剣に化けるまで (にんころ)
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第1巻:剣と兎とダンジョンと
プロローグ:出会いを求めるのは間違ってないがダンジョンは許してくれない


どうも始めまして。にんころです!
かなり勢いで書いたので拙いですがどうぞよろしくお願いします。
読みやすい工夫などのアドバイスを貰えるとありがたいです。
それでは本編どうぞ!


ここは迷宮都市オラリオ。数多の欲望犇めく場所、ある者は富を、ある者は夢を、そんなダンジョンに出会いを求める白髪の少年と正義を求める青年は今まさに、、、

 ミノタウロスから絶賛逃走中

「ヴモォォォォォォオオオオッ‼︎」

 

「おいベル!どうすんだこれ!」

この少年、名をシロウ・エミヤ

「どうすることもできないよ!」

この少年、名をベル・クラネル

 

この二人、上層に居るにも関わらずミノタウロスに追われているのである。

 

「どわっ!?」「 でえっ!?」

ミノタウロスの蹄。

背後からの一撃は当たることはなかったが足場を巻き込んだ。

足をとられ、無様に転がる俺とベル

「フゥー、フゥーッ・・・!?」

「うわわわわわわわっ・・・!?」

「まずったっ・・・!?」

ドンッと背中がぶつかる。行き止まりだ。何十もの通路を抜けて、辿り着いた広いフロア。正方形の空間の隅に俺たちは追い込まれた。

(自分の正義を見つけられないまま死ぬのか、師匠から貰った全てを台無しにしてしまうのか。)

隣を見れば緊張して力んだ笑みを浮かべたベル。

(そうだ諦めても二人で仲良く死ぬだけだっ!!歯を食いしばれ!笑う膝を立たせろ!)そう思い立ち上がった瞬間、ミノタウロスの胴体に一線が走った。

「っ!」

「え?」

「ヴォ?」

間抜けな声を出している間に何かに切り刻まれるミノタウロス、上腕から、大腿部、下肢、肩口、そして首と、いつのまにか目の前の怪物は肉塊へと成り下がっていた。

「グブォ!?ヴゥ、ヴゥモォォォォオオオーー!?」

断末魔が響き渡る。

鮮血が舞い大量の血のシャワーを全身に浴びて、俺達は呆然としていた

「・・・大丈夫ですか?」

目の前に現れたのは青色の軽装を着た金髪の、俺から見ても美少女だった。

この人を見た瞬間変な感覚に陥った。血が沸騰するような、だが冷めているような感覚。

ギルドで一度見た事がある、ロキ・ファミリアの第一級冒険者。[剣姫]アイズ・ヴァレンシュタイン

「あの・・大丈夫、ですか?」

「あっはい俺は大丈夫です。」

そう答えたのも束の間、後ろから「うわぁぁ!!」と絶叫が聞こえ振り返って見ると。居ない、唯一にして無二の兎みたいな家族が、辛うじて通路の先に砂埃が見えただけであった。

「・・・」

「ベル、お前はまったく」

俺は余りの情けなさに頭を抑え。逃げられたアイズさんは立ちつくしていた。

「・・っ、・・・っっ、・・くくっ!」

笑みを噛み殺した様な声が聞こえたと思って見れば狼男が居た。体を折ってヒーヒーと言っている

「助けていただいてありがとうございます。」

喋り掛けてようやく現実に戻ったのか此方を向いてくれた

「私達の失態だから助けるのは当然」

そう言って俯いてしまった。逃げられた事が余程ショックだったのだろう。

「すみません、仲間が失礼な振る舞いをしてしまいました。」

「ううん、別に謝られる事じゃないよ」

普通の人だったらここで文句を言うだろうがこの女性はそんな事ないようだ、正直大手のファミリアに目をつけられないかハラハラ物だった。

「ありがとうございました。」最後にそう言い残してギルドを目指して階段を駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

 




少し短いですがここまでです。


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第一章:無垢が罪なら無知も罪

1話から速攻で書いたので変かもしれない


ダンジョンから無事帰還した俺はある奴に会いに走っていた

「ベェルゥーーっ!」

ダンジョンに置いていかれた事を力に変えてカウンターを通り抜けアドバイザーと話す一室のドアを開けた。

「ベル!」

「どわぁ!」「ひゃっ」

ベルとハーフエルフのエイナさんが驚いた顔で見ていた。

「ベルお前が先に帰ったから酷い目にあったぞ!ゴブリンの集団に襲われるしコバルトに囲まれるしで散々だったぞ!しかもお前アイズさんにお礼を言わないだけでなく奇声を出して逃げるとはどう言う了見だ!」

物凄い剣幕で捲し立てた。正直人生でこれ以上ないくらいには早口だったと思う。

 

「シロウ君落ち着いて、、、ね?」

やはり女性は怖い心の底からそう思った

 

「ご、ごめんシロウ、ダンジョンに置いて逃げちゃって、」

と上目遣いで見つめてくる、どうも俺はこの目に弱いようだ。

「もう怒ってないけど、アイズさんに会ったらお礼はしっかり言うんだぞ?」

 

「う、うん頑張る!」

大丈夫か?この兎はと思ってしまうのも仕方ないだろう

 

「まぁそれはさて置き換金はしていくの?」

「・・・そうです、ね一応、ミノタウロスにでくわすまでモンスターはたおしていたんで」

「じゃあ、換金所まで行こう。私も付いて行くから」

 

何やら物凄くベルが落ち込んでいるように思えた、一瞬俺に怒られたからかと思ったがどうも違う感じなので。確実に理由を知っている人に聞こう。

「エイナさん、ベルの奴どうしたんです?」

「ヴァレンシュタイン氏の事が好きになってしまったみたいなの」

この一言で大体察しが付いた、つまりベルは絶賛青春真っ最中な訳である。

「なるほど、エイナさんからしたらそれは大問題ですねー」

世界が凍るのを感じる主に横から発生している。

 

「ベル君」

「あっ、はい何ですか?」

彼女は逡巡する素振りを見せながら、思い切ったように口を開いた。

「あのね、女性はやっぱり強い男の人に魅力を感じるから、、、めげずに頑張って!」

「・・・」

「強くなればもしかしたらヴァレンシュタイン氏も振り向いてくれるかもよ?」

一瞬なにを無責任なと思ったがベルは嬉しかったようで、、、「エイナさん大好きー!!」と言いながらギルドから出て行った。当の本人に視線を向けると

「なに見てるのよ」と睨まれてしまった。

(ベル、今日は二回も見捨てたな)心の中でベルを呪ったのだった。

 

「ただいまー」

そう言って入ったのは教会の地下にあるホームである

「お帰りシロウ君今日も無事みたいだね」

そう言って近づいて来たのは布面積の少ない白い服?を身に纏ったツインテールの巨乳ロリだった。この人はこんな見た目だが神様だ。俺とベルを拾ってくれた恩神にして家族、それがこのヘスティアと言う神だ。

 

(やはりただいまと言える幸せは何物にも代え難い物だな)

「それでシロウ君はステータス更新をするかい?」

「そうですね。やっときます。」

「わかったそれじゃ服脱いでうつ伏せになってくれ」

いつも思うがこの発言この人が言うとかなりギリギリな感じがする。

「そうだ、ベルはもう寝ちゃいましたか?」

「そうだね、すぐに寝てしまったよ。今日は散々だったらしいじゃないか」

そんな話をしていたら意識が薄れて行った自分でも気がつかない間に疲労が蓄積していたらしい。

 

「更新できたよって寝てしまったか。それにしても何度見てもおかしなステータスだね君は。」

 

シロウ・エミヤ

Lv1

力:I 90→H105

耐久:I 53→I 64

器用:I 95→H104

俊敏:H 100→H150

魔法:I 62→I 83

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

認められていないので使えない

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊との絆であり証

 

 




一応ステータスは出ましたね。
これは自分的に悩みましたぶっちゃけ簡単に投影できると魔剣ゲーになるのでバランス調整したいところです
気になる点もあると思いますが後々書きます。


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第ニ章:自分の正義は本能なのだろうか?理性だろうか?

ヘスティア・ファミリアの本拠、教会地下。地中に作られているため朝日も差さなければ、鳥の鳴き声も聞こえないがいつも大体5時に起きる。

「ベル行くぞーって居ないし」

何故かベルがもう居ないのでおかしいと思いつつソファーを見ると

「ベルきゅんのあほぉ。むゅぅ」と言っている夜這い女神を見て、目頭を押さえながら今日もダンジョンに向かう。

 

(ベルの奴先行ってしまったけどどこいるかなぁ)

少し肌寒い朝の空気を感じながら、朝からハプニングに巻き込まれたベルを探していた。

探しているとメインストリートの一角でベルと薄鈍色髪をした少女と喋っていた。

「ベル、最近俺を置いて行くのが趣味なのか?」

これで三度目なのでそろそろ怒っても良いだろうと思いジト目で睨んだ。

「シロウ!ごめん、焦って出ちゃったんだ。ヘスティア様が、、、ね?」

申し訳なさそうにこちらの顔色を伺うベル

「わかってる、怒って無いから皆まで言うな」

といつもついつい許してしまうシロウなのだ自分自身でも甘いのはわかっているがどうにも憎めない。

「あの、そちらの冒険者さんはベルさんのお仲間の人ですか?」

ウェイトレス姿の少女がベルに問い掛ける

「そうですよシルさん」

どうやらこの少女はベルの知り合いらしい。

「はじめまして、俺はシロウ・エミヤって言うんだよろしく。」

「はじめまして、シルフローヴァです。シロウさん」

笑みを浮かべてベルに視線を送っていた。

(お邪魔虫って感じだなぁ)

そんな事を思いながら今日もダンジョンに向かう。

 

古代と呼ばれる時代の戦士達はステイタス無しにモンスターと戦っていたらしい。正直言って信じられないと思うが俺の師匠がその類の人間だったので信じざる得ない。そんな戦士達ならばこの状況も余裕で切り抜けられるのだろう。

「無理だぁぁぁぁぁ!!」

「しぬぅぅぅうう!!」

隣のベルが叫びながら全力疾走している。正直認めたくないが同感である。コボルトの群れに真正面から挑むのは今の俺達には荷が重い。俺の師匠は魔法については教えてくれたが、頑として戦闘技能は教えてくれなかった。一度懇願してみたが「お前に剣を教えても時間の無駄だ。」と一蹴されてしまった。才能が無いと直球で言われた俺はその後、教えを乞うことは無かったのだが今になって思えばもう少し粘れば良かったと思っている。

そんなことを考えていたらベルが隠れたので俺も隠れた。ちなみにベルの武器は短刀で俺は拳と弓だ。武器は何故か使えないので使える弓と魔法で強化した拳だ、弓の才能はあったみたいなので師匠に教えて貰えたのだ。

「ベル、弓で確実に一匹仕留めるからそれが合図で突撃するぞ」

ベルが頷くのを確認すると同時に矢を弦に番える。極限まで引き伸ばした時間の中で狙いを定める。そして、、、、

「ヒュッッ、、、、ストッ!!」「ガァッ!」

とものの見事に頭に命中、したと同時に俺とベルが一目散に群れに突っ込んで行く。仲間がやられていきなり出てきた敵を見て一瞬硬直するコボルトの群れ。そんな隙を見逃す事もなく一匹ずつ確実に殺して行く。

強化開始《トレースオン》と呟き拳を強化しコボルトの頭を狙う。

「ガァァァァ!!」叫びながら逃げようとしてももう遅い強化した俺の拳はコボルトの頭蓋骨を容易に「はぁっ!!」砕いた。

自分の分は片付いたのでベルを見ると「はっ、はっ、はっ、」と少し息を切らしていたが戦闘は終わっていた。

「お疲れ様シロウ!」

「おう!お疲れ様」

「シロウは良いなぁ魔法がもう使えて!」

「そうか?そんなに良い物じゃないぞ」

と言ったが実はかなり便利な魔法だったりする消費魔力が少ない割にかなり強化できる。身体能力、硬度強化、が出来るので布なんかも場合によっては武器にも盾にもなる。

「まぁ何にせよ魔石回収するぞ」

「うん!そうだね」

そう言って俺たちは.また次のモンスターを探して上層を彷徨う。

 

シロウ・エミヤ

Lv1

力:H105→H113

耐久:I 64→I 75

器用:H104→H162

俊敏:H 150→H192

魔法:I 93→H120

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

認められていないので使えない

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊との絆であり証

 

「はい、シロウ君ベル君今回のステータスだ」

そう言われて見たのだが、何度見てもよくわからないので考えるのを辞める。

「えっ」

隣からベルの声が聞こえたので用紙を覗き込むと

「何だこれ、、、、」

意味がわからない位に成長していた

「か、神さま、これ間違いじゃないですよね?」

「君は僕が簡単な読み書きもできないと思っているのかい?」

「い、いえっ!そういうことじゃなくて、、、」

(何だかよくわからんが触らぬ神に祟りなしって感じで不機嫌なヘスティア様には触れないでおこう)

そんな事を思っていたら「知るもんかっ」と言ってヘスティア様は外出の準備を始めた。

「僕はバイト先の打ち上げがあるから、それにいってくる。二人寂しく夕飯を食べるんだねっ」

と言い残してバタンっ!と出て行ってしまった。

「なぁベル、お前ヘスティア様に何かしたのか?」

とベルに問い掛けながら俺はとばっちりを受けたと思っていた

「わ、わかんない」

(女神心は複雑なのである)

「そういえばシルさんに夕飯誘われてるんだけどシロウも一緒にどう?」

「おっいいねぇ、どうせ二人だけだし偶にはパーっとやりますか」

そう言って俺達は本拠から出た。

 

メインストリートの一角[豊穣の女主人]

「ここ、だよね?」

「記憶が間違ってなければな」

そう言い合いながら入口から店内を覗き込む。

(側から見たら不審者だなぁ俺達、、、)そんな事を思っていると。

「ベルさんっ」とベルにシルさんが声を掛けた、凄いギラギラした目で

「やってきました」

「よっ俺も付いてきたがいいか?」

「はい、いらっしゃいませ」

シルさんは朝と同じ服装で俺達を出迎えてくれた

「お客様二名入りまーす!」

(ウェイトレスってこんな事言わないだろ)

とか思ってたらシルさんはベルの様子を伺って可笑しそうににやけていた。

「では、こちらにどうぞ」

「は、はい・・」

「ありがとう」

案内されたのはカウンター席だった。

一番隅にある席に案内された俺達、シルさんが気を使ってくれたのかと思っていたらドワーフの女将さんが喋り掛けてきた。

「あんたがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせに可愛い顔してるねぇ!」

そんな事をベルに言っていた。少し可哀想になる位には同じ男として同情できる。

「なんでもアタシ達に悲鳴を上げさせるほど大食漢なんだそうじゃないか!いっぱい食べていっぱいお金使ってくれよ!」

ベルが度肝を抜かれたようにシルさんを見た。

側に居たシルさんは目を横に逸らしどこ吹く風だった。

「ちょっと、大食漢ってなんですか!?いつから僕はそんなものになったんでずか!?」

「・・えへへ」

、、、、かわいい不覚にもそう思ってしまった

そんなやり取りを見ながら水を飲んでいると女将さんが喋り掛けてきた。

「お前さんもシルの客かい?

「ベルの付き添いって感じですねぇ」そんな風に返して少し雑談していたらベルとシルさんのやりとりが終わったようで注文をして飯を食べ始めた。

 

しばらくして

「楽しんでますか?」

「圧倒されてます、、」

「割と楽しんでるぞ」

そんなやりとりをしながらエプロンを外したシルさん

「お仕事いいんですか?」

「キッチンは忙しいんですけど、ホールは間に合ってますので。」

そんな事を言いながら女将さんに視線を送ったシルさん。

女将さんも快諾したようで頷いてくれていた。

 

隣で楽しそうにベルとシルさんが話しているが俺は入らず一人で思考に没頭していた。

(最近忙しくて考えてなかったな。正義について)

昔師匠に言われていた、自分の正義を見つけろと言う言葉は今もまだ解は得られていない。師匠の最期に残した遺言であり、俺の人生の目標だ。

(オラリオに来てもまだ答えは見つけられませんでしたよ師匠)

とそんな事を思っているとベルの雰囲気が変わったのに気が付いた。

ベルの視線の先を見てみると、、、アイズさんだ、ベルは頰を赤くしてソワソワとしている。

青春をしている男の子の顔をしていた。

「青春か、」そう一人呟きながら酒をちびちび飲んでいた。

 

「そうだ、アイズお前あの話を聞かせてやれよ!」

そんな声が聞こえてきた。

「あれだって、帰る途中で何匹か見逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5層で始末したんだろ!?あん時いたトマト野郎とブルって無様に立ち上がった野郎の!」

正直その通りだと思った。一言も言い返せない、別にどうでもいい筈なのだが拳に力が入る。

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しのガキが!」

その後も罵詈雑言が狼男の口から出てくる出てくる。怒りでどうにかなりそうなのを鋼の意思で抑えつける。

(今までも何度も舐めてきた苦渋だ今更爆発させる程馬鹿じゃない。)

だが最後にベルが一番言われたくないであろう言葉が飛び出した。

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

ベルが一目散に外に出る

俺にベルを止める事は出来なかった。

「追わなくて良いのですか?貴方の仲間でしょう?」

エルフの人が話しかけてきた。

「追わないですよ。追った所で俺に出来る事は無いですから。それに事実だかは別に悔しく何てないですし、これお勘定です。」

そう言い立ち上がって店から出る。

「悔しくない人間はそんな顔しませんよ。」

 

店を出た瞬間後ろから声を掛けられた。

「待って、、、!!」

「その、、、ごめんなさい、!!」

「何故謝るんですか?」

わかってはいるが聞いてしまう。

「だって、、貴方の仲間を傷つけた、、」

「そうですね、確かに傷付けられたでも別に貴方には関係無い事ですよ。」

そうこの人には関係無いのだ、感謝こそするがこの人に当たるのは違う。

「で、でも、、、」

「そうですね、貴方には感謝しているけど貴方のファミリアには怨みが出来た。必ず晴らすべき怨みがっ!!」

自分の血が沸騰するのがわかる体が一瞬何かに作り変えられる感覚を覚えるが一瞬で消えた。

「それはウチのファミリアへの宣戦布告って事でええんか?」

現れたのは赤髪の細い目と体の神十中八九神ロキだろう。

「いいえ、今の俺じゃ確実に殺される、だから今はまだ挑戦しませんよ」

そう言い残して荒れ狂う感情を力に変えてバベルを目指す。

 

 

 

 

 




一応主人公設定
シロウ・エミヤ
外見
年齢 16歳
身長 170cm
体重 60kg
戦闘服
頭に赤いバンダナ
黒ライトアーマーと黒いズボンを着ている
右腕には包帯を巻いており戦闘中には硬化させ殴る

赤髪で右腕の肘あたりまで褐色なので包帯を巻いている。目にはハイライトが無く外見はプリヤの士郎を意識している。
戦闘
主武器
弓 拳

弓は天賦の才を持っているが剣は師匠から教わらなかった。射れば百発百中だが本人は当たり前なので気にしていない。

拳は近接時において使っているが才がある訳ではないのでただ単純に殴っているって感じだ。

主な魔法
強化 投影

強化と言う魔法を使う、詠唱はトレースオンの一言で終わりだ。コスパが良く硬化、身体強化もできるので便利な魔法と言う印象。イメージが強固であればあるほどブースト

投影:unknown

主なスキル
剣化の加護

加護と書いてあるが加護かはわからない謎のスキル、魔法を使う度に体は剣になるらしい。

経験値は戦闘では得られず、武器から得られる

力:武器を使った時の威力で変わる
耐久:武器を使った時の消耗で変わる
器用:武器の熟練度で変わる
魔法:自分が武器に出来る物に魔力を通すとup
これ以外にも武器に蓄積された経験で変動するが、、、

このスキルは精霊との絆であり証:unknown



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第三章:理性は静かに。感情は鮮烈に。

行間を意識して書きました。もし読みづらいとかありましたらコメントよろしくお願いします。


ー地獄を見たー

 

戦場には何も無かった。死体と泣き叫ぶ弱者、それと爆音が鳴り響くだけだった

 

ー地獄を見たー

 

間接的な物だった。目に見える物では無かった。だが人の本性を見てしまった俺は、さながらそこが地獄に見えた

 

ー最後に無力を知ったー

 

なんて事はない。師匠が殺されたのだ、、助けた筈の人々に。何も出来はしなかった、、魔法が使えるからっていい気になっていた。師匠なら死なないと何処かで思っていた。

師匠との旅で最後に得た物は正義に解を見つける使命と圧倒的無力感だった、、、

 

(俺はまだ弱い、ベルを守れなかった)

 

後悔の念が押し寄せて来た。普通の人だったら仕方ないとかしょうがないと言うだろう。だが、この男にそれは出来ない、、許されない、、正義を探し力を求めると言う事は自分に理性の鎖を巻き付ける事と相違ない。

 

(ベル待ってろ、お前を一人にはしないっ)

 

バベルへ必死こいて走る無様に転びそうになっても前に進む、、また後悔しないように。

少しずつ、だが確実に、自分が違う物に侵食されている事に今はまだ、誰も気がついていない。

 

 

ここはダンジョンの中、防具も着けずに戦う少年が一人

(ここどこだろう)

なんて能天気な事だろうか、理性をやっと取り戻した所は僕の未踏の地

 

(5階層、、、いや6階層)

曖昧な記憶を辿り、自分の下った階段の数を計算した。

そして理性が戻ったとは言え、まだ熱が冷めない僕に引き返すと言う選択肢は無かった。

 

「はっ、は、、」

口から漏れる息が乱れる。疲労は思っていたより蓄積されているらしい。

 

(そういえばシロウを置いて来てしまった)

ベルは四度目の置いてけぼりを使っていた。流石に今回は怒られる、そんな事を考えていたら。

 

(、、ここは)

広間に出たらしい。正方形の形をしており視界を隔てるものは何一つない。

僕は部屋の半ばまで足を進め中央付近で立ち止まる。周囲を見渡しても来た道以外は無いようだ。

行き止まりだとわかり引き返そうとした直後。

ピキリ、と

静まり返っていた広間に響く音、僕は顔を上げて周囲を見渡す。

亀裂から現れたモンスターはウォーシャドウ身の丈160cmほどはある人型モンスター。黒一色の体には毛や皮などは見受けられず唯一、十字の形を描く頭部に顔面と思しき真円状のパーツ。

6階層出現モンスター、[ウォーシャドウ]

 

「・・ッ!」

がしゃりっと後方からも上がる音に振り向けば、もう四匹のウォーシャドウが同じように産まれ落ちていた。

そして囲むように四方を包囲された僕は確信する。

 

(今の僕じゃ勝てない)

この五匹を一気に相手する事は出来ない。

(ああ、僕は死ぬのか)

絶望感が押し寄せて来た。まだ憧れの人に追いついていないのに

(、、神さま。シロウ。ごめん)

心は折れかけていた僕だった。無理だった最初から僕みたいな泣き虫な人間があの人に追いつくなんて。

諦めかけていた心に喝を入れるかのような。鋭く風を切る音が聞こえた。

「ヒュッ」

そしてその音源がウォーシャドウの頭を貫く。こんな芸当が出来る人なんて一人しか居ない。

 

「何諦めてんだベル!!お前ヘスティア様との約束を破る気か!?」

 

「・・っ」

(そうだ僕は生きなければいけないんだ。僕はもう一人だけの命じゃない)

 

 

シロウside

 

ダンジョンの上層を探しても一向に見つからないベル。

(まさか未踏の階層まで行って無いよなぁ)

正直ありえると思っている自分がいる。ベルは多分理性がきかない状態だろう、強くなる為にそんな無謀を犯しても不思議ではない。

 

「・・・」

何か聞こえた気がした。呼ばれている気がする。何か懐かしい様なそんな不思議な感覚に包まれながらなすがままに歩く。そして、、居た。

だがモンスターに囲まれているベルの顔は絶望した人のそれだった。

頭に一瞬で血がのぼるのがわかった。激情を押し殺して矢を射る。そんな精神状態でも外さない自分に驚いたがそんな事はどうでもいい。

 

「何諦めてんだベル!!お前ヘスティア様との約束を破る気か!?」

そう何より一番頭にきているのはベルが諦めてヘスティア様を泣かせる事だった。俺にとってもベルにとっても恩神であるあの神との約束を諦める事が許せなかった

 

強化開始<トレースオン>

魔法で拳を強化してモンスターにひた走る。さっきの一喝でベルは再帰したのか鋭い眼光が瞳に宿っていた

 

(いい男の面構えだ)

そう思いながらウォーシャドウに飛びかかる。二匹同時に相手するのは至難の業だがベルに負けていられないのでやるしかない。

「はっ!」

右から伸びてきた手を強化した包帯でガードして巻き付ける。それと同時に腕力強化も施して左の敵にぶつける。

「だぁぁあッ!」

泥臭い戦法だが大きな隙が出来たのでその間に矢を射る。

動く的だろうが何だろうが矢を射れば集中力が上がる俺にとっては関係なかった。

「ヒュッ、、スト!」

二匹の頭を同時に貫通した。

 

「ベル!」

敵を打倒した安心感に浸る時間も無いまま一匹また一匹と増えていき、唯一の通路を塞がれてしまった

 

「シロウ、僕は強くなりたいんだ。」

鋭い眼光が俺を射抜く。

 

(そうだベルは今強くなろうとしている。俺も強くならなきゃ、こんな所で逃げてなんかいられない!)

「ああ、ベルしょうがないから俺も付き合ってやるよ、こんな所で逃げたら男じゃねぇよな」

 

ベルは安心した様な笑顔を俺に向けてくる。

高揚した心に呼応してステータスが熱くなる。イメージが強固になる。

 

「やってやろうよシロウ」

「ああ!こんな所でくたばる訳にはいかないんでね」

決意をより強固にし、泥臭い戦いが始まった。

 

 

 

 

 



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第四章:真実は心の赴くままに

ここは教会の地下にある本拠。そこに今日は奇行を繰り返す神が居た。

(遅い、いくらなんでも遅すぎる。)

腕を組み、眉を寄らせて部屋を行ったり来たりを永遠と繰り返す。

 

(あの時嫉妬して怒ったからかな?)

そんな不安と焦り後悔が押し寄せてきていた。流石にシロウは帰ってくるだろうと思ったが、、そんな筈もなく。心配で外に探しに行っても収穫ゼロ。

 

(まさか襲われたのでは!?)

と先程から永遠考えているが当の本人達は一向に帰ってくる気配がしない。

やはりいてもたってもいられずドアに駆け寄ると、

「ガチャッ」

「ふぎゅ!?」

ドアが開きヘスティアの顔面に直撃!

そして必然的にヘスティアのスイカが形を変えてドアに当たる。

 

「どうした。ヘスティア様?」

「か、神さま、、ごめんなさい」

予想外の襲撃だったが上からの声に弾けるように顔を上げた。

「ベル君!?」

胸に広がる安堵、それと同時にその姿を見て絶句した。

「どうしたんだい、その怪我は!?まさか誰かに襲われたんじゃあ!?」

「いえ、そういうことは、なかったです、、、」

「じゃあ一体どうして!?」

「ダンジョンに潜ってたんですよ、俺とベルは」

ベル君も頷く、唖然として何もいえなかった。

「き、君達は馬鹿なのかい!?いいや馬鹿だったね!防具も着けずにしかも一晩中!?」

「、、すみません」

 

今ベルとシロウは防具を着けておらず。こんな状態でダンジョンに行けば裸同然、自殺行為となんら変わらない。

「どうしてそんな無茶をしたんだい?そんな自暴自棄のような真似。」

「・・・」

今のベル君はどこか暗い雰囲気がして、叱ろうにも叱らなかったヘスティアは諭すような優しい声音でかたりかけた。

しかしベル君は一向に口を開かない。

「わかった、何も聞かないよ。君は頑固だから、無理矢理聞いても無駄だろうしね」

「ごめんなさい、、、」

「なに、いいさ。じゃあ、シャワーを浴びておいで。傷の汚れを落として、治療しないと」

「、、、はい、ありがとうございます」

ベル君は部屋に入って行ったが問い詰めるべき人間はまだいる。

 

「ようし!それじゃ俺もベルと一緒に「ちょっと待つんだ」、、、、はい」

今の今まで溜めていた鬱憤も限界に達していたヘスティアはシロウへの当たりが異様に強かった。

「いや、まぁ正直若気のいたりとしか言いようがないんだが」

少し真剣味を帯びた声音で言っていた。

「それは僕にも言えない事なのかい?」

「言えません」

 

即答だった、心は凄く苦しくて頭の中では泣きそうだった。だがシロウが僕に言えないなら何かしら理由があるのだろう。僕は女神だからきっと女の僕には理解出来ない事なのだろうだからこそ。

「じゃあ、いつかきっと僕に言って欲しい、、約束だ。」

そう僕は君を信じている。彼の過去を僕は知らないし彼の戦い方も知らないけど、君は愛を理解して家族と接している。それだけは僕にもわかる。だから僕はそれを信じよう、家族なのだから。

 

 

シロウ・エミヤ

Lv1

力:H113→H156

耐久:I 75→H104

器用:H162→G246

俊敏:H192→G234

魔法:H120→H194

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

認められていないので使えない

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊との絆であり証

 

(これが今回の更新かぁ、、かなり伸びたな特に器用は)

そんな事を思いながらベルの方を見るとヘスティアの様子がおかしいのに気がついた。

「ベル君、今日は口頭で伝えるけどいいかい?」

そんな事をヘスティアが言っている、、怪しさ100%だ。

(何を隠してるんだ?)

と考えたが答えに辿り着くこともなく。

 

「あ、あふぉーッ!!防具も着けないで到達階層を増やしてるんじゃない!」

「ご、ごめんなさい!?」

少しこちらを睨んだが俺はどこ吹く風でステータスを読んでるフリ。

だが聞き逃せない言葉が次の瞬間出てきた。

「今の君は理由ははっきりしないけど、恐ろしく成長する速度が速いどこまで続くかはわからないけど、言っちゃえば成長期だ」

(そんな馬鹿な事があるのか?)

ここに来て怪しさが増す。大体神の恩恵にわからないだと?そんな事があり得るのだろうか。

 

そして一つの答えに辿り着く。

(もしかしてブーストスキル?)

それ以外に考えられなかった。ヘスティア様の怪しさが無ければベルの戦闘方法が成長しやすいとか理由を付けられるが。

(あの人嘘下手だなぁ〜)

呆れるぐらい動揺しているヘスティア様。きっと問い詰めれば言ってくれるだろうが。

(さっき見逃して貰った恩があるからな)

とこちらは見て見ぬ振りを決め込んだ。そんな事を思っているとベルとのやりとりも終わったようで。

 

「ベル君っ、僕は今日の夜・・いや何日か部屋を留守にするよ。構わないかい」

どうやらヘスティア様は神々のパーティーに行くようだ。

「それじゃ俺達はダンジョンに行くか」

そう言い残して本拠を出た。

 

「そういやベル、豊穣の女主人に行くんだろ?」

「う、うん」

「そう硬くなるな金は俺が払ったんだそんなに向こうも怒ってないだろうよ」

「そ、そうかな」

そう、これからお騒がせした謝罪をしに行くのだが先程からベルはこの調子なのだ。

そんなこんなで店の前に立っているとエルフとキャットピープルの店員が話しかけてきた。

「申し訳ありません、お客様。当店はまだ準備中です。時間を改めてお越しになっていただけないでしょうか。」

「まだミャー達のお店はやってニャいのニャ!」

可愛い、不覚にもニャだと言う言葉が秘める破壊力に負けてしまいそうになる。

 

(っと少しスリップしていたらしい)

スリップしている間にニャンコがわめいていた。

「貴方は黙っていてください」

エルフの一撃がまったく見えなかった

(ここは予想以上に化け物の巣窟みたいだな)

そんなことを考えていると奥から。

「ベルさんっ!」

とシルさんが現れた。何やらあの二人は甘い雰囲気でいるのでエルフに話しかけた。

「この間はすみませんでした。俺からも謝っときます。」

「お金はしっかり払って貰っていますから、謝る事は無い。それに貴方の怒りはあって然るべき物だ。」

「そう言って貰えるとありがたいのです。」

見た目は物凄くキツそうな女性だが、実はそうでもないらしい。話してみれば常識人みたいな印象だった。

 

そんな話をしている間にベルが「行ってきます!」と勢いよく飛び出してしまったので、俺も後を追う。

「ミアさんベルを許してくれてありがとうございます」

感謝の念を店の長に伝える。

「いいってことさ、お前さんはもっと希望を見た方がいい。後悔しないようにね。」

「まぁ見ているつもりなんですけどね。

見透かされているような感覚がして早々に立ち去ってしまった。

 

 

夜。

俺は一人夜風に当たりながら武器について考えていた。

(今は拳だがいつか限界が来る)

そう悩みの種はこれである。強化は魔力消費が少ないとは言え、使い続ければ魔力枯渇にだってなる。それじゃダメだ、俺には強い武器が必要だ。だが、いつもこの事を考えると頭痛と共にある情景が浮かぶ。

それは雪原、だが雪と言うにはあまりにも無機質でまるで鉄のような物だ。

そして地面には無数の剣が所狭しと突き立っている。

だがこれは俺の記憶じゃない事だけは何故かわかる。それがいつも見ていた幻。

だが今日は頭痛も幻も無い。その代わりイメージ出来たのは白と黒の双剣、それが見えた途端体が熱くなった。凄まじい激痛に苛まれたが一瞬で治った不思議に思いながら本拠に戻って行く

 

 

同時刻

神の宴会場[ガネーシャ・ファミリア]本拠

ヘスティア土下座しながらヘファイストスに言い放った。

「僕のファミリアの子に、武器を作って欲しいんだ!」

 

 



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第五章:予感と直感と

ダンジョン四階層。

 

俺は先に戦闘を終えたのでベルの戦闘を眺めた。

(ベル、お前は強くなったな)

少し羨ましいような、気がしないでもないが。俺には俺のペースがあると納得していた。

「ギィ!」

考え事をしていたら後ろからダンジョン・リザードが襲ってきたが強化した拳で頭蓋骨を粉砕して沈黙させた。

 

「ベル、そろそろ帰るぞ」

「うん、そうだね」

そんな話をしつつダンジョンを上がり、始まりの道と呼ばれる一階層

に出た。

 

「シロウ!あれ何!?」

「ん?」

ベルの指さした方向を見てみると、檻に入ったモンスターが居た。

 

「ああ、なんかモンスターフィリアって言うので使うらしいぞ」

「何それ?」

「ベルと同じ時期にオラリオに来たんだから見たことないよ」

「そうだよねー」

祭りの話で盛り上がりながらシャワー室へ歩を進めた。

 

 

「・・あんた、いつまでそうやっているつもりよ?」

「・・・」

「私、これでも忙しいんだけど?」

「・・・」

「そこで縮こまってられると、気がそがれて仕事の効率落ちるんだけど?」

「・・・」

「ヘスティア?」

「・・・はぁ」

 

神の宴があったあの日、ヘスティアから鍛治の依頼をされた。友人のよしみで格安にするのも子供達の努力を蔑ろにする事なので論外のなだが。ヘスティアは宴が終わった後も何度も何度も頭を下げてきて現在に至る。

 

「そもそも、あんたは昨日から何やってるの?なんなのよ、その格好」

「・・土下座」

「ドゲザ?」

「これをすれば何をしたって許されて、何を頼んでも頷いてもらえる最終兵器ってタケから聞いた」

もう無理だ、とヘファイストスは嘆息。仕事に身が入らないので必死に頼み込む理由を聞く事にした。

 

「ヘスティア、教えてちょうだい。どうしてあんたがそうまでするのか」

「今あの子達は変わろうとしてるっ。一つの目標を見つけて、ベル君は、高く険しい道のりを走り出そうとている!シロウ君は自分に足りない物を必死に探している!だから欲しい!あの子を手助けしてやれる力が!あの子達の道を切り開く武器が!」

視線は床に向けたまま。ヘファイストスの方を見向きもせずに言葉を続ける。

「僕はあの子達に助けられてばっかだっ!ていうか、ひたすら養ってもらってるだけだ!ボクはあの子達に何もしてやれていない!そんなのは嫌なんだよ、、、」

最後の方は消え入りそうな言葉だったがしかしヘファイストスを動かすに足りた。

 

「わかったわ。作ってあげる、あんたの子達にね」

顔を振り上げたヘスティアに、ヘファイストスはかたをすくめる。

「私が頷かなきゃ梃子でも動かないでしょ」

「・・・ありがとうヘファイストス!」

 

昔のグータラしていた引きこもり駄女神よりは今のヘスティアになら手を貸すのもやぶさかではないと思っている自分がいた。

「で、言っておくけど、ちゃんと代価は払うのよ」

天下のヘファイストス・ファミリアがタダ働きするのもありえない。

「わ、わかってるさ僕だってやるときはやるんだっ」

ヘファイストスは壁に作り付けされた飾り棚へ向かった。

「あんたの子達が使う得物は?」

「シロウ君はわからないけどベル君はナイフだよ」

わからないとは何だと聞き返したい。さっきまで必死に懇願してきたのにおかしな話だと思って聞き返した。

「わからないって何よ。さっきまで必死に作ってくれって言ってたじゃない」

 

「実はシロウには普通の武器が使えないんだ」

「普通の武器が使えない?」

何なのだそれは冒険者としてやっていけないじゃないか。

「君は親友だから教えるけど、このスキルが関係してるんじゃないかと思ってるんだ」

そう言って用紙を渡してきた。

 

 

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

 

「これは、何?」

上の文も気になるが一番は下の文だ

「経験値は武器から得られって、、」

「なんだいそんなに凄い事なのかい?」

「凄いなんて物じゃないわよ、、鍛治師の努力をこの子は一目でわかるって事なのよ!?」

「!?」

ヘスティアも気がついたようだった。そう、この意味は鍛治師にしか分かりづらいかも知れない事だが、武器から経験値を得られると言うのはつまり武器そのものの構造、素材、歴史、その全てを一目で把握すると言う事に他ならない。

「ねぇヘスティア、シロウ君とやらに少し会えないかしら?」

「なぜだい?」

「少し確認したい事があるの」

そう言い放つ私の顔はきっと嬉々としているでしょう。

 

 

ヘスティア様が出かけてから三日の朝。まだヘスティア様は帰ってきていない。

「ベル、そろそろ行くぞー」

「ちょっと待って」

そんなやりとりをしながらメインストリートを歩いていると。

「おーい、待つにゃそこのバンダナー!」

俺か?と確認すると頷いているので駆け寄ると。

「どうしたちんちくりん!」

「ミャーはちんちくりんじゃないのニャ!」

この三日間ずっと豊穣の女主人に赴きこのアーニャと仲よくなったのだ。

 

「それでどうしたアーニャ」

「ちょっと面倒ニャこと頼みたいニャ。はい、コレ」

「これはベルに頼んだ方がシルが喜ぶと思うぞ」

「そうなのかニャ?なら白髪頭に任せるニャ。これをあのおっちょこちょいに渡して欲しいニャ」

そう言ってベルに渡したのはがま口財布を渡していたがベルはいまだに何のこっちゃって顔をしていた。

説明をリューに任せたアーニャは手持ち無沙汰みたいなので喋りかけてみた。

 

「アーニャは祭りには行けないんだろ?」

「ミャーは店があるから行けないのニャ」

「なぁアーニャお前から見てベルはどう見える?」

素朴な疑問がふと湧いた。

「あんな、なよなよした男は好みじゃないのニャ!もっとカッコいい男はいっぱいいるのにミャーにはシルが理解出来ないのニャ」

なるほど外見はやはりそう見えているのかと納得する反面少し悲しくもあった。自分の家族はもっと凄いんだぞ!っと胸を張って言いたいが。

(まぁあんなにあたふたしてたら仕方ない)

そんなこんなでベルとリューさんのやりとりは終わったのかこちらに駆け寄ってくる。

 

「シロウ、シルさんにこれ渡さないと行けないんだけど一緒についてくる?」

少し思案したが。すぐに答えは出た。

「いや俺は別行動させてもらうわ」

そう言ってベルとは別れた。

 

 

一人で祭りを練り歩くぼーっと歩いていたので覚えていないが出店を見てるだけでも楽しかった。

そして少し歩いていたら。

「あっ」

「アイズたんどうしたん?」

「・・・」

出会いたくない二人に出会ってしまった。あの酒場の件以来の再会だが正直アイズさんは別としてロキは死ぬ程苦手なのである。

 

「なんや自分一人で祭りかいな寂しいやっちゃな〜」

「いや、仲間は少し野暮用で逃げられたんでね」

それじゃって感じでアイズさん達から背を向けると。

「まっ待って」

呼び止められた。

 

「えっとあの子は、、怖がっていました、か?」

不安な顔をしてこちらに問いかけて来た。

「あー、アイズさんには感謝してましたよ。ただベルは恥ずかしくて逃げただけなんで気にしない方が良いですよ」

そんな言葉を吐き捨てるように立ち去ろうとするとロキが問いかけて来た。

 

「自分前の言葉に後悔はないんやな?」

そう問いかけてくる。そんな物決まっている。

「ええ、あの言葉に後悔なんて無いですよ」

そう言って返した。

「なら何であの時ベートに反論も反撃もしなかったんや?」

そんな物は決まっている。

「俺はまだ弱いから。勝てないのならまだ挑まないそんな時間があるのなら自分の剣を研ぎますよ」

そう言い残して立ち去った。

 

「ふん、それが実現することを願ってるで?挑んでくるもんに容赦なんてせんからな」

鋭い視線と共後ろからかけられた言葉だった。

 

ロキと会ってから少し経ったが様子がおかしい。ギルドの職員が慌ただしくしているように見受けられた。

「なぁあんた一体何の騒ぎだ?」

相手の男はこちらを見て怪訝そうな顔をするが俺の戦闘服を見て顔色を変えた。

 

「あんた冒険者か?」

「そうだが?」

「なら少し手を貸して欲しい」

最初に頭を掠めていた不安感が徐々に大きくなりその一言で爆発する。

「モンスターが脱走しちまった」

聴き終える前にベルを探して走り始めた。

「ベル!どこにいる!?」

あのトラブルメーカーの事だ確実に巻き込まれているに違いない。

 

探し回ったが一向にみつからない。焦りが募るばかりである。

(まさか、、)

頭によぎる可能性は一つダイダロス通り。あそこは地上の迷宮と言われる程入り組んでいて住人ですら迷うような場所だ。

 

(ベル!)

絶望感に打ちひしがれていると何かに呼ばれている感覚に陥った。

(この感覚どこかで)

前の酒場事件の時ベルを追っていた時にも感じた感覚。

それを感覚を信じて走っていると。

「ベル!」

「シロウ!?」「シロウ君!」

見つけた。今まさにベルがステイタス更新をしている最中だった。

「俺が足止めするからちゃっちゃとしろよ!」

ヘスティア様が強く頷くのを確認してシルバーバックと対峙する。

 

弓は持ってきていないので体一つで戦わなければいけない。

「ガァァァァアアッ!!」

「くっ!」

拳で吹き飛ばされるのを何とか包帯でガードしつつ耐えていた。右から来る拳は包帯で受け。左から来る拳は半身になってかわしていた。

 

そしてその時が来る。

「おまたせシロウ!」

「遅いぞベル」

俺の相棒が横に立った。頼もしさを感じている。

合図も無く二人同時にシルバーバック目掛けて駆け抜ける。

「はっ」

まず先手を打ったのは俺上にぶら下がっているタオルを顔面に被せて強化した拳で一撃を見舞う。

 

「ガァァァァアアッ!」

暴れるが目を潰された事により混乱状態に陥るシルバーバックだったが俺とベルがその隙を見逃す事も無く。

「はぁぁぁああっ!!」

ベルがナイフをシルバーバックに突きつけた。

「ガァッ!」

だが浅かったのかベルは振り回されるが負けじとナイフに縋り付く。それはまるで何かを待つように、そして。

 

「せいっ!」

ありったけ魔力で強化された蹴りがナイフを直撃し勢い余ってシルバーバックを貫通した。

「ーーーーッッ!!」

歓声が響き渡る。俺、ベル対シルバーバックの戦いの行方を見守っていた、ダイダロス通りの住人達がこうふんを爆発させたのだ。

 

そんな中一人だけ意識が薄れ行く者が一人居た。

「ベル、お疲れ」

そう言い残して意識は途絶えた。

 



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第二巻:剣に歴史を刻む者
第一章:想像は行動と共に


二巻突入です!一巻の最終話はかなり眠かったので多分ものすっごい読みにくかったかも、、すみません。


ダンジョン7階層

 

俺とベルはキラーアントと戦っていた。

「ギギッ」

キチキチキチッ、とキラーアントが動かし歯を鳴らしている。

このモンスターはフェロモンを出して仲間を呼ぶ事が出来るので速攻で殺るのが一番だが、二対二で睨み合っている。

先に動いたのはベル、この中で一番速いベルの攻撃にキラーアントは避ける事も出来ず。

「ーふっ!」

ナイフを閃かせ四本の腕を落とす。このモンスターの甲殻は新米冒険者には硬いので隙間を狙うのがセオリーなのだが、神様のナイフは甲殻を容易く切断する程の切れ味を持っているので関係ない。

「はぁ!」

最後に首を一閃して一匹目は沈黙。続く二匹目には、

「ギギィ!」

「ふん!」

頭にアイアンクローをして握りつぶした。武器が無いので強化してパンチしたりして戦っていたが、アイアンクローは魔力消費が身体強化だけで済むので消耗を抑える事が出来る。

「ベル次行こうぜ」

「うん、そうだね」

俺達は7階層の探索を続けた。

 

 

「はぁ!?7階層にもう到達してるだと!?」

「うるさい、耳元で大声を出すな」

こいつはアドバイザーのミキ・ミシマ、ベルで言うところのエイナみたいな立場だ。

「お前らは自殺志願者か!?」

「俺達は自分に適した場所で戦ってるだけだぞ」

「はぁ魔法があるとはいえ危ないんだからな?」

「ミキ、ダンジョンに安全圏なんて殆どないぞ、、、」

「・・・」

ミキは優しいが心配性なのだがそれが鬱陶しくも嬉しかったりする。

「まぁ死なないようにするさ」

そう言い残してギルドを出た。

 

次の日 朝

ヘスティア・ファミリア本拠

ベルはどこかに行く予定があるらしく、俺は一人寂しくダンジョンへ行く支度をしようと思っていたら。

「シロウ君、今日暇かい?」

「それベルと間違えてませんか?」

「違うよ、君に聞いているんだ!」

ベルは今日女の子と外出する事を聞いて、ヘスティア様は朝からご機嫌斜めなのだ。

(それにしても俺に用事なんて珍しい)

 

「強いて言うならダンジョンに行こうかと思ってた所ですけど」

「少し僕の友神に会って欲しいんだ。君に凄く会いたがってるんだ」

「まぁ別に構いませんよ」

なんだかよくわからないが今日の予定が決まったのだった。

 

 

メインストリートにて

「ヘスティア様、、俺を置いて行くなんて酷いですよ、、」

あの神は俺を置いてバイトに行ってしまった。

(顔も知らないのにどうすれば良いんだ、、)

あと少ししても来なかったらダンジョン行こう。と心の中で呟いていると。

「君がシロウ・エミヤ君かな?」

「ん?」

後ろを振り返ると謎の麗人が立っていた。

「そうですけど、、貴方が神ヘファイストスですか?」

「そうよ」

そう一言呟いて、俺を片目で足の先から頭まで観察している。

「まぁ立ち話もなんだからうちに来ない?」

「え?」

半ば強引に連行されて行った。

 

[ヘファイストス・ファミリア]支店

「少し座って待ってて」

「・・・」

大人しく座るが一体大手のファミリアが俺に何の用だろうかと思考にふけっていると。

「待たせたわね」

とヘファイストス様がやって来た。

「単刀直入に伺いますが。俺に何の用事でしょうか?」

「これを見て欲しいの」

そう言ってテーブルの上に置いたのは、一振りの剣だった。

「・・ガァッ!」

頭に激痛が走る

(俺にはあれが何なのかわからない)

武器を見れば基本骨子、歴史などの情報が頭に流れ込んで来る筈なのだ。だがこの剣?からはその情報が一切入ってこない。

「やっぱり貴方見えているのね?」

「ッ!」

だがこの事実は誰にも言っていなかった。言っても意味が無いとわかっていたからだ。だがそれをこの神はいとも容易く暴いて信じた。

 

「その目は上位者、中でも鉄や剣の神や精霊しか持っていない目なのよ」

その言葉から確かな圧と好奇心が伝わって来た。だがこの女神様はやっぱりと呟いていた。と言うことは事前にこの能力を知っていたか予想していたのだろう。

 

「ねぇ、シロウ貴方私のファミリアに来ない?」

「ッ!?」

さっきから困惑ばかりしている気がする。多分何ヶ月か前の俺なら飛んで喜んだだろうが、今は状況が違う。

「なぜ俺を勧誘するんですか?」

素朴な疑問だった。俺の目は貴重なのかもしれないが、それだけじゃリスクの方が大きいだろう。見たところ友神を大切にされている神なのだろう、ヘスティア様と親友なのだから。だからそんなリスクを犯してまで俺を勧誘する意味がわからない。

 

「まぁ好奇心が半分、確認半分ってところかしらね。それでどうかしら?条件的には凄く良いと思うんだけど、、」

確かに条件は物凄く良いだろう破格の条件だと言って差し支えない、、、だが返答は決まっている。

 

「お断りさせていただきます」

即答に決まっている。

「理由を聞いても良いかしら?」

「そうですね、、俺は拾ってくれたヘスティア様に恩があります。この恩は一生忘れない、返して生きていこうと誓いましたから。それに何より俺の家族はヘスティア・ファミリアに居ますから」

そう俺にはベルも居るのだ。あの人達を裏切る事は俺には出来ない。

「ふられちゃったか、、」

「すみません」

少し申し訳ない気持ちもあったのだ。認めて貰う事など殆ど無かった俺の人生に、久々に現れたタイプの人だったからだ。

「まぁヘスティアには勧誘の話してたんだけどね」

「は?」

「そしたらあの子、「あの子に勧誘は意味ないよ。何てったって僕の家族なんだから」ってデカイ胸張っていってたわ」

恥ずかしいからそう言う身内贔屓はやめて欲しい、、恥ずかしいから!

 

「まぁふられちゃったけど。まだ用件は終わってないのよ」

そう言って真剣味を帯びた目で俺を見ていた。

「シロウ君、貴方剣を打ってみない?」

「え?」

想像の斜め上過ぎてよくわからない。

「ヘスティアにはしっかり許可貰ってるから安心して」

と言ってフリーズした俺を引きずって店を出る。

(ああ、この人も神なんだ)

最初の麗人のイメージが音速で崩されていくのであった。

 

 

(ここは、鍛冶場?)

連れてこられたのはヘファイストス・ファミリアの鍛冶場の一角ここで俺に打たせるらしい。

「この鉄を打ってみて、魔力を込めつつ」

「わかりました」

鉄に魔力を流しつつ熱した鉄を一回打ってみた。ぐらりと視界が一瞬歪んだ気がした。そして世界は暗転した。

 

そこは暗闇でいるのは俺と横たわっているもう一人の俺なぜか俺は横になっている俺を叩いていた拳で、、

これは何だろうそう思っていたが、途中から考える事が出来なくなり叩く事に、錬鉄に没頭していく。そして一瞬変な風景が見えた二本の黒と白の短剣を手にして剣の丘に立つ女性。そいつは振り向きもせずただただ背を向けていた。だが声を掛けようとした瞬間、その世界は数刻で鍛冶場に戻っていた。

 

手元を見てみれば先程見ていた二本の短剣が握られていた。



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第ニ章:想像と創造、果てに崩れゆく

ヘファイストス・ファミリア

鍛冶場の一角

 

「カァン!カァン!」

と鳴り響く。そう今日もなぜか鉄を打っていた。

事の発端は昨日

 

 

「この双剣は何?」

神ヘファイストスに問いかけられる。

「これは干将・莫耶って言う双剣です」

なぜかわかる武器の名を歴史を、だがこの双剣はまだ打ったばかりの赤子だ。歴史なんてあるはずもなく。

「ピキッ!」

甲高い音と共に砕けた。それもその筈、この双剣は未完成ですらないハリボテなのだから。

 

「・・・」

神ヘファイストスが何やら腕を組みながら思案していた。

 

(私の目に狂いは無かった)

やはりこの子は想像する側であり、それを生かす場はこの場所だと確信するが、、

(惜しいわね)

このままではこの才能は錆びて朽ちていくのは必然的だと思った。だから提案する。

「ねぇ少しの間うち打ってみない?」

 

 

これが事の発端だった。俺も武器が無かったのでせめて戦える武器を打っておきたかった。

「カァンッ!カァンッ!」

鉄を打つ。昨日覚えた感覚をなぞっていく、すると不思議な感覚に襲われる。一回叩けば耳鳴りが、一振り作り終えた頃には幻聴がする。

鉄が擦れる、、(ギチギチ)と言う音

だが作業を終えるとなりを潜め剣が砕ける。

その繰り返しをひたすらして気がついた頃には太陽が沈もうとしていた。だがまだ鉄に触っていかったので槌を振るう。この後魔力を使い続けた俺は魔力枯渇になりその場で倒れた。

この日打った剣の数100振り。

 

 

夢を見ていた。そこは鉄を打っていた時に見ていた剣の丘だったそしてまた背を向ける女性が佇んでいた。昨日より鮮明に見える、髪は白髪で腰まであるのを後ろで纏めている。だがそれしか見えないしわからない。

そしてまた目が覚める。

 

(最近同じ夢ばかり見る気がする)

そして自分の状況を確認する。

(昨日は倒れるまで鉄打ってたんだな)

そう心の中で呟くと手に違和感があった。目線を下に落として見ると。

「ッ!?」

昨日打てども打てども砕けていた双剣が形を成して残っている。

「よっしゃ〜!!」

少しの達成感を感じて身支度をする。そうダンジョンに行き試し切りするのだ。

(この時間だったらベルに会える筈)

早々に身支度を済ませて鍛冶場を出た。

 

 

始まりの道でベルを待っている。

「少し早かったかなぁ」

そんな独り言を呟いていると前方からベルと大きなバックを背負った小さな女の子を発見した。

「おーいベルー」

「シロウ!?どうしたのこんな所で!武器打ってるって神様が言ってたけど」

「おお、そうなんだよ見てくれよ」

そう言って干将・莫耶を見せる

「凄い!これシロウが打ったの?」

「そうだぞ!」

えっへん!と胸を張る俺。賞賛されると素直に嬉しい。

「ベル様ベル様、この方はどなたですか?」

少女がベルに喋りかける。

「俺はシロウ・エミヤって言うんだ。よろしくな」

「はい!シロウ様私はリリルカ・アーデって言います!よろしくお願いします!」

元気そうに答えているが、、その笑顔を見た瞬間違和感に襲われたがよくわからないのでまぁいっかで済ませる。

「ベルこの子「リリです!シロウ様!」リリはサポーターだろ?」

そうこのダンジョンにはサポーターと言う職業がある。主にヒューマンやパルゥム<小人>がなっている。冒険者だが弱い者達がなる職業なので時には酷い扱いをされる事もあったりするとミキが言っていた。少しリリの事が気になったが気のせいだと思考を切り捨てダンジョンに潜った。

 

「ギギィ」

キラーアントの群れが現れた。全部で10匹程度だと思う。ちなみにベルには試し切りするからと説明してもしもの為に後ろに控えてもらっている。

「トレースオン」と呟き身体能力を強化する、、が異変に気がつく。

(魔力消費が少ねぇ)

そう錬鉄の時、魔力を使い続けた結果体が無駄な消費を抑える術を編み出していた。何より剣を使っているので硬質化に割く魔力を身体強化に使えるのでやりやすい。

 

「ふっ」

キラーアントの首を一閃、その後右から来る四本の手を干将で二本落とし上から切り返し頭から両断する。

こんな調子で斬り殺していたら、八匹殺した所で「パキッ」とヒビが入り瞬く間に半ばが折れた。

「ッ!?」

「ギギィィ!」

ここが勝機だと踏んでキラーアントが迫ってくるが武器無しの方が熟練度的には上なので難なくかわし

「でぇや!」

「ギッ!?」

胴を右の前蹴りで蹴り飛ばし二匹目には回し蹴りを顔面に当て甲殻を蹴り砕いた。

 

戦闘が終わっても喜びは浮かばず。あるのは剣が壊れた絶望感、、

「また作り直しだ、、」

「あ、あははは」

「シロウ様はお強いですね!」

ベルの苦笑いとリリの慰めが右から左に通り抜ける。

 

ダンジョンから帰った後ステイタスを更新してまた鍛冶に勤しんでいたのは別のお話。

 

 

シロウ・エミヤ

Lv1

力:H156→F385

耐久:H104→G258

器用:G246→C623

俊敏:G234→E436

魔法:H194→C609

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

認められていないので使えない

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊との絆であり証




最後のステータス更新の幅が大きいのはずっと更新せずにいたのと、錬鉄により剣化の加護が働き補正されたから。

二巻一章で語られていた自分を叩いていると言う描写は自分を錬鉄していると言う事です。つまりは自分自身の手で自分を鍛えている。とまぁわかりづらかったかもしれないのでここで補足させていただきます。


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第三章:武人と悪女と兎と、、

かなり原作飛ばした、、、正直二巻はシロウに何をさせるか悩みまくってる。オリキャラ出すのも本気で視野に入れてる


「おいおい、もう夜中の十二時じゃねぇかよ」

「今日はちょっとながびいちゃったね」

「最後の方は群がられていましたからね、、、」

時間を確認する余裕すらなかったが、多くのドロップアイテムを獲得していた。

やはりサポーターがいるのといないのでは効率は段違いである。

「それじゃあ、リリ、シロウ、今日の報酬も稼いだ分の山分けでいい?」

「構わんぞ」

「ベル様は、もう少し常識と物欲というものを知った方がいいと思います。ありがたく頂戴してるリリが言える立場ではありませんが、、、人が良すぎです」

なんて言ってる顔は嬉しさ半分といった複雑そうな顔をしていた。

 

___________________

 

「そう。また強くなったのね」

呟きが落とされた。

遥か下方に見える小さな白い影。前を行くもう二つの影を追い、走って遠ざかっていく。

黒の薄いナイトドレスに包まれた、細身でありながら豊満な体つき。

冷たい月の光を浴びて一層神秘さを帯びるきめ細かな白替の肌。腰まで届こうかという銀の長髪。

 

「それでいい。貴方はもっと輝ける、、、」

その行き過ぎた己の美貌が映る硝子を、彼女――フレイヤは、手をついてカリと鳴らした。

巨塔バベルの最上階。

塔の中でも最上品質にあたる一室で、彼女はベルを見下ろしていた。

 

「もっと、もっと輝いて? 貴方には、私に見初められた故の義務がある……」

フレイヤは熱心していた。ベルに。事を放り出し、いっそ火のついた痴情を解き放ってしまいたいくらいに、美の女神は一人の少年に夢中になっていた。

フレイヤには、『洞察眼』というべき下界の者の魂の色を、本質を見抜く瞳がある。

それは神達の間で使用禁止と取り決められた絶対無比な「神の力」そのものではなく、あくまで性質、先天的能力なのでタブーには引っかからない。

 

「より強く、より相応しく、、、それがあなたの義務」

フレイヤの魔性の美に逆らえる者は、存在しなかった。

故にフレイヤ・ファミリアの構成員は周囲と隔絶した実力者ばかりだった。最強の一角と豪語できるほどに。

「私も強い男が好きよ?」

偶然見つけた綺麗な宝石ならぬ、綺麗な心の人。

「たのしみだわ。貴方がどこまで強くなるのか、どこまで輝けるのか、、、どんな色に変わるのか」

ベルの背中を見守るその瞳には確かに慈愛がこめられていたが、、、、

 

「あら?、、、うふふ、また気付いたの?」

視線の先、かなり小さくなっているベルが立ち止まり、頻りに頭を振っている。

「そうね。魔法はそろそろ使えてもいいかもしれない」

何となく色でステイタスがわかるフレイヤはベルに魔力加算が無いことに気がついていた。それが少し頼りなく思えたので早速手出しをすることにする。そして本を一冊手に取った。

 

「オッタル」

「はっ」

彼女が一つの名て呼ぶと、厳しい声がそれに応える。

錆色の短髪から猪耳を生やした獣人。ニMを超す大男だ。

「この本を、、、」

本を差し出そうとするが言葉を中途半端に切った。

 

「どうなされたのですか?」

「、、ふふっ、いえら何でもないわ。今のは忘れてちょうだい」

「は」

だがふと興味が湧いたのでオッタルに尋ねてみる。

「貴方から見てベルはどう?」

「あの少年には余りひかれません。それよりも、、」

「あの赤髪の青年の方が気になるの?」

「はい」

あの青年の色は平凡そのもので興味も惹かれなかった。正直英雄や勇者を数多く見てきた私からすればあれは普通の人間だった。だがオッタルが気にしているならと、もう殆ど見えなくなった背中をもう一度見るすると射抜かれたような視線を感じた。だが一瞬だけだった。

 

「気のせいかしら」

そんな事を思っていた私は横で好戦的な顔をしたオッタルを見落としていた。

______________

 

最後にベル達と一緒にダンジョンに行ったのいつだっけと思いながら鍛冶場から出て背を伸ばす。あの日壊れてからまだ形に残る物は出来ていない。なのでさっきまで鉄を叩いていたのだ。

 

「正直出来る気がしないが、、、」

なんて呟いているが実はそうでもなかったりする。設計図も有る。素材も有る。何が足りないのかわからないだと言う感じだが、俺の目にも確かに何かが足りないと言う事だけはわかっていた。

 

(最近同じ夢ばかり見てら気がする)

戦いの記憶ではないが、色々な武器の設計図と錬鉄をひたすらする自分だった。そして最後には身体中から先程見た設計図の剣が体から生えてくる。そんな夢。それをここ何日も見ていた。

 

(そろそろダンジョンに行って運動でもするか)

悪夢の事を考え気が重くなったので憂さ晴らしにダンジョンに向かう今は夜なので余り褒められた行為ではないが。

(まぁ弓の腕が落ちるのも嫌だしな)

自分をそう言いくるめてバベルへと向かう。

 

ダンジョンの三階層にいた俺は前から歩いてきたエルフのは女性に話しかけられた。

「君は白髪の少年の仲間か?」

「ベルの事ですか?」

そう言い振り向き顔を見ると絶句した。あの時狼男の近くに居たエルフの女性だったからだ。

 

(ロキ・ファミリアか)

と自分の中の警戒心がマックスになるのがわかる。

「そうか、さっき魔力枯渇で倒れていたぞ」

「魔力枯渇!?あいついつの間に魔力を覚えたんだ」

驚愕の事実だ。なんと俺が鉄を打ってる間にベルは魔法を習得していた。

 

「いや、すみま「だぁぁぁああああ!!!」うわぁ!?」

聞いた事のある奇声と脱兎の如き速さで何が横を通り抜けて行った。

「ベルお前って奴は」

と頭を抑えながら呟いていたら横から同情したような仲間を見つけたような目で見られていた。

 

疲れた俺はエルフの女性と別れすぐに鍛冶場に戻って寝た。ベルは何をやっているんだと自分の家族に頭を悩ませた夜だった。そしてこの日もまた同じ夢を見る

 




飛ばした三日間で何があったのか
原作
・リリのファミリアの事情が明らかになる。
・豊穣の女主人でグリモアを受け取る
・魔法を習得する
・我慢できずにダンジョンへ向かう
ss

・鍛冶場で倒れながらも剣を打つ。その度に倒れて同じ夢を見る

・リヴェリアと出会いベルに頭を悩ませる


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第四章:人の歴史は心と記憶

書き溜めをしたいので1日1話にしばらくします。ルルアのアトリエ楽しみだ。


「カァンッ、カァンッ」

鍛冶場に響く鉄を打つ後、今日も今日とて武器を作っているが何度やっても結果はいつもと変わらず。ヘファイストス様や他の鍛治師に助言を貰ったが、全て物の見事に失敗していた。

(こんな調子であの双剣を完成させられるのかな、、)

少し弱気になっていた。だが前より確実に魔力効率が良くなって消費魔力を少なく出来ている。だが肝心の武器は出来ずじまいで途方に暮れていた。

(気分転換にダンジョン行くか、何かヒント見つかるかもしれないし)

 

 

という事で、今はダンジョンに潜っている。が前から怪しい男が一人歩いて来た。最初は普通の冒険者かと思ってチラッと視線を向けると。

魔剣を持っていた、その魔剣の歴史が見えた。

「おい、待てよあんた」

「ちっなんだ!ぶへッ!?」

殴り飛ばす。

この魔剣が持ち主を教えてくれた。

剣の歴史が見えるという事はつまり、その持ち主の経験を見るのと同義である。その結果、この剣の持ち主のリリが何をされていたのかを知ってしまったのだ。

「お前、生きて帰れるなんて思うなよ。恨むなら自分を恨みな、、」

淡々と言葉が出てくる。怒りと冷静が同居している感覚。

「小僧が舐めやがって!!」

そう言って魔剣が開放される。

迫る炎を俺は、、、

「強化開始<トレースオン>」

持っていた布を強化して地面に立て身を守った。

 

「て、てめぇどうして」

「簡単な話だお前のやり方じゃ逆立ちしても俺は殺さない」

そう言い俺は肉薄する。そして、、、

「グヘッ」

人差し指を左の胸に突き刺した。

 

「この世界には屑なぞ数え切れないほど居る。だからこそ人は見て見ぬ振りをするんだ。」

そう、人という生き物は正義だのなんだのと言って結局は見て見ぬ振りをする。ここからは持論だが、善人は損をすると言うがそれは誤りだ。善人は損をしているのではなく効率が悪人より悪いだけなのだ。お金を稼ぐのだって他人が稼いだお金を奪った方が早いのだ。だから一見善人の方が損をしているように見える。効率の良い悪人は世界に数え切れないほど居る。見て見ぬ振りをしなければきりがない。

 

「だが、テリトリーに入って来れば容赦はしない」

きりがないからこそ自分の番になった時人は抗うのだそしてこの男は俺より弱いのでここで、、、

「殺す」

心臓に指を当てる事10秒弱、魔力を伝達し難い生物にも流し込めた。そして俺は、、

「硬化開始<トレースオン>」

「ガァッ」

血液を固まらせ、心肺機能を強化し疑似的な心筋梗塞にした。

「痛いだろう。心臓の血管が詰まるんだもんな。痛すぎて声も出ないだろ」

 

俺は知っている、何をしても変わらない人種を、、、

俺は見ていた、人が人がを痛めつけるさまをだから俺は、、

「正義がわからないよ、、師匠」

そう呟いて地上を目指した。

 

 

鉄を打つ、、俺の記憶を辿りながら。

今日の出来事でわかった事がある。単純な話、今迄の武器には歴史が無かった。つまり理りが無いのと同義だった。だからこの一振りに俺の歴史を刻み込む。そして遂に、、

「出来た。これが干将・莫耶だ」

この日俺は新たな武器を得た。




かなり短いですが二巻はここまで。正直二巻はリリの事だったのであまりシロウを絡ませたくなかったのが本音です。
あと巻の題名を変えました。理由としては二巻冒険してなくね?なんなら剣打ってただけじゃね?と思ったからです。


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第三巻:自分の内側をその手に
第一章:シロウの憂鬱


「オッタル。あの子、また強くなったわ」

「重畳、ですか?」

「ええ」

ここは迷宮の真上に築かれた摩天楼施設。その最上階。 「見違えたわ。[ステイタス]がどうこうじゃないの。魔法という切っかけ一つ手に入れただけで、あの子の輝きは一層鮮やかになった、、、私の目には器が洗練されたように見える」

 

しかしフレイヤは、その透いた色こそ何事にも代えがたいと思っているかのように。

「器の発展・進境が著しいと?」

「そういうことになるかしら」

部屋の隅で顔色を変えることのないオッタルと、短く受け答えをする。

直立不動の姿勢で主神を見つめる従者は静かだった。

「でも、一つだけ……一つだけ、輝きを邪魔する淀みがある。まるで枷のようにあの子を縛っているわ」

「そうね、十分に足る器はある。けれど、芯が足りない。いえ芯そのものはある、でもそれが曇って見える……何かが欠けているのか、何かが邪魔しているのか」

「オッタルはわからない?」とフレイヤは振り返り意見を求めた。まるで同じ男の子でしょう、と尋ねるかのように。

巌のような獣人はしばし口を引き結び、主人の問いに答えた。

「因縁かと」

「因縁……?」

「はい。フレイヤ様がお話してくださった。ミノタウロスの因縁、、、本人もあずかり知らない場所で棘となり、苛んでいるのでいるのかもしれません」

オッタルにはミノタウロスの話を聞かせてある。フレイヤ自身もそれらしい話を聞いただけなのだが。

 

「それならあの子に取り付いている茨を取り除くには、どうしたらいいのかしら?」

「因縁たる存在を打倒する以外にありますまい」

オッタルの言葉を聞いて思案する。

「今度のあの子への働きかけ、貴方に任せるわ、オッタル」

「どのような風の吹き回しですか?」

「私よりあの子の事理解してるんだもの、、嫉妬しちゃうくらいに。それに貴方も試したい相手がいるでしょう?」

「・・・」

オッタルの目には確かな闘争心が芽生えていた。

 

_____________________

 

今日はベルに呼ばれてカフェを目指していた。すると後ろから声をかけられ振り向くと。

「よぅシロウ君、修行がひと段落した感想はどうだい?」

「まぁ楽しかったですよ」

声の主はヘスティア様だった。

「そんな話より今日呼ばれた用件って何なんですか?俺ベルから何も聞いてないんですけど」

 

そう今回のサポーター騒動に関して少ししか知らない俺は今日呼ばれた事が何なのかわからずにいた。

「まぁ着いてからすぐわかることさ」

「そうですね、っと着きましたか」

そんな話をしていた矢先に着いた。

 

店内に入る

「おーいベル君!」

「来たぞベル」

「あっ神様とシロウ!」

ベルが座っている席に向かって歩く。

「お待たせ。すまない、待ったかい?」

「そんなことないです」

「それで彼女がそうかい?」

「あ、はい。この子が前話した」

「リ、リリルカ・アーデです。は、初めましてっ」

どっかの恋人の親への挨拶っぽい感じだった。

 

「いけない。神様とシロウの椅子を用意してもらってないや……」

「.…! なぁにっ、気にすることはないさ!この客の数だ、代わりの椅子もないだろう!よし、ベル君座るんだっ、ボクは君の膝の上に座らせてもらうよ!」

「あはは、神様もそんな冗談を言うんですね。ちょっと待っていてください、店の人に頼んできますから」

笑いながらベルは去っていった。 謀 を知らない純粋な子供の笑みだった。

置いてかれたヘスティアはしばし動きを止めていたかと思うと、へにゅん、とツインテールがしおれる。

 

「……ちょ、ちょうどいい。ベル君には最初から席を外してもらう予定だったんだ、何も問題はないさっ」

「は、はぁ」

ヘスティアはぴょんっとベルの座っていた席に腰かける。リリもそれに倣った。

「じゃあ、早速付き合ってもらうよ。あの子もすぐ帰ってくるだろうしね。自己紹介なんかはいいだろう? 君もベル君からボクのことは聞いているだろうし」

「は、はい」

ヘスティア様が目を細め眼光に真剣味が帯びてくる。

「率直に聞くよ。サポーターくん、君はまだ打算を働かせているかい?」

(久々にヘスティア様のこんな顔見るな)

二人の緊迫した空気は何処吹く風、一人だけ能天気な人間がいる。

そんな事を考えたりぼーっとしたりしていたら。

「シロウ君はこの子を信用できるかい?」

問いかけられた。だが魔剣の歴史を見た俺の答えは決まっていた。

「ええ、できますとも」

即答である。

「理由を聞いてもいいかい?」

二人の意識が俺に向く。

 

「リリ、俺は武器の経験を、つまり君が魔剣を持っていた時の出来事を全て見たんだ」

リリは恥ずかしそうに顔を赤らめ視線を落とす。

「だからこそ俺は君を信用できる。まぁその他に理由もあるけど君の心を暴くような真似はしないよ」

そう答えた。ヘスティアはその理由に満足したのか微笑みを浮かべていた。

この後もやりとりは続いたがベルの面倒を見てほしいとリリにお願いしてリリも願ったりって感じで話が終わった。

 

ごめんなさーいっ遅くなりましたー!」

「パーティの加入を許可する。あの子のお守りも任せた。けどっ、くれぐれもっ、出過ぎた真似はしないようにッ」ここからは修羅場が永遠と続き俺が雷を落とすまでそれは続いた。

(こんなんでこの先大丈夫か?、、、はぁ)

と心の中で溜息をつくのだった。



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第ニ章:類は友を見抜く

ごつごつとした岩肌が、上下左右、視界の全面を占領している。その有り様はまさに洞窟、炭鉱、坑道。

「この階層にとどまるのも久しいな、、、」

ダンジョン17階層。この階層に今たくましい体躯の獣人、オッタルが一人で探索を行っていた。

(そもそも、最後にダンジョンに潜った日も定かではないか)

オッタルの圧倒的な存在感故モンスターが姿を現さない。

(、、、嫉妬、か)

確かに俺はあの少年に少し嫉妬していた。だが今の俺にはそんな事よりも大事な物がある。それは、、

(あのシロウなる男)

確かにまだ弱い。神フレイヤもあれは凡人だとなんの変哲もない石ころだと言った。だがあの青年の目は違った。

(あの目はステイタス無しで研鑽を積んだ事のある目だ)

オッタルは武人だと自負している。だがこのオラリオに武人が居るのか?と言われれば答えは、、居ないだ。

ステイタスは確かに短期間で爆発的に強くなる。だがその分武を積み重ねる事が出来ない。何故なら体に技術が追いつかないからに他ならない。あの青年は血の滲むような、それも普通では考えられないような事をして技を磨いたのだろう。

(だからこそ、ここまで来い)

焦がれていた夢、、ライバル。[勇者]や[剣姫]ではなり得ない。あやつらは武人などではない。[勇者]は指揮官であり武人ではない。[剣姫]は修羅ではあるが強さを求める故技術に欠ける。あの青年に期待しよう。

「ブモォォォォオオオッ!」

「上々だお前に決めたぞ」

そう言い神フレイヤの命令を遂行する。頭の中では違う事を考えながら。

 

____________________

 

「ベル様、どうしてダンジョンに潜る前からボロボロなんですか?」

「は、はは、、、ちょっとね」

(ヘスティア様も大概だがベルも嘘が下手だな)

だが何を隠しているのかわからない俺は永遠考えていたが無意味だなと思考を切った。

 

 

「ヒィャアアア!」

「ギィィィイ!」

甲高い声を喚かせ小悪魔のモンスター[インプ]が突っ込んでくる。

「っ!」

だが俺が弓で射抜く前にベルが接敵し迎撃していく。

(ほう、お前修行してたのか)

動きを見ればわかったその動きは今までの行き当たりばったりの動きではなく経験や技術を用いた物になっていたからだ。そうするとだが疑問が一つ残る。

(誰が教えているのか?)

まぁ考えても答えは出ないので早々に切り上げて俺も参戦する。

 

「身体、硬質強化開始<トレースオン>」

矢を番いて弦を引き、離した所で小気味良い音が鳴る。

「ブォン」

放った矢はモンスターを貫通し後ろの二匹を射抜いた。

「「「ギィッ」」」

最近魔力効率が良くなって余裕が出てきたので矢と弓を硬質化し更に腕力を強化させる事に成功した。

そして簡易的な貫通矢を作り出す事を成功した。

そして後ろから突撃してきたインプには、、

「はぁ!」

「ギッ」

双剣で切り刻む、弓の遠距離と双剣の近距離で間合いの管理をしてモンスターを確実に仕留めていく。

 

「ふぅ。お疲れさん二人共」

「お疲れ様シロウ」

「お疲れ様です。シロウ様が弓を使ってる所始めて見ました。凄い練度ですね」

「ん?リリに見せた事無かったか」

そんな他愛の無い話をしていると、、、

オークとバッドバットが現れインプ達も合流して大所帯のお出ましだ。

「多いな」

「はい、多種のモンスターがああまで群れるなんて珍しいくらいです。どうしますか、オークだけでもリリが引き付けましょうか?」

すると横から

「[ファイアボルト]!」

魔法で全てのモンスターを壊滅させた。

 

 

「ねぇシロウ。僕、魔法に依存しちゃってるかな?」

サンドイッチを摘みながらベルが聞いてくる。モンスターを倒した俺たちは、休憩していた。

 

「そんな事無いぞ俺もかなり使ってるからな。だが欠点が一つある」

「欠点?」

そう俺たちの魔法は発動条件が低い代わりに一つだけ欠点がある。

「火力不足、つまり必殺の一撃足りえない」

そう早い代わりに火力が無いだから敵を一撃で屠る力が無いのでどうしても連続発動しなければならない。

「僕の魔法は弱いのかな?」

「そんな事はないぞ、確かに火力は低いがその分速い。人相手だったりすれば相手が魔法を撃つ前だったり攻撃前に使えば相手は後手になる」

そうこの魔法の良いところは知らなきゃ一発で敵に傷を負わせられるという点だ。

「それに魔法は本来長い詠唱を経て使いますからその分時間と言う部分では最強だと言っても過言ではありません」リリが補足してくれた。

「ありがとう」

と告げて立ち上がった。

「午後も、頑張ろうか?」

「行くか」

「はい、どこまでも力添えさせていただきます」

その後もダンジョン攻略に精を出す俺たちだった。

 

 

今日はダンジョンをお休みすると言う事をベルから言われたので鍛冶場から出て散歩していた。

何かないかと遠出して外壁近くまで来た。すると辺りに鳴り響く甲高い聞き慣れた音、こんな所でおかしいなと思い音源に近づく。すると

「はぁはぁ」

「もっと動きを見て」

アイズとベルが戦っていた。

(なるほど急成長の秘訣はこう言う事か)

一人心の中で呟きその場から離れダンジョンを目指す。

(俺も負けられないな)

ソロでダンジョンに潜るのだった。

 

現在10階層

魔石を集めながら敵を屠る。

何度双剣で切り刻んだかわからない程には潜っていた。

インプの群れとオークを殺していく。

 

今回は弓ではなく双剣だけをつかっている。まだ練度が高いとはお世辞にも言えないのでここで使い慣れておく。

「はっ」

「「ギィッ」」

干将でインプの頭を落とし、莫耶でもう一匹の胸を貫く。

 

「ふぅこんなもんか」

今日は朝から居たので結構な時間動いていた。まだ戦い足りないが肩慣らしには流石に長過ぎるのでダンジョンから出た。

 

夜帰り道。

俺は市壁内部を歩いていると、遠くから音が聞こえたので走って向かう。すると

「ベルッ!」

「シロウ!?」

「シロウ君!?」

ベル、ヘスティア、アイズさんが覆面に襲われていた。

臨戦態勢に入ろうとした瞬間仕事は終わったとばかりに姿を消していった。

 

「何だったんだ?今のは」

「闇討ちは、よくあるよ」

「あるんですか!?」

「うん。ダンジョンの外で仕掛けてくるのは珍しいけど、、」

 

そんな会話をしていると視線を感じた。

(これはバベルの方か、、上からの視線はそれ以外考えられないからな)

俺はあの時と同じように殺気を込めた視線でバベルを睨みつけていた。



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第三章:其の者は正義の探求者

凄く書いてて楽しかったので長くなってしまった、、、
文もかなり拙いかもしれない、、、


ダンジョンの某場所

「・・・」

筋骨隆々な肉体を持つ獣人が何かを待つように静かに座っていた。

「速く来い、、ここまで」

ニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。

 

_____________

 

今日は久々に本拠に泊まっていた。

パキリ、と。

ヘスティア様の持っていたカップの取っ手が割れていた。

「「・・・」」

俺とヘスティア様が押し黙り、じっとその陶器を見下ろす。

「じゃあ神様、後片付けはもうやっておきましたから!」「あ、、、ベル君!」

俺も嫌な予感がしていたが今日はヘファイストス様に会いに行かないといけないので。追う事も出来なかった。ベルが出た後。

「俺も行ってきます」

「待つんだシロウ君」

ヘスティア様に呼び止められる。

「君もステイタス更新するんだ」

「俺今日はダンジョン潜らないんですけど」

「いいからするんだ、、、」

有無を言わさぬ迫力が滲み出ていた。

 

シロウ・エミヤ

Lv1

力:A823

耐久:B753

器用:S902

俊敏:B734

魔法:A856

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

×められていないので*えない

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊との絆であり証

 

 

ホームを出た後ギルド前でヘファイストス様を待っていた。だがずっと何かが俺の中で焦っていた、、、

「シロウ、待たせたわね」

「いえ、大丈夫ですよ」

そう挨拶をしていたら何か大きな包帯で包まれた物が見えた。

「今日呼んだのはこれを渡す為なのよ」

とその荷物を手渡された。視線で開けてもいいか聞くと頷いてくれた。

包帯を解くと、黒い洋弓だった。

「これは、、、」

この弓の構造が読めなかった。と言うことは、、

「この弓は私が君の為に作った特別性の弓だよ」

「特別性?」

「そう、この弓は少し特殊でね君の魔力を吸って大きさを変えられるんだ」

面白い物を作るものだと素直に賞賛を述べたいが、この神は絶対ニヤついてくるので辞めた。

 

「なぜこれを俺に?」

これが最大の謎だった。俺は別にファミリアに対して何かしたわけでもないのに、、

「そうね、理由は二つ有るわ」

「二つ?」

「一つ目は面白い物を見せてもらったお礼」

面白い物とは何だ?と聞きたいがその間に、、

「ドクンッ」

何かが自分の中で弾けたような気がした。

「シロウ?」

ヘファイストス様は俺の異変に気がついたのか声をかけてくる。

「行かなきゃ、、、」

俺の中で何かが「ギチギチ」と音を鳴らしている。焦らせるようにそれでいて厳しく叱咤するように。

「ベルがヤバイ」

その一言を残してダンジョンに全力疾走する、、

 

残されたヘファイストスは一人で呟いた。

「死んだら許さないわよ」

そう言ってその場から立ち去った。

 

 

ダンジョンを疾走する。やはり何かがおかしい感覚がした。

しばらく走っていると前から顔面蒼白な男が居た。

「あんた白髪の冒険者見なかったか!?」

「じゅ、10階層でミノタウロスと戦ってた」

聞き終わる前に10階層を目指した。

 

(あと少しだ!あと少しで10階層だ!)

そう心の中で叫んでいた。走る度に焦燥感が増していく、、その焦りを力に変えて前に進んでいた。

 

だが前には圧倒的存在感を放つ獣人が仁王立ちしていた。

「そこを退いてくれないか?仲間を探してるんでね」

「・・・」

冷や汗が頬を伝う。体から力が抜けていく気がする。

「あんた何者だ?」

「もし俺がお前の仲間にミノタウロスをぶつけた本人だとしたらどうする?」

瞬間俺は獣人に干将・莫耶で斬りかかった。が拳で受け止められた。

 

(こいつこれ以上ないくらい強い)

一目見た時からわかっていた。隙の無い構えに圧倒的存在感、それに何よりどんな罠でも奇襲でも真正面から叩き潰すという俺にまで伝わって来る程の自信、、、

 

(だがこいつを超えなければ俺はベルの元まで行けない)

覚悟を決めて俺は獣人に向かって駆け出した。

そして間合いに入った瞬間連打と斬撃の応酬。右手の莫耶で切りかかれば左手で受け止められ、、左手の干将を振るえば右手で弾かれる。

(このままじゃジリ貧だ)

そう思い一旦距離を取り俺は意識を集中させ魔力を練り上げる。

「強化全開<トレースオン>」

俺の魔力を使い極限まで体に負荷を掛けて強化し剣を硬質化させた。

 

(狙うは首、、一撃で決める!)

俺は全ての意識を集中させ決死の覚悟で踏み出す。踏み抜いた地面を陥没させながら斬りかかる。

(これが今俺の持てる全てだっ!)

決死の覚悟の一撃は容易に相手の首を

 

 

 

 

 

切ることはできなかった。

「バリィン」

剣と共に意識が破壊される。後ろに少し仰け反り。薄れ行く意識の中俺はあの獣人の声が聞こえた。

「この程度か、、、」

悔しかったが負けは負けだそう言い聞かせながら意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇシロウ!」

声が聞こえる、、

 

「シロウは何で冒険者になったの?」

白髪の少年が俺に問いかけてくる、、

 

(俺はね正義を探して冒険者になったんだ)

そう俺は正義を探して冒険者になったが何も得られず、、剣も破壊された。

 

「しゃあシロウは正義の味方なんだね」

少年が俺に言う

 

(それは違う俺はどちらかと言えば悪人だ。効率の良い方を取っている)

 

「でもシロウは正義を探しているんだよね?」

「「ならシロウは正義の味方だよ」」

 

声が重なった気がした。少年と師匠の声が。

(ああそうだ、、俺はまだ正義の答えを持っていないっ)

 

_________

 

オッタルは正直がっかりしていた。それはこの青年が余りにも弱かったからに他ならない。

「フレイヤ様の言う通りだったな」

武人と信じた男は地に伏している、これ程までに期待外れな事は一度として無かった。そう思い後ろを向き歩き始めようと思ったら、後ろから圧を感じ振り返る。

「ほぅ」

淡く鈍い青色を体から放っている青年が居た。

口角が釣り上がるのがわかる。

(やはり俺の目に狂いなど無かった)

 

 

意識がぼーっとする浮世離れしている感覚だ。

(武器だまずは武器が必要だ。あいつを倒す為の強い武器が、、)

俺は願ったその瞬間。

「バキッッッ!」

「ガッハ!?」

世界が割れた、、全身に激痛が走る、、穴という穴から血が吹き出しているのがわかる。

だが俺は魔力放出をやめない。

俺の歴史を思い浮かべながら。

俺の歴史を見ながらふと師匠の言葉を思い出した。

「君の体は」「俺の体は」

 

 

「「剣で出来ている!」」

唱えた瞬間世界が変わり夢で見ていた剣の丘に辿り着く。だがいつもと違った。風は通り抜けず頰に当たり、地面を踏めば感触がする。そして前を向けば、、女性が立っていた。

女性は背を向けたまま呟いた。

「ようやく入り口に至ったのね、、、至ったならばシロウに渡そう」

 

理解した。あの世界は彼女の物であると、そして受け取った。

彼女の世界をだから俺は唱える俺自身をさらけ出す為に、、

 

「投影開始<トレースオン>」

激痛が走るが先程のに比べたら楽な方だった。

武器の設計図を頭に浮かべる、、

基本骨子解明

構成材質解明

憑依経験、共感完了

 

投影過程を全て行い虚空を掴む、無い筈の物を俺は掴む

そして目の前の獣人目掛けて走った。

 

青いモヤが形を成していく魔力が剣となる、、いや魔力は最初から剣だった、、、。

 

魔力が形を成した瞬間今までに無い速さで獣人を切り掛かる。

一瞬獣人の顔が見えた。その表情は獰猛に笑っていた。

 

背筋に悪寒が走ったが手を休めない。

「はぁぁぁぁあああッ!」

連撃を食らわす。だがさっきと圧倒的に違う部分がある。それは、一撃に込められた技術が段違いだった。

一回一回の斬撃が正確に急所を突き相手の隙を伺う、、、そして後ろから足音が聞こえた。

 

そして獣人は少し気を取られてしまったのか意識が音の方を向く。その隙を見逃すはずもなく。

(今だ!)

その隙を突き獣人と言う圧倒的な壁を抜け、疾走する。目指すはベルが居る場所。

 

開けた所に出た瞬間俺は見た二匹の赤と青のミノタウロスを前にアイズさんの前に立つベルを。

 

「ベル」

「シロウ、遅いよ」

俺とベルの目には確固たる意志が宿っていた。

ベルはアイズさんに追いつくと言う意志。

俺は正義を探し求める意志。

 

「「勝負だ」」

冒険をしよう。

正義を探す為に。

 

 

俺は青いミノタウロスを標的に定めて干将・莫耶を握る。(あのミノタウロスの斧、さっきの獣人の物か、、)

 

一人と一匹は動かない。ベルの方を[動]と言うなら。こちらは[静]だろう。

 

そしてベルの魔法を合図に

「ブォォォォオオオッ」

「はっ!」

動きだした。

 

 

剣で全ての攻撃を捌く。

(獣人に比べれば遅いし、軽い攻撃だが、、格上には違いない)

斧が上から振り下ろされる。それを強化した蹴りで弾き飛ばし双剣で切りつける、が

(浅いな、、)

全て筋肉に邪魔される。

「ちっやりづらい」

苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。

 

_____________

「……さっきから何なんだ、あのナイフと双剣は? 自分よりずっとでけえ大剣と斧を弾いてやがんぞ?」

「いや、武器の性能もそうだが……」

「上手い、、技でミノタウロスの攻撃を捌いてるよ」

未知のきが最き、大剣を打ち払う。

その光景を外から見つめるベートの疑問に、リヴェリアとフィンが答えた。

ベルとシロウは向かってくる大剣に対し、その側面を狙っていた。

退路を絶ってくる攻撃の軌道をずらし、僅かに生じた空隙へ体をねじ込んでいる。少しの手もとの狂いも許されない、紙一重の防御だ。

培われた技と瞬時の駆け引き。

「本当によく凌いでる。でも…」

「攻めきれないっ」

瞳を薄くするティオネと、落ち着きなく体を揺らすティオナの視線の先、真横から狙われた斧撃を莫耶で弾きその勢いで後ろへ飛んだ。

弓に魔力を込めて大きさを変えて目を狙い矢を放つがミノタウロスの左手にガードされてしまった。

 

「上手いっ!」

そう声を上げたのはティオナだった

「あの赤髪の子凄い練度だね」

「ああ、第一級冒険者に遅れを取らないくらいには上手い。だが、、、」

そうフィンとリヴェリアが言った通り上手いのだこれ以上無くだが、、

「剣の方はそこまでじゃないかな」

そう、さっき一瞬だけ憑依経験したがそれは莫大な魔力を使って一瞬だけと言う制限付きだったからであってここぞという時に使わなければ魔力枯渇で倒れる未来が待っているだろう。

 

「ブモォォォオオオッ!」

「はぁぁぁぁっ」

剣と斧が火花を散らす。

 

一旦距離を取ったがミノタウロスが肉薄してくる。

(まずい!?)

咄嗟に莫耶でガードするが弾かれミノタウロスの後方に飛ばされてしまった。

だから、

「ッ!」

干将で肉薄する、手を伸ばせば届く距離で俺は斧を迎え撃つ。暴風のような攻撃が俺を襲う。振るわれる風圧だけで飛ばされるかと思う程の攻撃だ。

だがそれでも捌きながら前に進みそして、、、

 

 

 

その時は来た。

「ブモッ!?」

後ろから莫耶が飛んできてミノタウロス背中に刺さったのだ気を取られたミノタウロスの隙を狙って。

「はぁぁぁぁぁぁあああっ」

新たに投影した莫耶を後ろに腕ごと引き、元々持っていた干将を水平に構え力を溜め。

 

「ブフォオオオオッ」

斧ごと十字に切り裂いた。

だがミノタウロスも負けじと俺を腕で弾き飛ばした。

 

俺もミノタウロスも満身創痍だった。

「はぁ、はぁ、はぁ、」

「フゥーッ、ングヴウウウウウウオオオオオッ!」

 

両手を地に着き頭を低くしたその姿は、まさに猛牛のそれだ。

俺とミノタウロスの距離はかなり離れている。ざっと十五Mくらいだ。だから俺は、、

「投影開始ッ」

魔法を使用して剣を投影した。それは針のように尖ったレイピアだった。

それを弓に番えて魔力を込め強化する。

(ここで残存魔力を全て使い切る!!)

 

一瞬の静寂、、、、互いに力を溜め、、解き放つ時を待つ、、力が最高まで高まった時、、、放たれる、、

「ブモォォォ!!」

俺目掛けて突撃してくる。一歩踏みしめる程に加速している。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ」

「ビィィィィイイン」

弦の音しかしない程細い剣を射る、、

狙うは頭、、そして、、

「ブフォッ」

レイピアは頭から一直線に貫かれて、「ズザザ」っと地面を転がり俺の前で失速し砂と消えた、、、

 

(ベルは無事か)

魔力枯渇で倒れそうなのを気合で繋ぎ止めてベルに寄る。

そしてベルの居場所に辿り着くと安心したかのように意識を手放した。

_________________________

 

「ふははははっ」

ダンジョン内に声が響き渡る。

「俺の手に切り傷を付けるか」

その傷は浅くもう塞がっているが傷は傷だ。認めようあの男は武人であると、剣から伝わってきた。青年とは違う存在があの剣の持ち主だと、、だがそれを引き出し使いこなしたのは他でもないあの青年であるのだ。

 

「何やら楽しそうじゃのう」

老兵が話し掛けてきた。

「お前が来なければまだやれたのだがな」

「それは運が悪かったなぁ」

そう言い残して老兵とその他が横を通り抜けて行く。

 

(次は自分の剣で挑んで来いシロウ・エミヤ)

そう願いつつ地上を目指した。

 

____________________

 

所用期間、役一ヶ月。

モンスター撃破記録二八一○体。

Lv2到達記録を大幅に塗り替えた。




今回の感想
戦闘って難しい!けど楽しい!以上!


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第四巻:新たな門出
第一章:女難と二つ名と


ギリギリ今日一話投稿


ここはギルド本部。

「よう、久々な気がするなミキ」

「俺的には回れ右してほしいけどね」

憎まれ口を叩いていたミキだが安堵したような顔をしている。

 

「最近噂になってるミノタウロスにやられたのかと思って少し心配してたんだ、でも大丈夫そうだね」

「まぁミノタウロスには襲われたんだけどな」

ミキが凍りつき動きが止まる。

「ん?」

「ん?」

二人して首を傾げている。

「今なんて言った?」

「ミノタウロスに襲われた。なんならLv2になったぞ?」

そう、あの闘いで俺とベルは上級冒険者の仲間入りしたのだ。

だがミキは俺の話を聞いてから様子がおかしい。

「なぁミキ大丈夫か?」

何やら目が回り始めたと思いきや。

「きゅーー「バタンッ」」

「ミキ大丈夫か!?ミキーーーー!!」

と倒れてしまった。

 

 

しばらくして。

「す、すまない。世話をかけてしまったようだね」

「いや、少し驚いたが大丈夫だ」

まだ顔色が悪いが喋れているみたいなので良しとする。

「それでシロウはランクアップの件でギルドに来たのかい?」

「アビリティについて聞こうと思ってな」

「その口ぶりから察するに複数発現した感じだね」

そう、今日ミキの所に来た理由は二つ、ランクアップの報告とアビリティの相談だった。

「実は三つ発現して悩んでるんだよ」

「贅沢な悩みだなぁ。それで何が出たの?」

「「女難」と「鍛治」と「魔導」が発現したけど継ぐ者って何だ?」

鍛治と魔導は見たまんまだが女難と言う訳の分からんアビリティがあったので、ミキに助言を貰いたかった。

「女難かぁ聞いた事無いなぁ」

「だよなぁ〜。ヘスティア様も見た事無いって言ってたからな」

「主神は何て言ってたんだい?」

「ん?誘惑とかが効かないとかじゃないかな?って言ってた」

「じゃそうじゃね?」

「えぇー、、、、、」

 

 

「帰りました神さまー!」

「帰った」

俺たちは教会の地下にある本拠に帰った。

テッ、テッ、と飛ぶような歩調でこっちまでやって来て、帰宅した俺たちを迎えてくれる。

「お帰り、二人とも。それで、決まったかい?」

「はい、僕。「幸運」のアビリティにします」

「俺は女難にする」

結局面倒なので女難にするわ」

「じゃ、横になってくれ」

そうして言われて横になる。

 

「終わったよ」

そう言われて俺とベルは首を傾げる。

「なぁベル強くなった感じあるか?」

「ないね、、、」

なぜか強くなった実感がない。

「まぁ器が大きくなっただけだからね」

 

そう言われてステイタスが書いてある紙を受け取った。

 

 

シロウ・エミヤ

Lv2

力:I 0

耐久:I 0

器用:I 0

俊敏:I 0

魔法:I 0

 

女難:I

 

<魔法>

[強化]

・イメージが強い程効果上昇

・強度強化

・身体強化

[投影]

・剣を複製する

<スキル>

[剣化の加護]

・魔法を使う度体は剣になる

・経験値は戦闘では得られず武器から得られる

・精霊が認めた証

[錬鉄]

・可能性の改変 制限2

 

横ではベルがスキルを習得したとかで盛り上がっているが、俺は新たに発現したスキルをヘスティア様に聞いた。

「ヘスティア様この可能性の改変って何ですかね?」

「うーん、僕も考えてみたけど可能性って言葉自体が不確定要素だから推測自体が意味ない可能性もあるしなぁ」

(つまりわからないって事ですね)

そんな感じでステイタス更新は幕を閉じた。

 

「それじゃ、僕はそろそろ出かけるよ」

「え?神様、今日仕事有ったんですか?」

「今日はね、三ヶ月に一度開かれる「神会」の日なんだ」

神会そう言うのもあるのか。

「ああ、そうさ。暇な神達の会合だよ、、、ランクアップした者の称号を決める、ね」

二つ名って剣姫なんかがいい例だろう。

「ベル君、シロウ君、僕は泥水をすすることになっても、必ず無難な二つ名を勝ち取ってくるよ、、、!」

そう言ってヘスティア様は出て行った。

 

ミキは一人そわそわして何かを待っていた。すると横から

「ミキ、お前んとこの冒険者の二つ名出てたぞ」

と言われて見てみれば「必中の一矢」と書かれていた。




神会はいらないと思ったので飛ばしました。
正直シロウ出ないので書いてもしっくりこんかった。


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第二章:実感と新たなステージへ

ね、寝るまでが19日だよね?


メインストリート

カフェ店内

 

俺は今日ここでヘファイストス様と会う約束をしていた。

「待たせてしまったかしら?」

「いいや、待ってないてますよ」

挨拶を交かわし席に着く。

「まずはランクアップおめでとう「必中の一矢」さん?」

「どうも」

そう神会でそんな二つ名を付けられた俺だが実際あまり関心が無かったりする。

「お気に召さないかしら?」

「そんな事ないですよ、ただ、、、」

「ただ?」

「神の玩具に成り下がるつもりは毛頭ありませんから」

そう、神達の娯楽としての色が強い命名は最初からどうでもよかったりする。所詮その程度の気持ちの物なら二つ名自体の力も自分にとってその程度の価値にしかなり得ないと思うからだ。

 

「あら、影響力は有ると思うわよ?」

そう、その一面もあるから否定はしない、だが、、、

「心身を強くする事は無いですから」

例えば「必中の一矢」という二つ名を付けられたがそれで俺の環境は変わるが、俺の心を鍛える事は出来ないつまりそう言う事だ。

 

「ふふ、そう言う所割と好きよ?」

「ご冗談を」

そんな他愛ない話をし終わり本題に入る。

 

「それで今日の本題は何ですか?」

今日はヘファイストス様から誘われて来たのだ。

「どうかしら?まだ鍛治をするつもりはあるかしら?」

そう聞かれて少し考える。俺の目的は正義の解を探す事であって至高の武具を作る事ではない。確かに俺は投影を行使して生み出す者としての色が強い事はわかった。だが、

 

「鍛治はするつもりはありません」

「理由を聞いても良いかしら?」

「俺は確かに生み出す者としての色が強いですが、武技を突き詰めたいですし目的も果たして無いですから」

(まぁ魔法関係の事もあるけどね)

鍛治師は唯一を生み出す事が生業だが俺はそもそも複製をするので鍛治師からしたら許し難い存在だろう。

 

「そう、残念ね」

「すみません」

かなり長い期間鍛冶場を使わせてもらっていたので心苦しくはあるので何か恩を返したい。

「借り一つって事で何かあれば手を貸しますよ」

「面白い物が見れたから私的にはいいんだけど、、わかったわそういう事にしとくわ」

「ありがとうございます」

そう言って俺の鍛治師としての生活は幕を閉じた。

 

 

 

翌日

ダンジョン内

「やってきたぜ、11階層!」

腰に手を当てたヴェルフが自分の得物を肩に担ぎながら言い放った。

(俺の魔法は鍛治師に見せない方がいいな)

 

今日のダンジョン探索は昨日加入したヴェルフのランクアップの手伝いという事でパーティーを組んでの立ち回りが重視される。なので俺は前衛へ行かずにリリと同じ所から弓での攻撃が多くなる。

 

 

「はぁー、リリは悲しいです。とてもとても悲しいです。お買い物に行かれただけなのに、見事リリの不安を裏切らず厄介事をお持ち帰りになるなんて、、、ベル様のご厚意に、リリは涙が出てしまいます」

ぼーっとパーティー編成について考えているとベル達は何やら賑やかになっていた。

「まぁリリそう言ってやるなリリ、厄介事には変わりない。だがベルが行動して決まった事だ許してやってくれ」

「そうは言いますが!シロウ様はベル様に甘すぎます大体いついついもetc、etc〜」

いつもの説教が始まり横のベルに助けてと視線で訴える。

「あーえっと、そうだ!リリ紹介してなかった。この人はヴェルフ・クロッゾさんヘファイストス・ファミリアの鍛治師なんだ」

そう言われてリリの顔が変わる。

「クロッゾ?それって呪われた魔剣の鍛治師の家名?あの凋落した鍛治貴族の?」

(なるほど、それで聞いたことがあったのか、、、」

昔師匠と旅をしていた時にクロッゾの魔剣の逸話を小耳に挟んだ。

なんでもその魔剣は海を割ったとかなんとか。

 

「ま、今はそんなこと、どうでもいいだろ?ダンジョンにもぐってるんだから、することは一度だ。なっ?」

「あ、、、は、はい」

と圧をかけて黙らせていた。

(これはまた訳有りを連れてきたなぁベルは、、、)

そう思っているとモンスターが次々産まれた。

 

少し肩慣らしもしたいし最初は俺も参戦するか。

そう呟き弓を大きくしてオークを狙う。

「硬化、身体強化開始<トレースオン>」

矢筒かり矢を取り出して硬化させる。力を限界まで溜めそして。

 

ゴォッッ、、スパァ

敵の頭を貫き後ろのモンスターをも貫通して行く。

(これがランクアップか、そりゃ武術なんか廃れる訳だな)

魔力の容量から力まで全てが段違いに上がっていた。

次の矢を三本弓に番えて放つ。

 

「すげぇ、、、あんなに頭に当たるもんなのか?」

ベルは早かったがシロウは一つ一つが正確無比で絶対的な技術って感じだった。

「ふふっ。ぼっーとしてぺちゃんこにされないでくださいね。ベル様が悲しみますから」

「リリスケ、お前の性格もよーくわかった」

と、やりとりしているのを聞いて何やってんだ。そう思いながら矢を射る。

 

 

「しかし、とんでもない弓の精度だなあそこまで外れないもんなのか?」

「まぁ練習すればな」

そう雑談しながら他の冒険者が多い所で昼食を摂っていた。

すると横から リン、リン、と音がして見てみるとベルの手が白く明滅していた。

(噂のスキルってやつか?)

なんて思っていると。

「オオオオオオオオオオオオオッ!!」

耳を聾する程の、凄まじい哮り声が轟いたのは。

声の方角を見ると居たのは。

「インファント・ドラゴン」希少種だった。

周りが動き出した中俺はベルを見ていた。

(あの光は何かある)

ベルが魔法を行使した瞬間、、、インファント・ドラゴンは消し飛んだ。

「こ、これがスキルかぁ」

正直ここまで強力なスキルが羨ましく思ったりもしたのは内緒である。

 

 

あの探索から帰り数日が経ち俺たちはダンジョンの中層へアタックしようとしていた。

「では、最後の打ち合わせをします」

「まず、前衛はヴェルフ様」

「俺でいいのか?」

「まぁ俺は遠距離だしベルは中距離から近距離って感じだから妥当だろう」

「シロウ様の言う通り、ここ以外いる所が無いってことです」

配置は前衛からこうだ

ヴェルフ、ベル、俺

リリ

てな感じで落ち着いたまぁこれしかないだろうって感じだろう。

そうして決まったのでベルを見てみると笑っていた。

「ベル、パーティーは楽しいか?」

「うん!楽しいよ、それにワクワクするしね!」

そう言って楽しそうに笑うベル。

 

「くっ、はははははははっ!そうだよな、こういうの、ワクワクするよな!ワクワクしなきゃ男じゃないもんな!」

「違いない」

そう言って俺たちが盛り上がったところでリリが。

「それでは、準備はよろしいですか?」

「ああ、問題ない。行こうぜ」

「うんっ」

「大丈夫だ」

気合いを入れて初の中層へアタックする。

 




日常回は全て吹っ飛ばして書きました。
ヴェルフは正直シロウと絡むって言うよりベルとって感じなので書いてもなぁって思ったのでね?大体これ読んでる人原作知ってるだろうからくどいとも思うし。
そのうち日常回を個別に出そうかなとも思ってたりします。


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第五巻:可能性の形となりたい自分
第一章:中層の現実は数の暴力


一週間くらい投稿が不定期になるかもしれません。
なるかも!なるかはわからない!


日が輝く。

メインストリートには多くの人達が街路を行き交い、徐々に賑わいを膨らませていた。

 

「こんな朝早くからすまんなぁ、ファイたん。押しかけるような真似してしまって」

「ま、構わないわよ。いつもは一人だし、たまにはこうして誰かと朝食っていうのもいいわ」

二柱の女神が歓談がてら朝の食事を取っていた。

「ファイたん。ドチビのとこのこの情報、何か知っとるか?」

「ん?ふふっ、なに、ヘスティアのことが気になるの?」

「気になってるちゅうかなぁ……最近調子乗っとるからのぉ、ドチビのくせに。天狗になって

あの無駄にでかい胸を張られたら、腹立たしいちゅうかなんちゅうか……」

ぶつぶつと不満を口にするロキに、ヘファイストスは笑みを漏らした。

「私の子が一人、ヘスティアの子とパーティを組んでいるわ。今日、中層に向かうみたいよ」

「えっ、うちのとこだけやなくて、ドチビのとこにも鍛冶師貸しとったん?」

「直接契約を結んだのよ、【リトル・ルーキー一と。うちの子は存外に気に入っているらしいわ、ヘスティアの子のこと」

どこか微笑ましそうな声音を滲ませながら、ヘファイストスはゆっくりと料理を口に運んだ。

「それに個人的に興味のある子もいるしね」

「興味のある子ってどないなやつなんや?」

「「必中の一矢」って子よ」

「それドチビの所やないかい」

「あの子に少し鍛治を教えた事があってね」

「それでどうやったん?」

「ん?ん〜、、ないしょ」

「たはぁ〜ファイたん酷いわぁ」

両女神が微笑ましい雑談をしていた。

 

___________________________

 

至るところに灰色の岩石が転がっている。周囲を囲む壁も、床も、天井も岩盤で形成されていた。

視界に広がるダンジョン13階層……最初の死線とも呼ばれる「中層」を前に、俺はそう思った。

「なるほどこれは厄介な地形だな」

「話には聞いていましたが、今までの階層より光源が乏しいですね」

既に大刀を装備しているヴェルフと、早速地形へ目を走らせるリリがそれぞれ口にする。

 

「上層」の12階層から伸びた下り坂を歩き抜くと、僕達を待ち受けていたのはずっと奥まで続いている岩石の一本道だった。「ルーム」に繋がっている通路の一種と捉えていいだろう。曲がりくねっているわけでもないのに先が見えないほど長いものは初めて見るけど。

他にも、壁の隅には井戸のようにぽっかりと空いた縦穴――下の階層に繋がる落とし穴――

なんかもある。燐光の頼りない明るさといい、これら全て上層ではありえなかった光景だ。

 

「2階層はルームとルームを繋ぐ通路が長いのが特徴です。安全に戦闘を行うためにも、まずリリ達は迅速に最初のルームへ到達しなければなりません」

リリの説明を聞きながら、俺とヴェルフ、ベルは確認し合うように頷いた。

見た以り13層の通路は上層より幅が広いけれど、基本的に、こういった通り道に陣取って戦闘するのは下策だ。

 

この階層から魔法を使うモンスターが出てくるので一掃されて全滅なんてなともある。

 

「それにしても、やっぱり派手だよな、コレ」

「サラマンダー・ウールのことですか?」

そう今回の探索は魔法対策にサラマンダー・ウールを着ている。

 

(まぁこのメンバーなら滅多なことがない限り大丈夫だとは思うんだがなぁ)

すると前から二つの影が。

「いきなりか」

そう呟き臨戦態勢に入る。

 

薄い燐光に照らされる影は二つ。通路の奥から完全に現れ、モンスターの姿があらわになる。

ごつごつとした体皮は黒一色だった。その中でも両の眼は爛々と真っ赤に輝きいていた。

犬、と言うには少々体がたくまし過ぎるきらいがある四足獣、ヘルハウンド。

狼とも違った凶暴な顔付きを盛大に歪ませながら、二頭のモンスターは唸り声を上げていた。

「なぁ、この距離はどうなんだ? 詰めた方がいいのか?」

ヴェルフの言いたい事はわかる。相手の射程がわからないなら無闇に叩かない方がいい。鍛治師だが要所は掴んでるらしい。

「ヘルハウンドの射程距離は甘く見ない方がいい、ってアドバイザーの人には言われたけど、、」

「なら、、叩くぞッ!」

前言撤回こいつは馬鹿だ。

(ここでマインドを消費するのは悪手だな)

そう思った俺は弓を大きくした形態を常時にした。

矢を番えて必殺の瞬間を待つ。

ベルとヴェルフが一体を処理した瞬間もう一体の口から火の粉が見えた。

(今だッ!)

ヒュッ、、ストン

「ギャンッ!?」

頭蓋骨を貫いた。

 

「よし、幸先は良さそうだな?」

「まぁこの程度ならまだ当分は大丈夫だろうな」

「そうだね、いい感じだったよ」

戦闘を終え、一息つく。

 

「まだ来るみたいだぞ」

「!」

俺の声にベルはすぐ反応した。

奥からやってきたのは、うさぎの外見をしきた三匹のモンスターだった。

「あれは、、、ベル様!?

「違うよっ!?」

全力でベルが否定しているが、まぁ外見は似てると思ってしまう。

「三対四だな」

「まずは右からやるか」

「う、うん」

まだまだ中層は続く。

 

「息つく暇もないとはこの事か、、」

アルミラージの鳴き声が四方八方から聞こえる。

(弓で処理しようにも複数の敵を相手を倒すには魔法を使わなきゃいけないからな、、、まぁ迷ってる暇は無いか)

「トレー「いけません!押し付けられました!」

「ちっ最悪なタイミングだな」

モンスターの群れに襲われた時他の冒険者に擦りつける事をパスパレードと言う。

「行くぞお前ら!迷ってる暇なんてねぇ!」

そう喝を飛ばし一斉に走り出す。

だが、、

(不味いな追いつかれる!)

すると横のベルが止まった。

「先行って!」

「っ!?ベル様」

「おい、ベル!」

そう言われ全力で逃げる。確かに心配だが俺かベルだったら断然ベルの方が退却戦は得意だ。逃げ足が速く一人での生存能力に一番長けているのがベルだからだ。

がしかしベルの撃ち漏らしが一匹こちらに向かって突撃してきた。

「大丈夫かお前ら!?」

「は、はい」

「なんとか、な、、畜生め」

腕を抑えて苦笑いを浮かべるヴェルフ。

{さっきの突撃がかすったのか、、傷はそこそこ深いが大丈夫だろう)

そんな事を思っていた矢先。

 

「まだ来るぞ!」

通路の奥から新手がやってきた。

「挟み撃ちだな」

「気が滅入るどころじゃないな、、、」

アルミラージやらヘルハウンドやらが両通路を塞ぐ。

「中層は敵が集まるのが速いな」

「は、ははっ」

三人が苦笑いを浮かべている。

 

「ベル様、ヴェルフ様、シロウ様、リリは逃げるのを上策とします。このままだと消耗戦になりかねません」

「反対はしないけどな、この状況どうする?」

「まぁ片道を強引に突破しなきゃダメだろうな」

「ええ、それが最良かと」

その意見に全員が頷き了承した。

「それじゃ」

「おう」

「行こう!」

そう言って俺たちは気合を入れ生存の道を慎重に選ぶ。

だがダンジョンは狡猾だった俺たちが弱るのを虎視眈々と待っている。

 

ピキリ、と。

疲労が貯まった俺たちの耳に届く。音源は天井、亀裂がどんどん広がる。

次の瞬間数十匹ものバッドバットが産まれ落ちた。

「ギィィィイイイイイイイ!!」

モンスターが生まれ落ちた事で穴だらけになった天井は安定を失い。

崩落した。

「「「「!?」」」」

俺たちは我武者羅に地を蹴り逃げ出す。頭上から殺人的な岩雨が降って来る。

「はぁ、はぁ、はぁ」

ようやく収まった頃。全員の生存を確認するがヴェルフは負傷しリリは体力の限界が近いかのように激しく息を乱していた。ベルと俺はまだ余力を残している。

(まだ大丈夫だな)

だが次の瞬間、、、

ヘルハウンドの群れが現れた。

全てのヘルハウンドが低い体勢から口内に熱を溜めている。

皆の状態を確認したからわかるが。

(離脱、不可能!?)

そうこれが中層なのだとこの時俺は、俺たちは実感した。



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第ニ章:強行突破は骨を断たせて

ルルアのアトリエ発売!
SEKIRO発売!
モンハンF極みゼルレウス実装!
ゲームが終わらないなぁ


辺りにモンスターの影は無く足音だけが通路に響く。

「ここは、、、何階層だ?」

そうやって見渡すが、俺以外モンスターもいなければ人影すら無い。

(これは、完璧にはぐれたな)

俺とベル達は同じ横穴に入ったが途中で分岐していたらしく俺だけ取り残された。

(まず考えるべきはベル達が地上を目指すか、18階層目指すかって事だよなぁ)

現状、地上を目指すのが一番確実だがそれには他の冒険者に出会わなければならない。何故なら横穴に落ちたのでここが何階層でどの辺りなのかがわからないので一つしかない階段を探すのは自力では不可能に近い。

更に言えば上層と違い中層は冒険者の数が格段に減るので、そもそも他のパーティーに出会わないのである。

 

だが18階層は安全階層と言いモンスターが新たに生まれない階層なのだ。更に地下を目指す場合は横穴に入って行けばいずれ18階層に着く。

となるとやはり、、

(地下に向かった可能性の方が高いか、、)

などと思考を巡らせながら通路を歩く。

 

道や光源、更に落ちた感覚からしてここの階層は

(15、、いや16階層か、、多分、、)

初中層で仲間とはぐれて16階層でソロってもう詰んでる現状に呆れ果てていると、

 

横の通路にヘルハウンドが見えた。

(あと少し隠れるのが遅かったら見つかってた)

この状況で下を目指すにはモンスターとの戦闘を極力避けなければならず。

 

ここからひたすら隠れては息を潜めの繰り返しだった。だがそれもいつまでも続く筈もなく。

「「「グルゥ」」」

(ヘルハウンドが三匹か、厄介この上ないな)

サラマンダーウールは無事なので炎耐性は有るが、ソロなので数で押される事を視野に入れなければならない。

なので、、

(仕掛けるなら速攻ッ!)

「ヒュッ、ストッ」

「ギャッ」

弓を構え一匹削る。が残り二匹がこちらに突進して来たので。

「投影開始」

干将・莫耶を投影し迎撃に備える。

(近い方から確実に迅速に殺させて貰う)

集中力を極限まで引き出し、時間感覚を引き延ばす。

先に飛びかかって来たヘルハウンドの頭を落とした後、魔法の準備をしているもう一匹に莫耶を投げ阻止しその後干将で一文字に切り裂いた。

「はぁ、はぁ、はぁ、」

想像以上に体力を消耗していたようで息が乱れる。

(ヘルハウンドは鼻が効くからそこら辺を誤魔化すか、)

ヘルハウンドの死体をサラマンダーウールに擦り付けて匂いを付ける。そうする事により一番厄介なヘルハウンドとのエンカウントを最小限に抑えるサバイバル技術だ。

 

(まさか師匠の無茶振りで山籠りしたのがここで役立つとは、、)

そうんな現実逃避をしながら横穴を探す。

 

 

「なんとか最初の横穴を見つけられたな」

流石にソロなので慎重に慎重を期して移動した結果この階層の戦闘回数は二回に抑えられた。

 

「17階層到着っと」

そう呟き歩みを進めた。

 

そして身を潜めながら進むと開けた場所に出た。

「ここは嘆きの大壁ではないな」

そう呟くと辺りから無数の音が聞こえてくる。

ピキリ

ピキピキ

(おいおい冗談じゃないぞ)

合計で五個の亀裂、そこから現れたのは。

「「ブモォォォッ!」」

「「「グルゥウ」」」

ヘルハウンド三体とミノタウロス二体だった。

 

(ここから逃げてその先にモンスターが居ればその時点で詰む、ならばここで強行突破するしかない)

 

「強化開始」

魔法を発動させ身体能力を底上げする。

 

「はッ」

ヘルハウンドに斬りかかるが目を潰しただけに終わり、ミノタウロスに蹴り飛ばされる。

「ガッッ!?」

だが転んでもただでは起きないのが俺である。ガードしなかった方の剣でミノタウロスの足を切りとばす。

 

(やべぇ右腕が折れやがった)

右腕の感覚を確かめるが手は動かず激しい痛みに襲われる。

今使える武器は剣一本のみで弓は使えない。

(筋肉を硬化させ骨を固定するしかないか)

「硬化開始」

剣を握れないのでバンダナで剣の柄と手を固定する。

 

(この状態は魔力消費が激し過ぎる、、早めに決着をつけたい所だな)

身体と硬化を同時に行使しているので湯水の様に魔力が無くなって行く。

 

(ここは一か八かの勝負を仕掛けるとしようか、、)

がむしゃらに目を潰したヘルハウンド目掛けて突っ込んで行き莫耶を振るが、バックステップで紙一重で避けられる。

だが走る前に投げていた干将が死角から頭を切り裂く。

「ギャンッッ!?」

それで生じた隙間に身体をねじ込み通路に全力疾走する。

が後ろから残りのヘルハウンドの魔法が迫る。

「硬化開始ッ」

硬化させたサラマンダーウールを地面に突き立てて炎を防ぎ前の通路に滑り込み。

「投影開始ッ」

工程破棄した大剣で通路を塞ぐぎ一命を取り留めた。

 

「はぁッはぁッはぁッ」

(生きた心地がしないな、、、魔力は残り少ない、武器は莫耶のみでサラマンダーウールは無い。絶望的過ぎて感心するね)

絶望感に苛まれながら歩む事数分。

 

道の先から何かの叫び声が通路に鳴り響く。

「ゴライアスか!?」

もしベル達が巻き込まれていたらと思い通路を走り抜ける。

するとベルに迫るゴライアスの右腕が視界に入った。

「投影開始ッ!!」

さっき投影した大剣と同じ物を投げつける。

 

「ゴォォォオオオオッ」

「はぁ、はぁ、何とか、、そら、せたか、、」

プツンとそこで意識が途絶えた。



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第三章:記憶の片鱗

ゲームも割と片付いたので少しずつペースを上げて行きたいです。


夢の世界、、、俺は今そこにいるのかもしれない、、、曖昧な感覚。

 

 

真っ白で何もない世界、そこに一人、自分だけ、、、、、

 

 

意識はあるが変な浮遊感だけを感じる世界、、、

 

 

「ーーーーー」

 

音が聞こえる。

 

「シ、、ウ」

 

近づくにつれてそれが誰かの声だとわかる。

その声は懐かしくも優しい声だった。

 

「シロウ、、」

 

ここに来て自分の名前を呼んでいる事に気がつく。

 

「シロウ、君に私の、、、、、を託す」

何か大切な物を貰った気がするが大事な所が聞こえない。

 

「これで君の、、君だけの可能性の形を探して欲しい、、」

 

(なぁあんたは一体)

 

「欲を言えば幸福になれる道を選んでくれ、、、次のエミヤは君だよシロウ」

 

「ッ」

その一言が聞こえた途端世界に亀裂が走り次の瞬間には砕け散った、意識が浮上していく感覚に襲われる。

 

「ッ!?」

飛び起きあたりを見渡す。

俺が居たのは天幕の中のようだが、ダンジョンにそんな物があるはずもないので思考を巡らせる。

(俺は一体何を、、)

そこで思い出す。

 

「ベルッ」

最後に見た相棒の背中、ズタボロになりながらリリとヴェルフを背負い走る姿が鮮明に蘇る。

 

「落ち着いて、君の仲間は大丈夫だよ」

「ッ」

テントの入り口から顔を出したのはアイズさんだった。

 

「そうか、、良かった。また助けられちまったな」

罪悪感に苛まれる。一度ならず二度までもと言うのは流石に精神衛生上よろしくない。

「ううん、そんな事ない。最初のは取り逃がしだから私達の失態」

 

「まぁこの話は平行線で終わらないだろうし他の話をするが。ベル達の所に案内をお願いできるか?」

「うん、わかった」

自分が言い出した事なのに自分で切るのは流石に失礼だなと思いながらテントの外に出た。

 

「ほう、なるほど、ダンジョンは何でもありなんだな」

あたりを見渡すと野営風景が広がっていたがそんなことよりも、、

明るいのだ、地下にある筈の場所が。

(何かしら仕掛けはあるだろうが、今はベル達の様子を見に行くのが先だ)

そう判断してアイズさんの背を追う。

 

「ここだよ」

そう言って天幕の前で止まる。

「ありがとうございます」

そう言ってテントの中を確認する。

「「「すぅ、すぅ、すぅ」」」

と三人が静かに寝ていた。

 

「良かった」

そう一言だけ呟き俺は天幕を閉める。

 

「これからどうするの?」

アイズさんからそう聞かれて返答を考えていると、飽きたのかテントの中を確認するアイズさん。

(この人は待つのが苦手なのか?)

そんな事を思っていると中から

「えぇっ!?」

と大きな声が聞こえたので中を覗くと大きな目を見開いて驚いていた。

 

「元気そうだなベル」

「シロウ!?生きてたの!?良かったぁ」

そう言って身体から力を抜くベル。

 

その後何やら話していたが家族の恋路の邪魔はしたくないのでテントの外で待つ事数分、ベルとアイズさんが出てきた。

 

「話は終わったか?」

「うん!この後団長さんに会わなきゃいけないみたいなんだ」

「ふーん、そうか。じゃ!頑張れよ!」

と肩を叩いて立ち去ろうとすると

「シロウも呼ばれてる」

「え?」

そう言われアイズさんに連行される。

 

 

周囲の天幕より一回り大きな幕屋。

そこで俺とベルはオラリオの最高戦力の一角と相対していた。

 

「アイズからは報告されていたけど、、、、よもや君達が、僕達のキャンプに担ぎ込まれてくるなんてね」

外見は金髪で小柄な子供だがその眼光に宿った覚悟が只者ではない事がわかる。

「ほう、この者らがお主らが話しておった例の冒険者か、リヴェリア」

「ああ、ガレス。白髪の方がベル、赤髪がシロウだ」

筋骨隆々のドワーフとダンジョンですれ違ったエルフ。彼等は俺の敵であり恩人でもある事を自覚する。

ロキ・ファミリアの団長である小人族の勇者、フィン・ディムナ。ドワーフの老兵、ガレス・ランドロック。そして迷宮都市最強の魔導師リヴェリア・リヨス・アールヴ。

この三人はLv6に到達している最強の一角だ。

 

(何が目的で俺達を助けたんだ?)

自問自答しているが一向に答えが見つからない。

(金?)

違う、弱小ファミリアにそんな物期待する事は無いだろう。

(ま、善意でも何でもいいが警戒するに越した事はないだろう)

そう自分に言い聞かせて思考を切った。

 

「こっ、こっ、この度は助けて頂いてっ、ほほほほ本当にありがとうございましたっ!?」

これ以上ないくらいに緊張した面持ちで言う。

 

「そう畏まらないで、どうか楽にしてくれ。そっちの君もね」

俺が警戒している事に気がついていたのかこちらに視線を飛ばしてくるが、はいそうですかと言える程楽観的ではない。

 

「それに、アイズの知人と聞いておきながら見殺しになんかしたら、僕は彼女に恨まれてしまうからね」

おどけた口調で喋っているのは多分ベルの緊張を解いて喋りやすくする為だろう。

「君達の事情は概ね理解しているつもりだけど、一応説明してもらえるかい?僕等の現状も話しておくから、情報交換といこう」

そう言われてベルが説明し始める。

 

「がははっ、中層に進出したその日には18階層か!なるほど、フィン、リヴェリア、確かにこの若造は面白い!」

「ガレス、この場は内輪だけではないんだ。抑えてくれ」

 

ガレスさんが豪笑しそれを指摘するリヴェリアさんと言う感じの図ができた。

 

「僕等の方は見たの通り、ここで休息を取っている。本来なら、遠征の帰りとは言えダンジョンに留まらずに地上を目指すんだけど、帰路の途中で、モンスターから厄介な毒をもらってね」

ロキ・ファミリアの下っ端が毒に侵されて身動きが取れないらしい。

 

「ベート、、ファミリアの中でも足の速い、、、」

ベートと言う名前が出てからその後の言葉が頭に入ってこなかった。

(ベート、あいつはここには居ないのか。まぁ居たとしても今の俺では力が足りない)

 

自分の無力感に苛まれているとベルが立ち上がり礼を述べて天幕の出口に向かっていたので後を追う。

 

「シロウ君、君は少し残ってくれないか?」

そう後ろから言われ流石に無視もできないのでベルに「先に行っててくれ」と言いその場に残る。

 

「さて、呼び止めてすまなかったね」

「流石に助けられて無視できる程恥知らずじゃないさ」

ベルが居た時とは明らかに三人の雰囲気が違う。

 

「君が僕達に思う所が有るのは知っているんだけど、少し聞きたい事があるんだ」

「ほう、ベルにじゃなくて俺にか」

大手が弱小ファミリアに何を聞きたいのか、と思っていると衝撃的な言葉が飛び出した。

 

「君は精霊と縁、もしくは所縁はあるかな?」

「ッ!?」

そう言われた瞬間俺は双剣を投影し臨戦態勢に入っていた。

 

「何が目的だ?」

「まぁそう警戒しないでくれ、ゆっくり話もできない」

そう言われても流石に俺の何かに関わっている物だ、警戒するに越したことはない。

 

「実はロキ・ファミリアにも精霊と縁のある者が所属しているのだが精霊の情報が少なくてな君が何か知っているなら教えてほしいのだ」

そうリヴェリアさんが言って確信した。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインか?」

「流石に気がつかれてしまっていたか」

頭を抑えるリヴェリアさんと苦笑いを浮かべる男性陣二人。

 

「そうなんだだから少しでも恩を感じているなら教えてくれないかな?」

そう言われて投影物を消して臨戦態勢を解いた。

 

「はぁ、それは話せないな」

三人の雰囲気の鋭さが増した。

「なぜか聞いてもいいかい?」

有無を言わさぬ眼光と圧力が俺にのしかかる。だが理由は単純明解だった。

「俺は精霊の事を覚えていないからそもそも教える事が出来ない」

三人の目が見開く。

「嘘ではないようだね」

「ああ、俺が教えて欲しいくらいには覚えていないな」

そう言い天幕を出た。

 

 

_______________________________

 

「良かったのか?フィン、あの小僧はまだ何か隠しているぞ」

「うーん、今聞いた所で彼が僕達に話してくれる事は絶対にないだろしね。それに彼は僕達が手を出せないことを理解していたから警戒はしていたがベル・クラネルとの話に口を挟まなかったしね」

しかもこの三人を相手に逃げるではなく臨戦態勢に入った事が何よりの証拠だ。

 

「まぁ一番の問題はこれから彼が敵になるのか、はたまた味方になるのかで変わってくるだろうから気長に待つことにするよ」

そう言って彼が出て行った出口を見つめていた。

 



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