問題児たちが異世界から来るそうですよ?√G (heartz)
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YES!ウサギが呼びました! 編


受験を超え、プロットを超え、ようやく投稿出来た一話。

私が知らない間に前作のUAの桁がおかしなことになってますが気にしない方向で。

ラストエンブリオの方でメソポタミア神話の話がちらほら出てるのでそろそろギルガメッシュが出ても良いのではないのでしょうか?期待しています。

年末でギルガメッシュを引いた私に抜け目はないと言う事で、一話目どうぞ!


 

 

 

「シドゥリ!シドゥリはいるか!」

 

咆哮が響く。

第四桁、四七九六外門にその宮殿は存在していた。

 

「こちらに。どの様なご用件でしょうか、王よ」

 

その最奥、玉座の間にてギルガメッシュとその補佐、シドゥリが談論を交わしていた。

 

「”―――”は知っているな?」

 

「はい。勿論でございます」

 

「その残党が、異世界から『人類最高位のギフト』を持つ者を召喚した」

 

「!.........ようやく人類最強戦力が召喚されたのですか」

 

「ああ。そこで相談なのだがな、シドゥリ」

 

「ええ、分かっています王よ。そこにある雑務の山は私が片付けておきます故、どうか白夜王の元へ」

 

「流石だなシドゥリ、褒めて遣わす」

 

「恐縮です王よ」

  

と言いつつも、大体の雑務は何時もシドゥリがしていることである。慣れた手つきでその山を抱え、玉座の間を後にした。

シドゥリが去っていくのを見送り、ギルガメッシュは腰を浮かす。

 

「『―――』か。人類種の原点候補者がどの様な者か、この我が裁定してやろう」

 

薄笑いを浮かべながら、全てを見通す英雄達の王は宮殿を後にした。

 

 

 

 

 

 

「なんと!?クリアではなく直接倒したとな!?ではその童は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思いません。神格なら一目見れば分かるはずですし」

 

第七桁二一〇五三八〇外門。そこにあるギルド”サウザンドアイズ”の支店。その中では、件の異世界から召喚された『人類最高位のギフト保持者』、逆廻十六夜・久遠飛鳥・春日部耀の三人に”ノーネーム”所属の箱庭の貴族、黒ウサギと”サウザンドアイズ”の幹部、白夜叉がここ、『箱庭』について大まかな説明を行っていた。

その途中、白夜叉が黒ウサギの持つ『水樹』に疑問を抱き、誰がそのゲームに勝利したか聞いたところ、問題児の一人、逆廻十六夜が直接殴って倒した事を聞き、眼を見張っていた。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったんですか?」

 

「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがのう」

 

小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。

だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

 

「へえ?じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

 

「ふふん、当然だ。私は東側の”階層支配者”だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティ並ぶ者がいない、”最強”の主催者なのだからの」

 

”最強の主催者”――その言葉に、十六夜・飛鳥・耀の三人は一斉に瞳を輝かせた。と同時に、襖が勢いよく開かれ、威厳ある声がその部屋に満ちる。

 

「大口をたたいたな白夜叉。この我を差し置いて最強を謳うか」

 

「.........申し訳ありません。急な訪問は迷惑と何度も言っているのですが」

 

急な訪問者の隣で身を縮こませる女性店員。謝られた白夜叉は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。

 

「よい。そやつは何を言っても聞く耳を持たん」

 

「おい、我を無視するとはいい度胸だな。塵になるか貴様」

 

問題児三人も多種多様な驚きをしているが、一番驚いているのは黒ウサギだろう。

 

「ギ、ギルガメッシュ様!?どうして貴方がこんな下層に!?」

 

「黒ウサギか。いやなに、貴様らが異世界から『ギフト保持者』を召喚したと知ってな、白夜叉に確認に来たのだが、その必要はないらしい」

 

そう言うとギルガメッシュは件の問題児三人に眼を向ける。十六夜はギルガメッシュの名に驚いており、飛鳥は白夜叉に挑む所を邪魔され不貞腐れている。そして耀を見たギルガメッシュは眼を細めた。

 

「おい、そこの娘。名を名乗れ」

 

「私?春日部耀」

 

それを聞いたギルガメッシュは笑みを浮かべ眼を閉じ郷愁に似た何かに浸る。――戦友とまではいかなくとも、共に戦争を歩み、そして勝利の杯を交わした相手を想い――

 

「用が済んだならさっさとホームへ帰れ」

 

眼を閉じるギルガメッシュに白夜叉はしっしっと手で払う。そんな事が出来るのは箱庭中を探しても片手で数えられるくらいだろう。

白夜叉の挙動に冷や冷やしている黒ウサギはギルガメッシュに眼を向ける。するとギルガメッシュは笑みを浮かべていた。

 

「普段ならば貴様とはいえ断罪する所だが、良い許そう。今の我は気分が良い。何せ、あの孝明の娘に会えたのだからな」

 

孝明。その名を聞いて反応する影が三つ。黒ウサギと耀、そして白夜叉。箱庭に住まう者ならば知らない者はいないと言うほどの功績を持つ男。

”彼の戦争”を戦い抜いた英雄であり”旧ノーネーム”の前リーダー。そして、

 

「あなたは、私の父を知っているの?」

 

春日部耀の父である。

 

 

~~~~

 

 

「孝明とは”あの戦争”を共に闘った仲だ」

 

そう言いながら腰を下ろすギルガメッシュ。白夜叉はそんなギルガメッシュに『こいつ居座る気か』と隠すことなく嫌な顔を一つ。

十六夜と黒ウサギ、そして耀がギルガメッシュの話を聞いてる最中、飛鳥が白夜叉に近づく。

 

「ねえ、あの人は誰なの?箱庭の人間って割には十六夜君も知ってるみたいだし」

 

「おや、娘はあやつを知らんのか。どれ私が教えて上げよう」

 

久遠飛鳥は普通.........とは言えないが、少し特殊な力を持っただけの普通の娘である。十六夜の様に知識が豊富な訳ではない。故にギルガメッシュの事を知らなくてもなんら不思議ではないのだ。

 

「あやつの名はギルガメッシュ。女神と人との間に産まれた半神半人の英雄じゃ。この箱庭には様々な修羅神仏、そして英雄がおる。箱庭で産まれ育った者、そして箱庭の外、つまり外の世界で英雄として祀り上げられ、箱庭に召喚された者。ギルガメッシュは後者じゃ」

 

英雄王ギルガメッシュ。古代シュメールの英雄であり、メソポタミア神話やギルガメッシュ叙事詩などに登場する最古の王。様々な武勇を残し、神々に愛され、されど神を嫌い、神代に終わりを告げた正真正銘の大英雄である。

 

「あら?という事は私が彼を知らないのは私の知識不足.........?」

 

「まあそうなるの」

 

それを聞いた飛鳥はどんよりという言葉が似合いそうなほど落ち込んでいた。

 

「英雄とは言ったが、ギルガメッシュは英雄の器を超えておる。神殺しなど当たり前に行う実力を持ってる上に、奴の千里眼は”ラプラスの悪魔”に迫るほどじゃ」

 

ギルガメッシュは後世において『全てを見た人』と語られる。東西を問わず、古今を問わず、全てを見通すその眼は、未来視の悪魔である”ラプラスの悪魔”に匹敵する。自らに、そして国に害を与える者をその目は逃さない。

 

「とは言っても、あやつに敵と認定される者はほとんどいないがの。あやつにとって、殆どの者が有象無象の塵にすぎん」

 

飛鳥は『そんな凄い人だったの........』と戦慄を覚え、私も話を聞きに行くと、十六夜達の中に戻って行った。

 

「やれやれ、今は機嫌がいいから良いものを。普段のあやつを知ったらこの三人がどんな顔をするか楽しみじゃな」

 

そう呟いた白夜叉の顔は、愉悦に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

「それで、結局黒ウサギ達は何の用で来たのだ?」

 

「あ、そうでした!実は白夜叉様にギフト鑑定をお願いしようと思い此処に来たのですよ!」

 

黒ウサギのお願いに白夜叉は一瞬顔を顰めるも、扇子で顔を隠し察せられないようにする。

 

「ふむ.........そうか。だが、無料という訳にはいかんな」

 

含み笑いを見せながら言う白夜叉に冷ややかな視線を向けるギルガメッシュ。

実際の所、ギフト鑑定は白夜叉にとって専門外も良い所なのだが、それを知るのはこの場にはギルガメッシュ一人。

釘を刺される前に先手を打つ。

 

(お主も面白い事は好きじゃろう?なら黙ってみてるが良い。幸い当てが無い訳ではない)

 

(........貴様が言うのならそうなのであろうな。良い、沈黙に徹する事にしよう)

 

何を隠そう、ギルガメッシュも白夜叉と同じく、面白い事が好きなのである。故に『異世界のギフト保持者』を見に来たし、『彼の戦争』に参加した。

愉悦を求めるのは、何時の時代も力有る者ばかりである。

嫌な話だ。

 

「そんなこと言われましても、黒ウサギ達”ノーネーム”には差し出せる物がありません。資産も少ないですし、水だって十六夜さんが勝ち取って来た『水樹』が無ければバケツで汲みに行かねばなりませんでした」

 

「いやいや、そんな事は百も承知じゃ。故に其処の三人には”ギフトゲーム”をして貰おう。ギフト鑑定はその勝利報酬という事で良いじゃろ?」

 

それを聞いた問題児三人は再び眼を輝かせる。

 

「そりゃ丁度いい。俺もお前と戦いたかったんだ。彼の英雄王とタメ張れる程の実力者となりゃ最強を語るにも納得ってもんだぜ」

 

「最強の主催者なのでしょう?探す手間が省けたわ」

 

「え、ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

慌てる黒ウサギ右手で制す白夜叉。その目は狙い通りといった風に怪しく輝いていた。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

 

「ふふ、そうか。―――しかし、ゲームの前に一つ確認しておくことがある」

 

「なんだ?」

 

白夜叉は着物の裾から”サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

 

 

「おんしらが望むのは”挑戦”か――――もしくは、”決闘”か?」

 

 

 

刹那、三人の視界に爆発的な変化が起きた。

三人の視覚は意味を無くし、様々な情景が脳裏で回転し始める。

脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる草原。白い地平線を覗く丘。森林の湖畔。

記憶にない場所が流転を繰り返し、足元から三人を呑みこんでいく。

三人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔―――そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

「.......なっ.........!?」

 

あまりの異常さに、十六夜達は同時に息を呑んだ。

箱庭に招待された時とはまるで違うその感覚は、もはや言葉で表現できる見技では無い。

遠く薄明の空にある星は只一つ。緩やかに世界を廻る、白い太陽のみ。

まるで星を一つ、世界を一つ創り出したかのような奇跡の顕現。

唖然と立ち竦む三人に、今一度、白夜叉は問いかける。

 

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か?――――それとも対等な”決闘”か?」




いかがでしたか?

私は3000~5000文字を基準にしています。

二話割とすぐに更新できると思います。

それではまた会いましょう。


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全然早く出せなかったですね。

いや、ほんと、あの、すみませんでした・・・。

二話です。三話は来月中には出します(小声)






1

 

 

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か?――――それとも対等な”決闘”か?」

 

魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬ凄味に、再度息を呑む三人。

”星霊”とは、惑星級以上の星に存在する精霊を指す。妖精や鬼・悪魔などの概念の最上級種であり、同時にギフトを”与える側”の存在でもある。

 

十六夜は背中に心地いい冷や汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。

 

「水平に廻る太陽と.........そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」

 

(それに.........)

 

十六夜はギルガメッシュを除き見る。

 

(あの景色の中、一人当然の様に顔色を変えなかった。この位当然ってか?おもしれぇじゃねえか!)

 

しばしの静寂の後――諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

 

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意出来るんだからな。アンタには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って試されてやるよ、魔王様」

 

苦笑と共に吐き捨てるような物言いをした十六夜を、堪え切れず高らかと笑い飛ばしたのは、白夜叉ではなく、

 

「く、くくく.........ふふはははははは!あはははははは!」

 

傍観に徹していたギルガメッシュだった。

 

「『試されてやる』とは、随分可愛らしい意地の張り方をする。貴様、十六夜と言ったか。良い、実に良い。どれ、貴様はこの我自ら試練をくれてやろう。光栄に思え」

 

「へえ、英雄王様から直々に試練を貰えるなんてな。勿論楽しませてくれるんだろう?」

 

「安心しろ。楽しむ暇も失くしてやる」

 

黒ウサギの冷汗は止まらない。ギルガメッシュは英雄王と言われている他に、暴君としても有名である。

決闘では無いにしろ、『あの』ギルガメッシュである。挑戦の内容がまともであるはずが無い。

白夜叉はギルガメッシュを一瞥すると他の二人にも問いかける。

 

「して、他の童達も同じか?」

 

「.........ええ。私も、試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

苦虫を噛み潰したような表情で返事をする二人。

満足そうに声を上げる白夜叉はギルガメッシュに問いかける。

 

「こう言っておるが、どうするのじゃ?」

 

「我が裁定するのは十六夜一人で良い。そこの娘二人では実力不足だ。死ぬぞ」

 

実力不足と言われた耀と飛鳥はむっとするが、最後の一言で素面に戻る。ギルガメッシュの実力を見た事はないが、その言葉は嫌に信憑性があった。

一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは一旦胸をなでおろす。

ギルガメッシュの言葉通りの意味であれば、最悪の結果にはならないだろう。

 

「も、もう!お互いにもう少し相手を選んでください!”階層支配者”に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う”階層支配者”なんて、冗談にしても寒すぎます!それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうじゃったかな?」

 

ゲラゲラと悪戯っぽく笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと三人。

その時、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。獣とも、野鳥とも思えるその叫び声に逸早く反応したのは、春日部耀だった。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

「ふむ.........あやつか。おんしら二人を試すには打って付けかもしれんの」

 

湖畔を挟んだ向こう岸にある山脈に、チョイチョイと手招きをする白夜叉。すると体長5mはあろうかという巨大な獣が翼を広げて空を滑空し、風の如く二人の元に現れた。

鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、春日部耀は驚愕と歓喜の籠った声を挙げた。

 

「グリフォン.........嘘、本物!?」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。”力””知恵””勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

白夜叉が手招きする。グリフォンは彼女の元に降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。

その様子を見たギルガメッシュが小馬鹿にするように口元を緩める。

 

「孝明の娘の初ゲームにグリフォンか。貴様にしては良い選択だな、白夜叉」

 

「私にしては、とはどういう事じゃギルガメッシュ。私は何時もナイスな選択をしている」

 

「ハッ、遂に脳まで腐ったか。生き過ぎるのも考え物だな」

 

「カカッ、不死を求めた愚王が何を言っておる。貴様は蛇に呑まれて死ぬが運命よ」

 

二人の目線に殺気が籠る。本人にとってそれが微々たる物であるとしても、黒ウサギ達にとっては呼吸が乱れる程の物であり、引いていた冷や汗が黒ウサギの背中を伝う。

 

「ちょちょちょ、白夜叉様!ギルガメッシュ様!喧嘩はお二人の時にして下さい!巻き込まれる私達は堪ったものではありません!」

 

言った。言ってしまった。王を名する二人に言ってしまった。

少し経ってから何で言ってしまったんだと後悔が回る。

 

「む、それもそうだな」

 

「ちっ、この決着は次の太陽の主権戦争だ」

 

この2人の王は意外と話の分かる王らしい。

 

 

 

 

 

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら二人とこのグリフォンで”力””知恵””勇気”の何れかを比べ合い、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか」

 

白夜叉が双女神ぼ紋が入ったカードを取り出す。すると虚空から”主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。

 

『ギフトゲーム名 ”鷲獅子の手綱”

 

・プレイヤー一覧 久遠飛鳥

     春日部耀

 

・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う

・クリア方法 ”力””知恵””勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

”サウザンドアイズ”印』

 

「私がやる」

 

読み終わるや否やビシ!と指先まで綺麗に挙手をしたのは耀だった。彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。比較的に大人しい彼女にしては珍しく熱い視線だ。

 

「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?失敗すれば大怪我では済まんが」

 

「大丈夫、問題ない」

 

耀の瞳な真っ直ぐにグリフォンに向いている。キラキラと光るその瞳は、探し続けていた宝物を見つけた子供のように輝いていた。隣で呆れたように苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥。

 

「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」

 

「気を付けてね、春日部さん」

 

「うん。頑張る」

 

 

その後、耀の踏ん張りと、父親に貰った木彫りの彫刻で、耀は怪我も無くこのギフトゲームをクリアした。

その木彫りには系統樹の刻印がされており、友となった動物の能力が扱えると云う、強力なギフト。伝説のプレイヤー、春日部孝明が作成したギフト。それが強力で無いはずもなし。ギルガメッシュは十六夜と飛鳥に笑顔で駆け寄る耀を見て満足げに頷くのだった。

 

 

 

 

「次は俺の番だな」

 

耀とグリフォンのギフトゲームが無事に終わり、十六夜はギルガメッシュに向き直る。

その佇まいは堂々としたものであり、今から王の挑戦を受ける者に相応しい態度だった。

 

「その意気が実力に見合っている事を願うぞ十六夜」

 

そしてギルガメッシュは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「貴様には王たる我の試練を受けることを許す。喜べ、貴様は我の目に止まったのだ。その意味を良く考えろ」

 

そう言うとギルガメッシュは光り輝く羊皮紙、”契約書類”を取り出した。

 

『ギフトゲーム名 ”バビロンの宝物庫”

 

・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

 

・クリア条件 ギルガメッシュからの攻撃に10秒耐える

・クリア方法 ギルガメッシュに認められる

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

”バビロニア”印』

 

その”契約書類”を掴んだ瞬間、十六夜の視界は光に呑まれた。

 

 

「ここは...」

 

十六夜が目を開くと、そこには絢爛豪華な剣や盾等の武具。まるで絵本で見るような財宝の山が並んでいた。

 

「ここは我の蔵の中だ。今此処には我と十六夜しかいない」

 

声がした方に顔を向ける。そこには煌びやかな玉座に座るギルガメッシュの姿があった。

 

(てことは、ここにある宝の山は全部ギルガメッシュ王が集めた財宝ってことか)

 

全ての宝物を集めたと伝承されるギルガメッシュは、その蔵に《財宝》と呼称される物の原典が自動的に納められる。その数はギルガメッシュ自身も把握し切れないほどであり、自動的にその宝物はランク付けされ、保管される。

これがギルガメッシュの持つギフトの1つ”宝物の威光(バビロンズ・クラウン)”。

 

「さて、我が攻撃を始めてからがこの遊戯の始まりだ。準備は良いか、十六夜」

 

そう言うとギルガメッシュの後ろに黄金の波紋が広がる。その数は数十にもおよび、目視では数え切れない程だ。

波紋の中からは、剣・斧・槍・矢等々、様々な武具が姿を現す。その神々しさに十六夜は驚愕する。

 

(こいつは...まさか全ての武具が聖剣や魔剣なんて言うんじゃないだろうな.........)

 

聖剣や魔剣を直接見たことない十六夜でも、その武器一つ一つが蛇神を殺せるほどの力を持っている事が分かる。

その姿に、十六夜の顔に冷や汗が滲む。

 

「我の期待を裏切ってくれるなよ、小僧」

 

そう言ってギルガメッシュは波紋から武器を射出した。

 

 

 

 

 

 

(10秒ってこんなに長かったか!?)

 

ゲームが始まってから約五秒。その間十六夜は飛んでくる武具にズタズタにされていた。勿論防ぐ、回避等の防御はしている。だがそれ以上に量が多い。

十以上の何処から飛んでくるか分からない武器が一斉に襲ってくる。さらに、それらは一つ一つが神をも殺せるかもしれない武具。

殴っても壊れない以上にこちらの拳に傷が付く。最初の三秒でそれに気付き、受け流す行動に出たが、四方八方から飛んでくる武器に技術が追いつかない。

思考だけが加速する。

 

「そら、さらに追加だ。さあ、避けろ避けろ!」

 

ギルガメッシュはそんな十六夜を見ながら嗤う。黄金の椅子からは動かず、頬杖をつきながら更に波紋を追加していく。

流石、愉悦部部長は格が違う。

 

(クソッ!このままだと負けちまう!どうにかしねえと.........)

 

思考しながらもなんとか猛攻を凌ぐ十六夜。

だがその最中、死角からの攻撃が放たれる。気付いた時には遅く、どうやっても防げる速度では無い。

思考だけが加速し、視界がスローモションになってゆく。

覚悟を決めた十六夜が”何か”を握りしめた。その瞬間、辺りに爆発音と爆風が吹き荒れる。

 

(これは......なるほど、自ら恩恵を受けながら、恩恵を砕く強力なギフトか...。我の”全知なるや全能の星(イ・シャクパ・イルム)”で見えないとはな)

 

爆風を受けながらも、十六夜のギフトをその千里眼で見ようとするギルガメッシュ。だが、その正体は千里眼をもってしても謎だった。

爆風が晴れた中、見えたのは傷だらけで立っている十六夜だった。その顔は獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「10秒経ったぜ、英雄王」

 

「ククク....。アハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

十六夜の台詞に対して大声をあげて笑うギルガメッシュ。その姿に十六夜は目を細める。

ようやく笑いが治まったのか、見開いた目でギルガメッシュが十六夜を捉える。その口元はにやけていた。

 

「良い、認めよう。貴様は我が試練を乗り切った。褒美だ、くれてやる」

 

そう言うとギルガメッシュは十六夜に向かって手を伸ばす。すると十六夜の体は青白い光に包まれる。

光が収まると、十六夜は自身の内側に力がある事を自覚する。だが、その力を引き出せない。

 

「その力は何れ貴様を助ける事だろう。今の実力に胡坐をかくな、貴様はまだ強くなる。次に矛を交えるのは貴様が真の英雄になってからだ」

 

ギルガメッシュがそう言った瞬間、十六夜の視界が光に包まれる。

目を開ければ白夜叉の部屋が目に入った。

 

「十六夜さん!」

 

黒ウサギの悲鳴に似た声を聞いて、十六夜は気絶した。




※この二次創作夢小説にはオリジナルギフトが多数存在しております。


最初の設定ではギルガメッシュは二桁(全権領域)だったんですけど、箱庭で云う権能が分からなくて結局三桁(全能領域)になったんですよね・・・。

あ、あとギルガメッシュのコミュニティの名前良いのあったら教えてください。あれは仮の名前です。良さげで、オサレな名前が思いつきませんでした。


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