輝くガールズバンド達との高校生活 (リュグナー)
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ハジマリノオト
設定&第1話「猫耳後輩とのエンカウント」


ローソンコラボだ!2周年だ!待ってろ、ドリフェス!


オリ主(男)

如月悠16歳、高校2年

身長152cm

好きなもの→コーヒー、クッキー

嫌いなもの→納豆、茄子

能力→学年次席、苦手な教科ナシ。スポーツ万能、割となんでもできる感覚派。後から理解するタイプ

容姿→152cmで少し筋肉質。中性的な顔立ちで割と整っている。髪は少し長めで髪質が良く、黒髪。

性格→冷静でクールな感じに見えるが、背が低いため背伸びした感がある、背が低いことがコンプレックス。

楽器経験者でギター、ベース、ドラム、ピアノは弾ける。

 

ポピパ組

香澄:納豆嫌いの同志。仲良し!

有咲:癒される……。抱きしめていいよな?

おたえ:花園ランド予備軍、ウェルカム・トゥ・ザ・花園ランド!

沙綾:弟にしたいなぁ…、パンいる?

りみりん:チョココロネの鼓動を感じる♪(恋?)

 

アフロ組

蘭:別に…いつも通りだし……(ナデナデ)

モカ:ん~?エモいねぇ~。

ひまり:甘やかしたいよー。

巴:あこに似てる気がする!ソイヤ!

つぐ:羽沢珈琲店の常連、可愛いなぁ

 

パスパレ組

彩:優しいから勘違いしそうだよ……

日菜:るんって感じかな?

千聖:背が低い同盟、カフェ巡り仲間

イヴ:小さき武士です!ブシドー!

麻耶:ふ、フヘヘ…おっと、いけないいけない。

 

ロゼリア組

友希那:ニャンちゃんに似てるわね…

リサ:餌付けしたい、弟?かなー。

紗夜:彼は凄いですね、好きかって?ええ、好きですが?

りんりん:可愛い…、抱きしめたい…!

あこ:可愛いし、カッコいい!でも、なんかモヤモヤする……?

 

ハロハピ組

こころ:あなたが笑顔だから私はハッピーだわ!

薫:あぁ、儚い……。なんて儚いんだ!

はぐみ:一緒にソフトボールしよ!

花音:カフェ巡り仲間、弟っぽい

美咲:癒し、癒されたい。はぁ…。

 

まりなさん:だ、だめよ私。未成年に手を出しちゃ。……あと4、5年待てば。あ、バイトしない?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は如月悠、高校2年だ。

今日は入学式がある。どんな1年が入って来るのやら……。

そう思いつつ体を起こし、ベッドから降りる。朝は弱い時と目覚めが良い時とがある。今日は良い方だ。

 

ガチャ

 

「おはよ、悠」

「帰れ」

「ご飯出来てるから」

「そうか……じゃあ帰れ」

「…わかった」

「あー、えっと…その……いつもありがとう」

「っ!べ、別に…いつも通りだし…」

「入学おめでとう、蘭」

「…うん」

 

今日も蘭が朝食を作りに来た。多分、蘭パパが一人暮らしの俺に気を利かせてくれているのだろう。

蘭も高校生だ。流石にもう来ないだろう……、というか自分の時間を大事にして欲しい。

 

朝食は何だろう?

リビングへと向かう。リビングに入り、机の上を見るとなんとそこには、何もなかった…。

 

は?

 

いやいや、え?

 

よく見ると机の上に書き置きされたメモ用紙がある。

 

『悠へ

ごめん、時間なかった。

納豆ならあるよ。

蘭より』

 

……。嘘だろ?

出来てるって言ってたじゃん。出来てないし。納豆って……俺、食べれないんだけど。

今日は飯抜きだな。まぁ、学校も午前中だけで終わるし、大丈夫だろ。

 

洗面を済ませ、制服に着替える。鏡を見て寝癖がないか確かめる。うん、大丈夫だ。スクールバッグを持ち、家を出る。俺の通っている学校は花咲川学園。2年前に共学になった。つまり俺は男子の一期生だ。……同性はやっぱり少ない。花咲川の生徒や先生たちはみんな良い人ばかりだ。選んで正解だったと思う。

 

そんなことを考えていると花咲川の校門が見えてきた。

新入生、男子居たら良いなぁ。

あれ?

………居なくね?

男子居ねーじゃん。

少なくとも今見た限りでは男子は居ない。

 

「今日からお世話になります!」

 

ふぁ!

 

びっくりした。

 

後ろを振り返るとそこには……。

 

ね、猫耳?

 

猫耳?ヘアーの女の子がいた。

 

え?こっちに近づいてくる。

 

「ねぇ、君も新入生?一緒に行こ!」

 

手を掴まれた。

 

「いや、俺は…って!ちょ、ま」

 

急に女の子が走り出した。手を掴まれている俺は引っ張られる……力、強くね?

 

「私、戸山香澄!君は?」

「如月、如月悠だ」

「よろしく!あ、私A組!」

「そうか」

「あれ?如月君の名前ないね?」

「当たり前だ、俺は2年だからな」

「え?先輩だったんですか?」

「じゃあな、新入生」

「あ、はい!」

 

なんか今年は騒がしくなりそうな気もする。しかし…どこかで見た顔なんだよな?まぁ、いっか。

 

 

 

〈香澄サイド〉

 

はー、さっきの先輩小ちゃかったなー。ん?

 

「良い匂いがする」

「え?」

「美味しそうなパンの匂い!」

「うち、パン屋なんだ」

「私、戸山香澄!A組だよ」

「私もA組、山吹沙綾。よろしくね戸山さん」

「香澄で良いよ」

「私も沙綾って呼んで」

「もう友達出来ちゃった!」

「あはは、そうだね。じゃあ、行こっか」

「うん!行こ!」

 

キラキラドキドキ見つかると良いなぁ。

 




設定は後々そうなるという感じで今はスルーして下さい。


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第2話「変わりゆく友人たち」

はっはっは!
やっちまったZE☆


やっちまったぜ………。


「皆さん、花咲川へようこそ。私達、生徒一同あなたたちを歓迎します。花咲川は………」

 

体育祭のステージでどこかで見たことあるような人、生徒会長が新入生に挨拶をしている。……多分、グリグリのキーボード?姉妹かな?

久しぶりにオーナーに会いに行こうかな……。

 

1時間程度で式が終わり、教室に戻った。

 

 

〈2ーB 教室〉

 

自分の席に座り、周りを確認する。見知った顔が何人かいる。紗夜、燐子、彩がいる。後ろの席には燐子が、隣には紗夜がいて、彩は……割と離れてる。

このクラスには工藤や後藤、佐藤といった苗字の人は居ないようだ。山田も居ないし、田中も居ない……大抵居るはずなんだがなー。まぁ、ということで後ろの席が燐子なんだけど……なんか時々ボソッと聞こえるんだが、「可愛い…」とか「うふふ……」だとか。誰のことなんだろ?

 

んで、隣の席の紗夜はやたらと俺のことを褒めてくる。「あなたの努力は知っています」とか「あなたとなら……い、いえ何でもありません」だとか。いや、嬉しいよ。そりゃ。

 

離れた席の彩は休み時間になると喋りに来る。「アイドルの道は遠いよ……」とか「今日はバイトかぁ……」だとか。やっぱり芸能界は難しいのだろう。いつも俺は「彩の努力は無駄にはならない、チャンスは必ず来る」と励ます。彩は「そうだよね、諦めちゃダメ……」と言い、真剣な表情になる。……いつもそんな顔してれば良いのに。

 

 

去年から続いている関係。

変わってないのようで変わった部分もある。

 

紗夜は何かに追われるように色々なことをし始めた。

 

燐子は今の自分の性格に疑問を持つようになった。

 

彩は芸能界の厳しさから自分の夢を諦めかけてきた。

 

 

俺は?

何が変わった?

……何も変わってない。一人だけ置いてかれた気分だ。

『いつも通り』か。蘭たちには悪いがこれだけは分からない。人は常に変わっていく生き物だ。良くも悪くも……。

今年こそは自分を変えてみせる。その結果がどんなものであろうと俺は…受け入れる。

 

そう!

俺は身長が欲しい!!

 

え?真面目な話?俺にとっては大事なことだ。高校2年で152cmだぞ?低すぎる。

あの案外小さいで有名な千聖と同じ身長なんだ。紗夜と10cmぐらい差があるし、巴や薫と並んだ時なんてもう……目も当てられない。

弟にしたいランキングと妹にしたいランキングで一位(生徒会調べ)を取ったのは俺だ。弟の方はまだ理解できる。いや、妹って…どういうことだ。

不可解なことに俺は『花咲川の弟』という称号を得ている。……お返しします、え?ダメ?

こうなったら俺が色んな人に称号、異名を付けるしか方法がない……!

 

 

………。あれ?無理じゃね?

 

紗夜は…後が怖いから嫌だし。

 

燐子も…やっぱり後が怖いから嫌だし。

 

彩は………うん、彩だし。

 

 

うん!新入生に的を絞ろうかな!

 




特になし!


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第3話「羽沢珈琲店って良いね」

ドリフェスルーザー、リュグナー


HRが終わり、帰ろうとしたところで千聖に声を掛けられた。

 

「今日は早めに終わったから喫茶店に行かない?」

「あー、わかった。花音も来るのか?」

「ええ、花音も一緒よ」

「……おい、花音は今どこに居る」

「え?花音なら私と一緒に、来てる…はず……嘘?」

「はぁ…探しに行くぞ」

「そうね。……ごめんなさい」

「別にいいよ、慣れたし」

 

少し目を離すとすぐ迷子になってしまうからなぁ、花音は。あまり、怒る気にはならない。……慣れって怖いな。

 

色々探したんだが、まず2年の教室や廊下には居なかった。体育館やテニスコートに行くのはめんどくさいから後回しにしよう。

 

居そうなのは1年の廊下あたりか?

 

そう思い、千聖と1年の廊下に向かった。

ここに居なかったら嫌だなぁ、と思いながら歩いていると誰かとぶつかってしまった。

 

「ごめん、考え事をしていたから気付かなかった」

「これくらい大丈夫ー……あれ?悠?」

「あ、花」

 

どうやらぶつかったのは花、花園たえのようだ。花とは昔、ミュージックスクールに通うっていた時に知り合った。懐かしいなぁ…。他にもレイや有咲とも仲良かったんだよなぁ。

 

「やっぱり大丈夫じゃないかもー」

「さっき大丈夫って言ってたよな?」

「言ってないよ」

「言ってますー」

「ん、んん」

 

千聖の咳払いにより、会話が一時的に中断された。

 

「知り合いに会ったら話すのもわかるけれど、花音を探すことを優先すべきよ」

「ごめん、千聖」

「人探し?」

「まー、そんな感じ。髪が水色っぽくてふぇぇ、って言ってる女の子見なかった?」

「あー。みたよ。あっちの方」

「ありがとう、花。あと、明日オーナーに会いに行くって伝えておいて」

「わかった。オーナーに伝えておくね」

「また明日」

「明日〜」

 

良かった。こっちの方に花音が来てて。花が言っていた方に進んでいくと、「ふぇぇ」と聞こえてきた。

 

「良かった、居た」

「花音にはいつも驚かされてばかりね」

「へー、千聖だって電車の乗り継ぎ出来ないくせに」

「……いつもお世話になってるわ」

「少しずつ慣れていけば良いさ」

 

あ、花音がこっちに気づいた。手を振りながらこっちに向かってくる。

 

「千聖ちゃん、悠君。探したよー」

「てい!」

「痛っ」

 

花音の頭に軽くチョップを入れる。

 

「探したのはこっちの方だ。花音」

「うぅ、冗談だったのに……」

「花音、あなたの場合、冗談に聞こえないのよ」

「ち、千聖ちゃんまでー…」

「少し……いや、割と遅くなったけど、今から行くぞ」

「いつもの場所で良いわよね?」

「羽沢珈琲店だな」

「行こ、千聖ちゃん、悠君」

 

…………。

 

「千聖」

「ええ、わかってるわ」

「やっぱりこうなるんだよね……」

 

花音がはぐれないように千聖に花音と手を繋いでもらった。二人とももう慣れたんだろう。俺がそうさせたんだけど。

学校からの商店街へと向かった。

 

ここの商店街はパン屋や精肉店、珈琲店など種類が豊富で栄えている。なぜかパン屋はチョココロネが品切れになりやすいし、パンが突然減ったりする。

 

しばらく歩いていると羽沢珈琲店が見えきた。花音もはぐれずに済んだ。

……流石に今日は蘭居ないよな?

 

 

 

〈羽沢珈琲店〉

 

「いらっしゃいませ、三名様ですか?」

「うん、三人」

「お好きな席にどうぞ」

 

今はつぐみは居ないみたいだな。

千聖がいるから少し奥の方に座る。やっぱりチェーン店と違って落ち着く。

 

「お水とメニューです」

「ありがとう」

「それではごゆっくりとどうぞ」

 

店員さんから水とメニュー表を渡された。今日はケーキにしようかな?

 

「私はこのイギリスのショートケーキにするわ」

「えーと、私はこれ。チョコシフォンケーキ」

「じゃあ俺はマロンモンブランにしよう」

 

マロンモンブラン(通常より栗が多め!)と書いてある。そういうことか。

 

「飲み物は紅茶か?」

「ええ、アップルティーね」

「わ、私はコーヒー」

「俺もコーヒーだけど……うーん、深煎りで」

 

ここの店員さん凄いな。メニューを言い合っている間に来てメモを取ってる。

 

「かしこまりました。すぐにお持ちしますね」

 

今回頼んだのはケーキ系だから早めに来るだろう。

それにしても……千聖がわざわざ今日喫茶店に行きたいなんて。何か相談ごとか?

 

「お待たせしました。こちらご注文にありました、ケーキ三つとアップルティー、コーヒー、深煎りコーヒーでございます」

「ありがとう、わざわざ一度にこんな量を持ってこなくても……」

「もう、慣れましたので」

 

凄いバランス感覚だった。スポーツでもやっているのか?……あ、いや、やめておこう。多分、弦巻家の使用人だ。

 

「美味しそうだね」

「ふふ、そうね」

「いただくとするか」

 

モンブランを一口食べる。栗の味と控えめながらも主張してくる甘さが丁度いいバランスを保っている。つまり

 

「美味しいな…」

「悠君、一口いいかしら」

「いいぞ、ほれ」

 

フォークで一口分に切り、千聖の口に放り込む。

 

「……良いわね。悠君、口開けなさい」

「あーん。美味いな」

 

イギリスのショートケーキ、どんなものかわからなかったがなるほど……生地がサクサクしていて少しクッキーぽい。歯ごたえがあって美味しい。

 

「ち、千聖ちゃん……!わ、私も。悠君あ、あーん」

「?あーん。うん美味しい」

 

チョコシフォンケーキ。しつこくないビターなチョコの甘さとシフォンがマッチしたケーキ。

 

ん?

 

花音が口を開けて何かを待っている。あーそういうこと……。

 

「はい、花音」

「……うん、美味しい、な」

 

一口あげたから、一口くれ。ということだな。まぁ、毎回やってることだし慣れた。

 

ケーキを食べ切り、コーヒーを飲む。

やっぱりここのコーヒーは別格だな。他のところより美味しい。メニューも豊富だし、期間限定とかマスターオリジナルとかもあるし、試作品なら無料で提供される。

 

コーヒーも飲み終わり、本題を切り出す。

 

「なぁ、千聖。何かあったのか」

「え?……そうね。ちょっと事務所からある話がきたの」

「やっかいごとか?」

「アイドルをやれって。『アイドルバンド』を結成するらしいの」

「アイドルバンドか……。いいんじゃないか?」

「そう、そうよね…。何を迷っているのかしら私は」

「失敗が怖いのか」

「!そ、んなことはないわ」

「……急がば回れ」

「何か言った?」

「……なんでもないよ」

 

失敗を恐れているのか。女優として周りから求められてきたもんな。リアリストぶってるけど千聖はそんなに器用じゃない……。それにアイドルバンドか…。いや、まだ決まったわけじゃない。上手くいくことを願うしか…。

 

「うし、帰るか」

「そうね、花音」

「ふぇ?う、うん」

 

レジで会計を済ませ、店を出る。

 

「じゃ、花音を頼んだ千聖」

「ええ、帰りましょ花音」

「うん、またね」

 

千聖たちと別れ、家に帰った。

 

 

今年は本当にいろんなことが起きそうだ!

 

そのことが楽しみな俺がいた。



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第4話「燐子のバブみとキラ星の香澄」

ドリフェス……終わっちまったな。


入学式の次の日。

 

いつも通りに登校するはずだったが、日菜が追いかけてきたので走って学校まで行った。

日菜に捕まると学校に遅刻するからな。

 

無事に学校に着くことができ……いや、この言い方だと無事に着けない時があるみたいに聞こえるな。まぁ、何事も無く着いた。

顔見知りに挨拶をしつつ、教室に向かう。

 

……なんか、1年に挨拶されてる気がするが、うん、気のせいだといいなぁ。

 

 

「おはようー」

教室に入り、挨拶をする。紗夜に挨拶するようにと言われてから毎日するようにしている。

 

「おはようー」と何人かから挨拶が返ってくる。

自分の席に座りたかったが……。彩が既に座っていた。

 

「どけ」

「やだ。最近、悠君が構ってくれないもん」

「……紗夜に言いつけるぞ」

「くっ、そ、それでもどかないから」

「燐子」

「うん、分かった……」

「え?燐子ちゃんはそんなことしない…よね?」

「ごめんなさい、彩さん」

「ちょ、はなし……ちから強…!」

 

燐子が彩を俺のイスから引き剥がしてくれた。

……正直、燐子があんなに力があるとは思わなかったがな。

 

そのまま彩は紗夜に引き渡されてどこかに連れていかれてしまった。

イスが空いたので座り、鞄を机に掛けた。

燐子にお礼を言わないとな。

 

「燐子、ありがとう」

「ううん、いつも通りだから。……それと、その…いい?」

「あー。良いよ」

 

そして俺は燐子に抱きしめられた。……慣れてしまったからだろうか、燐子に抱きしめられるとどこか落ち着く。

そんな俺にクラスメイト達は……

 

「ねぇ、写真撮っていい?」

「俺は良いけど、燐子は?」

「うん…!お願いします……!」

 

隠し撮りされるよりかはマシだと判断して許可を毎回出している。隠し撮りはNGだ。

 

クラスメイト達に写真を撮られているとチャイムが鳴った。

いつの間にかそんなに時間が経っていたようだ。あ、そういえば紗夜と彩は……、いつの間にか帰ってきていたようだ。

 

今日からフルで授業がある。はたして春休みボケしている頭は耐えられるのだろうか。

 

 

 

 

〈昼休み〉

 

授業内容が去年のおさらいからだったので、そこまで難しくはなかった。

クラスで朝に撮られた写真が出回っているのを横目に見ながら弁当を取り出す。

もちろん俺の手作りだ。本当はコンビニ弁当でも良いのだが、少しでも節約する為に自分で作っている。

 

「いただきます」

 

あまり凝ったものは作らない。……めんどくさいから。だから冷凍食品は割と使う方だ。

 

今日は玉子焼きに簡単に作ったポテトサラダ、生キャベツ、ウィンナー、あとは冷凍食品の唐揚げ。

 

適当に作っているので味が不安だったが普通に美味しかった。

 

「ごちそうさまでした」

 

昼休みはまだ終わりそうにない。…外の空気でも吸いに行こうか。

 

そう思い、席を立ち教室を出た。

歩いていると入学式の時にあった猫耳後輩に出会った。

 

「あ、悠せんぱーい!」

「よう、戸山」

「もうー、香澄で良いですよー」

「……香澄」

「はい!」

 

アレだな、うん。

友達認定されてるやつだ。

 

「悠先輩、星の鼓動を聞いたことありますか!」

「?星の鼓動ってなんだよ」

「こうー…キラキラー、ドキドキー…みたいな?」

「キラキラ、ドキドキ…ねー」

「だから私、キラキラドキドキすること探してるんです!」

「そうか、見つかると良いな」

「はい!頑張ります!」

 

星か。星?……もしかして

 

「その髪型って星をイメージしてるのか?」

「そうです!良かったー。酷いんですよー、皆は猫耳だーって」

「猫耳にしか見えないけどな」

「そういえば先輩」

「なんだ後輩」

「連絡先、交換しません?」

「ん?良いよ」

 

メッセージアプリの『リネ』に香澄☆という文字が追加された。一応、電話番号やメアドも交換しておいた。

 

「また今度、連絡しますね」

「期待せずに待ってるわ」

「ええ!?そこは期待してくださいよー」

「あー、はいはい」

「むー、……あ、もう昼休み終わりそうなので戻ります!」

「じゃ、またな」

「はい!」

 

結局、外に出れなかったな。

予鈴が鳴るなか教室に戻った。

 




次回、ハジマリノオト


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第5話「BanG Dream!」

???「やりきったかい?」


〈放課後〉

 

「うし、久しぶりにライブ観に行くか」

 

ついでにオーナーに会いに行こう。

今日はグリグリや紗夜もライブに出るらしい。それと燐子はネトゲの友達と会うらしい。

 

 

歩いていると懐かしい道に入った。

この道はまだ小さかった頃に有咲と一緒にご褒美で貰ったシールを貼ったんだよなぁ。

懐かしんでいると見たことのある猫耳…じゃなくて星の髪型をした後輩がいた。

 

「星だ!あれ?あっちにもある!」

 

その後輩は星のシールを追って走り始めた。

ってその先は確か…有咲の家に続いている。

 

「この先に何かあるかも!」

 

とりあえず、香澄を追いかけることにした。

 

 

〈市ヶ谷家〉

 

「ここは?誰か居ないのかな?すみませーん!……空き家かな?」

 

あ!アイツは馬鹿か!不法侵入じゃねぇか。

問題になる前になんとかしないと……。

 

 

〈香澄サイド〉

 

星を追って来たら空き家?に着きました!

なんか蔵っぽいところまで星のシールが貼ってある。

よし!蔵の中に入ってみよう!

 

「ご、ごめんくださーい」

 

少し奥の方にケースがある。それには大きな星のシールが貼ってある。

なんだろ?

 

 

〈有咲サイド〉

 

「調子はどうだー、利根川♪」

 

いつものように盆栽に水をやっていると、蔵の方に人が入って行くのが見えた。

 

「…!誰だ!もしかして…泥棒か!?」

 

だとしたらマズイ。早く捕まえてやる!

 

私は蔵に向かって走った。

 

 

 

〈悠視点〉

 

ん?あれってもしかして…有咲?

 

有咲は香澄が蔵に入っていったのが見えたのだろう。……面白そうだしもう少し待つか。

 

 

「手ー上げな!泥棒!」

「え?は、はい!」

「アンタ名前は?」

「と、戸山香澄です!」

「それ本名?もし、偽名だったら……止めるよ?」

「……お泊まり?」

「違う!アンタを捕まえるって言ってんの」

「ど、泥棒じゃないです」

「その制服……花咲川、うちの学校の」

「同じ学校?何年生?私、高1!」

「違うから!出て!質屋はあっち!こっちは全部ゴミ!」

「ゴミ?じゃあ、あれも?」

「質流れのギターかなんかでしょ!」

「ねぇ、見ていい?触っていい?」

「は?お前なぁ!」

「ちょっとだけ!ちょっとだけ〜!」

「伸びる!伸びる!服引っ張んな!」

「……ったく、触ったら、出てけよ」

「うん、じゃあケース開けるね」

「!すごい、このギター、星の形してる!」

「……そういうギターもあるんだろ」

「鳴った!すごい!聞こえた!?」

「ちっさ……。はい、終わりー」

「待って!もうちょっと〜!」

「終わりっつったろ〜!あのさ、そんなに弾きたいなら楽器屋さんとかライブハウス行けよ」

「!ライブハウス!?どこにあるの!?」

「知らねーよ!」

「わかった!探してくる!」

 

そう言って香澄は真っ赤なランダムスターを抱えて走っていった。

 

「えっ?あ!泥棒ーーー!!」

 

有咲は少し遅れて気づいたようだ。走っていった香澄を追いかけていった。

……有咲と話すのはまた今度にしよう。

俺は急いで[SPACE]へと向かった。

 

 

〈SPACE〉

 

「ようやく来たのかい」

「待たせてすみません、オーナー」

「良いさ、何かあったんだろ?」

「まぁな。もう少ししたら赤いランダムスターを持った女の子二人組が来る。チケットを安く売ってやって欲しい」

「ふん、アンタの頼みなら仕方ないね」

「ありがとう、ライブ観に行ってくる」

「CiRCLEには行かないのかい?」

「今日はグリグリを観に来たからな」

「そうかい」

 

CiRCLEに行くのは明日でいい。明日ならアイツの歌が聴けるから。

 

 

 

〈オーナーサイド〉

 

全く、いきなり変な頼みをしてきたもんだねぇ。

安くチケットを売ってやれ、か。

時代を担うような子でも来るのかねぇ。だとしたら……楽しみだ。

 

 

 

〈悠サイド〉

 

よかった、グリグリの演奏はまだ始まってないみたいだ。

 

熱意のある演奏を聴きながら安堵した。……もうすこしで来そうだな、香澄と有咲。

 

「有咲ー!凄い、人がいっぱい!」

「な、なんでこんなに居るんだ?有名なバンドじゃないらしいのに…」

 

……訂正。もう来ていたようだ。

 

「あ、始まるみたいだよ!」

 

 

グリグリの四人がステージに立った。

 

「SPACE!遊ぶ準備はできてますか!?」

 

きゃあああー!という歓声が沸き起こった。

 

「わ、あの人達、凄い人気だよ!」

「えーと、Glitter *Greenっていうバンドか」

 

「オーケー、いくよ!」

 

グリグリの演奏が始まる。

何度も聞いた曲でつい、口ずさんでしまうようなノリやすい曲。

ペンライトが鮮やかに光る。

 

「……!?!」

「うへぇ……!なんだよ、この盛り上がり……!」

「すごい!すごいね!」

「はあ?何?聞こえない!」

「すごい!!見つけた、キラキラドキドキできるもの……!!」

 

 

うんうん、良かった。求めていた何かを見つけることが出来たようだ。

……俺の目標は『世界を音楽で溢れさすこと』だ。

壮大すぎる目標だということはわかっている。

頭がおかしいと言わざるを得ない目標だということもわかっている。

だけど……見てみたい。音楽で繋がり合う世界を。音楽で語り合うことができる世界を。

ガールズバンドの人気は少しずつ高まってきている。それを爆発させるのは多分…香澄などの新生バンドマン達だろう。

 

 

……覚悟は決まった?

 

さあ、夢を打ち抜こう!

 

 

 

 




次回はCiRCLEが出ます。
Roseliaの話


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第6話「歌姫と狂犬とwith俺」

投稿が遅くなりすみませんでした!
バンドリ見たり、バンドリやったりしてたら遅くなりました。

今回は少し長いです



 

昨日のグリグリのライブはすごく盛り上がったな。今日はCiRCLEであの『孤高の歌姫』が出るらしい。聴きに行かないとな…。

 

昼休みになり、いつもと同じように自炊の弁当を食べる。

それなりに美味しかった。

食べ終わったが、休み時間はまだ時間が残っている。久しぶりに屋上に行こうかな?

 

教室を出たところで香澄に捕まった。有咲も連れてこられたようだ。

 

「あ、悠先輩!私、キラキラドキドキするもの見つけました!」

「良かったな、香澄」

「はい!じゃあ私、教室に戻ります!」

「じゃあな」

 

香澄は教室に戻っていった。……有咲を置いて。

いや、空気を読んだのか?案外、ああいうタイプの奴は周りを見ていることが多い。

 

そんなわけで今、目の前には少し戸惑っている有咲がいる。

 

「よう、久しぶり。有咲」

「ゆ、悠…だよな?」

「懐かしいよな…昔、色んな場所に一緒に星のシール貼ってたよな」

「うん…。あ、あのさ!」

「ん?どうした」

「あ、えっと…その…連絡先、交換しない?…い、嫌なら別にいいだけど!」

「嫌なわけないだろ。良いよ。」

「あ、ありがとう。……また後で連絡する!」

「あ、行っちゃった」

 

うーん。有咲はツンデレの素質をお持ちのようだ。…それに大きくなったなぁ。身長は俺と変わらないくらい大きくなって……。

 

え?

俺が小さいだけ?

……わかってるよ!そんなこんなことは!

昔は俺の方が大きかったんだ。(1センチの差)

身長が低い人にとっては1ミリですら大きな差であると俺は断言する!

 

いや、俺はほらあれだ。大器晩成型だからこれから背が伸びるんだよ(願望)。

 

あ、ヤバイ。昼休み終わる。

俺は急いで教室に戻ろうと思ったが、よくよく考えれてみれば教室を出た瞬間に香澄に捕まってずっと話していたので教室はすぐそこにある。

教室に戻って席に座ったところでチャイムが鳴った。

 

 

 

<放課後>

 

今日はCiRCLEに行く。誰かと一緒に行こうと思って誘ってみたが、紗夜は予定が入っているらしいし、燐子も友達とカフェに行くとか言ってるし、彩は……一応アイドルだし。

ということで一人で行くことになった。

 

 

 

 

 

〈CiRCLE〉

 

あれ?ちょっと人多くね?

いつもより人が多く感じる。みんな目的は同じなのだろう。

 

早く前の方に行かないと見えなくなる……!

急いで前の方に向かった俺は小さい体を利用して間をすり抜けながら目指すことでなんとか着くことが出来た。

こういうとき、小さいことが便利に思えてくる。

 

少し待っていると目当ての友希那が出てきた。

 

「「……友希那……!」」

 

『孤高の歌姫』、彼女が出てきた瞬間にスタジオの熱気が高まった。しかし、誰も騒がない。……彼女の歌を待ちわびているのだろう。俺もその一人だ。

 

「わ、わわわわわ!り、りんりん大丈夫!?死んじゃダメだよ!?」

 

ちょっと騒がしいなぁ。まぁ、大丈夫だろ。

 

「ーーー♪」

 

その刹那、スタジオは歌に引き込まれた。音が描く情景。色や香りになって観客達を包んでいく。

さっき騒いでいた人も友希那の歌声に圧倒され、静かに聴いている。

才能はもちろんあるがそれ以上に努力を感じる。決して挫折せず、ただひたすらに歌い続ける。クールなようで力強い歌声が全てを伝えてくる。

 

「来て良かった……!」

 

 

 

 

いつの間にかライブは終わり、他の観客達はもうかえっていた。

俺も帰らなきゃ…。

熱が未だに冷めない。

もし、もしだが…彼女がバンドを組めばどうなるのだろうか。

……多分、もっと凄いライブになる。

さて、帰るか。

 

「ちょっと待って」

「え?ゆ、じゃなくて湊さん…?」

「少し時間もらってもいいかしら」

「は、はい。大丈夫です」

「突然だけど…あなた、なにか演奏経験あるかしら?」

「あー、一応ギターとかピアノとかは弾けますけど……」

「そう…今度あなたの演奏を聴いてみたいわ」

「良いですけど…どうして俺に?」

「あなたが物足りなさそうにしていたからよ」

「俺が……」

 

確かに歌だけじゃもったいないとは思っていた……けど、普通は分からないものだろ。観察眼に優れているのか、それとも自信家なのか……あるいは両方か。

 

「……やっぱり今日じゃダメかしら?」

「へ?」

「楽器ならここで借りられるはずだわ」

「あ、そうですか……」

「さぁ、行きましょう」

「ええと……はい」

 

俺はしぶしぶ湊さんの後ろについていった。

 

 

 

……受付に戻ってきたんだけど、紗夜も居たんだな。

 

「まりなさん」

「あ、友希那ちゃん。どうしたの?」

「楽器を借りたいんですが……」

「良いよ。何を借りたい?」

「えっと……」

 

こちらを見てくる湊さん。

何にしようかなー。ギター?ベース?それともドラム……キーボードはピアノと鍵盤の数が違ったりするからやめとこう。

湊さんはボーカル、紗夜がギターなら……ドラムかな?

 

「それじゃあ、ドラムで」

「ドラムね。それならさっきまで使っていたのがまだセッティングされてるからそれ使って」

「わかりました。……さぁ、行くわよ」

 

湊さんの後ろをついていく俺と紗夜。さっきから紗夜の視線が痛い。無言の圧を感じる……。

 

 

 

中に入ると本当にドラムがセットされていた。……しかしギターアンプやマイクまで用意されているのは何故だろう?

アンプとミキサーを立ち上げ、ある程度で設定する。少しするだけだからエフェクターやイコライジングは弄らずにミキサーのフェーダーを0に合わせてマスターを上げる。PAさんがいるわけじゃないからそんな細かいことはしなくてもいいんだけど、癖でやってしまう。マイクの高さや角度は湊さんに任せよう。

 

「凄く手際が良いのね」

「ちょっとやったことがあるだけですよ」

「そうかしら……?」

 

セッティングが終わり、あらためてドラムを見る。……良かった、ツーバスじゃない。流石にツーバスは叩けないから。

 

「さぁ、準備はいい?」

「えぇ、いつでも」

「俺もいけますよ」

「……それじゃあ、いくわよ!」

 

演奏する曲は『革命デュアリズム』

……なんで俺も歌わないといけないんだよ、ドラムだぞ俺は。

まぁ、歌うけど。

 

 

ギターが一切ズレない完璧な音。頼もしいその音でリズムをとる。

引き込まれるような力強く美しい歌声。負けじと俺も二人に張り合う。

 

熱が上がっていく。

 

いつの間にか自分の…いや、俺たち三人の演奏に引き込まれていた。

 

湊さんを見るとふと目があった。

 

(あなた、やるわね!)

(そちらこそ、まだいけますよね?)

 

引き込まれていたのは俺だけじゃなかったようだ。

紗夜の方をみる。やはり目があった。

 

(勝つのは俺だ、紗夜)

(流石ですね……でも負けませんから!)

 

二人の考えていることが…感情が音になって伝わってくる。

ラストは思い切って速叩き。リズムもくそもない汚い音。……だが、今はこの音が心地よく聞こえる。

最後はギターと一緒に締める。

 

演奏が終わり、俺たちは顔を見合わせる。

そして同時に口を開く。

 

「最高だったわ」「やりきったな」「素晴らしい演奏でした」

 

………なんか締まらないなぁ。

 

 

 

 

〈自宅)

 

湊さんから下の名前で呼んで欲しいと言われ、友希那と呼ぶことになった。それとバンドに誘われたが断った。友希那はまだ諦めてないみたいだけど……。

 

紗夜は友希那のバンドに入るらしい。ストイック同士、惹かれあったんだろう。スタンド使いとかニュータイプみたいに。

 

 

今日のセッションで起こったあの感覚。音で通じ合ったあの感覚。

 

 

忘れないようにしよう……。

 

 

 

………疲れたから寝る!

 

 

 

 

 



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第7話「天災×天才」

遅くなり、すみません!




友希那と紗夜の2人と一緒に演奏した数日後。

 

 

〈学校の中庭〉

 

「あら?そこのあなた、いい笑顔ね!」

「へ?……あ、弦巻さん」

 

『花咲川の異空間』こと、弦巻こころに絡まれた。ちなみにこの二つ名(?)は俺が付けたんじゃないからな。……ホント誰が言い出したんだろ?

 

「私は弦巻こころよ!あなたは?」

「如月、如月悠。2年だ」

「年上なのね!あら?あなた、背が低いのね」

「お前もそんなに高くないだろ…」

「でも私の方が高いわよ?」

「そーだな……」

「そんなことよりも私、今笑顔になれることを探しているの。何か知らないかしら?」

「お前が好きなことよりすれば良いんじゃないか?」

「私だけじゃなくてみんなを…世界を笑顔にしたいの!」

「そ、そうか…」

「ええ!何をやって笑顔になっていたのかしら?」

「音楽…バンドで演奏して、笑顔になっていたんだと…思う」

「音楽…バンド…。そうね!教えてくれてありがとう!私、頑張るわ!」

「おう、またな」

「また会いましょう!」

 

なんか…やらかしたかもしれないな。それにしても「みんなを笑顔に」か。弦巻ならやれそうな気がしてならない。

 

この時、俺はとてつもない異色バンドが生まれるキッカケになってしまったことに気づくことはなかった。

 

 

 

〈放課後〉

 

「今日は真っ直ぐ帰ろうかな」

 

校門を出て家に帰ろうとしたが……。

 

「あ、悠くーん!一緒にゲーセン行こうよ!」

 

なんでもできる天才ちゃんに捕まってしまった。

逃げても直ぐに追いつかれるのは目に見えているから諦めて一緒にゲーセンに行くことにした。

 

「悠君ってさ、お姉ちゃんがギター弾いてることは知ってるよね?」

「まぁな、一緒に演奏もしたし」

「良いなー!……アタシさ、ギター始めるんだ」

「ギターを?」

「うん、お姉ちゃんと同じことがしたくて」

「今までもそうだったもんな」

「うん、でもお姉ちゃんはアタシが始めると直ぐに辞めちゃうんだ…。ねぇ、悠君」

「ん?」

「今度こそは大丈夫だよね?……一緒にできるよね?」

「多分な。紗夜ってさ…結構、負けず嫌いなんだよ。だから……」

「……うん」

 

なんだかゲーセンに行く気分じゃなくなった。それにしても日菜も少しずつ変わってきている。

 

「あはは、ゲーセンに行く気分じゃなくなっちゃった」

「じゃあ帰るか」

「うん」

 

それにしてもギターか。どうして急に?

 

「あ、悠君」

「何?」

「アタシ、アイドルになるんだ」

「へー、アイドルか」

 

アイドル、アイドルかー。……は?

 

「アイドル!?」

「うん、アイドル」

「…ギターは?」

「ギターもやるよ?」

「……アイドルバンド?」

「そうだよ!アイドルってるんってくるよね」

「そ、そうか」

 

アイドルバンドか……。あれ?千聖も最近アイドルバンドの話が来たって言ってたような…、彩も言ってたし。

まさかな……。

 

「悠君、じゃあねー!」

「あ、ああ。またな」

 

 

 

なんか最近、色々ありすぎじゃないか?

 

 

 



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第8話「やっぱりスマブラは大人数でやるべきだな」

ふっ、やっちまったZE☆
後悔はしてない!





 

今日は土曜日!つまり、学校が休みである。

 

「今日は何をして過ごそうかなー」

 

ゲームか練習スタジオに行くか、それとも誰かを誘ってどこかに行くか……。

 

「ん?『リネ』に巴からチャットが来てる」

 

えーと、なになに?

 

巴「今日暇か?」

悠「おう、一日中暇だ」

巴「ならさ、家に来ないか?あこも来て欲しいって言ってるんだ」

悠「OK、何時に行けばいい?」

巴「あこが「今から来て!」だって」

悠「わかった、んじゃ今、行く」

巴「昼飯はこっちで用意するからな」

悠「了解」

 

今日の予定が埋まってしまったな。さっさと着替えて行くか。

 

 

〈宇田川家〉

 

『ピンポーン』

 

「巴ー、俺だ」

「悠、今開ける」

 

玄関のドアが開いて、巴が出迎えてくれた。

 

「ごめんな、急に来てもらって」

「別に良いよ、暇だったし」

「そっか、なら良かった」

 

リビングに入るとあこが待っていた。

 

「我が眷属よ、我の召喚によくぞ応じた」

「誰が眷属だ」

「こら、あこ!」

「冗談だよー…。悠にぃ、いらっしゃい!」

「おう、あこ。元気にしてたか?」

「あこはちょー元気!」

「そうか、んで今日は何をするんだ?」

「えーとね、この前のリベンジ!」

「この前のってことは…スマブラか」

「あこはお姉ちゃんと特訓したから強くなってるよ?」

「強くなるのはあこだけだといつから勘違いしていた?」

「ま、まさか悠にぃ……!」

「そうだ、俺も特訓をして強くなっているのだ…!」

「あー、あこ?悠?その辺でストップな」

「えー?これからが良いとこなのにー」

「そうだぞ、巴。これからが良いとこなんだ」

「……悠がボケにまわるとツッコミきれない」

「悠にぃ、スマブラしよ?」

「じゃ、用意するか」

「アタシも後から入るから」

「わかった」

 

テレビに繋げてスマブラsp を起動する。

こうなることがわかっていたから家から自分のコントローラーを持ってきていた。

 

「あこはー、クラウド使うね」

「んじゃ俺はクロムな」

「ふっふーん。悠にぃのクロムなんてボコボコにするんだからね」

「へー、出来るかな?」

「むー」

 

あこ可愛い。

 

 

3、2、1、GO!

 

1対1の真剣勝負。

ルールはアイテムなし、ストック3の終点化。

 

「先手必勝だよ!」

「残念だったな」

 

クラウドが開幕ダッシュをしてきたから天空擬きでクラウドを切り上げる。

 

「あ!」

 

地面に落ちたクラウドをダッシュ攻撃。

そのまま走って空中前攻撃を当てる。

 

「ふ、復帰しなきゃ!」

 

クラウドが上Bで復帰してきたところをメテオ!

 

「嘘ー!」

 

クラウドのストックは1減った。

 

「ふっ」

 

画面の中のクロムにアピールをさせる。

『俺は負けん!』

 

「うー!ムカつくー!」

「まだまだこれからだ」

 

あこが操作するクラウドは少しずつ動きが大胆になってくる。

 

「当たれー!」

 

対する俺は避けまくる。

そしてクラウドをステージの端まで誘導する。

 

「あこ、ごめんな」

「はえ?」

 

『残念だったな!』

クロムの天空擬きに巻き込まれてクラウドは落ちていった。あー、もう天空で良いや。

 

「……」

 

クラウドが戻ってきた。

対する俺はノーダメージ。

あこは諦めたのかクラウドをステージから降りて自滅をしようとした。

 

「すまん、あこ」

 

ステージから降りていたクラウドにクロムの天空を当て、確定演出が出てクラウドは落ちていった。

 

『クロム!』

『俺の勝ちだ!』

 

「…………」

「あー、あこ?」

「……悠にぃ…?」

「お、おう」

「悔しいから次、勝つから」

「そ、そっか」

 

次にあこが選んだのは皆大好きガノンドロフだ。対する俺は格闘タイプのファイターだ。ちなみに技は

B→鉄球投げ

B上→かかと落とし

B横→熱血ドロップキック

B下→落下ヘッドバット

B上とB下にはメテオ判定がある。まぁ、天空と同じ感じに使えるということだ。

 

3、2、1、GO!

 

開幕からガノンドロフの魔人脚が飛んでくる。避ける。そのあと横スマを当てるとガノンドロフは少し飛ばされる。あとは鉄球を投げるだけ。あ、ガノンドロフ落ちた。

 

「……」

 

戻ってきたガノンドロフは今度はダッシュ攻撃や空中攻撃を仕掛けてくる…が大振りな攻撃は避けやすいから避ける。あ、ガノンドロフがステージからはみ出してる。

今だ!必殺、かかと落とし!

メテオが当たりガノンドロフが落ちていった。

 

「……」

 

ガノンドロフは戻ってきたがそのまま直ぐに自滅しに行った…がやっぱり最後は確定演出を出して終わらせたい俺の気持ちがガノンドロフに追い打ちを当てに行った。

B下、頭から落下していったファイターにガノンドロフは当たり、確定演出が出てガノンドロフは落ちていった。

 

『MY、BLOWER!』

猫スーツとクマの頭を被ったふざけた格好のやつがポーズを取っている。

 

「…………」

「あこ、やりすぎた。ごめん」

「…………」

「あこ!ホントごめん!」

「……つーん」

「……可愛いな」

「ほえ?」

「もー見てらんねぇ!アタシが相手だ!」

「巴……無理だろ?」

「なっ!それはそうだけど……!」

「お姉ちゃん……もういいよ」

「あ、あこ!」

「だって勝てそうにないもん…」

「っく!悠!お前なぁ!」

「まぁ、待て巴」

「いいや、待たない」

「悠にぃ…あこの特訓に付き合って!」

「わかった。あこをもっと強くしてやる」

「うん!りんりんに勝ちたいし」

「あー、燐子か…」

「悠にぃはりんりんに勝てるの?」

「勝率で言うと6割だから…一応は勝ってる」

「りんりん、そんなに強いんだね」

「ホントそれな」

「あれ?お姉ちゃんどうしたの?」

「あー、いや、なんでもないぞ。あはは…」

「…?変なお姉ちゃん」

「………ちょっと休んでくる」

「わかった」

 

結局、巴は部屋から出て来なかった。昼飯はあこが炒飯を食べたいと言ったので炒飯を作って食べた。美味しかった。

 

あこの特訓は昼からも続き、結果、俺が油断すると負けそうになるぐらいには強くなった。

 

 

「あこねー、ドラムやってるんだけど」

「けど?」

「友希那がバンドメンバー探してるって聞いたから頼みに行ったんだー」

「で、断られたのか」

「うん、2番目だと言っていた人に興味はないって言われたの……。お姉ちゃんが一番凄いドラマーだって思ってちゃダメなのかな?お姉ちゃんを目標にするはダメなのかな?」

「ダメなわけあるか」

「じゃあ、なんで友希那に断られたの!」

「あこはまだ友希那に演奏を聴いてもらってないだろ?」

「そうだよ」

「なら当たり前だ。あこのドラムで友希那にメンバーに入れたいと思わせたら良いんじゃないか?」

「そっか!ありがとう悠にぃ。あこ、頑張る!」

「おう」

 

あこの頭を撫でるとあこは嬉しそうに目を細めた。

 

「悠にぃ」

「ん?」

「あこ、悠にぃのこと好き」

「そっか、俺もあこが好きだぞ」

「悠にぃ…えへへ」

 

巴が過保護になる理由もわかる。あこは可愛い。妹にしたい。

と、もうこんな時間か。

 

「ごめんな、あこ。俺もう帰らないと」

「もうそんな時間なんだ、悠にぃ、また遊ぼ」

「おう、またな」

 

 

宇田川家を出て家に帰った。

いつの間にあこが友希那と会ってたんだろ?あこが会ったということは燐子もかな?案外、友希那にはカリスマ性でもあるのかもしれないな。皆、引き寄せられるかのように集まっていく。もしかしたら香澄や弦巻こころにもあるかもしれない……考えすぎかな?

 

 

まぁ、明日は日曜日だし、ゆっくり過ごすかー。

 

 




不快にさせてしまっていたらごめんなさい。


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第9話「ランダムスター、絆ツナグ」

このペースだといつ書き終わることやら……。

香澄、有咲回です!

初期段階の有咲、書きづらいです……。


今日は日曜日。今日も休みだ!イェーイ!

……テンション上げるのしんどいなぁ。

 

「あれ?また『リネ』にチャットが来てる」

 

えーと、香澄からみたいだ。

 

香澄「悠先輩!今日お暇ですか?」

悠「予定は特にないけど…」

香澄「じゃあ、今から有咲の家の蔵に来て欲しいです!」

悠「急だな、わかった。今から行く」

香澄「ありがとうございますー!」

 

蔵か。……あれ?なんで香澄が有咲の家の蔵に居るんだ?

まぁいいか。とりあえず着替えてから行こうか。

 

 

 

〈市ヶ谷家の蔵〉

 

「有咲ー、香澄ー、今来たぞー」

 

蔵の扉を開けると香澄と有咲が居たが、香澄が有咲を押し倒していた……。

 

「すまん、出直すわ」

「ちょ、待て!悠!」

「待てって言われてもなぁ」

「じゃあ、香澄を止めてくれ!」

「あー、はいはい」

 

香澄を立ち上がらせて有咲から少し離す。

 

「もう、悠せんぱーい。私に襲われたいんですか?」

「は!?」

「冗談ですよー。………今はですけど」

「なにそれ怖い」

 

香澄が冗談でもそんなことを言うとは思っていなかったから凄く驚いた。

 

「悠!助かった、ありがとう!」

「有咲!待て、抱きつくなー!」

 

有咲が起き上がって俺に抱きついてきた。恥ずかしいし、目の前に香澄だっている…し…。

 

「あー!有咲ずるい!私もくっつくー!」

「マジで待てよ!」

 

香澄にも抱きつかれてしまった…。こんなところを誰かに見られたらどうしよう。でも蔵だから誰も来ないはず……。

 

「有咲、香澄ちゃん。お昼ご飯だよ。……おやまぁ、悠ちゃんいらっしゃい、お昼ご飯食べるかい?」

「あ、頂きます」

「もう少しゆっくりしてていいからねぇ」

「あ、はい」

 

この状況につっこまないなんて有咲ばあちゃん、恐ろしい人……!

 

 

 

なんだかんだで何とか脱出することが出来た。俺は逃げるように……ようにじゃなくて本当に逃げてるんだけどな。昼ご飯を食べるために家に入った。

もちろん、香澄と有咲は後ろから追いかけて来てますけど?

 

「悠せんぱーい、ご飯は逃げませんってばー」

「悠!さっきのこと他の人に言うなよー!」

「香澄、そうじゃないし!有咲、他の人に言ったら俺も恥ずかしいわ!」

 

居間に入ると既にご飯が用意されていた。

 

「皆、元気が良くていいねぇ。白ごはんは多めかい?」

「あ、はい」

「私もお願いします!」

「ばーちゃん、私は普通でいいから」

「はいはい」

 

全員分のごはんが行き届いたところで有咲のおばあちゃんが音頭を取る。

 

「はい、それじゃあ皆、手を合わせて」

「「「「頂きます」」」」

 

あ、美味しい。どれも美味しいけど、特に卵焼きが凄く美味しい。やっぱり自分で作ったものを食べるより誰かに作ってもらった方が美味しく感じるなぁ。

夢中になって食べていたからか、気がつくといつの間にか全部食べ終えていた。有咲や香澄も食べ終わったようだ…。あれ?おばあちゃんも食べ終わってるんだけど…。

 

「食べ終わったね?手を合わせて」

「「「「ごちそうさまでした」」」」

「片付けはこっちでしておくから有咲たちは蔵の片付けしてきな」

「ありがとう、ばーちゃん」

「いってきまーす」

 

 

昼ご飯を食べてお腹を満たした俺たち三人は午前中と違って打って変わり真面目に片付けをした。有咲の言う通りガラクタがほとんどだな。……使えそうなのもいくつかあるけど。

 

「あ、悠。それはあっちな」

「おう、わかった」

「有咲ー、これは?」

「どっからどう見てもガラクタだろ……。あっちな」

「わかった!」

 

ところどころ有咲に指示をしてもらったりしながら片付けていく。

 

「ちょ、これ重!」

「ったく、有咲、無理すんな」

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 

「あー悠先輩、これ重いですー」

「嘘つくな。お前は中身の入ってないダンボールが重く感じんのかよ?」

「あ、……えへへー」

「はぁ……」

 

色々あったが無事に片付けは終わった。香澄が端の方に置いてある星のシールが貼ってあるケースを持ち上げようとした。

 

おい、ちょっと待てよ?

あのケース壊れてやがる…!

 

香澄が持ち上げた次の瞬間ケースが落ちる。

 

「あ!?」

「間に合え!!」

 

思いっきり飛び込んでケースの下に体を滑り込ませる。良かった…間に合った。

 

「悠!大丈夫か!?」

「まぁな、見ろ。ギターも無事だ」

「悠せんぱーい、ありがとゔございまずー」

「あーもう。俺もケガしてねーし、ギターも無事だから泣くなよ」

「でも、ケースが…」

「ケースなら新しいのを買えばいいだろ?」

「はい……」

 

俺たちの会話を聞きながら有咲はジッとギターと香澄を見ている。そして小さく頷き、よし…、と言って香澄に話しかけた。

 

「香澄……ギター弾きたいんだったよな?」

「…有咲?」

「そのギターやるよ」

「え?でもオークションはどうするの?」

「もうキャンセルした、ほら」

「ホントだ…。でも私は……」

「そのギター大事に使ってくれ。それが償いになるからな」

「有咲…!本当にいいの?」

「おう、それと…その、明日からちゃんと学校に行こうと思ってんだ」

「じゃあ、明日から一緒に行こうよ!」

「え!?…まぁ、良いけどよ。そ、れ、と、昼ご飯…ずっと私と一緒に食べること!」

「当たり前じゃん!有咲は友達だもん!」

「お、おう…」

「えへへ…」

「…………」

 

なんか俺、空気になった気分。それにしても有咲も成長したなぁ……。昔からツンデレだったから勘違いされたりしてたのに。

 

「悠先輩もありがとうございました!」

「別に当たり前のことをしただけだし」

「あ、そうだ!今からギターケース買いに行きません?」

「確かに…よし、行くか」

「おう、二人とも行ってらっしゃい」

「あれ、有咲は来ないの?」

「まだやりたいことが残ってんだよ」

「そっか…有咲、明日の朝迎えに来るから!」

「うん、待ってる、また明日な」

「うん、また明日!」

 

香澄は先に蔵を出て行った。まったく、余計な気をきかせなくてもいいのに…。

 

「有咲」

「どうした?悠」

「ピアノ…また弾くつもりなのか?」

「……まぁ、な」

「どうしてまた急に?」

「昨日までの私なら弾こうとも思わなかった…でも、香澄を見ていると昔の私や悠みたいに見えてさ…。見守りたいし、近くで応援したい。もし、香澄がバンドを組むつもりなら私は香澄のバンドに入る」

「そっか…。あんなに小さかった有咲がこんなに立派になって……!」

「うっせー!大体、昔も今も私と身長変わんねーだろ!」

「それを言われたら反論できねーだろうが!」

「昔から小さくて可愛いねぇ、悠ちゃん」

「な!それをいうなら有咲だって昔から可愛かっただろ!?」

「ちょ!ま、待って!……ちょー恥ずかしいんだけど」

「あ、悪い。……あ、香澄のこと忘れてた」

「は?え?早く行ってこい!何が起きるかわかんねーぞ!」

「悠せんぱーい!早くー!」

「……だって」

「はいはい、んじゃまたな」

「おう、またな」

 

蔵を出て香澄と合流した。

 

「先輩ー。有咲と何話してたんですかー?」

「ん、別に?」

「気になるじゃないですかー」

「なんでもねぇよ。…香澄」

「はい?」

「有咲を頼んだぞ」

「はい!……ところで有咲と何話してたんですかー?」

「だーかーらー、言わねーからな!」

「えー?」

「……。」

 

江戸川楽器店にてギターケースを購入。なんか物凄いキャラが濃い人に絡まれたりしたが、なんとか帰宅することができた。

 

明日からまた学校かー。まぁ、昼休みに中庭に居るであろう有咲をみてからかってやろうかな。どうせ、お淑やかを勘違いしてオホホとか、ございませんわとか、お嬢様言葉を使ってそうだし。




星9、コルゴムと乾巧の仕業 様
星10、甲斐隆貴 様

少々遅れましたが、高評価ありがとうございます!


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第10話「キラ星とお嬢様擬きとパン屋の娘とチョココロネ」

お待たせしました!第10話です!

ポピパ回!


〈花咲川高校 校門前〉

 

今日は週はじめの月曜日。少し憂鬱になりながらも登校していたのだが……。

 

「ふふふーん♪」

「……はぁ」

 

なんで香澄はギターを弾きながら登校してんの!?バカだろ!

 

「あ、悠せんぱーい!おっはようございまーす!」

「ちょ、バカ。声デケェよ」

「え?そうかなー」

 

元気過ぎんだろ……あ、紗夜がいる。いや待って、なんでこっち睨んでるんだ。

 

「あなた、ちょっと良いかしら」

「私ですか?」

「ええ、そのギターは少し預からせていただきます。ギターを弾きながら登校するなんて言語道断です」

「はい…すみませんでした」

「放課後に取りに来るように……それと明日からケースに入れてきなさい。それならば没収はしませんから」

「はい!ありがとうございます!」

 

怒るだけじゃないのが紗夜の良いところだな。いや、こっち見んなし。

 

「悠君、おはようございます」

「あ、ああ。おはよう、紗夜」

「また、あなたは女の子の知り合いを増やしたのかしら」

「えっと……はい」

「まったく…。もう少し節度を持ってください」

「うっ、ごめん」

「それではまた教室で」

「おう、頑張れよ」

 

風紀の鬼、氷川紗夜からお小言をいただいた俺は教室に入り、いつものように過ごした。

 

 

 

〈昼休み〉

 

午前の授業が終わり、昼休みになった。香澄たちは中庭で昼ご飯を食べるって言ってたな。……有咲をからかいに行ってこよう。

そう思い、中庭に移動していたのだが途中の渡り廊下でなにやら中庭を羨ましそうに眺めている女の子がいた。

 

「花、何見てんの?」

「あ、悠。香澄たちがなんか昔の私たちみたいに見えたんだー」

「あそこまで騒いではなかったけどな」

「そうだっけ?……レイ、元気かな」

「元気に決まってるさ、それにまた会おうって約束してるしな」

「うん、まだ覚えてる。『私たちは音楽で繋がっている、また会ったときは約束の歌を歌おう』だったよね?」

「………それだけじゃなかったけどな」

「え?何、聞こえなかった」

「なんでもねぇよ」

 

昔した約束のもう一つ。

 

『この三人でバンドを組んでデビューする』

 

何気なく交わした約束。花も忘れてしまっているこの約束。

思い出させることは簡単だけど……。今の花にはこの約束は足枷になってしまうかもしれない。なら、無理に思い出させる必要はないはず…。ないはずなんだ……。

 

「悠?」

「え?あ、ごめん。ボーっとしてた」

「そう?あ、お昼まだだった」

「だろうな。じゃ、またな」

「うん、はやくハンバーグ食べないと…!」

 

相変わらずハンバーグが好きなんだな、花は。なんか俺だけ取り残されていってる気がする。……ダメだな、こんなんじゃ。よし!有咲をからかいに行くぞー!

 

 

〈中庭〉

 

「よう、有咲!」

「あ、え!ゆ、悠!…さんじゃないですか?どういったご用件でしょう?」

「ぷっ、くくく……いや、ちょっと見かけたもんでね」

「あら、そうでしたの。おほほ」

 

やべー。めっちゃ面白い!有咲に似合わないな丁寧な言葉は。それに「おほほ」って……現実で聞くとは思ってなかったぞ、その笑い方。

あら?そういえば、俺の知らない子が二人もいる。

 

「どーも、初めまして。有咲と香澄の友達の2年の!如月悠です。よろしくな」

「わ、わたしは牛込りみです…」

「あ、私は山吹沙綾です。よろしくお願いします、先輩」

「牛込に山吹、な」

「あ、あの、わたしのお姉ちゃんが三年生にいるからわたしのことはりみでいいです…」

「じゃあ、私も山吹って言いづらいと思うので沙綾って呼んでください」

「わかった。りみ、沙綾」

 

そのあともご飯を食べながら軽い自己紹介をして昼休みを過ごした。連絡先も交換した。山吹ベーカリーというパン屋さんとそのお店のチョココロネをオススメされた。

……たしかモカにも山吹ベーカリーをオススメされてたような?

 

今度行ってみるか。

 




星9、プロスペシャル 様
高評価ありがとうございます!

アンケの投票もお待ちしてます!
締め切りは4月21日までです。


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第11話「イレギュラー発生ス」

お気に入り件数100到達!
皆さん、読んでくださってありがとうございます!

今回は意外なキャラたちが出ますよ?


〈放課後〉

 

今日は久しぶりにギター弾きに行こうかな。場所は……CiRCLEでいっか。

ギターケースを背負い、CiRCLEへと向かった。

 

 

〈CiRCLE〉

 

ん?今日は人が多く入っている。

ライブやってんのかな。

 

受付に行くと見慣れた人、月島まりなさんがいた。

 

「あ、まりなさん。こんにちは」

「悠君じゃん!どうしたの?まさかライブに来たとか!?」

「ちょっとギターを弾こうかと思っただけです。ライブはしません」

「えー。じゃあさ、最近ギターが抜けちゃったバンドが今日ライブに出るんだけど」

「……ギターが居ないのにライブに出ようとしてるんですか」

「まぁ、彼女たちがしたいって言うからね。そこでギターのサポートとして臨時で入って欲しいんだよ」

「別にいいんですけど、大丈夫なんですか?」

「大丈夫、大丈夫。その辺はオーナーから任せられているから」

「わかりました。……終わったらコーヒー1杯奢って下さいよ?」

「うん、1杯でも2杯でも、なんなら10杯だって」

「そんなに飲めるわけないじゃないですか……」

 

なんだかんだあってギターのサポートとしてライブに出ることなった。

 

 

えっと、まりなさんが言ってたバンドは……あ、居た……。うん、なんかバンドって青春だよねー、とか言ってそうな集まりだな。でも練習やライブはそこそここなしているみたいだし、やる気次第では……。

とりあえず、今日やる分は教えてもらわないと。

 

「こんにちは、今日のギターのサポートで入ります。如月悠です、よろしく」

「あなたがギターのサポートね?私がこのバンドのリーダーよ。ごめんね、急に入ってもらって」

「いえ、俺も丁度ギターを弾きたかったので……」

「そう?ちょっとトラブルでギターが抜けちゃったんだ。青春ごっこがしたいならカラオケにでも行きなさい、って言われたんだよね」

「……まぁ、それはそうですねー」

「は?」

「全てを賭けてやっている人から見たらそう思うのでは?」

「でも、私たちは遊びのつもりなんてない!」

「だったら見返してやればいいじゃないですか?」

「わかってるわよ。…全力でやるから足を引っ張らないでよ!」

「サポートミュージシャンを舐めないでくださいよ。そっちこそ足引っ張らないように」

「二人とも、私たちの全力を越えよう!」

「「了解!」」

 

 

 

〈ライブ本番〉

 

「続いてのバンドは『THE IRREGULAR』です」

 

観客たちの反応はまちまちだ。ギターが抜けたはずのバンドが出場するからだろう。

 

「久しぶりです、皆さん。ギター担当は変わりましたが全力で演奏してみせます」

 

会場が少し湧き、歓声が少し聞こえる。

 

「聴いて下さい、『COLORS』」

 

会場が一気に静まりかえる。メンバー同士で目を合わせて合図を送る。

 

 

妹を守るために世界に立ち向かった主人公をアニメのop。

変わろうとしている彼女たちにはピッタリの歌だ。彼女たちの気持ちが演奏に乗り、観客へと伝わっていく。

 

 

 

ボーカルが歌い終わり、演奏も終わった。

しばらくすると歓声と拍手が送られた。…けど、まだ終わりじゃない。

 

「もう一曲やります。私たちのオリジナル曲、『True Heart』」

 

これはさっき渡されたばかりの楽曲。彼女たちの気持ちを込めて作った歌。

 

『真実の心』

 

彼女たちの本当の気持ちが歌詞に書かれている。

 

「私たちがもーとめたもの、それは青春ー」

 

「だけど気づかさーれた、本当にやりたいーこと」

 

「あなたが教えてくれた」

 

「私たちのやりたいこと」

 

「隠されていた私たちのー」

 

「「「きーもーちー」」」

 

「中途半端じゃ止まらない」

 

「未完成じゃ終わらない」

 

「悔しくて辞めたくない」

 

「「「続けたい気持ち」」」

 

「いつか見返せる日を夢見て」

 

「いつか後悔させてやるため」

 

「だけどそれだけじゃない」

 

「「「変わっていく、それが私ーたちー」

 

 

歌と演奏が止まる。

静けさが会場を支配する。

時が止まったような、凍り付いた世界になったような感覚を感じる。

誰かが拍手をした。

凍り付いた世界は動き出した。

大勢の歓声が、拍手が、俺たちを、会場を覆う。

鳴り止まない歓声の中、俺たちはステージを後にした。

 

 

〈楽屋裏〉

 

「……大成功でしょ」

「…全力、越えたね」

「…私たちもやれるもんだね」

 

楽屋裏に戻ったがまだ彼女たちは興奮が冷めないようだ。

……まぁ、俺も楽しかったし。

 

「ねぇ、如月…だっけ?」

「そうだけど…」

「ちょっと話、聞いてくれる?」

「別にいいよ」

「ありがと。…ギターが抜けちゃったって言ったじゃんか。知ってるかもしれないけど、氷川紗夜ってギタリストなんだけど」

「………」

「ちょっと色々あって『青春ごっこならカラオケにでも行ってしなさい』、そう言われたんだよねー。私、悔しかった。私は遊びのつもりなんてなかったのに否定されて……。だからアイツが居なくても出来るところを見せようとしたんだ」

「…そうだったのか」

「あんたが…如月が煽ってくれなかったらあんな演奏は出来なかったかもね」

「それは違うんじゃないか?お前たち三人が全力を越えようとしたから出来たんじゃない?」

「かもね…。如月さえ良ければこれからも私たちのバンドでギターを弾いて欲しい…」

「良いよー」

「本当に?」

「本当に」

「ありがと!…あ、そういえば自己紹介まだだったね。私はボーカル担当、倉持 早苗(くらもち さなえ)だよ。あれがベース担当の佐川 理奈(さがわ りな)。これがドラム担当の二瀬 美乃梨(ふたせ みのり)ね」

「「私たちの扱いが雑過ぎでしょーが」」

「私たち三人とも羽丘で高2だよ」

「あ、じゃあ同い年だ」

「「「えっ…?」」」

「……どこを見て判断してた」

「「「そりゃ、身長」」」

「うっせ、ほっとけ」

「……どんまい」

「……なるようになるよ、多分…」

「……寧ろ個性だと思うよ…?」

「あー!もう、うぜーよ!俺、帰る!」

 

 

なんだかんだで打ち解け、連絡先も交換した。

……紗夜にバレたらえらいことになるぞ……!

え?フラグだって?

何言ってんだよ、そんなもんあるわけねぇよ。

 

 

 

次の日、普通に紗夜にバレて怒られた。

 

 

いやぁ、フラグって怖いね!

 

 




星10、完全無欠のボトル野郎 様
病み美少女の操り人形 様

星9、 ティアナ000782 様

高評価ありがとうございます!
アンケートを締め切ります。御協力ありがとうございました!

また、お気に入り件数が100に到達したので、記念ストーリーを考えています。
書いて欲しいなと思う話やこういうものが読みたいなど、過去話を書いてくれでもかまいません。御協力お願いします!


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第12話「コーヒーは奥が深い」


ごちうさコラボと聞いてやってしまった……!

浅はかな知識しかない…。


 

『THE IRREGULAR』でのライブがあった次の日、紗夜に少し怒られた今日この頃。

いつもと同じように日中を過ごし、放課後になった。

 

「よし、今日は自分でコーヒーを淹れようかな」

 

普段は休日にしかやらないが今回はライブがあったからそのご褒美として淹れる。

初めてばかりの頃は四苦八苦していたが今はある程度慣れたため、不味いというのは無いと言い切れる。豆が切れているから羽沢珈琲店に貰いに行こっかな。

 

 

〈羽沢珈琲店〉

 

中に入るとコーヒーの香りが漂っている。少しリラックスできるような、はたまた興奮するような不思議な感じ。

 

「やぁ、いらっしゃい悠君。今日はどの豆だい?」

「あ、マスター。……あれ?なんで豆を貰いに来たと?」

「だって店で飲むときは女の子たちと一緒じゃないか」

「……そうでしたね」

「あー、刺されないようにね?」

「肝に免じておきます。ところで豆は今、何があります?」

「いまはこの辺りだね」

 

そう言ってマスター(つぐのお父さん)は豆を何種類か出してくれた。

 

キリマンジャロとコロンビア、マンデリンにブルーマウンテンか……。

 

キリマンジャロは酸味が強め。

コロンビアは少し酸味があって甘味がある。

マンデリンは独特の香りと苦味が特徴。

ブルーマウンテンはコーヒーの王様と呼ばれるほど美味しいが、やはりお高い。

 

ブレンドをしようにもそれぞれマッチしそうにもないのでストレートにしよう。

 

いろいろ悩んだ結果……。

 

「…マンデリンでお願いします」

「お、マンデリンかー。何グラム欲しいかい?」

「50……あ、いや100グラムで」

「100グラムか。…もしかして水出しもするのかい?」

「はい、50をドリップで50を水出しでやろうかと思いまして」

「良いね。誰かにご馳走するつもりか?」

「一応はそのつもりですよ」

「流石、私の後継者だ」

「いや!違いますからね!?」

「しかし、うちの娘と結婚するだろう?」

「そんな話聞いたことないですよ!?」

「そうか、残念だな…。しかし、悠君。君なら大歓迎だ」

「は、ははは……。はぁ…」

「大分話し込んでしまったね。はい、マンデリン100グラムだよ。また来なさい」

「ありがとうございます。…つぐみが頑張りすぎないように見てもらえませんか?」

「わかっているさ。バイトを雇うつもりだ。出来ればつぐみと歳が近い子をね」

「何かあればヘルプで入りますよ」

「ははは、心強いなぁ。私も気をつけるつもりだが、悠君。つぐみを頼んだよ」

「もちろんです。俺だけじゃなくて蘭やモカ、ひまりや巴も……皆で支え合います」

「良い心がけだ」

「はい、じゃあ帰りますね」

「気をつけて帰りなさい」

「ありがとうございます」

 

 

豆を手に入れた俺は自宅へと帰った。

 

 

〈自宅〉

 

ドリップと水出しで淹れよう。ドリップは大体の人がわかっていると思うが水出しはわからない人もいるだろう。

水出しコーヒーとは名前通り、水を使ってコーヒーを作る。豆を挽いてサーバーなどの容器に50グラム入れ、そこに1リットルの水を入れる。30秒間、ゆっくりスプーンや棒でかき混ぜたらあとは10分〜1時間、冷蔵庫に置いておくだけ。時間が経てばドリッパーを用意し、そこに流し込み抽出する。そして完成!

麦茶のような透明感のある茶色に近い色。コーヒーの微か香り。そしてコーヒーなのにお茶のように飲めるというのが特徴。コーヒーやブラックが飲めない人でもこれなら飲めると思う。

つまり、この水出しコーヒーは友希那に飲ませるためのものだ。流石の友希那でもお茶は苦くて飲めないわ、とは言わないだろう……言わないよな…?

 

そしてドリップは全て手動だ。よく高校生がやることじゃないとか言われるが初めから手動で落としてるからあまり難しく感じないけどな。

 

コーヒーについて語り始めると止まらなくなるのでいろいろとカットする。

 

ドリップ、美味しかった。

水出しコーヒー、飲みやすかった。

 

以上!

 

と言いたいところだが次の日、友希那に水出しコーヒーを飲んでもらったら「美味しい、美味しいわ…!」と言って喜んでくれたのは良かったんだが…。何を思ったのか普通のブラックコーヒーを飲んで涙目になっていた。「…苦いわ。どうしてかしら……?」と言っていて凄くギャップがあって可愛かった!

 

もう一度。

 

友希那は可愛い!

 





コーヒーは自分で淹れてますがやっぱり味の調節が難しいですね…。フレンチプレスや水出しの場合はあまり気にしなくていいんですけどね…。

話は変わりますが、少し前にしたアンケートの結果、各話にタイトルを付けることになりました!これからもよろしくお願いします!


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第13話「Roselia結成」


GW10連休も終わりに差し掛かりましたね。
皆さまはどうお過ごしでしょうか?
私は……もうどう過ごせばいいのかわかりません(笑)


ようやくRoseliaが結成します!


 

ある日の学校の昼休みのことである。唐突に友希那からチャットアプリで「バンドメンバーが揃ったから演奏を聴いて欲しい」と、連絡があり、さらに紗夜からも直接言われ、CiRCLEに行くことになった。

 

 

〈CiRCLE〉

「いらっしゃい……あれ?悠君じゃない。それに昨日の……」

「あー、なんか演奏を聴いて欲しいらしくて」

「そうなんだ。じゃあ、はい。鍵」

「ありがとうございます。さあ、行くわよ、みんな」

 

いつの間にか集まっていた4人、紗夜、燐子、あこ、茶髪っぽいギャル(?)の女の子、+俺は友希那の後についていった。

 

 

全員が部屋に入ると軽い自己紹介が始まった。

 

「あー、アタシは今井リサ。友希那の幼馴染でベースやってます。リサって呼んでね?」

 

茶髪っぽい女の子はリサというらしい。

 

「知っているとは思いますが、一応言っておきます。湊さんがボーカル、白金さんがキーボード、宇田川さんはドラム、先程言ったように今井さんはベース、そして私はギターです」

 

紗夜がひと通りの各パートを教えてくれた。なるほどバンドを組むにはメジャーな楽器だな。

 

「そして私たち5人のバンド名は『Roselia』よ」

「どうして『Roselia』なんだ?」

「薔薇はrose、椿はCamellia。その二つから取って『Roselia』よ。イメージは青薔薇よ」

「たしか、花言葉は……」

「ええ、『不可能を成し遂げる』。私たちは必ずFUTURE WORLD FES.に出場してみせるわ」

「そう…。無理し過ぎないようにな」

「いえ、私たち『Roselia』に妥協は許さないわ。少しでも…違うわね。極限まで技術を向上すべきだわ」

「ミュージシャンにとって喉や腕、手や指。身体の全てが消耗品なんだ。演奏出来なくなってからじゃ遅いんだ……!」

「っ!それでも私は…!」

「……わかった。それほどの覚悟があるんだろう。ただし一つだけ覚えておけ。…『Roselia』は友希那1人だけのものではない」

「?…よくわからないわ」

「今は別に気にしなくてもいいよ」

「……わかったわ」

 

友希那と紗夜はストイックだからほかの3人がついていけるか不安ではあるけど……ライブも一度しているみたいだし、今のところは大丈夫かな。

 

「今日来てもらったのは私たちの演奏を聴かせたいと思ったからよ。報告が少し遅れてしまったけれど……」

「じっくり聴かせてもらうよ、5人の音を」

 

さっきから友希那しか喋らないけど……大丈夫か?紗夜はずっと考え事をしているみたいだし、今井……リサはなんかこっちを見てなんか呟いているし、燐子は驚いて目を白黒させているし、あこは目を輝かせているし……。

 

 

「じゃあ、いくわよ。『BLACK SHOUT』」

 

演奏が始まると同時に今まで感じていた不安は消え去った。始まった瞬間に全体の雰囲気が変わったからだ。

『BLACK SHOUT』…黒き叫び、いや……歌詞や友希那のことを考えると『黒き咆哮』というべきかな。

 

不条理を壊し、邪魔するものを振り落とし、甘えを捨てて、覚悟で踏み出す。全ては自分の信じる道の為に……。

 

友希那の信じる道がなんなのかは俺は知らない。けれど、友希那のしたいことは多分わかる。それは…復讐に近いナニカ。

そんな想いが込められた演奏は力強いがどこか危うく、脆いが故に儚く、美しい…。

 

 

「……う。…ゆう。悠!」

「あ、え?ああ、なんでもない」

「…?」

 

いつの間にか演奏は終わっていたようだ。それに気付かないほど引き込まれていたようだ。

 

「凄い演奏だった。演奏技術も高いし、独特の雰囲気というか…緊張感がある演奏だった。……まるで薔薇のような」

「そうかしら…?でもまだ足りないわ。フェスに出るにはもっと技術レベルを上げないと…!」

「そうですね湊さん。…練習あるのみです」

「あこももっと上手に叩きたい!」

「わ、わたしも……皆さんに…負けないように…頑張らないと……!」

「あははー。アタシが一番ヘタだからねー。……もう逃げたりしないから」

 

友希那や紗夜は言わずともストイックだとわかるけど、リサやあこ、燐子も割とストイックなんだなと思った。

バンドを組んでる身としては凄い強敵だけど…俺、個人としては新しいバンドが増えて嬉しい思いだ。

 

「もうこんな時間なのね…。楽しい時間はあっという間ね」

「そうだな。じゃあ、片付けて帰るか」

 

機材やケーブルなどを片付けているとリサに声を掛けられた。

 

「えーと、悠…だっけ?」

「どうしたんだ、リサ」

「あー……。ちょっと話があるんだけど…後で良い?」

「え?別に良いよ」

 

片付けは終わり、帰る支度をしてCiRCLEを出る。リサから話があると聞いていたから皆と別れ、近くの公園に行った。

 

 

〈公園〉

 

俺とリサはベンチに座った。しばらく無言の間があったがしばらくすると、ぽつりぽつりと喋り始めた。

 

「……アタシね、ちょっと前までベース弾いてたんだ。友希那と一緒にライブに出たりとかしてさー…。でも、ときが経つにつれて友希那が求めるレベルは高くなっていって…。アタシは置いてかれないように精一杯頑張った。友希那の近くにいる為に、寄り添う為に…。でも、アタシはついていくことが出来なくなった。結局、ベースやめちゃったんたよね」

「そう、か」

「逃げたの!アタシは友希那から逃げたんだよ!だから、アタシは……!」

「リサは逃げてなんかいないよ」

「そんなことない!逃げたの!」

「逃げてねぇ!」

「っ!」

「リサなりに友希那に寄り添う為に頑張ってたんだろ?リサはちゃんと友希那に向き合おうとしてるし、今度は諦めなければ良い」

「……ありがと。なんか恥ずかしいなぁ。結局、悠に助けてもらったんだね…」

「そんなことないし」

「それに…友希那も。キミと出会ってから友希那はまた笑うようになったんだよね。それに楽しそうに歌ったりするし……。だから、ありがと」

「……別に気にしなくていいし」

「ふーん……もしかして悠ってツンデレ?」

「ちげーし。それに自分じゃわからないから、そういうの」

「それもそっかぁ。……そろそろ帰らないと怒られちゃう」

「そうだな。じゃあ頑張れよ、リサ姉♪」

「ちょ!?」

 

別れ際に少しからかってからいえに帰った。

 

あれ?そういえば、友希那は『不可能を可能にする』って言ってたけど……フェスに出ることを心の何処かでは不可能と考えているのかなぁ?

友希那に限ってそんなことは考えそうにもないだろうから大丈夫だな!

 





そういえば…ドリフェスどうしよう?


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『THE IRREGULAR』オリキャラたちの設定


長々と待たせてしまい、すみませんでした!

まだ、本編が書き終わっていないので先にオリキャラたちの設定を上げます。


今更ながらになりますが、第11話より登場しました『THE IRREGULAR』、オリキャラたちの設定です。

 

*オリキャラたちの設定

 

『THE IRREGULAR』

・バンドリで紗夜がギターを担当していたバンドグループ。紗夜に言われた言葉で初心に戻る。自分たちの音や想いを伝えるために今日も音を奏でる。

 

 

・ボーカル:倉持 早苗

…このバンドのリーダーであり、まとめ役。肺活量が凄く、吹奏楽部にスカウトされるほど。

容姿は黒に近い茶髪で身長164cm。顔は可愛いより美人よりでバストサイズはC。

性格はやや天然で笑いの沸点が低く、すぐ笑う。しかし、割と努力家で主人公と同じくギター、ベース、ドラム、キーボードが弾け、友希那や紗夜に劣らずストイックである……はず。

好きな食べ物→唐揚げ

嫌いな食べ物→魚

 

 

・ギター:如月 悠

…本作の主人公。一通りなんでもこなす感覚派。日々、高みを目指して努力を続けている。ギター、ベース、ドラム、キーボードは弾けるが、それ以外の楽器はあまり出来ない。なお、詳しい設定は設定&第1話を見て下さい。

 

 

・ベース:佐川 理奈

…クール系美少女に見えるだけのノリの良い性格。ギターも弾くことができ、演奏技術もそれなりに高い。ゲームが好きでかなりのゲーマー。勉強が苦手。

容姿は黒髪ロングのストレート。身長167cm、Bカップ。

好きな食べ物→野菜全般

嫌いな食べ物→ジャンクフード

 

 

・ドラム:二瀬 美乃梨

…可愛い系で元気が取り柄。サイドアップポニーテールで緑髪。身長158cm、Dカップ。自称「天才のドラマー」と言っているが実際のところは秀才止まりのドラマー。自信家のようにみえるが、実は逆で自信がないのを隠すための虚言である。陰では努力をしているが、それを他人に言いふらすことはない。

好きな食べ物→特になし?

嫌いな食べ物→特になし (本当は大根、キノコ)

 

 

まずバンド名ですが、文字通り本来なら居ないはずのバンドとして登場するので、そう付けました。

 

このオリキャラたちがスペックが高い理由は、ストイックで狂犬時代の紗夜が入っていて、紗夜がRoselia結成するまで抜けなかったことを踏まえての設定にしました。

 

 

なぜこのメンバーたちをオリキャラとして登場させたかというと、特に深い理由はありません。

紗夜が入っていたバンドということは、ある程度実力があって演奏技術が高いと思ったので……。それにパフォーマンスもできると紗夜が(演奏技術の低さをパフォーマンスで誤魔化している) 言っていたので、他の人からみれば割と良いバンドだと思うはず……。

 

という作者の妄想です。

 

 

まぁ、これについては賛否両論かと思いますが、出来れば受け入れて欲しいです。

 

 

オリキャラたちの設定については結構曖昧なので少しずつ固めていきたいと思います。

もしよろしければご協力して頂けたら幸いです。

 





えっと……。


もうしばらくお待ちください。

今週には仕上げます!


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第14話「スカウトされちゃった?」


えー、待たせてしまいすみませんでした!

今回はパスパレ回?かな。


 

何日か前にライブをしたときにとある事務所の人からスカウトを受けた。なんでも今度、結成するアイドルグループのバック演奏をしてほしいらしい。……ちなみに俺がスカウトされた理由が「今のところ無名でなおかつ複数の楽器を演奏することができるから」だそうだ。

なんか嬉しいようであんまり嬉しくないんだけど……。

 

 

「確か、今日は顔合わせがあるんだよなぁ。さっさと行くか」

 

そういえば、彩が今日は事務所から呼び出されてる、って言ってたような…。

 

 

 

〈事務所〉

 

受付で声を掛けると奥の方の部屋に案内された。

扉を開けるとそこには既に何人か集まっていた。

 

「すみません、遅くなりました」

「あ、大丈夫ですよ。…さて、メンバーも揃ったので今日、集まってもらった理由を話しますね」

 

あれ?……彩に千聖、それに日菜もいる。

 

「ここにいるみなさんには、アイドルをしてもらいます」

「アイドル…ですか?」

「アイドルユニットの話ですか?」

 

えっと……。流石に俺は含まれてないよな?……うん、ないわー。

 

「ただのアイドルではなく、バンド活動……。つまり、アイドルバンドを組んでもらいます!」

「バンド……」

「難しそう……」

 

これはまた思い切ったことを考えるなぁ。成功するか、失敗するか……。バック演奏をしろ、だったよな?

少し……いや、だいぶ嫌な予感がする…。

 

「いえ、実際に演奏してもらうわけではありません。みなさんには、演奏しているフリをしてもらいます」

「フリ、ですか?」

「でも、それって……」

「確かにお客さんを騙すことに違いありません……ですが、 初回のライブだけのつもりです」

「わかりました。やり遂げてみせます」

「ち、千聖ちゃん」

「彩ちゃん、これは事務所側でもう決定していることよ。……やるしかないの」

「千聖ちゃん……。わかった、私も頑張るね」

「私もブシドーの精神をもって精進します!」

「なんか面白そうだし、アタシも賛成だよ!」

「5人の意見が一つにまとまったところで自己紹介してもらいましょうか」

「ようやくですか……。えっと、初回限定のアテ振りの演奏をする『THE IRREGULAR』のギター担当、如月 悠です。よろしく」

「え!?あのバンドに入ってたんすか!?」

「そんなに驚くことか?」

「当たり前ですよ!この辺では『Roselia』や『Glitter*Green』に次ぐ、人気バンドなんですよ!それにギターの人が変わったと思いきや前のギターの人よりも演奏技術が高い人が入ってさらに人気が高くなったんですよ。それに私もファンの一人なんですよ」

「お、おう。そうか、ありがとう?えっと…大和さんだっけ?」

「はい、麻耶と呼んで欲しいっす」

「俺のことも悠、で良いよ。よろしく、麻耶」

「よろしくっす、悠さん」

 

自分たちのバンドにファンが居るのは、ある程度知っていたけど、実際にファンだと言われると結構嬉しい。

……Roseliaやグリグリには負けてるみたいだけどな。

 

「大和さん、少し抑えて」

「す、すみません」

 

 

色々と説明を受けた俺は少し、不安な気持ちになった。ライブが来週に予定されてる。一週間しか期間がない。そして……アテ振り。何か不具合が起きないか心配だ。

 

 

「では、後ほど連絡を入れるので今日のところは解散です」

 

とりあえず解散らしい。

時間も割と遅くなっているから早めに帰るか。

 

帰り道の夜空は、どこか暗く、月や星が雲に隠れてみえなかった。

 

 

 

 





最近、暑いですね。
まだ五月なのに夏のような暑さ、夏が怖いですね。

最近、竹の花が咲いているらしいです。100年に一度しか咲かないらしいので見に行きたいですね。


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第15話「レコーディングは大変」

本当に申し訳ないです。

こんなにも更新が遅れるとは……。


 

〈1日目〉

 

昨日の俺はバカだった。パスパレの心配をしていたが、それ以上に自分の心配をすべきだった。なぜなら、それは……。

 

「ライブが1週間後なんだから俺も1週間……いや、レコーディングのことを考えると1週間もないじゃねーか……」

 

パスパレ五人の心配をしていたがそれどころじゃない。一つのパートでも大変なのに三つのパート、ギター・ベース・キーボードを弾けるようにならないといけない。

 

ライブで流す曲は『しゅわりん☆どり〜みん』、カバー曲の『ふわふわ時間』、『ハッピーシンセサイザー』の計3曲。

 

もちろん、昨日知らされたばかりだ。文句を言いたかったが、どちらにせよ、やらないといけないことだから少しでも早く弾けるようにならないと……。

今日からレコーディングまで事務所の練習スタジオを使うことになりそうだ。

まずはギターから攻めようか、そう思いギターに手を掛けた、そのとき誰かから声を掛けられた。

 

「あ、悠君じゃん」

「え、日菜?」

 

そう、パスパレのギター担当の氷川日菜だった。

 

「ギターならアタシ弾けるよ?」

「え、マジで」

「うん、マジだよ」

 

ならギターは日菜に任せてみるか。

 

「じゃあ、ギターのレコーディングは日菜に任せるよ」

「任されたよ!んー!るんってきた!」

 

よし、これで覚えるべきパートは二つ。ベースとキーボードだけだ。二つだけならなんとかなりそう……かも。

 

とりあえず、ベースから始めよう。

 

その日は一日、ベースを弾いて終わった。

 

 

 

 

〈2日目〉

 

学校がおわり、放課後すぐに事務所の練習スタジオへ向かった。

今日も昨日に引き続きベースを弾く。ある程度弾けるようになったら日菜にギターを弾いてもらってそれにベースを合わせる。

……なんで仮の音源がないんだ。あれば少しは楽になってたのに。

 

今日、『ハッピーシンセサイザー』と『ふわふわ時間』の二つは原曲を聴いてやっていたから問題なく弾けるようになった。……妥協点といったところかな。

明日はしゅわしゅわしないと……。

 

 

 

 

〈3日目〉

今日も学校が終わり次第、すぐに事務所の練習スタジオへ行った。

今日はどうやら日菜はいないけど、麻弥がいるらしい。

 

「あ、悠さん。どうっすか進行具合は」

「ヤバイね……悪い意味で」

「そうっすよね……あんまり無理はしないでください」

「そうだな。そういえばレコーディングっていつか聞いてる?」

「えっと、確か2日後ですね……」

「2日後かー……。駄目かもしれないな」

「と、とりあえず練習あるのみですよ!」

「だな」

 

一日中しゅわしゅわマラソンしていたら、ギリギリ弾けるようになった。少し安心した。

 

 

 

 

〈4日目〉

 

なんか今日から3年生たちが修学旅行で沖縄に行くらしい。帰ってくるのはGW中らしい。

それよりもレコーディングまで今日を入れてあと2日しかない。少しでも早く弾けるようにならないと……。

 

今日はキーボードでしゅわどり、ハピシンを重点的に練習した。『ふわふわ時間』は元々、弾けるから問題ない。

危機感があったからかある程度は弾けるようになった。

もしかしたらなんとかなるかもしれない……。

 

 

 

 

〈5日目〉

 

気づいたらGWに入っていた。

このGW中にRoseliaとAfterglowはライブをするらしい。Pastel*Palettesもお披露目ライブがあるし……。

 

今日は昼からスタジオでレコーディングだ。

 

「もう少し練習しとかないと」

 

午前中は練習出来るはずだから、『CiRCLE』で少し弾いていこうかな。

 

 

『CiRCLE』で午前中いっぱいレコーディングする三曲をマラソンしてミスを減らすことができた。

さて、昼飯も食べたしスタジオに行くか。

 

 

 

〈事務所 レコーディングスタジオ〉

 

スタジオ入りすると、既に音響の人が来ていてレコーディングの準備が整っていた。

 

「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

「あぁ、よろしく。君も大変だな」

「えぇっと……はい」

 

音響の人は落ち着いた男の人で、気遣いのできる大人って感じだった。

プロデューサーやディレクターも早めに来て、打ち合わせをしていたみたいだ。

マイクやキーボードなどの機種をみているとふいに隣から声をかけられた。

 

「そのキーボード、Rolandのやつですね」

「みたいだな、麻弥」

 

パスパレの臨時メンバーの麻弥だった。

 

「ふーん、このギターってESP?ってところのギターみたいだよ?」

「日菜か。ESPの楽器はどれも良いものだから割と値段が高いんだ」

「つまり、このパスパレの企画に力を入れてるってことっすね、悠さん」

「そういうこと。期待には答えないとな」

「うーん、よくわからないけど、とりあえずギターを弾けばいいんだよね」

「まぁ、日菜はそれで良いか……」

 

驚くほど天才性を持つ日菜。だからこその苦悩があったかもしれない。嫉妬や僻み、嫌悪……。それに加え、紗夜からの拒絶。何も感じないなんてことはないはずだ。それを隠して自分を演じる……。

俺がそんなことを考えているとレコーディングが始まった。

 

 

しゅわどり→ハピシン→ふわふわ時間の順で演奏した。日菜がギターを、麻弥がドラムを叩き、俺はベースを弾いた。後からキーボードも弾いて音を合成するらしい。

やはりミュージシャンである麻弥の演奏はとても上手だった。基本に忠実な音を叩く。

日菜の演奏もなかなかのものだったが、ただそれだけだった。確かに技術は凄いが、何も伝わってこない空っぽな音。

そんな二人の演奏に合わせてベースを弾いた。

三曲が録り終わるとその音源でキーボードを弾いて録音をした。

 

 

合成し終わった音を聴かせて貰ったが、思ったいた以上に出来が良かった。

レコーディングが終わってようやく気づいた。

 

「タイムリミットが短かったのは素人感を出すためだったのか……」

 

わざわざ外部の人間をスカウトしに来た理由がわかった。

色々あったけど、とりあえずは……。

無事に終わって良かった。

 

明日はさっき録った音源で歌のレッスンとボーカルのレコーディングをするらしい。

いやいや、ボーカルも口パクでやらせんのかよ……。まぁ、確かに彩を踊らせるためにはそうした方が良いのはわかるけどさ。

 

「そうだ、気分転換に明日『SPACE』に行こう」

 

GWというのもあって普段よりも出演バンド数が多いらしいし…。あと、グリグリも出るらしいし。

 

 

今日は帰ったら直ぐに寝ようかな。疲れたし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第16話「spaceライブと勇気ある一歩」前編


大変遅くなりました、申し訳ないです……。

ということで今回は前編と後編に分けて更新したいと思います。


レコーディングが終わった次の日。妙にスッキリとした頭で朝を迎えた。ベットから起き上がり、カーテンを開け太陽の光を浴びた。

 

「久しぶりに良い朝だなー」

 

背筋を伸ばし、伸びをしながらカレンダーを見る。今日の日付には赤マルがついていた。

 

『spaceライブ 香澄、有咲と一緒に観に行く』

 

そうだったなと思いつつ、時計を見る。そこにはデジタル表示された時間があった。

 

【11:47】

 

………。

目をこすり、もう一度見てみる。

 

【11:48】

 

壊れてはないみたいだ。

……じゃなくて、もしかして寝坊した?

 

 

今日の集合時間は12時だったような気がする……。

とりあえず、香澄に連絡しておこう。

そう思い、メッセージアプリを開くと何通かメッセージが届いていた。

 

香澄「悠せんぱーい、おっはよーございまーす!」

香澄「あれ?もしかしてまだ寝てますか?」

香澄「先輩?」

香澄「起きたら連絡してくださいね」

香澄「今から有咲と一緒に先輩の家に行きます!」

香澄「もうすぐ着きますよ」

 

 

やっぱり……。

とりあえず、着替えておこう。

 

 

 

〈香澄・有咲サイド〉

 

「ねぇねぇ、有咲ー。玄関のカギあいてるよ?」

「か、香澄!そこは普通インターホン鳴らすだろ!」

「おっ邪魔しまーす!」

「待てよ、香澄!」

 

「ふむふむ、なかなか綺麗ですね、有咲クン」

「そーだな……って、ちげーよ!」

「先輩の部屋はこっちかな?」

「待てって!ストップ、ストップ!」

 

「着いた、ここが先輩の…部屋…!」

「……もうどうにでもなれ」

「有咲、3、2、1でいくよ」

「へっ?」

「いっくよー、3…2…1…!」

「え、あ、おい!」

「GO!……って、うわっ!?」

「だ、大丈夫か!香澄!?」

 

 

 

〈悠サイド〉

 

あれ?もしかして勝手に入って来ちゃった?

……そういえば有咲の時もそうだったよな。

 

「3…2…」

 

入ってくるタイミングでドアを開けて驚かせてやるか…。

 

「1…!」

 

今だ!

 

扉が開くと香澄がバランスを崩したのかこっちに倒れ込んできた。

……目の前で人が倒れると少し罪悪感があるな。

 

「痛いです……」

「大丈夫か?」

「痛いこと以外は大丈夫です……」

「えっと…ごめんな香澄」

「謝んなくて良いよ、悠。コイツがアホなことしただけだから」

「有咲……」

「それにほら、もう元気だぞコイツ」

「先輩!早くライブ観に行きましょう!」

「…な」

「ったく、慌てなくてもライブは逃げねーよ」

 

まったく、最近は退屈しなくて良いな。

 

「ほら、先輩早く!先輩が寝坊したから時間がギリギリなんですよ!」

 

……そうだったな。

 

「わかった、わかったから引っ張るな!」

 

 

 

〈SPACE〉

 

「へへー、とうちゃーく」

「香澄、はしゃぎすぎるなよー」

「わかってるよ、有咲ー」

「ぜってーわかってねぇ……」

「先輩?どうかしたんですか?」

「ん?あ、いや、なんでもない」

「…………。」

「どうした、有咲?」

「なんでもねー……」

「……?」

 

俺たちは受付を済ませ、観客席へと向かった。

 

さっきスタッフたちを見ていたが、どこか様子がおかしかったような気がする。さっき連絡を取ってたスタッフもいたが……もしかしたら……。でも、俺の出る幕はないだろうけどな。

 

「あ、悠。またライブ観に来てくれたんだ」

「花、まぁな。……ところで少しトラブってるみたいだな」

「うん…。グリグリがまだ来てないんだ。台風の影響で間に合うかわからないって……」

「……そうか。花」

「何?」

「久しぶりにギターを一緒に弾いてみるのもいいかもな」

「?……!ふふっ。確かに、久しぶりにセッションしようか」

「あの曲でいいか?」

「いいね。私たちの憧れのギタリストから教えてもらったあの曲」

「飲んだっくれの落ちぶれたベーシストだったけどな」

「あの人が教えてくれた言葉」

「覚えてるよ」

「「In the name of BanG_Dream!Yes!BanG_Dream!」」

 

BanG_Dreamの名のもとに夢を撃ち抜け!

 

俺と花の憧れの人が教えてくれた言葉。それととある曲のメロディ。歌詞はまだ無い。

 

「また後でな、花」

「うん、また後で」

 

 

つい、花と話し込んでしまった。香澄と有咲からジーっと視線を感じる。しかし、どこか上の空のような……。

 

「BanG_ Dream……」

「どうしてその言葉を……」

 

悪いけど、今はライブに集中してもらうか。

 

「香澄、有咲。もうすぐライブ始まるぞ」

「へ?あ、はい!」

「あ?……おう」

 

 

会場全体の明かりが消え、ステージにライトがアップされる。そして、ライブが始まった。

 

 





小説版の方の設定も少し入れるようにしたいと思い、こういった感じになりました。


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第17話「spaceライブと勇気ある一歩」中編


前編と後編で分けると言ったな……あれは裏だ!

ということで中編です!


 

 

流石、オーナーが選ぶだけあって技術はもちろん、キチンと気持ちのこもったいいサウンドが耳を突き抜け、脳へと届く。

 

「凄いですね!先輩!」

「ああ、そうだな」

 

楽しい時間はすぐに過ぎてしまうものであっという間に最後のバンドになってしまった。確か…最後のトリはグリグリだったはず。まだ来てないのか……?

 

「あれ?次はグリグリでしたよね?」

「そのはずだ」

 

これまでに出てきたバンドたちがまた演奏を始めた。……時間稼ぎか。

 

「香澄、有咲。ちょっと待ってろ」

「え?」

「ったく、悠。早く行ってこい」

「おう」

 

 

ステージ裏に行くとみんな慌ただしく動いていた。花も今、こっちに来ていた。

 

「オーナー」

「なんだ、アンタかい?どうしたんだ?」

「ギターはある?」

「……なるほどね。ダメだ、と言いたいところだが正直、助かるね」

「そいつはどうも。花…、花園たえも借りていいですか?」

「わかった。ただ、もって数分だけだ。それ以上は……」

「わかってる。じゃあ、やりきってくるよ」

「任せたよ」

 

数分か……。多分それだけじゃ間に合いそうにないな。しかし俺たちにできるのは祈ることだけだ。

 

「花、いけるか?」

「もちろん、悠は?」

「俺が聞いたんだからいけるに決まってんだろ」

「あ、そうだった」

「じゃ、いくか」

「うん、せーの」

「「夢を撃ち抜け!!」

 

 

ステージに立つ。観客たちの動揺した顔が見える。当てられたライトが少し眩しい。でも、そんなことよりも…花と二人でステージに立てたことが凄く嬉しい。

さぁ、やりますか。

 

「おい、盛り上がってるか!!」

おおー!!!

 

「まだまだいけるよな!!」

おおー!!!

 

「ギターしかいねぇけど、全力で行くぜ!聴いてくれ、『God knows』!」

 

正直、指がつりそうだ。たが、隣にいる花は平然と弾いていて少し悔しい。それにしてもギタボはだいぶしんどいな。普段やらない分、難しく感じる。そして最後にまた出てくる早弾き。やっぱり指がつりそうだった。なんとか乗り越え、最後の音を弾ききった。

拍手と歓声が上がる。

 

「ストップ!」

 

俺の声と同時に拍手と歓声が止む。

 

「次の曲に行くぜ。次の曲は俺とコイツの憧れの人から教えてもらった曲だ。まだ歌詞はねぇが聴いてくれ。『BanG_ Dream!』」

 

歌詞もない。そして本当は曲名すらなかった。ただ俺が即興で付けた名前。この曲は元はアコギの曲だ。それを俺がエレキでも弾けるように少しアレンジした……バレたら怒られるかな?

 

「いくぞ、花」

「ギターと私は一緒……うん、いける」

 

ギターだけで奏でられるサウンド。この曲は静かめなロックだ。物足りないなんて言わせねぇ。

 

気付けば最後まで弾ききっていた。今の気分は最高にロックだ。

 

そして本当の最後。

俺と花はギターをライフルのように構えて撃ち抜く動作をしながら言った。

 

「「夢を撃ち抜け!!」」

 

そう言った途端、会場が今日で1番沸き立った。まるで歓声と拍手の嵐だ。

 

「ありがとう!お前らも最高にロックだぜ!!」

「ロックだぜ!!」

 

会場を盛り上げたままステージを降りた。

 

 

ステージ裏に戻った俺たちに待っていたのは、まだグリグリは到着していないという悲しい現実だった。

 

「無理だったのか……」

「これ以上は客を待たせられないよ。今日のライブはもう終わりだ」

「ちょっと待ってください!私がやります!」

「香澄!?」

「お願いします!私にやらせてください!」

「ダメだね、素人なんてとてもじゃないが上げられない」

「っ!……それでも私は!」

「オーナー、やらせてやってくれ」

「悠、アンタは素人にステージに立たせていいとおもってるのかい?」

「思っちゃいない。だが、コイツなら話は別だ。聴けばわかるさ……星のカリスマだよ、コイツは」

「はぁー……。わかったよ、好きにしな」

「あ、ありがとうございます!!行ってきます!」

 

香澄は物凄い勢いでステージに向かった。

さてと、まずは説明すべきかな。

 

「アイツはさっきも言った通り星のカリスマだ。ステージに立てば一気に変わる。聴くものたちを惹きつけるカリスマ性がある。まるでスターのような星のような、そんな奴だ」

「アンタが言ってた見込みのある奴ってアイツのことだったのかい」

「まぁ、そういうことだ」

「そうかい。なら私のやる最後の仕事、星のカリスマを本物にすることに決めた」

「……やりきれるか?」

「愚問だね。やりきるに決まってる。この依頼、任されたよ」

「……ありがとう」

 

香澄、見せてくれ。かつて見せてくれた星々の輝きを……ホシノコドウを。

 



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第18話「spaceライブと勇気ある一歩」後編

ようやくここまで話を持ってこれた。

あ、そういえば「バンドリの第3回バンド総選挙」投票しました?
まだの方はぜひ、投票しましょう!
その一票が運命を左右するのです!


……なんちゃって?



「有咲!ちょっと手伝って!」

「は、はぁ!?やらねーからな!」

「早く!!」

「ちょ!おま、引っ張んな!!」

 

香澄と連行された有咲がステージに立った。

有咲、どんまい……。

 

「戸山香澄です!キラキラ星、歌います!」

 

いや、幼稚園の発表会か!

でも、香澄らしいな……。

 

「きーらきーら〜…♪」

 

ふいに小学生の頃を思い出した。初めて人に憧れを抱いたときのことを……。

 

 

〈数年前、今はもう覚えていない川の付近〉

 

「はぁ…。ピアノとギターを習うのは欲張りだったかな?」

 

当時の俺は周りと比べると少し大人びていて、学校でもミュージックスクールでも周りから少し浮いていた。まぁ、そんな俺でも仲良くしてくれる人は何人か居たんだ。今でも覚えているのは有咲や花、レイ……そしてコンクールで知り合った名前は知らないが黒髪ロングの落ち着いた子。

対人関係が良好とはいえない状況で習っているのでモチベーションも上がりにくかった。

いろいろあってため息をつき、家に帰っている途中に『カスミ』と出会った。

 

「カスミです!歌います!曲名は『トゥインクルスターダスト』!」

「トゥインクルートゥインクルーひーかーるー♪」

 

キラキラ星とは少し違うデタラメな替歌。それでも楽しそうに笑いながら歌っていた。そんな彼女に惹かれて近くまで行って歌を聴いた。観客がたった一人しかいない小さなステージ。……ステージというにはおこがましいかもしれないけど。

 

「聴いてくれてありがとう!」

「いい歌声だね。楽しそうに歌ってる」

「だって歌うのって楽しいことでしょ?」

「……すごいね」

「なにが?」

「ううん、なんでもない。気にしないで」

「わかった!気にしない!」

 

彼女は歌うことは楽しいことだと言った。楽しいから歌っているのだと。

いつの間にか忘れていた初心の心。周りから求められて弾くのではない。上手くなるためだけに弾いているのではない。全ては楽しいから、弾きたいから弾くのだ。

だからこそ憧れた。俺ができなくなっていたことが平然とできている彼女に。

 

「また……また来てもいいか?」

「もちろん!えっと…」

「俺の名前は悠だ」

「悠君、私はカスミ。よろしくね」

「うん、よろしく」

 

俺と『カスミ』は握手を交わして友達になった。

しかし、いつ行っても、もう彼女はそこに居ることはなかった。

 

 

 

 

〈space〉

 

俺の憧れた彼女はもう居ない。だが、かつての友達ならいる。それが香澄だ。……アイツが覚えているかは知らないけど。

 

「ほら、有咲も!」

「もー、しゃーねぇな」

 

タン、タン、タン、という音が追加されたキラキラ星。ちょっとシュールだ。

しかし、何も事情を知らない観客達は少しずつ帰ろうとしている。

 

「か、香澄ちゃん。私も……」

「あ、りみりん!」

「りみ……」

 

ベースを抱えたりみがステージに立った。人前に出るのが苦手だったりみが勇気を出して一歩を踏み出した。星(香澄)に導かれて。

 

ベースも加わった即興アレンジ。歌とカスタネットとベース。

……よくキラキラ星だけでここまで繋げれたなぁ。あともう少しかな?

 

 

「glitter*green。今、到着しました!」

 

息を切らしながらそう言ったのは、グリグリのリーダー『牛込ゆり』先輩だ。

 

「……まだ間に合うよ。あの子たちに感謝しな」

「り、りみ…!?それにあの子たちは花咲川の……」

「はいはい、先輩方。早く衣装に着替えて下さいよ」

「悠君。……みんな、早く!」

「「「はい!」」」

 

よし、グリグリも到着した。後は観客達の足を止めないとな。

 

「もう一回行ってくる」

「……頼んだよ」

「言われなくても」

 

 

「きらーきらー……」

 

よく頑張ったな、三人とも。お前たちの背中をもうひと押ししてやるよ。

 

「悠先輩……?」

「歌を止めるな、続けろ」

「は、はい!…きらーきらー……」

 

有咲のカスタネットとりみのベースがギターの音にかき消されさいように弱めに弾く。あくまで主役は香澄、有咲、りみの三人だ。俺はそのサポートをするだけ。

俺が出てきたことによって帰ろうとしていた観客達の足を戻した。あと数分だけ待ってくれ、頼む。

 

 

「お待たせ。ありがとう」

「後は任せましたよ、先輩」

「ふふっ、了解」

 

ステージに向かってきた牛込先輩とすれ違いざまにハイタッチを交わして入れ替わる。……そんなに手の位置を下げなくても届くから……。

 

 

「みんなー!待たせてごめんね!space、盛り上がってますかー!!」

 

そして始まるグリグリの演奏。いうまでもなくキラキラ星。香澄と牛込先輩のデュエット。そして……香澄のソロ。

 

 

「さすがは星のカリスマ、そう思いません?」

「まだまだ粗削りだが、良いもんを持ってるもんだね」

「とあるゲームではスターを纏えば無敵になれるんですよ、知ってました?」

「知ってるよ。そのスターってのはアイツが持ってたランダムスターのことかい?」

「もちろん」

「ああ、そうかい……」

 

 

そしてライブは無事に終わった。

 

 

〈space楽屋〉

 

「みなさん、遅れてしまいすみませんでした!」

「私たちも勝手にステージに上がってごめんなさい……」

「オーナー、ご迷惑をお掛けしました」

「……客が満足して帰ったんだ。今回は許す、けど、次はないよ。気をつけな」

「オーナー……!」

 

「りみりん、ゆりさんたち、許してもらえて良かったね」

「うん…」

「ちょっと、あなたたち!二度とあんなことしちゃダメだよ!」

「スタッフさん!……ごめんなさい」

「今回は上手く行ったから良かったけどね、ダメなものはダメ。わかった?」

「は、はい!もうしません」

 

 

「あはは、怒られちゃったね」

「怒られるに決まってるだろ!めちゃくちゃ恥ずかしかったんだからな!」

「でもね、二人のおかげでステージに立てた……。怖かったけど、楽しかったよ。もしね、もしまだ間に合うなら…私も二人と一緒にバンドしたい……!」

「りみりん、もちろん!それじゃあ、次は文化祭だね!」

「はあ!?どっから出てきた!?」

「ギターを返しにもらいに生徒会室に行ったときに聞いたんだー。申請すれば体育館のライブステージに出られるって!」

「……まだマトモに弾けないだろ?」

「うん、頑張っていっぱい練習する!一緒に頑張ろ、有咲、りみりん!」

「はぁ…」

「うん、頑張ろ、香澄ちゃん!」

 

 

 

「悠君、私たちのためにステージに上がってくれたんだよね?ありがとう」

「当たり前のことしただけですよ、牛込先輩」

「そっか…。悠君だもんね」

「…?牛込先輩?」

「なんでもない…。そうだ!その牛込先輩っていうの禁止ね」

「えっ?……牛込さん?」

「違う違う。ゆり、だよ」

「ゆり…先輩…」

「んー、まぁ今はそれで良いよ。また今度、お礼させてね」

「いりません、と言っても聞かないんですよね」

「もちろん、良くわかってるね」

「……別に。そういえば中間テスト大丈夫ですか?もうすぐあると思うんですけど」

「……忘れてた」

「……ですよね」



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第19話「緊張感のない俺たち」


すみません。
スマブラがアプデされたのでつい……。
特に好きなのが3の主人公ですね。かの有名な勇者王が声をあててくれたんですよねー。

だが、私が一番好きなファイターはアイクだ!


 

spaceでライブがあった次の日、つまり今日だ。

今日はCiRCLEでRoseliaとAfterglow、THE IRREGULARの3バンド合同のライブを控えている。

 

「あ、そういえばパスパレのライブって今日だっけ?……観に行きたかったなぁ」

 

パスパレのライブが始まるのは13時から。そして俺たちのライブが始まるのは15時からだが、集合は12時ぴったりだ。

……つまりそういうことさ。

 

それはそうと午前中は時間がある。少しでも上手く弾くためにギターを弾くかな……。

 

『ピーンポーン』

 

ん?インターホンが鳴った?誰だろ。

 

「きっさらぎ君、あーそぼ!」

「は?佐川?」

「私たちもいるよ?」

「久しぶりだね、如月!」

「倉持、それに二瀬も……急に来てどうしたんだ?」

 

確かに家の場所も前に教えて来てもいいとは言ったけど、連絡ぐらいあってもいいんじゃないかなぁ……。

 

「スマブラしよー」

「なんだ、スマブラか……はい?」

「いいから家に入れて欲しいな」

「……開いてるから入れ」

「「「お邪魔しまーす」」」

 

ライブ当日の朝にスマブラするのかよ。……友希那や紗夜にバレたら怒られるなぁ。

 

ライブ当日にいきなり家に来てスマブラしたいと言ってきたアホの娘三人をリビングに通す。

今日はあこが来るかもと思ってたからスマブラは既に準備が終わっている。

 

「ん?やる気充分じゃない?」

「……まぁ、な」

「ライブ当日の朝からゲームするなんて常識を知りなさい」

「お前には言われたくねーよ!佐川!」

「ステイステイ、まあまあ。落ち着いて」

「犬じゃねーよ……」

「じゃあ、猫?」

「とりあえずペットじゃない」

「……早く始めない?」

「だな」

 

 

スマブラはこの間アプデがあり、新ファイターが参戦した。その名も『勇者(HERO)』。必殺技の数の多さは全ファイターNo.1だ。扱いは難しいが慣れればかなり強いはずだ。

今スマブラをするならば誰かしら使うに違いないな。

 

 

〈スマブラ開始〉

 

悠「よし、じゃあ俺はいつも通りにと」

『アイク』

 

倉持「私はー、これかな?」

『パルテナ』

 

佐川「んー?うん、これがビビビってきた」

『ガノンドロフ』

 

二瀬「相性を考えると……ってなんでもない」

『カムイ(女)』

 

 

悠(いや、誰も使わんのかーい!)

 

 

3、2、1、GO!

 

スタートとともにそれぞれの行動をとる。

俺はいつも通りにスーパーアーマーに任せた天空ごり押し作戦だ。

比較的、隙の小さい空中攻撃を繰り返しながらコンボへと導く。

 

悠「空N、空N、からの天空!」

佐川「卑怯なコンボ…」

悠「うるせーな」

 

アイクの戦い方は大体こんな感じだろ?空N擦りのアイク。

なんだかんだありつつもバトルは進んでいく。

そして残った二人。

俺と二瀬だ。

ストックは俺が残り1、二瀬は残り2だ。お互いに0%の状態。

 

二瀬「勝負は戦う前から結果は決まっているものよ」

悠「1on1なら負ける気がしねぇ、かかってこいよ」

 

ここから勝つのは難しいか……。だが、まともに戦えばの話だろ?なら、まともに戦わない。

 

悠「下投げからの空N、天空!」

二瀬「ウザいのよ、そのコンボ!」

 

二瀬の苦し紛れの攻撃はその場回避やジャスガで防ぐ。埒があかないと思ったのかバックステップをする二瀬のカムイ。それをダッシュで接近からの掴み、下投げからのジャンプ、空前でバーストだ!

 

悠「うしっ!これで対等だな」

二瀬「……カウンター厨になってやる」

悠「嫌われるからやめときな」

二瀬「勝つためにはなんでもするよ、たとえカウンター厨と罵られようがね!」

悠「かっこいいけどかっこよくないな!そのセリフ!」

 

俺の持ち前の回避能力で攻撃を避け続ける。回避しながら崖際に誘導していく。

 

倉持「あっ、もしかして……」

佐川「言っちゃダメだよ、リーダー」

倉持「そ、そう…だね……。可哀想……」

 

崖際まで追い詰めた俺はカムイを掴み、下投げする。からのー、天空じゃい!

 

悠「一発逆転の天空だ!」

二瀬「ズルよ、ズルだよね!」

悠「……ふっ、勝つためにはなんでもするさ。たとえ、天空厨と罵られようがね…!」

二瀬「セリフをパクんないでよ!」

 

 

〜2戦目〜

 

悠「仕方ないな、コイツで」

『勇者』

 

倉持「えー?勇者かー。これにしよ」

『ジョーカー』

 

佐川「新ファイター使うんだ、二人とも。私は…うん、決めた」

『フォックス』

 

二瀬「なぁんだ、了解。じゃあコレかな?」

『ブラックピット』

 

 

悠「お前ら、絶対手組むつもりだろ」

倉持「違うよ」

佐川「私たち二人だけだよ?」

二瀬「スマブラは乱闘が花のゲームなのに私が手を組むわけないでしょ」

悠「なるほどな……。下Bは乱用しないようにしよっと」

 

 

3、2、1、GO!

 

周りと距離を置きたいため、ライデインを放つ。当たったのを確認してから崖際へ逃げる。

 

倉持「ちょっ、25%!?」

 

当たった倉持の反応から勇者のことをあまり調べてないことがわかった。残りの二人も同じようだ。……リサーチ不足じゃないか?

端に逃げた俺はメラゾーマまで溜めて、コマンドを見る。

〜勇者コマンド〜

・ためる ←

・ホイミ

・マヒャド斬り

・ルーラ

 

迷わず『ためる』を選択。そしてもう一度コマンドを見る。

〜勇者コマンド〜

・ラリホー

・アストロン

・マダンテ

・バイキルド ←

 

バイキルドを選択し、攻撃力を高める。そして乱闘中の隙だらけなブラックピットの背中に横スマを当てる。

 

悠「!きた、かいしんのいちげき!」

二瀬「嘘!?まだ10%だったのに……」

 

バイギルドとためるのコンボ、そして1/8の確率で出るクリティカルヒット。これだけ条件が揃えば0%からでも一撃だろ。

まぁ、これだけ暴れてたら狙われるのは当然のことだ。あっという間に撃墜寸前まで追い込まれたがしかし、勇者にはこれを好機に変えるコマンドが存在する。

〜勇者コマンド〜

・メガンテ ←

・ルーラ

・マダンテ

・イオ

 

悠「まとめて吹き飛ばす」

倉持、佐川、二瀬「!?そんな!」

 

残りストック1の俺と同じく残りストック1の佐川。タイマンに持って来たらあとはコッチのもんだ。

メラゾーマまで溜めて佐川が操るフォックスへと近づく。……今だ!

 

悠「掴みからの下投げ、空前からのメラゾーマ!」

佐川「58%だって!?やばいかも」

 

一連のコンボを決めた俺は後ろに下がり、またもやメラゾーマまで溜める。

フォックスがダッシュ攻撃をしてきたところを緊急回避で避け、ジャンプして降下中に空上を当て、もう一度ジャンプをしてメラゾーマ!

 

悠「ふっ、決まったな」

 

メラゾーマが当たった瞬間に確定演出が出て、佐川の操るフォックスはバーストされた。

 

佐川「確定コンボはセコイよ」

悠「当てるの結構難しいぞ?MPも把握しないといけないしな…」

二瀬「あれ?ザキやザラキは使わないの?」

悠「あれを使うぐらいならメラゾーマの方が早い」

倉持「なるほどね……。あ、思い出した!」

悠「っ!びっくりしたー。なんだよ?」

倉持「私たち、今日ライブ」

悠「知ってる」

佐川「あ、ホントだ」

二瀬「すっかり忘れてたわ」

悠「お前らバカだろ」

倉持「とりあえず私たち、帰るね。ライブに遅れないでよね」

悠「お前には言われたくないな」

佐川「じゃあ私も帰る。お昼ちゃんと食べてから来てねー」

悠「うるせー。お前は俺の母さんか」

二瀬「……私としたことが。まさかコイツらと同じバカなことをするなんて……!」

悠「はいはい、とりあえず帰れよ」

 

 

三人はとりあえず家に帰った。

いや、マジで何しに来たんだよ。ライブあること忘れるか?

 

「ダメだ。俺も早く準備しないと」

「じゃーん!悠にぃ!一緒にCiRCLEいこ……う、よ」

「ん?どうした、あこ?」

「悠にぃ!早く服着て!!」

「お、おう。あとシャツ着るだけだし……」

「だ、か、ら、早く!」

「わかった、わかったから」

 

上半身くらいでそんな騒がなくてもいいのに……。

 

「悠君、あこちゃんが困ってたよね?」

「り、燐子……!」

「ふふっ、……なぁーんてね?」

「燐子……」

「それより、もう時間だよ?早く行こ?」

「了解、姫様。あこ姫、時間が来たようだ」

「うむ、時は満ちた。いざ参らん、えっと……我らの始まりの地へ!」

 

Roseliaの姫君たちは少々お茶目なところがあるようだ。



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第20話「3バンド合同ライブ in CiRCLE」


今回は前回と引き続き、THE IRREGULARも出ます。
本格派バンドと王道ロックバンド、そして本来いないはずの実力派バンド。

バンドと音楽が交わる時、物語(キズナ)が始まる


…………だといいなぁー。


 

家に迎えに来てくれた、あこと燐子と一緒にCiRCLEへと向かった。

 

「ねぇ、悠にぃ。ライブが終わったらスマブラしよーよ。勇者使ってみたい!」

「せめて明日にしようぜ。……Roseliaは反省会があるだろう?」

「うぅ、そうだけどさー。でも明日は学校だよ?」

「放課後にでも出来るだろ。燐子も来るか?」

「……い、いいの?悠君?」

「むしろ来て欲しい」

「……うん、私も…行くね」

「やったー!悠にぃとりんりんと一緒にゲームだ!楽しみー!」

「はいはい。浮かれてライブでミスるなよ?」

「だ、大丈夫だよ!ね、ねぇ、りんりん?」

「……気をつけようね?あこちゃん…」

「うぅ…りんりんまでー……」

 

そんなやり取りをしながら歩いているとCiRCLEに着いた。

受付にまりなさんが居るのを見て、まりなさんってずっと居るのかな、と思ってしまった。

 

「あ、悠君。それにあこちゃんに燐子ちゃんまで。楽屋で待っててね?」

「ありがとうございます、行こう、あこ、燐子」

「はーい」「……はい」

 

 

〈楽屋〉

 

楽屋に入ると既にアフグロとRoseliaメンバーは揃っていた。

 

「…悠。少し遅かったね」

「蘭か。一応時間通りに来たんだけどなぁ」

「悠さん。五分前行動は当たり前ですよ?」

「紗夜、どうせかなり早く来たんだろ?」

「……そ、そんなことは…ありませんよ?」

「ふーん……」

「ねぇ悠?それよりも衣装に着替えないとね」

「うん?ウチのバンドにライブ衣装なんてなかった筈だけど…?」

 

嫌な予感がする……。今までに起きたことのないような危険が迫っている気がしてならない。

 

「じゃーん!アタシと燐子で作ってみたんだ!かなり気合い入れたから中々の出来だと思うよ?」

「は…はい、私…すごく、頑張りました」

 

そう言いながら二人が取り出したのは見事に作られた可愛らしい衣装……どっからどう見ても女用にしか見えない。

 

「……俺にそれを着ろというのか」

「もちろん♪」「もちろん…です」

 

衣装を作ってくれたのはありがたい。そう、衣装を作ってくれたこと自体はありがたいが……!

 

「ということでアッチの更衣室にレッツGO!あ、巴ちょっと手伝ってー」

「わかった、任せろ!」

「ちょっ!は、話せばわかる!離せ、リサ!巴!」

「……GJです。リサさん……巴さんも…」

「悠君、大丈夫かな?」

「大丈夫だよ〜。ちょっと可愛くなって帰ってくるよ〜」

「え!?」

「モカ…違う」

「だ、だよね!蘭ちゃん!」

「悠は凄く可愛くなって帰ってくるから…!」

「そうじゃないよ!蘭ちゃん!」

「あこ、もうなにがなんだかわからなくなっちゃった……。早く帰ってきて、悠にぃ……」

 

 

〈更衣室〉

 

「リサ、お前がそんなヤツだったなんて……!」

「うん?なんのことかわからないなー♪」

「リサ先輩。やるなら一気にやっちゃいましょう!」

「巴、お前もか……!」

「ほら、悠。自分で着替えないと…どうなるかわかる?」

「…イエス、マム」

 

俺はリサに脅しをかけられ、自らの手で女物の服を着ている。

 

「…これでもう…いいだろ?」

「悠、動かないで」

「…好きにしてくれ」

「せっかくなら可愛く仕上げてあげる」

「リサ先輩。アタシ戻りますね」

「うん、協力ありがと」

「いえ、アタシもみてみたかったので」

「そっか、楽しみに待っててね」

「わかりました!」

「……よし、巴も行ったことだし始めますかー」

「あとでデコピンスプラッシュをお見舞いしてやる」

「なにそれ、なんか凄そう」

 

抵抗を諦めた俺にリサは遠慮なく俺を俺じゃない誰かに変身させていく。……あ、ウィッグも使うのか。

 

「…うん、完成!どう?可愛いっしょ!」

「おぉ、メイクでこんなに変わるとは……。俺が俺じゃないみたいだ」

「ふふん、メイクは女の子のための魔法だからね」

「いや、俺は男だ」

「今は女の子だよ?ねー?ユウちゃん」

「くっ、中性的な名前がここで仇となったか…!」

「こら、女の子なんだからもっと丁寧な言葉遣いしないと」

「……わかったよ」

「じゃあ、みんなのところに行こ?」

「そうだね…」

 

リサめ…!マジで後でデコピンしてやる!

だが、後々この出来事に感謝するようになるのだが……俺にはそんな先のことはわからなかった。

 

 

〈楽屋〉

 

「みんな、おっまたせー!」

「あの、今井さん。…悠さんはどこに行ったかわかりますか?」

「ん?目の前にいる子」

「え!?この可愛い女の子がですか!?」

「流石は今井先輩。ナイスです」

「おぉ〜。これはモカちゃんとタメをはれるかもね〜」

「悠君が女の子になっちゃった……」

「悠君、とりあえず写真撮らせてー」

「悠はドコに行ったのかしら?」

「悠にぃは悠ねぇだった…の…?」

「悠君…可愛い……」

「なんだ、このカオス……」

 

巴以外がおかしくなっている。とりあえず、ひまりよ。お前は俺の写真を撮ってなにするつもりなんだ。まさか、他人に送るなんてことはしない…筈だ……。

 

「すみませーん、少し遅れましたー……ってあれ?悠じゃん。どうしたの、可愛い格好して」

「リサに無理矢理……」

「そうなんだ。今の姿、アイドルに居そう」

「それはアイドルに失礼だろ」

「あくまでたとえの話。 悠君さしずめ悠ちゃんだね」

「変なあだ名を付けるな」

「同じバンドのよしみじゃん。これからもそれでライブに出てよ」

「断ります」

「ちぇー。あ、まりなさんがもう始まるから円陣組んで、だって」

「みんな、集合」

 

14人が集まり、円陣を組む。

 

「いつも通り、最高の演奏をしよう!」

「えい、えい、おー!………って、あれ?」

「よし、トップバッターのTHE IRREGULAR、ザラ…行ってきます」

「おい、倉持。勝手に略すな」

「ナイス、リーダー。今日から私たちはザラだね」

「私もいいと思いまーす」

「マジか……。ま、いっか」

 

 

〈ステージ〉

 

俺たちがステージに立つと歓声が湧き上がる。が、しかしチラホラと疑問の声も聞こえてきた。

 

 

「ん?あれ?ギターって男じゃなかったっけ?」

「あれ?ホントだ。変わったのかな?」

 

 

「ふっふっふー。実はこの子……悠君の女装した姿なのだー!」

 

 

「確かに、身長は同じぐらいだ」

「なんか…普通のガールズバンドにしか見えなくなったな……」

「可愛い過ぎだろ。恥ずかしがっているところもポイント高いな」

「女3、男1とかなんてハーレムだ、とか思ってたけど…アイツなら許せる」

「わかる。そういえばあの子って芸能事務所に所属してるんだよな?」

「おう。そういえばその事務所の新しく出来たアイドルガールズバンドが今日ライブやってるらしい」

「彩ちゃんとか白鷺千聖とかが所属してるんだよな…」

「流石にこっちのライブを優先して観に来たけどな」

「なんか近い将来、いろんなことさせられてそうだよなぁ」

「そのときは応援して支えようぜ」

「おう、この会場に居る俺たちの気持ちはひとつになったな」

「おっと、演奏が始まるぞ」

「演奏中は静かに…だな?」

 

 

いや、なんかめっちゃ詳しいんだけど!

何、あの人たち。え?俺って芸能事務所に所属したって言ってないよな?そんなに大々的に発表もしなかった筈だし……。

そんなことよりも……

 

「まずは最高の演奏をしないとな」

 

 

ライブは順調に進んでいき、問題が起きることなく大成功に終わった。

 

「いやぁ、みんな良い演奏だったよ!」

「あ、まりなさん」

「うんうん、みんなのおかげで今日は良いライブになったよ。ありがとうね」

「また、何かあったら呼んで下さい」

「もちろん!」

 

 

「ふー。ライブが無事に終わって良かった良かった」

「悠、大変だよ!これ見て!」

「ん?なんだ…これ……!」

 

アイドルバンド、Pastel*Palettes 当て振り、口パク発覚!

観客たちからお金を騙し取った?

 

「これって悠が所属してる芸能事務所だよね」

「………なんだよ」

「ゆ、悠?」

「……なんなんだよ!これ!!」

「ひっ!」

 

だから、だから協力したくなかったんだ!どうする?どうすれば良い?バンドのメンバーに…友達やバンド仲間になにか被害を加えられないようにするには…どうすれば良い……!

 

「ねー、悠にぃ。スマブラしに帰ろ!」

「うるさい!」

「ゆ、悠にぃ?な、なんで怒ってるの?」

「黙れ!お前らには関係ない!!」

「え?……悠にぃ?あこなにか悪いことした?」

「……悪りぃ、もう俺に関わるな」

「………なんで、理由をおじえでぐれないどわがらないよ!」

「俺がお前たちのことが嫌いだからだ……わかったならついてくるな…!」

「っ!」

 

俺はそう言うと走り出した……否、逃げ出したのだ。後ろの方であこの泣き声が聞こえる。少し足が止まりかけたが、足を前に踏み出し続ける。いろんな意味で足が動かなくなったときにすぐそばにあった公園のベンチに座る。

 

「……俺は最低だな」

 

どんな理由であっても女の子を、人を泣かすのはいけないことだ。演劇やドラマなどの創作の話でというのならば話はまた別ではあるが……。

 

「こんなところでどうしたんだい?子猫ちゃん?」

「あなたは?」

「私の名前など知らなくとも問題ないさ」

「はぁ…」

 

紫の髪色をした貴公子のような女の子に話しかけられた。

子猫ちゃんと呼ばれた理由は俺がまだ女装しているからだと思う。

 

「私はこう思う。全く知らない相手だからこそ話せるようなこともある、とね」

「ボクもそう思います…」

「それでどうして泣いていたんだい?」

「それが…………。」

 

今日あったことを細かいところは誤魔化しながら大雑把に説明した。

 

「なるほど、ね。確かにその気持ちはわかる」

「……」

「けれど、君のようなおバカちゃんは久しぶりに見るよ」

「なんだと……!」

「 怒ってる顔、生き生きしていて良いじゃないか」

「へ?」

「ふむ、答えはすぐ見つかるさ。余計なお節介はやめておくとしよう」

「あ、えっと…名前を教えてください」

「薫。瀬田薫だ。また、機会があれば会うこともあるかもしれないね」

「はい、そうですね」

「それじゃあ、また会おう」

 

タイミングよく現れた貴公子、瀬田薫さんはウマに跨り走り去っていった。

……認めたくはないが彼女のお陰で少しは気持ちが楽になった。認めたくはないがな……!

 

日が暮れてしまう前に帰ろう。

明日からみんなにどう接したらいいのかわからない……。学校もあるし色々と考えようか。

 





すみません、こんなつもりじゃなかったんです。

……どうしましょう。


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第21話「救いの手」

……頭痛い。

夏風邪には気をつけましょう。

全然治んないので……。


 

3バンド合同ライブがあって、あこを泣かせてしまった次の日。

今日はゴールデンウィークの間にある平日だ。本当はサボりたかったが、一人暮らしをする条件として学業を疎かにしないという約束をしているためサボるわけにはいかず、学校へと登校した。

 

教室に入るといつもと少しだけ違う雰囲気だった。

彩が少し気まずそうにちょこんと席に座っていた。そして俺と視線が合う。瞳から伝わってくる戸惑い、罪悪感、気まずさ…そして少しの希望。しばらく見つめ合っていたが彩が視線をそらし、首を左右に振ってまた下を向いた。

その姿を見ていると自分自身を殴りたくなった。俺は被害者ぶっておきながら結局は事務所に協力したバカだ。だから、今の俺は彩を…パスパレのみんなを慰めたり、話しかけたりすることは許されない。許されたとしても俺が俺を許さない。

 

俺が席に座ると紗夜と燐子が俺に話しかけようとして口を開けて、しばらくしてまた閉じる。それを見て感じた。

俺は…………だ。

 

 

そんな気まずい時間も終わり、放課後となった。誰とも話すことなく放課後を迎えた。

 

「あ、そうだ……事務所から呼ばれたんだっけか……。行くしか……」

「あ、ま、待って!悠君!私も一緒に行く!」

「彩……?」

「私も辛いけど…悠君はもっと辛いんだよね…?今の悠君を一人にしておけないよ」

「違う……。俺は知っていて事務所に協力したんだ」

「だとしても…だよ。なんと言われても私は悠君のそばにいるよ…」

「そうしたら彩に迷惑が……」

「関係ないよ。だって私は悠君の先輩なんだから」

「……先輩だから?」

「そう、先輩だからだよ。私だけじゃないよ。麻耶ちゃんやイヴちゃん、千聖ちゃん…それに悠君と同期の日菜ちゃんも。みんな悠君の仲間。知り合ったばかりかもしれないけど、それでも仲間なんだよ」

「…うん。ありがと。ちょっとだけ後ろ向いててくれない?」

「どうして?」

「男は涙を見られたくないんだよ……特に可愛い女の子の前では」

「悠君……。良いよ、好きなだけ泣いちゃっても」

「はずかしいなぁ、俺……」

「ふふっ」

 

彩に慰められた俺は年甲斐もなく大泣きした。恥ずかしがったが、それよりも彩が救ってくれたことが嬉しかった。

 

「じゃ、行こっか」

「そーだな」

 

 

〈芸能事務所〉

 

「すみません、わざわざお越しいただいて…」

「いえ、別に…」

「案内しますね。ついてきてください」

「わかりました」

 

 

〈会議室〉

 

「こんにちはー」

「来てくれてありがとう、ほら座って座って」

「はい」

 

俺と彩が会議室に入ると他のメンバーが既に揃っていた。

 

「さてと、今日集まってもらった理由は一つ。昨日のライブの話だ」

「……」

「すまなかった!機材トラブルで音源が途切れてしまった……」

「そう…でしたか」

「いや、それだけじゃない。音源が途切れた後、彼女たちが演奏をしようとしたところを僕個人の問題で止めてしまったんだ……」

「えっと…理由を伺っても?」

「構わない。……少ししか練習していない中途半端な演奏を聴かせたくはなかったからだ」

「………」

「僕がもっと考えて行動するべきだった。君にも迷惑をかけてしまったね…。僕にできる罪滅ぼし、償いは一つ。…僕個人の立場を捨ててでも彼女たちをキチンとした形でバンドデビューをさせること……。そしてそれを一刻も早く達成させることだ」

「本当に…できますか…?」

「やる。やらなければいけないんだ。それが僕のケジメだ」

「……そうですか。わかりました。俺も手伝います」

「本当かい!?有難い。細かい話はまた後でしようが」

「はい」

「そういうわけだ、Pastel*Palettesのみんな…すまなかった。必ず、必ずなんとかしてみせる!」

「プロデューサーさん……」

「……自分は信じています」

「うーん?よくわからないけど…このままじゃ私も嫌だなー」

「……武士の情けです、」

「………そう、ですか……」

「今更だけど申し訳ない。もう一度、バンドとしてライブが出来るよう色々とやってみるよ。各々、引き続き楽曲の練習頼んだよ」

「「「「はい」」」」

「白鷺さん?」

「…あ、はい。すみません、少しボーッとしてました」

「そう?ならいいんだけど…」

 

 

話が終わり、解散となった。俺とプロデューサーさんはそのまま残り、先程の話の続きをした。

 

 

「協力するとは言ったものの…何をすれば良いですか?」

「そうだねー。いっそ、君もアイドルになっちゃう?」

「策としてはアリですね……策としてはですけど」

「だよねー。じゃあ、ウチの事務所のお抱えタレントみたいなのはどう?」

「具体的には?」

「テレビやラジオなどのメディア関係や声優とかライブとかいろんなことをする仕事」

「うわぁ、大変そう」

「人気が出てきたらね」

「……これが一番早く済む方法なんですよね?」

「そうだよ。そして一番確実な方法」

「いいですよ。引き受けます。そのかわり給料弾んで下さい」

「重要な役割をしてもらうんだ、それくらいお安い御用だよ」

「話は変わりますけど…、千聖のこと引き留めてあげてください」

「あ、気づいちゃってたんだ?」

「もちろん、友達…仲間、ですから」

「ま、大丈夫だよ」

「どうしてです?」

「このまま辞めたら彼女のプライドが許さないだろうからね……」

 

 

 

 

〈千聖side〉

 

「私は……ここままじゃ…!」

 

「女優『白鷺千聖』というネームバリューが損なわれるのもそうだけれど……今のままじゃ私はお荷物で終わってしまう。それに、悠にも迷惑をかけてしまってる……」

 

「私のせいで演奏させてもらえなかったのだもの。……私がもっと真面目に取り組んでいれば…。いえ、それよりも私がすべきことをやるのよ。これだけはネームバリューのある私にしか出来ないこと……。やるしかないの…!」

 

 

〈side out〉

 

 

 

〈日菜side〉

 

千聖ちゃんの様子が気になって見に来たけど、辞める気は無かったみたい。よかったー。

 

「やっぱり、あたしには他人の感情がわからないみたいだよ…。もう少しで余計なことしそうだったなー。……あたしがもっと凡人だったらよかったのに……。」

 

「うん、考えても仕方ないや。あたしは他人から見える『天才』をあたしなりに演技するだけ……」

 

 

〈side out〉

 

 

 

〈悠side〉

 

こんな俺に優しくしてくれた彩には感謝してもしきれないな。

恩返し、といえば大袈裟かもしれないけど…今後、彩を助けていきたい。

今、辛いのは彩も同じ筈だから……。

 

「夢を撃ち抜くまでは終われない。こんな俺でも夢みていいんだ。BanG_Dreamの名の下に……」

 

 

頭を冷やした俺はRoselia、アフグロ、ザラのメンバーにメッセージアプリで謝ってなんとか許してもらえた。

 




UA数が2万を突破。
PV数も8万を突破。
お気に入り件数200突破しました。

読んでくれている皆さまに感謝。


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第22話「赤(スター)と青(天然)が出会う


前回の更新から間が空いてすみません。


 

なんだかんだでGWは過ぎ去り、スマブラをしてると時間ざすぐに過ぎるなぁと感じた。

 

今日からまた、いつも通りに学校がある。文化祭も近づいて来ているし楽しみだ。まだまだ先だけどな。

 

 

 

電車から出て通学していると遠くから声を掛けられた。

 

「あ、悠せんぱーい!おはようございまーす!」

「おはよう、香澄。えらく、上機嫌だな」

「久しぶりの学校ってなんだかワクワクしませんか?」

「わかるかも……」

「はぁ、はぁ。香澄、いきなり走るなよ」

「おはよう、有咲」

「うぇ!?…お、おおお、おはよう、悠」

「お、おう。おはよう、有咲」

「有咲〜このこの〜」

「ちょっ、おま、つつくなー!」

「二人は仲良いんだな」

「はい!」

「……ま、まぁな」

「あー!有咲がデレた!」

「だ、抱き着くなー!」

 

いつも通り、だな。今なら蘭たちが言ってた「いつも通り」がわかるような…そんな気がする。

イチャイチャしている二人を置いて教室に向かった。

 

 

 

〈教室〉

 

教室に入ってクラスメイトたちに挨拶をして、自分の席に座った。紗夜や燐子、彩と話していると授業が始まった。変わらない日常も良いもんだと少し思ってしまった。

 

 

昼休みになり、そういえばアイツらは中庭に居るんだったなと思い出し、有咲のばあちゃんが作った卵焼きを狙いに行った。

すまぬ、有咲。許せ。

 

 

 

〈中庭〉

 

楽しそうに騒いでいる四人組を目指し、歩く。

 

「……私って変態なのかな」

「じゃん」

「確かに変ではある」

「え、えっと……」

「うぅ、そうなんだぁぁぁ!」

「……お前ら何話してんだ?」

「あ、悠先輩!私って変態ですか?」

「……否定は出来ない」

「うあぁぁぁ!」

「えっと、香澄ちゃんは少し変だけど変態じゃないよ…」

「りみ、それフォローになってないぞ」

「それを言うなら有咲だって!盆栽に話しかけてるじゃん!」

「んな!してねーよ!」

「してたよ!『トネガワ今日も可愛いねー、お水あげるねー』って!」

「そんなこと言ってませんー」

「言ってたよ!」

「そんな言い方はしてねぇ!」

「……盆栽とおしゃべりはしてたんだ」

「というかなんでそんな話してるんだ?」.

「同じクラスの花園さんに『変態だ…』って言われて…」

「…花が?……もしかしてランダムスター見せたのか?」

「そうですけど、なんでわかるんですか!?」

「ランダムスターって変形ギターだろ?変形ギターは初心者か癖の強い人が使うモンだからなぁ。その中でもランダムスターは物凄く高いし、数も少ないから変態扱いされやすい…らしい」

「へー。そうだったんですね。んー」

「まぁ、嘘だけど」

「え!?嘘なんですか!?」

「アイツの考えてることは6、7割ぐらいしかわからん」

 

マイペースで天然。口を開けば、オッチャンが〜とか、花園ランドが〜とか、わかるんだけど何のことかはわからない。そもそも花園ランドって何?その予備軍と言われた俺はどう反応すればいい?……なんかパスポートがないとダメらしい。

 

「あ、そうだった。忘れるところだった」

「ん?どうしたんだ、悠?」

「卵焼きはいただいた!」

「ちょっ、勝手に取んな!」

「うん、うめぇ。…あ、コレやるよ」

「おう、ありがとな…ってこれバランじゃねぇか!」

 

(バランとはコンビニやスーパーの弁当に入っている緑色のギザギザしたプラスチックのヤツのことである)

 

「そんじゃ、コレやる」

「唐揚げか。ありがとな。…わざわざボケを挟むなよなー」

「はいはい。話は変わるが…バンドの方は上手くいってんのか?」

「りみりんが仲間になりました!」

「そっか。りみ」

「は、はい…!」

「勇気は……自信はついたか?」

「えっと…少しなら」

「ギターでもベースでもドラムでもなんでもそうだ、やりたいヤツがやるんだ。やりたいって思えばやればいいんだよ。自分のしたいようにすればいい」

「……お姉ちゃんも同じことを言ってました」

「うん、ゆり先輩の受け売り。どう?」

「はい、ありがとうございます。……悠先輩は花園さんとどういう関係なんですか?」

「あ、それ私も聞きたいです!」

「だそうですよ?悠先輩?」

 

どこまで話していいのかわからない。レイのことは隠すべき…?……俺だけの判断で話していいわけないか。簡単なことだけにするか。

 

「小さい頃、同じミュージックスクールに通っていた幼馴染みってだけ」

「そうなんですね…」

「な、有咲」

「お、おい、こっちに話を振るな!」

「…もしかして有咲も?」

「……まぁ、悠とはな」

「ヘぇー、有咲と悠先輩が…幼馴染みなんですね」

「話すのはそれぐらいにしてもう戻らないとチャイム鳴っちゃうよ」

「あ、ホントだ。ありがとう、さーや!」

「げ、マジか。んじゃ、俺はこのへんで」

「悠先輩、ちょっとだけ耳貸して下さい」

「沙綾?」

「……いつになったらパンを買い来るんですか?」

「……わりぃ、今日の帰りに寄る」

「じゃあ、また後でね、先輩」

「あー、はいはい。またな」

 

 

 

 

ちなみに帰りに寄ったやまぶきベーカリーのパンは凄く美味しかったと言っておこう。

 



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第23話「受け継がれし未完成な歌」前編


また間隔があいてしまいすみませんでした。

バンドリを知ってからだいぶ時間が経ちましたが、ようやくギターを始めました!

まぁ、アコギですけどね……。


 

とある日の放課後、友希那に呼ばれてRoseliaが待つ練習スタジオに向かった。

扉を開けて入ったときには既に話し合いが始まっていたようだ。

 

「この曲を聴いて欲しいの…」

 

そういって友希那がかけた曲は…どこかで聴いたことのある曲だった。

 

「この曲は……」

「すごい、凄くカッコいい!この曲を演奏してみたいです!」

「…うん、私も…演奏、してみたいな…」

「だよねー。アタシもこの曲、弾いてみたいんだよねー」

「そうですね。しかし、この曲は一体誰が歌っているのかしら」

「……それは」

「友希那、もしかして……」

「……いえ、やっぱりこの曲は今のレベルに合わない」

「えっ……!?」

 

そんなわけない。Roseliaはプロになるにはまだ日が浅いが、技術なら負けてないはず。それは友希那だってわかっている。ならば理由は一つ。

『憧れ過ぎた存在』の曲なのだろう。おそらく、FESを目指しているのに関係しているのだろう。

 

「そういうわけよ。…今の曲は忘れて」

「…ねぇ、友希那。さっきの曲って……?」

「今日はもう解散よ。…各自、自主練習を怠らないように」

「…友希那、アタシも一緒に帰るよ」

「そう。わかったわ…」

 

友希那とリサは先に帰ってしまった。リサは何か理由を知っているみたいだし、ここはリサを信じよう。

 

「……湊さんは何か迷っているみたいですね。……そして、私も……」

「そうみたいですね。でも!あこはあの曲がすっごくカッコイイと思ったので演奏したいです!」

「…そう、だね。あこちゃん…。私も、…演奏したいと…思いました…」

「だったら今からでも遅くないんじゃないか?」

「へ?」

「追いかければ追いつくと思うけど?」

「でも、まだ片付けが残って…」

「それは俺がやっておくから、さっさと追いかけな」

「ありがとう、悠にぃ!りんりん、行くよ!」

「…う、うん。行こう…あこちゃん…!」

「…私は残って片付けを手伝います。湊さんのことは任せましたよ」

「はい!任せてください!」

 

そう言うとあこと燐子は友希那を追いかけに行った。

残ったのは俺と紗夜。

しばらくの間、無言で片付けていたが、ふと、紗夜の方を見ると目が合った。目を合わせたまま口を開く。

 

「…私は、Roseliaにとって必要なのかしら…?」

「紗夜、急にどうしたんだ?」

「頂点を目指すなら凡人である私ではなくて、もっと才能のある人や『天才』と呼ばれる人の方が良いのではないかと……」

「……紗夜にはRoseliaは天才集団に見えるのか?」

「…失言でした。しかし、私でなくても……」

「…どうしてそこまで自信が無いんだ」

「私よりも妹である日菜の方が優れているからです」

「日菜か……」

「私はいつだってあの子に負けてきた!勉強もスポーツも習い事も!全部!あの子に追い越されるの!…あの子がギターを始めたのを知ってるわ。また私はあの子に追い越される!今までやってきたことが一瞬で!私は……!」

「ストップだ。少し落ち着け」

「落ち着くなんて無理よ!」

「うるさい!!!」

「っ!」

 

あー!イライラするー!

どうして気付かないんだ!

頭をクシャクシャに掻きむしりたいのを我慢して紗夜に言った。

 

「そこまで嫌なら逃げたらどうなんだ?」

「そんなこと出来るわけありません」

「だよな。じゃあ、なんで負けたくない?」

「周りから出来ない姉としてあの子と比べられるのが嫌だった」

「そうか。ならどうして同じ土俵に上がる?」

「あの子が勝手に私の真似をするだけ」

「……。でも、張り合おうとしてるよな?」

「……そう、ですね」

「多分だけど、紗夜のそれってさー、妹の目標となる姉を目指しているだけじゃない?」

「……はい?」

「周りに言われて悔しかったんじゃなくて妹の、日菜の目標になれなくて悔しかったんじゃないの?」

「そ、れは……」

「現実と日菜に向き合え、紗夜。紗夜の感じてる感情は当たり前のものだ」

「…現実と日菜に向き合う……」

「時間がかかってもいい。逃げるな」

「そう、ですね。……私なりに頑張ってみます」

 

 

片付けが終わり、家に帰ることになった。

 

「紗夜、送っていこうか?」

「いえ、一人で帰らせて下さい。…気持ちの整理をしたいので……」

「そっか。焦らなくていいからな」

「はい」

 

紗夜を先に帰し、まりなさんに鍵を返しに行った。

まりなさんはいつも同じ場所にいる。あの人の定位置というか、なんというか…。たしか、あこが「まりなさんはいつも同じ場所にいるからNPCみたい」と言っていた。

 

「まりなさん、練習終わったので鍵を返しに来ました」

「あ、悠君。お疲れ様。…Roseliaちゃんのお守り?」

「いや、お守りって…。そんなんじゃないですよ」

「悠君ってRoselia以外に気にしてるバンドあるの?」

「急に何ですか、その質問」

「いいから、いいから」

「…グリグリですかね?」

「聞いてるよ、グリグリの為に色々頑張ったんだって?」

「まぁ、学校の先輩達なんで」

「そっかー。グリグリ以外にはいる?」

「…うーん。まだバンドを組んでないんですけど、いるにはいますね」

「え?だれ、だれ?」

「学校の後輩です。女でランダムスターを使う変態かなぁ」

「確かにそれは変態だねぇ。上手いの?」

「いえ、まったく。チューニングを覚えたばかりの素人です」

「the素人だね」

「覚えが早すぎるのとギターを弾くときの雰囲気に少しカリスマ性があるんですよ」

「むー。羨ましい才能だー」

「ほんと、そうですよね」

「あ、もうこんな時間かー。車で送っていこうか?」

「え、まりなさんって車持ってたんですか?」

「バカにしてる?」

「いえ、滅相もない。それじゃあ、お願いします」

「悠君、ナビゲートは任せたぜ!」

「はいはい」

 

 

時間的に遅かったからまりなさんに家まで送ってもらった。

……そういえばまりなさんって何歳なんだろう?怖くて聞けない。



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24話「受け継がれし歌」後編

 

次の日、友希那から「みんなに話がある」と連絡があり、CiRCLEに向かった。

 

スタジオに着くと既に紗夜、あこ、燐子が集まっていた。

 

「みんな、お疲れ」

「あ、悠にぃ!おつかれー」

「あとは湊さんと今井さんだけね」

 

しばらくするとリサと友希那が来た。

 

「おっす、おはよ〜。アタシ達が最後だったかー」

「突然呼び出してごめんなさい。今日は、改めてみんなに話しておきたいことがあるの」

「話したいこと…?」

「ええ。昨日聴いてもらったあの曲だけど……。あの曲は私の父の曲なの」

「ええーっ!」

「友希那さんの……お父さん…?」

「あの曲を初めて聴いたとき、私はこの曲を歌いたいと、思った。だけど……」

「自信が持てなかったのか?」

「似たようなものね。今の私にあの曲を歌う資格があるのかわからなかった。少なくとも、胸を張って言えないと思ったの」

「資格……」

「あの曲が持つ、音楽への純粋な情熱を今の私では歌いきれないと、そう思ったのよ」

「曲がレベルに似合ってないって…そういうことだったんですね」

「だけど、あの曲と向き合いたいという気持ちは本物だと……それも音楽への情熱なんだと……それに気付かせてくれた人がいた」

「友希那……」

「……そんな事情があったんですね…」

「もし、機会をもらえるのなら私は…あの曲を歌いたい。あの曲にもう一度命を吹き込みたい。それが私に出来る向き合い方だと思うから……」

「………向き合う」

「ライブまで日がない上に、私情で申し訳ないと思ってる……。でも、私は……」

「駄目だなんて言ってません。…ただ少し、驚いただけです」

「あこは大賛成です!」

「私も、みんなとあの曲を…演りたいです……」

「だってさ、友希那?」

「…みんな。ありがとう」

 

よかった…。あとは、ライブまでの少ない日数でどれだけ仕上げられるか、だけど…Roseliaなら問題ないだろう。

 

「リ〜サ姉」

「ん?悠、どうしたの?」

「無理したら駄目だからな」

「……だいじょーぶ、倒れたら元も子もないもん」

 

リサは一人で背負い過ぎるからなぁ。それが空回りしなきゃいいけど……。

 

「明日からあの曲の練習をするから、各自、体調管理をしっかりするようにして」

「はーい」

「もちろんです」

「はい……」

「もっちろん」

「今日は解散ね。お疲れ様」

 

帰ろうとしたところを友希那に呼び止められた。

 

「あ、悠。明日から来なくていいわ」

「……言葉が足りてないぞ。みんな驚いてる」

「ごめんなさい…。サプライズというのかしら?貴方を驚かせたいから…当日のライブだけ来てちょうだい」

「言うと思ったよ。了解。楽しみにしてる」

「ええ。最高のライブにすることを約束するわ」

 

友希那がこんなことを言うようになったのか。Roseliaのおかげか?少し丸くなった気がする。……体型のはなしじゃないぞ?

 

 

それからRoseliaのライブまで暇だと思っていたのだが、むしろ忙しかった。

なんか事務所に呼び出されて歌とダンスの練習とかギター、ベース、ドラム、キーボードの演奏をレコーディングした。

何曲もというわけではなく、今度使うからといった理由で一曲だけだった。今度っていつだろう?でもまさか、『オトモダチフィルム』の作詞作曲者のオーイシさんが歌とダンスを教えに来てくれるとは……。もともと動画を見たりしてたから割とスムーズにいき、すぐに踊れるようになった。

オーイシさんに感謝だな。

 

 

いろいろやっているうちにRoseliaのライブの日になった。チケットは友希那から貰っていたから優先的に入ることができた。

ライブまで少し時間があるみたいだし、みんなの様子でもみてこようかな。

 

楽屋に着くとRoseliaは既にステージ衣装に着替えていた。

 

「みんな、緊張してる?」

「悠?どうしてここに?」

「時間あったし、緊張してっかなぁって」

「いいえ、むしろ気合いが入ってるわ」

「じゃあ、紗夜は?」

「いえ、私も緊張はしていません。練習は本番のように本番は練習のように。自分にそう言い聞かせてますから」

「あこは?」

「楽しみで緊張なんてしないよぉ」

「燐子は?」

「わ、私も…楽しみで…」

「……リサ?」

「え!な、なに?」

「緊張してるの?」

「あははー、大丈夫大丈夫!」

「そうか?」

 

どっからどう見ても緊張してることがわかる。でも、悪い方の緊張ではないみたいだ。なら大丈夫かな。

 

「じゃあ、向こうに戻るよ。また、ライブが終わったら来る」

「ええ。楽しみにしてなさい」

 

 

元の場所に戻ると他の人がいた。

どこかで見たことがあるような?

注意深く見てみると、ミュージックスクールに通っていた頃に何度か臨時教師として来てくれた湊先生だということに気づいた。

近づいて話しかけてみる。

 

「こんにちは。あの…もしかして湊先生、ですか?」

「ん?君は……。如月君かい?」

「はい!お久しぶりです」

「懐かしいね。あんなに小さかった君が……平均身長には届かないものの大きくなって」

「…身長のことは放っておいてください。それにしても湊先生はどうしてここに?」

「娘にライブをするから聴きに来てと言われたものでね。友希那というんだが……」

「友希那のお父さんだったんですか、湊先生は」

「なんだもう知っていたのか。……おっと、もう始まるみたいだね」

 

会場が暗転する。ちょっと間があいてRoseliaの『BLACK SHOUT』のイントロが聞こえてくる。そしてステージにライトが当たる。ライトアップされたステージに立つRoseliaのメンバー。

観客たちは一気に盛り上がって直ぐに静まる。みんな友希那の歌や楽器の演奏をしっかりと聴きたいからだろう。

あっという間に二曲が終わり、三曲目に入るらしい。

 

「次で、最後の曲となります。次の曲は……私が一番尊敬するミュージシャンの曲をカバーしたものです。…それでは、聴いてくださいーー」

 

友希那のそのMCを聞き、思わず湊先生を見る。湊先生は目元を押さえて肩を震わせていた。

 

「……友希那。ありがとう」

 

どういった意味で呟いたのかはわからない。でも、男の涙は見ていいものではない。湊先生の方を見ないようにしてライブに集中した。

 

 

そして、Roseliaの演奏が始まる。

ギターのジャリっとした音が聞こえる。イントロが終わり、友希那が歌い始める。

 

「裏切りは暗いままーーー」

 

やっぱりこの曲は湊先生が歌ってくれた曲だ。

「この曲には僕のいろいろな感情がこもっているんだ」

と言って少し笑っていた。

 

「この曲は僕のいろいろな感情がこもっているんだ……」

 

隣にいる湊先生は泣きながら言った。

 

「前も同じこと聞きましたよ」

「そうだったね…」

 

曲も終盤に差し掛かったとき湊先生は移動し始めた。

 

「さすがに娘に泣いてる顔を見せたくないから、楽屋に書き置きしに行ってくるよ」

「そうですか。湊先生、いい曲でした」

「如月君、あれはもう僕の曲じゃなくて娘の曲だよ。友希那に託したんだ、僕の夢を」

「残念です。もう、湊先生の歌を聴けないなんて」

「はは、ありがとう。じゃあ、行ってくるよ」

 

ふと、ステージの方を見ると友希那の後ろに湊先生の姿がぼんやりと見えた気がした。

 

「はっ、そっくりじゃん。流石、親子だな」

 

瞬きをすると湊先生の姿は見えなくなった。

演奏が終わったようだ。

 

「今日は来てくれてありがとう。以上、Roseliaでした」

 

観声と拍手に包まれながら退場していくRoselia。

 

「俺も楽屋に行くかな」

 

 

〈楽屋〉

 

「お疲れー」

「悠、聴いてくれてありがとう」

「あれ?そのスコアは……」

「これ?これは…私のお父さんのスコア。…ここに今日の感想を書いて帰ったみたい」

 

『いいライブだった 父より』

 

「不器用だなぁ、湊先生も」

「……先生?」

「ミュージックスクールのとき何回か来てくれたんだ」

「そうだったの…」

「それにしても湊先生…、泣いてるところを見せたくないって意地張って、それはないでしょ」

「えっ?お父さんが泣いてた?……本当に?」

「本当だって。ほら、スコアのところに涙の後があるだろ?」

「……これね。お父さん……」

「リサ、あとはよろしく。俺、ちょっと用事あるから」

「え、ちょ、…あー、行っちゃった」

 

つい、逃げてしまった。用事あるってのは本当だけど、急ぎではなかったんだけどな。

 

「一日で親子の涙を見るとか俺じゃ耐えられんわ」

 

まぁ、俺が泣かせたわけじゃないからいいけど。

それにしても事務所からまた呼び出しをくらった。なんだろ?テレビ出演とかそんな感じかな?仕事だから行かないといけないんだよなぁ。

 

面倒だなぁとか、やだなぁとか思いながら事務所へと向かった。

 



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第25話「ついにデビューする」


お待たせ致しました。

……いや、別に忘れてたわけじゃなくてですね、いろいろとあったんですよ。体調崩したりとか……あと、体調崩したりとか…。

素直に白状します。
すみません!COD mobileにハマってただけなんです!

……はい、申し訳ありませんでした。


 

事務所というかプロデューサーに呼び出されて事務所に向かった。

 

〈会議室〉

 

「急で悪いけど、バラエティー番組に出演してもらいたい」

「ホント急ですね」

「薄々気づいてたんじゃない?」

「あれだけやらされれると流石に……。わざわざオーイシさんまで来てましたし」

「で、その番組で君のプロフィールを公開することになってるんだけど、前と変更点はないよね?」

「そうですね…。変わったところはないと思います」

「あと、いくつか写真も公開していいよね?」

「良いですよ。……変なヤツじゃなければですけど」

「大丈夫、変なヤツじゃないよ。ちゃんとしたヤツだよ」

「なら、大丈夫ですね」

「(君にとっては違うかもしれないけどね)」

 

 

 

〈撮影当日〉

 

「はーい、それでは本番。3、2、1、どうぞ…」

 

「皆さん、こんばんは!メインmcの佐々木です。この番組は『普段、スポットライトを当てられない新人の芸人やアイドルにスポットライトを当てよう』というコンセプトとなっております」

「えー、本日もなんとゲストに来ていただいています。……いや、そもそもゲストおらんかったら何も出来んやろ。…では、気を取り直してこの方に来ていただいています、自己紹介お願いします」

 

「はい、○△事務所に所属してます。新人アイドルの如月悠といいます。ゲストに呼んでいただき、ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」

「はい、よろしく。悠くん、で良いよね?」

「はい、よろしくお願いします」

「結構若いねぇ、歳はいくつ?」

「今年で17になります」

「へー、ということは高校2年か。すごい小柄だけど身長ってどのくらいなの?」

「えっと……152cmです」

「え、152cm!?そんなに小さかったんだ。因みに成長の余地は」

「夢や希望をもっていても叶わないものもあるんですよ……」

「…終わったんだ、成長期。あ、でも俺も高校の時は結構小さかったんだ」

「そうだったんですか?想像つかないです」

「よく言われるよ。身長が伸びなくなって『もっと背が高くなりたい』って毎日考えてたら今の身長まで伸びたんだよね」

「…僕もやってみます」

 

「趣味とか教えてもらっても良い?」

「趣味は喫茶店巡りとかギターですね」

「喫茶店巡りか。一人で?それとも友達と一緒に?」

「基本、学校の友達と一緒行きますね。一人で行くことは少ないですね」

「なるほど。もう一つの趣味はギターなんだね。どのくらい弾けるの?」

「そうですね…。余程難しい曲じゃなければ弾けます」

「へぇ、じゃあ最近弾いた曲は?」

「最近弾いた曲は、オーイシさんの『君じゃなきゃダメみたい』ですね」

「そうなんだ。あれ?その曲ってアコギの曲じゃなかったっけ?」

「そうですね。この間、ご本人さんと一緒にエレキで弾けるようにアレンジしたんですよ。もちろん、アコギの方も弾けますよ」

「すごいなぁ。俺は昔にピアノ習ってたぐらいだからギター弾けるのは羨ましいな」

 

「悠くんって確かバンド組んでるって聞いたんだけど…」

「あ、はい。プライベートでバンドやってますね」

「それって事務所的に大丈夫なの?」

「はい、事務所の方には許可をいただいているので大丈夫です。まぁ、元々バンドやってる時にスカウトされたんですけどね」

「そうだったんだ。ちなみにバンド名教えてもらって大丈夫?」

「大丈夫ですよ。『THE IRREGULAR』というバンド名です」

「すごいバンド名だね。やっぱりパートはギターかな?」

「基本ギターですね。」

「基本?え、ギター以外にも弾けたりするの?」

「ベース、ドラム、キーボードなら弾けますね。あと、時々ボーカルもやりますね」

「…すごい。他のバンドメンバーも同じように色々弾けるんだ」

「はい。バンドメンバーに恵まれた感じですね」

「最近の若い子たちはみんな楽器できるの?」

「いやいや、流石にないですね。でも、最近ガールズバンドが人気みたいですね」

「ガールズバンドか。やっぱり悠くんの周りにも多かったりする?」

「多いというかガールズバンドしか居ないですね」

「じゃあ、悠くんのバンドだけがガールズバンドじゃない感じ?」

「僕以外のメンバーは女の子ですけど」

「……大変じゃない?」

「でも、ファンの方は男の人もいるので大丈夫ですよ」

「あ、スタッフからカンペが出てる。『ライブのときの写真があります』だって。…その写真がこちらです」

「あ…。そ、その写真は!」

「?おかしいなぁ。悠くんはどこにも写ってないね」

「ストップ!ダメです!」

「急にどうしたの?……えっと、もしかしてこの子が悠くんだったりする…?」

「えっと……。はい、そうです……」

「そういう趣味とかもあったんだね…」

「ち、違いますよ!これは友達に無理矢理させられたんです!」

「ま、どっちでもいいけどね。しかし、あれじゃない?もう女装してアイドルやっちゃいなよ」

「嫌ですよ…。神崎さん、なんでこの写真を選んじゃったのかなぁ…」

 

「じゃあ気を取り直して。最後にギター弾いてもらってもいい?」

「あ、はい。曲は何がいいですか?」

「せっかくだし、話にもでた『君じゃなきゃダメみたい』で」

「わかりました。あ、ありがとうございます」

「そのアコギでいけそう?」

「どうやらこれ僕のアコギみたいです」

「じゃあ、安心だ。あっちにセッティングしてあるから」

「あ、本当だ。……準備できました」

「それじゃあラストを飾る演奏を宜しく」

「ハードル上げないでくださいよ…」

 

「いきます。『君じゃなきゃダメみたい』」

 

前奏から気が抜けない。

今でもいっぱいいっぱいだ。オーイシさんはこれ以上のことを平然とやってのけるのだから凄いギタリストだ。

 

「あの子がーーーーー」

 

サビに入り、最後まで弾き切る。ミスはないもののオーイシさんのようなにはいかなかった。プロと比べても仕方ない話ではあるけれど。

撮影現場から拍手が送られる。

 

「凄く上手いじゃん。流石だね」

「いえ、それほどでも…」

「もっと話したいこともありますが、残念ながら終わりの時間のようです。それでは皆様、また次回に会いましょう。バーイ!」

「ば、バーイ」

 

 

 

〈撮影終了〉

 

撮影が終わると神崎プロデューサーが話しかけてきた。

 

「いやー、悠くん良かったよ。リテイクなしだ」

「はい、こちらこそありがとうございました」

「でも、これから大変かもしれないね」

「どういうことですか?」

「うーんと…まぁ、そのうちわかるかな?」

「そう、ですか。頑張ります」

「うん。あ、ところで悠くんってゲームとかしたりするの?」

「結構しますね。急にどうしたんですか?」

「ほら、ゲーム番組とかにアイドルとか声優とかを呼んだりするんだけど、悠くんもその候補に入ってもらおうかなって」

「えっと…。嬉しいですけど、大丈夫なんですか?トークとか面白くないですし」

「大丈夫、大丈夫。メインキャストの一人は芸人だから。ちなみに交代制でもう二人声優さんがメインキャストについてるよ」

「まだ決定しているわけではないですよね」

「そうだよ。悠くんさえよければ話を入れておくけど」

「……わかりました。僕は大丈夫です」

「ありがとう。いつになるかはわからないけど、決まったら連絡するよ」

「お願いします」

 

初めての番組出演だったけど、無事に終わって良かった。ところで俺は本当にアイドルに分類されるのだろうか?

というか、本当に俺は必要なのだろうか?

大きい芸能事務所なんだから簡単に信用を失うことはないだろうに。

Pastel*Palettesのみんなのためにもやるしかないんだけどね。少しでも可能性は高い方がいい。

 

今はそれよりも…放送された後は、大変だろうなぁ。みんなが見ないことを願おうか。

 





報告致します!
ついに全体PV数が10万を突破しました。
この数が多いのか少ないのかはよくわかりません。
ですが、これまで読んでいただきありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。

あと、COD mobileは少し控えめにしたいと思います。(思うだけでするとは言ってない)


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