SCP財団 ハーメルン支部 (エージェントA)
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SCP-002-HA 矛盾がある階段

scp-002-ha 「無限の階段」

オブジェクトクラス:safe

 

特別収容プロトコル:scp-002-haはその性質上移動が不可能である事から、高さ5mで網状の電気柵で覆い常に電気を流して保護して下さい。また周囲約100mの範囲でレベル◼️の封鎖が行われます。いかなる人物も封鎖の範囲内に入れないよう注意し、担当の警備員3名を常に配置してください。

研究目的に限りレベル3以上の担当職員の許可が必要です。

 

説明:scp-002-haは◼︎◼︎県◼︎◼︎市の郊外に位置する古いアパートの二階に通じる階段です。アパートは2階建で近代的な作りをしています。一階に5つ、2階に5つの住居スペースがあり、築10年ほどと見られています。損傷は特になく人が住む為の設備は充実しています。またアパート自体に損傷を与える試みは成功していますが、階段に接地している地面、階段そのものに対する損傷実験は全て失敗に終わっています。

scp-002-haは近隣住民の『階段に登ったまま1週間以上動かない奇妙な男がいる』という警察への通報が財団の目に留まり、エージェントの調査により異常性が発見された事で収容されました。また確保された男はインタビューの後Aクラス記憶処理を施して解放し、アパートの周辺にカバーストーリー『危険ガス類発生の為の封鎖』を流布しました。

scp-002-haの異常性は人が階段へ登る際に発現します。人が階段を登る際、登った対象は頂上付近で登った体勢のまま完全に硬直します。硬直は、殆どの場合他の人間が話しかけるか対象に触れるまで続きます。

Dクラス職員を使用した実験で硬直している間は如何なる生理的・肉体的な活動も停止することが分かっています。自発的にその状態から抜け出す試みは一切が失敗に終わっています。また時間に関わらず、放置した対象は精神面以外は登る直前の体調、見た目を維持します。

 

 

補遺002—A:

 

音声記録002-A

 

インタビュー対象者:D-1233

インタビュー担当者:篠崎博士

 

前書き:被験者は約1分の間SCP-002-HAの影響下にいた。

 

<記録開始>

 

篠崎博士:こんにちは、D-1233。

 

D-1233:博士…俺、俺は…

 

篠崎博士:落ち着いてください、D-1233。一つずつあなたが何を体験したのか、教えてください。

 

D-1233:わか…分かりました。[深いため息]…俺は、俺は階段を上っていた。あの、普通のアパートの階段だ。上るのは、確か…そう、確か全然普通だったはずだ。だけど…頂上付近に来た時に…全てが、変わった…。

 

篠崎博士:…変わった、とは?

 

D-1233:俺は…俺はうつむいていた。そして階段を上り続けていた。永遠の時間を…ずっと、ずっと、ずっと…きっかけは分からない、忘れたんだ…信じてくれ。俺は、ただ、ひたすらに…階段を上り続けていた。階段を上っていたんだ、博士…。

 

篠崎博士:永遠、でしょうか?あなたが硬直した時間は、1分ちょっとだったはずですが。

 

D-1233:[激高して机を叩く]博士は永遠を理解していないんだ!永遠とはそういうものじゃない!1分だとか1年だとか関係ないんだよ!

 

篠崎博士:落ち着いてください、D-1233。

 

D-1233:俺は今も永遠に階段を上り続けている!今も、今もずっとだ!俺がこうしている間も、俺は過去…違う、ずっと先の未来までずっと!俺は階段を上り続けている!俺は…俺は今…どうしてここにいる!?

 

篠崎博士:インタビューを終了します。彼を連れて行ってください。

 

<記録終了>

 

D-1233は錯乱して取り乱した後、取り押さえられAクラス記憶処理を受け回復した。

 

 

 

音声記録001—B

 

インタビュー対象者:D-1967

 

インタビュー担当者:篠崎博士

 

前書き:被験者は約4か月にわたってSCP—002—HAの影響下にいた。

 

<記録開始>

 

篠崎博士:おはようございます、D—1967。

 

D-1967:おはよう…ございます…

 

篠崎博士:調子はどうですか?

 

D-1967:はい…博士、私は、私はこうしてここに自分がいるという事が、理解できないのです…

 

篠崎博士:詳しく聞かせてください。

 

D-1967:私は…階段を上っていました。うつむいて、上から下へと流れる階段を一つずつ数えるように、永遠の時間を…[沈黙する]

 

篠崎博士:…続きはありますか?

 

D-1967:[涙を流し、声を震わせる]…はい、博士。私は…それから、おかしくなってしまいました…あなたに起こされたその瞬間、私は…私は、一瞬で永遠が終わって…でも、永遠はそこにあります。ずっと…私の隣で…頭の内側で、私の永遠は続いているんです

 

篠崎博士:どういう意味ですか?

 

D-1967:私は…私は、永遠に階段を上っていました。それは永遠に続いています。今もなお。だというのに、私はここにいる…私は、階段を上っていなければならないのに、こうしてあなたと話しをしているんです。それが、その矛盾が…私には、耐え難い苦痛に感じられるのです。

 

篠崎博士:…なるほど。他に何かありますか?

 

D-1967:…私は、一度だけ、頑張って顔を上げました。外に、青空が広がっていました。地平線のない、とても高い場所だった…私は永遠に顔を上げて…そして耐えられなくなって…永遠に顔を下げました…私は…私は!ああ!頭がおかしくなる…!私は永遠に顔を…顔を上げたんです!博士、信じてください!私は…矛盾なんです!

 

篠崎博士:ありがとうございます。インタビューを終了します。

 

<記録終了>

 

D-1967は錯乱した後、取り押さえられてAクラス記憶処理を受けました。

 

 



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SCP-003-HA 貝の唄

アイテム番号:SCP-003-HA

 

オブジェクトクラス:Euclid

 

特別収容プロトコル:SCP-003-HAはその発生を見逃さないため、サイト9101によって収容され、常に監視してください。現象が発生した場合、SCP-003-HA-1群がサイト9101外に飛び出さないように注意されなければなりません。また、常に高性能録音機によって録音され、※また地面から上空10mにあたる座標に同一のものを設置してください※→現在、一部の異常現象が発生しない事案が続いていますが、録音を絶やす事は許されません。補遺02-1実験ログ21を参照のこと。また、海に面する部位には網を仕掛け、SCP-003-HA-1群が外に出ないように管理してください。

 

説明:SCP-003-HAは■■県■■市の砂浜のごく一部分(縦30m、横20m)で発生する貝—SCP-003-HA-1群によってもたらされる、またはSCP-003-HA-02からSCP-003-HA-06によってもたらされる同タイミングで起きる異常現象です。

SCP-003-HA-1群は異常現象以外ではごく普通のヤマトシジミの群れで、現象が起きるまで・または起きた直後からは一切の異常を示しません。

SCP-003-HA-02からSCP-003-HA-06は地上10mの座標から発生する正体不明の人間の声です。全てが男性によって構成されています。

 

SCP-003-HA-1群は極めて無作為なタイミングで未知の言語・リズムで歌いだします。またこの現象は歌に触れたあらゆる貝にも感染しますが、範囲の外の貝には影響はないようです。この現象は段階を踏んで徐々に規模・音量を増加させ、形態を変化させていきます。

 

以下はSCP-003-HAの段階です。

 

段階1:貝が歌い始める。初めは無作為に選ばれた貝が歌いだし、徐々に感染していき2分もしない間に範囲内のほぼすべての貝に影響が及ぶ。

 

段階2:貝が飛び跳ね始める。飛び跳ねた際、貝と貝がぶつかり合う音が響くが歌のリズムを取っており、高音、低音を交えて歌の規模を大きくする。

 

段階3:貝に手足が生えて貝の上でタップダンスを踊り始める。また、数少ない個体は小石を手に取り自身にぶつける事でリズムを取り始める。

 

段階4:貝で形成された台の上で無作為に選ばれた貝がシルクハットと杖を持って登場し、ソロパートを歌い始める。歌の規模はこの時点で最大限にまで高調する。

 

段階5:※上空10m程の空中より、『アンコール』を求める、3~5人の人間によるまとめられた声が響く※

 

段階6:貝たちは求められたアンコールを無視する形で静止する。手足は貝の中に入り見えなくなる。この時点で、貝は生物学的に自然な行動を始める。

 

 

 

補遺02—A:実験記録

実験ログ21

筆頭研究者:■■博士

説明:上空10mのアンコールを求めるであろう座標にて、段階1時点から録音を開始。以下、日本語訳。

 

<記録開始>

 

SCP-003-HA-02:貝がまるで人間のように踊り狂うこの光景…これこそまさにエンターー…テイィンメントだ!今日もみんなと一緒にトークで暴れ回るから、視聴者の皆様も気軽に参加してくれ!参加についてはいつもの方法で頼むよ!

 

SCP-003-HA-04:さあ、今日はどの貝を壇上に立たせる?選ばれし貝はどの貝だ?

 

SCP-003-HA-03:あいつだ、あの一番大きな貝!デカいから目立つ!目立つは楽しいぞ!

 

SCP-003-HA-02:小さい奴の方が意外性があっていいんじゃないか?エンターテイメントは意外性の連続によって構成されるものだよ!

 

SCP-003-HA-05:美しい貝はどうだ?壇上の上で宝石の如く舞わせてみたら、面白い光景が拝めると思わないか?僕はそう思うね!

 

 

電話の音がなる。苛立たし気に舌打ちが聞こえる。

 

 

SCP-003-HA-02:折角気分が高揚していたのに!おい、[データ削除]。お前がとれよ!この最高の瞬間をその汚らわしい黒電話が意外性も何もない音でかき消しだす前には!先んじて取っておけよ!

 

SCP-003-HA-06:[電話を取る音]…もしもし、こちら、世界をかき乱す為のエンターテイメント事務所ですが…ええ、はい…そうですが、ええ今まさに。

 

SCP-003-HA-06:…何だって?すみません、カメラ止めて下さ―――

 

 

次の瞬間、プツリという甲高い音と共に声は聞こえなくなる。

 

 

<記録終了>

 

 

この実験以降、SCP-003-HA-02~SCP-003-HA-06の声は現在に至るまで再出現の予兆は無く、沈黙を保っています。

 

 

 

補遺02-B:SCP-003-HA-02がSCP-003-HA-06を呼んだ際の名前は、1年前に財団日本支部セクター■■■から血痕を残し姿を消したエージェント、■■■■と一致します。また、解析により■■■■の声とSCP-002-HA-06の音声はほぼ一致しています。関連性について調査が進行中です。



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