親友に会いに行ったら何故か異世界召喚されたんだが... (晴月)
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第一話 巻き込まれた異世界召喚

「お~い尚文。」

 

「ん?...おお、冬馬か。」

 

冬馬と呼ばれた青年は尚文と彼が呼んだ青年に駆け寄る。

 

「お前んちに行ったら図書館に行ったって聞いて来たんだ....それにしても何で図書館に?」

 

尚文は現在、読者をしようと図書館に来ていた。

 

「決まってんだろ読書だよ読書....ゲームや漫画なんかを買い漁ったから今月は金が無くってな。」

 

「あー....それは、御愁傷様。」

 

冬馬も尚文の現状を知ってそう言葉を掛けるしかなかった。

 

「そういう冬馬もだろ?」

 

「あ~うん....まぁ、そうなんだけどな。」

 

冬馬は誤魔化せないなと後ろ手で頭を掻く。

 

「でもまぁ、タマには読書も悪くないな。」

 

「だな。」

 

二人は並んで図書館に入って行き、棚からそれぞれ一冊ずつ本を手に取る。

 

━━━━━━━━━━━━

 

「う~ん....色々有りすぎて迷うな。」

 

二人は

 

古いファンタジーモノのコーナーに足を運んでいたが、二人とも興味を引かれる作品が多くどれから読もうか考えていた。

 

すると、二人の近くに位置する棚からドサッ、と落ちてきた。

 

「何だ?この本」

 

その本には『四聖武器書』と書かれていた。

 

「....この本から読んでみるか?」

 

「...そうするか。」

 

二人は近くの椅子に腰掛け、本のページを(めく)る。

 

最初のページには世界観の話が掲載されており、要約するとある異世界で終末の予言がなされており。

 

その内容は、『波』と呼ばれる災厄が幾重にも襲いかかり、防ぐ為には別の世界から四人の勇者を召喚する必要があるとの事。

 

その召喚された四人の勇者はそれぞれ武器を装備しており、それは『剣、槍、弓、盾』の四つだという。

 

「いや....流石に盾は武器ではないだろ。」

 

「だよな。」

 

互いに苦笑しながら続きを読み進めていく。

 

次は盾の勇者についての記述ページであった。が、

 

「あれ?」

 

そこには何も描かれておらず、白紙のページが何ページも続いているだけであった。

 

「何で何も書かれて....あれ?」

 

すると突然、尚文がその場に倒れてしまう。どうやら眠っている様子だが、

 

「尚文!?....あれ?なんか.....俺も眠く....。」

 

何故か近くにいた冬馬にも眠気が襲って来たのだった。

 

二人がドサッ、とその場に倒れて込むと冬馬が持っていた本の白紙のページが輝き始め、二人を包み込むように光が溢れる。

 

そして暫くすると本は消え、冬馬達も姿を消した。

 

これが二人の異世界での冒険の始まりだとは二人はまだ知る由もない━━━━━━

 

 

 

 

 

 




岩谷尚文 オリジナルの主人公 親友の冬馬と図書館で読書していたら異世界に召喚されてしまう。基本的に不遇な扱いを受ける主人公。

渡辺 冬馬 本作品の主人公 尚文の異世界召喚に巻き込まれる形で尚文と異世界に呼ばれる。 楽観的な性格。


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第二話 他の勇者達

親友の尚文に会いに町の図書館へと向かい、出会った主人公

渡辺 冬馬。彼は尚文と共に本棚から落ちた本を手に取り読んでみた。すると突然、急激な睡魔に襲われてしまい二人はその場に倒れこんでしまうのだが、


「おお...!」

 

感嘆とする声に尚文と冬馬は目を覚ます。

 

「何だ.....?」

 

「何処だ.....ここ?」

 

戸惑いながらも周りを見回すと二人と同様、状況が呑み込めていない様子の男が三人。

 

此処は一体どこで、彼らは何者なのか? そんな疑問が二人の頭を埋め尽くす。

 

更に周りを見回すと、石造りの壁に床には幾何学な模様が描かれており冬馬達の前には祭壇らしきものが設置されている。

 

「何かの儀式.....なのか...?」

 

冬馬は一体何の儀式なんだろうと再び、疑問を感じ取っていた。

 

「はっ....そうだ、尚ふ.....み?」

 

冬馬が振り向くとそこには何故か右腕に小型の盾を装備している尚文が呆然としていた。

 

「おい、尚文....尚文!」

 

「はっ...いけない、突然の出来事に頭が....」

 

どうやら別の場所にやって来たことと自分に装備されている盾のことでパニックになって思考が停止してしまったらしい。

 

「しっかりしろ......それにしても、此処は一体?」

 

「あの、すいません...ここは?」

 

冬馬がそんな事を言った直後、剣を携えた青年らしき人物が近くにいたローブを着た人物に尋ねた。

 

(あれ?....今の声、何処かで聞き覚えが....何処だっけ?)

 

剣の持ち主の声に既視感を感じてしまう冬馬だったが、

 

「おお、勇者様方!どうかこの世界をお救いください!」

 

「「「「「はい?」」」」」

 

ローブの男からの突然のカミングアウトに異口同音で冬馬達は答えてしまう。

 

「それはどういう意味でしょうか?」

 

(何だこの展開の早さ.....なろう系か?....なろう系なのか?)

 

近くにいた男の一人がローブの男に事の真意を問いただしているとき、冬馬だけ何故か現実味を感じずに、まるで良くあるネット小説的な展開の早さだなと考えていた。

 

「色々と込み入った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました。」

 

「古の....儀式」

 

それが異世界に俺達を召喚することか。

と納得した冬馬。

 

「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください。」

 

ローブを着た男は深々と冬馬達に頭を下げる。

 

「まぁ...話ぐらいなら....なぁ?」

 

「あぁ。」

 

「嫌だな」

 

「そうですね」

 

「元の世界に帰れるんだよな?話はそれからだ」

 

冬馬達が話を聞こうとした途端、他の三人は遮るように口々にそう言い放った。

 

(は?....今なんつった、コイツら。)

 

三人の発言に異を唱える冬馬。どうやら三人の態度にカチンときた様子だ。

 

(頭下げて頼んでる相手に対してなんて態度だよ、せめて話くらい聞いてやればいいじゃねぇかよ。)

 

冬馬と尚文が三人を睨み付ける。すると三人は二人に視線を向ける。

 

(何でコイツら半笑いなんだよ....もしかしなくてもこの状況を楽しんでるのか?)

 

「人の同意無しでいきなり呼んだ事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」

 

剣を持った男、見た目は高校生くらいの年齢だ。

 

(あっ、思い出した....こいつの声、もしかしなくても....やっぱそうだイキ○トだ...もしくは魔法...)

 

それ以上はいけない。

 

「仮に世界が平和になったらポイっと元の世界に戻されてはタダ働きですしね。」

 

弓を持った男も同意してローブの男達を睨み付ける。

 

(なんかコイツ、三人の中で一番ムカツクんだけど....何でだろうか?)

 

冬馬の主観はスルーしてと、

 

「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ?話に寄っちゃ俺達がこの世界の敵に回るかもしれないから覚悟しておけよ。」

 

槍を持った奴も散々言う。

 

(あー....つまりは、自分達の立場の確認と後の報酬に対する権利の主張か.....。)

 

なんとも逞しいというか強欲というか....そんな感じの事を言い放つとローブの男は、

 

「と、取り敢えず王様に謁見して頂きたい。報奨の相談はその場でお願いします。」

 

ローブを着た男は重苦しい扉を開させて道を示す。

 

「...しょうがないな」

 

「ですね」

 

「ま、どいつを相手にしても話は変わらねぇけどな」

 

三人はそう言って着いていく。冬馬達も遅れないように追いかけるのだった。

 

━━━━━━━━

 

「ほう、こやつ等が此度の勇者達か」

 

冬馬達のさが通された場所は玉座の間らしき場所でそこには爺さんが鎮座していた。

 

(まるで値踏みするように俺達を見ているな。)

 

「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を挙げい。」

 

(下げてすらいなかったけどな....それにしても国王ねぇ....まるで俺達を使い捨ての道具のようにする腹積もりなんじゃないだろうか?)

 

「さて、まずは事情を説明せねばなるまい...この国、更にはこの世界は滅びへと向かいつつある。」

 

王様の話を要約すると、この世界には終末の予言が存在し、その内容というのは、いずれ世界を破滅に導く幾重にも重なる"波"が訪れる。その波が振りまく災害をはね除けなければ世界は滅びるといった内容だそうだ。

 

そして今年がその予言の日であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計の砂が一度落ちきった時、次元の亀裂がこの国、メルロマレクに発生して凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。その時は何とか凌ぐ事が出来たが次の波はそれよりも強力なものとなる。その問題を解決するために四人の勇者を異世界から召喚したそうだ。

 

(何とも都合のいい話だな....)

 

冬馬は王様の話を聞いて疑心に陥る。何とも彼らに都合が良すぎるからである。

 

 

「話は分かった....で、召喚された俺達にタダ働きしろと?」.

 

「都合のいい話ですね」

 

「......そうだな、自分勝手としか言いようが無い。滅ぶのなら勝手に滅べばいい...俺達にとってはどうでもいい話だ。」

 

(コイツら.....さっきまで内心喜んでた癖に何を今更、)

 

と思ったが、

 

「確かに、助ける義理も無いよな...タダ働きした挙げ句、平和になったら『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないし...というか帰れる手段があるのか聞きたいし、その辺りどうなんだ?」

 

(尚文....お前もか....。)

 

親友がまさかあの三人に便乗して意見するとは思わなかった為、冬馬は尚文を見た表情がエネル顔のようになってしまう。

 

「ぐぬ...」

 

王様は自分の思い通りに勇者達を操れると思っていたのか、悔しそうな顔をしている。

 

(そう簡単に人を操れるかっての。)

 

冬馬は王様が何かよからぬ事を考えている事を悟り、そう悪態を心の中でついた。

 

その後、王様の臣下が勇者達には報酬を与えると言うと、尚文を含めた四人は喜んだ。

 

「では勇者達よそれぞれの名を聞こう。」

 

王様が勇者達に名前を訪ねる。

 

「俺は天木 錬。年齢は16歳、高校生だ。」

 

(まんまイキリ..)

 

それ以上はいけない(二度目)...剣を携えた少年はそう名乗る。

 

「俺の名前は北村 元康。年齢は21歳、大学生だ。」

 

槍の勇者も名乗る。

 

 

「僕の名前は川澄 樹。年齢は17歳、」

 

それに続いて弓の勇者も名乗る。

 

「俺は岩谷 尚文。年齢は20歳、大学生だ。」

 

これで勇者は全員名乗り出た...筈だった。

 

「お主は?」

 

「...へ?...俺?」

 

何故か王様は勇者ではなく巻き込まれただけの冬馬に目を向けた。

「あの~王様?...俺は異世界召喚に巻き込まれただけの一般人なんですけど?」

 

と、冬馬は語る。だが、

 

「ほう...では、その"腰に携えた短剣"は何だ?」

 

「へ?」

 

確認すると、確かに冬馬の両側の腰の辺りに短剣が携わっていた。

 

「え...何で?」

 

「お主は、言い伝えの通りならば...波が起こる10年に一度現れるとされる"双剣"の勇者に間違いないだろう。」

 

(何だそれ?)

 

冬馬は困惑した、自分と尚文が読んだ本には四大勇者の事は描かれていたが、"双剣"の勇者などという名前は一行足りとも出てきてはいないからである。

 

(こじつけっぽいけどな。)

 

とはいえ、名乗れと言われた以上名乗らなければならないと思い

 

「冬馬...渡辺 冬馬 年齢は20歳、大学生だ。」

 

冬馬も名乗った。

 

「ふむ、錬、元康、樹そして冬馬か。」

 

「王様、俺を忘れてる。」

 

「おっとこれは失礼した。」

 

(わざとじゃねぇの?)

 

王様の発言に裏があるような気がしてならない冬馬。

 

「では皆のもの、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい。」

 

「「「「ステータス?」」」」

 

異世界で聞く事が無いと思っていた言葉を聞いて四人は、戸惑う。

 

「えっと、ステータスってどうやって見るんでしょうか?」

 

おずおずと樹が王様に進言する。

 

「何だお前ら知らなかったのか?」

 

錬が冬馬達を呆れた様子で見てくる。

 

(このイキ○ト...って、文字が隠されてる!?)

 

危ない発言はこのように規制が入りまーす。

 

(ふざけんなよナレーション!)

 

....気を取り直して、話を戻そう。

 

「視界の端にアイコンみたいなのがあるだろ?」

 

「ん....ああ。」

 

「それに意識を集中するようにしてみろ。」

 

なんとなく上から目線がムカついた冬馬だったが、錬の言葉通りにすると、自分のステータスが可視化された。

 

渡辺冬馬

 

職業 双剣の勇者 Lv1

 

装備 スモールダガー (伝説武器)

異世界の服

 

スキル 無し

 

魔法 無し

 

 

 

色々な項目があったがとりあえず冬馬はこの情報に着目する。

 

「最初はレベル1か...これは不安ですね。」

 

「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からないな。」

 

「というか何だこれ?」

 

「勇者殿の世界では存在しないのでステータス魔法と呼ばれるこの世界のものなら誰でも使える物ですぞ。」

 

と、補足説明が入る。

 

(成る程、肉体の状態を数値として見れるのか....まるでRPGの世界だな。)

 

「それで?俺達はどうすればいいんだ?」

 

「勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化してもらいたいのです」

 

「強化?この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」

 

「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうですよ。」

 

「伝承ね、その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」

 

と、くるくると槍を回しながら元康が意見する。

 

(それもそうだ、だが何か理由があるのかもしれない。)

 

と、冬馬は考える。

 

「そこは後々、片付けていけばいいだろ...兎に角、頼まれたのなら俺達は自分磨きをするべきだよな。」

 

異世界に勇者として召喚されるという燃えるシチュエーション。

 

是が非でもやってみたいという思いが沸々と湧いてくる。

 

「そう言えば、俺達全員でパーティーを組むのか?」

 

「お待ち下さい勇者様方。」

 

「うん?」

 

これから旅に出るという所で大臣から進言される。

 

「勇者様方は別々に仲間を募り、冒険に出る事となります。」

 

「ほう、それは何故?」

 

「はい、伝承によると伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様達だけで行動すると成長を阻害すると記載されております。」

 

冬馬は試しに、尚文の盾に自分のダガーを近付る。すると、

 

《注意、伝説の武器同士を所持した者同士で共闘する場合、反作用が発生します。なるべく別々行動しましょう。》

 

「本当みたいだな。」

 

(というかこの説明、まんまRPGだな。)

 

「てことは仲間を募集した方がいいのかな?」

 

「ワシが募集しておこう。今日は日も傾いておる...勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つといいだろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

「あー王様、その....悪いんですけど、」

 

王様の言葉に対して歯切れが悪そうに冬馬が話しかける。

 

「?....どうされた冬馬殿?」

 

すると冬馬はこう言った。

 

「俺と尚文は自分達で探したいんですけど...明日、探してきていいですか?」

 

「なっ!?」

 

冬馬の言葉に王様は驚く。

 

「王様が募集をかけてくれるのは非常にありがたいのですが、俺は自分が見て、聞いて、感じたものしか信用できない人間なので、申し訳ないですが、俺と尚文の分は無しでお願いします...では。」

 

「え、ちょ、冬馬殿!?」

 

冬馬はそう言って尚文を連れて、玉座を後にする。

 

果たして二人は無事に冒険の旅に向かうために仲間を集められるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三話 レベリング

異世界へと召喚された冬馬と尚文は、王様の頼みで冒険の旅に出て"波"を防ぐよう言われる。そして王様が仲間を募集しようという所で冬馬は「尚文と共に自分達で探す」と言って尚文を連れてその場を後にするのだった。


「おい冬馬!何処に連れていく気だ!」

 

「少し待ってくれ。」

 

冬馬に引っ張られて玉座の間を出てしまった尚文は訳が分からず、冬馬に理由を求めるものの冬馬は何かを気にしてか、何も話してくれない。

 

「....ここならいいか。」

 

ようやく冬馬が止まった。その場所は玉座の間からかなり離れたいわゆる物置小屋の前であった。

 

「そろそろ説明してくれ....何で王様の計らいを断った?」

 

「簡単な話、尚文....お前、王様に良く思われて無いみたいでな。」

 

「えっ?...そうなのか?」

 

「ああ、間違いない...恐らくあの王様は、仲間を募集とか言いながらお前だけは自分で雇った冒険者か暗殺者を使って無き者にでもしようって魂胆だった筈だ。」

 

「そうか?」

 

冬馬の予想に疑惑の目を向ける。

 

「そうそう尚文、お前"あの本"読んだよな?」

 

"あの本"とは二人が異世界に飛ばされる前に読んでいた本のようだ。

 

「あ、ああ...読んだ。」

 

尚文の言葉を聞いて冬馬は尚文に目を向ける。

 

「なら...知ってるよな?...."双剣"の勇者が存在した。....なんて出来事は何処にも載ってなかった事を、」

 

「ああ。確かに載ってはいなかった。」

 

「なのに俺は、その"存在しない"筈の双剣の勇者としてこの世界に召喚された.....これっておかしいと思わないか?尚文。」

 

「...つまり、何か"イレギュラー"がこの世界で起こってる。....そう言いたいのか?」

 

尚文が自分の意図を汲んでくれたことに対して、冬馬は笑った。

 

「そうだよ!....良かった、尚文だけは俺の考えてること、分かってくれるんだから。」

 

冬馬は尚文と肩を組むと嬉しそうに笑った。

 

「さて、話を変えよう.....今後のことなんだが....」

 

「.....えっ!?」

 

冬馬の提案に尚文はただ驚くしかなかった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

その頃、玉座の間にて

 

「ぐぬぬぬぬ。」

 

王様は一人、悔しそうな顔をしている。

 

「何故だ、何故あの男はワシの言うとおりに動かない!」

 

どうやら冬馬の言動に対して腹を立てている様子である。

 

(もう少しで盾の勇者を貶める事が出来たのに....)

 

「ぐぬぬぬぬ....どうすれば....ハッ!」

 

その時、王様の頭の中で尚文を貶める策を思い付く。

 

(そうじゃ...この方法なら、奴を陥れる事ができる....今に見ていろ....)

 

クックックッ、と下卑た笑いを響かせながら明日を待つ王様の姿がそこにはあった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

翌日、早朝

 

街の外にて

 

「やっと着た。」

 

「お前なぁ....流石に.....早すぎるだろ...。」

 

息を切らしながら走ってくる尚文に対して冬馬は、

 

「悪い悪い....昨日言った試したい事を実践するならこの時間がちょうど良いと思ってな。」

 

後で詫びはする、と言って早速互いに背を向けて武器を構える。

 

「まさかお前が"こんなこと"を試してみたいとはな。」

 

━━━━━━━━━━

 

昨日、話の続き

 

「ひとつ....試してみたい事がある。」

 

「試してみたい事?....何だよ改まって?」

 

冬馬からの提案に何かあるのだろうと思い、尚文は聞いてみる事にした。

 

「さっき大臣が言ってただろ?..."勇者の力には互いに影響を及ぼす反作用がある"って。」

 

「...確かに言ってたな。」

 

「だが、それも"ある条件下"では無効になると...俺は考えている。」

 

「ある条件下?...何だよ、それは?」

 

「簡単な話...距離だ。」

 

「距離?」

 

冬馬はそこから話し出す。

 

「大臣の言っていた反作用ってのは勇者同士がパーティーを組んでいる場合、互いの成長に悪影響を及ぼしてレベリングが出来ないというものだった筈だ。....ならその場合、勇者同士の"距離"はどうだ?」

 

「!!!」

 

「どうやら、俺の言いたい事が分かったみたいだな....そうだ、どれだけ離れて行動すればレベリングに悪影響を及ばさないか....そういうことだ。」

 

「成る程...一理あるな。」

 

(確かに大臣は勇者同士がパーティーを組んだ場合の話をしていたが、勇者同士の"距離"は言わなかった....つまり、冬馬の言うとおり、離れて行動すればレベリングが出来る...そういうことだろうな。)

 

冬馬の提案に尚文は面白そうだ、と思い、

 

「分かった、冬馬...お前に付き合うよ。」

 

そう告げた。冬馬は嬉しそうに尚文の手を掴む。

 

「だよな!...尚文ならそう言ってくれると思ったぜ!...なら、明日の早朝、街の外に集合な...それじゃあ!」

 

「えっ!?...ちょっ、冬馬!?」

 

明日の集合時間を告げると去っていってしまう冬馬、それを見て尚文は、走っていく冬馬の姿を見送るしか出来なかった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「...それで?なんでこんなに朝早くから始める必要があるんだよ?」

 

「そんなの決まってる....あの王様が俺らに対して難癖付けてくると思ったからだ。」

 

「難癖?....どんな?」

 

「例えば、だ.....」

 

「成る程...確かに。」

 

 

冬馬の言葉に尚文は納得するしかなかった。

 

 

━━━━━━━━━━━━

 

数時間後、

 

玉座の間にて

 

「錬殿、樹殿、元康殿、そして冬馬殿.....と、尚文殿」

 

あからさまに尚文を除け者にして四人に話し掛ける。

 

「....それで王様、俺達の仲間を募集しておく...という話でしたが....集まりましたか?」

 

(いやいや、昨日の今日だぞ....幾らなんでも早すぎr)

 

「おお、集まっておるぞ。」

 

(集まってるのかよ!?....幾らなんでも手回し良くないか!?)

 

ここまで手回しが良いと、明らかに何かあるなと思ってしまう。

 

「先ずは錬殿から...入るがよい。」

 

王様が指を鳴らすと、背後から様々な格好をした冒険者達が出て来る。

 

「彼らが必ず錬殿の助けになってくれる筈じゃ。」

 

「ありがとうございます。」

 

そう言って錬は、玉座の間を出ていってしまう。

 

「次に樹殿。」

 

また王様が指を鳴らすと騎士の格好をした者や、魔法使いの格好をしたものなど様々な格好の冒険者が現れる。

 

「彼らが必ず樹殿の助けになってくれる筈じゃ。」

 

「ありがとうございます。」

 

樹も玉座の間を飛び出していく。

 

「次に、元康殿。」

 

「はい。」

 

王様が指を鳴らす、すると現れたのは、

 

「な!?」

 

なんと全員女性であった。

 

これには、冬馬も驚いて絶句してしまう。

 

「彼...ではなく、彼女達が必ず元康殿の助けになってくれる筈じゃ....多分。」

 

(王様...引いてないか?)

 

これには王様も驚いているようで、発言が少しおかしくなっていた。

 

その後、元康も玉座の間を出ていく。

 

「最後に冬馬殿だが、」

 

(この野郎....とうとう隠さなくなったな。)

 

「おっと、王様....昨日、俺は確かに言いましたよね?...仲間は自分達で見つける...と。」

 

冬馬は王様の発言に異を唱え、自分の申し出を思い出すよう言う。

 

「確かに昨日、言っていたな...だが、まだ(・・)見つけていないのでは?」

 

「!?」

 

(そう来たか。)

 

王様の言葉に冬馬はたじろぐ。

 

それを見て王様はしたり顔を見せる。

 

(やはり、奴の仲間はまだ見つかっていない!....さて、こいつはどう扱ってやろうか....。)

 

王様は自分の考えが的中していたことに安堵し、冬馬をどう操ってやろうかと考える。

 

「....」

 

冬馬は王様の表情を見てこう思った。

 

(かかった(・・・・)!と。)

 

「そこでじゃ!....冬馬殿にはワシの近衛兵を二人付けようと思うのじゃが....どうじゃ?」

 

もはや提案というより、脅迫に近い。つまり王様は決まっているならこの場に連れてこい、それが出来なければワシの言うとおりにしろ....そう言いたいのだろう。

 

(....出来れば、ここを出た後で反故にするつもりではあったんだが.....仕方ない、"プランB"だ。)

 

「さぁ、連れて来てワシに見せてみよ。」

 

「王様.....仲間なら誰でも(・・・)いいんですね?」

 

「?...勿論じゃ、冬馬殿が決めたのならワシは文句など言うつもりも無い。」

 

(言質は取った...ここから反撃だ。)

 

「....仕方ない...尚文、連れてきてくれ。」

 

「分かった。」

 

冬馬が尚文に頼むと、そのまま何処かへと向かっていった。

 

━━━━━━━━━━━

 

「お待たせしました....彼女達が俺達二人の仲間です。」

 

「な!?」

 

王様は驚愕した。何故なら、その仲間というのが...

 

奴隷(・・)...じゃと!?」

 

首に輪を付けた奴隷の女の子が二人....冬馬と尚文に鎖を握られて立っていたからだ。

 

「俺は、彼女を....尚文はあの子を...それぞれのパーティーメンバーとして迎える事にした....これなら問題無い筈ですよね....王様?」

 

ニッコリと毒気の無い笑顔で王様を見る冬馬....だが、

 

「み、認められるか!!!!....人間ならまだしも....何故、そんな薄汚い亜人等を...!」

 

「おいおい、王様?話が違うんですけど?....あんたさっき言ったよな?....俺が決めたならどんな(・・・)仲間でも良いと。」

 

「じ、じゃからそれは人間だと...」

 

「冒険者や人間を連れてくるとは一言も言っていない!!」

 

「ぐ....ぐぬぬぬぬ!!!」

 

王様は心底悔しそうな顔を見せる。

 

それもその筈、先程までは冬馬は仲間をまだ決めておらず、冬馬を自分の意のままに操る事が出来る。そう思い込んでいたのだ。

 

それに連れてくるという仲間も人間の冒険者だろうという先入観で勝手に決めつけており、奴隷等を仲間にするなど考えてはいなかったのだ。

 

「兎に角、俺達は奴隷をメンバーにする.....異論は断じて認めない.....行くぞ尚文。」

 

「ああ。」

 

尚文は心底落ち込んでいた。それもそうだ。先程、王様が仲間募集の時、冬馬を"最後"と言った事で、冬馬の言っていた事が真実だと理解したからだ。

 

━━━━━━━━━━━━

 

さて、話は数時間前に遡る。

 

「さて、仲間なんだが.....悪い、決めてない!」

 

冬馬の言葉にずっこけそうになる尚文。

 

「お前....ここまで来ておいて幾らなんでもそれは無いだろ!?」

 

「だって、なんかあの王様ムカついたから....」

 

現在はレベリングと実験を終わらせて城に戻る道中、二人は街を歩きながら次に打つべき手を考えていた。

 

「いやー...まさかあの距離で反作用がなくなるとは、」

 

「そうだな....まさか"600m"で互いの反作用が消失するとは...思わないよな。」

 

二人は反作用が起こらない"距離"を知るために街の外に出たのだが、冬馬は"1km"程距離を取らないといけないと考えていた。だが結果はまさかの"600m"。予想よりも400m程近くであった。

その事実にもはや、反作用って何だろうと考えていた矢先、

 

「もし、そこのお二人。」

 

「「!?」」

 

急に誰かに呼び止められる。

 

「こちらですよ。」

 

声がした方向を向くと、そこにはスーツ姿のいかにも怪しげな男が立っていた。

 

「貴方がた....今、仲間を探してるのでしょう?」

 

「...まぁ、そうだけど....それが何か?」

 

見るからに怪しげな男に対してぶっきらぼうに冬馬は答える。

 

「でしたら、私からある"提案"をさせていただきます。」

 

「"提案"?....一体どんな?」

 

「でしたら、私に付いてきてください。」

 

見るからに何かおかしい怪しげな男、だが自分達も切羽詰まっているのは事実、仕方ないので男の後に付いていく事にしたのだった。

 

━━━━━━━━━━━

 

「こちらです。」

 

後に付いていくとそこにはサーカスで使用するような大きなテントが張られており、男の後に続いて中へと入るとあちらこちらに檻が置いてあった。

 

「成る程..."奴隷"か。」

 

「その通りでございます!」

 

男は嬉しそうに冬馬に顔を向ける。

 

男の説明では、奴隷は全て亜人と呼ばれる人間の姿をしてはいるものの、人間よりも身体能力が高く、人間には難しい力仕事も楽々こなす事が出来る種族らしい。

 

その種類は様々で未だに見つかっていない種族もいるかもしれないとのこと。

 

「話は分かった.....それで予算なんだが、」

 

冬馬が財布代わりに使っている袋の中身を男に見せる。

 

「ほうほう....この程度の額でしたら、」

 

男がスタスタと歩いていく。

 

「このスペースに置いてある檻の亜人をお売り致しましょう。」

 

檻の中の亜人達は見るからに強そうな風貌をしている。

 

どうやらレベリングでそこそこ金を稼いだようだ。

 

「あー...申し出は有難いんだが、....その、この後装備を整えたいから...出来ればもう少し安い奴隷を売ってくれないか?」

 

冬馬の言葉に男は考える素振りを見せた。

 

「でしたら....こちらに。」

 

男に連れられて来たのは衛生管理がなされていない...非常に汚い奥の部屋であった。

 

「彼らはあまり売り物にならないので....先程の額から値下げしますと...こちらの商品しかお売り出来ません。」

 

「そうか...」

 

冬馬はそう言うもののその表情は、何処か嬉しそうであった。

 

「ん?」

 

並べられた檻、その中の一つが気になった。

 

「こいつは....」

 

檻には《キャット種》と書かれていたが残念ながら冬馬と尚文はこの世界の文字が読めない。その為、どんな種類の亜人なのか分からなかった。

 

「この亜人ですか?....こちらはキャット種という大変珍しい種類の亜人の少女です....しかし、人に対してかなりの恐怖心を持っているようで、....残念ながら売り物としては、最低価格となっております。」

 

「成る程....」

 

説明を受けた冬馬だったが、それよりもこの少女から何故か目が離せなくなってしまう。

 

「決めた....俺は、この《キャット種》を買わせてもらう。」

 

「宜しいのですか?」

 

「ああ、何故かこいつじゃないと駄目な気がする。」

 

「そうですか....分かりました...それで、もう一人のお客様は?」

 

「そうだな.....こいつかな?」

 

尚文が指差した檻には《ラクーン種》と書かれていた。

 

「そちらの奴隷はよく引き付けを起こすので注意が必要です。」

 

「別に....何でもいいし。」

 

今の尚文は冬馬の無茶振りに振り回されている状態なのでもう全てがどうでもよく思えていた。

 

「分かりました。」

 

男は手慣れた様子でキャット種とラクーン種の奴隷を檻から出し、胸にインクを落としていく。

 

「それは?」

 

「これは特殊なインクでして、これで奴隷の証である奴隷紋を書くのです。」

 

「それで奴隷を縛れるのか?」

 

「はい。...こちらの奴隷紋が身体に浮かび上がっている間、主人の言う事には絶対に逆らえません。」

 

「成る程。」

 

男が説明を終えると同時に奴隷二人の奴隷紋を書き終える。

 

「これで契約は完了しました。」

 

「代金だ。」

 

「ありがとうございます...また何時でもご利用のほどお待ちしております。」

 

テントを出た冬馬と尚文は次に向かう場所を話し合う。

 

「取り敢えず、まだ時間はあるし...もう一度レベリングに行くか。」

 

「ああ、そうだな!」

 

二人はまた街の外へと向かい、新しく仲間にした二人の奴隷の事をよく知る為に再びレベリングに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四話 新たな奴隷(なかま)

おまたせしました! 続きになります!


「さて、着いたのはいいものの.....どうしようか。」

 

ノリと勢いだけで奴隷商から二人の亜人を奴隷として購入したことに今更ながら冬馬は後悔していた。

 

「まぁ、今更だし....別にいいか。」

 

気持ちを切り替え、キャット種の少女に向ける。

 

「始めまして、俺がお前の主人....かな?渡辺冬馬だ...宜しくな。」

 

冬馬は少女に握手を求める....だが、

 

「フシャー!!!」

 

少女はまるで猫のように冬馬に威嚇し、これ以上近付くなと警告してきた。

 

(そういえばこの子、人間恐怖症だったな...すっかり忘れてた。)

 

しまった、と思いつつ彼女に近寄るも彼女は怯えた表情で近くの木の上に登ってしまう。

 

「あーやっちまった。」

 

今更だが、奴隷商の言葉を思い出す。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「よいですかなお客様、この街では亜人は差別の対象とされており、この街にいる亜人は全て奴隷という扱いにされております。」

 

「何で亜人が奴隷になってるんだ?....もしかして、自分達人間とは違うから...とかそういう理由か?」

 

冬馬の質問に奴隷商は頷く。

 

「全くもってその通りでございます。」

 

「成る程。」

 

何処の世界でも差別というのは無くならないらしいという事実を再認識し、彼女達をこれからどう育てていこうかと考えていたが、

 

「なぁ冬馬?」

 

突然、尚文に声を掛けられて振り向く。

 

「ん?どした尚文。」

 

「そろそろ王様が俺達に仲間を紹介するという約束の時間じゃないか?」

 

「え?......あ!」

 

視界の端を見て、そろそろ時間が近付いてきている事に気付き急いで城へと走っていく。

 

「悪い、また金が入ったら宜しく頼む!」

 

「ほう、それはつまり....ご贔屓にしていただくということで?」

 

「そう捉えてくれて構わない、行くぞ尚文!」

 

キャット種の少女をお姫様抱っこしながら走っていく。

 

その際、腕に噛みつかれてしまう。

 

「イテッ!....今は少しだけ我慢してくれ!」

 

「あっおい冬馬!?.....ハァ...仕方ないな...ほら」

 

「えっ?」

 

尚文はしゃがむとラクーン種の少女に背中を向ける。

 

「何してる、早く乗れ。」

 

「は、はい。」

 

少女を背中に乗せて冬馬の後を追いかける尚文、

 

その後、王様に彼女達を仲間として紹介し、そして再び街の外へとやって来ている。

 

「さて、どうしたもんか...」

 

自分の奴隷となった少女の怒りを買ってしまい、どうすべきかと思考を巡らせる。

 

「冬馬、俺達はあっちで少しレベリングしてくる。」

 

「分かった、俺はもう少し此処にいる。」

 

尚文はラフタリアを連れて、別の場所へと歩いていった。

 

対して冬馬は、木に登って此方をずっと威嚇し続けている少女をどう下ろしたものかと考えていた時、

 

「ん?」

 

「.....」

 

少女の四肢がプルプル震えているのが分かった。

 

「お前....もしかして、降りられないのか?」

 

「!....そ、そんな事は...無い。」

 

顔を赤くしてそっぽを向く。どうやら図星だったみたいだ。

 

「だったら何で登ったんだよ?」

 

「そ、それは....その...」

 

「それは?」

 

「....ううう...うるさいうるさいうるさい!お前が悪いんだ!」

 

「な、何だ急に!?」

 

「と、兎に角!私はここから絶対に降りないからな!」

 

「降りられないの間違いじゃないのか...?」

 

「ヘ、屁理屈言うな!」

 

「いや言ってるのお前なんだが...?」

 

これ以上はキリがないが、こんな会話を尚文達がレベリングしている間、延々と続けていた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

「どうだそっちは....って聞くまでもないか。」

 

「ああ、見ての通りだ。」

 

"命令"して木の上から降ろす事には成功したものの、それによって冬馬の顔には少女から受けた引っ掻き傷が幾つも出来ていた。

 

「今からでも返品しに行くか?」

 

尚文が冬馬の身を案じて、そう切り出す。

 

しかし、

 

「却下だ....俺は、そういう風に"生き物"を物扱いするのが嫌いなんだ....だからこそ、俺が責任持って最後まで面倒を見るさ。」

 

「そうか....分かった。」

 

冬馬の言葉を聞き、尚文は納得した様子で先に行ってしまった。

 

「さて、俺らも....って、どうした?」

 

「.....何でもない。」

 

少女は、冬馬の言葉を聞いていたのか、何も言わずに尚文の後を追い掛ける。

 

「.....?」

 

そんな少女の反応に首を傾げるしかない冬馬であった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

「いらっしゃい!」

 

冬馬達は、武器屋へと来ていた。

 

「実は俺ら、冒険を始めたばかりなんです。なので...色々商品を見せてもらえないでしょうか?」

 

冬馬が店主の男性にそう声を掛けた。

 

「兄ちゃん、随分礼儀正しいな....でも、俺にそんな気遣いは無用だぜ。」

 

「...そうか、なら色々見させてくれ。」

 

「あいよ、好きに見ていってくれ。」

 

店内を隈無く見ていく冬馬と尚文

 

すると、

 

「これは...短剣か?」

 

棚に設置されている短剣を見つけると手に取り、まじまじと眺める。

 

「俺のとはかなり作りが違うな...やっぱり俺のは、伝説の武器だからか?」

 

右手に自分のダガーを持ち、商品の短剣と見比べてみる。すると、

 

《ショートダガーが登録されました》

 

新しいウインドウが表示された。

 

「ん?」

 

(何だ今のウインドウ?....もしかして...!)

 

試しに、他の短剣を自分のダガーに翳してみる。

 

《ウッドダガーが登録されました》

 

《アイアンダガーが登録されました》

 

《スチールダガーが登録されました》

といった感じで複数の短剣が冬馬の短剣に登録されていった。

 

(成る程、伝説の武器と同じ形の武具に翳すと、それが伝説の武器に情報として登録されるって事か...)

 

まるで、電子機器のようだと思った。

 

「尚文。」

 

「どうした?冬馬。」

 

盾をまじまじと見ていた尚文に声を掛け、試しに自分の盾を商品の盾に翳すように伝える。

 

「......本当に登録された。」

 

「やっぱりな。」

 

尚文の言葉を聞き、冬馬はふと何か考え始めた。

 

「...もしかして...?」

 

ふと思い付いた事が出来るのかどうか店主を見つけて訪ねてみた。

 

「ちょっといいか?」

 

「ん?どうした?」

 

「魔物を倒した後に残る素材って...武器とか防具にできるのか?」

 

「おお、出来るぞ....ただし、量はこちらが指定した数を用意してもらう事になるがな。」

 

「成る程。」

 

此処まで来ると最早ゲームの世界のようにも思えた。しかし、実際に冬馬自身が感じ取っているこの感覚は紛れもなく現実のものであると彼に理解させる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「さて...」

 

あの後、冬馬は尚文 ラフタリアと一時別行動をとって"波"に備えての準備をしていた....のだが、

 

「あれ?...尚文は?」

 

約束の時間になっても一向に来ない尚文に「何かあったのか?」と首を傾げる。

 

「た、大変です...!!!」

 

「あれ?ラフタリア...?尚文は?」

 

「それが...兵士の人に連れていかれて...」

 

「なんだって!?」

 

それを聞いた冬馬は慌てて城へと走って行く

 

「ラフタリア、その娘と一緒に武器屋で待ってろ!!」

 

「は、はい。」

 

それだけ伝えて走っていった

 

(あの糞野郎....俺から別れた途端に強行手段に出やがって....許さねぇ...!!!)

 

冬馬は怒りで我を忘れそうになるが、慌てて正気に戻り尚文を助けるべく走るのだった

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「以上の事から『盾の勇者』岩谷 尚文を刑罰に処する。」

 

「俺は無実だ!!!」

 

突然見知らぬ女に痴漢呼ばわりされ、兵士に城へと連行された尚文。

 

「」

 

(クソッ!コイツら....!!!)

 

最早、自分を犯罪者と決めつけて判決に入る王達に沸々と怒りが込み上げてくる。

 

(もう駄目なのか....!!!)

 

その時、

 

「いやいや、幾らなんでも判決が早いでしょうよ」

 

「!!!」

 

「な、何故此所にいる!?」

 

其処には『双剣の勇者』である冬馬がヒラヒラと手を振っていた。

 

「今は神聖な裁判の審議中だぞ!!!立場を弁えろ!!!」

 

「神聖な裁判...ねぇ...」

 

何か言いたげな様子で王と尚文 そして他の勇者達を一瞥する。

 

「俺には冤罪をでっち上げようとする姑息な手段にしか見えないな。」

 

「き、貴様...!!!」

 

「それに、証拠はあるのか?」

 

「し、証拠?」

 

「そうだ証拠だ....尚文は?犯罪を犯したという根拠になり得る証拠があってこんな事をしているんだろう?」

 

「あ...当たり前だ!!!」

 

王の言葉に「へぇ...」と試すように冬馬は笑みを溢す。

 

「なら、どんな証拠なのかを教えてくれませんかね?」

 

「証人を此所に。」

 

王が呼んできたのは赤髪の女性であった。

 

「アンタか。」

 

「ええ。」

 

女性はまるで自分は被害者だと言いたげな様子で俯いている。

 

「話してくれ...どんな風に被害を受けたのかを。」

 

「はい....実は···」

 

女性は話し始めたが、その話を聞いて冬馬は 「は...?」

 

としか言えなかった。

 

何せ言っている事がまるで最初から尚文が悪い と言っているような内容を並べただけのものだったからだ。

 

「どうです?これで分かっていただけたでしょうか?」

 

女性は尚文を更に貶めることができると内心喜んでいる事は冬馬にも分かった。

 

「あぁ....よ~く分かったよ....アンタらがとんだペテン師だってことがな!!!」

 

冬馬は女性と王を睨み付けてそう言い放った。

 

「な!?」

 

「な、何を言っている!!」

 

これに対し、王は憤慨した。しかし、冬馬は続ける。

 

「仮に尚文が犯罪を犯したと仮定しよう...そしたら、目撃者がいる筈だ。」

 

「目撃者?」

 

「そうだ、でなければこんな所に尚文が連れてこられて檻に閉じ込められてるなんておかしいからな....」

 

冬馬は尚文に『俺に任せとけ』とアイコンタクトで伝えた。

 

「先ずは其処から洗っていこうか....先ずはアンタ。」

 

「え、私?」

 

「街中で痴漢されたと言っていたが...それは何処でだ?」

 

「それは....大通りです。」

 

「なら、益々おかしい」

 

「な、何がおかしいって言うのよ!!」

 

「あの時間帯、その場所は人通りが多い。ならば少なくとも目撃者の一人や二人は居てもおかしくはない筈だ....それなのにアンタはまるで目撃者なんて一人も居ないと言った....その時点で矛盾が発生する。」

 

「!?」

 

「それに、あんたの言い分からして妙だ···」

 

「な、何が妙だって言うのよ!?」

 

「痴漢犯罪は、“必ず”証拠が残る犯罪なんだ。今の言い分だと、その証拠が無い。だけど尚文は犯人だと勝手に決めつけてそのまま進めようとしているように聞こえる。」

 

「な···!?」

 

女の反応から察するにどうやら図星のようだ。

 

「そ、そこまで言うなら証拠を出しなさいよ!」

 

すると女は、突然捲し立てて冬馬に詰め寄った。

 

「いいだろう。なら『スキル』を使わせてもらう。」

 

「ス、『スキル』···?」

 

「待てい!」

 

「突然、何だ?」

 

冬馬が『スキル』を発動しようとした矢先、国王が待ったをかけた。

 

「これ以上は裁判の邪魔になる!双剣の勇者殿は即刻退場願おうか。」

 

どうやら、核心に迫られそうになって焦っている様子。

 

「ほう?そうきたか···だけどいいのかな?国王?」

 

「な、何がだ?」

 

「このまま俺を退場させれば、俺はあんたの株を落とすことになるぞ?」

 

「な、何を言い出すかと思えば···そんなこと···!」

 

「或るはずがない···と?そう言いたいんだろうが、それも出来ちゃうんだよなぁ。」

 

「な、何を根拠にそんなことを···」

 

「いやいや、よく考えてみなよ···俺は“双剣の勇者”だ。“波”が発生する数百年に一度、現れるか現れないかの特殊な存在なんだぜ?それを国王であるあんたが城から追い出した···な〜んて話が城下町に広がってみなよ···少なくともあんたの信用、ガタ落ちだぞ?いいのか?」

 

軽く脅しを掛け、国王を揺さぶる冬馬。

 

「ぐ、ぐぐぐ···!!!」

 

国王も冬馬の言っている事の意味を理解しているからこそ歯噛みしているのである。

 

「そういう訳で、『スキル』を発動させてもらう。異論は無いな?」

 

国王は、、暫く拳を握りしめて俯いていたがゆっくりと頷くのだった。

 

「では、許可が降りた所で···!」

 

 (スキル 『鑑定』発動!)

 

スキルを発動したと同時に冬馬の両眼に同サイズの魔法陣が展開される。

 

「······」

 

「な、何よ···?」

 

女は自分の周囲を回りながら自分を凝視する冬馬を訝しげに見る。

 

「なる程。」

 

何かに納得した様子で次は尚文へと近付く。

 

「尚文、両手を見せてくれ。」

 

「あ、あぁ。」

 

言われるがまま尚文は両手を冬馬に見せ、それをじっと見つめる冬馬。

 

「その手で何処か触ったか?」

 

「そういえば、檻の鉄柱を···」

 

「コレか?」

 

「そうだ。」

 

「······なる程ね。」

 

じっと檻の中も入念に確認すると、冬馬はやはりな···と呟いた。

 

「『スキル』を発動した結果、尚文が冤罪だと分かった。」

 

「馬鹿な!?一体、何を根拠に···!」

 

「証拠なら、その女の衣服と尚文の手にある。」

 

「?···一体、何を···言ってるの?」

 

「痴漢ってのは加害者が被害者の身体に直接触れる事で発生する犯罪だ。···ならば、被害者の触られた箇所には加害者の手の皮膚片が付着しており、対する加害者の手には衣類の繊維片が付着していなければこの犯罪は成立しない。」

 

「「!?」」

 

どうやら国王と女は冬馬の言いたいことを理解したようだ。

 

「だが、スキルを使って二人の衣類と手を確認したが、どちらにも証拠となり得るものなんて付着していなかった···つまり、この痴漢犯罪はデタラメ···冤罪事件と言うわけだ!!!」

 

「で、デタラメだ····そんな···そんなことが···!」

 

冬馬が核心を突いた事で国王は動揺を隠しきれず、女もあたふたとするばかりである。

 

「さて、これは痴漢犯罪ではなく冤罪事件にすり替わった···では、話を戻そうか···」

 

すると、冬馬は尚文に背を向けて二人に対峙する。

 

「俺たちのいた世界では、冤罪事件は詐欺罪として裁判を行われる···が、」

 

「?」

 

すると尚文を一瞥してから再び二人に向き直る冬馬。

 

「今回は傷害罪と暴行罪および逮捕・監禁罪も含まれるため、彼女には慰謝料として金貨を···そうですね····金貨10枚ほどで手を打ちましょう。」

 

「な!?···そんな馬鹿げた話が通るか!!」

 

「おや?ご不満で?」

 

「当たり前だ!そんな道理、通ると思って···!」

 

「いやいや、通るんですよこれが。」

 

「な、なに···!?」

 

「さっきも言いましたけど俺たちのいた世界での話···あれは、罪人を裁く際に適応される方法として懲役刑と罰金刑が存在する。···今回は冤罪事件ということだからそちらの女性には懲役刑で数年間、王城内の牢に幽閉する···もしくは慰謝料として金貨を10枚ほどこちらに払ってもらうかの二択があります。」

 

しかし、と付け加えて話を続ける。

 

「今回、彼女が犯した冤罪事件···詐欺罪に該当する犯罪です。···更に、国王···あんたは傷害罪、暴行罪に逮捕・監禁罪とまぁ多くの罪を犯した訳だ···あんたにも牢屋に入ってもらいたいところだが···腐ってもあんたは国王だ。牢屋になんて入れられない。」

 

だからこそ、と付け加えて更に話を続ける。

 

「あんたらには罰金刑···つまり、慰謝料として金貨十枚での支払いを請求する···これが妥当な判決だ。」

 

「···!····!」

 

怒涛の展開に国王は、もはや絶句することしか出来ない。

 

「さてと···まずは、あんたに支払ってもらおうか?」

 

そう言って女を見やる冬馬。

 

「む、無理よ!そんな額···払えないわよ!?」

 

「いや?払えるだろ···だってあんた···」

 

次に冬馬が発した言葉でその場にいた全員が驚くことになる。

 

「この国の···第一王女(・・・・)···だろ?」

 

「!?」

 

女は何故バレたのか分からなかった。それもそのはず、自分の正体を知っているのは国王と城の兵士達だけなのだから、冬馬が自分の素性に気付くはずなどないと高を括っていたのだから。

 

「何故バレたって顔してるな···いいだろう、ネタバラシしてやるよ。」

 

したり顔で話を続けだす冬馬。

 

「実はこの部屋に入る前に、この国の()の支配者である王女様の絵を見てしまってね。」

 

『え!?』

 

これに驚いたのは冬馬と尚文以外の勇者達三人であった。どうやら彼らはこの王がこの国を治めているのだと思っていたようだ。

 

冬馬の言葉に王は今にも爆発しそうなほど顔を真っ赤にしていた。

 

「そして、此処に来たとき証人として出てきたアンタを見たら···この国の女王様そっくりじゃないかと思ってね···だから、コレはアンタ等親子が尚文を迫害しようと仕組んだ冤罪事件だと

思ったのさ。」

 

と、女を見ながらそう答え、やってやったぞと言わんばかりに顔を綻ばせる冬馬。

 

「アンタ等王族については城下町で詳しく教えてくれた人()がいてな、それでアンタが第一王女だと知ったのさ。」

 

この達というのはこの後、このバカ王が国民に対して罰を与えないようにするため敢えて誤魔化すように冬馬が口からでまかせを言っただけである。

 

「さて、ネタバラシしたし···本題に戻るとしますか、金貨十枚···払ってもらおうか。」

 

「ぐ···グググググ···!!!」

 

その後、忌々しげに冬馬達を睨んでいた国王であったが、尽く冬馬に論破されてしまいもはや何も言い返せないと理解すると冬馬の要求を呑み、金貨を払ったのだった。そして冬馬は、尚文を連れて再び街の外へと戻るのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

それから数時間後、

 

「...何で助けたの?」

 

「ん?何だ、突然...」

 

もしもの時の為に準備をしている冬馬の元に少女が訪ねてくる。

 

「だから、何であの尚文とかいう人を助けたのか聞いてるの。」

 

どうやら少女は冬馬が尚文を助けた事が理解出来ない様子である。

 

「何でって、そりゃ......友達だから?」

 

当たり前だろ?と言いたげに少女を見て言い放つ。

 

「理解出来ない....例え、友達でも裏切る時は裏切るのに...」

 

少女の言葉に冬馬は何かを感じたのか、少女との距離を縮める。

 

「な、なに...?」

 

「......」

 

少女は冬馬の行動に疑問を感じたが、冬馬は黙ったまま少女の隣に座り込んだ。

 

「ちょうどいい、昔話をしよう。」

 

「昔話...?」

 

こんな時に一体何を言っているのだろう? 少女は冬馬の事が益々分からなくなった。

 

「今から約10年以上前、此所とは違う異世界で一人の少年が家族と幸せに暮らしていました。」

 

唐突に始まった昔話に「?」の文字が浮かぶ少女。しかし、何故か分からないがその話は聞くべきだと感じていた。

 

「しかし、ある時少年を残して家族は全員死んでしまいました。」

 

「え...!?」

 

「少年には身寄りがなく、仕方なく施設へと預けられました....其処から彼の地獄は始まりました。」

 

「......」

 

「施設に入って暫くして他の子供達が彼を虐め始めました。...最初はほんの些細な事だったのかもしれません...少年にも理由が分からなかったからです。」

 

「....周りの大人は?」

 

「...!」

 

少女が昔話に興味を持って質問してきたことに冬馬は驚いた。

 

人間不信だと聞かされていた少女が身を乗り出してこちらを見ているからである。

 

「....残念ながら、そのまま大人達も少年を虐めていたのです。....そんなことがあり、少年は心を閉ざしてしまいました。」

 

「......」(同じだ...私と...)

 

少女は奴隷になる前の事を思い出していた。

 

この世界では絶命したとされていたキャット族の生き残りというだけで見せ物扱いされたり酷い時には殴る蹴る等の暴行を受けたりしてきた暗い過去を。

 

「それから10年の月日が経ちました...少年は学校と呼ばれる施設に入り、黙々と勉強を頑張っていました...いつか自分を誰にも虐められないようにその世界で一番偉い人になろうと考えていました。」

 

「....それで?」

 

「しかし、虐めというのは何処へ行っても無くならないものなのです...その学校でも少年は再び虐めを受け、誰も信用出来ないと思い、一人孤独に生活していました....しかし、進学してから彼の生活は変わりました。」

 

「!!!」

 

「少年が何時ものように虐められていると...」

 

冬馬はその時の事を思い出す。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

『オイ!何やってんだお前ら!!!』

 

「....誰....だ?」

 

複数人で冬馬を囲むように暴行を加えていた人物達に一人の少年が立ち向かった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「まさか...!」

 

「そう、その少年の正体は...盾の勇者と喚ばれた男 『岩谷 尚文』だったのです。」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「何で助けた....!」

 

『は?』

 

「何で助けたのかって聞いてんだよ!!!あれか!?虐められてる俺を助けた俺格好いいとかそんなんだろ!?」

 

『お、オイ...落ち着けって....』

 

んで......

 

『ん?』

 

「何で誰も....助けてくれないんだよ....!」

 

ひたすら泣き続ける冬馬にどうしたもんかと悩む尚文。

 

悔しげに顔を歪ませ、俯く冬馬に対して尚文が取った行動は、

 

「えい。」

 

デコピンだった。

 

「な、何すんだよ!?」

 

「お前さ···色々と抱え込みすぎなんだよ。だからさ、その重い荷物俺にも背負わせろよ。」

 

そして、この出来事から尚文と冬馬の関係が始まった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「それから数年間、少年は親友として尚文と仲良くしており、現在は彼に助けられ、救われたことに感謝して今度は自分が彼を助けよう...そう心に決めたからこそ....『俺』は尚文を助けた...続く。」

 

「はぁ......はあ!?」

 

「まぁそういう訳だ...俺はアイツに救われた...だからこそ、俺は尚文を助けた....例え、世界中の誰もがアイツを非難しても...俺だけでもアイツを信じてやらないと...」

 

拳を力強く握って冬馬は呟いた。

 

「そっか...」

 

少女は冬馬の昔話を聞いて、

 

「えい。」

 

ポスッ、と彼の膝の上に乗った。

 

「······何してんの?」

 

突然の行動に、意味が分からないと冬馬は首を傾げる。

 

「いや...その.....」

 

少女もどう言ったものかと考え、

 

「あーもう!!!....とにかく!私はアンタに協力する...それだけよ!」

 

「え?....あ、あぁ....ありがとう....?」

 

「何よその不思議そうな顔は....兎に角、私はアンタに協力する...いいわね?」

 

「あぁ....うん、こちらとしても願ったりだ....え~っと...」

 

「...シオンよ。」

 

「え?」

 

「だからシオン!私の名前!」

 

「あぁシオンね...俺は 冬馬。『双剣の勇者』だ...宜しく頼むぞ。」

 

「此方こそ。」

 

二人は互いに握手を交わした。これから来たるであろう“波”を互いに乗り越える為に···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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