ジオン転生記 (清水蜂弥)
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ブリティッシュ作戦

新ギレンの野望のギレン編をイージーだけどクリアした記念に書きました。皆さんニューヤークってどうやって攻略しました?あれ難しすぎませんか?

素人が勢いだけで書きました。よろしくお願いします。


やあ、突然だけど君は転生って知ってるかな?そう、今流行りの転生だ。

 

例えば誰かがトラックに轢かれそうな人を助ける代わりに自分が轢かれて転生、ブラック企業の業務に耐えきれず過労死、あとは全く身に覚えがなかったりして気づいたら転生してたってパターンなどいろいろある。

 

いろいろ例を挙げて見たけど何が言いたかったのかというと何と自分も転生しちゃってたんだよね。ちなみに自分のパターンは最後の身に覚えがないのに転生しているパターンだ。

 

転生してから暫くはガンダムの世界とは気付かなかったが『サイド3』やら『スペースノイド』の単語を聞きガンダムの世界に転生した事に気付いた。しかも自分はサイド3に住んでいて両親はザビ家寄りのそこそこ大きな名家らしい。

その事を知った感想としては絶望感しか無かった。

 

ジオンと連邦のどっちが好きかと聞かれたら迷わずジオンと答えるが転生してその世界で生きるとしたら戦争の勝者である連邦を選ぶであろう。正直どっちも微妙ではあるが。

 

何とか生き延びる為に両親を説得して戦争の被害が出ない場所に引っ越しを提案したりこのままだと死ぬ可能性が高い事ジオンが負ける事を説明したら父親に軍学校に入れられて全てを諦めた。

 

ところがある日、軍学校で将来の事で絶望し腐ってる所に話しかけてくる二人組いた。

どうやら小さい頃何処かのパーティーであった事があるらしいのだが忘れていた。

その二人組とよく話すようになりいろいろあって親友同士になった。あの頃は良かった、なんせ

 

『オイ!いつまで現実逃避してるんだ!もうすぐ戦闘だぞ。お前がこの中で一番射撃評価が高かったから対艦ライフルを任せたんだぞ!本当は俺が使いたかったのに。』

『まあまあ落ち着いて、ヒカルも緊張してるんだよ。もちろん僕だって緊張して手が少し震えるくらいさ。』

『ふん、軟弱な奴らめ。』

怒鳴ってる奴はキッド、この隊の隊長。しかもツィマッド社のかなり上の方の幹部の息子だ。かなりのワガママで自信家だが自信に裏打ちされた能力も備えているし、時と場合を弁えた行動も取れるハイスペックな奴。

 

そしてキッドを抑えている奴はウィル、爽やかイケメンだが根っからの親ザビ家でアースノイドはスペースノイドによって支配されるべきという考えを持つヤベー奴。

 

そしてヒカルと言われてるのが自分でそこそこの家格を持つ名家で転生特典なのかMS適正がかなり高いが他の所は大していい所が無いような感じだ。

 

この三人は士官学校からの同期で腐れ縁と言ってもいい仲だ。同じ部隊になったのは多分キッドと自分のせいだろう。ツィマッド社幹部の息子と名家の息子が仲が良いので忖度で同じ部隊にしたのだろう、きっと。もし偶然なら神の意志を感じぜざるを得ない。

 

そんなこんなで粗方説明も終わったので現状をお教えしよう。現在我が隊はキリング・J・ダニカン中将率いる公国軍護衛艦隊の一員としてブリティッシュ作戦に従事している。内容としてはスペースコロニーを巨大な弾頭と見立て連邦軍中枢ジャブローを一撃で破壊するといったシンプルながら強力な作戦だ。まあ、コロニー制圧の為に毒ガスを使い皆殺しにするなど酷い作戦でもあるのだが。

 

『総員、配置に付け、第1種戦闘配備』

 

艦長からの指令を受け艦全体が一気にピリピリとした空気に満たされていく。

カタパルトデッキの近くにある待機室から飛び出すと3機のMSが目に入ってくる。

我らの隊の愛機

MS-06C初期量産型ザクⅡである。

この機体を簡単に説明すると核攻撃を使用する事を前提として作られた為コクピット周辺の装甲が三重複合装甲とかでかなり耐久性や生存率が高い機体であるのだ。

まあ戦艦などの主砲を喰らったら一瞬でお陀仏だが、セイバーフィッシュくらいなら結構耐えれるだろうと思う。

 

いやー、ザクⅠとかじゃなくて本当に良かった。

 

三人はそれぞれの機体に乗り込み戦闘に備える。

 

『最後の確認だ。艦から発進後、支援射撃と共に前に出る、前に出たら互いにカバーして相手を沈めていくぞ。戦闘機などは俺とウィルが抑える、その間にサラミスやマザランはヒカルが墜とせ。この戦いで絶対に戦果を残すぞ!いいな!』

 

『了解』

 

『ラジャラジャ』

 

『ヒカル!何をふざけている!このバカが!』

 

『イヤ、ちょっと緊張をほぐしてあげようとしただけじゃん、何もそんなに怒んないでも』

 

せっかく人がキュートなバトルドロイドの真似をして場を和ませやろうとしたのに。

 

『お前はいつもいつもぼーっとしてるかふざけているかのどっちかしか無いのか!』

 

『まあまあ、ヒカルも僕らのためを思ってやってくれたんだし。』

 

『ウィル!貴様もヒカルに何か言ってやったらどうだ。だいたいいつもお前が『あー、コホン、少し話をしていいかな』

 

いつもの如く馴れ合っているとモニターに男が出てきた。この艦の艦長だ。

 

『申し訳ありません!?失礼しました。』

『ああ気にしないでくれ、君達はこれが初陣だからね過度に緊張していたらほぐそうと思ったんだが…必要ないようだね。代わりと言ってはなんだが一つアドバイスをしよう。』

 

『ハッ!御配慮頂きありがとうございます。アドバイスとは一体?』

 

『何ただ[生きて帰る]それが一番重要な事だ。戦功なんて物は生きて帰らなければ何の意味もない。それを伝えたくてね。まあ伝えたいのはそれだけだ、諸君らの健闘を祈る、ジーク・ジオン』

 

『感謝します。ジークジオン』

 

生きて帰る…か、確かに一番重要な事だな。

でもちょっとなー少し引っかかるのは艦長の目が少し血走っていた事だ、これはもしかしたら上からいろいろと言われてるな?きっと戦死させないように一回出撃して補給に戻ったら再襲撃出来ないようになってたりするのかも知れないな。考えすぎか?まあいいや艦長の言っていた通り生きてさえいれば何とかなる何とかなる……よね?

 

 

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0079年1月8日

 

『キリング中将、アイランド・イフィッシュ地球落下軌道上に多数の敵影あり。ティアンム中将率いる第4戦隊を確認、他多数の迎撃艦隊も確認しました。』

 

『相手はティアンム中将か、厳しい戦いになるな。』

 

『そうでしょうか?今までも何度か妨害がありましたが損害は軽微です。何より虎の子のMSも万全です。』

 

『確かに我が軍は順調に作戦を遂行している。だが相手も馬鹿では無い、ある程度の情報は得ているだろう、そして何よりも相手は死兵になるぞ。』

 

『死兵ですか。確かにそれは厄介です』

 

『ああ、そうだ相手はもう一歩も引かんだろう。引いたら最後、自分の軍が文字通り消えて無くなるのだからな。』

 

『例え相手が死兵だとしても勝つのは我々です。』

 

『その通りだ、我々は完璧にこの作戦を遂行しなければならない、絶対にな…』

 

キリング中将はブリティッシュ作戦の全貌を知る人物である。そのためこの作戦の為に犠牲になったアイランド・イフィッシュの住人がどのような最期を辿ったかを知っている。犠牲になった者たちの為を無駄にしない為にも成功させる。もし失敗したらその時は…

覚悟を決めて戦いに挑むキリングであった。

 

『キリング中将、作戦遂行時間になります、御命令を。』

 

『総員戦闘開始!ジーク・ジオン‼︎』

『『『『ジーク・ジオン‼︎』』』




次回ヒカル爆散!?土星エンジン驚異の性能をお送りします(嘘)
次回はMS戦です。うまく表現出来なくても勘弁してください。


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ブリティッシュ作戦2

ブリティッシュ作戦の続きです
やっぱザクっていいですよね。
しばらくは無双状態です。


キリング中将から全部隊に攻撃命令が下され軍全体が殺気に包まれる。

 

もちろん自分達の部隊も命令に合わせ既に行動している。

緊張から口の中が酷く乾くのを感じながらも何回も何回も繰り返し練習した出撃手順を踏む。

 

パイロットスーツ独特の息苦しさを感じながらも全ての電源を入れ異常がないか何度もチェックをする

自分の乗るザクⅡのモノアイにピンクの目が光る、ゆっくりと一歩ずつカタパルトに向かう。

一番先頭が自分、二番目がウィル、最後が我らが隊長キッドである。

 

機体が出撃位置に固定され出撃準備が完璧に整ったのを確認する。

 

『こちらヒカル、ザクⅡ発進準備よし!』

『こちら管制、了解。発進を許可する。』

『了解。ヒカル、ザクⅡ、行きまーす!』

 

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バーニアを吹かし体全体にかかる猛烈なGに意識を失わないように歯をくいしばる。しばらくしてGが治るとまず安堵を感じると共に目の前の大宇宙に少しの恐怖と多くの感動を感じた。

 

『よし、全機無事だな。このまッ!?』

キッドが隊の無事を確認し、このまま進撃を命令する前に前方の艦隊からの強力な艦砲射撃やミサイル攻撃であった。

 

『回避行動を取りながら突撃!相手はミノフスキー粒子で狙いは曖昧だ、ヘマするなよ!』

『『了解!』』

 

キッド達の部隊はザクⅡのバーニアを吹かせながら必死にサラミスやマゼランの攻撃を避けていく。

しかしながら相手はそれだけでは無い。

 

『前からセイバーフィッシュ多数接近!』

『ウィルと俺で弾幕を張って強行突破だ。やられるなよ!』

 

ウィルとキッドのザクマシンガンが唸りを上げ弾丸を吐き出し弾幕を張る。その間もバーニアのスロットルを限界まで上げまるで流星の様な勢いでセイバーフィッシュの群れ駆け抜ける。

 

『被害報告!』

『被害なし!』

『こちらも被害はありません!』

 

ザクⅡの運動性を駆使し無傷で抜ける。隊の練度が高いのもそうだが何よりミノフスキー粒子によるレーダー兵器の無効、セイバーフィッシュとは比べ物にならない程の運動性能で切り抜ける。

 

『前方に艦影を視認。サラミス1、コロンブス1』

『よし、雑魚は俺たちが抑える。ヒカルはサラミスを墜とせ!』

『任せろ、痛いのをお見舞いしてやるぜ』

 

キッドとウィルが群がる戦闘機を蜂の巣にしながらヒカルのカバーをする。

その隙にヒカルは持ち前の優れたMS操縦技術を生かしサラミスに近づいていく。

 

サラミスは近づいてくる緑の巨人を堕とそうと必死に主砲やミサイルを撃つがミノフスキー粒子のせいで本来ならレーダー技術を使った高精度な射撃を用い全て外れる。

巧みな機動でサラミスの真上を取り狙いを定める。

 

『ほらよ、ちょっと遅いがお年玉だ!遠慮せず貰っときな!!』

ヒカルはそう言うとトリガー押した。

 

ザクⅡが持つ凶悪な対艦ライフルが火を吹きサラミスに直撃する。

 

『まだまだ喰らわせてやるよ!』

対艦ライフルが連続で二度火を噴く。ライフルから撃たれた弾はサラミスの装甲を貫くと内部で破裂し弾子をばら撒き内部から損傷を負わせていく。

その内の一発が艦橋にあたり爆発四散すると同時に艦全体が内部から少し膨らみ大爆発を起こしサラミスは沈んでいった。

 

『サラミス撃破!サラミス撃破!お次はコロンブスだ!』

『よくやった!戦功間違いなしだ!』

『流石MSシュミレーターでトップだったのは伊達じゃ無いね!』

 

ヒカルはサラミスを墜とした興奮が冷めないまま次の獲物のコロンブスに向かう。

セイバーフィッシュも自分達の母艦でもあるコロンブスを守ろうと必死に迎撃をする。

 

『クソ、奴らコロンブスを墜とされまいと必死だ、キッド、どうしたらいい。』

 

『このままじゃジリ貧だ、3機で制圧射撃しながら突っ込んでコロンブスを堕とす。そのまま母艦に戻って補給だ』

 

『了解』

『ラジャー』

『よし、息を合わせるぞ!3、2、1、今!』

 

3機のザクがかなりの勢いで進みながら弾を使い切る勢いで射撃したちまちセイバーフィッシュを墜とす。

セイバーフィッシュは強烈な射撃の前に墜とされるか逃げ出すかなどちらかだった。

セイバーフィッシュの陣形が崩れた先に逃げ出そうとするコロンブスが映るが余りにも遅すぎた。

 

『ヒカル!ウィル!このノロマな亀に戦争の厳しさを教えてやれ!』

キッドがそう吠えるとザク3機が一斉にコロンブスを撃ちまくる。

コロンブスはあっという間に爆発し撃沈した。

 

『よし、とっとと帰還して補給を受けて再出撃だ。母艦まで止まるなよ!』

 

こうして3機のザクは一旦戦場を後にするのであった。

 

 

 

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『こちらキッド、管制、補給を求む、着艦許可を。』

『こちら管制、補給を許可する。着艦姿勢を取り相対速度を合わせ。』

『了解、着艦姿勢を取り相対速度を合わせる。』

『着艦姿勢、クリア。相対速度、問題なし。回収ワイヤー発射…機体との接続を確認。オールクリア。補給完了までの時間は15分程だ、それまで休んでいてくれ。お疲れさん』

 

無事に母艦のムサイに辿り着き着艦も終えた。ようやく緊張から解放され一息つけた。そこで自分がかなり汗をかき疲労している事に気付いた。深く深呼吸をし、いつもの自信を取り戻す様にゆっくりと息を吐いた。

 

そこでふと自分達の事を振り返っていた。

父はツィマッド社の副社長、母はそこの技術設計者でありかなり恵まれた生まれだ。

 

父と母の愛情を受けすくすくと育ったが両親が溺愛したためか少し傲慢だったと思う(他人から見たらジャイアン並みの暴君です)そのためか友達がおらず寂しい思いをしていた俺に両親が友達を作る為に親戚の子供に合わせてくれた。それがウィルだ。

 

ウィルとは最初はギクシャクしていたが次第に仲良くなり親友になった。すくすくと育ち青年になった頃ウィルが共に士官学校に行かないかと誘ってきた。将来は両親の様にツィマッド社に入社しようと考えていたのだが現在地球連邦からの独立の機運が高まっており開戦間近と噂されていた。

 

俺はウィルのような親ザビ家でも無いがアースノイドの搾取は許せなかった。なぜ地球に住む奴らに我々コロニーに住む我らの指図を受けなければならないのかと言う疑問を抱いていた。

このまま行ったら開戦だ。もしも戦争が起こるならスペースノイド独立の為に戦いたい思いがあった。

 

こうしてキッドは両親の制止を振り切り士官学校に無理矢理入隊したのだった。

 

そこでキッドは第2の親友ヒカルに出会うのだがこの話はまた別の機会に。

 

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キッドが昔の事に思いを寄せているとコールが鳴りモニターに艦長の姿が映る

 

『艦長?どのようなご用件でしょうか?』

キッドは補給の完了の連絡か?と一瞬考えたがこのクソ忙しいであろう時にわざわざ艦長が出るわけ無いと考えより困惑を深めた。

 

『諸君らの隊は前線から後方に移動だ。』

 

『なっ!何故ですか!機体の損傷は皆無です!パイロット達も出撃を万全の体制で待っております!』

 

『落ち着け、諸君らがよくやっている事は分かっているし、格好の戦功のチャンスだと言う事は分かっているが』

 

『ならば何故です!何故後方に下がらなければならないのですか!』

 

『だから落ち着けと言っているだろう。確かに我々は優勢だが防御ラインを超えてくる敵が多く作業中のザクに多数の被害が出ている。これ以上の被害は看過できん。そのため諸君らに後方に下がり抜けてきた敵を倒してもらいたい。』

 

『……申し訳ありませんでした。少し冷静ではありませんでした。』

 

『気にしないでいい、諸君らは初陣だし、戦場では冷静に考えるのは難しい。それが出来るのは一人前だけだ。』

 

『ありがとうございます。任務了解しました。隊員に伝えます。』

 

『ああ、諸君らの活躍を願っている。』

 

通信が終わり静寂が訪れる。

『クソ、冷静になれ俺。上官に刃向かうなんて、何馬鹿な事をやってるんだ。』

 

キッドは気持ちを入れ替えヒカルとウィルに任務の変更を伝えた。

 

『マジかよ、せっかく戦功大量ゲットのチャンスなのに』

 

『仕方ないよ、命令されたらそれに従う。それが軍人だからね。』

 

『あーあ、確かに命令に従うしかないか。対艦ライフルは預けて120ミリに交換かぁ。』

 

『ああ、そうだな。ヒカルは武装を変えておけ。相手は戦闘機だけだろうからな。』

 

3人でさっきの戦闘での反省や確認をしていると補給終了の通信が入る。

 

『よし、全機出撃するぞ!気を抜かなよ!』

『おう!』

『了解』

 

それぞれのザクが勢いよく指定の場所に向かっていく。

 

こうして補給を終えた3機のザクはまた戦場に戻るのだった。

 




次回ブリティッシュ作戦成功!モグラ全滅ジャブロー消滅ジオン完全勝利!衝撃のラスト5分を見逃すな!(嘘)

次回は戦闘機から作業中のザクを守ったりします。

部隊の階級全員少尉って変ですか?隊長のキッドは中尉にした方がいいですか?

自分としてはルウムが終わったらキッドは大尉、ヒカルは中尉、ウィルは少尉のままで行こうかと思うんですがどうですかね?

今回の戦闘シーンはどうだったでしょか?アドバイスをください。


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ブリティッシュ作戦3

ブリティッシュ作戦の続きです。

核を使っても完全には壊れないコロニー。凄まじい装甲ですね。内部からの攻撃だと激弱でぽんぽこ穴が開いて脆いイメージです。何となく内部攻撃に激弱なデス・スターとかぶりますね。



いったいどのくらい時間が経ったのだろうブリティッシュ作戦が0079年1月4日に始まり現在1月8日。

この巨大なコロニーをジャブローに落とし戦争を終わらせるべく男はこのコロニーを大気圏に突入させる為の作業を黙々と続ける。

全てはスペースノイドの独立を果たし、妻と子供により良い世界を残すために。

 

この作業はとても意味ある仕事だと分かっているがこの四日間ろくに休憩も取っていない、流石に疲れが出てくる。

 

この作業が完全に終わりジャブローに完璧に落ちたのならそれはある意味で戦争を終わらした英雄の一員でもある。

自分にそう言い聞かせながら疲労でクタクタになりながらもコロニーへの大気圏突入用の熱処理作業をする。

 

コロニー前方では何とかこのコロニーを破壊しようとする連邦軍とそんな連邦軍相手に必ずコロニーをジャブローに落とそうとするジオン軍が血みどろの戦いをしていた。

 

近くでは作業を何とか妨害しようとする戦闘機がハゲワシのように作業中の無防備なザクを狙っていた。

 

男はこの仕事が終われば絶対にボーナスと休暇をもぎ取り家族と過ごす事を考えていた。

 

黙々と作業をしようやく終わる、その時だった。

 

ビービービーと危機を知らせるアラームが鳴り響く。

モニターから護衛のパイロットが何か言っているがよく聞こえなかった。

男は顔を上げ機器に挟んである家族との写真を見る。

 

『ああ、クソったれ。クレア、アリス。すまない。愛している。』

 

 

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護衛対象の作業中のザクがセイバーフィッシュのミサイルを受け爆発するのを背後の振動から確認する。

 

『クソが!またやられた!おいキッド、増援はまだなのか!もう持たないぞ!抜けられる!』

 

『何回も要請している!奴らかなりの攻勢を仕掛けていてどこも手一杯だそうだ!』

 

『クソ!奴ら自爆覚悟で突っ込んで来るぞ!どうしたらいいんだよ。』

 

『こちらウィル!弾切れのため補給に戻る!何とか無事でいてくれよ二人とも!』

 

『クソ!マガジンあるだけ持ってきてくれ。いちいち母艦まで行ってたら護衛対象は全滅だ!』

 

『了解!』

 

ウィルの機体が補給に戻るのと同時に敵の勢いも少し弱まり息を整える暇が出来た。

 

『奴らセイバーフィッシュにパブリク、トリアーエズまで突っ込んで来るぞ、何でもありかよ。』

 

『畜生、護衛対象のザクがもう3機もやられた。増援はいつ来るんだ。』

 

ジオン軍は連邦軍の物量を活かした攻撃や自爆攻撃に押され多数の作業中のザクが墜とされていた。

 

連邦軍は決してコロニーを地球に落とさせない為に文字どうりの死兵となり頑強に抵抗していた。

 

 

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『キリング中将、コロニーでの作業中のザクの被害が甚大です。』

 

『神風とは酷い事を…いや、此方も人の事は言えんか。』

 

『?何か言いましたか?』

 

『いや、何でもない。そうだな予備部隊を護衛にいくつか回せ』

 

『了解しました。予備部隊を護衛に回します。』

 

キリング中将と副官が話しているとレーダーから攻撃を知らせる表示が出た。

 

『レーダーに感あり!敵のミサイル攻撃!かなりの数です。』

(このタイミングでミサイル攻撃?何かあるな)

 

『念の為、コロニーの隔壁に隠れながら迎撃しろ。』

『了解しました。迎撃を命令します。』

 

ミサイルの迎撃を命じ暫くするとコロニー前方が光に染まった。

『状況を報告しろ!何があった。』

 

『これは、敵の核攻撃です!』

 

『全部隊に通達!敵ミサイル攻撃を全力で迎撃せよ!』

『連邦もカードを切ってきましたね。』

 

『向こうも必死だ。核でも何でも使うだろうな』

 

『……守り切れますかね?』

 

『出来る出来ないではない、もうやり遂げるしかあるまい』

 

キリング中将は深いため息と共に考えを巡らせた。

相手も虎の子の核を使ってきた以上向こうも限界に近いのだろう。我々も苦しいが相手はそれ以上に苦しいはずだ。

 

何せもう相手は戦力の5割既に失っている。本来ならもうとっくに撤退しなければならない損害だ。だがしかし、相手は引かない。きっと最後の一兵になろうともコロニーを攻撃するだろう。

 

はぁ

 

もう一度キリング中将は深いため息を吐いた。この戦いの行く末を思いながら。

 

 

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『漸く増援が来るぞ!全く遅すぎる!』

 

『やっと増援が来るのか。それよりキッド、お前の右脚大丈夫か?修理に母艦に戻った方がいいと思うんだが。』

 

『心配ない、脚部バーニアは問題なく動くしシステムチェックでもエラーは出ていない。それよりもウィル。お前はどうなんだ?』

 

『こっちは左脚の膝から先が大破判定。それ以外は特に損傷はないよ。』

 

『そうか、まあ修理に行こうとしてもどこも満杯で戻る頃には戦闘は終わってるだろうな。それで?ヒカルは何か損傷は?』

 

『損傷は特に無い。代わりに燃料が少し心許ないが、まあ何とかなるだろ』

 

二人のザクはまだ致命的な損傷は負っておらずまだ戦える状態だが母艦で修理が必要な状態だ。

ヒカルのザクはと言うと流石は転生特典?である優れた操縦で少し戦闘機の機銃を当たったくらいで損傷は無かった。

 

3人は互いの状況確認していると突然周りが明るくなりコロニー全体が激しく振動を始めた。

 

『奴ら核を撃ってきた!?』

 

『こっちも使ってるんだお互い様だろ!クソまた戦闘機が来たぞいったい何機墜とせばいいんだよ』

 

『増援が向かってる!耐えれば俺達の勝ちだ!全員生きて帰るぞ!』

『おう!』

『了解!』

 

編隊を組み突撃してくるセイバーフィッシュやトリアーエズの群れに照準を合わしたザク3機の120ミリマシンガンが一斉に火を吹き敵を蹴散らす。

 

しかし相手もすぐに散開してはザクを四方から攻撃し的を絞らせないように動く

 

3機のザクは相手に背後を見せないようお互い背中合わせで動く。

 

戦いの最中、変化があったのはまずキッドだった。

 

『クソ、弾切れだ。』

 

目敏くキッドのザクが弾切れだと見抜いたセイバーフィッシュが殺到する。

 

弾切れになりただの鉄の塊となった銃をセイバーフィッシュに投げつけ1機撃墜する。

 

『貴様ら戦闘機などヒートホークで十分だ!堕ちろ!』

ヒートホークを振り上げセイバーフィッシュに叩きつけ真っ二つに切り裂く。

 

しかし

 

(万全の状態ならともかくこの有様ではいつまで持つか分からんな)

 

キッドのザクは元々の損傷である右脚の損傷も酷くなり脚部ブースターは安全のために燃料を止めているため運動性が低下している。肩のシールドもミサイルや機銃を何回も防いだせいでもう使えない。

 

『おいウィル!キッドを下がらせろ!奴らキッドに狙いを定めやがった!』

『キッド!もう無理だよ!撤退命令を!』

 

ヒカルのザクが右手に120ミリマシンガンを撃ち左手でヒートホークを振るう。

 

くそくそくそ!何だよこれは!ジオンって最初は無双状態じゃないのかよ!何でこんなにピンチ何だよ、ベリーハードモードかよ!絶対に生き残って地球に降下した時はララァが元々いたとされる高官用の売春宿行こうとかアホなこと考えてたのに!畜生、まだだ!まだ終わらんよ!!

 

ヒカルのザクが孤軍奮闘を見せるも長くは続かない。

 

ビービービー

『推進剤が切れる!?しかも弾切れだと!ヤバイぞこれはマジで!』

 

ヒカルのザクが燃料切れで動きが鈍った時ウィルが撃ち漏らした爆弾を搭載した炎上中のパブリクがキッドのザクに体当たりを仕掛けようと猛スピードで突っ込んできた。

 

『避けろキッド!』

『キッド!』

 

キッドは直感で自分は助からない事を悟った。

キッドの脳裏に浮かぶのは家族の事、故郷の事、初恋の事など様々な事が浮かぶ、そしてヒカルとウィルの事を思い浮かべポツリと

 

『俺はお前達と会えてよか』

ドゴーン!という音と共にパブリクは大爆発を起こした。

 

『キッド!よくもキッドを殺したな!連邦のクソが野郎が全員ぶっ殺してやる!!』

 

『嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!キッドが死ぬ訳無い!アースノイドのゴミ虫に殺される筈がない!』

 

ヒカルが吠えウィルが闇堕ちするなか通信が入る

 

『お前達、俺を勝手に殺すな。』

『『キッド!?』』

 

(何で俺は生きてるだ?パブリクに突っ込まれて死んだはず。ん?これは、そうか!)

 

『こちら第18小隊隊長ガリル中尉だ。待たせてすまない、これよりここは我々が受け持つ。後方に下がり待機………いや、ちょっと待て、これは。………喜べどうやらコロニーが阻止限界点を超え完全にジャブローへの落下軌道に乗ったらしい。一部の部隊を除き母艦への帰還命令が出ている。』

『それって、つまり?勝った?』

『ああそうだ我々ジオンの勝利だ!』

 

ガリル中尉の報告に部隊は一瞬静まり返りその後爆発するかのような歓声が上がる

 

しばらくするとどこからともなく

『ジーク・ジオン』

と聞こえやがて数々の通信からの大合唱が始まる。

『『『『『ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!』』』』』

 

 

『ふう、終わったな』

 

『ジーク・ジオン!』

 

『ああ何とか全員無事だな』

 

『ジーク・ジオン!ザビ家万歳』

 

『最後はマジでお前が死んだかと思ったぜ』

 

『ジーク・ジオン!ジオンに栄光あれ!』

 

『ふん、俺が死ぬかよ!』

 

『アースノイドに死の鉄槌を!』

 

『ぷぷ、俺はバッチリ聞いちゃったけどね、『俺はお前達に会えてよか』ってねぇ。いやー嬉しいな。そこまで想われてると!』ドヤァ

 

『これからスペースノイドの輝かしい栄光が始まるんだ!万歳!万歳!万歳!』

 

『俺はそんな事など言っていない!ヒカル!その事は忘れろ!さもないと殺すぞお前!』

 

『はっはっは、絶対に忘れないし一生からかってやる。』

 

『やっぱり劣等種たるアースノイドは優等種たるスペースノイドに支配される方が幸せなんだ!』

 

『クズが!死ね!死んでしまえ!あといい加減うるさいぞウィル!少し怖いぞ!』

 

『俺は絶対に生き残ってやるもんね〜。あとウィル、勝利してハイになるのは分かるが、マジで怖い事言ってるぞ。ブラックウィルになっている。』

 

こうして馬鹿な事を言い合える、その事が心から嬉しく思う3人だった。

 




次回億越えルーキーキャプテンキッドの大冒険!
ウィル狂気のザビ家布教
ヒカルの転生発覚!?愉快なフラナガン機関と遊ぼう!(嘘)

次回は少しの休憩と作戦失敗まで書こうと思います。ルウムまで近いようで遠いなー。早くルウムまで行きたい。

ルウムでは誰か有名なキャラ出したいですね。王道だとやっぱりシャアですかね?他にもジョニーやシンマツナガ、黒い三連星など名だたるエースや有名人が出ますからね。

では誤字脱字があったらお教えください。お願いします。


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ブリティッシュ作戦4

皆さんは劇場版ジ・オリジンは見ましたか?僕は最初、友人から戦闘シーンは少ないと言われ見てなかったんですが、暇な時ふと思い出して見てみたんですが無茶苦茶面白かったです。
そこで言いたいのはドズルがメチャクチャ良い!凄く良い!お茶目な所が下手なヒロインより可愛いですよね。
紫ババアはマジ鬼畜。

見てない方は是非オススメしますよ。


0079年1月8日

 

『ティアンム艦隊、残存兵力を集結させ撤退行動を開始しました。』

『連邦軍による核ミサイル攻撃、反応なし。コロニーに損傷はあるものの無事ジャブローへの落下軌道に乗りました。』

『ジャブローへのコロニー落下予測時間は1月10日8時45分頃と推測されます。』

『キリング中将、やりましたね。ティアンム艦隊に70%以上の損害を与えました。我が軍の勝利です。』

 

部下の報告を受けキリング中将は張り詰めていた緊張が少しほぐれ無意識のうちに握りしめ、少し汗ばんだ手を開いた。

 

『諸君の奮戦のおかげだ。本当に良くやってくれた。』

 

キリング中将はこの一戦を振り返る。

相手のティアンム中将はかなりの名将であった。部隊を良くまとめ烈火の如き攻勢と要塞のように強固な艦隊陣形。

 

そして何よりもティアンム中将の、いや、この戦いに参加した連邦軍全体に言える事だが、その恐ろしいまでの精神力と執念だ。

 

確かにコロニーがジャブローに落ちたら連邦、いや、地球全体が未曾有の大災害に見舞われ、その後ジオンに占領されると言う最悪な結果が訪れる。

 

そんな悪夢を何としても防ごうと士気が上がるだろう。

地球にいる両親の為、愛する妻や夫、子供や友人の命が自分達の手に掛かっている。

その大切な何かを守るため自分の命を投げ打ってでもコロニーを破壊する。

 

あるマゼランは武装の全てを破壊されたと分かると、何の躊躇もなくその身をまだ無事な艦の前に出て盾になった。

 

既に満身創痍で退艦しなければならないはずのサラミスは最後の時まで主砲のメガ粒子砲を撃ち続け爆発していった。

 

セイバーフィッシュなどの戦闘機は自分が助からないと分かると自ら相手に突っ込み自爆をしていった。

 

故に思う。奴らはまだ生きている。生きている限り決して諦めず抵抗を続けるだろうと。最後の一人になろうとも。

 

その執念とも言える連邦からの攻勢を受け止めきれず、コロニーに少なくないダメージを負わせてしまった。もしもそのコロニーに何かあったら。

 

不安が顔に出たのだろう。副官が尋ねてきた。

 

『キリング中将?何か不安な事でも?』

 

副官の声に思考の海から現実世界に戻ったキリング中将は命令を下す。

 

『いや、何でもない。それよりも被害状況の確認を急げ、負傷者などの回収や救出、重傷者の後方輸送は最優先だ。部隊も再編し周辺の警戒を急がせろ!やる事は山ほどある。それにまだ作戦は終了していない!最後まで気を抜かなよ!』

『『『了解!』』』

 

そう、部下達に命令を下し、漠然とした不安を少し抱えながらもキリング中将も仕事に追われるのであった。

 

 

_____________________________________________________

0079年1月9日

 

ヒカルはムサイ級軽巡洋艦の割り当てられた自室で一休みしていた。

そして、考えていた。この先の事を。

 

この先、コロニーは崩壊し結局作戦は失敗する。その後またコロニーを落とそうとして失敗。

 

だけどルウム戦でレビルを捕らえるんだよな、ここで黒い三連星より先に辿り着いて確実に墜とせばかなりジオンが勝利に近づくんだが…無理だな。

 

いくらオレ達の隊が優秀でもリアルチートのエース達には敵わない。仮に全員が今のオレ並みの技量持っていたとしても無理だな。

 

今回の戦いで良く分かった。

確かに転生特典で高いMS操縦技術を得てもそれを生かし切れない。

周りの状況を良く確認し冷静に判断をし行動をする。オレにはそれが出来てなかった。

 

ただ操縦が上手い、それだけだ。動かせるだけでは本当のエースにはならない。燃料や残弾を常に把握し的確に判断し最適解を選択し続ける。それが本当のエースだ。

 

一年戦争で一番多くの戦果を残したとされるブレニフ・オグス中佐

まさに伝説のエース、数多くいるパイロット中で真のトップエースだ。

 

その戦果は公式記録でMS193機、艦船8隻。

 

連邦の白い悪魔と恐れられたアムロ以上の戦果だ。

 

まさしくエースだ。オレがいくら頑張ってもそこまでの戦果は絶対に届かない。

 

次はそんな本当のエースが大量に集まるルウム戦役だ。凄腕達の動きを見れたら良いが…。

 

『ヒカル、キッドが反省会をやるからすぐに来いだってさ。』

『ああ分かった、すぐ行く』

 

同室のウィルに返事をし部屋を出る。

そこで一つのことを思い出す。

 

オレの知ってるエース達は決して一人では無く仲間が居た。お互いに支え合い、足りないものを補い限界以上の力を振り絞り戦果を挙げていった。

 

オレにだってキッドやウィルが居る。今は無理でもいつかきっと本当のエースになれる。

 

ヒカルはそう自分に言い聞かせた。

 

 

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0079年1月10日

 

キリング・J・ダニカン中将率いる公国軍護衛艦隊は興奮に包まれていた。

 

ブリティッシュ作戦の要、巨大な弾頭に見立てたコロニー『アイランド・イフィッシュ』の大気圏突入の時間が迫ってきているからだ。

 

全将兵が固唾を飲んで見守る中大気圏突入のカウントが始まる。

 

『コロニーに異常なし。正確に突入コースに入ってます。』

『コロニー大気圏突入間近。』

『コロニー大気圏突入まであと1分。』

『カウントを開始しろ。』

『コロニー大気圏突入まであと30……20……10…5、4、3、2、1、コロニー大気圏へ突入しました!』

 

その瞬間辺りは歓声に包まれていた。

将兵達は互いに褒め合い、握手やハグ、肩を互いに組み笑い喜んだ。

 

『やってやったぞ、ざまーみろ連邦め。』『スペースノイドの怒りを知れ!』『お前達の死に意味はあったぞ…』『裁きの鉄槌を喰らいやがれ。』『やっと家に帰れるのか』『仲間の敵討ちだ!滅びろモグラめ』『ジーク・ジオン!』『帰ったら恋人に告白するんだ』

 

全員が勝利を喜んでいる中モニターのコロニーから目を離さなかった士官が焦った声で報告する。

 

『コロニーに異変あり!繰り返す!コロニーに異変あり!』

 

先程まで歓声で騒がしかった艦内が一気に静まる中、さらに悲鳴のような声を上げ報告する士官。

 

『コロニーに損傷を確認!損傷なおも進行中!』

 

『お、おい、まさか失敗したのか?』

『そんなわけあるか!コロニーは確かにジャブローに落ちてる!少し外壁が剥がれてるだけだろ⁈』

『ああ、そうだよな、失敗なんてするはず』

 

男が作戦失敗を否定しようとする時、ついに致命的な報告がされた。

 

『コロニーの損傷止まりません!このままでコロニーは4つに割れます!キリング中将!』

『……………』

『キリング中将!』

『今、我々に出来ることなど、祈ることしかない。』

『ああ!コロニーが、コロニーが割れます…』

 

将兵たちの祈りも届かず無情にもモニターに映るコロニーがゆっくりと崩壊を始めた。

 

0079年1月10日8時35分アラビア上空で四散、崩壊した。

 

8時41分コロニーの前半部分がオーストラリアのシドニーに激突。

 

残り1/3が太平洋上 2/3が北米大陸に落下する。

 

これによりオーストラリア大陸の16%が消失。

シドニー湾とよばれる直径500Kmのクレーターが生まれた。

 

シン、と静まり返った艦内で副官が報告する。

 

『……コロニーはアラビア上空で四散、オーストラリア、太平洋、北米大陸に落ちました。ジャブローはいまだ健在です。キリング中将、御命令を。』

 

キリング中将は震えそうになる声を必死に抑え命令を下した。

 

『本国に緊急連絡、ブリティッシュ作戦の失敗を伝えろ。全軍に撤退の指示を出せ。』

『了解しました。』

 

指示を出し、動き出す顔色の悪い部下達を目を閉じてシャットアウトする。

 

様々な事が頭によぎる。この作戦によって死んだ部下達、コロニーにいた罪なき住民、そしてコロニーが落ちた事による死者と災害。この先のジオンの行く末。

 

しばらく目をつぶっていたキリング中将は立ち上がり部下達よりも酷い土気色の顔をしながら言った。

 

『自室にいる』

 

それだけ副官に告げると自室に戻っていった。何かを決意した目をしながら。

 

 

 

_____________________________________________________

 

『キリング中将、本国から通信が入っています。』

返事がない。

『キリング中将?聞こえていますか?』

聞き返すも返事はやはりない。寝ているのかと思い部屋に入る。

『失礼します、キリング中将。本国から通信が…』

そこで目に入ったのは口から血を流し倒れ伏しているキリング中将の姿であった。

『おい!誰か来てくれ!早く!』

大声を上げ、人を呼ぶ

『医者だ!医者を呼んでこい!中将!お気を確かに!』

『なんだ!何があった!な、中将⁈』

 

責任感の強かったキリング・J・ダニカン中将は作戦失敗を受け、率いていた艦隊に撤退の命令を下すと自室で服毒自殺を図った。

 

幸いにも発見が早いため一命を取り留めたが長期の入院生活を送る事となる。




次回キリング中将改造人間計画?ジオン驚異のメカニズム!(嘘)

次回はルウムまで行けたらなと思います。

ルウム戦役ではシャアや黒い三連星はザクⅡS型に乗っているという説を採用しようと思います。


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嵐の前の静けさ

皆さんはガンダム のゲームに何か思い出はありますか?
自分は幼少期の楽しい思い出の一つに親戚の家でやった、連邦V SジオンDXという作品です。
特に印象に残ってるのはどこかの島の上空にガウが飛んでるんですけど下手すると攻撃が届かなく時間制限までずっと眺める事になります。
あの攻撃が届かない絶望感。今でも思い出します。
それとジムの足音!パコンパコン言いながら進むジム。かなり印象深いです。


真っ暗な宇宙の中で輝く星々。いつもなら何の変哲も無いただのありふれた景色。

 

しかし現在は違う。戦艦のちぎれ飛んだ主砲、あるはずの船体がどこにも無い艦橋、蜂の巣にされた戦闘機、ザクの頭、そして燃料なのか人の血なのかもわからない液体。

 

そのような物が無数に宇宙空間を漂っている鉄屑の墓場となっていた。

 

そこに、一隻の救難艇が飛んでいた。

救助艇はこの鉄屑の墓場を飛び回り信号を探していた。

 

『頼む、頼む、頼む。もう鳴らないでくれ。頼むから。』

 

ゆっくりと救難艇を進めていると突然

ビービービー

男は鳴らないで欲しいと祈ったが無情にも信号をキャッチするアラームが鳴る。

 

『くそ、何で鳴るんだよ、神様、どうかお願いします。』

 

男は信号の発信元まで進めるとそこにはボロボロのムサイが現れる。

 

『………』

 

男は念の為のハンドガンを腰に装備し、次に医療品が入ったバッグを肩に掛け背中のスラスターを確認する。

男は救難艇からムサイに移ろうとする時黒い袋を持って行くか迷う。

 

男は自嘲ぎみに笑うと結局手に取らずムサイに向かった。

 

艦内は外見同様ボロボロで、エアロックも生きて無かった。

手元の機械で信号の発信元に近づくにつれ鼓動が早くなり息が苦しくなる。

 

しばらく進んでいると目の前にまだエアロックが生きている部屋に辿り着く。

 

『おい!無事か!エアロックを開けるぞ!』

プシュー

エアロックを開けると気圧差から中にあった様々なものが飛び出していった。

 

男は中に入ると真っ直ぐに近づいてくるパイロットスーツがあった。

 

『よかった、無事か!安心しろ、もう大丈夫だ。どこか怪我はないか?』

 

男は喜んだが返事が無いことに気がつき嫌な予感を覚えた。近づいてくるパイロットスーツを避けると何の反応もなく扉の外にぶつかった。

 

『はは、こんなことなら袋、持って来れば良かったな』

 

パイロットスーツの背中には大きな穴が開いていた。

 

『こちら第21救難艇、C5地区で死亡者発見。』

 

『了解した、引き続き救命活動を続けろ。』

 

通信が終わると男は小さい声で呟いた。

 

『何が救命活動だ、無駄だ、みんな死んでんだよ』

 

男はこれで6度目となる通信に怒りと絶望を覚えた。

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後の世に一週間戦争と言われる戦争が終わった。

 

この戦いで総人口の25%、30億とも50億とも言われるおびただしい血が流れた。

 

しかし、連邦、ジオン共にまだまだ人は死ぬと言わんばかりに行動を開始していた。

 

ジオン軍総司令官のギレン・ザビはコロニーは地球に落ち、連邦軍に甚大な被害を出したものの、ジャブローは健在という、ブリティッシュ作戦失敗の報告を受け直ぐさま次の指令を発した。

 

『我々はまず、腐りきった連邦政府の威信を砕かねばならない。そしてジャブローこそが、そのくだらぬ威信の象徴なのだ。』

 

そう言い放ったギレンはドズルに新たな作戦を命令した。

 

第二次ブリティッシュ作戦である。

 

1月13日

ソロモンに居るドズル中将を総大将とした第1連合戦隊。

グラナダから突撃機動軍艦隊がサイド5に向けて出撃を始めた。

 

この大規模な移動を察知した連邦軍は阻止作戦を開始する。最後の望みを歴戦の将軍レビル中将に託す。

 

1月14日

レビル中将旗下の第3艦隊を中心とした大隊がサイド5に向けてルナツーを出発。

ルナツーの残存艦艇や各方面からの増援艦艇がさらに合流。

 

1月15日

ルウム戦役開幕

 

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『なー頼むよー、俺とお前の仲だろう?』

『無理です。どんなに頼まれても無理な物は無理なんです。それに先日知り合ったばかりでほぼ他人です。』

『そんな事言うなよー、もうオレら友達だよー、親友だよー』

『何で僕に頼むんですか!自分で言ってくださいよ、全く』

 

ムサイのMS格納庫でヒカルは整備兵に絡んでいた。

 

『どうしても乗りたいんだよ、新型のザクⅡS型に!』

『だから何で僕に頼むんですか!新型を回せるような権限は僕にはありませよ!もっと上に言ってください、上に!』

 

そう、ヒカルは整備兵相手に新型を寄越せと無理な事を頼んでいるのである。しかし、ヒカルもそんな事が出来ない事は百も承知である。目的は別にある。

 

『上に言える訳無いだろ!馬鹿かお前は!』

『何で逆ギレしてるんですか、もう勘弁してくださいよ!』

『ヒカル!何を迷惑かけている!』

 

ヒカルが整備兵に絡んでいると怒鳴り声が聞こえた。整備兵が怒鳴り声を上げた人物に目を向けると整備兵は天の恵みとばかりに顔を輝かせた。

 

『いや〜、ただの世間話だよ、な?な?』

 

ヒカルは必死に目で話を合わせるように要求する

『聞いてくださいキッド隊長!新型を寄越せと無茶を言ってくるんです!』

 

ヒカルの願いは速攻で断たれたようだ。

 

それを聞いたキッドの背後から般若の顔が出てくるのを確認したヒカルの額から冷や汗が流れる。整備兵は少し震えているようだ。

 

『お前、何をふざけている?頭でもいかれたのか?殺すぞ?』

『ハッ!申し訳ありません!殺さないでください!』

 

ヒカルは瞬時に最適解を導き行動する。どうやらエースに一歩近づいたようだ。

 

『ふん、この馬鹿が。これからブリーフィングだ遅れるなよ。それとこの馬鹿が迷惑をかけて済まない、後でキッチリ言い聞かせておく。』

『あ、いえ、その、大丈夫です。ありがとうございます。』

 

キッドが整備兵に謝罪をし此方を睨みながら何処かに去っていくのを敬礼しながら見送るヒカル。完全に姿が見えなくなるのを確認すると整備兵に向き合った。

 

『いや、何だ、無茶を言って悪かったな』

『え、ええ、その大丈夫です。』

『そうか!許してくれるか!いや〜やっぱり持つべきものは親友だな!そこで親友の君に簡単な頼みがある』

『いや、親友って。まあ、いいです。それで頼みとは?』

『何、整備兵の君には簡単な事だよ。ただ少しオレのザクのチューニングを頼む。あと追加で予備弾倉もな!頼んだぞ!』

 

ヒカルはそう整備兵に告げると風のように去っていった。ヒカルが去っていくのをポカーンとした表情で見送った整備兵は頭の中で頼まれた内容を認識すると絶望感に襲われた。

 

『無理です!絶対無理!そんな時間ありません!ちょ、待ってください!死んじゃいます!本当に過労死で死んじゃいますよ〜!』

 

そんな整備兵の悲痛な叫びに他の整備兵は哀れみの目を向けるのだった。

 

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(くくく、最初の予定とは少し狂ったが結果的にザクのカスタマイズを押し付けてやったぜ。

このクソ忙しい時に馬鹿正直に頼んでも断られる。そこでオレはある策を思いついた。交渉術の基本、ドアインザフェイスだ。簡単に説明するとまずは断られる前提の願いをする、断られたら次に本命のお願いをする。

人は何度も断ると罪悪感に襲われる、その罪悪感を利用した完璧な策である。)

 

『おいヒカル、何を気持ち悪い顔をしている、キチンと話を聞いていたのか?』

 

『えーと、あれだ、敵と戦うんだろ?分かってる分かってる』

 

『はあ、どうやら何も聞いてないようだな。ウィル、この馬鹿に説明してやれ』

 

『今回、僕らの隊の任務はコロニーへの核パルスエンジンの取り付け作業の護衛さ。』

 

『うげー、まじかよ。やる気下がるわー』

 

『確かに少し気に入らないが、それが命令だ。』

 

『へいへい、命令にはキチンと従いますよ。隊長殿』

 

ヒカルは軽口を叩きながらもルウム戦役について思い出す。この戦いはジオンの3倍という圧倒的な戦力差をMSを使い大逆転をする。そこでレビル将軍が捕らえられ戦いの決着がつく。

 

『おいヒカル、どうした変な顔して。』

『そうだよ、緊張してるの?』

 

どうやら少し力が入っていたようだ。

 

『いや、なに今回集まった戦力を考えててな、凄い大軍だろ?』

 

『ああ確かに。前の戦いもかなりの戦力だったけど今回はまさに総力戦とも言っていい軍勢だからね。』

 

『確かにな、今回の総大将はあのドズル 中将だ、しかもグラナダから突撃機動艦隊も来ている。今度こそコロニーをジャブローに落とす事が出来るだろう』

 

『そうだよ!ジオン切っての猛将ドズル 中将が指揮するんだ!連邦軍なんて一撃さ!』

 

『そう、だな。ウィルとキッドの言う通りだ。』

 

『ああ、前の戦いでも勝ったんだ!今回も勝って戦功を上げるぞ!いいな!』

『おう!』

『了解!』

 

3人はまだ見ぬ敵に闘志を燃やしていた。




次回『レビル死す』デュエルスタンバイ!嘘

次回はやっとルウム戦役です。

主人公達はS型では無くC型で戦います。ヒカルは追加弾倉はあれです。ジオリジンのシャアとかがやってたやつをイメージしてください。


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ルウム戦役

皆さんの好きなキャラは何ですか?
自分の好きなキャラは見事にジオン側ばかりです。
少し例を挙げるとアナベル・ガトーやノリス・パッカードなど男の中の漢!って言うキャラが好きです。
なんか連邦軍はそう言うキャラは少ないですよね?あえて挙げるならばサウス・バニングかシロー・アマダですかね。


宇宙の彼方からとんでもないスピードで進む何かがある。それは最初、ごま粒のような大きさだったが、だんだんと加速度的に大きくなっていった。

 

その正体はルナツーから出撃したレビル中将旗下の第3艦隊、そしてルナツーの残存艦艇や各方面からの増援艦艇がさらに合流してできた第1連合艦隊である。

 

その戦力は史上空前の大艦隊。

戦艦48隻、巡洋艦163隻、小型武装艦艇118隻、補助艦艇84隻である。

 

この大艦隊の総司令レビルは旗艦マゼラン級戦艦『アナンケ』にて部下達と会議をしていた。

 

『では、集まっている情報を報告してくれ。』

 

『現在、確認が取れているのは敵が巨大人型兵器を用いている事、強力な電波妨害により通信、レーダー、ミサイルの誘導などが妨害されています。またサイド5・11バンチコロニー『ワトホート』にて核パルスエンジンの装着を始めているもようです。』

 

部下の報告に周りはざわめく。

 

無理もない、何故なら今までやってきた事が殆ど通用しないからだ。

 

今までの高度なコンピュータによる自動制御での艦隊連携、高い精度を誇る射撃、それらが殆ど封じられ手動での運用になる。まさに悪夢だ。

 

しかし、彼等は諦めない。地上ではコロニー落下の影響から大地震や津波、異常気象などの大災害からかなりの死者が出ている。この混乱から復興作業を全く進んでいない。

 

もしも、また地球にコロニーがジャブローに、いや地球のどこに落ちても連邦という政府は無くなり、ジオンに支配されるだろう。いや、支配ならまだいいが、下手をしたら地球人類滅亡の危機が訪れるだろう。

 

『何としても、阻止せねばならないな。』

 

そう言いレビルは来るべき戦いに備え部下達と作戦を練り始めた。

 

 

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サイド5・11バンチコロニー『ワトホート』に先着していたジオン軍は早速コロニーを制圧し、核パルスエンジンの装着を始めていた。

 

この『第二次ブリティッシュ作戦』を取り仕切る総司令官はザビ家の次男でありジオン軍随一の猛将ドズル 中将であった。

 

コロニーをジャブローに落とすべく集められた艦隊は戦艦4隻、巡洋艦78隻、武装艦艇34隻、補助艦艇22隻というジオンの出せる限りの戦力を集めた。更に新型兵器のMSを掻き集め鉄壁の布陣を敷いていた。

 

『コロニーへの核パルスエンジンの取り付けはどうなっている。』

『現在の進捗状況は全体の34%程です。』

『ふうむ、そうか。なるべく急がせろ。』

 

ドズルはそう命令すると椅子に座り腕を組んで考え事を始めた。どうにも嫌な予感がしていた。虫の知らせや、獣の勘のようなものがドズルに何かを知らせようとしていた。

 

そのドズルの勘は当たっていた。ジオン軍が予測していた連邦軍の進行速度を遥かに上回る速度で進軍していたのだった。

 

『レーダーに感あり!連邦艦隊による襲撃です!』

『バカな!早すぎる!』

部下が驚愕の表情を顔に貼り付ける。

 

『全軍に通達!迎撃体制を取らせろ!迎撃部隊を優先して出撃、護衛部隊は作業中の部隊とコロニーを死守させろ!』

ドズルは素早く命令を出す。

 

『連邦めが、えらく動きがいいが…指揮官はレビルか?』

ドズルはレビルの優秀さにうめき声をあげるのだった。

 

 

0079年1月15日22時14分ジオン軍の予想を上回る速度で進軍した連邦軍の奇襲と言う形で、後に『ルウム戦役』と言われる戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

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おいおい大丈夫なのか、この戦いは。これはあの『ルウム戦役』だろ?何でこんなに苦戦してるんだよ。確かルウム戦役といえばジオン軍の3倍の戦力を持つ連邦軍に、MSを使い華々しく勝つと言う戦いじゃ無かったのか!前線は押されていて戦況は厳しそうだ。一体何がどうなってるんだ!

 

『おいキッド、前線への移動命令はまだなのか?押されてるぞ。』

 

『分かっているが、命令は下されてない。喋ってないでミサイルを撃ち落とせ!』

 

そう、こっちもまた連邦軍の攻勢に押され気味だ。連邦軍の十八番、圧倒的な物量によるミサイル攻撃だ。

 

『クソ、やたらめったに撃ちやがって、防ぐこっちの身にもなって欲しいぜ!』

 

『ああ、同感だ。こんなに広範囲に撃たれたら3機だけでは少しキツイな。』

 

『確かに厳しいね。でも仕方ないよ。前回はコロニーにダメージを受け過ぎて途中で壊れたんだ。何とか守らないとね。』

 

3機のザクは命じられた任務を果たすべく迫り来るミサイルを次々と撃ち落としていった。

 

マゼランやサラミス、レパントから発射されたミサイルが雨のように降り注ぐ。それらから巨大なコロニー、作業中MSや工作艦を守るには戦力が足りなかった。

 

コロニーを守らなければいけないジオンは貴重な戦力であるMSを迎撃部隊、護衛部隊、作業部隊の三つに分けなければならず、ただでさえ少ない戦力を分断する事を余儀なくされた。

 

それは結果的に被害を増大させるだけであり、現に前線のMS部隊は数が足りず、ほぼ全ての戦闘機を艦の護衛に回していた連邦艦隊と戦闘機の連携を突破出来ないでいた。

 

 

1月15日22時40分ドズル中将はこのままコロニーに執着しては『一週間戦争』の二の舞になると考え、核パルスエンジン装着の作業の中止を伝え、護衛部隊を含む全戦力に1月16日00時00分丁度に総攻撃をする事を命じた。

 

 

『おい!俺達に帰還命令が出ている。帰還するぞ。』

 

『はぁ?なら作業中の奴らはどうするだ?』

 

『心配いらん。作業は全て中止し、俺達と一緒に帰還する。どうやら戦力を結集して明日の00時丁度に連邦艦隊へ総攻撃をするらしい。』

 

『そうか、そう言う事だったのか!謎が解けたぞ。』

 

『ん?何の謎が解けたの?』

 

『え?あー、えーと、あははは、何でも無いから』

 

『ほっとけウィル、どうせアホな事でも考えてたんだろう』

 

酷い事をキッドに言われながらもヒカルは納得していた。ルウム戦役は2日にかけて行われていたのだ。

ヒカルがルウム戦役で知っている事は連邦がジオンの3倍の戦力だった事とシャアや黒い三連星などのエースが活躍した事くらいだった。

 

苦戦の謎は解けた。後は明日の総攻撃で華々しく活躍するだけだ。

 

『よーしキッド!ウィル!バンバン敵を墜として戦功をガッツリ稼ぐぞ!出世の大チャンスだ!』

 

『ふん、お前に言われなくても分かっている。帰還したらミーティングだ。分かったな。』

 

『全く2人とも、戦功も大事だけど、命あっての物種だからね?』

 

3人はそう言うと、作業をやめ帰還する工作艦などと一緒に、母艦に戻っていった。

 

 

 

_____________________________________________________

0079年1月16日00時00分遂に全戦力を結集した総攻撃がドズル中将から全軍に命令された。

 

まず最初に起こったのは艦隊同士の砲撃戦である。

しかしこの戦いは連邦軍が数の上で優位であったこと、既にミノフスキー粒子の使用を予測していたためブリティッシュ作戦時のような奇襲が成立しなかったこともあり連邦が優位に戦闘を進める。

艦隊戦のノウハウや戦闘艦の性能に関しては連邦が上で、ジオン艦隊から次々にムサイが落伍していく。

 

しかし、ここでジオンの奥の手、MSの前線投入を開始する。

 

瞬く間に連邦との距離を詰める巨大の群れが艦隊の護衛をしていたセイバーフィッシュなどの戦闘機を容易く蹴散らし突破していき、艦隊同士の砲撃で精一杯な連邦艦隊に襲いかかる。

 

戦力差3倍の連邦軍を破る伝説の戦いが今、始まった。




次回ヒカルうっかり黒い三連星ごとレビルを核で爆殺!?キシリア怒りの銃殺刑(嘘)

次回は戦闘回です。多分有名人出します。

ネットでいろいろと調べるんですけどいろいろな情報があり混乱しますね。まあそれぞれの使えそうなところを使って書いてるんで多分色んな時空が混ざってますね。

てか、めちゃくちゃ難産でした。疲れた。


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ルウム戦役2

4月からNHKで劇場版ジ・オリジンがやるそうですね。
かなり楽しみです。



0079年1月16日00時00分

 

遂に連邦艦隊を破るべくドズル中将が総攻撃の号令を発す。

 

連邦艦隊とジオン艦隊が砲火を交える中、ムサイやチベ、パプアやヨーツンヘイムから次々とザクが発進していく。

 

発進したザクは編隊を組み、ミサイルやメガ粒子砲が雨のように降る中を縫うように駆け抜けていく。

 

そんなザク達を何とか食い止めようとする連邦艦隊の護衛する戦闘艇や戦闘機の群れ。

 

しかし、今までの戦いで磨り減っている護衛部隊は、これまで以上の集中的かつ飽和状に投入されるザクに容易く殲滅され、突破される。

 

護衛部隊を突破したザク達は遂に連邦艦隊へと辿り着き、攻撃を始める。

 

ザクによる蹂躙が始まった。

 

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ヒカル達の乗るザクⅡC型が母艦から発進される。

 

強いGを感じながらもさらにスロットルを深く押し込みスピードを上げ迫り来る攻撃を避けていく。

 

『いい感じだ、あの整備兵には後で礼を言わなくちゃな。』

 

心の中でザクのチューニングを頼んだ整備兵に感謝を送る。

 

『ヒカル、少し出過ぎだ、陣形を崩すな。』

『分かってる。それよりも、前方に敵多数発見、どうする。』

 

何とかヒカル達のザクを食い止めようとする連邦の護衛部隊が行く手を遮った。

 

『前と同じだ、雑魚は他の奴らにやらせろ。俺達は突破して敵の本隊を撃つ!突っ込め!』

 

宣言通り3機のザクはスピードをさらに上げ護衛部隊に突っ込む。

 

道を塞ぐように集まりだしたセイバーフィッシュの部隊にキッドとウィルは銃口を向け撃ちまくる。

 

ドドドドドと2人のマシンガンが前方を塞ぐセイバーフィッシュを貫く。撃たれたらセイバーフィッシュは爆発する。

 

運良く2人からの銃撃を避けた1機が仲間の敵討ちだとミサイルを撃ち込みながら突進してくる。

 

『任せろ!』

 

そのミサイル攻撃を避けながらヒカルのザクは腰にマウントしていたヒートホークを手に取る。刃がプラズマ化され超高温状態となり黄色く輝く。

 

セイバーフィッシュと交差する時相手の進路上にヒートホークを置く。自分から突っ込む形となったセイバーフィッシュは綺麗に二つに分かれた後、爆発した。

 

3機のザクは無事、敵の防衛線を突破する。

 

『はい、これ。オマケね。』

ウィルのザクが腰から何かを後ろに投げる

 

防衛線を突破したザク達を慌てて追っていた他の戦闘機達にウィルはクラッカーを投げた。

 

クラッカーは爆発し、ザクを追っていた先頭のセイバーフィッシュ達を多数撃墜した。それでも何とか後を追おうとする戦闘機達は背後からの攻撃で次々と爆発していった。

 

後ろから別の部隊のザクが無防備にも背を向けていた戦闘機達に攻撃を行ったのだ。この攻撃により突破したザクを追うのは背後から現れたザクを優先するのだった。

 

『どうやら諦めたみたいだね』

『そうみたいだな』

 

ウィルとヒカルが話していると少し不機嫌な声でキッドが話しかけてきた。

 

『おい、ヒカル。あんまり無茶な真似はするな。危険だろうが。』

『はぁ?何言ってるんだ?あのくらい楽勝だし危険なのは何時もの事だろうよ。』

『そういう事を言ってるんじゃ無い!今のお前は核弾頭を装備しているんだぞ!何かあったらどうするんだ!』

 

そう、現在ヒカルが装備しているのは核バズーカである。勿論核弾頭も装備している。もし爆発したら部隊は全滅するだろう。

 

『へーき、へーき。心配性だなぁ、キッドは。お!それよりもほら、連邦艦隊のお出ましだ!』

『あははは、僕としてもあんまり無茶はよして欲しいだけどね』

『チッ、この馬鹿が。』

 

3機のザクが駆け抜けていると遂に連邦艦隊が前方に現れる。どうやら既に少数のザクが艦隊相手に大暴れしている様だった。

 

『クソ、少し出遅れたか。遅れを取り戻す!行くぞ!』

『いやいや、既に暴れてる奴らが超腕利きってだけだろ?』

『うん、僕達かなり早い方だと思うんだけど、凄い人は沢山いるんだね。』

 

キッドのザクが獲物を仕留めるべく駆けていく。その後ろを2人が追う。

 

『よし!2時方向、サラミス2隻、左側からやるぞ!』

『『了解』』

 

3機のザクが2隻の内の1隻に狙いを定め突撃を始める。キッドのザクがサラミスの砲塔を潰していく。ウィルは何とかサラミスを攻撃しているキッドのザクを墜とそうと群がる戦闘機達の邪魔をしていた。

 

『ヒカル、今だ!撃て!』

『了解、そんじゃあとっとと離れてろよ〜』

 

大半の砲塔を潰したキッドが急いで離脱し、ヒカルに命令する。

命令を受けたヒカルはサラミスに向けて核を放った。

 

真っ直ぐに放たれた核弾頭はサラミスに直撃。

次の瞬間核爆発を起こし、ピンク色の巨大な火の玉がサラミスを飲み込んだ。

 

『へっ!きたねぇ花火だ。』

そんな野菜星の王子様の名言を呟く。

 

『何をぼさっとしている!奴ら動揺している、隙をついて速攻を仕掛けるぞ!』

 

動揺し、怯える様にミサイルや主砲を撃ちまくるサラミスだが、その攻撃はザクに擦りをしない。

 

キッドのザクがサラミスの推進機関である熱核ロケットエンジンを撃ち抜き動きを完全に止める。

ウィルのザクが指揮を取っていた艦橋を蜂の巣にしサラミスの組織だった攻撃が乱れ好きが生じる。

トドメの一撃がヒカルのザクから放たれる。

 

先程の再現の様にサラミスはピンクの巨大な火の玉に飲まれていった。

 

『完勝だな、次の目標は…マゼラン5か』

『おいおい、冗談だろ?流石にキツイぜ』

『戦艦5隻はちょっと…無理だよ』

『チッ、分かっている。なら向こうに』

 

キッドが何か言おうとした瞬間赤い何かが通り過ぎた。

 

『なっ、何だ今の!?、赤い、ザク?パーソナルカラー持ちか!』

キッドが、通り過ぎたザクを見て呟く。

『赤い彗星、シャア・アズナブルだ』

ヒカルがその正体を告げる。

 

 

 

シャアの乗るザクⅡS型があまりの速さに赤い尾を引き戦場を切り裂く。

高い機動性を得るため推進ユニットのリミッターが解除されザクⅡの持つ推進性能を限界まで引き出す。

一般機に比べるとシビアな操縦技術が要求され、扱いが難しい機体だが完璧に制御する。

 

正に赤い彗星と化したザクがマゼランに近づく、次の瞬間にマゼランが爆発する。

シャアのザクはマゼランを蹴り爆風を利用すると速度をさらに上げながら別のマゼランに近づき、対艦ライフルを撃つ。

マゼランは爆発し撃沈していった。

 

 

『馬鹿な!何なんだあの速度と軌道は。奴は本当に人間なのか?』

『推進剤の噴射と同時に、戦艦や隕石を足場に蹴って移動している?どれだけ繊細な操縦なんだ。』

 

キッドとウィルがシャアのザクに目を奪われている頃ヒカルも目を奪われていた。

 

『あれが、シャアの五隻飛びか、やっぱり本当のエースって奴は化け物だな。てかレベルが高すぎて参考にならないな』

 

ヒカル達がシャアの動きに驚いている間にシャアは最後のマゼランを墜とすと何処かに去って行った。

 

『凄かったな』

『ああ、凄かった。』

『凄かったね』

『…行くぞ』

 

あまりの凄さに言葉が出なかった3人は現実に帰るとまだ戦場だった事を思い出し戦いに戻るのだった。

 

_____________________________________________________

1月16日03時00分

 

レビル将軍の乗る旗艦マゼラン級戦艦『アナンケ』が大破。脱出の際、ジオン軍の黒い三連星に拿捕され彼自身も捕虜となり指揮系統も壊滅する。その頃にはすでに戦いは決していた。サイド5自体も既に崩壊状態にあり、連邦艦隊もその半数以上を失っていた。

 

1月16日04時00分

 

総司令官を失った連邦艦隊は統制を失い、徐々に壊走を始めた。

この絶望的な状況を救ったのが次席司令官のロドニー・カニンガン准将である。

 

彼は統制を失い壊乱しつつあった残存艦隊に的確な指示を与え、生き残った艦艇の大部分を脱出させる事に成功した。

 

しかし、ジオンの追撃が激しく遂に艦隊の後方直ぐ側までに迫っていた。

そこで、カニンガン准将自らは乗艦であるマゼラン級戦艦『ネレイド』を反転させ殺到するジオン軍部隊の前に立ち塞がった。

 

彼は撤退する味方艦隊の時間を稼ぐべく、たったの一隻で殿を務めたのである。

この時、准将は副官に

 

『レビル将軍ならこうしたとは思わんかね?』

と一事呟いたと伝えられる。奮戦の末ネレイドは轟沈、カニンガン准将は壮絶な戦死を遂げた。

 

ネレイドは、自らの主砲がメガ粒子の熱で融解するまでビームを乱射。敵のビーム砲8発、大型ミサイル4発を受け、文字通り轟沈した。だが、その間に稼げた貴重な時間により、味方艦隊は戦場離脱に成功したのである。

 

 

こうして人類史上最大の艦隊戦、ルウム戦役は、ジオン軍の勝利で幕を下ろした。

 

連邦軍は戦艦36隻、巡洋艦139隻が大破・撃沈、小型艦艇や輸送艦はほぼ全滅。

 

ジオン軍も戦艦2隻が大破、巡洋艦70隻以上が大破・撃沈しておりかなりの損害を被っていた。

 

この戦いで地球連邦軍は宇宙戦力の80%を喪失し、制宙権はジオン軍の手にすることとなる。




次回レビル救出作戦?伝説傭兵スネーク登場!『レビル、待たせたな』『遅かった…じゃないか』(嘘)

次回は昇進と脱出まで行く予定です。

次の戦いは降下作戦になりますね。


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凱旋パレード

ネットで見たんですけどガンタンクを北海道の中心に置くとほぼ全域をカバーできるそうですね、まあほぼ目標に当たることは無理そうですけど。

後、ジャブロー攻略の時にアッグが攻略戦から2日後に岩盤によりドリルがオーバーヒートを起こし、頓挫したところを連邦軍に発見(救助)される。という情報を見て笑ってしまいました。


サイド3・1バンチ『ズム・シティ』

 

今現在、このコロニーはお祭り騒ぎである。

 

先の戦い『ルウム戦役』ではジオン軍の3倍の戦力を誇る連邦軍を新型兵器であるMSを巧みに運用し、連邦艦隊戦力の80%を宇宙のチリとし、華々しい大勝利を上げたからである。

 

その圧倒的な勝利を祝うため、凱旋式が開かれたのである。

 

街道には多くの人々が詰めかけ、戦争の英雄達に賞賛を送る。

 

『スペースノイド万歳!』『ザ・ビ!ザ・ビ!ザ・ビ!ザ・ビ!』『きゃー、カッコイイー』『ジーク・ジオン!』『ジオン軍万歳!』『連邦なんかぶっ潰せ!』『よくやった』

 

様々な声が軍人達を迎えていた。

 

しかしここで突然、歓声が止み、罵詈雑言が飛ぶ!

 

『この屑が!ざまぁみろ!』『私の息子を返して!返してよ!』『父さんを返せ!うわーん』『処刑だ!処刑しろ』『何でお前がまだ生きててあいつが死ななきゃならないだ』

 

国民の戦意や憎悪を煽るためギレンはルウム戦役で捉えた連邦艦隊総司令官レビル将軍を観衆の前に晒した。

 

レビルはその言葉が聞こえているはずだが顔を決して下げず、ただ何もない前方を睨みつけるのであった。

 

凱旋パレードを続けているうちに遂に終着点に着く。

 

ズム・シティ公王庁舎である。

 

 

_____________________________________________________

ズム・シティ公王庁舎ではまずデギン公王からのありがたい一言から始まった。

 

『栄光あるジオンの兵士諸君。貴官ら獅子奮迅の活躍により我がジオン軍は華々しい戦果を飾った。今日は先の活躍を祝うパーティーである。今日はゆっくりと戦いの疲れを癒して欲しい。』

 

次に特に戦功を挙げた者達への褒賞の授与だ。

 

『ガイア中尉、オルテガ少尉、マッシュ少尉。前へ』

 

ルウム戦役で総司令官レビル中将を捕らえた黒い三連星が呼び出される。

 

『貴官らの隊は、ルウム戦役にて敵の総司令官を捕らえるという多大なる戦果を挙げ、ジオンの勝利に貢献し、獅子奮迅の活躍を見せ、味方の士気を大いに上げるという戦功を讃え、ジオン十字勲章を授与する!また全員を昇級とする!』

 

ジオン十字勲章を授与との言葉にざわめきが走る。

さらにこの昇級によりガイア中尉は大尉、オルテガ少尉とマッシュ少尉は中尉になる。

 

黒い三連星が元の場所に戻ると次が呼ばれる

 

『シャア・アズナブル中尉、前へ』

 

シャアが堂々と前に出る

 

『貴官はルウム戦役にて戦艦5隻、巡洋艦3隻を墜とすという鬼神のごとき活躍を見せ、連邦艦隊に多大な損害を与え、味方の将兵の士気を大いに上げる戦功を讃え、二階級特進とする!』

 

辺りは先程より大きなざわめきが起こる。

 

その後も数々の英雄達がその戦功を讃えられていき、褒賞を貰っていった。

 

『キッド中尉、ヒカル少尉、ウィル少尉、前へ』

 

3人は緊張を上手く隠し前に出る。

 

『貴官らの隊は戦艦2隻、巡洋艦3隻、補給艦2隻を墜とす活躍を見せ、ジオンの勝利に貢献した事を讃え、全員を昇級とする!』

 

3人は元の場所に戻る途中で顔が綻ぶのを抑えられなかった。今までの働きが認められ、こうして大勢の前で褒められると少し恥ずかしい気持ちも湧き上がるがそれよりも嬉しさや誇らしい気持ちが溢れ出た。

 

無事に全ての表彰が終わり最後にギレン総帥の演説が行われる。

 

『我が同胞よ!1億5000万の栄えあるジオン国民よ!戦いはこれからだ!一糸乱れぬ隊伍を組んで、前に進もうではないか!ともに、勝利の日まで!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!』

 

『『『『『ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン』』』』』

 

ギレン総帥の演説が終わるとお気楽なパーティーが始まる。

 

パーティー会場には多くの人が詰めかけていた。

ジオニック社やツィマッド社、MIP社などのジオンを支える大企業の重役達、ジオン公国の内政面で活躍する議員達。様々な場所に影響を持つ名家などが集まっていた。

 

ヒカル達3人は凱旋した時の人の多さや、賞賛の声、表彰された時の事を話していると、声をかける者達がいた。

 

『キッド、良く生きて帰った。2人ともキッドを連れて帰って本当にありがとう。』

ツィマッド社の副社長でもあるキッドの父親が挨拶をしてきた。

 

『ウィル、お前は私達の誇りだ!これからもジオンの為、そしてザビ家の為に力を尽くすのだぞ!』

ちょっとテンションがおかしいこの人はウィルの父親だ。

 

『ガハハ、流石は俺の子供だ!連邦のカス共など相手にもならんわ!お前もそう思うだろ?キャロル?』

『ヒカル、怪我はないの?ご飯はちゃんと食べてるの?歯磨きは毎日しないとダメよ?』

最初に喋ったのは父親、喋り方通りの豪快な人だ。

父の言葉を全く聞かずに心配してくるのは母親だ。中々の美人である。胸の大きさは……ビグ・ザム級とだけ言っておく。

 

3人はそれぞれの親を交え今までの事を話していく。初陣の事、ピンチだった事、戦艦を墜とした時の事など様々な出来事を伝えていく。

 

話を聞く親達は驚いたり、怒ったり、心配したり喜んだりした。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、遂にパーティーの終わりが告げられる。ヒカル達3人は暫く休暇の為それぞれの親と帰っていく。

 

『それじゃあな。2人とも。』

『よっしゃあー、久々の休みだ!満喫するぜー。』

『うん、2人ともまた休み明けにね。』

 

3人が別れを告げると親達も別れの挨拶をする。

 

『それではお三方、また機会があれば。』

キッドが父親と去っていく。

 

『ええ、御機嫌よう。ではハンバッハ議員。私達もこれで。』

『ガハハ、また会おう!さらばだ!』

ヒカルも母と父と共に帰っていく。

 

『ええ、ではまたいずれ』

そう言いウィルも父と自分の家に向かっていった。

 

 

それぞれは家に帰っても今までの事を家族に語り明かした。そして次の戦いの事をひと時忘れ、幸せな時間を過ごすのだった。

 

 

『え?議員って何?え?ウィルの父親って議員なのかよ!ザビ家に熱狂的な親なのは知ってたけど、熱狂的な新ザビ派の議員。ヤバイな。あの親あってこの子供あり、だな。

 

てかツィマッド社副社長の息子と名家の息子、さらに新ザビ派議員の息子まで居るのか。…………ふっ、エリートコースは確実だな。

 

これから上官を務める人達の胃痛に苦しむ姿が目に浮かぶようだぜ!

 

_____________________________________________________

0079年1月??日

 

深い闇が広がる深夜、静寂が辺りを包む中、闇に生きる者達が蠢く。何の変哲も無い寂れた宿に、集まる影があった。

 

『ちっ、流石に本拠地だけはある、中々厳重じゃねーか。』

 

『どうしますか?やはり他の仲間を待ってからの方が…』

 

『馬鹿が、そんな時間はない。それに他の奴らが捕まって情報が漏れる可能性も高いんだ。計画通りに進める。』

 

男達が暗闇に紛れ何かをしようとすると情報収集に行っていた男が帰って来た。

 

『隊長、目標の居場所が分かりました。』

嬉しそうに報告する部下を、隊長と言われた男は冷徹な声を出す。

 

『はぁ、この馬鹿が、簡単に後を付けられやがって』

そう言った瞬間、男達は懐に隠し持った武器を取り出し、襲撃に備える。

 

しかし、扉が叩かれる。

 

(?何で扉を叩く?何故襲撃してこないんだ?)

 

扉から声がかけられる

 

『私は貴方達の敵では無い、それどころか味方だ。話だけでも聞いて欲しい。』

 

それを聞いた男達は余計に混乱を深めた。こんな敵のど真ん中に自分達以外に潜入している者はいない。少なくとも男はそんな存在がいるとは聞かされていなかった。

 

『ああ、勘違いしないで欲しい。私は連邦の所属では無い。ジオンの所属だ』

『…ジオンの奴を信用しろと?』

『ははっ、私がその気なら貴方達は既にこの世に居ない。貴方達もそれはおわかりでは?』

 

男達は迷う、相手の言葉通りだからだ。隊長と言われた男は部下達の判断を仰ぐ目を見て決断した。

 

『ああ、やっと話しを聞いてくれるのか。それではお邪魔させて貰うよ。』

 

男達は結局、部屋に招く選択をする。

部屋に入って来た男は武器を構える部下達の前を全く気にしていないと言うように飄々と通り抜け部屋にあった椅子に座る

 

『では早速本題に入ろう。何、簡単な事だ。君達にはレビル将軍を連れ去って貰う。その為にここまで来たのだろう?』

そう言って男は嗤った。

 

男達はあまりの驚きに声を出す事も出来なかった。




次回紫ババア鬼畜の所業!レビル、洗脳される!?洗脳されたレビルは機関銃を両手に持ち連邦高官を銃殺して回り最後は自爆するのだった。(嘘)

次回脱出と演説と条約です。

今回脱出まで行かなかった。早く地上に降りて戦うシーンを書きたい。


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大脱走と南極条約

他の作者さんはどの位のペースで1話書いてるんだろう。

自分の場合は、あれでも無いこうでも無い、疲れたから少し休憩。Wiki見て、ホームページ見て、まあこれでいっかぁ。とグダグダになって3〜6時間くらいで1話を書いてます。

文才が欲しい。


0079年1月22日サイド3・1バンチ『ズム・シティ』

 

活気溢れるジオン公国の首都にて、突如、爆発が起こる。その爆発は一回だけでは無く、あらゆる所で爆発を起こし混乱を招いていった。

 

人々はパニックを起こし、一時的にだが、コロニー全体がマヒを起こす。

 

更に不可解な事にいくつもの情報が錯綜し軍や治安維持の部隊は混乱し、的確な行動を起こせないでいた。時間が過ぎると共に更にパニックが広がる。

 

『ダイクン派のテロとの情報が!』『第11地区にて大火災が発生、現場から増援要請が!』『第42地区で不審な人影を見たとの通報がありました。』『パニックにより道路が封鎖され部隊が立ち往生しています!通れる道の情報を求めています。』

 

『一体これは…まさか!』

男は脳裏によぎった最悪の事態を想定し指示を飛ばそうとする。しかしそれは遅かった。何故なら…

 

『レビル将軍脱走!レビル将軍脱走が脱走しました!』

『くっ!至急関係各所に通達!コードレッドを発令、レビル脱走の緊急通信を流せ!』

 

_____________________________________________________

ズム・シティが爆発により混乱する少し前。連邦の特殊部隊によるレビル救出作戦は始まった。

 

レビル将軍が囚われているのは平凡な雑居ビルに偽装された独房だった。その独房に入れられていたレビルは突然起こった停電に戸惑う。

 

『何だ停電か?全くどうなっデェ』

パパパといった音の後に見張りの看守が倒れる。するとレビルの前に男達が現れる。

 

『レビル将軍ですね?我々は将軍の救出の為の部隊です。どうかお早く。』

『そうか、なら早く脱出するとしよう。それよりも本当に脱出出来るのか?』

『ご心配なく、必ず成功します。どうやらジオンはまだまだ戦争を続けたい様子です。』

 

男の発言にレビルは感づく。ジオンの中に脱出を手助けする者がいると。

 

レビル達が無事に偽装されたビルを出ると同時に至る所で爆発が起こったのかコロニー全体が少し揺れ、悲鳴が聞こえる。

 

『さあ、将軍!早くこちらに!頭を下げて衝撃に備えてください!安全運転って訳には行けませんからね!揺れますよ!』

 

レビル達は何処からか用意された軍用車に乗り込み爆走を始める。コロニーの住人は軍の案内放送に従い車を端に寄せ停車させ避難所に移動しているか、もしまだ車を運転していても直ぐにレビル達軍用車を見ると車線を開けるのだった。

 

しばらく爆走しているとレビルを捕らえる為の検問が張られていた。しかしレビル達の軍用車はスピードを下げる所か逆に上げ始めていた。

 

異変に気付いた検問を張っていた者達が停止を呼び掛けるも、猛スピードでレビル達は走り去る。猛スピードで突っ込んだ軍用車を見送ると、慌てて男達は起こった事を報告する。

 

上層部は漸く掴んだレビルらしき者達に追っ手を差し向ける。

 

『クソ、バレたな。おいお前達分かってるな。』

『はっ、宇宙人ども何て俺達が全員ぶっ殺してやりますよ!なぁ、お前ら!』

『『『おう!』』』

 

レビル達が猛スピードで進んでいると遂に目的地に着く

 

『ここは?見たところ建設途中の宇宙港に見えるが…』

『ええその通りです。ここに脱出用の特殊なランチがあります。さあ、お早く!』

 

しかしジオンからの追手が遂に追いつく。

 

『クソ、やっぱり追いつかれたか。』

『隊長、早く行って下さい。さっきも言ったでしょう。俺達だけでジオンの奴らを皆殺しにしてやるって。さあさあ!早く将軍を連れて行って下さい!』

 

ジオンの追手と連邦の特殊部隊による激しい銃撃戦が始まる。

 

『お前達……。将軍、こちらです。離れず付いてきて下さい。』

『……君達の覚悟と気高さ、そして誇りは忘れん。約束しよう。必ず勝つと!』

 

隊長と呼ばれた男とレビル将軍が宇宙港に入っていく。

 

『へへっ、聞いてたな。必ず勝ってくれるとよ。これで心置きなく戦えるってもんだ。なぁお前達!』

 

『おう!ジオンの最期を見られないのは少し残念だが。これで連邦が勝つなら最高の死に場所だな!』

 

『ああそうだな、ジオンに一泡吹かせてやった。そう死んだ家族に自慢できるぜ。』

 

そう、この特殊部隊の家族は、コロニー落としにより失った者達が集められていた。

 

レビル救出作戦は当然の事だがかなり困難な任務である。充分な支援も無いまま敵中枢でレビル将軍を見つけ救出し無事に連れ帰る。

この死地での任務は実力は勿論だが何より任務の為なら自分の命を惜しまず、拷問にも屈する事の無い強靭な精神力を持つ精兵が選抜されている。

 

その精兵はどれも家族を失いジオンを心の底から憎む者達であった。

愛する妻や子供、親や兄弟、恋人を失った彼等はジオンに一泡吹かせる為なら自分の命を平気で投げ出す者ばかりだった。

 

『おっと、どうやら奴ら本腰を入れて来たらしい。お前達、死んでも此処を通すなよ!奴らに俺達の強さを見せつけてやれ!』

 

レビル確保の為、敵の戦車やヘリ、特殊部隊が現れる。しかし男達は死ぬまで戦いレビル将軍が脱出する時間を見事に稼ぐのであった。

 

 

 

 

『将軍、どうやら振り切ったようです。この船は特殊な仕様でジオンの監視に見つかる事は無いでしょう。』

 

『そうか、任務、ご苦労だった。それにしても、彼等には』

レビルが何か言おうとすると隊長は少し強い口調で止める

 

『将軍、彼等は帰れない事を承知でこの作戦に志願していました。それに彼等は本望だった筈です。将軍が必ず勝つと約束したからです。彼等に報いたいなら約束を守ってください。』

 

レビルは隊長の強い眼差しを正面から見つめ頷く

 

『ああ、私は必ず勝つ。ジオンの打ち砕いて見せる。』

『それが一番、彼等が望む事です。レビル将軍。』

 

レビルは決意を新たに固め誓う。連邦に戻った暁には全力を尽くし勝利をすると。

 

 

その後、無事にジオンの支配圏を抜け、連邦の哨戒部隊に保護される。

 

『将軍!迎えのの哨戒部隊です!これでルナツーに帰還します!』

『そうか、君には本当に苦労をかけた。ありがとう。』

そう言いながらレビルと隊長は硬い握手を交わす。

それに照れたのか隊長は頰に貼ってある絆創膏をポリポリとかく。

 

『自分は任務を果たしただけです。それに、一番の功労者は彼等です。では将軍。行きましょう。ルナツーに。』

 

 

レビル帰還する!

 

 

 

無事にルナツーに帰還を果たすレビル。帰還するとすぐに演説の準備をさせた。弱腰な交渉中の連邦高官達に、いや連邦軍全将兵に対して。

 

 

_____________________________________________________

0079年1月31日

 

南極にてジオン公国と地球連邦での条約の最中にそれ報告はされた。

 

一週間戦争やルウム戦役、コロニー落としなどにより地球、宇宙両方に甚大な被害を受け、今まさに実質降伏勧告の様な条約にサインする事が決めかけた時。報告が入る

 

レビル帰還!それは両軍に衝撃を与えると共に続けて起こった全地球圏に向けた演説を行った。

 

後の世に『ジオンに兵なし』と言われる演説である。

 

 

『地球連邦に生き残った国民すべてに、私は訴えたい。

 

ジオンには、すでに兵はない!

艦もなければ、武器、弾薬もない!なのに、なぜそのジオンに降伏をしなければならないのか!

 

国民諸君!聞き給え!すでにギレンの言葉は脅しにしかすぎない。

不肖、私は、幸いにしてジオンに捕らわれ、ジオン本国の実態に触れた。

ジオンの国民は疲れきっている。軍事力の増強は、明日すぐ間に合うというものではない。

 

ルウム戦役ですでにジオンの兵力は尽きている。一人の兵を育てるのに何日かかる。ギレンは知らぬわけではあるまい。そして、地球連邦の国民、一人ひとりへ私は訴える。もはや、ジオンに兵はいない!

 

起てよ国民!今こそ、ジオンをこそ我等の前に倒すべきである!!』

 

この演説により地球連邦軍は強気になり戦争継続へと動き出す。

 

この日連邦とジオンによる『南極条約』が締結される。

 

簡単に纏めると内容は以下の通りである。

 

大量破壊兵器の使用禁止

 

特定地域、対象への攻撃禁止

 

将兵の人権に関する取り決め

 

 

南極条約は概ねこの様な内容で締結された。

 

 

これにより戦争は長期戦の構えを見せた。連邦は迫り来るジオンに備え、ジオンは地球に降下し連邦を追い詰める。

 

 

新たな戦端はもうすぐ開かれようとしていた。




次回ヒカル遊んでいたら地球の重力に捕まる『大尉ー、キッド大尉ー!助けてください、減速できません!』『ヒカル、ザクには大気圏を突破する性能はない、気の毒だが。しかしヒカル、これは無駄死にだぞ!』(嘘)

次回は地球降下作戦!やったね。

次回はご都合主義入ります。許してヒヤシンス。


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第一次降下作戦

面白い小説を探してランキングを見てみるとかなり後ろですがこの作品が出てきてビックリしました。
これからも更新を続けて行きたいと思います。よろしくお願いします。


ヒカルは宇宙要塞ソロモンのMS整備ドックにて自分達のモビルスーツを眺めていた。

 

第一次降下作戦の為、地上での作戦遂行には今まで乗っていたザクⅡC型では力不足であり、大幅な改良が施される事となったのである。

 

目の前に立つMSは地上での活動を前提にされたザク。

 

MS-06J 通称ザクⅡJ型である。

C型との違いは核の使用が南極条約にて禁止された為、デッドウェイトとなる対核装備を外し、また宇宙用の装備の省略で軽量化が図られている。さらにジェネレーターの冷却機構の空冷化、防塵対策などの手が加えられている。

 

そしてMS整備ドックにはその様な機体がずらりと並んでおり大量のザクがJ型に改修されていた。

 

どういう事だこれは、何でもう既にJ型がこんなにあるんだ?第一次降下作戦の時、本来殆どのザクはF型の筈だろう?俺のせいか?それとも他に転生者がいるのか?分からんな…

 

本来ならばあり得ないこの光景にヒカルは少しだけ戸惑うも別に悪い事ではなく寧ろいい事だと開き直る。

 

転生特典だか他の転生者がいるか分からんが有難いな、少しでも生き残る確率が上がるなら。

 

暫く眺めながら考え事をしていたがもうすぐ作戦ブリーフィングが始まる時間だと気付き慌ててドックから立ち去った。

 

 

ヒカルが慌ててブリーフィングルームに駆け込むと既に大勢の人で埋め尽くされていた。

 

その中にいるキッド達を見つけ自分の席に座り、キッド達と話していると中佐の階級章を付けた男が入ってくる。

 

『諸君、私が第一次降下作戦での前線指揮を務めるハーガン少佐だ。

今回我々の作戦目標はバイコヌール宇宙基地の制圧。

この作戦は大変重要であり、今後のジオンと地球を繋ぐ橋頭堡となる場所だ。なお施設へのダメージは最小限にして貰う。

この作戦に参加する戦力は我々MS中隊と陸戦隊2個大隊で制圧する。

MS部隊は先行して降下、敵の迎撃部隊を殲滅。その後陸戦隊による施設の制圧を行う。詳しくは作戦指示書を熟読するように。』

 

言われた通りに作戦指示書を読んでみると、情報部が事前に調べたであろう情報と作戦などが書いてあった。

 

敵施設には防衛用の対空施設やトーチカ、戦闘機や戦車、大型戦闘車両であるガンタンク初期型が配備されているらしい。

 

作戦では部隊を小隊ごとの4つに分けて全方位から攻撃するらしい。

 

『何か質問はあるか。……無いようだな、各自作戦指示書を熟読し作戦開始に備えよ、解散!』

 

_____________________________________________________

0079年3月1日第一次降下作戦開始

 

ガガガガガッとHLVが激しく揺れる。衛星軌道上から直接地球へと送り込まれたHLVは真っ直ぐに目標へと落ちて行く。

 

激しい振動に耐えるように操縦レバーを強く握りしめる。

辺りは暗くモニターには大気圏突入完了までの時間が、表示される。

 

ピーピーピーという音と共にとんでもないGが掛かり意識を失いかける。

HLVがパラシュートを出し、減速の為のブースターが起動したようだ。

 

歯を食いしばって耐えていると先程とは違う振動を感知する。

 

地表からの対空攻撃だ。いくらミノフスキー粒子で命中率が極端に落ちているとしてもまぐれ当たりがあるため冷や汗が流れる。

 

暫くするとHLVの扉が開き降下の為の準備が整う。

 

『よし、全機降下開始!敵を殲滅せよ!』

少佐の合図にザク達が一斉に飛び出す。

 

地表からは対空攻撃の嵐が吹き荒れる。

 

『バーニア起動!目ぇいっぱい吹かせぇぇ!』

少佐が強烈なGに耐えながら叫ぶ。

 

しかしバーニアを吹かし、減速を始めたザクに今がチャンスだと言うように攻撃が集中する。

 

減速を始めたザクの1機が対空ミサイルの餌食となる。胸に直撃したミサイルは直後、大爆発を起こし、ザクを木っ端微塵にする。

 

さらにもう1機が対空砲の餌食となる。ザクの左足が弾け飛び、その衝撃により姿勢制御が出来ずぐちゃぐちゃに回転しながら地面に激突し、爆発炎上した。

 

しかし、連邦の善戦はここで終わりを告げる。

 

何故なら。

 

『全部隊、異常は無いな!この糞アースノイド供を地獄に叩き落としてやれ!』

『『『了解!』』』

 

 

 

 

ヒカル達のザクが土煙を上げながらバイコヌール宇宙基地に降り立つ。

 

『これが地球の重力。』

『ザク大地に立つ!』

『うう、体が重い、動かしにくい』

 

それぞれが初めて地球に降り、感想を述べていると早速迎撃部隊が出てくる。61式戦車やガンタンク、空には攻撃ヘリやフライマンタが飛んでいる。

 

『ヒカルはタンク、ウィルはヘリや飛行機をやれ!俺は両方を援護する!』

『よし!任された!』

『了解!』

 

『まずはガンタンク!お前からだ。』

ヒカルは操縦レバーを前に倒し、ザクを走らせる。

地上用に設計されたザクⅡJ型はその性能を遺憾無く発揮させ、軽快に地上を駆ける。

 

近づくザクに61式戦車とガンタンクが砲撃する。

 

『雑魚は黙ってろ!キッド!』

フットペダルを踏み込む。ザクのバーニアが輝き、その巨体を浮かせる。

 

砲撃を空に飛ぶ事で避けると同時に空中で右手に持つ120ミリマシンガンを61式戦車に叩きつける。さらに生き残りの61式戦車の上に着地し踏み潰す。

 

そこを狙っていたガンタンクにキッドがマシンガンを打ち込み邪魔をする。

 

邪魔されたガンタンクの大口径砲が火を吹くが、僅かにずれ外れる。

『ナイス援護!後は任せろ!』

 

フットペダルを踏み込むが今度は高く飛ばず、地表を這うように移動する。

 

『くたばれ!』

左手に持っているザク・バズーカをガンタンクに向けて撃つ。280ミリという巨大な口径から吐き出されたロケット弾はガンタンクのコクピットに直撃し爆発する。

 

『キッド!こっちは終わったぞ!そっちを援護する。』

『よくやった!クソ宇宙と違って当たらん。』

『あーもう、落ちろ!』

 

攻撃ヘリはまだ何とかなったが、空を高速で飛び回る飛行機に苦戦をしていた。高い射撃センスを誇るヒカルが加わり、苦労して倒す事に成功した。

 

『全く、手こずらせてくれる。基地中央に向かうぞ。物陰に注意して進め。』

『『了解』』

ヒカルを先頭に中央目指して進んでいると別の部隊と交戦中の迎撃部隊を感知した。

 

『よし、敵は正面の部隊に夢中でこちらに気づいていない。背後から一気に奇襲する。』

そろりそろりと気づかれないよう近く。

 

前方のザクに夢中になっているガンタンク3機の背後を取る。

 

『ヒカル、バズーカで一番奥の奴をやれ、ウィルは俺と手前の奴らをやるぞ。………今だ!』

 

キッドの合図にヒカルはバズーカを撃つ。ロケット弾がガンタンクの背後に撃ち込まれるとバックパックに引火し大爆発を起こす。

 

突然の背後からの奇襲に残り2機のガンタンクが動きを止める。

 

ウィルのザクは近距離からマシンガンを撃ちまくり1機を蜂の巣にする。

 

キッドのザクはヒートホークを持ちバーニアを吹かし突撃していく。背後からの奇襲に慌てて振り返ったガンタンクは目の前でヒートホークを高く掲げているザクを目撃し動きが一瞬止まる。

 

『死ね』

キッドが冷徹な声で呟く。

ヒートホークがガンタンクに叩きつけられその機能を停止させる。

 

「助かった。奴ら防御陣地に篭って砲撃してたから困ってたんだ。」

相手の小隊長が感謝を伝える。

 

『気にしないでくれ、それよりも陸戦隊が到着する時間だ。急ごう』

 

二つの部隊が共に基地中央に進むと残りの部隊も既に来ているらしく激しい戦火を交えていた。

 

『全部隊揃ったようだな!一気に蹴りを付ける、全機撃てぇえ!』

少佐の合図で抵抗していたガンタンクや61式戦車に猛攻撃を加える。

 

『上から攻撃するぞ。ヒカル、ウィル!飛べぇぇえ!』

 

キッドの合図に3機のザクが大ジャンプをする。

 

『残弾を惜しむな!撃ち切れ!』

3機のザクが激しい銃撃を浴びせる。

 

突然の上空からの攻撃に61式戦車が次々と爆発する。

 

ヒカルのザクが左手のバズーカを撃ちまくる。弾が切れたバズーカを放り投げ、ヒートホークを取り出す。降りる位置を調整しそのままガンタンクに叩きつける。あまりの威力にヒートホークが地面までめり込む。

 

敵の真っ只中に飛び降りた3機は暴れ回り敵を混乱に陥れる。

 

『よくやった!これで終わらせるぞ、突撃!』

全てのザクが敵陣に突撃し得意の乱戦に持ち込むと、あっという間に壊滅していった。

 

今のが最後の部隊だったのか、連邦の基地司令官が降伏を伝える。

 

『ジオン公国の敵司令官に伝える。私はこの基地の総司令官だ。我々は降伏する。』

『私はこの作戦指揮官のハーガン少佐だ。降伏を受諾する。武装を解除し大人しくこちらの命令を聞けば条約にのっとった扱いを保障しよう』

 

こうしてバイコヌール宇宙基地は全面降伏し、ジオンの制圧下になるのであった。

 

バイコヌール宇宙基地はジオンの地球制圧の橋頭堡となり、オデッサに次ぐ重要拠点となり、強固な軍事施設になるのだった。




次回ヒカル、アキバに立つ!(嘘)

次回は多分敗走する連邦の追撃ですかね。


うーん、スランプ。というかモチベーションが上がらない。もしかすると更新頻度が減るかも。


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山岳基地攻略

皆さんジオンのモビルスーツで何が一番好きですか?

自分はケンプファーです。あの色、フォルム、武装。どれを取ってもカッコいいです。

ケンプファーの製造企業は謎ですが、ツィマッド社製という説を信じています。


ジオン公国の第一次降下作戦の為、中東アジア地域の連邦軍は壊滅的被害にあい、散り散りになっていた。

 

幸運にも生き残った者達は遠く離れた友軍の元へと必死の行軍を始める。

 

しかしジオン軍は占領地の支配を固めるべく執拗に連邦軍への追撃戦を命じる。

 

ジオン軍の降下作戦により壊滅した部隊の1つが4台のトラックに乗り、後方の基地を目指し荒野を移動していた。

 

全員がボロボロで痩せ細り今までの行軍の厳しさが一目で分かるようだった。

 

そんな時、一台のトラックがおかしな音をしながら動きを止める。

 

『クソ、一時停止。整備士!早く治せ!』

『またですか。もうこのトラックは限界です、今まで走れた事が奇跡ですよ。』

整備士の言うようにトラックには銃痕や傷、歪みが大量にあった。

 

『クソがっ!使える荷物を他の車に移せ!早くしろよ!あの巨人がいつ襲ってくるか分からないからな!』

隊長らしき男がそう命令すると、巨人との戦いを思い出したのか、震えながらも迅速に動き出す。

 

『あと少しなんだ、あと少しで後方の基地に到着する。』

男達はそれだけを心の支えにしていた。

 

『よし、出発するぞ。』

男が命じたその時だった。トラックの荷台から後方を警戒していた見張りが悲鳴のような声を上げる。

 

『きき、来た!奴ら、俺達を追って来たんだ!』

 

その瞬間トラックが急発進をする。

 

しかしザクも相手に気付いていたのか、猛スピードで追ってくる。

 

荒野を3台のトラックが爆走するが、ザクが徐々に追いついてくる。

 

『おい!もっとスピードは出んのか?!追い付かれるぞ!』

『これ以上スピードは出ません!重量が重過ぎるんですよ!それよりどうするんですか!追い付かれますよ!』

『クソ、全員撃ちまくれ!バズーカは足を狙え!水と食料は捨てろ!今何とかする事だけを考えろ!』

 

攻撃に警戒したのか、ザクがスピードを落とし距離が縮まる事は無くなった。

 

しかし、無慈悲にもザクがマシンガンを撃ち出す。

 

『クソクソクソ!やりたい放題しやがって!回避だ!全弾回避しろ!』

『無茶言わないで下さい!』

 

しかし、1発の銃弾が後方のトラックに直撃する。トラックは大きく横転すると、何回も回転しながら地面を転がりようやく止まる。しかし、トラックは見るも無残な形となり、生きている者はいないだろう。

 

『何で何だよ!何で俺が生きてる間にこんな事が起こるんだよ!』

 

男が嘆いてる間に銃弾がトラックの前方の地面に当たり土煙を上げ、大きな凹みを作る。

 

凹みにタイヤを取られたトラックが横転する。奇跡的に生き残った者が何とかトラックに出ようとすると後から来たザクに踏み潰され絶命する。

 

『嫌だ。死にたくない!俺は死にたくない!こんな所で死んでいい男じゃないんだ!』

あまりの恐怖に部隊を率いていた男は狂気に飲まれる。

 

『運転手、軽くなれば逃げれるんだな?そうだよな!?』

『ひっ!一体どうしたんですか、確かに軽くなれば逃げれる確率は上がりますけど…』

『そうか、逃げ切れるのか。』

 

狂った男は腰にあった拳銃を持ちザクと応戦している部下の背中に向け引き金を引く。

 

パンパンパンパンパン

『な、何をやってるんですか!?荷台で何が起こってるんですか!何で誰も答えてくれないんですか!』

 

狂った男は無言で殺した部下を荷台から投げ捨てる。

 

『おい、これで軽くなったぞ。絶対逃げ切れよ。』

『あ、あんたまさか!自分の部下を捨てたのか!?』

『俺は死にたくない。こんな所で死んじゃいけないんだ。』

皮肉にも軽くなった事でスピードが上がりどんどんザクとの距離が開いていく。

 

遂にはザクも諦めたのかマシンガンを撃つのをやめると、じっと止まり此方を見つめていた。

 

『は、はは。ははははは!やったぞ!逃げ切った!やはり俺は死ぬべき人間では無いんだ!』

『クソ、俺は何でこんな奴のために…、なっ!』

 

狂った男が喜んでいるとトラックが急ブレーキをかけ動きを止めた。

 

『何故止める!進め!お前も撃たれたいのか!』

『もう、無理です。もう、無理だったんです。』

 

狂った男が前方を覗くと目的地としていた基地が炎上する姿と此方に銃口を向ける3機のザクが目に入った。

 

『あ』

 

その言葉を最後に男の意識は無くなった。

 

 

_____________________________________________________

 

ジオンの占領下に置いたバイコヌール宇宙基地で新たな作戦が命令されていた。

 

『諸君、我々に新たな指令が下った。現在、第一次降下作戦により戦力を壊滅させた連邦軍は散り散りになった戦力をかき集め山岳基地に立て籠もって抵抗を続けている。この基地は中東アジア最後の抵抗を見せている。』

 

そう言いながらハーガン少佐がモニターに映る地図を指して説明する。

 

『この基地は山を利用した天然の要塞でMSが地上から侵入する入口が1つしか無い。相手は確実にそこに戦力を集中しているだろう。当然正面から攻略すれば被害は甚大な物となるだろう。』

 

少佐が少し芝居掛かった言い方で難しい顔をする。

 

『そこで朗報だ。ドダイYSという爆撃機を知っているかな?この爆撃機は何とモビルスーツを乗せて飛べるらしく、その実地試験の為、現在この基地に6機用意されている。』

 

少佐の説明にどよめきが起こる。

 

『このドダイにキッド隊、ロッド隊を乗せ上空から攻め込んで貰う。上空の指揮をキッド大尉、貴官に任せる。上空の部隊が砲撃部隊を全滅させたら地上部隊が突入する。これで説明は終わりだ!各自作戦遂行まで英気を養え。我々の手で連邦の悪足掻きにトドメを刺すぞ。解散!』

 

 

 

整備された発着場から爆音が響く。ドダイYSが上に乗るザクごと空を飛ぶべく高出力エンジンが唸りを上げる。

 

爆音がピークに達するとふわりと、その巨体を持ち上げる。徐々にその高さを上げると遂に前方に進み出し、その速度を上げていく。

 

ここに史上初のサブフライトシステムを採用した作戦が開始されるのだった。

 

 

 

先に先行していた地上部隊が、山岳基地からの砲撃に苦戦し、全く動けないでいた。

 

しかし、遥か上空を進む6機の機影が旋回しながら山岳基地を見下ろす。

 

『上空部隊、配置に付いたな?優先目標は砲撃をするトーチカ、ガンタンクだ!いい加減相手も飽きた頃だろう。奴らに変化を与えてやれ、攻撃開始!』

 

少佐の攻撃命令に6機のザクが一斉に上空から急降下し襲いかかる。

 

急降下したザク達が手に持つマシンガンやバズーカを撃ちガンタンクやトーチカを破壊する。

 

『チッ、やはりそこまで当たらんか。もう一度旋回して攻撃するぞ。』

 

ドダイのスピードと通常とはあまりに違う射撃状況に思ったよりも破壊出来なかった。

 

突然の奇襲に混乱したのか、上空のザクを墜とそうとする者、逃げ出す者、地上ザクを砲撃する者とバラバラに動き出す。

 

『こっちを狙ってる奴に狙いを定めろ。よく狙えよ!撃てぇえ!』

旋回したザクは此方を狙うガンタンクや61式戦車に狙いを定める。

 

少し慣れたのか先程よりも多くの敵を撃破する。

 

『よし、もう一度だ!せんっ、全機避けろ!』

 

もう一度旋回しようとしていたザク達に強烈な攻撃が加えられる。

 

想定されたよりも多くの戦力が居たのか、ガンタンクや大量の61式戦車が見事な隊列を組み、対空砲火を加えた。

 

この攻撃に反応出来なかった2機のドダイが攻撃を受ける。運悪くガンタンクの大経口方の直撃を受けたドダイがザクと一緒に大爆発を起こす。もう1機ドダイは翼をやられたのか回転しながら墜落していく。そのドダイにヒカルのザクがいた。

 

『『ヒカル⁈』』

キッドとウィルが悲鳴を上げる。

 

『ぐぅぅぅううう!』

ヒカルは墜落するドダイからザクを離すと何とか体勢を整えようとバーニアを吹かす。

 

何とか体勢を整えたザクは目の前に迫る建物回避するべく、限界までバーニアを吹かすも間に合わず激突する。

 

『ヒカル!応答しろ!おい、聞こえているのか!返事をしろ!クソ、ロッド隊はドダイを降りさっきの部隊を抑えろ、ドダイはそのまま対地ミサイルで援護!ウィルは俺とヒカルのザクを守るぞ!』

 

『『『了解!』』』

 

戦いは新たな局面を迎える。




次回ヒカル種割れを起こす『それでも、守りたい世界があるんだぁ!』(嘘)

次回はこの続きです。

予約投稿ミスしたよ。うわーんストックがー


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山岳基地攻略2

『う、うう……』

 

ヒカルは、鈍い痛みにより意識を覚醒させた。

 

身体中が重く、酷く痛みながらも、ゆっくりと瞼を上げる。

 

目に入るのは砂嵐を写すモニターと機体の損傷伝える赤い表示。

 

辺りでは砲撃音と振動が響き渡る。更に通信機が壊れたのかザザザザと不愉快な音を出し続けている。

 

『ここは、コクピット?何で俺はこんな所に?』

 

墜落の時の衝撃で一時的な記憶の混乱を起こす。

 

『えっと俺は確か、ルウムで……いや、違う。ルウムは終わって今は降下作戦の途中……いやそれも終わった。そうだ山岳基地!クソ、外はどうなってる!』

 

砲撃音と振動からまだ外では戦いが続いており、気絶からそこまで時間が経ってない事が分かった。

 

『システムチェック、起動。……ジュネレーター、良し。動力パイプ、良し。メインカメラ、使用不可か。左腕も使えん。が、それぐらいか。』

 

損傷の具合を確認すると頭部が潰れメインカメラと通信機が使用不可になっている他には左腕腕が落下の衝撃でボロボロになり動かないでいた。

 

『まだやれる。サブカメラ起動、良し。』

 

サブカメラを起動し、モニターに映す。それからゆっくりとザクは立ち上がり辺りを見回した。

 

上空ではキッドとウィルのザクがヒカルのザクにトドメを刺そうとしていたガンタンクと必死の応戦をしていた。

 

ヒカルのザクが無事を示すように片手を上げるとキッドのザクのモノアイが連続で光り、モールス信号を送る。

 

『え〜、何々、東、敵、3、西、敵2、北、敵6、南、敵8、西、進軍。つまり西に行って敵を倒せって事か?人使い荒いな〜』

 

そう言いながらも命令に従うべく行動を始める。

 

『えーと武器は、バズーカはぶっ壊れてる。ヒートホークとクラッカー2個か。こんなんで何とかなるのか?』

 

少し不安になりながらも西に向かって移動を開始する。

 

すると、2機のガンタンクが基地正面に向かって砲撃をしている姿を見つける。慌てて建物の陰に隠れ様子を伺うとどうやらまだバレてはいないらしい。

 

しかしこれは困った。走ったりは問題なく出来るが、墜落の衝撃のせいでスラスターの調子が悪い。もし運が悪かったら大爆発を起こすため使えない。

 

クラッカー2個では倒し切れないし、もし全力で走っても1機のガンタンクしか倒せ無い。その隙にもう一台のガンタンクがザクを倒すだろう。

 

少しだけ考えていると上空にキッドとウィルのザクが旋回しているのを見て覚悟を決めた。

 

レバーを思いっきり押し倒し、ザクを走らせる。

 

全力で駆け出しヒートホークを構えながらも、足止めの為クラッカーを1つ投げつける。

 

突然のクラッカーの攻撃に驚きながらも背後からの足音にガンタンクが背後を向く。

 

『喰らえや!』

 

こちらに振り向いたガンタンクにヒートホークを叩きつける。ヒートホークはガンタンクの装甲を切り裂き動きを止める。

 

隙だらけのザクを仕留めようともう1機のガンタンクが大口径砲をピタリと向ける。

 

ヒカルはコクピットで冷や汗を流しながら目を強く瞑る。

 

『死ねぇぇぇええ!この侵略者がああぁぁぁあ!』

ガンタンクの外部スピーカーが憎しみのこもった声を伝えると大きな爆発音を響かせる。

 

『はぁはぁはぁ、遅いんだよ全く。ヒヤヒヤさせやがって、アイツら』

 

ヒカルのザクのモニターにはこちらに大口径砲を向けながらも、全身を蜂の巣にされ、炎上するガンタンクの姿があった。

 

ガンタンクが大口径砲を撃つ少し前、ドダイに乗ったザク2機が低空を高速で飛行し120ミリマシンガンを無防備な横腹を晒すガンタンクに叩きつけた。

 

ガンタンクに刺さったままのヒートホークを抜いているとキッドとウィルのザクがドダイから飛び降り、バーニアを使いながら近くに着地する。

 

ヒートホークを引き抜いたヒカルのザクにキッドのザクが肩に手を置き接触通信を使用する。

 

『無事なようだな、悪運の強い奴め。』

 

『悪運が強いのはお互い様だ。それよりも、さっきのは少し遅かったぞ!あと少し遅れてたら俺は丸焼きになってたぞ!』

 

『ククク、すまんな、次からはもう少し早くするとしよう。それで?まだ行けるなら南にまだ敵が少し残っている。どうする?』

 

『ハッ!勿論行くに決まってるだろうが。』

 

『そうか、ならお前にも働いてもらうぞ。』

 

キッド達と合流し南に移動すると、2機のザクがビルを盾に様子を伺っていた。

 

『ロッド中尉、待たせたな。相手の様子はどうだ。』

「ハッ!相手は61式戦車が12両、ガンタンクが5機。この先で待ち構えています。」

『そうか、もうすぐ少佐も来るだろう。その前に一度、降伏を促してみるか。』

 

 

『こちらはジオン公国MS小隊隊長、キッド大尉である。この戦いの趨勢は決した!これ以上の戦いは無意味である。貴君らの賢明な判断を期待する。』

 

しばらくすると相手から返答があった。

 

『貴様ら外道に降るだと?笑わせるな!我々は最後の一兵と成ろうとも貴様ら悪魔を倒す為戦い続ける!』

 

『ふん、愚かなアースノイドめ、いいだろう。奴らの望み通りにしてやる。』

 

キッドは低い声でそう言い命令を下す。

 

『少佐を待つのはやめだ。ロッド隊は正面で応戦、相手を釘付けにしろ。ウィルは俺と右側面から叩くぞ。ヒカルは相手が完全に意識を晒したら左側面から襲い掛かれ。』

 

『『『了解!』』』

 

『え?俺1人で?鬼畜じゃね?』

俺のザクボロボロなんですけど…

『ふん、お前が来ると言ったんだぞ。それに…エースになるんだろう?このくらいこなしてみせろ。』

 

キッドがそう言い放ちヒカルを煽る。

 

『ぐぐぐ、分かった。やってやるよ!何せ俺は真のエースになる男だからな!』

 

 

 

 

ロッド隊がガンタンク達に向けマシンガンやバズーカを撃ちまくる。それに負けるかと倍以上の攻撃をロッド隊に向かって撃ちまくる。

 

陽動に引っかかっているのを確認したキッド達がバーニアを使い高速で接近する。

 

キッド達は近づくとありったけのクラッカーを広範囲に投げつける。

 

これにより5両の61式戦車が破壊され1機のガンタンクを小破させる。

 

小破し動きの鈍ったガンタンクにキッドがバーニアを使いながら猛スピードでタックルを叩きつける。肩のスパイクによりガンタンクのコクピットが押しつぶされ動きを止める。

 

キッドのザクを破壊しようと周りに居た2機のガンタンクが四連装機関砲を撃つ。

 

弾丸の嵐の中、コクピットが潰れたガンタンクを盾に耐える。

 

そんなキッドを助けるべくウィルがマシンガンを撃ちながらガンタンクに走り出す。

 

しかし、ウィルのザクに攻撃を受けていたガンタンクが予想外の動きを見せる。

突如ザクに向けて突進を始めたのだ。

 

突然の動きに戸惑ったウィルはヒートホークを抜くのが遅れてしまう。マシンガンによりボロボロになりながらもその巨体を生かした体当たりを喰らわせる。中途半端に抜いたヒートホークが空を舞い、ザクが吹き飛ばされる。

 

だが、ガンタンクも撃たれ過ぎたのか動きを止める。

 

『ウィル!この出来損ないのタンクの分際で!』

キッドがそう叫ぶ。

 

キッドのザクに四連装機関砲を撃っていたガンタンクが遂に大口径砲を盾にしていたガンタンクに向ける。

 

しかし、そのガンタンクが突如爆発する。

 

『待たせたな、キッド大尉。全機!敵を殲滅せよ!』

『『『『おう!』』』』

 

正面の敵を突破したハーガン少佐が部隊を引き連れ現れた。

 

大量のザクからの攻撃に瞬く間に連邦の戦力は撃破されていった。

 

最後のガンタンクが恐れをなしたのか大口径砲や四連装機関砲を撃ちながら後退する。

 

『ふん、逃げ出すとはな。一兵と成ろうとも戦うと言っていたがこのざまか!見苦しい、叩き斬ってやる!』

 

キッドのザクがヒートホークを構え、ガンタンクに近づく。

 

しかし最後の悪あがきとスモーク・ディスチャージャーを起動させ姿を消す。

 

『なっ!スモーク⁈』

突然のスモークにキッドも驚き追撃が止まる。

 

『チッ、まあいい。向こうにはアイツが居るからな。』

 

 

 

キッド追撃を撒いたガンタンクは猛スピードで基地内を走る。すると前半に片腕を無くしたザクがヒートホークを持ち佇んでいた。

 

片腕の無いザクがヒートホークを構え走り出す。

 

ガンタンクも大口径砲を乱射しながら突撃する。

 

しかし、何故かザクには紙一重で当たらない。

 

ガンタンクのパイロットは恐怖する。何故か攻撃の当たらないボロボロのザクに。

 

2機が正面からぶつかり合う瞬間、ザクが少し横にずれる。足を広げ掲げていたヒートホークを思い切り振り抜く。

 

ヒートホークを振り抜いたまま止まるザク。

 

ガンタンクは徐々にスピードを落としゆっくりと動きを止める。

 

構えを解き、ゆっくりと歩き出すザク。すると背後からガンタンクが大爆発を起こす。

 

ザクは歩みを止めず、仲間達の元へと歩みを進めた。

 




次回フラナガン『バイド』を発見!『キガツクトワタシワバイドニ……』(嘘)

次回は新たな指令が発せられます。ご都合主義が発動されます。

ストックの霊圧が…消えた……だと……


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ニーズヘッグ隊

ハーメルンよ!私は帰ってきたぁ!

皆さんどーもお久しぶりです。私がだれて放り投げたと思ったでしょう?安心してください、ちゃんと続けますよ。まあ、今回のように結構間が空くと思いますが。




バイコヌール宇宙基地

 

バイコヌール宇宙基地は現在、ジオンが確保したオデッサや他の資源地帯、占領地に送る物資や人材で溢れ喧騒に包まれていた。

 

その大量に送られてくるHLVの1つから何人かの人が降りてくる。

 

「わー、これが地球ですかー。やっぱりコロニーとは違うんですねー。体が重いですし変な感じですけど、感激です!」

 

HLVから飛び出したのはまだ少し幼さの残る顔立ちをした少し暗い色の赤毛をした女性だった。

 

「うう、首が痛む。何で宇宙港なのにHLVなんだ。ガブリルくらい用意してくれよ全く。優秀な技術者の僕の頭に何かあったら人類の損失だぞ。」

 

次に降りて来たのは髪はボサボサで肌は白く体の線が細い男性だった。彼は首をさすりながらブツブツと呟いていた。

 

「これが地球か。そしてこれが空か。」

 

次に顔を出したのはかなり大柄でがっしりとした体をした男性だった。作業着のような服の上からでも分かるムキムキの体と日に焼けた肌だがとても穏やかで優しそうな雰囲気が出ていた。

 

その後も続々とHLVから人が地上に降り立っていた。

 

そこに大型の車が複数近づき目の前で止まると1人の軍人が出てきた。

 

「特務部隊の方達ですね?この中にシーナ・ハルト特務大尉殿は居られるでしょうか!」

 

「はーい!私でーす。私がシーナ・ハルトです!」

 

呼び出した軍人は想像とは違い思った以上の若い女性に一瞬疑うも大尉の階級章を確認すると話を続けた。

 

「皆さんをお迎えに上がりました。どうぞお乗りください。そして着任の挨拶と部隊の顔合わせは13時頃を予定しています。それまでは自由に行動していいそうです。」

 

「了解しました。お迎えありがとうございます。」

 

大尉はそう感謝を伝え車に乗り込む。そして続々と乗り込み直ぐに満杯になると車は発進した。

 

「ふふふ、特務部隊かー。面白い所に配属されたかも。」

 

そう言い大尉はこれからの事に想いを馳せた。

 

 

 

 

 

バイコヌール宇宙基地司令官ローン・ディレット大佐は現在、1つのことに頭を悩ませていた。それはある部隊の事である。

その部隊は開戦初期から従軍し戦果を残し本国で表彰もされている有能な部隊だった。

 

一見何も問題は無く極めて優秀なのだが問題はその人員だった。

1人はツゥイマッド社という現在ジオンでかなり重要な位置にいる企業の副社長の息子。

更に歴史が古く社交界などに多大な影響力を持つ名家の跡取り。

そして熱狂的な親ザビ家の議員の息子。

 

この中の1人だけでも厄介だが一気に3人も居るともはや嫌がらせに思えてしまう。

 

更に頭を悩ませる原因は最前線に行きたがる事。この3人はMSパイロットとしてとても優秀で実力もある。だがそれが困る。

優秀なので安全な後方に置こうとしても納得せずに配置や作戦の不備を指摘し修正した新しい作戦を提案してくる。

無理矢理安全な場所に配置しても適当な言い訳をしながら前線に出て戦果を上げてしまう。

文句を言おうものなら戦果と自分達に特別扱いをしていると指摘されぐうの音も出なくなる。

 

実際に上から直接配慮するように言われていたし、言われていなくても必ず配慮していただろう。それ程までに影響力があり何かあったら簡単に自分の首は飛んでしまう。そんな配慮せざるを得ない者達なのだ。

 

だからこそ、と思う。

 

今度の命令はこの部隊にとって受け入れがたいものだと。まさに特別扱い。特に部隊の隊長は反発するのだろう。自分の親が関わっているのは明確なのだから。

 

はぁ、と深いため息を吐く。

 

するとドアから

 

「失礼します。キッド大尉、ヒカル中尉、ウィル中尉をお連れしました。」

「うむ、ご苦労。入りたまえ。」

 

副官と一緒に問題の3人が入ってくるのを確認すると少し深く呼吸をし気合を入れ直す。今から起こる厄介ごとを解決するために。

 

 

_____________________________________________________

「どう言う事ですか!もう一度!ご説明ください!」

キッドが顔を真っ赤にして叫ぶように言う。

 

俺とウィルはあからさまな特別扱いに面を食らっていた。

 

「…貴官の隊は本日より特務部隊『ニーズヘッグ』に任命する。」

 

特務部隊?確かに俺達は戦果を挙げたが特務部隊に任命される程では無い。一体どう言う事何だ?

 

 

基地司令官のローン大佐がキッドの怒声に眉間にしわを寄せながら説明をする

 

「この部隊はMSの更なる発展のため様々なデータを集める事を目的とした部隊だ。新型機の評価は勿論、試作機や実験機の問題点の洗い出し、新兵器の威力、耐久性など様々なデータを回収してもらう。」

 

ローン大佐はこのままでは相手も納得しないだろうと更に言葉を続ける

 

「勿論このままではただの技術試験部隊に過ぎない。だが先にも言ったようにこの部隊は特務部隊だ。様々な新兵器、新技術に習熟した部隊による通常では困難な任務の遂行。そのような役目を担ってもらう」

 

この言葉にキッドも納得しかけたが、大佐の濁した部分を強く指摘する。

 

「成る程、それでしたら確かに納得できます。それで?その新型機や新兵器とは一体どこの企業ですか?お答えください!」

 

この言葉に大佐も顔をしかめてしまう。だが言わなければ相手も納得しないだろうと考え素直に教える。

 

「……ツィマッド社だ」

 

大佐の一言を皮切りに静寂が訪れる。

 

俺とウィルは一体いつ大爆発を起こすのかキッドの少し後ろで震えていた。

 

「………特務部隊任命の件、謹んでお受けします。」

 

それだけを言うとキッドは部屋を飛び出していった。

 

「「先のご無礼をお許しください!失礼します!」」

大佐にキッドの非礼を詫び逃げるように部屋を出てキッドを追う。

 

先程までの怒号が止み部屋に静寂が戻る。

 

疲れた様子でタバコを取り出し火をつけ一服をし深いため息と一緒に煙を吐き出す。

 

「はぁ何で私が割りを食わんといけんのだ全く。」

 

これが只の兵士だったら怒鳴りつけて営倉にでもぶち込んでやったものを。逆に怒鳴られるとはな。おおよそプライドを傷つけられたのだろう。

 

「親の心子知らず、か。全く、迷惑なものだ。」

 

_____________________________________________________

 

俺とウィルは部屋を出て行ったキッドに何とか追いついていた。追いついてはいたが話しかけれずにいた。さっきの怒りが自分に向けられるのを恐れたためだ。

 

(おい、ウィル。お前が先に話せよ!)

(嫌だよ!ヒカルこそつまらないジョークかなんか言って何とかしてよ!)

(つまらないジョークだと!お前俺のジョークをつまらないだと!いいだろうお前この野郎!キッドの腹筋をねじ切るぐらい笑わさせてやるよ!)

 

売り言葉に買い言葉、ウィル挑発とも言えない挑発にヒカルは乗ってしまった。

 

「あ、あー、ごほん。キッド、俺のダジャレを聞いて少し落ち着け。……ギレン閣下は裏切れん!!ドズル将軍はこの後一体どーずる!!キシリぃぐばぁ!?」

 

突如横にいたウィルからキレのいいパンチを受ける

 

「何そのギャグ!つまらない上に不敬すぎるよ!殺すよ!?」

 

「お、お前。殴ったね、親父にも殴られた……事は沢山あるな。」

 

そんなアホな事を繰り広げているといつのまにか立ち止まり此方を向いていたキッドが問いかけてくる。

 

「…お前達は悔しく無いのか?」

 

キッドが真っ直ぐに此方を見て聞いてくる。

 

「俺達は今まで自分達の実力だけで戦果を上げてきた。決して親の七光りでは無く、軍に実力を示したと思っていた。だがさっきのは何だ。ツゥイマッド社専属のテストパイロットじゃないか」

 

キッドが悲しそうに顔を俯かせる

 

「これが本当に実力で選ばれたならそれでいい。だが俺の父親はツゥイマッド社の副社長だ。実力以外の事、父親の力で選ばれた。特別扱いをされた。俺はそれが許せない。」

 

「キッド……」

 

キッドは人一倍プライドの高い奴だ。それ故に今回の特別扱いにプライドを深く傷つけられたのだろう。

 

「キッド、ならよ。もっともっと戦功上げれば良いだけだろ?特別扱い?とんでもない戦功上げて特別扱いぐらい当然!ってぐらい活躍してやろうぜ!」

 

「うん、その通りだよ!僕も頑張るからさ、一緒に頑張ろうよ!」

 

「お前達…そうだな。俺達は実力を示したつもりだったがまだ足りなかったらしい。ならばもっと実力を示してやるだけだ!付いて来い、今からシュミレーターで模擬戦だ、行くぞ!」

 

「「了解!」」

 

 

こうして特務部隊『ニーズヘッグ』は設立された。本来あるはずのない部隊はこの先の未来をどのように変えるのか、変えないのか。それはまだ誰にも分からない。




次回、特務部隊レッドショルダー結成!(嘘)

次回は顔合わせと新機体登場かな〜


夜中にチマチマ書いたのと久し振りに書いたのが合わさって文章力が壊滅的になりました。すいません。
え?元から壊滅的だって?知ってます(白目)


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ニーズヘッグ隊2

最近急に暑くなりましたね?

久し振りに友人とBBQをしたら軽く引かれました。

お腹が減りすぎていて生焼けでも平気でパクパク食べていたからです。

勿論夜に少し腹痛になりましたがそれだけです。少し生焼け肉の方が断然美味しいですよね?


黒い3機のMSが荒野を駆け抜ける。

 

この黒いMSはザクとは姿形が異なっていた。

 

頭部にはセンサーが増設され、両肩に大きなスパイクが一つ、相手を威圧するかのように生えていた。

胸部装甲は増設され厚く頑強になり、背部のバックパックと脚部のスラスターが一新され、新型の推進エンジンを搭載されていた。

 

この3機のMSが新型の推進エンジンを試そうと前方の切り立った崖の上を目指しスロットルを深く踏み込む。

 

新型の推進エンジンが唸りを上げザクに使われていたスラスター以上の推進力を生み出す。

 

重量55トンの鋼の怪物が崖の上を目指し飛び上がる。

 

崖の上まであと少し、と言うところで1機のMSから異常を知らせるアラートが鳴り響く。それと同時に脚部のスラスターの一つから黒い煙が出る。

 

不具合の出たMSのパイロットは慌てて脚部のスラスターに燃料を送るのを停止させ、残りわずかとなった崖の上に何とか辿り着く。

 

急いで機体に膝を突かせるとモニターを操作し全体の燃料の供給を止め安全装置を起動させる。

 

念の為に今までのデータを取り出し外に出るためにコクピットを開けると別の黒いMSが巨大な手を差し出していた。

 

そのまま手のひらに移るとゆっくりと離れもう1機MSの下まで向かう。

 

すると黒いMSの外部スピーカーから声が流れる。

 

「大丈夫か?まさか故障するとはな。いや、欠陥があったのか?」

 

「はは、何とか大丈夫だよ。楽なテストだと思ってたけど気を引き締めないとね。」

 

「ああ、そうだな。…早速機体を回収してデータを取るそうだ。回収用の部隊も直ぐに来るらしい」

 

「それは助かるね、アレで帰って来いって言われたらどうしようかと思ってたよ」

 

「ふ、確かにな。よし、降ろすぞ捕まっておけ」

 

そう言うとMSに膝を突かせ手を地面につける。

 

二人がMSから降りると既に待っていた最後のパイロットが明るく言った。

 

「いやー、運が良かったな。燃料系のトラブルって下手したら大爆発するかも知れないからな」

 

「確かに、運が良かったよ」

 

3人のパイロットは迎えが来るまで雑談をし時間を潰した。

 

その後、直ぐに来た回収部隊と共に基地へと戻るのだった。

 

 

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バイコヌール宇宙基地MSドック

 

えー、皆さんどーも、現場のヒカルです。私は今バイコヌール宇宙基地にありますMSドックにおります。何とこのドック私達の部隊の貸切でございます!

 

何と私達の部隊が特務部隊『ニーズヘッグ』の部隊員に選ばれたのです。ですがこの部隊、実際はジオンが誇る大企業ツィマッド社の使いっ走りの様な部隊です。

 

ドックに横たわるのはツィマッド社の試作機

 

YMSー08A高機動型試作機

と言う機体です。

 

この機体はツィマッド社がザクⅡJ型の後継機を目指した機体。どうやら同時期に開発されたジオニック社のプロトタイプグフとの競作で作られたらしい。

 

高機動陸戦MSをコンセプトにされ、重力下での機動性の強化の為に新型の推進エンジンを搭載し、短距離ならジャンプ飛行も可能なのだが…。

 

プラン上ではプロトタイプグフを超える機動性を出せるのだが肝心の推進系に不具合が出てしまっている。

 

 

え?何これ、こんなMSあったのか。初めて知ったよ。

というかツィマッド社製で推進系の不具合って怖すぎるんだが。頼むからヅダの悲劇から学んで欲しいものだ。

 

だけど正史ではこんな機体全く出てこないしグフが採用され活躍していたから結局この機体は採用されないのだろう。

 

このMSのデータを解析しているツィマッド社の技術者や、機体の整備をしている整備員を眺めていると後方から若い女性の声がかかる。

 

「ヒカルさーん、こんな所で何をしてるんですか?」

 

声を掛けてきたのはシーナ・ハルト特務大尉

外見は非常に可愛らしく美少女と言っていいのだが所属がギレン・ザビ直属の総帥府、別名『ペーネミュンデ機関』に所属している。

 

総帥府直属の特務士官は表記の階級よりも2階級上の扱いを受ける特別待遇が許されており、派遣された先の一般部隊を強制的にその指揮下に置くことさえ可能なほどの強い権限を有している。

 

つまりはこの部隊の監視員だ。一体何を監視するのかはさっぱわからないのだが。

 

「どうしました?私の顔に何か付いてますか?」

 

首を少し傾げながら自分の顔をペタペタと触る姿はとても可愛く見える。

 

赤毛の髪がとても可愛い。

 

だが、生粋のジオニストだ。

 

気軽にボディタッチしてくる。

 

だが、ザビ家信者だ。

 

笑顔がとても可愛い、惚れそう。

 

だが、『優性人類生存説』の本を持ち歩く奴だ。

 

ふう、落ち着け。この女は地雷だ。見かけに惑わされるな。俺は、そう優しくて美人なお姉さん系の人がいいんだ。こんなアースノイド絶対殺すウーマンなんかお呼びでは無い。

 

「もう、何で無視するんですか?おーい、返事して下さーい。もしかして風邪ですか!お医者さんの所に行きましょう!」

 

そう言うと腕を抱える様に挟み連れて行こうとする。

そうすると必然的に小さな、けれど決して無いとは言えないくらいにはある小ぶりな胸に腕が当たる。

 

……小動物系貧乳年下活発キャラ、ええやんけ。もう、ゴールしちゃおうかな?

 

ヒカルがそんなアホな事を考えていると野太く低い男性の声がヒカルを現実に引き戻す。

 

「ヒカル中尉、トーマスが機体の事で呼んでいた」

 

声がした方向に視線を向けるとそこには大柄な人物がMSに使うだろう巨大な部品を肩に担ぎながら此方を見ていた。

 

この人物は我がニーズヘッグ隊の整備主任である。

 

名前はライン・ゴーウェン

 

作業着の上からでも分かるムキムキの体をしていて少し怖く感じるが顔つきがどこか優しげで性格もとても穏やかで優しい人物だ。

 

「ご、ゴーウェンさん。分かりました、直ぐに向かいます」

 

それを聞くとのっしのっしと去って行った。ちょっとクマ見たいと思ったのは秘密だ。

 

「うわー、凄ーい。あんなに重そうな物を担ぐなんて」

 

「確かに。あれ100キロくらいあるんじゃ無いのか?」

 

「あっ!やっと反応してくれましたね。全く意地悪しないで下さいよ〜」

 

頰を膨らませながら如何にも怒ってますアピールをしてくる。可愛い。

これが天然なのかわざと狙ってやってるのか分からない。

 

「すいません、少しぼーっとしていました。ご用件は?」

 

「ふふん、いいでしょう許して上げます!そうそう忘れてました!あとでキッド大尉が集まる様にと言っていました。どうやら『ニーズヘッグ隊』の人員が揃う様ですよ!」

 

ニーズヘッグ隊で後足りない物と言えば目的地に行くまでの足とそれを動かす人員、あとはオペレーターぐらいか?

 

「分かりました。トーマス技術大尉の用事の後、向かいます」

 

「確かに伝えましたからね〜。忘れないでくださいよー」

 

そう言うと彼女は去って行った。

 

 

ゴーウェン整備主任の言葉を思い出し、トーマス技術大尉を探していると俺の機体からデータを抜き解析をしている最中であった。

 

「トーマス技術大尉、自分を探していたと聞きましたが、ご用件は何でしょうか?」

 

自分がそう尋ねると目の下に深いクマを刻ませた肌白い男が此方を向いた。

 

名前はエディ・トーマス

髪はボサボサでメガネをかけている。体つきはヒョロヒョロで肌が白い。これぞ科学者のお手本のような格好をしている。ツィマッド社の技術者だ。

 

「ああ、君のMS操縦技術はとても高いようだね。だがその分機体の負荷が通常よりも強く掛かってるようだ。

データ的にはとても有難いがこの機体は試作機、未だに完成度は低く、少しの不具合で何が起こるか分からない。その事を頭に入れといて欲しい。」

 

「ハッ!了解しました。ですが戦闘の時だけは保証できません」

 

「勿論、戦闘の時は別だよ。本来、試作機といっても実用に耐えるレベルで無くてはならない。まあ、それでもYMSー08Aに不具合が起きてしまうのは我々技術者の問題でね。本当に済まなく思っているよ」

 

その後も少しだけツィマッド社や他の企業の事を教えてもらい別れ、キッドの所に向かう。

 

その道すがらこの先の事を思う。

特務部隊ニーズヘッグ隊。その規模は決して小さく無く支援も充実している。

もしこのまま行けば歴史をいい方に修正出来るのでは無いか?

その希望を胸に強く宿しながらキッドの元に歩き続けた。




次回、繰り返される悲劇、さらばヒカル推進器の暴走!(嘘)

次回はニーズヘッグ隊が完成されます。

ちなみに神話上のニーズヘッグは北欧神話に出てくるヘビ、またはドラゴンです。このヘビはラグナロクさえ生き延びるとされています。その為にこのような部隊になりました。


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