イナズマイレブン~円堂守と新生サッカー部~ (ハマT )
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プロローグ

今回から不定期更新になりますが読者参加型の小説を始めていこうと思います。皆さんよろしくお願いします


ゴールネットが揺れ試合終了のホイッスルがなる。だが誰もその場を動こうとしない。試合に疲れ動けない訳ではなく、ただ起きたことに唖然としていた。スコアは1-1。結果だけみれば引き分けだがその最後の一点が肝心だった。帝国学園と可憐花中のフットボールフロンティア参加規定変更によるエキシビションマッチ。

ーー来年度よりフットボールフロンティア参加チームは必ず一人以上女性選手をメンバーにいれること、但し特定の条件をみたしたチーム、または一定の審査を通過したチームは男性選手のみで参加が認められる。

きっかけは今まで男性のみしか参加できなかったフットボールフロンティアに届いた一つの手紙。そこにはとある女子校のサッカー部のサッカーにたいする思い、それがフットボールフロンティア運営委員会を動かした。

しかしいきなり変更といっても反発する学校も多い。それでこのエキシビションマッチだ。王者帝国学園と女子サッカー部が互角に戦えればその反発も消えるだろう。ーーそれがたとえ手加減だったとしても・・。

「き、鬼道・・これは・・」

「ああ・・まさか俺と同等の司令塔がいたなんてな・・」

手加減していたのは前半まで・・まさか後半、遅刻してきた一人のMFの指揮により少しばかり本気を出さざるを得なくなるとは誰も思っていなかった。技量はかなりの差があるにも関わらず帝国の隙をつく戦略。その結果一方的に攻められ始める帝国は試合終了間際、そのMFによって必殺技をあっさり破られ同点を許してしまった

 

ーー今にして思えばこれが全ての始まりだったのかもしれない。伝説のサッカー選手、イナズマイレブンを目指す私達の戦いはーー

 

一年後雷門中

少し前部員たった七人の雷門サッカー部に対してフットボールフロンティアで40年連続優勝を果たしている帝国学園からの練習試合が申し込まれた。弱小校と最強校、端から見れば結果は分かりきった試合。誰もがそう思っていた・・・前半が終わるまでは。

雷門サッカー部は前半だけで20-0という大差をつけられ帝国側のラフプレイによりボロボロ。更に恐怖からメンバーの一人が逃げだしてしまい、後半を戦うことが出来ない。そんな時、現れたのは炎のエースストライカー、豪炎寺だった。後半開始早々必殺技でゴールを奪おうとする帝国に対してキーパーで雷門サッカー部キャプテン、円堂はずっと練習していたゴッドハンドを遂に完成させ対抗。シュートを止めた円堂はゴール前に走っていた豪炎寺にパス、それを受けファイアトルネードを放ち遂に帝国から一点をもぎ取ることに成功する。それと同時になんと帝国が試合放棄、この練習試合は雷門の勝利で幕を閉じた。そしていよいよフットボールフロンティアに向けての挑戦が始まろうとしていたのだが・・

「フットボールフロンティアに出られない?!」

サッカー部室に円堂の叫び声が響く。部室には豪炎寺を除く帝国と戦った皆が集まっている。だが皆その表情は暗い。

「・・俺だってフットボールフロンティアに出たい!!でもこればっかりはどうしようもねぇんだ!!」

染岡が一枚の紙を円堂に渡す。それに合わせ他の皆も同じように紙を渡す。

ーー病院の診断書だ。書かれている内容は違うもののそれが意味することは同じだ。帝国のラフプレイによる怪我。この場で恐らく無事なのは円堂とあの時逃げ出したメガネの二人だけだ。

「フットボールフロンティアの参加規定を確認しましたが今のサッカー部はどの規定も満たしていません。この状態では参加は不可能ですね」

「参加規定って何がだめなんだ?」

「『参加チームには必ず一人以上女性選手をメンバーにいれること』、『初参加のチームは運営立ち会いのもの練習試合を行い審査を受けること』、『参加登録したチームメンバー以外の参加を禁止する』、この三つですね・・まずこのチームには女性選手はいません。それに円堂君以外が怪我をしている以上、練習試合の勝敗は関係ないとはいえ運営の審査を通過できるとは到底思えません」

メガネの言葉を聞き落胆する円堂。それもそうだろうサッカー少年憧れの大会フットボールフロンティア。去年は部員不足から参加は断念したもが今年は人数も揃っている。今年こそと思った矢先にこのような事態となったのだから。

「円堂・・実はたった一つ方法があるんだ・・この方法なら俺たちも大会に出られる可能性がある」

「本当か?!風丸!!」

風丸の言葉に飛び付く円堂。それをゆっくりと諭しながらその方法を説明する。その方法はもう一度部員を集め新しいサッカー部を作りフットボールフロンティアに参加するというとものだ。もし参加出来れば参加校の中から何かしらの理由で参加できなかったメンバーを集めた参加チームに選ばれる可能性がある。

「でも大丈夫ッスか?帝国の時でさえ試合直前にやっと集まったんッスよ」

「その心配には及びません!!」

部室に入ってきたのは二人の女子生徒だ。一人はサッカー部マネージャーの木野秋。もう一人は全く見ない顔だ。

「あ、皆!!この子マネージャー希望の・・」

「音無春奈です!!それより話は聞かせてもらいました!!新サッカー部の立ち上げ私もお手伝いします!!帝国との練習試合に助っ人が集まらなかったのはサッカー部があるのを知らなかったりどうやっても勝てないと思っていたのが理由みたいです!!でも帝国との練習試合は結果も含めて学校中の話題になっています!!あの時とは状況が違います!!」

「なら俺たちも手伝うぜ!!俺達だってサッカー部!!最大限のサポートはするぜ!!」

マネージャーを含めて皆が円陣を組む。

「新生雷門サッカー部!!皆で絶対に作るぞ!!」

「「「おお!!」」」

フットボールフロンティアに向けてサッカー部を作ろうと動き出す皆。

 

その様子を部室の外から伺っていた一人の女子生徒がいたことをを彼らはまだ知らないーー




キャラ募集は下から飛べます。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=211299&uid=58942


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第1話転校生が来た!!


主人公(笑)

新生サッカー部の合体技や掛け合いを募集しています。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=211369&uid=58942



 

 

「・・であれからどうなんだ?」

次の日の昼休み。円堂に染岡、木野の三人は昼食をとりながら新生サッカー部の勧誘状況について報告していた。

「私は音無さんと一緒に募集のビラを作って配でみたんだけどまだ連絡は無いわね・・」

「俺は幾つかの部活を回ってみて良さそうなやつを探したんだが・・」

どうやら二人ともあまり成果をあげられていないようだ。

「・・そう言えば今朝隣のクラスの大山ってやつが、放課後話があるって・・ってあれ?もしかして冬海先生?」

円堂が指を指した方にはサッカー部の顧問で円堂のクラスの担任、冬海先生がいた。その後ろには一人の女子生徒がついてきている。

「次の授業って確か小此木先生だよね?」

「えー皆さん、今日からこのクラスに転校生が来ます」

「舞埼友紀です!!皆よろしくね!!」

そう言えば今朝机が一つ多かった。それがその転校生の席のようだが・・。

「・・もしかしてあの転校生遅刻したのか?」

「流石にそれは無いんじゃない?」

 

放課後、日直の仕事を終えた円堂は部室に向かって走っていた。授業が終わってから既に三十分が立っているため恐らく皆勧誘に学校中を走り回っているだろう。だからと言ってキャプテンである円堂がサボる訳にはいかない。玄関を出てグラウンドに出て来た円堂のところに突然ボールが飛んでくる。不意打ちとはいえ円堂はキーパー。難なくそのボールをキャッチする。ボールが飛んできた方をみると大柄の男が立っていた。

「誰だ!!」

「俺のボールをキャッチするとは流石だな!円堂!貴様が欲しいのはこれだろう?」

その男が円堂にみせたのは一枚の紙ーーサッカー部の入部届けだ。

「これが欲しければ俺と勝負しろ!」

「望むところだ!!」

そう言って円堂は鞄を地面に起きグローブを手にする。

「ルールは簡単だ!俺がシュートを打つ。それを止められたら貴様の勝ち!止められなければ俺の勝ちだ!」

その男はそう言ってボールが地面に起き思いっきり蹴る。コースは真正面、しかし円堂は右に飛ぶ。スピンだ。その男はボールにスピンをかけ右に曲がるようにしていたのだ。その事にいち早く気付いた円堂はボールを難なくキャッチする。

「流石だな!俺は古島空羅!これからよろしくな!」

 

「円堂・・すまなかった!!ラグビー部を代表して謝罪をさせてくれ!!」

円堂が古島をつれて部室に入るなり隣のクラスの大山剛に頭を下げて謝罪される。

「あの・・えっと・・」

「ラグビー部のやつら・・あれだけすごい試合をしたサッカー部をいまだにバカに・・」

大山曰く円堂がサッカー部を立ち上げた頃彼のいたラグビー部は円堂達を馬鹿にしていたらしい。そして少し前帝国との練習試合を見た大山は諦めないその姿に感動を覚えたのだがラグビー部はその姿さえもバカにしたためラグビー部に愛想をつかしたらしい。

「改めて・・俺は大山剛!ラグビー部からの転部だがよろしく頼む!」

「ああ、こっちこそよろしくな!!」

「たった一日で三人ですか・・前と比べるとかなり順調ですね」

大山から入部届けを受けとると同時に冬海先生が部室に入ってくる。その後ろには今日の転校生の姿がある。

「えー彼女は舞埼友紀さん。今日からサッカー部の副キャプテンを勤めてもらいます」

「えー?!副キャプテン?!ボクそんな話聞いてないよ!!」

冬海の言葉に声を上げたのは円堂ではなく友紀だった。

「これから新生サッカー部を立ち上げるのですよ・・ならば今まであやふやにしていた副キャプテンに関してちゃんと話をつけるべきだと私は思いますがね」

冬海のいうとうりサッカー部を立ち上げた頃から人数不足を理由に副キャプテンの話を延期にしてきた。だかこれから立ち上げる新生サッカー部は大会に出られるだけの人数を集める。

「彼女は円堂君、あなたと同じ様にゼロからサッカー部を・・」

「ふ、冬海先生!!その話は!!」

「・・まぁいいでしょう。ともかくこれは決定事項ですよ」

そう告げると冬海は部室を後にした。

「・・えっと・・改めてボクは舞埼友紀!!なんか副キャプテンを勤める事になっちゃったけど・・よろしくね!!」

 

「チッ豪炎寺も新入部員もいやしねぇ!!」

部員を探しながら帝国戦でゴールを決めた豪炎寺の勧誘を目的として歩く染岡だが全くその成果をあげられないでいた。最も辺りを睨みながら歩いていたら誰も寄り付かないのが当たり前なのだが・・

「あのーもしかして染岡先輩ですか?」

「あ?誰だ?」

「俺は『漆黒のストライカー』黒牙龍斗。聞いたことありますよね?」

「いや全く・・ってストライカー?!」

突然目の前に現れたちょっと残念そうな男の言葉を聞き目を見開く。それもそうだ、ストライカーという言葉はサッカーで有名な言葉。その言葉を使うということは・・

「お前もしかして・・」

「はい!!サッカー部、入団希望です!!」

 

「どう?音無さん?」

同じ頃木野は音無のいる新聞部を訪れていた。校内新聞による宣伝。その効果を確認するために。

「木野先輩!!学校中の噂になっていますよ!!それと・・これは噂ですがこの学校にかなり有名な選手がいるみたいですよ・・確か昔大きな怪我か何かで消えた人みたいですね・・名前は・・」

「・・高咲優菜」

「そうそう・・ってえ?」

声のした方を見ると小柄な少女が立っていた。

「私は・・・神奈崎切那・・サッカー部に入部希望・・」

「本当?!やりましたね先輩!!」

 

夕方 鉄塔

空も少しずつ暗くなり始めた頃。全く人気のない場所に一人の女子生徒が来ていた。

「今日もいないか・・」

近くの木に立て掛けられたタイヤを見て少し溜め息をつくと、近くのベンチに腰を掛け本を読み始める。彼女がこの場所に来るようになったのは少し前、偶然バンダナをつけた少年がタイヤで特訓しているのを見つけたからだ。彼女ーー高咲優菜はここ最近その特訓の掛け声や音を聞きながら読書をするのが日課となっていた。しかし数日前からその少年は来ていない。そのせいか、彼女の集中力は五分と持たず、すぐにその場を後にした。

 

放課後

完全に日も落ちた頃円堂と友紀は家に帰るための帰路についていた。

「・・結局今日は五人しか集まらなかったか」

「そんなに卑屈にならないの!!一日目で五人も集まったんだから凄い事だよ!!・・ボクの時なんて一ヶ月でやっと四人だったし・・」

「ん?なんか言ったか?」

「え?何でもないよ!!」

自分の発言を慌てて誤魔化す友紀。

「それより・・さ、明日からはボクも勧誘手伝うからさ、きっともっと集まるよ!!」

明日からの勧誘について話ながら歩く二人。二人が曲がり角に差し掛かった頃突然現れた人影と友紀がぶつかる。友紀は転けなかったもののその人影は尻餅をついてしまう。

「あ、ごめんなさい!!大丈夫ですか・・」

「いてて・・はい何とか・・・」

「「あー!!」」

その人影と友紀が互いに指を指し驚く。

「お、お前もしかして友紀か?」

「そっちこそ・・誠也?」

「友紀?知り合いか?」

「うん!!ボクの幼なじみの池之上誠也!!これでも一応サッカーやってるんだよ」

その言葉を聞いた瞬間円堂の目が輝く。

「なぁ!!良かったらサッカー部に入らないか!!」

サッカーしようぜとやっている誠也に対してしつこく勧誘してくる円堂。

「あーもう分かった分かった!!こっちも都合があるから明日まで待ってくれ!!」

(・・家には金ないから相談しても反対されるだけだろうけど・・)

 

次の日、切那はジャージに着替えるため更衣室へと向かっていた。まだ主な活動は勧誘となるものの今までの感じならもうすぐ部員も集まる。そんな事を考えながら歩いている時だった。隣のクラスから出てした一人の女子生徒とすれ違う。一瞬ぶつかりそうになるものの、互いにかわしその場を後にする。そして更衣室にたどり着いた瞬間、先程の女子生徒の顔が脳裏を過る。昔サッカー雑誌で取り上げられた程の有名選手、確か名前は・・。その女子生徒のことを完全に思い出した切那は更衣室に来た目的すら忘れ後を追いかけた。



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第2話歩き出す者達

そう言えば背番号って何か意味があるのかな?特に詳しく決めてないから誰かいい案下さい

キャラの合体技募集中です

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=211369&uid=58942


「今日からサッカー部に入る池之上誠也です!!」

勧誘二日目、六人目の入部者となる誠也の紹介をしていた。昨日、円堂のしつこい勧誘を受け反対覚悟でお前両親に相談したところ、反対どころか大賛成。その上ジャージにスパイクまで用意されおりかなり驚いたのは記憶に新しい。

「・・にしても舞埼先輩遅くないですか?」

音無の言うとおり副キャプテンの友紀がまだ来ていない。いや彼女だけでなく切那と黒牙の姿もない。

「まぁ友紀は転校生だからまだ手続きが残っているんだろ?」

「いや、多分違うと思う・・」

幼なじみである誠也だからこそわかる友紀が遅れた理由。それは・・

「あー!!またやっちゃった!!」

遅刻だ。友紀は昔からかなり遅刻癖が酷く、小学校の入学式に4日という前代未聞の記録を打ち立てたこともある。

「ま、まぁともかく今日は勧誘にいくか!!」

「ねぇ、ちょっと待って!!昨日ってさ部室に誰も残ってなかったの?それとさ、皆運動部の方を回ってたの?」

友紀に言われ昨日のことを思い出す。確かに部室には誰一人として残ってなかった。皆それぞれ勧誘のため学校中を回っていたからだ。それにサッカー部は運動部、だからこそ運動部の方で勧誘を行っていた。

「・・運動部・・誰もいない部室・・」

友紀は目を閉じたまま左手の人差し指でこめかみを三度叩くとうーん、唸り始める。

「何してるんだ?」

「友紀は優秀な司令塔だからな・・多分効率のいい勧誘の仕方を考えているんだろ?」

「・・よし!!壁山と栗松は部室に残って、マネージャーと旧部員は文化棟、キャプテンと新入部員は商店街で勧誘!!成果がなくても六時には部室に集合!!」

 

同じ頃、鉄塔

優菜は一人ここに来ていた。

「今日もいないか・・」

別に期待しているわけでもない。今日もあの少年がいないことを確認するとベンチに座り本を開く。

「・・でさっきからあなたは何なの?」

本を読みながら近くにきた少女ーー切那に話しかける。

「・・高崎優菜・・消えた天才・・」

切那の言葉を聞き本を閉じる優菜。

「・・悪いけど人違いじゃないかしら?」

「・・私は覚えてる・・あなたとは何度も戦ったから」

優菜も切那のことは覚えてる。何故か全くパスを出さずプレイしていたMF。かつては何度も対戦した相手だ。

「・・先に言っておくけど、サッカーなんてやる気ないから・・」

「その本・・サッカー部とサッカーを消そうとする未来の組織との戦いの小説・・本当はサッカーのこと、好きなんでしょ?」

切那の言葉を押し黙る優菜。確かにサッカーはやめた。しかし気が付けばサッカーの雑誌や小説を手に取り、試合などは見てしまう。サッカーはやめても嫌いになれない。それが優菜の本音だった。

「・・私は昔お父さんのチームにいた・・でもそのチームでのサッカーは楽しくなかった・・もし負けたり試合中にミスしたら酷い目にあわされた。それに皆が弱いからってずっと一人でプレイさせられた・・」

切那の体が震え、目元には涙が光っている。余程辛い目にあったのだろう。気が付けば優菜は切那を抱きしめていた。

「・・私ね小6になったとき前十字靭帯断裂っていう怪我をしたの・・長い時間をかけて完治したんだけど、完全にやる気を無くしちゃった・・」

あまりにも長い治療期間が彼女からサッカーへの情熱を失わせてしまった。

「・・人は変わろうとしなきゃ・・変われない・・・好きなものから逃げたら・・ダメ・・」

ゆっくりと立ち上がり切那は優菜に手を差し伸べる。

「私は変わるためにサッカー部に入った・・優菜も・・一緒に変わろ」

(好きなものから逃げない・・・か・・)

どれだけやる気を失ってもスパイクやユニフォームはどうしても捨てられなかった。もしかしたらあのバンダナ少年の練習を見ていたのも、もう一度サッカーに戻る切っ掛けを探していたのかもしれない。気が付けば優菜は切那のその手を取り立ち上がっていた。

 

河川敷

小学生達がサッカーの練習をしているのを横目に豪炎寺は家へと帰っていた。そこに突然ボールが飛んでくる。それをそのまま蹴り返すと飛んできた方を見る。

「炎のエースストライカー、豪炎寺さんですよね!!俺は『漆黒のストライカー』、黒牙龍斗です!!良かったら決闘してくれませんか?」

「悪いがサッカーはやめたんだ・・」

「・・負けるのが怖いんですか?」

黒牙の勝負を断り家に帰ろうとするが黒牙の挑発に歩みが止まる。

「ルールは簡単・・交代にシュートを打ち続け先に外した方負け・・俺が勝てばサッカー部に入団してもらいます。俺が負ければサッカー部を退団します」

別に豪炎寺にメリットのある提案ではない。だが先程の黒牙の言葉。安い挑発だが闘争心に火を着けたのは間違いない。

「・・いいだろう」

勝負を快諾し近くのグラウンドに移動する。

「・・俺からいくぞ・・『ファイアトルネード!!』」

豪炎寺の必殺技シュート。一本目ということもありあっさりと入る。

(・・・凄い・・流石・・豪炎寺さん・・・)

黒牙がサッカーを始めたのは一年ほど前、豪炎寺に憧れてだった。ジュニアチームに入り豪炎寺を越えるストライカーになろうと必死に特訓した。

「・・俺だって・・あなたを越えるために必死に特訓したんです!!全てを闇に包め!!『ダークトルネード!!』」

ファイアトルネードに似た必殺技だが纏うのは炎ではなく闇。それを見た豪炎寺は戦慄した。もしかしたら黒牙は自分を越えるストライカーになるかもしれない・・。

(・・夕香・・俺は・・)

去年のフットボールフロンティア決勝の応援に向かう際事故にあい、意識不明の妹。その償いのためにサッカーをやめたのだが帝国の事といい、今回の事といいまるで夕香がサッカーをやめないで、と訴えて来ているようにしか感じない。

「・・・黒牙、悪いが俺はお前に負けるつもりはない・・これからずっとな!!」

「豪炎寺さん・・」

(夕香・・俺ももう一度歩き始めるよ・・)

豪炎寺が放った二本目のシュートはゴールを大きく外れていた。

 

商店街

「はい!!元気な子にはアメ上げるよ!!」

「わーい!!ありがとう!!おねーちゃん!!」

小さな女の子にアメを上げる友紀。現在サッカー部の新入部員達は商店街で勧誘を行っていた。途中円堂が冬海に呼ばれ離脱したがそれでも成果はあった方だ。三日月静海と水瀬泡華、二人の部員が新たに加わっていた。

「・・それにしても友紀は未来でも見えてるのか?」

「確かに普通は商店街にに新入部員がいるとは思わないからな」

友紀の思考力に驚く古島と大山。そこに半田が走ってくる。

「皆大変だ!!すぐに部室に戻ってくれ!!」

 

半田に言われ急いで部室に戻ってきた友紀達。円堂に黒牙、切那を除く他の部員に先程誘った水瀬と三日月の姿、更に見たことない部員が二人いる。

「あ、もしかして君が副キャプテンのユウキ?私は神崎アリス!!よろしくね!!」

「俺は高壁大那っす。俺のことは大那でお願いします!」

「僕は三日月静海。よろしく」

「わ、私は水瀬泡華です・・その・・・よろしく、お願いします」

皆それぞれ自己紹介を始める新入部員たち。円堂を含めれば十一人、たった二日で最低限の人数を集めることには成功している。

「・・意外と早かったですね」

冬海と共に円堂が部室に入ってくる。円堂は冬海から一枚の紙を手渡され声に出して読み始める。

「えー・・雷門中サッカー部への通知・・あなた方の審査試合の日程と対戦相手が決定したのでお知らせします。対戦相手は海王学園、試合は明日・・って冬海先生!?これって・・・」

「ええ今円堂君が読み上げたとおり明日海王学園と審査試合を行うことになりました」

なにがなんでも無茶苦茶だ。完成したてのチームで連携の確認と練習もなし。その状態での審査試合などまるで雷門中をフットボールフロンティアに参加させないように組まれたしか考えられない。やはり皆が冬海に非難の声を上げる。

「・・確かに酷い話ですが実は明日転校してくる天宮陽菜さんと昨日から風邪で休んでいる白浪傑さんがサッカー部の入部届けを出しています。人数は何とか足りてますから後は円堂君と舞埼さんを中心に頑張って下さいね」

そう言って部室を出ていく冬海。冬海の言うことが正しければ現時点で部員は円堂を含め十三人。大会に参加するに至っても問題のない人数だ。

「・・・ねぇ、明日の試合ボクに任せてくれないかな?」





◯月×日
皆の力を借りてやっとここまでこれた。でも二人ととはぐれちゃった。何とかして見つけたいけど奴らがこっちの動きに気づく前にこの秘伝書をばらまかないと・・。


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第三話観察試合開始!!vs海王学園!!


今回は初めての試合。ちゃんと書けてるか不安・・。


最近の募集はこちら

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942


海王学園との試合当日

「私、天宮陽菜って言います!よろしくお願いします!」

「白浪傑。まぁ、よろしく」

「私は高咲優菜・・てか普通入っていきなり試合はないでしょ・・」

新たに三人の部員を加えた新生サッカー部。皆それぞれアップを行い、友紀は皆と話ながら何かの最終確認を進めている。

「それにしてもいきなり試合か・・俺の闇に包まれた足が疼くぜ!!」

「・・お前何か面白いな・・」

黒牙に声をかける誠也。何か気が合うのだろう二人とも初対面にもかかわらずかなり仲良く話している。

「・・試合とは聞いていたが大丈夫なのか?」

新しく声のした方を見ると豪炎寺の姿があった。それも雷門のユニフォームを来ている。

「円堂・・俺はサッカーをやめない。そう決めたんだ・・」

「豪炎寺・・これからよろしくな!!」

互いに握手をかわす二人。そこにフットボールフロンティアの観察委員が近付いてくる。

「雷門中サッカー部にこれから行う審査試合の説明を行います。今回の審査試合の対戦相手は海王学園。勝敗は関係無く試合の内容を元に評価を出してフットボールフロンティアの参加資格を与えます。また本日、フットボールフロンティア参加したメンバーの登録も行います。試合後こちらの紙にメンバー表を書いて提出してください。それでは、五分後に試合を始めます。準備をお願いします」

遂に来た審査試合。皆が集まり円陣を組む。全てがこの試合で決まる。

「皆!!今日は精一杯頑張って俺達のサッカーする!!そして・・絶対にフットボールフロンティア参加資格を手にするぞ!!」

円堂の言葉に気合いを入れた皆はそれぞれ友紀の指示の元、ポジションに付き始める。

FW 黒牙 天宮

MF 白浪 友紀 切那 誠也

DF 大山 大那 古島 アリス

GK 円堂

これが今回のスタメンだ。対する海王学園のフォーメーションはFWが四人、MFが四人、DFが二人となっている。

笛がなり雷門ボールでキックオフ。

「皆!!作戦道理行くよ!!」

「任せてください!!」

天宮と黒牙がパスを繋いで上がり後に友紀と切那が続く。

「おい!!海野!!風間!!我ら海王の力を見せてやれ!!」

「「アイアイサー!!」」

DFの海野と風間が黒牙と天宮に接近していく。

「天宮先輩!!」

「いっくよー!!『バウンドフレイム!!』」

天宮がいきなり必殺シュートを打ち込む。

「『ハイドロアンカー!!』」

それに対してキーパー、岸部は必殺技で弾き返す。それを拾ったのは黒牙だ。

「全てを闇に包め!!『ダークトルネード!!』」

直ぐ様シュートを放つ黒牙。そのシュートに岸部は反応しきれずゴール・・とはならずキャプテンの浪川が受け止める。

「こいつ・・」

「必殺技をあっさり・・」

驚くのも無理はない。ダークトルネードを必殺技ではなく普通に止めたのだ。海王学園はかなりの得点率を誇るチーム。ダークトルネードを止めるだけのキック力を持つならそれも頷ける。

「『フライングフィッシュ!!』」

自陣のペナルティエリアからのロングシュート。あまりの事態に皆が唖然としている。それもそうだろう、雷門の多くの選手が小学校まで、中学生となっても外部のジュニアチームでサッカーをやっていた。

ーーレベルが違うのだ。フットボールフロンティアに参加する学校とジュニアチームとでは前者の方がプロに進む率が高い。それゆえにその事態に皆が動けない。数人を除いてはーー

「やぁ!!」

友紀が体を張ってボールを受け止めも弾かれ吹き飛ばされる。だが勢いは落ち円堂の手に収まる。

「・・帝国との試合を見てたが・・」

「・・やはりジュニアチームとはレベルが違う・・」

受け止めたボールを大山に渡す円堂。ドリブルで上がろうとするもかなり遅い。

「ケッ!!素人がよ!!」

それを浜岸がスライディングで奪い取る。

「行かせんぞ!!」

そのボールを古島がタックルで奪い直ぐ様、切那にパス。それを受け切那が上がっていく。

「切那!!誠也にパス!!白浪は・・・切那?」

友紀が誠也と白浪を攻撃に参加させようと指示を出した時、切那の異変に気づく。何かに怯えたように動きが止まる。動きが止まった切那から浪川があっさりとボールを奪うとそのまま上がっていく。

「決めさせて貰うぜ!!『ネプチューンの矛!!』」

ボールに水が集まって槍の形を作り出し浪川はそれをゴールに向かって蹴る。

「やらせるかよぉ!!」

それを止めるため大山がタックルを仕掛けるもあっさりと吹き飛ばされる。

「『ゴッドハンド!!』」

円堂がゴッドハンドで防ごうとするも一瞬で砕かれボールはゴールに・・・

「「「止める!!」」」

大那、古島、アリス、三人が体を張って止めようとするも無意味。ボールはゴールに突き刺さった。

 

0-1

 

先制点は海王学園。DF四人が体を張り、円堂がゴッドハンドを使っても止める事の出来なかった浪川のシュート。帝国程とまではいかないがそれでも実力が違いすぎる。

「・・・成る程ね・・」

実力の差に皆が驚く中、友紀だけが不敵に笑う。

「ねぇアリス・・ちょっと頼みたいことがあるんだ・・」

友紀が何かをアリスに耳打ちする。

「うん!!分かった!!やってみるよ!!」

アリスが作戦を承諾する友紀はポジションに戻る。それと同時に試合が再開される。

「まだまだ行くぜぇ!!」

直ぐ様波平がボールを奪い浪川にパス。

「『アイスグランド!!』」

それを直ぐ様友紀が奪い攻め上がり黒牙、天宮が後に続く。

「止めろ!!」

浪川の指示で風間が迎え撃つも友紀はその頭上を軽々と飛び越えシュート体制に入る。

「ボクたちだって負けられないんだ!!天宮!!」

しかしシュートは打たず天宮にバックパス。パスを受け取った天宮はそのままシュート・・ではなく再びパス。受け取ったのは黒牙だ。

「まだ時が満ちてない・・舞埼先輩!!」

黒牙も打たずパス。三人の焦らすようなプレイに岸部が痺れを切らしボールを奪おうと前にでる。

「戻れ!!罠だ!!」

「遅いよ!!」

浪川が気付き岸部を止めようもするも時すでに遅し、友紀は再び黒牙に戻すとそのままシュート。岸部は反応しきれずゴールを許してしまう。

 

1-1

 

シュートを打たずに焦らし、耐えきれなくなり前に出てきた山岸が手の届かない場所にシュートを打つ、海王学園の血の気を多さを利用した作戦だ。

「・・キャプテン・・」

「山岸・・お前は悪くない・・それにしてもあの司令塔・・何処かで見たような気がするんだが・・気のせいか・・」

友紀の姿を見て何かを感じるもすぐに頭から振り払いポジションに戻る浪川。海王学園のボールで再開すると同時に前半終了の笛がなった。





海王学園がかなり強いとか書いてますがあくまでも結成一日のチームだからそう感じてるだけです。ちゃんと練習したら海王学園はロングシュートくらいしか打てません。


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第4話海王学園の猛威?


この試合友紀がチートみたいになってますが海王学園が面白いくらいはまってくれるだけです。

最近の募集は

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942


ハーフタイム

後半に向け皆それぞれ休憩を取っていた。

「舞埼先輩!!さっきのサイクルシュート流石です!!」

「勧誘の時といいまるで名探偵だな・・」

前半、友紀の出した二つの作戦は上手く回り練習不足のチームが海王学園相手に互角に戦えていた。一つは相手を焦らすシュートローテーション、もう一つはパスをする際名前を呼び、呼ばれた相手は立ち止まるというものだ。

「観察試合は全員参加・・後半はメンバーを変えるよ!!」

友紀が告げる後半のポジション。

FW 黒牙 豪炎寺

MF 水瀬 友紀 優菜 白浪

DF 三日月 大山 古島 アリス

GK 円堂

友紀から指示されたポジションにつく皆。

後半は海王学園からのボールでスタート。いきなり攻め混んでくる海王学園。

「大山!!古島!!」

「おう!!」

「任せておけ!!」

攻め上がる波平の前に立ちはだかる二人。その後ろから接近していた三日月がスライディングでボールを奪い直ぐ優菜にパス。その前に船越が立ちはだかる。

「久しぶりだけど・・『アグレッシブビート!!』友紀!!」

必殺技で船越をかわし友紀にパス。それをダイレクトで豪炎寺にパス。

「『ファイアトルネード!!』」

場合にはを受け取りすぐにシュートを打つ豪炎寺。

「『ハイドロアンカー!!』」

それを必殺技で跳ね返す岸部。そのボールを拾ったのは黒牙だ。すぐに黒牙は友紀にパス。

「行くよ!!エターナル・・なんちゃって!!」

必殺技を打とうとして黒牙に戻す友紀。フェイントだ。だが完全にバレバレのフェイントだった為岸部もすぐに黒牙に注意する。その為か友紀の後ろから水瀬が走ってきていたのに気づくのが遅れた。

「水瀬!!」

「『レインボーバブルショット!!』」

黒牙が水瀬にパス、そのパスを受けてシュートを打つ水瀬。岸部は必死に腕を伸ばすも数センチ届かずボールはゴールに突き刺さる。

 

2-1

 

ファイアトルネードやダークトルネード、バウンドフレイムといった必殺技を跳ね返すキーパーだがフェイントや焦らしといった心理をつく戦略には弱い。

「・・あの司令塔俺らの弱点に気付いてやがる・・」

再びポジションに戻り始める海王学園、その中で一人浪川だけが不適な笑みを浮かべていた。

「・・ごめん・・友紀・・交代して・・いい・・?」

「ちょっと?!優菜大丈夫?!」

荒い息をついて友紀に交代を頼み込む優菜。しばらくサッカーをやめていた為か体力が落ちており、その上しばらく使ってなかった必殺技も使用していた為僅かな時間で体力の限界に達したようだ。優菜と交代したのは誠也だ。

「やっぱりブランクはキツいか・・」

再び海王学園のボールで再開。波平から浪川にボールがわたった瞬間、ボールを思いっきり蹴り飛ばす。その先にいたのは友紀だ。ボールに弾き飛ばされた友紀は転倒こそしなかったもののボールを奪うことには失敗。跳ね返ったボールは再び浪川の元に。再び浪川は友紀にボールをぶつける。

「おい・・」

「あいつら・・」

友紀を潰すつもりだ。二度もゴールを奪ったのは友紀の作戦。逆を返せば友紀の作戦がなければゴールは奪えなかったということになる。海王海王は勝つために友紀を潰そうとしていた。

「あいつら!!すぐにやめさせ・・」

「・・やめさせたら・・観察試合自体が中止になる・・」

もし観察試合が中止になればフットボールフロンティアに参加は出来ない。

ーーフットボールフロンティアか、チームメイトかーー

完全に分かりきった答えだが皆動かない。いや、動けないのだ。どれだけボールをぶつけられても転倒せず立ち続け誰にも助けを求めないどころか皆に指示を飛ばしカウンターに備える友紀。その目がまだ一切の諦めていないからだ。

「・・しぶてぇんだよ!!『ネプチューンの矛!!』」

浪川が必殺技で友紀に止めをさそうとする。

「おい!!」

「あれはまずいぞ!!」

「きちゃダメ!!絶対に・・ボールを繋ぐから!!」

友紀に槍が迫る。もう間に合わない。誰もが最悪の事態を想像し目をそらす。

「ナイスタイミング・・アリス!!」

アリスが槍を横から蹴り軌道を変える。起動の変わったボールは友紀のすぐ横に突き刺さる。

「・・やっぱりその技・・横からの衝撃に弱いんだね」

ネプチューンの矛はかなり強力な必殺技、しかし横からの力には弱く少しでも力が加われば簡単に軌道を変えることが出来る。それを見抜いた友紀は前半アリスに横から蹴るように指示を出していた。

「皆行くよ!!」

ボールを拾い前線に上がる友紀。ネプチューンの矛が止められた為か海王学園の動きが鈍くなっている。友紀の指示したポジションが的確に相手の隙を着く。友紀から、誠也、黒牙へとパスが繋がりキーパーと一対一。絶好のチャンスに黒牙は友紀にバックパス。

「先輩!!決めてください!!」

友紀の指示ではない。黒牙が独断で友紀にパスしたのだ。

「『エターナルブリザード!!』」

「『ハイドロアンカー!!』」

友紀の必殺シュート。それに対して必殺技で対向するも友紀のシュートは岸部の必殺技を凍らせゴールに突き刺さる。

 

3-1

 

決定的な一点。残り時間も僅か、海王学園が逆転するのはかなり厳しいだろう。

再びポジションに戻る両チーム。海王学園のボールで再開すると同時に波平がシュートを打つ。それに浪川が合わせて走り込んでくる。

「『ネプチューンの矛!!』」

海王学園は無理矢理にでも点を取り逆転、最悪でも引き分けに持ち込むつもりだろう。

「元ラグビー部舐めるな!!」

しかし大山がシュートにタックルを仕掛ける。元ラグビー部だけあって強力なタックル。その一撃にボールは大きくコースを外れコート外に飛んでいく。それと同時に試合終了の笛が鳴った。

「友紀!!大丈夫か?」

試合終了と同時に皆が友紀に駆け寄る。皆の心配に笑顔のピースサインで答える。

「・・それにしてもこの試合大丈夫なのか?」

誠也の疑問ももっともだ。この試合、友紀は皆にあまり本気にならないように指示していた。最後の友紀のシュートを見れば完全にバレたも当然。参加資格を得られないかもしれない。

「君達・・なかなかいい試合でした。試合の総評ですが・・」

皆が不合格を覚悟する。

「・・本気を出してないとはいえ海王学園に2点差で勝利。これから雷門はもっと強くなるでしょう・・もしかしたら帝国を倒せるかもしれません」

「・・それって・・」

「はい・・雷門サッカー部は合格です。大会のルールや日程等詳しいことは後日改めて連絡します」

その言葉を聞いた瞬間皆声をあげて喜ぶ。

 

新生雷門サッカー部。その一歩を遂に歩き始めた私達。このときの私達はどんな困難でも皆となら乗り越えていける。・・・そう思っていたーー

 

 

数日後

サッカー部の部室には皆が集まっていた。遅刻癖の酷い友紀も誠也に無理やり引きられ来ているため全員が集合している。

「一回戦の相手何処になるんでしょうかね?」

フットボールフロンティアの抽選の為、現在冬海は抽選会場に行っており皆その結果を待っていた。

「どの学校も強敵ですが流石に帝国や王帝月ノ宮といった優勝候補とは当たらないと思いますよ」

野生や御影、煌星や竜王山に王帝月ノ宮、そして帝国。参加校の名前を見て期待を膨らませる皆。どこも強敵だが中でも帝国と王帝月ノ宮は別格。もし今当たれば確実に負けるが他ならまだ勝機はある。

「・・大丈夫じゃないのか?これだけあるんだその二つを、ピンポイントで当てるほど冬海もバカじゃないだろ?」

誠也の言葉を皆が笑い飛ばす。

 

その部室の外では冬海が立ち尽くしていた。

「・・・・どうしましょう・・・」

冬海の手に握られた紙。そこには一回戦の対戦相手の名前が書かれていた。

 

『王帝月ノ宮』

 

それが雷門の初戦の相手だった。

 







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フットボールフロンティア開幕!!激闘のサバイバル戦!!
第5話友紀と野坂



書いてて気付いた・・・友紀の通り名何も決めてなかった!!
舞姫だとそのままだし、氷上の妖精も必殺技だし・・。
何かいい意見ありません?←それは自分で考えろ


とある方の活動報告で知ったんですが友紀ってチャンスメイカーだったんですね。あ、退院おめでとうございます。←書く場所絶対間違ってる





最近の募集は↓

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942


・・えっと・・それって・・」

「はい・・初戦の相手は王帝月ノ宮に決まりました」

冬海の言葉に皆が絶句している。フットボールフロンティア地区予選。そのルールは二つのグループに分けたサバイバル戦。AとB、二つのグループに分けられたチームをそれぞれ残り一チームになるまで戦い最後に二つのグループの生き残り同士で戦って優勝を決めるというものだ。雷門が所属するのはグループA、優勝候補の一つ帝国はグループB。その為最後までこの二つが当たることはないと思ったいたのだが・・。

「・・・その王帝月ノ宮ってそんなに強いのか?」

「去年は帝国に負け準優勝となってますね・・注意すべきなのは二人。一人は司令塔の野坂で別名『戦術の皇帝』。もう一人は西陰というGK ですね」

そう言って音無が見せたのは王帝月ノ宮の今までの試合データ。帝国に負けたと言ってもその戦績は帝国と何らかわりない。一回戦からとんでもない強敵とあたってしまった。

「・・こうなったら猛特訓だ!!報われない努力はない!!」

「・・ちょっと待って・・王帝月ノ宮には唯一の弱点がある」

特訓に飛び出そうとする円堂を止めそう告げる友紀。

「・・それって本当?」

「流石『氷雪の指揮者』この一瞬で見抜くなんて流石です!!」

友紀の言葉に皆が食い付く。一人変なのがいるが放っておいても問題はないだろう。

「・・さて皆試合まではボクの指示道理の練習を頼むね」

 

「野坂さん・・それは・・」

「クレープだよ」

商店街にあるクレープ屋。そこに西陰と野坂がいた。野坂が手に持っているのはクレープだが心なしか色が少しおかしい。

「・・野坂さん例の雷門についてですがやはり警戒する程のチームでないみたいです」

「それはどうかな?」

西陰にクレープを渡すとクレープを指差しながら説明を始める。

「今の雷門はそのバニラ、チョコレート、抹茶にイチゴを混ぜたクレープのように強く有能な選手が沢山いる。でも欲張りは良くない・・欲張り過ぎればそのクレープのように互いの長所を殺しあってしまう」

ーーもっともそれを制御する頭があれば別だけどねーー

そう言って三枚の写真を取り出す野坂。その内の二枚にはアリスと優菜の姿が写し出されている。残りの一枚には紫の髪をしたおかっぱの少女が写っている。

「野坂さんの弟子と消えた天才・・そして『妖精』ですか・・」

「ああ・・きっと三人ともフットボールフロンティアに参加してくる・・今回は少し楽しめそうだね」

 

次の日

「・・これどう見ても私達戦力外よね・・」

友紀が何人かに個別の練習メニュー出しており皆それぞれの特訓をしていた。優菜に渡されたのはジョギングと切那とのパス練習。友紀からは戦力外との見られているようにしか感じない。それもそうかもしれない。パスの出せない切那とスタミナの少ない優菜。いくら技量があってもその二つが大きな弱点となり友紀からすれば使いづらいのだろう。

「・・友紀さんには多分考えがあるんじゃないかな?」

「・・考えっていったって・・」

皆の練習を見てもおかしな点が多い。黒牙と豪炎寺は互いに必殺技を打ってそれを必殺技で止める、大山は壁に向かって体当たり、他の皆は自由練習。友紀は一体皆に何をさせたいのだろう。

「・・私にはあの人の考えが分からない・・・」

友紀が有能であることは二人には分かる。でもやってることは意味の分からない行動が多い。部活も誠也が引きずって来なければ遅刻は当たり前、気が合うのか白浪や天宮と部活をサボってラーメンを食べに行き、木野や音無に連れ戻され怒られるなどかなり自由すぎる。

「そう言えば切那って少しパス出せるようになったわね」

優菜の言うとおり観察試合の時と比べれば切那はパスを出せるようになってきている。

「・・私が禁止されてたのは試合の時だけ・・練習の時はなにも指示を受けてなかったから・・」

確かに試合であれば紅白戦でさえパスを出せなかった切那。最近は紅白戦でも少しならパスを出せるようになってきている。

「・・ねぇあれ・・・」

切那が指を指した方には友紀がいた。近くに木野がいることからまたラーメンを食べに行っていたのだろう。

「・・ほんとなにやってるんだか・・」

 

部活が終わったあと友紀は一人、ラーメン屋『雷雷軒』を訪れていた。

「おかわり!!」

「はいよ・・にしてもお嬢ちゃん良く食べるね・・」

既にラーメン十二杯。よく細身の体に入るものだ。

「ごめん・・隣いいかな?」

「うんいいよ・・」

隣に人が座ってもお構い無く十三杯目に手をつける。

「本当に良く食べるね」

「お腹が減ったらなんとやらってね・・て?!」

話しかけてきた隣の客の姿を見て驚く友紀。それもそうだ。王帝月ノ宮のキャプテン、野坂の姿がそこにあったからだ。

「君が雷門の司令塔、舞埼友紀さんだね・・僕の知ってるあの人と同じ名前だけど同一人物なのかな?」

「・・誰の事言ってるの?ボクには分からないんだけど・・」

「・・まぁいいや・・今日僕が君に会いに来たのはただの挨拶だよ・・だから警戒しなくてもいい」

立ち上がって警戒する友紀とは裏腹に出されたラーメンを食べる野坂。

「・・君も食べたらどうだい?」

野坂に進められとりあえず十三杯目を食べる友紀。野坂も出されたラーメンを静かに食べ始める。二人とも食べ終えると互いに向き合う。

「ご馳走さま・・舞埼さんあまり慣れないことはしない方がいいと思うよ」

そう言って友紀の手を指す野坂。友紀が左利きでありながら右手でラーメンを食べていたのを指摘する。

「・・ボクは両利きに修正したからね・・それより君こそあの座りかたをしなくてもいいの?」

二人の司令塔による情報の探りあい。相手よりも多く情報を得ることが出来れば試合で優位に立てる。

「・・そうにらまなくてもいいんじゃないかな?僕が今日来たのは挨拶が目的だよ」

握手を求める野坂。それに応じると野坂は少し笑う。 「君のチームは爆弾を抱えている・・そんな状態でフットボールフロンティアは勝ち抜けないよ」

そう告げ店を後にする野坂。

「・・そんな事は自分自身が分かってるよ・・」

そう言って財布からお金を出して店を後にする友紀。

「おいお嬢ちゃん!!お釣り・・ってあれ?」

店長が友紀の置いていったお金を見て気づく。どういうわけか一万円札が五枚。普通の中学生が持ち歩くにしては多すぎる。良く見てみるが偽札でもないし友紀がカツアゲするようには見えない。

「まぁ・・今度来たときに返せばいいか・・」

 




○月□日
街中であの子を見つけた。部活の勧誘をしているあの子の姿を見て少し懐かしくなった私がいる。あの子にこの秘伝書を・・ダメだ。この技は結局完成できなかったもの・・そんなのをあの子に渡すことは出来ない。


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第六話アレスの天秤


すみませんサブタイトルテキトーにつけました・・

話数に関してですが試合が始まる話は漢数字、それ以外は数字にします。サブタイトルだけだと分かりづらくなると思うので・・・

そう言えば観察試合の頃から悩んでたんですが一回雷門って負けた方がいいのですかね?そうなるとルール上練習試合くらいしか負けさせられないし・・また皆さんに頼ることになるんですが意見を下さい・・←またか・・

最近の募集はこちら

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942



王帝月ノ宮戦前日

皆がそれぞれ練習する中、友紀は一人で鉄塔に来ていた。ゆっくりと沈み行く夕日を見ながら先日野坂に言われた事を思い出していた。

『君のチームは爆弾を抱えている』

勿論それが何を意味しているかは分かっている。だからと言ってそれをすぐに取り除くことは出来ない。でもそれが敗北に繋がる可能性も高い。

「・・仕方ないよね・・」

そう言って立ち上がり学校に戻ろうとする友紀。そこに一人の男が近づいてくる。

「舞姫友紀さんだね・・」

「えっとあなたは・・」

「私は御堂院。王帝月ノ宮の学校スポンサーです」

そう言って名刺を取り出す御堂院。友紀が受けとるとそのまま話を続ける。

「あなたはアレスの天秤というのを知っていますか?今私達が開発している教育システムです。特殊なコンピューターで対象者のDNAを解析し一番最適な教育を個別に施すというものです。これがあれば今より更に優秀な人材を育てる事が出来ます」

「・・もしかしてボクにその計画に協力してほしいの?」

「と、とんでもない!!あなたは既にアレスがなくても優秀です!!・・ただアレスはまだ皆に認知されていません。そこでこのフットボールフロンティアなのです」

曰くフットボールフロンティアでアレスで教育したチームが優勝すれば、アレスがかなり優秀なシステムであることを実証できるらしい。

「今の王帝月ノ宮は帝国にすら勝てます・・ただどうしても不安要素があります・・それが雷門です・・雷門はサッカーとしては優秀な選手が多い・・そこで司令塔であるあなたに次の試合『負ける』ように指示してほしいのです。勿論・・」

「悪いけどそれは出来ないよ・・」

御堂院の言葉を遮りキッパリと断る友紀。そのまま柵を飛び越え下に降りると学校に向かって歩き始める。

「・・あなたは優秀ですが世の中の渡り方を知らないようだ・・」

 

「あ、優菜!!皆は?」

学校の帰り道友紀は優菜と出会った。ゼェゼェと息を切らしているところから恐らくジョギングをしていたようだ。

「友紀・・皆もう帰ったわよ・・全く『今日は早めに帰って休もう』って提案しといて・・」

「ごめん、ごめん・・それより優菜は自主練? 」

「まぁね・・それより一つ聞きたいことがあるんだけど・・」

優菜が聞きたいこと、それは自身と切那についてだ。スタミナの少ない優菜とパスの出せない切那、他の皆と違って与えられた練習は戦力外に等しいもの。本当に友紀が自分達を戦力外としてとらえているのか。

「・・人は普段八十パーセントの力しか出せないのは知ってる?」

有名な話だ。人が百パーセントの力を出せば肉体が持たない。その為、脳がリミッターをかけている。だが命の危機を感じればそのリミッターが外れ一時的に百パーセントの力を出すことができる。

「・・ボクはね人の心も同じだと思うんだ・・」

そして友紀から告げられた言葉を聞き優菜は驚く。

「・・そんな賭けみたいなこと・・」

「・・うん次の試合・・全ては二人にかかってるんだ・・」

 

フットボールフロンティア地区予選第一回戦当日

地区予選の試合は全て同時に行われ、次の対戦相手は全てランダムに発表される。多くの部員を持っていたり学校を上げてサッカー部を応援しているなら他のチームの試合を偵察できる。もっとも今の雷門には無理な話だが・・

「・・それにしても凄い人だな・・」

「全員王帝月ノ宮の偵察だな・・流石優勝候補だ」

場所は王帝月ノ宮グラウンド。既に準備を終えた雷門は試合に向けてのウォーミングアップをしていた。

「ようこそ雷門サッカー部の皆さん僕は王帝月ノ宮のキャプテン、野坂悠馬です。今日はよろしくお願いします」

「雷門サッカー部、円堂守です」

互いに握手をかわす円堂と野坂。見ると試合開始の時間が迫っていた。互いに並んで挨拶をかわすとそれぞれ散開しポジションにつく両チーム。

 

FW 豪炎寺 黒牙

WF誠也 友紀 切那 白浪

DF 古島 アリス 大山 三日月

GK 円堂

 

これが雷門のフォーメーションだ。

(・・確か古島はSBじゃなくてCBだったはず・・)

雷門のメンバーの一部はどのチームでも特定のポジションにつく事が多かった。古島もその一人で基本的にはCB、観察試合でもそれを守っていた。しかし友紀はそれに関係なくポジションにつかせた。

「・・皆相手は未知数だ!!気をつけるんだ!!」

笛がなり雷門ボールで試合が始まる。始まると共に上がって行く豪炎寺と黒牙。その前に道場が立ち塞がるもワンツーでかわしそのままシュートの体制に入る。

「『ファイアトルネード!!』」

練習の為か帝国の時より威力が上がったシュート。

「『王家の盾!!』」

しかしそれを西陰は必殺技で止める。止めたボールを道場にパス。すぐに奪いに来た豪炎寺をかわすとそのまま野坂にパスする。

「おっと・・いかせない」

野坂の前に白浪が立ちはだかる。野坂もフェイントでかわそうとするもそれを完璧に見抜き全く抜かせない。

「・・流石、常識外れのファンタジスタ・・でも」

野坂はバックパス、それを受け取ったのは草加。

「サッカー皆でするものだからね」

草加共に上がって行く野坂。すぐに大山がスライディングを仕掛けるもかわされ必殺シュートの体制に入る。

「『キングス・ランス!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

野坂のシュートを止めようと必殺技を出すも止められずゴールを許してしまう。

 

1-0

 

これが王帝月ノ宮の実力。恐らく最初にシュートを打たせたのは挑発の意味を込めてだろう。

「・・こんなの・・」

「強すぎる・・」

あまりの実力差に絶望する皆。

「・・やっぱり・・王帝月ノ宮の弱点は・・」

ただ一人友紀だけが不敵に笑っていた。

 





フットボールフロンティアの女子選手の参加に関して
・学校が男子校であること
・初参加であること
・十年以内に優勝経験があること
上記の条件のどれかに当てはまる学校は免除とする
また
・創部から二年以上たっていること
・一番近い練習試合から数えて五回の試合において2勝していること
この二つの条件を満たしている場合特別な審査を設けそれに合格した場合免除とする

これからもし男子のみのチームが出てくれば上の条件を満たしたチームということになります。



実は参加規定の一つにとある抜け道が・・・


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第7話友紀の策


自分は普段やりたいところまでで1話(プロローグだと勧誘開始)を区切ってます。・・本当にすみません今回少しやり過ぎました・・

募集可能人数を増やしました

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942


1ヶ月前

野坂はこの日とある理由から病院に来ていた。

「・・それで先生・・結果は?」

「・・見たことのないものです・・原因も不明・・早く何とかした方がよいかと・・」

「・・分かっています・・原因も全て・・だからこそ・・」

 

(立ち止まれないんだ!!)

得点を決めポジションに戻る野坂。確かに雷門はレベルを上げている。だが心がまだ弱い。この程度で絶望していれば優勝などもっての他。

「・・さてどうでるか・・」

再び雷門のボールで再開。先程と違って激しくディフェンスしてくる王帝月ノ宮。何とか必死にかわすもなかなか前に進めない。

「舞埼先輩!」

裏から上がっていた友紀にパス、ジャンプを駆使してどんどん上がって行く。

(・・王帝月ノ宮の動き・・やっぱりボクたちの苦手を把握している・・)

友紀はジャンプ力とバランス力に優れている反面、タックル等の当たりに関しては平均レベル。それに対して王帝月ノ宮はタックルを中心にディフェンスをしてくる。黒牙は高いパワーとテクニックを持つボックスストライカー。その反面スピードは遅く、抜かれてもすぐさま追い付いてスタミナを削りにくる。

「豪炎寺!!黒牙!!」

(?今・・)

一瞬動きを止め二人に指示を出す友紀。それを見た野坂が何か違和感に気づく。もしかしたら・・。その考えに至った瞬間野坂が笑う。

(・・どうやら先に弱点を見つけたのは僕のようだね・・)

三人でペナルティエリアまで上がる。友紀にはゴールを決める策がある。その為にもキーパーと三対一の状況を作らなければならない。

「「『アンコール・バンディアン!!』」」

その三人の前に桜庭と香坂が立ちはだかる。二人は互いの右足と左足を合わせた後それを地面に叩き付ける。それと同時に巨大な遺跡が現れ地面を揺らす。黒牙と豪炎寺は転倒するも友紀は何とか耐えようとする。しかしそこに奥野が背後が近づきボールを奪いそのまま野坂にロングパス。それを受け取った野坂はタックルで突っ込んでくる大山をかわしシュートを放つ。

「『キングス・ランス!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

止めようとするもやはり破られゴールを決められる。

 

2-0

 

王帝月ノ宮の追加点。相手のディフェンス力を考えても逆転は厳しい。

「・・皆!!少しフォーメーションを変えるよ!!それと絶対にこれ以上の失点はゆるさないで!!」

友紀が動き始める。さっきまでの絶望が嘘のように消え友紀の指示を聞くために集まり始める雷門サッカー部。

「おい!!そんなフォーメーションでこれから逆転できるのか?!」

「・・このフォーメーションは逆転を狙うんじゃなくて失点を防ぐフォーメーションだよ」

しかし友紀から聞かされたフォーメーションと指示はどう見ても逆転できるようなものではない。皆、少しは反論するも友紀の「全ては後半から」という言葉に納得はしていないがポジションにつき始める。

 

FW 切那 友紀

MF 豪炎寺

DF 白浪 古島 アリス 大山 三日月 黒牙 誠也

GK 円堂

 

DFを増やし確実に失点を抑える作戦を取ってきたと誰もが思えるフォーメーション。

(・・このフォーメーション・・普通に見れば守りに力を入れている・・でも・・何なんだこの違和感・・)

野坂もこのフォーメーションに違和感を感じる。

再び雷門ボールで再開。蹴り出した切那はそのまま上がりそれに友紀が続く。豪炎寺も上がり始めるがセンターサークル当たりで動きを止める。

「切那!!パス!!」

中盤まで上がった所で友紀がパスを求めるもやはり動きが止まる。それを見逃さなかった野坂がスライディングでボールを奪いそのまま上がって行く。

「『アイスグランド!!』」

直ぐ様友紀が追い付きボールを奪う。そのボールをそのままパスするが・・

「な?!」

「お、おい!!」

パスの相手は切那。皆が声を上げて驚く。切那はパスを出す事が出来ない。練習では少しづつ出せるようになっては来ているが試合になると体が震え動きが止まる。なのに何故ーー

「もしかして・・勝てないからって全ての責任を押し付けるつもりか!!」

友紀には考えがある。それを知るのは友紀本人と優菜の二人だけ。

(・・皆・・気づいて!!)

切那にボールを回しパスを要求。パスを出せずに奪われたボールを奪い返すと直ぐに切那にパス。 ただひたすらにそれを繰り返す。王帝月ノ宮もボールを奪って直ぐに攻めるもディフェンスに阻まれなかなかシュートに入れない。

「友紀!!」

豪炎寺から友紀にパス。それを受けとると直ぐに切那にパス。

ーーその瞬間王帝月宮の動きが変わった。今まで友紀や豪炎寺につけていたマークを外したのだ。パスの出せない切那にボールが渡ると他の皆にボールは回らない。そう判断し確実にボールを奪いに動き出したのだ。

(・・なるほど・・このフォーメーションは彼女にボールを回すため・・確かに彼女はどういうわけか王帝月ノ宮のディフェンスを突破するだけの力がある・・でもゴールを決めれるのはFWの二人か舞埼さんだけ・・)

野坂もフォーメーションの意味に気づく。だかそこまで脅威に感じていないのかそのまま何の対処もせず試合を続ける。結局前半は互いに攻めきれないまま2-0で終了した。

 

「おい!!これはどういうことだ!!」

ベンチに戻る様直ぐに大山が友紀に掴みかかる。それもそうだろう。前半友紀の策で失点を最小限に抑えれたが攻撃に関しては切那にボールを回し続けた為全く、チャンスはなかった。切那もパスが出来ない事がチャンスを潰してしまったと考え皆から離れたところに座っている。

「・・ねぇ友紀・・貴方が皆にこの作戦を話さない理由は分かる・・でもこのままじゃ逆効果じゃない!!」

優菜の言葉に皆が頭を傾げる。友紀もしばらく考え込んだ後その口を開く。

「・・王帝月ノ宮の弱点は司令塔の野坂にあるんだ・・」

友紀が見つけた弱点、それは王帝月ノ宮はほほ全てのメンバーが野坂の指示で動いていると言うことだ。オフェンスとディフェンスのタイミングとやり方、必殺技のタイミングそれを全てコントロールしているのが野坂だ。

「攻略するためには野坂の戦略を全て潰し指揮系統をマヒさせる必要があるんだ」

「・・それは分かったけどそれが・・」

「・・だから切那か!!」

豪炎寺が気づく。相手は切那がパスを出せない事を知っておりそれに対応した行動を取り始めた。もし切那がパスを出せば対応が遅れ隙が生まれる。それどころか切那への対応を考え直さなければならない。そしてここからは友紀の賭けだが考え直している間、野坂の指揮能力が低下するかもしれない。これが友紀が考えた策だった。

「・・皆に作戦を伝えなかったのは意識すると成功率が下がるからなんだ」

もし切那がパスを出せなかったら雷門は確実に負ける。少しでも成功率を上げるために敢えて作戦を皆に伝えなかったのだ。切那に余計なプレッシャーを与えないためにも。

「・・後半はメンバーを交代してフォーメーションも変える!!皆絶対に勝つよ!!」

友紀を中心に円陣を組む雷門。それを見た野坂は後半に向けて気持ちを入れ直す。

「・・野坂さん」

「雷門は後半動き出す・・西陰ゴールを頼むよ」

 

後半に向け皆がポジションに付き始める。

 

FW 天宮 友紀

WF 白浪 優菜 切那 古島

DF大山 豪炎寺 黒牙 アリス

GK 円堂

 

「・・これは・・」

雷門FWは全員がフィールドに出ているも内二人はDF、前半の事といい、全くポジションを守らない友紀。野坂さえも友紀の考えが分からないでいた。

(・・切那・・今度は私が・・あなたを助ける!!)

優菜がサッカーへ再び向き合う切っ掛けを作ってくれた切那。その恩返しにトラウマから切那を解放したい。その思いがあるからこそ優菜は友紀の賭けのような作戦にも乗った。勝負は後半。運命の後半戦が王帝月ノ宮ボールで始まった。

「古島!!白浪!!切那!!優菜!!」

友紀の指示を受け皆がフォーメーションを変え始める。だがそれよりも先に野坂が攻め上がる。

「『キングス・ランス!!』」

直ぐ様シュートを打つ野坂、その前に豪炎寺と黒牙が立ちはだかる。

「漆黒の門・・・勝手に通れると思うなよ!!『ダークトルネード!!』」

「『ファイアトルネード!!』」

二人でシュートをブロックするも弾き飛ばされる。だがそれにより大きく威力が弱まり難なく円堂がキャッチする。

「反撃いくぞ!!」

円堂から大山、優菜、そして切那へとパスが回る。パスを受けた切那が直ぐ様上がるもやはりパスを出そうとして動きが止まる。そこを野坂がスライディングでボールを奪い、上がり始める。

「『アイスグラウンド!!』優菜!!」

直ぐ様友紀がボールを奪い優菜にパス。それを優菜は切那にパス。しかしまたパスを出そうとして体が震え始める。

(・・あれ?・・今・・)

「・・優菜も気付いた?今・・確かにボールが転がった・・」

今までパスを出そうとして動きが止まると同時にボールもその動きを止めた。だが今、ほんの少しだか転がったのだ。

ーー僅かながら切那がボールを蹴ったのだ。

少しばかり見えた光明。もう一押しすればきっと・・。そう考え奪われたボールを取りに相手を追いかける二人。既にボールは野坂に回りシュートの体制に入る。

「俺だってやってやる!!」

そこに大山がタックル。それにより足下が狂ったのかボールはフィールドの外へ。

「・・無茶をするな!!サッカーは体ではなく足でするものだ!!」

古島が大山に声をかける。

「足でするもの・・」

友紀から必殺技の特訓という指示で何度も壁に体当たりをしたが全く感覚を掴めなかった。もしかしたら友紀の本当の目的はサッカーとラグビーの違いを教える為だったのかもしれない。

豪炎寺のスローインで試合が再開。直ぐ様野坂がボールを奪いシュートを打とうとする。

「やらせるかよ!!」

大山が大きくジャンプし着地。それにより地面がゆれ野坂が転ける。

「・・何か考えていたのと違うけど・・まぁいっか・・必殺技、名付けて『ジャンプブロック!!』」

「・・いやそのネーミングは無いわ・・『アースクエイク』の方がいいと思う」

前線で友紀が大山の必殺技に名前をつけるも、直ぐ様優菜が突っ込む。

(・・ここに来て向こうの士気が高まってる・・一体何故?)

先程まで劣勢だったはずの雷門。だがどういうわけかどんどん勢いを取り戻しつつある。

「・・まさか・・逆転の方法があるというのか?!」

大山が奪ったボールを再び前線に回す雷門。再び優菜に回ったボール。

「・・切那!!」

叫び、再び切那にパスを回す優菜。パスを受け取った瞬間切那の中に何かが流れ込んでくる。

(・・なんだろう・・物凄く・・暖かい・・・)

今までとは違う。物凄く暖かいボール。

ジュニア時代、父から下されたパスの禁止令。その為か皆のパスは冷たく、悲しいものだった。だが雷門のパスはとても暖かい。同じ勝つためのパスでも全く違う。

「切那!!」

優菜がパスを要求する。それに対して切那は・・・ボールを蹴り出した。

 




そう言えば試合ってちゃんと書けてますかね?前に一回雷門十二人で試合させてたことありましたから・・


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第8話パス

やらかしたぁぁぁぁ!!前回の話でやってはいけないミスをやらかしたぁぁぁぁ!!該当部分は修正したけどもこれはまじであかんやつ!!

敵キャラ募集中です

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942

必殺タクティクス募集中です

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=213594&uid=58942



 

「切那!!何故あそこでカルマにパスを出した!!」

稲妻KFCとの試合を終えた切那は監督である父から説教を受けていた。試合終盤、相手をかわすためにチームメイトの黒崎カルマにパスを出した。しかし父はそれが気にくわなかったのだろう。

「・・全く・・わかっているのか?お前以外は使い物にならん!!これからパスを出さず一人で攻めろ!!」

 

それから数ヵ月後、父は亡くなった。酔っぱらい運転によるひき逃げ、それも一度ひかれ、地面に倒れたあとしばらくしてから来た車にもう一度引かれるという悲惨なものだった。

 

父の死によりやっと自由にサッカー出来ると思っていた切那。しかし父の影響は大きく切那の心に傷を残していた。パスを出そうとすれば体が震え動けなくなってしまう。やがてトラウマからサッカーをやめた切那だったがある日雷門と帝国の練習試合を見て衝撃を受けた。諦めずボールに立ち向かう円堂。その姿を見て自身も諦めず戦いたい、そう思うようになった切那はサッカー部へと入部した。

 

「切那!!」

優菜が叫ぶ。見ると目の前には相手が迫ってきている。

(私・・だって・・変わりたい!!)

切那がボールを蹴る。そのボールはまるで吸い寄せられるように優菜の足下におさまる。

ーーパスだ。切那を見るも震えている様子がない。

「・・行ける!!勝てる!!」

優菜が再び切那にパスを出す。その前に桜庭と香坂が立ちはだかる。

「「『アンコール・バンディアン!!』」」

必殺技で止めようする二人。しかし切那はボールを蹴りあげるとその場にしゃがむ。

「ナイス、切那!!『エターナルブリザード!!』」

しゃがんだ切那を足場に飛び上がり遺跡を飛び越える友紀。そのまま空中で必殺技でシュートを放つ。

「『王家の盾!!』」

それに対して必殺技で対抗しようとする西陰だかそのボールに切那が追い付きボールを蹴り、もう一度ボールに追い付いて蹴り混む。

「『ソニックボルト!!』」

切那の必殺技で軌道を変えたシュートは西陰の必殺技に止められることなくゴールネットを揺らす。

 

1-2

 

遂に奪った一点。それもただの一点じゃない。切那がパスを出しての一点。

「・・野坂さん・・」

(・・まずいなこのタイミングで・・)

野坂が焦り出す。既に試合は終盤、皆野坂の指示がなくても攻撃に対処出来るようになってきている。だがこのタイミングでそのパターンを変えられた。

「・・野坂さん・・グリッド・オメガで・・」

「ダメだ・・あのタクティクスは確実に破られる」

相手を空へと浮かせ地面に叩き付け動きを封じる必殺タクティクス。確かに強力だか空中プレイを得意とする友紀、元ラグビー部の大山等によって恐らくあっさりと破られる。

「・・もう一度点をとって相手の心をへし折る!!必殺タクティクス『ローグプレス!!』」

試合再開と共に王帝月ノ宮の選手が中央に集まりジグザグにパスを出して一気に突破する。

「な?!」

「しまった?!」

その勢いのまま豪炎寺と黒牙をも突破。円堂と一対一となる。元の威力のキングス・ランスを打たれれば止められない。

「『キングス・ランス!!』」

必死に二人が走るももう間に合わない。

(・・あれ?・・そう言えば何でオフサイドにならなかった?)

野坂が最後にパスを受けたのは豪円寺や黒牙よりゴール側、つまりオフサイドポジションだ。なのにオフサイドをとられない。それはつまり、ゴールと野坂の間に雷門の選手が円堂を含めて二人以上いるということだ。見ると円堂の後ろからアリスが現れてボールに向かって走ってくる。

(しまった?!何故こんな単純なことを!!)

点を取ることに集中し過ぎていた為、単純なことを見逃しまった。

「ノサカ直伝!!『キングス・ランス!!』」

アリスは小学五年の頃、野坂に出会っていた。その時野坂から教えてもらったのがこの技だった。最初は完成出来なかったがそれからも何度もこの技を練習し続けた。野坂のオリジナルにはまだ及ばないものの威力を落とすには十分だ。

「『ゴッドハンド!!』」

ファイアトルネードとダークトルネード程の効果はないもののゴッドハンドで止めることができる威力まで落とすことに成功。難なく止める。円堂は止めたボールを黒牙にパス、黒牙もそのまま白浪にパスする。

「行かせないよ!!」

直ぐに野坂が追い付きボールを奪おうとする。持ち前の頭脳で白浪のトリッキーなフェイントを完全に読む野坂。それに対して白浪はバックパス。それを受け取ったのは大山だ。

「サッカーは『チームプレイ』だろ?」

前半の仕返しと言わんばかりに笑う白浪。大山もドリブルの速度が観察試合と比べると、僅かに上昇している。

(・・これが・・あの人が言っていた・・雷門の底力・・)

「切刹!!」

大山から切那へパス、それを受けとると友紀や優菜ともに連携でどんどんと上がって行く。

「・・みんなのサッカー・・楽しい」

「何当たり前のこと言ってるのよ!!」

「そうだよ・・サッカーはこんなものじゃないよ!!」

「行かせない!!」

笑顔で進む三人の前に桜庭と香坂が立ちはだかる。それに対して切那は友紀にパス。友紀はその場で減速、優菜と切那はそれぞれ左右に広がる。

「何をしようと無駄だ!!」

「「『アンコール・バンディアン!!』」」

遺跡を呼び出しディフェンスする二人。それに対して友紀は左サイドの優菜にパス、それを受けとるとそのままダイレクトで右サイドの切那にダイレクトパスするがそれを桜庭がカットしようとするが、友紀が先にカット。「天宮!!」

カットしたボールを友紀は天宮にパスする。アンコール・バンディアンは協力なディフェンス技だが、どちらかが必殺技以外の行動を取れば遺跡の意地は出来ない。前半、隙だらけの友紀からボールを奪ったのは必殺技を使った二人ではなく別の選手。そこからアンコール・バンディアンの弱点を見抜いていた友紀。

(・・まさか・・ここまで・・)

 

「自由なシュート?」

天宮が二十五杯目のラーメンを食べながら友紀に聞き返す。数日前、友紀と白浪と共にラーメンを食べに行ったときの会話だ。

「うん、ほら天宮のバウンドフレイムってさ、変則的にバウンドするわりに正面にしか行かないじゃん?」

「・・つまり、キーパーがシュートコースをよめないようにしろってことか?」

「すごいね!!白浪!!ボクの言いたいことが分かるなんて!!」

「・・まぁこう見えてフェイントは得意だからな」

「・・でもコースを読ませないってどうすれば・・」

不安を抱きながら友紀に質問する天宮。

「少し難しいんだけどね・・」

 

(ボールにスピンを何度もかけて・・何度も跳ねさせる!!)

「『バウンドフレイム!!』」

パスを受け取りシュートを打つ天宮。それに対して王家の盾で対抗するも、そのシュートは西陰の読んだ方向とは別の方向に飛んでいく。

 

2-2

 

「申し訳ありません野坂さん・・王家の盾が二度も・・」

「いや・・雷門は王家の盾を破ったんじゃなく、かわしたんだ」

残り時間は僅か。恐らく次の一点を決めた方がこの試合、勝つことになる。

「・・今度こそ決める!!皆は援護を!!」

再び攻め上がる野坂達。その前に三日月が立ちはだかる。

「『スカイウォーク!!』」

それに対して空中を歩き突破しようとするも三日月は空中の一歩目を歩いた時点でボールを奪う。

「僕は個人プレイは苦手なんだけど、ね!!」

三日月は誰かに照らされこそ輝くと考えチームプレイを重視している為か、個人技を苦手としている。だが友紀同様空中でのプレイを得意としている。

(・・まさか・・)

ーー選手のデータを意図的に隠していたのかーー

どういうわけか野坂の知るメンバーの行動やプレイスタイルに若干のズレが生じ始めている。勝つために徹底的に調べたはずなのに。

「・・皆!!もう指示もない!!各々が全力のプレイをするんだ!!そして・・」

「・・皆!!ここが正念場!!最後まで諦めちゃダメだよ!!そして・・」

「「この試合・・絶対に僕(ボク)達が勝つ!!」」

 

試合終了まで後5分ーー

 







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第9話皇帝の結末


王帝月ノ宮戦、決着です

今回今までやったことのない始めての書き方をしてます。

新しくキャラ募集始めました

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=213985&uid=58942


 

 

皆様始めまして。私、この物語の語り部由岐と申します。激闘を繰り広げる雷門と王帝月ノ宮。果たして勝つのはどちらかでしょうか?

 

 

あ、先に断っておきますが今回の話、少し意地悪ですので・・ごめんなさいね

 

 

 

 

三日月が野坂から奪ったボールを優菜にパスする。それを受けた優菜は荒い息をつきながらも必死に上がってく。ブランクでスタミナがかなり落ちている優菜。必死にスタミナを作るため、部活が終わってからも走り込みを行ってきたが後半切那の為、スタミナを使いすぎたのだ。丘野が優菜からボールを奪うも直ぐに切那が奪い返し優菜にパスする。

「・・全く・・もう限界・・なのに!!『アグレッシブビート!!』」

必殺技で奪うために近付いてきた竹見をかわすもその先に野坂が立ち塞がりボールを奪う。

「もう一度必殺タクティクスだ!!」

「させない!!」

必殺タクティクスで攻めようと陣形を組むも野坂の前に友紀が、他の選手の前にも皆が立ち塞がり陣形を組めない。野坂の持つボールを奪うために蹴りこむ友紀、それに対して野坂も逆に蹴りこむ。二人の力を受けたボールは空に飛び上がり、二人はそれを飛んで追いかける。互いにヘディングでぶつかり合う野坂と友紀。再び弾かれたボールを拾ったのは切那だ。しかし必殺タクティクスを諦めた王帝月ノ宮の選手は皆に徹底的にマークしておりパスが出来ない。

ーーたった一人、優菜を除いては。

スタミナ切れの優菜は他と比べるとマークが浅い。スタミナがなければ正確なプレイは出来ない。この状況ではスタミナの切れた優菜は脅威ではないと判断したからこそ優菜からマークを外したのだ。

「・・優菜!!」

優菜にパスを出す切那。

「『Δストライク!!』」

それを受けた優菜は直ぐにシュートを打つ。右下にあるボールを右足で左上に蹴り、それを左足でかかと落とし、最後に右足で後ろ回し蹴り。しかしスタミナのためか足元が狂いシュートコースはかなりずれている。そのシュートに切那が追い付き修正しようとするも、FWでもない切刹が必殺技を普通に蹴り返すことは不可能に近い。案の定ボールは空へと上がって行く。

「『エターナルブリザード!!』」

そのボールにジャンプして追い付いた友紀はオーバーヘッドのままゴールに蹴り混む。

「『王家の盾!!』」

それに対して西陰も王家の盾で防御する。しかし二つの技はぶつからない。シュートの角度が急過ぎてゴールに届かないのだ。

「まさか?!」

西陰が気づく。この試合雷門が奪った二点は全て、必殺技をかわしてきた。つまり・・。

「いっけー!!天宮!」

天宮が急降下したボールを蹴り混みコースを変える。すぐに手を伸ばすも間に合わずそのボールはネットを揺らす。

 

3-2

 

そして、それと同時に鳴り響く試合終了の合図。それがなっても動こうとせず、会場も静まり返っている。やがてその状況を理解するにつれて歓声が大きくなっていく。

ーー強敵相手に大金星。それに気づいた雷門の皆も喜び始める。

試合終了共に地面に倒れ込む優菜。完全にスタミナが切れ動けない。でも何処か清々しい顔で空を眺めている。

「・・何よ・・やっぱり・・楽しいじゃない!!」

 

「・・気に入らないな・・」

ディフェンスラインで座り込む黒牙。皆が喜ぶにも関わらず、苦い顔をしていた。

「どうした?黒牙」

「古島先輩・・」

黒牙の横に座る古島。

「・・この試合・・俺は何の役にたてませんでした・・」

黒牙が本来のポジションで参加してたのは前半の少しだけ、途中からは友紀の策によってDFとして参加した。いやそれだけなら良かったのかも知れない。相手キーパーの必殺技をこの試合、誰一人として破れていなかった。黒牙本人が直接シュートを打ったわけではないが今の自分が打っても結果は変わらなかっただろう。

「・・黒牙・・力が及ばなかったのは俺もだ・・FWのお前達に頼らないと相手を止められなかったのだからな・・それと・・キャラ忘れてるぞ」

「な?!わ、忘れてませんよ!!てかキャラじゃないです!!」

「・・なぁ、黒牙・・俺にダークトルネードを教えてくれないか?」

「古島先輩・・いいですよ。漆黒の闇・・その身に纏うのに途中で根を上げないで下さいね!!」

 

「・・二人共ありがとう・・」

スタミナの切れた優菜を切那と友紀が支えながらベンチへと戻っていく。そこに野坂が近付いてくる。

「・・優菜は、任せて・・」

「分かった・・お願いね」

優菜を切那に任せ野坂の所に向かう友紀。

「・・勝利おめでとう。まさか僕達が負けるなんてね・・」

「・・ありがとう・・でも流石戦術の皇帝、もし切那がパスを出せなかったら負けていたのはボクたちだったよ」

互いに握手をかわす二人。

「・・君は気付いているのかい?今の雷門は優勝できない。結局爆弾は取り除けてないようだしね」

「・・この爆弾は結構厄介だからね・・でも「可憐花がフットボールフロンティアに出てる」?!」

野坂の言葉に驚く友紀。

「・・な、何で・・あそこは・・」

「それは多分・・キミがいないからじゃないかな?・・僕はこんなことを言ったけど君達を応援しているからね」

そう告げると自身のチームメイトのところに向かう野坂。その後ろで友紀は左腕を強く握り締めていた。

 

夕方

試合の片付けを終えた野坂は1人で、とある場所に来ていた。

「・・無様だな野坂・・あのような弱小校に破れるとは・・全くこの面汚しめ!!」

王帝月ノ宮サッカー部のスポンサーを努める御堂院のところだ。

「・・お言葉ですが雷門の司令塔は王帝月ノ宮の持つ大きな弱点に唯一気付きそこを付いてきました」

「・・そんな事は分かっている!!私が言いたいのは貴様に何のために全てを任せたと思っているのだ!!」

御堂院はかなり賢い男だ。アレスを利用している野坂一人がチームをコントロールし勝利する。そうすればアレスがどれだけ優秀かが皆にアピール出来る。ただし、途中で負ければそれも全て無駄となる。

「・・まぁいい・・次は負けるなよ」

「・・アレスシステムは人体に大きな影響をもたらします・・」

御堂院にそう告げる野坂。その言葉を聞いた御堂院が驚き野坂の肩を掴む。野坂の脳にある腫瘍。野坂の読み道理ならアレスシステムに使用する薬物による影響だ。野坂もアレスシステムの利便性は承知している。だが、人体に影響のある以上容認することは出来ない。

「それは本当なのか?!」

だか、御堂院はその事を知らなかったのか驚きの声をあげる。

「・・え、えっと・・僕の脳にある腫瘍は医師な見たことのないもので・・もしかしたらアレスシステムの薬物が原因ではないのかと・・」

「・・そうか・・」

野坂の肩を離すと電話を取る御堂院。

「・・ああ、私だ・・すぐにアレスシステムを停止して被験者に病院を受診させろ!!」

その姿を見た野坂は笑う。思っていたのとは違うがアレスシステムの危険性を御堂院に伝えることが出来た。恐らくこれからアレスシステムは改善されていく。きっと近い将来安全な形で実用される。そう考えた野坂は1人御堂院の元を後にした。

 

 

 






御堂院、実は次の試合後に逮捕される予定でした。でも次の対戦相手の設定を考えているうちに御堂院の必要性がなくなったのでキレイな人になりました。出番がないのは変わりませんが・・


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第十話編み出せ必殺技!!


実は先日アカウントロックによって一部のキャラが消えてしまいました。バックアップを取ってあるため被害は少なかったのですが・・。それを含めて今後の方針について少しばかり・・

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=214492&uid=58942


追記

投稿時に書き上がっていなかった後半部分を追加しました


王帝月ノ宮戦の翌日。今日は朝練はなく少し遅め(といっても授業までかなりじかんはあるが)に水瀬は登校していた。だかその表情は何処か暗い。それもそうだろう。先日の試合、水瀬はずっとベンチにいた。友紀の策のために必要なかったとはいえやはり自身の力不足と考えてしまう。

「あ、水瀬!!おはよー!!」

その水瀬に友紀が声をかけてくる。それを見た瞬間、水瀬を始めまばらに登校していた皆が慌て始める。最早学校全体で承知の事実となっている友紀の遅刻癖。友紀が来た以上遅刻ギリギリということになる。皆急ぎながらそれぞれ時計を見た瞬間すぐにゆっくりとし始める。ただ、友紀が遅刻しなかっただけだからだ。

「水瀬、何か悩んでるの?」

「・・友紀・・私って力不足なのかな?」

試合で自分がずっとベンチにいたことを相談する水瀬。それを聞いた友紀は少し悩んだ後、じゃあと口を開く。

「『アイスグランド』覚えてみない?」

 

放課後

「新しい必殺技ァ?!」

友紀が告げたその言葉に皆が驚く。またまた珍しく遅刻しなかった友紀が部室に来た瞬間告げたのは新しい必殺技を身に付けなければ雷門は勝てないと言うことだ。

「・・皆考えてみて?王帝月ノ宮にボクたちの必殺技って通用した?」

ゴッドハンド→ほとんど通用せず、威力軽減でやっと止められる

ファイアトルネード→あっさり止められる。

ダークトルネード→打ってはないが多分王家の盾は破れない

「・・舞崎先輩の言うとうり俺たちの技は何一つ通用してません。それも対戦相手は優勝候補の一角。帝国に通用するかどうか・・」

「なるほど!!それで新しい必殺技ってわけか!!」

「そういうこと、それで新しい必殺技なんだけど・・」

そう言って何枚かの紙を取り出す。それを見た瞬間円堂が声を上げて驚く。

「あー!!それじいちゃんのノート!!」

そう言ってノートを取り出し何処かのページを開く。そこには友紀の持つ紙と全く同じ汚い字でいろんな事が書かれていた。

「・・全く同じだ・・でも何で・・」

「拾った」

そんな適当な・・。皆がその言葉を飲み込む。

「・・で、どんな技を習得するんだ?」

「・・『イナズマ落とし』と『イナズマ1号』。これに書かれているのはこの二つだね。全く読めないけど・・」

「・・えっと・・イナズマ落としは『ビョーンとしてズバーン』イナズマ1号は『ギューンとしてズバーン』」

「擬音を使うなよ・・」

・・というかそもそもギューンとビョーンくらいしか変わらないとか色々と突っ込みどころはあるがそれは置いといて・・

「とにかくキャプテンが合いそうな人を選んでその必殺技、他は自由に練習!!」

 

「えっとねアイスグランドは上手くイメージするんだ。氷の上を滑る自分をね」

それぞれが別れて特訓するなか友紀は水瀬にアイスグランドを教えていた。

「・・こ、こう?」

水瀬も真似をしてみるも全く出来ない。

「・・まぁゆっくりすればいいと思うよ・・あれよりはましだから・・」

友紀が見た先では古島と黒牙が何かの練習をしていた。

「・・良いですか古島先輩。まずは闇の力をその身に感じるんです」

「こうか?」

「違います・・こうです」

謎のポーズを何度も取る二人。あれで一応ダークトルネードの練習らしいが・・ 。

「・・でも黒牙はあれでダークトルネードを身につけた・・キャプテンもあんな適当な紙で必殺技を身につけて、友紀は戦術の皇帝に勝っちゃうし・・私は皆と比べて才能なんて・・」

「・・ボクに才能なんてないよ・・」

水瀬の言葉を聞き暗い表情を浮かべる友紀。その表情に何も言い出せなくなる水瀬。

「皆!!一旦部室に集まって!!」

そこに木野がやって来て集合をかける。結局何も言えず水瀬は友紀と共に部室へと戻っていった。

 

「・・えー次の対戦相手は綺羅星学園に決まりました。昔欧米の貴族が作った学校で当時の男女別学がそのまま残った珍しい学校ですね。対戦するのはその男子生徒の方ですね」

音無が提示した綺羅星のデータを見る皆。王帝月ノ宮と比べるとそこまで強くなく実力としては今の雷門と同等かそれ以下。そこまで苦戦はしないだろう。

「ちょうどいいね、次の試合までは新必殺技の練習!!綺羅星で試そう!!」

 

同じ頃綺羅星学園

「レン、次の試合、雷門だとよ」

「雷門?あの弱小かい?」

「ああ、だが王帝月ノ宮に勝ったそうだぜ」

「イヴ、どんなチームにも弱点はある。例えば・・彼女とかね」

 

雷門サッカー部室

すでにこの日の部活は終わり皆が帰ったのだが友紀は1人パソコンであることを調べていた。

「・・やっぱり・・あの事はニュースにもなってない・・」

野坂に伝えられた可憐花の参加。それについて調べていた。友紀の記憶が正しければ可憐花はある出来事で参加出来なかったはず。しかしどう調べてもその出来事は出てこない。誰かが揉み消した、それもなぜーー

いくら考え、調べても結論は出ない。結局その日はそのまま部室へと泊まる事となった。

 

の日

友紀は先日と同様に水瀬にアイスグランドを教えていた。だが全く形にはならず苦戦していた。

「うーん・・何がダメなんだろう・・」

「・・でも何か友紀の動きを見てたら何かイメージが出てくるというか・・」

「お、ならアイスグランドじゃなくてその技の練習をしようよ!!」

友紀に言われイメージとして出てきた技の構えを取る水瀬。基本的な動きだけだがそれを見た友紀が驚く。

「・・え・・その動き・・」

「・・・えっと友紀の動きって何処か踊っているように見えるから・・友紀?」

何かブツブツとものを言いながら何かを考え込む友紀。

「あ、ごめんごめん・・ってあれ?」

気が付くと校門の方が騒がしくなっていた。様子を見に行こうとすると黒牙が謎のポーズをとる古島を置いて近付いてきた。

「あ、黒牙!!アレなんなの?」

「よく分からないですけど何か神の顔?を持つ人が来たとか何とか・・」

黒牙のよく分からない説明を受ける二人。確かに校門の方から見られない人が歩いてくる。

「・・え?!」

その顔を見た瞬間水瀬が顔を赤らめる。それもそうだ目の前に現れたのは絵に描いたようなイケメン。見ると切那や優菜、マネージャー等女子はみなその男に見とれている。

「・・はぁい。キミが雷門の司令塔舞崎さんだね?僕は綺羅星のキャプテン!!空縞レン、さ」

まるでホストの様にポーズを決めながら挨拶をするイケメン。イケメンだからか黒牙と違いかなり様になっている。

「それにしても舞崎さん。君はとても美しい。僕はもう君にメロメロさ!」

「おい!アンタなにやってんだ!!」

そのまま友紀の手をとり口説き落とそうとするレン。その間に誠也が割って入り胸ぐらを掴み、友紀から引き離す。

「・・邪魔しないでくれないかな?僕は彼女に・・」

「・・友紀どうしたの?」

「・・ごめんボクああいうの苦手で・・」

水瀬と友紀の言葉を聞き驚きの表情を浮かべるレン。恐らく今まで苦手と言われたことが無かったのだろう。

「・・だとよさっさと帰りやがれ!!」

「ふん・・君達との試合楽しみにしているよ」

流石イケメン(?)すぐに取り直すとそのまま学校を後にする。

「・・あのやろう・・」

「・・誠也?夏でもないのに・・」

誠也は夏やサウナ等辺りの気温が暑くなると怒りっぽくなる。今はそこまで暑くはないのにも関わらずどういうわけかイライラとしている。そのままそれぞれ練習に戻る皆だが何処かその事が友紀には引っ掛かっていた。

 

試合当日、綺羅星学園グラウンド

「・・おい!!友紀は何処にいるんだよ!!」

いつも道理学校に泊まったはずの友紀は『先に行ってるね』とメモを残してその姿を消していた。 皆もその言葉を信じて綺羅星学園に来たが荷物があるだけでその姿は無かった。皆周辺を探したり携帯に電話を入れるも全く反応はなかった。刻一刻と試合開始の時間は迫ってきている中、外に探しに出ていた誠也が戻ってきた。

「誠也!!友紀は・・」

「・・心配ない。今警察の人が探してるそれより試合の準備を・・」

「え?ああ・・」

少し様子のおかしい誠也に促されそれぞれのポジションにつく雷門メンバー。

 

FW 黒牙 豪炎寺

WF 優菜 誠也 水瀬 切那

DF 大那 古島 アリス 大山

GK 円堂

 

これが綺羅星でのフォーメーションだ。元々友紀が入る所には優菜が入りサイドに変更されている。また円堂がイナズマ落としに選んだ豪炎寺と大那も試合に出ており隙を見て上がるつもりだ。対して綺羅星のフォーメーションは雷門とそれぞれのポジションの数も全く同じだ。

ホイッスルがなると同時に雷門ボールで始まる試合。最初にボールを受けた黒牙はそのまま誠也にパス。しかしどういうわけか誠也は動かない。

「誠也?」

「おい!!どうした?!」

「・・皆・・ごめん・・」

「え?」

誠也がボールを蹴る。そのボールは誰にも阻まれることなくゴールネットを揺らす。

 

0-1

 

試合開始直後いきなりの得点に皆が驚き動けない。それもそうだろう。誠也が蹴ったボールが入ったのは自陣のゴール。つまりオウンゴールだ。

「・・誠也・・?」

「・・ごめん・・・この試合・・俺達は勝てないんだ・・」

 




敵キャラ募集

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=213985&uid=58942

敵キャラ募集その二

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=212518&uid=58942


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第11話雷門の弱点


没サブタイトル『10vs12』

敵キャラ募集中です

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=213985&uid=58942


友紀が目を覚ますと何処か暗い部屋の中だった。

(・・確か・・ボクは・・・)

雷門のサッカー部室に泊まった友紀。起きてすぐに顔を洗うためグラウンド近くの手洗い場に向かって・・。そこからの記憶がない。どういう状態なのかを把握するため立ち上がろうとして気付く。両手両足を縛られ口にはガムテープが張られている。

(え・・何で・・)

全く状況の掴めない友紀。何とか脱出しようとするも頑丈に縛られ全く効果がない。窓も閉ざされ時間も分からない中必死に脱出しようとする友紀。努力むなしくただ時間が過ぎていった。

 

「くそ!!友紀のやつ何処にいきやがったんだ?」

試合開始前、誠也は綺羅星学園周辺を探していた。何となくだがこの近くにいると感じているがやはり何処にも見当たらない。

「これは、これは、雷門の池ノ上君ではありませんか?」

何処かで見たイケメン、レンが誠也に話しかけてくる。

「・・おいなんのようだ?こっちは忙しいんだよ」

「そう敵視しないでくださいよ・・折角良いものをプレゼントしにきたのにね」

そう言って携帯を見せるレン。そこに写っていたのは何処かの部屋で縛られた友紀の姿だった。

「な?、お前?!」

「・・この女は俺のことをバカにしやがったからなぁ!!」

人の好みは人それぞれ、友紀もあくまでも苦手と告げただけでバカにしたわけでない。恐らくレンはかなりプライドが高く苦手を悪口として捉えたのだろう。

「・・だからって・・」

「それにてめぇもだよ!!汚い手で触りやがって!!いいか?この女が大事なら今日の試合分かってるよなぁ?」

 

 

 

「誠也!!一体どうしたんだよ!!」

試合開始早々オウンゴールを決めた誠也に皆が詰め寄る。

「・・少し足下が狂っただけだ」

そう言ってポジションに戻ろうとする誠也。やはり様子がおかしい。皆そう考えてはいるものの、周りを寄せ付けないオーラを纏う誠也に誰も言い出せないまま試合は再開。黒牙と豪炎寺が上がりそれに水瀬と切那、更に誠也までもが後に続く。

「・・・面白そうじゃないか・・必殺タクティクス!!『ストライク・コロッセオ』!!」

「・・なんだこれ・・魔王でも呼び出そうってのか?」

レンの合図を元に皆が陣形を変え始める。気が付くとボールを持った黒牙とDFのイブの二人を残し周りには誰もいなくなっていた。いや、イブを除く皆が走り回り黒牙と他の皆の間に壁を作っていたのだ。

「・・おせーよ!!ノロマ!!」

イブがボールを奪い壁に向かって蹴る。そのボールは壁に取り込まれるもすぐにレンと共に飛び出してくる。

「・・早速決めさせてもらうよ!!『七星剣!!』」

ボールを持ったまま飛び上がるとレンの後ろに北斗七星が現れる。その北斗七星の星から光がボールに向かって伸び集まり始めそれをゴール向かって蹴る。

「・・ダークトルネードは無理だが・・『スピニングカット!!』」

古島が足を振ると衝撃波が起きてシュートの威力を弱める。弱まったシュートを簡単に受け止める円堂。それをそのままアリスにパス。パスを受けたアリスはすぐに水瀬にバスするも水瀬はトラップミス。こぼれたボールを優菜が拾い黒牙にパスするもやはり黒牙もトラップミス。近くにいた豪炎寺がボールを拾うも相手に奪われる。違うポジションとの連携、そして一つ一つのプレイが全く噛み合わない。

「・・・やはり今の雷門は・・」

ーー全てを友紀に任せていた。

元々優秀なプレイヤーが集まっていた今の雷門。もし皆がそれぞれ全力のプレイをすれば綺羅星程度20-0という大差で圧勝できる。但しそれは空想理論、実際に皆が全力を出せば一切の連携が取れなくなってしまう。それを友紀が上手くバランスを取っていたのだ。たが今の友紀が不在の状況ではそのバランスが取れない。その為それぞれのプレイや連携が互いの長所を殺しあっている。いやそれだけだったら良かったのかもしれない。

「な?!誠也?!」

切那が奪い返したボールをどういうわけか誠也が奪いそのまま上がっていく。だがそれもすぐにイブが奪い取る。イブからMF、そしてレンへとボールが繋がるがそれをすぐに古島が奪い水瀬にパスするもやはり誠也が奪い取る。理由は分からない、だがどういうわけか誠也は雷門のプレイを邪魔している。その為雷門は攻めきれない。だがそれは綺羅星も一緒。連携が乱れているとはいえ個々の能力の高い雷門。綺羅星の攻撃を簡単に防いでいく。結局前半はその拮抗した状態のまま終了した。

 

ハーフタイム

「ちょっと!!貴方達!!」

それぞれベンチに戻り後半への準備を整えている皆に1人の女子生徒が近付いてくる。その姿を見た冬海が狼狽え始める。

「夏未お嬢様!!」

雷門の生徒会長であり理事長の娘、雷門夏未。恐らく王帝月ノ宮に勝利したサッカー部の試合を見に来ていたのだろう。だが前半の体たらくをみたら文句を言いたくなるのもわかる。

「後半は池ノ上君を下げなさい!!いい?これは理事長の言葉と思ってもらって結構です!!」

「・・分かりました・・後半は池ノ上君に変わって・・」

「ま、待ってくれ!!」

誠也が冬海に交代をやめるように懇願するも全く聞く耳を持たず交代を審判に告げようとした瞬間・・

「誠也!!」

友紀の声。見ると入り口の方にジャージ姿の友紀がいた。

「・・友・・紀?」

ヨロヨロと友紀の方に向かって歩き始める誠也。友紀はすぐにその誠也に飛び付き胸に顔を埋める。

「・・嬢ちゃん誘拐されてたんだ・・普通は病院で検査をしなきゃならないんだがどうしてもここに来たいって言うからよ」

友紀をつれてきた鬼瓦という刑事によると友紀は綺羅星のキャプテン、レンに誠也を脅すための材料として誘拐されたらしい。証拠は集まっており逮捕は可能だが逮捕状が出るのは試合後。更に今回の件で綺羅星は失格となりこの試合勝てなくても次に進むこと事が可能らしい。

だが小さく体を震わせている友紀を見て皆が思う。このままでいいのかと。大切なチームメイトを怖い目に合わせたゲス野郎に負けていいのか。

「・・勝ちたい・・」

切那が呟く。

「・・やつらを闇の底に!!!」

黒牙。

「・・奴等を許すことは出来ない」

豪炎寺。皆の気持ちは一緒だ。その言葉を聞いた友紀が誠也から離れ目元の涙を拭う。

「・・ごめんね皆・・・後半からはボクが・・」

「必要ねぇよ・・今の雷門は逆にお前がいるから勝てない」

恐らく友紀も気付いている今の雷門の弱点。それを克服しなければこのまま勝ち続けれない。

「・・友紀!!お前は病院で検査を受けろ!!心配ねぇよ・・お前がいなくても勝てるさ」

「誠也・・」

友紀が皆を見るとそれぞれの目に決意の光が灯っていた。

「・・皆・・後は頼むよ・・」

それを見た友紀は鬼瓦と共にその場を後にする。それを見届けた誠也は皆に向き合うと頭を下げる。

「皆すまなかった!!」

謝る誠也に近付く夏未。

「・・理事長の言葉としても命令します・・この試合必ず勝ちなさい!!」





今回の話を読んで気付いた方がいると思いますが・・綺羅星は咬ませ役です。七星剣とか結構真面目に考えましたが咬ませ役です。


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第12話怒りの雷門

実は御堂院は今回の試合後逮捕される予定でしたがかわりにレンが逮捕されました。

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後半

雷門も綺羅星も一切のメンバーを変更しなかった。スタミナの少ない優菜も前半殆ど動いてない事から続けて試合に参加している。

綺羅星ボールで再開する試合。直ぐ様黒牙がボールを奪うと何も見ずに後ろに蹴る。それを取ったのは誠也だ。すぐに相手のMFが来るもかわしそのまま上がっていく。

(・・あの女を餌にアイツを味方にするのは失敗したか・・でもこの一点を守れば!!)

この試合の結果に関係なく敗退が決まっていることを、知らないレンは皆にタクティクスを指示し、誠也から奪うとそのままシュートの体勢に入る。打ったシュートは真っ直ぐゴールに向かっていき、円堂も止めようとするも急にコースを変える。咄嗟の事に『ゴッドハンド』出す暇もない円堂は思いっきりパンチングし弾き飛ばす。

「今のって必殺技・・『熱血パンチ』がいいわね」

弾かれたボールを取ったのは古島。その古島も黒牙同様適当に蹴りそれを水瀬が取る。

(・・友紀のあの動き・・)

舞うようにプレイする友紀。 高いジャンプ力とバランス能力があるためそう見えるだけなのかも知れないがそれでも水瀬からすればいつか同じポジションとして追い付き存在だった。

「友紀の為に・・負けられません!!」

水瀬は『バブルホップ』というドリブル技を持っていたが、友紀から隠し玉として土壇場まで使わないように指示を受けていた。水瀬は練習中『バブルホップ』と友紀の舞う動きを合わせた必殺技を作り出そうとしていた。それが・・

「『泡沫の舞!!』」

泡まみれになった周りを踊るように滑り相手を抜き去っていく。抜き去った後すぐに前に蹴り出す。それを拾ったのは黒牙だ。

「こいつら・・」

ーー連携を全くしていない。

皆適当に蹴り出しそれを他のプレイヤーが拾う。連携が出来ないならしなければいい。それが雷門の出した結論だった。その作戦は上手く行き徐々にだが連携がとれはじめている。ボールを拾った黒牙が相手DFを抜きシュート体勢に入る。

「漆黒の怒りを・・思いしれ!!『ダークトルネード!!』」

黒牙の放ったシュートはキーパーもろともゴールに突き刺さる。

 

1-1

 

今の状況からすれば雷門にとって大きな一点。

「・・アイツら・・」

思いっきりゴールポストを蹴るイブ。もしこの状態が続けば負けるのは綺羅星。

「・・一発逆転だ・・アレをやる!!」

綺羅星のボールで再開すると同時にFWとMFだけでなくDFまでもが上がり始める。

「これって・・」

「トータルフットボール・・」

全員攻撃、全員守備のサッカー。雷門に実力の劣っている綺羅星。実力が足りないなら1人に対して多人数で当たれば有利にたてる。だがそれもちゃんとその戦術を身に付けていればの話だが・・。

「・・面白いけど・・」

攻めてくるレンからあっさりとボールを奪う優菜。すぐに奪い返しに来た相手をどんどんと抜き去っていく。

「あれだけ引っ掻き回したんだからあんたが決めなさい!!」

優菜が誠也にパス、それをそのままヘディングでゴールに叩き込む。

 

2-1

 

逆転。今の状況からすれば綺羅星にとって厳しい一点だ。

「・・バカ・・な・・」

まだ完全に身に付けていないとはいえ、攻撃も守備も人数的有利を作れるトータルフットボールを破られた綺羅星。それに皆が悟り始める。今の雷門には勝てないと。

再び綺羅星のボールで始まるも、直ぐ様奪われ豪炎寺にボールが回る。その後ろから走り込んでくる大那。飛び上がった大那の体を足場に更に飛び上がった豪炎寺がオーバーヘッドでシュートする。

「「『イナズマ落とし!!』」」

三度ネットを揺らすボール。

 

3-1

 

雷門のエースストライカーだが作者の都合で殆ど点が取れなかった豪炎寺が遂に一点を決めた。

再び綺羅星ボールで再開するも諦めかけた相手から簡単にボールを奪うと再び豪炎寺にボールが回る。そこに今度はGKの円堂が走り込んでくる。

「「『イナズマ1号!!』」」

円堂と豪炎寺のツインシュート。そのシュートは再びネットを揺らす。

 

そこから最早一方的だった。相手のボールで再開すればすぐに奪いシュートを打ち点を取るのワンサイドゲーム。綺羅星も少しでも点を押さえようとするも雷門の、勢いに呑まれ連携が上手くいかない。それどころか必殺タクティクスも上手く発動しない。試合が終了したのは15-1という大差がついた時だった。

「ふ、ふざけるなよ!!貴様ら!!」

試合が終了すると同時にレンが叫ぶ。

「この試合、脅しで勝ったくせにいい気にるなよ!!」

自分が雷門に行ったことをあたかも綺羅星がやられたように怒鳴り散らすレン。そこに鬼瓦がゆっくりと近付いてくる。

「空縞レン!!誘拐に監禁、脅迫の罪で逮捕する!!」

「刑事さん・・証拠はあるんですか?証拠がないのに・・」

「雷門の防犯カメラに空縞カンパニーの社員の姿が映っていてな。問い詰めたらお前の指示で誘拐したと自供した。それに監禁場所から見つかったこの髪、犯人じゃないならDNAを提出してもらう!!」

「クソ!!」

鬼瓦の言葉を聞き逃げ出すもすぐに警備員がレンを取り押さえる。そのまま身柄を渡されたレンは鬼瓦に連行され会場を後にした。

 

 

グラウンド近くの木陰

アホ毛のついたおかっぱ頭の少年が誰かと電話で話していた。

「・・空白さん・・今日帝国は試合だったんですよ・・」

『ごめんねジュンくん・・可憐花はメンバーギリギリ・・私が抜けたら確実に負けちゃうからね』

「・・まぁあの人が危険な目にあうのはボクとしても嫌だけどね・・」

電話を切り胸のペンダントを手にするその少年。そこには紫の短髪の女性の姿が写っていた。

「・・今どこに・・………さん・・」





◯月□日

今日は北海道に来た。雪原ではあの子が1人でいた。あの子が彼らと会うのはまだ先だけど今のうちにあの技を教えておかないと・・


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第13話舞崎家



初期の憲三さんのサンプルボイス

「私は舞崎憲三だ」

「友紀!!いつまで玉蹴り等に呆けているんだ!!」



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綺羅星との試合から一夜明けた放課後

雷門サッカー部の皆は部室に集まっていた。

「・・えー次の対戦相手は竜王山に決まりました」

予選Aブロック最終戦。その対戦相手は竜王山に決まった。データを見ると得点率と失点率はほぼ同じ。そこまで厄介とは思えないのだが・・

「友紀がいないとなぁ・・」

昨日誘拐された友紀は検査の結果、異常なしと判断されたが大事をとって今日は学校を休んでいる。もしこの場に友紀がいればきっと何か分かるだろう。

「・・全く綺羅星を圧倒したチームがなんて顔してるのかしら?」

部室に夏未が入ってくる。その手には二枚の紙が握られている。

「あなた達に二つ伝えたいことがあります。まずは私がサッカー部のマネージャーになります」

夏未の言葉に皆が驚く。雷門理事長の娘であり生徒会長の雷門夏未。その彼女が突然マネージャーとして入部すると言い出したのだ。

「そしてもう一つはこれよ」

夏未が見せた紙を見てもう一度驚く。見せた紙は退部届け、それも友紀のものだった。

「なんで・・友紀が・・」

皆がその紙を手に取り気づく。字がかなり達筆だった。その達筆すぎる字はどう見ても友紀のものでない。

「・・そう言えば友紀のお父さんって友紀がサッカーを続ける事をあんまり良く思って無かったような・・」

誠也が思い出す。直接は会ったことはないが何度か友紀の話に出てきた事がある。

「・・気に入らないな・・」

この退部届けに友紀の意思は全くない。今までの様子を見ても友紀がサッカーが、好きなことは分かる。

「・・・とにかく彼女がサッカーを辞めたくないと言うのならばあなた達の力で連れ戻しなさい」

 

 

隣町

誠也の案内の元、円堂と黒牙は友紀の家の近くへと来ていた。

「この辺にあるって行ってたんだがなぁ・・」

昔の記憶を頼りに探すも、

①公園の近く

②どれだけ遅くなっても公園にいれば平気

という程度の情報しかなく苦戦していた。

「・てかなんで黒牙がいるんだよ・・」

キャプテンの円堂と幼馴染である誠也が来るのは分かるが、全く関係のない黒牙が来ている事に対して疑問を持つ誠也。

「いいじゃないですか・・雷門を導く軍師の邸宅を訪問したいですし」

完全に好奇心から同行している黒牙。そんな三人で隣町の公園辺りを中心に探すも全く見付からず既に一時間、取り敢えず公園のベンチに座り今後の探索について話し合っていた。

「誠也と友紀が遊んでいたのはこの辺りだから友紀の家はこっちの方にあると思うんだけどなぁ・・」

「でもそっちに舞崎って表札は無かったし・・」

誠也と友紀が遊んでいた側の周辺を探し尽くしたが友紀の家は全くなかった。

「・・あれ?」

スマホで辺りの地図を見ていた黒牙が気づく。地名と公園の名前が一致していないのだ。普通公園には辺りの地名から名前を付けられる。しかし今いる公園は全く違う名前が付けられていた。

 

 

舞崎運動公園

一部施設を覗いて無料で利用できる大きな公園。その中心には関係者以外立ち入り禁止の大きな建物があり皆、合宿施設だと思っていたが・・

「・・なぁもしかして・・」

「・・ああ・・」

合宿施設にしては大きく豪華な建物。良くみると庭にはメイド服やスーツを来た人が掃除をしたりしている。

「友紀の家の場所って確か・・」

①公園の近く→公園内ならかなり近く

②どれだけ遅くなっても公園内にいれば平気→公園内は庭みたいなもの

確かに全ての条件を満たしている。確認しようと建物の入り口に近付くと他の人と違う服装をした女性がメイドの一人と話していた。ラフな服装ではあるがミニスカートにリボンという女の子っぽい服装。紫の髪も左サイドのポニーテールで纏められている。

「・・ん?」

何か違和感を感じてもう一度その女性を見る三人。ミニスカートにリボンという女の子っぽい服装と何処かで見た事ある紫の髪。

「・・あの・・俺の見間違いじゃなかったらあの人・・」

「友紀!!」

円堂が声をかけるとその女性が振り向く。

「キャプテン!?皆?!」

服装も髪型も違うだけでこんなに印象が変わるのか・・。そんな事を考える三人。

「もしかして今、馬子にも衣装とか考えてなかった?」

 

やはりこの家は友紀の家だった。この舞崎運動公園は舞崎グループ社長の家の庭を皆に解放している場所だ。

「入るよ」

円堂達は友紀の案内で父親の舞崎憲三の所に来ていた。名前からしてかなり厳格なおっさんをイメージしていたのだが・・

「来たのか!!友紀!!」

ジャージ姿で変なポーズを決めながらチャラそうな男ーー憲三が話しかけてくる。

「・・先輩・・今日だけで頭が・・」

「・・奇遇だな・・俺もだ・・」

「お父さん!!何で友紀からサッカーを奪おうとするんです!!」

「・・友紀には私に似た天性のバランス能力が備わっている!!」

ポーズを決めながら話す憲三。途中で転けなければかなり説得力があったと思うが・・

「だからこそ友紀はサッカーではなくフィギュアスケートをやるべきだ!!」

今度は部屋全体をスケートのように滑りながら話す憲三。

「パパ!!ボクはサッカーをやめるつもりはないよ!!」

父の言葉に反論し喧嘩を始める二人。それをみたメイドが円堂達を部屋の外に連れ出す。それと同時に部屋の中で轟音が鳴り響く。メイド曰く二人の喧嘩は毎回こんな風になるとの事。

「もう知らない!!パパのバカ!!」

そう言って三人にも目をくれず部屋を後にする友紀。ゆっくりと部屋に入ると音の割にはあまり荒れていない部屋。その中で虫の息となった憲三が壁にもたれ掛かっていた。

「・・これを・・・友紀に・・」

メイドに一枚の紙を渡すとそのまま気を失う憲三。メイドは全く気にするようすもなく紙を受け取り友紀の元に向かう。

「あの・・ほっといていいんですか?」

「何時もの事です・・それよりこれを・・」

友紀に渡す予定の紙。そこには血文字で『覚悟を見せろ』と書かれている。

「・・憲三(笑)様はああ見えて友紀様の事を案じております・・覚悟を見せろということはつまり、どんなに辛いことがあっても進めるのか、と問いかけているのです」

「・・それって」

「はい・・もし友紀様が覚悟を見せればきっと憲三(笑)様はお認めになるかと・・」

「それ本当?!」

見るとさっき出ていったはずの友紀が戻ってきていた。・・手にハンマーを持っていることには突っ込まないでおこう。

「憲三(笑)様は先日の一件や友花様の事があり友紀様の身を案じられております」

「・・分かってるよ・・だからってボクはサッカーを止めるつもりは無いよ・・ねぇ次の相手って何処?」

「竜王山ってところだ・・」

次の対戦相手を聞いた友紀が頷く。

「次の試合・・絶対に勝つ!!その為にも明日から頑張ろう!!」

 

 

 

 

皆様お久しぶりです。この物語の語り部由岐です。フットボールフロンティア予選も後二試合。これから更に激戦となりますが一体どうなるのでしょうか?

 

あら?お客様が来たようですね。何を不思議に思ってるのですか?私のところにもお客様が訪ねて来ることもありますわ





ど う し て こ う な っ た !!

憲三さんは元々かなり厳格なおっさんだったんですが書いていくうちにただの変人に・・


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第14話花の挑戦者



まだどうするか決めてないけど可憐花の募集が終わったらまたキャラ募集しようかなぁ~。ちょっとまた必要なキャラができそうだし・・。

キャラ募集中です

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次の日

どういうわけか遅刻しなかった友紀が次の相手竜王山について説明し始める。

「竜王山は海王以上の攻撃的チーム、得点率と失点率が似てるのは取られた分を取り返しているからだね。注意するのはエースストライカーの八多野龍。高いフィジカルとスタミナの持ち主だね」

友紀が見せたのはこれまでの試合の様子。確かにどの試合でも点を取らても全く気にしていない。

「つまり勝つためには相手の攻めに対抗できるだけの守備を身につけるって事か?」

「違うよ・・必要なのは・・これだよ♪」

 

友紀が提案した練習方法それは・・

「何で・・遊園地なんだよぉぉぉ!!」

遊園地でジェットコースターに乗ることだった。全く理由の分からない皆だが王帝月ノ宮の事もあり、取り敢えず乗るしかなかった。

「・・で一体何でここに来たのかしら?」

ジェットコースター一本でリタイアし、ベンチに座り込む友紀に夏未が話しかけてくる。

「・・竜王山の攻撃はかなり荒々しいからね・・対応するためにはジェットコースターで体を慣らそうと・・」

「それでここに・・でもあなたはかなり辛そうだけど・・・」

夏未に渡された水を飲み干すとフラフラながらも立ち上がる友紀だがすぐに倒れそうになる。

「・・これは・・ダメね・・」

「ごめんね・・・そう言えば誠也と黒牙は?」

遊園地では色々な絶叫マシーンに雷門のメンバーが乗っているが、何処にも誠也と黒牙の姿が見えない。

「・・今雷門では四十年前にサッカー部が使っていた特訓施設を復活させようとしています。その為にちょっと手伝って貰っているのよ」

四十年前の雷門サッカー部。友紀も噂で聞いた程度だがかなり強く、フットボールフロンティア全国大会決勝に進んだが決勝当日に試合会場に現れずそのまま歴史の中に消えた存在。当時使っていた特訓施設を復活させることに成功すれば更に雷門をパワーアップさせることが出来るだろう。

「それって後どれくらい・・」

「後は仕上げの段階に来ています。多分明日から利用できるはずです」

竜王山との試合は明後日の夕方。上手く行けば1日半はかつての雷門サッカー部ーーイナズマイレブンと呼ばれたサッカーチームの特訓施設を利用できる。そう考えた友紀は立ち上がり叫ぶ。・・が、すぐに吐きそうになり口許を押さえる。

「・・本当に大丈夫なのかしら?」

「大丈夫じゃないのか?」

そこに豪炎寺達がやってくる。

「友紀はいつも最善を尽くしてたからね。きっと今回も・:」

「・・友紀さんに頼り過ぎるのは今の雷門の弱点・・」

切那の言うとおり綺羅星との試合で発覚した雷門の弱点。それを克服するためにもそれぞれの最善を尽くす。今の雷門はそれを共通の目標として努力している。

「いつかは友紀がいなくても勝てるチームになる!!」

完全にダウンしている友紀の前で誓う雷門サッカー部。

「・・思ったよりはやれそうね・・」

 

「誠也!!黒牙!!」

遊園地から学校に帰ると誠也と黒牙が地面に倒れていた。

「おい・・大丈夫か?!」

皆が慌てて駆け寄る。良くみると二人とも涙を流していた。

「・・負けた・・」

「え?」

「負けたんだよ!!」

 

時は遡ること数時間前

「お疲れ様です」

「ああ、ありがとうな」

夏未に頼まれ特訓施設、イナビカリ修練所の調整を手伝っていた二人は少しばかり休憩を取っていた。

「・・それにしてもこんな施設があったなんてなぁ・・」

「ほんとですね・・」

改めて見るとこの施設は凄いと思う。スピードをあげる為のランニングマシーン(歯車)やキーパーのセーブ力を上げるマシーン(大砲)等、色々なサッカーに関係(?)する機械がある。これを使っていたかつてのイナズマイレブンはどれ程強かったのだろうか・・。そんな事を考えていると突然ボールが飛んでくる。黒牙がそれを受け止め蹴り返すとそこには一人の少女が立っていた。

「誰だ!!」

「・・あなた達がお姉さまの今のチームメイトですか?・・あんまり強く無さそうですね」

「なんだと!?」

誠也がその少女の持つボールを奪おうとするもあっさりとかわされる。黒牙も奪いに行くがその少女は跳んでかわす。

「黒牙!!」

「ダークスライディング!!」

黒牙と誠也が同時にスライディングで仕掛けるもやはり簡単にかわされる。

「何なんだよ・・」

二人のプレイが全く通用しない。いやよまれている。はっきりいうが実力はそこまで高くない。恐らく普通にやれば簡単にボールを奪える。だがその少女は二人の動きやプレイの癖を完全によみ対象することで実力の差を埋めているのだ。

「・・この程度でお姉さまのチームメイトだなんて笑わせてくれますわね!!」

少女が二人に向かってボールを蹴りだす。そのボールを受け止めたのは黒牙でも誠也でもなく別の少女だった。

「キャプテン!!」

「うらら・・こんなところで何をしてるのかしら?」

先程まで二人を圧倒していたうららもその少女に頭が上がらないのかずっとキャプテンと呼ばれた少女の説教を受けている。

「皆様ご迷惑をお掛けしました・・うらら帰るよ」

「おい、待てよ」

二人が帰ろうとした所を誠也が止める。

「迷惑をかけたなら一勝負しないか?」

 

イナビカリ修練所から学校のグラウンドに移動した四人。

勝負のルールは簡単。

①必殺技を使わずにゴールを決めたら勝ち。

②使用するフィールドは半分。

③ただし何処にいても一度センターラインを跨がないといけない。

勝負はうらら達のボールでスタート。中盤辺りまで上がった所で黒牙がボールを奪いセンターラインに戻るも、うらら達は奪いに来ない。

「・・フッ、俺達の前に怖じ気ついて手も足も出ないのか!!」

挑発しセンターラインに近付いた瞬間、二人が一気に近付きボールを奪いセンターラインを跨ぐとすぐに上がり始める。誠也達は中盤辺りでもう一度ボールを奪うともう一度センターラインに戻るもセンターライン近くで再び二人はボールを奪い上がり始める。

(・・こいつら・・)

ーーボールを奪われたらセンターラインに近付くまで手を出して来ない。

ルール上何処まで攻めていても一度センターラインに戻る必要がある。その戻る動作を全て誠也達にやらせ自分達は攻める事しかしない。

「・・だったら!!」

センターラインに戻った誠也はすぐにゴール近くにいた黒牙にパス。すぐにヘディングでシュートする。速効で相手が近付く前にボールを繋げシュートを決める。二人が取った策、しかしそれはキャプテンと呼ばれた少女によってあっさりと破られ・・いや、逆に同じ策をやり返された。シュートを止めるとセンターライン近くにいたうららにパス、うららはセンターラインを跨ぐとすぐにキャプテンと呼ばれた少女にパスを出し受け取とるとすぐにシュートを打ちゴールネットを揺らした。

(・・あのうららとか言うやつの能力から見て俺達は遊ばれていたのか・・)

「・・さて・・うらら・・可憐花に帰るよ」

うららと共にその少女は正門から帰っていく。二人が去った後地面に倒れ込む黒牙と誠也。総合的な実力は圧倒的にこちらが上、しかし相手はそれを戦術やよみで上回った。もしこのまま勝ち続ければきっと戦うことになる。恐怖と悔しさから涙を流し始める二人。

 

 

友紀達が戻ってきたのはそれから三十分後の事だった。

 

 

 



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第十五話竜の咆哮

今回少し短いです


敵キャラ募集中

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仮募集中です

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竜王山との試合当日

雷門は会場となる竜王山中のフィールドで準備運動をしていた。

「・・今日の試合負けられない!!」

憲三は友紀に覚悟を見せろと言った。この試合の結果次第では友紀はサッカー部を辞めなければならない。時間が来て皆ポジションにつき始める。

 

FW 黒牙 誠也

MF 優菜 友紀 切那

DF 大山 豪炎寺 アリス 古島 三日月

GK 円堂

 

竜王山の攻めに対してディフィンスを厚くし、豪炎寺をシュートブロックの為にゴール前に配置したフォーメーション。黒牙もゴール前に配置するつもりだったが『誠也さんと共に前線に配置してください』とせがまれ今の配置になっている。対して相手はキャプテンの龍のワントップ、DF二人とMF七人というフォーメーションだ。

雷門ボールでスタートする試合。黒牙と誠也がパスで上がっていきそれに友紀が続く。MFが奪おうと立ち塞がるも黒牙は友紀にパス。パスを受けた友紀は跳んでかわす。

「『エターナルブリザード!!』」

「『炎竜の豪炎!!』」

相手のキーパー、ハルが両手に纏った炎をボールに叩きつけ止める。

「龍!!」

ハルはゴール前に上がっていた龍にロングパス。パスを受けた龍がシュートを打つと緑色のドラゴンが現れる。

「『ドラゴンクラッシュ!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

ぶつかり合う二つの技。ドラゴンクラッシュの勢いに負け飛び上がるボール。それを受け止めたのは豪炎寺。そのまま優菜にパスし上がっていく。

「・・・黒牙・・やるぞ!!」

「・・誠也さん!!まだ時が熟してません!!」

何かを相談しながら上がっていく二人。優菜から切那、友紀とパスで繋いで行く。

「『ストームトラップ!!』」

竜王山唯一の女性選手であるMF、天野がいくつも竜巻を作り友紀の行く手を阻む。良くみるとわずかに隙間が空いておりそこを突破しようとするも待ち構えていた天野に止められる。そのボールは再び龍の元に渡る。

「今度こそ決める!!『ドラゴンクラッシュ!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

再びぶつかり合う二つの技。今度は豪炎寺がシュートをブロックし威力を軽減。なんなく円堂の手に収まる。円堂はそれをアリスにパス。相手もすぐに止めにくるもアリスはどんどんと上がっていく。

「ユウナ!!」

アリスからパスを受け上がっていく優菜。

「『アグレッシブビート!!』」

相手のMFを必殺技で突破し友紀にパス。そのまま上がっていくも相手のDFに止められる。

「・・先輩?」

黒牙が気づく。友紀の動きがおかしいことに。友紀のプレイならDFを突破することも造作もない。しかしどういうわけかあっさりと取られた。それどころか相手の必殺技も友紀なら引っ掛かることなく突破できるはずなのだが取られた。

「誠也さん・・舞崎先輩って頭の方に弱点ってありますか?」

「・・まぁ司令塔やってるくせにバカだな・・かなり要領が悪くて一つの事しか考えられないな」

よく考えてみれば友紀の作戦は全て試合前に作られていた。王帝月ノ宮の時の作戦は複雑なものが多かったがどれも試合中に考えられていなかった。どの試合も友紀は皆に指示を飛ばす事だけに集中していた。それどころか指示を出す時にわざわざ立ち止まっていた。恐らく指示を飛ばしている間は本来のプレイができないのだろう。もし、今何かを考えているならプレイに支障をきたす理由も分かる。父の事だろう。

「・・・次にボールが来たらやります・・」

「・・黒牙・・わかった!!」

奪われたボールは天野に渡ると同時にキーパーに向かってパス。

「行くぞ!!必殺タクティクス!!『超竜大砲!!』」

ハルをスタートに一直線にダイレクトパスを繋いで行く。十一人目となる龍がゴールに向かってシュートを打つ。

「『ゴッドハンド!!』」

円堂がゴッドハンドで止めようとするが簡単に砕かれゴールを決められる。

 

1-0

 

チームメンバー全員でボールにパワーを貯める必殺タクティクス。かなりの威力を持ったその一撃は恐らく黒牙や豪炎寺がブロックしても止められない。

「・・あのタクティクス、サイドががら空き・・」

切那がすぐに超竜大砲の弱点に気づく。超竜大砲は一直線に選手を並べる特徴があるため選手のいないサイドががら空きとなっている。何とかしてボールを奪えば一気に攻め上がれる。恐らく友紀も気付いているはずだが・・

「・・サイドががら空き・・そうだったんだ!!」

友紀の様子からして気付いていなかったようだ。

再び雷門のボールで再開する試合。黒牙と誠也が上がるも相手に奪われる。

「『アイスグラウンド!!』」

すぐに友紀が奪い返そうとするもかわされる。

「『バーサクスライド!!』」

次の光を元に自らの身体能力をブーストした三日月がDFラインからセンターライン近くまで一気にスライディングで上がりそのままボールを奪う。

「・・友紀!!」

息を切らしながらも友紀にパス。しかしそれは相手にカットされる。

「・・友紀・・」

何度やっても毎回ボールを奪われる友紀。何処からどうみても試合に集中できていないのは明らかだ。

「黒牙!!」

奪われたボールを再び奪い返す雷門。そのボールはゴール前にいた黒牙の元に。

「闇の力よ今ここに!!」

「全てを凍てつかせろ!!」

「「『シャドウ・イン・アイス!!』」」

黒牙と誠也がツインシュート。そのシュートは氷と闇を纏い、轟音を響かせながらゴールへと向かっていく。あまりの勢いに地面をも削り取っていく。

「『炎竜の豪炎!!』」

ハルも必殺技で対抗するもあっさりと吹き飛ばされる。

 

1-1

 

同点に追い付くと同時に鳴り響く前半終了のホイッスル。その様子を憲三が観客席で見ていた。

「・・友紀・・やはり、お前は司令塔には向いていないな・・」

憲三が胸のペンダントの中にある一枚の写真を見る。そこに写っていたのは友紀に似た一人の女性。

「・・お前と同じだな・・夕花・・」




王帝月ノ宮以来まともに試合を書いた気がする・・


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第16話氷上の妖精



実は竜王山のメンバー(募集キャラの龍を除く)と憲三さんには共通の元ネタがあります。皆わかるかな?←おい


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今から九年ほど前

「ねぇママ・・家にスケートリンクがあるのに何でここに来たの?」

友紀は母親である夕花に連れられ隣町にあるスケートリンクに来ていた。

「・・ここは家のスケートリンクと違って人が多いからね上手く人をかわしながら滑ってごらん」

母に言われて人混みの中に入って行く友紀。

「ママ~」

友紀が傷だらけで泣きながら戻ってきたのは一分も立たないうちの事だった。

 

ベッドで眠る友紀の頭を優しく撫でる夕花。昼間何度も友紀を励まし人混みの中に入れたが全て泣きながら戻ってきた。友紀が母のようなフィギュアスケーターになりたいと言ったのは2ヶ月程前、自宅で滑っている夕花を見た時だった。その時、夕花が初めてまともに滑るのに二時間ほどかかったのだが友紀は五分で当時の夕花以上に滑ったのを見て少し落ち込んだのはまだ記憶に新しい。

「寝たのか?」

部屋の入り口には憲三がいた。相変わらず変なポーズを取っているがそれも愛嬌なのだろう。

「うん・・本当に友紀はすごいよ・・きっとボクの叶わなかった夢に手が届くかも・・」

ーーいつか世界に羽ばたく。氷上の妖精と呼ばれ、いくつもの大会で優勝してきた夕花が唯一敵わなかったのが世界。世界大会で優勝することを目標に特訓していたがやがて憲三と結婚し友紀を妊娠。気づけば夢からどんどんと遠ざかっていた。

でも娘ならーー。夕花以上の才能を持っているかもしれない友紀。だからこそ自身の変わりに友紀を、その思いでずっと友紀に指導をしてきた。

 

その日は雨が降っていた。会社でその電話を受けた憲三はすぐに病院へと向かった。病院に着いた憲三は看護婦に案内され奥の治療室に向かう。ベッドの上には夕花が寝ておりその横では友紀が泣いていた。

「・・飲酒運転による轢き逃げです・・奥様は娘さんを守ろうとして・・」

夕花は死亡、友紀も右腕を骨折している。突然すぎる死。

 

それから何をしていたのかは分からない。気が付けば葬式を終え部屋で仕事をしていた。日付からしてあの日から一週間は経っている。

「パパ・・」

「どうした?友紀・・」

「わた・・ボク・・サッカーをやりたいんだ・・」

 

ハーフタイム

「黒牙!!誠也!!」

フィールドで倒れた二人を連れてくる皆。どうやら先程の技はかなりの体力を使うようだ。

「・・後半は三人も交代・・」

「二人よ」

交代の話をしていると優菜話しかけてくる。

「私だってスタミナ切れで途中交代なんてもう嫌なのよ」

練習外でスタミナをつけていた優菜。前半をフルで戦った状態でも後半も戦えるだけのスタミナがまだ残っているようだ。

黒牙と誠也を交代させそれぞれのポジションに着く雷門。

 

FW 友紀 天宮

MF 優菜 白浪 切那

DF 大山 豪炎寺 アリス 古島 三日月

GK 円堂

「・・友紀・・気付いていないのか・・」

 

竜王山のボールで後半戦が始まる。すぐに友紀がボールを奪い攻め上がる。

「切那!!白浪!!」

優菜が二人に指示を出す出して友紀に続く。今の友紀はいつもと比べるとちゃんとしたプレイが出来ていない。だからこそ何とかして援護しなければならない。攻め上がる友紀に相手のMFが立ちはだかる。友紀はすぐに天宮にパスを出し突破。すぐにシュート体制に入る。

「『バウンドフレイム!!』」

「おぉ!!『炎竜の捕食!!』」

天宮が打ったシュートをハルは食べた。いやボールの回りの炎だけを吸収したのだ。

「食ったら力が沸いてきた!!」

炎が無くなり失速したボールをなんなく止めるとそのままゴール前にばす。そのパスはカットしようとした雷門の選手を吹き飛ばし龍のもとに。

「楽しかったよ雷門の皆・・でもこれで終わりだ・・『ドラゴンスクリュー!!』」

龍がボールを浮かして回転させるとそれにあわせ青と緑のドラゴンが現れるボールの回りを回りながら共にゴールへと向かっていく。

「『ファイアトルネード!!』」

豪炎寺がブロックするも止めることは出来ず弾かれる。だがコースをずらすことには、成功しシュートはゴールポストに直撃し再び龍の元に。

「『ドラゴンクラッシュ!!』」

再びシュートを打つ龍。

「『ゴッドハンド!!』」

今度はそのシュートをゴッドハンドで止める円堂。止めたボールを豪炎寺にパス。豪炎寺も相手を二人抜くと優菜にパスをだす。

「『アグレッシブビート!!』」

優菜が必殺技で相手をかわし友紀にパス。上がっていくも相手のスライディングでボールを奪われる。奪った相手はすぐにキーパーにパス。

「必殺タクティクス!!『超竜大砲!!』」

再び皆がダイレクトパスを繋ぎゴールへ。

「『ゴッドハンド!!』」

止めようと試みるもやはりゴールを割られてしまう。

 

1-2

 

再びの失点。ゴールからボールを拾った円堂が豪炎寺に渡した瞬間、豪炎寺が友紀目掛けて思いっきりシュート。突然の事態に対応出来ず弾き飛ばされる友紀。

「友紀!!試合に集中しろ!!お前が悩んでいるのはわかる・・だが周りを見ろ!!」

豪炎寺に言われ周りを見る友紀。そして気付く。皆が友紀を心配した表情で見ている。豪炎寺のボールで弾き飛ばされたからではない。友紀の今までのプレイを心配していたのだ。

(・・そうか・何を考えていたんだろう・・)

サッカー部をやめたくない思いが先走り皆を見ることを忘れていた。もしサッカー部をやめたとしても今までと同じ父に反抗し続ければいいだけの事。

「選手交代!!三日月スタミナもう無いよね?」

恐らく前半の必殺技でスタミナを使いきっていたのだろう。三日月と交代したのは大那。ポジションの変更はなく再び雷門のボールで試合が再開する。天宮からパスを受けた友紀は何故か動かない。竜達が一気に友紀に近付く。竜がスライディングで奪おうとした瞬間。友紀がジャンプ、それと同時に一気に上がっていく。

「止めろ!!」

龍の指示を受け皆が止めにいく。それに対して友紀はフィールドを凍らせると竜王山の選手をトリプルアクセルやイナバウアーなどフィギュアスケートの技で次々と抜いていく。

 

その様子を見ていた憲三が驚く。今の友紀はまるで『氷上の妖精』夕花ような動きをしている。

(・・そうか・・お前は・・)

友紀がサッカーをすることに反対する理由。それの一つが夕花だ。夕花の夢をいつかは友紀に叶えて貰いたい。その思いが強く残っていた。だが今の友紀を見れば分かる。夕花は友紀の中にいる。

(そうか・・前に進んでいないのは・・私だけだったのか・・)

 

 

次々と相手を抜き友紀がシュート体制に入る。

「『エターナルブリザード!!』」

友紀が打ったシュートはゴールではなく真下に、そこに走り込んで来た天宮がシュートを打ち込む。そのシュートにハルは反応出来ずボールはゴールネットを揺らす。

 

2-2

 

同点に追い付く雷門。それに残りの時間は僅か。次に点をとった方が勝つ。

竜王山のボールで再開する試合。龍はすぐにキーパーにボールをパス。

「必殺タクティクス!!『超竜大砲!!』」

再びダイレクトパスを繋いで行く竜王山。五人目から六人目に渡る瞬間、友紀がカットに入る。しかし連続で繋がれたボールはかなりの威力を持っておりなかなか蹴り返せない。

「友紀!!」

「友紀さん!!」

優菜と切那が助けに入る。流石に三人の力が加わったボールは竜王山のゴールへ。

「『炎竜の豪炎!!』」

ハルが止めようとするも超竜大砲の威力を跳ね返されたボールを止めれずゴールを割られてしまう。

 

3-2

 

それと同時にホイッスルが鳴り響く。予選Aブロック最終戦は雷門の勝利だ。

「おめでとう・・俺のシュートをことごとく防いだのは君たちだけだ・・」

「そっちこそかなり凄いシュートだったぜ!!」

互いに握手をかわす円堂と竜。

「・・・友紀」

その近くでは友紀に憲三が話しかけていた。

「パパ・・」

「・・どうやら夕花・・お前の母はお前の中で生きているようだな・・これからは好きにしろ・・・ただし!!必ず世界に羽ばたたけ!!」

そう言ってその場を後にする憲三。その背中を見て笑う友紀。

「ありがとう・・パパ・・皆!!サッカーやろうよ!!」

皆の所へ走って行く友紀。

 

 

その様子を見る紫の髪をした一人の女性。

「・・急いがないと・・あの子達が動き出す前に・・」

ゆっくりとその場を後にするその女性。壮絶な試合に誰もが見入っていたためかその女性がいたことに、ましてやその女性が突然現れた事に気付く者は誰一人としていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に日付も変わった頃、竜王山のフィールドに一人の青年がいた。その青年は空中を叩くような動作をしている。

「・・やっぱりここに来ているみたいだぜ」

『』

「必要ねぇよあの人は必ず俺が連れ戻す・・だからそこで待ってろよ・・姉貴」





書いてない裏設定設定ですが・・

舞崎家の一人称
夕花→ボク
友紀→私(夕花生存時)→ボク(夕花死亡後)
憲三→私

両親の年齢
夕花→享年29才
憲三→33才(友花死亡時)

誕生日
友紀→5月23日
憲三→7月7日
夕花→12月23日



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第17話帝国のスパイ


今回かなり短いです。


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竜王山との試合の次の日。

友紀達は予選決勝の帝国戦に向けイナビカリ修練所で特訓をしていた。竜王山の試合で勝ち取った勝利、それが皆のモチベーションを大きく上げていた。

「黒牙!!誠也!!あの技は絶対に使っちゃダメだよ! !」

「・・でもさこれがなきゃ雷門は負けてただろ?」

「誠也さん・・多分豪炎寺先生のシュート療法のほうが効果あったかと・・」

竜王山の試合で使ったシャドウ・イン・アイスの事で友紀から説教を受ける黒牙と誠也。たった一発打っただけでスタミナの切れる必殺技はかなり燃費が悪い。そんな技は帝国に通用しない可能性が高い。最も何人かの選手にはとっておきがあるのだが・・

「・・舞崎さん・・皆のデータをまとめて見たんだけど・・」

木野や音無から渡されたデータを見る友紀。どの選手のデータを見ても必殺技が出るような様子はない。

「・・ねぇこれってまとめたの二人?」

「?まとめたのは私達ですけど取ったのは冬海先生ですが・・」

「・・やっぱりおかしい!!」

友紀が見せたのは水瀬のデータ。そこには必殺技の欄に『バブルホップ』と書かれている。それだけではない、切那には、『ラウンドスパーク』、黒牙には『シャドウストライク』。他の選手も含めどの技も友紀がチームメイトにも隠すように指示をしていた技が書かれている。

「・・・全部冬海先生が知ることの出来ない必殺技だよ!!」

全て竜王山戦直前、イナビカリ修練所の中で見せてもらった帝国への隠し玉ばかり。それを知るには監視カメラもなく、練習中は余程の事がない限り開かない修練所内にカメラを仕掛ける必要が・・

「まさか!!」

何かに気づいた友紀が木野の持つペンを地面に叩きつける。叩きつけられたペンは二つに折れ、中からは明らかにおかしい物が出てくる。

ーースパイカメラだ。

「皆!!練習を中断!!黒牙、誠也、切那、優菜は冬海先生を探して!!他の皆は修練所の中からカメラを探して!!」

 

友紀が指示を出してから三十分。修練所の中から百を越える隠しカメラが見つかった。ベンチの板やフィールドの石、特訓装置のネジなど分かりにくい所に至るところに隠されていた。

「これ全部冬海先生が・・」

「このカメラを使わないと分からない情報を持っているからね・・お、」

友紀のスマホに電話がかかってくる。誠也からだ。

『友紀!!冬海のやつを見つけた!!』

 

誠也から連絡を受けた友紀達は雷門のガレージに来ていた。

「おや?皆さんどうしました?」

ガレージに止めてある大きなバス、その近くにはいくつもの工具が転がっている。

「冬海先生・・実はボク達の大切なもの盗まれていたんだ!!」

「え!?それは大変ですよ?!これじゃ帝国戦への隠し玉が・・」

どうしても自分が犯人じゃないとしらをきる冬海。

「ねぇ・・何で盗まれていたのが帝国に向けての隠し玉だって知ってるの?」

「?それは・・普通に盗まれるとしたらそれしか考えられないでしょ?」

「・・先生・・・ボクは何も隠し玉を盗まれたなんて言ってませんよ」

「?!」

友紀のその言葉に冬海も気付く。友紀は大切なものを盗まれたと言った。普通大切なものと言えば財布や思い出の品等が最初に思い浮かぶはず、しかし冬海はそんなものより帝国への隠し玉が盗まれたと言った。それはつまり・・

「冬海先生・・何で盗まれたのが隠し玉って知ってるんですか?」

「・・それは・・私が盗んだからですよ!!」

「やっぱりそうだったのね・・」

冬海が認めると同時に夏未がガレージに入ってくる。

「・・冬海先生、実は雷門のメンバーを入れ替えてからあなたの行動を監視していました・・そしたらこんな写真が手に入りました」

夏未が冬海に見せた写真には帝国の生徒と話す冬海が写っていた。

「冬海先生・・あなたは本当は帝国のスパイなのではありませんか?」

「・・ええそうですよ!!影山総帥は私に帝国のポストを与えてくれる変わりに雷門の情報を渡すようにいったんですよ!!」

帝国は四十年無敗のサッカー以外にもかなり優秀な進学校としても知られる。生徒も含めそこに赴任できる教師もごく限られた者ばかり。

「・・冬海先生・・あなたを本日をもって雷門教師を解任します!!これは理事長の言葉と思っていただいてもよろしくて」

夏未によって教師を解任されるも冬海はただ高々に笑う。

「・・残念ですが私がいなくなって困るのはあなた達ですよ」

まるで捨て台詞のようにその言葉を吐きガレージを後にする冬海。

 

その後冬海がいじっていたバスを確認するとブレーキに細工がされていた。恐らく帝国に向かう途中で事故を起こさせる算段立ったのだろう。最も冬海がいじっていたバスは次の日にラグビー部が使用する予定だったのだが・・・

「・・にしても冬海がスパイだったなんてな・・」

「まぁ基本的になにもしてなかったけどね・・」

よく考えてみれば殆どなにもしてない冬海。いてもいなくても問題がないと皆で話す。そこに友紀が暗い顔をして戻ってくる。

「・・皆・・大変な事になっちゃった!!」

友紀が見せた一枚の紙。大会規定のコピーでそこには・・

『各チーム、監督のいない場合試合をすることは認められず失格処分とする』

雷門最大のピンチを迎えた瞬間だった。





冬海先生って無能なのか有能なのか・・書いてて分からなくなった・・


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第18話監督を探せ!!


すみません今回も短いです・・


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冬海を解任した次の日

「・・で、どうするんだ?」

部室では皆がこれからの事について話していた。このまま帝国戦までに監督が見つからなければ雷門は失格処分となる。

「・・とりあえず友紀とキャプテンが町に出て監督になってくれそうな人を探してるけども・・・」

サッカーバカと要領の悪い人。皆がかなり不安になりながらも結果を待つしかなかった。

 

河川敷

「・・探すっていってもねぇ・・」

監督になってくれそうな人を探す友紀は河川敷に来ていた。二人で別々に探した方が効率がいいと考えて円堂とは別行動を取っている。

「稲妻KFCの監督は忙しそうだし・・だからと言ってパパや皆に頼むのもあれだし・・」

情報。友紀の長所は、ある情報から最善の手を導きだす所にある。メンバー集めの際も『雷門のサッカー部が弱い』という情報があったため、『学校外のチームでサッカーをしている』『待ち時間を潰す』という可能性を導きだし『商店街の中で練習開始まで待つ』という結論にたどり着いた。だが裏を返せば情報が少なければ最善の手を見つけられないと言うこと。

「・・あ、嬢ちゃん久し振りじゃねぇか」

声のした方を見ると雷雷亭の店主が自転車に乗っていた。恐らく出前の帰りだろう。

「ほらこれ忘れもんだ」

店主から渡されたのは何枚かのお札。

「前に来たとき忘れてたおつりだ」

「あ、ありがとうございます」

「何か悩んでいるのか?」

店主に現状の雷門の事を告げる。なぜだかは分からないがこの店主には全て話せる。そう思う友紀。

「・・成る程なぁ・・そう言えば何か妙なやつを見たって噂を聞いたな・・何でも世界を旅してる監督らしいが・・っておい!!」

監督という言葉に反応し飛び出す友紀。

「全く・・うん?」

店主が何かに気付く。

ーー友紀の落とし物だ。ロケットペンダントのようだがチェーンが切れた様子はない。恐らくポケットから落ちたのだろう。

「・・これは?!」

その中にある写真を見た瞬間、店主が驚く。そこに写っているのは友紀に似た女性ーー夕花と妙なポーズをとる男性ーー憲三。そして円堂に似た男性。

「・・何で・・大介さんが・・」

 

 

日も完全に暮れた頃、友紀は一人で鉄塔に来ていた。店主に監督がいるらしいと聞いた友紀は、町中を探し続けたが結局見付からず鉄塔の上に上っていた。鉄塔から町を見れば少しは何か思い付くと考えたが何も思い浮かばない。

「ここからの景色は本当にいいよね・・」

「そうだね・・ってうわ?!」

自分しかいないと思っていた友紀に、突然誰かが声をかける。短い赤い髪の女性。見た目に20代前半に見える。

「ごめんね驚かせにゃって・・ちゃって」

思いっきり噛むその女性。

「・・君監督を探しているんだよね・・私は鶴崎友菜(つるさきともね)、日本中を旅してるりゅんだ・・るんだ」

もしかしたら店主が言っていた人はこの人かも知れない。

「・・よかったら私が監督を引き受けてもいいけどひとちゅ・・一つ勝負しない?」

 

鉄塔の下にある広場。そこで互いに向き合う友紀と友菜。ルールは友菜の蹴るボールを三本全て友紀が止めるというものだ。

「いい?どんな方法をちゅか・・使っても止めれたら良いからね・・行くよ!!」

友菜が思いっきり蹴る。かなり回転をかけており、ものすごく曲がるが友紀もそれを完全によみ蹴り返す。

「一本目!!止めたよ!!」

「お、しゃす・・流石だね・・ならさ、これならどう?」

友菜がボールを高く蹴りあげる。それと同時にどんどんと冷気がボールに貯まっていく。

「全てを凍てつかせろ・・『エターナルブリザード!!』」

友紀のエターナルブリザードとは違いオーバーヘッドで蹴る友菜。それを真正面から蹴り返す。多少押し込まれるも何とか止めることには成功する。

「・・凄い・・」

「しゃす・・流石だね・・じゃあ三本目行くよ!!」

友菜がボールを蹴りあげると先程とは比べ物にはならない冷気が甲高い音をたてながらボールを包み始める。

「『・・・・』」

必殺技の名前さえも冷気の音で全く聞こえない。友菜がボールを蹴るとゆっくりと友紀に向かって行く。構える友紀だがそのボールは友紀のもとまでは届かず地面に落ち爆発する。

「・・えっと・・」

「やっぱり・・失敗しきゃった・・しちゃったか・・」

不発に終わった必殺技で凍りついた鉄塔広場。それを見るだけでどれだけの威力の必殺技だったかが分かる。

「・・そう言えば勝負!!」

あまり威力に呆気にとられていたが、そもそもこの勝負は友菜に雷門の監督を引き受けてもらうためのものだ。

「・・リューリュ・・ルールは『どんな手を使ってもボールを止める』だからあなたの勝ちよ。引き受けてあげるわ・・雷門の監督を」

 

帝国学園

雷門との試合の前日。既に部活は終わっており、皆帰っているにも関わらず鬼道は一人グラウンドにいた。ある人から妙な話を聞いた鬼道は、次の雷門で似たような事が起きると考えていた。雷門とは真剣にぶつかり合いたい。そう考えるからこそグラウンドを調べる鬼道。しかし何も異変はない。

 

ーーそして結局何も見付からないまま決戦当日を迎えた。





★月■日

今日は沖縄に来た。久し振りだしサーフィンでもして楽しんでたらあの子が話し掛けてきた。本当にノリがいい子だ。


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第十九話帝国に来た!!


今回も短い上に殆ど鬼道さん視点です。



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帝国との決戦当日

決戦の舞台となる帝国学園フィールドで雷門の皆がそれぞれアップや作戦、フォーメーションなどの最終確認をしていた。ここで勝てば全国。その思いが皆の士気を高めている。

 

その様子を端から眺める鬼道。雷門との試合開始まで後僅か、それまでにあるものを見つけなければならなかった。切っ掛けは王帝月ノ宮と雷門との試合。優勝候補となる相手のデータをとるために試合の録画を見たとき友紀の姿を見た。一年ほど前可憐花のとエキシビションマッチで手加減していたとはいえ、隙をつかれ一点を取られた。その時司令塔を勤めていたのが友紀だった。しかしなぜかその友紀が雷門にいた。ただ転校しただけに見えるが何かを感じた鬼道は友紀や可憐花について調べた。その結果、『友紀が暴力事件を起こしフットボールフロンティアへの参加資格を剥奪されかけた』事を知った。普通ならそれで終わるがその情報は『何者かによって隠蔽された』可能性があった。隠蔽した人物で最初に思い付いたのは憲三。彼なら娘の為にやりそうだが、当時は娘がサッカーを出来なくなることに大賛成だろう。なら誰がーーそれに悩んでいる時、雷門に帝国のスパイが潜入したことを聞きもしやと考えた。杞憂であればいいと考えながらもロッカールームやフィールドを調べた鬼道。特になにも無かったがどういうわけか胸騒ぎを感じてもう一度調べ直している。

「鬼道さん!!何してるんですか?もうすぐミーティングですよ」

鬼道のところに内宮が来る。まもなく帝国側のミーティングが始まるため呼びに来たみたいだ。

「・・もしかして例の罠ですか?これだけ探しても見付からないんですからないんじゃないんですか?」

内宮の言うとおりこれだけ探しても見付からないならないと考えるのが普通だが・・。

「もしかして!!」

何かに気づいた鬼道は内宮が止めるのも聞かず何処かへと走っていく。向かった先は帝国フィールドを動かす仕掛けを動かす機械室。フィールドにないのならここに何か仕掛けているかもしれない。勘ではあるが調べ始める鬼道。しかし何も仕掛けらしきものは出てこない。

「ここでもないのか・・」

もうすぐ試合開始。 このままだと大変な事になる。

「いったい何処に・・・」

もう一度辺りを見渡す鬼道。帝国学園で調べていない場所はもうない。・・いやたった一ヶ所あるではないか。

「まさか!!」

 

歓声が鳴り響く帝国グラウンド。いよいよ予選決勝が始まろうとしていた。憲三や野坂に龍、染岡さん達。皆がこの一戦に注目している。

「凄い人だね・・」

「相手は最強王者の帝国・・いよいよ下剋上が始まるんですからね!!」

雷門のメンバーも控え室で歓声の大きさから観客の多さを感じ取っていた。

「みんにゃ・・皆集合!!」

友菜が皆を呼び集める。

「こりぇ・・これから戦うのは四十年無敗の帝国学園!!かなりの強敵だけど今までの特訓を思い出せば必ずかてりゅ!!勝って絶対に・・全国に行こう!!」

気合いを入れる雷門のメンバー達。試合開始の時間が来てフィールドに集まり並ぶ雷門と帝国。

「今日はいい試合しようぜ!!」

「円堂・・」

握手する円堂と鬼道だが真剣な顔で円堂に何かを伝える鬼道。その言葉に驚くも鬼道はそれを無視してポジションに付く。

 

FW 豪炎寺 黒牙

MF 優菜 切那 友紀 誠也

DF 三日月 古島 大山 大那

GK 円堂

 

これが帝国戦でのスタメンだ。ベンチの皆もいつでも出れるように準備を整えている。

 

準備が整い雷門のボールで試合が始まる。キックオフの笛がなった瞬間、突然轟音が鳴り響き天井から鉄骨が降ってくる。

ーーその真下には雷門の選手。その悲惨な光景に誰もが目を覆う。フィールドには鉄骨が突き刺さりきっと無事では済まされない。

「・・ここまで・・するのかよ・・この時代の総帥は・・」

帝国の皆もその光景に驚きの表情を浮かべる。ゆっくりと晴れていく土煙。その中から現れたのは無傷の雷門の選手。

「・・鬼道の言ってたことはこういう事だったのか・・」

あの時鬼道から『試合が始まったらすぐに自陣のDFラインまで下がれ』と言われていた円堂。実際に鉄骨が刺さっているのはセンターライン周辺。鬼道の言うとおりにしていて正解だった。

 

「・・バカな?!」

帝国学園の総帥である影山は、無傷の雷門の選手を見て驚愕していた。この鉄骨によって雷門は重症を負い試合できなくなる。それがどういう訳か全くの無傷だ。

「影山・・お前に逮捕状が出ている!!」

総帥室に入ってきたのは鬼瓦を含めた数人の警察。

「・・帝国の四十年無敗の記録はお前が裏で他の優勝候補を潰していたからだったんだな・・」

脅迫、隠蔽、不正。悪事の限りを尽くして帝国を勝たせて来た影山。だがその悪事が何処から警察に漏れたようだ。逮捕され連行される影山。影山は最後までその不敵な笑みを浮かべたままだった。

 

鉄骨が突き刺さったフィールドを新しいものへと交換し再びポジションに付く両チーム。

「円堂!!俺達帝国は全力で雷門と戦う!!王者の壁・・簡単に破れると思うなよ!!」

「望むところだ!!鬼道!!この試合俺達は勝って絶対に全国に行く!!」

互いに高まる二つのチーム。

 

試合開始の笛と同時に遂に決戦の幕が上がったーー





雷門の監督の『友菜』や語り部の『由岐』、ラスボスの指揮官『フレーズ』、この三人は実はかなりちゃんと設定を練って作ったキャラです。今の時点ではまだ掘り下げていませんが多分皆『お前頭おかしいんじゃね?』ってなりますよ。


・・今の時点で気づいている人いるのかな?


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第20話決戦!!帝国学園!!前編


試合が始まってもまだ短い件について・・


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試合開始と共に一気に攻め上がる雷門。その前に立ちはだかる帝国のDF『五条』。

「『キラースライド!!』」

必殺技で奪いに来るもギリギリでパスを出す豪炎寺。そのパスを受け取った黒牙がそのままシュート体勢に入る。

「漆黒の闇を受けろ!!『ダークトルネード!!』」

「『パワーシールド!!』」

黒牙のシュートを止める源王。止めた源田はそのまま内宮にパス。その内宮も受けとるとすぐに鬼道にパスを出す。

「・・行かせない!!優菜!!」

「OK!!切那!!」

「「『ザ・パルス!!』」」

切那と優菜が互いに両足の裏を合わせて蹴る。切那に蹴られた事で雷の力を纏った優菜がアグレッシブビートの要領でボールを奪う。

「友紀!!」

「『氷上の妖精!!』」

パスを受けた友紀は迫ってくる土門を必殺技でかわすと豪炎寺にパス。必殺技ではなく普通のシュートを放つもすぐに反応され止められる。

「成る程・・シュートを何度も打って劣勢だと思わせる作戦か・・だがまだ甘い!!」

源田は雷門ゴール前にロングパス。それを受けた寺門がシュートを放つ。

「『百列ショット!!』」

これでもかというくらいボールを蹴る寺門。

「百列には・・百列!!『爆裂パンチ!!』」

今度は円堂が何度もボールを殴り止める。弾かれたボールは大山のもとに、受けた大山は誠也にパス。誠也も攻めてくる相手をかわし上がっていく。

「行かせるかよ!!『キラースライド!!』」

土門によってボールが奪われる。そのボールは再び鬼道のもとに。

「『イリュージョンボール!!』」

必殺技で古島をかわし上に蹴りあげる。それを佐久間が下に蹴り再び鬼道がシュートする。

「「『ツインブースト!!』」」

「行かせないっす!!『ザ・ウォール!!』」

壁を作り止める大那。弾いたボールを再び鬼道のもとに。鬼道が口笛を吹くと数匹のペンギンが現れる。鬼道がボールを蹴るとそれに続いてペンギンが飛び上がる。

「『皇帝ペンギン』」

「「『2号!!』」」

そのボールを佐久間と寺門がツインシュート。

「『ゴッドハンド!!』」

ゴッドハンドで受け止めようとする円堂だがペンギンの勢いは止まらない。ペンギンによってゴッドハンドは砕かれボールはゴールへ・・

「いかせるか!!」

しかしそれにすぐに反応した円堂が必死に手を伸ばしゴールを死守する。円堂は体勢を立て直すと古島にパス。奪いに来た寺門をかわし三日月にパス。ドリブルで上がり相手が近づく前に優菜にパス。

「『アグレッシブビート!!』」

すぐに近付いてきた相手を必殺技でかわす。

「・・全く全部託すわよ!!『Δストライク!!』」

かなりの距離があるにも関わらずシュート。もちろんその威力はゴール直前でかなり弱まる。

「源田!!」

弱まったボールを止めたのは黒牙だ。

「漆黒の闇を受けろ!!『ダークトルネード!!』」

再びダークトルネードを放つ黒牙。

「『パワーシールド!!』」

先程と同じ様に必殺技で止めようとする源田。しかしそのボールを豪炎寺がさらに蹴り混んでくる。

「パワーシールドは衝撃波の壁・・その弱点は薄さだ!!『ファイアトルネード!!』」

薄い衝撃波の壁をシュートを押し込むことで破ろうとする豪炎寺。その目論みどうりパワーシールドは壊れゴールにボールが入る。

「決めさせない!!」

たがそれを内宮が止める。

(・・先から何なんだこの違和感・・)

試合の中鬼道は、雷門が情報にあった必殺技を使わない事に違和感を感じていた。帝国に隠しだまが露見しているのは既に知っているはず、だがどういう訳か使わない。

(・・・何を企んでいる!!)

警戒をしながらもボールを受け取り攻め上がる鬼道。その鬼道が手を上げると同時に帝国のフォーメーションが変わっていく。鬼道、寺門、佐久間を除く皆が雷門の選手にぴったりと張り付く。それにより皆ゴールに近付けず円堂と1対3。

「・・・これで邪魔は入らない!!」

「させるかぁぁ!!」

人数のためか、マークされなかった豪炎寺がゴール前まで戻り、鬼道がシュート使用としたボールをスライディングで止めようとする。ボールを弾くことには成功するもそれを拾ったのは佐久間。そして再び鬼道のもとに。

「『皇帝ペンギン!!』」

「「『2号!!』」」

先程ギリギリで止めたペンギンがゴールに迫る。

「行かせない!!」

その前にマークを無理矢理突破してきた友紀が立ちはだかり、ヘディングでシュートを止めようとする。だが強すぎる威力に弾き飛ばされる。それのためかボールは軌道を変えゴールポストに直撃し円堂の手に収まる。それと同時に前半終了の笛が鳴り響く。互角の戦い。互いに点を決めるチャンスはあったが相手が執念によって決めさせない。前半を見ただけで誰もが悟る。

ーーこの試合先に点を決めた方が勝つ

「鬼道!!」

シュートを打った後、足を押さえて鬼道は動かないでいた。見ると足が赤く腫れていた。

「大丈夫か・・」

「ああ・・俺よりもあっちを・・」

「友紀!!」

鬼道が指を指した方には雷門のメンバーが集まり始めていた。よく見るとその中心には友紀が倒れていたのだか、どういう訳か全く動かない。事態に気づいた救急隊員が走ってきて友紀をタンカーにのせ様子を確認する。

「・・脳震盪ですね・・恐らく受け身に失敗して頭をうったのでしょう」

受け身が取れない程かなりギリギリだったのだろう。

「・・念のために病院で検査を・・」

 

 

激闘の帝国戦。最強王者と互角に戦えている事が私達がどれだけ強くなったかを実感させてくれた。

 

でもこの時誰も気づいていなかった。この試合の裏で大きな事態が動き出そうとしていたことを・・

 

 

 

 

 

 

「・・こんな所にいやがったぜ・・あの人」

『』

 

 

 





かつてこの地に妖魔ありけり

一人の青年妖魔打ち倒しけるもその体呪われ命僅かとなりけり

一人の聖者青年の為祈ると光輝く結晶現れ青年の呪い浄化せん



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第21話決戦!!帝国学園!!後編


遂にフットボールフロンティア予選決着です。

後書きのあれは一回やってみたかったんだ・・。


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ハーフタイム

頭を打ち、気を失った友紀をタンカーにのせて救急隊員がフィールドを後にしていく。

「・・友紀・・」

突然の事態に皆の士気が大きく下がる。このままだと後半は押し負けてしまう可能性がある。

「・・後半は選手を交代、それと・・α-1を発動します」

友菜が全く噛まずにたんたんと告げる。

「・・おいそれは友紀がいないと無理だろ!!あんた一体何を考えているんだ?!」

「・・それは私の言葉です!!あなた達は彼女がいないと何もできないのですか?」

その言葉に皆がハッとする。確かに今までの試合、友紀の力があったからかもしれない。だが最後に道を切り開いたのは皆の力。その事に気付き皆の目に意志が戻り始める。

「・・そうだ・・何を考えていたんだ・・」

「・・まるであの時と同じだな」

綺羅星戦での事を思い出す皆。あの時も友紀は試合に出られなかった。

「・・これもさだめか・・ならば乗り越えないとな!!」

もう一度気合いを入れ直す皆。

 

FW 豪炎寺 黒牙 天宮

MF 水瀬 白浪 誠也

DF アリス 大山 古島 大那

GK 円堂

 

大きくメンバーを変えた雷門。それに対して帝国は鬼道をベンチに下げ手当てをしている。どうやら前半のプレーで足を痛めたようだ。

笛がなり、帝国ボールで後半が開始。鬼道がいないにも関わらず完璧な連携で攻めてくる帝国。あっという間にゴール前につくと佐久間がボールを繰り上げそれに寺門と辺見が続く。

「「「『デスゾーン!!』」」」

帝国のシュートがゴールに向かって行く。

「行くぞ大那!!」

「はいっす!!」

「「『プレス・ザ・ウォール!!』」」

大那のザ・ウォールを大山がタックルで動かしシュートにぶつける。その勢いでシュートは止まりボールは大那の元に。

「白浪先輩!!」

「おう!!」

ボールを受けた白浪は迫ってきた相手をかわしながらボールを、何もないところへ蹴り出す。そのボールが地面につくと前に走っていた白浪の元に。そのボールを受け止めるとそのまま天宮にパス。相手のDFが、止めに来るも豪炎寺にパスしてかわし再び天宮の元に。

「『バウンドフレイム!!』」

「『パワーシールド!!』」

バウンドフレイムでゴールを狙うも範囲で守るパワーシールドにあっさりと止められる。

(・・分析終了・・始めるわよ・・)

友菜が右手を上げた後まっすぐ横に伸ばす。

(来た!!)

(合図!!)

そのサインに気づいた皆の顔付きが一気に変わる。

「・・何をしようとも無駄だ!!」

源田がボールを内宮にパス。内宮も前にパスするもそれを水瀬がカットし、すぐさま豪炎寺にパス。豪炎寺もパスを受けるとすぐにシュート。源田は簡単に弾くもそのボールは天宮の元に。再びシュートを放つも弾かれた今度は黒牙の元に。再びシュート。もう一度弾くもボールは雷門へ。

(こいつら・・)

前半帝国が雷門にしたフォーメーション。それをそのままやり返しただけ。だが恐ろしいのはそれを完璧に真似したということだ。雷門のデータを徹底的に調べ上げ誰が誰にマークすればいいかを編み出した帝国。それでも鬼道という司令塔が試合で見極めてやっと。だが雷門は司令塔のいない中それを簡単にやってのけた。

「・・・なめるな!!」

豪炎寺のシュートを正面から受けとめる源田。同じ戦術だからこそその弱点もわかっている。ボールをパスしたのはゴール前にいるマークされていない寺門。

「『百列ショット!!』」

「『爆裂パンチ!!』」

受け取ってすぐにシュートを打つも円堂に止められる。弾かれたボールを取ったのはアリス。すぐに上がっていく。相手のMFが止めに来るも水瀬にパスを出してかわす。

「『泡沫の舞!!』」

必殺技で相手をかわす水瀬。しかしすぐにDFによって弾かれボールはフィールドの外へ。それと同時に一人の選手がフィールドに入ってくる。鬼道だ。時間はかかったものの手当てを終えて試合に復帰するようだ。

「・・ここでか・・」

司令塔のいない雷門と司令塔のいる帝国。かなり厳しい戦いになる。だが試合時間も僅か。

ーー確実に一点を取る。

両チームにはその思いが強く残っていた。

 

雷門のスローインで再開する試合。そのボールを奪おうと激しくタックルを仕掛けてくる鬼道。パスを出してかわすもすぐに別の選手が奪いに来る。かなり激しいプレイにボールを奪われる雷門。それと同時に一気に攻めて上がってくる帝国。ゴール前でボールが回ったのは鬼道。

「『皇帝ペンギン!!』」

「「『2号!!』」」

「『ゴッドハンド!!』」

前半円堂がギリギリで弾いたシュート。ゴッドハンドで止めようとするも勢いに押され始める。

「・・俺達だって負けられないんだよ!!」

円堂が左手でゴッドハンドを作り右手のゴッドハンドと重ねる。それによってペンギンが弾き飛ばされボールは円堂の手の中に。

「・・止まった・・・」

シュートをちゃんとした形で止めた円堂。円堂はボールをアリスにパス。相手が奪いに来るもパスでかわしどんどんと上がっていく。だが帝国側も必死にぶつかってくる。意地と意地がぶつかりあう。激しい攻防の中帝国のゴール前で豪炎寺にボールが回る。その後ろからは大那が走り込んでくる。

「イナズマ落としか・・だがゴールは割らせんぞ!!『フルパワーシールド!!』」

源田が先程よりも強力なシールドを作りゴールを守る。それに対して大那と豪炎寺が飛び上がる。その背後から円堂が近づいて来て一緒に飛びあがる。

「「「『イナズマ1号落とし!!』」」」

大那を踏み台に飛び上がりシュートを放つ二人。そのシュートと源田の必殺技がぶつかり合う。シュートは衝撃波の壁を少しずつ押し込み打ち砕く。源田も必死に手を伸ばし止めようとするも届かない。

「させるかぁぁぁぁ!!」

鬼道がシュートを蹴り返そうとする。何とか弾き返すことには成功するも笛が鳴り響く。ゴールラインよりも後ろで弾き返していた鬼道。間に合わなかったのだ。

 

1-0

 

それと同時に鳴り響く試合終了の笛。それが鳴っても皆動けないでいた。時間がたつにつれて状況を飲み込め始める皆。

フットボールフロンティア関東予選決勝、雷門vs帝国。

絶対王者帝国を撃ち破り、雷門が全国大会への切符を手に入れた。





フットボールフロンティア全国大会遂に開幕ーー


「友紀・・誠也・・小学校以来だな!!」

「豪炎寺!!俺達はお前を倒すために強くなった!!」


ーー木戸川清修

「あの時・・帝国に俺達は敵わなかった・・でも今は違う!!」

「皆援護をたのむ。僕が点をとって見せるとも」

ーー学生連合

「・・相手はかなりの強敵だからね・・あれをやろう!!」

「綺麗な花にはトゲがある・・可憐花の底力見せて差し上げますわ!!」

ーー可憐花


「稲森!!見せてやろうぜ・・最強の田舎者の力を!!」

「見せてやる!!これが俺の『ファイアトルネード』だ!!」

ーー伊那国


サッカープレイヤー達の激闘が今始まるーー


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全国大会開幕!!渦巻く陰謀と衝撃の過去!!
第22話合宿しようぜ!!


今回も短い・・というか季節外れの水着回。
作中ではまだ5月中旬です。

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夕方、雷門病院

ベッドに座った状態で友紀は一人今日の試合の録画を見ていた。帝国戦前半終了間際、友紀は軽い脳震盪を起こし戦線を離脱、目を覚ましたときには試合雷門が勝利していた。

「・・あー!!もうなんでボクはこうなるの?!」

激しい試合を途中で離脱してしまった事を悔やむ友紀。海王や綺羅星の時といい酷い目に会う事の多い友紀。一体誰の仕業やら・・

「・・こうなったら!!」

何かを決意した友紀は病室を後にして・・

 

次の日

円堂達は何処かの島にいた。こうなったのは昨日の夜、突然友紀から『合宿しよう』と連絡を受け、指定された場所に向かうと船に乗せられ気が付くとここにいた。

「・・なぁ一つ聞きたいがここは何処だ?」

「島だな・・多分今建設中のサッカーアイランドだろ・・」

「・・合宿ってここでやるのか?」

突然の事態とはいえちゃっかりと水着に着替えている男性陣。海では黒牙や三日月、白浪が泳いでおり、砂浜では大那と円堂、大山に古島がサッカーボールを蹴って軽く運動をしている。

「にしてもあいつらはまだか?」

船酔いでダウンした友菜を連れていった友紀達女性陣。恐らく近くの宿泊施設で懐抱している為かなかなか戻ってこない。

「お待たせー」

「お、噂をすれば・・」

友紀達の声のする方を見ると水着姿の友紀達がいた。その姿に男子達は見とれて言葉を失う。

「舞崎先輩!!俊足の皇帝・・その力を見せて差し上げますよ!」

「あ、ちょ!!」

友紀の手を取り海に向かっていく黒牙。慌てている友紀だがお構い無し。

「お、おい!!友紀は・・」

泳げない。という誠也の言葉を最後まで聞かずに海に入る二人。案の定溺れ近くの影で懐抱される友紀。

「・・話が全く進まない・・」

 

友紀が皆をここに連れてきたのは全国大会に向けての特訓の為だ。予選では帝国と互角以上に戦い抜いたものの苦戦した試合の方が多い。だからこそ開会式までここで合宿をする事にしたのだが・・

「・・・相変わらず特訓の意味が分からないんだよなぁ・・」

黒牙と誠也は泳げない友紀の手伝い。古島達DF陣はビーチバレー、水瀬達MFは川でボート、豪炎寺と天宮は岩山でロッククライミング。最早意味が分からない。

「・・友紀・・全国大会の初戦の相手って分かるのか?」

「発表されるのは開会式の後、ボク達の試合は開幕試合だから・・」

ーー対策が出来ない。

全国大会のルールはスイスドロー三回戦。勝っても負けても三試合行った後、勝ち点の多い四チームが決勝トーナメントに進むと言うものだ。前回優勝校の帝国と関東代表の雷門は初戦で当たることは無いため強制的に開幕試合と最終試合に分けられる。いきなり開幕試合を引き当てたのが監督の友菜なのだが・・

「・・だからといって何も考えて無い訳じゃないだろ?」

「・・まぁね・・特訓の意味が分かればかなり違うからね・・」

 

その日の特訓を終え皆が寝静まった頃

天宮は一人で森の中に来ていた。帝国との試合、自分の必殺技が通用しなかった。確かに不規則なシュートは一点を守る技には有効だが範囲を守る技には弱い。全国で戦うにはもっと強力な必殺技を産み出さなければならない。そう考え個人練習のために森に来たのだが・・

「・・ここどこ・・」

昼間と違う森に完全に迷っていた。月明かりだけが辺りを照らしているがそれも森の木によって遮られ殆ど真っ暗。とりあえず広い場所を探して進んでみると洞窟が見つかる。取り敢えず素通りしようとするもよく見ると明かりが見える。恐る恐る進む天宮。洞窟のあかりは人工のものでかなり奥まで続いている。奥に進むに連れて少しずつ気温が下がっていくのを肌で感じる天宮。開けた場所に着くと地面には氷が張っておりその中心では誰かが滑っていた。

ーー友紀だ。

近くにあるラジカセから流れる音楽に合わせ滑っていた。『氷上の妖精』のように優雅に舞う友紀に見とれる天宮。

「あ、天宮!!どうしたの?」

音楽がなり終わると共に友紀が天宮に気づいて近づいて来る。

「友紀は何でここに・・」

「何となくスケートリンクの匂いが仕手ね・・う~寒々・・」

確かに氷の影響か冷える為か、かなり震える友紀。すぐに近くに置いていた毛布に身をくるむ。少し不安に感じながらもここに来た目的を話す天宮。

「・・なるほどね・・ならさ・・ちょっと特殊な特訓をしてみない?」

 

全国大会開会式

多くの観客が集まるフロンティアスタジアム。 円堂達も間もなく始まる入場行進に向けて整列している。

『さぁ、フットボールフロンティア全国大会!!いよいよ選手の入場が始まります!!最初に入ってきたのは千羽山!!予選では無失点で勝ち進んできました、全国大会でもその鉄壁の守りを見せてくれるのでしょうか!!』

実況の説明に合わせ各チームが入場していく。

「おい!!友紀はまだかよ!!」

「・・それが寝坊・・らしくて・・」

もうすぐ雷門の番なのだが友紀がまだ来ていない。先程家に電話するとどうやら寝坊らしい。

「・・あいつ遅刻癖は酷いが寝坊はしなかったはずなんだがなぁ・」

友紀が来てないがらもやむを得ず入場する雷門。その後に帝国、そして特別推薦枠として世宇子が入場してくるも世宇子は調整中の為開会式は欠場するらしい。

 

 

同時刻舞崎邸

「う~ん・・後四時間半~」

 

雷門の初戦開始まで後一時間の事だった。

 





次回悪魔が暴れます


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第二十三話フィールドの悪魔

書いててあれだけど・・

まだ友紀の二つ名決まってない!!

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全国大会第一試合

 

雷門vs伊那国

 

組み合わせが発表され準備を整える両チーム。

「連絡取れた・・後半からきゅる・・来るって!!」

開会式に来なかった友紀と連絡をとった友菜。それによると後半には絶対に間に合わせるとのことらしい。

「・・厳しいな・・友紀不在の上に相手の情報が一切無い・・」

相手は初参加のチーム。その上彼らの予選ブロックは行われず試合のデータは一切無い。

「・・取り敢えず友紀が来るまで俺達で情報を集める!!いくぞ!!」

 

雷門フォーメーション

FW 天宮 黒牙

MF 切那 優菜 誠也 水瀬

DF 三日月 大山 高壁 古島

GK 円堂

 

vs

 

伊那国フォーメーション

FW 剛陣 稲森 小僧丸

MF 奥入 道成 服部 氷浦

DF 日和 岩戸 万作

GK 灰崎

 

互いにポジションにつく両チーム。試合開始の笛と同時に雷門ボールでスタートする試合。

「おっと・・」

「これ以上は線をこえちまう」

一気に攻め上がる雷門と違いどういうわけか一定の距離しか動かない伊那国。あっという間にゴール前に来た雷門。

「闇の力を思い知るがいい!!『シャドウストライク!!』」

ボール軽く浮かし回し蹴りでシュートを放つ黒牙。ダークトルネードと比べて動きは単純だが威力はダークトルネード以上。そのボールはゴールに向かっていくが・・

「『ザ・ウォール!!』」

岩戸のザ・ウォールに阻まれる。岩戸から服部、そして氷浦へとパスが繋がる。

「『氷の矢!!』」

氷浦が前線へパス。それを受け取ったのは小僧丸だ。

「・・豪炎寺・・なぜあんたがベンチにいるのか分からないが・・そこで見ていろ!!これが俺の・・『ファイアトルネード!!』」

小僧丸が打ったファイアトルネードに皆が驚く。豪炎寺の必殺技を殆ど完璧にコピーしていた事に。

「『ゴッドハンド!!』」

威力こそ劣るものの確かにファイアトルネードだ。驚きながらも大山にパス。すぐにドリブルで上がるもやはり相手は一定の距離しか近づいてこない。

「こいつら一体なに考えてやがる・・」

疑問に感じながらも攻め上がる雷門。

「・・今度こそ・・闇の力を思い知れ!!『シャドウストライク!!』」

もう一度シュートを放つ黒牙。岩戸が止めに入るもそのボールは途中で上がり遥か上に・・

 

「・・シュートの威力の底上げ?」

合宿の時、天宮が友紀から言われたのはロッククライミングの本当の意味だった。不規則な崖から突き出た岩、少しの力をかけただけで壊れるものもあれば全体重をかけても壊れないものもある。

「・・それを見極められるようになればボールにどう力をかければ強いシュートが打てるようになるからね・・」

 

(・・あの技は・・まだ未完成・・でも!!)

「『バウンドフレイム!!』」

天宮が空中から思いっきりシュートを打つ。そのボールは名前と違い全く跳ねず一直線にゴールへと向かっていく。

 

1-0

 

止めようとした灰崎ごとボールはゴールに叩きこまれる。先制点を奪ったのにも関わらずあまり喜ばない雷門。それもそうだ、それぞれの選手が一定の距離しか攻めず守らない。点を入れれたのは実力というより運の方が高い。

(・・やっぱりあの子じゃないと分からないか・・)

伊那国ボール試合再開。しかしすぐに雷門にボールを奪われ再びゴール前に攻め上がる。伊那国も必死に止めようとするもやはり一定の距離しか守らない。

「切那先輩!!!!」

「『ソニックボルト!!』」

黒牙からバックパスを受けた切那がシュートを放つ。岩戸が止めに向かうもそのボールは再びゴールから大きく外れ天宮のもとに。ボールを受けた天宮はシュートコースを修正し伊那国ゴールへと叩き込む。

 

2-0

 

更に点差を広げる雷門。

「・・・のりかさん始めても構いませんか?」

「はい!!何時でも行けます!!」

 

選手交代

IN OUT

 

海原 のりか 服部 半太

 

ポジション変更

 

海原 のりか 灰崎 凌兵

 

 

稲森 明日人 灰崎 凌兵

 

 

遂に動き出す伊那国。キーパーを交代し灰崎をFWに、稲森をMFに変更してきた。

「・・ポジション変更・・一体何を・・」

「・・分からん・・だが今までの動きも気になる・・油断するなよ・・」

伊那国ボールで再開する試合。それと同時に灰崎が一気に攻め上がる。雷門のメンバーが止めようとするもラフプレイや隙をついた攻めに対処できない。

「ポジション変更しただけなのにこれかよ!!」

他の選手は相変わらずだが灰崎だけは自由に攻め上がってくる。

「『オーバーヘッドペンギン!!』」

「「『プレス・ザ・ウォール!!』」」

灰崎のシュートを弾き返す大山と大那。弾かれたボールは灰崎のもとへ。

「小僧丸!!」

「おう!!」

灰崎が五匹のペンギンを呼び出して空へと蹴り上げる。蹴り上げられたボールを回転しながら小僧丸が蹴り、五匹のペンギンが回りながら合体、一匹の巨大なペンギンになる。

「「『ペンギン・ザ・トルネード!!』」」

合体したペンギンがまるでドリルのように高速回転しボールを追いかける。

「『ゴッドハンド!!』」

円堂がゴッドハンドで止めようとするもペンギンが触れると同時に爆発、円堂が吹き飛ばれる。

 

2-1

 

灰崎以外の動きは相変わらずだが点を決められた。

「・・大丈夫!!まだ一点リードしてるんだ!!」

すぐに気持ちを持ち直しポジションにつく雷門。雷門ボールで試合再開。攻め上がる雷門だがやはり相手は一定の距離しか守らない。

「闇の力を思いしれ!!『シャドウストライク!!』」

「『マーメイドヴェール!!』」

黒牙のシュートを止めるのりか。そのまま岩戸にパス、どんどんパスだけで攻めあっという間に灰崎の元に。皆が必死に止めに向かうも強引なプレイに弾き飛ばされる。

「『ザ・ウォール!!』」

「『スピニングカット!!』」

大那と古島が必殺技で止めようとするも破られ円堂と1対1。

「『パーフェクトペンギン!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

灰崎のシュートを止めようとするもあっさりと破られる。

「させん!!『ダークトルネード!!』」

黒牙からダークトルネードを教えてもらっていた古島。必死に追い付き完成した技で止めようとするもシュートの威力に吹き飛ばされる。

 

2-2

 

あっという間に同点に追い付かれた雷門。

「・・くそ・・・動きが見えない・・・」

灰崎の激しい動きに対応出来ない雷門。皆息を切らし始めている。だが残酷にも雷門ボールで試合再開。すぐ様灰崎にボールを奪われ攻められる。

「これ以上の失点は不味い!!絶対に止めるぞ!!」 FWも含め皆が灰崎を止めようとするも弾き飛ばされる。灰崎のシュートに警戒する円堂だが灰崎がパスしたのは剛陣。

「『ファイアレモネード!!』」

「『ゴッドハンド!!』」

剛陣のシュートを止めようとするもボールが爆発、それに吹き飛ばれる円堂。

 

2-3

 

それと同時に鳴り響く前半終了の笛。友紀が会場にたどり着いたのはそれから二分後の事だった。




こぼれ話

この作品、最初は『アレスルートの白恋の男子が主役』だったけど何となく考えていくうちに

伊那国・雷門の女子生徒(ボクっ子)が生まれる

無印に女子生徒ぶちこんだ原作再編

読者参加型

という風に変わっていきました。友紀が氷の技を使うのは初期の名残です。


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第24話最強の田舎者達




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数ヵ月前、伊那国島

 

東京からかなり離れ所にある小さな島。もちろんここにも学校とサッカー部は存在している。

「おーい明日人!!」

「剛陣先輩!!」

学校が終わり部活に向かう稲森に声をかける剛陣。部員が11人、場所も場所な為フットボールフロンティアへの参加資格も持っていない。それでも彼らは楽しくサッカーをやっていた。

「はーい皆さん!!今日はお知らせがありまーす!!一つ目!」

部室に入るなりやけにテンションの高い監督、趙金雲がポスターを広げる。

「あれこれ根回ししてやっと手に入れました!!フットボールフロンティアの参加資格!!」

趙金雲の言葉に驚きながらも喜ぶ皆。趙金雲はとある組織から『サッカーを広める』という指命を与えられこの島にやって来た。最初はかなり胡散臭かったが今となっては皆にとって大切な監督だ。あれこれ根回ししてというのは恐らくその組織の事だろう。

「そして二つ目!!何と新しい仲間が来まーす!!はいドーン!!」

その言葉と同時に入って来たのは灰色の髪をしたいかにも不良のようななりをした男子生徒。

「彼は灰崎凌兵君。前にいた学校ではエースストライカーでしたが協調性の無さや相手を痛みつけるプレイスタイルから孤立、精神修行の為そしてこの田舎に来ました。では自己紹介お願いしまーす」

「全部ベラベラ喋ってんじゃねぇか!!」

趙金雲に突っ込むを入れると皆睨み付ける灰崎。

「・・悪いが俺は俺の好きにやらせてもらう!!」

そう言って灰崎は部室を後にした。

 

それから数日後

フットボールフロンティアに参加するために練習をする皆。その様子を灰崎は一人遠くから見ていた。何度か皆が誘って来たが全てはねのけ一人でサッカーをしていた。

「・・どうですか?皆の様子は?」

灰崎に趙金雲が話し掛けてくる。

「・・あんな遊びで勝てるかよ・・本島の奴らは甘くねぇぞ」

「はい!!灰崎君の言うとおりです!!でも灰崎君は二十三時間休憩無しで走れますか?」

「後一時間頑張れよ!!まぁ・・そんなに走るのは無理だな・・」

「そうです!!今彼らには決められた範囲を守る練習をしています!!これでこちらの体力消耗は押されられまーす!!」

「・・それが上手くいっても相手がなにもして来なければ一緒だろ?」

灰崎の言葉に待ってましたと言わんばかりに胸を張る趙金雲。

「赤い服にジャムを落としたら焦るでしょ?全く同じです!!たった一人暴れる選手がいればそれに皆対応しなければなりません!!それにより相手の体力を削りにかかります!!そしてその役を灰崎君に・・」

「何で俺が!!最初に言っただろ!!俺は・・」

「好きにやっても構いませんよ・・ありのままの灰崎君のプレイスタイルが適任なのです!!」

「・・チッ・・俺はアイツらと馴れ合うつもりはねぇぞ!!」

「本当にそう思ってます?・・本当は彼等と一緒にやりたいんじゃないですか?」

 

次の日

気分が乗らなかったという理由で部活に参加しなかった灰崎。その後を一人の少年が付けていた。

「・・おい!!お前さっきから何なんだよ!!」

いい加減に腹がたった灰崎が振り返る。そこにいたのは特徴的な髪型をした少年ーー稲森だ。

「・・なぁ灰崎・・なんでいつも一人でいるんだ?」

「お前には関係ないだろ・・」

「関係あるよ!!だって同じチームじゃないか!!」

突き放す灰崎に食い付いてくる稲森。

「・・ッチ・・うぜーんだよ!!」

あまりのしつこさに腹を立てボールをぶつける灰崎。その場に尻餅をつくもすぐに立ち上がり灰崎に食い付いてくる。

「・・なんでそんなに俺に構うんだよ!!」

「・・灰崎のサッカー寂しそうだったじゃないか!!」

影から練習を見ていた灰崎だが練習の後、裏山で一人ボールを蹴っていた。ただ見ているだけでは体が鈍る為だ。 稲森はその事を見ていたようだ。

「・・灰崎・・・分かってるだろ?サッカーは・・・」

 

「一定の範囲しか守らない?」

スタジアムについて準備体操をしている友紀に皆が前半の奇妙な動きについて報告する。

「・・あの灰崎って選手にはあんまりがっつかない方がいいかもしれない・・それと皆・・特訓を思い出せばきっと対抗できるよ!!」

 

 

 

 

選手交代

 

IN OUT

 

 

 

舞崎友紀 高咲優菜

 

 

友紀と優菜が交代し伊那国ボールで試合再開。

「・・特訓って言ったってよぉ!!」

再開と共に一気に攻め上がる灰崎。

「・・行かせないよ!!」

それを止めようと友紀が立ちはだかるもすぐに抜かれる。

「まだまだ!!」

すぐに三日月、大山が止めに向かうも抜かされる。

(・・ボクたちの動きと連携が完璧に把握されてる・・でもなんで・・)

灰崎の動きを、少し見ただけで雷門の動きを把握し動いていることに気付く友紀。初見のチーム相手に対抗する為にした特訓もこのままじゃ意味をなさない。

「・・本当は皆に答えを出して欲しかったんだけど・・FWは力のかけ方を意識!!MFは流れる試合の動きを見極めて!!DFは相手の動きをよくよんで!!」

友紀が、島での特訓の理由や目的を詳しく話さなかったのは自分自身で答えを導き出させる為、しかしここで負けてしまえばそれも意味がない。

「・・そういう事ッスか!!」

友紀の言葉を聞き大那が灰崎の前に立ちはだかる。

「『ザ・ウォール!!』」

必殺技で灰崎を止める大那。

(・・今灰崎君の動きが読まれましたね・・)

趙金雲が今のプレイが偶然でないことに気付く。

「三日月先輩!!」

大那が三日月にパス。しかし道成にあっさりと奪われ再び灰崎のもとへ。

「『アイスグランド!!』」

DFまで下がっていた友紀が奪い返し再び攻め上がる雷門。

(皆の動きが・・・まさか!!)

皆の動きが鈍い事に気付く友紀。伊那国のスタミナ減らし。それがここに来て効果を表し始めている。

(・・DFはかなり消耗が激しい・・すぐに交代しないと・・)

交代のために一度ボールを外に蹴りだす友紀。しかしそれを氷浦が止める。

(・・かなりあからさまなやり方ですが・・雷門の指揮はこれで機能しなくなりました・・)

前半、友紀がいない中奮戦した雷門。まさかそれが仇となり後半相手のペースに飲まれ始める。

「・・こうなったら・・皆!!確実に一点を取るよ!!」

試合を中断させようとしても無理。それならば一点を確実に取り試合を中断させる。そう考え攻め上がるも体力の消耗からかミスを連発する雷門。友紀の焦りとは裏腹にただ時間だけが過ぎていく。

「・・天宮!!」

「今度こそ・・『バウンドフレイム!!』」

友紀から天宮にパス。そのまま跳ねないバウンドフレイムでシュートを打つ。

「『マーメイド・ヴェール!!』」

しかしそれを海原がキャッチ。それと同時に試合終了の笛が鳴り響く。

 

「・・勝った・・」

始めての試合で勝利をおさめた伊那国。それを実感するにつれて皆の喜びが大きくなっていく。

「灰崎・・」

皆の輪に入らず一人遠くから傍観する灰崎に一人の少年が話し掛けてくる。

「キャプテン・・」

かつて灰崎がいた学校のサッカー部。そのキャプテンだ。

「・・今まですまなかった!!」

今まで勝手なことをしてきたことを謝る灰崎。

「・・いい試合だったな」

「・・ああ・・だってアイツらがいたんだからな」

サッカーは一人では出来ない。あの日稲森から言われた言葉を思い返す灰崎。あの頃の姿から考えられない今の灰崎。

「・・灰崎戻ってきたら一緒にサッカーしないか?」

「追い出しといてよく言うぜ・・まぁでもそれも悪くねぇな・・」

皮肉を言いながらも笑う灰崎。その姿を見ながら何かを考える友菜。

(・・勝者は笑い・・敗者は泣く・・さてこの子達がどう立ち直るか・・・)

笑いあう灰崎達とは裏腹に落ち込む雷門のメンバー。相手の策にまんまとはまり手も足も出なかった。

「・・・何が後一歩だよ・・全然遠いじゃねぇか!!」

 

その様子を控え室から11人の少女が見ていた。

「・・友紀ちゃん・・」

「・・これはやられたな・・あの友紀が気付かないなんて・・」

「友紀は気づいてたさ!!でも対策する為の頭が足りなかったってことさ」

「・・皆そろそろミーティング始めるよ。」

白い髪をした少女の言葉で皆がホワイトボードに向き合う。

 

 

一回戦に負けた私達。それぞれが強くならないといけない。この時皆の頭にはその事しか頭になかった。

 

だからこそ気づかなかった・・次の試合・・まさかあんな事になるなんて・・




ここだけの裏話なんですが・・

当初アレスの主人公の中で灰崎だけ出番なかったんです。
でもそれだと可哀想なので伊那国に入れました。
それがまさかの主役クラスに・・。ごめん稲森君・・。出番全部カットして・・







あ、灰崎がキーパーでスタメンしてたのはアニメと全く同じ理由です。書き忘れてました。


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