楽羅來ららちゃんは語りたい (那由多 ユラ)
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小説 ららちゃんは語りたい!
第1話を語りたい


怒られましたぁ(泣)
なんの事かわからない人が多数でしょうがとりあえずしばらくは小説だけで大人しくしてます。


私は楽羅來(らららい) らら。ちょっと語りたがりでちょっとした能力を使えるJK初心者です

 

今日は4月の最初の方、入学式。

 

…めんどくさい。

 

今は体育館のステージ初老の女性、校長先生が話しています。

暇なのでこの学校についてでも語ってみましょうか。いえ、別に寂しくないです。…ないです。

 

ここは常世立総合隔離高等学校。運営は世界のなんたらで立地は日本ではないどこか。土地は広大で半径1000kmを超える。社会から切り離された学校で基本的に知られていないこと、都市伝説扱いされていることを教わったりそうでもなかったりする学校で学科数は世界一位。噂では全校生徒よりも多いんだとか。

そんな学校に入学するのは特殊な力を持っていたり、知ってはいけないことを知ってしまった人間で半強制的に入学させられるのである。

この説明だと何だか都合の悪いものを放り込む檻のようだが実際は案外そうでも無い。

卒業というシステムがないので外に出ることは出来ないが今の時代通販がある。出費は全額学校側が負担してくれるので生活に困ることはない。

 

あえて欠点を上げるとするなら、運動部が大会に出られないことだろうか。

まぁ当然である。こんな得体の知れない都市伝説そのものみたいな学校が大会に出られるわけがない。

ちなみに文化部は匿名、かつ個人で一度学校のチェックを通せば作品の出展は可能である。

 

さて、学科の話に戻りましょう。この学校には普通系、制作系、破壊系、軍事系、特殊系、未知系の6つの系列にそれぞれ一万を超える学科があります。つまり最低でも六万学科あるわけです。

ちなみに全校生徒は500に届かない程度、今年の入学者は4人で過去最高なんだとか。

 

横並びに座っていて私は左端なので右から、

愛莉奈(ありな)涙目(なみ)さん(14)♀、破壊系魔法科

九能(くのう)生糸(きいと)くん(9)♂、特殊系情報科

納富(のうとみ)しほさん(923)♀、普通系歴史科

そして私、楽羅來(らららい)らら(16)♀、未知系創造科

何故知っているのか、ですか?それは…

おっと、校長先生の話が終わりそうです。

 

話はまた後でということで。

 

「――以上で話を終わりにします。疲れたから一ヶ月ほどゴールデンウィークにしましょうかね。

あぁ、4人は担任の指示に従って教室に向かってくださいねぇ」

 

校長がとんでもないことを言い出したことに驚いていたら体育館の端から黒髪ロングで長身のカッコイイタイプの男性が私たちの前に来る。

 

「あ~、えっと、あれだ、おまえら何も言わずに着いてこい。逸れるなよ」

 

とりあえずまだここは未開の地なので何も言わずについて行く。

 

20分ほど歩いて辿り着いたのは入口の自動ドアにHRと書かれた二十回建て、直径50メートルほどの円柱状の建物。

この建物を中心に六つ、同じような建物が囲うように建っている。

 

「ちゃんとついてこいよー」

 

ドアをくぐると自習スペースなのか丸いテーブルにイスが四つのセットが沢山並んでいて中心に円形のエレベーターと囲うように大きい二重螺旋階段が設置されている。

 

私達四人はテーブルにつき、担任と思わしき男性に目を向ける。

 

「あーっと、あれだ。俺は普通系暗殺科3年の(みなごろし)殺浴(さつよく) 。一応お前らの担任だ。愛莉奈から順に自己紹介しろ」

 

「はいっ、破壊系魔法科の愛莉奈 涙目です。爆竹からビックバン程度の爆発魔法が使えます」

 

「次」

 

「…九能 生糸。…9歳。…特殊系情報科。…話しかけたら、社会的に殺す。」

 

「殺人はここでも禁止だ。次」

 

「ウチは納富 しほ といぃます。学科は普通系歴史科の、いつの間にか不老なこと以外は普通の人間さかい、よろしゅうな」

 

「おう。次」

 

おっと、私の出番だ。

 

「私は楽羅來 らら、未知系創造科です。万物創造能力を持ってて脳以外は普通の女の子ですよ」

 

脳は私の能力で『知りたいことを知ることが出来る脳』に創り変えました。が、ここでは語りません。

 

「あー、とりあえず校長が宣ったように今日からしばらく休みだ。お前らの住む寮は外に出てすぐの六つのあれだからお前らでてきとーに探してこい。あとは行けばわかる。

ほらっ、散った散った!」

 

私達は追い出されるように外に出される。

 

 

「あのっ、これからどうします?」

 

最年少の九能くんはどこに行けばいいのか分かるのか一人でどこかに歩き去ってしまい、続いて年少の愛莉奈さんが私達二人に話しかける。

 

「言われた通りに寮に行きましょうか。破壊系はここから反対の右側、普通系はこの入口から真っ直ぐですよ」

 

「ほーん?疑うわけやないけど、なして分かるん?どっか書いてたん?」

 

「まぁ、そんなとこですよ。では私はこれで」

 

私は未知系の寮に向かって歩き出す。

ちなみに場所は破壊系の反対側、ここから正面右側です。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

…なんでしょうかこれは一体?

未知系寮の扉を開くと年齢は同世代と思われる金髪ツリ目の女の子にショットガンを向けられてます。

 

「おいコラここがどこだか分かってんのかあぁん!?」

 

「…ショットガン型のクラッカーですか。歓迎ありがとうございます」

 

パァンッ

という音と共に私にカラフルな紐が私に降りかかりました。

 

「…なんでわかったんだよ?」

 

とりあえず彼女について語ってみますか

「未知系家庭科四年、絢美(あやみ) 加奈(かな)さん。パッと見一昔前のヤンキーのようですが会って数日後には本性がバレてしまい、年上には可愛がられ年下には慕われてしまい一匹狼に憧れるもなれない女の子。

どんなものを使っても美味しくて栄養豊富な料理が出来てしまう原理が未知な能力の持ち主。

…なんでヤンキーやってるんですか?」

 

私が聞くと彼女は耳まで真っ赤にして目に涙を浮かべる。

 

「な、なんでそこまで知ってんだよ!?そういう能力なのか!?」

 

「なーちゃん、と呼んであげた方がいいんでしょうか」

 

「やめろ!殴るぞ!?」

 

「いいんですか?あることあること語り尽くしてあげますよ?」

 

「…やめて。お願いだから、やめて」

 

「私は楽羅來ららといいます。なんでこんなことしたんですか?」

 

「別に、ルームメイトを出迎えに行くくらい普通のことだろ?…なんか悪いかよニヤニヤしやがって!」

 

おっと、あまりに可愛らしいから口元が緩んでしまいましたね」

 

「声、出てるからな?」

 

「おっと、語りたがりでつい」

 

「そうかよ。おら、案内してやっからついてこい」

 

「了解です、なーちゃん」

 

「なーちゃん言うな!

あぁ、あとこれやるよ」

 

なーちゃんに渡されたのは…

 

メリケンサック?

 

「お近付きの印ってやつだ」

 

「…私、殴るより蹴るほうが好きなんですけど」

 

「冗談をマジに受け取るなよ。私らの部屋の鍵なんだよそれ、無くすんじゃねぇぞ」

 

「一体どんなセンスしてるんでしょうか」

 

「おい、私だって泣く時もあるんだからな?」

 

「なーちゃんでしたか。部屋には私達二人で住むことになるんですか?」

 

「今までは一人部屋だったんだよ。ほら、さっさと行くぞ」

 

さっきのホームルーム棟と同じような構造の部屋のエレベーターで二階に上がり右に少し言ったところの部屋、248号室に入る。

 

あ、ほんとにメリケンサックが鍵なんですねこの部屋。

 

 

部屋の内装は入ってすぐ廊下の左右にそれぞれトイレとお風呂、その先この寮の外側部分は全面ガラスでカーテンがかけられていてカーテンに枕が向くようにベッドが二つ並んでいる。左右対象になるように机と本棚、タンスにクローゼット、冷蔵庫が二人分置かれている。左側は使われているので私は右側のようだ。

 

「足りないもんは机のノートパソコンで注文な。次の日の昼頃に届く。風呂のシャンプーとかは私のでいいなら使っていいぞ。

なんかわかんないことはあるか?」

 

「キッチンはないのですか?」

 

「一応上の階が調理室だ。食材はほぼ揃ってる。

メシは3階な。なんでも作ってくれる食堂がある。

…能力で分かるんじゃねぇのか?」

 

「私、人と話すのが好きなんです。

そして私の能力は万物想像能力です。作れる物の限界が未知なので未知系創造科なんです」

 

「ほーん。じゃあそのなんでも分かるみたいなのはどうやってんだ?」

 

「脳をそういう風に創り変えてるんです」

 

「うげっ、マジかよ」

 

 

 

 

 



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第2話で語りたい

時刻はお昼頃。

私達は3階の食堂にお昼ご飯を食べに来た。

 

「…あの、なーちゃん」

 

「…なんだよ?」

 

「未知系って女の子しか居ないのですか?いや、別にいいですけど」

 

「や、男も居たはずだぞ?最近見ねぇ気がするけど」

 

「はぁ。何かあったのでしょうか」

 

なんて話してたら食堂の列が進み、私の番が来た。

 

「何が食べたいですか?」

 

カウンターで私に話しかけるのはショートヘアで小学生くらいの小柄な女の子。

 

「小学生?」

 

「はーい。少々お待ちくださいねー」

 

「えっ、ちょっ、」

 

え?

 

「おいらら、おまえ、人間食うのか?」

 

「いや、そんなわけないじゃないですか」

 

「だよな。先輩、どこに取りいく気だ?」

 

「えっ、まさか歳上なんですか?」

 

「いや、確か今年で12だったと思うぞ?」

 

「…雛美(ひなみ) 小鳥(ことり)、11歳。未知系対人科六年。どんな極悪人でも改心させることが無意識下で可能。

体格と名前からピーちゃんと呼ばれている」

 

「おう。私は四年だから二つ先輩なんだよ」

 

「なるほどです」

 

「ゴッメーン、さすがに小学生のお肉は無かったー。何か他にない?」

 

「チーズケーキをお願いします。ピーちゃん先輩」

 

「おっけー。あれ、私自己紹介したっけ?」

 

「おまえ、昼飯だよな?

小鳥先輩、こいつは今日からルームメイトのららっつぅんだ。よろしくしてやってくれ」

 

「へぇー、なーちゃんと一緒なんだぁ。仲良くしてあげてね?なーちゃん寂しがり屋さんだから」

 

「ぅおい!?あんたは私の母親か何かか!?」

 

「フフッ、私も寂しがりなので大丈夫ですよ」

 

「なら安心だねー。なーちゃんは何食べるの?」

 

「お前のそれは語りたがりっつーんだ。…味噌ラーメンとチャーハンを頼む」

 

「はいなー。二人で最後だから私も一緒に食べていい?」

 

「私は構いませんが、なーちゃんはどうです?」

 

「あぁ、いいよ。先に席ついてるからな」

 

「先輩だけに働かせる気ー?」

 

「だぁ、わかったわかった。らら、三人分の席頼んだぞ」

 

「あの、私も手伝います。私が食べるものですし…」

 

「いーからいーからー。ららちゃんは座っててー」

 

「ってわけだから、頼んだぞー」

 

私に背を向けて厨房に向かう二人はまるで姉妹…母娘?あぁいえ、親鳥とひよこのようです。枕元に並べたいですね。

おっと、席を取らないと埋まってしまう…と思いましたが普通に半分以上の席が空いてますね。さすが、生徒数が少ないだけのことはあります。

 

席について五分ほど待つと厨房から二人が出てきました。なーちゃんの持つおぼんにはラーメンとチャーハン、ピーちゃん先輩はチーズケーキとオムライスを持っています。

 

「共食いですか?」

 

「…ららちゃん、私だってちゃんと人なんだよ?」

 

「うしっ、出来た。どうだ、上手いだろ」

 

ピーちゃん先輩が私に気を取られているうちになーちゃんがオムライスにケチャップでひよこ三匹が並んでいる絵を描いていました。

 

「ピーちゃん先輩、共食いですか?」

 

「…ごめんなさい鳥さん、いただきます」

 

「おい、どーすんだよこの空気。先輩泣きそうじゃねぇか。…いや、描いたの私だけども」

 

「これもピーちゃん先輩のためなんです。優しく見守りましょう」

 

「ごめんなさい、ハムッ。ごめんなさい、ハムッ」グスン

 

「見てられねぇよ!らら、お前ちょっと、って何のんきにチーズケーキ食ってんだよ!」

 

「あっ、美味しい」

 

「ほんと!?ありがと!今日のは自信作なんだ!」

 

「うわっ、復活した」

 

「ええ、とっても美味しいです。

そしてピーちゃん先輩、泣きながら食べては味がわからないでしょう?それでは鳥さんに失礼ですよ」

 

「ほんとだ!ごめんなさい鳥さん」

 

「いや、泣かしたのお前…」

 

「ほら、なーちゃんも早く食べないと麺がのびてしまいますよ」

 

「げっ、やべ

そーいやなんで先輩はピーちゃん先輩で私はなーちゃんなんだよ!」

 

「「なーちゃんはなーちゃんでしょ?」」

 

「ちょっ、先輩まで!?」

 

「だってなーちゃんだもん」

 

「やめて欲しかったら『やめてくださいららおねーちゃん』って可愛い感じに言ってください」

 

「嫌に決まってんだろ!

…多分だけど私がそれやったら呼び方を『なーたん』とかに変えるだろ」

 

「わ、私も呼び方には不満があります!なんでなーちゃん以外誰も先輩って呼んでくれないんですか!?」

 

「じゃあピーたんとかか?」

 

「なーたん、それ、中華料理に使う黒い卵です」

 

「…ピーたんよりかはピーちゃんの方がまだマシかな」

 

「…私もせめてなーちゃんで頼む」

 

そんなこんなで食器を片付けてさらに会話を続ける。

 

「さぁ、ららちゃん。何か聞いておきたいとはある?なーちゃんよりは詳しいと思うよ?」

 

う~んと、あ、

「授業ってどこでやるんですか?」

 

「あ、それ私も知らねぇ」

 

「それはもしかしてあれですか?ヤンキーだからサボってるとかですか?」

 

「…おう」

 

「あははっ、違うよー。この学校、五年前からゴールデンウィークとシルバーウィークを交互に延々と繰り返しててずっと休みなんだよ」

 

「なーちゃん、うそついたの?」

 

「んな事よりらら、お前の脳ならそんくらい分かるんじゃねぇの?」

 

「違うんです、なーちゃん。能力で知るのと人に教えてもらうのとでは旨みにポッ○ーとプ○ッツくらい差があるんです!」

 

「大して変わんねえじゃねぇか!嘘でもキノコとタケノコの差があるくらい言いやがれ!」

 

「どっちもあんまり変わんないよ!ウォー○ーを探せとミッ○の差があるくらい言わなきゃ」

 

「それも大差ねぇよ怒られねぇかなこれ!?あとぜってぇ○ッケは知らない奴いるからな!?」

 

「ミ○ケ、懐かしいですね。私も小学校ではよくやってましたね」

 

「どうしても見つからないとだんだん屁理屈言い出すんだよね」

 

「そうだなぁ。それに比べてウォ○リーは一切屁理屈が通じないんだよな」

 

「ええ。ダミーが沢山いても絶対にどこかしら違うんですよね。

そういえばここって図書館か本屋さんはあるんですか?」

 

「あるよー。車で北に5分くらいのとこに図書館、そっからさらに10分くらいでおっきいショッピングモールがあってその三階が本屋さん」

 

「通販で車も買えるんですか?あと免許は?」

 

「免許はいらないよー。車は買えるし事故らなきゃもーまんたいー」

 

「なーちゃん、運転できますか?」

 

「…バイクなら」

 

「ふむ、自転車ならできると」

 

「あははっ、なーちゃんったらかーわいー。ははははっ」

 

「うっせぇ笑うんじゃねぇ!そういう先輩はどうなんだよ!?」

 

「わたし?わたしは軽トラックなら運転できるよ?」

 

「「…なんで?」」

 

いや、ロリっ子と軽トラって意外と似合いそうですけども。

 

「やー、あれって荷物運ぶ時に便利なんだよねー」

 

「なお、既に二十回を超えるほどぶつけてる模様」

 

「先輩、取説読んだか?」

 

「わたし、取説は読まない派だから」

 

「命に関わるからそれは読んでくれ」

 

「そうですね。それに案外取扱説明書も読んでみると楽しいですよ?」

 

「えっ、マジ?

らら、それは無いわ」

 

「えっ、そうですか?子供向けおもちゃのやつとか無駄にハイテンションだったりして楽しいですよ?」

 

「なんで子供向けおもちゃの取説の内容を知ってるの?ららちゃん何歳?」

 

「16歳です。なーちゃんはいくつですか?」

「17だ。ここに来たのは13の時」

 

「ちなみに私は6歳の時だよ」

 

「ここって何歳から入学させられるんですか?」

 

「能力とかが分かったらすぐじゃねぇの?」

 

「最年長は96って誰かが言ってたよ?」

 

「あ、私と一緒に入学した人に923歳の人がいましたね」

 

「それどんなバケモンだよ」

 

「普通系歴史科で、方言がちょっと怪しい方でした」

 

「めちゃくちゃ怪しいじゃねぇか」

 

「普通系って未知系以上に怪しいからね」

 

「そうなんですか?」

 

「まぁな。普通系っていまいちどの辺が普通なのかよくわかんねぇんだよ。らら、お前なら分かるんじゃねぇの?」

 

「そうですね、語らせて頂きましょうか。

 

普通系、普通教科に特化してしまった人間や常識外な生い立ちをもつだけの人間・人外なんかが入学します。例えば宇宙から来たとか数百年生きてるとか、人工的に造られた人間など。

また、他にも知ってはならない機密事項をたまたま知ってしまった人間もここに入ります。

つまり、人外が一番集まる系列ですね。

まぁ、人外以上に人外じみた方々も多数、他系列に属しているのでなんとも言えませんが」

 

「特にお前とかな」

 

「そうですか?私、脳以外は至って普通の女の子ですけど」

 

「その脳がやべーんだよ」

 

「ららちゃんの前にはプライバシーなんて役に立ちませんからね」

 

「そんなことありませんよ、知られたくないであろうことは語らないようにしてあげてます」

 

「語らないだけかよ」

 

「むしろタチ悪いよね。どこまで知られてるかわかんないんだもん。

実際どこまで知ってんの?」

 

「それはもう、誰もが知ってることから本人も気づいてないことまで一通りは」

 

「ほぼ全てじゃねぇか」

 

「ちなみに今日のなーちゃんの下着の色は水色です」

 

「なに暴露してくれてんだおい!」

 

「なーちゃんって意外と趣味が可愛いよね」

 

「ちょっ」

 

「そういうピーちゃん先輩はくまちゃんですね」

 

「なんで言っちゃうのぉ!」

 

「この際だから らら、お前もどんなか吐きやがれ」

 

「フフッ、どちらだと思いますか?」

 

「二択ということは、白か黒ってこと?」

 

「それなら白じゃねぇか?黒ってイメージはねぇよ」

 

「いえいえ、身につけてるか持ち歩いてるかです」

 

「持ち歩いてる場合なんの意味があるんだよ」

 

「ちゃんとつけないとダメですよ!お胸が垂れちゃうらしい…あっ」

 

「私、垂れるほどありませんから」

 

「あっ、いやいや、ららちゃんもまだ成長期がきっと来るからっ、ね?」

 

「そ、そうだぞーららー。…私もそんなにないけど」

 

「いえ、大丈夫です。私、ちっちゃい方が好きですから。

必要とあれば胸も創り直せますし」

 

「マジか!」

 

「ピーちゃん先輩は背が小さいうちになら大きくしてあげますね」

 

「なんで先輩だけなんだ!?」

 

「ロリ巨乳は合法ロリ以上に貴重ですから需要があるんです」

 

「私の巨乳には需要がねえってか?」

 

「100%私の趣味であり主張ですがヤンキーキャラで巨乳がカッコイイのは薄い本だけです」

 

「なに!?マジか。…まて、お前まだ16だよな?なんでR18の内容のこと知ってんだよ」

 

「年齢くらいネットでなくてもいくらでも誤魔化せます。

あ、ピーちゃん先輩はダメですよ?」

 

「言われなくても読みません!」

 

「読みたいとか言われても周りが全力で止めるだろうな」

 

「ちなみになーちゃんのお気に入りはヤンキー主人公のおねロリものです」

 

「ちょっ、はぁ!?」

 

「なーちゃん、私のことが!?」

 

「いやっ、ちょっ、ちがっ」

 

「いつの間にか三時ですね。おやつにしましょう」

 

「おいそこのマイペースWikip○dia!」

 

「なーちゃんなら、わたし、いーよ?」

 

「そんでそこの違法ロリ!いい加減ららの嘘だと気づけ!」

 

「ふぇっ!?なーちゃんわたしのこと、嫌い?」

 

「嫌いじゃねぇけどそういうとこは嫌いだよ」

 

「ガチな返しだ!?それもなーちゃんに!」

 

「まぁまぁ、ヤンキーだからって百合ではいけないなんてことはありませんよ」

 

「だからちげぇっての!」

 



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第3話が語りたい

カスタムキャストで作ったららちゃんとなーちゃんです!
ららちゃん

【挿絵表示】

なーちゃん

【挿絵表示】



引き続き食堂で私たち三人は雑談を続けました。

 

「さて、おやつに私がドーナツでも揚げましょうか」

 

「らら、お前料理できるのか?」

 

「ええ。どれだけ語りあってもダウンしないような糖分過多で高カロリーなものをご用意します」

 

「「えっ…」」

 

「おや、ダイエット中でしたか?でしたら中止してください。女の子のお腹はちょっとぷにぷにくらいがちょうどいいんです。あんまり痩せすぎていると心配になります」

 

「微妙にわかる性癖こじらせてんじゃねぇよ!」

 

「なーちゃん分かるんだ!?」

 

「いいですか?ピーちゃん先輩、可愛い子がみんな体重が30~40キロだと思ったら勘違いですよ?可愛い子はちょっとふっくらでも可愛いんです」

 

「そ、そうなんですか?でもわたし、そんなに可愛いかなぁ」

 

「ええ、可愛いです。天使です」

 

「そういや天使って基本男じゃなかったか?割とガチムチな」

 

「二次元の天使は男性でも可愛い方は多いんですよ?」

 

「…お前は可愛ければそれでいいのか?」

 

「いえ、最悪言葉が通じるのであれば見ただけで正気を失うような怪物であろうとも仲良くできます」

 

「…多分、その怪物さんの方が辛いと思うなー」

 

「私にはお前の方が遭遇しただけで相手の心をこねくり回す怪物に見えるぞ」

 

「それはピーちゃん先輩のことでは?。極悪人ですら改心(心を改造)できるんですよね?」

 

「ららちゃん、改心をなんだと思ってるの?」

 

「…ピーちゃん先輩、今日のドーナツは会心の出来ですよ」

 

「いつの間にか作ったんだ!?そして絡め方が雑だ。もうちょっと練れ」

 

「それじゃあなーちゃんのお手本、どーぞ!」

 

「やらねーよ!」

 

「ええ~」

 

「なーちゃんって意外と突っ込みキャラなんですね」

 

「そういうお前は博識キャラの皮をかぶったボケキャラだよな」

 

「ねぇねぇわたしは?わたしは?」

 

「合法ロリっぽい違法ロリだな」

 

「さっきから聞きたかったんだけど違法ロリってなに!?」

 

「合法ロリじゃないロリの事だ」

 

「私をロリって言わないで!成長期だからね!」

 

「らら!」

 

「成長停止薬を盛ったポンデリングがこちらに」

 

「…食べないからね?」

 

「美味しいですよ~お砂糖たっぷりですよ~」

 

「うぅ、た、食べないもん」

 

「もちもちですよ~太らなくなりますよ~」

 

「ほんと!…ううん、でもでも」

 

「先輩、食え」

 

「もうっ、なーちゃん?」

 

「っな、なんすか?」

ピーちゃん先輩はなーちゃんを睨みつける。決して怖くはないが謎の威圧感がなーちゃん向けられていた。

 

「おこるよ」

 

「…ごめんなさい」

 

「フフッ、小学生に叱られる金髪ヤンキーって新鮮ですね」

 

「もうっ、ららちゃんもダメですからね!ららちゃん、責任とってそのドーナツはららちゃんが食べてください!」

 

「ちょっ、それは…」

 

「ええ、構いませんよ」ハムッ

 

「あっ…」

 

「おいらら!今すぐ吐き出せ!」

 

「ふぁんふぇふぇふふぁ?」

 

「ごめんららちゃん冗談だから~」

 

ゴクッ「…どうせ私、今後は老ける一方でしょうから問題ありませんよ?」

 

「…それでいいのかよ

そういや髪の毛とかって伸びるのか?」

 

「さぁ、分かりません…

伸びませんね。まぁ能力で創れますし問題ないでしょう。そもそも現状かなり長いですし」

 

「なんか、ららちゃんの今のセリフ日本語的に怪しくない?」

 

「確かに。タイムラグでもあんのか?」

 

「糖分不足ですね。私の脳、通常の数倍糖分を消費するんです。というわけでいただきます」ハムッ

 

「…カロリーはどこで消費されてんだ?」

 

「何らかの形で体内に溜まってなにか創るときに消費されます。

ぶっちゃけますと私の体重は結構重いですよ。具体的には75キロくらい」

自分で語っておいてちょっと恥ずかしいですねこれは。顔が赤くなるのが分かります。

 

「リアルな数字だな~」

 

「でもららちゃん、そんな太ってるようには見えないよ?」

 

「密度とかが違うんです。大変ですよ?あんまり溜まると硬くて身動きが取れなくなりますから」

 

「防御力高そうだな。ちょっと殴ってみていいか?」

 

「ちょっ、なーちゃん?ららちゃん?」

 

「構いませんよ。その場合分厚い鉄板で壁を張りますが」

 

「やめとくわ。うっかり私が怪我しそうだ」

 

「そうじゃなくてもダメだよ。もぅ」

 

「なーちゃんには鉄分100%のドーナツをあげましょう」

 

「それただの鉄だよな?鉄の輪っかだよな?」

 

「わっ、すごい完成度。細かい凹凸まで表現されてる」

 

「他にもカステラやバームクーヘンもありますよ」

 

「ららちゃんすごーい!」

 

「もはやこれ、ただの文鎮だよな。もしくは鈍器。

どーすんだよこれ」

 

「食堂のカウンターなんかに飾るのはどうですか?」

 

「いいねそれ!ちょっと置いてくるね、って重!なーちゃん手伝って~」

 

「しゃーねぇな。ほれ」

 

「ありがと~」

 

あの二人、どのような関係なんでしょう。夫婦や恋人ではありませんし、友人と言うには近すぎます。

…母親と反抗期の娘でしょうか。もちろんこの場合ピーちゃん先輩が母親で。

 

「…ららちゃん、どうかした?」

 

「っ、いえ、二人はどのような関係なのかと思いまして」

 

「ん~、考えたこともなかったな。ダチって感じじゃねぇしな~」

 

「家族でいいんじゃないかな?もちろんららちゃんもね」

 

…今日会ったばかりの私が?いいのでしょうか?

 

「何難しい顔してんだよ。今さら博識キャラになろうったって無駄だぞ?」

 

「いえ、そうではありません。そうじゃなくて、いいんですか?今日あったばかりの私が家族なんて」

 

「い~よ~。相手がどんな人かなんて五分も話せば言葉にできない程度にわかる。それどころかお昼からずっと話してるんだよ?色々分かるよー」

 

「先輩、そう言って私が入学した日にめっちゃ構ってきやがったよな」

 

「懐かしいね~。あの頃は若かったなぁ」

 

「今も十分幼いじゃないですか。

色々分かると仰いましたがどの程度なんでしょうか?」

 

「ん~、さすがにららちゃん程じゃないけどね。色々は色々だよ?例えば、んー、…ららちゃん、あんまり自分の能力を凄いと思ってない…ううん、違うなぁ。なんて言えばいいのかな?他の人の能力の方がいい、とか羨ましいとか、思ってない?」

 

「まぁ、間違いではありませんね」

 

私はふと空を眺めながら答えました。

 

「何言ってんだよ?お前ほどすげぇ能力持ったやつそうそういねぇだろ?」

 

「ええ、そうですね。自分で言うのもあれですが私ほど反則級な能力は恐らく無いのではないでしょうか。

私にはやろうと思えばビックバンなどの前触れもなく宇宙を創り出すことも、有から無を創ることすらも出来るんですから、そんな方他にいませんよ」

 

「前に、何かあったの?誰かに酷いこと言われたとか?」

 

「…私には金や宝石、石油なんかを作ることができます。それもかなり高効率的に。

ここまで言えばなーちゃんは分かるんじゃないですか?」

 

「えっ、なーちゃん分かるの?」

 

「…まぁ、先輩は六歳からここに居るんじゃわかんねぇか。

なんとなくだが分かったさ。大人共にひたすら創らされてたんだろ?それもかなりの量をぶっ続けでとか、延々と飲まず食わずでとか、自給自足しながらとか、

細かくはわかんねぇけどよ」

 

「…農家は金を、金持ちは宝石を、国は石油を求めました。

これはあくまで目安ですがこれらを1キロ、1リットル創り出すのに約10万キロカロリーが必要になります。

農家は質の悪いパンや野菜を大量を用意し、金持ちや国は大量の栄養補給食を用意しました。

能力を周囲に知られたのは3歳か4歳の時でしたか。それっきり親はまるで図書館の本のように私を高値で貸し出すようになりましたね。

おかげで世界中を飛び回れましたが、覚えているのはたまに現地の方がくれたお菓子のことくらいですね」

 

「ららちゃん、かわいそう」

 

「お前のスイーツ好きはそれでか」

 

「まぁ、今話したことは二ヶ月ほどで終わったんですけどね。過労死した死体を創り出して死を偽装して『破くとどっかに飛ばされる紙』を創って脱走、その後は、まぁ色々と」

 

「心配して損したじゃねぇか」

 

「フフッ、ありがとうございます。

それからは楽しかったですね。お金には困らなかったので世界中の本を読み漁ったりして、最終的に日本のアニメや漫画に行き着きました」

 

「行かなくていい所に来ちまったなおい」

 

「私みたいなのをなろう系主人公って言うんですよね?」

 

「それは本人が言わないのが暗黙の了解だがな」

 

「おや、なーちゃんもこういったことはご存知でしたか?」

 

「ねー二人とも、なんの話してるの?」

 

「所詮人間は娯楽の前には無力だという、この世の真理の話です」

 

「なんかむずかしそー?」

 

「いや、んなわけねぇから。普通にサブカルチャーの話だから」

 

「今やメインカルチャーと言ってもいいと思いますけどね。

『サブ』なんていういかにもおまけみたいな呼び方するからいまだ否定的な方が多いんですよ」

 

「それだけじゃねぇと思うけどな」

 

「うぅ~わたしだけ仲間はずれみたいで嫌~」

 

「ふむ、でしたらピーちゃん先輩、明日にでも本屋さんに行きましょうか。手取り足取り色々と教えてあげます」

 

「え、やったー!」

 

「なーちゃん、他になにか買った方がいいものってありますか?」

 

「そうだな、着替えと…ゲーム機とかか?ディスプレイも買わなきゃな。それと、らら、お前って化粧とかするのか?」

 

「しませんね。というかやったことありません。肌のケアも化粧水と乳液だけです」

 

「ほーん。まぁ必要になったらその都度買うなりしたらいいだろ」

 

「そうですね。最悪私が創ればいいですし」

 

「うんうん♪ららちゃん来ていつもよりにぎやかになりそうだね!」

 

「そうかぁ?むしろ静まり返りそうだけど」

 

「だめだよー、そんなこと言っちゃ。ららちゃんがかわいそうじゃん」

 

「そうですなーちゃん。ららおねーちゃん、かわいそうです」

 

「うるせぇ!自分のことを『ららおねーちゃん』とか言ってんじゃねぇよ!恥ずかしくねぇのか!?」

 

「もう一回、もう一回言ってみてください!なにかの極地に至れそうな気がします!」

 

「お前を死の極地まで殴り飛ばしてやろうか?」

 

「貴女を恥の極地までご案内致しましょう」

 

「サラッと私より怖ぇこと言ってんじゃねぇよ」

 

「具体的にはこの学校の全校生徒になーちゃんのことを『お姉ちゃま』と自然に呼ぶようにちょっと手を加えます」

 

「やめろ気色悪い!やってる事がしょうもないだけで立派な洗脳じゃねぇか!」

 

「ピーちゃん先輩、ちょっと呼んでみてください」

 

「えっと、加奈お姉ちゃま?」

 

「やめろー!灰になるわ!」

 

「どんな表現ですか」

 

「お前の仕業だろうが!」

 

「何を言ってるんですか、なーちゃんが可愛いからです。私は悪くありません」

 

「んだとコラ!」

 

「なーちゃんの目は綺麗ですね~」

 

「お前の目に節穴を開けてやろうか」

 

「…あれって人為的だったんですか」

 

「あれ、それってかなり遠回しに自分の目は綺麗って認めてない?」

 

「…うっせ」

 

「…もしかしてなーちゃんの金髪碧眼って素ですか?」

 

「…言わなくてもわかんだろ」

 

「へ~、なーちゃんの髪って染めてるわけじゃなかったんだね」

 

「隔世遺伝ってやつなんだと。両親は二人とも黒髪黒眼だった」

 

「なんかなーちゃんも苦労してそうですね。是非とも夕飯を食べながら聞かせてください」

 

「まだ喋んのかよ…」

 

「ピーちゃん先輩、そろそろお仕事では?」

 

「ん~…いいや!なーちゃん、私にも聞かせて?」

 

「ったく、ららほど大したもんじゃねぇぞ」

 

 

 



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第4話は語りたい

時刻は夕飯を食べるにはちょっとだけ早い時間。私達はなーちゃんがヤンキー風になってしまった伝説を聞き入ることとなった。

 

「…いや、別に大したことねぇからな?」

 

「ですがなーちゃん、嘘でも幼い頃にパツキンのヤンキーに助けて貰ってからヤンキーにあこがれてるくらい言ったほうが格好いいですよ?」

 

「んな事したらぜってえお前が真実を暴露するだろうが。そもそもパツキンのヤンキーなんて今どきいねぇだろ」

 

「いえいえ、そうでもありませんよ?私のこれまでの人生では三名のパツキンのヤンキー風に覚えがあります」

 

「世界中飛び回って三人じゃほぼ限りなくいないに等しいじゃねぇか」

 

「うち一人はなーちゃんです」

 

「なーちゃんやったね!」

 

「ちなみにぴーちゃん先輩は私が知る中で軽トラドライバー最年少ですよ」

 

「外じゃ大問題だからな」

 

「そうなの?便利なのにな~」

 

「ええ。私ももっと幼女に大型の車とかを運転させるべきだと思います」

 

「そりゃ可愛いからってだけだろ?事故ったら悲惨だろうが」

 

「私あれやりたい!あの工事の時の高いやつ!」

 

「………クレーンか?」

 

「あれって根元どうなっているんでしょうね。キャタピラとかだったらてっぺんにライフルとか設置したいです」

 

「戦車じゃねぇか」

 

私達がほのぼのと話していると、まだ夕飯には早いにもかかわらず一人食堂にやって来て私達に気がつき、こっちにやって来る。

 

「はろー、ぴーちゃんとなーちゃんと、新しい子?はじめまして~」

 

「初めまして、未知系図書科二年、24歳、清水(きよみず) 姫乃(ひめの)さん。身長165cm、スリーサイズは上から92、61、80とふんわりほんわかな肉体と性格から『妹に欲しいお姉さんランキング』全人類中13位、おめでとうございます」

 

「あはは~、なに開口一番にぶっちゃけちゃってくれてるのかな~?今の私なら普段は『清姫(きよひめ)』って呼ぼれるのは嫌なんだけど君相手なら蛇の化け物にだってなれるかも~?」

 

「極度の可愛いもの好きで現在はぴーちゃん先輩に夢中、最近は厨房で働くぴーちゃん先輩を眺めるのがマイブームなんですか?」

 

「…よく視線を感じると思ったら」

 

ぴーちゃん先輩の目が怖いです。具体的にはガチで気色悪いおっさんに痴漢にあったJKくらい怖いです。

 

「あわわっ、ぴーちゃんごーめーんー」

 

「ちょっ、そう言いながらっ、胸で締めないでっ、窒息しそ~」

 

「あー!ごめんぴーちゃん、だいじょうぶー!?」

 

「他にもなーちゃんに『おいぶち犯すぞ雌豚がァ!』と言われたいそうですよ」

 

「ごめんなさい、私、そういうのよく分からないんで」

 

「なーちゃんに敬語使われたぁ!?これはもう新入りちゃんに責任とって貰うしかないかな~?」

 

「ごめんなさい、私ボンキュッボンよりツルペタストンの方が好みなんで」

 

「え~」

 

「申し遅れました、私、未知系創造科一年、楽羅來 ららと申します」

 

「…ららららららちゃんね~、じゃあらーらちゃんだ~」

 

「ウックク、いいじゃねぇか『らーらちゃん』、私も呼んでやろうか」

 

「いえ、なーちゃんには是非ともららおねーちゃんと呼んでください。そしたらなーちゃんの舎弟になってあげないことないかもしれないです」

 

「舎弟に……いや、いらねぇよ!舎弟なんぞ要らねぇしそもそも、舎弟をおねーちゃんとか呼べるか!」

 

「そういう方々は結構いらっしゃいますよ?私調べでは世界に2756組あります」

 

「…騙されねぇからな?」

 

「ほら、ぴーちゃんを『小鳥おねーちゃん』って呼んでみてくださいよ」

 

「あれ、私なーちゃんのしゃてい?だったの?いつの間に?」

 

「おや、違いましたか?でしたら性奴隷でしたか」

 

「「んにゃぁっ!?」」

「んなっっ!?おいらら!お前私をどんなキャラにしたいんだよ!?」

 

おや、三人とも赤くなってしまいましたね。二人はともかく清姫さんは…あぁ、耳年増ってやつですね。またの名をむっつり。

 

「なーちゃん、やっぱり私をそういう目で…」

 

「それは姫乃だ!私じゃねぇ!」

 

「えぇ!?私でもないよ~

…むしろされたい………かも」

 

「もし宜しければ私となーちゃんの相部屋、変わります?」

 

「いいの?」

 

「やめろバカ!姫乃と相部屋になるくらいなら、らら、お前の方が…お前の方が…あれ、もしかして姫乃の方が誤差程度でもマシか?」

 

ちょっ、さすがにそこまで言われると辛いんですが…

あ、そういえば

 

「ぴーちゃん先輩と相部屋の方は誰なんですか?やっぱり同年代の方ですか?ラブラブなんですか?」

 

「えっ!?そ、そそそんなことないよ!?私とののちゃんはラブラブでもなんでもないよ!?」

 

「へぇ、ののちゃんと言うんですか。では、そのようにそちらの方にお伝えした方がよろしいですかっ!?」

な、なんか後ろからヤンデレラの気配がします!私、背後から刺されたりしませんよね!?

 

「結構です。誰がなんと言おうと私と小鳥先輩はラブラブです。いつでもイチャラブです。相思相愛です。身体だけの関係なんかじゃないですからね、いいですか、違いますからね?いつでもいつまでも私は小鳥先輩のことが大好きで尊敬してて敬愛してて恋愛してて親愛しててつまり愛してて、小鳥先輩も私のことを妹のように娘のように恋人のように妻のように夫のように愛してくれています。この座は絢美先輩にも姫乃にも譲りません。もちろん貴女にもです。……すいません、貴女誰でしたっけ?前にも会った事ありますか?ありましたらごめんなさい、私覚えるの苦手なんです。

おや、机から小鳥先輩の涙の匂いがしますね。まさか貴女、先輩を泣かせたんですか?でしたら許しません。しっかりと設備を整えたうえで心臓を蒸し焼きにした後に毛髪のパスタ、右腕の唐揚げ、左腕の叩き、右脚の刺身、左脚のスペアリブ、眼球のたこ焼き、脳みその味噌汁、他胴体部の焼豚を絢美先輩、貴女に振舞って差し上げます」

 

「なんで私が!?」

 

いきなり現れかなりの長台詞を話すのはまるでこけ…日本人形のようなおカッパショートのぴーちゃん先輩より少し大きい幼女。

 

「あ~、ののちゃん久しぶり~。外に出るなんて珍しいね~。どーしたの?」

 

「お久しぶりです、姫乃。…ちょっ、いい加減私達を膝の上に乗せるのをやめなさいっ」

 

同じ二年生だから仲がいいのですかね?私達の中で1番背が高い清姫さんの膝にののちゃんとぴーちゃん先輩がうまい具合に収まってます。なるほど、高身長だとあんなことが出来るのですか。

清姫さんとさほど背の変わらないなーちゃんに期待を込めた視線を送ります。

 

「…なんだよ」

 

「……」

 

「無言で姫乃を指さすな!やらないからな!?お前さっき自分から体重75キロとか言ってたじゃねえか!」

 

むぅ、しかたありませんねぇ。今回のところは諦めます。

 

 

 

「申し遅れました、私は楽羅來 ららという今日来たばかりの新入生です。

よろしくお願いしますね?未知系愛情科二年、浄花町(じょうかまち) ののさん。貴女からぴーちゃん先輩を寝取ろうなんて考えは一切ありませんから是非ともこの場でイチャついてくれて結構ですよ。実況は私に任せてください。これでも昔の将来の夢はスポーツの解説のおっさんでしたから」

 

「最後のそれは絶対に嘘ですよね?まぁ、小鳥先輩を狙わないと言うのでしたら貴女と仲良くしてあげないことも無いかも知れませんし今後一切出会わないように対策を練るかも知れません。せいぜい私と小鳥先輩のイチャイチャを指をくわえて見てることです」

 

「ぴーちゃんとののちゃんイチャイチャしちゃうの~?私の上で~?だーいかーんげーい!らーらちゃん、カメラは任せたよ!」

 

「ええ!しっかり濡れ場を収めて見せましょう!」

 

「ほら先輩、ちゅー、しましょ?」

 

「や、やー!なーちゃんとか見てるんだよ!?ののちゃん正気に戻って!ここベットじゃないよ!」

 

「ふふふふふ、何を言ってるんですか先輩?ここにふわふわな枕があるじゃないですか」フニフニ

 

「んんっ、ののちゃん、それ、私のおっぱいだよ~」

 

「おい、ここ食堂だぞ?」

 

何故かこの時なーちゃんの声がとても良く通りました。

 

「「「「はっ、私は何を?」」」」

 

「おまえら…」




なんと、これ前話から30分も経ってないんですよ?恐るべき会話率。

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第5話も語りたい

各々夕飯を食べた後はそれぞれの部屋に戻っていった。

今はなーちゃんと私はパソコンで必要なものを購入している。

 

「シャンプー類はどうするよ?」

 

「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?どうせよく分かりませんし」

 

「じゃあ同じのを買い足しとくな。着替えはどうするよ?」

 

「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?」

 

「良くねぇよ、テキトーに選んどくからな。

他、なんか欲しいもの無いのか?」

 

「なーちゃんのを使わせてもらってもいいですか?」

 

「そのセリフ三回目だぞ?

…おいらら、まさか疲れたか?」

 

「…ええ。フフっ、こんなに沢山の方とお話出来る機会なんて今までありませんでしたから。今、控えめに言ってかなり幸せです」

 

「そうかいそうかい。せいぜい飽きないように気をつけるんだな。

通販は明日にしてもう寝るか?つっても風呂には入ってもらうけど」

 

「寝ます。お風呂は嫌いなので体と服を創り直しますね」

 

「無駄使いにも程があんだろ。

私は風呂はいってから寝るから。…おやすみ」

 

「はい…おやすみなさい…」

 

 

加奈side

 

なーちゃんこと加奈は湯船に漬かりながら今日来た新入生を思い返していた。

 

 

ったく、何がどうなったらあんな人間みたいなバケモンができあがんだよ。

 

色んなことが知りたいから脳を創り変えるとか、風呂入りたくねぇから体創り変えるとか。

 

そのくせ寂しがりで話したがりだから知ってることでも聞いてくるし、なんか…めっちゃ懐いてくるし。

 

「しかも無駄に可愛いから悪い気がしないのがなんか気に入らん」

 

やべっ、声にでてたか。聞かれてなきゃいいが…

いや、聞こえてなくてもあいつなら分かっちまうのか。

 

…今後私はどうすりゃいいんだ?プライバシーはどこに行ったんだよ。ららのさじ加減か?

 

暴力で解決不可って面倒すぎるなおい。

 

いやまて、一発で殴り殺せば――

 

無理だな。確実に無理だ。

私は別に殺したいほどららのことは嫌いじゃねぇし、あいつのアニオタ具合を見るに、っつか聞くに自分のバックアップくらい作ってそうなもんだ。

 

加奈は夕食中にららがののとしていた最強キャラ談義を思い出す。

 

 

 

 

「最強と言ったらやっぱり物理法則に直接干渉する能力が一番です。温度を操れば相手を焼くことも凍らすことも可能ですし、どこぞの学園都市最強みたいにベクトルを操れば物理攻撃完全防御も可能です。圧力を操れば相手を破裂させたり、流体を操って溺死させることも可能です」

 

テーブルに着き、カレーライスを食べながら浄花町ののはららに言い放つ。

 

「確かにその通りですが、あえて私はそれを否定します。

最強と言えばどんなに、どれだけ、とことん死んでも負けにならない不死系統の能力だと思います。これは死を負けと定義づけた場合の話ですが。

でもまぁそれでも、様々な作品に様々な不死性を持ったキャラがいらっしゃいます。

粉々に破裂しても即座に元通りとなる超再生、肉体を流体に変化させることで物理攻撃を受け流す流体化、大量のクローンや人形に死後乗り移る肉体の大量生産、物語の都合で何度死んでも、倒れても生き返り立ち上がる主人公。

これらを倒すことが容易ですか?」

 

「容易ではありませんが、不可能ではない。それが私の以前出した結論ですよ。

世界中の神話などには不死性を持つ英雄、怪物が多数存在します。

それらを死に至らしめるのはいつもそれぞれの不死性に対する特効性能をもつ武器やアイテム、時には手段だったりします」

 

「浄花町ののさん、ひとついいことを教えて、語り聞かせていただきます」

 

「はぁ、?」

 

「不死の生物が死に至らしめられるのは全て、あれもこれもどれもそれも、殺したものにより強い怪物性、英雄性を持たせるためのものです。不死の生物を殺した英雄は時の人ならぬ時の英雄となり、不死の英雄を食らった怪物は最強の怪物と名を轟かせる。つまりは物語上必要なことです。

まぁ、現代で不死殺しをするのは結構簡単なんですけどね。

有名どころでいうなればプラナリアがそうでしょう。何度切られても、別れたそれぞれの肉体が不足分を再生して個体数を増やす。

そんなプラナリアだって、切られても死なない生物だって、大抵は煮込めば死にます。ヒドラもアキレスもヘラクレスも八百比丘尼も、トロトロになるまで煮込めば死ぬでしょう。

ちなみに、これはあまり知られていないことですがプラナリアは切っても死ぬことが割とあります。生命力が足りなくて再生がしきれずに死に至ったりとか。

これは有名なのでののさんもご存知かもしれませんが、不死を精神的にも肉体的にも一番殺すのは時の流れです。

百年弱生きる人間が、ひょんな事に切られても、茹でられても、煮込まれても死なず、突けるような弱点もない完全で完璧な不老不死を手に入れたところで、どうでしょう?

今の戦いは確実に勝てます。何せ相手が身体能力や異能が圧倒的に勝っていたとしても、不老不死というだけのことで寿命という絶対的格差が生じるので、極論相手が死ぬまで殺され続ければ戦いに勝てます。

しかし、数万年、数億年、数兆年が経過すればどうでしょう?人類は滅び、全く別の知的生命体が地球に住み着いたとして、自身が収まる場所はあるのでしょうか?人間を食物とする生命体がやってきたとしたらどうでしょう?

これでは不死の人間というのはただの的であり、栄養源でしかありません」

 

「あの、それだけ聞いてると不老不死を最強というあなたの意見と矛盾するのでは?」

 

「おや、そうでしょうか?少なくとも今話した不老不死の人間は、相手に寿命や経年劣化がある限り戦いに負けることは無いでしょう。闘いには勝てなくとも、戦いには勝てるでしょう」

 

「はぁ、なんだか全てその通りな気がしてきました。

でしたら、次は属性別で誰が最強かという話をしましょう。まずは火属性からです」

 

「いいですねぇ。では私は――

 

その後、四時間ほど話した、語らったところでののが力尽き、姫乃が抱き抱えて部屋まで運んで行った。

 

 

 

 

 

 

あいつら仲良しかよ。最初の仲悪げ、というかののの一方的な敵意はどこに行ったんだよ。

 

のののアニメ好きは小鳥先輩から聞いてたけどららもそうなのか。…こいつらの名前揃ってひらがな二文字だからめっちゃ読みづらい、もとい言いづらいな。

 

私もアニメとかはそれなりに見るけどあいつらには全くついていけなかった。ってかららのはアニメとかじゃないのか。

 

不老不死。

多くの人間の夢であり、多くの人間が追い求めた肉体の理想形。

 

多分、ららなら創れるよな。

 

限界が未知の創造能力。

私の料理が作れるだけの能力の完全上位互換ってところか。

 

…やべ、考え事してたらのぼせそうだ。

 

 

 

 

 

風呂から出た私は軽く水を浴びてから髪を乾かし、寝巻きに着替える。

脱衣所から出てふとららが寝ているベットに目を向けると、そこには体育座りのように膝を抱きしめるように身を縮めて眠るららの姿があった。

 

「こりゃ、抱き枕も追加かね」

 

「それならなーちゃんが抱き枕になってください」

 

「…起きてたのかよ」

 

「身体を創り直したら汚れ以外に疲労や怪我も無くなることを忘れていました。どうにか寝かしつけてください」

 

「無理だ。目ぇとじて黙ってろ」

 

「さもなければ気になるけどオチがなくて終わらない怪談を延々と語り聞かせますよ」

 

「やめろ。んなもんよりなんか癒されるような話でもないのか?」

 

「どれだけなーちゃんの存在が周囲を癒しているかを語りましょうか」

 

「やめろ。もっとやめろ」

 

「なーちゃんの目付きの影響で未知系の生徒のうち六名が猫派に鞍替えしたとか」

 

「お前と私を抜いた全員じゃねぇか。あと確かののと小鳥先輩は最初から猫派だ。

テキトーなこと言ってんじゃねぇよ」

 

「おっと、バレてしまいましたか。

でもそれでも、姫乃さんの猫嫌いを完全に克服させたのは事実です」

 

「待て、それ私知らねぇんだけど」

 

「ちなみになーちゃんは猫派ですか?子猫派ですか?猫又派ですか?」

 

「全部猫じゃねぇか」

 

「ちなみに私は白猫派です」

 

「せめて今言った三つの中から選べよ」

 

「アルビノの猫の目ってとても綺麗なんですよ」

 

「…そうなのか?」

 

「ええ。赤みのある青系統の色で他のものではなかなか見られない色合いです」

 

「ほーん」

 

「おや、あまり興味が無いのですか?」

 

「いや、普通に寝みぃ」

 

「今夜は私が眠くなるまでは寝かせませんよ」

 

「らら、お前って実はめちゃくちゃ自己中だよな」

 

「今更ですか?

まぁ、ずっと自分以外を中心に置けない旅をしていましたからね」

 

「お前の人生って普通に小説一本かけるよな。多分」

 

「なーちゃんはサブヒロインみたいなキャラしてますよね」

 

「それ聞く奴によってはめちゃくちゃ悪口だから二度と口にすんじゃねぇぞ」

 

「具体的には主人公の親友の恋人になりそうなキャラです」

 

「具体的に言ってんじゃねぇよ。いねぇよ、私を恋人にしたいなんて物好き」

 

「そうでしょうか?既にヤンキーキャラなのに料理が得意で先輩に可愛がられていて、後輩から慕われているという色んなギャップ萌えが発生していますよ」

 

「まて、結局私について語ってくれちゃってんじゃねぇか」

 

「今なら眠れそうな気がするので寝ますね」

 

「おいまて!」

 

「おやすみなさい、なーちゃん」

 

「こらー!」




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第6話さ語りたい

辺り一面を桜の花びらが覆っている。

 

私の眼球を直接包んでいるのでは無いかと錯覚するほどに、視界には桜色が群れを成す。

 

「サクラ、バラ科スモモ属サクラ亜属に分類される落葉広葉樹。

果実であるさくらんぼが食されるほか、花や葉を塩漬けに食べられることもある。

古来から桜の花は日本人に愛され、春に桜の木の下で宴を催す風習、花見は現代でも盛んである」

 

何気なく桜について語ってみると、桜色にヒビが入り、ピピピピという音が聞こえてくる。

 

 

 

目を覚ますと、見慣れない天井がそこにはあった。

 

「…すごくピンクな夢を見ました」

 

「…発情期か?」

 

声が聞こえた方に目を向けるとまるまる一本のバームクーヘンをナイフとフォークで切り分けながら食べるなーちゃんがそこにいた。

 

「なーちゃん、人間に発情期はありませんよ?まぁ正確にはウサギと似たような感じで年中交尾可能なだけですが」

 

「え、まじ?」

「人を『発情期を失ったサル』と称する人がいるくらいです。ウサギやネズミも同様だというのに、人間には自虐癖でもあるのでしょうか」

 

「それは間違いなくあるだろうな。

…なんで私たちは朝っぱらから発情期の話なんてしてんだよ」

 

「私が『(全面サクラで)すごくピンクな夢を見ました』と言ったらなーちゃんが発情期か?と聞いてきたからです」

 

「悪かったな、失言だったよ。

朝メシ食うか?つってもカステラとドラ焼きくらいしか無いけど」

 

「私、基本朝は食べないのでいいですよ。食堂には行かないのですか?」

 

「お前、朝っぱらから小鳥先輩にメシ作らせんのかよ。鬼だな」

 

「従業員の人とか居ないんですか?」

 

「居ねぇよ。あれは先輩がやりたくてやってんだよ」

 

「なーちゃんが木刀で脅したとか、ののさんが包丁で脅したとかではなく?」

 

「むしろののはやめてほしがってる。私にだけ作ってーって」

 

「容易に想像つきますね。微笑ましいです」

 

「そうだな。

…あ~らら、カーテン閉めてくれ。今すぐ、急いで」

 

「…?はい」

 

私がカーテンを閉めて数秒、なーちゃんが窓ガラスの前に仁王立ちして何かを待ち受ける。

 

なーちゃんが両手を左右に広げた瞬間、窓ガラスに人型の穴が開き、穴の分のガラスは人型を保ったまま、カーテンを巻き込みながら天井に突き刺さる。

 

「…なるほど、貴女でしたか」

 

襲撃した人物を私は知っている。というか、昔出会っている。

 

「お久しぶりです。人類最強、絶対的百獣王者(ぜったいてきひゃくじゅうおうじゃ) 子猫(にゃんこ)さん」

 

赤いショートヘアに茶色の眼、左目に片眼鏡をかけていて首と左足には動物用の首輪のようなものを身につけて髪をひと房紫のリボンで括り、猫をモチーフとしたスリッパを愛用し、ワイシャツ一枚を第3ボタンまで空けて身につけた少女を、

この属性を盛りまくったにも関わらず露出の多い服装をした少女を私は、私の創り変えた脳を使わずとも知っている。

 

「ん、久しぶり。ららら」

 

「一つ多いですよ。私の名前はららです」

 

「らららららー♪」

 

「おい子猫(にゃんこ)、私の肩の上で歌うな。降りろ」

 

子猫は加奈の肩に肩車のような姿勢で乗っていたのではなく、左肩の上に片足立ちをしていた。

 

子猫は大人しく降りると加奈の背後から、今度はおんぶのような姿勢になるように抱きついた。

 

「しばらく会わないうちに随分とお可愛いらしくなられたのですね」

 

「子猫、お前ららとあったことあるのか?」

 

「うん。ららは私の恩人。私を人の身に留めてくれた」

 

「そんなことしていませんよ。ただ拘束具を創って差し上げただけです」

「拘束具?」

 

「そう、彼女の身につけているものは全て私の創った、猛獣を縛り付ける拘束具です。

 

絶対的百獣王者 子猫 18歳

未知系幻獣科 10年生

隔離高等学校の創設期メンバーの一人で、この学校が出来る数ヶ月前、彼女が八歳で私が六歳の頃にインドで出会いました。

その頃彼女は持って生まれた能力、世界中に存在する人間の創作生物の力を十全に使えるという能力を使いこなせずにいた。

そこを私が能力に制限をかけるアイテムを複数、用意することで彼女の能力を人間の限界値程度まで押さえ込んだ。

 

明確な基準があるにはありますかが複雑すぎるので多くは語りませんが、子猫さんやぴーちゃん先輩はギリギリ人間で、私やなーちゃんは人外とされます。人外には人権が適用されない他、様々な制限がかけられることがあります。

例えば、なーちゃんの食堂での料理を人に振る舞うことの禁止とか。

 

そんな人外でない人間の中での最強が絶対的百獣王者 子猫さん」

 

「なっげぇよ。短く」

 

「私みたいなバケモノを除いた中で絶対的百獣王者 子猫さんが最強ということです。拘束具込みですが」

 

「らら、最近は絶対獣(ぜったいじゅう) 子猫(にゃんこ)って名乗ってるからそっちで呼んで」

 

「略してより中二臭くなりましたね」

 

「中二違う。かっこいいの」

 

「ではそういうことで」

 

「…そういやらら、子猫の服装っておまえが作ったんだよな?」

 

「はい。そうですよ?」

 

「じゃあこの裸ワイシャツとか片眼鏡とかはお前の趣味か?」

 

「違いますよ。片眼鏡は子猫さんの注文ですし、ワイシャツは中に何も着てはいけないなんて縛りは無いですし」

 

「ららと加奈、仲良し?」

 

「子猫、ちょっと空気読もうか」

 

「そういえばなーちゃん、子猫さんのことは先輩呼びじゃないんですね」

 

「加奈、会ってからしばらく年下だと思ってた。その名残り」

 

「悪かったよ」

 

「まぁなーちゃん高身長ですし」

 

「加奈は全身快適肉枕」

 

「肉枕…

なーちゃん、ずっとおんぶに立ちっぱで疲れませんか?」

 

「めっちゃ疲れた。降りろ」

 

「やーなの。仕事で疲れたの。癒して」

 

「と、帰ってくるといつもこの通りだ」

 

ドサッ、と子猫をおんぶしたままベッドに倒れ込む。

 

「帰ってくるって、子猫さんは何処で何をしていらしたのですか?」

 

「ららなら知ってるでしょ」

 

「それでも貴女から聞きたいのですよ」

 

「ららはこういう奴だ。諦めろ」

 

「アメリカで、モン狩り?」

 

「なるほど」

 

「いやっ、それでいいのか?」

 

「子猫さんには語彙力なんかよりも言葉足らずな可愛らしさを期待してますので」

 

「お前がそれで満足なら何よりだよ」

 

「ん、らら、これ美味しい」

 

「それは良かったです。カップから全てmade in 私 ですよ」

 

「ふーん。ららの優しい味がする」

 

「…ららに優しさなんてあったか?」

 

「私の少ない優しさを物理的に溶かし込んだ逸品ですから」

 

「つまり今のお前、めっちゃ優しくねぇじゃねぇか」

 

「人間に優しさなんて、ありませんよ」

 

「お前が言うとただでさえ重いのにさらに重くなる場所で区切るんじゃねぇよ」

 

「加奈が優しく突っ込むおかげであんまり重くない。さすが」

 

「なーちゃんは癒し系ですからね」

 

「ちげぇよ」

 

「でもみんな、加奈に癒されてる」

 

「子猫、お前泣かすぞ」

 

「その時が加奈のデレるとき」

 

「この場合は私はどちらに着けばいいのでしょうか」

 

「らら、お前は間違いなく私の敵だ」

 

「そんな酷いです。私と貴女の仲ではありませんか」

 

「昨日会ったばっかだろうが」

 

「らら、昨日来たの?」

 

「ええ、そうですね」

 

「ふーん、結構遅かったんだね。なんかしてたの?」

 

「ここから出られなくなる前に世界遺産などを巡っていました。最後は日本の秋葉原です」

 

「アキバは世界遺産じゃねぇよ」

「…楽しかった?」

 

「ええ、楽しかったですね。またいつか行きたいです。今度はなーちゃん達も一緒に」

「そう。なら良かった」

 

「ま、出られねぇんだけどな。私等みたいな人外は特に」

 

「私が例外なだけで人間でも出られない」

 

「そう言われると、やっぱり出てみたくなりますよね。学校がどんな対応をするのかとか、世間は動くのかとか気になります」

 

「興味はないではないがお前一人でやれよ?」

 

「おや、ルール違反はお嫌いですか?ヤンキーなのに」

 

「ほっとけ。生憎と私に世界を敵に回す趣味はない」

 

「私、国なら敵にしたことあるよ?」

 

「あ、私もありますね」

 

「なに、お前らバカの?」

 

「だって、ららを虐めてたからつい」

 

「普通スナイパーライフル向けられたら怒りますよね?」

 

「まさかの共犯かよ。そして普通の奴はスナイパーライフル向けられたら怒る前に撃たれて死ぬ」

 

「頭が弾けるのってとても痛いんですよ」

 

「やっぱ手に入れてやがったか。不老不死」

 

「私の細胞の中には完成寸前の私が27京3598兆9807億4268万4457人、入っています。分かりやすく言うなら残機が約27京あるということです」

 

「さすが人外。人間では出来ないことを平然とやってのける」

 

「…人外でもこんなことやらかすやつはららくらいだと思うぞ。あと子猫、いい加減降りろ」

 

「やーだ。…加奈、シャンプー変えた?」

 

「…だったらなんだよ」

 

「いい匂い。半日くらい寝れそう」

 

「まさか半日このまま寝る気か!?」

 

「お昼に起こして。……スゥ」

 

「おい!?子猫!?」

 

「…私はぴーちゃん先輩と本屋さんに行ってきますね」

 

「おいらら!?んな事より助けろー!」

 

「何か買ってきた方がいいものありますか?」

 

「…テキトーに映画を頼むわ。…ホラー以外で」

 

「……分かりました」

 

「その間はなんだ!?」

 

 



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第7話と語りたい

 

「なーちゃん、子猫(にゃんこ)さん、『ファンタジック ヒューマン』と『グッドイーター』どっちを観たいですか?」

 

「おい待て、帰って来て早々、何の話だ?」

 

「ぴーちゃん先輩にオススメして頂いた映画を二つほど購入してきました。どっちを観たいですか?」

 

「らら、それどっちも駄作」

 

子猫(にゃんこ)は観たことあんのかよ…」

 

「そうなんですか?ぴーちゃん先輩のイチオシだったのですが」

 

「小鳥先輩のセンスってどっかおかしいからなぁ。ちなみに子猫、どんな映画なんだ?」

 

「らら、ネタバレしていい?」

 

「まぁ、ネタバレ程度私には大した影響ありませんが」

 

「『ファンタジック ヒューマン』は全身を植物に改造されて動けなくなった人間が、人類が滅ぶまで人間観察をするだけの世界一シュールなフルCG映画。

『グッドイーター』は実際に男が昆虫や魚の内臓のミンチをパンに挟んで必死に笑顔を作りながら食べ続ける飯テロの対義語とまで言われた18禁映画。こっちは一切CGを使ってない」

 

「なんだその検索してはいけない動画みたいな映画」

 

「面白そうですねなーちゃん。まずはグッドイーターから見ましょう」

 

「おい待て。私たちこれから昼飯食うよな?」

 

「はい。…あぁ、そういう事ですか。食堂のモニターを使って大画面で観たいんですね?」

 

「んなわけねーよ!どこの前衛的なダイエットだ!」

 

「食欲は失せて映画も楽しめる。一石二鳥?」

 

「子猫、さっき二つとも駄作っつったよな?」

 

「駄作には駄作なりの楽しみ方がある」

 

「最強がすぎるだろお前!」

 

「そんなに言うのでしたらファンタジック ヒューマンを観ますか?」

 

「モニターに流したとして誰が見るんだ?」

 

「開始数分の改造シーンは見応えあり」

 

「…残りの一時間以上はどうした」

 

「………盛大に爆ぜる」

 

「それ多分ラスト数分だよな?」

 

「究極の放置プレイ映画」

 

「それは視聴者か?それとも男の方か?」

 

「あ、なーちゃん、そんなに言うのでしたらこちらはいかがですか?『AV-アニマル ビデオ』」

 

「なんだそのジャンルみたいな名前」

 

「男女が性欲に身を任せ、獣の如く盛り狂う様をプロの俳優が演じた作品です」

 

「アダルトビデオじゃねぇか!ネーミングセンスやべぇなおい!」

 

「あ、でも15歳未満の人は見れないのでののちゃんやぴーちゃん先輩は観られませんね。残念ですがこれは私たちだけで観ましょう」

 

「なんでその内容で18禁じゃねぇの!?そしていつの時代の男子高校生だよ!」

 

「…らら、高校生って自慰見せ合うの?」

 

「さ、さぁ?でもきっとなーちゃんが言うのですからきっとそうなのでしょう。深く聞いてはいけませんよ?たとえなーちゃんにそのようなことをした過去があったとしても、それを聞かないのが真の良き友人というものです」

 

「深く聞けちゃんと聞け私はそんな現場を見たことも無ければ聞いたことも無いしオナ…自慰を見せるような趣味も無い!」

 

「そうなんですか?でも私は見たいので遠慮せずにして下さって構いませんよ?」

 

「らら、変態」

 

子猫(にゃんこ)さん?私は(さなぎ)にはならなければ成虫にもなりませんよ?」

 

「そっちじゃない。えっちぃってこと」

 

「あぁ、そちらでしたか。子猫さんはどうですか?」

 

「蛹にもなれるし、成虫にもなれる」

 

「なるほど、変態ですね」

 

「いやつっこめよ。そして子猫、なんだその言ってやったぜみたいなニヤケ顔。もうすこし自分の顔の状態考えろ」

 

「片眼鏡って、両目に付けたらすごくかっこよさそうですよね」

 

「急にどうした脳みそでも蛹になったか?」

 

「いえ、中二的かっこよさを放つ片眼鏡を両目に付けたらかっこよさも二倍になるかなと。

そして私の脳は蛹のごとくドロドロビシャビシャです。割ってみますか?」

 

「何言ってんだ?蛹ってガッチガチだろ?」

 

「加奈、それ違う。外側は硬いけど、中は液体。外はカリカリ、中はトロトロ」

 

「まじ?つーかなんで美味しそうな表現を足した?」

 

「加奈なら美味しく調理出来るかなって」

 

「出来るだろうけどしたくねぇよ」

 

「なーちゃん、蛾の蛹のチャーハンなんてどうですか?」

 

「パラパラチャーハンにアクセントを足そうとしてんじゃねぇよ。餡掛けチャーハンパイでいいじゃねぇか」

 

「餡掛けチャーハンパイ、美味しそうですね。今日のお昼はそれにしましょう」

 

「らら、それ誰が作るの?」

 

「えと、ぴーちゃん先輩でしょうか?」

 

「小鳥、今日はおやすみ。本屋さんに行った日は部屋から出てこない」

 

「それは困りましたね。なーちゃん作ってくれません?」

 

「…まぁ、具材に文句言わねぇならいいけどよ」

 

「灯油の石油煮込みを完食した私です。パイ生地に電球を使う程度では動じませんよ」

 

「まて、お前の過去が気になりすぎる」

 

「ワイシャツとパーカーの衣服炒めは美味しかったですねー」

 

「まともな飯食ってきたんだよな!?」

 

「さすがに冗談です。アキレス腱のかき揚げなんて食べたことありませんよ」

 

「…それはどっちだ?」

 

「らら、三色眼球団子は美味しかったよ」

 

「…待ってろお前ら、私が世界最高のフルコースを今日の昼飯にしてやる!」

 

なーちゃんは立ち上がり、部屋から飛び出していきました。

 

 

「子猫さん。なーちゃんの扱い、見事な腕前です」

 

「ららこそ。二日目とは思えない腕前」

 

 

「誰ですか綾美加奈を調理場に立たせたのは!速やかに名乗り出なさい!って絶対獣、まさかあなたのしわざかしら!?」

 

ららと子猫が会話を再開してすぐのこと、開けっ放しにされたドアから一人の女子高生が駆け込んで怒鳴りあげる。

鋭い目付きに整った顔、セーラー服に黒髪ロング、ステンレス製の木刀(鉄刀?)、右腕には風紀委員と書かれた腕章が付けられている。

 

「…子猫(にゃんこ)さん、どなたですか?このいかにもアニメから転校してきましたみたいな風紀委員さん」

 

「私と同じ10年生。つまり創設期メンバー」

 

「ふむふむなるほど。

軍事系殺戮科10年生、平和のために全てを殺す正義の体現者、隔離高校を管理する組織、『委員会』の一人にして風紀委員長。名を小野塚(おのづか) 彩湖(あこ)

25歳独身、趣味はぬいぐるみ作りと料理。17歳から19歳にかけて中二病発症。ゴスロリに身を包み、手作りのグロテスクなうさぎのぬいぐるみを抱いて風紀委員としての活動を行った過去は最大級の逆鱗。

攻撃した対象のダメージを自在に操作できる異能をもち、核爆弾で死者を出さないことも、デコピンで殺すことも自由自在。

身体能力にもすぐれ、文字通り一騎当千の戦力として戦争に参加した経験から人に頼ることを苦手としている。

ところでそのセーラー服はコスプレですか?」

 

「ぶっ殺す!!」

 

「ちょ、なんですかいきなり。ここは学園異能バトルものアニメではありませんよ?確かになろう系主人公を自称したことはありますが冗談半分面白半分ですしそもそも私ってバトルキャラではありませんし貴女の可愛らしいピンク色のリボンが付いた白いパンツなんて見ていませんし大きな胸を締め付けるようなスポーツブラも見ていませんし黒髪ロングにはゴスロリよりもメイド服の方が似合いそうだなんて思ってもいません。ええ本当です。シミ一つない美肌を活かし水着撮影をさせて欲しいだなんて以ての外ですとも」

 

「ぶっっ殺す!!!」

 

彩湖はステンレス製の木刀をらら目掛けて振り下ろす。ららはすかさず手を前に出し、スライム状のなにかで木刀を押さえる。

 

「なんでららは煽るの?」

 

「ちょ、たんまですっ!流石にステンレスで叩かれたら頭が割れます!知ってますか人って死んだら死ぬんですよ!?」

 

「知るか死ね!!」

 

「ちょー!?子猫さん助けて下さい!なんですかこの不法侵入強盗殺人鬼さんは!25歳にもなってセーラー服なんて恥ずかしくないんですか!?」

 

「黙って静かに死ね!」

 

「断末魔も許してくれないんですか!?そんなあなたには夜眠る時延々と死者の嘆きが聞こえることでしょう!」

 

「全部殺す!」

 

「なんでこんなバーサーカーに風紀委員なんて任せたんですかね!現実に権力握った風紀委員なんて居ないんですよアニメと現実の区別をつけてください!」

 

「黙れ黙れ黙れぇぇええ!!」

 

「彩湖、うるさい」

 

ドスン、と子猫は彩湖をベッドに向けて蹴り飛ばす。

 

「邪魔をするな!」

 

「さすがは最強ですね。

とりあえず、女性を止めるならこれですよね」

 

ららは彩湖の身体を中心にロープを生成し、亀甲縛りにしたあと手錠、足枷を付ける。

 

「その手錠と足枷は10トンほどの重さです。あまり暴れると綺麗な肌に傷がつきますよ」

 

「な、縄を解け!下劣な!」

 

「…安らかに黙ってください。普段は優しい私でも、殺されそうになって怒らないほど温厚でも無ければ殺さないほど利口でもないのですよ」

 

「ひぃっ!」

 

「らら、目、怖い」

 

「お、ほんとですか?目つき悪い系ヒロイン目指せますかね」

 

「閲覧注意系ヒロインなら、ワンチャン?」

 

「とりあえずアニメに出られるようなヒロインにはなれなさそうですね」

 

「まずららがアニメと現実の区別を付けるべき」

 

「ブーメランが遠回りして帰ってきました」

 

「ブーメランは全体攻撃」

 

「子猫さん?なに…を…

なーちゃんに清姫さん、廊下で倒れてどうかしましたか?」

 

「清姫やめれ~ヤンデレじゃない~」

 

「金髪はキャラ作りじゃない…金髪はキャラ作りじゃない…」

 

「あっ、なーちゃん!チャーハンが散らかってるじゃないですか!」

 

「隠し味は…充電ケーブルのソース…」

 

「綾美加奈のチャーハン!?遅かった…か…」

 

「子猫さん、お昼ご飯にしましょうか。鶏としめじのクリーム煮なんてどうです?」

 

「らら、料理出来たの?」

 

「ずっと一人暮らしだったので。ぴーちゃん先輩程ではありませんがそれなりには出来ますよ」

 

「楽しみにしてる」

 

「何言ってるんですか?手伝って頂きますよ」

 

「料理、したことない」

 

「切ったり洗ったりだけですから大丈夫ですよ」

 

「がんばる」



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第8話に語りたい

 

かくして人類は滅び、それでも尚彼は観察を続ける。

 

fin

 

 

「…おい子猫(にゃんこ)、この駄作をどう頑張ったら楽しめるんだ?」

 

「ファンタジック ヒューマンは、自分がこの状態になったらどうなるか考えながら観る。

植物となって人類が滅亡するまでを観察して、かつての同郷の人が死んでいくのをどんな思いでやり過ごすのか、とか」

 

「さぁなーちゃん!次はグッドイーターです!ポップコーンの貯蔵は十分ですか!」

 

「観ねぇし食わねぇよ!五万歩譲ってさっきのは良くてもそれは観たくねぇよ!…らら、お前なんでそんなにノリノリなんだよ」

 

「ファンタジック ヒューマンは素晴らしい作品でした!ピーちゃん先輩のおすすめへの信頼度は鰻登りです!」

 

「お前どんな頭してんだよ」

 

「創り物の頭ですけど」

 

「らら、それなら一人で見て。私も流石にご飯食べたあとにグッドイーターは見たくない」

 

子猫(にゃんこ)が拒否るって相当だな」

 

「嫌ですよ。一人でなんて寂しいじゃないですか」

 

「ならののと一緒に観ればいい。あの子はグロとか平気だから」

 

「そうですねぇ、なーちゃんにあまり無理をさせる訳にもいきませんか。たしかピーちゃん先輩と同室でしたね」

 

「おう。馬に蹴られないようにな」

 

「おや、なーちゃん心配してくれるんですか?」

 

「ちげぇよ。ののの不機嫌がこっちにまで来るのが面倒なだけだ」

 

「それは残念。お二人にこのAVを渡しておきますのでご自由に使って下さいね」

 

「らら、私と加奈はそういう仲じゃない」

 

「ふふふっ。おじゃま虫は退散致しましょう」

 

 

 

 

………

 

 

 

 

コンコン

 

「ののさん、いらっしゃいますか?」

 

「居ません。居ませんから帰ってください」

 

「居るじゃないですか。私の目の前の全裸でピーちゃん先輩のベッドで眠っている黒髪のおかっぱ幼女は何方なのでしょうね?」

 

「そんなことをしていいのは私だけです。…何しに来たんですか」

 

「とある映画を見ようと思って誘ったらなーちゃんと子猫(にゃんこ)さんに断られてしまいまして。一人じゃ寂しいので一緒に観ましょう」

 

「…まぁ小鳥先輩も居ないのでいいですけど」

 

「そういえば確かに居ないですね。午前中は一緒に本屋さんに行きましたが、今はどちらに?」

 

「今なにか聞き捨てならないことを言った気が…

まぁいいですけど。漫画に影響を受けたらしく軽トラックでまだ見ぬロマンを探しに行ってしまいました。私を置いて」

 

「そういえば少年漫画を大量に買ってましたね」

 

「原因はあなたでしたか」

 

「まぁそう怒らないでくださいよ。小さな女の子が全裸で包丁二刀流なんてしても面白すぎて顔面蒼白になってしまいます」

 

「あなたを青あざだらけにして青ざめさせてあげます」

 

「痛そうですね。やめておきましょう。いくら私の残機が27京3598兆9807億4268万4457あったとしても、死ぬ時はちゃんと痛いんですから。毎回肉体がリセットされるので死にすぎて麻痺するみたいなこともありませんし」

 

「ちゃんと痛めつけてあげるのでご安心ください」

 

「そんなイタいこと言ってないで仲良く映画観ましょうよ。グッドイーターというキャラメルでひれ伏しブルな作品だそうですよ」

 

「…コミカルでフレキシブルでは?」

 

「もっとちゃんとツッコミ入れてください。はら、さんっはい」

 

「いえ、やりませんから。そんな自爆確定な演技を私がすると思いますか?」

 

「ギャップ萌えってあるじゃないですか」

 

「本人に直接求めないでください。あれは自然発生するものです」

 

「清姫さんののんびり変態キャラとかですか」

 

「あなたは姫乃のあれに萌えるんですか?軽々しくドン引きです」

 

「私は今『軽々しくドン引き』というパーフェクトワードに燃えてます。熱いです」

 

「あなたはギャップ萌えとは無縁そうですね」

 

「まぁ、ある程度なんでも出来ると大抵の事はギャップにはなりえませんから。

ギャップ萌えといえばやはりピーちゃん先輩なのですかね。外見、年齢共に十二歳で軽トラックの運転をしてらっしゃいますし」

 

「ええ。あれは正直私も驚きました。…かっこよかったなぁ」

 

「それはそれは、微笑ましい限りですがいい加減グッドイーターの内容が気になってきたので観ましょう。ポップコーンとアイスコーヒーを準備してきましたよ」

 

「グッドイーター…?たしか、小鳥先輩が絶賛していたような。なんでも、制作した方はきっと『命を貰う』ということを誰よりも理解してる、と」

 

「ほう。より一層気になったので観ましょう」

 

「えぇ」

 

 

 

 

あああアあアああアァァァァ……

 

Fin

 

 

 

 

 

「す、凄まじかったですね」

 

「…はい。なーちゃんと子猫さんが拒否したのも納得ですね。これは誰彼構わず見せられる内容ではありません」

 

「Gの入ったコロッケって、実際どうなんでしょうね」

 

「昆虫食は経験がありますが、よく分かりませんね。分かりたくもありません」

 

「昆虫食…、ちなみにどんな味なんですか?」

 

「種によって異なりますが、割と淡白な味がしましたね。大半が美味しくはありませんでしたが、時々あたりもあります。まぁ、見た目がアレなだけにもう一度食べたいとは思いませんが」

 

「聞いといてなんですけど予想外にリアルな感想で」

 

「軽々しくドン引き、ですか?」

 

「分かってて言わないでください。恥ずかしいじゃないですか」

 

「それを言うなら人の前で全裸のあなたの方がよっぽど恥ずかしいですよ」

 

「小鳥先輩以外の人間なぞ有象無象。見られてもなんとも思いません」

 

「気持ちは分からなくもないですが、私の場合肉体そのものを何度か作り直してるので周囲の人間ではなく私が有象無象という認識です」

 

「なんとも寂しそうな人生ですね」

 

「だからこうして遊びに来てるんです」

 

「わたしはあなたを友達とは思ってないですけど」

 

「私もそうですよ?話のわかる年下の女の子としか思ってません」

 

「…私が言うことではないでしょうけどそれ、人によっては本気で泣かれますよ」

 

「そんなこと語られずとも分かっていますとも。人を傷つける言葉を使うときはしっかりと状況と言葉を選びますよ」

 

「選んだ末に小鳥先輩を泣かせたのですか」

 

「可愛い子の泣き顔を見たいと思うのは当然のことでは?」

 

「チッ。

…不覚にも同感してしまいました」

 

「それにあれはすぐに治るところを突いたので見た目よりも遥かにダメージは少ないですよ」

 

「はあ。…人として終わってますね、お互い。なんで私たちみたいなのにすごい異能が備わるんでしょう。もっとまともな方にこそ備わるべきだと思います」

 

「備わったからこそ、人から外れたのでしょう。私の文字通りなんでも創れる異能に、ののさんの愛を操作する異能。そんなもの持って産まれて歪まないなんて、それこそ歪です。そんな私たちからしてみれば、感性はともかく比較的普通なぴーちゃん先輩やなーちゃんがどうしようもなく魅力的なんです」

 

「私から見れば、あなたも絢美先輩も大差なく見えるんですけどね」

 

「恋は盲目というやつですね」

 

「ちょっと違う気がします。言うなれば…目くそ鼻くそ?」

 

「せめてどんぐりの背比べと言ってください」

 

「それこそ大差ないでしょう。皆等しく踏み潰されて終わるんですよ」

 

「比喩ではなく物理的に潰すつもりでしたか。…なんで私たちは自分たちの人間性について話してるんでしたっけ」

 

「さぁ。あなたはただの映画を観に来ただけでは?」

 

「そうでしたそうでした。どうです?実際に昆虫食を経験してみませんか?」

 

「いえ、遠慮しておきます。あなたが持ってきたポップコーンでおなかいっぱいですので」

 

「それは残念。まぁ昆虫食は私たちで語らうほどのものでは無いのでいいですけど」

 

「用が済んだらのなら帰ってください。予定外に時間を盗られたおかげで私は眠いんです」

 

「それなら仕方ないですね。…裸で寝るのはいいですけどそれで体調を崩さないようにお気をつけて」

 

「余計なお世話です」

 

「では」

 

 



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第9話ね語りたい

 

「あいつ、朝っぱらからなにしやがった」

 

白、白、白。

 

私こと絢美加奈が目を覚ますと、辺り一面が白で埋め尽くされていた。

 

原因と思われるららは……

 

「マジごめんなさいなーちゃん。いやもうほんと、この身を自由に犯し尽くしていいのでお説教は勘弁してください」

 

どうしようもなく綺麗な土下座をしていた。

 

「おいらら、何をどうしたらこうなんのか吐きやがれコラァ!」

 

「いえ、えっと、その…」

 

「アァ?」

 

「ちょっと…その…ソシャゲのガチャで大爆死かましましてですね」

 

「ほぅ?」

 

「溶かした額が八桁にまで至りまして…」

 

「はぁ?」

 

「もうこんな世界滅べとか思ったら、ちょっと能力が暴走しちゃいまして…

かろうじて隣のベッドだったなーちゃんは守れたのですが…」

 

「…もうツッコンでいいか」

 

「…どうぞ」

 

「馬鹿だろお前!なんだよ課金額八桁って!八桁つったらあれだろ!?一、十、百、…千万!?やめろよそんなクソゲー!その金どっから出したんだよ!んでもって世界滅ぼしたぁ!?他のバケモン共はどうしたんだよ!世界滅ぶ程度で死ぬのか!?」

 

「いやまぁ、所詮人間なんて世界規模で見れば細菌や微生物と同じようなもの。土や岩と同じ構成物質であり滅亡対象だということでしょう」

 

「ことでしょう。じゃねぇよ!これからどうすんだよ!」

 

「どうするも何も、どうしようも無いでしょう。世界を創り直すにしてもそのためには世界と世界で無い部分の境目を理解し、創らねばなりません。そうしなきゃ穴の空いた風船のようにみるみる縮んでしまいますから。

創れるものに限界がないというだけで私の脳はそこまで万能ではありませんよ。スパコン程度の演算速度すらもなければ記憶力も容量もありません」

 

「いやほんと、どうすんだこれ。地面の材質もよくわからんが食いもんはどうにかなるとして、いやほんと何したらいいんだ?」

 

「仕方がありません。私となーちゃんで『アダムとイブ』と洒落こみましょう」

 

「洒落こまねぇよ。生産性皆無だろうが」

 

「ペニスなら創れますが、なーちゃんはアダムとイブ、どちらをやりたいですか?」

 

「生産性を創るな。今すぐにでもお前を殺りてぇよ」

 

「てぇてぇですか?」

 

「てぇてくねぇよ。…おい待て、てぇてぇてなんだ」

 

「『てぇてぇ』とは、素晴らしい・最高といった意味を持ち、素晴らしすぎてその感情を表現する語彙力を持ち合わせていない際に使用されます。尊いという言葉を訛らせたもので、掻い摘んで言ってしまえば『萌え』の上位互換です」

 

「…おう、とりあえず私の今の感情はそのてぇてぇとは対義語だ」

 

「どうどう、落ち着いてください。どうどう」

 

「馬じゃねぇよ。蹴り飛ばしてやろうか」

 

「なーちゃんのお尻を無知で叩くのもいいですが、どちらかと言うと犬のように顔を埋めたいです」

 

「やめろ。鳥肌が立つ」

 

「鶏が先か卵が先かって話がありますが、今私たちは鶏な訳ですし」

 

「卵も子供も産む気はねぇよ」

 

「では私が孕みます」

 

「単為生殖くらいお前なら出来るんだろうけど子供も面倒も今増やすな。全部片付いたあとに一人で勝手にやってろ」

 

「でも今暇ですし…。子育てなら年単位で暇をつぶせますよ」

 

「お前今すぐ全国のお母さんに焼き土下座してこい」

 

「その全国のお母さん滅びましたけどね」

 

「よし、焼肉しろ」

 

「自分で肉削いで焼きながら謝るって、どんなプレイですか」

 

「真っ先に焼肉を奢るじゃなくて自分を焼肉にするって発想に至るサイコバカを初めて見たよ。全国のお母さんのの並みに狂ってんじゃねぇか」

 

「でもほら、日本には指を切り落として謝る人もいるみたいですし」

 

「終わってんな日本。んな事しても能率落ちるだけじゃねぇか」

 

「そうなりたくないが為に意地でも能率をあげるんです。結果、プラスマイナスゼロというわけですよ」

 

「極道も楽じゃねぇな」

 

「一部が楽するためにその他大勢が身を粉にして働く。そうして出来るのが文明ですよ」

 

「そんな全人類が目を逸らしたくなるような三分クッキング初めて聞いたわ」

 

「何かと差をつけて競い合い落とし合う差別社会。それこそが一番効率よく優れた文明を創る近道です」

 

「その文明を創る人類、今居ないけどな」

 

「そうでしたね。どうします?ジェンガでもしますか?」

 

「らら、お前には緊張感とか危機感とか無いのか?」

 

「現状ありませんよ。なーちゃんがいますから」

 

「お、おう。真顔でそういうこと言うんじゃねぇ」

 

「あ、いまもしかしてなーちゃん照れました?ねぇ照れました?」

 

「ウザイ黙れ。ドミノにするぞ」

 

「抽象的に脅されると怖いですね。いま危機感がピューピュー出てます」

 

「そのまま萎んでろ」

 

「私は水風船ではありませんよ?…さてはなーちゃん、私を人間だと思っていませんね?」

 

「おう、よく分かったな。その通りだよ」

 

「くっ、私の心が傷つきました。これはなーちゃんのお尻に顔を埋めないと立ち上がれません」

 

「尻に敷いてやろうかコラ」

 

「下から舐めまわしますよ?」

 

「人間ウォシュレットやめろ汚い」

 

「……」

 

「……」

 

「なーちゃん」

 

「なんだよ」

 

「暇ですね」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「……」

 

「なーちゃん、百億円当たったら何しますか?」

 

「今なら積み重ねてピラミッド作るな。

らら、お前無人島に何か一つ持ってくなら何持ってくよ?」

 

「海底まで潜れる潜水艦か宇宙に行けるロケットですね。まだ見ぬロマンを追いかけます。なーちゃんはどうですか?」

 

「ダイニングキッチン。店開いて人を呼んでやる」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「料理に慣れてきた頃にな、ミキサーをいい感じに止めたらみじん切りに出来ると思ったんだよ」

 

「えぇ」

 

「それ以来玉ねぎベースに味を調整したソースが一週間くらい大ヒットしたんだ」

 

「みじん切りには失敗したんですね」

 

「思い出した頃にはひき肉はダメになってた」

 

「ハンバーグを作ろうとしたんですね」

 

「その時に初めて能力が発動してミキサーが合い挽き肉になった」

 

「じゃあハンバーグ作れたんですね」

 

「ああ。それ以来私はミキサーを信用出来なくなった」

 

「ミキサーもまさかひき肉にされるとは思っていなかったでしょうね」

 

「……」

 

「……」

 

「らら、1回限定で押したら5億円貰えるけど性別が変わるボタン、あったら押すか?」

 

「さぁ、どうでしょうね。創りましょうか?」

 

「いや、いま創られても押さねぇよ」

 

「……」

 

「……」

 

「なーちゃん、人生を72年として、それを1日にすると18歳頃の年齢は朝の6時頃だそうです。

それなのにまだ6時前なのにどうしようもなく暇を持て余してる私たちって、どうなんでしょうね」

 

「夜型なんじゃねぇの?」

 

「なーちゃん、あなた天才ですか」

 

「んな事考える暇あんならこの状況どうにかしてくれ」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「なーちゃん、タヌキってネコ目イヌ科タヌキ属らしいですよ」

「…どれだよ」

 

「タヌキです」

 

「らら、お前暇すぎて脳内図書館で立ち読みしてるだろ」

 

「バレましたか」

「……」

 

「……」

 

「…ワニって、子供のワニが鳴いてると大人のワニが寄って来るらしいですよ」

 

「…リンチか?」

 

「欲しかった反応と違う…。ワニの泣き声ってインベーダーゲームの『キュイン、キュイン』って音に似てるらしいです。

だから、ワニに包囲されたくなかったらワニの傍でインベーダーゲームはしない方が良いそうですよ」

 

「らら、ワニ肉のステーキって食ったことあるか?」

 

「なるほど、なーちゃんにとっては撒き餌のようなものでしたか」

 

「食べ放題だな」

 

「あ、でもそこには電源が無いと思われます」

 

「……」

 

「……」

 

「変なメールに添付されたフォルダを開いて、ウィルス感染してケータイが死んだ事がある」

 

「なーちゃん、意外とおバカだったんですね」

 

「件名が『キャベツが職務放棄しました』だった」

 

「ごめんなさい、多分私もそれ来てたら開きました」

 

「……」

 

「……」

 

「まだ学校に来る前の話なんだが、テレビ点けたら『マシュマロGカップ』とか言ってて、母親の胸を本気でマシュマロだと思った私は服ひん剥いてかぶりついた」

 

「…性欲旺盛な子だったんですね」

 

「そこで食欲旺盛って言わないあたりお前だよな」

 

「……」

 

「……」

 

「暇ですね」

 

「ほんとどうにかしろよ、お前」

 

 





世界が無くても小説は書けます!←多分書けてない


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第10話でも語りたい

「暇ですねぇ」

 

「そうだな。いつまでこうしてんだよ」

 

「そうですねぇ、擬似的に異世界転生でもしてみます?」

 

「とりあえず話だけは聞くだけ聞いてやる」

 

「まずこの場に宇宙を創ります」

 

「おう。突っ込まねぇぞ」

 

「具体的には暗い紺色で重力の無い空間を創ります」

 

「星があれば完成だな」

 

「次にでっかい円盤型の土台を創ります」

 

「ん?」

 

「土台の縁に大きな山を創り、塩水で浸します。海の完成です」

 

「おいそれ…」

 

「円盤の中央あたりを盛り上がらせて、大陸が出来上がりです」

 

「まてこら」

 

「最後に24時間周期に出たり消えたりする太陽と月、星を宙に創れば擬似的な世界の完成です。重力は大陸が大きければ勝手に発生します」

 

「天動説じゃねぇか!」

 

「ダメでした?」

 

「ダメに決まってっ……あれ、いいのか?」

 

「ただし生物が全く居ないので一から創る必要があります。アダムとイブです」

 

「却下だ!今と大して変わらねぇじゃねえか!」

 

「やれやれ、仕方がありませんね」

 

「なにがやれやれだよ。それはこっちのセリフだ」

 

「もういっそこのまま一生語らいますか」

 

「無期懲役やめろ」

 

「こんな可愛い子と一生を共に出来るんですよ?」

 

子猫(にゃんこ)だったら百歩譲って良かったけど、らら、お前が相手だと一週間も足らずで精神病む自信がある」

 

「私の話は聞くに耐えないということですか?」

 

「むしろ耳障りだ」

 

「いっそ歌い続けてやりましょうか」

 

「暴力的かつ恐喝的に黙らせるぞ」

 

「根元から絶たれそうな黙らせ方ですね」

 

「大事なのは首を絶つか肺を絶つかだな」

 

「肺を絶つという表現は初めて聞きました」

 

「よく考えたらただの切除手術だけどな」

 

「首は…ギロチンですね」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「……」

 

「あの、なーちゃん。『そうだな』だけ言われると会話が続かないんでなにか喋ってください」

 

「そうだな」

 

「……」

 

「……フッ」

 

「なに勝ち誇るような顔してるんですか。可愛いだけですよ」

 

「あーはいはい、ありがとなー」

 

「なーちゃん?」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん萌えー」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん、私の事好きですか?」

 

「そうだなー」

 

「……」

 

「そうだなー」

 

「なーちゃん、ちゃんと聞いてくれないのなら体液を撒き散らしながら喚きますよ」

 

「…悪かったよ。ちゃんと聞くからせめて普通に泣いてくれ」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「何話そうとしたのか忘れました」

 

「おい」

 

「そうですねぇ、

本屋さんのホラーコーナーに、題名とか何も書いてない、黒いパッケージのビデオが置いてあったんですけどあれ…」

 

「呪いのビデオとかじゃねぇの?」

 

「いえ、仕切り用のダミーです」

 

「お、おう。そっか」

 

「中に何かを入れてきちゃったんですけど、世界滅ぶ前に誰か見たりしましたかね」

 

「多分誰も見てねぇよ。そして何入れやがった」

 

「液晶画面から黒髪ロングの女性が出てくるビデオです」

 

「つまりお前が出てくるビデオか。ホラーだな」

 

「いや、確かに私も黒髪ロングですけど、さらに個体数も増やそうと思えば増やせますけど、画面から飛び出ることも可能ですけれども」

 

「尚更お前以外が出てくる可能性が消え失せたぞ」

 

「貞子さんは私の友達ではあるだけで私は貞子さんじゃありません!」

 

「お前の交友関係どうなってんだよ」

 

「一時期廃校を拠点にしてた時期がありまして。視聴覚室の貞子さん、トイレの花子さん、通学路の口裂け女さん、一年三組のコックリさん、二年四組のコックリさん、五年一組のコックリさん、五年二組のコックリくん、五年三組のコックリさん、五年四組のコックリさんとシェアハウスをして、たまに近所の八尺様が遊びに来てましたね」

 

「コックリくんのハーレムにお前が首突っ込んだじゃねえか」

 

「かろうじて会話が出来たのは花子さんだけでしたね…」

 

「まずなぜ会話を試みたんだよ」

 

「画がホラーテイストなだけで容姿は女の子でしたから」

 

「どこ時空の誰なんだよお前は」

 

「グダグダ時空の楽羅來ららちゃんですよ、私は」

 

「はぁ?」

 

「ではまたいずれ逢いましょう」

 

「ちょ、おい待て!」

 

 

 

……………

 

 

 

「って夢を見たんだよ」

 

「夢オチですか?」

 

「…おう」

 

「へぇ」

 

「なんだよ」

 

「ふふふふふ」

 

 

……………

 

 

 

「って夢を見たんだ。らら、お前心当たりないか?あるよな?吐け」

 

「夢が夢オチで終わると、今この場は夢なのかどうか、分からなくなりません?」

 

「やっぱお前の仕業か」

 

「違いますよ?まだなーちゃんの脳は弄ってません」

 

「そのうち弄るような言い方すんじゃねぇよ」

 

「ちなみに世界はクトゥルフ神話の神格、アザトースの見る夢だと言われています」

 

「やめろ混乱することを言うんじゃねぇ」

 

「ちなみに聖書の神は世界を創るのに七日、使ったそうです」

 

「おう。それは知ってる」

 

「まぁ有名ですからね」

 

「で、いま私たちの居るこの真っ白い空間はどこなんだ?」

 

「世界が滅んだ後の世界じゃないところです」

 

「正夢じゃねえか!まさかお前、ソシャゲで爆死したから滅ぼしたとか言うなよな?」

 

「まさかもまさか、その通りですよなーちゃん。もしかして予知能力でも身につけたんですか?」

 

「んなわけあるか!って言いたいが…」

 

「ありえちゃう人生歩んじゃってますからね、私たち」

 

「ちなみにらら、予知能力持った知り合いとかいるか?」

 

「とある廃校の一年三組のコックリさん、二年四組のコックリさん、五年一組のコックリさん、五年二組のコックリくん、五年三組のコックリさん、五年四組のコックリさんがお持ちになられてましたね」

 

「そこまで正夢なのかよ!

まさか他に貞子と花子と八尺様と口裂け女も居たか?」

 

「え?貞子さんも八尺様と口裂け女さんは居ましたね。…でも、花子さんは居ませんでしたよ?」

 

「ちょっとズラすことで妙なリアリティを出すんじゃねぇよ!」

 

「いやだから違うんですって。なーちゃんがどんな夢を見たのかは理解しましたが、ホントの本当にトイレの花子さんの知り合いは居ないんですって」

 

「マジかよ。ってことは予知夢じゃねぇのか」

 

「それは分かりませんよ?予言なんて外れてナンボなものですから。ノストラダムスの大予言だって必ず当たる訳ではありませんし」

 

「んなオカルトとくらべられてもな」

 

「今この状況こそがかなりのオカルトだと思いますけどね」

 

「ホントそうだな。マジどうにかしろよ」

 

「それが不可能っていうのはなーちゃんの夢の中の私が語っているじゃないですか。これも夢オチで終わることを期待しててください」

 

「夢オチで終わってもそこからまた同じ状況になんのが目に見えてんだよ」

 

「さぁ、分かりませんよ?」

 

「らら、二度あることは三度あるって言葉しってるか?」

 

「なーちゃん、使うタイミング間違ってますよ。今この状況は三回目です」

 

「正確に数えて分析してんじゃねぇよ」

 

「いえいえ、これは重要なことですよ?」

 

「は?」

 

「今の私と次の私がが回数を把握している場合、それは完全に同じことを繰り返している訳では無い。つまりはなーちゃんの体験している無限ループは無限に続く訳では無いということです。」

 

「お、おう。そうか」

 

「まぁ夢のことなのでそれを無限ループというのかは分かりませんが」

 

「そうかよ。

…ひとつ聞きたかったんだけど、らら、お前今回のこれ以外に世界滅ぼしたりしなかったのか?」

 

「ありませんが、どうしてですか?」

 

「ソシャゲなんてしょーもない理由で滅ぼしてんだから今回以外にもやってそうだなって」

 

「ありませんよ?私はそこまで人類に絶望していませんでしたから」

 

「ソシャゲ程度で絶望したのかよ」

 

「昨今のゲームを嘗めてはいけませんよ。どれだけの人間を破滅に導いたことか」

 

「お前ほど人類を破滅に導いたやつもいねぇよ」

 

「まぁ、それはそのうちどうにかなりますから」

 

「マジ?」

 

「超マジです」

 

「ならさっさとどうにかしてくれ」

 

「なーちゃん、急がば(まわ)れ、ですよ」

 

「周してんじゃねぇよ。ループするだけじゃねぇか」

 

「周るのが嫌というのでしたら、もう少し眠りましょう。まだ夜中の三時頃で私は眠いんです」

 

「時計がねえから分かんねぇよ」

 

「私がガチャを引いたのが二時ごろでしたので、体感一時間経過で三時という計算です」

 

「めっちゃフワフワな計算だなおい。てかなんでそんな遅い時間に引いたんだよ」

 

「深夜に引くと当たりが出やすい、みたいな都市伝説あるじゃないですか」

 

「あれ都市伝説だったのかよ」

 

「確率は一定のはずですから」

 

「でもあれ、信じられないくらい被るよな」

 

「明記されていない要素が少なからずあるのは確かでしょうね。持っているキャラは出やすいみたいな法則ありますし」

 

「物欲センサーってやつだな」

 

「欲しいと思うものほど手に入りにくくなる。私のような消費者には損しかしないシステムですね」

 

「お前みたいな消費者はお前しかいねぇよ」

 

「さて、分かりませんよ?世の中には私以外にも一枚の絵に数千万どころか数億円払うような方もいらっしゃいますし」

 

「ソシャゲの課金と芸術作品を一緒にしてんじゃねぇよ」

 

「ぶっちゃけ芸術作品の評価って金額よりも分かりやすいものってそうそう無いんですけどね。ほとんど運ですし。あと産まれた時代」

 

「まぁピカソの絵が現代人もスゲーってなるかと聞かれると、微妙なところだよな」

 

「ピカソのような奇天烈な芸術家が評価されてる理由って、基本的人間はに理解不能なものは叩くのに芸術だけは『自分には理解できない高等なものだ』と褒めるからなんですよ。好きでもないくせに」

 

「言われてみるとそうかもな。ちなみにらら、お前はピカソの凄さは分かるのか?」

 

「正しく分かっているかはともかく、好きですよ?あのカオスな絵。是非とも現実で再現したいですよね」

 

「下手なお化け屋敷より怖ぇよ」

 

「そういえばここは全面真っ白ですね…」

 

「おいやめろ!」

 

「冗談ですよ冗談。ですから包丁を構えるの辞めてください。どっから出したんですかそれ」

 

「今すぐここを芸術作品にしないと誓え。さもなくば刺す」

 

「やめてくださいなーちゃん!なんかなーちゃんの足元にヒビが入っちゃってますから!」

 

「は?」

 

 

グチャリ

 

 

 

「…何だか真っ白な夢を観ました」

 

「おはよう、らら。ドーナツ食べる?コーヒー飲む?それとも私のみ、る、く?」

 

「あ、おはようございます子猫(にゃんこ)さん。…なーちゃんはどうしました?」

 

「世界が滅ぶ夢観たって言って、雛美のとこに相談に行った」

 

「なーちゃんが夢オチで終わる予知夢を観る予知夢を観て夢オチで終わる夢を観たのですが」

 

「…らら、なんて言った?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

「らら、そういえばアレ、当たった?」

 

「ダメでしたね。数千万溶かしたのですが、ひとつも当たりませんでした」

 

「そう」

 

「ショックすぎて世界滅ぼすところでしたよ」

 

「…そう。やめてね、めんどうだから」

 

 



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