とある師弟のD×D (カツヲ武士)
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原作前~原作1巻
とある師弟のD×D


オリ主使い回し。とりあえず俺TUEEEEEE系
になるんですかね?

基本的に原作設定に対するツッコミが多く
原作主人公関係に対するアンチになるので、
原作好きなヒトや原作主人公が好きな人は
読まない方が良いかも。

あと、原作キャラも結構消えるし改変もある
ので、原作キャラ好きな人も読むのは辞めた
方が良いですよ?




原作開始前!



オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「お、お願いします!白音は!妹だけは

許してください!この子は何も知らないし

何もしてないんです!」

 

・・・なんか黒おじさんのところの配下

の小倅が眷属に殺されたって言うから、

どんなヤツが殺ったのかと思って討伐

される前に見てみようと思って見に来たら、

目が合った瞬間に土下座された件について。

 

て言うかそんなところで土下座したら

服に雑魚悪魔の血が付くぞ?

 

「いやいや、いきなり土下座されてもな。

ここは『近付くな!そのへんに転がってる

肉片みたいにしてやるぞ!』くらいは言う

モンじゃないのか?」

 

そのくらいの覚悟が有って主人を殺した

んだろうし?

 

「無理です!絶対無理です!!」

 

ふむ・・・俺との実力差がわかる程度の

実力はあるか。

 

さて、コイツの妹なぁ。

 

・・・白いな。それにネコだ。

 

これじゃあシカタナイ。

 

ネコネコカワイイとも言うし、コレは

保護せねばならんだろうなぁ。

 

素質もありそうだし鍛えれば強くなる

だろうよ。

 

だが無償ってのは有り得ん。

弟子に「返してこい」って言われる

可能性がスゴク・高いし。

 

まぁなんだかんだ言ってあいつも

一緒になって鍛えるんだろうが。

 

「罪なき子供を殺す趣味は無いから妹の

保護に関しては問題ない。

阿呆どもが来たら俺が処してやろう」

 

くくく。コイツ目当てに阿呆どもが騒いで

接触してきたら、全員まとめて奇跡の部屋に

ご招待だ。

中級や上級が来てくれれば最高だな。

 

「え?!ほ、本当ですか?!」

 

頼んでおいて驚くって・・・まぁダメで

元々って感じだったんだろうけど。

 

「うむ。オレサマウソツカナイ」

 

だって悪魔だもの。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

だからソコで土下座すんなってばよ。

 

「しかしお前は下級とはいえ貴族を殺した

主殺しだろ?流石にお前は庇えんぞ」

 

下級とは言え貴族は貴族だからなぁ。

 

現行の法では下克上なんざ認められて

ないから、どう転んでもコイツは犯罪者。

 

逃がして密かに支援するくらいなら構わん

だろうが、おおっぴらに懐に入れたら

魔王だの大王が騒ぐよな。

 

まだ連中を一掃できる強さが無いから、

今のところは我慢せねばならん。

 

しかし眷属による主殺しなぁ。これも

意味がわからんよな?【爵位を持つ

上級以上の悪魔が王として眷属を率いる】

のがレーティングゲームであり、駒の

配布だって爵位を持つ上級以上の悪魔が

絶対条件のはずだろ?

 

没落したナベリウスのさらに分家の小倅に

爵位なんかねーだろ。

実力で上級悪魔にはなれるかもしれんが

爵位はまた別問題だし。

それがなんで悪魔の駒持ってんだ?

 

横流しだとしたら管理体制を問わねば

ならんし、そのへん投げっ放しはどうか

と思うんだ。

 

ソレにこのクロネコを従えるだけの力が

有るなら、普通にソコソコ強いと思うん

だがなぁ。

 

見た感じクロネコは無傷だよな?

奇襲で負けたか、子猫の時に従えたか?

 

まぁいいや()

 

とりあえず今はクロネコだ。

 

「え、あっ・・・か、構いません!

妹が無事ならソレでっ!」

 

うむ。麗しき姉妹愛よな。

若干依存の気もあるが、まぁ姉とは

こういう生き物なんだろう。

 

「そうか。なら妹を預かろう。今は

眷属にしないが将来は眷属にするかも

しれん。それに問題はあるか?」

 

コイツは悪魔じゃなく妖怪だろ?

妖怪にとって冥界の空気ってどうなんだ?

毒だとしたら眷属にした方が良いのかも

しれんが・・・

 

「えっと、できたら眷属にして庇護して

もらえると助かります」

 

ふむ。元妖怪の姉がそう言うならそうした

方がいいのか。

 

悪魔の駒は好きじゃないがシカタナイ。

ポーンの駒一つで行けるだろうし。

 

「・・・それで何を見返りにすれば良いで

しょうか?私の体ですか?」

 

なんか勝手に自己完結して急に

死んだ目になって服を脱ごうと

してる件について。

 

・・・まぁ今まではそんな連中としか

接触してこなかったんだろうなぁ。

 

「まてまて、ここで服を脱ぐな。大体だな

体目当てだとしてもこんなところで

行為に及ぶようなアホが居るのか?」

 

悪魔の死体と血と肉と内臓がそこら中

にあるんだぞ?どんな趣味だよ。

 

・・・もしかして悪魔としては普通なのか?

俺の周りにはいないが探せばいくらでも

居るのだろうか?

 

「いや、わからないですけど・・・私には

他に貴方様に支払えるモノが無いので」

 

ふむ。無償の善意などないという事くらいは

知っているようだがな。

 

だがコイツは悪魔のルールを知らんらしい。

 

コレもレーティングゲームに頼る今の

冥界の在り方が生んだ歪みかもしれんな。

 

「そんなの簡単だろ。契約をすればいい」

 

「・・・契約。ですか?」

 

願いを叶えるためにナニカを捧げる。

本来悪魔とはこういうものだろう?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一目見てわかった。この悪魔は今まで

自分が殺してきた悪魔なんかとは別格!

 

戦ったら一瞬で白音と一緒に殺される

ことになるってわかったから、汚れる

のも構わないで土下座してお願い

したんだけど、まさか普通に白音を

保護してくれるなんて言われるとは

思わなかった。

 

騙されてる可能性は勿論ある。

私の体目当てって可能性もあるし

幼女趣味の変態って可能性も、

白音が珍しいからって可能性もある。

 

だけど今の私にはこの悪魔に頼るしか

無い。そのはずだったのに。

 

「・・・契約。ですか」

 

見た感じ貴族でしょ?契約はある意味

対等な関係の間柄で結ぶモノじゃないの?

 

それが主殺しの私と契約を結ぶ?

頭おかしいの?

 

「悪魔の口約束など信じてどうする。

ソレに無償でお前の妹を保護しても

俺にはなんの得もない。

ならば契約とソレを履行した際に

発生する報酬こそが俺への報酬となる。

お前だってそのくらいの保険は掛けた

方が妹の心配をしなくても良いだろう?」

 

・・・言ってることはわかる。

 

妖怪だろうが人間だろうが悪魔だろうが

報酬さえ有れば契約は出来るし、悪魔に

頼みごとをする時はナニカを差し出す

のは当然のこと。

 

私が報酬を支払い、彼が契約を果たす。

うん何も間違ってない。

 

このまま彼に抱かれても、ソレは

口約束の延長でしかないし彼に

とっては一時の快楽でしかないから、

気分で約束を反故にする可能性もある。

 

もしそうなったら・・・死んでも一矢

報いる覚悟で戦うくらいはするけど、

一番大事なのは白音が危険な目に

遭わないようにすること。

 

だから契約を結ぶのは問題ない。

問題ないって言うか、是非結んで欲しい!

 

だけど問題は私が差し出せるのが体しか

ないことよね。

もしそれで足りないとなれば・・・どうしよう。

 

助けてもらえないってこと?

 

「・・・私は何を差し出すことに

なるんですか?」

 

でも確認だけはしなきゃ。もしかしたら

体だけで済むかもしれないんだし!

 

「ん?お前は現世で人間や他種族と契約を

交わしたことが無いのか?」

 

え?確かにないけど、何か関係があるの?

 

「ふむ。どうやら知らんらしいな。

今の悪魔契約は契約専用の機械があってな。

その依頼の内容、まぁ難易度やらなにやら

によって提示される報酬が違うんだ」

 

・・・知らなかった。研究所で実験か

レーティングゲームしかしてなかったから、

そういうのはまったく知らないのよ。

 

けど今大事なのはソコじゃない!

 

「じゃ、じゃあ白音を保護してください

っていうお願いに必要な報酬はどう

なるんですか?」

 

お金とかなら・・・時間が掛かっても

いいなら絶対に準備してみせるから、

お願い!なんとかして!

 

「ん~エラーだな。期間や内容が曖昧

だから報酬も算出出来ないんだろう」

 

期間・・・そうか。それに保護って

言っても、狭い小屋で匿ってるのも

大きな屋敷で過ごすのも同じ保護

だもんね。

 

けどコレで契約に関しての信憑性が

上がった!

支払える報酬を支払えば、この悪魔は

白音を保護してくれる!

 

「そうだな例えば『妹を俺の眷属にして

10年保護する。その間の衣食住を保証し

虐待や性的な行為の強制は認めない。

ただし鍛錬は許可する』って感じなら・・・

まぁこうなるか」

 

その内容なら・・・うん問題ない!

ご飯も食べれるしちゃんと服も着て

あったかい布団で寝れる!

 

10年って言うのが微妙だけど、今の

ままじゃ明日だってわからないんだし。

 

鍛錬は勿論必要!この悪魔が鍛えて

くれるなら白音はきっと強くなれる!

 

しかもちゃんと報酬が表示されたって

ことは、私にも出来ることって判断

されたんだよね。

 

「それで!それでお願いします!」

 

それならすぐに決めなきゃ!

この悪魔の気が変わったら全部台無し

になっちゃうんだから!!

 

「いや、悪魔相手に白紙委任はやめておけ。

勢いだけじゃなくきちんと自分で考えて

報酬を確認してから決めろ」

 

・・・なんて言うか、この人本当に悪魔?

スゴク・いいヒトっぽいんだけど。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

うむ。不思議そうな顔してるな。

まぁ普通に考えたら自分に不利になる

ようなことを言う悪魔なんか信用

出来んだろうが、残念ながら悪魔は

基本的に契約には常に真摯なのだよ。

 

殺して魂もらって終わりって言うなら

別に問題ないんだが、次回の予約だの

継続利用とかを考えた場合は信用が

モノを言うからな。

 

実績と信頼あっての悪魔稼業なんだよ。

 

魔王と言い大王と言いそういうの

忘れてるから何時まで経っても冥界の

諸問題が片付かんのだ。

 

旧魔王派だの新魔王派だの貴族派だの

大王派だの・・・そういうのは後でヤレ。

 

そもそも貴族悪魔はそれぞれの所領を

持ってて、魔王も完全に自治を認めて

るんだぞ?

 

さらに悪魔が足りないから土地も余ってる。

 

地方が嫌だって奴はいるけど、基本

土地が有ればなんでも出来るだろうに。

 

「そ、それで、私が支払うべき

報酬を教えてもらえますか?」

 

ん~焦ってるなぁ。まぁ全ては俺の

気分次第だし、さっさと契約を纏め

たいって言うのがあるんだろうが・・・

 

「引っ張ってもしょうがないからな

『妹を俺の眷属にして10年保護。

その間の衣食住を保証し虐待や

性的な行為の強制は認めない。ただし

鍛錬は許可する』ことに対する報酬は

『月に一度の性交(魔力供給込)』だな」

 

まぁ妥当なところだろ

 

「えっと・・・性交はわかるんです

けど、魔力供給込?」

 

ん?気を使うなら知ってそうなモン

だがな?

 

「房中術による魔力の供給だ。

コノ場合はお前の魔力を俺がもらう

ことになる」

 

「房中術・・・あぁなるほど」

 

理解したか?

 

「月に一回って言うのはアレだな。

妹の月謝とか食費込みの家賃みたいな

感じだと思えばいいだろう。

ソレを支払ってる限り俺も妹を放逐

することはない。

さらにお前が死なないようにするために

定期的な援助もするし、今後も妹に

会えるというお得な契約だな」

 

ずっと匿ってるわけじゃなく、月に一回

って感じなら上の連中にもバレんだろうし

騒ぐこともないだろうよ。

後は・・・隠形はソコソコ出来るよう

だから、鍛えれば好きな時に遊びに

来れるくらいにはなるだろう。

 

「月謝に家賃・・・確かにそれなら

月一回って言うのもわかるし、納得

できます。それにこれからも白音に、

妹に会えると言うならこんなに嬉しい

ことはありません!」

 

ふむ、きちんと納得した上での契約

なら問題ない。

 

シロネコはこれからだが、クロネコは今で

さえ上級悪魔を殺せるレベルだ。

素質を伸ばせば最上級悪魔の上の方に

匹敵する程度の強さを獲るだろうし、

この世界の妖怪の持つ力には興味がある。

 

新たな力を手に入れて顧客もGETした。

 

うむ。これには弟子もニッコリするしか

あるまいな。

 

「では行くぞクロネコ。基本的には

契約者としてお前を保護してやるが

流石に堂々とされても困る。

それなりの偽装を施すから、妹みたいに

ネコ形態になってくれ」

 

「は、はい!」

 

ふふふ。コレに俺の特性を加えれば・・・

うむ。誰がどう見ても豹だ。

 

自意識の部分だけ調整すればタダの

使い魔にしか見えまい。

 

「これでよし。さっさと帰るぞクロネコ」

 

デービール・ウイングっ!

 

説明しよう!空を飛ぶのだ!ってな。

 

そういやコイツの名前はなんだっけ?

正式な契約書にちゃんとサインさせ

ないと契約が履行されないからな。

 

「あ、あの!黒歌です!私、黒歌です!」

 

お?自分から言ってきたか。感心感心。

 

「リシュヴァーユ・オセだ。

一応オセ伯爵家当主だが、今の

お前は契約者だ。

よって礼儀作法に関しては最低限のモノで構わん」

 

・・・まぁ弟子が矯正するけどな。

 

「オ、オセぇぇ?!」

 

おいおい。契約者とは言え悪魔だろう?

同族の貴族を呼び捨てするのはいかんぞ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ふむ師がお戻りですか。うん?・・・何かを

肩に乗せてますね。

 

豹に擬態してますがアレはクロネコですよね。

それにシロネコも抱えてますか。

 

確かナベリウスのところの阿呆を殺したのは

眷属のクロネコだった筈ですが、何かアレと

契約でも交わしましたかね?

 

貴族殺しの主犯ではありますが、

所詮は没落貴族の分家の小倅。

 

オセ本家の当主たる師には関係

ないことです。

 

・・・アレの上司のネビロスを何故か

黒おじさんとか言ってましたけど、

師って別にアレと血縁関係とかありません

でしたよね?

 

まぁ別にネビロスと血縁関係があっても

所詮はその部下で眷属に殺されるような雑魚。

 

興味もありません。

 

さっさとお出迎えして来週のサバトの

準備をしましょうかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ。お疲れさまでした。

早速ですが師よ、その猫共は汚いので部屋に

入れる前に風呂に入れてくださいね」

 

臭いもしますね。まぁ主を殺して

逃げてたら、マトモに風呂なんか

入れませんよね。

 

「ん?あぁそうだな。血の臭いもあるし

風呂には入れないとな。

それに空腹だろうから飯の準備も頼む」

 

猫の飯と言えば・・・冷たいご飯に

汁モノをぶっかけるんでしたっけ?

 

まぁいいや()

 

「かしこまりました。あぁクロネコ、服は

洗濯しますので持ってる衣類は向こうに

置くようにしなさい」

 

白猫は寝てるんですかね?

返事が無いのは不敬ですが、今はまぁ

シカタナイと言うことにしてやりましょう。

 

しかし猫の状態から人型になるときって

普通は裸ですよね?衣類とかどーしてる

のやら・・・

 

「あ、はい。だけど替えの服が・・・」

 

あぁ逃亡生活してたらそんなの

ありませんよね。

 

「替えの服はこちらで用意します。

無論サイズは合わないでしょうが、今は

余裕があるガウンで我慢してください」

 

そもそもこいつらの扱いってどんな

感じなんです?

捕虜とかではないでしょうけど・・・

 

「あ、私はコレからオセ様と性交するから

服は妹の分だけで大丈夫です!」

 

いや、食事があるでしょう。

 

それとも師と急ぎで性交しなければ

ならない理由でもあるんですかねぇ?

 

「・・・とりあえず契約内容の確認

をさせて貰いましょうか」

 

どーせ主殺しとか逃亡者とか関係なく

契約してきたんでしょ?

何をするにも契約内容を見てからです。

どちらにせよ服は用意させますがね。

 

「あ、はい、私とオセ様の契約内容は・・・」

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

なるほど・・・この内容なら妥当な

ところですね。

 

契約という形で報酬を取り、さらに

房中術で魔力をもらうと。

 

さらに継続的に接触することで妖怪特有

の技術も学べるし、妖怪を鍛えた場合の

データも取れますね。

 

流石我が師。

 

まぁなんだかんだ理由をつけても

コイツの妹が白かったから助けた

だけでしょうけどね。

 

白っ子はまだしも、コレをネコモドキと

言うにはちと大きいですよね?褐色って

わけでもないし・・・

 

まぁ師が楽しそうだから良いと

言う事にしましょうか。

 

「確認しました。委細問題ありません。

とりあえず今夜は頑張ってください」

 

「え?あ、は、はい!」

 

師との性交は、クロネコが考えるような

単純な性交ではありませんからねぇ。

 

房中術が入るなら尚更です。

 

まぁシロネコが起きないように

防音魔法はしっかりかけてあげますよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッ、アッ、アッーーーーーーーー!」

 




主人公が人間サイドじゃねぇって?

だって豹子頭なんだもの!
シカタナイネ!

クロネコはシロネコを悪魔にされて実験に
使われるのを嫌って主殺しをしたのであって、
普通に悪魔になる分にはそれほど忌避感を
抱いていません。


つーか眷属にならなかったらヤバイと思ったもよう。



やりたいようにヤル外道なら
悪魔だよね!ってお話

基本的に作者の作品は原作設定遵守の
考察モノではなく、オリ設定とオリ展開の
アンチ・ヘイトモノです。

設定が違うとか、原作と違うと言うツッコミは
受け付けませんので、ソレを了承できる方のみ
お読み下さい。

嫌いな人は読み飛ばしてください。



オセ君>>越えられない壁>>弟子>>越えられない壁>>黒猫>>>>越えられない壁>>>>白猫


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2話

基本的に作者が書きたいものを書いてるだけの作品です。

その為、かなり読む人を選ぶ作品ですので、
オリキャラ・キャラ改変・俺TUEEEEEE要素が
嫌いな人や、 原作愛が強い人、アンチ・ヘイトが
嫌いな人は不快になるので読まない方が良いでしょう。

わざわざ嫌いなモノを読んで不快になる必要は
ありませんし、話の作り方が嫌いだとか言われ
ても作者は改善する気はあまりありませんよ?

ーーー

まさかのオリキャラが?!まぁ試しみたいな
感じですんでご勘弁を。

白音の内面の口調が分からない!
原作の乳語翻訳ってどこにあったっけ?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


真夜中の廃工場にて向かい合う二つの影。

 

片や10M、いや15Mを超える馬の下半身

に人間の女の上半身を括ったかのような異形。

片や150cmも無い小柄な少女。

 

10倍以上の体格差がある両者。第三者が

見たならどうなるだろう?

 

異形に怯えて声も出せないだろうか?

それとも勇気を振り絞って少女に協力

して、共に逃げようとするだろうか?

 

少なくとも、誰もが少女がピンチと

判断して少女に味方しようとするだろう。

 

「さっさと死ね」

 

決して大きくは無いが、底冷えするような

冷たい声が無機質な廃工場に響く。

 

その声に合わせて異形が駆け出した!

 

・・・後方に。

 

「はっ逃がすわけないでしょう」

 

いきなり後ろを見せた異形の行動に

驚くことも無く、少女は淡々と、その

冷たい声色を変えぬまま異形の背に

言葉を掛ける。

 

『こ、こんなところで死んでたまるかぁっ!』

 

必死の形相で異形が叫ぶ。

 

普段ならば、いくら廃工場でも周囲に誰も

居ない等と言うことも無いし、少し離れた

ところには民家も見えることから、異形の

狙いは周囲の人間を巻き込み場を混乱

させることと推察出来るだろう。

 

そもそも15Mを越える巨体が全力で動けば、

ソレだけで大きな音が出るのだ。

 

異形もソレを知った上で、わざと壁を破壊

しているようにも見える。

 

その巨体や見た目からもわかるように、

異形は明らかに世の理から外れた存在である。

 

周辺の人間が見れば間違いなく騒ぎになる。

そして異形は知っている。

 

自分たちを狩る連中は、基本的にその存在を

隠匿するのだ。

 

だからこそ敢えて音を出して暴れまわる。

 

衆目の目が有れば、ヤツは自分を攻撃

出来ない。

 

故に異形の狙いは場を乱すこと。

戦うことを諦め全速力で逃げる為に

異形は無駄とも言えるような大きな

音を出すし、大声を上げる。

 

伊達に下半身が馬の体ではない。速度で

目の前の少女に負けるなど有り得ない。

 

コイツから離れたら再度姿を変えて、別の

地域に潜伏しよう。

 

逃亡の手段から別の潜伏先までリストアップ

出来る程度の知恵が有るのが、この異形の

強みの一つであろう。

 

もしもこの異形を見つけて、今も追い詰めている

少女に経験が不足していたなら。

もし少女に油断慢心が有ったなら、この異形は

予定通りに逃げることが出来たかもしれない。

 

そして逃げた先で、無辜の民を喰らいながら

欲望の限りを尽くしたことだろう。

 

だが少女は慌てない。油断も慢心も無い。

何故なら彼女は狩人で、異形は罠に嵌った

獲物なのだから。

 

「大声を上げて無関係な人間を集めよう

と言うなら無意味ですよ?

周囲は私の張った人避けと遮音の結界

が有りますからね。こんな廃工場を塒に

しようとした自分の判断を呪え」

 

少女の宣告に異形は己の目の前が暗く

なるのを幻視した。

 

だがもうすぐ出口!建物を破壊して少女の

足を止め、そのまま全力で駆け抜けようと

足に力を込めようとした。その瞬間

 

ボンっと何かが弾ける音が聞こえ、異形は

その女性の体を廃工場の床に投げ出すこととなった。

 

な、ナニが有った!?慌てながら自分の状況を

確認しようとする異形。

 

だが現実を目の当たりにして、その顔を

凍り付かせることになる・・・

 

異形が見た現実は喪失であった。

 

すなわち異形が異形足り得るモノ。

その下半身が消し飛んでいた。

そう、15Mを越える巨体の大部分が

跡形も無く消滅しているのだ。

 

そして遅れてやってくる痛み。

 

『ぐ、ぐぁぁぁぁぁ!』

 

「やかましい。さっさと死ね」

 

異形が驚きで自失していたのは、ほんの

数秒であった。

だがその数秒が異形の命運を分けた。

 

まぁ自失せずに逃走を選んでいたと

しても、強大な下半身を失った異形が

少女から逃げ延びることなど不可能で

あったが・・・

 

『こ、こんなところでぇぇ・・ヘブッ!』

 

泣き叫ぶ異形の頭を何の感情も見せずに

潰す少女。

 

・・・・・・

 

後に残ったのは静寂と、最後に異形が逃げる

為に暴れたせいで荒れた廃工場。

それに下半身の無い女の死体。

 

少女は無感情にソレを見つめ、死体から

例のモノが抜ける前に処置を行う。

 

異形の討伐から死体の回収。

 

コレが今回少女に与えられた任務だ。

死体への処置が無事完了したことを確認し、

ようやく少女は肩の力を抜いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

うーん。アレが『ぐわぁー』とか言った

ときに「バイサーDIEーん!」とでも

言えば良かったですかね?

 

いや、仕事中にふざけたら矯正される

からアレなんですけど、そんなことを

考えてしまうほどの雑魚でした。

 

ナンデこんなのが冥界から地上に逃げる

事が出来て、さらに駒王町(こんなところ)までやって

来れたのやら。

 

まぁそれなりに力が有るなら廃工場に

なんか居を構えませんし、こんな形で

人間の肉なんか喰いませんよね。

 

普通に考えて雑魚。だけどこんなのが主人

から逃げれるわけ無いですから、やはり

飽きた主人に捨てられたのかな?

 

もしくは何とか主人の元を逃げ出した

ところを、偶然はぐれ悪魔の互助会の

ような組織に助けられた?

 

あとは旧魔王派の連中辺りが、無能や

阿呆の評判を落とす為に送り込んで来た

可能性も有ります?

 

ん~。まぁこの辺の調査は簪姉様に

お任せするしかないですね。

 

しかし弱い。悪魔の駒を使って眷族悪魔に

なったんだろうし、さらにアノ巨体でしょ?

 

普通ならどの駒であろうともかなりの

攻撃力が有るはずなのに、タダの雑魚でしたよね?

 

かといって悪魔の駒に反乱防止の何かが

有るわけでも無い。

 

そうじゃ無ければ、ご主人様が言う

ナベリウスのところの分家の小僧程度を

殺した黒歌姉さまが、SSランクの

はぐれ悪魔扱いって言うのがおかしいですし。

 

あぁいや、追撃部隊やら何やらを全部

潰してるし、いまだに討伐されてないから

ランクが上がってるのは良いのですけどね。

 

もし反乱防止の何かが有ったら、

そもそも追撃部隊に勝てないって話です。

 

今は魔力と簪姉様の協力でそういうのも

無効化出来ますけど、当時はそんなこと

出来るだけの余裕が無かったですし。

 

何より魔王アジュカ・ベルゼブブが造った

駒に反乱防止の機構が有ったなら、当時の

黒歌姉さまがどうにか出来るハズ無いし。

 

・・・知性が落ちるって言うけど、ソレは

反乱防止とは関係ないよね?

 

まぁこんな知性の欠片も無い奴と一緒に

されたら黒歌姉さまもキレると思うけど。

 

でもねぇ。ご主人様に保護されてから数年、

黒歌姉さまが貴族を殺したとかなんだで

グダグダ言って来た連中が居ましたけど、

・・・そもそもはぐれ悪魔って主人を

殺したヤツか捨てられたヤツなんでしょ?

 

でもって主人って言うのは貴族じゃん。

 

ソレ考えた上ではぐれ悪魔の数を見たら、

年間貴族はどんだけ殺されてんのって話に

ならない?

 

黒歌姉さまの家族でしかない私に構うより

先にすることあるんじゃない?

 

純血種は貴重なんでしょ?

魔王とか大王は予防策考えたら?

 

ご主人様が『眷族に殺される程度の未熟者

に悪魔の駒など渡すな』って言うのと、

『姉はどうか知らんがコレは私の眷族だ』

って言ってくれたから今じゃ特に問題視

されてないけどさ。

 

もしご主人様に保護されてなかったら

どうなってたことか。

 

なんか私は猫又の中でも珍しい猫魈って

種族らしいから、いずれ黒歌姉さまみたい

になれるって考えた連中が私の心を折って

眷族にしようとしてたとか?

 

上層部では黒歌姉さまを討伐した後の

取り分までしっかり協議してたらしい。

 

結果、現ルシファーのサーゼクスが私を

手に入れて、妹の眷族にしようとしてた

って話ですよね。

 

自分たちで追手を放って黒歌姉さまを追い

詰めておきながら、私は戦利品扱いって。

 

まぁソレが貴族って生き物らしいですけど。

 

黒歌姉さまと一緒にご主人様に拾われたから

良いんですけど。

 

・・・コレだって結果論ですよねぇ。

 

そんなこんなで悪魔の命令なんか聞くのは

アレですけど、コレもご主人様の命令だし。

 

何よりようやく一人で仕事を任された

んですから、しっかりお仕事しないと!

 

 

 

さておき、まずは報告しましょうか。

 

「簪姉様。討伐終わりました」

 

報告・連絡・相談は大事です。

ご主人様も言ってます。

 

『うん。コッチでも確認したよ。

地上での単独任務お疲れ様。その死体は

コッチで回収するから、白音ちゃんは

そのまま帰投して。

あぁ、攫われた人間はまだ生きてるみたい

だから気を調節して・・・場所を移して、

朝には起きるようにする程度で良いかな?』

 

「了解です」

 

流石に廃工場(こんなところ)で倒れてたら

誘拐事件扱いですからね。

 

記憶の操作はあんまりするべきじゃ無いし。

 

まぁ公園のベンチ辺りで眠らせてれば

酔っぱらった結果と納得もするでしょう。

 

偽装の為には新聞紙かダンボールが必要なん

ですが、新聞紙だと日付で違和感が出ます

から・・・ダンボールですね。

 

『しかしアレだね。コイツはココに来た

ばっかりでまだ誰も殺して無いからアレ

だけど、こんなのを発見できないで侵入

させる時点で管理が杜撰すぎるよね』

 

本当にそうですよ。いくら人間とは言え

無駄に殺して良い資源なんて無い。

そもそもの話、こう言う自分の管理地に入った

はぐれ悪魔の討伐も管理者の仕事でしょうに。

 

「ですね。阿呆のシトリーと無能の

グレモリーとは良く言ったものです」

 

管理者を名乗るのが2人居てコノ体たらく。

 

コイツが私の主になる可能性が有った

んでしょう?

 

ハッキリ言って話になりません。

 

使い魔を使ってティッシュ配りをしている

ようですが、契約を叶えることの意味を

正しく理解していないようですし。

 

これが若手悪魔の代表格って言うん

だから、ご主人様も頭が痛いでしょう。

 

『ほんとにねぇ。魔王が2人して頼んで

来たから管理権限を譲ったけどさ。

たかだか3年でココまで乱れるなんて

思いもしなかったよ。

日本神話勢力からのクレームもご当主様

に来てるみたいだし。アホに統治なんか

させるべきじゃ無いってことがわかるね』

 

まったくです。

 

「しかしアホ二人のせいでご主人様に

クレームが入るんですか?」

 

管理者であるアホや、その兄と姉に言えば

良いと思うんだけど・・・

少なくとも奥様よりは文句を言いやすい

と思うんだけどなぁ。

 

『キチンと引き継ぎしろ!って感じみたい。

当主様は魔王の嫁のメイド気取りに

きちんと引き継ぎしてるんだけどさ』

 

ですよね?本来は一年くらいかけてヤル

のを我侭抜かして三か月にしたとか

言ってましたけど・・・伝言ゲームに

失敗した感じですかね?

 

『なんでも日本神話勢力が無能にクレーム

入れたとき、無能が「私の所領の運営に

口を出すな」とか言ったらしいよ?』

 

あぁ、ソレで駄目だコイツ・・・って

なったんですね。

 

所領の運営じゃなくて、土地の管理方法や

無駄な損失を出すザル警備に文句をつけて

るってことに気付いてない。

 

所詮ガキですからねぇ。

 

でもって魔王の妹扱いされると反発

するんでしょ?

 

そして貴族としてじゃなく個人として

見て欲しい?

 

馬鹿じゃない?個人として見たらタダの

無能でしょうに。

 

事実も受け入れることが出来ない無能が

どうやって領地運営するんですかねぇ?

 

一体眷族は何をしているのやら。

 

無能の女王はバラキエルと姫島の人間の娘で、

母親からの遺伝である雷を好んで使う癖に、

堕天使の力は使わないとか?

 

持ってる力を使わないで腐らせるなんて意味が

分からない。って言うか馬鹿じゃないですか?

 

騎士がサーゼクスのところの侍かぶれの

弟子で、聖剣計画の生き残り?

 

死に掛けたところに偶然(・・)無能が現れて、

悪魔にしたとか言ってるらしいけど、

明らかにサーゼクスがお膳立てしてますよね?

 

ドコの世界に教会勢力の施設の近くに何の

備えもなく自分の妹を差し向ける妹魂(シスコン)が居るんですか。

 

更に僧侶のヴァンパイアハーフ。

同じようにヴァンパイアに狙われて郷を追われ、

逃げてる最中にヴァンパイアハンターに殺された

所を偶然(・・)通りがかって眷族にした?

 

ドコの世界に(ry

 

しかも眷族にしたものの、ソイツが強力な神器を

持ってて?能力が使いこなせないから封印指定って・・・

 

無能じゃん。

 

そんな危険物を何で学園に置いてるの?

さっさと冥界に戻して制御訓練させろよ。

 

 

でもって阿呆姫。

 

コレもシトリーとしては無能。

そもそもコイツらが司るのは欲情でしょ?

 

水とか氷ってどこから来た?

 

眷族もねぇ。兵士の匙元士郎はヴリトラ関係

の神器を持つからソコソコ優秀ですけどね。

 

あまりに中途半端。折角の神器が宝の

持ち腐れだし。育てるならきっちり育てろ。

 

女王の真羅は神器持ちだけど、弱い。

戦闘より事務仕事メインなんですかね?

戦えない女王なんか話になりませんけど。

 

後戦えるのは退魔師出身の騎士くらいですか?

 

普通ならもう少しバランス取れたパーティ

組むと思うんですけどね?

 

更に夢が酷い。下級・中級・転生悪魔でも

別け隔てなくレーティングゲームに参加できる学校?

 

馬鹿じゃない?いや、阿呆だった。

 

そんな無能と阿呆が居る学園に入学して、

はぐれ悪魔やら他の勢力の連中が侵入

してきたら、被害が出る前に殺すって言う

のが私の仕事なんですけどね?

 

「あの無能共は、私たちがサーゼクスと

セラフォルーに雇われてこういう仕事を

してることを知ったらどうするんで

しょうかね?」

 

今まで何の問題も発生してないのは

「自分たちがしっかり働いてるからだ」

とか勘違いしてそうですけど。

 

『ん?私たちに文句垂れた後で兄と姉に

ナニカ言うんじゃない?』

 

あぁ「余計な真似するな」とかですかね?

 

バイサーの侵入どころか私との戦闘に

すら気付かないし、こうして結界を張って

もなんのリアクションも取らない時点で

アレに任せたら酷いことになるって事が

確定してますからね。

 

その結果評価が落ちるんですから、

二人の魔王(シスコン共)の判断は間違って無いって

事になるんですが・・・

 

「もし文句を言われた場合は、殴り倒しても大丈夫ですかね?」

 

普段の生活で甘やかされすぎて痛みを

知らないから、連中はいつまで経っても無能で阿呆なんでしょ?

 

成長のきっかけになるなら二人の魔王(シスコン共)も喜ぶんじゃないですか?

 

『まぁ良いけど。後からご当主様にクレーム

入るから、必ず映像と音声記録を録ることが

条件かなぁ』

 

あぁ、ご主人様にクレームが入るのは

駄目ですね。

 

うん。とりあえず連中が接触してきたら

必ず記録を録ることにしましょう。

 

「で、町はずれの教会を根城にしてる

堕天使共はどうします?」

 

無許可なのは分かってますし、元々

堕天使は敵でしょ?

 

ご主人様の『悪魔は悪魔らしくあるべき』

と言うモットーを遵守するなら、連中は

見的必殺ですよね?

 

それに生かしてたら奥様に『怠惰・故に死ね』

って感じで殺されそうですし。

 

怠惰もある意味悪魔らしいと思うんです

けど、ご主人様も奥様も簪姉様もサボり

は絶対に許さないんですよねぇ。

 

『あぁ、アレね。アレは聖女関係で

ディオドラ・アスタロトが色々計画中

なんだって』

 

「ディオドラ・アスタロトですか?」

 

あの聖女マニアの?

 

まぁアホで世間知らずな聖女と、

頭が固い教会連中の性質を利用して

戦力の低下をさせてるって実績を

挙げてるそうですけど・・・

 

タダの女好きでしょ?

 

ワンパターンで三流の茶番を用意

してるだろうけど、堕天使とは関係

無くないですかね?

 

『そ、アノ中途半端野郎。禍の団(カオス・ブリゲード)に所属

してオーフィスからドーピング剤貰って

調子に乗ってるみたいだけどねぇ。

何か雑な計画組んでるみたいだよ』

 

雑な計画ねぇ。まぁ元々碌なモンじゃ

無いのは確かなんだけど・・・

 

「アレは一応正式なアスタロト家の後継ぎ

ですから、変に関わると面倒事確定ですか?」

 

何だかんだで罠に嵌めてるのは堕天使とか

教会とか聖女関連だし、悪魔としては決して

間違ってる訳じゃないから、ご主人様も特に

粛清とかはしないですよね。

 

『だね。とりあえず私と白音ちゃんには

ご当主様から現地での生殺与奪権が与えられて

るけど、わざわざご当主様に面倒かけるのもアレだと思うからさ。今回は放置かな?』

 

つまり、邪魔だと思ったら殺しても良いけど、

出来るだけ放置が望ましいって感じですかね?

 

ま、そもそも領内に入った堕天使の処理は

管理者の仕事だし?

フォローするって言っても、はぐれ悪魔

とかならまだしも、他の陣営の場合は

外交が絡む可能性もあるからなぁ。

 

『ま、サバトの関係者や、私たちの

契約者関係に手を出さないなら放置で良いんじゃないかな?』

 

なるほどなー。

 

「サバト関係者にディオドラ如きが

ナニカ出来るとは思えませんけどね」

 

アレに手を出したら奥様やご主人様が

動くし・・・そもそも無理でしょ?

 

『まぁそうだね。基本的に契約もソッチ

関係に絞ってるから何も無いと思うけど、

アホってのは何をするか分からないから

アホなんだよ?』

 

・・・確かに。

 

油断慢心ダメ絶対ですよね。

 

「とりあえず了解しました。堕天使一味

は放置で、教会の聖女とかエクソシストも、コチラに手を出してこない限りは泳がせます」

 

自分が養殖場に居るってことを魚は

知りませんからね。

いつでも釣れるんです。捌く準備だけはしておきましょう。

 

『だね。堕天使との戦争はご主人様も

望む所だし、アッチからナニカして来た

なら反撃しても文句を言われる筋合い

は無くなるからね』

 

ですよねー。

 

そもそもアスタロト家の次期当主でしか

ないディオドラ如きがご主人様に文句を付けることなんか出来ませんし。

 

「ではコレ以上待っても阿呆も無能も

来ないようなので、そろそろ帰投します」

 

まったく。どれだけ時間が経ったと思ってるのか。

 

『はぁ。コレがご当主様の後釜だと

思うと頭が痛くなる。

まぁいいや。後片付けは使い魔にさせるから

早めに帰ってきてね?今日は帰りに寄り道しちゃ駄目だよ?』

 

「うっ!」

 

お、お菓子を買って帰ろうとしたのがバレてる?!

 

『深夜に学生がお菓子買ったら目立つでしょ?

お菓子もご飯もコッチで用意してるし、

黒歌さんも待ってるからね~』

 

「黒歌姉さまが?」

 

てっきり冥界でご主人様とアレしてる

と思ったのに?

 

『地上での初仕事だからね。心配してた

みたいだよ?』

 

『か、簪様!それは言わなくて良いです!』

 

あ、居たんだ。

 

「ふぅ~ん。黒歌姉さまは私が一人で

お仕事出来ないって思ってたんですね?」

 

ふぅ~ん。

 

『ち、違う!白音がお仕事終わった後で

一緒にお祝いしたかっただけなの!』

 

ふぅ~ん。

 

『とは言いながら「白音にナニカ有ったら

どうしよう?!」ってずっと言ってたけど』

 

『か、簪様!?ち、違うにゃ!私は白音を

疑ったりしてないにゃ!』

 

ふぅ~ん。「にゃ」が出たってことは

かなり動揺してるみたいだけど・・・

 

「まぁ良いですよ」

 

『え?!』

 

初仕事なのは事実だし、心配もさせたみたいだし?

 

ソレに・・・ちょっと嬉しいし。

 

「とりあえず黒歌姉さまは簪姉様の

邪魔をしないように待ってて下さい」

 

ご主人様と契約してるとは言え、一応

黒歌姉さまもはぐれ悪魔。

 

油断して見つかったら面倒なことに

なりますから。

 

『りょ、了解!』

 

さ~て、私も寄り道しないで帰りましょう!

 

後で奥様やご主人様にも褒めて貰うにゃ!

 

・・・ご主人様に褒められるのを想像したら、にゃが出ちゃった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「・・・平和ねぇ」

 

「あらあら。平和なのが一番でしょう?」

 

まぁ、朱乃は子供のころから散々な目に

遭って来たから、平和なのが一番って言う

のもわかるんだけど・・・

 

「ソレはそうだけどね、少しくらいは

刺激が有った方が面白くない?」

 

まぁちゃんと仕事してれば刺激のある

事なんか起きないんだけどね。

 

ふふ、何事も無く所領を治めるって

言うのは簡単なようで難しいって言うけど、

元々そんな問題なんかゴロゴロ起こること

なんか無いわよね。

 

とりあえずはこの調子で大学卒業まで

所領を治めれば、実績としては十分よね?

 

ライザーとの結婚がアレだけど・・・

まだ4年あるからね!ソレまでに

何とかするわ!

 

後は眷族を見つけてレーティングゲーム

デビューの準備しないと。

 

流石に誰でも良いって言う訳でもない

から、簡単には行かないかもしれないけど。

 

ソーナみたいに特徴の無い人間

を眷族には出来ないからねぇ。

 

夏休みになったらちょっと遠出して

見ようかしら?

 

お兄様からお薦めの場所でも紹介して

貰えば、また祐斗やギャスパーみたいに

偶然の出会いがあるかも知れないわ!

 

 

ふふふ!早く夏休みになーれ!

 

 




白音サン頑張る。

そもそもクロスオーバータグあるし?

兎さんにするか、かんちゃんにするか
悩んだ結果、兎さんだと会話にならない
可能性を考えた結果かんちゃんです。

あくまで原作の設定に対するツッコミが
メインになるかも?(いつものこと)

今のところ続く予定は無いですよ?



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3話

基本的に作者は軽度のフロム脳でコジマ汚染者
ですので、曖昧な表現や微妙な言い回し。
伏線を張りまくりで、しかも説明をしない
で相手に脳内保管を求めると言う外道です。

つまり、読者様に優しくない作者です。

主人公君はヤりたいことをヤりたいように
ヤるために動いてますが、ソレが何なのかは
・・・とりあえず皆様の想像にお任せしてます。

また、作者は好き嫌いが激しいので嫌いな
救済したりはしません。故に原作キャラに愛を
感じてる人は読まない方が良いですね。


ーーーーーー







原作主人公死す?!

原作開始・・・

深読みによる勘違い要素になるのか?

短いけど、作者にはこのくらい5000文字~6000文字が一番楽です。

オリ展開!
オリ設定!

嫌いな人は読み飛ばし!


「簪姉様?なんか堕天使が人間殺してましたけど、アレって良いんですか?」

 

悪魔の領土で堕天使に勝手なことされてますよ?コレは戦争じゃないですか?ご主人様も大喜びですね!

 

「うーん。アレって性犯罪で有名な兵藤一誠でしょ?報復の依頼でもされたかも知れないよね」

 

「あ、確かに!」

 

元々あの堕天使どもは、聖女絡みでディオドラ・アスタロトが何やらやってましたし・・・その可能性もありますか。

 

そうなればアレはディオドラの依頼を

受けた堕天使が性犯罪者を殺しただけ

の話になります。

 

悪魔が絡んでるから越権とまでは

言えないってことになりますよねぇ。

 

早合点して殺すところでした。

この一瞬でコレだけの情報を分析

するなんて、さすが簪姉様です!

 

「後はアレだね、堕天使の趣味の神器狩り?」

 

あぁ、そんなことしてましたね。

聖書の神に反逆した堕天使ですから、

神の作った神器もその保持者も敵扱いするのはわかります。

 

アザゼルが研究するのも、彼を知る為の

一手と考えればただの趣味とは言えません。

 

そうなるとアレは堕天使としても趣味と実益を兼ねた任務になります。

 

「それはわかりました。ディオドラとどんな

契約を結んでるか知りませんが、それなら

あの雑魚堕天使が悪魔の領土で不自然な

までに偉そうにしてるのも理解できます」

 

普通なら命の危険に怯えてコソコソする

レベルですよ?だけどディオドラと言う

後ろ盾が有れば無能や阿呆なんか気にする

必要も無いって感じでしょう。

 

本来であれば堕天使と通じるのはアレですが、

悪魔である以上人間だろうが堕天使だろうが

契約は交わせますからね。

 

あの聖女マニアは気に入りませんが、

ご主人様の言う「悪魔らしい」行動を取る悪魔はとても貴重です。

 

中途半端に人間被れした無能や阿呆より

よっぽどマシですよね。

 

「だね。コッチに何かしてくるわけでも

無いし。それに無能がアレを眷属にする

みたいだから、ディオドラがサーゼクスと

何か契約を結んでたかも?」

 

またサーゼクスですか・・・神器持ちの

人間を堕天使に殺させて、ソレを助ける

形で眷属にするって感じですか?

 

そうすれば助けられた人間は無能に感謝

するし、堕天使を憎みますからね。

 

で、あの無能は騎士と僧侶に続いてまたまた

偶然(・・)自分を呼び出した人間が偶然(・・)神器を

持ってて、偶然(・・)死にかけてるってことに

違和感も何も覚えずそのまま眷属にするんですか?

 

頭大丈夫ですかね?

 

「・・・へぇ」

 

ん?無能が変態を悪魔にしようとしたのを

見て簪姉様が驚いてる?

このヒトが驚くなんて、何か珍しいモノでも

あったんですかね?

 

まぁタイミングを見れば可能性として有るのは・・・

 

「アレに宿る神器が珍しいモノだったとかですか?」

 

それしかないですよね?

 

「うん。アレは神滅具(ロンギヌス)だね。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だよ」

 

へぇ。ほぉ。

 

「アレが奥様がマダオと呼ぶ赤龍帝が宿った神滅具(ロンギヌス)ですか」

 

神を殺せるとか言っておきながら、特に誰も

殺したことがない神殺し(笑)の神器。

 

「間違いないね。あの赤いオーラはここ

数十年で何回か見たことがあるよ」

 

昔三大勢力を相手に暴れまわったって言う

二天龍の片割れである赤龍帝が宿ってるって

言う話だけど、人間の体じゃアレを完全に使えないって話だったよね?

 

「赤龍帝(笑)と言えば、確か毎回毎回

白龍皇(笑)と喧嘩するから出てくる度に

奥様が「五月蝿い」って言って使用者諸共

殺してるんですよね?」

 

神どころか奥様に殺されてるって・・・

いや、奥様が神様より強いだけかも

しれないけど。

 

「だね。ご当主様も「無様」って言って、

見かけたら殺すくらい惨めな扱いだよ」

 

まぁねぇ。神に匹敵するドラゴンが神器に

封じられて、人間の魂と一緒になんかしてる

んでしょ?

 

そりゃ無様ですよね。

 

殺してやるのが情けでしょう。

 

「宿主が雑魚だから無能でも眷属に出来た

みたいだね。

だけど兵士8つ使ったか・・・神器の力が

駒を使った転生に何らかの干渉をするのは

知ってたけど、あまりにも中途半端すぎる」

 

ですよねー。持ち主が雑魚とは言え、神を殺せる(自称)ほどの龍を宿す神器を持った雑魚です。

 

無能が眷属に出来ること自体がおかしいですよね。

 

「多分宿主を殺さないように神器が自分の

力を抑えたんだと思うけど・・・そんな

調節が出来るなら普段から力不足で眷属に

出来ないなんてことにはならない。

何でもかんでも『天界のシステムの異常』

で片付けるのは技術者として無しだから、ここはきっちり調べたいところなんだけど・・・さてどうするかな」

 

あぁ、簪姉様の悪い癖が出ましたよ。

 

奥様も認めるHENTAI技術者ですからねぇ。

こんなバグがあったら調べたいでしょう。

 

本来なら私としても、悪魔らしく己の欲望に

忠実な簪姉様を止める気はないんですよ?

だけど今回のコレは・・・

 

「流石に簪姉様が出たらアジュカやアザゼル

も出て来ると思いますけど、大丈夫ですか?」

 

コレがありますからねぇ。

 

タダでさえご主人様は堕天使や天使との

戦争も辞さないって公言してるヒトで周囲の

穏健派に警戒されてますし、その側室であり

オセ領の躍進を支えるHENTAI技術者でも

ある簪姉様が表立って動いたら、絶対あの連中も動きますよね?

 

「あぁ・・・アイツ等かぁ。アザゼルは

そのまま殺せば良いだけなんだけど、魔王

を殺すのはまずいよねぇ」

 

アジュカもサーゼクス同様に超越者と呼ばれる魔王なんですけど、殺せないとは言わないのがこのヒトたちの怖いところです。

 

あくまで殺したあとの政治的混乱によって

ご主人様が治める領地が荒れるのを嫌って

るんですよね。

 

「ですね。アザゼルを殺しても堕天使との

戦争になるくらいですけど、アジュカは

アレで現在の悪魔社会を形成する要素の

一つですから・・・」

 

ご主人様の許可なく殺るのは止めた方が

いいと、白音は思いますマル。

 

「うーん。ご当主様に迷惑が掛かるならシカタナイネ。今日のところは我慢しよう」

 

この人たちご主人様好きすぎですよね。

いや、私も大好きですけど!

 

「でもって無能が性犯罪者を悪魔にして

蘇らせたのはいいんですけど・・・」

 

そのまま帰りましたよ?

 

「雑魚を餌にして堕天使を釣る気かな?

拠点はわかってるんだから別にそんな

ことする必要はないんだけど・・・」

 

ですよね?普通は自分の拠点に持って

行って説明やら何やらをすると思う

んですけど・・・なぜ帰る?

 

「まさか堕天使の拠点を知らないとか?」

 

まさかねー。さらにアイツ等が駒王町に

無許可で滞在してるけど、おそらくディオドラ

と何かしらの密約を交わしてる可能性が

あるってことぐらいは掴んでますよねー?

 

「・・・町外れの教会をただの天界の勢力と

勘違いしてる可能性はあるね」

 

えぇぇ~。10年前に赤おじさん?の身内

のゴタゴタが有って以来、あそこは廃教会

扱いで名義以外は天界勢力とは無関係になってるハズでしたよね?

 

「いや、その辺はあのメイド気取りにも

きっちり教えたんじゃないんですか?」

 

引継ぎしてますよね?土地や建物の名義

やら何やらは教会関係なんで、私たちが勝手

に壊すとことも出来ないから残してるだけ。

 

ソコに堕天使が住み着いてるんだから、

完全に不法侵入だってことくらいは

知ってないと管理者として不味くないですか?

 

「貴族の箱入りお嬢様が権利者とか名義

を調べるとは思えないし、覚えてるとも

思えない。それに眷属の姫島も木場も

世間知らずのガキでしょ?

メイド気取りもなんだかんだで貴族の

娘で脳筋だし・・・」

 

あぁ、周囲にまともな保護者や補佐役が

居ないから、ソレも有り得るのか。

 

「そうなると無能にとって今の状況は

『堕天使が勝手に領内に侵入して、神器を

持った人間を殺しまわってる。でも今は

拠点も事情も良くわからないから泳がせよう』

って言う状況ですか?」

 

何がしたいんだか・・・

 

と言うか阿呆は何してるの?日中の公園で普通に堕天使が正体を明かして街の人間殺したよ?

 

さらにその犯人は悠々と帰って行ったけど、アレを尾ける使い魔とかも居ないよね?

 

「だね。でもって駒を8つも使うとは

想定してなかったから、コレからアレの

家族構成とかイロイロ探るんじゃない?」

 

なるほど・・・確かに性犯罪者の家庭や

背景によっては悪魔と敵対する勢力と

繋がってる場合が有りますからね。

 

本来は調べてから復活&転生なんで

しょうけど、無能がそんなの気にする

はずもないし。

 

もし背景に悪魔に敵対する勢力がいるなら、

姫島の時みたいに家の権力でゴリ押しする

つもりなんですかね?

 

まったく、貴族として見て欲しくないとか

言いながら貴族として生きる気マンマン

じゃないですか。

 

いつまでもそんなんだから両親だの婚約者の

ライザー・フェニックスが結婚を早めて、

貴族としての教育をしようとしてるんですよ。

 

まぁアレもただの女好きですから、教育は

フェニックスの家がするんでしょうけど。

 

まぁいいや()

 

「とりあえず堕天使が人間の真似して

何をしたかったかは見ました。

奥様とご主人様に報告して終わりですね」

 

元々その確認でしかなかったし。

マダオに関しては奥様が判断するでしょ?

 

「そうだね。今日は白音ちゃんの日だから

しっかり甘えてくるんだよ~」

 

「うにゃ~」

 

あぁ、こうして簪姉様に頭を撫でられる

のも良いけど、やっぱりご主人様は別格

だもんなぁ。

 

さっさと帰ってお風呂入ってご主人様

が待つ冥界に帰らなきゃ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「にゃー・・・ご主人様ー」

 

うむ。なんというか・・・ネコだな。

 

白音を眷属にしてからなんだかんだで

10年経ったが、まぁネコだ。

 

「15で元服したから夜伽もできます!」

とか言って来たが・・・クロネコ曰く、

まだ子は作れんらしい。

 

なら伽の必要は無いんじゃないか?って

思ったんだが、弟子も簪もクロネコも

ちゃんと相手しろって言うし。

 

まぁ慣れるのも必要だし、発情期を

無理して抑えるのは体に悪いから別に

良いんだけどなぁ。

 

貴族家当主として種馬になるのはいつの

世も変わらんのかね。

 

とは言え今回はいい仕事したからな。

存分に膝の上で丸くなるが良いわ!

 

「うにゅ~」

 

・・・しかしまさか赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の保持者が

駒王町の無能姫の眷属になるとはなぁ。

 

普通に考えたら素質はあっても全然鍛えてない無能では眷属には出来んよな?

 

なんたって今は上級悪魔として最低レベル

でしかないんだぞ?

属性攻撃が強力だからソコソコの攻撃力

は持ってるが、ソレだけだ。

 

そんなのが赤龍帝を宿した神器って

・・・桁が三つ違うぞ?

システムがどうこうじゃなく、世界の意思(ご都合主義)の干渉を感じるな。

 

ということは、その雑魚が原作主人公か、ソレに準じる存在だろう。

 

・・・地元で有名な性犯罪者らしいが、

何故か逮捕歴もないみたいだし。

 

感情のままに突っ走る根性系の主人公って言うのは有り得るよな。

 

でもって堕天使陣営には白龍皇(生まれながらのライバル)もいるし。

その雑魚が堕天使に殺されたのも何かの

符牒になるのかもしれん。

 

そうなると俺が悪魔ってのは随分と良い

モノなのかもしれんぞ。

 

人間や神と違って器の限界強度は修練と

契約でいくらでも超えれるし、契約を

交わせば交わすほど領内が栄える。

 

簪のおかげで、契約成就の際の報酬が

冥界全土に行く可能性があったところを

ウチの領内だけに限定出来たのが良いな。

 

なんで働きもせずに貪るだけの連中に

施しをせねばならんのだって思って

たから非常に助かる。

 

まぁようやく見つけた原作主人公だ。

 

警戒すべきは管理者だよな。

 

もし管理者が居るとすればオーフィスや

グレートレッドクラスだろう。

 

なにせグレートレッドは次元の壁を守る存在らしいし。

 

今でようやく6割程度。あと10年有れば

オーフィスも超えられただろうが、

そこまで強くなればタダの俺TUEEEEだし

目標がなくなるのはつまらん。

 

高校生が堕天使に殺されて悪魔になった。

 

きっかけとしては十分。起承転結の起だ。

コレから原作スタートとなる可能性は高い。

 

うむ、話の始まりには丁度いいくらいの

強さと思うとしよう。

 

 

 

さて、そうなると今の段階で赤龍帝と

俺たちが関わるのは早計か?白音と

簪が見たっていう雑魚堕天使とディオドラの小僧はどう動く?

 

話の流れを考えるなら、教会から追放されて

見知らぬ土地で右往左往してる聖女が悪魔に

なった主人公を頼ると言うパターンも有りか。

 

イロイロ計画してたディオドラにして

みたら寝取られみたいなもんだが、

サーゼクスとしても是非無能の眷属に

欲しいところだろうからな。

 

何せ今回の聖女は悪魔も癒せる回復役だし。

 

最終的には泣き寝入るか、それとも

禍の団(カオス・ブリゲード)の連中やオーフィスの蛇の力を使って奪い返す?

 

主人公視点にしてみたらなかなかの

物語になりそうだが・・・ワザワザ雑魚の

昼ドラ見せられるのもなぁ。

白音と簪には赤龍帝を見張るように指示を

出して、弟子には堕天使の領土を襲撃させるか?

 

そのまま堕天使と戦争になれば白龍皇と

赤龍帝が戦う下地もできるし、俺も全力で

戦闘行動が取れる。

 

「ご主人様・・・」

 

「ん?あぁ起こしたか?」

 

いかんいかん。全力戦闘なんか久しぶり

だから、つい気が逸ってしまったな。

 

「いえ、元々微睡んでただけですから。

でもご主人様が嬉しそうなので白音も

なんだか嬉しくなっちゃいました!」

 

おぉ、尻尾がピーンと立ってるな。

犬と違って、猫は嬉しい時って尻尾を

振るんじゃなくて立てるんだよな。

 

「そうか。コレからお前も忙しくなる

だろうから、今のうちに鍛えておけよ?」

 

今の魔王級程度じゃ足りん。少なくとも

赤龍帝程度は殺せるようになってもらおう。

 

「了解しました!」

 

うむ。良い返事だ。

 

「つきましては・・・房中術の修行をしたいので、つ・づ・き!お願いしますにゃん♪」

 

にゃが出たかー。最初はあざといから

あんまり好きじゃないって言ってたが、

今じゃ甘える時に普通に言ってるんだよな。

 

変われば変わるもんだ。

 

「あ、あの。・・・ダメ、ですか?」

 

あぁ、黙ってたから不安にさせたか?

 

夜伽の最中に、目の前にいる女を

放置して考え事するなど、男としてダメだろう。失敗失敗、伯爵失敗だ。

 

「まさか。お前も随分いいオンナになった

と思っただけだ。

今回はお前も頑張ったからご褒美は弾むさ。

続きを望むならいくらでもシテやろう!」

 

それにまぁ、白音がこうして自己主張して

くるようなったのもいいことだ。

前みたく遠慮して何も言えないよりは余程良い。

 

そういう遠慮も要らんと言う意味も込めて、しっかり愛してやらねばな!

 

「にゃ~ん♪」

 

私は全てを愛している!・・・訳では無いが、悪魔は悪魔らしくあるべきだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この動きだした物語を観察するか、それともぶち壊すか。

 

配役と内容次第ではあるが、今世もせいぜい楽しむとしようじゃないか。

 

 

 

 




無能は確か町外れの教会を天界の
勢力とか言ってませんでしたっけ?

アレ?堕天使・・・そんな考察回

シロネコもオンナであるってお話。

ご主人様>>超えられない壁>>奥様(無手)>>>>>簪姉様(神器?有)>>超えられない壁>>アザゼル>黒歌姉様≧白音≧

奥様と簪姉様の間にはかなりの格差はあれど壁はない模様。



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4話

あれ?二話出来た。

原作設定へのツッコミはまだ微妙。
まずはオセ君たちの強さの
秘密やら何やらの解説回です。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


サバト。ソレはヨーロッパで信じられていた魔女あるいは悪魔崇拝の集会。魔宴、魔女の夜宴・夜会ともいう(wiki)

 

何故いきなりサバトについて語るかって?

ソレは赤おじさんの従妹が亡くなってから

ここ駒王町を管理していたオセ様こと俺が

この街でサバトを開いていたからだな。

 

参加者は魔女ではないが、悪魔崇拝者

ではあるのでセーフ。

 

黒ミサの方が良いか?と思ったが、なんか

デスノート書いてそうでアレだし。

それに死神とかこられても困るから、ここはサバトで統一。

 

各集会は毎月一回開催され、参加者からは

大量の生命力を得ることが出来る。

 

この会合のおかげで俺や俺の眷属の器は

限界強度を更新して昇華し続けてるし、

俺が治めるオセ領の地質やら霊的な効能

が増すわけだ。

 

さらに悪魔契約の基本である「契約したら

死後魂は冥界に囚われる」という要項を

悪魔に転生できると言う殺し文句にして

契約者をGETしてるわけだな。

 

(そもそも悪魔ってそうやって増えるもんだし)

 

さらに我がオセ領は、所領は広いが堕天使の

領土に近いと言う、ある意味では冥界で最も

危険な場所でもある。

 

転生待ちの魂があって、広い土地が有って、

生まれた子を育てることが出来る環境があり、

天敵が側にいれば、子を増やすのが生物というもの。

 

寿命が万年あろうと生存本能を刺激する

環境なら、自動的にそうなるんだよ(暴論)

 

事実都市部では子供の出生率が低いらしい

けど、ウチの所領だと普通に生まれてるし。

 

まぁ一万年寿命があって戦争が無いので

有れば、普通は子供なんか産まねぇよ?

 

アジュカは種の存続がどうこう言って

悪魔の駒を作ったらしいが、こんなん

他勢力に喧嘩売ってんじゃん。

 

戦争の火種にしかならんって。

 

サーゼクスが超越者と言っても、所詮は

神クラスだからゴリ押しもできん。

 

基本は信仰で数と勢力が増すんだから

黙って契約して悪魔としての仕事をして

れば良いのに、あの脳筋魔王どもは

近道を求めて世界の理に真っ向から逆らいやがった。

 

そもそも種の存亡が危ぶまれるって言うが、

何千年もかけて増やしてきた悪魔が戦争と

内乱で減っただけだろ?

 

そんなん同じペースで増やせば良いだけだろうに。

 

人間の人口爆発に影響されたかどうか

知らんが、誰と比べて数が少ないんだ?

 

人間が増えて悪魔が減ったなら、個人に

回る信仰や契約数が増えて万々歳だろうが。

 

悪魔に友情パワーなんざいらんだろうし、

王制とはいえ完全に自治が認められた

貴族政治に必要以上の社会性もいらんだろう?

 

まずは統治者が個の力を高めることで

他者からの干渉を防ぐ必要がある。

 

悪魔の序列や格式なんざ他の神話群には関係無いんだからな。

 

それなのに中途半端に貴族だの王だの

爵位だの・・・何言ってんだ?

 

レーティングゲーム?戦争の練習?アホか。

 

王の駒合わせても16個だぞ?16人で

集団戦でもすんのか?

 

さらにそれぞれの指揮官は貴族だし。

戦場に連携の取れない中途半端な小隊が

生まれるだけじゃねーか。

 

ソレだって強大な個に潰されるのがこの世界だ。

 

なら中途半端な眷属作ったり中途半端な

貴族社会を形成するより、徹底的に個を

磨くべきだろう。

 

そんな訳で他の連中が都市部で政治ごっこを

行ってる内に、俺は黙々と悪魔としての活動

をしているわけだ。

 

「「「おぉぉぉぉオセ様ぁぁぁぁぁ!」」」

 

うむ。素晴らしい熱気だ。さすがは全国から選び抜かれた精鋭。

 

「「「にょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

あの世紀末覇者共は皆勤だな。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!俺は今日の為に嫁を質に入れて来たんだぁぁぁ!」

 

中野さんかよ。

 

「「「「「オーセ!オーセ!オーセ!オーセ!オーセ!オーセ!」」」」」

 

押すなよ?絶対に押すなよ?とか言いたくなるが・・・

 

「うにゃ~いつもながら凄い熱気です」

 

白音はコイツら苦手だからなぁ。

 

「全くだね。まぁ気持ちはわかるけど」

 

簪はな。うん。方向性は違うけどある意味お仲間だし。

 

「別に暑いだけで誰も損してませんからね、さっさと終わらせて鍛錬しましょうか」

 

弟子に至っては完全に己の成長の糧としか見てねぇよ。

 

いや、ソレが悪魔としては正しいのだが。

 

・・・まぁいいや()

 

さっさと終わらせたいのは俺も同じだし、

連中だってさっさと始めたいだろう。

 

んじゃ、スイッチを切り替えるか・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『待たせたな(イケボ)』

 

その声と共に今日もまた、サバトの会場に彼らにとっての神が降臨した。

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」

 

そしてその声が聞こえた瞬間、全国から集められた500人の悪魔崇拝者たちが一斉に声を上げる。

 

ここに集まった彼らの内心は様々だ。

 

今月も来てくれた!

噂は本当だった!

コレで勝つる!!

114514!!

アツゥイ!!!!

ウホッ!いい悪魔!

 

・・・本当に様々だ。

 

『コレよりサバトを始める』

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」

 

だが皆が皆、サバトの開始を心待ちにしていたのは確定的に明らか!

 

皆は待っていたのだ。彼に会える時を。

皆は待っていたのだ。夢を叶える瞬間を。

皆は待っていたのだ。故に、例え悪魔に魂を売ることになっても決して後悔はしない!

 

そう、皆が待っていた悪魔の名はオセ!

ソロモン72柱の1柱にして地獄の大総統!

偽エノク文書やゴエティアに記されし悪魔にして豹頭の悪魔!

 

そんな彼によってのみ叶えられる、サバトに

集いし500人が望むモノ!それは・・・

 

『諸君!魔法少女になりたいかぁぁぁッ!?』

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

オセ。その能力は多々有るが、彼らが望むのは

狂気と妄想、そして変身!

 

・・・今宵。漢達は夢を叶える。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

なんて言うか、まぁオセって感じだから

良いと思うんだけどさ。

それに魔法少女はともかくとして、他にも

変身したい!って感じでご当主様を呼ぶ人は

多いし?個別にアニメキャラとかに変身して

自撮りしたりしてるんだよね。

 

まさしくオタクの聖地!

 

コレが毎週土曜に行われてて、その内容が

 

第一土曜日・魔法少女

第二土曜日・ドラグ・ソボール

第三土曜日・機動騎士ダンガム

第四土曜日・花弁ライダー

 

だもんねぇ。ダンガム以外は実際に変身できるし。そりゃオタクは喜ぶよ。

 

ダンガムもキャラに変身した上、幻魔拳で

リアルな操縦体験まで出来るから大きなお友達も大満足。

 

アガレス大公のところの父娘とかもお忍びで

来ようとしたらしいじゃん?

 

で、特に儲けが大きいのがこの魔法少女。

 

あの世紀末覇者みたいな連中が見た目

通りの物凄いエネルギー持ってて、

下手な魔王級より強いみたいなんだよね。

 

そいつらを含む参加者の生命力の半分が参加費用になるわけだ。

 

そうやって回収した生命力の半分は私たちの

強化に使われて、残りの半分が冥界に行く。

 

本来ならその冥界に行った力は冥界全土に影響を

与えるハズだったけど、私がシステムをいじって

オセ領の土地や空気。つまり環境改善に当てた。

 

その結果オセ領では出生率も高く、子供の

素質も総じて高い。

 

学校やら職能訓練所を開設して兵士も鍛え

てるし・・・そもそも堕天使領が隣にある

から、住民の危機感って言うのかな?

 

そういうのが高いんだよね。

 

で強い兵士と高い忠誠心を持った兵士に

守られてるから治安はすこぶる良いし、

土地に栄養が有るからご飯も美味しい。

 

ご当主様も奥様も私もその辺の堕天使に

負けることは無いから実際に侵攻を受けた

ことは無いけど、住民の本能的な危機感

は刺激されてるんだよね。

だから普通に子作りするし、普通に子供が

生まれる。

 

ご当主様がオセ家の当主になってからココ

数十年、オセ領は拡大を続けてるし、ほとんどの分野で右肩上がりの成長率を誇ってる。

 

もうウハウハだよねぇ。

 

あ、ちなみにサバトで生命力を抜かれた連中は、

魔法の時間が終わったら疲れ果てて倒れこむ

場合も有るけど・・・今じゃ普通にその感覚

すら満足して受け入れてるからね。

 

『いい汗かいた』って感じなんでしょ?

 

一応参加費で一人3000円もらってるから、特に不信は抱かれて無いみたいだし。

 

それに各イベントが月一限定で参加者は選抜式って言うのが良いんだろうね。

 

特別感があるし、抽選すら予約で埋まってるよ。

 

まさしくWINーWINの関係。

自分の力を最大限利用して利益を上げるところはさすがご当主様だね。

 

「さて、アチラは特に問題無いよう

ですし、シロネコと簪の駒王町での

任務の報告を受けるとしましょう」

 

おっと、もう向こうは維持だけだもんね。

ご当主様は向こうの仕事に集中するみたい

だから奥様はこっちの問題に当たるわけか。

 

けど、なんて言うか・・・何十年と

経ってるけど、奥様から簪って呼ばれるのは

なかなか慣れないなぁ。

 

向こうは『奥様』じゃなくて『少佐』って

呼んでも返事はしてくれるけど、やっぱり

正妻であることが嬉しいみたいだからね。

 

私は変わらず側室だけど、ご当主様の

側に居れればソレで良いし。

なんだかんだで第一側室って偉いしね!

 

「はい奥様!赤龍帝を宿した性犯罪者は、

翌日になって無能から説明を受けて正式な

眷属となったようです!」

 

おっと報告報告。まぁ今回はマダオがメイン

になるから、白音ちゃんがメインで報告する

ことになるんだよね。

 

ほとんど知ってることだけど、聞き流してて

補足説明を求められたら矯正されちゃうから

油断は出来ないよ。

 

「はぁ・・・翌日というところが

無能が無能たる所以ですね」

 

ですよねー。そもそも不法に滞在してる

堕天使に自領の住民を殺されたのに、

その堕天使を尾行することも無く放置。

 

そして新たに眷属にした性犯罪者も放置してそのまま帰宅するんですからね。

 

もぉわけがわからないよ。

 

「ワザワザ目立つ木場先輩を使って学校の

旧校舎に呼び出したらしいですから、

そのへんも随分と噂になってますよ」

 

あぁ、元女子高だもんね。腐ってるのが多そうだよ。

 

「その程度の配慮もできないとは。

どーせ目立っても「記憶を消せばいい」

とか簡単に考えてるんでしょうね」

 

ありそうですねー。

 

「だと思います。それで現在廃教会には、

堕天使とディオドラがモノにしようと

してる聖女と、堕天使から加護を得てる

エクソシストが集まってるようです」

 

これもなぁ。そもそも悪魔と堕天使の

違いが良くわからないんだよなぁ。

 

そもそも神様に反逆したくせに攻撃に

光を使うって何なの?

 

ソレで天使と戦えるの?

 

もしくは天使の光+堕天使の何かが合わさってサイキョーになっちゃった?

 

かつての大戦時にどうやって三竦みを作ったのか気になるところだよね。

 

「何というか・・・旦那様が言うように、

色情狂の小僧が失敗して聖女が無能姫の

眷属になるのが幻視できましたよ」

 

まぁあきらかに制御出来てないし、失敗フラグ乱立してますもんね。

 

「私もそう思います。さらに教会にいる

はぐれのエクソシストどもは悪魔と契約を

交わした人間を襲ってます」

 

あぁ、確かに無能や阿呆の眷属と接触した

人間が狙われてましたね。

 

「簪?」

 

おっと。

 

「はい、その通りです。ですが連中が狙う

のは悪魔と契約を交わしたことがあるか、

悪魔を呼び出そうとしている最中の人間に限ります」

 

おそらく魔力の残り香とかを感じてる

んでしょうけど。

 

「ふむ。なるほど」

 

まぁあんな目立つ方法でティッシュ配り

してたら、嫌でも目星はつけられますよねぇ。

 

「それで私たちと契約を交わした人間には

私が作ったプロテクトをかけてますので、

堕天使にも天使にも、また同じ悪魔で

あっても魔力を辿って契約履歴を調べる

ことは出来ません」

 

この契約自体ネット受注だし?

 

「さらにこのサバトもあくまで同好

の士の集まりとしか公表してません

ので、情報の漏洩はありませんね」

 

会場の場所は毎回変えて、当選者だけに

教える形だし。

 

そもそもこういうのに参加する人って、

横のつながりは凄く強いけど、ある意味

で排他的だからね。

 

『実は俺、月に一回悪魔が主催するサバトに参加して魔法少女になってるんだ!』

 

なんて公表する人は居ないし、そういう

のは抽選で弾いてるから、情報漏洩の心配は無いですよ。

 

それに、万が一バレても良いように、

契約者にはご当主様の刻印付きのバッジが

有りますからねぇ。

 

もし我々の契約者が殺されたら戦争です。

 

今の天使や堕天使はご主人様に口実を

与えるような真似はしないでしょう。

 

「ふむ。まぁ我々の契約者が守れて

いるなら問題ありませんね。

あとは管理者を名乗る無能どもの問題でしょうし・・・」

 

ですよねー。自分の契約者くらい自分で

守れって感じですよねー。

 

「でも奥様?サーゼクスやセラフォルーから

受けた依頼だと、ソイツらも私や簪姉様が

守らなきゃダメなんじゃ?」

 

あーうん。その可能性もあるかな?

なんか私たちの所為にしてきそうな予感が・・・

 

「問題ありません。旦那様も常々仰って

ますが、契約者を守るのは契約を交わした

悪魔の義務です。それを自分の眷属

以外に代行させるような悪魔はもはや

悪魔ではありません」

 

「あ、そうだったんですね!」

 

ん~それなら問題無いかな?

 

「あとの問題は日本神話群からのクレームです」

 

「「あぁ」」

 

アッチにしてみれば、悪魔の内情なんかどうでも良いもんね。

 

それが無能の契約者だろうが阿呆の

契約者だろうが、そんなん関係ないから

しっかり守れ!って感じになるよね?

 

「前々から気になってましたけど、何で

日本神話の方々はご主人様にクレームを

入れるんです?簪姉様からは引き継ぎが

どうとか教えてもらったんですけど・・・」

 

言ったねぇ。まぁソレも口実の

一つなんだけどね?

 

「まぁ引継ぎ云々もありますがね、

日本神話としては旦那様と繋がりを

切りたくないんですよ」

 

「・・・なるほど」

 

前任だからもう知らないって感じに

なったらアレだし。

無能が居なくなったら再度ご当主様に

管理者になって欲しいみたいなんだよね。

 

「実際我々としては、開発しても我々の

領土になるわけでもない地上の土地

なんか預かっても得がないし、関わり

たくないと言うのが本音なんですけど・・・」

 

「「ですけど?」」

 

奥様が言いよどむのは珍しいですよね?

 

「・・・二人も知ってるでしょう?

あの目つきの悪い冷徹な鬼ぃさん」

 

「「・・・はい」」

 

あの方はご当主様が見せた幻覚だと思ったら、

普通に日本の地獄に居ましたもんね。

 

臨死体験する度に『また旅行ですか?』って

言って申請書類を出して来るヒトなんだけど、

ほんとに地獄で鬼をしてたんですよねぇ。

 

「あの方は普通に旦那様と仲良いし、

金棒片手に頼まれたら断れませんよ」

 

・・・わかります。

 

いろんな意味でお世話になってますもんね。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

はぁ。また駒王町の住民ですか?

 

一介の悪魔でしかないオセさんには悪い

ですが、あの小娘どもは一度しっかり

教育をして貰わないといけませんよね?

 

ん?あぁ、今回の下手人は堕天使関係者

ですか・・・そうですかそうですか。

アザゼルを血祭りに上げるのが先ですか。

 

とりあえずクレームを入れて、改善の

兆しがないなら・・・くくくくく

 




弟子にも師匠以外に怖いヒト()がいるもよう。

まぁ、あんまり本編には関わりませんよ?
作者が風呂敷畳めなくなるんで・・・

サバトで大量の生気を吸収して器の拡張中ってお話。

全国で魔法少女に憧れる人間が500人・・・多いか少ないか。

ただ、特撮ヒーローや機動戦士は500人じゃ足りませんよね?

堕天使を放置して住民と契約者を守らない管理者とは一体・・・。悪魔の内部的な信用は無くなりますが、基本は犯人が一番悪いので対外的には無能の評価は落ちないもよう。


??≧オセ>>超えられない壁>>>>>弟子・・・以下前話と同じ。

ミル○ん?この人なぁ・・・魔王級だけどなぁ。時空がなぁ。


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5話

元聖女は良いヤツだった!
良いヤツだったぁぁぁぁぁぁぁ!!

でっていう。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「はい、予想通りの茶番だったね」

 

「ですねー」

 

しかし元聖女が教会を追放された

理由が、教会の前に現れた傷だらけの

悪魔を回復させたからって。

 

元聖女って馬鹿じゃない?

 

なんで聖女が居る教会の近くに傷だらけの悪魔が単体でいるの?

 

教会に逃げ込む悪魔がいるわけないでしょ?

 

それに、普通に考えたら悪魔に傷を負わせたのは天使か教会のエクソシストじゃないの?

 

追撃は無いの?無いならなんでソレが無いのかって考えなかったの?

 

ちょっと考えれば、その悪魔が天使か教会の

エクソシストと戦って、瀕死の傷を負ったけど

ソレを倒したってなるよね?

 

もう完全に教会の敵じゃん。ソレを癒した?

そりゃ教会から敵認定されるでしょうよ。

 

現場で戦うエクソシストからしてみたら、

自分たちが犠牲を払って必死で追い詰めた

悪魔をあっさり全回復させたってことでしょ?

 

そんなの話を聞いただけでブチ切れるよね?

 

なんでアイツは殺されずに追放で済んだの?

 

追放した後、ココく来るまでに追手は無かったの?

 

わけがわからないよ。

 

 

それに堕天使とディオドラもねぇ。

 

堕天使は所詮木っ端堕天使でしたし、

ディオドラも中途半端にしか関わって

無いから、後ろ盾ってほどでもなかったし。

 

アレは証拠を残すことを嫌ったんですかね?

それとも後からアホ聖女の味方面する為に

堕天使に顔と名前を明かさなかったんでしょうか?

 

普通に「堕天使と教会を手玉に取った!」

と言っても問題ないと思うんですが・・・

まぁ中途半端にアホ聖女の好感度を高め

ようとしたんでしょうね。

 

その結果無能に奪われましたけど。

 

あの草むらで待機してるディオドラの

背中を指差して「NDK?」とか言ってる

簪姉様の笑顔が今回の茶番の唯一にして一番の見所でしたね!

 

「けどまぁ。神器の外し方と取り付け方は

見たから、コレを研究すれば堕天使や教会

の戦力は削れるね」

 

「さすが簪姉様です!」

 

あの茶番の中でもしっかり将来に役立つ

情報を獲得するなんて・・・

 

政治とか組織運営は奥様に及びませんが、

技術ならアジュカすら凌ぐって言うのは

伊達ではありませんよ!

 

「基本的に三大勢力は人間の技術を見下し

てるからねぇ。

使い魔や何やらは警戒しても、監視カメラは

普通に素通りなんだよ。おかげで秘術だろう

がなんだろうが目の前でやってくれたよ」

 

いや、私が褒めたのは監視カメラ云々じゃ

なくて、アノ阿呆共の茶番の中に見るべき

ところを見出したその観察力なんですけど。

 

けどこの程度は簪姉様にとっては当たり前

のことでしょうから、褒めても馬鹿にされた

ようにしか感じないかもしれません。

 

ここはお話に乗りましょう!

 

「アレは何というか、阿呆な状況でしたよねぇ」

 

あの聖女を括りつけてた十字架とか、何の為に必要だったのかわかりませんし。

 

さらに狭い地下室に信者を密集させて、

どったんばったん大騒ぎでしょ?

 

あんなの普通に目立ちますし、教会陣営が

仕込んだSEC●M的なカメラとかにも全部

情報が映ってましたよね?

 

「カメラの映像は何度でも再生できるし

劣化もしないから、研究するならコッチの

ほうが楽なんだけどさ~アイツ等が全然

気にしないから、黙ってたら一般人にも

情報が流出しちゃうんだよねぇ」

 

ハッキングしたり情報の差し替えしたり

イロイロしてましたもんねぇ。

 

そういう情報操作に関しては奥様の

得意分野らしいですけど、簪姉様も

出来ないわけじゃないですからね。

 

「お疲れ様です」

 

なんであんな目立つことしてたのやら。

地下室に集まった信者?も無駄だし、

他の堕天使は普通に別行動して、悪魔と

契約した人間を殺そうとしてたし。

 

もう少し集団としての纏りを持ってたら

あの痴女も逃げることくらいは出来たと思うんですけどね。

 

「ホント、無駄に疲れたよ。まぁアイツ等が

どーなろうと私たちはどーでも良いんだけどねぇ」

 

ですね。ただアイツ等が目立って情報漏洩

を隠蔽する為に記憶操作とかされたら、

一般の人たちにも悪魔の魔力の残り香が

残っちゃうから、そんなことをさせないようにこうしてフォローしてるだけだし。

 

その残り香のせいで、全く関係ない市民が

悪魔関係者として教会とか堕天使に狙われ

るんだから、日本神話の方々だって文句の

一つや二つはつけたくなりますよね。

 

・・・あの鬼ぃさんが文句だけで済ませて

くれるって言うのが信じられませんけど。

 

ソコはご主人様とのユウジョウですよね!

 

「とりあえず無能たちが消えたら教会内部を

調べて、儀式に使ってた素材とかの回収しよう」

 

「はい!」

 

あんな雑魚堕天使が行ってたアホくさい

儀式でも、使ってた素材には何か意味があるかもしれませんしね。

 

もしアザゼルの趣味なら、ソレはソレで一つの

情報です。

研究に余計なモノなど無いのです!

 

「無能が残した監視用の使い魔とかが

いるかもしれないけど、その辺は白音ちゃんに任せようかな?」

 

「はい!お任せ下さい!」

 

こういう時の為の仙術ですからね!

お役に立って褒められるんです!

 

「ちっ。もう終わってやがるかっ!」

 

ん?この普段から赤ビキニを履きながら

『私は一向に構わんッ!』とか『まぁいいや』

って言って聖杯戦争に参加しつつ、ワインを

使ってパパウパウパウでフヒィーンしてそうな声は・・・

 

「・・・アザゼルですか。まさかワザワザ

悪魔が管理してる土地に来るとはね」

 

そう堕天使陣営が誇る幹部連中の総督(変態の長にして)アザゼル(いい歳こいて厨二病患者のおっさんっ!)!」

 

「・・・ソコ、心の声が漏れてるぞ」

 

おや、つい本音が出ちゃいましたか。

失敗失敗。白音失敗です。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

クソっ、日本の鬼畜魔神にクレーム入れられて

大至急事態の収拾に来たと思ったら、まさか

カンザシ・オセに現場を抑えられているとはっ!

 

コイツは技術者としても驚異ではあるが、

単独の戦闘能力でも俺を凌ぐし、何よりコイツの神器?は本当にヤバイ!

 

なんでこんなところに・・・と言いたい

ところだが、元々コイツラは駒王町の

前任の管理者だし、あの外道鬼神の

知り合いらしいからな。

 

今回の件も無関係とも言えんのだろうが・・・

 

それにシロネ・オセまでいやがる。

 

元が日本出身の妖怪で、あの動物好きの

虐殺鬼王のお気に入りだし、コイツ単独

でも俺を苦戦させる程度の実力はある。

 

さらにコイツらの主は『悪魔は悪魔らしく

あるべきだ』って言う理念から、堕天使

や天使と馴れ合うことをしない。

 

ウチのコカビエル以上に戦争を望んでるキチガ●だぞ。

 

当然眷属であるこいつらも、ココで俺を

殺すことに抵抗など無いだろうしな。

 

今のも俺を挑発したんだろう?

そうだよな?

本音が漏れたわけじゃないよな?

 

いや、まぁソレはともかく、ここでの戦闘は間違いなく悪手だ。

 

俺が悪魔の領土に無断侵犯したって口実で

戦闘が始まり、そのまま冥界のオセ領から

ヤツの正妻が兵を率いて侵攻してくる!

 

そして今の俺たちじゃコイツらと戦争になったら確実に甚大な被害が出る。

 

流石にサーゼクスやアジュカが止める

だろうから、当代のオセが戦場に出て来る

ことは無いだろうが、奥方とカンザシがな。

 

コイツらが本格的に動き出したら正式な

停戦命令が出るまで一体どれだけの

仲間が殺されるか・・・想像もつかん。

 

そこで停戦したとしても、コッチに非が

ある以上その損害の補填が出来んからな。

 

そうなれば勢力としては死んだも同然。

 

せめてヴァーリにシロネ・オセを

抑える程度の実力がつくまでは戦い

にもならんぞ。

 

かといって殺る気満々のコイツら相手じゃ無傷で逃げることも、無傷で逃がすことも出来ん。

 

クソっ!下っ端の暴走で、なんで此処まで俺らが追い詰められなきゃなんねーんだよ!

 

「随分不満そうな顔をしてますが、そんなに

変態の長扱いが不満でしたか?」

 

あぁん?変態の長呼ばわりされて喜ぶよう

な奴なんか・・・居たな。バラキエルとか。

 

「いい歳こいて厨二病患者のおっさんの

方が不満なのかもしれませんよ?」

 

やかましい!男はいつだって少年の心を持ってるんだよ!

 

「あえて言うなら両方不満だが・・・

まぁ今回はウチの下っ端がお前らに

迷惑を掛けたからな。ここは不問にしてやるよ」

 

つーか会話だと?このキチ●イ共が?

堕天使の総督(仮想敵の首領)であるこの俺と?

 

「あぁ、もしかして戦闘をお望みですか?

申し訳ありませんが、今は日本神話群の

方々から自粛要請が入ってましてね」

 

よしっ!助かった!流石の覇王鬼帝も、地上で戦闘が起こった際の事後処理が面倒だったと見える!

 

「雑魚の堕天使を一方的に駆除するなら

まだしも、相手は腐っても堕天使の総督。

どんな技術を持ってるかわからない

経験豊富な貴方が、なりふり構わず逃げに

徹したら地上にもかなりの被害が出て

我々が折檻を受けてしまいますからね。

そうなったら悪魔と堕天使の戦争どころじゃありません。故にココは見逃しますよ」

 

言ってくれる・・・確かに前線から引いて

長いし、純粋な戦闘力に関しては多少

劣化したのは認めるが、たかだか百歳

程度の小娘相手に此処までコケにされて

黙っていられるかっ!!

 

・・・って言うのがコイツの狙いなんだろ?乗らねぇよ。

 

コッチから仕掛けたらコイツらは問答無用で応戦するだろう。

 

その結果、あの地獄無双が

 

『子供の挑発に乗って地上で戦闘?正気ですか?』

 

とか言って来るんだろ?誰が引っかかるか!

 

「・・・流石にこんな挑発には乗りませんか。

まぁ貴方がココに来たのは日本神話の方々

からのクレームの対処の為なのでしょうが、

ココは悪魔が管理する土地です。

急ぎなのはわかりますけど、最低限の手順は

踏んでもらわないと困りますね。

本来なら悪魔領に対する領域侵犯と見做され

ますよ?次回以降は気をつけて下さい」

 

ちっ。言ってることは向こうが正しい。

 

だがコノ言い方だと、今回は警告で収める

つもりか・・・コイツらもあの超鬼羅刹

は怖いと見える。

 

「あぁ了解した。それで、これから後始末をしたいんだが情報の共有は可能か?」

 

本来なら堕天使である俺に情報など

渡すことは無いだろうが、今回は

日本神話群からの依頼で後始末を手伝う

形になるからな。無下にはされんだろ。

 

「自分で調べろ・・・と言いたいところ

ですが、今回はまぁ補佐官様絡みですから

シカタナイですね」

 

そう言うと思ったよ。さて、そんじゃまぁ

真面目にやるか!

 

・・・ココで俺が邪魔したとか報告されたら

折檻された上で日本での活動を制限されるからな。

 

下っ端のせいで、この特殊な進化を遂げた

神秘の国の研究が出来なくなんざゴメンだぞ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

カクカクシカジカアクマカラミタムートンイトウ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いや・・・悪魔も聖女も教会も堕天使も、

関係者全部まとめてバカじゃねぇのか?」

 

映像を見せてもらったが、なんだこの三文芝居?

 

当然編集や改竄されてる可能性も有るから

後でキッチリ調査はするんだが・・・それにしたってコレはひどい。

 

「我々から見てもディオドラと無能に関して

は擁護のしようが無いですね」

 

「そりゃそうだろうよ」

 

そもそも下っ端が自由気ままに歩いてるし、

契約者を殺されてるにも関わらず堕天使陣営(俺たち)

クレームも入れてない。

 

普通なら相手の弱みを握って政治利用するべきだろう?

 

さらに契約者を守ろうともしてないし、

報復もしていない?どういうことだ?

 

「最終的に無能が堕天使共を殺したのは

『目障りだったから』のようですね。

一応冥界に確認を取り、あの連中が不法侵犯

だと言う確認はしたようですが・・・ソレを

招き入れたディオドラの動きには終ぞ気付きませんでした」

 

「馬鹿じゃねぇ?」

 

サーゼクスが妹を甘やかしてるのは

知っていたが・・・こんなのをオセの

代わりに管理者にしたのか?

 

そりゃ日本神話群だってキレるさ。

 

「更に、日中当たり前に活動してたヤツを

放置して、住民が殺されても何も文句を

言うことも無かったって・・・」

 

セラフォルーの妹は何をしてるんだよ?

 

「コイツらは管理者として無能過ぎますが、

だからと言って堕天使が領土侵犯や住民の

殺害をして良いわけでもないということは

わかりますね?」

 

「・・・そりゃそーだ」

 

そうとしか言えん。家の鍵がかかってない

からと言って盗みに入って良いわけじゃ無い。

 

それはわかるんだがよぉ・・・

 

コレはねーよ。家の鍵が空いてるどころか、

玄関開けっぱで目の前に財布置いてる状況だぞ?

 

泥棒が罠かと思って入ってみたら、普通に

無用心なだけだったって感じだろ?

 

ソレで家の中に入られた!とか抜かしてもなぁ。

 

馬鹿じゃねぇ?

 

最低限の備えってのがあるだろうよ。

 

でもってウチの下っ端は悪魔に良いように

利用された挙句、カンザシ・オセに神器を

抜き取る瞬間を見られたって?

 

最悪だ。

 

元々捕らえた堕天使を拷問やら何やらを

して、情報そのものは持ってた可能性が

あるんだが、コレで悪魔も・・・いや、

あのキ●ガイも神器が自由に使えるように

なっちまう!

 

でもって赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だと?!阿呆が!

今まで眠ってた神滅具(ロンギヌス)を目覚めさせた挙句

敵対する陣営に渡しやがって!

 

ヴァーリ的には良い事かもしれんが、

下手に戦わせればオセ夫妻に消される。

 

クソっ・・・問題だらけだが、現時点でその問題を認識できただけでも良しとしようか。

 

って言うかそう思わねーとやってられねぇ!

 

「簪姉様。コッチは終わりました」

 

あぁん?そういえばシロネは居なかったな

どこに行って・・・?!

 

ヤられたっ!現場に残った資材やら

何やらを根こそぎ持って行きやがったっ!

 

コレで全く同じ状況を作って儀式を

再現してから各種改良を行う気かっ!

 

「お疲れ様、白音ちゃん。情報料は確かに

頂戴しました。後は政治的な問題になる

ので、サーゼクス様とお話下さい」

 

「・・・はいよ」

 

完全にヤられた・・・。

 

しかも外交担当はセラフォルーであるにも

関わらず、ここでサーゼクスの名前が出て

くるあたり、俺らが水面下でやってることも

知ってるぞってか?

 

しかし誰よりも戦争を望むコイツらがアレを黙認するだと?一体何を企んでやがる?!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「おや、アザゼル。お早いお帰りで。

後始末は終わったので?」

 

現地でするようなことは全部連中に

やられたからな。

連中が言うように、後は政治の問題だ。

 

「シェムハザ、コレから大至急サーゼクスと

連絡を取る。後始末に関する資料はコレだ。

確認して裏取りを頼む」

 

映像資料もある以上、嘘ってことはない

だろうが、悪魔からの資料だけを参考に

して行動するわけにいかんからな。

 

「サーゼクス?あぁアソコには最愛の妹が

いましたからね。堕天使と何かあったと

言われて暴走されても困りますか」

 

まぁ普通ならそう思うよな

 

「ソレもそうだが、今回はオセが絡んでやがる」

 

「はぁ?!」

 

だよなぁ。悪魔の嫁さんが居るコイツに

してみたら、堕天使と戦争を望むあの

ヤロウは決して無視できない存在だ。

 

「ヤツに口実を与える前に動かなきゃ

まずいことになりそうだ。

あとコカビエルが挑発に乗らんように

動きを見張ってくれ」

 

アイツもな。休戦したことに反対する

堕天使を纏めてくれてはいるが、その

せいもあってだいぶ鬱屈が溜まってる。

 

俺がオセならアイツを狙うだろうよ。

 

「・・・了解です」

 

そもそも今現在の時点でオセがどれほど

成長してるか見当もつかんから、出鼻を

挫くための先制攻撃も出来ん。

 

とりあえずサーゼクスやアジュカとは

戦うような様子もないから、連中にオセの

動きを牽制してもらって、稼いだ時間を

情報収拾に当てるべきだ。

 

下手に時間を与えれば、タダでさえ

強力な連中が神器を装備して来る。

 

「あ~クソっ!後任の管理者(無能と阿呆)の管理体制の不備を利用して

此処までの策を打ってくるとは・・・やってくれたなオセっ!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・いや、お前らの自爆だから。

 

 

 

 

 




癒す相手は考えなさい。
エクソシストがどんな思いで訓練して
悪魔と戦ってると思ってるんだ?

それに良く言われることですが、
癒した悪魔がまた悪さしたら
どーすんの?ってことですよね。

そりゃ追放されますよ。つーかこんなん
エクソシストに裏切り者呼ばわり
されて殺されるでしょ?

こいつを追放して悪魔とかに味方されたら
どうなるよ?

今後は悪魔に瀕死のダメージ与えても、
帰還されたら癒されるんやで?

一人の剣士でしかない八重垣なんかより
よっぽどタチ悪いと思うんだけどなー。ってお話

アザゼルとはそれなりに顔見知り。

まぁ堕天使側にしたらやべー奴として
指名手配されてる感じですかね。

ちょっと違うかもしれませんが、
再不斬とカカシみたいな感じと言えば
わかりやすいでしょうかね?

簪(無手)>>>中二病>白音


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原作2巻
6話


原作二巻突入ッ!

突っ込みどころ満載だぜっ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「は?フェニックスの三男坊?」

 

ルッケン●じゃないよね?

無能の婚約者の方だよね?

 

「はい。今日の放課後なんですが、

無能の拠点である部室にメイド気取りが

居ましたんで何かあるのかな~?

って思って探ってみたら、普通に

転移陣を使って転移して来ました」

 

ほほう。いや、アレが婚約者の元を訪れるのは特に問題ないけどさ。

 

問題が有るのはメイド気取りだよねぇ。

 

へぇ、ふぅん。ほぉ。普段から無能を

フォローしてる前任者の私たちには、

先触れの連絡も本人からのアイサツも

何も無いけど、コレはどういうことかな?

 

「奥様やご当主様から何か連絡は来てる?」

 

アッチに連絡が行ってて、奥様かご当主様が

特に私たちに報告する必要は無いって判断

したならソレで良いけどさぁ。

 

「・・・来てないですね。確認の連絡を入れておきましょう」

 

「だね」

 

もしアッチにも何の連絡も入れてないと

したら・・・サーゼクスの失策だね。

 

メイド気取りが何を企んでるかは

知らないけど、私たちはご当主様の

代理としてココに居るんだよ?

 

メイドとして来てるならグレモリー家が、

女王として来てるならルシファーが

オセ家を舐めてるってことだよね?

 

それとも無能の輿入れを拒否されたこと

に対する腹いせかな?

 

黙ってれば無能はバアル家に嫁ぐことに

なるからって理由で、少しでも条件が良い

相手を探した結果・・・真っ先に婚姻相手

として名前が挙がったのがご当主様。

 

ソレはそうだよね?連中が自分たちと同じ

(だと思ってる)超越者を取り込もうと

するのは間違って無い。

 

その方法に婚姻を使うのも当たり前だし、

純血で実績も上げてるからバアル大王家も

文句が言えない相手だもん。

 

ただ、何をトチ狂ったのか知らないけど、

連中は無能を正妻にすることを条件に

上げてきたんだよねぇ。

 

奥様は「名目上のことでしょう?旦那様が

良いなら構いませんよ?」とか言ってたけど、

ご当主様の正妻として公私を支えている実績

がある奥様を差し置いて、なんで無能の小娘を

正妻にしなきゃならないんだって話だよね!

 

ご当主様も普通に「有り得ん」って言って

断ったけどさ!

そのせいで暫く奥様がご当主様に甘えて、

私たちの時間も削られちゃったけど・・・

 

あぁ~思い出したら何かムカついて来た!

 

「ん~冥界の奥様やご主人様にも特に連絡は行ってないみたいですね」

 

よし、ギルティ。

 

弱みを見せたら食われる政治の世界で、

こんな簡単に弱みを見せる時点で連中は

統治者に向いてないよ。

 

所詮馬鹿力で選ばれた王とその眷属だね。

 

あとはフェニックスか。婚約者の前任者

である我々を無視するのは頂けないけど、

グレモリー家やサーゼクスがそのことを

隠してる場合は、私たちがここに居ること

を知らないんだよね?

 

この場合は調べない不勉強さを叱るべき?

それともご当主様があえて隠したままに

してるって考えるべきかな?

 

ご当主様は物事を秘密にするの好きだからなぁ。

 

取り合えずグレモリー家にはクレーム入れておくように奥様に進言するとして・・・

 

「それで、あのメイド気取りは最終的に何しに来たの?」

 

わざわざ学校にまで行くくらいだもんね。

よっぽどの大事があったと見るべきだと

思うけど・・・でもコッチに何の連絡も

来てないってことは、グレモリー家の

内部の問題かな?

 

婚約者である焼き鳥と一緒に婚前旅行の

行き先を決めるだけなら、わざわざアレが

来たりしないよね?

 

そーゆーのはお互いの女王が打ち合わせ

して決めるモノだし。

 

「えっとですねー。なんでもグレモリー家

の当主とフェニックス家の当主公認で婚約

を結婚に切り替えるんだとか」

 

「へぇ~」

 

まぁ、今のままじゃあまりにも貴族としての

自覚も無いし、無能が過ぎるもんね。

 

ウチからの報告書や日本神話群からの

クレームに加えて、この間の厨二病(アザゼル)から

何か報告が行ったかな?

 

厨二病もなぁ。あんなロマンを勘違いした、中途半端なにわか技術者なんかさっさと滅べば良いのに。

 

あぁ、ダメだダメだ。オセ家の悪魔として

「滅べば良い」じゃなくて「滅ぼした」って

言えるようにならなきゃダメなんだよね。

 

それに白音ちゃんの報告もまだ有るみたいだし。

 

「で、ソレに反発した無能が焼き鳥と

レーティングゲームするそうです」

 

「はぁ?」

 

いや、ちょっとナニ言ってるかわからないですね。

 

「え?ナニ?あの無能。当主が決めた

婚約者との結婚に反対してるの?」

 

ありえなくない?

 

「みたいですね。なんかグレモリー家が

どうこうじゃなく、個人として見て

欲しいとか言ってるみたいです」

 

いや、アレは確かに普段からそう言ってるけどさ。

 

それって仕事の評価だけじゃなくて、恋愛とか結婚に関して言ってたの?

 

馬鹿じゃない?

 

「とりあえず家出したらいいんじゃないかな?」

 

そしたら貴族の娘じゃなく一人の小娘として見てもらえるよ?

 

後継はサーゼクスの子が居るし。

 

「ですよねぇ。私もあそこまで甘やかされて、

贅沢な暮しをしておきながら、ナニ言ってん

だコイツ?って思いましたよ」

 

普通はそうだよね?

 

グレモリーとしては身近にいるサーゼクスと

メイド気取りが自由恋愛の末に結婚したから、

貴族としての恋愛観を教えることが

出来なかったかもしれないけど、これは無い。

 

家を保つことこそ貴族家に生まれた

モノが果たす最低限の義務じゃん?

 

統治云々は求められてないでしょ?

 

あくまで貴族としての価値観を教育

する為の婚姻でしょ?

 

ついでに世継ぎも居れば尚良し、だろうけど。

 

無能があまりに無能を晒しすぎて、子供を

満足に育てられないって烙印を押されてる

連中にしてみたら、ここでしっかりしないと

貴族としては終わるよね?

 

そもそも地上と同じ広さがあって、海も無い

冥界だよ?堕天使と二分してるって言うけど

どんだけ広大だと思ってるの?

 

でもって名家が大量に没落やら断絶して

今や土地が余ってる状態だよ?

 

それなのにグレモリー家の所領は日本の

本州と同じくらいしかない。

 

はっきり言って公爵家としてはありえないくらいみみっちいよね?

 

ウチだって、かなり抑えてオーストラリア大陸より広いくらいの土地があるんだよ?

 

そんでもってウチはイロイロ開発して土地を

無駄にしないようにしてるけど、冥界には

まだまだ空きがあるんだよ?

 

それなのに日本の本州程度って。どんだけ政治力無いのさ?

 

一応魔王を輩出したせいで拡張が出来て

ないって理由があるかもしれないけど、

元々アレは頼まれて魔王になったんでしょ?

 

そのへんの交渉はちゃんとしろよ。

 

基本的に土地と食べ物が有ればヒトは増えるんだよ。

 

まぁ連中みたいに仕事もしないで、神が造った

システムの乱数に期待してるようならいつまで

たっても子供は出来ないだろうけどさ。

 

ソレだってタンニーンみたいに種族ごと

囲い込めばその種族だって配下にできるし、

全部領民として養えばいいだけでしょ?

 

生活圏を失いつつある妖怪とか、差別されてる

ヴァンパイアハーフとか匿まえばイイ話じゃん。

 

でもって悪魔と交配してハーフ悪魔を産んでもらえば、言うこと無しなんじゃない?

 

そういうのを勉強する為に日本の学園に来てるんじゃないの?

 

まさか中途半端に日本の常識に染まった結果

貴族政治はおかしいって思うようになった?

 

家のお金使います!家の権力使います!

家のコネ使います!でも私はグレモリー家の娘

としての義務を果たしません!ってこと?

 

義務を果たさないくせに、権利だけ

貪るのは最低の貴族だって学ばなかったの?

 

それ以前の問題なんだけど。

 

「そもそもレーティングゲームは基本的に貴族のゲームなんだけどねぇ」

 

未成年で爵位は持ってないから今は

ただの上級悪魔でしかないんだけど、

貴族の家族も貴族だからね。

 

「ですよね」

 

馬鹿じゃない?

 

「つまり無能は、貴族として見て欲しくない

くせに、貴族であることが最低条件のゲームで

自分の将来を決めようとしてるの?」

 

なにその二律背反?いや、この場合は自縄自縛?

 

「そうなりますね。ついでに言えばそれに誰も疑問を抱いてないところが連中が末期なところです」

 

いやぁ、もぉ、なんというか・・・

 

「簪姉様の気持ちはわかります。ですけど問題はここからでして」

 

ん?

 

「別に無能と焼き鳥がどうなろうとウチには関係ないよね?」

 

問題ってナニ?

 

「・・・無能が合宿をすると言い出しました」

 

「( ゚Д゚)ハァ?」

 

いや、思わずリンちゃんみたいな

リアクションしちゃったけど・・・

合宿ってナニ?

 

「なんでも今のままでは、プロで実績のある焼き鳥に勝つことはできないと言い出しまして」

 

今のままどころか、普通に考えたら

少なくとも10年は勝てないでしょ?

 

「それでも、事実を事実として認識出来るだけマシになったのかな?」

 

少なくとも自分が弱いって言う現実は見れてるもんね。

 

「事実は見れてるかもしれませんが、現実が見れてません・・・」

 

んん?あぁ、問題はその合宿だもんね。

 

「焼き鳥との試合に備えて合宿に行くんだ

もんねぇ。その間の管理はグレモリー家で

・・・やるわけないか。当主の命令に逆らって

るヤツのフォローなんか出来ないよね」

 

我儘娘の暴走ではあるけど、貴族家同士で

決めた正式な婚約であり結婚の前倒しでしょ?

 

それに反発して領地を離れるんだもん。

もしもフォローしたらグレモリー家も

結婚を認めてないってことになるし?

 

結婚を認めた上で合宿も認めるなら、

領地の管理と合宿を両立して見せろ!

って言うのが普通だよね?

 

て言うか当主に逆らうんだから、管理者も辞任するのかな?

 

「その合宿の期間はどれくらいの期間を予定しているの?一年・・・じゃ足りないよね?」

 

焼き鳥は能力に溺れた阿呆だけど、眷属は

プロの舞台で活躍してるし、それなりに経験

もあって各自で研鑽も詰んでるだろうから、

姫島や木場程度じゃ話にならないよね?

 

活路があるとすれば赤龍帝の成長だけ。

 

それだって素人がソコソコ使えるようになるには最低でもそれくらいは時間が必要でしょ?

 

「・・・(フルフル)」

 

ん?無言で首を横に振った?

 

「・・・管理者はもちろん辞めるんだよね?」

 

当主に逆らってまで行う将来を掛けた

大一番でしょ?数年合宿して焼き鳥に

勝ったら、そのまま家を出るくらいの覚悟があるんでしょ?

 

「・・・(フルフル)」

 

「えぇぇ辞めないの?!一年じゃない

ってことは数年居ないんでしょ?

それなのに管理者として居座り続けるの?!」

 

ありえなくない?!さっさと後任決めて

冥界のご当主様の所に帰りたいんだけど!

 

「・・・そもそも合宿の期間はもっと短いんです」

 

「( ゚Д゚)ハァ?」

 

プロ相手に将来を賭けて戦うってのにまともな準備もしないの?

 

それともフェニックス家とグレモリー家が初めから時間を与えなかった?

 

当主に逆らってるんだからある意味それが当然だけど。

 

でもって負けることが前提だから

管理者も辞めないってこと?

 

フェニックスの連中がフォローするならソレで良いけど・・・

 

「その間は阿呆がフォローするそうです」

 

「( ゚Д゚)ハァ?」

 

今でもマトモに管理出来てないのに?

 

私たちが昼夜どれだけフォローしてるか

知らないの?

いや、無能と阿呆は知らないけど、

メイド気取りは知ってるよね?!

 

「・・・ちなみに合宿の期間はどれくらいなの?」

 

場合によっては冥界からヘルプを呼ばなきゃ・・・

 

「焼き鳥との試合は10日後で、合宿は一週間だそうです」

 

「( ゚Д゚)ナメテンノカ?!」

 

一週間で素人がプロに勝てるわけないだろ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『で?ジオティクス殿。今回の件、

散々コチラに迷惑をかけておきながら

我々に一報も無いというのはどういう

つもりですかな?』

 

「いや、それはですな・・・」

 

リアスが世話になってるのは事実だが

ソレは契約の上のことだ!

 

と言えれば良いが、今回のコレはなぁ。

 

まさかリアスが結婚に反発し、さらに

合宿のために管理地を離れるなど

想定できるはずが無いだろう?

 

いや、レーティングゲームをすることは

認めたし、修行も必要だろうさ。

 

だがソレはあくまで管理者としての

義務を果たした上でのことだろうに。

 

さらにグレイフィアまで合宿を認めた挙句

「今の私はグレモリー家の女中です

ので勝手にアイサツは出来ません」

とか抜かしやがって!

 

お前は着替えればいいだけだろうが!

 

リアスの義姉として、世話になってる相手に

挨拶することになんの問題がある?

 

サーゼクスの女王として、地上で働く同胞に

挨拶することになんの問題がある?

 

自分が嫌われてるから苦手なんだろうが、

そういうのを加味して普段から女中の格好

をしてるんじゃなかったのか!?

 

すでにシトリー家のお嬢さんがリアスの

留守中の管理に名乗りをあげてしまっている

以上、こちらから人員を出すことはできん。

 

さらに言えば今のリアスは当主である

私に逆らって行動をしているのだ。

 

まさか擁護するわけにも行かん。

 

『人間には可愛い子には旅をさせよと

言う諺がありますが、ソレだって旅をする

ことが出来る能力があってのモノです。

今のリアス嬢は一人では何もできん小娘。

常識・良識・頭脳・実力・財力・権力。

全て家頼りの親頼りで兄頼りです。そんな

彼女を外に出すのは正直感心しませんな』

 

ぐっ!私とて出したくて出したわけじゃない!

 

とも言えんよなぁ・・・向こうにしたら

まさしく「知ったことか」で終わる話だ。

 

契約はフォローで有って代行ではない。

フォローすべき者が職務を放り投げたと

言うなら、この契約は破棄されるよな?

 

『ご懸念通り、今回ソチラの職務放棄を

確認したのでリアス・グレモリーへの助力

契約は今この場を以て解約となりました。

違約金については最初に交わした書面通りです』

 

「ぐっ」

 

違約金は痛い。だがそれ以上にオセ家との

契約に対して違反したことが痛い。

 

当代のオセ殿は「悪魔は悪魔らしく在るべき」

と言う理念を持ち、愚直に悪魔らしく生きる

ことを旨としている。

 

そして「悪魔は契約を遵守するモノ」と

言うのは常識だ。

 

さらにフェニックスとの婚姻は貴族家

当主同士の約定だが、オセ家との契約は

家同士の契約。

 

私個人の信用問題ではないと言うのに・・・

 

「確かに当方の娘、リアス・グレモリーは

その職務を放り投げましたが・・・」

 

「ヴェネラナ!?」

 

普段なら心強い援軍だが、彼相手には

逆効果だぞ!?

 

『・・・奥方。今は当主同士の話し合い。

ジオティクス殿を差し置いての発言は

感心できませんな』

 

そう、例えヴェネラナに対して私や

サーゼクスが頭が上がらないと言っても、

ソレはあくまで内向きの話。

 

相手は伯爵だが貴族家当主だぞ。

対外的には許可なく話しかけるだけで

無礼であり不敬。

 

さらに当主を差し置いての発言など彼が

認めるはずがない。

当代のオセは礼儀作法に恐ろしく細かい

ことで知られているんだからな。

 

誰よりも悪魔らしく、そして貴族らしい悪魔が彼。

 

だからこそリアスの夫にと思ったのだが・・・

 

「大変失礼いたしました。ですが・・・」

 

『失礼したと思うなら黙れよ』

 

「「・・・」」

 

・・・もっともだよな。

 

『今回はグレモリー家による契約違反に

対する通告と、今後についての通達です。

奥方の意見は求めてません』

 

そう。求められたのは私からの謝罪と事実確認。

 

本来ならヴェネラナは話を振られるまで

発言することなど出来んのだ。

 

今まで皆がソレを許したのはバアル家の

娘であり、私の妻でありサーゼクスの

母だからに過ぎん。

 

「・・・妻が失礼しました」

 

「・・・」

 

コレで違約金がさらに増えるか?いや、

彼は公私混同するタイプではない。

 

つまり無礼は無礼で貸しと言うわけだ。

 

『謝罪は受け入れましょう。それで今後

につきましては・・・・・・』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「ほーら、イッセー!気張るのよー!」

 

「おおっス!」

 

 

 

 




世界の半分を治めてる大帝国において、
所領が日本の本州しか無い大貴族ってなんぞ?

三國志好きに分かりやすく言うなら
荊州(南郡含む)より狭いんですぜ?

更に言えば、海が無いんだよ?

どんだけ狭いんだよってお話。

人口密度とかもあるけど・・・基本的なサイズ
が人間と同じ~10倍の大きさみたいですから
密度はあまり参考にならないですかね?

つまりオセ夫妻はグレモリー家を荊州の州牧
程度にしか見てないのです。

無能は甘やかされ過ぎ。それを育てた家を
彼らが認めるはずがありません。

焼き鳥は才能に溺れてるかもしれないけど、
眷属は普通に鍛えますよね?
だってプロでしょ?大将一人だけ強くても
駄目なんでしょ?


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7話

オセ君と焼き鳥陣営の会話。

おや?オセ君が焼き鳥を狙ってる?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「ようやくライザー・フェニックスを眷属ごと殺す口実が出来たな」

 

「えぇ。そうですね」

 

元々機を窺ってましたが、ようやく眷属の誰もが納得する形で連中を消すことができそうです。

 

私としてはそれほど気にはしてませんでしたが、面白くないのは事実でしたし。

 

完全な八つ当たりではありますけど、それもこれも悪魔らしいと言えますよね。

 

旦那様の中では契約違反する悪魔は悪魔ではない。

 

故に、グレモリー家は冥界に住むモノ

というだけで同胞ではないと言う認識です。

 

そんな家の娘と正式に結婚して婿となるなら

ライザー・フェニックスも我々の敵。

 

ならばその眷属も殲滅対象。

 

多少強引ですが、所詮この世は弱肉強食。

 

それに何より、旦那様のお怒りは私の為

ですからね!妻としてこれほど嬉しいことは

ありません!

 

それをとめるなんてとんでもない!

 

「一応、無能がマダオの力を使って焼き鳥に

勝つ可能性も有るには有るが、その場合

ライザー・フェニックスは諦めて無能を狙う。

貴族の資格なしとして無能を駒王町から

排除して阿呆一人の管理体制にするだけだな」

 

確かに。プロが一週間鍛錬した程度の素人に

負けたら焼き鳥の評価はガタ落ちです。

 

その眷属が事故死しても誰も文句は言いませんからね。無理に今消す必要も無いでしょう。

 

無能もねぇ。当主に逆らって自由気ままに

生きようとするならば、管理者としては到底

認められませんよね。

 

そもそもグレモリー家の娘だから管理者に

なれたと言うことを忘れてませんかねぇ?

 

「それでは、阿呆が駒王町を昼夜管理する

ことは不可能ですから、シトリー家から

契約内容か期間の変更の連絡が来ること

になりますね」

 

現在の依頼は昼はシトリー家の。夜は

グレモリー家のフォローが仕事です。

 

もしシトリー家が昼夜管理することになった

としても、ソレは我々には関係ありません。

 

シトリー家とすれば後任を立てて娘を管理者

から外して帰国させるか、我々にも昼夜の

フォローを依頼するかの選択となります。

 

前者の場合は今回の無能と違っていきなり管理を放り出す訳ではない。

 

きちんとした手続きをした上での管理者

変更であれば、契約違反とはなりませんが、

それでも違約金は取れますよ。

 

後者の場合は、我々に対し追加料金を

組み込んだ契約更新案を提示するでしょう。

 

そして管理体制は今まで通り・・・とはいかないでしょうねぇ。

 

今まで昼だけで良かったのが、夜も管理する

となれば人員を振り分ける必要が出ます。

 

つまり単純に言えば人員が半減すると言うことですよね?

 

今でさえまともに管理出来てないのがさらに半減ですよ?

 

普通は所領の管理なんて昼夜で分割

するモノではありませんが・・・

グレモリー家とシトリーの家が、いや

サーゼクスとセラフォルー(シスコンども)が散々甘やかした弊害ですよね。

 

その甘やかされたことにすら気付いてない

阿呆は今回のことで現実を見る良い機会に

なるでしょう。

 

何せ無能が居ない一週間。我々は夜間の

フォローを一切しませんから。

 

阿呆は「リアスはこんな激務をあんな

涼しい顔してこなしていたの?!」

とか思うかもしれませんが、そこらへんは

勝手に勘違いしてなさいな。

 

以前アザゼルが来たことで、天界や堕天使

も駒王町と言う土地に目をつけました。

 

元々教会勢力にしてみれば気分の

いい土地では有りませんがね。

 

さらに堕天使側に我々がグレモリーと

仲違いしたと言う情報を流しておけば、

阿呆が釣れるでしょう?

 

大量の堕天使やらエクソシストが来ることになりますが、はてさてどうなることやら。

 

こちらとしては、簪も白音も能力的には

まだ余裕がありますが、ストレスという

意味では限界が近いですからね。

 

人員を補強するか、シトリーとの契約変更に

サインしないで両者をこちらに帰還させる

と言うのも一つの手ではあります。

 

「だな。もしその連絡が無いままナニカ

したなら、それこそ契約違反だ。

さっさと簪と白音を戻して、鬼ぃさんに

『お世話になりました』ってアイサツして終わりだ」

 

いや、ソレはどうでしょう・・・

 

旦那様が直接行けばソレも可能でしょうが、

我々だと『ちょっと待ってください』って

言われたら逃げられませんよ?

 

アノ方には今まで散々お世話になってますからね。

 

なんにせよアイサツは必須ですけど。

 

え~と、確かアノ方の好物はおにぎりと

お酒でしたかね。

お茶なら旦那様が選んだモノで良いの

ですが、お酒となると・・・我々の陣営で

飲むのはクロネコくらいですが、まさか

クロネコが飲む程度のお酒をあの方に

贈答するわけにもいきませんよねぇ。

 

・・・とりあえず簪に日本酒とアキタコマチとササニシキを購入させましょうか。

 

おにぎりの味付けは、下手な具を入れると戦争ですから塩で良いですよね?

 

海苔は・・・有るのと無いのを持っていけば良さそうです。

 

あの方は何か見返りを期待した賄賂は

絶対に受け取りませんが、お供え物や

感謝の気持ちを無下にする方でもありませんからね。

 

あとは、引き止められないようにマキさん

を説得しておけば何とかなりませんか?

 

あぁ豊玉姫さんにもナニカ用意しないと。

 

ふむ。兎の数え方は一羽二羽だし・・・焼き鳥の眷属なんか喜んでもらえますかねぇ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「兄貴、大至急ってことだけどなにか問題でも有ったのか?」

 

・・・来たかライザー

 

「あぁ、お前に確認したいことがあってな」

 

本来なら父上や母上が決めたことに文句を

言うつもりは無いが、今回は流石にヤバイ。

 

場合によってはフェニックス家が滅ぶかもしれんからな。

 

「確認したいこと?まぁ良いけどよ」

 

こいつは貴族的な考えの持ち主だが、所詮三男坊。

 

家の存続を考えたことはあっても、その重みまではまだ理解出来んだろう。

 

「話の内容は今回の結婚についてだ。

今回わざわざ婚期を早めたのは、アレが

あまりに無能を晒し、周囲に恥を振りまき

迷惑をかけている現状に歯止めを掛ける

為と言うのは私もわかってはいるのだ」

 

ほんとになぁ。あんな家に婿入りするなんざ罰ゲームだろ?

 

家の経営状況はわからんが内部の環境が悪すぎる。

 

ジオティクス殿はともかく、ヴェネラナ殿や

サーゼクス様、グレイフィア様に常時監視

されるようなものだしなぁ。

 

「そうだな。顔や体が好みなのは確かだが

頭が悪すぎる。婿養子だからって、子作り

以外何もしなくて良いってわけじゃねぇだろ?」

 

それはその通り。

 

相手の家に入る以上、家の繁栄を求めるのは

間違ってないし、浪費と妄想癖のある妻を

止めるのは旦那の仕事だ。だがなぁ。

 

「あぁ。お前はお前なりに、貴族家の次期当主

の婿となることの意味を考えてるのはわかった」

 

才能に溺れてるところもあるが、身近に

サーゼクス様のような方が居る環境に

なれば増長癖もなくなるだろうし、

そもそも貴族が偉そうにするのは当然

と言えば当然のことだからな。

 

今後の成長に期待できると思えばこの

結婚は良い決断なのだろう・・・

 

普通ならな。

 

「なんかアレな言い方だけど、まぁアレだ。

これでも俺は兄貴やオセ様みたいな貴族を

目指してるからな!」

 

うん。兄としては正直嬉しいし、悪魔としても

貴族としても、何より統治者として、あの方は

見習うべきところが多いのは事実だ。

 

ライザーとは歳もそんなに離れてないし、

目標としやすいのだろう。

 

だがなぁ・・・

 

「今回確認したいことと言うのは、まさしくソレだ」

 

兄としては弟を応援してやりたいんだが、

侯爵家の次期当主としてはなぁ・・・

 

「ソレ?」

 

この様子では知らんか。まぁグレモリー家としては家の恥だし。

 

さらにサーゼクス様が噂に上がらないように方々に手を回してるそうだからな。

 

「・・・オセ家とグレモリー家が断交したらしい」

 

なんでこうなったんだか。

いや、理由を聞けば納得出来るんだが・・・

 

ライザーがその一因を作ったと言うのが痛い。

 

「はぁ?!」

 

だよなぁ。驚くよなぁ。

 

「いきなり言われてもわけがわからん

だろう?順を追って説明するからよく聞け」

 

「あ、あぁ!」

 

ここで理解させないと、ライザーも

我々もどうなるかわからんからな。

しっかり聞けよ?

 

 

~~~

 

今リアス・グレモリーとソーナ・シトリー

が管理している駒王町は、元々ベリアル家

が管理していた土地だ。

 

それがベリアル家の管理者と教会の連中との

ゴタゴタが有り、結果色んな連中が介入して

ある意味無法地帯となった場所でもある。

 

そこを老害たちがオセ殿に汚点を付ける為に半ば強制的に管理させたんだよな。

 

で、オセ殿は老害どもの企みを知りつつも

しっかりと管理を行い、老害連中はおろか

天界や堕天使たちにも付け入る隙も見せず

完璧に統治してみせた。

 

そうして安定してきた所に二人の魔王様(シスコン)が妹を送り込み、管理者として実績を積ませようとしてきたわけだ。

 

お二人(シスコン)にしてみたら、

 

妹が地上への留学を求めてきた。

      ↓

安全、かつ簡単に管理が出来る土地が良い。

      ↓

ん?ココいい感じだな!

 

と言った感じなのだろうがな。

オセ殿にしてみたら面白いハズがない。

 

それでも、内面はどうかわからんが

オセ殿はグレモリー家とシトリー家の

要望を受け入れて、管理者を降りた。

 

これだけで普通の貴族ならキレるところだが、

彼にしてみたら飛び地の管理が無くなるし、

老害共の干渉も無くなり、魔王様や他の家に

貸しを作れると言うメリットもあったからな。

 

~~~

 

 

「・・・ここまでの流れは良いな?」

 

簡単に説明したが、自分が婿に入る家だから、コレくらいは知ってると思うが・・・一応の確認だ。

 

「あぁ、そこまではわかる。だがなんで

今更断交なんかするんだ?キレるなら、

その『管理者を譲ってくれ』って時点で

キレるのが普通じゃないのか?」

 

うむ。その通り。普通ならそうだ。

 

「そもそもオセ殿は『悪魔は悪魔らしく

在るべき』と言う理念の体現者。

駒王町の管理と言う仕事が【契約】である

以上、魔王様が正式な法に則り管理者の

変更を命じた場合は従うのが道理と言ったそうだ」

 

悪魔の貴族として、個人的な頼みでの我儘

ならば聞かんが、正式な命令は聞くわけだ。

 

実に貴族的で、いっそ清々しさを感じさせるよ。

 

「なるほど・・・さすがオセ様。既得権益

に拘る老害共にはできん決断を平然とやってのけるッ!」

 

ライザーのような老害を嫌う若手が

そこにシビれてあこがれるのもわかる。

 

私にもそのメリットは理解できるが、ソコまでの決断は中々出来ん。

 

「問題はここからでな。リアス・グレモリー

とソーナ・シトリーは管理者になる際に

「実家の補佐は受けない」と言ったんだと」

 

自分たちの力でやりたいと言うのは

甘ったれた子供にとってはよくある話だから、

これに関してはわからんでもない。

 

だがこの場合の補佐は人員に限るようだがな。

 

なんせ生活環境に関してはしっかり実家の

サポートを受けてるし・・・

 

「あぁ、だからあそこにはグレイフィア様

以外はガキしか居なかったのか・・・」

 

そのグレイフィア様とてあくまでリアス嬢

の説得と調整の為だろう?

 

管理や運営の手助けはしてないはずだ。

 

「当然15か16のガキが管理できるほど

世の中甘くはない。

かといって子供に甘い両公爵家は、二人の

要望を叶えたいから自分たちの家の人間を

派遣することは出来なかった」

 

バレた時に嫌われるのを嫌ったんだろうが、

いくらなんでも公私混同だろう。

 

「・・・それで?」

 

なんとなくわかってきたか?

 

「両公爵家は前任者であるオセ殿に

二人の補佐を依頼したんだ。

それも、二人にバレないようにして

欲しいと言う条件までつけてな」

 

魔王様方は流石にそこまでのことは

依頼出来なかったらしいが・・・

間違いなく援護射撃はしただろうな。

 

「はぁ?!オセ様の顔を潰しておきながら

連中はそんなことしてたのかよっ!」

 

ライザーが驚くのはわかる。普通ならココで断交だよなぁ。

 

「そうだ。そしてオセ殿はソレも【契約】と

して受けたんだ」

 

コレが凄い。普通なら断るし、断っても

誰も文句を言わないところなのに、

遺恨や面子に拘らずに【契約】として

割り切り、粛々と受けると言う歪みのなさ。

 

コレが面子に拘る老害共には持ち得ない

悪魔貴族に必要な度量と言うのだろう。

 

「凄ぇな・・・さすがオセ様」

 

うむ。ここで誇りがどうこう言うほど

歪んでは居ないようでなにより。

 

「それで、だ。此処まで二人が地上に居た

三年間、しっかりと契約を遵守して土地の

調整やらはぐれ悪魔の討伐やらのフォロー

をしてきたオセ殿だが、あくまでその仕事は

フォローで有り代行ではない。わかるな?」

 

学校行事などで数日いない時は有った

ようだが、その際は遠慮なく実家の

フォローを受けたらしいな。

 

・・・徹底しろよ小娘どもが。

 

「ふむ。確かに本人達にバレないように

って言うなら代行は出来ねぇよな?」

 

それもそうなんだが・・・ここからが本題だ。

 

「で、今回の断交の話になる」

 

「・・・あっ!」

 

気付いたな?

 

「そうだ。今回のお前との試合前の合宿。

アレが『リアス・グレモリーが管理者と

しての責務を放棄した』と見做されたんだ」

 

はっきり言ってその通りとしか言い様がない。

 

結婚云々はどこまで行っても私事。

 

それを優先して自分が管理する領地を

放置して修行?ありえんだろう。

 

グレモリー家当主の意向に逆らってる

以上実家のサポートはない。

 

ソーナ・シトリーがその間の管理を

すると言ったらしいが、ソレだって

後から決まったことだ。

 

管理者としての義務を果たしてないと

言われればその通りだし、何より半ば

無理やり管理者になって置きながら

この体たらく・・・その結果が

 

「オセ様との契約違反かよ・・・」

 

「そう。悪魔にとって最も忌むべき

行いを、それも散々迷惑を掛けたオセ殿

相手に行ったんだ」

 

地上には仏の顔を三度までという名セリフが

有るらしいが、少なくともオセ殿は二度耐えた。

 

しかしコレで三度目、さらに契約違反はオセ殿からみて正しく逆鱗。

 

グレモリー家が違約金やら何やらを

支払うのは当たり前としてだ・・・

 

オセ殿はグレモリー家を悪魔貴族として

認めないと言う声明を出した。

 

魔王派だろうが旧魔王派だろうが大王派

だろうが、コレに対しては納得するしかない。

 

「そしてこんな状況で婚期を早めてまでお前を

婿入りさせると言うことは、フェニックス家は

オセ家の決定に異を唱えるということになる」

 

「あっ!」

 

予定通り4年後なら『ずっと前から

決まってたことだから』で済むんだがな。

今は時期が悪すぎる。

 

「いや、そんなの知らねぇぞ!修行期間だの

合宿だのは、グレモリー家がリアスを納得

させるための方便だって話だしよっ!」

 

グレモリー家でも「最低限やるだけやって

負けたら諦めろ」と言う、ある意味での

慈悲だったのだろうが・・・まさか所領

の管理を投げ出すなど思ってみなかったのだろうな。

 

そもそも今まで散々貴族としての権利を

使っておきながら、当主の意向に逆らう

時点でありえんのだ。

 

「さらに言えば、リアス・グレモリーが

結婚に反対したことで、サーゼクス様も

結婚には乗り気ではないらしい」

 

妹に嫌われるのを避けたんだろ?

 

その証拠に、グレイフィア様が我儘を

言ったリアス・グレモリーの言動を

掣肘しなかったからな。

 

本来なら「我儘抜かすな」と言って終わる話だし。

 

「はぁ!?」

 

魔王との繋がりを求めての婚姻なのに

その魔王に嫌われ、さらに貴族派とも

言えるオセ殿に敵視されるって。

 

そしてオセ殿は敵に容赦はしない。

 

今はサーゼクス様が必死でグレモリー家に

対する報復を止めてるのだろうが・・・

 

「つまり結婚に反対するサーゼクス様が、

お前を守ってくれる可能性は限りなく低いという事だ」

 

むしろオセ殿がライザーを殺してくれれば万々歳とでも思ってるかもな

 

「・・・ちなみに、兄貴がオセ様と戦ったらどうなる?」

 

どうにもならん。

 

「瞬殺だな。俺では5秒耐えられるかどうか・・・」

 

いや、5秒耐えれたら自分に拍手してやるぞ。

 

「マジかよ・・・」

 

当たり前だ。伊達にオセ家だけで堕天使を

滅ぼせると言われている訳では無いのだぞ。

 

「しかも俺の目の前には、駒王町に行って

おきながら婚約者の前任者であり、現在職務

のフォローをしているオセ殿の側室である

カンザシ・オセ殿にアイサツをしなかった

ヤツが居るらしいぞ」

 

カンザシ殿は正式な側室だから、言うなれば第二夫人。

 

礼儀作法に五月蝿いオセ殿の第二夫人だぞ?

 

知るか!と言いたいところだが、その場に

グレイフィア様が居たのだろう?

 

職務について尋ねれば、そのくらいの情報は

入手できたはずだ。

 

職務怠慢・・・これも貴族に相応しくないよなぁ。

 

「マジかよ・・・」

 

マジだよ。

 

「そこで最初の確認の話になる」

 

ようやくだが、内容は聞くまでも無いだろう?

 

「俺にオセ様を完全に敵に回してまで、

リアスと結婚する気があるかどうかってことだよな?」

 

その通り。

 

「さらにサーゼクス様からの擁護もなく、

グレモリー家もお前を差し出す可能性がある」

 

普通ならありえんだろうが、あれだけ小娘に甘い連中だ。

 

無いとは言い切れん。

 

「ついでにフェニックス家もヤバイな」

 

その通り。我々もついでで潰される

可能性が非常に高い。

 

そしてそのまま我々はフェニックスの涙の

生産材料として、生かさず殺さずの状況に

されるだろうな。

 

何せ彼は【悪魔らしい悪魔】なのだから。

 

「それでも、お前がどうしてもリアス嬢と

結婚したいと言うなら、私からもオセ殿に

交渉してみよう」

 

今まで話したのはあくまで予測。

・・・かなり確度が高いが、予測なのだ。

 

まだ正式に結婚したわけでもないし、

結婚したとしても実際に動く前に

交渉すれば、ライザーだけはなんとかなる可能性がないわけでもない。

 

それこそフェニックス家とオセ家の契約で

かなりこちらが譲る形になるが・・・

ついでで潰されるよりは余程マシだ。

 

「兄貴、すまねぇ・・・」

 

「気にするな。兄として弟の幸せを願うのは当然だからな」

 

どうしても結婚したいならすればいい。

 

婚約破棄の場合は向こうが望んでるのだから、あとは言い回しだ。

 

問題は父上だが・・・なんとか説得しよう。

 

 

 

 

「あぁ、ありがとよ。それなら俺は・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ライザーが見てるのはグレモリーとしての私・・・」

 

「ぶ、部長・・・」

 

 

 

 




流石のオセ君も敵対行動を取ってない
悪魔の貴族を狙うような真似はしませんよ?

その後の統治だのイロイロ有りますからね。
別に魔王になりたいわけでもありませんし。

オセ君が焼き鳥陣営を狙う理由?
八つ当たりと言うか何というか・・・
まぁつまらない理由ですね。
なんだかんだで弟子大好きですからシカタナイネ!

焼き鳥陣営。それなりに考えてるもよう。
(と言うか政略結婚なんだから政略考えるのは当然です)

まぁ婚約者の前で婿養子が女を侍らせて
ディープなアレしたりハーレム云々言う
のはアレですが、貴族が後継残すのは
義務ですからね。

無能は正妻だから、そういう教育の一環として考えれば・・・

すみません無理です。原作主人公に感情移入させる為の神(原作者)のアレです。お疲れ様でした。ってお話

つーか少子化はどうした。コイツら普通に4人兄妹だぞ?

まぁ作者的には、コイツらは悪魔として仕事(涙の販売)をしてるからって考えましたけど・・・


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8話

コレぞ究極奥義っ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!

誤字報告ありがとうございます!


「お久しぶりです。オセ殿」

 

「お、お初にお目にかかります!レイヴェル・フェニックスと申します!」

 

ふむ。焼き鳥と無能の結婚式の予定日を

算出して、フェニックス領を焦土にする

計画を立てていた所にまさかの来客。

 

このタイミングで来ると言うことは、

コレは現当主の意向ではなく、眼前で旦那様

にアイサツしているルヴァル・フェニックス

の手並みでしょう。

 

「レイヴェル嬢は初めまして。そして

ルヴァル殿は確かに久しいな」

 

基本的に次期当主でしかないコイツには、

伯爵家当主である旦那様との接点はない

から久しくなるのもシカタナイでしょうね。

 

呼び名としてはオセ様かオセ閣下が正しい

のですが、彼のような次期当主に対しては

旦那様が殿呼びを許容しているので私と

しても矯正する気はありません。

 

「えぇ、本当に。私としてはオセ殿の領地運営に

興味があるので、もっと頻繁にお会いしてその

手腕を学びたいと思っているのですがね」

 

見え透いたお世辞ではありますが、

旦那様が計画し私が運営する領地運営が

ある種の理想に有るのは事実。

 

ここは素直に賞賛されていると思いましょう。

 

「私の施政はともかくとして、卿は現在

レーティングゲームでトップ10に入る

実力者ではあるものの、それ以前に

フェニックス家の次期当主でもある。

流行りのゲームにご多忙なのはわかるが、

卿の家の財政状況を考えればそろそろ政を

真剣に学ぶ時期ではないかな?」

 

ですよねー。名家には名家の仕事があります。

 

コイツがレーティングゲームに参加するのは

名前を売るのと賞金が目当てなのでしょうが、

コイツらってそんなことする必要ないんですよね。

 

そもそも正式な72家の一つなのですから

フェニックス家が成り上がりと言う風潮も

おかしいし。

 

経済的に差を付けられた老害どもが

苦し紛れに文句を抜かしてるだけでしょ?

 

旦那様に関しても文句を言ってましたが

ソレは結果で黙らせましたし。

 

コイツも似たようなことをしようとして

実力を見せつけているのでしょうけど、

所詮運営の手のひらで転がされるゲームの

プレイヤーでしかありません。

 

せめて運営側に回らないとねぇ。

 

「功名餓鬼に領地経営は出来ませんが、

勇名が有れば人材も得やすいですからね。

中々難しいところです」

 

ほほう。旦那様の皮肉に対し上手い返し。

言ってることも強ち間違いでは無いし、

まぁ及第点でしょうか。

 

「ふむ。昨今のフェニックス家のご当主は

調子が思わしくないようだが、卿が居れば

フェニックス家は安泰のようだな」

 

調子が思わしくない、ですか・・・そう言う言い方も出来ますよね。

 

「え?お父様が?!」

 

減点1。

 

「レイヴェルっ!」

 

減点2。

 

「あ、し、シツレイしましたっ!」

 

ほう。この場で減点2で収めますか。

やはり中々のモノです。

頭の調子が悪い当主に替わって、

さっさと当主になったらどうですか?

 

「謝罪を受け入れよう。だがこの場に

妹殿を連れてきたのは何の為かな?」

 

そうそう、さっさと話を進めましょう。

 

場数を踏ませるためなどと抜かしたら、

その無礼と不敬を鳴らして今日にでも

ライザー・フェニックスの眷属諸共

滅ぼしてやるぞ?

 

「ご配慮に感謝を・・・本日妹をこの場に

連れてきたのは、オセ殿の所領を見せ

見識を広める為であり、またオセ殿と

契約を結ばせたいと思いまして」

 

所領を見せる、ねぇ・・・場数と同じ

意味ではありますが、問題は契約ですか。

 

旦那様は余程の無礼がない限り、契約に

関しては内容を精査しますし、妥当と

判断すれば相手が誰であれ契約を結びます。

 

ソレを知った阿呆どもはあの手この手で

旦那様を嵌めようとしてきたのですが・・・

 

さて、今回のコイツは何を宣う?

 

契約をチラつかせれば何とでもなると

考えているなら、そこの鳥頭を持って

所領に侵攻し、家を含む全てが焦土と

なる様を見せつけることでその勘違いを

糺すことになりますよ?

 

「契約ねぇ。最近は悪魔の中でも契約を

軽んずるものが多くてな。

悪魔が契約を反故にした場合、何を失うかを

正しく理解出来ていないのではないかと思って

いるところだよ」

 

「「・・・」」

 

そうなんですよねぇ。

 

本来契約違反をした悪魔が失うのは、

金でも信用でもありません。その存在です。

 

グレモリー家は違約金と言う形で金を

支払って終わりと考えているかもしれんが、

実際は連中の悪魔としての根幹部分が

すでに失われている。

 

ソレも当主個人ではない、グレモリー家の

悪魔全体に言えること。

 

日常生活では気付かんだろうが、もはや

グレモリー家は悪魔として終わりだぞ?

 

「なるほど・・・軽々しく契約と言う

言葉を使ったことをお詫び致します」

 

さて、謝罪したものの要望を取り下げる

気は無いようですね。

 

ですが、言いたいことはわかりますよ?

行儀見習いでしょう?

 

「卿が謝る事でもないが・・・とりあえず

話を進めよう。察するに妹御を預かって

教育して欲しいと言うのだろう?」

 

グレモリーとシトリーがアレですからね。

自分の家で育てるのではなく、他所に

預けるのは決して間違ってませんからね。

 

「えぇ、その通りです。ライザーが婚約

していたアレやシトリー家のお嬢さんの

ような、貴族の物笑いの種になられても

困りますからね」

 

婚約していた(・・・・・・)アレときましたか。

コレはどっちの意味なんでしょうね?

 

婚約破棄か、それとも結婚することに

なったと言うことか。

 

「若者は夢を追うものだが、領民の

命を預かる者が現実を見れんのでは困る。

妹御がアレらのようになっては、折角

卿が押し上げたフェニックス家の勇名が

地に堕ちることとなるからな。

弟の眷属として甘やかすよりも外に

出して学ばせるのは正しい判断だ」

 

婚約していたってところはスルーですか。

まぁどっちに転んでも一緒ですからね。

 

それに実際問題、サーゼクスが挙げた勇名は

グレモリー家の当主と次期当主の行いのせいで、

もはや汚名に変わりましたからねぇ。

 

「弟としては妹を自分の眷属とすることで、

悪い虫が付かないようにするという意味合い

もあったようですが、過保護にした結果が

あの二人ですから・・・」

 

凄い説得力ですよねぇ。

 

しかし焼き鳥の眷属はハーレムメンバーであり

交配を前提とした連中だったはずでは?

 

・・・いや、妹との交配も、珍しいことでは

ありますが無いわけでは無いですからね。

 

流石にここで行儀見習いする間は

自粛してもらう形となりますけど。

 

・・・しかし旦那様もそのくらいの積極性

があれば良いのですけどねぇ。

 

後宮と言うには数が少なすぎますよ?

 

流石に行儀見習いで預かった小娘を

側室にするようなことは・・・待てよ?

 

コレは血統的に考えれば純血の悪魔ですよね?

 

それに行儀見習いとは、そもそもそう言う

可能性を考慮したモノですよね?

 

ふむぅ。コレはあとで簪に確認させる必要がありますね・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「だ、大丈夫ですか?お兄様・・・」

 

正直に言えば全然大丈夫では無いが・・・

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

そう、問題はない。

 

オセ殿は特に意識していなかったのかも

しれんが、あの自然と出る圧力だけで

潰されそうになったし・・・

奥方殿からは明確な威圧を受けて、何度か

気を失いかけたがソレでも気絶はしなかった。

 

なんだあの二人は、以前会った時より

更に強くなっているじゃないか。

 

アレ相手に5秒?・・・絶対に無理だ。

 

だがまぁ、その結果と言って良いのだろうな。レイヴェルを彼の下に預けることが出来た。

 

まだ契約という形では無かったが、口約束でも十分。

 

オセ殿は嘘をつかないし約定も守る。

 

これで最悪でもフェニックス家は生き残れる。

 

「良いかレイヴェル。オセ殿も仰っていたが

貴族として、統治者として政治と言うのは

非常に重要だ」

 

何も考えてない老害共がウチやオセ殿の

発展を羨んでイロイロと小細工を弄して

いるが、そんな暇があったら自領の発展の

為に働けと言いたい。

 

「はい。確かにレーティングゲームで

勝っても得られるのは名誉と賞金です。

所領が栄えるわけではありません」

 

その通り。例外としてはその賞金を使って

開発するという考えもあるかもしれんが、

ソレは維持費と言うモノを理解してない

素人の妄言。

 

政治を行うためにはそのような一時金に

頼ったモノではなく、定期的に入る税収が

必要不可欠なのだ。

 

「そうだ。一介の貴族であれば名誉を

重んずるものだからゲームで名を上げる

のも良いだろう。しかし当主は違う。

当主は統治で以て名を高めねばならん」

 

ゲームで勝ちました。

連戦連勝です。

でも領土が荒れ果てて税収がありません。

開発も生活もゲームの賞金頼りです。

 

こんな貴族が貴族と言えるか?

 

フェニックス家は涙の販売が有るから

財政的にはそれほど悪くはないが、それ

だって彼らにしてみたら微々たるモノだ。

 

1個1億円の涙を年間100個売るのと、

100万の民に1日200円使わせること。

どちらが利益が大きいか? という話だからな。

 

どう考えても後者だろう。

 

また、涙の生産量を増やすのと1日に

使わせる金額を増やすこと、どちらが

簡単かと言われれば後者に決まっている。

 

特産品で儲けるのは悪くはない。だが

それだけに頼ってはいかんのだ。

 

所領の発展の為には溜め込んだ資金を有効に

使わねばならん。

そのために必要なのは正しい政治の知識と経験。

 

私が直接教えを受けることが出来れば良いが、

流石に不可能だからな。

 

レイヴェルに学ばせて、その知識を

フェニックス家のために活用してもらう。

 

それに、もしレイヴェルがオセ殿の

お手つきとなればオセ家から支援を

受けられることになるしな。

 

更に彼の眷属であるシロネ・オセは

レイヴェルと同年代でありながら、既に

魔王級の実力者と言われている。

 

彼に鍛えてもらえれば、レイヴェルも

10年後には魔王級とまではいかなくとも、

最上級悪魔に匹敵する実力者となれるだろう。

 

「はい!ざっと見た感じでは有りますが、

オセ様の所領はフェニックス家とは比べ物

にならないくらい広大で、栄えています!

コレが正しい貴族による正しい政治の結果なのですね!」

 

うむ。きちんと本質を理解しているな。

 

「そうだ。老害共がほざくような理想の

貴族像ではなく、オセ殿が体現している

姿こそが貴族の正しい在りかたなのだ」

 

老害共からは『堕天使の領域と接する辺境故

広大なのだ』などと言われているが、

これはあえてこういう土地を報奨として

入手していると見做すべきだろう。

 

老害が蔓延る中央から距離を取れるし、辺境の

守護者としての実績と名声を得ているからな。

 

更に何かしらの理由が有るのだろうが、

それはまだ私にはわからん。

 

「はいっ!学べることは全て吸収し

フェニックス家の為に役立てます!」

 

・・・レイヴェルに重荷を押し付けることに

なるが、3ヶ月の研修期間を乗り越えれば

正式に契約を交わせるということだったな。

 

それまではなんとしても耐えて貰わねば。

 

いや、教えを受けるのに耐えると言うのはおかしいか。

 

そもそもオセ殿の在り方は悪魔の理想。

その教えを受けることが出来ると言う

のは、どこの悪魔であっても垂涎の的。

 

オセ殿はあまり乗り気ではなかったよう

だが、奥方殿が何か伝えたようだったな?

 

…奥方殿の思惑はなんであれ、あの口添え

がなければ、三ヶ月とはいえレイヴェルに

教育を受ける許可を頂けたかどうかわからんのだ。

 

あの方々が無駄な虐待なとするはずもないし、

もしかしたら奥方殿の付き人にでもするか?

 

それなら最高と言えるんだが・・・あぁいや、

最高なのは奥方殿の許可を頂いて寵姫や側室

となることだが・・・

 

現時点でそこまで高望みはするべきではないな。

 

最悪繋がりを持つだけで良いんだ。

 

しかし、本来なら今日からでも預ける予定

だったが、ライザーとアレの試合が終わる

までは眷属を変えるのはフェアじゃないと

言われてしまったのは誤算だった。

 

いや、言われてみれば確かにそうなんだが。

 

素人であるアレが眷属を増やす分には構わんが、

こちらは迎え撃つ側である以上、減るにせよ

変わるにせよ、後出しでメンバーを変えるべき

ではないと言うのは正論だろう。

 

それに、悪いことでもない。何せ試合までの

間に、レイヴェルに対して心構えを伝える事

ができる。

 

「あぁそれでいい。その覚悟を忘れるな?

他家の政治を学ぶのだ。甘えは許さんぞ」

 

まだ若いとは言え、政治にそんなのは関係ない。

妥協して手を抜いたり、我儘を抜かした時点で

放逐されるだろう。

 

そしてその際の評価や評判は将来まで影響する。

 

・・・いや、将来どころか奥方にそのまま

誅される可能性も有る。

 

試合まで一週間も無いが、行儀見習いを

するにあたっての心構えだけではなく

最低限の礼儀作法と教養は叩き込むべきだよな。

 

ケーキだのお茶もあくまで趣味だし。

 

それはそれとして、だ。

 

「アレとの試合の際、万が一でも

傷を負っては困るからお前は戦闘に

参加せず即座に下がるように。

戦わなければ良いと言う訳じゃない。

リタイアしてフィールドから出ておけよ」

 

普通ならありえんが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の保持者が居るからな・・・

 

「あ、た、確かにそうです!」

 

今さらアレとの試合なんざどうでも良いんだ。

 

だが、そのどうでも良い試合のせいで、

あのお二人を相手に行儀見習いの延期を

願い出るなど絶対にゴメンだぞ!

 

「ライザーには私から伝えておく。これは

兄としての頼みではなく次期当主としての

命令だ。良いな?」

 

アレみたいに勝手な解釈をして我儘を

抜かすようなら、オセ殿に生け捕りにされて

搾取される前に俺が殺してやるぞ?

 

「か、かしこまりました!」

 

よし、レイヴェルはこれで良い。あとは

ライザー次第か。

 

「あの、それで、お兄様?」

 

「ん?どうした?」

 

何か聞きたいことや言いたいことが有るなら

出来る限り聞いてやろう。

・・・コレが最後になるかもしれんのだから。

 

「えっと、お父様ってどこか具合が悪いのでしょうか?」

 

・・・あぁ。それか。

 

「そうだな。ハッキリ言って重症だ」

 

母上もな。

 

「そ、そんなっ!我々フェニックスでも

治癒できない病が?!」

 

あぁ、ソレに怯えてたか。うん、まぁ勘違い

するような言い方だからなぁ。

 

「取り返しがつかないくらい重症だよ。

何せアレを見て尚、アレを育てた家に息子を

婿養子として差し出そうとするんだからな」

 

不死鳥の馬鹿は治らんってな。

 

「・・・あぁ。そう言うことでしたか」

 

そう言うことだ。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天才って言葉はあまり好きじゃないわ」

 

「どうしてですか?」




究極奥義!土下座外交っ!

わかりやすく言えば妹は人質ですね。
まんま外史のネコモドキと同じ扱いでごわす。

奥方は何かを計画しているようだ・・・

ちなみに奥方にアイサツしてませんが、
オセ君との話し合いなのでコレで良いのです。

信長と濃姫が一緒に居る場合、何か用が無い
限りは信長にアイサツすれば良いのです。

濃姫にアイサツして、信長を無視して
会話するのは無礼な行為になりますからね。

普通、相手の家がここまでグダグダなら
婿にやるのは考えませんかね?ってお話

追伸。

皆様の誤字報告はありがたいのですが、前話の
仏の顔【を】三度までと言う名セリフは
謙虚なナイト様が言い残したセリフであり、
正しいブロント語です。

この言い回しは天才のセンスであって
決して誤字では無いのです!


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9話

悪魔の駒に関するオセ君の基本的な考えですね

つまり説明回!

オリ設定!
オリ展開!

オリキャラ?クロスオーバーキャラ?
とりあえず他作品のキャラ登場!

嫌いな人は読み飛ばし!




無能が合宿に行って早3日・・・阿呆が

夜に人員を割り振ってるせいで、日中の

負担が酷いことになってますねぇ。

 

まぁ堕天使やら教会勢力が動くのも基本は

夜だから、ソッチに注意を向けるのも

わかるし?もしかしたらシトリー家から日中に

関しては手を抜くように指示が出てるかも。

 

阿呆は私たちの事を知らなくても、シトリー家(むこう)は知ってるからなぁ。

 

あ、そうだ。前々から聞きたいって

思ってたんだけどすっかり忘れてた。

 

「そーいえば簪姉様?」

 

合宿と言えば、そもそもの疑問があったんだよね。

 

「ん~どうしたの白音ちゃん?」

 

お疲れですねぇ。

 

まぁご主人様が交わした契約では、

阿呆が日中手を抜いたとしても職務放棄

してるわけじゃないから、コッチは

ちゃんとフォローしなきゃいけないし。

 

夜に関しても本来は契約外だけど、

あまりに杜撰な管理だから放置したら

鬼ぃさんに迷惑がかかって、ご主人様に

クレームが入っちゃいますからね。

 

そりゃストレス溜まりますよ。

 

「いや、人員の補充ってないのかなぁって」

 

本題はちょっと違うけど、まぁ多少はね?

 

「あぁ、ソレね?今後がどうなるかわから

ないから、今後のことも考えて奥様に

援軍要請したよ。

はぐれ悪魔の討伐に行ってる方は無理だけど、

他所に出張してるヒトを送ってくれるってさ」

 

確かに今後のことを考えたら・・・

もしかしたら契約継続とかなる

可能性も有りますか。

 

そうなった時にいきなりコッチに派遣

されても困るだろうし?

 

それにはぐれ悪魔討伐班はねぇ。私とか

黒歌姉さまみたいにアレを使えないと

イロイロ困るから、そりゃアッチからは

来ないですよねぇ。

 

それで、コッチに来るのは出張から帰って

きたヒトになるのか・・・

 

「出張班ですか。基本はその中でもご主人様の

眷属の方が来るんですよね?」

 

私たちの応援だし、家の人たちは領地経営に

忙しいからなぁ。

 

他に出張してる家臣団のヒト達も忙しいだろうし。

 

「だねぇ。向こうは向こうで忙しいし、

阿呆のフォローの為に領地経営に支障が

出たら本末転倒だからね」

 

ごもっともです。

 

「そのために眷属の方が来るのはわかる

んですけど、そもそもご主人様って

悪魔の駒は嫌いなんですよね?

それなのに眷属って良いんですか?」

 

いや、まぁ眷属にしてもらった私が言う

ことじゃないんですけどね?

 

なんて言うか信念的なヤツで。

 

「あぁご当主様は何事もヤリたいようにヤる

ヒトだから、有る物は何でも使うよ?

ソレに悪魔の駒が嫌いと言うより、その中身

って言うのかな?そういうのが嫌いなだけだし」

 

「中身?」

 

悪魔の駒の中身ってなんですか?

 

「あ~それは『ふ~む。白音は不勉強だねぇ』」

 

む、この簪姉様が浦安で大騒ぎしてるときに

一緒に騒いでそうな声は・・・

 

「神野サンですか。お久しぶりです。

フンコロガシ屎泥課のお手伝いは終わったんですか?」

 

まぁココが日本で『出張してるヒト』を応援に

出すって時点でなんとなくわかってましたけど。

 

『だねぇ。主からコッチの手伝いしろって

言われてさ。鬼ぃさんにも、コッチがアレだと

無駄に忙しくなるからフォローして来てくれ

って言われてねぇ。許可が出たんだよぉ!』

 

なるほど。理屈はわかります。ソレにコッチには

簪姉様が居ますからね。相手も堕天使だの教会

だし神野サンなら適任でしょう。

 

「あ、お久しぶりです神野サン」

 

『おーおー久しいね、かんちゃん!

相変わらず憑かれてる顔してるねぇ!』

 

うん。このヒト何故か簪姉様が大好き

なんですよね~。

好きと言っても男女の仲じゃなく、孫娘に

接する感じですけど。つまり・・・ダダ甘です。

 

「お話は聞いてると思いますけど阿呆が

あまりにも阿呆でして。正直神野サンが

来てくれて助かりますよ~」

 

・・・このヒトにそんな事を言えるのは

簪姉様とご主人様くらいですよね。

 

なんたってこのヒト、奥様を相手にからかって遊ぶヒトですから。

 

『うんうん。そぉだろうそぉだろう!

ココに空君が来たら大変だからねぇ!』

 

いやー何というか、まんま孫娘に頼られて喜ぶお祖父さんですよ。

 

それに確かに空さんは地上に出たら危険ですよね。

まぁそれはそれとして・・・

 

「神野サン?私が不勉強なのはわかり

ましたが、出来たらご主人様の悪魔の駒

についての価値観を教えて欲しんですが」

 

本題はコレですよね。

 

自分が未熟なのは知ってますけど、だから

と言って未熟を理由にしてご主人様を理解

することを諦めちゃダメだと思うんです。

 

『おぉぅ。素直で勤勉だ。悪魔としては

どうかと思うけど、ソーユー悪魔も居ても

良いよね。

なんたって主が主だもの!だって悪魔だもの!

さんたまりあうらうらのーべす!!』

 

うーん。相変わらずひゃっはーしてますねぇ。

突っ込んだら負けだから突っ込みませんが、

これでは何時まで経っても問題が解決しません。

 

「あ~神野サンがアレだから私が教えるけど、

ご当主様が悪魔の駒が嫌いな理由は幾つか

あってね」

 

ほうほう

 

『まず第一に、意味のわからないモノだからだねぇ』

 

いきなり入ってきやがったっ!でも・・・

 

「意味がわからないですか?」

 

適用者を強制的に悪魔に変えるんですよね?

でもって使った駒によって様々な力を得る。

 

ある意味わかりやすいのでは?

 

「そうだね。わかりやすいところだと・・・騎士の駒かな」

 

「騎士の駒?」

 

速さを増すんですよね?

 

『アレは速さを増すって言うけど、そもそも速さって何さ?』

 

ん?うーん。んん?言われてみれば・・・

 

「脚力から生まれるモノなら脚力。

動体視力から生まれるものなら視力。

体の反応速度を上げるなら神経だよね?」

 

確かに・・・

 

『でも力を上げるなら戦車がある。魔力で

強化するなら僧侶がある。なら騎士って

何を強化してるんだい?』

 

思考・・・では無いですよね。

動体視力は視力だし・・・アレ?

 

「同じように戦車もだね。筋肉密度を

上げてるわけでも無ければ、魔力量も

変わってない。重さも変わらない。

それなのに頑丈になって力が増す?

意味がわからなくない?」

 

確かに・・・

 

『つまり他種族を悪魔にするだけなら

兵士で良いのさ!

それなのに、種族を変えるだけじゃなく

わけのわからない力を後付けするの

は彼の美学に反するんだよぉ』

 

それはそうですよね。自分自身を磨き

技術を磨くのがご主人様です。

 

悪魔になったら肉体強度が変わったり弱点が

出来ますけど、ソレは種族の問題ですし。

 

有る物は全部使うと言っても、僧侶の駒

みたいに魔力を外付けHDみたいに

増やすのならまだしも、戦車とか

騎士って何を強化するの?って話ですか。

 

そんなわけのわからないモノを眷属の

体の中に入れたくないってことかな?

 

「第2に眷属と家臣の違いも出てくるね」

 

あぁ、ソレはわかります。

 

『そぉう!貴族として家を保つためには

譜代の家臣は必要不可欠。けどソレって

15人で足りるかいぃ?』

 

足りませんよねぇ。

 

「しかも眷属として強化されるのは戦闘力だけ。

領地運営に必要な力ってそういうのとは

全く違うでしょ?なのに眷属は自分が主君に

選ばれたって優越感を覚えちゃうし、眷属に

なってない家臣の人は劣等感を覚えちゃう」

 

領地運営には戦闘に向かない純粋な文官の人

たちが必要なのに・・・

 

『そうなったら家の統治が乱れる。だから

彼は悪魔の駒を使って眷属を増やすのは

良いことではないと思ってるのさ!』

 

なるほど・・・奥様や簪姉様は政治も

戦闘も出来る万能の天才ですから特に

問題にはなりませんけど、もしも眷属が

サーゼクスみたいな脳筋揃いなら家を

保つどころじゃありませんね。

 

「基本的には力こそ正義っていうのが

悪魔社会だけどね?法の下で領土を

運営するなら、力より文官として信用

出来る人を眷属にするべきなんだよ」

 

けどそんなことしてる悪魔はいませんよね?

 

『まぁ眷属が領地を守護する為だけの

存在ならソレで良いんだけどねぇ』

 

主君にそういう扱いされたら、ほとんどの

眷属は「眷属である自分を差し置いて、

主君が戦えない文官を特別扱いしてる!」

って騒ぎますよねぇ。

 

力を重視するが故の、武官と文官の軋轢

ですか。駒を持つのは貴族であると言う

ルールを考えれば軋轢を助長するのは

良いことではないと。

 

「第3にソノ理念がおかしい」

 

あぁなるほど。ソレはご主人様も良く

言ってますよね。

 

『元々少子化を改善する為に造ったモノ

なのに、あきらかに他の勢力に喧嘩を

売って戦争を助長してるじゃないか。

コレで堕天使やら天使を悪魔にするなら

まだしも、君みたいな妖怪や他の勢力の

神獣だの神使を眷属にするんだよ?』

 

ダメですよねぇ。

 

「まぁご当主様は戦争上等っ!てヒト

だから他の勢力の連中を眷属にすることは

否定して無いけど、製作者の意図から

完全に外れてるよね。

それなのに何の修正もしないアジュカに

関しては・・・馬鹿だと思ってる」

 

文句のつけようがないくらいの馬鹿です。

 

政治家としても技術者としても中途半端なんですね。

 

『さらに無責任だ!主君は眷属に

対する責任を負うべきなのに、

はぐれ悪魔やら何やらは全然減らない!』

 

うん。全くそのとおりですよねぇ。

 

「この問題を解決する方法に関しては、

私たちはすでに対処法を確立してるけどね。

他の連中は何も出来てないでしょ?

老害が眷属をペットとして考えたとしても問題

だし、配下と考えてるとしてもまともに管理でき

ないような連中に駒を渡しちゃダメだよね?」

 

あきらかにダメですよね。

 

それこそ他の勢力に喧嘩を売って

戦争を吹っかけるつもりなら問題

無いんでしょうけど・・・

 

今の魔王は戦争に反対してますもんね。

意味がわからないよ。

 

「でもって奥さんとかを強化する為に

使ってるヤツが居るじゃない?」

 

・・・居ますね。

 

『おかしいよねぇ?悪魔を増やすための

駒なのにドーピングに使うんだよ?

主が大っ嫌いなパターンだよねぇ?』

 

そうですよね。そもそも悪魔以外のモノを

悪魔にする為のモノなんだから、悪魔に

適用されるのはおかしいんですよね。

 

「他にもいくつかあるけど、まぁ

簡単に説明できるのはこれくらいかな。

あとはご当主様の口から直接聞いてね」

 

むぅ・・・他にもあるんですか。

 

『そうだねぇ。主のお考えは勝手に考察

するんじゃなく、本人に聞くべきだよ?

どこぞの神みたいに死んでるわけじゃないんだからさぁ』

 

「・・・それもそうですね」

 

現状でわかったのは、ご主人様は他種族を

悪魔にする為の手段としてなら悪魔の駒を

使うけど、眷属の強化とかに使うのが嫌い

ってことなんですよね?

 

もし違っても、ソレはソレでご主人様との

会話の種になるからおっけーです!

 

『さてかんちゃん?白音も納得したところで現状を教えてくれるかなぁ?』

 

おぉ、そうですよね。神野サンはお仕事で

来てるんだから、そっちをちゃんとしないと。

 

あ、でも先に

 

「神野サン。イロイロ教えてくれてアリガトウゴザイマス」

 

ちゃんとお礼を言わないとシツレイですよね!

 

『・・・ん~そんな純粋に感謝されるとアレだけど・・・まぁお仲間だから良いか!』

 

あれ?このヒトも悪魔の中の悪魔だから、

感謝とかしたら逆にシツレイだったかな?

 

まぁいいや()

 

白音は悪魔だからヤリたいようにヤるんですよ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はぁ?グレモリーがオセと断交だと?!」

 

どういうことだ?サーゼクスはそんなこと

一言も言ってなかったぞっ!

 

「えぇ。妻の実家からの情報で、主な

貴族家の当主には通達されている

らしいので嘘や虚報ではないでしょう」

 

シェムハザの奥方情報か・・・それに

貴族家当主に通達したってんなら嘘でも

策でもなく本当か。

 

「しかしなんでまたいきなり?」

 

俺が悪魔領に無断侵犯したことについては

カンザシ・オセも政治の問題として直接

サーゼクスと話せって言ってきたし・・・

そもそも俺が行ったのだって、日本神話群の

鬼面仏滅絡みってわかってたよな?

 

もしもアレを理由に政治的なナニかをしたら、

『勝手に利用するな』って言われて折檻

されるから、アレが理由ってわけじゃねーだろ?

 

「何でも職務放棄による契約違反だとか」

 

「はぁ?」

 

契約違反?オセに対して?馬鹿じゃねぇ?

 

「職務の内容が良くわかりませんが、

どうやら完全に決別したようですね」

 

「そりゃそーだろ」

 

悪魔にとって契約は絶対遵守が基本。

 

人間が契約の裏をかいたりした場合は

裏をかかれた悪魔が阿呆なのであって、

契約違反とは違うからな。

 

しかし家ごと断交するってことは悪魔の

貴族家同士が結んだ契約ってことか?

 

二重にダメじゃねーかよ!

 

「・・・そういえばアイツの妹が結婚

するって話だったよな?」

 

それ関係か?

 

「あぁ、相手は確かフェニックス家の三男坊

でしたっけ?長々と愚痴ってましたよね?」

 

ホント長々とな。他の悪魔の手前愚痴だの

文句が言えないのはわかるが俺に言って

なんになるってんだ。

妹魂(シスコン)も大概にしろって思った

もんだが、そういえばアイツらのことを

カンザシ・オセは無能と阿呆と言ってたな。

 

まさかとは思うが無能が何かやらかした?

 

そのせいでオセがブチキレたってのは・・・あるかもしれん。

 

無能だろうが阿呆だろうが無礼や

不敬が許されるわけじゃねぇ。

 

ガキが馬鹿やったら保護者の責任だって言われたらどうなる?

 

あの身内に甘いグレモリーが娘を

切り捨てることが出来るか?

 

・・・無理だろうな。

 

あとは赤龍帝か。アレも白龍皇もこれまで

4代に渡って奥方に仕留められてるから、

今回顕現したことで殲滅対象になった?

 

・・・ありえる。

 

そうなるとウチもヤバイか?

 

「とりあえずヴァーリに暫く表を

出歩くなって伝えなきゃな」

 

強者との戦いがどうとか言ってるが

相手が悪すぎる。

 

まさかヴァーリの趣味に堕天使全部を巻き込む訳にはいかねぇからな。

 

和平が成立すればオセの矛先はコッチ

から外れるんだ・・・

頼むからもう少し大人しくしてろよ?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!

魔力の塊を出すとき、自分が一番イメージ

しやすい形で打つの!」

 

「え!え?えええええええええ!?」

 




とりあえずオセ君的には駒のドーピング性能は嫌いだけど、
「他種族を悪魔にする為の方法としては有り」と言う考えです。

感想で話を膨らます卑怯者?
褒め言葉ですなっ!!

神野=サン。一体何者なんだ・・・

かんちゃんと仲がいい理由?
欲に忠実なのと中のヒト関係ですかねってお話。

オセ君のモデルや見た目は当然某作品の大尉ですよ?

鬼ぃさん≧空くん≧ご主人様>>>>>神野サン>>超えられない壁>>奥様>>>>>>簪姉様>>>超えられない壁>>>白音

鬼ぃさん強すぎぃ!

まぁコレはアレですよ?冗談みたいなモノですし、
相性とかもあるので、あんまり参考にならないと
思ってください


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10話

山を破壊した後の各勢力のお話

前話のラストと今回の話の内容を
一部修正してます。曖昧な記憶で投稿して
本当に申し訳ないと思っている(メタル)

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!!


「「はぁ?試し撃ちした攻撃で山を吹っ飛ばした?」」

 

何やってんだマダオっ!!

 

『ぐろぉぉりあぁぁす!!山っ?!山って!!

おおおおおおお、ぐろおぉぉりあぁぁぁす!!』

 

「神野サン笑い事じゃないですよ~。もうやだ~冥界帰る~」

 

あぁ、簪姉様がダウンしたっ!

それとグロリアスって笑い声だったんですね?!

 

「だけど実際コレはどうなるんです?

私たちの仕事って駒王町の管理のフォローが仕事ですよね?」

 

百歩譲ってもシトリー家の阿呆のフォローでしょ?グレモリー家とは断交したし・・・

 

『うん。僕たちには関係ないね。グレモリー

とも断交してるしぃ!

いやはや流石は主!もしも断交前に山を破壊

されてたら間違いなく僕たちが鬼ぃさんに

折檻されてたよぉ!』

 

確かに、ソレを考えれば見事なタイミングですよね。

 

「あぁそれもそうか。一応ご当主様に報告は

あげるけど・・・なら日本神話群からの

クレームは阿呆に行くんですかね?」

 

もしくは巡り巡って私たちに「フォローが出来てない」って言って来るとか?

 

貴族ってそういう責任転嫁とかのプロでしょ?

 

『さて、この場合はどうだろう?阿呆サンも

別にアレの監督義務があるわけでもないし?』

 

簪姉様には普通に受け答えするんだよなぁ。

 

「じゃあ普通にグレモリー家ですかね?

まぁ結局はサーゼクスあたりがフォロー

するんでしょうけど・・・」

 

甘やかすからダメなんですよね。

土地を所有してるからってナニしても

良い訳じゃないでしょうに。

 

『日本神話的には面白くは無いだろうねぇ。

だけど連中が個人所有の山を自分で開発

したって言えばそれまでさぁ』

 

まぁ貴族なら自分の家の土地は自分の

モノだし、開発だってしますからね。

 

文句を言われる筋合いは無いって感じに

持っていくんでしょうけど・・・

 

「そっか。土地所有者としてはそうなるか。

そこにいる生き物も勝手に住んでるだけ

ですから、ある意味で不法侵入って形に

すれば賠償とか謝罪は必要ないですね」

 

そうですよね・・・法的には。

 

『そんな事したら、今回はなんとかなっても

今後は悪魔に対して土地を売ったり

貸したりする勢力はなくなるだろうねぇ!』

 

ですよねー。法的になんとかなれば

良いってわけでも無いし・・・それに

神話勢力とは関係ない生き物のこと

だってあるんだから。

 

普通は告知してからヤりますよねぇ。

 

「そうなりますかねぇ。あと現在貸し出し

中の土地に関しては、魔王の親族による

破壊活動を理由に全部契約解除とかですかね?」

 

ですよねー。魔王の親族による破壊活動に

魔王がフォローを入れるんでしょ?

 

『そうなる可能性は非常に高いね』

 

無能個人じゃなく悪魔陣営の決定って

なっちゃうわけですよね。

 

「だけど、それならご主人様的には

地上から完全に縁を切れるから

良いのかもしれませんよ?」

 

今だってこんなお手伝いしてるし。

お仕事任されるのは嬉しいけど、正直もう

帰りたいって言うのは簪姉様も一緒なハズ!

 

「ん~そうとも言えないかなぁ?」

 

え?何かあるんですか?

 

『駒王町と縁を切るだけならいいけどさぁ。

サバトを行う場所を借りれなくなったら

困るだろぉ?』

 

「あ、それはそうですよね!」

 

空さんの制御とか考えたら力はいくら

あっても困らないし。

それにサバトで得られるエネルギーが

急に無くなったらオセ領の土地が・・・

 

いや、確か何かあってサバトが開催

出来なくなった場合に備えて、普通に

運営できるようにしてますよね?

 

サバトに頼るだけの領地運営なんかありえませんし。

 

家臣団の方々も普通にお仕事してますからね。

 

いや、サバトを待ち望む人間たちの熱い

要望が天に届けば、天照大神様も許可を

出す可能性はありますけど・・・

 

「他にも有るけどね。とりあえずはサバトかな。

もしもご当主様だけにサバトを行う許可を

出した場合は、悪魔陣営や日本神話群からの

クレームや要望は全部ご当主様に行くことに

なるんだよね」

 

おぉう・・・外交ルートの独占と考えれば

アレですけど仕事量を考えれば・・・

 

『死ぬねぇ。過労により家臣団全滅のお知らせぇ』

 

ですよねー!

 

「それにね。白音ちゃんもわかってると

思うけど、今回の件で一番やばいのは

山の生き物がどうとかじゃないんだよ」

 

ですよねー。

 

もちろんソレもありますし、山が

無くなったことを誤魔化す必要も

ありますけど、ソレ以上にヤバイのは・・・

 

「・・・地脈ですよね?」

 

山一つ無くなったことで完全に乱れた

地脈をどうにかしないといけないんです。

 

『そぉーう!海中だっていきなり山が

無くなれば潮流が変わるぅ!

一部の潮流が変わればその影響は世界の

潮流に関わるぅぅ!

なら大地はどうだいぃ?いきなり山が

無くなれば気流が変わるし、今まで

その山や樹木が蓄えてきた水やら何やらが

全部!いきなり!消失したらどうなる?!』

 

・・・最悪です。

 

『そこから生じる災害に対する責任は

悪魔が取らなきゃいけない!

この場合関係してるのはグレモリー

だけだけど、日本神話群は主の名前を

挙げてくるだろぉぉぉうぅぅぅぅぅ!』

 

さっきから思ってたけど、神野サンめっちゃテンション高いですね!

 

「地脈を理解できてない悪魔共が、

まともに責任取れるとは思えないからねぇ。

そりゃご当主様に行くよ・・・」

 

そりゃそうですよね。無能どもだって責任取れ!

って言われても、取れません!としか言えません。

だけどそんな口論をしている間にも地脈は乱れ

ますし、災害だって起こります。

 

その災害を未然に防ぐためには地脈の修正と気流の操作が必要不可欠。

 

災害が発生するまでの短時間でそれが出来るとなれば・・・

 

「空さんを呼ぶんですよね?」

 

「だね。そうするしかない」

 

あのヒトが地脈の流れを調整して自然の

形に戻せば良いんだけど・・・時間が

経てば経つほど調整は難しくなる。

 

かといって無能がやったことを自発的に

我々がフォローすれば、今後の活動に

差し障りが出るし、何よりご主人様が

『知ったことか』って言う可能性が高い!

 

だって無能の尻拭いとか、全然悪魔らしくないし!

 

その場合は日本神話群の土地神様が

なんとかするんだろうけど、やっぱり

評価は落ちますよねぇ?

 

・・・アレ?コレってどちらにしろご主人様に負担がかかるんじゃない?

 

それならさっさと空さんを呼んで、やって

もらった方が傷は小さいと思うんですけど・・・

 

うん!結局はご主人様と奥様の判断次第ですね!

 

白音は考えることを辞めました。まるっ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「サーゼクス。いくらなんでもこれは無い」

 

「・・・すまない」

 

オセ家との断交は、自業自得だから何もいわん。

 

しかしこれはなぁ。

フェニックス家の三男坊が、リアスが

これ以上アホなことをしないように

結婚を急いだのもわかる。

 

当主同士が決めた婚姻を結婚にしたのも、

互いの当主が認めたなら問題ない。

 

だがその後はなんだ?

貴族の娘が当主の意向に逆らう?

 

当主は逆らった娘を叱りつけるどころ

かレーティングゲームをさせる?

 

さらに修行の時間を与えて合宿場所を

用意する?

いや、なんで当主の意向に逆らったのに

グレモリー家の別荘使わせるんだ?

 

でもって山を破壊?それも事故じゃなく、

リアスが攻撃を指示して、眷属の騎士が

回避した結果だと?

 

ナニしてくれてんだ?!結界くらい張れよ!

 

「サーゼクスちゃん・・・流石にこんなの

どうしようもないよ?」

 

「・・・すまない」

 

だよなぁ。唯一の救いは、事故現場が

グレモリー家所有の土地だから弁償とかが

不要なことくらいか。

 

山の生き物に関してはアレだが、元々

ソコまで気にすることでもない。

悪魔が自然環境に配慮するってのも

おかしな話だからな。

 

山の神については、あの程度で死ぬような

ことは無いらしいが、加護を与えてる住処を

破壊されたらそりゃブチキレるだろうさ。

 

だがソレだって言ってしまえばグレモリーと

日本神話群で話を着ければ良い話だ。

 

だが、この日本神話群からの報告書にある

気流と地脈はダメだろう?

 

正直東洋的発想だからそれほど詳しい

わけではないが、海中の山と潮流を

喩えに出されれば、これがどれだけ

ヤバイことなのか・・・私でもわかるぞ。

 

「いやぁ僕も眷属に聞いてみたけどさぁ

確かにヤバイんだってさぁ」

 

「・・・すまない」

 

そうか、ファルビウムの眷属が認めたか。

 

リアスのことは我々全員も知ってるから

あまり強くは言いたくないんだが・・・

 

「「「どーすんだよ!!!」」」

 

「・・・どうしよう?」

 

知るかっ!

 

最初は妹の為になるからって言って結婚に

賛同したかと思えば、妹が嫌がった途端に

嫌われたくないからって180度態度を

変えやがって!

 

そんで中途半端に温情を与えた結果がコレかよっ!

 

フェニックスに至ってはオセ家に娘を

差し出したんだぞ!

 

グレモリーに対してのクレームに一切

関わらないならソレでも良いけどよぉ。

 

フェニックスとの会合の時にグレイフィアが

居たんだろ?!

 

グレイフィアが修行を認めたんだろ?!

 

お前らの中じゃ女中なのか何なのか

知らねーけど、世間一般じゃアイツは

お前の嫁で魔王の女王なんだよっ!

 

もう魔王が無関係とは言えねぇんだよ!

 

「・・・とりあえず、今回の件だな。

いきなり山が消失したことで災害が

生じることはわかった。だがコレは

どうすれば良いんだ?」

 

ホントどーすれば良いんだ?

 

「アジュカちゃんの覇軍の方程式は?」

 

「無茶言うな」

 

無理に決まってんだろ!世界中の気流と

地脈を計算して修正って・・・しかも

何時まで修正すればいいんだよ!

 

「あ~問題はもうすでに地脈がズレ

始めてるってことらしいぞ」

 

ダメじゃねーか。

 

「・・・つまり、今から『山を元通りに

造り直しました!』と言っても、さらに

流れが乱れるだけと言うわけか」

 

「だな」

 

どーすんだよ!ソレを計算しろと?

 

「向こうからはオセちゃんの所にいる眷属に

地脈の専門家が居るはずだって話だけど・・・」

 

「「「・・・」」」

 

オセか。そんな眷属まで居たとは初耳だが、

あいつならありえなくはない。

 

だがなぁ。今まで散々顔に泥を塗ってきた相手だぞ?

 

管理者を譲ってもらった後でフォロー

までさせてたくせに、職務放棄して

契約違反と断言されて断交された相手だぞ?

 

それに対して、全ての元凶であるリアスの為に動けと?

 

「・・・俺には言えん」

 

今までカンザシ・オセが悪魔の駒の研究をしてる

のを黙認する程度で、特に敵対もしてないのに

・・・ココでアレを敵に回す気はないぞ!

 

「僕もちょっと・・・」

 

だよなぁ。もし彼に頼みごとに行くなら

当主本人が行かねばならん。

面倒事が嫌いなのもあるが、礼儀作法に

五月蝿いオセはファルビウムにとって

ある種の天敵だ。

 

「・・・私も厳しいかな」

 

なんと言ってもソーナの件で現在進行形で

迷惑をかけてる相手だからな。

ブチ切れて「ソーナのフォローもしない!」

なんて言われたら終わりだ。

 

「「「・・・」」」

 

「・・・おぉう」

 

なにがおぉうだ!お前んところの問題

だろうが!

 

アザゼルだって色々警戒して部下の動きを

止めてるのに、なんで同じ悪魔が彼を敵に

回そうとしてるんだよっ!

 

「「「さっさと逝ってこい!」」」

 

いい返事がもらえるまで帰ってくるなっ!

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「さてさてマダオが山を破壊、ですか」

 

無能の命令とはいえ、ソレを成す力が

あるだけでも問題ですよねぇ。

 

「アホだよなぁ。鬼ぃさんからは大至急

対処願うって要請が来てるんだが・・・」

 

あの方が要請で留めるのが旦那様の凄い

ところですよ。

 

普通なら首根っこ捕まえて無理やり

やらされますからね。

 

「とりあえず空殿を呼び戻しますか?」

 

地脈と言ったら彼ですからね。

 

「だな。でもって地上には・・・下手に

一人で出したら色々終わるから、土曜に

俺と一緒に行くのが妥当かな?」

 

土曜のサバトの前?いや前だとサバトが

中止になりますからサバトの後に片付け

るつもりですか。

 

今が木曜ですから・・・鬼ぃさんには

明後日には何とかすると言う返答を

するべきですかね?

 

「もしソレでも遅いと言われた場合は?」

 

本来なら二日なら十分な早さですが、

今回の件の重要性とあの方の性格を

考えれば・・・有り得ますよ?

 

「サーゼクス次第とでも言っとくか?

流石に内容が内容なんで、一介の悪魔に

決定権は無いとか言ってみるさ」

 

このまま黙ってればグレモリー家やら

サーゼクスが何か言って来るでしょうし、

旦那様が言えば鬼ぃさんも納得してくれますか。

 

それにいくら魔王(ぼんくら)どもでも、まさか

この内容のクレームに対して二日も三日も

掛けるようなことはしないでしょう。

 

・・・しませんよね?

 

いや、それ以前にですねぇ。

 

「この期に及んでグレモリー家が無能を

連れ戻さないのは何故でしょう?」

 

悪魔に迷惑をかけるだけならまだしも、

地脈の修繕なんか一歩間違えれば世界規模

の案件ですよ?

 

空殿が動いたら間違いなく周辺地域は

影響受けますし・・・

 

その元凶を放置するってどうなんです?

 

「今更戻しても納得しないからだろう?

中途半端に戻してグダグダ文句垂れるくらい

なら、さっさと試合に負けて結婚して隠居

させてくれって感じなんじゃないか?」

 

なるほどなー。

 

「元々此処まで状況が悪化したのも無能の

せいですからね。責任を取らせると考えれば…」

 

結婚直後にガタガタになった家を継がされるわけですか。

 

無能は完全に自業自得ですが、

フェニックスにはいい迷惑ですよねぇ。

 

実際結婚するかどうかはわかりませんが、

もし結婚しない場合はどうするんでしょうね。

 

無能単品に家を継がせるって言うのは

流石に無いでしょうし・・・ん?

 

「旦那様。通信です」

 

噂をすれば…ですね。

ここはこのタイミングで連絡を入れてきたことを評価するべきでしょうか?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あぁん?日本の山間部で大規模地震?」

 

ソレがどーしたって言いたいとこだが、

態々俺に報告してくるってことは

普通の自然災害じゃねーんだろ?

 

「えぇ、しかも断続的に発生してます。

場所は・・・グレモリー家の私有地付近

ですね。震源地と震度の範囲はコレです」

 

「・・・なんだこりゃ?」

 

こんなピンポイントで複数回?火山や

活断層があるわけでもねぇのに?

 

でもって、またグレモリーかよっ!

 

「・・・まさか赤龍帝がなんかやらかしたか?」

 

目覚めたばかりでまともに制御もできねぇだろうし。そういうのを疑うレベルだよなぁ。

 

「可能性はあります。調査させますか?」

 

本来ならさっさと行かせるところだが

今は地上での行動は自粛させてるんだよなぁ。

 

でもってグレモリーだろ?下手な奴を

行かせれば赤龍帝を刺激するだろうし、

あそこには朱乃も居るからな。

 

バラキエルも関わってくれば・・・面倒この上ねぇな。

 

さらにカンザシ・オセたちが網を

張ってたら、そのまま問答無用で

戦いを挑んで来るよな?

 

俺とサーゼクスの会合を知ってるなら

潰そうとしてくる筈だし・・・

 

「いや、今回は様子見だ。サーゼクスが

何かしてるかもしれんし、下手に探って

鬼が出てきたらたまったもんじゃねぇ」

 

いやマジで。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「じ、地震?!」

 

「・・・大きいわね。この建物は

頑丈だから大丈夫だと思うけど、

みんな一応気をつけてね」

 

「「「「了解です!」」」」

 

 

 




そもそも山も別荘もグレモリー家の施設ですよね?

なぜ使用許可を出した?

工事で少しずつ削ったりするならまだしも
一気に無くなったらダメだと思います。

一部修正。リアスの命令で山を狙ったんじゃ
なくて木場が避けたんですね。

失敗失敗、作者失敗。

鬼ぃさん、報告書をグシャリ。そしてニッコリ。

地脈の専門家(空くん)による調整?あっ・・・(察し)ってお話


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11話

とうとう合宿も終わり、着々と戦いに
赴く為の準備を進めるイッセー達!

・・・その裏側のお話。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!




「山を破壊したって・・・何のために?」

 

グレモリー家の敷地内で起こった地震について、

地元の連中が調査に行ったって言うから、その

調査結果を買い取る形で情報収集させたんだがよ。

 

・・・なんだそりゃ?

 

山を吹き飛ばすって、何か意味があるのか?

その山に何かが封印されてたとか?

 

「何でも赤龍帝が魔力を打ち出した際に

思った以上の出力が出たようですね。

それで組手の相手をしていた無能の眷属が

ソレを回避した結果、山が吹っ飛んだそうです」

 

事故かよっ!

 

「馬鹿じゃねぇか!?」

 

いや、ほんとに。シェムハザも普通にアイツ

の妹を無能呼ばわりしてるけど!

 

つーか結界とか張らねーのかよっ!

張らねーなら回避すんなよっ!

日本の山を破壊したら責任問題になる

だろーがよっ!

 

山って簡単に言うけどよ!そこには沢山の

生物やら樹木やらがあるし、拳豪鬼神は

そーゆーのが大好きなヤツだぞっ!

 

それに山によっては水脈だの地脈が・・・

 

「そうだよ、地脈だよ!山を吹き飛ばしたって

ことは地脈とかやべぇことになるだろ?!」

 

普通に考えればいきなり山が吹っ飛んだら

付近の地脈はガタガタだし、近くに龍脈が

有った場合は洒落にならん被害が出るぞ?

 

まさかあの地震はソレが原因かっ?!

 

「地脈に関しては、一時的にかなり乱れたそう

ですが・・・今は既に修復済みとのことでした。

日本神話群からのクレームも一先ず落ち着いたとか」

 

・・・まぁソレなら良いんだけどよ。

サーゼクスも解決済みとは言え、自分の妹とその

眷属のミスなんざわざわざ公表したくは無いだろうし。

 

山の生き物や神については俺たちには関係

ねーから、奴らが交渉で何とかしろって話だな。

 

しかし・・・そんなのと結婚させられる

フェニックスが哀れでならんな。

 

オセと断交したってだけで悪魔社会だと

かなり肩身が狭くなるだろうし、更に

態々婚期を早めての結婚だろ?

 

前後関係は微妙だが、ソレを行う時点で

オセに対してフェニックスが喧嘩を売った

と思われても弁明出来ねぇ状況だ。

 

普通にしてればもっと良い相手が居ただろうに。

 

ま、オセの矛先がコッチから向こうに

向いたと思えば良いか?

 

しっかしよぉ。本当に結婚ってのは人生の

墓場だよな。

 

こりゃ暫く独り身で居た方が良い。うん。

そうしよう。いや、別に結婚に憧れとかは

まったくねーんだけど?

独身の方が色々楽だし?研究し放題だし?

 

はぁ。誰に言い訳してんだよ。

 

「・・・とりあえず地震についてはわかった」

 

目覚めたばかりの赤龍帝と、ソレを操り

きれない無能の主の合作ってことだな。

 

「やはり暫くは連中に近付くべきじゃねーな。

どんな事故に巻き込まれるかわかったもんじゃねぇよ」

 

もらい事故が一番下らねぇ上に被害が馬鹿に

ならんからな。

 

しかも保険に入ってねぇなら尚更だ。

 

「ですね。全員に伝えておきましょう」

 

「おう。んじゃ、そっちは頼んだぞ」

 

さて、コッチはコッチでさっさと例の話を

纏めねーと。

 

無能な妹が結婚したら、サーゼクスは会談

どころじゃ無くなるだろうしよ。

 

だがコイツらと手を結んだら、連中が何か

やらかす度に拳魔鬼神に『連帯責任』とか

言われるんじゃねぇか?

 

・・・・・・ミカエルにも相談しとくか。

 

――――――――――――――――――

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおん!」

 

自業自得だバカタレが。

 

「でも良かったじゃない?私はオセちゃん

があんなに早く動いてくれるなんて思って

なかったよ?」

 

・・・そうだな。あそこまで顔に泥を

塗られて喧嘩を売られたにも関わらず、

尚もコイツと【契約】を交わし、更に特に

焦らしたりすることなく即座に対応して

地脈の修正をしてみせた手並みは、素直に驚嘆に値するぞ。

 

「彼は悪魔らしい悪魔だからねぇ。

契約を交わしたらそこに手抜きはしないし、

物事は中途半端にやらずに初手に全力で

行うのが最終的に一番労力が掛からない

ってちゃんと理解してるんだよぉ」

 

ふむ。ものぐさなファルビウムが言うと説得力があるな。

 

「その言いようだと地脈の問題はしっかり

改善されたんだな?」

 

契約でやつが手を抜くとは思えんが、

事が事だからな。

後から歪みがありましたと言われても困る。

 

「うん。大丈夫みたいだよぉ。いやぁあの

レベルの修繕を一日二日で終わらせるん

だから、ほんと彼の眷属は粒ぞろいだねぇ」

 

確かにな。俺でさえかなり面倒な仕事に

なると思ってたんだが・・・常時張り付いて

の調整ではなく、一度の修正で全てを

終わらせるというのは凄まじいの一言だ。

 

その地脈の専門家に加えてカンザシと

白音に奥方。

更にまだ何人か居るらしいが・・・

基本的に秘密主義でレーティングゲーム

にも参加しないから詳細は不明だが

敵にしたらかなり厄介なことは確かだ。

 

「ただ、その際に周辺に地震があったって

話だよね?それについては大丈夫なの??」

 

ふむ。地脈の修繕だからそういうことも

有るのだろうが、ソレで修繕方法が荒い!

などと言われても困るよなぁ。

 

「あ、あぁ。コレは最初から周辺地域に告知

していたし、そもそも修繕の為の工事のよう

なモノだ。

工事現場が五月蝿いからと言っても、工事を

しなければどうなるかはわかってるからな。

早期に修繕するならソコまで文句は言わんとの

ことだったよ」

 

「そうか」

 

その工事する必要になったのがリアス

のせいだし、向こうが納得しているという

のならこちらから言うことはないな。

 

「私としては、あそこ周辺の土地の譲渡で

話が済んだのは助かった。父上もソレは

納得してくれたしな。

後はオセ君が日本神話群の地域担当と話を

着けるそうだ」

 

「「「・・・」」」

 

本来なら外交はセラフォルーの仕事だが、

今はオセの邪魔をする気もないしなぁ。

面倒な仕事が減って良かったと言った感じか。

 

それに下手にサーゼクスが交渉して言質を

取られたりするよりは彼に任せたほうが

良いのも事実。

 

しかしこれだけの案件が土地の譲渡だけで

話が済むだと?

 

彼が地上の土地にこだわりを持つなどと

言った情報が有ったか?

 

「ん~サーゼクスが彼と結んだ【契約】は

グレモリー家の土地を譲渡することと、

地域担当の話し合いに介入しないこと。更に

リアスの監視体制を強化しろってことでしょ?

良くそんなんで彼が動いてくれたねぇ?」

 

その通りだよな?土地の譲渡はともかく

監視の強化は当然だ。

子供だから責任は保護者が取ると言うなら

保護責任を果たせ!と言うことだろう?

 

当たり前のことを当たり前にするのが契約

になるのか?と言われれば確かに疑問が残る。

 

さらにこれだとサーゼクスではなく

グレモリーの交渉だ。

 

だが断交を宣言した以上オセがグレモリー

と交渉することはないよな?

 

周辺地域の担当との折衝も本来は土地の

所有者が自分でヤルもんだし・・・

 

コイツ、他にも何かシテ来たんじゃないだろうな?

 

「いや、まぁ。その。な?」

 

おいィ?コイツ、あからさまに目を逸らしたぞ?

 

「「「お前、なにしやがった?!」」」

 

絶対勝手に何かやりやがったな?!

いい加減にしねぇとマジでかなぐり捨てンぞ?

 

「い、いや、別に何も譲ったり売ったり

したわけじゃない!ただ・・・」

 

むしろモノを売って来た方がマシだろうが!

その場で話が終わるんだからなっ!

 

「ただ・・・何をしてきたのかな?かな?」

 

行けっセラフォルー!やっつけろ!

 

「リ、リアスの保護責任者を、リアスが

グレモリー家を継ぐまでの間我々魔王が

務めると言った【契約】だ・・・です」

 

「「「はぁ?!」」」

 

なんでお前んとこのアホの面倒を俺らが

みなきゃなんねーんだよ!

 

「わ、我々ってことは・・・今後リアス

ちゃんがナニかしたら、私たちも責任を

取らされるって事ぉ?!」

 

「おいお~い。勘弁してくれよぉ・・・」

 

「だな。もうオセ家のフォローは無いんだぞ。

コレからどれだけやらかすと思ってるんだ?」

 

職務放棄して四日目にコレだぞ?コレから

当主就任まで何年あると思ってる!

 

「い、いや、ホラ、ライザーと結婚したら

家を継ぐし?そうしたらグレモリー家の問題

と言うことで、父上や母上がなんとか・・・」

 

ナニ言ってやがるっ

 

「「「お前結婚に反対してたろーが!!!」」」

 

部下もそのつもりで動いてるんだろ?

こっからまた結婚賛成派に回るのか?!

 

朝令暮改って知ってるか?過ちを知って改善

しないのは悪だが、コロコロ変わるのだって

良い事ではないんだぞ!

 

「くっ。リアスが結婚を嫌がってるのに結婚を

強要することは・・・だがゲームに負けて納得

してくれるならワンチャン・・・」

 

ねーよ!そもそも当主の決定に逆らって

おきながら、ゲームに望みをかける時点で

頭がおかしいだろうがよ!

 

フェニックスが結婚するってことすら怪しいよ!

 

もう監禁するか分家に養子に出してしまえ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・ライザー、決心は変わらんのだな?」

 

これが最終確認だ。決心が変わらんと

言うならば・・・家としては父上が動く

だろうから、私は兄として出来る限りの

ことをしてやろう。

 

「あぁ。あまりにも中途半端だし、家にも

兄貴にも迷惑をかけることになるけどよ。

やっぱり俺は俺の夢を諦めきれねぇ」

 

中途半端、か。確かに第三者が見れば

そういう風にも見えるだろう。

 

だが私やレイヴェルは知っているっ!

場合によっては、あのオセ殿を敵に回す

ことになると言うことがどういう意味を

持つのかと言うことをっ!

 

ソレすら覚悟して戦いに挑むライザーの

姿勢が中途半端などとは誰にも言わせんっ!

 

「兄貴・・・元々この試合は、グレモリー家の

都合によるものだ。

リアスに貴族としての義務である【婚姻】って

決断を迫ることで、普段の行動を自省し、

貴族としての自覚を持たせる為のモノ。

そのために【婚約】と言う契約を【結婚】にしたことが発端だった」

 

「あぁ、そうだな」

 

言い方は悪いが、ライザーはグレモリー家を

凋落させるような言動を取り続けるリアス嬢の

素行を抑えるための口実に使われたのだ。

 

まぁ自分の婚約者が阿呆で、婿に入る予定の

家を台無しにしようとしているのを見れば

それを何とかしようとするのも間違いではない。

 

「だが・・・リアスは素行を改めるどころか、

職務を放棄し、管理すべき土地を投げ捨てて

合宿を行うなんて言う愚行を犯しやがった!」

 

これもな。もともと十日と言うのはライザー

が言い出したことではなく、ジオティクス殿が

リアス嬢を納得させるための猶予期間として

十日欲しいと言ったからこそ、ライザーから

彼女へ時間をやったのだ。

 

普通に考えればプロで実績があるライザーに

対し、素人のリアス嬢が十日でどうにかなる

はずがない。

 

子供じみた夢を諦めさせ、現実を見せるのが

更正の第一歩と考えたらからこその猶予。

 

本来なら今まで貴族の権利を散々利用してきた

小娘が、当主の決めた事に逆らうなど有り得ん。

 

当主に結婚しろと言われたらソレを粛々と

受け入れるべきだし、もしも結婚をしたく無い

と言うならば、家を出るか結婚を早めることの

メリットとデメリットを確認・精査して、

ジオティクス殿やサーゼクス様、場合によっては

父上や私に対して各種工作を行って婚儀を引き延ばすべきであったのだ。

 

10日有ればそれなりの事は出来ただろう?

 

現実を正しく直視して、勝てない戦はしない。

 

戦に必要な準備が出来ないならば、戦では

なく外交や交渉の場を戦場とする。

コレが正しい貴族家当主の在り方だ。

 

もしそうして貴族として現実を見て、正しい

行動が取れると判断できるような提案が

出来たなら、彼らも我々も婚儀の延期を受け入れただろう。

 

ソレをまさか、その猶予期間を使って本気で

ゲームに勝つために使うなど考えもしなかった!

 

いや、勝てるわけないだろっ!

 

自分の眷属の数を見ろよ!質を見ろよ!

現実を見ろよ!家名を背負うんだぞ?!

領民の命を背負うんだぞ?!

 

プロとして場数を踏んでいるライザーの

眷属が、初陣の自分達でも勝てるような

雑魚に見えたか?

 

後宮のメンバーとしてライザー(愛する男)の力になる

為に、日々の鍛練を欠かさない眷属達が

一週間やそこらの鍛錬で勝てるような

おちゃらけた雑魚に見えたか?

 

寝惚けるなっ!

 

アレは明らかに誇りと言うのを勘違いしている。

 

貴族家当主の務めとは、勝てない戦に挑戦して

玉砕することではない。

例え泥水を啜ってでも、己の面目を潰すことに

なっても、生き延びて家を存続させることこそ

当主の務めなのだ。

 

にも関わらず私事を優先し、方々に迷惑をかけ

まくり、更にはソレを自覚しないなど有り得んことだ!

 

さらに、その迷惑をかけた相手はシトリー家

ではない。オセ家だぞ?!

 

こんなヤツの婿など、金を貰ってもお断り

だと言うのに、何故父上や母上は何も疑問に

思っていないのだっ!

 

本気で純血種との婚姻がめでたいことだと

思っているのか?

 

サーゼクス様と繋がりが出来ると思ってるのか?

 

貧乏神を自分から抱え込んでどうする?!

サーゼクス様はむしろ敵対するんだぞっ!

 

本来なら次期当主でしかない私に、この結婚に

反対する権限など無い。

 

こうしてライザーに対して当主の意向に逆らう

ような事を言うのは、ある意味でリアス嬢と

同じ行動を取っているとも言えるだろう。

 

だがっ!当主の頭がおかしくなって、家を

滅ぼしかねん決断をすると言うならば、

さっさと隠居させるのが次期当主の務め!

 

我儘抜かして問題行動を引き起こし、家を

滅ぼそうとしている小娘と一緒にされてたまるか!

 

レーティングゲームに関して言えば、正直

惜しい気持ちは有るが・・・ソレでも家を優先せねばならん!

 

「ライザー、連中はお前に。いやフェニックス家

に自分達の負債を抱え込ませるつもりだ。

先程も言ったが、それでもこちらは出来る限りの

ことはしよう。だが・・・その先は地獄だぞ?」

 

冥界に居る悪魔が言うことでは無いがな。

 

「兄貴には本当に申し訳ないと思ってる。

だがな・・・誰かに負けるのはいい。

でも自分には負けられない!」

 

・・・ふっ。子供だ子供だと思っていたが、

一端の口を叩くようになったじゃないか。

 

「そうか。ならば後ろは気にせず好きにやれ!」

 

いざと言うときはレイヴェルが居るからな!

 

「済まねぇ。そして・・・ありがとうございます!」

 

僅か十日でここまで成長出来るとはな。

今のコイツならもしかしたら・・・

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ま、魔王ぉぉぉぉぉっ!?部長のお兄さんって魔王なんですか!?」

 

「ええ」

 

・・・・・・

 

「・・・だから、部長は家を継がないといけないのか」

 

兄貴が魔王になっちゃったら、そりゃ仕方ないな。

 

 

 

 

 




次回デュエルスタンバイ!

君はフェニックスの涙見る・・・

いや、まぁ今回が戦闘準備なんですけどね?ってお話


しかし評価が赤くなったりオレンジになったり・・・
コレはアレですか?絹ごしメンタルな作者が
評価がオレンジになったら更新しなくなる
可能性を考慮した訓練された読者の方々による
絶妙な調整ですか??

ふっそろそろ作者のメンタルは木綿豆腐に
匹敵する硬度を持ち始めていると言う
ことを知らんらしいなぁ!


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12話

とうとう極悪非道の女ったらしの
ライザーの野郎と麗しのリアス部長の
レーティングゲームが始まる!

あんなに修行したんだ!あの魔法を使って
活躍して、部長を勝利に導いてみせるぜっ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「レイヴェル・・・アレかな?私の目が

おかしくなったのかな?

私にはリアス嬢がソファーに座って優雅に

茶を飲んでいるように見えるのだが・・・」

 

ルヴァルお兄様がご自分の目を疑うのも

わかります。私も正直よくわかりません。

ただこれだけは言えます。

 

「私もルヴァルお兄様と同じものが見えてます」

 

うん。多分。おそらくですけど、私たちは

幻覚か何かを見せられてるのでしょう。

 

「・・・すでに開始の合図は鳴ってるよな?」

 

「はい、確かに告知されました」

 

だって私がリタイヤ出来たんですもの。

 

いきなり私がリタイヤしたことで何かの

罠を疑ったのかもしれませんけど・・・

 

少しの間連中の動きが止まったかと

思ったら、当たり前のように女王が

お茶の準備をして、そのまま作戦会議を始めましたわ。

 

・・・どういうことなの?

 

「ふ、ふふふ」

 

「お、お兄様?」

 

今まで聞いたことがないくらい低い笑い声です!

 

「貴族たるもの『余裕をもって優雅たれ』

とでも言うつもりか貴族気取りの小娘がっ!」

 

あ、切れましたわっ!まぁ気持ちはわかります。

 

「貴様の相手はライザーだぞ!すでにプロで

実績があって!フェニックス家の才児と言われ!

多少増長してはいるが、ソレだってオセ殿に

憧れて自身を磨いてきた結果、試合で実績を

上げてきたことを背景とする自負だ!」

 

そうなんですよね。基本的にライザーお兄様は

努力を人に見せないことを旨としてますから

誤解されがちですが、ただフェニックスだから

と言う理由で勝てるほどレーティングゲームは

甘くありません。

 

ルヴァルお兄様がトップではなくトップ10に

居ることからもわかるように、対策などいくら

でも取れるのです。

 

その対策をねじ伏せてきたからこその勝利。

そして勝利を重ねてきたからこその自負。

 

そのライザーお兄様に初陣のリアス様、いえ

リアス・グレモリーが同じ土俵の上に上がり

張り合う為には常に全力全開で、その全てを

警戒して戦わねばなりません。

 

それなのにお茶。お茶って・・・

 

「……別にルール違反ではない。むしろ

気が逸って失敗するよりマシだと言う意見も

あるだろう」

 

まぁ、初陣ですからね。そういう可能性も

無きにしも非ずですが。

 

「だがっ!少なくとも私は評価しないっ!」

 

それはそうです。ライザーお兄様が全てを

懸けて戦おうというのに、自分が結婚

することが嫌で始めたこのゲームで、

あのような余裕を晒すことに何の意味が

あるのですか?

 

眷属に不安を見せないため?観戦している

我々に余裕を見せつける為?寝惚けるな!

そういう外面を気にしなくて良いように

今回は親族しか観戦しないようにしたんで

しょうがっ!

 

「ルヴァルお兄様。ライザーお兄様はご自身が

このような屈辱を受けて居ることを知りません

からまだしも、お父様やお母様はコレを

見てもまだアノ無能にライザーお兄様を婿に

する事がライザーお兄様の幸せだとお考え

なのですか?!」

 

ありえませんでしょう?!コレでは

結婚したあと、アレにどのような扱いを

受ける事になるか!

 

サーゼクス様にヴェネラナ様やグレイフィア様

のお三方に掛かれば、ライザーお兄様はタダの

若造に過ぎません!

 

勝手に眷属を愛人にし、家の財産を好き勝手

浪費して生きる無能を糺すこともなく、

ソレを咎めたライザーお兄様は悪者にされる!

 

大王家と魔王の家族であると言うだけで

ソコまでされなければ行けないのですか?!

 

「・・・父上や母上はグレモリー家が名家

であり、ライザーがその家の次期当主の婿に

なると言うことを重視しているのだ」

 

通常貴族の三男では家を継げませんから、

その考えも間違っては居ないと思います。

 

・・・普通ならそうでしょう。

 

「しかし名家と言っても、まさしく名前だけ

の家ではありませんか。

屋台骨はガタガタで、貴族としての信用も

失いました。あのような家を継ぐくらいなら、

ルヴァルお兄様がライザーお兄様の為の分家を

建てた方が、余程良いでしょう?」

 

ユーベルーナを正妻にして、そのまま家を

興せば良いではないですか!

 

「まったくもってその通りだ」

 

「それなら!!」

 

さっさと無能が声高らかに掲げている

婚約破棄を認めてしまえば・・・

 

「だがな。ライザーはフェニックス家の男子

なのだ・・・貴族なんだよ」

 

「貴族・・・」

 

あぁ、そうでした。そうでしたわね。

 

「わかるな?父上や母上の頭の中がどう

だろうと、コレは貴族家当主が決めた婚姻だ」

 

そうなりますわよね。

 

「つまり無能があそこでどれだけ騒いでも、

こちらの当主であるお父様と、向こうの

当主であるジオティクス様は婚約破棄を

認めてませんから・・・」

 

当然ですよね。溜まりに溜まった負債や

無くした信用を回復させる為にも、彼らに

とってこの婚姻は必要不可欠。

 

もし無能が言うように婚約破棄を認めて

しまえば、オセ家に続きフェニックス家

との間の契約も破ることになる。

 

そうなったらサーゼクス様の実家が

どうこうではありません。

 

「そうだ。現状を省みれば、彼らは

絶対に自分たちから婚約破棄を認める

事はない。

ライザーにはソレを認める権限がない」

 

・・・この試合にわざと負けると言う方法も

ありましたが、ソレはライザーお兄様が家の

誇りに泥を塗る行為であると言って拒否して

しまいましたし。

 

「だから、まずは全力で勝負に勝つ。

そして彼らの覚悟を問うのですね?」

 

無能が現実を見ることが出来るかどうか。

そしてグレモリー家がアレを諭すことが

出来るかどうか。

 

そしてその覚悟があるならばライザーお兄様が

ご自身の力で貴族家当主の婿にふさわしい

存在であることを証明し、無能が手に入れた

眷属を鍛え、互いの眷属を最大限活用して

共に朽ちかけた家を再興してみせると言うのが

ライザーお兄様の決断!

 

ソレをあの無能は・・・何が「個人として

見て欲しい」だっ!グレモリー家の庇護も

なければサーゼクス様の庇護も無い貴様

個人に何があると言うのですっ!

 

「そうだ。このゲームも、内容によっては

アレを再評価できる可能性も有ったのだ」

 

そう、勝てないなら勝てないなりに全力で

勝つための努力をすべきでした。

 

そして、その努力の集大成がアレですか。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「イッセー、戦いは始まったばかりよ?

もともと『レーティングゲーム』は短時間で

終わるものではないわ。

もちろん、短期決戦の場合もあるけど、大概は

長時間使うわ。実際のチェスと同様ね」

 

そ、そういうものなのか?俺はてっきり

映画の合戦シーンのような戦いを想像

していたんだけど・・・

こう、「入り乱れて超決戦!」みたいな

 

「いきなり向こうの僧侶がリタイヤ

したのはアレだけど、名簿を見たら

リタイヤした僧侶って言うのはライザーの

妹のレイヴェル・フェニックスだったの」

 

「い、妹ぉ?!」

 

あの鳥野郎!妹もハーレムメンバーに

加えてやがったのかよ!

 

「おそらく、普段は経験を積ませるために

参加させてるのでしょう。だけど今回の

ゲームはライザーと私の、いわば私事。

妹を関わらせるのを嫌ったのね」

 

「な、なるほど・・・」

 

経験を積ませるためか・・・確かに

そういうのも必要だよな。それなら

まぁ納得もできるし、妹を自分の戦いに

巻き込まないって言うのもわかる。

 

それに妹って事は、そいつも不死鳥の力が

あるんだろ?厄介な敵が減ったって事だよな!

 

あと、あそこにいたのはみんなカワイイ子

だったよなぁ。

うん。俺だって好き好んでカワイイ女の子

を殴りたいわけじゃないし!

 

ここはラッキーって考えよう!

 

「わかったところで作戦会議よ。

レーティングゲームは戦場を使い

込んでこそ意義がある・・・祐斗」

 

「はい」

 

部長に促され、木場がテーブルの上に地図を広げた。

 

さぁ作戦会議だ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カクカクシカジカサクセンカイギトムートンイトウ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

お、俺にはわからない戦略分析会議が行われているぞ!

 

「祐斗は、まず森にトラップを・・・」

 

「はい」

 

命令されるやいなや、地図と怪しげな

トラップグッズを手に持って部室を出て行った。

 

「朱乃は祐斗が帰って来る前に・・・」

 

「わかりました部長」

 

朱乃さんが了承する。

 

すでに作戦は始まってるんだな。

俺とアーシアはどうしたらいいかわからんぜ。

 

「あ、あの、部長。俺はどうしたらいいんですか?」

 

何か仕事をしてたい!

 

「そうね。ココに座りなさい」

 

「はい!」

 

隣に座るよう指示してくるので、部長の隣に座った。

 

「ここへ横になるのよ」

 

ソレは伝説の・・・伝説の膝枕ってヤツですかぁぁぁ!?

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なぁレイヴェル。アレかな?私の目が

腐ったかな?無能が赤龍帝と仲良くして

いるようにしか見えんのだが・・・」

 

今現在のお兄様の目が死んでるのは確かですが・・・

 

「もしルヴァルお兄様の目が腐っていると

言うなら、私の目も腐ってることになりますね」

 

だって私にもルヴァルお兄様と同じものが見えてますから!

 

いくら今すぐの結婚を望んでは居ないとは

言え、婚約者が居る身でありながら・・・

 

更に、映像を両家の者が見ていると言う

ことを知っていながらコレですかっ!

 

奴は一体どれだけフェニックス家の顔に

泥を塗れば気が済むんですの?!

 

「そうか。やはり目の錯覚ではなかったか。

・・・私はこれだけでグレモリー家との断交は

可能だと思うが、レイヴェルはどう思う?」

 

「同意見ですわ!此処までコケにされて

ライザーお兄様を婿養子として差し出すだ

なんて有り得ません!」

 

それでも私としてはライザーお兄様の決断を

尊重したいところなんですが・・・ですが、

とりあえずこのゲームで見るべきところはありません!

 

ライザー兄様!あの無能に覚悟など問うだけ無駄です!

 

言い訳が出来ないくらい完璧に叩き潰して下さい!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ユーベルーナ」

 

「はいっ!」

 

今まで俺を支えて来てくれたコイツらに

したら、リアスなんかを正妻として迎え

入れることに当然抵抗もあるだろうに。

 

それにこの後の状況によってはオセ様と

敵対し、グレモリー家ごと消される可能性も

あるってことも理解しているだろう・・・

 

それなのに文句も言わず従ってくれるんだからな。

 

ほんとにいいオンナ達だよっ!

 

「予定通りだ。本来なら初陣のリアスの

戦術を見た上で迎え撃つのが正しいのだ

ろうが、今回はそんなことはしねぇ」

 

あんな連中に俺の眷属を傷付けさせて

たまるかよっ!

 

「了解です。あの小娘共に、我々の

実力を見せつけてやります!」

 

素質だよりの未熟者に教えてやるよ。

 

実戦に定石など無い。千変万化こそが戦場の理!

 

相手に猶予や手加減を期待するのがどれだけ無様を晒すのかを知れっ!

 

「全員突撃!短期決戦(ブリッツ)だ!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

リアス、ココがお前が望んだグレモリー家の

力もサーゼクス様の力も通用しない戦場だ!

 

 

現実を理解できねぇなら、夢想を抱いて溺死しろ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

『・・・リアス・グレモリー様の騎士。リタイヤです』

 

はぁ!?木場がリタイヤ!?まだ開始から

10分もたってねーぞ!トラップを仕掛けて

る最中に殺られたってのか?!

 

「なんですって?!」

 

ぶ、部長も驚いてる!コレは完全に予想外ってことか?!

 

『・・・リアス・グレモリー様の女王。リタイヤです』

 

はぁ!?朱乃さんまで!?

 

「ど、どういうこと!?祐斗だけなら

まだしも、朱乃まで一言も通信出来ずに

落とされたというの?!」

 

そ、そうだよな!通信機があるし、それに

女王の朱乃さんがそう簡単に落とされる

わけがないよな!

 

『・・・ライザー・フェニックス様の兵士×8。

「女王にプロモーション」です』

 

「「はぁ?!」」

 

は、8人全員プロモーションっておかしいだろ!

ココには誰も居ないぞ?!

 

「まさかっ!イッセー上よっ!」

 

上?あっ!そういうことかっ!

 

まずい!俺はチャージすら出来て無いし、

アーシアがっ!!

 

「「「「「「「「遅いっ!!」」」」」」」」

 

「う、うわぁぁぁぁ!!」

「「キャァァァァァ!!」」

 

ぶ、部長っ!アーシアっ!!

 

『・・・リアス・グレモリー様の兵士、僧侶リタイヤです』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「「「よくやった!!」」」

 

「り、りーあたーーーーん!」

 

「「「お前どっちの味方だっ!」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

兵士と僧侶がリタイヤしたがリアスは

まだリタイヤしてねぇ。

 

上に向かって滅びの魔力を展開して相殺したか?

咄嗟の判断としては間違って無いが・・・

 

「くっ!上に居たのは兵士だけ。

女王や僧侶を周囲に巡らせて全方位から

の攻撃だったとは・・・」

 

そういうことだな。少し考えれば

わかることだろうに。

 

「話にならん。リアス、お前はこの10日間何してたんだ?」

 

「なんですって?!」

 

林にトラップ?空を飛べる悪魔相手に?

まぁ普通なら効果があるだろうさ。

アホ面してまっすく飛んでくるヤツ

なんざ狙い放題だろうよ。

 

・・・数と質で上回ってればな。

 

林の中で一人で作業してるところを

ユーベルーナが狙い打って終わりだ。

 

上空に幻術?女王一人で単独で?

護衛の一人も付けずに?

 

アホ面して術を展開しているところを

全員で袋叩きにして終わりだ。

 

本陣で何してたか知らねぇが、人員が

足りねぇなら自分で動かねぇとダメ

だろうが。

 

中途半端に貴族ぶりやがって。

 

定石ってのは戦力が拮抗してる相手を

崩すために使うんだ。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は時間を掛ければ

掛けるほど強くなる。

それこそ神を滅ぼせる力があると

言われる神滅具(ロンギヌス)

使い手が雑魚だろうがなんだろうが

ソレだけでも警戒する対象になるのは当然」

 

「・・・」

 

油断慢心ダメ絶対。直接教えを受けたワケ

じゃねぇが、俺たち世代なら誰でも知ってる

オセ様の名セリフだ。

 

「ならばどうする?時間を与えなきゃ良い。

なら俺の取るべき戦略は短期決戦(ブリッツ)を仕掛けて

さっさと終わらせることだ」

 

「・・・そうね」

 

悔しそうな顔してるがよぉ・・・悔しいのは

コッチだってんだ。小手試しの一撃で

全滅しやがって・・・コレをどうやって

評価すれば良いんだ?

 

貧弱ぅ!としか言えねぇよ。

 

「将来はどうか知らんが、今のアレは仲間が

居なけりゃチャージの時間も稼げねぇ雑魚だ。

チャージ前に倒せれば良し。もしもこの場に

居なければ全員でお前を倒して終わり。

ま、当たり前の戦法だな?」

 

それに対してお前は何をしてた?

 

「まさか貴方が此処まで余裕のない戦法を

とって来るなんてね。そんなにイッセーが

怖かったの?」

 

なんだ?自慢?挑発?

 

「当たり前だ。さっきの話を聞いてなかったか?

神滅具(ロンギヌス)を恐れねぇ奴はタダの馬鹿だろ?」

 

怖ぇのは眷属じゃねぇ。あくまでソッチだ。

 

「・・・くっ」

 

くっじゃねぇよ。挑発して一騎打ちでも

申し込むつもりだったか?

 

無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!

 

さて、もう抵抗する事は出来んだろうが

獲物を前にペラペラ喋って足元を掬われ

たら話になんねぇな。

 

この映像はレイヴェルがオセ様に見せるん

だからな。万が一があったら俺の評価も

そうだがレイヴェルの立場もやばくなる。

 

そうなったら兄貴やフェニックス家だって

どうなるかわからねぇんだ。

 

「で、指揮官として完全敗北したわけ

だがコレ以上何か必要か?

愚痴は後で聞くし感想戦も後でしてやる。

見学してる方々にお前の愚痴を聞かせても

しょうがないから、今はさっさと自分が

するべきことをするんだな」

 

さっさと投了しろ。せめて最後は潔く負けを

認めろよ?

 

「・・・くっ!イッセーさえ無事ならっ!」

 

どうにもなんねぇよ。コッチは赤龍帝だけ

を警戒して、ソレを潰す策を用意してんだ。

 

場当たり的な対処でどうにか出来ると思うな。

 

「で?」

 

何度も同じことを言う気はない。

もしも無駄な会話をして引き伸ばして

サーゼクス様あたりの介入を狙ってるってんなら・・・

 

まぁなんにせよ、次の一言で終いだ。

 

「・・・私の負けよ。投了(リザイン)します」

 

『リアス・グレモリー様の投了(リザイン)を確認しました』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私の負けよ』ねぇ。未熟な指揮官に

未熟な眷属で本気で俺に勝てると思われてたとはなぁ・・・

 

俺も随分舐められたもんだ。

 

まぁ何にせよコレで第一歩だ。後は・・・

 

 




はい。普通はこうなりますよね?

森にトラップって・・・空飛べるんですよ?
無警戒に飛んだところを強襲するには
対空のスキルが必要不可欠ですが・・・ねぇ?

ついでに言えば、どんな学校だって飛んだら
直線距離で10分以上掛かるわけありません。

原作では無能姫も告知から数分で一騎打ちしてるし。

原作の無能と性犯罪者のやり取りって、
アレはフェニックス陣営ブチ切れすると
思うんですけどねぇ・・・
両家の関係者に見られてるんですよ?ってお話。

きさまっ見ているなッ!どころの話じゃありません。


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13話

戦いはライザー陣営の勝利で終った。
だがこの戦いが残した爪痕は大きく、
特にリアス・グレモリーとその眷属の心に
は大きなしこりが出来るモノであった。

愚かな上層部はこの戦いですべての決着が
着いたと祝杯を上げる。
だが、そんな上層部の中でさえ様々な意思が
錯綜していることに気付く者は少ない。

そう、休息とは次の戦いへの準備期間に
過ぎないのだから・・・

ギ●ンの野望風前書きっ!

オリ設定っ!
オリ展開っ!

嫌いな人は読み飛ばしっ!



「あぁ・・・コレはひどいな」

 

旦那様も普通にビックリですが、気持ちは

わかります。『コレはひどい』としか言いよう

がありません。

 

この無能は一体なにやってんですかね?

自分の将来と意思を貫くために臨んだ戦いで、

格上を相手にお茶飲んでのんびり作戦会議?

さらに無駄にトラップを仕掛ける為に

戦力を単独で外に出し、部下が働いている

最中に衆人環視の中で愛人とスキンシップ?

 

兵士の駒の封印の解除と言ってますが、

悪魔の駒にそんな機能があったんですか?

 

簪からはそんなの聞いてませんが、空殿は

戦車二つ使ってましたよね?

・・・いや、空殿が全力を出せばアレなのは

聞いてますから、今のままで良いんですけど。

 

ま、まぁ空殿は良いのです。今の問題は無能。

コイツの戦略も意味がわかりません。体育館

を確保しても維持できないでしょう?

 

そもそもコイツは攻めたいの?守りたいの?

人員が不足しているから磐石な守りなど不可能

だし、そもそも素人が張った未熟なトラップに

実戦経験がある相手眷属が引っかかるとでも思ってるのですかね?

 

しかも、なんでコイツは極々自然に他者を

見下してるんですか?自分を含めて眷属全員

初陣ですよね?油断慢心出来る立場ですか?

 

「はい!あの無能は私たちの顔に何度も

泥を塗りました!それだけに飽きたらず、

今もまたグレイフィア様が何やら企んで

いるのです!コレではあんまりです!」

 

当主に望まれて婿養子として家に入るのに、

妻となる女は無能で現実を見ていないって。

 

ついでに義理の兄は結婚に反対してるし。

もう完全に支離滅裂ですよ。

 

・・・と言うか、なんで無能は今も被害者面

してるんでしょうねぇ?

 

「・・・とりあえず。あまりにもライザーが哀れなのはわかった」

 

ですねぇ。無能が当主の意見に逆らい、

さらにゲームで決めたことに従うと

言っておきながら、ソレに納得してないって。

 

むしろ。あそこまであっさりヤられたら、

全部吹っ切れると思うんですが。

 

実力の差も理解出来ただろうし・・・

出来てますよね?まさか指揮官として完全敗北

したくせに「負けたのは偶然だ!」とか、「もう一度ヤれば!」とか思ってませんよね?

 

『くっ、イッセーが無事なら・・・』とか言って

ますが、相手を案山子と勘違いしてませんよね?

 

ん~諦めの悪さを生き汚さと表現すれば中々の

モノと言えますが・・・醜いのは確かです。

 

でもって妹魂(シスコン)がソレを陰ながら

応援しようとしていると。

 

まぁこの情報はコチラが流したモノですが

そのへんはまだ理解出来てませんか。

 

しかし我々としてはアレが結婚できずに

いてくれた方が、保証人がはっきりし

ていて色々やりやすいのですけど。

旦那様はどうお考えでしょうか?

 

面白いと思えば計画の変更もしますけど?

 

「それで、結婚式が終わったら私の元に

行儀見習いに来る予定のレイヴェル殿が、

態々結婚式の前に当家に来たのは何用かな?

まさか『試合の映像を見せる』と言う、

こちらからの依頼を果たす為だけでは

ないのだろう?」

 

ですよねー。

 

本来なら映像を見せて旦那様に愚痴を

聞かせる小娘など、首を捩じ切って終わり

ですが、旦那様が解説を頼みましたからね。

 

試合が瞬殺で終わったので、試合内容では

なく、フェニックス家の所感を述べるよう

に言ったための愚痴です。

 

元々彼らの本心を聞きたかったのですから、

ソレを咎めるつもりはありません。

 

後はまぁ、本題次第ですね。

 

「は、はい!我が兄、ライザー・フェニックス

はグレモリー家の次期当主と婚姻した場合、

当主代行として親政を行う予定なんです!」

 

ほほう。こちらとしてはわかりきったこと

ではありますが、ある意味では極秘情報。

 

サーゼクスあたりが聞いたら激怒する

内容をここで臆せずに述べるとは・・・

 

「ふむ。あの無能やあれを育てた家族が

信用出来んというのは良くわかる。

私でもアイツらに仕事を任せるような事はしないだろうな」

 

ですよねー。もし何かを任せる場合だって、

せめて10年は教育した上で適性を見る形になります。

 

適性がないなら閉じ込めて捨扶持を与えて終わりですね。

 

あとはミリキャスとやらの能力次第ですが・・・

 

しかし婚姻した場合(・・・・・・)ですか。前もそんなことを言ってましたね。

 

この期に及んで上手く泥沼から抜ける

方法が・・・有るには有りますが、

自力でソレに気付きましたか。

 

ルヴァルかライザーかは知りませんが、

堕天使や天使と違い、悪魔は若手の方が

優秀なようですね。

 

「ご理解頂きありがとうございます!

つきましては我が兄、ルヴァル・フェニックス

よりオセ様に対してお願いがありまして・・・」

 

お願いねぇ・・・前回来た時に軽々しく

契約という言葉を使うなと注意しました

から、ソレを踏まえてのことでしょう。

 

更に本来ならルヴァル・フェニックスが

直接来るべき案件をこの小娘に任せたのは、

結婚式の準備やら何やらで動けない為?

 

いや自分が周囲の貴族の目を引きつける

役を担ったと言ったところでしょう。

 

こういう抜け目のなさは旦那様も好む

ところですから、無礼・不敬を問う必要も

ありません。

 

もし自分が咎められても、旦那様が小娘

の行儀見習いを受け入れると言った以上、

長男の不敬で小娘を殺すことも無いと判断

したのでしょう。

 

どちらにせよ彼らは我々を軽く見てはいないし、

万が一があってもフェニックス家が滅ぶことは

無いようにしてからの一手。

 

まったく、此処まで分不相応に有能な親族を

迎え入れることが出来るというのに、無能は

一体何が不満なのやら・・・

 

どーせ自由になってもレーティングゲームするだけでしょう?

 

なら領地運営を任せる相手が出来たと喜ぶべきでしょうに。

 

「フェニックス家の次期当主たる

ルヴァル殿からのお願いか。

現在の状況を考えれば大体予想は出来るが、

レイヴェル殿の口から聞かせてもらおうか?」

 

そうですね。内容は予想は出来ますし、

こちらが提示する条件もすでに考えています。

 

ただ、小娘の使者としての仕事を潰すわけには

いきませんからね

 

「は、はい!(わたくし)レイヴェル・フェニックスより、

オセ様に対しルヴァル・フェニックス

からのお願いをお伝えさせて頂きます!」

 

要望ではなくお願いというのが、また

なんとも間抜けではありますが・・・

そういうのも追々教えていきましょうか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『そんなんじゃおまえは何時まで経っても強くなれない』

 

赤い夢の中で、その声は心の奥底から

いや、俺の左腕から聞こえてきた

・・・誰だ?何が居る?

 

赤い竜の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグ。お前の左腕にいるものだ』

 

ウェルシュ・ドラゴン・・・ドライグ・・・

 

『負けるのもいい。死ななければ敗北も力の糧になる。だが・・・』

 

俺と何がどうなるって言うんだ・・・

 

『そのうちわかるさ・・・嘲笑った連中に

見せてやればいい。「ドラゴン」って存在をな』

 

ドラゴン・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『(よぉし良しっ!今回の宿主は悪魔だ!

つまりヤツに狙われることはないっ!

ふははは、勝ったぞ!ザマミロ白いのっ!)』

 

 

ん?コイツ、今なんか言ったか?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ライザー、良くやった!」

 

まさしく完全勝利!無能とて言い訳のしようも

ない、プロとしての完璧な勝ち方だ!

 

これからのこともあるが、今はあの

無能に吠え面かかせただけで十分っ!

 

これでフェニックス家の面目は保たれたし、

オセ殿も条件付きでライザーを認めると

おっしゃってくれた。

 

グレイフィアが何か企んでいるそうだが、

アレは明らかにサーゼクスの企みだろう。

 

内容も予想出来ている以上、対処も出来る。

 

・・・最悪の中でも少しでも良い方向に

持っていこうとしただけなのに、何故

我らがここまで譲歩せねばならんのかは

未だに釈然としないものが有るが、ソレ

でも最悪は脱したからな。

 

気持ちは随分楽になったし、それはライザーも一緒だろう。

 

 

 

「あぁ。自分でも最低限の仕事は果たしたって

のはわかってる。そしてボールは向こうに

投げた。後はアッチがどう動くかって話に

なるよな?」

 

確かに最低限ではあったが、アレは無能が悪い。

 

「うむ。その通りだ」

 

本来なら少しは見せ場をやるべきだと苦言を

呈するべきだが、アレではな。

 

まぁ少なくともこちらはヤるべきことは全て

やったし、無能には指揮官としての実力の差

を見せつけることが出来た。

 

恥を云々言うならば自分たちの拠点での

行動を省みろと言えば良い。

 

未熟者が勝手に相手の行動を決めつけて

油断した隙を突かれたと言うだけの話だ。

 

そんなヤツにワザワザ見せ場などやる必要は

無いし、そもそも今回は遊びや指南の為の

ゲームでは無かったのだからな。

 

自分の将来をかけた戦いで油断慢心など・・・

 

「あとはオセ様の条件なんだが・・・アレは

どう判断すれば良いんだろうな?いや、別に

嫌と言う訳じゃないし、本人も気持ち的には

微妙では有るが、まぁ納得してくれてるから

良いんだけどよ」

 

あぁ。あの条件な。

 

「確かに、奥方殿が人間で有った頃に因縁が

有った名前。と言われてもなぁ」

 

正直そんなの知るかっ!と言いたい所だが、

その名を名乗られたら殺したくなるとまで

言われては・・・改名するしかないよなぁ。

 

と言うかあの方は転生悪魔だったのか。

いやいや、別にだからどうしたと言う

つもりは全くないんだがな。

力もさることながら、オセ殿の隣に居るのが

当たり前に見える程だったから、てっきり

分家筋の方かと・・・いや、生まれや種族に

関係なくアレが貴族の夫婦としての正しい形なのだろう。

 

うむ、やはりオセ殿は参考になる。

 

「しかもレイヴェルが『絶対に言うことを聞いて

下さいっ!断ったら間違いなくフェニックス家

が滅びます!』と口酸っぱく言うくらいの殺意

を浴びせられたんだろ?

向こうにしたら余程のことみたいだし、少なく

ともオセ様にはソレだけの我儘を言えるだけの

力が有るから、本当に不満はねぇんだぞ?」

 

それはそうだ。更にその条件さえ満たせば

これからフェニックス家も交流が出来るし、

ライザーがグレモリー家に入った後も人員

やら何やらの面でフォローしてくれるらしいじゃないか。

 

キチンと此方にも得が有る。と言うか、得が

多すぎる気もするが、害しか及ぼさない小娘

の一族の我儘に比べたら万倍マシだ!

 

「とりあえずお前と本人が納得できるなら改名

した方がよいだろう。見返りもきちんと用意

してくれているのだしな」

 

当主たるもの基本は自家が得をするように

動くべきだが、その場その場の損得で動く

のは未熟の証と言うことだな。やはりオセ殿

から学ぶことは多いよ。

 

「……その気になれば何も言わずに殲滅

することだって出来る方々が、わざわざ

こうして選択させてくれるってことを感謝

すべきなんだろうな」

 

その通りだ。

 

利益を独占するのではなく、お互いが得を

するように動けば将来的には更に良い関係

を結べるのだ。

 

基本では有るが、その基本をしっかりと理解

して実際に行うことがどれだけ難しいことか。

 

その場その場の感情でしか動かないグレモリー

の連中を見れば良くわかると言うものだ。

 

「それに比べてあの連中は・・・あんなこれ

見よがしに悪巧みしやがってよぉ!

バレねぇとでも思ってんのか?!

ゲームの時の無能の行動と言い、ヤツらは

どんだけ俺たちを馬鹿にすりゃ気が済むんだ!」

 

アレな。流石にあんなことをされたら覚悟を

決めたライザーも切れるだろうさ。

 

何せ奴らは此方の面子や都合など完全に無視

して、魔王と言う立場と超越者としての力を

使って、その場その場の感情から生まれた

我儘をごり押ししてくるのだからなぁ。

 

あんな連中を後ろ楯にするくらいなら、

貴族派と呼ばれてもオセ殿に庇護して貰った

方が政治的にも軍事的にもマシだ。

 

それを分かっていながらも、貴族派と言うのは

周りが勝手にそう表現しているだけで、基本的

にオセ殿が派閥を形成しているわけでも無いし、

すり寄るような真似をすれば逆に嫌われるのは

知っていたから、今までは何の接点も無かった。

 

今回の件で、レイヴェルを行儀見習いとして

預けることが出来たのは完全な僥倖だ。

 

実質人質ではあるがな。それでも構わん。

父上や母上は人質としてではなく、普通の

行儀見習いとしか考えてないが、鍛えて

もらえるのは事実だし。

 

何とかお手付きになって貰えんものかなぁ。

 

・・・レイヴェルのことはさておき、眷属の

名を改名するだけでさらに繋がりを強める

ことが出来るなら安いものだろう。

 

あとは最後にサーゼクスがどう動くかで

我々の将来も決まる。

 

ライザーを妹の婿として認めるなら良し。

認めないなら・・・決断するだけだ。

 

我ら貴族がいつまでも大人しく泣き寝入る

だけだと思うなよっ!

 

 

――――――――――――――――

 

 

「・・・納得されてませんか?」

 

「ええ。勝負が着いたとしても、俺は納得出来ません」

 

何が何だかわからないうちにやられてよぉ!

『ゲームに負けました。約束通り部長は

鳥野郎と結婚します』なんて言われて納得

出来るかよ!

 

俺はまだ何も出しきっちゃ居ないんだっ!

 

あんな野郎に部長を渡したくない!

 

「サーゼクス様からのお言葉をあなたへお伝えします」

 

・・・部長のお兄さんから?

 

「『妹を助けたいなら、会場に殴り込んできなさい』だそうです。

その裏にも魔法陣があります。お嬢様を奪還した際にお使いください。

必ずお役に立つと思いますので」

 

・・・・・・

 

 

「必ず、部長さんと帰って来てください」

 

笑顔で俺に言うアーシア。

 

「ああ、もちろんだ」

 

と、思い出した。アーシアに伝えたいことがあったんだった。

 

「アーシア、実はな・・・」

 

「はいっわかりました!」

 

事情を話すと、すぐに了承して部屋にあるモノを取りに戻ってくれた。

 

よし、これであと残すは・・・

 

(・・・いるなら、話がある。出てこいっ!)

 

不気味な笑い声が心の中で響き渡る。

 

『ああ、なんだ、小僧。俺になんの話がある?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ФωФ)

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『妹を助けたいなら会場に殴り込んできなさい』

 

ねぇ。そんでもって

 

『お嬢様を奪還した際に・・・』

 

って・・・馬鹿じゃない?

 

フェニックス家との約束ガン無視だし、結婚式

を潰されたら、立場とか面目丸潰れよね~。

明らかにフェニックス家や来客に喧嘩を売る

形になるだけど?

 

コレは魔王としての失策かな?それとも

グレモリーとしての失策になるのかな?

 

どちらにせよ自分達が監視されてる可能性にも

気付かないから脳筋って言われるのよ。

 

私に追手をかけて、白音を奪い取ろうとした

コイツらに私が遠慮すると思うな?

 

ドラゴンのフェロモンなんざわかってれば

いくらでも対処出来るし。

 

こんなの御主人様と比べたら・・・いや、

比べるだけで奥様に『不敬』って言われて殺されるにゃ。

 

ま、まぁそれは良いにゃ!コイツらの計画はわかったし

 

さっさとコレを奥様に報告して、御主人様に褒めてもらうにゃん♪

 

 




性犯罪者が関わるところで作者っぽくない
地の文は、原作そのまま引用してるんだぜ(ゆっくりみていってね)

CV子安。殲滅フラグ回避に成功したもよう。

奥様は転生悪魔だったようだ。

まぁ二人の出会いとかに関してはフロム脳的な
脳内補完でお願いします。


(ФωФ)とは一体・・・

次回でようやく原作二巻終了かな?ってお話


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14話

原作二巻が終わると言ったな?

あれは嘘だ(知ってた)


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「さて、これは・・・卿らに『おめでとう』と

言って良いものなのかな?」

 

う~む。オセ殿の眷属が入手してきた情報を

考えれば、確かに『おめでとう』とは言えんよな。

 

だがこれで我々の行動も決まったと考えれば悪くはない。

 

しかし、やはりサーゼクスはライザーを認めることは

無かったか。

 

・・・まぁ良い。

 

いつまでもグダグダと寄生され、散々搾取

されてから切り捨てられるよりはマシだろうさ。

 

「魔王公認で無能と縁が切れるのですから、

フェニックス家としては目出度いことですよ」

 

醜聞と負債まみれの親族を抱え込むよりは

間違いなく良いことだ!

 

「そうか。確かに無能な味方ほど厄介な存在は

いないというのには同感だ。

それでは私はこれにて失礼しようと思うが、

レイヴェル嬢はどうする?」

 

ん?帰るのか?あぁいや、魔王が決めたこと

とは言え、強制的に三文芝居を見せられたら

オセ殿とて主催者たる我々に文句をつけねば

ならなくなるからな。

 

更に言えば魔王が【契約違反】を唆したと

なればソレに対しても反論することになる。

 

オセ殿の理念からすれば、そのような魔王は

魔王に非ず。

 

・・・もしかしたら式場で超越者同士が

命の奪い合いをすることになるやもしれん。

 

そうなったらサーゼクスとオセ殿以外は

全滅するよなぁ。

 

うむ。つまりコレはオセ殿の配慮なのだろう。

 

そしてレイヴェルか。結婚式に身内が参列

しないのは不自然だが・・・

 

「もしオセ殿に問題が無いなら、レイヴェルも

一緒に連れて帰ってやってくれませんか?」

 

今日をもってレイヴェルはフェニックス家の

令嬢ではなく、オセ家に仕える形となるのだ。

 

さらに、この結婚式がマトモなモノならば

参列させても良いが、ただの茶番だろう?

 

ならば優先すべきは主となるオセ殿だろうよ。

 

「卿がそう言うなら私に否は無い・・・あぁ。

今回の件に関してだが、正直な話、無能や

グレモリー家・魔王陛下に対しては文句も

あるが、卿らに含むところはない。

またライザー殿のゲームでの戦術は実に

素晴らしかった。まぁ最後の無能との会話は

頂けないが、教導と言う意味では間違いでは

ない。そこのところも伝えておいてほしい」

 

「えぇ。確かに伝えましょう」

 

やはりオセ殿はフェニックス家ではなく、

私やライザーと言った個人を評価して下さ

っているのだな。

 

自分個人を見ろなどと抜かしながら、ライザー

という漢を見ることをしなかった無能一族など

比べ物にならん。

 

此度の件、ライザーにとってはオセ殿のお言葉

が何よりの報酬ですよ。

 

・・・本来ならライザーにも直接お声を

かけてほしいところだが、今ライザーの

ところに行けば、隣に居る無能やサーゼクス

と顔を合わせることになる。

 

連中の契約違反に関しては、まだ実行された

わけでもないし我々も既に納得してることでは

あるが、それを知りながら無視する訳にも

いかないだろう。

 

これがオセ殿に出来る我々に対する精一杯の

激励なのだろうな。

 

「この度は御足労に加え御助力まで頂き、

誠にありがとうございました」

 

オセ殿にしてみたらまさしく御足労、つまり

無駄足だったよなぁ。

我々で何か補填出来る事が有れば良いのだが。

 

「なに、ルヴァル殿とライザー殿と言った

漢を見ることが出来たと思えば、この程度

何のことはない。では失礼する」

 

・・・あぁ。やはりこの方こそが貴族!

私も貴族を名乗るなら、この背中に追い

付かねばならんのだな!

 

「はっ!お疲れさまでした!」

 

立場など関係なく、オセ殿には礼を尽くすべきだ。

 

・・・この方を知りながら己を【貴族】だの

【魔王】だのと名乗る事が出来る連中とは

付き合いを改めるべきだろう。

 

さしあたってはサーゼクスとグレモリー!

 

コレ以上フェニックス家やライザーの顔に

泥を塗ることは許さんぞっ!

 

――――――――――――――

 

 

「えぇ?!オセちゃん帰っちゃったの?!」

 

くっ!遅かったかっ!

 

サーゼクスが交わした契約についての

詳細を確認したかったのにっ!

 

この結婚が成立して、ジオティクス殿が

家督の譲渡を宣言すれば我々はコイツらの

面倒を見なくて良いんだよな?

 

今日、リアスが家督を継ぐことになっても、

保護責任者としての契約は満了したと言う

ことになるんだよな?!

 

「ん~?礼儀作法に五月蝿い彼が、結婚式に

呼ばれたのに式の前に帰る?おかしくない?

最初から不参加にしとけば良い話だよね?」

 

あぁ。現実逃避出来る時間はもうおしまいか。

 

まぁいいや。ファルビウムの疑問ももっとも

ではあるし、この辺は微妙なところだからな。

 

「ファルビウム。彼はグレモリーと断交して

いるから、結婚式に出ないのはある意味

当然だろう。今回この場には、次期当主で

あるルヴァルの顔を立てて来場しただけ。

そして式の前に挨拶をして贈答品を贈れば、

無礼にはならないのではないか?」

 

私としても確証は無いが、出席を断るにしても

直接顔を出した方が相手に対しても謝罪になるだろうし、それほど的はずれな意見では無いと思う。

 

「ほぇ~まぁオセちゃんならそう言う判断を

するかもねぇ」

 

正直こう言う場合の正しい貴族の作法など

我々の中でも誰も知らんからな。

もっとも悪魔らしく、貴族らしいと言われる

彼がそうするなら、誰も文句は付けられん。

 

それにライザーに話しかければ、横に居る

リアスやサーゼクスと言ったグレモリー家も

相手にせねばならんからな。

 

断交していて許す気が無いなら無視する

ことになるだろうさ。

 

フェニックス家の当主に関してもそうだろう。

 

断交すると言っている家との婚姻を進めた

彼と顔を合わせれば、何も言わんと言うわけ

にもいかんだろう。

 

そこで婚姻を祝えばグレモリーとの仲を

認めることになるし、非難すれば悪者扱い

される。

 

だからこそ次期当主と個人的に話をして

帰ったのだろうさ。

 

「あ~なるほど。それに彼は戦争肯定派の

筆頭だし、下手に何かを言って言質を取られ

たく無いって言うのもあるのかなぁ?」

 

それも有るだろうな。アザゼルからも彼が

和平について何かを知っているようだと言う

報告も来てるし。

 

まぁ私達としても下手に会話をして言質を

取られたらヤバイから、今回はあくまで

友人の妹の結婚式に参加する、いわば私人と

して接触する予定だったのだが・・・

 

予定変更だな。

 

「そうだろうな。それに既に帰ったのを追う

わけにもいかんし、契約に関しては後で直接

確認するしかあるまい。あとはせめてこの式

が滞りなく終わることを祈ろう」

 

いやマジで。サーゼクスがアホなことして

無かったことにするとか絶対に止めろよ?

 

「ん~そうだね!だけどリアスちゃんは暗い顔してるね?やっぱり不満なのかな?」

 

それも有るだろうが、新婦がこれ見よがしに

不満そうな顔を見せてるってどうなんだ?

 

「……結婚したくないってゴネて、当主に

逆らった上に職務放棄して合宿を行い、さぁ

これからゲームをしよう!ってなったのに、

隙を突かれて潰されたからね~。不完全燃焼なんじゃないの?」

 

不完全燃焼って。自業自得じゃねぇか。

 

映像は見たが、あそこまで見事に隙を晒して

瞬殺されるのも珍しいよな?

 

「あ~あるかも。ライザーちゃんは指揮官として

正しい選択をすることで、自分が次期当主の

旦那になることに何の不足もないってことを

周囲に見せつけたけど、リアスちゃんがソレを

理解出来て無いなら・・・」

 

その辺は周りが理解させろよ。

 

大体、相手に赤龍帝が居る以上時間を掛ける

のは悪手。故に短期決戦をしかけるのは指揮官

として間違ってないだろ?

 

完璧な対処法だよ。

 

リアスが何故それを警戒してなかったのかが

不明だが・・・ライザーと赤龍帝を舐めてた

んだろうな。

 

「そ~だねぇ。リアス視点だと何がなんだか

わからない内に負けたって感じだろうね」

 

相手に選択肢を与えずに一方的に終わらせる

のが戦いの理想。ライザーはソレを行ったに

過ぎん。

 

「まず単体で動いてたリアスちゃんの眷属を

奇襲と数で潰して、兵士みんなを女王に

プロモーションでしょ?そうして上に注意を

引き付けておいて、全方位からの一斉射撃

だもんねぇ。そりゃワケわかんないよ」

 

それから簡単な解説を行った上での降伏勧告だ。

 

これだけでもライザーが

 

敵に甘さを見せない。

敵の情報を調べ上げる。

拘りを捨て必要な手段を採れる。

瀕死の相手にも油断慢心をしない。

 

といった指揮官や為政者としての能力が

あると言う事がわかる。

 

リアスは言い訳のしようもない完全敗北。

サーゼクスやグレイフィアあたりが解説を

すれば済む話だと思うが・・・ん?

 

「なぁセラフォルー、ファルビウム」

 

気のせいか?

 

「どうしたの?」

「ん?何かあったか?」

 

コイツらは疑問に思ってないと言うことは

俺の気のせいだな?どこかで見たんだよな?

 

だが、一応。一応確認しておこう。

 

「お前ら・・・グレイフィアを見たか?」

 

ちなみに俺は見てないぞ?

 

「「・・・アレ?」」

 

おいィ?!まさかサーゼクスの野郎っ!

 

 

―――――――――――――――――

 

 

まぁコイツの中に居たから言いたいことも

やりたいこともわかる。

別に不死鳥ごときがどうなろうと知った

ことでもないしな。だがコレは悪魔として

考えたらどうなんだ?

 

『なぁ小僧。お前はコレから自分が何を

しようとしてて、その結果どうなるかを

正しく理解しているか?』

 

「はぁ?ど、どういうことだよ?!」

 

・・・理解してないな。

 

『そもそも悪魔にとって契約は絶対だ。

契約を破る悪魔は信用されんし、場合に

よっては悪魔の面汚しとして処分される』

 

主にヤツらにな!

 

「しょ、処分?!」

 

冗談でも何でもないぞ?

 

『そうだ。ソレを踏まえた上で言えば、

今回お前らは不死鳥とゲームを行い、負け

たら結婚を認めると言う契約を交わしたな』

 

ソレが嫌だと言うなら戦い以外の選択肢を

探すべきだったろうに・・・

 

「いや、けどよ!やっぱりおかしいだろ!」

 

いやおかしいのはお前だ。

 

『お前が納得しようがすまいがソレが現実だ。

それでだ、契約通りに結婚しようとしている

式場に乱入して、サーゼクスからの何らか

の助力を受けて結婚式を台無しにしたとしよう』

 

助力の内容にもよるが、態々この小僧を

使うと言うことは、ドラゴンとしての力を

使わせるのだろう?

 

破壊しか産み出さんドラゴンの力を結婚式

会場で使うなら、結婚式は台無しになるよな。

 

「あ、あぁ!殴り込んで来いって言うのは

そう言うことだろ?

そうすれば部長を助けることが出来るんだっ!」

 

おいおい、自分がどれだけ無茶を言っているか

理解してるのか?

 

賭けに負けておきながら、レートがおかしい

ってイチャモンつけて騒いでるんだぞ。

 

そもそも貴族家の当主と、娘が対等な立場で

賭けが出来るはず無いだろうに。

 

見苦しいのは事実だが、とりあえず話を先に

進めるとしよう。

 

『で、結婚式を潰された不死鳥はどうなる?』

 

「はぁ?あんなヤツどうなったって構うもんかよ!」

 

なんと言うか・・・別に卑怯な手を使われた

わけでも無ければ、無理やり何かを押し付けられた

わけでもない。アレはアレなりにしっかり

小娘の立場にも配慮していただろうに。

 

それなのに単純な好き嫌いで動くか。まぁ

ドラゴンとしては間違っていない。だがソレは

力が有るヤツだけに許されたモノだぞ。

 

『お前の気分の問題ではない。不死鳥は

契約に則り結婚式を挙げる準備をしているの

だろう?親族や付き合いの有る貴族を呼んで

式場の支度をして、料理やら引き出物も用意

して、相手からも祝いの品やら何やらも貰って

いるだろうな』

 

「・・・」

 

『何せ貴族の婿入りだ。一般人が想像出来る

ようなチャチなもんじゃない。

当然金も掛かってるが、ソレ以上に面子が

掛かっている。それも不死鳥だけではなく、

グレモリー家の面子もな』

 

わかるか?わかれよ?

 

「そ、そうか。部長は嫌がってるけど、部長の

お父さんやお母さんはアノ鳥野郎の婿入りを

望んでるんだった・・・」

 

そうだ。そこを履き違えるな。

 

『何故かサーゼクスは結婚に反対しているよう

だが、アレは既にグレモリー家から出ている

ようだから、この不死鳥やグレモリー家の

面子の問題とは無関係だ』

 

会ったこともないヤツを信用して、後ろ楯に

なってくれるなどと考えるなよ?

 

「つまり、部長の結婚を邪魔するってことは

部長の家族の面子も潰してしまうんだな?」

 

ここまでは大丈夫か。不死鳥に一切気を

配らないのは歪だが・・・まぁ鳥なんざ

どーでも良い。

 

『そうなるな。だがそれだけではない』

 

「ま、まだ何か有るのかよ!」

 

いや、普通に考えればわかるだろう。

 

『それによりグレモリー家が無くすのは信用だ』

 

「し、信用って・・・悪魔だぞ?」

 

悪魔としてはどうかと思うかもしれんがな。

 

『信用を軽く考えるなよ?家同士で交わした

契約を守らず、個人で交わした契約も守らず、

相手の面子を力で踏みにじって己の我儘を

貫くようなヤツが隣に居たらどうする?』

 

まぁ基本的にドラゴンってのはそう言う

生き物なんだが・・・

 

「ま、周りがみんな敵になるのか?」

 

『そうだ。最初に言ったな?悪魔の面汚しと

して処分されるんだ。当然名誉など地に落ちる。

つまり、お前がコレからやろうとしているのは、

主の実家であるグレモリー家を滅ぼす可能性も

有る行為と言うことだ』

 

「そんな・・・」

 

『場合によってはグレモリー家の連中が小娘と

小僧を自家の面汚しとして、自ら処分に動くかもしれん』

 

むしろそうしないとヤツらに潰されるだろ?

なまじ人間よりも頑丈だからな。生きたまま

延々と地獄を見せられるぞ?

 

あの悪魔どもに容赦と言う言葉は無いんだ。

 

「か、家族なんだぞ?!そこまでするのかよ!」

 

むしろ家族だからだろう

 

『小娘一人の命と家族親族一族郎党の命。

選ぶならどっちだと思う?あぁ、勘違いを

しないように言って置くが、そもそも小娘が

我儘を言わなければ誰も死なないし、その

我儘だってゲームの勝敗で決めると言う形で

かなり譲歩して貰ってるんだぞ?』

 

どんだけ小娘に甘いんだ。

 

「じ、譲歩?アレがかよ!?」

 

時間も期間も与えている。十分だろうが。

 

『人間の小僧の価値観と悪魔の貴族の価値観

は違う。むしろアノ小娘が納得していない

と言うのが異常なことだ』

 

小僧の中から見てたがな、普段から貴族の権利

を使っておきながら、都合の良いときだけ個人

としての扱いを望むなど有り得んだろう。

 

どうしても嫌なら家出をしろよ。

 

というかヤツは駄目な気がする。他のは

良いが、ヤツと関わったら録なことにならん

と俺の勘が警告してくるんだよ!

 

だからヤツ以外にしとけ!あのアーシアって

娘で良いだろうが!

 

「・・・そうか、部長は納得していないんだな?」

 

あぁん?

 

「小難しいことはわからねぇ!だけど部長が

納得していないってんなら、俺がすることは

変わらねぇよ!」

 

いや、なんか難しいこと言ったか?結婚式を

潰したら皆に迷惑がかかって信用とか無くす

ぞって話だよな?

 

「負けたまんまじゃ駄目だってのはお前が

言ったんだろ?!

ドラゴンってヤツを見せつけろって言ったの

はお前だろ?!なら力を!あの鳥野郎に勝つ

ための力をくれっ!」

 

・・・なんと言うか。随分と都合の良い頭だな。

 

まぁいいや()

 

そもそもこの忠告も安直にサーゼクスの掌の上

で踊ることに対する警鐘だしな。

 

小僧が思考を操られて、俺の力を都合の良い

ように使われると言うなら反対もするが、

小僧が自分の意思で動くと言うなら反対する

理由もない。

 

それに「悪魔の面子など知ったことか!」と言う

姿勢は実にドラゴン的だ。嫌いじゃないぞ!

 

『・・・良かろう。力は貸してやる』

 

小僧は正真正銘の雑魚だが、俺の力があれば

不死鳥ごときには負けんだろうさ。

 

「ほ、本当か?!」

 

オレサマウソツカナイ

 

『あぁ。ただし、今の小僧じゃ力が足りん。

故に・・・・・・』

 

これくらいは覚悟出来てるのだろう?

 

「おう!そんなんであの鳥野郎に勝てるなら

いくらでもくれてやるっ!」

 

ふっ。迷うことなく即決したか。

 

『ならばくれてやろう!神も怖れたドラゴンの力をな!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしもヤツが来たら・・・サーゼクスに唆されたと言えば何とかなるよな?嘘じゃないし。

 




嘘ではない。ちゃんと【かな?】って
つけてるし。東スポ東スポ。

いつもながら原作読んでも主人公の思考が
理解できんのですよっ!

一体何がどーなればそんな行動になるんだッ!

そして周囲は何故ソレを当たり前に受け止める?!


マダオ的には『まぁドラゴンだし?我儘を言って
ナンボだよね?だけど弱いくせに我儘言って
ると死ぬからな』って感じですかね。


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15話

原作だと5・6ページで終わったんだけどなぁ。

くどい?いや、政治ってこういうモンですよ?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ようやく式が始まったか。グレイフィアが居ない

のは釈然としないが、ココまで何も無かったこと

を考えれば「自分が恋愛結婚したのに家の為に

結婚するリアスに合わせる顔が無い」とか考え

ている可能性もあるかもな。

 

まぁソレはあくまで私事。本来ならしっかり

割り切って式に参列するべきだし、そもそも

『負けたリアスが悪い』と諭すべきだろう?

 

大体なんだリアスのあの表情は?表情を取り

繕うことも出来んのか?参列者やフェニックス

家の関係者にシツレイだろうが。

 

・・・サーゼクスがなんかキョロキョロしてる

んだが、アレだよな?妹のそんな顔を見るのが

辛くてどうしていいか分かって無いんだよな?

 

式を潰す為のナニかを待ってるわけじゃないよな!

 

「・・・なぁアジュカ?」

 

「どうした?」

 

ファルビウムが真顔で正装してるって言うのは

凄い違和感があるが・・・流石にシツレイだな。

 

「リアスの眷族がナニカした場合ってさぁ。

僕たちの管理不足になるのかな?」

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「どうなるんだろうな?」

 

いや、普通なら眷族の粗相は主の粗相なんだが

それはあくまでモラルや常識の問題だよな?

 

【契約】という形ならそう言う忖度は一切

無いはずなんだが・・・

 

「正直わからん。サーゼクスが彼とどんな

契約を結んだのかという情報も無いからな」

 

あの野郎。結婚式が終わってリアスが当主に

なったら見せるとか言って、契約書を絶対に

見せようとしなかったからな。

 

アレは絶対にナニかを隠してるぞ。

 

「そうかぁ。そうだよねぇ」

 

しかし今になってこんなことを聞いて

来るということは、何か気付いたか?

 

「ファルビウム。何に気付いた?」

 

ヤバいことなら情報は共有しておきたい。

 

「ん~?赤龍帝が居ないしグレイフィアも

居ないじゃん?」

 

・・・そうか。そう来るか。

 

「野郎。リアスに執着している赤龍帝を

使ってこの式を台無しにする気か?」

 

そんなことをしたら、この結婚に関して

譲歩しまくったフェニックス家を完全に

敵に回すぞ?

 

グレモリー家の連中はリアスの気分重視で

何とかなるかもしれんが、徹底的に顔に

泥を塗られたフェニックス家や参列者に

対する補填をどうする気だ?

 

「多分そうだねぇ。さっき眷族からいきなり

ドラゴンの気配が会場の近くに現れたって報告が来たし」

 

もう確定情報かよっ!

 

「・・・その気配に対して隔離結界か何かを

張ることは可能か?」

 

まだこの場に来ていないなら何とでもなる!

 

「ん~流石にこの会場で、両家に許可なく

眷属を動かしてリアスの眷属を隔離するのは

マズいかなぁ」

 

あぁそうか。眷属が祝いの言葉を述べに

来たとか、何かしらの余興と言われて

しまえば両家の面目を潰すことになるのか。

 

何せ赤龍帝がナニかするって言うのは

俺達が勝手に想像してることだからな。

 

さてこの場合、赤龍帝が式を台無しにする

わけだが、リアスもソレを望んでるよなぁ。

 

そうなるとコレはリアスの粗相になるのか?

 

そうなったらペナルティは・・・参列者に

対する補填?だがソレだけならば何とかなる。

 

「今回の件はあくまでグレモリー家と

フェニックス家の婚儀。他所に迷惑を

掛けるわけでも無いし、魔王が責任を取る

ことになったとしても・・・サーゼクス

一人に背負わせることが出来る案件だ」

 

我々4人が保護責任者と言うが、内々の

ことなら別に誰か一人が背負うことに

なっても文句はあるまい。

 

オセも居ないしな!

 

「あ~確かに。彼が居たら僕たち全員

シバかれていたかもしれないけど、彼は

先に帰ったもんねぇ」

 

そう言うことだ。

 

もしもこの場にヤツが残って居たら

「ちゃんと見ろって言ったろうが!」

と言われてシバかれても文句は言えんが、

ヤツとの契約を知ってるのは俺達だけだ。

 

なら対外的にも契約的にもサーゼクスの

責任で問題あるまい。

 

というか、そう思わないとやってられん。

 

「アジュカちゃん、ファルビウムちゃん」

 

ん?セラフォルー?こいつもマトモな格好

して真顔で居るのは違和感があるな。

 

それはさておき、かなり険しい顔を

しているが・・・

 

「・・・アレ見てよ」

 

アレ?入口付近に居る格下の連中か?

 

・・・そう思ってた時期が俺にもありました。

 

「「・・・おぉう」」

 

いやいやいや。何やってんだあの赤龍帝。

 

入口付近に居るのは下級貴族とはいえ、

この婚儀に呼ばれるだけの格が有る連中だぞ?

 

着飾った貴族たちの中であんな学生服のガキ

がコソコソしてたら・・・目立つだろう?

 

見ろ、警備や周囲の連中も何かの余興の

準備と思って見て見ぬふりしてるぞ。

 

「う~ん。あそこまで怪しいと逆に手を

出せないんだねぇ。

あんな潜入方法があるなんて思いもしなかったよ~」

 

まぁ、俺も考えもしなかったが・・・

いや待て、確か地上で有名な工作員は

段ボールを使って潜入ミッションを

すると聞いたことがある。

 

その際、周囲の人間は段ボールがあることに違和感を覚えないらしい。

 

認識を誤認させているというわけだ。

 

もしかしたらそれと同じ原理なのかもしれん。

 

だとしたら赤龍帝。あなどれんな。

 

「部長ォォォォォォォォ!」

 

おいィ?!

 

「「「ソコで声上げるのかよっ!」」」

 

今までの考察全否定かっ!

 

「ここに居る上級悪魔の皆さん!ならびに

部長のお兄さんの魔王さま!俺は

駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠です!」

 

おいおいおいおい。

 

「・・・オセちゃんがココに居なくて良かったね」

 

「「全くだ」」

 

全面的に賛成だ。なんと言っても【不敬】は

彼の中で処刑案件だからな。

 

その責任なんか負えんぞ!

 

それに下僕の下級悪魔が上級悪魔の貴族に対し

上級悪魔の皆さん(・・・・・・・・)って・・・

 

最低でも跪いて【上級悪魔の皆様】だろう?

 

「お兄さんの魔王様って・・・せめて

サーゼクス限定にしてくれよぉ」

 

全くだ。お兄さんと魔王様が別に聞こえる

だろうが!ここで魔王(おれたち)を巻き込むなっ!

 

「部長のリアス・グレモリー様を

取り戻しに来ました!」

 

「「「いやいやいやいやいや」」」

 

取り戻すって・・・

 

「そもそもグレモリー家が認めて進めた結婚だよね?!」

 

その通り。ライザーの実力を知った今では

熱望していると言っても良いだろう。

 

「それにライザーは婿養子だろ~?」

 

持って行かれたのはフェニックス家だぞ?

 

「ついでに言えばアイツのモノではない」

 

強いて言えばグレモリー家の者でありモノだ。

 

「イッセー君!ここは僕たちに任せて!」

 

ん?アレはリアスの眷属の騎士だよな?

何やってんだアイツ?

 

「あらあら、やっときたんですね」

 

同じく女王だよな?

何やってんだアイツ?

 

「部長――リアス・グレモリー様の処女は俺のもんだ!」

 

「「「・・・」」」

 

・・・何言ってんだコイツ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

本当に来たか赤龍帝。いやオセ様からの

情報を疑ってたワケじゃねぇけどよ。

 

それでもサーゼクス様やリアスが契約を

守ると言うことを信じてたんだがな。

 

そもそも下級悪魔二人でプロの警備を

殺さずに足止め出来る状況を不思議に思わんのか?

 

ワザと通したことにすら気付かんのか?

 

「どういうことだ、ライザー?」

 

俺に聞くな。クソ親父。

犯人は目の前に居るだろうが。

 

「おい、リアス殿。これはいったい?」

 

『おい』の後にリアス殿って。まぁ混乱してる

んだろうな。

 

「あれは私が用意した余興ですよ」

 

・・・サーゼクス。

 

「さ、サーゼクスさま!そのような勝手は」

 

これは流石の親父も文句言うよなぁ。

 

「ふむ。サーゼクス様はグレモリー家の方と

してではなく、あくまで魔王としてお招きした

ハズですが・・・両家の関係者に無断で余興を

準備するのは些か無礼が過ぎませんか?」

 

・・・兄貴。そりゃそうだよな。

今回の横槍を利用することと無礼を見逃す

事は別問題だよな。

 

「あ、あぁ。確かにそれはルヴァル殿が

いう通りだ。無礼を謝罪したい」

 

謝罪はするが覆さねぇってか?

 

「私に謝罪されましてもね。父上と

ジオティクス殿はどうお考えで?」

 

まぁ、謝罪すべき相手は結婚式を混乱

させられた挙句、警備に穴が有るって

言われることになる親父とグレモリー家だからな。

 

あれがテロリストで、招待客が殺されていたらどうなっていたことか・・・

 

「・・・謝罪は受け入れましょう。ですが

ルヴァルが言うように両家の結婚式です。

折角サーゼクス様がご用意した余興では

有りますが、このような下品な言動をされては・・・」

 

だよなぁ。この状況でリアスの処女がどうとか

抜かす時点で、余興の域は超えてるよなぁ。

 

・・・オセ様なら何も言わせずに赤龍帝と

眷属どもを殺してサーゼクスの非を鳴らす

んだろうが、俺達にソコまでの力はない。

 

だがこの屈辱は絶対に忘れんぞ。

 

「うむ。フェニックス卿の言うことは

もっともだ。サーゼクス。お主は何を

どうしたかったのかな?」

 

ジオティクスは・・・半々か。

 

この結婚がリアスやグレモリー家の為に

なると言うことは理解しているが、当の

リアスがこれ見よがしに不満そうな顔を

隠そうともしていないからな。

 

リアスが望む相手と結婚をさせてやりたい

とでも思っているんだろうが・・・

 

俺はどんだけ舐められてるんだろうなぁ?

 

「父上。私は可愛い妹の婚約パーティーは

派手にやりたいと思うのですよ」

 

婚約(・・)パーティだぁ?本音が出てるぞ。

レーティングゲームでの契約は結婚だろうが!

 

「ドラゴン対フェニックス。

伝説の生物同士で会場を

盛り上げる。最高の催しだと思いませんか?」

 

思わねぇよ。俺たちの都合はどうなる?

 

「さぁドラゴン使い君。お許しが出たよ」

 

出てねぇよ。あんまりに無礼な申し出

だから場が固まったんだよ!

 

結婚式をぶち壊そうとしてるのは

分かるが、もうちょっと他の方法があるだろう?

 

「なるほど。サーゼクス様の仰りたいことはわかりました」

 

兄貴?

 

「ですが、ライザーはフェニックスを代表

するにはまだまだ未熟。来賓の方々に

未熟なフェニックスをお見せするわけにも

いきません。なにより結婚式の余興の演目に

新郎を担ぎ出すのもおかしな話でしょう?」

 

「む・・・」

 

まぁ、両家の結婚を言祝ぐ式だしな。

地域によっては新郎が余興に参加する

こともあるが、少なくともグレモリーも

ウチもそんな文化はねぇ。

 

「かといってせっかくサーゼクス様が

用意してくれた余興です。

それに赤龍帝に対してフェニックスが

怖れを成したと言われても困る」

 

だよな。サーゼクスはこの辺を突こうとしたんだろ?

 

「ではルヴァル・・・どうすると言うのだ?」

 

親父・・・本当に分かんねぇのか?

 

「無論、フェニックスを代表して私が

赤龍帝の相手をしましょう」

 

「な、何と!」

 

はっ。サーゼクスは完全に予想外みてぇだな?

 

そもそも俺相手なら勝てると思われてる

こと自体が不満なんだが・・・

俺の全力戦闘は見せたことは無いハズ

だが、この判断はグレイフィアか?

 

「私では神をも殺すと言われた赤龍帝を

相手にするには不足かもしれませんが、

弟の結婚式を派手にしたいと言うのは

私も一緒です。それにコレは龍と戦える

またとない機会とも言えますしね。是非お願いしたい」

 

上手い。俺が兄貴より弱いのは事実だし、

その俺をフェニックスを代表する存在と

言うのには無理がある。

 

口実はサーゼクスと一緒だが説得力が違う。

 

ソレに兄貴はレーティングゲームで

トップ10に入る実力者で有名人。

 

来賓とて兄貴の戦を見たいと思うだろう。

 

さぁサーゼクス。ここからどーするよ?

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ま、まずい。いくら何でも今の彼が

ルヴァル・フェニックスと一騎打ちして

勝てるはずが無いぞ!

 

ライザーくらいなら何とかなると思って

乱入させたが、言ってることは彼が正しいし・・・

 

あ、アジュカに意見を

 

「「「・・・」」」

 

ひぃ!や、ヤヴァい!アジュカだけ

じゃなく、他の2人も完全に殺る気だ!

 

そーだよな。結婚式が終わった後でリアス

がグレモリー家を継ぐって言ったもんな!

 

式を台無しにしようとしたら敵だよな?

 

いや、でもアレじゃないか?可愛い

リアスの保護者になれるんだぞ?

怒るところじゃなく喜ぶところだろう?

 

問題を起こすことが前提みたいに

言ってるが、そーゆーところも含めて

可愛いんだろうがっ!

 

あぁいや、今はリアスの可愛さを語る

場ではない。何とかしてライザーを引き摺り

出さねばならんのだ!

 

「さぁ、赤龍帝君。サーゼクス様の用意した

余興とは言え、弟の結婚式にいきなり下等で

無礼な下僕悪魔が乱入してきたのだ。新郎の

兄が腹を立てないとは思って無いだろうね?」

 

あ、コレはバレてるな。

 

「ら、ライザーのお兄さん!?」

 

「ライザー【様】だ。小僧が誰の許可を

取って我が弟を呼び捨てにしている?」

 

ごもっとも。もともとライザーは侯爵家の

直系の三男だ。今の彼の立場を考えれば

直接話し掛けることすら無礼で不敬。

 

・・・コレ、後でオセ君に殺されないか?

 

いや、後のことは後で考えよう。まずは

今だ!彼がコレ以上の無礼を重ねて余興の

域を超えてしまう前に何とかしなくては!

 

だがどうすればいいんだ?!

 

「兄貴。コイツは兄貴が相手するまでもねぇよ」

 

ら、ライザー?!よし、そうだ!

そのまま行けっ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「兄貴。コイツは兄貴が相手するまでもねぇよ」

 

駄目だこりゃ。兄貴の言うことが真っ当

すぎて、サーゼクスが冷や汗を流して

固まってるじゃねーか。

 

「ふむ?とはいえ折角の余興だぞ?

炎で焼き尽くした龍の丸焼きはお前の

門出を祝うに相応しいと思うのだがな」

 

おぉおぉ。あの兄貴がマジギレしてるよ。

まぁ気持ちはわかる。正直兄貴がキれて

無ければ俺がキれてるだろうし。

 

「こんなの丸焼きにされてもなぁ。

それにピエロに切れてもしょうがねぇ。

フェニックスの炎が穢れるだけだ」

 

コレはマジで。

 

「何だと?この鳥野郎?!」

 

おい、さっき兄貴が言ったこと聞いてたか?

 

「先ほどサーゼクス様はフェニックスが

どうこう言ってましたが・・・本音は

リアスの婿である私の全力戦闘が見た

かったのでしょう?」

 

ホレ、助け船だ。ちゃんと乗れよ?

 

「う、うむ。ルヴァル殿には申し訳ないが、

兄として妹の婿の力が見たいと言うのが

本当のところであったのだ!」

 

はぁ。こんなのが俺たちを束ねる魔王かよ。

 

「やはりそうでしたか。良いでしょう。

サーゼクス様に頼まれたのなら断れるわけもない」

 

とりあえずこの余興をさっさと終わらせよう。

 

「う、うむ。ではよろしく頼む。

さてドラゴン使い君。君が勝った場合の

対価は何が良い?」

 

やっと本題に入れたって顔してんな?

 

「サーゼクス様?」

 

「なんということを!」

 

ホントになぁ。そもそも下級悪魔が立って

俺達と会話することが異常だってのに。

 

リアスの眷属なら何しても良いってのが

通じるのはグレモリーの中だけだぞ。

 

「悪魔なのですから、何かをさせる以上は

コチラも相応のモノを払わねばならないでしょう」

 

・・・まぁソレがサーゼクスの本題だからな。

 

「さぁ、君。なんでもあげるよ。爵位かい?

それとも絶世の美女かな?」

 

俺は何を貰えるんですかねぇ?

 

しかし、ここで赤龍帝が「グレイフィア」

とか言ったらどーすんだろーな?

 

「リアス・グレモリー様を返してください」

 

返すって・・・誰に?どこに?俺はグレモリー家に婿入りするんだが。

 

「わかった。君が勝ったらリアスを連れて行けばいい」

 

何処に?つーか俺の意見は?前のゲームの契約はどうなった?

 

グレモリー家とフェニックス家の婚儀で魔王が勝手に新婦を賭けの対象にしたんですがそれは?

 

「ありがとうございます!」

 

いや、その前にお前は俺たちに謝罪しろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こっちの事情も考えてよ(棒読み)




騎士気取りや半分堕天使や原作のシロネコに
止められる侯爵家と公爵家の警備って・・・

あと学生服のガキがうろついてたら
絶対目立ちますよね?警備は何してたの?

まぁ原作でここにルヴァルが居たら、
余興でライザーをフェニックス代表には
しないと思うんですよねぇ。

だって貴族で新郎ですよ?下級の下僕悪魔
と戦えって・・・シツレイ過ぎない?

その気になれば性犯罪者が何かを
言う前に殺せたけど、利用する為に
殺さなかったもよう。

次回、デュエルスタンバイ!
フェニックスは生き延びることができるか?(迫真)


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16話

やっと原作2巻終了!

思考のトレースがキツイ!

ついでにルビ多すぎィ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!



「ねぇアジュカ?コレってさぁ、アレだよねぇ?」

 

ファルビウムも気付いたか。

 

「あぁ、間違いない」

 

フェニックス家、いや、ルヴァルとライザー

はリアスを切り捨てたがってる。

 

そりゃそうだよな。ココまであからさまに

やられたらサーゼクスが結婚に反対している

と言うことがわかるし、何よりリアスの

ようなアホやあの赤龍帝に対する保護責任

を負いたくなどないだろう。

 

サーゼクスの要望に対してジオティクス殿

が何も言わなかったこともマイナスだ。

 

グレモリー家がオセ家に断交されて

いることも知ってるだろうし、家同士・

個人同士で結んだ契約を反故にする

連中と関わりを持ちたくないと考えるのは当然だろ。

 

俺とてサーゼクスがイイ顔して出てきた

ときには、グラットンスウィフトでバラバラに引き裂いてやろうかと思ったほどだ。

 

セラフォルーは親のダイヤの結婚指輪のネックレス探しに行ったし。

 

とはいえ、ライザーとて貴族。当主が決めた

婚姻に逆らうことは出来なかった。

 

前回のレーティングゲームとて家が決めた

結婚を早める為のものだし、家名や自身の

名が落ちることを考えればワザと負ける

ことなど出来なかったのだろう。

 

だがココで魔王公認で婚約を破棄できる名目を手に入れたわけだ。

 

ここまで己を殺して家の為に生きようとする

悪魔は少ないし、さらに当主としての実力も

見識もある悪魔など、簡単には見つからん。

 

サーゼクス。気付いてるか?お前が逃がした

魚は大きいぞ。

・・・さらにココまで顔を潰されたルヴァル

も今後は俺達の敵となるだろう。

 

そして俺達の敵となった場合庇護を求めるのは

旧魔王派ではない。オセだ。

 

アイツは別に派閥を形成しているわけでは

無いが、主戦派の代表格。

 

まったく、回復手段をもつフェニックスを

主戦派に回すとは。

 

アホ一人の結婚のせいで悪魔社会にどれだけの

損失が出るか考えているのか?

 

「ん~赤龍帝は妙に自信が有るみたいだけど

そもそもライザーの強さって知ってるのかな?」

 

「いや、知らんだろ」

 

ゲームでも一方的に瞬殺されたし。更に

あの攻撃にはライザーは参加してないから

攻撃力もわからん。

今までのレーティングゲームでも全力戦闘

をしたことはないだろう?

 

だから俺達だってライザーの正確な強さは

わからんのだ。ソレを相手にあの自信・・・

 

「まぁ赤龍帝と何かしらの契約を交わした

可能性が高いよね~」

 

それしかないよな。

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)か・・・」

 

確かにアレならライザーに勝てるかも

しれんが・・・明らかに分不相応だ。

 

暴走したらサーゼクスが処理するつもりか?

 

「ソコまで行くかどうかは知らないけど、

まぁ近いのをするんじゃない?

今度こそ負けられない戦いだし?」

 

本来負けても良い戦いなど無いのだがな。

 

悪魔の駒の普及とレーティングゲームが

悪魔を劣化させるというオセの主張も

わからんでは無いのだが・・・。

 

いや、今はアレだ。何せライザーに勝って

貰わねば俺たちは何時までもアレの面倒を

見ねばならんのだ。

 

ワザと負ける気だろうが・・・面目を

保ちながら負けるのは至難の業だし、

赤龍帝が自爆して終わったらどうしようも

あるまい。

 

頼む。リアスと結婚してくれ!

サーゼクスやグレモリーはコッチで

何とかするから!!

 

『開始してください!』

 

「「がんばれらいざー!」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『開始してください!』

 

バトル開始だ!もう引き返せない。あぁ勝つだけさ!

 

炎の翼を生やすライザーは俺の籠手を指差した。

 

「お前の能力はすでにすべて割れている。自分

の能力を倍にしていく神器『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』で

倍増した力を仲間や武器に譲渡する力。

禁手(バランス・ブレイク)した際は鎧を身に纏い高密度の

龍気を獲る。

さらに覇龍(ジャガーノート・ドライブ)により赤龍帝としての

能力を全開放するのだろう?」

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)はともかくとして、禁手(バランス・ブレイク)がバレてる?ジ、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)?何のことだ?!

 

「はっ。隠してるつもりか?だがなゲームでも

リアスに言ったが、お前は雑魚だがその手に

宿るのは紛れも無く神滅具(ロンギヌス)

研究するのは当然だし、その対策も練るに

決まっている!」

 

な、何を言ってるか良く分かんねぇが、

油断はしてねぇてことだな?!

 

『小僧!奴は俺を知り尽くしている!

下手な行動は意味が無いぞ!一手も

無駄にするな!』

 

そうかよ!だけど俺がやることは変わらねぇ!

 

「部長、十秒でケリをつけます」

 

「・・・イッセー?」

 

大丈夫っスよ。いま、見せるっス。

 

「十秒とは大きく出たな!リアスの『兵士』!

ならば俺は5秒でケリをつけよう」

 

はっ言ってろ鳥野郎!

 

「部長!この場所で『プロモーション』することを許してくださ・・・ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

な、攻撃してきやがった?!

 

「アホか。開始の合図は既にされているし

5秒のカウントダウンも始まっている。

プロモーション?寝惚けるな。せめて

宣言の前にするんだったな。

世界が貴様の都合で動いているとでも思ったか?」

 

くそっ!この卑怯モノめっ!

 

「燃え尽きろ。コレがフェニックスの炎だ。カイザーフェニックスッ!」

 

なっ!炎が鳥の形を?!

 

『小僧!アレはヤバイぞっ!生身のお前では即死だ!さっさと使え!』

 

ぷ、プロモーションはまだだけど、そんな隙はねぇってか?!

 

「輝きやがれ!オーバーブーストォッ!!」

 

間に合えっ!!

 

『Welsh Dragon over booster!!!』

 

力が・・・お前の力が流れ込んでくるぜ!って

 

「ぐぉぉぉぉぉ!!」

 

あ、熱い!メチャクチャ熱いぞ!!

 

『当然だ。フェニックスの炎はドラゴンの

鱗にも傷を残す。今のを喰らってお前が

生きてるだけでも感謝しろ!』

 

そ、そうかよっ!だが確かに俺はまだ生きてる!

 

「ふむ。今のを耐えるか。ソレにその鎧。

疑似的な禁手(バランス・ブレイク)か?左手が龍化

していると言うことは・・・捧げたか。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)にそんな機能があるとは。

まぁ覇龍(ジャガーノート・ドライブ)のことを考えれば、無い事では無いな」

 

やっぱり調べてやがる!だがなぁ龍の力を実際に味わった事は無いだろ!

 

「なに冷静に品評してやがるっ!コレが

龍帝の力!禁手(バランスブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』!

俺を止めたきゃ魔王様に頼み込め!

何しろ『禁じられた忌々しい外法』らしいからな!」

 

10秒の無敵時間!コレで終わらせる!

 

「借り物の力で囀るな。それに魔王様だと?

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の継承者がココ数代

誰に殺されたか知らんのか?」

 

『・・・』

 

「は?何言ってんだ!無駄口を叩いてる

暇はねぇんだよ!」

 

時間稼ぎには乗らねーよ!

 

「・・・まぁ良い。投了(リザイン)だ」

 

「行くぞ!覚悟しやがれ!!・・・はぁ?」

 

今コイツなんて言った?俺の耳がおかしくなったのか?

 

「聞こえなかったか?投了(リザイン)と言ったんだ」

 

はぁ?いや、どう言うことだ?!

 

『ら、ライザー・フェニックス様の投了(リザイン)を確認しました』

 

は?え?俺の空耳じゃない?

 

『・・・嘘でも冗談でも策でもないらしい。小僧お前の勝ちだ』

 

「は、はぁぁぁぁぁ?!」

 

そんじゃ何か?俺がドライグに左手を捧げたのって・・・

 

『勘違いするな。俺の力が無ければお前は奴の炎で消し炭になっていたぞ』

 

あ、そ、それはそうか。でも何で・・・

 

「ライザー!どういう事だ!」

 

あ、アレは確か向こうの親父さんだよな?

やっぱり怒ってる??

 

『・・・小僧。鎧を解除しろ。ソレは戦闘

をしなくともお前に負担をかけるぞ』

 

い、言われてみれば・・・とりあえず

試合は終わって、俺が勝ったんだよな?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ライザー!どういう事だ!」

 

いや、最高のタイミングじゃねぇか。

 

「まぁ仕方あるまい。今回のことを

反省して以後は更なる鍛錬を積むように」

 

「あぁ。了解だ。俺もまだまだ未熟だな」

 

流石は兄貴。アドリブだったがきちんと

合わせてくれると信じてたぜ。

 

「ルヴァル?!何を言っている?」

 

さて、解説は・・・兄貴に任せるか。

 

「父上。そもそもライザーはヤツを殺す

ことは出来ません」

 

そうなんだよなぁ。アレがどれだけ

無礼なことをしても俺には殺せねぇ。

 

「何?」

 

「無論ライザーの実力不足が原因では無く、

悪魔社会の事情ですがね」

 

・・・上手い事言うもんだ。

 

「悪魔社会の事情だと?サーゼクス様の

顔を立てたとでも言うのか?」

 

まぁ貴族としてはソレも間違っちゃねぇよな。

 

「ソレも有りますが、折角赤龍帝が悪魔陣営

に現れたのですよ?もしココで殺してアレが

別の陣営に行ったらどうなりますか?」

 

だよなぁ。ソレがあるんだよなぁ。

 

「むぅ・・・ソレは確かに」

 

「それをフェニックス家のせいにされても

困ります。つまりライザーは殺さないよう

に手を抜きながら全力の赤龍帝を相手に

しなければならない」

 

まぁ出来ねぇとは言わねぇがな。

 

「・・・あのオーラを見れば、決して油断して良い相手では無いな」

 

手抜きと油断は違うが、まぁ納得してくれりゃソレで言いさ。

 

「そうですね。そして更に赤龍帝が言った

10秒でケリをつけると言った言葉。

コレはアレのタイムリミットでしょう」

 

だよな。明らかに分不相応の力だ。10秒

だって持つかどうか微妙なところだろう。

 

「なるほどな。10秒超えれば死ぬか暴走

するのか。そうなったらせっかく悪魔陣営(我々)

手に入れた赤龍帝を失うことになる・・・か」

 

そーゆーこった。

 

「そうですね。だからこそライザーは

5秒でケリをつけると宣言し、初手で

自分の最大火力を出して見せた」

 

まぁ手は抜いてたけどな。

 

「ふむ・・・あぁ。5秒過ぎてたのか」

 

まぁ、俺の炎に耐えて、あんな無駄に恰好付けてりゃなぁ。

 

そもそもリアスとの会話を含めたら

10秒すら超えてんだろうが。

 

アイツの中じゃ世界の時間経過はアイツ

が決めんのか?

 

そして時は動き出す!ってか?

 

「そうです。勝つだけなら簡単です。距離を

取れば良いだけなのですから。

ですが悪魔社会のことを考えればライザーは

アレを殺せませんし、自爆もさせるわけには

いきません」

 

「むぅ・・・」

 

悪魔社会を強調してるのは親父には

その方が分かりやすいからだろうな。

 

「とは言え何もせずにいるわけには

行きません。

その為のカイザーフェニックスです」

 

わざわざ警告をやった上で手を抜いたんだ。

ソレで死ぬようならそれまでだよな。

 

「あぁ、アレで死ぬようならソレまで。

生き延びたなら己の幸せよりも今後の

悪魔社会を優先しようとしたのか」

 

・・・リアスと縁が切れるんだから

俺の幸せと両立したって感じなんだが。

 

「そうです。しかもこの場合、婚儀が

成立しなくとも契約違反にはなりません」

 

だよな?勝手に新婦を賭けられてコッチ

には何もねぇなんて賭けですらねぇよ。

 

「・・・サーゼクス様が赤龍帝を楯に婚儀を潰しに来てたからか?」

 

お、ようやく気付いたか?

 

「そうです。明らかに我々に不利な

状況での賭け試合。

そもそも新郎であるライザーや我々の許可

なく新婦を賭けの賞品にするなどおかしい

でしょう?」

 

アレがまともだってんなら今後は誰も

結婚式に魔王を呼ばねぇだろうな。

 

「・・・ライザーの幸せを願って

見て見ぬ振りをしていたが、やはり

ルヴァルもそう思っていたか」

 

あぁん?もしかして親父、この期に

及んでこの結婚が俺の為になるって

本気で考えてたのか?

 

「無論です。ココまでコケにされて我慢

するなどフェニックス家の次期当主と

して認めるわけには行きません!」

 

誰だってそう思うよな?

 

「うむ。アレだけ譲歩してやったのに

いつまでも現実を見ようとせず参列者に

笑顔も見せんリアス嬢や、その眷属の不敬

や無礼は許せるモノでは無い。

そもそも下級悪魔がライザーを呼び捨てに

した挙句、我々の目の前で鳥野郎だぞ!」

 

あぁ、アレはな。俺に対する悪口じゃなく

フェニックス家に対する愚弄だよな。

 

「ライザーの幸せを求めていたのも事実

だが、貴族家当主として契約の履行を遵守

しようとしていたのも有る。

だが向こうがココまでしたのなら・・・」

 

なるほどな。親父は親父で真剣に契約を

考えてたのか。

でもって契約を破れないなら、せめて

俺が幸せになれるようにと色々譲歩して

貸しを作ってたんだな?

 

「父上。向こうが望み、魔王陛下が認めた

婚約破棄です。我々はソレに乗りましょう!」

 

兄貴。そうだよな。親父がまともなら

隠居なんかさせなくて良いんだもんな。

 

「うむ。ライザー。お前には悪いが・・・」

 

「いや、むしろココまでされるような家に

婿入りなんかしたくねーよ」

 

遠慮でも何でもなく。マジでそう思う。

 

「そうか。そうだな。ではとりあえず

この場は『5秒でケリをつけると言ったが

ソレを実行出来なかったライザーの未熟』

と言う形で収める気か?」

 

ま、そうなるな。

 

「そうですね。我々と近い参列者には

赤龍帝の事情を教え、ライザーが個人の

幸せより悪魔社会の都合を優先したと

言うことを説明しますが、今はそう言う

形になります・・・すまんな」

 

「いや、俺が未熟なのは事実だからな。

この程度なんでもねぇよ」

 

ソレにオセ様からもお褒めの言葉を

頂けたんだ!今回の茶番はソレだけで

十分価値が有ったさ!

 

「うむ。お前には敗北が必要だと思って

居たが、私の思い違いだった。

ライザー、お前はもう一人前の悪魔だよ」

 

「親父・・・」

 

随分心配かけてたんだなぁ。

 

「・・・どうやら赤龍帝がリアス嬢を

連れて行くようですね。

我々は敗者として口を噤みましょう」

 

敗者ね。まぁ結婚式で新婦を持って

行かれるなんて、まさしく敗者だよなぁ。

 

「敗者か。この屈辱は忘れんぞっ!!

・・・ルヴァル。オセ殿にレイヴェルを

預けたのはそう言うことなんだな?」

 

お、とうとう目を覚ましたか!

 

「えぇ。その通りです。今回の件も

オセ殿から多大な支援を受けております」

 

主に情報だな。サーゼクスがグレイフィア

を赤龍帝の元に差し向けてココへの転移

魔法陣を渡したり、あのグリフォンを貸し

たりと・・・その準備段階からしっかり

情報をつかんでるんだから、恐ろしい方だ。

 

「そうか。彼には後ほど私からもアイサツ

せねばならんな」

 

そりゃそうだ。兄貴が親父を強制的に隠居させない

なら親父が当主のままってことだし。

なら親父が礼を述べるべきだろう?

建前上は式の前に貰った品々に対する

謝罪とかになるか?

 

ソレを考えたら、コレから数か月は

謝罪に回ることになるよなぁ。

 

本来ならリアスやサーゼクスが

やるべきだろうが、連中はそんなこと

しねぇだろうし。

 

「えぇ。よろしくお願いします。その際の

口添えは私とレイヴェルで行いますよ」

 

うん。兄貴がすぐに継ぐことにならなくとも

次期当主ってことはかわらんからな。

オセ様との繋がりは持っとくべきだろう。

 

俺もアイサツに行きたいところだが、

まさか婚約破棄へのお力添えに感謝

するわけにも行かねぇ。

 

それに暫くは魔王が報復を警戒して

俺の動向を気にするだろうから

俺は動かねぇ方が良いな。

 

はぁ・・・だが暫くは修行だな。

手を抜いたとはいえ、あの程度の

雑魚を殺せないなんて未熟が過ぎる。

 

オセ様や奥様に見られて失望される

のは御免だぞ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい。サーゼクスは何処に行った?」

 

「あいつ、いつの間にか消えてたよねぇ?」

 

「黄金の鉄の塊で出来ているダイヤの

結婚指輪のネックレスで致命的な致命傷を

与えてやろうとしてたのに!!」

 

・・・結局ソレは何なんだ?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「私のファーストキス。日本では、

女の子が大切にするものよね?」

 

「え、ええ、そうですけど!

ってファーストキスゥゥゥ!?」

 

 




フェニックス卿覚醒(誰得?)

原作と違ってグレモリーとは和解しないもよう

ふ。5秒で潰すと言ったにも関わらず
潰せなかった我の未熟よ!って感じですね。

無理やり終わらせましたが、実際性犯罪者は
政治的なアレも有って殺せないんですよねぇ。

原作でもサーゼクスはどこかに
消えてましたが・・・お前は消えちゃ駄目だろ?!

次回はリザルト回ですかね?って感じ



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原作3巻
17話


言うなれば2・5巻。

導入章とでも言うんですかね?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


「そのような感じで私リアス・グレモリー

もこの兵藤家に住まわせてもらうことと

なりました。ふつつか者ですが、どうぞ

よろしくお願いしますわ。お父様お母様」

 

・・・俺の日常はどんどん賑やかになって

いくようだ。

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

ーーシロネコ視点ーー

 

「と言うわけで、何故か無能が駒王町に帰還してきました」

 

いや、なんでコッチ来てるの?アイサツ回りとかしなきゃ駄目なんじゃないの?

 

「うわぁ~もう嫌だぁ~~冥界帰るぅぅぅ~」

 

あぁ!簪姉様がっ?!

 

『ぐろぉぉぉぉりあぁぁぁすっ!』

 

神野さんもなんか反応してるし!

 

「だから、笑い事じゃないですよ~!」

 

いや、やっぱりソレって笑ってたんですか?!

 

『いやいや、かんちゃん。落ち着いて考えなよ』

 

いきなりテンション変わるし。

 

相変わらず簪姉様には嫌味も言わないし

からかわないんですよねぇ。

 

「落ち着いて考えたって無能は無能ですよぉ」

 

ごもっとも。何か良いことでも有るんですか?

 

『それはそうだけどさ?無能さんが眷属

を連れて帰ってきたなら、阿呆さんは夜の

割り当てから解放されるんじゃないかな?』

 

おぉ!ソレは確かに!

 

「え?家に逆らって来たくせに管理者はその

ままなんですか?兵藤家に行くのって家を

出たか追い出されたんじゃ無いんですか?」

 

普通に考えればそうですよねぇ。

 

「いえ、無能は未だにグレモリー家の次期当主のままです」

 

有り得ないことですが・・・

 

「な~ん~で~さ~」

 

わっかんないですよねぇ。

 

『ん~そりゃアレだろぉ?当主がミリキャス

とか言うのに家を継がせたく無いんだろぉ?』

 

家を継がせたく無いって・・・あぁ。

 

「可愛い孫にあんな家を継がせたく無いと言うことですか」

 

そんでもって、サーゼクスのコネでどこか

別の家を興せとか?

 

『当たりだよ白音ぇ~君も成長してるようで何よりさぁ~!』

 

う~む。私がアレだと簪姉様が困るから

扱いを少し良くしてくれてるんですかね?

 

「あぁ、そ~言えばメイド気取りはルキフグスだし、ソッチ方面も行けるもんね」

 

「ですね。つまりグレモリーは全ての負債を

無能に押し付ける、いえ、無能に清算させる

つもりなんですね?」

 

そもそも無能が表に出てきてからの三年で

積み上げましたからね。

特に今年度なんて2ヶ月でコレですよ。

 

『そぉだねぇ。しかも主がサーゼクスと契約を

交わして、無能さんの監視体制を強めたって

言うじゃないか?つまり僕らは日中、人数が

増えて余裕が出来た阿呆さんのフォローだけ

してれば良いんだよぉ』

 

そう考えれば、無能の帰還も悪くは無いと

言うことですかね?

 

「あ~なるほどな~。それならコッチは神野

さんが増えた分だけ楽になりますよね?」

 

普通ならこのヒトの相手って心労が増すと

思うんですけど・・・流石簪姉様です!

 

『そぉだよ!そぉ言うことだよかんちゃん!』

 

うんうん。とりあえずお爺ちゃんの機嫌も

良いみたいだし。暫く夜は休めそうですね。

 

「あ、そういえば神野サンは補佐官様の

ところには戻らなくて良いんですか?」

 

そういえばそうですよね。出張なのか

出向なのかはアレですけど、無能が帰って

きたなら向こうに行かなきゃ駄目なんじゃ?

 

『中々良い着眼点だけど心配無用さ~。

なんたってまだまだコッチで問題が起こる

みたいだからさぁ』

 

いや、嬉しそうに言われましても・・・

神野サン的には簪姉様と居れるから良い

ことなんでしょうけどね?

 

「問題って無能絡みで何か有るんですか?」

 

そーゆーことですよねぇ。このヒトの諜報能力は

異常ですから。一体何を掴んだのやら。

 

『うん。コレが詳細。今ごろ主が奥さんと

対策を考えてるんじゃないかな?』

 

ほうほう。お二人が絡むのも確定ですか。

まぁだからと言って私たちが知らなくても

良いと言うわけではありません。

 

しっかり予習はしておかないと、ご主人様や

奥様の足を引っ張ってしまいますからね!

 

と言うか、なんでわざわざ焼鳥の娘なんか

預かったんでしょうね?

 

人員が足りないって言うのもわかりますが、

あんなヤツがご主人様の側に居るって言う

のがなんかムカつきます。

 

いや、奥様の決めたことに文句をつける

つもりなんて有りませんけど。

 

「へぇ?ご当主様と奥様がねぇ」

 

おっと。簪姉様も資料を確認するみたいです。

 

ではいつも通り膝の上にシツレイして、私も

資料を確認させていただきましょう!

 

「「どれどれ?」」

 

・・・・・・・・・

 

「「マジですか?」」

 

『もちろん。本気と書いてマジさぁ~』

 

あ、有り得ませんって。ほら、私の頭を

撫でてた簪姉様の手が止まりましたし!

 

「大佐殿~もう無理~!」

 

あ、とうとう大佐殿が出ましたよ!

簪姉様も限界ですかっ!

 

『どっちかって言うと大尉って感じだけどねぇ』

 

神野サンも妙な納得をしてないで、簪姉様の

ストレス発散を手伝ってください!

 

ほら簪姉様!猫ですよ~可愛い白猫ですよ~!

 

 

―――――――――――――――――――

 

ーー奥様視点ーー

 

 

「つまり植物の部分には細胞壁が有ったが、魚部分には無かったと言うことが判明したわけです」

 

なんか以前簪が纏めたレポートに、旦那様が

生物学的な見地から意見を追加した資料を

作ってたと思ったら・・・あの資料、完成して

たんですねぇ。

 

簪が言うには、なんでも普通の顕微鏡では

見えないようにモザイクみたいなモノで

隠されてたらしいですけど。

 

アレにそんなプロテクトをかけて、一体誰が得をするのやら。

 

『ほほう。流石簪殿ですね。あぁいや、オセさん

の着眼点もお見事です。・・・コレは今回の学会

いけるかも知れませんね?』

 

いやいや、どこに行く気ですか。

 

たしかに生物学上の難題と言われればそうかも

しれませんが・・・そもそも地獄の生物(ナマモノ)

そう言うの当て嵌めるだけ無駄じゃないです

かねぇ?

 

お二人に説教喰らうから口には出しませんけど。

 

「あの、奥様?」

 

ん?あぁそう言えば金髪螺旋鳥頭もいましたね。

 

「良いですか?あの鬼ぃさんと旦那様の会話に

口を挟んでは行けません。死にますよ?」

 

冗談でも何でもなく。いまのコイツだと、

鬼ぃさんの視線から来る重圧だけで死にます。

 

「あ、いえ、当主様の会話に口を挟むような

真似はしませんが・・・」

 

ふむ。そのくらいは弁えてますか。

ならば何が言いたいのでしょう?

 

「それ以前に、当主様と普通に会話をしている

あの方は誰なのかな~と思いまして」

 

何を言ってるんだコイツは?

 

「なんで悪魔である貴女があの方を知らないのか

わかりませんが・・・あぁまだ子供でしたね」

 

鬼ぃさんに対してシツレイ極まりないですが、

子供が無知なのは当たり前です。

直接ナニかやらかす前にそれが知れただけ

良しとしましょう。

 

「は、はい。申し訳ございません!」

 

うむ。わからないことを謝罪出来るならまだ

見込みはあります。

 

「シカタナイ。これ以上のシツレイを重ねる前に

しっかりと教えるので、今後もわからないことが

有ったらキチンと聞くように」

 

旦那様関連は「知らなかった」じゃ済まない

方が多すぎますからねぇ。

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

素直なのは良いことです。私も金髪螺旋頭に

対する評価を改める必要が有るようですね。

 

コレもまた我知無知の教えなのでしょう。

 

 

・・・

 

 

「つまり、冬虫夏草の虫が生きていて、植物と

完全に融合してしまってる状態に近いのでは?」

 

『ふむ、新しい意見です。卵の段階で精子か

卵子に植物の種も付着していて着床の手助けを

していると?・・・ほほぅ。コレが霊視顕微鏡

の映像ですか。なるほどなるほど』

 

・・・あの金魚のような華についてはどう

説明したものでしょうか。

アレは見て触って食べてみないとなんとも

言えないですし。

後で鬼ぃさんに頼んでコヤツにも食べさせて

もらいましょうか?

 

と言うか、簪・・・アレをあそこまで真剣に

調査してるって。そんな暇は無かった筈なん

ですがねぇ。

 

まぁ旦那様と鬼ぃさんの趣味と考えれば、

こちらも真剣にやらざるを得ないのは確か

ではあるのですが・・・

 

うむ、もう少し仕事を回しても良さそうですね。

 

丁度良く堕天使と天界、いえ教会がナニかしてる

ようですし。向こうには神野も居ますから、特に

問題は無いでしょう。

 

あぁ、そう言えば鬼ぃさんに好きな具とお酒の

銘柄を聞いておいた方が良いですね。

 

簪に持たせても良いし、クロネコを逝かせる

のも良いでしょう。

 

なんにせよ、正妻たるもの旦那様の憩いの一時を邪魔してはいけません。

 

お仕事お仕事っと。

 

 

「つまり・・・」

 

『いや、答えを急ぐのは・・・』

 

・・・あのお二人クラスになると、どーでも

良いこと以外に全力を注げませんからねぇ。

 

うむ。趣味と言うのは大事です。

 

――――――――――――――――――

 

 

リアス・グレモリーが関わる事案で発生した

被害・損害に対する賠償責任はグレモリー

ではなく魔王が負うこと。

 

その後始末をオセ家に依頼する場合の料金は

その修繕の度合いによって割り増しとする。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

・・・なるほど。サーゼクスでは無く魔王(おれたち)というのはそう言うことか。

 

「ん~まぁ、これなら良いんじゃない?」

 

セラフォルーは納得か。つかコレを否定したら

妹が巻き込まれた時に問題が生じるからな。

 

この契約なら自分が庇うこともできるし。

 

「だねぇ。特に問題無いと言えば問題ないかなぁ?」

 

ファルビウムは関係ないもんな。

 

「そ、そうだろう?!そうだよなっ!」

 

この野郎・・・

 

「サーゼクス。セラフォルーとファルビウム

も一応納得しているが、これはあくまでオセ

との契約と言う括りで見た場合だ。

今後勝手に契約することは絶対に許さん」

 

オセにしては良心的って感じで思ったより

普通の契約だったからとやかく言わんが、

せめてサインする前に一報よこせよ。

 

「だねぇ。今後リアスちゃんがナニカ

やらかす度に私たちが面倒見るって

言ってもさ、コレって言ってしまえば

グレモリーじゃなく悪魔勢力として責任を

取れって話だよね?」

 

うむ。正確にはリアスが関わったことに関してだが、同じことだろう。

 

「つまり~対外的にクレームを言うべき

相手が僕たちになったけど~サーゼクスが

きちんと責任を取れば問題ないわけだね~」

 

そうだな。普通に考えれば我々の政治構造

なんざ他所には関係が無い。

悪魔がやらかした事なんだから悪魔が責任を

取れ。と言われればそれまで。

 

グレモリー家を挟まずに済むだけ話の解決は

簡単だし。・・・こいつらの面子は潰れるが

そもそもやらかさなければ済む話。

 

「罰則にしても、オセ家に後始末を依頼

した場合の料金割り増しくらいだからな。

オセ家としては当たり前の話だろう」

 

それでも料金さえ支払えば後始末はして

くれるのだから破格の条件だな。

 

「オセちゃんも悪魔社会を滅ぼしたいワケじゃないからねぇ」

 

そうだな。【悪魔は悪魔らしくあるべき】と

言う理念から天界や堕天使との戦争を推進

しているが、だからと言って自分から堕天使

勢力に攻め込んだりはしていない。

 

種族として緊張が重要だと考えているのだろう。

 

「って言うか今のオセ家の戦力って

どうなってるの?シロネはサーゼクスや

アジュカには及ばないけど、セラフォルー

や僕より強いよね?」

 

う~む。最近シロネと接触したアザゼルの

見立てでは、カンザシには勝てず、シロネ

相手でも相当苦戦するとのことだが・・・

 

「彼女は10年でアソコまで行くんだから、

もっと前から鍛えてた子が居たらって考えたら

・・・もうやばいよねぇ」

 

だな。相当ヤバイ。少なくとも国境警備を

担う兵士は最上級悪魔クラスの実力者だろ?

 

指揮官に必要なのは個の力では無いが、

個の力が無ければ何も出来んからなぁ。

 

「少なくとも奥方とカンザシは俺やサーゼクスと戦えるレベルだぞ」

 

オセに至っては・・・わからん。ソレを

考えれば無駄に敵対することは避けたいな。

 

「そうだな。それにこれだけの戦力が我々に

あるのだから、主戦派が騒ぐのもわからない

では無いのだが・・・」

 

俺とサーゼクスを合わせて考えれば、圧倒的な

個が少なくとも5つだからな。

そりゃ勝てると思うし、勝てるなら戦いたい

だろうさ。

 

・・・自分でヤれって話だがな。

 

「オセもねぇ~彼は売られた喧嘩は買うし、

買った以上は叩き潰すんだろうけど~

その後の統治とかを考えてるからねぇ~」

 

そうだ。アイツが望む戦争は殲滅戦では

なく、中途半端な休戦をヤメロと言う感じ

だからな。

 

 

ーーーーー

 

 

種族的に天敵なんだから見敵必殺で良い

じゃ無いですか。別に天界や堕天使の

領土に攻め込めとは言いませんよ。

 

政治?そんなの連中相手に気にすることじゃ無いですよね?

 

平和?悪魔の駒を造って戦争を助長させた

陛下が言うことではないでしょう?

 

攻め込まず、攻め込ませず、かといって

慣れ合わずに殺し合う。このくらいが我々

として丁度良いと思いませんか?

 

下手に談合してると見られたら他の勢力も

黙っていないでしょうし。

 

あぁ、もし陛下が本気で戦争を望んで無い

なら悪魔の駒は没収すべきですね。

大王派の貴族?言われれば殲滅して

回収してきますよ?

 

王の駒が邪魔なら私が残らず破壊しましょう。

 

千の老害貴族と100万の民。魔王陛下が

どちらを選択するかは知りませんが・・・

 

それとアグレアスも封印すべきでしょうね。

アレが諸悪の根源です。

誰かに利用される前に潰した方が良い。

 

 

ーーーーー

 

 

と俺に対して面と向かって言うくらい、

今の状況が気に入らんらしいし。

 

言いたいことはわかるし、悪魔として

過激と言うほどのモノでも無い。天界や

堕天使に対してそのくらいの態度を見せれば、

我々が他の神話勢力との戦争は望んでいないと

言う証明になる。そして戦争の火種も消せる。

 

だがサーゼクスは納得してないんだよなぁ。

 

別に旧魔王派だろうが何だろうが負けを

認めずに逆らうなら殺せばいいし、大王派

のように過去に生きる老害よりも未来ある

若者を優先するのは王として間違ってはいない。

 

汚名を被るのが嫌なのか覚悟が無いのか

知らんが、あまりにも中途半端。

 

とはいえ、これに関しては技術にしか目を

向けない俺や、自らを軍事機構の一つと

割り切るファルビウム。

力ある女性悪魔で先代レヴィアタンの娘を

打倒したことで魔王となっただけの

セラフォルーも同じだから文句は言えん

 

結果我々は老害に迎合しているように見える。

そりゃ老害を嫌う若手がオセに憧れるさ。

 

…今後の事はコレから考えるとして、だ。

 

「とりあえずリアス・グレモリーの監視の

強化は絶対だ。婚約破棄の責任も取らずに

地上に逃げて、参列者や関係者に謝罪も無い

と言うのはありえん」

 

家族はともかく、本人が謝罪もしないで謹慎もしないって何だよ!

 

今この時にやらかして無いか不安でしょうがない!

 

「だね。正直グレモリー家は信用できない!

これじゃソーナちゃんもどうなるか・・・」

 

そう、リアスのこの行動を許すって時点で

グレモリーは駄目だ。

ソレにソーナも阿呆と言われてるからなぁ。

 

巻き込まれたらどうなるか・・・

 

「だねぇ。監視は僕の眷属にさせる?

それとも地上に居るソーナにさせる?」

 

ふむ。監視役としての実績を積ませてやろう

と言うことか?

いや、関わるのが面倒だと思ってるだけだな。

 

「りーあたんに監視だと?!そんなの許さんぞ!」

 

「「「お前は黙れ!!!」」」

 

監視しねーと駄目な風にしたのはお前らだろうが!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?リアスの行動監視任務?」

 

・・・どういうことなの?

 

「はい、それもベルゼブブ様。アスモデウス様。

更にレヴィアタン様からの連名での任務です」

 

・・・どういうことなの?

 

 




三巻は地上がメインなので、当然この三人がメイン。

CV子安は暫くお休みです。

まぁ原作3巻以降は神野サンが大活躍
する予定ですけどね!

オセ君は鬼ぃさんとナニカを研究しているようだ。

魔王との契約。まぁ基本的に
当たり前のことを当たり前にヤレって
感じです。グレモリー信用出来ないから
魔王が責任持て。担保は国家予算。
こんな感じの契約ですな。

サーゼクスが隠したのは担保が国家予算の部分がアレだからです。

他の三人の心境としては、なんだかんだ
言っても小娘の出す損失くらいなら、
各々の魔王家の予算でなんとかなるから
大丈夫だねって感じです。

阿呆が無能を監視して何になると言うのか・・・ってお話


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18話

とうとう原作キャラが!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!



 

ーーソーナ視点ーー

 

「・・・確かにリアスがやらかしたことを

考えれば監視は必要ね」

 

命令書が来たときは何事かと思ったけど

まさかお姉さまからリアスの所業を箇条

書きにした書類が送られてくるなんて。

 

コレは現状私たちが甘やかされてることを

しっかり理解して、職務に妥協するなって

言う警告なんでしょう。

 

何せ私が我儘を言ったせいで迷惑を

掛けていたのがオセ様なんですもの。

 

リアスが抜けた後のフォローも、夜を重点的

に行えって言うのはこう言うことだったか。

 

そりゃ、日中の人員を減らしても問題は無いし、

リアスも涼しい顔してアノ激務をこなせるわよ。

 

問題が起こる前にオセ様の眷属様方が

処理してるんだもの。

 

今まで大きな問題なんか起こる筈ないわ。

コレは知らなかったで済む話ではない。

 

結局、実家の支援は受けない!なんて我儘を

言っても実際に問題が発生したら冥界に

迷惑が掛かるし、私たちで取れる責任

なんか高が知れてるってことなのよね。

 

「ですね。私たちに何も言わずに合宿に

行ったのもアレですが、山の破壊って・・・」

 

そう。ライザーとの結婚が嫌でゲームに

望みを繋げるための合宿とか、気持ちは

分かるけどアレは職務放棄よね?!

 

せめて私に一報入れてからにしなさいよ!

 

合宿を決めた当日の夜に来て「留守を任せて良いかしら?」じゃないわよ!

 

「大きな問題なんて無いから大丈夫」とか

言っておきながら、かなり杜撰な管理してるし!

 

そして山っ!

 

リアスは特に何も気にしなかったみたい

だけど、有り得ないでしょう?!

 

あの地震はリアスの眷属が山を破壊した

際に生じた地脈の乱れを、オセ様の眷属

の方が修繕した結果ですって?

 

その修繕費用はサーゼクス様支払い?何してんのよ!

 

「我々の日中の仕事もかなりフォローして

貰っていたようですし・・・」

 

そう。椿姫が言うように、私たちが見過ごして

来たはぐれ悪魔や堕天使の対処もしてもらって

たみたい。

 

「それに堕天使の総督(アザゼル)なんて超大物が来てた

なんて知らないわよ・・・」

 

あの僧侶が堕天使関係のゴタゴタで手に入った

のは知ってたけど、リアスからは何も報告が

来てないわよ?

 

性犯罪者兵藤一誠に宿った神器が神滅具だもん。

そりゃアザゼルとか敵の幹部も興味持つわよ!

 

リアスはアホ面晒して自慢してたけど、宝物が

奪われる可能性をなんで考えないの?!

 

カンザシ様が居なかったら殺されて回収

されてたわよね?!

 

そもそもそんな連中を私にどーしろって言うのよ!

 

堕天使の総督(アザゼル)に関しては・・・やはりこちら

からオセ様の眷属の方に接触して対処を相談

するべきでは?リアス・グレモリーが関わった

ら駄目なんでしょう?」

 

それ以前にリアスが関わったところで意味

ないからね。どーせ何も考えずに無駄に

相手を挑発して問題を悪化させるだけよ。

 

今回のフェニックス家との破談のせいで

リアス・グレモリーはグレモリー家としても

リアス個人としても信用を失ったわ。

 

グレモリーにはミリキャスが居るから最悪

リアスを放逐すればいいだけだけど、

私までこんな風になったらシトリー家が滅ぶ。

 

こうして陰ながらサポートしてもらってる

くせに、調子に乗って一人前の顔してる

私なんか不安材料にしかならないわよねぇ。

 

「そうね。それにまさか一年の瀬尾白音さん

がオセ様の眷属だったなんて・・・」

 

もうこれだけでね。どんだけ無能晒してるのよ。

 

そりゃ実家の支援を受けないなんて言ってる

場合じゃないわよ。

・・・一人で出来て無いんだもの。

 

「あ、あの会長?俺たちの仕事が未熟で、

今までそのオセ様?のサポートを受けて

たってのはわかりました」

 

匙にしてみたら自分の仕事が中途半端って

言われているようでアレかもしれないけど、

皆にも現実を見て貰わないとね。

 

「そうね。この資料を見れば一目瞭然よ」

 

悔しいけど半人前扱いされるのも当然。

 

はぐれ悪魔25体。堕天使37体。天使11体。

エクソシスト41人・・・堕天使とエクソシスト

は最近増えてきたらしいけど、だからってコレ

だけの敵を狩っていたことに気付かないって。

 

しかもリアスの赤龍帝や僧侶の件で悪魔との

契約を結んでた人間が殺されてた?

ソレをリアスは記憶操作で誤魔化してた?

 

馬鹿じゃない?!契約者を守らないで悪魔

を名乗るんじゃないわよ!!

 

何が「夜は自分たちの管轄」よ!夜に侵入

されて夜に殺されてるじゃない!

 

赤龍帝に関しては日中だけど・・・そもそも

領地の管理者が学校で授業なんか受けてるん

じゃない!って言われたらねぇ。

 

授業時間はまんま管理者としては

サボってるのと一緒なのよねぇ。

 

そりゃ舐めてんのか?ってクレームも

入るし、リアスと揃って阿呆と無能って

呼ばれるのもわかる。

 

その間をずっとフォローしてもらってた?

オセ様に?ヤバい。顔から火が出そう・・・

 

「あのですね!それで、俺たちはどうするんです?」

 

あ、あぁ、まずはソレよね

 

「知らなかったとはいえ、今まで多大な

フォローを受けていたのは事実。

コレからは迷惑をかけないようにしっかり

打ち合わせをした上で向こうの指示に従うわ」

 

先達として学ぶことも多いし、何より強い。

 

アザゼルなんて超大物の名前が出てきた

時点で私たちに出来ることなんか無いもの。

 

こうなれば私たちに出来るのは、せめて

あの方々の負担を減らすことくらいよね。

 

「し、従うって・・・」

 

ナニカ不満でも有るのかしら?

 

そもそもオセ様は伯爵家の当主だし、

悪魔の中の悪魔と言われるほどの御方。

私たちみたいな小娘がどうにか出来る

相手でも無いのよ。

 

「匙、世の中には私より年下で私より

偉いヒトが居る。ソレだけの話よ?」

 

少なくともシロネ・オセ様はオセを名乗る

事が許された立場にあるし、管理者としても

先達で実戦経験者。

2歳上なだけの私が礼を尽くすのは当然じゃない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーシロネコ視点ーー

 

 

ん~コレはどう判断したものか・・・

 

「と、言うわけです。今までシロネ様に

フォローをして頂いて貰いながら、一度も

ご挨拶もしてこなかったこと、平にお詫び

申し上げます」

 

なんでちょっと時代ががってるんですかねぇ。

 

ソレはともかく

 

「まぁ、アナタ方に知られないようにと

言うのがシトリー家からの依頼でしたから、

ソレに関しての無礼や不敬は咎めませんよ」

 

謝罪されたならきちんと返事はしないと

いけません。

とは言え契約はどうなるんですかね?

 

今回は私がミスしたわけでも無ければ

シトリー家が契約違反したわけでも無い。

 

セラフォルーがコイツに連絡を入れて

「無能みたいになるな!」って警告したんでしょ?

 

そもそも我々のフォローを知られない

ようにするって言うのは、こいつらが

無駄に反発するのを防ぐため。

 

反発しないなら、フォローを受けて職務を

遂行すると言うことを理解させるって

ことになりますよね?

 

この場合のフォローってオセ家がするの?

それともシトリー家?セラフォルーでは

無いですよね?

 

「ありがとうございます!契約に関しましては

出来ましたらオセ様にこのままフォローを

して頂きたいのですが・・・」

 

あーうん。報告書にあった堕天使の総督(良い歳こいて厨二病患者のオッサン)

の事を考えれば、シトリー家の家臣が来ても

殺されるし、セラフォルーが来たら戦争ですもんねぇ。

 

ご主人様や私たちと違ってソコまでの

覚悟は出来て無いから、政治的配慮と

身の安全を両立させる為には私たちが

必要ですよねぇ。

 

ん~この阿呆は確かに阿呆ではあるけど、

その思想と理念が阿呆なだけですから

ソコをしっかり教えればマトモになる

んですかね?

 

それに簪姉様も、管理が楽になるなら特に

反対はしないと思いますけど・・・

 

とはいえ勝手な判断は出来ませんよね。

 

「ソーナ・シトリー殿からの要請は確かに

承りました。ただご主人様と契約を交わした

のはシトリー家であり貴女ではありません。

その要望に応えるかどうかは、ご主人様と

シトリー家の話し合い次第になります」

 

結論が出るまでは変わらずフォロー

することになりますけどね。

 

「なっ?!会長が頼んだのにっ!」

 

あぁん?なんか不満そうな声を上げた

ヤツが居ますね?

 

「匙!あ、シツレイしました!ソレで十分です!ありがとうございます!」

 

ふむぅ。奥様なら【不敬】の一言でコイツ

らを蒸発させるんでしょうが、私は代理人

に過ぎませんからねぇ。

 

「眷属の教育はちゃんとして下さいね?

無能のように教育が出来てないヤツも

居ますが、そういうのは本来客人の前に

は出さないモノです。アレが無能と呼ば

れているのと同様に、貴女は自分が阿呆と

呼ばれてることを知ってるのでしょう?」

 

さて、どう出る?コレで騒ぐなら殺して

兵士の駒4つは回収させて貰いますよ?

 

「こ、このっ!「匙!黙りなさい!」か、会長・・・」

 

まぁ・・・セーフかな?残念。

 

「オセ様からの助力の件を考えれば、

この数年ソレに気付かず管理者面していた

私は他の方々から見ればさぞかし滑稽に

映ったことでしょう。その評価は妥当な

モノです」

 

ん?コイツまさか理解してない?

 

「いえ、貴女が阿呆と呼ばれる最大の

理由は、その夢。レーティングゲームの

学校に関することですよ?」

 

ココはさっさと教えてやりましょう。

阿呆から脱却すれば簪姉様も喜びますし、

奥様も現実を見ない阿呆の戯言を聞くのは

嫌いですからね!

 

「「「「はぁ?!」」」」

 

ん?阿呆だけじゃなく眷族全員が反応した?

コレは駒の大量獲得できますかね☆

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

「皆、黙りなさい!」

 

私の夢を正面から阿呆呼ばわりされて

怒ってくれるのは嬉しいですが・・・

相手が悪すぎる!

お姉さまからの書状では目前のシロネ様

はお姉さまより強いんです!

 

気分を損ねたら全員殺されるって言う

のがわからないのですか?!

 

「で、でも!!」

 

匙!アナタが一番危険なんです!

 

「私は黙れと言いましたよ!」

 

さっきも黙れと言ったにも関わらず

こうして反論してくるなんて・・・

眷属の教育が出来ていないと言われて

粛清されたらどうするんですか!

 

「ふむ・・・反対意見を言われた程度で

殺気を出すとは、貴女の眷属は教育者に

向いて無いんじゃないですか?」

 

ソレは・・・その通りよね。いくら私の

理想に対する反対意見でも、相手の言う

事が気に入らないからって力で押し潰そう

とするのは間違ってるわ。

 

そもそも押しつぶせる相手じゃないけど。

 

「返す言葉も有りません・・・」

 

もうソレしか言えないわよ。

 

「ま、眷属の教育はソッチでやって下さい。

ソレすら出来ないヤツに教育者を夢見る

資格はありませんよ?」

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

そうよね。一番身近に居る彼女たちを

教育出来てない癖に教育者なんて・・・

 

「私としては今後もフォローする可能性の

有る貴女が、阿呆のままだと困るから現実

を知って欲しいと言う意味を込めて、

こうしてお話してるだけです。

自身に対する反対意見が不要と言うなら、

ココでお暇させて頂きましょう」

 

そう、公爵家の令嬢である私にこうして

ちゃんと正面から意見を言ってくれる相手

と言うのは本来とても貴重な相手なのよ!

 

イエスマンじゃなく、陰で笑うでもなく、

こうして諭してくれようとしてるのは

まさしく慈悲!それなのに・・・

 

「眷属の教育も含め、私の未熟をご指摘

頂きながらのご無礼。誠に申し訳ございません!」

 

この機会を逃したら駄目よ!ココで頭を

下げなければ私もリアスと同じように

無能として切り捨てられるっ!

 

「か、会長・・・し、シロネ様!度重なる

ご無礼!申し訳ございませんでしたっ!」

 

「「「「申し訳ございませんでした!」」」」

 

皆・・・こんな私の為に・・・

 

「謝罪すれば何をしても良いと言うモノ

でも有りませんよ?特に相手に殺気を

向けると言う行為は、そのまま殺されても

文句が言えない行為です」

 

「「「「「?!」」」」」

 

い、今のは殺気?!コレが・・・こんな・・・

駄目!逃げるとか一矢報いるとかそういう

次元じゃないっ!

 

こ・・・殺される・・・みんな!殺されるぅ!

もうだめだぁ・・・おしまいだぁ。

 

「・・・今回は許しますが、次はありません」

 

え?ゆ、許してくれたの?!本当に?

あっ!し、シロネ様の気が変わらないうちに!

 

「ご容赦頂きありがとうございます!」

「「「「「ありがとうございます!!」」」」」

 

厳しい言葉だったし殺気は怖かったけど、

言われたことは正論で反論の余地は無い。

それに良かった!コレでみんな助かった!

 

「・・・では私から説明する前に一つ要望なんですが」

 

「はい!なんでしょう?!」

 

なんだって聞きます!・・・だけど要望?命令じゃなく?

 

「お茶とお茶菓子を。それと眷属たちを

働かせてください。こうして話している

間もカンザシ・オセ様は治安維持活動を

行っているのですよ?」

 

・・・ごもっともです。

 

この方達はあくまでフォローであって、

私たちがサボったらそのまま契約違反に

なるんですよね。

 

「椿姫、お茶とお茶菓子を!他の皆は

今すぐ仕事に移って!

リアスの監視は・・・巴柄、アイサツと

して彼女の部室に行って頂戴!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

まずはコレで良し。夜に関しては椿姫と

相談するとして・・・今はシロネ様からの

教えを受けなきゃ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーカンザシ視点ーー

 

 

「ふーんコレが噂のエクスカリパー(笑)ですか?」

 

所詮人造の聖剣だねぇ。けど聖なる光が宿ってる?

ん~神が生きてるうちに祝福を与えたのかな?

にしても天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)って。

ツッコミどころ満載だよねぇ。

 

『そーだねぇ!なんか白い少年が無能さんの

騎士と遊んでたからさ。帰り際に持って来た

のさぁ!でもって武器がなんか微妙じゃん?

確認してみたらまぁビックリ!』

 

へぇ。白い少年ねぇ。シグルド計画でしょ?

ラウラさんみたいな感じなんだろうけど・・・

 

「ふぅん。こんなの使ってる時点でアレ

だけど、その白い少年君はどうしたの?」

 

神野サンがあっさり殺すとかはしないよね?

 

『ん?奇跡の部屋に運んだよ~今頃は主と

奥さんが色々確認してるんじゃないかな?』

 

あぁ、なるほど。まぁコレ持ってるって

事は教会戦力か堕天使側でしょ?

そんなのが悪魔の管理する駒王町に来たら

駄目だよねぇ?

更に無能が管理する夜なら見逃してやるけど、

日中動くなんてダメダメだよ。

 

そんな阿呆は木人形として医学の礎に

なると良いさ~。

 

「了解了解。とりあえずコレは調べた後で

空さんに粉砕してもらおうかな?

それとも神野サン、コレ食べますか?」

 

普通の悪魔ならダメージ受けるけど、

空さんとか神野サンなら問題無いでしょ?

 

『ははははは!そぉだねぇ!ソレも良い

かもしれないねぇ!』

 

ですよね~神野サンって神の祝福を汚すとか大好きですもんね~。

 

さぁコカビエルはどう動くかなぁ?

私たちを警戒して拠点を隣町にしたのは

良い判断だけど狙いは全部バレてるよ?

 

教会の方も、聖剣(笑)が無くなったし。

これからどうなっちゃうの~(棒)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

ーー奥様視点ーー

 

 

 

「な、なんだってんでぃ!」

 

おや、目が覚めましたか

 

「ほう・・・」

 

旦那様が何か関心してますけど、アレは

リアクションに関心してるんですね。

 

「か、体がっ!体が動かねぇぞ?!」

 

シグルド計画。少尉の時もそうでしたが、

人間は何時でも何処でも変わりませんねぇ。

 

「なるほど。いい締まりをしている」

 

まぁソコソコ鍛えてはいるようですが・・・

 

「てめぇ!何しやがったんだよぉ!」

 

口の利き方がなってませんが、まぁ

旦那様も楽しそうですし、ココでの

不敬はBGMみたいなモノですからね。

 

そもそもコイツってアレでしょ?

下っ端堕天使が駒王町に来た時に

下っ端と一緒になって悪魔の契約者を

殺した連中の一人でしょ?

 

こーゆー奴らが居るから悪魔と契約

する人間が減るんですよねぇ。

 

「フム・・・活も良い」

 

ソレしか良いとこなさそうですけど。

 

「クソっ!何をする気だってんですか!!」

 

自分でもわかってるでしょうに。

診療台の上に寝かされて、両手両足を

固定されて、さらに動きを止められて

たら・・・ねぇ?

 

「どうやらきさまは最高の木人形のようだっ!」

 

それ、全員に言ってますよね?そういう

ルールなんですか?

 

「木人形?!ち、ちくしょーなんか嫌な

予感がビンビンだぁぁぁ!

こんなとこで死んでたまるかぁぁ!!!」

 

いや、その予感遅すぎませんか?

それにまぁ、確かにココでは

死にたくないでしょうね。

 

「それだ!その生への執着が死穴すら封じる

強烈なパゥワー!を生むかもしれん!!」

 

いやぁどうでしょう・・・今まで執着で

どうにかなったの居ませんよ?

 

「!!」

 

おぉ。なんかすごい速さで手が

グッパッグッパしてますね。

 

コレはまさか高速ジャンケンの秘孔?

 

「ん!?フム・・・この秘孔ではないらしい」

 

ですよねー。ではアクリル板を用意しましょう。

 

「うわっ!うわぁぁ!!うわらば!!!」

 

今回は胴体でしたか。アクリル板用意して正解でしたね。

 

「ん~弟子よ。フェニックスの涙持って来てくれ」

 

「ハイハイ。ちゃんと用意してますよ」

 

どーぞ。好きなだけ使って下さいな。

 

コレが有れば資源の無駄遣いを

抑えることが出来ますからね。

 

これだけで金髪螺旋鳥頭を預かった

甲斐があると言うモノです。

 

「というわけで、貴女の実家に連絡を

して、追加の買い入れをお願いします。

あぁ無論代金は言い値で払いますよ?」

 

「ひ、ひゃい!わかりましゅたぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・まったく、悪魔の癖に怯えすぎじゃないですかねぇ?




阿呆姫、真実を知る(強制告知)
細かいことは次回かな?

と言うか、こいつ等生徒会活動とか
部活動とかしてる場合か?

白い少年、捕まる。
まぁ日中は彼らがフォローしてますからね。
そりゃ捕まります。

エクスカリパー。どっかのギル様や
半熟な卵から出てきそう。

白い少年とは一体・・・ってお話



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19話

ネコネコカワイイによる説教回。

あくまで個人の意見です。異論は認めます。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

「では貴女の歪みについて話します。確と拝聴なさい」

 

おぉ!今のなんか奥様っぽくないですか?!

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

相手は公爵家の次期当主ですけど、まぁ

問題ないですね!殺気の影響で女王が

着替えてきたのはアレですが、コイツも

着替えさせた方が良いですかねぇ?(愉悦)

 

ま、そんな時間はありませんが。

 

自分でも言いましたが、簪姉様は今も

コイツらのフォローしてますし、教会や

コカビエルの狙いもありますからね。

 

さっさと説教して終わらせましょう。

 

「まずは貴女に自覚が有るかどうかを

問いましょう。何故貴女の夢が阿呆と

侮辱されるか分かりますか?」

 

コレが分かってるかどうかで話す

内容がガラリと変わりますからね。

 

「・・・貴族にとって都合が悪いから

でしょうか?」

 

むぅ駄目だこりゃ。

 

「そんな老害視点でご主人様が貴女を

阿呆呼ばわりするはずが無いでしょう?」

 

まったくコイツは。何を考えているのやら。

 

「えぇ?!私はオセ様にまで阿呆って

言われてたんですか?!」

 

自覚なかったの?!そっちに驚きですよ!

 

「まぁ良いですよ。無駄話は後にしましょう。

まず、レーティングゲームを広めることの

問題点です」

 

別に私はコイツのお友達じゃ無いです

からね。わざわざツッコミなんかしませんよ。

 

「いや、良くは・・・あ、でも確かオセ様は

レーティングゲーム反対派でしたよね?

もしかしてソレも関係してますか?」

 

そのくらいの知識はありましたか。

でも勘違いはいけませんよ。

 

「順序が逆です。問題があるからゲームに

反対してるんです」

 

その問題が大きすぎるんですよねぇ。

こいつ等はなんでソレに気付かないのか。

 

「な、なるほど・・・」

 

ふむぅ。とりあえず良いです。

 

「まずは参加者。これは悪魔の駒によって

眷属になった者が最低条件ですよね?」

 

当たり前の話ですけどね。ソレが無いなら

誰だって参加できますし、タダの乱戦です。

 

「そ、そうですね」

 

うむ。ソコを否定してたら眼鏡を没収

してサングラスにしてましたよ!

 

「そして元々悪魔の駒は少子化に伴い悪魔以外を

悪魔にする為にアジュカ様が造ったモノです」

 

アレに様を付けるのはアレですけど、

まぁシカタナイですね。

 

「そ、そうですね」

 

大人しく聞く姿勢は良いですよ。

あの中途半端なヴリトラもこうなら

眷属も一緒に話を聞かせてやっても

良かったのですが・・・

 

「つまりゲームを広めて参加者を増やす

と言うことは、悪魔の駒を使用して他種族

を悪魔に変えると言う行為ですね?」

 

悪魔に使う場合も有りますが・・・アレは

本来の使用目的とはズレますからね。

 

「あ、た、確かに!つまり眷属や王となる

モノの為の学校を作ると言うことは、他の勢力

や種族にとっては・・・」

 

頭の回転は悪くないんですよねぇ。

 

「そうですね。他の勢力や種族にはその

学校は強制収容所に見えるんじゃないですか?

つまりソレは戦争の助長行為です」

 

望んで悪魔になるのも居ますが、他の神話の

神使や神獣は絶対にそんなことを望みません。

 

でも強力な眷属を望むならそう言うのを

悪魔にする必要がありますよね?

 

そんなん戦争ですよ。

 

「で、でもそれなら悪魔に駒を使えば!」

 

どんな悪魔でもって言う理念ならそうなりますけどね?

 

「本来の使用目的と違いますし、そもそも

少子化なんですよね?誰に使うんです?」

 

オセ領には年間五千を越える上級悪魔が

産まれてますし、そのうちの千は最上級悪魔

なんですが。

 

ただ彼らを眷属にするには彼ら以上の力が

必要ですから、お前らみたいな血統頼りの

ボンクラには不可能ですけどね。

 

無理矢理殺してから復活させるにしても

ご主人様や奥様に殺されますし?

 

「あぅ!」

 

しかしコイツ。そういう諸般の事情を全く考慮していませんでしたね?

 

「つまり悪魔社会の事を考えるならば、

レーティングゲームに頼るのは逆効果。

また、下級悪魔の成り上がり促すならば

必要なのは個の力か、文官としての能力です」

 

大事なのはゲームに勝つことじゃないんです。

 

「例えばプロのボクシング選手の中で生涯ソレ

だけで食べていけるヒトがどれだけいますか?

傷を負うし怪我も残ります。フェニックスの

涙なんか上級ランクの試合やタイトル戦。

もしくは大貴族の身内くらいにしか使わない

んですよ?自分達が使えるからってソレが

当たり前だと思ってませんか?」

 

コイツらは普通に医務室とか使えますけどね。

下級悪魔にそんなの使わせるような連中でも

無いでしょう?

 

「あうっ!」

 

「しかもそれだって一試合で二個とかです。

それ以外の回復手段なんか無いんですよ?

どんだけ下級悪魔が死ぬと思ってるんですか?」

 

ローマの剣闘士じゃないんですよ?

 

「・・・」

 

「貴女はレーティングゲームに夢を見すぎ

なんです。フェニックス家のライザーが

公式戦で相手に勝利を譲ってるのも知って

るでしょう?」

 

政治的配慮でね。

 

「・・・はい」

 

「侯爵家の直系ですらソレですよ?貴女が

鍛えた生徒がそう言うのをしなかった場合、

上級悪魔になぶり殺しにされますよね?」

 

後ろ楯がない下級悪魔なんかただの餌です。

 

「あう・・・」

 

「大体貴女のレーティングゲームに向ける姿勢も

おかしい。素の力が弱くても戦えるチーム編成?

『金銀飛車角抜きで戦います!これなら負けて

もシカタナイけど、勝ったら誉めて下さい!』

とでも言うつもりですか?苦労して眷属を

集めてる相手にシツレイでしょうが」

 

拘りは買いますが、そう言うのは確りと

した実績が有ってのモノです。

 

「・・・相手に失礼」

 

「相手は、そんなチームには勝って当たり前と

言われ、負けたり苦戦したら評価が落ちるん

ですよ?卑怯じゃないですか?」

 

自分は何も失わずに経験だけ貰うんですから。

 

まぁご主人様にしてみたら卑怯は誉め言葉

ですけどね。

 

「あ、あぅぅ~」

 

そんなあざとい真似しても止めませんよ。

 

「ついでに貴女自身の知識も足りません。

上級ランカーが使ってる王の駒を知って

ますか?」

 

ご主人様曰くドーピング剤ですね。オーフィス

の蛇と同じくらい嫌悪してるヤツです。

 

「「お、王の駒?!」」

 

ほら知らない。

 

「兵士、騎士、僧侶、戦車、女王があって

王の駒が無いわけ無いでしょう。

アジュカ様がそんな手抜きをするとでも?」

 

とりあえずアジュカのせいにしてやりましょう。

 

「それは、いや、確かに・・・」

 

しかし技術に関してはアジュカの名前は無駄に

説得力ありますね。まぁ納得したなら良いです。

 

「ちなみに王の駒は大貴族達がその駒と情報を

独占してます。効果は女王の駒と同じように

全ての能力の向上。ただし倍率が違います。

何でも10倍~100倍に上昇させるとか」

 

この10倍~100倍って言うのは多分

はったりですけどね。頭の悪いヤツはすぐに

10倍だの100倍と言ってゼロを増やした

がりますが、幅が大きすぎるでしょうよ。

 

正確には誰でも魔王クラスに成れるといった

程度の強化率。

つまりはオーフィスの蛇と同じ外付けのHDD

でしょうね。

 

「「10倍~100倍?!」」

 

アホ臭いけどインパクトは有りますよねぇ。

 

「そうです。そして、ゲームの運営を行っている

貴族共はソレを使って上位ランカーやタイトル

保持者を操り、自分達の権勢や懐を潤しているのです」

 

駒が欲しかったら従え。八百長をバラされ

たくなかったら従えって感じですね。

 

「そ、そんな・・・」

 

プロに憧れるだけならまだしも、その学校を

作ろうとしてるヤツがコレではねぇ。

 

「そもそも老害貴族が運営してるゲームですよ?

カジノだってイカサマや乱数調整が普通に行われ

ているのに、なんでクリーンでフェアなモノと

勘違いしたんですか?」

 

普通に考えたらあんなやつらが運営する

ゲームなんかクソゲーでしょうよ。

 

呼符で☆五?出るわけ無いでしょ?運営の手先

か、運営がダーツか何かで選んだユーザーが

優遇されてるだけでしょ?

 

「つ、つまりそう言った連中が全部居なくなれば!」

 

馬鹿ですか?

 

「利益が無ければ運営なんか出来ませんよ?

どこまでが良くてどこからが駄目かを貴女が

決めるのですか?何様です?

それに現在のレーティングゲームではキチンと

最低限の利益は出してるんです。悪魔の駒の

普及も、転生悪魔の地位の向上も少しずつ

では有りますが成果は上がってます。貴女の

無駄な拘りと正義感でソレを潰す気ですか?」

 

まぁ転生悪魔の地位向上と言っても、所詮は

奴隷剣闘士としてのモノですけどね。

 

基本的にこの辺は一歩ずつやって行くモノで

しょうから、今がアレだからといって全部を

否定するわけにはいきません。

 

つーか、悪魔が正義感っておかしいでしょ?

隙が有ったら突くし、ルールに穴が有ったら

広げるでしょ?それが悪魔じゃないの?

 

「・・・」

 

「ちなみに我々の前任の駒王町の管理者である

クレーリア・べリアルはその王の駒について

探った為に上層部によって粛清されてます」

 

コレもねぇ。馬鹿ですよねぇ。

 

「え、えぇ?!か、彼女は教会のエクソシスト

と恋に落ちたから殺されたんじゃ?!」

 

ほぉ。そのくらいの情報はありましたか。

ただねぇ。

 

「いや、ソレならエクソシストを悪魔にすれば

終わる話でしょ?ディオドラ・アスタロトが

聖女を堕とすのと何が違うんですか?」

 

教会のエクソシストを悪魔にしました!なんて

立派な功績じゃないですか。

 

「た、確かに!」

 

なんで違和感覚えないのか・・・

 

「元々彼女は皇帝の従妹にして大ファンだった

らしく、当時から噂として流れていた王の駒と

皇帝のゴシップを否定するために色々調査を

してたんだとか」

 

馬鹿ですよねぇ。好奇心は猫を殺すんですよ。

 

「え?そ、それじゃあ皇帝も王の駒を!?」

 

憧れの絶対王者がドーピングしてたらショック

でしょうねぇ。でも残念。

 

「いえ、皇帝は使ってませんよ。二位と三位は

使ってますが」

 

正直ドーピングしてすら皇帝にすら勝てない

連中の名前なんて覚えてられないんですよねぇ。

 

「そ、ソレならなんで彼女は?!」

 

いやいや。

 

「皇帝が使って無くとも他の貴族は使って

ますし?運営以外にも知られたくないヤツ

なんかいくらでも居るでしょ?」

 

関係者全員が敵ですね。

 

「そ、そうですね。確かにそうです」

 

「さらに言えば、他所の貴族家の秘密なんか

探ったら王の駒とか関係なく殺されますよね?」

 

これは普通の話ですよね?

 

「あ~はい。ソレはそうです」

 

まぁ前任者の話はこれくらいで良いとして。

 

「つまり貴女は知らない事が多すぎます。

現実も知らないし、実際の下級悪魔の扱いも

知らないし、運営の動きも知らないし、上位

ランカーの情報も有りません。そんなのが

ゲームの学校?何を考えてるんですか?」

 

馬鹿ですか?アホですよね?

 

「・・・」

 

「ついでに言わせてもらえば、貴女はまだ

レーティングゲームの経験すらないじゃ

無いですか。眷属にも空きがありますし」

 

「え、えぇ。そうですけど・・・」

 

なんで疑問に思わないんです?

 

「さっきの喩えを使うならですよ、まともに

ボクシングをしたことがない人がボクシング

ジムを作るんですか?コミッショナーには

嫌われてて必要な知識も経験もコネも無いんですけど?」

 

そんなの誰が味方するんですか?

 

「あっ!」

 

今気付いたの?馬鹿じゃない?

 

「小説を書いたことが無い人がプロの小説家を

養成する学校を作れますか?せめてどこかの

レーベルで出版して賞を取ったとか、アニメ化

したとか、何十万・何百万部売れたとか、

編集として実務を積んだとか、そう言うのが

あるならまだしもです。

小説好きで実家が金持ちなだけのデビュー前の

新人が学校を作る?まんま阿呆じゃないですか」

 

有り得ませんよ。金持ちの妄言です。

 

「あ、あぁぁぁ。わ、私はなんて事を・・・」

 

もう悪魔社会全体に恥を晒してますよね?

 

「せめてプロとしてデビューして、実績

積んで、裏の事情も理解して、それらの

改善策や改良案を用意した上で学校が必要

だと判断したならソレも良いでしょうけどね」

 

だけど今はダメ。鼻で笑われて終わり。

 

「・・・こんなの誰だって私を現実を見てない

小娘扱いしますよね」

 

ようやく事の本質に気付きましたか。

 

「えぇ。貴女の関係者はみんなそう思ってます。

誰もソレを言わないのは貴女が公爵家の令嬢で

魔王陛下の妹だからですね」

 

老害連中は偉そうにしてるくせに個の力が

無いから、文句すら正面から言えません。

まぁそうやって影で笑うことで憂さ晴らしを

してる程度の連中だからご主人様も歯牙に

掛けないのですけど。

 

「お、お姉さまも・・・」

 

ん?あぁ、姉にまで馬鹿にされてると

思ってますか?

残念ながら姉も馬鹿です。

 

「彼女は純粋に貴女の夢を応援してますよ?

魔王としてレーティングゲームの運営には

関わってませんし、王の駒を巡るあれやこれ

のことも知らないんじゃないですかね?」

 

アジュカが隠してるみたいだし

 

「そ、そうですか・・・でもシトリー家は」

 

あん?そんなの知らないに決まってますよね?

 

「実家の方々は常識に則ってるだけですね。

王の駒は・・・まぁ魔王派でしょうから

知らないのではないですか?」

 

実際どうかわかりませんが。

 

 

「な、なるほど・・・」

 

少なくとも実家が意図的に自分を貶めてる

わけでは無いと知って安心しました?

 

けどこの程度じゃなぁ・・・

 

「で、アナタがご主人様に阿呆と言われる理由なんですが」

 

コレを理解しないことにはコイツに

前進はありませんよね?

 

「ほ、他にもまだあるんですか?!」

 

何を驚いているのやら・・・一番大事な

ことがあるでしょう?

 

「貴族家の次期当主が政治を省みずに

ゲームゲームって、馬鹿じゃ無いですか?」

 

貴族の仕事はゲームじゃ無く政です。

 

「あうっ!!」

 

こんなのが次期当主って・・・こいつ等は

もうどうしようもないですよね?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

「貴族家の次期当主が政治を省みずに

ゲームゲームって、馬鹿じゃ無いですか?」

 

「あうっ!!」

 

ま、全く持ってその通りよ!

経験とか下級悪魔の扱いとか王の駒とか

色々あったけど、貴族として最低限の

事をしてないヤツが何をしてる?と

言われれば反論できないッ!

 

「まぁ学校を作るのは良いんですよ?

人材の育成は重要です。

けどレーティングゲームの学校ってのがねぇ。

普通に文官育成の学校じゃダメなんですか?

それならご主人様もアナタに先見の明が

有るって褒めて下さると思いますけど」

 

そ、そうよね。貴族として領民を思うなら、

ゲームに頼りきりの現状を改善しなきゃ

駄目なのに、今以上にレーティングゲームに

のめりこむ様にする政策は悪手よ。

 

運営の老害共にとって良い餌にしかならないわ!

 

「あ、あの、シロネ様?」

 

「なんでしょう?」

 

椿姫?一体何を?

 

「い、今までのお話は確かにその通りで

我々に反論の余地は有りません」

 

そうよね。自分の未熟はまだしも

戦争の助長や老害の事をまったく

考えていなかった。

今のままじゃ下級悪魔をゲームに参加させ

ても軒並み潰されるか嬲り者になるだけ。

 

「ふむ。それで?」

 

うん。わざわざ口に出すことでも無いわよね?

 

「その、王の駒って我々が知っても

良い事なんですか?」

 

・・・

 

「あっ?!」

 

そうよ!オセ様の前任者で皇帝の従妹が

殺されてるじゃない!

シロネ様は暗殺されたりしないだろうけど

私たちはヤバイ!

 

「別に吹聴しなければ良いのでは?

大王派の連中にしてみても、貴女は公爵家の

令嬢。普通に大貴族だし、セラフォルー様

繋がりでアジュカ様から情報をもらってると

考えれば、知ってるくらいなら問題ないでしょ」

 

「「な、なるほど・・・」」

 

確かにそうよね?そもそも駒を造った

のはアジュカ様だし、魔王派と言っても

情報くらいは持っててもおかしくないって

感じなのか。

 

別に彼女みたいに秘密を探るわけでも

無いから、わざわざ言いふらさない限り

狙われることは無い。

 

それにお姉さまを抜きにしても公爵家

令嬢で後継ぎの私を暗殺するのは至難の業。

 

今まで通り阿呆面してれば殺されてるかも

知れないけど、今後はその可能性も考慮

して動くことになるから・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー匙視点ーー

 

会長に言われて街に出てみれば・・・

いきなりコレかよ。

 

「なぁ、仁村・・・」

 

俺の勘が間違ってなければアレって・・・

 

「えぇ、アレは間違いなくエクソシストです」

 

あんなローブ着込んで、人目を避けるような

術を使ってるし。

 

「だよなぁ」

 

でもってあんなに堂々と武器を携帯してるし。

アレは聖なる武器か?

 

悪魔の管理する土地で、堂々とコレか。

俺達って本当に舐められてたんだなぁ。

 

「使い魔を殺してないところを見ると

どうやら我々を討伐しに来たわけでは

無いと思うんですが・・・」

 

あぁ、そうなるか。

 

「ならとりあえず接触だな?どんな理由が

あるか知らねぇが、ココは悪魔の管理する

土地だ。武器を持って歩いてたら職務質問

くらいするべきだろ?」

 

会長が管理してる土地と言いたいとこなんだがなぁ。

 

「ですね・・・だけどいきなり襲われる

可能性も有るから、接触は気を付けて下さい」

 

「だな」

 

聖なる武器を持って悪魔の領土に来るヤツだ。

俺らじゃ下手に戦闘したらヤバイかも。

 

・・・まぁコイツらが何かやらかしても

シロネ様が殺して終わりそうだけどよ。

 

「ソコのエクソシスト。ココは悪魔が

管理する土地だが・・・戦争が望みか?

戦争が望みじゃないなら要件を聞こうか」

 

「ほう・・・町に入ると同時に接触

してくるとは、話に聞いていたより

無能の管理者と言うわけではなさそうだ」

 

「「・・・」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会にまでそんな評判が流れてたのかよ。

 

今日シロネ様に説教されて無かったら、

俺達って全世界の笑いモノだったのかなぁ。

 

 




君たち、色々おかしいよね?ってお話。

公爵は普通に大貴族だし、知ってても
粛清されたりはしませんよ?
オセ君も伯爵家当主だから知ってても
違和感も何もありません。

匙くん。誰かと接触したもよう。


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20話

眼鏡会長覚醒?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーカンザシ視点ーー

 

 

『おやぁ残念?阿呆さんの眷属が先に

接触しちゃったよぉ。コレは殺ったら

フォローじゃなくなっちゃうよねぇ』

 

だねぇ暗躍じゃ無く普通にメイン張っちゃうよねぇ。

 

それに私や白音ちゃんはまだしも、

神野サンと空さんはご当主様との関係を

秘匿しなきゃいけないし。

 

「うーん。あの二本は見てみたいけど・・・

阿呆や無能との話し合い次第じゃ行ける

んじゃないかなぁ?

いや、正直どっちでも良いんだけどさ」

 

惜しいと言っても所詮は紛い物だからね。

 

ご当主様や奥様に見せるにはレベルが

低すぎるから、笑いも取れないし。

神野サンが食べるくらいでしょ?

有っても無くても良いかな?

 

『おぉ!それもそうだねぇ!中途半端

ではあるけど祝福を受けたモノだし?

味わいとしては☆1つ上げても良いぃ!』

 

うーん微妙。まぁいいや()

 

あの痴女みたいな恰好した連中は学校に

行くみたいだし。向こうは白音ちゃんの

管轄だもんね。

 

何を宣うのかは白音ちゃんの報告を待とうかな?

 

「それに雑魚だし。アレは多分コカビエルの

関与を知らないか、先遣隊が潰されてるから

その確認の為に派遣されたっポイですよね?」

 

まさかあんな雑魚にコカビエルが殺れるハズ無いよね。

 

『だねぇ。だけどさ。何であの娘っこたちが

送られてきたんだろうって考えてごらん?』

 

ん?何でって何かあるの?

 

『あいつらはねぇ。片やデュランダルの

後継者で、片や前任者と恋仲にあった弟子

を殺した紫藤トウジの娘だよぉ?』

 

「へぇ~」

 

なるほどなぁ。雑魚にしてはレア度

が高いんじゃない?

 

けどあの程度でデュランダルねぇ。アノ禿

より若いってこと以外に何かあるのかな?

 

でもって紫藤トウジ・・・家族大好き

なアレが悪魔の巣窟に娘を派遣するの?

 

教会内部に何かがあったか、ソレとも

教会内の戦争肯定派がコカビエルの策に乗った?

 

少なくとも娘が殺されたら父親は切れる

だろうし、教会と堕天使が戦うことに

なるよね?

 

私たちは・・・まぁ見学かな?

 

コカビエルも私たちと戦う気は無いし。

 

ご当主様も自分が売られた喧嘩なら

買うけど・・・無能に喧嘩を売られた

だけなら放置するよね?

 

かといってコカビエルが無能に何か

するってのは考え辛い。

 

「特攻・・・いや、ただ死ぬことを望まれた

鉄砲玉みたいなナニカってことですかね?

けど、向こうの思惑がその程度なら、

今回もご当主様の予定通りになりそうかな?」

 

あんまり予定通りでつまらんって言って

金魚とか秘孔の研究してるけど・・・

まぁ奥様が居れば政に関しては問題無いし?

せめて趣味くらいは満喫して欲しいよね!

 

『そぉだねぇ。このままだと主もさぞかし

つまらないだろうからさぁ、僕が盛り上げ

てあげようじゃないかぁ!』

 

神野サンもノリノリだなぁ。

 

「うんうん。コカビエルやらアザゼルの驚く

顔を録画してNDKしましょうかね」

 

無能は多分神野サンのこと知らないよね?

 

ふふふ。きっとアホ面晒すからご当主様も

楽しんでくれるはず!

 

「あ、でも駒王町に迷惑かけちゃ駄目

ですよ?隣町の拠点にも先制攻撃しちゃ

駄目って言われてますし」

 

下手に戦闘になったら補佐官様に殺されるよ。

 

『おぉう!鬼ぃさんにシバかれたら

僕だってタダじゃ済まないからねぇ!』

 

ですよねー。あのヒト。裁判前の霊的

なモノに対して絶対の裁量権持ってます

から、空さんですら条件次第で一方的に

殴り飛ばされますからねぇ。

 

ご当主様も偶に鍛錬に付き合って貰ってる

らしいし、流石に神代から生きる鬼神は

違いますよね。

 

「そーいえば空さんは何処行ったんです?

確か冥界での仕事以外はコッチに居るって

聞きましたけど?」

 

私じゃ抑えれないし、神野サンも力じゃ

抑えれないから、野放し状態なんだよね。

 

いや、神野サンの分体が憑いてて、何か

有ったらご当主様か補佐官様が動くらしいけど・・・

 

『んん?あぁ~空クンなら前にグレモリー

から貰った土地でゆっくりしてるよぉ?』

 

あぁそうか。舗装とかされてないむき出し

の自然だもんね。

しかも日本神話群の山の神の祝福がある

らしいから、空さんにしたら冥界より

くつろげる場所なんだね。

 

なんであんな場所を貰ったかと思ったら

空さんに対する福利厚生だったかぁ。

 

流石ご当主様だね!

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

『・・・♪』

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーシロネコ視点ーー

 

 

「はぁ?エクソシスト?」

 

ふむ?説教が終わった辺りで眷属の使い魔

が来たと思ったら・・・まさか連中を発見

するなんてね。

 

コレは、コイツの眷属を働きに行かせた私の失策になりますか?

 

いやいや、サボってるのを働かせるのは

当然ですよね?叱られませんよね?

 

むぅ・・・ご主人様の判断基準がわかりませんよ。

 

今まで町に入って来た連中は面倒事が発生

しないように見敵必殺して来ましたが、

こいつ等に見つかってこうやって接触まで

されたら簡単には手を出せません。

 

何と言っても我々の仕事はフォローですからね。

 

「シロネ様、どう思いますか?」

 

ん?あぁ、自分が今までアレだった事を

知ったから自分の考えに自信が持てなく

なりましたか?

 

本来ならコレからじっくり考えて自分の

進むべき道を見つけるべき時にこんな

問題が発生したらねぇ。

 

「連中の望みが会談なら受けてみては?

何を言うかは知りませんが、とりあえず

聞いてみないことにはね」

 

予想は出来てますけど、確定ではありませんし。

 

「そ、そうですね!」

 

現実を知った後でいきなり大きな仕事が

来て焦ってますが・・・まぁフォローは

しますよ?

 

「まず私が持つ情報を確認して下さい。

内容は恐らくコレ関連ですからね」

 

もしもコレ以外なら教会や堕天使連中は

ご主人様の予想を覆したことになります。

 

その場合はご主人様も大喜びでしょう!

是非超えて欲しいモノですが・・・

エクソシストが2人でしょ?下回ると言う

意味では超えて来るかもしれませんよねぇ。

 

「さ、流石シロネ様です!」

 

ん?何がって…あぁ情報の重要性を理解できて

いるならそうなりますよね?

 

相手の情報も持たず、何を狙ってるかも

分からないのに会談なんか受けるのは

ただの馬鹿ですから。

 

「内容については魔王様が絡む案件に

なりますから、軽々しく相手に言質を

与えてはいけませんよ?」

 

貴族にとっては交渉の場こそが戦場です。

その辺も学んでもらわなきゃ。

 

「ま、魔王様が絡むんですか!?」

 

何を驚いているのやら。

 

「そりゃそうです。そもそも他勢力との

交渉ってそういうもんでしょ?」

 

外交ならまんまお姉さん絡みですよね。

 

「た、確かに!」

 

好き嫌いで仕事を選べる立場でも無いし。

準備万端整った戦場を創れるようになる

には場数を踏む必要があります。

 

その辺の経験も積ませて、さっさと阿呆から

脱却させちゃいましょう!

 

「では情報を開示するので拝聴なさい」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

ふふふ。この奥様っぽくしゃべるのは

なんかイイですよね!大人って感じです!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

カクカクシカジカキョウカイダテンシムートンイトウ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

こ、コカビエル?!この前のアザゼルの件

が無かったら笑って流してるけど、態々

エクソシストが来てるってことは本当か!

 

けど、何だってそんな大物がこの町に!

 

「え、エクスカリバーが盗まれたんですか?」

 

そ、そうよね。椿姫も驚いてるけど

あんな有名な聖剣を盗まれるって

おかしくない?

 

「ま、所詮はエクスカリパー(笑)です。

警備も中途半端だったのでしょう。

ただ、それでも有名なモノですからね。

獲物には丁度良かったんじゃないですか?」

 

ん?

 

「え、エクスカリパー?バーじゃないんですか?」

 

ど、どういうことだってばよ?!

 

「そこからですか?教会はあれらの剣に

エクスカリバーとか名前をつけてますけど

そもそもエクスカリバーって教会とは

関係無いでしょ?」

 

・・・まぁそうよね。湖の精霊とか

魔術師のマーリンとかは教会からしたら

異端よね?

 

「エクスカリバーに憧れたヤツが人造神器

を造って『コレはエクスカリバーだっ!』

って言っただけでしょう?ソレに聖剣が7本

とか頭おかしいんじゃないですか?」

 

戦争で破壊されて7つの欠片を元に

造り直したって言うけど・・・

 

「そもそも伝承のエクスカリバーに

そんな力無いですよね?

 

擬態の聖剣?いつエクスカリバーが

姿形を変えたんです?

 

夢幻の聖剣?エクスカリバーに幻覚

見せる効果あったんですか?

それなんて鏡花●月?

 

天閃の聖剣?速度を増すって何です?

脚力?腕力?筋肉?何を増すんです?

 

祝福の聖剣?エクスカリバーに神様

関係無いのに祝福?

 

破壊の聖剣?斬れよw

 

透明の聖剣?風●結界ww

 

支配の聖剣?ソレを剣に頼るなよ。そも

そも剣にそんな力が有ったら部下は離反

してませんよね?」

 

えっと・・・確かにそうね。

 

7本が7本とも伝承の中の聖剣とは

全く関係無いわよね。特に支配とか。

 

「…なるほど、そう言われれば確かに

教会の誰かが造った人造神器もどきと

言った方がしっくり来ますね」

 

椿姫も追憶の鏡(ミラー・アリス)を持ってるからねぇ。

確かに7本とも聖剣と言うには能力が微妙か。

 

教会の上層部にしてみても出自が

怪しいモノだから警備もそれほど厳しい

モノじゃ無かったと考えれば・・・

 

「納得できたようでなによりです。

でもって、コカビエルの狙いは

三種族の睨み合いからの漁夫の利を

上げることと予想されます」

 

「漁夫の利ですか?」

 

このままだと完全に天界を敵に回す

だけですよね?

 

「そもそもアレが本気でタダの戦争を

求めるならば、態々こんな面倒な

真似はしません。貴女か無能を殺すか

オセ領に攻め込めば済む話でしょう?」

 

「それは・・・そうですね」

 

私を殺せばお姉さまが報復をするし

リアスを殺せばサーゼクス様が動く。

オセ様に至っては、準備万端でソレを

待ち構えてる節までありますよね?

 

「ですがそれだと一方的に堕天使が

負けますからね。

今回わざわざ教会戦力を駆り出したのは、

悪魔と天界を戦わせる為の一手でしょう」

 

「私たちと天界を?」

 

いや、この場合は天界と悪魔が一時休戦

してでも堕天使を狙うんじゃ?

 

「悪魔と共闘するなんてことを認めたら、

連中の実働部隊であるエクソシスト達が

納得するはずないでしょう?」

 

「「あっ!」」

 

そうか!現場が暴走するのか!そして

連中にしてみたら上級悪魔で魔王の妹

である私やリアスは、弱いくせに価値が

高いと言う絶好の手柄首!

 

そもそもエクソシストは悪魔や堕天使に

恨みを抱いてる連中だから、戦争再開を

望んでるし、悪魔が悪魔の駒で戦力を

回復する前にって思ってるはず!

 

もしかしたら教会だけじゃなく他の神話

勢力だって、エクソシストの味方をする

わよね?

 

なんたって悪魔の駒は自分たちの神使やら

神獣を悪魔にするんだもの!

 

サーゼクス様の眷属には麒麟も居るし

スルトの分体も居る。

本人たちはともかく、中国や北欧神話

が面白いはずが無い。

 

天界の支援は無くとも他の神話の支援を

受けれるなら勝機は十分。

 

少なくとも地上から私たちを叩きだす

くらいの事はできるわね。

 

天界連中にしてみても信者が悪魔を殺す

のを止めることなんか出来ないわ。

 

「聖書の神が死んでいる以上、今の天界

に他の神話勢力からの介入を抑える術は

ありません。暴走した現場に引きずられて

全面戦争になれば、サーゼクス様を始めと

した超越者と呼ばれる方々は向こうの神の

相手をしなきゃ行けませんし」

 

「「・・・」」

 

今、なんか、変な言葉が聞こえた気が・・・

 

「あの、シロネ様?聖書の神って死んだ

んですか?」

 

椿姫、今日ほど貴女を眷属にして良かった

と思ったことは無いわ。

 

「そうですよ?なんでも前回の大戦で

先代の魔王様と相打ちしたとか」

 

「「えぇぇぇぇ?!」」

 

神もそうだけど、先代の魔王様って

そうやって死んでたの?!

 

「いや、先代とは言え魔王様ですよ?

討ち取った相手くらい調べましょうよ」

 

「そ、ソレはそうですけど・・・」

 

でもそうよね?アザゼルに打ち取られた

とか聞かないし、ミカエルに殺された

とかなら絶対に復讐してるはず。

 

そうか。相打ちだったからこそ停戦が

成立したのか・・・

 

「そんなわけですから、向こうはコチラを

挑発して戦端を開こうとしてくるでしょう。

もしくはナチュラルに無礼なヤツを

送り込んできて、無礼打ちしたところ

を口実にしますかね?」

 

な、なるほど。

 

「その使者と我々、いえソーナかリアス殿が

相打ちになればコカビエルは大喜びですね」

 

そういうことよね?

 

「ですね。コカビエルや他の神話の連中は

大喜びでしょうし、教会のエクソシストや

主戦派も大喜び。

悪魔はサーゼクス様とセラフォルー様は

大激怒。ご主人様は粛々と戦争準備をして

堕天使を滅ぼし、後顧の憂いを無くしたら

他の神話勢力の神を相手に喧嘩することに

なるんでしょうねぇ」

 

「いや、もう世界大戦じゃないですか!」

 

私たちの首ってそんな価値があるの?!

 

「そうですね。そんなわけですから、

間違っても貴女が連中に殺されることが

無いように、私も会談に参加します」

 

そ、ソレは助かりますけど!

 

「あの、オセ様って戦争推進派では?」

 

そうよね?世界大戦バッチ来い!って立場

なんじゃないの?

 

「勘違いされがちですが、確かに

ご主人様は戦争肯定派であり推進派です。

でもソレは【悪魔は悪魔らしくある為】

のモノです。

馴れ合いを良しとはしてませんけど、

別に無差別に他所の神話群の神と戦おうとも

思ってませんし、現時点では堕天使や天使と

いった敵種族を滅ぼそうとも思ってません。

何せ天使や堕天使がいなくなれば悪魔の敵が

いなくなりますからね」

 

「「はぁ」」

 

何と言うか・・・哲学的?なのかしら?

 

「ま、その辺は後でも良いでしょう。

今はエクソシストとの会談です。

相手はリアス・グレモリーとの会談を

求めて来ていますが、コレは向こうの

上層部としては無能を相手にした方が

挑発しやすいし、現場や堕天使としても

私たちオセ家と断交して無能の名を世界に

広めているグレモリーの方が扱いやすい

と言うのが有ります」

 

・・・そうよねぇ。あの無駄にプライド

が高いリアスならエクソシストに何か

言われたら即キレるだろうし、会談の

内容もサーゼクス様に伝えるような

ことはしないわよね。

 

さらにオセ家と断交しててフォローも

無いなら、向こうとしては狙い目。

 

・・・堕天使や天界ですら私たちがオセ様

からフォローを受けてたことを知ってた

ってことよねぇ。

 

ほんと、何してるのよ私。

 

「ではリアス殿を呼ばずに我々が会談を

受ければ良いのでしょうか?」

 

椿姫・・・そうよね。反省は後よね。

 

「ですね日中の管理者はソーナ殿ですし、

わざわざ連中の策に乗る必要はありません。

挑発されることや護衛の事も考えれば、

参加者は私と真羅さんで良いでしょう」

 

・・・匙が居た場合、挑発に乗ったら

無礼を理由に戦端が開く可能性が有るか。

それに玉砕覚悟で攻撃してきたら椿姫

以外だと死んじゃう可能性も有る。

 

「一応リアス・グレモリーが後で

騒ぐ可能性も有るので、眷属の女王を

呼んで参加させてはどうです?」

 

「・・・確かにそれは有りますね」

 

まぁ姫島さんは日中は私が管理者だって

言うのは知ってるし、女王を代理人に

するのはある意味当然。

 

リアスにも相手にも無礼にはならないか。

 

でもってリアスが絡んだから魔王様に

報告を上げる必要もあるわね。

 

「それにアレが殺されたら堕天使の

バラキエルが教会に戦闘を仕掛ける事に

なりますよ。堕天使に味方する陣営と

天界に味方する陣営を把握できますね」

 

・・・なるほど、コレが政治。コレが

戦略か。私より年下だけど明らかに

踏んでる場数が違う。違い過ぎるわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、連中がナニを(のたま)うかを

聞きましょうか。

場合によってはそのまま戦争です。

キチンと記録は取って下さいよ?」

 

 




真面目眼鏡?好きですが何か?

神野サン。とりあえず一本イったもよう。

まぁ普通に考えたら捨て駒ですよね?
作者的には、悪魔を殲滅する為の罠
だと思ったんですよねぇ。ってお話。

ちなみにオセ君は攻め込ませない
攻め込まないを基本にしているので
攻め込まれない限りは他勢力に挑む
ような真似はしませんよ?

地上のオセ領に攻撃を仕掛けたら
空くんがコロコロソワカしますし、
かんちゃんが狙われたらグロリアスが
発動しますけど。

真羅ってさぁ絶対ダメな苗字でしょ?
ご立派様を想像しますよね?


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21話

エクソシストとの会談。

眼鏡会長無双回?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

 

「ごきげんようエクソシストさん。駒王町の

管理者でありシトリー公爵家次期当主である

ソーナ・シトリーよ」

 

「・・・?」

 

私の名乗りを聞いて姫島さんが不思議

そうな顔をしてるけど、気持ちはわかるわ。

 

私は今まで積極的に家の名前を名乗る

ような真似はしてこなかったものね。

 

だけどシロネ様から対外的な交渉を

するなら正式な立場を名乗れって

言われたのよ。

 

…家の力を前に出すのは面白くないけど

シトリー家の次期当主じゃなきゃ私が

管理者になんかなれるわけ無いって正面

から言われたらねぇ・・・

 

それに、外交は家の格がモノを言うわ。

 

タダのソーナよりはこっちの方が意味が

有るって言われた以上、使えるモノは

なんだって使うわよ。

 

「ふむ。シトリー公爵家・・・確かに72柱

の悪魔として有名だな。

そうか管理者は話に聞くリアス・グレモリー

では無かったか。通りで眷族が迅速な対応

をするわけだ」

 

・・・どんな話を聞いたんだか。

 

一瞬姫島さんのこめかみがピクッて

したけど、まぁ日中の管理者は私だし。

話の邪魔するなって言っておいたから

とりあえずは無言で居るようね。

 

コレが性犯罪者やリアスだったら

どうなってたことやら。

 

「で?教会から派遣されたエクソシスト

が悪魔に名を名乗らないってのは当然だと

いうことくらいは理解しているつもりだから

それを無礼と罵るつもりはないけど…

そもそも武器を持って私の管理地に侵入し、

会談を申し入れたのはそちらよね?

なら最低限通すべき礼儀っていうのが有ると

思うのだけど?」

 

戦争は望んで無いけど無駄に下手に

出る気も無いわよ?

 

「ほほう。思うところはあるが、言っている

ことはそちらが正しい。私はゼノヴィアだ」

 

「・・・そうね。イリナよ」

 

フルネームで無いのは、まぁ良いか。

 

「ではお話の内容を伺いましょう。あぁ

ちなみに貴女方が管理不十分でコカビエルに

奪われたエクスカリバーは、皆殺しの大司教

と言われたバルパー・ガリレイが持ってる

みたいね。彼は何かの儀式をして剣を一つに

纏めようとしているみたいよ?」

 

偽物の剣を一つに纏めてナニがしたいんだか・・・

 

「「「はぁ?!」」」

 

まさしく吠え面よね。シロネ様から頂いた

情報は正確無比。姫島さんも反応してる

けど・・・コレはシカタナイわね。

 

「な、なるほど、そこまで調べがついて

いたとは。そうか、バルパー・ガリレイ。

彼が裏切り者か」

 

「ゼノヴィア!簡単に信じて良いの?!」

 

そりゃ教会としてはイリナ・シドウの

「悪魔の言うことを頭から信じちゃ駄目」

と言うスタイルが正しいのだけどね。

 

「貴女方は情報収集と、聖剣の奪取。

もしくは破壊が任務なんでしょう?

そして集めた情報の正否を判断するのは

現場ではなく、報告を受けた上層部が

するものよ」

 

間違ってもリアスが勝手に判断して

良い事じゃないからね。

 

姫島さんへの説明が面倒だわ。

 

「何ですって?悪魔が偉そうにっ?!」

 

沸点低いわねぇ。まぁエクソシストに

とって、私たちは仇敵。慣れ合わない

と言う点で言えば間違ってないわ。

 

けど神が存在しない以上、こいつらは

所詮教会上層部の犬でしかない。

なら犬よりその後ろに居る奴らを

見据えて動くのが大事よね。

 

「イリナ、悪魔の言うことに賛同するのは

癪だが、言っていることは間違ってない。

それにこの会談は情報を集めるのが任務

の一つなのだから、感情で潰すような

真似は慎んでくれ」

 

ほう。こっちは冷静・・・いや、これは

いつでも私たちを殺せると言う余裕?

 

ここにシロネ様が居なければそれも決して

間違いとはいえなかったけど、残念ながら

居るのよねぇ。

 

「さっきの悪魔の言葉を信じるのか?

と言う話だが、可能性は高いと思う。

何せバルパー・ガリレイは教会の

聖剣計画に関わっていたしな。

エクスカリバー絡みの事件に関与

している可能性は非常に高い」

 

まぁ情報を判断するのは上層部でも

現場は現場で判断が必要だものね。

 

「むぅ・・・」

 

コッチは感情のままに動くガキ、か。

教会はガキに刃物を持たせて暴れさせて

戦争の口実にする気かしら?

 

「聖剣計画・・・」

 

あぁ、リアスのところの騎士も無関係

じゃないわよね?

 

でもそういうのは後にしてもらうわ。

 

「それで、コカビエルの狙いは天界と

悪魔の戦争を起こすことでしょう。

実際こうして聖剣を追って来た貴女方が

現場で悪魔に対して感情を爆発させたり、

今ここで私に斬りかかってきたらソレが

戦争の口実になるからね」

 

敵の狙いが分かってるならさっさと

潰す。私にはコカビエルを泳がせる

だけの余裕も力も無いのよ。

 

「・・・ほう。確かに有り得ん話ではない」

 

「そうね。それは有り得るわ」

 

でしょうね。悪魔を前に会話をするだけ

で本来は異端。そのまま切りつけようと

してもおかしくないわよね。

 

「私としては堕天使が作った舞台で

踊る気は無いし、戦争の口実として

斬られるのもゴメンだと思っているわ」

 

さて、気付くか?

 

「そうか。そういう事か・・・」

 

コッチは気付いたわね?

 

「え?何?どうしたの?!」

 

コッチは駄目、と。

 

「私たちはコカビエルの打倒や聖剣の

回収の為に派遣されたんじゃない。

主戦派によって戦争の口実を作る為に

派遣されたと言うことだろう?」

 

それが分かっていながらこの表情。

……これが教会のエクソシスト、か。

 

「えぇ、そうね。私はそう見てるわ」

 

正確にはオセ様だけど。

 

「「ええぇぇ?!」」

 

姫島さんは全く話についてこれてないわね。

 

「イリナ・シドウがココで死ねば教会では

比較的穏健派のトウジ・シドウも動くわ。

私が死ねばセラフォルー・レヴィアタン

が動くことになる。相打ちなら最高よね?」

 

まったく、よくもまぁこんな策を考えるモノね。

 

「お、お父さんのことまで!?」

 

いやいや。

 

「そりゃぁ10年前のココの管理者やその

恋人であったヤエガキを殺した教会有数の

戦士の名前くらいは知ってるわよ?」

 

実際にクレーリアを殺したのは悪魔だけど。

 

「や、八重垣さんを殺した?お父さんが?!どういう事っ?!」

 

おや?知らなかったのかしら?

 

「・・・不勉強ね。ま、コレも悪魔の

戯言と思って聞き流しなさいな。

今の貴女には関係ない事だし、態々

私が教えることでも無いわ」

 

「くっ!!」

 

「……イリナ。彼女の言う通りだ。悪魔の言うことを真に受けるな」

 

そうそう。冷静になりなさい。

 

「流石は破壊魔ゼノヴィア・クァルタ。

ヴァスコ・ストラーダの跡を継ぐにはまだ

色々と足りていないし、ことあるごとに

シスターグリゼルダに説教されている

みたいだけど、それなりに現実は知ってる

みたいね?」

 

「「はぁ?!」」

 

ふふふ。化けの皮が剥がれてるわよ?

情報を制する者は世界を制する!

つまりオセ様が世界を制してるのよ!

 

「いや、何を驚いているのかしら? 我々

悪魔陣営もただエクソシストに狩られて

いるわけじゃない。相手の情報は調べるし、

警戒すべき相手は警戒しているのよ」

 

実際は自分は大丈夫!って油断慢心して

殺されてるけど。

・・・そもそもこの情報ってどうやって

集めたのかしら?

 

「そ、そうか。まぁストラーダ師が

有名なのは事実だし、シスターも

知る人ぞ知る存在ではあるからな・・・」

 

そうそう頑張って自分を納得させなさいな。

 

「そうね。私たち悪魔の奸計に嵌って

聖女アーシア・アルジェントをみすみす

放逐したりする無能連中の情報なんか

いくらでも抜けるわよ?」

 

シロネ様、本当にこんなに挑発して大丈夫

なんですよね?向こうが切れてもちゃんと

守ってくれますよね?!

 

「なっ!」

 

あれ?姫島さんは知らなかったっけ?

まぁいいや()

 

「アーシア・アルジェントだと?あの

悪魔を癒した魔女がどうしたと言うんだ?」

 

「……」

 

おー姫島さんが無表情になったわね。

解説してあげるからしっかり聞くのよ?

 

「簡単に言えば悪魔には聖女を堕とすことを

趣味にしてる奴がいてね?

そいつが自分の趣味のついでに教会戦力から

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の使い手を引き抜く為に

罠を張ったのよ。

だってアレだけの回復能力を教会勢力

のエクソシストに持たれたら・・ねぇ?」

 

普通に考えたらあんなの放逐する

なんて有り得ないと思うんだけど。

 

「なっ!つまり我々は・・・」

 

コレはアレですよね?こいつを挑発

するのとリアスに事実を伝えるのと、

私にもくだらない正義感を捨てろって

言ってるんですよね?

 

それが出来ないなら私にも見切りをつけるという、オセ様からの試練!

 

「そう。エクソシストとの戦闘によって負傷

したと思わしき悪魔を治療した彼女自身の

愚かさもあるけど、その前段階である

『聖女のいる教会に現れた悪魔の存在』

自体が悪魔の罠だと気付くことができず、

結果として優秀な回復役を手放した阿呆ね」

 

ならば悪魔らしい悪魔を演じ切って見せるわ!

・・・演じるって言うのが情けないところなん

だけど、実際未熟なんだからシカタナイわよね。

 

「悪魔ごときが、いい加減にっ!!」

 

お?抜くか?抜くか?

 

「止めろイリナ!勝手に戦争を起こす気かっ!」

 

ちっ。コレで抜いてたらシロネ様の狙い

通りだったのに。

 

・・・いや、何を企んでるかは知らないけど。

 

「ゼノヴィア!でも!悪魔なんかにこんなに

馬鹿にされてタダで済ませちゃ!」

 

沽券に関わるって?誰の?貴女?

 

「我々の感情で任務を放棄することは

できん・・・それに情報の裏も取らず

に剣を抜けば、それこそ戦争だ。

私たちが何をしに来たかを考えろ!」

 

ん~。コレは予想以上に粘るわね。

 

「あら?そちらがどんな情報が欲しいか

わからないから、関係が有りそうなのを

教えてたんだけど・・・気に障ったなら謝るわ」

 

そう。挑発じゃないのよ?

 

「・・・そうか」

 

「ぬけぬけとっ・・・」

 

そもそも貴女達は敵だし。遠慮も配慮も要らないわよね?

 

「それで、最終的にどんな情報が欲しいの?

コカビエルの拠点なら隣町だし、日中は

私を、いえ、私の姉であるレヴィアタンを

警戒してコチラには来ないわ。

細かい場所については・・・態々

教えてあげる必要は無いわね。何から

何まで悪魔からの情報じゃアレだろうし。

そのくらいは自分で調べなさいな」

 

警戒されてるのは正確にはオセ様だけど

これ以上の情報開示は許されてないしね。

 

「……もっともな話だ。情報については有り難く頂こう」

 

「・・・」

 

ふむ。ナチュラルに無礼なヤツが

来るって分かってたから良いけど、

知らなかったら匙とかを会談に

参加させてたわよねぇ。

 

その結果眷属を御しきれないと

して見切りを付けられてたか。

 

「そう?後はアレでしょ?コカビエルは

自分達で相手をするから、自分たちが

死ぬまでは静観してろって言うんでしょ?」

 

本来ならコイツ等ごときがコカビエル

に勝てるわけ無いからね。

自分の任務に気付いたゼノヴィアなら

理解できるわよね?

 

「・・・そうだな。ここで話をする前

ならばエクスカリバーはコチラで片付ける

から手を出すな。と言う予定だった」

 

「ゼノヴィア?!」

 

ふむ?心境に何か変化でも出たのかしら?

 

「管理者が噂通りの無能なら『邪魔だから口

を挟むな、手も出すな』で良かったんだがな。

流石にここまで情報に差が有るなら、素直に

協力を仰ぎたい」

 

「ちょっと!何を勝手に?!」

 

へぇ。完全に私を捨てるタイプか。

 

「イリナ。私は任務を遂行するために

ここに居るのであって、無駄死にする

為にここに居るわけじゃない。

それにコカビエル相手にここまで情報を抜け

るなら間違っても足手纏いの無能ではない。

その実力も十分だろう。感情で否定するのは

簡単だが、明確な理由が無いなら黙ってくれ」

 

「・・・」

 

いや、情報を抜いたのはオセ様なんだけど・・・

 

って言うかリアスの評価が凄いわね。

……実際は日中の管理者だった私の

評価も合わさってるからアレだけど。

 

姫島さんなんか・・・アレ、奥歯とか

砕けない?唇どころか握りこぶしからも

血が出てるわよ?それ大丈夫なの?

 

「評価をしてもらうのは悪い気はしない

けど、さっきも言ったようにコカビエルの

狙いは天界と悪魔の戦争よ?」

 

姫島さんを気にしてたら話が前に進まないし

さっさと話しを進めましょう。

 

そもそも自業自得だし。

 

「ふむ・・・では猶更我々が協力すべき

ではないか?」

 

まぁそう考えるのが普通よね。

私もそうだけど、コレが現場の兵士視点の限界。

 

「ゼノヴィア殿は現地の判断で納得できる

かもしれないけど、他のエクソシストや

サポート要員の方々は悪魔との共闘に納得

できるのかしら?一度共闘すると言った

相手に後ろから斬られたら私たちも黙って

はいないわよ?」

 

馬鹿正直に信じる方が馬鹿だって言われたら

その通りなんだけど・・・それでも正式な

共闘の条約を結んだなら条約違反よね?

 

「あぁ、なるほど。コカビエルを相手に

決死の私と他の者達ではどうしても意見

の相違があるし、むしろ私が異端として

処分されるか」

 

「そうね。そうなったら共闘どころじゃない

でしょ?故にこちらからは用意できるのは

・・・情報と食事と拠点かしら?」

 

このくらいなら私の判断でも大丈夫

って言われたし。コレ以上は冥界に

確認を取らなきゃ駄目よね。

 

「情報はわかるが、拠点と食事?それなら

コチラでも予算が有るから用意出来るぞ?」

 

うん。普通なら舐めてんのかってなるわよね?

 

「コカビエルを相手にするのにその辺の

ホテルや民家でも利用するつもり?

何時コカビエルの部下に襲撃されるか

わからないし、民間人の被害も出るわよ?」

 

教会は堕天使に利用された程アレだし、

先行してた連中は全員音沙汰無しでしょ?

 

「ふむ。それは確かに。そちらの用意した

拠点ならレヴィアタンの影響があるから

襲撃の可能性も少ないし、君たちも戦争を

望んで無いと言うのは本当だろうから、

悪魔に襲撃される可能性も少なくなる」

 

はぐれ悪魔だのコカビエルに呼応した

主戦派が居るから全くないとは言えない

のよねぇ。

その辺は理解してるみたいだけど・・・

 

「そういう事ね。せめて休憩くらい

ちゃんと取りたいでしょう?コッチも

情報を届ける場所が安全地帯なら

安心して部下を差し向けられるし」

 

教会勢力の拠点に眷属を行かせるなんて御免よ。

 

それに私にはわからないけど、彼女たちは

普通にトイレや食事、睡眠が出来る環境

なんて望んでも手に入らないんだとか?

 

こう言ったら確実に「お前が言うな!」って

言われるんだろうけど・・・大変よねぇ。

 

こういう現場の意見も何も知らないで

ぬくぬくと過ごしてきた才能頼りの

お嬢さんなんか、コイツ等にしたら

赤子の手を捻るようなモノよね。

 

「うむ。君が思った以上に話せる悪魔で

良かったよ。私はその協力を受けたいが

イリナはどうだ?」

 

あぁ、居たわね。黙ってろって言われた

から黙ってたの?・・・無駄に素直ね。

 

「…私としても民間人に被害を出したく

無いし、戦争をしたいわけじゃない。

一応上に確認は取るけど、私個人としては

文句は無いわ」

 

ま、それでも悪魔に協力するなって言う

可能性もあるけど、コレに関しては教会

の意向だし。私には関係無いわ。

 

「そう。なら貴女方の宿泊先を用意するわ」

 

今回はここまでね。

 

「ではとりあえず今日の会談はこのくらいで

良いかしら?今回が初対面で更に初日、本来

なら顔見せとアイサツで終わるモノが

ここまで話が進んだんですもの。

貴女方も上に報告することも有るだろうし、

私も上層部に連絡を取る必要が有るわ」

 

コッチはその上層部が隣に居るけどね!

 

「もっともな話だ。宿泊先までの

地図を貰えたらお暇するとしよう」

 

よし、これで連中の動きを知りやすく

なったわね。

あとは・・・あぁ、コレもあるか。

 

「知っての通り、イリナ・シドウの幼馴染

である兵藤一誠は赤龍帝の継承者であり、

リアス・グレモリーに仕える悪魔となったわ。

軽々しく自宅訪問なんかしたら彼女が無駄に

騒ぐから接触は遠慮して頂戴」

 

あれだけ溺愛してるお気に入りの眷属に

エクソシストが接触したら気が触れたように

騒ぐだろうからねぇ。

 

ほら、コレ以上ないと思ってた姫島さんの表情がまた変わったわ。

 

シロネ様から情報をもらった私が言うのも

アレだけど、こいつ等って内部の報連相が

まったく出来てないんじゃない?

 

こんなのと一緒にされるのかぁ・・・嫌だなぁ。

 

「・・・そう」

 

うーん。コッチはゼノヴィアに比べたら、随分アレね。

 

けど納得しようが納得しまいが私は

忠告はしたわよ?後はソッチの問題だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・リアスと私は無関係だってちゃんと言っておかないとね。

 

 




まぁ、破壊魔さんは最初はマトモでしたよね?
原作主人公に関わって劣化しましたけど。

シロネコから貰ったばかりの情報を
ちゃんと覚えてる辺りは流石眼鏡。ってお話

シロネコは気配を消してますがちゃんと
部屋の中に居ますよ?

眼鏡会長を守る気はあるけど、姫島さんが
暴走して殺されても動く気は有りませんね。


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22話

会談が終わった後のお話。

げ、原作キャラが?!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!

アンケご協力ありがとうございました!

沢山の方が最初で良いとのことでしたが
不満を抱いている方も結構な数が居ると
言うことがわかったので、一端隠します。

ご協力ありがとうございました!
(大事なことだから2度)


ーーソーナ視点ーー

 

さて、エクソシストは帰ったしシロネ様

からも特に何も言われてないから、まぁ

及第点ってことかしら?

 

あとはお姉さまへの報告書の作成よね。

 

「ソーナ会長、説明。して頂けますよね?」

 

あぁ、コイツもいたか。

 

ニ゛ッ゛コ゛リ゛って感じかしら?少し前なら

引いてたかも知れないけど、シロネ様の

殺気に比べたらそよ風以下。出直しなさい。

 

「もちろん断るわ」

 

そもそも、何でリアスの下僕に過ぎないアンタにそんな態度取られて私が譲らなきゃいけないのよ。

 

ヒトにモノを聞くにはそれなりの態度が有るでしょう?

 

さっきまでは説明しようとも思ったけど、こんな態度取られたらねぇ。

 

「なっ!」

 

何?今の威圧モドキで私が素直に情報

をペラペラ話すと思った?

 

「何を驚いてるの?私はリアスの部下でも

無ければ付属品でも無いわよ?」

 

そう。私はシトリー家の次期当主として

相応しい態度を取らなきゃ駄目なの。

なぁなぁで済ませて良い事なんかない。

 

特にコイツらに関しては・・・

 

「そもそも私は学校の秩序を乱す者は

たとえリアスでも許さないと言いましたよね?」

 

しっかり釘は刺したわよ?

 

「・・・えぇ、ソレが何か?」

 

ソレが何かぁ?

 

「白昼堂々とアーシア・アルジェントの

衣類を破壊して全裸にするのは公序良俗に

反する行為だと思うんだけど?貴女方の

価値観は違うのかしら?」

 

何よアレ。洋服崩壊?何考えてるの?

 

「う、いや、アレは・・・」

 

アレは何よ?戦闘で女の敵の装備を

破壊するって言うならまだしも、日常

で使う意味あるの?

 

家でやりなさいよ!

 

「と言うか貴女方は気が緩みすぎです。

この非常事態に管理者で有りながら

球技大会の練習だのなんだのと・・・

コカビエル程の大物の存在に気付いてない?

ソレも会談で教会のエクソシストに知られる

ようなリアクションを取るなんてね」

 

・・・球技大会に関しては私も練習してたけど。

 

だけど夜はアンタらの管轄でしょ?何してんのよ。

 

「くっ・・・」

 

くっじゃ無いわよ。

 

「ソレにコチラに情報を隠しておいて

『説明。していただけますよね?』

ですって?貴女、一体何様かしら?」

 

私と自分が同格とでも言うつもり?

タダの同級生で顔見知りなだけでしょうが。

 

「情報を隠した?どういうことですの?!」

 

はっ眷属の内部で報連相が出来て無いのは

ソッチの事情。

私たちには関係無いわよ?

 

「しらばっくれる気?先日そちらの騎士が

天閃の聖剣を持ったはぐれエクソシストの

フリード・セルゼンと交戦したことは

知ってるのよ?」

 

シロネ様に教えてもらったからね!

 

「何ですって?!」

 

コレはどっちの意味なんでしょうね?

知られてたこと?それとも知らなかった?

 

「つまりそちらはエクスカリバーの

情報を持っていたと言うことになる。

だけど私にはそんな情報来て無いわよ?」

 

いくら眷属に甘くても隠して良い情報と駄目な情報が有るでしょうが!

 

「そ、そんな・・・」

 

眷属の状況も把握出来ず、現実も見れず。

仕事もしないで男と乳繰り合ってるだけ

だからアンタらは無能なのよ。

 

「つまり情報を秘匿してるのはソッチ。

私は自分が知る情報をエクソシストに

教えると共に貴女にも伝えたわ。

本来ならこの場で説明を求めるのは私の方よ」

 

いや、ほんとにどーなってんのよ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー朱乃視点ーー

 

 

何も言い返せなかった・・・それに

まさか祐斗君がそんな情報を隠してたなんて。

 

ソーナ会長はセラフォルー様に報告

するつもりだって言ってるし、コレは

一歩間違えれば悪魔全体に対する裏切り

行為になるかも知れませんわ。

 

「あら朱乃、生徒会の用事は終わったの?」

 

「リアス・・・」

 

学校生活を楽しみたいって思うのも

わかるし、最後の球技大会をイッセー君

と盛り上げたいって言うのもわかるけど

確かに管理者としては・・・

 

「どうしたの?暗い顔してるけど何か問題でもあったのかしら?」

 

問題・・・問題かぁ。

 

「そうね。とりあえず私が知ったことを

教えるから、落ち着いて聞いて頂戴」

 

エクソシストに与えた情報がどこまで

正しい情報かは知らないけど、ソーナ

会長が言ったようにソレを判断するのは

上の仕事。まずは伝えないといけませんわ。

 

「???。えぇナニが有ったか

分からないけど聞かないことには

判断出来ないわ」

 

はぁ・・・気が重い。それとアーシアちゃん

についてはまだ何も言わなくて良いわよね?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

カクカクシカジカエクソシストトソーナトムートンイトウ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「何ですって?!」

 

コカビエル?!そんな大物が?!

それにエクスカリバーって・・・だから

祐斗があんな状態だったの?!

 

ソレを追ってエクソシストが来て、ソーナ

と会談?私に何も言わず?

 

あ、だから朱乃か。確かに日中の管理者は

ソーナだし私の代理人と言うなら女王

の朱乃なら・・・でもこっちがソーナに

情報を隠してたと思われてたって。

 

確かに祐斗が情報を持ってて、ソレを

隠してたなら主である私の責任になる。

 

まさか『眷属から情報を隠されてました』

なんて言えないし、そんな事を言ったら

祐斗がはぐれ悪魔として処分されちゃう。

 

「さらにエクソシストがイッセーの幼馴染?!」

 

イッセーやお父様、お母様が危ない!?

 

「えぇ、ただ戦争を望まないなら軽々しく

訪問はするなと釘を刺してましたので、

その点については問題無いでしょう」

 

「そ、そう・・・」

 

その辺の気配りは流石ソーナね。

でもイッセーがやりすぎて学園の

秩序が乱れてると思われてるのか・・・

 

まぁ確かにエッチだし、学校で洋服崩壊

なんか使ったらそう言われるわよねぇ。

 

「それで、どうします?」

 

ん?どうするって何を?イッセーの

行動を抑えるのは難しいわよね?

そもそも、あぁ言う後先考えないところが

イッセーの魅力だし、爆発力にも繋がって

るのよねぇ。

 

わ、私はイッセーのそういう所が好きなんだし・・・

 

「コカビエルについてですわ。ソーナ

会長が言うには日中は隣町に居て、

夜間にコチラでナニカしているとの

事でしたけど・・・」

 

あぁ、そっちか。

 

「まずはコカビエルの狙いを知らないと

駄目よね?悪魔と天界の戦争を望むなら、

悪魔にエクソシストを殺させるか逆に

エクソシストが悪魔を殺すか、よね?」

 

まぁどっちも普段なら当たり前のことでは

あるけど、今は不味いってことよね?

 

さらに日中はソーナ・・・と言うか

セラフォルー様を警戒してるくせに

夜は警戒していないですって?

 

舐められたものね!

 

「・・・サーゼクス様に報告はしないんですの?」

 

朱乃は何を言ってるのかしら?

 

「ソーナはセラフォルー様を頼った

みたいだけどね。現時点でお兄様に

連絡したところで何にもならないわ。

最低でもコカビエルの狙いや細かい

動きを確認してからじゃないと、ね」

 

それに、今報告したら祐斗の扱いが悪くなるじゃない。

 

今回は事情が事情だからシカタナイけど、

まずはソッチをなんとかしてからじゃないと

お兄様には連絡できないわ。

 

問題はソーナがセラフォルー様にどんな報告

をするかわからないってことよ。

 

でもまぁ知らない仲でもないし、私たちが

不利になるような報告はしないはず。

 

「確かに、そうかもしれませんわね」

 

朱乃も納得したわね。だけど今はイッセーと

アーシアを探して無事かどうか確認しないと!

 

下手にエクソシストに絡んで条約違反とか

したら問題だし、幼馴染と聖剣が絡むなら

今のイッセーは危ないわ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーカンザシ視点ーー

 

『かんちゃ~ん。無能さんのところの騎士

がはぐれになったから捕まえて来たよぉ』

 

ん?あぁなんか無能と喧嘩したんだっけ?

 

コイツはコカビエルや白い奴の情報を主君に

隠してたし、悪魔から見たら裏切り者だよね?

 

それに、コイツは確か神器持ち。

 

「なるほどねぇ。はぐれ悪魔が日中堂々と

うろついてたら駄目ですよねぇ?」

 

ふふふ。口実は十分。討伐したはぐれ悪魔

の名前まで報告する義務も無い。

 

『だよねぇ。はぐれ悪魔がどうなるか

って事を軽く考えすぎだよねぇ』

 

主従揃ってアホだったねぇ。あぁ、コイツの

主君は無能か。

 

まぁいいや()今なら堕天使陣営に殺られ

たって事になるでしょ?

 

向こうも自分たちが殺した連中について

細かく考えてるような感じはない。

 

白い少年が勝手に動いて殺したって思う程度でしょ?

 

既に2日経ってるけど、それくらいなら

ただの単独行動って思ってるみたいだし。

 

「それならさっそく実験だ!転生悪魔から

神器を抜いたらどうなるんだろうね!」

 

死ぬの?それとも駒が有るから大丈夫なの?

性能は落ちるよね?そもそも魔剣って何?

 

あぁ、駒を回収しないと駄目だから

黒歌さんか白音ちゃんを呼ばないと!

 

神器抜いた瞬間に死んで悪魔の駒が主人の

元に還ったらはぐれ悪魔対策にならないからね!

 

初期化してご当主様が使うか、空さんが

破壊するか神野サンが食べるか知らない

けど、まずは騎士の駒GETだぜ!

 

『いやいやぁ、喜んで頂けてなによりぃ!

エクソシストが単独で隣町に行ったら

ソレも回収してくるよぉ!』

 

おぉ。至れり尽くせりだ!

 

「流石神野サン。仕事が早い!連中が

阿呆からの申し出を上層部に伝えてるなら、

連中からの連絡が途絶えても悪魔は無関係。

『上層部の命令に従って隣町に調査に

行ったらそのまま帰ってきませんでした』

ってなるんですよね!」

 

そりゃ犯人は隣町に居る堕天使幹部サン

ですよねぇ。

隣町に関しては阿呆は関係無いし?

フォロー対象外だよね?

 

『そうだろうそうだろう!そうなるだろう!

かんちゃんも嬉しいし僕も嬉しい。

戦争を望んでるコカビエルも嬉しいし、

教会の主戦派や他の神話勢力だって嬉しいよねぇ!』

 

ですよねー。元々が堕天使と天界の

問題だし?悪魔は関係ないですから

勝手に戦ってくれますよねぇ。

 

ご当主様にしてみても。自分を嵌めよう

とする奴は叩き潰すんじゃなくて、自爆

させて自分で掘った墓穴に嵌るのを見て

NDKするのも好きだし?

 

奥様はご当主様が喜ぶならなんだっておっけーなヒトだし。

 

更に言えば日本で死んだらそのまま補佐官様行きだ!

 

いやーみんな得するよぉ。

 

どっちが来るかなぁ?デュランダルが来たら良いなぁ。

 

両方来たら、デュランダルはコッチで

もう片方は皇帝さんにでもあげようかな?

 

従妹を殺したエクソシストの娘だし。

もし逃がすようなら私たちで処分すれば

良いよね?

 

ふふふふふ。馬鹿が中途半端に策なんか

巡らせるから無様に滅ぶことになるんだよ!

 

 

・・・なんか今の兎さんみたいでしたね~。

 

 

「ふははははははははは!」

 

『ぐろぉぉぉぉぉりぁぁぁぁす!』

 

 

 

(ΦωΦ)

 

なんか呼ばれたから来たけど・・・

この二人が機嫌が良いって普通に怖いにゃあ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

ソーナ・シトリーからセラフォルーに

直接緊急連絡が有ったから何かと思えば。

 

「駒王町・・・の隣にコカビエルぅ?!」

 

うむ。早速監視が役に立ったな。

 

「ん~アザゼルからは連絡が無いけど~

コレは部下を連れず単独でヤッてる

みたいだねぇ~。シロネの予想通り

他の神話勢力が堕天使とエクソシストに

協力してると見るべきかなぁ?」

 

まぁそうだろうな。聖剣を盗みリアスや

ソーナを殺せば堕天使が両陣営に一方的に

潰されて終わることになるだけだしな。

 

態々教会を挑発して我々の管理地に

来ると言うことはそういうことだろう。

 

で、天界と我々が戦いを始めたら

横槍でも入れるか?

 

オセが国境警備している以上ソッチは

無いか。むしろ冥界から出た連中を

各勢力で袋叩きにする方が確実だ。

 

だが今の堕天使陣営の面子を考えるならば

打撃力が足りん。

 

やはり他の神話勢力関連の援軍が確定してる

のだろうな。

 

元々我々を嫌うハーデスか帝釈天か・・・

スルトを警戒した北欧も可能性が有る。

 

「で、リアスの騎士が情報を隠したまま逐電

したらしいが、サーゼクス。何か聞いてるか?」

 

コイツや眷属に何か情報を流してるなら

まだ良いのだが。

 

「・・・私や総司も何も聞いてない。

まさか個人の気分で主君(リアス)を裏切るとはな。

いい度胸だ。と言ってやろうじゃないか」

 

うむ、流石のサーゼクスもリアスの立場を

危うくする眷属に容赦をする気は無いようだな。

 

実際コカビエル相手では我々が動く

前にソーナやリアスが殺されていても

おかしくは無いからな。

 

今だって正直危険と言えば危険なんだ。

 

おそらくアザゼルからオセ家の事を聞いて

いたからこそ、日中は動かず夜に動いて

居たのだろう。

 

コカビエルの誤算はシロネがソーナを守護

していて策を全部読まれていたことと、

眷属がリアスへ情報を渡さず、さらにリアス

も情報を知った今でもサーゼクスへ連絡を

取ってない事か。

 

映像記録を見る限り極々自然に悪魔を

見下すタイプのエクソシストだ。

 

直情的な赤龍帝やリアスなら挑発に

乗って戦闘になり、聖剣の攻撃を受けて

深手を負うだろうな。

 

結果我を失ったサーゼクスにエクソシスト

を殺させる気だったのだろうが、会談は

ソーナが受けて連中の挑発を受け流し、

逆に圧倒して見せた。何せ拠点や食事の

手配をするくらいの余裕まである。

 

シロネの存在が有るとはいえ、実に堂々と

した受け答えだし。

 

シロネに説教を受けたらしいが、どうやら一皮剥けたか?

 

「オセちゃんがコッチに情報を流さないのは

わかるよ?向こうにカンザシちゃんとシロネ

ちゃんが居るし、コカビエルが何をしても

自分たちで潰せるからね。

ソーナちゃんのフォローもしてくれてるし、

リアスちゃんについては契約外。むしろ

領土侵犯と報復を理由に戦争再開できる

なら万々歳ってことでしょ?」

 

そう言うことだな。そもそも駒王町の

管理者はソーナとリアス。この二人に

情報を流しても対処など取れん。

 

何も知らないなら向こうで最初から最後

まで好きなように処理することも出来るしな。

 

今回こうしてソーナに情報を渡したのは

ソーナの眷属がエクソシストと接触

したからだろう?

 

ソーナが関わってないなら自分たちで処分

するが、ソーナが関係するならフォローに

専念すると言うことだろう。

 

「オセ君がリアスをどういう風に思って

いるかは知らないが、確かにリアスの

守護は契約外だし、むしろ監視体制を

強めろと言うアドバイスが有ったから

こそ、連中が何かする前にこうして情報が

手に入ったと思えば・・・悪いことでは無い」

 

アドバイスじゃなくて契約だけどな。

 

「さて問題はココで俺たちがどう動くかだ」

 

アザゼルに対しての抗議はもちろんだが

天界に対してどうするか・・・

 

「どうするもこうするも。私がコカビエルを殺して終わりだ」

 

・・・この妹魂(シスコン)め。

 

「サーゼクスぅ。君が出たらコカビエルに

味方してる他の神話勢力の連中も出て来る

んじゃないかなぁ?」

 

そうだよな。堕天使だけの問題ならソレ

でも良いんだが、他の連中を考えれば

冥界の最高戦力が単騎で出たら絶好の機会だよな。

 

「む、では全軍で・・・」

 

・・・この妹魂(シスコン)め。

 

「他の関係ない勢力も刺激することになるねぇ~」

 

それこそ大惨事世界大戦だぞ?

 

「ならばどうしろと言うんだ!こうしてる

間にも、りーあたんがコカビエルに狙われ

ているかも知れないんだぞ!」

 

狙われているのは確かだろうが・・・

 

「普通にオセちゃんに頼めば良いでしょ?」

 

ソーナがキチンと守護されてるから

コッチの妹魂(シスコン)は余裕あるな。

 

だが言ってることは間違ってない。

 

ヤツは相手の策を全部読んでるし、

シロネとカンザシならコカビエルに

負けることは無い。

 

それに二人は対外的にはオセ家の眷属悪魔に

すぎんから他の神話勢力も手は出さんしな。

 

ただの眷属悪魔に負けるようなら支援の

価値無しとして切り捨てられるだろう。

 

「むむむ!」

 

何がむむむ!だ。妹の前で恰好付けたい

んだろうが・・・いや、まさかリアスに

功績をやりたいのか?

 

今は流石にアレだからなぁ。

 

実績が有れば評判に関しては何とでも

覆せる。

 

まさかオセにソレを依頼しないだろうな?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁイリナ。その絵は何だ?」

 

「・・・たぶん・・・ペトロ・・・さま?」

 

「・・・まさか悪魔に食事と寝床を

用意して貰ったことを心から感謝する

ことになるとはなぁ」

 




衣類破壊を二人と戦う前に使った設定です。

シロネコの裸?性犯罪者に
見せるわけないじゃないですか。

わぁ!神野君は仕事熱心なフレンズだね!

性犯罪者に剣で勝てない剣士なんざ
いらんなぁ?ってお話。

堕天使は冤罪でもないのが痛いところ。

エクスカリバーに関しては、一応原作3巻
に布石みたいなのは打ってますよ?
『いろんな存在がそれぞれの勢力に力を貸した。
妖精・精霊・西洋の魔物・東洋の妖怪・人間・・・』
ってマダオが言ってますけどね。

ソレでエクスカリバー借りたって設定かも
しれませんけど、ソレが教会に有って
神の祝福有りって・・・借りパクかよ!って
なるしなぁ。

後、カトリックとかプロテスタントって
言ってますけど、天使が実在してその声
が聞けるのに分派するってどういうこと?


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23話

シロネコ、決断する。

眼鏡会長強化フラグ!

話はまったく進まない!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

いやはや無能の女王は本当に無能でしたねぇ。

 

「ではシロネ様、我々はこのまま

エクソシストを監視しているだけで

良いと言うことでしょうか?」

 

ふむぅ。まぁそれ以外に出来ることは

無いでしょうから、コイツ等はソレで良いと

思うんですが・・・とりあえず今後について

は一回簪姉様に伺う必要が有りますよね。

 

では連絡をって、ん?簪姉様からメール?

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

さて、この状況で連絡が来たと言う

事は何かしらの指令ですよね?

 

コッチの状況は神野サンが掴んでるハズだし。

 

「は、はい!」

 

うむ。やっぱり最初に殺気を見せたのは

良い判断でしたね。

私も奥様にされたからわかりますけど

ごちゃごちゃ煩い奴は殺気で黙らせれば

良いのです。

 

あんな無能の女王みたいな中途半端な

笑顔では相手を怒らせるだけですからね。

 

さて、メールの内容はっと。

 

へぇ。流石は神野サン。無能の騎士を

確保したんですか。

さっきの女王の様子を見るとその辺は

何も知りませんね?

コレは堕天使陣営に殺されたことにする

んでしょうか?

 

それとも駒が返ってこないから行方不明?

まぁどっちでも良いですね。

 

でもって黒歌姉さまが来てるから買い

食いをしないで帰って来なさいって。

 

むぅ・・・いつまでたっても子供扱い

されてますよねぇ。

ちゃんと夜伽もしてるのに・・・。

 

まぁ簪姉様から見たら私なんかまだまだ

未熟ですし。子供扱いされているウチが

華ですよって芥子サンも言ってますからね。

 

うん。それも良いでしょう。私はロリ系眷属としてご主人様を癒すんです!

 

それはそれとしてコカビエル対策・・・

 

「へぇ。まぁそうなりますよねぇ」

 

「「・・・」」

 

おっと、そう言えばコイツらが居ましたね。

 

んーむ。コイツ等に関してはサポートも

あるし、保護もしなきゃ行けないんですよね。

 

今までは隠れてしてたけど、今後は普通に

護衛やサポートの人員を回せますか?

 

と言うか眷属の斡旋でもしましょうか?

 

「確かソーナ殿には戦車の駒と騎士の駒、

さらに兵士の駒が3つ空きがありますよね?」

 

結界創るのに特化したヒトとか、汎用性の

高い魔法を使えるヒトとかはどうでしょう?

 

「え?あ、はい!」

 

ふむぅ。だけどコイツが使える程度のヒト

ですか。もうちょっとレベルを上げないと

上級悪魔ですら仲魔にはできませんよねぇ。

 

そもそもご主人様は悪魔を眷属にする

ことを嫌いますし。

 

兵士の駒2つか3つで仲魔に出来そうなの

が居れば良いんですが・・・あ。

 

「えぇ~と、まずエクソシストに関してはコチラが対処します」

 

もうこいつ等がどうにか出来るレベルを

越えてますからね。

 

「・・・よろしくお願いします」

 

微妙に悔しそうだけど、自分の力不足を

自覚しましたからね。現実を見て貰いましょう。

 

「ちなみに護衛に関しては今まで通り

行いますけど、我々が護衛してたのは

ソーナ殿だけです。

眷属の皆さんを護衛してたわけではありません」

 

この辺も告知しちゃいましょう!

勘違いされたら困りますからね。

 

「そ、そうだったんですか?!」

 

そうだったんです。

 

「ですが今回の件で皆さんは自分たちの

甘さを理解できたと思います」

 

出来ましたよね?

 

「「はい!理解しました!」」

 

うむ。殺気と共に出した内心をきちんと

理解したようで何より。

 

「そう言う訳で、貴女方にはコレから

学校を休んでトレーニングしてもらいます。

正直今のままだと話になりません。

徹底して強化しないと逃げることも

時間稼ぎも出来ませんからね」

 

私もまだまだ未熟ですけど、こいつらは酷い。

なんで自衛も出来ない貴族の跡取りが他の

勢力と接触する地上に来てるんですかね?

 

今は簪姉様の負担を考慮して神野サンが

護衛してるから、いつでもどこでも

どんな状況でも助けることは出来ますが、

彼や空さんは我々との関与は知られない方が良いみたいですし。

 

ソレに副会長とヴリトラの神器は

鍛えれば鍛えるほど使えます。

 

悪魔なんだから中途半端な学業なんかより、

まずは力を身につけなさいって話ですよ。

 

なんか副会長とヴリトラの神器を持つ眷属の

名前を見てご主人様は楽しそうにしてたし?

 

護衛対象が弱すぎるから鍛えます!

って言うのは問題ないですよね。

 

「えっと、ソレは・・・」

 

あぁん?『ソレは』何だって?

 

「貴女は自分の立場を理解してますか?

お嬢さんの趣味の学校生活とコカビエル対策、

どっちが重要ですか?

主従の命と生徒会活動、どっちが重要ですか?

コレからの悪魔生と趣味の学校生活、

どっちが重要ですか?

日中机に座ってお勉強しながら管理者やって、

その合間に暇があったらトレーニング?

アンタら色々舐めてませんか?無様を

晒す前にココで死にますか?」

 

撲殺轢殺斬殺刺殺毒殺圧殺絞殺鮫殺

好きなのを選ばせてやりましょう。

 

まずは女王からです。側近の死に様を見せて

世の中の真理を学ばせてやりましょうか。

 

「「ひぃ!!」」

 

口答えは許しません。折角鍛えてやると

言ってるんですからしっかり学びなさい。

 

・・・ん、いや待てよ?

 

「あぁ、もしかして無能のように職務放棄に

なると思ってますか?もしそうならソレに

関しては問題有りませんよ」

 

ソッチを警戒した可能性も有りますよね。

それなら契約を優先したとも言えますし、

家名のことをを考えたらおいそれと決断は

出来ません。コレは説明を怠った私の失敗。

 

うむ、失敗失敗。シロネコ失敗です。

 

「えっ・・・と、はい!そうなんです!」

 

ふむぅ。それならシカタナイですねぇ。

 

「先程コカビエル関連に関しては魔王様より

我々オセ家に対処するよう依頼が来たんです。

故に流石にフォローで何とかなる次元では

無いので、我々が管理者を一時代行すると

言う形になりますね」

 

ま、普通はそうなりますよね。

 

本来ならどの面下げて!ってなりますけど、

こういう実績がご主人様の信用に繋がるんです。

 

それに。下手にコイツ等に任せて問題を見逃し

たら補佐官様にシバかれますし。

 

だったら最初から私たちがヤった方が

マシですよね~。

 

「な、なるほど!そうなんですね!」

 

そうなんですよ。

 

「と言う訳で今日から貴女方を鍛えます。

レーティングゲームの空間のような形で

修行場を用意しますので、これからは

その空間内で寝起きしてもらいますよ」

 

ふふふ。ずっと修行させてやります。無能の

中途半端な合宿なんか目じゃ無いですよ!

 

「え、えっと、そうなると学校の運営とかは

どうなるんでしょうか?一応コレも正式な

仕事でして・・・」

 

はぁ?正式な仕事?自分で生徒会長になって

自分で抱え込んだ趣味でしょ?

 

 

「さっき言われたこと理解してますか?

お前らのお遊びなんかどーでも良い。

出席は人形にでも代行させればいいし。

運営と生徒会業務は実家の悪魔を呼べよ」

 

公爵家の人間ならコイツ等の仕事の

代行くらい出来るでしょう?

 

この期に及んで実家を頼らないとか抜かしたら奥歯抜くぞ?

 

「はい!了解しました!」

 

うむ。ソレで良いのです。

 

「まずは全員の地力を高めてもらいます。

コカビエルへの対処に関しては一週間も

有れば終わるでしょうが、貴女方の修行は

最低でも一か月はしてもらいましょうかね」

 

なんか若手の顔見せ?みたいなのが

あるんでしょう?それまでは修行です。

 

いい加減コイツ等の阿呆面見るのも限界

でしたし!良い機会です!

 

「「い、一ヶ月・・・」」

 

驚いてますが、まぁわかりますよ。鍛練にしては短すぎますよねぇ。

 

ただ肝心のレベルが低いから中級、いや上級悪魔

の育成カリキュラムなら一ヶ月で良いですよね。

 

ウチの所領なら誰でもヤってることですし。

 

よし、早速ご主人様に申請しましょう!

 

駄目って言われたら・・・コカビエルを

殺るまで気絶させて箱に詰めて保管ですね。

 

後で治せば問題なしです!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー奥様視点ーー

 

いやはや、旦那様と仕事をするのは嬉しい

のですけど、二人でやるとすぐに終わって

しまうのが難点ですよねぇ。

 

ゆっくりお茶を飲む時間が出来たと考えれば

良いのかも知れませんが、どうにも手持ち

無沙汰です。

 

修行の時間は修行の時間でちゃんと有るから

アレだし。あんまり働きすぎても部下が休め

ませんからね。

 

いやー困った困った。あんまり暇なんで

旦那様に膝枕して貰うくらい困りましたよ。

 

・・・うむ。やはり師に撫でて貰うのは良い。 

あぁいや、師でも良いけど旦那様ですよ旦那様。

 

「ん?ほほう。とうとうシロネコも育てて

学ぶ段階に来たか」

 

ほぉ。シロネコが初めて旦那様に直接稟議

を上げて来たと思ったらそんなことを・・・。

 

てっきり閨の順番とか食事やおやつに関して

の要望だと思ってたのですが。

 

見くびってました。失敗失敗。正妻失敗です。

 

「しかしアレですね。魔王からコカビエルの

対処を依頼されたと言うことを簪に告知した

と思ったら、次の瞬間にシロネコが教育に

目覚めたと言うのがよくわかりませんね」

 

誰か弟子入りでもして来たのでしょうか?

 

「なんでもソーナ・シトリーとその

眷族が随分と人生舐めてるらしくてな。

シロネコも我慢の限界が来たらしい」

 

あぁ、なるほど。何せ阿呆ですからねぇ。

 

セラフォルーが我々の存在をアレに

告知したようだと言うのは報告を受けて

ましたが、何か反発でもしましたか?

 

「とりあえず現実を教えたし、魔王からの

依頼も来たんだから、もう表の職務は実家

の連中にやらせて、管理や警邏はウチの連中

の経験にしたらどうかって感じだな」

 

実家の力を借りて時間を作って修行すると?

阿呆はそんな殊勝な性格してたんですか?

 

もう稟議見せてもらった方が早いですね。

 

「私も書類を見せてもらっても?」

 

「ん?おう、俺としては内容に問題ないと思う。

後はお前もチェックして問題がなければ承認。

なんか問題が有ったら修正してやれ」

 

ではお言葉に甘えて・・・よっと。

 

ふふん。旦那様の膝の上はシロネコ

やクロネコの定位置では無いのですよ。

 

さてさて、シロネコはどんな稟議を

上げて来たんですかねぇ?

 

・・・・・・

 

「なるほど。我々の部下は地上での任務を

経験してる者が少ないですし、現状護衛対象

が弱すぎて何か事故で死なれても困ると」

 

たしかに、あんまり弱いと護衛どころか余波や事故で死にますからねぇ。

 

足手纏いを守るのも修行では有りますが・・・

護衛対象の阿呆はともかく、対象でもない

眷属を入れればそれなりな数になりますし。

 

本来なら捨て置いても良いのですが、我々

に眷属を守る余裕がないと言われてもアレ

だし、神器使いも居ますか。

 

無駄に殺すのは惜しいと言うことですね。

 

「だな。気持ちはわかる」

 

ですね。それに最低限の強さがないと仕事が

出来ませんし、仕事が出来ないならフォロー

も出来ません。

 

現在の契約や今後のことを考えれば、重点的な

トレーニングは必須と言うわけですか。

 

それに、鍛練場所がこれなら護衛と修行を

両立してますし、普段の職務についての

フォロー案も出来てます。

 

ただ・・・その修行内容が上級悪魔育成

カリキュラムと言うのがアレですね?

 

阿呆は元々上級悪魔だし、そもそも公爵家

令嬢の眷属がそこまで弱いわけ無いでしょ?

 

前に見た無能のところは親もアレだから

シカタナイですけど、阿呆の家は・・・

姉はアレですが家は普通ですよね?

 

眷属は護衛も兼ねますから普通に考えたらソコソコの強さはあるはず。

 

つまりこれはあれです。シロネコの勘違いです。

 

まったく、自分から稟議を上げてくるのは

良い事ですが、旦那様に出す書類ですよ?

 

ちゃんと文書を確認してからにしなさい。

 

簪は何を……いやシロネコは直接我々に

稟議を上げる権限があるし、この内容

ならば反対はしないだろうと思って

簪に稟議書を見せてませんね?

 

ついでに言えば彼女は今、無能の騎士の

神器や駒についての実験もしてるし。

 

HENTAIの実験の邪魔はしない方が

良いと判断したのでしょう。

 

ならばシカタナイ。旦那様が気づく前に私が

修正してあげましょうか。

ふっ、これも正妻の務めですよね。

 

【最】上級悪魔育成カリキュラムに変更して

場所は・・・異界なんか使ったら修行中に

事故で即死したら元に戻れませんよね?

 

フェニックスの涙はもったいないし。

 

うむ、鬼ぃさんに頼んで日本地獄の場所と

教員を用意して貰いましょう。

 

彼処なら魂だけですからいくらバラしても

死なないし、そもそも悪魔は肉体を鍛える

のではなく魂を鍛えるモノです。

 

健全な精神は健全な肉体に宿るんだゼ

と言う言葉が有りますが、最初から精神を

鍛える事が出来るならその方が良いでしょう。

 

鬼ぃさんとしても、駒王町の管理者の片割れ

には色々殺りたいことも有るでしょうし。

 

そもそも阿呆たちは日本地獄の方々に

アイサツすらしてませんからね。

 

ふふふ、中さんとかも普段暇してるらしい

ですから、遊び相手が出来たと思えば

しっかり擂り潰してくれることでしょう。

 

後は豊玉姫さんですね。鮫の怖さを教えてやって貰いますよ。

 

でもって、面子は阿呆と神器使いが2人。特徴の無いのが5人ですか。

 

神器使いは・・・女王の真羅?まーら?

 

「旦那様、この真羅ってあのマーラと関係が有るんですか?」

 

この家の初代がご立派な加護を受けたとか。

 

「可能性は有るな。なんたって日本では

五大宗家って言われてる連中の直系だ。

同じ五大宗家の百鬼って家に至っては黄龍と

契約してて無尽蔵の闘気を纏うらしいぞ」

 

ほう!黄龍ですか!

 

「まさか日本にソレほどの使い手が居るとは。

…分体では有るでしょうが、それでも今の

私や簪では勝てませんね」

 

いくら分体でも黄龍は凄い。百分の1の力

でも洒落になりませんよ。更に無尽蔵の

闘気を引き出して使いこなすとは。

 

そやつは昔の旦那様に匹敵するやもしれません。

 

「人間の体には限界があるから、たとえ

無尽蔵の闘気を纏えても寿命には勝てん。

だが、お前も知っての通り、気は万能だ。

無尽蔵の気を纏うならば俺とてヤバイぞ」

 

うむうむ、そうですね。油断慢心ダメ絶対。

 

悪魔の中では強くても、上には上が居るということを忘れてはいけません。

 

マーラにも同等の資質が有り、更に悪魔と

なって人間の体や寿命と言う軛から解放

されたと言うなら、魔神クラスになる可能性

は極めて高い。

 

更にマーラには神器までありますからね。

衝撃の反射だけなら大したことはありません

が、衝撃には無限の可能性があります。

 

衝撃と言うものを正しく理解出来るなら、コヤツは化けますよ!

 

それだけの存在を人間界で遊ばせるのは

いけません。キッチリ鍛えて百年後には

私や旦那様の越えるべき壁となって貰います!

 

「それにもう一人の神器使いは、匙ですか」

 

うむ。これなら旦那様が興味を抱くのは

無理は有りません。

 

「そうだな。別人なのは当然知っているが、

その名を聞いて、弟子として鍛えるならば

半端は出来んよ」

 

ですね。当て字と言う可能性も有りますし、

何らかの繋がりが有るかもしれません。

 

ヴリトラの力を宿した神器に体術と魔力

が有るならばかなりの使い手になるでしょう。

 

更に特徴の無い連中は、言うなればこれから

如何様にも成長出来るということ。

 

悪魔である以上は魂を限界まで鍛えて、

それから契約や何やらで壁を越えさせます。

 

うむ、やはり最上級悪魔の育成カリキュラムで間違いは有りませんね!

 

金髪螺旋鳥頭はまだ上級ですが・・・自分に

近い年齢で上の階級の者が居ると知れば訓練に

身が入る事でしょう。

阿呆が来たら最上級のカリキュラムを経験

させてやりましょうかね。

 

シロネコは同い年ですが、さすがに期間が

違いますし。

 

とりあえず鳥頭は連中と一緒に鍛えましょう。

 

あとは自称弟子のアレなんですが、

今は第三等級魔王の育成カリキュラムを嬉々

として行ってますからねぇ。

今さら最上級悪魔育成に行っても無意味です。

 

フェニックスの涙をアレに使うのは惜しいです

が、旦那様も楽しんでますからシカタナイ。

 

シロネコにはまだ届きませんが、たまには戦わせても良いかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソレはソレとして・・・

 

「旦那様、今日は房中術の鍛練をお願いしたいのですが・・・」

 

こんなずっとくっついてたら・・・ねぇ?

旦那様も昂ってますし。

 

それに今夜は私の日ですし?むしろもう今から

ずっとソレでも良いと言いますか。ずっとソレが良いと言いますか。

 

「お、日中に雪蘭から言ってくるのは珍しいな」

 

いや、アレですよ。あくまで鍛練ですよ。

 

・・・それに私とて一人の女ですし。

 

「ふふっ、私は林冲様の正妻ですからね。正妻

には旦那様を独占する権利が有るんです」

 

簪やシロネコやクロネコに譲る日も有ります

けど、一人で寝るよりは旦那様と一緒が良いに

決まってます。

 

「確かにそうだな。お前は俺のオンナで俺はお前のオトコだ」

 

あぁ。そう言うのはズルいですよ。そんなこと

言われたら、これから側室を増やそうとしてる

決心が鈍るじゃ無いですか。

 

・・・でも今では人員が足りないのも事実。

何より私たちが持たないし・・・いや、今は

そんなことより旦那様との時間ですよね。

 

「では寝室へ行きましょうか?」

 

私は旦那様に抱きつくので忙しいので、

このまま運んでくださいね。

 




眼鏡会長、強制強化合宿に突入するの巻。

と言うか、命懸け!とか真剣に!とか言うなら
学校辞めて鍛えろよ。と思った作者は悪くないと思う。

正妻にミスは無い!シロネコのミスなのだ!

鬼ぃさん的にも眼鏡には色々言いたいことが
有るので場所の提供は引き受けるもよう。

つか百鬼で黄龍で勾陳・・・おいィ?

そりゃ副会長も衝撃のマーラとか呼ばれる
くらいの実力者になれるかもしれないよね。

いや、眼鏡の眷属の数を10人にして・・・



それはそれとしてオセ君と奥様は仲良しですってお話。


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24話

最初と最後が堕天使サイド。
真ん中は・・・

新たなオリキャラ?!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーアザゼル視点ーー

 

「コカビエルが・・・」

 

あのバカ野郎。

 

「アザゼル、問題はこの報告がサーゼクスから

来たモノであり、オセが対処することになった

と言うことです」

 

だな。このままじゃ確実にコカビエルが

殺されっちまう。

しかもアイツはソレを覚悟してる節が有るし。

 

「とは言え俺たちがコカビエルを止めるわけ

にはいかねぇ」

 

見つかる前ならまだしも。いや、それだと

アイツが命を懸けてる意味が無くなる。

 

俺たちに出来るのは精々が殺される前に

回収して命を助けてやるくらいだろうよ。

 

「・・・ですね。ではオセに連絡を取り、

『コカビエルを殺さないように』と言う依頼

を出しますか?」

 

普通ならヤツもそんな依頼は引き受けねぇ

だろうが今回のケースなら有り得るか。

 

サーゼクスはサーゼクスで自分の妹に手柄を

やりたいってんで、手加減を依頼してる

みたいだし。

 

・・・まぁコレは自分がただの妹魂のピエロ

になってでも、コカビエルは生かして返すって

言う堕天使陣営への配慮だろうがよ。

 

しかし手加減したって死ぬときは死ぬんだ。

ここはしっかりと「殺さない」と言う確約が

必要になるだろうな。

 

悪魔連中も他の神話勢力の干渉には気が

ついてる。だからこそ魔王が動かずに対外的

には1悪魔に過ぎないオセを使うんだろ?

 

当然天界もそのことは知ってるが、下手に

動けば教会のエクソシストが全員敵に回る。

 

連中は悪魔や堕天使を滅ぼすために産まれて

教育と訓練を受けてきた連中だからな。

 

今の消極的な態度だって許せんだろうさ。

 

コッチにしてみても、まだ和平が成ったワケ

じゃねぇ。

戦争になった際に他の神話勢力との繋がりが

なけりゃ順調に数を増やしてる悪魔に負ける。

 

て言うか、そもそも連中の後ろ楯が無きゃ

俺たちは勢力として成り立ってない。

 

今は親父も初代のルシファーも居ないが、当時

の大戦時は俺たち堕天使が最弱の勢力だった。

 

メタトロンにすら勝てない俺たちじゃ魔王は

ともかく、親父が出てきたら戦いにすらなら

なかったからな。

 

だが、それで戦争が早期に終結するのを嫌った

外の連中が手を貸してくれたからこそ、俺たち

はこうして生きている。

 

しかし、俺たちが和平を結ぶなんてことに

なったら当然連中は面白くは無いだろう。

 

だから主戦派の堕天使を煽り、エクソシスト

を煽り、聖剣の実験をしたい皆殺しの大司教

を使って事を起こさせようとした。

 

コカビエルはそれに気付いたんだろうな。

それとも主戦派から説得を受けて知ったか。

 

どちらにせよ、現状俺たちは他の神話勢力との

繋がりを切るわけにはいかねぇ。

 

かと言って戦争なんかしたら連中の思うがまま。

 

ならどうする?

 

堕天使幹部のコカビエルが動き、堕天使にも

和平を望んで居ないヤツが居ると言うことを

諸勢力に見せた上で、エクソシストや堕天使を

操り、戦争の一歩手前って所で潰される。

 

これしかない。

 

サーゼクスとセラフォルーの妹が居る地に

居ながら一切手を出してないことも、外には

『小娘が援軍を呼ぶのを待っている』と言う

ことが出来るし、主戦派の仲間にも同じ事を

言って行動を押さえさせることが出来る。

 

ついでに天界と教会への離間計とでも言うか?

 

とにかく時間をかければソレだけ教会の

エクソシストが来るし、ソレを潰すだけでも

戦争の火種と戦力の各個撃破には十分。

悪魔と戦わせることが出来れば最良と言えば

戦争を望んでる連中全員を誤魔化せる。

 

後は幕の引き方だが、そこで出てくるのが

オセだ。ヤツは伯爵ではあるが、他の神話勢力

から見たら所詮悪魔の中の1貴族にすぎん。

 

格としては堕天使の幹部と同格かやや下。

 

コカビエルに対してぶつかってもおかしく

ないし、その結果コカビエルが負けても

違和感が無い。問題は一方的に殺られた

場合だがアイツはソレも覚悟している。

 

つまり最終的にどうなろうと、俺が動いてケツ

拭く形で事態を収めると確信してるんだろう。

 

・・・馬鹿野郎が。そんな信頼は要らねぇんだよ。

 

とは言えだ、ダチの献身を知りながら下らねぇ

プライドを引き摺るわけにもいかねぇ。

 

「シェムハザ、ヤツに連絡だ」

 

何を対価にされるかわからんが、ダチの命とは

比べるまでもねぇ!

 

それにヤツも戦争は望んでも、他の神話勢力

の都合での戦争なんざ御免だろうさ。

 

その方向でなんとか交渉を纏めねぇとな。

 

――――――――――――――――

 

ーーゼノヴィア視点ーー

 

 

うむ。悪魔が用意したとは言え金と食べ物に

貴賤はないし、普通に美味い。

 

情報は上に報告したし、現在は指示待ちだ。

久々にゆっくり休めそうだな。

 

まったく、悪魔が教会の上層部より現場に

優しいと言うのもどうかと思うが・・・

これも我々を堕落させるための罠か?

 

いや、しかし戦いが有るとわかっている

のだから万全の状態で望むのは当然。

 

つまり食事の後でフカフカのベットに横に

なるのは間違いではない。

 

「ねぇゼノヴィア?これからどうするの?」

 

どうするもこうするも。

 

「私は上層部からの指示待ちだ。コカビエル

の拠点が隣町にあると言うのは悪魔からの

情報に過ぎんからな。きちんと調査した上で

動かんと無駄に敵を警戒させることになる」

 

あの様子ではおそらくこの情報は正しいの

だろうが、裏を取らないなんて有り得ん。

 

かと言って援護も何も無しに挑んでも無駄

死には目に見えてるし、上層部はソレも

望んでいるのだろうが・・・ストラーダ師

にも連絡を入れたから、あまり酷いことには

ならんと思いたいな。

 

「なるほどね。私としてはさっさと殺して

終わりにしたいけど、そんな簡単な相手じゃ

ない。下準備が必要だって言うのはわかるわ」

 

その下準備をするための資金を使い込んだ

阿呆が居るがな。

 

アレは普通に着服だよな?金にだらしない

奴は信用しては駄目だとシスターにも言われ

てるし。つまりコイツは信用できん。

 

今まではサポートスタッフがいたし、敵も

弱かったからまだしも、全身全霊を掛けて

戦うべき時に横には居て欲しく無いぞ。

 

「とりあえず私はヴァチカンから指示と援軍

が来るまでは待機だな。

・・・待機とは言え悪魔が管理する土地での

潜入任務だ。一切気は抜けんし、今後が有る

ならこの経験は今後の為にも役立つだろう」

 

今回を生き抜く事が出来たらの話だがな。

 

「そんな寝転がってキリッて顔されてもねぇ」

 

ふっ、何と言われても私はこのフカフカから

出る気はないぞ!

 

「何を言ってるんだ。体調管理は戦士の基本。

食えるときに食って寝れるときに寝るのは

間違いではないだろう?」

 

ついでに言えば予算や安全を気にせずにこんな

ホテルに泊まれる機会なんか二度と無いんだ。

 

シスターへのお土産もシトリー家の金で買えて

発送出来たし。金を使えば使うほど悪魔の財力

を削れると言うことだしな。

 

だからと言って室内の調度品やら何やらを

破壊するつもりもないが・・・

 

「確かにその通りでは有るんだけどね」

 

何か不満そうだが、まぁ悪魔の用意した拠点が

気に食わんて言うならそれでも良いさ。

 

「そもそもイリナにはイリナの部屋が有る

だろう?どうせ上からの指示が来るまでは

待機なんだから、部屋で休むか赤龍帝以外

の知り合いにでも会ってきたらどうだ?」

 

幼馴染みが一人と言うことは無いだろうし、

流石にあんな釘を刺された以上は赤龍帝の

ところに行って無駄に無能を刺激するよう

なことはしないだろう。

 

わざわざ他人の休息を邪魔しに来るなよ。

 

「・・・それもそうね。コカビエルが動くの

は夜らしいし、10年振りの駒王町を堪能

するのも悪くないか。流石に幼馴染みと接触

したら悪魔に目をつけられちゃうから、今は

会えないけどね」

 

ま、コカビエルが本当にレヴィアタンを警戒

してるならそうなるな。

 

実際は今の段階で悪魔を敵にすれば、堕天使が

我々と悪魔の両方に潰されると言うことを

警戒してるのだろうが・・・それでも夜には

平然と動いていると言うのだから、夜を担当

すると言うリアス・グレモリーの無能さが

良くわかる。

 

イリナの言う通りに赤龍帝の家に行っていたら

どうなって居たことか。

最初にソーナ・シトリーの眷属と接触出来た

ことはまさしく神からの恩恵。

ならばこの恩恵を堪能せねば不敬と言うもの。

 

それに悪魔の管理する土地に住む者が我々と

繋がりが有ると思われるのは宜しくないと

言うのもわかる。

 

「ま、私は戦うべき時が来たら動く。イリナは

イリナで好きにすると良いさ」

 

予算もないし。今の私が外を出歩いても何も

出来ずに腹を空かせるだけだもんな。

 

・・・追加で予算が貰えるとしたら絶対

自分で管理しよう。

 

 

――――――――――――――――――

 

ーー赤おじさん視点ーー

 

『死んでくれる?』

 

「「「「「うわぁぁぁぁ?!」」」」」」

 

おや、今日は悲鳴が多いな?それに若い声。

彼女に新しい友達でも出来たかな?

 

「おやべリアルさん。今日も面会ですか?」

 

いつの間に・・・オセ殿と言い彼と言い、

やはり私とは桁が違うな。

 

「ご無沙汰してます補佐官殿。そうですね。

淋しい思いはしていないと言うことは理解

しているのですが・・・いつまでも妹離れ

出来ない兄でお恥ずかしいことです」

 

クレーリアを殺した老害どもは許せんが、

こうして会うことは出来てるし、何より

その理由がな。

 

まったく、王の駒だのゲームのイカサマだの、

そんな事を探っていたとは。

 

オセ殿にも言われたが、貴族の秘密など

探ったら殺されても文句など言えん。

 

私たちが甘やかしたのが死因と言われて

しまえばな。

 

さらにクレーリア本人からも謝罪され、ここ

でヤエガキと仲良くやれてるなら言うことは

無いさ。

 

・・・王の駒を使ってイカサマしている連中を

正面から迎え撃ち、勝利する私を見るのが最近

の趣味と言われてはゲームから降りるワケにも

いかないしな。

 

「故人を想う気持ちに良いも悪いも有りません。

ココにもちゃんと臨死体験して来てますし、

オセさんからも迷惑料は頂いてますから、

お気になさらず」 

 

うん。そうなんだよな。普通じゃこれない

から、しっかりと殺さない程度に殺されて

るんだよな。

 

それに迷惑料か。

 

「そう言って頂けると助かります。それと

奥方殿より補佐官殿へ此方を預かってます。

ご本人からも直接お会いできない無礼を

お許しくださいと言う言伝も預かってます」

 

あの奥方殿も補佐官殿には礼を尽くすからな。

恐ろしい方だ。

 

と言うか、服が持ち込めるなら土産品も行ける

だろうと言う発想がスゴいよな。

 

「ほほう。ご丁寧にありがとうございます。

お米が三種にお酒。さらに・・・炊飯器?」

 

うん。何で悪魔が地獄の補佐官に炊飯器を

贈るのか良くわかりませんよね。

 

「まずお米はアキタコマチとササニシキ。

それに青天の霹靂と言う銘柄ですね」

 

何で米にこんなに種類が有るのやら・・・

流石は神秘の国ジャポン。

 

「青天の霹靂とは・・・また何と言うか」

 

うむ。補佐官殿もリアクションに困ってるな。

気持ちはわかります。

 

「なんでもオソレザンが有るアオモリの特等米

だとか。アキタコマチより粘り気が少なく、

ササニシキより固めらしいですよ?」

 

良くわかりませんが、そうらしいです。

 

「ほほう。青森は津軽ロマンだけでは無いと

言うことですか。流石は奥方殿」

 

津軽ロマンって何?いや、深く考えたら

駄目だろうから、さっさと解説をして目録

を渡してしまおう。

 

「そ、そして、この炊飯器ですが、なんでも

第二夫人のカンザシ殿が造ったモノで、米の

銘柄に併せて水や空気、熱量などを自動調節

して最適で最高の状態に炊きあげる機能が

付いてるんだとか。無論手動調節も可能です」

 

コレを聞いたときに、無価値!と言おうと

した私は悪くないはずだ。

 

「ほほう。ソレは凄い。流石は簪殿。お米に

かける情熱は素晴らしい。そしてオセさんは

『弘法も筆に拘る』と言いたいのでしょうね。

一流の素材を一流の料理人が一流の器具を

使って調理してこそ超一流の料理となる。

あの若さでこの領域に来るとは・・・」

 

み、妙に感心してるが、言ってることは

間違いではないから何とも言えん。

 

『あ!赤おじさんだ!』

 

む、これは好機!

 

「あぁ気付かれてしまったか。では補佐官殿、

私はこの辺でシツレイします」

 

この方は子供に甘いからな。それにアイサツ

は済んだし、炊飯器と米に興味津々だから

この辺がちょうど良いだろうさ。

 

「ん、あぁ。そうですか。このようなモノを

頂き有り難うございましたとお伝えください」

 

良し!

 

「えぇ、確かに伝えましょう。さて待たせたね」

 

大人の事情で子供を待たせてはいかんよな。

 

『大丈夫!黒おじさんは居ないけど、今は

こうして赤おじさんと遊べるし、あそこに

新しいお友達も出来たの!』

 

うむうむ。最初は私をおじさんと呼ぶから

クレーリアの子供と思い、ついヤエガキを

殴り倒したが、この子はどうもべリアルの

血に反応しているらしいんだよなぁ。

 

初代が何かしたのかも知れんが、とりあえず

今はオセ殿の眷属として日本地獄でお手伝い

しているらしい。

 

オセ殿からも仲良くしてやってくれとは

言われてるし、こうしてなついてくれる子

を無下にする気はないから良いのだが。

 

そして新しいお友達か。基本的にココでは

殺しても死なないから彼女の呪いやら何やら

を受けて死んでも問題ないからなぁ。

 

むしろ死んでから立ち上がるだけで魂が

鍛えられていくんだから、有る意味お得な

鍛練法ではある。

 

私もずいぶんと世話になったモノだよ。

 

さて、そのお友達はどんな連中かな?あまりに

アレなら距離を取らせるが・・・

 

新しい囚人ならお友達とは言わないだろ

うし補佐官殿も近寄らせまい。

 

奥方殿かオセ殿に友達と紹介されたんだろうか?

 

「「「「「・・・」」」」」

 

ふむ、見たところ若手の悪魔だな。ならば

オセ殿関連か。いやはやこの年でこんな英才

教育を受けれるとは羨ましい限り。

 

頑張って強くなるが良い。

 

少なくとも彼女の呪いに耐えれるなら、

その辺の上級悪魔など話にならんくらい

強くなれるからな。

 

「何寝てるか、さっさとオキロよ」

 

・・・。止めにしか見えんがアレが

中殿の気付けだ。起きないと血の池に沈め

られるから、早く起きた方が良いぞ。

 

「「「「「はいぃぃ!」」」」」

 

・・・うむ。彼らは強くなる。間違いない。

 

レーティングゲームに参加するかどうか

は知らないが、もしも参加してくるなら

近い将来の脅威となるのは間違いないな。

 

「若者よ、私の所まで駆け上がって来るが良い」

 

その時は絶対王者として迎え撃とう!

 

『あ~か~お~じ~さ~ん!』

 

「おにいさま~」

 

「お義兄さ~ん」

 

おっと。今は皇帝ではなく、おじさんで従兄

だったな。と言うかヤエガキ!貴様に義兄

呼ばわりを許した覚えはないぞッ!

 

 

――――――――――――――――――

 

ーーコカビエル視点ーー

 

「フリードのヤツはまだ帰ってこんのか?!」

 

フリードと言うよりは天閃の聖剣だろうが。

まぁどうでも良いがな。

 

「殺されたのだろう?管理者は無能でも、

無能だからこそ優秀なサポート要員を配置

するのは当然だ」

 

オセとかな。

 

「くっ!あのような精神破綻者に聖剣を持た

せたのが間違いだったかっ!」

 

それはそうだろう。いくら適性があるとは

いえ、誰でも良いと言うモノでもなかろう。

 

しかしコイツの後ろにいるヤツがわからん。

 

ハーデスのように分りやすい接触も無いし、

コレではアザゼルに中途半端な情報しか

渡せんではないか。

 

ここでコヤツを殺せば完全に裏が取れなく

なるし。はてさて、どうしたものか。

 

「・・・教会から聖剣持ちが二人派遣されて

来たのだろう?とりあえずソチラを回収

しつつフリードの末路を調査してみては

どうだ?殺したのが教会からの追っ手ならば

ソイツが天閃の聖剣を持ってるだろうし、

お前が持つ聖剣も狙って来るだろう?」

 

アレにソコまでの価値が有るとは思えんが、

まぁ面子の問題だよな。

 

「むぅ・・・確かにそうだ。ならば私は囮の

拠点を造り待ち伏せるべきか?」

 

まぁココに追っ手が来られても掃除が面倒だ。

 

俺の目から離れたら連中の後ろにいるヤツ

が接触して来る可能性も有るか。

 

「それが良いだろう。工房を構えて待ち構える

のが貴様らの遣り方ならば、そうした方が

違和感が無い。俺は小娘を相手にする気は

ないから、精々頑張って聖剣で悪魔を殺して

上の連中を誘い出してくれよ」

 

いくらなんでも小娘相手に全力を出したら

あちらが蒸発して終わりだからな。

連中にしてみたらソレこそが狙いだろうが、

わざわざ狙い通りに動く気も無い。

 

「ふん!わかっておるわ!まずは聖剣使いの

追っ手に餌を撒くとしよう。それから・・・」

 

・・・・・・

 

捨て台詞を吐いて独り言を言いながら消えたか。

 

アザゼルもそうだが、研究者と言うのはああいう生物なんだろうなぁ。

 

「さて、邪魔者は消えたぞ?話が有るなら

聞こうじゃないか」

 

建物全体を覆う俺の結界に被せるようにして

新たな結界を張ったか。

 

コレだけの力量にコレだけの気配を隠蔽出来る

相手。ようやく来たか?

 

「流石に気付きましたか。私はオセ様が眷属、

白音・オセ。主人の使者として参りました。

堕天使幹部の良心にして最後の常識人と言わ

れるコカビエル殿にお逢いできて光栄です」

 

「・・・そうか」

 

コレがシロネ・オセか。単独で俺の前に

立ちながらも一切の気負いがない。

 

確かに強者。アザゼルが警戒するのもわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、堕天使の良心にして最後の常識人て。

コレでも戦争狂とか言われてるんだがなぁ。

 

否定が出来んのがまた何とも・・・




コカビーは堕天使の将来の為に粉骨砕身(物理)
して頑張ってます。

会長眼鏡一同修行中。
最初は魂の強度を高めるもよう。

専門家の監修の元、安全を確保した上で
殺してます。素人の方は真似しないで下さい。

新たなオリキャラ・・・一体何スなんだ?

ゾンビだから悪魔にしても大丈夫。むしろ
結界が亡くなっても生きていけるように
なりました。ってお話。

シェムハザ?この時期に悪魔の嫁さん孕ましてる
時点でダメでしょ?


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25話

シロネコと堕天使幹部のお話。

ルビが多すぎるので断念。
無駄に文字数が多くなるから
シカタナイネ!

原作キャラにさらに、被害者が?!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

 

ふむ?コカビエルがなんか微妙な顔してますが

どうしたんですかね?

 

あ、いや、周りがあんまりアレなんで苦労

してるのはわかりますよ?

あんなのがトップだと大変ですよね。

 

「あまり具合が宜しくないようですが・・・

我々が生産してる胃薬を使いますか?原料に

フェニックスの涙を使用してますので、強制

的に胃を治してくれますよ?」

 

ここで彼が倒れたら堕天使陣営は阿呆しか

居なくなりますからね。

私としては別にソレでも良いと思いますが、

ご主人様的には堕天使も悪魔の敵として

存在してくれないと困るから、あんまり馬鹿

でも困ると思ってるらしいんですよねぇ。

 

だからと言って、賢い敵よりは馬鹿な敵の方が

良いわけですけど。まぁ馬鹿の度合いですよね。

 

少なくとも今回の一件で各陣営に楔を

打ち込むまでは死なれては困るみたいですし。

 

とりあえず今は恩を売って信用を高めるとしましょうか。

 

「お前たちはフェニックスの涙で一体ナニを

造ってるんだ・・・薬はありがたく頂くが」

 

あ、やっぱりツッコミは入りますよね?

 

「本来は稀少なモノですが、単純な回復薬

として悪魔が独占するよりも、こうして

薬品として配布することで他の神話勢力の

胃袋を掴むことが出来ますからね」

 

力で戦うだけが侵略では無いのですよ。

 

「なるほど。それが広がれば他の神話勢力も

悪魔を潰そうとは思わんし、あとは地道に数を

増やして勢力を増せば良いと言うわけか。

気の長い話ではあるが、何もせんで滅びを待つ

よりはよっぽどマシだな」

 

ふむ。やはりご主人様が睨んだ通りです。

 

「そう言うことです。戦争を語るには自国

の政治を理解している必要が有るとご主人様

は常々語っておられますが、現在の堕天使陣営

において政治を正しく理解出来ているのは

コカビエル殿だけであるとも言ってましたよ」

 

コイツはただの戦争好きではなく、政治を

理解出来る軍務大臣です。

その能力で政治を理解したからこそ今回の

狂言なのでしょう。

 

「俺を称賛してるのか堕天使を馬鹿にしてるの

かが微妙なところでは有るが……まぁ今回の

件に関してはそちらが予想している通りだ」

 

でしょうね。いくらなんでもこのタイミング

での単独行動なんか有り得ません。

 

「他の神話勢力の介入を利用して幹部である

貴方が動き、天界と悪魔と堕天使が関係する

事件を起こして各勢力にいる主戦派やソレに

支援する連中を炙り出す。

さらに失敗することで連中の企てを潰して

反省会的な会議の場を作らせ、アザゼルが

望む和平への道筋を造る。コレが貴方の狙いですよね?」

 

滅私と言うかなんと言うか。簪姉様曰く

『香ばしい生き方』ですよねぇ。

 

「・・・そうだな」

 

――――――――――――――――――

 

ーーコカビエル視点ーー

 

 

完璧に読まれている、か。流石はオセ。

あの若さでありながら、オセ家だけで我々

堕天使を滅ぼせると言われる戦力を揃え、更に

それを完璧に統率しているのは伊達ではない。

 

「今述べたように、我々は貴方の狙いが時間稼ぎ

と情報収集だと言うことは理解してます」

 

だろうな。

 

「そうか。その上でこうして直接会いに来たと

言うことは、オセ殿から何かしらの情報を

頂けると言うことで良いかな?」

 

アザゼルはオセを戦争を望むキ○ガイと思って

いるのだろうが、軍政家として見ればアヤツの

行っていることは何一つ間違ってはいない。

 

本当にキチ○イならば勝てると判断したら

即座に戦争をしかけて来るだろうさ。

 

『悪魔は悪魔らしく在るべき』と言うのは悪魔

としての存在の確立なのだ。

なら『堕天使が堕天使らしく』在ればどうなる?

 

答えはバラキエルやシェムハザが見せた。

我々は天使に頼らなくとも数を増やせるのだ。

 

あとはその産まれてくる子を育成できる場

が有れば良い。

 

オセは生物的な本能を利用して自領の悪魔の

出産数を増やして見せた。

ならば我々とて同じ方法を採れば数は増やせる。

 

今は実験段階に過ぎんが、着実に新世代は産ま

れて来ていたのだ。冥界に土地は余っているし、

オセが国境を警備している以上は勝手に侵攻して

くる悪魔も居ない。

 

このままなら堕天使と悪魔が増え、天界だけ

が数を増やせんと言う状況だが・・・そもそも

天界は人間を使い俺達を殺してきたからな。

戦力と言う点で見れば奴等は侮れん。

 

それに気付いたのが他の神話勢力の連中だ。

我々が着実に数を増やすことを嫌ったのだろう。

 

戦争を望む堕天使の若手と教会を煽り、勝手に

動かしやがった。

下っ端とは言え堕天使が教会のエクソシストと

共同で動き、あまつさえ聖剣を奪取してきたと

誇らしげに語って来たとき、ついアレを殺した

のは今でも間違いでは無いと言い切れる。

 

大した情報は持って無かったし、俺の名前で

行ったことにすれば、周囲も疑問に思って

動く前に情報収集をするだろうと踏んだのだ。

 

そして俺の事情を完璧に理解したオセの使者が来た。

 

「そうですね。まずは魔王であるサーゼクス様と

変態の長にして良い歳こいて厨二病のおっさん

より、コカビエル殿の助命嘆願が届いてます」

 

・・・なんと言うか。

 

「そ、そうか。サーゼクス殿はともかくとして

アザゼル!がそのようなことをしていたか」

 

本来なら感動するか、見くびるな!とキレる

べきなのだろうが・・・

 

「変態の長にして良い歳こいて厨二病のおっさん

からは『どんな条件でも飲む』とまで言われた

そうです。その心意気を酌んだ為ご主人様は

私を使者として遣わしました」

 

挑発・・・ではないな。普通に本心か。

俺に対しては主人であるオセの命令だから

礼を尽くすが、アザゼルに関しては別に興味

も無い、と。

 

いや、まぁ種族的に天敵同士だし、長年

争ってきた悪魔に対して、堕天使に対する

配慮云々を言うのもおかしな話。

 

それに俺個人に対してはしっかり使者として

礼儀を守ってるから何とも言えん。

 

「アザゼル!の配慮には友として感謝する

べきか、堕天使として私情に流されるなと

説教すべきか微妙では有るが、いまは良い

だろう。私が望むのは私の助命ではないと

言うことは使者殿も知っているだろうしな」

 

これ以上アザゼルを引っ張られても俺も

リアクションに困るからな。とりあえず他の

話題を頼むぞ!

 

「そうですね。では、まずは『禍の団』と言う

連中をご存じですか?」

 

禍の団・・・

 

「いや、知らぬな。そいつらが?」

 

奴等の後ろに居ると言う連中か。

 

「表面的にはそうですね。悪魔や堕天使、天界

に恨みを持つ連中が集まって出来た組織です」

 

ふむ、つまりは反三大勢力と言ったところか。

今までは地下に潜って各勢力に対して攻撃して

いたが、我々が和平を結ぶとなって連中も

纏まったということだろうな。しかし、

 

「表面的には?それはどういう事かな?」

 

ソレなら表も裏もあるまいよ。

 

「では基本的な情報からいきましょうか。

禍の団の主な構成員は、まず旧魔王派。

次いで人間の神器持ちが集まって出来た

英雄派と呼ばれる集団。そして魔法使いや我々

に恨みを持つ個人と大小の組織による連合です」

 

なるほど、確かにカオスだな。

 

まぁ旧魔王派はわかる。内乱で現魔王に力で

潰されて、僻地に押しやられた連中が僻地で

ウダウダ何かしらの悪巧みをしていると言う

のは有名な話だ。

 

だからと言って反三大勢力に与するのは

どうかと思うが、大前提としてやつらは

頭がオカシイからな。

 

オセのように土地を開発して自分の国を造った

方がよほど建設的だと思っては居たが・・・

旧魔王と言いソレを見過ごす今の魔王と言い、

一体ナニをしているのやら。

僻地に送りつけて蓋をするだけでは恨みが

積もるだけではないか。

 

価値観や主義主張が違いすぎるから話し合い

も出来ん。

さっさと滅ぼすか独立させるべきだったな。

 

そして英雄派。コレもわかる。神器狩りをして

いた我々堕天使は特にコイツらの恨みを買って

いるのだろうよ。

 

そして魔法使い。まぁ旧魔王派が協力するなら

魔法の研究も捗るし、天使やら堕天使を捕らえ

て実験でもする気なんだろうさ。

 

あとは純粋に我らを恨む連中か。

 

コイツらをみれば英雄派や魔法使いに対し

他の神話勢力が助力していると見て間違い

無いな。

 

しかしコレでは・・・

 

「気付きましたね?コレでは教会の主戦派

が動く理由にはなりませんし、そもそも

内部崩壊しないとオカシイのです」

 

だな。どう考えても英雄派が旧魔王派と

組む理由が無い。

堕天使を恨む連中は多いだろうが、それと

同じくらい悪魔が憎いはず。

 

さらに三大勢力を敵とするならエクソシスト

の主戦派が動く理由にはならん。

 

「・・・よほどの大物が纏めているのか?」

 

色々聞きたいことは有るが、まずはコレだな。

組織としてグダグダになるのが確定しているのを

しっかりと纏めているヤツがいるのだろう。

 

「えぇ。禍の団の首領は無限の龍神です」

 

はぁ?!

 

「オーフィスだと?!なぜヤツがそんな勢力を

率いているのだ!」

 

確かにヤツなら旧魔王派だろうが英雄派だ

ろうが力で纏めることが出来るだろう。

だが、ヤツにそんな意思があるとは聞いた

事がないぞ?!

 

そもそもヤツがその気になれば、組織など

作らなくとも我々を滅ぼせるだろうがっ!

 

「ですから『表面上』です。知っての通り

オーフィスには敵意と言うものは有りません。

もっと言えば全てに興味が無いのです」

 

そうだな。アレはそう言う存在だ

 

「つまり担ぎ上げて組織の顔としているのか?」

 

ソレならわかる。どうにかして接触して交渉

できたなら担ぎ上げることは出来るだろう。

 

ソレ自体が最大の難関だがな。

 

万が一交渉に成功して担ぎ上げることが出来た

なら、その名を最大限活用してしまえば……

 

『オーフィスが反三大勢力を表明した』と

言うだけで世界に激震が走る。

 

エクソシストとて下手にオーフィスを敵に

回すことは出来んし、天界がオーフィスから

教会を守れるか?と聞かれれば無理と答える

しか無いだろう。

 

聖剣狂いの後ろにいる者はソレを利用して

ヤツを動かしていたか。

確かに無限の龍神がバックに居れば教会を

出奔しても問題はないし、俺にでかい態度を

取って機嫌を損ねてもリカバリーが利く。

 

「しかしヤツもただのお飾りでは有りません。

何でもヤツは蛇と呼ばれる力の塊を構成員に

渡して、彼らを強化しているとか」

 

蛇・・・何かの隠語だろうが、オーフィス

の加護と言ったところか。

 

「しかしなぜオーフィスが其奴等の味方を?」

 

嘘か本当かはわからんが、貰える情報は

全て貰う。今までの情報だけでもアザゼル

への土産には十分ではあるがな。

 

「オーフィスの望みは静寂。いずれ次元の

狭間に戻ることが目的らしいですね」

 

・・・なるほど。オーフィスにも渇望があった

と言うことか。そして何者かがソレを理解して

突いたわけだな。

 

「ならばオーフィスの狙いは反三大勢力の

設立ではないな?」

 

静寂を求めると言うならば相手は我々ではない。

 

「そうです。オーフィスにとって禍の団はいずれ

グレートレッドを打倒するための兵士なのです」

 

「なるほど」

 

やはりそうか。しかしグレートレッドが狙い

とは、流石はオーフィスと言ったところか。

俺たちとはあまりにもスケールが違いすぎる。

 

「オーフィスの狙いはわかった。その為に

兵士に力を与えると言うのも良い。

力を求め、力を得た者たちが我々三大勢力を

潰したいと言うのも理解出来る」

 

それにオーフィスには敵対しても勝てないと

理解しているから、戦わずに傘下に加わると言う

ヤツもいるだろうし、オーフィスを利用するだけ

と言う連中も・・・いや、旧魔王派の連中が

馬鹿正直にグレートレッドと戦うはずがない。

 

借りは踏み倒し、そのまま利用するだけ利用

しようと言う連中が殆どだろう。

 

オーフィスにしてみたら百年後でも二百年後

でも大して変わらん。力を与えたヤツの中で

一人でも戦力になるヤツが生まれればソレで

良い、と言ったところか。

 

つまり禍の団とやらとオーフィスの利害は

一致している。しかし、しかしだ。

 

「そもそもオーフィスを担ぎ上げ、その渇望を

理解して交渉出来る存在など居ない。

なぁシロネ殿・・・オセ殿はナニを掴んだ?」

 

表面上オーフィスが首領で、各派閥の連中は

オーフィスを利用して居ると思い込んでいる

のだろうが、距離を取れば組織の歪さがわかる。

 

各派閥の連中やソレに力を貸す反三大勢力の

連中を操ってるヤツが居るのだろう?

 

そいつは誰にも存在を悟られることなく、

それでいて全ての勢力に対して手を伸ばし

ている。

 

「流石は堕天使陣営の良心にして最後の常識人

と言われたコカビエル殿。お見事です」

 

それはもう良いから!本心からの誉め言葉

なんだろうけど、そう言うのは要らないから!

 

「コカビエル殿の予想通り、彼らを影で操る

存在が居ます」

 

よし、話が進んだ!しかし、やはりそうか。

 

「・・・オセ殿は其奴が誰か知っているのだな?」

 

普通に考えれば、知っているのだろうな。

だからこそ勝てる戦争もせずに領地で戦力を

強化しているのだろう。

 

下手に表に出れば其奴が敵に回る、いや、

自分達も嵌められると考えたか?

 

「無論です・・・コカビエル殿は『神野悪五郎日影』もしくは『神野明影』と言う名を知っていますか?」

 

神野悪五郎日影?神野明影?

 

「いや、寡聞にして知らぬが・・・まさか人間が?」

 

人間が龍神に干渉するなど普通ならあり得んが

何かしらの神器でも使ったのか?

 

「流石に知りませんか。まぁ彼は名を変え、姿を

変えて世に在り続ける存在ですからね。

堕天使の貴方にわかりやすく言うなら、その名の

通りヤツは『神の影』です」

 

神の影!?それはっ!その名はまさかっ!

 

「デミウルゴスだとでも言うのかっ!」

 

ヤツが顕現して暗躍しているだと?!

 

「えぇ。その通りです。宗派によっては

ヤルダバオトとも呼ぶらしいですね?」

 

「あぁ。そうだ!しかしまさかヤツが・・・」

 

神の影。這い寄る混沌。この世の全ての悪。

蝿の王。そして原初の悪魔。

 

くそっ!確かにヤツなら全てが繋がるっ!

 

各神話勢力に対して影響力があり、オーフィス

の渇望とて見抜き、交渉も出来るだろう!

 

欲望を隠さない旧魔王派や魔法使いを操り、

復讐や功名を求める英雄派とやらも掌の上で

転がすようなものだろう!

 

洗脳による不勉強が根底にある一途な信仰心

しか持たないエクソシストなど、ヤツにとって

はまさしく玩具!

 

汚して貶めて腐らせてから殺すことなく

棄てるだろうよ。

 

しかもやっかいなのはヤツは1つの勢力に

拘らんと言うことだ!

 

禍の団?反三大勢力?ヤツにとっては暇潰し

以外のナニモノでもない!

 

自らは功名や権勢など求めていないのだ。

 

故に人畜無害を装い、全ての勢力に得が有る

ように利害調節を行うことも容易い。

 

そうして自分で創った舞台で踊る阿呆を見て

嘲笑するような存在だ。

 

ヤツには堕天使の事情だの悪魔の政治だの

他の神話勢力の懸念など関係ない!

等しく玩具、等しく道化。等しく塵芥。

全てを汚し、全てを貶め、全てを腐らせる。

 

オーフィス?まさしく表の看板だな。

だがその渇望を利用して客を集め、我々を

踊らせる名としては十分だ。

 

アザゼルっ!我々は想像以上にヤバイのに

目を付けられたぞっ!

 

「コカビエル殿にも事態の重要性が理解して

頂けたようなので、ご主人様からの提案を

お伝えさせて頂きます」

 

ん、あぁ、そうか。オセはヤツの存在を

知りながらもこうして暗躍しているの

だものな。

 

何かしらの対策を練っていると見て間違いは

無い。そもそも我らとの共倒れを良しとする

ようなヤツでも無いからな。

 

まぁオセにとっての最良の結果を出すための

案ではあるだろうが、今の俺たちには指針と

なるものが無い。つまりはこの提案が指針

となるだろう。

 

「うむ。失礼した。宜しく頼む」

 

どのような提案かは知らんが・・・もしも

我らから見て、ベストでは無くともベターと

判断出来るような内容ならばその意見を採用

することも吝かではない。

 

と言うか、時間に余裕が有るわけでもなければ

情報も足りんから、今の時点では提案を断れる

とは思えんがな。

 

「いえ、相手が相手ですから仕方在りません。

それで、ご主人様からの提案は・・・・・・」

 

 

 

―――――――――――――――――

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「デミウルゴスだと?!」

 

禍の団については先日から調べてて、漸く

その名前や概要を掴んだってのに、まさか

首領と思っていたオーフィスがただの客寄せ

の表看板だったとはなっ!

 

確かにヤツが禍の団なんかの首領になった

動機や切っ掛けに関しての調査はまだ出来て

いなかったが、静寂への渇望とは・・・

 

でもって俺達の主戦派に直接関与して動かして

たのはハーデスか。

 

ケルベロスを貸し出されたぁ?ヤツにしたら

「コカビエルに頼まれただけ」とでも言うんだ

ろうがよぉ。

「何に使うかは知らなかった。むしろあのような

事に使われたことを遺憾に思う」ってか?

 

でもって管理不十分を理由に、自分の庭である

コキュートスにでも堕として口を封じるか?

 

なめ腐りやがって!

 

「皆殺しの大司教もオーフィスまでは知って

いるかも知れないが、デミウルゴスまでは

知らないだろうとのことですね・・・」

 

「だろうな」

 

そもそもオセがヤツの存在に気付いたことが

異常だ。だが、虚報にしてはオーフィスが

禍の団を率いているのは事実だし、ソレを

操る存在が居ると言うのも不思議はない。

 

情報源が気になるところだが、ヤツは無限鬼畜

との付き合いも有るからな。

 

「とりあえずは情報の裏取りだ。ヤツが裏に

居るってのを前提に調査をやり直すぞ!」

 

クソッ!ヤツが関わるとなれば、欲望に忠実な

悪魔や堕天使は相性最悪だし、強者との戦いを

望むヴァーリもヤバイか。

 

「了解です。シロネ・オセからの提案については

どうしますか?」

 

アレか。コカビエルは現場の判断で断れんと

判断したんだったな。

それにアレならサーゼクスからの手加減や

俺からの助命嘆願も両立出来る。

依頼はあくまで『殺さねぇこと』だからな。

 

「乗るしかねぇだろ。サーゼクス達はヤツの

ヤバさを知らねぇし、天界の連中は

親父無しでは戦えんと理解してるはずだ」

 

ヤツに関わるくらいなら逃げるだろうよ。

そうなれば和平なんか成り立たねぇ。

 

禍の団の連中に味方する他の神話勢力に

ヤツの存在を伝えたところで、証拠も

なければ逆に俺達を確実に潰せると判断

される可能性が高けぇ。

 

そもそもヤツに戦いを挑むのが間違いだ。

ヤツは殺せねぇし封じることも出来ん。

 

興味を無くして通りすぎるのを待つのが

唯一の最適解。

 

この場合は禍の団と俺たちの戦争か?

ソレが成れば、あとはどっかで見学して指差し

て笑って、飽きたらどっかに行くだろうよ。

 

クソッたれが!

 

だがソレならソレでヤツは俺たちの和平を

邪魔しないとも言える。

 

あとは他の神話勢力に警戒をさせずに和平を

結び、禍の団と戦えば・・・あぁクソッ!

 

難易度が高すぎるだろうがよっ!

 

 

―――――――――――――――

 

ーーカンザシ視点ーー

 

 

 

『ん~ベネ!ディ・モールトベネ!』

 

おんやぁ?神野サンがスゴく・喜んでるねぇ。

まぁ信仰心溢れる乙女なんか大好物だろうし。

 

「デュランダルの方は暫く動かないみたいだし、

そろそろ私たちも動かなきゃ駄目だから、今回

はとりあえずこの辺で良いかな?」

 

破壊の聖剣がどんな原理か見たかったけど、

あんまり欲張ってもアレだしね。

 

4つもデータが取れたなら十分ではあるし。

 

『聖剣に囚われた老害の目の前で聖剣を

汚す悦び!神を信じる乙女の前で神の死を

伝える悦びはもう!ぐろぉぉりあぁぁす!』

 

うんうん。ご機嫌だね!

 

「コカビエルに神野サンのことを告知も出来たし、

これからは大手を振って動けますよ~」

 

まぁあくまで『禍の団のべんぼう』として

禍の団の誰も知らない黒幕としてですけどね。

 

『そうだねぇ~アザゼル達は僕を禍の団の

黒幕と勘違いして動くんだろうねぇ~』

 

まさしく徒労。あのニワカ技術者気取りが

無駄に疲れてく所を指差して笑ってやります。

 

「そうですねぇ。何処にでも居て何処にも

居ないのが神野サンだし。

一度でも『そこに居る』と疑ったらアウト

なんですよねぇ」

 

いやはや。おっかないですねぇ~。

 

『そぉなんだよ!だから僕はいつだって

かんちゃんの側にいるのさぁ~!あぁ、

モチロンお風呂とかトイレとか主との

プライベートな時間は除くよ?覗くんじゃ

なく、除くんだよぉ~!』

 

「いや、さすがにそこを覗かれたら殴りますよ」

 

普通にご当主様に言い付けるし、なんなら

補佐官様にもお願いします。

 

『真顔だねぇ!いや真顔だよ!うんうん

そりゃ真顔になるさぁ!』

 

当然ですっ!親しき仲にも礼儀有りですよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ФωФ)・・・なんで簪様がアレと仲良く

出来るのかがサッパリわからないにゃ。

 




コカビー胃薬を手に入れる。

回復薬。老害が得するだけのゲームで浪費する
くらいなら他で使えよ。と言うことで、ゲーム
に使用する分を減らしてオセ君が買って色々
ヤってるもよう。

下手に老害たちに販売して禍の団に横流し
されても困るし、不死鳥もちゃんと売れてて
新しいアイディアにもなるので損はしてない。
それにルヴァル=サンもゲームに見切りを
つけたからシカタナイネ!

原作だと天使も交配で増やせるけど、かなり
条件が厳しいみたいですんで、本能刺激して
も増えないです。

いつからシロネコが全員に本当のことを
言っていると錯覚していた?ってお話。

聖剣に囚われた老害と神を信じる乙女とは
一体・・・

神野サン。散々な言われようだけど、実は有名神
だったんだぜ!至高の御方は居ないぞ!


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26話

コカビーと真剣に真面目な話した次の日

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーゼノヴィア視点ーー

 

イリナが戻らないか・・・

 

私は待機だったが、向こうは上層部から

隣町の調査をするよう命令が出てたらしい。

 

まぁ悪魔からの情報を鵜呑みにするわけ

にも行かないというのもあるし、宗派や

派閥間の主導権争いもあったのだろうが・・・

 

それにソーナ・シトリーはそれなりに

忙しいらしく暫く面会は出来ない。

 

アチラも立場があるから教会戦力である私と

おいそれと接触できないだろうし、管理者と

しての仕事もあるもんな。

 

情報に関しても配下の連中が集めた情報を

貰えるから問題はないが。

 

イリナも直情的なところがあるし、今回の

使い込みがバレたら処罰間違いなしだから

功を焦ったところもあるのだろう。

 

しかし人員はともかく、エクスカリバーが奪われたのが痛い・・・

 

かといって私一人で何が出来るワケでもない。

 

と言うか、私の勘がこの宿舎を出たら

死ぬと警鐘を鳴らすんだよなぁ。

 

信仰の下に死ぬことを恐れてはいないが

犬死はゴメンだぞ。

 

教会との連絡を絶たれたわけでもないし

やはりここは待機すべきだろうな・・・

 

戦士として体調を整えつつ、悪魔の財政に

痛手を加えるとしよう。

 

イリナ、正直信徒の寄付からなる我々の予算を

使い込んだのは許せんが君の仇は取ってやる。

 

遺品は・・・あの絵か。父親に届くように

手配しようじゃないか。

 

・・・レシートと購入の経緯と抗議文も添付してな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーオセ視点ーー

 

「シロネコは無事コカビエルと接触。

連中は我々の提案を飲む模様です」

 

ふむ・・・まぁそうだろうな。今の状況で

神野を知れば、シロネコが提示した策が

自分たちにとって一番有効だと判断する

しかない。

 

ソレは良いんだが・・・

 

「そっちはそのままで良い。現状の問題は

サーゼクスからの依頼だ。

無能の守護と出番が欲しい。さらに手柄に

なれば尚良しと言うモノだったよな?」

 

なんというか、過保護と言えば過保護だし

コカビエル相手と思えば望み過ぎとも言える。

 

「ですね。守護と出番については目処が

立ちました。あとは手柄ですが無能に何を

させますか?」

 

これがなぁ。そもそも無能ってどれくらい

強いんだ?耐久はライザーのところの眷属

の攻撃で全滅する程度だろ?

 

今回に関しては最低単位がケルベロスだぞ?

赤龍帝が禁手に至ってると考えれば1ベロス

はあるだろうが、さすがに堕天使幹部のツレ

がケルベロス数頭だけってのはなぁ。

 

中級堕天使で死んでもイイ奴って言っても

コカビエルはアレで仲間想いだし、生贄

と言っても難しい。

 

ハルパーだがハルペーだかアカベーだかは

もう逝ったしなぁ。

 

白い少年はもう灰になったし、無能の眷属は神器になった。

 

ウチの連中出したら即殺だし、ダメージすら受けん。

 

手加減させて負けたふりして逃がす?んん~。

 

「戦場から生きて戻って、さらに情報を持って

帰る事が出来れば初陣の偵察兵としては最高

だと思うんだが、コレだと華が無いよな?」

 

無能に貴族としての手柄を求めてるなら

コレだと足りんだろ。だが正直アレに何か

させるってかなりキツいぞ。

 

そこそこ使える眷属が居ればいいが、あの

無能は無駄に拘りがあるしなぁ。

 

「いえ、相手がコカビエルならば無能が生きて

戻るだけでも戦果と言えます。

あとはサーゼクスが美化してくれるのでは?」

 

ふぅむ。そういう脚色もあるか。まぁ大本営

発表だし、和平への架け橋とか言えば誤魔化す

事が出来るレベルではあるが・・・

 

「とりあえずその方向で調整するか。

細かいことに関しては終わってから

魔王共に決めてもらうか」

 

仕事は完璧に仕上げたいところだが

素材が悪すぎる。

雑草と汚れた水でポーションなんか

作っても腹を壊すだけ。

 

苦情でアトリエが潰れますお疲れ様でした。

 

「ですね。正直面倒見きれません。特殊な結界と

手加減でなんとか余波に耐えてもらいましょう」

 

うむ。生き延びればなんとかなるだろ。

 

「でもってコカビエルの戦闘に関してだが、

とりあえず流れはコレで問題ない。

ただ白澤殿から『コカビエルが痛めつけられ

たり苦戦してたら音声記録だけ録ってくれ』

と言う依頼が来てるんだよなぁ」

 

コレ、絶対鬼ぃさん絡みだろ?俺もシバかれる

気がしてならんのだが・・・

 

「あぁ、声が似てますからね。なんか少し

前にゆりだかゆらだか言って吹っ飛ばされて

ましたけど・・・変に加工しないで映像付き

で送れば良いのでは?

神野が出て来る前に映像を切って、ヤツの

せいで映像が乱れたとか言っておけば白澤

殿の依頼的には問題なさそうですよ」

 

ふむ。どうせ俺たちのすることに興味も

ないだろうし、死ぬのは無関係の人間じゃ

なくて三大勢力関係者だもんな。

 

魂の送り先さえ間違えなければ迷惑にはならんか。

 

「それまでコカビエルが勝ってれば特に問題無いもんな」

 

ついでに言えばあいつが負けるとか苦戦する

なら相手はアザゼルだろ?

 

確実にコカビエルを止めれて、尚且つ手加減

出来る人材となれば堕天使にはアザゼルしか

居ないからな。

 

連中が指示通りに動くなら、コッチが直接

動かないだけでも十分な援護になる。

 

ハーデス関連で連中に内応している奴が

口封じのために派遣されるとしても、現状

コカビエルと戦えるのは堕天使の幹部以外

だと雑魚の白龍皇が奇襲して攻撃を当てたら

ってところだろ?

 

堕天使内部に裏切り者が居る可能性を

知ったコカビエルが今更そんな攻撃に

当たるとは思えんし、食らって負けたら

それまでだ。

政治を理解できるコカビエルが消えれば

堕天使が弱体化することになるから、適当な

ところで神野に場を掻き回させればいい。

 

そうなると自然に情報をバラしつつ戦闘を

しなけりゃならなくなるが、神野なら問題

なくやるだろう。

 

コカビエルも相手が連中だけなら問題

あるまい。せいぜい悪魔と堕天使にわかる

ように情報をばら蒔けばいいさ。

 

「それと一応ウチから自称弟子を出したい

と思うのですがどうでしょう?

今のアレならコカビエルといい勝負だと

思いますが・・・」

 

ん?アレか。まぁあのノリは正直嫌いじゃない。

 

なんだかんだで上下関係は理解出来てるし、

そろそろ実戦経験も有った方が良いか。

 

「任せる。ただ無能が変に張り合う

可能性があるから、邪魔されんような

工夫が必要になるぞ?」

 

初戦が足手纏いを抱えて格上の相手って

のはちょっとな。

 

今回は無駄な気遣いとか無くしたほうが

アレの経験にもなるだろうし。

 

「それならシロネコに補佐をさせましょう。

あとはシトリー家の者ということで最上級

悪魔を何体か連れて行き、無能の護衛と

すれば問題ないかと」

 

ふむ。そのまま結界張らせても良いし、

物理的に拘束するのも有りか。

 

でもって計画の微調整も必要だが・・・

まぁこのくらいやることが有った方が

暇も潰せて良いか。

 

さて、そうなると匙がどうなったか気になるところだ。

 

上級悪魔カリキュラムを経験させてから

まだ三日しか経ってないが、マーラは

まだしもサジと言う名を継ぐ者だし

「男子、三日会わざれば刮目して見よ」

とも言うしな。そもそも最初が最大の成長期。

 

悪魔に成り立てて器が定まってないからこそ

爆発的な成長ができるし、土台を固める意味

でも基礎は重要だ。

 

阿呆に関しては・・・まぁ現実と地獄を

見て成長してくれ。

姉のアレを見れば素質はあるだろうからな。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ達視点ーー

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラ

オラオラオラオラオラオラオラオラ

オラオラオラオラオラオラオラぁぁ!」

 

10分に一回死んで、中さんに叩き起こされて。

 

強制的に強化された魔力を纏った地獄の水で

作った無数の拳!

 

容赦なんかしない、したら殺される!

私は子供でもヤル時はヤル子だったのよっ!

 

「甘いですよー」

 

なっ!櫂で一蹴?!って言うか櫂って

そういう使い方できるの?!

 

「動きを止めたらいけませんよー」

 

あっ!やばっ!

 

「ブベラっ!!」

 

顔面潰すと見せかけて胴体ですか。

そうですかこれがジワジワ死・・・

 

「ふぅ。やれやれだぜ。ですよー」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

まずは走れ。とにかく走れ。黙って走れとは

言われてるけどよぉ!悪魔なんだから飛んじゃ

ダメなんですかねぇ?!

 

こんなのゴールデンじゃねぇよ!

 

『走れ走れー。火車より早く走るんだよぉぉ』

 

「出来るかっ!つーかダミ声すげぇな!」

 

変成庁製猫語翻訳機使ってるのになんで

そんなダミ声に変換されるんだよ!

どこぞのバーのママとかオカマ忍者っぽいぞ!

 

『うるせぇ、変態が。何がデキ婚だ人生舐めネコ』

 

くっ!ソレに関しては何も言い返せねえ!!

貴族の婿さんになるならタダのガキじゃ

ダメだってのはわかってるのにっ!

 

「うぉぉぉぉ!俺は強くなってぇぇ!会長の

役に立てる兵士になるんだぁぁぁぁぁぁ!」

 

まずはそれからだ!学校の教師云々は生き延び

てからじゃねぇと意味がねぇ!

 

「たわばっ!」

 

『喋ってないで走れ。叫ぶ体力があったら走れ

夢見る余裕があったら走れ。でもってさっさと

家賃払いやがれこのろくでなしがぁぁぁ!』

 

家賃ってなんだ?!

 

『お前がッ!死ぬまで!走るのを!止めないっ!!』

 

「うげぇぇぇぇぇ!!」

 

走ってねぇよ!引きずられてるよ!もう削れてるよぉぉぉぉ!!

 

 

 

・・・・・・・・・

 

『死んじゃえー』

 

「「じゃえー!」」

 

「「「「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

「そして起きろ。お前ら弱過ぎね」

 

「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

「サーゼクスちゃん。アザゼルから配慮への

感謝状が来てるんだけど、何かしたの?」

 

アザゼルからの感謝状だと?こちらからの

クレームに対し、感謝状が来ると言うのは

どういうことだ?

 

「ん~?クレーム入れたのに感謝されるの?

コカビエルの動きを教えてくれてありがとう

ってこと?」

 

・・・その可能性もあるか。下手にコカビエル

の口から情報を出したりしたら堕天使を煽って

る連中に警戒されるからな。

 

こちらからの情報があったから動けると

考えれば、ようやく動けると言った感じか?

 

無い話ではないだろうが・・・

 

「う、うん!そうなんだ!さ、さらにオセ君

の見解も添えただろう?

わ、私もそうだが、彼もアレだ。戦争を

望んでるというわけではないからな!」

 

「「「・・・」」」

 

怪しすぎる。

 

「(・・・絶対何か隠してるよね?)」

 

「(間違いないねぇ~)」

 

「(オセが絡んでる可能性が高いな)」

 

今回の書状にはオセの名前を出さず、

クレームと共に『悪魔としての見解』を

送ったんだぞ?

 

それに対して心の中で感謝することは

あっても、態々公式に感謝してくるなど

有り得んことだ。

 

「(また何か勝手に契約したとか?)」

 

「(だろうねぇ~。彼から特に何も連絡が

ないということはサーゼクス個人でやった

ってことなんだろうけどさぁ~)」

 

「(この時期にサーゼクス個人で?

さらにアザゼルから感謝状が来る?

つまり・・・コカビエル絡みだな)」

 

普通なら個人で何を依頼しようが知った

ことではないし、態々告知させるなど

ありえんが・・・今はオセからソーナに

修行をつけたいと言われて、シトリー家が

二つ返事で了承したために一時的に

監視に穴が空いている。

 

サーゼクスが自分の眷属に監視させると言う

事で納得はしてるんだが、どうも怪しい。

 

いや、リアスの監視兼護衛を信用できる者

にしたいというのもわかるし、我々に

妹を監視されるのも嫌だと言うのもわかる。

 

同性で友人のソーナだからこそコイツも

認めたんだからな。

 

だが現在事態をオセに任せた上、ソーナも

いないし、コイツの眷属が護衛と監視をする

となったせいで駒王町の情報が一事遮断され

てしまっているのも事実だ。

 

契約は「戦争にしないこと。コカビエルは

出来るだけ殺さないこと。リアスが冥界に

退避するまでの間の身辺警護」である以上

特に問題が発生する要因は無い・・・はずだ

 

いや、まて、まさかコイツ。

 

「なぁサーゼクス?」

 

「んん?!な、何かな?!」

 

めっちゃ動揺してやがる。やはり・・・

 

「リアスが冥界に退避するのは何時になる

予定だ?

当然退避命令は出してるんだよな?要請じゃ

なく命令で出したんだよな?

向こうに足手纏いがいたんじゃオセとて

まともに動くことは出来んぞ?」

 

コカビエルとシロネが戦えば余波だけでも

相当なモノになるし、結界の外で待機させる

くらいなら初めからコッチに退避させた

方が安全だ。

見ることも経験ではあるが、今のリアス

では次元が違いすぎて経験にすらならん。

 

「ももももちろんだ!退避な。うん退避!

もう少しで帰ってくる予定さ!」

 

おいィ?

 

「「「・・・」」」

 

「・・・ちなみにリアスちゃんには何て

言って命令を出したの?」

 

そうだよな。まずはソコだ。内容によっては

我々で首に縄を付けてでも引っ張って来る

必要があるぞ。

 

「り、りーあたんにはだな。うん。

危険だから早く帰ってきなさいと・・・」

 

子供かっ!って言うかこの様子じゃ

退避命令出してねーな?!

 

「セラフォルー大至急学校で運営業務を

行ってるシトリー家の者にリアスの現状を

確認させてくれ、俺はオセに連絡を取る。

ファルビウムはいざという時のために

すぐに地上へ行ける派遣部隊の準備を頼む」

 

「りょーかい!」

 

「りょ~かい。派遣部隊の任務は戦闘

じゃなくリアスたちの回収で良いよね?」

 

「無論だ」

 

下手な眷属を送っても殺されるだけだからな。

 

ならばさっさとリアスを回収してしまおう。

 

「ま、待て!大丈夫だから!りーあたん

は回収しなくて良いから!」

 

良いわけあるか。

 

そもそもリアスが死んだり怪我した時に

一番騒ぐのはお前だろうが。

 

いくら退避までの間の護衛を依頼している

とは言え、自分から死地に赴くような阿呆

はオセとてどうしようもないだろ?

 

守るために無駄に人員を割くことになるし、

いくらなんでもそこまで邪魔されたら、

例え護衛対象でも気絶させて箱詰めにして

送り込んで来るくらいはする奴だぞ?

 

それなのに何でこんなに余裕なんだ?

これではまるでソーナの安全を確信

したセラフォルーじゃないか。

 

ん?安全を確信してる?

 

「なぁサーゼクス。お前、リアスの

退避までの護衛ってのを拡大解釈して

退避させなきゃずっと護衛してもらえる

とか思ってないよな?」

 

まさかな?まぁそんな詐欺まがいのこと

がオセに通用するするはずないんだが。

 

「ま、まさか!そんな虫の良いことは

考えていないともさ!」

 

いないともさって・・・どこの方言だ?

 

「ならばコカビエルの件が一定の終息を

迎えるまでの間の護衛とか、あわよくば

リアスにも手柄を立てる場を用意して

欲しいとか、そういう依頼はしてないな?」

 

今ならソーナも居ないし、手柄を独り占め

できるとか考えてないよな?

 

「ままままままままさか!

そそそそそそんな!むむむむむ

むしのいいいいことは!」

 

・・・此処まで動揺すると逆に凄いな。

しかしそうか。それなら話が繋がる。

 

「・・・つまり手加減するような依頼

を出したからアザゼルも感謝状を送って

きたってことかなぁ~」

 

「サーゼクスちゃん・・・いくらなんでも

オセちゃんだって仕事って割り切れない

ことがあると思うよ?」

 

「だな。今回はまだしも次回からは

契約すら受けてくれない可能性が高い」

 

いくらなんでも実戦で、しかも堕天使の幹部

や他の神話勢力が絡む案件で手加減って。

 

コレでオセの眷属が死んだら魔王が断交

されるんじゃないか?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー奥様視点ーー

 

 

「さて、自称弟子。仕事です」

 

旦那様が許してるからアレでしたが

コイツも元服した男子です。

 

つまり・・・働け。

 

「へ?仕事っすか?あだだだだだだだだ!」

 

何か不満でもあるんですかねぇ?それに

何度も教えてるでしょうが。

 

「返事はハイです」

 

それ以外の返事はいりません

 

「ハイっ!スミマセンデシタッ!ヨロコンデ

ヤラセテイタダキマス!」

 

まったく。流石は5年前の段階で旦那様に

挑んで地獄を見て、そのまま弟子入り志願した

という経歴の持ち主。

 

基本的に無骨者でHENTAIではありますが、

この辺で手柄の一つでも立てさせねば旦那様

の人材育成能力と器量が疑われますからね。

 

「仕事場所は地上、相手は堕天使幹部

コカビエルです。今の貴方なら丁度良い

相手でしょう。

数値だけ見ればほぼ互角ですが、相手の

経験を考えれば勝てる可能性は極めて低い

相手です。死なないようにサポートは

しますから、実戦というものを学んできなさい」

 

今のコイツならよほどのことがない限り

死にはしませんからね。

一応シロネコに補佐させますが、まぁ

大丈夫でしょう。

 

「初陣がコカビエルっすか!そりゃいい!

ありがとうございます姉御!」

 

姉御って・・・ところどころ不敬ですが

コイツ的には精一杯の敬意らしいですし、

旦那様的にはコレがコイツの持ち味だから

って言うことで許可も出してますからねぇ。

 

「まぁいいでしょう。とりあえず準備を。

あぁ、現地には無能が居ますから、正体が

バレないように仮面でも被りますか?」

 

別にバレても良いような気もしますが、

コイツの立場やら何やらを考えると

色々面倒ですからね。旦那様からも

配慮するようにと言われてますし。

 

え~と、紙袋と布頭巾。それにキャッチャーマスク・・・キャッチャーマスク?

 

「無能・・・あぁ、リアス・グレモリー

っすか。まぁどうでもいい相手っすけど

実家にバレたら面倒っすからねぇ」

 

っすが多いですねぇ。

 

「そのへんは任せます。ただ紙袋だと破けた

時に困りますから、被るなら布頭巾にして

おきなさい。

細かい仕事内容は現地で簪に確認するように」

 

コレもアレですが、まぁいいや()

 

「了解です!殺戮に特化した俺の実力を見せてやりますよ!」

 

うん。まぁ悪魔としては間違ってません。

 

どーせ今のコイツでは殺せないだろうし

もし殺しそうになったら神野が止めますよね。

 

 

 

さて、無能に出番をやれと言われましたが

凶児に手柄を立てさせるなとも言われてません。

 

旦那様は気にしてませんが、正妻として

いつまでも旦那様を便利屋扱いさせる気はありませんよ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は!裸エプロンッ?!

 

「・・・く、クラスのお友達から聞いたんです」

 

「・・・なるほどその手があったわね」

 

血が、血が足りねぇぇぇぇぇッ!!

 

 




ヤバスヤバスしてる堕天使陣営。
真剣に考える教会陣営。
ほのぼのオセ君陣営。
世紀末の眼鏡会長達。
ピリピリしてる魔王達。
日常生活満喫している無能一味。

・・・いや、無能はアレですよ?
原作でも騎士が大司教とか白い変人を
追いかけて行ったその日の帰りですよ?

真面目にやれ。ってお話

自称弟子・・・一体何者なんだ・・・


白龍皇に対するツッコミや感想は
ネタバレになるから、まだご遠慮下され。


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27話

サブタイを付けるなら
「かわいそうな堕天使」

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし




 

ーーコカビエル視点ーー

 

 

関係者全員から無能だ無能だと言われるから

どれほど無能なのかと思えば・・・

 

まさか俺の存在を知っておきながら警備も

警護も置かず、さらに眷属が行方不明で

あることも放置して自分はお気に入りの

赤龍帝とご同衾かよ。

 

お前、夜の管理者じゃなかったのか?

オセが代行してるのを知らんのだろ?

 

これでは下っ端も教会を根城に出来るし

元聖女も普通に街に入って来れるな。

 

・・・日中の最上級悪魔による警戒網

とは雲泥の差だ。

 

サーゼクスの妹であることとグレモリー家の

名で好き勝手やってると言うのは本当か。

 

はぁ・・・だがシロネ・オセの提案を

受けた以上は、コレを俺の最後の敵と

せねばならんわけだ。

 

まぁ実際の戦闘は俺と同等の実力を持つ

悪魔を派遣してくれると言うから、最悪

でも不完全燃焼と言うことにはならん

だろうが・・・

 

それにしたってなぁ。俺にも敵を選ぶ

権利くらいは有ると思うんだが。

 

と言うか今のコレって俺がコイツらの

情事を覗いてる感じになるのか?

 

いや、情事と言うほどの事はしてないんだが

 

「なぁシロネ殿よ。アイツ等を関わらせんと

ダメか?」

 

普通にオセ家の連中だけで良くないか?

 

「コカビエル殿の気持ちはわかりますが、我々

は無能に出番を与えて欲しいという依頼も受けて

ますし・・・我々に対して宣戦布告などしたら、

その時点でカンザシ・オセ様が貴方を殺さなく

てはならなくなりますよ?」

 

「・・・そうか」

 

まぁカンザシ・オセはシロネ・オセを遥かに

上回ると言うし、宣戦布告してきた相手を

生かして帰したらオセの名に傷が付くものな。

 

100年少々でここまでの実力を得たのは、

素質もあるがそれだけ地獄を見てきたと言う

ことだろう。

 

アザゼル曰く覇王鬼帝だったか?神代から

生きる鬼神に鍛えられたと言うのは嘘では

無いのだろうな。

 

「ちなみに。そう、ちなみになんだが、

今あそこに光の槍をぶち込んだらシロネ殿は

どうなると思う?」

 

防ぐか、避けるか、結界に弾かれるか。

 

「普通に死にますね」

 

・・・だよなぁ。うん知ってた。

 

「と言うかコイツの眷属はどうした?

バラキエルの娘と騎士が居ただろう?」

 

フリードがそんなことを言っていたはずだ。

 

「変態の娘なら家で寝てるのでは?騎士は

以前白い少年に討ち取られてましたね。

その白い少年は我々に喧嘩を売ったので

悪魔に敵対したとして処理しましたけど」

 

悪魔なんだから働けよ!主君の警備しろよ!

 

しかもフリードっ!アイツは本当に精神破綻者

だったか。実力差もわからんとはなぁ。

 

聖剣の因子とやらに頭をヤられたか?

 

「バルパーも帰ってこんが、奴はお前らが?」

 

なんか餌を撒くとか言っていたが実際

アレから音沙汰が無いんだよな。

 

「私たちは何もしてませんよ。貴方も

私たちも何もしてないなら、恐らくは

ヤツでしょう。教会の援軍はまだ到着

してませんし、無能は見ての通り無能。

それにヤツは話を聞く限りでは聖剣狂いの

前で聖剣を壊したりするのが好きそうです」

 

・・・有り得る。妄執を絶望と嘲笑で

塗りつぶすのがヤツの趣味だし。

 

「ではフリードが持っていた聖剣は

どうなった?」

 

普通に考えれば研究のために冥界に運ぶ

のだろうが、ヤツが絡むとなれば下手に

動かせんだろう。

 

何せアレは今回教会や我々を動かした鍵だし、

アレが有れば信心深い信者共が勝手に寄って

くるんだからな。

 

砂糖に集る蟻を眺めたり潰したりするのが

奴だ。ならば砂糖を放置することはない。

 

「面倒事になると確定してましたからね

カンザシ・オセ様が分解しました」

 

「・・・そうか」

 

まぁそれも一つの対処法ではある。ヤツは

過去に固執せんからな。

無くなったら無くなったで別の方法で我々

を嬲ってくるだけの話なんだが・・・

 

「コカビエル殿、現実逃避はもう良い

でしょう?私としてもあの阿呆面を

見ているのは正直辛いのです」

 

うん。まぁそうだろうな。殺気は無いが

イラついているのはわかる。

 

はぁ・・・切り替えるか。

 

「ではシロネ殿。私は私の仕事をしよう。

ヤツが出てきたときは段取り通りに」

 

「かしこまりました。ご武運を」

 

ふ、武運か。コレから俺と同等の敵と戦い、

俺の口を封じようとする堕天使の仲間と戦い、

そしてヤツをおびき寄せるのだ。

並みの武運では足りんな。

 

だが、だからといって挑まん訳にはいかん。

 

この戦いは速攻こそ唯一の勝機。デミウルゴス!

いや神野明影ッ!貴様の思うようにはさせんぞ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「・・・なんだこの重圧?!」

 

俺と部長とアーシアは一緒に寝ていたけど、

いきなり凄い重圧を感じて目が覚めた。

 

部長は・・・窓際に立って上を観てる?

 

「堕天使か・・・」

 

そう呟くと部長は指パッチンをして学生服に

着替え、家の扉を開け放つ。

 

そして外に出た俺達を見下すように、ヤツは

空に佇んでいた。

 

「はじめましてかな、グレモリー家の娘。紅髪が

麗しいものだ。忌々しい兄君を思い出して反吐

が出そうだよ」

 

うぉぉぉぉぉ!いきなりの挑戦的な物言い!

憎悪を感じるくらいだ。

 

部長も冷淡な表情を浮かべているけど・・・

こ、怖い!

 

「ごきげんよう堕ちた天使の幹部。コカビエル。

それと私の名前はリアス・グレモリーよ。

もう一つ付け加えさせてもらうなら、グレモリー

家と我らが魔王は最も近く、最も遠い存在。

この場で政治的なやりとりに私との接触を

求めるなら無駄だわ」

 

コカビエル?!

コカビエルって!堕天使の幹部って!マジか?!

 

「ふっ。今のを本気で言っているのだと

したら、やはり貴様は無能の小娘だな。

貴族気取りに王族気取り、それでいて

護衛も対策も無しに俺の前に立つ無能よ。

今、頼りのお兄様はココには居ないぞ?」

 

コイツっ!部長になんてことをっ!!

 

「そもそもその様子では自分の眷属がどう

なったかも知らんのだろう?

俺という存在を知りながら警備も警戒も

せず、お気に入りの赤龍帝と同衾するのは

構わんが・・・主というならばもう少し

己の部下を気にするのだな」

 

眷属?コイツ何を言ってやがる?!

 

「・・・祐斗をどうしたのかしら?」

 

え、あ、そうか!まさか木場がっ?!

 

「別に俺は何もしていないぞ?お前の騎士は

フリードに斬られてあっさりと死んだよ。

聖剣での一撃だ。悪魔の駒も一緒に消滅した

らしいな」

 

なんだとっ!フリードって、あのアーシアを

連れて歩いてたイカレ神父かっ!

 

あいつが木場を殺しただって?!

 

「なんですって?!」

 

部長も驚いてる!だけど言われてみれば今の

今までの木場を心配してなかったけど、何か

しらの方法で木場が無事だと思ってたって

ことだよな?

ソレがコカビエルの言葉で否定された?

 

「今頃そんなリアクションされてもな。

そのフリードは別の悪魔かエクソシストと

戦って殺されたようだが・・・。

ここ数日でコレだけの動きが己が管理する町で

起こって居たにも関わらず何一つ把握できて

いなかったか?シトリーの小娘は己の力では

足りんと判断して実家や姉を頼ったと言うのに」

 

き、木場が野郎に殺されて、あの野郎も

殺されてる?!それじゃあ俺は仇も討て

ねぇってのかよっ!

 

「嘘よ!悪魔の駒が消滅するなんて

聞いたことがないわ!」

 

え?嘘?嘘なのか?木場は生きてるのか?

 

「小娘が。自分が知ってることが世界の理とでも

言うつもりか?その傲慢さは悪魔に相応しいが、

肝心の実力が足りていないぞ」

 

ど、どうなんだ?木場は一体・・・

 

「まぁキサマらの眷属などどうでも良い。

貴様が勘違いしたように魔王との政治的な

交渉もする気はない。

態々こうやって貴様らに会いに来たのは

キサマらをゲームに誘うためだ。

今の悪魔はゲームが好きなんだろう?」

 

ど、どうでも良いだと!コイツ!俺たちの

仲間をなんだと思ってやがるっ!

 

「・・・祐斗については調査するとして、

一体どんなゲームをするつもりかしら?」

 

「部長!」

 

後回しにして良いことじゃ・・・!

 

「イッセー。今は我慢して。目の前に

いるのは堕天使の幹部なの。隙を見せたら

一瞬で殺される。だからお願い・・・」

 

部長・・・そうだ。俺も悔しいけど部長が

一番悔しいに決まってるんだ!

 

その部長が耐えてるんだ!俺が耐えないで

どうするっ!!

 

正直怖い。圧倒的な力を感じるっ!だけど俺はっ

 

「イッセー・・・」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーコカビエル視点ーー

 

 

・・・なんだこの茶番。いや、最初から

茶番になるのはわかってたんだがな。

 

赤龍帝のガキが下向いて震えてたと思ったら、

何か覚悟を決めた顔で小娘の前に立ち小娘は

うっとりとして赤龍帝の背中を眺めてるって・・・

 

俺の前で隙を晒したらダメなんじゃなかったのか?

 

一秒に一回で計算しても、すでに500回以上

死んでるぞ?

 

フェニックスとの試合は映像で見たが、

こんな奴が宿主とは。まさか赤龍帝に同情

するときが来るとは思っても見なかった。

 

それに家の二階で見てる僧侶はなんだ?

俺は孤立した回復役を殺せば良いのか?

 

もぉいいや。

 

「お前の根城にしている駒王学園を中心に

してこの町で暴れさせてもらうぞ。

そうすればサーゼクスも出てくるだろう?」

 

我ながらセコイことだ・・・

 

「そんなことをすれば戦争が勃発するわよ?」

 

コイツ、本当に無能だな。

 

「今更ソレを問うのか?聖剣の事は知ったん

だろう?アレを使えばミカエルあたりが

出てくると思ってたんだがな。

来たのはタダのエクソシストと聖剣を使う

雑魚が2匹だ。あまりにつまらん。

だからサーゼクスの妹の居城で暴れるんだよ。

ほら、楽しめそうだろう?」

 

全然楽しめん。溜息を我慢するのがキツイ。

 

このストレスをぶつける相手が来て

くれるのが唯一の救いか・・・

 

「・・・戦争狂め」

 

何をアホなことを。地上の拠点で暴れたくらい

で戦争が起こるわけないだろうが。

 

オセや日本神話の鬼に殺されて鎮圧されて終わる。

 

小娘が【自分の拠点】を過大評価しすぎだ。

 

「そうだ。そうだとも!俺は退屈で退屈で

仕方がなかった!」

 

あぁ。家帰って炬燵入って寝たい。

 

ダメだダメだ!俺の背には堕天使の未来がっ・・・

だがコイツらの真顔を見てるとなぁ。

 

何で俺と対等の顔してるんだよ。こうやって

話をしているうちに魔王でもなんでも呼べよ。

 

「つまりゲームとは・・・」

 

クソゲーだな。

 

「すでに駒王学園にある魔法を仕掛けてある。

時間内に俺を打倒できなければ最初に学園

が吹き飛び、さらに連鎖して街に被害が

出るようになっている。

サーゼクスの妹とレヴィアタンの妹、それら

が通う学び舎だ。さぞ魔力の波動が立ち込め

ていて、混沌が楽しめるだろう?

戦場としてはちょうどいい!」

 

シロネ・オセ一人で釣りが来るが。

それに学園って。狭すぎるだろう。

 

まぁ今回はその狭さが必要だから逆に良いと

考えてはいるが、ココで違和感を持たれても困るな。

 

「くっ!!」

 

・・・大丈夫だな。敵の阿呆に感謝する

のはアレだがシカタナイ。

 

「ハハハ!戦争をしよう!魔王サーゼクスの妹よ。

一心不乱の大戦争をな!」

 

光の槍~からの散弾っ!

 

「「うわっ!!!」」

 

はぁ・・・敵を目の前にして目を閉じるなよ。

頼むぞシロネ・オセ。このフラストレーション

を解消できる相手を頼むぞ!!

 

 

―――――――――――――――――――

 

「イッセー!学校へ向かうわよ!」

 

「はいっ!」

 

堕天使の幹部が相手と言う大決戦が

はじまろうとしていた!

 

―――――――――――――――――――

 

ーー???ーー

 

「シロネサマ。アレがリアス・グレモリーっすか?」

 

なんつーか、酷くね?アレが若手の有望株?

俺なんかよりよっぽど狂ってるじゃねぇか。

 

「見ての通りです。貴方が凶児なら、アレはもう

形容が出来ないくらいの阿呆で無能です。

赤龍帝狂いとでも言えば良いのでしょうかね?」

 

魔力を持たねぇサイラオーグと言い、脳味噌

持たねぇリアスと言い、バアルの関係者って

のは、何かしらの問題を抱えなきゃ気が済ま

ねぇのかね?

 

「もうただのアホで良いと思うっすよ」

 

ありゃ馬鹿とか言ったら馬と鹿にシツレイ

だし、雑魚と言ったら魚にシツレイだわ。

 

屑でもカスでもねぇ。無能とはよく言った

もんだよな。

 

「まぁ眷属の生死すら敵に聞かされるまで

気にもせずに日中はおままごと、そして本来

悪魔が活動すべきこの時間に睡眠を取る連中

ですからね。評すべき言葉無しと言った所です」

 

「そっすね」

 

ありゃ悪魔としても貴族としても最悪だな。

お家騒動の直後だってのに家族親族放置で

愛人といちゃつき、仕事すらしてねぇ。

 

しかも、なんだって雑魚の下僕が偉そうに

してんだ?生意気な目付きでコカビエルを

見てたが、自分の視線が相手を刺激して

主であるリアスを殺すことになるかもしれ

無かったと理解出来てんのか?

 

アレが赤龍帝?話になんねぇよ。もう少しで

白龍皇が来るって話だが、今代の白龍皇は

ハーフだかクォーターのルシファーだって?

 

ハーフになった時点でルシファーじゃ

ねぇだろ。悪魔舐めんな。

 

神器によるドーピングがある分、多少の

苦戦はするかもしれねーけど、そっちは

俺が殺らなくても良いらしいし?

 

とりあえずコカビエルと全力で戦えって

話だったよな?

 

周りの連中はシロネサマがなんとかして

守るって言うし。余波は気にしなくても

良いってのは嬉しいねぇ。

 

今まで周りに散々タコ殴りにされてきた分、

さっさと憂さ晴らしといきたいところだが・・・

 

「連中はこれから眷属呼んで、事情を話して。

シトリーの家のやつらと連絡取って、更に冥界

の魔王サマに事情を説明して援軍要請して、

学校の周囲に結界を張ってから乗り込むんす

よね?その間コカビエルは何するんすか?」

 

もしかしてずっと待ってんの?連中がいつ来ても

良いように空に浮きながら椅子に座って?

ケルベロスもずっと『待て』してんの?

 

いくらなんでも間抜け過ぎませんかね?

 

「さて、素数でも数えるか貴方との戦いに

備えて激情を溜め込むか、アザゼルに連絡

を取ったり記録用の何かを備え付けたり

してる可能性が高いですね」

 

・・・命懸けの戦いの前座がアレだからな。

俺なら激情を溜め込んで敵が来たら何も

考えずに突っ込む可能性が高い。

 

いや、まぁ静かに燃えるタイプも居るから

難しいところでは有るんだが。

 

どちらにせよ油断はしねぇ。つかそんなん

したら普通に殺される。

 

それに、何でも映像記録も録って今後の反省点

や重点的に鍛えるべきところも教えてくれる

って言うし、漸く自称弟子から弟子に昇格だぜ!

 

ついでに、コカビエルの声ってあのヒトそっくり

だからな。

 

色んな想いを拳に乗せて、思いっきり殴り付けて

悲鳴を上げさせてやらぁ! 

 

んじゃまぁ、連中が色々準備してるうちに

俺も準備しますか。

 

えー姉御から借りた布頭巾と、マトイ。

音楽はコレか。そんでもって口上が・・・

ほほぅ、人間の特撮ネタ?らしいけど、中々

センス有るじゃねーか。

 

「・・・貴方の登場のタイミングや口上は簪様が

監修したらしいですから私からは何も言いません。

ですがまぁフォローはしますので、全力で当たって下さい。骨は拾いましょう」

 

「合点承知っすよ!」

 

俺見てぇな半端者に目をかけて鍛えてくれた

旦那や先輩方に恥をかかすワケにはいかねぇ!

 

無能の存在が霞むくらいのアツぅいバトルを

お見せしやすぜ!

 

 

 

 

 

・・・つーかさっさと来いや。

非常事態舐めてんのか?

 

――――――――――――――――――――

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「既にサーゼクス様に打診しましたわ」

 

「朱乃!」

 

非難の声をあげる部長だが、朱乃さんが

珍しく怒った表情を浮かべていた。

 

「リアス、コレはあなた個人で解決できる

レベルを遥かに超えてるわ。

・・・魔王の力を借りましょう」

 

あんな風に部長へ詰め寄る朱乃さんを初めてみた。

 

「理解してくれてありがとうございます。

シトリー家の皆様、サーゼクス様の加勢が

到着するのは一時間後だそうですわ」

 

一時間。それくらいならなんとかなるかも。

いや、何とかするんだ!

 

「コレはフェニックスとの一戦とは違い死戦よ!

それでも死ぬことは許さない!生きて帰って

あの学校に通うわよ、皆!」

 

『はい!』

 

俺たちが気合いの入った返事をする!

 

 

――――――――――――――――――

 

ほう?コカビエルが動いたと?それも学園か。

 

コレは現場の判断で動くべきだな。

 

――――――――――――――――――

 

ーー???ーー

 

「なんつーか、いいヤツっすね。コカビエル」

 

律儀っつーかなんつーか。

 

「・・・ですね」

 

それに引き換えこっちの無能は・・・もぅ

無能過ぎて謝罪したくなるくらいやべぇ。

 

俺なら間違いなくあそこで作戦会議してる

ところを爆撃してるか、さっさと来いやっ!

って言って一人か二人殺してますわ。

 

自分で死戦とか言っといて何やってんだ?

 

 

―――――――――――――――――

 

ーーコカビエル視点ーー

 

 

・・・何やってんだあいつら。

 

敵である俺の言うことを疑いもせずに正面

から堂々と来るし、正門前ででかい声で作戦

会議してるし。それに援軍が一時間後って。

 

俺相手に雑魚が一時間耐えるなんざ有り得ん

だろ?自惚れ過ぎだ。ソレを指示してきた

上の意図を考えたりはしないのか?

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

「今行くぞりーあたんっ!」

 

「「「黒幕を誘い出すまで待てって言ってる

だろうがっ!」」」

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやはやカオスだねぇ~』

 

僕、まだ何もしてないんだけど?

 

 




原作では聖剣狂いの儀式とか色々ありましたけどね?
それにしたって付き合い良すぎでしょう。

たぶん堕天使の幹部連中との付き合いに
慣れてしまってこんな感じに・・・

無能。お前は人生舐めすぎってお話


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28話

前半・中盤。堕天使幹部との死闘!

後半主役?登場!茶番を演劇に変えるには
一流の演出家と一流の俳優が必要なのです。


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

正面から堂々と乗り込む俺たち。学園の

敷地に入った途端、俺はプロモーションで

『女王』に昇格して力の底上げをしている。

 

鳥野郎のときみてぇな真似されても困るしな。

 

だけど悪魔歴の浅い俺の『女王』は朱乃さんに

比べるとまだまだ力が弱い。

 

「・・・っ!」

 

俺たちは校庭の異様な光景に言葉を失った。

 

まず校庭の中心に魔法陣が一つ。その魔法陣を

囲むように無数の魔法陣が展開していて、それ

ぞれが光を放っている。

 

夜の静寂と合わせてある種幻想的で神々しい

とも言える光景が広がっている。

 

「ようやく来たかグレモリーの娘。無能は

時間を捨て有能は時間を買うという言葉が

あるが、まさしく今のキサマらは無能そのものだな」

 

なんだとっ!上から目線で偉そうに!

 

声のした方向を見上げると、空に浮いた

椅子に腰掛け、余裕そうに足を組みながら

俺たちを見下すコカビエルがいた。

 

「さて、ゲームを始める前から爆破などして

は興醒めだから今まで待ったが漸く動ける。

で、小娘。これからココに来るのは

サーゼクスか?それともセラフォルーか?」

 

コイツ・・・完全に俺たちなんか眼中にねぇ

って言いたいのかよ!

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私たちが・・・」

 

ヒュッ!ドォォォォォォォォ!

 

風きり音のあと、爆音が辺り一帯に爆風と

ともに広がっていく。

 

爆風が発生した先にあるのは・・・いや、

あったのは体育館だった。

 

か、影も形もなくなってる!消し飛んだ

って言うのか?!

 

「つまらん。まぁいい。余興にはなるか」

 

体育館のあった場所には強大な光の柱が

斜めに突き刺さっていた。

あ、アレもしかして堕天使の光の槍か?

 

で、でかすぎだって!堕天使の姉ちゃんが

放った槍なんか爪楊枝じゃねぇか!

 

『ビビったか?』

 

俺の心に直接ドライグが語りかけてくる。

って言うかビビるだろう?あんなの見せられたら!

 

『あぁ、アレが堕天使の幹部。古の大戦を

生き延び聖書に名を残す本物の堕天使だ』

 

本物の堕天使・・・

 

『まぁいざとなったらお前の体の大半を

ドラゴンにして、一時間は動けんような

ダメージを与えてやるよ。

そのあとは魔王に任せればいい』

 

・・・そこまでの相手なんだな。

 

てか鎧の具現化は最終手段だ。鳥野郎の

ときは不発だったが、アレは10秒間の

間しか強くなれない。

 

体力・魔力・それらの限界を無視して得られる

俺の禁手の力はほとんど無敵だ。

けど、使用後に丸三日神器が使用不可能となる。

 

使用するのは一か八かの瀬戸際だろう。

 

『・・・(今回は大丈夫だよな?悪いのは

堕天使だし、ここで戦わなきゃさらに地上に

被害が出るんだもんな。だが「五月蝿い」と

言われて問答無用で殺されるかも・・・)』

 

 

ん?コイツ何か言ったか?

 

「さて、まずは余興だ地獄から連れてきた

俺のペットと遊んでもらおうかな」

 

コカビエルが指を鳴らすと、闇夜の奥から

ズシンズシンと地を揺らしながら何かが

近づいて来るのがわかった。

 

「な、なんだありゃ?!」

 

10メートルは有る黒い巨体に4本の足。

血のような真紅の双眸。そして三つの頭!

 

「・・・ケルベロス」

 

忌々しそうに部長が言う。部長はコレが何か

知ってるんですか?

 

「ケルベロス?」

 

「えぇ、地獄の番犬の異名を持つ有名な魔物よ」

 

じ、地獄の番犬?!そんな物騒な異名をもつ

バケモノなんですか?!

 

「本来は地獄・・・冥界へ続く門の周辺に生息

してるのだけど、まさか人間界に持ち込むなんて!」

 

「やばいんすか?」

 

まぁヤバくないわけ無いけど!

 

「やるしかないわ!消し飛ばすわよイッセー!」

 

おおっ、部長。気合が入ってるぜ!俺も気合を入れる!

 

「いくぜ、ブーステッド・ギアァァァ!」

 

躾がなってないようだから俺が調教してやる!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーコカビエル視点ーー

 

 

いや、全員でケルベロスに当たられてもなぁ。

 

「イッセー今回は私たちが貴方をフォローするわ」

 

「力を溜めて俺がトドメですか?」

 

作戦会議なんかしてる暇ねぇだろ。

ほら、ケルベロスが黙って待ってるぞ。

ソレを不思議に思わんのか?

 

そもそもケルベロスを普通に生息してる野生

の獣みたく言うんじゃねーよ。

 

ギリシャ神話の獣だろーが。ほら、この

情報が有れば俺の背後に居る組織はわかる

だろ?もう良いよな?情報はやったし、

このまま生きて帰れば、小娘にしては十分

な実績だろう?

 

つーか。もうめんどくせぇ。なんか教会の

エクソシストも来たし。

 

・・・結界はどーした結界は。下手に結界に

衝撃を与えれば余波で街が吹っ飛ぶんだぞ?

 

普通に聖剣で破壊しやがって。

 

デュランダル使いらしいが、自分が

ストラーダと同じ領域にいるとでも

勘違いしたか?

 

「とりあえず死ね」

 

エクソシスト。今回の茶番、貴様に回す役はない。

 

光の槍を展開。数は・・・まぁ10で良いか。

ん?シロネ・オセから通信?

 

『そのエクソシストは奴の餌に使えます。

殺さずに動けない程度のダメージで抑えて

もらえませんか?』

 

・・・なるほど。信仰心に篤く、聖剣を持った

乙女か。奴の大好物だな。餌は多いに越した

事はないと考えればこの判断は妥当だろう。

 

「了解した」

 

なら出力を抑えて・・・まぁこの程度

なら大丈夫か?

 

死ななければ向こうがなんとかするだろうしな。

 

さぁ未熟者。堕天使幹部の光の槍を味わえ。

 

「なっ?!コチラに気付いていただと?!

う、うわぁぁぁぁぁ!」

 

雑魚が、俺相手に奇襲が出来るとでも

思ったか?そのまま寝てろ。

 

元々コイツ等なんざどうでも良いんだ。

 

まぁ聖剣だとケルベロスもダメージを

受けるから、早めに戦闘不能にした

方が良いというのはあったが。

 

もし失ったらハーデスが堕天使陣営に

クレームを入れて来るだろうし。

 

「喰らいなさい!」

 

小娘が。なんで態々声を掛けるのやら・・・

 

『ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

ふむ。現状で無能の魔力はケルベロスの

火炎弾一つと互角程度か。

 

サーゼクスと同じ滅びの魔力と言うなら

その属性は同じなはず。

アザゼルもオセも研究しているだろうが

こう言った明確な指標はありがたいだろうな。

 

つまりアレは全てを滅ぼすのではなく、

自分の魔力の質量と同等のモノしか滅ぼせん。

 

いや、ケルベロスの魔力と今のアレの魔力を

比べればケルベロスの方が上だ。

つまり属性的にほとんどのモノに対して有利

に働くということか。

 

コレをサーゼクスが使うというのは

まさしく脅威よな。とは言え、

 

『『『ぐるぁぁぁぁぁぁ!』』』

 

ケルベロスの頭は三つ。さて、この火炎弾をどう防ぐ?

 

「くっ!!」

 

「リアスっ!これでも喰らいなさいっ!」

 

雷・・・アレがバラキエルの娘か。

父親に似なくて良かったな。

 

しかしこの期に及んで堕天使の力を使わんだと?

 

手を抜いて勝てる相手と思われたか、それとも

死んでもバラキエルの力には頼らんと決めたか。

 

後者ならまだマシなんだがなぁ。

 

「くっ!押し負けるっ!」

 

当たり前だ。小娘の手を抜いた一撃でどうにか

なるほど、地獄の門番は甘くない。

 

「いくぜ、ブーステッド・ギア!ギフト!」

 

Transfer(トランスファー)!!』

 

ほう。赤龍帝の譲渡か。まぁそれなら今の

連中でもケルベロスの火炎弾を跳ね返す

ことも出来るだろう。

 

「コレならっ!さぁ喰らいなさい!・・・え?」

 

「は?」

 

「い、犬コロが居ない?!」

 

火炎()と言ってるだろうが。何故その場から

動かないと決めつけた?

 

『『『ぐらぁぁぁぁぁぁぁぁ!』』』

 

「「きゃぁぁぁぁぁ!!」」

 

「部長!朱乃さん!!」

 

未熟。あまりに未熟。戦場が自分の

思い通りになると思ったか?

 

「すぐに回復を!」

 

元聖女アーシア・アルジェントか。

 

その回復技術は貴重で稀少。さらに指示を

守ることが出来る性格。つまり無能のメンツ

で前線で使えるのはコイツくらいだろうよ。

 

だがな?

 

『ぐるるるるるるるるる』

 

「なっ!もう一匹居たのかよ?!」

 

ケルベロスが1体だけだと誰が決めた?

戦場での奇襲など常識。さらに相手が

作ったフィールドなら尚更だ。

 

偵察も何もなしで正面から突っ込んでくる

のが許されるのは明確な強者のみ。

 

「あ・・・」

 

未熟な赤龍帝頼りの小娘どもが、俺と

同格とでも言うつもりか?

 

「クソっ!アーシアッ!」

 

護衛も無く、身を守る術も持たぬ回復役など

タダの雑魚だ。

俺が動いていたら一瞬で終わってるぞ?

 

『『『ぐるるるるるるる』』』

 

「クソっ!コレがケルベロス・・・」

 

「あ、甘く見てましたわ」

 

まぁ本気では無いから逃げに徹すれば

そこそこは大丈夫だろうさ。

深手ではあるが死ぬような傷でもない。

 

元聖女に関しては・・・

 

『ぐるらぁぁぁぁぁぁぁ』

 

「アーシアには指一本触れさせねぇ!ぞぉぉぉぉ!」

 

「い、イッセーさん!!」

 

赤龍帝が傷を負うごとに回復か。・・・まぁ

そうしなければ赤龍帝が倒れて終わるからな。

 

戦闘継続と時間稼ぎだけをするなら

ソレでも間違いではないが。

 

俺が動いたら終わるということを理解

しているか?

 

情報もやった。敗北の経験も与えた。

命もある。もう十分だろう?

 

「輝きやがれ!オーバーブーストォッ!!」

 

『Welsh Dragon over booster!!!』

 

ん?赤龍帝の禁手か?今代は未熟でいまだ

10秒限定の強化らしいが・・・強化率は

変わらんのだろ?一撃の重さは増えるかも

しれんが、今更アレが出てきたところでなぁ。

 

別にアレが世界で最強と言うわけでもなし。

ケルベロスでは荷が重いだろうが、元が

雑魚すぎる。今までの赤龍帝の強化率を

考えれば、あの程度なら話にならんよ。

 

それにそろそろ来てくれるんだろう?

飽きてコイツらを殺すかもしれんぞ?

 

「だらしねぇッ!!!」

 

『ギャウン?!』

 

「「「「?!」」」」

 

ふ、漸く来たか。さて、余興は終いだ。

待たされた分、精々楽しませてもらうぞ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

クソっ!部長も朱乃さんも怪我のせいで

動きが鈍ってる!

 

向こうの奴が遊んでるみたいだから

なんとかなってるけどよ!

 

『がぁぁぁぁぁぁ』

 

「クソっ!」

 

助けに行かなきゃダメなのに、二匹目の

コイツをなんとかしないとアーシアが

殺されっちまう!

 

かといって俺一人じゃコイツは倒せねぇ!

木場が居れば・・・勝手に動いて勝手に

殺されやがって!ソレでも部長の騎士かよ!

 

「イッセーさん!」

 

いや、今はそんなことを言ってる場合じゃねぇ!

ドライグ!禁手すればコイツ等には勝てるな!?

 

『無論だ。だがここで使えばコカビエルの相手は出来んぞ』

 

・・・そうだ、コレはアイツにとっては余興!

だけど温存して部長や朱乃さんやアーシアを

失うわけにも行かねぇ!

 

・・・ここで使うぞ!後のことは後で考える!

 

『まぁ、それもまた良いだろう』

 

相手が相手だ。最初から温存することを

考えてたのが間違いだった!

 

「輝きやがれ!オーバーブーストォッ!!」

 

『Welsh Dragon over booster!!!』

 

コレが俺の禁手・赤龍帝の鎧!!

行くぞワン公!覚悟しやがれっ!

 

「だらしねぇっ!!!」

 

『ギャウン?!』

 

『「・・・は?」』

 

ケルベロスが・・・消えた?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーシロネコ視点ーー

 

  

「輝きやがれ!・・・」

 

漸く来ましたか。ご主人様からはマダオに

邪魔をさせないのと経験を積ませないように、

アレを無駄打ちさせろと言われてますからね。

 

「では行きなさい。今のアレは10秒限定

らしいですから大見得を切れば終わります」

 

まさかこんな方法で10秒潰されるとは

マダオも思わないでしょうねぇ。

 

茶番も真剣にやれば立派な演劇です。

 

せめて簪姉様を楽しませてくださいよ?

 

「了解っす!動物殴んのはアレっすけど、

今回はシカタナイっすね!」

 

不良が動物好きって本当なんですねぇ。

 

「下手に殴りすぎると補佐官様に殺されます。

一撃で終わらせなさい。

ダメージを受けたアレの回復と転送はコッチで

しますから、殺さないようにミネ・ウチを

するように」

 

「ガッテン承知の助っ!そんじゃ行ってきやす!」

 

そのサンシタムーヴは止めましょうよ・・・

だから何時まで経っても自称弟子なんです。

 

まぁいいや()

 

「だらしねぇ!!!」

 

『ギャウン?!』

 

うん。今の無能を評価するにはこれ以上の

言葉はありませんね。

 

とりあえず最高の登場シーンです。

精々大見得を切ってくださいよー。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

な、何が起こった?いきなり砂埃が舞ったと

思ったらケルベロスが宙に浮いて、消えた?!

 

驚きに身を固めていると、徐々に砂埃が晴れていく。

まさかコレも何かの演出なのか?

 

砂埃が晴れたところに居たのは呆然と

する部長と朱乃さん。それに・・・頭巾?

 

2mくらいの体格で、頭巾をしてて、

特攻服って言うのか?ソレを着てるな。

 

真ん中に雷の模様?雷の中は漢字で

戦・国・鬼・神・参・上!って・・・

ヤンキーかよ!

 

・・・・・・で、結局コイツは何なんだ?

 

「我こそはぁ!堕天使のぉドクーガよりぃ!」

 

なんだ?急に両手を広げて腰を落とした?

確かアレは・・・歌舞伎の大見得?だっけ?

 

「この神秘の国!エキゾチックなジャペェ~ンを救うためぇい!」

 

いや、なんで態々溜めるんだよ!それとジャパンの発音良いな?!

 

「冥府の底より蘇った戦国の鬼神!

Oh!YOSHITUGUなりぃッ!」

 

えっと・・・ん?ヨシツグって言ったか?

 

「お、Oh!YOSHITUGU?ま、まさか?!」

 

朱乃さん?何か知ってるんですか?

 

「知ってるの朱乃?!」

 

部長も驚いてるよ!つかコカビエルも

ケルベロスも固まってるよっ!

 

「ここが天下分け目の関ヶ原ぁ。堕天使死すべし慈悲はないっ!」

 

せ、関ヶ原?いや、まぁ、言いたいことは

なんとなくわかるけど・・・

 

「関ヶ原・・・やはり彼はっ!」

 

朱乃さん、何か知ってるんですね?!

 

「And now you gon`be with me for the last ride

(さぁ俺と一緒に最後のドライブに出かけようぜ)」

 

なんでソコは英語なんだよ?!

 

『・・・相棒』

 

ん?どうした?お前もツッコミたいのか?

 

『・・・時間切れだ』

 

・・・は?

 

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー???ーー

 

「決まったぁーーーーーーーーー!!」

 

 

『ぐろぉぉぉぉりあぁぁぁぁぁす!!」

 

 

 

 

(ΦωΦ)・・・ナニかキメたの間違いじゃないかにゃぁ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

「「「「せ、戦国鬼神?!」」」」

 

な、なんだアレは?!

 

「くっ!悔しいけど見事な入り方!残心にも

隙がない!コレはプロね!一流、いえ超一流のプロが監修してるのねっ!」

 

いや、気にするのそこなのか?

マジカルなんとかの演出じゃないんだぞ?

 

「えっと・・・いや、なんだろ~

彼?どっかで見たような気が・・・」

 

ファルビウム。お前アレと知り合いなのか?

どこで知り合ったんだ?

 

「くっ!サタンレンジャーも負けてはいない!

だが・・・悔しいがアレは完璧だ!

姿勢・発音・タイミング・音楽・角度・口上!

さらに実力!その全てに無駄がないっ!」

 

いや、まぁ。隙だらけに見えてコカビエルに

は隙は見せてないし、ケルベロスを一撃で

葬るだけの力もある。

 

いや、葬るというよりはアレはもともと

一定のダメージを受けたら帰還するように

なっていたんだろうが・・・

 

このタイミングで来たってことはオセの部下だろ?

 

たしかにリアスは傷を負ったが、アレ

なら問題なく回復出来るし、実戦で格上と

戦うという経験も積めた。

 

手柄と言えばこの映像がすでに偵察兵

としての手柄となる。

 

うん。条件は全部満たしてるんだが・・・

 

なんだかなー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼルーー

 

 

 

「戦国鬼神だと?!まさかアレをロボットじゃなく

特撮でヤるとは・・・カンザシめやってくれるっ!」

 

「・・・アザゼル、変な対抗意識持たないで下さいよ?」

 

 




FGOじゃねーんだよ。敵だって回避するんだよ!
なんで火炎弾放ってからボーッとしてんだよ!
撃ったら動くのは基本だろーがっ!

破壊魔さん、一撃。まぁ当然ですな。
配慮する必要がないんだもの。

戦国鬼神・・・何者なんだ・・・

もちろん登場曲はG○ショーグンですってお話


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29話

戦闘描写?ハハッ

戦闘中の各勢力のお話。

原作キャラがエントリー!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!



 

ーーコカビエル視点ーー

 

ふむ・・・一見巫山戯ている様に見えるが

構え・残心・立ち振る舞いに隙はない。

 

こちらが何をしても即座に動けるような構え、

アレに下手な奇襲をかけても確実に反撃される。

 

さらに残ったケルベロスにも油断なく

気を向けているか。

 

ケルベロスも下手に動けば殺られることを理解している。

 

視線と雰囲気だけで地獄の門番に死を覚悟させる実力者。

 

ここで俺が気を抜けば瞬殺されている。

戦場で敵の隙を作り出すのも狙いか?

 

実際戦慣れしていない無能や赤龍帝は完全に

動きを止めたし、禁手も解除された。

 

殺そうと思えばいつでも殺せるだろう。

 

俺とてシロネ・オセに話を聞いていなければ

音楽や口上の最中に攻撃を仕掛けていた

かもしれん。で、その結果、カウンターで

沈んでいたわけだ。

 

場に登場する。ただそれだけで此処までやってくるか。

 

コレがオセの配下。そうだ!戦闘だけでは

無く、この盤外戦とも言えるような心理戦

にすら一切気を抜けないのが真の戦場っ!

 

頭巾も意味があるのだろう。恐らく

立場の問題なのだろうが・・・

 

コヤツはまさしく真の戦を知る漢。

 

眷属以外にもこれだけの配下を抱えて

いるとは。やはり戦争をすれば我々が

負けるのだろうな。

 

だが、俺の最期を飾る相手としては不足は無い!

 

「行くぞYOSHITUGU!この俺を倒してこの街を守って見せろぉぉ!」

 

それはそれとして、無能(お前の仲間)のせいで

溜まったフラストレーションの解消に

付き合ってもらうぞっ!!

 

「来やがれコカビエル!俺を無能(あんなの)と一緒だと思うなぁ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

ドォォォォォォォォン!!

 

あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ!

 

「俺はコカビエルの前で禁手をしていたと

思ったら頭巾した特攻服を着た男?が

現れて、いつのまにか禁手が終わっていた」

 

な、何を言っているのかわからねーと思うが、

俺も何をされたのかわからなかった・・・

 

頭がどうにかなりそうだった、催眠術だとか

超スピードだとか、変身ヒーローの変身シーン

だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ!

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ!

 

そしてその頭巾がコカビエルと戦っている。

・・・戦っているんだと思う。

はっきり言って見えねぇんだよ。

 

ドゴーーンとかバーーーンとか音がしたと

思ったら一瞬だけお互いが拳を付き合わせて

たり、蹴りで相手を吹っ飛ばしてるんだ。

 

それにコカビエルから感じる圧力は、俺たち

に向けているモノでは無いと分かっている

のに、実際に重さを感じるくらいのモノだし

あのヨシツグ?からもコカビエルと同じ

くらいの圧力を感じる。

 

・・・声は変えてるみたいだけど、体つき

からすれば男だよな?

 

戦国鬼神。一体何者なんだ・・・。

 

「朱乃、さっきの貴女は彼について

何か知ってるみたいだったけど?」

 

部長?そ、そうだ。そういえば朱乃さんは

アイツについて何か知ってる風だったな!

 

「知っていると言っても個人的な

知り合いとかじゃなく・・・そう、

例えばペレとかジーコを知っていると

言う感じですわ」

 

ペレ?ジーコ?確かサッカー選手だよな?

サッカーを知らない俺でも知ってるくらい

の有名人ってことを言いたいのか?

 

「そう。とにかく今はどんな情報でも

欲しいわ。彼が何なのか教えて頂戴」

 

だ、だよな。あ、でもその前に!

 

「アーシア!」

 

ケルベロスはもう一匹・・・アレ?

 

「ハイ!部長さんと朱乃さんを回復します!」

 

いや、それで良いんだけど、アレ?

 

「もう一体のケルベロスならコカビエル

と彼が殴り合う前に消えたわ。

コカビエルにしてみたら余興はおしまいと

言ったところなのでしょうね」

 

クソっ!その余興にすら苦戦する俺たち

はもう構う価値もねぇってか?!

 

『そうだな。一見ふざけているがアノ頭巾

の実力は本物だ。頭巾は顔が見えんから

何とも言えんが、少なくともコカビエルに

遊んでいるような余裕は無い』

 

・・・そうかよっ!

 

『ふてくされるのは構わんが、まずは自分が

弱者であることを自覚しろ、そして目の前

で起こっている強者の戦闘を見ろ』

 

見ろったって・・・

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

相変わらずドォォォォォォォン!だの

バァァァァァァァン!だのと言った二人が

ぶつかり合う音と衝撃波しか見えねぇよ。

 

『今はそれでいい。近いうちに相棒にも

俺が見えてるモノを見せれる時が来る

だろう。アレは一流の力と技術、そして

駆け引きの応酬だ。その余波を感じる

だけでも全然違うぞ』

 

・・・そうか。

 

悔しいけど今の俺にはコカビエルの動き

も頭巾の動きもまったく見えねぇ。

 

こんなの相手に一時間稼ぐなんて言ってた

なんて、今更になって怖くなって来た。

 

禁手(いざという時の切り札)がなくなるだけでこんなに怖いのか。

みんなこの怖さの中で戦ってるのか。

 

「・・・セー!イッセー!聴いてるの?」

 

「あ、ぶ、部長?」

 

「ひどい顔してるけど、どこか怪我でも

したの?それならアーシアに・・・」

 

あぁ、部長は優しいなぁ。こんな馬鹿な

俺にもやさしくしてくれる。

 

そうだ。俺は最強の『兵士』になるんだ!

こんなところでへこたれてたまるかよっ!

 

「いえ、ちょっと考え事をしてまして。

それで朱乃さん、アイツは結局なんなんですか?」

 

そう言って上空に視線を移せば、見えはしない

が、コカビエルとアレがまだ戦ってるのがわかる。

 

「確証は無いんですけど、あんな頭巾を被って、

ヨシツグを名乗り、戦国の鬼神と言ってました

よね?そして天下分け目の関ヶ原・・・」

 

そういえば言ってたな。アレって何かの

暗号か何かだったのか?

 

「あっ!まさか彼は?!」

 

ん?部長も気付いた?

 

「えぇ、さらに日本を守るために冥府

の底から来たと言ってましたし・・・」

 

・・・言ってたな。

 

「そ、そんなことがあるわけ・・・い、いえ、

私たち悪魔がいるんですもの、彼が居ても

おかしくはないわね」

 

ん?部長も知ってる有名人なのか?

 

「えぇ、恐らく彼は豊臣家に仕えた戦国武将

大谷吉継・・・が祀られたか何かで土地神

に変異したモノのでしょう」

 

大谷吉継?誰だ?それに土地神?変異??

 

「そうね。それならこの駒王町を

吹き飛ばそうとするコカビエルから

日本を守ると言うのも説明がつくわね」

 

そ、そうなの?説明がつくの?

神様ってそういうもんなのか?!

 

「今回、コカビエルが用意した魔法陣が

彼を顕現させる為の魔力を供給したの

でしょう。

あの体は本来の彼のモノではなく、近くに

依代となる人間がいたんだと思います」

 

あぁ、だから特攻服なのか。そうだよな。

普通に考えたら戦国時代の人が特攻服

を着たりしないよな?

 

それに暴走族とかが着る特攻服には、

鬼神とか破壊神だとかって書いてるのも

テレビとかで見たことあるし。

 

今回はそういう偶然が重なったのか?

 

「なるほど・・・私たち悪魔に対して

攻撃を仕掛けず、コカビエルに対して

攻撃を仕掛けるのは、魔法陣の危険性を

理解したからかしら」

 

「可能性は高いですわね」

 

そ、そうなのか?そっち方面の知識は

ないからさっぱりわからないけど・・・

 

「リアス様。一時お引き下さい。ココに

いては彼の者の邪魔になります」

 

うわっ!い、いきなり現れたけど・・・

確かソーナ会長の家の人だよな?

 

「貴方はシトリー家の・・・そうね。

悔しいけどアノ戦闘に下手に手を出せば

彼の邪魔をしかねないわ」

 

ソレは・・・そうだ。今の俺は禁手も

使えないしな。

 

「ですわね。それに彼は日本を守る英霊。

我々が不利になるような真似はしないで

しょうけど、コカビエルを討った後、悪魔

である私たちを敵と見做す可能性もあります」

 

あ、そうだよな!その可能性も有るんだ!

 

まずは情報を整理して、あの戦いの

後でどっちが勝っても良いように準備

しとくんだよな。

 

一時間稼げば魔王様も来るって話

だったし・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

うむ。リアスは戦場を脱したな。コレで

オセはリアスに関する依頼を全てクリア

したことになる。

 

いつもながら見事なモノだ。

 

あとはコカビエルか。だがあの戦国鬼神?

は予想以上に強いな。

 

正面から奴と戦って負けていない。

むしろ競り勝っているぞ。

 

「ぐぬぬ。なんていうの?戦い方に華があるわ!

かといって素人好みの派手さだけじゃなく、

玄人も唸らせる技術の応酬も。

そしてそれらをしっかり魅せる為の戦いを

してるのね。それでいて手を抜いてない。

正真正銘の全力戦闘よ。あんな子が居たなんて

・・・オセちゃんズルい!」

 

なにが「オセちゃんズルい」だ。確かに言う

通り見ていて熱くなる戦いかもしれんが、

それは互いの実力が拮抗していて、さらに

戦闘のタイプが正反対だからこそだろう。

 

動のYOSHITUGUに静のコカビエル。

相手の勢いを上手く受け流すコカビエルの

技量あってのモノだぞ。

 

まぁ彼が相当な実力者というのは否定

せんが、セラフォルーが創る作品とは

毛色が違うだろうが。

 

「あ~誰だっけなぁ~。いや、もう少しで

思い出せそうなんだけど・・・」

 

そっちは頑張って思い出してくれ。

スカウトとまではいかんが、アレだけの

実力者を遊ばせる余裕は無いからな。

 

後日名指しで何かを依頼しようにもYOSHITUGU

など居ませんと言われてしまえば終わりだし。

 

おそらくはその為の布頭巾なのだろう。

 

「あの戦い方もそうだがカメラワークが凄い。

アレはシロネ君か?それとも他の眷属か?

完璧に二人の動きを追っているし、自身も

周囲への警戒を怠っていない。

ただ見学するだけならそれなりの力が有れば

誰でも出来るが、見る者にまで配慮したあの

動きはもはや異常といっても良い。

いったいどれだけ鍛えたというのだ・・・」

 

うん。まぁマトモな意見ではある。

普通の使い魔や眷属の視点からの映像

なら当然視線はブレブレで、編集しな

ければ見れたモノではないからな。

 

こちらにあの映像を届けてる者は、完全に

二人の動きを見切っているのだろう。

 

と言うか、リアスとその女王の頭は

大丈夫か?

 

なんで大谷吉継がエギゾチックなジャパンとか

言うんだよ。日本で良いだろうが。

 

一体地元の何と合成されたらそうなる?

 

いや、実戦の空気と現場で感じる殺気やら

何やらで混乱しているのはわかるが、

明らかに魔力を身に纏ってるだろうが。

 

確かにそう誤認させるように動いていると

言うのも有るが・・・う~む。混乱している

子供に気付けと言うのが無理なのかもしれん。

 

我々(と言うかサーゼクス)とてオセの

部下が救援に入ると知っていなければ

もっと慌てていただろうし。

 

とりあえず今回の件で堕天使に味方したのは

ハーデスで確定した。

 

教会はわからんが、ソレでも現場を詳しく

調べれば何かしらの情報は手に入るだろう。

 

後はアレに他の誰かが介入してくるかどうかと

言ったところか。

 

アザゼルからの情報では白龍皇を現地に

送ったとのことだったな。

 

コカビエルがやり過ぎる前に止める為と言う

ことだが、あそこには赤龍帝も居るぞ?

 

今代の白龍皇は強者との戦闘を望むと言うから

赤龍帝の禁手が不発に終わった以上、アレを

敵とは見ないだろうし二天龍の戦闘にはならん

と思うが・・・

 

奴らには暴走や覇龍があるから油断は出来ん。

 

さて、これから現場はどう動く?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーコカビエル視点ーー

 

「ほらほらほらほらほらほらほらぁ!」

 

ぐっ!拳や足は当たっていない、魔力の

弾丸でもない、コレはやはりっ!

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

ドォォォォォォォォン!

 

ーー

 

音が弾けると同時に両者もが距離を取る。

 

この戦いが始まってから、初めて両者が

動きを止めた。

 

向き合う両者の姿にそれほど違いはない。

 

布頭巾もコカビエルも肩で息をしているが、

損傷はそれほどのモノではない。

古の戦場を生き抜いたコカビエルから見れば

まさしく多少の傷と言えるだろう。

 

ただその「多少の傷」を負っているのは

コカビエルただ一人。

布頭巾は衣類に乱れは有れど傷と言う

傷は見受けられないように見える。

 

両者の実力にそれほどの差は無い。

ならば何故片方だけが傷を負うのか。

 

それも老練なコカビエルが、一方的に。

 

ーー

 

・・・ようやく距離を取ることが出来たか。

 

近接戦闘は回転の早さがモノを言う。

10枚の翼を持ち光の槍を主体とする

俺では奴の回転に押し負けるのは必定。

 

さらに俺には見えんが、こやつ間違いなく

槍のようなモノを持っている!

 

そしてソレを魔力で隠蔽して蹴りや拳の

合間に打ち込んで来るから、間合いが

全く掴めんときた。

 

ソレがコヤツの能力なのだろうが・・・

 

「おいおいおいおいおいおいおい?

どぉしたどぉしたどしたぁ!コレが

大戦を生き抜いた堕天使幹部かぁ?!」

 

言ってくれるっ!声は変えているが、

この技の粗さや魔力の流れの未熟さ

を見れば、コイツは間違いなく若造!

 

未熟さを勢いで誤魔化しているのはわかる。

だがその勢いが尋常ではないっ!

 

近接戦闘技術は俺が上だが、この見えない

武器の間合いを捕まんことには・・・

 

「はっ!もしかしてテメェ。この次のこと

考えてやがるな?」

 

「・・・」

 

否定はせん。と言うか否定出来ん。 

 

「肝心な時に腰が引けてんだよ。行動の節々に

被弾をしねぇで一方的に当てようって虫の良い

考えが透けてやがる。俺とテメェにそこまでの

実力差はねぇよ。寝惚けてんのか?それとも

本物の痴呆かよ?」

 

「・・・」

 

イチイチ勘にさわるヤツだ。

 

しかしそうか。俺はこの次、さらに次に控える

ヤツのことを考えたペース配分をしていたが、

コヤツは全力で俺にあたって来ていたのだな。

 

道理で力が同等で技量では俺が勝ると言う

のに、此処まで押されるわけだ。

 

コヤツは、もし俺に負けたとしても

シロネ・オセやカンザシ・オセが後ろに

控えているからこそ全力戦闘ができる。

 

それは奴らに全てを丸投げすると言う

意味ではなく、自分の仕事を果たしたと

言う意味での引継ぎになるだろう。

 

対して俺はどうだ?そうか・・・仲間の差か。

 

「まったくシツレイな野郎だ。姉御や他の

皆さんが手前から技術やら何やらをしっかり

学べって言ってきたが、どうやらその必要は

ねぇらしい。帰ったら旦那に伝えてやるよ。

『旦那が褒めてた堕天使は、取るに足らない年寄りでした』ってなぁ!」

 

シツレイ。確かにそうだ。コヤツはあの

無能とは違い、俺の強さを正しく知り、

本当の意味で命懸けで俺に挑んでいるのだ。

 

それに対して俺はどこを見ていた?

 

コヤツを正面から見ていたか?

 

・・・それに旦那と言うのはオセだな?

 

ヤツが俺を褒めていた、か。シロネ・オセに

伝えていた評価と言いコヤツの態度と言い、

タダの戦争狂を随分と買ってくれたものだ。

 

だが、そこまで若造共に評価されていたと

言うなら、俺とて覚悟を決めよう!そもそも

コヤツに勝てねば次など無いのだからな!

 

今だけは堕天使幹部の矜持も何もない、

一人の男として生意気な若造を潰すのみ!

 

「小僧。今までシツレイしたな。これからが本番だ」

 

目は覚めた。経験の差が戦力の決定的な

違いになるということを教えてやろう!

 

「やっと俺を見たか。ま、とりあえず

今までのシツレイは貸しだ。キッチリ

返してもらうぜ!一括でな!」

 

ふっ。この俺をやたらと蹴る殴るしておいて

その物言い、悪魔にしておくには惜しい。

 

だがソレとコレとは別。

 

「すぐにカッとなるのが若造の悪い癖だ。

貴様の布頭巾を分捕り、その素顔を晒して

やろう!」

 

釣りはいらんぞ!

 

「やってみせろ、このくそジジぃが!俺の

後ろにはなぁ!てめえの悲鳴を待ちわびてる

ヒトがたくさん居るんだよぉ!」

 

知るかっ!

 

「若造がっ!年長者の恐ろしさを知れぃ!」

 

後のことなど知らん!とりあえず殴らせろぉ!

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

「はっ楽しそうにしやがってよぉ」

 

一歩間違えばコレが最期だってのに

あの馬鹿野郎は・・・。

 

「彼は彼でずっと溜め込んでましたからね。

こんな状況でなければ、YOSHITUGU殿や

オセ殿に感謝したいところですよ」

 

だな。その気持ちはわかる。戦国鬼神とか

言って出てきたから日本地獄のアイツ関連

を疑ったが・・・アレだろ?コカビエルの

悲鳴を待ちわびてるヒト達ってのはそう

いうことだろ?

 

ヤれ!YOSHITUGU。俺が許す。ボコボコに

しても良い。思う存分殴りあえ。

 

とはいえ、だ。

 

「この戦いが終われば恐らくヤツが来る。

消耗したコカビエルやYOSHITUGUを殺しにな」

 

普通ならコカビエルの口封じをする為に

誰かを送り込んで来るくらいだろうが、

アソコにはサーゼクスの妹もいるしな。

 

ついでにYOSHITUGUも殺せば戦争の

理由には十分だ。

 

三大勢力の戦争再開。その最初の一撃には

絶好の舞台。

 

ソレを誰かに譲るような真似はしねぇだろ?

 

かといって俺たちが最初から警戒してる

とわかれば、ヤツは出てこねぇ。

 

ヤツは力で押しつぶすことも出来るが、

基本的には策を弄する。

何たってその方が楽しいからな。

 

ヤツはダムの壁に有るか無いかの細かい

罅を見つけて、ソレを広げて、穴にする。

 

でもってその穴をわざと見つけさせる

んだ。ソレを見て焦る俺たちを見て嗤う。

 

穴を塞ぐ段取りがついて「あと1分で作業が

終わる。コレで大丈夫だ」ってなったところ

に邪魔を入れ、一気にダムを崩壊させて、

目の前で呆然とする作業員を見てまた嗤う。

 

最後にダムの崩壊によって生まれた犠牲

や損害・そして生き延びたモノたちと、

ダムの作業員の争いを見てまた嗤うんだ。

 

今回、ヤツの干渉は防げねぇ。

 

だからこそ強者との戦いを望むヴァーリだ。

 

コカビエルもYOSHITUGUも疲弊している

状態ならヤツの欲は刺激されん。

 

あの場にヤツが現れたとしても、ヤツは

強者としてのタイプが違う。

 

ヴァーリならばそのままコカビエルを連れ

帰って来ることも可能だろう。

問題はコカビエルの口封じをしにくるヤツだ。

 

禍の団絡みかハーデスんとこの死神か。

ヤツが誰かを唆して無関係のヤツを送り込んで

来る可能性もある・・・その場合はヴァーリが

大人しく引いてくれるかどうか。

 

「アザゼルっ!」

 

状況が動いたか?!

 

『ふふふ、コカビエル、まさか貴方がこんな

アツい戦いを魅せてくれるとはね』

 

ヴァーリ?アイツ何してやがる?!

ヤロウ。まさかあの戦いに触発されたのか?!

 

『そして戦国鬼神YOSHITUGU。観るものを

アツくさせる見事な戦いぶりだ』

 

やっぱりか!アイツがあんな戦いを見て

動かねぇワケがねぇよな!

 

くそっ!人選ミスった!

 

『俺の望みは強者とのアツい戦いだ。今の

コカビエルも楽しめそうだが、俺としては

君に興味がある。だからYOSHITUGU』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『や ら な い か』

 




無能錯乱中。いや、コレがデフォか?

戦国鬼神、一体何者なんだ・・・
技術を持った柴千春みたいな感じ?(別人)

女に興味がなくて尻を追い求める男が参上。

彼に対する意見は基本的にネタバレに
なるから、ツッコミは厳禁だぞっ!


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30話

まさか駒王町は下北沢だった?

白いナニカに覆われた男が酷い目に・・・

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「貴様が槍のようなモノを持っている

のはわかってる!!」

 

はっ!OHスティックの間合いを見切る事を

諦めて俺の腕の動きから軌道を予想したか?

 

でもって槍なら持ち手の部分を抑えれば

ダメージがねぇとでも?

 

だがなぁテメェがソレを知ってるってのも

想定内なんだよぉ!

 

「受けろや!断空槍!」

 

この技の前に間合いなんざねぇ!

 

「甘いっ!槍で俺に勝てると思うなっ!

見えぬ攻撃など見飽きたわ!」

 

ほぉ?見えねぇ槍にきっちり合わせて

きやがるか。

コレは確かに見えねぇ武器との戦いも経験してるな!

 

「ならコレはどうだ?裂風迅槍衝!」

 

連撃が駄目なら一撃だ!

 

「お前の槍術に付きあう義理など無い!

槍に風を纏わせるならこれくらいはやって

見せろ!滅殺旋風牙っ!!」

 

ぐっ!技の出が早ぇ!その上簡易的な

竜巻との合わせ技だと?!

 

俺の技を潰すとともに頭巾も狙って

来やがった!

 

コレが無くなったら強制退場だからなっ!

 

「円圏っ!!」

 

槍を使ったマ・ワ・シ・ウ・ケ!

槍でも光でも火炎放射でもなんでもこいや!

 

「ようやく防御に回ったなぁ?喰らえ

光槍・千峰塵!」

 

しくった!全方位からの光の槍!逃げ場がねぇ!せめて急所をっ!

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

痛てぇ!だが耐えれねぇ痛みじゃねぇ!!

 

「トドメだYOSHITUGUっ!」

 

油断したな?タメがでけぇぞ!

 

「誰が死ぬか!渦龍回峰嵐ッ!!」

 

コカビエルごと、全部吹っ飛ばすっ!

 

「何ッ?!」

 

体勢が崩れたな?さぁ受けろっ!

 

「死ねやっ!OH!フラッシ『自称弟子。上です』・・・は?」

 

シロネサマ?上?

 

いきなりの通信はアレだが、ソレが必要なほどの非常事態か?!

 

本来なら敵を前にして視線を逸らすなど

有りえないほどの隙なのだが、俺の行動に

何かを感じたんだろう。

 

コカビエルも俺が見ている方向に目を向けた。

 

見上げれば視線の先に白が見える。

 

白い全身鎧。体の各所に宝玉のようなモノ

があり、背中には8枚の翼。

 

見た感じそこそこの実力者のようだが、

俺やコカビエルの戦に割り込めるほどの

実力者ではないな・・・

 

シロネサマはコレが何者か知ってるのか?

 

 

 

 

『や ら な い か』

 

 

 

 

・・・何言ってんだコイツ?

 

「・・・『白い龍(バニシング・ドラゴン)』」

 

あぁん?なんか白いのがいきなり

意味不明な発言して来たと思ったら

アレが噂の白龍皇か。

 

だけどアレって確かどっちかが負けて

殺されそうになったら出てくる予定じゃねぇのか?

 

確かに技術差で俺が押されてはいたが、

コッチもまだコカビエルを殺せる手は

有ったし、今も勝利を確信して油断して

たところにアレを当ててたら形勢は逆転

していただろうが、まだ明確な勝敗がつく

ような状況じゃねぇよな?

 

それが何でこの状況で来るんだ?

 

「『神滅具(ロンギヌス)』の一つ『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)

鎧と化していると言うことはその姿は禁手

である『白龍皇の(ディバイン・ディバイディング)(・スケイルメイル)』か。

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』同様忌々しい限りだ」

 

コカビエルの反応からしてもコイツが

ココに来ることは予想外だったのか?

 

「邪魔をして本当にすまないと思っている。

アザゼルからはやり過ぎたら止めるように

言われてたんだがな。

流石に目の前でこんな戦いを魅せられたら

黙ってるなんてことは出来ないさ」

 

あぁん?そーいやコイツは強いヤツと

戦いたいとか抜かすガキだったな。

 

「戦いに惹かれたか。だが邪魔立ては・・・」

 

ん?邪魔っつーか、ソイツって確か。

 

「ふっ、邪魔立てしたらどうすると?」

 

さりげなく近付いて間合いを潰してるが

剣呑な気配は消せてねぇぞ。

 

普通なら俺を警戒してるからだって

思うんだろうな。

 

「破ッ」

 

けっ、味方面して近付いて、喋りながら後ろから不意打ちかよ。

 

狙いは体じゃなく羽か?確かどっかに

触ればいいらしいが・・・

 

「フッ。甘いぞ小僧」

 

「ヌッ!」

 

だよな?カオスなんたらの一味が自分を

口封じに来るってわかってんだもんな?

 

ソコで油断して奇襲なんか受けたらタダの馬鹿だし。

 

つーか白いのは絶対に当たるって思い

込んでたな?

踏み込みは中途半端で体幹も乱れてる。

 

毟るつもりだったか?なんだその手は?

足元もブレブレ、そして何よりっ!

 

「クルルァ!」

 

「グヴォ!」

 

ボディががら空きなんだよ!!

 

「この雑魚が、俺の戦闘を邪魔しといて

タダで済むと思うなよ?」

 

魔界の獣だってなぁ?縄張りやら餌を巡って

戦ってる最中に第三者が割り込んで来たら、

一時的に戦闘中断して邪魔者を優先的に排除するんだよぉ!

 

そもそも俺相手に殺気出しておきながら

コカビエル狙うって・・・舐めてんだろ?

 

俺がてめぇらの会話や戦闘を黙って見学してると思ったかよ!

 

「かはっっ!ざ、雑魚だと?!言ってくれるっ!」

 

いや雑魚だろ?つか今のボディに耐えたか。

 

・・・違う。耐えたんじゃねーな。

 

コイツの踏ん張りが足りねぇから攻撃を

受けたときに体が浮いたのか。

その結果偶然衝撃が逃げたってとこか・・・

 

コレ、録られてるんだよなぁ。絶対矯正だよ。

 

まぁいいや()今はこの白いのだ。

 

「別に奇襲や騙し討ちが悪りぃとは言わねぇ。

戦場で隙見せる方が馬鹿ってだけの話だ」

 

そん中には味方の裏切りだって有るだろうよ。

 

「だがなぁ。強者との戦いを望むとか

言いながら、相手の力を半減させるって

のはどういう了見だ?自分の力を鍛えて

伸ばすんじゃなく、相手の力を落として

自分と同じステージにしなきゃ戦えねぇ

ヤツが雑魚じゃなくてなんだってんだ?」

 

性根の段階で腐ってんだよ。

 

「ぐっ!」

 

ぐっじゃねぇよ。

 

「さらに硬い鎧と龍気で身を守り、攻撃を

受けても触れば何とかなると言う特性に

頼った油断慢心。もう話になんねぇよ」

 

下らねぇ。旦那や補佐官サマなんざ、触る

とかそう言う次元じゃねーぞ?

 

「戦士たるもの使えるモノは何でも使う!

そして油断慢心しているのは貴様だ!

戦国鬼神YOSHITUGU!」

 

あぁん?

 

「貴様が上から目線でおしゃべりしてる間に

10秒経過したぞ!すでに接触も済み!

条件は満たされた。我が名はアルビオン!」

 

『Divide!』

 

白いのの鎧が光って何かが俺の周囲に纏わりつくが・・・

 

「で?ソレがなんだ?カスが効かねぇんだよ!」

 

目の前に相手がいて、倒れても居ねぇのに、

勝手に勝利を確信して棒立ちしてんじゃねぇ!

 

もいっちょ喰らえや!ボディ!

か~ら~の~テンプルにOHスティック!

 

簪の姉御が創った鎧を貫通する槍の

一撃を受けろっ!

 

「ぐふっ!がっ!ば、馬鹿な?!」

 

二発でダウンかよ。だらしねぇなぁオイ。

 

「油断?慢心?コレは雑魚を前にした強者の

余裕って言うんだよ。

それにありきたりのセリフを吐きやがって。

『馬鹿な?』その後はなんだってんだ?

『そんなはずは無い!』とでも言うか?」

 

これだから能力頼りのガキは駄目なんだよ。

 

『な、何故だ・・・どうなっている!?』

 

あぁん?なんだこの声?コレは神器の中から声出してんのか?

 

「どうなってるもこうなってるもねぇ。

そもそもテメェの能力が全てのモノを

半減させる事が出来るんなら、大戦の際に

三大勢力が結託しようがナニしようが負け

ることなんかねぇだろうが」

 

半減させるコイツと倍増させる赤蜥蜴だ。

際限も制限もねぇなら負けることなんか

有り得ねぇ。

ソレが負けて殺されたって意味を考えろや。

 

『・・・』

 

「テメェらの力は既に調べ尽くされて

対策取られてんだよ。当たり前だよなぁ?

何時までも馬鹿みてぇに半減だの倍加だの

ご都合主義みてぇな力が通用すると思うな

クソ蜥蜴が」

 

相手の力を半減して自分の力に上乗せぇ?

そもそも力って何だって話だろうが。

 

旦那はコイツ等の力を龍気であると判断した。

 

基本的に神器であるコイツ等は人間にしか

宿らねぇ。そして人間に魔力はねぇからな。

 

それなのに今まで赤蜥蜴もコイツも普通に

神器としての力を発揮して来た。

 

極めつけはフェニックスの時に見せた

体一部のドラゴン化だ。

 

悪魔となった赤龍帝が普通に聖水とか

十字架を持てたんだろ?

 

つまりコイツらの力には悪魔としての

力は上乗せされてねぇ。

純粋な龍としての力だ。なら悪魔が魔力で

抵抗しても無駄だし、堕天使や天使も光で

何とかなるモンじゃねぇ。

 

そりゃ防御不能に見えるさ。

 

だが龍の力と分かってればいくらでも対処できるよなぁ?

 

コイツの能力の本質は龍気で相手を包み

魔力や生命力と言ったコイツが認識した

力を喰らう能力だ。

 

喰らった力を己の神器に取り込み、龍気に

還元して己を強化するってわけだ。

 

ただし強化はあくまで一時的なモノで

消化したら終わり。

喰いきれねぇ分は放出しねぇと体調を壊す。

 

はっ欠陥品が。

 

故に、龍気を阻まれたら喰らえねぇ。

コイツが認識出来ねぇ力は喰らえねぇ。

力の差が有りすぎれば喰らえねぇ。

 

そして喰らわねぇと戦えねぇ。

 

倍化と違って自分の強化が出来ねぇからな。

 

元の身体が有るときならソレでも良かった。

 

飛び道具やら何やらを半減させてしまえば

後は純粋な肉弾戦だ。

 

ドラゴンなら肉弾戦に負けることなんか

そうそうねぇからな。

 

だが人間の体じゃそんなことは不可能。

ハーフだかクォーターの体が宿主だから

今までよりは多少の強度は有るだろうが、

濁りは強化じゃねぇぞ?

 

純血悪魔と人間の間に生まれた子供が、

純血悪魔並の魔力が有って人間特有の

神器を獲るなんてことにはならねぇ。

 

ハーフより純血の方が魔力は多いし、

肉体強度も上なのは当然だろうが。

 

赤龍帝みてぇに悪魔の駒で転生でも

すれば話は別かもしれんが、コイツは

ただの人間モドキで悪魔モドキ。

 

そんな鎧で身を守ることが前提の戦い方

なんざ、鎧が使えなきゃ無意味だ。

 

「そもそも一対多数だろうが二対多数

だろうが負けて殺されたんならソレで

終わりだろうが。

二天龍?ほざくな負け犬の寄生虫が。

負けを認めて大人しくするならまだしも、

何時までも負けを認めずグダグダと・・・

見苦しい。うぜぇ。さっさと死ねよ」

 

『き、貴様ぁ・・・!』

 

いつまで最強気取りだ。旦那や姉御から

逃げ回ってる寄生蜥蜴が。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー 

 

「「「「・・・」」」」

 

まぁ、言ってることは間違ってない。

 

いきなり白龍皇が出て来てコカビエルに

奇襲を仕掛けたと思ったら回避されて、

戦いを邪魔されてイラついた戦国鬼神

YOSHITUGUにボコボコにされた上

説教されているのには驚いたが、それ以上に

驚いたのは白龍皇の半減に対処してきたことだ。

 

「えーと、アジュカちゃん。赤龍帝の力と

白龍皇の力ってもう解明されてるの?」

 

そう思うよなぁ。

 

「いや、少なくとも我々では解明出来ていない」

 

かつての大戦の際はどの勢力にもそんな

余裕が無かったし、神滅具になった後も

生け捕りが出来るようなモノじゃない。

 

最後は覇龍を使って周辺を巻き込んで終わりだからな。

 

更にココ数代はオセ夫妻が問答無用で

狩ってたし。

 

その時に特性を見つけたのか?

ソレとも大戦や内戦で散逸した資料の中に

二天龍に関する資料があったのか?

 

「ん~。まぁ敵を研究して対策するのは

当然ではあるよね?神滅具は全部で13個

もあるんだし?それぞれが有名なんだから。

表に出て来る度に「まさか」とか「そんな」

とか言って被害を出すってのは間抜けが過ぎるよねぇ~」

 

もっともだな。俺の覇軍の方程式はその場

の流れやら何やらも計算するが、あくまで

俺が理解出来ると言うだけの式。

 

体系として伝えることは出来んから汎用性が無い。

 

しかし奴、いやオセ家ではその根幹を理解して

対処法まで実用化しているのか。

 

コレはカンザシ・オセだな。やってくれる!

 

「赤龍帝もか・・・コレはりーあたんの

眷属の強化と補充を急がねばならんな」

 

サーゼクス・・・まぁそうだな。折角

悪魔陣営が手に入れた神滅具の赤龍帝が

欠陥品と言われてはな。

 

今のところリアスの最大の功績である

赤龍帝の入手が霞んでしまうことも

考えれば、出来るだけ早くその欠点を

教えて貰い強化しなければならんだろうよ。

 

しかしこの場合はどうなるんだ?

コカビエルがやり過ぎたら止める為の

要員である白龍皇が潰されたぞ?

 

リアスたちは気付いて無いだろうが

コカビエルが展開している魔法陣は

町を破壊するものではない。

 

衝撃や何やらを外に逃がさん為のモノだ。

 

堕天使陣営がコチラにもしっかり配慮

してくれていると言うことなんだろうが

ここからどうやって幕を引く気だ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「白龍皇の力を無効化しただと?!」

 

調べ尽くした?対策済み?!どういうことだ!

 

「アザゼル、コレは・・・」

 

サーゼクスはそんなことを言って来た

事はねぇ。アジュカも神器に興味がねぇ。

 

ならばそんなことするのは一人しかいねぇ!

 

「カンザシ・オセっ!やってくれたなっ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーカンザシ視点ーー

 

ま、政治家なら神滅具の対策取るよねぇ?

 

『うーん。喋りすぎな気がするけど、

アレって良いのかい?』

 

まぁ本来なら良い事じゃ無いんですけどね。

 

「問題ないですよ。アレにも特に口止め

はしてませんし。魔王から問い合わせ

が来たら『天才のアジュカ様』を散々

NDKしてやる予定ですから!」

 

アザゼルと言いアジュカと言い、欠陥品

を堂々と見せびらかして恥ずかしくないの?

 

人工の神器?神器の研究?何千年研究

してそのレベルなのさ?

 

人間は100年足らずで月に行ったよ?

 

悪魔の駒?反乱防止も無ければ、老害に

奪われたらそのまま手も足も出ないって。

 

せめてシステムに外から干渉するような

ナニカを付けろよ。

自分でも意味が分からないモノを量産

するんじゃないよ。

 

しかも神器に興味が無い?馬鹿じゃない?

敵が使って来る兵器の研究しないで何が

国家の技術担当だよ。死ねば?

 

『かんちゃんが良いなら良いけどさぁ。

ま、とりあえず白いのもダウンしたし、

そろそろ僕の出番だよね?』

 

何もしてないのに色々カオスですけど、

ココからが神野サンの舞台ですよ~。

 

あ、そうそう。

 

「ですねー。ついでに白音ちゃんが残す

ように言ったアレも回収して来て欲しい

んですけど、頼んで良いですか?」

 

破壊の聖剣はともかく、デュランダルは

見てみたいよねぇ。

 

ヘクトールが使ったドゥリンダナなのか

ローランの歌に出てきた天使の祝福を

受けた剣なのか。

 

まぁローランの歌って言っても、アレって

人間同士の戦いでしょ?ソレに使われた

剣に何で祝福があるのか知らないけど。

 

と言うか、ローラン普通に味方の裏切りが

原因で死んでるし。

 

家族とか義理の親を悪く言うけど決断した

のは王でしょ?ジャンヌダルクと言いコレ

と言い、英雄を裏切って殺してから称える

のがフランス・クオリティなのかな?

 

・・・そう言えばランスロットもフランス人

に後付けされたんだっけ?

 

はぁ。やっぱりフランスは駄目だね。

 

『もちろんさぁ!だけどデュランダルと

エクスカリパーは良いとして、あの

小娘はどうするんだい?処す?処す?』

 

ん?アレかぁ。うーん。

 

「デュランダルの因子とか聖剣の因子

とか言うのを調べるから、分離機ですね。

まぁ神野サンが穴に入れた後でも因子

がどうこうなるわけでも無いですから、

その辺さえちゃんとヤってくれたら

好きにしても良いと思いますよ?」

 

ご当主様からも何も言われて無いし、

まぁ白音ちゃんが何か言ったらソッチ

を優先して欲しいですけど。

 

『了解!りょーかい!じゃあかんちゃんから

の合図がある有るまでアレで遊んでるよぉ』

 

うん。まぁ最初から死ぬことが任務の

エクソシストだし、駒王町に来た聖剣(笑)

は全部無くなってるからアレも本望だよね!

 

「よろしくお願いしますねぇ」

 

『おぉう。行ってくるよぉ』

 

 

 

 

 

 

 

 

(ΦωΦ)・・・分離機って。いやまぁ

堕天使だのエクソシストがどうなろうと

知った事じゃないけど、白音にあんまし

エグイの見せて欲しくないにゃあ・・・

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーコカビエル視点ーー

 

「さてコカビエル。もう邪魔モンは居ねぇ

と言いたいとこだが・・・俺的にはコイツ

を生かして良い事あるとは思えねぇし、

他人の戦場にしゃしゃりに出て来て無様に

潰されて気絶してる雑魚なんざ生かす価値

もねぇ。

話を聞く限り堕天使陣営らしいが邪魔して

みるか?」

 

『くっ・・・』

 

ふむ。コイツが俺に不意打ちを仕掛けて

来たのは、俺を倒してYOSHITUGUと

戦いをしたかったのか、それとも禍の団(カオス・ブリゲード)

関係の口封じなのか・・・どっちなんだろうな?

 

まぁどちらにせよ邪魔してきたのは事実。

だが三発でダウンした上にこの説教だろ?

 

ヴァーリ本人はアレかもしれんが白龍皇には

十分なダメージだし。

 

まさか赤龍帝だけでなく、白龍皇にまで

同情する時がくるとは思わなかった。

 

それに二天龍を負け犬の寄生虫扱いか。

 

オセ家の中ではこういう扱いなのだろうが。

神滅具も落ちぶれたもんだ。

 

「俺も貴様の気持ちはわかるんだがな。

済まんがソイツには聞きたいことが有る。

ココで貴様に殺させるわけにはいかんな」

 

とりあえず殺すのは何時でも出来る。

 

ならばコイツがどんな情報を持っているか

の確認をせねばならん。

 

「ほぉ?俺相手に足手纏いを抱えて

勝てるとでも?多少経験やら技術に差が

有るからって調子に乗りすぎだろぉ?」

 

・・・それは確かにそうだ。正直言って

コイツ相手に、気絶した足手纏いを抱え

ての戦闘など出来ん。

 

だが情報源と堕天使陣営の神滅具を失う

訳にも行かん。

 

さて、どうしたものか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーー???ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神は死んだ!!お前の努力や根性なんて、何の役にも立たないことは知ってるだろォ!』

 

「嘘だッ!うそだウソダうソダうソダ

うそダウそだうソだウソだうソだウそだ」

 

『きひっ、ひひはは、あーはっはっはっはっはっは!』

 

 




白いの、ハッテンすることなくダウン!

いや、作者的にコイツが強い理由が分からないんですよねぇ。

あとアジュカ。お前は神器に興味持たなきゃ
駄目だろ?魔王だよな?最低でも神器を研究
する組織くらいは作れよってお話。

白いのに対するツッコミ解禁だっ!


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31話

まさかYOSHITUGUが?!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「さぁそこの雑魚を守って見せろよぉ」

 

今までの俺ならココでヤル気無くしてさっさと

帰ってるんだろうが、テメェとの戦闘は姉御

からの命令で仕事だ。

 

俺の感情なんか関係無ぇし、そもそも

足手纏いを抱えて俺と戦うことを決めた

のはテメェだ。

 

テメェの決断にはしっかり責任持てや。

 

「くっ!破邪結界(マホカトール)!」

 

あぁん?そもそも堕天使が天使と同じ

光を使うこともアレなんだがよぉ。

 

そんな即席の結界で何しようってんだ?

 

いや、結界にしては中途半端、壊される

ことを前提にしてんな?

 

つまり破壊した時に俺に何かしらの

マイナス効果が出るヤツか。

 

なるほどなるほど。雑魚を狙って攻撃

したとこで俺の動きが止まったらその

まま攻撃を加えると。

 

でもって俺が警戒してアレを破壊

しなけりゃ雑魚は守れるってか?

 

まぁ・・・気持ちはわかるがよ。

 

「そんな即席の結界なんざ戦闘の余波で

破壊されて、そのまま雑魚ごと消滅して

終わりだろうが。舐めんなよ?」

 

せめて雑魚が気絶して無けりゃ逃げれた

んだろうけどよぉ。

 

「お前にゃ誰も守れねぇ。雑魚を守って

死ねや堕天使」

 

悪魔は悪魔らしく。堕天使に容赦なんざ

しねぇし、戦闘の邪魔をしてきた雑魚を

生かして帰す気もねぇ。

 

とは言え守りに専念したコイツを破るのは

ちと時間がかかる。

 

だが、ここで詰めを誤るようなら弟子失格

だよなぁ。

 

確実に仕留めるぜ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーコカビエル視点ーー

 

ちっ!弱みを抱えた俺の隙を的確に

突いて来る。

 

回避すればアレに当たる位置取りで、

下手に受け流せば結界が破壊される。

 

結界が無ければ余波で死ぬ。

 

クソっ!この強者気取りの小僧がっ!

邪魔した挙句に足を引っ張りおって!

 

「光槍・舞踏連刃!」

 

雷速で襲い来る光の槍の連撃ッ!大戦時

最も多くの悪魔を葬った奥義を喰らえぃ!

 

「チッ!ノーモーションで溜めもねぇ。

速さも威力も申し分ねぇっ。だがよ!」

 

なんだ?あの目立つ外套のような服を

楯に?そんなもので俺の槍を防げると

思ったか!

 

「何?!」

 

外套ごと穴だらけに・・・居ないだと?!

 

「隙だらけだ!」

 

馬鹿な!いつ間合いを詰めた!?

 

「ぐぅぅっ!」

 

右腕が持って行かれたっ!こやつ

何をした!?

 

外套を影にして俺の目を眩ませたのは

わかる。だがそこから俺の真横まで移動

するにはどうしたって姿が見える!

 

超速移動でも大気の流れや移動に

生じる音でわかる!

 

だが今のは何だ?!奴は完全に気配や

姿を消すことが出来ると言うのか?

 

いや、まて。姿を消す?・・・そうか

武器もこうやって消していたか!

知ってるぞ!その特性を持つ悪魔をっ!

 

「貴様!グラシャラボラスの血族だな?!」

 

現魔王の一人、ファルビウムの縁者か!

 

「はっ。流石にバレるか。まぁバレた

所でテメェに何が出来るわけでもねぇ。

精々そこの足手纏い守って、苦し紛れの

負け惜しみと断末魔を聞かせろや」

 

ちぃっ。頭巾で素性を隠しているところから

ソコを突けば多少の動揺は誘えると思ったが、

流石にこの程度では揺らがんか。

 

それにコヤツの言う通り、姿を消すという

単純なモノだからこそ対処は難しい。

 

何せコヤツは白龍皇(足手纏いの小僧)と違い能力に頼る

雑魚ではない。

能力を使いこなす強者だ。

 

揺らがず、惑わず、歪まない。

その若さでココまでの戦士を育成する

とは・・・流石オセと言ったところか!

 

『いやいやいや。正体がバレたら退場

するのが覆面キャラの宿命(さだめ)でありルール

なんじゃないかなぁ?』

 

「あぁん?何だ?また乱入者か?」

 

この、聞くものを不快にさせる声、そして

怖気が走る圧力・・・来たか?!

 

しかし、この反応を見る限りYOSHITUGU

はヤツが来ることを知らなかったようだが・・・

コレはオセが情報の拡散を嫌ったのか?

 

まぁ良い。ココからが俺の最後の舞台だ!

 

アザゼル!後は任せたぞっ!!

 

「来たなデミウルゴス。いや!神野明影!いつまでも貴様の好きにはさせんぞっ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

『貴様!グラシャラボラスの血族だな?!』

 

はぁ?

 

「ファルビー?」

「ファルビウム?」

「どういうことだ?」

 

知り合いどころか親族じゃねーか!

 

「え、えぇぇ?!ウチにあんなの居たっけ?!」

 

まぁ覆面してるからアレだろうが、

言われて見れば体格的に納得できる

ところもあるし、武器やら自分を

透明化させるのはグラシャラボラス

の魔力特性だ。

 

実際に戦っているコカビエルの推察でも

あるし、まず間違いあるまい。

 

『はっ。流石にバレるか。まぁバレた

所でテメェに何が出来るわけでもねぇ。

精々そこの足手纏い守って、苦し紛れの

負け惜しみと断末魔を聞かせろや』

 

ホラ!本人も認めたぞ!つーか認めて

良いのか?隠してるんじゃないのか?

 

「ファルビーずるい!優秀な眷属だけ

じゃなくあんなのまで隠してるなんて

ずるい!今度マジカル☆レヴィアたんに

出演するように言ってよ!」

 

まぁ確かにあれほどの人材を隠すと言う

のはどうかと思うが・・・

魔法少女とアレをどう融合させる気だ?

 

逆に興味が有るんだが。

 

「いや、隠すって言われても、僕だって

アレだけヤれるのが身内に居たらもっと

使ってるし・・・ん?あ!もしかしてアノ

服ってオセが用意した衣装じゃ無く私物?

だとすればアレはゼファー?!」

 

ゼファー?グラシャラボラスのゼファー

と言えば・・・

 

「まさか凶児・ゼファードルか?!」

 

まぁアノ恰好は凶児というより狂児だが。

 

「まさか!彼はりーあたんやソーナ、

それにアジュカのところのディオドラと

同年代だろう?!ソレがコカビエルと

互角に戦える強者になるなどありえん!」

 

驚くのも無理はない。若手でも有望と

言われている連中とは桁が3つは違う!

 

「い、いや、僕も詳しくは知らないけど

5年位前に「武者修行に出る!」って

言って行方不明になってたんだよ。

二か月に1回は実家に手紙が届くから

無事だってことは知ってたけど、まさか

オセのところで修行してたなんて・・・」

 

武者修行・・・まぁリアスやソーナの

留学も似たようなモノだし、彼は別に

次期当主というわけでも無いから比較的

自由なんだろう。

 

ソレに二か月に一回手紙って、凶児でも

なんでもなく、普通に常識人じゃないか。

 

リアスの方がよほど狂ってるぞ?

 

「うーんシロネちゃんが10年でアレだと

考えれば、ゼファーちゃんが5年で

あそこまで行くのも納得は出来るけど」

 

シロネの場合は幼少期からの鍛錬だから

まだわかるが、ゼファードルはどうなんだ?

 

いや、悪魔としては子供も子供だから

十分成長できる余地はあるのだろうが。

 

「いや~まさかあのゼファーがねぇ。

次期当主じゃなく、政治とか全く気に

しなくて良いからこそ個の力の向上に

全力を注げたんだろうけど・・・」

 

ふむ。元々才に溺れていたと言う評判は

あったからな。その才がどれほどのモノか

は知らんが、転生悪魔のシロネと純血悪魔

の彼では出発点も強度も違う。

 

ソレだけ鍛え込めたと言うことか?

 

と言うかサイラオーグやリアスが政治

について何かをしているとは思えんぞ。

 

「むぅ・・・マズいな。今の彼と比べ

られてしまえば、若手の心が折れる。

顔見せはどうしたものか・・・」

 

お前が心配してるのはリアスだけ

だろうが。

 

だがまぁ言ってることは確かだ。

アレだけの実力者が同世代に居ると

知ればディオドラどころか他の面子

も心が折れるだろうな。

 

「ふふふ。なるほどなるほど。そうかそうかぁ!」

 

ん?セラフォルーは妙に機嫌が良いな?

ソーナとて他人事では・・・そうか。

 

「ソーナは今オセに鍛えられてるんだったな?」

 

そりゃ機嫌も良くなるだろうよ。

鍛えられた結果が目の前に有るんだ。

 

個の力に頼るのは組織として歪ではある

が、個の力が無ければ何も出来ないのも

また事実。

 

「ふふふ、そうだよ!今まさに鍛えて貰って

る最中だよ!なんたってソーナちゃんは、

オセちゃんから!直接!鍛えたいって

言われるくらいの才能の持ち主だからね!」

 

いや、ソーナの場合はあんまりアレだったからだろ?

 

「ぐぬぬ!ずるいぞお前ら!」

 

なにがぐぬぬだ。お前んところは断交

されてるから絶対に鍛えてもらえんぞ。

 

「いやぁ僕にずるいって言われてもなぁ。

正直今の今までゼファーがお世話になって

るなんて知らなかったし。

コレは今度何かお礼しなきゃ駄目だよなぁ」

 

だろうな。次期当主では無いにしても

アレだけの実力が有れば何処の家でも

婿に欲しがるし、何よりオセとの繋がりも

保てるんだ。

 

知らないならまだしも、知った以上は

何かしらの礼をするべきだろう。

 

しかしそうか。技術だけでなく、政だけ

でもなく、人材育成も出来るんだよな。

 

もうアイツが魔王で良いんじゃないか?

 

『いやいやいや。正体がバレたら退場

するのが覆面キャラの宿命(さだめ)でありルール

なんじゃないかなぁ?』

 

「「「「?!」」」」

 

何だ!?いきなり第三者の声?ソレも

声だけで重圧を感じさせる強者だと!

 

他の神話勢力の神が来たか?!

 

・・・ブツン・・・

 

「あっ!映像がっ!」

 

くっ!カメラを回していた眷属が潰されたか?

 

『来たな神野明影!いつまでも貴様の好きにはさせんぞっ!』

 

音声は生きているのか・・・しかし

神野明影?コカビエルは何者か知っている

ようだが、一体何者だ?人間か?

 

「何だって?!」

 

ファルビウム?こいつが余裕をなくす

とは珍しい。何があった?

 

「地上へ通じるルートが遮断されたってさ。

転移も出来ないらしい」

 

「何だと!」

 

・・・やられた。最初から我々が援軍に行く

事を知っていれば、対処もされるだろう。

 

コカビエルは援軍が行くことを知った上で

放置していたが、本来はコイツ対策だったのか?

 

『何だか知らねぇが邪魔すんじゃねぇよ!』

 

ゼファードルも知らんか。つまりそいつの

存在はオセも知らなかったと言うことか?

 

『さっきも言ったけどさぁ、正体が判明した

覆面ヒーローは退場するのが宿命だろぉ?』

 

『うぉ、な、なんだこりゃ?!おぉぉ!!』

 

くっ!映像が潰されたせいで状況が

わからん。ゼファードルが殺られたか?

 

『シー・ユー・アゲインってねぇ!』

 

『YOSHITUGU?!貴様っ!!』

 

「「「「・・・」」」」

 

この状況で言うのもアレだが、まぁアレだ

コカビエルはゼファードルの名前を知らんからなぁ。

 

『アヒャヒャヒャヒャ!安心しなよ。

彼は見てて面白かったからねぇ。

コレからの活躍を期待してるんだよぉ。

だから殺さずに退場させただけさぁ!

ついでにソコで無様に倒れてる白い蜥蜴

も外に送ってやるよぉ。

対処された無能の赤龍帝と雑魚の白龍皇が

コレからどうするのか楽しみだ!』

 

退場・・・命は奪われて無いし、コレから

を期待すると言うなら後遺症が残るような

こともされていない・・・か?

 

そして白龍皇もか。完全に舐めてるな。

 

『何が活躍だ。貴様が創る地獄で貴様が

求める道化として踊らせる気だろうが!』

 

地獄を創る?道化?何だ?何を言っている?

 

『おやおやおや。今の僕の名前と言い、

その物言いと言い、堕天使は随分僕たちを

詳しく調べて居るようだ。いまだに何も

知らずに阿呆面している悪魔や天使にも

見習わせたいもんだねぇ』

 

「「「「・・・」」」」

 

何も知らない、か。確かにそうだ。

サーゼクスもアザゼルからは何も聞いて

無いようだし、そもそもコイツは何だ?

 

『僕たちだと?貴様等反三大勢力連合の

企みなどハーデスが接触してきたとき

から掴んでいる。

故にココで貴様が来ることも知っていた!』

 

反三大勢力連合・・・そうか。ハーデス

だけではなく既にそういった包囲網のよう

なモノが出来上がっていたか。

 

『そうみたいだねぇ。情報収集に徹してた

ハズのキミが、いきなり無能の管理者に

宣戦布告したり、町を吹き飛ばすとか

言い出した時にはとうとうストレスで気が

触れたかと思ったもんだけどさぁ』

 

「無能の管理者だと!?」

 

いや、反応するところはソコじゃない。

 

『聖剣狂いの老害を単独行動させたり

聖剣使いの乙女を単独行動させて放置

したのも君の狙いかい?』

 

老害?あぁ皆殺しの大司教か。そして

聖剣使いの乙女というのは、ソーナと

接触した教会から派遣されたエクソシストだろう。

 

しかし単独行動?報告では二人一組では無かったか?

 

『・・・当然だな。わざわざ用意した貴様

好みの餌だ。食いついて貰わねば困る』

 

餌?どういうことだ?今回の件は

下っ端の堕天使と教会の主戦派が他の

神話勢力に唆されて起こしたモノじゃ

無いのか?ソレを利用して敵と内通者を

炙り出すのが目的では無かったのか?

 

『あぁ確かに僕好みの餌だった!まさしく

どストライクさ!あの聖剣に全てを懸けた

老人の目の前で聖剣を穢し破壊した時は

笑いが止まらなかった!

頑なに神を信じる乙女に神の死を伝え、

絶望の淵に沈めてから虫に食わせた時の

快感なんか、もう言葉にも出来ないよ!』

 

なるほど、こういうタイプの下衆か。

そして駒王町に持ち込まれた聖剣は

全てコイツに破壊されたと言うことか?

 

『その欲が貴様を滅ぼすことになるのだ。

覚悟するんだな!』

 

『ん?・・・あぁ、残った聖剣使いを瀕死

にして放置したのは教会や天界への配慮

じゃなく、僕をこの場に呼び出す為の餌か。

ソレにこの結界もねぇ。最初この結界は

僕の侵入を阻む為のモノかと思ったら、

まさか僕を逃がさない為の結界とはねぇ。

急に動き出した割には随分周到じゃないか?』

 

そうか、衝撃を外に出さないのも

有ったのだろうが、本命はコイツを

外に出さない為のモノだったのか。

 

それにもう一人の聖剣使いもあの場

に居たのか?

 

『貴様に時間を与えれば与えるだけ我々

が不利になる。ならば策を

巡らせる時間を与えないことが、我々に

出来る唯一の抵抗だろうよ』

 

策士に対して時間を与えないのはわかる。

だがこのコカビエルの態度は何だ?

戦っても勝てないと判断しているのか?

 

足止めや時間稼ぎが目的と言う割には

我々に出来ることは無いし、堕天使の

援軍も来る様子は無い。

この時間を稼いで何になると言うのだ?

 

『ふむ。堕天使幹部が命を懸けて時間

稼ぎねぇ・・・気に入らないなぁ』

 

今まで嘲笑うだけだった声に感情が乗った。

 

コレは・・・怒り?

 

『俺とて貴様に勝てるなど自惚れてはいない。

それに万が一ココで貴様を殺せても所詮は

分体だろうが。だが安心したぞ!』

 

分体?安心?なんだ?何に安心したんだ?

 

『いくら貴様でもYOSHITUGUや俺を

一蹴できるほどの分体を作るのに時間が全く

掛からん等と言うことは有るまい!

一年か?半年か?三カ月か?俺の命でソレ

だけの時間が稼げるなら十分だ!』

 

「「「「はぁ?」」」」

 

「い、一年?半年?三か月?その時間を

稼ぐ為だけにコカビエルが命を使う~?!」

 

どれだけの大物だ?だが神野明影など

聞いたことが無いぞ?!

 

「有り得ん!さらにあのアザゼルがソレを

認めるなど有り得ん!」

 

そう。ただでさえ仲間想いのアザゼルが

コカビエルを捨て石に使うなど・・・

 

「そ、そうだよ!しかもソレだけの強さ

を持つ分体をそんな短期間で造れるって

一体何者なの?!」

 

どれほど規格外だと言うんだ・・・。

分析しようにも映像が無いのが痛い!

 

『あぁそういう事ねぇ。僕も舐められた

モンだ。まさか君ごときが僕と相打ち

出来るとでも思ってたのかい?』

 

そ、そうだ。元々コカビエルと互角

だったゼファードルを一蹴するほどの

実力者だ。ソレをどうやって相打ちに

持ち込むと言うんだ?

 

『舐めてるのは貴様だ!この結界は貴様を

終わらせる為のモノ!

この一撃は貴様を確実に終わらせる!』

 

・・・命を使った技だと言うのか?

だがこの相手にそんなことを言えば

発動前に潰されるのでは?

 

『へぇ?凄い自信だね?良いだろうやって見せなよ』

 

何だと?受ける気か?・・・いやそうか。

分体と言って居たからな。

あえて自分を滅することが出来る技を

受けて今後の対策をする気か?

 

今分体を仕留めて時間を稼ぎたい

コカビエルと、今後の対策の為に技を

見たいコイツ。

利害は一致していると言うことか。

 

そしてコカビエルはココまで見越して

今回の舞台を用意したと言うのか!

 

『その傲慢さが貴様を殺すのだ!

・・・死よ、死の幕引きこそ唯一の救い』

 

詠唱?堕天使幹部が?

 

『この毒に穢れ蝕まれた心臓が動きを止め、

忌まわしき毒も傷も跡形もなく消え去るように。

この開いた傷口、癒えぬ病巣を見るがいい』

 

毒?堕天使の光の力が毒になると言う

事は、この神野とやらは悪魔か?

 

『滴り落ちる血の雫を、全身に巡る呪詛の毒を、

武器を執れ、剣を突き刺せ、深く深く柄まで通れと』

 

呪詛と光を合わせている?

 

『罪人に、その苦悩もろとも止めを刺せば、

至高の光はおのずから、その上に照り輝いて

降りるだろう』

 

至高の光・・・やはりそうか。

 

『終焉変生・無間黒肚処!』

 

詠唱が終わったか。音声だけと

言うのがつくづく悔やまれる!

 

『ほぉう。限定的に世界の理を纏う一撃か。

なるほどなるほど。かなり発動条件は厳しい

けどそれなら確かに僕にも通る。

まさか堕天使がココまで研究しているとは

思いもしなかった。時間稼ぎに使うには

惜しい技だねぇ』

 

理?一体コカビエルは何を纏った?

 

『さぁ受けろ!一撃だ!』

 

『はっ神すら殺す攻撃だ。君じゃ一撃

しか持たないの間違いだろう?まぁいい!

避けはしない。当ててごらんよぉ!』

 

神すら殺す?それほどの一撃で

ようやく時間稼ぎが出来る敵だと?

 

『アザゼル!後は任せたぞっ!!

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うほっ!凄く・・・一撃必殺だねぇ。

だが覚えたぞ!次は同じ手が通用する

とは思わないことだ!

アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 




ま、まさかYOSHITUGUの正体が彼だったなんて!(天丼)

音声だけでお送りしております。

こかびぃぃぃぃぃぃぃ!ってお話


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32話

原作3巻終了!

現場はヒドイ有様です。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーコカビエル視点ーー

 

『いやいやいや。正体がバレたら退場

するのが覆面キャラの宿命(さだめ)でありルール

なんじゃないかなぁ?』

 

やはり来たか。ここまではシロネ・オセの

計画通り!

 

「来たなデミウルゴス!いや、神野明影!

いつまでも貴様の好きにはさせんぞっ!」

 

『・・・コカビエル殿。すべてのカメラ

がヤツによって破壊されたようです。

ただ、音声は生きてますので何とかして

時間を稼いでください』

 

そうか・・・アレだけ仕掛けたカメラも

全て破壊されたか。

 

だがまぁソレも想定内。音声が生きて

居るだけでも十分だ。

 

コイツが出てきた以上、俺の死は確定!

だが直接的な攻撃は最後までしないだろう。

何せコイツは相手を嬲り殺すのが趣味なの

だからな!

 

できるだけ時間を稼いで、情報を吐かせる!

 

「あぁん?そこの黒いの!何だか知らねぇが

コレ以上邪魔すんじゃねぇよ!」

 

なに?YOSHITUGUはヤツの事

を知らんのか?

 

いや、グラシャラボラスの血族に情報を

与えれば魔王も知ることになる。

そうなればコヤツが表に出てくることは

無かっただろう。

 

それに禍の団には旧魔王派が大量に居る

らしいから、情報の漏洩を嫌ったか。

 

『さっきも言ったけどさぁ、正体が判明した

覆面ヒーローは退場するのが宿命だろぉ?』

 

「うぉ、な、なんだこりゃ?!おぉぉ!!」

 

黒い穴だと?いや、あの黒いのは虫だ!

それに奥に見えるあの髪の色は聖剣使いか?

つまりアレはどこかに繋がる穴では無い!

 

『シー・ユー・アゲインってねぇ!』

 

「YOSHITUGU?!貴様っ!!」

 

不覚ッ!アレだけの実力者を無駄死にさせて

しまったっ!

 

『アヒャヒャヒャヒャ!死んだねぇ!

虫に食われて死んだねぇ!

あぁ、ソコで無様に倒れてる白い蜥蜴

は外に送ってやるよぉ。さっきの彼が消えた

とは言え、対処された無能の赤龍帝と雑魚の

白龍皇がコレからどう活躍するのか楽しみだ!』

 

退場だと?つまり命は奪わないし、

後遺症が残るようなことも無いと言う

ことだろう?

 

つまり白龍皇は・・・

 

「何が活躍だ。アレは貴様が創った組織(カオス・ブリゲード)

貴様が求める道化として踊らせる気だろうが!」

 

先ほどの不意打ちは禍の団からの口封じ

を兼ねた攻撃だったと言うことだ!

 

『おやおやおや。今の僕の名前と言い、

その物言いと言い、堕天使は随分僕たちを

詳しく調べて居るようだ。いまだに何も

知らずに阿呆面している悪魔や天使にも

見習わせたいもんだねぇ』

 

ん?この反応。まさかコイツ、自分を調べた

のは俺達(堕天使陣営)だと思ってる?

ならばここは乗ってみるか・・・

 

「僕たちだと?貴様が禍の団やハーデスを

隠れ蓑に暗躍していたことは掴んでいる。

故にココで貴様が来ることも知っていた!」

 

ギリシャ神話との不和を狙ったのだろうが

残念だったな!ココで貴様の企みは潰させ

てもらうぞ!精々勝ち誇って情報を明かせ!

 

『そうみたいだねぇ。情報収集に徹してた

ハズのキミが、いきなり無能の管理者に

宣戦布告したり、町を吹き飛ばすとか

言い出した時にはとうとうストレスで気が

触れたかと思ったもんだけどさぁ』

 

そうだろうな。俺とて貴様の存在を

知らなければココまで性急に動く

ことは無かっただろう。

 

『聖剣狂いの老害を単独行動させたり

聖剣使いの乙女を単独行動させて放置

したのも君の狙いかい?』

 

バルパーが動いたのも教会の連中が

動いたのも俺がナニカしたわけでは無いが。

 

「・・・当然だな。わざわざ用意した貴様

好みの餌だ。食いついて貰わねば困る」

 

ココは勘違いをさせておこう。

 

それに今ので確信した!やはりコイツは

オセの動きを掴んでいない!勝てる!

それなら勝てるぞッ!

 

『あぁ確かに僕好みの餌だった!まさしく

どストライクさ!あの聖剣に全てを懸けた

老人の目の前で聖剣を穢し破壊した時は

笑いが止まらなかった!

頑なに神を信じる乙女に神の死を伝え、

絶望の淵に沈めてから虫に食わせた時の

快感なんか、もう言葉にも出来ないよ!』

 

まぁ連中がどうなろうと知ったこと

では無いが・・・まぁ乗っておくか?

 

「俺が用意した餌に食いついただけだろう。

その傲慢さがお前を殺すのだ!」

 

挑発はどうだ?煽るのが好きな奴は

煽られることに慣れて無いモノだが・・・

 

『ん?・・・あぁ、残った聖剣使いを瀕死

にして放置したのは教会や天界への配慮

じゃなく、僕をこの場に呼び出す為の餌か。

ソレにこの結界もねぇ。最初この結界は

僕の侵入を阻む為モノかと思ったら、

まさか僕を逃がさない為の結界とはねぇ。

急に動き出した割には随分周到じゃないか?』

 

ふむ。多少反応はあるな。煽りに乗る

なら今後は楽にもなる。

 

それに、結界の特性に気付いたか。

だがソレすら偽装で有ることには

気付いていないようだな!

 

「貴様に時間を与えれば与えるだけ我々

が不利になるのはわかっていた。

だからこそ時間を与えぬ速攻よ、ソレで

いて貴様が見逃せないような隙をあえて

作ったのだ。

ソレに乗った阿呆な黒幕気取りが貴様だ!」

 

悪意を操り欲を見る。だからこそこの

誘いに乗ると確信していたぞ!

 

『ふむ。堕天使幹部が命を懸けて時間

稼ぎねぇ・・・まぁ無駄だけど?』

 

無駄だと?ふ、そうやっていつまでも

上から目線で余裕を見せていればいいさ。

 

時間が掛かれば掛かるほど貴様を

追い詰める罠は威力を増すのだ!

 

「俺とて貴様に勝てるなど自惚れてはいない。

もしココで貴様を殺せても所詮は分体だろう?

だが安心したぞ」

 

本体なら尚良かったが、そもそもコイツには

明確な本体と言うモノが無いからな。

 

このレベルの分体で助かったと言うべきだろう。

 

『安心?分体なら何とかなるとでも?』

 

そんな自惚れは無い。

 

「いくら貴様でもYOSHITUGUや俺を

一蹴できるほどの分体を作るのに時間が全く

掛からん等と言うことは有るまい?

1か月か?半月か?10日か?俺の命でソレ

だけの時間が稼げるなら十分だ!」

 

ソレだけ有ればアザゼルは和平を纏めるだ

ろうし、オセも何かしらの対処をするだろう。

 

『あぁそういう事ねぇ。僕も舐められた

モンだ。まさか君ごときが命を捨てた

程度でこの体を殺せると?そしてさらに

時間稼ぎが出来るだけのダメージを与える

ことが出来るとでも思ってたのかい?』

 

そうだな。例え分体であっても俺とコイツ

には明確な実力差がある。

 

おそらくサーゼクスがこの場に来ても

勝てるような力を持たせたのだろう。

だがなぁ!

 

「舐めてるのは貴様だ!この結界は貴様を

終わらせる為のモノ!

この一撃は貴様を確実に終わらせる!」

 

こう言えば奴は必ず乗って来る!

俺の命を使った一撃を受けて嘲笑う為にな!

 

『へぇ?凄い自信だね?良いだろうやって見せなよ』

 

やはりな!貴様は自分が全てを演出して

いると思っているのだろうが、貴様も

配役の一人にすぎんことを知らぬまま死ね!

 

「その傲慢さが貴様を殺すのだ!

・・・Tod! Sterden Einz' ge Gnade! 」

 

それっぽく詠唱してヤツの注意を逸らし、タイミングを計り堕天使の力を混ぜろと言われたが・・・

 

何故ドイツ語なんだろうな。

 

『へぇ?詠唱かい?魔法陣と連動してるね?

地脈とナニカを絡めてるのかな?』

 

この魔法陣自体がカンザシ・オセが設置

したものらしいからわからんが・・・

 

「Die schreckliche Wunde, das Gift, ersterde,

das es zernagt,erstarredas Herz!

Hier bin ich, die off'ne Wunde hier! 」

 

この辺で堕天使の力も混ぜ合わせろと

言っていたな。

 

『毒・・・それに病巣・・・僕を相手に?

何をする気だい?』

 

コイツにもわからん術式なのか。

映像を残せればよかったがそこまで

求めるのは酷と言うモノだろうな。

 

「Das mich vergiftet, hier fliesst mein Blut:

Heraus die Waffe! Taucht eure Schwerte.

tief,tief bis ans Heft! 」

 

『何だってぇ?地脈の力に堕天使の光を

合わせるだとぉ?さらにコレは悪魔の力?

そうか!ココは悪魔の拠点だったねぇ!』

 

なるほど・・・ソコまで見越してこの場を

戦場にしろと言っていたのか!

 

「Auf! lhr Helden:

Totet den Sunder mit seiner Qual, von

selbst dann leuchtet euch wohl der Gral! 」

 

『なるほどなるほど。地脈・堕天使・悪魔の

力を一つに纏めて疑似的な理を創造したか。

発動条件はかなり厳しくて限定的だけど

それなら確かに僕にも通る。

まさか堕天使がココまで研究しているとは

思いもしなかった。天使の力も合わせれば

新たな理を創ることもできただろうに。

時間稼ぎに使うには惜しい技だけど・・・』

 

なんだと?コレはソコまでのモノなのか?!

 

「Briah――Volsunga Saga!!」

 

詠唱は終わった!コレ以上の時間稼ぎは

出来んが、アザゼルならコレを聞いて

何かしらの事はできるだろう!

 

神を殺す一撃と言うなら猶更だ!

 

「さぁ受けろ!一撃だ!」

 

『ソレはどこぞの神滅具(ぽんこつ)と違い、

真に神すら殺す攻撃だ。君じゃ一撃

しか持たないの間違いだろう?まぁいい

避けはしない。当ててごらんよぉ!』

 

完全に余裕が消えてるぞ!だがな!

 

「受けろ無間黒肚処地獄っ!自由をぉぉ!!!」

 

ど真ん中をぶち抜くっ!

 

『うほっ!凄く・・・一撃必殺だねぇ』

 

手応え有りっ!

間違いなく俺の拳はヤツの腹を貫いた。

明らかに格上のコイツに俺の一撃は

明確なダメージを与えたぞ!

 

・・・代償として俺の体が崩壊を始めて

いるが、ソレでも十分!

 

『だが足りないッ!肝心の君の力がッ!!

これじゃあ精々三日だよぉぉ!

アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!』

 

急造の魔法陣と俺の命で三日稼げたか。

コレも良い情報だな。

 

そして足りんのは知っている!本命は次だ!

 

『準備完了しました。発動します』

 

来たか!俺ごと殺れよ!カンザシ・オセ!

 

『ん?はぁ?!まさかこの一撃すら囮?!

僕の意識をお前に向ける為の?!』

 

今更気付いても遅いわ!

 

「言っただろうが!この結界は元より

貴様を殺すための結界だ!」

 

ココを起点に全てを破壊する禁呪

を使うらしいが・・・

 

『ふははははははははははははは!

喰らえよ!デミウルゴス!!

ツァァァーリ・ボンッヴァァァァァ!!』

 

コレは・・・破壊の光?!存在の汚染と

消滅の因子だと?

 

『おいィ?正気かぁぁぁぁぁぁぁぁ?!

こんなところにいられるか!僕は逃げるぞ!!』

 

あのデミウルゴスが慌てている!

つまりはソレだけの一撃ということか!

 

「逃がさん。お前も道連れだっ!!」

 

持ってくれよ俺の体よっ!

 

『馬鹿な!その体でまだ動けると言うのか?!

良いのか?確実にお前も死ぬぞ?!』

 

元より覚悟の上っ!

 

「アザゼルぅ!後は任せたぞぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

・・・視界が白く染まり、自分が光に

包まれて行くのが分かる。

 

神に反逆し、神の軍勢と戦い続けた

俺が光に包まれて死ぬとはな。

 

だがこの死は無駄死にではない。

アザゼル・シェムハザ・バラキエル・

サハリエル・タミエル・ベネムネ・

アルマロス・・・サタナエルも居たな。

 

・・・あぁ・・・光が見える!

 

 

 

『ざぁーんねん!』

 

・・・なっ?

 

『あの程度で僕の足止めなんか出来る

わけ無いじゃないか。ナニしてんの?』

 

なん・・・だと・・・

 

『ハハハハハ!僕は何処にでもいて何処

にもいない!結界?無駄無駄無駄!

分体を造るのに時間が掛かる?

そんなわけないだろぉ?君程度瞬殺

する分体を造るのに時間なんか要らないさぁ!』

 

そ、そんな・・・!

 

『つまり君は無駄死になのさぁ。君が

必死で時間を稼いで手に入れた情報だって、

連中には内容を編集したものをお届けしてる!

アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 

お・・・おの・・・れぇ!!

 

『それに、僕たちは君を殺さない!例え自爆でも

ねぇ!何故ならそう言う【契約】だからさぁ!』

 

僕た・・ち?契・・・や・く?

ま・さか・・マサカ・・・まさかっ!?!

 

『悪魔の天敵の堕天使幹部が悪魔の言うこと

を真に受けてどうするのさぁ!滑稽だねぇ!

惨めだねぇ!アヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 

全てヤツの策かぁ?!オノレおのれオノレ

おのれぇ!オセぇぇぇぇぇぇ!

 

『おぉ?コレが燃え尽きる前のロウソクかぁ。

ハハッ魂ごと穢れてしまえよぉ。命がけで

味方の足を引っ張ったお馬鹿サン!

精々僕たちに負の感情を向けて逝くんだねぇ。

おぉあんめいぞぉぐろぉぉぉりあぁぁぁす!』

 

く・そ・・すま・・・ア・・ル・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

 

コカビエル・・・お前の仇は絶対に取るっ!

 

「シェムハザ!すぐに天界と悪魔に連絡だ」

 

「了解です!」

 

アイツが稼いだ三か月は無駄にはしねぇ!

それに映像は無かったが、コカビエルが

使った技は間違いなくヤツにダメージを与えた!

 

アレの詠唱も解読しねぇとな。元々は

オセが用意した術式らしいが、アレは

連中の奥の手のハズ。

 

元々戦争推進派のオセが俺たちに情報を

出すことはねぇだろう。

無論サーゼクス達にだって情報漏洩を

懸念して教えねぇ筈だ。

 

あくまでコカビエルが死ぬ事を前提と

した一時的な技術提供。さらに連中に

とっての実践試験でも有っただろう。

 

コカビエルが認めたこととは言え、

面白くはねぇが・・・効果があると

判明した以上はな。

 

後は神滅具の研究データか。コレも和平を

結んだからと言って提供して貰えるとは

考えねぇ方が良いだろうな。

 

くそっオセの野郎は一体どこまで進んでやがる!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーシロネコ視点ーー

 

『あ、ココは「爆破オチなんてサイテー」

と言うべきだったかなぁ?どう思う白音?』

 

ん~簪姉様の事を考えればソレで良いかも

しれませんけど。

 

「ネタとしては良いかも知れませんが、

アレが炸裂するまで誰がどこで話を

聞いてるか分かりませんでしたからねぇ」

 

実際旧校舎の中に変なの居たし。

 

アレは禍の団が利用するつもりらしいから

戦闘の前に飛ばしておきましたけど、

あぁ言うのが他にいないとも限りませんからね。

 

『あぁソレもそうだね。とりあえずコレで

連中は僕の存在を知り、堕天使が情報を

隠してることを知ったわけだ』

 

ですね。

 

「そして聖剣やら白龍皇のデータも取れ

ましたし、何よりご主人様のアノ技の

データも取れましたよ」

 

簪姉様的にもご主人様的にも大満足ですよね!

 

『ふむ。疑似的な創造も出来たし、アノ光

が霊的なモノを破壊することを確認出来た

って言うのが最大の収穫かな?』

 

ですねー。

 

冥界で使っても良いですけど無駄な破壊に

なるし、ココなら堕天使や悪魔が勝手に

修繕してくれますもんね。

 

「そうですね。コカビエルに効くなら

他の堕天使も大丈夫でしょう。

もう少し耐久が有れば他勢力の神にも

効くかどうか実験出来たんでしょうけど」

 

白音はそう言って「喰らえばよかったのに」と

言う意味合いを込めて神野サンを見てみます。

 

『う~ん、アレは普通に神すら殺せるね。

僕や空クンはチョット毛色が違うから

アレだけど、他なら十分かな?悪魔や天使

に関しては言わずもがなだけど』

 

へぇ。やっぱりこのヒト達は規格外ですよねぇ。

 

「あ、でも、それならもしかしてコレ

って大地も汚染しちゃってますか?」

 

そもそも元がそう言うモノですよね?

空さん怒りません?

 

『あぁ、その辺は主がきっちり調整してるよ。

っていうか僕に喰らえって言ってたでしょ?』

 

あの「喰らえ」って演技じゃ無く神野サン

に処理しろって意味だったんですねぇ。

 

『そもそもアノ実験の為の異界だしねぇ。

かんちゃんだってそのくらいの準備はするさぁ』

 

「それもそうですね」

 

ご主人様も補佐官様も自然破壊は嫌いだし。

 

簪姉様や奥様がその辺配慮しないわけないですよねー。

 

『じゃぁ帰ろうか?外の連中は衝撃で

気絶してるし、YOSHITUGUクンは

何か指示が出てるかい?』

 

居ましたね、戦国鬼神w

 

「特には。まぁ今回は良い絵が撮れたし

コカビエルも最後まで真顔で連呼して

ましたからね、白澤サンも喜ぶんじゃ

ないですか?」

 

途中までは普通に特撮だったしなぁ。

 

一子さんとか二子さんが喜んでくれれば

補佐官様も私たちには何もしませんよね?

 

一応マキさんに何か掩護してもらった

方が良いかも・・・

 

『かんちゃんも喜んでたしねぇ。じゃあ

コレは冥界まで運んであげようかなぁ。

あ、そうだ!目が覚めたら「知らない天井だ」

って言うかどうか賭けてみるか~い?』

 

ふっ、愚問ですね。

 

「言わないに鰯5匹で」

 

何で最低単位が鰯なのか知りませんが、

オセ領の悪魔って何故か鰯が好きなん

ですよねぇ。

 

海が無いから、魚介類が珍しくて好きなんでしょうか?

 

『悪魔の僕たちが鰯の頭に何かを

見出すのはアレだけど、まぁ鰯は

かんちゃんも好きだしねぇ。

良いだろう好きな体位は正●位のこの

僕がその賭けに乗ろうじゃないかぁ

トォーーーマァァァーーースッ!!』

 

いや、ソコで性癖暴露されましても。

 

ココで私が「う・ま・の・り☆」とか

言うと思ったんですかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁご主人様とならどんなのでも好きですけどねっ!




現場で台本は読んでませんが、
詠唱文を覚えてるコカビーはマジコカビー

ちなみにアザゼルたちも悪魔と
同じ音声が流れてます。
わかり辛くてすみません。

某所
「ど、ドイツ語って!w」
「YOSHITUGUって!w」
「あざぜるぅぅぅぅwwwww」
白澤=サン、大満足。

え?堕天使?敵ですが何か?ってお話。


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クロスオーバーキャラ。技の設定。原作三巻登場まで

とりあえず原作三巻終了までに使われた
ネタや登場人物についてざっと解説。

あくまで作中で出た技やキャラのみです。

原作キャラが原作で使った技については解説しません。

え~他にもありましたかねぇ?


奥様  

 

眷属:女王の駒

出典:真・恋姫無双(オリキャラ)

 

使い回しのオリキャラ。メインヒロイン?

とある外史からずっとオセ君の弟子筆頭であり正妻。

 

戦闘も出来るが、その本質は将であり政治家。

ヒトを率いることや策を練ることを本領と

しており、智謀でオセ君に並ぶ希少な存在。

 

何故か白いモノやネコに甘い(比較的)

貴族的な価値観の持ち主で、礼儀作法を

重んじる性格。

 

元人間の転生悪魔。この世界が悪魔が居る世界

であることを知り、さらにオセ君の容姿が豹の

頭を持つ悪魔であると言うことを知った彼女が

「あ、コレ間違いない」と言うことで召喚。

(もし違っても知識を与える悪魔なので何か

ヒントを貰えると思ったとのこと)

 

結果オセ君と出会えてそのまま眷属になった。

 

転生悪魔をオセ家の当主の妻に迎えることを

反対した連中も居たが、オセ君が全て粛清し

彼女も正妻として不足の無いところを証明

したので今では誰も反対していない。

 

見た目は中華服を来た風見幽香。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

簪・オセ 

 

眷属:騎士の駒×1

出典:I・S(インフィニット・ストラトス)

 

同じ作者の作品である、とある師弟の成層圏

からの使い回しキャラ。オリキャラ化している。

 

基本的には更識としての簪であるが、身内

であるオセ君や奥様、白音や黒歌。また

何故か神野明影に対しては親族として接する。

 

機械技術に詳しく特殊な神器を持っているらしい。

 

転生悪魔。人間の時に神器を使って奥様やオセ君

を探していたところ、奥様を先に見つけることが

出来た為、奥様と合流。

 

その後奥様と共にオセ君を召喚し眷属悪魔

となった。

 

転生悪魔を側室として迎えることに

反発する者も居たが・・・(ry

 

戦闘も出来るがその本質は技術者である。

 

オセ君(奥様)至上主義者で彼らの為

と判断すれば他の全てを滅ぼせる。

 

オセ君が考えた政策やら理論を実現させる

為に日々奥様を交えて色々している。

 

側室であるが奥様とは仲が良く、常に

正妻を立てることを忘れないので権力

争いなどは発生しない。

 

奥の序列を理解しているため、場合に

よってはオセ君の意見より奥様の意見を

優先する時も有る。

 

ただ奥様がオセ君の意志を最優先する

ヒトなので基本的にはそういうことは

発生しない。(例外は側室を増やすこと)

 

 

見た目 I・Sの更識簪参照

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

??? 

 

眷属:兵士の駒×1 

出典:女神転生シリーズ

 

色んなところで赤おじさんと黒おじさんを

探していたところ、駒王町に赤おじさんの

気配を感じて来訪した。

 

しかし、そのときすでにクレーリアが死んで

いたため途方に暮れていたところ、次の

管理者として駒王町に赴任したオセ君が発見。

 

『死んでくれる?』が効かないオセ君を友人

と認め、さらにオセ君が赤おじさんを知って

いるとの事だったので、彼に会うことを条件

に眷属となった。

 

悪魔としての生を受けた後も『死んでくれる?』

と言いながらソーナ達と遊んでるが、コレは

悪意があるわけでも無いし、何よりカワイイので

正義であり無問題である。

 

現在は「黒おじさんも居たら良いなぁ」

と思っているが、そこまで拘りはないもよう。

 

そもそも彼らの願いは彼女の幸せである。

 

沢山の友人や理解者が居て笑顔が絶えない

現状を見て草葉の陰で喜んでいることだろう。

 

赤おじさんは初代ベリアル

黒おじさんは初代ネビロス

 

神による不幸な死が有ったと言うが

詳細は不明である。

 

見た目は青い服を着た金髪のょぅι゛ょ。

もちろんっょぃ。

 

むしろっょぃょぅι゛ょとは彼女のことである

(断言)

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

神野明影 

 

眷属:僧侶の駒×2

出典:相州戦神館學園八命陣

 

神の影。デミウルゴスでありヤルダバオト。

これは聖書陣営で呼ばれた名であり、他の

宗教や地域では別の名を持っている。

 

何処にでも居て、何処にも居ない。

新血愁・心霊台や命奪崩壊拳を喰らった

際に、側で蠢いてたり指差して笑ってる

のはコイツの分体だったりする。

 

原初の悪魔であり、72柱より古い存在。

 

実際に悪魔が居る世界で、悪魔が悪魔を

召喚したらどうなるのかに興味を抱いた

オセ君が、ベルゼブブを呼び出す為の準備

を行い召喚してみたら出てきたのがコイツ。

 

本体は座のような世界にあると言われてるが

詳細は不明。

 

この世界の神魔の歪さに対してなんだかなー

と思っている。

 

オセ君の『悪魔は悪魔らしく在るべき』と言う

理念に共感したのもあるが、その場に居た簪と

何故か意気投合したのでオセ君の眷属となる。

 

特にオセ君の為なら大量破壊兵器を造る

ことも辞さない簪のMADさがお気に入り。

 

欲に忠実なオセ君陣営は本人的にも居心地

が良いらしく指示にも逆らったりはしない。

 

正面から奥様をからかって生き延びることが

出来る稀有な存在でもある。

 

ある世界に置いて彼は第八等指定廃神扱い。

ちなみに日本の三大怨霊は5~6等である。

 

見た目は真っ黒な僧衣に乱れた金髪、

漆黒の肌に明らかにヤバい目をした異形の男

 

悪魔・外道・ゲス・下劣と言えば彼だろ?

と言う作者的な必然により登場。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

空さん 

 

眷属 戦車の駒×2

出典 ???

 

地脈の専門家らしい。神野サンも彼を

同格か格上としているもよう。

 

むき出しの自然が好きらしく、グレモリー

から譲渡された土地でくつろいでいる。

 

神様と言えば彼(?)だよね?

何気に萌えキャラ?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

鬼ぃさん  

 

第一補佐官様

出典:鬼灯の冷徹

 

まんま彼。

 

作中では表に出てくることは無いが、

随所で目を光らせているもよう。

 

若いながらも金魚草の新たな可能性を

示した簪や、目の付け所が違う奥様に

一定の評価をしている。

 

オセ君とは何かと馬が合うらしく、後輩

を可愛がる感じで接している。

 

裁判前の霊的なモノに対し絶対的な

裁量権を持つ設定。

 

コカビエルに声が似ているらしい。

 

ょぅι゛ょではないがっょぃ。

 

オーフィスやグレートレッドよりっょぃ

が相性的に純真無垢で肉体を持つ存在で

あるミ〇たん相手には不利になるかも?

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

戦国鬼神OH!YOSHITUGU  

 

元ネタ 戦国魔神ゴーショーグン

         

神秘の国日本を守る為、突如駒王町に

現れた戦国の鬼神。

 

リアス達はその正体を大谷吉継と予想し、

魔王はゼファードル・グラシャラボラスと

推測しているがその正体は謎に包まれている。

 

OHステッィクと呼ばれる防御貫通の槍と

OHフラッシャーと言う技があるようだが

どんな効果を持つのかは不明である。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

使用された技。 

基本的にググった方が早いかも?

 

ーー

 

人世界・終焉変生

(無間黒肚処地獄・マッキーパンチ)

 

使用者:コカビエル

出典 :Dies irae

 

ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンが

使う創造。相手は死ぬ。

 

ーー

 

断空槍

   

使用者:YOSHTUGU  

出典 :テイルズシリーズ

 

ーー

 

裂風迅槍衝 

 

使用者:YOSHTUGU  

出典 :テイルズシリーズ

 

ーー 

 

滅殺旋風牙 

 

使用者:コカビエル

出典 :テイルズシリーズ

 

ーー

 

円圏

    

使用者:YOSHITUGU

出典 :特に無し

    

マ・ワ・シ・ウ・ケとコメントは刃牙

 

ーー

 

光槍・千峰塵 

 

使用者:コカビエル

出典 :魁男塾

 

元ネタは覇極流・千峰塵。

 

ーー

 

渦龍回峰嵐 

 

使用者:YOSHITUGU

出典 :魁男塾

 

同じく覇極流 

 

ーー

 

破邪結界

 

使用者:コカビエル

出典 :ダイの大冒険

 

マホカトール。アバン先生とポップ

が使ったアレ。

 

ーー

 

光槍・舞踏連刃 

 

使用者:コカビエル

出典 :BLEACH

 

言うほど早くありません。

言うほど長く伸びません。

 

ーー

 

ツァァァーリ・ボンッヴァァァァァ

     ↓

ツァーリ・ボンバ

 

使用者:簪・オセ

出典 :相州戦神館學園八命陣

 

元ネタの元ネタは言わずと知れた水素爆弾。

広島に落とされた原子爆弾リトルボーイの

3300倍の威力を誇る。

 

本来はオセ君の技らしいが簪が使用に成功。

本来の水爆とは違い、破壊・消滅・汚染の

因子を持つ一撃らしい。

 

ーー

 

魔蟲化 

 

使用者:神野明影

出典 :相州戦神館學園八命陣

   

使用者を憎めば憎むほど蟲になっていく。

 

使用者が〝あえて〟条件付けして使う

悪意のひとつ。

実際は問答無用に変身させられると思われる。

負の感情が強いほどその進行も早くなる。

変身させる蟲は使用者が選べる。

 

ーー

 

黒穴(ブラックホール)

 

使用者:神野明影

出典 :相州戦神館學園八命陣

 

無数の蟲を凝縮させて作られる黒い穴

蠅に始まり、悪虫、害虫、汚虫が集まり

凝縮されてゆく。

本作では魔蟲化した存在はコレに加わる設定

 

 




中さんや芥子さんや一子、二子さん。
豊玉姫さん、火車さん、マキさんに
関しては鬼灯の冷徹ウィキ参照だっ!

オセ君?(ΦωΦ)フフフ…ってお話。


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原作4巻
33話


原作4巻突入。

前話のコカビーと神野サンの
会話のくだりを微修正しました。


ココは短くなりそうです

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!



ーー兵藤一誠視点ーー

 

・・・目が覚めたら全部終わっていた。

 

何が何だかわからないが、俺達にはそう言うしかなかった。

 

俺達が結界の外に出た後、少ししてから

結界の中から凄い光と衝撃が溢れ出て来た

と思ったら、そのまま気を失っていたらしい。

 

コカビエルもヨシツグも居なくなってた

ことから、朱乃さんや部長の予想だと、

あの光はコカビエルがナニカした結果で、

どうもヤツはヨシツグと相打ちになった

んじゃないかって話だったけど。

 

ただ問題はソコじゃなかった。

 

「こ、校庭が!校舎がっ?!」

 

そう、戦いの余波で校庭は穴だらけで

クレーターまであるし、校舎は半壊。

体育館は戦いの前にコカビエルの槍で

消滅してたよなぁ。

 

旧校舎は何とか無事だったけど、この

ままじゃ授業どころじゃないって状態

だったんだ。

 

・・・学校を愛する部長にとってコレは

大ダメージで、かなり錯乱してた。

 

俺はてっきりガス爆発か何かが起こった

ことにして時間を稼ぐと思ったら、

部長の実家の人や会長の実家の人に

手伝わせて朝までに全部修繕したし。

 

鳥野郎との戦いのときのフィールドを見て

思ったことだけど、魔力ってすげぇ!って

再度思ったね!

 

ところどころ新しくなってる建物に対して

学園に通う生徒たちは???って感じだった

みたいだけど、その辺は魔力で軽く認識を

いじることで調節するらしい。

 

なんつーか。魔力ってすげぇよな!

 

そんなわけで部分的に新しくなった学校で

日中は授業を受けて、夜は悪魔の仕事をして

たんだけど・・・まさか最近の俺のお得意

さんが堕天使の総督アザゼルだったなんて!

 

それに驚いて部長に報告して、対処方法を

考えてたら今度はサーゼクス様まで来るし!

 

どーなってるんだ?!って思ってたら、

なんでも今回の件に関することで悪魔と

天使と堕天使で会議を開くことになった

らしいんだよな。

 

朱乃さんが会長さんから聞いた話だと、

そもそもコカビエルの野郎が戦争を望んで

教会の人間を唆して聖剣?を盗んだことが

全ての発端らしいんだ。

 

そして部長が管理する駒王町に潜伏する

ことで、ココにエクソシストをおびき寄せ

俺達と戦わせようとしてたとか?

 

そこで何でそうなるのかが良く分かんねぇ

けど、木場はその事を知りながら部長に

何も言わずにいたんだって?

 

その所為で会長からは部長が情報を隠して

たって言われて朱乃さんが叱られたらしいし。

 

一人で抱え込んで部長やみんなに迷惑

掛けた挙句、戦って負けて殺されたって、

何やってんだアイツはよ!

 

今回は木場個人の暴走で済んだけど、

一歩間違えば部長が悪魔を裏切ったって

言われるようなことだったらしいじゃ

ねーかよ!冗談じゃねーぞ!

 

思い悩んでたからって、眷属としてやって

良い事と悪い事の区別もつかねぇのか!

 

いや、あんなヤツのことはもう良いんだ!

 

そんなこんなで会談の前・・・と言うか

授業参観の前の現地視察の為に地上に来た

サーゼクス様が、ウチの両親に挨拶して

そのままウチに泊まったり、色々人間界を

楽しんで行ったりしたんだ。

 

・・・ぶ、部長のおっぱいに倍化を

掛けるなんて考えもしなかった。

 

だけどそうか、この力にはもっと可能性が

有るんだなって思ったよ!

 

サーゼクス様からも常識に囚われず、色んな

方向から試してみるように助言を貰えた。

 

でもってサーゼクス様からの紹介で

大学部から新入りが入って来た。

 

木場が居なくなったことの代わりなんだ

ろうけど、男の先輩だ。

 

人狼って言う種族らしいけど、寡黙で

ちょっととっつきにくいヒトなんだよなぁ。

 

俺は何か嫌われてるみたいだし。

 

・・・痴漢とか性犯罪者扱いされたく

ないからあんまり近くに来ないでくれ

って酷くねぇか?!

 

いや、まぁ、俺の普段の行いが悪いって

言われたらそうなんだろうけどさぁ。

 

ま、まぁそんなわけで、新しい仲間も

加わって気持ちも新たに再出発だ!

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーカンザシ視点ーー

 

 

「はぁ?」

 

いや、白音ちゃんったら冗談が上手いんだから

 

それともアレかな?最近阿呆が修行に

出てるおかげでシトリー家の連中が

まともに仕事してるから気が緩んだかな?

 

「残念ながらソラミミでも冗談でも

ありません。

サーゼクス・ルシファー(シスコン)が駒王学園に来ます。

・・・授業参観で」

 

聞き間違いじゃ無かった?!

 

「馬鹿じゃない?!」

 

仕事しろよ!そもそもの名目は会談の下見

なんだろうけど、そーゆーのは眷属にさせろよ!

 

会談の下見が授業参観なら今回のは

下見の下見?わけがわからないよ!

 

ゲームセンターとかハンバーガーは

まぁ良いけど、神社って。

神聖な力を払いのけてお参りって!

 

普通に宣戦布告だったよね?!

 

アレのせいで補佐官様の機嫌悪いんですけど!

 

YOSHITUGUが無言でボコボコに

されてるんですけど!

 

そもそも魔王家とそれぞれの実家は関係

無いって言ってなかった?

 

それにアザゼルが赤龍帝に接触してる

でしょ?アレはアレだよね?

赤龍帝と白龍皇の共通項を調査して

るんだよね?

 

今更総督が焦って動くって、アイツら

まさか対策とか何もしてないの?!

 

阿呆眼鏡の修行を監修してるご当主様に

報告するときアザゼルって単語を口にする

たびに補佐官様がYOSHITUGUを

タコ殴りにしてるらしいんですけど!

 

・・・まぁ吹っ飛んでるのは実力差も

弁えずに場の空気に乗って神野サンに

挑んだ罰でもあるから良いんだけど。

 

「とりあえず会談に伴い色々な下準備

が有るみたいですね。

グレモリーと断交してるので無能の兄

として来ていたサーゼクスと、その妻の

メイド気取りはコチラに来てませんが、

今回は流石にご主人様へご挨拶の書状を

出したそうです」

 

ふぅん。へぇ。ほぉ。まぁ今回はソレで

良いよね。

 

「セラフォルーは会談までコッチには来ないんだね?」

 

阿呆眼鏡が居たらアレだったかもしれない

けど、まぁ赤龍帝も無能だし駒王町に居る

無能には興味ないよね?

 

そもそも会談場所の下見なんか魔王がすること

じゃ無いし。

 

「ですね。学校運営に関してはシトリー家

の連中がちゃんとしてますし、出席やら

何やらしてるのは影武者ですから。

また魔王が2人も地上に出たら周囲へ警戒

させてしまいますので、会談まで遠慮した

のではないでしょうか」

 

ふむ。そのくらいは考えることが出来るか。

 

てっきり修行中の妹の応援をしたいとか

言い出すかと思ったけど・・・

 

下手に干渉してご当主様の機嫌を損ねて

訓練を打ち切られるのを嫌ったのかな?

 

「でもって、無能は新たに眷属を増やしたって?」

 

良くもまぁあんなヤツの眷属になるよねぇ。

 

「はい。大学部のルー・ガルーですね。

サーゼクスからの依頼で戦車の駒を

使って眷属になったようです」

 

ふぅん・・・人狼か。魔王からの依頼なら

命令と一緒だし。可哀想に。

 

けどアレだね?僧侶のハーフ吸血鬼と言い

ソイツと言い、明らかに無能の力を越え

てるよね?

 

宿主が雑魚で、尚且つ完全に眠ってた赤龍帝

ですら兵士の駒8個使ったんだよ?

変異の駒ったって、ハーフ吸血鬼の中に有る

モノは無能がどうにか出来るモノじゃない。

 

アレを駒一つで眷族に出来るの?

無能が持つ悪魔の駒には何か特別な力(ご都合主義的なナニカ)でも有るのかな?

 

あ~だけど騎士は普通の駒だったよね?

敵なら強くなるけど手に入れると弱くなる

システムでもあるとか?

 

それともご当主様や奥様が警戒してる管理者の力?

 

ソレがわかるまで今代の赤龍帝は殺せない。

ライバルっぽい白龍皇も生かす必要が有る。

 

だけど騎士は殺せた・・・か。

 

つまりコレで行けば、無能と女王と元聖女は

ハーレムメンバーだから殺せない?

人狼とハーフは接点が薄いから殺せるかも?

 

とりあえず性犯罪者が見てないところで、

元聖女の僧侶か女王を殺せるかどうかの

実験をする必要が有るよね。

 

「あ、そうだ。ちなみに神野サンって、

ご当主様が言う管理者に勝てるんですか?」

 

アレはその辺に居る神様とは違って、もっと

高次の存在なんでしょ?

でもって神野サンも似たような存在だよね?

 

向こうはメタイ事を言えばご都合主義の塊で

デウス・エクス・マキナって奴だけど。

 

まぁご当主様とか奥様とか私が居るって

考えればそう言う存在が居るってのも

わかるんだけどさ、力以外の対抗策が

有ったらその方がいいよね。

 

『ん~?僕や空クンもそうだけど、基本的に

管理者は勝ちとか負けとかって存在じゃ無い

からねぇ。

在り方によっては殺せるけど普通は無理と

考えた方がいいかなぁ?』

 

あ、管理者の存在は知ってるんだ。

 

「えぇ~神野サンと似たようなのが他にも

居るんですか?中々しんどいんですけど」

 

おぉ。白音ちゃんも言うようになったねぇ。

 

『まぁ、否定はしないよぉ。白音は種族的

に悪魔だからアレだけど、悪魔以外の存在

にとって僕は禍々しさの塊だし?』

 

だねぇ。存在自体が悪魔で、神野サンが居る

場所こそが地獄。そんな存在が複数居たら

対抗するヒト達は大変だよねぇ。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

『(。-ω-)zzz・・・ (。゚ω゚) ハッ!・・・(。-ω-)zzz』

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「そう言えば授業参観にはご当主様も

来るんでしょ?」

 

奥様はお仕事で向こうに残るらしいけど。

 

「です。私も「お仕事が有るんだから無理

しなくて良いんですよ?」って言ったんですが、

土曜サバトで、日曜が簪姉様の日。月曜が

参観日ですから日程に無理はないそうです。

補佐官様へのアイサツと修行の進捗確認の

ついでに私の職場の調査も行うって話でした!」

 

ついでと言いながらソッチが本命なんだよねぇ。

ソレを知ってるから白音ちゃんも嬉しそうだし。

 

サーゼクスとは違って政は奥様がきっちり

行うし、サバトも補佐官様へのアイサツも

重要なお仕事だもんね。

 

それに日曜は二人でデートできるし。

今回は何処いこっかなぁ。

 

あ~心がぴょんぴょんするんじゃぁ~♪

 

「(ΦωΦ)」

 

『か~んちゃ~ん。白音が微妙な顔してる

から戻っておいでよぉ。

あとデートなら浦安がオススメだよぉ』

 

( ゚д゚)ハッ!

 

危ない危ない。柴田〇兵以上舘ひ〇し未満

の危なさだったね!

 

予定はちゃんと立てなきゃ駄目だけど、

そう言うのって万全の予定を立てれば

何故か駄目になるんだよねぇ。

 

ご当主様が何かプランを立ててくれる

可能性もあるし?

 

別に外に出なくても映画見て夜にアレ

が出来れば私としては文句無いし!

 

まぁ日曜日のことは土曜のサバトの

後にでもご当主様と考えるとして、

授業参観での問題はやっぱりサーゼクスを

どうするかだよねぇ。

 

グレモリーは無視しても良いけど、魔王

として来てたら相手しないと駄目だし。

 

とりあえず会談への参加は拒否したし、

情報提供も散々NDKした後で拒否

したし。YOSHITUGUもリハビリ中

ってことで不参加にしたけどさ。

 

阿呆眼鏡はコカビエルに関係無いから

会談には不参加で良いはず。

持ってる情報は全部セラフォルーに

伝えてあるしね。

 

けどサーゼクスはご当主様と直接顔を

合わせることが出来る希少な機会なんだ

から、絶対にナニカ言ってくるよね?

 

とりあえずシトリー家のフォローが仕事

だからここにいるけど、会談が終われば

帰れるように出来ないかなぁ。

 

白音ちゃんも学校でマスコット扱い

されててイラついてるし。

見世物じゃないし、ご主人様以外にそう

いう目で見られたらそりゃストレス溜るよ。

 

性犯罪者も普通に覗きとかしてるらしいしね。

 

そんな環境で仕事するくらいなら、冥界に

帰ってご当主様と一緒にお仕事と修行を

してた方が良いよねぇ。

 

早く第四等魔王カリキュラムを卒業して

私や奥様が居る第六等まで来るんだって

意気込んでるけどさ。

 

そう簡単に追いつけると思わないでね?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

・・・予想通りと言えば予想通りだが。

 

「堕天使からは情報がほとんど得られな

かったわ。むしろコッチが知ってること

を教えて欲しいって感じだったわね」

 

情報は力だからな。しかも現状は和平も

成立していない敵対勢力だ。ホイホイと

情報をやるサーゼクスが異常なんだよ。

 

「ん~堕天使は神野明影の情報を隠して

るのかなぁ?それとも僕たちも知ってると

思ってるのかなぁ?」

 

コレは微妙なところだ。

 

そもそもコカビエルが用意した魔法陣がな。

 

発動の前段階では映像があるから細かい

内容まで解読出来たが、何度見ても

衝撃や音を外に出さないと言うだけの

モノでしかないんだよ。

 

さすがに最後の一撃は結界の外に居た

リアスたちを気絶させる程度の余波が

出たが・・・コカビエルの命を使った上、

神に届く一撃の余波がその程度で済んだ

ことが異常と言っても良い。

 

その異常な強度を持ったアレに現場で

堕天使特有のナニカを加える事で、

神野明影とやらを封じ込める檻となる

のだろう。

 

そのナニカが分かれば、相手がどんな

存在なのかも逆算出来たのだが・・・

 

校舎が崩壊したことにリアスが焦って実家や

シトリー家の連中に後始末を急がせた結果。

現場には中途半端なモノしか残らなかった。

 

その所為でまともな解読も出来なかったし、

堕天使にしてみても神にも通じる一撃を

生み出すと言うアレは他の神話勢力だけ

じゃなく、俺やサーゼクスに対する切り札

でもあるからな。

 

そうそう教えるなんてことはしないだろう。

 

オセはサーゼクスや俺たちが情報漏洩する

事を嫌って情報の提供を拒否したし。

 

『国家の技術担当を担う魔王陛下に当方

からお伝えできることなどありません』

 

『神滅具に関しては私どもが生まれる前

から冥界の技術を担ってきた魔王陛下が

知ってること以上の事は知りません』

 

『赤龍帝や白龍皇も、劣化版の神器しか

知らない我らよりも実際にヤツと戦った

魔王陛下の方が詳しいでしょう』

 

散々な言われようだが、要するにマトモに

仕事してない技術者にやる情報も技術も

無いと言うことだろう?

 

俺とて悪魔の駒や自分が研究している

モノの情報を寄越せと言われても拒否

するからな。

 

アザゼルも同様だろうよ。

 

ソレを考えれば会談と和平は絶対に

必要なんだが・・・

 

「ファルビウムはゼファードルから

何か聞けたか?」

 

まさかYOSHITUGUとは無関係

とか言わんだろうな?

 

「ん~なんだか黒いのだったとしか

わからないみたいなんだよねぇ」

 

黒いか。悪魔に限らず大きさやら

見た目はある程度自由に変えれるから

参考にはならんな。

 

白龍皇が何を見たかはアザゼルも

教えて来ないし。

 

「そうか・・・セラフォルー。ミカエルは

神野明影について何も知らなかったんだな?」

 

コカビエルが命を懸けて時間稼ぎをする

ような相手だ。

知り合いのような口ぶりだったし、天界

も無関係とは思えんのだが。

 

「うん。会談に関しては問題ないみたい

だけど、向こうは向こうでヤツが聖剣を

壊した方法とか、因子?とかデュランダル

の事とか知りたいことが沢山あるみたい」

 

まぁそもそもが偽名のようだったし、

名前だけではわからんか。

 

それにデュランダルだと?そんなモノまで

持ち込んで居たのか?

 

いや、聖剣を盗んだ相手がコカビエルと

言うなら教会がストラーダクラスの使い手

を送ってくるのは当然だが・・・ソレも

神野明影に消されたようだからな。

 

教会が焦るのも当然か。

 

そして聖剣の破壊。ソレが悪魔によるモノ

なのか他の神話勢力の技術力なのかさえ

確認出来ないのも痛い。

 

あの場で即席でやったような口振りでは

あったし、コカビエルもソコに疑問を

覚えていなかったようだから、神野明影の

能力の可能性が高いよな。

 

しかしどこまで行っても可能性は可能性。

推測は推測だ・・・これでは技術者として

失格だな。

 

かといって破壊する為に聖剣を借りる

ことなど出来んし・・・

 

破壊と言えば悪魔の駒だ。リアスから確認

の依頼が来たが、聖剣によって消された

眷属悪魔は駒が残らんのか?

 

今までそんな報告は無かったが・・・

 

まぁ駒を持つ連中はとにかく気位だけは

高いから「自分の眷属が狩られた!」だの、

「はぐれ悪魔になって聖剣使いに殺された!」

だのといった報告をするなんてことは無いと

言うのもあるだろう。

 

更にエクスカリバーやデュランダル相手

と判明してるケースなんかほとんど無い。

 

つまりは現状データが足りな過ぎる。

 

殺すことを前提に眷属にして実験する

のも考えたが、そもそも聖剣が無い。

 

恐らく聖剣創造などで造れるモノでは

なく、エクスカリバー級の聖剣だから

こそ起こった現象だろうが、これも推測

に過ぎん。

 

残る聖剣は祝福の聖剣と支配の聖剣か。

支配の聖剣は行方不明で祝福の聖剣は

教会で守りを固めてる。

 

貸してくれと言っても拒否されるのは

目に見えてる。

まぁ強奪しようと思えば出来るだろうが

和平の前にすることでは無いよなぁ。

 

それに手に入れたとしても使えるヤツ

が居ない。

 

つまりはソッチ方面は研究出来ん。

一定以上の格が有る聖剣には駒を

消滅させる可能性があると言うことを

告知して警戒させるしかないな。

 

この情報もリアスの手柄となるから

サーゼクス的には嬉しいだろうな。

 

それに消滅させられた駒の再配布は

行えないから、聖剣使いと戦うことを

嫌がる悪魔も出てくるだろう。

 

つまり悪魔の中で消極的であっても和平

に賛成する者が出てくる可能性が有る

と言うことだ。

 

・・・反対に悪魔の駒を憎む勢力は

喜び勇んで悪魔を殺そうとするだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に反三大勢力の包囲網が出来上がってる

以上、三大勢力間の和平は成るだろう。

 

だがなサーゼクス。和平後に待っているのは

コカビエルを殺った反三大勢力との戦争だ。

 

それは悪魔の存亡をかけた戦争になる。

 

何時までも話し合いなどと温い事を言って

いたら、最愛の妹も死ぬぞ?

 




コカビーの後、数日後に何事も無かったか
のように破壊魔が部室で悪魔になってるん
ですよねぇ。
カラオケとか普通に行ってるし。

つまり体育館や破損した校舎は速攻で
修繕してたわけです。
違和感は魔力で誤魔化してなっ!

悪魔陣営と堕天使陣営は探り合いを
している模様。
探っても何も無いけど、何も無い事を
証明できない。まさしく悪魔の証明!ってお話

補佐官様は何故彼を優先的に殴るのか(謎)



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34話

堕天使も色々探ってるのです。

全身に白いのを付着させる尻好きが!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーアザゼル視点ーー

 

やはり悪魔は情報を隠して来たか。

しかし赤龍帝への接触に関しては特に

制限を付けて来ないのは何故だ?

 

コレはサーゼクスの独断か?それとも

オセだけじゃ無く悪魔陣営では研究が

完全に終わっていると言うメッセージか?

 

それにオセ。デミウルゴスが関与している

と言うことがわかった時点でコカビエルが

死を覚悟したことは事実。

 

もしもの時は自分ごと殺しても構わないと

言う契約に変更したし、アノ自爆術式を

使うと決意したのは他でもねぇコカビエルだ。

 

俺から文句を言う気はねぇが、ある意味

自分たちが殺したようなモノだからと

言って報酬を受け取らなかったのは意外

だった。

 

いや、契約に真摯なヤツなりのけじめと

考えればありえねぇ話では無ぇんだがよ。

 

ついでに俺達と馴れ合いはしねぇと言う

事でもあるんだろうな。

 

しかし、サーゼクスめ!まさか現場検証や

デミウルゴスの魔力調査よりも俺たちに

調査される事を嫌って証拠隠滅をするとは

一体何を考えてやがる!

 

確かに神にも通じる一撃なんざ秘中の秘!

オセからも強く言われてるんだろうが、

アレじゃ自分たちだってまともな調査が

出来ねぇだろうが!

 

それともアジュカが何か仕込んでたのか?

だから現場を残すのを不要と判断した?

 

・・・有り得ねぇ話では無い。セラフォルー

やサーゼクスは隠し事が出来ねぇから、

ファルビウムと一緒に情報を秘匿し解析

してる可能性も有る。

 

何せYOSHITUGUはファルビウムの血族

だって話だからな。

 

ヴァーリは気絶で、白龍皇(アルビオン)も意識を断たれた

状態だったから、ヤツの姿を見たのは現場に

いたYOSHITUGUとカメラを回していた

シロネ・オセの眷属だけだ。

 

オセが俺達と馴れ合わねぇなら、情報源は

一つしかねぇ。

ソレを悪魔に握られたってのがな。

 

あの魔法陣や詠唱の解読も進めてるが、

あの段階では外に影響が出ないように

するだけのモノだ。

 

あれじゃヤツの侵入も脱出も阻めねぇ。

 

アレにコカビエルの命と悪魔の力か何か

をプラスしてようやくヤツに届く一撃

を作り出せたんだ。

 

アイツが命がけで手に入れた情報と

時間を無駄にするわけには行かねぇって

言うのによぉ!

 

ソレにヴァーリも。あそこまで強キャラ

ムーヴしておいて完全に一蹴されたから、

相当凹んでたし。

 

肉体へのダメージはソレほどのモノでも

なかったが、ソレはソレで手加減された

って話になる。

 

アイツは雑魚とか言ってたがヴァーリは

決して雑魚じゃねぇ。

 

もしコカビエルに奇襲が成功していたら

一回の半減でコカビエルを超えることは

出来ていたくらいの実力はあったんだ。

 

だが半減が効かないYOSHITUGUから

見たら雑魚と言われても仕方ないかも

しれんな。

 

そもそも今までは強力な神滅具を完全に

コントロールすることに専念してたし、

基礎体力や魔力は鍛えていたが根本的な

技術やら何やらを鍛えるような時間が

無かったからな。

 

コレは俺にも言えることだが、元々が

オンリーワンな神滅具だ。その効率の良い

鍛え方ってのはまさしく手探り状態。

 

白龍皇の中に居るって言う過去の使い手は、

今まで全部人間だからルシファーの魔力を持つ

ヴァーリへの指導もできん。

 

結果アイツは白龍皇の力を制御して使い

こなすことこそ最強への近道と判断して

いたんだが・・・何で最強を目指すヤツが

敵を弱体化させるんだ?なんて言われたらなぁ。

 

「使えるものは何でも使う!」とは言ってもよ、

相手の力を落として勝ったんじゃ、そんなん

どう考えても【最強】じゃねぇよなぁ。

 

アイツは今、自分の在り方に悩んでやがる。

 

本来ならもっと早く俺が教えてやれば

良かったんだが・・・甘やかした結果だな。

 

いや、俺も言われるまでは気付かなかった

んだから偉そうな事は言えん。

 

アルマロスが言うように基礎となる肉体を

徹底的に鍛えさせるべきだったか。

 

・・・YOSHITUGUを理想の鍛え方だ!とか

言ってたが、アレは戦士としての理想なのか

特撮モノとしての理想なのか。

 

もしもオセが赤龍帝を鍛えたらどんな化物

が出来るのか、想像もつかねぇ。

 

あのサーゼクスの妹である無能の眷属に

なってくれて助かったと言うべきだろうな。

 

おかげで現状では戦力がある意味で拮抗

しているから和平も不可能じゃねぇ。

 

とりあえずソッチは授業参観の後だ。

 

今はこの駒王町と駒王学園からヤツの

残滓を少しでも集めねぇと、命懸けで時間を

稼いでくれたダチに顔向けができねぇよなぁ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「ん?校門の前に誰かいる?」

 

プールから出て校舎を出ようとした俺の

視界に銀が入り込む。

 

「・・・」

 

凄い美少年が学校を見上げている。銀髪だ。

 

外人だから細かい年齢はわかんないけど

俺と同じくらいに見える。

 

そして俺はそんな彼から目を離すことが

出来なかった。

 

タダ校舎を見上げていると言うだけなのに

俺は彼が幻想的に見えてしまったんだ。

 

俺の視線に気付いたのか、美少年はコチラ

を見て微笑みかけて、言葉を紡ぐ

 

「やぁ、いい学校だね」

 

「えっと・・・まぁね」

 

何とか彼に合わせるように爽やかに答え

ようとしたけど、上手く出来てただろうか?

 

「俺はヴァーリ・・・今代の白龍皇だ」

 

そうか。ヴァーリ君って言うのか・・・え?

 

「こうして会うのは初めてだな『赤い龍』

・・・赤龍帝。兵藤一誠」

 

え?何?俺の事を赤龍帝って言うって

ことは間違いなく関係者だよな?

 

て言うか白龍皇?!ソレって前にドライグ

が言ってた白いの?俺のライバル?!

 

う・・・嘘じゃなさそうだ。俺の左手から

怒り?みたいな感情が溢れてくるのがわかる!

 

コレは歴代の先輩方の感情が流れて来てる

って言うのか?

 

「そうだな。もし俺がココで兵藤一誠に

魔術的なモノを仕掛けたりしたら・・・」

 

『白い龍』の手が俺の鼻先に迫った時・・・

 

シュッ!と言う音と共に誰かが降って来た。

 

いや、誰かじゃないルー・ガルーさんだ!

 

「冗談なのは分かってるが、あんまり

好きにさせると俺の主が煩いのでな。

済まんが邪魔させてもらおう」

 

ルー・ガルーさんはそう言って構えを取る

 

「ふむ。まぁ俺との力の差は理解出来て

いるが、仕事を仕事と割り切るタイプか。

君のようなタイプは逃げる時は一切躊躇

が無いからね。

会話をしに来たのにココで逃げられたら

意味が無い。冗談は謝罪しよう。会話を

続けさせてくれないかい?」

 

え?何が冗談で何をしたいのかさっぱり

わからないんだが・・・

 

「白龍皇が赤龍帝との対話を望むか。

ココで戦わんと言うなら俺としては

文句は無い」

 

そう言うとルー・ガルーさんは構えを

解いて距離を取った。

 

よく分かんねぇけど、ルー・ガルーさんは

コイツに悪意や敵意が無いと判断した?

 

「感謝するよ。とは言え俺が話をしに来た

のは兵藤一誠ではなくてね」

 

「はぁ?」

 

さっきと言ってることが違うじゃねぇか。

 

『・・・俺に用か』

 

ドライグ?あぁ、そういう事か。コイツは

俺じゃなくドライグに用があるって?

 

「あぁ、寝ていたら済まない。どうしても

赤い龍である貴方に確認を取りたかった」

 

なんつーか。俺を無視されんのは面白く

無いが、コイツの表情は真剣そのもので

何故か口を挟もうと言う気になれなかった。

 

『珍しいことも有るものだ。まぁ長い時を

生きればこう言うこともあるのだろうな』

 

さっきの感じからすればドライグが会話

を拒否する可能性も考えていたけど・・・

 

どうやら興味が勝ったらしいな。

 

「感謝する。と言っても聞きたいことは

とても簡単な事でね。赤龍帝、貴方は

自分が殺された時の事を覚えているか?」

 

は?

 

『・・・古い話だな』

 

あ、あぁそうか。コイツが言ってるのは歴代

の先輩じゃ無く、神器に閉じ込められる前の

龍としての体が有った時のドライグか。

 

「あぁ、残念ながら白龍皇は覚えて無くてね。

もし覚えているなら教えて欲しい。

無論自分が殺された時の記憶なんか屈辱

以外の何物でも無いと言うのはわかってる。

だからもし覚えていたら、そして教えても

良いと思ってくれたらで良いんだ」

 

何と言うか・・・落ち着いているようで、

どこか必死さを感じるような。

 

一体どんな感情がコイツを動かして

るんだろう?

 

『・・・期待に沿えるかどうかはわからんが、

俺の場合は多数の敵に刻まれた事しか覚えて

いない。だから何が致命傷になったかは知らん。

その後、まぁ死んだあとか死ぬ前かは知らんが

体ごと神器に閉じ込められたようだから、死体

は残っていないはずだ』

 

多数の敵に囲まれて殺られたのか。そういえば

コイツは三大勢力全部を敵に回したんだもんな。

 

「そうか、多数の敵にか。ではもう一つ教えて

欲しいことがあるんだが・・・」

 

この質問にどんな意味があるのかはわからない

けど、コイツに取っては重要なんだろうな。

 

『内容によるとしか言えんな』

 

そりゃそうだ。だけどさっきまでの怒りに似た

感情は困惑って感じに変わってるから、多分

今のドライグは答えれる質問なら答えると思う。

 

「もっともだ。では、もしも貴方が神器から

出れて肉体を持ったとしたら、アルビオンと

雌雄を決したいと思うか?それとも三大勢力

へ復讐を考えるか?」

 

なっ?!白い龍との決着はまだしも、三大勢力

への復讐だって?!

 

いや、確かにコイツらを殺して神器に閉じ込めた

のは三大勢力なんだろうけど・・・

 

『・・・両方有り得んな。今更白いのと決着を

つけようとも思わんし、三大勢力への復讐も

有り得んよ。まぁこうして神器となり、俺たち

を宿した者達が惹かれ合って戦闘になるケース

が多々あるのは事実だ。

どうやら俺達の感情を無理やり刺激するように

出来ているらしいが、その辺は良くわからんな』

 

さ、流石ドライグ!そうだよな!俺も悪魔

だし、前に聞いたときは「あの頃は若かった」って

感じでなんか反省してたみたいだったし。

 

だけどそうか、さっきのこいつから感じた怒り

みたいな感情は神器としての機能なのか。

 

もしかしたら自分達の戦争を邪魔された神様

とかが、これ以上邪魔しないようにって感じ

で人間の体に移して、戦いの規模を小さくした

うえで共闘して自分達に歯向かわないように

したのかも知れないな。

 

「その点はアルビオンと一緒か。そうか、

貴方も最強を求めているわけでは無いと

言うことか」

 

ん?最強?どう言うことだ?

 

『それはそうだろう。別に俺たちは最強を

目指して鍛えていたわけではない。それなり

に強くて自由気ままに生きていただけだ』

 

そ、それなり?三大勢力にたったの二人、いや

二匹?で喧嘩を売ってかなりの損害を与えた

コイツが?!

 

「兵藤一誠。君はまだ理解できないだろうが、

この世界は強者が溢れている。

君が想像しやすい強者である魔王サーゼクス

とて、この世界ではトップ10にも入らない

のが現実だ」

 

さ、サーゼクス様ですらトップ10に入らない

ってマジかよ?!

 

「ちなみにアルビオンが言うには悪魔最強は

魔王じゃ無いらしいが、貴方も同じ意見かな?」

 

はぁ?魔王様より強いヤツなんか居るはず

無いだろうが!

 

『白いのと同じ意見と言うのはアレだが、

まぁそうだろう。少なくとも俺たちが肉体を

持って全力で戦闘したとしても勝てないと

断言出来るのが二人、いや三人程居る』

 

「はぁ?!」

 

真剣な話みたいだから口を挟む気は無かった

けどよ!流石にちょっと待てよ!

 

「勢力とか部隊とかじゃなくて二人か三人と

戦ってお前が負けるのかよ!?」

 

天龍って呼ばれたコイツらに二人か三人で

勝てるってどんな悪魔だ?!

 

『勘違いするな。二人一組のチームではない。

一対一で勝てんのが三人いるんだ』

 

「はぁ?!」

 

もっとダメじゃねぇか!

 

 

――――――――――――――――――

 

ーーシロネコ視点ーー

 

「奥様、お疲れ様です」

 

珍しく地上に奥様だけが来ましたよ。

ご主人様は補佐官様のところに行ってます

けど、こっちで何か有りましたっけ?

 

「えぇ。シロネコも御苦労様です。神野と

一緒だと疲れるでしょうし、更には学園で

見世物のような扱いをされているとか?

眷属としてではなく、女として不快な思いを

させるつもりは無かったのですが・・・正直

私の見込違いでした。苦労をかけますね」

 

「いえ!これも仕事ですから!」

 

苦労しない仕事なんか無いんです!それに

シロネコはご主人様の為ならどんなお仕事

だってしてみせます!

 

いや、他の男に抱かれろとかは嫌だけど。

そんなことは命令されないって知ってます

からね!しませんよね?しないで下さいっ!

 

『いや~せめて僕に関しては否定して欲しい

んだけどさぁ。奥さんもアレだけど、白音も

ひどいよねぇ~アヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 

このアヒャヒャヒャヒャヒャは煽るための

笑いなんですよねぇ。

 

奥様を煽るなんてこのヒトくらいですよ。

 

「お疲れさまです奥様。なんだかんだ言っても

神野サンもキチンと仕事はしてくれますからね。

凄く助かってますよ」

 

簪姉様が居るからだと思うんですけどねぇ。

居なかったら絶対自由気ままに遊んでますよ。

 

「簪も御苦労様です。神野に関しては、まぁ

旦那様も認めてますし、仕事をサボっている

わけでは無いですから簪が助かっていると

言うなら別に良いのです」

 

やっぱり奥様は簪姉様にもちゃんと配慮

して下さいますよね~。

お話の中だと正妻様と側室って仲が悪い

イメージが有りますが、お二人はいつも

仲良しです!

 

喧嘩とかされたら困るから、いつまでも

仲良しで居てくださいね!

 

それはそれとして、神野サンは礼儀とか作法を

知った上で平然と無視してくるヒトですから。

 

奥様とは絶望的に相性が悪いんですよね。

 

『お~お~。いつになく寛容じゃないか!

流石昨日から今日にかけて主に散々甘えて

来ただけのことはあるね!』

 

「「・・・」」

 

え、え~と。確か昨日は奥様の日じゃ無かった

ような気が・・・

 

「こうっ!!!」

 

おぉ!コカビエルの命懸けの攻撃を軽く上回る

一撃っ!速さも重さも比べ物になりません!

 

私が喰らったら一撃で蒸発しちゃいます!

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!擬似的な理も

乗せることが出来たのは見事だけど、ソレ

じゃあまだまだ足りないよぉ!』

 

そんな一撃を受けて、尚も笑うこのヒトは

ホント底が知れませんねぇ。

 

「・・・奥様~。神野サンに関わってたら話が

前に進みませんよ~。今日は日本神話の方が

来るんですよね?」

 

あ、そうだったんですね。日本神話の方が。

アレですか?サーゼクスのアレへのクレーム

ですか?それとも三大勢力の会議を駒王町で

行うことに対するクレームですか?

 

「・・・そうですね。向こうの方が来る前に

場を浄めようと思いましたが、こやつの相手を

しては散らかるだけですよね」

 

ですよねー。虫とか虫とか虫とか。

 

だけど、ある一定以上の実力者には不敬とか

無礼って言葉は適用されなくなるって話でしたが

神野サンはそのレベルなんですよねぇ。

 

『散々な言われようだぁね!まぁ間違って無い

けどさ!虫とか置いておこうかぁ?』

 

まぁだからと言ってわざわざ日本神話の方を

不快にする必要は無いわけで。

 

「神野サンには冥界ではぐれ悪魔の探索をお願い

してるじゃ無いですかぁ。分離器にかけても良い

し潰しても良いから駒を集めて下さいよ~」

 

ふむぅ。普段はフンコロガシさんのところに

行きますが、まだ暫くはコッチで仕事があります

からね。冥界でのはぐれ悪魔探索ならばこのヒト

の特技を最大限活かせます。

 

まさしく適材適所。

 

『おぉう。そうだったねぇ。さっさと行かない

とかんちゃんと主に怒られちゃうかぁ。

まったく悪魔使いが荒い連中で僕もビックリだ!

流石悪魔!奥さんも元気でねぇ~』

 

軽いなぁ。はぐれ悪魔を虫のおやつか何かと

思ってるのかなぁ。

 

「はぐれ悪魔対応班も貴方の事を知らない者が

増えてますからね。顔見せも兼ねてますので

暗躍ではなく表に出るように殺って下さい」

 

あぁ。毎年新人さんが入りますからね。

知らないヒトが見たら間違いなく不審者だし、

ある意味ではぐれ悪魔だから攻撃されちゃう

可能性もあるのか。

 

『はいよ~』

 

軽いなぁ。はぐれ悪魔対策班の新人さんは

おやつじゃないですよ~。

 

・・・・・・

 

「さて、神野が消えたところで使者の出迎えの

支度です。いつもは私と簪が出迎えますが、

今回はシロネコの紹介も有りますので貴女も

正装して参加するように」

 

おぉ!とうとう私も奥様や簪姉様みたいな

中華服?みたいなのを貰えるんですね!

 

「かしこまりました!」

 

なんか、一人前って感じです!

 

「地上担当で、側室・・・では有りませんが

旦那様との夜伽もしてますからね。顔見せは

必要でしょう」

 

んん?地上担当はわかりますが、ご主人様との

夜伽って関係有るんですかね?

 

も、もしかして。つ、妻の代理みたいな?

 

に、にゃ~急にそんなこと言われても・・・

シロネコ困っちゃうにゃ~!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ФωФ)・・・私の順番飛ばされたにゃぁ。

後で振替みたいなのあるかにゃぁ?

 




悪魔め!なんて自分勝手な連中なんだ!

赤い性犯罪者と白い尻マニアが交わるとき
薔薇の扉が開かれるっ!

バトルマニア?いや、ただの弱いもの虐めが
好きなジャイアンだよね?

日本神話からの使者に関しては正式な外交ルート
では有りませんが、オセ君は自治を認められた
貴族であり、以前に地域()担当との交渉許可を
取ってるので魔王に報告せずに応対しても悪魔
勢力としてのルール違反にも成らないのです。

地域が山間部だけと誰が決めた?ってお話。






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35話

作者は風邪を引いたらしい。

日本神話群からの使者がエントリー!
奥様の知り合いらしいが?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーシロネコ視点ーー

 

日本神話の方が来るって言うからてっきり

クレームかと思ったんですけど・・・

 

「簪姉様?なんか普通にお食事会みたいな

感じの準備してませんか?」

 

お茶とかお茶菓子の準備もしてるけど、

なんかお稲荷さんとか有りますよ?

 

「ん?あぁ、白音ちゃんはまだあのヒトに

会ったことないもんねぇ」

 

クレーム入れてくるなら補佐官様関連ですよね?

あちらの方々ならソレなりに知り合いですけど、

私が会ったこと無いって確信してるのは何故?

 

「えっと、お名前すら聞いてないので・・・」

 

なんとも言えませんよねぇ。

 

「あ~相手のヒトは天照大神様の神使でね。

直接お名前とかは呼ばないのが礼儀みたい

なんだ」

 

ほほー。天照大神様の神使様なんですか。

天照大神様に直接お仕えしてるなんて相当

高位の方ですよねー。

 

「・・・いや、大物過ぎませんか?!そんな

ヒトが直接クレーム言いに来るんですか?!」

 

ヤタガラス様とかそう言うレベルでしょ?!

当たり前に神様ですよね?!

 

「うんうん。私も元は日本人だからねぇ。

今の白音ちゃんの気持ちは良くわかるよ」

 

そーですよ!私たち妖怪の元締めですよ!

 

「けどまぁクレームを言いに来るのも本気

ではなく、あくまでお仕事って感じなんだ。

本題は奥様との情報交換なんだよ」

 

本気じゃない?

 

「クレームではなく情報収集が目的なんですか?」

 

まぁ魔王がやらかした事を、対外的には一介の

悪魔でしかないご主人様に言うのは違うって

ことですよね?

 

天照大神様としてはソレを口実にして情報収集

をしたいと。

 

だけど奥様が情報漏洩をするなんて絶対に

有り得ませんよね?

 

「情報収集じゃなくて情報交換だよ。奥様も

こちらの情報を明かして、アッチからも情報を

貰うんだ。コレをしっかりとやってるからこそ

日本で私たちが活動できてると言っても過言

じゃないね」

 

「な、なるほど」

 

対等と言うか、向こうが上の立場なんですね。

 

まぁ私たちは間借りしてるようなモノだし、

そう言うのもわかるんですけど。

 

「だけど、奥様の性格だと日本での仕事より

情報を重視するような気がしますけど?」

 

情報をやらないなら仕事をさせないって

言われたら、適当な情報を流すか拒否する

ような気がするんですよね。

 

「ん~何でも奥様がかなりお世話になった

ヒトらしくてね。

それにご当主様も許可してるから、これも

仕事のうちって感じかな?」

 

あぁ、ご主人様が許可を出してるなら奥様と

しても問題ないし、契約を遵守するためには

必要なことですもんね。

 

更に相手は補佐官様レベルのお偉いさんだと

考えれば、嘘とか誤魔化しもできないか。

 

信用は大事です。ご主人様も言ってます!

 

「でもソレだと、神使様のお相手は奥様じゃ

なくてご主人様がしないとマズイのでは無い

ですか?」

 

確かに奥様はご主人様の代理人として相応しい

格が有りますけど、そもそも代理の方が相手を

するようなヒトでは無いですよね?

 

「格の話をしたらそうなるんだけどねぇ。でも

まぁ会ってみたらわかるよ。

とりあえず奥様がご挨拶するから、私たちは

その後でご挨拶。向こうは気さくな方だけど、

シツレイしたら奥様に殺された後で補佐官様

とか日本神話の方々に色々されることになる

から、キチンと礼儀は守ってね?」

 

さらりと言いましたけど、かなりヤバイです

よね!?シロネコ終了のお話どころじゃ無い

くらいヤバイ方じゃないですか!

 

「が、頑張ります!」

 

としか言えません。

 

奥様の代理人とかになると、そんなヒトとも

話し合いをしなきゃダメなんですね!

 

だけどシロネコは頑張ります!きちんとお仕事

を完遂して、正式な側室を目指すんです!

 

 

 

・・・・・・

 

 

「お久し振りです正妻様!」

 

(ФωФ)・・・なんか思ってたより神使様の

腰が低い件について。

 

いや、クレームが表向きの仕事とは聞いて

ましたが、もしかして奥様の方が偉いの?

 

「久しいですね狐殿。普段こちらから赴き

きちんとしたご挨拶を出来ぬ無礼をお許し

ください」

 

いや、えっと。奥様もへりくだってますね。

お互いがお互いを尊重してる感じです。

 

まぁ悪魔の奥様が高天原とかには行けません

から、どうしても向こうから来てもらう形に

なっちゃいますよねぇ。

 

ソレがシツレイと言われれば確かにその通り

なのかも知れませんけど、神使様は特に気に

してる風では無いですよね?

 

ん~見た感じは上が白で袴が朱色の巫女服に

淡い空色のストールを着こなしたお姫様です

よね?尻尾が五本に狐耳が有る綺麗なヒトです。

 

むぅ。天照大神様の神使で狐様となると、

宇迦之御魂様を連想しますけどあの方とは

違いますよねぇ。

 

間違いなく私より強い。いや、そもそも立場的

なモノが違いすぎますから戦うとかは無いと

思いますが・・・

 

「そして簪様もお元気そうで何よりです!」

 

そんでもって。普通にテンションが高い。尻尾

ふりふりですよ。綺麗な見た目と裏腹に可愛い

系のヒトです!

 

「お久し振りです狐様。とは言え、普段冥界で

執務をされている奥様よりはお会いできる

機会が多いので、お久し振りと言うほどでは

無いかもしれませんけど」

 

あぁ。簪姉様が普段応対しているクレームの

担当者もこの方なんですかね?

けど、それなら普段から奥様も居ないとおかしく

なりますかね?

 

「まぁ確かにソレは有りますねぇ~。いやはや

簪様が造ってくれた機械のお陰で、天照様や

月詠様の業務が捗っていますからねぇ。

もう本当に大助かりですよ!」

 

あ、なんか機械を販売してたんですか。

 

もしやアレですかね?自動で五円とか五十円を

金額別に振り分けカウントする盗難防止用の

罠付きお賽銭箱とか、柱にイタズラとかをした

ヤツを特定して自動で罰を与える特殊な監視

カメラとか。

 

お賽銭箱は年始に大活躍するらしいですよねぇ。

 

「それで、そちらの可愛らしいシロネコさん

は・・・もしやクロネコさんの妹さんですか?」

 

く、黒歌姉さまのことも知ってるんですか?!

 

「そうですね。そろそろ狐殿にもご挨拶を

させようと思いまして。白音、ご挨拶なさい」

 

お、驚いてる場合じゃないですよね!

 

「し、神使様におかれましては、お初にお目に

かかります!白音・オセと申します!

猫又の妖怪してました!宜しくお願いします!」

 

ここで無礼を働いたら奥様やご主人様のお名前

にも傷が付きますからね!アイサツはしっかり

しないと!

 

「ふむふむ。ご丁寧にどうも。私は故あって

ふるねーむは名乗れませんのでアレですけど、

貴女には親しみを込めて【狐】と呼ぶ事を

許しちゃいましょう!」

 

こ、ここで狐と呼んだら間違いなく死にますよ!

 

「で、では狐様と呼ばせて頂きます!」

 

コレだって本来ならかなりシツレイですよね?

 

「ふむぅ。簪様と言い白音様と言い、礼儀正しい

のはわかりますが・・・固いですねぇ」

 

いやいやいや、簪姉様も狐様って呼んでたし、

奥様も当然だって顔してますから!

 

そもそも貴女神様ですよね?!私を様付けで

呼ぶの止めてもらえませんか?スゴク違和感が!

いっそシロネコでお願いします!

 

って言えたらなぁ。

 

「まぁ初対面ですから、その辺は追々で良い

ですね。ソレで正妻様?この場に白音様も

呼んだと言うことは彼女も?」

 

あ、そうですよね!驚いてばかりはいられま

せん!私は奥様の代理人になるんですから!

 

「えぇ。今はまだ正式なモノでは有りませんが

いずれは正式な側室として迎えたいと思って

おります」

 

に、にゃ~!こうして正式な場で言われたら

やっぱりアレですにゃ~!

 

「うむぅ。簪様には不快なことかもしれませんが、

私も旦那様にはご側室が足りないと思ってたん

ですよ!貴族のご当主様なんですから、もっと

ぱぁっとしても良いと思うんですけどねぇ」

 

お、奥様と簪姉様の目の前でそんなこと言う

なんて!立場上、怒りはしないと思います

けど、ご不快になりますよっ!

 

この会談の後はやけ食いか、ご主人様に甘え

倒すかのどっちかになりますよねぇ。

 

「いえ、私もご当主様には側室が足りないと

思ってますから。

それに狐様がお許し下さるなら近いうちに白音

ちゃんも側室に上げることが出来ますね!」

 

ん?ご主人様の側室を増やすのに狐様の許可

が必要なんですか?

奥様と簪姉様とご主人様が認めればソレで

良いのでは?

 

「あぁ。白音は知りませんでしたね。狐殿は

旦那様の内縁の妻として色々と支えてくれて

いましてね。私もお世話になったものです」

 

にゃ?!

 

「ご、ご主人様の内縁の妻?!」

 

内縁の妻とは言え妻と認められてるんですか?

 

て言うか、内縁の妻と第二夫人ってどっちが

上なんですか?!

 

「そうなんです。内縁の妻なんです!種族的に

正式に嫁ぐことはできませんが、天照様達に

お願いしてなんとか認めて貰ったんです!」

 

お、おぉ。尻尾が凄い振られてます!

グッって感じで拳を握ってますけど、力の

差を考えたら可愛さより怖さが有りますよ!

 

「なんでもイザナミ様とか補佐官様も巻き込んで

の直談判だったらしいですよねぇ。

最初『私も悪魔に転生する』とか言ったりして

イザナミ様も普通に苦笑いしてたとか」

 

イザナミ様って、このヒト天照大神様のお母さん

を巻き込んでの直談判したんですか。

 

「それでも本来の格ならば転生悪魔の私たち

より、狐殿こそが正妻となるべきでした。

それを私たちに配慮してくれたのですよ。

故に奥の序列としては私より上だと思って

きちんと礼儀を弁えるように」

 

奥様より上なんですか?!

 

「そんな!私ごときが普段から旦那様の公私を

支える正妻様を差し置いて上に立つなど絶対に

有り得ません!

お気持ちは嬉しいのですが、簪様の次と言う

立場でお願いします!」

 

ん~お互いが相手を立ててるんですね。

コレはどちらの意見を重視するべき?

 

私が奥様に逆らうなんて有り得ませんが、かと

言って狐様の言うようにしないと奥様を下に

置くと言う形になりますよね?

 

簪姉様の立場も考えると、かなりややこしい

ことになるのでは?

 

「いや、さりげなく私を上にしないで下さいよ。

私より狐様が上です。と言うより奥様と狐様が

同格で良いじゃないですか。

別に権力争いだとか、跡目争いが有る訳じゃ

無いですからね」

 

おぉ!さすがは簪姉様っ!ご自分の立ち位置を

落としてでも狐様を立てるんですね!

 

その辺の権力目当ての女には出来ないことを

平然とやってのけましたよ!

 

そこに痺れる憧れるぅ!

 

「むぅ。いつまでたっても簪様は簪様ですねぇ。

貴女はもう少しご自身を評価して、きちんと欲を

持った方が良いと思いますよ?」

 

いや、簪姉様の欲は奥の序列とは別方向に

有りますからねぇ。

 

第一側室であり、ご主人様と夫婦であり、研究

とかも好きに出来る現状を死守する為ならば、

神様にも喧嘩を売るヒトだと思いますよ?

 

「と言うか、もしかして日本神話の方々が我々

と縁を切りたくないのって・・・」

 

狐様が原因ですか?何かこのヒトもご主人様

の為なら世界を敵に回しそうなヒトですし。

 

「白音ちゃんが想像した通りだよ。私たちと

しても日本神話群はともかく、狐様や補佐官様

との縁は繋いでおきたいからねぇ」

 

なるほど。魔王やら何やらが無礼な申し出を

してきても契約と言う形で日本に関わって

いるのは、サバトと補佐官様だけが原因では

無かったのですね。

 

「ありがたいお言葉ですねぇ。あ、忘れてました!

天照様より旦那様への感謝の品を預かってます

ので、後程旦那様と共に確認をお願いします!」

 

絶対に忘れちゃダメなこと忘れてませんかね?!

と言うか、感謝の品って言いました?

 

「感謝なんですか?クレームの書面ではなく?」

 

どう言うことですかね?

 

「いやいや、くれーむは魔王に対してですからね。

そもそも私は旦那様に対してくれーむを入れたり

しませんよ!そんなご無礼は出来ません!」

 

全身を使ってバッテンを作りましたね。

 

『私は』ってことは、ご主人様にクレームを

入れるのは別のヒトが担当で、感謝とかを伝える

ときに狐様が来るんですね。

 

けど、感謝って何に?

 

「白音様はまだ良くわかってないみたいですから、

今回はこの狐さんが説明して差し上げましょう!」

 

・・・お姉さん振りたい系のヒトなんですかね?

 

「白音」

 

あ!

 

「よ、宜しくお願いします!」

 

奥様の声がマジギレ手前でした!さっき簪姉様が

言ってたシツレイしたら奥様に殺られるって言う

のは大袈裟でも何でも無いんですね!

 

「えぇではご説明しましょう!とは言え話は

簡単なんですけど・・・『最近、日本で勝手

気ままにヤってる教会の連中や堕天使連中を

片付けてくれてありがとうございます』

って言うのと、地脈の修復と活性化に対する

感謝なんですよ」

 

「なるほど。確かにコカビエルの件は、日本神話

の方々からすればそう言うことですよね」

 

でもって地脈の修復と活性化は空さんですか。

 

あのヒトは普通に寝てるだけで大地が活性化

するらしいですからねぇ。

 

――――――――――――

 

(+.+)(-.-)(__)..zzZZ

 

――――――――――――

 

 

 

「そう言うことなんですよ!私たち日本神話は

見守ることは有っても干渉はしないのが基本

ですからね。

今回みたいに庭先で騒ぐ程度なら少しイラッ☆

とする位なんですけど、やっぱり面白くは無い

ですからねぇ」

 

まぁ、ハーデスが何しようが操られて暴発して

日本に来てますからねぇ。迷惑な話ですよ。

 

て言うか、狐様が来て奥様や簪姉様がお相手して

るのって・・・女子会ってヤツじゃないですか?

 

情報交換ってご主人様関連?!

 

ソレで日本神話群の方々が私たちに便宜を図って

くれるって言うなら良いかも知れませけど・・・

 

いや、普通ならご主人様の情報なんか極秘案件

だけど、相手が狐様でご主人様も許可してて、

奥様もなんか楽しそうだから問題無いですね!

 

 

―――――――――――――――――

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

やはり痕跡はねぇか。ヴァーリもアルビオンも

術式に詳しいわけじゃねぇし、魔法陣よりも

YOSHITUGUを気にしてたからな。

 

とりあえずコレ以上の現場検証は無意味だな。

あとは会談の場でどうにかするしかねぇ。

 

他に気になることと言えば、今回のシロネ・オセ

の言動だ。

 

何でもセラフォルーの妹にはコカビエルの狙いが

天界と悪魔の戦闘だと語っていたらしいが、実際

にソレを狙ってたのはハーデスやデミウルゴス

だと言うことは知っていたはず。

 

何故ソレを隠した?

 

まぁ下手に話してアイツらが情報漏洩した場合

周りに警戒されるし、デミウルゴスもコカビエル

の前に現れることは無かったかも知れんから判断

としては間違っては居ないんだがよ。

 

・・・実際セラフォルーのヤツはシロネ・オセと

妹の話の内容を俺達に暴露してるし。

 

オセもサーゼクス達に情報を渡さないのは

情報統制の問題だと言ってるらしい。

 

まぁ悪魔の連中はどこで旧魔王派と繋がってるか

わからねぇからな。

 

下手に話を聞かれて警戒されるわけには

いかなかったんだろう。

 

もしも今回ヤツが来なかったら例の魔法陣や

術式を試すことが出来なかったからな。

 

その結果、術式がデミウルゴスに通用するか

どうかの確約がとれなくなる。

 

オセとしては何としても今のうちに試して

おきたかったってのも有るんだろうよ。

 

だが、ソレなら最初っからコカビエルが死ぬ

ことは決まってたよな?

ソレなのに何故俺達からの依頼を受けたんだ?

 

・・・元々自滅術式を使って死んだ場合、奴ら

が殺した訳じゃねぇから契約不履行とはならん

はずだよな?

 

つまり【いざと言うとき、コカビエルが認めた

場合に限りコカビエルごと殺すことを認める】

なんて契約に変更する必要は無かったんだ。

 

わざわざ【コカビエルを殺さないように】と

言う契約を交わしておきながら・・・更に

報酬は断ってきたよな?つまり堕天使幹部を

殺して、更に俺から報酬を受け取るといった

真似をしたわけでもねぇ。

 

何故こんな回りくどいことをしたんだ? 

 

オセが何かを隠してることは確定だが、ソレ

が何かわからねぇ。

かといって探りを入れるには時期と相手が

悪すぎる。

 

下手に接触してヤロウに戦争の口実を与える

わけにも行かねぇしな。

 

とりあえずは和平だ。ソレが成らないことには

にっちもさっちも行かねぇよ。

 

コカビエル・・・お前が命を懸けて稼いで

くれた時間を無駄にしてすまんっ!

 

だが、必ずデミウルゴスのヤロウには一矢

報いてみせるぞっ!

 

――――――――――――――――――

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『は?赤龍帝に聖剣を?正気ですか?』

 

ソレが普通のリアクションだよな。だが俺は

狂ったわけでもなければ、何の意味もなく

こんな提案をしている訳じゃない。  

 

「あぁ。コレは天界にとっても悪い取引では

ないと思うぞ」

 

術式や詠唱、魔法陣など調べることは多々有る

が、とりあえずは出来ることから進めていこうか。

 

他はともかく、アザゼルやカンザシ・オセに

三流技術者扱いされるのは我慢出来んからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふぅ~ん。主人公君の強化フラグってヤツ?

はてさて、主はどうするんだろぉねぇ~?』

 




狐様の力で日本神話群が便宜を図ると言っても、
秋葉原だの日光だの恐山だのと言った観光の
許可だったり、地脈の力を使う許可だったりと
言った感じですね。

ちなみに
空さん≧オセ君>神野サン・・・・・・八等
奥様>簪姉様(神器有り)・・・・・・・・六等
簪姉様(無手)>狐様・・・・・・・・・・五等
ょぅι"ょ>黒歌姉さま≧シロネコ・・・・四等
YOSHITUGU・・・・・・・・・・・・・三等

最大で八等で、それぞれの等級が
作者的に設定した越えられない壁です。

狐様はサポート主体なので直接戦闘だと
簪姉様に負けますが、組織が有りますからねぇ。

鬼の補佐官様は当然八等。

サーゼクスとアジュカが五等で。
アザゼルやセラフォルー・ファルビーが四等。

空さんを眷属に出来たのは・・・後日かなぁ。

大雑把な力関係はこんな感じってお話。



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36話

感想でも書きましたが、基本的に作者的な時間の流れ(正史)は恋姫→成層圏です。

成層圏では恋姫時空にも元々有った女尊男卑が
世界規模で残っており、天災兎のアレで
マッハで加速したからあそこまで異常な社会に
なったと言った感じです。

ダンジョンは未来とか過去とかそう言う
世界では無いので、時間軸を考えてもアレですからね。

ちなみにオリキャラたちは座のような場所に登録
されていて、世界線の違いからオセ君や弟子には

恋姫→ダンジョン(異世界)→HSDD(異世界)
恋姫→成層圏→HSDD(異世界)

と言う二つの流れがあり、オセ君と弟子は両方
の知識を共有。狐殿は上でかんちゃんは下の
記憶を保持してます。

オセ君と弟子からすればダンジョンと成層圏は
両方とも恋姫の後の記憶であり、どちらが先と
言うモノが無いんです。

曖昧なところは魔法の言葉、オリ設定!で
オナシャス!

そんなわけで前半天使と悪魔の話し合い
後半ほのぼの。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

『聖剣を悪魔に貸し出すことの利点ですか?

私には思いつきませんが・・・』

 

それはそうだろうな。この情報は悪魔にとって

死活問題となるが、俺としても老害連中の駒の

使用法に文句が無いわけではない。

 

そもそも戦争の助長をしたいわけではないしな。

 

故に情報を明かすことを誠意として、和平への

援護射撃をしようじゃないか。

 

「まず大前提の話だ。悪魔の駒によって悪魔

となった者が殺された場合、その駒は主人の

下に戻るように設定されている」

 

『・・・ほう』

 

通信越しでも眉を顰めているのがわかるな。

それはそうだろう。

 

つまり教会のエクソシストや天使がいくら

転生悪魔を殺しても、悪魔はその総数を

減らすことが無いということだからな。

 

さらに言えば、はぐれ悪魔についてだ。

 

どんな事情が有れども、アレらは悪魔に

対して不満を抱いている存在だ。

 

それを殺してしまえば、悪魔に敵対するモノを

減らすだけでなくその駒が元の主の手元に戻る

ことになる。

 

つまりは悪魔の為にはぐれ悪魔を狩っていたと

言っても過言ではないのだからな。

 

『その情報だけでも憤慨に値しますが・・・まぁ

悪魔とは休戦中とはいえ敵対していますからね。

敵が策を巡らせるのは当然の事と受け止めましょう』

 

本心はどう思ってるか知らんが、今のミカエル

の立場ならそう言うしかないだろうな。

 

「そこで聖剣だ。先日駒王町で堕天使に与した

と言われるエクソシスト、フリード・セルゼンが

聖剣で眷属悪魔を殺した際、悪魔の駒が消滅した

との報告があった」

 

この情報が有れば教会もしばらくは本格的な

攻勢を控えるだろう?

 

『なるほど・・・その情報が本当ならば、主戦派

のエクソシスト達に「ただ悪魔を殺すだけでは

無意味。駒ごと消滅させることが必要だ」と

言って、研究をするための休戦期間を設けること

が可能になりますね』

 

そう。いきなり和平などしても現場で主戦派と

穏健派が争うだけだからな。

 

悪魔や堕天使にしてみれば同じ教会戦力だし、

もし和平後にエクソシストに殺されれれば

ソレが原因となって戦争が再開される事になる。

 

一度くっつきかけた信頼関係が壊れれば修復は不可能となる。

 

ならばまずは正式な休戦と言う期間を設け、

現場の主戦派を抑える名目が必要不可欠。

 

教会ははぐれ悪魔を殺しても無意味どころか

我々に利することになるとわかれば、その

処遇を討伐から捕獲に変えるだろう。

 

悪魔は眷属が駒ごと消滅することを忌避して

地上への進出に消極的になる。

 

そもそも我々は地上に出なくとも、冥界の

土地の開発をすれば良いだけだからな。

 

内政という地味な行為を嫌う連中が多く、

各々が好き勝手にしてるからアレなだけで

やるべきことはいくらでもあるんだ。

 

・・・それをしっかりと指導して行くのが

本来の魔王の仕事なんだろうが、俺たちは

どこまで行っても傀儡。

 

国家運営のノウハウも無い者が、下手に政治に

干渉すればどうなるかわからなかった。と言い訳

して、それぞれの専門に逃げたと言っても良い。

 

専門と言ってもファルビウムは種族間の戦争の

ような大規模な軍事行動が無ければ、その力を

使うことはないし、俺に至っては三流技術者と

鼻で笑われるレベルだが・・・

 

「そうだな。そちらも俺が言ったことを鵜呑み

にはできまい。だが研究するに足る命題で有る

ことは理解できるだろう?」

 

嘘か本当かを調べる必要が有るよな?

向こうは悪魔の駒の帰還から調べる

必要があるが、俺たちの場合は聖剣で

転生悪魔を殺せばいい。

 

はぐれ悪魔を討伐させて駒の移動を確認

すればそれで終わりだ。

 

『確かにそうです。しかしそれと赤龍帝に

どのような関係が?』

 

やはり警戒するか。それが普通なんだよな。

何せオセにしてみたら対処済みの力だが、

俺やアザゼルも未解明の神滅具。

 

その持ち主が悪魔になって、さらにそれを

強化させる理由は思い当たらんだろうよ。

 

・・・普通ならな。

 

「フリード・セルゼンが使った聖剣は例の

エクスカリバーらしいからな。普通の聖剣

とは格が違うだろう?」

 

さすがにソレを実験の為に貸せとも言えん。

 

しかし普通の聖剣と言うのも何と言うか

違和感があるな。

いや、まぁエクスカリバーと比べれば他の

聖剣は普通扱いになるんだろうが。

 

『ソレはそうです。あぁ、そう言うことですか』

 

ミカエルも気付いたな?

 

「そう、赤龍帝の力で増幅させることで

格の不足分を補うと言う話だ。

ヤツは左手を龍化させることで十字架や

聖水すら増幅させて持つことが出来る

からな。聖剣も多少手を加えれば不可能

ではないだろう」

 

後は剣術の問題だが、止めを刺すだけでも

結果は出るけらな。実験には十分だ。

 

『なるほど。それはわかりました。流石に

悪魔の貴方では聖剣の微調整は無理でしょう

から、私に調整した聖剣を用意しろと言う

ことですね?』

 

その通り。痛みやら何やらには耐える

ことが出来ても、改良と言えるような

細かい調整は出来ん。

 

「そう言うことだ。その調整に先立ち、

こちらで用意した赤龍帝のデータを渡そう。

互いに得が有り、更にはそちらには必要な

ことだと思うがどうだ?」

 

現在の赤龍帝のデータがあっても何が

出来るわけでもないしな。

オセがソレ以上進んだモノを持っている

以上、後生大事に抱える気もない。

 

『ふむ。確かに異論はありませんが・・・』

 

何やら不満げだな?

 

「何かあるのか?」

 

さて、俺が思い浮かばん問題があっただろうか?

 

『コチラが貰い過ぎのような気がしまして。

赤龍帝のデータも、悪魔の駒の情報も、本来

なら秘匿情報でしょう?怪しむなという方が

無理があると思いませんか?』

 

あぁ、信用の問題か。ソレはそうだな。

 

「ミカエルにはわからんかもしれんがな。

悪魔の駒は俺が造ったモノだ。欠点が

あると言うなら確かめねばならん。

その結果として其方に悪魔の駒の対処法が

流れたとしても、それはそれで戦争の抑止

に成りうるモノだと思っている」

 

他の神話勢力から見ても悪魔の駒は厄介者だ。

 

それで『対処のしようがないから滅ぼす』と

言った方向に舵を切られては堪らんからな。

 

『技術者として、ですか。正直言えば良く

わからないというのが本音ですが、ソコ

の部分で嘘はつかないのが貴方やアザゼル

と言った存在ですから、その部分は信用

出来ると判断しても良さそうですね』

 

まぁ、コレを完全に理解できるのは同じ

技術畑の者だけだからな。

 

それに対処法が有れば教会や教会に味方

している他の神話勢力の連中もソチラを

研究するだろうし、その間の時間は稼げる。

 

稼いだ時間で法規制やら老害の排除などを

していけば、駒に頼らぬ社会の土台も夢では

なくなるだろう。

 

後は相互理解の問題だ。それこそ政治に

なるが、サーゼクスがどう動くか。

 

むしろオセに全権を任せたほうが話は早い

のだろうが、ヤツは戦争推進派だからな。

 

全権を与えればそのまま開戦しそうで怖い。

 

そうそう、ヤツと言えば赤龍帝のデータを

渡すことに対しての返答がまだだったな。

 

わざわざ言う必要は無いと思うが一応伝えておこうか。

 

「赤龍帝のデータに関してはアレだよ。

そちらでも知っているだろう?」

 

関係者ならこれで通じるだろ?

 

『・・・あぁ、御夫妻が居ましたね』

 

そう。赤龍帝が何かやらかした場合、

あいつらが普通に狩るからな。

 

能力に対する対処も出来てるし、堕天使の持つ

神器を抜き取る技術も研究していると言うこと

だから、今回何かやらかしたらそのまま封印

されたりするんじゃないか?

 

『ふむ。かの御夫妻なら同じ悪魔だからと

いって手心を加える心配もありませんね』

 

確かにその心配は皆無だな。

と言うかこの信用の高さよ。

天使に此処まで信用される悪魔ってどうなんだ?

 

いや、今回はソレがプラスに働くから良いんだが。

 

「そうだな。むしろ悪魔の面汚しとして積極的に狩るだろうさ」

 

あの二天龍に対する殺意の高さは何なのか・・・

 

『なるほど、きちんと抑止出来るなら多少

赤龍帝に力を与えたところで問題は無いと

言う事ですね。わかりました、その件に

関しては他の熾天使とも協議しますが恐らく

問題はないでしょう。

アザゼルが唱える和平に関しても、条件付き

休戦と言う形にすれば没交渉にはならないと思われます』

 

条件付き、か。ま、そちらはセラフォルーと

サーゼクスの仕事だからな。

 

援護はしても口は挟まんさ。

 

「問題はハーデスを始めとした他の神話勢力

の連中だ。教会の人間に助力した者の情報

はあるのか?」

 

和平を邪魔するなら絶対に手を出してくる

と思うんだが・・・

 

『サーゼクスやアザゼルからも連絡を受けて

調査してはいますが、現在は何者かの関与が

有ったということしかわかりませんね。

どうしても影で動くことになりますから、

急な進展は望めないでしょう』

 

それはそうか。反三大勢力連合と言うことは

旧魔王派が加わることが無いと言うのが唯一

の救いだった。

 

なにせエクソシストにしてみれば悪魔は殲滅

すべき対象で、ソレと休戦しようとする

天使はすべて神の意思に反する堕天使。

 

反三大勢力連合と言っても、自分たちが天使

の意思に背いているとは思ってはいないから

こその今回の暴挙だ。

 

その辺を上手く突くことが出来る者による

犯行だろうが、ハーデスとは別口だろう。

 

いや、別口というよりは役割分担か?

 

冥府にいて堕天使と接触しやすいハーデスと、

地上担当の何者かが居ると考えて問題は

ないだろう。

 

心当たりが多過ぎるが……神野明影とやらが

動き出すまでに、和平とまでは行かなくとも

その道筋は作っておきたいところだ。

 

それはアザゼルもサーゼクスも同じ気持ち

だろうが、持ってる情報の差がな。

 

「ちなみにミカエルは神野明影と言うヤツに

心当たりは無いんだな?」

 

コカビエルの知り合いではあったが・・・

 

『えぇ。そのようなモノに心当たりは

ありませんね。

そもそも偽名のようですし、名前だけでは

こちらもどうしようもありませんよ』

 

だろうな。声だっていくらでも変えられるし

アザゼルも細かい情報を明かそうとはしない。

 

こっちの情報の隠蔽に関する不信やサーゼクス

とセラフォルーの情報統制が甘いのが原因と言われてはなぁ。

 

和平のためとは言え何でもかんでも喋って

たら、逆に信用も無くすだろうに。

 

さらにリアスが勝手に行った現場の修復も

悪魔陣営の証拠隠滅と誤解されてるし。

 

そりゃグレモリー家とシトリー家の力を使って

即座に現場を荒らしたらそう思うよな。

 

勝手な判断を繰り返してコチラの足を引っ張り続ける無能が。

 

サーゼクスの妹でなければさっさと消して

しまえるのに。

 

いや、サーゼクスの妹だからこそ調子に乗って

るんだろう。

何故ヤツにグレモリー家の権力を使わせて

いるんだ?

さっさと廃嫡してミリキャスをグレモリー家の

次期当主にすれば良いものを。

 

そうすればアレもグレモリー家の者じゃなく

タダの小娘として見てもらえるだろうに。

 

『アジュカ?』

 

おっと、いかんいかん。まだ通信中だったな。

 

「神野明影に関してはこちらでも調べたが、

日本の文献に神野悪五郎日陰という名の妖怪?

が居ると言うことはわかっている。

どうやらこの名前から取ってるらしいな」

 

だからなんだと言う話だがナニカのヒント

になれば良い程度の情報だ。

 

『妖怪・・・一介の妖怪にコカビエルを圧倒

出来るほどの力が有るとは考えづらいですね』

 

その通り。やはりその名を借りたナニカなの

だろうが・・・名には力がある。

 

ソレを考えれば全くの無関係であるとは思えん。

 

つくづくオセからの信用がないのが痛いな。

 

それもこれも日頃の行いと言われればソレまでだが。

 

とりあえずは一歩一歩だ。まずは和平。

 

そして悪魔の駒だ。俺が造ったモノに欠点が

あるならソレに目を向けず、耳を塞いでも

しょうがない。

 

向こうも研究するだろうが、コチラも対処を

取らせてもらうぞ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーオセ視点ーー

 

「赤龍帝に聖剣を与える、ねぇ?」

 

だからなんだと言う話だが・・・いや、今後

レーティングゲームに参加するならば聖剣が

有ると言うのは大きなアドバンテージだよな。

 

禁止と言っても咄嗟に出る場合もあるし、

何より魔王の妹の眷属だ。

 

『実戦で奇襲に対応できないのが悪い』とか

言って擁護してくる連中も出てくるかもな。

 

手加減が出来るような技量じゃないから、

対戦相手が死ぬ可能性も出てくるか。

 

・・・ならば死なないように鍛えて殺る

のが師としての努めよな。

 

『おねーさーん!また死んじゃったよー』

 

「「しんじゃったー」」

 

まったく。連中は何時まで即死してるんだか・・・

 

「オウ。さっさとオキロ」

 

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

ふむ。これなら会合までにはギリギリ

最上級悪魔ってところか?

 

なんか普通の上級悪魔のヤツより厳しめだなぁ

とは思ってたんだが・・・いやはやまさか、

シロネコからの稟議を見た弟子がコイツらを

上級ではなく最上級悪魔育成カリキュラムに

突っ込んだとは思ってなかった。

 

見抜けなかった・・・このオセの目をもって

してもっ!!

 

まぁ興味がなかったってのも有るが。

 

間違いがあったら訂正してやれと言ったが、

アイツは普通に勘違いしたんだろうなぁ。

 

公爵家の令嬢と眷属がこんなに雑魚なはずがない

 

と言ったところか?普通ならそうだよなぁ。

普通じゃないから阿呆なんだが。

 

でもってYOSHITUGUもなぁ。

 

「自称弟子。寝てる暇が有ったらすぐに立て。

1対1でコカビエルに勝てないのはまだしも、

あの技の粗さと弱点を抱えたヤツを殺しきれ

ないその未熟さが許せん」

 

確かにアレはな。神野の乱入は有ったが、

その前に片付けることは出来ただろうし。

 

コイツにはコカビエルを殺すなとか言って

ないし、むしろ『全力で当たれ』と指示を出した

にも関わらずあの結果だから、そりゃ許せんさ。

 

強敵との戦いからタダの処刑に変わったことで

思考を仕事と切り替えたのはわかるが、明らか

に殺る気が変わったもんな。

 

アレはいかん。

 

「う、うぉぉぉぉぉ・・・?!」

 

「・・・叫んでる暇が有ったら動け」

 

そんでもって叫ぶ癖な。あの時の技名だの

何だのは、目立つためとミスリードを誘う

為のモノだからまだしも、今ココで叫ぶ

必要は無いだろうに。

 

魂を鍛える場所で、気合がモノを言う世界

だからソレはソレでシカタナイのかもしれんが、

弟子として鍛えるなら矯正していかないとなぁ。

 

しかしやはり世界は原作主人公君に有利になる

ように動くか。

こうなると管理者はカタチ有るモノではなく

概念的なモノになるのか?

 

もしそうなら確認のために一度全てを破壊するつもりで動く必要があるが・・・

 

「オセさん。あの連中に対して不穏な

気持ちを抱くのはわかりますが、日本で

面倒事を起こすのは止めてくださいね」

 

「アッハイ」

 

ばれてーら。

 

いや、もうコノ鬼ぃさんが管理者で良いんじゃね?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

「おおっ!女の子!しかも外国の!」

 

素晴らしい!アーシアに続いて金髪美少女か!

これほど歓喜することもない!

 

「見た目女の子だけど、この子は紛れもなく男の子よ」

 

・・・え?俺は一瞬我が耳を疑った。

明らかに理解できない言語が耳に入ってきた。

 

「女装趣味があるのですよ」

 

信じられない!と首を振る俺の横から

朱乃さんが平然と言ってくる。

 

「こんな残酷な話が有っていいものか!

似合ってる分余計に真実を知った時の衝撃が

デカいんだよ!つーか引きこもりの癖に女装

ってなんだよ!誰に見せる為の女装ですか!」

 

もうわけがわからないよ!

 

「だ、だ、だって。女の子の格好の方がかわいいもん」

 

このヤロウ!チ○コ付いてる癖に!

 

「『かわいいもん』とか言うなぁぁぁぁ!」

 

俺の夢を返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・俺の二人目の後輩は女装男子でした。

 

 

 




とにかく和平の前にするべきことをしなさい
って感じですね。

トップが「おーい。和平しよーぜー!」
と言って出来るモノではありません。

特に教会は散々洗脳教育やら実験をしてた
手前現場を止める為の努力が必要不可欠です。

拙作の天使は「悪魔の弱点を研究する為の
時間稼ぎ」という形で休戦させる予定ですね。

堕天使?(ΦωΦ)フフフ…

オセ君は超えられない壁(鬼ぃさん)に遭遇して
人生を楽しんでいるもよう。

性犯罪者?うん。頑張れば?ってお話


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37話

前半女子会という名の物騒なお話。

中盤~性犯罪者たちの宴

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

「それで、今回駒王町で行われる三大勢力の

会合については旦那様は不参加なのです」

 

情報交換が行われてますが、狐様はニコニコ

笑って尻尾を振ってるだけなんですよねぇ。

 

この狐様はアレですね。もうご主人様関連の

話題ならなんでも嬉しいのでしょう。

 

「ほむぅ~。日本神話群としては現在の天使や

悪魔、堕天使の自称三大勢力さんたちには

代表者が居ないと言う認識なんですけど、実際

手を組んだら組織的にはどうなるんです?」

 

代表者不在だからこそ、ご主人様を代表として

扱ってるんですよね?

もし誰かが代表になったら、そいつが日本神話群

を始めとした各神話勢力との折衝をすることに

なるんでしょうけど・・・悪魔にはそんなこと

出来る人員はいませんし、まさか厨二病の変態(アザゼル)

ソレをやれるはずがありません。

 

実力と格を考えればメタトロン辺りですかね?

 

「まだそこまでの話にはなってませんね。

とりあえずは今の自然休戦ではなく、

しっかりとした形での休戦協定の成立を

目指してるようですよ?」

 

何をするにしてもまずはソコからですよね。

 

アザゼルやミカエルは他勢力の神級の力を持つ

サーゼクスやアジュカを個の力として看板に掲げたい。

サーゼクスはとにかく戦争止めて内政に専念したい。

 

ついでに堕天使の技術や天界のシステムに関して

の共有などを考えてるのでしょうが、そんなの

他の神話勢力が認めるはず無いですよねぇ。

 

何たって前科がありますし、現在進行形で神器

だの悪魔の駒だので迷惑かけてるんですから。

 

「なるほど~。とりあえず悪魔の中でも旦那様

や旧魔王?の方々が居ますからねぇ。

その辺の意見をまとめないと混乱が大きくなる

だけですけど、其の辺は?」

 

この辺は・・・

 

「無論、サーゼクスは気付いてませんよ。

今の段階で魔王連中は、禍の団と呼ばれる

連中を反三大勢力連合としか思ってません。

故に旧魔王派がソレに加わるなど考えもして

いないでしょう」

 

あ、普通に言って良いんですね?

てっきり機密情報かと思っていましたが、

狐様が旦那様が不利になるような情報を

漏洩することは無いと言う信用ですね。

 

だけど、普通に考えればそうですよねぇ。

 

反三大勢力と言うなら旧魔王派なんか

真っ先に殲滅対象ですし、そんなのが

いたらどうやっても統制は取れません。

 

ハーデスやら帝釈天は最終的に禍の団も

切り捨てるつもりですから、我々が混乱

すればする程良いと言った感じで特に

テコ入れは考えてないようですけどね。

 

まぁ神野サンが暗躍していることを知ってる

厨二病の変態(アザゼル)はその辺も知ってますが、

今の段階で旧魔王派がソレに参加してると

言う確たる証拠はありません。

 

ソレを言ってしまえばサーゼクスは必ず

旧魔王派の連中に確認を取りますし、

その結果悪魔陣営が大混乱して和平どころじゃ

無くなりますからね。

 

何が何でも和平を結ぶと言うのが堕天使の

スタンスですから、そういうのを嫌ったので

しょう。内乱は和平の後にしろって感じで

しょうか?

 

ソレはソレで問題だと思いますが、

結局は厨二病の変態(アザゼル)も堕天使の総督。

堕天使の利益を第一にしないといけません。

 

最初は聖書陣営の為って感じだったみたい

ですけど、そういうのをとっぱらって生存と

仇討ちに舵を切りましたよ。

 

やっぱり聖書陣営にとって神野サンの名前は

スゴク・大きいってことですよねぇ。

 

「流石は旦那様に正妻様です!今更連中に

和平なんか結ばれても誰も得しませんからね!

堕天使だろうが天使だろうがさっさと滅べば

良いのです。

そうなれば聖書陣営は悪魔だけになって、旦那様

ともっとお会いできますよ!」

 

いや、えっと・・・そうなんですか?

 

「とはいえ狐様。ご当主様は堕天使も

天使も滅ぼす気はないみたいですよ?」

 

そうなんですよねぇ。簪姉様の言う通り

【悪魔が悪魔らしく在る為】には天使も

堕天使も必要不可欠なんだとか?

 

まぁソレが居なくなったら悪魔は土着の

神様になっちゃいますからねぇ。

 

ソレはソレで良いような気もしますが、そも

そもご主人様は冥界の王になりたいわけでも

無ければ世界制覇したいわけでも無いんです。

 

ヤりたいことをヤリたいようにヤるためには

力が必要で、その為に鍛えてるだけだし。

 

その結果、何故か周囲から悪魔らしい悪魔って

言われ、さらに貴族らしい貴族なんて言われる

ことになるんですから、ご主人様は根っからの

悪魔で貴族なんですね!

 

「あぅ!そうでした!旦那様がそのように

お考えでしたら、私如きがどうこう言っては

いけませんね!

正妻様にもお耳汚しをしてしまいました!」

 

あ~なんか目がバッテンになってますよ。

本当に奥様とご主人様が好きなんですねぇ。

 

「いえ、狐殿の気持ちもわかります。私とて

あの連中が旦那様と同じ種族だなどと認める

のも相当苦労してますからね」

 

ソレは良くわかります。

 

そもそも悪魔って多種多様ですから、何を

持って悪魔って括るのかがわからないん

ですよね?

 

魔力を持ってれば悪魔と言うなら、魔力を

持たない純血悪魔は悪魔じゃないって話に

なりますし。

 

タダの冥界に住む動物として処分したいと

言うのはわかりますよ。

 

無能とか性犯罪者とか半分堕天使とか元聖女

とか、人狼は・・・ある意味被害者だからアレ

だけど。

 

あ、そういえば女装趣味の変態も居ました。

 

神野サンが何やら仕込みをしたらしいです

けど、会談でアレが何をしようと魔王やら

熾天使には効果が無いと思うんですがねぇ。

 

一体ナニをするつもりなのやら・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

ん?何やってんだアイツ等?

 

校庭の痕跡の解析は諦めて、とりあえず

この前ヴァーリが接触した赤龍帝の様子を

見に来たんだが・・・いや、何やってんだ?

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!」

 

金髪が赤龍帝の動きを止めて、止まったヤツ

に対して頭を下げてるな。

 

もしかしてアレは変則的な「だるまさんが転んだ」じゃなく『停止世界の邪眼』か?

 

でもって制御訓練かナニカをしてる?

 

いや、神器の制御をこんなお遊びでどうにか

出来ると思ってんのか?と説教するべきか、

それとも悪魔の神器訓練なんざこんな白昼堂々

と校庭でヤルようなモンじゃねぇだろう?って

説教すべきか・・・。

 

サーゼクスやらセラフォルーもザルだが、

悪魔にとって情報の秘匿はどうなってんだ?

 

まぁいいや(本家)

 

とりあえずは赤龍帝との接触が出来るし

少しでも波長を記録しとかんとな。

 

白龍皇はまだしもコッチは貴重だ。

データを取るなら今のうちだよな。

 

「へぇ。魔王の妹さんの眷属諸君はこんな

ところで集まってお遊戯してるのか?」

 

さてさて、どんなリアクションが待ってるやら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・アザゼルっ!」

 

いきなり声をかけられたからそちらへ視線を

向けたとき、俺は驚きのあまり言葉を失った。

 

「よぉ。赤龍帝。あの夜以来だ」

 

堕天使総督のアザゼルがなんで学校に来てるんだ?!

 

俺の剣呑な雰囲気を察してかアーシアは俺の

影に隠れ、ギャスパーは・・・茂みに隠れて

震えてやがる。

 

だが相手は堕天使の総督だ。新米の悪魔として

はアレが正しいリアクションなんだろう。

 

「こんなとこで殺る気はねーよ。散歩してたら

ケッタイなことしてるから見に来ただけだ。

堕天使総督の俺がわざわざ悪魔の管理地で

下級悪魔君を虐めてもしょうがないだろう?」

 

そう言って手を振りながら近付くアザゼル。

 

堕天使の総督ってことはコカビエルよりも

強いんだろう。

前はヨシツグが来てくれたから俺たちは

誰一人死なずに済んだけど・・・本来なら

指先一つで殺されるような実力差が有る。

 

せめて赤龍帝の鎧を展開しなければ話に

ならないだろう。

 

だからこそ言ってることはわかるしナニカ

仕掛けてくるとかそう言う感じじゃないけど・・・

 

「で、そこに隠れてる吸血鬼」

 

名指しで呼ばれてビクッとするギャスパー。

気持ちはわかる!スゴクわかる!

けどよぉ!まだ会ったばっかだけど、コイツは

部長にお世話を頼まれた俺の後輩だ!

例え堕天使の総督だって変な真似はさせねぇぞ!

 

「おいおい、俺との実力差くらいわかるだろ?

コカビエルどころかケルベロスに苦戦したお前

さんが俺に勝てるわけねーだろうが」

 

ぐっ!その通りだがよぉ!

 

「とりあえず話を進めるか。お前さんは

『停止世界の邪眼』の持ち主なんだろう?

そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。

補助具か何かで補助すればそれなりに制御

できるとは思うが・・・まぁアレだ。

現時点でお前らが出来る神器制御の上達に一番

てっとり早い方法は赤龍帝の血を飲むことだ。

吸血鬼には血でも飲ませておけば力がつく。

後は自分たちでやってみろ」

 

そう言って背を向けるアザゼル。

 

え?コイツ、本当に俺たちの特訓を見て

興味が出たから来たって言うのか?

 

いや、確かにサーゼクス様もコイツは神器

に関して色々知ってるって話はしてたし、

堕天使が神器を集めてたのはレイナーレも

言ってたから、嘘じゃないんだろうけど・・・

 

そう思ってたら背を向けて歩き出そうと

していたアザゼルがコチラを振り返った。

 

今度はギャスパーじゃなく俺に何か用か?

 

「ウチの白龍皇・・・ヴァーリが勝手に接触して

悪かったな。いきなりで驚いたろう?」

 

ん?まぁ確かに驚いたけど、こいつと白龍皇って

何か関係あるのか?

 

「あいつも色々あってな。今すぐ赤龍帝と

白龍皇の宿命の対決の再開とはならねぇだろう」

 

あの様子だとそうだよな。だがアザゼルが

こうして会話をしてくると言うなら俺にも

聞きたいことがあるんだ

 

「・・・一つ聞きたい」

 

「お?なんだ?詫びがてら聞いてやるよ」

 

軽いな!だけど堕天使の総督からしたら

俺なんかその程度なんだろうけど・・・

いや、今はまず質問だ。

 

「前にアイツと話した時にアイツが言ってた

んだけど、魔王様より強い悪魔がいるって

言うのは本当なのか?」

 

ドライグも認めてたけど、部長は知らないって

言ってたし。

 

もしかして今の悪魔社会のヒトじゃなく、

過去の魔王様とかそう言うヒトじゃないか

って話だったよな?実際どうなんだ?

 

「あぁん?なんでお前さんが知らねぇのか

逆に不思議なんだが・・・」

 

この言い方だと、まさか本当に居るのか?

 

「しょうがないだろ!こちとら最近悪魔に

なったばっかりで悪魔社会に詳しくないんだよ!」

 

部長以外の伝手は生徒会長達しか居ないし、

最近は人が変わったように授業受けて業務

をこなしてるから、中々接点が無いって

部長も言ってたし!情報が少ないんだ!

 

「いや、期間が短いからって言うのはタダの

言い訳だぞ?例えお前さんが新米だろうが

なんだろうが相手には関係ない。

知らずに魔王に喧嘩売って「知りませんでした

許してください」ってのが通用するほど甘い

世界じゃねぇのは知ってるだろ?」

 

・・・それはそうだ。偉い人を知らないのが

悪いんであって、知らないから許せって言う

のは通じないよな。

 

「まぁいい。そもそもお前らグレモリーは

アイツ等と断交してるんだろ?そのせいで

お前の主も教えたくないのかもしれんし」

 

断交?部長の家と?つまり仲が悪いってことか?

 

『何だと?!』

 

おわっ!い、いきなり声出すんじゃねーよ!

 

「ん?あぁ。お前さんがこうして平気な顔して

外を出歩いてることに違和感は感じていたが、

まさかドライグも知らなかったってことか?

……いや、確かにこれまで蓄えた知識は

ともかくとしても最新の情報は宿主に依存する

からな。知らないのも無理はない、か?」

 

ど、どういうことだ?!

 

『あ、相棒!今すぐ家に帰れ!事実確認と

安全が確保できるまで絶対に外に出るなッ!』

 

え?は?外に出るなってそんな・・・

 

「ま、そうだよな?何せ赤龍帝ってだけで、

いきなり現れて「こんにちは。死ね」って

言って殺される可能性もあるんだ。

そりゃ家で大人しくするのが普通だよ。

実際ウチの白龍皇も会談までは極力外を

出歩かないようにしているし、オーラを

出すような真似もしないように休眠状態に

なってるからな」

 

こ、この前会った時白龍皇が無言だったのは

ソレか?!って言うか「こんにちは。死ね」

とかどういう冗談だ?!

 

『冗談ではない!いや奴らは「こんにちは」

も「死ね」も言わんからそこが冗談と言える

かもしれんが・・・洒落にならんぞ!』

 

こ、こんなに慌ててるドライグは初めて見た。

一体なんだってんだ?

 

「そもそも連中は駒王町の前任の管理者で、

今だって最近までお前らのフォローしてた

んだろうに。それを知らねぇって、いくら

なんでも不義理が過ぎねぇか?」

 

ぜ、前任の管理者?そういえば部長や会長が

管理者をしてるのは、こっちに留学して来て

からだから3年前からってことだよな?

 

その前から管理してた人が居て、引き継ぎ

って感じでフォローしてたのか?

 

『ふ、不義理・・・無礼・・・不敬?!』

 

ド、ドライグ?

 

「あ~すまん。どうやら俺が思ってた以上

にお前らはヤバイらしい。

とりあえずアイツらに敵認定されて殺されたく

ねーから俺はこの辺で帰るわ」

 

「はぁ?」

 

ドライグが此処まで慌てて、堕天使総督が

さっさと退散するほど怖いヒトなのかよ?!

 

「それ以前に、そもそも今は休戦みたいな形で

コッチに滞在してるんだろ?!サーゼクス様

の許可も有るってのにアンタを敵視して殺す

なんて真似するハズないだろ?!」

 

そんなことしたら戦争だろ?どういうことだ?

 

『相棒、俺が知ってる限りではヤツらは

戦争肯定派・・・というか推進派だ』

 

「はぁ?」

 

認めるどころか推進してんのかよ!

 

「そーゆーこった。俺を殺したら間違いなく

堕天使と悪魔の戦争だ。

口実としては・・・俺が自分が敵とみなした

グレモリーと仲良くしたからとか、そもそも

堕天使との和平を認めないって感じだろう」

 

いや、それって戦争したいだけだよな!

そんな悪魔が居るのかよ?!

 

『むしろ堕天使や天使と和平を考える悪魔

の方が珍しいのだ。

相棒だって人間の時に隣に人間を殺すことを

仕事にしてるような種族がいたら、そいつと

仲良くしようと思うか?』

 

そりゃ・・・その人によると言いたいところ

だけど、普通は無理だよな。

 

「そーゆーこった。本来悪魔と堕天使は

有史以前からの天敵同士。お互いを認識

したら殺し合うのが普通なのさ」

 

そ、そんなサツバツとした関係だったのか。

いや、確かに部長はレイナーレをあっさり

殺したし、コカビエルもサーゼクス様や

レヴィアタン様と戦争しようとしてたけどよ!

 

「ってなわけで俺は帰る。ヤツに関しての

情報漏洩は御法度だし、ここは元々ヤツの庭。

どんな罠が仕掛けられてるかわからねぇんだ。

細けぇことが聞きたいなら主にでも聞けや」

 

ど、どんだけ危険なんだよ。

 

しかもその人はアザゼルを殺せるんだろ?

ドライグも一切否定しないってことは

そう言うことだよな?

 

でもって駒王町に滞在してんのか?!

 

『早く、早く逃げろぉ!吸血鬼やそこの僧侶が

気になるなら連れて逃げろ!

部室より自宅だ!両親が居る自宅なら大丈夫だ!

おそらく、きっと、たぶん。大丈夫だよな?』

 

知らねーよ!

 

あっ!いつの間にかアザゼルも居なくなってる!

本気で逃げたのか?!

 

よ、良くわからねぇけど、俺も逃げないと

やばいんだよな?!あ、だけど部長になんて

言ったら・・・

 

「どう?練習は捗ってるかしら?」

 

おぅ!ココで部長がっ・・・だけどまさか

怖いから逃げますなんて言えないし、さっき

聞いた俺の血の話もしておいた方が良いよな?

 

『・・・暫く俺は寝る。出来るだけオーラを

出さんようにするから、相棒も抑えろ。良いな!』

 

アッハイ。

 

「イッセー?」

 

返事をしないでドライグと話をしている俺を、

不思議そうな顔して見てる部長。

 

そんなお顔も素敵です!

 

とりあえずその前任者の家と部長の家が断交

してることは俺に話したくないみたいだから、

そっちに関しては後で匙に確認を取ろう。

 

「じ、実はさっきまでアザゼルが居まして・・・」

 

「なんですって?!」

 

うん。驚きますよね。自分の管理する町だけ

じゃなく、こうして学校にまで来るんですから。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぼ、僕はこんな神器いらない!みんな怖がる!

嫌がる!僕だって嫌だ!友達を、仲間を停めたく

ないよ!大切な人の停まった顔を見るのは・・・

も、もう嫌だ』

 

部屋の中ですすり泣くギャスパー

 

「困ったわ・・・この子をまた引きこもらせて

しまうなんて。私は『王』失格ね」

 

落ち込む部長。部長は悪くない。ギャスパーも

悪くない。悪いのはむしろ俺だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後は俺に任せてください!俺が何とかします!」

 

 




コイツら普通に校庭で悪魔の力使って
ますよね?
匙とかに見られてますから隠蔽もして
ないですよね?

ドライグ、驚愕の事実を知る。
性犯罪者は妙な気遣いをしたようだ。

て言うかなんで赤龍帝保持者の血を飲めば
神器が活性化するんでしょうね?
龍の血って神様の力と反発したりしないの?

『王』失格だなんてとんでもない!
部長以上に王にふさわしいヒトなんか
いないっすよ!ってお話


展開予想はダメだ・・・ソレだけは
やっちゃダメなんだぁぁぁぁ!!


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38話

会談前の一幕。

平常運転の無能一味。仕事しろ。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

「いいか、よく聞いてくれギャスパー。

俺はな、この赤龍帝の譲渡の力を部長の

おっぱいに向けて使いたいんだ!」

 

壮大なる俺の野望を聞いて、ギャスパーは

驚きに目を丸くする。

 

「す、すごいです!強大な神器を持っている

のにそこまで卑猥な発想にたどり着けるなんて。

イッセー先輩の煩悩って勇気に溢れてますね」

 

馬鹿にされてる気がするが、気のせいだ!

 

「そうだろうそうだろう!強大な神器がなんだ!

ようは使いようだ!俺はこの神器を使って部長

の胸を吸い!そして譲渡するんだ!いや、何なら

朱乃さんの胸に譲渡しても良い!」

 

夢がひろがるぜ!おっとヨダレが・・・

 

「ぼ、僕もなんだか勇気が出てきた気がします」

 

そうだろう!やっぱりエロは偉大だ!エロに興味が

無い男なんかいねぇんだ!

 

「ソレとアレだ、もし他人と顔を合わせるのが

怖いってんなら・・・これなんかどうだ?」

 

そう言って取り出したるは紙袋。

 

「か、紙袋ですか?あ、目の部分に穴が

空いてるんですね?」

 

そう言うとギャスパーはちょっと被ってみます

って言って俺が用意した紙袋を被ってくれた。

 

いや~俺はアレだけど、ヨシツグを見て

こういうのも悪くないって思ったんだよな。

 

後からゲームとかに出てくる戦国武将の

大谷吉継の絵を見たけど、普通に格好良い

感じだし。

 

コイツももしかしたら格好良く・・・

 

「ど、どうですか~似合いますか~?」

 

なるわけないよなぁ。

 

薄暗い教室の角に、頭に紙袋を被った女装男子が現れた。

 

さらに穴の部分からは赤い眼光がギラリと

光っている。ゆっくりとした動きが、まるで

ゾンビみたいで恐怖心を煽って来るぞ!

 

夜の学校って言う場の雰囲気もあるんだろう

けど、凄まじい迫力だ!

 

・・・凄まじい迫力なんだけど、どっからどう

見ても変質者だよ!おまわりさんこいつです!

 

「あ、でもこれ・・・イイですねぇ」

 

マジか。イイのか。

 

「俺、今お前を初めて凄いって感じたよ」

 

いや、神器の能力を知ったときも凄いとは思った

けどよ。アレはギャスパー個人じゃないし?

 

だけど、ギャスパーは気に入ったみたいだが、

流石にコレを外に出すわけには行かないよなぁ。

 

段ボールと紙袋がこんなに凶悪な組合せだった

なんて思わなかったぜ。

 

せめてヨシツグみたいに布頭巾にするべきだったかなぁ。

 

 

・・・・・・

 

 

ま、まさかミカエル様と会って、直接聖剣を

貰うことになるなんて思いもしなかったぜ。

 

どう考えても悪魔に成り立ての下僕悪魔に

対する扱いじゃないよな!

 

『当たり前だ。あいつはお前そのものじゃなく、

俺を宿したお前を見てるんだ。それはミカエル

だけじゃない。各勢力のお偉いさんは皆そう

言う目でお前を見ることになる』

 

わかってるよ!だから調子に乗るなって言い

たいんだろ?!

 

『違う。そんなことどうでも良いからさっさと

帰宅しろと言いたいのだ。と言うか、こうして

いるうちにも殺されるかもしれんのだぞ?

用が済んだなら今すぐ帰宅しろ』

 

コイツはこの前からずっとこうだよな。

堕天使の総督も逃げるような相手だから、

俺なんかがどうにか出来る相手じゃないって

言うのはわかるんだけど、ちょっと焦り過ぎ

じゃないか?

 

今までだって特に何かされた訳でもないしさ。

 

「イッセー君?」

 

おっと。朱乃さんが不思議がってるぜ。部長も

そうだけど、こう言う節々の仕草とかも綺麗で

最高なんだよな!

 

いや、待てよ。今なら部長も居ないし、話を

聞けるか?なぁ、ドライグはどう思う?

 

『むぅ。さっさと帰りたいが情報は必要だ。

いつまでも警戒して外出を控えるわけには

行かんしな』

 

そうなんだよなぁ。あんまりコイツが必死

だからとりあえず外出は控えるようにしてる

けど、いつまでもこんな感じだと俺も気疲れ

するしな。

 

よし、ここらで朱乃さんに聞いてみよう!

 

「朱乃さん。ちょっと聞いても良いですか?」

 

俺のテンションがいつもと少し違うと察して

くれたんだろう。朱乃さんはいつもの微笑を

崩さないまま頷いてくれた。

 

「あらあら、私のスリーサイズを知りたいなら

・・・直接触って確かめてみます?」

 

流石朱乃さん俺のことを良くわかってる!!

 

『・・・相棒。今は俺とお前の命が懸かってる

と言うことを忘れるなよ。

ふざけてるなら俺は今すぐ休眠するぞ』

 

やべ。ドライグがマジギレしてる。

 

いや、それはそうだよな。俺と繋がってるから

心もある程度読めるらしいし、俺が考えた事が

本気か冗談かは当然わかる。

 

その上で、散々危険だから帰れって忠告まで

してるのに、ソレに逆らってエロいことを優先

してたら・・・普通なら切れるよな。

 

だけどコッチも冗談じゃ無いんだよ!男として

朱乃さんのスリーサイズは確かめないと駄目だ!

一生後悔するぞっ!

 

『・・・・・・』

 

あ、あれ?マジで寝た?いや、確かに今のは

冗談じゃなく本心からの言葉だったけど・・・

 

「それで、何を聞きたいんですか?」

 

あ~どうしよ。けどここまで来て何も聞かな

かったら、コイツは今後二度と俺に協力して

くれない気がするんだよな~。

 

さっき言われたけど、周りは俺を赤龍帝の力を

宿した悪魔として見てるんだ。その力を使えない

俺はただの雑魚の下級悪魔。

 

もしドライグに協力して貰えなくなったら部長の

為に戦うことなんか出来なくなる。

 

くそっ!今回は朱乃さんのスリーサイズを諦める

しかねぇのか?!いや・・・だけどっ!

 

「あらあら。本当に私のスリーサイズを

確認したかったんですか?しょうがない子

ですねぇ♪」

 

「え、いや、その」

 

違うとも言いきれないっ!いや、そうだ!

目の前のエロを追い求めないで何が男だっ!

 

「ふふふ。今はリアスが居ないから、何時も

より長く、じっくりとお話出来ますわ」

 

「じ、じっくりとお話ですか?!」

 

このヒトが言うと本当にエロいよな!

 

「ただ・・・そうですね。その前に私のお話を

聞いてもらえますか?もしソレでイッセー君の

気持ちが変わらないなら・・・」

 

朱乃さんのお話?そりゃ聞かせて貰います

とも!どんな内容かは知りませんが、ソレで

朱乃さんのスリーサイズを直接確認出来るなら

喜んで聞かせて頂きますっ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カクカクシカジカムカシノアケノサントムートンイトウ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

堕天使とのハーフ?それを気にしてたの?

 

「それを知ってイッセー君はどう感じます?

堕天使は嫌いよね?悪魔として眷属化した

とは言え一度は貴方とアーシアちゃんを殺し、

この町を破壊しようとした連中なんですもの」

 

まぁ好きか嫌いかと言われたら・・・

 

「確かに俺は堕天使が嫌いです」

 

アザゼルにはそれほど敵意とかは沸かないけど、

ソレはアイツが俺を敵として見てないのと、

俺自身が敵対しても勝てないと思ってるから

だろうな。

 

そう思ってると朱乃さんは悲しそうな表情を

していた。そんな顔しないで下さい。

確かに俺は堕天使は嫌いだ。だけど・・・

 

「だけど朱乃さんは好きですよ?」

 

「・・・?!」

 

なんか驚いてるけどさ、そもそも朱乃さんに

何かされたわけでもないし、アザゼルが率いる

堕天使って種族は嫌いだけど・・・朱乃さんは

堕天使の血を引いた悪魔ってだけだろ?

 

「生まれのことは俺には良くわかりませんけど、

朱乃さんはオカルト研究部の副部長で、やさしく

してくれて・・・

別に朱乃さんが堕天使の血を引いてても朱乃

さんは朱乃さんですし、嫌いにはなりませんよ。

それに朱乃さんの羽が汚いとは思いませんよ?

むしろ似合ってると言いますか・・・」

 

あぁくそっ!上手い言葉が見つからねぇ!

 

そんな俺の言葉を聞いて、朱乃さんは・・・泣いていた。

 

やべっ!女の子泣かしちゃったよ!

 

「殺し文句言われちゃいましたね・・・

そんなこと言われたら、本当の本当に

本気になっちゃうじゃない・・・」

 

最後のほうが聞こえなかったけど「殺し文句」

って、なんか悪いこと言っちゃった?!

 

そう思ったら朱乃さんが抱きついてきた!

やべぇよ!柔けぇよ!

 

「ねぇ、これから二人っきりのときは

朱乃って呼んでくれる?」

 

甘えるような声に俺の脳みそをどうにかさせて

しまいそうになる!

 

「ふふ、こんなところをリアスに見られたら

嫉妬されちゃいますわね」

 

た、確かに。お気に入りの俺が朱乃さんに抱き

つかれてるところを見たら部長も面白くは無い

よなぁ。

 

「えっと、どうしたものか。確かにこの場面を

部長に見られたら・・・」

 

とは言えこの柔らかさを跳ね除けるなんて

俺にはできねぇ!

 

「部長に見られたら・・・どうなるのかしら?」

 

・・・・・・・・・この声は

 

そこには明らかに怒った部長のお姿が。

 

「例の剣はもらったの?」

 

怒りを感じる歩みで俺にズンズンと俺に

近づいてくる部長。

 

やべぇよ!滅びの力を纏ってるよ!

 

ここで冗談を言ったら死ぬ!そう思わせる

ナニカが部長には有った。

 

「ハイ!もらいました!」

 

俺は背筋を伸ばしてビシッと敬礼して答える。

 

「ミカエルは?」

 

「帰りましたっ!」

 

当然姿勢は崩さない!

 

「ならココに用は無いわ!帰るわよ!」

 

この場から踵を返した部長に急いで続く。

っと、その前に朱乃さんに頭を下げる。

 

なんか色々すみません本当に・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーカンザシ視点ーー

 

 

「ふーんミカエルが直接性犯罪者に聖剣をねぇ」

 

強奪して天使ごと実験する予定だったけど

準備が無駄になっちゃったねぇ。

 

だけど態々悪魔と取り決めがある神社を

使っての譲渡か。

コレは邪魔するヤツがいたら釣り出す気

だったのかな?

 

この場合の「邪魔するヤツ」は悪魔や堕天使

じゃなく天使か教会だと思うけど。

 

この辺の意見調整はどうなってるのやら。

 

「ですね。普通に『殺してでもうばいとる』

も出来ましたが、流石に会談前にミカエル

を殺したら会談が成立しません。そのため

ご主人様からもGOサインは出ませんでした」

 

白音ちゃんがしょぼーんとしてるけど今回は

シカタナイね。

 

せっかく狐様に紹介してもらって側室入りの

許可ももらったんだから、お仕事こなして

功績にしたかったんだよねぇ。

 

魔王からしたら交渉相手を殺したってことに

なるけど、悪魔社会としては大戦果だし。

今回の和平だって魔王が貴族院に何も言わず

にバアルとだけ話して勝手に決めたことだし。

 

今の段階ではミカエルもアザゼルもタダの

敵だから、殺しても手柄にしかならないよね。

 

まぁ白音ちゃんの功績はともかくとして。

いくら赤龍帝が絡むとは言え、普通はミカエル

が態々出てくる案件じゃ無いよね?

 

下っ端とまでは言わないけど、それなりの

天使に任せればソレで済むはず。

 

そもそも天使にとってあの性犯罪者は、人間の

頃から「見るのも汚らわしい」ってレベル

のクズだよね?

ソレが悪魔になったんだから尚更ダメなはず。

 

そう考えれば我慢出来る天使がいなかったから

ミカエルが来たと考えることも出来るけど・・・

 

それとも襲撃を警戒した?いや、それにしては

周囲に警護が居るような感じはしなかった。

 

まさか聖剣の微調整をミカエルが自分でしたの?

 

その結果、性犯罪者に剣を渡した際の最終調整

を出来るのがミカエルしかいないから、こうして

直接出てきたとしたら話は繋がるね。

 

ふむ。現在の天界にまともにシステムを弄れる

のが居ないと考えれば、それも有り得るか。

 

コレは偶然を装った概念的な管理者の加護?

それとも人材不足から来る必然?

 

ん~情報が足りないなぁ。

まぁいいや()

 

「とりあえず会談は明後日だけど、今回の

仕込みは全部終わってるからね。

白音ちゃんは私とサメ映画でも見ようか?」

 

恐らく私たちには監視が着くから、下手に

動かないでアリバイを作らなきゃ。

 

ついでに布教もね。

 

「サメ映画も良いんですけど、今回も神野サンが

殺るんですよね?コカビエルのときと然程時間が

経ってませんけど、こんなに頻繁に表に出ても

良いんですか?何かお手伝いとかした方が良いんじゃないですか?」

 

ふむ。コレは神野サンの心配と言うよりは、

私もお仕事欲しいです!って言う意思表示かな?

 

「今回の計画の鍵は女装趣味の変態だからねぇ。

アレが予定通り仕事をしたら神野サンは場を

弄るだけで良いし。後は連中が勝手に纏まって

くれるよ。下手に私たちが動けばご当主様の

計画の邪魔になるから、今回は待機だね」

 

とりあえずは三大勢力が纏まって聖書陣営って

形になってくれないと困るしねぇ。

 

「むぅ・・・」

 

ん~白音ちゃんが此処まで不満そうにするのは珍しいなぁ。

 

でもコレって功を焦ってるってことだから

良いことじゃないんだよね。

 

「白音ちゃん。仕事をしたがるのは良いけど

焦るのはダメだよ?

ソレは失敗の元。私たちはご当主様と奥様が

決めたことに従ってれば良いの。

それともお二人が信用できない?」

 

ご当主様は言わずもがな。私は現場指揮官

で技術者。奥様は軍略家であり政略家。

私は現場の意見を届けることはあっても、兵士

の我侭で作戦を狂わせるわけにはいかないの。

 

もし白音ちゃんがソレを理解出来ないなら、

奥様に殺される前に私が殺すよ?

 

「お、奥様とご主人様が決めたことに

逆らうなんてとんでもないです!

ワガママ言ってスミマセンデシタ!」

 

うんうん。ソレでいいの。ご当主様も奥様も

もちろん私も、普段から白音ちゃんや黒歌さん

を可愛がってはいるけど、超えちゃいけない

一線はしっかり見極めてね。

 

「わかったところでサメ映画の鑑賞会だよ~。

今回は豊玉姫様オススメのサメ映画だから

インパクトは小さいかもしれないけど、

話題作りにはなるからさ。しっかり細かい

ツッコミが出来るところまで見るように!」

 

ツッコミ前提なのがサメ映画の醍醐味だよね!

 

「はいっ!頑張ります!」

 

いやぁ、さっき脅しすぎたかな?映画って

無理やり頑張って見るものじゃ無いんだよ

・・・って言いたいところだけど、Z級は

忍耐が必要なのが多いからなぁ。

 

まぁ豊玉姫様がオススメするくらいだから

キワモノってことは無いと思うけど。

 

え~と題名は

 

『救え!金魚シャーク!~キャットに迫る罠~』

 

・・・補佐官様。ナニしてるんですか?

パッケージのミキさんの目が死んでますよ。

もしかしてホラー映画なんですかねぇ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「さて、行くわよ」

 

部長の後に続き部室を後にしようとする俺たち。

 

なんでも今回の会談の場所を提供したってだけ

じゃなく、コカビエルとの戦闘や、当時の状況

を出来るだけ詳しく報告するために会談への

参加をするように言われたらしい。

 

サーゼクス様に報告を上げてはいるが、現場の

意見が欲しいってことなんだろうか?

 

ソーナ会長は居ないから、聖剣使いに関する話

ではないみたいだし。

 

『ぶ、部長!皆さぁぁん!!』

 

世にも珍しい喋るダンボール。もちろん中

にはギャスパーが入っている。

 

「ギャスパー今回の会談は大事なモノ

だから、神器を使いこなしていない

貴方は参加出来ないのよ?」

 

部長がそう言ってギャスパーを諭すが、

ここでルー・ガルーさんが意見を口にした。

 

「リアス嬢。会談の場にいる方々は僧侶の

神器が通用しない方々だし、そもそもこの

会談を邪魔しようとするモノたちがいた場合、

孤立した僧侶が狙われる事になるぞ?

サーゼクス様は無論のことアザゼルも僧侶の

神器の危険性は知っているのだ。

いざというときのことを考えて孤立を防ぐという

名目が有れば拒否されるようなことはあるまい。

会談に参加する方々に許可を取り、連れて行く

べきではないか?」

 

なんならダンボールのまま部屋の角に

置くだけでもいいって言うけどよ・・・

 

そもそも会談を邪魔する奴なんているのか?

和平に反対する連中が居るって言う話は

聞いてるけど、いくらなんでもココに乱入して

くるような奴は居ないだろ?

 

魔王様にミカエル様にアザゼルがいるんだぞ?

普通に死ぬじゃん。

 

部長も少し考えたけど、俺と同じ結論に

至ったのだろう。

 

「確かに貴方の言うことにも一理あるけど、

流石に心配しすぎよ。

きちんと結界も張ってあるし、そもそも乱入

なんかしてきたらそいつは会談の参加者に

殺されるわ。さらにそいつが所属する勢力は

三大勢力全てを敵に回すことになるもの」

 

まぁそうだよなぁ。

 

今駒王学園には誰も侵入できないように強力な

結界が張られていて、結界の外には天使や悪魔

堕天使の軍勢が待機してある。

 

もちろん誰も外には出られないような結界だ。

 

こんなところに侵入するなんて正気の沙汰

じゃねぇよ。

 

ギャスパーは部長や俺たちにとっては大事な

仲間だけど、アザゼルやミカエル様にして

みたら普通の悪魔だし、人質にもならない

から狙われるって可能性も無いだろうし。

 

「ソレと僧侶って言い方は止めて。この子

はギャスパーよ」

 

そうそう。それも有る。本当はリアス嬢も

止めて欲しいらしいけど、向こうは年上で

部長も上手く距離感が掴めてないからなぁ。

 

それに肝心のギャスパーがルー・ガルーさんを

怖がってるし。普段接点もないから中々親しく

名前を呼べないってのもわかるんだけどよ。

 

アーシアが言うには吸血鬼と人狼って仲が

悪いらしいからソレも関係してるのか?

 

「・・・善処しよう」

 

向こうも悪気があるわけじゃなく、距離感が

上手くつかめてないだけみたいだし。

 

まぁコレは追々だよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ気を取り直して行きましょうか」

 

「「「はいっ」」」

 

大物が集まる会議室で、三大勢力のこれからを

決める事になるだろう会談が始まろうとしていた!




性犯罪者ども・・・真面目にヤレ。

ルー・ガルーさん。そもそもルー・ガルーは
種族名ですよね?
でもって愛称はルガールさんらしいので
きっとフルネームはスティーブン・ル・ガール。
これはっょぃ。ってお話

ギャグエロ時空とは一歩引いた立ち位置の
常識人。当然常識フィルター完備である。



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39話

やってまいりました駒王会談

皆んな仲良く和気あいあい。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

コンコンと部長が会議室の扉をノックする。

 

「失礼します」

 

そう言って部長が扉を開くとそこには・・・

 

この時のために用意されたであろう豪華絢爛な

テーブル。

そしてソレを囲むように見知った人たちが

座っていた。

 

空気は静寂に包まれており全員が真剣な表情を

していて、会談の開始前から何やら会話をして

いたようだが・・・

 

アーシアが不安そうに俺の服の端を掴む。

俺もその手を握ることで、アーシアを励まし

俺自身の気付けにした。

 

そうして気を落ち着かせて場を見てみると

このメンバーが如何に凄いメンバーの集まり

なのかがよくわかる。

 

悪魔側。サーゼクス様と女の人だ。若い感じ

だけどどこかで見たような?

そしてグレイフィアさんが給仕をしている。

 

天使側。金色の翼のミカエル様と見たこともない

女の子の天使。つーかすげー美人だ!

 

堕天使。アザゼルと『白い龍』ヴァーリ。

黒い翼を広げてる様子は普段のおちゃらけた

おっさんではなく、堕天使の総督としての

貫禄を十分に醸し出している。

そして白い龍は壁に寄りかかり腕を組んで

目を瞑っている。

 

そう言う格好もサマになるってのが、すげー羨ましいぜ!

 

「私の妹とその眷属だ」

 

中に入って入口の近くで会議室にいる面子を

確認していたらサーゼクス様が俺たちを他の

陣営のお偉いさんに紹介する。

 

その言葉に合わせて部長は無言で頭を下げた。

 

おっと。白い龍に嫉妬してる場合じゃない!

俺も頭を下げなきゃダメだよな!

 

「なぁサーゼクス?この中で一番立場が下で

あるお前さんの妹が、一番最後に会談の場に

来るのってのはちと常識不足じゃねぇのか?」

 

そう言って頭を下げたままの俺たちを

放置してサーゼクス様を睨むアザゼル。

 

お前が常識云々言うな!と言いたいところ

だけど・・・ちらりと部長を見たら、部長は

唇を噛んでガマンしていた。

 

『自分の失態でサーゼクス様の立場を悪く

してしまった』そう考えてるんだろう。

 

「それにコイツは自分の前任者のことも何も

知らなかった。はっきり言ってありえねぇ。

ここで俺たちが何を言ってもアイツが認めねぇ

限り戦争は続くんだぞ?そのへんお前はどう考えてんだ?」

 

前任者・・・戦争推進派の悪魔のことだよな?

 

「アジュカからは何も聞いてませんでしたが、

サーゼクス?今のは事実ですか?」

 

ミカエル様もアザゼルの言葉に反応したって

ことは、ミカエル様もその前任者を知ってる

ってことか?それにアジュカって魔王の

アジュカ・ベルゼブブ様か?

 

ミカエル様と何かあったのか?

 

「確かに妹は彼と連絡を取っていない。

今回の会談に関しても、本来なら本人か

代理人を呼ばねばならんところだが、

天使や堕天使と席を共にするとなれば、

この場で戦争になりかねんということで

今回の出席は見合わせたのだ」

 

そ、そんなに危険な悪魔なのかよ!

 

「おいおいおい。俺は今回の件に関して

謝罪する立場ではあるが、同時にお前らに

情報を渡す立場でもあるんだぞ?

せめてソッチも持ってる情報をくれねぇと

フェアじゃねーだろ?」

 

情報交換が目当てってことか?

だけどそれなら俺たちが居るだろ?

 

そのために俺たちが呼ばれたんじゃ無いのか?

 

「そうですね・・・せめてコカビエルと

戦ったYOSHITUGUでしたか?彼の話も

聞きたいのですが」

 

あ、ヨシツグのことを言ってるのか。

 

まぁ確かに実際コカビエルと戦ったのは

アイツだし・・・だけどアレって日本の

神様でコカビエルと相討ちしたんじゃ?

 

「・・・彼は現在リハビリ中だ。そちらの

白龍皇はノーダメージで結界の外に弾かれた

ようだが、彼はヤツに飛ばされた際相当深い

ダメージを与えられたらしくてね」

 

ん?この様子だと、サーゼクス様はヨシツグ

の正体を知ってる?

 

それに白い龍もあの場にいたのか?でもって

ヤツって何だ?ダメージ?あの光か??

 

「・・・リハビリね。ありえねぇ話ではねぇ

がどこまで本気なんだか」

 

アザゼルは完全にサーゼクス様を疑ってるよな。

 

だけど元々は自分たちが引き起こした事件

だろうによ!なんて態度だっ!

 

「まぁ、とりあえずサーゼクスの妹さんから

話を聞きましょうか。現場の視点でしか

見えないモノと言うのは有りますからね」

 

そう言ってミカエル様が俺たちを見て

話をするように促してきた。

部長が頭を上げてサーゼクス様を見ると、

サーゼクス様は部長を見て頷いた。

 

これは「話しなさい」ってことなんだろう。

 

・・・っていうか俺たち座れねぇのかな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「以上が私、リアス・グレモリーとその

眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

はぁ・・・やっぱり無能は無能か。

何一つ独自の情報を持っちゃいねぇ。

 

全部コカビエルからの又聞きで、ソレを

真に受けてただけってか?

 

嘘をついている風じゃねぇし、そこまで

器用な真似ができるタイプでもない。

 

YOSHITUGUはヤツに関しては知らなかった

ようだが、何かしらの情報を持ってた可能性

が高いと踏んでたが・・・ソレはアジュカも

同じだろう。

 

さらにファルビウムの親類だろ?軍略家として

情報を隠すのは当然だから、この場に連れて

こねぇ可能性は考えていたがよ。

 

まさかオセの代理人すら呼んでねぇとは

思わなかった。

 

「ありがとうリアスちゃん☆」

 

セラフォルーか。コイツもサーゼクスに劣らぬ

妹魂(シスコン)のはずなのに、今回の件に関しては不自然

なほど動じてねぇ。

 

一歩間違えれば妹が死んでたんだぞ?

それなのにこの態度はねぇだろ?

もっと俺たちに突っかかって来ても良い

はずだろう?

 

いや、断交されたのはグレモリーだけだから、

コイツの妹はオセに庇護されてるのか?

 

聖剣使いと接触した後、シロネ・オセと

何かしらの話し合いをしたのは確定だが、

当然その情報もオセによって調整されていた。

 

だが『作戦の都合上セラフォルーにも伝えるな』

と言って口止めしている可能性も有るんだよな。

 

この場に出てきたら口を割るように圧力を

かけるつもりだったが・・・読まれたか?

 

「・・・つまり彼女たちはヤツを見て

いないと言うことになりますね?」

 

ミカエルがやや失望したような声色で

確認をする。

 

「そうだな、妹を含めその眷属はヤツを

見ていない」

 

使えねえぇぇぇぇぇ。

まぁウチのヴァーリも似たようなモンってか

それよりタチが悪ぃから文句も言えねぇが。

 

管理者を名乗るなら、何かしらのバックアップ

くれぇできるようにしておけや。

 

全部オセとコカビエルが仕込んだカメラや

マイク頼りじゃねーかよ。

 

はぁYOSHITUGUもオセ関係と考えれば断交

しているグレモリーに接触させるわけもない

し、そりゃ情報もねーよな。

 

「セラフォルー。お前さんの妹はどうした?

少なくともコイツよりは情報を持ってるだろ?」

 

無能が無理ならコッチはどうだ?

 

魔法陣や何やらについても聞いてる可能性

は高いよな。なにせ日中の学校の管理者だ。

仕掛けを聞いてないってことはないだろう?

 

「ソーナちゃんが聞いたことはそこの

書類に有る通りだよ。

後から再度確認したけど、彼に関しては何も

知らないしヤツや魔法陣に関してもなんにも

聞いてないみたいだね」

 

・・・嘘じゃねぇみてぇだな。まぁ下っ端に

教えてもしょうがねぇことだし、初めから

情報を与えなきゃ漏洩もしねぇか。

 

「それでは次の質問ですが、現場からその

魔法陣やら何やらの痕跡を消し、私たちが

一切の情報を得られないようにしたのは、

アジュカかファルビウムの指示でしょうか?」

 

お、打ち合わせにはねぇ意見だが、まぁ

そうだよな。神にも通じる一撃を生み出す

技術の秘匿はミカエルとしても看過できる

モンじゃねぇ。

 

「・・・いや、現場を残すことよりも、

人間界に破壊跡を残すのを嫌った私の判断だ」

 

ダウト。

 

「それにしてはさっきからお前さんの妹が

妙に焦ってるな?お前さんの命令じゃなく

他の誰かの命令だろ?」

 

本当にサーゼクスからの命令ならココで

そんな反応はしねぇよ。

 

「法廷や査問会ってわけじゃってねーから

嘘がダメとは言わねぇけどよ。

せめてもう少しちゃんとした嘘つけや」

 

バカ正直にペラペラ情報を喋るヤツも信用

できねぇが、この場ですぐにバレる嘘を吐く

ヤツは尚更信用されねーぞ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

「それでは次の質問ですが、現場からその

魔法陣やら何やらの痕跡を消し、私たちが

一切の情報を得られないようにしたのは、

アジュカかファルビウムの指示でしょうか?」

 

え?そ、その言い方だと部長が誰かの命令

で証拠隠滅したような感じになってるぞ?!

 

あ、だけどそうか!あの場ですぐに学園を

修繕したのは部長が荒れ果てた校庭や

体育館を見て半ば混乱してやったことだけど、

アレが事件現場みたいなモノと考えれば、

俺たちは警察が来て調査する前に証拠隠滅

をしたって事になるのか!

 

もし部長が勝手な判断でソレをしたとなれば

当然立場が悪くなる。

 

だからサーゼクス様が自分の命令だって

ことにしようとしてくれたんだ!

 

部長もそれに気付いて焦ってるように見える。

 

けど俺にもソレがわかるってことは・・・

 

ダウト。

 

誰かの声が聞こえた気がしたと思い、その

方向を向いたら、その先には厳しい視線で

俺たちを見るアザゼル(堕天使の総督)がいた。

 

「それにしてはさっきからお前さんの妹が

妙に焦ってるな?お前さんの命令じゃなく

他の誰かの命令だろ?」

 

やっぱり気付かれてた!それに怖い!

コレが本気の・・・俺たちを『敵』と

して認識したアザゼル(堕天使の総督)かっ!

 

「いや・・・ソイツの顔色を見るに現場の

修繕は誰かの命令ではなく独断でやったな?」

 

ま、まずい。圧力がどんどん上がってくる!

それにミカエル様もコッチを見る目が厳しく

なった?

 

なんだ?あのコカビエルが用意した学園を

吹き飛ばす魔法陣にはどんな意味があったんだ?!

 

「つまりアジュカもあの魔法陣については

何も知らねぇってことか?!

クソッ!小娘がっ!てめぇ!自分が何をしでかしたかわかってんのか?!」

 

うおっ!これは本気の殺気か?!

そんなにあの現場を修繕したのがまずい

ことだってのかよ?!

 

「・・・アザゼル。それ以上妹に殺気を

向けるなら私が相手をするぞ?」

 

さ、サーゼクス様も臨戦体勢に?!

 

こ、コレってまさか・・・部長のせいで戦争になるってことか?!

 

「アザゼル。気持ちはわかりますが少し

落ち着きなさい。彼女を殺したところで

物事が解決するわけではありません」

 

み、ミカエル様が止めてくれてるけど、

視線は厳しいままだ。

それに今の言葉は言い換えれば「物事が

解決するなら部長を殺してもいい」って

ことだろ?

 

つまり天使としても現場を修繕したことに

関しては怒ってるってことか?

 

確かに事件現場を勝手に修繕すんのはダメ

なことかもしれねぇ!だけどよぉ!

 

「そ、そもそもアンタんとこのコカビエルが

勝手にココに来てあんな魔法陣作ったんだろ?!

ソレを修繕したからってなんで堕天使のアンタ

に文句を言われなきゃなんねぇんだよ!」

 

ここは悪魔の管理地で、学園は部長の領土だ!

ソレを修繕して何が悪いってんだっ!

 

「・・・サーゼクス。まさかてめぇ。

妹にも事情を説明してねぇのか?コレ

だって一応管理者なんだろ?」

 

コレだと?一応だと?!コイツっ部長を何だと

思ってやがる!

 

「コカビエルの動きに関してはアザゼル

から報告を受けてましたし、私としても

彼の判断は間違っていないと思います。

彼の命懸けの行動をこのような形で穢され

ればアザゼルが怒るのも無理はありません。

しかもその張本人がコレでは・・・」

 

み、ミカエル様も部長に対して失望の目を

向けている・・・

まさかアザゼルの思い込みとかじゃなく

本気で部長が悪いってのか?

 

こ、コカビエルのヤツが何をしてたって

言うんだよ!

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

まさかアジュカやファルビウムが情報を

隠蔽したんじゃなく、この小娘が勝手に

やったことだとはな!

 

「サーゼクスッ!身内を庇うのはわかるが、

ソレは信賞必罰を旨とする組織の長がやって

良いことじゃねぇ!甘やかすのもいい加減に

しやがれ!」

 

これじゃアイツはタダの無駄死にじゃねーか!

 

いや、オセが持ってる情報さえ有れば無駄

じゃなくなるが、問題はオセがソレをヤツ

だけじゃなく俺たちに向けてきた場合だ!

 

アイツが命を削って放った一撃が、ソレを

元にして作られたモノが、堕天使に向けられ

たら、アイツは何のために死んだことになる?!

 

アイツは最後、俺に全てを託して死んだんだぞ?!

 

ソレを無駄にするどころかマイナスにする

ような真似されて黙っていられるかよぉ!

 

「ソレに関しては本当に申し訳ないと思っている」

 

科学者みてーなこと言ってんじゃねーぞ!

 

「本気でそう思ってんなら、さっさとヤツと

和解して情報でもなんでも入手しやがれ!」

 

ソレができねぇってんならせめて仲介しろや!

 

「アザゼルの気持ちもわかるんだけどね。

オセちゃんは私たちを信用してないし、

もし情報をもらえたとしても貴方たちに

アノ情報を渡すなんてことをしたら・・・

間違いなく内乱が起こって穏健派の悪魔が

滅ぶことになるわ」

 

「知ったことかよ!ソレを纏めんのがお前ら

魔王の仕事だろうが!」

 

そもそもサーゼクスが無能を甘やかして、

散々あいつの顔に泥を塗ったから信用を

失ったんだろうが!

 

「アザゼル、彼はそもそもサーゼクスたち

穏健派と違い戦争推進派です。

情報漏洩どころか、我々に技術提供するなど

と言った真似をすれば確かに彼女達を悪魔

の面汚しとして処刑するでしょう」

 

ま、普通に殺されるだろうな。

 

「そうなればその後に待っているのは

悪魔を率いた彼と天使や堕天使との戦争。

故に落ち着きなさい」

 

ちっ!確かにそれはそうだ。

 

もしコイツらを処刑すれば、アイツは

そのまま俺たちとの戦争に動くだろうよ。

 

下手に信用できねぇ連中と同盟を結ぶくれぇ

なら、いっそのこと滅ぼした方が後方を気に

しなくて済むし、その方が一丸となってヤツに

当たれると考えるだろうからな。

 

だからこそコイツらが殺されるような口実を

与えるわけには行かねぇってのはわかるんだ。

 

わかるんだがよぉ!

 

「オセ・・・彼が魔王様を処刑?!どういうことですか?!」

 

あぁん?まだ居やがったのか無能。

 

つーかアイツ等の庭でオセを呼び捨てかよ、

コイツは本当に何も知らねぇのな。

 

「もうお前さんに用はねぇ。報告ご苦労さん。

赤龍帝置いて退出してくれや。サーゼクスも

ソレで良いな?」

 

どーせ大した情報も持ってねぇし。下手に

何かコカビエルを馬鹿にするようなことを

口にしたら殺すかもしれねぇからよ。

 

それに下手にコイツと関わったらオセと

対峙することになるんだろ?

 

そんなのはゴメンだ。

 

「・・・あぁ。リアス、すまないが今回は

ここまでだ。一誠君を置いて退出したまえ」

 

外交の経験を積ませるって腹積もりも

有ったんだろうがよぉ。

どーせならこんな小娘じゃなく、オセと

繋がりがあるセラフォルーの妹を連れて

来いってんだ。

 

「で、ですがイッセーは私の眷属で・・・」

 

あぁん?この無能は家長の命令だけじゃなく

魔王の命令にも逆らうのか?

こいつらどんだけ甘やかしてきたんだ。

 

そりゃ規律に五月蝿いオセにも嫌われるさ。

 

・・・いやまて、眷属だと?

 

「おい、お前の眷属に吸血鬼が居ただろ。アイツはどうした?」

 

『停止世界の邪眼』は使いようによっては

かなり凶悪な効果をもたらす神器だぞ。

 

そもそも俺たちの和平や停戦を潰したいヤツら

にしてみたらこの会談は絶好の機会。

 

オセの性格上ココでヤツが動いてくるとは

思わねぇが、デミウルゴスのヤツは力が無い

分体を作るのに時間はいらねぇだろう。

 

今回の会談だってこれだけの軍勢が待機

してるんだ、下準備だって相当してきた。

 

ならばこの情報がまったく漏れねぇなんて有り得ねぇ。

 

つまりハーデスを始めとした、俺たちを

敵視する連中に情報を与えてこの場を乱す

なんて当たり前にやってくるだろうさ。

 

だからこそウチの連中が警戒してるんだが・・・

 

「そうだなリアス。彼はどうした?何故

この場に連れてきていない?」

 

サーゼクスも危険性に気付いたな?

元々危険だから隔離していた存在だもんな。

 

「えっと、彼はまだ神器を制御できて

いないので、ここに連れてくるのは無礼

になると思いまして・・・」

 

「孤立させたってのか?!」

 

有り得ねぇだろ!無礼って言うなら元聖女

がココに居ることも、人狼がここに居るって

ことも問題だろうが!

 

せめて参加者の確認くれぇ取れやっ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーを置いてきたことに対して

アザゼルが文句を言い、サーゼクス様が

深刻な顔をしている。

 

部長も自分の判断が間違いだったって

思ってるみたいだ。

 

あの時ルー・ガルーさんの言うことを

聞いていたら・・・

 

そう思ってたらあの感覚が襲って来る。

 

・・・体の機能が一瞬停止する。

 

そう、これはギャスパーの時間停止を

くらったときの感覚だった。

 




アザゼルはギャスパーのことを知ってたよね?
サーゼクスも当然知ってましたよね?

会談の邪魔をされる可能性を考えてたし、
当然考慮すべき内容でしょう?
何故原作で突っ込まれなかったのか・・・

和平?さて、これから頑張るんじゃないですかねぇ?ってお話


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40話

会談中、ギャスパーの能力をくらった
ときの感覚が俺を襲った。

一体何が?!まさかギャスパーの身に何か有ったって言うのか?!

相変わらず作者の地の文が荒い!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「・・・アレ?」

 

気づいたとき、会議室の室内は少しだけ変わっていた。

 

ミカエル様が窓から外を見ていて、

サーゼクス様とグレイフィアさんが

何やら真剣な面持ちで話をしていた。

 

「赤龍帝が目覚めたか・・・」

 

アザゼルが俺の方を見て不機嫌そうに言う。

 

どうもコイツは俺たちのことが嫌いらしい。

コカビエルのことが関係してるらしいけど

正直わけがわからない。

 

本来は教会の聖剣を奪ったコカビエルこそ

非難されるべきなのに、サーゼクス様も

ミカエル様もコカビエルに理解を示してる

んだよな。

 

どういうことだ?

 

「とりあえずこの場にいて動けるのは

サーゼクスの妹とその眷属以外の全員。

赤龍帝が停められたことが意外では有るが、

まぁそれだけ吸血鬼の能力が高いって

ことなんだろうな」

 

言われて周囲を見渡すと、部長や朱乃さん

アーシアにルー・ガルーさんの動きが止まっていた。

 

これってやっぱりギャスパーの能力なのか?

 

「でもって外から来てるのは魔法使いか。

結界をすり抜ける何かを使ってるようだが

実力は中級前後ってとこだな。

俺たちの足止めが目的にしては個人の力が

弱すぎる。そもそも俺たちにしてみればこの

校舎がどうなろうが、どうでも良い話だ」

 

な、なんてことを!

 

「ソレを踏まえたうえでの足止めだと

すると、面目を潰すことが目的か?

休戦だろうが和平だろうが、その会場を

襲撃され破壊されたってなったら、本来

歴史に残る三大勢力の会談が別の意味で

歴史に残っちまう」

 

校舎がどうでもいいって言うのは気に

入らねぇけど、今はそんなことを言ってる

場合じゃねぇ!

 

「サーゼクス様!ギャスパーがっ!」

 

間違いなくコレはギャスパーの力なんだ!

おそらくルー・ガルーさんが言ったように

反対派に狙われてこの力を使わされたんだ!

 

「そうだね。これは確実に彼の力だ。

まさかリアスが彼を孤立させるなんて

思っても見なかったよ・・・」

 

サーゼクス様が片手で頭を押さえている。

 

ルー・ガルーさんも予想してたけど、こう

いう場に反対派が来る可能性って言うのは

当たり前ってことなのか?

 

「いつの時代も勢力と勢力が和平やら

何やらを結ぼうとすると、どこぞの集まりが

ソレを嫌がって邪魔しようとするもんだ」

 

アザゼルは苦い顔で外を見ながらそう言った。

 

そうか。それにしても、アイツ等!

こっちの面目を潰す為なら殺されても

良いって言うのかよ!

 

そんなのにギャスパーを巻き込むんじゃねぇよ!

 

「しかし神器の能力が高すぎるな。コレは

一時的な禁手か?

能力の増幅は連中の得意技とも言えるから

不自然って程でもないが、ここまで制御

出来ないのは何故だ?」

 

い、一時的な禁手?俺がドライグに手を

捧げて開放したアレみたいな感じか?!

 

「おい赤龍帝。お前、アドバイス通りに

お前の血を吸血鬼に飲ませたか?」

 

はぁ?お前には関係ないだろ!って言い

たいところだけど、下手なことを言ったら

ヤバイのはわかる。

 

「いや、飲ませてない。ギャスパーは血を

吸うことが苦手なんだ」

 

吸血鬼なのにって思ったけど、その辺は

個人の勝手だしな。

 

「馬鹿が!自分の神器を制御したいって

本気で考えてるなら、好きとか嫌いって

話じゃねーだろうが!」

 

何だと?!お前にギャスパーの何が

わかるってんだ!

 

「一誠君。アザゼルの言うことは間違って

いない。眷属として主君(リアス)の役に立ちたいと

本気で考えてるなら、そして自分自身を

変えたいと思っているならば、好き嫌いで

手段を選ぶのは間違っているよ」

 

「さ、サーゼクス様・・・」

 

ま、まさかサーゼクス様にまで俺たちが

間違ってるって言われるなんて・・・

でもそうか。部長の為って考えたらアイツ

が嫌がってでも血を飲ませるべきだった

のかもしれない

 

「そもそも彼は毎週輸血用の血は飲んでいた

のです。それに貴方の血も混ぜれば好きも

嫌いもなかったのでは?」

 

「あっ!」

 

そうだよ!グレイフィアさんが言う通りだ!

アイツが輸血用の血を飲んでたのは知って

たんだから、それに俺の血を混ぜれば

アイツに無理やり俺の血を飲ませることにはならないじゃんか!

 

そしたら部長のためにも、ギャスパーの為にもなったんだ!

 

俺は馬鹿だ!なんでそんなことに気付かなかったんだよ!

 

「馬鹿の自虐はどうでも良い。問題は現状を

どうするかってことだ」

 

現状・・・外を見ればたくさんのローブを

被った人?が校舎に攻撃を加えている!

 

「魔法使いって奴だ。人間でも悪魔と似た

ようなことが出来るって考えればいい。

たださっきも言ったが実力的には中級が

良いとこだ。だが今の問題はソコじゃねぇ」

 

そう言いながら左手を空にかざすと大量の

光の槍が生まれる。

 

「そらよっ!」

 

そしてその大量の光の槍が外にいる魔法使い

たちに降り注ぐ!

 

一発一発はコカビエルの槍よりは小さいけど、

それだって俺を一撃で殺すことができる威力

があるって言うのはわかる。

 

あんなのいくら魔法使いって言っても、人間が

耐えれるようなモノじゃない!

 

大量の砂埃が舞い、ソレが落ち着いた頃

そこにはたくさんの死体が・・・

 

・・・アレ?無い?

 

「コレだ。おそらく堕天使の力に対して

何かしらの中和効果を出す魔法を開発

したんだろう」

 

はぁ?!人間が堕天使の総督の攻撃を防ぐ魔法を開発だって?!

 

「私もですね」

 

そう言うとミカエル様は指を外に向ける。

 

何をするのかと思ったら、急に指先が

ピカっと光った!あぁぁぁ目が~目が~!

 

悪魔にとってその光は直撃しなくても

毒なんですね!

 

ちゅどッ!!

 

そう思ってたら外から爆発音みたいなのが

響いてきた!

 

目をこすって見てみると校庭に大きな穴が

空いてて、その周辺には人が倒れてる。

 

おぉ!天使の力は通用するのか?!

 

「やっぱりダメか・・・」

 

アザゼルはそう言って苦々しい顔をしている

 

「は?いや、倒れてるよな?」

 

俺が指差した先には確かに人が倒れてるぞ?

 

そんな俺を見てアザゼルはため息を吐いた。

 

「あのなぁ。ミカエルの攻撃を受けて

人間が原型を保てるわけねーだろ?」

 

そ、そう言われてみれば・・・

 

「アレは地面を抉った衝撃でダメージを

与えただけだ。

まぁ中心部に居た連中が消えてるってことは

多少は光の威力も通ってるようだから完全に

通用しねぇってわけじゃねぇ。

恐らくある一定の威力がなければ無効化

されるようだな」

 

ま、まさかミカエル様の攻撃も効かない

のかよ?!それって相当ヤバイだろ!

 

「まぁ全く効かねぇってんならアレだが、

そうじゃねぇ。

その上衝撃やら何やらが効くなら、普通に

音響爆発みてぇに使えば良いだけだから

今はそれほど大した問題じゃねぇよ。

俺やミカエルの本気なら普通に大地ごと

消し飛ばすことだって出来るしな」

 

ぶ、物騒だなおい!

 

「だがこれで手加減は難しくなった。

更に下手な攻撃は校舎を傷付ける。

でもって校舎が傷つけば俺たちの面目が

完全に潰されるってこった」

 

そ、そうか。向こうは面目を潰す為に

命を捨ててるって話だもんな!

 

「ちなみにこの校舎を覆っていた結界の

外に居た悪魔・天使・堕天使の軍勢も

軒並み動きを止められているようだな」

 

ん?そういえば結界の外が見えなく

なってるけど・・・なんでそんなことがわかるんだ?

 

「一誠君。もしも彼らが動けていたら

魔法使いに攻撃を許してはいない。

結界に阻まれてるとは言え何かしらの

行動をしているだろう」

 

あ、あぁそうか。ソレはそうだよな。

 

「とりあえず俺やミカエルの攻撃は通用

しねぇが、結界は役に立つみてぇだ。

奴らの技術が一体俺たちの何に作用してる

のかはわからねぇが・・・」

 

そう言うとアザゼルは右手を口元に当て、

何やらブツブツと独り言を言い始めた。

 

「とりあえず今はアザゼルとミカエルと

私がココで結界を張ることで校舎を守って

いるんだ。だがこのままだと我々も動きを

止められてしまうかもしれないし、何より

リアスが怪我をしてしまうかもしれない!」

 

あぁ、この人はこんな時でもサーゼクス様だ

 

「お嬢様の身の安全を守るためにも、一刻も

早くギャスパー・ヴラディの神器を抑える

必要があります」

 

グレイフィアさんはそう言って魔力を纏い

外に向けて放出したっ!

 

ドドドドドドドドドと言う音とともに膨大な

魔力が校庭に降り注ぎ・・・

そこには何も無くなっていた。

 

骨とか死体も蒸発したって言うのか?!

 

「ふむ。悪魔の力は無効化出来ていないか。

まぁ元が千差万別のモノだし、俺たちの光

と違い特定が難しいのか?」

 

この結果をみてアザゼルは何かを考えて

いるようだが、この調子ならグレイフィア

さんがいればなんとかなるんじゃ?

 

そう思ってた時期が俺にもありました。

 

奥からわらわらと現れる魔法使いたち。

一体どれだけ準備してきたんだ?!

 

「減らしたと思ったら次々と来やがる。

一体どんだけ俺たちを恨んでるんだか」

 

・・・悪魔を恨む人間は多いだろうし、

神器や何やらの件で堕天使だって彼らに

憎まれてるらしいもんな。

 

「つまりこういう状況でね。連中の攻撃

は私たちが抑えるが、どうしても手が

足りない。下手にリアスを動かして

神器の副作用が出ても困るし、守りを

放棄してこの校舎を壊させるわけにも

行かないと言うのが現状だ」

 

なるほど。グレイフィアさんは敵の数を

減らすのに必要だし、アザゼルやミカエル様

の力はいつまで持つかわからない。

もしかしたら攻撃みたいに無効化される

可能性もあるってことか。

 

「そーゆーこった。その上で粘って、

業を煮やした連中の親玉が出てくる

のを待ってるんだよ」

 

綺麗な女の子の天使やサーゼクス様の

横に居た女の子、それに白い龍はその

親玉対策のために待機してるってわけか。

 

現状はわかった。

 

「とりあえず俺が真っ先にすることは

ギャスパーを取り返すことですね!」

 

部長の眷属として当然ですよね!

 

サーゼクス様の目が一瞬俺を向くが、

すぐにアザゼルの方を見た。

 

「アザゼル、君は確か神器の制御に関する

研究をしていたな?」

 

そんな研究してたのか?いや、まぁ確かに

ギャスパーの神器の制御に関することで

アドバイスもらったけど・・・

 

「あぁん?それがどうした」

 

そう言いながらも、大体言いたいことが

わかっているんだろう。アザゼルは

苦々しげに俺の方を見る。

 

ん?って俺?

 

「赤龍帝の制御はできるだろうか?」

 

「・・・・・・」

 

あぁ、そう言うことか。確かに素の俺は

その辺の魔法使いにだって負ける雑魚

だもんな。そりゃ籠手を制御する術が

なけりゃ信用できねーか。

 

・・・こんな時に一人で後輩を守れない

自分の弱さが嫌になる。

 

「嫌味か。そんなん俺よりオセに聞けよ」

 

ん?なんでココでオセが出てくるんだ?

戦争推進派なんだろ?

 

「ここに居ない者のことを口にしても

しょうがないだろう?それに最悪彼が

向こうについている可能性だって有るんだ」

 

え?え?そうなの?!

 

「ねーよ。ここにアイツが居たら

校舎ごと吹き飛ばされて終わりだ。

こんなまどろっこしい真似はしねぇ」

 

物騒なヤツだな!しかも魔王様ごと殺るのかよ!

 

「・・・いや、まて。まさかミカエル

や俺の力に対する魔法使いどもの対策

はヤロウが技術提供してんのか?」

 

いや、しかし、だとすると・・・と

真剣な顔で考え込むアザゼル。

 

良くわかんねぇけど、今は考えるより

先にコッチを対処してくれよ!

 

「まぁいい。とりあえずソレについては

後だ。まずは現状を打破しねーとな」

 

そう言うとアザゼルは懐に手を入れ、

ソコから小さなリングを二つ取り出した。

 

「コレを持っていけ。ソレがあれば簡易

ではあるが神器を制御できる。

一つは吸血鬼のガキ、もう一つは赤龍帝用だ」

 

投げ渡されたリングを掴む。こ、コレが

有れば俺の神器も制御できるのか?

 

「ソレがあれば代償無しでも一時的な

禁手もできるだろう。まぁ肝心の使い手

が雑魚だからアレだが、使いどころさえ

間違えなければ魔法使い程度なら楽勝だ」

 

自分が雑魚なのはわかってるが・・・敵に、

さらにこの場で言われたことに情けなさを

覚える。

 

だけどそういうのは後だ!今はギャスパーを

助けに行かなきゃ!

 

そう決心して、サーゼクス様に頭を下げて

会議室を出ようとした俺の背中に、アザゼル

から声がかかる。

 

「まてまて。今のお前だけじゃ不安だ。

ヴァーリ。お前もコイツについて行け」

 

・・・どんだけ信用ないんだよ。

まぁ堕天使が下っ端悪魔を信用する

わけにはいかないんだろうけど。

 

「・・・校舎ごとその眷属を破壊した方が

手っ取り早いと思うんだが?」

 

コイツっ!なんてことを言いやがる!

 

ごくごく自然にギャスパーを殺そうとする

コイツに怒りを覚える!

 

そんな俺を尻目にアザゼルは言葉を紡ぐ。

 

「ソレは最終手段だ。悪魔と協定を結ぼうって

ときに魔王の妹の眷属を殺すのはよろしくない

のはわかるだろう?」

 

いや、白龍皇よりはマイルドになったけどよ!最終手段でも殺るなよ!

 

「アザゼルの配慮には感謝するが、その場合

は私が自分の手で彼を殺すよ。

だから一誠君、無理はするな。君まで失ったら

リアスが悲しむ」

 

さ、サーゼクス様まで・・・まぁそれはそうか。

ギャスパーを庇った結果、ココでミカエル様や

アザゼルを死なせたら間違いなく戦争だ。

 

そうなったら被害は眷属一人で済む話じゃ

ない。そしてその責任はリアス部長のものになって

しまう可能性もあるんだ。

 

だから最悪ギャスパーを殺してでも神器を

止めるって判断は間違いじゃないってことなんだな。

 

・・・それに納得しかけてる自分が嫌だ。

 

いや、だけどアザゼルも言ったようにソレは

最終手段なんだ!ソレまでココに居るヒト達は

我慢してくれてるってことだろ?

 

なら俺がするべきことは・・・

 

「頼む白龍皇!俺と一緒にギャスパーの救出を手伝ってくれ!」

 

間違いなく俺より強いコイツに協力を仰ぐことだ!

 

正直コイツは苦手だけどギャスパーを

助けるためにはそんなこと言ってる場合

じゃねぇ!

 

「・・・赤龍帝に頭を下げられては、俺も

我侭を言うわけには行かないな」

 

そう言うと彼は俺の前に立ち背中に翼を

展開させる。

コレがコイツの神器『白龍皇の光翼』か。

 

「禁手化」

 

『Vanishing Dragon Balance Beraker!!!!』

 

音声の後、彼の姿を白い光が包む!

その光が収まったあと、そこに居たのは全身を

白い輝きを放つ全身鎧に包まれた男の姿。

 

いとも簡単に禁手化するライバルの姿に

どうしようもなく劣等感が刺激される。

 

そんな俺の嫉妬混じりの視線に気付いたのだろうか?

 

彼はコチラを一瞥してから部屋を出よう

として、そこでピタリと動きを止めた。

 

「協力はしよう。だが眷属を助けたいと

言うのは君の意向だ。

ならば君が前に出るべきじゃないか?」

 

動きを止めてた俺に、咎めるような口調と

さっさと動けと言わんばかりの視線を向けて

来る白龍皇。

 

い、言われてみればそうだよな!

 

ギャスパーを助けたいって言うのは俺の

我侭で、別にコイツらは殺したって良いんだ。

 

サーゼクス様だってアイツがリアス部長の

眷属じゃなければ殺してるだろう。

 

つまり無駄に使っていい時間は無いんだ!

待ってろギャスパー!今助けるぞ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

・・・行ったか。

 

ヴァーリがふさぎ込んでるようだった

から、考えなしのバカと一緒に行って

ついでに魔法使い相手にストレス発散でも

して気を紛らわせれば良いと思ったが、

思った以上に赤龍帝に頭を下げられたことが衝撃だったらしいな。

 

コレが良い方向に行ってくれれば良いんだがなぁ

 

「ソレでアザゼル。君に聞きたいことがある」

 

サーゼクスが真顔でそんなことを言ってくる。

 

聞きたいことならこっちも山ほどあるんだがよ・・・

 

「なんだ?」

 

まぁオセと情報交換していない以上こいつが

持ってる情報に価値が有るとは思えん。

 

ならばココはこっちから情報提供して貸し

と言った形にするのが正解だろうな。

 

「神器を集めて研究し何をしていた?神滅具も

いくつか持っているのだろう?

神が居ないのに神殺しをしようとでも言うのか?」

 

ナニ言ってんだコイツ?

 

「・・・備えてたのさ」

 

それ以外にねぇだろうが。

 

「備える?何に?」

 

おいおいおい!マジか?マジなのか?!

 

「コカビエルの後ろに居たのはハーデスだし

教会の後ろに居た奴は正体すらわからねぇ!

神野明影に至っては完全に神クラスだろうが」

 

神野明影に関しては偶然発覚したんだがよ。

 

「そもそも反三大勢力連合が出来るってのは

元から予想出来たことだろう!

オセだってソレに備えてたぞ?お前らは何も

してこなかったってのか?!」

 

俺の言葉にサーゼクスやセラフォルーだけ

じゃなくミカエルとガブリエルまで驚愕してやがる!

 

「どんだけ俺たちが他の勢力から嫌われてる

と思ってんだ?

復讐したいと思う連中が纏まるのは当然だし、

悪魔の駒なんか使って他の勢力の連中を悪魔に

変えて危機感を煽ったのはお前らだろうが!」

 

ソレを聞いたサーゼクスの顔にさらに驚愕の

感情が宿った。

 

それはつまり悪魔の駒が反三大勢連合の連中に

とって、どれだけ恐ろしいモノか全く理解して

なかったと言うことを意味している。

 

「おいおいおいおいおい!サーゼクス!

てめぇまったく自覚なかったってのか?

有り得ねぇだろ?!」

 

ここまで無自覚・無責任に他の勢力の連中を

悪魔に変えてたってのか?!

 

そりゃ戦争になるさ!

 

「俺たちを敵視する反三大勢力連合は

『禍の団』を名乗っている。その首領は

『無限の龍神』だ」

 

それを裏で操ってる神野明影は・・・

どこに奴の手が入ってるかわからねぇ以上

下手に知らせねぇ方がいいだろうな。

 

「まさかっ!」

 

「そうか。彼が動いたか・・・」

 

ミカエルもサーゼクスもようやく事態の

重大さがわかったか!

 

そう、これは反政府組織によるテロなんかじゃねぇ。

俺たち三大勢力と反三大勢力の戦争なんだよ!

 

絶句している連中をあざ笑うかのように女の声が

飛び込んでくる

 

『そう、オーフィスが「禍の団」のトップです』

 

その声と同時に会議室に魔法陣が浮かび上がる。

 

転移魔法陣?そしてこの紋章は・・・

 

「そうか・・・そう来るわけか!」

 

「え?これって?!」

 

魔法陣を見て呟くサーゼクスと驚くセラフォルー。

 

そのリアクションを見て俺の記憶も蘇る。

そう、この魔法陣に浮かぶ紋章が示すのはレヴィアタン!

 

つまり今回の黒幕は禍の団の中で最も歪な連中・・・旧魔王派かっ!

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お~お~踊ってるねぇ。それに会議室で事件

が起こったよぉ!会議室が現場になったよぉ!

アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!』




無能停止中。いや、普通に考えたらアンタも
動けないよね?
外の軍勢が全員停止してるんですよ?

そんな強制的に強化された能力の中でも
無能が動けるんであれば半分吸血鬼は
無能に依存すると思います。

あと危険物を抱え込んでるヤツに制御を
仕込むって言ってるんですよね?
吸血鬼に好き嫌い言う権利有るんですか?


研究者なら天敵である堕天使と天使の
光については真っ先に研究しますよね?
弱点を克服しないの?アジュカ何してんの?

魔法使いもポコポコやられすぎ。アザゼルや
ミカエルが居るってわかってるなら対策
するだろうし、そもそも数がおかしい。
そんなわけで対策してきたと言うオリ設定!

アザゼルやミカエルが一撃でどれだけ殺せるか
知りませんが、100以下ってことは無いでしょ?
それが絶え間なく来るって・・・そもそも
人間の魔法使いですよね?
全員が最低中級悪魔クラスの力を持つって話
ですけど、そんなのが何千も何万も居るの?
その組織、普通に人間界を支配してませんか?


乳と尻の夢の共演!どうなる女装半分吸血鬼!
変態しか居ねぇ・・・ってお話


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41話

次々と明かされる禍の団の全貌!
そして彼らが掲げる最強の龍の存在と
その大いなる目的が明らかに?!


乙女(セラフォルー)が手を組んで見守る中、
悪党の野望を挫くため、堕天使総督アザゼルが強大な敵に挑む!

負けるなアザゼル!頑張れアザゼル!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!



 

ーーアザゼル視点ーー

 

「ごきげんよう。現魔王のサーゼクス殿」

 

やっぱりコイツか・・・

 

記憶の中にあるレヴィアタンの紋章が青く

輝き、目の前に悪魔が転移してくる。

 

そこに現れたのは胸元を大きく開け、足に

スリットが入ったドレスを身に纏う妙齢の女性悪魔。

 

旧魔王の血族、カテレア・レヴィアタン。

 

・・・つまりコカビエルがシロネ・オセから

聞いた、旧魔王派が禍の団に居るって情報は

本当だったってことだ。

 

あれからそれほど日も経ってねぇし、明確

な証拠が有ったわけじゃねぇからサーゼクス

達にも言えなかった。

 

そんなこんなでマトモな調査は出来なかった

んだが、ここに来て自白しやがった。

 

これでシロネ・オセの情報の確度が上がったってことになる。

 

つまり神野明影が禍の団の裏に居るって情報の確度も上がっちまった!

 

あのデミウルゴスが音声に気付かねぇハズ

がねぇし、何かしらの編集みてぇなことを

されてる可能性も考えてたんだが、その辺は

オセの技術力が勝ったってことか。

 

まぁそりゃそうだよな?もしも奴が音声の

ことを知ってたら、あの場でコカビエルが

時間稼ぎするなんてことは出来なかったし、

編集たってアレは魔力を使ったモノだけじゃ

なく、機械も使ったリアルタイム送信だろ?

 

普通に考えたら干渉なんか無理だ。

そんなことをするくらいなら、ハナっから

音声も消してコカビエルとYOSHITUGUが

相討ちしたことにした方が早えぇ。

 

なにせYOSHITUGUはファルビウムの親族

だし、アレだけの実力を持つ存在だ。

血統だけの無能よりよほど価値が高い。

 

こっちもコカビエルが殺されたとなれば

血の気の多い連中が動くだろう。

 

神野明影の関与を知っているオセが動かなく

ても他の連中が勝手に騒ぐからな。

 

そうなりゃ悪魔と堕天使の戦争だ。奴は

指差して嘲笑って見物してただろうよ。

 

しかし今回はどうだ?コカビエルが時間を

稼いでくれたおかげで会談は出来た。

さらに悪魔陣営がこれでもかってくらい

弱みを曝け出してくる。

 

これなら俺たちに有利な形で協定を結ぶ

ことも難しくはねぇ。

 

あとはこの場をどう切り抜けるかってことに

なるんだが、ひとまずヴァーリと赤龍帝に

期待ってところか?

 

それまでは時間稼ぎと情報収集だな。

 

「・・・先代レヴィアタンの血を引くもの。

カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」

 

どういうことだも何も・・・普通に内乱だろ?

まぁ反三大勢力連合に与するって言うのは

意味がわからねぇってのもわかるが、基本的に

こういう地位を求めるタイプにそういうのを

当てはめても無駄だ。

 

こいつらは望む地位を得る為ならなんだって

やるし、雌伏だの何だのと自分を納得させる

言い訳を作り、周囲は利用するだけの存在と

してすっぱりと割り切ることが出来る連中だ。

 

それにコイツらみてぇに権力闘争ばっか

してる連中からすれば禍の団の中の権力争い

だって楽なもんだろうよ。

 

なにせ英雄派も魔法使いも100年も生きて

ねぇ人間で、他の連中は規模が小せぇ。

 

ハーデスや他の連中が手を加えてても、連中は

最初っから使い潰す気だから禍の団の権力云々

には興味がねぇ。

 

精々内乱を起こして場を混乱させ、さらに

オーフィスがグレードレッドを殺すために

育ててる兵士を俺たちに殺させて、アレの

不興を買えば良いとでも思ってるんだろうさ。

 

オーフィスが俺たちを「邪魔」と思うだけで

勢力的には滅ぶんだからな。

問題は神野明影だが・・・アレはオーフィスの

渇望を把握してるからな。

 

言葉巧みに動かすことは簡単だろう。

 

「旧魔王派のほとんどの者が『禍の団』に

協力することを決定しました」

 

挑発的な笑みと共にサーゼクスへ告げるカテレア。

 

新旧悪魔の確執が表に出てきた形だが、

コレはコレで好機ではある。

 

なにせこいつらが内戦をするなら、俺たち

堕天使や天使との不戦条約は絶対に必要に

なるからな。

 

「カテレア、それは言葉通りと受け取っても良いのだな?」

 

他にどう受け取れってんだよ。身内に甘いのも大概にしろや。

 

「サーゼクス、その通りです。今回の

この攻撃も我々が受け持っています」

 

我々・・・ねぇ。現状、その我々の

中にオセは含まれてないようだが?

 

「クーデターか。カテレア、何故だ?」

 

いや、何故ってお前

 

「この会談と逆の結論に至ったのですよ」

 

逆?地位だけじゃねぇってことか?

 

恐らくサーゼクスも同じ考えに至ったのだろう

視線でカテレアに続きを促す。

 

「私たちは、神も先代魔王もいないなら、この

世界を変革すべきだと言う結論に至ったのです」

 

世界の変革ねぇ。そろそろ口を挟むか。

 

「オーフィスの野郎はそこまで先を見てる

のか?どう考えてもそうは思えねぇが?」

 

コイツらがオーフィスを利用してるってのは

わかってる。オーフィスもソレを理解してる

ってのもな。だが世界の変革云々になれば

他の神話勢力が許さねぇだろ?

 

オーフィスはソレを抑えることが出来る

だけの関心をコイツらに持ってるのか?

 

そう考えた俺を見てカテレアはため息を吐きながら

 

「彼は力の象徴としての、力が集結する為の

役目を担うだけです。彼の力を借り、一度

世界を滅ぼし、そしてもう一度構築します」

 

新世界の創造・・・その為の力だと?

つまりオーフィスを神とした秩序の構築か。

 

・・・オーフィスがただの神輿扱いじゃねぇ

のはわかった。

確かにアレには神として担ぐには十分な力が

あるだろう。しかしこの言い様はおかしいぞ。

 

「天使と悪魔と堕天使の中から賛同者を

集い、新たな世界の支配者として立つ。

それはわかった。オーフィスを神として

システムに干渉し、秩序を構築する。

それも良いだろう。だが他の神話勢力は

どうなる?連中をどうする気だ?」

 

コレだ。連中はコイツらによる新世界の

創造なんざ絶対に認めねぇ。

 

オーフィスが居ると言っても。肝心のアイツ

の渇望は神になることじゃなく静寂への帰還。

 

もしもその対処がオーフィス頼りなら一発で

ひっくり返されて終わるぞ?

 

・・・いや、ソレが神野明影の狙いか?!

 

「他の勢力など彼の力で抑えて終わりですよ」

 

やっぱりか!この馬鹿共はオーフィスを

意思や欲を持たない力の塊としか見てねぇ!

 

「カテレアちゃん!どうしてこんな?!」

 

セラフォルーが声を掛けるが・・・いや

ソレは逆効果じゃねぇか?

 

俺の予想通り、今までどこか余裕が有った

カテレアの表情に怒りの感情が現れる。

 

「セラフォルー!私から『レヴィアタン』の

座を奪っておきながらよくもそんなことを!」

 

まぁ旧魔王派どもにしたらそうなるよな。

 

全く、サーゼクスといいコイツといい

ナチュラルに他人の逆鱗を刺激するのが

好きな連中だぜ。

 

コレで他者との和平だのなんだのを本気で

願うんだから、タチが悪ぃよな。

 

「カテレアちゃん!わ、私は・・・」

 

おいおい、今はお前が魔王でそこにいるのは

反乱分子だぞ?話し合いより先にすることが

あるだろう。

 

「セラフォルー。安心なさい。今日ココで

貴女を殺して私が魔王レヴィアタンを名乗り、

そしてアザゼルが言うようにオーフィスを

神とした新たな世界を構築します。

アザゼル、ミカエル。そしてルシファー。

アナタ方の時代はココで終わりです」

 

所詮他人頼りかよ。

まぁコイツの底が知れたのは良いことだ。

後は・・・

 

「新たな世界の構築はわかった、その上で

お前に聞きたいことがある」

 

どうしてもコレは確認する必要がある。

 

「なんでしょうアザゼル?堕天使総督として

の最後の言葉として聞いてあげましょう」

 

完全に調子に乗ってやがるな。

 

まぁ良い。今はそうやっていい気になって

情報をペラペラ喋ってくれや。

 

「あの魔法使いどもが使った俺やミカエル

の力に対抗した技術はオセがお前らに提供

したものか?」

 

新世界の構築なんざアイツが望んでるとは

思えんが、契約なら力を貸す可能性もあるからな。

 

「魔法使いの使った技術?人間如きの技術に

興味はありませんから、その質問には知らない

と返答しましょう。それにオセと言いましたか?

彼が我々に力を貸すはずが無いでしょう」

 

技術に関しては不明か・・・だがオセが

旧魔王派に力を貸さないってのはどういう

ことだ?旧魔王派も戦争を望んでるんだろ?

 

「どうやら政治形態が未熟な堕天使には

わからないようですので教えてあげますが、

オセは所謂貴族派と呼ばれる派閥の長です」

 

いちいち煽ってくるのが気に食わねぇが、

今は情報収集が先だ。

 

でもって貴族派?アイツ派閥なんか持ってたのか?

 

「とは言え本人が貴族派と名乗っているわけ

ではなく、あくまで通称。我々とは違う価値観

を持った集団をそう呼んでいて、その代表格が

オセなのです」

 

こいつらとは違う価値観?どういうことだ?

 

「オセが提唱するのは【悪魔は悪魔らしく・貴族は貴族らしく在るべき】というモノです」

 

「それは知ってる。しかし貴族と言うなら

王に従うのも貴族じゃねーのか?」

 

一応サーゼクス達に従ってるだろ?

 

「名前だけならそう考えるのも無理は

無いでしょう。

ですが、そもそも我々の政治体系は王制

による冊封体制ではないのです」

 

そうか。そう言うことか!

 

確かに土地が余ってる冥界で自治権を

与えられている悪魔の貴族たちは、王に

従ってナニカをしてるわけじゃねぇ!

 

それぞれが好き勝手に領地経営をしてるし

王がソレに対してナニカをしてるわけでも

ねぇ。種族もマチマチでそれぞれ価値観も違う!

 

ソレが国として纏まってるのは外敵と

戦う際に魔王の力を必要としてるのと

通貨や食料の供給をスムーズにする為。

 

個の力を持ち、広大な領土でもって経済を

回し、食糧自給が出来るなら国にこだわる

必要もねぇし、当然魔王に拘る必要もねぇ!

 

魔王の名を何よりも重んずる旧魔王派に

してみれば、思想が近い分決して相容れない存在だ!

 

「どうやら私が言いたいことは伝わった

ようですね。その聡明さは流石堕天使総督と

言ったところでしょうか。賞賛に値しますよ」

 

なんか上から目線で評価されてるが、今は

どうでも良い!

 

てことはオセはコイツらを歯牙にもかけねぇ

から契約を持ちかけられたら乗る可能性が

有るが、コイツらはそのプライドの高さから

オセと組むことはねぇわけだ。

 

そうなればオセは外に居る魔法使いどもに

技術提供はしていない!

 

禍の団とは無関係ってことだ!

 

よしよしよし!つまりオセがコイツらに賛同

してて既に堕天使領に攻め込んでるっていう

最悪のケースは無い!

 

むしろソレを狙ってコイツらが堕天使領との

国境に向かおうとしたら、オセと敵対する

ってことだ。

 

いや~焦ったぜ。魔法使いの技術にしても

俺たちを憎んで研究してた連中がナニカを

発見したってところか?

 

ソレはソレで興味があるが、詳細は捕虜を

尋問して聞き出せばいい。

 

まさか全員自爆とかはしねぇだろうしな。

 

「アザゼル、貴方の蓄えた技術と知識、ココで

失うには惜しい。

どうですか?我々と共に新世界の創造に力を

貸す気はありませんか?」

 

あぁん?馬鹿かてめぇ。それにサーゼクスに

ミカエル。なんで焦ってんだよ。

 

「なんで負け犬のお前らなんかに力を

貸さなきゃならねぇんだ?

セラフォルーに力で負けてレヴィアタンの

座を奪われたんなら諦めて従えよ。

ソレが力を重んじる悪魔のルールだろうが」

 

くだらねぇ。俺たちが乗ってる船も

相当やべぇが。

向こうは既に墜落して沈みかけた飛行機。

いや、羽の付いたカヌーだろ?

 

一人で漕いでろ。

 

「なっ?!貴様っ!!」

 

どうした?余裕が無いぞ?笑えよカテレア。

 

「そもそもオーフィスからもらった蛇で

ドーピングした程度で、俺に勝てると

思ってんのか?寝ぼけんな雑魚が」

 

外付けのナニカで、一時的に出力を増しても、

所詮素の力はコカビエルと戦える程度。

 

「「「「蛇?」」」」

 

サーゼクスやミカエルが首を傾げるが、

カテレアはわかりやすいくらい驚いてやがる。

 

コレでシロネ・オセの情報がまた一つ確度を上げたな。

 

コレが良いことなのか悪いことなのか・・・

まぁいい。正しい情報だったってんなら

有効活用するだけだ。

 

小娘が。その辺の天使や堕天使ならまだしも

そんなんで勝てるほど堕天使総督ってのは

軽くはねぇんだよ!

 

「・・・どうやら貴様は知りすぎている

らしいな!その情報源を吐かせたいところ

ですが手加減出来る相手でもない。

全力で殺させてもらいます!」

 

そう言ってカテレアは懐から小瓶を取り出し

中に入っていた小さな黒い蛇のようなモノを

飲み込んだ。

 

そして次の瞬間、ドゥ!と言う音とともに

爆発的に向上したカテレアの蒼い魔力が

会議室にいる面々を襲った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

「ギャスパー!」

 

部室にたどり着いて、ドアを開けたとき、

俺の目に入ってきたのは妙な魔法陣の様な

モノの中心にダンボールごとギャスパーを

置き、魔法か何かを使って神器にナニカを

していると思われるフードを被った連中と、

虚ろな目をしたギャスパーだった。

 

目の前が真っ赤になりそうになる俺を見て

フードを被った魔法使いが一歩前に出て

何かを言おうとした瞬間・・・俺よりも、

もちろんフードの魔法使いたちよりも先に白が動いていた。

 

 

「まさかこれほど早くココに来るとぅわらば?!」

 

「な、なんだ?!この悪魔ぁぁァァベサン!?」

 

「いきなり殺しにきただとぉぉぉぉルギス?!」

 

「ま、まて!コイツがどうなっっったわばっ!」

 

「止まれ!止まれ!止まれぇぇぇエバラッ!」

 

「このぉ!人質がぁぁぁぁぁぁアベシっ!」

 

・・・ここはまさに世紀末。タフな少年を

自負してる俺だが、この突如展開した白い

暴力が吹き荒れる部室の真っ只中では呆然

として立っていることしか出来なかった。

 

気付けば部室は赤く染まり、ところどころ

に肉片や骨が飛び散っている。

 

コレ、誰が掃除するんだろうな・・・

部室を見た部長が声を荒げる様がハッキリと

見えた気がした。

 

て言うか何も言わせずに殺すって・・・

 

「何をしている?人質を抱えた犯罪者と

会話や交渉するのは御法度だ。

武器を捨てろと言われて、武器を捨てれば

殺されるし、殺された後で人質が解放される

ことなんかないんだぞ」

 

そ、そうだ。我に返って「やりずぎだ!」

って言おうとしたけど、こいつらは元から

命懸けで俺たちを殺しに来てるんだもんな。

 

「時間稼ぎが目的なら会話をしても良いが

時間がないのはコチラだったしな」

 

なるほど。考えなしに殺したんじゃなく、

ソレが最善と判断して殺したのか。

 

交渉なんか無意味だし、まずは全員倒して

安全を確保しなきゃダメだってことだな。

 

・・・女の子の声もしたけど、ここで

「女の子を殺すなんてダメだ!」なんて

言ったら俺も敵を庇ったとか言われて

殺されるか?

 

いやいや、余計なことを考えるな!そもそも

俺たちの目的はギャスパーの救助。

それ以外のことを考える余裕なんかないんだ。

 

「とりあえず君の血をソイツに与えるんだ。

アザゼルやサーゼクスが会議室でも言って

いたが好き嫌いを言える状況じゃない。

そもそも時間を止めると言ってもソレは

あくまで停められた相手の体感時間。

意識がないまま時間が経過すれば残った

体がどうなるかわからんぞ」

 

そ、それって部長達がやばいって事か!

 

それなら好き嫌いなんか言ってられねぇ!

って言うか言わせねぇ!

 

話を聞いて焦った俺は、ミカエル様から

もらったアスカロンを取り出して自分の

手の平を軽く切り、血が滲んだ手のひらを

ギャスパーの口に押し付けた!

 

血の匂いに反応したのだろうか?

 

虚ろな目をしたままギャスパーは俺の

手のひらに舌を伸ばしチロチロと舐めていく。

 

うーん。コレが女の子だったら興奮したの

かもしれないけど、流石になぁ・・・

 

そんなことを考えながらギャスパーを

見てたら虚ろだったその目に徐々に光が

戻ってきた!・・・ような気がする。

 

「それとさっさとアザゼルから貰った

リングをソイツにつけろ。興奮して

また暴走したら、次はもっと危険な状況に

なるかもしれないぞ」

 

い、言われてみればその通りだ。

 

臆病で人見知りのギャスパーにとって

この状況はどう考えても普通じゃない!

 

正気に戻ってからまたすぐ暴走なんて

ことになって部長にナニカ有ったら大変だ!

 

そう思い、ギャスパーの右手にリングを

嵌める。

 

それと同時に、ギャスパーから放たれてた

神器の気配が消え、空気の流れも感じられる

ようになった。

 

つまり・・・

 

「い”、イ”ッ”セ”ーセ”ン”ハ”イ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”」

 

うん。正気に戻ったのは嬉しい!

だけど俺の服に鼻水付けるのは止めてくれっ!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーカンザシ視点ーー

 

 

「バロールの魂の欠片の破壊を確認。流石神野サンだね!」

 

私たちからすれば厄介って程ではないけど、

明らかにバロールを超えたなんかよくわかんない力。つまりはご都合主義的な力だったからねぇ。

捕獲とか解析よりも破壊を優先して正解だったね。

 

『だろぉ?魂と一体化した神器を狙う方法が

有るなら、神器の中にある魂を狙うことも

可能さぁ。なにせ魂があるなら感情がある。

感情が有れば渇望がある!

生存本能と一緒にソレらを暴走させて

制御を失わせ、残った剥き出しの魂を喰らえば

カンタンにおしまいさぁ』

 

魔法使いたちは自分たちに神野サンの分体(小さな蟲)

憑いて居たことなんか知らないし、白龍皇も

血肉で汚れた部屋にいる蟲に注意なんか

払わない。変態吸血鬼は意識が無かったし

そもそもコイツの中に居たモノを正しく

理解出来てたヤツが居ない。

 

「後は抜け殻の神器と竜の血とリングで

ソレを制御したと思い込む連中だけ。

まぁ元々抜け殻でも十分な威力を持った

神器だから、本人が違和感に気付かない限り

気付くことはないね。時間が経てば尚更無理」

 

これで赤龍帝の近くにあるご都合主義が一つ消えたね。

 

『だねぇ。唯一気付きそうなアザゼルは自称

魔王様と戦闘中だしぃ?』

 

自称魔王w普通に辺境で国を作れば普通に

国主として生きていられたのにねぇ。

 

『んじゃ、アレが終わったら僕の番かな?』

 

ん~本当はYOSHITUGUとかALICE・X

とかの登場シーンとか色々考えてるんだけど、

今回は両方出せないからなぁ。

 

まぁ神野サンは神野サンで煽りとか色々

参考になるからいいんだけどね!

 

「ですね。今回も神野サンに張り切ってもらいましょう!」

 

『むぁかせてぇ!アーヒャヒャヒャヒャヒャ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ΦωΦ)・・・最近出番ないにゃぁ




原作読み返して、新世界の構築とか、こいつら
一応真っ当なことを掲げてたんだなーと思いましたマル。

悪魔の駒にも反対してるし、堕天使や
天使とは敵対してるでしょ?
実は真っ当な悪魔なんですよねぇ。ってお話


玉ねぎの皮を一枚一枚剥いていくオセ君陣営。
尚、玉ねぎはそのことに気付いていないもよう。


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42話

原作主人公サイド。

無事魔法使いの魔の手からギャスパーを
助けた俺と白龍皇!

神器の暴走も収まって、コレから
どうしようかと考えていた時のことだった。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

俺に縋り付いて泣き叫んでるギャスパーを

あやしていると、部屋の隅から紅い光が

漏れ出して来た。

 

アレは部長の私物が置いてある場所だよな?

 

不思議に思っていたら、部屋の奥から

 

「イッセー!ギャスパー!無事?!」

 

こ、この声は部長?!

 

「落ち着いて下さいリアス。敵が

残っていたら攻撃を受けますわよ?」

 

朱乃さんもだ!

 

会議室で動きを止められていた、二人

の声が部室の中に響く。

 

「キャスリングか・・・悪魔の駒の機能

なのだろうが、使い手がアレではな。

人質を取られたらどうする気だったのやら」

 

白龍皇がそう呟く。

 

そ、それはそうだ。俺達を大事に思ってる

って言うのは嬉しいけど、犯罪者にして

見れば人質としての価値が有るってことに

なるんだもんな。

 

さらに敵が居た場合は、自分の位置を相手に

教えることになるし、相手に準備されちまう。

 

白龍皇は確かにやりすぎかも知れないけど、

その結果最短でギャスパーを助けることが

出来たし、俺達も無傷だ。

 

ソレを考えれば、やっぱりコイツは間違って

無いってことになる。

いや、だからって眷属を大事にする部長が

間違ってるって訳じゃないけどな!

 

「な!何よこの血と肉片?!私の部室で

一体何が有ったの?!」

 

うん。転移してきていきなりソレ見たら

ビックリしますよね。

 

「さて、君の仲間は助けて神器の暴走も

収まった。さらに主が来たのならコレ

以上の護衛は要らないだろう?

俺はこの辺で失礼させてもらうよ」

 

あ、そうだな。そもそもコイツはその為に

一緒に来てくれたんだもんな!

 

「あぁ、おかげで助かった!感謝するぜ!」

 

宿命のライバルとか過去の赤龍帝の所持者

云々は知らねぇけど、とりあえず俺はコイツ

に何も悪い事されてねぇしな。

 

むしろ助けられたんだから感謝しねぇと。

 

そう思って頭を下げるが、向こうからは

何のリアクションも無い。

どうしたんだ?と思って顔を上げて

みれば、そこには苦虫を嚙み潰したような

顔・・・とは少し違うな。

 

普通にリアクションに困ってるような顔を

した白龍皇が居た。

 

「俺の中のアルビオンも絶句してるが

まぁ良い。感謝は受け取ろう」

 

ん?やっぱり赤龍帝がコイツに感謝する

のはそんなに珍しい事なのか?

 

「では失礼する。・・・まだ敵は居るんだ。

油断して魔法使い如きに足元を掬われない

ようにするんだな」

 

憎まれ口なのか本心からの注意なのかは

わからないが、そう言って白龍皇は部室

から出て行った。

 

「イッセー!」

 

ソレを見送ってたら、部長が俺を見つけ

声を掛けてきた。

 

多分今まで奥から部室の中を伺って

たんだろう。その上で戦闘が終わって

ると判断して出て来たってとこかな?

 

「部長!ご心配をおかけしました!」

 

だけど今はそういう考察はどうでも良い!

神器で止まってた部長達に副作用とかも

なく、こうして無事に動けるようになったんだからな!

 

そう思って振り返ると、そこには満面の

笑みを浮かべた部長が・・・

 

アレ?なんか怒ってない??

 

「えぇ、お兄様から事情を聞いてとても

心配したし。ギャスパーも敵にどんな目に

遭わされたのか、想像するだけで怒りが

込み上げてくるわっ!」

 

ぶ、部長から紅いオーラが・・・

 

「まさか私の眷属をテロの道具として利用

するなんてね・・・私の顔に泥を塗るだけ

じゃなくお兄様の立場を悪化させ、悪魔の

立場を悪化させ、貴方やギャスパーを危険

な目に巻き込んだ連中が憎くてたまらない!」

 

そ、そうだよな。今回の件で部長はアザゼル

だけじゃなくミカエル様にまで失望されてた

みたいだし、せめてルー・ガルーさんの言う

ことを聞いていたらギャスパーが利用される

なんてことは無かったんだ。

 

ソレに対しての後悔もあるんだろう。

 

油断してたのは事実かも知れないけど、

コッチが油断してたからって向こうが

何をしても良いってわけじゃねーんだ。

 

眷属を大事にする部長が怒るのも無理はない。

 

「そしてこの部屋よ!何がどうなれば

こんなに肉片や血塗れになるのかしら?!

コレなんて、念入りに壁にこすりつけて

るわよね?!」

 

やっぱり怒った!ま、まぁそうだよな!

自分の拠点にこんなグロい塗装されたら

怒るよな!

壁紙変えるとかそう言う次元じゃねーし!

 

「あ、いや、ソレは白龍皇が思いっきり

殴った結果、壁と一体化したヤツです!」

 

つかアイツ、部長に絡まれるのが嫌で

さっさと出て行ったんじゃねーだろうな?!

 

「白龍皇・・・話は聞いていたけど本当に

イッセーに協力してくれたのね?」

 

部長も訝しげにしているけど、やっぱり

白龍皇が赤龍帝に協力するって言うのは

相当珍しい事みたいだな。

 

「えぇ、この魔法使いたちも、ギャスパー

を人質に取られないようにって言って

アイツが速攻で潰したんです」

 

だから悪いのは全部アイツです!

 

「そう・・・それなら白龍皇に文句を

言うのは筋違いね。

そもそも私の油断が原因なんだし・・・」

 

今回に限れば白龍皇は眷属の命の恩人。

 

眷属か部室かを考えれば当然眷属を

優先するだろうし、そもそもが自分の

尻拭いだと思えば白龍皇に文句なんか

言えるはずがない。

 

つまり・・・俺もセーフですね!

 

・・・・・・

 

「はぁ。もういいわ。とりあえずイッセー。

私たちの動きが停まってたときに一体何が

有ったか教えてくれるかしら?」

 

部室の内装について気持ちの折り合いを

付けたのか、頭を押さえて何かを考えてた

部長が溜息を吐いて俺に説明を求めてくる。

 

けど状況説明ならサーゼクス様が向こう

に居るんだから、説明受けて来たんじゃないの?

 

疑問が顔に出てたんだろう。ギャスパーに

異常が無いかどうか調べていた朱乃さんが

ギャスパーと一緒にコッチに来て、笑いを

堪えながら補足してくれた。

 

この様子だとギャスパーに異常は無かった

みたいだな。

俺にはそう言うのが分かんないから、正直

助かったぜ!

 

「リアスったら気付いたらイッセー君が

居なくなったものだから、もう凄く錯乱

しちゃってね?

白龍皇と一緒にギャスパー君を助けに

行ったって聞かされて、更に混乱したの」

 

あぁ、なるほど。俺もいきなり部長が

消えてたら焦るよなぁ。

 

「朱乃!」

 

怒ってるようだけど、コレは俺にもわかる

恥ずかしいのを誤魔化してるんだ。

 

そんなお顔も可愛くて最高です!

 

「ソレで、戦車の駒を部室に置いてある事を

思い出して一人でここにキャスリングで転移

しようとしてね?

グレイフィア様に「落ち着け」って叱られて

私と一緒に送ってもらうまで、ずっとこんな

感じでソワソワしてたの」

 

あぁ、なるほど。向こうでは説明を聞いてる

余裕が無かったんですね。

 

部長は真っ赤な顔してソッポを向いている。

 

ココまで大事にされてるってのは眷属冥利

に尽きるよな!部長の眷属で良かった!

 

「そんなわけで私たちは細かい事情

とかを知らないんです。

キャスリングもリアスと一緒に来れるのは

一人だけってことでしたので、私が同行し、

ルー・ガルーさんはアーシアちゃんの護衛

ということで向こうに残って貰ってます」

 

なるほど。アーシアが居ないのはそう言う

事だったのか。

まぁルー・ガルーさんが護衛と言っても

向こうには魔王様方が居るから襲撃を

受けるなんてことは無いだろうけど・・・

 

「向こうは今回のテロの首謀者が現れて

アザゼルと戦闘をしてるわ。

お兄様たちはその余波に巻き込まれて校舎

が破壊されたりしないように結界を張って

て動けない状況だし、何かお手伝いをする

にも事情が分からないと何も出来ないわ」

 

む、向こうに首謀者が?!それにアザゼル

と戦闘?!ま、まぁサーゼクス様が結界を

張ってるならアーシアは無事だろうけど、

相当ヤバイヤツってことか?!

 

ソレにさっきから部長がサーゼクス様を

お兄様って呼んでるのはそれだけ動揺

してるってことだよな。

 

停まる前の状況を考えれば、コレ以上

サーゼクス様の足を引っ張れないって感じか。

 

「だから教えて頂戴。一体何が有ったの?

どういう状況で、どんな考察、どんな会話が

有ったのかを。勿論覚えてる限りで良いから」

 

そう言って部長は真剣な表情で俺の目を見る。

 

当然俺に否は無い。ただ、下手に俺の考え

とかを言うと混乱するだろうから、会議室

でのアザゼルやサーゼクス様の会話は聞いた

ことをそのまま伝えた方が良いよな?

 

俺がそう言うと部長は「ソレでお願い」と

言って頷いてくれた。

 

よし!上手く説明できるかは分からねぇけど、覚えてる限りの事は伝えよう!

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

カクカクシカジカムートンイトウザ・ワールドソシテトキハウゴキダス!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なるほど・・・事情はわかったわ。説明ありがとうイッセー」

 

とりあえず部長が動きを止められてから

今までの流れをざっと説明したら、感謝

の言葉を貰えたぜ!

 

「ぼ、僕が好き嫌いなんかしたから・・・」

 

そう言って凹むギャスパー。

 

ソレは確かに原因の一つだけどそもそも

こんなのは想定外だろ?

 

「ギャスパー。今はそう言って自虐してる

場合じゃないの、イッセーの血を飲んで

さらにそのリングで神器を制御出来てるなら

その力を活かす方法を考えましょう」

 

・・・厳しいけど事実だ。下手な慰めなんか

出来る状況じゃ無いし、何よりこのままじゃ

部長の立場が悪くなる一方だしな!

 

「けど魔法使いがミカエル様やアザゼルの

力を無効化ですか・・・いえ、正確には

無効化では無いのでしょうけど、かなりの

力を減退出来るとなると・・・」

 

朱乃さんは真剣な顔で考え込んでいる。

 

「そうね。そしてお兄様やアザゼルが

口にしたオセに関しての疑問・・・彼が

全くの無関係とは思えないわ」

 

そうそうオセだよ。

 

「部長、そもそもそのオセって言うのは何者

なんです?いや、72の悪魔の1人なのは

合宿の時に教えて貰いましたけど・・・」

 

ライザーとか会長と同じ純血悪魔なんだよな?

 

「彼については正直よくわかって無いのよ。

駒王町の管理者としての前任者で、私の

婚約者候補だったんだけどね?」

 

「こ、婚約者候補ぉぉ?!」

 

何だと?!ライザー以外にもそんな奴が居たのかよ!

 

「もう。そんなに驚かなくても大丈夫よ。

昔の話だし、所詮は【候補】だったから」

 

しょうがない子ねと言って部長が頭を

撫でてくれるが、何て言うかこの衝撃は

簡単に消せそうにないぞ!

 

「そもそもオセ様は伯爵家当主ですから

グレモリー家の次期当主であるリアスとの

婚姻は難しかったんです。

もし結婚する場合はリアスが次期当主を

降りて向こうに嫁ぐ形になってましたわ」

 

な、なるほど。公爵家の次期当主としては

有り得ない相手だったのか。

 

「更に彼は戦争推進派で、穏健派である

今の魔王様方とは距離を置いてるの。

まぁソレを取り込む為の政略結婚と言う

話でもあったんでしょうね」

 

あぁなるほど。確かにオセのことを知ってる

ヒトは口をそろえて戦争推進派って言うよな。

 

ソレを味方にする為の結婚か・・・

ライザーの時よりタチが悪いじゃないか!

 

「さらに彼の所領は堕天使領と隣接した

冥界でも指折りの危険地帯。

彼が堕天使に味方したり、逆に勝手に

戦争を仕掛けることが無いようにする

楔の役割もありますわね」

 

楔って・・・完全に部長を個人として

見てねぇじゃねーか!

 

「つまり彼と私の婚姻に関して政治的な

意味を考えれば、侯爵家の三男でしかない

ライザーと比べても比較にならないほど

大きいのよ」

 

政治的な意味って・・・

 

「その為この婚姻はリアスのご両親や魔王様

だけじゃなく、魔王様に賛同する穏健派の

貴族の方々にも是非にと望まれたモノでした」

 

魔王様だけじゃ無く他の貴族まで・・・

 

「コチラから向こうに付けた条件は私を

正妻として迎えることだったわ」

 

正妻って。そりゃそうだよな。公爵家の

次期当主を降りてまで向こうの家に

お嫁さんに行くんだ。

 

ライザーのところみたいに、何人も居る

女性の一人って訳には行かないだろ!

 

「ソレに対してオセ様は「自分の正妻を

お前らが勝手に決めるな」と言って婚姻を

拒否したのです」

 

「はぁ?!」

 

次期当主を降りてまでお嫁さんに行くって

言う部長を、正妻にするのを拒否しただって?

 

何様だ!?いや、そこで結婚されてたら

俺が部長と会うことはなかったんだけど!

 

「そもそもオセには奥さんが居たのよ。

転生悪魔だけど、仲の良い夫婦らしくてね。

側室の第2夫人も居てその人との仲も良好。

そんなところにいきなり正妻として私を

送り込まれても迷惑だってことらしいわ」

 

お、奥さんが居たのか。ソレなら、まぁ

しょうがないのか?

 

「ソレに話を聞く限りだと私とは価値観が

まるで違うから、どうしても幸せな家庭は

築けなかったでしょうね」

 

価値観?まぁ戦争推進派だもんなぁ。

 

「彼はレーティングゲーム否定派でも

あるのです。その為一度もゲームに参加

したことが無いのですよ」

 

そりゃ部長とは合わないよなぁ。

 

「だけど、戦争が好きなのにレーティング

ゲームも否定してるんですか?」

 

戦争が好きなら予行練習みたいな感じで

参加してると思ったんだけど・・・

 

「その辺は良く分かって無いけど、そもそも

彼は【貴族は貴族らしく在るべき】って言う

主張をしててね?

転生悪魔や下級悪魔がレーティングゲームで

成り上がるのを嫌ってるんじゃないかしら?」

 

な、なんてヤツだ!自分が貴族だからって

他の悪魔が成り上がるのを嫌ってるって

言うのかよ!それに貴族らしくってことは

やっぱりライザーみたいな高慢ちきなヤツってことだろ?!

 

「そう、選民意識も強そうでしょう?眷族に

情愛を注ぐリアスだと、どうしても反発

しちゃうだろうし、元からいた側室との間

にも軋轢が生まれます・・・。

つまりオセ様は魔王様やグレモリー家との

繋がりを得ると言うプラスよりも、リアスが

嫁ぐことで発生するであろう家中の混乱等の

マイナスの方が大きいと判断したのでしょうね」

 

「ぶ、部長をマイナス扱いって!」

 

ソレが政略結婚だって言われたらそう

なのかも知れねぇけど!

 

確かに元々奥さんが居るところに部長が

奥さんとして嫁いだら問題はあるだろうし、

貴族として考えればそう言う考えになるの

かも知れねぇけどッ!

 

それじゃ誰も部長個人を見てねぇだろ?!

 

「まぁ結果として政略結婚しなくて済んだし、

家の事は当然としても、貴族なのに奥さんを

大事にするヒトだってことだから私としては

悪い印象は無いのよ?

戦争推進派と言っても国境沿いなら沢山

問題は有るだろうし、安全なところで

戦争だ平和だと無責任に言ってるヒト達より

はずっとマシだと思ってるわ」

 

い、言われてみれば確かにそうかも・・・

 

奥さんを大事にしてるって言うなら、

部長個人を見るってのは浮気みてぇな

モンだし?そんな真似はしねぇよなぁ。

 

側室ってのがアレだけどライザーとかを

見れば、貴族の当主は沢山奥さんが居る

のが当たり前みたいだし。

 

後は序列?の問題だったのか?

 

「ただ私たちがフォローを受けていた

と言うのがわかりませんわね。

着任の際もご挨拶は特にしなくて良いと

グレイフィア様から言われてましたし」

 

とりあえず婚約者関係の話題は一段落

したとみて良いんだろう。

 

次の話題として朱乃さんが不思議そうに

呟いたのは駒王町の管理のことだ。

 

アザゼルやらサーゼクス様の様子を

見れば嘘じゃなさそうなんだよなぁ。

 

「私が彼と連絡を取っていないと言う事を

アザゼルやミカエル様は有り得ないことの

ように言ってたし、お兄様もそのことを

否定はしなかった・・・

つまり知らないうちに何かしらのフォローを

受けて居たと言うことなんでしょうね」

 

部長も不思議そうな顔をしてる。

本当に心当たりがないみたいだ。

 

そもそも普通に考えて、結婚を断った

相手のフォローなんてするか?

 

それとも結婚を断ったことに対する

罪滅ぼしみたいな感じなのか?

 

「あ、それと確かミカエル様はオセが

魔王様方を処刑するとかって言って

ましたけど、そんなこと出来るんですか?」

 

白龍皇やドライグが言ってた魔王様より強い

悪魔ってのがオセのことなんだろうけど、

いくら何でもそんなこと出来るのか?

 

「・・・そうね。レヴィアタン様も

穏健派が全滅するって言ってたわね」

 

レヴィアタン様?!今、レヴィアタン様って

言いましたよね?まさかサーゼクス様の隣に

居た女の子ってレヴィアタン様だったの?!

 

「ミカエル様もアザゼルもソレについて

懸念してましたわね。

今の魔王様方を殺したら悪魔を率いた

オセ様との戦争だと・・・」

 

俺が衝撃の事実に驚いている間にも

部長と朱乃さんは考察を続けていた。

 

そうだ。サーゼクス様を始めとした魔王様

の力を知ってるはずのミカエル様も、そう

言ってアザゼルを止めてたな。

 

「・・・つまり魔王様が勝てると

思ってないってことですか?

ミカエル様もアザゼルも。魔王様方御本人も?」

 

更に相打ちとかじゃ無く、絶対にオセが

生き残るって判断したってのか?

 

「・・・そうなるわね」

 

悔しそうなお顔の部長。なんだかんだ

言ってサーゼクス様の力を一番理解して

信じてるのはこの人だもんな。

 

そりゃ認めたくないさ。

 

「おそらくソーナ会長の情報源はオセ様

でしょう。ソレを考えれば、今のところ

オセ様が敵対していると言うことは

無いのではありませんか?」

 

そう言って沈みかけた場の空気を明るく

しようとしてくれる朱乃さん。

 

こういう気遣いが出来るからこの人は

部長の女王なんだろう。

 

「ソーナか。確かに何かしらの繋がりは

ありそうね」

 

後で確認することが増えたわねと言って

右手で頭を押さえ目を瞑る部長。

 

今まで得た情報を纏めて、コレから

どうするかを考えてるんだろう。

 

部長の邪魔をしないように俺と朱乃さん

は黙って部長の判断を待つ。

 

そう言えばギャスパーは・・・

ふと思いだし、ギャスパーを見てみると

そこでは自分でボールを飛ばして、ソレを

停める訓練をしているギャスパーの姿が。

 

そうか、コイツもコイツなりに出来る

事をしようとしてるんだな。

 

そう思うと胸が熱くなってくるのを感じる!

 

どれくらい経っただろう。部長が目を開け

強い意志を宿した視線で俺達を見る!

 

「まずは魔法使いを片付けましょう。

グレイフィアが一人で頑張ってるみたい

だけど、打ち漏らしは絶対に出るし

天使や堕天使の力が通じないならソッチ

を狙えば援護になるわ」

 

なるほど。まずは数が多いけど悪魔の

力に対抗出来てない魔法使いを潰す

のか!

 

「そうなるとアーシアちゃんは

向こうに置いてきて正解でしたわね」

 

朱乃さんがそう言うが、ほんとに

そうだよな。

相手は数が多いし、自衛の力を持たない

アーシアが狙われる可能性が高いんだ。

 

ギャスパーについては・・・

 

「ぼ、僕も戦います!イッセー先輩の

血とこのリングのおかげで神器も

制御出来てるみたいだし!」

 

ボールを手に持ちながら、覚悟を

決めた目で俺達を見据えるギャスパー!

 

こいつも男だな!

 

「そう、なら貴方も着いてきなさい!

皆、行くわよっ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

部長の力強い言葉に俺たちの返事が続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王学園オカルト研究部の出陣だ!

 

 




茶番回であるっ!

オセ君に関しての知識が少ない?
まぁゲーム脳ですし、婚約を断られた
相手の事をわざわざ細かく教えたりは
しないよねってお話。



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43話

カ、カテレアちゃーん!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


 

ーーアザゼル視点ーー

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ふむ。流石は水と氷の魔法特性を持つ

レヴィアタンの直系。

ソレを操る技術は中々のモンだ。

 

ついでにオーフィスの【蛇】によって

強化されたことで出力も上がっている。

 

「アハハハ!どうしましたアザゼル?!

アレだけ偉そうな口を叩いておきながら

防戦一方ではありませんか!」

 

感情は躁状態。コレは急に得た力に溺れてるのか?

 

それにしては力を制御出来てるように見えるんだが・・・

 

【蛇】を飲み込んだのは初めてじゃないが、

かといって頻繁に訓練出来るほどの回数

じゃねぇってところか?

 

そもそもコイツ等は訓練するってタイプ

の性格じゃねぇだろうけどよ。

 

「ほらほらほらほらぁ!」

 

周囲に生み出したのは大量の水と氷。

だが問題はコレじゃねぇな。

 

「破ッ!」

 

気合と共に光の槍を展開し、ソレを放出せずに

ぶつけ合わせる事で衝撃波を生み出す。

 

その衝撃波に押され、俺の周囲に広がって

いた霧状にまで薄まっていた水滴や水蒸気が

霧散していった。

 

「これ見よがしに自分の周りに水や氷を

展開しておいて相手の注意を自分に向け、

実際狙ったのは細かい水滴や何やらを利用

した水蒸気爆発・・・だろ?」

 

そんな手に引っかかるかよ。

 

「ほう。流石は堕天使総督。この程度の

小細工では倒せませんか・・・」

 

コッチはそもそもコイツがこんな小細工を

使えることに驚きだ。

 

さっきまでの躁状態も半分は俺の油断を

誘う為の演技か。

 

「セラフォルーに敗れたお前が、何で俺達

全員の居る会場に単身で乗り込んで来た

のか疑問ではあったが、コレならまぁわかる」

 

今のコイツはかつての魔王と同格だ。

 

実際に戦えば経験の差から先代の方が上

だろうが、力だけなら上回るだろう。

 

ソレだけの力が有ればセラフォルーにも

勝てると判断したのかも知れねぇな。

 

「こちらは完全に予想外ですよ。先代と

戦い生き残ったアナタが弱いなどとは

思ってませんでしたが、所詮は技術者で

ありオセの眷属如きに怯える臆病者。

この力が有れば瞬殺出来ると思ってましたからね」

 

アホか。シロネ・オセやカンザシ・オセの

恐ろしさは直接の戦闘能力じゃねぇ。

 

無論ソレも怖いが、厄介なのは技術力や

徹底的に鍛えこまれた技。そしてソレを

万全に使いこなす思考。

 

更にアレだけの実力がありながらオセの

為に命を惜しまねぇ精神性だ。

 

「少なくともレヴィアタンに成れなかった

腹いせに、新世界を構築しようとする小娘

よりは向こうの方がよっぽど怖えぇよ」

 

なんたってオセの為なら全てを滅ぼせる

連中だからな!

 

「世迷い事を。まぁ良いでしょう。私が

こうして貴方と戦うことが出来る。

この事実が有れば禍の団に所属しよう

とする勢力も増えるでしょうね」

 

ちっ。ソレはそうだ。

 

俺が向こうの力を観察しているとはいえ、

少なくとも今のコイツは俺が瞬殺できる

ような雑魚では無くなった。

 

逃げに専念されれば逃がす可能性すら有る。

 

・・・

 

ん?逃がす?待て待て待て。そもそも

コイツはどうやって会議室に転移してきた?

 

転移陣を敷くための準備は何時行った?

 

結界は破られてねぇよな。

間違いなく内側にコイツ等と連絡を

取ってるヤツがいるってことだ。

 

ソレは誰だ?まず悪魔はねぇ。

 

サーゼクスもセラフォルーも和平を望んで

るし、カテレアの存在は知らなかった。

無能の眷属にはそんな頭がねぇ。

 

天使もねぇ。ミカエルは堕天使も悪魔も

信じてねぇが、今の天使に戦争をする

だけの余裕は無ぇ。

 

そうなると・・・堕天使。いや。

 

「ヴァーリ。お前が裏切ったか」

 

呟いた俺の視線の先には、禁手化した

ヴァーリの姿が有る。

 

「あぁ、気付かれたか。本来ならカテレア

との戦いの隙を突いて奇襲する予定だった

んだが・・・コカビエルの時のことが頭に

浮かんできてね。

下手な奇襲よりも俺の存在を知ったときに

生じる隙をカテレアに突いてもらおうと

してたんだ」

 

なるほどな。流石に完璧な奇襲を回避

された挙句、YOSHITUGUに殴られ

説教されたのは相当応えたようだな。

 

「もともとは和平が決まった瞬間にハーフ

吸血鬼を拉致、それから魔法使いによる

特攻を仕掛け、頃合いを見て私と白龍皇が

暴れる予定でした。

アナタ方の誰かを1人を殺せれば最高。

無理でも会談を壊せればソレで良かったのですよ」

 

ヴァーリが参戦し勝ちを確信したのか、

カテレアはペラペラと情報を明かして来る。

 

「・・・確かに俺たちの面子を潰すことは

出来るだろう。

和平が締結した後で種族的には悪魔である

お前が暴れれば、サーゼクス達の立場も

無いし悪魔勢力は信用を失い、和平も

立ち消えることになるだろうさ」

 

俺がソレを認めると、ヤツは満足げに頷いた。

 

「そうですね。それこそが狙いです。

そして今ココで、一人で飛び出して来た

貴方を仕留めれば完璧と言えるでしょう」

 

コイツ等の頭ん中じゃそうなんだろうがよ。

 

「だがあの場ではまだ和平は成立して

無かったぞ?むしろ悪魔陣営を糾弾

していた。それなのに何故出てきた?」

 

タイミングがおかしいだろ?

 

先ほどの満足げな表情から一転、忌々しげ

に俺を見据えるカテレア。

 

・・・表情に出過ぎだ。まぁ普段から我慢

なんかしてねぇだろうから、こういうのは

しょうがねぇんだけどよ。

 

「私としても誤算でしたよ。まさか会談の場で

ハーフ吸血鬼の事に言及されてしまうとは。

無能があのまま赤龍帝を置いて会議室から

立ち去っていたら、無能ごとハーフ吸血鬼を

拉致して行動に及べたのです」

 

・・・そうなればサーゼクスは怒り狂うが

動きを停めることになってただろうな。

 

まさか無能が魔王に口答えしたことで

コイツ等の計画が狂うとは思わなかった。

 

なんつーか、コッチだけじゃなく敵にも

被害を出す無能ってすげーな。

 

「あそこでサーゼクスの命令をうけた

グレイフィア等が動けば作戦が根底から

覆ります。故に動いたのですよ。

白龍皇が赤龍帝と一緒に動いたのは

意外ではありましたが、単独行動できる

切っ掛けとしては悪くありませんでした」

 

そう言うとカテレアは再度魔力を集め始めた。

おしゃべりの時間はお終いってか?

 

だが俺にはまだ確認しなきゃならねぇ事が有る。

 

「ヴァーリ。何時からだ?」

 

そう、コイツがいつから禍の団と接触

してたかだ。

 

「オファーは元々あったんだがね。決定的に

なったのはコカビエルを連れ戻す為に待機

してた時さ」

 

あぁん?なんでそんな微妙な・・・いや

連中にしてみれば、コカビエルは禍の団を

支援してるハーデスの協力者か。

 

ならばヴァーリにあの場でコカビエルを

奇襲で倒させて、その後はケルベロスやら

何やらの管理不足を理由にハーデスが

預かると言った形にしようとしてたんだな。

 

そうすれば俺に怪しまれることなく堕天使

陣営の幹部を回収できるし、コカビエルが

纏めてた主戦派の確保が出来たって訳か。

 

ヴァーリはヴァーリで強者との戦いを

望んでたからな。

 

「そもそもの誘い文句はアースガルズと

戦ってみないか?と言うモノでね。

戦争を望んで無いアザゼルには悪いと

思ったが、そそられたのは事実だ」

 

まぁ、コイツにしてみたらそうかも

知れんが・・・

 

「アザゼルには感謝している。ソレは

嘘じゃない。だが、俺はコレ以上ぬるま湯

の中に居ることに耐えられないんだ!」

 

「ぬるま湯・・・そうか。やはり決め手は

YOSHITUGUか?」

 

完膚なきまでに自信を砕かれたからな。

 

「そうだ!俺はもう一度ヤツと戦い、

そして打倒する!

俺はアイツを倒さないと一歩も先に

進むことは出来なくなったんだ!

その為には悪魔陣営と手を結ぶことを

認めるわけには行かないんだよ!」

 

ちっ。最強と言う曖昧な目標ではなく、

実像としての敵を見つけて、それ以外が

見えなくなったってのかよ!

 

「・・・YOSHITUGUより俺達の方が

強いのは知ってるな?」

 

アレが強いのは確かだが、ソレでも

俺やサーゼクスには劣るんだぞ?

 

「無論知っている!つまりYOSHITUGUを打倒

した後にも俺が目指す敵が居るということだ!

最高じゃないか!」

 

あ~そういう事か。段階を踏んで自分の

成長を実感するって感じか。

 

溜ってた鬱屈が最悪な方向に爆発しちまったな。

 

そう思ってヴァーリを見てみれば狂相と

言っても良い笑みを浮かべていた。

 

うん。こりゃ駄目だ。言葉で何とか

なるような状態じゃないし、かといって力づく

で何とかしてもYOSHITUGUと戦わない限りは

元には戻らんだろう。

 

『俺としてもあそこまでコケにされて

黙っているわけにもいかんッ!』

 

アルビオンもか・・・

 

無能の眷属のガキに宿り半ば諦めが

入ってるドライグと違い、ヴァーリは

今までで一番優秀な白龍皇だもんな。

 

最強を目指すコイツなら、いずれは

奥方やオセに挑むことも出来ると思ってたのだろう。

 

「奴は半減の力を姑息な力と断じた!

だが俺の考えは違う!

持っている能力を使いこなして何が悪い!

サーゼクスの消滅は卑怯な力か?

レヴィアタンの水と氷は姑息か?

ヤツが使った透明になる技はどうだ?!」

 

・・・論点がずれてるぞ。

 

最強なら相手を弱体化させるのはおかしいって話だろ?

 

いや、能力込みで最強って言うならソレは

ソレで良いんだが、コイツの思い描く最強は

どんな手を使ってでも最後に立ってる奴が

最強だ!って感じじゃねーよな?

 

そもそもYOSHITUGUは最強目指してるなんて一言も言ってねぇし。

 

しかし、余裕を無くし手段を選ばなくなったヴァーリか。

 

戦士としては間違いなく一皮剥けたな。

 

神器の力は魂に左右されると考えれば

今のヴァーリは完全に白龍皇と同調

してやがる分、かなり厄介な存在だ。

 

そもそもカテレアが俺と戦えるレベル

だってことを考えれば、一度でも半減を

喰らえばアウト。

 

・・・仕方ねぇ。使うか。

 

「今のお前ら相手じゃ俺も切り札を切る

しかねぇ。済まねぇがさっさと終わらせて

貰うぞっ!」

 

そう言って懐から切り札を取り出すと、

カテレアとヴァーリは俺から距離を取った。

 

見慣れない武器を警戒して距離を取るのは

間違っちゃいない。だが今回は悪手だったな!

 

本来はデミウルゴス対策に用意したモンで

ココで使う予定は無かったが・・・

 

「・・・白龍皇あの短剣は?」

 

「知らん。まさしくアザゼルの奥の手だろう。

潰すにしても下手に近寄ってカウンター系の

技ならアウト・・・さて、どうする?」

 

ハッもう遅せぇよ!

 

「禁手化ッ・・・!」

 

言葉と共に俺が造った人工神器に力を注ぐと

短剣が光を放ちながらその姿を変えていく!

 

「・・・ドラゴンだと?!」

 

驚くヴァーリ。流石にわかるか?

 

「まさか人工的な神器まで造っていたとは。

ソコまでの情報は有りませんでした・・・」

 

そりゃそうだ!誰が内通してたか知らねぇが

コレを知ってるのは俺とシェムハザだけだ!

 

「白い龍と他のドラゴン系神器を研究して

創り出した俺の傑作人工神器!

『堕天龍の閃光槍』それの疑似的な禁手状態

『堕天龍の鎧』だ!」

 

俺の放つ堕天使としての力と鎧から生じる

ドラゴンの力。

この二つが相殺することなく共存する形に

出来たのはまさしく奇跡だったぜ!

 

「疑似的な禁手だと・・・」

 

ヴァーリは明らかに衝撃を受けている。

そりゃそうだ。ドラゴン系の禁手の怖さは

コイツが一番良く知ってるからな。

 

『神器を暴走状態にして強制的な覚醒を

促している。一種の暴走だな。

傑作の人工神器とやらを使い潰す気か?』

 

流石は神器となったアルビオン。その

程度はわかるか。

 

「・・・力を持つ龍を核にしましたね?」

 

そんなの見りゃわかるだろう?

 

「あぁちょっくら『黄金龍君』ファーブニルと

契約を交わしてな。二天龍の禁手を模したのさ。

今のところ実験は成功ってところか」

 

対価の支払いが面倒ではあるが、ソレを

上回るだけの価値はある!

 

「ははは!やっぱりアザゼルは凄いな!」

 

今頃気付いたか?

 

「まぁお前の相手は後だ。まずはカテレア。

貴様を殺さねぇとなぁ。お前だって

オーフィスの力でドーピングしたんだ。

俺が開発した技術を自分で使うことを卑怯とは言うまいな?」

 

そもそも戦いに卑怯もへったくれもねぇけどよっ!

 

「くっアザゼル!貴方はソレだけの力を持ちながらっ!」

 

これだけの力しか持ってねぇんだよ!

この程度ではカンザシ・オセの神器に

到底届かねぇんだ!

 

「そもそもココを何処だと思ってやがる!

ココでの長時間の戦闘なんざ自殺行為

以外の何物でもねぇ!アイツらの怖さも

知らねぇ小娘が!さっさとくたばれや!」

 

さっきまで俺も忘れてたが、正直

やべぇんだよ!

俺も何度かオセを呼び捨てにしてるしよぉ!

 

『・・・ヴァーリ。今は避難するぞ。確かに

このままではYOSHITUGUと戦う前に殺される』

 

「・・・そうか。ソレは嫌だな」

 

白龍皇とヴァーリは引くか。まぁソッチは

追わねぇよ!

 

「アザゼルっ!貴方も目の前の私ではなく

別のモノを見ますか!その無礼、命を持って

償いなさいッ!」

 

やかましい!

 

正面から突っ込んでくるカテレアに対し槍を向ける。

 

「射殺せ!神殺鎗ッ!」

 

ノーモーションかつ神速で伸びる、堕天使が

使う光の槍の基本にして奥義!

 

驚愕の表情を浮かべるカテレア。

 

当然と言えば当然だ。人工神器とは言え物理的に

存在する槍が伸びるなんざ想定外だろうよ!

 

そしてコイツに回避できるだけの技量はねぇ!

 

「ぐっ!」

 

・・・確かな手ごたえを感じたが殺せてねぇ。

 

コレはカテレアの耐久云々じゃねぇな。

ちっ!胴体部分を貫通したが、貫通力が

高すぎたかっ!コレは改良案件だ。

 

槍の一撃を受けて倒れこむカテレアを

尻目にそう思ったのが油断だったのだろう。

 

「流石ッ!ですがタダでは死にませんッ!」

 

そう言ってカテレアが自らの腕を触手化

し、俺に巻き付けてきた。

 

でもって体に浮かぶ自爆術式。

 

おいおい、旧魔王派の夢見る小娘だと

思ってたらソコまで覚悟を決めてやがったか。

 

触手を断ち切ろうにも一向に俺の

左腕から剥がれる気配がねぇ。

 

ならカテレアに止めをと思い槍を向けるが・・・

 

「アザゼル!この状態になった私を

殺しても無駄です!私と繋がっている

以上、私を殺せば貴方も死ぬような

呪術も発動しています!」

 

ちっ!自分の命と引き換えに相手を殺す術式だぁ?

 

殺された場合に掛かる呪いか。でもって

自爆の場合は呪いは発動しねぇが普通に

大ダメージってか?

単純だが単純だからこそ効果が高い!

 

「ギャスパー!イッセー!朱乃!ココを

離れるわよ!巻き込まれたら死ぬわ!」

 

あぁん?いつの間に無能がこんなところ

に来てたんだ?

 

「で、でもアザゼルは?!」

 

赤龍帝・・・小僧に心配されるほど

落ちぶれたつもりはねぇぞ?

 

「アレでも堕天使の総督よ!自分で

なんとかするわ!それより早く離れて!」

 

アレって。まぁそうなんだが・・・

 

「アレが噂のサーゼクスの妹、無能姫ですか。

今更多少の距離を取ってどうにかなると考える

のはまさしく無能ですね」

 

全く以てその通りだな。

 

「ソレでもアレはサーゼクスの最愛の妹!

更に貴方と相打ちなら十分な戦果です!」

 

まぁ標的としちゃ間違ってねぇよ。

 

「ま、死ぬなら一人で死んでくれや」

 

覚悟を決めたカテレアを尻目に

そう言って左腕を切り離す。

 

「なっ?!自分の腕を?!」

 

いや、普通こうするだろ?

 

「お前さんみてぇな覚悟を決めた女は

正直嫌いじゃねぇが、だからって一緒に

死ぬ気はねぇよ。

そもそもこちとら自爆覚悟の特攻なんざ

見飽きてるんだ。片腕くらいくれてやる。

冥土の土産に持って行け」

 

コイツにやるにゃちと高い土産だがな。

 

そう思いながら槍でカテレアを貫く。

 

自爆寸前で身動きも取れないところに

俺の全力の一撃を喰らい、カテレアは

シュワッと音を立てて消滅した。

 

そしてカテレアの消滅を確認すると

共に鎧から光が溢れ、禁手化が自動で

解除された。

 

「ちっ人工神器の限界か。

まぁいいや(本家)。

改良の余地は多分にあるし、宝玉さえ無事なら

また造り直せる。

暫くは実験に付き合ってもらうぞ黄金龍君」

 

そう言いながら宝玉に目を向けると、

コイツは『宝物を忘れるな』と言わん

ばかりに淡い光を放った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

す、すげぇ。何が何だかわからねぇけど、

アザゼルがドラゴンの鎧を纏ったと

思ったら色っぽい姉ちゃんを倒してた!

 

アレだろ?アザゼルと戦ってたってことは

あの姉ちゃんが部長が言ってた敵の首謀者

なんだろ?

 

それに自爆とかなんとか言ってたけど左腕

を犠牲にしてあっさり光の槍で貫いて消滅

させたし!

 

でもって鎧を解除して、手に持った丸い球

みたいなのに話しかけてる?

 

良く分かんねぇけど、アレがアザゼルの

神器か何かなのか?

 

「流石はアザゼル。あの状態のカテレア

すら一蹴したか」

 

突然頭上から聞こえた声に、驚いて上を

見たら、そこには白い鎧を身に纏った

白龍皇が腕を組んで浮かびながら、鋭い

目つきでアザゼルを見つめていた。

 

て言うか、なんでコイツがアザゼルを

こんな目で見てるんだ?

同じ堕天使勢力なんだよな?

 

不思議に思ってる俺を無視して、白龍皇は

その構えを崩そうとはしない。

 

「で、ヴァーリ?お前はどうする?

鎧も左手も無くなったがお前の相手

くらいなら余裕だぞ?」

 

そう言って残った右手で槍を構え。

ヴァーリに声を掛けるアザゼル。

 

だからどういう状況だ?!

 

なんでアザゼルがヴァーリに槍を向けてるんだよっ!

 

部長や朱乃さんの方を見ても事情が

はっきりしてないようで、明らかに

狼狽してるのが分かる。

 

とりあえず首謀者は死んだんだろ?

会談はどうなるんだ?コレから再開するのか?

 

アレだけいた魔法使いたちもいつの間にか姿を消してるし・・・

 

「部長、コレからどうしましょうか?」

 

上に居るヴァーリやアザゼルのことは

気になるけど、まずは部長の指示を仰ごうと

声を掛けたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

『いやはや片手が無いのに元気だねぇアザゼルくぅん?』

 

 

 

 

 

 

・・・聞くだけで相手をイラつかせる

ような、相手をわざと煽るような口調で

突如としてソイツはこの場に現れたんだ。

 

見た目は黒。そうとしか思えない出で立ち。

身長は2メートルくらい?髪は逆立っていて、

身に纏うオーラはさっきまでのアザゼルを

上回る禍々しさを帯びている。

 

誰だ?そう思っても声が出ない。

 

なんで?いや、俺はコレを知っている。

殺気だ。コカビエルがヨシツグに向けてたモノ。

 

会議室でアザゼルが部長や俺達に向けてた

ソレが、この場を蹂躙しているんだ!

 

だけどコレはコイツの殺気じゃない。

この場の全てを覆うような殺気の主は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その声・・・貴様が神野明影かァッッ!!!」

 

 

 

・・・そのアザゼルの叫び声を最後に、俺は意識を失った。




ケツ龍皇さんはねぇ・・・育ての親から
厨二を引き継いじゃったんだよねぇ。

原作通りにカテレアちゃん退場。
無能サン。明らかに解説か、にぎやかしであるってお話。

ケツ龍皇と乳龍帝の因縁の戦いが・・・起こらないっ!

神野サンがエントリーだッ!


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44話

前話のあらすじ 

神野サンがエントリーだっ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!

相州戦神館學園八命陣を知らないと全くわからない!

だけどクロスオーバーだからシカタナイネ!



 

ーーアザゼル視点ーー

 

『ん~?堕天使が僕の事を知ってるのは

コカビィとの会話で知ってたけどさぁ

声で僕を判別するのかい?』

 

心底不思議そうにするデミウルゴス、

いや神野明影。

確かに意味が分からねぇよな?

 

咄嗟に言っちまったが、しくったぜ!

俺達があの詠唱やコカビエルとの会話

を知ってると思われるのは不味い!

 

俺達は何も知らねぇと思わせないと今後

警戒されちまう・・・

 

さてここからどうやって誤魔化す?

 

落ち着け・・・落ち着くんだッ!

頭はクールに心は熱くッ!ココで

焦れば全部が台無しだぞッ!!

 

『あぁ~。もしかしてカメラを潰す前に

ヨシツグ君に覆面ヒーローの宿命を

教えたから、その声を分析したのかなぁ?』

 

よしっ!ここだ!

 

「あの状況で現れて、更にあんだけ明確な

威圧感と耳障りな声を出す存在なんか、

てめぇしか居ねぇからな!徹底的に調べさせてもらったぜ!」

 

やはりコイツは音声が生きていたことを知らなかった!

 

コレは好都合だ!このまま誤魔化せば

今後もコイツの油断を誘うことが出来る!

 

それはそれとして、俺があの映像、

音声を何度再生したと思っていやがる?!

 

コカビエルが命がけで挑み、俺に

全てを託して逝った最期の戦いっ!

 

何度繰り返し見たことかッ!何度繰り返し聞いたことか!

 

親父の声は忘れても貴様の声は忘れねぇ!

 

「神野明影ッ!テメェを生かして帰す気はねぇぞッ!」

 

弱体化してるのは知っている!

分体とは言え無事に帰す気はねぇ!

 

『生きて帰さないぃ?僕がどんな存在か

知ってるだろぉ?帰るってどこに帰るのさぁ?』

 

アヒャヒャヒャヒャと耳障りな笑い声が

この場に鳴り響く。

 

『切り札っぽいその出来損ないはもう使え

ないだろぉ?そもそも堕天使である君が

作ったのに『人工』神器って何だよ~?』

 

うるせぇよ!イチイチこまけぇことに

突っ込んでくるんじゃねぇ!

 

『ソレにその殺気はどうかと思うよぉ?

白蜥蜴はともかく無能さん達は全滅だ。

後で妹魂の魔王サマに叱られるんじゃ

ないかなぁ?』

 

そうだ!無能はともかくヴァーリは?!

 

「貴様・・・何者だ?」

 

良し、少なくとも殺気だけで倒れるような

事は無かったか!

 

「ヴァーリ!ソイツがYOSHITUGUを

倒してコカビエルを殺った野郎だ!

油断するな!一瞬で死ぬぞ!」

 

コイツを含め、仲間たちにも神野明影の

音声は聞かせてねぇからな!

 

情報漏洩を嫌って俺とシェムハザ

しか知らねぇようにしてたんだよ!

 

だからヴァーリの言動にウソは無い。

現場に居たコイツが知らないってことは

自分の情報の洩れも無いって思うだろ!

 

『ふむ?状況的には確かにそう判断

するのは妥当だけど、ヨシツグ君が

そこまで覚えてたのかな?』

 

やべぇやべぇ・・・そうだ。コイツから

見て俺たちが知ってるのはコイツが急に

あの場に現れたことと、コカビエルが死んで

YOSHITUGUとヴァーリが生き延びたことだけだ。

 

下手なアドバイスもできやしねぇ・・・

さらにヴァーリは俺たちを裏切ってるし。

どうしろってんだ・・・

 

だがまぁ、今のコイツにはあの時みてぇに

俺たちを一蹴出来るほどの力はねぇはず。

 

実際は何処までの力を持ってるかはわからねぇ

んだが、少なくとも今の俺やヴァーリ相手なら負け

ないと判断したからこそ出て来たんだろう。

 

「ほう・・・貴様がYOSHITUGUを。

禍々しさは有るが、それほどの使い手

とは思えん。何か特殊な能力者か?」

 

確かに、実際コイツが何をしたかは

分かってねぇんだよな。

 

YOSHITUGUやヴァーリを結界から外に

弾き出したってのは分かってるが、

後はコカビエルが自爆術式で自爆して

ダメージを与えたってことだけだ。

 

だがそのおかげでこうして会話が

成り立つ程度の分体が出て来たって事を

考えれば、アイツの死は無駄じゃねぇ!

 

『おいおい、コカビィの技からキミを

助けてあげたのは僕だぞぉ?もう少し

感謝の気持ちってのを持ったらどうだ~い?』

 

ヴァーリが困惑した表情で俺を見てくる。

 

気絶してたから何も知らねぇのか。

 

それにしてもコイツ、何でコカビエルが使った

アレの事を隠しもしねぇんだ?

 

・・・いや、そうか!コイツは元々

堕天使陣営があの術式を開発してたって

勘違いしてやがったんだ!

 

だから元々知ってるであろう俺に

隠す必要は無いと考えてるのか?!

 

「はっ!何が「助けてあげた」だ。恩着せ

がましい事言ってるが、結局コカビエルを

嬲るのに邪魔だっただけだろうがよ!」

 

ヴァーリはコイツに目を付けられてる

って感じだったから、下手な事をしない

限りは殺されたりはしねぇ。

 

ならコイツのヘイトを俺に集めて、後は

何とかして時間を稼いでサーゼクスや

ミカエルの到着を待てばいい!

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!バレた?

流石はアザゼルくぅん!コカビィが

後を任せただけのことはあるねぇ~』

 

コイツッ!!

 

「・・・貴様のことはよくわからんが

アザゼルが貴様を憎んでて、今現在

俺の邪魔をしているのは確定している。

つまりは打倒すべき敵だ」

 

ヴァーリ・・・俺に感謝してるってのは本当だったか。

 

だがソイツは打倒すべき敵とか、そう言う次元の存在じゃねぇぞ!

 

『打倒すべき敵ねぇ。まぁ最強を目指すって

言うならいずれは僕も超えなきゃダメだと

思うけど・・・今の君は弱すぎるなぁ~。

そもそも君って僕とは相性最悪だよぉ?』

 

相性?YOSHITUGUがやった対策以外に

白龍皇対策があるのか?

 

「・・・ッ!」

 

今までなら突っかかってだろうが、やはり

YOSHITUGUに対策取られてたのは相当

効いてるな。言葉の意味を読み解こうと必死で

頭を働かせてやがる。

 

『もっと言えば君は最強を正しく理解

出来ていないんじゃないかなぁ?

蜥蜴クンの半減の力を使って敵を倒すにしても、

それだけじゃぁ最強は名乗れないんだよぉ?

最低限到達しなければならない領域って言う

のがあるからねぇ』

 

「到達しなければならない領域?」

 

そう言いながらヴァーリが俺を見るが

俺にも良くわからねぇ。

 

明確な指標みたいなのが有るってのか?

 

『簡単に言えばランクってやつかなぁ?

君たちが言う魔王級だとか神クラスだとか

そう言うのをもう少しわかりやすくした

指標みたいなのがあるんだよ』

 

・・・なんでコイツはペラペラ情報を

喋るんだ?俺を煽るためか?

それとも他にナニカ理由があるのか?

 

「指標・・・」

 

『蜥蜴クンは興味あるみたいだから、今回は

僕が教えてあげようじゃないか!

感謝して聞くように!アヒャヒャヒャヒャ!』

 

くっ、この笑い声を聞くたびに殺意が沸いて来やがる!

 

だが今はミカエルやサーゼクスが来るまでの

時間稼ぎと情報収集が最優先だ!

耐えろ!左腕の痛みに集中して、興味を隠せ!

敵意を抑えずにあえて晒すことで、煽られて

動くのを必死で我慢してるように見せろ!

ヤツの関心を惹くんだ!・・・実際必死で我慢してるがよっ!

 

『それでその指標はねぇ、簡単に言えば

1から8までの等級。

もしくはGからAそしてSを加えた8等級だねぇ』

 

1から8。それかG・F・E・D・C・B・A・Sの8等級ってか?なるほど、わかりやすい。

 

『それで行くと、アザゼルが4等。さっきの

神器モドキをつかって5等ってとこかな?』

 

「ほう?あの力でも5。つまり上から4番で

しかないだと?」

 

ヴァーリは信じられないような顔をして

いるが、俺にしてみたら納得はできる。

 

アレでは他の神話勢力の神クラスと戦うことは

出来ても、倒すことは出来ねぇだろうからな。

 

『いやいや、実際聖書の陣営と言う神話勢力

の中のさらに1勢力に過ぎない堕天使程度が

アレだけの力を持つなんて有り得ないぞぉ?

普通の神話勢力の神クラスが5等だからねぇ』

 

やっぱりそんなもんか。だが改良を続ければ

他の神話勢力とも張り合える可能性は有る

ってことだな!

 

『ちなみに向こうにいるミカエル君が4等。

サーゼクス君が5等。セラフォルーサンが4等

だねぇ。まぁサーゼクス君はもしかしたら6等

に届くかもしれないかなぁ?』

 

なるほどなるほど。確かに違和感はねぇ。

サーゼクスもナニカ奥の手を持ってるって

ことだろ?でもってアジュカも5等か。

 

『帝釈天・トール・ゼウスあたりが6等で

シヴァ・ヴィシュヌあたりが7等といえば

君にも頂の高みがわかるかなぁ?』

 

「シヴァが7等だと?いや、オーフィスが8等と

考えればそうなるのか?」

 

・・・そうだな。本来シヴァは最強と言っても

いい存在だが、オーフィスやグレートレッドの

前では霞んでしまう。

 

『あ~オーフィスを知ってれば上は理解

しやすいかもしれないよねぇ。

そしてヨシツグクンが3等で君が2等だ。

覇龍を使ってようやく4等に届くかどうか。

つまるところ正直言って今の君じゃ最強を語る

には小さすぎるんじゃないかなぁって思ってさぁ?その辺どう思うかなぁ?』

 

そうか、コイツ。俺やヴァーリに力の差を

教えて絶望させ心を折ろうとしてやがるのか?!

 

「俺が2等か。まぁYOSHITUGUやアザゼルの

等級を考えればわからない話ではない」

 

馬鹿にされたと怒り狂うかと思ったら意外に

冷静だな。ヤツも意外そうな顔をしてやがる。

 

『妙に冷静だねぇ。まぁ今の君程度が何を

しても無意味だって分かってもらえたら

それで良いんだよぉ~。

今回僕が用があるのはアザゼル君だから、

雑魚は隅っこで大人しくしてなぁ!』

 

情報提供の時間はおしまいってか?

まぁいい。

 

「ハッ!こっちもてめぇには用が有るんだ。

首だけで済むと思うなよッ!」

 

通用しねぇにしても、出来るだけ解析を

させてもらうぞっ!

 

アイサツ替わりに一回死ねや!舞踏ッ!

 

光の槍が神野の腕を貫く・・・前に霧散した。

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!いまナニカ

したのかいアザゼルくぅん?!』

 

その結果にヴァーリは驚きの表情を

浮かべるが、俺は半ば予想できてた

ことだから驚きはねぇ。

 

ただ嘲笑う声が不快だがなっ!

 

「やっぱりな!魔法使いどもが使ってた

俺やミカエルの光を無効化する技術は、

テメェが関わってたってことかよ!」

 

そうだ。オセじゃないなら他の神話勢力か

とも思ったが、もっと適任者が居るって

気付いたんだよ!

 

『あぁ?ソレの確認だったのかい?ソレは

アレだねぇ。勘違いさせて悪かったねぇ』

 

勘違いだぁ?!

 

『アレは君が好きな技術じゃないよぉ?ただ

魔法使いのニンゲンに僕の分体(小さな蟲)を貼り付けて

光を食らってただけさぁ~』

 

小さな蟲だと?

 

そういえばあれだけ居た魔法使いが一人も

居なくなってるのは何故だ?

 

カテレアが負けたから逃げたにしては

動きが早すぎるし、そもそもそんな簡単に

逃げれるほど甘い結界じゃねぇ!

 

かと言って手加減が必要なグレイフィアが

簡単に一網打尽に出来るような状況でも

なかったし、さらに無能が校庭に居たって

ことは尚更手加減が必要だったよな?

 

逃げたわけじゃねぇ。消し飛ばされた

わけでもねぇ。なら残るは一つ!

 

「てめぇ魔法使いを喰ったな?」

 

それならこの短期間で、コイツが俺たちの前に

姿を表せるくらいの力を持った分体を造り出す

ことが出来るのにも納得が出来る!

 

『おぉ~ご名答だよ!流石はカテレアちゃんも

認めた聡明な堕天使の総督さんだぁね!』

 

舐め腐りやがってっ!

 

『中級悪魔程度の力でもそれなりの数が

集まればそれなりの力になるからねぇ。

さらに言えば現在外で戦ってる彼らもだね』

 

外で戦ってる彼ら?

 

「どういうことだ?魔法使いが消えた

なら戦闘なんざ・・・?!」

 

コイツ!まさかっ!!

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!普通に

考えろよアザゼルぅ!旧魔王派にとって

カテレアちゃんはどんな存在だい?

悪魔の駒を否定してて眷属が居ないからって

一人で会談の場に乗り込むとでも?

ありえないだろう?彼女は魔王の血を引く

オヒメサマだぜ?!家臣が居るに決まってる!』

 

そうだ!アイツが一人で乗り込んで来た

のはヴァーリとともに会談の場を壊す為!

 

そして自爆術式まで準備していたくらい、

ヤツも命懸けの任務であることを覚悟の行動だった!

 

それなら家臣が動かないはずがない!

その狙いはっ!

 

『そう!彼らの狙いは動きの止まった

天使と堕天使!さらに彼らにとっては

裏切り者の悪魔の軍勢さぁ!』

 

完全にしてやられたっ!主君に殉じる

のが連中の価値観だろうがっ!

 

『もちろん彼らだって無抵抗に殺されてる

わけじゃない。神器に抵抗できたのも居るし

そもそもハーフ吸血鬼の神器は目に映った

モノの停止だ。角度的に陰になったりした

連中は止まらないし、僕の分体が憑いた連中も

当然止まらない!』

 

その結果悪魔・堕天使・天使の戦闘が発生

したってのかっ!

 

堕天使や天使にしてみればドレが旧魔王派

かなんてわからねぇし、現魔王派だって

攻撃を受けたら反撃するだろう!

 

『負傷したり致命傷を負って墜ちた彼らは

僕が美味しく頂いてるから安心しなよぉ。

いやぁ目の前に勝手にご飯を用意してくれ

るんだから君たちって親切だよねぇ!』

 

グッ!戦闘に集中してれば負傷者に気を

配る余裕なんかねぇ!

衛生兵みてぇなのは連れてきてねぇし、

戦闘停止の命令を出そうにも、結界が

邪魔をするし、堕天使だけが止まっても

意味がねぇ!

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!死ね死ね死ね!

もがいて死ね!苦しんで死ね!夢を腐らせて死ね!

夢を抱えて死ね!夢を穢して死ね!夢を掲げて死ね!

死にたくないと涙を流しながら死ね!

お前だけは許さないと怒りを込めて死ね!

お前だけは助けてみせると嘯いて死ね!

助けてくださいと命乞いをして死ねよぉぉぉ!』

 

黒い意思と圧力が俺を襲う!コレが今のコイツの力だと言うのか?!

 

外の軍勢と魔法使いを喰らったコイツは、

明らかに禁手化したときの俺と同等の力を得ている!

 

「・・・連中を喰らえば喰らうほど力を

得ると言うならココで仕留める!」

 

そう言ってヴァーリがヤツに攻撃を仕掛け

ようとするが奴はヴァーリを見向きもしない。

 

ヤツには絶対の自信があるのだろう。

それにわからないことがもう一つ。

 

・・・俺ですら簡単には動けない圧力の中、なんでヴァーリが動けるんだ?

 

不思議に思っていると、後頭部にヴァーリ

の拳を受けたヤツが楽しそうに俺を見て

笑っている・・・コイツ、俺だけに威圧を

向けたってのか?!

 

だからヴァーリはコイツの力がわからない。

だからヴァーリは白龍皇の力を使ってしまう!

 

「貴様の取る対策を見てYOSHITUGUとの

戦いの参考にさせてもらおう!行くぞ!

我が名はアルビオンッ!!」

 

『Divide!』

 

ヤツとヴァーリの体が一瞬白く光るっ!

 

YOSHITUGUのときは何も起こらな

かったが、今回はどうなる?!

 

そう思って凝視していた俺が見たのは

 

『「う、あ、あぁぁぁぁぁぁーーーッ!」』

 

我を失って暴れ狂うヴァーリと、同じように

苦悶の声を上げる白龍皇だった。

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!馬鹿だねぇ!

阿呆だねぇ!愚かだねぇ!クズだねぇ!

無知だねぇ!無能だねぇ!無様だねぇ!』

 

ソレを見て心底愉快そうに笑い声を上げる神野!

 

「てめぇ!ヴァーリに何しやがったっ!!」

 

叫びながら転げまわるヴァーリの姿は

どう考えても普通の痛みやら何やらじゃねぇ!

 

『いやいや、見てただろう?僕は何もしてない。

やったのは彼らで、完全な自爆じゃないか。

ソレを僕のせいにするのはどうかと思うなぁ?』

 

そんなことを訊いてるんじゃねぇ!

 

『僕に効かない光の槍を構えて何がしたいのか

さっぱりわからないねぇ?脅しのつもりかい?

それで介錯でもしてやったらどうだい?その

方がよっぽど建設的だよぉぉ!

アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!』

 

耳障りな笑い声とヴァーリの苦悶の声が

その場に鳴り響く。

 

クソッ!くそっ!糞っ!コイツがヴァーリを

殺さないと判断して、さっさと逃がさなかった

俺の判断ミスだ!

 

『まぁ簡単に教えてあげようじゃないか。

知ったところで何が出来るわけでも無いしさぁ?!』

 

舐め腐りやがって!そう思うが、事実

何が起こってるか理解出来てない俺には

対処できることはない。

 

『見たまんまだけどね。蜥蜴君は僕の一部を

取り込んだのさぁ。元々そう言う能力だろぉ?

全身の半分は不可能だから、あえて一部だけ

隔離させて半分取り込ませたんだよぉ』

 

「一部だけ隔離?分体だからこそ出来ること

なんだろうが、ソレがなんだってあんな

ことになってやがる!」

 

未だに叫び続けるヴァーリ。そしてまるで

その叫び声を自分を称える賛美歌のような

顔で聞いているヤツの顔に槍を叩き込む!

 

『いやいやいや、サマエル君を知らないのかい?』

 

神野は何事もなかったかのように俺の槍を

無効化し嘲笑いながら言葉を続ける。

 

しかしサマエルだと?神が龍や蛇を呪った

結果のアレがココでなんの意味を・・・

 

「そういうことかっ!!」

 

そこまで考えて、ようやく俺の頭の中に答えが浮かぶ

 

『わかったかい?僕は存在そのものが悪意

であり穢れであり呪いであり毒であり害悪だ。

しかも龍限定なんてチャチなモノじゃない!

そんなのを取り込んだら服毒自殺と何も

変わらないじゃないかぁ!』

 

心底愉快そうに笑い声を上げながら神野

はヴァーリを指差して状況を説明する。

 

指さされたヴァーリはと言うと、翼から

黒いナニカを必死で外に排出しようとしていた。

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!毒を

取り込んだから外に出しましょうって?

そんなんで解決するなら毒殺だの呪殺だの

なんてモノはこの世に存在しない!』

 

絶望を突きつけるかのようにヤツの言葉は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我は 廃神蝿声厭魅。

 

其の名べんぼう 地獄なり。

 

落ちろ汚れろ溶けろよ蜥蜴。魂まで穢されながら

 

生きながらにして腐り果てる恐怖を知れ

 

 あんめんぞぉ ぐろぉりあぁぁす!』

 

本来なら神を祝福するその祝詞は、

その声は、苦しみもがくヴァーリを

嘲笑う声とともにその場に響き渡った。

 

 




カテレア=サンの立場を考えたら
一人で来るなんてありえませんよね。

原作では剣士気取りが
「旧魔王派は悪魔の駒を否定して眷属が居ない」
からカテレアが誰も連れて来ていないって言う
けど・・・アレか?悪魔の駒で眷属にならないと
部下として認められないの?

普通に貴族だし、シャルバとかには
家臣とか賛同者がたくさん居たよね?

彼女一人で放り込むなんてありえないし、
そもそもカテレアの監視とか新入りの
ケツ龍皇にさせるなんて有り得ないでしょう?

ケツ龍皇にカテレアなんか目じゃねぇぜって
強者ムーヴさせたいんでしょうけど・・・ちょっとねぇ。


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45話

ヴァーリ白目でガクガクブルブル

前半少し前後してサーゼクス視点

後半アザゼルと神野サン

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!

基本的に原作アンチだから原作の設定や
キャラ好きな人は読み飛ばし推奨だっ!

前の感想にも書きましたが、8等もピンキリです。
言ってしまえば幽遊白書のSランクです。
戦闘力5万以上は全部Sランクって感じのアレです。

ですので最強を名乗るなら最低でもSランクに
ならないと話になりません。

相性云々はそこからのお話ですね




 

ーーサーゼクス視点ーー

 

まったく。ギャスパー君の神器の暴走が

収まったかと思ったら、リーアたんが

暴走してキャスリングしようとするわ、

女王の朱乃君も抑えようともせずに

一緒について行くとか言い出すわ、

それでいて元聖女のアーシア君やルー・ガルーは放置って。

 

それで主と言えるのか?ソレを諌めるべき

女王は一体何をしてるんだ・・・

 

「何やら疲れた顔をしてますが、アレは

サーゼクス様とジオティクス様が徹底的に

甘やかした結果です。いい加減にしないと

本気でオセ殿に殺されますよ?」

 

グレイフィアが冷たい目で私を見るが、

そもそも彼女と母上があんまり厳しく

するから、私と父上が庇う形になったんだよな。

 

リーアたんにしてみたら庇ってくれる

私たちに懐くのは当然だし、可愛い妹に

懐かれたら甘やかすのは当然じゃないか!

 

とは言え、流石に今回の失態はマズイ。

最後に入ってきたことから始まり、前任の

オセ君との連絡不足の露呈や、コカビエル

の件での無策と校庭の証拠隠滅は私とて

庇えるような内容では無い。

 

なにせ内部だけではなく外部にまで迷惑を

かけているし、アザゼルにしてみたら

コカビエルの命を無駄にされたようなモノだ。

 

その上眷属を孤立させ敵に利用されるとか。

 

そもそもギャスパー君がおかしいのだ!

リーアたんの眷属なら自分の神器の制御

訓練で好き嫌いを言ってどうする!

 

知らないとかアザゼルが信用できなかった

と言うならまだしも、血を吸うのが嫌いって。

リーアたんの眷属としての自覚が足りん!

 

その結果がコレだ!珍しい神器の持ち主で

死にかけてるから丁度いいと思って眷属に

するように色々動かしたが、明らかに失敗

だった!

 

これなら多少無理をしてでも、白音君を

眷属にしていた方が確実にリーアたんの

為になっていただろう。

 

しかもルー・ガルー君は我々に連絡を取って

ギャスパー君をココに連れてくるよう献策

したというではないか。

 

リーアたんが私たちに遠慮したのはわからん

ではないが朱乃君は何をしていたっ!!

 

そもそもライザー君とのゲームの時も前回の

コカビエルの時も、何故彼女は堕天使の力を

使わないんだ?

リーアたんの為に全力を出す気がないと?

 

どいつもこいつも舐め腐りやがって・・・

 

リーアたんの眷属だからって私がいつまでも

甘やかすと思うなよ?

 

アーシア君やイッセー君はまだまだ未熟だが、

リーアたんの為に全力で動こうとしてるから

問題ないんだ。

未熟なら成長すれば良いだけだからな。

 

だが、好き嫌いで手を抜くと言うのはありえんだろう?

 

総司の弟子だった騎士も、勝手な判断で

情報を隠してリーアたんの立場を悪くしたし。

 

・・・一度徹底的に追い込むべきじゃないか?

 

勝手にやったら流石にリーアたんが怒る

だろうから、夏休み中の強化合宿的な

感じのを提案してみるか?

 

そうすればリーアたんも実家に戻って

来れるし・・・母上も随分お怒りだからなぁ。

 

「まさか?!」

 

ん?さっきまで私に冷たい目を向けていた

グレイフィアが校庭を見て驚いているな?

 

まさか魔法使いがグレイフィアの攻撃に

も対処し始めたか?

 

そう思ってた時期が私にもありました。

 

魔法使いが何かしたのかと思って、結界の

強度を高めようとしていた私の耳に入って

きた「まさか?!」に続くグレイフィアの

言葉は・・・

 

「お嬢様?!」

 

だった。

 

うん?お嬢様??お嬢様って・・・

 

「はぁ?!」

 

リーアたん?!

 

その言葉の意味を理解し、驚愕して

グレイフィアの視線の先に目を向けると、

その先には校庭に出て魔法使いと戦闘を

開始するリーアたんとその眷属の姿が。

 

いやいやいや!君たちが出たらダメだろ!

グレイフィアの攻撃の余波で死ぬぞ?!

 

「グレイフィア!攻撃を控えろ!」

 

手加減でもダメだ!リーアたんが怪我をするっ!

 

「くっ!何故外に?!こちらに帰還するか

部室で結界を張って篭城するべきでしょうに!」

 

グレイフィアが苦い顔をしながら吐き捨てるが、

まったくもってその通りだ。上ではカテレアと

アザゼルが戦闘してるんだぞ?その余波だって

今の彼らじゃ厳しいだろう!

 

それにあの戦い方は何だ?

 

ギャスパー君は神器をリングで制御して

彼なりに戦っているようだからまだしも、

姫島朱乃ッ!この期に及んで手抜きかぁッ!

 

叫び出しそうになる衝動を抑え、上空の

戦闘の余波が届かないように結界を張る。

 

ギャスパー君が動きを止め、イッセー君が

力を譲渡して、リーアたんや姫島朱乃が攻撃

するスタイルを基本としているようだが、

どうしてもヤツの手抜きが目についてしまう!

 

白龍皇がアザゼルの援護に行ったから、

向こうは大丈夫だろう。

 

本来ならばカテレア以外の大物の乱入を

警戒していたセラフォルーを魔法使いの

殲滅に向かわせたいところだが・・・ココで

彼女が戦闘に加われば間違いなくリーアたんが怪我をするッ!

 

しかし何故校庭に出てきた?功を焦ったか?

それに何故あの行動を姫島が止めんのだッ!

 

お前は女王だろうがッ!現状、リーアたんが

参入出来るレベルの戦いだとでも思ってるのか?!

 

魔法使いしか居ないなら楽勝だとか思って

るんじゃないだろうな?!

 

「グレイフィアっ!」

 

ここはグレイフィアに出て貰って

殴り倒してでもコッチに連れてきてもらおう!

 

「えぇ、今はお嬢様の我侭が許される

状況ではありません。殴り倒してでも

連れて参ります!」

 

うむ。本来ならリーアたんにそんな真似を

して欲しくないが・・・今回は普通に命が

懸かってるからな。

 

下手に遠慮してもダメだし、言葉で説得しよう

にもそんな時間は無い。

隙を見せれば死ぬのが戦場なのだ。

 

「アレは・・・?」

 

ん?リーアたんに注意を持って行かれて

気付かなかったが、横でつぶやかれた

ミカエルの声を聞き上空のアザゼルと

カテレアの戦闘に目を向ける。

 

んん?白龍皇とカテレアが並んでアザゼルと対峙している?

 

それにアザゼルが短剣を構えて光を放った

と思ったら、次の瞬間、短剣が姿を変え

槍となっただけではなく、金色に輝く鎧が

彼の身を覆っていた。

 

・・・質量とかまるで違うんだが。

 

そもそもアレは神器なのか?元が短剣で有る意味は?

 

様々な考えが頭の中を駆け巡る中、

上空では蒼と金が交差していた。

 

「カテレアちゃん?!」

 

結果はセラフォルーの悲鳴のような声が伝えてくれる。

 

・・・アザゼルの勝ちだ。

 

クーデターを起こしたとは言え、同じ

悪魔であり、同じ時を過ごした同胞が

また一人逝ってしまった。

 

本来ならアザゼルではなく私がやるべき

仕事だったが、魔法使いが天使や堕天使

の光の対処をしてきている以上、私や

セラフォルーはこちらに残るべきとの

意見に甘えさせてもらったが・・・

やはり悔いが残る。

 

確かカテレアはクルゼレイと・・・。

クルゼレイも彼らに賛同していると言う

なら、せめて私が引導を渡すべきだろう。

 

どうやら最後は自爆をもくろみアザゼルと

相打ちを狙ったようだが、そんな方法で

殺せるなら彼は前回の大戦を生き抜いていない。

 

アザゼルが勝ったことは和平を望む魔王

として嬉しいことではあるが、どうしても

素直に喜べない。

 

・・・やはり私は王など出来る悪魔ではないのだ。

 

過去に何度も「政治家など私には無理だ」

と言っても、象徴が無ければ悪魔が滅ぶと

言われて結局断ることも降りることも出来なかった。

 

アジュカは私に付き合ってくれたが、

彼にも随分苦労をかけている。

 

・・・かと言って私が魔王を名乗れば彼らが反発する。

 

魔王としての強権を発動できるほど自分の

政治に対する自信が持てない私から見たら、

常に先を見据え、確固たる意見を持っている

オセ君の方がよほど魔王に向いている。

 

彼が戦争推進派でなければ喜んで魔王の座を

譲ったのだがなぁ・・・

 

カテレアの死は私が自分で思っている以上の

衝撃だったらしい。

 

・・・だから私はその声が聞こえるまで

その存在に気付かなかった。

 

 

 

『いやはや片手が無いのに元気だねぇアザゼルくぅん?』

 

 

 

この声・・・まさかコカビエルの時の?!

 

そう思って校庭を見ると、そこには

周囲の空間を歪ませるほどの怒気を纏い、

離れている我々でさえ思わず身構える

ほどの殺気を放つアザゼルと、声の主を

向いて構えを取る白龍皇。

 

彼らの視線の先には、ここからでも分かる

禍々しさを身に纏う黒い長身の男。

 

 

 

「その声・・・貴様が神野明影かァッッ!!!」

 

 

 

そうか、やはりアレが神野明影か。

 

アザゼルの魂からの叫び声が正体不明の

男の名を確信させた。

 

「お嬢様っ!!」

 

グレイフィアの悲鳴にも思える声で我に帰る!

 

そうだ!あそこにはリアスがっ!

 

アザゼルの殺気に押しつぶされたのか、

リアスを含めた全員が校庭に倒れている!

 

「グレイフィア!出るぞ!!」

 

ここでヤツを逃がす気もない!魔法使い達なら

ミカエルとガブリエルがいれば十分だ!

 

 

 

ガァァァァァァン!!

 

 

覚悟を決めて外に出ようとした私を結界が阻む!

 

『サーゼクスくぅん?残念だけど今回君には

用は無いんだよぉ。

妹サンとそのお仲間は返すから、邪魔しないで

君は君がするべきことをしたらどうかなぁ?』

 

耳元に低く響くヤツの声に私たちは一瞬動きを停められた。

 

その一瞬の間に、校庭には大きな黒い繭の

ようなモノが出来上がる。

 

コレはヤツの作った結界か?

 

そしてリアス達はその言葉通り、繭の中では

なく外にはじき出されていた。

 

魔法使いが居れば攻撃を受けていたかも

しれないが・・・いつの間に消えたのか、

魔法使い達は忽然と姿を消していたので、

そのようなことにはならなかったのが救い

といえば救いだろう。

 

つまりヤツは魔法使いの撤退を助けに来たのか?

 

いや、今はリアスの安全確認が先だ!

 

グレイフィアと共に急いでリアスたちの

元に向かい、状況を確認する。

 

うむ。誰も傷を負ってはいない。

アザゼルの殺気で気絶しただけだ。

 

一安心すると、あとはこの黒い繭を

どうするかと言うことになるのだが・・・

 

「サーゼクスちゃん!外がっ外でっ!!」

 

セラフォルーの声を聞き、今までもやの

ようなもので覆われていた結界の外に目を

向ける。

 

そこでは・・・

 

 

「「「連中を殺せぇぇぇぇえ!!」」」

 

「「「アザゼル様を救え!なんとしても助け出せぇぇぇ!!」」」

 

「「カテレア様の仇ぃぃぃぃぃ!!!」」

 

「「「オノレ悪魔どもがっ!!!」」」

 

 

 

天使・堕天使・そして悪魔が入り乱れる戦闘

が起こっていた。

 

本来なら即座に止めるべきなのだろう。

だが、ある悪魔が言った「カテレア様の仇」。

この言葉を聞いて、その意味を理解したとき、

私にはこの戦闘を止める術が思い浮かばなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

『見ろよアザゼルぅ。外じゃお前のお仲間と

悪魔と天使が戦ってるぞ?サーゼクスは動きを

止めて、セラフォルーもカテレアの家臣だけを

殺すことなんか不可能だと気付いたなぁ。

ミカエルやガブリエルも事態に気付いたが

ここで天使だけが止まっても、カテレアの

配下を殺さない限り戦いは終わらないと

言うことは理解してるようだねぇ』

 

ヴァーリが苦悶の声を上げ、奴が嘲笑うかの

ように言葉を紡ぐ。

 

何やってやがるサーゼクスッ!上空で

発生した戦闘に呆然とするのはわかるが、

そんなとこでぼさっとしてる暇があったら

コッチに加勢しろっ!!

 

そう思いながら考えつく限りの攻撃を

神野に繰り出すが、どれも通らない!

 

堕天使の光はもちろんのこと、俺が作った

人工神器の攻撃全てが無効化されていく!

 

『その人工神器はそもそも発動に君の

力を核として使ってるからねぇ。

堕天使の光を解析してればある程度の

減退は出来るのさぁ』

 

そんな減退した攻撃じゃ、ただでさえ

強力なこいつには通らねぇってわけかよっ!

 

『ソレに君は徐々に弱っていき、僕は徐々に

強くなる。君の部下の死が!君の部下が

殺した悪魔や天使の死が!僕を強くするのさぁ!』

 

あぁぁぁ畜生がっ!!一刻も早くコイツを

仕留めねぇと手に負えなくなるってのに!

 

『あぁ、ソレとサーゼクス君やミカエル君

の救援を待ってるなら無駄だよぉ?』

 

俺が時間稼ぎをしていると読まれていた?!

 

いや最初っからわかった上で攻撃を潰して、

俺の無様な姿を見て嘲笑ってやがったのかっ!

 

『こっちからは普通に見えるけど、向こう

からは大きな黒い繭にしか見えないんだよ。

当然向こうから中の様子は伺えないよぉ。

更に言えばコレは結界ではなく異界。

彼らには理解もできないモノだから干渉も

出来ないし、サーゼクスの消滅の力も理が

違うから作用しないのさぁ』

 

理・・・コカビエルが纏ったって言うアレかっ!

 

『君に用があったのはソレでねぇ?正直

あの魔法陣は堕天使が単独で作ったモノ

じゃないのはわかってるんだ』

 

なんだと?コイツはソレを勘違いして俺を

狙ってきたんじゃねぇってのか?

 

『だってそうだろう?もしアレを君たちが

単独で造れるなら、他の神話勢力が黙っちゃいない』

 

・・・それはそうだ。神殺しの一撃を堕天使が

放てるようになれば、神話勢力のパワーバランス

が一気に崩壊するからな。

 

なんとしても術式を解明するか封印させようと

してくるだろうよ。

 

『術式を貸出した側としても君に解析される

ことを警戒して、最も重要なところは秘匿

していたはずだ。だからこそ君にあの魔法陣の

ヒントを教えたくてねぇ』

 

・・・はぁ?

 

「なんのつもりだ?自分を殺せる術式を

なんで俺に伝えようとする?!」

 

神殺しの一撃とは言うが、アレは元々

コイツ用の一撃だ!分体とは言え間違い

なく効果があったほどのモノを何故?!

 

『驚くのはわかるよ?でも僕としてもさぁ。

君たちが絶望して、逃げることも抵抗する

ことも止めてもらっちゃ困るんだよぉ』

 

コイツはっ!どこまで俺をイラつかせれば

気が済むんだッッ!

 

「・・・だから俺に希望をチラつかせて

抵抗させるってのか?!」

 

無抵抗の俺らを嬲ってもつまらねぇってか?

抵抗されたところで殺られるのは分体だから

大したことねぇってか?!

 

舐めんのも大概にしろやっ!!

 

『ま、弱者は強者の造った舞台で、強者の

作成した台本に従って、強者が考案した

振り付けで踊るのさぁ。

それとも魔法陣の情報が要らないとでも?』

 

グッ!言ってることは間違ってねぇ!

ソレに魔法陣の情報が無ければ、諦めて

嬲られるだけの家畜に成り下がっちまう!

 

オセに協力を仰げればなんとかなる

可能性もあるが、ソレだけはコイツに

知られるわけには行かねぇ!

 

「クソッタレが・・・」

 

ありったけの殺意と怒気を込めて見つめる

俺を眺めて、奴は満足げに頷く。

 

『ソレでいいんだよぉ!大体僕がこうして

現界したのだって、元々は悪魔や教会、堕天使

に殺された連中の恨みが蓄積されたからだ!』

 

なんだと?!

 

『君らがヤってた事だろう?神器狩りだっけ?

神器を持つ子供の家を襲い、目の前で両親を

嬲り殺し、本人を犯して、心身共に散々嬲った

後に殺して神器を抜くじゃないか。

そのとき堕天使たちは大体こう言ってるぜ?

『精々抵抗して見せろ、そうじゃなきゃつまらない』

ってなぁ?その際彼らにどれだけの怒りや恨みが

生まれるか知ってるか?

関係ないとは言わせない!堕天使に神器狩りを

命じたのは他でもない貴様なんだからなぁ!』

 

・・・

 

『教会が人造人間を造ってナニをしていた?

神に祈りを捧げる純真無垢な子供たちを

量産しては不良品として処分してたじゃないか?

『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』彼らが

どれだけ熱心に、純粋にこの言葉を唱えたと

思う?それに対して天界は何をした?!

教会を罰したか?計画をすべて止めたか?!

否!担当者を外して罰しただけだ!ふざけるな!

そんなことが贖罪になるのか?

それ以外に神の名のもとにどれだけの罪を

重ねてきた?どれだけの罪を黙認してきた?!』

 

・・・

 

『悪魔によってもたらされた被害を今更

僕が言う必要はないだろう!』

 

・・・

 

『わかるか?!キサマらが生んだ痛みが!

恨みがっ!呪いが!苦しみが!キサマらを苦しめて

殺せという渇望(いのり)が僕を現界させたんだ!』

 

全部・・・俺たちの自業自得だってのか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だからこそ僕はキサマらが絶望して諦めて

大人しく死を待つなんて認めない!

常に目の前に希望の糸を垂らし、ソレに縋り付く

様を見て!糸を巡って仲間を蹴落とす様を見て!

仲間だったモノを恨んで地獄に沈む様を見て!

散々に苦しめて、追い詰めて、狂わせた上で

一人残らず残らず滅ぼすのさぁ!!』

 

 

 

 




サーゼクスもアジュカも、自分は魔王に
向いてないって散々言ってますからねぇ。

無能の問題は本来ならグレモリー家だけの
問題で終わるハズだったのに・・・
やっぱり過ぎたる力は身を滅ぼすのでしょう。


神野サン独走中である!ってお話






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46話

原作4巻は短いハズだったんだけどなぁ。

故にぶった切る!!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

 

まさか旧魔王派が反三大勢力に加担して

いるとは・・・普通に考えたら間違いなく

内部分裂するから、真っ先にその可能性を

除外していたが、旧魔王派以外の連中は、

種族の確執よりも我々への怨みや、オーフィス

と言う看板、それと旧魔王派が持つ組織運営の

ノウハウや資金・情報等を得ることを優先したといった感じだろうか?

 

『アジュカちゃん!ファルビー!どうしよう!

どうしたらいいの?!』

 

セラフォルーが焦るのもわかる。

 

カテレアが宣戦布告と先陣を担当して、

悪魔が和平会談をぶち壊すという連中の

策も半ば成功しているからな。

 

これからカテレアの家臣だけを狙って殺すなど

不可能だし、ミカエルやアザゼルが天使や

堕天使の動きを止めれば、悪魔によって

彼らの部下が討たれる。

 

当然それを認めるわけに行かないだろうから、

最悪でも専守防衛を指示するしかないが、

そもそも天使や堕天使は悪魔を憎んでるし、

お互いが仇敵だ。

 

流れ弾でも戦端を開くことになるし、堕天使

の影から天使を狙ったり、逆に天使の影から

堕天使を狙うだけで戦端は開かれる。

 

『ファルビーどうしよう!援軍とか呼んで

カテレアちゃんの家臣のヒトたちを止める

ことって出来る?!』

 

セラフォルー・・・そんな甘いことが言える

状況じゃないぞ。

 

「うーん。無理だねぇ。こっちが援軍を

送れば向こうも援軍を出してきて戦闘の

規模が大きくなるだけさ~。

それに今更カテレアの部下たちは止まらない

んじゃないかなぁ~?」

 

『そ、そんな!』

 

その通り。アイツ等は主君に殉じるために命を

懸けてる連中だ。

コチラの数が多かろうが少なかろうが全滅

覚悟で戦い続けるだろう。

被害が出れば出るほど和平は難しくなるし、

それこそが主君(カテレア)が命懸けで望んだことだからな

 

場合によっては連中の中にオーフィスの蛇を

持ってるヤツがいる可能性もある。

 

そうなれば一気に被害は拡大するし、下手な

援軍は天使や堕天使を刺激するだけで犠牲者

を増やすことにしかならん。

 

ソレを知っているから堕天使も天使も援軍を

送ってこないのだろう。

 

「だけどアレだねぇ?リアスの眷属を利用して

動きを止めて、そこをカテレアの部下が強襲

するって言ってもさぁ。

あまりにも行き当たりばったりな作戦だよねぇ?」

 

「ん?そうか?」

 

むしろ計算され尽くした一撃に見えるが・・・

 

「そりゃそうだよぉ。そもそも吸血鬼君

の神器を暴走させたって、所詮停止する

のは視界に映った連中だけだよぉ?

どうやってアレだけの数を止めたのさ?

上空に連れてって全方位を見せたの?

それならなんで部室に戻ったの?

そもそもその威力はどうやって試したの?

赤龍帝君や白龍皇が彼を解放するまで外の

軍勢が止まってたってことは、ずっと力を

出してたってことでしょ?それなのに

魔法使いが止まらなかった理由はナニ?」

 

ふむ・・・確かにそう考えれば、実験無しで

こんな真似は出来んよな?

もし他に同じ神器使いがいて実験出来たと

言うならリアスの眷属を使う必要もない。

 

そもそも中級悪魔程度の実力しか持たない

魔法使いが対処出来るような神器では無い。

 

失敗が許されない上、カテレアという存在が

命懸けの任務に当たるにしては不安要素が

多すぎる。

 

油断慢心なら最初から彼の神器など使わず、

カテレアが結界の外に出現して、会談中に

外で待機してる連中を皆殺しにすればソレ

だけで今回の会談は潰れる。

 

「つまり目的に対して手段がおかしいと?」

 

考えれば考えるほど違和感しか出てこない。

 

「だねぇ。部下の連中だってみんなバカって

ワケじゃないからさぁ。宣戦布告なら会場に

映像を送るだけでも良いわけじゃん?

わざわざサーゼクスやセラフォルーを刺激した

挙句、生身でミカエルやアザゼルに喧嘩を売る

必要性が全くないんだよねぇ」

 

そうだな。

 

カテレアと言う存在の価値を考えれば、使い捨て

にする理由もない。

 

コレはカテレアも乗せられたと考えるのが妥当か?

 

だとすれば誰に?決まってる、黒幕が現れたじゃないか。

 

「・・・神野明影が裏で動かしていたか?」

 

アレが他の神話勢力の一員という可能性も

有るが、直接関与したのは間違いなさそうだ。

 

「そう思うよ?ちなみにアレが作ったあの

黒い繭についてはどう?解析できた?」

 

ファルビウムが指し示すのは、神野明影が作った

と思われる黒い繭のような結界だ。

 

大きさ的には校庭の半分程度で中が全く見えない。

 

サーゼクスの消滅の魔力でも消せないらしい。

 

硬いわけでも脆いわけでもなく、そもそも実体がないとか。

 

つまりあの繭のようなモノは物質ではなく

空間に作用するナニカが生み出した境界のようなモノだ。

 

アレの解析など現場で現物を見ながらでも1年はかかる。

 

「さっぱりだな。恐らく中ではアザゼルが奴と

戦闘しているはずだが、その音や衝撃も無いし」

 

殺されてるなら繭を展開する理由が無いからな。

 

ヤツはサーゼクスに用はないと言ってアザゼルを

閉じ込めたが、おそらくコカビエルの件で彼を

嬲るつもりなのだろう。

 

更に、アザゼルが囚われたことにより堕天使は

恐慌をきたし判断力を失った。

 

一つの行動にも幾重の意味を持たせ、効果を

上げる様子はまさしく策士。

 

コカビエルがヤツに時間をやらん為に

速攻を仕掛けたのも当然だ。

 

『そんなことはいいから!早くこの状況を

なんとかしないと!和平が潰れちゃうよ!』

 

「「・・・」」

 

まぁその通りなんだが。ここで俺たちが

何をしたところで連中は止まらんだろ?

 

「そもそもファルビウム。この状況で和平を

結ぶ方法なんてあるのか?」

 

三大勢力のトップが会談してる場での戦闘行為だぞ?

 

サーゼクスが力づくでこの場を収めても遺恨は

残るし、これだと休戦すら難しいんじゃないか?

 

「あ~うん。あるにはあるんだけど・・・」

 

『え?有るの?!』

 

セラフォルー本人も半ば諦めてたのだろう。

ファルビウムの言葉に目を見開いて驚いている。

 

「完全に非常事態だからねぇ・・・それに

ミカエルやアザゼルの許可が必要だし、

可能かどうかは聞いてみないことには・・・」

 

ミカエルやアザゼルの許可?

それに可能かどうかの確認??

 

『ミカエルとガブリエルにはこっちで許可を

取れるけど、アザゼルについては・・・』

 

だよなぁ。

 

「シェムハザやバラキエルはこの会談を

見守ってる筈だからさぁ、状況は把握

してると思うんだ~」

 

アザゼルの意見が聞けないなら代理か。

 

まぁシェムハザは悪魔の奥方がいるし

バラキエルは娘があの場にいるからな。

 

こっちから連絡を取ればなんとかならん

こともないだろう。

 

「それで、可能かどうかの確認とは、誰に

何を確認する気だ?」

 

まぁ誰にと言うのはわかってるが・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー奥様視点ーー

 

 

『いや、オセさんに文句を言うのは

筋違いだと分かってはいるんですよ?』

 

そう言いながら通信の先で蟀谷(コメカミ)に#を浮かべて

お酒を飲む鬼ぃさん。

 

まぁこの戦闘に関しては旦那様は全く

関係ないですしねぇ。

 

『むしろ神野サンがきちんとアザゼルに説教

してくれてますし、墜ちた連中が地上から

攻撃したりできないように処理もしてくれてます。

それに上空からの追撃によって町や住人に

被害が出ないよう、処理してくれてますしね』

 

そうなんですよねぇ。

 

神野が予想以上にしっかりと仕事してるんですよ。

 

自分が演出する舞台だから楽しそうに

ヤってるのが唯一の救いではありますが、

後で簪と一緒に地獄でリフレッシュさせて

やろうって思うくらいには頑張ってます。

 

『流れ弾までしっかり処理してるようだし、

目撃者などが出ないように全体に結界まで

張ってもらってます。これだけのことを

してもらってると考えれば、貴方に文句を

言うのは完全に筋違いだと言うのは

分かってるんですよ?』

 

そうなんですよねぇ。あの空間を異界化して

戦闘の余波で現世に霊的な歪を生まないよう

にしてるし、無関係な連中が巻き添えを

喰らわないように最大限の努力をしてますよ?

 

さらには隠蔽と証拠の隠滅までしてますからねぇ。

 

 

『ソレをわかった上でのお願いです。

アイツ等何とかしてください』

 

うん。そうなりますよね。

 

神野が仕事してるのはわかってるけど、

それはそれですよねぇ。

 

普通に誤魔化せる範囲を超えてるし、夜だから

ナニしても良いってわけじゃないですから。

 

「了解です。もう少しで魔王から連絡来る

と思うんで、来たら速攻で終わらせます。

その準備として、この二人を出したいんですが」

 

あぁ彼女を動かしますか。確かに彼女を

使えば向こうはすぐに収まりますよね。

 

ついでに乗り物。

 

簪は登場シーンがどうこう言ってましたが

今回はそういうのは無しですね。

 

『ん?あぁ、お二人ですか。了解しました。

一人は半分死んでますが・・・いますぐ

叩き起しましょう。そのまま送るので対処を

よろしくお願いします』

 

お願いしますと同時にしっかりやれと

言わんばかりの眼光ですねぇ。

 

まぁ旦那様との仲を考えればこういう目にもなりますか。

 

何せ完全に体育会系の先輩後輩ですし。

普段からお世話になってる上、今はお酒飲んでるから尚更怖いですよねぇ。

 

金髪螺旋鳥頭が居たら重圧で死んでますよ?

 

「了解です。悪魔がご迷惑をおかけして誠に

申し訳ございません」

 

本来なら旦那様が頭を下げる必要は無い

のですが・・・全くの無関係というわけ

でもありませんしねぇ。

 

更に連中の不敬は度を越えてますから、

そろそろコッチも我慢の限界でしたし。

 

介入できるならそれに越したことはありません。

 

神野もアザゼルの不敬にはしっかりと報復してますし。

 

残るは無能とその一味。とりあえず連中、及び

その関係者には痛い目を見てもらいましょうか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

 

「やぁ。状況はそっちでもわかってるよねぇ?」

 

通信がつながると同時に、挨拶もそこそこに

ファルビウムが確認を取る。

 

普通なら極秘の会談だから俺たち以外に

状況を知るモノなど居ないのだが・・・

 

『無論ですな。現地からの報告は逐一上がってきております』

 

だろうな。なんと言ってもオセの場合は現地に

カンザシ・オセやシロネ・オセがいる。

 

そして喧騒の外にいる分、セラフォルーたち

の主観混じりの情報しか持たない俺たちより

正確な情報を持っている可能性が高い。

 

『正直に言えば「今すぐあの戦闘に参加

して開戦の狼煙を上げたい」と言う積極的な

部下の声を抑えるのを面倒に思ってますよ』

 

意外・・・でもないか。オセは戦争推進派では

有るが敵対種族を根絶やしにする気はないのだ。

 

そもそもコレに乗じるつもりなら地上では

なく冥界の堕天使領に侵攻しているだろう。

 

さらに後方・・・つまりは我々が内乱中で

有れば悪魔と堕天使の戦争云々を言っている

場合ではない。

 

外に出るには、まずは内乱を終息させてから

というのは軍事の基本。

今は開戦の時期ではないということだろう。

 

「話が早くて助かるよぉ。それで可能かな?」

 

いや、主語がないとわからんだろ?

説明を受けるまで俺やセラフォルーも

どうやっても和平なんざ無理だと考えてたんだからな。

 

『許可が有れば可能です。和平か休戦協定

かは微妙でしょうが・・・よろしいので?』

 

わかるのかよ。この辺は軍略家としての

能力の高さなんだろうが・・・コイツって

何か出来ないこと有るのか?

 

「その辺の調整は僕たちの仕事だからねぇ。

現場での作業に関しては僕が悪魔側の全権を

任されたし、天使側はミカエルも認めたよぉ。

あとは堕天使だけど、否定はされないと思う」

 

サーゼクスは詳しい内容を聞かされて

ないが、とにかく和平が結べるなら!

って感じだったな。

 

ミカエルとセラフォルーはまさしく苦渋の

決断と言った感じで、堕天使は協議中。

 

とは言え「戦争して滅ぶよりはマシ」と

言った感じになるのは間違いないだろう。

 

そもそも今回の和平を強く望んだのは

堕天使陣営だ。

 

『では後は我々に保険が欲しい。『英雄』の用意はできますか?』

 

英雄?どういうことだ?

 

「あぁ、そっか。まぁ君の立場ならそうなるよねぇ」

 

ん?立場??

 

『そう言うことですね。私としては無能殿が

現地に居るのでちょうど良いと思ってます。

何せ今回のミスは酷すぎますからね。

この辺で他の勢力からの同情を誘うくらいの

何かを背負うべきではないでしょうか?』

 

ん?リアス?今更アレに何をさせると?

 

「確かにソレもあるねぇ。サーゼクス的にも

なんとかしたいところだろうし、表面上は

問題ない。それどころか他の勢力からも、

同情を集める形になるから悪いことでも無いね」

 

ミカエルには完全に失望されて、アザゼルから

は殺意すら向けられてるリアスが同情される?

 

いや、まぁ余りにも無責任な行動が目立つし

これまでのミスに対して何の罰も与えないのは

問題だから、周囲が納得するようなナニカが

有るならソレを課すべきだと言うのは賛成だ。

 

『では堕天使からの許可と簡単な筋書きが

できましたら連絡頂ければ、こちらも

動きましょう。こちらの準備は3分も有れば

出来ますのでお急ぎなら頑張ってください』

 

準備が早い・・・早すぎるようにも思えるが

向こうでも戦闘に参加しようとしている連中を

抑えてるんだもんな。

 

行けと言われれば何時でも行けると言う訳だ。

微調整にかかる時間が3分ということか?

 

それに「頑張ってください」か。完全に終息

までの流れを読み切ってると言うことだな。

 

「了解。こっちの準備が終わったら連絡するよ」

 

そう言って通信を切るとファルビウムが

溜息を吐きながら俺に愚痴をこぼす。

 

「相変わらず彼は準備が良すぎるのと、

話が早すぎて怖いねぇ。

まぁ彼が裏で操ってるとか、そう言う

ことは無いだろうから普通に任せても

大丈夫そうなのが救いだけどさぁ~」

 

あぁ、動いてるのは旧魔王派に他の神話勢力と

神野明影だと言うことはわかってるからな。

 

もしもオセが反三大勢力と協力関係に有るなら

この状況をなんとかしようとするファルビウム

に協力することはないだろう。

 

それにカテレアもオセとの接触は無いと

断言したし。奴らのプライドの高さを

考えれば無理はないだろうな。

 

この混沌とした状況を何とかできると

断言するのだ。動くのはシロネ・オセ

ではなくカンザシ・オセか?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

 

『さぁて。ようやくアザゼル君が現状を理解

できたところでさっさと術式に対するヒントを

上げようじゃないか。僕の渇望(いのり)は君たちの

絶望に塗れた死。

ここで罪を自覚して諦めと共に潔く死なれても

つまらないし、何より他の連中にさっきと同じ

説明するのも間抜けだしねぇ』

 

さっきの話を聞けばわかる・・・コイツの言うことに嘘はねぇ。

 

その上で俺が潔く死を選んでも殺すことは

ねぇだろうし、もし自殺を選んだとしても

コイツは死なねぇ程度の回復をさせて、俺が

苦しんでる横で堕天使を生きながらに解体

するくらいのことはヤって来る!

 

ならば今は反省だの自虐はしねぇで

コイツから情報をもらい、コイツの想像を

超えたモノを作り出すことで事態の解決を

図るべきだろう。

 

と言うかそれしか手段がねぇ!

 

『あぁ、その自らの無力さに対する悔しさと

コカビィの仇に対して教えを乞う憐れさ。

イイねぇ。そういうのだよ!ソコに絶望と

恐怖を与えて、大事なモノを一つ一つ穢して

犯して、壊して、殺す!ソレこそが今の僕の存在理由(アイデンティティー)ッ!』

 

くそっ!それもこれも今まで俺たちが

ヤってきた事だと言われれば、批判も反論も出来ねぇっ!

 

『あぁ、そうそう。白トカゲ君なら安心したまえ』

 

「そ、そうだ!ヴァーリッ!」

 

さっきから声が聞こえなくなったが・・・

苦しめて殺すと言うならココで殺すような

真似はしねぇだろう。

 

それに安心だと?呪詛に耐え切れなくて

気絶したか?下手に耐えるよりはその方が

マシって感じだったが・・・

 

『迎えが来てたみたいだからねぇ。呪詛を

抜いて外に放り出したよぉ~。

でもって気絶してる白トカゲ君をそのまま

お猿さんが持って帰ったさぁ。

彼は仙術も嗜んでるようだから、呪詛が

抜けた状態のトカゲ君なら癒せるだろう』

 

お猿さんだぁ?仙術が使える猿となれば

ヤツだろうが・・・今はソッチじゃねぇ。

 

「なんだってそんなことを・・・」

 

なんでわざわざヴァーリから呪詛を抜いた?

 

普通なら殺すか、そのまま呪詛で苦しめ

ときゃ十分コイツの目的に叶うだろ?

 

『ん~?何故って?彼は君達幹部諸君にとって

息子のような存在だからねぇ。

ソレが自分たちと敵対する禍の団に所属して、

好き勝手してるとなればそれだけで討伐対象。

それだけでも君たちに苦悩を生むことになる

じゃないか?』

 

確かに説得も交渉も出来なかった。

 

このままじゃアイツはただのテロリスト扱い

されちまう・・・だがソレがなんの関係がある?

 

『ソコに僕の呪詛に苦しんでるとかなったら

裏切りに対して変な理由ができちゃうだろぉ?

「癒すために仕方なく向こうについた」とか。

けどねぇ、実際彼は彼の我侭で離反した。その

事実を美化されても困るんだよねぇ』

 

ちぃっ!逃げ道を完全に塞いだって事か。

それもこれも俺たち堕天使を苦しめるためだけにっ!

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!その調子で

僕を憎むがいい!憎しみで僕を殺せるくらいに!

その目が、その感情が僕の渇望(いのり)なのだから!!』

 

くそっ!今は何をしてもダメだ!かと言って

諦めて頭を切り替えるなんて真似はコイツが

許さねぇ。

 

こうやって常に俺の感情を揺さぶって遊んでやがるっ!

 

『絶望・恐怖・呪いなど、それぞれの感情には

鮮度があるのさぁ!真の意味でのマイナスとは

静的な状態ではなく変化の動態。

希望の先にある絶望。やったか?の後の無傷。

許さねぇ!と叫んだ後の、実は自業自得でした

と言う事実の確認ッ!』

 

まさしく今の俺ってわけかよ・・・

 

『外の戦闘も激しさを増している!そのまま

憎めよ!互いを憎みながらも、手を組まねば

生きてはいられないと言う現実に挟まれて、

仲間の仇も討てないと葛藤しながら屍の

上で踊り続けろぉ!!』

 

クソっ!向こうは向こうでどうにも

ならねぇ!

 

サーゼクスやミカエル。それにシェムハザ

も、各勢力が援軍をよこさねぇところを

見れば、戦闘の拡大を抑えているのはわかる!

だがこのままじゃどうにもならねぇ!

 

そんな現実を理解して歯を食い縛る

俺の顔を見て、神野の顔が楽しそうに歪む。

 

そう、ソレが見たかった。何度も言われた

言葉が再度繰り返されようとした時。

 

『はぁ?』

 

今までの煽りや呪詛の声ではなく、完全に

予想外のことが起こったような、素っ頓狂な

声を上げて、奴は結界の外を呆然と見ていた。

 

何だ?何があった?

 

そう思って見てみれば、外での戦闘が終わっていた。

 

いや、終わっているというより、全員が動きを

止めて何かを警戒しているように見える。

 

神野と同じように外を凝視してると・・・

 

「「「グッ!!」」」

 

と、うめき声を上げて落ちていく悪魔や天使。

 

「「「ガッ!!!」」」

 

そう言って死んでいく堕天使や悪魔。

 

「「「なんだ?!何がァッ?!」」」

 

叫び声を上げて血を吐く天使と堕天使。

 

わけがわからねぇ。だがコレは明らかに

何者かによる攻撃。

 

そしてこの状況でこんなことをしでかす何者かの狙いは・・・そうかっ!

 

コレはサーゼクス、いやファルビウム?!

俺がその狙いに気付いたとき、周囲に声が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アハハハハハもっと行くよぉ!さぁ走れワンちゃん!みんな『死んじゃえー』』

 

何もない空間に響く少女のような声。

そしてその声が響く都度死んでいく軍勢。

 

天使は地面に激突する前に光となり、

堕天使は羽だけを残して消え、

悪魔はその存在がなかったかのように塵と化す。

 

『アハ!死んじゃった~だけどまだまだたくさん居るよ!だから・・・『死んでくれる?』』

 

死ぬ、死ぬ、死ぬ。種族に関係なく、

その声に込められた呪詛によって死んでいく。

 

確かにこれなら和平は成る。最悪でも

休戦は出来るっ!あの状況ならコレが

一番だと言うのもわかる!

 

だが・・・だがっ・・・!!

 

『ほう、この事態にここまで完璧に対処して

くるとはねぇ。コレはファルビウム君かな?

う~ん。正直侮ってたねぇ』

 

結界の外を凝視し、冷静に状況を分析する神野。

 

そうだよなぁ。今の悪魔陣営のことを良く

知らなきゃ、コレは透明の能力を持つ

ファルビウムの親族の仕業にしか思えねぇだろうなぁ!

 

『あ~このままじゃあと1分も持たないねぇ。

さっさと君にヒントを上げて退散しようかな』

 

そう言って心底つまらなそうな顔をする神野。

 

そう、もう間もなく外の連中は全滅する。

 

ファルビウムが選び、オセが実行したであろう

作戦は簡単だ『死人に口無し』。あとは俺たちが

大本営発表で誤魔化せということだろう。

 

神野の本心からつまらなそうな顔を見れば、

ある意味で神野に一矢報いた形になると言う

のは理解できるが・・・嬉しさなんざ湧き上がるはずもねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アーハハハッ!たぁ~のしぃ~ぞぉ~!』

 

 

 

 

心底楽しそうに笑う少女の声を聞きながら、

目の前で次々と死んでいく同胞を見て

ミカエルやサーゼクスは何を思うのか。

 

俺は絶対に今日のことは忘れねぇ。

 

無念・後悔・憎悪・憤怒・呪詛。ありとあらゆる

感情を飲み込んで、俺は死んでいく同胞を見る。

 

 

それだけが今の俺に出来る唯一の行動だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

この日、三大勢力による正式な休戦協定は成った。

 

 

 

有史以来敵対していた三大勢力による休戦は

他の神話勢力に驚きを持って迎えられ、

歴史に残るこの会談は、会談が行われた場所の

名を取り『駒王会談』と呼ばれることになる。

 

 

 

なお、この会談に反対し、会談の成立を邪魔

しようとしてきた魔法使いや三大勢力内の

反和平派組織によるテロ行為が行われたが、

そのことを予め予見していた当地の管理者の

策により彼らは一掃されることとなった。

 

 

旧魔王派が精鋭を用意し、命懸けで行ってきた

テロ行為に対して神算鬼謀でもって迎え撃ち、

僅かな犠牲でその企みを潰した若き英雄。

 

それは二天龍と称された赤龍帝をも従える一人の女悪魔だった。

 

魔王サーゼクス・ルシファーの妹にして冥界の秘蔵っ子。

 

「紅髪の滅殺姫」リアス・グレモリー。

 

世界は彼女の名を知る事になる。

 

 

 




珍しく働く魔王さま。

だけどソレ以上に神野サンはスゴク・働いてたと言う裏話。

って言うか学園に張った結界の外に天使だの
悪魔だの堕天使の軍勢が大量に居たら
一般人に見られるよね?その辺どうなの?

物理的な障壁かナニカあったんですかねぇ?

大本営発表は次話!

展開予想は作者の心が死ぬから御法度だァ!



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47話

戦闘後のお話。予想以上に長くなったので
2話編成になりそう。

追加とか、逆に削るとか、色々弄る可能性有り。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

「コレはどういうことですか?!」

 

部長の怒声が通信機に向けて放たれる。

 

けど部長の気持ちはよくわかる。今回も

俺たちが気絶している間に事態は全部

終わってたんだ。

 

それなのに部長の評価が、異常な程高くなってる。

 

和平賛成派のヒトたちは

 

『テロ組織が計画してた策を読み、ソレを

利用して眷属をあえて餌にして敵をおびき

寄せて一網打尽にした天才!』

 

とか言ってるし、反対派だったヒトたちも

 

『旧魔王派のテロリストをアザゼルにぶつけ、

彼の左腕を奪う大戦果を成し遂げた!』

 

って言って部長を褒めちぎる。

 

そして一般的な報道としては

 

『リアス・グレモリー嬢は今回の策でテロリスト

と堕天使総督のアザゼルを戦わせ、双方に甚大な

被害を与えることに成功。

そして負傷したアザゼルは魔王陛下に対し

頭を垂れて和平を申し入れたが、陛下は

毅然とした態度でソレを拒否。

ただし現状の把握と情報収集及び旧魔王派との

折衝の兼ね合いを考えて、堕天使側からの様々な

技術の提供を条件とした一時的な休戦という形で

協定を結ぶこととなった。

これはまさしく歴史に残る外交的勝利である。

この結果を生み出すきっかけとなった、

リアス・グレモリー嬢の貢献は非常に大きい』

 

って感じで部長を褒めちぎる。

 

だけど部長にしてみれば、どれもこれも

自分は関係ないこと。

 

普通の悪魔とかならラッキーとか思って

貰った功績に胡座をかくんだろうけど、

誇り高い部長がこんな扱いをされて喜ぶ

はずがないんだ!

 

『リアス、今回の君の失態は君が思ってる

以上に重い。実際に罰を与えれば君個人の

処刑はもとより、グレモリー家が断絶しても

おかしくないほどの失態だ』

 

通信機の向こうのヒト。どうやら冥界の

上層部のヒトらしいけど、俺には誰だか

わからない。

 

部長も顔は知ってるみたいだし、部長の

ことを呼び捨てにするくらい近しい関係者

なんだろうけど・・・

 

いや、そうじゃない!いま何て言った?!

部長の処刑?!グレモリー家の断絶?!

 

「そ、それは・・・」

 

なんだかんだで家のことを誇りに思ってる

部長だ。

自分のこともそうだけど、実家の断絶とまで

言われて、さっきまでの勢いは完全に失速

してしまった。

 

「ぶ、部長が処刑ってどういうことですか!」

 

言葉を失った部長に代わり俺が声を荒げる!

 

「い、イッセー?!」

 

突然割り込んだ俺に驚く部長。だけど

とてもじゃないけど我慢できねぇ!

 

「だっておかしいじゃないですか!

なんで部長が処刑されなきゃならねーんです?!

悪いのはテロ組織でしょ?!」

 

通信機の向こうの相手にも伝わるように

部長に食ってかかる俺。

 

部長もなんて言って良いかわからないようで

オロオロしている。

 

・・・普段綺麗で凛とした部長なだけに

こういうギャップはスゴク良いです!

 

『リアス。眷属の教育はきちんとしろ。

まともに教育できないなら隔離しろ。

相手がいつまでもお前の不敬を許すと思うな』

 

本来の目的を忘れかけてた俺に、いや、

部長に通信機から冷たい声色の警告が発せられた。

 

って言うか俺は無視かよ!これだから悪魔の

お偉いさんはっ!

 

「も、申し訳ございません!ベルゼブブ様!」

 

そう言って通信機に向かって頭を下げる部長。

 

え?ナニ?いまベルゼブブ様って言いました?!

それって魔王様ですよね?!

 

やべぇ・・・そう思ってると通信機の向こうの

お偉いさん、ベルゼブブ様は俺を一瞥すること

もなく通信を切った。

 

コレは良いことなのか悪いことなのか。

 

気分的にはもちろん良くない。

 

だけど魔王様に対する無礼を見逃してもらった

と考えれば、かなりの温情と言えるだろう。

 

ん~む。

 

「イッセー!今回はお許し頂いたけど、

魔王さまとの通信に勝手に割り込まないで!

貴方が殺されるかと思ったじゃない!」

 

微妙な気持ちでいる俺に部長から声がかかる。

 

や、やっぱり相当やばかったんだな?!

そう思うと今更ながらに震えて来る。

 

「・・・けど気持ちは嬉しかったわ。ありがとうイッセー」

 

そう言って頭を撫でてくれる部長!

やっぱり部長は最高だぜ!

 

「それに今ので切り替えは出来たわ。本来なら

こんな扱いをされて黙ってる気は無かったけど、

家や周囲。さらには悪魔陣営そのものに迷惑を

かけたのは事実ですもの。

この評価を受け入れて、評価に恥ずかしくない

ような悪魔にならないとダメなのよね」

 

そう。ヒトによっては名誉だけど、部長に

とっては完全にお人形さん扱い。

それは部長が何よりも嫌う行為なんだ。

 

だけどソレを自分への罰と受け止めて、部長

は前へ進もうとしている。

 

「だけどね、急にこんな評価をもらったことで、

今まで以上に周囲に人が寄ってくることになる。

その中にはテロに味方する連中も居て、私たちの

命を狙ってくるかもしれないのよ」

 

そ、そうだよな。テロ組織にしてみれば

部長は仲間の仇ってことだし。

 

「そこでお兄様からは護衛が。実家からは仕事の

フォローをする人員が来ることになったの」

 

部長の護衛と仕事のフォローか。ん?

 

「護衛はともかくとしてフォロー・・・ですか?」

 

基本的に部長って実家の人の力を使うのを

嫌がってるよな?

それなのに受け入れを承諾したの?

 

不思議そうにしてる俺を見て苦笑いする部長。

 

「そうね。まずマスコミ対策。冥界の

メディアが騒いでるのはわかるでしょ?」

 

「まぁ・・・そうですね」

 

散々褒めちぎってたからなぁ。

 

ご本人様に聞きました!とかは有るのか?

 

けど実際のことを話すわけには行かないし

そこんところはどうするんだろ?

 

「今回の件に関するインタビューに関しては

『軍事機密です』って言って断れるけど、

ソレ以外に関してはね。どうしても表に出ないといけないわ」

 

あぁ、そっか。断れるものは断るけど

だからといって全部断ったら不自然だしなぁ。

 

「それにお兄様やグレイフィアから実家に

戻ってしっかり鍛え直すように言われてるの。

コレは私としても望むところよ!」

 

あぁ、なるほど。高過ぎる自分の評価に

追いつくためには鍛錬は必要だし、俺たち

も鍛えなきゃって思ってたもんなぁ。

 

「それに夏休み中に若手が集まる会合が

あるから、どうしても冥界には戻る必要

があったのよ。

だから夏休みは冥界に戻って徹底的に鍛えるわ!

それで、その間の駒王町の管理を実家から来た

ヒトに回すってことよ」

 

ほうほう。部長が参加する会合なら会長も当然

参加するだろうから、前の合宿の時みたいに

会長に頼むってわけにもいかないんだな。

 

そんでもって、留守にするからには代わりのヒト

に管理を任せないと、管理人不在になっちゃう

もんなぁ。

 

「そういえばオセさん?についてはどうなったんですか?」

 

なんかフォローを受けてたとか、前任者との

付き合いがどうこうって話でしたよね?

 

「それに関してはお兄様と実家でやるから、

私は彼と関わらないようにって言われたわね」

 

関わらないようにって・・・ま、まぁ戦争好きで

貴族主義?だから相性が悪いとかそう言うこと?

 

「基本的に彼は伯爵家の当主で、私は公爵家とは

言っても次期当主でしかないからね。格とかそう

言う関係があるのよ」

 

良くわからねぇけど、面倒な感じだ!

多分さっきのベルゼブブ様みたいな感じの

ヒトなんだろ?

 

だったら関わらない方が良いよな!

 

「今のところ、家同士の付き合いについては私は

ノータッチ。あったとしても、お父様と一緒に

アイサツに行く程度だから、そっちは気にしなく

て良いわよ。今の私たちがするべきは特訓よ!」

 

うん。部長は確かに前を向いて歩きだした!

 

それにギャスパーも自分の神器の制御に磨きが

かかってるし、ルー・ガルーさんや朱乃さん

だって遊んでるわけじゃない!

 

もちろん俺やアーシアだってな!

 

あの混乱を経験した眷属みんなが自分の力不足を

感じ、一丸となって前へ進もうとしてるんだ!

 

次こそは絶対に部長の為に働いてみせる!

そして、今は上の都合で作られた評価だけど、

その評価を超えるような成果を上げてやるぜ!

 

 

 

 

見よ!オカルト研究部はぁ紅くぅ燃えているうぅぅッ!!ってな!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアジュカ視点ーー

 

「・・・英雄か」

 

リアスとの通信を切って一息つくと、後ろで

新聞を読んでいたサーゼクスがポツリと呟いた。

 

つかお前新聞そんなに取ってたか?

 

・・・いやコレは違うな。

 

「サーゼクスには悪いけどさぁ。今回は

流石に何も無しで庇うのは無理だよ~」

 

サーゼクスを見ることなく、自分の作業に没頭

しながら謝罪するファルビウム。

 

いや、ファルビウムは過去の戦争で英雄に

されたサーゼクスが『英雄』と言う言葉を

いい意味で捉えていないと思って謝罪したんだろうが、アレだぞ?

 

コイツ新聞切り抜いて、リアスの写真と

評価のところをノートに貼ってニマニマ

してるからな?

 

普通に喜んでるし、メディアへの露出

についてグレイフィアにスケジュールを

調整するように命令してるからな。

 

まぁソレだって俺たちがサーゼクスに

頼んだことだから、積極的になってくれる

ならむしろ良いことなんだが。

 

今回の会談では同行した部下が全滅すると言う

結果になったし、その犠牲の重みをリアスに

背負わせることになるから、絶対に良い顔は

しないと思ったんだが・・・

 

どうやら今回リアスがやらかしすぎた事は

こいつもしっかり理解していて、これから

どうしようか?とか、どんな罰を与えれば

釣り合いがとれるのか?ってことを真剣に悩んで

いたみたいなんだよな。

 

そこに降って湧いた『英雄』のオファーだ。

 

罪人として裁かれるか英雄として祭り上げられる

かを選択しろと言われれば、そりゃ英雄を望むのが普通だが・・・

 

ここは一度しっかり罪を認識させてしっかり

裁いた方が後の為になると思うんだがなぁ。

 

だが今回のリアスの罪を裁くとなると、

先ほど本人に言ったように、お家の断絶も

ありえるから『後』なんか無くなる。

 

でもって、リアスを処刑しようとしたら絶対に

コイツが騒いで堕天使領とかに亡命させるよな?

 

ソレを考えれば今回の『英雄』扱いは間違いではない。

 

あとは眷属や本人の強化だが。それは夏休みを

利用して実家で鍛えるそうだし。

 

一ヶ月やそこらで強くなれるものかと思うが、

鍛錬をしないよりはマシだ。

更に母親が相当お冠らしいから、性根を鍛えて

くれることを祈ろう。

 

ついでに冥界にいる間は禍の団の連中からの

干渉もある程度コントロールできるしな。

 

でもってそのコントロールする予定の

ファルビウムなんだが・・・

 

「あ~ゼファーが使えるのは良いけど、

どうやって配置するか・・・」

 

真面目に仕事してるんだよなぁ。

 

珍しいことではあるが、あの会談の場で

呪詛を振りまいたのがオセの眷属であり、

さらにその子供を乗せて戦場を走り回って

いたのがゼファードルであると言う報告を

受けて、その後処理をしているのが現状だ。

 

なんといってもグラシャラボラス直系だ。

 

次期当主ではなくともその扱いは慎重に

なるし、実家は未だにゼファードルが

ここまでの強者になったことを知らない。

 

そうなると縁組をするにしても評判が

悪い彼は中々相手も見つからんだろうし、

実力を知ってるとはいえ魔王である我々が

一人の悪魔を推薦するというのも問題だ。

 

分家を起こさせるか、どこかに婿入りさせるか、

軍に所属させるか、特殊戦力として使うか・・・

 

基本的にはオセに鍛え続けて貰うのが一番だが

所属はキチンとしないとな。

 

そうしないと給料とか褒賞に響くんだよ。

 

幸いゼファードルも功績や評価に興味はなく、

むしろリアス一人のモノにしてくれと言って

来たから今回の対処は難しいモノではないが、

信賞必罰をはっきりしない組織は正常な組織

足りえないと言う持論を持つファルビウム

からすれば、ゼファードルの要望は痛し痒し

と言ったところだろう。

 

・・・実際今のアイツは若手を超えてるし

戦場での実績と功績を挙げているのだ。

 

扱いに困るのはわかる。

 

「けどまさか凶児って言われたゼファーちゃんがねぇ・・・」

 

セラフォルーがしみじみ呟くがコレは俺も同意見だ。

 

そもそも今回オセに依頼した内容は

 

『とにかく素早い全滅。結界の外にいる

連中は天使も悪魔も堕天使も全員殺すこと』

 

だった。

 

コレは悪魔・天使・堕天使の全てを被害者

とすることで特定の勢力による謀略である

という可能性を消すとともに、一切の情報を

遮断してカテレアの家臣たちは無駄死にだった

という悪評を流すことを目標としている。

 

それに反応してきたヤツらを狩るのが軍略家

としてファルビウムとオセが考えた策。

 

ついでとしてファルビウムは

 

『逃亡も許さず、その実行者も不明なら最高』

 

等といったふざけた依頼を追加した。

 

この実行者云々に関しては、展開してる

部隊だけじゃなくアザゼルやミカエル

にもバレなければ尚良しと来た。

 

流石にムチャが過ぎると思ったが、オセはそれも承諾。

 

だがオセは禍の団や他の神話勢力の連中の目が

自分に向かないようにするため、こちらに

『英雄』の準備を求めてきた。

 

『依頼は果たすが餌になる気はない』と言う警告だな。

 

まぁこの辺は軍略家同士のじゃれあいのような

モノらしいから、オセもファルビウムも互いを

敵視したりはしていない。

 

そんなこんなで依頼を発注したんだが、

どうやらファルビウム的にはカンザシ・オセ

による特殊な技術を用いた狙撃かナニカが

行われると思っていたらしい。

 

まぁ確かに長距離狙撃なら正体不明だし、

特殊な弾頭で周囲を滅ぼすことも出来た

だろう。

撃ち漏らしたのはシロネ・オセや他の眷属

が片付けるとでも思っていたんだな。

 

言われてみればソレを前提にした依頼だった

と言えるんだよ。

 

だがオセはYOSHITUGUことゼファードルと

我々も知らない眷属を出してきた。

 

カンザシを温存させたか?と思ったが何の

ことはない。ソレが一番早くて確実だと判断

しただけのことだった。

 

確かにゼファードルのことは他の陣営の連中は

誰も知らないし、透明になって姿を隠してる

から単純に考えればグラシャラボラスの関係者と

思うだろう。

 

アザゼルやミカエルはYOSHITUGUを疑った

かもしれんが、戦闘方法が違うし、何より

呪詛の元は少女の声だ。

 

我々が言ったリハビリ云々は信じてなくとも、

まさかYOSHITUGUことゼファードルが、

オセの眷属の少女を肩車して飛び回ってるなど

想像できまい。

 

と言うか俺も無理だった。事実を知った

ファルビウムも首を傾げていた。

 

凶児はどこに行ったんだよ?不良が親戚の

少女を肩車してる様子が頭に浮かんだが、

その現場が天使と悪魔と堕天使が入り乱れる

戦場と言うところが凶児か?

 

しかも彼らを殲滅したのが少女の方だと

言われても、リアクションの取りようがない。

 

誰も犯人を見てないし、死んだ連中も特殊な

呪詛によって死体すら残らなかったから証拠

も何も無い。

 

オセはまたもやこちらからの依頼をすべて

クリアしてみせたわけだ。

 

そこで問題になるのがゼファードルの扱いだ。

普通なら「子供を肩車して戦場を走れるかっ!」

と言って反発するだろう?

 

まさか凶児が素直に乗り物としての仕事に専念

するなんざ想像もできん。

 

しかも『ワンちゃん』呼ばわりも受け入れてる。

 

いや、人間の魔道書ではグラシャラボラスは

翼を持った犬と言う描写をされてるがなぁ。

 

まぁそれはそれとして、つまり今の彼は

強力な力を持ちながらも、驕らず粛々と

命令に従うことが出来る兵士なわけだ。

 

さらに姿を消せて正体もバレない。

 

どんな任務もこなせる彼は軍略家として

見れば、ある種の理想の兵士と言っても良い。

 

そりゃ使いどころも悩む。しかもこれから

想定されるのは旧魔王派との内乱。

 

相手は政治犯であり、当然大王派にも伝手

があるだろう。

と言うか連中に資金やら情報を援助してる

のは大王派だ。

 

誰が大王派で誰が旧魔王派かという明確な

線引きが出来ないし、主戦派だから殺すと

言えば流石にオセも黙ってはいないだろう。

 

だからこそオセと繋がりがあるゼファードルの

価値が爆上がりしてるわけだ。

 

それにこの辺の政治判断を大王派に頼ってきた

我々は、現状敵が動かない限りソイツを禍の団の

一員として裁くことが出来ない。

 

敵に先制させて、防御か逃走、もしくは反撃まで

できる実力をもつ彼は本当に重宝するだろう。

 

先制攻撃ができない現状に歯痒さがあるが

・・・今は連中が餌となったリアスに食いつく

のを待つしかない。

 

あとはアザゼルとミカエルとの口裏合わせ。

 

それぞれの陣営でそれぞれの大本営発表が

行われているが、共通するのはテロを仕掛けて

きた連中を撃退したのはリアス・グレモリー

であるという事だ。

 

これにはアザゼルもミカエルもリアスに

若干の同情があったらしい。

 

明らかに実力が伴ってないのに英雄扱い。

更にその実は餌だからな。

 

今回の失態を償う罰としては問題ないと

判断したのだろう。

 

思いもよらぬ方法で内部だけじゃなく外部

との折衝を終えたサーゼクスは終始ご機嫌。

 

部下が死んだが、あの時点では他にどうしよう

も無かったと言うのを理解してるし、部下が死ぬ

のは初めてと言うわけでもないしな。

 

いつまでも部下の死にウジウジしている余裕など無い。

 

また、リアスが餌になったことに関しても

「ソレが『英雄』としての宿命だ」とか言って納得してるし。

 

もっとも「急な注目を浴びたから危険だ」と

言う名目でリアス公認で自身の眷属を補佐兼

護衛として貼り付けることが出来たから、

ようやく安全の確保も出来たと言うところか?

 

反対にセラフォルーは、もしも立場が

少しでも違ってたらソーナが餌にされて

いたと戦々恐々してる。

 

オセのところでどれだけ鍛えられてる

かによって今後が変わるからなぁ。

 

直接の連絡は取れない以上は若手の会合が

行われる時に確認するしかないから、期待半分

不安半分と言ったところか?

 

あとはアザゼルだな。

 

部隊が全滅した後、少ししてから突如繭が崩壊し、

中から全身に傷を置い、失った左腕から血を

流して気絶しているアザゼルが出てきたと言う

報告を受けたときには戦争を覚悟したが・・・

 

どこからともなく(恐らくゼファードルだろう)

降ってきたフェニックスの涙のお陰で一命を

とりとめたんだよな。とりあえず今は絶対安静

として休息しているらしい。

 

繭の中でどんな戦闘が行われていたかは不明だし、

神野がどんな存在かも把握出来ていない俺達に

してみれば、出来るだけ早い復帰を望むのだが・・・

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

 

 

「あの術式はギリシャ神話のヘスティアの

『竈』を一部再現した感じらしい」

 

いまだにベッドの上から動けない俺が、あのとき

ヤツから聞いたヒントをシェムハザに伝えると、

シェムハザは指を顎に当てて、考え出した。

 

「・・・なるほど。敵を入れない、また敵を

逃がさないと言うことに関しては強固なモノ

になりそうです。ですが・・・」

 

俺と同じ結論を導きだしたシェムハザ。

 

だが、ソレはどんな結界でも当然有る効果だ。

わざわざヘスティアの名前を出してきたことが

わからない。

 

「ヤロウは『全部教えたら俺たちが創意工夫を

しなくなる』とか言って、ヒントしかよこさな

かった。だが、このヒントは無意味なモノじゃ

ねぇ。何せ俺たちが成果を出せずに諦めたら

ヤロウの渇望は満たされねぇからなっ!」

 

そう、この渇望がある限りヤツは俺達に希望の

糸を垂らし続ける。

 

わざと見えるように、わざと掴むことが出来るようにな。

 

いつまでもそうやって油断してろ!その隙に

こっちはヤロウの裏をかくっ!

 

「結界と魔法陣、更に詠唱の解析を続けつつ

俺は赤龍帝に接触する」

 

そう、あらゆるモノを倍加させる可能性が有る

アレならば、ヤロウが想定した以上の威力を

出すことが出来るかもしれねぇ。

 

さらに学園に入ることでシロネ・オセと接触

することも出来るようになるっ!

 

こう自然な形で情報交換が出来れば、ヤロウを警戒

させることも無いだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤロウが言うように結局は自業自得なんだろう。

 

俺たちの管理不十分が原因で大量の悪意やら

何やらを産み出し、ヤツを現界させちまったんだろう。

 

だがそんなの関係ねぇんだよ!

 

どんな手を使ってでも、俺はヤロウを殺すっ!

 

それが今の俺にある唯一の渇望だッッ!

 

 

 




英雄様。とりあえず前を向こうとしたもよう。
尚、相変わらず足元は見ない。

魔王様。サーゼクスも普通に情愛()の家の
悪魔ですからねぇ。部下と妹なら妹を取るし、
いつまでも死んだヤツに本心から拘るような
未熟者でも有りません。

そしてファルビー悩む。ってお話。

頑張れアザゼル!負けるなアザゼルッ!



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48話

仕事が忙しかったのと、スマホの調子が
おかしかったのとウン・エイ=サンについて
考えてて更新が遅れております。

ソレがルールならシカタナイネ!

少し表現をマイルドにしなきゃダメかなぁと反省してみる。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!




ーー兵藤一誠視点ーー

 

「てなわけで、今日からオカルト研究部の顧問と

なった。アザゼル先生、もしくは総督と呼べ」

 

一日の授業が終わり、これから部活を頑張ろう!

と思い部室のドアを開けたところ、何故か

着崩したスーツ姿のアザゼルがオカルト研究部の

部室にいた。

 

色々聞きたいことがあるんだけど、まずコモン

ってなんだ?☆1のことか?

 

それと、確かアザゼルは前回の戦いでかなりの

重傷を負い絶対安静のハズじゃなかったっけ?

 

「・・・どうして貴方がここに?」

 

額に手を当て困惑している様子の部長。

うん。気持ちはわかります。

 

「色々有るが、一番の理由はお前らの護衛だな」

 

護衛?確かサーゼクス様が眷属の方を回して

くれるって話だったよな?

 

それなのにわざわざ堕天使の総督様も部長の護衛をするってのか?

 

「貴方が居なくても、サーゼクス様からきちんと

した護衛が派遣されてくるわよ!」

 

当然部長もそのことを知ってるから、アザゼルの

護衛なんか不要と言って追い返そうとするけど、

それに対する返答は「はぁ」と言う、心底部長を

バカにするような溜め息。

 

その態度に怒りを覚えた俺が反論しようとするが

 

「お前さん。ちっとは現実を見ろや」

 

さっきまでのバカにしてた感じを無くし、むしろ

怒ってるかのような声色で部長を諭すアザゼルに

動きを止められてしまう。

 

「現実、ですって?」

 

怪訝そうに答える部長。

 

ソレを見てさらに深い溜め息を吐くアザゼル。

 

「まず、今回の件でリアス・グレモリーは

奴等に狙われることになっただろう?」

 

・・・それはそうだ。今の部長の評価は

テロリストを手玉にとった天才で、冥界の秘蔵っ子だ。

 

テロリストにしてみたら最優先で狙って来るだろう。

 

「つまるところ、今のお前さんの状況を包み隠さずに言えば、お前さんは奴らを釣る為の餌ってわけだ」

 

そう真顔で告げてくるアザゼルの言葉に、

部長も返す言葉を失ってしまう。

 

「餌?餌って・・・」

 

呆然とする俺たち。まさかサーゼクス様が

部長をそんな風に扱うなんて・・・

 

「そもそもがお前さんがやらかしたことに

対する罰なんだってことを忘れるな?

サーゼクスはお前さんを罪人として裁くか、

英雄として働かせるかを選ばされたんだ」

 

「罪人か英雄か・・・」

 

そしてサーゼクス様は部長に英雄として歩む事を求めたんだな。

 

そうか、目立つって言うのはそう言う意味も有るんだ。

 

だからこそ一度冥界に戻って鍛えろって言われた

んだろうし、サーゼクス様から護衛も送って来る

って言う話になったのか。

 

そうだよ、話の流れが急だったから忘れかけてた

けど、そもそも護衛の話だよな。

 

「だからこそサーゼクス様の眷属の方が来るって話だろ?」

 

それならアザゼルは要らないだろ?堂々巡りじゃないか。

 

「その先を考えろって言ってんだよ」

 

その先?

 

「いちいち回りくどいことを言わないでさっさと教えろよ!」

 

なんつーか、頭の良いヤツってこう言う話し方

するよな!

わざわざ含み?を持たせたり、隠語ってヤツ?

を交えたりよぉ。ハッキリ言えってんだッ!

 

憤慨する俺を見て、アザゼルは溜め息を一つ

吐いて言葉を続ける。

 

「リアス・グレモリー。最初に言っておくが、

俺はお前の兄貴じゃねぇし、親戚のオジサンでもねぇ」

 

はぁ?いきなり何言ってんだコイツ?

 

ハテナマークを浮かべる俺を余所に、アザゼルの言葉は続く。

 

「眷属の無礼は主の無礼。そして相手の立場を

踏まえた言動は礼儀の基本だ。そもそも俺は

学園内なら教師だし、学園外なら堕天使の総督。

悪魔と堕天使が正式に休戦協定を結んだ今、

お前さんが俺に対して取るべき態度はなんだ?」

 

いや、確かに先生か総督って呼べとは言ってたけどよぉ。

 

「・・・申し訳ございませんでした」

 

そう言ってアザゼルに頭を下げる部長。

な、なんでこんなヤツに?!

 

「今回はいきなりのことだから見逃すが、

いつまでも相手がお前らの無礼や不敬を

見逃すと思うなよ?」

 

完全に上から目線で説教をしてくるアザゼルに

頭を下げ続ける部長。

 

それもこれも俺が考えなしに噛みついたせい

なのか?

この前ベルゼブブ様も似たような事を言って

たけど、俺たちはコイツにまで頭を下げなきゃ

ダメなのかよ?!

 

「・・・とりあえず話の続きだ。サーゼクスから

送られてきた眷属がリアス・グレモリーを狙って

きた奴等を捕らえて殺したとしよう。その場合

俺達は悪魔だけに仕事を押し付けた形になるし、

当然情報は悪魔で独占することになるわけだ」

 

は?情報の独占?

 

「・・・なるほど、そう言うことですか」

 

部長は納得したようだか、俺にはさっぱりわからない。だ、誰か教えてくれ?!

 

「つまり今回総督がコチラに来たのは、リアス

を狙ってきた敵に対する処理の分担と情報の共有。

私たち悪魔が旧魔王派のテロリストに手心を

加えないかどうかの監視もありますわね。

さらには使われた技術の解析や意図の考察などを

目的とした配属と言うことですわ」

 

混乱している俺に朱乃さんが補足をしてくれた!

ありがとうございます!

 

「・・・今の状況で何かあったときに悪魔が

全部片付けてしまうと他の勢力に対する隠蔽を

疑われてしまう。そして水面下で旧魔王派に

味方する悪魔は予想以上に多いのも事実。

その為、他の勢力の人員を側に置いて相互監視

をする必要があると言うのはわかりました」

 

な、なるほど。前に部長がやったような修繕も

他の勢力の連中にしてみたら証拠隠滅になって

たんだもんな。

 

アレだって一歩間違えたら旧魔王派への援護って

言われちゃうことだったらしいし、そう言うのを

警戒するのと同時に、リアス部長を狙って来る

連中に対する警告って意味もあるのかな?

 

「ま、そーゆーこった。堕天使が絡むなら俺が

責任をもって殺す。悪魔に関しては状況次第。

天使は・・・暫く内側の調整に回るらしく、

下手な動きをするヤツは処分しても良いって

言う許可がミカエルから出てるから、コレも俺が

責任もって殺してやるよ」

 

な、なるほど。アザゼルもミカエル様も仲間を

殺す覚悟は決めてるってことか。

でもってアザゼルならコカビエルみたいな幹部が

来ても勝てるって言う信頼もあるみたいだ。

 

「それに物事ってのは直接現場で見ないと

わからねぇことは多々あるからな。

セラフォルーにその旨を伝えたら、この役職を

回されたってことだ」

 

「セラフォルー様が・・・」

 

セラフォルー・レヴィアタン様か。なんでも

外交を担当しててソーナ会長のお姉さんって

話らしいからな。

 

この決定は部長や俺たちの意見では覆らない

ってことだろう。

 

やっぱり今回の会談による休戦協定と、その会談

を襲撃されたことは、俺たち三大勢力にとって

わざわざこうしてアザゼルが出るほどの一大事

だったってことなんだよな!

 

「ついでにサーゼクスからはお前らの教育も

頼まれてる。正直悪魔陣営は一部を除き神器に

ついての理解が無いに等しいからな。

赤龍帝の籠手も停止結界の邪眼も、今のまま

じゃ宝の持ち腐れだ」

 

「ぐっ!」

 

アザゼルの言葉に思わず顔をしかめてしまう。

 

認めるのは悔しいけどアザゼルの言う通りだ。

 

俺やギャスパーが貰ったリングを見ればわかる

けど、魔力や筋肉を鍛えるならまだしも、神器に

関しては堕天使陣営が何歩も先に進んでる!

 

ならその教えを受けることが出来れば、もっと

効率よく強くなれるってことだよな?

 

「なるほど。私たちとしてはイッセー達を効率的

に鍛えることが出来るし、総督殿も私を狙った敵

から情報を得ることができます。

それならば、顧問の立場は両者が望むモノと言う

わけですか・・・流石はセラフォルー様」

 

うん。セラフォルー様は政治の都合ってヤツを

一方的に押し付けるんじゃなくて、俺たちにも

ちゃんと得があるように配慮してくれてる。

 

やっぱり会長と部長の仲が良いからかな?

家族ぐるみの付き合いってヤツ?

 

「納得できたところで、早速赤龍帝の鍛練だ。

正直言って今のコイツは弱すぎる。

神器を使いこなすとか、そう言う次元じゃねぇ」

 

「ぐっ!」

 

自覚はしてるけど、あまりにもハッキリと

指摘されたことで呻き声を出してしまった。

 

「同世代の白龍皇は未熟ながらも自分の能力

を理解して使いこなそうとしている。

さらにお前らの世代には格が違う強者と言って

良いヤツがいるだろ?」

 

あの白龍皇が未熟・・・魔法使いとの戦闘を

見ただけでも俺なんかとは明らかに格が違う

って思ったけど、アレでもアザゼルから見たら

未熟者なのか。

 

それに俺達の世代で格が違う強者って誰のことだ?

 

「えぇ・・・そうですね」

 

心当たりが有るのか、苦い顔でアザゼルの言を認める部長。

 

「何でも夏休み中に向こうで若手の会合が有るとか?」

 

そう言えばそんなこと言ってたな。

 

「来賓も呼ぶらしいし、それまでには最低限外に

出しても恥ずかしくないような力と礼儀作法を

身につけて貰わなきゃ、教育係としても困るんだよ」

 

勝手な言い分をっ!と言いたいところだけど、

アザゼルの配属はサーゼクス様やレヴィアタン様

が決めたことだ。

 

その決定に異を唱えるわけにはいかないし、

実際に俺に力が不足してるのも事実。

 

それに、所詮は一介の眷属悪魔に過ぎない俺や

ギャスパーが堕天使の総督に鍛えて貰えるって

言うのは、本来なら有り得ないほどの厚待遇だ。

 

そう思えばこの人事はサーゼクス様からの

激励であり、レヴィアタン様からの贈り物

と言ったところか?

 

うーむ。政治ってのはさっぱり分からない

けど、とりあえず部長の眷属として恥ずかしく

ない実力を身に着けるって言うのは必要だ。

 

・・・夏休みは冥界観光とか言ってる余裕

なんかなさそうだ。

 

そう思う俺にアザゼルは特大の爆弾を落としてきた。

 

「そもそもお前さん。ココで何やってんだ?

所領の運営に関する経験ってんなら地上に出る

必要なんかないだろうし、日本の文化に憧れて

の留学ってんなら管理者になったらダメだろ?」

 

アザゼルが何を言ってるのかよく理解できないんだけど・・・

 

実際部長って何で駒王町にいるんだろう?

 

「・・・日本の文化に憧れたのは事実です。

さらに所領を持つ経験を学ぶことが無意味

とは思えませんが?」

 

そうだよな。部長は日本の文化が大好きだし

いずれ家を継ぐならそう言う経験だって必要だろ?

 

「それは本来分けて考えるべきモノだ。

実務を知らない小娘が領地運営の経験を積む

なら、失敗したら余所に迷惑がかかるような場

ではなく、自領で補佐を付けてするべきだろう?

「失敗した」だのなんだので迷惑を被るのは

地元の人間だぞ?」

 

本心から呆れながらそう言うアザゼル。

 

言ってることはわかるけど、部長が

失敗なんかするはずないだろ!

実際これまでうまくやってきだんだし!

 

「初めてやることで失敗しねぇヤツはいねぇ。

そんで失敗は成長の元でもあるのは事実だ。

だからといって他人様に迷惑をかけても良い

ということにはならねぇのはわかるな?」

 

「・・・」

 

無言で頷く部長。

 

まぁ失敗するしないは別として、言ってる

ことはまともだからな。

 

 

「部下をまともに管理出来なかった俺が

言うのもなんだが、お前さん達が余りにも

考え無しに動いた結果、迷惑を被った連中が

たくさんいる。その筆頭がオセ・・・殿だ」

 

「「「は?」」」

 

さっき俺のせいで部長がコイツに謝ることに

なったから、出来るだけ声を出したりしない

ようにしてたけど・・・コレは無理だ。

 

この前の会談の件でサーゼクス様や悪魔陣営。

それに堕天使や天使に対しても迷惑をかけた

形になるのはわかってるんだけど、オセ?

 

部長も朱乃さんも意外な名前を挙げられたのか、呆然としていた。

 

「自覚無しかよ。まぁ、サーゼクスや実家が

謝罪やら何やらをしてるし、実際お前さんは

ヤツから見たら実家の臑を齧る小娘にすぎん。

お前さんに文句を言っても仕方ねぇと判断

してるが故の放置なんだろうがなぁ・・・」

 

頭を乱暴にガシガシとかきながらそうボヤくアザゼル。

 

いやいやいや、今まで我慢してたけどコレは

眷属としても、俺個人としても我慢出来ねぇ!

いくらなんでもこの言い方は部長にシツレイだろ?!

 

「実家の臑齧りだって!アンタに何がわかる

ってんだ!部長は今まで実家の力なんか一切

借りずに駒王町の管理を・・・」

 

してきたんだ!って言おうとしたけど、

アザゼルの眼光がソレ以上の反論を許さない。

 

「ガキ、目上に対する言葉遣いもロクに

出来ねぇなら喋るな。

つーか主と客の話に下僕が口を挟むな。

我慢が出来ねぇなら一礼して出て行け。

・・・姫島朱乃。女王として眷属の管理は

しっかりしろ。本来ならはお前がコイツを

黙らせて外に連れ出さなきゃダメだろうが」

 

そう言って俺には一瞥もくれずに朱乃さんを

見るアザゼル。なんか初対面って感じじゃ

ないけど・・・そうか、父親が堕天使幹部の

バラキエルだから、その縁で知り合ったのかも。

 

「・・・申し訳ございません」

 

俺がそんなことを考えてるうちに、

朱乃さんが反論することなく頭を下げてしまう。

 

くっ!部長だけじゃなく朱乃さんまでっ!

 

「悔しそうな面してるが大元の原因はてめぇだ。

これ以上迷惑かけたくねぇと思ったら出て行け」

 

一切俺を見ようとしないアザゼルに怒りを

覚えるが、コイツが言ってることは間違って

ないんだろう。

だからこそ部長も朱乃さんも一切反論せずに

頭を下げたんだ。

 

ココで怒りに任せて叫んだり掴みかかったり

したら部長にもっと迷惑がかかる。

かと言って今更コイツに頭を下げて出て

行くなんて死んでもゴメンだ!

 

そう思って俺は必死に怒りを我慢した!

 

「とにかくその無知無能はいい加減にしろ。

ヤツはともかく、ヤツの周りに殺されるぞ?」

 

む、無知無能?!ここまで部長を馬鹿に

されても我慢しなきゃならねぇってのか?!

 

だけど部長も朱乃さんも悔しそうに歯を食い

しばりながら我慢してるんだ!

 

俺だって我慢しなきゃダメだ!

 

そう思っても次から次へと部長に対するダメ出しが入る。

 

俺は我慢することに必死で、これ以上は何も

覚えてないが、後からギャスパーやアーシアに

聞いたところ相当ヤバイ殺気のようなものが

溢れ出てたらしい。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーアザゼル視点ーー

 

ダメだこいつら。

 

サーゼクスに頼まれた無能への教育を施すに

あたって、真っ先に目に付いたのが現状への無理解。

 

ついで礼儀知らずに実力不足だった。

 

実力に関しては、俺から見たらコイツらは

まだ生まれたばかりのガキだ。

 

それなら伸ばせば良いだけだが、この無礼はダメだろう。

 

最初に先生か総督と呼べと言ったにも関わらず、

俺に対して当たり前のように対等に口を利く

リアス・グレモリーも相当アレだと思ったが、

その眷属もまた酷い。特に赤龍帝がな。

 

調子に乗ったのかなんだか知らねぇが、何なんだアイツ?

 

マシなのは無言を貫く吸血鬼と元聖女か?

 

いや、実際は赤龍帝の後ろで震えてるだけで

何も言えないのが正しいのだろうが・・・

 

これも実力差を理解できてるとすれば、一介の

下僕悪魔が俺に対して取る態度として決して間違いではない。

 

だが魔王が認めた人事による配置である以上、

コイツらにとって俺は遇すべき客であり教師。

 

ソレを相手に茶の一杯も出さねぇって。

 

残る眷属の人狼は大学部に所属してるから

不在だが、前の会談の際に吸血鬼のことを

指摘したって言うから、常識はあるんだろうよ。

 

非常識連中の中に常識人を混ぜるのはもはや

虐めだと思うが、まぁ悪魔内部で眷属と主君

のことだから、その辺には触れねぇ。

 

それにしたってコイツらの無礼は酷い。

 

学園内に居るシロネ・オセは、その権限が無い

だろうからまだしも、カンザシ・オセや奥方が

居たら一瞬で塵にされるレベルだぞ。

 

こんなのと付き合うのは正直ゴメンだが、

俺の目的である赤龍帝がなぁ。

 

「とにかくその無知無能はいい加減にしろ。

ヤツはともかく、ヤツの周りに殺されるぞ?」

 

神野の目的を知った今、俺とて死ぬことは

覚悟してるがよ。

流石にこんなことで殺されてたまるかってんだ。

 

「・・・無知無能ですか」

 

蟀谷に#マークを作り目元と口元をヒクつかせる

リアス・グレモリー。

 

大貴族のお嬢様だ。今まで誰も面と向かって

こんなことを言ってきた奴はいねぇんだろう。

 

だからと言ってソレを許容する気もねぇ。

 

「現実がソレを物語ってるからな」

 

つーか夜の管理者が夜に当たり前に寝てるってなんだ?

 

日中の管理者であるセラフォルーの妹は、

実家の力を使ってしっかりと管理体制を

作って学校生活を送ってるって言うのに、

コイツときたら・・・何もしてねぇじゃねぇか。

 

そもそも力不足を実感しておきながら、

日中楽しくお勉強ってなんだ?

 

餌として働いてたって言うにしても、

こんなの怪しすぎて相手だって食いつかねぇよ。

 

「とにかくさっさと冥界に行く支度をしろ」

 

寿命のことを考えれば、今からでも遅くはねぇ。

 

こちとら神野の狙いを妨げるためにも、さっさと

赤龍帝の力を解析しねぇとダメなんだよ!

 

「は?いや、今から・・・ですか?」

 

リアス・グレモリーが心底不思議そうな顔を

しているが・・・コイツ、マジか?

 

「当たり前だろう。テロリストが時間と場所を

選ぶと思ってんのか?馬鹿じゃねぇの?

今このとき、自爆特攻で生徒や校舎ごと爆破

とかされたらどうする?俺はそこまで守らんぞ」

 

本来はテロじゃねぇが、コイツらが持つ

情報ではそうなってるから、こう言えば

納得しやすいだろ?

 

実際旧魔王派の連中はニンゲンなんか気に

しねぇからな。

むしろ喜んで殺ってくるだろうよ。

 

「「あっ?!」」

 

そのことに今気付いたって顔をする主と女王。

 

赤龍帝に至っては、なんか殺気っぽいのを

出して俺を睨んでるな。

 

アレも相当無礼で不敬なんだが・・・まぁ

ガキだしな。それに殺したら赤龍帝の解析ができん。

 

寿命の関係からも今回の宿主とは長い付き合いに

なるかもしれんし、しばらくは放置してやるよ。

 

・・・多分アジュカもこんな気持ちなんだろうなぁ。

 

「わかったらさっさと準備しろ。ちなみに、町の

管理に関しては元々お前さんにはまともに出来て

ねぇから心配するだけ無駄だ。

セラフォルーの妹がしてるみてぇに、実家の力を

きちんと使って最上級悪魔の警戒網を敷いてれば、

テロリストだってお前さんが不在の駒王町を

態々狙うような真似もしねぇだろ」

 

セラフォルーの妹の対応は俺から見ても満点に近い。

 

コカビエルの存在を知った時点で素直に自分の

力不足を認め、危険と判断して即座に実家を

頼りこれだけの管理体制を敷くんだ。

 

間違いなく無能でもなければ阿呆でもない。

 

つまりアレが阿呆とか言われてたのはその能力

じゃなく、学校がどうこうって言う主義思想に

問題があったってことだろ?

 

もしくはコイツ(リアス・グレモリー)の評判に引き摺られたか?

 

後者だとしたらかなり不憫なことだと思う。

 

もしその辺のミスリードを狙って、周囲に

油断させる為の擬態としていたならば、

若さに見合わず相当な強かさと評価できる。

 

・・・はぁ。なんで向こうに赤龍帝が行かなかったかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現状はまさしく前途多難。

だからと言って諦める気はねぇ!

 

そよ風みてぇな殺気を向ける赤龍帝を視界の隅に

捉えながら、俺は何度目になるかもわからない

溜め息とともに決意を新たにした。

 

 

 




性犯罪者と無能に説教する総督。
厨二は趣味であって仕事はしてるからね。

というか、原作で堕天使と和平を結んだって
いうなら無能サンのアザゼルに対する態度は
ありえないんじゃない?

魔王や天使長と同格の対応をすべきでしょ?
家を頼らないとかお兄様は関係ないと
言っておきながらその態度は何?ってお話

まぁ現実を教えないと教育もクソもないですからねぇ。


表現?ハハッ。あとがきだから良いんじゃないっすか?


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原作5巻
49話


苦労人アザゼルの苦労は続く。

前半アザゼル視点
後半久しぶり登場会長メガネ視点

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアザゼル視点ーー

 

「ど、どうでしょうか」

 

そう言って、不安を隠そうともしないで

俺が見てるものと同じ資料を片手に、

俺に意見を求めてくる無能。

 

いや、まったくもって何を考えてるのか

さっぱりわからねぇよ。

 

コレが死を覚悟したコカビエルですら関わる

ことを躊躇した無能か。

 

訓練云々の前に今までの駒王町の管理方法や

その記録、自分や眷属の訓練内容を確認する

ことにしたんだが丸っきり遊びじゃねぇか。

 

「どうもこうも・・・ツッコミどころしかねぇな」

 

今までツッコミを入れる奴が居なかった

ってのもあるんだろうが、それだって

コイツが実家からの補佐役の派遣を拒否して

たんだから、コレはまるっきり自業自得。

 

実家の連中が不安だからって理由で前任者の

オセにフォローを依頼するのも当然だ。

 

まぁそれ以前に、そんな要望を飲むコイツの

両親の頭の中も問題だがな。

 

「そうですか・・・」

 

そう言って落ち込むリアス・グレモリー。

 

態々姫島朱乃や赤龍帝を連れずに一人で

来たのはダメ出しされてるところを眷属に

見せたくないからか?

 

「だらしなさを隠すのは100年早えぇ」と

言いたいところだが、まずは一歩一歩だ。

 

「まず真っ先に是正すべきは女王、姫島朱乃の手抜きだ」

 

「そ、それはっ!」

 

何か驚いてるが、コレはツッコまないと

ダメだろう。

 

「当然バラキエルのことを踏まえた上で

言ってる。過去の事情もあるが、だからと

言って戦場でこんなことをしてたら、本人

だけじゃなく主や仲間も殺すことになるぞ」

 

そりゃサーゼクスもどさくさに紛れて

殺そうとするさ。

 

「仲間・・・」

 

そう言われて考えこむが、どうせコイツの

頭の中には赤龍帝しかいねぇんだろう。

 

完全に色狂いの思考だよ。

 

「前回の魔法使いに関しては連中が対策

(神野の蟲)してきたのを見てたからと

言う言い訳も効くがよ。コカビエルの時の

ケルベロスのときは間違いなく命が掛かった

場面だ。

それなのに個人の感情で手を抜いて、雷光

じゃなく雷しか使わないなんてのは、自殺

行為を越えて裏切り行為だぞ?」

 

甘やかしてんじゃねぇ。

 

「た、確かにそうですけど・・・」

 

自信がねぇって?

 

まぁ今まで望むものは全部手に入って、苦労

と言う苦労を経験してねぇコイツじゃあな。

 

コイツの言葉は軽すぎるんだよ。

 

そんなんじゃ、その顔と体で男を魅了

したり、金と権力を使った仲良しこよし

の友情ごっこは出来ても、戦場で背中を

預けることが出来る戦友は絶対にできねぇよ。

 

「部下の悩みを解決すんのも主君の務めだ。

ソレを放棄しておきながら女王だの王だの

ほざくんじゃねぇよ。しっかり話し合え。

その上で説得出来ねぇなら眷属を辞めさせろ」

 

「・・・」

 

俺の言葉に対し、無能は俯いて肯定も否定もしない。

 

「いいか?権利ってのは義務の後に来るんだ。

お前さんの女王と言う立場で得られる権利を

姫島朱乃は享受しているんだ。

ならばアイツにはお前さんの為に全力を出す

義務がある。今後絶対に命懸けの戦場で手抜き

なんかさせんな。

それに話もしねぇで尻込みしてんじゃねぇよ」

 

「・・・」

 

無能は無言のままだ。言ってることは

分かってるがやりたくないってとこか?

 

まぁコイツがどうしようと、俺には関係ねぇ。

 

鍛えろって頼まれたから第1段階として

現状を指摘してるだけだしよ。

 

それにコイツみてぇに、甘やかされて育って

きたガキにはあえて強い口調でハッキリ物事

を言わねぇと、自分に都合の言いように解釈

してしまうからな。

 

解釈の余地が無いようにしっかりと

現実を見せる必要がある。

 

「でもって吸血鬼。コレはまぁ今までが

アレだったが、今はしっかり血を飲んでるし

制御も上手く行ってる。コレはこのまま

でもいずれは禁手に至るだろうよ」

 

そもそもの素養が良いからな。

 

「普通に正面から戦闘仕掛けて、相手の動きを

止めるもよし。物陰に隠れても良し。

性格を考えれば正面切っての戦闘には向かねぇ

だろうが、元々いくらでも応用が利く神器だ。

うまく使って見せろ」

 

つまりコイツを活かすも殺すも指揮官次第。

まぁ・・・今はまだそれほど使えねぇがな。

 

「・・・分かりました」

 

姫島の話が流れたから安心したのか、今度は

きちんと返事を返す無能。

 

「もう一人の僧侶アーシア・アルジェント。

コイツに関しては回復役としては文句がねぇ」

 

例の馬鹿だな。聖女狙いの悪魔ってのが

どうなったかは知らんが、それは俺には

無関係だから、はっきり言ってどうでもいい。

 

コイツ個人としては完全な指示待ち人間では

あるが、指揮官として見ればこれほど使い

やすい駒もないだろう。

 

「回復役としては、と言いますが・・・

他に何か問題があるんですか?」

 

不機嫌そうになった?あぁ、元聖女も

コイツのお気に入りだもんな。

 

そんなの知ったことか。

 

「自衛手段がねぇ。現状常に誰かを貼り

付けることになるが、どう考えても人員が

足りねぇからな。

新しい眷属かコイツ用の使い魔でも

見つけてきたらどうだ?」

 

騎士と戦車の駒が余ってるんだろ?

そう指摘するとますます不機嫌そうな

顔になった。

 

鍛錬以外のことに口を出すなってか?

ハイハイ好きにしてくれよ。

 

「人狼に関しては特に言うことはねぇ。

魔力もあるし、今まで通り鍛えれば

お前さんの眷属としては十分以上の存在だ」

 

種族の特性と戦車の駒による強化のおかげか

既に中級の上くらいの実力はあるしな。

何より常識がある。コイツこそ大事にすべき眷属だ。

 

「そうですか、では次ですね」

 

おいおい、何か突っ込んできたらコイツの

価値を説明してやろうと思ったら俺の含み

をあっさり流しやがった。

 

コイツに関しては特に思い入れもないから

さっさと本命に行けって?わかりやすい小娘だ。

 

「赤龍帝に関してはリングを使った

擬似的な禁手の稼働時間の延長や、禁手

状態に慣れることから始める必要がある」

 

元が雑魚だから鍛えるってのはわからん

でもないが、そもそも悪魔が鍛えるべきは

肉体じゃなく魂だ。

 

ソレを理解してねぇから中途半端な

鍛錬になるんだよ。

 

「禁手に慣れる・・・ですか」

 

無能はそう言って今までとは格別の真剣さを見せる。

 

まぁ分不相応な神滅具だから真剣になる

のは良いんだけどよ。

 

結局は色ボケだってのがなぁ。

 

 

・・・・・・

 

 

それから各自の簡単な鍛錬メニューを渡すと

ともに、冥界行きの準備を急ぐように言って

無能を下がらせた俺は、シトリー家の連中から

受け取った駒王町の現状に関する資料を見る。

 

その内容は無能が用意した資料とは内容や

纏め方まで全然違う。正しく雲泥の差だ。

 

つーか、シトリー家の用意した最上級悪魔

を管理してるのはシロネ・オセかよ。

 

どーりで日中の警戒網に隙も無駄もねぇし、

人員に油断とか弛緩した空気がねぇわけだ。

 

そんなん有ったら殺されるもんな。

 

そりゃ三下が日中に隠れて悪さ出来る隙なんかねぇよ。

 

会談の時は担当として無能が入ったから

手を引いたんだろうが、ソレが無ければ

あんなことは起きなかっただろうに。

 

 

 

・・・やり切れなさが俺の胸をよぎるが、

過去のことは過去のこと割り切らないと

駄目だと自分を叱咤して、資料に書かれた

事実に対する意図を読む。

 

まぁ普通に考えれば、今まで関わって

来なかったシトリー家の連中よりも

前任者だったヤツらの方が町には詳しいし、実力差もある。

 

オセ家はオセ家でシロネ・オセの指揮官

としての訓練って意味もあるんだろうな。

 

学園にいるのも、本人じゃなく身代わりで、

本人はおそらく拠点で鍛錬しつつ仕事を

こなしてるんだろう。

 

その身代わりからは「勢力として休戦は

しても馴れ合うつもりはない」としっかり

釘を刺されてる。

 

まぁ勢力として完全に一丸になったわけ

じゃねぇし、無条件に俺たちを信頼せず

警戒するのは当然だ。

 

とは言えここまで接点が無いのはなぁ。

 

でもってセラフォルーの妹だ。これも

身代わりを登校させて、自分たちは冥界に

避難してるって話だったが、無能も眷属

連中も何も知らなかったんだよなぁ。

 

ま、情報の漏洩を嫌ったんだろうさ。

 

セラフォルーの許可もあるみたいだし、

実家としても危険なところに次期当主が

いるのは困るだろう。

 

だけどよぉ・・・同級生が身代わりかどうか

にすら気付かねぇってどうなんだよ?

 

まぁ身代わり連中も最上級悪魔だし、今の

アイツ等じゃ気付けねぇのもしょうがねぇ

かもしれねぇが・・・いくらなんでもなぁ。

 

はぁ。情報を知れば知るほど

リアス・グレモリーの評価が落ちる。

 

ただの貴族のお嬢さんならそれでも良い。

 

いや、当主の決めた結婚に反対して、ゲームで

負けたら結婚するって契約を交わしておいて

堂々とソレを破棄した挙句、式に参列した

貴族たちにも何もせず、謝罪やらなにやらを

全部実家に押し付けて自分は地上でお気に入り

の眷属と一緒に管理者ごっこしてる時点で、

貴族云々以前にコレはもう外に出しちゃダメだろ。

 

裸の王様どころの話じゃねぇよ。

 

「はぁ」

 

・・・溜め息が止まらない。

 

胃痛はともかく頭痛までしてきそうだぜ。

 

コレは近いうちにオセ家が作ってると

言う薬を買う必要があるか?

 

胃は強制的に治るらしいが、頭痛は

どうなんだろうなぁ~。

 

ってか俺に売ってくれるかなぁ。

 

それともセラフォルーの妹が学園に来る

ようになれば少しは楽になるのだろうか。

 

現実逃避気味に外を見る。

 

そこには眷属とじゃれ合いながら下校する

無能の姿があった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

 

ここは日本地獄。本来なら日本で死んだ死者

が、お迎え課の方々に連れてこられて初めて

来ることになるはずの場所。

 

・・・そのはずなんだけど、なぜか私たちは

生きたままで来訪し、ここ一ヶ月お世話になってる場所でもある。

 

そう、シロネ様に連れられココに来て、

修行と言う名の虐待を受け続けて早一ヶ月が経とうとしていた。

 

いえ、実際一ヶ月かどうか知らないけど・・・

寝る前に書いてた正の字もいつの間にか更新

出来なくなるくらいに殺られて、気がついたら

たたき起こされて鍛錬を積まされる日々。

 

いえ、こういう言い方はシツレイよね。

向こうの方々だって暇じゃないのにこうして

私たちを鍛えてくれたし、実際に私たちは

学校に通ってる時に比べて比較にならない

くらいに強くなったわ。

 

でもそれと同時に色んなものを亡くした

のは事実よね・・・尊厳とか。

 

それはそうと、元々上級悪魔で指揮官の私や

神器を持つ椿姫。それに匙は特別扱いを

されて個別に鍛えてもらってたから、今まで

お互いがどんなトレーニングをしてたかって

言うのは知らないのよね。

 

それで今日。ようやく皆も基礎訓練を卒業し、

眷属全員で纏まって訓練するってことになり、

他の眷属の子と合流できるって話だったから

彼女らが訓練を受けてたところに来たんだけど・・・

 

 

そこには強面の犬、いや、夜叉一さんと

彼を目の前にして厳しい顔をしたまま

直立不動の体勢を取る私の眷属が居た。

 

久しぶりに見る皆を見て、無事だったのね!

とか、大丈夫だった?とか酷いことは・・・

当然されたわよね?って言ったりしようと

したんだけど、どうもそんな雰囲気ではない。

 

 

これからナニカするのだろうか?と困惑

して見守っていたら、今まで目を閉じでいた

夜叉一さんが「オベリスクの巨神兵!!」

と言わんばかりの大声を上げた。

 

 

ーー

 

『本日をもって貴様らはウジ虫を卒業する!』

 

う、ウジ虫って。

 

「「「「サー!イエッサー!」」」」

 

だ、誰も否定しないのね。

 

『本日から貴様らは眷属悪魔である!

兄弟の絆に結ばれる。貴様らのくたばるその日まで。

どこにいようと眷属悪魔は貴様らの兄弟だ!』

 

いや、まぁ、そう・・・なのかな?

 

「「「「サー!イエッサーッ!!」」」」

 

返事はソレで決まりなの?

 

『多くは冥界へ向かう。ある者は二度と戻らない』

 

まぁ、学校卒業したら冥界が主な職場だしね。

 

「「「「・・・」」」」

 

あ、ここは返事しないんだ?

 

『だが肝に銘じておけ。

眷属悪魔は死ぬ。死ぬために存在する!』

 

いや、どんなだけブラックなの?!

 

「「「「サー!イエッサー!!」」」」

 

否定してよ!

 

『だが眷属悪魔は永遠である。

つまり―――貴様らも永遠である!』

 

なんか良いこと言ってるけど、私が殺すこと

前提よね?ブラック前提よね?!

 

「「「「サー!イエッサー!!」」」」

 

ーー

 

 

一連の流れが終わり、スゴク・イイ顔してる

夜叉一さんやみんなに突っ込み入れるのは

どうかと思うけど、流石にひどくない?!

 

「ソーナ、諦めましょう」

 

そう言って私の肩に手を置いてくる椿姫。

 

久しぶりにあう彼女は明らかに疲れきってるけど目は死んでない。

 

むしろギラついていると言っても良いわね。

 

「ですね。戦いは数です。そしてより効率的に

戦うために必要なのは勝手気ままに動く

ウジムシではなく、訓練された兵士です」

 

匙・・・貴方まで精悍な顔つきになって。

 

コレが教育。コレが訓練。

 

【レーティングゲームの学校を作るということは、ソレに参加する兵士を作るということだ】

 

という現実を嫌というほど見せ付けられる。

 

『おう。来たか嬢ちゃん』

 

内心凹んでる私を見つけ声をかけてくる

夜叉一さん。

ココのヒトたちは私のことを名前ではなく

嬢ちゃんと呼び続ける。

 

正直最初は面白くはなかったけど、今じゃ

納得してるわ。

最近自覚したばかりだけど、彼らから

見ても私はただの大貴族の我侭お嬢さんにすぎないもの。

 

個人で何を成した訳でもなければ、ソレだけの知恵も力もない。

 

そりゃ嬢ちゃんよね。

 

だからこそこうして遠慮も情けも

容赦もなく鍛えてくれるんだろうけど・・・

 

『とりあえず基礎の基礎は終わった。

あとはこれから一ヶ月嬢ちゃん達を

加えた連携訓練をして基礎は終了だな』

 

え?アレ??自虐してて私の耳がおかしくなったかしら?

 

「あの、夜叉一さん?もう一ヶ月って聞こえたんですけど?」

 

もともと一ヶ月の訓練ですよね?!

 

そう思って確認するも、現実はやはり無常である。

 

『あぁ、もともと新入り教育用の8週間

カリキュラムだからな。

本来ならもっとじっくりしっかり鍛える

のが普通なんだが、なんかお前らも事情が

あるんだろ?』

 

事情っていうか学業と言いますか、シロネ様

からは趣味の学校より鍛えるのを優先しろって言われたし

私もその通りではあると思うんですけど、

やっぱり気になると言いますか何と言うか。

 

それに向こうがどうなったか知りたいのも

あるし、匙とかも家族の面倒は家のヒトたち

にさせてるけどやっぱり気にはなるだろうし。

 

夏休み中に若手の会合があるからソレに

参加しなきゃいけないのは確かでもあります。

 

『お前らみたいなのをこんな短時間で

一人前にしてくれとはな。まったく、シロネも無茶言いやがるぜ』

 

ヘヘッって言いながら言ってますけど

まんざらでも無さそうですよね?!

 

それに別にこんな短期間でいろんな意味で

地獄を見せなくても良いから、じっくり

鍛えるコースをお願いしたいですっ!

 

まぁそんなこと言ったらシロネ様に「甘えるな」

とか言われて、またココに叩き込まれるだろう

から言いませんけど!

 

「で、でも、そもそも訓練は一ヶ月って言われたんですけど?」

 

だからと言って無抵抗はありえないわ!

 

楽をしたいんじゃないの!これ以上

無闇矢鱈と死にたくないの!

 

必死にそう言い募る私を見て「何言ってんだコイツ?」みたいな顔をする夜叉一さん。

 

『そりゃ元々シロネが言ってた準一等、つまり

お前らで言う上級悪魔くらいなら今で十分だ。

だけど向こうの奥さんからは一等の最上級悪魔

くらいの力を身に付けさせるように言われて、

料金もしっかり貰っちまってるからなぁ』

 

いやぁカミさんや子供も大喜びだったぜ

とか言って笑ってるけど・・・そうですか

代金は支払い済みですか。

 

って言うかコッチは笑えないですよ!

 

って言うか最上級悪魔?!私たちそんなの目指してたんですか?!

 

『魔力だけならもうその段階だが、ソレ

を扱う技術が伴ってねぇからな。

今のお前らは、はっきり言って雑魚だ』

 

雑魚・・・で、でも私だけじゃなく、皆も

魔力だけとはいえ最上級悪魔に匹敵する

ところまで来てたの?!

 

『そもそもお前らの同期の自称弟子だって

3等の初級魔王講座を受けて鍛錬してんだぞ?』

 

自称弟子・・・あぁゼファードルね。

 

ファルビウム様の実家と言うことで少しは

情報もあったけど、凶児とまで言われてた

問題児の噂が最近めっきり聞かなくなった

と思ったら、オセ様の下で修行してたなんてね。

 

そりゃ問題なんか起こせないわよ。

 

『まぁなんだかんだでアイツは5年くらい

訓練してっからアレだけどよ、嬢ちゃんは

アイツと比べられるんだろ?』

 

「・・・そうですね」

 

彼はグラシャラボラス家の次期当主では無い

けど、同世代の若手として会合に参加するはず。

 

そうなれば私たちは同期として彼と比べ

られることになるわよね。

 

『ソレを考えたら現時点で最低限1等

くらいは無いと色々まずいんじゃねぇか?

って向こうは考えたんだと思うぞ?』

 

そう言われてしまえば、その通りとしか

言えないわよね。

 

個の力より指揮官としての力が重要!とか

嘯いても、それは両立出来ないモノじゃない。

 

個の力が無い指揮官なんか何の役にも

立たないのが現実よ。

 

『元々嬢ちゃん達より早く来てて、日々

基礎鍛錬を行ってる焼き鳥の嬢ちゃんなら

まだしも、基礎の基礎すら出来てねぇ雑魚

を一人前にするんだぞ?

そりゃいくら俺だって8週間かかるってもんだ』

 

焼き鳥の嬢ちゃん・・・あぁフェニックス家

のレイヴェル・フェニックスさん。

 

この前偶然芥子サンのところで会ったけど、

彼女も随分鍛えられてたわよね。

 

オセ様の奥様の付き人みたいだけど、最低限の

力が無いと自衛も出来ないし、何かあった際

余波で死ぬからって理由で鍛えられてるとか?

 

完全に同世代のゼファードルや、少しだけ

年下だけど、世代的には同世代と言っても良い

レイヴェルさんの実力を考えれば、確かに

上級じゃ足りないのはわかる。

 

更に若手最強と言われるサイラオーグも居る。

 

それなら私たちがココで泣き事を言うわけには

行かないわよね!

 

『お、ようやく自分に折り合いつけたみてぇだな』

 

顔を上げた私を見て、楽しそうに笑う夜叉一さん。

 

なんだかんだでちゃんと待ってくれるあたり

面倒見の良いヒトなのよね。

 

「えぇ覚悟も決めました。まずはその一等。

最上級悪魔にふさわしい実力を身に付けます!」

 

ゼファードルの3等には及ばないけど、

千里の道も一歩から!階段だって一段ずつ

登ってれば、いずれは次の階に到達出来るわ!

 

『その意気だ!行くぞお前らァ!』

 

覚悟を決めた私を見て満足気に頷いてから、

夜叉一さんは私の後ろに声をかける。

 

・・・後ろ?お前ら?

 

「「「「「サー・イエッサー!!」」」」」

 

椿姫・・・匙。アナタ方も教育済みだったのね

 

『嬢ちゃんは指揮官だから今までは完全に

別だったが、これからは一緒に訓練する。

部下の限界点を理解してねぇ指揮官はダメ

だし、部下と連携出来ねぇ指揮官はもっとダメだ』

 

直立不動の眷属を当然のように放置して

私に今後の方針を教えてくれるけど・・・

何ていうか、皆の目力が凄い!

 

コレは「休め」とか言えってこと?

でも今は説明を受けてる最中だし。

 

「そ、その通りですね!」

 

そもそも正論過ぎてそれしか言えないわ!

 

私はね、直立不動でこっちを見る皆より、

目の前の夜叉一さんの方が怖いのよ!

 

『現状はギリギリ1等ってとこだからな。

これから基礎を鍛えて全員1等の真ん中

ぐらいに上げて、連携次第で2等や3等

と戦える程度までは鍛えてやるから安心しなぁ!』

 

気合の入った夜叉一さんと、彼を見て、

微塵も体勢を変えないままに目から

光だけを消して絶望を私に伝える皆。

 

・・・みんな器用ねぇ。

 

いや、現実逃避して感心してる場合じゃない。

 

私を含めて、皆はこれから絶対にこれまで

以上の地獄を見るんだろうけど、コレを

避けてしまえば私たちに今後はないのよ!

 

「ハイッ!よろしくお願いします!」

 

正直今のゼファードルがどれだけ強いのか

は知らないけど、この訓練を終えれば

まったく戦えないなんて事はないってことよね!

 

私としては、今更レーティングゲームだの

その学校だのに固執して、ゲームの運営として色々

しながらゲームに夢を見る悪魔の出世の機会を

好きなように操り、政治の実権を握った気に

なってる老害共を喜ばせる気はないけどね。

 

もし「ゲームにまったく参加しない」なんて

言えば、自分達の手を離れようとする私に

対して老害どもがどう動くかわからないから、

付き合い程度にはゲームをしないといけないわ。

 

だけど、付き合いだからって無様に

負けて良いってわけじゃない。

 

私はシトリー家の次期当主として、恥をかくわけにはいかないの。

 

もう私個人の問題じゃ済まないんだから。

だからこそ私は強くなる!

 

シトリー家次期当主として領民全部を抱えるわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シトリー家は私の家!シトリー領に生きる者はみな、我が親我が子我が兄弟!私は皆を背負って冥界に向き合うのよ!

 

 




現実を知って茫然自失する堕天使総督。
趣味に走る時間なんか無いぞ?
とりあえず現実をしっかり突きつけるもよう

眼鏡会長。眷属共々訓練中。ってお話
夏休みも継続して鍛えてもらえるよ!やったね☆


くそ、ウン・エイ=サンが怖くてあんまり書けねぇ!


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50話

前半・久々登場かんちゃんとシロネコ。
後半・主人公?アザゼル視点。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

「ほほー。流石は夜叉一さんだねぇ」

 

報告書を見ながら簪姉様が本当に驚いた

表情でそう呟きます。

 

うん、私としても同じ気持ちです。

 

「ですね。まさか夏休みを含めて

8週間で1等まで成長させる予定

だったとは思いませんでした」

 

私としては一ヶ月で準一等になれば

十分って思ってたんだけど、私が

ご主人様に上げた稟議書を見た奥様が

 

「公爵家の護衛が上級程度じゃダメだろう」

 

って判断して最上級悪魔並にするように依頼

を出したらしく、ソレを受けた夜叉一軍曹に

よる強化プランが発令されたとかなんとか。

 

まぁ今まで貴族のお嬢様として遊んでた

眼鏡と、その付き人ですからね。

 

しっかり現実を見せる意味もあるんでしょう。

 

「促成栽培なんで、どうしてもアンバランスな

形にはなるけど・・・まぁシカタナイネ!」

 

ですね。元々無理を言ってるのはわかるし、

私たちだとその「バランスの悪さ」が我慢

できずにズルズルと訓練しちゃいます。

 

この割り切りは流石夜叉一さんと言えます。

 

まぁコレで奴らが帰って来た後はそこそこ

使える駒が増えますから楽になるだろうし、

簪姉様もご機嫌が良さそうです!

 

だけど次の報告がなぁ・・・

 

「ですが、無能が性犯罪者の家を改築しましたよね?」

 

周囲の土地に関しては、多少強引では

ありますが取引と言う形で交渉してる

みたいだから、本来なら文句を言うよう

なことじゃないかも知れませんけど・・・

 

「あ~アレね。無能にも程があるというかなんというか」

 

呆れた様子を隠そうともしません。

 

「餌としては目立ってくれた方が良いのは

事実なんだけどねぇ。

あまりにも不自然すぎて逆に警戒されてるし」

 

そう、餌が餌として機能してないんです。

 

あの無能は自分が生活しやすいようにって

考えて拠点を改造したんでしょうが・・・

 

現在の無能は『英雄』としての名と立場を

持ちながら、あまりにも行動が馬鹿すぎて

敵に裏があると警戒されてしまい、結果として

狙われないと言う奇跡のバランスを生み出しました。

 

コレがサーゼクスの狙いだとしたら大した

モノですけど・・・実際はタダの偶然です。

 

私たちにとって最大の問題はこの【偶然(ご都合主義)】なんですけどね。

 

「もしかしてアイツ等ずっとコッチに居る気なのかな?」

 

簪姉様は心底嫌そうに顔を顰めてますね。

だけどわかります。

 

眼鏡が戻ってきたら一時的に楽になりますが、

アレは学園を卒業したら領地に帰るでしょう?

 

そうなれば残った無能が単独でココを

管理することになるかもしれません。

 

サバトや日本神話群の方々との付き合いを

考えれば放置は出来ないし・・・

 

「かもしれないです。何もかも無責任に

投げ出した無能にしたら、冥界よりも

コッチの方が過ごしやすいでしょう」

 

何をしても肯定されて、説教されることもなく、

かと言って実家の力を使えないわけでもない。

 

それでいて普段から「次期当主として、

家の力に頼ることなく所領を管理する

ことで領主としての経験を積んでます!」

とか抜かしてるんでしょ?

 

イギリス人もビックリな二枚舌ですね。

 

そんなのが通るなら、そりゃ過ごしやすいでしょうよ。

 

でもって、その無能が無能を晒した結果がこのアンバランスな管理体制です。

 

日中は私が冥界から派遣された連中を

使って警戒網を敷いてるからまだマシ

ですけど、夜がひどすぎるんですよ。

 

人狼に申し送りはしてるんですけど、夜中

マトモに働いてるのは彼だけだし。

 

他の連中は家の中で性犯罪者を取り合ってるんですよねぇ。

 

そのせいで使い魔もマトモに管理出来てない。

 

アザゼルが何やら企んでるみたいだから、

さっさと冥界行って欲しいんですけど。

 

「そりゃ働かなくてもお金に困らないなら

実家より外の方が過ごしやすいよねぇ」

 

あれだけ実家に迷惑かけておきながら、

何も補填しないでお金と人材を強請る

んですから、大した面の皮の厚さですよ。

 

「仕事もしなくて良いなら、毎日が楽しくてしょうがないのでしょうね」

 

日中は楽しくお勉強で、夕方は下僕と遊んで

夜は男と同衾して・・・

 

知れば知るほど呆れの色が強くなります。

 

「はぁ。羨ましい話だねぇ」

 

口調とは裏腹に、完全にゴミを見る目で資料を確認してます。

 

「ん~。私は真似も理解もしたくないですけど」

 

生粋のHENTAIである簪姉様は仕事=趣味

みたいなところもありますし、基本的に

私たちはご主人様に褒められることで幸せを

実感してますからね。

 

だけど、もしもご主人様が怠惰な方ならどうなんでしょう?

 

奥様や簪姉様と一緒に無能みたいに毎日ダラダラ過ごすんですかね?

 

・・・ダメだ。仕事もしないで色欲やら

何やらに溺れるご主人様って想像出来ない。

 

三日くらいで『飽きた』って言って普通に仕事しそうです。

 

なんたって政には終わりがありません。

 

現状でも開発する土地が有り余ってますし、

技術的な進歩によって統治の範囲やら開発の

内容やらは日々変わります。

 

そんな日々の都市開発とか領地経営を楽しんでますからねぇ。

 

グレモリー家だって領土のほとんどは森とか

だし、やることはいくらでもあるんです。

 

こうして平気で仕事をサボる無能一味のことを理解出来る気がしませんね。

 

主君の有り様はそのまま家の有り様です。

 

こんな連中が悪魔貴族のスタンダードなんです

からそりゃ冥界の悪魔領も発展なんかしませんよ。

 

「私にも無理かなぁ~。だって本来なら

夜の業務は関係ないから放置したいとこ

だけど、夜の内に侵入した虫は日中に

片付けなきゃダメだからさぁ。

こんな考えをしてる時点で無能みたいに

遊んで暮らすのって無理なんだよねぇ・・・」

 

そうなんですよねぇ。

 

無能みたいに『日中は遊ぶし夜は寝るわ!

何か有ったらすぐに動いて解決するわ!

私たちなら出来るから大丈夫!』

な~んてお気楽思考は持てません。

 

夜のことだからって言って何もかも

放置してたら日中の業務にも支障が出ます。

 

とりあえず今は夜間に侵入してきた連中の

拠点を抑えて、日中に捕まえて情報の

抜き出しを行ってるから、夜にも何も

起きないってだけの話なんですよね・・・

 

連中は見回りしてる最上級悪魔に気を

取られてますから、私や黒歌姉さまの

アンブッシュに対処できないんです。

 

そんな感じで捕まえた連中から得た

情報で、当たり障りの無いのを人狼に

渡してるんですよね。

 

ソレをどこまで理解してるのやら。

 

人狼は普通に申し送りの際に、担当に

菓子折りを渡して来るくらい感謝して

るっていうのに・・・

 

「とりあえず無能は自分の城にアザゼルが

来て、説教やら監視やらされてるのが随分と

不満みたいです。

早めに冥界に帰ってサーゼクスか実家の両親

に泣きつくつもりじゃないですかね?」

 

アザゼルにしても神野サンに教えられた

『ヘスティアの竈の術式』を研究したいし、

赤龍帝の倍加の力をソレに載せるための

強化実験とかを目論んでるみたいですけど。

 

「アザゼルねぇ。アレも大前提が違ってる

ことに気付いてないからねぇ」

 

そうなんです。そもそも神野サンに被害者の

渇望とか関係ないでしょ。

 

「だけど、なんで連中はあそこまで一途に神野サンの言うことを信じるんでしょう?」

 

神野サンからの情報なんか信じる方が

どうかしてますよね?

あんな怪しいヒトからの情報なんか、普通は疑いませんか?

 

ゲイのサディストじゃないんだから、

目の前に蜘蛛の糸を垂らすハズないでしょうに。

 

「アレは神野サンの演出が凄いからだよ。

普通はあの場、あの状況で嘘ついて遊んでる

なんて思わないからねぇ」

 

あぁ実際連中はいろんな勢力やニンゲンに

被害を出してるし、相当恨みも買ってるから

違和感が無いんですか。

 

最初以外は全部事実だから、最後の嘘も

読み取れないんですよねぇ。

 

ヘスティアってw竈ってw

 

遊ばれてるのはわかってても、その内容が

連中が思ってるのとはまるで違うから

いつまでたっても正解にはたどり着けない。

 

だからいつまでも試行錯誤するわけです。

 

つまり・・・ご主人様が望む楽園に一歩近付きました!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

『ドライグを宿した小僧を鍛えろだと?』

 

訝しそうにこちらを見て疑問を口にする龍。

 

コイツは元六大龍王の一角にして転生悪魔『魔龍聖』タンニーン。

 

今回赤龍帝を鍛えるにあたって、適任者は

コイツしか居ないと思い連絡を取ってみたが、

通信機越しでも乗り気ではないのがハッキリ

わかる。

 

だがココはなんとか提案に乗ってもらわないと困るんだ。

 

「あぁ、そうだ。サーゼクスからも依頼書を

預かってる「是非頼む」とのことだった」

 

そう言って依頼書を見せるが、反応は鈍い。

魔王の権威を利用したと思われたか?

 

『・・・ドライグにやらせればよかろう』

 

そう渋い口調で指摘してくる。

 

まぁ普通ならそうだろう。コイツは

龍としても転生悪魔としても最強格

だが、普段は龍王としての仕事もあるんだ。

 

わざわざ下級の下僕悪魔なんかに構ってる

暇はないだろうよ。

だからこそサーゼクスからの依頼書なんだが、

この分だと逆効果だったか?

 

「それでも限界がある。やはりドラゴンの修行と言えば・・・」

 

とりあえず誠意を見せるために向こうの疑問に答える。

 

『・・・元来から実戦形式。俺にそのガキを虐め抜けと言うわけか』

 

話が早くて助かるぜ。

 

「そういうことだ」

 

今の連中の鍛錬は温すぎる。

あぁ言う雑魚は自発的に自分を追い込む

ことは出来ねぇ。

 

他者が本気で向かうことで危機感を持ち、

追い込んで追い込んでようやく壁を破る

ことができるんだ。

 

・・・神野が言った等級で言えばおそらく

今の赤龍帝は1等以下。ランク外。

そんな雑魚の力を上乗せしたところで

何の意味もないだろう。

 

自在に禁手を使えるヴァーリでさえ2等。

ならばあのガキも禁手を使えれば2等に

は届くかもしれねぇ。

 

でもって覇龍で4等なら・・・

 

流石に今のガキに覇龍がどうこうは無理

だろうが、それでも最低限の下地は欲しい!

 

『そうか。だが断る』

 

予想はしていたが、随分とあっさりとした返答だな。

 

コレは俺に対する不満とかではなさそうだ。

 

「・・・理由を聞いても?」

 

今回コイツに断られたのはシカタナイが

今後のことを考えればその理由は確認

しなきゃな。

 

普通に考えればコレはグレモリー家や

サーゼクスに貸しを作れる機会だ。

 

龍【王】として考えた上でソレを無視する理由が

有るってんなら、他に依頼しても断られるだろう。

 

ソレに対する対策も必要になるからな。

 

『お前にも何やら狙いがあるようだが、俺が

それに付き合う義理はないというのが一つ』

 

まぁ、そりゃそうだ。神野云々は最高機密。

ソレを言わずに協力を求められても胡散臭い

だけだろう。

 

そもそも悪魔と堕天使は敵対してたし、

休戦したからっていきなり仲良くは出来ん。

 

龍【王】としてはソレには乗れんか

 

「なるほど。俺の信用の問題か。それで、

他にもありそうだが?」

 

一つってくらいだからな。

 

『まぁな。先程お前はドライグが鍛える

には限界があると言ったが、そのガキは

お前が言う限界に到達したか?』

 

・・・なるほど。

 

せめて自分で鍛えることが出来る限界

まで鍛えてからにしろってことか。

 

ごもっともだな。わざわざ甘ったれた

小僧を鍛えるなんざ御免だろうよ。

 

「正直言って限界には到達してねぇ。

だがコイツは今回みたいに長期で冥界に

行く機会が少ないんだ。機会が有るうち

に鍛えたいってのはおかしなことか?」

 

長期ったって一ヶ月前後しか居ねぇが。

 

『鍛錬において基礎を飛ばしても良い

ことなど無い。実戦で鍛えるよりも

道場かどこかで基礎を学ぶべきだな』

 

それもごもっとも。

 

『それにお前は勘違いをしているようだから

言っておこう』

 

「勘違い?」

 

なんだ?何か俺が知らない情報でも有るのか?

 

『そもそも『赤龍帝』は既に居ないのだ。

今いるのは『赤龍帝の籠手』と言う神滅具

を宿したニンゲン。いや、転生悪魔だ。

それは決してドラゴンではないぞ』

 

・・・龍としての誇りか?

 

『英雄だかなんだか知らんが、あんな

プロパガンダで全てを欺けると思うな。

今の『赤龍帝の籠手』の宿主は小娘の

下僕となり全力で尻尾を振る小僧だ。

そんなのを同族と認める気も無ければ

鍛えてやる気もないッ!』

 

この感情は・・・怒りか。今の宿主は

相当コイツに嫌われてるらしいな。

 

「言ってることは紛れもなく正論だ。

しかしここまでの情報を一体何処で?」

 

フェニックスの件で悪評を垂れ流したのは

知ってるが、ソレだけか?

 

『・・・お前は何も知らんのだな』

 

堕天使だから仕方ないが・・・と言いながら

俺を見る視線には多分に呆れが混じっている。

 

交渉するなら相手のことくらい調べとけってか?

 

『そもそも俺が悪魔になった理由は知ってるな?』

 

「あぁ、ドラゴンアップルだろ?」

 

流石にそれくらいは知ってるさ。

 

『その通り。冥界の一部の土地でしか栽培

出来ないアレを恒久的に得るために、俺は

悪魔になった』

 

そう、コイツは力が強いだけじゃなく、仲間

思いで責任感が強い龍【王】だ。

 

だからこそ赤龍帝の教育も任せたかったんだが・・・

 

『俺の所領でもとりあえず最低限の栽培は

できている、だが品種改良や増産となると

簡単にはいかん』

 

そりゃそうだ。農業は根気だからな。

ドラゴンは気が長いが、どう考えても

農業には向かんだろ。

 

『そこで俺が頼ったのがオセ殿だ』

 

「はぁ?!」

 

ここでヤツが出てくるのかよ!

 

『オセ殿は我々が数百年、数千年かけて

行ってきた品種改良を10年もかけずに

行い、土壌の開発や水質、空気に至る

まで研究を重ね、今や増産だけじゃなく

味の向上にまで手をつけている』

 

何やってんだアイツは・・・いや、

統治者としては農政に目を向けるのは

正しいことなんだろうがよぉ。

 

『今ではオセ領でもドラゴンアップルは

栽培されている。ついでに現在の俺の所領で

採れる収穫量ではどうしても不足気味でな』

 

まぁドラゴンだし、一度の消費量はかなり

のモンだろう。

それに有ればあるだけ喰いたいってのも

あるんだろうなぁ

 

『結果的に不足分をオセ領から輸入している。

さらに、こちらの品質改善の為に技術提供まで受けている状況なのだ』

 

「・・・なるほど」

 

情報源はオセ家、もしくはオセ家と親しくしてる家か。

 

そりゃオセと断交してるグレモリーの

眷属なんか鍛えられねーわな。

 

『まぁそんなわけでオセ殿への遠慮もある。

だが一つ言わせてもらえば、俺がサーゼクス

とお前からの依頼でドライグを鍛えたとして

もオセ殿が俺に何かすることは無い』

 

確かにヤツはそんなセコい性格はしてねぇ。

 

間違っても自分がそんな事を言っていたって

言われても困るし、そもそもそんな勘違いを

するなって言う警告なんだろうな。

 

『情報の出処と俺たちの事情はわかったな?

結局のところ俺が依頼を受けんのは

今の所有者をドラゴンと認めてないから。

そしてお前達の狙いがわからんからだ』

 

あのガキの普段の行動と、俺の信用ね。

 

「もしも俺が何かしてオセ家に迷惑が

掛かったら仲間が滅ぶ可能性があるし、

本人が許しても奥方が殺しにくるもんなぁ」

 

そう、オセはその迷惑すら楽しみの

種として大概の事は笑って許すんだが、

周囲が決して許さないんだよ。

 

学園で無能に言ったことだが、ソレは

俺たちにだって言えることだ。

 

『その通り。奥方殿もそうだが眷属も

強力でな。正直言って無駄に機嫌を

損ねたくない。

もしも俺以外の龍に頼る場合でもオセ家

からの承諾は貰った方が良いだろう』

 

・・・つまりは無理ってこったな。

 

「しかしお前さん以外で冥界に居る龍となると、ティアマットのことか?」

 

天魔の業龍と言われたアイツも

オセに世話になってるのかよ?

 

確かレーティングゲームに関して何やら

関与してるらしいが・・・

 

『ヤツは・・・まぁアレだ。オセ殿に逆らうどころじゃない』

 

「はぁ?」

 

悪魔領に入り込んだ密偵はほぼ全員が

オセ領で殺されてるから、細かい情報は

手に入らなかったんだが・・・

 

一体何がどうなってやがる?

 

 

・・・・・・

 

 

 

情報を得れば得るほど状況の悪さが

浮き彫りになっていく。

 

本格的な頭痛を覚えて、俺は通信を終えた後

何も映っていない通信機の前で頭を抱えた。

 

いや、まずは現状把握ができただけ良しとしよう!

 

神野の顔と声を思い浮かべ、なんとか気力を

振り絞り未来を見据えようとするが・・・

 

はぁ。溜め息が止まらねぇ。

 

とりあえず赤龍帝の教育は考え直しだ。

 

まさかタンニーンからドラゴンとして見られてないとはな。

 

まぁ実際タダのガキだし、龍王が鍛える

価値があるかと言われれば・・・無い。

 

最低でもこっちで出来る限界まで

鍛えてからってのが筋なのも事実だ。

 

それにドラゴンアップル以上の対価も払えんから、無理強いも出来ん。

 

サーゼクスの依頼とはいえ、所詮は

依頼であって命令じゃないから当然

断る権利だってあるよなぁ。

 

タンニーンもティアマットもダメなら龍王は

諦めて、もっと身近な奴にするか。

 

それでいてドライグのプライドを刺激しない

ヤツかぁ・・・そんな都合の良いヤツいたら

サーゼクスも真っ先に紹介してくるよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしオセは農業も出来るのか・・・

 

 

正式に休戦協定も結べたし、

もうアイツが魔王で良いんじゃねぇか?

 




農業に一家言あるオセ君。そもそも
悪魔やドラゴンに品種改良とかって
ノウハウなさそうですねってお話。

アザゼルは追い詰められているようだ・・・
(別に誰も追いかけてません)


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51話

誰もが予想していたオリキャラ登場。

若手の会談前のYOSHITUGUについて

ある意味日常回!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「自称弟子。お前は悪魔の駒を持ってますか?」

 

師匠から急な呼び出しを喰らったもんだから

急いで来て、アイサツして正座したと思ったら

いきなりこの質問である。

 

そう、目の前にいるのは俺にとっての師匠だ。

 

額に紅い宝石がある龍人で、本来の種族は

ヴィーヴルと言う種族の龍だが突然変異種らしい。

 

外見はやや小柄で白い肌と白い髪に白い角。

目は赤っぽい橙と言ったところだろうか。

 

外見だけならタダのアルビノの幼女で

済む話なんだが、問題なのはその中身。

何故か生まれつき神器っぽい白い槍を持つ

と言うのも有るが・・・

 

っょぃ。

 

ひたすらにっょぃ。

 

本人は槍が得意と言うが、基本的には何でも使える。

 

基本的に俺に武術を仕込んでるのがこのヒトで、

今の俺の立場で師匠と言えば旦那じゃなくてこの

ヒトになる。

 

なんでも武に特化してて、純粋な戦闘に

関しては姉御や簪の姉御より上だとか。

 

自称弟子扱いなんで師匠とは呼べないので

姐さんと呼んでるが、まぁ師匠だな。

 

そんで、その姐さんが修行の前になんか話が

あるって言うから、なにか大事な話かと思って

正座して聞いてたんだが・・・悪魔の駒?

 

お付きの二人も???って感じだし。

 

「・・・返事は?」

 

うぉっ!悠長に考えてる場合じゃなかったッ!

 

「ハイッ!モッテマスッ!」

 

答えると同時に目の前で白い槍が止まる。

 

「この前実家のオヤジが急に

「ファルビウム、いや魔王様からだ」

って言って送ってきましたッ!」

 

恐らくは知ってるだろうが、補足説明もしておく。

 

つーか、いつ間合いを詰めたか?とか、いつ槍を

動かしたか?とかそう言う次元じゃねぇ。

 

気付いたら殺されてる。姐さんと俺には

隔絶した力の差があることは知ってるが、

コレは純粋な技量の差らしい。

 

とりあえず今回は殺される前に助かった。

正直珍しいなんてもんじゃねぇ。

 

このヒトたちの矯正=サツガイだからな。

返事が遅れたってのは言い換えれば質問の無視。

 

つまりは不敬だ。不敬=矯正=サツガイでも

あるのに、今回助かったのは質問の内容で

ある悪魔の駒についてナニかあるからだよな?

 

わざわざ甦る時間を待つのも惜しいってことか?

 

「ならば良し。ではここにいる海蛇と

黒いのを自称弟子の眷属にしなさい」

 

「「「はぁ?!」」」

 

槍が引っ込んで一息つけたと思ったら、いきなりの爆弾発言。

 

俺も驚いてるが、姐さんの側に居る

二人もめっちゃ驚いてる。

 

「若手の会合とやらがあるのでしょう?

自称とはいえ、教頭先生の弟子に眷属の

一人もいないのでは格好がつかないでは

ないですか」

 

驚く俺に説明をしてくれるが、その槍が

いつ俺の脳天を貫くのかわからないから

一切気が抜けねぇ。

 

「そ、そう言うことっすか」

 

とはいえ、説明を受けたらリアクションを

取らなきゃ普通に「無視するな」と言って

コロサレルからな。

 

でもって、そうか。会合に参加するのは良い

けど眷属な・・・まったく考えてなかったけど、

確かに旦那に恥をかかすわけにはいかねぇよな。

 

「い、いや、でもお嬢!お嬢の命令に

逆らうわけじゃないけど、コイツじゃ

私らを眷属に出来ないって!」

 

必死に弁明する、蒼い髪のティアマットさん。

こんなんでも五大龍王最強と言われてたらしいが、

赤龍帝の籠手の保持者を狙ってたところ偶然

居合わせた姐さんに遭遇し、一撃で蹴散らされたとか。

 

元々冥界で気分次第で暴れてるみたい

だったから、そのまま処刑か部下かって

話になって部下を選んだんだよな。

 

「そうだな。まだ3等だろ?流石に

実力が足りんぞ。いや、俺もお嬢様の

命令に逆らうわけではないが」

 

そう言ってうんうんと頷く、金と黒が混ざった

特徴的な外見した長身痩躯の男。

 

名前はクロウ・クルワッハさん。邪龍最強

と言われ、長い間、冥界や地上を流離い

強者を探してたらしい。

 

でもって強者の噂を聞き旦那に挑もうとした

ところ、姐さんに「100年早い」って言われて

ボコボコにされたんだよな。

 

そのあとで処刑か部下かって話になって

部下になったと。

 

再戦を望んでるらしいが、何時挑むんだ?

との問いに対して「今はまだ勝てないから」

と言って震えながら視線を逸らすまでが

一連の流れになってるらしいな。

 

だけど確か今のティアマットさんは5等

でクロウ・クルワッハさんは6等だ。

 

流石に力の差がありすぎて今の俺じゃ

眷属には出来ねぇと思うんすけど・・・

 

「そんなの空殿に遊んでもらいボロボロ

になって死んだところを駒で再生させれば

良いだけでしょう。

噂の無能がマダオさんだの吸血鬼だのを眷属に

出来たのは宿主が死んでたからだろうって

簪殿が言ってましたし」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

( *・ω・)・・・♪(o・ω・)ノ))

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さらりと言ってるが、突っ込みどころ満載っすね?!さらに冗談でもなんでもねぇッ!

 

「「殺すの前提ですか?!」」

 

お二人も姐さんがマジだってわかってるからかなり焦ってる。

 

しかも相手が空サンだ。

 

あのヒトはなぁ・・・普通に殺すとか殺されるとかじゃすまねぇしなぁ。

 

ティアマットサンなんか見た目が若い女

だから尚更やべぇし。

 

「当たり前です。そうしないと自称弟子の眷属になれないでしょう?」

 

何言ってんだコイツら?と言わんばかりに

不思議そうな顔をしてるけど・・・

 

俺としては殺すならひと思いに姐さんが

殺せば良いと思うんだけど、多分死ぬなら

空サンの玩具になってから死ねってことなんだろうなぁ。

 

情けも容赦も何もねぇ。凶って言葉が一番似合うのって絶対コノヒト達だと思うぞ。

 

けど、一応俺の意見も言わないとダメだよな。

 

「しかし姐さん。流石にそんな方法で

お二人を眷属に出来ても、ソレは俺の

実力じゃありませんぜ」

 

旦那たちが居れば俺を殺してはぐれ悪魔

になろうとはしねぇだろうけどよぉ。

 

「ふむ。続けなさい」

 

俺の一生に関わることだからだろう。

 

いつもなら反論しようもんならその手の

槍で腹を貫かれてるが、今回はそんな事は

しないでしっかり俺の意見を聞こうとしてくれる。

 

だからこそ俺も姐さんの目を見てしっかりと

自分の考えを述べることが出来た。

 

「へい。強力なお二人を眷属に加えることで

油断慢心することになったら本末転倒っす。

つまり旦那の顔を潰すことになりやす。

そうなった場合、俺を始末すれば良いって話

じゃないでしょう?」

 

どんなに頑張っても今の俺じゃお二人を

頼ることになるだろうし、油断慢心って

のは自覚しねぇから問題なんすよねぇ。

 

「・・・なるほど。自称とはいえ弟子が

粗相して先生の顔を潰した場合、責任を

もって先達の弟子がソレを殺したとしても

物事は解決しませんね。

そもそもそれだと教頭先生が誰かに

負い目を作った後になってしまいます」

 

ソレは頂けませんと言いながら槍を

抱えてうんうん唸る姐さん。

 

側に居るお二人からは「よく言った!」

と言わんばかりの視線を感じる。

 

「龍が側に居れば自称弟子、ひいては

教頭先生に箔が付くと思いましたが、

流石に早まりましたか」

 

あ、一応俺の為でもあったんっすね。

 

「確かに分不相応な力は身を滅ぼします。

失敗失敗白っ子失敗です」

 

どうやら納得してもらえたようだ。

 

つーか普通はそうだよなぁ。とりあえず

自力を高めて強えぇ眷属を得るか、同じ

くらいのを見つけて一緒に鍛えるかにした

方が俺の成長につながると思うっす。

 

このヒト達はそう言うのをすっとばす

レベルだからなぁ。

 

「むぅ。やはり私は武人としての仕事に

専念して、こういう段取りは奥様か簪殿に

お願いしたほうが良いのかもしれません」

 

そう言って懐から通信機を取り出す姐さん。

 

おそらく姉御か簪の姉御に連絡を

取ってるんだろう。

 

実際そういう段取りは姉御の仕事

みたいなところあるからなぁ。

 

あとは旦那の決定次第だけど。

 

「よくやった自称弟子!お前にゃ後で

なんかやるよ!」

 

考え込んでる俺の肩をティアマットさん

が上機嫌で叩けば、

 

「うむ、お嬢様に物申し、さらに意見を

撤回させるとは見事だ。

後で体術の稽古をつけてやろう」

 

そう言って懐からバナナを取り出す

クロウ・クルワッハさん。

 

半分以上は自業自得だけど、コノ人ら

も大変だなぁと思う。

 

まぁ退屈だけはしてねぇだろうけどさ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー奥様視点ーー

 

「ふむ。眷属ですか」

 

アレが恥を晒せば旦那様の名に傷が付くなんて

考えもしませんでしたねぇ。

 

『そうなんです。衣装や武具、付き人とか家臣については何とでもなりますが、眷属となると…』

 

私の言葉を聞き自分の意見を述べてくる伯師妹。

 

珍しく修行や旦那様のこと以外の連絡が来たかと

思えば、自称弟子の眷属とは。

 

相変わらず面倒見の良いことです。

 

事実、若手の会合とやらで眷属の一人も

居ないのはアレですし、龍が居ればソコソコの

箔がつくと考えるのは、無理がありませんが

今の若手のレベルを考えれば、確かに

自称弟子が言うように油断慢心して

いずれは旦那様の顔を潰しますよね。

 

そうなったら殺すとかどうとかの

問題では無くなってしまいます。

 

誰かを貸そうにも、現状のヤツは

シロネコ以下ですからねぇ。

 

・・・そういえばシロネコからも阿呆

眼鏡の眷属の都合の話が来てましたね。

 

アレは当時上級程度でしたが、今なら

それなりのヤツを駒一つで眷属に出来ますか。

 

とりあえず眼鏡は後で良いとして今は自称弟子です。

 

自分で探せと言いたいところですが、流石に期間がありませんからね。

 

金髪螺旋鳥頭は既に母親によって僧侶の駒を

使われてましたが、コイツは預かりモノです

のでコチラでキープ。

 

残りは・・・教会から奪取した検体がありますから、ちょうど良いかもしれませんね。

 

実力的にも今は大体1等から2等ですし。

 

「とりあえず僧侶一人と騎士二人はこちらで用意

しましょう。残りの兵士やら戦車やら女王は自分

で見つけさせなさい」

 

そもそも眷属とはそう言うモノでしょう。

 

『わかりました!会合の時は私の部下じゃなく、

自称弟子の実家の家臣を用意させます!』

 

妥当な判断です。いくら自称弟子に箔を付ける

と言っても、あまりこちらの情報を出したくも

無いですから。

向こうに人員を用意させるのが良いでしょう。

 

「えぇ。それで良いですよ」

 

しかし眷属ねぇ。一応簪が造ったアレが有れば

ギリギリ4等になれますから、多少の幅は広がり

ますが・・・キチンと揃えさせないと我々が手を

抜いたと思われますよねぇ。

 

とは言え、悪魔に駒を使うのは旦那様が嫌ってるので当然無し。

 

あとは他の神話の神使や神獣ですか。

 

喧嘩を売られたから殺した。ついでに

眷属にしたって感じにすれば問題無い

ですかね?

 

もしくは狐殿に日本神話関係の誰かを

紹介してもらいますか?

 

旦那様との繋ぎにもなると思えば、

向こうもそれなりの人材を出してくれる

と思うんですが・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「トスカです」

 

なんつーか白い髪した子供だな。神器持ちで

術者として優秀らしい。見た感じ10かそこら

だが、実際は10代後半だとか。

 

こいつが姉御が言う僧侶だろうな。

 

「リントっす」

 

20歳になってないくらいか?白と黒の髪を

した少女。剣士としての素養があるとか。

 

「シグです」

 

見た感じトスカって奴と同じくらいの少年だ。

コレも剣士としての素質があるって話だ。

 

うん。確かに僧侶一人と騎士二人だな。

 

実力的には神器持ちのトスカが二等でリントとシグが一等か。

 

神器はトスカにしかねぇが、リントとシグは

聖剣と魔剣の因子?ってのがあるらしい。

 

それが駒によって強化されることを考えれば

十分以上の人材だと思うんだがよぉ。

 

いくらなんでも若過ぎね?

 

いや、悪魔は魔力である程度容姿を操作

出来るし、5年もしたら普通に眷属として

戦力になるのはわかるんだ。

 

未熟者同士できちんと鍛えろって言う

皆さんの意見でも有るんだろう。

 

それ以前の問題もあるんだが・・・

 

「ゼファードルだ。つかお前らって教会

の機関でなんかヤッてたんじゃねーの?

悪魔に恨みとかねーのか?」

 

だから今も悪魔になってないんじゃね?

 

俺の言葉を聞いて目を見合わせる三人。

少し目で会話したと思ったら三人が

頷き、代表してトスカと名乗った少女が

一歩前に出て俺の疑問に答える。

 

「確かに私たちは教会の連中に、神様

への信仰とか悪魔や堕天使を殺せって

言われ続けてきたんですよ」

 

だよなぁ。教会の実働部隊ってそういう連中だろ?

 

頷く俺を見て言葉を続けるトスカ。

 

「だけど、そもそも神様は死んでるんじゃ

意味無くないですか?」

 

「・・・あぁ。まぁ。そうだな」

 

そうとしか言えねぇ。

 

「死んだ神様に何かしようとも思わないし、

悪魔が憎いなら自分らで殺せば良いじゃ

無いですか。

わざわざ人体実験だのなんだのされて

まで他の人の為に戦う気も無いんです」

 

「そりゃそうだ」

 

普通に考えればそうだよな。

 

何で見ず知らずの連中の為に

命懸けで戦わなきゃならんのよ?

 

「私が元居た組織では、教会の連中に

沢山の子供が集められました。

そこで散々ひどい実験された後、みんな

不適合とされてガスで殺されたんです」

 

ガスねぇ。随分とまぁ人間らしい殺し方だ。

 

そりゃコイツらの恨みはむしろ教会に向くよなぁ。

 

そうさせないように信仰を元に洗脳教育とか

してたんだろうがよ。

 

その信仰対象が居ないと分かったら、

普通に憎しみしか残らねぇわな。

 

「ウチも兄が無理やり改造されて堕天使や

悪魔と戦わされ続けた挙句『やりすぎ』

とか言われて追放っすよ?

そんでもってウチに兄の償いしろとか・・・」

 

リントが苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。

 

「さらに調整体で寿命が短いってんで、

連中の作る薬が無けりゃ長生き出来ないし。

そんなの普通の精神じゃ持ちませんって」

 

壊れるのが当たり前で、壊れたら捨てられるわけだ。

 

・・・控えめに言ってもクソだな。

 

「その結果、兄は地上でシロネ様に挑んで殺されたそうです」

 

「シロネサマに?そりゃ何というか・・・」

 

人間だろ?良く挑んだな。自殺願望が暴走したのか?

 

俺は人質とられても無理だな。

 

こいつの兄貴がどれだけ追い詰められて

居たのかが想像も出来ねぇよ。

 

「もちろんシロネ様に恨みなんかありません。

むしろ兄を苦しみから解放してくれて

感謝すらしてます。

でもね?自分らで兄を追い詰めておきながら、

監督を放棄して後ろで偉そうにしてる教会の

連中は憎いし、信用出来ねぇんすよ」

 

ごもっとも。それに、もしシロネ様に恨みを

持ってたら・・・それはそれで凄ぇ根性だと

認めてもらえるかもな。

 

「でもって悪魔になれば寿命も延びるし、

連中に対しての意趣返しにもなるっしょ?」

 

「なるほど。十分過ぎる動機だなぁ」

 

そりゃ俺だって意趣返しの一つや二つ考えるわ。

 

「僕としてはですね。先生もそんな教会が

信用出来なくて出奔しちゃいましたし。

リントのねーやんもコッチにいるんで

僕もコッチで鍛えようかなと。

寿命が延びればその分鍛えれますしねぇ」

 

シグはそう言って俺を見る。

 

コイツは恨みとかじゃなく強さか。

 

その先生ってのが誰からしらねぇが、

間違いなく姉御や姐さんには勝てねぇ

だろうから、修行場所として考えれば

最高の環境だよな。

 

寿命が延びれば、その分鍛えられるっていうのも紛れも無い事実だし。

 

そう考えれば悪魔になるのも文句はねぇ、と。

 

「「「それに・・・」」」

 

それぞれの理由に納得してるところに

何かを決意した顔で三人は並び、

 

「「「そもそも奥様の指示だし」」」

 

「……そうか」

 

口を揃えて結論を述べた。

なんだかんだ言っても結局はソコか。

 

・・・逆らえねぇよなぁ。心から納得できる理由だぜ。

 

その上で俺の眷属になる理由を連中なりに

考えて、自分を納得させたんだろう。

 

それに心の底から頷く俺を見て、目の前の

三人も俺に対して仲間意識を感じたようだ。

 

まぁコイツらに異存が無いなら、さっさと

眷属にするべきだろう。

 

とりあえず3人か。急ぎで眷属集めをする

気もねぇし、まずは姐さんに言われたように

実家に行って付き人揃えてもらうとすっかね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「キャー!リアス姫様ぁ!!」」」」

 

甲高い若い女性たちの声が響いたかと思えば

 

「「「「リアス様ぁぁぁぁ!」」」」

 

集まった若い男たちの声も街道に鳴り響く。

 

部長は苦笑しながら声援に手を振っている。

 

マスコミの発表前からこんな感じだった

らしいけど、今じゃ更に人気が出たんだとか。

 

 

 

 

俺の主様はやっぱりすげぇや!

 

 




オセ君の眷属で騎士の駒×1。7等の槍使い。
奥様の妹のような立ち位置で、普段は
修行とはぐれ悪魔狩をしているらしい。

ティアマットってなんか冥界で暴れてたり
しておきながらレーティングゲームに
関わったりしてるんでしょ?

アジュカ、お前盟友なら魔王として取り締まれよ。

とりあえず白髪少年に喧嘩を売られたので
人造人間関係者を潰しまわった模様。
追放?管理責任ってあるよね?ってお話。



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52話

冥界に来て最初の行事が若手悪魔が
集う会合だってのはビックリしたけど、
俺達の最初のライバルは部長と同世代のヒト達だもんな!

今のところ評判では実戦を経験してて、
英雄って言われてる部長の評価が高い
みたいだけど・・・

アザゼルの言い方や部長の様子を見るに、
どうやら部長は自分以上の存在が同期に
居るって思ってるみたいだ。

へっ!まぁどんなヤツだって俺が倒して、
部長こそ最高の主様だって証明してやるぜッ!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

歓声を上げる人たちを後にし、地下鉄に

乗って辿り着いた先は都市で一番立派な

建物の地下にあるホームだった。

 

電車から降りてエレベーターに乗った時、

部長は俺達に向き合い、最終確認といった

感じで途中で何度も言ってた事を告げる。

 

「皆、もう一度確認するわ。何が起こっても

平常心でいること。

何を言われても手を出さない事。上に居るのは

将来の私たちのライバルたちよ」

 

無様な姿は見せられないと言って気を

引き締める部長。

 

特に俺だよなぁ。魔王様や堕天使の総督に

噛み付くような真似をする眷属なんて部長

からしたら寿命が縮むようなモノだった

って言うし。

 

けど部長を馬鹿にされたりするのは

どうしても我慢出来ねぇし、ソレを我慢

したら部長の眷属失格じゃねぇか!

 

この辺の折り合いを付けろって話なんだ

ろうけど、部長は部長で何だかんだ言って

嬉しそうだし。

 

あの笑顔を見たらなぁ。

 

色々考えているウチにエレベーターが停止し扉が開く。

 

エレベーターの中から見る限りかなり

広いホールみたいだ。

 

随分上に上がったみたいだけど、外を確認

しようと動く前に、エレベーターの前で待機

していた使用人みたいな人が声をかけて来る。

 

「ようこそグレモリー様。こちらへどうぞ」

 

その声に従い、使用人の人の後ろに続く俺達。

 

通路を進んでいくと、一角に複数の人影が見える

 

「サイラオーグ!」

 

人影に向かって声を掛ける部長。

どうやら知り合いがいるみたいだ。

 

あちらも部長を確認すると、コチラに

歩いてくる。

男性だ。見た目は黒髪で長身。筋肉質。

年齢は俺達と同年代に見える。

 

「久しぶりだなリアス」

 

向こうも親し気に部長にアイサツをしてくる。

 

低い声に落ち着きと自信が見え隠れしてる。

活動的に見える服装と短髪。てか武道家系?

 

紫の瞳からは強い意志が感じられるな。

野性的なイケメンだが、一体全体部長と

どんな関係なんだ?

 

俺の訝し気な様子を察したのか、アイサツ

を交わしていた部長がコチラに向き直り、

言葉を交わしていた悪魔を紹介してくれる。

 

「えぇ、本当に久しいわ。あぁ、初めてのヒトも

居たわね。彼はサイラオーグ。母方の従兄弟よ」

 

従兄弟サンでしたか。そうでしたか。

それなら親しくてもしょうがないよな!

 

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

そう言って自己紹介をするサイラオーグさん。

 

てか今、バアル家って言わなかった?

バアル家って序列一位の大王家だよな?!

 

部長は魔王様の妹で大王の姪になるのか?!

いや、俺の主様は本当にすげぇな!

 

テンション上がりまくりの俺を尻目に

部長が俺達を紹介していく。

 

上級悪魔だろうから、シツレイは駄目だよな!

驚きながら頭を下げる俺の紹介が終わった後

部長はサイラオーグさんと話を続ける。

 

「ソレで、こんな通路で何をしていたの?」

 

そうだよな?このヒトも会合に参加するなら

その為の部屋が有るんだろ?

 

「あぁ、くだらんから出てきただけだ」

 

ん?退屈だとか?

 

「くだらない?・・・他のメンバーが何かしてるの?」

 

部長は何か察したようだが、あえて確認をして見るみたいだ。

 

「・・・向こうにはアガレスもアスタロトも

来ている。挙句にゼファードルもな。

ソレで着いた早々にゼファードルとアガレス

がやり合い始めてな」

 

心底嫌そうな顔をするサイラオーグさん。

やり合うっていったい何を?

 

そう考えていたら

 

ドォォォォォォォォォォォォォ!

 

建物を揺らすかのような大きな音が響いてくる!

何事?!近くの部屋から聞こえて来たけど?!

 

部長も気になったのか、音のした方、大きな扉へ向けて歩を進める。

 

「まったく。だから開始前の会合などいらんと進言したんだ」

 

サイラオーグさんは嘆息しながら眷属のヒト達を

連れて部長の後に続いた。

 

何だ?どーゆーことだ?

 

不思議に思うも、危険な場所なら部長を一人で

向かわせるわけには行かない!

俺達も覚悟を決めて部長の後を追い、大きな

扉の先を見ると・・・

 

そこには色んなモノが粉々に破壊された大広間が有った。

 

広間の中央では青色のローブを纏う

女悪魔が殺気を放ち、部屋の隅を睨み

付けている。

 

眷属のヒト達?も同じ方向を殺気を放ちながら睨んでる。

 

怖いっ!怖いって!。元が美少女だからって

言うのも有るけど、明らかにマジギレして

るし、感じる魔力も下手をすれば俺達を上回る

程のモノだ。

 

「ねぇゼファードル、こんなところで戦い

をしても仕方ないと思わない?死にたいの?

殺しても上に咎められないかしら?」

 

あまりの殺気に気圧されてたら、その

女悪魔が殺気を強めながら部屋の隅を

睨みながら声を掛ける。

 

その視線の先では・・・

 

「自摸。混一色・対々和・中・発・ドラ三。

親倍満で8000オールだ。さっさと出せ」

 

「うわー。そう来ますか!」

 

「白じゃないんっすか?!」

 

「えぇ。僕も白を止めてたのに」

 

・・・女悪魔の殺気やら何やらを完全に無視して、小さな子供たちと麻雀をやってる大柄な悪魔が居た。

 

え?コレってどう見てもやり合ってる

って感じじゃないよな?

 

「へぇ。大三元か小三元の上乗せかと思えば

まさかのホンイツ止めか・・・やるね」

 

その手を見て感心してる男の悪魔。

 

普通に平和に麻雀してるようにしか見えないんだけど・・・

 

「話を聞けって言ってるでしょうがぁぁ!!」

 

「・・・」

 

部長は目を点にして固まってるし

サイラオーグさんは頭を抱えている。

 

動きを固めた部長をみて、サイラオーグさんが

やれやれと言った感じで頭を振りながら状況を説明してくれる。

 

「まぁこういう事だ。ココは時間が来るまで

若手悪魔が集まる待機所で、軽いアイサツを

する場でもあったんだがな。奴は本当に

軽く挨拶をしたと思ったら眷属と麻雀を

始め、アスタロトはソレを見学しているのだ」

 

な、なるほど。けどまぁ待機なんだろ?

本を読もうが麻雀しようが他人に迷惑

掛けないならソレで良いのでは?

 

「麻雀を知らない俺やアガレスは完全に無視

された形になる。まぁ俺としては無駄に騒ぐ

くらいなら麻雀だろうが何だろうがしてくれ

と言ったところなんだが、アガレスが我慢

出来なかったようでなぁ」

 

よ、予想以上に下らねぇ・・・

 

ま、まぁ確かに若手の会合なのに

身内で麻雀してたら駄目だよな!

面子とか色々あるだろうし。

 

「ん?おぉ無能コンビが来たか。しかし女の方は

相変わらず・・・いや、マヌケ面に更なる磨きが

かかってんなぁ。まずは鏡見て来たらどうだ?」

 

は?コイツ、今コッチを見てなんてった?

 

「んじゃあとはソーナが来たら終わりかね。

あぁ、アガレスの嬢ちゃん。とりあえず

さっき散らかした分は片付けしとけよ。

自分が散らかした分は自分で片付けるのは

常識だ。あと食べ物粗末にすんな」

 

そう言ってテーブルの上に積まれている

果物を魔力で引き寄せて頬張る大柄な男。

 

ん?テーブル?何か違和感が・・・

 

「・・・装飾品や壁、椅子などは破壊

されているが、テーブルやその上にある

食べ物には埃一つ付いていない。

恐らくアノ大柄な悪魔が守ったのだろう」

 

違和感に首を捻っていると、普段あんまり

喋らないルー・ガルーさんが説明してくれた。

 

なるほど、俺が感じた違和感はソレか。

 

「さて、時間的に次でラスだ。気合を入れろよ」

 

「「「了解!」」」

 

まだやんのかよ!

 

蟀谷に血管を浮かび上がらせそうな

女悪魔と完全に目が点になってる部長。

溜息をつくサイラオーグさんと

楽しそうに後ろで見てる男悪魔、そして

全自動雀卓のスイッチを押す大柄な悪魔。

 

・・・完全にカオスだ

 

「その辺にしておけアガレス家の姫シーグヴァイラ」

 

サイラオーグさんはとりあえず女悪魔を

止めることにしたようだ。

 

実際実力行使したのは彼女だし、

後片付けもあるもんなって・・・

 

いや、アイツさっき部長を無能とかマヌケとか言わなかったか!?

 

アイツが言った事が頭の中で再生され、ソレを

理解した時

 

「クルルァ?!」

 

気付いたら俺は大柄な悪魔に飛びかかっていた!

 

「イッセー?!」

 

止めないで下さい部長!部長への無礼を

許したら眷属失格っすよッ!

 

そう!俺はッコイツがッ泣くまでッ殴るのをッ止めないッ!

 

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

「あれ?」

 

気が付いたときはベッドの上だった。

 

ヒトの気配を感じて横を見れば、アーシアがベットの側の椅子に座りながら寝息を立てている。

 

んん?ココハドコ?

 

俺の部屋じゃないよな?

 

アレ?夢??

 

見知らぬ天井を見て首を捻るが、何が何やら

さっぱりわからないぞ。

 

微妙に頭も痛いし、体も重い。もしかしたら

どこかにぶつけたかも知れないな。

 

うーむ・・・とりあえず安静にして、アーシアが起きたら聞いてみようかな。

 

そう考えて、ひとまず布団の中で目を閉じた。

 

・・・なんつーか。良い布団だよなぁ。

 

馴れない環境で、もともと疲れてたんだろう。

襲い来る睡魔に抵抗なんか出来るハズもなく、

俺はそのまま眠りに落ちてしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーサイラオーグ視点ーー

 

「クルルァ?!」

 

「イッセー?!」

 

何を言ってるのか良く分からない発声をして

ゼファードルに殴りかかろうとするリアスの

眷属。

 

恐らく主君の無能扱いが我慢出来なかった

のだろうが、迂闊すぎる。

 

相手はグラシャラボラス家の次期当主では

無いし、凶児と呼ばれるほど素行が悪い男

だが、れっきとした上級悪魔で貴族だ。

 

たかだか挑発された程度で眷族が手を出して

良い相手ではない。

 

・・・アガレスに至っては完全にルール違反

だが、同じ貴族同士だし向こうが気にして

ないなら何とかなるだろう。

 

しかしまさか凶児が常識を説くとはな。

 

奴に説教されたアガレスがキレるのもわからんでは無いが・・・

 

「イッセェー?!」

 

さっきよりも大きなリアスの声が響く。

 

見れば先程紹介された赤龍帝が壁に激突

して気を失ってるように見える。

 

いや、アレは壁に当たる前に気を失っていたか?

 

「ねぇ・・・今の見えた?」

 

さっきまでの激情を全く感じさせない、

冷たい視線でゼファードルを視るアガレス

の問いに、俺は首を横に振ることで答える。

 

事実赤龍帝が飛びかかったところまでしか

見えなかったし、ゼファードルが何かを

したようにも見えなかった。

 

そもそも俺が部屋を出たあとに、アガレスから

建物を揺らすほどの攻撃を受けたにも関わらず、

本人が無傷なのはまだしもテーブルやその上の

食べ物まで保護し、さらに麻雀の卓やら牌やらも

一切ダメージが無いと言うのはどういう事だ?

 

完璧にアガレスの攻撃を受け止めた?いや、

部屋にダメージが有るから受け流したのか?

 

くそっ。こうなると部屋を出ていたのは痛い。

 

自分の堪え性の無さを反省すると共に

噂とはアテにならんモノだとしみじみ思う。

 

凶児の噂を聞いて俺が思った素行の悪さとは方向性が全く違う。

 

眷属と麻雀って。

 

シツレイにはシツレイだろうが、そもそも

我々には協調性など求められてないだろうし、

こうして互いを敵視する分には成長の為に

発破をかけていると言える。

 

結果としては悪魔としては間違ってない

のかも知れんが・・・

問題の本質はソコじゃない。

 

ヤツは俺を含めた全員が眼中に無いのだ。

 

眼中にないから親交を深めようとしないし、

弱みを貸しにしようともしない。

 

その結果が麻雀だ。おそらく俺達の相手を

するくらいならこうして眷族と麻雀をして

コミュニケーションを深めると共に、

知的訓練をした方がマシだと判断したのだろう。

 

アスタロトは彼らの手を見ることで、

癖や性格を掴もうとしているわけだ。

 

アガレスも最初は似たようなモノなの

だろうが、完全な無視に対してタガが

外れたんだろうな。

 

ソレを理解出来なかったのが、今来た

ばかりのリアスとその眷族。

 

状況が把握できないなら、まずは様子見が

基本なのに、感情に任せて動く癖は変わってない。

 

元々リアスには才能があった。だがなまじ

才能が有ったせいで甘やかされたのだろう。

 

フェニックス家のライザー殿との試合や

その後の行動を見て、今のリアスは

『典型的な才能に溺れた貴族のお嬢さん』と

判断し、警戒には値しないとしていたのだ。

 

だが最近の報道を聞いて、実戦を経験した

ことで才能が開花したのかと思って真っ先に

接触してみたのだが・・・

 

この様でコカビエルとの戦いに生き残り、テロリストを手玉に取っただと?

 

コカビエルは大戦を生き抜いた経験豊富な

堕天使だし、テロリストとて勝算あっての

計画だったはず。

 

感情で動く未熟者が、行き当たりばったり

で何とか出来るようなモノではないぞ。

 

・・つまり報道は嘘と言うことだろう。

 

天使や堕天使と休戦協定を結んだのは事実。

その二勢力も同じような報道をしてるのは、

事実だからでは無く何やら秘密が有るのだろう。

 

リアスの本質は何も変わっていない。

ただの我侭な小娘だ。

 

噂の赤龍帝もこの程度なら警戒には値しないと評価を定める。

 

尤も、油断して足を掬われる気は無いがな。

 

「とりあえず、化粧直しをしてこい。

まだ時間はあるし、考えを整理する

時間も必要だろう」

 

「……そうね」

 

そう言うとアガレスは頷きながら

眷属を引き連れ部屋を後にした。

 

「あら?待機場所はココだと聞いて来たのに、随分と荒れてるわね。椿姫、係員のヒト達を呼んできて頂戴」

 

「はい」

 

そう言って新たに部屋に入って来た女悪魔。

シトリーの声を聴き、己の過ちに気付く。

 

 

 

・・・しまった。部屋の片付けをさせるのを忘れていた。

 

何だかんだで俺もゼファードルの言動に動揺していたのだろうな。

 

担当の方々には迷惑をかけるが、

後で何か差し入れでも用意しよう。

 

・・・費用はアガレス家に請求できるよな?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーソーナ視点ーー

 

「はぁ・・・」

 

あんまり部屋が荒れてたし、リアスは

性犯罪者を抱えながらゼファードルを

睨んでるし、ゼファードルは麻雀してるし

ディオドラは麻雀の観戦をしてるから、

一人残って何やら考えごとをしている

サイラオーグに事情を聞いたんだけど、

もう溜息しか出ないわ。

 

「兵藤・・・アイツ、本当に馬鹿だったんですね」

 

匙がそう言うけど、否定出来ないわ。

 

リアスが甘やかすからなんだろうけど、

一向に素行が改まらないみたいね。

 

「とりあえずリアス、彼を横になれる

部屋に運んだら?睨んでても何も解決

しないわよ?」

 

姫島さんも殺気とも言えないような

幼稚なナニカを出してるけど、そんなのが

ゼファードルに通用するハズないでしょう。

 

こんなのと同列扱いされてるって思うと

悲しくなるし、見てるだけで頭が痛く

なるからさっさと消えて欲しいわ。

 

「そ、そうね!アーシア!回復をお願い!」

 

運びながら元聖女に回復をさせるリアス。

 

・・・へぇ。

 

「あの回復量は凄いですね。魔力の量

以上の何かがあるみたいです」

 

僧侶の憐耶もソレを興味深そうに見てる

けど、やっぱりあれは不自然よね。

 

何か回復に必要な条件付けをすることで

効果を増してるとか、そんな感じかしら。

 

「人狼が一番動きが良いですね。体術

としてはそれなり、魔力的には中の上。

もしかしたら準一等に届きますか?」

 

戦車の翼紗はリアスの眷属の動きを

観察し評価を下す。

 

私も同意見よ。だけどアレなら弱点も

分かってるから特に気にする必要は無い。

 

いえ、連携次第では厄介ね。

 

「吸血鬼は慌てるだけ。何やらゼファードル殿

を睨んでますけど、神器を使ってる様子は

ありません。つまりはタダのガキですね」

 

もう一人の僧侶、桃が神器持ちの吸血鬼を見定める。

 

ま、動きを止めても単独じゃ意味無いしね。

精々麻雀の邪魔ができるくらいだし。

 

実はソレが一番の嫌がらせだってことに

気付いたら面白いんだけど・・・

一度目の前で使ってくれないかしら?

 

神器の情報が欲しいのよね。

 

「姫島は完全にリアス殿と同じ状況です。

フォローも何も無し。タダの小娘ですよ」

 

係のヒトを呼びに行った椿姫が返って来た。

 

彼女の場合は今までの評価が高すぎたからねぇ。

今まではバラキエルの娘だからって下駄

履いてたのに、その力を使いこなせずに

にいたら、そりゃタダの小娘よ。

 

主を補佐する女王としても無能だし。

 

マトモな実戦を経験していない時から

自分の評価が高いことに疑問を覚えて

なかったみたいだけど・・・現実を

見れないのは相変わらずね。

 

「兵藤に至っては完全に雑魚です。

警戒するとしたら譲渡ですけど、周囲の

能力と本人の性格を見れば・・・現状

問題無いですね」

 

兵士の匙の意見に留流子が頷く。

 

「そうね。とりあえず一度声を掛けて、

手伝う感じで肩でも貸してきなさい。

そして会合が終わるまで目覚めないように

少し手を加えてきて頂戴」

 

バレない程度にね。と言うと匙は小さく

敬礼してリアスたちのところへ向かった。

 

まずコレで良し。後は・・・

 

「とりあえずリアスとシーグヴァイラが

戻って来るまではすることも無いし、

ゼファードルの麻雀でも見学しましょうか?」

 

顎に手を当てて考え込んでるサイラオーグを誘って麻雀見学よね。

 

何せ最も警戒しなきゃいけないのは

目の前の格闘家崩れじゃない。

文字通り地獄の経験を潜り抜けてきた

ゼファードル!

 

今は少しでも情報が欲しいし、心理戦の

真骨頂とも言える麻雀を見学出来るなら

それに越したことは無いわ!

 

お姉様にアイサツして衣装の調整に時間が

掛かったのが勿体無かったわね。

 

「・・・麻雀をすることに関して文句は無いのか?」

 

「は?」

 

コイツは何言ってるのかしら?

 

修行修行で頭まで筋肉になったって噂は聞いてるけど・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麻雀だって立派な修行でしょ?

頭が悪い奴は何やっても失敗するし、

先を読めないヤツは何やっても駄目。

我慢出来ないのも駄目だし、空気を

読めないのも問題外。違う?」

 

チェスとかと一緒で、遊びながら

鍛えれるんだからむしろ推奨すべきでしょ?

 

「そ、そうか・・・」

 

なんか納得してないみたいだけど、

まぁ良いわ。

 

私は私が必要と思うことをするだけよ!




真剣勝負()の邪魔はしてはいけません。

コイツ等は同期であるが故に常に比べられます。

それ故行動や言葉の節々から互いを警戒し、
探るのが普通です。

特にサイラオーグ君は負けられませんからねぇってお話


あがり役や煽り文句、目が覚めた彼の様子を
微妙に修正しております。


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53話

若手同士の親睦会

特に話は進まないッ!

おや?ディオドラの様子が・・・

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


前話の麻雀のあがり役と、ゼファードルの煽り文句等微調整しております。



ーーサイラオーグ視点ーー

 

今回の会合は本来なら無意味と思っていたが、

正直俺の考えが足りなかったようだ。

 

会場での諸々でリアスがアレなのもわかったし

アガレスの性格もそれなりに掴めた。

 

恐らくこういう盤外での情報戦のようなもの

をさせる目的も有るのだろう。

 

その程度のことも思い浮かばず、偉そうに

『問題が起こるだけだから必要ない』等と

進言した俺は、さぞかし滑稽に映っただろうな。

 

何せ『問題』が起こることが前提で、そこから

どれだけ情報を得るかと言うのがこの会合の

目的なのだから。

 

そしてリアスはもう目的を果たすことは出来ん。

ゼファードルへの恨み以外は何も残らん。

 

アガレスは半々か。どれだけ早く戻るか、

そして俺が居ない間に何が有って、何を

知ったかによるな。

 

シトリーは完全に出遅れた。

 

だからこそ、この麻雀から得られる情報を

余すことなく得ようとしているのだろう。

 

そうなれば、今回の情報戦はアスタロトの

一人勝ちとなるか?

 

アガレスの性格や攻撃、俺の性格や気性。

リアスの情報にゼファードルの麻雀だ。

 

あぁシトリーは情報を得ない代わりに誰にも

情報を与えないことに成功しているか。

 

だがそれはアスタロトも同じ。あえて周りを

騒がせて、自分から注意を逸らし、一切情報を

明かすようなことをしてない。

 

今わかっていることと言えば、アスタロトも

シトリーもゼファードルを侮ることは

ない、と言うことくらいか。

 

何せ今二人は、ゼファードルの麻雀を見学を

しているが、その表情は真剣そのものだ。

 

麻雀のルールを知らん俺には細かい

心理戦を理解することが出来んが、

確かに先ほどシトリーが言ったように

頭が悪い奴は何をやってもダメだよな。

 

先程堪え性が無いと自覚したばかりなのに

この様だ。まだまだ未熟だと自覚すべきだろう。

 

それにしても驚くのはシトリーの眷属だ。

 

細々とした動きに見える行動の節々に

無駄が無いし、体幹にもブレが無い。

 

全員がかなりの体術を取得している。

 

魔力に関しては俺にはわからんが、

俺の眷属が警戒するレベルのモノを

身に纏っているようだ。

 

今回集まった同期の中で最も厄介と

見ていたのは赤龍帝を擁して実戦を

経験したリアスだと考えていたが完全に

あてが外れたな。

 

しかし俺も他の奴らも成長期。

 

これからも成長するし、元より俺にはない才能

の持ち主たちだからな。

最初から油断できるような相手などいない。

 

俺を指して若手ナンバーワンというのもいるが

それとて周囲が勝手に言って居るだけで、

実績という点ではリアスどころかアスタロト

にも劣るし、指揮官としての知性なら恐らく

シトリーに勝てん。

 

アガレスのアレが半分演技だとしても・・・

その眷族の殺意は本気だったと思うが、

あの程度では俺の眷属には勝てん。だが

ゲームの内容によっては苦戦するかもしれん。

 

そうなるとあとはゼファードルだが・・・

 

「ほぉ?」

 

「・・・へぇ」

 

やつの手札(麻雀だから牌というべきか?)

を見てアスタロトとシトリーが何やら

驚いているが、俺にはさっぱりわからん。

 

所詮遊戯と馬鹿にしていたが、そもそも

俺が成り上がる為に使おうとしているのは

レーティングゲーム。

 

ゲームの名が付いていて、それにチェスの要素が

多分に含まれていることを考えれば、遊戯だから

と軽視して良いものでは無いのだ。

 

かといってこれから麻雀を習って眷属と

麻雀の修行と言うのも何か違うよなぁ。

 

まずはチェスだな。うん。

 

それに、俺がこちらの方面に弱くとも、得意な部下が居れば良いだろう。

 

「「「ロン」」」

 

自分の未来を思い描いていると、少女と

少年の声が被って聞こえてきた。

 

ロンと言えば、確か相手が捨てた牌であがることだよな?

 

・・・つまりゼファードルが捨てた牌で全員あがった?

 

どういうことだ? それならシトリーや

アスタロトのリアクションは失望であって、

驚嘆では無いはずだ。

 

一体何があった?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

「・・・へぇ」

 

ゼファードルの打ち方を見て、その狙いに気付き思わず声を上げてしまう。

 

コレはディオドラもきっと同じだろう。

 

もしも私の予想通りなら、コレは普通に

考えて有り得ないわ。

 

そして運命の一打。一萬切り。もしコレで

周りが反応しなければ問題ない。

だけどもし一人でも反応したら・・・

 

「「「ロン」」」

 

あぁ、やっちゃったか。

 

どうやら私が来るのを待ってて、今回が

オーラスだったらしいからね。

 

あがれるならどんな役でもあがらないと駄目だって思ったんだろう。

 

三人同時のロンだけどコレは三家和(ヤルティックキャノン)じゃない!

 

「・・・ばかな」

 

牌を倒した小柄な少女がうめき声をあげる。

その役は清一色。食い下がりで5翻。

一萬と四萬の両面待ちで、四萬ならタンヤオ

が付いて(喰いタン有りらしい)高めなのに

一萬で上がったため満貫で終わってしまった。

つまりは八〇〇〇点。

 

「マジっすか・・・」

 

黒と白の髪をした少女は茫然としている。

 

その役は面前三色と平和、ドラ2(頭ドラ)。

コチラも5翻止まりで満貫。八〇〇〇点

四萬なら平和とドラしか無いから、あえて

一萬を出して三色を追加させたのね。

 

「有り得ないでしょー」

 

少年はお手上げ~と言って卓に身を投げる。

その役は立直・一気通貫・平和・赤ドラ。

つまりコレも満貫。八〇〇〇点。

四萬なら一気通貫がつかないから、こちらも

わざわざ高めの一萬を出して調整してるわ。

 

三人全員の待ちを一萬と四萬にして、更に

一萬なら全員が五翻。

符に関係なく満貫確定よね。

 

ゼファードルは三人に満貫を振り込んで合計

24000点を放出したけど、前の場で親の

倍満をキメてたみたい。

 

つまりは・・・全員プラマイゼロ。焼き鳥も無し。

 

碁で言えば持碁を狙ってやったと言うわけか。

 

本来は一本場だからそれぞれ百点が上乗せされる

けど、ソレはゼファードルからの御祝儀みたいな

扱いかしら?

それともローカルルールで複数のロンの場合は

換算されないとか?

 

ま、その辺は良いわ。問題はコレは卓越した読み

なのか、それとも何かしらのサマなのか。

 

間違いなく運ではないのはわかるんだけどね。

 

色々と判断が難しいけど、少なくとも今の

ゼファードルは猪突猛進の猪ではなく、計算

して動く狼と言うこと。

 

はぁ。三等の実力に加えこの計算高さ。

 

他の三人も、ゼファードルに勝てなくても

二位を狙って手堅く動く性格みたいだし。

 

数は四人でも敵に回したら相当厄介よね。

 

けど基本的に彼はレーティングゲームに興味を

示してないし、私としても特に闘う予定は無い

から、直接戦闘で比較をされることは無いと言う

のがせめてもの救いかしら。

 

「で、どうだディオドラ?参考になったか?」

 

私と一緒に麻雀を見ていたディオドラに

ゼファードルが笑顔で問いかける。

 

なるほど、向こうは向こうでしっかりコッチを観てたって訳ね。

 

一手に沢山の意味を持たせるのは

策士としては当然。

 

自称とは言えオセ様の弟子を名乗り、ソレを

認められているのは伊達ではないわね。

 

「正直言えば全然足りないけどね。

それでも君を侮るのは危険だと言うことは

良くわかった」

 

ディオドラは薄く笑いながらそう答えるが

目は笑っていない。

 

気持ちはわかるわ。直接戦うことは無い

とは言え、今後同世代として評価される

ことになる相手ですもの。

 

自然と警戒しちゃうわよね。

 

「それにしても君からの評価が妙に

高い気がするんだけど・・・僕と君に

何か共通点ってあったかな?」

 

そう言って不思議そうに首を傾げてるけど、

確かに彼の性格や実績を聞けば、ディオドラ

ってゼファードルが嫌いそうなタイプよね?

 

「あん?そりゃアレだ」

 

「アレって何かしら?」

 

雀卓を片付けながらゼファードルが何を

言うのか、彼がディオドラの何を評価して

いるのかを聞こうとその会話に参加する。

 

突如会話に参加してきた私を見て、2人は

チラリとコチラを一瞥しただけで会話を

進めていく。

 

ゼファードルは完全に気にしてないわね。

 

ディオドラは、自分の情報を入手される

ことより自分の評価が気になるのかしら?

 

「お前さんは俺らの中で唯一悪魔として

働いて実績上げてるんだ。

ソレを評価しねぇなんてのは有り得ねぇ」

 

・・・なるほど。

 

確かに教会勢力から聖女を離反させるって

言う実績を上げてる以上、ソレは評価

すべき点よね。

 

趣味=仕事って言うのが一番実績を

上げやすいのも事実だし。

 

「唯一って言われてもねぇ。僕たちの

同期には英雄様が居るんだけど?」

 

ディオドラは苦笑いしながらそう言うが、

さっきまでと違い目にも柔らかさがある。

 

そりゃ純粋に自分を評価されて悪い気分に

なるヒトなんかいないわよね。

 

そして『英雄様』かぁ。

 

修行を一時中断してコッチに来て一番

最初に驚いたのがソレよね。

 

休戦協定は、まぁ今までも似たような

感じだったし、締結したって言うこと

だけは聞いてたから問題はなかったけど。

 

まさかリアスが餌にされるなんてね。

 

今回もお姉様からリアスの所業を箇条書きした

のが送られて来たけど、ホント何やってんのよ。

 

アザゼルが監視について護衛するついでに

教育するって言うのもわかるわ。

 

だってあまりにも馬鹿過ぎるもの。

 

お姉さまが絶対近寄るな!って言うのもわかるわ。

 

この様子じゃディオドラもリアスの

実情を知ってるみたいね。

 

狙ってた聖女のアーシア・アルジェントを

横から掻っ攫われた関係なんでしょうけど。

 

「その英雄様は眷属連れてどっか行ったぞ。

本来なら眷族を運ぶのは眷属に任せて、

自分はコッチで情報収集すべきだろうに。

ソレすら判断出来ねぇヤツなら、あの実績

は上層部のお人形になった結果だろうよ」

 

そう判断するわよねぇ。

 

私も運んだら?とは言ったけど、自分で運べ

なんて言ってないし。

 

ソイツの資質を見るなら咄嗟の判断を見る

のが一番だけど、リアスは完全に駄目よね。

 

「君もそう思うかい?実際彼女が現地にいた

のは事実だろうけど、どうも報道されてる

内容と現物の間に齟齬があるんだよねぇ」

 

肩をすくめて苦笑いしているディオドラ。

 

実物を知ってるディオドラにしたら、笑うか

贔屓だ!って怒るかなんだろうけど・・・

今回は笑うことにしたようね。

 

実際はタダの餌だし、リアスの評価が

高くてもコイツの趣味には関係無いものね。

 

高すぎる評価に本人が全く届いてないから、

無様でしかないのよ。能力じゃなく行動も。

 

それで英雄面してたら笑うし、名実共に

英雄になろうとしてるなら警戒するけど、

まさか英雄面もしないで努力もしない

なんてのは想定外だったでしょう。

 

「サーゼクス様の妹でバアル家の親族だ。

まさか現物そのまま報道させるわけにも

行かんだろうよ。いやはやご苦労なこった。

無能に下駄履かせるのも大変だよなぁ」

 

そう言いながらサイラオーグを見るゼファードル。

 

コレは挑発?それとも本心?

 

もしくは盗み聞きしてないで会話に加われって言う警告?

 

「ふむ。俺がその程度の挑発に乗ると

思っているなら心外だな」

 

とりあえずサイラオーグは会話に加わる

切っ掛けを貰ったと判断したか。

 

「その割には眷属がなんか無様なのを

晒してるが・・・ま、その辺の教育は

ソッチでやってくれや」

 

サイラオーグの眷属から漏れ出る殺気を、

一言で無様と切って捨てたゼファードルに

ディオドラも驚いてるわね。

 

そりゃ普通に考えれば結構な殺気よ?

それぞれが上級に届くんじゃない?

 

だけど殺気なんか出してる時点でねぇ。

 

殺すなら殺せ、殺さないなら隠せ。

隠せないなら死ね。そんなのが前提の

地獄に居た彼らにしたら、あんなの無様

以外のなにものでもないでしょう。

 

それに私たちもシロネ様に言われたけど、

殺気を向けるってことは明確な敵対行為。

殺されても文句が言えないわ。

 

眷属がソレを出してるなら止めるのが

主君の務めでしょうに。

 

『俺の為に怒ってくれてありがとう』

とでも考えてるの?

 

・・・そう言えばリアスと従兄弟だったわ。

コレとも距離を置くべきかしら。

 

「あ、あらソーナ。来てたのね」

 

サイラオーグとの距離を考えてる私に

後ろから声が掛かる。

 

なんかさっきから居たけど、話しかける

タイミングを伺ってたみたいなのよねぇ。

 

溜息を我慢して後ろを振り返れば、青い

ローブを纏ったシーグヴァイラが微妙な

笑顔でコチラを見ている。

 

ん?この微妙な笑顔は何?部屋を荒らした

気恥ずかしさ?

 

良く分からないわね。とりあえず無難な

アイサツを返そうかしら。

 

「久しぶりね。さっき着いたのよ」

 

部屋に関しては触れない。麻雀に関しても

雀卓はもう無いし、知らない振りで良いわよね。

 

当たり障りのない会話で時間を潰そうと

した私に対し、何かを言いたい様子の

シーグヴァイラ。

 

私と彼女に何か接点ってあったかしら?

 

さっきから落ち着かない様子で下を向いて

眼鏡をいじってるけど・・・あぁ眼鏡が被ってるわね。

 

まさか眼鏡トークでもする気かしら?

私の眼鏡は百八式も無いわよ?

 

警戒する私を他所に、何か決心を固めた

様子で顔を上げる。

眷属も「頑張れ!」と何やら励ましてる

ようだけど、アレかしら?

匙に一目惚れでもしたのかしら?

 

留流子は完全に慕ってるみたいだし、桃も

意識してるみたいだから応援は難しいけど

だからと言って邪魔はしないわよ?

 

それにアガレス家に婿入りしたら側室くらい

持てるわよね?そしたら二人も一緒に娶って

貰えば、みんな幸せになれる可能性も有る。

 

うん、ココは積極的には応援出来ないけど

紹介するくらいなら問題無いわね!

 

「あのね?貴女が地上で駒王町?の管理

してるってのは知ってたのよ」

 

「ん?」

 

匙の事と思って身構えていた私に対して、

ボソボソと小声で話して来るシーグヴァイラ。

 

ここで駒王町の管理の話?

リアスの『英雄』に関する情報収集かしら?

 

「でもって、グレモリー家がオセ家から

断交されたのも知ってるわ。

……その理由を知ったのはつい最近だけど」

 

ふむ。それならリアスの評価に違和感を

覚えるのも当然よね。

 

いつリアスが戻って来るか分からないし

小声になるのも当然か。

 

「ソレで?」

 

私も声を落として続きを促す。

 

「・・・貴女方がオセ家のフォローを受けてたって本当なの?」

 

そっちか。そりゃ私のプライドにも

関わる話だから聞きづらいわよね。

 

アガレス大公は大王派と魔王派の橋渡し

みたいな役割をしてるし、貴族派と呼ばれる

ようになったオセ様を警戒するのも当然。

 

でもって魔王派と貴族派の仲が悪くなる

のは避けたいわよね。

 

とは言え私としては隠すようなことでもないわ。

 

「事実よ。特にオセ様の眷属である

シロネ・オセ様にはお世話になってるわ」

 

実際はカンザシ・オセ様にも相当お世話に

なってるんだろうけど、顔を合わせて会話

したことあるのはシロネ様だけだし。

 

私の言葉を聞いて、シーグヴァイラと眷属達

の間にざわっとした空気が生まれる。

 

いや、麻雀は終わったから、ざわ…ざわ…

されても困るんだけど。

 

「し、シロネ・オセ様とお話したことがあるの?!」

 

驚きに声を大きくするシーグヴァイラ。

 

いや、あんまり大声であのヒト達の

名前を出して欲しくないんですけど。

 

あのヒトたちは目立つの嫌いだし、情報漏洩

扱いされたらリアルで地獄見るんですけど!

 

個人情報はシャレにならないんですけど!!

 

 

 

 

(ΦωΦ)

 

 

 

 

?!?!?!

 

とてつもなく嫌な予感がして周囲を見回した

けど、特には何も無い。

 

いや、ゼファードルがアチャーって顔を

してるけど、ソレは男連中の会話で何か

あったからよね?!

 

コッチの会話が聞こえたわけじゃ無いわよね?!

 

狼狽する私を尻目に、私から距離を取り始める椿姫たち。

 

他の眷属の方とアイサツしてきますねー。

とか殊勝なコトを言ってるけど、絶対巻き添えを嫌ったのよね?!

 

シーグヴァイラの眼鏡に映る私の目から

徐々に光が失われていくのがわかる。

 

私が何したってのよ~!

 

確定した未来を思い、頭を抱えて転げ回り

たくなるのを必死で抑える私の手を取り、

シーグヴァイラは意を決したような表情で

言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い!私にカンザシ・オセ様を紹介してッ!」

 

・・・私にタヒねと申すか。

 

椿姫ッ、距離を取って正解だった!みたいな顔してんじゃ無いわよッ!




若手同士の交流。まぁ普通に考えれば
こういう事です。

基本的に貴族社会は談合と讒言と
離間と腐敗と競争社会ですからね。



過去の改変?ハハッ。ソレが作者の力だッ!ってお話





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54話

ようやく本題か?

話は微妙に進んだぞ!

前半会長眼鏡
後半天才技術者兼魔王様!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

何を考えて私にカンザシ様への口利きを

望んだかは知らないけど、とりあえず

ココでコレ以上シーグヴァイラに口を

開かせるわけには行かないわ!

 

「まず大声出すのは止めて。あのヒト達は

情報漏洩を許さないし、勝手にこんな事

話してるって言われるだけでも叱られるの」

 

叱られるどころじゃ済まないけどね!

 

「え、あ、ご、ごめんなさい!」

 

私の言葉にシュンとした様子を見せる

所を見ると、どうも本気で口利きを

望んでるみたいね。

 

こういう場にしたのも普段私と連絡を

取れないからかしら?

 

「そもそもそう言うのは私に頼むよりも、

御父上のアガレス大公様と一緒にオセ様に

ご挨拶してお願いすれば良いんじゃない?」

 

ソッチの方が確実でしょ?技術提供の話

とかになればオセ様の許可が必要になるんだし。

 

そう言うとシーグヴァイラは深い溜息を

吐いて説明してくれる。

 

「基本的にオセ様はお一人か奥様をお傍に

控えさせるのよ。カンザシ様は第二夫人

だけどそう言う儀礼を嫌ってるみたいで

表に出てくることはほとんど無いわ」

 

「へぇ。そうだったんだ」

 

しみじみと語る彼女に軽く相槌を打つ。

実際に私は家としてお会いしたわけじゃない

から知らなかったけど、そういう役割分担

みたいなこともしてるのね。

 

ならシロネ様はカンザシ様の付き人みたい

な感じなのかしら?

 

「そうだったの。それでお一人の場合は

すぐに帰っちゃうし、まさか奥様の

前で第二夫人のカンザシ様を紹介して

欲しいなんて言えないじゃない?」

 

・・・そりゃそうよね。

 

普通に考えたらモノスゴク・シツレイだし。

 

「けど、そもそもカンザシ様に何かお願い

するならオセ様の許可が必要でしょ?」

 

逆に言えばオセ様の許可が有れば大概

の事は解決するのよね?

 

「まぁそうだけど・・・流石にオセ様に

公式の場でお願いするわけにも行かないわ。

大公家の立場としてはオセ家に貸しを

作れば中立性が失われるし・・・」

 

一体何をしてもらうつもりなのやら・・・

下手に内容を聞くのもダメな感じだし

ココは逃げの一手よ!

 

「とりあえず、貴女個人からの手紙

とかならシロネ様にお届けすることは

出来ると思うわよ?」

 

そう、届けるだけなら可能よ!

 

一応貴族の家の付き合いとかあるものね。

シロネ様だって受け取りはするでしょう。

 

まぁカンザシ様に届く前にオセ様や奥様

が見ることになるだろうけど、そこまでは

面倒見れないわ。

 

「ソ、ソレでも良いわ!なんとかお願いします!」

 

そう言って頭を下げるシーグヴァイラ・・・って!

 

「こんなところで頭を下げないでよ!

若手だけって言っても眷属とか使用人

とか居るのよ?!」

 

変な噂が立ったらどうするのよ!

オセ家との交渉の玄関口気取りとか

言われたら普通に殺されるわよ!

 

 

 

 

(ΦωΦ)

 

 

 

?!?!?!

 

さっきの嫌な予感がさらに強くなった?!

ついでに椿姫の距離も遠くなったわ!

 

心なしかゼファードルも距離を取ってない?

 

 

ディオドラやサイラオーグは良く理解

してないみたいだけど、とりあえずって

感じで一緒に移動してるし!

 

アレ?私なんか悪い事したっけ?!

 

気が付けばシーグヴァイラとその眷属

以外から距離を取られ、何も無いはず

なのに死の恐怖を感じると言う現状。

 

コレは不味い。このままじゃ死ぬわ!

タヒぬじゃなくて普通に死ぬわ!

 

フンコロガシ屎泥課は色々死ぬのよ!

 

何とかして現状を打開しようとする私の

頭上で終末のラッパが鳴り響く。

 

「皆様大変長らくお待ちいただきました。

皆様がお待ちでございます」

 

それは使用人からの無慈悲な一撃!

 

男どもは眷属を連れてさっさと部屋を出て、

そもそもの元凶のシーグヴァイラは、

それじゃよろしくね!と言って良い笑顔で

去って行く。眷属も心なしか嬉しそうだ。

 

残されたのは一人空虚に笑う自分と、

距離を詰めようとしない私の眷属達(薄情者ども)

 

「すみません!遅くなりました!」

 

そう言って部屋に駆け込んで来て、私の

前で頭を下げる匙。

 

どうやら私たちが匙を待っていたと誤解

しているようだけど、とりあえずソレで良いわ!

 

後の事は後で考えましょう!

 

頭を切り替えて、他の連中が向かった先に

歩を進める私たち。

 

・・・ついに行事が始まる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

「はぁ・・・」

 

待機室での諸々の報告を受けて思わず溜息が出た。

 

「サーゼクス。実家で教育してたんじゃ

なかったのか?」

 

実家とは別と言いながらもグレイフィアが

向こうに居てミリキャスを教育させてる

以上、コイツとて無関係じゃないよな?

 

アザゼルからも散々愚痴られたが、アレは

一体何をやってるんだ・・・

 

「いや、まぁ。リーアたんを馬鹿にされて

動かないのは眷属としてはアレだし。

しかし場の目的や立場を考えると・・・」

 

コイツはコイツで板挟みか。

まぁ妹を馬鹿にされたら怒るのが

兄だが、お前は魔王だろうが。

 

なりたくてなったわけじゃ無いし、

さっさと辞めたいと思ってるのは俺も

一緒だが・・・現在の立場がある以上、

公私混同は駄目だし、優先すべきは私情

ではなく公務を優先すべきだろう。

 

「アガレス大公のところの娘さんも

大概だねぇ~。いや、コレはそう言う

のを引き出したゼファーの勝ちって

とこかなぁ?」

 

ファルビウムからすれば、今回のヤツの

行動に関して不満は無いようだ。

 

まぁ挑発なんか基本だし、ヤツが見せたのは麻雀だろ?

 

それで周囲に自分の存在を印象付けた

と言うなら、まさしく最小の労力で

最大の成果を上げたと言える。

 

それにヤツがディオドラを高く評価している

と言うのも意外だった。

 

性格や戦い方から行けばあぁ言ったタイプ

は嫌うモノかと思えば、実績は実績で正しく

評価できるとは。

 

理想の兵士ってだけでも無く、理想の上官

に近付きつつあるな。

 

「うーん。ソーナちゃんの衣装に力を

入れ過ぎたのは失敗だったかなぁ。

けど下手に晒すよりは隠した方がソーナ

ちゃんのためでもあるしなぁ」

 

セラフォルーはセラフォルーで判断に

迷うところだろう。

 

噂や情報は家やら何やらで集められるが、

実際に会って得られる印象と言うのは

重要だからな。

 

俺達のような上からの目線では無く、

同じ高さから見ることで見えるモノもある。

 

ソレを考えればもう少し時間に余裕が

有った方が良いと言うのは事実だろう。

 

「疑問なのはアガレス大公家の娘さんだ。

カンザシ・オセ殿にどのような用があるのかな?」

 

赤龍帝やリアスの話題から外れたから

だろう、サーゼクスが積極的に話題を

提供してくる。

 

不思議そうに首を捻ってるから。本当に興味が

あるのかも知れんが・・・。

 

普通に考えれば、何かを頼むならオセ本人か

奥方に頼むべきであって、第二夫人である

カンザシ・オセに何かを依頼するのは

おかしいと言うのもわかる。

更に彼女は現在地上で駒王町にいるからな。

 

リアスに何かしらの関係があると疑ってるのだろう。

 

・・・実際はサバトで使われてるダンガムの

高性能シミュレーターを使い500人の仲間

が入り乱れる戦場の絆シリーズを体感&領地

に導入したいだけなんだがな。

 

大公から俺に造れないか?と聞かれたが

流石に知らないモノはどうにも出来ん。

 

情報は鍵付き掲示板でしか公開されて無いし、

それだって「ヤバイ!」とか「かっこいい!」

とか「ドミュが凄い!ホバーがリアルだし

旋回性能が高くてブレない!」とか

「地上最強はギョンだ!シールドミサイルが

熱いしイザとなったら頭が突き刺さる!」

とか「この宇宙は・・・天国だ!」って言う感想だけだろ?

 

そんなこと言われても何が何やら。

 

その感想を見ては抽選に漏れたことを嘆き、

次こそは!って言いながら抽選結果を

神に祈りながらドキドキして見てるって。

 

もう抽選だけで金が取れるレベルだ。

 

つか悪魔の大公が死んだ神に祈るなよ。

 

大公はダンガム造ったヤツを神と呼んでる

らしいから、アレとは別だ!と言ってたけど。

 

本人的には一般人の振りして参加して、

何食わぬ顔で帰って来れば他の貴族にも

バレないとか思ってるんだろうが・・・

 

そもそもオセは悪魔は抽選から外してるって

言ってたし、権利の譲渡も出来ないから

普通にしてたら参加は無理なんだよな。

 

イベント告知でZがどうとか00がどうとか

俺に言われてもなぁ。

 

中立性だとか立場の関係上素直に

頼み込めないのはわかるが・・・

 

立場と言うのは面倒なモノだ。

 

「うーん。アノ子の趣味を考えれば

カンザシちゃんにロボットでも造って

貰いたいんじゃない?」

 

セラフォルーはそう言うが、惜しいな。

ロボットとダンガムは別物らしいぞ。

 

「あぁ~アザゼルもやりそうだけど、

カンザシ・オセの方がスタイリッシュな

感じのを造りそうだよねぇ」

 

そうだな。アザゼルがスーパーロボットで

カンザシ・オセがリアルロボットの印象だな。

 

「そんなところだろう。もしも大公家として

貴族派云々を言うなら、連絡を取るのは

カンザシ・オセでは無く当主本人になるだろう」

 

俺がそう言うと他の三人も納得したように頷いた。

 

もしかしたらフェニックス家のように

付き人として入れることまで考えて

いるかもしれんが・・・ソレだって

オセ本人の承諾が必要だろうし。

 

先に外堀を埋めるような姑息な真似は

奥方が許さんだろう。

 

そもそも趣味でソコまではしないよな?

 

「ふむ。純粋な趣味なら我々が口を挟む

必要は無いか。それで、そのオセ君は

今回は不参加とか?」

 

そう、これまでは比較的積極的に行事に

参加してきたオセが不参加を打診して

来たんだよな。

 

「だねぇ。彼にしてみれば若手がどうこう

じゃないもんね。ココに来れば他の貴族に

囲まれることは分かってるし?」

 

そうだな。ファルビウムが言うように、

こう言うイベントの場は普段中々表に

出てこない貴族家の当主にとっては

情報交換の場でもある。

 

まぁ今のオセには、老害から得られる

情報など不要だろうから、なおさら参加する意味は無いか。

 

「ん~私としてもオセちゃんには色々

感謝することもあるけど、ソーナちゃん

については魔王として関係ないことに

なってるからなぁ」

 

個人的な謝意を示すのにも立場が

あるからなぁ。つくづく面倒なことだ。

 

「それに休戦協定の件も有る。今回は

シカタナイかもしれんな」

 

あぁ。それもあるか。今回は旧魔王派の

内乱を収めることを優先したが、本来オセは戦争推進派。

 

休戦協定は面白いモノでは無いからな。

 

行事に参加しないことで「不満だ」と

言う事をアピールしていると言った

感じになるのか?

 

この辺の政治的な呼吸を理解出来るのが

居ないのが俺達の問題だよなぁ。

 

政治的な視点を持ってる奴は大概が

文官気質で、個人の実力としては

どうしても格が落ちる。

 

個人の力を貴ぶ(その割には中途半端だが)

悪魔社会だとどうしても軽く見られて

しまう。そうなれば象徴としても魔王の

価値は薄れ、しかも政治にも中途半端な

形で関わってしまう。

 

完全に悪手だ。

 

オセを5人目の魔王に・・・とも考えたが

オセ家には後継者が居ないから領地経営が出来なくなる。

 

ソコまでして魔王なんかなっても

オセには一切の得が無いからなぁ。

 

とりあえず若手の確認、と言うか品評会だ。

 

発破をかけると言うか何というか、今回の

若手連中で婚約者が居るのが一人も居ないし。

 

とりあえず婿や嫁としての品評をしたい

連中が大勢いるようだから、そう言った

連中に精々良いところを見せて欲しいモノだな。

 

 

・・・・・・

 

 

「ほう」

 

と俺が息を吐けば

 

「へぇ」

 

とファルビウムが感心したように目を見開き

 

「なるほど~」

 

そう言ってセラフォルーは嬉しそうに観察をして

 

「むぅ・・・」

 

サーゼクスはその差にどうしようもなく不安になる。

 

ソレもこれも眼下に並ぶ若手悪魔の存在が原因だ。

今回の若手は6人。その前評判は

 

グレモリー家次期当主、リアス・グレモリー

 

バアル家次期当主、サイラオーグ・バアル

 

アスタロト家次期当主、ディオドラ・アスタロト

 

アガレス家次期当主、シーグヴァイラ・アガレス

 

シトリー家次期当主、ソーナ・シトリー

 

そしてゼファードル・グラシャラボラス

 

この順番だ。

 

協定の前はサイラオーグ・バアルこそが

若手のナンバーワンと言われていたが、

実戦経験と赤龍帝の眷属化などの実績と

各種報道によってリアスが筆頭扱いだ。

 

事実を知るモノからすれば、あんなのが筆頭かよ

と悪魔の将来を嘆くことになるだろうが、

実情を知れば未来は明るいと言っても良い。

 

リアス・グレモリーは、行動も能力も

アレだがサーゼクスが保証人になってるし

アザゼルも教育に名乗りを挙げたから、

これからを期待出来る・・・かもしれん。

 

サイラオーグ・バアルは己の力でバアル家の

次期当主を勝ち取ったことは知られてるし、

ソレを良しとしない連中の闇討ちやら何やら

を粉砕してこの場に立つことが出来る俊英。

 

ディオドラは既に教会勢力から多数の聖女

を離反させ、勢力の弱体化と内部に不信を

招くと言う実績を上げている。

 

シーグヴァイラ・アガレスは既に父親と

共に公務に当たり着実に実績を積んでいる。

 

問題はその後の二人。まずその思想や地上

への留学を行い、周囲から阿呆と呼ばれて

いたソーナ・シトリー。

 

無能と言われていたリアスが仮初とは言え

実績を上げたが、彼女は何も実績が無い。

 

だからこそ前評判も低いし、もしかしたら

リアスの評価に不満を抱いている可能性も

有ると危惧していたが・・・それどころ

では無い。この成長は完全に予想外だ。

 

本人もそうだが眷属の質も極めて高い。

 

動きに無駄が無いし、重心の乱れや無意識に

漏れる魔力も、未熟ではあるがそれなりに

隠蔽出来ている。

 

コレはつまり、自身の身心をきちんと

把握しコントロールしている事を意味する。

 

漏れ出る魔力を見れば上級か最上級。

その辺の老害など既に相手にならん。

 

表面しか見れない老害共は含み笑いを

しているが、今のソーナ・シトリーに

レーティングゲームで勝てるのは現在

トップクラスと言われる連中だけだろう。

 

ソレもかなりの接戦だ。経験の差で

勝つか負けるかと言ったところだな。

 

そしてゼファードル。コイツは既に若手

と言って良い存在じゃないぞ。

 

グラシャラボラス家の次期当主では

無いし、凶児と言われるほど素行が

悪かったことで評判は最悪。

 

実績と言う実績もないから評価の

仕様が無いと言うのも有る。

 

だが既にYOSHITUGUとしての姿を

知っている我々から見れば、ヤツに対する

評価は異常の一言だ。

 

身体の線や関節の動きを見せることを嫌った

のか、やや余裕のある白と緑が合わさった色

をした道着のような服を纏い、腕を組んで

佇むその姿には、一定以上の強者にだけわかるような凄みがある!

 

YOSHITUGUとしてコカビエル

と言う強者との戦いを経験したことで

更に上の段階に進んでいるのもわかる。

 

それなのに一切の油断や慢心が無い。

 

兵士として実績があり。指揮官としても

適性が見え隠れしているしな。

 

わざと体幹を崩しているが、隙は無いし

漏れる魔力も無い。

 

少なくともコカビエルと戦えるだけの

魔力が有りながら、当然のようにソレを

隠蔽している。

自らを完全にコントロールしているよな。

アレを見ればソーナ・シトリーや、その

眷属はまだまだ未熟だと言うことがわかる。

 

ソレに眷属。後ろに並ぶのは年端もいかない

少年少女だが、ソレは周囲の連中も一緒だ。

 

5年もすれば違和感は無くなるだろうし、

気にするような事ではない。

 

問題はその子供たちが放つ気配だ。明らかに

隣に立つソーナ・シトリーの眷属にも劣らん。

つまり現状で上級から最上級悪魔に匹敵する

実力があると見るべきだろう。

 

階級としての最上級悪魔は老害共が決める

感じだからアレだが、実力的に最上級悪魔

と言う段階に到達するのは簡単じゃない。

 

つまり、そんなにポンポン成れるモノじゃ無いんだがなぁ。

 

・・・オセの常識は一体どうなってるんだ?

 

まぁアイツに関しては今は良い。

問題はこれからだ。

 

若手でレーティングゲームをさせる予定

だったが、ゼファードルとソーナに

関しては別枠にするべきじゃないか?

 

別枠とは言ってもどうするかと言う話だが。

 

ハンデと言うのは違うし、ここで2人だけ狙う

ようなことをすれば、ファルビウムはともかく

セラフォルーが騒ぐよなぁ。

 

そもそも我々はゲームに関しての発言力

が無いから、多少意見を言う程度だ。

 

組み合わせをソーナとゼファードルにする?

駄目だ、若手の心が折れる。

 

かと言って戦わせても同じだ。

 

「アジュカ・・・」

 

悩む俺にサーゼクスが小声で声を掛ける。

恐らく俺と同じことを考え、何かしらの

腹案が浮かんだので俺の意見が欲しいと

いったところだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どうしよう?」

 

「知るか」

 

一度完敗して心が折れた方が連中の為になる。

 

俺の中でそういう結論が出た。

 

結論が出れば、今まで考え込んでいたのが

何だったのかと言うほどに視界が晴れる!

 

うむ!今日は何か良い事がありそうだ!

 




前評判が良く分かりませんよねぇ。
何を持って若手ナンバーワンなのか。

普通ならディオドラが一番と評価される
べきだと思うんですが・・・

セラフォルーは妹とその眷族が成長したので前評判なんか気にしません。

ファルビウムは軍略家なので侮って貰った方が都合が良いと考えてます。

アジュカはあんまり興味が無くて。
サーゼクスは妹を心配するってお話。


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55話

原作だと長々と続く日常&エロを切って捨て
数ページで終わるところを散々引っ張る作者!

そう、これが作者だッ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし


ーーソーナ視点ーー

 

私たちが居るところを基点に扇状に広がる

議場に大勢の老害貴族どもが座ってコチラを

品評している。

 

開放的な劇場の舞台に立つ役者を、

二階席や三階席から見る感じと言えば

わかりやすいだろうか。

 

正直言ってあまり面白くは無い視線だけど、

まぁこんなのは今回限りと割り切ってこの

会合を乗り切るわ。

 

そう、問題はこんな連中の視線や評価なんか

じゃなくて、この後のシロネ様からの折檻よ。

 

椿姫も嫌な予感を感じたって言うし、ソレは

確実に有るとみなすべきよね。

 

KAKUGOを決めておけば、不意打ち

だって防げるっ!と良いなぁなんて思ったりなんかして。

 

・・・シーグヴァイラが手紙を無くしたり

忘れたりしてくれないかしら。

 

ソレが一番安全に全てが解決する方法

よねぇ。なんて現実逃避をしながら

私たちと並ぶ同期の悪魔を観察する。

 

まぁ観察と言ってもキョロキョロ視線を

移すわけにも行かないから、薄く霧状に

した水を展開して探るくらいだけどね。

 

周囲の連中には香水の匂いくらいに

しか思われないように偽装もしたけど、

・・・やっぱりゼファードルには弾かれるか。

 

どう考えても頭二つは上ね。

現段階では勝てないわ。

 

でもってサイラオーグは・・・一等から

二等くらいかしら。

個人的には私たちよりやや上。一騎打ち

なら私と椿姫と匙以外なら勝てないわね。

 

私も近接戦闘だと勝てないだろうから

少し距離を置いての戦闘になるでしょう。

 

他は・・・まぁ、うんって感じかしら。

そうよね、それくらいが普通なのよね。

 

「よく、集まってくれた。次世代を担う貴殿ら

の顔を改めて確認する為、集まって貰った。

これは一定周期ごとに行う、若き悪魔を

見定める為の会合でもある」

 

前列に座っていた老害が立ち上がり、勿体ぶった口調でそう宣う。

 

口調や態度は厳かだが、貧弱な魔力と

ソレに見合わない服装を見てると笑い

が込み上げてくる。

 

見定める?冥界の現状を理解出来ず、時の

流れも見れない貴様らに何が出来ると?

 

声を出して笑わないよう、必死で取り繕う

私を一瞥した老害は、緊張してると見たか

媚びを売っていると見たかは知らないが、

満足そうに頷いて席に着いた。

 

「さっそくやってくれたようだが・・・」

 

髭面の老害が私たち、いえ、リアスを見て皮肉気に言う。

 

彼はアレかしら。フェニックス家の結婚式に

参加したのかしら?

 

リアスを見る目には、嘲笑と言うよりは

呆れのようなモノが多分に含まれている

ように感じるわね。

 

「・・・」

 

視線を受けてリアスはやや憮然とした表情を

しながらも、無言で頭を軽く下げる。

 

恐らくリアスはさっきの性犯罪者の狼藉の

事を言われてると思ってるんだろう。

言葉だけならそうだけど、彼女は自分が

どれだけの事をやらかしたか自覚してない

からタチが悪いのよね。

 

「キミたち6名は家柄、実力共に申し分の無い

次世代の悪魔だ。だからこそデビュー前に

お互い競い合い、力を高めて貰おうと思っていた」

 

サーゼクス様のお言葉を受けて、今まで

私たちを上から眺めていた数人の老害が、

何かを確認するかのように上段に座るサーゼクス様の様子を伺っている。

 

思っていた(・・)ね。

 

まぁそうでしょう。今の私たちでは全員で

挑んでもゼファードルには勝てない。

 

サーゼクス様だってそれくらいはわかってるはず。

 

今の言い様だと、恐らく運営の老害たちは

私たちにレーティングゲームをさせる予定

だったみたいだけど、ゼファードルの実力を

見てサーゼクス様が独断で方針を変えようと

しているのかしら?

 

妹魂と言うのもあるだろうけど、そうしないと

わざわざ作った『英雄』リアス・グレモリーの

立場がないしねぇ。

 

「思っていた・・・ですか?では我々も

近日中に禍の団との戦闘に投入されると?」

 

サイラオーグが訝しそうに確認を取る。

 

まぁ彼にしてみたら武勲は欲しいわよね。

自分にもソコソコ自信が有るみたいだし、

実際その辺の老害たちでは勝てない程度

の実力もあるでしょう。

 

「それはまだわからない。だが、出来るだけ

若い悪魔たちは戦闘に参加させたくないと

思っているよ」

 

そんな血気に逸るサイラオーグを咎める

ことなくサーゼクス様は苦笑いをして

問いに答えた。

 

・・・コレがシロネ様なら、許可なく

喋るなとか言って矯正されてるわね。

 

リアスが礼儀作法を理解出来ず、眷属に

教育出来ないのってサーゼクス様が

甘やかしたからじゃないの?

 

シツレイかも知れないけど、この予想

は外れて無いと思うわ。

 

サーゼクス様の返答に眉を吊り上げた

サイラオーグを見て「そう言えばコイツも

サーゼクス様に可愛がられてたわね」と

現実逃避気味に思いだした。

 

「何故です?若いとは言え我らとて悪魔の

一端を担います!この歳になるまで先人たちの

御厚意を受けて、なお何も出来ないとなれば!」

 

尚も言い募ろうとしたサイラオーグに

対し、サーゼクス様は右手を上げて、

それ以上の言を封じた。

 

・・・まず、勝手に我ら(・・)って言うのは止めなさいよ。

 

私は冥界の方針に逆らう気も無いし、

戦場に出たいなんて思って無いわ。

 

先人のご厚意ってアナタは散々見下されて

苦労掛けられただけでしょうが。

 

嫌味も程々にしないと無駄に敵を作るわよ。

そして何より不敬だわ。

相手は従兄弟とは言え魔王様。

公式の場で若手が口答えして良い相手

では無いのよ?

それにそもそも意見を求められてないのに

勝手な発言するなんてどうなってるの?

 

ソレを何故誰も咎めないの?

・・・所詮は貴族気取りの老害か。

 

何が本当の無礼で不敬なのかを正しく

理解してないから、場の空気だけを読んで

雰囲気で発言してるのよね。

 

私はそう確信して、この場に居る貴族たちに見切りをつける。

 

オセ様は欠席したみたいだし、空席も

ちらほら目立つ。フェニックスも欠席だ。

 

この空席の貴族が恐らくオセ様を信奉

する貴族派なのだろう。

 

旧魔王派に味方している貴族の場合も

あるかも知れないけど、連中は下手に

欠席して魔王様方に目を付けられるような

ことはしないだろうし。

 

もしそんなのが敵なら内乱もさっさと

終わって助かるんだけどね。

 

「サイラオーグ、その勇気は買おう。しかし

無謀だ。今の君たちは成長途上。

まだまだ上に行けるだろう。更に、

優秀な次世代の悪魔を失うような事になっては、

例え敵を打倒出来たとしても意味が無い。

だからこそ君たちには段階を踏んで強く

なって欲しいと思っている」

 

サーゼクス様の言葉を受けて、頭を

冷やしたのか「わかりました」と言って

下がるサイラオーグ。

 

なかなか上手いことを言いますけど、要するに

邪魔だから下がってろってことですよね?

 

もしくは【100年早い】と言った感じかしら?

 

普通に考えて、アザゼル(堕天使の総督)が腕を失う

ような戦場で私たちに出来ることなんかないわよね。

 

精々避難誘導くらいかしら?

 

尚も不満そうにしているサイラオーグを見て、

コイツ等に近付くのは止めようと決心する。

 

私はソレが私の安全につながると確信したわ。

 

私の決心をよそに老害たちのお言葉は続く。

 

とりあえず内乱よりレーティングゲームを

重視するように誘導してくるのは、さっき

のサーゼクス様の意見の補強なのか、

それとも私たちのレーティングゲーム離れを

防ぐ為なのか。

 

判断がつかないと思って、とりあえず観察

することに徹していたら、ようやく連中の

話が終わったようね。

 

再度サーゼクス様が立ち上がり締めのお言葉を述べる・・・

 

コレでやっと終わりか。

そう思ってた時期が私にもありました。

 

「さて、長い話に付き合わせてしまい

申し訳なかった。私たちは若い君たちに

私たちなりの夢や希望を見ているのだよ。

ソレだけは理解して欲しい」

 

その言葉にサーゼクス様の横に座るお姉様が

イイ笑顔でブンブンと首を振っている。

 

・・・恥ずかしいからやめてくれませんか。

 

終わりと見せかけてまさかの追い打ちである。

 

恥ずかしがってる私に関係なく、サーゼクス様のお言葉は続く。

 

「最後に、それぞれの目標を聞かせてもらえないだろうか?」

 

目標・・・目標ねぇ。

 

私が掲げていたレーティングゲームの学校

なんて夢は無謀で阿呆だと言うことは本当

の意味で良く分かったわ。

 

私には夜叉一さんのように兵士を作る技能

は無いし、アレは普通の環境じゃ出来ないもの。

 

ソレに指揮官を作るには実戦を知らないと

駄目だから、やっぱり実戦を生き残る兵士

を作れないと意味が無い。

 

かといって捨て駒を量産するようでは

無意味どころか害悪よ。

 

夢から覚めれば現実が待ってるけど、

現実が痛すぎるのよねぇ。

 

自業自得ではあるけど・・・ココまで

阿呆として名を広める前に、誰かに

マトモに意見を言ってもらえなかった自分・・・

いえ、否定意見を聞き入れなかった自分の

阿呆さとシロネ様のありがたさに涙が出そう。

 

「俺は魔王になるのが夢です」

 

あぁ、自虐してる場合じゃ無かったわね。

 

と言うかサーゼクス様からの問いかけに対し、

率先してサイラオーグが答えたけど・・・

 

いや、アナタ大王家の次期当主でしょ?

アレかしら。大王家は自分の子供に継がせて

自分は魔王になるとか?

 

『・・・ほう』

 

魔王様方を始めとしてお偉いさんから

感嘆の声が出る。

 

いや、コレは阿呆じゃないの?老害の

基準が良く分からないんだけど?

 

困惑して様子を見る私の耳に更なる

言葉が入って来る。

 

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

 

ん?ソレ言ったらグレモリー家から魔王に

なるのも、シトリー家から魔王になるのも

勿論アスタロト家から魔王になるのも、

グラシャラボラス家から魔王になるのも

全部前代未聞でしたよね?

 

何言ってんだコイツ?

 

本気で老害共の頭の中を心配し始めるが

どうやらその疑問を持ってるのは私だけ

らしく、この場はスゴク・シリアスな

空気が漂っている。

 

あ、いや、ゼファードルからも困惑の

空気が漂ってるから、多分私と同じこと

考えてるわね。

 

自分の頭がおかしくなったんじゃ無いと

言うことがわかって少し安心したわ!

 

「俺が魔王になるしかないと冥界の

民が感じれば、そうなるでしょう」

 

いや、アンタより先にオセ様だと思うけど。

 

私の声はゼファードルにしか届かないの

だろう。感心するように頷いて、老害は

席に座った。

 

「私はグレモリーの次期当主として生き、

レーティングゲームの各大会で優勝するのが

近い将来の目標ですわ」

 

リアスの言葉にお偉いさんや魔王様方が

心底安心したかのように頷いた。

 

そりゃそうよね。戦場に出さずに家の中か

ゲームだけさせとけば誰も損しないし。

自発的にグレモリーの次期当主(英雄兼餌)として生きる

と言うなら万々歳よね。

 

「僕はアスタロト家の次期当主としての成長を

するとともに、外交官としてこれからの悪魔社会

の役に立ちたいと思っています」

 

次に発言したのはディオドラ。

 

アスタロト家の次期当主はともかく、外交官?

 

老害たちの表情にも?マークが浮かんでいる

のを見て、ディオドラは苦笑いしながら己の

発言の意図を説明する。

 

「僕は教会勢力及び天界の価値観に詳しい

と自負しています。

休戦を結んだ以上は今までのような敵対

関係だけでなく、時には現場での協力も

必要になるでしょう」

 

価値観に詳しいときたか。まぁ聖女を堕とす

には相手の事を知らなきゃダメだもんねぇ。

 

それに現場での協力ねぇ。

私は中々上手い言い回しだと感心するが、

老害どもは何やら不満があるようだ。

 

まぁ今まで敵対してきたのにいきなり

協力とか言われてもねぇ。

 

「その都度セラフォルー様が出ていたのでは

話になりません。

今の冥界に必要なのは個の力を誇示する悪魔

ではなく、政治を理解できる悪魔です」

 

おぉ・・・堂々と言い切ったわね。

コレはさっきのサイラオーグに対する

皮肉かしら。

 

でもって個の力を持たず、自分達が政治を

理解していると思ってる老害たちに対する

配慮もしてるのかしらね?

 

顔を顰めてるのが今の魔王様方を傀儡に

したい大王派や、サイラオーグの支援者かしら?

 

「なるほど。では君はレーティングゲーム

には然程興味を持ってないのかな?」

 

微妙に機嫌が悪そうにそう言ってくる老害。

あぁ、確かに外交官にはゲームがどうとかは

関係無いものね。

 

ゲームに依存せずに実績を挙げられたら

困るってわけか。

 

「勉強として見学する分には興味が

ありますが参加しようとは思ってませんね」

 

なんとまぁ。

 

ここまで正直に答えるとは思ってなかったのでしょうね。

 

レーティングゲームの運営に関わると

思わしき老害たちが露骨に顔を顰めたわ。

 

これはゲームに参加しないと明言すると

ともに、将来的には自分も運営に参加する

という意思表示なのかしら?

 

ディオドラの意図を考えていると、彼は

更に言葉を続ける。

 

「何せ僕はアスタロト家。ベルゼブブ様の

実家ですからね。レーティングゲームに

関われば、どうしてもその関係で評価に影を

落とすことになるじゃないですか」

 

肩をすくめながら言う姿に嘘は感じられない。

 

まぁ言ってることはわかるわ。アジュカ様

からナニカ裏技を教わったとか、それこそ

王の駒を使ったとか言われてしまえば、

どんなにゲームで活躍しても正しく評価

されることは無いでしょう。

 

ならレーティングゲームに関係ないところで

実績を上げようとするのは間違ってないわ。

 

さっきまで渋い顔をしていた老害たちも

その言葉には納得できたようで、表情を

元に戻している。

 

いや、アンタら、そんな単純で良いの?

 

私のような小娘にすら簡単に表情で思惑を

読まれる老害を見て、こんなのが悪魔の

上層部なんだ・・・と不安がよぎる。

 

不安に駆られる私を無視して、次はどうやら

シーグヴァイラが発言するようだ。

 

・・・この順番って決まってるのかしら?

 

「私はアガレス大公家の者として、各勢力の

橋渡し役を務めると共に領内の発展を、

特に科学技術の発展による飛躍を目指しています!」

 

力強く宣言する彼女の姿勢にブレは無い。

 

なるほど、科学技術と言うならアジュカ様では

なくカンザシ様に繋ぎをつけようとする気持ち

はわかるわ。

 

今の悪魔社会は中途半端に貴族かぶれだから、

無駄な労力とか無駄な時間、無駄な人件費とか

結構嵩んでるのよ。

 

雇用も立派な貴族の仕事ではあるんだけど、

今の冥界ならもっと効率的なヒトの使い方

って言うのが有るからね。

 

機械で出来る事は機械でやって、それ以外

のことにリソースを割くと言うのは正しい。

 

実際ナニを導入しようとしているかまでは

知らないけど、オートメーションによる

産業革命みたいな事を目論んでるのね。

 

「ふむ。科学技術・・・」

 

よくわかってないようなリアクションをする老害。

 

とりあえず自分が望んだ答えではないと

言うことはわかってるみたいね。

 

「ではアガレス家のお嬢さんも現状は

レーティングゲームに興味がないと?」

 

理解しがたいと言う顔をしながら問いかけて

くるわね。まぁコイツ等にはソレしかないから、

ディオドラと同じでゲームに興味がないのは

困るんでしょうよ。

 

ただ、彼女はアガレス大公家の次期当主だし、

折衝役に徹して欲しいって言うのもあるんでしょう。

 

つまり老害にしてもどっちつかずの微妙な感じよね。

 

「そうですね。私としても先程アスタロト殿が

言ったように、先達の戦い方を学ぶと言う意味

では興味がありますが、積極的に参加すると

いう気持ちはありません」

 

コッチもあっさり言い切ったわねぇ。

 

リアスなんか「信じられない!」って感じで

目を剥いてるわよ?

 

けど、コレが貴族家の次期当主としては正しい

のよね。ゲームよりまず政治。当たり前のこと

だけど、私はそんなこともわかってなかった。

 

「な、なるほど。私がわざわざ言うまでもなく

理解しているようですが、レーティングゲーム

は冥界のトップクラスの悪魔がその知恵と力を

振り絞り戦うモノ。若手のアナタ方には参考に

なることも多々ある。そのことを忘れず、

時にはレーティングゲームに参加して自らを

鍛えることを怠らないようにしていただきたい」

 

「えぇ、お言葉確かに承りました」

 

目元をヒクつかせながらゲームへの参加を

促す老害の言葉に対し、特に反発することも

なくシーグヴァイラは頭を下げる。

 

それを見て一先ず矛を収める老害と、微妙な

顔を崩さない周囲の連中・・・

 

あの周りが全員運営関係の老害だとしたら

結構な勢力になるけど、それほど余裕が有る

ようには見えないわ。

 

若手の有望株がゲーム離れしたらマズイと思ってるのかしら?

 

あぁ、そういえばオセ様もゲームは反対派だし、

オセ様に親しい貴族は最近ゲームへの参加を

取りやめてるわね。

 

それにフェニックスの涙も品薄とか言われて

中々入手出来ないみたいだし、そもそも

トッププレイヤーの一角でもあった

ルヴァル・フェニックスもゲームを引退したのよね。

 

今の状況は運営の老害共には面白くないのかもしれないわ。

 

そう考えているとシーグヴァイラは

頭を上げて、私に視線を寄越す。

 

・・・「絶対シロネ様に手紙届けてよ!」

という強い意思を感じるわ。

 

さ、さて、シーグヴァイラにはこれ以上

言うこともないみたいだし、立ち位置から

したら次は私かしら?

 

彼女の視線から逃げるように前を向き直り、

発言しようとした私の動きを老害の一言が止める。

 

「では次にゼファードル君、君の目標を

聞かせて欲しい」

 

なぜか私を飛ばしてゼファードルを指名してくる老害。

 

その周りではニヤニヤして私を見る連中が居る。

 

コレはアレね。トリで阿呆なこと言って自分達を

笑わせろってことよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、良いでしょう。今の私はアナタ方を

笑わせるだけのタダの阿呆な道化師(ピエロ)ではなく

老害を殺せる道化師(ペニーワイズ)だと言う事を教えて差し上げますわ!




実際サイラオーグと魔王様とか老害の話って
かなり現実と噛み合ってないと思います。

なんというか・・・馬鹿?

ディオドラとシーグヴァイラの
目標は当然オリ設定です!

オサレルールだと、挑発は受けないけど
フリには答えるのがルールみたいな感じは
ありますよねってお話。


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56話

さぁ!立ち上がれペニーワ○ズ会長ッ!
眼鏡の力を見せてやれッ!

働く魔王さま視点。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

若手の目標、ねぇ。

 

確かに若手に夢や希望を見出そう

としてるのは事実だが、それより先に

貴族派連中との折衝だと思うぞ?

 

しかし我々の役割分担では外交に関しては

セラフォルーだが、こういった内部の場合は

サーゼクスの仕事になるんだよなぁ。

 

そうなるとオセやフェニックスとの関係

改善は絶望的だし、タンニーンには赤龍帝の

教育を断られてるし・・・正直若手を励ます

より俺たちがしっかりしろ!って話だと思う

んだがなぁ。

 

いや、そんな暗い現実はあとで見よう!

 

うむ。若者の目標とは素晴らしいなッ!

 

サイラオーグが魔王を目指す発言をしたとき、

良し!変わってやる!と言わなかった自分を

手放しで褒めたくなったが。

 

ただ現在のヤツはサーゼクスの下位互換だし

正直言って知識やら何やらで王となれる

ようなタイプではないから、完全な脳筋だろ?

 

しばらくは無理だな。

 

いや、大王家の初代が魔力のある子供を

当主にするために、さっさと魔王かソレに

準じる立場にしてくる可能性もあるか。

 

例えば副王とか。

 

その場合は周囲としてもどーせ担ぎ上げる

だけだから、脳筋でも問題ないと判断される

だろうし自分たちの家督に関する問題も片付く。

 

俺たちには次代の若手を鍛えろとでも言うか?

 

俺としては魔王に成りたいと言うヤツが

居るなら是非なって貰いたいから、そう

言った連中を鍛えて引き継ぎさせるのに

異論は無いが・・・

 

それもこれも、もう少し後のことだろうな。

 

でもって無能が次期当主としての研鑽と

ゲームに専念すると言った時は、嬉しさで

涙が出そうになったものだ。

 

なんと言っても今現在も、俺たちはアイツの

連帯保証人扱いだからな!

 

黙ってグレモリー領内でお人形さんをするか、

ゲームをするか、地上で餌として機能するか

をしてくれるというなら、これほど嬉しい

ことはない。

 

その上でジオティクス殿がさっさと隠居して

家督を譲ってくれれば最高なんだが・・・

ソレは現在、サーゼクスとグレイフィアが

必死で止めてるらしいな。

 

普通に考えればミリキャスが死ぬし、最悪の

場合の連帯保証人がいなくなることを警戒

しているんだろうがよぉ。

 

スゴク・メイワクだ。

 

でもってディオドラ。うん、アイツの

趣味を考えれば、ソレも有りだろうよ。

向こうの感情については態々言わなければ

良いだけの話だし。

 

実際問題、個の力で魔王になろうとしている

サイラオーグより、個の力よりも政治を重視

しているディオドラの方が有難い存在では

あるんだ。

 

俺たちに政治力を付けて欲しくない

大王派にしてみれば面白くはないだろうし、

更にレーティングゲームに興味がないと

言い切ったからな。

 

自分の持つ唯一の武器が通用しなくなる

ことに老害どもがどう反応するのやら・・・

 

そしてシーグヴァイラ・アガレス。

うん。完全に趣味だな。

 

誰も損をしないし、科学技術の発展は

領内の発展に役立つのも事実だから、

その部分に異論はないが・・・

 

カンザシ・オセの協力を得られなかったら、

俺やアザゼルが協力することになるのかねぇ。

 

こいつもレーティングゲームに興味は

無いと言い切ったし。

 

ゲームより政治を重視すると言うのは

貴族家の次期当主としては当然だし、

アガレス大公から王の駒に関する情報を得たと

言う可能性もある。

 

それなら態々老害の為に働こうとは思わんよな。

 

それで次はソーナの番か。明らかに成長した

ソーナが、今は一体どんな目標を持っている?

 

掲げる夢は変わったのか、それとも夢は夢の

まま持ってて、それを実現するためのナニカ

を目標とするのか。

 

そう思っていたんだが。

 

「では次にゼファードル君、君の目標を聞かせて欲しい」

 

まさかソーナを飛ばしてゼファードルとは。

 

ソーナ・シトリーの発言を止めた老害の

言葉に、セラフォルーの蟀谷がピクリと動く。

 

明らかにソーナの目標を知った上で笑い者にしようとしてるからなぁ。

 

本人はなんか闘争心に火が付いたみたいな

顔してるが、アレだって老害共には楽しみ

にしかならんだろう。

 

今のソーナがそれを理解していないとは思えん

から、あえて連中に見せてるのだろうがな。

 

ニヤニヤと笑う老害たちに対して、ソーナが

ナニを言うのか興味が無いと言えば嘘になる。

 

アレだってリアス同様、幼少期から見てきた娘だ。

 

最近はリアスの行動がぶっ飛んでて

影が薄くなってるが、正直我々の胃には

その方がありがたいくらいだし。

 

現実を見て下手に自分で動かず、他人を

頼ることが出来るようになったと言うのは、

彼女の成長として高く評価しているところ

でもあるしな。

 

その彼女の今の目標は興味があるし、

笑いものにするために飛ばされたのは

俺としても面白くはない。

 

だがゼファードルの目標には正直それを上回る興味がある。

 

今ですら堕天使幹部と互角以上に戦うことが

出来て、さらにオセと言う規格外を知るヤツ

がどんなモノを見ているのか。

 

勿論ファルビウムやサーゼクスも興味は有る

だろうし、セラフォルーも気持ちを切り替えた

のか、今ではゼファードルが話すのをじっと

待っている状況だ。

 

「目標ですか・・・」

 

数多の貴族の視線を一身に受けながら、

気負うこともなく自然体で言葉を紡ぐ

様には既に貫禄が見え隠れしている。

 

凶児と呼ばれ、一番評価が低かったハズの

男の様子に、会合に参加した老害も驚きを

隠せないようで周囲の連中と目やメモで

何かを確認し合っているようだ。

 

話の内容によっては婿候補にでもするか?

 

しかしアレだ。この場で一番驚いてるのが

グラシャラボラスの当主っぽいのがなんとも言えんな。

 

苦笑いを抑えながらゼファードルの言葉を待つ。

 

「今の俺には遠すぎてわかりませんね」

 

彼なりに考えた末の答えなのだろう。

誤魔化そうとかそういった感じは一切ない。

 

しかし遠すぎる目標か。なるほどな。

 

「わからないとは?」

 

老害は首を捻りながら問いかける。

まぁ普通はわからんよな。

 

だが、分かるヤツにはわかるだろう。

 

事実ソーナは納得したように頷いてるし、

コッチのファルビウムやセラフォルーも

アイツの言いたいことは理解できた。

 

もちろん俺やサーゼクスもわかる。

 

眼下のゼファードルは老害の質問に対し、

一度頷き顎に手を当て、言葉を選びながら

発言しようとしている。

 

この態度を無礼と見るモノも居るようだが、

さっきのサイラオーグに比べたらどれだけ

マトモか理解できないのか?

 

老害どもの質の低下は看過出来ないレベル

に到達しているようだ。

 

「俺には色々足りないモンがあります。

まず直近は個の力。コレは魔力だの腕力だの

と言った単純な戦う力だけじゃなくて、経験

やら知力やら政治力、あぁ財力もありますか」

 

嫌な発見に頭を悩ませる俺の耳に

ゼファードルの言葉が入ってくる。

 

うむ。現在の悪魔社会において個の力と

言えばサーゼクスを想像する連中が多いが、

俺たちはあくまで突然変異のようなモノだ。

 

力だけの存在で象徴となったが、実際は

汎用性に欠けるし失敗も多い。

 

政治力の無さは日々痛感してるし、

個人に出来ることは限界があるしな。

 

それに対してファルビウムのような軍略家

は個人の武もあるが、それ以上に組織を

使いこなすことができるのが大きい。

 

人材を纏めて使いこなす力。まぁこれも指揮

と言う力の一つなのだろうが、コレは才能

だけでなく知識と経験がモノを言う世界。

 

現在の彼には不足しているのも事実だろう。

 

金が無ければ何も出来んのは常識だしな。

 

「いくら鍛えても馬鹿じゃ意味が無いし、

頭が良くても現場を知らなきゃ意味がない」

 

もっともだ。

 

頷く俺たち魔王に対して「現場を知らない」と

言われた老害共は不満げに口元を歪ませる。

 

いや、お前ら現場以前にバカだから。

 

バカの上に現場を知らない、タダの夢想家だから。

 

俺はそう言いたくなるのを我慢し、同僚で

あり、横で震えているアイツの親族でもある

ファルビウムを見てみる。

 

・・・どうやら声を出して笑うのを必死で我慢してるようだ。

 

凶児と呼ばれていた頃を知ってるので、そのギャップが更に面白いのだろう。

 

「そんなわけで俺は今の俺に足りないものを

補いたいと思ってます。

まずは目標をきちんと見ることが出来る程度に

個の力を高めることが目標ですね」

 

ふむ。つまりは自分の目標としている者の

背中を見るために、己を高める必要があると

判断しているのか。

 

・・・その目標は確実にオセだよな。

 

政治から人材育成から戦闘から技術革新から、

本当の意味でなんでも出来るオセの背中を

見る為には、何もかもが足りないと本気で

判断しているのだろう。

 

正しく若人。正しく挑戦者。コイツはまだまだ

成長するという確信がある。

 

このまま成長することが出来たなら、

コイツこそ悪魔の宝となるだろう!

 

今のゼファードルにはそう確信させるモノが確かにあった。

 

・・・だが老害共にはソレは理解

出来ないモノらしい。

 

「最終的には個の力か。まぁそれも悪魔らしいと言えるな」

 

一体ナニを聞いていたのやら・・・やはり

オセが言うようにさっさと老害どもを殺して

若者を保護すべきじゃないか?と言う考えが

脳裏に浮かぶが、その後の統治の事を考えて

しまい、泡と消えていく。

 

この辺の覚悟が俺たちに足りんと言うことだろうなぁ。

 

「では君はレーティングゲームに興味は

あるだろう?強者との戦いを経験できる

機会だからな」

 

老害はそう言ってゼファードルの意思を

確認しようとする。

 

まぁ表面だけ見ればそうだろう。

 

「確かに他流試合と考えればアリでしょう。

ただ、楽しめると思える相手と戦う為には

ランクを上げなきゃ行けませんからねぇ。

弱い者イジメしているうちに慢心したり、

ゲームに飽きないかどうかが不安ですね」

 

・・・なかなか言うじゃないか。

 

オセがゲーム反対派だからてっきり彼も

反対するかと思いきや、ゲームを戦闘の

経験を積む場としては有りと割り切っているのか。

 

ソレにオセも洗脳教育はしていないという事だろうな。

 

何せオセには自分が嫌ってるものも

許容するという度量が有る。

 

だからこそ、オセの背中に追いつく

ためには使えるモノはなんでも使う

ということなのだろう。

 

そして弱い者イジメときた。

 

本心からの言葉だろうが、コレは

サイラオーグやリアスに対する牽制か?

 

それとも老害たちに、マッチメイクするなら

それなりのヤツにしろと言う注文?

 

どちらにせよ、彼の実力を考えればココに

いる若手は全員【弱い者】の範疇だろうし、

イジメにしかならないのは確かだ。

 

サイラオーグも無能も、自分は眼中に

無いと言われたことに気付いたな?

 

特に赤龍帝を潰された無能やその女王は

形容しがたい目と殺気をゼファードルの

背中に向けているが・・・まぁその程度の

殺気では届かんよな。

 

「なるほど。中々自信があるようだ。

いや、若者はそうあるべきだよ」

 

老害はそう言って満足そうに座る。

 

他と違いゲームに興味はあると言ってるし、

生意気な小僧がベテランに潰されて現実を

知れば良いとでも思ってるのだろうな。

 

「では君は魔王に興味は無いかい?」

 

老害の思惑を考えている俺の横で、

おもむろに立ち上がったサーゼクスが

ゼファードルにそんな質問をした。

 

今までは老害が夢や目標に対する補足説明

を聞いたり、ゲームに関する質問をする

だけだったのに・・・

 

サーゼクスが魔王に言及したことで

周囲の連中、いや、サイラオーグや

リアスも驚きで目を見開いている。

 

ふむ。今はまだ無理だろうが、この調子で

あと10年鍛えれば、ゼファードルは魔王に

相応しいだけの力を持つと思う。

 

だが本人の意志としてはどうなんだろうな?

 

「え?無いっすね。つーか、それどんな罰ゲームっすか?」

 

思わず普段の言葉使いが出たのだろうが・・・

 

「クックックッ!」

 

ノータイムで答えるゼファードルに笑いを抑えることが出来ん!

 

「ハハッ、僕の前で良く言ったねぇゼファー!」

 

ファルビウムが本当に楽しそうに笑ってそう言えば、

 

「ふふふ。罰ゲームかぁ。言うねぇ」

 

セラフォルーも笑うしかないと言った感じで

笑みを湛えている。

 

「君、素直なのは良い事だが、出来たら

もう少し言葉を選んでくれると助かるな」

 

俺たち三人が笑いを堪えきれてないのを

見て苦笑いのサーゼクス。

 

そりゃそうだ。自分が質問したので無ければ

コイツが一番大きく頷いていただろうよ。

 

逆に魔王が若手に「自分の仕事に興味がない」

と言い切られ、更に罰ゲーム扱いされても

笑っていると言う状況に、周囲の老害達は

口を開けて呆然としている。

 

だがその様子が俺たちの笑いを加速させる

ことに気付いているだろうか?

 

 

俺としてはこの場で

 

 

「よくぞほざいたッ!ヤりたいことをヤる!それでこそ悪魔だッ!」

 

 

そう讚えてやりたいところだが・・・

ソレに我慢出来ないのも当然居る。

 

「サーゼクス様ッ!ソレに魔王様方ッ!

若手にここまで言われて笑って済ませる

おつもりですかッ!」

 

権威に五月蝿い老害には我慢出来ないよなぁ。

 

とは言え、だ。ここでコイツに

 

 

「態々俺たちにアピールしながら言う必要は

無いぞ?

本当に無礼だと思うなら自分で彼を掣肘

すれば良いだろう。

俺は止めんからやってみたらどうだ?」

 

 

とは言えんしなぁ。さて、どうしたものか。

 

ともかく折角の楽しい雰囲気が台無しだ。

「もう少し空気を読め」くらいは言っても

良いかもしれんが。

 

そう思っていると、老害に名指しで批難された

サーゼクスは落ち着き払って老害に向き直る。

 

「ふむ。質問をしたのは私で、彼は本心で

答えただけだろう。

貴方は彼が私が望まない返答をしたと言う

程度のことで目くじらを立てるほど、私達が

狭量だとでも言うのかな?」

 

サーゼクスが何と言って返すのかと思えば

・・・まぁ、妥当なところだろうな。

 

サーゼクスがそう返すと、声を荒らげた

老害はグッ!と言いながらも席に座り直す。

 

コイツにしてみたら忠義の行動なのだろうが、

正直こういうアピールはウザイだけなんだよなぁ。

 

それに我々が折檻だなんだと言ったら、

器が小さいだの何だのと騒ぐ癖に。

 

意味がわからんよ。

 

しかしまぁ、サーゼクスも言うことは事実だ。

 

俺たちから見ても別に怒るようなことじゃない。

かと言ってここで怒らなければ甘いと言われ、

怒れば魔王の器が小さいと言われる。

 

面倒この上ないが、今回は若手の会合であり、

若手が主役。

多少甘くとも笑って許すと言う度量を見せる

のが我々にとってもベストの選択だろうよ。

 

「だが貴方の言うこともわかる。故に少し

言葉を選んでくれと言う警告をしたのだよ。

・・・ゼファードル君。イイネ?」

 

一応こちらの為に怒ってみせた老害の

顔も立てなければならんからなぁ。

 

プライドだけが一人前の小物の相手は面倒でいかん。

 

「・・・申し訳ございません」

 

うむ。自分でも言葉遣いを間違えたと

反省しているようだな。

 

実際に問題なのは内容だが、反省してると

周囲が判断するならソレでいいさ。

 

「魔王様!俺は納得出来ませんッ!!」

 

ゼファードルの謝罪で場の空気が落ち着き

かけたところに、そんな大音声が響き渡る。

 

あぁん?

 

俺たち魔王が納得して、老害が納得した

ならこの話はソレで終わりだろうに。

 

そう思って声がした方を見れば、そこには

全身から「我慢できん!」と言わんばかりの

怒気を放つサイラオーグが。

 

あぁ、コイツは魔王になるのが夢と言って

民がどうとか言ってたからなぁ。

 

魔王という職に夢を見てるサイラオーグに

してみたら、それを罰ゲーム扱いされては

我慢出来んか。

 

「そうです!私も我慢できません!」

 

そう叫ぶ無能(トラブルメイカー)

 

コイツはアレだ。なんだかんだで兄魂(ブラコン)だし。

おそらくコイツの頭の中では

 

「お兄様が公衆の面前で侮辱されたけど、きっと

この場の空気のせいで怒ることが出来ないんだわ!

だったら私が代わりに怒れば良いのよ!」

 

って感じだろう。

 

つーか納得出来ないも何も、ゼファードル

が魔王をどう思おうがゼファードルの勝手

だろうに。

 

そもそもこうやって割り込んでくること

自体が無礼な行為なんだが・・・

 

迷惑だ。早くアレをなんとかしろサーゼクス。

お前の従兄弟と妹だぞ。

 

「「「・・・」」」

 

俺とセラフォルーとファルビウムの視線が

サーゼクスに突き刺さる。

 

こいつにしてみたら『お兄たんの為に

怒ってくれるリーアたん最高ッ!』と

でも思ってたんだろうな。

 

だがもう少し場の空気を読め。もしココで

乱闘とかになったら、俺たちが参加しない

限りゼファードルの一人勝ちだぞ?

 

それこそ若手の心が折れる。

 

だからこそ甘やかすな。今はお前たちの

意見を聞いていないとはっきりと言え!

 

「「「・・・」」」

 

少し動きを止めていたサーゼクスだが、

俺たちの視線を受けて再起動し、そして

コクりと小さく頷いた。

 

よし、ビシッと言ってやれ!

 

「・・・サイラオーグ、それにリアス。

納得出来ないと言うなら、どうすると

言うのかな?」

 

(((コイツ、ぶん投げやがった!)))

 

考えても結論が出なかったのだろう。

 

更に妹に嫌われたくないからと言って、

結論を向こうに投げ捨てるという暴挙に

出た妹魂(シスコン)に対し、俺たちのストレスはマッハで加速した!

 

胃を抑えたくなる衝動を我慢し、サイラオーグと

無能(どあほう)の次の言葉を待つ俺たち。

 

老害どもはサイラオーグや無能(勘違い)の肩を

持つような雰囲気だが、ゼファードルは

そんな二人や周囲に対して特に怒りや

何かを見せるでもなく

 

「なんだこいつら?頭大丈夫か?」

 

と言った感じの視線を向けている。

 

ウム。予想以上に大人だ。彼には凶児と言う

渾名ではなく、何か別の二つ名をつけよう。

 

現実逃避気味に彼の二つ名を考える俺。

空を流れる雲を眺めるファルビウム。

妹を見て心を落ち着かせるセラフォルー。

そして生唾を飲み込むサーゼクス。

 

四者四様の様子で眼下に立つ二人の

阿呆の言葉を待つ。

 

そしてその二人は視線を合わせ、一度頷いて息を吸い込み・・・

 

「「はい!俺(私)はゼファードルとのレーティングゲームを希望しますッ!」と宣った。

 

 

 

おいおい死んだぞ。

 

我々が最も恐れていた事態を自分から

引き起こした無能(ストレスの元)とサイラオーグを見て、

俺は溜息を我慢することが出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーソーナ視点ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アレ?ねぇ、私は?」

 




OTONAのゼファードルとか呼ばれそう

眼鏡会長・・・もう夢とか目標とか
そう言う空気じゃなくなったもよう。

ペニー○イズ会長は亡くなったのだ(未登場・溺死)

ゲー無(虚無)の幕が開けるっ!ってお話


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57話

今更ですが、この作品は「とある師弟」が主役です。

師はオセ君に限りませんし、弟子も筆頭だけではありません。

オリキャラ化したのが全部主役だと
思って貰えれば「主人公はどーした?!」
と言うツッコミも我慢してもらえるかなぁ




ーーーー

ようやく会合終了だッ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

いや、ゼファードルにレーティングゲームって。

 

自殺行為でしょ?実力差がわかってないの?

魔王様達が頭を抱えてるわよ?

 

しかも老害共も「良く言った!」みたいな

顔して頷いてるし。

 

コレはアレね。運営としてもオイシイし、

リアスや一部の老害は、魔王様方が本心では

ゼファードルに対して怒ってると勘違いしてるのね。

 

魔王様はこの場の空気のせいで怒れないから、

代わりに自分が怒って機嫌を取ろうとしてるわけか。

 

まぁリアスは兄魂(ブラコン)が炸裂しただけでしょうね。

あぁいや、性犯罪者の件もあったか。

 

て言うか魔王を目指してるサイラオーグ=サン。

貴方、反対意見は全部殴り飛ばす気なのかしら?

 

別にゼファードルがナニを考えていようと

ソレが冥界に役立つことならソレで良い

でしょうし、邪魔をしないって言ってるん

だからそのまま放っておけば、私と彼は

別枠で試合を組まされてたと思うわよ?

 

だって今の貴方じゃどう考えても一方的に

負けるもの。

 

「ゼ、ゼファードル君。彼らはこう言ってるが

君の意見はどうかな?」

 

サーゼクス様がやや慌てたような感じで

ゼファードルに問いかける。

 

ちなみに魔王様方の目はゼファードルや

サイラオーグではなく、サーゼクス様に

向けられてるわね。

 

本来なら「お前たちの意見は聞いてない」

って言ってバッサリ切り捨てるべきところ

を「どうしたい?」なんて確認しちゃった

からねぇ。

 

ここでサーゼクス様がゲームを認めない!と

言うにはそれなりの理由が必要になるわ。

 

運営の老害もサイラオーグもリアスも納得

する理由かぁ・・・私には思い浮かばないわ。

 

「無論売られた喧嘩は買います。ですが現時点で

コイツらには俺に挑むだけの力が有りませんね。

さっきも言いましたが、弱い者イジメして自分が

調子に乗るのはゴメンですよ」

 

おぉう。ゼファードルも攻めるわねぇ。まぁ

逃げる必要はないだろうし、この場で私たち

全員相手にしても勝てる実力があるからね。

 

とは言え、散々眼中に無いと言われてるリアスや

性犯罪者の仇を討とうとしてる姫島朱乃あたりは

もう限界かしらね?

 

他人事と割り切って見る分には面白い

見世物なんだけど・・・一応障壁

張っておいた方が良さそうね。

 

私が障壁を展開したのを見て、隣の

シーグヴァイラやディオドラも自分と

眷属を守るように障壁を展開する。

 

私たちが障壁を張ったことで、場が更なる緊張に

包まれる中、ゼファードルの言葉は続く。

 

「そもそもの話ですが、今の段階で俺がコイツら

とレーティングゲームをしても何も得るものが

ありません。ついでにコイツらも、気分で他人を

殴り倒すなんて言う評価を得たいわけでも無い

でしょう?」

 

そう言って肩をすくめて苦笑いする姿は、

この場を笑い話で収めようとしているとも

取れるけど・・・

 

うーん。正しく正論よ。

 

サイラオーグとしては魔王を目指すのに

短気で短慮で脳筋だって評価はマズイし、

リアスに至っては戦えばメッキが剥げて

英雄としての評価を落とすことになる。

 

そんなの誰も望んでないわよねぇ。

 

「ゼファードル。貴様は随分と口が回る

ようだが、目の前で夢を穢されて笑って

いられるほど俺は大人ではないぞッ!」

 

そう言ってゼファードルを睨み付けるサイラオーグは怒気を隠そうともしていない。

 

笑い話で済ませようとするゼファードルの

配慮には気付かなかったか。

 

確かに配慮と言うにはちょっとアレだけど、

彼は彼で、喧嘩を売られてスゴスゴと逃げたら

向こうで地獄()を見るからねぇ。

 

それにしてもサイラオーグは煽り耐性低すぎ。

これが王になったらどんな世界になるのかしら?

 

いや、コレは支持者に対するポーズと言う

可能性もあるわね。

 

それにこの感じ。おそらく7~8割くらいの

出力かしら?これだけなら匙一人で勝てるし、

私も椿姫と二人で当たれば無傷で勝てるわね。

 

フフフ、その調子で情報を出して頂戴。

若手ナンバーワンサマ?

 

「知るかよ。少なくとも夢ってのは現実を

見てから見るもんだ。

無能の脳筋が魔王サマに憧れるのはわかるが、

お前の価値観をこっちに押し付けるな。

それにお前じゃまだまだ実力が足りねぇよ」

 

私はこの場を彼らの情報を得る場にしようと

考えをシフトしたけど、ゼファードルは最初

からその必要すら無いと判断してるわね。

 

シッシと手を振って追い払おうとしてる

ゼファードル。

 

言い方はアレだけど言ってることは

間違ってないわ。

 

サイラオーグの夢なんか彼には関係ないし、

ガキの癇癪に付き合ってられるかってのを

隠しもしていない。

 

他人に己の価値観を押し付けるには、正しい

知識や理屈で相手の蒙を啓くか、絶対的な力に

よる強制が必要だけど・・・今のサイラオーグは

未熟者の暴走だもの。

 

今までサイラオーグが相手してきた雑魚なら

ともかく、色んな意味でホンモノの怖さを

知ってるゼファードルに対して、その価値観を

押し付けるには完全に力不足。

 

どうでも良いと言わんばかりにあしらわれ

怒りに震えるサイラオーグに対して、

涼しいカオで正論を述べるゼファードル。

 

・・・どう見ても凶児はサイラオーグよねぇ。

 

「ゼファードルッ!貴方には私の眷属も

お世話になったし、是非ともその借りを

お返ししたいんだけど?」

 

性犯罪者を傷付けられた上にお兄様まで

馬鹿にされたと感じてるリアスは、殺気を

隠そうともしていない。

 

まぁ、無理だけどね。ゼファードルは嫌そうに

リアスを見ているけど、アレは別に滅びの

魔力を警戒してるわけじゃなくて、面倒くさい

子供の癇癪程度にしか思ってないわ。

 

「あースマン。お前とは関わり合いたく

無いから、さっさと別に行ってくれ。

ほら、向こうにいるシトリーとかアガレス

とかと遊んでたらどうだ?」

 

うわっ!完全に相手にしてない!

 

無能(雑魚)無能(サーゼクス様の妹)無能(英雄様)だもんねぇ。

そりゃ関わりたくないわ・・・って

言うかコッチを巻き込まないでよっ!

 

「そうよソーナ!貴女もセラフォルー様を

馬鹿にされたのよ?!」

 

私を見て「だから力を貸せ!」と言わんばかりに

声を荒げるリアスを見て、正直ドン引きする。

 

いや、なに言ってんのこいつ?

 

どっちかといえば退屈だったところに

笑いを提供してもらったって感じよねぇ。

 

ちらりとお姉様を見ると、苦笑いして

ナイナイと眼前で手を振っている。

 

うん。やっぱりそうよねぇ。

 

て言うか本気で私を巻き込むのやめて

欲しいんですけど。

 

私と同じような感想を持ったのだろう。

 

ちらりと横を見ると、隣で障壁を張っている

シーグヴァイラも嫌そうな顔をしながら首を

横に振っている。

 

「「はぁ」」

 

私たちは二人同時に溜息を吐くが、事態は

一向に改善されない。

 

と言うか魔王様。さっさとこの茶番止めて

くれませんかねぇ。

 

「つーか二人共、その温い殺気っぽいのは

さっさと収めるべきだな。

ココがどういう場かわかってるのか?」

 

心底面倒臭そうに忠告するゼファードル。

コレは挑発ではなく本心からの忠告だった

のだろう、だけど頭に血が昇ったリアス達に

そんなのがわかるはずもない。

 

「「なめるなっ!!!」」

 

我慢の限界を超えたのか、サイラオーグが

間合いを詰めようと踏み込み、リアスが滅びの

魔力をゼファードルに向かって放った!

 

ボンッッッ

 

・・・が、その魔力はゼファードルに

当たる前に消滅した。

 

「えっ?!」

 

本気で驚くリアスだが、何に驚いているのやら。

 

ギシッ!

 

「なっ!」

 

間合いを詰めようとしたハズのサイラオーグは、

踏み込んだ足がそのまま地面に縫い付けられたか

のような感触を受けて、その動きを止められた。

 

驚愕の表情を浮かべる二人だが、コレを

やったのはゼファードルじゃないわよ?

 

魔王様や老害貴族が見てる前でそんな

行為が認められるわけがないでしょうに。

 

「それまでだ。控えろサイラオーグ・バアル。

そしてリアス・グレモリー。

確かにサーゼクスは貴様らに要望を聞いたが、

それ以上の発言を許した覚えはない。

貴様らは誰の許しを得て発言し、戦闘行為に

及ぼうとしたのだ?」

 

冷たい声で両者に声をかけるアジュカ様。

 

ま、言ってることは確かよね。ゼファードルの

場合は挑発(本心だとおもうけど)を交えて

サーゼクス様の質問に答えただけ。

 

後は忠告と、お前にゃ関係ないって言う事実を

指摘しただけだし。

 

けど、意外だわ。てっきりリアスの魔力は、兄の

サーゼクス様が消滅させるかと思ったんだけど、

この様子だとアジュカ様の覇軍の方程式によって

消されたみたいね。

 

サイラオーグの踏み込みに関しても同じ

だけの力で相殺したのかしら?

 

アジュカ様の技術に驚嘆すると共に、二人の

行動に対して何のリアクションも取らなかった

ゼファードルに違和感を感じる。

 

「しかしアジュカ様っ!」

 

なおも言い募ろうとするリアスに対し

今度はお姉様が言葉をかける。

 

「リアスちゃん?勝手に私を馬鹿にされた

ことにしてソーナちゃんを巻き込まないで

くれないかなぁ?」

 

うん。私も全面的に同意します。

 

・・・笑顔だけど、アレは相当怒ってるわね。

 

まぁ最初に私を巻き込んだのはゼファードル

だけど、今回は彼も被害者だしねぇ。

 

「あ、えっと・・・申し訳ございません」

 

お姉様が本気で自分を怒っていると理解

したのだろう。

 

なんで?と言う思いを隠そうともせずに、

とりあえずの謝罪をして引っ込むリアス。

 

ま、コレでリアスは良いわね。

残るはサイラオーグなんだけど・・・

 

アレよね?なんで彼は生きてるのかしら?

 

あの方々に仕込まれたゼファードルが、子供の

癇癪と見てるとは言え、喧嘩を売られて黙って

済ませるハズが無いと思うんだけど・・・

 

「ゼファー、槍を収めてくれないかな~」

 

疑問に思っているとファルビウム様が

ゼファードルにそう声をかけた。

 

槍?

 

シーグヴァイラや椿姫の顔を見ても

?マークが浮かんでるけど・・・

 

彼は槍なんか持ってないわよね?

相変わらず?マークが頭に浮かぶ私達。

 

そんな私たちを見ずに、サイラオーグを

横目で見るゼファードルだったが

 

「了解です」

 

そう言ってナニカを懐にしまう。

 

「・・・なるほど」

 

今のはあえて槍を見せるように動いたのでしょうね。

 

私も椿姫も、その動きを見て理解する。

彼は間違いなく見えない槍を持っていたわ。

 

ソレが短槍なのか、長さが調節できるのかは

知らないけど、懐に入るくらいの槍。

 

仕込み槍とでも言うのかしら。それを持って

いて、サイラオーグが間合いに踏み込んで

きたら突き殺す気だったと。

 

リアスに対してはその後で投槍の

ようにして使う気だったのかしら?

 

どちらにせよ二人は魔王様のおかげで

命を拾ったと言うことね。

 

それを理解してるのは魔王様方と私達。

それにサイラオーグとその眷属が何人か。

 

ディオドラもシーグヴァイラも気付いてない。

 

リアスに至っては未だになんで邪魔したんだ!

って顔でアジュカ様を見てるから、アレは

本当に何も理解出来てないわね。

 

同期の戦力調査が出来たから良かった

と思えば良いのか、それともこれからも

こんな連中と同期として付き合って

行かなきゃダメだと考えるべきか・・・

 

はぁ。溜め息が止まらないわ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

「はぁ・・・」

 

あの現実を知らんガキ共に対してもだが、

今は「さっさと止めろ」と言う俺たちの視線

に対し、「・・・頼む」と言って俺に処理を

依頼してきたサーゼクスに思わず溜息が出る。

 

妹に嫌われたくないのと、従兄弟の自尊心を

砕く事を嫌ったんだろうが、お前が甘やかす

からあぁなったんだと言うことをしっかり

自覚して欲しいモノだ。

 

・・・それにしてもアノガキ共もなぁ。

 

いくら甘やかされたからと言ってもアレは度が

過ぎてるだろう。

 

もう少し常識というものを持てんのか。

 

「ゼファー、槍を収めてくれないかな~」

 

ファルビウムの声を聞き「了解です」とだけ

言って文字通り矛を収めたゼファードル。

 

うむ。完全に大人の対応だ。

 

今回アイツは正当防衛だし、槍もしっかり

隠す配慮も見せているから、特に咎める

必要はないだろう。

 

そもそも罰ゲーム云々で俺たちは誰一人

怒ってないしな。

 

それに、そんなことを言ったら魔力を持たない

サイラオーグが『魔王になる』と言った事も

不遜として罰する必要も出てくるだろう。

 

自分は挑発まがいの事をしても良いが他人は

ダメと言うのは、王としての資質に問題あり

と見做されるぞ。

 

その上すぐに暴力に訴えようとしたのも

マイナスだ。

 

旧魔王派ならそれでも良いのだろうがな。

 

アイツらも今の我々を見て温いと感じてると

言うことだろうか?

 

どちらにせよこの場を荒らした二人には

何かしらの罰が必要だろう。

 

・・・望み通り戦わせるか?

 

今のを見ればゼファードルは手加減する

余裕もあるようだし、本気で殺されかければ

実戦を知らんサイラオーグも舐めた口を

叩くことは無くなるだろう。

 

元々の予定でもあったし、何よりコイツらが

自分で望んだことだ。

 

叶えてやろうと言えば文句はないだろうな。

 

老害共もゲームをさせることに文句を

言うことはないだろう。

 

問題はゼファードルやディオドラ、ソーナ、

シーグヴァイラ・アガレスに全く得が無い

と言うことだ。

 

特にゼファードルは眷属の数が少ないし、

ルールによっては一方的に負けてしまう。

 

自分に有利な状況に持っていくのは軍略

の基本だからな。

おそらくサイラオーグはソコをついてくる

ことになると思うが、さて、どうする。

 

今後の展開を考えながらもサーゼクスに対し、

とりあえず場は収めたからあとはお前がヤレと

言う視線を向ければ、ヤツは決意を決めたよう

な顔をして軽く頷いた。

 

いや、妹が絡んだ時のお前のキメ顔はロクな

ことがないから正直見たくなかったんだが・・・

 

「今アジュカが言ったように、ココでの

戦闘行動を認める訳にはいかない。

そもそもココは君たち若手を見定める場

でもあると言うことは最初に伝えたハズだ」

 

おぉ。当たり前のことを当たり前に妹に

告げるサーゼクスに驚きを隠せない。

 

サーゼクスにまで説教をされるとは

思ってなかったのだろう。無能は頭を

下げてフルフル震えている。

 

サイラオーグは・・・さっきのゼファードル

の槍について考えているのか、硬い表情を

崩さない。

 

実際あと2歩踏み込んだらゼファードルの槍を

認識する前に頭を貫かれて死んでたからな。

 

光の槍を使うコカビエルと槍で渡り合った

ゼファードルの槍術は、コイツらが想像する

よりずっと洗練されていて、更に強力だ。

 

槍が見えず、そこまでの間合いが掴めてなく

とも、あのままだったら自分が死んでいた

と言うことを理解出来ればソレだけで十分な

収穫だろうよ。

 

怒りやら何やらで完全に動きを止めた二人

とは対照的に、何事もなかったかのように

サーゼクスの言葉を聞くゼファードルを見て、

俺は今の段階でもファルビウムの補佐くらい

は出来るとその評価を更に上方修正する。

 

「とはいえ、若者が血気に逸るのは当然のことでもある」

 

「「「?!」」」

 

おいィ?!

 

咎めるどころか、その行動を認めた妹魂(シスコン)

驚きの目で見るファルビウムにセラフォルー。

 

俺も同じ目をしているだろう。

 

サーゼクスは蟀谷に冷や汗を垂らしながら、

こちらを決して見ないようにして言葉を続ける。

 

「ちょうどいい。ゲームをしようじゃないか」

 

直前までゲームを渋ってたコイツがソレを

認めるだと?リアスが恥をかくぞ?

 

コイツの狙いが読めない俺はどうにかして

言葉の意味を探ろうとするが、サーゼクスは

俺には何も言わせ無い!と言わんばかりに、

周囲を無視して話を進めていく。

 

「無論、若手同士のゲームだ。実は近日中に

アザゼル(堕天使の総督)や各勢力のレーティングゲームの

ファンを集めてデビュー前の若手のゲームを

観戦させるという名目があってね」

 

お前はさっきまでソレに反対してただろうがっ!

 

俺たちの視線による心からのツッコミを軽やかに

受け流すサーゼクス。

 

「まずはサイラオーグとゼファードルで一戦。

執り行ってみようではないか」

 

あぁん?ソレでゼファードルの強さを知れば

無能も我慢すると踏んだのか?

 

もしくは時間を稼いで無能に何らかの補強を

行い、無能でも勝てるルールの試合を見つけて

から挑ませるつもりか?

 

それならリアスが恥をかくことはないだろうが・・・

 

考え込む俺を余所に、予想もしなかった

ところから予想外の提案が飛び出す。

 

「あ、それならリアスちゃんとソーナちゃん

も一戦してみたらどうかな?」

 

サーゼクスの言葉に便乗する形で無能に

死刑宣告をするセラフォルー。

 

どうやらさっきのアレはコッチの妹魂(シスコン)

とって許せることではなかったらしいな。

 

まぁ下手にさっきのに巻き込まれて戦闘に

参加してたら、ココでソーナまでもが無様を

晒していた可能性もあるのだ。

 

そりゃ我慢できんだろうよ。

 

「だったらさ~ディオドラ・アスタロトと

シーグヴァイラ・アガレスも一戦しよっか?」

 

セラフォルーの笑顔とともに齎された

提案(死刑宣告)に顔を蒼白にするサーゼクスを

尻目に、ファルビウムもその後押しをする。

 

・・・ここまで来たら俺も乗るべきだな。

 

「どうせなら総当りで良いだろう。実際の

若手ナンバーワンを決めるのも面白い」

 

1対1なら間違いなくゼファードルだが、

眷属を加えた戦闘ならソーナも中々の

戦いを見せるだろうし、無能と違い

下手に手を加えなくともルールによっては

勝つことも不可能ではないだろうからな。

 

完全に外堀を埋められて口をパクパク

させるサーゼクスを尻目に、運営の老害

を交えて細かい日程を決めていく。

 

元々予定していたことだから、コレに

関しては問題あるまい。

 

「第一戦は約20日後の8月20日。

第二戦はその翌日で8月21日。

第三戦はさらに翌日の8月22日。

前日の8月19日に他の勢力の来賓に

対するお披露目を兼ねたパーティを

行うので、眷属を交えて参加するように」

 

同じ日でも良いが、ずらした方が来賓と

しても観戦が楽だろうし外交は一日で終わる

モノではない。

 

何日か滞在する名目が有った方がよかろう。

 

セラフォルーに目配せすると、ソレで問題ない

と言うように頷いた。

 

これでよし。いい加減無能には目を覚まして

もらわないと、コッチの胃がもたん。

 

サーゼクスを放置し、ひと仕事を終えて満足して

居ると、セラフォルーが何かを思い出したかの

ように「あっ!」と声を上げる。

 

なんだ?ナニカあったか?

 

ファルビウムにも思い当たることが無い

のか、首を傾げてセラフォルーを見る。

 

「じゃ、最後はソーナちゃんだね☆」

 

「えぇ?!」

 

「「「「「「・・・」」」」」」

 

おいおい、この空気で?

 

この妹魂(シスコン)は妹にタヒねと申すか?

 

セラフォルーの言葉を聞き本気で驚く

ソーナを見て、さっきまでソーナを

笑い者にしようとしていた老害達までもが

彼女に哀れみの目を向けた。

 

そんな視線が集中する中でも彼女は

健気に前に出て・・・

 

「・・・シトリー家の次期当主として

ガンバリタイトオモイマス」

 

そう言った。言うことが出来たソーナに、俺は拍手を送りたくなった。

 

・・・うん。ガンバレ

 

老害貴族も魔王派もそして魔王(俺たち)も。

この場にいる全ての悪魔が同じ感想を抱いた

だろうということは想像に難くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の生暖かい視線と、よく出来ました!と

満面の笑みで拍手するセラフォルー。

 

 

 

このとき、ソーナ・シトリーの目は確かに死んでいた。




色々大荒れの会合。
最終的にコレに持っていく為に
一体原稿用紙何枚分使ったことやら・・・

修行パート?ハハッ。

道化にすらなれなかった悲しい眼鏡会長。
きっと見せ場はあるさ!ってお話


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58話

目が覚めた性犯罪者は自分が寝ていた
ときの出来事を聞いて何を思うのか・・・

アザゼルの胃と毛根は大丈夫なのか?!
若手の運命を決めるゲームまで、あと20日。

頑張れアザゼル!頑張れソーナ!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしっ!



ーー兵藤一誠視点ーー

 

「そうか、シトリー家とのレーティングゲームか」

 

部長からの報告を聞き、顎に手を当てて

何やら考え込むアザゼル。

 

なんか目が覚めたら会合が終わってて、

会場から帰る際に怒りを爆発させた部長や

「仇を取れなくてゴメンなさい」と謝罪

してくる朱乃さんに事情を聞いたら・・・なんとまぁ。

 

俺はあの大広間で麻雀をしてたゼファードル

とか言うヤツに挑みかかって、ナニをされたか

わからないまま気絶したそうだ。

 

部長だけじゃなく朱乃さんも、ギャスパーも

ルー・ガルーさんも俺がナニをされたか全然

わからなかったらしい。

 

でもって俺が居ない会合で、そのゼファードル

とか言うのが部長やサイラオーグさん。ソレに

サーゼクス様を始めとした魔王の方々を侮辱

したらしい!

 

マジかよ?!俺なんて多分サーゼクス様の

前に立っただけで膝が震えるぞ?!

 

それなのに侮辱?!魔王を罰ゲームって?!

 

「シトリー家の嬢ちゃんがどれほどの

モノかは知らねぇんだが、ルー・ガルー。

お前はどう思った?」

 

部長や朱乃さんには聞かずルー・ガルーさんに

確認を取るアザゼルにムッとするが、生徒会

のメンバーを見てない俺には何も言えない以上

ソコは我慢するさ!

 

アザゼルに話題を振られたルー・ガルーさんは

目を瞑り、考え込んでいる。

 

まぁどう思った?なんて言われてもなぁ。

戦ったわけでもないし、細かいことなんか

わかんないよなぁ。

 

なんでそんな質問をしたんだ?

 

「・・・強いですね」

 

そんな無意味な質問をしたアザゼルに軽く

失望していたんだけど、ルー・ガルーさんは

俺が予想もしなかった答えを出してきた!

 

わかるの?!それに強いの?!

 

「ほう・・・映像も何もないのが痛いな」

 

ルー・ガルーさんの雰囲気もあるだろうけど

ぼそっと言われると真実味が増すよな!

 

アザゼルがソレで判断したかどうかは

わからないけど、どうやら簡単な敵じゃ

ないってことだな!

 

ま、いくら強くてもコッチは鳥野郎とか

コカビエルとかとの実戦を経験してるんだ。

初陣の会長達には負けられないぜ!

 

「ま、シトリー家のお嬢さんが俺の見立て

通りなら、負けることはねぇだろうよ」

 

へぇ。なんだかんだ言ってアザゼルも部長が

負けるはずないって思ってんのか!

 

「問題は第一戦。サイラオーグ・バアルと

ゼファードル・グラシャラボラスのゲームだ」

 

そう言って頭を押さえるアザゼルに俺たち

全員が???状態になる。

 

他のヒトの試合が問題ってなんだ?

 

「総督殿。問題とはなんでしょうか?」

 

そんな俺たちを代表して部長が確認を取る。

 

その部長に対して「簡単なことだ」と言って

言葉を紡ぐアザゼル。

 

「レベルが違うからな。お前らの心が折れる

可能性を考えればゲームを見た方が良いのか

見ない方が良いのかわからねぇってことだ」

 

「はぁ?!」

 

俺が考えなしにナニカ言えば部長や朱乃さんに

迷惑がかかるから黙ってたけど、アザゼルの

言葉に思わず声が出てしまう。

 

だけど仕方ないだろ?レベルが違う?なんだそれ?!

 

若手の筆頭は部長だろ?!

 

「・・・イッセーが驚くのも無理はないわね」

 

驚く俺に宥めるかのような視線を送り、そう呟く部長。

 

この様子だと部長も心当たりがあるってことか?

 

「現在の私の評価は実戦を経験したことと、

悪魔勢力に必要だからと言うことで上積み

された評価よ。そして、その評価が出る前

は彼が若手のナンバーワンと言われていたの」

 

若手ナンバーワン・・・あそこに居た

ヒトだけじゃなく、全部ひっくるめての

ナンバーワンってことか。

 

で、でもよ!

 

「た、確かに今の部長の評価は上から

与えられた評価ですけど、それだって

実際に戦場を経験したって土台が有った

からこそだし・・・」

 

レベルが違うってことは無いだろ?!

 

「悪魔にとっての若手の範囲がわからんが

少なくともアイツに勝てるのがわんさか

居るって言うなら、今頃サーゼクスたちは

若手の層の厚さに祝杯を挙げてるだろうよ」

 

部長の言葉を否定しないアザゼルにイラつき

を覚えるが、それ以上に気になることがある。

 

「アザゼル・・・先生は、そいつの実力を

知ってるように聞こえますけど、そんなに

有名なヤツなんですか?」

 

デビュー前の若手が堕天使の総督に名前を

知られてるって言うのは、相当だよな?

 

ナニカ有名なのか?例えば部長が俺を眷属

にしたみたいな感じで、凄い眷属が居るとか。

 

「知ってるも何も・・・あぁそうかお前ら

は知らんか」

 

そりゃそうだ!堕天使の要チェックリスト

なんか見たことねぇし!

 

「堕天使にまでその名が届いてるなんて、流石ね・・・」

 

なんか勝手に納得したアザゼルと、その相手を

思い出してるのか頷いている部長。

 

「そういうこった。お前たちは今後ヤツと

ずっと比較されることになるんだ。

今回も戦わねぇなら問題なかったが、

総当りとなればいずれは戦うことになる」

 

まぁそうだよな。同期でそんな奴が

居れば、ずっと比べられるだろうし、

総当りなら戦うこともあるよな?

 

だけど、どんだけヤバイのかは知らない

けど、そいつのことを知らないってのは

もっとヤバいんじゃないのか?

 

「なら尚更相手の情報はしっかりと確認

するべきではありませんか?」

 

俺と同じ気持ちなんだろう。力強い

眼差しでアザゼルを見据える部長。

 

そうだ!どんなヤツだって部長の心が

折れるなんてことが有るはずないんだ!

 

「だからこそだな。戦闘を観るのは今じゃなく

ヤツとのゲームの前か、出来るだけお前等を

鍛えた後で、少しでも勝機を得てからの方が

良いと思ってるんだよ」

 

苦い顔で部長に言い含めるアザゼル。

 

「その言い方だと、総督殿は私たちに

一切勝ち目がないと仰っているように

聞こえますけど・・・?」

 

こ、言葉は丁寧だけど、今の部長は明らかに怒ってらっしゃる!

 

いくら相手が若手ナンバーワンと言われてても

ここまで言われたら誇り高い部長に我慢なんか

できるはずないよな!

 

「実際今のお前らに勝機なんか微塵もねぇよ。

むしろ正気が飛ぶだけだ」

 

誰が上手いこと言えと言ったんだよ?!

 

部長の怒りを鎮めろよ!もう、色々

溢れ出てきてるじゃねぇか!

 

「・・・まぁ彼が強いのは知ってますし

私が未熟なのもわかってます」

 

えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!部長が矛を

収めた?!ナンデ?!

 

「ふむ。ソレがわかってりゃ十分だ。

今はどうあがいても勝てん。だからこそ

戦う時は勉強するつもりで挑むといい。

・・・負けても死ぬわけじゃねーんだしな」

 

た、確かにそうだけど・・・。

 

なんて言うか、相手が強いからって言って

ヤる前から逃げる部長はなんかヤダな。

 

「・・・少なくともソーナとのゲームまで

20日あります。それまでにキチンと鍛えて

総督殿が私たちに第一戦を見せても良いと

判断するような成長をしてみせます!」

 

そう言い切った部長を見て、俺はまだ

この人を正しく理解してなかったと反省する!

 

そうだよ!部長が諦めるはずないんだ!

今がダメでも明日、明日がダメなら明後日!

そうやって成長していけば絶対に届くって

信じてるんだよな!

 

なら俺だって諦めちゃダメだ!

部長の眷属として、どんな訓練でも

乗り切ってみせるぜ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

サーゼクスからの情報と無能からの報告で

確信したが、まさかYOSHITUGUが本当に

若手扱いされてる悪魔とは思わなかった。

 

サーゼクスの冗談かと思ったんだがな。

 

でもって無能が言うには若手ナンバーワンと呼ばれてたって?

 

まぁあれだけの実力者だ。アレとマトモに

競えるヤツなんかいるはずねぇよな。

 

「言っとくが20日程度でどうにかなるような差じゃねぇぞ」

 

熱くなってるガキ共には悪いが、まずは

現実をしっかり見せねえとな。

 

「わかってます!ですが前に進むことを諦める

気はありません!」

 

言ってることはマトモなんだよなぁ。

 

コイツのやることなすことがぶっ飛んでるのは

夢と現実を正しく理解出来てないからだって

思ってるんだが・・・

 

後ろに居る眷属どもも力強く頷いてるが、

人狼だけは微妙な表情をしている。

 

ナニカあるのか?

 

「なぁルー・ガルー。言いたいことが

あるなら今のうちに言っておけ。

これからお前らは個別に鍛えることに

なるから、しばらく会えなくなるしな」

 

俺がそう言うと無能と元聖女と姫島朱乃と

赤龍帝の顔が驚きに染まる。

 

いや、お前らみてぇに毎日毎晩馬鹿やってて

強くなれるわけねぇだろうが。

 

「ど、どういうことですか?!」

 

代表して無能が問いかけてくるが、

すでにメッキが剥がれかけているぞ。

 

これが悪魔の『英雄』か・・・

 

そう思うと悲しくなるが、今は赤龍帝の成長を

促さないとヤツに一矢報いるどころじゃねぇ。

 

甘ったれたガキに現実を教えるために口を開く。

 

「これからお前らが『英雄』として生きて

いく世界は遊びじゃねぇんだぞ?

今みてぇな温い環境のままなら強くなる

どころか生き残ることもできねぇよ」

 

俺の言葉に顔を強ばらせる無能。

 

俺が護衛したってなぁ、相手も俺と戦える

ような実力者だし、護衛対象が馬鹿で

勝手に死にに行けば守れねぇ。

 

それに最低限の自衛ができなきゃ守れねぇんだよ。

 

「いいか赤龍帝。才能がねぇヤツは命懸けで

鍛えるしかねぇんだ。

朝起きて女に甘やかされて、学校行って女と

遊んで、部活で甘やかされて、夜は家で

寝るだぁ?何やってんだてめぇ?」

 

コイツの行動を見てると殺意が沸くんだよ。

 

最強の兵士だの部長を守るだの偉そうな

ことを抜かしておきながら、なんだこの有様は?

 

一日の修行時間が2時間もねぇって

温すぎるだろうがよ。

 

はっきりと自分の生活が温いと名指しされた

赤龍帝は、口をモゴモゴさせて何か反論を

しようとしているみたいだが、今はガキの

妄言に付き合ってる暇はねぇ。

 

訓練に当てる時間は1分1秒が惜しい。

 

餌だってポンポン出来るわけじゃねぇし。

相手の規模や戦力を考えれば、最低限

俺やミカエルに襲われても時間稼ぎ出来る

程度の強さが必要なんだ。

 

ソレを考えればYOSHITUGUが最良なんだが、

アレはアレで別の使い方をするようだな。

 

まぁ姿を消せるならソッチ方面で使うべきと

言うのは確かだがよ。

 

『命懸け』。仮にも戦場に出た連中がこの

言葉の意味を理解できんとは思えんが・・・

 

「はぁ・・・」

 

驚愕に固まるガキ共を見て溜息を吐く。

 

コイツら、純粋にゲームのことしか

考えてねぇよ。

 

無能が「前に進むのを諦めない!」と言っても

所詮はこの程度。

視野が狭いから進む距離も短いってわけだ。

 

「待たせて悪かったなルー・ガルー。結局お前はナニを言いたかったんだ?」

 

しばらく会えないって事に絶望して、

悲劇のヒロインごっこをしている無能眷属

共を放置して、唯一の常識人に話を振る。

 

「いえ、どうもリアス嬢と総督殿の認識に

齟齬があるような気がしまして・・・」

 

微妙な顔で話し出すが

 

「認識に齟齬だと?」

 

むしろこいつと同じのが有ったらやばいんじゃないのか?

 

冗談じゃねぇぞと思いながら人狼の言葉を待つと、

コイツは確かに俺が認識していなかった事実を

教えてくれた。

 

「えぇ、私が知る限り、若手ナンバーワンと

呼ばれていたのはサイラオーグ・バアルです」

 

あぁん?

 

「誰だそれ?」

 

そんなハンバーグみてぇなヤツなんか知らねぇぞ?

 

「だ、誰って!総督殿が言ってた、私とは格が

違う悪魔で、若手ナンバーワンと言われている

バアル家の次期当主、サイラオーグ・バアルです!

彼のことを知っていたのでは無いのですか?!」

 

赤龍帝と乳繰り合ってた無能がいきなりそう

言って俺に驚愕の表情を向ける。

 

バアル家ってことはアレか?コイツの血族か?

だから自分より上とあっさり認めたのかよ。

 

くだらねぇ。少しは自分を見ることが出来た

と思って安心した俺が馬鹿だった。

 

「知らねぇよ。なんで態々悪魔の一貴族の

次期当主なんか調べなきゃなんねーんだ」

 

初代のゼクラムの傀儡だろ?興味ねーよ。

 

「な、なら総督が言っていた格が違う

悪魔と言うのはまさかっ?!」

 

あぁ、そういう事か。そりゃ人狼も俺と

コイツの認識に齟齬があるって忠告してくるわ。

 

「当然ゼファードル・グラシャラボラスに決まってるだろうが」

 

サイラオーグとやらがどれだけ強くても

所詮実戦を知らねぇ若手。

 

どう考えてもアイツには手も足も出ねぇよ。

 

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」

 

俺の言葉に再度驚愕する無能眷属たち。

 

つーかコイツらがアイツに喧嘩を売って

なんで無事に帰ってこれたのか不思議に

思ってたが・・・そうか、向こうが場の空気を

読んで手加減したのか。

 

そりゃ『英雄様』を殺したりタコ殴りには

出来ねぇよなぁ

 

はぁ・・・溜息が止まらねぇ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーシロネコ視点ーー

 

 

 

「はぁ・・・平和ですねぇ」

 

「だねぇ」

 

トラブルメーカーがいないだけで地上は

こんなにも快適に過ごせる場所になるんですねぇ。

 

溜息は諦めじゃなくても出るって

初めて知りましたよ。

 

クーラーがガンガンに効いた部屋で食べる

アイスは至高のメニューに加えても良い

かもしれませんね!

 

通常の管理業務はグレモリーとシトリーの

家の連中がやりますし、連中が対処できない

ようなヤツは私が殺るから、最近は簪姉様も

趣味の映画を鑑賞してまったりとしてます。

 

てっきりこの夏は私たちも冥界に戻って

お仕事かと思ったんですけど、奥様が

気を利かせてくれたんですよねぇ。

 

向こうに行けば強制的に連中に絡まれるし、

ご主人様のお仕事をお手伝いしようにも

コッチで問題がなければ、特に忙しいって

こともないみたいで、奥様も仕事が早く

終わると言ってましたからね。

 

他のヒトの仕事を奪うわけにも行かない

ですし、ご主人様とまったりする日は

キチンと有ります。

 

それにずっと一緒にいたら他のヒトの邪魔になっちゃいますからね。

 

そのへんは我慢が必要ですよね。

 

「あぁ、そうだ。なんか冥界の黒歌さん

から白音ちゃんに連絡来てなかった?」

 

そう言ってぐだーっとしていた簪姉様が

メガネをかけ直しながら聞いてきました。

 

ん~気を抜いてても綺麗さと可愛さがある

って言うのが羨ましいですよねぇ。

 

私なんかグデーっとしてたらタダの子供扱いで、

お腹に毛布かけられますよ。

 

かと言って大人の体になっても奥様や

黒歌姉さまの魅力には勝てないし。

 

特に奥様がなぁ。あのヒトは普段から

大人って感じだから、私が体だけ大人に

なっても、どうしても大人ぶったシロネコ

でしかないんですよねぇ。

 

むぅ・・・たま~にギャップ萌え的なのを

狙ってヤル分には良いかもしれませんけど、

基本的にシロネコはロリ枠です!

 

他のヒトのジャンルに干渉しちゃダメですよね!

 

・・・でもって黒歌姉さまはなぁ。

 

「黒歌姉さまの用事は、私宛って言う

よりは簪姉様宛なんですよ」

 

「ほぇ?私?」

 

そう、簪姉様なんです。

 

お休みのところにお仕事の話を持ち込む

のはアレかな~と思って遠慮してましたけど、

どーせいつかは報告しなきゃいけないことです

からね、コレも良い機会だと思いましょうか。

 

「なんでもアガレスのところのお嬢さんが

簪姉様にお願いがあるとかで、貧乳眼鏡に

手紙を預けたらしいんです」

 

態々私や簪姉様の名前を大音量で叫んで。

 

処す?処す?って言われたけど、私を

なんだと思ってるんですかね?

 

流石にコレで貧乳眼鏡を処すのは違う気がしますよ。

 

「はぁ・・・私にねぇ。どーせダンガムの

筐体でしょ?其の辺のゲーセンのを買って

帰れば良いだけだと思うんだけどねぇ」

 

ですよねー。

 

「ちなみにご主人様はああいった技術の

輸出に関してナニカ言ってるんですか?」

 

私はあくまで簪姉様の付き人みたいな感じだし、

政治的な事に関わることが少ないですからね。

 

こういう時に聞いておきましょう!

 

「ん~。基本的には私が任されてるね。

輸出も輸入も、秋葉原の研究も好きに

して良いって状況かな」

 

輸出入と秋葉原がどう関係するかはアレ

ですけど、それじゃあ結局は簪姉様の

胸三寸ですか。

 

「だけど私としても勝手な判断をした結果、

ご当主様にご迷惑をかけるようなことには

したくないからねぇ。必ず政治が絡むから、

奥様とお話して決めることにしてるよ」

 

なるほどなー。奥様を立てると言うよりは

普通に相談してるんでしょうね。

 

「それじゃ今回の件はどうなるんでしょう?」

 

まだ手紙が届いてないのにこう言うことを

話すのも変かもしれませんけど、内容が

わかってるなら今のうちに決めることは

決めたほうがいいですよね?

 

手紙が届いてからどうこうするのは時間の無駄ですもん。

 

「今は金魚草の空中栽培と拷問用のサメ草の

研究に忙しいから無理かなぁ。サバトへの参加

希望は当然却下だし。筐体を送る気もないね~」

 

ふーむ。つまりアガレスの完全敗北ですね。

 

「そもそもご当主様はあそこのアグレアスが

嫌いだし。コッチの要求を却下しておいて、

自分たちだけ要求を通そうってのはムシが

良すぎないかなぁ?」

 

いや、ゲームとアレを一緒にするのは

どうかと思いますが・・・

 

けどアレのせいで悪魔の駒は量産されますし、

和平だ何だの言うならアレの封印を最初に

するべきだって言うのもわかるんですけどね。

 

結局はこの件でご主人様の意見に対して明確な

返答をしないアガレスや魔王に対して、利益供与

をする気はないと言ったところですか。

 

「あ、だけど契約って言ってきたらどうするんです?」

 

その場合はご主人様も精査しますよね?

条件もそんなに厳しくなさそうですけど。

 

「ん~アガレスは基本的に折衝役として中立を

重んじるからねぇ。戦争推進派の私達とは

軽々しく契約を結べないんだよ」

 

そう言えばそうでした。つまりはどう転んでも

完全な没交渉。

 

交渉はその手に嵌めた武器を認識して、

ちゃんと解除してからにしなさいって話ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて問題が解決したので、これから貧乳眼鏡が

手紙を持って来たら直ぐに地獄に連れて行って

鍛錬しましょうか。

 

たとえゲームであってもアレが無様を晒したら

ご主人様が恥をかきますし、自称弟子に

対してマトモに戦うこともできなかったら

私がウィーネ様に殺されますからねっ!

 




基本的に現段階の性犯罪者には性欲以外での
自分の意見は有りません。

部長の意見が全ての兵士気取りですね。

アザゼルさんはソーナさんを高く評価
しております。当然無能よりも高いです。

家庭内序列 オセ君≧奥様≧狐殿>簪≧白っ子>クロネコ≧シロネコって感じです。

ょぅι"ょは娘枠。簪的には白っ子と自分は対等
ですが、白っ子は自分をオセ家の槍と考えてる
ので、簪を第一側室として立ててます。

奥様的には、オセ君>奥様ですが、肝心のオセ君
が奥様の意思を優先してるので、オセ家の中では
一番偉い感じになってます。ってお話。

金髪螺旋鳥頭はまだランク外です。


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59話

すまない。昨日は仕事が忙しく、更に作者に
用事が有り投稿出来なかったんだ。

投稿を待っていた読者の方々(居るかな?居ると思いたい)には申し訳ないと思っている。

準備回。話は全く進まないっ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いなヒトは読み飛ばしっ!


ソーナ・シトリーは公爵令嬢である。

 

押しも押されぬ上流階級のお嬢様であり、家庭に

何か問題があるわけでもなく、両親や姉だけでは

なく、長年シトリー家に仕えてくれている家臣達

の愛も一身に受けて育ってきた。

 

所謂箱入り娘と言っても過言ではない。

 

食事が出来なくて飢えたことなんかないし、

水が飲めなくて渇きを覚えたこともない。

 

欲しいものは望めば手に入るし、勉強やら何やら

だって人並み以上に出来た。

 

そのせいで勘違いをしていたのは事実だ。

 

話せばわかる。やれば出来る。才能より努力。

習うより慣れろ。

 

話して解決するなら世の中に事件は無い。

 

やれば出来るなら、世の中に失敗と責任と

言う言葉はない。

 

世の中には努力ではどうにもならないことが

あるし、ヤるだけヤっても成果が出ないこと

だって多々ある。

 

特に勝負事は、相手だって努力しているのだ。

 

自分の才能を上回る才能を持った相手が、自分の努力を

上回る努力をしていたら絶対に勝つことは

出来ないだろう。

 

慣れる為には経験が必要だが、普通は失敗前提で

経験を積ませてくれる環境なんか無い。

 

『頑張る』と言うのは人によってその内容や

限界点は違うし、結果が出なければ無意味と

言うのが社会と言うものだ。

 

頑張った結果成長しました!だけど会社に

損失を出しました!なんてのを笑って認める

企業がどれだけある?

 

失敗によって失われるものは多々ある。

金、時間、資材、そして信用。

 

ソレを失っても笑って許す企業などないのだ。

 

だからこそ普通の企業は、新人には失敗しても

良いような仕事しかさせないし、先輩や上司が

フォロー出来る範囲のことしかさせない。

 

縁故かワンマン社長のお気に入りか、余程

余裕のある企業でも無い限りは、新人に対して

成功したら実績になる、つまり失敗したら

責任が伴うようなことはさせないのが普通だ。

 

「失敗しました」と言う報告に対して、

「ならば反省して次に活かしなさい」と言うのは

ある意味では理想の上司なのかも知れない。

 

だが、ソレは失敗の責任をキチンと補填する

ことが出来る者が言う台詞だ。

 

つまり何が言いたいかと言うと・・・

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーソーナ視点ーー

 

「あ、あうぅぅぅ~」

 

い、今までの私の行いの功罪判定を聞いて

死にそうになる私。

 

「つまりソーナ殿は現実を見れてません。

経営者としても、指揮官としても、上司と

しても有り得ません。

こんなのが管理職に居たら会社が潰れます」

 

シロネ様の容赦ない判定を聞いてヨツンヴァイ

になるのを必死で堪えているけど、確かにコレ

はひどい。

 

良くもまぁシトリー家が私に駒王町の管理者

なんかをさせたものだと思う。

 

先輩(経験豊富な家臣)の補助を受けない!

なんて言うのは我儘な小娘の妄言。

 

小娘がミスをすれば管理地が荒れ、民が死に、

他の陣営にまで迷惑をかけ、そして小娘に

仕事を任せたシトリー家や悪魔勢力の信用も

無くすのよね。

 

まぁ悪魔貴族は人間を見下してるから、悪魔社会

での評価は変わらないけど、それはあくまで身内

のこと。

 

対外的な評価は酷いことになるわ。

 

「三国志に例えるなら、魔王陛下と繋がりがある

シトリー家は皇帝と繋がりがある荊州の劉表。

オセ様は精鋭を率いて国境を警備している、幽州

の公孫賛のような存在ですね」

 

うん。貴族の家としてみたら本当にそんな

感じですよね。

 

実際は政治とか経済とか領土の広さもオセ家が

圧倒してるんですけど、貴族としての評価は

知る人ぞ知る辺境の1領主って扱いですもんね。

 

中央に居る老害から距離をおき、力を蓄える

様子は董卓に近い気もするけど・・・

 

「本来なら我々に劉表の子供を鍛える義務は

有りません。もちろん導く必要もないのです」

 

ですよねー。鍛えるどころか、むしろ公孫賛に

したら中央の老害だの、それと繋がりがある

劉表なんか潜在的な敵ですよねー。

 

「はい。わかります」

 

教育は実家でヤレ。ソレが終わってないなら

外に出すなって話ですよね。

 

「例えるなら遠征先で勤務地が被り、先任として

引き継ぎを行うだけのはずが、後任がまさかの

初陣前の小娘で、実家や皇帝が「なんとか上手く

フォローしてやってくれ!」と頼むから、渋々

貴女方をフォローしてたんです」

 

わざわざこうして噛み砕いてるのって、アレ

ですよね?そうしないと私が理解出来ないって

思ってるんですよね?

 

「もう、本当に、何と言いますか・・・」

 

実際どんだけ周りに迷惑をかけてきたのかを

考えたら、この低評価はどうしようも無いわね。

 

「断ることもできましたが、フォローをしないと

今まで付き合ってきた現地の勢力にまで迷惑が

かかりますからねぇ」

 

「あ、あぁそうですよね!私達悪魔だけの問題じゃ無いですもんね!」

 

現地の勢力が怖すぎますよねっ!

 

「その通りです。しかし、そのフォローすべき

対象が、まさか日中管理者の仕事を完全に放棄

して学生生活を満喫し、未熟者のくせに録な

鍛練もせず、中途半端に契約業務だけをこなして

遊び呆けるなんて想像出来ませんでしたよ」

 

正座してる足より、突き刺さる言葉が痛いです!

 

「我々がどれだけのストレスを溜めたかわかりま

すか?普段おおらかな簪様が拷問用にサメ草なん

てのを造ろうとするくらいのストレスですよ?」

 

「怖っ?!」

 

サメ草を造るって発想も怖いけど、用途と見た目

がかなり怖いのが想像できたわ!

 

あの金魚がオギャーって泣くだけで怖いのに、アレがサメって?!

 

シュレッダーに入れられたA4用紙みたいに体を

削られていくのが想像できた!

 

「良いですか?貴女は夏休みが終わったら駒王町

に戻ることになります。コレは貴女の我儘から

始まったとは言え駒王町の管理者と言う任務が

正式な任務だからです」

 

「ハイっ!」

 

そうですよね。身代わりを登校させて、自分は

鍛えるなんてことをするくらいなら管理者を

辞めて鍛えることに専念すれば良いだけだし。

 

散々他人様に迷惑をかけておいて、面倒だから

辞めるなんて事は許されませんよね!

 

「そうなれば、私たちもフォローの為に駒王町に

戻ることになります。ですがね?阿呆のフォロー

はもう嫌なんですよ」

 

「・・・ハイ」

 

そりゃそうよね。どうせフォローするなら

仕事もせずに遊び呆けてる貴族の小娘なんか

よりは最低でもマトモに仕事をしてる人の

フォローをしたいわよね。

 

「だからこそ、貴女には最低限自分で戦えるだけ

の力と常識。そして現実を教えてるのです」

 

ですよねー。今までは全部有りませんでしたからねー。

 

・・・ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません。

 

普通はこんな事言わずに悪評を広めて私達の

立場を落としたり、放置して私たちに失敗を

させてからフォローすることで、シトリー家や

お姉様達に対して何かしらの追加要求したり

するのが普通なんですよね。

 

それなのに、こうしてキチンと向き合って

貰った挙句、為になるお説教までして頂き

感謝の念に絶えません。

 

公爵家次期当主として土下座は出来ないけど、

心は五体投地しておりますっ!

 

ただ、誠に恐れながら申し上げますが・・・

 

「あのちなみに、20日後のリアスとの試合なんですけど・・・」

 

今の私にしたら帰還後の統治よりそっちが緊喫の

問題なんじゃないかなぁって思ったり。

 

いや、統治を軽く見てるわけじゃ無いですよ?!

 

「ん?あぁ、そういえばそんな茶番もありましたね」

 

うわぁ。コレは本気で相手にしてませんね。

ゼファードルもそうだけど、どんだけリアスに

価値を見い出して無いのやら。

 

私と違って向こうは説教する価値もないって

判断してるのよね?

 

まぁ向こうのメンバーは、無駄にプライドが高く

て暴走する主君に、手抜きする女王。指示待ちの

元聖女とハーフ吸血鬼に、主君と一緒に暴走する

性犯罪者。そこに常識担当の人狼だもんねぇ。

 

指示を出す主君と女王が評価できないなら

チーム全部が駄目ってわけか。

 

常識人の人狼さんが憐れよねぇ。

 

ま、私も今のリアスに警戒する必要があるとは

考えてはいないわよ?

 

それでも、一応油断慢心は駄目だと思っての

確認だったんだけど・・・シロネ様もこんな感じ

なら、今のままでも特に問題は無いのかしら?

 

「わざわざ私が言うことでは無いでしょうが、

リアス・グレモリーとのゲームに関しては、

一つを除き対策は必要無いと考えてます」

 

「え?何か対策が必要なんですか?」

 

いや、侮るわけじゃないけど、今から鍛えても

私たちとは差が有りますよね?

 

彼女が私たち以上の地獄を見ると言うなら警戒の

必要もあるけど、リアスは私以上の箱入り娘

だし・・・アザゼルも勢力の関係上、魔王の妹を

物理的に地獄に堕として鍛えるなんて真似は

出来ないから、どうしても常識的な鍛練になりますよね?

 

それならどうやっても負けないのでは?

 

そう考えてた時期が私にもありました。

 

「・・・性犯罪者による洋服崩壊は警戒しなきゃ駄目でしょう?」

 

あっ!

 

「確かにそうですっ!」

 

アレは主としても女としても、喰らったら負け!

眷属の皆だって自殺するわっ!

 

リアスが苦笑いする様子が目に浮かぶけど、本来

苦笑いなんかで済ませて良いモノじゃないっ!

 

絶対に許してはいけない所業よ!

 

「まぁ冥界全土に裸体を晒したいと言う変態が

貴女の眷属に居るなら、私は別に構いませんがね」

 

「い、いません!私の眷属はみんなノーマルですっ!」

 

ノーマルよね?いやまぁ、匙は男性だからその辺

よくわからないし、年頃の娘さんは腐るのが早い

って言うからちょっと自信が無いけど。

 

少なくとも露出狂は居ないはずっ!

 

「ふむ。それならば問題ありません。試合当日は

キチンとした装備で臨むでしょうから、その中に

護符のようなモノを入れるとしましょう」

 

え?装備?護符?

 

「えっと、装備って、学校の制服じゃ・・・駄目ですよねー」

 

目が怖いです!サメの餌の鰯を見るかのようなシロネ様の目がモノスゴク・怖いっ!

 

「当たり前です。死ぬことは無くても重傷を

負うことがあるのですよ?

眷属の為に防御力がある装備を用意するのも

主君として当然の配慮です。学生服?何を

考えてるんですか?て言うか頭の中に脳みそ

入ってますか?」

 

そ、そうですよね。眷属のことを考えたら

防御力は考えないと行けませんよね!

 

一応確認させて欲しいんですけど、

 

「で、ですが、護符とかって反則扱いされたりしませんかね?」

 

実際どんなルールになるかは知らないけど、

そう言うのってドーピングみたいな扱いに

されませんか?

 

そう問いかけた私に対するシロネ様の返答は、

鰯どころじゃなく、本物のゴミを見るかのような

冷たい視線でした。

 

アレですよね?普通なら聞くまでも無いことを

聞いちゃったんですよね?

 

いや、もう、阿呆でゴメンナサイって謝りたく

なるような視線を浴びて耐えること数秒。

 

「はぁ。あのですね。性犯罪者が攻撃力の高い

聖剣持ち込んだり、聖女が回復の神器を持ち込む

のは良くて、貴女が防御力の高い防具を用意する

のが駄目なわけ無いでしょう。

騎士みたいな全身鎧や馬みたいなのを使うヤツ

だっているし、そもそも赤龍帝の籠手は神を殺す

神滅具ですよ?そんな伝説の武具を相手にすると

言うのに対策を取るなって・・・どう考えても

有り得ないと思いませんか?」

 

溜め息と共に告げられた言葉は、あまりにも

当たり前のことでした。

 

そりゃ「聞く前に少しは考えろ」 って言いたくなりますよねぇ。

 

「ごもっともです」

 

小娘が馬鹿な質問してスミマセン。

 

「ではソーナ殿も納得出来たようなので、次の問題に行きましょう」

 

次の問題・・・

 

「えっと、何から行きましょうか?」

 

正直問題が多すぎて、何が前で何が次なのか

良くわからないんですよね。

 

『一つ一つ片付ければいずれ無くなるから、

今は提起されたことを片付けて行くように』

と言われてるけど・・・

 

「色々ありますが、やはり一番最初にやるべきは

眷属に関してですね」

 

「眷属・・・」

 

今はみんな基礎を鍛えてる最中だけど、いずれ

自分の力の方向性を考えなきゃ行けないわよね。

 

そのことかしら?

 

「質に関してはこれまで通り、鍛練でしっかり

鍛えれば良いですが、量に関しては貴女が自分で

増やさなければなりません」

 

なるほど。質ではなく量。つまりは新しい眷属を

見つけろってことですか。

 

う~ん。訓練を受ける前なら、少しの心得が

あるだけでも良かったかも知れないけど、

今は眷属同士の力の差が出るから探すと言って

も中々難しいわよね。

 

「とは言え今の貴女達の場合、その辺の公園の

ベンチに転がってるイイ男では足りません。

最低でも準一等。つまりは上級悪魔程度の力は

必要でしょうね」

 

何で公園のベンチが出てきたのかはわからない

ですけど、力の差についてはそうですよね。

 

「そ、そうですね!最低でも上級クラスの力が

ないと、孤立したり、力不足で悩んだりしちゃい

ますよね!」

 

贅沢な悩みだってのは自覚してるけど、実際

そうなっちゃうわよね。

 

「本来ならば、眷属に関しては駒を持つ主君の

意思を最優先すべきなんです。

いずれ今より成長した貴女が、自分で1から眷属

を育てるときが来るかもしれないと言うことを

考えれば、駒に多少の空きがあるのも良いことだ

と思いますしね」

 

そうですよね。今は鍛えてもらってる立場

ですけど、いずれは私が自分で育てるときも

来るかもしれないし。

 

・・・元々は今の眷属もそのつもりで集めた

んだけど、世間も常識も知らない私がマトモな

教育なんか出来るはずありませんもんね。

 

あのままじゃ皆の素質を腐らせることにしか

ならなかったと思えば「私が眷属を育てる!」

なんて言うのは百年早かったわ。

 

「しかし現状のままでは今回の総当たり戦、

自称弟子とのゲームにおいて確実に無様を

晒すことになります・・・聞いてますか?」

 

「ハイッ!キイテマスッ!」

 

今はシロネ様が解説してくれてるのよ!

自虐してる場合じゃないわ!

 

ええっと、それでゼファードルのことよね。

 

「確かにそうです。見えない槍についても対策が

必要ですし、そもそもの実力差が有りますから」

 

鍛えた時間の差は今の段階でどうにかなる

モノじゃないわ。

 

「自覚が有るようで何より。アレも自称とは

言え弟子ですからね。貴女方が学校に通って

勉学に励んでいる間、アレは鍛練を積み

地獄を見ていたのです。

その積み重ねが有る以上、一年にも満たない

貴女方の付け焼き刃でどうにかなる相手では

有りません」

 

積み重ねの差。確かにその通りですよね。

 

私たちが夜叉一さんに鍛えられてる間も

ゼファードルは鍛練してるんだもの。

 

それも、三等に相応しい内容のモノでしょ?

・・・私たちとは期間も密度も違うわ。

 

だけどシロネ様だってソレくらいわかって

るわよね?その上でなんとかなるようなヒト

を紹介してくれるみたいな感じだけど。

 

「つまりシロネ様は、ゼファードルとマトモに

戦えるようになる。もしくは切り札となるような

ヒトをご存知と言うことでしょうか?」

 

現状では私と椿姫と匙が連携を組んで、完璧に

事を運んで、彼を全部私の計算通りに動かした

としても、きっと疲弊させるのが精一杯。

 

僅かに二ヶ月の鍛練しかしてない私たちと、5年

の鍛練を積んだ彼との間には決して越えられない

壁が存在するわ。

 

ソレを覆す・・・ことは出来ないかもしれない

けど、勝負になる程度まで持っていけると言う

なら、是非紹介して貰いたいわ!

 

私だって恥をかきたいわけじゃ無いからね!

 

「そうですね。彼女なら少しの鍛練で貴女方に

並ぶでしょうし、自称弟子にもダメージを

与えることが出来るでしょう」

 

「彼女、ですか?」

 

女性で私が眷属に出来るレベルなのに、そのヒト

を加えたらゼファードルとも戦えるようになる?

 

一体どんなヒトなの?

 

「ちなみにコレは強制ではありません。もしも

貴女が不要と判断すれば、彼女は自称弟子に

紹介することになってます」

 

「うぇ?!」

 

い、今以上にゼファードルが強化されるの?!

 

確かに彼には眷属が少なかったから、ルールに

よっては勝てるかもって言う思いがあったのに、

死角がどんどん無くなって行くわ!

 

いや、この方たちがそんなのを残しておく

はず無いんだけど!

 

「さらに言えば、すでに自称弟子には一人

眷属が追加される事が決まってます」

 

「えぇ?!もう一人決まってるんですか?!」

 

だったら絶対に紹介して貰わないとマズイわよね!

 

強制じゃないってことだし、会ってみて

私たちとは合わないって思ったら断れば

良いだけだし。

 

「シロネ様っ!その方の紹介をお願いしますっ!」

 

恥?プライド?そんなのは紙のボートと一緒に

排水溝に捨てて流したわっ!

 

このヒト達に対してはすでに恥と思う気持ちも

なければ、取り繕うべき外聞も無いから、お願い

だってストレートに行けるのよ!

 

「ふむ。決断が早いのは良いことです。

では早速紹介しちゃいましょう!」

 

え?連れてきてたの?それじゃあさっき

までの説教も全部聞かれてたってこと?!

 

「こちらが新たな眷属候補。元エクソシスト。

聖剣使いのロウヒーロー、ヨシコ=サンです!」

 

ダダダダダダン!

 

よ、ヨシコ=サン?聖剣使い?エクソシスト?

 

困惑してる私を無視してシロネ様が不思議な

テンションでドアを開けると、そこに居たのは

ボーイッシュな髪型や顔つきとは裏腹に、私を

挑発するかのような御立派な胸部装甲を搭載した女性だった。

 

いや、女性ならロウヒロインじゃ無いですかね?

 

「ドーモ。ヨシコデス」

 

混乱している私にそうアイサツしてくるヨシコ=サン。

 

どうやら礼儀正しいヒトみたいですねって・・・

 

「いや、アナタ、ゼノヴィア・クァルタ=サンですよね?」

 

聖剣の破壊を目的として教会から派遣されてきた

エクソシストで、私のツケでイタリアにお土産

まで贈ってたヒトでしょ?

 

一度しか会ってないですけど、そのメッシュみたいな髪は忘れませんよ?

 

「「・・・」」

 

特徴を掴むのは貴族の嗜みです。ドヤ顔でそう

告げた私に対して、シロネ様とゼノヴィアさんは

 

『おいおい、マジかよコイツ。空気読めよ』

 

と言う目を向けて来る。

 

・・・え、アレ?もしかして言っちゃ駄目なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

いやはや『目は口ほどにモノを言う』と言う

名セリフは本当ですよねー。

 

先日の会合に続き、今日もまたその事実を強く

実感することになりました・・・マル。

 




戦いに挑むのに、ぬののふく(学生服)しか
準備しないっておかしいと思う。

また、原作主人公が神器を纏って鎧を装備するなら、他の人だって完全武装が当たり前ですよね?

それともアレですかね?彼らのぬののふくには
超高性能な防御力場を発生させるI・Sみたいな
特殊効果が有るのでしょうか?

洋服崩壊は学校で見せてますからね。
当然学校担当のシロネコも知ってます。

栗みたいな口をしたもよう。

眼鏡会長の元にまさかの追加人員、謎のロウヒーローが現れたっ!

メシアプロジェクトは関係有るのか?
手術痕とかは有るのか?
細かいことは次回だっ!ってお話。




ここからは、感想や評価に対する作者の意見となります。人によっては不快になるので、見るなら自己責任でお願いします。




Q・何ですぐに殺そうとするの?

A・基本的にオセ君陣営は見敵必殺を旨とします。
そもそも敵だし。生かす理由が無い限りは殺し
ます。情報の拡散をナニよりも嫌う彼らにして
みたらソレが一番労力がかからないからです。

Q・陰口を叩くくらいならフォローするなり無能や
原作主人公を導けば良いんじゃない?

A・そんな義理はありませんし、評価とは本人が不在
のところで他人につけられるモノです。

学校の先生が通信簿に書いて渡すような
ことを人事課の人がするとでも?
しかも現状は社長令嬢がワガママ抜かして会社
(悪魔社会)に損失を出してる状況です。

そりゃ陰口叩かれますよ。

上司が部下に評価を伝えて嗜める場合もあります
が、それは上司の優しさであり、警告です。

てか自分が会社にいたらわかりませんかね?
わざわざアホで生意気な新人に関わろうとする
ヤツは、下心が有るヤツ以外に居ませんって。

親切心?領主と言う貴族の仕事はそんな温いモノ
じゃないでしょ?

相手が馬鹿やったら修正するより弱味として
利用するのが政治闘争です。

そして断交したオセ君から見た場合、彼女らは
潜在的な敵であり、助ける対象ではありません。



何を言いたいかと言えば、作者には理解出来ない
意見や感想、評価が有りますが、作者の価値観が
嫌いなら読み飛ばしで良いのですよ?と言うお話です。



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60話

ヨシコ=サンの事情!

話はやっぱり進まない!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーシロネコ視点ーー

 

コカビエルにヤられた後、神野サンに壊されて、

あわや蟲になるところを救助したヨシコ=サン

ですが記憶はきっちり修正されてるようで何より

でした。

 

と言うか、その辺もしっかり偽装してた神野サン

が凄いんですけどね。

 

気分で仕事してるようで、演出には手を抜かない

から使う方としては助かるんでしょうねぇ。

 

結局のところ、神野サンを使えるだけの器量と

仕事と趣味を両立させることが出来る環境を

作れるご主人様が凄いって話ですけど。

 

しかしこの貧乳は・・・ワザワザ名前を変えて

紹介したんだから、その辺の空気を読めよ。

 

貴族のお嬢様には酷なのかも知れませんが、

折角の配慮が台無しです。

 

いや、それとも私がボケたと思ってツッコミ

を入れたんですかね?

 

ふむぅ・・・ヨシコ=サンのことを知ってたら

その可能性も有りますか。それならシカタナイ。

 

「とりあえずソーナ殿が心配してるであろう、

元エクソシストを信用して良いのか?と言う

疑問にお答えしましょう」

 

貧乳眼鏡はまだ呆然としてますからね。そりゃ

いきなり現れた聖剣使いを、何の説明もなく

「コイツは使えるから信用して眷属にしなさい」

と言われても反応に困るのはわかります。

 

優しいシロネコさんがきちんと解説してあげましょう!

 

「え、あ、はい。ヨロシクオネガイシマス」

 

うむ。普段は一番下の子扱いだから、やっぱり

こう言うの良いですよね!

 

いや、狐様に様付けで呼ばれるのはカンベン

してほしいんですけど。

 

黒歌姉さまは「クロネコと呼んでください!」

って最初にお願いしたらしいですね。

 

私に事前に情報を貰えなかったのはアレだけど、

情報漏洩は処刑案件だからシカタナイね!

 

「「・・・」」

 

おっと、今は狐様とかじゃないですよね。

 

さて、キチンと聞く体勢が出来てる貧乳眼鏡と、

直立不動の元恥女の胸部装甲を見比べながら

この私が説明をしてやろうじゃないですか!

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーーソーナ視点ーー

 

「いや、気になってるのはソコじゃないです」

 

な~んて言ったら、私の首から上がなくなりますよね?

 

実際今まで何してたのか?とか信用して良いのか?

って言う疑問は有るから。説明して貰えるなら

ありがたいのは事実ですよ。

 

「何を隠そう、実は彼女。とある任務で聖剣を

盗んだコカビエルを追跡していたエクソシスト

さんでしてね」

 

「へ、へぇー。そうでしたか!」

 

しらなかったわ~。

 

「それで、先日の駒王学園での戦闘の際、

コカビエルの攻撃を受けた後、彼の配下の

堕天使と戦い敗れてしまったようなのです」

 

シロネ様の言葉を聞き、視線を彼女に向ければ

ヨシコさん、いや、ゼノヴィアさんは頭を掻いて

恥ずかしそうに肯定した。

 

「お恥ずかしながら、奇襲を先読みされて

しまってね。洒落にならないダメージを

受けてしまいヤツの配下の堕天使にも殺され

かけてしまったんだ」

 

うん。まぁ歴戦のコカビエルに対して奇襲を

成功させるのは難易度が高いですよね。

 

「なるほど・・・」

 

そう言いながら私は頭の中でその状況を再現して

見るけど、普通に絶対絶命ですよね?

 

なんで生きてるの?

 

「でもって、ダメージを受けても決して諦めない

ヨシコ=サンを見て、その心を折ろうとしたので

しょう。

その堕天使はあろうことか、聖書の神の死を

エクソシストである彼女に伝えたのです!」

 

汚い、流石堕天使。汚い!

と言いながら説明を続けるシロネ様。

 

なんと言いますか・・・堕天使も性格悪い

ヤツ多いですからねぇ。

それに彼女は中々男好きする体だし、心を

壊しても色々使い道は有りますもんね。

 

「うむ。ソレを聞いて自棄になった私は相討ち

覚悟で戦いを挑み、その堕天使を倒したものの

ソコで倒れてしまってな」

 

あぁ。心が折れたってことで油断してNDKして

たところを、聖剣で貫かれたのね。

 

マヌケなヤツも居たもんだわ。ヤッパリ油断慢心

は絶対駄目よ!

 

アホな堕天使の死に様を思い浮かべ、基本的な事

だからこそ大切にしなきゃ駄目だと再確認する。

 

「その後の記憶が無いらしいのですが、結界が

破壊された後、そのまま学園の敷地内で傷を負い

気を失っていたヨシコ=サンを学園での戦いを

観測してた私が発見し、治療したんですよ。

その後なんやかんやあって保護したわけです」

 

へぇ。としか言えませんね。だけど保護ってナニ

から保護したのかしら?

 

「ん?ナニか聞きたいことが有るような顔を

してますが、どうしました?」

 

か、顔に出てた?!

 

「えっと。保護ってナニから保護したんですか?」

 

気付かれたのは未熟の証拠なんだけど、今さら

よね。恥ずかしがる必要なんか無かったわ。

 

うん。気になることは普通に聞こう。

シロネ様の冷たい視線にも慣れてきたわよ!

 

「ふむ。まぁその辺は貴族のお嬢様だからシカタナイか」

 

ゼノヴィアさんにまで憐れまれたけど、もう

良いの!知ったかぶりが一番駄目なのよ!

 

「・・・ですね。良いですかソーナ殿。彼女が

知った聖書の神の死と言うのは、事実では有り

ますが我々三大勢力の中では秘事にあたります」

 

「そ、そうですね」

 

二人の冷たいような生暖かいような、そんな視線

を受けながら、教えを理解しようと必死で頭を

回転させる。

 

確かに秘事よね?だけどソレを知ったと知られな

ければ問題は無いんじゃない?

 

ワザワザ吹聴してまわるような事じゃないし。

ん、アレ?コイツまさか・・・

 

「もしかして、彼女。その事を教会の上層部に

確認したんですか?」

 

嫌な予感を感じて、もっとも有り得ないであろう

予測を口に出して見る。

 

普通に考えたら有り得ないけど、普通じゃない

のがエクソシストだもんね。

 

「うむ。真偽の確認を取ってしまったのだ」

 

コイツ馬鹿だ?!私たちには秘事で済むけど、

教会の中じゃ禁忌でしょ?!

 

驚愕した様子を見て取ったのだろうシロネ様は

頷きながら説明を続ける。

 

「ソーナ殿も理解出来たようですね。そもそも

連中は神の名を騙り信徒から金を集め、更に

聖剣計画やらシグルド計画と言った人体実験を

行うような連中ですよ」

 

そんな連中に、神の死の確認なんか取ったら・・・

 

「理解したみたいだね。まぁ私もシロネ様に

言われるまで気付かなかったから偉そうな事は

言えないんだが・・・その場で私は異端者扱い

されてしまったんだ」

 

そりゃそうなるわよねぇ。未だに神を信じる

狂信者からしたら、堕天使の言うことを真に

受けて「神が死んだ」なんて言うヤツは異端者

だろうし、上層部にしてもそんなことを言いふら

されても困るもの。

 

納得する私を見て、説明を続けるゼノヴィアさん。

 

「それで、その場はなんとか私を処刑しようと

する連中から逃れることは出来たんだが、当然

追っ手を差し向けられたのさ」

 

そりゃそうでしょうよ。よく確認したときに

殺されなかったわね?

 

まぁ何かしらの備えはしてたんでしょうけど。

 

「追手の相手をしながらこれからどうしようか

と悩んでいたら、私をイタリアに送り届けて

くれたシロネ様と偶然接触できてね」

 

「シロネ様と?」

 

部下に任せずにワザワザご自分でイタリアまで

行ったの?それに偶然?有り得ないわよね?

こうなる事を予想して監視してたんでしょう。

上手く行けば聖剣使いをスカウト出来るもの。

 

「いやぁ驚きましたよ。イタリアでジェラート

を食べたり簪様へのお土産を選んでたら、夜の

街角でエクソシストが戦闘してるんですからね」

 

暗殺チームがメタリカしたり、親衛隊が土の中

を泳いでたりと、イタリアもマッポーでしたね。

 

とか言ってますけど、まさか・・・

 

「普通に観光してたんですか?!」

 

き、教会のお膝元で甘味を満喫って。いや、

そういえばディオドラも普通に元聖女が居た

場所に通勤してたわよね。

 

・・・私が言うことじゃないけど、教会も

相当駄目よね。

 

「そりゃそうです。イタリアなんかそうそう

行く機会は無いですし。

大体スカウトの為にヨシコ=サンを監視する

ほど私たちは人材不足じゃありませんよ?」

 

何を今更と言いながら、当たり前のように説明

してくれてますけど、本人の目の前ですよ!

 

流石に気を悪く・・・してませんね。

怒るとかじゃなく、苦笑いしてるわ。

 

「まぁハッキリ言われるとアレだが、事実では

あるしな。それにそう言ってもらえた方が私と

しても信用できるのさ」

 

いやまぁ、それはそうでしょうね。

 

はじめから下心が有って接触してきたなら

まだしも、完全に偶然なら疑うことも無いわ。

 

「無論、私達にも下心が無いわけでは無いです。

接触したのは偶然ですが、そもそも私が無一文の

彼女をイタリアまで送り届けたのは、彼女と契約

を結んだと言うのも有りますが、教会勢力の中に

不和の種を撒く為だったんですから。

まぁ親しい友人やら何やらに神の死を伝えて

くれたらなぁ~程度のモノだったんですけどね」

 

まさか彼女が真っ先に上層部に確認を取るとは

思わなかったと言うことですね。それに、

 

「ちゃんと悪魔的な意図が有ったんですねぇ」

 

無償の善意なんて悪魔らしい悪魔を掲げる

オセ様には有り得ないことですからね。

 

「当たり前です。ついでに偵察と観光もして

ましたが、基本はお仕事ですよ」

 

偵察も立派なお仕事だと思うんですけど・・・

いや、あまりにも警備がザルで仕事にすら

ならなかったんですかねぇ?

 

「けど、ソレは本人に聞かせても良いんですか?」

 

折角の信用が無くなりませんかね?

 

「「・・・はぁ」」

 

そんな私の考えは、やはり現場を知らない小娘

の妄言だったみたいで、二人は溜息を吐いて

解説をしてくれる。

 

「その事に関しては私とて織り込み済みさ。

悪魔が無償の善意で動くはずないからね。

なにかしらの悪巧みはしてるだろうってこと

くらい普通に考えるよ」

 

で、ですよねー。普通なら考えますよねー。

 

「その上でヨシコ=サンは本国への帰還と事実の

確認を優先したというわけです。まぁ悪魔と契約

を交わしたのですから、その時点で彼女を異端

扱いするのも間違いでは有りませんがね」

 

あ、そう言えば契約してたんですよね。

 

つまりシロネ様はしっかり報酬を貰った上で彼女

をイタリアまで送り届け、ついでに教会の内部に

不和の種を撒き、ついでのついでに偵察と観光

もしてきたわけか。

 

なるほど。一石二鳥どころじゃない。コレが

正しい悪魔の在り方なのね。

 

「契約と言っても私が支払ったのは今回私が

日本で得た情報と、聖剣を扱うことが出来る

私の遺伝子情報、つまり髪の毛と血の提供だ。

その気になれば拷問でもなんでもして、好きな

だけ入手出来るモノで支払いを済ませてくれた

シロネ様には感謝しか無い。

同時に裏が有ると確信することにもなったのさ」

 

なるほどなるほど。無一文を治療し、悪魔が教会

の総本山であるイタリアまで運ぶことを考えたら

安すぎるくらいの対価よね。

 

そりゃ裏が有ると疑うわ。

 

「そんなわけで、私は私で狙いが有り、彼女は

彼女で狙いがありました」

 

利害の一致か。契約には十分よね。

 

「だけど私が会った時に感じた彼女の性格だと、

神の死を知った上で追っ手と戦うようなヒト

とは思えませんでしたけど・・・」

 

普通に自害するか、生を諦めて粛々と殺される

ようなタイプですよね?

 

「うむ。普通なら神の死を知った時点で生を

諦めていただろうが、1度ソレを乗り越えた

からだろうな。神の死を嘆くよりも、神の死を

知りながら信徒を欺く連中に対して怒りを

覚えたのだよ」

 

あぁ、本来なら駒王学園で堕天使に心を折られて

終わって居たのが、相討ち覚悟で破れかぶれとは

言え、立ち上がって戦ったんですもんね。

 

落ち着く時間的な余裕も有っただろうし、

それで本国へ戻り事実を確認した後で命を

狙われる羽目になり、上層部への怒りが沸き

上がってきたわけか。

 

怒るところが命を狙われたことじゃなく、神の

名を騙るってところが良く理解できないけど、

ソレも狂信者の在り方よね。

 

「それで、暗殺チームに追われていた彼女に

接触したところ、なんと彼女の方から契約を

持ちかけて来たのですよ」

 

教会の上層部に復讐するなら、悪魔か堕天使に

協力を仰ぐのはわかるけど、ソレって信仰的に

は大丈夫なのかしら?

 

首を傾げながらゼノヴィアさんを見れば、

さっきより深い苦笑いをしていた。

 

「追手と戦闘をしているところにシロネ様が

現れてね。『喧しい、夜中に騒ぐな』と言って

暗殺者チームの連中を瞬殺したんだ」

 

あぁ。なるほど。接触ってそう言う・・・

そりゃ契約を持ちかけるわよね。

 

「納得できたみたいだね。ソーナ殿が予想した

ように、もしも彼処で契約を持ちかけなければ

そのまま私も殺されていただろう」

 

遠くを見ながらそう告げるゼノヴィアさん。

 

よっぽど怖かったのね。思い出したのか膝が

震えてる・・・うん。必死で契約をしようと

する様子が目に浮かぶわ。

 

「私としてもあんな場所で死ぬ気は無かったし、

殺される理由が『夜中に騒いだから』なんてのは

ゴメンだからな。それに銀行の口座は凍結された

し、無一文で補給も休息もままならん状態だ。

もしもシロネ様に殺されなくとも、契約を結んで

貰わなければそのまま犬死にしていただろうな」

 

うん。それはそうよね。教会にしたら禁忌を

知ったエクソシストを生かす理由は無いし、

財産だって没収するのが普通よね。

 

現金を持ち歩くタイプには見えないし、そもそも

邪魔になるから戦闘に必要なモノ以外は意図して

持たないといった感じかしら。

 

「契約の内容はイタリアからの脱出の幇助と

当面の生活の保障でした。まぁその程度なら

オセ様に確認を取らなくても、私の判断で

出来ましたからねぇ」

 

あぁ。なるほど。無一文だと生活がアレだし、

今までみたいに悪魔や堕天使を狩る理由もない。

 

それにエクソシストは私たちから見ても仇

だからね。教会の追手だけじゃなく、悪魔や

堕天使にまで命を狙われたら教会の上層部へ

の怒りを晴らすどころじゃないものね。

 

生活の保障は重要だわ。

 

「そしてその条件が聖剣を使った各種実験だった

んだ。わかりやすく言うなら、実験に付き合って

給料を貰うと言った感じかな?」

 

わ、ワザワザわかりやすくしなくても

大丈夫ですよ?流石にそのくらいはわかります。

 

いや、さっきからわかりきった事を質問してる

のが理由なんでしょうけど。

・・・むしろ配慮してくれてるんでしょうね。

 

「我々としても正規の聖剣使いによって振る

われる聖剣のデータは欲しいですからね。

何時までも『聖剣だ!ヤバイ!』なんて言って

られませんし」

 

なるほど。為政者としても、研究者としても

弱点を弱点のままにしないのは当然よね。

 

ゼノヴィアさんにしてみたら微妙な気分に

なるかも知れないけど、他に支払うものが

なければソレしかないか。

 

「それで、研究は一段落したんです。普通なら

何年か生活するのに不足は無いだけのお金を

支払いましたし、私たちが用意した拠点で

暮らす分にはある程度生活も保障出来るように

してたんですけどね」

 

あぁ。確かにゼノヴィアさんの当座の生活は

守られたけど・・・

 

「そもそも私の目的は安穏に暮らすことではなく

教会の上層部に対する復讐。いや連中の粛清だ」

 

ですよねー。普通に暮らすなんて望むようなら

狂信者なんかやってませんよねー。

 

「更に天界が悪魔や堕天使と正式に休戦して

しまいました。コレではヨシコ=サンの目的は

果たされぬままになってしまいます」

 

現場ではかなり不満が有るみたいだけど、

やっぱり天使も人間を見下してるのよね。

 

自分達の決めたことに従え。従わないなら

異端として排除するって感じなんでしょ?

 

信仰の対象である神の正式な下僕である天使に

狙われたら、そりゃエクソシストも表立って

抵抗はできないわよね。

 

「そこで私が考えたのが、反三大勢力同盟の

禍の団への荷担か、戦争推進派であるオセ様

への協力と言うわけだ」

 

ふむ、個人で勝てないなら組織を頼る。

当たり前の話ではあるけど中々に難しい

決断でもあるわ。

 

教会の上層部を狙うなら反三大勢力の禍の団が

一番手っ取り早いような気もするけど、教会も

和平に反対してる連中が多数居るわよね。

 

そうなれば禍の団は教会はあえて放置して

内部分裂を誘うでしょう。つまり時間がかかる。

 

だけどゼノヴィアさんには禍の団で時間を

潰すわけにはいかない事情があるわよね。

 

何せ彼女は今まで大量の悪魔や堕天使を殺して

きた有名なエクソシスト。

旧魔王派が幅を聞かせる禍の団に所属したら、

確実に命を狙われるでしょう。

 

だから禍の団への参加を見合わせた。

 

そしてオセ様は誰よりも悪魔らしい悪魔。

エクソシストに負ける悪魔が悪いって言うヒト

だから、ゼノヴィアさんに対して恨みは無い

だろうけど、肝心のゼノヴィアさんの信仰を

考えれば助力を請うには抵抗があるわよね。

 

「ま、そこまで考えたとき、悩むまでも

無かったと思い至ったがな」

 

そう言って苦笑いをしながら肩を竦める彼女を

見れば、どちらを選んだかなんて聞くまでも無いわよね。

 

そもそもシロネ様やオセ様を様付で呼んでるし。

いや、呼び捨てしたら確実に死ぬからって可能性

も無きにしもあらずだったけど。

 

「ヨシコ=サンには個人の力も不足して

ましたからね。自らを鍛えると言う意味も

込めて私たちに従うことにしたんです」

 

個人の力不足も何も・・・

 

「シロネ様が眷属最弱とか言う時点で色々

おかしいですもんね。

そりゃ彼女だって鍛え直そうと思いますよ」

 

魔王のお姉様より強いのがその扱いって

どう考えても異常ですからね。

 

「そうだな。私はシロネ様とカンザシ様に

しかお逢いしたことは無いが、お二人を

上回る実力者が何人も居ると言われたら、

禍の団に加入しようとは思えないよ」

 

しみじみと語るゼノヴィアさんに、心から

同意します。

 

「そこまではわかりましたが、私の眷属で

良いんですか?私は魔王様の妹で、休戦協定

に反対してるわけじゃありませんよ?」

 

前にシロネ様にも聞いたけど、別に私が敵に

回ってもいつでも潰せるから問題ないって

言う話だから、オセ様やシロネ様はそう言う

思想の転換を強要してこないのよね。

 

むしろ敵対することを望んでる節もある。

 

ソレが何を意味するかは知らないけど・・・

いざとなったら私はお姉様とシトリー家を

天秤にかけることになるのよね。

 

今のところは、お姉様を泣き落としてでも方針を

転換させてオセ様に完全服従する予定だけど。

 

「あぁ。それでも構わない。どうせ協定は

崩れるからね。ソレまで死にたくはないし、

今以上に力をつけたいのさ。その為にはオセ様

所縁の悪魔が望ましいし、ソーナ殿なら多少

ではあるが繋がりも有るしな」

 

「なるほど・・・」

 

いつまでも所属不明の元エクソシストのままでは

切り捨てられる可能性が有るし、ゼファードルや

私は今現在鍛えられて力をつけてる最中。

 

そして私とは元から顔見知りだし、私への評価も

低くは有るけど悪くはない。

むしろ貴族のお嬢さんにしたらマシな部類って

考えてるのかしら?

 

彼女にしたら私を主とする選択肢は決して

悪くないのね。

 

それに休戦協定が崩れると確信している。

各勢力に外から煽る連中や、内側から崩そうと

してる連中が居るからそう考えるのが普通か。

 

こう言う実戦を理解して、兵士としての視点を

持つ彼女は私としても是非に欲しい存在。

それでいて聖剣と言う切り札が有れば、確かに

ゼファードルとのゲームでも使えるわよね。

 

そう考えてうんうんと頷く私の様子を見て、

シロネ様も私が彼女を眷属にすることに否は

無いと判断したようだ。

 

「ではさっさと眷属になさい。騎士か戦車を

オススメしますが、あえて兵士とするならソレ

も良いでしょう」

 

うん、そうよね。ソレが本題だから、さっさと

済ませろって言うのはわかります。

 

「そ、そうですね!では駒は・・・」

 

今の私なら聖剣を持つとは言え人間の彼女を

眷属にするなら、兵士の駒でも一つか二つで

いけると思う。

 

だからこそ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なるほど、コレが悪魔になると言うことか」

 

駒を使って悪魔に転生したゼノヴィアさんは、

自分の体の変化を確かめるように手を握ったり、

踏み込みの確認をしている。

 

「それではコレでシツレイします。ヨシコ=サン

が扱う聖剣については、後日簪様が手を加えた

モノを用意します。

とりあえず今は素の力を高めることと、剣術の

基礎を学ぶカリキュラムを組むのでそのつもりで

いなさい。

ソーナ殿は今まで通り夜叉一さんに鍛えて貰う

ように。良いですね?」

 

「「ハイっ!お疲れさまでしたっ!」」

 

そう言って立ち去るシロネ様にアイサツする

私とゼノヴィアさん。

うん、しっかり教育済みで何よりです。

 

それに、私たちがやってる連携訓練にはまだ

参加させずに個の力を向上させる方針ですか。

 

まぁ現状で上級クラスの実力は有るし、経験も

あるから、リアスとのゲームでは連携よりも

単独で使うことを視野に入れた方が良さそうね。

 

そうやって早速彼女の使い方を考え込む私

の前に立ち、ゼノヴィアさんは一礼をした。

 

改めてアイサツするのかしら?

 

礼儀正しさに苦笑いしそうになるが、こう言う

のは最初が肝心。

気を引き閉めて彼女の言葉を待つ。

 

 

 

 

 

 

 

「私はロウヒーロー・ヨシコ=サン。コンゴトモヨロシク・・・」

 

 

 

 

 

うん。色々言いたいことはあるけど、アイサツ

にはアイサツで答えなきゃね!

 

「ソーナ・シトリーよ。よろしくねゼノヴィアさん」

 

そう呼ぶと彼女は物分かりが悪い子供を見るかの

ような目を向けてくる。

 

いや、それ主を見る目じゃないから!

 

そうツッコミたいが、シロネ様から今までの

自分の行いを指摘された私は、もしかして

私が悪いのか?と思う気持ちもあるわけでして。

 

だから思いきって聞いてみることにした。

聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥って言うしね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そもそもヨシコ=サンって何なの?」

 

「・・・はぁ」

 

その問いに対する答えは溜息でした・・・まる。




無駄に長くなった説明回。

禁忌を知ったヤツをそのまま追放?
この世界観の教会が?有り得ませんよね?

普通に黒タイツ履いた天使とかが信者を
使って殺しに来ますよね?

わざわざ悪魔に聖剣を渡すのも有り得ないし。

自暴自棄になって悪魔になるより、狂信者と
して神の名を語り信者を騙してる上層部へ
鉄槌を下すための手段として悪魔になる方が
自然じゃないかなぁと思いました。

悪魔にならないとその前に死ぬと言う確信
が有ると言う事情も有りますけどね。

どこまでが本当でどこまでが嘘なのか。
悪魔は嘘をつけないと言う世界観でもないので、
契約以外では普通に嘘も吐きますよ。




ヨシコ=サンだって言ってるだろ!ってお話。

ちなみに改造手術は受けてません。



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61話

前話の続き。

ヨシコ=サンの正体が明らかに?!
そしてYOSHITUGUの元に現れた
新たな眷属とは?!

かなり強引な展開だ!
後で修正する可能性大!!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーーソーナ視点ーー

 

「いいかい主殿?」

 

ゼノヴィアさんは、溜息を吐きながらもしっかり

解説してくれるようだ。

 

呼び方がちょっと硬いけど、それはまぁ追々

で良いと思うし、今はヨシコ=サンについて

ちゃんと聞いておかないとダメよね。

 

基本的にシロネ様たちは無駄な事をしないし、

何かしらの意味は有るはず。

 

・・・本人に聞いても教えてくれるんだろう

けど、あんまりにもアレな感じだったから

躊躇しちゃったのよね。

 

「ヨシコ=サンに深い意味はない。タダの偽名だ」

 

あっさり言い切る彼女に驚愕する私。

いや、だって、ねぇ?

 

「意味なかったの?!」

 

それなのにあんな冷たい目で見られるって

いくらなんでも理不尽じゃない?!

 

驚く私を見て、ゼノヴィアさんは溜息を

こらえるように説明を続ける。

 

「あくまで「ヨシコ=サン」には意味が

無いというだけだぞ?偽名を名乗るには

それなりの意味が有る」

 

んん?あぁ、偽名であればヨシコ=サンと言う

名前に拘る必要はないのね。

 

でもなんで偽名が必要なの?

 

「天界や堕天使と正式な休戦協定を結んだ今、

天界勢力の下部組織である教会の連中が正式に

異端と認定して追っ手を放っている聖剣使いの

元エクソシスト、ゼノヴィア・クァルタを、悪魔勢力

の穏健派の筆頭である魔王の妹が堂々と眷属と

して雇い入れたら色々ダメだろ?」

 

・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

「ソウデスネ」

 

うん。そりゃそうよね。それ以外言えないわ。

 

正式に教会から「引き渡せ」って言われた場合、

他の勢力に脅されて眷属を見捨てたら私の評価が

酷いことになるし、シトリー家やお姉様の評価も

最悪になるわ。

 

かといって引き渡しを拒否すれば、折角締結した

休戦協定にヒビが入る。

 

と言うかヒビを入れようとする奴が大勢

いるものね。

 

この場合日本で言えば奉公構いに近いかしら。

 

そんな彼女を雇うなら偽名は必要不可欠よね。

 

わかる人には当然わかるけど、あくまで

彼女はヨシコ=サンとして眷属に加えたと

言うスタンスを保たなきゃダメなのか。

 

堂々とゼノヴィア・クァルタを名乗らせたら

向こうに喧嘩を売ってるようなモノだもの。

 

一見無駄な誤魔化しとはいえ、建前や外交儀礼

として必要な処置というわけね。

 

でもってヨシコ=サンは本当に意味のない偽名

ってわけか。

 

つまりこれは私たちで言えば、はぐれ悪魔を匿うようなモノ。

 

・・・そりゃシロネ様やゼノヴィアさんに

「貴族なんだから言われなくても察しろ」

って言われるわよねぇ。

 

「主殿にも理解できたようで何より。それに

ロウヒーローと言うのは神の尖兵としての

意味があるらしいからね。

私は悪魔となったが、諸悪の根源である教会の

上層部を討つ為ならソレも良し。

マンセマットのような天使もいるし、敵意を

以て本当の意味での神の敵を裁くのも悪くない」

 

さっきも言ってたけど狂信者から見たら、

神が死んでることを隠して信徒や同僚を

騙す教会の上層部は、神の意思を捻じ曲げる

本当の意味での神の敵よね。

 

もしかしたら勝手に悪魔やら堕天使と停戦した

天使や何やらも敵として認定してる可能性も

あるけど・・・私は一応穏健派だってことは理解してたし。

 

今のところ無理に誅殺しようとはしてない

みたいだから良いけどさ。

 

あ、でもこれは確認しなきゃ。

 

「協定が崩れるまでは禍の団に所属した

エクソシスト、つまり貴女と同じような思想

のヒトたちと戦う可能性があるけど、それは

大丈夫なのかしら?」

 

今の段階で禍の団に所属したエクソシストは

天界が決めた休戦に反対してるのよね。

つまりは教会の敵でしょ?殺せるの?

 

「その心配は尤もだが、基本的に彼らは

悪魔や堕天使との休戦を嫌って動いているのだよ。

その決定について上層部への不平不満は

あるだろうが、神の死を隠匿している連中

への怒りがあるかどうかは・・・微妙だな」

 

さすがは解釈の違いで宗派を違え、身内同士で

戦争をする連中よね。

微妙な解釈が違えば敵として認定することも

厭わないってわけか。

 

当たり前のように話す彼女を見て、狂信者の

怖さを理解する。

まぁ穏健派とは言え、教会の上層部と仲良く

したいとは思ってないから私としては問題

無いのかな?

 

「今のところ聖剣を持たない私だが、近い

ウチにカンザシ様が私用の武器を用立てて

くれるらしいからね。

まずはソレを使いこなして主殿の役に立つ

ことを証明させてもらおう」

 

あ、そう言えばそう言ってたわね。

聖剣についても研究してるらしいから、きっと

ソレ系の武器なんでしょうね。

 

そしてソレなら悪魔にとっては毒だもんね。

上手く使えばゼファードルに対する切り札

にもなり得る。

 

さらに実戦を知る兵士だもんね。うん!

流石シロネ様!彼女こそ今の私に必要な人材だわ!

 

あとの問題は、リアスとのゲームでは隠そう

かしら?それともあえて出てもらおうかしら?

 

その辺の調整は私の仕事だから、シロネ様も

指示は出してこない・・・

 

相談すれば意見をくれるけど、傀儡に

するつもりはないってことよね。

 

厳しいのかソレだけの価値を見出して貰えて

ないのかは微妙だけど・・・

まずは無様を晒さないように全力で頑張るわ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーYOSHITUGU視点ーー

 

 

「という訳で新たに一人眷属を紹介します」

 

いきなり姐さんに呼ばれたんで急いで来て、

正座して話を聞いたら眷属の紹介の件だった。

 

「ヨロシクオネガイシマス!」

 

なんか前もこんな事あったなぁと思い

ながらも、返事を返す。

 

同じ失敗はできねぇんだよ!

 

「ウム。決断が早くて何より。今回は前回の

反省を活かして最初から奥様を交えての紹介

になるので、過剰戦力や反対に実力不足に

悩む必要はありません」

 

「「(ほっ)」」

 

自信満々に語る姐さんの後ろで、心底安心

したかのような表情を浮かべる二人。

 

まぁ姉御の指示で空サンに殺されるって

可能性もあったからなぁ。

 

その場合誰も止めないだろうし。

色々大変なことになるから、安心するのも

わかる。

 

いや、俺が強くなって普通に眷属に出来れば

良いんだろうけど、積み重ねが違うからなぁ。

 

「では早速紹介しましょう。教頭先生の

契約者であり、日本神話群の狐殿からの紹介

でもありますので、眷属になるまでは客人

としての扱いとなります。

最低限の礼儀は守るように・・・イイネ?」

 

念を押してくる姐さんに対し、俺が出来る

返事は1つしかない。

 

「ヘイッ!了解しやしたっ!」

 

旦那の契約者ってだけでアレだけど、

キツネ様って確か旦那の内縁の奥さんだろ?

・・・姉御が気を使うヒトだよな。

 

礼儀を守らなかったらどうなるかはわかりやした。

 

まぁ最低限で良いってことは旦那も

キツネ様もいねぇんだろうから、

普通にお客さん扱いで良いって事だ。

 

そんなら特に問題はねぇっすよ!

 

「そのサンシタムーヴはちょっとアレですが、

教頭先生が認めてますからねぇ・・・」

 

つぶやきながらも奥に居るヒトを呼びに

行く姐さん。

 

普通ならティアマットさんやクロウさんに

呼びに行かせるんだけど、まぁ旦那や

キツネ様関連のお客人なら呼び寄せるっ

てのはシツレイなのかも。

 

この人たちってこう言う動作とか相手の

呼び方とかで相手の立場がわかるように

してくれるし、ソレを見て判断すれば良い

ようにしてくれてるから楽で良いんだよな。

 

俺が正座して待ってるのは、もうデフォルト

だから特に疑問は抱かない。

 

それで相手が俺を見下せばソコが付け入る隙になる。

 

そもそも俺が待ってるのはお客人じゃなく、

お客人を連れてくる姐さんだからな!

 

ここでプライドがどうとか騒ぐほど馬鹿じゃねーぜ!

 

「お待たせしました。彼が日本神話群からの

紹介でいらした新たな眷属候補。

戒厳司令官ことゴトウ=サンです」

 

・・・

 

姐さんの後ろから現れたのは旧日本軍?の

軍服を着た厳ついオッサン。

大太刀と呼ばれる大きな刀を持っている。

 

うん。明らかに指揮官っすね。

確かに俺には不足してる要素っす。

 

「ただいま小龍姫様よりご紹介に預かった

ゴトウと申す。天照大神様の神使様より

護国の任を受け、貴公に助力をすることと

相成った。コンゴトモヨロシク・・・」

 

うーむ。厳しい顔や図体に似合わず堅苦しい

アイサツだが、無理をしてる感じではなく、

儀礼は儀礼でキチンと収めているのだろう。

 

それにどこか緊張しているように見えるが、

日本神話群に所属してるヤツからしたら

天照サマからの勅命だし、横の姐さんが

怖いってのもあるんだろうな。

 

「ヨロシクオネガイシマス」

 

どこか親近感を覚えて、俺はゴトウと名乗る

オッサンに挨拶を返した。

 

それに対してあからさまにホッとするオッサン。

うん。絶対上に色々言い含められてたんだな。

 

そう思えばさらに親近感が増してくる。

 

ちなみに小龍姫は姐さんの異名だ。元々

白龍姫とか白龍公女とかもあったけど、

白龍皇と被るしそもそも『皇』の下扱い

みたいで気にいらんってことで姉御に

直訴して変えたらしいな。

 

異名ってそういうもんだっけ?と

思いながらも、そういうのを自称する

連中はいくらでもいるし。

 

姐さんの場合は実力もあるし、龍王で

もあるティアマットさんや邪龍最強の

クロウさんもお嬢とかお嬢様って呼んでる

から、それはそれで良いのだろう。

 

小さいってのは良いのか?って思ったが

その辺は旦那がシロッコとか呼ぶから良いんだと。

 

出来たら白をつけたかったらしいが、皇帝

より上の名前をつければ旦那や姉御に

対する不敬になるとかで諦めたらしい。

 

おかげで白龍皇は姐さんに狙われるハメ

になって戦々恐々としてるとか。

 

まぁ基本的に赤龍帝も白龍皇も姉御が

潰してるからアレだけど、逃げたり

邪魔が入ったりする場合は姐さんが

片付けるつもりらしいな。

 

ティアマットさんはソレでヤられた口だな。

 

「見てわかると思いますが、ゴトウ=サン

は指揮官として優れた方です。

無論戦士としても戦えますし、技量と

言う点では現在の貴方を凌ぐでしょう」

 

ほう。まぁ魔力ならまだしも技術は積み重ねだからな。

 

5年程度しか鍛えてねぇ俺よりオッサン

の方が優れてる可能性は有るだろう。

 

それはともかく・・・

 

「しかし護国ですかい?俺は別に日本に

敵対しようとは思っちゃいませんが、

普通に聖書陣営の勢力ですけど・・・」

 

悪魔になって良いのか?と確認を取ると

オッサンは笑顔になり。

 

「包み隠そうとしないのは良いことだ。

故に私も胸襟を開こう」

 

そう言って自分の思想を解説してくれる。

 

「実は元々古き神の力を借りて聖書の

陣営の侵攻に抵抗しようとしていたのだ。

古き神とはすなわち悪魔。他人の力では

なく自身の力で立てると言うならば

それに勝る喜びはないと言うことだな」

 

あ~なるほど、こういうタイプか。

指揮官にして自身も戦うことを厭わない。

 

理想のためには自分を一つの駒として見る

ことが出来る軍人。

 

ファルビウムの眷属に居そうなタイプであり

実に頼りがいがある。

 

だけど、このオッサンが言う悪魔と

俺たちって違う感じがするんだが・・・

 

そんな俺の疑問を感じ取ったのだろう、

姐さんはオッサンに対する補足説明をしてくれた。

 

「ゴトウ=サンは、元は一般人でしたが、

ふとしたことで聖書の陣営の悪行を知り、

それに対してなんとか抵抗しようとしていたのです」

 

なるほど、悪行ときましたか・・・色々ありますよねぇ。

 

「まぁ私が知ったのは聖書の陣営と言う

より教会の連中の悪行だがな。

その中で面白半分に人間を殺す悪魔や

堕天使の存在を知ったわけだ」

 

ふむ。そもそも教会の連中が兵士を

造るのはソイツらに対抗する為だしな。

 

頷く俺に更に解説を入れるオッサンの話

を聞いて、理解できるところもあるが

やっぱり悪魔になるのは違わね?と言う

疑問も深くなる。

 

教会の非道を知り、その理由を知れば

俺たちに行き着くってのは分かるぞ?

 

だけどよぉ・・・

 

「それなら普通は俺たち悪魔陣営じゃなくて

禍の団に味方するんじゃねぇですか?」

 

普通はそうなるよな?なんでソレが

悪魔になるって話になるんだ?

 

「そうだな。だが他の神話の場合、加護を

与えるとか言っても実際の体は人間の体だ。

天使やら堕天使に襲われた場合、下っ端

ならまだしも上位のモノ達との戦闘となれば

巻き込まれただけで死んでしまう」

 

まぁ、そうだな。ん、いや、そういう事か。

 

「・・・だから悪魔の駒なのか」

 

ようやく話が繋がってきた。

 

「そうですね。基本的に人間とは寿命も

肉体強度も違う悪魔になれば、出来ることの

幅は広がります。

また教頭先生は自由と研鑽を愛します。

力による支配は否定しませんが、統治に

対しての責任も重視しますので、日本神話群

の方々からも一定の信用があるのです」

 

少なくとも旦那方はお遊びでニンゲンを

狩るような真似はしないし、そんな堕天使

やら悪魔を見かけたら普通に殺すもんな。

 

「そう、オセ殿の思想は自然との調和を

愛する日本神話群に非常に近く、私と

しても賛同できるところが多々ある。

更に言えば禍の団が勝った場合、旧魔王派

やら何やらが暴走するのは目に見えている。

なればこそ、私は悪魔でありながら同じ

悪魔をも誅し、日本神話群からも信用のある

オセ殿と繋がりを持とうとしたのだ」

 

元々旦那を呼び出して契約してたけど、

それ以上の繋がりを求めたんだな。

 

その結果が俺の眷属ってことか。

 

「オセ殿からは貴公の下僕悪魔になっても

思想を操られることはないと聞いた。

あとは主人となるモノの気性や実力だが、

貴公には実力があるが悪意がない」

 

悪意ねぇ。とりあえずニンゲン相手に何か

しようとは思わんし、まずは鍛錬が先って

感じだからかね?

 

「オセ殿と契約して今まで自己研鑽をして

きたが、やはり人間の身には限界がある。

だからこそ悪魔になって護国の望みを叶えたいのだ」

 

旦那に鍛えられて来たニンゲンか。

何年の付き合いかは知らねぇがそりゃ

基礎は十分だろうな。

 

「この考えは日本国民として不敬と言える。

だがそれでも天照大神様からの勅という形で

認可も頂くと言う望外の誉れを頂けた!」

 

お、おぉう。スゴイ・笑顔だ。

 

「護国の為に身を捨てるゴトウ=サンの

KAKUGOに天照大神様も心を打たれたのですね」

 

「然り!私は間違えて居なかったッ!!」

 

しみじみと口にする姐さんの言葉に

全力の笑顔で答えるオッサン。

 

うん。気持ちはわかった。俺に護国を邪魔

する気はねぇし、もしも今後悪魔になった

オッサンが日本に手を出した天使や堕天使を

殺して戦争になるってんなら、補佐官サマも

敵に回ることはねぇだろうよ。

 

とはいえ誰彼構わず襲われても困る。

 

「とりあえずゴトウ=サンの都合や渇望

は理解しやした。

悪魔になって、鍛えて強くなって国を護る。

立派なことだと思いやすぜ」

 

俺みてぇな力を求めるだけのガキよりも、

精神的に数段上に居るのも分かる。

 

「未来ある若人にそう言ってもらえると嬉しいな。それで?」

 

俺の言いたいことはわかってるのに

キチンと俺の口から言わせようとする

のは年長者としての指導なのだろうか?

 

少なくとも俺が参考にすべき点が多々ある

って言うのもわかった。

 

「ゴトウ=サンには言うまでもない事だと

思うけど、教会の連中が俺らを狙うみたいに

手当たり次第に連中を殺すのは止めてくれ。

基本的にサツガイは護国の為、でもって俺に

一声かけてくれるようにして欲しい」

 

眷属が勝手に殺りました!なんてのは通用

しねぇし、下手な事したら旦那に迷惑がかかるからな!

 

旦那が望んでる戦争と俺らが考える戦争は

たぶん違うし。

 

「うむ。もっともな話だ!」

 

そう言う思いを込めて頼むとオッサンは

笑顔で頷いた。

 

「いやはや、流石オセ殿の弟子よ。若いのに

責任というものを良く理解している。

貴公のような若者を導くのも一つの護国よな!」

 

いや、護国なのかどうかはわからんが・・・

魔王の親族である俺が日本神話群に味方する

って考えれば、あながち間違いじゃないのか?

 

どこか釈然としないが、とりあえずオッサン

は納得したようだし、俺としても異論はない。

 

「んじゃ契約と行きましょうや」

 

眷属とする代わりに護国に協力する。

そんな感じかねぇ?

 

「うむ、よろしくお頼み申す!」

 

・・・

 

 

戦車の駒を使いオッサンを悪魔にする。

 

うん。俺よりは弱いが3等の実力者だ。

 

旦那が基礎を鍛えたからなんだろうが、

このオッサンでコレならニンゲン最強と

言われるヴァスコ某ってのはどんだけなんだろぉなぁ。

 

そんな現実を思い、遠い目をしながら自分の

未熟さを痛感する俺の前にオッサンが跪き、

アイサツをする。

 

 

 

 

「我は魔人、戒厳司令官・ゴトウ。コンゴトモヨロシク」

 

 

 

「ゼファードル・グラシャラボラスだ。見ての通り

未熟な小僧だが、よろしく頼む」

 

きっちりと主君に対する礼儀をもって接して

こようとするオッサンに、主君として応える。

 

教会の悪行を警戒する常識人みたいだから、

連中の悪行の被害者である三人の眷属とも

仲良くやれるだろう。

 

眷属を得る伝手も無く、色々となぁなぁに

しがちな自分に足りない将来を見据えて動く

ことができて、更に部隊指揮官としての能力を

兼ね備えた人材を紹介してくれた旦那や姐さん

には感謝しかない。

 

感謝しかないんだが・・・そもそも戒厳司令官ってなんだ?

 

満足げに頷く姐さんや、悪魔になった自分の

身を確かめるオッサンの気分を害すのはアレ

だからな。後で本人に確認することにしよう。

 

彼はそう決意して、自らに向けられる冷たい

視線の可能性を回避することに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の名はゼファードル・グラシャラボラス。

ソーナ・シトリーより空気の読める漢である。




原作ではアレでしたが、本来なら堂々と
仲魔にできるようなヒトじゃないんですよねぇ。

建前ってのは重要です。
ソレすらしないと普通に相手の
逆鱗を刺激しますからね。

そして現れた護国の勇将。ゴトウ一等陸佐。
銃刀法違反で捕まる前に悪魔になった模様

悪魔と契約を交わして超人になったんだぜ?
オセ君にピッタリなキャラだと思ってました。

残念ながらフンドシ+刀装備ではありません

知らないヒトはググれ!(不親切)

戒厳指令官とは一体・・・ってお話


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62話

キングクリムゾンっ!!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしっ!




ーー兵藤一誠視点ーー

 

アザゼル・・・先生からトレーニングメニューを

もらった俺たちは各自が修行を積み、部長の実家

であるグレモリー家に集合した!

 

久し振りに見るが、ギャスパーは少しだけ

逞しくなったように見えるし、ルー・ガルー

さんはピリピリした感じがするくらい野生?

を磨いてきたらしい。

 

「イッセーさん!」

 

そう言って俺に駆け寄ってくるアーシア!

あぁ、そうだよ。コレが女の子なんだよ!!

 

アザゼル・・・先生に連れられて堕天使

のヒトたちに鍛えられてきたけどみんな

ムサイ男ばっかだったしな!

 

その中でも、朱乃さんのお父さんである

バラキエルさんは、俺が弱いままだと

朱乃さんが危ないからっていう理由で

徹底的にしごいてきたんだ。

 

だけどソレも白龍皇が受けた修行だって

言うから逃げるわけには行かなかった!

 

なんたってライバルらしいしな!

 

今は特別任務で不在だったけど、あんまり

差があれば部長だって面白くないだろ?

 

最強の兵士として胸を張るにはライバル

には負けられないってな!

 

・・・だけど禁手には至れなかったんだ。

 

アザゼル・・先生が言うには禁手はそんなに

簡単に至れるモノじゃないって話だけど、

白龍皇が簡単に禁手してるのを見たからか

やぱり悔しいよな。

 

そのことを考えてちょっと落ち込んだけど、

少なくとも俺が成長したことは事実だ。

 

部長は何よりも基礎的なことを学ぶべきだ

と言う理由で、細かい戦術やら何やらを

重点的に学び、朱乃さんは自分の中に流れる

堕天使の血を受け入れろって言われてた。

 

楽しみにしててくださいって言われたから

きっとそういうのを受け入れたんだろう。

 

アーシアも、神器の威力の調節は出来なかった

けど、近距離なら飛ばすことも出来るように

なったらしい!

 

ギャスパーは神器の制御のほかに身体能力

を高めるトレーニングをしてたって話だった。

 

だから逞しくなってたんだな!

 

俺たちの成長を見て、ソーナ会長との試合に

負けはないと断言するアザゼル・・先生に

ちょっと違和感を覚えたけど、俺は俺が

するべきことをするだけだぜ!

 

「では総督殿、私たちは第一戦を見ない方が

良いと言うのを撤回すると?」

 

みんなが集まって、報告が終わったあと。

アザゼル・・先生がそんなことを言い出した。

 

へへん。俺たちが予想以上の成長を遂げたという

ことだよな!

 

そう思っていたんだけど・・・

 

「そうだ。第一戦はディオドラ・アスタロト

とシーグヴァイラ・アガレスのゲームに変更

されたからな」

 

はぁ?順番が変わったってのか?なんで?

 

「・・・彼らのレベルが高すぎて、第二戦

や第三戦の若手の心が折れるからですか?」

 

悔しそうに唇を噛む部長。

 

ま、まさか本当にそんな理由で?

 

その意見を否定して欲しくてアザゼル・・先生

を見るも、彼は当然のように頷いて部長の言葉

を肯定した。

 

「その通りだ。今回は来賓も居るからな。

あまりにも差が有れば余興にもならねぇと

判断されたんだ」

 

クソっ。その言葉を聞いて屈辱に歪む部長の

顔を見て、情けなさと怒りでアザゼルに殴り

掛かりそうになるが、そんなことをしたら

我慢してる部長の心意気が台無しになって

しまう!そう思って必死に耐える俺を横目に

見て、朱乃さんが質問をする。

 

「では第三戦は見ることを許可して貰える

のでしょうか?」

 

なんで第三戦なんだ?と思ったけど、普通に

考えればレベルが違うって言うならトリだよな。

 

最初は心が折れるからって理由でダメって

言われたけど、成長した今なら・・・

 

「ダメだな。とりあえず奴らとの試合の

日程が決まり、その直前まで鍛えてから

じゃねぇと無駄になるだろうよ」

 

そんな俺の希望はあっさりと打ち砕かれた。

 

成長したって評価をされても尚、力の差が

あるってことなんだろう。

 

一体どんだけ強いんだよ、そのゼファードル

ってヤツはっ?!

 

「試合の順番は変わるが、お前とシトリーの

ゲームは二日目だからな。まずは第一戦で戦う

連中の試合内容を見て自分の糧にしろ」

 

そう言って立ち去るアザゼル・・・先生。

 

悔しさに唇を噛み震える部長と、ソレを

宥める朱乃さん。

 

パーティの前日だってのに、空気は最悪と言って

良いものだった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

昨日のアレから一夜明け、どうなるかと戦々恐々

してたけど・・・今では部長も気分が回復したようだ!

 

「心配かけてゴメンなさい」

 

そう言いながら俺の頭を撫でてくれる部長!

そうだよ、部長は諦めずに一歩一歩前に進む

って決めたんだもんな!

 

そりゃ今は負けるかもしれねぇけど、俺が

強くなればその分倍加の力も強くなるし、

鍛えて強くなったみんなを更に強化できる

ようになれば、誰にも負けねぇチームに

なるんだ!

 

そう思い直し、俺も前を向こうと決心する!

 

そして昼になり、パーティ会場に向かうために

客間で待機してた俺たちを迎えに来たヒトに

案内され、前の会合の時みたいに地下鉄で移動

する。

 

冥界での部長の人気が凄くて、気軽に移動

出来ないってのが難点だよなぁ。

 

人気があるって言うのも大変だと思いながら

景色を眺めること数時間。

 

魔王領ルシファードに到着した俺は

正装である駒王学園の学生服に着替えて

パーティー会場の建物に入った。

 

ルー・ガルーさんや女性陣(何故かギャスパーも)

は着替えに時間がかかるってことで別行動。

 

なんとパーティ会場の周辺の施設が

全部そういう準備するためのモノらしく、

これから部長たちは髪のセットだとか

衣装合わせを行うんだとか。

 

いやぁ金持ちって凄げぇわ。

 

待機所には地上にいたときでは

考えられないような料理やら何やらが

所狭しと用意されている。

 

種族とか色々あるからこれでも足りない

可能性があるんだとか・・・

 

いやぁ金持ちって凄げぇわ。

 

住んでる世界の違いを再認識しちゃうね!

 

「ん?兵藤か?」

 

待機所でみんなが来るのを待ってたとき

知り合いの声が耳に入ってきた。

 

この会場に来る悪魔で、俺のことを

知ってる悪魔となれば数は限られる。

 

そしてその声に聞き覚えがあると思って

振り返ってみれば。

 

「匙か。久し振りだな!」

 

生徒会に所属する匙が、青を基調とした

スーツを身に纏って立っていた。

 

・・・え?学生服じゃないの?

 

驚愕する俺を見て眉をひそめる匙。

 

「相変わらずアホみたいな顔してるが、それより

なんで学生服なんだ?スーツを忘れたのか?」

 

いや、えっと・・・

 

アホと言われたことより、当たり前にスーツ

の話題を振られたことに狼狽する俺。

 

「学生の正装は制服で良いって聞いたから・・・」

 

新品の制服で来たんだけど。と言うと

匙はマジかコイツ!?って顔をした。

 

「地上の冠婚葬祭ならそうだ。だがココは

冥界で、お前は学生としてじゃなく悪魔と

して出席するんだぞ?

それもグレモリー家の眷族悪魔としてだ。

なら相応しい格好ってもんがあるだろ?」

 

当たり前のように口にしてくる匙に、

言われてみれば・・・と不安になる。

 

青いのはソーナ会長の家を象徴する色

らしく、そういうのを纏うのが正しい

作法らしい。

 

ルー・ガルーさんは大学生だし、ギャスパーは

女装癖があるからって油断してた!

 

「まぁお前んとこの部長さんはニンゲンの

文化が好きだし、ある意味その格好も

オンリーワンだからソレはソレで目立つと

考えたのかも知れんが・・・もしも普通に

勘違いしてたらアレだぞ?お前も主人も恥

かく事になるぞ」

 

真剣な顔をして忠告してくれる匙の様子を

見れば、嘘を吐いてるとかそういうのは

無さそうだ。

 

いや、確かに部長は勘違いするかも。

 

誰も部長には突っ込まないだろうけど

裏で笑われるかも?!

そう思えば居ても立ってもいられない

くらい不安になってきた!

 

そんな俺を見て、匙は呆れ顔で情報をくれた!

 

「あんまりワタワタするな。こういう

ところは服を汚したりした場合に

備えて着替えを用意してるもんだ。

とりあえず自分に合ったサイズの服を

キープして貰えばいい」

 

「な、なるほど。キープだな!」

 

着替えなくていいんだな?!

 

「そう、キープだ。そんでもって人狼サン

に話を聞いて、着替える必要が有ると

言われたら着替えれば良いし、そのままで

良いと言われたらそのままで良いだろ。

勝手に着替えるのは部長さんの顔を潰す

ことになるから止めとけよ」

 

部長の顔を潰す?ナンデ?

 

「主君が下僕の服も用意しなかったって

噂になるんだよ。

当然この会場の中で部長さんや部長さんに

親しいヒトに聞こえるようには言わねえ。

だけど貴族の評価ってのは貴族だけじゃ

なく使用人や領民など色んな立場の人間が

いろんな場所でするもんだ」

 

だから眷属悪魔は主君の顔を潰さない

ように注意しなきゃなんねぇんだよ。

 

ハテナマークを浮かべた俺に苦笑いで

教えてくる匙。

 

そうか、そんなもんなのか・・・

 

部長の眷属として恥ずかしくないように

強くなる!とは言うものの、こういう

常識は正直よくわかってねぇ。

 

グレモリー家で部長のお母さんや教師役

の人に教えてもらってるけどなぁ。

俺はこの間悪魔になったばっかだぞ?

 

そう思ってた俺が甘かった。

 

「いいか兵藤、周りにとっちゃ俺たちが

悪魔になったばかりだとかは関係無い。

眷属に常識がないのは主君が下僕への教育

を怠ったから。そう判断されるんだ」

 

真顔で告げる匙の言葉に、俺は絶句することとなった。

 

「お、俺のせいじゃなく部長のせいになるんだな?」

 

言われてみれば、今まで俺が魔王様に反論

したりアザゼル・・先生相手に騒いだり

したとき、怒られるのは俺じゃなく部長だった。

 

ソレを思い出すと、今の自分の格好が

あまりにも場違いなように思えてきて、

また部長の顔を潰すのかと思うと怖くなる。

 

「そうだ。いいか?主君に恥をかかすな。

着替えが必要だとわかったら、酒でもなんでも

服にこぼせ。それから着替えれば、それはお前

がおっちょこちょいだったって話で済む」

 

な、なるほど・・・

 

コレが下僕悪魔としての心得と言うもの

なんだろう。俺の両肩を掴んで正面から

真剣な顔つきで教えてくれる様子を見れば

「余計なお世話だ!」なんて口が裂けても言えない。

 

「けど、なんでソレを教えてくれるんだ?

俺は今度お前たちと戦う敵だぞ?」

 

普通なら俺が失敗したのを見て馬鹿に

するとかじゃないのか?

 

そう考えてた俺は自分の考えの浅さを自覚する。

 

「だからだよ。対戦相手の評価があまりにも

アレなら、ソレに負けた場合の会長の評価はどうなる?」

 

「え?!」

 

ま。まさか対戦相手の俺にそんな事を

言ってくるなんて・・・

 

アザゼル・・先生が言ってたように、匙も

俺たちに勝てないと判断してるのか?!

 

ま、まぁ神滅具を持つ俺や反則級の神器を

持つギャスパー。

滅びの魔力を持つ部長に堕天使の幹部の血を

引いて悪魔には毒になる光すら使えるって

言う朱乃さん。そしてアザゼル・・先生も上級

クラスの実力があると認めるルー・ガルーさん

に、傷を負っても即回復させることができるアーシア。

 

こんなメンバーが命懸けの実戦経験まで

積んでるんだから、そりゃ初陣の会長が不利

なのはわかってるけど・・・

 

そうか、向こうもソレを自覚してるのか。

だから俺が無様を晒して部長の評価を

落とせば、俺たちに負けた会長の評価は

さらに落ちる。

 

そりゃシャキッとしろ!って言いたくなるよな。

 

「すまねぇ匙。とりあえず服をキープして

からルー・ガルーさんと話して来る!」

 

匙の心遣いを無駄にしない為、俺は男性用の

更衣室として使用されている区画(部屋

じゃなくて区画そのものがそういう扱い)

に向かって歩を進める。

 

「おう、さっさと行け。焦っても走るなよー」

 

そう言って手を振る匙。忠告をくれた恩を

返すためにも、しっかりした姿を見せなきゃな!

 

 

 

 

「・・・俺らが言うのもアレだが、まともに

眷属を教育できねぇのが悪魔の『英雄』か。

そんなだらしねぇヤツを担いで大丈夫かねぇ」

 

 

とりあえずまた血液GETだぜ。

 

俺の背中を見ながらそう呟いた匙の言葉は

俺の耳に入ることはなかった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

結論から言えば俺は着替える必要は無いらしい。

 

本当のパーティならまだしも、今回のは

次期当主のお目見えと言うよりは各家の

当主やお偉いさんが集まるための口実

みたいなモノで、部長や会長はアイサツ

くらいはするけど、それ以上のモノでは

無いんだとか。

 

焦らせてくれた匙を一瞬恨んだが、部長や

朱乃さんが言うには、匙の言うことは

決して大げさでも間違いでもないから、

ちゃんと感謝するようにってことだった。

 

うーむ。部長や朱乃さんが言うなら

そうなんだろう。

 

学生服でも問題が無いってだけで、

普通に考えればこういうパーティーの

ときにスーツで正装するのは間違いじゃ

ないもんな。

 

部長も俺に似合うスーツを新調して

くれるって言うし、結果オーライだ!

 

柄にもなく緊張したのと焦って走ったせいで

貧血気味になったけど、美味いメシ食って

たら回復したし。

 

うん。今度匙には何かやろう。

 

アイツの趣味とかわかんねぇから何が

喜ばれるかわかんねぇけど、その辺は後で聞いてみるか!

 

「最上階にある大フロアが会場みたいね。

イッセー。各御家の方々に声を掛けられたら

キチンとアイサツするのよ?」

 

心配そうに俺を見る部長。実際礼儀作法

に関しては詳しくねぇんだよな。

 

匙も言ってたけど向こうにしたら期間

なんか関係なく、俺は部長の眷属だし。

 

俺一人の問題なら別にどうなっても

良いんだけど、部長に恥をかかすのは

ダメだよな!

 

「正直自信があるとは言えません・・・

出来るだけ目立たないようにします!」

 

そう思って正直に心中を打ち明けると

部長を始めとしたみんなが苦笑いしている。

 

アレ?なんかミスりました?

 

「後ろ向きなんだか前向きなんだか

わからないわね」

 

そう言って頭を撫でてくれる部長に

 

「あらあら。なら私がエスコートして

差し上げますわ」

 

と言って手を取ってくれる朱乃さん!

胸が!胸が当たってますって!

 

「うーうー」

 

そんな二人に負けじと俺の服を掴んで

自己主張するアーシア。

なんか幼児退行してない?!いや、可愛いから良いけど!

 

アーシアの可愛さを再認識してる間にも

部長と朱乃さんの戦いは続いている。

 

「私が一緒に回るわ!朱乃は他の女王の

ヒトたちと情報交換するって仕事が

あるでしょ?」

 

「あらあら、その場にイッセー君が居たら

話も弾むと思いませんか?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

ふ、二人の背景にそんな文字が見えるぜ!

 

「とりあえず、往来の邪魔だ。エスコートに

ついての相談は通路の真ん中じゃなくて、

隅っこに寄るか、自分に割り振られた専用の

待機所でやってくれや」

 

二人の剣幕に怯えてたら、後ろから声が

かかってきた。

 

いや、その通り。ホントスミマセンと

思いながら声がした方を振り返ると、

少し離れたところに緑色を基調とした

中華服?っぽいのを着た2メートル近い

大男が、同じような格好をした数人の

ヒトを連れて立っていた。

 

おそらくパーティーの出席者で、周りの

人たちは眷属なんだろうけど・・・

 

アレ、このヒトどこかで会ったことないか?

 

そう思って首を傾げて記憶を探ってると

いつの間にか戦いを止めていた部長と朱乃

さんがコッチをすごい目で睨んでた。

 

ヒェ?!

 

俺が睨まれたわけじゃないのに、ひゅんとしたぜ!

 

「ゼファードル・・・」

 

お二人の剣幕にビビる俺に構わず部長が

そう呟いた。

 

ゼファードルってアイツか?!麻雀しながら

俺を倒して、会合で部長やサーゼクス様を

侮辱したヤツで、アザゼル・・先生が俺たち

じゃ絶対に勝てないって言い切った悪魔か!

 

怒りより驚きの目で視線を上に向けソイツ

の顔を見れば、部長や朱乃さんの殺意が篭った

視線を警戒するでもなく、ただひたすらに

面倒臭げに受け止めている。

 

「前にも言ったがお前さんに関わる気は

無いんだ。とりあえず通路の真ん中で

騒ぐのは止めて、進むか退くかしてくれ」

 

首をかきながらそう言って来るゼファードル。

 

確かに通路の真ん中で話してたのは迷惑かも

しれねぇけど、コイツはグラシャラボラスの

次期当主じゃないんだろ?

 

それが公爵家の次期当主である部長に向かって

その態度、一体何様だってんだ!

 

俺は殺気を込めてゼファードルを睨み付ける。

 

だが向こうは俺のことなんかおかまいなしに

部長だけを見ている。

 

俺なんか眼中に無いってか?鳥野郎並にシツレイなヤツだっ!

 

コレが普通の悪魔の貴族の態度だと思うと

胸糞が悪くなるぜ!

 

「・・・ゼファードル殿。向こうは特に

動く様子がありません。つまりは先に入場

しても良いと言うことではありませんか?」

 

ゼファードルの後ろに立っていた大柄な

男がそう告げる。

 

コイツも俺の視線なんか気にしねぇってか?!

 

主従揃って気分が悪りぃ!そう思ってると

ゼファードルはひとつ頷き

 

「それもそうか。別に中央を歩くことに

拘りはねぇし。邪魔されなきゃソレで

問題ねぇよな」

 

ヤツは特にその眷属の言うことを否定

することもなく、全員でコッチに向かって

間合いを詰めてくる!

 

その様子は完全に無防備で、通路の

中央で止まってた俺たちをあっさりと

無視して横に寄って歩いていく。

 

ここで俺が挑みかかったら、部長が

問題を起こしたって言われっちまう!

 

『いいか、主君に恥をかかせるな』

 

待機室での匙との会話を思い出し、ここで

このままコイツの態度を見逃すのと挑み

かかって説教することのどっちが部長に

とっての恥になるのかを考え・・・

 

俺は動けなかった。

 

そんなゼファードル一行に対し、俺は

殺気やら何やらを込めた目で見送ること

しかできなかったんだ。

 

情けねぇ。勝つとか負けるとかじゃなく、

部長に無礼を働いた野郎を見逃したのが

この上なく情けねぇ。

 

唇を噛む部長と朱乃さん。奴が行った後を

見つめるルー・ガルーさん。俺たちの殺気に

怯えたアーシアとギャスパー。

 

少しの間無言で固まった俺たちは、誰が

言うでもなく、そのまま会場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対アイツにだけは負けねぇ!第三戦だって

しっかり観戦して、サイラオーグさんが

アイツを倒すところを見届けてやるっ!

 

でもって弱点とかも研究して、俺たちも

あいつをギャフンと言わせてやるぜっ!

 

今も悔しそうに唇を噛む部長の横顔を

見て俺はそう決意したんだ!

 




匙は前回も血を吸ってますね。噂では
赤龍帝の血は神器の成長に役立つんだとか?

と言うか、いくら簡単なパーティとは言え、
貴族家の当主が集まるパーティに名目上の
主役の眷属が学生服で参加って有りなの?ってお話

ちなみに、この時点では匙君に先生になると言う
夢を聞いて涙を流す『お袋さん』が存在します(原作5巻)

いや、別に良いんですけどね?







ここから先は感想やら何やらに対する
作者の価値観です。前と同じように不快に
なる可能性もあるから、それが嫌な方は
読まなくても良いですよ?






基本的にシロネコ達が無能だの性犯罪者
だのと呼んで相手を貶すのは、個人を評価
していないのと、相手を自分たちの潜在的な
敵とみなして馴れ合うつもりが無いからです。

本人やその親族が居るような場では○○殿
とか言う程度の気遣いをしますが、
いない時まで遠慮する価値が無いと判断
してるというのも有ります。

他の陣営所属のゴトウ=サンの前で
ゼファードルを自称弟子と呼ばないのも
一応彼には配慮する価値を見出している
ということでもあります。

ちなみに阿呆眼鏡から貧乳眼鏡になったのは
一応彼女の中では評価が上がってるんです。

シロネコさんは自分が成長したとき
どうなるかを知ってますからねぇ。

それでもまだまだ個人を評価するには
実績が足りないと判断しています。

今までのマイナスがありますからね。
しっかり成長したと言うことを実績で
証明しない限り認められることはありません

努力は誰でもしてるんですからね。


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63話

前話の続き!

原作キャラ登場!
地の文の粗さが目立つっ!


パーティーがぁぁぁ?!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「アレが噂の『無能の英雄』ですか・・・」

 

ゴトウが感慨深そうに頷いているが、無能で

英雄って組み合わせに違和感を感じさせない

のがアイツの凄ぇところだよな。

 

「見ての通りお飾りで疫病神だ。アレとは

極力関わるなってファルビウムのアニキ

からも言われてるからな。

「出来るだけ放置で、突っかかってきたら

瞬殺するように」だとさ」

 

シロネサマや簪の姉御にも嫌われてるからな。

下手に親しくしたらどうなることか。

 

「なるほど。さして難しい問題でもなさそうですな」

 

誰が見ても弱点丸出しだもんなぁ。

 

「連中は赤龍帝に依存してますよね。

赤龍帝を討つか孤立させればソレで

終わりでしょう」

 

トスカがそう言うが、全く持って同意見だ。

 

眷属がある意味で特別扱いされるのは

当然だが、ヤツらの場合は完全に龍の気

に飲まれてる。

 

要を抜くか破壊すれば終わるだろうよ。

 

「今回のゲームは私たちに出番が無さそう

っすからねぇ。楽なのは良いんすけど、

あんまり張り合いが無いのもなんだかなー

って感じっすよねぇ」

 

元エクソシストが悪魔のパーティーに

参加するってのに、欠片も緊張してねぇ

リントのふてぶてしさに苦笑いが浮かぶ。

 

「無能程度に全力を出すわけにも

行かねぇからなぁ。

年寄り共が見たいのはゲームであって

弱い者イジメじゃねぇ。蹂躙もソレは

ソレで面白いかも知れんが、いずれは

敵になる連中も居る」

 

北欧神話だのギリシャ神話だの、色々

招待したらしいからな。

 

少なくとも帝釈天とハーデスが禍の団に

手を貸してるのは確定だから、連中に

手の内を見せるわけには行かねぇ。

 

とは言え・・・

 

「けどアレですよね?連中の奥の手を

引き出せって言われてますよね?」

 

そうなんだよなぁ。

シグが言うように、今回は旦那からの

命令が出てるんだよなぁ。

 

奥の手の内容は知ってるが、ソレを晒す

ようにしろって言われてんだ。

 

だからこそ瞬殺は出来ねぇし、それなりに

追い込む必要もある。

 

ソレにアイツが奥の手を使えば、三等に

届く可能性も有るとか?

 

そうなれば俺達の鍛錬にも使えるし、

ソコソコ楽しめると思うんだが・・・

 

「引き出したところで大したことも無い

可能性が有るからな。あんまり期待

しねぇでヤってみようじゃねーか」

 

そもそもがバアル家の無能だ。魔力を

持たないから闘気がどうとか言ってる

らしいが、話になんねぇよ。

 

珍しいもんで勝てるのは最初だけだ。

応用が利かねぇから対策取られたら

終わるし、そもそも独学で鍛えたところで

限界がある。

 

よーいどんで始まるガキの喧嘩ならまだ

しも、戦場に出るには100年早ぇ。

魔王になりてぇとか言うなら勝手になってろ。

 

「ですな。それにオセ殿がゼファー殿に前座

を用意してくれたようですぞ?」

 

眷属には俺の事をゼファーと呼ぶように

言ってるから俺に関しては良いんだがよぉ。

旦那をオセ殿呼びって大丈夫なんだよな?

 

長年の付き合いがあって本人から許可を

貰ったって言うけど、姉御とか姐さんに

「悪魔になったんだから弁えろ」とか

言われねぇだろうな。

 

とりあえず今は何も言われてねぇから

ソレで良いのかも知れねぇけど・・・

何にも言わずに殺されるから油断が

出来ねぇんだよなぁ。

 

不安を覚えながらゴトウが指差す方向を

見ると、そこにはクロカサマの使い魔が

居て、コッチをじっと見ていた。

 

あぁ、なるほど。俺に実績でも積めってか?

 

「・・・俺とトスカで行こう。ゴトウは

リントとシグを頼む」

 

少し考えて、流石に全員が抜けるのは問題が

有るだろうと思い、俺と結界を使えるトスカ

で向かうことにする。

 

「了解です」

「畏まりました」

「行ってらっしゃいっす~」

「頑張って~」

 

ゴトウはともかくリントとシグは完全に

他人事だな。

 

気が抜けることこの上ねぇが、肩の力を

抜くことが出来たと考えれば悪くないか。

 

気合を入れなおしてクロカサマの使い魔

の後を追いながら、相手について思いを馳せる。

 

公式の場で実績になるってことは、相手は

禍の団なんだろうが、問題はその中の誰を

用意してるかってことだ。

 

シャルバだのクルゼレイだとかなら、蛇を

使われても奥の手を使えばなんとか戦える

だろうが、旦那たちのスパルタを知ってる

俺としては、いきなりオーフィスが居る

可能性も考慮しなきゃなんねぇんだよなぁ。

 

・・・その場合は生き延びればセーフか?

 

強敵が居るのは間違いないだろうな。

 

期待半分・恐怖半分で会場の外に出て

近くの森へと辿り着いた俺が見たのは・・・

 

「ねこだな」

 

「ねこですね」

 

猿と背広を着た男がネコについて語っていた。

 

奴らは確か禍の団の猿と聖剣使い。

 

 

 

 

「・・・トスカ。猿の方を任せる」

 

情報が確かなら、背広の男は聖剣使い。

実力的にはトスカも戦えるが、聖剣は

場合によってはやべぇからな。

 

「了解です・・・ホウイ」

 

さぁてコッチが見つかる前に出来るだけ

準備しとこうか。

 

 

・・・なんでネコについて語りながら

戦闘態勢を取ろうとしてるのやら。

 

クロカサマが何かしたのか?

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ーークロネコ視点ーー

 

(ΦωΦ)フフフ…!はぐれ悪魔だから暗躍が

メインで、更に神野とかが諜報をする

もんだからめっきり影が薄くなって来た

黒歌お姉さんの出番にゃ!

 

まぁ影が薄い方が暗躍しやすくなるし、

ご主人様にも地味な仕事をキチンと

出来るって評価されるから、ソレは

ソレで良いんだけど!

 

そもそもご主人様と出会って無ければ

白音とも離れ離れになってたしね。

 

白音に「白音も悪魔になっちゃった♪」

って言ったとき「ほわーん」って感じ

だったけど、アノ時の判断は間違って

無かった!

 

しっかり恩返しするにゃ!なんて思って

たのもあるけど、結局のところは自分の

為なんだよにゃ~。

 

白音と一緒に居たいって言うのも極論

すれば私の我侭だし。

 

そう言う建前を取っ払えば、クロネコ

としてご主人様の側に居る幸せを満喫

したいってだけなんだ。

 

ソレに性交があんなにイイものだなんて知らなかったし。

 

アノ房中術で互いを高め合う感じはいい、

最後に魔力をもって行かれる感覚も好き。

 

メスとしてご主人様には勝てない。

 

もう私はご主人様から離れられないにゃ~。

 

・・・そもそも離れる気はないけど。

 

白音と一緒に鍛えてもらって、今じゃ

普通の魔王なんかには負けないくらいの力は有る。

 

まぁ神様とかには勝てないけど、そもそもが妖怪だし。

 

神様になるには1000年必要だよね~

 

子供も欲しいけど、今はまだダメだって。

ナニカあるみたいだけど・・・その辺は追々で良いの。

 

とりあえず捨てられないように

キチンと仕事しないと!

 

とは言え、今回の仕事って冥界に潜む

禍の団の連中の中で、ソコソコ強い

のを自称弟子に当てるってダケなんだよにゃぁ。

 

アイツに実績上げるって言うけど、

白音の実績にしちゃ駄目なのかな?

 

いやまぁ、地上に居る白音がわざわざ

コッチに来て、手抜きした戦闘なんか

したら違和感ありまくりだけど。

 

まぁいいにゃ。とりあえずコイツ等を

引き摺りだすにゃ。

 

術式展開。さぁ行け私の使い魔たち!

 

「ナニモノ?!・・・なんだねこかぃ」

 

ふふん。お猿さんはそこそこ仙術の心得が

あるみたいだけど、純度が足りないわ。

 

初代ならまだしも、こんな未熟者に破れる

ような術じゃないわよ?

 

「・・・むぅ。ねこがいますね」

 

聖剣コールブランドを持った剣士。コレが

アーサーか。まぁこの術は聖剣だとか

そう言うのは関係無いからね。

 

さぁ認識しろ、警戒しろ、ソレがお前たちを

術に嵌めることになる!

 

けてるけてるけてるけてるけてるけてる~

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーー美猴視点ーー

 

(ΦωΦ)

 

 

冥界での潜伏の指示を受けて、禍の団の

連中が用意した潜伏用の建物の中で

くつろいでいたら、急に何者かの視線を感じたぜぃ。

 

普通なら違和感を抱かないだろうが、

野生動物が俺っちを見るかのような

視線でかなりさりげなく俺っちを

観察してるような気配を感じたんだ。

 

最初は勘だったが、意識すればするほど

その視線が間違いなく俺っちを捕捉して

いると言うことがわかる。

 

この自然な気配の消し方、かなり使い手だ

・・・そう考え警戒しつつ、さりげなく

振りむけば・・・

 

(ΦωΦ)

 

そこには黒いねこがいてじっとコチラを見ていた。

 

普通なら「なんだねこか・・・」で済む話だが、ココは冥界。

 

普通のねこなんか居るハズがねぇ。

つまりは何者かの使い魔だろ?

 

「なぁアーサー。こっちを見てるあの

ねこ、どう思う?」

 

さりげなく同僚のアーサーに話を振る。

 

 

(ΦωΦ)

 

 

「スゴク・・・ねこですね」

 

何の警戒もしていないかのように

ネコをネコとしてしか認識しない

アーサーに、警戒心よりも呆れを覚える。

 

コイツ、動物好きだったのか?いや、

ルフェイが魔女だからクロねこに対して

敵意を抱きにくい?

 

判断がつかないが、まぁねこを認識しつつ

さりとて警戒して無いと言うなら、向こうを

騙せる可能性も有るってことだ。

 

禍の団に所属してるヤツの使い魔なら

コッチに接触してくるだろうし、接触

してこないで監視してくるってことは

ココを襲撃しようとしてる奴が居るって

ことだよな?

 

 

(ΦωΦ)

 

 

ココを用意した禍の団の旧魔王派が

裏切ったのか、偶然見つかったのは

知らねぇが・・・緊急事態だろう。

 

「とりあえず準備しようぜぃ」

 

何時襲われても良いように拠点の中の

金目のモノは収納していく。

 

 

(ΦωΦ)

 

 

こっちを見るねこの視線に耐えながら。

 

「おや、あそこにもねこがいますね」

 

 

(ΦωΦ)

 

 

アーサーが二匹目のねこを見つけた

ようだ。

 

暗闇の中に居るからわかりにくいが、

目が輝いてるからわかったのだろう。

 

なんつーか、普通のねこの目じゃ無く、

人間っぽさって言うのかねぇ?

そう言うのが見え隠れしてるんだぜぃ。

 

(ΦωΦ)

 

隠形は一流だが、視線に感情が乗る

時点でこのねこの主は未熟なんだろう。

 

問題はその主が情報をやってる先だ。

コレは一回捕獲して逆探知するべき

かもしれないぜぃ。

 

 

(ΦωΦ)

 

 

そもそも、この場所をどうやって

見つけたかって言うのも有るし。

 

 

(ΦωΦ)

 

「むぅ・・・ねこが増えた?」

 

考えているうちに、コッチを見る

ねこの数が増えているようだ。

 

一見すれば何にもねぇ所や、ソコに

入んのかよ?!と言うような隙間

からも視線を感じる。

 

(ΦωΦ)

 

向こうも俺っちにバレたことを察して

数を増やして来たんだろう。

 

そう言えばなんか若手のゲームをする

ってことで来賓を招いてパーティー

をしてるんだったか?

 

(ΦωΦ)

 

その警備の為に色んな所を探ってて

ココもバレたと考えれば、有り得なく無い。

 

(ΦωΦ)

 

ねこ多いな?!

 

完全に包囲されてるんじゃないか?!

 

(ΦωΦ)

 

姿は見えずとも気配はわかる。

 

ソレを感じればかなりの数のねこが

俺達や建物を見張っているのが分かる。

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

「ねこです」

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

「ねこだな」

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

とりあえずこの視線を向けてくるねこが

何をしてくるでも無いが、そもそも潜伏

してる俺達が、これだけの気配に囲まれ

てるってのは焦燥感を煽る。

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

また増えた?!コレは何かの罠か?

もしくは絶対に逃がさないと言う包囲網?

 

「アーサー!とりあえず斬ってくれぃ!」

 

空間を切り裂くアーサーの技でもって

移動すれば、包囲も何もねぇんだぜぃ!

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

 

アーサーが空間を切り裂いた瞬間。

俺達に向けられる視線が更に増えたことを感じる。

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

もしかしてコレは何かの術なのか?!

俺っちが知らない術理に内心驚愕するが、

そう言うのは後だ!とにかくここはヤバイ!

 

アーサーも何かヤバイとは感じている

のだろう。

 

俺と目を合わせて一つ頷くと、俺達の

周囲全ての空間を切り裂き、視線を一度

全て遮断したうえで更にもう一回空間を

斬って、その中に入っていく。

 

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

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(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

(ΦωΦ)フフフ…私の前で空間を切っても

無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ♪

 

・・・

 

アーサーが切り裂いた先は、俺達の

拠点からも、パーティー会場からも

少し離れた森の中だった。

 

普通に考えれば、パーティー会場の

護衛がココに目を向けることは無いし、

向こうからココだと距離も離れてる

ので、同じヤツが警備してるってことも

無いだろう。

 

一体あの視線は何だったのか?

一息吐いて状況を思い出そうと

したとき

 

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

(ΦωΦ)(ΦωΦ)(ΦωΦ)

 

・・・またアノ視線を感じた。

 

アーサーも同じく視線を感じたのだろう。

 

普段は顔色を変えないコイツが

目に見えて顔色を悪くしている。

 

とりあえず聞くまでも無い事だろうが、

アーサーが感じたモノと今の俺っちが

感じたモノの認識を合わせようと

 

「ねこだな」

 

と俺っちが聞けば

 

「ねこですね」

 

アーサーも頷いて俺を見る。

 

その目はさっきから俺を見ていた

ねこの視線のように見えて・・・

 

アーサーが俺を見る目に恐怖を覚え、

「俺を見るなぁぁぁ?!」と叫び

出しそうになった時。

 

「何がネコなのか知らねぇが・・・

禍の団所属の闘戦勝仏の末裔美猴と

聖剣使いアーサー・ペンドラゴンだな?」

 

バッ!

 

あのままだったらアーサーと俺っちが

同士討ちしていただろう。ソレが術者

の狙いだったと判断した俺っちは術に

嵌められたことを悔いる。

 

もう視線は感じない。

 

恐らく第三者にして俺達の共通の敵が

現れたことで術が解除されたのだろう。

 

一触即発の空気は霧散し、俺達は声を

掛けてきた方へと視線を向ける。

 

ソコに居たのは緑を基調とした中華服の

ようなモノを着込んだ2M程の大男と、

同じ格好をした12、3歳前後の小柄な少女。

 

向こうは何故か俺達を知ってるようだが、

俺っちも、俺達もコイツを知っている。

 

ゼファードル・グラシャラボラス。

 

今回のパーティーの主役の一人であり、

凶児と呼ばれていた問題児。

 

そしてコカビエルを圧倒し、ウチの

リーダーを一蹴した強者!

 

「YOSHITUGUッ・・・」

 

コカビエルとの戦いでは見えない槍を

持っていたらしいが、今はどうだ?

 

と言うか、何故ここに居る?

 

「あぁん?俺の事を知ってるようだが、

どっからだ?堕天使陣営からの情報か?」

 

訝し気にコチラを見るヤツからは、

情報収集と言うよりタダの確認と

言った感じしか伺えない。

 

「ゼファーさん。尋問は捕えてからでも十分です」

 

怖い事を言う少女だが、言ってる

事は間違ってない。

 

今の段階でヴァーリに勝ったコイツに

勝てるとは思ってねぇが、かといって

何もせずに逃げるってのもな。

 

アーサーを横目で見るも、目を向け

られたアーサーは無言で首を横に振る。

 

だよなぁ。そもそもココにコイツが居る

って事は、アーサーが空間を切り裂いた

際にナニモノかが、干渉して来たって

ことだろう。

 

その干渉が何かわからない限り、簡単

には逃走出来ねぇだろう・・・

 

ソレにヴァーリが敗れて、コイツを

越える為に今も修行してるのは事実だが、

実際どの程度の強さか知らねぇから俺ら

としては興味があるのも事実だ。

 

「ヴァーリを一蹴したと言う強者。

興味が無いと言えば嘘になります!」

 

とりあえずアーサーが行ったか!

 

出来るだけデカい音を出して護衛の悪魔を

集めれば、そいつ等が足手纏いになって

動きを止める可能性も有る。

 

それまで精々時間を稼がせてもらうぜぃ!

 

「残念ですがお猿さん。貴方は既に終わってます」

 

唐突に聞こえる少女の声に反応し

そちらを見れば、少女は目を閉じて

コチラに掌を向けている。

 

無防備に見えるが、YOSHITUGUが

戦場に連れてくるヤツがタダのガキとは

思えない。

 

とりあえず術で牽制しようと右手で

印を組もうとするが・・・

 

「う、動かねぇ?!」

 

拘束されてる!?いつの間に?!

 

「攻性結界・ジョウソ・・・結ッ!」

 

「ぐぅっ!!」

 

少女の言葉に合わせて細い針のような

何かが俺っちの肩を貫いた。

 

俺の防御用の術式をいとも簡単に

貫かれたことに驚くが、少女の技を

身に受けてソレの凶悪さを理解した。

 

コイツ、細くて先が尖ってる上にドリルみてぇに回転してやがる!

 

結界術で動きを封じられている俺を

貫く様子は、まさしく標本!

 

可愛い顔してえげつねぇ真似をしてくれるッ!

 

自分を拘束する術式を解明しようとするが、

どう見ても普通の結界術じゃねぇ。

 

コレはまさか・・・

 

「結界系の神器かよっ!」

 

ソレを知ったところで何も解決はしない。

 

むしろこの拘束の解除が一気に厄介に

なったという事実に絶望を覚える。

 

何せ一定の法則を持つ術式と違い、それぞれ

が訳の分からねぇ起源を持つのが神器だ。

 

どの系統の結界なのかを知らなきゃ抵抗すら難しい。

 

クソっ!俺っちがアーサーと睨み合ってる

間に仕込みを終わらせてやがったか!

 

「ぐはっ!」

 

アーサーも聖剣の一撃を捌かれて

ヤツに蹴り飛ばされたっ!

 

アーサーは人間だからどうしても肉体的な

耐久度が低い。

 

ただでさえ2Mを越える大男の、さらに

魔力や闘気を纏った一撃だ。

 

その攻撃は、自分が喰らったわけでも無い

のに、アーサーがもう立てないであろうと

確信するような重さが内包されていた。

 

くそっ!訳の分からねぇ視線からココまで

全部向こうの予定通りかよ!

 

準備不足が悔やまれる。このままでは俺らは

ココで終わる!そう思ってたら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしてるのゼファードルッ!」

 

紅髪の悪魔が、眷属を連れて現れやがった。

 

期待していた足手纏いの登場だ。だが、

今のアーサーじゃ逃げることもできねぇ。

 

結果として敵が増えただけと絶望仕掛けたが・・・

 

「アーシア!向こうの彼がヤバいッ!すぐ回復して!」

 

そう言ってアーサーを回復させようとする紅髪の悪魔に

 

「ハイッ!」

 

異論も挟まず回復させる元聖女。

 

「邪魔はさせねぇぞ!!」

 

へっぴり腰でYOSHITUGUを睨む赤龍帝と

 

「それ以上ヤるなら私たちが相手をしますわ!」

 

赤龍帝にならんで決めポーズしている女王

 

「「・・・」」

 

ナンダコレ?

 

即座にアーサーを回復させた悪魔の行動に

俺っちとアーサーが絶句して動きを止め。

 

「「・・・はぁ」」

 

少女とYOSHITUGUは、溜息を吐いて

頭を振り、明らかに殺る気を無くしたように

構えを解いた。

 

それと同時に俺の拘束も解ける!

 

「美猴っ!」

 

回復したアーサーが俺の元へ駆け寄り、

有無を言わさず俺の背後の空間を切り裂いた!

 

「「「え?」」」

 

とりあえずこの場から逃げる!

 

術者の存在は警戒しなきゃならねぇが、

今のYOSHITUGUの様子を見れば

不思議と大丈夫な気がする。

 

「ありがとよ!」

 

「次は必ず貴方に剣を届かせます!」

 

 

「「「えぇ?!」」」

 

 

アホな顔してコッチを向く紅髪の悪魔を

尻目に、俺っちとアーサーはその場を

逃げ出すことに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

その後の事は旧魔王派に聞いたが、禍の団

に所属する俺達がパーティー会場から

それほど離れてないところに居たことを

問題視して、パーティは中止となったらしい。

 

警備を担当していた現魔王派は各勢力から

散々嫌味を言われていた!と、上機嫌で

報告してきて、なんかボーナスやら酒も

貰ったんだが・・・

 

何故か事件を起こす前に俺達を発見して

撃退したのが、悪魔の英雄『紅髪の滅殺姫』

となってることに俺っちとアーサーは首を

捻る事になる。

 

まぁYOSHITUGUと戦ったとか

言ったらヴァーリがへそを曲げるから

ソレはソレで助かるんだが・・・

 

あの視線は一体何だったのか。

 

アレ以来ネコを見るたびにビクっとする

俺っちとアーサーを不思議そうに見る

ルフェイの視線が痛いぜぃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ΦωΦ)

 

 

 

 

 

 




クロネコ、働く。働く?
恐ろしい術だった・・・

トスカは結界について色々研究
しているようだ・・・

なぜ英雄がこんなところにっ?!

それぞれの細かい動きは次話だッ!ってお話。

原作のクロネコさんは現段階の性犯罪者が
禁手した程度で恐怖を抱き、尻尾を巻いて
逃げるんですよねぇ・・・

龍王と戦うお猿さんと比べて戦力的にどうなの?


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64話

その後の偉い人たちの動き。

前話がかなり強引なので、前と一緒に修正
する可能性有り!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

シェムハザからの説教を終えた俺達は、

我々に用意された会議室に移り、今回の

件の顛末を確認していた。

 

「サーゼクス・・・」

 

もう、何と言うか、なぁ。

 

「・・・すまん」

 

俺達の視線を受けて頭を下げるサーゼクス。

 

シェムハザや他の勢力の来賓には、禍の団に

パーティー会場の近くに侵入されたとだけ

報告した為、警備体制の粗やらなにやらの

説教を受けることになったが・・・事実は

そんな生易しいモノじゃない。

 

「ゼファーが見つけて捕える為にあえて

半殺しにした向こうの剣士を、回復した

挙句に逃走を幇助したって・・・」

 

ファルビウムは報告書を読んで頭を抱えている。

 

「敵には闘戦勝仏の末裔も居たんでしょ?

情報を抜けなくても、捕獲するだけでも

外交的な利益は計り知れないんだけど」

 

セラフォルーも流石に笑えないようだ。

 

そりゃそうだ。各勢力と和平や休戦協定を

結ぼうと言うときに、向こうの弱みが

有るのと無いのでは成果が全然違うからな。

 

しかも貸しを作る相手が闘戦勝仏と

なれば、どれだけの利が発生するか。

 

ソレをあっさり逃がすのに協力する

なんて、まさしく利敵行為。

 

和平する気あんのか?って聞きたくなるよな。

 

「そもそもリアス一行がパーティー会場を

抜け出した理由が、ゼファードルが少女を

連れて退出したからって・・・」

 

口を噤んでいたリアスたちを別室に待機

させ、人狼に確認を取った時にソレを

聞かされた時は思わず殴り倒そうとする

のを堪えるのが大変だったぞ!

 

「例えゼファーがその子とナニしようと

リアスには関係ないじゃんか~」

 

ファルビウムの言う通りだ。何やら

正義感に燃えていたが、やってること

はタダの覗き。

 

「リアスちゃんから上がってる報告書も

『自分は悪くない』って言うのを根幹に

してるから公平性の欠片も無いし」

 

リアスの中では『凶児』のゼファードルが

いきなり無抵抗の者を蹴り上げた。

 

つまり弱いモノ虐めを始めたのを止めたと

言うのが言い分だが・・・

 

ゼファードルからの報告だと、眷属が

放っていた使い魔が森を散歩中に何者か

に殺されたから、ソコに何かあると思って向かった。

 

向かった先では、聖剣を持つ剣士と

闘戦勝仏の末裔が何やらしていたので

問いただしたら戦闘になった・・・か。

 

リアスたちには純粋に戦闘が速すぎて

見えなかったんだろう。

 

その結果相手が無抵抗に見えたと言う所か。

 

まぁ聖剣を持つとはいえ、人間の身では

今のゼファードルの相手は不可能だろうし、

闘戦勝仏の末裔は眷属が神器で動きを封じて

いたらしいからなぁ。

 

「ぜ、ゼファードル君が嘘を吐いている可能性は!」

 

サーゼクスが一縷の可能性を込めてそう言うが、そんな可能性は無い。

 

無駄な願望はさっさと潰して現実に向き合って貰おう。

 

「無い。会場の建物の上に設置された望遠型

防犯カメラにもしっかり向こうの二人の姿が

映ってるからな。

相手の容姿や装備を見れば、ゼファードルの

言い分が正しいとわかるだろう?」

 

顔まではわからんが、流石に持ってる聖剣はわかる。

 

アレはコールブランドで間違い無いだろう。

そして猿っぽい相手が闘戦勝仏の末裔と

言われればそう見えるしな。

 

この辺は捕虜を取れれば良かったのだが・・・

 

がっくり肩を落とすサーゼクスだが、

流石にゼファードルにシツレイだろうよ。

 

「それで、ゼファーはリアスの行動に絶句。

その間に連中が逃げたって話だけどさぁ。

コレ、ゼファーの未熟を責めたりしないよね?」

 

まぁ戦闘行動を止めて敵を逃がしたのは

未熟と言えば未熟だが・・・そもそも

彼は若手としてパーティに参加してるんだ。

 

若手が未熟なのは当然だし、コレは絶句

して動きを止めるのも当然だろう。

 

実家から離れたとはいえ、ファルビウムに

とって親族の問題だ。

 

まさかコレでテロリストを逃がしたと

言われて、責任を取れと言われても断固

拒否するだろうよ。

 

「とりあえず今回は逃がしたのではなく、

事件が発生する前にテロリストを発見して

撃退したと言うことにすれば良いだろう」

 

そうすれば責任問題にはならん。

むしろ功績になるだろう。

 

まぁ侵入を許した俺達の評価は落ちるが、

ソレは事実だからどうしようもない。

 

今回は何かが起こる前に対処出来たことを最大限利用する必要が有る。

 

そうしないと責任問題が大きくなり過ぎて、

処分しなければならない者が大勢発生してしまう。

 

前回の会談でサーゼクスの部下が大量に

失われたことを考えれば、コレ以上の

人材の損失は控えたい。

 

今の段階で我々に大きな失点が生まれるのも不味いしな。

 

それに何より、今は俺達以外に真実を

知るものが居ないと言うのも大きい。

 

侵入者が現れたのも、戦闘したのも、

逃走されたのも、すべて悪魔陣営以外

は知らないし、あえて公表することで

コチラの誠意を示すことにもなるだろう。

 

俺の提案を受けて、サーゼクスはバッと

頭を上げ、セラフォルーとファルビウムは

ソレしか無いかと納得をする。

 

だがそうなると次の問題となるのが・・・

 

「えっと、その場合彼らを撃退したのは

ゼファーちゃんになるの?ソレとも『英雄』

リアス・グレモリーになるのかな?」

 

コレが問題だ。セラフォルーの問いに

考え込む俺とファルビウム。

 

本来ならゼファードル一択なんだ。何せ

今回連中を発見したのも戦ったのも、

彼だから、功績は当然彼のモノだろう。

 

だが本人は敵を逃がしたことに対して

責任を感じているらしく、功績どころか処罰を求めているようだ。

 

己の未熟さを認め、己を甘やかすこと

をしないストイックさには好感を抱くが、

それ故にココで功績と言って彼を評価

しても、ソレは彼にとっては誉め言葉

どころか侮辱にしかならん。

 

「俺としては本人が望まぬものを無理やり

押し付ける気は無いが、ゼファードルは

功績を欲しがると思うか?」

 

一応ファルビウムにも確認を取るが

 

「ん~無いだろぉねぇ~」

 

無気力に即答するファルビウムを見れば、

本人に聞くまでも無いと言うことだろう。

 

「じゃあリアスちゃんに背負って貰うのかぁ」

 

サイラオーグなら喉から手が出る程

欲しがるであろう実績を、あっさりと

投げ捨てるゼファードルに苦笑いを

禁じ得ない。

 

それとは反対に、投げ捨てられた実績を

罰ゲーム扱いで背負わされるリアスにも

多少の憐れみを感じる。

 

いや魔王としては多少の憐れみを感じるが、

個人としてはそのまま13段の階段を上って

欲しいと思ってるぞ。

 

「む、むぅ・・・」

 

俺の言葉に微妙な顔をするサーゼクス。

 

妹に罰が下るどころか実績になるのは

有り難いが、あまりにも看板が大きく

成りすぎていることに危機感を覚えたか?

 

今でさえ無能の英雄として嘲笑の対象と

なりつつあるが・・・本人がソレをきちんと

罰として認識してるかどうか。

 

名実ともに英雄に相応しい悪魔になって

見せる!とか言い出したら100年は

隔離する必要があるぞ。

 

功績を焦る無能の英雄なんざ、友軍に

とっては死神以外のナニモノでもないからな。

 

とりあえずアレは、さっさと実家に戻して

教育とゲームに専念してくれればそれで良いんだ。

 

もしくはさっさと結婚して、英雄のまま

引退してくれれば最高なんだがな。

 

「ソレで、リアスのゲームの日程はどうする~?」

 

ん?リアスとソーナのゲームは明後日の

予定だが、日程の変更だと?

 

「あぁ、このままだとリアスちゃんは

禍の団の精鋭と戦った事になるもんねぇ」

 

・・・なるほど。戦闘の疲れを癒す必要

も有るし、そのままの日程にすれば不公平

感が出ると言うことか。

 

「り、リーアたんや『英雄』の事を考えれば、

トリはマズいんじゃないかな?」

 

ふむ。サーゼクスの言い分もわからんではない。

 

このままではメッキが剥げるどころではないからな。

 

それだと『英雄』にした意味が無いし、

むしろ最初に戦えば疲労を原因にして

負けることもできるか。

 

とは言え今更日程を変えれば、明日の

ゲームに備えて準備しているディオドラと

シーグヴァイラの気勢を削ぐことになる。

 

しかし『英雄』の為だけに実際に戦闘した

ゼファードルの戦闘を早めるのもなぁ。

 

さて、どうしたものか・・・

 

「とりあえずゼファーに聞いてみようか?

ついでに何か褒美が欲しいかどうかも確認

しなきゃダメだし~?」

 

「それもそうだな」

 

まずは本人に確認しよう。本来なら「黙って

指示に従え」と言えば良いことだが、功績を

奪う形になるからな。

何かしらの補填をするのが健全な組織と言う

モノだろうさ。

 

「り、リーアたんへの確認は?!」

 

「「「ねーよ!」」」

 

寝言をほざくな。黙って指示に従わせろ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

悪魔領で開かれてるパーティに参加せず

赤龍帝のデータを確認していたところ、

俺の代理としてパーティに参加していた

シェムハザから急に連絡が来たと思えば・・・

 

「パーティ会場の側に闘戦勝仏の末裔と

コールブランドを持った剣士だぁ?」

 

もうなんつーか。警備はどうした?とか

言いたいとこだが、コールブランドを持った

剣士が相手だと相当上位の悪魔じゃないと

瞬殺されちまうよな。

 

それに転移みてぇな真似をして来たって事は、

闘戦勝仏の末裔がなんか術を使ったか?

 

2人が出現したと言うポイントを見れば、

なるほどと納得はできる。

 

街の警備担当が向かうにも微妙な距離だし

会場になったホテルからも微妙に離れてる。

 

警備の穴を突いたと言った所だろう。

 

ココで何をしようとしていたのかが

気になるが・・・現在はパーティは中止、

調査して状況を確認次第来賓に報告する

ことになっているとか?

 

まぁナニカされる前とは言え、ここまで侵入

されたとなればな。

 

取り合えず、今わかってることを教えて

貰おうと確認を取るが

 

「リアス・グレモリーが?」

 

シェムハザから齎された情報に首を

傾げざるを得ない。

 

『えぇ、なんでも今回のパーティーが

狙われる可能性を考慮し、警備の穴と

言えるポイントに使い魔を待機させて

いたとか』

 

あぁなるほど。駒王学園でテロリストの

行動を読んで罠を張った天才サマなら、

その程度のことは容易いだろうなぁ。

 

「この件で魔王連中は『英雄』が必要だったと判断したわけだな」

 

完全な失態。後付けの英雄が必要な程の

ナニカが起こったってことだろう。

 

『そのようですね。とりあえず調査報告書

が上がるのを待ちますが・・・』

 

報告書ったってなぁ。

 

「必要ねぇ。それらしく纏めてくるだろうが

最終的には中身がねぇモノになるだろうよ」

 

そもそもシェムハザを始めとした来賓が

報告を受けるまでその存在に気付かな

かったんだろ?

 

悪魔とて報告する義務が無いのを態々

報告してきたのは・・・誠意か?

 

それともさっさと自分たちで創った話を

公開しないとヤバイことだった?

 

ま、おそらく両方か。

 

今更俺らが調査したところで悪魔陣営が

発表したモノ以上のモノは手に入らねぇ。

 

それにしても・・・多分現地に居たら

俺も教育係の一人として巻き込まれて

たんだろうなぁ。

 

あの赤龍帝が開発した馬鹿見てぇな

魔法もあるし。

 

遠くから見る分には、笑い話としては

面白れぇと思えるかも知れねぇが・・・

何でアイツらは、何度も死に掛けて

おきながら死ぬ気で鍛錬が出来ねぇんだ?

 

危機感が無さすぎだろう。

 

まぁ俺としては勝負が分かり切ってる

シトリー戦なんかより、ゼファードルが

無能とゲームをするときにどんな対策を

取って来るのかが気になるところだ。

 

奴は神滅具対策は当たり前だと言うが、

白龍皇の半減ならまだしも、赤龍帝の

倍化に対する対策ってのが思い浮かばねぇ。

 

ソレに、いまだに魔法陣と詠唱の関係が

わからねぇ。

無能一味程度に何かしらのモノを使う

とは思えねぇが、サイラオーグとか言う

奴との戦いでは何か使うかも知れねぇし。

 

今やってる実験の結果、普通の龍の手の

効果で出来る倍化じゃどんなに頑張っても

神を抑えるには出力が足りねぇ。

 

やはりアノ詠唱とコカビエルが纏った

『理』ってのを理解出来ねぇことには

話は前に進まねぇよな。

 

「そう言えばそっちにはオーディンの

爺さんも居たな?」

 

パーティ参加予定者には北欧神話の主神

であるオーディンが居たはずだ。

 

『えぇ、簡単な挨拶と世間話をする

程度でしたが、レーティングゲームには

それなりに興味があるようですね』

 

あの爺さんが若手のゲームに興味だと?

何を企んでやがる・・・

 

「とりあえず明日は俺もソッチに行く

事になる。会談の予定を組んでくれねぇか?」

 

神野明影について何処まで知ってるか

知らねえが、ヤツは北欧神話でも洒落に

ならねぇ存在のハズ。

 

騙して計画に利用するとか、部下や同盟者

として使うとか、そう言うことが出来る

存在じゃねぇ。

 

何かしらの情報が有れば、必ず俺に

探りを入れてくるはずだ。

 

反対に探りを入れて来なければ奴に

関する情報が無いって事だ。

 

その場合は『理』に関する情報だけ

貰えれば良い。

 

『了解しました。向こうに打診します』

 

シェムハザには俺の狙いは大体話してる

から、連中に断られるような交渉はしない

だろうよ。

 

「頼んだ」

 

後は戦争推進派のオセが若手のゲームに

興味を示すかどうか・・・。

もしかしたら仮想敵としてハーデスや

帝釈天を見る為に来るかも知れねぇな。

 

そんときゃ何が何でも情報を入手する

ようにしねぇと。

 

『それと、試合の日程が再度変更される

ことになりました』

 

どういうことだ?いや、そうか。

 

「連中の発表ではリアス・グレモリーは

禍の団との戦闘をしたんだもんな」

 

ソレを考えれば後に回すのが普通か。

 

それとコレはアジュカやファルビウムが

無能に言い訳を許さない環境を創った

と見れば良いのかねぇ。

 

『ですね。休息と英雄のお披露目を兼ねて

トリにすることになったようです』

 

はっ!まぁ何も知らなければそうなるわな!

 

サーゼクス辺りは今頃頭を抱えてる

ことだろうがよぉ、可哀想なのは

シトリー家の嬢ちゃんだろうよ。

 

まぁ俺としちゃ茶番が一つ減るんだから

ありがてぇ話だけどよ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー奥様視点ーー

 

「自称弟子のヤツ!折角クロネコに命じてソコ

ソコの実績になりそうな相手を選んでやったと

言うのに、アレは無いと思いませんか?!」

 

旦那様の膝の上で旦那様に頭を撫でられながら

愚痴ってもねぇ。

 

普通に顔がにやけてますよ。まぁ気持ちはわかりますが。

 

しかし伯師妹が珍しく私や旦那様の前で愚痴って

きましたが・・・私としては、アレはアレで良い

と思いますよ?

 

あそこで闘戦勝仏の末裔とか言う雑魚や

アーサーとか言う眼鏡を殺した場合、

闘戦勝仏本人は死人に口なしと尻尾切りを

するでしょうし。眼鏡を殺したところで、

聖剣の扱いが面倒になるだけです。

 

わざわざ天界にくれてやるのはアレだし、

かといって我々が回収するのも違います。

 

殺さないなら捕らえることになりますが、

捕えてもすぐに英雄派の絶霧(ディメンション・ロスト)で逃げるでしょ?

 

その際も聖剣の扱いが残りますからね。

 

ならばここは無能のせいで逃がしたと

言う事実と、自称弟子は働いたと言う

実績を取るべきでしょう。

 

その上で聖剣が欲しいなら、他の勢力が関与

しないところで回収すれば良いのです。

 

「落ち着け白っ子。自称弟子やクロネコに無能に

関わるなと命じたのは俺だし、二人ともあの場の

判断としては間違ってない」

 

外交的な理由もありますが、闘戦勝仏は私や簪の

修行に使えますからね。

 

自称弟子はそこまで考えては居ないでしょうが、

結果的にはまずまずの結果ですよ。

 

クロネコもミーム汚染術式を試せたと言って

ますしね。

 

「むぅ・・・教頭先生がそう言うなら

シカタナイですね」

 

うむ。それで良いのです。下手に無能に関わって

私たちが行っている連中に対する対処がバレても

困るし、管理者が出てくればクロネコや自称弟子

では持ちません。

 

かと言って旦那様や空殿が動くのはもう少し

先だし、今は各勢力に対して旦那様は無関係を

装う必要が有りますからね。

 

「あ、それとディオドラ・アスタロトの

ところにクルゼレイが訪れたそうですよ!」

 

ほう。明日の試合に備えた蛇の受け渡しですかね。

 

ソレを旦那様に報告出来ると言うことは、

アレは現実を知りましたか。

 

「またか。オーフィスもなぁ。どれだけ蛇を

量産すれば気が済むのやら・・・」

 

旦那様が溜息交じりで嘆いてますが、

実際何を考えてるんでしょうね?

 

雑魚がドーピングしたところで意味が無いし、

強者にはあんなのでは意味がありません。

 

本気でグレートレッドを狙うなら、

あの・・・何でしたっけ。

サマエル?とか言うのを使うか、空殿の

如く全てを崩壊させるだけの力を使うか、

もしくは自分の出力を上げる必要が有ると

思いますがねぇ。

 

「とりあえずブツは海蛇が預かってます。

ドーピング剤がないから、明日のゲームは

予定通りの動きをすると思われますよ」

 

ディオドラとシーグヴァイラですか。

 

余興を盛り上げる前座程度にはなるかも

知れませんが。どちらが勝っても大勢には

影響ありませんね。

 

・・・そういえばシーグヴァイラが簪に書簡で

技術提供を求めたとか言ってましたが、普通に

断ったそうですね。

 

コレを逆恨みして、軍事的でも政治的でも何か

してくれれば我々がアグレアスを堕とせるん

ですけどねぇ。

 

旦那様が嫌うアレの存在はさっさと消滅させたい

のですが、ソコまでは望みすぎでしょうか。

 

「明日はソレで良い。そもそも両者ともゲーム

に夢を見ていないから、勝敗も気にならんよ。

内容も普通に若手のゲームになるだろうから、

初々しさを求める老人には丁度良い余興になる

だろうな」

 

ですよねー。そんな感じですよねー。

 

「自称弟子は二日目に移るようにしたそう

ですが、これは別に良いんですよね?」

 

伯師妹は振り返りながらそう言って、旦那様に

抱きついて上目遣いをしてます。

 

なんかいつにも増して積極的ですが・・・

 

まぁ今日は彼女の日ですからね。シカタナイ。

理解ある正妻の私は、伯師妹のついでに膝枕と

頭を撫でて貰うだけで我慢してあげましょう。

 

「問題ないな。アイツも面倒事はさっさと

終わらせて戻りたいだろうし、ソーナの

試合は茶番だ。下手に見て油断するのを

避けるって言うのは悪くない判断だよ」

 

うむ。油断慢心ダメ絶対の精神をしっかりと

体現しているようで何よりです。

 

「そんなもんですかねぇ。まぁ教頭先生の邪魔にならないなら良いです!」

 

そう言って旦那様にさらに強く抱きつく伯師妹。

 

ふむ、なんと言うか今日は随分と甘えますね。

 

「・・・師姉様、今日は私の日ですからね?」

 

ふむ。何を今さら。

クロネコやシロネコを加えたことで伯師妹も

奥のことで自己主張するようになったのは

良いことですが、今回は無用の心配です。

 

私は順番を飛ばしたりしません。

 

ただ伯師妹が疲れて寝たあとで、旦那様を

労って差し上げるだけです。

 

だから寝所に行くのを早めても良いのですよ?

 

いや、こうして頭を撫でて貰うのも捨てがたい

ですから、もう少しこのままでも良いですけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ~師姉様が幸せそうなのは嬉しいけど

なんか釈然としないです!」

 

ふ、これが狐殿にもない正妻の特権なのです。

・・・悔しくてもあげませんよ。

 

 




今回も確かに失態ですが、他の勢力には一切
迷惑がかかってませんから、勢力としては
ソレほど問題ではありません。

侵入者を警備が見つけて処理したと言い張れば、
侵入されたことはマイナスですが、いざと言う
ときの対応はキチンとしていると言い張れます。

そもそも警備とは抑止と防止ですから、抑止が
出来なくとも防止は出来ましたって感じだと
思ってください。

リアスを英雄にするのは魔王たちの中では
完全に罰ゲームです。
高い階段を上らせて、首に縄をかけるような
行為ですね。

サーゼクス的には首の縄さえなければ
名声だけが残るのでなんとかしたいもよう。

実際部長さんが結婚してグレモリー領に籠れば
旧魔王派は態々敵が多い地上に行く必要が無く
なるし、魔王派も餌を管理しやすくなります。

また、意味がわからない行動をとって関係者の胃
を痛めることも無くなるので、みんなにとって
最高の結果になります。

まぁ赤龍帝との結婚を認めてるかどうかは・・・

原作ではカジノに入り浸ってた総督。拙作
ではモチロンそんなことはしてません。

オセ君たちは今日もほのぼのしてるもよう。

感想で話を膨らませる卑怯モノ?
誉め言葉ですな!(久し振り)

ネタバレはやめてくだされや~ってお話


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65話

アザゼルさん、爺さんと会談するの巻

そして原作主人公たちに救いの手が?!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


オーディン。北欧神話の主神にしてて戦争と死の神。詩文の神でもあり吟遊詩人のパトロンでもある。

 

魔術に長け、知識に対し非常に貪欲な神であり、自らの目や命を代償に差し出すこともあった。(wiki)

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

まぁこの知識に対して貪欲であるが故に

悪魔の駒に興味を持ったって可能性が高いか。

 

何せヴァルキリーが死した勇者を導いて半神

にするまでもなく眷属を作れるのだ。

 

勇者が減った昨今、戦力強化を考えれば

これほど都合の良いモノは無いだろう。

 

兎に角俺としてはこの知識に貪欲な神が

どのような知識を持っているか。

 

そしてソレがヤツに通用するようなモノ

なのかどうかが知りてぇんだ。

 

「久しいなオーディン」

 

本来ならエロ話やら悪態の一つでも付いて

場を和ませるべきなんだろうが、今の

俺にはそんな余裕はねぇ。

 

「ほっ悪ガキの堕天使が神妙な顔しおって。

長年敵対しとった悪魔連中と何やら探り合い

をしているようじゃが、何ぞ悪巧みかの?」

 

悪巧みか、まぁオーディンにしたら神殺しの

一撃を生む術式の開発と研究はソレを遥かに

越えるモノだろうが・・・この調子だと

気付いてねぇな。

 

つまり神野についても知らねぇ可能性が高い。

 

半分の安堵と半分の失望を感じるも

会談を無意味なモノにしない為に、俺は

溜息を堪えて話を進める。

 

「俺達が自己の発展向上を求めたなら、

アンタらには悪巧みとも言えるかもしれんな」

 

敵対勢力が発展するなら立派な悪巧みだろうよ。

 

「ふむ。所詮は親たる神を失い、親が

残した玩具に縋って迷走してるガキかと

思えば、一応ガキなりに前に進もうとは

しているようじゃな」

 

髭をしごきながらそう言うオーディン

からは、挑発ではなく本気で感心している

ような雰囲気が感じられた。

 

・・・俺の神器研究はそんな風に見られていたのか。

 

研究者として執着していると言う自覚は

あったが、ソッチ方向は全く自覚して

居なかった。

 

その視線で見れば神器に興味が無いと

言い切るアジュカの方がよっぽど

独り立ちしているように見えるだろう。

 

「正直今回の会談では、政治家気取りのガキ

のお遊戯を見せられるかと思っとたがな。

今の貴様なら多少は有意義な会話が出来そう

じゃわい」

 

この爺さんにしてみたら俺はどこまで

行ってもガキなんだろう。

だが、年長者としてガキの話を聞いてやる。

と言うなら遠慮なく行かせてもらう。

 

「そうかよ。そんじゃ早速有意義な会話って

ヤツをしようじゃねぇか」

 

こっちとしても無駄話をしてる余裕はねぇしな。

 

「よかろう。儂としても御主との会談

なんぞよりレーティングゲームを観戦

したいからのぉ」

 

まぁこの爺さんは元々その為に来たんだしな。

とりあえず余計な前置きがいらねぇのは助かる。

 

「なら最初の話題だ。禍の団から天界が

保持してるシステムの改良についての提案

が有ったと思うが・・・なぜ断った?」

 

俺の言葉に目を細めるオーディン。

 

情報が洩れてることに警戒をしたのか、

それとも他に何か理由があるのか・・・

 

この情報は俺達堕天使内部の裏切り者

を調査した際、浮かび上がって来た阿呆を

拷問して入手した情報だ。

 

元々連中はオーフィスを神とし、システム

を動かす為のキーとして利用しようとしてた。

 

しかし現在一番システムに詳しいミカエル

ですらシステムの全容は把握していない。

 

ならばどうするか?

 

知恵者を雇えばいい。

 

その結論に至ったヤツらは、知恵者であり

知識に貪欲なオーディンに目を付けた。

 

自分たちのバックにオーフィスが居る以上、

爺さんが下手な動きをしても潰せると

勘違いしていたのだろう。

 

オーディンとしてもシステムを解析

できれば、それと同様のモノか更に

発展させたモノを開発し、自分たちの

勢力に組み込むことも出来ただろう。

 

もしくはそのまま乗っ取るなりすること

だって出来たはずだ。

断る理由がわからねぇんだよな。

 

向こうは何やら考え込んでいるが、俺は

急かすことなくオーディンの言葉を待つ。

 

「・・・提案と言うよりは、オーフィスの

名を使った脅しじゃったがな」

 

どうやらどこまで話すかを決めたらしい。

 

実際黙秘しても向こうは痛くも痒くも

ないのだが、俺との会談に意味を見出した

以上、ココで終わらせる気は無いのだろう

 

黙って話を聞く俺を見てオーディンは更に話を続ける。

 

「正直システムの改造には興味が有った。

だがのぉ、オーフィスが背後に居るとは言え、

悪魔の一勢力の脅しに従ったとなれば・・・のぉ?」

 

そう言って、わかるだろ?と言わんばかりの視線を向けて来る。

 

「なるほど・・・」

 

そりゃそうだ。親父やら旧魔王がいて、

その配下として来たってんなら交渉の

余地が有るかもしれんが、今の旧魔王派は

まさしくガキの集まりだ。

 

そんな連中に、対等どころか格下の扱い

を受け、主神がソレを受け入れれば神話群

としての格が歪む程のダメージを受ける。

 

当然内部の反発も強くなるし、ロキ

辺りがラグナロクを起こす可能性も

有っただろうな。

 

頷く俺を見て理解が追いついたと判断

したか、向こうも結論を口にする。

 

「儂ら北欧神話群の格が落ちるし、

内部の反発もシャレにならんわい」

 

そりゃそうだ。

 

「まぁそれでも反発する連中を説得か

無視してあえて従い、システムに干渉

できるようにしてそのまま横取りする

と言うのも考えたがの」

 

そう、俺が警戒したのはソコだ。

 

この爺さんが大人しく従うはずも無いし、

オーフィスは爺さんが上手くシステムを

使えるのを見たら、旧魔王派連中なんか

よりも北欧神話と取引する可能性が高いと

踏んだんだ。

 

「お主の警戒は尤もじゃ。じゃがなぁ

その後のことを考えれば、流石に躊躇

せざるを得んよ」

 

溜息を吐きながら事情を説明されるが

良く分からねぇ。

 

システムを奪って、オーフィスとも敵対

しないってんなら何に躊躇するんだ?

 

コレは堕天使の長でしかない俺と神話群の

主神であるオーディンの差か?

 

「その後のこと?」

 

だからこそ聞いてみたが・・・

 

「・・・はぁ」

 

返事は失望と言うか何と言うか

微妙なリアクションだ。

 

「そのシステムを中に抱え込んだ場合、

いつのまにやらこちらが乗っ取られる

と言う可能性を考えたのじゃよ。

ソレが聖書の陣営の伝統的なやり方じゃし、

聞けば何やら神の意志が宿った神器も有る

と言う話ではないか」

 

・・・あぁ、ソレを警戒したか。そりゃ俺達は

ヤル方だから気付かねぇが、ヤられる方に

したら真っ先に警戒するよなぁ。

 

ソレに、その可能性が無いとは言い切れんし。

 

「わかったか?つまり関わらぬのが一番じゃ。

それに悪魔だ天使だ堕天使だとそれぞれの

動きが曖昧な状況な『禍の団』よりは

『聖書の陣営』として纏まってくれた方が

戦いやすいしの」

 

・・・なるほど。

 

「もしも旧魔王派と和解されて悪魔の戦力が

増えても面倒だし、システムが別の勢力に

奪われて妙なことになっても困る。

それなら数が少ない現魔王派に旧魔王派

を潰させ悪魔としての戦力を低下させる。

ついでに早期に協力関係を持つことで信頼関係

を構築し悪魔の駒の情報を得て、類似品の

作成や対抗策を練る方が建設的だ。

ついでのついでに悪魔が弱れば天使もわざわざ

システムを弄ろうとはしないってか?」

 

『禍の団』の連中は完全に不発弾扱いか。

爆発するなら身内で勝手にしてろと言う訳だ。

 

「ま、そんなところじゃよ。勝手に内乱

でも何でもしてくれるなら儂らとしては

大助かりじゃ。

悪魔の駒についての情報が得られると言う

なら、多少の面倒事は我慢できるしの」

 

流石は神話群の主神と言ったところか。

女に甘い好々爺どころじゃねぇ。

 

他にも色々思惑は有るだろうが、コレ以上は

有料になりそうだ。

 

今回はこれまでだな。

 

「了解だ。正直に答えてくれてあんがとよ」

 

何処までが本音かは知らんがな。

 

「ほっ。引き際まで心得たか。無駄に

情報を得ようと探りを入れてくると

思ったんじゃがのぉ」

 

今までの俺ならそうだったろうさ。

そうやって相手に無駄な警戒させたり、

無駄にコッチが情報を持ってないことを

暴露してんだろう。

 

どっかのサーゼクスみたいにな。

 

「ほっとけ。俺も成長するんだよ」

 

あの兄妹を見て自省出来ねぇようなら

組織の長なんか出来ねぇよ。

 

「言いよるわ。なら授業料の支払いを

求めても良かろうな?」

 

だよなぁ。タダで情報をまき散らすような

爺さんじゃねぇよなぁ。

 

「等価交換だ。授業の内容に見合った分

しか支払わねぇぞ」

 

何を知りたいか知らねぇがな。

 

「ふぉっふぉっふぉっ。ソレで良いわ。

聞きたいことは一つ。答えれんと言うなら

ソレでも良いぞ?」

 

成長した悪ガキに対するご祝儀ってか?

随分と太っ腹なことだ。

 

「ま、答えれるかどうかは聞かなきゃ

わからんからな。とりあえず言うだけ

言って見てくれや」

 

この様子なら神器についての情報か

禍の団に関する情報だろうな。

 

そう思ってた俺が甘かった。

 

 

 

 

「ならば問おう。貴様らが研究している、神を殺す術式は何の為じゃ?」

 

・・・空気が死んだ

 

 

 

 

今までの笑顔を消し、真顔で、かつ

殺気を込めた目で俺を見るオーディン。

 

爺さんにとって、俺は所詮悪巧みを

しているガキに過ぎなかったんだ。

 

ご祝儀?休戦協定を結んだ俺達の視察?

悪魔の駒の情報の入手?どれも違う。

 

すべてはこの問いをするために爺さんが張り巡らせた罠。

 

嘘や誤魔化しは一切許さんと言う意思が

込められた視線に、俺は今回の会談での

敗北を確信した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

ま、まさかあのゼファードルがいきなり

蹴りを入れて吹っ飛ばしたのが、俺達に

敵対するテロ組織の一員だったなんて!

 

今回、パーティの途中でアイツが少女を連れて

会場から抜けたのを、アイツを睨んでた部長と

朱乃さんが見つけて、少女に無理やり碌でも

ねぇことをするんじゃないかって思って

心配して使い魔に後を追わせてたんだよな。

 

それで人気のない森に行ったんで、コレは

マズいと思って俺達を連れて森に入ったら、

ゼファードルが急に無抵抗の人を蹴り

飛ばして半殺しにしたのを見たんだ。

 

ソレを見た俺達は『凶児』として名高いヤツが

貴族の特権を利用して弱い者虐めをしていると

判断し、蹴られた人をアーシアに回復させて

アイツに正義の鉄槌を下そうとしたんだけど・・・

 

回復して貰った人は、猿?みたいな人

を連れてさっさと逃げてしまったんだ。

 

状況が分からない俺達は、ゼファードルの

横に居た少女が呼んだらしい警備の悪魔

のヒト達に連れられて、事情聴取を受けたんだけどさ。

 

その後でサーゼクス様からの使者として来た

グレイフィアさんが、頭痛を堪えるかの

ような仕草をしながら部長にお説教している

のを聞いて、俺や朱乃さんは自分たちが

やらかした事を知ったんだ。

 

「そもそも彼が自分の眷属と何をしても

お嬢様には関係ありません」

 

そんなことっ!と反論しようとするが、

グレイフィアさんに視線だけで黙らされた。

 

説教の邪魔するなってことだよな。

 

釈然としないが、結果的にとは言え、

今回ミスしたのは俺達だ。

お叱りを受けるのは当然だろう。

 

「戦闘の邪魔をしたばかりかテロリストの

回復までしてしまっては言い訳も出来ません。

今回の件でグレモリー家はグラシャラボラス家

に対して賠償金を支払うこととなりました」

 

ば、賠償金・・・俺達がやらかした

ことで、部長のお父さんやお母さんが

お金を支払うってのか?

 

「ただ、今回の件はお嬢様がテロリストを

逃がしたとするのではなく、テロリストが

悪さを働く前にお嬢様が発見し、ソレを撃退

したと言う筋書きになります。

対外的にはお嬢様の実績となるんですね。

その為、このグラシャラボラスへの賠償金も

大々的に告知されるものでは無く、当主同士

の了解と言う形となりますね」

 

はぁ?

 

「何ですって!?」

 

俺も驚くが、部長はもっと驚いている。

そりゃそうだ。俺達は撃退したどころか

その戦いの邪魔をしたんだもんな。

 

驚く俺達を余所にグレイフィアさんは

説明を続ける。

 

「悪魔の『英雄』がテロリストを逃がしたと

なればお嬢様の価値が落ちます。

以前アザゼル総督に言われたと思いますが、

この『英雄』の看板はお嬢様を守る為の

楯でもありますが、同時にテロリストを

おびき寄せる餌でもあるのです」

 

淡々と説明するグレイフィアさんだけど、

心なしか本気で怒ってるような気がする。

 

「その餌が実績を上げた後で断交すると

言うのはあまりにも不自然ですからね。

サーゼクス様やファルビウム様の配慮でも

ありますが、それ以上にジオティクス様が

グラシャラボラス家の当主様に誠心誠意

謝罪したこともあり、内々のモノとなりました」

 

ぶ、部長のお父さんが誠心誠意謝罪?!

いや、賠償金を支払うんだから当然の

ことかも知れないけど・・・

 

「お父様が・・・」

 

部長の顔色はもう真っ青だ。

 

前回の駒王学園ではギャスパーの件とか

で沢山ミスもあったけど、アレは英雄の

看板を背負うことでなぁなぁにしてもらった。

 

だけど今回は看板を担いだ上でお父さん

が謝ることになってしまったんだ。

 

家族を大事にする部長へのダメージは計り知れないだろう。

 

「本当ならゲームが終わった後で告知する

予定でしたが・・・」

 

そう言ってショックを受けている部長に

追撃をかけるグレイフィアさん。

 

「ジオティクス様及びヴェネラナ様より、

お嬢様は教育が終わるまで地上への移動を

禁じると言う命が下されました」

 

え!?地上への移動の禁止?!

ソレって駒王学園に行けないってことか?!

 

「何ですって?!」

 

またしても驚く部長、いくらなんでも

やり過ぎじゃ・・・

 

「『餌が餌として機能せず、しかも針に

掛かった敵を逃がすなど言語道断。

教育が終わるまで絶対に外に出すな』と

ファルビウム・アスモデウス様より勅命が

下り、サーゼクス様を始めとした御三方も

それに同意しました」

 

「お、お兄様まで?!」

 

そんな!お父さんやお母さんだけじゃ無く

サーゼクス様まで部長を責めるのかよっ!

 

「サーゼクス様としては今回や前回の件の

ほとぼりが冷めるまでお嬢様は冥界で

勉強と修行することを望んでおられます」

 

しゅ、修行って言うけどやってることは

軟禁だろ?そんなのって・・・

 

「お嬢様の行いは情報操作により民衆

には英雄として評価されていますが、

真実を知る上層部では胃痛と頭痛の源と

なっております。ソレを自覚して下さい」

 

ず、頭痛と胃痛って・・・一瞬冗談かと

思ったけどグレイフィアさんは真顔で

部長を見つめている。

 

コレはマジだな。

 

サーゼクス様も相当ダメージを受けているのだろう。

 

グレイフィアさんにはなぁなぁにして

許す気は無いようだ。

 

「コレを機にしっかりと自分を見つめ

なおし、グレモリー家の次期当主として

相応しいと言われるような方になって

もらわねば困ります」

 

そう一切の反論を許さないように言い切った。

 

貴族家の当主云々っていうのは、自分を

個人として見て欲しいと望む部長にとって

決して面白くない話題だ。

 

だけど決して避けて通れないと言うことも

部長は理解している。

俯いて悔し気に歯を食いしばる部長に

なんて声を掛けて良いのかわからない。

 

「ちなみに眷属の方々に関してですが、

ルー・ガルー殿は今まで通りに大学部で

学業に専念してくれて構いません」

 

俯く部長を放置して俺達眷属に指示を

出すグレイフィアさん。

 

本来なら俺達の主は部長だけど、今回の

指示は部長のお父さんか、サーゼクス様

から出てるのだろう。

 

無理に逆らえば部長の立場が悪くなる

と思えば、逆らう気にもならない。

 

ま、まぁあんまり理不尽な内容なら

流石に反対するけどなっ!

 

でもってルー・ガルーさんは今まで通りか。

 

「了解です」

 

自分への指示を聞いて安心したように了解

するルー・ガルーさん。まぁ大学でも色々

あるんだろうな。

 

「ギャスパー・ヴラディ殿も今まで通り

PCを使った契約業務を行ってください。

あぁアザゼル総督から渡されているはずの

訓練メニューは必ず消化してくださいね」

 

「わ、わかりましたぁ!」

 

ギャスパーも地上か・・・リングや俺の血

で神器の制御が出来てるからな。

元々PCを使った業務で若手の眷族悪魔の

中じゃ結構な利益を上げてるって言うし。

 

「アーシア・アルジェント殿は冥界で

自衛の為技術の習得と使い魔の捜索を」

 

「は、はいっ!」

 

アーシアは冥界か。いつも俺が守れれば

良いけど、俺が居ないときも自分の身を

守れるくらいにならないと不味いって話

だったもんな。

 

「姫島朱乃は女王としてお嬢様が不在の間、

地上で管理者の代行業務を行うように」

 

朱乃さんは地上か。女王だから王の部長が

いない間に代わりに働くのか

 

「・・・はい」

 

朱乃さんはさっきから元気がない。

 

主である部長が暴走したら抑えるのが

女王の仕事だって説教されたらしいもんな。

 

「ちなみに貴女が行うのは書類へのサイン

だけです。実際の管理業務は現在駒王町の

管理を代行しているグレモリー家の悪魔が

引き続き行いますので、口を出さないように」

 

え?それって、働くなってことかよ?!

 

「そんな!?」

 

俺と同じ結論に至ったのだろう、朱乃さん

も反論しようとするけど・・・

 

「黙れ」

 

グレイフィアさんの本気の威圧で、俺達は

動きを止められてしまう。

 

「勿論お嬢様の度重なる失態には私たちの

教育不足も有るでしょう。

ですが、そもそも普段から王を支えるのは

私たちでは無く女王である貴様だ。

貴様がマトモに女王としての仕事をして

いればここまでお嬢様の評価が落ちる

ことは無かったのだッ!!」

 

朱乃さんに対しては他の眷属に対する

遠慮のようなモノはない。

 

相当不満が溜まっているようだけど・・・

 

評価が落ちていると言う言葉に凹む

部長と項垂れる朱乃さんを無視して、

グレイフィアさんは最後に残った

俺に向き直る。

 

「兵藤さんは冥界で修行と勉強です」

 

「え?!」

 

その言葉は、夏休みが終わったら当たり前の

ように地上に戻って、当たり前のように

学校生活を送ると思っていた俺に、思った

以上の衝撃を与えた!

 

驚く俺に、さっきの朱乃さんに対する

モノとは違った、扱いに困る子供を見る

かのような目を向けて来るグレイフィア

さんに反論の言葉を探すが・・・

 

「今の貴方は知らないことが多すぎます。

それに修行も必要です。それなのに地上の

学校で、机に座って勉強などさせている

余裕はありません」

 

と言い切られてしまい、反論の言葉どころか

その機会すら潰されてしまう。

 

今の自分に悪魔としての常識が無いのは

事実だし、悪魔になったばかりだからって

言い訳は通用しないっていうのも匙に説教

されたばかりだ。

 

修行も必要なのは分かってる。

 

学校での授業も真剣に受けてるとは言えない。

 

「・・・はい。わかりました」

 

だから俺はその言葉に頷くことしかできなかったんだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

(ΦωΦ)ほほぅ。

 

 




オーディンも色々考えているもよう。
まぁ当然自勢力の繁栄が第一です。

エロギャクに可能性を見いだすほど馬鹿ではありません。

とうとう救いの手(説教)がッ!

ファルビウムやアジュカ、セラフォルーは
被害の拡大を抑える為に、サーゼクスは
ほとぼりを冷ます為に隔離に賛成してます。

説教しているグレイフィアさん。
自覚症状はあるので、厳しく接する模様。



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66話

前話の続きッ!

オーディンとアザゼルの会談は続く。

そして一仕事終えた魔王様。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーーアザゼル視点ーー

 

「どうした?答えられんか?」

 

沈黙する俺に対して殺意を鋭くしながら

問いかけるオーディン。

 

何が答えられないなら答えなくて良いだ。

そう言った瞬間に俺を始めとした周辺に

居る堕天使やら悪魔を皆殺しにする気

満々じゃねぇか・・・

 

勢力を率いる主神の殺気を受けて、俺は

自らの未熟さと迂闊さを呪うが、完全に

後の祭りだ。

 

この沈黙だって誤魔化しと判断されれば、

爺さんは俺を殺して堕天使が神を殺す術式

を研究してると糾弾した上で、聖書の陣営

を滅ぼそうとするだろう。

 

嘘も誤魔化しも悪手。隠蔽も出来ん。なら

正直に話すしかねぇが、何処まで話せる?

 

コイツは神野と繋がりがあるのか?

 

・・・いや、まて。神野は俺達に希望を残すはずだ。

 

既に爺さんと接触してた場合、爺さんはどう動く?

 

爺さんが俺達に協力して術式の研究に

協力した挙句、最後にその術式を奪うか?

 

俺達に向ける・・・可能性はねぇな。

そんなの無くてもその気になれば殺せるんだ。

 

他との戦争に使う?それこそ俺の知った

ことじゃねぇ。

 

術式が完成すれば神野の絶対性にヒビが入ることは事実。

 

完成した術式を奪われたり、オーディンに

対策を取られたとしても、そもそもの話

俺達の狙いはオーディンじゃねぇしな。

 

神野と接触してねぇならそのまま味方に

引き込めばいい。

 

利用されても構わねぇ。使えるモンは

何でも使うし、今はどんな情報でも欲しい。

 

「ほう、ようやく腹を決めたか」

 

俺が覚悟を決めたことを察したのか

オーディンからの殺気が少し和らぐ。

 

コレは殺気で委縮しないようにって言う

爺さんなりの気遣いなんだろうが・・・

 

まぁいいや(本職)

 

正直に打ち明けて協力を仰げば、確実に

研究は進むんだ。

 

ここは巻き込む一択だ!

 

「・・・神野明影、もしくは神野悪五郎日影

ってヤツを知ってるか?」

 

まずは今の名前だ。名前なんざ有って無い

ような奴だがその名で現界して来た以上、

全くの無関係ってことは無いだろう。

 

「ふむ・・・知らんの。いや、悪五郎と

やらは日本の妖怪の名前じゃったか?」

 

流石は知識に貪欲とまで言われる神だ。

そんなことまで知ってたか。

 

だがこの感じだと本人には会って無い?

いや、さっきそう決めつけて痛い目に

遭ったばかりだろうが!

 

決めつけはヤメロ。むしろ敵だと思え!

 

「その通り。今は神野明影を名乗ってる。

そんでもって俺にとってはダチの仇だ」

 

ヤツが現界した理由を話せば、爺さんは

俺達から距離を置くだろうか?

普通なら距離を置くが、だがそんなことを

したら俺達の研究の邪魔を出来なくなる。

 

神を殺す術式の研究を放置出来ない以上

なにかしらの関係を保とうとするはずだ。

 

「ダチの仇ぉ・・・ソレが神クラスの

実力者だとでも言うのかの?」

 

訝し気に俺を見るオーディン。やはり

神野明影では伝わらねぇか。

 

だが俺はコイツを巻き込むと決めたんだ!

情報の公開もしようじゃねぇか。

 

「ソレに関しては納得行く説明を出来るが、

まず防音の結界を張って欲しい。

特にアンタの付き人にも知られないように

しないとどんな被害が出るかわからねぇぞ」

 

オーディンとの接触が無くてもロキとかと

接触してる可能性があるし、情報は秘匿

するもんだ。

 

「ほう。まぁサーゼクスの小僧のように

情報の秘匿も出来んガキよりはマシじゃな」

 

そう言うとオーディンは空中に指で何かを

描いていく。

 

ルーン魔術って奴か。

 

俺も研究くらいはしてるが、流石に主神の

オーディンが使う術式まではわからん。

 

「ホレ、コレで良いわい。儂らの言葉

は儂のお付きにすら聞こえんよ」

 

そう言われて付き人の戦乙女を見れば、

何かを話しているのはわかるが、何を

話しているのかは分からないと言うように

顔に?マークを浮かべている。

 

慌てて無いのは、俺が正面から堂々と

情報漏洩の危険性を指摘したからか?

 

主神のお付きにもなれば、知らない方が

良い事ってのが多々あるのもわかる

だろうし・・・聞かれてたとしても俺は

配慮したからな?

 

文句を言われる筋合いは無いと

割り切ってオーディンへ情報を伝える。

 

「コレから言うことは、悪魔陣営や天界の

連中すら知らねぇ。

堕天使でも誰が裏切り者かわからねぇから

俺とシェムハザしか知らねぇことだ」

 

バラキエルにも教えても良いかも知れんが

アイツには朱乃って弱点が有るからな。

 

下手に教えるくらいなら教えねぇ方が

良いだろう。

 

「なるほどのぉ。悪魔は旧魔王派とか言う

連中がおるし、天界も教会の連中がアレじゃ。

他にも内部が纏まっとらんからのぉ」

 

何処で情報が抜かれるか分からねぇ以上、

ヤツの情報は秘匿しなきゃならねぇ。

 

まぁ最悪俺達が潰れても、オセが居れば

何とかなる可能性が高い。

 

だからこそオセには出来るだけ接触せず、

神野の視線を俺に集めるようにしたんだが、

その結果がオーディンへの情報の漏洩って

のが笑えねぇ。

 

「そう言うこった。でもって神野に

ついて知れば、爺さんも無関係では

居られなくなる可能性がデカいが・・・

後悔しねぇな?」

 

ソッチから聞いてきたんだ。ココで

引くって事はねぇだろうが、逆恨み

されても困るしな。

 

「放置してお主らが神を殺す術式を完成

させる方がヤバいわい。

前置きはこのくらいで良かろう、さっさと教えんか」

 

引っ張る俺に少しイラついてるようだが、

俺だって覚悟が要るんだよ。

 

今だってこの会話を聞かれてねぇか戦々恐々してんだぞ!

 

まぁいいや()

 

聞きたいってんなら教えてやるよ。

 

「神野明影。その名の通り奴は神の影だ」

 

俺の言葉を聞き、オーディンは目を見開いた。

 

ちゃんと伝わったか。

 

シロネ・オセがコカビエルに伝えた言い回し

だが、直接名前を言わずに伝える言い方

としてはコレ以上ないくらいの表現方法だぜ。

 

何とも言えない感想を抱いた俺とは違い、

向こうはそれどころでは無いらしい。

 

「馬鹿なっ!ヤツが現界したじゃと?!」

 

そう言って立ち上がるオーディンの目には

さっきまでの余裕は全く感じられない。

 

そう、俺達の中ではデミウルゴスは神の影

と言う存在だが、神話によっては奴は破壊

や破滅の象徴だ。

 

ソレがそのまま概念みたいなモンだから、

撃退だの討伐が出来る存在じゃ無い。

 

現れたらその渇望を満たして消えるか、

飽きてどこかに行くのを待つしかないと

言う、まさしく災害。

 

そんなのをダチの仇と言ってる俺の正気を

疑ってるのかも知れねぇな。

 

とりあえずこのリアクションを見れば

オーディンはシロだ。

 

でもって周囲にも声は届いてねぇ。

 

もし届いてたら、戦乙女のリアクションは

爺さんを見て驚くんじゃ無く、俺の言葉

に対して驚くはずだからな。

 

ならとことん巻き込んでやる!

 

「とりあえず俺はヤツと直接対面したし、

サーゼクスも遠目ではあるが確認してる。

そして、ダチであるコカビエルの仇だ」

 

どんなに疲れようが、あの音声を聞くだけで

ヤル気が出る。むしろ寝ててもアイツの

声が聞こえてくるんだよっ!

 

「・・・お主の様子を見れば虚言では

無いと言うのはわかる。

ヤツが相手と言うなら、神を殺す一撃が

必要だと言うのも納得出来んでもない」

 

どうやら無自覚に殺気を出してたようだな。

 

神野本人が居るならまだしも、思い

出すだけでこんなになってちゃ周囲に

警戒させるだけだってのに。

 

だがヤツを野放しにすれば、堕天使

どころか俺達全員が滅ぼされるんだ。

 

そうなったら混乱は聖書の陣営だけじゃねぇ。

 

神野にしてみればソレでも構わねぇ

んだろうがよぉ・・・!

 

「落ち着けと言うに・・・しかし

アザゼルよ、神を殺す一撃だろうが

何だろうがヤツを殺すことなど出来ん。

ソレはお主も知って居よう?」

 

殺せる方法があるなら何処の勢力だって

その方法を欲しがるだろうな。

 

だからこそあの術式だ!

 

「・・・コカビエルが命がけで、ある

一撃を奴に当てたんだ」

 

「・・・」

 

俺の言葉を黙って聞くオーディン。

 

その一撃が神を殺す一撃だと言うのは

わかっているのだろうが、その結果

までは予想出来ねぇだろう。

 

「その結果ヤツの分体を破壊することに成功し、

更に三か月近い時間を稼ぐことが出来たんだ」

 

少なくともコカビエルの時はサーゼクス

が来ても殺せるように、6等以上の実力

を持っていた筈。

 

ソレほどの分体がすぐに造れるわけがねぇのは

常識だし、コカビエルの言った3ヶ月って言葉に

対し否定もしなかった。

 

もしもその期間を短く出来るなら、アノ時

コカビエルを絶望させるためにしっかりと

強調してきたはず。

 

実際駒王会談の時に現れたヤツは、魔法使いや

仲間を贄にされたせいで強化されたにも関わらず

最終的に4等から5等くれぇの実力しかなかった。

 

ヤツの話し方を聞けば本来のヤツは7等か8等。

 

そこまでの分体を創るなら3ヶ月じゃ足りねぇ

と思うが、それでも3等の力しか持たない

コカビエルが推定6等以上のヤツを殺せたって

のは信じられねぇ成果だ。

 

ヤツが次に姿を見せるのは何時かわからねぇ。

 

だがトールや帝釈天、サーゼクスを6等と

言ったからにはそれ以上の力が無ければ

出て来ねぇだろう。

 

あの術式が完成しねぇ限り、どれだけ力が有って

も通用しねぇ可能性が高いが、心をへし折ること

を目的とするなら中途半端な戦力じゃ意味がねぇからな。

 

前回のアレは俺に罪を自覚させ、後悔させる

ために現れたようなもんだしよぉ。

 

もしかしたらサーゼクスの消滅の魔力なら

何とかなるかも知れねぇが、自分達の命運を

悪魔だけに託すわけには行かねぇだろぉよ。

 

「馬鹿な?!幹部とは言え堕天使の命

でヤツの分体を破壊しただと?!」

 

何度目か分からねぇ本気の驚愕を見せる

オーディンに付き人も狼狽を隠そうともしない。

 

だがその驚きは至極当然。何度も言うが、奴は

災害だ。力が有れば倒せるってモンじゃねえ。

 

「その通り。その時にヤツが言った言葉が

『理を纏う一撃』と言うモノだ。

ソレがヤツを殺す一撃に通じていると言うのが

わかってるが、いまだに再現できてねぇ。

ソレさえわかればヤツに対抗できるんだ!

今は何でもいいから情報が欲しいんだよ!」

 

そもそも『理』が何なのかわからねぇし、

ソレを纏うからこそ神野にダメージを

与えることに成功したんだ。

 

ならばソレを解明して倍化出来ればって

のが俺らの腹案なんだが・・・

 

「『理』だと?」

 

真剣な目で俺を見るオーディン。

コレは何か知ってるのか?

 

とりあえず俺は、出来るだけ隠し事はしないと

言う意志表示を込めて俺の知る情報を明かす。

 

「・・・そうだ。コカビエルがソレを

纏ったとき、ヤツは「それなら確かに

自分にも通る」と言ってコカビエルの

一撃を受けたんだ」

 

今後の対策としてなっ!その結果がアレだ。

 

「『理』のぉ。しかしコカビエルはその

神を殺す一撃をどうやって纏ったのじゃ?

お主が研究中だと言うなら、魔王連中が

研究して、完成させとるとでも言うのか?」

 

この疑問は確かに当然の疑問だ。

 

俺以外にその技術を研究してるヤツが

居て、さらにソレを完成させてると

なれば警戒もするだろう。

 

とは言えだ、その疑問に答えてしまえば、

オセが神野に対抗するための手段を有して

いると言うことが外部に知られてしまう。

 

そうなればオーディンは必ずオセに

確認を取ろうとするだろう。

 

その結果はどうなる?情報漏洩を嫌ったオセに

よる粛清か?ソレともその情報を掴んだ神野に

よってオセ陣営が準備してる策を潰す為に

オーフィスあたりを騙して差し向けるか?

 

どちらにせよオセが潰されたら、俺達が

失敗した時の保険が無くなる。

 

その可能性を俺が作るわけにはいかねぇよな。

 

「・・・ソレに関しては、今は言えねぇ」

 

そう苦い顔をして言う俺に対して、当然

不信感を抱くだろうと思ったが・・・

予想に反してオーディンはそのことに

言及してくることは無かった。

 

「言えぬか。まぁ信頼を得る為にと何でも

かんでもペラペラ喋られても困るし、

秘匿すべき内容であることは事実じゃ。

とりあえずはその程度で良いわい」

 

さっきまでの剣呑な雰囲気を消し、

苦笑いをしながらさらに告げる。

 

「神を殺す一撃を使う相手はわかった。

正確には神ではなくヤツに通じる一撃

と言うのもな」

 

その通りだが・・・何か違いがあるのか?

 

「とりあえずお主が今まで調べた情報

や開示できるモノを儂にも見せよ。

ヤツにも通じる一撃を生み出せると

言うなら、儂らも用意したいしのぉ」

 

ソレはつまり・・・

 

「俺達三大勢力じゃなく、俺に協力するってことか?」

 

勢力として連携を組んだ方が北欧神話

にしても得が有ると思うが・・・

 

「その通りじゃな。そもそもお主らに協力

して儂らになんの得が有る?

悪魔の駒に関しては、多少の興味が有るが

それとて悪魔化対策の為よ。儂らの戦力たる

半神の戦乙女は普通に増えとるし、人造の

戦乙女や勇者なんぞ必要としてはおらんしのぉ」

 

・・・どうやら俺は自分たちの価値を過大評価

していたらしいな。

 

言われればその通り。連中にしてみたら

俺達は数が多いだけの烏合の衆だ。

 

その数だって内戦やら何やらで減ってる

以上、元々俺達に対して価値を見出して

居なかったってことか。

 

この分だと他の神話群からの評価も相当

やべぇことになってるだろう。

 

「じゃが今回の情報は貴様に協力する

必要が有ると判断するに足る内容じゃ。

今は貴様らが狙われているようじゃが、

ヤツの事じゃ。いつ何時コチラを向くか

わからんからのぉ」

 

そう言って右手を差し出して来るオーディン。

 

コレからの他勢力との折衝に不安を覚える俺だが、

目の前に一条の光が見えたのも事実だ。

 

コレがヤツが用意した目に見える希望

なのかどうかはわからねぇが・・・

少なくとも今の俺には心強い援軍だぜ!

 

「わかった。とりあえずコカビエルが

使ったモノの前段階の魔法陣と詠唱を

確認してみてくれ。

その後爺さんの意見を聞かせて欲しい」

 

差し出された手を掴み、俺は一歩前進

したと言う実感を確かに感じた。

 

 

 

神野明影、貴様の好きにはさせんぞっ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

アザゼルとオーディンが会談をしている

らしいが・・・おそらくは例の魔法陣と

詠唱に関する問題を話し合ってるのだろう。

 

コチラにも情報が欲しいところだが、

情報漏洩を考えればそう簡単に教える

ことは無いだろうな。

 

それにしても・・・

 

「これはシカタナイ。シカタナイんだ。

コレ以上はリーアたんが死んでしまう。

なら一時嫌われてでも・・・うぅっ!」

 

独白でダメージを受けてる妹魂はともかく

 

「いやぁようやく動いてくれたねぇ~」

 

ファルビウムが肩を回しながらしみじみ

と呟いたこの一言が、我々の心境を代弁

してくれている。

 

うむ。やっとだ。

 

「ソーナちゃんがこんな扱いにならなくて良かったぁ」

 

セラフォルーも心底安心したような顔だな。

 

そう、ようやくリアスの隔離に成功したのだ!

 

サーゼクスも事態のヤバさを正面から認識した

おかげで、コレ以上の我侭は許さんと俺達が

連名でグレモリー家に命令を出すことが出来た

と言うのが大きい。

 

もっと早くやるべきだったが、餌となった

『英雄』を隔離する為には他の陣営が納得

する理由が必要だったからな。

 

今回、テロリストを待ち構えて戦ったが

最終的に逃がした事で自分の力不足を痛感。

 

『修行と旧魔王派の目をグレモリー領に

惹きつける為に、自領での研鑽を積む』

と言うのは貴族連中なら誰もが納得する

理由だし、そもそもこんな状況で地上に

出て学校生活など正気の沙汰じゃない。

 

無防備すぎて餌が無駄に警戒されてしまう。

 

コチラも『英雄』を守ろうとしていると

言うポーズを取る必要が有ると考えれば、

リアスは冥界に残るのが自然だ。

 

あとは期間だが、最低でも百年は隔離したい。

 

それだけの期間が有れば禍の団に味方する

旧魔王派の炙り出しも終えることが出来るし、

我々に直接敵意を抱く教会の連中や英雄派、

魔法使いも死んでるだろうからな。

 

二代目だの、三代目だのになれば悪意やら敵意は

薄れるから内部分裂も考えられるし、その間に

オーフィスとの交渉も出来るかも知れん。

 

他の神話勢力との話し合いも十年~五十年で

終わらせることを目標にし、後任の魔王を

決めることが出来れば完璧だろう。

 

ここまで出来れば理想だが、少なくとも

その作業中に胃痛や頭痛を感じることが

無くなると思えば十分な成果だ!

 

「ソーナと言えば、いきなりトリにされた

ことに文句とか無かった~?」

 

ファルビウムがセラフォルーに確認するが、無論

不満はあるだろうよ。なにせ今回の件はソーナや

サイラオーグにしたら完全にとばっちりだからな。

 

功績があるゼファードルから二日目に移して

欲しいと言われたからその意見を飲んだが、

本来ならば対戦相手であるサイラオーグや

ソーナにも確認をとるべき案件でもある。

 

とはいえ『命令だ』で済む話ではあるんだがな。

 

妹魂のセラフォルーからすればリアスの暴走が

原因でソーナから不満を言われるのは避けたい

ってことで一応確認させたんだよ。

 

最悪テロリストとの戦いでリアスの眷属が負傷

したことにして、今回は試合をしないと言う手も

有ったんだが・・・来賓は赤龍帝に興味が有る

だろうし、ソーナの扱いが悪すぎるからな。

 

「ソーナちゃんはねぇ。全員が無傷で、さらに

落ち着いてゼファーちゃんの試合を観れるから

助かったって感謝されちゃった☆」

 

嬉しそうに笑うセラフォルーの様子を見れば、

ソーナの感謝はホンモノなのだろう。

 

しかし、なるほど。そう言う判断か。

 

ゼファードルと同じようにオセに鍛えられてる

ソーナにしたら、一番警戒するのはゼファードル

になるよな。

総当たりだからいずれは当たることになるし、

リアスとのゲームに関してはすでに結果が

見えてるからなぁ。日程も気にしないか。

 

リアスを次回以降のゲームに参加させるか

どうかは、今回のソーナとのゲーム次第。

 

内容によっては適当な理由をつけてゲームにすら

参加させんぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日ゲームをするシーグヴァイラとディオドラ

は恐らく若手に相応しい内容になるだろう。

 

問題は明日だ。ゼファードルが蹂躙するのか

それとも手加減して遊ぶのか。

 

あまり派手に殺って欲しくはないが、相手が

無駄に入れ込んでるサイラオーグだからなぁ。

 

一日も早く戦いたいから試合の日程の変更は

望むところと言うが、一体どうなることやら。

 

 

 




とりまオーディンを引き込むことに成功した
堕天使総督。

自然な形でオセ君に会えたら良いが、神野さん
に目をつけられている自分達が下手に接触して
オセ君を警戒されるようなことになったら
不味いと考えてるもよう。

ちなみにオセ君は対外的にはまったくの無名
と言うわけでは有りません。そこそこ有名です。

奥様が赤龍帝とか白龍皇を狩ってますから、
その関係です。ソコソコ止まりですけどね。

北欧神話でも神野さんへの備えはしておきたいもよう。

とりあえず肩の荷が降りた魔王様。

堕天使総督との温度差は、神野さんの情報(正体や目的)をどれだけ知ってるかの差ですってお話


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67話

キングクリムゾン!

話はほとんど進まないッ!

オリ設定!
オリ展開!

今日は一話だけ投稿だ!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

「まぁ順当なところよね」

 

昨日のシーグヴァイラとディオドラの試合は

シーグヴァイラの勝利で幕を閉じた。

 

お互いにゲームに掛けるモノがあるわけでも

無いから、試合は定石通りのチェスのような

感じで始まり、眷属に一定以上のダメージが

入ったらリタイヤするように設定していた

ディオドラが順当に眷属を失い、最終的に

三対一で終局を迎えて投了するって流れね。

 

「だな。彼は指揮官として諦めが良すぎる

ような気もするが・・・ゲームなんかで眷属に

重傷を負わせるわけには行かないと言う考え

ならアノ設定もわかる。

それに彼は外交官を目指しているのだろう?

部下を大事にすると言うのは良いことだよ」

 

聖女を堕とすことを趣味にしていると言う

ことを知った後でも、ヨシコ=サンは彼に

対して特に不満はないようね。

 

曰く「それが戦略と言うものだ」と言うの

だから切り替えが早いと言うか何というか。

 

むしろ彼に騙されて聖女を放逐していた

教会を心底馬鹿にしてたからねぇ。

 

て言うか、ディオドラの眷属が全員聖女なら

年間何人の聖女が教会から放逐されたのかしら?

 

それに対して教会は何か疑問を持たなかったの?

それともディオドラが上手かった?

 

うーん。どちらにせよ教会の上層部は頭が

悪いってことで確定なんだけど・・・

 

「反対にシーグヴァイラはちょっと無理

をさせた感じだけど、眷属も何て言うか

ちょっとヤケになってた感じよね?」

 

何かあったのかしら?

 

「おそらく・・・扱いが悪いからじゃないですか?」

 

私の疑問に椿姫が答える。

 

「あぁ『英雄』のリアス様と若手ナンバーワン

のサイラオーグに比べたらねぇ」

 

いくらゲームに何も理想を抱いてないとは

言え、前座扱いは面白くないわよねぇ。

シーグヴァイラは我慢出来ても、眷属は

我慢できなかったか。

 

うん、彼女は良い眷属を持ったわね。

忠義に厚い眷属と言うのは、ソレだけで財産。

 

彼女とのゲームもルールによっては

苦戦するかもしれないわね。

 

リアスの眷属は・・・アレは忠義って言うのかしら?

 

確実に色々勘違いしてるわよね。

 

お姉様からの情報だと、今回のゲームが

終わったらしばらくグレモリー領に隔離

出来るから、私も駒王町で胃を傷めなくて

良いよ☆って話だったけど・・・

 

正直ありがたいとしか言えないわ。

 

「しかし会長。明日の茶番の準備より、

今日の試合観戦を優先するってのは

わかるんですけど・・・良くシロネ様が

許してくれましたよね?」

 

匙の言葉に眷属全員が頷いているけど、

私としても意外だったわよ。

 

まさかシロネ様から「明日はゲームの

前日ですから休みなさい」なんて優しい

言葉を言われるなんて思ってなかったし、

更に「自称弟子のゲームを観戦するように」

なんて言われるなんて。

 

普段なら「ゲーム?遊びのために鍛錬を

休むと?死にますかそうですかサヨウナラ」

とか言われて折檻されるもの。

 

思わず「正体を現せこのニセモノめ!」

って言って、思いっきり吹っ飛ばされた私は悪くないと今でも思う。

 

ただ、当然理由はあるのよねぇ。

 

「なんでも私たちが彼とのゲームで無様を

晒せば、シロネ様が折檻される可能性が

あるんですって」

 

「「「「・・・」」」」

 

もう何て言うか・・・ねぇ。

 

絶句しているみんなに説明するけど、

下手に言い振らしてシロネ様の機嫌を

損ねるような真似はしないでよ?

 

「今のシロネ様の立ち位置は師匠というより

アドバイザーでしょ?実際に鍛えてくれて

るのは夜叉一さんたちだし・・・」

 

私の言葉に頷くみんな。

 

シロネ様もたまに私たちの相手をしてくれて

弱点とか問題点を指摘してくれるけど。

 

現段階では基礎段階の特訓だし、正式な

技やら何やらを学ぶ弟子ってわけでもないのよ。

 

「でもお姉様達は私達を鍛えてるのは

オセ様だと思ってるじゃない?」

 

さらに頷いてから「あぁ」という声が

漏れてきた。

 

理解できたようね?元凶は世間の目よ。

 

「つまり対外的にはオセ様の教え子でしょ?

無様を晒したらオセ様が恥をかくでしょ?

オセ様に恥をかかせたら関係者全員矯正でしょ?」

 

このすべての流れがイコールで結ばれる

ベルトコンベア式の矯正は、シロネ様でも

逃げれないのよ!

 

私の説明を聞き、みんなは納得したような

顔をして頷いている。

 

「納得しました。しかしあのヒトですら

当たり前に矯正されるんだから、

本当におっかない方々ですよねぇ」

 

この椿姫のセリフが全てを物語ってるわ。

そうよ、本当におっかないのよ。

 

「だからこそしっかりゲームを見ないとね。

矯正云々は別にしても私たちだって無様を

晒したいわけじゃない。

ゼファードルは全力は出さないだろうし、

かなり手を抜くでしょうけど、相手の

サイラオーグは間違いなく全力よ。

つまりゼファードルは参考程度だけど、

サイラオーグの情報は丸裸になるわ」

 

ゼファードルならともかく、間違っても

サイラオーグには負けられないからね。

 

彼もしっかり見ないとダメって事でも有るのよ。

 

まぁ結局はサイラオーグがどこまで

ヤれるかって話なんだけどね。

 

「若手ナンバーワンが思いっきり

噛ませ犬扱いですね・・・」

 

苦笑いする匙。表現は悪いけどその言葉に

は全面的に同意するわ。

 

「所詮は『若手』限定ですもの。既に実戦を

経験していてコカビエルや白龍皇を打ち破る

ほどの実力者とは比べようがないじゃない」

 

なんで大谷吉継を騙ったのかはわからない

けど・・・覆面関係なのかしら?

 

「それにサイラオーグが掲げた「魔王」になる

という夢は頂けないわ。

ゼファードルもしっかり潰しに行くでしょうね」

 

アレは私やゼファードルのようにオセ様を

知る悪魔にとっては、決して面白くない台詞。

 

関係ないところで勝手に騒いでるって

だけなら「勝手に目指してろ」で済む

話だけれど、潰せる機会が有るなら

潰したくなるのが人(悪魔)情よねぇ。

 

実力的には単体で1~2等。切り札を使って

2~3等だとか?ただし魔力が無いから応用

の幅が恐ろしく狭いのよね。

 

眷属との実力差も大きくて碌に連携も

できないから、現時点なら勝てるという

のが私達の見立てよ。

 

だからこそ今回サイラオーグの夢を蹂躙する

機会が私より先に向こうに行ったのはアレ

なんだけど、私は私で英雄様の相手をする

必要があるし。

 

・・・補佐官様達から「殺れ」って激励の

お言葉を頂いた以上は、しっかり殺らないと

大変なことになるわ。

 

明日のプランは大体決まってるから

今更慌てる必要もない。

 

て言うかなんで実績がないサイラオーグが

若手ナンバーワンなのかしらね?

 

まぁいいわ()

 

「見せてもらいましょうか。若手ナンバーワンの実力とやらを」

 

ソレを支持する老害の吠え面も一緒にね!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「むぅ・・・」

 

昨日の会談から一夜明け、目の前では

北欧神話の主神であるオーディンが

腕を組んで映像を凝視し、さらに音声を

繰り返し再生している。

 

「確かに魔法陣は外に衝撃やら光を

逃がさぬ為のモノで間違いない。

ヘスティアの竈の効果もあるじゃろう」

 

ほう・・・どうやらコカビエルが詠唱を

使う前から、この魔法陣にはヘスティアの

竈の効果が隠蔽されていたらしい。

 

俺にはわからなかったが、さすがは魔術のプロだぜ。

 

だがコレでヤツが言うヒントってヤツが

現実味を浴びてくる。

 

嘘だったり俺らの空回りを期待したモノ

なら全く違うアプローチも出来るが、

ヤツから与えられた情報が唯一の近道

ならソレに縋るしかねぇ。

 

この二律背反を楽しんでるんだろうが、

ヤツの声を思い出すだけで腸が煮えくり返るッ!

 

「しかしこの詠唱がのぉ・・・」

 

おっと。落ち着け。今は解析だ。

怒りで目の前が見えなくなったら、

見えるもんも見えなくなる。

 

俺が怒りを抑えてる間にもオーディンは

一言一句、何度も確認をしている。

 

やはり詠唱との関連性を結びつけるのは

難しいか。まぁソレがオセが考案した

秘術だろうし。そう簡単にはいかねぇよな。

 

「韻や文法がおかしいぞい。コレ、

もしかして自動翻訳か何かされとらんか?」

 

そう思っていた俺に、爺さんは特大の

爆弾を投下してきやがった!

 

「じ、自動翻訳だと?!」

 

いや、まぁ悪魔の言語と堕天使の言語は

微妙に違うし、特殊な言語を使った詠唱

なら、無理やり悪魔が理解出来るような

言語に翻訳される可能性もある!

 

クソっ俺はなんでそんなことにも気付かなかったッ!

 

無力感より怒りに飲まれそうになるぜ!

 

「まぁコレは魔法に一定以上の理解が

なければ気付かんだろうがの。

おそらくこの詠唱文では効果は得られん。

ヤツの映像やコカビエルの口を読めれば

別じゃが・・・聞くが音声が生きてると

いうのは、ヤツがワザと残したわけでは

ないのじゃな?」

 

オーディンはそう言って、音声そのものの

信憑性を確認してくる。

 

頭を冷やせってフォローでもあるんだろうな。

 

冷えた頭で、ヤツがワザと音声を生かす可能性を考えるが・・・

 

音声を残すことで希望を残し、尚且つ

俺たちの無力感を煽ってるって可能性は

俺たちも考えはしたんだ・・・だが結局

それはねぇと判断した。

 

オーディンからの確認に俺は迷わず首肯する。

 

「元々この映像はコカビエルや関係者の

行動を記録し、各陣営に反三大勢力である

禍の団の裏に居るヤツを伝えるためのモノ

だったんだ」

 

ケルベロスを見せるのも、ハーデスの

ことを声高らかに叫んだのもソレが

目的だった。

 

「ヤツが現れたのは偶然みてぇなもんだ。

いや、ヤツの存在を知った協力者が、ヤツ

好みの餌を大量に用意して、ヤツが来た時の

ために実験中の魔法陣を準備したんだから

偶然ってのもおかしな話だがよ」

 

ある山に熊が居るって知った猟師が、

熊をおびき寄せて殺すために、熊が

好む餌を罠としてバラ撒いたんだよな。

 

その結果熊が来たってのは偶然と言うのかどうか・・・

 

「なるほどのぉ。聖剣に狂った老人や、

聖書の神の死を知らん狂信者なんぞ

ヤツ好みの餌ではあるわい」

 

あの場であれだけの餌が集まったのは偶然

かもしれんが・・・いや、集まった連中を

餌として利用することを思いついたオセの作戦勝ちだ。

 

「じゃが、ソレとコレは違うじゃろ?」

 

あぁ、そうだ。質問の内容は音声だったな。

 

「そもそもこの詠唱やら音声やらが

残ってると知ってるなら、ヤツは俺に

ヘスティアの竈なんてヒントは齎さん」

 

ヒントと言うには大きすぎるだろう。

 

アイツが施すのはあくまで蜘蛛の糸。

 

直ぐに答えに行き着けばソレを太く改良

されてしまい蜘蛛の糸じゃなくなるからな。

 

ついでに言えばヤツが純粋な善意で

ヒントなんか出すはずがねぇ。

 

元々協力者の存在を確信していたからな。

 

おそらくだが、俺が協力者と接触するのを

誘っているような感じがしたんだよ。

 

もしも俺がその協力者に接触したら、

ソッチの完成した術式を破壊するか、

改ざんして全く別のモノにして嘲笑う気だろうよ。

 

爺さんはソレを踏まえたうえでココに

「侵入は阻めないが侵入されたら必ず

気付く結界」を作って術式の研究をしている。

 

コレならヤツも簡単には手が出せねぇし、

そもそも爺さんにはマークが着いてねぇ

ようだ。

 

おそらくこの爺さんが使うルーン魔術は

多種多様な上、いくらでも変化するから

対処が難しいってのもあるんだろう。

 

下手に接触すれば見つかるし、交渉の

余地も無い相手だ。

とりあえずは、一定以上の力を得るまで

放置するしかねぇだろうよ。

 

それにあの魔法陣に使ってるヘスティアの

術式から、ヤツも爺さんも協力者はギリシャ

神話関連と判断しているようだ。

 

まぁ元々コカビエルやら配下の堕天使には

ハーデスが干渉してきてたんだもんな。

 

その関係で他のギリシャ神話の神が中立を

掲げるために、何かしらの補填をしてきた

と考えてもおかしくはない。

 

具体的にはヘルメスとかを警戒してるんだろうな。

 

それで、おそらくオセはそこまで読まれる

事を見越してヘスティアというギリシャ神話

の神の術式を使ったというのも有るだろう。

 

ヤツの目をギリシャ神話に向けるために。

 

ヤツがギリシャ神話を調査してくれれば

その分俺たちは時間が稼げるし、禍の団に

味方してコカビエルを嵌めてくれた連中に

一矢報いたと思えば溜飲が下がる思いだ。

 

ついでにヤツも、何もないところをアホ面

しながら真剣に調査してると思えばなぁ!

 

・・・つまりアノ魔法陣は、

 

1・ヤツを誘い、閉じ込める結界であり

2・理を纏うための術式の下準備であり

3・協力者がギリシャ神話と誤認させる

 

と、少なくとも3つの意味を持つわけだ。

 

シロネ・オセが言うには急造だから効果も

悪いという話だが、とんでもねぇ。

 

コカビエルが実践したことで更に開発が

進んだであろう術式がどうなってるのか、

恐ろしくて他の神話連中には話せねぇよ。

 

「ふむ。ヒントが大きすぎるという事か?

そう思うだけの根拠があるのじゃろうが、

まぁ・・・お主らが狙われとる理由が理由じゃもんなぁ」

 

何故俺たちの前に現界したのか?と言う

問いに包み隠さず答えたからなぁ。

 

自業自得だと言わんばかりの視線を

向けられ、俺は思わず目をそらす。

 

俺だって余所の陣営が似たようなことを

してヤツを現界させたら、余計なことを!

と心から叫んで悪態つくだろうからな。

 

「まぁ良いわい。とりあえずはコノ詠唱

は現状参考にならん。

とは言え一度現地で同じ魔法陣を構築し

再現する必要は有るじゃろうが・・・」

 

先ほどの責めるような視線ではなく、

「そのくらいならできるだろ?」と言う

目を向けられる。

 

悪魔との折衝やら何やらは当然させてもらうが、問題は口実だよな。

 

下手に適当な理由をつけてしまえば各勢力に

警戒されてしまうし、情報は当然漏れる。

 

ソレがヤツの耳に入れば当然術式の再現

だということもバレるよな。

 

この辺の調整は何とかするしかねぇが・・・

 

「ソレに関しては準備しよう。だがソッチ

は大丈夫なのか?」

 

こっちがいくら迎える体制をとっても、

問題なのは向こうも一緒だ。

 

北欧神話の主神が日本に来訪するとなれば、

当然お忍びってわけにも行かねぇし、内部の根回しだって必要だろう。

 

「面倒ではあるがヤらんわけにも行くまい。

一応言っとくが、お主ら聖書の陣営は当然

嫌われとるから下手に口を挟むなよ?」

 

変に気を使って俺らが根回しすれば、逆に

相手を怒らせることになるってか?

 

まぁ普段から無能がやらかしてるし、前回の

協定でも随分騒がしくしたからなぁ。

 

いや、まて。そうだ、ヤバイ。

 

「・・・そういや爺さんはあの黒鬼皇帝を

知ってるのか?」

 

もし向こうに行くなら日本神話群より先に

ヤツに一報入れる必要があるよな?!

 

いや、下手に口を挟むなって言われた

からココは放置で良いのか?

 

「・・・知っとるよ」

 

おぉう。まぁ何かしらの関わりが有る

とは思ってたが、今ので通じるんだから

両方とも大したもんだ。

 

「んじゃ、俺は口を挟まねぇから、そっちへの連絡も頼んだぜ?」

 

いやー残念だなぁ。

 

俺はちゃんと「忘れてた」とか無いように

しっかり釘も刺したぞ~。

 

「おい待てぃ!(江戸っ子)」

 

待たんッ!

 

さて今日のゲームはYOSHITUGUが出るからな。

 

なんたって禍の団の聖剣使いと仙術や妖術

を使う闘戦勝仏の末裔の二人組を一蹴したんだろ?

奴が使う術式やら戦法もしっかり研究しねぇと。

 

「いや、待て。待ってくれい。アヤツ

との交渉はお主に任せるからっ!

昔っからの付き合いじゃが、儂アイツ苦手なんじゃよ!」

 

HA☆NA☆SE!

 

アイツが苦手じゃない奴が居てたまるかっ!!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー???ーー

 

 

「ほほう。このお茶は・・・新作ですか」

 

あえて高級と言われる玉露を淹れず、

さりとて新茶の甘味を感じさせる逸品。

 

・・・やりますね。

 

「そうなんです!補佐官様の為にぶれんど

したお茶なんです!」

 

ふむ。この方がオセさん以外にお茶を点てる

とは・・・珍しいこともあったものです。

 

「普段からお酒ばっかり飲んでるからと

一子様や二子様やあーちゃんが心配して

お茶を用意して欲しいと頼まれたんです。

お酒を飲むなとは言いませんが、子供の

前では量を控えてくださいな!」

 

そう言われて指さされた方を見れば、

襖の影には三人の子供の影が・・・

 

「「「・・・」」」

 

アレですかね?誰かが酒に対する知識を

彼女たちに教えて、それで私が普段から

飲んでるのを見て心配してると。

 

そもそも私、鬼なんですが・・・

 

まぁ子供の心配を裏切るのもアレですし。

少し控えるようにしましょうか。

 

最近は地上の問題児も大人しくしてるようですしね。

 

「・・・善処しましょう」

 

「「「わーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありえね~?!」

「他人の言うことを聞いたぜ?!」

「・・・彼女も補佐官になってくれないかな~」

「ふふふ、好きな酒を我慢して胃痛になれ!」

 

 

 

・・・そうかお前か。

 

 




シーグヴァイラとディオドラのあつぅい戦いがぁ?!

オーディン、良いところを突くってお話

投稿しないとランキングが上がる不思議。
・・・どういうことなの?


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68話

YOSHITUGUと若手ナンバーワンの決戦!

力と力がぶつかり合う戦場で
どんなドラマが生まれるのか・・・


オリ設定!
オリ展開!

今日も一話投稿だッ!

嫌いな人は読み飛ばし!




・・・ソレは正しく蹂躙だった。

 

「結」

 

「おぉぉぉぉ!!馬鹿なっ!こんなことがぁっ?!」

 

青ざめた馬(ペイル・ホース)に乗る騎士の、最速の願いは知らぬと動きごと封じられ

 

「結」

 

「私の魔眼がっ?!」

 

避けられぬはずの騎士の想い(重力)は壁の

向こうには届かず無意味と散り

 

「結」

 

「貴様の能力はコレで封じ・・・がぁぁっ?!」

 

棺には自分が入れとばかりに全ての力を

失った僧侶が倒れ伏し、

 

「結」

 

「くっ私の氷を?!きゃぁぁぁぁ?!」

 

僧侶が使う氷はいとも簡単に砕かれて

 

「結」

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

黒い龍と化した戦車の炎は知らぬと無視され

 

「結」

 

「おぉぉぉぉぉ!くっそったれがぁぁぁ!」

 

当たれば潰せるであろう戦車の一撃は

巨漢の異形ごと押しつぶされた。

 

各眷属たちは一人で挑んだのではない。

皆で連携したし、それぞれが潰される前に

決死の攻撃を繰り出している。

 

ただその全てが塵として蹂躙されただけだ。

 

それは純粋に力量の違い。

 

蟻が象に勝つことが出来ないように、

当たり前のことを当たり前に行った

結果のことである。

 

 

 

 

若手交流戦、第二戦。

 

一部の者は試合の前から既に勝者を

確信していたが、この内容は流石に

予想外だっただろう。

 

誰もが言葉なく、ゲームを映すディスプレイ

を凝視している。

 

第二戦のゲームは大方の予想を裏切り、

ゼファードル・グラシャラボラス側による

サイラオーグ・バアル側の蹂躙で幕を開けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

「サイラオーグ・バアル様の騎士リタイア」

 

「サイラオーグ・バアル様の騎士リタイア」

 

「サイラオーグ・バアル様の僧侶リタイア」

 

「サイラオーグ・バアル様の僧侶リタイア」

 

「サイラオーグ・バアル様の戦車リタイア」

 

「サイラオーグ・バアル様の戦車リタイア」

 

 

・・・・・

 

試合開始から一時間も経たずに兵士と

女王を除く眷属が全滅とはな。

 

さらに今も・・・

 

「いい加減にしなさいっ!」

 

『・・・!』

 

「貴様ぁぁっ!」

 

 

サイラオーグ側の女王クイーシャ・アバドン

とローブで身を隠した兵士、それに王である

サイラオーグ・バアル自身もまた、握り拳から

血を流しながら攻撃を繰り出しているが・・・

 

「はぁ・・・話になりません」

 

そう呟く一人の少女の前に、手も足も

出ない、いや、そよ風すら届かない。

 

そしてその少女の後ろでは・・・

 

 

「ポン」

 

「む・・・白ポンですか」

 

「えぇ~またっすか?」

 

「今、その牌なんか光りませんでした?」

 

凶児と言われたゼファードルが眷属と

麻雀をしていた。

 

必死の顔で攻撃を繰り出す彼らを完全に

無視し、目の前の麻雀に集中する様は

まさしく異常。

 

対戦相手に対する敬意もなければ、ゲームを

観戦している来賓に対する配慮もない。

 

コレは流石に・・・と思い来賓を見るが

 

「ほほう。あの結界系の神器をあんな

感じで使うとはな」

 

アザゼルは麻雀より結界系の神器を

使うゼファードル側の僧侶の実力に

目を見開き、

 

「HAHAHA☆あの小僧、ここで白かよ!

まだまだだな!」

 

帝釈天はゼファードルの安易な哭きに対して

ツッコミをいれ、

 

「ふむ。あの哭きには何やら深い意味

があるのじゃろうかのぉ?」

 

オーディンは哭きに込められた意味を推察している。

 

・・・少なくとも帝釈天とオーディンは

麻雀観戦を楽しんでいるようだ。

 

各陣営の配下は主神が楽しんでる以上、

文句も言えるはずがない。

 

悪魔側としては「真面目にやれ」と言いたい

ところだが、ゼファードルが真面目に

なればサイラオーグが瞬殺されてゲームが

終わってしまうと言うことがわかっている為、

注意のしようがないと言うのが実情だ。

 

まさかもう少し接戦に見えるようにしろ!

と文句をつけるわけにも行かないしな。

 

「HAHA!あのガキ。中華服っぽい服

着てるから見所あると思ったがよ、

この俺の前で麻雀とはやってくれるZE!」

 

特に上機嫌なのが帝釈天だ。

 

昨日のシーグヴァイラとディオドラの

ゲームでは若者の若者らしい戦いだと

普通に評価していたが、今回は完全に

立場を無視して楽しんでいる。

 

「しかしアザゼルから聞いては居たが

あやつが20にもならん若手とはのぉ」

 

感心するように目を細めてゼファードルを

見るオーディン。

 

昨日の会談で其の辺の情報交換は終えて

いたのだろう、チラリとアザゼルを見るが

こちらの視線には気付いてないのか

食い入るようにゲームを観戦している。

 

まぁコカビエルを打倒して白龍皇を一蹴

したYOSHITUGUの試合だ。

 

俺としても、ヤツが白龍皇への対策を講じていた

ように、彼らの眷属が持つ神器に対して

何かしらの対策を練ってくると思ったがな。

 

「まさか真っ向勝負とはねぇ。彼程度には

策も準備も必要ないって感じかな?」

 

ファルビウムは意外なモノを見たかの

ように呟き、ソレを聞いた周囲の貴族共は

アレのどこが?!と言った表情をしている。

 

しかしアレはまさしく真っ向勝負だ。

 

そう見えないのはサイラオーグの

力不足としか言い様がない。

 

なにせ彼らは特に何か特殊な真似を

しているわけではない。

 

結界の神器使いが、結界の力を使って

正面から相手の攻撃を受け止め、

相手以上の力を以て潰してるだけだ。

 

王を目指すサイラオーグには皮肉なこと

この上ないが、まさしく王道の戦と言える。

 

王とは将軍が勝利報告を携えて戻るまで、

その勝利を疑わずに居るものだからな。

 

しかし女王と兵士を潰さないのには何か

理由があるのか?

 

「ゼファードルッ!貴様ッ!俺には

見る価値が無いとでも言うのかッ?!」

 

血を吐くかのような声を上げるサイラオーグ

だが、当のゼファードルは視線をやろうとも

しないで、麻雀に集中している。

 

むしろ・・・

 

「ロン。白、ダブ南で3900だ」

 

「え?あれ?今僕3ピン切ったよね?ナンデ二萬が?!」

 

ゼファードルめ。サイラオーグをチラ見した

騎士の少年の隙を突き、捨て牌に細工しやがった。

 

「真剣勝負の最中に視線を逸らすとは。

まだまだですなシグ殿」

 

振り込みに愕然とする少年を諭す初老の悪魔。

 

元人間の眷属悪魔らしいが、随分と落ち着いているな。

 

それに彼は、彼を見たファルビウムが早速実戦投入

可能と判断し、配置を考えるほどの実力者だ。

 

指揮官としても使えるらしいが・・・

しかしこの状況で真剣勝負の相手がサイラオーグ

ではなく麻雀と言うのがなぁ。

 

「HAHAHA!やるねえ!見事な早業DA!

読みも良い。胆力もある!」

 

イカサマを使ったことを怒るかと

思えば、その技を褒める帝釈天に

 

「なるほどのぉ。コレを狙っておったか。

早上がりのための白哭きとは。

サマ前提の戦いを想定しとらんかった

儂が未熟という事かの?」

 

イカサマを想定してなかったことを

恥じるオーディン。

 

いや、それはどうなんだ?

 

真剣勝負に卑怯もクソもねぇ!と

言うならその通りなんだが・・・

 

「それにアノ麻雀のせいで、噂の

若手ナンバーワン様が完全に我を失った。

その結果が眷属全員での無様な突撃で、

返り討ちDA。完璧な作戦だZE!」

 

あぁそうか、結果を見ればそうなるか。

そして戦いとは結果が全て。

ソレを考えればゼファードルは完全に

サイラオーグをコントロールしている。

 

「じゃな。最小の労力で最大の利益を得る。

しかも相手が血気に逸り奥の手の神器やら

何やらを使用したのに対し、あの者は一切

の情報を明かしとらん。

現状あの少女が多少強力な結界を使っておる

だけじゃからな。

アレは次回以降のゲームも見据えておるよ」

 

周囲もオーディンの言葉に異論はない

ようで納得したように頷いている。

 

なるほど、決してサイラオーグを小馬鹿に

しているだけではないのか。

 

「まぁなんだかんだ言っても、前に

ゼファーが言ってたじゃん?」

 

ファルビウムは終始にやけているが・・・

 

「ゼファードルが言った?」

 

何か言ったか?

 

「アレでしょ?売られたケンカは買うって

ヤツでしょ☆」

 

首を傾げる俺を見て、セラフォルーが

ファルビウムの言葉を補足する。

 

コレは外交官として、内輪ネタにせずに

来賓にもわかるようにしようと言う魂胆が

有るのだろう。

 

それに俺も思い出した。確か・・・

 

『無論売られた喧嘩は買います。ですが現時点で

コイツらには俺に挑むだけの力が有りませんね』

 

だったか。うむ。その言葉を証明したと言う事か。

 

絵に書いたような有言実行である。

 

納得する俺にゼファードル陣営の少女の

声が聞こえてくる。

 

「さて、女王にも既に手が無いようですので

『・・・死んでください』」

 

ん、この言葉は、まさか駒王会談の時の呪詛か?!

 

殺す気か?!と思ったのは俺だけではない。

ファルビウムやセラフォルー、アザゼルまで

目を見開いてゲーム会場を凝視する!

 

「そう簡単にっ!」

 

自分に向けられた指向性のある結界を穴に

入れようとする女王。

 

目には見えないが、おそらく風か何かを見て

その進路を予想しているのだろう。

完全に捉えた!そう確信する女王。

 

だが・・・

 

「クイーシャ!後ろだッ!」

 

サイラオーグの悲痛な声が響く。

 

「え?キャァァァァァァァ?!」

 

サイラオーグの女王は呪詛ではなく、

結界によって体を抉られ堕ちていく。

 

眼前に迫る結界は女王が見切ったのではない。

 

僧侶があえて読ませていたのだ。

 

「結」

 

背後からの一撃を受け、完全に無防備に

なった女王に感情の篭らない声で追撃を

行うゼファードル陣営の僧侶。

 

「グッ!ガッ!ゴフッ!!」

 

力を失い堕ちる女王にさらに連撃を加える。

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

サイラオーグが少女を殴りつけようとするが

 

ガァァァァァァァァン!

 

結界を殴る音だけが鳴り響く。

 

「も・・う・・し・・「結」ぅガッ!!」

 

主への謝罪の途中でも攻撃を止めない僧侶。

 

『サイラオーグ・バアル様の女王、リタイア』

 

結界ごと地面に激突させられる前に

リタイア出来たようだが、なかなかに

えげつない戦い方だ。

だが戦いとしては間違ってない。

 

老害貴族やサイラオーグの支持者は

彼女の攻撃を非難するが・・・

 

「ほほう。あの嬢ちゃんも中々わかってるじゃねぇか」

 

帝釈天は冷静に彼女の行動を褒め

 

「むぅ。コレが若手とは。恐ろしいのぉ」

 

オーディンもまた彼女を評価している。

 

「うんうん。アレで正解。よくやった。

まだ女王はリタイアしてなかったし、誰が

フェニックスの涙を持ってたかわからない

からねぇ。油断して隙を見せるような真似

をしてたら、来賓の方々を相手に恥を

かくところだったよ」

 

危ない危ないと言うファルビウムの

声に、老害どもの非難の声は収まった。

 

この状況で油断してやられました

なんてのは、サイラオーグの支持者

としては良いかも知れんが、悪魔と

しては未熟さの露呈となる。

 

ここまで圧倒しているのなら、もう

サイラオーグの個人評価ではなく、

悪魔の若手は底が知れんと判断して

もらったほうが良いのだ。

 

それに、サイラオーグの眷属達の攻撃は

若手の範疇を超えていたのも事実。

 

それ以上にゼファードル陣営が強かっただけだ。

 

そのことは来賓も十分わかっているだろう。

その証拠に一方的に負けているサイラオーグを

馬鹿にするようなコメントは無い。

 

「おのれオノレおのれオノレおのれぇい!」

 

女王を落とされて怒りを爆発させたサイラオーグ

が、ゼファードルを睨む。

 

しかしソレは悪手だぞ。

 

「敵から目を離すな未熟者」

 

結界を張る少女はそう言って、残った兵士と

サイラオーグを棺のような形をした結界に

閉じ込めた。

 

「『?!』」

 

そうだ。戦闘中に戦ってる相手から目を

離すなど論外。

 

王は自分が負けてる時にこそ視野を広く持たねば

ならんのに、感情に任せてソレを全く理解も実践

もできていないのはマイナスだぞ。

 

「王様気取りさん。慢心して良いのは力を

持ったホンモノの王様だけです。

今回の貴方の敗因は、貴方がゼファードル殿を

格下と見下し、奥の手を使わずに無駄な攻撃を

行うと言った選択をした為。

つまり・・・王としての判断ミスですね」

 

奥の手が何かは知らんが・・・まぁ

何か有るならココまで殺られる前に

使うべきだと言うのは確かだ。

 

歯を食いしばるサイラオーグをまるでゴミ

を見るかのように見下す少女。

 

「所詮なんの展望もなく、権力目当てで

「王になる」などと抜かす愚か者。

今まで自分を虐げて来た者達相手に散々

弱い者イジメをして調子に乗っていたよう

ですが、それも今日で終わりです。

いい夢は見れましたか?」

 

そう言えばコイツは王になると言ったが、

王になってナニをすると言うのはなかったな。

 

母親がどうとか、虐待がどうとかは所詮

サイラオーグ個人の問題。

 

民には関係ないからなぁ。そりゃ権力目当て

と言われるだろうさ。

 

でもって虐待してきたヤツらを見返すって

言うのも、ガキの頃イジメてきた奴らに

イジメ返しただけと言い切るとは。

 

そんな男に関して「王としての資質」を問うならば、首を傾げざるを得ん。

 

力こそ正義!と言うなら・・・今現在負けてるしな。

 

「さて王様気取りさん。もう理解してるとは

思いますが、わざわざ貴方と兵士さんを残した

のは、この場で貴方の罪を魔王様方や来賓の

方々に公表するためです」

 

ん?罪だと?何の話だ?

 

「貴様、まさかっ?!」

 

ソレを聞いて焦るサイラオーグ。

ヤツには心当たりが有るようだが・・・

 

「今のリアクションで十分です。もう兵士さんを

リタイアさせても構いませんよ?もちろん貴方も

投了してくれて構いません。

ソレをしないなら切り札を失った貴方を刻んで

擂り潰すだけですしね」

 

やられたっ!と言う顔をするサイラオーグ。

まぁ確かに、その罪とやらに関係してるであろう

兵士を今から逃がしたところで、それは自分の

罪を隠してますと言っているようなモノだ。

 

更に言えば抵抗も無意味。今まで散々攻撃しても

破れなかった結界だ。

今さらどうしようもないだろう。

 

そしてもしここで兵士をリタイアさせれば、

彼女は我々が確認をとる前に、罪とやらを

告発するのだろう。

 

わざわざこの場で公表するのは、恐らく事故か

何かでその罪が露呈するよりも自分達で告発

した方が、勢力としての自浄機能が健在だと

言うことを証明出来るからか?

 

つまりその罪は明かしても致命的ではないが、

サイラオーグとしては汚点になると言うことか。

 

さて、どんな罪なのやら。リアスに鍛えられた

俺の胃はそう簡単には破けんぞ?

 

そう思ってた時期が俺にも有りました。

 

「サイラオーグ・バアル。貴方の罪は神滅具

の不法所持、つまり報告を義務化した協定に

関する違反の現行犯です。

言い訳は私達ではなく魔王様方にするように」

 

は?

 

少女の言葉を聞いたが、理解が追い付かない。

 

「「「「はぁ?!」」」」

 

神滅具??不法所持???確かに神滅具は

発見次第報告するようにと言う協定は

昔からあった。

 

事実白龍皇や煌天雷獄は堕天使陣営

や天界勢力から発見と所持の報告が

上がっていたし。先の休戦協定にも

その内容は正式に盛り込まれている。

 

サイラオーグが、いや、バアル家がソレを

知りながら秘匿していた?!

 

俺たちに何も知らせずに?!

 

俺とファルビウムとセラフォルー、更に明日の

リアスを心配していたサーゼクスまでもが同じ

声を挙げ、アザゼルや帝釈天、オーディンから

は「説明しろ!」と言う視線が突き刺さる!

 

いや、説明して欲しいのはコッチだ!

一体どう言うコトだってばよ?!

 

「ぐっ!」

 

顔を歪めるサイラオーグの表情を見れば嘘とは思えない。

 

そう言えばヤツの兵士は兵士の駒7つを

使用したんだったか?

 

リアスが8つで赤龍帝を宿したガキを眷属に

出来たと考えれば・・・

 

「そこにいる自律型神滅具、獅子王の戦斧が

何よりの証拠。

何が目当てで情報を独占しようとしたかは

知りませんが、もしソレを研究出来れば

どれだけの応用技術を得られたことか。

脳筋の貴方にはわからないでしょうねぇ」

 

は?今何といった?

 

「自律行動だと?!神器、いや、神滅具が?!」

 

少女の言葉を聞き、驚きで目を見開くアザゼル。

 

確かにソレが真実なら一体どれだけの奇跡で

成り立っているのか・・・

 

それに他の魂が篭っている神器や神滅具

の自律行動の可能性を考慮すれば、ソレはタダ

の神滅具を秘匿するのとはわけが違う。

 

決して個人の名声の為に秘匿して良い情報ではないぞ?!

 

「一応その強度を確認するように指示も

出ています。遠距離攻撃を無効化すると

言う性能を見せてもらいましょう」

 

そう言いながら僧侶が印を結ぶが・・・

そもそもあの印には何か意味があるのか?

それともアレ自体がミスリード?

 

棺のような箱の中に閉じ込められた兵士、

いや、獅子王の戦斧が結界を破壊しようと

もがくが結界は微動だにしない。

 

「無駄ですよ。所詮貴方は使われる道具。

使い手がいなければ本来の力は出せません」

 

それはそうだ。何がどうなって悪魔に転生

したかは知らんが本来は斧だからな。

 

武器なら熟練した使い手が持って初めて意味があるだろうよ。

 

抵抗を続ける獅子王の戦斧に対し小型の

結界をぶつけるも、その全ては無効化されて

いるのか、ローブが破け黄金に輝く鎧の

ようなモノが見え隠れしているが、本体に

ダメージは無いようだ。

 

「本体にダメージなし。だが結界は効果がある。

ってことは、あくまでアレが無効化できるのは

自分が遠距離攻撃と認識したモノか?

つまり距離をトリガーにしている?

それとも決められた攻撃以外は無効化する?

つーか道具が悪魔になるってなんだ?付喪神?」

 

アザゼルは先程から完全に研究者の目で

獅子王の戦斧を見てるし。

 

「ほぉう。こんなことまで隠してやがったか。

汚い!流石悪魔!汚いZE!」

 

帝釈天は冗談交じりに俺たちを批判してくる。

 

冗談混じりなのは、後でしっかり教えろと

いう事か、ソレとも他に何か理由があるのか。

 

「あの嬢ちゃん・・・一体ナニをしようとしておる?」

 

オーディンは、僧侶の少女が弾かれると

わかった上で結界内部に居る獅子王の戦斧

に対して似たような攻撃を繰り返していることを

疑問に思っている。

 

強度の確認と言うのはオセからの指示

だろうが・・・一体どこから獅子王の戦斧の

情報を手に入れたのやら。

 

いや、我々が迂闊なだけか。

 

「大体分かりました。では次で最後です。

これに耐えたら貴方の勝ち。破壊出来たら私達の勝ちですね」

 

破壊?神滅具を?!

 

「おいおいおい、若手悪魔ってのは

そんな事まで出来んのかYO?」

 

呆れながらも興味深そうにしている帝釈天。

 

それはそうだ。使い手を殺すのではなく神器を

破壊出来ると言うなら、他の神話勢力にとって

無視できる情報ではない。

 

自律型の神滅具というだけでアレだがな。

 

問題はサイラオーグがリタイアさせないか

どうかだが、そんなことをしたら来賓や

俺たちからどれだけの突き上げを喰らうか

理解しているのだろう。

 

現状を打破する為の方策を必死で考えているように見える。

 

・・・打破させる気はないがな。

 

俺たちがディスプレイに釘付けになる中

僧侶は目を閉じ、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『滲み出す混濁の紋章

不遜なる狂気の器

湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる

爬行する鉄の王女

絶えず自壊する泥の人形

結合せよ・反発せよ

地に満ち己の無力を知れ』

さぁ結界師の真髄を味わいなさい!真界・黒棺っ!」

 

 

『グォォォォォォォォォォォ?!』

 

 

 




力(鉄球)と力(卵)がぶつかりあった結果、
片方が一方的に潰れました。(当たり前)

「滅」してないから、まだ優しいよね?

白龍皇のことは教会のゼノヴィアさん
ですら知ってましたからねぇ。

ヴァーリの個人情報はともかく、
其の辺はしっかり告知されてたもよう。

ソレを個人で所有者しちゃダメでしょってお話。


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69話

若手なんばーわん。(別に一番強いとは言ってない)散る。

そしてとうとうオセ君が動く?

今日は2話投稿できるかなぁ・・・

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアザゼル視点ーー

 

『グォォォォォォォォォォォォォ!』

 

真っ黒に染まった結界の中からくぐもった

獣のような声が響き渡る。

 

神器が、いや神滅具が自律行動することには

確かに驚いた。そもそも義務化した矢先に

神滅具の情報を秘匿する悪魔共にも驚いたが。

 

だが最優先すべきはあのガキが行っている詠唱ッ!

 

遠距離攻撃を無効化する効果を持つ

獅子王の戦斧に対して、術でダメージを

与えるってのは、まさかアレも『理』か?!

 

「爺さんっ!」

 

思わずオーディンの爺さんを見る。

爺さんは真剣な顔をして結界を見ていたが

 

「いや、アレは違うの」

 

首を振って俺の言葉に籠められていた期待を否定した。

 

「ほほう?オーディンサンには何か

わかったのかYO?

俺には結界の中がただ真っ黒になった

だけにしか見えんGA?」

 

帝釈天が俺たちの言葉に反応するが、

コイツは明らかに俺たち三大勢力の敵だ。

 

情報を与えて良いものかどうか・・・

そう考えたのは俺だけらしい。

 

「うむ。アレは結界の内部に複数の重力源を

発生させて、中の相手を破壊するための術じゃな」

 

重力源の発生か・・・重力を発生させる

神器があるくらいだから、ソレを操る術式

もあるのだろう。

 

しかしあの棺みたいな狭い箱の中に

複数の重力源を生むのかよ。

 

わかりやすく言うなら右手の小指と

薬指を反対側に引っ張る感じだろ?

 

そんな感じを複数?

 

確実に壊されるじゃねぇか。えげつねぇ術式だぜ。

 

でもってアレが獅子王の戦斧にダメージを

与えたのは、自分の周囲に発生した重力源が

攻撃とみなされないからか。

 

まぁ重力を攻撃と見做せば、奴が地上に立つ

ことはできねぇしな。

 

ソレが明らかに自分に関係する攻撃だと

判断すればどうなるかはわからねぇが、

「周囲に発生した」ってのがキーだろう。

 

あとの問題は痛覚や治療か。何かしらのダメージ

を負ったようだが、アレは道具じゃなく悪魔化

したからとでも言うのか?

 

痛覚がないなら叫び声など上げんだろう。

 

だがまぁ、コレは普通の術式だ。

 

『理』を纏わない単純な重力やら何やらじゃヤツには通用しねぇ。

 

正直あの詠唱に興味がないわけじゃねぇが、今回は後回しだ。

 

「サーゼクス。流石にいきなりの協定違反は見過ごせねぇぞ?」

 

そう、あの詠唱が『理』と関係ないのなら、今の

俺がすべきは堕天使の総督としての仕事だ。

 

隠してたのはゼクラムあたりの指示だろうが、

そもそもなんの為の協定だと思ってやがる。

 

それに来賓を招いてのゲームだぞ?

参加選手くれぇきっちり調べろや。

 

ここで甘い顔すればオーディンの爺さんは

俺を見限るだろうし、帝釈天も俺たちに

対してどんな行動を取るかわからん。

 

帝釈天とて昨日の会談や、今の俺の態度で俺と

オーディンの爺さんが協力体制にあるってのは

なんとなくわかってるハズだから、今はそれほど

突っ込んでこねぇだろうがよ。

 

「う、うむ。私としても初耳だ!コレは

見過ごせん!ここは一度明日のゲームを延期

して、事実調査を行いたいと思うが・・・

帝釈天殿やオーディン殿はどうだろうか?」

 

明日のゲームを延期して調査ぁ?

 

『英雄、リアス・グレモリー』のお披露目を

しねぇってか?まぁ気持ちはわかるがよ。

 

「確かに自律型の神滅具は気になるけどYO!

赤龍帝も同じ神滅具だRO?しっかり調査

する意味でもゲームはするべきじゃね?」

 

そうだよなぁ。そもそもコイツは赤龍帝と

悪魔の駒を見に来たんだ。

今回の獅子王の戦斧に関しては僥倖でしかない。

 

本題を優先するのは当然だろうよ。

 

それに自律型と言えば狗も似たようなもん

・・・いや、アイツとは違うか。

 

なんと言ってもコッチは元が斧だからな。

何が有れば斧に悪魔の駒を使うってことに

なるやらさっぱりだが、その辺は調査を

待てばいいだけだ。

 

「うむ。確かに獅子王の戦斧は気になるが

赤龍帝もなにか問題が生じておる可能性も

あるからの。

お主らに調査させるには信用が足りん。

故にしっかりと見せて貰いたいもんじゃな」

 

そうだ。俺やオーディンの爺さんにして

みれば、赤龍帝の倍加はヤツへ対抗する

ために必要不可欠な技術。

その確認を怠るなんざありえねぇ。

 

「そ、そうですか・・・わかりました。

では調査とゲームを両立させて行いますので、

今回の件に関する詳細報告は明日以降となって

しまいますが、お時間を頂いても?」

 

一見調査報告を作るための時間稼ぎと

思えるが、コレは違う。

 

ゲームを潰すか、最悪でも延長させようとしてやがるな。

 

当然それに気づいている後ろの魔王たち、

特にセラフォルーの目がヤバイ。

 

まるで犯人のクマを見つけたウサギみてぇな

目をしてやがるぜ。

 

それに帝釈天やオーディンは譲る気がねぇぞ?

 

「あぁ、ソレでかまわねぇYO!なぁオーディンサン?」

 

「うむ。致し方あるまい」

 

陽気に頷く帝釈天と、鷹揚に頷く爺さん。

 

サーゼクスの様子から何かを隠そうと言う

気配を感じ取ったんだろうな。

 

ソレを邪魔してニヤニヤしてるが・・・

サーゼクスが隠したいのは秘密兵器とか

じゃなく『英雄』の実態だぞ?

 

まぁ関係者の胃と頭に甚大な被害を与える

秘密兵器と言えばその通りだがよ。

 

 

 

 

 

『グ・・ォォォォ・・・ォォ!』

 

「やはり重力は無効化できませんか。所詮は欠陥品ですね」

 

俺たちがそんなやり取りをしている間にも

向こうでは僧侶が獅子王の戦斧に対して

言葉を向ける。

 

この会話の最中でも結界の中では重力の

嵐による蹂躙が行われているのだろう。

 

しかし欠陥品とはどういう事だ?

 

俺たちが抱いた疑問を感じ取ったのか、

YOSHITUGU、いや、ゼファードルの

僧侶は解説を行う。

 

「そもそもネメアの獅子の魂は、ギリシャ神話

のゼウス様の手で獅子座へと昇華しています。

大戦で倒されて体や魂に手を付けることが

出来た白龍皇や赤龍帝とは違い、聖書の神が

どうこうできるようなモノではありません」

 

「「「「・・・」」」」

 

そりゃ・・・うん。そうだな。

 

「そもそも、ネメアの獅子のどこから斧が出てきたんです?」

 

いや、どこって言われても・・・

 

「そう言った様々な観点から、我々はソコに

あるのは残留思念の様なモノかナニカでは

ないかと推察しました。

なにせヘラクレス様の豪腕で三日も首を絞め

られていたのですからね。

その肉は食われ、皮は剥がれたとしても

害意や無念は残ったでしょう。

ソレを聖書の神が拾い、自分が造った神器の中に

組み込んだのではないでしょうか?

・・・コレが斧ではなく皮を加工して作られた

服等なら、聖書の神が関わらないホンモノの

意思が宿る可能性も認めることもできますがね」

 

『・・・』

 

そう言いながら攻撃を続ける少女。獅子王の

戦斧が呻き声すら上げていないのはダメージか?

それとも自己の存在が揺らいでいるのか?

 

「「「「・・・」」」」

 

いや俺を見るな。オヤジが何考えてあんなの

造ったかなんて知らねぇよ!

 

つーか、確かネメアの獅子は武器やら何やらが

通用しないって特性が有って、ヘラクレスの矢を

弾き、棍棒の攻撃を無効化したんだったよな。

 

加工された革はヘラクレスの服となったが、

そもそも皮が攻撃を無効化したワケじゃなく、

その下の肉とか骨とか魔力的なモノとか、

全部が揃って攻撃を無効化していたはずだ。

 

そこでヘラクレスはフロントチョークで

締め上げることにしたわけだが・・・

 

うん斧は全く関係無いな。間違いなくオヤジの

趣味だ。だから魔王共。俺を見るなってば。

 

神器研究の第一人者だからって、なんでも知ってるわけじゃねぇんだよ!

 

『ば、馬鹿な。では私は!このワタシは

残留思念に過ぎないというのかぁ?!』

 

俺が頭の中でネメアの獅子について考えて

いた間も、当然ながら戦いは継続している。

 

襲い来る痛みの中でなおも叫ぶ獅子王の戦斧。

その声は悲痛さにまみれていた。

 

その声を聞き、俺はあの僧侶の狙いにようやく

気付く。そうか、破壊とはこういう事かっ!

 

「さぁ?ただ誇り高き獅子ならば、ゼウス様に

復讐を目論むか、己を打倒したヘラクレス様に

従うことはあっても、私ごときに敗れるような

王様気取りに仕えるなどありえないでしょうね」

 

この時点でもはや貴方にネメアの獅子を

名乗る資格は無いのでは?

 

結界に閉じ込められた獅子王の戦斧にそう

告げる少女の目には、喜怒哀楽のどれも

含まれてはいない。

 

それだけに今の言葉も彼女が当たり前のことを、

当たり前に告げてるだけだと言うのがわかる。

 

ソレを受ける獅子王の戦斧も同様だろう。

いや、俺たちより余程衝撃はデカいハズ。

 

『誇り・・高き獅子・・・あぁ・・ワタ・シハ

ワタしワタシワたしわたしワタシワタしわタし

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

・・・壊れた。これが狙い。

 

魂だけの存在が、肉体となるモノを破壊された

上で己の存在を否定する事を事実と認めて

しまえば、その存在を保つことなどできねぇ。

 

自分が死んだことに気付いてない幽霊に

既に死んでいることを伝えるようなもんだ。

 

後に来るのは暴走そして消滅。

 

だが壊れた敵を見逃すほどソコの

僧侶は温くねぇ。

 

「滅」

 

今までは「結」と言って攻撃を加えていた

のを「滅」と変えたのにはナニカ意味が

あるのか?

 

そう思っていたが、その答えは直ぐに俺の

目の前に展開していた。

 

『アぁァァぁぁァぁァっッ・・・・・!!』

 

結界が小さくなっていく。

解除じゃない。押しつぶしている。

 

いや、滅しているのだ。

 

サーゼクスが驚きで目を見開くが、元々

聖なる光や聖剣で悪魔を消滅させることが

出来るように、相手を消滅させると言う

だけならバアル家に伝わる魔力以外にも

方法はあるんだ。

 

結界の中に入った異物を消滅させるのも

結界使いとしては当たり前の能力の一つ。

 

自己を見失い、抵抗するだけの意思を

亡くした残留思念なんざそれなりの

力が有れば消滅させることも可能だろう。

 

サイラオーグ・バアルは呆然としながら

その有様を、自分の眷属が消えていく様を

見せつけられている。

 

だが、ココで俺は重大なことに気付いた!

思考停止してる場合じゃねぇよ!

 

「て言うか何故リタイアさせねえんだよ?!」

 

呆然としているサイラオーグにもイラつくが、

当たり前のように消滅させようとしてる僧侶

だって問題だろう。

 

故に思わず叫んでしまう。残留思念とは言え

アレは神滅具に相応しい神器だ。

 

研究すれば他の神話生物の残留思念から

でも人工神器が造れるってことだぞッ!

 

どれだけの戦力強化になると思ってやがる!

 

ソレを消そうとするゼファードルの僧侶も、

ソレを守らねぇサイラオーグも理解できんぞ!

 

「落ち着けアザゼル。結界とは、そもそも

そう言うもんじゃ」

 

そう言って俺の肩を掴むオーディン。

 

そう言うもの。つまりは外界と隔離して

いるから、リタイア出来ねぇってのか?

 

「ならば尚更僧侶の方を止めねぇと!」

 

そう思ってファルビウムにヤツを止める

ように要請しようとしたが、

 

「小僧。ワシは落ち着けと言ったぞ?」

 

再度爺さんが俺に声をかける。

 

落ち着いてる場合かっ!そう怒鳴ろうとしたが

爺さんの様子を見て、その動きを止めた。

 

止めざるを得なかった。

 

俺を制止する爺さんは、声にも肩を掴む手にも

かなりの力を入れていて、更に画面を睨み付ける

様子は怒りに震えているようにも見える。

 

そうだよな、この爺さんにしたってアレ

だけの奇跡の結果生まれたモノが

目の前で失われるなんざ許せねぇよな?!

 

だからこそ、あの僧侶を止めないとッ!

 

そう思ってたんだが・・・

 

「聖書の神のクズが。他の神話勢力に手を

出すだけでなく、まさか死したモノの思念

まで利用するとは・・・」

 

え?

 

「・・・まったくだ。ヴリトラもそうだがよ。

オメーらは勝手が過ぎる。だからオメーらは

信用出来ねぇんだよ」

 

オーディンは我慢ならんといった感じで呟き、

普段の陽気さを消した帝釈天が冗談の欠片も

感じられない表情と口調で吐き捨てた。

 

ど、どう言うことだ?怒りの矛先は

僧侶じゃなくて俺たち??

 

俺だけじゃなく、サーゼクスたちも

オーディンの爺さんや帝釈天の言葉を

理解しきれていないようで、剣呑な

雰囲気を隠しもしない二人にどうして

良いかわからないようだ。

 

「アザゼル、お主はアレを研究して自己の

勢力の発展に役立てるつもりかもしれんがの。

ソレは全ての神話勢力に対する宣戦布告じゃ。

アレはあそこで終わらせるのが正しい」

 

宣戦布告?何が・・・??

 

「はっ!全然わかってねぇ。とりあえずアレだ。

今回の件であの嬢ちゃんやその主を罰する

ことは、須弥山代表としてこの俺が許さねぇ!」

 

怒気と共に発せられた帝釈天の宣言に、

俺たちは言葉を無くす。

 

「無論このオーディンも北欧神話を代表し、

彼奴らを罰することは許さん。

隠匿しとったバアルの小僧は知らんがな」

 

そう言って唖然とする俺たちを見回す

爺さん。これは紛れもなく本気だ。

 

二人からはココでナニカ有れば戦争も

辞さないと言う本気を感じる。

 

一体何が二人の逆鱗だったのかわからぬまま

動きを止めていた俺たちの耳に入ってきたのは・・・

 

『サイラオーグ・バアル様の兵士リタイア。

更にサイラオーグ・バアル様の投了を確認。

ゼファードル・グラシャラボラス様の勝利です』

 

と言う試合終了の宣言だった。

 

 

 

 

 

 

 

この日13個有った神滅具は12個となり、

悪魔陣営は神滅具の隠蔽を各勢力に謝罪。

 

神滅具の隠蔽は初代であるゼクラムの

指示であることが判明していたが、

バアル大王家はサイラオーグ・バアルを切り

捨てることで事態の収束を図ろうとした。

 

だがコトは悪魔だけの問題ではない。

 

そんな誤魔化しが許されるような状況では

なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

数日後

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

「で、どうかな?」

 

ファルビウムがオセと連絡を取っているが、

こいつらの会話には相変わらず主語がない。

 

『可能ですが、魔王領や他の領地に居る

連中は無理ですね。

また現地に居る連中で「アレを生かせ」だの

「コレを捕えろ」と言うのも不可能です』

 

ソレでも、通じるんだから問題は無いがな。

 

後はその方法か。コトがコトだから明言しない

だろうが・・・魔王領だの他の領地に居るヤツが

無理と言うのは、文字通り全滅させるからだな?

 

そうなると今回も前回の様な呪詛を使うのか?

 

「ソレで構わない。準備にどれくらいの

時間が必要かな?」

 

まぁ良い、重要なのは結果だ。

 

粛清は元々オセから提案されてたことだから

可能なのはわかる。

 

そして今回英雄を望まんのはオセがそう言う悪魔だと言うことを皆が知ってるからか?

 

もしくは今更悪名の一つや二つは気にせんという事か?

 

『人員の撤退もさせますから・・・準備に十日。

実行にも十日は欲しいですね』

 

十日か。ソレが早いのか遅いのか。

 

まぁ準備を含めて20日有れば俺とて

可能ではあるだろうから、この期間が

不自然と言う程のものでもない。

 

ついでに言えば、その間に逃がすべき者は逃がせと言いたいのだろう。

 

「それでいい。ヨロシク頼むよ。今回は

君に泥を被って貰う形になるけど・・・」

 

ファルビウムは普段の間延びした

口調ではなく、終始真剣な表情で

連絡を取っている。

 

しかしコレはな。仕事への報酬は当然として、

どんな形で補填すれば良いのやら。

 

サーゼクスあたりが知ったら・・・いや

アイツはアイツで従兄弟のサイラオーグ

を心配してたからな。

 

間違いなくトカゲの尻尾きりに走るで

あろうバアル家を見す見す逃がすような

真似はしないだろう。

 

『ご安心を。当方も後ろを気にしては前に

進めませんからな。老害の罪を裁くことで

他の連中への警告とするには十分でしょう』

 

前か・・・バアル大王家が旧魔王派を支援

しているのは公然の秘密。

ソレを粛清すると言うのはそのまま大義名分

になるし、悪魔陣営が纏まらなければ何時に

なっても他勢力との戦争が出来んからな。

 

その点コイツはそんな妥協を許さん

から信用できるというのが何とも・・・

 

「お手柔らかに・・・とは言わない。

今回の件でわかった。ヤツらがいる限り

悪魔に未来はない」

 

ファルビウムは本気で老害を消すことを

決意したか。

 

俺とて覚悟を決めよう。1000の老害より

100万の民を選ぶのが王というモノ。

 

今回はオセに背負わせることになるが、

その後に我々が民を導くことを考えれば

今の段階で泥は被れん。

 

向こうもそのことを理解してくれて居ると

言うのが救いではあるがな。

 

『かしこまりました。それとバアル領にある

王の駒や悪魔の駒も全て破壊します。回収しろ

等の命令は受け付けませんのでそのつもりで』

 

コレは俺に対する警告だな。

 

「あぁ、望むところだ。よろしく頼む」

 

以前言われたときにヤっていれば、

ココまで悪魔陣営が苦境に立たされる

ことは無かった。全ては俺の罪。

 

悪魔の駒の改良とレーティングゲーム

からの脱却は望むところだ。

 

俺がそう答えると、オセは満足げに頷いて

『ではこれより準備に入るので失礼します』

と言って通信を切った。

 

相変わらず迷いがない。

 

いや、王が迷いを見せてはダメだと言外に

俺たちに伝えてるのかもな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「超龍師団・ウィーネはバアル領北部を殲滅しなさい」

 

「はっ!」

 

「妖魔師団・黒歌と百獣師団・白音は同じく西部を殲滅」

 

「「はっ!」」

 

「不死魔団・アリスは私と共に南部を殲滅します」

 

『はーい!』

 

「魔影群団・本来は神野ですが、今回は簪が率います。東部を殲滅しなさい」

 

「はっ!」

 

「外部への情報漏洩は神野が遮断します。

各々好きに殺りなさい」

 

「「「「「『はっ!』」」」」」

 

「尚、中央は空殿と天中殺・凶将百鬼陣が

動くので、決められた範囲から絶対に中に

入らないように」

 

「「「「「『はっ!』」」」」」

 

「これより状況を開始する。先に通達するが

コレは蹂躙戦だ。容赦は許さん。見敵必殺。

民も、兵も、将も、貴族も関係ない。殺せ。

王の駒を持つ者が出てきたら磨り潰せ。

オーフィスの蛇を持つ者が居たら鏖殺せよ。

オセ様こそ悪魔だと。オセ様こそが大悪魔

だと冥界のクズどもに教えてやるのだ。

今はまだその前段階に過ぎないが、

将来、来るべき時の為に働け。

往くぞ!オセ様の名を不変の伝説とせよ!」

 

「「「「「『応っ!』」」」」」

 

 

 

 

『ねぇ主ぃ、アレ、良いのかぃ?』

 

「別に構わんさ。俺は貴族悪魔だし。他の

所領に住む連中のことまで面倒見る気はない。

それに仕事は楽しくやった方が良いだろう。

バアル領如き、サーゼクスでも10日有れば

滅ぼせるからな。

お前も不自然じゃない程度に遊べばいいさ」

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ、相変わらず

気前の良い主で嬉しいねぇ!それじゃ

好きにやらせてもらおうかなぁ!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その後オセ家がバアル大王家を罪人として

弾劾し、断交及び粛清を宣言。

罪状は神滅具の不法所持及び、禍の団への

情報と資金提供。更にフェニックスの涙を

始めとした物資の横流しである。

 

悪魔勢力最大派閥を率いるバアル大王家と

悪魔勢力の最精鋭を率いるオセ家の戦闘は

長期に渡ると予測され、その被害は甚大なモノ

となると考えたモノたちより魔王に仲裁を望む

声が多数上がるも、その仲裁が行われることは無かった。

 

コレは魔王が拒否したのではなく、仲裁が

入る前にバアル大王家側が全滅したからだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

♪(o・ω・)ノ))))))))

 

(((((((((((ヽ(・ω・o)♪

 

((((((((ヽ(・∀・)ノ)))))))

 

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(((((((((((ヽ( ̄∇ ̄*)

 

(σ≧▽≦)σ)))))))))))

 

((((((((ヽ(´・ω・`)

 

(* ̄∇ ̄)ノ)))))))))

 

(((((((ヽ(≧∇≦ゞ)))))))

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

全滅。バアル大王家の血筋だけでなく、将も、

兵も、民も、全てが十日の内に滅ぼされた。

 

特に領都は正しく灰塵と化し、ソコに悪魔の

営みがあった名残すら消えていたと言う。

 

このオセ伯爵家によるバアル大王家の粛清は、

大王家に味方していた大王派貴族や、そこから

資金や物資を補充していた旧魔王派達に対して

絶大な衝撃を与えることになる。

 

戦闘期間は粛清の宣言から僅か10日。

生き残りも目撃者も皆無。

 

魔王や他の家が放った諜報員も全員が消息不明。

 

その為この間バアル大王家の所領において

ナニが有ったのかを知るモノは、オセ家の

中にしか居ない。

 

ただ周囲を攻略していた各方面の悪魔達は

遠く離れたところから届く、聞きなれない

歌を聴いたと言う。

 

その歌は冥界に住む悪魔達の中では当然ながら

知られてはいない。

だが、地上にある日本と言う国を知るモノが

聞けばこう答えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かごめかごめ』もしくは『かごめ呪言歌』と。

 




大王家終了のお知らせ。

ちなみに魔王様とオセ君の会話は数日後の
話なので眼鏡会長はちゃんとゲームします。

赤龍帝のハードルがモノスゴク・高いッ!

謎に包まれたっょぃょぅι゛ょの名前がついに明らかに?!

オセ君サイドのお話は試合の後かなぁってお話


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70話

二話投稿出来た・・・だと?

試合を見た眼鏡会長と英雄様。
そしてオセ君陣営のお話。

つまり・・・特に話は進んでないッ

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

「サイラオーグ相手に完全勝利か」

 

結局僧侶一人しか力を見せることは

無かったけど、アレだって知らなければ

対処出来なかったもの。十分よ。

 

彼女の結界に関しては、声が届くと言う

ことは衝撃は通ると考えれば、椿姫でも

破れるでしょう。

 

いえ、それも彼女の設定次第でしょうけど

少なくとも匙なら問題ないわね。

 

問題はサイラオーグよね。あれって今後は

どうなるの?

 

来賓の方々にまで罪状を告知された以上、

バアル家が尻尾切りをしたり、事実を隠蔽

しようとしたところで通用しないわよね?

 

老害が滅ぶか、何かしらの罰を与えて

なぁなぁにするのか・・・どちらにせよ

主従揃ってみんな心と体に大ダメージを

負ったし、切り札は失われた。

 

あの眷属の中で最も警戒していた兵士が

消え、女王の特性である穴も見た。

 

アレなら私が相手すれば勝てるわ。

匙は相性が悪いし、椿姫はどうかしら?

ヨシコ=サンは・・・うん勝てるわね。

 

他の眷属に関してもねぇ。

 

騎士が乗る青い馬はソコソコの速度しか

なかったから、速さで優れば問題ない。

 

視線で重力を発生させる神器は、地面の

陥没具合からそれほどの威力は無かった。

 

能力を封じる棺は・・・まぁ地力が

違うし、そもそも能力じゃなく普通に

潰せば問題ないわね。

 

僧侶が使う氷の魔法は普通だし。完全に

私の下位互換だから、普通に倒せるわ。

 

竜に変身って言ってもあの程度じゃ的だし、

大柄な力自慢なんか椿姫の餌よね。

 

あの程度なら完封できる。

 

問題はサイラオーグだったけど、

ゲームに出れるかどうかが疑問よね。

 

出てきたところで、切り札が無いから

普通の筋肉でしょ?

 

垂れ流しの闘気なんか今更だし。

結界に対する攻撃を見れば、完全に我流。

 

我流は防御に回ると弱いからねぇ。

神滅具を纏って防御力を底上げした

状態ならともかく、アレだけなら誰が

当たっても勝てるわ。

 

「ふむ。彼が今後出てこないとしたら、

明日の私たちのゲームはかなり重要な

モノになるだろうな」

 

映像が消えたディスプレイから目を離した

ヨシコ=サンがそう呟く。

 

そりゃそうよねぇ。

 

私もゼファードルもシーグヴァイラも

ディオドラも、ゲームに何かを求めて

るわけじゃない。

 

そんな中、真剣にゲームをしようと

しているリアスにとっての強敵は、

サイラオーグただ一人だった。

 

ソレが堕ちたんだもの。

 

サーゼクス様やリアスにとっては福音よね。

 

「シロネ様からも『しっかり殺れ』と

言われてますけど、その『しっかり』が

難しいところですね」

 

椿姫は試合の内容に対しての不安を

隠そうともしない。

 

弱気になるな!とでも言えばイイのかしら?

だけど気持ちはわかるわ。

 

補佐官様が奥で金棒素振りしてて、その

周りで遊ぶアリス様と火車さんと夜叉一さん。

 

そこにシロネ様を始めとしたオセ家の方々が

目を光らせてるんでしょ?

 

「温い」って言われてもダメだし「殺り過ぎ」

って言われてもダメなのよね。

 

この辺はリアスの眷属の強さにもよって

違うんだろうけどさぁ。

 

私は私でハードル高いわよ。

 

「しかしゼファードルさんは一瞥も

しませんでしたね?サイラオーグも

言ってましたが見る価値が無いって

ことでしょうか?」

 

匙が不思議そうに首を傾げてるけど、

まぁ半々ね。

 

この辺は政治家として、王としての視点

が必要になるから、シカタナイか。

 

「匙も知ってるでしょうけど、サイラオーグが

王を目指したのはゼファードルの僧侶が言った

ように、私利私欲、特に権力欲からのモノよ」

 

私の解説に匙は目を見開く。

 

「え、いや、でも。アレですよね?昏倒

しているお袋さんの為に強くなったって

話でしたよね?!」

 

お母さんを大事にする匙にはサイラオーグ

に同情する点も多々あるのでしょう。

 

でもね?

 

「匙、ソレが民に何の関係がありますか?」

 

そう、無関係だ。むしろ母親にいい顔を

したいと言うだけで王に成られては迷惑

と言っても良いだろう。

 

「更に自分を馬鹿にしたヤツを見返す?

殴り倒して?一体彼はどんな世紀末を

創るつもりなのかしらね?」

 

気持ちはわからないでもない。でも

ソレは王の行いじゃない。

 

方針や命令に逆らったものを殺すのは良い。

足を引っ張る虫も潰すべきだ。

だけど個人の感情で復讐するのは違う。

 

まさしく僧侶が言う通りの弱い者イジメ。

そんなのが王を語るなと言いたくなるし

お姉様の仕事を侮辱するな!と言いたくなる。

 

「なるほど、彼は民を見ていない。

それでは封建制の中で王になったとて、

政治の荒波に飲まれるか、利用されて

悪名を着せられ、殺されるだけだな」

 

ヨシコ=サンは地上のヨーロッパの

歴史を知ってるからね。

腕力だけで王になった存在の末路も

知ってるでしょう。

 

「それにサイラオーグは底が浅いのよ」

 

椿姫も話に加わってきたわね。

 

「浅い?ですか?」

 

思っても見なかったことを言われて目を

瞬かせる匙。まぁ見た目とかエピソードを

聞けば苦労してきたって言えるかもしれないけど・・・

 

「母親が昏倒して入院してるって言う

のは確かに悲劇でしょう。

でも世の中には病気になっても入院すら

させることが出来ずに、目の前で死んで

しまう親や子を見るヒトだっているわ」

 

そうよね。下を見ればキリがないとは

言うけど・・・

 

そんな悪魔社会を作ったのは間違いなく

バアル大王家とその派閥・・・そして

ソレを掣肘できずに居る今の魔王様方。

 

「ご飯を食べるために働くのは当たり前。

家族の食費を稼ぐ為、貴族に暴行を受け

ながら歯を食いしばってる悪魔もいれば、

体を売って子供の食費を稼ぐ母親も居る」

 

「・・・」

 

うん。日本でも珍しいことじゃない。

 

ソレが封建制で差別主義の悪魔社会なら

どれだけの事が行われているか・・・

 

「当たり前のように食事が出来て、

病気とは言え母親は病院で寝てるだけ。

他の貴族が陰ながら支援してくれて、

本人には体を鍛える余裕まである。

コレで悲劇と言われてもね。

スラムの子供たちからしたら寝言に

しか聞こえないんじゃないかしら?」

 

魔力が有ろうと無かろうと、現状彼は

普通に生活出来てるもの。

 

支援者は政治的に傀儡にしようとか、

バアル家の次期当主だからって下心も

あったんでしょうけど、そもそも何を

支援してもらったの?

 

入院費はウチが要らないって言ってるし、

グレモリーやら母親の実家も間接的に

援助してるから生活費には困らないでしょ?

 

貴族として生きるためのナニカを支援してもらった?

 

それは一般には贅沢と言うのよ。

 

病気の兄弟や母親を屋根も無いような

場所で看病してる子供にしたら

サイラオーグの環境は恵まれてるでしょう。

 

私たちは王になることを目指すよりも先に、

自分たちの所領をしっかりと確認して、

そういった子供たちが居なくなるような

領地経営をしなきゃいけないのよ。

 

・・・二言目にはゲームゲーム言ってた私が

言うことじゃないけどね。

 

サイラオーグは王になれば何でも出来る

って勘違いしてたかも知れないけど、

それは逆。王は各地の領主に対して一定

の配慮を行わなければならないわ。

 

それに比べれば自分の領土を好きにできる

地方領主の方が出来ることが多いのよ。

 

そのことを知れば、まずは各々が自領を

確認しその問題点を把握、そして解決策を

考案することが冥界を変えることになる

と言う答えに行き着くわ。

 

そのための意見交換や技術交流をする

のが派閥。

 

そして政治闘争に明け暮れてる老害を無視し、

真剣に貴族として次代を考えるのが貴族派。

 

そう。貴族派は現魔王派や旧魔王派と違い、

血統やら主義思想の正当性ではなく、貴族

として己の所領を栄えさせる手段を求める派閥。

 

そしてソレを実行しているからこそオセ様は

貴族派筆頭のような扱いを受けてる。

 

貴族の義務を理解せず、王の職務を理解

しない脳筋が王を語るなんて許せるもの

じゃないし、そんな阿呆に価値を認める

ほど私たちは安くない。

 

まぁ単純に公の場で売られた喧嘩を最高値で

買っただけって可能性もあるけど。

 

あんな爆弾抱えて他人様に喧嘩売るって

何考えてたのかしら?

 

しかも普通に眷属として連れ歩いてるし。

 

溜息を堪える私の後ろでは、今も椿姫や

ヨシコ=サンがサイラオーグに同情する

余地がないことを説明しているわ。

 

他の眷属もしっかり聴いてるみたいだし、

ココは良い授業になったと思いましょう。

 

さぁ明日は『英雄リアス・グレモリー』と

『阿呆のソーナ・シトリー』のゲームよ。

 

前評判は9:1でリアス優勢。

 

・・・ふふっ。明日が楽しみだわ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

さ、サイラオーグさんが完敗・・・それも

ゼファードルってヤツは一歩も動かず、

あの僧侶が一人で終わらせやがった!

 

「まさかサイラオーグも神滅具を持ってたなんて・・・」

 

部長はサイラオーグさんが負けたことより

神滅具に驚いてるみたいだな。

 

ま、まぁ俺の赤龍帝の籠手と同じ神滅具だ。

警戒するのも当然だよな!

 

「ですが、今回の敗戦で神滅具の不法所持

と言う扱いとなります。しばらく彼は

ゲームに参加することは無いでしょう」

 

朱乃さんは心持ち明るい声でそう部長に

語りかける。

 

昨日のゲームが終わるまでは、暫く俺たちと

離れることに対してかなり凹んでたんだけど、

会長とのゲームの結果によっては早く地上に

帰還出来るかもしれないって部長が言って

から、少しずつ回復してきたんだよな。

 

流石部長!メンタルケアもばっちりだぜ!

 

「そうね。サイラオーグがその存在を隠して

たからあんな結果に終わってしまったけど、

もしもあの切り札を使っていたらゲームは

どうなっていたかわからないわ。

なにせ神滅具ですもの。

ゼファードルがどうやってアレの情報を

手に入れたかは知らないけど、どんな力が

有ったかまではわからなかったはずよ」

 

そ、それはそうだ。

 

俺の赤龍帝の籠手だって、自分の倍加だけ

じゃなくギフトだって出来るんだもんな。

 

「そうですわね。その力がわからないから

こそああやって分断したんでしょうし」

 

朱乃さんの言うとおりだ!

 

鳥野郎もそうだったけど、あんな風に

正面から来ないで、卑怯な搦手を使って

くるのが悪魔の貴族ってヤツなんだ!

 

正々堂々と相手と向き合う部長とは大違いだぜ!

 

「そしてまた麻雀よ!一体何様のつもり?!

それに偉そうに説教なんかして!あいつらが

サイラオーグの何を知ってると言うの?!

私はいくら強くてもあそこまで相手を、

そしてゲームを侮辱するような真似をした

ゼファードルを絶対に認めないわ!」

 

おぉ!部長が燃えている!

 

でもわかります!あんなに頑張って戦ってる

サイラオーグさんや、その眷属のヒト達を

見向きもしないで麻雀なんて、相手を馬鹿に

してるにも程があるぜッ!

 

それに・・・女王のヒトがダメージを受けて

堕ちるときも、そのまま追撃しやがった!

泣きながらサイラオーグさんに謝ってたのに、

ソレすら無視して攻撃するなんてありえねぇ!

 

ソレが人間のやることかよぉ?!

 

あんな連中には絶対に負けられない!

 

あの結界だって部長の滅びの力が有れば

壊せるって話だし、たくさんの天使とか

堕天使の動きを止めたギャスパーの

魔眼だって防げるはずないからな!

 

結界に頼ってるだけのヤツなんかボッコボコにしてやんよ!

 

「落ち着いてリアス。彼が慢心してるなら

慢心させましょう。そして私たちはその

慢心を突いて倒せばいのよ」

 

お、おぉ。確かにそうだ!流石朱乃さん!

 

向こうが油断してるならそのまま

油断させておけば良いんだよな!

 

「・・・そうね。ありがとう朱乃」

 

朱乃さんの言葉を聞いて冷静になって、

気恥ずかしさを覚えたのか、赤い顔して

謝罪する部長とソレを見てあらあらと

笑いながら声を掛ける朱乃さん。

 

うん。グレイフィアさんに叱られてからと

言うもの落ち込んでちょっとギクシャク

してた二人が、いつも通りの二人に戻った。

 

こうなった俺たちは強いぞっ!

 

「とりあえずサイラオーグ様には後で

お見舞いに行くとして、私たちは明日の

ソーナ会長との試合があります。

ゼファードル殿だけを見てソーナ会長を

無視していては勝てるものも勝てません。

逆に油断で足元を掬われますよ?」

 

朱乃さんはそう言って部長を諌めるけど、

そうだよな。

 

いくらアザゼル・・先生や、匙が俺たちの

勝ちだって判断してて、周りも絶対有利って

言ってても、肝心の俺たちが油断してたら

勝てるものも勝てなくなる。

 

匙には悪いが、お前たちが勝つための

唯一の可能性である「俺たちの油断」は、

今この時無くなったぜッ!

 

「えぇそうね。まずは一歩一歩よ!『英雄』

として恥ずかしくない戦いをして、来賓の

方々にも若手悪魔はサイラオーグだけじゃ

ないってことを見せつけるの!

まずはソーナ!初陣で緊張してるであろう

彼女には悪いけど、ココで私の踏み台になってもらうわ!」

 

ふ、踏み台って・・・ま、まぁ言い方は

悪いけど、あの修行で成長した今の俺たちが

全力を出せば、特に特徴がないって言う会長

のチームじゃ太刀打ちができねぇのも事実だ。

 

ギャスパーの神器も使用許可が下りてるし、

俺だってリングを使っての禁手や、新たな

魔法がある!

 

会長は鳥野郎やゼファードルの野郎みたいな

卑怯な手を使う相手じゃないし、何より初陣だ。

 

俺たちみたいに強敵と戦ったことも

なければ、一歩間違えれば死ぬって言う

実戦の空気ってヤツも知らないんだ。

 

だからこそ俺たちが勝つ!

『英雄、リアス・グレモリー』の伝説は

ここから始まるんだッ!!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー奥様視点ーー

 

 

「ふむ。バアル大王家を敵として粛清する

名目が出来たことは良いことだが・・・

そうかヤツは違ったか」

 

旦那様が本日行われたゲームの内容を

見ながらそう呟きます。

 

期待ハズレと言うのと、予想が外れた

ことに対する嬉しさの半々でしょうかね?

 

ですが気持ちはわかります。

 

「アレはエピソードだけ見れば物語の主人公

ですからね。もしくは宿敵と言った感じの

一人になれたかもしれませんが・・・」

 

その為に追い込ませて、逆転できる可能性

まで示唆させたんですけどね。

 

「だな。あの状況で火事場のクソ力的な

ナニカが起こって禁手だのなんだのを

していたら、奴にも管理者の加護(ご都合主義的な力)

働いてると判断して「耐えたからお前の勝ち」

とか言わせて自称弟子に投了させる予定

だったが・・・さすがに何も無いのは

意外だった。

アザゼルやアジュカが神滅具の破壊を容認

した事と言い、全部普通に終わったな」

 

本当に普通でしたねぇ。

 

「諦めないど根性」が奇跡を生むと言うなら、諦めたから試合終了と言ったところでしょうか。

 

「とりあえず今回の件でバアル大王家が

失点を露呈しました。

コレで連中と断交出来ますし、近日中に

ファルビウムあたりから粛清の依頼が

来るでしょう」

 

来なければ勝手に粛清しますが、さすがに

オーディンや帝釈天の目の前であんな真似をしたらねぇ。

 

今回冥界に来て居ないギリシャ神話への

補填もあるでしょうし、何より

「責任者が大物なんで見逃しました」

なんて言えません。

 

バアル大王家が自分から、外部勢力が納得

するような何かしらの処罰を提示してきた

ならまだしも、あの王気取りに全ての責任

被せて蜥蜴の尻尾切りをするようなら、

いくらボンクラ共でも決断するでしょう。

 

母親の実家を滅ぼすことをサーゼクスが

認めるかどうかはわかりませんがね。

 

「普通に考えればそうだな・・・ふむ。

どーせなら軍の予行演習も兼ねるか」

 

ほほう!とうとう軍勢を動かしますか!

 

「殲滅だけなら伯師妹とその配下2匹で

十分ですが、軍の演習となれば簪や

シロネコもこちらに戻す必要がありますね」

 

今は休暇中ですが、ソレを理由にコレに

参加させなければ簪だって気を悪くする

でしょうし。

シロネコの指揮の実践経験にもなります。

 

クロネコもそれなりに働いてますから、

褒美がわりにシロネコと一緒に仕事を

させても良いでしょう。

 

アリスはどうするか・・・彼女一人でも

十分ですが、それだと扱いが悪いですよねぇ。

 

さてさて、どのように使いましょうか。

 

「空にもそろそろ何時もの仕事以外の

仕事を与えて暇つぶしさせよう。

贄になる連中も向こうに沢山いるし」

 

あぁ、空殿まで使いますか。

 

確かに暇潰しにはなるでしょうし、もし

向こうに管理者がいた場合でも空殿

なら問題ないでしょう。戦闘に

なれば余波で周辺を滅ぼせますからね。

 

本番前の準備運動にはなりますか。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「でもって情報封鎖は神野にさせよう」

 

神野ですか。まぁどれだけバアル領が広大で

あっても、距離の概念が無い神野には無意味ですからねぇ。

 

情報封鎖に問題は無いでしょう。

 

「あとは司令官だな。細かい指示は

各師団長が行う形で良いが、当然

全体を見る司令官は必要だろうよ」

 

そして司令官。不測の事態に対応する為に

も必要なのはわかります。

 

普通なら旦那様が行うのでしょうが、この

言い方だと旦那様ご自身は今回の粛清に

参加しないおつもりでしょうか?

 

「お前の予想通り、今回俺は出ない。

万が一の際、空を抑える必要があるからな」

 

あぁ、うん。そうですね。

 

最初から空殿と一緒に居たら空殿が

気を使って加減してしまいます。

 

そうなったら暇潰しの意味がないですもんね。

 

そしてハメを外し過ぎた空殿を抑えるのは、

旦那様か神野にしか出来ません。

 

神野とて余裕があるわけではないので、

封鎖に穴が開く可能性を考えれば旦那様が

抑えるのが一番確実ですよね。

 

「そうなれば司令官は当然雪蘭だ。アリス

のフォローをしつつ全軍の監督を頼む。

連れてくのは準一等が4万に一等が1万。

三等を1000だな。陣触れは任せる」

 

「かしこまりました」

 

戦場で旦那様の代行をするとなれば、

その役は当然私ですよね。

 

ふむぅ。配置は東西南北の四方向と中央に

空殿と言ったオーソドックスな形で良いですね。

 

基本的に悪魔は飛行能力がありますから

地形に囚われずに動けます。

 

補給も簡単だし、部隊展開が楽で良いですよねぇ。

 

逃がす心配もないなら無駄に包囲

する必要も無いし。

 

各方面12750人。いや、編成内容を

変えてクロネコとシロネコの量を増やし

ましょうか。

 

伯師妹の部隊は少なくとも良いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふふふ。ようやく旦那様を愚弄する老害共を

滅ぼす日が来ました。

 

私や簪を転生悪魔と見下すのはまだしも、

ソレを理由に旦那様を蔑んだ愚か者よ。

 

ソレに庇護されて生きる虫けらどもよ。

バアルは滅びの力とやらを持つらしいが、

本当の滅びと言うものを教えてやろう!!

 




次回、眼鏡会長VS『英雄』リアス・グレモリー!

この時点で英雄様は神滅具の消滅を知りません。

結界は自分の力が有れば壊せると判断。
サイラオーグは筋肉ですから、相性が
悪かったと思ったのでしょう。

説教?他人の説教に耳を傾けるヒトじゃ
ないしなぁ。

『英雄様』はゲッタードラゴンもビックリ
な遠距離攻撃武器の使い手である。
ダブルトマホークどころじゃねぇ。

神滅具を宿してて転生に兵士の駒
8つ使った原作主人公と、
4分割されたウチの一部を宿してて
転生に兵士の駒を4つ使った匙。
・・・アレ?

純血至上主義の貴族は色々面倒なんです。
奥様は旦那様が受けた(旦那様は奥様が受けた)
屈辱を絶対に忘れません。ってお話



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71話

ゲーム開始直前!作戦ターイム!

『英雄』はリアス様単体ではない、チーム皆が
居てはじめて『英雄』なんだっ!

オリ設定!
オリ展開!

今日は1話だけっ!

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

「コチラの戦力は全部知られてるけど、ソレは

夏休み前までの情報よ!」

 

部長が自信満々に宣告すれば、

 

「向こうは戦車を増やしてますね。その分更に

数が劣ることになりますが、ギャスパー君の

神器の解放許可が出ていますから、数については十分覆せますわ」

 

朱乃さんは冷静に戦力分析をしている。

 

俺の目の前では、部長と朱乃さんによる試合前の

最後のミーティングが行われてるんだ。

 

俺も参加したいけど、俺にはそんな知識も

才能もないからな。

 

邪魔しないのが一番だ。いつか上級悪魔に

なったときにソレだと不味いらしいけど、

いきなり何でもかんでもってのは無理だからな!

 

俺も部長みたいに一歩一歩着実に進むぜ!

 

その結果とも言えるけど、今回の修行で俺は

最終的に禁手に至ることは出来なかったけど、

地力は間違いなく上がった。

 

さらに新しい魔法も覚えたしな!ぐへへへへ。

あの魔法があれば匙以外が全員女性である

会長のチームには圧倒的に有利に戦えると思う。

 

部長にも魔法の概要を話したけど、凄い!って

手放しで褒めてくれたしな!

 

「問題はイッセーの使い方よね」

 

ん?俺ですか?

 

「そうですわね、普通ならリングを用いた禁手

を使ってアタッカーとして動いてもらうのです

けど、その後がもちません」

 

うっ、た、確かにそうだ。リングのお陰で体を

捧げなくても禁手は出来るけど、一度使えば

その日一日は神器が使えないんだよな。

 

だから俺は最初は通常状態での倍加でギフトを

使って部長や朱乃さん。場合によっては

ギャスパーを強化するって言う話だよな。

 

会談の時みたいに、建物の中の相手の動きを

停止させることができれば、俺たちは停まってる相手を倒すだけだし。

 

建物に居ない相手を各個撃破出来るって戦法も有るらしい。

 

あのとき相手にやられたことでも、使えると

判断したら何でも使うって言うのは中々出来る

ことじゃない。

 

そう言うのを飲み込む度量ってヤツが必要なんだ!

 

飲み込んだ上で、更に改良を加えてゲームで

活用しようとするなんて考えもしなかった。

さすが部長だぜッ!

 

「サポートとして使うなら私かギャスパーの

側に置くべきだし、アタッカーとしてなら

ルー・ガルーと組ませるべきよね?」

 

俺の頭を撫でながら告げる部長。

そうか。ルー・ガルーさんを強化しつつ

俺も戦う形にしないと、ルー・ガルーさんが

一人でアタッカーしなきゃ行けないのか。

 

「あらあら。私と組んでも良いのでは?

圧倒的戦力で相手を潰して、他に援護に

行くと言うのも間違いではないでしょう?」

 

そう言って俺の腕をとる朱乃さん。

 

ちょ、や、柔らかいモノが当たってますって!

 

「朱乃はダメよ!だってまだ力の制御が完全じゃ

ないじゃない!倍加なんかしたらどうなるか

わからないわッ!」

 

部長はそう言って朱乃さんから俺を引き離そう

とするけど、朱乃さんはあらあらと言って

微笑みながらも俺の腕を離そうとはしない。

 

また二人の間で火花がッ。

 

ま、まぁコレがいつもの俺たちだもんな!

緊張もしてないし、油断だってしてない。

 

なんなら鳥野郎みたいに、開幕と同時に速攻

をかけても良いんだ!

 

フィールドにもよるけどさ。ギャスパーの神器に

俺がギフトして、相手の動きを止めるんだ。

 

そのまま他の皆が動いて試合を終わらせるって

言う手も有るんだぜ?

 

ソレを聞いたとき、やっぱり部長は天才だって思ったね!

 

誰もが気付かない事をサラリと発見してサラリと

やってのける!ソコに痺れる憧れるぅぅ!

 

ま、まぁソレで部長が停まったら意味が

無いから、やっぱりフィールド次第って

話だけどさ。

 

観てる方はつまらないかも知れないけど、これ

だって立派な戦術だしな!

 

会長を踏み台扱いするのはアレだけど、初陣で

緊張してるところを一気に終わらせることで、

力の差ってヤツを見せつけて、ゼファードルに

挑戦状を叩きつけてやるって言ってたし!

 

みんなの夢を賭けたゲームであんなふざけた

マネをするヤツを認めるわけには行かねぇし、

来賓の人たちにだって、あんなのが悪魔の若手

みたいに見られても困るしなっ!

 

会場の全員に見せてやるぜ、英雄の戦いをなっ!

 

 

・・・ついにゲームが始まる!

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーソーナ視点ーー

 

試合前のミーティング。特に言うことは

無いけど、油断慢心を無くすためにも

しっかりと準備と対策をしないとね。

 

今回のゲームにおいて、勝敗は既に決まってるわ。

 

試合には負けても良い。

だけど勝負に勝つ必要があるのよね。

だからこそ油断も慢心もしないわ!

 

「一番厄介なのは、赤龍帝の倍加を受けた

ギャスパー君の神器の使用よ」

 

コレに停められるのが最悪のパターン。

 

会談の際に天使や堕天使、そして悪魔の精鋭

を停めた力。

現在の出力は未知数だし、可能性を考えるなら

コレが一番厄介だわ。

 

魔法使い達が停まらなかったことを考えれば、

何かしらの対策は取れるみたいだけどね。

 

ソレに対して、今回私たちが用意したのは

ヨシコ=サンよ。

 

正確には私たちが用意したわけじゃないけど、

その辺はどうでも良いわ。問題は私が彼女を

きちんと戦力として使いこなせるかどうかよ。

 

とりあえず私たちが急に停止したときに、

狼狽しないで動けるように打ち合わせを

しておかないとね。

 

「ならば予定通り、開始と同時に私が神器を

使う形で良いかな?」

 

そう言って腕を叩くヨシコ=サン。

 

確かに彼女が簪様から与えられた神器には、

アレに対抗するだけの力があるって話だし。

 

サイラオーグみたいに温存して負けるのも

馬鹿らしいし、普通に使って貰いましょう。

 

「それにヴリトラを宿す俺にもアレは通用

しないみたいですから、最悪は俺が前に出て

時間を稼ぐ形になりますね」

 

匙は自信ありげにそう言って来る。

 

まぁ確かに。暴走状態で有りながら当時の

禁手すら出来なかった赤龍帝が動けたくらい

だから、アレは龍気でも防げるみたいよね。

 

それならば向こうが成長したとしても、暴走

以下の出力なら今の匙の動きを停めることは

不可能でしょう。

 

地力の違いを考えれば、私たちも多分大丈夫

だとは思うけど、油断は禁物よ。

 

そう考えながらみんなの装備を見る。

 

基本的に蒼いローブ着用で、下はヨシコ=サン

がエクソシスト時代に使っていたような肌着を

鎧下にして、その上に特殊な素材の革鎧っぽい

鎧を纏って体の線が出ないような格好をしてるわ。

 

ヨシコ=サンはさらにフルフェイスの兜も

装備してるわね。

剣を携える様子は、なんて言うのかしら

どこぞの傭兵団を率いる鷹って感じ?

 

他の皆も、ソレなりに高価な素材を使用した

防具で、魔力による攻撃やらナニやらを軽減

する効果が有るのを装備させてるわ。

 

公爵家のお金をこんなことに使うのはアレ

だけど、眷属の皆に怪我をさせない為だし、

次期当主の面目を保つ為だもんね。

 

要らないなんて言えないわ!

 

ちなみに体の線が出ないってことは、随所に

余裕が有って行動を阻害するってことだけど、

筋肉や関節の動きから行動を予想されない

ってことでもある。

 

何よりそれでも学生服と比べれば十分に

動きやすいし、戦場へ行くのに部下に防具も

持たせない王なんて言われたくは無い。

 

それに防御力が有るって事は、それだけ思い

きった行動が取れると言うこと。

 

赤龍帝の保持者が禁手をした時なんかは、

攻撃力より防御力の強化が厄介だしね。

 

後は赤龍帝対策。本人の倍加に関しては私達

ではどうしようも無いけど、ヨシコ=サンの

神器なら対応出来る。

 

ギフトによる上乗せも洋服崩壊もシロネ様が

用意した護符が有るから、間違いなく防げる。

 

原理については簡単な説明しか受けて無いけど、

ソコを疑う気はない。

 

まぁ龍気対策だから、ヴリトラを宿す匙には

護符が無いけどね。だけど、赤龍帝の性格を

考えれば男にアレは使わないと思うのよねぇ。

 

使われたらリタイアしろとは言ってるけど、裸に

された不良と裸にした性犯罪者の絡みかぁ。

 

ウチの子が腐らないか心配だわ・・・

 

ま、まぁ良いわ。私は私がするべきことをする。

そこに感情は交えない。

 

・・・だけどね。

 

「性犯罪者、兵藤一誠は必ず殺るわ。ソレを

可愛がるリアスにも屈辱を味わってもらうし、

立場を弁えずに同調する姫島朱乃も同罪よ!」

 

リアス。学園の秩序を乱す連中は許さない。

私はそう宣言したわよっ!

 

「「「サー・イエッサー!」」」

 

確固たる意思を宿した私の言葉に、直立不動の敬礼で答える眷属のみんな。

 

「このゲームが終わったら、連中はグレモリー

が隔離して教育するらしい。だけどその前に

思い知らせて殺るのよ!奴らの愚行に対して

私がどれだけ怒り狂ってるかをねッ!」

 

私たちが血の池で溺れてた時、奴らは学園の

プールでナニをしてるのかしらねぇ?

 

「「「サー・イエッサー!」」」

 

その他にも沢山報告が上がってきたセクハラや

痴態の数々。

 

アイツら、この私を舐め腐りやがってっ!

 

叫び声を上げたくなる激情を抑えて、努めて

静かな声で語りかける。

 

「私たちはこれから『英雄』とゲームをするわ。

とても大変なゲームになるでしょう。

もちろん逃げ場はない。

勝負に勝って明日を手に入れるか、負けて全てを

失い地獄に落ちるか。

どう?殺り甲斐を感じるわよね?」

 

下手を打てば物理的にも精神的にも地獄に

堕ちる。まさしく崖っぷち!

 

だからこそ楽しみよね?

 

「「「サー・イエッサー!」」」

 

皆も理解してるようで何より。ならば問おう!

 

「ではみんな。私たちの特技はナニ?」

 

「「「殺せ!殺せ!殺せっ!」」」

 

「この試合の目的はナニ?」

 

「「「殺せ!殺せ!殺せっ!」」」

 

「私たちは学園を愛してるか!?闘争を、

戦争を、殺戮を愛してるか!?」

 

「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」」」

 

「OK!往くわよっ!私たちの戦場へッ!!!」

 

「「「サー・イエッサー!!」」」

 

 

リアス!箱入りの英雄様にインガオホーと言う

言葉の意味を教えてあげるわっ!

 

 

 

・・・ついに戦争が始まるっ!

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

両チームがステージに転送されて、これから

若手交流戦第三戦が始まろうとしている。

 

始まろうとしているんだが・・・

 

「んん?なぁ、オーディンサン?俺の記憶が

確かなら『英雄』で赤龍帝を擁してるのって、

紅い髪をした方だよNA?向こうの眼鏡の方

じゃ無いよNA?」

 

帝釈天が心底不思議そうな顔をして隣の

オーディンに確認を取る。

 

「儂もそう聞いておるがのぉ。眼鏡の方は

セラフォルーの嬢ちゃんの妹で、今回が

初陣と言う話じゃったが・・・」

 

自信無さげに髭を撫でるオーディン。

 

うん。わかる。

 

片や学生服で、試合を頑張るわ!って感じの、

見るからに未熟な若手連中。

 

片やガチ装備で、落ち着いて殺るべきことを

殺るって感じを漂わせる歴戦の兵士。

 

どう見ても実戦を潜り抜けてきた『英雄』は

ソーナにしか見えん。

 

「なぁサーゼクス。あの嬢ちゃん・・・何だ?」

 

アザゼルの情報でも、ソーナはリアスと対を

なす阿呆としか知らなかったのだろう。

 

明らかに怪訝そうな目でソーナ陣営を見ている。

 

そんなアザゼルの質問に答えたのは、質問された

本人ではなく、隣にいるセラフォルー。

 

「もちろん私の可愛い妹のソーナちゃんだよ!

うんうん。前の会合の時も思ったけど、アレから

さらに成長してる☆頑張って鍛えたんだね♪」

 

歌いだしそうな程の上機嫌でセラフォルーが

来賓にソーナを紹介するが、気持ちはわかる。

 

一時期は阿呆だの何だのと陰口を叩かれて、

貴族連中の中でさえ孤立しかけたソーナが、

貴族派筆頭のオセに目をかけられて育成まで

してもらえたのだ。

 

その結果を来賓にもわかるようにお披露目

出来たとなれば、そりゃ上機嫌にもなるさ。

 

それに、個の力はゼファードル並みとまでは

行かないが、チームとしての完成度の高さは

一見しただけでわかる。

 

全員が最上級悪魔に匹敵し、ソレが連携を

組めると言うなら、チームの総力としては

サイラオーグを凌ぐのは確実。

 

もともと教師を目指していて、冷静さと

視野の広さを兼ね備えた彼女は、指揮官と

して高い資質を誇ると目されていたのだ。

(我々の身内贔屓も有るがな)

 

このまま順当に経験を積めば、直ぐにでも

ゲームのトップランカーに名乗りを揚げる

ことになるだろう。

 

まぁ会合の時はアレだったから、今の彼女が

ゲームに夢を抱いてるかどうかは不明だが。

 

つくづくあの時のサイラオーグやリアスの

暴走が痛い。

 

反対にサーゼクスは冷や汗が止まらない様子だ。

 

しかしこれ以上の贔屓は流石に許さんぞ。

 

なんと言っても今回は、未だにリアスが満足に

使いこなせない吸血鬼の神器の使用を許可し、

会場も建物の内部にしたんだ。

 

更に建物の破壊を行わせない、つまりは力を

セーブして戦わせることで、怪我の可能性を

減らすと同時に地力の差による被害を抑え

ようとしたわけだ。

 

英雄が惨敗するわけには行かないし、ソーナも

大怪我をする可能性が減るからセラフォルーも

認めたが・・・そんな小細工はこれっきりだ。

 

ソレにあの二人を見比べればわかるが、この程度

の小細工が通じるほど戦力は拮抗していない。

 

サーゼクスの狙いは初手でリアスが吸血鬼の

神器を発動させ、建物内部のメンバーを

敵味方問わず全て停止させることだろう。

 

そして赤龍帝が動けることを確認したら、

危険だからと言ってゲームを終了させる。

 

動きを停められたソーナには英雄と戦うだけの

力が足りなかったと言う形で収めるわけだな。

 

だがその為には、リアスが自分が停まってでも

相手を停めて、赤龍帝に全てを託すと言う

決断をする必要が有る。

 

更にオセによって鍛えられていた彼女達が、

あの神器に対して何の対策も取っていない

マヌケだと言うことも必要条件になる。

 

つまりは無理だ。あきらめろん。

 

「はぁ~新人でコレかYO!昨日の麻雀野郎と

言い、あの眼鏡の嬢ちゃんと言い、中々層が

厚いじゃないKA!これに赤龍帝を擁する

英雄が加わるんだRO?こりゃテロリストも

大変DA☆」

 

若手のゲームや赤龍帝以外にも見るモノが

有ったと上機嫌な帝釈天。

 

どうやら第一戦では相当退屈させたようだな。

 

まぁ、普通なら若手ではなく皇帝の試合を

見せるのが筋なのだろう。

 

ボクシングで言えば四回戦、いや、デビュー

前の新人の試合を見せられるようなモノだ。

 

接待ならタイトル戦見せろと言われるのが

当然だからなぁ。

 

若手に夢を見ているのは我々の勝手。そんなの

相手には関係ない。

そんな当たり前の事すらわからんから、我々は

いつまでもガキ扱いなのだろう。

 

この辺の判断も政治力になるのだろうな。

 

「うむ。若手の育成能力を見れば決して

侮れぬ。悪魔勢力単体でも厄介よな」

 

オーディンはソーナやゼファードル本人では

なく、ソレを育て上げたモノ。つまりは師や

環境を見ているようだ。

そうして俺たちを敵に回した際のリスクを

計算しているのだろう。

 

サーゼクスや俺と言った個の力以外にも見る

べきところが有ると判断してもらえたとも

言えるが、結局はオセのお陰と言うのがな。

 

『作戦時間は30分です。この間に対戦

相手と接触することは禁じます。

ゲーム開始は30分後を予定しています。

・・・では作戦時間です』

 

と言うか、何故グレイフィアが審判役なんだ?

 

前回のゲームで、殺りすぎを止めれなかった

からと言う名目で強者を送り込んだのは

知ってたが・・・せめて派閥の悪魔にしろよ。

 

いつの間に潜り込ませたのかは知らんが、

いくらなんでも公平性に疑問が出るだろう?

 

アレか?可愛がってた従兄弟のサイラオーグ

みたいに、リアスが蹂躙されたら困るからか?

 

ソーナ側から文句が上がらないから良いと

言うのかも知れんが、普通はそこで文句は

言えないぞ。

 

セラフォルーは変態貴族を見るかのような

目をサーゼクスに向けてるし。

 

つーか、目が怖っ!

 

「あの馬鹿・・・」

 

セラフォルーの目に驚いてる間にも、

ゲームの作戦時間は着々と進んでいる。

 

そんな中、アザゼルが頭を押さえてナニかを

呟いている。

 

何があった?そう思い、ディスプレイを

見てみれば・・・

 

『イッセー君?ナニを見てるのかしら?』

 

そう言いながら赤龍帝に抱きつくリアスの

女王。そして赤龍帝の居る場所は本屋だ。

 

それも成人用雑誌が置かれてるコーナー。

幾つかの本が開かれているところを見ると

どうやら赤龍帝が立ち読みしてたらしい。

 

・・・ナニをヤってんだアイツらはっ?!

 

事態を把握し、一瞬固まった俺は、思わず

手にしていた双方の眷属のデータが書かれた

書類を地面に叩きつけた!

 

そんな俺のリアクションを見て、セラフォルー

やファルビウム、サーゼクスや他の来賓も異常に

気付いたらしい。

 

『今度、こう言うの着てあげましょうか?』

 

『ま、マジっすか?!』

 

驚愕する俺達を放置して、馬鹿どもの痴態は

会場に居る全員が目にすることになる。

 

帝釈天は眉を潜め、オーディンは見るに

耐えんと他に目をやり、悪魔の貴族たちは

あまりの出来事に目を見開く。

 

ヤツらがサーゼクスの妹の眷属で、バラキエル

の娘や赤龍帝だからこそ何のリアクションも

されてないが、そうで無ければこの場で

査問委員会が組織されているだろう失態だ。

 

我々の法に国家侮辱罪とか有ったかな?

現実逃避してる間にも、昼ドラは続く。

 

抱き合う赤龍帝と抱き締める腕に力を込める女王。

 

『あ、朱乃さん。どうしたんですか?』

 

『イッセー君から戦う勇気を貰ってるんです』

 

何を言うかと思えば今さらソレかよ!

ゲームの前から覚悟くらいしとけやっ!

 

つーか、主を差し置いてナニしてる?!

いや、ソレ以前に今は作戦時間であって、お前ら

の恋愛の時間じゃねーよっ!

 

ツッコミが追い付かんっ!

 

「「舐め腐りやがってっ!」」

 

声のした方を見れば、サーゼクスとセラフォルー

が変態を見る目で連中を凝視していた。

 

セラフォルーはわかる。ヤツらは完全に

ソーナを舐めてるからな。

 

サーゼクスはアレか、リアスを差し置いて

赤龍帝と仲良くしてるからか?それとも

大事な作戦時間をあんなことに使って、

主の顔に泥を塗ったからか?

 

どちらにせよ。二人の魔王は殺意を込めて

ディスプレイを眺め、ファルビウムはソーナの

眷属の動きを見ることにしたようだ。

 

来賓の相手をするアガレス大公の背中が

煤けて見えるのは気のせいでは有るまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム開始前の作戦時間。その中の僅か十五分

にも満たない時間で『英雄』が己の眷属を御し

きれてないことが露呈することになった。

 

今まで散々鍛えられたと思っていたが、まだまだ甘かったようだ。

 

奴等をどうやって『英雄』のまま隔離するかを

考えるが、俺にはナニも思い付かん。

 

 

 

 

 

すまん。ファルビウム。後は任せた・・・ぞ。

 

そうして俺は緊急用の医務室に搬送された

のであった。




知将、リアス部長の策を読めるヤツなんか
居ないぜっ!

サーゼクス、色々援護射撃をしているもよう。

セラフォルーはずっとあの目をしている。
(一応解説すると、ウサミちゃんの目です)

魔王を倒すのは英雄の仕事だろ?
そんな感じの事を言ってた槍使いが居るらしい。

お前らに反省と言う文字はねぇのか?
主の為に全力を尽くすとか、匙の夢を潰す
とか言っておきながら、衆人環視の上で
エロ本の立ち読みとラブコメである。

いや、なにしてんの?ってお話。



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72話

今日も一話だ!

とうとう始まったペニーワイズ会長VS英雄!

英雄は数の少なさを覆すために
誰もが思いつかない策に出る!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!

かなり荒いので、修正の可能性大!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

あ、危なかった!いや、ナニカ危険なこと

があったわけじゃなく、朱乃さんと

見つめ合ってもう少しで朱乃さんの唇と

俺の唇が重なるってときに「ピピピッ」

って言うあと五分のアラーム音がしてさ。

 

そのままハッとなって離れたんだけど、

あの雰囲気は本当に危なかった!

 

もしも朱乃さんとあんな雰囲気でキスした

なんてバレたら部長に怒られるしな!

 

何回も来たことが有る場所だったから、下見の

報告も出来たし、上手く誤魔化せた・・・と思う。

 

部長に俺の知ってることを報告した後は、

俺はアーシアやギャスパーと話してるし

朱乃さんは部長と作戦会議してるけど、

どうしてもさっきのが気になって目で

朱乃さんを追ってしまう。

 

俺の視線に気付いた朱乃さんは、軽く

微笑んで小さく手を振ってくれるけど、

部長が気付いたら大変なことになるので

やめて下さい!

今は地図に集中してるけど、いつ視線を

上げるか分からないから、本当に心臓に

悪いっす!

 

そんな俺たちを見て「むーむー」と言って

服を引っ張るアーシアも可愛い!

 

『・・・定刻です』

 

俺たちが思い思いの時間を過ごす中、作戦時間

の30分は終わったようだ。

 

それにしてもグレイフィアさんの声が、

いつもと違うというか何というか。

 

柔らかさが無いって言うのかな?

前に朱乃さんを叱った時ほどでは

ないけど、何かを我慢してるみたいに

聞こえるのは気のせいだろうか?

 

もしかしてアレか?部長の応援したいけど

出来ないから、我慢してるのかな?

 

うんうん。わかるぜ!義姉としては義妹を

応援したいし、悪魔としては英雄を

応援しないと行けないんだけど、部長が

サーゼクス様の妹で、グレイフィアさんが

サーゼクス様の女王だからな!

そんなあからさまなコトは出来ないってことだろ?

 

そりゃ色々我慢してるよなぁ。

 

『開始のお時間となりました。尚このゲーム

の制限時間は三時間の短期決戦形式を採用

しております。それではゲームスタートです』

 

「え?!」

 

グレイフィアさんの内心はともかくとして、

急に告げられた短期決戦形式と言うルール

に驚く俺。

 

だけど驚いてるのは俺だけで、部長を始め

とした皆は特にリアクションを取っていない。

 

本番のゲームでもこうしていきなり告げられる

こともあるんだろうか。

 

いや、だからこそ30分の作戦時間を

用意したと考えれば予想は出来たのかも。

 

流石部長がハマってるレーティングゲーム。

本当に奥が深いぜ!

 

感心していると、部長が椅子から立ちあがり

気合の入った力強い視線を俺たちに向けて言う。

 

「作戦はさっき話した通り。まずはギャスパー

の神器を使うわ。

イッセーは直ぐにチャージを開始して」

 

「はいっ!」

 

部長の指示に従い力を溜める!部長は

一気に決める気だ!

 

「デパートの内部の全部を停止したら

イッセー以外の全員が停止する。

つまり私たちまで動きが止まるわ」

 

そ、そうだな。俺は前の暴走状態でも

動けたし、今回は暴走ってわけでもないから

多分問題なく動けるだろう。

 

だけど部長を始めとした他のみんなが

止まったら見てる方も困るよな。

 

「だからまずはイッセーとギャスパーを

除いた私たちみんなで立体駐車場へ向かうわ。

イッセーはギャスパーに譲渡したあと、

店内を突っ切って、本陣を目指しなさい」

 

「はいっ!」

 

向こうの本陣は一階の西側だ。

 

突っ切るってコトは吹き抜けを利用して

中央突破しろってことか?

 

「ギャスパーは合図が有り次第、神器を

使って頂戴。ココからなら視界に入るのは

デパートだけだから、特に問題はないはず」

 

あーデパートと駐車場が一体化してたら

同じ建物扱いになるってことか。

その辺はどうなんだろうな?

 

「もしも私達が停まってもイッセーは

無視して動きなさい。

私が停まるって言うことは向こうも止まる

ってことだからね、そのままソーナに拳を

突きつければグレイフィアが勝利を宣告

するでしょう」

 

「な、なるほど。俺しか動けないなら

ソレで終わりですもんね!」

 

何の対処もせずに部長たちも停まったなら

アレだけど、キチンと対処した上でも

停まったら、それはギャスパーが強いって

ことになる。

 

そうなればその強いギャスパーを眷属に

してる部長も強いってことになるのか。

 

完璧だ!完璧な作戦だぜ!

 

「そういう事よ。問題はソーナ達もソレを

警戒して、屋外や立体駐車場に移動する場合ね」

 

ふむふむ。そうか、向こうもギャスパーの

神器は知ってるんだもんな。

 

そりゃ警戒するか。その場合どうするんだろう?

 

俺が考えていると、朱乃さんが柔らかい笑みを

浮かべて説明してくれる。

 

「そのためのイッセー君ですわ。私たちの

メインアタッカーで有るイッセー君が脇目も

振らずに中央突破しようとしていたら、

こちらにどんな狙いが有っても向こうは

イッセー君を止めないといけません。

まさか素通りさせて、イッセー君を女王に

させるわけにはいきませんからね。

だけど今のイッセー君を食い止める為には

それなりの戦力が必要になるでしょう?」

 

あ~それはそうだよな。匙は兵士の駒を4つ

使ってるらしいけど、俺はその倍だ。

 

その上、経験を積んで更に堕天使の幹部に

鍛えられた今の俺を相手にするには、

初陣の匙一人じゃ無理だろう。

 

そうなれば最低でも何人かが俺を止めに

来る事になる。

 

ソレを全部停止させて撃破すれば、向こう

の眷属を一気に減らせるってわけか!

 

すげぇ。十重二十重って言うのか?

 

一つの動作で何重にも罠を仕掛けて、どれか

を外してもしっかりと部長の計算通りになる

ように会長と俺たちを動かしてるぜ!

 

コレが掌の上って奴かッ!

 

「わかってても避けられない策こそ上策。

戦力を分散させたところを各個撃破でも

良いし、纏まって停まるならそれまで。

もしもイッセーを無視して本陣を捨てて

動くなら、イッセーにはそのまま女王に

なって無双してもらうわ」

 

おぉ!完璧だ!まさしく完璧ッ!

 

この勝負もらったなっ!

 

 

 

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

『・・・定刻です』

 

グレイフィア様からの作戦時間終了の連絡

がアナウンスされたけど、何かしら?

なんか奥歯にモノが挟まったような感じが

したけど、リアスがナニカ面白いことでも

したのかしら?

 

『開始のお時間となりました。尚このゲーム

の制限時間は三時間の短期決戦形式を採用

しております。それではゲームスタートです』

 

「「「えぇ?!」」」

 

眷属の皆がいきなりソレ?!と言った感じで

驚くが、まぁリアスやサーゼクス様の立場を

考えたら想定できるわよねぇ。

 

元々接待で来賓の方に見せるゲームだし、

チンタラするのは問題外。

 

更に制限時間無しでどっちかの全滅なんて

ルールにしたらリアスが大変な目に遭う。

 

英雄が無様に負けるわけにはいかないものねぇ。

 

「疑似神器開放。七剣抜刀!『時に煙る白亜の壁』」

 

開始と同時にヨシコ=サンが早速神器を展開した。

 

ヨシコ=サンの神器を開放した際の姿は、

三メートルくらいの大きさの全身鎧。

色は上半身の装甲は青を基調にして

下半身は白が多いわね。

そして爪先や正中線の所々に赤が有る。

 

背中の翼にも大きな盾にも見える剣と、

黒い銃にも見える槍がメインだけど、

そもそも彼女の神器である七剣の『剣』

とは剣だけではなく7つの武器と言う意味を持つわ。

 

教会の7つの丘とか、7つの首を持つ獣を

打倒する武器をイメージしたらしいけどね。

 

その内訳が酷い。

 

1・盾にも翼にも見える剣。ある意味正しい

  バスターソード。

  殴り倒すこともできるし、結界の起点

  にも使えるわ。召喚?ハハッ。

 

2、3・マンゴーシュとサーベルの雌雄一対剣。

  武器破壊と他にもナニカあるようだ。

 

4・魂を刈り取るハルバート。重いのよね。

 

5・忍者刀。自分や相手の血液を武器に

  纏わせ様々な効果を生み出すわ。

 

6・クナイ。何故か胸元から無尽蔵に出てくる。

  ヨシコ=サンは豊満である。

 

7・銃のように見えるけど、実際は槍になる。

  魔力を始めとした異能を破壊する槍ね。

 

コレ全部に聖なる属性付与って・・・

もう全部彼女一人で良いんじゃないかしら?

 

ま、まぁ使いこなすにはまだまだ技量が

足りないらしいけど。

 

とりあえず今回使ったのは一つ目の剣。

コレでこの一帯に対する結界を張る

ことで魔力攻撃は遮断出来た。

 

今からギャスパー君の神器を発動させても

自爆で終わるわ。

 

なにせ結界内部はある意味で異界。

私たちが居るのはデパート建物の中ではなく、結界の中。

 

ギャスパー君が直接視認してくるなら

まだしも、建物と言う括りで私たちを

止めようとしても無効化出来る!

 

・・・それにしても不可解なのはリアスよね。

 

なんでダメもとで初回神器の一手を使って

こなかったのかしら?

 

赤龍帝のチャージが間に合わなかったから?

 

ソレとも私たちが何らかの対策をしている

と判断したから?

 

もしくは自分が停止する可能性を考えて臆した?

 

・・・最後のが一番ありそうなのが何とも言えないわ。

 

「とりあえずコレで本陣は問題ないわね。

ではこれから予定通り、匙と留流子が先行。

赤龍帝とぶつかってもらいます。

もしギャスパー君がコウモリとなって監視

や情報収集してたとしても、出来るだけ

落とさないようにしてください」

 

後半になったら、何人かが本陣から出て

ワザと彼の神器を受ける必要があるのよね。

 

そうしないと勝負にならないから。

 

『彼の神器で動きを止められたから、

危険と判断してリタイアさせました』

ってところかしら?

 

英雄様に華を持たせるのも大変だわー(棒読み)

 

「了解です。俺たちはど真ん中を普通に

歩いてれば良いんですよね?」

 

「えぇ。そうよ。吹き抜けを利用して

まっすぐ向こうの本陣を狙って頂戴」

 

匙の確認に対して首肯する。

 

「了解です!それじゃ早速出ます!」

 

「行ってきます!」

 

そう言って匙と留流子は店内の中央に

ある吹き抜けを目指して出発した。

 

同級生と戦うことに迷いはないみたい。

兵士は前に進むのが仕事だもんね。

 

その調子で強くなりなさい。

いずれ上級悪魔になったら留流子や桃と

結婚させてあげることも出来るでしょう。

 

そんな眷属の未来を夢見てふと笑みが溢れる。

 

まぁ今はそんな未来よりもゲームよね。

 

本当のチェスと違って、レーティング

ゲームでは兵士をプロモーションさせる

必要はほとんど無い。

 

特に今回みたいに力任せに戦えない

ようなフィールドなら、底上げされた

力より、普段通りの力で戦うのが上策。

 

兵士の駒を4つ持つ匙が女王になったら

その力の制御だけでも大変だろうしね。

 

赤龍帝なんかさらに力に振り回される

んじゃないかしら?

 

結局のところ今回リアスが私たちに勝つために

取れる手段は、開幕の神器開放か、赤龍帝を

女王にプロモーションさせてから一旦退かせて

後半に禁手させて半ば暴走気味の無双。

 

赤龍帝の暴走に関しては、建物の被害が

アレだけど、負けるよりはマシ!って

割り切ればヤってくる可能性が高いわ。

 

もしくはそう見せかけて、あえて赤龍帝を

中央突破させてこちらの注意を引き、

人狼と姫島朱乃とギャスパー君により本陣を強襲。

 

そこで私たちが強襲に対処しているうちに

赤龍帝がリアスと合流。

 

譲渡と滅びの力の組み合わせで本陣ごと

消すって形よね。

ライザー・フェニックスさんの使った強襲

に近い戦法だけど、赤龍帝の譲渡が有れば

さらに効果が増すから、普通なら侮れない。

 

後は一丸となっての中央突破かしら?

 

数が少ないからこそ戦力を集中させて

くるでしょうね。

 

一応発見しても潰さないようにとは

言ったけど、ギャスパー君を監視や

情報収集には使わないでしょう。

 

折角今の自分には扱いきれない特上の

神器の開放許可が下りてるんだから、

最大限活用しないとダメよね。

 

普通に考えたら全体の動きを止めるより、

人狼あたりが担いで持ってきて正面から

乗り込み、私たちの動きを個別に止めて

そのまま撃破って言う流れが一番効果的だもの。

 

わざわざ短期決戦で単独行動をさせて、

各個撃破されるような手段は取らないでしょう。

 

あとは、兵藤一誠を囮にして駐車場から来るかしら?

 

囮と見せかけて主力と見せかけて更にって

言う何個かの策のウチの一つに使うんで

しょうけど、それは戦力の逐次投入よ?

 

その場合は譲渡が無いから、分散した方を

そのまま力の差で潰せるのよねぇ。

 

とりあえずコチラは赤龍帝狙い。

 

性犯罪者への折檻と、チームの要を抜くことを最優先させてもらうわ!

 

「椿姫、憐耶と巴柄を連れて駐車場に

行って罠を張って頂戴」

 

椿姫の追憶の鏡の禁手を使えば、駐車場に

来た敵は間違いなく潰せるわ。

 

時間稼ぎにもなるし、建物への被害もない。

今回のルールに一番役立つわよね。

 

と言うか魔王様方はリアスをどうしたいのかしら?

 

リアスってなんだかんだで脳筋だし、

感情と依怙贔屓の塊みたいな上司だから

指揮官としての適性は無いでしょ?

 

それぞれの眷属の個の力を暴走させる

以外に勝ち目がないって言うのは当然

わかってるわよね?

 

「了解です。ですが、駐車場に英雄様が

来た場合はどうしましょう?」

 

椿姫が確認を取って来るけど、有り得るかしら?

 

リアスが駐車場にってことは、それは

つまり完全に兵藤一誠を囮にするってことよ?

 

あのリアスが、ゲームとは言えそんな非情の手を打てるの??

 

普通なら兵藤一誠を囮としたと見せかけて、

その後ろからアーシアさんを連れて来ると

思うけど・・・

 

でも可能性は考慮しなきゃだめよね。

 

リアスが駐車場に移動する利点は何かしら?

全員で本陣への奇襲?無いわね。

私たちの力を知らないのに総大将が奇襲に

動くなんて有り得ないわ。

 

少なくともギャスパー君の神器に対して

どんな対処をするかって言うのを見るはず。

 

彼女にとっての勝ち筋は「どれだけ上手く

ギャスパー君を使うか」なんだから。

 

それはともかく。

 

「普通なら無いと言い切れるけど、その場合

は罠は解除ね。

でもね椿姫。色んな状況を想定するのは

良いけど、指示に問題がないならまずは

さっさと動いて頂戴」

 

その方が効率的だし、無駄に使って良い時間は無い。

 

そう言う意味合いも兼ねて、殺気を込めた目を椿姫へ向ける。

 

「は、はいっ!スミマセンデシタッ!」

 

私の視線を受けて直立不動で敬礼する椿姫と何故かそれに続く眷属のみんな。

 

そうよソレで良いの。今の私は学園の

生徒会長じゃなく王。つまりは上官よ。

 

指示そのものに問題があるならともかく、

罠を張った結果に対する想定は罠を張る

前にするべきじゃないわ。

 

とは言え誤解されても困るわね。

 

「みんなもわかってると思うけど、今のは

意見を言うなって言うことじゃないわよ?

動きながら考えて、疑問に思ったことを

その都度聞いてきてくれれば良いの。

まずは指示通り動けってことだから。

・・・イイね?」

 

「「「「サー・イエッサー!」」」」

 

返事を返すのは良いことよ。でも

今は作戦行動中。

 

「わかったらさっさと往け」

 

来賓の方々も見てるんだから、いつまでも

学生気分で居るんじゃないわよ!

 

「「「サー・イエッサー!」」」

 

椿姫達はそう言って立体駐車場へ向かう。

 

気付かれても対処できない策なんてのは下策。

本当の策とは最後まで気付かせないモノよ。

 

「むっ?」

 

リアスが考えているであろう策を潰す為に

色々な想定をしてたら、隣で待機してたヨシコ=サンが声を上げた。

 

「どうしたの?」

 

トイレなら3時間は無理よ?

 

流石に実戦慣れした彼女がそんなことを

言うとは思ってなかったが、どうやら

リアスは私の予想以上にアレらしい。

 

「結界表面にナニカの干渉を感じた。

どうやら向こうの吸血鬼が神器を使った

ようだな」

 

今更?ナンデ?何かの準備をしてたの?

 

そう思いながら「見ろ」と言われて彼女が

指差す方向を見れば、いつの間にか胸元から

抜かれていたクナイが投げられており、

雑貨品を売っている店の商品を破壊していた。

 

商品を破壊したクナイはそのまま消えたけど、

破壊された商品は時が止まったかのように

地面に落ちることなく静止している。

 

なるほど、クナイは聖なる力が内包されて

るから大丈夫だけど、商品はそうじゃない。

 

つまり店舗全体が停められたってわけね。

 

「まったく厄介な神器ね。とは言え

間接的な干渉ではヨシコ=サンの結界を

破れるほどの出力は無いってわけか。

一応威力確認の為に結界の外に出る必要が

あるわね・・・翼紗!」

 

「ハッ!」

 

本陣に残っている翼紗に結界の外に出る

ように指示する。

 

本当はこんな毒見みたいな真似は嫌い

だけど、この中で動けるかどうかって

言うのは今後に大きく関わるからね。

 

「「「・・・」」」

 

私たちが見守る中、恐る恐る結界を出る翼紗。

 

怖いわよねぇ。ごめんね。

 

そんな気持ちを表情に出さないように苦心

しつつ、ゲームの後で皆にナニカ欲しい

ものをあげようと心に決める。

 

当たり前に部下を殺せるような、でも

絶対に無駄死にさせない指揮官が理想だと

言うのは知ってるけど、やっぱり眷属の

皆を危険に晒したくないと思う。

 

・・・私には兵士を鍛えて地獄に送り込むことなんかできない。

 

レーティングゲームの学校を作るなんて

無謀で外道な夢を早めに諦めてよかった。

 

本心からそう思うわ。

 

胃を痛くしそうな時間の中、翼紗は

普通に動いて、壊れた雑貨をもって、

結界内に戻ってきた。

 

結界に入ると共に砕け散った雑貨を見て、

私たちにはギャスパー君の神器が通用

しないと言う結論が出た。

 

コレは力の差なのか、それとも護符のおかげなのか。

 

とりあえず最悪の状況は脱したわ。

 

コレで今回のゲームで私がシトリー家の顔を潰すことはない。

 

「「「ふぅ・・・」」」

 

私も予想以上に緊張してたみたいだけど、

私以外の皆も相当緊張していたみたいね。

 

溜息のタイミングが完全に私と被っていたのがちょっと面白かった。

 

時計を見れば、開始から10分ほど経っていた。

 

なんでこのタイミングで神器を使って

来たのかはわからないけど、この時間

全部チャージに使ったとすれば、

一体どれだけの力がギャスパー君に注がれたかわからないわね。

 

・・・性犯罪者が溜め込んだ力を注がれる男の娘かぁ

 

 

 

 

 

・・・

 

 

ま、まぁいいわ!

 

これから赤龍帝を潰せばこれ以上の力は来ない。

つまり私たちの動きが封じられることはない。

 

第1段階にして最終段階はクリアしたわ。

 

後はずっとこちらのターンッ!リアス。これから先は地獄よ!

 

 

 

 

・・・どうやって負けようかしら。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

擬似神器だと?!ならアレはカンザシ・オセの作か?!

 

シトリーの戦車が展開した神器を見て

驚いたのは俺だけじゃない。

 

「へぇ。なんつーか。聖書の神が創った

鎧より洗練されてんNA!それに結界まで

使ったZE?それも中々の強度DA!」

 

明らかにオヤジや俺とは違う作風の

神器に興味を示す帝釈天。

 

「ほほう。コレはコレは。神秘と科学の

融合と行ったところかの?」

 

知識に貪欲なオーディンの爺さんも、

赤龍帝や吸血鬼そっちのけで向こうの

神器を観察している。

 

だが一番動揺してるのは・・・

 

「ば、馬鹿な!小柄だが上半身に青が多めの、

対ビームコーティングを施されたEカーボン!

翼にも見える大剣ッ!銃のように見える銃剣!

・・・いやアレは他にもナニカ隠しているな?!

そして脚部や腰の部分にも収納がある!更に

背中のDNドライヴまで忠実に再現しているッ!

間違いない!アレは00ダンガムの主人公である

イナバ・U・レイセンが乗るダンガム七剣!

セラフォルー様!アレは一体どういうことですかッ?!」

 

普段温厚なアガレス大公が、目を血走らせて

セラフォルーに質問している。

 

いや、ありゃ質問というよりもはや詰問だな。

 

「え、えぇ?そんなこと言われても・・・」

 

アガレス大公のあまりの勢いに、さっきまでの

目つき悪っと言われるような目つきから一転、

わけがわからないよと動揺するセラフォルー。

 

まぁダンガム云々言われても、魔法少女にしたら

さっぱりわけがわからないよな。

 

アジュカもいねぇし。

 

とりあえず、この神器を展開したことにより

リアス・グレモリーの策は根底から覆された。

 

元々策ってほどのもんじゃなかったが・・・

作戦時間でアホやってた連中に期待する

のが間違いか。

 

残るは分散した戦力の各個撃破だ。

 

いやはや、初手で相手の策を潰すのは

基本だがよぉ。まさか結界によって

建物との境界を定めることで、間接的な

停止を無効するとは。

 

 

元々勝敗がわかってたゲームだから、

特に見るべきものはないと思って

居たがとんでもねぇ。

 

奴らがオセの関係者だとわかれば、使う

技術の一つ一つが革新的なブレイクスルー

の可能性を孕むってことだ。

 

この試合は一瞬たりとて目が離せねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つーか、こっからシトリーの嬢ちゃんが

どうやって負けるのか・・・逆に興味が出てきたぜ。

 




ヨシコさんの神器は完全にネタだからな!引っ張らないぞ!


手に汗(脂汗)握るレーティングゲーム第三戦!
勝つのは常勝(腐敗)と不敗(初陣)か?!。

フェニックス?最終的に婚約破棄と言う
目的を果たしたから、コレはもう戦略的な
勝利と言っても良いのではないでしょうか?


感想で頂きましたが、獅子王の戦斧に
使われているネメアの獅子は、沢山居る
獅子の中の一頭らしいですね?
(原作10巻参照とか)
・・・いや、それで良いのか神滅具?

まぁネメアの獅子の父親であるオルトロス
の兄貴のケルベロスが量産されてて、
堕天使のペット扱いで前座にされてる世界ですからねぇ・・・

後は「サー・イエッサー!」についてですね。
元々サーは閣下という意味がありますので、
現地で女性に使っても失礼でも何でもありません。

まぁ学校とかではどうかわかりませんが。
現場で戦う兵士に男も女もありませんからね。



ちなみにこんなコメントがありました

Q・作者サンは原作が嫌いですか?
愛が感じられません

これに対する作者の答えは

A・原作に関してはともかく、
原作主人公一味の行動が大っ嫌いです。

となります。

まぁ愛は人それぞれなので、作者の
作風が合わないと感じたら無理して
読まなくても良いのですよ?

読者様も嫌いな作品を見て不快な思いを
したくはないでしょうし、わざわざ
低評価して価値観押し付けられても
作者だって困りますってお話。


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73話

圧倒的な力を持つ赤龍帝に匙と仁村の
兵士コンビが挑む!

今日も一話だッ!(最近忙しい)

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!




ーー兵藤一誠視点ーー

 

部長の指示でギャスパーに譲渡を使ったあと、

俺は一人で中央の吹き抜けを目指していた。

 

そして少ししたら、慣れ親しんだギャスパー

の神器の波動が俺の背中に届いたんだ。

 

よしっ神器は間違いなく発動したぜ!

 

その証拠に、その辺に有る服や何やらは

まったく動いていないし、エアコンとかの

細い音も消えた!

 

後はギャスパーが俺の血を飲みながらこのまま

俺が向こうにつくまで制御すれば良い。

 

そんなに時間はかからねぇ。

 

なんたって真っ直ぐ向かうだけだからな!

 

向こうに着いたらどうしようかな?ただ普通に

寸止めすれば良いのか?それとも一応動き出す

可能性も考えて皆に洋服崩壊を使っとこうか?

 

生徒会の人たちも美人揃いだし、いやいや何より

コレは真剣勝負だからな!万が一を考えたら

しっかり潰すのは当然だ!だから仕方ないよな!

 

部長の為にも動けない会長達の動きを更に

封じておこう!

 

そう、あくまでも部長の為さ!

 

最早勝ちは決まった!後はグレイフィアさんから

終了の合図が出る前に、動けない相手に触れて

しまえば終わりだッ!

 

そう思ってたのに・・・

 

「よう兵藤。いい夜だな」

 

停まったハズの世界で俺に話しかけてくるヤツが居たんだ!

 

その声に驚き固まる俺。

そして俺の目の前に現れたのは・・・匙。

 

まさか俺や駐車場に避難した部長達以外に

動けるヤツが居たなんて・・・

 

しかも、完全に神器が作用してる建物の中だぞ!

 

『そんな?!どうして彼が動けるの?!』

 

通信を聞いている部長も驚いている。

完全に計算外ってことかよっ!

 

「動ける?あぁ、もしかしてギャスパーの

神器を発動してたか?」

 

不思議そうな顔で確認を取る匙。

コイツ、気付いてなかった?

 

いや、時間が停まってたら気付かないのは当然

だけどよ。どうなってんだ?!俺だって慣れる

まではずっと停まってたし、会談の時も数秒間は

止まってたんだぞ?!

 

それなのに何で匙も動けるんだ?!

 

クソッ!悪魔の駒を4つ使ったのは伊達じゃ

ないってことかよっ!

 

いきなりの計算違いにうろたえる俺に、更に

予想もしなかった声が聞こえてきた!

 

「匙先輩。周りをもう少し見てください。

何というか、空気が停まってますよ。

ホラ、あそこのお店のカーテンとか」

 

そう言って匙に声をかけてきたのは、黒髪の

ツインテールの少女だ。

確か一年の兵士・・・いや、そうじゃない!

 

「なんでその子も普通に動けるんだよっ!」

 

匙はともかく、彼女は普通の転生悪魔だろ?!

 

『有り得ないわ!ソーナは何をしたの?!』

 

会長の不正を疑う部長。気持ちはわかるぜ!

俺や・・・まぁ匙ならともかく、他の眷属

まで自由に動けるなんてありえねぇ!

 

一体どんな卑怯な手を使いやがったっ!

 

「なんでって言われてもなぁ・・・」

 

愕然とする俺を見て頭をかく匙。

 

「会談で天使や堕天使の軍勢を纏めて停止

させた凶悪な神器に対処するのは当然です。

現場では魔法使いが動いていたのでしょう?

なんで対抗策が無いと考えたんですか?」

 

そう言って心底馬鹿にするような目を

向ける一年の兵士。

 

会談の内容は会長のお姉さんの魔王様から

聞いたのだろう。

 

『ありえないわ!』

 

そう叫ぶ部長。

 

確かに対策を取るのは当然かも知れないが、

ソレが出来なかったからギャスパーは封印

されていたんだ!

 

長年部長や魔王様方が出来なかった事を、

簡単にできるはずがない!

 

やっぱり何かしたんだろ!それに・・・

 

「匙!何だその鎧はっ!学生服はどうした?!

それでも駒王学園の生徒会のメンバーかよ!」

 

俺たちのユニフォームと言ってもいい学生服

を着ることもなく、鎧とローブで身を固める

なんて、何考えてやがる!

 

そう激昂する俺だったが・・・

 

「いや、お前も禁手したら鎧じゃん」

 

う・・・い、痛いところを突いてきやがるぜ!

 

「そもそも実戦で防御力皆無の装備で

戦う方がどうかしてます。

兵藤先輩は防御力が上がるから良いかも

しれませんが、他の人は違うんです。

自分だけ鎧着ておきながら匙先輩に文句

言わないでください」

 

ぐっ。そ、そう言われると俺は何も言い返せねぇ。だけど部長は違う!

 

『特殊な装備で身を固めたと言うの?!

グレイフィア!コレは反則でしょう?!』

 

部長はそう言って俺たちの様子を見ている

はずの審判役のグレイフィアさんに声をかける!

 

そうだ!そんなの許されるはず無いだろ!

 

グレイフィアさんから、会長サイドに反則とか、

装備の解除を言い渡すとかそう言うことになると

思ってたのに、部長の声に対する返答は

 

『・・・特に問題はありません』

 

と言うモノだった。

 

問題ねーわけねーだろっ!!グレイフィア

さんやサーゼクス様は部長の敵なのか?!

 

「あのなぁ。神滅具や、その中に竜殺しの

聖剣まで持ってる兵藤とか、反則級の神器

を持つ吸血鬼が良くて、なんで普通の防具が

ダメだって思うんだ?」

 

『・・・?!』

 

何度目になるかわからないけど、通信機

越しでも部長が絶句する気配が伝わってくる。

 

い、いや、そう言われればそうだけど!

 

「俺たちは魂とくっついてるからしょうがねぇだろ!」

 

一番大きなのはそこだ!俺たちは取り外し

不可で、向こうは普通に装備を選べるじゃねーか!

 

「それなら同じように強化した防具を用意すれば

良かったのでは?ライザー様に負けた時も、

コカビエルと向き合った時も、ちゃんとした

防具を装備してればダメージも少なかったかも

しれません。そういうのを考えてソーナ会長は

私たちの為に防具を用意してくれました。

つまり、現在そちらが学生服で防御力皆無な

ぬののふくを装備してるのはリアス様の手抜きですね」

 

て、手抜きだって?!

 

『なんですって?!』

 

あんなに眷属を愛する部長が、眷属の安全に

まったく配慮してないような言い方をされて

絶句している。

 

いくら相手が女の子とは言え、部長のことを

何にも知らないヤツにココまで言われて黙って

いられるかっ!

 

話してる最中もチャージしていた俺は

思わず女の子に殴りかかった!

 

俺のいきなりの行動に驚いたのか、

匙は身動きが取れないみたいだ!

 

溜め込んだ力が直撃すれば上級悪魔でも

耐えられないってアザゼル・・先生も

言ってたからな!

 

女の子を殴りたくはないが、俺の目の前で

部長を馬鹿にした自分を呪えっ!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

俺の左手(この手)が光って唸る!

勝利を掴めと轟き叫ぶぅぅぅ!

 

先に一人落とすぜっ!

 

そう思って、硬直している少女への

ボディーブローが当たると思った瞬間・・・

 

「遅い」

 

俺の速攻にびっくりしていたはずの女の子は、

殴りかかった俺の左腕を掴み、籠手を触らない

ようにして攻撃を流す。

 

「そして甘い」

 

攻撃が流されたことに驚く俺に対して女の子は

そのまま腕を掴み、空いた片手で俺の襟を

取り、俺の踏み込みの力を利用して投げ技を

使ってくる!

 

動けねぇ!それに少女の肘が俺の左腕の裏肘に

絡まって抜けれない。

 

そしてそのまま関節を極めたまま俺は

地面目掛けて投げられたっ!

 

このままじゃ顔面から地面にぶつかっちまう!

そう思って右手を顔の前に持ってきたんだ。

 

間一髪、顔面から叩きつけられるのは防いだ

んだけど・・・

 

ボキッ!

 

ホッとして全身から力を抜いた瞬間に、左腕から

鈍くて嫌な音が聞こえたっ!

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

音の発生源が自分の左腕だと認識したと同時に、

熱と痛みが襲って来た!

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!

 

『イッセー?!』

 

今まで経験したことがない痛みを感じて

思わず左腕を折った少女を全力で振り払おう

とするが・・・その時既に少女は俺の傍から

離れて、匙のところに戻っていた。

 

そうか!狙いは初めから左手だったのかっ!

 

悪魔になって肉体的に強くなってなかったら

泣き叫んでいたであろう痛みの中で、俺は

遅ればせながら少女の狙いを悟る。

 

「蔓落とし。ま、同じ転生悪魔で肉体強度

にも差が無いなら関節技は効くってことだな」

 

痛みに耐える俺を見て、冷静に告げてくる匙。

 

「所詮素人ですね。殴る蹴るだけが戦い

ではありません。アーシアさんがいれば

骨を嵌めて治療できるんでしょうが、

残念ながら今の兵藤先輩は一人です。

しかもチャージした分を使ったから、

直ぐに禁手化することも不可能ですね」

 

匙と一緒に冷たい目で俺を見てくる少女に

怒りよりも怖さが浮かぶ。

 

「ねぇどんな感じですか?駒1つの兵士の

女の子に負けるってどんな感じですか?」

 

そう言いながら俺に近づいてくる少女。

 

その目は動物を観察してるような目で、

どこか怒ってるような、そんな目をしていた。

 

「貴方にセクハラされた友達は沢山居ます。

覗きやら何やらで怖くて更衣室で着替える

ことが出来なくなったり、学校に来るのも

怖いと思うようになった子も居ます。

今のはその子達の怒りですっ!

・・・私たちはね?貴方がその制服を着て

るのが許せないんですよっ!」

 

そう言いながら上段回し蹴りを放ってくる!

 

左手の痛みで回避は出来ない!だから

右手でガードしようとしたんだけど、

少女は蹴りが右手に当たる前に足を

ピタリと止め、背中から翼を出して俺に

突進してきた!

 

ガードで上げてた俺の右腕を掴んで、

一瞬でアームロック?の体勢に持っていく。

 

こんなの!っと振り払おうとするも、

力が入らないポイントを押さえられてる?!

 

右腕が狙いかと思って振りほどこうとする

が、俺の目の前には少女の肘が迫っていた!

 

アームロックしながら顔面に肘かよっ!

 

もしもこの肘で倒れたら、倒れる勢いを

利用して右腕も壊されるのだろう。

 

えげつない攻撃に冷や汗が出る。

 

だが、少女は勢いが有っても軽い!

 

肘を耐えて、距離を取りフェニックスの涙を

使って回復したら洋服崩壊を喰らわせてやる!

 

とりあえず最初の肘を耐える為に、自分から頭を

肘にぶつけにいくと同時に、踏ん張りを聞かせ

ようと足に力を込めるが・・・

 

ガクンと音がしたかと錯覚したくらい、急に

膝から力が抜けた。

 

何だ?!と思えば、匙の人差し指から黒い

ナニかが・・・

 

「匙ぃぃ?!ぐふっ!」

 

戦いに横やりを入れてきた匙に文句を言おうと

したところに、少女の肘が入る!

 

「狼牙っ!コレは貴方達が普段から学園内外で

セクハラを行ったせいで、その都度被害者らに

頭を下げに行って胃を痛めた教職員達の恨み。

更に内部評価を落とすことになってボーナスや

給料を減らされ、外部からも白い目で見られる

ことになり、胃と心を痛めた教職員達の恨みっ!」

 

小柄な少女だが、鎧を着こんだ上に全体重を

乗せた高速の肘だ。

その威力は堕天使幹部との練習の中で喰らった

どの一撃よりも重かった。

 

ぐしゃりと、鼻の下に叩きつけられた肘。

 

鼻が潰れ、前歯も何本か折れたかも知れない。

 

そんな一撃が顔面に当り、体ごとぶつかってきた

うえに、更に振り抜くような勢いもプラスして

俺の体を地面に叩きつけようとする。

 

足腰から力が抜けたことで、顔面に肘が

入ったままアームロックの体勢のまま倒れる俺。

 

頭を押さえようにも左手は使えず、右手は

ロックされている。

 

ゴンッ!と言う鈍い音がフロア全体に響き渡る。

そして後頭部から来る痛みに呻く暇もなく・・・

 

グキッ!ボキッ!

 

右肩と右肘から、さっきの左腕から聞こえた

ヤツよりもヤバイ音と痛みがッ!

 

「う、ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

あぁぁぁぁぁ?!痛い痛い痛いっ?!右肩と

右肘が完全に壊されたッ!

 

『イッセー!?今すぐ行くわっ!だから今は

そこから逃げてっ!』

 

痛みで前も見えない俺に聞こえるのは

通信機の向こうで慌てる部長の声。 

 

『えぇ、私もすぐ行きますわ!だから

「・・・待て」邪魔しないで下さいっ!』

 

朱乃さんの声に紛れて聞こえてきたのは

ルー・ガルさんの声。

 

お、俺の援護をしない気かよっ?!

 

ルー・ガルーさんに見捨てられた?!って

思ったけど実際は違ったんだ。

 

そう、アッチだって安全って言う訳じゃなかったんだっ!

 

『・・・囲まれている』

 

通信機の向こうから冷たい声が聞こえる。

 

『『そんなっ?!』』

 

部長と朱乃サンの声が重なった。

 

だけどそうだ。兵士の駒一つで眷族になった

少女が動けるなら、他の眷属だって動けると

考えるのが当たり前じゃないかっ!

 

「ま、そんなわけだ。お前に援軍はねぇ」

 

したり顔でそう告げる匙に怒りが沸く!

 

「匙、てめぇ!さっき俺に何かしただろ!」

 

少女の肘を受ける前にテメェが何か

したのは知ってるんだよ!

 

歯を食いしばりながら、卑怯な手を使って

来た匙を糾弾する!

 

一対一の邪魔なんかして恥ずかしくねぇのかよ!

 

そんな俺の言葉に対して二人はキョトンと

した顔をした後で

 

「そりゃそうだ。戦場で敵が二人いたら、

二人に狙われるのが当たり前だろ?

むしろいつからタイマンだと錯覚していた?」

 

「馬鹿ですか?馬鹿ですね?」

 

悪びれもせずにそう言って来たんだ!

 

ありえねぇ!と思うが、今はそんなコトを

言ってる場合じゃねぇ!

 

すぐに回復しないと!

 

「あぁ、ちなみにフェニックスの涙を

使っても、骨折は治らんぞ」

 

な、なんだって?!どういうことだよ!

 

「さっき言ったでしょう?外れたり

折れてズれた骨は正しく嵌めてから

でないと治せません。もしその状態で

使えば、その状態が正常な状態と判断

されて腕が歪な形で固定されます」

 

な、なんかそれらしいこと言ってるけど、

敵の言うことを信用するわけが無いだろ!

 

それに何より後頭部や折られた両腕が

痛い!そう思って何とかして折れた

左腕を動かして、フェニックスの涙の

入った瓶を割ろうとしたんだけど・・・

 

『イッセーさん!そちらの方々が言う

通りです!絶対にフェニックスの涙は

使わないで下さい!』

 

通信機の向こうから今まで黙っていた

アーシアが声を上げた!

 

かなり焦ってるみたいだから、嘘じゃ

無いんだろう。だけど・・・

 

『アーシア!』

 

部長がアーシアを諫める。

 

そうだ。コレで俺がフェニックスの涙を

持ってるってことが向こうにバレた!

 

・・・だけど今思えば、なんか最初から

分かってた感じだったよな?何でだ?

 

「いや、今更ソレを隠されてもなぁ」

 

匙は、もうどうしようもないモノを見る

かのような目で俺を見る。

 

やっぱりわかってたみたいだけど、どういう事だ?

 

「そんな不思議そうな顔をされても・・・

そもそもリアス様が、アレだけ執着している

兵藤先輩を単騎で動かすのに回復手段を何も

持たせないハズが無いじゃないですか。

アーシアさんが居るならまだしも、今は

完全に一人ですからね。

そりゃ兵藤先輩がフェニックスの涙を

持ってるって判断しますよ」

 

あきれ顔の二人。だけど、ソレってつまり

部長の性格を読んだってことかよ!

 

じゃあこの作戦も?!

 

「さて、時間をかけても何も無いみたいだし。終わらせるぞ」

 

「了解です」

 

驚愕で動きが固まった俺に、二人が

向かって・・・来ない?

 

少女はその場で呼吸を始め、匙は黒い紐?

のようなモノを数本出している。

 

何をする気だ?と思いながら警戒していると

 

「う、うぉぉぉぉぉぉぉ?!」

 

急に右足が何かに引っ張られるような

感覚に襲われて、更に物凄い力で空中に

投げ出される!

 

コレは!?

 

足に黒い紐のようなモノが有るんだ!

ソレが匙に繋がっていて、ロープの

ように引っ張られてるんだ!

 

おそらくさっきのもコレで何かして

俺の足に細工したに違いない!

 

「コレが俺の神器『黒い龍脈(アブソープション・ライン)』そして

この神器を使った技『伸縮自在の愛(バンジーガム)

ガムとゴムの両方の特性を備えたコレは

普通に縄として使うこともできるし、

引っ張ることも伸ばすことも可能だ。

さらにこんな事も出来るぜっ!」

 

匙は空中に釣り上げられた俺の頭や

背中にも紐をつけて行く!

 

「そいやっ!」

 

と言う掛け声とともに俺の体が高速で回転した!

 

視界が紅く染まり、目から耳から鼻から

口から、大量の血が出るのを感じたと

思ったら何処からか少女の叫び声と共に

「グシャッ!」と言う音が聞こえ・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『リアス・グレモリー様の兵士・リタイア』

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「コレが!お前らが変態行動を繰り返す

コトで駒王学園の品位が疑われ!

肩身の狭い思いをさせられた挙句!

ずーっと心痛と頭痛で悩まされた

私たち生徒会の恨みだぁ!!!!」

 

少女の魂の叫びが籠った蹴りが、空中で

乱回転してレッドアウトと言う症状を起こし

かけていた赤龍帝の頭を完璧に捉えた。

 

グシャッと言う音がココまで聞こえた

のは気のせいでは無いだろう。

 

てか赤龍帝死んだんじゃね?

 

「良い蹴りだ」と言う声が聞こえた気が

するが、気持ちはわかる。

 

「良くやった!」と言う声もチラホラ

上がっているが、コレもまぁわかる。

 

エロ本から始まり、ラブコメにアホみたい

な作戦。さらには反則だのなんだのと散々

見苦しいコトしてやがったからなぁ。

 

コレ以上悪魔の顔を潰す前にさっさと殺れ!

と言うのは悪魔の共通認識だったはずだ。

 

あそこで茫然としているサーゼクス以外はな。

 

 

 

『リアス・グレモリー様の兵士。リタイア』

 

 

 

グレイフィアの冷たい声が会場に響く。

 

恐らく今、医務室では大至急両腕の骨を

嵌めてからフェニックスの涙を使用して

るんだろうが・・・

 

問題はソコじゃねぇ。

 

「おいおいおいおい!赤龍帝が負けたZO?!

まだ何もしてねぇのに!兵士同士の戦いDE!

余裕面でエロ本立ち読みしてたのNI?!」

 

あまりにもあんまりな結果に帝釈天が

大爆笑している。

 

「ま、戦いを勘違いしたガキの末路と

しては妥当じゃな」

 

一番見たかったチャージからのギフトを

見たからか、オーディンの爺さんは結果に

満足しているようだ。

 

コイツ等にしたら、戦場で舐めた真似してる

ガキなんか粛清対象だろうからなぁ。

 

「HAHAHA!いやぁ笑ったZE!

しかしアザゼルYO!あの小僧が使った

のはヴリトラの神器だNA?

特殊な力が有るだろうし、単体でも強力な

神器DA!だがその強力な能力に頼らねぇ

であんな使い方をするなんて見所があRU!

中々いいセンスしてやがるZE!」

 

そう言って、帝釈天が手放しで褒めそやす。

確かに匙と呼ばれた兵士が使ったのは

間違いなく黒い龍脈(アブソープション・ライン)だ。

力を吸い取るだけじゃ無く、当たり前の

ように特殊な縄として使うとは・・・

 

「神器に頼らず、〆は自分で。うむ。

しっかりと武器を使いこなしておる。

更に仲間のサポートもしっかりと出来る

となれば、アレは良い勇者になるぞい」

 

オーディンの爺さんも向こうのガキを

高く評価しているが、俺としても同意見だぜ。

 

「しかし噂の英雄サマは何してるんDA?」

 

ようやく笑いが収まった帝釈天は、円陣を

組んだまま俯いて一切動かないリアス嬢の

行動を訝しむ。

 

そうなんだよな。赤龍帝が堕ちたことで

動揺してるんだろうが、問題はその前だ。

 

あの赤龍帝中毒共が何故動かなかった?

ギャスパーの神器に停められるとか

そう言ったことは考えてなかったよな?

 

 

「先ほどあそこの人狼は「囲まれてる」

と言ったが、あそこには何もない(・・・・・・・・・)

じゃが連中は囲まれとることを確信

しておる。コレは幻術かの?」

 

オーディンも不思議そうに見ているが、

実際俺にも何も見えねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全にシトリー家のペースだが・・・

コレ、大丈夫なのか?

 

まさかこのまま終わらんよな?

 

そんな不安と、コレから何をするかと

言う期待が入り混じる視線の先では、

 

『よくもイッセーをぉぉぉぉぉぉぉ!』

と言いながら滅びの魔力を乱射する

リアス・グレモリーと。

 

『イッセー君に見て貰いたかったのにぃ!』

と言って頭を振り、半狂乱になって雷光を

周囲にばら撒く主従の姿が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、コレ、大丈夫なんだよな?

 

 

 

 




赤龍帝、墜ちる。

狼牙の肘が当たった場所は鼻の下である。

つまり完全武装した小柄な少女が高速で
突っ込んできて人中に肘をかましました。
そのまま地面に叩きつける荒業である。
(原作では人中ではありません)
コレで生きてるとは流石悪魔!

でもって空中で乱回転中に完全武装の
少女による頭部を狙った蹴りである。

コレで生きてるとは流石悪魔!

即死しないように手加減はしてますよ?
匙君がインパクトの瞬間ちょっとだけ
引っ張る感じですが。ってお話。

彼女は原作主人公ですらヒヤッとする
ほどの体術の切れがあるらしい(wiki)

いや、原作主人公の体術って・・・

いきなり逆転に必要な戦力を無くした英雄!

ソーナは負けることが出来るのかッ?!






ココからは作者の愚痴になります。

勘違いしてる方が居るようなので
一話のあとがきにも追記しましたが、
作者の作品は原作設定遵守の考察モノ
ではありません。

オリ設定・オリ展開のアンチ・ヘイトモノです。

原作と設定が違うとか、原作はこうだ
と言われても、作者は最初からすべての
話の前書きで言ってます。

『オリ設定・オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし!』と。

したり顔でツッコミ入れる前に
ちゃんと前書き読みましょうね。


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74話

長い!(11000字越え)

今日も一話だ!

さっさと終わらせるために強引に話を纏めたぜ!


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

『コレが!お前らが変態行動を繰り返す

コトで駒王学園の品位が疑われ!

肩身の狭い思いをさせられた挙句!

ずーっと心痛と頭痛で悩まされた

私たち生徒会の恨みだぁ!!!!』

 

私たち全員の魂の叫びを乗せた蹴りが

兵藤一誠に当たり、そして

 

『リアス・グレモリー様の兵士。リタイア』

 

と言うグレイフィア様のアナウンスが

聞こえたとき、思わずガッツポーズを

した私は悪くない!

 

良くやったわ留流子!貴女には特別ボーナスよ!

 

ヨシコ=サンはともかく、ココに居ない

椿姫達も全力でガッツポーズをしている

であろうことは想像出来るわ。

 

更に駐車場では、椿姫の神器の禁手である

狂乱の赤い池(マッド・パーティ)』によって生み出した疑似

生命体による状態異常術式もばっちり嵌ったわ!

 

元々椿姫は追憶の鏡(ミラー・アリス)によって望まぬ形で

異形を呼び寄せていたのよ。

だけど今回の修行で禁手に至ったことで

特殊な範囲系能力を齎す生物を、ある程度

選別して生み出す事が出来るようになった。

 

その生物を使えば、ソコには居ないのに

居るように見せる事も可能。

 

認識を弄る鳥や、不思議な「ねこ」による

視線を認識すれば、彼女たちはなにも

居ないのに完全に包囲されたと認識するわ!

 

当然映像では把握出来ないから対処も不可能よ!

 

流石にシロネ様が使う術式みたいに完全に

認識を破壊することは不可能だけど、今回は

コレで十分!

 

別動隊(リアスが居るから本隊かしら?)

の動きを止めて、兵藤一誠を潰す事が

出来たんだからね!

 

リアスたちにしてみればヤツこそ要!

ヤツこそ居なくなれば、勝手に暴走して

冷静に動くことは出来なくなる!

 

そうなれば『狂乱の赤い池』そのものに

対して抗うことは不可能になるわ!

 

冷静に動こうとする人狼も、冷静だから

こそアノ術式は嵌る。

 

最初に言ったけど、コレからはずっと私たちの

ターンよ。とりあえずは完全に動きを封じられた

リアスたちを放置して本陣を急襲させましょうか。

 

「2人とも良くやりました。ではコレより

第二段階プランBに移行します。

匙と留流子は敵本陣に向かいなさい。

本陣にギャスパー君が居る可能性が有ります

から油断はしないように。

そして匙は建物に黒い龍脈を使って間接的に

ギャスパー君の力を奪い続けなさい、奪った

力は留流子に渡す分と自分の強化。

それでも力が余るようなら、その辺の雑貨や

店舗の商品を拾って強化しなさい」

 

コレで匙のオーバーフローは無くなるわ。

あとはギャスパー君を見つけて撃破しましょう。

 

『『サー・イエッサー!』』

 

まさか開始早々にリアスまでもが本陣を捨てて

立体駐車場に出るとは思わなかったけど、

コレは各個撃破の恰好の的。完全にリアスの失策よ。

 

「もしも本陣の前に扉が有ったら、匙の

黒い龍脈(アブソーブション・ライン)で扉を開ければいいわ。

そうすれば中にギャスパー君がいた場合でも

視線をコントロール出来るでしょう」

 

扉一枚隔てた部屋の中程度なら、ギャスパー君

が居るかどうか位はわかるでしょう。

 

不在なら本陣を落とした後で別を探せば言い。

 

本陣に居たなら扉を開くタイミングとかを

コントロールすることで、彼が匙達を直視する

ための視線の動きやタイミングを掌握出来るわ。

 

「視線を遮るものがなかったら、その辺の

店の壁を破壊するなり、カーテンを破くなり、

ローブを使うなりして視界を遮断して頂戴」

 

現状、こうして皆が動けていることを考えれば、

直視さえされなければ彼の神器は怖くないわ。

 

そもそもギャスパー君個人は神器頼りの弱者。

接近さえ出来れば奇襲し放題よ。

 

匙の黒い龍脈を繋げることが出来れば、

何かする前に潰せるでしょう。

 

後は必要に応じてプロモーションと

行きたいところだけど、まぁこのまま

で問題無いわよね。

 

場合によっては騎士にして速度を上げ、

合流を急がせても良いけど。

 

『『サー・イエッサ!』』

 

 

よし、コレで向こうの本陣は問題ない。

 

そもそも今回のゲームはお姉さまが提案した

とは言え、英雄を勝たせなきゃいけないって

言うメッセージが込められたモノよ。

 

その中で、しっかりと個別に復讐する

機会を与えてくれたのよね(多分だけど)。

 

それなら私たちが真っ先に討伐するのは

性犯罪者・兵藤一誠。

 

コレを潰すことが作戦の第一段階だった。

 

孤立していようが、集団だろうがアレだけ

は必ず潰す必要が有った!ソレが私たちの

意地でもあるし、アレを殺ればリアスも

姫島朱乃もタダの女に成り下がるからね。

 

その後で姫島朱乃を孤立させて狙うのが

本来の第二段階。つまりプランAだった

けど、アレがリアスと一緒に行動してる

なら私たちはガラ空きの本陣を潰すわ。

 

誇りも名声も徹底的に(ブレイク)してあげる!

 

本陣は勝敗には関係ないけど、その陥落はソレ

だけで低評価になるからね。

 

本来ならココまで殺る予定じゃ無かったけど、

私だけじゃ無く、眷属の皆をあそこまで反則

だの卑怯だの言われておきながら、黙って

負けてあげるほど、私は達観して無いわよ!

 

それも性犯罪者である兵藤一誠に言われて

我慢出来るとでも思ってるのかしら!?

 

予定ならこの時点で罠を解除する

気だったけど、とことん行くわよッ!

 

「ふむ。向こうの主力を潰して喜ぶのは

わかるが、少し入れ込み過ぎだな」

 

ヨシコ=サンに言われて、随分呼吸が

乱れた居たことを自覚する。

 

落ち着け!落ち着くのよソーナ!

 

すぅ。はぁ。すぅ。はぁ。深呼吸して周りを見る。

 

そうよ。まだ勝負は始まったばかり。

ココで何か失敗して状況を覆される

訳には行かないの。

 

「ふぅ。落ち着いたわ。ありがとうヨシコ=サン」

 

「なに気にすることは無い。主殿は

初陣なんだから硬くなるのは当然さ」

 

感謝する私に男前な返事をするヨシコ=サン。

翼紗とは違って男にも女にもモテそうよねぇ。

 

けどそうか、私は初陣で入れ込んでたのか。

自覚すれば気恥ずかしさを覚えるが、今は

こんなどうでも良い事まで考えることが

出来るくらいまでには落ち着けたわ。

 

落ち着いたところで今後のプランを練りましょうか。

 

まぁ勿論英雄様相手に勝とうとは思って

ないから、試合には負けてあげるわよ?

 

公式では私に黒星が付いて、リアスは白星。

記録だけ見れば十分でしょ?

 

ただしリアス。貴女のプライドと評価は

木っ端微塵に粉砕するけどね!

 

民衆やテロリストに対する英雄としての

価値に関しては・・・まぁアレよ。

 

昨日のゼファードルとサイラオーグの戦いでの

暴露のせいで、何か事故があると不味いから

今回のゲームは生中継しないって話だし。

 

老害の皆さん。精々頑張って編集して頂戴。

 

後は今回の苦戦をバネにして、グレモリー領で

勝手に成長して下さいな。

 

・・・

 

さて、大体の流れを再構築したところで

次の行動に移りたいんだけど・・・

その為には本陣の陥落かギャスパー君の撃破が最低条件。

 

何せ彼に直接視認されたら停止させられる

可能性が残ってるからね。

 

こんなところで間抜けは晒さない。

 

もし向こうの本陣に伏兵が居て、匙や

留流子が撃破されたら私たちが動くけど、

そもそもリアスと姫島朱乃と人狼と

元聖女の声が聞こえてるのよね。

 

ならば本陣は無人かギャスパー君一人。

 

そう考えていた私の耳に吉報が届く。

 

 

『リアス・グレモリー様の僧侶。リタイア』

 

 

良し。コレでギャスパー君が突然ナニカに

目覚めて暴走したりする危険性も無くなった。

 

ヨシコ=サンの結界も解除しても良いわね。

 

そうヨシコ=サンに指示を出そうとしたが、

その指示が口から出る前に思いとどまる。

 

・・・いや、待て。待つのよソーナ。

リアスには僧侶が2人居るじゃない。

 

万が一の可能性として、兵藤一誠が堕ちたことで

トチ狂ったリアスや姫島朱乃による同士討ちって

パターンも有るわよね。

 

最近のリアスは常に私の想像の斜め下を行く。

だからこそ匙や留流子から連絡が有るまで、

思い込みで動くべきじゃ無いわ。

 

確認しようと思ったけど、コッチから連絡するのは論外。

 

もしも向こうに何かしらの備えがあって、

今も戦闘中なら彼らの邪魔になるもの。

 

今はまだ焦る時間じゃない。

 

そう自分に言い聞かせ、深呼吸して眷属からの連絡を待つ。

 

そう、私は王なの。戦の準備をして命令して、

仕事を任せたならあとは戦勝報告を待てばいい。

 

意識して背筋を伸ばし、不敵に笑え。

 

すべて私の計画通りなんだと思わせろ!

 

このゲームを見ているであろう赤龍帝と

リアス目当ての来賓に、いつも心配して

くれたお姉様に!鍛えてくれたシロネ様に!

そして私を阿呆扱いしてきた老害貴族共に、

私は変わったと見せつけるのよ!

 

 

『会長。敵本陣にて敵僧侶のギャスパーを発見。

コレと交戦し、撃破。敵本陣を制圧しました』

 

 

よし。匙からの報告に小さく頷く。

 

撃破から制圧の時間が掛かったのは、罠や

誰かが隠れてる可能性を疑ったからかしら?

 

とにかく油断慢心しないのは良い事よ。

 

「了解。ならばコレから椿姫と合流して

指示を待ちなさい」

 

『『サー・イエッサー!』』

 

残るはリアス・姫島朱乃・人狼と元聖女。

 

自分の眷属が少ないから少ないなりに動いた

のかも知れないけど、性犯罪者を過信したのが

貴女の敗因よ!

 

あぁいや、負けるのは私なんだけどね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

『リアス・グレモリー様の僧侶・リタイア』

 

本陣に待機していた吸血鬼が、歩兵二人に

ダイナミックエントリーされてそのまま

落とされた。

 

なんつーか。軍人かってくらい動きに無駄がねぇ。

 

「おー。アイツらガキにしてはアレだNA?

悪魔っぽさって言うかそう言うのねーNA?」

 

まったくだ。若手が魔力より技術を使って戦う

様子を見ると、若手悪魔のゲームと言うより、

サバゲーにしか見えん。

 

「無駄のない指示とソレに従う兵士。

つまりゲームをしようとして油断していた

英雄に対し戦争を仕掛けた嬢ちゃんか。

ふむ。今回は英雄を勝たせる八百長試合を

警戒しておったが、悪魔がこのゲームに

真摯じゃと言うのは本当らしいの」

 

本気か皮肉かイマイチ良く分からない

オーディンの爺さんの言葉を聴き、口を

パクパクさせるサーゼクスや貴族悪魔達。

 

阿呆が。ソコはセラフォルーみてぇに

笑顔で頷いてれば良いんだよ。

 

「ソレはそうですよオーディン様。

政治的配慮から、試合結果として負ける

ことはあるかも知れませんが、試合内容

まで妥協する謂れがありませんので」

 

笑顔のままシレっと抜かすセラフォルー

に驚きの目を向けるサーゼクス。

 

アレはそんなこと言って良いのか?!って目だな。

 

良いんだよ(断言)。

 

英雄を勝たせるってのはわかる。当然だ。

帝釈天もオーディンもソレは当然わかってる。

 

三大勢力としては英雄は餌であれば良い。

不敗で常勝というネームバリューが有れば尚良い。

 

このゲームで苦戦したところで、英雄様が

テロリストの面目を潰したことには違いが

無い。英雄を苦戦させた若手(セラフォルーの妹)

要チェック対象になるだけだ。

 

むしろ、英雄様を実質子供扱いできる若手が

居ると言うのは、悪魔陣営の層の厚さを意味

することになる。

 

つまり内容で圧倒しても最終的に向こうの

嬢ちゃんが負けて、英雄様が勝利したと言う

記録が残れば、対外的な帳尻は合う。

 

元々サーゼクスの妹とセラフォルーの妹で

ライバル関係みたいなモンだったらしいし、

多少の苦戦は当たり前だろう。

 

むしろシトリー家としたらそのくらいの

見せ場が無ければ不満が溜まるだろう。

 

バアルの小僧とは事情が全く違うからな。

 

何が言いたいかって言えば、極論すれば

俺達が見に来たのは未熟なガキのゲーム

じゃねぇってことだ。

 

赤龍帝の能力と、悪魔の駒を使って

転生した悪魔のデータ採取なんだよ。

 

だから帝釈天やオーディンの爺さんは

勝敗には拘らねぇんだ。

内容が面白ければソレに越したことはないがな。

 

セラフォルーは外交官としてソレを

理解しているからこその発言だ。

 

むしろ真面目に試合を観戦してる

お前らの方が異常なんだよ。

 

そんでもって、赤龍帝の能力は倍化と譲渡を確認した。

 

禁手はタダ鎧を纏って強化するだけだから

特に見る価値もねぇ。

 

亜種に至れば話は別かもしれんが、今の

ところはリングのサポート無しじゃ何も

出来ん小僧だ。

 

禁手する前のデータの方がよっぽど

貴重だろうよ。

 

俺としては特に実験室内での譲渡と

実際のゲームでの譲渡の違いを分析

したいところだが・・・

 

まぁソレは帰ってからだな。

 

『そんな?!ギャスパーまで?!

そんな目で私を見るなぁぁぁ!』

 

リアス・グレモリーが悲痛な声を上げるが、

そもそもお前はトチ狂って周囲に消滅の

魔力をバラ撒いてるだけじゃねぇか。

 

それに私を見るなって何だ?

 

『くっ!数が多いッ!ソレにこの視線!

いい加減にしなさいっ!!』

 

姫島朱乃はそう言いながら周囲に雷光を放つ。

 

いや、バラキエルの力を使うことにした

のは良いが、視線?本当に何に向かって

撃ってるんだ?

 

数が多いとは言うが、離れたところに居る

シトリーの女王が、使い魔でも放ったか?

 

「幻術でも無いのぉ。こうなれば先ほど

眼鏡の嬢ちゃんが展開した赤い池のような

ナニカが、何らかの認識障害を起こしてる

と見るべきか、それとも映像では見えん

ナニカが居ると見るべきのぉ?」

 

そう言いながら俺を見て来るが・・・

ナニカを生み出す神器だと?

 

まさか魔獣創造では無いだろうし、

ステルス性能が高いってんなら連中に

見つかる前に強襲出来るよな。

 

『・・・ぐっ!』

 

『ルー・ガルーさん!』

 

何も考えずに周囲に魔力をバラ撒く二人の

攻撃から元聖女を庇う人狼。

 

ダメージを負う度に元聖女が回復させてる

が、いい加減冷静になれや。

 

いくら人狼でも英雄様の魔力が直撃したらマズいぞ?

 

このままだとリアス・グレモリーや姫島朱乃は

魔力切れか体力切れを起こし、人狼は味方

からの攻撃でダウン、元聖女もそのまま

落ちることになるが・・・誰もその場を

離れようとしないのは、ナニカに囲まれて

いると確信しているからか。

 

認識阻害系の術式は自分がソレを起こして

いると知らなければ、解除できん。

 

そうこうしているウチに向こうの

兵士も合流しちまったし。

 

数字だけ見るなら英雄様もまだ2人しか

落ちてないから、巻き返しが不可能って

訳でも・・・無理だな。

 

 

 

いや、マジで。コレからどうやって負ける気なんだ?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーソーナ視点ーー

 

 

『会長、匙と留流子が合流しました』

 

リアスたちが駐車場で暴走している

間に、椿姫から連絡が入る。

 

どうやら無傷で合流できたようね。

 

ならばココは更に獲るべき。

 

「匙は姫島朱乃に伸縮自在の愛を着けて

向こうから引き摺りだしなさい。

飛んできたところを隙があれば椿姫が

両腕を切断して。後はタコ殴りよ!

隙が無ければ眷属全員で作りなさい。

雷光の威力は見た通りだから

直撃しても大したことないけど、無駄に

攻撃をさせることも無い。わかるわね?」

 

奴らに見せ場なんか必要無いの。

屈辱と恥辱に塗れてもらうわ!

 

『『『『サー・イエッサー!』』』』

 

姫島朱乃の次は・・・孤立させましょうか。

 

リアスの性格なら無傷で投了なんかしないでしょう。

 

むしろ軽く挑発するだけでコッチを

卑怯者扱いして騒ぐわよね。

 

「姫島朱乃の処刑が終わったら人狼と

元聖女ね。

その後リアスが騒ぐでしょうから、

ソレに乗ってゲームを終わらせます。

其々を甚振ることなく、最短の時間で

終わらせなさい」

 

獲物を前に舌なめずりなんかして

逆転なんかされるわけには行かない。

 

人狼と聖女には恨みがあるわけじゃない

からさっさと終わらせてあげる。

 

恨むなら性犯罪者とソレを甘やかした

主人を恨むのね。

 

『『『『サー・イエッサー』』』』

 

さぁ終局よ。

 

まだ時間は1時間も経ってないけど、

まぁ良いでしょう。

 

こんな時間はさっさと終わらせるに限るわ。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーリアス視点ーー

 

 

『リアス・グレモリー様の女王。リタイア』

 

『リアス・グレモリー様の僧侶。リタイア』

 

『リアス・グレモリー様の戦車。リタイア』

 

 

やられたっ!と思ったときには既に遅かった。

 

気が付けば不快な視線は無くなり、私の

周りに居た眷属は全滅していたわ。

 

何かしらの術を仕掛けられていたのね。

 

その所為で私たちは誰も居ない空間で

囲まれたと錯覚してしまい、この場に

留められてしまった。

 

その結果、イッセーを見殺しにし、他の

皆まで失うことになったわ。

 

完全に作戦負け・・・だけど、こんな

無様な負けが許されるわけが無い!

 

眷属に防具も用意しない主君。

 

神滅具を持つ眷属を使い潰した主君。

 

最高クラスの神器を持つ眷属を孤立

させて、各個撃破されることを見逃した主君。

 

幻術に嵌って何もないところに攻撃を

し続けて、一緒に居た朱乃達が居なく

なったことにすら気付かなかった主君!

 

そしてっ!

 

「椿姫。私を見下すなんて偉くなったモノね!」

 

ソーナの女王にすら見下される主君っ!

 

「あぁ。ようやくお目覚めですかリアス様?

ですが眷属の皆さんはすでにベッドでお休み

のようです。お目覚めになったばかりで

申し訳ございませんが、そのままお眠りに

なった方が良いのではないですか?」

 

私を見下しながらそう告げてくる椿姫。

 

グレモリー家のお嬢さんの面倒は見る

気が無いとでも言いたいのかしら?!

 

「残念ながらあまりの怒りで眠れそうに

無いわね。貴女の主君に文句の一つも

言いたいんだけど、案内してくれないかしら?」

 

落ち着きなさい。今は呼吸を整えて魔力を

溜めるのよ。

 

「誠に申し訳ございませんが、今の

リアス様では主のソーナ・シトリー様と

面会させるわけには行きません」

 

それはそうでしょうね。私に残った唯一の

勝機はソーナとの一騎打ちですもの。

 

警戒するのは当然か。

 

「ドレスコードがねぇ。そのようなボロボロの

恰好でシトリー家の次期当主様にお会いできる

ハズ無いでしょう?」

 

「何ですって?!」

 

警戒でも何でもなくドレスコード?!

どこまで私を馬鹿にする気?!

 

「それに、いつもご自身で仰ってるでは

ありませんか。

「自分をグレモリー家のリアスでは無く、

リアス個人として見て欲しいのだ」と。

そして個人で見た場合、シトリー公爵家の

次期当主様にタダのお嬢さんが直に

お会いできるはずがないでしょう?」

 

「くっ!」

 

そう言いながら椿姫が静かに右手を挙げれば、

周りにソーナの眷属達が集まって来る。

 

「一度顔合わせはしてますから、再度

ご紹介する必要はありませんね。

あぁ、ちなみに性犯罪者・兵藤一誠を

打ち破ったのはコチラの兵士の仁村と

兵士の匙です。

両腕をへし折り頭を潰しましたが、

生きては居るでしょう・・・多分」

 

「貴様らがッ!」

 

イッセーの仇を目の前にしてカッとなった

私は、したり顔をしていた椿姫に

ぶつけるべく溜めていた魔力を向こうの

兵士二人へ向けて放つ!

 

「「う、うわー」」

 

特大の滅びの魔力を受けて吹き飛び、

そして消えていく兵士!

 

『・・・ソーナ・シトリー様の兵士×2。リタイア』

 

手応えがちょっとアレだけど、いきなり

の攻撃に防御も出来なかったみたいね!

 

イッセー!仇は取ったわよっ!

 

「おぉ。流石はリアス様ですね。まだ

これだけの魔力を隠し持ってるとはー」

 

驚く椿姫だけど、正直今のは兵士に

使うには勿体無い魔力量だったわ。

 

一矢報いたとはいえ、兵士を削った所で

余力があることがバレてしまった。

コレでもう奇襲は通じないわよね。

 

ソレに向こうにはまだ戦車が2人と騎士が

1人、僧侶が2人に女王まで残ってる。

 

「ですがこれまでですね。リアス様、投了しませんか?」

 

「なんですって?」

 

この私に投了しろと言うの?!ソーナなら

まだしも、眷属の椿姫が?!

 

「いえね?私たちとしてもグレモリー公爵家の

令嬢にして魔王様の妹。更に悪魔の英雄サマを

一方的に囲んで潰すと言うのは本当に心苦しい

のですよ」

 

言ってることも口調も真剣そのもの

だけど、目が私を見下してるのよっ!

 

所詮は貴族のお嬢様とでも言いたいの?!

 

「とは言え、リアス様からすれば我々は

赤龍帝・兵藤一誠の仇でしょう?

戦うとなれば意地でも抵抗しますよねぇ?」

 

そうよ、コイツ等はイッセーの仇!

実行した兵士は潰したけど、コイツ等が

居なければイッセーを一人で戦わせる

なんてことは無かったッ!

 

「勝負は既に我々の勝ちが決まっている

のに、ココで戦えば損害が出る。

我々としては無駄な損耗はしたくないんです」

 

「無駄ですって?!」

 

この私の首に価値を見出してない

とでも言うつもり!?

 

「そうですねぇ。さっき言ったように

リアス様はお偉い様。貴女に対して

本気で戦う訳にはいきません。

かといって手加減してコチラが損耗する

のも馬鹿らしい。

時間切れを待つのも来賓の方にシツレイ。

ならば潔い投了こそがリアス様が選択する

べきコトではありませんか?」

 

当たり前のように勝利を確信し、私を

見下すソーナの眷属達に殺意が沸く。

 

ソレに今コイツ何と言った?

 

「私相手に本気で戦えないですって?」

 

接待プレイをしたとでもいうつもり?!

 

「そうですよ?そうじゃ無いと術を

解除して、こうしてお話などしません。

あのまま奇襲で潰してますよ」

 

何処までも舐め腐ってっ!!

 

「結局のところ貴女は貴族のお嬢様で

我々は転生悪魔です。

立場が違いますからね。下手に怪我を

させたらソーナ様の立場も悪くなる。

故にこうして降伏勧告をしてるのですよ。

貴族らしく潔く投了しませんか?」

 

「なめるなっ!!」

 

どこまでも調子に乗ってる椿姫に魔力を

向けるも、さっきの兵士への攻撃を

見ていた彼女は油断せず攻撃を避ける。

 

「優しさのつもりなんですけどねぇ」

 

何が優しさよ!ココまで馬鹿にされて

黙ってヤられるものですか!

 

「ならシカタナイ。コチラが投了しましょう」

 

「は?」

 

コイツ、今なんて言った?!

椿姫の言った言葉の意味が分からず固まる

私に、椿姫を始めとしたソーナの眷属達は

心底馬鹿にしたような目を向け・・・

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶。リタイア』

『ソーナ・シトリー様の騎士。リタイア』

『ソーナ・シトリー様の僧侶。リタイア』

 

私の目の前で次々リタイアしていく

ソーナの眷属。

そんな・・・コレって?!

 

「悪魔の英雄様には勝てませんからね。

それではお疲れ様でした」

 

そう言って通信機を置き一礼して消えていく椿姫。

 

『ソーナ・シトリー様の女王。リタイア』

『ソーナ・シトリー様の戦車。リタイア』

『ソーナ・シトリー様の戦車。リタイア』

 

策でも何でもなくリタイアしていく

ソーナの眷属達。

 

ソレを告げるグレイフィアのアナウンスに

茫然としていると、椿姫が置いていった

通信機からソーナの声が届く。

 

『リアス、コレから実家で鍛えるのでしょう?

次に会う時までに成長しておきなさいな』

 

上から目線。いえ、勝者の余裕を持って

私にそう告げるソーナ。

 

「ま、まちなっ・・・!」

 

『ソーナ・シトリー様の投了を確認。

リアス・グレモリー様の勝利です』

 

そして私に何も言わせないかのように

告げられる勝利のアナウンス。

 

「勝利?コレが?!馬鹿げてる!あと一歩、

いや半歩で、ソーナは勝っていた!

目前の勝利を放棄する正当な理由が何か

あると言うの?!」

 

そう叫ぶ私の声に答える者は居ない。

だけど私は知っているわ。

 

椿姫が言ったじゃない!ソレは私が悪魔の『英雄』だから。

 

英雄が負けるわけには行かないからっ!

 

だからソーナは負けを選んだ。いえ、私に勝利を譲ったのよっ!

 

情けない話ね。私は本来、自分のモノではない

勝利を譲ってもらった。まるで乞食のようにっ!

 

ライザーには何が何だかわからないうちに負けて。

 

コカビエルには相手にもされず。

 

駒王会談ではアザゼルの殺気で倒れ。

 

ゲームの前のパーティでテロリストを逃がし。

 

格下と侮ったソーナに勝ちを譲られたっ!

 

こんな勝利があるかっ!こんな惨めな思いを

する勝利が有ってたまるかっ!

 

こんな無様な英雄が居てたまるかっ!!

 

 

ゲーム会場から転送されて控室に戻った私は、

眷属が待つ医務室に向かうことも出来ず、

 

声も出さないまま涙を流していた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

若手交流戦・第三戦。

 

英雄リアス・グレモリー嬢とソーナ・シトリー嬢

のレーティングゲームは前評判の通り

英雄リアス・グレモリー嬢の勝利で終了した。

 

ゲームの内容は前日のバアル家の不祥事が

あった為生中継では無く、録画されたモノで

あったが、それでもファンを熱狂させるには

十分なモノで、特に建物内の時間を止めての

赤龍帝による中央突破すら囮にすると言う大胆な

戦法は玄人を唸らせ、その策に嵌って結界内

から一歩も動けなかったソーナ・シトリー嬢を

終始翻弄したリアス・グレモリー嬢の策が際立つモノであった。

 

特に評論家が評価したのは、駐車場にて

ソーナ・シトリー嬢の女王と眷属を蹴散らした

リアス・グレモリー嬢の滅びの魔力と

若手最強の女王と言われる姫島朱乃の雷光の

組み合わせの凶悪さだ。

 

ソーナ陣営が仕掛けた罠を正面から

食い破る様子は一見の価値有りとして、

絶賛されることとなる。

 

これにより兵力である眷属を失った

シトリー嬢が、投了を宣言する決定打となったからだ。

 

敗者であるソーナ・シトリー嬢は

この試合の後「一層の精進をします」

とだけ述べてその場を立ち去った。

 

勝者たるリアス・グレモリー嬢は

コメントを差し控えたが、コレは長年の

学友であるソーナ・シトリー嬢へ気を

使った為とされる。

 

だがライバルとの戦いの勝利は格別だったのだろう。

勝利の後は控室で一人歓喜の涙を流していたと言う。

 

このように、強いだけでなく敗者を気遣うことも

出来る心優しさや、謙虚なところも、彼女が英雄

として称えられる理由であろう。

 

コレからも英雄リアス・グレモリーの活躍からは目が離せない!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーー奥様視点ーー

 

 

『コレが!お前らが変態行動を繰り返す

コトで駒王学園の品位が疑われ!

肩身の狭い思いをさせられた挙句!

ずーっと心痛と頭痛で悩まされた

私たち生徒会の恨みだぁ!!!!』

 

シトリー眷属の蹴りを喰らってリタイア

するマダオの所持者。

 

うむ。中々良い一撃です。喋りながらと

言うのはアレですし基礎能力が足りないから

まだまだですが、十分にナニカ籠った一撃。

 

1等から2等の実力でアレなら十分です。

 

「ん?あれ?赤龍帝も違ったか?」

 

おや珍しい。旦那様が本気で驚いてます。

 

まぁアレは明らかにおかしい(ナニかに護られた)存在でしたからね。

 

私としてもアレを主人公の第一候補として

見てたから、何かしら不思議なこと(ご都合主義的なこと)

おこると思ってたのは事実です。

 

ですが主人公だとすれば、あそこで

何かしらの奇跡っぽいのが起きますよね。

 

「いや、もしくは負けても死なないから、

成長するために経験として受け入れた?それか

ギャグに対するツッコミのようなモノ

だから、回避出来なかったか?」

 

うーむ、真剣にツッコミの可能性も考えてます。

 

確かにバアルの小僧とは違い、収監される

わけでは無いから、まだ再起は可能です。

 

それ故、主人公の可能性はまだあるんですよねぇ。

 

コレをバネにすると言う可能性も十分ありますし。

 

性根を叩きなおしたと考えれば

有り得ない話ではありません。

 

とは言え既に結果は出ました。

 

簪が造った疑似神器も正常に作動して

いますし、アレを量産すれば我々の陣営は

更に強化されることでしょう。

 

差しあたっては老害共の粛清で実験する

事になるでしょうが・・・

 

「とりあえず観れるものは観た。簪もコレ

を観てるハズだから、今後は量産体制に

入るか改良するかの判断はお前たちに任せる」

 

「かしこまりました」

 

そうでした。量産の前に改良する可能性だって

有りますよね。

 

うむ。老害共を粛清すると言うことで無意識に

逸って居たようです。

 

流石我が師。いえ、旦那様。隙がありません。

 

「それとシトリー家には何か戦勝祝いでも

贈ってやろう。

お世話になったお鬼ぃさん達にも必要だし

シロネコにも褒美だな。シロネコにはお前

から聞いてくれ」

 

「はっ!」

 

ふむ。シトリー家には貴族として一般的な

戦勝祝いの品を贈答しましょうか。

 

阿呆とか言われてた存在ですからね。

普通の扱いになったと知れば喜ぶでしょう。

 

シロネコは奥に所属するモノとしての

褒美が良さそうですね。

 

補佐官殿には・・・あぁ、旦那様が

用意してたアレがありますか。

 

なら後は夜叉一殿ですね。

 

クッキー殿からチー子さんの為に何か

女の子らしいモノが欲しいと言う

話があったようでしたから・・・

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーー???--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほほう。コレが噂の魚沼産コシヒカリと

南魚沼産、シオザワのコシヒカリですか。

・・・やりますね」

 

態々分けて来るとは。中々のチョイス。

これほどの品、以前頂戴した炊飯器で炊く

べきか、ソレとも釜で炊くべきか・・・

 

「おぉ!俺達には食い物以外にもクッキーと

チー子用のリボンですぜ!気が利くねぇ。

こーゆーのはさっぱり分かんねぇからな。

正直助かりやす!」

 

ほう。桜色と赤のリボンですか。

どこの家庭も奥方は強いですからね。

娘さんが加われば尚更でしょう。

 

「へへっ!こんなの貰ったからには残りの期間もしっかり鍛えてやらねぇと!」

 

ふむ。夜叉一さんも殺る気十分と言ったところ。

 

しかし、彼女たちは指示通りしっかり殺って

くれたようですし、貰いっぱなしと言うのも

アレですね。

 

私も多少手ほどきをするべきでしょうか?

 

 

「いや、君は手を出さない方が良いと思うよ?」

 

「働けヒゲ」

 

どっから出てきた。またサボりか。

 

「扱い酷くない?!」

 




原作マダオ曰く一番怖いのは「こもった一撃」だそうで。

うん。こもってるよなぁ。

椿姫副会長の神器の禁手はなぁ。原作でも
おっかない可能性を秘めてますよねぇ
SCP?ナンノトデス?血の池?
作者は水の中の死体は見たことありません。
そっちじゃない?ナンノコトヤラ。


会長。勝負に勝って試合に負けました。
原作通り、英雄の評価とプライドを粉砕しましたね。

ただ、英雄様は対外的には餌のままである。
編集マンセー。記事を書いた記者は
普通に映像を見て本心で書いてます。

貴族のお嬢様に軽く当たるマスコミが異常
なのか、マスコミに普通に接する貴族令嬢が
アレなのか・・・

まぁ悪魔社会ですからね。人間の価値観とは違います。

会長陣営は椿姫に言われても潔く投了なんかしないだろうと確信していたもよう。

だったらコッチが投了してやんよぉ!ってお話。

元々勝敗は決まってるのは皆(来賓含む)
分かってますからねぇ。

一騎打ちとか自爆とか色々考えましたが、
顔も見せずに終わるのが一番屈辱を与える
事が出来るんじゃないかなぁと思いました。

朱乃さん?タコ殴りにされましたが何か?(ΦωΦ)?

ソーナ一行には勝ったのに地獄が待ってるぜ!


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幕間 バアル領殲滅戦
75話


ゲームは部長の勝利で終わったらしい!
何でもあの後、会長側が仕掛けた罠を
全部破壊してあっさりと逆転したらしいんだ!

流石は部長だぜ!だけど俺は何の役にも
立てなかった。
だから今度こそしっかり修行して、部長の役に立ってみせる!

そんな決意をした俺の元にアーシアが飛び込んできた!

え?なに?どうしたアーシア。
焦ったアーシアから伝えられたのは衝撃の事実で・・・

な、なんだってー?!


ーー


今日も一話だ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!




ーー兵藤一誠視点ーー

 

俺が目覚めたのは三日後のことだった。

 

アーシアが言うには腕も頭も特に異常なし。

ダメージと肉体的、精神的な疲労があったらしい。

 

会場に設置された医務室から搬送されて、

今はグレモリー家の中の一室を借りてるらしい。

 

俺が真っ先にリタイアしたゲームに関しては

部長はしっかり勝ったらしい。

 

「らしい」が多いけど、実際映像とかは

見せてもらって無いし、雑誌の記事を

見てもイマイチ良くわからないんだよなぁ。

 

アーシアも途中で退場したからどうやって

勝ったかはわからないんだとか。

 

朱乃さんがすごい勢いで飛んでいった

と思ったら戦闘音みたいなのが聞こえて、

それから直ぐに気を失ってリタイア

してたんだと。

 

うーん。わけがわからない。

 

おそらく朱乃さんが自分たちを囲んで

いた敵を倒しに行ったんだろうけど・・・

 

余波か何かで気絶したのかな?

 

と、とりあえず勝ちは勝ちだ!

 

本来なら祝勝会みたいなのをやるんだろう

けど、どうやらそんな気分じゃないとか。

 

雑誌だとかなり優勢に戦って勝ったって

話だけど、実際のところ部長は相当苦戦

したみたいだ。

 

そりゃそうだよな。俺は最初に落とされて、

アーシアだって落とされたって言うなら

その後は回復役が居ない状態で、更に敵の数

が多いってことだ。

 

しかも相手の会長側は部長の性格を読んで

作戦を潰して来たし、2対1を卑怯とも

思わない連中だ。

 

苦戦するに決まってる。

 

そして前評判で圧倒的有利とされながら、

そこまで苦戦した部長の評価はゲーム前と

比べてかなり落ちてしまったらしい。

 

あ、評価が下がったって言うけど、世間では英雄のままなんだ。

 

ただ、実際観戦してた上役の人たちの評価が

下がったって意味だな!

 

特に赤龍帝である俺が真っ先に落とされた

って言うのが問題だったとか。

 

そりゃそうだよな。向こうは匙以外

全員駒1個で眷属になったんだ。

 

それなのに兵士8個分の俺が兵士1個の

少女に負けたら、俺の実力不足より

運用方法のミスを指摘されるよなぁ。

 

クソ!やっぱり誰も潰せずに負けたって言うのが悔しいぜ!

 

匙と戦って潰すか、せめてあの後輩の女の子に

洋服崩壊を喰らわせて、リタイアさせていたら

ここまでの評価にはならなかっただろう。

 

そう思うと、いくら匙が援護したからと

言っても、駒一つの少女に負けた自分の

弱さが情けなくなる。

 

俺も修行しなきゃって思ったね!

 

そもそも俺は勉強と修行の為に冥界に残ることになったんだもんな!

 

そんでもって他の眷属のみんなは、試合前に

グレイフィアさんに言われたようにそれぞれ

移動している。

 

朱乃さんとル・ガルーさんとギャスパーは

既に地上に行った。

そしてアーシアと部長は冥界で修行。

俺もこれから勉強や修行をすることになる。

 

俺は部長には会えないらしい。部長の

お母さん曰く、何でも今は俺たちに会うと

甘えが出るとか。

 

苦戦したんだから少しくらい弱音を

吐いても良いと思うんだけど、その辺は

グレモリー家の教育だからな。

 

部長も、次期当主に相応しい悪魔だって

言われるようになるまで必死で修行

するんだろう。

 

俺だって置いていかれる訳にはいかない!

ここでアーシアと一緒に強くなるぜ!

 

 

って言うか妙に慌ただしいけど・・・何かあったのか?

 

「イッセーさん!大変です!」

 

悪魔の文字や歴史を勉強しながら屋敷の

中が慌ただしいなと思ってたら、アーシアが

すごい勢いで飛び込んできた!

 

「ど、どーした?!何があった?!」

 

こんなに焦ってるアーシアは相当珍しい。

ま、まさか部長に何か?!

 

そう思ってたんだけど、アーシアが言う

「大変」は俺が想像していたのとは

まるで違ったもので・・・

 

「戦争です!リアス部長のお母さんの家が

宣戦布告されたんです!」

 

「は?」

 

今アーシアはなんて言った?

 

戦争?

 

部長のお母さんの家って確かバアル家だよな?

大王家で、サイラオーグさんが次期当主の・・・

 

悪魔に対してとか、三大勢力に対して

じゃなくバアル家に宣戦布告?

 

だから屋敷内が慌ただしいのか。

 

い、いや、そうじゃない!

な、何がどうなってるんだ?!

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーライザー視点ーー

 

コンコン。

 

「入れ」

 

息を整えてからドアをノックすると中から

入室を許可するオヤジの声が聞こえてきた。

 

グレモリー家との婚儀が流れてからと言う

もの、兄貴と一緒にオセ様に会いに行き、

その領地経営に感銘を受けたオヤジは、

レーティングゲームを運営する老害共に

売るフェニックスの涙の量を減らし、

オセ様と共同で新たな薬を開発したりする

のを始めとした様々な改革を行っている。

 

そんなわけで俺も新たな領地経営の勉強を

することになり、新しい発見に日々胸を

躍らせているところなんだが・・・

 

今のオヤジの声は、最近じゃ聞かなくなった硬い声だ。

 

急な呼び出しといい、よほどのことが起こったらしいな。

 

「遅れてすまねえ」

 

一言謝罪して会議室に入ると、ソコには

オヤジと母上とルヴァルの兄貴、それに

オセ様の元に行儀見習いに出したはずの

レイヴェルの姿があった。

 

「・・・来たかライザー」

 

「お久しぶりですお兄様」

 

オヤジに緊急招集だって言われたから

鍛錬を切り上げてきたが・・・

 

まさかオセ様関連かよ。

 

「レイヴェルがここに居ることでもわかる

と思うが、今回お前を呼び出したのは

フェニックス家の方針を伝えておく為だ」

 

オヤジが硬い顔で言うが・・・

 

「ん?方針も何も、オセ様と歩調を合わせるんだろ?」

 

貴族派っていう派閥が正式に出来たらソレに

従うし、出来なくてもレイヴェルからの情報で

敵対だけはしないようにするって話だよな?

 

「まぁその通りだ。そこさえ押さえていれば

問題はないんだがな」

 

兄貴がそう言って肯けば

 

「ですが今回のことは流石に問題が

ありましてね」

 

母上は深刻な顔をしている。

 

「流石に今回のことはまだマスコミに

流せませんので次兄様にはお教え出来ません。

ですがフェニックス家としての対応をキチンと

決めておかないと、下手にライザーお兄様が

動かれてしまえば取り返しがつかないことに

なりますから・・・」

 

レイヴェルは、何かを怖がってるようだな。

つーかコイツ、妙に強くなってないか?

普通に上級悪魔以上の魔力を感じるぞ?

 

「そういうことだ。家の者が個人的に

味方したと言っても、オセ殿には通用せん。

フェニックス家として一族郎党眷属、その

全ての統制を遺漏なく執る必要がある」

 

関係者全員纏め上げろってか?

 

一体なんだってんだ?と思う俺に

ルヴァル兄貴から衝撃の情報が齎された。

 

「よく聞けライザー。オセ殿は明日

バアル大王家に対し断交と粛清宣言、

つまり宣戦布告する」

 

「はぁ?」

 

断交はまだしも宣戦布告?!しかもバアル大王家?!

 

「内容は、協定違反とテロリストの禍の団に

いる旧魔王派に対する資金・情報の援助。

そしてフェニックスの涙や他の軍事物資の

横流しだ。・・・オセ殿はこの機に大王家を

完全に駆逐する気らしいな」

 

「さらにコレは魔王、アジュカ・ベルゼブブ様

とファルビウム・アスモデウス様からのオセ様

に対する密命でもあります」

 

兄貴の溜息と、レイヴェルの緊張した口調で

明かされたその情報は、正直ヤバイなんてもんじゃない。

 

「レイヴェル、情報漏洩にならねぇんだな?」

 

そう、ヤバイのは俺たちじゃなくレイヴェルだ。

 

こんな重大情報を実家とはいえ、他家に

漏洩したとなれば、今後オセ家の中では

生きて行けないだろう。

 

俺たちが庇うにしてもバアル家のように

家ごと粛清される可能性も有れば、

暗殺される可能性もある。

普通に考えて相当やばいんだが・・・

 

「その点は大丈夫です。むしろ奥様より

「この情報をフェニックス家に伝えなさい」

とご命令を受けました!」

 

そう言って胸を張るレイヴェルの様子

からは嘘は見受けられない。

 

つまりは本当に奥様からの命令なのだろう。

しかしそうなると、オセ様は何を狙って

こんな情報を俺たちに流したんだ?

 

「そういうことだ。つまりオセ殿からの

踏み絵と言ったところだろうな」

 

意図が読めない俺に、上座のオヤジから声がかかる。

 

「踏み絵?」

 

たしか地上で教会の人間かどうかを調べるために

行われた選別方式だよな?

 

俺がオウム返しに聞けば、オヤジは机に肘をつき、

手を組みながら「そうだ」と言って言葉を続けた。

 

「フェニックスの涙が老害からテロ組織に

流れてることを知りながら、今後も販売する

と言うなら我々もテロリストの協力者。

粛清対象となった大王家に売ると言うなら

オセ家の敵。さらに大王家に味方する貴族

連中に売ってもオセ家の敵だな」

 

適当な貴族を中間に立てて、向こうに涙を

販売するのは許さねぇってか?だが・・・

 

「それなら暫く生産と販売停止で問題ねぇだろ?

別にオセ様だけに売れって訳でもねぇだろうし」

 

『味方しねぇから敵』なんてコトはねぇだろ。

オセ様がそんなセコイことするハズねぇからな。

 

敵対しねぇなら黙って見てろって感じだろ?

 

「うむ。私と父上、そして母上も同じ意見だ。

当然レイヴェルもな」

 

そりゃそーだろ。態々老害の味方して滅んでたまるかってんだ。

 

「私としてはライザーにリアス関連で

グレモリーから協力要請が来た時の

可能性を考えてね?

貴方はなんだかんだで優しいから・・・」

 

母上が本当に安心したと言った表情で俺を見る。

 

グレモリー?あぁリアスの母親がバアル家

出身だもんな。

 

つーか、いくらなんでもソレはねーよ。

優しいとかは完全に母上の欲目ってヤツだ。

 

「流石に俺もあそこまで俺らの顔に泥を

塗ったグレモリーの為に動く気はねぇぞ。

サーゼクスサマから直接言われても断る」

 

いや、マジで。

 

「儂もそのつもりでな。今回は向こうから

何を言われても断る気だったから、お前も

そのつもりだと聞いて安心した」

 

そう言って本当に安心したように息を吐く

オヤジ。

この2人、どんだけ俺を過大評価してんだよ。

 

「つーか、オセ様の味方はしなくて良いのか?

援軍・・・は要らねぇだろうが、支援物資とか

色々出せると思うが?」

 

普通に考えてバアル家程度じゃオセ様には

勝てねぇだろ。

タダでさえ勝てるところに援軍に行っても

手柄の横取りか、ゴマすりと言われて評価を

落とすだけだ。

 

それなら物資とかを出したほうが評価は

高くなると思うんだが・・・

 

「その必要は無いとのことです。なにせ今回の

戦闘予定期間は10日。領民・兵士・将。その

全てを滅ぼし、捕虜も取らないそうですから」

 

「「「「・・・」」」」

 

レイヴェルの言葉に思わず唖然とする。

 

両親や兄貴も同じように無言だってコトは

コレは今知ったってことか。

 

「つまり私がこうして来たのは、お父様が

仰ったように踏み絵と言う意味も有ります

けど、今すぐ当家の関係者をバアル領から

避難させるよう指示してもらう為です」

 

なるほど。

 

バアル大王家が率いる大王派は冥界の悪魔勢力の

政治を一手に担う派閥。

 

当然俺たちも無関係じゃないから、その領都

に駐在させてる一門のモノが居るし、商売

として向こうに滞在してる連中も居るだろう。

 

そいつらを今すぐ引き上げろってわけか。

 

「しかし取引の最中とか在庫とか色々都合が有ると思うんだが?」

 

信用にも関わるし、直ぐに完全封鎖で戦争って

わけでもないだろう?

 

少しくらい滞在して処理をさせても大丈夫じゃないのか?

 

そう思ったんだが・・・

 

「宣戦布告したら、誰一人とてバアル領から

出ることは許さないそうです。

そして退避の際に発生した損失はオセ家で

補填するそうです」

 

はぁ?

 

「誰一人とて出さねぇって・・・そんなことが可能なのか?」

 

広大な領土を持つバアル家だぞ?

抜け道だってあるだろうし、そもそも

封鎖すら難しいだろ?

 

ソレを完全に抑える?それだけの兵がいるってのか?

 

オヤジや兄貴も同じように考えてるのだろう、

レイヴェルに「何か知ってるのか?」と言う

視線を向ける。

 

自分に向けられた俺たちの視線の意味を

正しく理解したレイヴェルは、背筋

伸ばしてはっきりとした口調で告げる。

 

「どのような手段を使うのかまでは

私にはわかりませんでした。ですが

少なくとも奥様方は本気でした」

 

・・・なるほど。

 

何かしらの方法があるってわけか。

 

でもってレイヴェルにはまだ見せられねぇと。

そりゃ在庫がどうこう言ってる場合じゃねぇな。

 

「流石に今のは初耳だが、まぁ聞いての通りだ。

これから儂らはバアル領から関係者を撤退させる。

当然バアル大王家と付き合いがある貴族共

の所領からもだ。

大仕事になる故、お前にも手伝ってもらうぞ」

 

オヤジは有無を言わさぬ気迫を纏い、そう告げてくる。

 

「当然だ。さっさとやろう。俺は何をすればいい?」

 

そもそも反対する理由がねぇし、ようやく

家の役に立てると思えば嬉しく思う気持ちすらある。

 

まぁ心残りと言えば、悪魔最強と言われる

オセ様の戦争を見てみたかったってのも有るが・・・

 

「ではお兄様!今すぐ動きましょう!

無駄な動きをすれば矯正されてしまいますわ!」

 

レイヴェルの本気で焦った顔を見れば、

そんな生易しい状況ではないらしい。

 

対岸の火事と油断すれば無能の烙印を

押されて価値無しと判断されるって?

 

さすがはオセ様。おっかねぇなぁ。

 

 

 

このとき既に俺の中ではバアル家が

終焉を迎えることは確定していた。

 

あとはどれだけの連中がソレに味方し、

地獄を見るのかってことくらいか。

 

とりあえず俺達がその地獄に巻き込まれ

ないように、全力で動くぞ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーー奥様視点ーー

 

 

「久しいですなゼクラム殿」

 

そう旦那様が通信機越しに話しかける相手は

大王家の初代ゼクラム・バアル。

 

家督は既に譲っているものの、実権を握った

ままであり、子孫を傀儡にしているとの噂が

流れているが・・・

 

『うむ、久しいな。お主は相変わらず悪魔の

ようで羨ましい限りだ』

 

普段の他の老害に見せるような無駄に大物ぶった

受け答えをせずに、旦那様と普通に会話をする姿は

その辺の老害とは一線を画した貫禄と言うものが

確かに宿っている。

 

何千年と齢を重ね、悪魔を見てきたモノだ。

旦那様もその歴史には素直に敬意を払う。

 

「現在のご当主殿も先代殿も、貴族遊びが

過ぎましたな。

今回あの神滅具を隠すよう指示したのは、

時代の変遷を感じ取った為と推察します。

・・・ご自身の指示に反発するモノが

出ることを期待したのでしょう?」

 

そう、この老体は自分が古い考えから抜け

出すことはできないとわかっている。

 

だからこそ過去の内乱で旧魔王派を打ち破った

指揮官であるにも関わらず、連中も同胞である

という考えをもって援助をするし、今の

悪魔社会に対しても古き悪魔の価値観を植え付けようとする。

 

そして己の指示を超えて動くモノが

現れたなら、ソレが新しい時代を作ると

言うこともしっかり理解している。

 

様々な時代の変遷を見てきた老体にとって、

ソレは必要なモノではあるが、自分とは相容れないもの。

 

故に自分の指示を超えて動くモノの存在を

疎ましく思いながらも期待したのだろう。

 

だからこそ今回の神滅具隠匿の指示だ。

 

コレは元々各勢力の不文律のようなモノ

だったが、三大勢力の休戦協定に正式に

盛り込まれた条約に違反する行為だ。

 

それゆえ報告・・・まぁこの場合は密告に

なるかもしれませんが、ソレをしても

魔王を始めとした他の勢力によって庇護

される案件であった。

 

つまりご老体の指示に逆らうという、

古き時代に新たな流れを創る行為の

大義名分となっていたのだ。

 

その大義名分を与えられておきながら、

ご老体が決めたバアル家の次期当主である

実の弟を殴り倒してその座を奪ったアレが、

そこまでして『魔王になる』と抜かした

アレが最後までご老体の影響力から脱却

出来なかったと言うことが、どれだけご老体に

失望を抱かせたか・・・アレは今も理解して

いないだろう。

 

もしくは当代か先代が未熟者を使って

蜥蜴の尻尾切りなどせず、黙ってご老体を

差し出せば、古き時代へ終止符を打ったと

言う名誉はバアル家に齎されたのに。

 

どれだけ歯がゆい思いをしたことか。

 

話を聞いた当初は「自分で子孫を圧迫して

おきながら何を虫の良い事を」と思わないでも

なかったが、今では終ぞご老体を超えることが

出来なかったモノ共への呆れの方が強い。

 

『ふっ。それはお主の考えすぎだ。

儂はそこまで出来た悪魔ではない。

所詮は古き価値観を引きずる老害の

首領でしかないのだぞ?』

 

なるほど。そういうことですか。

 

「・・・そうですか。それではゼクラム殿が

抱えている古き時代を、ソレに縋る老害を

御身諸共滅ぼします」

 

このご老体は抱えて逝くことを選んだのですね。

 

『うむ良くぞ申した!それでこそ悪魔よッ!』

 

旦那様の宣誓に、本当に嬉しそうに笑うゼクラム。

あぁ、コレが悪魔らしく在ると言う事か。

 

「バアル家に関しては、サイラオーグ・バアルが

現在魔王領の施設に収容されています。

滅びの魔力の継承を考えマグダラン殿を逃すと

言うならその後で正式な宣戦布告を致しますが、

如何なさいますか?」

 

悪魔としてはアレですが、貴族にとっては家の存続が何より重要ですからね。

 

流石に先代や当代を逃がす気はないが、

次期当主の座を奪われたモノならば

特に問題はありません。

 

その辺の配慮もしようと言うのでしょう。

 

『ご配慮痛み入る。・・・そうだな。では

マグダランを魔王への仲介の使者としよう。

事情を知ってるのはファルビウムか?』

 

ほう。流石に旦那様の独断ではないとわかりますか。

 

しかし先程から上機嫌なのはアレですかね?

自分が選んだ魔王が自分を超えたと言うなら、

古き時代の番人としても本望といったところでしょうか?

 

「ベルゼブブ様もですね。恐らくですが、

今頃レヴィアタン様も壁を超えているでしょう」

 

そんなご老体の気持ちを理解している

のでしょう。旦那様は正直に告げます。

 

『ふっふっふっ。そうか、あの小僧共。

ようやくか。しかしサーゼクスがまだとはな』

 

あれはなぁ。無駄に情に厚いから、脱却

には相当時間がかかるでしょうね。

 

「いずれルシファー様も超えますよ」

 

旦那様が慰めるようにそう言うが、

いつになるのやら・・・

 

まぁアレもしっかりと超えれなければ死ぬだけですからね。

 

『うむ。そうだな。しかし今回はお主に

全ての泥を被せることになる。

何か補填してやりたいが、現状ではな』

 

信賞必罰が世の習い。ご老体にとっても

旦那様の行動は悪魔勢力の為の行動だと

わかっているのでしょう。

 

ですがご老体から何かを受け取れば

粛清の大義名分が消えてしまいます。

 

かと言って頭っから拒否すればご老体の

最後の気遣いも台無しになる。

 

むぅ・・・難しいところですね。

 

そう思ってましたが、それは私がまだまだ

旦那様を過小評価していたのでしょう。

 

「今回は貴族の義務と言うヤツです。

義務の遂行に報奨を求めたりはしませんよ」

 

なるほど、そうきますか。確かに戦争で戦うのは貴族の義務です。

 

弟子が師を量りきれないのは当然ですが

過小評価はいけませんよね。

失敗失敗。正妻失敗です。

 

それに今回、人件費やその他諸々の諸経費は

魔王に請求です。

 

無料で軍の大規模演習が出来ると考えれば

それだけで褒美のようなモノですからねぇ。

 

旦那様の言葉を聞き、さらに顔を綻ばせるご老体。

 

『ふははははは!流石は誰よりも貴族らしく、

悪魔らしいと言われるだけのことはある!

・・・お主があと1000年早く生まれて

居ればと思わずにはいられんよ』

 

1000年って、スパンが長すぎますねぇ。

 

しかし、もしもそうなったら今の悪魔社会は

どうなってましたかね?

まぁ私は変わらず旦那様のお側にいますけど。

 

ありえない想定に思いを馳せている間にも、

ご老体と旦那様の話し合いは続きます。

 

 

 

 

『・・・こんなところか。では宣戦布告のタイミングは任せるぞ』

 

「かしこまりました・・・良い戦を」

 

『ふっ。小僧が!そう簡単に勝てると思うなよ!

年寄りの怖さを教えてやるわ!』

 

 

通信機越しにもわかるような覇気を纏った

ご老体に一礼し、旦那様は通信を終えました。

 

 

 

・・・・・・

 

 

通信を終えても、旦那様は頭を下げたまま、

その場を動こうとはしませんでした。

 

コレはご老体への敬意でしょうか。

それとも古き時代への黙祷なのか。

 

未だに旦那様のお考えがわからないのが

歯がゆいと思う気持ちと、それこそが旦那様

と思う気持ちがあって、中々複雑です。

 

 

私と旦那様しか居ない執務室。

 

 

それから少ししてから、旦那様は

一度深呼吸して、目を開けました。

 

私の目に映るのは、在りし日の師の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・雪蘭」

 

「はっ!」

 

「地獄を創るぞ」

 

「・・・はいっ!」

 

懐かしいその姿に、その言葉に、年甲斐も

なく胸をときめかせるのはシカタナイコト

だと思います。

 

 

 

だからクロネコ。今日は諦めなさい。

 

今日の林冲様は私だけのモノです!

 

 

 

 

 

 

(ΦдΦ)?!




今回の前書き、これって次話の前書きに
するべきじゃない?
と思った読者様。君は間違っていない。

だがこのまま行くぜ!

宣戦布告前にフェニックス家みたいな
会議が出来たのは極一部です。
援軍は参戦拒否。

勝手に参加した場合は「ついて来たら死ぬぞ?」(モモン様)的なことになります。

誰得ゼクラム・バアルのキャラブレイク!(強化?)

いや、数千年生きててタダの老害ってことは
無いでしょうってお話。


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76話

長い!(12000字越え)

殲滅を一話で終わらせたぜ!
本編には影響なし!

魔王復活ッ!魔王復活ッ!魔王復活ッ!

コレで原作5巻終了。

ノリと勢いで書いてるので、後で修正の可能性大!



オリ設定!
オリ展開!

今日も一話だッ!

嫌いな人は読み飛ばし!





ーーアジュカ視点ーー

 

あれから数日。予定していた人員の撤退も

終わり、これからオセによる宣戦布告が

始まろうとしている。

 

・・・ゼクラム老もコノ映像を見ることに

なるのだろう。

 

彼は老害を抱えて死ぬことを選んだ。

 

その為の各方面への根回しや、引き継ぎをした。

 

そして今は冥界に残しておけないような連中を

選別して適当な理由をつけてパーティーをしているという。

 

あれは逃げないように捕えておいて、

戦争に巻き込む気なのだろう。

 

オセへの密命の後、ご老体から連絡が来た

ときの「遅すぎる」と言う叱責は、俺や

ファルビウムに対する叱責だったのか、

それとも自身に対するモノだったのかは

今となってはわからない。

 

だが、「せいぜい悪役として戦ってやろう」

と笑うご老体に悔いは無いように思える。

 

ようやく友の元へ逝ける。そんな顔を

していたご老体へ、お疲れ様でしたと

声を掛けることが出来なかったのは、

彼に引導を渡すのが俺では無いからだ。

 

最後まで不甲斐ない魔王で申し訳ない。

 

だが、これ以上の無様は晒さんと誓う。

 

冥界は責任をもって治めよう。

 

「あ、始まるみたいだよー」

 

セラフォルーの声で我に帰った俺は

ファルビウムとセラフォルーと三人で

この宣言を見ることにした。

 

サーゼクスにとっては母の実家だからな。

変に悩ませるよりはこの方が良いと

判断したんだが・・・実際のところ

どうなることやら。

 

そう思ってると、舞台の中央に造られた、

台のようなモノの前に厳かとも言える

雰囲気を纏う、黒い軍服のような服を来た

痩身の悪魔、オセが姿を見せた。

 

「「「・・・」」」

 

その姿を見て、その目を見て思わず無言になる。

 

肌が粟立つ!なんだこの圧力は?なんだこの威は?!

 

映像越しにもわかる。コレは俺が初めて先代の

ルシファーに会った時の衝撃を越えている。

 

先代を遥かに超える威を放つ悪魔がソコに居た。

 

コレが今のオセ・・・

 

まさしく悪魔の中の悪魔。

まさしく貴族の中の貴族。

 

この映像を見れば、ゼクラム老も後進の

逞しさに破顔するだろうよ。

 

 

そしてその悪魔は静かに語りだした。

 

 

ーーーーーーー

 

 

諸君、この冥界は堕天使領と悪魔領を繋ぎあわせて成立している極めて不安定なものである。

 

三大勢力の大戦が有った。悪魔勢力の内戦が有った。

 

本来なら内戦が終わった後、敗者たる旧魔王派は

解体し、現政府へ恭順させるか、戦争責任を問い

処刑すべきであった。

 

しかし現政府が、内戦後に敗者となった旧魔王派

に対して行った施策は隔離である。

 

すぐ隣に天敵の堕天使が居るにも関わらず、

隔離と言う有り得ない施策を採用した理由は、

老害貴族共が旧魔王派と繋がっていたからに

他ならない。

 

つまり、先代陛下のご子息様方が率いる魔王軍が

勝っても、現魔王様達が率いていた反政府軍が

勝っても、自分達が生き残ることが出来るように

両方に繋がりを持つ連中が多数居たのだ。

 

そのため我々悪魔は内には旧魔王派、外には

堕天使をはじめとした敵を抱える事となった。

 

結局のところ、入れ物さえ造ればよしとして

彼等は中央に引きこもり、真に悪魔社会を統治

することはしなかったのである!

 

私が旧魔王派、すなわち敗者を抹殺するか

現政府への服従を促すよう要求したとき、

バアル家を始めとした貴族家がソレに反発した。

 

それどころか、大王家一党は現魔王様方を

傀儡とし、己らこそが悪魔政府だと騙り、

旧魔王派に対して支援を行っていたのである!

 

そして支援を受けて調子に乗った旧魔王派が

テロリストに加担し、復権を狙って会談の

場で魔王様のお命を狙うというクーデターを

仕掛けてきたことは記憶に新しい!

 

その結果は諸君らが知ってる通り、英雄に

阻まれ敗北に終わった!それはいい!

 

しかしその結果、旧魔王派の頭を押さえたと

勘違いした悪魔政府はさらに増長し!

 

禍の団のような反政府運動を放置し!

 

牙を抜いたと勘違いしたテロリストに対して

継続して支援を行うことで、連中を支配下

におこうとする愚策を行ったのだ!

 

そしてそれは旧魔王陛下の血族を騙る連中に資金を与え、その跳梁を許すことともなった!

 

これが今の状況を生んだ歴史である!!

 

ここに至って私は悪魔が今後、絶対に

内戦を繰り返さないようにすべきだと

確信したのである!!

 

それがバアル領を完全に滅ぼす作戦の真の目的である!!

 

これによって冥界の戦争の源である、権力に固執し続ける老害を粛清する!!

 

諸君!自らの道を拓くため、悪魔のための

政治を手に入れるために!あと一息!

諸君らの力を使わせて貰う!

 

そして諸君は新たなる時代を掴むことになるだろう。

 

そう、新しい時代の覇権を選ばれた国民が

得るは、歴史の必然である。

ならば、我らは襟を正し、この状況を

打開しなければならん。

 

我々は冥界を生活の場としながらも

共に苦悩し、錬磨して今日の文化を

築き上げてきた。

 

しかしながら旧魔王派とソレに味方する

老害共は、搾取するだけの自分たちが

悪魔の支配権を有すると増長し抗戦する。

 

今まで老害貴族共の気分次第で、貴族だけの

都合によって!諸君の父も、子も、その老害共

の無思慮な主張の前に死んでいったのだ!

 

その悲しみも怒りも忘れてはならない!

 

我々は今、この怒りを結集し、老害に叩き

つけて、初めて真の勝利を得ることができる。

この勝利こそ虐げられた死者全てへの

最大の慰めとなるのだ。

 

諸君、私は地獄の様な戦争を望んでいる。

諸君、私に付き従う戦友諸君。

君達は一体何を望んでいる?

 

老害どもを滅ぼす戦争を望むか?

情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?

鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を

殺す嵐の様な闘争を望むか?

 

戦争!(クリーク)戦争!(クリーク!)戦争!(クリーク!)

 

よろしい。ならば戦争(クルィィィク)だッ!!

 

我々は満身の力をこめて今まさに

振り降ろさんとする握り拳だ!

 

だがこの暗い闇の底で幾世紀もの間堪え続けて

きた我々にただの戦争ではもはや足りない!!

 

大戦争を!!

 

一心不乱の大戦争を!!

 

戦争を忘却の彼方へと追いやり

眠りこけている連中を叩き起こそう

 

髪の毛をつかんで引きずり降ろし

眼を開けさせ思い出させよう

 

老害連中に恐怖の味を思い出させてやる!

老害連中に血の味を思い出させてやる!

 

私、リシュヴァーユ・オセはココに

バアル大王家への断交と粛清を、

老害貴族共の粛清を、

そして旧魔王派の殲滅を宣言するッ!

 

 

 

各軍団長に伝達。総司令命令である。

 

バアル領へ侵攻し、古きもの全てを破壊しろ!

古きものに味方する者達を駆逐しろ!

古きものを支える者達を焼き払え!

 

さぁ、逝くぞ諸君ッ!

 

 

 

 

地 獄 を 創 る ぞ !!

 

 

 

 

『『戦争!(クリーク!)戦争!(クリーク!)戦争!(クリーク!)』』

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「「「・・・」」」

 

映像の向こうではオセ家の兵士たちが

シュプレヒコールを上げている。

 

「いや、コレ、大丈夫なの?」

 

映像を消した後、セラフォルーが主語が無い

質問をして来るが・・・まぁ、言いたいことはわかる。

 

「ん~別に僕たちを殺して魔王になるって

言ってるわけじゃないし、他の勢力と

戦争しようってわけでも無いしねぇ。

あくまで老害の粛清と旧魔王派への

宣戦布告でしょ?サーゼクスあたりは

旧魔王派との話し合いがどうこう言うかも

しれないけどさ~。

どうせ話し合いなんかできないんだし。

ゼクラム爺ちゃんも旧魔王派を集めてる

みたいだから、此処までが予定通りって

感じなんじゃないかな~」

 

ふむ。お互いに打ち合わせ済みと言う事か。

 

宣戦布告と断交を宣言し、軍勢が向こうに

到着して戦闘が発生するまで大体3日。

 

これから向こうに老害どもの軍勢が合流する

のを待つだろうから、それが7日か?

 

準備期間が10日と言っていたが、オセは

準備が終わったから宣戦布告をしたのだろうし。

 

進軍が実行の10日に含まれるかどうかが

微妙なところだな。

 

「いや、そうじゃくて、今のオセちゃんって

アレじゃない?帝釈天様やオーディン様より

明らかに強くない?」

 

セラフォルーが映像が消えたディスプレイを

指差しながらそう告げる。

 

うん。知ってた。

 

「いや、まぁ、そうだけど。それはホラ、アレ

だよ。見ないことにしても良いんじゃない?」

 

かなり情緒不安定になるファルビウム。

 

うむ。まぁ今更オセの強さがわかったところで

何ができるわけでも無いしな。

 

元々オセの奥方だって俺より強いと思って

たんだから、今更ではある。

 

ヤツが本気を出したら俺やサーゼクスでも

潰されるだろう。

 

まったく、アイツは一体ナニになろうと

しているのか・・・

 

「まぁ、悪魔勢力を皆殺しにする気は無い

ようだし、我々に強力な戦力が居て困ると

言うこともないだろう。魔王になりたいと

言うなら喜んで譲ってやる」

 

戦争推進派だろうが何だろうが、

少なくとも政治についての見識がない

俺やファルビウムよりはマシな統治を

するだろうしな。

 

「あーまぁ・・・それもそっか」

 

セラフォルーも特に魔王の地位に固執

しているわけでもないから、俺の気持ち

はわかるのだろう。

 

ファルビウムも軍略家として動くなら

別に魔王である必要はないんだし。

 

未だに先代の子供たちやら何やらを

討ち取ったことを気にしている

サーゼクスがアレだが、アイツの

アレは、グレイフィアに対する遠慮

みたいなところもあるからな。

 

正直民には関係ない。

 

あとはこの一心不乱の大戦争に、魔王派の

貴族を参加させないようにするくらいか?

 

これからの展望を話し合おうとした

そのとき、いきなり会議室のドアが

開かれた。

 

普通なら有り得ん暴挙であり、警備兵は何を

していた!と言うところだが、今回はまぁ

シカタナイだろうな。

 

「「「・・・」」」

 

無言で扉に目を向ければ、そこに居たのは

赤髪紫瞳の魔王陛下。

 

「おぉぉぉぉい!!見たか?見たな?!アレはなんだ?どういうことだッ?!」

 

「「「(めんどくさいのが来た)」」」

 

俺たち三人の気持ちが一致したのを確信した。

 

ココまでオセに泥を被せた以上、せめて

コイツくらいは抑えないと無能どころか

老害の仲間扱いされてしまいそうで怖い。

 

あいつら、絶対普通に殺したりしないだろ?

 

とりあえず俺たち三人の仕事は決まった。

 

 

 

オセよ!コイツは任せて(戦場)に行け!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

バアル領北部はまさしく地獄であった。

 

『我は空戦龍将、タンニーン!我がブレスを受けよ!』

 

隕石に匹敵すると言われる魔龍聖のブレスは

周囲を完全に焼き払い、さらにタンニーンの

配下たちがソレに続く。

 

炎、氷、雷。様々な属性のブレスにより、

バアル領北部の都市や軍事拠点はその全てが

焦土と化していた。

 

龍に挑もうとしたモノはことごとく敗れた。

 

そしてその脅威へ挑むのではなく、逃げようと

湖や川と言った水辺へ向かったモノたちもいた。

 

だが・・・

 

『水戦龍将、ティアマット。アンタらに逃げ道は

無い。ここで殺してやるよ!』

 

天魔の業龍、五大龍王最強と言われた蒼き龍と

その配下が水辺に訪れたモノたちを蹂躙した。

 

タンニーンのブレスから逃れたモノ達の中で、

水辺ではなく山間部へ逃れたモノ達も居た。

何故か彼らは森林へ攻撃を加えなかったからだ。

 

だが、当然ソコにも救いの手はない。

 

『陸戦龍将、クロウ・クルワッハ。これより

キサマらを蹂躙する』

 

邪龍最強と言われたクロウ・クルワッハは、

その言葉通りに挑むものも命乞いをするモノも

平等に蹂躙した。

 

そしてその配下の邪龍たちもまた、一切の

容赦をすることなく、彼らを生きたまま食い漁る。

 

本来なら、例え龍相手でもココまで苦戦

することは無かった。

 

偵察の結果大量の龍が襲いかかってくると

された北部には精鋭が集められていたのだから。

 

最上級悪魔も居た。

王の駒を持ったモノも居た。

オーフィスの蛇を持ったモノも居た。

 

「「「せめて貴様だけでもぉ!!!」」」

 

その精鋭たちが、タンニーンを殺そうと

命懸けで向かってくる!

 

『ちぃ!コレが例の蛇と王の駒を使った連中かっ!』

 

配下では勝てないと判断し、出来るだけ距離を

取らせ自分で戦おうとするが、思った以上に

敵が強い。

 

ドーピングを使ったとは言え、今の彼らには

ティアマットやクロウ・クルワッハには

届かないかも知れないが、数の力を使えば

タンニーンなら相討ちくらいはできたかも

知れない程度の強さはあった。

 

だからこそ彼女はソコにいた。

 

「「「がっ・・・?!」」」

 

タンニーンをして負傷は免れないと判断した

バアル領の精鋭たちの突撃は、彼に届く

ことなく白い槍の煌きとともに消え去った。

 

一瞬の空白が出来、何事もなかったかの

ように静まり返る戦場。

 

だが、タンニーンは助かったなど微塵も思っていない。

 

「未熟。紫。それでもお前は元とは言え龍の王ですか?」

 

白く小柄な少女が、タンニーンの頭上で呟く。

 

いつの間に頭上を取ったとか、そう言う

次元ではない。

 

他とは隔絶したその実力はソコに居るだけで

魔龍聖と言われた龍にさえ確実な死を幻視させる。

 

その少女はそれほどの実力者であった。

 

現在の冥界において彼女の行動を確実に

掣肘できる実力者は4人居るが、その

4名ともココには居ない。

 

そう、次に危険なのは自分だ。

 

「教頭先生から命じられた蹂躙とは相手に

一歩も譲らずに押しつぶすことです。

お前が潰されたら連中に一矢報いたと勘違い

されるではありませんか。それなりに有名

だから使ってやってるのに、それでは意味が

ありません。潰される前に死にますか?」

 

散々な言われようだが、タンニーンは

冷や汗を流したまま口答えしない。

 

龍王としての立場が有るのはもちろんだが、

何かを言えば殺されることがわかりきってるからだ。

 

小龍姫は甘くない。殺すと決めたら必ず殺す。

そう言う存在だ。

 

だからこそ黙る。自分はあくまで外部協力者。

直ぐに殺されることはない。

 

それに黙っていれば援軍が来ると言うのは

わかっているのだ。

 

『お嬢、タンニーンが未熟なのは奥様だって

知ってることだろ?それなのに未熟を理由に

殺したら、奥様の作戦に誤りを認めるって

ことにならないかい?』

 

(来た!)

 

そう、同じ龍王のティアマットや邪龍とは言え

龍のクロウ・クルワッハと、互いに助け合うと

言う条約を結んでいたからこそ、彼は黙秘を

貫いていたのだ!

 

「むぅ。ソレは確かにそうですね。ついでに

言えば砲兵が接近されたら弱いと言うのも

戦の常識。決死の兵に接近されたからと

いって、ソレだけで砲兵を殺していては

戦略が成り立ちません」

 

龍を接近戦が弱い砲兵扱いすると言うのも

アレだが、そう思いながらも絶対に口には

出さない。

 

タンニーンは空気が読める龍なのだ!

 

「シカタナイ。今回は不問とします。

全ての空戦龍は高度を取り、都市部へ

絨毯爆撃を開始しなさい。

精密さは必要ありません。ただ森林破壊は

避けるように。一歩間違えれば空殿による

蹂躙に巻き込まれますからね」

 

『『『『了解!!』』』』

 

(良しっ!助かった!)

 

後でティアマットに何かを贈る必要が有るが、

少なくとも、ここで殺されることは無くなった。

 

圧倒的戦力で蹂躙しているように見えるが、

命の危険を感じているのは督戦されている

龍たちも同じであった。

 

故に容赦はしない。手加減?そんなものは無い。

 

全てを焦土と化すまで龍は止まらない。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

バアル領西部は地獄であった。

 

敵味方の様々な魔術、妖術が入り乱れる戦場は

ある意味一番地獄らしい戦場とも言えるモノ。

 

その中でも一際目立つのが、SS級はぐれ悪魔

として名高い黒歌である。

 

今回、反老害貴族の旗頭として立った彼女の

周囲には、同じようにはぐれ悪魔とされた

モノたちや、その家族たちが滅殺の意思を

持って立っている。

 

彼女たちこそ老害の罪の証。

被害者であり、生き証人。

 

オセが言った、耐え偲んできた民たちの

怒りがこの戦場を地獄にしていた。

 

 

ーーシロネコ視点ーー

 

 

「待ちに待った時が来たのだ! 多くの眷属

悪魔が無駄死にで無かったことの証の為に・・・

再び悪魔としての理想を掲げる為に!

無理やり悪魔にされたモノも居るだろう!

悪魔にされたあとに虐げられたモノも

居るだろう!

飽きたと言われて捨てられ、駒を回収する

為に命を狙われたモノたちも居るだろう!

皆の無念を晴らすため!

悪魔の屑の殲滅のために!

老害貴族どもよ!私は帰ってきたぁぁぁ!! 」

 

 

 

・・・黒歌姉さまが血の涙を流しながら

ご主人様の術式を構築していきます。

 

今はご主人様の庇護の元幸せを満喫している

黒歌姉さまですが、元々私を守るために

無理やり実験に参加させられたりしてた

らしいですし、絶対に口には出しませんが

体を求められたこともあるのでしょう。

 

それらの恨みを晴らすため。

 

そして自分以外の虐げられた悪魔の恨みを

晴らす為に老害を殺そうとする黒歌姉さま

の邪魔は誰にもさせません!

 

「百獣。黒歌様を守れ。そしてお前たちの

無念を黒歌様と共にぶつけてこい!」

 

『『『おぉぉぉぉぉぉぉ!』』』

 

悪魔の駒によって転生させられた被害者たち。

 

老害貴族からの刺客に怯え、隠れ潜んでいた

モノたちを集めたこの軍団は、決して素質

が高かったわけではありません。

 

だが死を恐れ、ソレに抗う為に鍛錬を

重ねることで強くなりました。

 

民意の象徴でもあるコノ軍勢を任された

以上、無駄死にはさせません。

 

未だに黒歌姉さまたちをはぐれ悪魔扱いして

被害者面する老害どもよ!我らの怒りを知れっ!

 

 

「くらえ、リトル・ボォォォォォォイ!!」

 

 

殲滅術式が光を放つ。

 

本物は放射能とか色々撒き散らすモノだが、

ソレを術式とすることで調節を可能にしたらしい。

 

だが、その光がもたらす熱量は甚大であり、

直線上にあった要塞だろうが都市だろうが

全てを蒸発させていく。

 

「「「「潰せぇぇぇぇぇぇ!」」」

 

その威力に恐れ慄き、動きを止めた敵は、

黒歌姉さまの配下による魔術で滅ぼされるか

 

「「「「死ねぇぇぇぇ!!!」」」」

 

獣と化した軍勢になぶり殺されることになる。

 

これこそがご主人様が望み、私たちが望んだ地獄です!

 

私も遅れを取るわけには行きません!

 

 

まるで切れ味の悪い刃物で削られるかのような。

 

バアル領の西部ではそんな戦場(地獄)が

顕現していた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

バアル領東部は地獄である。

 

 

己の影から突如として現れる蟲によって

首を狩られるモノ。

仲間を助けようとして、その体内から

現れた蟲によって殺されるモノ。

 

腐りゆく自分の手を認識しながらも、

迫り来る死から逃れようと必死で魔力を

振るう少年兵。

 

その少年兵の魔力で貫かれる上官。

 

敵が一人も居ないはずの戦場で、味方同士が殺し合う。

 

そんな地獄の中を、一見すれば華奢な少女が、

メガネをかけた青にも見える銀髪の少女が歩く。

 

彼女は滅多に表に出ないから、その名は知られて

いても、その姿を知る者はほとんど居ない。

 

故にバアル家の兵には彼女が敵かどうかがわからない。

 

それ以前に、誰が敵で誰が味方か。

今自分たちに何が起こっているのか

理解できているモノは居ないのだが・・・

 

この場でソレを理解しているのは、地獄を歩く

少女。オセ家第一側室、もしくは第二夫人とされる

簪・オセただ一人。

 

いや、正確には一人では無い。

 

「いやぁ。魔影群団を指揮って言っても、

彼らは勝手に殺ってくれるから楽ではある

んだけどさぁ」

 

そう呟く少女の横には、黒い、そうとしか

表現出来ない大柄の男が居た。

 

いつの間にかソコにある男は、一言で言えば醜悪だった。

 

顔が、ではない。その存在が醜悪なのだ。

 

男が歩けば大地が腐る。

男が見ればモノが腐る。

 

ソレはべんぼう 存在そのものが地獄。

 

アザゼルが見れば我を忘れて襲ってくる

であろうモノの名は神野明影。

 

本来なら領外へ逃げるモノたちを喰らう

のが彼の仕事だが、別にサボっているわけ

ではない。

 

子供を守るために盾になろうとする

親の目の前で子供を喰らい、

親を守ろうとする子の前で親を喰らい、

恋人を守ろうとする男の前で恋人を喰らう。

 

ありきたりだと思えば逆にしたり、

ワザと両方を逃がしたと思えば

繋いだ手の中に蟲を仕込んで腕から

食わせたり。

 

顔から腐っていく恋人の姿を見せつけ、

恋人を捨てて逃げる心の腐った男を嗤い。

恋人に捨てられた顔の腐った女の絶望を嗤う。

 

『好きにやれ』今の主の言葉通り、彼は

好きに殺っていた。

 

『かんちゃんの手を煩わせるのもアレだと

思ってね。それにかんちゃんだと地獄って

言うか一瞬で終わっちゃうじゃない?

それだと勿体無いかなぁって思ってさぁ』

 

今の彼は普段の相手を揶揄う口調ではなく、

真剣に弁明している様子だ。

 

その姿は誰がどう見ても孫娘の機嫌を取る

祖父である。

 

「いや、神野さんの言うこともわかりますよ?

ご当主様が『地獄を創れ』と命じた以上、

私たちは地獄を創らないと行けません。

だけど私の場合、どうしても実験になるし、

実験だと即効性の地獄にはならないですもん」

 

ふてくされるように簪が言うが、実際

今回のコンセプトと自分が創る地獄は

微妙に違うと言うのもわかっている。

 

こういった場で自分が地獄を創るとすれば

細菌兵器の類になるだろう。

 

ソレはソレで立派な地獄だが、残念ながら

自分が愛する男が創ることを望んだ地獄とは

趣が違うのではないかと思うのだ。

 

まぁアノ人はそれでも「よくやった」

と言って頭を撫でてくれるだろうが、

やっぱりちゃんとした地獄を創るべきだ

と考えれば、神野の協力は悪い事ではない。

 

それでもやっぱり、自分の力で・・・と

言うのも有る。

 

『今回はまぁ他に譲ってあげなよぉ。

擬似神器の件で主が褒めてくれたし、

普段活躍してるんだからさぁ』

 

「むぅ・・・」

 

そう言われれば、他のヒトたちへの遠慮が

生まれるのがHENTAI国家のニンゲンである。

 

確かに自分は奥様と一緒に日頃から褒めて

もらう機会が多い。

 

今回だって狐様も参加しようと随分と

頑張っていたみたいだが、結局参加

できなかったとシクシク泣いていたのを

見ているし・・・

 

「はぁ。シカタナイなぁ。即死も実験も

許されないなら削るだけにしようっと。

・・・『アルレシャ』」

 

溜息を吐きながら神器を展開する簪。

 

その神器は、一見すればヨシコ=サンが

纏った擬似神器とよく似ていた。

 

それはそうだろう。そもそもがコレを

参考にして造られた神器なのだから。

 

その神器は黒かった。いや、純粋な黒ではなく

黒を基調にして所々に金を加えた全身鎧。

 

クロウ・クルワッハが奥様やウィーネに

命を狙われ、さらに「色を替えろ」と

言われた理由でもあるが、簪自身は別に

気にしてはいない。

 

むしろ同色が増えれば戦隊が組める程度の考えだ。

 

実際神野も全身黒で金髪赤目だし。

 

『おぉ、ソレを見るのも随分久しぶりだねぇ』

 

神野は簪の神器を見て楽しそうに嗤う。

自身に似ているのも有るが、コレを展開

した簪が創る地獄は、神野をして中々に

趣が有るのだ。

 

「円状十二王方牌大車併展開」

 

簪の周囲に12の球状の物体が浮かび上がる。

 

「範囲は・・・バアル領東部全域。クリア。

それじゃ神野さん。出来るだけ死なない程度に

吸収ヨロシクお願いします」

 

『むぁかせてよ!』

 

神野の声を聞いて、一つ頷き

 

「超振動突撃刃夢現起動。魔力開放」

 

薙刀の様なモノを取り出し、そして周囲の

物体を削る!

 

「さぁ鳴り響け天魔波旬交響曲!!」

 

リィィィィィィィィィィンと言う

音が鳴った。

 

 

その音は通常のモノの可聴域では無かったが、

運良く(・・・)その音を聞き取ることが出来た

モノは、脳を破壊されて死ぬことができた。

 

そして死ぬことが出来なかったモノたちは・・・

 

パン。パン。

 

バアル領東部に住むモノ達の体の一部が

なんの前触れもなくはじけ飛んだ。

 

「うわぁぁぁ?!」

 

「何だッ?!」

 

「あ、足がッ一体何が?!」

 

「腕が!腕がぁぁぁぁ」

 

何がなんだかわからない。そんな混乱の中

 

「やめろ!入ってくるなぁ!!」

 

「痛い痛い痛い!!」

 

「あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”」

 

「蟲がッ蟲が足の中にィィィ!!」

 

どこからともなく現れた蟲に襲われるモノたち。

 

生きたまま蟲に中身を喰われるという地獄。

 

バアル領東部はまさしく地獄であった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

バアル領南部はある意味で幸せだろう

 

『わーい!皆トモダチだぁ!』

 

「「・・・!!」」

 

少女の声と共にアンデッドと呼ばれる

魔法生命体が手をあげる。

 

彼女の呪詛によって死んだモノは姿も形も

残らないが、これらアンデッドによって

殺されたモノは同じアンデッドと化す。

 

アンデッドに殺された死体が立ち上がり、

今も生きる生者を襲い、どんどん増殖

していく様はまさしく地獄。

 

だがそれでも唯一救いと言えるモノがある。

 

それはアンデッドには嬲ると言う思考がないと言うことだ。

 

ただ生者を襲い、同じ存在に堕とすだけ。

運良く即死出来ればそれ以上の痛みや

恐怖から脱却できる。

 

場合によっては少女の呪詛によって

痛みも何もなくそのまま死ねるのだ。

 

ソレは他の地獄と比べればどれだけ幸せなことか。

 

 

ーー奥様視点ーー

 

 

「ははは、アリス。あまり遠くに行ってはいかんぞ」

 

たくさんのトモダチと共にはしゃぐ少女を

見て目を細めるのは、悪魔社会において

『皇帝』と言われるほど知名度が高い悪魔だ。

 

その称号のせいで小龍姫に殺されかけた

ことが有るらしいが・・・まぁそれでも

冥界有数の実力者である。

 

「と言うか、ココにいて良いのですか?

確かに今の貴方なら彼女の呪詛で死ぬ

こともないでしょうし、戦闘の巻き添えで

死ぬことも無いでしょう。

オセ様も許可しましたから文句をつける

気はありませんが、ご実家から文句を

言われるのではないですか?」

 

アリスと共に南部を担当する奥方と

言われる悪魔がそう声を掛けるが

『皇帝』はどこ吹く風である。

 

「ははは。父上も母上も行ってこいと

言って背を押してくれましたとも!」

 

コレが勝ち馬に乗るとかそう言う小賢しい

考えなら殺していたが、彼らの目的は

老害を殺すことだ。

 

だからこそオセも例外的に彼の参戦を認めた。

 

ちなみに例外として認められた外部

戦力はタンニーンと彼だけ。

 

タンニーンは有名で見栄えが良いからと

いう理由で参戦させられている。

 

「・・・クレーリアが死んだのは我々の

教育不足によるものが大きい。

好奇心で貴族の家を探るなど殺されても

しょうがないことだ。それは認めます。

ですが実際殺したのは連中で、連中はその

事実を未だに隠匿し、謝罪すらしてこない!

いや、謝罪でなくても良いのです!

我々に非があったと堂々と告発してくれば

ソレを謝罪することも出来る!そうして

初めて我々も前を向くことができます!

だが連中は何もしてこない。これでは我々の

時間は止まったままではないですか!

ならば我が手で滅ぼすのも道理でしょう!」

 

いや、そこで滅ぼすのが道理なのでしょうか?

 

そう思いながらも、こいつも妹魂の一人

だったと思い直す。

 

それに、この機を逃せば老害へ復讐する

ことは出来なくなると考えれば、コレも

また彼らの選択なのだろう。

 

「貴様らの狼藉もここまでだ!」

 

ん?

 

アリスのはしゃぐ声とアンデッドに襲われる

悲鳴、もしくは戦闘音だけが響いていた地獄に

突如として男性の声が響きわたる。

 

どう見ても2等~3等クラスの実力しか

無いように思えるが・・・

アリスがトモダチを増やすために呪詛を

使ってないから生きているのだろうが、

何やら穴のようなモノを使ってアンデッド

を収容しているようだ。

 

それを見たアリスは新しい遊びと思って目を

輝かせているが・・・

 

「ビィディゼ・アバドンか。そういえば

ヤツは王の駒を使っていたな・・・奥方殿。

アレは私に任せてもらえまいか?」

 

どうやら『皇帝』の知り合いのようですね。

 

まぁ別にこだわりもないし、そもそも自分が

ココに居るのは、オーフィスの蛇を持った

敵や世界に守られた存在(主人公かそれに相当する者)が我々の

邪魔をしに来ることを警戒したが為。

 

クロネコやシロネコには逃げると言う

判断が出来る。伯師妹なら戦えるだろう。

簪の傍には神野が居る。

 

空殿は問題ない。

 

だが、アリスは逃げるという選択が出来ない。

それ故に、こうして護衛を兼ねているのだ。

 

「構いません。ですが我々は無駄に戦いを

長引かせたりする輩を好みませんし、

雑魚のドラマを見る気もありません。

全力で、最短の時間で潰してください。

ソレが出来ないなら私が両方殺します」

 

自分たちが行っている地獄の創造とソレを阻む者(主人公かそれに相当する者)の調査は師の勅命。

 

それを妨げるモノも、怠慢によって

ソレを穢すモノも許さない。

 

「問題ありません。アレは多少の体術を

学んではいますが、所詮根幹部分を王の駒

と言うドーピングに頼るモノ。

今まではゲームで潰すことでクレーリアの

無念を晴らしてましたが、戦場に現れた

なら話は別。もとよりゲームを穢す存在に

かける情けはありませんしね」

 

そう言って『皇帝』は一歩前に出る。

 

「ならば良し」

 

そう言おうとした矢先のこと

 

「貴様は・・・ディハウザー・ベリアル?!

まさか貴様が成り上がりのオセに味方するとはなっ!」

 

あぁん?てめぇ。誰を何と言った?

 

「死ね」

 

気が付けば私の体は、旦那様を侮辱した

下等生物に攻撃を繰り出していました。

 

「「は?」」

 

命奪崩壊拳。手加減抜きの一撃は無礼者の腹部を難なく突き破る。

 

「「「ビィディゼ様っ!」」」

 

いきなりのことで混乱する雑魚の眷属共。

 

「この程度の実力で私の前に立ち、さらに

旦那様を侮辱するとは。

・・・クズがキサマらは無価値に死ね」

 

「だ、旦那?まさか貴様がっ?!」

 

ボンっ!

 

何かを言おうとした無礼者を爆発四散させる。

ハイク?残す必要など無い。

 

そしてその眷属共も同罪だ。

 

「アリス。殺しなさい」

 

キサマらにはアンデッドにする価値もない。

 

『んーよくわかんないけど、そう言う遊び

だったのかな?まぁいいや!』

 

「「「よくも!『死んじゃえ!』がはっ?!」」」

 

アリスの呪詛を受けて駒も残さず消滅する

クズども。

 

何も言わせず、何も残さず。

うむ。これこそが処刑です。

 

「・・・奥方殿」

 

『皇帝』が何か言いたげですが知りません。

言いたいことがあるならハッキリ言いなさい。

 

大体目の前で旦那様を侮辱されて許す妻などいないのです。故にアレは私の獲物でした。

 

「さぁアリス、ココは終わりました。

さっさと次に行きましょう」

 

さっさとコチラを終わらせて、西のネコを

フォローしないと、何者かが来たときに

逃亡を許してしまうかもしれませんからね。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ソレから数日。バアル領の南部は無数の

アンデッドがひしめく地獄であったが、

ソレらはとある悪魔の玩具となった後、

全てが塵と化したという。

 

南部には中央と同じように血の跡すらも

残らず、残っていたのは初めから何も

無かったかのように平らになった大地だけであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

(。・ω・。)))))))

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご老体。長年の忠勤お疲れ様でした」

 

「う・む・・流石に・・・疲れた。・・・あとは・・任せた・ぞ」

 

「はっ」

 

 

 

 

 

灰燼と化したバアル領。ソコで何が有ったかを知る者はいない。

 

 

 

 




どこぞの戦争好きな少佐が弟の葬式で
隕石を落下させようとした感じの演説。

対抗する為に演説をしようと思ったが、
作者に文才が足りないため諦めた!

つまりはグダグダである!

主人公か管理者が邪魔しに来る可能性を
考慮していた模様。

神野さんも、空くんが動く前なら余裕が
有るから、援護に入りました。

ダメージを与えても回復される可能性が
あるので、さっさと蟲を体内に入れて
しまえと考えたもよう。

クロネコは怒りの力を放出したってお話!


まぁ、究極的には最後の会話が有れば良いのですよ。


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原作6巻
77話


原作6巻開始・・・の前?

胃痛魔王と聖女スキーのお話

オリ設定!
オリ展開!

今日も一話!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

バアル領の殲滅から数日。ソコに居たモノは

全滅したし、元々引き継ぎ用の資料が用意

されていたこともあり、避難させられていた

民たちを建物が無事だった東部に纏めて入植

させた上で、新たな領主を決めたことで混乱と

言う混乱が起きることもなく収まった。

 

これにより、後始末を含めたオセ家による

バアル家の粛清は幕を閉じたと言うわけだが

当然悪魔社会の上層部は混乱している。

 

まぁ老害共がある程度片付けられた

とは言え全滅したわけではない。

 

ゼクラム老が持っていた権益やら何やらを

自分のモノにしようとしたり、オセに

擦り寄ろうとしたり、我々に庇護を求め

ようとしたりと、かなりの混乱具合である。

 

そんな中では、政治はサーゼクスの領域と

言って全てを押し付けるわけにはいかんし、

何よりサーゼクスに任せっきりは怖くて

仕方が無い。

 

そんなわけで俺達も貴族どもの相手や、

レーティングゲームの運営に関する新たな

法整備などを行っていた。

 

『おひさしぶりです。ベルゼブブ様』

 

忙しい中、アスタロト家・・・つまり実家から

緊急連絡が入って来たのはそんな時だった。

 

「久しいなディオドラ」

 

実際こうして個人的に話すのは、久しいどころではない。

 

血統的には従兄弟ではあるが、俺は魔王

として、いや、技術者として実家に

関わらないようにしていた為、サーゼクスや

セラフォルーのように親族と言う理由で彼ら

と接する機会などなかったのだから。

 

魔王としては正しいのかもしれんが、実家の

政治力も利用していれば、少しは悪魔社会の

政治も良く出来たかもしれんと考えれば、

随分遠回りしたものだと思う。

 

まぁ俺個人の感情は良い。

 

珍しく連絡を寄越して来た従兄弟。それも

緊急連絡と言うのだから、その内容を精査

するべきだろう。

 

『えぇ、誠に。本来なら時候のアイサツやら

何やらをするのが政治家としては正しいので

しょうが、陛下もお忙しいでしょう。

故に単刀直入に本題に入るご無礼をお許し下さい』

 

・・・この時点で単刀直入では無いような

気もするが、ソレは俺が政治家ではなく

技術者だからそう感じるのだろうな。

 

「あぁ、気遣い痛み入る。早速本題に入ってくれ」

 

俺にしても、ここで世間話を振るようなタイプ

の悪魔では無いから、助かると言えば助かる。

 

なにせ老害や通常の貴族と言うのは本題に

入る前に最短で10分以上の口上を述べるのだ。

 

その口上の中に含みやら何やらを持たせる

から聞き逃しも出来んし、下手に相槌を

打てば賛同したと見做される。

 

貴族の相手とは、俺のようなタイプの

悪魔にしてみれば面倒この上ない。

 

だからこの程度の前置きで本題に入って

くれるディオドラに対し、無条件で好感度

が上がるのも止むを得ないことだろう。

 

『では早速、クルゼレイ・アスモデウスと

シャルバ・ベルゼブブを始めとした連中が

英雄殿のレーティングゲームを狙い、

何やら企んでおります』

 

「・・・」

 

そうか。連中、餌に掛かったか。

 

英雄を利用して何をするかは知らんが、

今まで散々顔に泥を塗ってくれたことに

なっているアレに意趣返しをしつつ

開戦の狼煙にでもする気か?

 

下手に動かさずに隔離しているだけで

餌として機能するのだから、最初から

なんとかしてアレを隔離しておけば、

常識の習得やら何やらも可能になって

いたかもしれんな。

 

奴らに破壊された胃をさすりながら、

苦笑いを浮かべる俺をどう見たのか、

通信機の向こうではディオドラが何やら

戸惑った表情をしている。

 

「報告ご苦労。その情報が手に入ると言う

ことは、連中はお前にも声をかけてきたのだな?」

 

魔王の実家がテロリストに加担したと

なれば、政治的なダメージは計り知れん。

 

失敗しても政治的な混乱は免れん。

 

つまるところ、英雄だけでなく俺たちに対する意趣返しにもなるな。

 

連中にしては考えたものだ。

いや、元々連中は他人が嫌がることを

する分には超一流の手腕が有ったな。

 

『そうですね。本来はグラシャラボラス家も

巻き込む予定だったそうですが、どうも

向こうは以前からアスモデウス様の目が

光っていたようで、接触出来なかったそうです』

 

あぁ、ゼファードルの件だろうな。

 

堕天使や旧魔王派がYOSHITUGUの正体を

探るために実家に人員を差し向けるであろう

ことを警戒したファルビウムが手を打った

のだろうが、ソレがそのまま干渉を阻む一手

となったか。

 

「なるほど。シトリー家やグレモリー家も

魔王の実家だが、サーゼクスもセラフォルー

もそれなりに実家と繋がっている。

故に実家から距離を置く俺たちを狙ったか」

 

狙いは間違ってない。

 

特にグレモリーに接触しないのは正解だ。

 

グレイフィアの立場が有る以上、絶対に

連中に味方することは無いだろうし、

アレを味方にすれば慢性的な胃痛と頭痛に

悩まされることになる。

 

英雄が離反したとなれば痛いが、

向こうについたなら滅ぼすことも

できると考えれば・・・いや、無理か。

 

サーゼクスが必死で抵抗するよな。

 

まぁソレを狙ってナニカしたり、餌の

甥であるミリキャスに英雄様の実態を

吹き込んで動かすという手も無いわけ

ではないが・・・ミリキャスはまだ子供。

 

種を植えるには十分だが、ソレが芽を出す

まで待つ時間も無いのだろう。

 

なにせバアル家が旧魔王派に対する

支援を理由に滅ぼされたからな。

今後連中に支援をする貴族の数は激減

するだろう。ソレを焦ったか。

 

我慢だの節制が出来るような連中では無いからな。

 

動けるうちに動かねばジリ貧だ。

その程度の理性は有ったようで何より。

 

『そのようですね。無条件で支援してくれた

大王家からの支援が無くなり、このまま他の

支援者も居なくなれば残るは惨めな孤立です』

 

なるほど。

 

「ふっ。周囲に自分を称えてくれるモノ共

が居なくなるのが耐えられんか」

 

政治的な視野が無いのは俺たちも同じ

だから、偉そうに批判できるモノでも

無いが・・・もはやガキの癇癪だな。

 

 

『えぇ、偉そうな物言いをしていますが、

過去に中央から辺境に隔離されたことで

連中は孤立することに対して異常とも

言える恐れを抱いております』

 

若造とも言えるディオドラにすら

器の底を見切られたか。

 

「その結果がなりふり構わずの勧誘か。末期だな」

 

敵対したとは言え、昔馴染みが落ち

ぶれるというのは悲しいものだ。

 

ソレに巻き込まれるモノたちが居る

以上、容赦をする気はないが。

 

むしろ辺境で好き勝手に国造りでもして

いれば、その統治内容でもって我々の

未熟さを指摘し、政治的なマウントを

取れただろうに。

 

寂寥感とでも言うのだろうか、彼らが

選択を間違えなければ・・・と言う思いに

浸っていた俺の思考は、ディオドラの放った

言葉で吹き飛ばされた。

 

『えぇ、ただなりふり構わない暴走だから

こそ厄介であるとも言えます。

・・・連中はオーフィスの蛇を使っての

大盤振る舞いを始めました』

 

「なんだと?!」

 

戦力の底上げとしてオーフィスの蛇を

使ってくるのはわかっていた。

 

と言うか連中にはソレしか方法がない。

 

だが、アレは継続性が無いドーピング剤。

 

もしレーティングゲームに使ったとしても、

王の駒と違い不正が疑われてしまうから

意味がないどころか自分の首を締める行為

となってしまう。

 

戦争で使うにしても、所詮は一時的な強化。

 

元の能力が低ければ暴走するし、力を

使いこなすこともできん。

強化された魔力を使い遠距離から魔力砲撃を

放つだけの砲兵にしかならんのだ。

 

ソレに専念されれば面倒ではあるが、いくら

大盤振る舞いと言っても、すべての兵士に

蛇を渡すようなことはしないだろう。

 

となれば元の立場と矜持が邪魔をして、

一兵士として動くことなど出来んだろう。

 

その結果出来上がるのは、統率の取れない中途半端な力を持つ個の群れだ。

 

そんな連中が中途半端に政治力を持つ

ようになれば面倒この上ない。

 

『どうも私が英雄殿に対して隔意を抱いて

いると確信しているようですね。

連中は私のところにも何体かの蛇を手土産と

して持ってきましたよ』

 

そう言って瓶を掲げてみせるディオドラ。

 

その中には黒いナニカが渦を巻くように

蠢いている。

 

・・・アレがオーフィスの蛇か。

 

前にカテレアが見せたときは一瞬だった

から細いことは不明だったが、なるほど。

確かにオーフィスの力の一部を魔力に

還元できるようにしているのだろうな。

 

未知のモノに対する興味は有るが、今は

それどころではない。

 

このような真似をしてオーフィスの蛇を

ばら蒔いているのだとすれば、一体何程の

貴族達が奴らに賛同することか。

 

オセによってバアル家が滅んだとは言え、

オーフィスの名と脅威には勝てん。

 

さらに悪魔は本能的に力に憧れるモノだ。

 

この誘惑に抗うのは相当な自制心が必要になる。

 

連中に自制心を求めるほど、俺は腑抜けてはいないぞ。

 

・・・中立派を騙る連中の大半は、奴らに

対して何かしらの便宜を図っていると見た

方が良いかもしれんな。

 

しかしよくもまぁディオドラはその誘惑を

振り切ったものだ。

 

「若手の悪魔に英雄に対する隔意が有るのは

当然だろう。嫉妬もあるだろうが、事実を

知ればなおさらだ。

サイラオーグなど、喉から手が出るほど欲して

いた実績を、何もせずに得ているのだからな」

 

むしろ邪魔をしてるまである。

 

だからこそわからん。

 

『あぁ、私が英雄を擁立した現政府につく理由ですか?』

 

そうだ。普通なら巫山戯るな!と声を

上げてもなんの不思議もないのだ。

 

実際に実績を積んでいるディオドラなど

その筆頭だろう。

ついでに言えば英雄のところの元聖女は

ディオドラが教会から離反させたモノ。

 

獲物を取られた上にこの扱いと考えれば、

旧魔王派がディオドラを味方とカウント

する理由も良くわかる。

 

「率直に言えばそうだ。英雄との確執は

さて置き、クルゼレイやシャルバならば

ともかく、オーフィスが敵となるのだ。

俺たちの敵に回ることは有っても味方に

なる理由がわからんよ」

 

ドーピング剤とはいえ力を貰い、聖女を

掠め取られた恨みを晴らすことも出来る。

その上、旧魔王派が勝てば確実に幹部と

して迎え入れられるのだぞ?

 

それだけの高待遇に転ばない理由があるのか?

 

『まずさて置かれた英雄殿との確執ですが、

確かに私が教会から離反させたのを英雄殿に

奪われた形ではありますよ?

恨みと言うか、ナニしてくれるんだ?!と

言う気持ちは確かに有りました』

 

態々英雄との話を先に持ってきたのは、

そちらから説明した方が話が早いと思ったからか?

 

「・・・」

 

それともどうせ説明するんだからと言うことか?

 

続けるように視線で促すと、ディオドラは

一つ頷いて心境を吐露する。

 

『その上で言わせて貰えば、私は英雄殿に

関わりたく無いのです』

 

おぉう。思った理由とは全然違うが、凄い説得力だ!

 

『獲物を奪われたのは業腹ではありますが、

それも私が彼女を手に入れるまでキチンと

管理しなかったからだと言われてしまえば

その通りですからね』

 

うむ。まぁその通りだ。なんでソーナと

英雄が居るところに聖女を差し向けたのか

未だにさっぱりわかってないからな。

 

下級堕天使に聖女の神器を抜き取らせると

言う名目を与えたと言うなら、ソレは

悪魔の管理地である必要は無いだろう。

 

日本語を話せない箱入りの聖女をイタリア

から日本に移動させる手間暇を考えれば

ムダが多すぎる。

 

『自分が釣った魚を、タグも付けずに

他者の生け簀に放流したら他者に釣られた。

ソレだけの話です。怒るなら自分でしょう?』

 

「まぁ、その通りとしか言えんな」

 

苦笑いするディオドラに、こちらも

苦笑いで返す。

 

つまり自制と自省が出来るなら、英雄に

対して「聖女を獲られた!」と騒ぐような

真似は出来んと言う事だな。

 

自分が惨めになるだけだ。

 

『そして旧魔王派ですが、アレらに味方

するということとオーフィスがバックに

付くと言うことはイコールではありません』

 

うむ。それもその通り。

 

頷く俺を見て、ディオドラは更に言葉を続ける。

 

『極めつけは先日のオセ様の戦です。内容は

知りませんが、バアル領が全滅したのは事実。

その中にはオーフィスの蛇を持ったモノも

居たでしょう。王の駒を持ったモノも

居たでしょう。ですが彼らは生き延びましたか?

オーフィスは彼らを守りましたか?』

 

確かに旧魔王派に援助していたバアル家に

対し、援軍として参戦した連中の中には

王の駒を持つモノ達も居ただろうな。

 

当然オーフィスの蛇の所持者も居ただろう。

 

『そもそもカテレア殿がオーフィスの蛇を

使ってもアザゼルに勝てなかったのですよ?

他にも、百年単位で修練をして、研究を

重ねて、トップランカーと言われた悪魔が

王の駒を使っても皇帝に勝てないのですよ?

外付けの力に意味がないことの証拠ではありませんか』

 

王の駒を造った者としてはアレだが・・・

実際に言っていることは間違ってはいない。

 

世の中は結果が全てだ。

 

『今から私たちが修練したところで、

相手も強くなります。まぁ技術者で

あるアザゼルの場合は慣れや最適化と

いう方向かもしれませんがね』

 

うむ。アレも人工神器などを造っていた

ようだからな。

カンザシ・オセの擬似神器と言い、アレ

を量産して使いこなす方が健全といえば

健全かもしれんが・・・多少話がズレて

来ているな。

 

「つまり、連中に味方してオーフィスの

蛇を手に入れても、我々に滅ぼされる

ことが目に見えている。

その際オーフィスが庇うようなことを

するとは思えないため、後ろ盾としては

不十分だと判断したわけか」

 

政治的に見ればこんなところか。

まぁ少しでもオーフィスを知れば

そのような答えに行き着くだろう。

 

コレは家の存続も視野に入れた政治判断。

つまりディオドラだけでなく、父上の

判断も有ると言う事か?

 

『そうですね。力が無駄とは言いませんが、

今はそれよりも政治が大事だと思っています』

 

話がズレていたことを自覚したのだろう、

気恥ずかしそうに笑いながら結論を述べる

姿に嘘は感じられない。

 

『陛下は最近のフェニックス領を見ましたか?

以前は涙の生産で得た収入を交際費やら何やら

に使ってましたが、今は領内の整備。特に

インフラ整備に当ててます』

 

ほう。大口顧客であるゲームの運営に

対してフェニックスの涙の販売数を減らし、

「自ら収入源を減らした」と陰口を叩かれて

いた彼らがそんなことを。

 

『その結果、税収と言う確固たる収入源

を得て、フェニックス領は更なる発展を

しようとしています』

 

「フェニックスの涙に頼らん領地運営か」

 

コレはオセのところに差し出した娘の

入れ知恵か?それとも何かを学んだか?

 

『陛下はオセ領を見たことがありますか?』

 

そう言われて、俺は一度もオセの所領を

自らの目で見たことが無いことに気づいた。

 

部下から「辺境とは思えないほど発展している」

だの「統治が行き届いている」だのと言う報告を

受けているだけだ。

 

だが、先日の演説の際に会場となった場に

居たオセ領の兵を見れば、その軍事力と

ソレを支える所領の豊かさはわかる。

 

だが、それだけでは無いのだろう。

 

ディオドラは興奮した様子を隠すことなく

オセ領について語る。

 

『アレこそ専制政治の極みなのでしょう。

既得権益を求めた商人や業者は追放や殺害。

全て自らの家臣団で管理・運営しています。

なにせ我らは人間とは違い、寿命が長い。

その為専制政治の最大の問題点と言える

後継者争いが発生せず、国力の全てを発展に

注ぐことができます。

さらに彼らには民が賢くなっても統制出来る

だけの能力があるのです。

アレを見てしまえば、私もドーピングをして

中途半端な力を誇示するより、政治を学んで

領内を栄えさせたいと思いますよ』

 

それが貴族と言うモノでしょう?

 

そう告げるディオドラにかける言葉がない。

 

俺たちは彼らを若手だなんだと言って、

正しく評価が出来ていなかった。

 

この目はまさしく節穴だ。

 

『ソレに旧魔王派には展望がありません。

力こそ正義と言っても、アザゼルに勝てない

程度の力しかないのです。

もっと言えば、彼らは政治の意味も必要性も

正しく理解していない。故に私のような

悪魔は居心地が悪いでしょうね』

 

つまり旧魔王派に味方する理由がないと言うことか。

 

目先の力ではなく、このように先を見据えた

考えを持つ貴族が一体どれだけ居ることか。

 

ソレが自分の親族であることが誇らしく思える。

 

我ながら現金なものだ。

 

「お前の考えは理解した。納得もな。

・・・外交官としての情報収集見事である」

 

ディオドラの選択は何一つ間違っていない。

更に功績を挙げたのも事実。

 

今まで無難だの俺と比べて才能が無い

だのと言われてきたディオドラだ。

コイツにはコイツなりの葛藤も有っただろう。

 

だがディオドラはソレを乗り越えたのだ。

ならば俺は魔王として評価しようじゃないか!

 

『はっ!ありがとうございます!』

 

告げ口だ卑怯だなどと見下すような感情が

一切無い、純粋な評価。

 

アジュカと比較されることなく得られた、

正当なプラスの評価。更にソレを下した

のは他ならぬアジュカ・ベルゼブブ!

 

これこそがディオドラ・アスタロトが望んだモノ。

 

彼の渇望はココに満たされる。故に

旧魔王派に靡くことはない。

 

「貴公には今後も連中の味方として情報を

収集してもらう。出来るな?」

 

出来るか?とは聞かない。何故なら

アジュカはディオドラを認めたから。

 

『無論です!』

 

そしてディオドラも出来ないとは言わない。

 

自らを認めた漢の前で無様は晒せないし、

何より彼が掲げた夢である外交官の任務

とは国家公認の情報収集員と言う意味も

有るのだから。

 

疎遠であったアジュカと、ディオドラ。

二人の間に確かな信頼が生まれたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では最初の命令だ。コレを旧魔王派を滅ぼす一手としよう」

 

『なんなりと!』

 

本来ならファルビウム辺りと考えるべき

ことだろうが、どちらにせよコレは必要

なことだからな。

 

そう自分に言い聞かせ、アジュカは彼に

非情の命令を下す。

 

「・・・英雄を挑発しろ。周囲にわかるようにな」

 

関わりたくないと言った彼に対してこの命令。

ココに居るのはまさしく悪魔の王!

 

『・・・かしこまりました』

 

さっきまでのテンションは何処へやら。

 

通信機の向こうには、今までの感動も

何もかも吹っ飛ばした無表情が有った。

 

不満も有る、不安も有る、だが必要な事だと

言うことも理解している。ソレ故の無表情だ。

 

若手悪魔のせめてもの抵抗と言っても良い。

 

若者の無表情を見て正直スマンと思いつつ

命令を撤回する気もないアジュカは、この

従兄弟に何か補填しようと心に決めたのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「あぁアーシアさん!やっと会えた!」

 

「だ、誰だ!アーシアに何の用だ!」

 

「え、ま、まさか貴方は?!」

 

 

 

 

 

 




胃痛魔王と聖女スキーとの血縁関係が良く
わからないので従兄弟設定にしました。

情報が有れば後から修正することに
なるが、私は一向に構わんッ!(情報求ム)

聖女スキーはなぁ。向こうに付く理由は
いくらでも有るんだよなぁ。
まぁ基本的には自業自得ですが。

ソレを認識出来てたらこうなったってお話。

理由があって殺すオセ君より、気紛れで動くオーフィスの方がバックにするには怖いよね?

オリ設定でオリ展開と言ってるから
ダイジョーブ!ダイジョーブ!



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78話

ディオドラ頑張るの巻

またまた原作主人公に愛の手が?!

オリ設定!
オリ展開!

しばらく投稿は一話だ!

嫌いな人は読み飛ばし!




ーーディオドラ視点ーー

 

はぁ・・・辛い。

 

何というか、今まで数万円かけて回して

きたスロット台を移動したら、次の奴が

千円で大当たりを引いて連チャンしてる

のを見てるくらい辛い。

 

そして「その台は俺が暖めた台だからよこせ!」

ってイチャモン付けに行くって・・・

 

どんな精神の持ち主だよ。

どう考えても異常者じゃないか。

 

悪魔だって無理なモノは無理なんだぞ。

 

まぁコレも僕の実績に対して正当な評価を

与えないアホな上層部や、ソレを見返す

為に旧魔王派の連中の口車に乗った僕の

自業自得なんだろうけどさ。

 

オーフィスの蛇があろうと勝てないもの

は勝てないし、王の駒なんてある以上、

ゲームに期待するのも間違ってるんだって

ことすら知らなかったんだ。

 

そもそも誰かからもらった力で勝ってどうする?

 

負けたって良いぢゃない。別に世界最強を

目指しているわけでも無いんだし。

 

そう僕はあの時、小龍姫様とティアマットと

クロウ・クルワッハがウチに来て説得(物理)

をしてきた時にわかったんだ。

 

僕が生きるために必要なのは個の力より政治だと。

 

アジュカ様の親族だから粛清されなかったと

言うだけで、一歩間違えてたら普通に殺されてた。

 

いや、バアル大王家のアレを知った後だと、

絶対に『普通』には殺してもらえないと理解してる。

 

だからこそさっさと降伏して、政治家として

生きようと思ったのに、その最初の仕事が

英雄との折衝(挑発)って。

 

せめて自称魔王の連中との折衝にして欲しかった。

 

・・・まぁコイツらと確執が有れば有るほど

旧魔王派が僕を疑う可能性は減るし、連中の

情報を抜いて策を逆手に取るって言うなら

ソレも間違いではないんだろうけどさぁ。

 

ついでに僕の忠誠も確かめられるし?

一石二鳥どころじゃない効果もあると

思うよ?だけどなぁ・・・

 

なんで一度は諦めた聖女を再度欲しなきゃダメなんだよ。

 

もしも「ハイ」って言われたらどーすんの?

 

やっぱりお断り!なんてできないよなぁ。

 

 

はぁ・・・辛い。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

 

サイラオーグさんの実家で、部長のお母さん

の実家であるバアル大王家は滅ぼされた。

 

部長のお父さんの嘆願は、そもそも

オセってヤツと断交してるから不可能で、

サーゼクス様も仲裁に動こうとしたけど

その前に全部終わってしまったんだ。

 

最終的に、バアル家で生き残ったのは

サイラオーグさんとベルゼブブ様に

戦争の仲裁を申し出ていた弟さん。

あとは部長のお母さんだけって話だ。

 

あぁ、サイラオーグさんのお母さんは

シトリー家の病院に入院しているから特に

問題はないらしいけどよ。

 

だけどその他のバアル領に住んでた人たちは全員が殺されたらしい。

 

兵士も、普通のヒトも、大人も子供も。男性も女性も。分け隔てなく全員が、一人残らず。

 

やりすぎだ!って言ってオセを止めようと

したヒトや、援軍に行ったヒト達も、纏めて

テロリストとして殺された。

 

そしてソレだけのことをしたにも関わらず

オセは罪に問われることはないらしい。

 

いや、普通に考えて有り得ないだろ?!

 

だけど、そもそもテロリストに資金やら

情報を渡していたって言う罪が有るから、

やりすぎかもしれないけど決して悪い

ことでは無いって判断されたらしい。

 

そんなこともあって部長のお母さんは暫く

凹んでたし、グレモリー家の皆さんも

「次はグレモリーかも?!」って思って

戦々恐々としてたんだとか。

 

俺たちは悪いことなんかしてねぇから

大丈夫でしょ?って言ったんだけどさ。

 

そもそも俺たちは前にテロリストを

逃がしてるんだよな。

 

そしてバアル家と血縁関係に有って、オセ家と断交している。

 

ココまで条件が揃ったら、次に狙われるのは

自分たちだって考えるのも無理は無いって

グレイフィアさんが教えてくれたんだ。

 

今のグレモリー家は相当ヤバイ状況らしく、

部長のご両親はいざとなったらミリキャスに

グレモリーの名を捨てさせることも考えてる

そうだ。

 

因みに部長は逃げることは許されず、どんな

状況になってもグレモリーの家を継ぐことが

決定している。

 

そもそも今のグレモリーの状況を作ったのは

部長だからだ。

 

ゲームの前にもチラっと言われたけど、

その後で眷属の皆にグレモリー家の状況を

説明したらしい。

 

俺は寝てたんで最後になったけど・・・

 

 

 

1・管理者としての未熟。

 

なんでも部長が地上に留学に出た後、心配に

なったご両親が部長の前に駒王町を管理して

いたオセにフォローを依頼していたらしい。

 

その際の部長の仕事があまりにも未熟で

周囲に迷惑をかけていたらしいんだ。

 

そんなことなら最初から実家のフォローを

きちんと受けろ!ソレが嫌ならグレモリー家

でもっと経験を積んでからにしろ!って

言われてたらしい。

 

・・・実際俺が殺されたのも、管理地で

堕天使を取り締まることが出来てなかった

部長と会長のせいって言われたらなぁ。

 

 

 

2・管理者としての管理責任を放棄した合宿。

 

 

コレは鳥野郎との試合前のことだな。10日

でプロに勝てるわけ無いだろ。馬鹿か?って

言うのが周りの評価らしい。

 

それに家の当主の命令に逆らうっていう事

自体が有り得ないんだとか。

 

反論しようとするも、今まで散々貴族として

その権力や財力を使ってきておきながら、

ワガママを言うなってことらしい。

 

ただ、グレイフィアさんとサーゼクスさん

も家の命令に逆らって結婚したので強くは

言えなかったとか。

 

どうしても嫌だったら家を出ろって話

だったらしいな。

 

家は出ない。家のお金や権力は使う。だけど

家の当主の言うことは聞きません。

 

ここまで来ると頭は大丈夫か?って疑われるレベルの話なんだとさ。

 

そしてコレのせいで、フォローすべき相手が

職務放棄したってことになり、オセ家が

グレモリー家の契約違反として断交を宣言。

 

そして俺が山を破壊したことで他の勢力にも

かなり迷惑をかけたらしい。

 

今じゃあの周辺はオセ家に譲渡されたんだとか。

 

 

 

3・ライザーとのゲーム内容と契約違反。

 

 

一言で言えば馬鹿かって話だ。

 

初陣の素人が勝手に短期決戦は無いと決めつけ、

未熟な眷属に迂闊な単独行動をさせたり、

かと思えば王は本陣で兵士に膝枕したり

紅茶を飲んだりと・・・映像が残ってるんだぞ?

何してるんだ?

向こうにシツレイだと思わないのか?って

感じで散々に叱られた。

 

でもって、そこまで馬鹿やって負けたくせに

レーティングゲームで負けておきながらの

不平不満、更に俺による結婚式の妨害だ。

 

ドライグにも言われてたことだけど、コレの

せいでご両親は貴族社会で信用を失い、相当

肩身が狭い思いをしてるんだとか。

 

一言で言えば有り得ないってさ。

 

さっきの合宿の件も含めて考えればグレモリーは

「娘をまともに育てることが出来ない家」って

評価されて、我儘を言った部長や実行犯の俺だけ

じゃなく、ソレを許しているご両親の頭の中まで

疑われることになったらしい。

 

 

 

特に参列者は傘下の貴族以外の全部が付き合いを

改めると宣言してきて、結婚式を潰されて完全に

面目を無くしたフェニックス家や、彼らに近しい

家からも断交されてしまったんだ。

 

コレはサーゼクス様やグレイフィアさんも同罪。

 

アレ以来貴族の中では魔王様方を結婚式に呼ぶ

ことは控えるようになったんだとか。

 

コレは面倒が少なくなって良いと言うわけにもいかない。

 

何たって魔王様が信用できないってことだからな。

 

かと言って結婚式に呼べ!と強制することは出来ないし。

 

アレは部長の望みを叶えるためだったとは言え、

今後数百年グレモリーは貴族として信用され

ないし、サーゼクス様の子であるミリキャスの

結婚相手も中々見つからないだろうって話だった。

 

信用を無くすって言うのはかなりヤバイ事

だったんだって俺にもようやくわかった。

 

それと、下手にグレモリー家と関わりを

持てばオセに殺される可能性もあるって

言って怯えてるらしい。

 

またオセかよ!どんだけ怖いんだ?!

 

 

4・眷属(木場)による情報の独占と、コカビエルに対する対処の杜撰さ。

 

 

コレはあれだ。聖剣についてだな。

 

木場が情報を持ったまま勝手に消えて勝手に

殺されたせいで、俺たちは何も知らないまま

情報を隠匿したって言われて叱られたんだ。

 

コカビエルは本来なら俺たちがどうにか

出来るような相手じゃない。

 

盗まれた聖剣が駒王町に有って、ソレを

壊すために教会の戦士が来てるって

知ってたらもっとちゃんとした備えが出来た。

 

さらに奴が居ることを知りながら、

俺たちは普通に寝てたからな。

 

・・・ありえないって叱られた。

 

 

 

5・コカビエルとの戦闘の後の独断での現場修復。

 

 

どこの世界でも事故や事件の現場は

残すって言うのは常識らしい。

現場を勝手に弄った事で証拠隠滅を図った

って言われたし、会談の場でミカエル様に

まで怒りの目を向けられたんだよな。

 

 

6・会談でのギャスパーの放置と戦闘妨害。

 

 

コレもあの場で言われたことだ。

 

ルー・ガルーさんが言ったように、会談を

狙われる可能性を考慮すればギャスパーを

一人で放置することなんか有り得ない。

 

勝手な判断をせずに、参加者の方々、特に

サーゼクス様に確認を取るのが普通だと。

 

そして校庭に出たこと。あの時校庭の魔法使い

に対してグレイフィアさんが攻撃をしていた。

 

そんなところに俺たちが出て行ったモノ

だから、攻撃が出来なくなったらしい。

 

さらに上ではアザゼル・・先生とテロリスト

が戦闘をしていたんだ。

その余波から俺たちを守るための結界を

張る必要も出てしまった。

 

つまり邪魔。

 

良かれと思って動いたのが、完全に皆さんの

邪魔になってたんだ。

 

 

 

7・上位者に対する無礼。

 

 

 

・・・コレは主に俺。結婚式の時もそうだけど、

鳥野郎や参列者、ベルゼブブ様や他の上役の方々。

 

アザゼル・・先生についてもだな。

 

偉いのは部長のお父さんやお兄さんの

サーゼクス様であって、部長やその眷属

である俺じゃない。

 

俺はドライグを宿してるから特別扱いされて

いるけど、本来はただの下僕悪魔だ。

 

勘違いするなってことだな。

 

・・・俺のせいで部長は眷属の躾ができてないって評価をされているらしい。

 

 

 

8・会長とのゲーム内での無様な言動。

 

 

ゲームに負けることは別に良いんだとさ。

 

作戦を見破られて逆に反撃を受けるのも

よくある話だし、相手だって色々考えてる

んだからソレは問題ない。

 

だけど作戦時間中に俺がエロ本を読んだり、

朱乃さんと仲良く話をしていたりと言うのは

絶対に有り得ない。

本気で主君を勝たせる気があるのか!って

かなり叱られた。

 

・・・ハイ。その通りです。

 

あの映像はしっかり流れていて、部長は眷属を

まともに統率出来ないってことを来賓の方々や

悪魔の上役のヒト達にも見せつけてしまったんだ。

 

そりゃ評価も落ちる。

 

その他に俺たちの策を破ったり、対処して

きた匙たちに対する卑怯だの反則だのと

見苦しい言動を重ねたことも、俺たちの

評価を落とした原因だ。

 

鳥野郎も言ってたけど、神滅具や沢山の

神器を持つ俺たちに対抗するために準備

するのは当然のことなんだ。

 

ソレをされたから卑怯なんて言うのはただの

言いわけだし、2対1だって卑怯でも何でもない。

 

油断した俺たちが悪い。ソレだけの話。

 

他にも色々あるんだけど、あまりにもツッコミ

所が多すぎてグレイフィアさんも纏めきれて

ないらしい。

 

とりあえず、これからはそう言う今までの行い

の中で駄目だったことをきちんと自覚した上で

修行と勉強をしなきゃダメだって言われてるんだ。

 

 

・・・・・・

 

 

アレから時間が経った事で部長も少しは

落ち着いたみたいで(それ以前に戦争が

有ったから無理やり立ち直ったとも言うけど)

今では、ご飯の時や修行の合間とかには会える

ようになっている。

 

必要以上に甘えないようする為にって理由で

使用人の方々も見てるから一緒に寝たりは

して無いけど、前みたいに頭を撫でて貰ったりしてるんだ!

 

そんなこんなで地上に帰らず、グレモリー領

で勉強や修行をしている時、ソイツは現れた。

 

「あぁアーシアさん!やっと会えた!」

 

そう言いながらアーシアに近づくイケメン。

 

使用人のヒトから部長にお客さんが来たって

言われて、アーシアを連れてくるように

言われたから一緒に来たんだけどよぉ。

 

俺とアーシアが部屋に入ると同時に、ソファーに

座ってた男が立ち上がり、向かいに座ってた

部長や、アーシアの隣に立つ俺をそっちのけで

アーシアの手を取って跪き、その手の甲にキスを・・・って

 

「待てぇぇい!」

 

危ねぇ!コイツ俺のアーシアに何する気だ?!

 

「だ、誰だ!アーシアに何の用だ?!」

 

流れるような動きでアーシアに変なことを

しようとしたイケメンから、アーシアを守る

ように間に入ると、ソコでそいつはようやく

俺の事が目に入ったようで

 

「あぁ、赤龍帝くんか。こんにちわ」

 

そうアイサツしてきた。

 

「あ、ど、どうも。コンニチワ」

 

アーシアと比べて軽いな!と思いながらも

部長のお客さんなので、アイサツを無視する

わけにも行かないと思った俺は、ちゃんと

アイサツをしたつもりだったんだが・・・

 

部長は頭を押さえてるし、使用人の人たちの

目がギラリと光ったのが見えた。

 

どうやらダメだったらしい。

コレは後から追加の授業だな・・・と思ってると

 

「いやいや、赤龍帝君。一応僕はこれでも

上級悪魔で、君の主の英雄殿の同期だ。

ソレを相手にそのアイサツは無いよ」

 

俺の前に立つイケメンは溜息を吐きながら

ヤレヤレと言わんばかりに首を振っている。

 

くっ!イラつくが貴族としては温厚な

言い方なのだろう。

部長も怒ったりせずに、苦笑いだ。

 

「ごめんなさいディオドラ。正直まだ

礼儀に関しては教えられてないの。

やっぱり龍を宿した事で他人に謙ると

言うことが難しくなったみたいね」

 

そう言いながらこっちへ来いと手招きする部長。

 

ドライグは関係ないと思うけど・・・

そう思うけど、コレは部長のフォロー

なんだろう。一応謝罪もしてるから

シツレイでは無いってことか?

 

また部長に謝罪をさせてしまったって

思ったけど、今回の相手は部長の同期

らしいし、ソレほど厳しく言うような

状況じゃないってことかな?

 

「ふぅん。神器を宿す下僕って言うのも

考えものだね。

まぁいいや()今回僕がココに来たのは

赤龍帝君の礼儀作法を確かめることじゃ

ないからね」

 

そう言いながら俺たちと一緒に部長が待つ

部屋の中央部に戻り、部長の向かいに座る

イケメン。

 

たしかディオドラって言ったか?

 

貴族にしては俺を見下す感じはあんまりしなかったけど・・・

 

まぁさっきの様子から、こいつの狙いはわかってたけどな!

 

今もじっとアーシアを見てるし!

 

「前回の会合の際に、リアス殿の眷属の中に

知り合いに良く似たヒトが居たんでね。

ソーナ殿とのゲームの中でその名を呼ばれて

いたことで確信したんだ。そしてソレを確信

したからこそ、こうして会いに来ることを

我慢出来なかった!本当にお久しぶりです。

アーシアさん!」

 

そう言いながら、まるで舞台俳優のように

大げさな動作で腕を広げるイケメン。

 

久しぶり?この様子だと嘘ってわけでもないし

行き過ぎたファンとかってわけでもないよな?

 

え?悪魔とアーシアが知り合い?ナンデ?

 

混乱する俺の横ではアーシアが何かを

思い出したかのような顔をして・・・

 

「え、ま、まさか貴方は?!」

 

やっぱり知り合いか。しかしいつの間に

こんなイケメンと・・・

 

性格は貴族って感じかも知れないけど、

鳥野郎よりはシツレイってわけでもないし、

ベルゼブブ様みたいに話す価値もないって

感じのヒトでもないよな。

 

だけど、そんな印象はこのイケメンから

語られた自己紹介が全部ぶっ飛ばすこと

になった!

 

「あの時は貴女に迷惑がかかると思い、

名を明かすことは出来ませんでした。

ですが今なら問題ありません。

僕の名はディオドラ・アスタロト。

アーシア・アルジェントさんが教会から

追放されることになった原因となった悪魔です」

 

は?え?

 

「なんですって?!」

 

部長が驚くが無理はない。俺だって驚きだ!

だけどアーシアは驚くことなく、イケメンに

対して頭を下げて言った。

 

「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

 

まるで看護婦さんが入院患者に告げるような、

そんな優しい声だった。

 

ソレを聞いて俺たちは、コイツが嘘を言って

居ないと言うことを確信したんだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「アジュカ~?君は鬼なのかなぁ~?」

 

「アジュカちゃん。家族、いや親族かな。

とりあえずもうちょっと優しくしてあげたら?」

 

ディオドラの想いを伝え、俺が与えた任務を教えたら責められた。

 

解せ・・・無くはないが、俺はもう胃が破れる音を聞くのは嫌なんだよッ!




感想で話を話を膨らませる卑怯者?
褒め言葉ですな!(確信)

という訳でディオドラ=サン。
原作1巻部分では禍の団所属ですが、
「なまはげ」の襲撃により心が折れました。

さらに何やら電波を受信したもよう。
ディオドラ、貴方疲れてるのよ・・・

魔王の実家に醜聞持ち込まれて政治的に
混乱するのはゴメンだし、そもそも
魔王はオセ君の敵ではないので弱点は
しっかり潰します。

もしも「なまはげ」に逆らってたら?
逆らう気がなくなるまで奇跡の部屋で
説教(物理)でしたね。

ハイ・ワカリマシタとしか言えない立派なディオドラ=サンが出来上がることでしょう。

愛の手(説教)による教育を受ける原作主人公!そもそもその為に冥界に残ってますからね。


女王?(ΦωΦ)?ってお話





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79話

ディオドラ君は仕事中

オリ設定!
オリ展開!

今日も一話っ!

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

アーシアが「お久しぶりです」と挨拶した

ことで、コイツが知り合いなのは確実だ。

 

そして、目の前に居るコイツが言った言葉を

信じるなら、アーシアはコイツを癒したから

教会から追放させられたってことだよな?

 

しかしこの場合俺は怒れば良いのか?それとも

アーシアと会うきっかけを貰ったと思って感謝

するべきなのか?

 

そもそもアーシアはナニかを求めてコイツを

治療したわけじゃない。

コイツが傷付いていたから癒しただけだ。

 

そうなると・・・流石に傷付いたことを責める

ってのは筋違いだよな?

 

部長もどんなリアクションを取れば良いのか

わかってないみたいで、二人の会話を見守る

ことにしたらしい。

 

俺は・・・もしコイツがアーシアに変な事をしようとしたら止めるけど、問題はどうやって止めるかだ。

 

礼儀とか作法の件で散々叱られたから、流石に

すぐに殴ったりはしないけど、それでも

無理やりナニかをするようなら、殴ってでも

止めるって覚悟は有る。

 

鳥野郎の時は決闘までしたんだ。今さらコイツを

殴ることに躊躇はしない!

 

それに、アレはゲームに負けた俺達が我儘を

言ったのが悪いって話だったけど、今回は違う。

 

仲間を、アーシアを守るためだ。

確実に止めて見せるぜ!

 

いやまぁ、あくまで変な事をしたときだ。

その場合は部長もフォローしてくれるだろうし!

 

て言うか、コイツって何しに来たんだ?いや、

アーシアに会いに来たんだろうけど、その後だ。

 

普通なら挨拶して、お土産か何か渡して、軽く

世間話とかして帰るんだろうけど・・・貴族で

部長の同期ってことは、ゲームの準備とか色々

有るはずだよな?

 

いずれは俺達とレーティングゲームで対戦する

ことが決まってる以上、選手同士の下手な接触は

出来ないはず。

 

なのにこうして来たのは、ソレだけアーシアに

会いたかったからか?

 

さっきみたいに、手の甲にキスとかしようと

したら直ぐに止めるつもりでディオドラと言う

悪魔を観察してるんだけど、普通にソファーに

座って話をしてるだけなんだよなぁ。

 

さっきのは余りにも感極まったってヤツだったのか?

 

正直コイツが何を考えてるのかわからない。

少なくとも貴族にしてはマトモって言うか、

無駄に偉ぶった感じはしない。

 

前のゲームで退場したアーシアの事も気遣って

るみたいだし、まぁ悪いヤツじゃないのかも。

 

「アーシアさんが教会から放逐させられること

になったのは僕のせいだ。

だからこそ僕はアーシアさんを護りたいと思う」

 

責任を取るってことか?その言葉を聞いて、

そんな風に思ってた俺が馬鹿だった。

 

コイツが言った言葉はそんなに軽いものじゃ

なかったんだ・・・。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

話せば話すほど、未だに現実を理解して無いんじゃないか?と疑わしくなるくらい楽天的なお嬢さんだ。

 

まぁ教会の管理してる聖女なんて、基本的には箱入りで世間知らず。

 

管理する連中が馬鹿だから、どうしても頭が悪く

なるし自分で考えるって事をしなくなるんだよね。

 

あえてそう言う教育をしているってのもあるけど。

 

もし自分で物事を考えるようになったら、教会の在り方に疑問を覚えるのが普通だからね。

 

ソレ故に、連中は信仰と言う名を使った洗脳教育により、個人の考える力を育成させないようにするのが普通だ。

 

そしてコイツはその中でも一際駄目な部類の女。

 

自分の行為が善意から来るものであり、自分は間違ったことをしていないから後悔はしないだと?

 

その結果がどのようになろうと受け入れる?

 

駄目だ。少し前まではこう言った世間知らずを

堕とすことに生き甲斐を感じてたけど、どうやら

僕は自分を理解していなかったらしい。

 

僕が汚して喜んで居たのは教会のお人形じゃない。

 

ソレを管理していた教会の連中の顔に泥を塗るのが好きだったんだ。

 

中途半端な力をもつ上級悪魔を殺し、少なくない

被害を出してきた連中が掲げる大切なモノを踏み

にじることが好きだ。

 

馬鹿な教会を手玉に取った結果、いきなり教会

に捨てられた聖女を保護し、真実を教えて絶望

させることが好きなんじゃない。

 

結果的にはソレが一番効率が良いからそうして

ただけで、結局は洗脳教育により盲信や狂信

の域に達した馬鹿な連中を見るのが嫌いだから

真実を教えてただけだ。

 

絶望するってことは現実を理解したってことだろう?

 

神の死を知り、絶望した彼女らが教会に恨み持つようにするのが好きなんだ。

 

聖女を切り捨てた馬鹿どもが、聖女に復讐される

のを見るのが好きだ。

 

神が居ないことを知りながら、聖女として己を

持ち上げ、散々良いように利用してきたのに、

いきなり手のひらを返して追放したり、殺そうと

する教会の連中の変節に対して、怒りを覚える

様子を見るのが好きだ。

 

いつまで経っても僕に騙されたと言う現実を

理解出来ず、教会や天界にとって間違いなく

貴重な人材である彼女たちを訳のわからない

理屈で魔女扱いし、自ら投げ捨てて己の仇敵に

する連中を馬鹿にするのが好きだったんだ。

 

我が事ながら倒錯しているとは思う。

だが、ソレが正しい悪魔と言うものだろう?

 

目の前に居る中途半端に人間の価値観を持った

英雄殿や、中途半端な貴族としての誇りを持つ

無能殿のように意味がわからないナマモノより

よっぽどマシだろう。

 

大体、なんでこの場に赤龍帝が居るんだよ。

グレモリーではアーシアと英雄殿に用が有ると

伝えたらコイツもセットでついてくるのか?

 

普通は当人だけで話すもんだろ?

 

アポも取らずにいきなり転移陣で押し掛けた

とかならまだしも、しっかり先触れも出した

上での正式な客だぞ?

 

当たり前のように対等な目線だし、言葉遣いも

なってない。

 

さらに、さっきからジロジロと観察してくる

視線がうざすぎる。

 

挑発に来たつもりが挑発されてるんだけど。

 

英雄殿はコイツに執着してるらしいし、変に

聖女を絡めなくても「無礼だ」って言って

いきなりコイツをぶん殴ったらソレだけで

十分な気がしてきたんだけど。

 

いや、僕の実績と絡めた方が作戦の成功率が

上がるのは確かなんだけどさ。

 

事前調査の結果、現在の英雄殿やその眷属どもは

赤龍帝の価値観に追従するようなんだよな。

 

元々ソーナ殿や無能殿は我々とは価値観が違うと

言われてたが、無能殿のソレは最近かなり顕著に

なってきたらしい。

 

ライザー殿とのレーティングゲームや、ソレ

からの婚約破棄はもはや伝説だからな。

 

さらにアーシア・アルジェントの在り方を矯正

しないと言うのもわからない。

僕たちは人間じゃない。悪魔だぞ?

こんな連中だから貴族に愛想をつかされるんだ。

 

最終的にコイツらを理解することを諦めて、僕は僕の価値観で動くべきだろうって判断した。

 

ソレが一番自然で、かつ成功率が高いから。

 

それに、少なくともコイツらと違って、僕のソレに恥ずべきモノはない。

 

小龍姫様やゼファードルもその実績を確かに

評価してくれてるし、その上に立つオセ様も

僕に多少なりとも価値が有ると判断したんだ。

 

今時珍しい悪魔らしい悪魔だって言ってくれてたらしい。

 

・・・正直嬉しかったよ。

 

この気持ちが有るからこそ、旧魔王派による

オーフィスの蛇を使った誘惑にも勝てたし、

今もこうして落ち着いて周りを見ることが

出来るようになった。

 

その結果、慢性的な頭痛と胃痛が出てくることに

なったけどな!

 

現実を見ずに夢の中で暮らしてたら、こんな

ストレスに悩まされることは無かっただろうな。

 

・・・夢を見たまま死ぬと言うのも有る意味

幸せかも知れないけどね。

 

まぁいいや()

 

さっさと挑発を終わらせて帰ろう。

 

「アーシアさんが教会から放逐されることに

なったのは僕のせいだ。

だからこそ僕はアーシアさんを護りたいと思う」

 

きっかけは僕だけど、僕が何もしなくても

コイツは自分の意思で悪魔や堕天使を癒して

放逐されていたと思うけどね。

 

教会や天界も勝手に自滅する馬鹿しか居ない。

 

こんなのと長年戦ってたって・・・老害どもは

一体ナニをしてたんだろう?

 

はぁ。溜め息を我慢するのが辛い。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

ディオドラの話を聞きフリーズしてた俺の思考は、部長の声を聞いて再起動した。

 

「アーシアを護りたい?ソレはどう言う意味かしら?」

 

部長がやや不満げにディオドラに対して問いかける。

 

そりゃそうだよ。アーシアは部長の眷属だ。

態々ディオドラに護って貰う必要なんか無い。

 

そう言う意味を込めた問いかけに対して、

ディオドラは部長の不満なんか関係ないと

言わんばかりに話し出した。

 

「そのままの意味ですよ英雄殿。そうですね、

一番良いのはトレードで私の眷属になって貰う

ことですが、希少な神器を持つアーシアさんを

放出することは無いでしょう?

ですので、ウチに出向して頂くと言うのが

一番現実的かと思いますが如何でしょう?」

 

聞かれた質問には答えてるけど、ある意味では

完全に無視した言いようだ。

 

ディオドラの言葉を聞いた部長は更に不満を募らせる。

 

「なるほど、私の質問の仕方が悪かったようね。

ならば言い換えましょう」

 

口元をヒクつかせながらもこうして会話を

してるのは、向こうが失礼な事をしている

わけでは無いからだ。

 

「トレードしてくれ!」とか言って来たなら

アーシアを大事にしている部長はアッサリと

断るだろうけど、出向?って形にするなら

有り得ないことでは無いんだろう。

 

実際アーシアの神器は治療に使えばこれ以上

無いくらい優秀な神器だからな。

 

手を貸してほしいって気になるのはわかるぜ。

 

だけど、ソレだと護るって言うのとは違うだろ?

部長はソコを聞きたいんだろうな。

 

「さっきの話を聞く限りだと、貴方のところに

行くことがアーシアを護ることになると確信

してるみたいね?ソレはどういう意味かしら?」

 

そうだよ。まるで俺達じゃアーシアを護れない、

いやソレ以前に、アーシアにナニか危険が訪れ

ようとしてるみたいじゃないか?

 

どーゆーことなんだ?

 

「聞くまでも無いでしょう?アーシアさんは

戦場に立つ方ではない。戦場の後方で負傷兵を

癒す方だ。対して英雄とは戦場に立つ者。

貴女が戦地でアーシアさんを護れないのは

先のレーティングゲームで実証されたでは

ありませんか。

僕はね?アーシアさんを保護する義務があると

思っています。貴女がアーシアさんを護れる

ならソレでも良かった。しかし貴女にはその

の力が無い。故に私が護りたいのですよ」

 

「・・・っ!」

 

俺達じゃ力不足だから任せておけない。そうディオドラに言われて部長は悔しそうに唇を噛む。

 

た、確かに俺たちはゲームに負けたし、アーシア

も攻撃を受けてリタイアした。

 

アーシアは俺が守る!とか言いながら、俺は

真っ先にリタイアちまったし、グレイフィア

さんやアザゼル・・先生もアーシアを守る

ための眷属や使い魔が必要だって話はしていた。

 

それに部長には『英雄』としてテロリストたちを

引き寄せる『餌』としての役割がある。

 

ソイツらを撃退することで実績を積めることに

なるけど、そこは確かに戦場だ。

 

しかも最大の支援者だったバアル大王家と、その

一味が滅ぼされたことで、テロリストたちは相当

焦ってるようで、近いウチに必ず何かしらの

行動を取ると予想されてるらしいんだよな。

 

その危険からアーシアを遠ざけるって言うのが

ディオドラの言い分か。

 

心優しいアーシアが立つべき場所じゃないって言われたらその通りなんだろう。

 

一瞬だけど、アーシアは向こうに行った方が安全

なんじゃないかって思っちまった。

 

だけど、そんな感情は次のディオドラの言葉で

完全に吹っ飛ぶことになる!

 

「更に言えば、知っての通り僕の眷属は皆

元は教会で聖女と呼ばれていたヒトたちです。

きっとアーシアさんとも話が合うでしょう」

 

は?

 

にこやかに告げる口調に嘘は無いんだろうけど、

コイツの眷属全員が元は聖女って呼ばれてた?

 

そんなこと有り得るのか?

 

それに知っての通りって、ソレって悪魔の中じゃ有名な話なのか?

 

「・・・ソレは初耳ね。ディオドラ、貴方の眷属

が元聖女なのにはナニか理由があるのかしら?」

 

どうやら部長も知らなかったらしい。

ナニか裏が有ると考えたようで、その裏を

探ろうとしてるみたいだ。

 

ディオドラの方は、当たり前に部長が知ってる

と思ってた事を知らないと言われたことで、

ちょっと気を悪くしたようだ。

 

それでも自分がアーシアを保護しに来た。つまり

自分が頼む側だと言う事を思い出したのか、溜息

を吐きつつも解説をしようと口を開く。

 

「・・・今さら英雄殿に説明する必要があるとは

思えませんが、まぁ良いでしょう。戦とは

目の前の敵を葬るだけが戦ではありません。

そもそも我々の敵は目の前に居る天使や堕天使、

また教会のエクソシストと言った戦闘要員だけで

はなく、後方支援を行う者たちも含めた『勢力』

が敵として存在していました」

 

き、急に小難しい話をしてきたけど、部長は

しっかりと意味を理解しているようで眉間に

皺を寄せながら頷いている。

 

「そんな中で僕が悪魔勢力の一員として選んだ

選択は『教会における後方支援の撹乱』、つまり

教会の掲げる信仰の象徴である『聖女』を離反

させることです」

 

ん、ど、どう言うことだ?

 

アーシアは目を見開き、信じられない者を

見るかのようにディオドラを凝視し、部長も

また嫌なモノを見たと言わんばかりに顔を

しかめさせる。

 

「つまりディオドラ、貴方のせいでアーシアが

教会を追放されたと言うのは、当時アーシアの

目の前に「偶然現れた傷だらけの悪魔」を治療

したからではなく、アーシアを教会から追放

させる為に貴方が仕組んだ罠に嵌まったから。

と、言うことかしら?」

 

な、何だって?!

 

難しいことは良くわからないけど、コイツが

アーシアを罠に嵌めたって言うのか?!

 

「その通りです。我々にとってアーシアさんは

瀕死の傷を与えたエクソシストを即座に治療し、

リハビリも何も無しにノータイムで現場に復帰

させることが出来る、ある種の戦略兵器でした」

 

部長の咎めるような口調や目線を無視して

高らかに語る様子には、アーシアに対して

悪いことをしたって言う感情が無いように

見える。

 

つーか、絶対にそんなこと考えてねぇよな?!

 

「そんな危険とも言える戦略兵器を放置するなど

あり得ません。

アーシアさんが敵に居る限り、敵は生き延びる

事を優先して動きます。

さりとて戦場において確実に止め刺すと

言うのは少なくない労力を使います。

その結果、相手を殺しきれない上に自分達が

重傷を負うと言う悪循環が生まれていました。

わかりますか?死ななければ治ると言うのは

現場の兵士、特に洗脳教育を受けた連中にして

みればこの上ない福音です。

死ぬまで戦い続けることが出来ると言うのも

有りますが、なにより神の力で治癒されて

いると言う実感まで得られるのですからね」

 

故にアーシアを狙った。そう言って口を閉じる

ディオドラになんて言えば良いのかわからない。

 

教会のヒト達は敵だから、アーシアが追放

されようがどうなろうが構わない。

優秀な回復役を手放した連中が仲間割れして

くれれば最高だって話なんだろう。

 

コイツのしたことは、悪魔としては正しいんだろうさ。アーシアが敵にいたらコッチがヤバイって言うのもわかる。

 

だけど、ショックで何も考えることが出来なく

なってるアーシアを見ると、俺は目の前で笑う

コイツを殴りたくなるッ!

 

「・・・なるほど、貴方は悪魔としては間違ってはいないわ。それどころかかなりの実績と言えるでしょう」

 

部長も、個人的な好き嫌いは兎も角として、コイツの実績は認めるようだ。

 

「そうでしょう?サイラオーグのような

勘違いをした餓鬼や、貴女のように作られた

実績の上に立つ張りぼての英雄殿と違って、

僕は自らの力で実績を挙げ、上役の方々から

確かな評価を頂いています」

 

コイツっ!サイラオーグさんは良くわからないけど、部長まで馬鹿にしやがった!

 

英雄殿とか言っておきながら内心で見下してやがった。これがコイツの本性かよっ!

 

 

「……私のことを馬鹿にするのは構わないわ。

今までの行いが行いだもの。

だけどサイラオーグまで馬鹿にされるのは

面白く無いわねっ!」

 

そう言って部長が滅びの魔力を身に纏うが、

ディオドラは特に何もせずに部長を一瞥し

 

「魔力を持たない無能が、無駄に鍛えて何が

したかったんだい?魔王になる?何のために?

むしろ政治的な見識を得るために学ぶことの

方がよほど冥界の為になるだろうさ。

そしてヤツにはその見識を魔王様に披露して、

使って貰うこともできただろう?

そうして出世したあとで、自分の後進を育てて

引き立ててやれば良いじゃないか。

それなら魔力を持たないモノでも、頑張って

勉強すれば冥界の役に立てる、出世も出来ると

言うことを証明出来たんだ。

ヤツはその道を放棄して、単純な力を選んだ。

そして力が無ければ冥界では成り上がることは

出来ないと言う、誤った常識を周囲に植え付け

ようとした。それを勘違いした馬鹿と言わず何と言うんだい?」

 

座ったまま、部長に対して警戒もせずに持論を述べる。

 

力がないなら頭で成り上がれ。ソレがコイツの

意見なんだろう。

 

普通に考えたらコイツが言ってることは

間違ってはいないかもしれない。

 

だけどコイツが頭を使った結果が、アーシアを罠に嵌めて追放させたって事を考えれば、どうしても納得なんかできねぇよ!

 

ソレにコイツはさっきから部長も馬鹿にしてやがる!

 

「サイラオーグに知能や魔力が無いように、

英雄殿も知能と常識を無くしたと言うのは

本当のようだね?客人の前でそんな魔力を

纏ってナニがしたいんだい?

脅迫ならTPOを選ぶべきだし、感情の暴発

なら未熟そのもの。格好をつけたいなら失敗

してるよ?

君たちのせいでバアルの血族は欠陥品と言われ

ているのを知ってるかい?」

 

ぶちん。

 

俺の中でナニカが軽く切れた。

 

気付いたら、俺はディオドラの肩をつかんで殴り

つけようとしていた!

 

「触るな」

 

だけどディオドラはそんな俺を魔力使って押し

潰し、逆に殴りつけてきた!

 

「イッセー?!」

「イッセーさん?!」

 

部長とアーシアが殴り倒された俺の近くに来る。

その様子を見ていたディオドラは肩を払う仕草

をしたあと

 

「下僕が貴族の肩に触れ、さらに攻撃を加えよう

とするとは何事か?無礼であろう。

リアス・グレモリー。これがグレモリーの

やりようと言うなら僕にも考えがあるぞ」

 

そう言ってきたんだ。

 

部長を馬鹿にしたのはそっちが先だろうがっ!

そう言おうとした俺の前にアーシアが立つ。

 

厳しい目で部長を睨んでいたディオドラだが、

アーシアに対してはそんな目を見せず、

むしろ優しげな目を向けていた。

 

アーシアを罠に嵌めておきながら、どのツラ

下げてそんな表情をしてやがるっ!

 

見れば見るほど怒りが沸いてくる!

 

「ディオドラさんが私を保護したいと仰って

くれたことは理解しました。

私を教会から離反させた、いえ、教会が私を

放逐するように貴方が動いたと言うことも

わかったつもりです」

 

静かに告げるアーシアの目にはさっきみたいな

驚きとか、哀しみとか、そう言うのは見られない。

 

「そうだね。悪魔にとっては必要なことでも

アーシアさんには悪いことをしたと思ってる。

だからこそ、僕は君を護りたい」

 

コイツなりに何かしらの拘りが有るんだろう、

だけど俺はコイツを信用しないし、しちゃ

いけないって確信している!

 

「アーシアッ!」

 

だからこそ、俺は騙されるなって意味を込めて

アーシアの名を叫んだ。

 

俺の声を聞いたアーシアは、一度振り返り、

安心して下さいと言う目を俺に向け、それから

一度深呼吸をした後・・・

 

「申し訳ありませんが、私はリアス部長の眷属で

生涯イッセーさんと共に在ると決めてるんです。

リアス部長とイッセーさんに要らないって

言われるまでは離れるつもりは有りません」

 

そうハッキリと言い切ったんだ!

 

 

安心しろアーシア!俺も部長も、アーシアを

要らないなんて絶対に言わないからなっ!

 

部長と俺が強く頷くのを見て、ディオドラは

この場を諦めることにしたらしい。

 

だけどディオドラは帰り際、こんな事を言いやがったんだ。

 

「ソレがアーシアさんの決めた選択ならば、

僕には何も言うことはありません。

ただ、僕はいつでもお待ちしています。

そのことは忘れないで下さい。

・・・ただしリアス・グレモリー。貴公らの

無礼は別問題だ。必ずやこの報いは受けさせる

と約束しよう」

 

そっちが先に無礼を働いたんだろうがっ!

それなのに何を偉そうにしてやがるっ!

 

・・・そう思ってたんだけど、このあと使用人

のヒトから話の内容を聞いたグレイフィアさんは

烈火のように怒ったんだ。

 

魔力を纏って相手に向けるのは宣戦布告に等しい

行為だし、話し合いの中でいきなり下僕が相手に

殴りかかるなんて有り得ない。

 

貴女たちはグレモリー家を滅ぼす気かっ?!って

言われて、俺達は長時間の正座とお説教を受ける

ことになった。

 

おのれディオドラっ!この恨みは忘れんぞっ!

 

「聞いてますか?」

 

「ハイッ!」

 

だから正座してる足の上に氷を載せるのは勘弁してくださいっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった・・・断ってくれて本当に良かったッ!」

 

 

 

 




感想でも有りましたが、原作主人公の劣化が
激しいかもしれません。

ですが作者的に考えると、学校で覗きやセクハラ
を繰り返し、ソレがバレて女生徒に追われて折檻
まで受けているのに反省することなく犯罪行為を
繰り返すヤツなんてマトモな感性をしている
ハズがないと思い、こんな感じになってます。

原作でも一度ライザーを殴り倒したんだから、
二度目があっても良いだろうって言ってます
からね(そのせいで各方面に謝罪しまくった
と言った母親の説教を受けた後です)

つまりは日頃の行いですね。



挑発任務は完了したもよう。

体育祭?馬鹿じゃない?ってお話。


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80話

原作6巻はポンポン進むぜ!
(前回が長すぎた)

副題をつけるなら「かわいそうな悪魔」

オリ設定!
オリ展開!

今日も1話!

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーーYOSHITUGU視点ーー

 

「マスゴミの取材ぃ?」

 

修行中の俺に実家の兄貴から連絡があったと

言うから、こっちから連絡を入れたら急に

そんな事を言われたんだがよぉ。

 

意味が分からねぇよ。

 

『そうだ。なんでも若手悪魔特集だそうでな。

英雄殿やお前の特集だそうだ』

 

英雄ってアレと一緒かよ。

 

思わず顔を顰める俺を見て苦笑いする兄貴。

どうやら俺の気持ちはわかるようだ。

 

アレだな。ファルビウムの兄貴から英雄

の実態を聞いているのだろう。

 

『アレと同列に語られるのは御免だと

言う気持ちはわかる。

だがコレも貴族の義務と言うヤツだ。

若手とは言え名が売れた以上は働かねば

ならん・・・本来ならお前は家の権力や

財を使っているわけでは無いから、

貴族として果たす義務は無いのだがな』

 

だよなぁ。どこぞの無能と違って俺は家から

出てココに居る身だ。

 

仕送りだって貰った覚えはねぇし、貴族と

してナニカをしてもらった覚えはねぇ。

 

とは言えだ・・・

 

「いや、俺がグラシャラボラス家じゃ

無かったら旦那に弟子入りすることが

出来なかったと考えれば、最初の段階で

家の恩恵に与ったとも言えるんだよなぁ」

 

そもそもの話、殺されなかったのは

家の名前が有ったからってのもあるし。

 

それに俺の素質は先祖譲りのモノだ。

それなら「家は無関係」とは言えねぇよなぁ。

 

『・・・』

 

俺の言葉に驚いて無言になる兄貴。

まぁ言いたいことはわかる。

 

『変わったな。今のお前なら喜んで

次期当主の座を譲るが・・・どうだ?』

 

はっ!ナニ言ってやがる。

 

「そんな面倒事は御免だ。俺はまだまだ

未熟者。もっと上を目指すつもりだし、

貴族としての仕事をしてる暇はねぇ。

次期当主になっても鍛錬は出来るかも

知れねぇが、民を省みずそんなコトを

してたら粛清されちまうぜ」

 

旦那たちは俺が家を継いでも文句を言う

事はねぇだろうが、あんまりにも舐めた

政をしてたら『恥さらし』として殺される

だろうよ。

 

旦那の教えを受けるってのはそう言うことだぜ。

 

『ソレは残念だ。俺としてはお前を

コッチに戻して、俺が代わりに教えを

受けようと思ってたんだがな』

 

このヤロウ!俺の野心を試す気かと思えば、純粋に面倒事を俺に回す気だったのか?!

 

つーか代わりにって何だよ?!

 

ショックを受けてる俺に対し、兄貴は

恨みがましい視線を隠しもせずに言う。

 

『お前は知らんだろうが、俺達の世代

からすればオセ殿は憧れの対象だぞ?

ファルビウム様から連絡が入り、お前が

オセ殿に弟子入りしていると聞いた俺が

どれだけお前を羨んだ思う?』

 

「いや、知らねぇよ!」

 

かなり本気の目で言われているが、実際

知らねぇよ!

そもそも調子に乗って、度胸試しを兼ねて

武者修行とか言って国境に向かおうと

してただけだし!

 

そこで偶然視察中の旦那を見つけて

ちょっかい出したら半殺しにされて、

悔しくて弟子入りしただけだぞ!

 

・・・俺がグラシャラボラスじゃ

なかったらあそこで殺されてたよなぁ。

 

『しかもいつの間にかコカビエルや白龍皇

と戦えるレベルに成長していて、その上

眷属も若手ナンバーワンと言われたヤツを

一蹴出来るレベルだと?妬ましい・・・』

 

兄貴の呪詛が終わりそうにない。

 

コレはアレだ、マジで旦那に弟子入りする

気だったようだな。

 

悪魔ってのは力に惹かれるモンだから

シカタナイっちゃシカタナイんだが、

だからと言って家は継がんぞッ!

 

それはさておき、まずは話題を変えよう。

 

「い、今はとりあえず仕事の話だろ?

俺からソッチに行けばいいのか?」

 

変えると言うより流れを戻す感じだが。

まぁアレだ。そう、仕事優先だ!

 

今行ってる修行はあくまで私事。

 

そうで有る以上、修行より仕事を優先しても俺が叱られることは無い。

 

つーか今は若手のレーティングゲームが仕事

みたいな感じだから許されてるが、本来

なら「働け」と言われて折檻受けてるんだ!

 

ソコに実家から仕事を持ち込んで

くれたんだから、ここは乗るしかねぇ!

このビックウェーブにッ!

 

・・・ついでに兄貴の呪詛も終わらせれるし。

 

しかしマスゴミなぁ。

 

旦那達はプロパガンダで利用するモノ

としか思って無いし、何故か偉そう

だから関わりたくねぇってのが本心だ。

 

別に名前を売りたいわけでもねぇし。

 

それに普通なら用が有るのは向こうなん

だから、向こうから来るのが筋なんだろう。

 

だけどココはなぁ。

 

国境沿いに中央のマスゴミが来ても迷惑なだけなんだよなぁ。

 

つーか旦那の許可を得ていないテレビ局

の連中なんか来たら、普通に殺されるし。

 

補佐官サマのところは猶更だ。

 

そんなの呼び込んだら、ソレが理由で俺まで殺されるっつーの。

 

いまだにグチグチと恨み言を言ってる

兄貴に取材の場所の確認を取ろう。

 

つーか次期当主の仕事ってどんだけ面倒なんだよ。

 

まぁ政とか他の貴族家との付き合いとか

色々あるからな。

俺がその立場になったら、どこぞの英雄と

同じように好き勝手にしようとするかも知れん。

 

ソレを考えれば俺の兄貴が鬱屈をため込んでるのもわからんでは無いぞ?

 

替わってやる気は無いがな!

 

『ん?あぁそうだな、とりあえずお前は

YOSHITUGUとしてではなく、そのまま

ゼファードルとして取材を受けてもらう

事になる。オセ殿に関しては当然黙秘だ。

もし、強さの秘訣だの何だの聞かれたら

「修行して強くなった」とだけ言えば良い』

 

 

まだまだ愚痴が続きそうだったが、実際

兄貴も暇じゃないのだろう。とりあえず

仕事優先で行くことには異論が無いらしい。

 

それに強さの秘訣ったってなぁ。

前回のゲームで俺は何もしてねぇぞ?

 

トスカについては神器だし。

 

まぁ修行の成果だってのは確かだから

別に問題はねぇけどよ。

 

『ちなみに英雄殿は冥界第一放送でテレビ

放送の打ち合わせと各種雑誌の取材。

お前は主にバンブー書房の雑誌の取材と、

麻雀大会のゲストとして呼ばれてるな』

 

兄貴の言葉を聞き、正直少なくない驚きを覚えた。

 

まさか麻雀大会が開かれるほど冥界に

麻雀が浸透していたとはな。

 

「ほほう。少しはモノの道理を理解して

いるヤツが居るらしいな」

 

脳筋悪魔に麻雀を流行らせることで、

悪魔に思考する癖をつけさせるって言う

旦那の狙いは着実に実を結んでいるようだ。

 

なにせ領地経営だの家臣団の取り纏めには

腕力だけじゃなく、どうしても思考力や

書類を捌く力が必要だからな。

 

武力だけでなく知性も重んずるように

しつつ、文官と武官の垣根を取っ払う

には麻雀は最適なんだよ。

 

何せ武官にも指揮官と兵士の違いが有る。

そして指揮官には思考力が必要だしな。

 

娯楽と知性と落ち着きと思考力を学べる上に

派閥の垣根を越えてコミュニケーションまで取れるんだ。

 

少し目端が利くヤツなら誰だって導入しようとするだろうよ。

 

貴族の嗜みにしても良いくらいだぜ。

 

『今まで麻雀は元々知る人ぞ知る遊戯と言う

扱いだったのだ。

だが前回のレーティングゲームでお前が

アレをしていただろう?

ソレをオーディン様や帝釈天様が絶賛

したし、ほとんどの貴族に嫌われていた

サイラオーグを一蹴したのもイメージの

向上に役立ったのだろう』

 

あぁ、サイラオーグなぁ。

 

普通に考えたら魔力至上主義の悪魔貴族には

好かれねぇだろうし、バアル家の中でも

次期当主を腕力で叩きだしたことで微妙な

扱いにされてたんだよな。

 

そもそも滅びの魔力を継承させるための

次期当主だってのに、全否定だからな。

 

アレを支援してたのは、アレの境遇に同情

してたシトリーだのグレモリー。

後はバアル家の権力にすり寄りたい連中

だったり、家名復興を目指す連中だ。

 

どちらにせよ俺に負けて、神滅具の隠蔽を

バラされて、更にバアル大王家が旦那に

潰されたことでかなりアレな状況らしい。

 

流石に大王家を断絶させるわけには行かない

ってんで家は弟が継承するらしいが、その

弟もサイラオーグに殴り倒されて心に傷を

負ったんだとか?

 

下らねぇ。連中は一度旦那や補佐官サマと

戦ってみりゃ良いんだ。

 

そうすりゃ、敗北なんざなんでもねぇ、

死んで無いだけマシだ、って思えるだろうによ。

 

実際ソーナ・シトリーは負けることを

どうとも思って無かったし。

 

ソレを考えれば、いまだに英雄として仕事

を受けることが出来るリアス・グレモリー

の心は鋼だよな。

 

いや、滅びの魔力で羞恥心や何やらを無くしたって可能性も有るけどよ。

 

まぁいいや()

 

とりあえず麻雀の普及になるなら旦那の

為でもある。

喜んで取材を受けようじゃねぇか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアジュカ視点ーー

 

 

彼からリアス・グレモリーとの会談の結果の

報告を受けたとき、俺が感じたのは『感謝』

であった。

 

謝りたいと感じている、だから感謝と言うのだろう。

 

だが、地獄はこれからなんだ。ホントすまん。

 

『は?い、今なんと?』

 

通信機越しにもディオドラの絶望した様子が良く分かる。

 

蟀谷を抑えているところを見ると、彼は

胃痛より頭痛の方が強く出るらしい。

 

安心しろ、すぐに胃も痛くなる。

 

「うむ。次のレーティングゲームは、

お前とリアス・グレモリーだ」

 

だから諦めて現実を受け入れろ。

 

『いやいやいや、おかしいでしょう?

本来なら次は前回のレーティングゲームの

勝者同士や敗者同士の戦いのハズ!

さらに英雄殿には眷属が少ないし、我々

とて策を弄する時間が必要なハズ!

なればこそ、英雄殿の次戦は不戦勝となる

サイラオーグでしょう?!』

 

心底焦った表情で訴えるディオドラ。

 

言ってることは間違ってない。

 

英雄に負けは許されないし、旧魔王派が

リアスのゲームに合わせて何やら策を

弄していると言うなら、その情報を

集めてからにするべきだ。

 

つまりは不戦勝になるサイラオーグと

当てるのが一番となる。

 

そして勝者同士であるシーグヴァイラ

とゼファードルのゲーム。

敗者同士のディオドラとソーナのゲーム

と言うのが一番自然だろう。

 

実際来賓が見たいのはゼファードルと

ソーナだろうが、ソレをすれば残るのは

ディオドラとシーグヴァイラ。

 

すでに対戦済みのカードになっては意味が無い。

 

とは言えゼファードルとソーナの試合は、

今やるよりも時間を置いた方が面白い

内容になることは間違い無いし、コレを

ヤッてしまうと、他のゲームがなぁ。

 

そう言う訳でソーナとゼファードルは

最終戦の前と決まってる。

(最終戦は英雄とゼファードルの全勝対決だ)

 

だがココで、英雄が勝利を譲られてばかり

では心が病むと言う意見が出たんだよな。

 

サーゼクスとしては「不戦勝でも時間を

稼げるから良かったのに」とボソッと

抜かしてたから、アイツの手の者ではなく

純粋に『英雄』を心配した者たちによる結果なのだろう。

 

もしくは急いで英雄殿の面子を潰したい

旧魔王派の意向を受けたのかも知れん。

 

だが、いつまでも大本営発表で誤魔化す

のも限界があるし、ボロを出す前に

早めに汚名を返上させるべきだと言うのもわからんでは無い。

 

自分自身が納得しない限り、いつまで

経ってもアレは成長することが出来んのだ。

 

・・・誰も成長など望んで無いがな。

 

なんならリアスを病欠扱いで不戦敗にしても良いくらいだ。

 

とは言えゲームをさせないわけにもいかん。

 

サーゼクスの妹を特別扱いしているとなれば問題だろうし。

 

しかし確実に勝てると思われていた

ソーナにアレだったからな、悩んだ結果

連中が提示してきたのがシーグヴァイラに

負けたディオドラとのゲームだ。

 

元々ゲームに拘りを持ってないし、本人も

眷属もコレと言った攻撃力を持っていない。

 

更に最悪前回のように一定のダメージを

受けたらリタイアさせると言う設定を

すれば、不自然でない程度に負ける事が出来る。

 

英雄に実績を与えるには十分と言う訳だ。

 

残りはサイラオーグとソーナ。

シーグヴァイラとゼファードルだな。

 

コレはコレで負け同士、勝ち同士でバランス

が取れるし、何より旧魔王派に時間を与えた

挙句オーフィスの蛇を使われて暴走される

よりも、さっさと潰すべきだと言う意見も

有るからな。

 

それらの事を説明すれば、ディオドラは

俯いたまま

 

『畏まりました・・・クルゼレイにはそのように伝えます』

 

どうやら抵抗は無意味と感じたようで、

あっさりと納得してくれた。

 

そもそも決定事項だからな。

 

いまだに若手のコイツが何を言おうと、

この決定が覆ることは無いと言うことはわかっているのだろう。

 

本来なら適度に情報を流して英雄と

ディオドラの対決姿勢を煽っていく

予定だったのだがな。

 

急ぎの仕事になれば粗が出る。

 

ソレはコチラもそうだが、向こうは我々以上に急ごしらえだ。

 

「向こうが用意する策がわかったら

教えてくれ。必要な人員を配備する」

 

『必要な人員・・・ですか?』

 

訝し気な目でコチラを見るディオドラ。

 

「この場合は護衛だ」

 

俺がそう言えば向こうは納得したように頷いた。

 

何しろ貴重な政を理解する貴族悪魔だ。

ココで裏切り者扱いで殺されても困る。

 

つまり英雄の感情に任せた行動を抑え、尚且つ

旧魔王派の連中からディオドラを守れるような

人員を回す必要があるわけだ。

 

ディオドラもオーフィスの蛇を貰ってる

そうだから、最悪ソレを使って時間稼ぎを

させれば良いと言うのは有るが、アレに

どんな悪影響が有るかもわからんからな。

 

名が知られていない強者と言えばオセの

眷属だが・・・流石に今回はな。

 

旧魔王派との因縁は我々がつけねばならん。

 

かといってあまり強いのを出せば

連中に警戒させることになる。

 

となると・・・あぁ、アイツならセーフだろう。

 

大体今回はまともなゲームにはならんのだ。

それ故護衛は眷属に拘る必要も無い。

 

もしも連中が何も仕掛けて来なければ、

適当に戦わせて負ければいいしな。

 

『なるほど。そちらも了解です。なんとか

よろしくお願いします』

 

ホント頼むぞ!?と言う意思を感じさせる

視線を感じたまま、ディオドラとの通信を

終える。

 

無理をさせる分、その辺はきっちりと

してやるべきだろうな。

 

後は来賓か。呼ぶからには今回の裏を

説明する必要が有るが、下手に説明

すれば情報の漏洩になる。

 

ソレを踏まえた上で呼ぶべきは・・・

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

グレモリーの連中は赤龍帝と英雄殿が

グレモリー家で教育中だし。

姫島朱乃を含む連中はバラキエルが

陰ながら護衛している。

 

それ故、新たな技術を研究する時間が出来た

俺は、堕天使領の拠点の近く、自身が造った

実験場にて新たな可能性に目を輝かせていた。

 

「滲み出す混濁の紋章

不遜なる狂気の器

湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる

爬行する鉄の王女

絶えず自壊する泥の人形

結合せよ

反発せよ

地に満ち己の無力を知れ」

 

『真界・黒棺ッ!!』

 

詠唱と共に出来上がる黒い棺。

 

中に重力は発生してねぇが、コレは

結界系の神器がねぇからだろうか?

ソレともナニカ足りない要素があるのか。

 

オーディンの爺さんが言うには、詠唱は

発音やら力を籠めるタイミングにも意味が

有るらしいからな。

 

ココ数日はアノ映像を見返して研究をしているんだ。

 

いまだに完全な再現は難しいが、

少しづつ形にはなって来ているぜ。

 

まずは箱から作り、中を改造していけばいい。

 

後は詠唱を短くするなり、効果を変えて

行くなりすることで、詠唱に関する知識や

技能も増える。

 

その結果『理』を纏うことが出来れば最高だが、流石にソコまで高望みはしない。

 

何せアレは魔法や魔術の専門家である

オーディンの爺さんすら解読出来ないモノ。

 

専門外の俺がそう簡単に出来るもんじゃねぇ。

 

だが出来なくても良いんだ。

 

何せ光の槍以外の属性攻撃の開発は俺達にとって急務だからな。

 

会談の時は神野が己の力で対処してきたが、

もしかしたらカンザシ・オセは技術によって

対処してくる可能性もある。

 

あの疑似神器もそうだ。結界以外の力は

見て無いが、七剣ってくれぇだから、

最低でも七つの効果が有るんだろう。

 

連中は結界を造り出す技術と、その結界を

使った戦闘方法の確立をしているんだ。

 

新しい戦い方を習得しなければ、いずれ

俺達はゴミのように蹂躙されることになる。

 

ならば俺とて新たなモノを造らねぇとな!

たかだか百年と少ししか生きてねぇ小娘に

負けるわけには行かねぇんだよっ!

 

「研究の最中邪魔します」

 

そんな感じで詠唱を一節ずつずらしたり、

俺なりにスタイリッシュな形のモノを

作ろうと調整している中、シェムハザが声を掛けてきた。

 

最近は研究に掛かりっきりで、統治に

関してはまかせっきりだが(今までと

大してかわらねぇな)悪魔と休戦協定

を結んだことで、随分と気が楽になったらしい。

 

まぁ奥さんのことも有るし、オセの戦力を

警戒しなくて済んだってのも有るだろう。

 

そんな感じでストレスが減ったシェムハザは俺の研究にも随分寛容になった。

 

だからこそ、こんな微妙な顔をして来る

理由が思い当たらず、俺は首を傾げ問いかける。

 

「どーした?ナニカ面倒事か?」

 

最大の面倒の種はグレモリー家で

隔離されてるから、アレ以外だろう。

 

そう思ってたんだがな。

 

「アジュカからの連絡です。次回の

若手の交流戦の日程と、旧魔王派に

よる干渉についての連絡でした」

 

・・・研究は一端お預けか。

 

コレは流石に無関係とは言えねぇしな。

何せ旧魔王派に味方する俺の部下たちの洗い出しもある。

 

バアル家を滅ぼした勢いを利用して

ココで全部終わらせる気なのだろう。

 

大掃除だな。

 

どれだけの仲間を殺すことになるのか、

ソコまでして休戦をする必要が有ったのか?

 

幾度となく自問自答してきたことだが、

その答えは既に出ている。

 

堕天使の未来の為、神野明影を殺す為、俺は止まる気はねぇんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「イッセー、次のゲームが決まったわ。日程は7日後。相手はディオドラよ」

 

「ディオドラ・・・アイツっすか!了解です!」

 

こんなに早くあの野郎と戦う機会が

訪れるなんてなッ!

 

次は油断なんかしねぇぜっ!

 




エロや体育祭の茶番が無いので話が早いです。

まぁ原作主人公サンたち以外には関係無いですからね。

ゼファードルのお兄さん。原作では
さっさと殺されてるからアレだけど、
しっかりと旧魔王派の勧誘を断る
だけの気骨があったヒトなんですよねぇ。


ディオドラは頭痛持ちらしい(すっとぼけ)

堕天使総督は詠唱に可能性を感じているようだ。ってお話


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81話

キングクリムゾン!



とうとうディオドラとのゲームの日がやって来た!
久し振りに集合した俺達は完全武装でゲームに臨む!

見てろディオドラ!お前が馬鹿にした部長と
俺達の力を見せてやるぜ!

オリ設定!
オリ展開!

今日も一話!

嫌いな人は読み飛ばし!




ーー兵藤一誠視点ーー

 

「そろそろ時間ね」

 

部長がそう言い立ち上がる。

 

ディオドラとの決戦日、俺達はグレモリー家の一室に集まっていた。

 

久し振りに会う(と言っても10日くらいしか

経ってないけど)朱乃さんは凄く疲れた顔をしていた。

 

そして俺と目が合うと同時に俺に向かって飛んできて、そのまま抱き着いて来たんだ!

 

いきなりの事に混乱して抱きとめたけど、

このままじゃ部長が怒るんじゃないか?!

と思ったら、涙ぐみながら「イッセー君」と呟く

朱乃さんを見て、シカタナイわね。と言って

黙認してくれた。

 

部長も最初こんな感じだったもんなぁと

思ってると部長にジロリと睨まれた。

 

こ、心を読んだのか!?と思ったけど

別に読まれて困ること考えて無いし、

ちょっと朱乃さん柔らかいなーとか、

相変わらず大きいなぁとか思ったくらいだし・・・

 

ま、まぁそんなこんなで落ち着くまで

頭を撫でたり、背中をさすったりして、

ようやく朱乃さんが立ち直ったと思ったら

さっきの部長のセリフだ。

 

アーシアの事情については説明していて、

ディオドラがアーシアを狙って何かを

してくる可能性もあると言うことも皆に

説明済みだ。

 

朱乃さんはソーナ会長からディオドラの

仕事については聞いてて、アーシアが

アイツに騙されてたってことは知ってた

らしいけど、ソレをアーシアに話しても

重荷になると思い、黙ってたらしい。

 

まぁ悪魔と言うモノに失望されたくなかったと言うのも有るんだろう。

 

部長も最初は何で自分に報告しなかったのか?

と怒ってたけど、その情報を入手したのは

聖剣やコカビエルの時だし、あのときにそんな

話をされても誰一人冷静には聞けなかったと

思えば、朱乃さんの判断は間違ってはいない

と言えるだろう。

 

そんなわけで情報を共有した俺達は準備を

整えて、時間が来るのを待っている。

 

ちなみにルー・ガルーさんはプロテクターの

ような防具を装備してて、アーシアはいつもの

シスター服。俺達は駒王学園の制服を着てる

けど、コレはタダの制服じゃなく、魔力に

対しての防御効果がある繊維で作られている

高級品だ。

 

前回の匙からの指摘は部長に相当の衝撃を

与えたらしく、しっかり装備を整えることに

したらしい。

 

それでも学生服なのは、部長が駒王学園を

愛してるからなんだろう。

 

だから部長が早く愛する駒王学園に戻れる

ように、そしてディオドラに正義の鉄槌を

下す為にも俺は全力で戦うぜ!

 

そう決心したとき、部屋の中央に配置された

魔法陣に光が走り、転送の時を迎えた。

 

 

・・・・・・

 

 

「・・・着いたのか?」

 

魔法陣の輝きが収まり、視力が回復してくる。

そして目を開けた先に広がっていたのは

だだっ広い空間だった。

 

近くに見える建物は一定間隔で柱が並び、下は石造りだ。

 

なんて言うのかな?ギリシャだっけ?

あそこに有るなんとか神殿みたいな感じ。

 

ただ、ひび割れとか、年を重ねた感じが無く、

最近作られたって感じだな。

 

空は・・・紫ではなく、白い。

 

うーむ。相変わらず良く分からない世界

だけど、まぁいいや。

 

ココが俺達の陣地なんだろう。

 

今回も短期決戦か?それとも長期戦か?

どちらにせよ、俺は俺の仕事をするだけだ!

そう思って審判役のヒトのアナウンスを

待つが、一向にうんともすんとも言ってこない。

 

うーん。なんだろうこの肩透かし感。

 

「・・・おかしいわね」

 

俺が訝し気にキョロキョロしてたら、

部長も顎に手をやり考え込んでいるし、

朱乃さんも何やら考え込んでいる。

 

ギャスパーとアーシアは俺の服を掴んで

不安そうにしているし、ルー・ガルーさんは

周囲を警戒している。

 

一体何なんだ?運営側でミスでもあったか?

と思ってると、神殿とは逆方向に魔法陣が

出現してきた!

 

まさかディオドラ?!今回は至近距離での

戦闘か?!と思ったが、明らかに魔法陣の

数が多く、さらに俺達を囲うように出現している。

 

そしてソレゾレがパッパッと光を放ち、

其々が転送の準備をしているのはわかるん

だけど問題はソコじゃない。

 

「・・・アスタロトの紋章じゃ無いな」

 

ルー・ガルーさんが呟けば

 

「共通項はありませんわ。ですが間違いなく・・・」

 

朱乃さんも厳しい表情で魔法陣を凝視している。

 

「悪魔。しかも私の記憶が確かなら、コレは

旧魔王派、それもベルゼブブやアスモデウスに

連なる系譜の悪魔の魔法陣よ」

 

紅い魔力を身に纏い、臨戦態勢に入りながら

語られた部長の言葉に俺は度肝を抜かす!

 

旧魔王派?!つまり禍の団かよ?!

 

まさかこんなところで『英雄』である部長を

潰す気だってのか?!

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者にして、

我々の顔を潰してくれた『英雄』よ。

貴様はココで散ってもらう!」

 

数百とも千とも言える悪魔が俺達を包囲する

かのように出現し、そして先頭に立つ悪魔が

そう宣言すると、俺達に対して敵意や殺意を

向けていた悪魔達が一斉に魔力を纏った!

 

こいつ等、本気でココで俺達を殺す気だ!

そう思って籠手を顕現させ、チャージに入る!

 

「キャーーー!」

 

腰を落として臨戦態勢に入った俺に聞こえて

来たのはアーシアの悲鳴!

 

後ろを振り返るも、ソコに居たはずの

アーシアの姿が無い?!

 

「イッセーさんッ!」

 

焦る俺に空から声が届く!

上を見ればソコにアーシアと・・・

 

「ディオドラぁ!!」

 

アーシアを抱えて笑うディオドラの姿が有った!

 

「やぁ、リアス・グレモリー。そして赤龍帝。

アーシア・アルジェントは預からせて貰うよ」

 

そして俺の叫び声を聞き、さわやかな笑顔で

ふざけたことを言いやがったんだ!

 

「アーシアを放せ!このクソ野郎!卑怯だぞ!

つーかゲームをするんじゃねーのかよ?!」

 

俺がそう叫ぶと、ディオドラは一瞬キョトン

とした顔をした後で笑い出した。

 

「何がおかしい?!」

 

そう叫べば、ますます面白そうな顔をした

ディオドラは、まるで演劇の登場人物の

ようにアーシアを抱えた腕とは逆の腕を広げて言い放つ。

 

「馬鹿じゃ無い?戦場に卑怯なんて言葉は無い。

そして後方の回復役を狙うのは戦術としては

当然の発想だ。

それに君たちとゲームなんかしないさ。

コレはね?一方的な粛清だよ。

ココに居るのは禍の団、いや真なる魔王様

の配下の皆さんだ。いくら『英雄』である

リアス・グレモリーや赤龍帝である君達でも、

この数の上級悪魔や中級悪魔に囲まれては

勝てないだろう?

回復役が居なくなれば尚更勝ち目は無い」

 

勝ち誇るようにそう告げるディオドラを俺達は激しく睨む!

 

「貴方、禍の団と通じたと言うの?最低だわ。

しかもゲームを穢した挙句に、私の眷属である

アーシアまで奪い去ろうとするなんてねッ!」

 

その中でも部長の怒りはかなりキてるようで

部長の魔力が一層盛り上がっていく!

コレは間違いなくキレてる!でもそうですよね!

俺もキレる寸前です!コイツは・・・コイツだけは許しちゃいけねぇ!

 

「ま、こうした方が僕の好きなことを好きな

だけ出来ると判断したのさ。

それに、ゲームは最初から汚れてるでしょ?

運営をしてた老害どもがクリーンだとでも

言うつもりかい?

英雄殿。君はもう少し政治を知るべきだね」

 

怒りに燃える俺達を、まるで馬鹿を見る

かのように見下しているディオドラ。

 

そーゆーことを言ってるんじゃねぇ!

 

「その調子で悪あがきをしてくれ、その間

僕はアーシアさんを歓待するとしよう。

・・・無論意味は分かってるね?

赤龍帝、ソレが許せないと言うなら神殿の

奥まで来るといい。きっと面白いモノが

見れるだろうさ!」

 

ディオドラが俺達を嘲笑する中、朱乃さんが

俺に声を掛ける!

 

「イッセー君!ギフトを!」

 

「ハイ!」

 

溜め込んでいた力を譲渡すると、朱乃さんは

ディオドラに向かって雷光を放つ!

 

だけど・・・

 

「いや、アーシアさんが死ぬだろ?」

 

そう言って魔力を放ち、朱乃さんの雷光を

相殺するディオドラ。

 

そしてそのまま空気がぶぅんと振動し、

奴の周りの空間が歪んでいく。

 

「イッセーさん!イッセーさん!」

 

そうって手を伸ばすアーシア!

 

「アーシアぁぁぁ!!」

 

俺も手を伸ばすが、当然この手が届くことは

無く、ディオドラは笑いながら消えて行った。

 

恐らく神殿の奥に行ったんだろう。

 

目の前でアーシアを攫われてしまったっ!

何がアーシアを守るだ!俺は!また俺はっ!

 

「イッセー先輩!まずは目の前の敵をどうにか

するのが先ですぅ!その後でアーシア先輩を

助けに行きましょう!」

 

自虐してる俺にギャスパーが縋り付く。

 

そうだ、要は簡単なことだ。さっさとこの場を

切り抜けて神殿の奥に行き、ディオドラを殴り

つけてアーシアを助ければいい!

 

ディオドラ!お前は絶対に許さねぇぞ!

 

そして決意を固め周囲を見てみれば、俺達が

ディオドラに注意を向けている間、周囲の

悪魔はギャスパーによって動きを止められて

いたり、ルー・ガルーさんが一人で敵に

接近していて周囲の悪魔と戦っていたんだ。

 

大勢の悪魔に囲まれてるのに俺達は敵から

目をそらし、ディオドラ一人に目を向けると

いう失敗をしていたことに気付く。

 

隙だらけだった俺達が連中から一切の攻撃を

受けなかったのはルー・ガルーさんとギャスパーのおかげだったんだ。

 

コレ以上迷惑はかけねぇ!

 

ドラゴンショットを打つためにチャージするか、

それとも部長や朱乃さんに譲渡するか。

 

部長に指示を仰ごうとしたとき・・・

 

「下がれ小僧ども」

 

俺の後ろからそんな声が聞こえてきた。

 

誰だ!?と思って声のした方向へ視線を

向ければ、ローブ姿の隻眼の老人が立っていた。

 

いや、この爺さん本当に誰だ?!そう思って

固まっていると、部長は驚きに目を見開く。

 

「オーディン様?!何故ここに?!」

 

どうやら知り合い?みたいだ。敵ってこと

もなさそうだけど、いつの間に?

 

いや、どっかで聞いたことがあるような・・・

 

周囲の悪魔達も爺さんの出現に驚き動きを止めている。

 

その隙にルー・ガルーさんもコッチに

戻ってきて息を整えている。

 

大きな傷は無いが、相当疲れてるみたいだ。

ギャスパーも神器を一度停止させ、俺の血を

飲んで息を整えている。

 

「うむ、話すと長くなるがのう。簡単に言えば

ゲームを乗っ取られたんじゃよ」

 

白い髭を撫でながらそう告げる爺さん。

やっぱりそうだったか!

 

「そもそもレーティングゲームの運営に

大王派が多くいたのは周知の事実。

そして大王派が奴らに支援しとったのも

同様じゃから、乗っ取られたと言うより

罠に飛び込んだと言った方が良いかもしれんな」

 

大王派。オセに滅ぼされたバアル家の連中か!

その残党が禍の団に協力して『英雄』である

部長を狙って来たんだな?!

 

「ディオドラ・アスタロトが連中と通じて

おるのは、アジュカの小僧が知っておっての。

泳がせた結果がコレじゃ。

外では運営側と各勢力の面々が協力体制で

迎え撃っておる。

で、お主らの救援が必要だったのじゃが、

予定した増援が結界に阻まれてココに

これなくてのぉ。儂がサーゼクスの小僧に

お主らの救援を依頼されたと言う訳じゃ」

 

さ、サーゼクス様が俺達の為に・・・

いや、でも待てよ?

 

「結界があるならどうやってココに来たんだ?」

 

この爺さんがココに来れるなら、他のヒト

だって来れるんじゃないのか?

 

「・・・口の利き方を知らん小僧に教える

事なぞ無いわ。とりあえず儂の仕事は結界の

解析と破壊。それとお主ら救援じゃ。

邪魔じゃからさっさと下がって避難しておれ」

 

なっ?!

 

軽くあしらわれてイラッとするが、コノ

爺さんは部長が様付で呼ぶ相手だと思い直し、

なんとか反論するのを我慢した!

 

「相手は北欧神話の主神だ!討ち取れば名が揚がるぞ」

 

邪魔だと言われた部長も爺さんの言葉に何か

言いたそうにしていたが、向こうの悪魔達が

再起動したために言葉を飲み込んだ。

 

けどさっきの「北欧神話の主神」って言う

悪魔の叫び声で思い出した!

そうだよ!オーディンと言えば北の神様だ!

 

そして爺さんや俺達に向けて一斉に放たれる魔力弾。

 

この数はヤバイッ!そう思って、迎撃

する為に動こうとする俺達。

 

「討ち取る?貴様らが?この儂を?」

 

だけど爺さんは不愉快そうにソレを眺め、手に持った杖をトンと地に突く。

 

カッ!と光ったと思ったら、魔力弾は

全て消滅していた。

 

こ、この爺さん凄ぇ!

 

白い髭を撫でながらフム・・・と言って向こうを眺める爺さん。

 

向こうの上級悪魔もこの光景に顔色を変えている。

 

「本来ならば儂の力で結界を打ち破れるハズ

なんじゃが・・・ココに入るだけで精一杯

とはのぉ。コレは術だけではなく神器。

いや神滅具との合わせ技かの?中々良い腕

をしておる。コレは少し骨が折れそうじゃ」

 

爺さんは悪魔や俺達を無視して結界を調べているようだ。

 

「あぁ、アザゼルからコレを渡すように

言われておる。

まったくこの儂を使いに出すとは、あの

小僧、今回は何を報酬に貰おうか・・・」

 

そう言って小型の通信機を出して来る

爺さん。つかアザゼル・・先生を小僧

扱いって、流石神様。

 

やっぱりお偉いさんだったぜ。

 

「とりあえずお主らは避難せい。眷族の

嬢ちゃんを心配する前にお主らの方が

問題じゃからの。

勝手気ままに動かれて死なれでもしたら

報酬がもらえんからの」

 

そう言って杖を振れば、俺達の体を薄い

魔力のようなモノが覆う。

 

報酬って・・・いや、サーゼクス様から救援

の依頼を受けたんだから、当然ソレは必要

なんだろうけどよ。

 

だけど、アーシアの心配をするなって

どういう事だ!?

 

「オーディン様。お言葉はありがたいの

ですが、私たちは攫われた仲間を

取り戻さねばなりません!」

 

部長が決意をした目で爺さんに告げる。

俺達も頷き、部長と一緒になって爺さんを見る。

 

そんな俺達の目を見て、爺さんは一度溜息を吐き

 

「・・・勝手にせい。とりあえず神殿まで

行けばよかろう。後はアザゼルの小僧と

相談でもするんじゃな」

 

そう言って俺達では無く悪魔の方を向く爺さん。

 

まさか一人でコイツ等を抑える気か?!

 

「さて待たせたの。知ってると思うが、

儂はお主らが想像しとるより強いぞい?」

 

そう言ってオーラを纏う爺さん。その力は

俺の想像を遥かに超えていて・・・

 

「グングニル」

 

いつの間にか左手に抱えていた槍を悪魔達に

向けて投げ飛ばした!

 

ブゥゥゥゥゥンッ!!

 

槍から極大のオーラが放出され、空気を貫く

ような鋭い音が辺り一面に響き渡った!

 

?!?!?!

 

そしてその一撃が造り出した光景に俺は自分の眼を疑った・・・

 

その痕跡は遥か先まで一直線に伸び、

大地を抉り、その進行方向に居た悪魔を

消し飛ばしていた!

 

「・・・?」

 

だが爺さんは自分の一撃に満足してないのか

左手と槍の痕跡を何度か見比べている。

 

その様子を呆けるように見る俺。

 

「すみません!お言葉に甘えます!」

 

「神殿まで走るわよ!」

 

だけど部長と朱乃さんの声で我に返った。

 

そうだ!アーシアを助けるんだ!

こんなところで呆けてる暇はねぇ!

 

ココに居ても足手纏いになるだけだ。

だからこそ俺達はこの場を爺さんに任せて

神殿に向かって全力で駆ける!

 

待ってろよアーシア!

すぐに助けてやるからな!

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーアーシア視点ーー

 

神殿の奥に用意された見るからに怪しげな

祭壇のようなモノ。

 

・・・の前に置かれたテーブルと椅子。

 

その椅子に座る私と、向かいに座る

ディオドラさん。

 

あの後ディオドラさんに攫われた私は、彼の言葉通り歓待を受けてました。

 

「いやぁ手荒な真似をして済まないね。

とりあえずくつろいでていいよ。

それと向こうのリアス殿や赤龍帝君は

無事だから安心して良い。

ちなみに飲み物は紅茶がイイかな?

ソレともコーヒー?あぁ日本のお茶も

あるけど、確かアーシアさんはイタリア人

だったよね?ならエスプレッソとかの

方が良いかも知れないね。

ただカプチーノとかカフェなんたらとか

種類が多すぎて、実はあまり良く分かって

無いんだよ。済まないがあんまり高品質

ではないけど我慢して欲しい。あ、ジェラート食べる?」

 

・・・本当に気を使って貰ってるのがわかってしまい、リアクションに困ってしまいます。

 

こう言うとき、どんな表情をしたらいいんでしょうか?

 

「え、エスプレッソお願いします」

 

ソレはそれとして、イッセーさんの家では

飲むことがないエスプレッソを頂きます!

 

 

そして待つこと暫し。

 

私の前に出てきたエスプレッソは、高級

そうなカップも影響して、何やら私が知る

モノでは無いような気がしてなりません。

 

ですが出して頂いた以上はちゃんと頂きます!

 

「あ、おいしい・・・です」

 

間違いなくエスプレッソなのに、やっぱり

私が知るモノとは味も香りも全く違います。

 

主よ、コレが高級品なのですね・・・

 

「そう?ソレは良かった。一服したら

事情を説明するから、ゆっくりしてて。

あぁ、ケーキも他の飲み物も有るから

気になったモノがあったら遠慮なく

言って欲しい」

 

コレがメニューね。そう言って自分の分の紅茶とケーキを頬張るディオドラさん。

 

 

 

うん。何て言うか、色々勘違いしてごめんなさい。

 

どうやらイッセーさんも無事みたいだし、

私はジェラートを頂きながら向かいに座る

ディオドラさんに内心で謝罪するのでした。

 




ディオドラ、頑張るの巻。

ディオドラと原作主人公組の会話を邪魔しない
悪魔達マジ天使。

オーディンはサーゼクスの依頼を受け参上。

結界やらなにやらの技術を探りに来たもよう。

アーシアさんは普通に歓待されてます。
その理由は次回!ってお話


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82話

元聖女と紳士のお茶会。

あまりにも目障りなので一応教育します。
ソレで嫌われたら最高!って感じです

英雄一行と堕天使総督の会話も有るよ!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアーシア視点ーー

 

「と、まぁこんな感じだね」

 

ディオドラさんから今回の流れについて

説明を受けましたが、驚きました!

 

ディオドラさんは魔王様の密命を受けて

二重スパイのような仕事をしていたのです!

 

そして何の備えも無く(シスター服は用意

して貰いましたが、全然足りないそうです)

戦場に現れた私を保護してくれました。

 

「あの場に君が居ても、今の君じゃ連中の

一斉攻撃を回避も防御も出来ないだろ?

そうなったらリアス殿たちが君を守る

ために負傷するかも知れない。

ソレを回復出来る余裕も無いだろうしね」

 

言われて見ればその通りです。

 

あの場において、私は間違いなく、完全に足手纏いでした。

 

「前にも言ったけど、君の価値は戦場での

治療では無く、後方での治療だ。

だから戦場で役に立たないからと言って

凹むのは間違ってるよ」

 

落ち込んでいる私に優しい言葉をかけて来るディオドラさん。

 

リアス部長の家で会った時や、さっきみたいな大げさな動作は一切ないです。

 

本当に自然体って感じだから、ウソも吐いて無いって思います。

 

なんでも、今まではテロリストの見張りが居たそうです。

 

そして今はソレが居ないので、こうして普通にお話が出来るんだとか。

 

きっとあそこで私たちを囲んでいた

悪魔さんの中に、ディオドラさんを

監視していた悪魔さんが居たのでしょう。

 

「連中は僕が君を攫って如何わしいコト

をしようとしてると勘違いしてるからね。

流石に見せる気は無いって言って見張りを

追い出したのさ」

 

な、なるほど!確かにさっきまで私も

その可能性を考えてました!

 

だけどディオドラさんにはそのつもりは

一切ないみたいです。

 

私を教会から離反させたのはコノ人なん

ですけど、ソレだって悪魔としては当然の

戦略だし、そもそも何も考えずに彼を癒した

私にだって問題が有ります。

 

ソレにあんなことがあったおかげ・・・

と言うのもおかしいですが、ソレで私は

イッセーさんとお会い出来ましたし。

 

ディオドラさんに恨みは有りません。

 

「そう言ってもらえると助かるよ。

君に嫌われたせいで、いざと言うとき治療を

受けれないとか御免だし。この先英雄殿と

付き合っていけば必ず胃を痛めるからね。

胃薬が無い時は是非君に治療して貰いたい

と思ってるんだ」

 

苦笑いしながら紅茶を飲むディオドラさん。

お話を聞けば相当苦労しているようです。

 

その原因がリアス部長やイッセーさんだと

言うのが、スゴク・申し訳なく思います。

 

確かに皆さん良いヒトなんだけど、感情で

突っ走ると言われたらそうですよね。

 

私も何も考えずに治療したり、他人の

言うことだけを聞くような真似は止めた

方が良いと叱られました。

 

今までは教会のシスターやリアス部長に

命じられるまま治療をしてたし、自分の

感情で治療をすることも有りましたが、

コレからは少し考えるようにします。

 

何せそう言う優先順位をつけなければ

イッセーさんが死ぬことになるから。

 

コレもディオドラさんの意見を鵜呑みに

していると言えばそうかも知れませんが

アザゼル先生やグレイフィアさんを

始めとした皆さんまでもが口を揃えて

「今のままじゃダメだ」って言うんです。

 

だから私も変わる必要が有るんだと思います。

 

「うん。予想以上に現実に向き会えて

いるようで何より。後はアレだね」

 

紅茶を飲みながら何かを考えるディオドラさん。

 

何か言い辛いことでもあるのでしょうか?

 

「言い辛いと言うよりは、知ってるか

どうかの確認だね。僕の持つ資料だと、

君は知らない可能性が有るってことに

なってるけど・・・」

 

私が知らないこと?沢山あると思うんですが・・・何でしょう?

 

首を傾げる私を見て、まぁいいかと頷き

 

「アーシアさん。君は聖書の神が、

君が祈りを捧げている主が既に

死んでるって知ってるかい?」

 

そんな信じられないことを言って来たんです!

 

主が死んでいる?有り得ないです!

だってソレが事実なら私たちの信仰は・・・

 

「君たちの信仰は、セラフの連中によって

聖書の神が残したシステムと言うモノの

管理・運営のエネルギーとなっている。

教会の上層部はソレを知って居ながら、

君たち聖女を利用して信仰を稼いでいる。

だからこそ悪魔を癒した君が許せないと

言うのもあったんだろうね」

 

そんな!そんなっ!!

 

「嘘だと思うなら君たちの教育係を

兼ねるグレイフィア殿に聞くと良い。

ヴェネラナ殿やジオティクス様でも

良いかも知れないけど、まぁその辺は

君の交友関係の問題だからね」

 

主の死を受け入れられず、絶望する私に

追い打ちをかけるかのように言ってくる

ディオドラさん。

 

優しいと思っていたディオドラさんが、なんでこんなことを・・・

 

「君が悪魔だからだよ。君や赤龍帝君は

悪魔としての自覚が足りない。

正直見ていてイライラする。

そもそも悪魔なのに主に祈ったりするのは

有り得ないんだ。更にそのシスター服を着る

ことで周囲にどんな風に思われると思う?

例えば教会のど真ん中、ヴァチカンで悪魔を

賛美したらどんな扱いを受けるかな?」

 

そう言われて私は自分の迂闊さに気付きました。

 

そんなことしたら異端扱いで審判を受ける事になるでしょう。

 

そしてソレは私だけでなく、私の面倒を

見てくれたシスターや司祭様達も・・・

 

今の状況に置き換えれば、リアス部長や

そのご両親です。

 

私のせいで皆さんが悪魔としての常識が

無いと言われ、馬鹿にされてるのです!

 

「まぁ君を詳しく知らない悪魔は、君が

ソレを着ることで教会を馬鹿にしてるって

思ってるよ?だけど少しでも君を知る

悪魔はそうじゃない。

君が未だに信仰を持ってソレを着ていると

言うことがわかっている。ハッキリ言おう

ソレは悪魔に対する背信行為だ」

 

立て続けに告げられる事実に、私は足元が

崩れて行くのを幻視しました。

 

馬鹿にされてるどころではありません。

 

私たちは悪魔に対する裏切りを疑われていると告げられたのです。

 

「今はリアス殿が『英雄』だからね。

その眷族が裏切るはずが無いと言う

論法が通る。

だけどもし『英雄』が必要なくなれば、

君は『英雄』を殺す口実になるんだ。

だから、今すぐとは言わないけどね。

既に死んだ神に対して信仰を捧げるのは

止めなさい。まずはそのシスター服だ」

 

粛清。そんな言葉が私の頭を過ります。

 

リアス部長のお母さんの実家である

バアル大王家は、悪魔に対する背信の

罪で粛清されたのです。

 

ならばディオドラさんの言うことは

決して嘘でも大げさでも無いのでしょう。

 

主が死んだことを嘆いている暇

など私には無かったのです!

 

むしろソレを嘆くと言う行為は悪魔を馬鹿にする行為。

 

だからこそ私はソレを認め、前を向かなかければなりません。

 

そうしないとリアス部長もイッセーさんも殺されてしまうから。

 

でも、どうしても涙が止まらないんです。

 

主が死んでいた。そしてコノ信仰は無意味で、

すぐにでも捨てなければいけない。

その現実を受け止めるには、私は弱すぎたんです。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

神殿にたどり着いた俺達は爺さんから

受け取った小型の通信機を耳に付けて、

アザゼル・・先生から今回の流れの説明を

受けていた。

 

『とりあえず言いたいことも有るだろうが

黙って聞け。現在このレーティングゲームは

禍の団の旧魔王派による襲撃を受けている』

 

ソレはすでに爺さんに聞いたことだから、

俺たちは無言で頷くだけで次の言葉を促す。

 

『そのフィールドも、近くの空間領域に

あるVIPルーム付近も旧魔王派の悪魔

だらけだ。だがまぁコレは俺達も予想

してたことだから、現在は各勢力が協力

して旧魔王派の連中を撃退している』

 

なるほど。アジュカ様が情報を持ってた

って爺さんが言ってたからな。

 

奇襲されたと見せかけて反撃してるわけか。

 

はっ!ディオドラは俺達を嵌めた

気になってるけど、嵌められたのは

向こうだったってわけか!

 

『向こうにすれば俺達来賓を含めた全員を

攻撃し、魔王の面目を潰すと同時にお前ら

を殺すことが狙いだった。

対して俺達も、ココで旧魔王派を全滅

出来れば今後は色々楽になる。そんな

わけで、今回の奇襲を止めなかったんだ』

 

なるほどなー。けど来賓の命を狙われた

ってなったら、ソレだけでヤバいんじゃ?

 

『今回の件は来賓に対してしっかりと襲撃

が有る事を伝えていてな。その上で見学

したいなら来いって感じだったのさ。

その中で帝釈天もオーディンもオリンポス

の連中も、全員が参戦を希望しやがった。

何処の勢力も勝ち気だよ』

 

通信機の向こうで苦笑いしてるのがわかる。

 

どこのお偉いさんも「テロには屈さない!

むしろ返り討ちだッ!」て感じなんだろう。

 

「・・・このゲームはご破算ってわけね」

 

今回のゲームで周囲のヒト達を見返すんだ!

って気合を入れていた部長は、俯いて通信機の

向こうに居るアザゼル・・先生に確認を取る。

 

『そりゃそうだ。今回の件はそもそもが

お前を狙って来る旧魔王派を一日も早く

殲滅する為のモノだ。

ゲーム?寝惚けんな。コレはクーデターを

目論む旧魔王派との戦争だぞ?さっさと

頭を切り替えろ』

 

部長の気持ちをないがしろにするなッ!

と思うが、戦争とゲームのどっちが大事だ?

と言われれば、いくら俺が馬鹿でもわかる。

 

「・・・先生、アーシアさんがディオドラに攫われたんです」

 

強い口調で告げられた事実に動きを

止めた俺達の中で、朱乃さんは一人冷静に

アザゼル・・先生にさっき起きた重大な

事件を伝えた!

 

そうだよ!戦争なら猶更ディオドラに

攫われたアーシアを助けないと!

 

『そうか。ならソッチはコチラで片付ける。

ソコは直に戦場になる。お前らは足手纏いに

なるからすぐに避難しろ。その神殿の隠し

地下室はかなり頑丈な造りになっている。

戦闘が終わるまではソコで待機するように』

 

俺達は足手纏いだとあっさり言われた

事で、朱乃さんや部長の目が吊り上がる。

 

や、やべえよ!かなりキレてるよ!

 

『このフィールドは神殺具である『絶霧』

によって作られた結界に覆われている。

空間に関しては抜きんでた神器を相当の

術者が補強して作られたようでな。

中に入るのは何とかなっても、出る

のは不可能に近いんだ。

何といってもオーディンの爺さんですら

即座に破壊出来ない代物だしな』

 

部長や朱乃さんの気分など知るかと

言わんばかりに現状を説明してくる

アザゼル・・先生。

 

非常事態だからシカタナイのかも

しれないが、正直勘弁してくれ!

 

「・・・もしや先生も戦場に?」

 

無言で怒りを抑える二人と、ソレに

戦々恐々する俺とギャスパーを尻目に

ルー・ガルーさんが質問をする。

 

『あぁ、同じフィールドに居る。かなり

広大なフィールドだから距離は離れているがな』

 

なるほど。ってことはコッチに来るまで

時間が掛かるってことだな。

 

だったら・・・

 

「アーシアは俺達が助けます」

 

すぐ近くに居るって言うなら他の人

に任せるのも有りかもしれない。

だけど、今アーシアを助けることが

出来るのは俺達だけだ!

 

『お前。今がどういう状況か分かってるのか?』

 

通信機の向こうから聞こえる声には

明確な怒気が含まれている。

 

だけど俺は諦めない!諦めてたまるかよ!

 

「む、難しいことはわかりません!

でもアーシアは仲間です!家族です!

助けたいんです!俺は二度とアーシアを

失いたくありません!!」

 

コレは紛れも無い本心だ!こうしている

間にも、アーシアはヤツにどんな目に

遭わされてるかッ!

 

『なら猶更黙って避難しろ。アーシアが

攫われた時点でお前にソレを言う権利はねぇ』

 

だけど、アザゼルは俺にそう言い切ったんだ。

 

『難しいことはわからねぇ?なら教えて

やる。邪魔だ。災害現場で素人が騒ぐな。

救助ってのはな、救助隊に任せるのが一番

確実なんだよ』

 

ココでも俺は足手纏いだって言うのかよッ!

 

俺が何も言い返せないでいると、部長が

怒りを抑えた声で言う。

 

「総督殿。確かに総督殿の仰る通り、

素人が災害現場で騒ぐのはプロの

邪魔になるでしょう。

ですが現在そのプロの方がおりません。

ならば素人であっても応急処置をする

必要が有るのではありませんか?」

 

そう言って、俺達が動く名目にしようとする部長。

 

そうだよ!そのプロが居ねぇじゃねーか!

 

『勘違いすんな。今のお前らは『英雄』

じゃねぇ。連中を釣る餌だ』

 

ハッキリと告げられる言葉に俺達

全員の動きが停まる。

 

『それにな。応急処置も何も、そもそも

その必要がねぇんだ。

何しろアーシア・アルジェントは既に

保護されてる。

さっきの救助云々は引き上げるのに

多少の手間がかかるってだけの話だ。

後はお前らが避難すれば俺達も遠慮なく動けるんだよ』

 

はぁ?アーシアが既に保護されてる?!どーゆーこった?!

 

『良いか?戦場に置いて上官の命令は絶対だ。

そして上官が部下に全部の情報を渡すなんて

こともねぇ。

リアス・グレモリー。今のお前は戦場を

しらねぇ小娘に過ぎん。故に監督役の俺に

「さっさと避難しろ」と言われたら黙って

避難しろ。コレは要望じゃねぇ。命令だ』

 

堕天使に命令される謂れはねぇ!と言おうと

したけど、ソレは言えない。

 

何せこの監督役って言うのはサーゼクス様が

直接依頼したことだからだ。

 

ソレを無視するってことは、魔王様の指示に

逆らうってこと。

 

俺達は誰一人納得出来てねぇ。だけど

その命令に反対することも出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

神の死を知り涙を流すアーシア・アルジェント。

 

以前まではこの光景が何よりも好き

だったけど、今は全然食指が動かない。

 

ココで僕が優しい言葉でもかければ

好感度は上がるんだろうけど、ハッキリ

言って僕は英雄殿一派に関わりたくない。

 

ココでこの子と仲良くなっても絶対に

赤龍帝が絡んでくるだろう。

 

親しくなって無駄に接点を増やすくらい

なら恨まれて疎遠になった方が百倍以上

マシだ。

 

そう思い紅茶を飲む。

 

彼女のすすり泣く声にウザさを感じ

始めたとき、神殿の最奥であるココに

転移してくる者が居た。

 

転移陣に浮かび上がる紋章はベルゼブブ。

 

「聖女を嬲るのは良い趣味だと思うが流石に

時間をかけ過ぎだな。さっさとソレを祭壇に

設置してもらいたいのだが?」

 

自称真なる魔王様の一人、シャルバ・ベルゼブブが現れてそんなことを言って来た。

 

僕が情事の最中ならどうしてたんだよ。

 

はぁ・・・こんな連中に仲間面される

のも面倒だ、いや、もう良いのか?

 

アーシア・アルジェントも突然現れた

シャルバに驚き、グズって泣いてた目を

こすって必死に取り繕おうとしている。

 

まぁ手遅れだけど。とは言え僕は僕のやる

べきことをやろう。

 

「そう言えばシャルバ殿、アノ祭壇だが

破壊された場合はどうなるのかな?」

 

急にそんなことを聞いていた僕に、

おかしなモノを見るような目を向ける

シャルバ。

 

「そんな目をしないで欲しいな。外には

北欧の主神であるオーディンが居るんだよ?

ソレに対してコレは神滅具で造ったとはいえ、

所詮は人間が作ったモノだ。

破壊される可能性は十分あると思わないか?

いや、破壊なら良い、その効果を無効化

されたり別なモノにされたらどうする?」

 

「・・・何だと?」

 

考えもしなかったのだろう。驚きで

目を見開くシャルバには真なる魔王様

としての威厳が足りないように思える。

 

「例えば効果範囲。フィールド全体では無く、

特定の誰かに変更される可能性は無いか?

そもそも回復とはそう言うモノだろう?

あとは効果もだな。範囲が広くなった分薄く

なっては意味が無い。

神滅具で増幅すると言っても限度があると

思うのだが?下手をすれば我々が一方的に

全滅することになる。

そんな賭けが出来るほどこの神器を作った

霧使いは信用出来るのかな?」

 

そう問いかければ、シャルバは無言で黙ってしまう。

 

人間の作った装置よりも、北欧神話の

主神であるオーディンの方を恐れるのは

ある意味当然の発想だ。

 

今更と言うかも知れないが、今回の計画は

そもそもが杜撰な計画から立ち上がったモノ。

 

不安材料はいくらでもある。

 

そして人間を信用できるか?と言われて

コイツが「出来る」と答えるハズが無い。

 

「・・・貴公の言いたいことはわかった。

当然の疑問でも有る。ならばどうする?」

 

シャルバもココで下手に装置を動かすのは

危険と判断したようだ。

 

だからと言ってココで何もせず計画を

潰すわけにも行かない。

ならどうする?そう問いかけてくるのは

当然のことだ。だからこそ僕も当然の

事を言おう。

 

「オーフィスにオーディンを殺して貰えば

良いでしょう。正直かの御仁は無気力に

過ぎる。今のままでは『飽きた』と言って

別の場所に行くやもしれませんし、他の

勢力と交渉される可能性も有ります」

 

もしソレをされればコイツ等は支柱を

失い滅ぶことになる。

そんな屈辱を受け入れるようなことは

無いだろう。

 

「なるほど。オーディンを殺すことで

この装置に対する干渉を防ぎ、さらに

別の勢力との交渉も出来なくなるか。

うむ・・・見事な策だ」

 

最善ならそうなるだろうね。とにかく

コイツ等は自分が可愛いから、もしも

人間のせいで自分が傷付く可能性が

有ると思えば、その可能性は徹底的に

潰そうとするとは思ってたけど、まさか

こんなに簡単に行くとはねぇ。

 

部下たちが殺られている?そもそも

時間稼ぎ要員だし、コイツ等がそんなの

気にするはずが無い。最終的に自分が

生き延びて、計画が成功すればソレで

良いんだからな。

 

「オーフィスに指示を出そう」そう言って

転移していくシャルバを冷たい目で見送る。

 

後はオーディンが結界を解析するか

破壊してくれるかを待つか、向こう

からの合図を待てば良いだろう。

 

オーフィスがコイツ等に従ってオーディンを殺したら?

 

まぁ、その時は大人しく彼女を祭壇に繋げるさ。

 

ソレもこれもアイツがオーフィスのいる

場所までたどり着けたらの話だ。

 

だからアイツについてはもういいや。

 

「とりあえずアーシアさん。聞いての通り

暫くは大丈夫だ。向こうで少し休むと良い。

あぁ仮眠をとるなら歯を磨いておきなよ?

来客用のが有るし糸楊枝や高周波のヤツも

有るから、しっかりとね」

 

「は、はぁ」

 

何か呆けてるけどアレかな?悪魔だから

虫歯が怖くないとか、神器で治るとか思って

るのかな?

 

歯周病やら何やらならまだしも、虫歯は

日々の浸食だから、神器では治らないと

思うんだけどなぁ。

 

まさかわざと虫歯になるような不衛生な

状態にするわけにもいかないから実験も

難しいよね。

 

もし虫歯が治せるレベルの能力なら、彼女

一人で人間社会を牛耳る事が可能だよね?

 

実験を提唱してみるか?

 

まぁ今はいいや。

 

とりあえず仮眠でも虫歯菌は増殖するから、

予防できることはしっかりと予防するべきだ。

 

ついでに口臭もね。

 

エスプレッソの匂いがする囚われのヒロイン

と言うのも間抜けだし。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・お前自身が出張って来るとはな」

 

「アザゼル。久しい」

 

 




当たり前のように戦うことなく戦争から排除された原作主人公一行。邪魔で迷惑だから引っ込んでろと言う大人の意見ですね。

少し前の描写ではオーディンですら侵入が精一杯
なはずの結界なのに、アザゼル総督は入るのは
何とかなるとか言うんですよ?
せめて同じ巻の中くらいは設定守れと言いたい。


つか悪魔至上主義の旧魔王派の悪魔が、
人間が突貫工事で作った装置を信じて
作戦の根幹にしますかね?

原作だと英雄と紳士のゲームまでの
日数はたったの5日ですよ?

反転は実験段階だし、元聖女の回復が
凄いって言っても、それだって作戦の
根幹にするにはありえないでしょう?

一体どんな精神状態だったのやら・・・


とうとう現れた偽ロリ。
作者は彼女をロリとは認めません!ってお話




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83話

総督と無限接触ッ!

どうなるアザゼル!どうするアザゼル!

そして無双するオーディンに魔の手が迫る!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!




ーーアザゼル視点ーー

 

まさかいきなりオーフィスと邂逅するとはな。

 

神殿に向かい飛んでいた時、ファブニールの

宝玉が淡く輝き、このフィールドの隅っこ

の方に反応を示していたんだ。

 

その反応に胸騒ぎを覚えた俺は、こうしてココに

飛んできたのだが・・・

 

そこにいたのは一人の少女。

 

腰まである黒い髪に、黒いワンピースを着て、

細い四肢を覗かせている。

 

見た目は少女だが、隠しきれない不気味な

オーラがコイツの正体が無限の龍神である

と教えてくる。

 

少女は端正な顔つきだが、無表情で神殿の

方をじっと見ていた。

 

「・・・お前自身が出張って来るとはな」

 

その少女に向かい俺がそう言えば、神殿を

向いていたオーフィスは俺に視線を移し、薄く笑う。

 

「アザゼル。久しい」

 

久しい?こいつに時間の概念なんかあったか?

それに笑う?なんだ?俺の知ってるオーフィス

とは随分違うが・・・

 

「前は老人の姿だったが、今回は黒髪少女ってか?

何があったかは知らんが・・・何を考えている?」

 

コレが俺の知るオーフィスなら、何も考えず、

ただソコに在る存在なんだが、今のコイツは

自身の渇望を持ち、ソレを叶えようとする意思

を持っている。

 

ならばココにも何かしらの意味が有って

現れたんだろう。

 

「シャルバ・ベルゼブブからの依頼。我の

邪魔をするオーディンを殺しに来た」

 

「・・・?!」

 

最悪だっ!確かに今の俺たちはコイツの

邪魔をする存在。

 

そしてこのフィールドに於いて、連中の

狙いを妨害出来る唯一の存在でもある。

 

シャルバとやらは何一つ嘘を吐いていないし、

説得や交渉が出来る相手じゃねぇ!

 

それにココでオーディンの爺さんが

殺されたら、結界の解析や神野に対抗

するための研究が滞ってしまう!

 

その上、北欧神話が混乱するってか。

 

そもそも襲撃があることを前提にして

いたから、オーディンを殺されても俺たち

の勢力としては問題ないかもしれんが、

それに納得できない連中だって居るだろう。

 

その結果は、統率が取れない北欧神話群の

内乱と、俺たち三大勢力への敵対。

 

クソッ!小僧め!自分が勝った後どう

なるか考えもしねぇってか?

 

それとも敵対者はオーフィスに殺させるか?

どちらにせよ厄介な策を思いつきやがってっ!

 

「さすがに見逃せねぇな・・・ココでお前を倒せば世界は平和になるかね?」

 

どう考えても勝てねぇ。ソレはわかってる。

だがなんとかしねぇとダメだ。

 

最善は時間を稼いでる内にオーディンの

爺さんが結界の解析を終えて逃げてくれる

ことだが・・・そもそも時間を稼ぐのもキツイ相手。

 

さて、どうする。頭の中を全力で回転させて

対策を考えていくが、どう考えても答えがでない。

 

「無理。アザゼルでは我を倒せない」

 

侮蔑でもなく、嘲笑でもない。当たり前のことを当たり前に告げるオーフィス。

 

確かにそうだ。だがココでこいつを止める

ことが出来れば、禍の団に対して

大ダメージを与えることが出来るんだよな。

 

そうなれば神野の狙いを一つ潰すことが出来るだろう。

 

いやまて。

 

「なぁオーフィス。お前、オーディンを殺しに来たんだよな?」

 

「然り」

 

俺が確認を取れば、オーフィスは特に異論も挟まずに肯定する。

 

「じゃあ何でここにいる?何故今すぐに

オーディンの側に行って殺さない?」

 

おかしいだろ?コイツは嬲るだの警戒すると

いうことはない。

 

殺すと決めたならさっさと殺す。そういう存在だ。

 

それなのにこんなフィールドの隅っこで

何してんだ?

 

「・・・我が転移してきたのがココだった。

そしてオーディンの近くに転移できない。

さらに言えばこの空間内で転移が出来ない

ようになっている」

 

オーフィスの言葉に俺は驚愕した。

 

あのオーフィスの行動を阻害するほどの

結界を造れるモノが禍の団に居るだと?!

 

驚く俺を尻目に、オーフィスは続ける。

 

「とは言えこの程度なら問題ない。ここから

殺そうと思ったらアザゼルが来た」

 

ぜ、絶妙のタイミングってわけかよ!

自分がココに来たタイミングが如何に

神がかっていたかを知り、人知れず

冷や汗を流す。

 

しかしアレだな。

 

オーディンの爺さんを殺す前に、こうして

俺と会話をする程度の情緒があるのなら、

このまま会話で時間稼ぎが出来るかもしれねぇな。

 

俺の思考が戦闘から時間稼ぎにシフト

したとき、オーフィスの真横に魔法陣が

出現し、何者かが転移してくる。

 

オーフィスは真横に現れたモノに特に何も

感じていないようで、転移してくる者の

邪魔をしようとはしない。

 

つまり禍の団の一員ってわけだ。

 

そして転移してきたのは一人の貴族服を来た男。

 

そいつは俺に一礼し、不敵に笑んだ。

・・・目は笑ってねぇがな。

 

「お初にお目にかかる。俺は真の魔王の

血を引く者。クルゼレイ・アスモデウス。

禍の団の真の魔王派として、堕天使総督

である貴殿に決闘を申し込む!」

 

あぁ、コイツがアスモデウスの子孫。

 

クーデターの首謀者の一人がこうして態々

俺の目の前に出てきてくれたというわけか。

 

俺は頭をポリポリと掻きながら、呟く。

 

「旧魔王派のアスモデウスか。ベルゼブブはどうした?」

 

カテレアは俺が葬った。ルシファーはヴァーリ

とそのオヤジにジジイ。

 

なら残りはベルゼブブだろう。そう思い

尋ねたんだが・・・

 

オーフィスにオーディンを殺すよう依頼した

シャルバ・ベルゼブブ。

こう言う奴が潜んでるのが一番危険なんだよ。

 

確認するや否やドンッと言う音と共に魔力を纏うアスモデウスの子孫。

 

オーラがどす黒い。つまりすでに

オーフィスの蛇を飲み込んでいるってことか。

 

敵の目の前でドーピングするような

阿呆ではないと言うことらしいな。

 

「旧ではない!真なる魔王の血族だ!

アザゼルよカテレア・レヴィアタンの

仇を討たせてもらうっ!楽には殺さんぞッ!」

 

あぁん?コイツ、カテレアの男か何かか?

小僧の情事なんざどーでも良いが、今回の

首謀者の一人を殺せるならソレで良い。

 

問題はオーフィスだが・・・

 

「オーフィス!アザゼルは俺に任せて

もらうッ!貴様はオーディンを殺せッ!」

 

その声を受けて神殿の方向に手を向ける

オーフィス。

 

ちっ!さすがにココまで離れた距離からの

狙撃なんか受けたら、オーディンの爺さん

がやべぇぞ!

 

さらに攻撃するのがオーフィスとなればなおさらだ!

 

何とかして止めねぇとっ!

だがオーフィスの説得は不可能。

 

ならば狙いは仮にでも手綱を握る目の前の小僧だ!

 

「まてクルゼレイ・アスモデウス。そもそも

このフィールドはオーフィスの攻撃に耐えれる

強度があるのか?オーフィスが殺意を込めて

放つ攻撃の余波はどれほどだ?それに俺たちは耐えられるのか?」

 

情けねぇ話だが、多少の距離があった

ところでオーフィスの攻撃は周囲一体を

灰燼と化す攻撃力が有るだろう。

 

いや、フィールドごと消し去る可能性が高い。

 

その可能性を示唆すれば、保身に長けた小僧なら恐らく・・・

 

「・・・ちっ!確かにその心配はあるか。

オーフィス、俺がアザゼルを殺すまで

攻撃は保留だ。

その後でフィールドごと殺せばいい」

 

オーフィスとすれば結果的に爺さんを

殺せればソレで良いのだろう。

 

クルゼレイの言葉に対し、特に何を

言うでもなく頷き、神殿に向けていた

手を静かに下ろした。

 

これでよし。爺さん!さっさと結界を解析して逃げろよ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー???視点ーー

 

 

「・・・グングニル」

 

何度目かの投擲を行えば、オーディンの

放った百発百中の槍は確かに目標を消滅

させていた。

 

進行方向には槍の軌跡が残り、その槍が

放られた先に居た悪魔は消えている。

 

数十で足りないならと、百人近くで

纏まり、防御シールドを張ったが、

それすら貫かれた。

 

英雄を殺すための場に、突如として現れた

オーディン。ソレを討ち取って名を揚げようと

して、その周囲を囲んでいた千に近い悪魔たち。

 

すでにその数は半分以下となっていた。

 

彼らは自分たちが挑んだ北欧神話の

主神の強大さをまざまざと見せ付けられ

ることになり、その士気はもはや完全に

崩壊していると言ってもいいだろう。

 

なにせ攻撃を加えれば魔法で相殺され、

逆に反撃を喰らって殺されるのだ。

 

殺そうと思えば全滅させることも可能な

オーディンが、何故こんな胡乱な手を

取っているのか。

 

リーダー格の悪魔は、オーディンの狙いが

自分たちの士気の崩壊にあると目星を付けた。

 

自分たちが攻撃をすれば反撃を受けて殺される。

 

ソレを確信してしまえば、オーディンに

攻撃を仕掛けることが出来る悪魔は居なくなるだろう。

 

そうやって心を折ることで自分たちを

降伏させて実績とする。

 

ソレを以て今後の統治を楽にしようという

のが、オーディンをこの場に差し向けた

サーゼクスの狙いなのだろう。

 

敵の狙いに気付き思わず歯噛みするが、

ソレを知ったところで彼らにはどうする

こともできないと言う現実に突き当たる。

 

何故なら目の前の神が強すぎるからだ。

 

恐らく自分たちが掲げるシャルバ達よりも。

 

いや、もしかしたら自分たちの最終目的である

サーゼクスよりも強いのかもしれない。

 

準備不足で挑んで良い相手では無かった。

 

指揮官の悪魔はそう後悔する。

 

だが・・・彼らにはまだ一つ希望がある。

そう、今回禍の団が用意した、例の罠だ。

 

アレが発動すればこのフィールド内の

()に甚大なダメージが与えられる!

 

そうなれば北欧神話の主神と言えども

ひとたまりもない。

 

だからこそ我々はアレが発動するまで

時間を稼ぐことにするのだ。

 

今のオーディンはこちらから攻撃しない

限り反撃してこない。

 

ならば我々はオーディンを抑え込めていると言えるだろう!

 

乾坤一擲の戦でソレだけの偉業を成した

となれば、作戦成功時に自分に齎される

であろう報酬は如何程のモノか。

 

第一目標である英雄は逃がしたが、ソレを

補って余り有る戦功ではないか。

 

黙っているだけでソレが転がり込んで

来ると言うなら悪いことではない。

 

そう考えて、部下や協力者に距離を取り

散開するよう指示を出そうとしたが・・・

 

「いい加減にせい」

 

自分を含めたオーディンの周囲に散開していた

全ての悪魔が、彼によって放たれた極大の光に

包まれ・・・ソコで悪魔の意識は途絶えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーオーディン視点ーー

 

 

舐めた真似をしてくれる・・・

 

儂の放ったグングニルは確かに地を抉り、

進行方向に居た悪魔たちの障壁を貫いていた。

 

じゃが誰一人とて殺してはおらぬ。

 

殺す前に転移させられていたのじゃ。

いや、コレは転移と言うよりは悪魔どもの

ゲームのシステムにあるリタイアに近い。

 

ともかく、儂ですら解析出来ていないこの

結界の中で、転移を可能にする者が儂を

観察しておったのじゃ。

 

故に放った全方位への攻撃魔術。

 

中級だろうが上級だろうが、儂にしたら

等しくゴミよ。

 

ただ転移の技術を見定めるために

小刻みに攻撃していただけに過ぎん。

 

「ほほう。流石は北欧神話の主神殿。

見事な魔術ですな」

 

誰ひとり居なくなった空間にそう言って

現れたのは、黒い軍服のような服を着た

目つきの鋭い黒髪の男。

 

知的でありながら確かな力を感じるその

姿は、戦う前から一廉の存在であることを

確信させるには十分な存在。

 

しかも儂の前に立つと言うのに恐怖心の

欠片も見られぬ。

 

さもありなん。こやつは儂の攻撃を観察し、

ソレから悪魔共を避難させることが出来る

存在なのだから。

 

「見たところ悪魔のようじゃが・・・貴様も

旧魔王派とやらの悪魔か?」

 

だとすれば間違いなく幹部。

 

サーゼクスの小僧に匹敵する悪魔が敵に

居るとは聞いとらんが・・・

 

「まさか。私は彼らとは違います。

どちらかといえば現魔王派でしょうね」

 

肩をすくめる様子には儂と戦おうと

する気配がない。

 

いや、いきなり豹変する可能性もあるから

簡単には判断できんのじゃがな。

 

「ならば何故アヤツらを避難させた?

旧魔王派はテロリストぞ?ソレを

守るなら貴様とて同罪ではないか」

 

先だって、大王派とか抜かす、旧魔王派では

なくともテロリストを支援したとして

滅ぼされた家があると聞く。

それと同じ扱いを受けることになるじゃろう。

 

そう聞けば

 

「然り。故に私は彼らを避難させたので

はなく捕らえたのですよ。

なにせタダでさえ数が少ない悪魔の中で、

多少主義主張が違うからと殲滅されては

種の保存が出来ません。

それに彼らは所詮兵士です。心が折れ、主が

居なくなれば民に戻すことも可能でしょう?」

 

・・・言ってることはわかる。

 

悪魔の数についての問題は深刻らしいし、

テロリストもそのような扱いなら労役を

課すという形で助命もできる。

 

それに情報を収集すると言う意味もあるのだろう。

 

「更に北欧神話の主神であるオーディン様に

何かが有れば外交問題です。

サーゼクス・ルシファー様がオーディン様に

依頼を出したのは知っておりますが、流石に

胡乱ではないかと思いましてね。

悪魔の内乱に北欧神話の主神殿を関わらせる

だけでも恐れ多いのに、その上『英雄』の

保護のために同胞を殺させるなどありえません」

 

うむ。言ってることは完全にこの悪魔が正しい。

 

貸し借り以前の問題じゃ。

 

まぁ儂としては、この「入ることは

出来ても出ることが出来ぬ」という

結界に興味が有ったから依頼を受けたがの。

 

本来ならば拒否して外で高みの見物をしておるわ。

 

「言いたいことはわかった。お主の言う

通りじゃろう。

しかしじゃな。儂はお主の様な者が居るとは

聞いとらんぞ?」

 

そもそもコヤツが居れば儂に依頼を出す

までもなく連中は救えたじゃろ?

 

それに態々儂のグングニルに隠れて悪魔を

避難させた理由の説明にもならん。

 

「あぁ、今回は魔王様方が自分でケリを

つけたいとか言ってましてね。

私には今回の作戦への参加命令は出されて

いないのですよ。

・・・こうして来賓の方々の手を煩わせて

いる時点でダメだという事に気付いていない

のが問題ではありますが、今までの傀儡から

脱却し、少しずつ自らの足で前に進もうと

しているのを見ればソレもまたシカタナイと思えます」

 

・・・保護者かの?

 

「では今まで隠れとった理由は?」

 

「オーディン様の攻撃の解析と観察ですね」

 

ほっ!臆面もなく言い放ちおったわ!

 

策士で有りながら爽やかさすら感じ

させるのは、行動に対するこやつなり

の芯が有るからか。

 

ある意味でロキに近い存在。

 

人間なら間違いなく勇者と言えるじゃろう。

面白い悪魔も居たもんじゃ。

 

じゃが今はこの悪魔よりも先に確認

せねばならんことがある。

 

「聞くが、お主らはすでにこの結界の

解析を終えたと見て良いのかの?」

 

そうでなければ転移で避難させることなど

出来んからのぉ。

 

「ん?あぁ、オーディン様はまだ結界の

核となる部分を見ていないようですな。

アレを見ればこの程度の結界など直ぐに

解析出来ますよ」

 

やはりそうか。

 

結界の中から結界を解析するよりも、結界を

構築している核を確認出来れば解析も容易い

と言うのは当然の話。

 

ならばその核とやらに案内してもらおうとするが・・・

 

「本来ならオーディン様にもお見せしたい

所ですが、残念ながら貴殿にはここより

退出していただきます」

 

「なんじゃと?!」

 

その核を確認し、術式を解析しようとした

儂に対しその悪魔がそう言い放ちおった!

 

知識の独占か!?この儂を相手に?!

 

これだけの強固な結界を造れる術式を解析

すれば、北欧神話としても十分な利益となる。

 

それゆえに悪魔としてもこの技術の漏洩を

防ぐというのはわかるが、目の前に馳走を

置かれてお預けを喰らうような真似を

させる気はないし、こうして儂を派遣して

おきながらそのようなことをしてくるなら

正式に抗議することも辞さんぞ!

 

殺気を込めて悪魔を見やるも、その悪魔は

苦笑いをするだけ。

 

「知識に貪欲なのはわかります。今回の

ご無礼の補填として術式をそちらに提供

するのも構いません」

 

ん?儂を追い出すのは知識の独占ではないというのか?

 

その言葉を聞き殺気を収め、首を傾げる

儂をみて更に苦笑いを深める悪魔。

 

「困った爺さんだ」と言わんばかりの

態度にイラつきを覚えるが・・・

 

「オーディン様が狙われております。

向こうに居るヤツを感じませんか?」

 

そう言って神殿とは別方向を指差す悪魔。

言われてそちらに遠見の術をかければ、

フィールドの端に居るのはアザゼルの小僧と

ソレと対峙する見知らぬ悪魔。

 

そして・・・

 

「オーフィスじゃと?!」

 

黒い服を着た少女の姿をしたモノが、

こちらをじっと観察しておった!

 

奴の視線は儂に固定されていて、狙われていると言うのも嘘では無いだろう。

 

あの距離からの狙撃、いや、オーフィスに

したら距離など関係ない。

 

フィールドごと破壊するような一撃が

見舞われるところじゃったという事か?!

 

「おわかり頂けましたか?旧魔王派が

玉砕覚悟でオーディン様を狙って居れば

すでに貴殿のお命はありません」

 

連中が己の命を惜しんでオーフィスに

攻撃をさせていないと言う事か・・・

 

その隙に避難しろというのは正しい。

 

「じゃがのぉ。さっさとココから退避した

ところで、儂がオーフィスに狙われて

おるのは変わらんじゃろ?

追跡されたらどうせよと言うんじゃ?」

 

「悪魔に関係ないところで勝手に死ね」と

言うなら態々先程のような外交問題云々は

言わんじゃろ。

 

何かしら算段があるはずじゃ。

むしろなかったら死ぬ。

 

「現在オーフィスが貴殿を狙うのは、

旧魔王派がそう依頼したからでしょう。

それらはココで全滅しますので」

 

なるほど、依頼人がいなくなれば殺し屋も

その刃を下げるか。

さらにオーフィスには拘りや仇討ちと

言う発想もないじゃろうしのぉ。

 

「ふむ。なるほどのぉ。では世話になるとしようかの」

 

ココで下手に抵抗してもオーフィスに殺されるだけじゃ。

 

それならさっさと避難するわい。

 

その上で後ほどサーゼクスを通じてコヤツ

から報酬を取り立てる方がマシじゃろうて。

 

「ご決断に感謝を。では元のVIPルームに

転送致します。

周辺の掃除は終わっているのでご安心を」

 

・・・手際の良いことじゃのぉ。

転移の魔法陣の上に立ち、コヤツの

構築する術式を観る。

 

ふむ、核に干渉して鍵を開けるタイプか。

コレはコヤツが言うとおり、核を見れば

直ぐに解析出来るのぉ。

 

自分が神殿に行くべきだったと後悔

するも、後ほど術式がもらえると言う

ならと思い直し、ぐっと抑える。

 

「あぁ、そうじゃ、お主の名を聞いとらんかったの」

 

こやつは最初からある程度の礼儀を

守っておったが、名を名乗ることは

無かった。

 

まぁ魔王の配下である悪魔が、主君の

許可なく儂に名を売るような真似は

できまいよ。

 

それ故に、名を聞かれるまでは一人の

悪魔として接すると言うのは当然の礼儀。

 

じゃがその当然の礼儀のわかる悪魔と

言うのは珍しい。

 

報酬の取り立てに必要と言うのもあるが

その名を聞いておこうと思ったんじゃ。

 

「オーディン様に名乗るのも烏滸がましい。

ただの悪魔で結構・・・とは言えませんな。

オセ。リシュヴァーユ・オセと申します」

 

オセ。そうかコヤツが・・・

 

様々な噂を聞くが、所詮は悪魔の貴族の

一人と捨て置いたが、なかなかどうして。

 

人間の解釈では儂が聖書の陣営によって

貶められた姿とも言われておるが・・・

 

「うむ。そう言われれば儂の若い頃に似ておる!」

 

転移の光と不思議な満足感に包まれて儂は

その場を脱することとなった。

 

しかし転移の直前、儂の褒め言葉を受けて

奴が微妙な顔をしたのは気のせいに違いあるまい!

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー???視点ーー

 

 

『いやはや。あのオーディンですら騙す

なんてねぇ。やっぱり主は凄いねぇ』

 

半ば感嘆、半ば呆れの感情でソレは言う。

 

「まぁそういう能力だからな。あとは任せた」

 

『了解了解』

 

その言葉と同時に黒い軍服を着た、

先ほどオセと名乗った悪魔は蟲によって喰い尽くされた。

 

・・・つい先程まで「主」と呼んだ相手を

喰らったと言うのに、その残骸に目もくれず

ソレはアザゼルらの方を向く。

 

『さぁお仕事お仕事っと』

 

にたぁと言う擬音が聞こえてきそうな

醜悪な笑顔を浮かべて、ソレは消えた。

 

そこに残ったのは数匹の蟲と、オセとは似ても似つかない悪魔の残骸であった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「部長!やっぱり俺、納得できませんッ!」

 

「イッセー・・・」

 

 

 




この時のオーフィスってロリっつーか
普通の少女なんすよねぇ。

笑うし、受け答えもするし。
帰り際「楽しくなるぞ」とか言うし。

兵藤家に来た時、何故あそこまで退化したのか・・・

オーディンに迫る(悪)魔の(救いの)手

まだ彼は殺さない模様。


ーー次回予告ーー

お願い!死なないでアザゼルッ!あなたが
ココで倒れたら冥界はどうなるの?!
英雄は誰が教育するの?!
アジュカの胃はまだ残ってるッ!
ココで耐えれば神野に勝てるんだからッ!(え?)

次回、クルゼレイ死す! デュエル・スタンバイ!ってお話


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84話

戦火に巻き込まれぬよう避難していた
英雄に対し忍び寄る赤い影!

その声は「このまま隠れてて良いのか?」
「それでもお前は英雄なのか?」と英雄
を戦場と言う名の地獄に誘おうとする!

ソレは何を狙っているかはわからない。
だが英雄を地獄に誘う声に対し、英雄を
己の主君と定めた狼が、その主君を守る
ため高らかに吠えるッ!



オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーー兵藤一誠視点ーー

 

「部長!やっぱり俺、納得できませんッ!」

 

神殿の隠し部屋に避難している中、俺は

部長に詰め寄っていた。

 

「イッセー・・・」

 

部長も納得してるわけじゃない。だけど

邪魔するなって言われて、ソレを正しいと

認めてしまってるからこそ動けないんだ!

 

「イッセー君の気持ちは分かりますわ。

だけど私たちが下手に動いたせいで、逆に

アーシアさんが危険に晒されてしまうかも

しれないのですよ?」

 

朱乃さんは俺にそう言って、俺を

落ち着かせようとしてくれるが、

そもそもアザゼルが言ったことが

信用できねぇんだよッ!

 

「大体、アーシアを保護したって言い

ますけど、誰が保護したって言うんですか?!」

 

あの時はその場の流れで何も言えなかった

けど、おかしいだろ?!

 

「・・・確かに。総督殿は朱乃に言われる

までアーシアが攫われたことは知らなかった。

それなのにアーシアがすでに保護されてると

断言したのは何故かしら?」

 

そう、それだよ!

 

部長は俺の言いたいことを理解してくれた

ようで、その考えを口に出す。

 

「言われてみれば不自然ですわね。さらに

ディオドラ・アスタロトに攫われてから

保護するまでの時間が短すぎます」

 

朱乃さんもその不自然さに気づいたみたいだ!

 

「・・・普通に考えたら嘘よね?」

 

朱乃さんに確認を取る部長。

 

「そうですわね。コレはリアスを戦場

から退場させるための嘘でしょう」

 

そうか、やっぱり嘘だったのかっ!

 

アーシアを助けるとか言いながら、

実際は見捨てようとしてたんだな?!

 

アザゼルの言葉を信じた自分の馬鹿さ

加減にイライラする!

 

「だ、だけど外が戦場なのは事実ですぅ。

リアス部長の安全を最優先したと考えれば

アザゼル先生の判断が間違ってるとは

言い切れませんよぉ」

 

弱々しくも意見を言ってくるギャスパー。

 

確かに部長のことを最優先すれば

そうなるんだろうさ。

 

だけどなぁっ!

 

「なら最初から嘘なんか吐かないで

そう言えばいいのよっ!」

 

部長は自分が馬鹿にされたような気分に

なっているのだろう。

眦を上げて立ち上がる!

 

「で、ソレを言われてたらお嬢は素直に避難をしてたか?」

 

そんな部長に対してルー・ガルーさんが落ち着き

払って部長に意見する。

 

「そ、それは・・・」

 

部長もそれについては自信がないのだろう。

 

俺でもわかる、その場合に部長は絶対にアーシア

を助けるために行動してたってな!

 

「それに勘違いするなよ女王。俺たちが守る

べきはお嬢の眷属ではない。お嬢だ。

アーシア・アルジェントが攫われたのは我らの

油断が原因。その後の総督殿が嘘を吐いていた

としても、ソレを責めるのは筋違いだ。

わかるか?今、俺たちは戦場にいるのだぞ?

誰かを救助する余裕などないし、眷属として

お嬢の命を最優先で守らねばならんのだ。

二重遭難して全滅するなど笑えんぞ」

 

ルー・ガルーさんの言葉を聞き黙って

しまった朱乃さん。だけど今のは

聞き逃せねぇ!

 

「それは、アーシアを見捨てろってことか?!」

 

俺が叫べば、ルー・ガルーさんは俺の方を向き。

 

「ならばこの状況でお嬢を戦場に連れて出すか?

ソコでお嬢が殺されたらどうするつもりだ?

向こうの狙いはお嬢なんだぞ?」

 

ぶ、部長が殺される・・・

 

そう考えれば、俺が納得できないからって

理由でココから出ようとする行為がどれだけ

危険なことかがわかる。

 

だけどアーシアを見捨てることも出来ねぇよっ!

 

「そもそも総督殿が言った言葉が嘘とも限らん」

 

「・・・ソレはどういうことかしら?」

 

部長も自分が死んでも良い!とは言えない。

 

何故なら部長が死ぬってことは他の

眷属全員が死んでるってことだからだ。

 

そして俺が絶対に守る!とも言えねぇ。

だってそう誓ったはずのアーシアを

目の前で攫われてしまったから。

 

だから、部長はなんとかなる方法を

考えているんだろうけど、その為の

情報が足りないんだ。

 

だから今はどんな情報でも欲しいって

感じなんだろうけど、こんな時にも冷静な

ルー・ガルーさんが俺たちを本当に仲間

だと思ってるのかどうかが不安になるぜ。

 

「お嬢、もしもの話だが、あの場で

アーシア・アルジェントが攫われて

なければどうなっていた?」

 

そんな例え話をしてくるけど・・・

もしもあそこで攫われてなかったら?

 

「あっ!」

 

朱乃さんが声を上げた。

えっと、どうなるんです?

 

部長も朱乃さんの意見を聞こうと目を向ける。

 

「・・・悪魔たちの一斉砲撃で殺されるか、

アーシアさんを守るために誰かが身代わりに

なって死んでいた可能性が高いです」

 

「「あっ!」」

 

ソレを聞いて俺と部長も声を上げる。

 

ダメージなら癒せるけど、あの場でアレ

だけの悪魔から一斉攻撃を受けたら、

治療する前に消し飛んでる可能性が高い。

 

アーシアの運動神経じゃ回避とかも難しい。

 

ソレはアーシアだけじゃなくギャスパーも

一緒だけど、ギャスパーはなんだかんだで

高い魔力が有るし強力な神器が有るから、

なんとかなる可能性は高いんだよな。

 

だけどアーシアは無理だ。回避も防御も

出来ねぇ。他の誰かが守る必要がある。

 

ソレを考えれば、あそこでアーシアが

攫われたのは良い事だったってことになっちまう。

 

「じゃ、じゃあディオドラはアーシアを守る

ためにあそこから連れ出したと言うの?!」

 

部長も同じ結論に至ったのだろう。

愕然とした表情でルー・ガルーさんを見る。

 

「可能性の話だがな。先ほど総督殿も今回の

件はアジュカ・ベルゼブブ様が情報を持って

いたと言っていただろう。

そしてアスタロト家はベルゼブブ様の実家。

ソレを考えれば、すでに保護していると言う

言葉と、引き上げるのに多少の手間がかかる

という言葉も繋がってくる」

 

な、なるほど。最初からディオドラは魔王様の

命令で動いてた可能性が有るってのか?!

 

「で、でもソレはおかしいでしょ!

それならディオドラが私たちを挑発

する理由が無いじゃない!」

 

そ、そうだよな?それなら最初からそのことを

俺たちに言えば、それだけで済む話だろ?

 

「こうしてテロリストを釣る為には、お嬢と

彼は敵対していた方が都合が良いのだろう。

何せ俺たちは『英雄』として連中を釣る餌だ。

だがお嬢に演技なんかできないだろう?

それにあそこで下手にディオドラがスパイだと

知られれば、ディオドラもアーシアも命を

狙われることになる。

更に言えば・・・彼は神殿に来いと言った」

 

え、演技はともかく、そうだな。

 

確かに神殿に来いって言ってたぜ!

 

だからこそ俺たちはアソコを爺さんに任せてここに来たんだからな!

 

「おかしいだろう?千を超える上級や

中級の悪魔に囲まれた俺たちが、どう

やってあそこから神殿に到達できる?

ディオドラとて最初は囲まれた俺たちに

「一方的な粛清」と言っていた。

ソレが次の瞬間に「神殿に来い」だぞ?

矛盾どころの話ではない」

 

「「「確かに」」」

 

俺を除く三人が頷く。

 

えっと・・・つまり?

 

「つまり、今はディオドラがアーシアを

保護してるのよ。粛清する相手は私たち

ではなくて、向こうの旧魔王派の連中。

そしてこの戦場で一番安全なのが神殿の

中にあるココや、神殿の奥ということね」

 

部長の言葉が耳に入るが、理解が出来ない。

 

い、いや、だって、そんなの。

 

「なるほど彼がスパイと考えるなら総督が

言ったことは嘘ではなくなるし、バレない

限りはアーシアさんは無事です。

下手に我々が向かって不自然さが出てしまえば

アーシアさんも我々も危険に晒される」

 

朱乃さんもディオドラがスパイ。つまり

こっちの味方って考えに納得しつつある

 

「い、言われてみれば、アーシアさんが

攫われたとき、ディオドラさんは先輩の

ギフトで増幅された副部長の攻撃を見て

「アーシアさんが死ぬだろ」って言って

相殺してました・・・」

 

た、確かにそうだ!

 

あの時は何も考えて無かったけど、下手したら

アーシアが巻き添えになってたんだよな。

 

「落ち着けば分かることだ。だからお嬢。

今は勝手な判断で外に出るべきじゃない。

最低でも総督殿と連絡をとってからに

するべきだろうよ」

 

ルー・ガルーさんはそう言って、また

壁に背を預けて入口付近を見ている。

 

そうか、アレは格好をつけてたんじゃなく、

侵入者が来ないかどうか見張ってたんだ。

 

あの人が俺たちを仲間だと思ってない?

とんでもねぇ。あの人は常に最善の

行動を取って俺たちを守ってたんだ!

 

それにアーシアが無事な可能性が高い

なら俺たちがすべきは、部長を守ることだ!

 

俺はギャスパーと頷き合い、部長を守る

ためにどうすれば良いかを朱乃さんや

部長を交えて話し合うことにした。

 

 

 

(はぁ・・・所詮は憶測だというのに、よくも

まぁ簡単に信じられるものだ。

とりあえず。ヤツが敵で有ってもあの様子なら

何回かヤられるだけだろ?死にはしないだろう

から、あとは魔王様や総督殿に任せておこう)

 

 

 

 

 

 

 

ん?今ルー・ガルーさんが何か言ったような?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

とりあえず俺の敵はこの小僧のようだな。

 

敵の幹部である以上容赦はしねぇ。

情報はすでに有るから生かす理由もねぇしな。

 

つーか、さっさと殺してオーフィスの

脚を止めねぇと、最悪VIPルームに居る

連中全員が殺されることになる。

 

つまり・・・さっさと殺すッ!

 

「一瞬で終わらせるぞ」

 

俺はファブニールの宝玉を取り出し、例の短剣を構える。

 

「行くぞ小僧!禁手化ッ!」

 

次の瞬間、俺は金色の全身鎧に包まれていた。

その姿を見て満足げに頷くクルゼレイ。

 

バカが、仇だと言うなら隙を見せずに殺しに

くれば良いものを。

 

中途半端な保身と中途半端な誇りが

キサマらの勝機を完全に無くしてる

ことに何故気付かんのだ。

 

態々指摘する気もねぇ。

 

だが、さっさと終わらせようとする俺の隣に魔法陣が現れやがった。

 

また邪魔者か?と思ってその紋章を見れば

・・・そうか、お前が出てきたか。

 

転移陣から現れたのは紅髪の魔王。サーゼクス・ルシファー。

 

「サーゼクス、何故出てきた?」

 

お前は元々向こうのVIPの護衛だろうが。

 

「今回、私は妹を政治の世界に巻き込んで

しまった。さらにいつもアザゼルに任せ

きりでは悪魔としての体裁も保てないだろう?」

 

まぁ、ソレはそうだ。

 

悪魔のクーデターだってのに堕天使の俺が

その幹部を片付けるってのもおかしな話。

 

普通に考えれば堕天使に対するヘイトが

溜まるからな。

 

前回のカテレアは俺の左腕を奪ったって

言うのが有ったからアレだが、今回は

瞬殺する予定だったし。

 

「サーゼクスッ!忌々しき偽りの存在ッ!」

 

サーゼクスを見て激高するクルゼレイ。

だがお前はカテレアの仇討ちをしに

来たんじゃなかったのか?

 

さっき申し込まれた決闘はどうなる?

ココで不意打ちされたら死んでるぞ?

 

所詮は碌な戦を知らねぇ小僧だ。

そう思うと溜息が出るぜ。

 

あ~とりあえず禁手解除しとくか。

 

全身鎧を解除した俺は、茶番となることが

確定したサーゼクスとクルゼレイの会話に耳を傾けた。

 

「貴様がッ貴様さえいなければッ!」

 

いや、アジュカはどうした?

 

実際、旧魔王派を打倒したのはサーゼクスとアジュカだろ?

 

まぁセラフォルーやファルビウムも活躍したわけだが・・・

 

「クルゼレイ。矛を下げてはくれないだろうか?

今なら話し合いの場も用意も出来る。

前魔王の血筋のモノたちを辺境に隔離した

ことは、まさしく愚行だったと反省している」

 

オセの演説で言われたからなぁ。

滅ぼすか懐柔するかをハッキリするべきだったんだ。

 

政治の実権を持ってなかったと言うのも

あるだろうが、それ以前にお前らは勝者

として中途半端過ぎたんだよ。

 

「ふざけないでもらおう!天使や堕天使と

手を結ぶ貴様に悪魔を語る資格などない!」

 

だからこんなヤツが出てくるんだ。

 

「お前らの中にも天使や堕天使は居るだろ?

さらに人間や他の神話群の連中も」

 

鏡で自分を見ろ。そういう意味を込めて

皮肉を言ってみるが、こう言う奴には

無意味ってのが定番だが・・・

 

「はっ!我々は連中を利用しているのだ!

自らの名で立つことも出来ん!直接貴様や

ミカエルに意見を言うことも出来ぬ雑魚

に何ができる?!相互理解?和平?不要だ!

連中は我々が支配することで正しく天使や

堕天使足り得るのだ!」

 

おぉ。思ったよりまともな反論に驚いたぜ。

しかし確かにソレはあるよな。

 

コソコソと技術の漏洩とかするくらいなら、まず俺に文句言えよって話だ。

 

教会の連中も、天使に文句は言えなくても

教会内部では随分と議論してるしな。

 

ソレを考えればウチは随分とセコイ。

 

俺らにとっては情報と技術の流出は

痛いが、それだけでは力を前提とした

連中の中では出世なんざ出来ん。

 

そりゃコイツ等に利用されて終わるぜ。

 

連中に味方する俺の部下たちの情けなさに溜息が出そうになる。

 

そんな俺とは別の意味で、サーゼクスは

悲しい目をしている。

 

同じ悪魔でもココまで価値観が違えば

交渉なんかできねぇよ。

 

わかりきったことでも、どうしても

止められないのだろう。

 

「クルゼレイ。私は悪魔という種を守りたい

だけだ。民を守らねば種は繁栄しない。

甘いと言われてもいい。

私は未来ある子供たちを導く。

今の冥界に戦争は必要ないのだ」

 

サーゼクスが語った道は、悪魔のために戦争が

必要と判断するオセとは一線を画した考え方。

 

王としてはわからないでもないが、はっきり言って悪魔としては異常だ。

 

だからこそ普通の悪魔であるクルゼレイには届かない。

 

「甘いッ!なにより稚拙な理由だッ!ソレが

悪魔の本懐だとでも思っているのか?!

悪魔は人の魂を奪い、地獄へ誘い、神と天使

を滅する存在だ!」

 

これだけ聞けば向こうが言ってることが

正しく聞こえるのが不思議だぜ。

 

「魔王とは、ルシファーとは全てを滅する

悪魔の王!その名を名乗りながら何故隣の

堕天使に矛を向けんのだ!

ソレが悪魔への背信行為となぜわからん!」

 

敵意を漲らせるクルゼレイに悲しい目を

向けるサーゼクス。

 

これが現魔王と旧魔王の子孫の最後の話し合いとなった。

 

クルゼレイから目を逸らし、オーフィスへと

向けたサーゼクスはオーフィスへと問いかける。

 

「オーフィス。貴殿との交渉も無駄なのだろうか?」

 

それに対するオーフィスの返答は

 

「我の蛇を飲み誓いを立てることだ。

もう一つ、冥界周囲に存在する次元の狭間の

所有権。ソレを全てもらう」

 

服従と冥界の閉鎖か。中々シビアだが考えようによっては悪くない。

 

閉鎖したあとでオーフィスの許可を取り、

回廊のようなモノで直通させる方法を

生み出せば、次元の狭間で静寂を貪る

オーフィスに迷惑をかけることなく外に

出れるだろうし、そもそも種の保存と

言うなら鎖国は悪い選択ではない。

 

外敵からの侵攻もオーフィスが防ぐ事に

なるから、特に問題ないだろう。

 

蛇を飲んだ場合でも、そこのクルゼレイのように、絶対服従というわけでもないようだしな。

 

少しの間考える俺とは違い、サーゼクスは

その条件を飲めないと判断したようだ。

 

天を仰ぎ瞑目し、次に目を開けたとき・・・

ソコには冷たい意思を持つ魔王が居た。

 

ソレを確認したクルゼレイは距離を取り

両手に魔力の塊を溜めていく。

 

つーかよぉ。その敵の準備を律儀に待つのって

のはどうなんだ?悪魔貴族の嗜みなのか?

 

俺の疑問を他所に、向こうは完全に戦闘状態となった。

 

「・・・ん?」

 

クルゼレイとサーゼクスを見ていたオーフィスが、急に戸惑ったような、困惑したような声を上げた。

 

「そうだ!それでいい!その方がわかりやすいのだよサーゼクスぅ!」

 

オーフィスの態度に疑問を覚えたが、すぐ近くで

生じる魔力の衝突に備えることを優先する。

 

そもそもクルゼレイは最初からこうする

予定だったんだ。

だからこそ話し合いなんか最初から無意味。

 

ソレを知っていながらも、語りたかった

のかもしれんな。

自分の想いを、冥界にかける想いを。

 

サーゼクスは右手を突き出し、ソレを上に向ける。

 

そこに集まるのはサーゼクスを象徴する消滅の魔力。

 

「クルゼレイ。私は魔王として、今の冥界に敵対するモノを排除する」

 

「貴様がッ!魔王をッ!語るなぁぁッ!」

 

サーゼクスの宣誓に対し、怒りと共に

掃射される無数の魔弾。

 

数は多いが、一発一発は俺が禁手化を

する前の段階の攻撃力より低い。

 

つまり3等から4等程度だ。

これではサーゼクスに通じない。

 

俺はそう確信したし、ソレは眼前で証明されていく。

 

ガォンッ!ギュンッ!

 

サーゼクスの撃ち出した小型の魔力弾は

クルゼレイが放つ魔弾を消滅させ、その

威力を保ったまま奴を葬り去ろうと

向かっていく。

 

ソレを障壁を張って防ごうとするも、障壁

ごと削られ、慌てて回避に回るクルゼレイ。

 

その中の一つがクルゼレイの口の中に入っていった。

 

その後すぐにドウッ!と言う音と共にクルゼレイの腹が一瞬膨らみ、その魔力が急激に下がっていく。

 

俺はソレを見てサーゼクスのやったことを理解し、そして驚愕した。

 

そりゃそうだろう?何せコイツは、クルゼレイの

体内に有ったオーフィスの蛇を打ち消しやがったんだ!

 

「殲滅の魔弾。腹に入っていたオーフィスの

蛇を消滅させてもらった。

コレで絶大な魔力はもう使えないだろう」

 

ボソリと呟くサーゼクス。その事実に

恐れ慄くクルゼレイ。

 

いとも簡単にパワーアップの源を消滅

させられたことで、先程まで余裕を

見せていたクルゼレイの表情には明確な

焦りと怯えが見える。

 

コレがサーゼクスが使う消滅の魔力か。

 

初めて本物を見るが・・・なるほど。

かなり厄介な代物だ。大きさは小さいが

その威力は絶大。さらにピンポイントで

狙ったモノを消滅させる技術は見事の一言。

 

完全に自分の魔力をコントロールしてやがるぜ。

 

・・・だが、腹の中の蛇を消すくらいなら、

頭を飛ばせば終わってたんじゃね?

 

そう思うが、きっとアレだ。

体内に入った蛇を消せるかどうかの実験だろう。

 

・・・ん?しかしソレが当たり前に出来たって

ことは、コイツはオーフィスの蛇を取り込んだ

場合、その蛇が体内のどこに行くかとか、蛇が

どんな形で相手を強化をしているのかってのを

理解してるってことだよな?

 

ぶっつけ本番にしては確信があったみたいだし。

 

どこでどうやって実験したかは気になるが、

ソレ以前に、蛇を消せるなら別にオーフィスの

出した条件を飲んでも問題ないのでは?

 

コイツの趣味?いやしかし・・・

 

疑問が疑問を生む中、向こうは終幕を

迎えようとしていた。

 

「おのれ!貴様と言いヴァーリと言い、

何故ルシファーはこうも恵まれた力を

持っているのに我らと相容れないのだっ!」

 

そうか、やはりヴァーリはこいつ等と

相容れないか。

 

一応他の勢力にはヴァーリがルシファーの

血を引くものだと説明してるし、今は

連中の誘いに乗ったフリをして二重スパイ

をしているってことになってるからな。

 

こいつ等と下手に仲良くしてて、守りに来なくて良かったぜ。

 

どうやら元気そうだし。一安心ってとこだな。

 

俺は胸を撫で下ろすが、向こうは

そういうわけにもいかん。

 

最後の力を振り絞ろうとしたクルゼレイの

腹をサーゼクスの魔力が貫通する。

 

致命傷だ。

 

「な、なぜ・・・本物が偽物に負けねばならないッ!!」

 

血涙を流しながらも未だ手に魔力を

込めようとするクルゼレイに対し、

サーゼクスは瞑目し、手を横にゆっくりと薙ぐ。

 

その瞬間、宙を飛び回る無数の滅びの

魔力がクルゼレイに向かい、そして

消滅させた・・・かに思えた。

 

だがっ!

 

『ソレはねぇ。君が弱いからだよぉ』

 

バクンと言う音とともに姿を消したクルゼレイ。

 

そしてクルゼレイが居た場所には、サーゼクス

の消滅の魔力すら打ち消した、黒い修道服の

ようなモノを来た長身のモノが・・・

 

「神野ぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

その醜悪なモノを認識したと同時に、俺は

光の槍をソレに投げつけていた!

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

ソレは醜悪だった。

 

『いけないなぁサーゼクスくぅん。殺すなら

しっかりと相手を見ないと駄目じゃないかぁ。

そもそもなんで即死させずに苦しめるんだい?』

 

アザゼルの攻撃を無視して、ソレはサーゼクスに語りかける。

 

ソレは醜悪だった。

 

体は黒く、目は赤く。髪は金。その姿に

オーフィスまでもが眉を顰める。

 

ソレは醜悪だった。

 

声を聞けば怖気が走る。あれだけ偽善者だの

甘いと罵倒されても怒りを見せなかった

サーゼクスでさえ、声を聞くだけで思わず

攻撃を仕掛けてしまいそうになる程に。

 

ソレは醜悪だった。

 

空気を腐らせ、大地を腐らせ、天を腐らせる。

 

ソレは醜悪だった。

 

その腕には腕と足と腹を失ったクルゼレイが、

未だに苦しみに悶えながらも生きていた。

 

腹に空いた穴に蟲を入れられ、されど死ねず、

蟲によって体内を喰われる痛みと恐怖に

先ほどとは違う意味での血涙を流し、慟哭していた。

 

ソレは醜悪だった。

 

全てを愚弄し、全てを嘲笑い、全てを腐らせる。

 

ソレはまさしく真なる悪魔。

 

「神野ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

三者の前に現れた、三大勢力を滅ぼさんとする悪意の具現者。

 

『やぁアザゼルくぅん。相変わらず元気そうで何よりだねぇ』

 

ソレは第八等指定廃神・蝿声厭魅(さばえのえんみ)

 

 

 

ここに地獄が顕現した。

 




英雄が出ると思った諸君。残念だったな!
英雄は常識の檻の中に入ったのさ!

ちなみに原作では「死ね、さっさと死ね」
の後に神殿に来いと言うディオドラ君。

大丈夫か?

常識に囚われた英雄なんか 毒にも薬にもならないんだよってお話

クルゼレイ死んでない!(予告通り)

偽ロリが転移出来なくてシャルバが転移できる理由は次回ですな。



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85話

神野君とオーフィスが邂逅するとき、ナニかが怒るっ!(誤字に非ず)

紅茶をキメてる紳士の元に現れる悪魔の影。
紳士は悪魔の誘惑を乗り越える事が出来るか?


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!



ーーアザゼル視点ーー

 

『いやぁ。可哀想な悪魔君だねぇ。悪魔と

しては何一つ間違ったことは言ってないのに

魔王様に逆らったが故に、貰った力も失って

腹に穴を開けられて、散々に嬲られた上で

殺されそうになるなんてさぁ』

 

俺からの殺意を軽く受け流し、手の内にある

クルゼレイを甚振りながらサーゼクスを煽る神野。

 

そのクルゼレイは体内を蟲に喰われる痛みに

襲われ、されど死ねず。ただ呻き声を上げるている。

 

「・・・ッ!」

 

その言葉に歯を食いしばるサーゼクス。

実際、蛇の力を消す必要はなかったし、

あの力が無くなった以上は腹を抉る必要も

まるでない。

 

妹の『英雄』みてぇに大きめの魔力で全体を

消滅させれば終わりだったんだ。

 

嬲ったと言われても反論はできねぇだろう。

 

だがそんなことはどうでも良い!

 

問題は俺らがコイツに対して何の準備も

出来てねぇってことだ。

 

さっきは勢いに任せて攻撃しちまったが、

やはり全く効いちゃいねぇ。

 

サーゼクスの消滅の魔力も、クルゼレイの

手足と一緒に喰われた。

 

つまりサーゼクスもコイツを殺せねぇってことだ!

 

あとはオーフィスだが、そもそも神野は・・・

 

「無貌。久しい」

 

心持ち目付きを険しくしたオーフィスが

神野に話しかける。

 

久しい?あぁ、神野は裏で禍の団を操って

たって話だからな。オーフィスとは直接の

接触をする必要もねぇか。

 

『やぁオーフィス。相変わらずつまらない

渇望を抱えてるねぇ。

って言うか何だいその格好?禍の団の中に、

老人だった君を少女にして着飾らせるような

倒錯した趣味のヤツでも居たのかい?』

 

「「・・・」」

 

俺たちが気になってしょうがないことを

いとも簡単に聞いてのけやがった!

 

憧れはしねぇが凄ぇとは思うぜ!

 

「この姿の方が我の望みを叶えやすいと言われた」

 

誰だよそんなことを教えたヤツは?!

 

『あぁ、もしかしてアレかい?ハニトラ的な

意味も有るけど、無知であどけない老人なんか

キモいからって理由で吹き込まれたかな?』

 

神野はそう言いながらゲラゲラと笑う。

 

まぁ、偉そうにふんぞり返るなら爺の方が

良いかも知れんが、普通に会話するとなると

コッチの方がマシかもしれんよな。

 

あとは庇護欲的な感じか?赤龍帝あたりなら、

爺には目もくれねぇが、今のコイツなら話

くらいは聞こうと思うかも知れねぇ。

 

ソレを考えればこの格好もわからなくはない。

・・・いや、そうじゃねぇ!

 

オーフィスとの会話に気を取られたが、重要

なのは、コイツはオーフィスを裏で操っては

居るが仲間じゃねぇってことだ。

 

まぁそもそもコイツが誰かと仲間になるなんて

事はねぇけどよ。

 

「それで、何故ここに来たのだ?」

 

怒りを隠そうともせずにサーゼクスが問う。

殺すつもりだったとは言え、今も神野の

腕の中で苦しみにもがくクルゼレイの姿は

我慢がならないのだろう。

 

・・・元々こいつが遊んだのが原因だがな。

 

サーゼクスの問いに、何を今さらと言わんばかり

の目を向ける神野。

 

『僕の渇望はねぇ。君たち聖書の陣営が苦悶と

絶望の果てに滅ぶことさぁ。ならばこの悪魔君

だって苦しめる対象になるだろぉ?』

 

「ぐっォォォォォ?!」

 

クルゼレイの傷口に指を突っ込み、そのまま

掻き乱す事で更に痛みを与えていく。

 

絶え間なく続く痛みに気を失いそうになるも、

ソレを許さない絶妙の力加減で痛みを与え続け、

その慟哭を聞いて愉悦に浸る神野明影。

 

確かにヤツの渇望を考えれば、旧魔王派の悪魔

こそ人間が恨みをもつ悪魔とも言える。

 

ならば苦しめるのは道理ってか?!

 

「これ以上の冒涜はさせんっ!」

 

さっき以上の魔力を纏い神野へ、いや、その

腕の中に居るクルゼレイへ向けるサーゼクス。

 

普通なら避けるか防ぐだろう。だがコイツは

そんな次元の相手じゃねぇぞっ!

 

『滅びの魔力ねぇ・・・馬鹿じゃない?』

 

心底つまらなそうなモノを見る目で、神野は

あっさりとサーゼクスの魔力を掻き消した。

 

「なっ?!」

 

何のリアクションも起こさずに自らの力を

消されたサーゼクスが驚愕の表情を浮かべる。

 

『いや、何を驚いてるのか知らないけどさぁ。

所詮はバアルを起源とする悪魔の魔力だよ?

悪魔の祖たる僕にソレが通用するわけ無い

じゃないか。スルトを炎で焼こうとするよう

なモノって言えばわかりやすいかい?』

 

煽るでもなく、ただただ事実を述べるのは、ソレが一番サーゼクスに効くと確信しているからか?

 

実際に己の力を正面から破られたサーゼクスは、

目を見開き、完全に思考停止をしているようだ。

 

力の象徴として悪魔を率いるサーゼクスの力が

一切通用しないと言うのは、コイツにとっての

存在意義の崩壊に等しい。

 

しかしソレはサーゼクスの過信だ。

ルシファーらしく言えば傲慢か。

 

サーゼクスの魔力が通用しない相手なんざ

神野以外にも居るんだよ。

 

たとえばソコのオーフィスもそうだ。

 

そう思ってオーフィスの方を見れば、ヤツは

神野に向かって魔力を放出するところだった!

 

「やべぇ?!」

 

クルゼレイに言ったように、オーフィスが

殺意を持って放つ攻撃は俺たちとは桁が違う!

フィールドは持たないだろうし、俺たちも

余波で死ぬっ?!

 

無駄だと思いつつも障壁を張る。しかしソレは

俺が予想もしない形で無駄となった。

 

『つまらないねぇ』

 

回避しようが防御しようが、例えどんな形で

あれこのままならこのフィールドごと消滅

するだろうと言う威力が込められた極大の

一撃は、神野がそう呟くとなにも無かったかの

ように消え去った。

 

自分の攻撃に対して、防ぐだの流すだのではなく

消すと言う荒業を行った神野に、オーフィスも

目を見開く。

 

『ん~何したかわからないって顔してるけど、

所詮君って存在は馬鹿力を放出するだけの存在

だからねぇ。一定以上の実力があるなら君への

対処法は簡単なんだよねぇ。

・・・つまるところ君じゃ僕は殺せないよぉ』

 

無限と言われた龍神の攻撃を事も無げに

消し去ったバケモノは、笑いながらそう告げた。

 

『因みに僕も君を殺せないけど、今の君なら

壊すことは出来るよぉ?中途半端な渇望を

抱えた事を後悔しながら壊れてみるかいぃ?』

 

最悪だ・・・何をしたかは知らねぇが、神野が

オーフィスですら勝てねぇバケモノだったとは。

 

それに一定以上だと?つまり今のヤツは本来の

八等の実力が有るってことか?!

 

まだ一ヶ月程度しか経ってねぇのに何故ッ?!

 

俺が必死で考えている間にも、オーフィスは再度

攻撃を行おうとしている。

その表情には嫌悪のようなモノが宿っていて、

明らかに神野を拒絶していた。

 

『いや、ワンパターン過ぎるんじゃないかな?

まぁ今まで我慢を知らなかったんだろう?

工夫を知らなかったんだろう?新たに芽生えた

感情のままに振る舞う有り様は正しく小娘。

はっきり言えば君は世俗に浸かりすぎたね』

 

そう言いながらヤツはオーフィスの攻撃を受け、

無効化して行く。

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!惨めだねぇ~。

無限?最強?グレートレッドに勝てない君が?

静寂も獲られず、力も獲られず、知識も協力者

も獲られず、ひたすらに世界を歩き回り、無駄に

汚れただけの君が?自惚れはいけないねぇ~』

 

オーフィスを指差して嘲笑う神野。

 

「うるさい」

 

ソレに対して、更に明確な殺意を込めた攻撃を放つが・・・

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ!』

 

ヤツはその攻撃を飲み込むかのように消していく!

 

どんな原理かは知らねぇが、ヤツにはどれだけ

強力な攻撃でも通常の攻撃が効かねぇらしい。

 

こんなヤツどうしろってんだよ・・・

 

だが諦める訳にはいかねぇ!コレほどの存在を

相手にコカビエルは立ち向かったんだ!

堕天使の未来を俺に託して逝ったんだッ!

 

自分に活を入れ、諦めそうになる自分を奮い立たせる!

 

「・・・なぁ神野よぉ。今回のてめぇの狙いが

そこのクルゼレイを苦しめてサーゼクスを

からかうことってんなら、もう一人の旧魔王派の

シャルバはどうなんだよ?」

 

まずは時間稼ぎだ。情けねぇ話だが、今は

どうやっても勝てねぇからな。

 

それにだ、さっきはクルゼレイを苦しめるのが

目的とか言ってたが、実際の狙いはサーゼクスだろう?

 

俺が確信を込めて言えば、サーゼクスは驚いた

顔で俺を見て、神野はニタリと笑うことでソレ

を肯定した。

 

とりあえず、今のコイツは俺たちを殺しに来た

わけじゃねぇ。

 

なら何とかして別の標的を見つけてもらい時間を

稼ぐ必要が有る。

 

『彼かい?彼はもう少し惨めな思いをしてから

こうしてあげようと思ってさぁ~』

 

「アァァァァァァァァァァ?!」

 

目に指を突っ込まれ苦悶の声を上げるクルゼレイ。

 

ソレを見てサーゼクスは悲痛な表情を浮かべ、

オーフィスは通じない攻撃を続けている。

 

明らかに苛立つオーフィスだが、その攻撃は

工夫と言うものがなく、ただただ強力な

攻撃を高速で放つだけ。

 

普通の相手ならそれで即殺だろうが、

相手はオーフィスと同格のバケモノ。

 

吸収なりなんなりをしているなら許容量を

超過すれば倒せるだろうが、コイツの場合は

そうじゃないだろう。

 

と言うか、既に連中は次元が違う戦闘を行って

いて、何をしてるかすらわからねぇ。

 

ただ、オーフィスが感情に任せた攻撃を加えていて、神野がソレを消しているのだけはわかる。

 

当然俺に手が出せるような状況でもない。

 

あの詠唱さえ解読出来ていればっ!

 

意味の無い仮定では有る。それにヤツは一度

アレを受けて今は対策もしているだろう。

 

それでも、アレを使えるかどうかは大きな違いだ。

 

ここでヤツを止めなければ、ヤツを止める手段が

ねぇ俺たちはずっとヤツの影に怯えて過ごす事に

なるだろう。

 

更に言えば、オーフィスと戦えるだけの力を持つ

コイツなら、オーディンの爺さんやゼウスの

オヤジすら殺せるんだ。

 

今は俺たちを標的にしているから良い。

 

いや、俺たちの協力者ってだけで殺される可能性が有るか。

 

そうなった場合、主神を失った連中の恨みはどこを向く?

 

特にギリシャなんざ「誘いに乗った自分が悪い」

などと言うような連中じゃねぇぞ。

 

つまり神野だけじゃなく、俺たちに対しても敵対

行動を取るはずだ。

 

なんせヤツが現界したのは俺たちのせいだからな。

 

ここで何とかしねぇとダメだ!だがコイツを倒す

ためにはどうすればいい?

 

何が必要だ?考えろ!怒りに任せて動くな!

 

今はクルゼレイを痛め付けることでサーゼクス

をからかって遊んでいるから、クルゼレイが

死ぬまでは時間が稼げるはずだ!

 

更に攻撃を続けているオーフィスにだって、

何かしらの対処はしているはずなんだ。

 

故にまだ時間はある。考えろ!どんな

強力なヤツにだって弱点は有るんだからなっ!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

 

アーシア・アルジェントが奥の寝室で仮眠を

とっている間に、僕の元にアジュカ様から

作戦完了の合図が来た。

 

どうやらクルゼレイもこの場に現れたらしい。

いやはや、流石は英雄殿。

 

一人で旧魔王派の幹部連中を釣り上げたよ。

コレはアレだ。黄金ダンゴ並の集客力だね。

 

いや、結局はアレを英雄として使おうとした

オセ様がここまで考えてたと言うのが妥当な

ところだと思うけど。いやはや、ここまで

アッサリと成果を出されたら驚くしかない。

 

逆らうなんてとんでもない!ってところかな?

 

さて合図も来たことだし、そろそろ動くかな

と思ったところで、丁度良く魔法陣が現れる。

 

そこから現れたのは当然シャルバだ。

 

「ディオドラ殿。オーフィスは動き出した。

準備を急いでもらおう」

 

再度僕が居る神殿の最奥に転移してきた

シャルバがそんなことを言ってきたが、

やはりコイツ理解していない。

 

「ん?あぁ、そうだね。それじゃやってくれ」

 

こちらにも合図があったし、もう擬態する必要はない。

 

そもそもオーフィスが殺意を持って動いた

なら既に僕たちだって消し飛んでるだろうに。

 

そんな事すらわからないから貴方達は勝てないんだ。

 

「・・・何を?」

 

コイツが転移してきたことも計算通り。

 

まぁ無駄にプライドが高いコイツらが、

オーフィスを動かそうとして、彼の気分を

害して殺されたり、他の派閥の連中に

阻まれる可能性も有ったらしいけど、

こうして現れるのも予想の範囲内。

 

つまり・・・モウニゲラレナイ。

 

何も無い空間に声をかけた僕を訝しげに見るシャルバ。

 

だが次の瞬間その目は見開かれることになる。

 

「了解。『結べ蜻蛉切』」

 

その声と同時に、何かが光り、そして……

 

ガラガラガラ

 

音を立て、神殿の最奥に設置された祭壇が、

後ろの壁ごと切断された。

 

「なっ?!」

 

どういうことだ?何があった?破壊不能ではなかったのか?!そんな事を考えているのだろう。

 

目の前で起こった不可解な現象に、驚きを隠さないシャルバ。

 

つーか敵の目の前で動きを止めてどーするのさ。

さっさと逃げるか戦うかを選ばないと・・・無意味に死ぬぞ?

 

椅子に座り、紅茶を飲みながら、未だに動きを

止めている「自称真なる魔王様」の醜態を見る。

 

敵の目の前で無防備に立つ。

 

ソレがどれだけ危険なことかわかってないのだろうか?

 

「『獅子には肉を 狗には骨を 龍には無垢なる魂を』今宵の虎鉄は血に飢えている!」

 

「な、後ろだとッ?!ぐぉぉぉぉ!」

 

呆然としていたシャルバは突如現れた鎧武者に背中を斬られた。

 

言わんこっちゃない。

 

「ディオドラ!貴様裏切ったのかッ?!」

 

この期に及んで何を言うかと思えば・・・

遅い。遅すぎる。

 

「いや、最初に裏切ったのは貴方達でしょう?

この装置を起動したら、間違いなく僕だって

死ぬじゃないですか」

 

フィールド全体に神にも損傷を与えるレベルで大ダメージを与えるんでしょ?

 

一悪魔に過ぎない僕が耐えれるとは思えないね。

 

「なっ?!貴様っ!!」

 

驚くシャルバに更に声をかける。

 

「今回の襲撃でサーゼクス様の妹である英雄を

討ち取り、さらにアジュカ様の実家である

アスタロト家を貶め、その上で来賓たちに

ダメージを与える事で完全な決別を狙ったの

だろうけど、そもそもが堕天使の開発中の

技術を人間の神滅具で補強すると言う、正直

どこに勝算を見出だしたかわからない策が

成功すると思い込めたのは凄いと思うよ?」

 

自分の策が見破られていたことが信じられない

のか、いまだに目を見開いて僕を見るシャルバを

見ていると、自分も一歩間違えばあんなサンシタ

になって居たんだと言う事がわかり、冷や汗が

流れてくる。

 

だけどココはもう終局だ。コイツに生き延びる道はない。

 

「特に反論が無いってことは、彼にはこれ

以上の策も情報も無いようだね。それで、

捕らえるかい?それとも殺すかい?」

 

ココで死ぬか、ソレとも尋問されて死ぬかの違いだね。

 

サーゼクス様ならともかく、アジュカ様や

ファルビウム様はコイツに遠慮なんかしない

だろうし。

 

鎧武者にそう尋ねれば、彼は無言でカタナを構える。

 

どうやらココで殺すようだ。

 

「後ろからの奇襲を当てた程度で図に乗るな!」

 

そう言いながらシャルバが懐からオーフィスの

蛇を取り出す・・・迂闊だねぇ。

 

「『結べ、蜻蛉切り』」

 

再度聞こえた声と共に、オーフィスの蛇が

容器ごと切断された。

 

「何だとッ?!」

 

ドーピング剤を破壊されて目を見開くが、

態々敵を強化なんかさせるはずが無いだろ?

 

それに、敵が鎧武者の彼だけだといつから錯覚していた?

 

「すまねぇが仕事でな。お前と遊んでる暇はねぇんだわ」

 

そう言って僕の横に現れたのは、二メートル程

の大男。その表情は布袋に隠れて見えないが、

隙間から覗く目は、明らかにめんどう臭そうな

雰囲気を放っている。

 

気だるげに槍を持つその姿は、隙だらけの

ように見えて一切の油断も慢心もしていない。

 

「その姿、貴様がコカビエルを破り、ヴァーリを

一蹴したと言うYOSHITUGUかッ?!」

 

・・・あぁ、彼がゼファードルだってのは

一応秘密だったね。

 

ついでに言えば、いまだに20にもならない

グラシャラボラスの若僧にそこまでの力が

有るはずか無い、って言うのが旧魔王派の連中の

言い分らしい。

 

ファルビウム様を認められないなら、その

血族も認められないよな。

 

それはアジュカ様の親族である僕も同じなんだろうけど。

 

「俺が何者でもお前には関係ねぇ。殺してやるからさっさと首を出せ」

 

そう言いながら槍を向けるゼファードル。

 

本来なら姿を見せずに殺せた筈なのに、態々

こうして姿を現したのは、彼らの戦闘訓練も

兼ねているのだろう。

 

中途半端な実力者を追い詰めて確実に狩る

訓練でも有るかもしれないけどね。

 

傷を負い、強者二人に挟まれたシャルバは、冷や汗を流しながら退路を探している。

 

だが、ココはすでに転送禁止だ。

ボスキャラからは逃げられないのさ。

 

逃げ場が無いと理解して焦るシャルバを見てると

自然と口元が緩んでくる。そうか、コレが愉悦か。

 

因みにシャルバはオーフィスの蛇が無ければ、

大戦を生き延びたコカビエルよりもずっと弱い

と思うんだけど、その辺はどうなんだろうか?

 

血の滲むような鍛練でもしてたとか、何か

秘密兵器が有ると言うなら調査するべき

だとは思うけど・・・まぁいいや。

 

勝敗の見えた戦いに興味を示すこともなく、

僕は少し冷めてしまった紅茶を飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし英雄殿が邪魔しに来ると思ったけど、何も無いな。

 

そのことに対して心底ありがたいと思うけど、

不安も有る。

 

とりあえず胃薬と頭痛薬の準備だけはしておこう。

 

 

 

 




神野さんに煽られてオーフィスが怒るの図。

まぁ普通に笑ったり、グレートレッドに対して
指で銃を作ってBANする情緒が有りますからね。

相手をイラつかせる存在である神野さんに
対して素直な悪意をむけてしまうのは
シカタナイネ。

サーゼクスさん。何を言ってもブーメランである。

紳士の元に現れた謎の槍使いと鎧武者の
正体とは?!

次回、シャルバ死すっ?!

因みに虎鉄は誤字ではありませんってお話。



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86話

苦戦した・・・

何故タイミングよくクルゼレイのところにサーゼクスが出てくるのか。

そして何故ディオドラの方へ援軍が一人も居ないのか。

まさかディオドラに向こうからの援軍が
一人も来なくて、さらにアザゼルが
リアスに頼まれたから誰も送りませんでした!
なんてアホな理由は無いだろうし・・・

それならそもそもオーディンを一人で
働かせることに疑問を抱くでしょう?

ソレに原作主人公が覇龍になった時にも誰も来ないし。

何故だ?戦争目的が正義だからか?

この矛盾を作者なりに説明することがスゴク難しかった。


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!


ーーアジュカ視点ーー

 

ゼファードルが装置の基幹部分を破壊した

ことで禍の団の策は根底から覆された。

 

こちら側に攻め込んできた連中も片付けたし、

本来ならディオドラ達を後退させて、俺が

シャルバを討ち取れば良いのだが・・・

 

「あ~やっぱり無理だ。入れないや」

 

ファルビウムがそう言って両手を挙げた。

 

俺やセラフォルーがサーゼクスが組織した援軍と

共に向こうへ突入しようとしたが、向こうは侵入

が出来ないようになっている。

 

更に、ディオドラが仕掛けた通信機から神殿

内部の映像や音声は届くが、サーゼクスやアザゼル

とは一切連絡が取れん。

 

オーフィスが居たのと、クルゼレイとの会話や

戦闘は見れたが、ヤツに止めを刺す瞬間に映像も

音声も途絶えてしまった。

 

最悪の場合は向こうでアザゼルとサーゼクスが

オーフィスに殺されている可能性も有る。

 

正直焦燥感は有るが、オーフィス相手では俺達が

向かったところで無駄死にだ。

 

元々はオーディンが狙われていたらしいが、

オセからの連絡でオーフィスに狙われていた

オーディンを結界の外に避難させたと聞いて

無ければ、また胃を痛めていただろう。

 

何かあったら外交問題だもんなぁ。

 

なんでサーゼクスは普通にオーディンに戦争への

参加を依頼してるんだよ。

 

ソレくらいならオセを使えと言われるのも無理はない。

 

空間干渉まで出来る配下を抱えているオセの準備

の良さが気になるが、そもそも亜空間に罠を

仕掛ける以上はこのくらい想定するのが当たり前

とまで言われたし。

 

オーディンも普通に納得して自身の軽率な

行動への謝罪をしてきたし、オーフィスの

攻撃からの救助への感謝の意を伝えられたら、

俺達だって納得するしかないよなぁ。

 

ファルビウムも「そりゃそうだよねぇ」って言って凹んでたし。

 

溜め息を吐きたくなるが、今は向こうへと

侵入する方法を構築するのが先だ。

 

何せ結界に使われている術式が先程までとは

まるで違うモノになってしまっている。

 

別室にいるオーディンや、拠点に戻ったオセも

解析に当たっているが、現状は何もわからんらしい。

 

俺は技術者であって魔術師ではないから術の

解析は難しいしな。

 

解析が出来ないなら出来ないなりに動くべき

だが・・・まずはリアスたちの帰還を優先して

行い、それからディオドラやゼファードルの

帰還をさせるか。

 

向こうから戻れない場合は避難させる必要が

有るが、ディオドラとリアスを同じ場所に

避難させて大丈夫なものだろうか?

 

ゼファードルが間に立てばなんとかなりそう

では有るが、本人が嫌がるだろうし、そもそも

リアスが暴走して二人に襲いかかった場合は

正当防衛として殺されるよな。

 

ディオドラは胃薬と頭痛薬を用意してるから

その辺は大丈夫そうだが・・・

 

『陛下方、向こうの結界の解析結果が出ました』

 

向こうにいるディオドラの胃を心配していた

ところ、オセからの通信が入る。

 

相変わらず仕事が早い。

 

オーディンですら解析出来ていないと言うのに。

いや、オーディンは自分の仕事を終えたから、

態々俺達に伝えないだけかも知れんがな。

 

「助かるよ~。それで、どんな感じ?」

 

自嘲している俺に構わず、ファルビウムが

オセに確認を取る。

 

実際問題、サーゼクスにアザゼル、ディオドラや

ゼファードルはココで失うわけにはいかん。

 

もはやシャルバなぞどうでも良いんだ。

 

向こうのフィールドごとオーフィスに殺される

前に何とかして皆を回収したいが、ソレが可能か

どうかすらわからんからな。

 

『現在では介入できません』

 

はぁ?

 

それでは「解析が終わった」という言葉と矛盾するのではないか?

 

俺達が動きを止める中、セラフォルーが再起動し通信機の向こう側に居るオセに確認を取る。

 

「えっと、解析は終わったんでしょ?それでも

オセちゃんが抱える術者が無理だって言うなら、

また北欧に借りを作ることになるけど、再度

オーディン様に依頼を出した方が良いってことかな?」

 

外交担当のセラフォルーとしては頭が痛いだろうが、ソレでも現状打破を優先するなら貸し借りを言っている場合ではない。

 

解析結果を回して貰う必要が有るだろうな。

 

そう思っていた俺に、現状はそんなに生易しい

モノではないと言う事実が突きつけられる。

 

『オーディン様でも難しいかと思われます。

何せ今の向こうの空間は、以前駒王学園にて

アザゼル総督が隔離された結界と同種のモノに

よって外界から隔離された世界となっています』

 

「え?それって・・・」

 

オセの報告にセラフォルーが固まる。

 

だがソレも無理はない。

 

今のフィールドが駒王学園にて展開していた黒い

繭と同種のモノに覆われていると言うことは、

向こうにはソレを展開した術者が居ると言うこと。

 

つまり・・・

 

『はい、向こうにはデミウルゴス。いえ神野明影

が居る可能性が極めて高いと言うことです。

ヤツをなんとかしない限り、こちらからの干渉は

難しいでしょうし、オーディン様も関わろうとは

しないでしょうね』

 

「「「・・・」」」

 

オセから報告された最悪の内容に頭を抱える。

 

アレは確実に神クラス。しかも最凶と言っても

良い存在だ。アレが造る結界を破壊するなら、

ソレこそシヴァレベルの破壊に特化した存在や

オーフィスの様な規格外の力による破壊を行う

しかないだろう。

 

オーディンの知識も可能性の一つにはなる。

 

だが、オセの言う通り現状では北欧神話の主神

として率先して神野明影に関わろうとは思わんだろう。

 

しかし、オーフィスが中に居るにも関わらず

結界が維持されていると言うことを考えれば、

中からでは破壊できない可能性が高いな。

 

かと言って外から破壊するにしても、中の

様子がわからなければ結界と共にサーゼクスや

アザゼルまで殺してしまう。

 

もはや向こうは完全に手詰まりだ。

 

こうなってしまえば、俺達に出来るのは

ディオドラやゼファードルが巻き込まれて

殺される前に回収することくらい。

 

「あ~ソッチはしょうがない。切り替えよう。

それで神殿内部についてだけど、映像や音声が

来るってことはソッチは異界になってないと言うことかなぁ?」

 

ファルビウムはサーゼクス方面を早々に諦め

神殿方面に関する確認を取る。

 

冷酷に見えるかも知れんが、無理なモノは無理と

割り切ることも上に立つモノには重要な資質だ。

 

この切り替えの早さがファルビウムを優れた軍略家たらしめているのだ。

 

それに言ってることもわかる。

 

侵入が阻まれてる以上、何かしらの干渉はされて

いるだろうが、映像や音声が来るなら異界と

言うほどのモノではないだろう。

 

『そのようですね。ヤツが何を企んで居るかは

知りませんが、神殿内部は従来のレーティング

ゲームのフィールドと似たような形になって

いるようです』

 

ファルビウムの問いに対するオセの返答は、条件付きの肯定。

 

「似たような形」と言う表現と「何か企んでいる」

と言うのが引っ掛かるな。

 

いや侵入が難しくなってるのはわかるんだが・・・

 

『向こうへ侵入することはできます。脱出する

ことも出来るでしょう。

ですがその時点で、結界内に侵入した際の

ログのようなモノを取られるようです』

 

「ログ・・・なるほどな」

 

当然と言えば当然だが、厄介な真似をしてくれる。

 

「えっと、ソレが取られるとどうなるの?」

 

内心で歯噛みしていると、セラフォルーが

不思議そうな顔をして聞いてきた。

 

ソレに対するオセの言葉は単純にして明快。

 

『解析されます』

 

これだけだった。技術者である俺にはわかるが

セラフォルーにはピンと来てないようだから

解説しておこう。

 

「駒王学園で、アザゼルやミカエルの光の槍が

無効化されていただろう?我々個人の魔力の

波長やら何やらを解析して、アレと似たような

真似をされると言うことだ」

 

俺の言葉に目を見開くが恐らくソレだけでは

済まんだろう。

 

俺の内心をオセが補足する。

 

『ほかに考えられるケースとしては、あの場に

居た魔法使い達のようにナニカを仕掛けられて

問答無用で喰われますね』

 

そう。コレもアザゼルからの情報だが、本来なら

ヤツの復活まで数ヵ月は稼げた筈だったのだ。

 

その時間がココまで短縮されたのは、あの会談の

場において、魔法使いを始めとした連中や天使に

堕天使、さらに悪魔も喰らったからだと言う話だった。

 

つまり、今ヤツが手を加えている結界の中に転移で

入ると言うことは、ヤツに解析された挙げ句に

体内にナニかを仕込まれる可能性もあることを意味する。

 

「だが、それなら何を企んでるかはわから

ないと言うことは無いだろう?

我々の解析や罠が目的では無いのか?」

 

思ったことをそのまま口に出すが、ソレに

関する答えはオセからでは無く、側に居た

ファルビウムから来た。

 

「アジュカ~。そもそも神野は僕たちを

殺そうと思えばすぐに殺せるんだよ?

それなのに何で態々解析なんてするのさ?」

 

「・・・言われてみればそうだな」

 

ヤツが我々を苦しめる為と言えばそうかも

知れんが、そもそもヤツは我々を生け捕り

にして、永劫苦しめる程度の事が出来る

だけの力が有るののだ。

 

ならば態々解析する理由が無い。

 

『その通りですね。可能性とすれば皆様を

解析し、その情報を魔法使いや敵対組織に

流すことですが、そもそも陛下方が前線に

立つことも稀です。

更に言えばベルゼブブ様の『覇軍の方程式』

は、解析したところで意味がありません』

 

そうだな。今回サーゼクスが出たが、アレ

だって本来なら有り得んことだ。

 

まぁオーディンを動かしている時点で有り得ん事ではあるがな。

 

そしてオセが言う通り、俺の『覇軍の方程式』は俺の魔力を解析したところで意味が無い。

 

セラフォルー辺りはヤバイかもしれんが、

水と氷の解析をしたところで物理現象を

どうにか出来るわけでは無いからな。

 

つまるところ単調な魔力弾は無効化されても

それほど痛手では無いんだよな。

 

俺達を殺す罠でも無ければ、何かを仕掛ける

わけでも無い。

 

それなのに態々ログを取って解析する理由は何だ?

 

オセもソレが判断できないと言うのだろう。

そうである以上、軽々に俺達が動くわけには

行かない。

 

何故なら今の俺達は、ヤツに何が出来て、何が

出来ないのかを把握していないからだ。

 

何かしらの罠を仕掛けていて殺されるだけなら良い。

 

最悪は洗脳されて同士討ちなどさせられた場合だろう。

 

クソっ!今になってサーゼクスが向こうに動いた

ことが重く響いてくる。

 

本来ならサーゼクスは出るべきでは無かったし、

出るならクルゼレイではなくディオドラの方へ

向かうべきだったのだ。

 

アザゼルにクルゼレイを任せるのが嫌だと

言うなら、シャルバを若者に任せて良いワケ

では無いからな。

 

敵意が無いオーフィスとの会話よりも彼ら

若手を優先すべきだろう?

 

それなのに咄嗟の感情で向こうに行って

しまったアイツに説教の一つでもくれて

やりたいが、現状はソレどころではない。

 

今、向こうはゼファードルとその眷族が

押している。

オーフィスの蛇は破壊されているし、

シャルバでは脱出できないような状況では

あるようだから問題が無いように思える。

 

しかし何が有るかわからんのが戦場だ。

油断も慢心もせずに戦闘を行っているが、

ナニカが有れば覆されるだろう。

 

しかしすぐにシャルバを殺さない理由は何だ?

トンボキリとか言ったか?あのカンザシが

作ったであろう疑似神器ならば、オーフィスの

蛇では無くシャルバの首を落とせただろう?

 

大方神器で蛇を斬れるかどうかの試験と、

あの眷属が纏う刀と鎧の一体型神器の調整を

しているんだろうが・・・

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

「・・・」

 

叫び声を上げながら弾幕を張るシャルバに対し、

その弾幕を切りながら無言でゆっくりと間合い

を詰める鎧武者。

 

アレはカタナに魔力を籠めて相殺してるのかな?

なまじゆっくりと来るもんだから、そりゃ怖いよねぇ。

 

しかしシャルバの敵は一人ではない。

 

「そらっ!」

 

正面から迫る彼に気を取られれば、側面や

背後、上下左右問わずに槍が飛んでくる。

 

「ぐっ?!」

 

その槍を回避しようとすれば弾幕が甘くなるわけで

 

「ムンッ!」

 

鎧武者が隙を突いて突っ込んだ!

左片手一本突きと言ったか?

 

特殊な構えから全身のバネを使い、体ごと

突貫する様はまるで狼が獲物を食い破る

かのような印象を受ける。

 

いや、虎鉄と言ったからアレは虎か。

 

「グォォォォォッ!」

 

鎧武者の突貫を左手を犠牲にして回避するシャルバ。

 

「ほう?貴族のお坊ちゃんにしては良い判断だ」

 

ゼファードルがシャルバの行動を褒めるが、

アレは怯えて左手を前に出したら偶然カタナ

を逸らすことに成功しただけだろう。

 

と言うか、眷属を実戦慣れさせると言う

狙いはわかるが、そもそもオセ様たちは

敵を嬲ることを嫌うはずだ。

 

それなのに何故さっさとシャルバを殺さないんだ?

 

僕の視線からソレを読み取ったのだろう。

左手を押さえながら怯えた目で周囲に弾幕を

ばら撒くシャルバを放置して、ゼファードルが

コチラへ戻って来る。

 

「アレは餌だ。俺やゴトウのオッサンの

慣熟訓練も有るが、アレを助けに来る奴や、

祭壇を破壊されたことに違和感を覚えた

連中が出てくるのを待ってんだよ」

 

そう説明を受ければ、なるほどと納得出来る。

 

そういう理由が無ければ「さっさと殺せ」

と言われて地獄を見せられるだろうしな。

 

シャルバが殺されれば転移の起点が無く

なるし警戒させることにもなる。

 

逆にいまだにシャルバが生きてることが、

観測者に対して僕たちの力を誤認させる

事が出来るだろう。

 

ついでに自分たちで捌けないような敵が

出てきたら、小龍姫様辺りが来るんだろ?

 

どう考えても詰みだ。

 

後はオーフィスについてだけど、いまだに

何にも無いと言うことはアレからの攻撃は

無いと見て良いだろう。

 

と言うか、シャルバの相手を若手に任せていいのか?

 

向こうの幹部何だから、コッチも魔王が出て

来た方が良いと思うんだが・・・

 

・・・ッ?!まて!まさかッ!!

 

「ゼファードル!すぐにヤツを殺せないか?!」

 

急に焦って質問したことで、ゼファードル

が怪訝な顔をして僕の顔を見る。

 

「旦那達からは特に決められた時間を稼げと

言われたわけじゃねぇし、実力的に見ても

殺せるか殺せねぇかで言われたら殺せるさ。

だが、さっきも言ったがアレは餌だぞ?

特に理由がねぇなら慣熟訓練に使いてぇ

ところなんだがな」

 

100日の訓練より1回の実戦と言う言葉が

ある。だからこそ実戦の空気の中でどれだけ

やれるかを確認するのは大事なのだろう。

 

コレは油断では無い。地上の肉食動物が、

子供に狩りの練習をさせる為に獲物の

足を折る行為に似ている。

 

つまりは余裕だ。

 

だが、ココで余裕を見せるのはヤバイ!

 

「駄目だ。そんなことをしていたら『英雄』が来るッ!」

 

その言葉を受けて眉を顰めるゼファードル。

先を言えと言うことだろう。

 

「ココに魔王様や魔王様が用意した援軍が

来ないのがその証拠だ。

僕たちだけで十分と考えた可能性も有るが、

万全を期すなら備えをするのは当然だ。

その備えが来ないと言うことは・・・」

 

「『英雄』に手柄をやろうってか?」

 

真顔で頷く僕を見て考え込むゼファードル。

他にも何か理由があるかも知れないけど

物事は最悪を想定して動くべきだろう。

 

コチラにアーシア・アルジェントが居る

以上は『英雄』がココに来る可能性は

低くは無いと思う。

 

そのまま訳の分からない理屈でシャルバを

庇われても困るし、何より僕は連中の顔を

見たくない!

 

胃薬も頭痛薬もあるけど、使わないに越したことはないからな!

 

さっさと目の前のシャルバを討伐して帰還するべきだ!

 

必死にそう言う僕の言葉に納得したのだろう。

 

ゼファードルは一つ頷き、鎧武者と戦う

シャルバに槍を構える。

 

しかし・・・

 

「YOSHITUGUぅぅぅぅ!!」

 

大声を上げて突っ込んでくる白い塊が

ソレを妨害した。

 

ソイツは『英雄』では無いが、無関係でもない。

 

堕天使陣営に所属していて、僕と同じく

二重スパイとして禍の団に所属している

白い龍。

 

「あん?白蜥蜴が、死にに来たのか?

今回は手前を庇うヤツ(コカビエル)は居ねぇぞ?」

 

自分に殺意を向ける白龍皇を蜥蜴扱い

するゼファードルの胆力に関心するが、

それ以上に、このままなし崩しに『英雄』

が出てくるのが怖い。

 

「オッサン!十分だ!さっさとソレを殺せ!」

 

慣熟訓練の相手としては十分だし、

餌としても白龍皇を呼び寄せたなら十分だ。

 

僕と同じ結論に至ったゼファードルが

鎧武者に声を掛ける。

 

問題は二重スパイを殺すわけには行かないと言うことだけど・・・

 

その辺の手加減はゼファードルに任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来るなよッ!絶対に来るなよ!?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この感じ・・・まさか?!」

 

「どうしたのイッセー?急に左手を押さえて」

 

「あらあら。イッセー君も年頃ですものね」

 

「ち、違うっすよ!別に中二的なのじゃなくてですね・・・」

 

 

 

 

 




有り得ないでしょ?オーディンを派遣しておきながらコレですよ?

最低でもグレイフィアくらいは動きますよね?

あんなタイミングよく来て、普通に
クルゼレイと会話をするってことは
しっかり映像か音声は届いてたハズだし。

サーゼクスが動けるってことなら
他の魔王だって動けますよね?

原作の理由は知らないけど、拙作では
神野って奴が悪いんだ!

鎧武者は普通にゴトウさんでしたー。

詠唱は虎鉄繋がりですね。
装甲悪魔ゴトウ。凄い・・・漢だ!

※ゴトウさんの持つコテツは虎徹ではなく虎鉄です。誤字では有りませぬ。

まさか(常識の)檻に閉じ込められた英雄が!?ってお話。


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87話

とうとう諸悪の根源がっ?!

オリ設定!
オリ展開!

作者の中で切り替えができてないので
文章がかなり粗いっ!

修正する可能性大!

後半ちょっとグロ表現有り(今更)

嫌いな人は読み飛ばしっ!


ーーアザゼル視点ーー

 

「・・・死ね」

 

『キィヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。僕は君らと

違って死ぬなんて概念は無いからねぇ。

殺せるなら殺して欲しもんさぁ』

 

オーフィスの攻撃に対して嘲笑で返す

神野明影。

 

今やオーフィスは単純な真正面からの

攻撃だけでなく、周囲を回って死角から

攻撃をしたり緩急のようなモノを混ぜたり、

さらに属性のようなモノも混ぜているが、

その一切合切が通用していない。

 

その攻撃が当たった瞬間に消えるのだ。

 

吸収しているようでも無い。

 

さらに余波で俺達が死なないように

何かしらの手を加えているようだ。

 

端から見たらオーフィスによる蹂躙にしか

見えないだろうが、実際は逆。

 

神野は今まで一度も攻撃をしていないが、

あの表情を見れば出来ないのではなく

あえてしていないのだろう。

 

そして攻撃を加えているオーフィスの

顔は怒りと憎しみに染まっているように見える。

 

単純でこれまで挑発されることもなかったオーフィスは

精神的に、神野が言うように感情が芽生えた

ばかりの小娘なのだろう。

 

幼稚園児が気に入らないモノを全力で

排除しようとするのと一緒だ。

 

それ故にその思いは一途だし、純粋でもある。

 

親父によって生み出された悪魔ではなく、

真の意味の原初の悪魔で有るヤツからして

見たら、その感情はさぞかし面白いモノだろう。

 

だが煽る以外に何もして居ないと言うことは、

思った以上に余裕が無いのか、ソレとも

純粋な挑発なのか。

 

しかしヤツが「殺せないが壊せる」と言うのがわからん。

 

と言うか奴は何がしたいんだ?クルゼレイは既に死んでいるように思えるが・・・

 

『さて、そろそろ準備は良いかなぁ?

これからアザゼル君に良いものを

見せてあげようじゃないか』

 

俺が疑問に思ったことを理解したのか、

コッチをみて笑いかける神野。

 

その面を見るだけで殺したくなるッ!

 

『簡単なことなんだけどさぁ。今の君達

からしたら、テロ組織の首領がオーフィス

なんて最悪だろう?

だからその脅威を消してあげようじゃないか』

 

「は?」

 

コイツ、何を言ってやがる?

 

『不思議そうな顔だねぇ。ついでに理を

纏うという言葉の意味を教えてあげるから、

精々研究すると良いよ。まぁ映像や音声を

録らせてあげるほど甘やかす気は無いけどさぁ』

 

コイツッ!

 

クルゼレイやサーゼクスはオマケで、本命は

俺やオーディンの研究が進んで無いと見て

手を出しに来たってのか?!

 

『そうそう、その顔だよぉ!君が詠唱の研究

を進めて充実感を得るのは良いんだけどさぁ。

どうも肝心の研究が進んで無いじゃないか?

それじゃあツマラナイダロウ?』

 

どこまでも舐め腐りやがって!

 

『ついでにソコに居る魔王君にも痛みを

与えないとねぇ。

なんたってアザゼル君は堕天使に1人

しか居ない総督だけど、彼は悪魔に4人

居る魔王の1人だ。

・・・1人くらい減っても良いよねぇ』

 

ニタリと嗤いサーゼクスを見る神野と、視線を

受けてビクッと体を震わせるサーゼクス。

 

その表情は魔王と言う強者ではなく、狩人に

獲物と認定された弱者のようだ。

 

無理もない。前に聞いた話ならサーゼクスは

本気を出せば6等の実力者。

他神話における神に匹敵するんだ。

 

当然自分の力に自信が有ったろうし、あの

消滅の力はある意味でサーゼクスの全てだ。

 

ソレをいとも簡単に無効化する神野は自分の

全てを無意味にする存在であり。

まさしく自分を狩る存在と言っても良い。

 

ソレに目を付けられたと思えば、この態度もわかる。

 

出力を上げればどうにかなると言う存在

では無いと言うことは、今のオーフィスを

見れば痛いほどわかるからな。

 

『コレから使う術式は僕が親友と呼んだ

男が開発した術式でねぇ。

残念ながらココとは次元が違うみたいで

ココには居ないんだけど、だからこそ

彼が生きていたと言う証として使って

みようと思うんだよぉッ!』

 

両手を上げて声高らかに語る神野の

表情は、楽しくてたまらないと言う

喜悦の表情。それより・・・コイツは

今なんと言った?別の次元の親友だと?

 

グレートレッドが次元の壁を守って居ると

言う噂は聞いたことが有るが、コイツは

ソレすら超える存在だと言うのか?!

 

『さぁ受けろオーフィス。そしてサーゼクス君もねぇ。君たちが持つモノを穢してあげようじゃないか!』

 

言葉と共に溢れる負の感情に、絶えず攻撃を

続けていたオーフィスまでも一瞬動きを止める。

 

干キ萎ミ病ミ枯セ(かわきしぼみやみこやせ)

 

禍々しく醜悪な声が場を支配する。

 

「クッ!」

 

その詠唱を止めようとサーゼクスが攻撃を加えるが、神野は一切意に介さず詠唱が続く。

 

盈チ乾ルガ如(みちひるがごと)

 

「ソレ、止めろ」

 

一度は止まったオーフィスまでもが、その詠唱を止めようと攻撃を加えるが、神野は嗤うだけだ。

 

淡々と唱えられる詠唱に背筋が凍る。

意味は分からねぇが、明らかにヤバイ!

 

沈ミ臥セぇ(しずみこやせぇ)!!』

 

神野の言葉と共に空が赤黒く染まる。

コレが・・・理だとでも言うのか?!

 

「う、うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「死ね死ね死ね」

 

コレ以上はさせんと死力を振り絞る2人。

良く見ればサーゼクスは全身が滅びの魔力に

なっているかのような状況だ。

 

『ーー急段、顕象ーー』

 

だが届かない。2人の必死の攻撃を見て神野は愉快そうに笑みを深めただけ。

 

そして理が顕現する。

 

生死之縛(しょうししばく・)玻璃爛宮逆サ磔(はりらんきゅうさかさはりつけ)

 

神野の背後に現れたのは大量の逆十字架と

ソレに磔られたミイラ。

 

そのミイラの表情はどれも苦悶の表情をしていた。

 

ソレだけで、このミイラは生きたまま磔に

架せられた連中であり、この中に楽に

死んだモノは一人も居ないと言うことがわかる。

 

『どぉだぃアザゼルくぅん?!聖書陣営の

連中に見せるには随分と洒落が聞いてる

理だと思わないかいぃ!』

 

「・・・くそったれがッ」

 

逆さ磔。確かに聖書の陣営に対する皮肉としては効きすぎている。

 

だがコレが何だと言うのだ?

 

確かに皮肉は感じるし、不気味なのもわかる。だがこの程度で何かを感じるほどガキじゃねぇぞ?

 

いや、まて。

 

サーゼクスやオーフィスの攻撃が停まってる?

2人は何処に消えた?

 

そう思って周囲を見回せば・・・

 

「何だとッ?!」

 

先ほどまでヤツの周囲を高速移動していた

オーフィスや、全力で攻撃を行っていたはずの

サーゼクスが逆さ磔に架せられていた!

 

「む。何だ?」

 

無表情で両腕両足を十字架に磔られた

オーフィスは動こうとするが、一切の

動きが封じられているようで、軽く

身じろぎするだけ。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

対してサーゼクスは痛みに声を上げている。

 

『オーフィスはアレだねぇ。痛みも恐怖も

知らないから今の状況が理解できてないねぇ。

あ、アレだよ?逆さになってるのにスカート

が捲れないのは一緒に固定してるからさぁ!』

 

どーでも良いッ!

 

この状況で心底どーでも良い事を朗らかに

宣う神野に対し殺意が膨れ上がる。

だがソレこそが神野の狙いだったんだ。

 

『この術式はねぇ。相互理解の術式なんだよぉ』

 

得意げに語る神野。

しかし相互理解だと?どういう意味だ?

 

『ふふふ。つまり僕に対する負の感情を抱く

相手に対して、僕を理解してもらうために

僕の一部を進呈する術式なのさぁ~』

 

「なんだと?!」

 

負の感情に対して一部を進呈するだと?

 

神野に対して負の感情を抱かないモノなど存在しないだろう。

 

コイツはそういう存在だ。

 

そしてソレに対して神野の一部を進呈するとなれば・・・

 

以前ヴァーリがコイツの一部を取り込んだ時の状況が思い出される。

 

つまり今のサーゼクスやオーフィスは!?

 

『気付いたかぃ?今の2人は体内に送り込まれた

呪詛によって穢されている真っ最中さぁ。

オーフィスはソレを何かわからないままに

受け入れ、変質しその存在を歪めて壊れる。

サーゼクス君は・・・まぁ壊れるだろうねぇ』

 

高らかに嗤い声を上げる神野。ソレを賛美

するかのようにサーゼクスは声を上げ、他の

ミイラたちも呻くような声を上げている。

 

まるでソレは亡者の合唱のようであり、神野は「ココが我が楽園」とでも言うような満足げな表情をしている。

 

『本来は死病に侵されて満足に歩くことも

出来なくなった術者が創造したものでね?

彼に対する負の感情に対して、彼が相手の

健常さや精神的な余裕に輝きを見て、ソレを

羨ましいと感じた際に発生する等価交換の

術式だ。「俺の苦しみを教えてやろう。

だからお前の幸せを教えろ」と言った感じかな?』

 

話が進むに連れて絶望感を抱く。

 

つまり神野と戦うには、こいつに悪意を持たず

に戦うことが出来る者で無いと勝ち目が無いって

言う事になるじゃねぇか!

 

あのオーフィスでさえ、世俗に塗れたが

故に神野に怒りと不快感を抱いてしまった。

 

他の連中の場合、神野を知らなければ本能的な

嫌悪感が。知っていれば恐怖や忌避感が有るだろう。

 

つまりは全ての存在があの術式の餌食となるッ!

 

本来なら大したことはないモノだが、

使う相手が呪詛の塊とも言える神野に

なれば、その脅威度はオーフィスを壊す

までに跳ね上がるってわけかよ!

 

俺がアレを喰らってないのは、俺が足掻く姿が

見たいから。ただそれだけだろう。

 

『つまり理とは、術者が思い描く世界の事だ。

ソレを創造し纏うことで神をも殺せる一撃

が生まれるというわけだね。

コカビィが纏った理は一撃必殺。『必殺』で

あるが故に、僕の分体は滅ぼされたのさぁ』

 

・・・なるほど。確かにソレならわかる。

オーディンの爺さんも理という言葉には

反応してたから、言葉の意味は理解して

いたんだろうな。

 

ただソレを纏うために必要なプロセスがわからねぇ。

 

この術式の理は相互理解と言っていた。

 

逆さ磔は、ペテロがローマに処刑される際

神の子と同じ死に方は恐れ多いと自らの

処刑の際に課すよう依頼したとされているモノ。

 

ソレが何故相互理解になる?

 

それともペテロとは関係がない、誰かの逸話を神話再現でもしたってのか?

 

『さ、ココまで見せたら十分だろぉ?

これからオーフィスとサーゼクス君には

地獄を見てもらうから、君はさっさと

帰って研究でもしてもらおうかなぁ』

 

そう言って俺の周りに穴のようなモノを

開ける神野。

 

「ま、まて!サーゼクスをどうする気だ?!」

 

このままだとコイツが作った結界から

俺だけが解放されると言う確信が有った為、

そう問いかける。

 

『さっきも言っただろう?今の悪魔君達には

危機感が足りないよねぇ?こんなゲーム

なんかしてる暇があったら、僕に対する

対策を練るなりするべきだと思わないかい?』

 

・・・確かにソレは有る。

 

神野のことはさておいたとしても、今の

悪魔陣営は内乱中だ。

来賓を招いてのゲームなんかしてる場合

じゃねぇだろうよ。

 

そもそも今回の罠だって、以前に比べたら

マシではあるが、本来は旧魔王派に対して

罠を仕掛ける必要なんかねぇんだ。

 

辺境に攻め込んで纏めて殺せば終わりだからな。

 

ソレをせずに、こうして攻撃を招いてからの迎撃なんてのは温いの一言。

 

どうせ戦闘に参加しなかった連中への恩赦

でも考えているんだろうが、そんな中途半端な

姿勢だから何時まで経っても悪魔陣営の内乱は

終わらねぇし、神野に対する研究や備えも

満足に出来ねぇままだ。

 

そしてその温い行動の元凶はサーゼクスと言ってもいい。

 

大王派が消えた今、サーゼクスまでも壊れれば

他の魔王も危機感を抱いて悠長なことは

しなくなるし、その分神野に対しての

比率が上がるだろう。

 

その結果が更なる絶望になるってか?

 

ソレを考えれば、サーゼクスの温さは神野に

対する嫌がらせにはなってたってわけだ。

 

まぁ所詮は嫌がらせであって、勢力としては

一歩も前に進んでねぇがな。

 

ソレならいっそのことココで神野に壊して

貰った方が、俺達は同じ敵に対して団結

出来るかもしれねぇ・・・

 

『お仲間を見捨てる覚悟は出来たかい?』

 

俺の内心を読みきったかのようなタイミングで声をかけてくる神野。

 

その顔はニヤニヤと言う音が聞えそうなのを

隠そうともしていない。

 

俺がこいつらの仲間で、仲間を見捨てる

葛藤に苦しむとでも思ってんのか?

 

それなら見込み違いだ。そもそも俺は来賓。

 

俺の力が通用しねぇ上にオーフィスを

捕えるほどの敵から逃げたところで、文句を

言われる筋合いはねぇし、今回勝手にココに

来てクルゼレイを嬲った挙句神野に捕まった

サーゼクスが間抜けってだけだろ?

 

このせいで堕天使と悪魔の間にしこりが

出来る可能性も有るが、オーディンの

爺さんと繋ぎが出来た以上は別に悪魔と

仲良くする必要はねぇ。

 

まぁオセ家による攻撃の可能性が

有るが、アイツだって神野と戦う為の

準備をしてるんだ。

 

ソレを考えたら俺たちは悪魔と距離を

置いたほうがいい結果になるかもしれねぇ。

 

『英雄』の面倒も見なくて良くなるし。

いや、赤龍帝の可能性を考えれば、そう

簡単に切り捨てるのも問題だが・・・

 

『なんか考え込んでるねぇ。まぁ僕は僕で遊ぶから、君は君で頑張りなよぉ』

 

そう言うと神野は俺を穴に叩き込んだ。

 

全身をナニカに削られるような痛みに

晒される中、俺が最後に見たのは、

逆さ磔によって呪詛を叩き込まれ我を

失ったように暴れるサーゼクスと、

磔られたまま顔を顰めるオーフィスの姿だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

 

「YOSHITUGUぅぅ!」

 

「今回は前回みたいな無様は晒さねぇぜぃ!」

 

白龍皇はもうソレしか言ってないし。言語中枢

大丈夫かな?

 

更に孫悟空の子孫まで来てるし。

 

「あぁ、前回より無様を晒すんだろ?」

 

白龍皇の攻撃を受け流しつつ、孫悟空の

子孫へ攻撃を加えるゼファードル。

 

あっちは2対1でも余裕みたいだ。

 

今の2人は鎧武者よりは弱いみたいだけど、

白龍皇には覇龍があるからなぁ。

 

「カタナですか。なるほど面白そうだ」

 

向こうではシャルバに止めを刺そうとした

鎧武者の前に、聖剣を持った剣士が立ちはだかっている。

 

「面白いか・・・ガキが」

 

その剣士を見て呟く鎧武者の声には

苛立ちがあるように思える。

 

アレは自分を馬鹿にされたと判断したのか、

それとも他に理由があるのか。

 

とりあえずシャルバの援軍?はこの3人のようだ。

 

もう十分だよね?

 

「僕としては、これ以上ココに残る意味は

無いような気がするんですよね。

さっさと避難したいとこなんですけど、

そこのところはどうなんです?」

 

ここはアジュカ様に連絡を取って指示を仰ぐとしよう。

 

そう思った僕が馬鹿だった。

 

『さっさと退避させたいところだが、この

結界に使われてる術式が厄介でな。

今後前に出るであろうゼファードルや

その眷属の事を考えれば、簡単には転送

させることが出来んのだ』

 

「厄介・・・ですか?」

 

僕がそう言うと、オセ様が解析したと言う結果が表示される。

 

うげっ向こうに解析されるのか。でも・・・

 

「確かに『英雄殿』やゼファードルには痛い

かもしれませんけど、僕には関係無いんじゃ

ないですかね?」

 

確かに『英雄殿』の眷属の神滅具の解析とか

されたら問題だし、ゼファードルのアレだって

秘密兵器みたいな感じだけど、僕は別に前線に

出る気は無いし、別に解析されても良いんじゃないかな?

 

ある意味彼らを見捨てると言っているが、

そもそも文官である自分がこうして前線に

出てるだけでも問題だと思っているので、

僕的にはココで退却するのは援護だと

すら思っているんだけど。

 

下手にナニカすれば彼らの足手纏いに

なるし、なにより嫌な予感が止まらない!

 

『まぁそうなんだが、スマンがもう少し

時間を稼いでくれ・・・もしも『英雄』が

地下室を出たら連絡するから。そのときは

ヨロシク頼む』

 

「ちょっ?!」

 

一方的に切られた通信に驚愕し、再度

連絡を付けようとしても一切通じない。

 

向こうも非常事態なのかもしれないけど、

こっちの救助だってありますよね?!

 

オーディンはどうした?まさかさっさと逃げた?!

 

いや、彼は来賓だからさっさと逃げるのが正しいんですけど!

 

だからって置いてけぼりは酷いッ!

 

「ふっ!」

 

「むぅん!」

 

向こうではスーツの剣士と鎧武者が斬り合っている。

 

「最強の聖剣と謳われたコールブランドを正面から抑える悪魔が居るとはッ!」

 

そう言いながら、スーツ姿の剣士が振り

下ろしからの腹部を狙った突きを放つ。

 

一番回避しにくい攻撃を、悪魔の天敵である

聖剣を使って行うことで防御も封じる算段だ。

 

普通ならソレを回避する為に体勢を崩すか、

防御することでダメージを負うことになるだろう。

 

だけど何かしらの成果が上がると確信

していた剣士は、鎧武者の思いもよらない

回避方法に驚き、固まってしまう。

 

「なっ!」

 

鎧武者は背中から生えた悪魔の翼を使い、

滑るかのような動きで間合いを外す。

 

「天賦の才が有るようだが、所詮は武器に

頼る小僧よな。ソレでは真の強者には届かんぞ」

 

そりゃそうだ。僕たち悪魔をはじめとした

連中は空を飛ぶのが普通だし。

 

鎧武者だからイメージが沸かないのかも

しれないけど、そんな思い込みに付き合う

道理はないよねぇ。

 

必殺の攻撃をいとも簡単に躱された剣士は

眼前に迫る鎧武者の斬撃を聖剣を防御に

回すことで防ごうとするが・・・

 

「甘い」

 

ドンッ。という音と共に剣士の左足の

膝から先が吹き飛んだ。

 

それは上段をフェイントとした斬撃ではなく・・・

 

「グッ!銃だと?!貴様には剣士の誇りがないのかッ?!」

 

剣と刀との違いは有れど、同じ剣士と思っていたのだろう。

 

不意打ちで銃撃を受けた剣士の表情は怒りに染まっている。

 

Pfeifer Zeliska(パイファー ツェリスカ)。悪魔に正々堂々の戦を

挑む時点で貴様は阿呆よ。

戦とは勝たねばならんのだ。その為の工夫を

忘れ聖剣に頼る小僧など所詮はこの程度。

そもそも悪魔相手に天敵たる聖剣を使って

おきながら、尋常な剣の勝負だとでも言う

つもりか?更に動きを阻害するスーツなど

着て我に挑むと言うのがすでに増長ッ!

そのようなガキを相手に、しかもテロリスト

相手に何故我が誇りをかけねばならんのだ?」

 

当たり前の事を当たり前に行った。

敵が自分で視界を塞いで隙を作った以上は

その隙を突くのが勝負というモノ。

 

そもそも本来なら一騎打ちすら不要だ。

なにせ自分らが2対1でゼファードルと

戦ってるんだから。

 

悔しさに歯噛みする剣士に対して、鎧武者は

これ以上話すことはないと言う態度を取り

 

「死ね」

 

「ぐわっ!」

 

その戦闘の傍で放心していたシャルバの首を刎ねた。

 

「なっ?!」

 

自分が斬られると思っていたのだろう、

驚愕と自分を無視された屈辱を綯交ぜに

した視線を鎧武者に向ける。

 

「そもそも我が主君から受けた命令は

シャルバ・ベルゼブブの殺害。ならば

逃がす前に殺すのは当たり前だろうが」

 

そう言いながら、血振りを行い刀を収める鎧武者。

 

つまり彼は初めから騎士を敵と見ていなかった。

 

剣士はただの障害物。ソレが無くなったら

目標を殺害するのは当然と言える。

 

「ディオドラ殿、コレを捕縛するか

殺すかは貴殿に任せても良いな?」

 

「あ、はい。なら・・・とりあえず

腕を切断してもらえませんか?」

 

確かに現場責任者は僕だけどさ、せめて

そいつの腕を潰してもらわないと聖剣で

殺されるよね?!

 

「御意」

 

切断したら生えてこないとは思うけど

どうなんだろ?

 

「くっ!舐めるなぁぁぁ!!」

 

黙っていれば腕が切断されることになる

剣士が、必死の形相で立ち上がろうとする。

 

だが人間の構造上、肉も骨も粉々になった

足は支えにすらならないし、片足では

バランスが取れないのは当たり前だ。

 

「グッ!クソッ!クソォォォ!」

 

脚を潰された左方向に周り込まれ、ドンッ

と言う音とともに発射される銃弾を防ぐ。

 

それ自体は凄いことだと思うけど、最早無意味だ。

 

満足な踏み込みが出来ない以上、銃弾を

弾くことが出来ても、その衝撃は逃せない。

 

「疾ッ!」

 

「あ、あぁぁぁぁぁ!!」

 

体勢が崩れ、跳ね上げられた右腕が切断される。

 

今まで悪魔と戦えるまでに鍛えてきた自身の

右腕が、いとも簡単に切断された事に呆然とする剣士。

 

そして剣すら持たずに棒立ちとなったところを

 

「噴ッ!」

 

「ギャァァァァ!!」

 

左腕まで失って、バランスも取れずに倒れこむ。

 

そして自らの眼前にある腕を見て目を

見開き、矜持も何もなくして涙を流しだした。

 

ククク。腹の底から湧き上がる衝動!コレが愉悦ッ!!

 

だがココで浸るわけにも行かないよな。

 

「アーサー?!」

 

孫悟空の子孫がこちらの異常に気付き、

何かの術を使おうとする。

 

何をするつもりかは知らないけど、させるわけないだろうに。

 

「アレをお願いします」

 

「承知」

 

鎧武者が孫悟空の子孫の迎撃に向かう。

 

「クソッ!こいつも強えッ!」

 

妙な真似はさせないと接近戦に

持ち込まれた孫悟空の子孫は、

鎧武者に動きを抑えられた。

 

では僕は剣士の傷口を焼いて止血してやろうじゃないか。

 

ソレからフェニックスの涙で回復させてやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!」

 

アーシア・アルジェントや『英雄』が

来る前に、最低でもコレはしておかないとね。

 

僕は勘違いで全回復なんかさせないぞ。

 

フフフ。偉そうにスーツなんか着て戦場に来た結果がコレだ。

 

両腕と片足がなくなり、ソレが2度と

戻らないと理解した時の剣士の顔を

想像しただけで麻婆2杯は行けると思うぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口元を歪めながら剣士の止血を行うディオドラの姿は、誰がどう見ても悪魔そのものだった。




諸悪の根源サーゼクス。逆サ磔に囚われ拷問中。

中の人的にも少女の絶対領域は死守しないと簪に怒られるからね!

神野サンの設定上、コレ出来ますよね?
親友と被るからやらないだけでしょうし。

人間最強(笑)の剣士がっ?!
このままだと白龍皇チームがヤヴァイ!
英雄はまだ来ないのか?!ってお話。

ディオドラは神野サンを知りませんので、
解析云々に危機感を持ってません。

ちなみにYOSHITUGUも神野さんは敵だと思ってます。



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88話

キツイ。英雄がキツイ。
でも出さなきゃっ!(謎の使命感)

白蜥蜴と孫悟空の子孫の運命や如何に?!
短めでごわす。

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!


ーーYOSHITUGU視点ーー

 

さて、猿の方はゴトウのオッサンが

抑えてるし、半死半生のメガネは

・・・ディオドラが傷を焼いてるな。

 

ありゃ捕虜にする気か。

 

なら傷口を焼いた後でフェニックスの涙を

使わせて、あの状態が正常だと認識させれ

ば完璧だと思うが、今は義手とか義足が

有るからなぁ。

 

その辺どう考えてるんだか。

いや、アレか。義手や義足でも聖剣を

使えるかどうかの実験でもする気か?

 

もしソレが可能なら、悪魔の中にも普通に

聖剣を使うヤツが出てくるかもしれねぇ。

 

それかソーナの眷属のヨシコ=サンみてぇに

擬似神器でサポートする形にしても良いかもな。

 

そんな俺には似つかわしくないことも

考えてしまうのは、目の前の白蜥蜴が

あまりにもアレな為だ。

 

「なぁお前、ここ1、2ヶ月何してた?

つーか数ヶ月程度の鍛錬で俺に勝てると

本気で思ったか?」

 

前回の時は勝手に隙を晒したアホを殴り

倒しただけで、今回は普通に正面から

打ち合ってるんだが・・・

 

これがまぁ酷い。

 

まず白龍皇の能力かなんだか知らんが、

翼を展開する意味がわからん。

 

もしかしてハーフだから自前の翼が無いのか?

 

そう思ったが、そもそもアレじゃ的が大きく

なって当然空気抵抗も増すよな。

 

でもって白蜥蜴は翼から喰いすぎた分を

放出するから、翼は弱点の一つでも有る。

 

ソレを態々さらけ出すのがわからん。

 

「黙れぇぇぇぇぇ!」

 

でもってこの一見すれば直情的に見える行動。

 

例えばこの右手を大きく振りかぶったテレフォンパンチも・・・

 

「見え見えだ」

 

コレはわざと回避させて、相手のカウンターを誘う攻撃だから普通に受けてやれば良い。

 

「なっ?!ぐわっ!」

 

防御されることに慣れてないもんだから

簡単に体勢が崩れるんだよ。

 

そこに普通に蹴りでも打撃でも加えてしまえば

半減させることもできずに吹っ飛ぶわけだ。

 

ま、普通白龍皇の半減を知っていれば

誰だって回避を選ぶから、防御された時の

引き出しがほとんどないのも無理はない。

 

鍛錬で防御してもらっても、ソレは

してもらってるだけのモノ。

更にその場合は己の半減も封じてる

から実戦形式とは程遠い。

 

まぁアレだ。当たれば勝てるって

のは明確な強みだからな。

一点集中で鍛えるのは悪くねぇんだ。

 

でもって何とかして最初の一撃を加える

のがコイツの戦闘スタイルだから、相手の

裏をかこうとするのは間違いじゃない。

 

だが肝心のコイツがなぁ。

 

中途半端にプライドが高いから、騙し討ち

したあとは正面から戦ってきたんだろ?

 

でもって半減を使いながら潰してきたわけだ。

 

その戦い方が主流になっちまってるから、

どうしても小技に頼るのを良しとしねぇんだろう。

 

その結果がバレバレのフェイントに、拙い戦闘技術だ。

 

つーかなんで覇龍を使って来なかった?

まさかその状態でどこまで出来るか試す

とか言うガキ臭せぇ理由じゃねぇよな?

 

ま、コイツの都合なんざどーでも良い。

離れるってことは穂先に映るってことだぞ?

 

「『結べ、蜻蛉切』」

 

「グッ!クソッ!」

 

どこまで見てたかは知らんが、詠唱と

同時に斬撃が飛ぶ程度は分かっているらしい。

 

俺の声を聞き回避しようとするが、残念だったな。

 

「ギャッ!!」

 

俺の狙いは猿だ・・・とりあえず腕一本。

 

これでアイツは傷と俺の存在を気にしながらオッサンと戦う必要が出てきた。

 

オッサンも楽になるだろうよ。

 

「美猴?!おのれぇ!」

 

どーした?何を怒ってる?

無視されたことか?それとも戦ってる

仲間に不意打ちをされたことか?

 

「さっきまで2人で掛かって来てたのは

お前らだろ?猿がオッサンに向かった

からと言って俺がアレを逃がす理由があるのか?」

 

勝手に相手を交換した気になってるがな。

俺たちが居るのは戦場だぞ?敵に後ろを

見せれば死ぬし、流れ弾だってあるだろう。

 

プロレスのタッグマッチじゃねぇんだ。

目の前の一人しか見てねぇようなガキが

生き延びれると思うな。

 

「てめぇの敗因は最初っから覇龍を使って

こなかったことだ」

 

大方前回は奇襲で負けたんで、真正面

から戦えばそれなりに戦いになると

踏んだんだろうがな。

 

んなわけねーだろ。

 

「そもそもが未熟な半悪魔。肉体強度の違いは

どーしよーもねぇし、鎧を纏ったところで、馬鹿の

一つ覚えの半減が通用しなけりゃ、そんなの

糞の役にも立たねぇ目立つハリボテにすぎん。

それなら兵士の駒8つ分のドーピングがあって、

更に自己強化出来る赤蜥蜴のほうが数倍マシだぞ」

 

『なっ?!』

 

今まで黙ってた白蜥蜴が声を上げる。

侮辱されたと思ったか?だが実際そうだからなぁ。

 

「あぁ、自分が特別で死ぬことがないなんて

勘違いすんなよ?ルシファーの血筋だろうが

なんだろうが所詮はテロリスト。

その扱いはそこのベルゼブブの子孫と同じだ」

 

更に堕天使陣営だろ?アザゼルがなんか

それらしい言い訳をしたらしいが、手前が

会談の場で禍の団に参加したって自白した

のは知ってんだ。

 

「都合が悪くなったら抜けます」なんて

真似が許されると思うな?

 

「どこまでも上から目線で言ってくれる!

ならば見せてやろうっ!歴代最強の白龍皇

の力をなッ!」

 

俺の言葉を聞き、腰を落として顔の前で

腕を交差する白蜥蜴。

 

「『我、目覚めるは 、覇の理に全てを奪われし二天龍なり 』」

 

何をする気かと思えば・・・馬鹿か?

 

戦闘中に敵の目の前で詠唱?ソレもサポートが一人もいない状況で?

 

こりゃダメだ。一応警戒しろとは言われてたが

馬鹿を警戒する必要はねぇ。

 

「『無限を妬み、夢幻を想う 』グフッ!き、貴様っ!」

 

蜻蛉切が無防備な白蜥蜴の腹を貫く。

 

「阿呆が。俺は言ったぞ。てめぇの敗因は最初っから覇龍を使ってこなかったことだとな」

 

そして命の保証はしねぇともな。

動かねぇなら殺すだけだろうが。

 

「がはっ!」

 

蜻蛉切を捻り体内を傷つけてから、穂先を抜く。

 

そして止めを刺すために白蜥蜴の全身を

穂先に映し込もうして、ふと考えた。

 

駆動に慣れるために何度も使ってきたが、

あまり使いすぎるとネタバレになるから

頻度はソコソコにしとけって話だったよな。

 

今の状況を観てる連中が居るなら、

コレも解析される可能性もあるよな?

 

それに悪魔陣営は情報漏洩に定評があるし。

 

今までの戦闘でわかるのは詠唱と同時に

遠距離攻撃も出来る斬撃程度だろ?

 

ここで映し込むと言うプロセスを見せて、確信させるのは面白くないよな。

 

強度的にも白蜥蜴の鎧程度なら問題なく貫けたし、遠距離攻撃も試せた。

 

テストには十分だろう。

 

ついでに言えば、コイツの血筋は捕虜にするには

めんどくせぇし、そもそもコイツは姐さんに命を

狙われてるからな。

 

ここで生かしたら俺が殺される。だからこそしっかり殺す。

 

「じゃあな白蜥蜴。次はもう少しまともな寄生先を見つけろよ」

 

串刺し。ソレが俺が選んだ殺し方だ。

 

『ヴァーリ!逃げろッ!!』

 

白蜥蜴が叫ぶが、腹に穴が空いた上に、捻られて

内臓に損傷を負った半分人間のコイツが機敏に

動けるわけねーだろ。

 

腹を押さえるコイツ目掛けて放たれた攻撃は、

寸分違わず頭を貫き、完全に吹き飛ばす。

ビクンとその全身を痙攣させたあと、

腹を押さえていた手をだらりと垂らして

倒れこむ白蜥蜴。

 

鎧は解除され、残ったのは頭がない死体だ。

 

問題はこのままだと悪魔の駒か何かで

復活するかもしれねぇってことだ。

 

中途半端に体を残さずに、このまま魔力を

ぶつけて消滅させた方がいいのか、それとも

カンザシの姉御の為にサンプルとして持って

帰るべきか・・・

 

向こうを見れば、すでにオッサンが猿の首を切っていた。

 

捕虜も一人獲ったしシャルバも殺した。

ついでにテロリストも殺せば十分だろ。

 

「ディオドラ、終わったぞ」

 

これでココでの仕事は終わりだ。あとは

その辺で鍛錬するか茶でも飲んで時間を

潰せば良いだろ。

 

あ、鍛錬はダメだな。

 

下手にココで鍛錬して俺やオッサンが消耗したら、何か有った時に対処できなくなっちまう。

 

となると茶か。

 

そう思って奥の部屋に行こうとしたとき・・・

 

「お前!なんで殺したんだッ!もう勝負は着いてただろ!」

 

猿を殺したオッサンの前に『英雄様』御一行が現れた。

 

ディオドラは驚きに目を見開き、オッサンはめんどくさそうに溜息を吐く。

 

そして俺は・・・約束された面倒事に巻き込まれる前に姿を消したのだった。

 

ディオドラが何か言ってるな。裏切り?知るか。

俺は『英雄様』と関わりたくねぇんだよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー兵藤一誠視点ーー

 

俺の籠手に反応があった。コレは前にも有った。

近くに白龍皇が来てるってことだ!

 

ソレを部長に伝えれば、部長は顎に手を当てて考えるような仕草をして俺に確認を取ってくる。

 

「白龍皇がココに来た?確か彼は何かしらの

仕事で堕天使の拠点には居なかったのよね?」

 

「はい、そうです」

 

俺がアザゼル・・先生のところで修行を

している最中、白龍皇は仕事で出てるって

話だったんだ。

 

仕事の内容までは知らないけど、今回この

タイミングで来たってことは俺たちの救援

なんじゃないかと思うんだ。

 

「ならアザゼル総督が用意した救援と考えれば

辻褄が合いますわね。さっきから本人と連絡が

つかないのは戦闘中と思われます」

 

朱乃さんも俺と同じ判断をしたようだ。

つーか現状ソレ以外に無いよな!

 

「となると、私たちはどうするべきかしら?

救助が来るまでここで待機するべきか、

もしくはここから出て救助と合流すべきか」

 

え?それって悩むことなんですか?

 

「ここは壁とかが頑丈ですから、外の様子が

まったくわかりません。アザゼル先生と連絡が

取れない以上は、外はまだ戦闘中で危険だと

考えるべきだと思いますぅ~」

 

なるほどな。俺の中じゃさっさと外に出て

救助と合流してアーシアの無事を確認したい

とこだけど、ギャスパーはここで待つべき

だって考えなのか。

 

アーシアの事を考えればもどかしいけど、部長

が危険に晒されるかもって考えたら隠れてる

方が安全だよな。

 

「私としては戦闘中だからこそ、少しは動く

べきだと思いますわ。そうしないと何時まで

経っても私たちは餌のまま。いえ、今回の件で

旧魔王派が壊滅するとしたら・・・」

 

朱乃さんはそう言って言葉を区切る。

 

テロリストが居なくなるなら良いことなん

じゃ?そう言いたいところだけど、部長は

一瞬ハッとした顔をして頭を押さえている。

 

い、一体どうなるってんだ?!

 

「獲物が居なくなれば『英雄』も必要なくなる。

『英雄』は『英雄』のまま飼い殺しにされるわね」

 

か、飼い殺しだって?どう言うことだ?!

 

「えぇ、そうなるでしょう。グレイフィア様の

様子を見れば、リアスはこのままグレモリー家で

教育を受けることとなる可能性が高い。

そしてほとぼりが覚めるまで・・・普通に考え

れば、百年単位での教育を施すまでは外に出し

たりはしないでしょうね」

 

ひ、百年単位の教育って、ソレはもう監禁ですよね?!

 

あの部長を愛してるお父さんがそんなことを

するとは思えないけど、部長と朱乃さんは

ソレがあり得ると判断してるみたいだ。

 

「グレイフィアから言われた事を考えれば、

確かにその可能性は高いわ。更に敵が居なく

なってしまえば、私たちが功績を上げることが

出来なくなるわよね・・・」

 

そ、そうか。実績って言うのは、俺たちが成長

したって言う証拠にもなる。

旧魔王派の連中が居なくなれば、その実績を

積む相手か居なくなる。

 

「そうですわね。他のテロリスト相手にリアス

を出すような真似はしないでしょうから、冥界

から出られないリアスには何も出来なくなる。

そこそこの戦闘が有ったときに『作戦を考えた』

とか言って適当な功績を与えられるでしょう」

 

つ、つまりこのままじゃ部長は駒王学園に

戻ることは出来ないし、俺も家には帰れない

ってことかよ?!

 

ソレなら多少の無理はしてでも外に出て

上級悪魔や中級悪魔を倒すべきだよな!

 

そう言う実績が有るのと無いのだとやっぱり

違うだろうし!

 

「それを考えたら、とりあえずディオドラの元へ

行くのも悪くはないわね。もしも敵が居なくても

纏まってた方が救助もしやすいでしょうし、敵が

居たなら白龍皇と協力して戦えば良いわ」

 

アイツと協力か。魔法使いを敵だからって

理由であっさり殺すヤツだけど、間違いなく

俺達の中の誰よりも強い。

 

そんなアイツに譲渡を使えば、その辺の

上級悪魔なんか楽勝だよな!

 

それに部長は外に出て行きたいみたいだし。

そもそもグレモリー家での教育がそこまで

長引くなんて考えもしなかったし、部長だって

出来るだけ早く駒王学園に戻りたいはず。

 

「あとはグレイフィア様に言われたように

戦闘の邪魔になってはいけません。

戦闘している相手がいた場合、どちらが味方

でどちらが敵なのかの判断は絶対に必要です」

 

あ、そうだ。ソレが有った。

 

駒王会談の時はアレが最善だと思って

動いたけど、実際は最悪の選択だったんだ。

さらに俺たちにはテロリストを回復させて

逃がしたって言う実績もある。

 

もしも外で戦闘が続いてるなら、敵と味方の見極めは絶対に必要だよな!

 

「俺としては出るべきではないと思う。

功績より命を取るのは間違いではないぞ?」

 

ルー・ガルーさんは反対か。

 

だけど、白龍皇が救助に来てるならその心配は

ほとんど無いだろう。

 

何度も言うけど、アイツは強いからな!

 

そんなことを話した後、俺たちは最終的に地下の避難場所から抜け出すことになった。

 

そして神殿の奥へと到着した俺たちがソコで見たのは、

笑いながら倒れてる相手に攻撃を加えるディオドラと、片腕が無くなり、傷だらけになってるヤツの首を刎ねた鎧武者の姿だ。

 

ソレを見たとき、俺はその鎧武者が敵なのか?とか、

味方なのか?とか関係なく叫んでいた。

 

「お前!何で殺したんだッ?!もう勝負は着いてただろッ?!」

 

勝負が着いたなら殺す必要なんか無いはずだ!

そう言うのに敵も味方も関係ねぇだろ?!

 

俺の叫び声を聞いて驚きの表情を見せる

ディオドラと、何の行動も見せない鎧武者。

 

視界の端でナニかが消えたような気がしたけどそんなのは後でいい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディオドラは味方かも知れねぇけど、その腐った性根を叩き直してやるぜッ!

 

 

 

 

 




死亡確認。

まぁこの世界の死亡判定は、神(原作者)様に
愛されてるかどうかで容易に覆りますけどね。


因みに原作主人公一行は、初戦でゼノヴィアの
攻撃でディオドラ君の眷属を消滅させてます。

特に罪悪感も何もなく、普通にスッキリ
してる様子に、作者は恐怖を覚えました。


ついに英雄が動き出す!ってお話



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89話

英雄が出てくると筆が遅くなる法則。
ミミズの法則とも言う。

英雄VS紳士 因縁の対決が今始まるッ!



オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!




ーーディオドラ視点ーー

 

おいおいおいおいおいおいおい。

なーんでアイツ等がココにいるんだ?

 

アジュカ様からの連絡は来てないぞ?

・・・向こうで何か異常でもあったか?

 

しかもなんか赤龍帝がコッチを睨んでるし。

 

まさかとは思うが、僕がアジュカ様の命令を

受けて動いてるってことを知らないとか無いよな?

 

と言うかゼファードルッ!君は僕の護衛だろ?!なんでさっさと消えてるんだよ!

 

鎧武者さんも顔は見えないけど面倒だと

思ってるだろ?!

 

「・・・ディオドラ、貴方はここで何をしていたのかしら?」

 

僕が脳内で色々考えていたら『英雄様』が僕に

そんな質問をしてきた。

 

しかし「ココで何をしていた?」と来たか。

一体奴等の目にはどう映ってるのやら。

 

しかし何でそんなに偉そうなんだ?そもそも

コイツは避難するように命令が出てたよな?

 

撤回する理由は無いから、明確な命令違反。

独房や営倉が有れば叩き込むレベルだよな。

 

となれば、現場指揮官である僕が取るべき行動は・・・

 

「何をしていたか?当然仕事だよ。アジュカ様からの勅命を果たしていただけさ。君こそココで何をしているんだ?君には避難命令が出ていたはずだぞ?」

 

僕がアジュカ様の部下で、禍の団のスパイを

してたことを匂わせると同時に、避難命令が

出たお飾りのお前とは違って魔王様から仕事を

任せられていると言うことをアピールしとかないとな。

 

この場の指揮権は僕にあるんだ。

 

それに何より「テロリストだと思ってました」

なんて勘違いをされて、コイツらから攻撃を

受けるなんて間抜け過ぎる。

 

コイツらは気分で敵を認定してくるからな。

その後で適当な言い訳を使って逃げるような奴等だ。

 

その為、まずは言い訳が出来ないような状況を作る必要が有る。

 

「やっぱりアジュカ様のスパイだったのね・・・それじゃあ貴方が連れ去ったアーシアは無事と言うことで良いかしら?」

 

おいおいおい。

 

質問に質問で返すなよ。せめて僕の質問に答えてからだろ?

 

つーかアーシアさん?奥で普通に寝てるぞ。

とは言え「泣き疲れて寝てる」とか言えば

間違いなく勘違いしてくるよなぁ。

 

いや、むしろベッドで寝てるってだけで勘違いしてきそうな予感がする。

 

連中はとにかく自分が気に入らないのを殴る理由が欲しそうだしね。とりあえずは答えてやろう。

 

・・・むしろこうして失点を重ねれば、今後コイツらがグレモリー領の外に出て来ることが無くなるかも知れないな。

 

流石に勘違いで戦闘なんて無様を晒す気はないけどさ、命令違反やら何やらをきっちり映像と音声に残そう。

 

「無論、彼女は僕の仕事の邪魔にならないようにキチンと保護してるさ」

 

軽く質問には答えてやるよ。ついでに軽く煽るくらいはしても良いよな?

 

いくらなんでも、この程度で味方と戦闘をしようとは思わないだろう。

 

「仕事の邪魔?そもそも貴方の仕事とは何?」

 

不機嫌そうに尋ねてくる『英雄様』。いや、少しは自分で考えろよ。つーかなんでお前に教える必要が有るんだ?

 

あぁ、駄目だ、コイツらが自分で考えた結果が現状の命令違反なんだもんな。

 

「知る権利がー」とか騒がれても面倒だし、しっかりと誤解の余地が無いように教えてやらねばならん。

 

こう言う猪の手綱を握るのも文官の仕事だ。

 

「見ての通り、テロリストの殲滅だよ。具体的には、そこに倒れてる旧魔王派の幹部であるシャルバ・ベルゼブブや、先日君たちが回復させて逃がしたテロリスト共の処理だね」

 

僕が指差した先にある、首がない二つの死体を見る『英雄様』御一行。間違っても治療だの悪魔の駒での復活だのをさせないようにしないと。

 

「ちなみにコイツもそうだ。一度逃げておきながら、再度我々に挑みかかって来たからね。捕虜にするために生かしてるが、ソレ以上の扱いをする気はない。しっかりと両腕を落として傷口を焼いて止血してるのさ」

 

馬鹿が可愛そうだとか騒ぐ前に釘を刺す。

 

「そしてアーシア・アルジェント。彼女は自衛手段が無く、更に目の前に居る敵も癒やそうとするからね。ハッキリ言えば戦闘の邪魔だ。だから別室にて待機して貰ってるよ」

 

今のお前らも相当邪魔だけどな。

 

「なんだと?!アーシアの優しさを何だと思っていやがるッ!」

 

僕の言葉に答えたのは『英雄様』ではなく、その下僕。

 

邪魔だって言ったばかりなのに「何だと思ってる?」と聞かれてもねぇ。

 

自衛が出来ないのと敵を癒やすのが邪魔以外の何だと言うのやら。しかも論点をずらしてるし。

 

その上、主と現場指揮官の僕との会話に割り込み、口の聞き方も全然改善されてない。

 

コレはアレだ。もう脊髄反射の領域だ。つまり赤龍帝は爬虫類じゃなく昆虫だったと言うことだろうか?

 

うーん。大発見かも知れないけど、

今は放置だ。コイツと会話してると

頭がおかしくなるからね。

 

・・・そもそも会話にならないんだけどさ。

 

とりあえず今後の為に『英雄様』から失言を頂くとしよう。

 

「さて僕は質問に答えたよ?次は君が答える番だ、リアス・グレモリー。君は命令違反を犯してまで、ココに何をしに来たんだい?」

 

「なっ?!シカトかよッ!」

 

シカトも何も、そもそも発言権なんか無いだろ。

もう少し自分の立場ってヤツを自覚しろよ。

 

そしてお気に入りがシカトされて不機嫌になった

『英雄様』。お前も心して答えろよ?返答に

よっては家を継ぐ前にグレモリー家が滅ぶぞ?

 

「・・・合流しに来たのよ」

 

「は?」

 

合流?何と?

 

『英雄様』が悔しげに呟いたその言葉の意味を考えるが、済まない・・・素直じゃない僕の思考回路はショート寸前だ。今すぐアジュカ様に会ってコイツを押し付けたい。

 

「お話中失礼致します。私はリアス・グレモリーに仕える戦車の人狼、ルー・ガルーと申します。ディオドラ・アスタロト様と直接お話が出来る身分ではございませんが、今は緊急時として、私に状況説明の為の発言をお許し願えませんでしょうか?」

 

動きを止めた僕を見かねてか、向こうの眷属が説明を買って出てくれた。

 

「あ、あぁ、是非頼む。それと緊急時だからね。口調についてもそれなりに礼儀を払ってるとわかれば、特に咎めないと約束しよう」

 

『英雄様』や女王の頭の中に虫が湧いてるのは有名な話だし、その原因とも言える赤龍帝とは関わるなと言うのはもはや常識。

 

『英雄』一味の良心と呼ばれる彼が間に入ってくれるなら正直助かる。

 

「御厚情ありがとうございます。それでは説明をさせて頂きます。元々私たちが避難していた場所は設備は整っておりましたが、外壁が厚く、外の状況がわかりづらい場所でした」

 

ふむ。まぁそうだろうね。

 

何時でも何処でも発情&暴走するコイツらを隔離するなら、余程しっかりとした設備が必要だ。

 

狭いだの汚いだの空腹だのと言われないように、最低でも風呂・トイレ・ダイニングにキッチンは必要だよね。

 

あぁついでに寝室もか?

 

もはや避難場所と言うよりは簡単な別荘だけど、高位貴族のシェルターなんてそんなもんだしね。

 

「それならば下手に外に出ずに、室内で黙って寝てれば良いじゃないか?何故態々設備が整ったシェルターから出てくるんだ?」

 

いやマジで。

 

「なっ?!すぐ側で戦争をしていると言うのに、私たちは黙って寝ていろと言うの?!」

 

『英雄様』が喚き出すけど、その通りだよ。邪魔だから引っ込んでろって言うのが関係者各位の総意だ。

 

人狼も迷惑そうな顔をしているが、角度的に見えないみたいだね。

 

とは言え、彼の立場を考えたら、主君が喋り出したら無視は出来ないよなぁ。

 

「上層部が君に求めたのは参戦ではなく避難だ。ならば君はソレに従う義務があるだろう?」

 

参戦されたらコイツに護衛をつけなきゃいけないし、自爆覚悟で狙われて負傷されても面倒だ。

 

『英雄様』の仕事は、連中を釣った時点で終わりなんだよ。

 

「くっ!」

 

惜しい。その後に「殺せ!」とか言ったら、容赦なく眷属を殺してやるのに。

 

「しかし我々にも何か出来ることが有るのでは・・・」

 

女王が喋り出すが、フォローのつもりか?

 

「黙れよ。僕がいつ君に発言の許可を出した?」

 

コイツはダメだ。前回のソーナとのゲーム前に何をしていたか、リアルタイムで見てた僕たちは知ってるからね。

 

完全な色情狂。コイツとは話す価値が無い。

 

「・・・っ!」

 

「朱乃さんになんてことをっ?!」

 

悔しそうに歯噛みする女王と、ソレを見て僕に噛みつく赤龍帝・・・もしかしてその女王が僕と同格と思ってるんじゃないだろうな?

 

内輪で『英雄様』が同格扱いしてるのかも知れないけど、世間一般ではただの眷属悪魔だからな?

 

バラキエルの娘だからって、悪魔社会には関係無いし。

 

とりあえず説明が途中で、どうしたら

良いかわかってない彼に助け船を出そうか。

 

「話の途中ですまないね戦車君。話を続けて貰えるかい?」

 

悪いのは君の主であって、僕や君じゃないけどね。

 

「はっ!我々はアザゼル総督から通信機を預かり、総督の指示で避難をしておりました」

 

度重なる無視を受けて表情がアレになってる赤龍帝を無視して、戦車君が報告を続ける。

 

そこまでは当然知ってる。問題はそこから何で態々出てきたか、そして合流とは何を意味しているのかって話だよ。

 

頷く僕を見て、言葉を続ける戦車君。

 

苦労してるよなぁ。彼も頭痛薬か胃薬を常備してるんだろうか?

 

「そこで待機している中で、赤龍帝の籠手を持つ当方の兵士が白龍皇がこの場に現れたことを感知しました」

 

白龍皇?あぁ、そう言えば二天龍とか呼ばれてて、お互いが引き合うんだっけ?

 

頭が無い死体をチラ見するが、今のところはしっかり死んでるみたいだ。

 

悪魔の駒が復活させることが出来る猶予時間とかが良くわからないけど、とりあえず頭が無ければ大丈夫だろう。

 

アーシア・アルジェントの治療で回復されたり、フェニックスの涙を使われたりしなければ、このまま放置でもよさそうだけど・・・

 

しかし白龍皇が来たからと言って、何故コイツらが出てくることになるんだ?

 

「それで、堕天使陣営の本拠地で訓練を

受けていた赤龍帝から、白龍皇がアザゼル

総督の命令で特殊任務に当たっていると言う

情報を得ておりまして・・・」

 

おいおいおいおーーーーーい!

 

「・・・つまり、白龍皇を味方の救助か何かと思ったと言うわけかい?」

 

恐る恐る聞けば黙って頷く戦車君。

 

合流って白龍皇とかよ!

 

たしかに僕も白龍皇が二重スパイだって

言う情報は貰ってたけど、あの様子じゃ

普通にテロリストだよな?

 

スパイが一心不乱にゼファードルに殴りかかる意味がないし。

 

連れてた2人は間違いなくテロリストだから、

ソレこそ「スパイとは知りませんでした」って

言って殺されても文句は言えないぞ!

 

まぁゼファードルはなんか確信が

有ったみたいだけど、おそらくオセ様

経由で情報が来てたんだろうな。

 

現場指揮官の僕に教えなかったのは、事前に

白龍皇が来るなんて知らなかったからか。

 

それならシカタナイネ。

 

つまりゼファードルは良い。命令違反でも何でもない。問題はこの馬鹿共だ。

 

「では今回勝手な思い込みで行動したのは、

アザゼル総督と連絡が取れなかったからかな?」

 

僕がアジュカ様と連絡が取れないように、

向こうも連絡が着かないのかもしれない。

 

そうじゃなかったら、アザゼルの立場なら

白龍皇との合流は絶対に妨害しようと

するだろうからね。

 

仲間面して近づいた『英雄様』に対して、

白龍皇が「自分はスパイじゃない!」

なんて言ったらソレだけで大問題だし。

 

「はっ!その通りです」

 

ふむ、さすが『英雄』だ。兵士としてはクズだな。

 

現状維持で命の危険が無いなら、上司と

連絡が取れない場合は黙って待つべきだろう。

 

ソレをしないで、勝手に避難場所から

出てきて、僕を敵認定してるわけだ。

 

溜息が出る。さっさと引っ込ませよう。

 

「はぁ・・・話にならないね。あぁ、説明

ご苦労様。助かったよ。

では今回アジュカ様から現場指揮官として

任命された僕が、アザゼル総督に変わって

君たちに指示をだそう。

さっさと避難場所に戻れ。向こうから連絡

が来るまで待機だ」

 

さっさと帰れ。目の前から消えてくれ。

 

「なんだと?!またあそこに戻れって言うのかよ!」

 

そーだよ。そう言ってるんだ。

 

「・・・貴方がアジュカ様から現場指揮官と

任じられたと言う証拠は有るのかしら?」

 

喚く赤龍皇を無視してたら、『英雄様』が

そんな事を言ってきやがった。

 

「証拠?そんなの後から本人に聞けば

良いだろ?僕が嘘を吐いてたとして、

君らを安全な避難場所に移動させることで

僕にどんな得が有るっていうのさ?」

 

頭痛と胃痛の元が無くなるってのは有るけどね。

 

「確かにそれはそうだけど・・・」

 

不服そうだなぁ。だけどそんなの関係ないんだよ。

 

「リアス・グレモリー。すでに指示は出した。

いや、指示と言う言い方が悪かったかな?

コレは命令だ。君の納得なんか必要ないんだよ」

 

戦場で、納得できないから動きません!

なんて抜かす兵士なんか要らないんだ。

 

少し痛い目に遭わないとわからないのかな?

 

この場で本人か眷属を痛めつければ良いかも

しれないけど、コイツの後ろにいる妹魂がなぁ。

 

「ふざけるな!俺たちだって戦える!

それに、さっさとアーシアを返せよ!」

 

返せって・・・僕がスパイだと知ったなら

保護したことくらいわからないのかねぇ?

 

感謝の気持ちも無くコレって、ホントやる気失せるわー。

 

「私の眷属をゴミを見るかのような目で

見るのは止めて欲しいわね。

それにイッセーが言うように、アーシアを

引き取らせてもらうわ。

まずは彼女の無事を確認させて頂戴」

 

眷属も眷属なら主も主だ。

どんだけ無礼なんだよ。

 

まぁいいや()。僕だってコイツの眷属の

面倒なんか見たいわけじゃないしな。

なんなら熨斗つけて返してやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼファードル!彼女を連れてきてくれ!」

 

どーせ寝てるか、エスプレッソでも飲んでるんだろ?

 

ゼファードルも奥で休んでるだろうし。

連れてきてもらおう。

 

「ゼファードルですって?!」

 

ん?『英雄様』はアイツを見てなかったか?

 

フフフ、ならば一石二鳥だ。アイツも巻き込んでやる!自分だけ逃げようなんて許さないからな!




対決はしてるよね。

紳士、ことごとくフラグを回避するの巻。

馬鹿な!見えていないはずだッ?!
コレを避けるだと?!
えぇい!ヤツは化物かっ!!ってお話。

YOSHITUGUすら操る、悪魔の如き智謀の持ち主。
今は悪魔が微笑む時代だ!

巨悪に挑む英雄の運命や如何に!?


Q・何故英雄は成長しないのか?

A・成長する機会を与えてないから。
危機感も無ければ成長に必要な経験も
足りてないので、成長してません。
周囲もレベルアップより隔離を選んでます。


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90話

前回のあらすじ。

元聖女を悪魔の手から取り戻すため、
危険を省みず神殿の奥へと向かった若き英雄達。

ソコで彼らは衝撃の事実を知るッ!

あまりにも、グダグダになったので
バッサリ終わらせるッ!

そして、とうとうオセ君の狙いが明らかに?!

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばしッ!



ーーアーシア視点ーー

 

「やっぱり教会の連中って有り得ないっすよね~」

 

「「「ホントソレ!」」」

 

ど、どうしたら良いのでしょう?仮眠室でお休みしてたら、ディオドラさんやゼファードルさんの眷属の方達が来て、そのままお茶会になってしまってるんですけど・・・

 

「いや~アーシアさんにはウチの兄貴が迷惑をかけたみたいっすね。とりあえず私は関係ないし、兄貴は死んだんで、恨むなら兄貴を洗脳教育した教会連中を恨んで下さいっす」

 

「は、はぁ」

 

そう言って私にお菓子を渡してくる女性。お名前はリントさんで、聞けばレイナーレ様のところにいた元エクソシストのフリードさんの妹さんだとか。

 

確かにフリードさんは色々と感情の揺れ幅が大きな方でしたが、まさかアレが教会の洗脳教育のせいだったなんて・・・

 

私も有る意味洗脳教育を施されてたようですけど、エクソシストの方々はそれとは比べ物にならないくらい、かなり酷い扱いだったようです。

 

それにエクソシストの時の苦労話などを聞いてしまえば、悪魔を治療すると言うことがどれ程彼らを苦しめることになるのかもわかります。

 

神に仕えると言っておきながら、同輩たる彼らが命懸けで消耗させた敵を癒すなど、同輩の命に泥を塗ると同じことでした。

 

神の所在や信仰の有無など関係ありません。

 

私は己の愚かな行いにより、追放されるべくして追放されたのです。

 

まぁソレはソレとして・・・主の意思を偽り、信徒の信仰を利用して私腹を肥やす教会や天界の連中は許せませんが。

 

「ソーナ・シトリー様のところのヨシコ=サンなんか、自分を騙してた連中を捌く為に悪魔になったって公言してますからね。だからアーシアさんも、彼らを恨まないとか言っちゃダメですよ?ソレは泣き寝入りだし、連中の非道を認めることになるんですから」

 

トスカさんがそう言ってお茶請けを頂いてます。

 

彼女も教会の施設で無理やり教育されていて、御友人全員が自分達に教会の連中が望む力が無いとわかると纏めてガスで殺されたんだとか。

 

そもそもその御友人達は、教会が拾ったり買ったりしてきた孤児や奴隷のようなモノで、扱いはまさしく実験動物そのもの。そんなことを主の名を騙って行っていたと言うのですから、天使も教会の上層部も信用出来ません!

 

ここに居る皆さんが元教会の関係者の為、教会の悪辣さに対する愚痴が多いのですが、あとの話題は部長さんでした。

 

部長さんは、実家や魔王様の権力を使ってやりたい放題のワガママ貴族と言うのが周囲からの評価なんです。

 

関係各所に迷惑をかけておきながら、本人に自覚が無いのが更に問題なんだとか。

 

確かに部長さんは貴族のお姫様って感じですし、結構ワガママしてますよね。

 

地上の学校なんかに行ってる暇が有るなら、貴族としての勉強や領主としての仕事をするべきだと言うのもわかります。

 

学校は楽しいですけど、楽しむのが仕事じゃ無いですもんね。私も状況に甘え過ぎだと叱られました。

 

あとは副部長さん。あの人はもうダメらしいです。

 

なんでも前回のソーナ様とのゲームのとき、開始前の作戦時間にイッセーさんを誘惑してたとか。

 

主の進退を賭けたゲームで、自分の色欲を優先すると言うあまりにも有り得ない行為。

 

ソレを見た上層部の方々は副部長さんを評価することは無いし、同じ眷属悪魔からも非難の声が上がってるそうです。

 

イッセーさんに至っては、虎の威を借る狐(部長さん)の威を借る蜥蜴扱いです。

 

なんでも、イッセーさんが犯した上層部のヒト達に対する度重なる無礼は既に許される範囲を越えていて、サーゼクス様が止めていなければ狂犬として処分されてもおかしくないんだとか。

 

イッセーさんのせいで、眷属への締め付けを強化する法案も出来るかも知れないらしいんです。

 

だからイッセーさんは副部長さんと同じように上層部から嫌われてて、同じ立場の眷属悪魔のヒトたちからも嫌われてるそうです。

 

・・・この上、洋服崩壊なんか見せたら冥界全部がイッセーさんの敵になっちゃいますよね。

 

どうにかして部長さんとイッセーさんの行動を改めさせないとダメなんですけど、どうしたら良いか見当がつきません。

 

普通は行儀見習いみたいに、他所の貴族の家で色々学ぶべきなんですけど、今や部長さんを受け入れてくれる家が無いんですって。

 

だからこれ以上の粗相をする前に、グレモリー領から出さないことが肝要だとか。

 

リントさんやトスカさんからは「部長さんは赤蜥蜴(イッセーさん)と一緒に隔離してくれ」と言われる始末。

 

どう考えても『英雄』の扱いではありませんね。

 

「おぃーっす」

 

溜め息を堪えてると、覆面をした大きな男性が入って来ました。

 

YOSHITUGUさん・・・ではなく、トスカさんやリントさんの主のゼファードル様です。

 

見た目はとっても怖いヒトなんですけど、話をしてみると実は子供とかに甘い良いヒトだってわかります。

 

「お疲れ様っす、ゼファーさんが来たってことは、向こうは一段落したっすか?」

 

そう言ってゼファードル様にお茶を出すリントさん。

 

なんと言うか、自由に見えてキチンと上下関係が出来てるんですね。

 

「まぁな。とりあえず戦闘は終わりだろうよ。後は面倒な連中が出てきたから、さっさと逃げてきた」

 

「面倒な連中?」

 

トスカさんが首を傾げます。

 

それはそうですよね。面倒なヒト達が居るなら

戻ってくるのはおかしいですよね?

 

「ん?でもゴトウさんが居ないってことは、ディオドラ様の護衛を継続してるってことでしょ?ゼファーさんが逃げても良いの?」

 

さっきまで周りが全員女性だったので、出来るだけ存在感を出さないようにしてたシグくんも話に便乗してきました。

 

その内容はトスカさんのお話を踏襲するもので、この場の皆さんが不思議に思ってることでしょう。

 

もしかして何処かの来賓の方でしょうか?権威的な意味で面倒と言っているのかも知れませんね。

 

そう思ってた時期が私にも有りました。

 

ゼファードル様は何故か私をチラッと見てから、とんでもない情報を教えてくれたんです!

 

「そこの僧侶の主様が避難場所から出てきたんだよ。今ごろディオドラと口論でもしてるんじゃねぇか?」

 

私を見たから、どうしたのかな?なんて思ったのが馬鹿でした!まさか部長さんが魔王様達が用意した安全な避難場所から出てきてるなんて!

 

もしかして本当に私が拐われたと考えて、助けにきたのでしょうか?

 

「何しに来たかは知らねぇが、とりあえず赤蜥蜴はディオドラを睨んでたな。何がしたいかは知らんが、勝手に避難先から出てきて現場指揮官に噛みついてるんだ。また不敬と命令違反の上塗りだぜ」

 

お茶を飲みながら溜め息を吐くゼファードル様。

 

そ、そうですよね。もし部長さんがディオドラさんが魔王様のスパイだと知らなくても関係ありません。

 

部長さんには避難するように指示が出てるんです。

 

その指示に逆らってる以上、今の部長さんは勝手に行動をして、勝手に騒いでディオドラさんの邪魔をしていると言うことになります。

 

ソレはつまりテロリストの人達の味方をしてると言うことにもなります。

 

周りの方々は「またか」みたいな顔をされてるし、リントさんやシグ君は「処す?処す?」と言いながら剣を握ってます。

 

「処す」の意味はわかりませんが・・・も、もしかしたら部長さんとイッセーさんが危ないかも!

 

直ぐに私も部長さんへ事情の説明をしに行きたいのですが、私は私でこちらで待機しているように指示が出ています。

 

まさかココで私まで勝手な動きをするわけにはいきません。

 

どうしよう・・・そう考えていたら、

 

「ゼファードル!彼女を連れてきてくれ!」

 

向こうからそんな声が聞こえてきました。

 

間違いなくディオドラさんの声だし、彼女って言うのは私のことですよね?

 

呼ばれたゼファードル様はスゴく・嫌そうな顔をしていますけど、皆さんは部長さんとは関わりたくないらしいですから、シカタナイかも知れません。

 

・・・私とも関わるのが嫌とかじゃ無いですよね?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーディオドラ視点ーー

 

ゼファードルが奥からアーシア・アルジェントを連れてくれば、『英雄様』はまるで従兄弟の仇を見るような目で彼を睨み付ける。

 

いや、アレはサイラオーグの自爆だから。

 

「アーシアッ!無事だったか?何か変なことはされてないか?!」

 

赤龍帝がそう声をかけるが、最初に魔王様のスパイだって話したよね?しかもココは戦場だよ?変なことなんかするはず無いだろうに。

 

コイツの頭の中はどうなってるんだ?

 

「はいイッセーさん。私は皆さんに大変良くして頂きました!だから部長さん、ディオドラさんやゼファードル様にシツレイな事をしてはいけません!」

 

いきなりそんなことを言い出したアーシア・アルジェントに対して目を白黒させる『英雄様』ご一行。

 

僕としても違和感を感じたけど・・・あぁ、もしかして向こうで僕やゼファードルの眷属から話を聞いたのかな?

 

少しでも現状を理解してれば、今の時点でのシツレイがどれだけヤバイかわかるよね。

 

つーか今でさえ普通に命令違反の現行犯だし。

コイツらの保護者は胃を壊してるんじゃないかな?

 

「アーシア?貴女が急にそんなことを言うなんて、何が有ったの?もしかして脅迫でもされたのかしら?」

 

そう言って僕やゼファードルを睨む『英雄様』。

 

普通に考えたら、アーシア・アルジェントが命令違反してゴネてる『英雄様』を諌めてるんだよね?ソレが脅迫?

 

冗談だとしても、その言葉が出てくるあたり、どういう思考回路をしてるのかさっぱりわからないよ。

 

しかも僕の目の前には『英雄様』の言葉を受けて身構える赤蜥蜴と色情狂が居るわけで・・・

 

いや、ソレを信じるってどうなんだい?

 

ゼファードルはひたすら面倒臭そうにしてるし、鎧武者も然り気なく死体を運ぶために後方へ行こうとしている。

 

因みに向こうのハーフヴァンパイアと人狼君は、アーシア・アルジェントの無事を確認したから、さっさと用意された避難場所に戻ろうとしているみたいだ。

 

ソレが僕が出した命令だから彼らの行動が正しいんだけど・・・て言うか、何で女装してるんだ?

 

レーティングゲームにしろ戦争にしろ、あの格好はおかしくないか?学生服もそうだけど、主従揃って趣味全開って相手にシツレイだろ?

 

皇帝とかみたいに本気でレーティングゲームしてる連中に、ゲームを汚すな!とか言われるぞ?

 

作戦時間中の女王の痴態と言い、赤龍帝の立ち読みと言い、主の無策無能と言い、あらゆる意味で超越してるよなぁ。

 

「ご希望通りアーシア・アルジェントさんをお連れしたよ。ソレではさっさと戻ってくれ」

 

コッチはこれから捕虜の尋問したり、疲れた心身を癒すんだ。僕たちを解析しようとする連中が出てきたら相手をしなきゃいけないし、もしかしたら装置を破壊された英雄派が動いて来るかも知れないからね。

 

わざわざゼファードルの眷属を秘匿してるのもその為だ。

 

見た目が子供だし、戦い方も見せてないから、僕たちを観測してるであろう絶霧の使い手も油断してくれれば良いんだけど。

 

「・・・どこまでも私達を無視してくれるわねッ!」

 

当たり前だ。お前らに関わったらアジュカ様ですら胃を壊すんだぞ?関わっていられるかよ。

 

無駄に敵意をばら蒔きやがって。

 

いい加減自覚しろ。ソレは牛丼屋で大盛りつゆだくを頼むヤツに敵意を向けるくらい不毛な行為だぞ。

 

一人でサツバツとしてんじゃねぇ。周りの空気を見ろ。刺さねぇし刺されねぇよ。

 

「無視?命令しただろ?さっさと従ってくれ。ゼファードルがここに居ることからも、僕が現場指揮官だと言うことがわかっただろ?ソレとも君の方に僕の命令に従えない理由でも有るのかい?」

 

「くっ!」

 

くっ!じゃねーよ。さっさと動け。

 

それともプライドが邪魔して動けないか?

コイツは無駄にプライド高いからなぁ。

 

我儘が言える状況じゃないことくらいはわかると

思うんだけど。

 

と言うか、妹魂やらバラキエルが居なければ

ここまで会話なんかしないで殺してるぞ?

 

それなのに父親が嫌いだとか個人としてがどうとか・・・自分達がどれだけ身内に助けられてるか自覚しろよ。

 

「いい加減にしやがれっ!黙って聞いてれば部長に対して無礼な口を叩きやがって!」

 

いや、お前は黙って無いよね。

 

「イッセー・・・」

 

おい、ここは主として止めるとこだぞ。

ナニ頬を染めてんだよ。

 

「なぁディオドラ、さっさと戻ろうぜ。帰還できねぇならとりあえず奥で休めよ。連中とは会話するだけ無駄だ。下手に無視してサーゼクス様の機嫌を損ねるのが怖いのかも知れんが、お前は十分頑張った。アジュカ・ベルゼブブ様もしっかり評価してくれるはずだ」

 

あまりにもグダグダなのを見かねたゼファードルがそう提案してくる。

 

まぁさっさと幕を引きたいと言うのは有るし、何か有った時に指揮官が頭痛を抱えてるのは不味いよな。

 

「て、てめぇらッ!・・・えっ?!」

 

「こ、コレ転移?強制的に帰還すると言うこと?!」

 

ゼファードルの意見に従い後退を考えていたら、僕達に噛みつこうとしていた赤龍帝や『英雄様』達の足元から転移の光が漏れてきた。

 

僕たちがまだと言うことは、アレだな。

 

魔王様方はコイツらが解析される危険性よりも

この場を収めることを優先したんだろう。

 

まぁあのままだと、戦わずして僕はダウンしてるだろうし、余りにもグダグダ過ぎて『英雄』を処罰しなきゃ行けなくなるからねぇ。

 

まぁいいや。とりあえず僕たちは奥で休もう。

 

「サヨナラ。もう二度と会わないことを祈るよ」

 

いや、マジで。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー奥様視点ーー

 

 

『主ぃ~白龍皇が死んだみたいだけど、コレどぉする?』

 

作戦遂行中の神野から連絡が来たと思えば・・・

 

「白龍皇が死んだか。うーむ。何かしらの役割

が有ると思ったが、見込み違いだったな」

 

旦那様も思案顔です。まぁ予想外なことは多い方が楽しいと言う方ですから、コレはコレで良いのでしょう。

 

「一応鬼ぃさんに確認を取ろう。霊的なバランスに問題が無いようなら破壊してもらうから、とりあえずは保管だな」

 

なるほど。白蜥蜴単体の力は大したことが有りませんが、世界的なバランスの問題も有りますか。

 

ソレを考えれば、死者の魂が囚われる神野の地獄(べんぼう)を展開していたのは正解ですね。

 

神野は集合無意識と繋がってるから、そのまま漂白して輪廻の輪に戻すも良し、知らない振りをして冥府や他の地獄に送るも良し。魂ごと破壊するも良しですね。

 

宿主の罪はともかく、白蜥蜴は野生動物として暴れていただけですからね。罪と言う罪はありません。

 

一応宿主を洗脳していた疑惑もありますが、ソレはそう言う風に造った聖書の神の罪ですし。

 

まぁ補佐官様の判断次第ですね。

 

『了~解ぃ。とりあえず保留っと。それと、サーゼクス君は完全に壊れたね。目玉をくり貫いて頭も丸坊主にしてあげたし、滅びの魔力も回収済みさぁ』

 

漸くアレが消えましたか。旦那様の計画がまた一歩進んだと言うことになりますね。

 

「流石に良い仕事をする。オーフィスはどうだ?」

 

旦那様もご満悦です。ですがそうでしたね。本来の目的はサーゼクスではなくオーフィスでしたね。

 

何しろあの場に単騎でサーゼクスが出てくるとは思ってませんでしたからねぇ。

 

ヤツは自分がオーフィスに殺される可能性を考えなかったんでしょうか?

 

『コレ?無駄な感情を回収したから、今はただの力の塊だね。取り合えずその辺に転がしておくよ~。黒穴の中に異界を創っておけば、ある意味本人が望む静寂なる世界になるし、なにもしなければこのまま大人しく寝てくれると思うよぉ』

 

ふむ、確かにその通りではあります。

 

ヤツは下手に力がありますから、帰巣本能を刺激するくらいなら、隔離しておいた方が良いでしょうね。

 

「ふむ。渇望を持つなら意思を尊重も出来るかと思ったが、基本的にオーフィスは概念を司る存在。下手に感情をもたせるわけにも行かないし許可なく殺すことも出来んからなぁ。いっそ鬼ぃさんに回そうとも思ったが向こうも困るよな・・・よし、取り合えずはソレで良いか」

 

旦那様からしたら越えるべき壁と思いきや、ただの力の塊でしたからねぇ。

 

まぁ良いでしょう。

 

コレで禍の団は資金源である旧魔王派や、旗印のオーフィスを失いました。

 

帝釈天やハーデスの狙いは完全に崩壊しましたし、オーフィスを警戒していた連中も、今後は表だって動いて来るかも知れません。

 

今後、悪魔陣営や堕天使、さらに北欧神話群や、ソレらから情報提供を受けた連中は、オーフィスに代わって現れた『神野明影』と言う存在に対抗するため、新たな武器や術式を造り出して行くことになるでしょう。

 

ソレはつまり過去に造られた神器や魔法に頼る停滞の時代を終わらせ、新たな技術の開発や工夫が必要となる新時代の幕開けとなる。

 

そして旦那様が望む『戦争』によって、ソレらはより強く、より新しくなって行く。

 

 

 

 

 

 

ふふふ、これなるは千年、いや永劫戦い続け、進化してゆく楽園の創成!

 

旦那様の渇望を理解出来ている連中がどれだけ居るかは知りませんが、何人にも邪魔はさせません!

 

例えその先が世界の崩壊で有っても、我々は止まらない!

 

管理者よ。もしも居るならば、そしてもしも我々を止めるならば、今しかないぞ?

 

我々を止める為の力を、その輝きを旦那様に魅せてみろッ!

 

 




英雄が登場すると作者のメンタルが大変です。

普通に仲良くする元聖女。自分が所属するところのヤバさを知るの巻。

そして紳士は完璧に地雷原を突破したもよう。
こいつが神か?ってお話







以下ネタバレ。


なんか、主人公が何をしたいかわからないと言われますが、拙作のオセ君は初めから戦争を推進しております。特に隠してませんよね?(ФωФ)?

ただ、相手が堕天使や天使だけではないと言うだけの話です。だってそんなの聖書の陣営の内乱でしょ?

最終的に全ての神話を巻き込むのが目的でございます。

オーフィスに対しては各陣営が諦めてる節がありましたし、まさか無限の龍神が聖書の神の恨み程度で出来たモノで弱体化するなんて考えもしませんでしたからね。

取り合えず手も足も出ないと考えられている存在を退場させて、理やらナニやらによって撃退出来る神野君を表に出すことによって、各陣営の技術開発やらナニやらの成長を促すのが狙いですね。

成長した連中が争えばさらに成長するぜ!って感じです。

態々解説しなくても訓練された読者の皆様は理解していたと思いますが・・・多少はね?





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原作7巻
92話


92話で間違ってません。

91話に該当する文章が書けない・・・英雄達が、英雄達がぁぁぁ!!

原作7巻導入回!

謎に満ちてた世界観が明らかに?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーー奥様視点ーー

 

「まったく!ぷんすかですよ!」

 

狐殿が来たと思ったら急に愚痴り始めましたね。

 

まぁ彼女もお疲れでしょうし、我々にも

その責任の一端が有ります。

 

事の発端はオーディンが訪日すること。

 

その目的は駒王学園でコカビエルが

試した魔法陣と詠唱の実験ですが、

ソレだけだと流石に失礼と思ったのか

それとも周囲にそれらしい理由をつける

為なのか、自分が日本を訪れる理由を

日本神話群の主神である天照大神様に

挨拶する為とか言い出したんですよね。

 

もうこれだけで開いた口が塞がりません。

北欧の神如きがなんたる不敬。

 

その原因を作った我々に対して、問答無用で補佐官様が殴り込みに来ないだけマシと思うべきでしょう。

 

「オーディンが日本に行って、術式の再現

実験をするのは知っていたが・・・まさか

その口実に天照大神様を使うとはな」

 

話を聞いた旦那様も驚いていますね。

 

ソレはそうでしょう。天照大神様は曙光の号を持ち『八百万』の理を以て神座に君臨する方。

 

旦那様が言う主人公を守ると言う意味の管理者ではなく、本当の意味での世界の管理者とも言えるお方です。

 

世界に造られ、北欧と言う地域に縛られた

オーディン如きが面会できるような方では

無いと言うのに、一体何を考えているのか。

 

「そうなんです!そもそも天照大神様は

『勝手にすれば良いんじゃないかの?』

って感じで容認してるんですよ?

あの方々が気にするのは化生。つまりは

旦那様のような方が独自の理を持つことを

恐れているのであって、元々が理の化身とも

言える神野サンのような集合無意識から

生まれた方や、空さんのような守護者の方に

対して含むところは無いんです!」

 

狐殿が旦那様に抱きつきながら愚痴ってますけど、さらりと旦那様が高天原に警戒されてると言ってますよ?ソレ、言って良いんですか?

 

旦那様も苦笑いです。まぁ向こうの方々が、

旦那様のように力を持ち、神の次元に

到達するモノを警戒するのは当然でしょう。

 

そもそも旦那様が持ちうる理と似たような

モノが既に有るらしいですから、警戒も

それほど本気では無いらしいですがね。

 

悪魔は万年生きると言いますが、向こうの

方々には寿命が有りませんし、旦那様は

「限りが有るからこそ輝く。だから寿命が

無くなるのは困る」と言う持論の持ち主。

 

それ故に旦那様と彼らは相性が良いのです。

 

向こうにしてみたら旦那様は新たな存在に対する試金石。

 

もしも旦那様を打ち破る存在が現れたら

向こうも本気で動くのでしょう。

 

その扱いには思う所も有りますが、旦那様がソレを認めてますからね。

 

ならば私は正妻としてソレに従うまで。

 

ソレはともかく、オーディンに対しての対応ですが・・・

 

「とりあえず現状において駒王町の

管理者はソーナ・シトリーだ。

オーディンの案内には彼女を付けることになるだろうな」

 

まぁそうなりますか。

 

「護衛に関しても、現地が悪魔の領土である

以上は悪魔から出すことになる。

アジュカ、いや、ファルビウムだな。彼が

誰を任命するかは知らんが、現状で可能性が

高いのはゼファードルだろうな」

 

そもそもが自分たちを上回る実力者で一つの勢力の主神ですからね。

 

本来なら最高戦力の魔王が出て護衛する

のが正しいのですが、サーゼクスは廃人で、

アジュカやファルビウムは神野やオーフィス

への対処が有るし、セラフォルーは外交官

として各地へ動く必要が有るので地上に

出てくる余裕が無い。

 

ソレに連中は自分たちと彼らが同格と

勘違いしてる節がありますからね。

 

我々は聖書陣営の中の一勢力。いわば陪臣。

対してオーディンは神話群の主神です。

 

格として見れば魔王は彼らよりも格下なんですがねぇ。

 

その魔王の更に下の連中を護衛に付ける?

間違いなく無礼ですよねぇ。

 

グレイフィアなら魔王の代行として丁度

良いかもしれませんが、サーゼクスが

アレですからねぇ。

 

旦那が動けないときこそ奥方が動くべきでしょうが、所詮は家を投げ捨てた貴族の小娘。

 

母親としても貴族としても足りません。

 

ソレを考えれば、魔王の親族であり、先の戦で

白龍皇を討ち取り、堕天使の幹部と五分に

戦った自称弟子は使い勝手が良いでしょうが、

アレが護衛と言われると・・・

 

「我々に依頼は来ませんか?」

 

実力で言えば我々に来そうな気もしますがね?

 

そう聞けば旦那様は狐殿を撫でながら

苦笑いをしている。

ふむ?何かおかしなことを聞きましたかね?

 

「俺達は戦争推進派だからな。下手に護衛

にした場合、オーディンを狙った連中を容赦

無く殺すことになるだろう。

無論、護衛という大義名分は有るが、現在の

悪魔陣営は立て直しの真っ最中だ。

下手に戦争の引き金は引けんだろうよ」

 

なるほど。北欧神話群やオーディンを狙う連中に

対して自称弟子では力不足と思いましたが・・・

護衛と言うより案内の方が意味合いが強いと

言うことでしょう。

 

ついでに言えば、魔王から見ても、旦那様は

悪魔の貴族では有りますが頭ごなしに命令

できるような関係では有りません。

 

貴族家当主に、護衛をしろ!などとは言えないのですよね。

 

中途半端な貴族主義の弊害です。

 

「そう言えば日本神話群はオーディンの

扱いをどうするんだ?勝手にしろとは

言うが、天照大神様の性格ならば会談を

無視すると言うことも無いだろ?」

 

あぁ、確かにそうですよね。

普通に考えれば代理の者を出すことになるでしょうが・・・

 

「あ!それなら不肖、この私が天照大神様の

代理として連中と会談することになりました!」

 

誇らしげに胸を張る狐殿。

 

旦那様は狐殿の頭を「凄いなー」と言いながら撫でてますが、コレは一大事ですよ。

 

狐殿とて無力では有りませんが、何か有って

怪我でもしたら大変です。

 

コレは万全の準備を整えねばなりませんね。

 

「狐殿の護衛には伯師妹を付けましょう。

青いのと黒いのが居るのでその辺の神

如きならば殺せます。

それと雑魚対策にアリスですね。彼女の

殲滅力が有れば雑魚がいくら居ても問題

ありません。

後は、オーディンの方で邪魔をしないように

ソーナ・シトリーにはシロネコを監督に、

警備の総指揮は簪に任せましょう」

 

本当は私が担当すべきですが、私が出ては簪が

後ろに下がれません。そうなると狐殿と簪と

言う形で護衛対象が増えてしまいますからね。

 

その点シロネコならソーナ・シトリーと

知り合いですし、簪の付き人です。

 

一応簪の側にクロネコも控えさせれば問題無いでしょうね。

 

シトリー家はとはいまだに補佐の契約が

継続してますから補佐ならば問題ありません。

 

もしも魔王たちから協力要請が来ても、

シロネコと簪が動いていると言うことに

すれば良い。

 

あとはオーディンを狙う連中に舐めた

真似をさせないように、神野に病でも

ばら撒いて貰いましょうか?

 

それとも空殿に見張って貰い、何か有ったら

即座に異界を展開してもらうべきか?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

( ´・ω・)?

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「せ、正妻様!大丈夫ですよ!私の護衛には

補佐官様が付くことになってますし!」

 

「鬼ぃさんが?」

 

旦那様もビックリですが、さすがに予想外です。

あの方が護衛?まぁ補佐と言えば補佐ですが・・・

 

「はい!オーディンとも知らぬ仲では無い

そうなので、天照大神様に対する無礼を

しっかり理解させると仰ってました!」

 

「・・・そうか」

 

あぁなるほど。我々は悪魔勢力と言うことも

有りますが、補佐官殿は日本地獄の所属。

 

天照大神様の配下でも有りますから、

ココで地上に出ても特に問題は無い。

 

オーディンが知り合いなら猶更ですね。

 

奴を見せしめにすることで、今後勘違いした

連中が現れないようにするつもりでしょう。

 

例えば悪魔陣営が彼らに協力を要請したり、

他の聖書の陣営の連中にも新たな土地の

借り入れの要請をしたりさせないように

する気でしょう。

 

ですが、補佐官殿が来るなら猶更警護に気は抜けません。

 

あの方は金棒を構えただけで伯師妹が死を

覚悟するレベルですからね。

 

我々が天照大神様を軽く見てる等と

思われたらどうなることか。

 

旦那様が折檻を受ける可能性も有ります。

伯師妹にはしっかりと言い含めましょう。

 

自称弟子にも油断はさせません。

 

魔王共はこのことを何処まで理解してるのやら。

 

何も知らないようなら魔王を護衛に付ける

ように話を通す必要が有りますね。

 

オーディンはともかく、狐殿への不敬は許しません。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーシロネコ視点ーー

 

ず~いぶん久し振りな気がします。

 

こんな事を簪姉様に言えば「メメタァ!」って

言われて吹っ飛ばされますから言いませんけど。

 

でもって奥様からの緊急連絡です。

 

オーディンがココに来ることに関係してる

んでしょうけど、簪姉様が眉を顰めてるのを

見ると、黙って実験して帰るってだけじゃ

無いんですね?

 

「とりあえず白音ちゃんは、オーディンの

案内役になるだろうソーナ・シトリーの

補佐になるね」

 

「なるほど~」

 

まぁソレは問題ありませんよね?多少の教育

を施して、少しはマトモな考えを持つように

なりましたけど、やっぱりまだまだ若手で

未熟ですからね。

 

領主としての仕事と案内役を兼ねるには

まだまだ実力不足です。

 

ソレはそれとして、連中の補佐は仕事のウチだし、特に問題無いのでは?

 

「問題はココからでね?オーディンが何をトチ狂ったか、天照大神様との会談を要請したらしいのよ」

 

「えっと、北欧神話の主神が日本を

訪れるなら挨拶くらいは普通なのでは?」

 

最低限の礼儀だと思いますけど・・・何か

問題が有るのでしょうか?

 

首を傾げる私に対して苦笑いする簪姉様。

 

むぅ。何か私の知らないことが有るのでしょうね。

 

「白音ちゃんはまだ知らないか~。

天照大神様はね?とっても偉いの」

 

ん?ソレはそうですよね?何しろ日本神話群の主神ですし。

 

簪姉様が何を言いたいのか良く分からないのですが・・・

 

「それでね?今の天照大神様は厳密には

イザナギ様とイザナミ様の子ではなく、

曙光と言われる方が太陽の化身である

天照大神様と同化したって感じの方なんだ」

 

む?

 

純粋な太陽の化身ではないと言うことですかね?

 

「世界の創造と言うか管理と言うか、そう

言うのをしてる方でね?

わかりやすく言えば補佐官様の上司の上司。

その理は世界を覆うの」

 

「スゴク・偉いどころじゃ無いですよね?!」

 

理についてはあんまり詳しく無いですけど、

補佐官様の上司の上司って!

明らかにソッチが問題ですよ!

 

「そうだね。お参りするなら「良く来た」

って感じで終わりなんだけど、同格面して

会談なんか申し込んで来たじゃない?」

 

あぁ、補佐官様が素振りしてるのが想像できます。

 

「本来なら格下だから「寝惚けるな田舎者が」

で済む話なんだけど、天照大神様は基本的に

そう言うのに無頓着な方でね」

 

あぁ、日本神話の方ってスサノオ様みたいな

ヒトたち以外は基本的に大らかですよね。

 

日本で悪魔や堕天使が騒いでも気にしないし。

 

「人を見守り、国を見守り、世界を見守るのが

あの方々だからね。態々小物の粗相に目くじら

を立てることは無いけど、今回はソレが響いた

形かな?」

 

「まさか・・・会談を受けるのですか?」

 

ソレはシカタナイにしても、場所は何処に

なるんでしょうね?

 

流石に高天原に他の神話群の神様を招きはしないですよね?

 

まさかオーディンが用のある駒王町?

こんなところに補佐官様の上司の上司が来るの?

 

半ば絶望を覚えながら確認すれば、簪姉様

は頷いてしまいました。

 

ですがまだです!まだ絶望する時間では有りませんでした!

 

「流石にご本人様は来ないで、代理の神使様が来るってさ」

 

ま、まぁそうですよね。

ですが神使の方とて神様です!粗相なんか出来ません!

 

「でもってその代理の方が狐様なんだってさ」

 

「・・・マジですか」

 

真顔で頷く簪姉様。つまり奥様からの緊急連絡

とは狐様の護衛に関することなのですね!

 

「狐様の護衛には、ウチからウィーネちゃんと

アリスちゃんが付く。当然ティアマットと

クロウ・クルワッハも一緒」

 

「なるほど。ウィーネ様は強力な神が来た

時で、アリスさんは雑魚が来た時のためですか」

 

戦いは数と言いますが、アリスさんの呪詛は

数を無効化するだけの力が有りますからね。

 

ウィーネ様に関しては相手がシヴァクラスで

無い限りは後れを取ることは無いですし、

お付きの二人もその辺の神様くらいなら

瞬殺できるらしいです。

 

「そうだね。ソレでオーディンの方には

ソーナ・シトリーと自称弟子がつく予定。

ソレを白音ちゃんがフォローする形だね」

 

むぅ。扱いが微妙ですが、連中が特に面倒なことをしなければ、後は全部ウィーネ様が片付けてくれますかね?

 

いや、あくまで狐様の護衛ですから、私たち

には関わらない可能性も有ります。

 

「まぁコレは予定だから、他の連中が

オーディンの護衛につく可能性が有るけど、

私たちは護衛と言うよりは周囲がおかしな

真似をしないようにすることが仕事だね」

 

「なるほど・・・狐様にご迷惑をかけないこと

が第一と言うことですね?」

 

その為ならオーディンが死んでも構わないと。

 

「そうだね。何せ狐様の護衛には補佐官様

も付くみたいだから。ただでさえ油断

慢心は駄目だけど、一切の手抜かりは許され

ないからそのつもりでね」

 

おぉう・・・まさかの補佐官様出陣ですか。

 

稀に視察みたいなことをしてるのは知って

ましたけど、そうかぁ狐様の護衛かぁ。

 

とりあえず会長眼鏡と自称弟子にはキツク言って置きましょう。

 

「ウィーネちゃん達や白音ちゃんへの指示は

私が出すことになるよ。

黒歌さんも私の補佐としてコッチに来ること

になるから、いざと言うときは確実にフォロー

する。だから白音ちゃんが一人で苦労する

ような事にはならないから安心してね」

 

そう言って簪姉様が指揮官の顔を見せました。

 

狐様は奥様と並ぶ重要人物ですからね。

ご主人様の眷属として粗相を許すわけには

行かないと言うことでしょう。

 

そしていざとなれば簪姉様と黒歌姉様が私のフォローに回ると言うのも心強いです。

 

面倒事を持って来たオーディンには

何かしらの嫌がらせをするとして・・・

 

まずは準備ですね。

 

軍勢を動かすことは有りませんから、

駒王町の警備に関する引き継ぎくらい

でしょうけど。

 

無様を晒したら補佐官様とウィーネ様に

殺されると分かれば、自称弟子も学園に

戻ったソーナ・シトリーも素直に言うことを聞くでしょう。

 

・・・聞かなかったら聞かせるまでですが。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?オーディン様が駒王町に?!」

 

「そう☆だからソーナちゃんに案内役を頼みたいんだ♪」

 

 




91話は後で書きます。いつか。きっと、多分。

拙作の世界の理は曙光八百万であるってお話。
お父さんやお母さんは出てきません。



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93話

何と言うか・・・スランプ?

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

オーディンが駒王町に来るから、その案内役と

言われても・・・

 

「そもそもオーディン様は何をしに駒王町に来るんですか?」

 

観光なら別にココである必要は無いですよね?

 

『んーとねぇ。まぁソーナちゃんなら大丈夫かな?・・・日本神話の人に言っちゃダメだよ?』

 

その危険すぎる前置き止めてくれませんかね?!

 

「あ、私は仕事がありますのでコレで失礼します」

 

「あぁ、そうだな私も巡回だった。では魔王様、シツレイシマス」

 

椿姫!ヨシコ=サンまで?!

 

『あ、はーい。頑張ってね~☆』

 

お姉様はその2人が退出するのを止める

どころか、むしろ好都合とでも言うように

彼女たちを送り出す。

 

ひ、秘密を守ると考えれば良い事なんで

しょうけど、何か納得がいかないわ!

 

2人が居なくなったことで私一人になった

ことを理解したお姉様は、キョロキョロと

自分の周囲を見て聞き耳を立ててる者が

いないかどうかを確認しているようだ。

 

いや、そんなにヤバイ情報なら知りたくないんですけど・・・

 

任務の内容に突っ込んだ私が馬鹿だったの?

 

『えっとね?オーディン様とアザゼルは、

以前駒王学園でコカビエルが使った

魔法陣の再現をする気なんだ』

 

もう話し始めたし!

 

後悔は後!聞いた以上はきちんと理解しないと!

 

だけど内容がおかしくないですかね?

 

「魔法陣の再現・・・ですか?」

 

確かコカビエルって、リアスには街の破壊が

どうこう言ってたけど、実際はあの事件

そのものが禍の団の連中を誘き寄せる為の

狂言で、ココでの戦闘の衝撃やら何やらを

外に出さない為のモノだったのよね?

 

その痕跡はリアスが跡形もなく消し去ったけど・・・再現?

 

あぁ、もしかして映像でも撮ってたのかしら?

もしくはオセ様とかが記録を撮ってた可能性が

高いわよね?ソレを貰ったとか?

 

『そう、その魔法陣には色んな秘密が有って、

アジュカちゃんもファルビーも近い内に

調査に行くことになるんだって』

 

魔王が何してんの?!

 

「魔王様のフットワークが軽すぎませんかねぇ?!」

 

いや、オーディン様の格を考えれば、魔王様が

動くのも当たり前かもしれませんけど!

 

先日サーゼクス様がオーフィスと戦って

致命的な致命傷を負ったばかりですよね?!

 

『私もそう思わないでもないけど、コレは

最優先でやらないとダメなんだよ。

だからオーディン様が学園で何をするか、

しっかり見定めてね?』

 

真顔で告げられる任務を聞き、リアルに

肩にナニカが乗ったような錯覚を覚える。

 

・・・責任が重すぎませんか?

 

「いや、私は学生でしがない管理者ですよ?

言ってしまえば町長です。町長に一国の王様を

出迎えさせるっておかしくないですか?」

 

悪魔の中で北欧神話群の扱いがどうなってるのかわかりませんけど、少なくとも格が違いますよね?

 

だから外交官出してください。ディオドラとか。

 

『そう言われちゃうとそうなんだけど~

でもでも案内役としては現地の町長さんが

居ても問題ないと思わない?』

 

私の言外のメッセージは軽く受け流され、

ある意味正論のようなものを笑顔で叩き込んできたお姉様。

 

ま、まぁ、所詮は案内役ですもんね。

 

「では、それ以外はどうなるんです?

護衛とか饗応役が必要だと思いますけど?」

 

いや、私たち悪魔勢力でオーディンを護衛

出来るのなんかオセ様たちしか居ないで

しょうけど、まさかあのヒト達を護衛に

なんか出しませんよね?

 

『護衛はゼファーちゃんで、饗応役は

コッチでは出さなくて良いみたい。まぁ

向こうも遊びに来るわけじゃないからね』

 

ゼファードルか・・・彼はファルビウム様の

血族で白龍皇を討ち取った武功もある。

 

オーディン様も気に入ってたみたいだし、

彼は特に問題ない、か。

 

「そう言えばアザゼル総督も来るんですよね?そちらはどうなるんです?」

 

基本的にアザゼル総督も聖書の陣営では

あるけど、堕天使陣営のトップでしょ?

 

魔王様と同格と考えれば護衛が必要よね?

 

『アザゼルに関しては自分で用意するみたい。

一応信頼の証としてゼファーちゃんやソーナ

ちゃんが付くのは認めるけど、やっぱり

ついこの前まで戦争状態だったし、さらに

負傷から回復したばっかりだからね。

何か有ってソーナちゃんのせいにされても

困るし。私もそれでいいかなぁって☆』

 

あぁ、サーゼクス様と共にオーフィスと戦った

んですよね?そして一定時間戦った後でやはり

自分たちではオーフィスには勝てないと判断した

サーゼクス様が、来賓であるアザゼル総督を

巻き込めないと言うことで彼を脱出させたらしいけど・・・

 

これに関しては何と言うか、どこまでが本当なんだかわからないわ。

 

あの場にオーフィスが居たのは事実らしいし、

サーゼクス様がクルゼレイ・アスモデウスを

討ち取ったのも事実。

 

だけどその後が微妙なのよ。

 

オーフィスでしょ?それぞれの神話が恐れる

無限の龍神でしょ?ソレと戦って何故

サーゼクス様はまだ生きてるの?

 

嬲る趣味とかはないだろうし、そもそも

オーフィスと戦って逃げれるの?

 

私なんかシロネ様から逃げれる気がしないんだけど?

 

『とりあえずそんなわけだから、よろしくね!

コレもソーナちゃんの評価になるんだから☆』

 

私が考え込んでるうちにそう言って話を終わらせに来たお姉様。

 

いつもならもっと下らない話をしたりして

長引かせようとするのに、そんな余裕は

無いのだろう。

 

お忙しいのはわかる。それに私の評価も、ね。

そんなのはどうでもいい!なんて言えない。

今まで散々迷惑かけてきたし。

そもそも貴族は評判や名声を求めるモノ。

今までは相当風当たりがキツかったのよね。

 

実家やお姉様にしてみれば、引きこもりが

社会復帰したような感じかしら?

 

それなら今まで迷惑をかけた分、任された仕事はきちんとしないと!

 

「わかりました。万全の状態でオーディン様をお迎えさせて頂きます」

 

私がそう言えば、心底安心したような顔で

『ヨロシク☆』と言って通信を切るお姉様。

 

私が「仕事を押し付けられた!」と言って

不満を言うのを恐れていたのだろうか?

 

まったく、私はそこまで子供じゃないですよ。

 

お姉様の気遣いが嬉しいやら気恥ずかしいやらでどんな表情をして良いのか分からなくなる。

 

だけど今の私たちにそんな余韻に浸っている時間は無い。

 

『会長、連中が来ました。数は4。全員神器使いです』

 

通信機から流れる匙からの報告でスイッチを切り替える。

 

夏休みが終わり、駒王町に戻った今の私は

領主であり指揮官。

 

こうやって小刻みに人員を派遣してくる禍の団の英雄派の狙いが、実験であり禁手化であるというのはわかってる。

 

だからこそ一人も逃がさない。生け捕り?捕まえても記憶を失う連中を?無意味でしょ?

 

そんなことをしてるから、連中は失敗しても

殺されないと勘違いして何度も襲ってくるのよ。

 

故に殺す。彼らが悪魔陣営の被害者だろうが何だろうが関係ないわ。

 

彼らを生かした結果、私の眷属の家族や友が

殺されるというのなら、私は彼らを殺すことに

躊躇なんかしない。

 

「了解。これから向かいます。戦闘は

私が行くまで控えるように。それと、

そいつらが囮の可能性も有るから椿姫は

別働隊を率いて巡回を行って頂戴。

実家からの応援に対する指揮権も預けます。

必ず4人一組で動いて、単独行動は禁止よ」

 

囮に全力を注いで街が破壊されましたなんて

ことになったらシロネ様に殺されるわ。

 

いや、あの方々もそうならないように

フォローはしてくれるけど、その分

失点に対する指摘が入るから、こちらにも

余裕なんかないのよ。

 

油断も慢心もしない。わかるわね?

 

そう言う意味を込めて指示を出せば『『『『サー・イエッサー』』』』と即座に響く眷属全員からの了承の返事。

 

そうよ、それで良いの。

返事を聞いた私は一度頷き、部屋を出る。

 

さぁ、戦争を始めましょう。神器頼りのテロリストどもに、訓練された兵士の怖さを教えてあげるわよ!

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

「シトリー家の眷属かッ!この外道共がっ!」

 

連中が何故か町外れの廃工場の中に集まって

待機してたので、ヨシコ=サンの結界で廃工場

を覆い、私の魔力で水蒸気爆発を発生させた

ところ、生き残った黒ずくめの男に外道扱い

された件について。

 

いや、テロリストが悪魔に何を求めてるの?

 

呆れながらもハンドサインで援軍への

警戒と、転移で逃がさないようにする為に

この場の霊的な流れを乱すように指示を出す。

 

皆が頷いたのを確認して、私が一歩前に出る。

 

人間の身でアレに耐えると言うことは防御系

かカウンター系でしょ?

 

それなら簡単。人間の身は脆弱だからね。

 

「何か言いやがれ!この悪マ”?!・・・?!」

 

全身に火傷を負い叫び声を上げていた男が

水を吐いて死んだ。

 

はいオシマイ。

 

話す?何を?どこで聞き耳を立ててるか

わからないのに、態々解説なんかするとでも?

 

と言うか言われなくても察しなさいよ。

水蒸気爆発で生じた衝撃や熱で忘れて

るんでしょうけど、その水蒸気には

私の魔力が宿ってるでしょうに。

 

空気中に漂う細かい霧にも。

 

ソレを吸うと言うことは体内に私の魔力が

宿った水が出来ると言うこと。

 

あとは内臓を破壊してもいいし、溺死させても良い。

 

悪魔なら己の魔力で中和出来るかもしれない

けど、それだって認識しなきゃ死ぬもの。

 

人間が耐えれるモノじゃないわ。

その程度もわからないで、更に対策も

取らずにココに来たって、経験どころか

無駄死にするだけなのにねぇ。

 

でもって観測員かしら?離れたところにいた

スナイパーみたいなのは、匙の伸縮自在の愛

で捕縛済み、こちらに引き寄せるだけで発生

する急激なGによるレッドアウトは凶悪よねぇ。

 

しかも予期せぬところから来るから、普通に

ムチウチになるのよ。

 

腕が折れても戦える、足が折れても戦える。

だけど首を痛めた人間は戦えないわ。

 

記憶は必要ない。狙いはもう知ってるから。

ただ神器の情報が欲しいのよね。

 

「『緑光矢』ですね」

 

首の骨が折れて気を失ってる男の神器の確認をしていた留流子がそう告げる。

 

えっと、シロネ様からのリストには・・・無いわね。

 

「なら処分ね。匙」

 

「はい!」

 

私の言葉に従い頭を潰す。うん。ここで

テロリストに情けをかけるようじゃ悪魔社会

でどんな扱いを受けるかわからないからね。

 

リアスあたりなら殺す必要は無い!とか

騒ぐかもしれないけど、記憶を失った

テロリストなんか生かしてどうするのよ?

 

自分は手を汚さないで偽善の自己満足に

浸れるほど余裕が有る訳じゃないのよ。

 

まぁ『英雄』の場合は別かもしれないけどね。

 

だけど私たちは違う。問答無用で殺害せよと

言う指示が出てるんだから殺さなきゃ駄目。

 

舐めプして経験を積ませた挙句に逃げられるなんて論外よ。それこそ利敵行為じゃない。

 

英雄派の討伐という仕事をきっちり

こなした私たちは、椿姫と合流して

巡回の続きを行う。

 

戦闘が終わったからといって気を抜いて

奇襲を受けるわけには行かないし、何より

今の駒王町の管理者は私だけ。

 

リアスは事実上の更迭処分を受け、グレモリー家での再教育を受けているわ。

 

どうも英雄派の連中もソコまでは理解

していないようで、私じゃなくリアス

との戦闘を望んでいるようなのよね。

 

まぁ同じ『英雄』だし?一般の悪魔の中では

リアスは未だに英雄で悲劇のヒロインだけど、

上層部は絶対に彼女を動かす気は無いから。

 

サーゼクス様が負傷したとき、アジュカ様は

「コレでリアスを隔離できる!」って泣いて

たらしいし。

 

親友のサーゼクス様に関しては、戦場の

ことってきっぱり割り切ってるのよね。

 

ソレはともかく、私たちが誰一人英雄派を

逃がさないから、情報が行き渡ってないのよね。

 

だから連中は未だに、ココに来れば

『英雄』のリアス・グレモリーやそれに

従う雷光の巫女と最強の赤龍帝たちと

戦えるって思ってるのよね。

 

戦闘経験としては十分だし、万が一

討ち取ったら大手柄!って感じらしいわね。

 

まぁせいぜい頑張って下さいな。

あんなのでも一応討伐実績にはなるし。

 

廃工場を修繕したりする手間がアレだけどね。

と言うか連中はアソコで何をしたかったのかしら?

 

待ち伏せにしては隙だらけだったわよね?

 

それとも、まさか自分たちが罠を張った廃工場に、私たちが正面から入って行くとでも思ったのかしら?

 

いや、無いわよね。大破した学園を一晩で

立て直す事が出来る私たちが、廃工場の

破壊なんかに気を使うはずがないもの。

 

うーん。わけがわからないわ。

 

それと向こうの術式。

 

禁手化したら強制転移するらしいけど、

負けたら記憶消去することといい、随分と

都合の良い術式よねぇ。

 

ま、ヨシコ=サンの結界内ではそれも不可能だし、

そもそも転移は万能じゃない。

 

しっかりと準備すれば転移の妨害くらいできるのよ。

 

英雄派がそれすら理解できていないのか、

それとも他の襲撃を受けてる拠点では

あっさり逃がしてるのかどうかは不明

だけど、この単調な攻撃もオーディンが

駒王町に来る前に止めないと不味いわよね?

 

「ソーナ。シロネ様から緊急連絡です」

 

そう考えてたら、オーディンよりも優先すべき方の連絡が入ってきた。

 

「直ぐに繋いで」

 

もはや脊髄反射でそう答え、通信機の前で膝を折る私たち。

 

一応結界を張ってるから周囲の人間には

見えないだろうけど、道路でいきなり

正座する私たちが見えてたら一体

どんなリアクションをされるやら・・・

 

でも緊急連絡とは珍しいわね。

 

私たちがテロリストを逃がした時でさえ、

普通に片手に逃げた犯人の首を持ってきて

私たちに折檻するくらいなのに。

 

『緊急事態です。オーディンが駒王町に

訪問することは知ってますね?』

 

「はい、知ってます」

 

正座してる私たちに特に違和感を持つ

こともなく話を始めるシロネ様。

 

シロネ様が機密情報を知ってることに今更疑問を抱かない。

 

質問には答える。コレが長生きの秘訣よ!

 

『案内役として貴女が任命され、一応の

護衛として自称弟子が任命されたことは?』

 

「はい、先ほどレヴィアタン様から伺いました」

 

一応の護衛って・・・まぁそうよね。

オーディンだって神クラスの護衛を

連れてくるでしょうし。

なんだかんだでゼファードルは私と

同年代の若手だもの。

 

だけどそれがどうしたのかしら?

 

私の言葉を聞き、手間が省けましたと言う

シロネ様。えっと、手間?

 

『結論から行きましょう。此度オーディンが

天照大神様に会談を申し入れるという無礼を

働いた結果、代理の方が駒王町に訪れる

こととなりました』

 

さっきも思ったけど、普通にオーディンを

呼び捨てにするのね。

 

せめて心の中だけにしておくべきじゃないかなー何て思ったり思わなかったり。

 

絶対口には出さないけどね!だけど・・・

 

「無礼ですか?むしろ日本に来て

天照大神様にご挨拶をしない方が

問題になるのでは?」

 

ソレを言えば私たちもアイサツしてないけど、

正直私たちはアイサツ出来るような身分じゃ

ないし。オセ様が代理でアイサツしてくれた

みたいなんだけど・・・

 

いや、なんか一時期リアスが「代理人に文句を言われた」って憤慨してたわね。

 

・・・・・・ま、まぁソレは良いわ!

 

問題は今!と言うか北欧神話群の主神と日本神話群の主神だと同格なんじゃないの?

 

私が疑問に思ったことを察したのだろう。

シロネ様も『その気持ちはわかります』と

言って通信機の向こうで頷いている。

 

偽物か?!反射的にそう思ってしまったが、

シロネ様のジト目から感じられる圧力は本物だ!

 

『今、貴女が何を考えたかは不問にします。

まずは指示を出すので聞きなさい』

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

ヤヴァイ!本気で緊急事態よ!だって私を含む

全員が声を揃えるくらいマジだもの!

 

『代理の方はとても偉い方です。万が一

にも不快な思いをさせないようにする為、

外部から駒王町に転移が不可能となる

結界を展開します。

そしてアリスさんと私で侵入者の一斉

清掃を行いますので、暫く夜の巡回は

不要です。もし知り合いなどがいた場合

避難するように伝えなさい』

 

は?

 

アリス様が出る?地上に?

 

「ソーナ!」

 

あっ!

 

「りょ、了解です!」

 

椿姫の声で我に返り、取り合えず返事を

したけど・・・どういうこと?

 

いや、オーディンが来るなら不穏分子は

残さず消すのが当たり前だろうけど、

オーディンよりも天照大神様の代理を

優先してる?

 

 

『・・・まぁいいでしょう。とにかく

日中の清掃や治安維持に手を抜くことは

許しません。明日から数日は私が直接指揮

を執ります。魔王にはまだ伝えてませんが

何か問題はありますか?』

 

「「「「「ありません!!」」」」」

 

文句なんか有るわけ無いわ!有っても言えるような空気じゃないし!

 

『よろしい。では計画書を送りますのでしっかりと読み込むように』

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

眷属の皆も他人事じゃないからね。全員で返事をする。

 

だけどこれだけは聞いておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ココで何が始まるんです?」

 

シロネ様が魔王様方を差し置いて動くと

言うことは、オセ様の命令ですよね?

 

そしてココまで厳重なら、タダの訪問とか、魔法陣の研究で終わるようなことはないですよね?

 

ナニカあるのよね?それはお姉様にもまだ

連絡してないらしいけど、私が報告しても

大丈夫なんですか?

 

そう言う意味を込めて確認してみると、

溜息を吐きながらも教えてくれたわ。

 

『大惨事です』

 

少し疲れを感じさせる表情で、端的に述べられた言葉には遊びも何も含まれて居ない。

 

「「「「「・・・」」」」」

 

眷属含め全員が無表情になる。

 

聞かなきゃよかった!と思うけどもう遅い。

 

コレが私たち未熟者がオセ様公認の大惨事に巻き込まれる事が確定した瞬間でした・・・まる。

 

 

 

 




原作読んでると疲れるんですよねぇ。

何度かテロリストが攻めて来てるのに普通に学校生活してるし。

携帯がなる前にテロリストが暴れてたら相当死んでるよね?とかなんで廃工場に居たの?とか、誘ったにしては「対応が早い」とか言ってるし。

そもそも放課後から廃工場に行くまでに結構時間経過してるし。お前ら本気でテロリストの相手する気が有るのか?舐めプで逃がすなよ。殺せよ。なんで生け捕りにしてんだよ。パワータイプが別行動してんじゃねーよとか。

フィルターが壊れたぜ・・・ってお話


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94話

うーむ。コレで良いのか?と思う自分がいますね。


オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーソーナ視点ーー

 

何か質問はありますか?と言う問いかけに

対し、最初に気になったことを聞いてみる。

 

「と言うか、そもそも・・・えーとその会談ですか?ソレの何が問題なのでしょうか?」

 

さっきも聞いたけど、アイサツしに来るんですよね?むしろ礼儀を守ってるのでは?

 

そう思うんですけど、違うのかしら?

 

『そうですね。では説明していきましょう。

「今度ウチの主神がオタクらが悪魔に貸してる

土地に行くことになったからよろしく。

訪日の理由は内緒だけどな。

ついでに会談しようぜ。ソッチに行くのは

ウチの主神だからな?それなりの応対ヨロシク」

・・・コレはアイサツ以前に失礼でしょう?』

 

「「「「あぁ確かに」」」」

 

そっか、いきなり他国の国家元首に来られても迷惑よね。

 

こんなの『勝手に来たんだから知らん』と言っても良いレベルだわ。普通ならもっとしっかり調整しますよね?

 

迎える方だって準備が必要なんだし。

 

『そして来日の本来の目的が術式の再現と開発です』

 

バレテーラ。

 

『えぇ悪魔も堕天使もオーディンも隠してる

つもりですが、ばればれです。つまり会談は

「ついで」と言うことになりますね?』

 

うん。さらりと心を読まれたけど当たり前にシツレイですよねぇ。

 

そして付け加えるなら『人の家の庭で兵器開発するな』と言うことですね?ごもっとも。としか言えないわ。

 

『更に現在彼らはテロリストと交戦中です、

そしてテロリストの標的は聖書の陣営と

それに与する神話群。

つまり現在日本神話群は関係ありません』

 

なるほど、そう言えばそうですね。

 

「日本神話群を巻き込むなと」

 

うん。シツレイですよねぇ。

 

『そうですね。ついでにオーディンの地元である

北欧神話の連中も自らの主神が態々日本に来て

天照大神様に挨拶することを納得してません。

どうも術式の再現の話をしていないようですね。

ちなみに我々の調査だと既にロキが怪しい

動きをしてます』

 

ロキって、ラグナロクでも起こす気?

と言うかそうか。本題の術式の再現の

ことを知らなければ、北欧神話群が

日本神話群に挨拶をしに来るってこと

になるものね。

 

格に拘ったり、プライドが高い連中には我慢できないわよね。

 

「なるほど、せめて国内の反対勢力を纏めてから来いと言うことですね」

 

この辺は悪魔の旧魔王派が禍の団に所属したのと一緒よ。

 

『そう言うことです。コレで日本でロキが何か

やらかしたらどうなりますかね?

悪魔が騒ぐ分には、まぁ我々は正式に彼らから

土地を借りてるからまだしも。

いえ、今までだって貸してるアパートの一室で

徹夜で酒盛りされてカラオケや麻雀される程度

に迷惑ですが、この上悪魔の友人が乗り込んで

来て喧嘩を始めたら・・・どうですか?隣に

住んでる人や、大家さんだって怒りますよね?』

 

そりゃ激怒して叩き出すレベルですよね~。

 

『現状、ただでさえ悪魔に貸してる土地に訳の

わからない連中を呼び込まれて、さらに片付け

が出来ないままゴミ屋敷みたいになってたんです。

それがようやく改善されたかと思ったら、英雄派

によって壁に落書きされたり、ロケット花火を

打ち込まれたりしてる状態なんですよ?

そこに他の神話の神が偉そうにやって来て

『これから問題起こすからヨロシク』と

宣言するのです。コレが無礼でなくてなんですかね?』

 

なんと言いますか・・・本当にグダグダですよねぇ。と言うか他人事じゃないわよね!そのゴミ屋敷を作ってたのが私とリアスですよねッ?!

 

「ご迷惑をおかけしてスミマセンデシタ!」

 

素直に土下座する私と眷属一同。ヨシコ=サンは関係ないからとばっちりだけど・・・いや、彼女も騒ぎを起こしに来た一人か。

 

もうホント、なんと言いますか。スミマセン!

 

『あぁ、過去の貴女の行状は良いんです。

で、日本神話群としてはこれ以上面倒ごとを

持ち込まれても困るので、今回最終兵器を

出すことになったんですよ』

 

シロネ様からあっさりとお許しを頂いたことに、ちょっと違和感を覚えるけど・・・そもそも私達相手にグダグダと愚痴るような方々じゃ無いですもんね。

 

それに、今後も似たような事をされても日本神話群としても困るってことか。

 

ウチの魔王様方も近々来ると言ってたから、ソレに対する牽制もあるのかしら?。

 

「しかし・・・最終兵器ですか?迷惑をかけっぱなしの私達悪魔にならともかく、北欧神話群は初犯ですよね?」

 

まぁ初手で最大戦力を使って相手を威圧するのも戦略上間違いでは無いですけど。

 

『なんで貴女が上から目線で評価を

してるか知りませんが・・・まぁ

ココで貴女を折檻して掃除に不備が

出たら困ります。後日貴女が見る地獄に

免じて勘弁してあげましょう』

 

地獄が確定してた?!だから優しいのかッ!

と言うか通信機越しに心を読むの止めてくれませんか?!

 

『貴女の地獄はさておき、説明を続けます。まず、初犯だからこその引き締めでしょう。日本神話群は天照大神様の代理として神使様を派遣することを決定しました』

 

さて置かないで!ソコは何とか頑張れば許す的な温情をお願いします!!

 

「・・・その神使の方が最終兵器なんですか?」

 

約束された地獄に絶望してると椿姫が私に

変わって質問してくれたわ。

 

本来なら無礼とか言われるかもしれない

けど、緊急時はそういうの関係無いって

言われてるから大丈夫!

 

むしろ私のフォローをしないと叱られるのよね。

 

『有る意味この方()ですね。なにせ

オセ様と個人的な繋がりが有る方で、奥様の

ご友人です。なんでも大変お世話になった方だとか』

 

は?え?ナンデスッテ?ご友人?誰の??

 

「「「「あばばばばばばばば」」」」

 

シロネ様の言葉を認識した私たち全員がその場であわあわし始める。そしてソレについて誰も違和感を覚えない。

 

それほどまでに今もたらされた情報はヤヴァイ!

いや、本気でマズイでしょ?!

 

『慌てる気持ちはわかります。そしてその神使様に万が一がないように、我々オセ家からも護衛が派遣されることになりました。これは冥界には関係なく、奥様のご友人を御守りする為のモノですね』

 

「な、なるほど」

 

シロネ様の口から立て続けに発せられる情報に焦りを隠せないわ。オセ家からの護衛と言うのはオセ様の眷属かしら?それとも家臣団からの派遣?・・・シロネ様では無いはず。だって私達の指揮を取るとになってるし、この言い方だと別の方よね?

 

まさか第2婦人のカンザシ様が?

 

『家臣団の中からも人員を出して護衛すべきと言う声も有りましたが、最終的に大人数だと神使様に迷惑がかかると言うことで、眷属であるウィーネ様と彼女の側近であるティアマットさん、そしてクロウ・クルワッハさんに加え、アリスさんが護衛につくことになりました』

 

「・・・」

 

そのあんまりにもあんまりな内容に開いた口が塞がらないわ。

 

いや、だってウィーネ様って・・・小龍姫様ですよね?!オセ家の筆頭武官にして最上級悪魔の魔聖龍様すら超える悪魔龍族最強と言われる方ですよね?

 

その実力は、奥様やカンザシ様より強いと言うもはや異次元の存在!

 

ソレに五大龍王最強のティアマットと邪龍最強のクロウ・クルワッハって!そこにアリスさんもつくの?鉄壁なんてモンじゃないですよね?!

 

それにそもそも小龍姫様って護衛に使うような方じゃないですよね!

 

そりゃシロネ様に指揮を執ってもらわないと駄目ね!私たちじゃ打ち合わせすら出来ない!と言うか何かシツレイが有ったら洒落にならないわ!

 

『あぁ勘違いしてはいけませんよ。と言うか落ち着きなさい』

 

通信機の前であわあわする私たちに冷たい

声をかけて冷静にさせるシロネ様。

 

歳は私達の2つ下なのに、こうして通信機

越しでも私たちに死を感じさせる程の

実力差があるんだから恐ろしい話よねぇ。

 

けど、今なんておっしゃいました?

 

「勘違い・・・ですか?」

 

そう聞こえたんですが、ウィーネ様や神使様がヤヴァイと言うのが勘違いになるんですか?

 

冷静になった頭で考えるけど、奥様のご友人で

ウィーネ様が直接護衛するほどの方でしょ?

どれだけヤヴァイ方かは十分わかりますけど。

 

『神使様はもちろん弱くはありません。

無論私やアリスさんよりは強いのですが、

ウィーネ様や奥様よりは弱いそうです』

 

「いや、充分ですよね?!」

 

シロネ様以上ならお姉様以上なんでしょ?!護衛必要なんですか?!

 

あぁ、いや、まぁオーディンと会談するなら神使様といえ神様なのかしら?・・・そして、もしかしたら神様としたら弱い部類になっちゃうのかな?

 

『世の中上には上が居るモノです。

だからこその護衛ですからね』

 

はい。ごもっともです。

 

『そして神使様は立場のある方ではありますが、基本的に大らかで優しい方です。そんな方をこうして最終兵器扱いはしませんよ』

 

「な、なるほど」

 

この話し方だとシロネ様も個人的にお会いしたことが有るのか。まぁ奥様のご友人ならカンザシ様も接点が有るでしょうし、元々の駒王町を担当してたんですものね。

 

それで神使様は最終兵器では無いから勘違いするなと言うことですか。しかしそれだと、一体何が最終兵器なのかしら?

 

奥様のご友人よりヤヴァイ存在が居るのよね?

私には想像出来ないんですけど・・・

 

私たち全員がゴクリと唾を飲み込み、シロネ様の言葉を待つ。

 

『引っ張ってもしょうがないのでさっさと話しますが・・・なんと今回、貴女方もご存知のアノ補佐官様が地上に出てきて神使様の護衛を勤めるそうです』

 

・・・はいぃ?

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

ホサカンサマ?

 

保坂様じゃないですよね?て言うか保坂様って誰?私は知らないわよ?私達も知ってるなら違うわね。ならホサカンサマとは一体・・・

 

頭の中に黒い和服を着て金棒をフルスイングしている目付きの悪い鬼神様が現れては消えていく(魂が情報の再生を拒んでる)。

 

認めたくない。だけど、一度『もしかして』って思ったらどうしてもその可能性が頭から離れない!

 

だからつい聞いちゃったんだ☆

 

「あの、そのホサカン様ってもしかして補佐官様ですか?日本地獄に所属する、黒い和服を着込んでて、眼光だけで私たちを滅ぼせる鬼の神様の補佐官様?」

 

違うと言って欲しかった。私達全員がそう思っていた。だけど現実はいつだって非情で厳しいモノ。 

 

『えぇその通りです。ジ●リ好きな補佐官様です』

 

ジブ●好きだったの?!魔界な天使の●ブリールじゃなくて?!

 

いや、違う!問題はソコじゃないっ!

 

言葉の意味を理解した瞬間、周囲の温度が少なくとも5度は下がったのを感じたわ!

 

だって、だってあの方が駒王町に来るのよ?!

知ってる?地上で死んだら、死んじゃうのよ?!

 

「「「「も、もぅだめだぁ。おしまいだぁ!」」」」

 

あの目を、あのお姿を、あの金棒を思い出すだけで震えが止まらない!

 

しかも今回は既にオーディンがナチュラルにシツレイをかました後よ!きっと彼らに折檻するのよね?連中が磔にされて、金棒で撲殺されるのが見えたわ!

 

そして余波で吹っ飛んで入院する私たちもッ!

 

『・・・おしまいにしないために動くのです。

良いですか?今回の我々の任務は、英雄派と

名乗るテロリスト共の掃除の徹底とオーディン

やアザゼルが神使様にシツレイをしないように

することです』

 

そ、そうか!あくまで補佐官様は護衛ですものね!神使様に何もなければ、私たちは助かると言うことですね!

 

「な、なるほど。もしもオーディンが、自分が

北欧神話群の主神だからと言って神使様に

対して何かをしたり、アザゼルが堕天使の総督

だからと言って、神使様に対して無礼な態度を

したり、舐めた口を叩いたりしないようにする

ことが大事と言うことですね!」

 

オーディンもアザゼルも、本来なら私ごときが

口を出せるような相手はないけど、向こうに

補佐官様が居ると言うなら話は別!

 

無礼はするなって言えばわかってくれるわよね!

 

万が一補佐官様を知らなくても、奥様の

ご友人と言えば少なくともアザゼル総督は

止まるでしょ!

 

『そうですね。そしてもしもロキだの何だのと

言った向こうの神が動いた場合ですが、流石に

我々では対処出来ません。

なので神使様に迷惑がかかる前にウィーネ様が

片付けます。ですから私たちが神の相手をする

心配は無いと断言しましょう。

また貴女への指示は私が出しますが、全体の

指揮は簪・オセ様が執りますので命令に違反

しない限りは大丈夫です。良いですね?』

 

「「「「「サーイエッサー!」」」」」」

 

シロネ様からの確認の声に合わせて全員で返事をする!

 

正座してるから敬礼は出来ないけど、間違いなくシロネ様を指揮官と認めてるとわかるはず!

 

神相手がどうだとか、アザゼルがどうだは関係ない!

 

そうよ!私たちにはカンザシ様とシロネ様がついてるんだから、今回の私たちはお二人の手足となって動けば良いのよ!兵士は自己判断をせずに上官に任せれば良いの!

 

公爵家の令嬢?ゲームの王様?何ソレ?美味しいの?

 

少なくとも個人としても指揮官としてもシロネ様に不満なんか無いんだから、従うことに抵抗なんか無いわよ!

 

私達の返事を見てシロネ様は一度頷いてから

『では資料を送るので確認するように』と

言って通信を切ったわ。

 

ヤヴァイ。コレは大事件よ。直ぐに

お姉様に連絡して掃除を行わなきゃ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

 

「なん・・・だと・・・?!」

 

今度オーディンの爺さんを連れて日本に

行くと言う連絡に対し、悪魔側からの

返答が来たが、これはどう言うことだ?!

 

「ん?何か問題でも有ったかの?」

 

驚愕の声を上げた俺に、不思議そうな顔を向ける爺さん。この様子なら知らないらしいが・・・

 

「とりあえず、向こうはいきなり爺さんに来られても迷惑だそうだ。スケジュールやら何やらの都合上、天照が会談に応じることは出来んから代理を寄越すとよ」

 

これに関しては分かる。こっちも本気で

天照と会談する気はなかったしな。

だから代理だろうが何だろうが問題ない。

問題は爺さんだが・・・

 

そう思って爺さんの顔色を伺って見れば、向こうは俺の言葉を聞き、然もありなんと頷いている。 

 

この分なら無礼とかと言って騒ぐ事はないな。

 

「ふむ。まぁ急な話じゃったからのぉ。他勢力の主神の来訪なんざ本来なら調整に年単位が必要なことじゃ。仕方あるまいよ」

 

向こうの対応もシツレイでは有るが、そもそもがコッチの行動が非常識なんだ。

 

ならば咎めることは無いって感じなんだろうがよぉ。

 

「爺さんが納得してくれて何よりだ。だが向こうはそうは思ってないようだぜ」

 

自分が悪いと思ってれば平謝りできるだろ?

そう言って悪魔からの資料を爺さんに渡す。

 

「ん?どう言うことじゃ?」

 

納得顔から一転し、再度不思議そうな顔をするが・・・

次の表情はわかるぞ。驚愕か絶望だ。

 

だからこそ宣言してやろう!

 

「資料を見た爺さんは次に『なんじゃと?!』と言う!」

 

いきなり何言ってんだコイツ?って顔をしてるがよぉ!向こうの護衛の名前を見てみろやッ!

 

ドヤ顔で護衛の欄に書かれた名前を指差してやるぜッ!

 

「なんじゃと?!・・・ハッ?!」

 

気付いたな?コレはアレだ。向こうはコッチの非常識に対してキッチリと落とし前を付ける気だぞ!

 

いやはや爺さんに『交渉は自分達でやるから俺たちは関わるな』って言われてたから口添えも何もしなかったが、結果的に正解だったな!

 

「あ、あたたた。ヤバイッ!持病の腰が・・・コレでは日本に行くなど不可能じゃ!すまぬが今回はお主一人で行ってくれぃ」 

 

いきなり腰の痛みを訴え出したが、無意味だな。

 

「そうか。ならソレを理由にドタキャンするか?」

 

既に向こうは出迎えの段取りを組んでるんだぞ?いきなり行くって言って向こうに準備をさせてからドタキャンなんか出来ると思うか?相手はヤツだぞ?それに向こうの代理がオセの奥方の友人だと?護衛にティアマットとクロウ・クルワッハが居るって何だよ!と言うか爺さんが行かなきゃ意味ねーだろうがッ!

 

ツッコミが多すぎるわ!まぁ主神の来訪なんてのはそれだけ重要な案件だからな・・・しかし今回ばかりはアレだ。下手に会談なんか申し込まずに素直に術式の再現と言って挨拶だけに留めて置くべきだったかもしれん。

 

「・・・」

 

ドタキャンした時に生じるであろう大惨事を想像したか、爺さんの顔が真っ青になる。

 

まぁアレだな。流石に今回は急ぎすぎた。向こうの事を考えれば、相手を軽んじたと言われても反論が出来ねぇ。

 

ま、今回の段取りに俺は関わってねぇし。無礼を咎められるのは爺さんだけだろ?黙って闇の裁きを受けるんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやまて。もしかしたらアイツなら神野に対抗出来る手段が有るかも知れねぇな。つーことは今回の参加は渡りに船ってヤツかも・・・うしっ!ならば土下座してでも何か情報を得てやらぁよ!だから爺さん。アンタの犠牲は無駄にはしねぇ。心置きなく逝ってくれッ!」

 

「うぉい小僧ッ!心の声が漏れ出とるぞッ!」

 




感想欄でも、オーディンは天照大神様が偉いのを知らないんだからシカタナイ!という方が居ますが、知らないのがシツレイなんじゃなくて、オーディンの行動ソレ自体がシツレイなのです。

そして曙光様は代理が相手をすると決まった時点で「そう?んじゃあとは任せた!」で終わってますので、特に不満を抱いてません。

不満を抱くのはいきなり不要な仕事をする羽目になった周囲の面々と言う事ですね。狐様も任務に文句を言うタイプではないので、この場合は狐様の部下や、その他色々な方です。

ダンジョンでもこの手法を使い読者様に錯覚させるように描写してるからアレなんですが、ネタばらしするかあえてこのままで行くかも悩みの種ではありましたね。

とりあえずシロネコは会長眼鏡に常識の部分のみ伝えた模様。


アザゼル、今回は無事か?!オーディンの腰はどうなる?!ってお話


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95話

作者に正気は残ってるのか?
暑さでダメになったんじゃね?

オリジナル×2そしてDDの更新。
スランプとは一体・・・

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアジュカ視点ーー

 

「マジか~」

 

ファルビウムがソーナから上げられた

報告書を読んで机に倒れこんだ。

 

うむ、気持ちはわかる。

 

「まさか向こうからオセちゃんの奥さんの

お友達が来るなんてねぇ。

シロネちゃんはかなりピリピリして掃除

してるらしいよ?」

 

セラフォルーも苦笑いだ。

 

苦笑いで済んでいるのは元々オーディンを迎えるにあたって掃除は必要だし、シロネ・オセはあくまで裏方だから、掃除はちゃんとソーナの実績になるからだな。

 

だがそれ以前の問題は日本神話群だろう。

 

英雄派によるテロを受けてる真っ最中に

何してくれてんだ?と言う意見は至極

真っ当なモノだし。こんな状況では例え

北欧神話の主神が行くとなっても天照が

会談に来ないのも当然だよな。

 

とは言え神野の事を吹聴して回れば、俺達は全ての勢力から「こっちくんな!」と排斥されることになるだろう。

 

その結果秘密にしたままの訪問となり、

相手には無礼と罵られるわけか。

 

・・・まさかコレも神野の狙いか?

 

いや、態々こんな形で離間の計を使うなど

有り得ん。ただの自爆だな。

 

その証拠にアザゼルからは向こうの人員に

無礼が無いように、悪魔陣営の指揮権を

シロネ・オセに預けるよう要請が来ている。

 

何せオセ家の武官筆頭の小龍姫が護衛に

つく相手だからな。ソーナでは釣り合いが

とれんだろうし、何か下手を打てば

そのまま堕天使陣営にオセが率いる

軍勢が殴り込みをかけるだろう。

 

ソレを考えれば同じオセ陣営である小龍姫と

シロネ・オセが連絡を取ってくれるのは実に

ありがたいことだと言える、

 

と言うかティアマットは一体何をしてるんだ・・・

 

最近見ないと思ったら、なんでクロウ・クルワッハと一緒に小龍姫の付き人をしてるんだよ。

 

そりゃゲームの運営に関わることを止めるわけだ。なにせオセはゲーム反対派だからな。

 

まぁいい。オセ陣営が動くことで戦争の

危険性が増すが、今回の任務はあくまで

天照の代理の護衛だ。

 

ロキが動いているらしいが、オーディンに

絡む分には問題ない。

 

言ってしまえば北欧神話群の問題だ。

 

オーディンを狙って不法入国したロキが

日本の領土でドンパチしようが、その

責任は我々には無い。

 

ソーナは案内に過ぎんからな。オーディン

とて20にもならん悪魔の小娘に己を護衛

させようとは思わんだろうし、一応護衛の

ゼファードルも同様だな。

 

シロネ・オセやカンザシ・オセがどう

判断するかはわからんが、さっさと

会談を終わらせてくれとしか言えんよ。

 

そうすれば後は術式の再現だけだろ?

小龍姫も関係なくなるしな。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーアザゼル視点ーー

 

オーディンの爺さんが駒王町に来る前に、俺は今回の各勢力の案内役や護衛役を集め、顔見せを行っていた。

 

「あー堕天使総督のアザゼルだ。でもってこいつが・・・」

 

そう言って俺の横に佇む大柄な男に自己紹介をさせる。

 

「堕天使幹部、バラキエル。総督殿と

オーディン様の護衛を担当することになった」

 

そう言ってソッポを向くバラキエル。

ぶすっと言う音が出そうなくらいの

不機嫌さを隠そうともしやがらねぇ。

 

まぁ事情が事情だから、分からんでもねぇけどよ

 

「悪魔陣営より、案内役を務めますソーナ・シトリーです」

 

そう言って眼鏡をかけた細身の悪魔が頭を下げる。

 

シトリー公爵家の次期当主で魔王である

セラフォルーの妹と言う立場は、悪魔の

中でも指折りの存在だ。

 

さらに駒王町の管理者である以上、これ

以上の人選は無いだろう。

 

だがバラキエルがなぁ・・・

 

「貴公がソーナ・シトリーか・・・」

 

明らかに娘の姫島朱乃を袋叩きにされた

事を根に持ってやがる。

 

更にココに来れば娘に会えると思ってたら

グレモリー眷属は冥界で謹慎中。

 

完全に肩透かしを食らったんだよな。

 

とは言え、俺としては『英雄』が今回の

件に参加しないことに対して安堵の溜息を

吐いたくらいなんだが・・・

 

「ゼファードル・グラシャラボラスです」

 

名前だけを名乗りペコリと頭を下げる大男。

 

堕天使の中ではYOSHITUGUの名で

知られるこの男に対してはバラキエルも

不満そうな顔を見せることは無い。

 

何せコイツはコカビエルと、真正面から互角以上に打ち合った男だ。

 

アイツは神野が出てくるまでは本当に

楽しそうに戦ってたんだから、その相手

であるコイツには礼を言うべきなのかも

知れねぇとすら思う。

 

だが、コカビエルは禍の団の刺客に殺された

事になっている。その刺客にコイツも負けた

って事を考えれば感謝の言葉は嫌味か何か

にしか聞こえんだろうな。

 

あとはYOSHITUGUや眷属が持つ

疑似神器や術式だな。

 

詠唱と共に斬撃が飛ぶ槍や、鎧化する刀。

さらにダンガム風の神器。

 

少なくとも三つの疑似神器に、結界使いが

使った詠唱呪文や、ソーナ・シトリーが

『英雄』相手に使った術にも興味が有る。

 

とは言え下手な行動をする気はねぇが・・・

 

「北欧神話所属戦乙女ロスヴァイセです。

オーディン様の護衛は私が行いますので

皆様には案内と周辺警護をお願いします」

 

俺達の紹介が終わった後、銀髪の戦乙女がそう宣う。

 

やや挑発的な物言いではあるが、

自分のところの神の護衛を他所の

勢力にさせようとは思わんよな。

 

「「了解しました」」

 

そして戦乙女の言葉にノータイムで返答する

ソーナ・シトリーとYOSHITUGU。

 

コレは「言質取った!」と言ったところか?

今の音声を記録してシロネ・オセにでも

転送するんだろうな。

 

「え?あ、んんッ!理解が早くて結構です

ではフォーメーションなのですが・・・」

 

「ちょっといいかい?」

 

「・・・なんでしょうか?」

 

予想以上の反応の良さに面食らった戦乙女が

気を取り直して場を仕切ろうとするが・・・

ココは邪魔させてもらうぜ。

 

「そもそも俺達は、それぞれが護衛対象

みてぇなもんだ。

下手にフォーメーションを組んでも満足な

連携ができるとは思えねぇよ」

 

俺がそう言えば戦乙女は顔をしかめる。

 

自分で「護衛はいらない」と言ったばかり

なので、オーディンを優先しろだとか、

全員の連携がどうとかは言えねぇよな。

 

「一番弱いのが案内役であるそこの

シトリー家の次期当主で。しかも

魔王の妹だ。もともと案内役に戦力は

求められてねぇから普通に護衛対象だ。

そこそこ強ぇYOSHITUGUだって

魔王の親族だし。俺はそのまま総督」

 

コレを見れば悪魔陣営はまさしく案内役でしか無い・・・表面上はな。

 

「確かにそうですね。では私がオーディン様の側にて待機、そして悪魔の皆さんは地域の掃除ですか?」

 

普通に考えればそうだろう。実力に差が

有り過ぎれば足手纏いにしかならん。

 

ならば同じ場には居ない方がマシだよな。

 

「基本的にはそうなるだろうな。ただし

ゴミがオーディンの爺さんの周辺に現れた

場合に備えて、何人かは悪魔が付くそうだ」

 

半神の戦乙女や堕天使の幹部が相手をする

までもない敵ってのはいるからな。

 

掃除要員は必要だろうし、護衛対象の

近くに転移する為には基点が必要だ。

 

その基点替わりでもあるってな。

 

「なるほど・・・アザゼル総督の意見は

もっともです。それではオーディン様の

側に仕える悪魔側の人員は既に決まってるのですか?」

 

そう言ってソーナ・シトリーを見るが

まぁソイツが案内役だもんな。

 

「まずは案内役の私、私の護衛として

眷属の兵士と戦車が付きます。

女王は私に代わって掃除を行うので

お傍には付きません。

後はゼファードルと、その眷属ですね」

 

この場にはYOSHITUGUの眷属は

居ねぇが、アノ結界使いと刀使い以外の

眷属も来るのか。

 

麻雀以外の腕を見せて貰えるかもな。

 

でもって兵士はヴリトラで戦車があの

ダンガムか。結界使いが2人いれば雑魚

からの攻撃は防げるだろうし、まぁ問題

ねぇだろうよ。

 

「わかりました。私としても数が増える事は

必ずしも良いこととは思ってませんから、

丁度良かったと思いましょう」

 

普通に考えれば若手の悪魔なんざ足手纏いだからな。邪魔するヤツが少なくなるなら護衛としては万々歳だろう。

 

自分の仕事がやりやすくなると

でも思ってるのだろう、緊張を緩めた

戦乙女に対して、ソーナ・シトリーが

攻撃を放つ。

 

「それとロスヴァイセ様に警告が有ります」

 

「警告・・・ですか?」

 

戦乙女の蟀谷がピクリと動く。

ソレはそうだろう、半神である彼女

から見たら弱者も弱者な悪魔である。

 

ソレが何を言うかと思えば意見でも忠告でもなく警告ときた。

 

自身に主神の護衛に選ばれた精鋭と言う

自負が有れば、舐めるな!と声を荒げても

おかしくは無いだろう。

 

ソレをしないだけの冷静さがあるのは

流石と言いたいが・・・そうか爺さんは

説明して無かったか。

 

「はい、警告です。アザゼル総督は御存じ

のようですが、ロスヴァイセ様はご存知

無いようでしたので・・・」

 

あぁ、護衛に対するフォーメーション

云々の話を流したことで気付いたか。

 

ゲームの時にも思ったが『英雄』とは頭の回転が違うな。

 

「総督殿?」

 

俺がソーナ・シトリーに感心していると

戦乙女がどういうことだ?と言った感じで

俺を見てくる。

 

いや、文句は俺じゃなくオーディンの爺さんに言えよ。

 

とは言えココには居ない爺さんに何を

言っても無駄だ。とりあえずは俺からも

補足してやろうじゃねぇか。

 

なんたって情報を秘匿したことで向こうに

迷惑をかけた場合、野郎に殺されるのは

爺さんだけじゃねぇからな。

 

・・・情報漏洩とか言われねぇだろうな?

 

「ソーナ・シトリーの言う通りだ。

ついでに言えばその警告の内容は俺や

オーディンの爺さんも知っている。

むしろなんでお前さんが知らなかった

のかを不思議に思うレベルだな」

 

いやマジで。死ぬのは俺だけじゃねーぞ?

確実に爺さんが最初に殺られるからな?

 

「オーディン様まで・・・わかりました。

ではシトリー殿、その警告とやらをお聞かせ

願えますか?」

 

あっさりと思考を切り替えるところを見れば

意志の疎通に不備が有るのは日常茶飯事

みてぇだな。

 

俺らが言うことでもねぇが、どこもかしこもグダグダだ。

 

「はい、まずは絶対に向こうの護衛の

方々に迷惑を掛けないことです。

向こうから指示が出たら必ず従ってください。

逆らった場合、命の保障はありません」

 

ソーナ・シトリーの言葉を聞き頷く俺と

YOSHITUGU。

 

バラキエルは良く分かってねぇな。

 

「はぁ?」

 

何言ってるんだコイツ?って顔をするが、

嬢ちゃんが言ったことは何一つ間違ってねぇ。

 

つーかコイツ護衛の名簿を見てないのか?

それともオーディンの爺さんが隠したか?

 

「・・・ロスヴァイセ様は護衛の名簿を

確認しましたか?」

 

嬢ちゃんは俺が不思議に思ったことを

しっかりと確認してくる。

 

うーむ、政治家としては優秀だよな?

魔力も高いし、コカビエルの件を考えれば

物事を正しく理解できる目も頭も有る。

 

・・・何でコレが『英雄』に並ぶ阿呆なんだ?

 

「いえ、まだ見てませんが・・・」

 

嬢ちゃんの質問に対して、やや居心地が

悪そうに視線を逸らす。

 

まぁオーディンの爺さんが情報を隠した

かも知れんが、そもそも護衛なんだから

そう言うのをしっかり確認するべきだよな。

 

リストが無いなら作れって感じだろう。

 

「そうですか、まず向こうの護衛には有名

どころとして五大龍王のティアマットさん

と邪龍最強のクロウ・クルワッハさんが

います」

 

そうなんだよなぁ。アイツらがいるんだよなぁ。

 

「・・・( ゚Д゚)ハァ?!」

 

一瞬固まった後で驚愕しやがった。

リアクション芸としては一流だな。

 

「さらにこのアリス様とウィーネ様と

言うのはオセ様の眷属です。アリス様は

超級の呪詛の使い手で、どれだけの

軍勢を率いて来ても瞬殺されます」

 

そう言って俺の方をちらりと見るが、そうか!コイツが会談の時の呪詛の使い手か!

 

そりゃ英雄派がいくら居ようと無意味だ。

どれだけ神器が強力でも所詮は人間。

悪魔・天使・堕天使の精鋭を即死させる

ような呪詛には耐えられねぇ!

 

「な、なるほど、巻き添えを警戒しろ

ということですね・・・」

 

戦乙女が冷や汗を流すが、まぁ龍共

のインパクトに比べたらな。

 

しかしこれほどの人員を護衛として出して

来るとはな。

 

そりゃシロネ・オセがコイツ等の指揮を取るわけだぜ。

そうしないと何が起きるかわからんし、

不測の事態が起こった時の被害がデカすぎる。

 

しかしこの分だと向こうの使者が奥方の友人と言うのは本当か。

 

気を付けよう・・・そう思ってた時期が俺にも有りました。

 

「そしてウィーネ様は小龍姫の二つ名を

持つオセ家の武官筆頭で、先ほどの2名の

龍を従えています。

更にその武は奥様を凌ぐとのことです」

 

は?

 

「いや、奥様を凌ぐと言われましても・・・」

 

戦乙女の嬢ちゃんが何か言ってるが・・・

 

「( ゚Д゚)ハァ?!」

 

「あ、アザゼル?!マズいぞ!」

 

バラキエルも慌ててるが、待て!なんだソレは!そんなの聞いてねーぞ!

 

いや、タンニーンを差し置いて悪魔龍族最強

と言われる小龍姫ってのが居るのは聞いて

いたが、ソレがこのウィーネって奴なのか?!

 

そして奥方を凌ぐだと?ってことはカンザシ以上?!

 

これだけで堕天使陣営に甚大な損害を

与えることが可能な面子だ。

 

向こうが揃えた予想以上の陣容に、オセは

北欧神話群と戦争を起こす気か?!と疑うが・・・

 

「そして鬼灯様は・・・説明出来ません。

逆らわないで下さいお願いします」

 

「は、はぁ・・・」

 

ソーナ・シトリーの懇願を聞いて頭が冷えた。

うんそうだ。ヤツがいたな。

 

ヤツは基本的に政治には関わらん。

 

もしも自分たちを利用して戦争がどうとかを抜かすヤツが居たら、地獄を見せるどころじゃ済ませねぇだろうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず戦乙女はオーディンに護衛の

情報を確認することにしたようだ。

 

俺としてもウィーネとやらの情報を

確認する必要が有るし、向こうの使者に

対しての手土産や応対のレベルを上げる

必要が有ると分かっただけでも収穫だ。

 

 

 

つーか、ドラゴンってどこの陣営にも

属さない最強の生物じゃ無かったのか?

 

オセ家の常識はいったいどうなってやがる。




アザゼル総督はヴァーリの死を乗り越えた模様。

91話が気になってしょうがねぇ?
見るんじゃない、感じるんだ!!


つーか本人が来る前に打ち合わせ位しろよ。

そしてロスヴァイセって半神で主神の配下で側近なんだから、聖書の陣営で言えばミカエルでしょ?(最低でも熾天使)

魔王本人と同格だろうし・・・なんで悪魔の貴族如きにへりくだる必要が有るんですかね?


向こうのオリジナル作品?ハハッってお話


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96話

1日にむこうで歴史を1話。ローファンタジーを3話。

そしてコッチでDDを1話。

・・・作者は何をしているのだろうか?
消える前の蝋燭?

オリ設定!
オリ展開!

短いぞ!

嫌いな人は読み飛ばし!


ーーアザゼル視点ーー

 

一回目の顔見せから数日後、俺達は再度

の情報の擦り合わせの為に駒王町の某所

に集まって協議していた。

 

「オーディン様に伺い、指示が出ました。

『そのウィーネと言うのは知らないが

鬼灯には逆らうな。むしろ関わるな。

向こうの護衛と会話が出来るなら護衛に

関しては全て相手に一任せよ』とのことです」

 

がっくりと力を落として報告してくる戦乙女。

 

つまり今回コイツに出された命令は

「主神の護衛だけをしてろ」と言うことだ。

 

ある意味で先日自分が悪魔達に言った

「余計な事をするな」と言うのが

叶った形では有るが、なんとも言えん

表情をしているな。

 

「お初にお目にかかります。悪魔側の

護衛責任者、シロネ・オセです。

戦乙女様にご迷惑をおかけすることは

無いので、オーディン様の護衛に全力

を注いでください」

 

そして、やや凹み気味の戦乙女に丁寧に止めを刺しに来るシロネ・オセ。

 

その辺の悪魔が相手なら戦乙女も反発

するだろうが、明らかに自分より強い

シロネ・オセを見れば、向こうの人員の

怖さもわかると言うものだろう。

 

懸念事項としては、オセ家の眷属たちの心証だ。

 

まぁコイツらの本心なんざ探るまでもねぇ。わかるぞ、「面倒なことしやがって」と言ったモノだろう?

 

奥方の友人はともかくとして、そもそも

俺達がここで研究・再現しようとしてる

術式はオセが開発したものだ。

ソレを盗みに来た俺達に良い顔をする

理由が無い。

 

オセの許可が無ければココで戦闘になってもおかしくはないくらいだからな。

 

だがここで研究の許可を出したところが

オセの内心を物語っている。

 

そう、つまりオセとしても神野に対抗する

手段は多い方が良いと判断してるのだ。

 

研究所が一箇所しかなかったら、ソコを

やられたら全部お終いだからな。

リスクの分散は当然だし、今は俺達に碌な

技術が無いからアレだが、俺達がオセの

持つモノとは別のモノを造り出したなら

その時は技術交換もできるだろうさ。

 

ちなみに案内人のソーナ・シトリー達は今回ココには来ていない。

 

シロネ・オセからの「掃除してて下さい」と言う命令に従って全員が兵士として動いている。

 

・・・コイツに鍛えられたら、そりゃ歴戦の兵士みてぇにもなるよな。それにソーナ・シトリーやYOSHITUGUもヤツを知ってる感じだったし。

 

金棒での洗礼でも受けたか?

 

あの若さで地獄の底を体験している不運に同情すべきか、高みを知ることができて良かったなと言うべきか・・・

 

少なくとも『英雄』みてぇに慢心する

ことはねぇってことは確定してるから、

兵士としては信頼しても良いだろうさ。

 

「前回の顔合わせには参加しませんでしたが、お話は伺ってます。そのため今回の護衛に関して最大の問題はどこまで殺るか。と言うことです」

 

俺がソーナ・シトリーに対する評価を

定めてる最中にシロネ・オセがそんな

事を言って来たが・・・

 

「どこまでってのはアレか?テロリスト

に対してか?なら殲滅一択だろ?」

 

別に生け捕りにして拷問したり、神器を抜くってんなら止めねぇけどよ。

 

「なるほど、ではこの会談を邪魔しに来る連中は殲滅ですね?戦乙女様も異存は有りませんか?」

 

ん?何か引っかかる言い方だな?

 

「え、えぇ。ソレで問題有りません」

 

戦乙女の方は、明らかに気圧されてやがる。

 

まぁ爺さんに邪魔するなって言われてるしな。

ソレを考慮すれば前回の顔合わせで知った

情報で、向こうがどんだけ恐ろしい存在か

を理解出来るし、目の前で「良し」と頷く

シロネ・オセも「殺すと決めたら必ず殺す」

って雰囲気を隠しもしてねぇからな。

 

しかもなんか邪魔が入ることを確信してるみてぇだし・・・

 

コレはアレだな。後から「殺すな!」って言われても既に言質は取ったから知らんってことだよな?

 

つーか誰が来るんだ?貴重な神器使いか?

まさか神滅具?

 

「ではロキ様が来たらコチラで処分します。ラグナロクに関しては・・・そちらで何とかしてください」

 

乱入者が北欧神話の神だと?!

しかもロキ?!

 

「( ゚Д゚)ハァ?」

 

戦乙女が完全に固まりやがった!

 

「いやぁどうもロキ様が今回の会談に対して

かなり不満が有るらしいんですよ。

それでオーディン様に文句を言う!って宣言

してるみたいですね?そんな彼が来たらどう

するかは我々の中でも決めかねてましたが、

総督殿と戦乙女様の許可を頂けて助かりました」

 

コイツ!爽やかな顔して何てことを言いやがるッ!いや、コレは俺が迂闊だった!完全にしてやられたっ!

 

「彼はまず、日本神話群に対して自分たちの

神話の主神がアイサツするのが気に入らない

のと、我々聖書の陣営との同盟も気に入らない

ようですね。まぁ基本的に我々は嫌われてます

ので理解はできます。あぁ文句はソコの堕天使

の総督様にお願いしますよ?

ここまで嫌われる原因を作ったのはこの人と

ミカエルと先代魔王様と神です」

 

「・・・」

 

ぐうの音も出ねぇとはこのことだな。

俺達が他勢力に手を広げたのは事実。

その方法が他の勢力から嫌悪されてる

のも事実だし、まさか親父やミカエル

だけのせいには出来ねぇよ。

 

「まぁロキ様が我々を嫌おうが何だろうが

日本神話群の方々には関係ありません。

無断で侵入してきたら滅ぼします。

正面から来たら話は聞きましょう。

ですが我々に宣戦布告をするような言動を

した場合は滅ぼします。

北欧神話の事情?喧嘩を売られたから

買っただけですが何か?」

 

反論の余地を許さぬように畳みかけてくるが、言ってることは何一つ間違ってねぇよな。俺らからすれば優先すべきはオーディンの爺さんだが、オセにしてみたら優先すべきは奥方の友人である日本神話群の使者なんだろ?

 

神野への対抗策に関しても、日本神話群に粗相して護衛の代表のヤツに目をつけられたらソレどころじゃねぇからな。

 

恐らくヤツには神野も何も関係ねぇ。俺たちが滅ぶ?勝手に死ねって感じだろうよ。

 

「そもそもオーディン様はロキ様が凶行に

及ぶと予想していながら今回の訪日を決定

しました。せめて内部の意見くらい纏めて

から来て下さい。率直に言って迷惑です」

 

「「・・・」」

 

丁寧な口調ではあるが迷惑とまで言い切りやがった。

 

やべぇな。コレがオセの眷属の意見

だとすれば、ロキと一緒に俺達も

消される可能性が有るぞ。

 

何せオーディンの爺さんは5等か6等。

奥方もそのくらいなはずだ。

 

そしてソレを上回ると言うからには

ウィーネって奴は6等か7等。

 

つまり低くてトール。高ければシヴァレベルだ・・・洒落にならん。

 

神野が俺を苦しめる為に生かすって言う

なら死ぬことは無いかも知れんが、

下手にダメージを受ければそれこそヤツに

生かされるだけのモノに成り下がるだろう。

 

そうなれば残った仲間たちは鋸を引くかのようにゆっくりと嬲り殺される。

 

俺らではオーフィスですら拘束したあの

術式を破壊出来るとも思えねぇしな。

 

だからこそ要注意だ。向こうには出来るだけ関わらねぇ。

 

会談の場にも俺は行かねぇ・・・ってわけにはいかねぇよなぁ。組織の代表である俺が日本に来てるだけなら良い。だが向こうに天照の代理が来てるってのに挨拶もしねぇとなれば、ヤツの金棒で俺の息子が再起不能にされちまう。

 

そうなれば神野もソレを見て指差して嗤うだろうよ。

 

そんな致命傷のダメージを受ける気も無ければヤツを楽しませる気もねぇ。だからこそ当たり障りのない挨拶をしてさっさと会談を終わらせようとしたってのによぉ。

 

まさかロキがきて問題を起こそうとしてるなんてなぁ。

 

「ろ、ロキ様が動くと言うのは確かなのですか!?」

 

完全に停止していた戦乙女が再起動した。

まぁ気持ちはわかる。何せソレが事実なら

ロキの目的はオーディンだ。

 

そしてオーディンと向き合われたら

自分一人で相手をする必要が有るし、

オーディンと向き合う前ならロキが

滅ぼされてしまう。

 

しかもその許可は先ほど自分で出したばかり。

 

いやそもそも護衛としては襲って来たヤツを始末したところで正当防衛だし、シロネ・オセが言うように、内部の問題を片付けてから来いってのは当たり前の話だ。

 

迷惑をかけるのが同盟を組んだ俺達だけならともかく、全く関係ねぇ日本神話群なんだからな。

 

俺ら聖書の陣営はテロリストの件で、北欧神話群は同じ神の件で迷惑を掛けるんだから、印象は最悪だ。

 

ロキ?あのシロネ・オセだけならまだしも、奥方を上回るって言う小龍姫や、ヤツに勝てるわけねーだろ。

 

下手に向こうに絡めば肉団子待ったなしだし、向こうに絡まないところで襲ってきたなら、俺たちがヤバイか?

 

まぁどちらにせよ、北欧神話群が受けるダメージは甚大なモノになるだろう。・・・どーすんだよコレ?

 

「確かに悪魔からの情報に信憑性など期待は出来ませんよね。では戦乙女様ご自身でご確認してみては?」

 

コテンと首をかしげて答える様子には嘘は見受けられん。コレは確実に来る。

 

ならば備えねばならんが、神が相手となると俺たちだけでは厳しい。しかもロキが単体で来るはずがねぇ。

 

話だけなら良い、一騎討ちも良い、だがもしも本気でオーディンに何かをする気なら、ヤツはフェンリルを連れてくるだろう。

 

そうなればオーディンの爺さんは戦えねぇし、俺達だってやべぇ。だが、駒王町で戦うことで強制的に向こうを巻き込めば・・・何とかなる。

 

少なくともフェンリルはヤツが回収するだろうし、ロキも小龍姫ってのに殺られるだろう。だがソレは北欧神話にとってどうなんだ?

 

他の神話群との接触で新たな可能性を探すとか言ってるらしいが、新し過ぎるよな?

 

まさかヤツがロキを、タコ殴りにして終わりだと思ってるとか?・・・有り得る。ヤツは己の力を知るが故に、世界の均衡を破壊しようとはしないからな。

 

だが小龍姫がなぁ。戦争上等のオセの眷属が、自分達に喧嘩を売られた挙げ句(シロネ・オセが現場にいればそうなる)、奥方の友人に迷惑をかけられた場合、相手がロキだからと言う理由で止まるか?

 

さっきシロネ・オセが言ったように、容赦なく消されるんじゃないか?

 

・・・こうなったらアレだな。ロキが正面から、正規の客として訪問してくれることを祈るしかねぇ。

 

名目は「単独行動をしたオーディンの回収」なんてのはどうだ?爺さんが下手に抵抗しなければ地元には帰れるんじゃないか?向こうで何があるかは知らんが、それでも日本で最終戦争をおっ始めるよりはマシだろうよ。

 

「た、確かにそうですね。その件については至急確認させて頂きます!」

 

よし、ならばその時に、向こうに伝言してもらうか。ここで戦争なんか起こすわけには行かねぇからな!

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ーーシロネコ視点ーー

 

 

いやいや、自称弟子と眼鏡公女からの情報通りでしたね。コイツらどんだけ報連相が出来て無いんですか。

 

戦乙女はマゴマゴしてるし、アザゼルは保身に走るし。まぁ組織の長とすればソレが正解なんですけどね。

 

補佐官様に喧嘩を売るのは勇気ではありません。自殺です。

 

かと言って今のこいつらでは、ロキが敵として来たら勝てませんからね。どうしても神クラスの力を持つ援軍が必要になりますが、いきなりそんなん用意出来ません。

 

その為オーディンを殺さない為には狐様の護衛の皆さんが必要になります。あとは・・・そうですね。ロキを説得出来れば問題ありませんね。

 

つーか最初からソレをやれって話ですが、神野さんの情報を隠したままだとソレも難しい。

 

それに、ここでロキやフェンリルを討ち取れば、北欧神話は強制的に新たな道を模索することになりますよね?つまりは停滞からの脱却です。

 

つまりご主人様の望みにまた一つ近付きます!

 

そのお手伝いをするために、ウィーネ様もロキが駒王町に現れた時点で殺すつもりですからね。戦乙女の許可なんて関係ありません。

 

ただ「私たちはテロリストを殲滅する」と言うのを宣言しただけですからね。

 

ソレが嫌なら来るな。来るなら覚悟を決めろ。ただソレだけのお話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやはや、ロキの選択が楽しみですねぇ。

 

 

 

 




前置きが長すぎる?作者も自覚してますが、作者の中ではこの絶体絶命のピンチで、どうやってロキを長生きさせるかを考えてます。

いや、だって、一回目で瞬殺したら出番が・・・ってお話。



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97話

久々。本当に久々に更新でごわす。

文章が・・・

オリ設定!
オリ展開!

嫌いな人は読み飛ばし!


ロキ視点

 

『つーわけじゃ。済まぬが儂への文句が有る

なら、後できちんと話し合いの場を作るんで、

今回は我慢してくれ。つーか何をするにも

とりあえず帰国してからにしてくれんか?』

 

急にオーディンから連絡が有ったから何かと

思えば、私に行動の自粛を求める為の連絡とは。

 

「はぁ、まぁそれなら仕方ないと言いますか

何と言いますか・・・」

 

我々北欧神話群の主神であるオーディンが、

何をトチ狂ったかいきなり

『聖書の陣営の堕天使勢力と同盟を結ぶ』だの

『日本神話群とやらとの会談に向かう』

とか言い出した時には「何をアホなことを」と

思ったが、その理由が連中が開発をしている

神殺しの術式の観測と調査と言うなら文句はない。

 

私が動こうとしていることも向こうには

筒抜けだったようだし、向こうが自分を

殺そうと万全の態勢を整えているところに

ノコノコ突っ込むほど阿呆ではないつもりだ。

 

と言うか是非とも頑張って調査してくれと

言いたい。

何せ聖書の陣営の連中が神殺しの術式などを

持ってしまえば、今まで以上に調子に乗って

くるだろうからな。

 

『うむ、すまんの』

 

いつも以上に素直なオーディンの態度には

違和感を覚えるが、アレだろ?

 

日本神話群の使者の護衛には例の鬼神が居る

のだろう?私は直接会ったことは無いが、

娘のヘルから話は聞いているぞ。

 

少し前にオーディンに真意を問い質しに

日本へ行くと言った際に『日本に行くと言う

なら絶対に逆らってはダメな方が居ます!』

と随分と念を押されたからな。

 

オーディンも妙に恐れているようだが、それは例の鬼神が理由か?

 

「ちなみに聞きますが、その、ホオズキと言うのは・・・」

 

『馬鹿者っ!軽々しくその名を口にするでないっ!』

 

「あ、はい」

 

当たりか。と言うかあのオーディンがマジで

ビビっている件について。

 

いや、基本的に我ら北欧神話は黄昏によって大半

が消える事になるので、自らの死に対しては

耐性と言うか、覚悟が有るモノなのだが、ヘルと

言いオーディンと言いなぜこうも怯えるのか。

 

まぁいいや()とりあえず私は納得したので、

他の連中を説得してくれ。具体的にはスルト。

 

なんかスルトセカンドとか訳のわからんモノを

造られた挙げ句、それを悪魔ごときの眷属に

されてるんだろ?

 

ただでさえ聖書の陣営の情報が流れてくるように

なってからと言うモノ、連中の非道だの無道に

対してかなりイラついてるからな。

 

誰が、何の為に世界を焼く存在のコピーを

造ろうとしたのかは知らんが、所詮は魔王

ごときに従う存在だ。

 

脅威の度合いはそれほど高くは無いが、本人

からしたら我慢は出来んよなぁ。

 

そもそもスルトのコピーって只の火の神の

出来損ないだろ?誰だよ造ったの。

 

神殺しの術式なんか関係ねぇ!って感じで襲われるかもしれんぞ。

 

『とりあえず頼んだぞ!来たら命の保障はせんからな!』

 

「はぁ」

 

言葉は非常に強い言葉なのだが、その内実

を知れば何とも言えない気分になるな。

 

まぁオーディンは最強と言う訳では無いし、

彼を上回る神だっていくらでも居るだろう。

 

自分よりも強いモノを警戒するのは当たり前だ。

 

それに私としても日本で黄昏を行う訳には

行かんし、連中用に何かを仕込むもの面倒だ。

 

態々踏み台になってやる筋合いも無い。

 

それにテロリスト共が何やら蠢動している

ようだからな。

 

踏み台というよりは咬ませ犬のような扱いだが・・・人間がこの私を欺けると思うなよ?

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

奥様視点

 

『向こうはこんな感じだねぇ』

 

「ふむ、オーディンめロキを説得したか」

 

旦那様は「意外だ」と言う顔をしてますね。

 

確かにあの頑固な老人が簡単に己の行動を

改めるのは意外と言えば意外ですが、その

原因である補佐官様のことを知っていれば、

当然の行動だと思いますよ?

 

「おかげでコチラとしても狐殿に迷惑はかかりませんから、問題無いのでは?」

 

重要なのはココだと思うんですけどねぇ。

 

別に来られても殺すだけなのですが、

日本の敷地内で神を殺したら何か面倒

な手続きとかが有るかもしれませんし。

 

「ま、そりゃそうだがな。折角神が挑んで

来てくれるんだから、捕獲の用意をして

おこうと思ったんだよ」

 

「あぁなるほど」

 

奇跡の部屋ですか。本物の神を実験出来る

なんて早々有りませんし、更に言えばその

神は「ロキ」ですからね。

 

向こうとは違うと言うことは分かって

いますが、どうしても興味は有ります。

 

『うーん。神って言っても中途半端に受肉

しちゃってるから、面白い存在とは言えない

と思うけど?』

 

神野的には受肉している時点で神では無い

と言う感覚なんですよねぇ。

 

まぁ斬れば殺せる神なんか神じゃないと

言われてしまえばその通りです。

 

それに連中は私や魔王のサーゼクスらと

同レベルですからねぇ。

 

狐殿は戦ごとに向いた方では無いのでそれも

シカタナイことなのですけど、あのインドで

破壊を司るシヴァが7等ですからねぇ。

 

それに帝釈天がシヴァを敵視するって意味

が分かりませんよね。

 

元々仏教だのインド神話だのは色んなのを

混ぜ込んでいますが、世界の破壊を司る

シヴァに対してその辺の雷の神如きがどう

立ち向かうと言うのか。

 

インドラだとしてもヴィシュヌの力を借りて

ヴリトラを倒したんでしょ?

 

ヴリトラは一度死んでも何度でも甦るので、

殺し方はいくらか有ったみたいですが、それ

でもヴィシュヌ>インドラであるならば

シヴァと敵対しようとすること自体がおかしい。

 

まぁ神話は所詮神話だし、肉体を持つ神には

違う理が有ると言えばそうなのでしょうが。

 

「ソレはソレだ。ロキは伝承だけ見れば

雌雄同体にして悪辣な神なんだから、

学術的には面白いのかも知れんじゃ無いか。

まずは殺ってみんことには何も出来んさ」

 

学術って言うような存在ですかねぇ。

 

『ふぅん。まぁご主人が良ければ良いさぁ』

 

結局はそこですよね。旦那様が望むことを

叶えるのが我々の使命なのですから、

意見を言うことは有っても、ソレを否定

したり訂正させる必要などありません。

 

『そんで、向こうで色々している英雄派

についてはどうするんだぃ?』

 

来ました英雄派。

 

なんでも禁手化を狙って色々な実験をして

いるんでしたっけ?

正直に言えば勝手に禁手でも何でもしろって

感じですが、旦那様にしてみれば・・・

 

「人間が知恵を絞って、さらに命懸けで己を

昇華させようと言うのだろう?ソレを邪魔

するような無粋な真似はせんよ」

 

『「ですよねー」』

 

神野と同じリアクションになってしまい

ましたが、そりゃそうなりますよ。

 

連中は悪魔の『英雄』と違って、しっかり

己を追い込んで、鍛えているんです。

 

旦那様にとっては称賛することは有っても

邪魔をするようなことでは有りません。

 

とは言え加減しては意味が有りませんので、

きっちりと眼鏡公女にも仕事はさせますけどね。

 

「では神野は予定通り適当な兵士を

連れて英雄派を襲ってくれ。

その際のレベルは・・・3等で良い」

 

『りょーかーい』

 

ふむ。今の自称弟子と同レベルの悪魔を

ぶつけることで、連中に絶望を与えると

言う寸法ですか。

 

その絶望を乗り越えたとき、彼らは更に

成長をしていると言うことですね。

 

まぁ堕天使の幹部程度ですから、神器

次第では・・・・・・無理ですね。

 

一体ならまだしも、数体で現れた場合、

人間では攻撃の余波だけで死にます。

 

絶霧の使い手がどこまで出来るのか、それと

魔獣創造のレベル次第では反撃も難しいこと

ではありませんが・・・どこまで期待できることやら。

 

それに指導者は「曹操」を名乗っていると言う

ことですが、曹操とか諸葛亮の魂を引き継いだ

と言うのも意味が分かりませんし、神器

が発現したからってそのまま曹操を名乗ると

言うのもアホみたいなヤツですよね。

 

その名前を名乗ってしまったがゆえに己の

生き様を確定させてしまいました。

 

諸葛亮に至っては・・・何がしたいのでしょう?

 

私たちが知る諸葛亮はタダの夢見がちな阿呆

でしたが、この世界の諸葛亮もまた無駄に

戦乱を広げただけの阿呆ではありませんか。

 

英雄と言うなら侯景くらい弾けて見せなさい。

 

それはそれとして、ロキが止まったことを

簪に伝えましょうか。

 

神野が率先して教えるかも知れませんが

正式な命令は必要ですし。

 

とは言え狐殿の護衛に気を抜かせる気は有りませんけどね。

 

・・・・・・連中にも誰かを

差し向けるべきでしょうか?

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ソーナ視点

 

『と、言う訳でロキは動きを止めました。

ただ天照大神様の代理である神使様を

お迎えするにあたってご無礼が無いように

貴女方はいつも通り業務を行うように』

 

「はい!」

 

良かった!本当に良かった!

 

オーディン様の機嫌とかは良いんですか?とは聞かないわ!

 

だってロキ様が日本に来ていたら、ロキ様と

オセ様の眷属の方々の戦争でしょ?

そうなってたら駒王町なんか消し飛ぶわよ!

 

まぁカンザシ様辺りが何かしらのフォロー

をしていたでしょうけど。

 

それにしたってオーディン様よね。

止めれるなら最初から止めなさいよ!

 

『それと、これからオセ家は英雄派に対して

攻撃を仕掛けます。巻き添えが発生しない

ようにするつもりでは有りますが、現在

連中は何やら妙な真似をしようとしている

そうなので、今まで通りの見敵必殺を

心掛けて動くように』

 

「「「サー・イエッサー!」」」

 

シロネ様のお言葉に対して全員が敬礼で

応えると、満足そうに頷いて通信が切れる。

 

英雄派の拠点を掴んでるんですか?!

とかも聞かないわよ!

 

そのまま固まること数秒。前に気を抜いた

所に『あぁ忘れてました』と言って通信を

再開されたこともあるので、気は抜けない。

 

とは言え今回は大丈夫そうね。

 

「聞いたわね?ヨシコ=サンと匙はこのまま

私と共にオーディン様の案内役を続行。

椿姫はもうしばらくはパトロールを任せる

事になるけど、終わったらボーナスを出す

から何か欲しいモノが有ったら言ってね」

 

王の代わりに動くのが女王の仕事なので

ソレをどうこう言うつもりは無い。だけど

働いた分の補填はキチンとしないと駄目だ

と言うことを考えれば、少しは椿姫にも

報いる必要が有るだろうと思って声を

かけたんだけどね。

 

「私としてはするべきことをしているって

だけですし、欲しいモノと言われても

余りないのですけど・・・」

 

多分そうだろうなぁとは思ってたわよ。

お金を貰っても使う機会が無いし、

お休みなんかあったら鍛えるもんね。

 

ソーナが予想したように、いまのソーナ眷属は

基本的に暇さえあればトレーニングをするのが

流行り(と言うか護衛として鍛錬は義務)

なので、椿姫としても特に欲しいものは無い。

 

有るとすれば精々が「良き師が欲しい」と

言ったところだが、ソレを言った途端に

地獄から手が伸びて来てどこぞに引き摺り

込まれることがが想像出来るので、絶対に

口には出さない。

 

椿姫はあくまで「(程)良い(ところで抑えてくれる)師が欲しい」のであって、死にたいわけでは無いのだ。

 

「うーん。まぁソレも分からないでも

無いんだけどね。ただ前回の『英雄』様の

ゲームのせいで暫くはゲームは無いけど

場合によっては私とゼファードルの

ゲームがありそうだから、ソレに備えた

装備とかでも良いのよ?」

 

最低限全員用の装備は揃えているが

個別になると話は別だ。

 

椿姫だけ特別扱いするようでアレだが、

そもそも椿姫は自分の代理にもなる女王だ。

 

それ故に特別扱いするのが普通だし、椿姫

には匙のような龍気も無ければヨシコ=サン

のような専用の装備も無い。

 

神器を有効に使う為にも彼女には何か

装備品があった方が良いと言うのは

眷属全員の想いでもある。

 

それに予算云々の話になった場合、一応

其々の眷属には冥界に領地を与えているが、

高校生如きが領地経営を出来るハズが

無いので所領は発展しているとは

言えない状況である。

 

なのでやっぱりシトリー家の財布から

出ることになるし、特殊な材料などに

関しては公爵家の伝手が有った方が望む

モノが得られると言うのも当たり前の話。

 

「あぁゼファードル様ですか」

 

椿姫が溜息を吐きながら、将来戦う

事になるであろう強敵を思い出す。

 

ソーナや匙は、彼と同じようにオーディン

の近くで仕事をしているからこそ、

現時点で彼らの実力は自分たちを大きく

凌いでいると言うのは良く分かっている

 

ゴトウは人間の身で有りながらオセと

契約を交わして鍛えに鍛えた戦士だし、

他の3人も物心ついた時から教会に

よって洗脳教育を受け、身心を鍛えて

居た身だ。

 

つい最近まで学校に通い遊びながら

鍛錬モドキをしていた自分たちでは、

到底太刀打ちできるような相手では無い。

 

だからこそ白音はヨシコ=サンを

紹介したのだし、簪もいい勝負が

出来るようにと疑似神器を与えたのだ。

 

「うーむ。確かに彼らとの戦いとなると、現状では厳しいモノが有るな」

 

そのヨシコ=サンとしても、今の自分

では彼らの一人と相打ちが出来るか

どうかと言ったところだろうと言う

ことは理解している。

 

ゲームの勝敗に興味は無いが、自己鍛錬

と言う点で考えれば、身近に超えるべき

壁が有ると言うのは悪いことでは無いし、

負けるにしても痛い思いをしたいわけでも無い。

 

ならば出来るだけ準備をしておきたいと

言うのは当然の話だろう。

 

「・・・麻雀勝負とかにならないですかね?」

 

匙も弱気と言うか何と言うか、微妙なことを

言って来る始末だ。

 

「それじゃ、レーティングゲームの意味無いでしょう」

 

お互いの実力差を正しく理解しているから

こそのコメントであるが、流石に麻雀では

レーティングゲームの意味が無い。

 

もしかしたらアジュカ様辺りが遊び心を出して

東西南北とか白発中の牌を持つ眷属が揃う

ことで、国士無双!(ライジングサンッ!)とか言って

特殊な力を発動できるような仕掛け(ギミック)を作る

可能性も無くはないが・・・

 

いや、チェスだから。と頭の中で起こった

国士無双によって生じた大爆発を無視する

ことにするソーナ。

 

「ま、どんな内容の試合であっても無様を

晒さないように研究と修行は怠らないよう

しないとね」

 

「「「ですねー」」」

 

何せ無様を晒したらシロネ様共々矯正である。

 

眷属一同、来るゼファードルの戦いに備えて

緩むことなく修練することを誓ったと言う。

 

たとえロキが来訪しなくとも、彼女に安息の日は来ない。それが領主と言うモノだ。

 

 

 




ロキ、来ない!

まぁ彼は狡知の神ですからね。危険には近付きませんし、拙作のオーディンは原作の方とは趣が違いますので、当然自分が折檻される可能性は減らしていきます。

北欧神話に於いて全てを終わらせる神であるスルト。彼らがそのコピーを作るとか有り得ません。しかも数え方がセカンドって・・・北欧だって言ってるのに。さらに廃棄処分とか意味が分からない。

そして英雄派に襲い掛かる理不尽ッ!
理不尽を超えてみせろぉぉ!ってお話

噂では拙作の解禁を宣伝してくれた方が居るとか?こんな作品で申し訳ございません。


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98話

か、書き方が・・・


ソーナ視点

 

会談の当日。会談予定時間よりもかなり早い

時間に会場に到着した私たちは、最後の打ち

合わせを行っていた。

 

「どう?何か異常はあるかしら?」

 

『今のところはねぇな。シロネサマからも特に

何も指示は来てねぇし、今がチャンスだ』

 

「了解」

 

『「ふぅ」』

 

馬車の外に居るゼファードルと二人で同時に溜め息を吐く。

 

正直このプレッシャーはキツい。今まで私を

守っていた警護の人達に感謝の金一封を送り

たくなる程度には、要人警護と言う仕事が

どれ程大変なのかってことがわかったわ。

 

私はただの案内役だけど、ここで英雄派が

来たりしたら地元の管理者としての面目が

丸潰れになるし、ロキ様が動かなくても他の

テロ要員がどう動くかわからなかったから、

正直不安だったのよね。

 

だけど会場に着いたからにはもう安心よ!

何せこの会場、外からわかるくらいに厳重な

警備をされているし、何よりこの気配は

間違えようがないわ!

 

『つーか、本当に補佐官サマが地上に出てきたのかよ』

 

ゼファードルもわかるのね。おそらく抑止的な

意味を込めて、わざと気配を隠していないの

だろうけど・・・そう、ここには補佐官様が居るっ!

 

つまり、現時点でこの建物に攻撃を仕掛けたら、

その連中はもちろんのこと、所属する組織ごと

滅ぼされると言うことが確定したわ!

 

・・・あれ?けどそれって、もし禍の団に所属

する悪魔が来たら、悪魔が滅ぼされたりしない?

 

『貴方達の無策が原因でしょう』とか言って。

 

い、いやいや、ソレが有るからこそシロネ様が

掃除の陣頭指揮を取ってるのよね!椿姫、

頼むわよっ!悪魔の未来は貴女に掛かってる!

 

 

 

このように、心の中で己の部下に悪魔の未来を

託したソーナだったが、肝心の要人が乗る馬車

の中は静寂、いや沈痛な空気に包まれていた。

 

「・・・爺さん」

 

「わかっとる。わかっとるが・・・」

 

そんな空気を作り出しているのは今回の

事態を招いた張本人でもある来賓の二人、

堕天使の総督であるアザゼルと北欧神話群の

主神であるオーディン様。

 

この両名を会場に送り届けたら、ゼファードルや

私はお役御免となるのだけど、会談の会場に

着いた今、二人の腰は重いわ。

 

それはもう、馬車の荷台に取り付けられた

取っ手にしがみついてでも馬車から

降りることを拒否するくらいには重いわ。

 

「「・・・・・・」」

 

誰一人として馬車を降りる気配がないのは何故なのか。

 

「えっと、総督殿?」

 

「ちょっと待て。待ってくれ。待って下さい!」

 

何その三段活用?!

 

何だかんだで来賓(悪魔からすれば先代の魔王

陛下と同等の存在)であるアザゼルからの良く

わからない要望を受けて身動きが取れなくなった

私に、本当の意味でも来賓であるオーディン様

からも声がかかる。

 

「た、確かシトリーの嬢ちゃんはアヤツと

顔見知りじゃったよな?」

 

「あの、オーディン様?いきなり何を?」

 

戦乙女様が心配そうな声をかけるけど、声をかけられた方は、下を向いてガタガタと震えているわね。

 

いや、気持ちはわかるわよ?このドアを開けて

建物の中に入れば、そこには御機嫌斜めな

補佐官様が居るんでしょ?

 

即ち地獄確定。私なら迷わず逃げるわ。

 

でも今回の会談はオーディン様が申し込んだ

モノだし、流石に逃げることは出来ない。

 

逃げたらドタキャン扱いですものね。

どうせ殴られるなら諦めた方が良いと思うん

だけど、そこで何故私が出てくるのかしら?

 

「確かに補佐官様とは顔見知りですが、私は

それ以上の関係でも有りません。この中で

言えば一番親しいのは外のゼファードルかと

思われます」

 

『はぁ?!』

 

外から「俺を巻き込むな!」と言わんばかりの

悲鳴が聞こえた気がするけど、私には関係ないわ。

 

実際私なんか数ヵ月前に知り合っただけだし?

ゼファードルは何だかんだで5年近い付き合いなんでしょ?

 

有りのままを報告するのが私の仕事なのよ~。

 

「そうか・・・爺さん?」

 

「うむ!ではゼファードルよ。お主に命じるぞい。儂らを守れ!」

 

「( ゚Д゚)オーディンサマ?!」

 

戦乙女様が驚いているけど、わかるわ。確かに

ゼファードルは護衛としてここに居るけど、

建物の中に関してはノータッチだもんね。

 

それなのに本来の護衛である彼女がこんな扱いを受けていたら、完全に立場が無いわよね。

 

『つーかよぉ。この場合守るって何から守るんだ?』

 

「そうね・・・とりあえず不審者じゃない?」

 

うん。そうなのよねぇ。オーディン様や

アザゼルが何を言っても会場の中で

待ち構えているであろう補佐官様は

私たちの敵じゃ無いし、そもそもあの方は

理不尽な暴力は・・・振るわないとは

言わないけど、それだってちゃんと手加減

してくれるもんね。

 

言ってしまえばツッコミでしょ?それを

防いだら駄目なんじゃないかしら?

 

それに向こうには小龍姫様だって居るんだし、

私たちがどうこうしたところで・・・ねぇ?

 

だからこそゼファードルが動くとしたら

予想外の不審者が接近してきたときだけど、

それもアリス様の呪詛で殺せるはず。

 

殺せないような相手なら私たちは

時間稼ぎしかできないわ。

 

まぁ時間稼ぎも立派な仕事だけど、向こうの

面子を考えたら時間なんか稼ぐ必要も無いのよねぇ。

 

自分から火の中に飛び込もうとする

虫を止めてもしょうがないじゃない?

 

虫の死骸で火を灯している土台が汚れる

のを防ぐって言うのもわかるんだけど、

下手に私たちが戦って場を汚すくらいなら

小龍姫様やアリス様やシロネ様が出て

一撃で終わらせた方が早いし、綺麗に片付くと思うのよねぇ。

 

元々この建物の警備は向こうが全責任を

持って行うって告知されてるし。

 

だから私たちは絶対に関わらないのよ!

 

「いや、不審者もそうじゃが!」

 

「そ、そうだ!俺達来賓の身の安全をだな!」

 

「ソレハ、ムコウノカタガタト、イクサオトメサマノオシゴトデス」

 

「「何でカタコト?!」」

 

五月蠅いわね!実際そうなのよ!今まで

なんとか無事に任務をこなして来たん

だからコレ以上私たちを巻き込まないで!

 

それにホラ、来たわよ?

 

「お疲れ様です!」

 

「護衛ご苦労。ココから先は私たちが

引き継ぎますので、自称弟子は周囲の

警戒に移りなさい」

 

「へい!了解しやした!」

 

外のゼファードルがお疲れ様です!って大声を

上げて建物の中に声を掛けると、向こうからも

それに応える声が聞こえて来たわ。

 

この声は小龍姫様ね。

 

「「お、おい、ゼファードr」」

 

最期の守りを失った二人が声を上げようと

するけど、それより先に向こうから声が掛かる。

 

「アザゼル総督とオーディン様ですね?

中で神使様がお待ちです。

時間より早いですが会談の用意は出来て

おりますので、どうぞお越しください」

 

奥様のご友人である神使様をお待たせして

いることに若干の苛立ちがあるのか、馬車

を隔てても分かる程度の圧力が感じられるわ。

 

私に向けられたものじゃ無いと分かって

いても土下座をして許しを請いたくなる

ような圧力を直に受けている二人は、目に

見えて顔色を悪くしているわね。

 

「ロ、ロスヴァイセ!」

 

「は、はい?!」

 

そんな時。いきなり声を掛けられた護衛の

戦乙女は、ビクッとして背筋を伸ばす。

 

そうよねぇ。私が同じ立場なら

「こんな圧力を出す相手にどうしろって言うの?!」

って言って護衛対象を差し出すわよ。

 

そう思っていたらオーディンは彼女に

 

「そ、そうじゃ!お主、先触れとして向こうに挨拶をして来い!儂とて北欧神話の主神としての立場がある故な!」

 

「う、うむ、そうだな。まずは先触れが大事だもんな!」

 

「え?いや?・・・え?」

 

戦乙女は、私が?って顔をしてるけど言ってることは間違っていないわ。普通に考えたらね。

 

「・・・神使様を待たせておきながら、

護衛に挨拶をさせる。だと?」

 

だけどそれはあくまで『普通なら』よ!

そう。向こうは既に会場で待っていて、

さらに小龍姫様が迎えにまで来ているのよ!

 

そんな中で、自分たちが会場まで来ているにも関わらず、今更先触れの使者って何なの?

 

この場合は護衛と一緒に会場入りするのが

正しい作法よ。と言うか、今まで先触れの

使者なんか出した事ないでしょうに。

 

「お2人とも、諦めて下さい」

 

私も案内役として2人に会場入りを促すと、

2人から「裏切るのか?!」と言った

顔を向けられる。だけど、そもそも私は悪魔陣営ですし?

 

北欧神話も堕天使も、敵じゃないだけで

味方って訳でもありませんし?

 

って言うかさっきからお待たせしてるんで、さっさと行ってくれませんかねぇ?

 

そう思っていると、向こうから更に追加で

人が出て来た。この気配は・・・やはり。

 

まさか本当に補佐官様が地上にお越しになるとはねぇ。

 

遠い目をする私を見て戦乙女が何やら

不思議そうな顔をしているけど、

そうか。この人にはこの底なし沼の

ような深淵を感じさせる気配は理解

出来ないようね。

 

チラリとアザゼルとオーディンを見れば、

彼らは戦乙女とは違ってちゃんとこの気配を

感じ取ったのでしょう。

 

2人の顔が絶望で染まっていくわ。

 

「・・・何をしてるんですか?さっさと降りてきなさい」

 

「「はいっ!」」

 

「( ゚Д゚)オーディンサマ?!」

 

馬車の向こうから発せられた声に対し

反射的に背筋をピン!と伸ばして返事を

するオーディンの姿を見て、戦乙女が

驚きの声を上げた。

 

・・・私にしてみたら補佐官様を前に

して、普通にツッコミが出来る戦乙女の

胆力に驚きよ!

 

色々諦めてすごすごと馬車から降りて

いく2人と、表情に?マークを浮かべ

ながらオーディンに付き従う戦乙女を見て

私は「知らないって凄いなぁ」と思いました、まる。

 

 




リハビリに近いです。正直言って書き方を忘れつつありますので、内容の流れは一緒ですが書き方が変わってきそう。

偽物ではありませんよ?作者は作者でございますですはい。


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99話

短い上に書き方ががががが……


リハビリと思って許してクレメンス。

オリ設定・オリ展開。
嫌いな人は読み飛ばし!





アザゼル視点

 

「「……」」

 

名簿を見たときは「まさか」と思ったが。まさか本当に来るとはな。

 

いや、名を騙った後の危険性を考えれば、最初っから嘘って線はないってことくらい理解していたがよぉ。

まぁそれに関しては、今はいい。

 

問題は会談の場として用意されたこの建物だ。

 

建物自体は古くもなく新しくもないが、この部屋に設置された机や椅子は北欧神話群の主神である爺さんや、一応堕天使勢力のトップである俺というVIPを持て成す分には過不足ない代物ではある。

 

……場合によっては俺の分の椅子だけパイプ椅子とか段ボールとかも想定していたが、流石のオセ陣営も日本神話群を対象とした公式な使者を相手に礼を失するような真似はしなかったか。

 

もしこの場でそれをやられていたら、立場上文句の一つも言わなけりゃならんかったから、これに関しては正直助かったと思っている。思っているんだがよぉ。

 

「あの、ウィーネ……様とおっしゃいましたか?」

 

「なにか?」

 

会談の場として用意された部屋に入った俺と爺さんが、何とも言えない表情をしながらも無言を貫いていたことに違和感を感じていたであろう戦乙女が向こうの護衛に声を掛けた。

 

その声色にどこか謙るような気配を見せるのは、半神の戦乙女とはいえ、5大龍王最強と謳われたティアマットや邪龍最強と謳われたクロウ・クルワッハを従えているだけじゃねぇ、ただそこに居るだけで『殺ると決めたら必ず殺る』という雰囲気を醸し出す小龍姫の怖さを肌で感じているからだろう。

 

しかし相手がどれほど怖くとも、彼女も一勢力を率いる主神の側仕えだ。

 

どうしても指摘しなくてはならないことってのは存在する。

 

バラキエル? もう完全に置物だよ。

無理もねぇ。なんといっても、娘の姫島朱乃が連中と同じ悪魔勢力だ。

 

それもオセに敵視されている『英雄』の眷属だからな。

 

ここで下手な事したら「バラキエルの無礼は娘の罪」なんて言われて血祭りにされる可能性だってあるんだ。それに抗議しようものなら「内政干渉」を理由にしてオセと堕天使の間で戦争が勃発しかねん。

 

つくづく前回の作戦で穏健派の筆頭であるサーゼクスが再起不能になったのが痛い。

 

いや、アレがあったからこそ悪魔陣営も神野対策に本腰を入れた。と考えれば決して悪くはないんだ。

 

しかしオセを抑える楔が減ったってのも事実。

 

……つーかオセも神野対策をしてるんだよな? そういう意味では俺らとオセは目的を同じくする仲間だ。それなのに俺らとの戦争を求めるっておかしくね?

 

下手に迎合して神野に気取られるのを防ぐって意味合いも考えられるが、それにしては小龍姫が剣呑な雰囲気を隠しもしてねぇ。

 

あくまでリスクを分散しているだけであってコッチに期待していないって可能性もあるにはあるが、どうも不自然だ。

 

これは後で要確認、だな。

それはそれとして。

 

「あの、ですね。そのぉ」

 

「……なんでしょう?」

 

「ひっ!」

 

明らかに「サッサと言え」と圧迫してくる小龍姫の圧力に心が折れそうになっている戦乙女。

 

気持ちはわかるが。ここまで行ったらそのまま突っ切れ! むしろ突っ込め!

 

俺や爺さんから向けられる期待の眼差しを感じ取ったか、戦乙女は意を決した表情をして、ゆっくりと俺と爺さんの対面にあるモノを指差しながら言葉を紡ぐ。

 

「あの。ソレ、なんですか?」

 

((良く言ったッ!))

 

そうなんだよ。俺と爺さんが座っているのは、確かにVIPが座るのに相応しい椅子なのだが、問題は対面、つまり俺達と会談を行うであろう相手が座るであろう位置にあるモノだ。

 

「む? あぁ、北欧神話群の方には馴染みがないかもしれませんね。これは御簾と言います」

 

「ミス。ですか?」

 

「えぇ。日本神話群における貴人が座する場、ですね」

 

(知っとるわいッ!)

(知ってるよッ!)

 

「な、なるほど」

 

俺と爺さんの心の叫びは戦乙女には届かなかったようだ。まぁ、あんな風にさも当然に用意されているなら「そういう文化なのかも」って納得するのも理解できなくはねぇ。だが俺は騙されんぞ!

 

「いや、その御簾ってのは確かに貴人用だが、それは本来格上が格下と謁見する場合に使われるモンだよな?」

 

「え?」

 

日本の文化を知らなかったり勘違いしているなら誤魔化されたかもしれねぇがなぁ! これでもそれなりに調べてるんだよ!

 

「そうじゃな。儂もそう記憶しておる。つまり日本神話群は、儂らを格下として扱っとるのかのぉ?」

 

いくらこっちに非があるとはいえ、公式な会談でこんな真似をされて黙ってるわけにはいかねぇよ。

 

「ふむ。格下とか格上とかいう考えはありませんでしたね」

 

「ほう。そもそもの話、この場に来るのが日本神話群の天照大神殿ならまだしも、その代理でしかない神使であるならば儂を前にして顔を見せるのが礼儀じゃろう?」

 

「だな。急な会談を申し込んだことはこっちの非礼だが、だからって無条件にそっちの非礼を赦すわけじゃねぇぞ?」

 

俺らが知らねぇと思って精神的優位に立とうとしたか? 甘ぇよ。

 

向こうの鬼帝は礼儀にはめっぽう五月蠅い存在だ。たとえ身内だろうと、否、身内だからこそ対外的な無礼は許さねぇはず。それが自分の武力を背景にした無礼なら猶更だぜ。

 

強力な後ろ盾を得て墓穴を掘ったな。この外交的を失点は貸しとして、譲歩を迫ってやる。

 

そう考えていた時期が俺にもありました。

 

「いえ、格がどうこう以前に神使様は女性ですから」

 

「「は?」」

 

剣呑な(といっても外交上のブラフだが)空気を纏った爺さんや俺に対して、小龍姫はそう宣いやがった。

 

「日本の文化では貴人、それもお相手のいる女性はみだりに男性に顔を見せないのが礼儀なのですよ」

 

「「……」」

 

ちらりと鬼帝を見れば、奴は無言でうなずいた。つまり嘘ではないってことだ。

 

「さらにお二方の逸話を知れば、ねぇ?」

 

「「あぁ」」

 

小龍姫のいう言葉にバラキエルと戦乙女が声を揃えて理解を示しやがった!

 

いや、確かに俺は女が理由で堕天したし、オーディンの爺様も好色な逸話に事欠かねぇけどよ!

 

「そういうわけです。外交儀礼として考えれば私としても多少思うところがないわけではありませんが、女性である神使殿をあなた方の目に触れさせるのを控えたいというウィーネさんの意見も理解できます。そもそも今回の会談ではそちらの非礼が過ぎますしね。それと差し引きということを考えれば御簾くらいは問題無いと判断しました。というわけで、このままでいいですよね?」

 

「「……」」

 

「いいですよね?」

 

「「アッ、ハイ」」

 

「オーディンサマ( ゚Д゚)⁉」

 

鬼帝の圧力、というか『差し引き』という言葉の意味を理解した俺と爺さんは、承諾を求める声に一も二もなく頷いた。

 

そんな俺らに戦乙女がなんか言っているが、そんなの関係ねぇ!

 

御簾越し? 無礼? アホか!

『それはそれ』で折檻されるより、差し引きでゼロにした方が良いに決まってんだろうが!

 

「いや、引きはしますがゼロにはしませんよ」

 

「「なん……(じゃ)と……」

 

「言ったでしょう? 今回のあなた方は非礼が過ぎる、と。今後の事もありますし、それなりのOHANASHIは覚悟して貰いますよ」

 

「「……はい」」

 

何をしたってこの鬼からは逃げられねぇ。

 

俺に出来るのは、せめてバラキエルを巻き添えにする程度だぜ。

 

「む? 何やら嫌な予感がする」

 

ほほう。暫く戦場を離れていた癖に良い勘してやがる。だが、ドMのお前ぇがいればさしもの鬼帝も気持ち悪がって逃げるかもしれねぇんだ。絶対に逃がさねぇぞッ!

 




上下関係? 当然意識しておりますが? 
格付けって大事ですよね。

俺が上! お前が下だッ! ってお話。



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100話

まさかの連日投稿
短いけどシカタナイネ!


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嫌いな人は読み飛ばし!


アザゼル視点

 

「ご納得頂けたようですのでご挨拶を。私、此度天照大神様の代理として罷り越しました、サンジョウノと申します。以後お見知りおき……はできませんが、よろしくお願い致します」

 

「……確かに見知りおけんわな。まぁそれはもう良いわ。北欧神話群で主神を務めておるオーディンじゃ」

「……見れねぇもんな。堕天使総督のアザゼルだ。よろしく頼む」

 

なんやかんやで御簾越しでの会談を認めたあと、いつから居たのかわからねぇが向こうの神使が意外な程に丁寧な挨拶をしてきたんで、俺も爺さんもやや面くらいながらも挨拶を返す。

 

「ご挨拶は確かに。それで、早速なんですが」

 

「「???」」

 

「此度御二方が、いえ、あざぜる様は悪魔勢力に貸している町で役職を得ているようですので正式には違いますかね? ではえっと、おーでぃん様が急な来日をした上で、会談を申し込まれました目的をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、気になるか。まぁそうじゃろうのぉ」

 

向こうが何を言うかと思えばそれか。そりゃ向こうにしてみたらいきなり他国の国家元首が来たようなもんだからな。そりゃ気になるだろうさ。

 

普通なら世間話とかに紛れて探るんだろうが、ここまでストレートにくるとはな。日本神話群としては下手に探り合いをする手間よりもさっさと話を進めたいって感じか?

 

(さて、どう返答したもんかねぇ)

 

まさか『馬鹿正直にコカビエルが使った術式の解析をしに来た』とは言えねぇわな。かと言って用も無いのに緊急来日ってのも違和感がありまくりだ。だからと言って嘘なんて吐いた日にゃ鬼帝によるOHANASHIがOSHIOKIになるんだろ? どうしようもねぇな。ま、聞かれたのは俺じゃねぇし。頑張れ爺さん。 

 

「基本的には、観光と視察。じゃな」

 

「ふむぅ。観光はわかりますけど、神話群の主神が急な来日をする理由にはなりませんよね? では主な目的は視察となるのでしょうか?」

 

「さよう」

 

「ふーむ。では、その視察とは、何を視察するおつもりですか?」

 

「それは、あれじゃよ。お主ら日本神話群が悪魔勢力に貸してある土地の運用状況を視察したいと思っておるんじゃ。アザゼルの小僧はその案内役兼お目付け役でもあるのぉ」

 

「ほほー」

 

「そもそも儂らには他の勢力に土地を貸すという概念がなかったもんでのぉ。それをやった場合、その土地がどうなるのか気になってしょうがなかったんじゃよ。しかしその土地を借りた勢力というのが、各陣営に嫌われとる聖書の陣営、それも悪魔勢力じゃろ?」

 

「なるほどなるほど」

 

「わかったかの? 下手に時間をかければ悪魔どもは隠蔽工作をするじゃろ? それをさせないためにこうして急ぎできたんじゃよ。結果として根回しや準備が足りず、其の方らに迷惑をかけることになったことについては、このとおり。謝罪しよう。無論この場だけでなく後日正式に謝罪させてもらうつもりじゃ」

 

「それはそれは。そういうことでしたかぁ」

 

ほほう。流石は智謀を売りにする爺さんだ。前々から考えていたんだろうが、確かに嘘は吐いてねぇ。御簾越しのせいで向こうの顔色はわからねぇが、声色からは理解を示しているような感じがする。

 

「それで、視察の結果如何によっては儂らにも土地を貸してもらえぬかどうか交渉を行いたくてのぉ。そう思って今回こうして会談の場を設えて貰った。というわけじゃ」

 

「ふむぅ。それが神話群の主神様が行うことなのでしょうか? と考えればどうにも微妙なところではありますが、それがそちら流の誠意の示し方であると言うのなら、私の一存では簡単に否定もできませんねぇ」

 

「そ、そうじゃろ?」

 

そりゃまぁ。誰がどう見ても軽率なのは事実だから、そこが違和感といわれると、爺さんもキツいところだよな。実際戦乙女なんかさっきからずっと目がアレだし。

 

しかし主神であるオーディンに頭を下げられた上で交渉の段取りを組まれては、主神の代理でしかない神使としても疑いはあれど頷かざるを得ねぇわな。それに、後から何かしらの文句が来たとしても、こっちの主目的はあくまでコカビエルが使った術式の解析だ。それさえやった後なら別にどんな文句がこようと関係ない。…‥もっと言えば、鬼帝が睨みを効かせている今、この時を乗り切れるならそれでいいんだ。

俺らはこの会談が終わったら堂々と解析と調査をして帰ればいい。

 

「なるほど。それではおーでぃん様の誠意にお応えする形でお伝え致しますが……」

 

そんなことを考えていた俺に、サンジョウノを名乗った神使は言葉を紡ぐ。

 

「現在日本神話群といたしましては、今後他勢力への土地の貸出を控えることを決めております。勿論現在悪魔陣営に貸し出しを行っている土地も、契約更新は認めず、現在の貸し出し期間が終わり次第、即時帰国をしていただく予定となっております。そういった事情ですので、おーでぃん様のご要望にお応えすることはできかねます」

 

何? 土地の貸出を止める、だと?

 

「ほう。アザゼルはそのことは知っておったか?」

 

「……初耳だな」

 

いやマジで。

 

「だが理由は見当がつく」

 

「英雄、か?」

 

「あぁ」

 

それしかねーだろ。

 

「そうですねぇ。元々日本神話群の中にも聖書の陣営の方々のやりかたには不満の声がありましたし、土地の貸出にも異論はあったのです。それは前任の方が真摯に対応して下さって頂いたお陰で一応なんとか鎮まっていたのですが、その方の後任としてきたのがあの方々でしょう?」

 

「だな」

 

無能のリアス・グレモリーと阿呆のソーナ・シトリーってな。

 

無能はともかくとしても、誰がどう見ても優秀だったセラフォルーの妹が、なんで『阿呆』なんて言われていたのか気になって少し調べたんだが、どうもアレがまともになったのはここ最近のことらしいんだよな。それまでは無能に匹敵するほどの無策。いや、眷属が無名だった分、無能よりも悪いという評判だったらしい。

 

当然そんな阿呆に領地の維持なんざできるハズもなく。結局無能と同じで学校生活を満喫してたんだとか。

 

そりゃ怒られるわ。

 

「普通の悪魔貴族の方ならまだしも、あの方々は魔王と呼ばれる方々のご令妹でしょう? しかも前任の方に無理を言って代わってもらったとか。そうなりますと、我々から見てこの人事は『魔王がわざと杜撰な管理しかできない未熟者を差し向けてきた』ということになります」

 

「だろうな」

 

実際はサーゼクスとセラフォルー、そして両方の家族が甘やかした結果生じた暴走だが、相手からすればそうなるわな。

 

「その結果が、はぐれ悪魔による一般人の殺害。堕天使による不法侵入と一般人の殺害。悪魔となった赤龍帝を宿した少年による自然破壊。教会から聖剣を持ち出してきたこかびえるさんと教会勢力、悪魔勢力の争い。学校での悪魔・天使・堕天使・禍の団に所属する方々による戦争行為と、簡単に言っても色々とやりたい放題なんですよ? 今年だけでこの周辺地域がどれだけ霊的に荒れたのかお分かりですか? あざぜる様は他人事ではありませんよ?」

 

「お、おう」

 

かなり、というか赤龍帝の自然破壊以外の全部に堕天使が絡んでるからな。神野云々は向こうに関係ねぇし。というか、神野が現界した理由を考えれば他勢力からすれば自業自得でしかねぇ。つまるところ、日本神話群としては悪魔勢力だけでなく三大勢力全部の印象が悪いってことだろうよ。

 

で、他の勢力に土地を貸した結果がこれなんだから、日本神話群の中ではもう他の勢力に土地を貸す気はなくなったって話だろ? 納得だよ。

 

「はぁ。阿呆どもが。貴様らが自滅するのは勝手じゃが、儂らにまで迷惑をかけるでないわ」

 

「……返す言葉もねぇよ」

 

爺さんとしては「北欧神話は関係ないじゃないか」と言いたいところだろうが、そもそも他の勢力に土地を貸すってのが異例で異常なんだ。その結果がマイナスしかなかったってんなら、それが一つのケースであろうとも日本神話群が土地の貸出を控えるようになる理由としては十分な説得力を持つ。

 

もしもこの上で土地の貸出を望むなら、自分らの土地を貸すくらいの担保が必要になるだろう。しかし日本神話群以上に閉鎖的な北欧神話群にはその選択肢はねぇ。ならば爺さんにはこれ以上の交渉はできない。

 

「貴様らが周囲に迷惑をかけて回るのは今更のことじゃし、それで迷惑を被った日本神話群の者に文句を言うわけにもいかん、か。……まったく、これだから聖書の陣営はダメなんじゃよ」

 

土地の賃貸についてはこの場を誤魔化すためのでっちあげと思ったが、どうやらそれだけではなかったらしい。まぁそれも”あわよくば”って感じだったのだろうが、それさえも完全否定されたことで爺さんは明らかに面白くなさそうな目を向けてきた。

 

堕天使は関係ねぇ! とは言えん。

 

しかし、だ。これで会談が終わりだと考えればどうだ?

 

結果としてロキは来なかった。

これ以上問題がないなら折檻もねぇ。

 

諸々の事情を勘案した結果、俺は内心で『勝ったッ! 第七巻、完!』と喝采をあげていた。

 

『この場は解散して、一回家帰ってビール飲んで寝るぜ!』

 

そう考えていた俺だったが、御簾越しに向き合っている相手はそこまで甘い存在ではなかった。

 

「では今回御二方は、以前こかびえるさんがとある学校で神野さんに使った『神を殺せる術式』の解析はしない。ということでよろしいのでしょうか?」

 

「「……」」

 

Oh バレてーら。

 




散々言い訳させた上で止めを刺すスタイル。

悔い改めて♂ってお話


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101話

文章修正の可能性あり



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嫌いな人は読み飛ばし!


アザゼル視点。

 

「では今回御二方は、以前こかびえるさんがとある学校で神野さんに使った『神を殺せる術式』の解析はしない。ということでよろしいのでしょうか?」

 

俺たちの狙いが向こうにバレていた。

 

いつからだ? 誰から……は言うまでもねぇな。オセだろ? もしくはセラフォルーの妹。

 

俺だって悪魔連中の情報管理に期待を抱くほど馬鹿じゃねぇ。

 

だからセラフォルーにこっちの狙いを話した時点で情報が漏れるのは覚悟の上だ。むしろ今回は情報の漏洩を期待したってのも有る。

 

「ほほう? なにやら私が聞いた話と齟齬があるようですが……嘘、吐いたんですか?」

 

「い、や、その、嘘というか……」

 

「嘘というか、なんでしょう?」

 

「ほら、その、なぁ?」

 

爺さんがそう言いながら俺を見てくるが、残念だったな。

 

「いや、俺を見られても知らんよ。なにせ俺はこの会談に先立って爺さんが日本神話群の皆さんになんて言ったか知らねぇし」

 

「アザゼルぅぅぅ!?」

 

嘘じゃねぇぞ。お前らは口出しすんなって言われたから、口出しどころか一切関わらないようにしてたからな!

 

「そういえば、堕天使さんからはなにも言われてませんでしたねぇ」

 

「そりゃそうじゃが、わかるじゃろ? というか、わかった上で言っとるんじゃよな!?」

 

「なんのことやら」

 

明らかに理解している表情をしながらも、爺さんを許そうという気配がない鬼帝。

 

これはアレだ。

『面倒事に巻き込みやがって』っていうアレだ。

 

確かに日本神話群からみて今の俺たちは、反三大勢力組織である禍の団との抗争中の組織だからな。

 

下手に会談なんかしたら他の神話群から聖書陣営と何かしらの繋がりを持ったって疑いを持たれてしまうし、場合によっては禍の団の標的にされる可能性もある。

 

それも、直接的な攻撃とかならまだしも、無関係の一般人が襲われたりするんだから、そりゃ堪ったもんじゃねぇだろうさ。

 

反論しようにも、これまでの信用ってのが、な。

俺たち堕天使や元エクソシストが一般人を殺したり、悪魔陣営が山を壊したり、会談の日に三大勢力が争ったりしたんだから、そりゃ信用はねぇよ。

 

加えて神野の存在まで察知してるなら尚更だ。

俺だって他の勢力がこんな厄ネタを抱え込んで会談を申し込んでしたら切れる自信がある。

 

そう考えれば面倒事の主犯である俺にも何かしらのペナルティはありそうなもんだが、今のところその気配はなさそうだ。

 

……間違いなく後からOHANASHIかOSHIOKIがあるだろうが、今はいい。俺にとってなにより重要すべきは、さっき神使が言い放った一言にある。

 

「爺さんの口上はさておくとして、だ」

 

「おいィ!?」

 

爺さんの叫び声? 聞こえねぇぁ。

 

「日本神話群は神野の存在を、いや、ヤツが現界していることを把握している。それで間違いないな?」

 

そう。目の前の神使は確かに神野の名前を口にした。

 

でもって奴が名乗った神野明影とは日本の妖怪の名だ。

 

奴が数ある異名の中からその名を名乗った以上、何かしらの関係はあると思っていたし、機会があれば聞こうと思っていたんだ。その機会を向こうが用意してくれたってんなら、こっちとしては乗るしかねぇよなぁ?

 

「えぇ、勿論把握しておりますとも」

 

「……そうか」

 

「件の土地は、現在悪魔に貸し出しているとはいえ我々の土地であることに違いありませんからねぇ」

 

隠しもしねぇって? それならそれで話は早い。

 

「んじゃ、日本神話群は俺たちと足並みを揃える心算ってことでいいのか?」

 

神野の存在を知り、コカビエルの使った術式の中身を知っている日本神話群が、神野に対抗するための術式を調査しに来た俺たちと会談をするっていうのはそういうことだろ?

 

……そう考えた上で共同作戦を提案した俺と、俺の言いたいことを理解して『あわよくば助かるかも』と目を輝かせる爺さんに対し、向こうの神使はあっさりと言い放ちやがった。

 

「え? 我々日本神話群にはアナタ方と足並みを揃える心算なんかありませんよ?」

 

「「は?」」

 

 

ーーーー

 

ウィーネ視点。

 

狐殿の言葉を耳にして阿呆面を曝すアザゼルとオーディン。

 

簪殿から『後で愉しむために必要だから』と言われて預かっていた記録媒体にしっかりと記録されていることを確認している最中も、狐殿の言葉は続く。

 

「そもそも日本神話群の考え方では、神野さんは滅ぼすべき邪悪ではありませんしねぇ」

 

「「はぁ?!」」

 

神野さんの存在を肯定するかのような言葉を聞いて、さらに阿呆面を曝す両名。というか聖書の陣営の敵は、他の陣営にとっては味方でしかありませんよね。

 

「おや? 一神教である聖書陣営のあざぜる様が驚くのはわかりますけど、多神教である北欧神話群のおーでぃん様がそこまで驚くのは意外でしたねぇ」

 

二人のリアクションが面白かったのか、それとも簪様や教頭先生に見せる良い画が録れたことが嬉しいのか。おそらく両方だろう。狐殿はコロコロと笑いながら二人に日本神話群のスタンスを解説する。

 

「日が差すところに影ができるのは当然の理。故に光輝なる天照大神様が治世に神野さんのような存在が生まれることもまた必然。そう言った考えが大元にある以上、我々はアナタ方のように、影を無くそうとか、影を排除しようなどと考えることはないのです」

 

「……ふむ。確かにそういった考え方もある、か」

 

「そりゃ、そうかもしれねぇが……」

 

「光に対する影、もしくは闇の存在は不可分のものですよ。聖書の陣営で言えば、堕天使であるあざぜる様や、悪魔であるうぃーね様だってそういう存在でしょう?」

 

「……まんまそうじゃな」

 

「……」

 

そうですね。教頭先生もおっしゃっていましたが、聖書の神が絶対にして唯一の存在であり、その存在だけで世界が回るのであれば、神の敵対者である悪魔も堕天使も必要ありません。そしてそれは北欧神話群にも同じことが言えます。

 

「そういった感じなので、今のところ我々日本神話群は神野さんを敵視していません。むしろ神野さんが現界した理由を生み出した、アナタ方聖書の陣営を敵視する意見の方が多いのですよ」

 

「くっ」

 

なんかアザゼルが『痛いところを突かれた!』って表情をしていますが、実際のところ彼が現界したのは、ご主人様が『悪魔が悪魔を召喚したらどうなるんだろうな?』っていう好奇心から召喚してみたら彼が来たってだけの話なんですよねぇ。いやはや、それを知っていながらしっかりとアザゼルに釘を刺すとは。流石は狐殿。やりますねぇ。

 

「おーでぃん様があざぜる様に協力しているのは、神野さんへの対策というのもありますが、悪名高き聖書の陣営が神殺しの術式を開発、そして独占することを防ぐという狙いもあるのでしょう?」

 

「……まぁ、包み隠さずに言えばそうじゃな。神野とやらへの復讐に凝り固まっとるアザゼルの小僧はまだしも、悪魔だの天使どもがその術式を手にしたら何をするかわからんからのぉ。勢力を束ねる主神ならば、自らの勢力を脅かしかねん連中に備えるのは当然のことじゃろ?」

 

組織の長としてはその通りとしか言えません。ですがねぇ。

 

「なら最初からそう言えばいいんですよ。無駄に隠そうとするから後から面倒事になるのです」

 

「スミマセンデシタ!」

 

補佐官様の言う通りです。どーせこいつらは解析した術式を自分たちで独占しようとしていたのでしょうけど、補佐官様を欺けるはずがないでしょうに。最初から『解析目的で訪日したいのですがよろしいでしょうか?』と正直に話していれば、わざわざ会談の場を用意したり、狐殿が代理をするなんて面倒なことにはなっていないのです。

 

まぁ、今回のお説教も狐殿の実績になるということらしいですので、私も師姉様も多少の面倒には目を瞑る心算ではありますけどね。

 

「それに関しましては補佐官様のおっしゃったとおりです。『会談のため』と言われて求められる準備と、『研究のため』と言われて求められる準備は違いますからね。本来であれば私が言うべきことではないとは思いますが、他の勢力への訪問の際は注意してくださいませ」

 

「「……ハイ」」

 

「で、そういった事情を勘案した上で結論を言わせていただきます」

 

「「……」」

 

「日本神話群としては、アナタ方への協力は致しません。ですが、アナタ方が術式を解析し、研究することについて掣肘するつもりもございません。好きにしてくださって結構です」

 

「「はぁ?」」

 

断られると思ったのでしょうか。狐殿から告げられた日本神話群としての結論を耳にしたオーディンとアザゼルが揃って阿呆面を晒しました。

 

ですが内実を知る我々からすればおかしいことではありません。そもそも日本神話群にとって重要なのは既存の理を破壊しないことなのです。それを踏まえた上で考えれば、今回連中が解析しようとしている術式は、すでに教頭先生が日本神話群に提出済みのモノ。というか、元々日本神話群の上位者の方々が纏った理の応用でしかないのです。だからこそ彼らの研究を妨げる必要がないんですよね。

 

「具体的には、今回御二方が駒王町へ赴き、術式を解析したり研究する分には構いません。ただし、そうやって出来上がった術式の検証や使用を行う際は、日本国内ではなくご自分の地元でお願いします」

 

わざわざ内実を明かすつもりはないのでしょう。狐殿は驚きに固まる二人に釘を刺します。

 

日本で使うなというのは、まぁ、あれです。前にマダオさんを宿した阿呆がやったみたいに、ポンポンと山を壊されても困りますからね。

 

「それさえ守って頂けるのであれば、我々から付け加えることはございません。以上が日本神話群からの通達となります。御二方からは何かございますか?」

 

このまま二人がなにも言わないのであればそれで会談は終わり。そう思っていたのですが、世の中そうそう上手くは回らないようで……

 

「……一つ聞きたい」

 

「爺さん?」

 

「なんでしょうか?」

 

オーディンが顔を顰めながら狐殿に問いかけました。私としては「空気読め」と言いたいところですが、あくまでこの場は狐殿と連中の会談の場です。護衛に過ぎない私に発言権はありません。まぁ、あまりにも狐殿を冒涜するようなことを口にしたならば、数日後にどこかで老神の死体が揚がることになるでしょうけど、ね。

 

そんな私の思惑を知ってか知らずか、オーディンは狐殿に問いかけます。

 

「……日本神話群にとって、先日コカビエルが使用したという『神殺しの術式』とはどのような扱いなのだ?」

 

「何を……いや、そうか!」

 

なるほど。確かに先ほど狐殿はコカビエルが使用した術式について言及しましたからね。ならば日本神話群がすでにその術式を観測していると考えるのは当然のこと。さらに『自分たちの研究の邪魔をしない』ということから、オーディンはこの術式が「日本神話群がその術式を手中に収めた上で、自分たちに研究を許可する程度の術式でしかない」と考えたのでしょう。

 

そこまで考えが及べば『なぜその程度の術式が、神野さんに通用したのか?』という疑問につながりますよね。

 

その次は『実は効いていなかったのではないか?』という疑問。

さらに次は『ならば何のための偽装か?』となります。

 

一応これまでの神野さんの言動から『堕天使をおちょくるため』という理由は用意できますが、その場合どうしてもコカビエルに術式を与えた我々への不審は募りますよね。

 

現時点で我々と神野さんの繋がりが発覚するのは……あれ? 別にいいのかな?

 

あ、いや。ダメだ。現時点でそれが発覚した場合、怒るのは堕天使と悪魔の上位陣だけ。当然連中が敵に回っても討伐できるけど、それは教頭先生の望みではありません。

 

さりとて、この状況では何と答えても『日本神話群が神殺しの術式の流出を防がない』という不自然さは残りますよねぇ。

 

つまるところこの質問は、オーディンが『諸々の不自然さ』に気付いたが故の質問です。

 

 

 

 

 

 

 

流石は知恵の神にして神話群の主神と言ったところですね。こういった連中は単純な力では量れない厄介さがあります。

 

はてさて。この曲者に対して狐殿はなんとお答えするのでしょうか。

 

 

 

……証拠隠滅のご命令は補佐官様がいないところでお願いしますよ?

 

 

 

 

 

 




原作を見ても、聖書の陣営って味方になる勢力の方が少ないと思うんですけどねぇ。特に悪魔(主人公陣営)

狐殿の返答は如何に? ってお話。




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102話

忘れた頃に更新してみたり……

短め。

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嫌いな人は読み飛ばし!


――アザゼル視点

 

結局日本神話群から派遣された神使との会談は、その内容とは裏腹にあっさりと終わった。

 

本来予定されていたであろう鬼帝のOHANASHIも、向こうの神使が「解析などが終わってからにした方が良いと思いますよ?」と言ってくれたので、とりあえずは後回しだ。

 

その後に聞こえてきた「ここで全治半年とか言われても困りますしねぇ」なんて言葉は……知らねぇな。少なくとも俺は関係ねぇし! 

 

問題は神野の存在と、爺さんが訪日した目的である術式について、だ。

 

「で、どう思う?」

 

「うむ。真実かどうかはわからんが、嘘は吐いていなかったように思えるのぉ」

 

「……そうか」

 

思えば爺さんは最初っから『堕天使の命と引き換える程度の術式で神野に通用するのか?』ってことを疑っていたんだよな。

 

だからこそ日本神話群の連中が術式の解析及び再現を妨害しないことに疑問を覚えたんだが、向こうの返答は単純にして明快。

 

『妨害する価値がないから妨害しない』と来たもんだ。

 

神野にすら通用する術式についての扱いが軽すぎる。そう思った俺は、爺さん同様にコカビエルが命を懸けてまで使用した術式の効果に疑いをもつところだったが、それは俺の早とちりだった。

 

「確かに向こうの言い分もわかる。費用対効果が悪いのは事実じゃし、一度でも他の陣営に術式の効果が知られてしまえば、簡単に対処されてしまうからのぉ」

 

「……そうだな」

 

神使曰く『堕天使さんの幹部がその命を削る術式を使って神野さんの分体を退ける。その効果は確かに素晴らしいとは思いますよ? ですが、それで稼げる時間は如何ほどでしょうか? 一人で数ヶ月だとして、こかびえるさんと同等の力をもつ幹部さんは何人いますか? そもそも術式の効果を知った上で堕天使さんの幹部が放つ攻撃を真正面から受ける神なんて神野さんくらいしかいませんよね? それに対処法だっていくらでもありますし? 結論を言わせていただければ、アナタ方が術式を研究し完成させたとしても脅威足り得ません。私たちはそう判断しております』だからな。

 

対処法として挙げられた方法も『攻撃を受ける前に潰す』なんて基本的なことから『使い魔なりなんなりを投げつける』なんて簡単な方法までなんでもござれだ。

 

そりゃまともに喰らうのは無限に分体を生成できる神野くらいだろうよ。

 

それに俺は思い違いをしていた。

 

神野も言っていたことだが、そもそも『理』とは、術者が思い描く世界。つまり権能を具現化する行為だ。

 

コカビエルはオセが用意した魔法陣や詠唱を利用することで『一撃必殺』の理を纏うことに成功したが、それはコカビエル本人が持つ権能とはまったくの別物。

 

己のもつ権能とは別のモノを纏ったが故に、コカビエルの体は術式に耐えることができずに自壊することになった。

 

通信で神野が言っていた『一撃しか持たない』ってのはこのことだったんだな。

 

一回使うごとに使用者が死ぬ。さらにそれで得られるのは数か月って短い期間だけというなら確かに費用対効果は最悪だ。

 

……何が最悪かって、それでも俺たちが神野を撃退するにはこの術式に頼るしかねぇってことなんだよな。

 

でもって問題はそれだけじゃねぇ。

 

「これから爺さんはどうするよ?」

 

俺からすればこの術式は「使用すれば自壊するような術式」と聞こえが悪い術式ではあるが、相打ちの神話と呼ばれる北欧神話群との相性は悪くないように思える。しかしそれもこれもあくまで俺の感想だ。

 

これは下手に研究を進めた結果、最終戦争が早まる、もしくはその規模が拡大したり、逆に縮小する可能性もある術式だからな。主神という立場を考慮すれば研究を躊躇するのが普通だろうよ。

 

爺さんが退いてしまった場合研究速度が落ちることになるのは明白だ。だからこそ俺の立場で考えれば何とかして研究を続行して欲しいと思う。だがこればっかりはな。

 

そう思って聞いてみたんだが、俺の心配は杞憂に終わった。

 

「確かに費用対効果は悪い。じゃが神野を退ける術式の研究は無駄にはならん」

 

「じ、じゃあ研究を続けるってのか?」

 

「無論じゃ。そもそも儂が未知の術式を前にして退くわけがなかろうが」

 

「お、おう。そうだな」

 

そうだよな! この爺さんは知識欲を満たすために片目を捧げたり、槍に刺されながら首を吊ったりする変態だもんな! そりゃ諦めねぇよな!

 

「……なにやら貶されている気がしないでもないが、まぁ良いわい。第一、ここで諦めたら丸損じゃしな」

 

「丸損? あぁ、確かにそうなるか」

 

「うむ」

 

ロキを説得して日本まで来たってのに手ぶらで帰ったら主神としての威厳も無くなるし、後から鬼帝に折檻されることが確定しているもんな。(それも全治半年以上)

そこまでして得るもんがねぇとか、そりゃ丸損以外のなにもんでもねぇわな。

 

「それに例の術式自体はまだ未完成のものなんじゃろ?」

 

「あぁ。そう聞いている」

 

シロネ・オセが言うには、だがな。いや、そこは疑ってもしょうがねぇけどよ。

 

「未完成であれだけの効果が得られるのであれば、完成させればより高い効果も見込めよう?」

 

「それは……そうかもな」

 

考えてみりゃあの術式は未完成のくせにコカビエルが神野の分体を破壊できた術式なんだよな。

 

何を以て未完成なんだ? 射程距離か、それとも術者の安全性か? もしかしたら……

 

「気付いたようじゃな?」

 

「あぁ」

 

最大の欠点である費用対効果。これを改善できる可能性もある、か。

 

「今のところじゃが、儂としては威力を多少落としてでも継続して使用できるように改善することができれば良い。そう考えておる」

 

「なるほど」

 

威力よりも術者の命ってわけだな。当たり前と言えば当たり前の話だ。

 

「威力を調節できるようになれば連射もできるかもしれんし、なによりこのままでもいざというときに相打ちに持ち込むこともできるもんな。少し考えただけで他の神話群との戦いで有利に立てる可能性が高い技術なんだ。そりゃ研究を止めるわけにはいかんわな」

 

「そういうことじゃな。しかも敵に使われた際の対応の研究にもなる」

 

「だな」

 

俺は打倒神野のため。爺さんは北欧神話のため。少なくとも現時点ではお互いの利害がぶつかることはない。

 

しかしそれだと……

 

「未完成の術式に警戒しないのはわかる。しかし完成させた場合は日本神話群にとって脅威になると思うんだが、その辺どう思う?」

 

結局はここに突き当たる。確かに堕天使があの術式を纏ったところで、スサノオとかが出てきたら術式を当てる前に潰されるだろうよ。だけど北欧神話群の神が改良された術式を纏ったらどうする気だ?

 

日本神話群がそこまで考えていないってんなら話は簡単だ。だがそこまで愚かな連中じゃねぇよな?

 

「おそらくじゃが」

 

「なんだ?」

 

「儂らに告げていない対処法があるんじゃろうて」

 

「なに?」

 

いや、それならあの余裕にも説明がつく。

 

少なくとも『理』については向こうの方が詳しいんだからな。詳細を聞ければよかったんだが、日本神話群と俺たちの間には何の繋がりもねぇからな。

 

向こうが何か欲しがっているならまだしも、何もない状態で一方的に技術提供を求めるわけにはいかねぇし、求めたところで断られるのがオチだ。

 

土地を借りることに成功していた悪魔陣営なら繋がりはあっただろうが、英雄様が犯した度重なるやらかしのせいで今や完全に敵視されているみたいだし。

 

まぁオセに関してはそれなりに信用しているみたいだが、そのオセは魔王や俺たちと疎遠……つーか敵対しているようなもんだからなぁ。

 

いや、この場合は魔王や俺たちと敵対しているからこそ信頼されているって考えた方がいいのか? 

 

あの阿呆どもは本当に……。な、何にせよ(俺は)説教を免れたし、術式の解析の許可を得た。それに京都へ行って妖怪と交渉の席に着く許可も貰えたんだ。決して悪い結果じゃねぇ。

 

研究のあとに爺さんがどうなるかはしらねぇが、それはそれだ。

 

「……絶対に逃がさんぞ」

 

爺さんが何ぞ言っているが、聞こえねぇなぁ! 俺は俺のやるべきことをやるぜ!

 

 







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原作9巻
103話


原作9巻導入回

ちなみに8巻は短編集みたいな感じなので割愛しております。

オリ設定
オリ展開

嫌いな人は読み飛ばし!


ソーナ視点

 

「修学旅行?」

 

夏休みを利用した文字通りの地獄合宿を終え、オーディン様+アザゼル総督が無駄に日本神話群との会談を望んだせいで突発的に発生してしまった会談の案内役という大役もなんとか無事に終え、ようやく胃痛と頭痛から解放されて普段の生活に戻れる! と思っていた矢先に、匙が神妙な顔をして「今のうちに確認しておきたいことがあります」なんていうから何かと思って聞いてみたら、まさか学校行事に関する質問とはねぇ。

 

普通に忘れていたわ。

 

でも、そうよね。私たちは去年行ったからあれだけど、匙は今年だもんね。そりゃ忘れないわよ。だって当事者だもの。

 

「はい。普通に考えれば『駒王町の管理者である俺たちが任務を投げ出して京都旅行に行くなんてありえないことだ』っていうのは理解しているんです」

 

「「うぐっ!」」 

 

無自覚に襲ってくる言葉の刃が痛いっ!

 

そうよ! 去年私と椿姫は管理とかそういうのを全部放り出して(って言うか何も考えずに)京都旅行に行ったのよ!

 

それが『契約違反』にならなかったのは、たぶん『留守にする間限定だから』って自分を納得させて実家から人員を派遣してもらったから、よね。

 

ちなみに旅行期間中に実家から人員を派遣してはもらったのはリアスも同じ。

 

なんていうか……客観的に見たらこの時点で管理者失格よね。

 

はぁ。当時から私たちのサポートに回っていたはずのシロネ様たちは私たちの行動を見てどう思っていたのかしら?

 

責任を放棄したことを怒る?

 

……ないわね。

 

期待も何もされていなかった私たちを怒るはずかない。むしろ我儘な貴族のお嬢様がいなくなった代わりに、それなりにまともな悪魔が来てくれるんだもの。両手を挙げて歓迎したかも。

 

で、多分だけど「勝手に京都でもどこでも行けばいい。ただし二度と帰ってくるな」くらいは思われていたはずよ。

 

はぁ。去年の私ときたら「貴族の誇り」だとか「家に頼らずに統治を学ぶ」だとか偉そうに言っておきながら、一体何をしていたのやら……自分のことながら情けないにも程があるわ。

 

穴があったら入りたいとはこのことよ。いや、墓穴に入るつもりはないけど。

 

「そ、それで、そこまでわかっているなら何が聞きたいのかしら?」

 

あっと。過去を振り返って自己嫌悪と現実逃避をしている私に代わって、私と同じかそれ以上にダメージを受けていたはずの椿姫が話を進めてくれたわ。

 

うん。椿姫は椿姫で補佐役としては最低最悪に部類されていたもんね。それに、なんだかんだ言っても私は公爵家の時期当主だから周りから直接的な干渉をされる可能性は低かった(ただしオセ様関連は除く)けど、椿姫は名家出身で神器を宿していたとはいえ所詮は元人間の転生悪魔。

 

一歩間違えたら私に甘いせいで直接注意ができなかったお父様やお母様、それにお姉様から『私を堕落させた元凶』扱いされて殺されたり、オセ様の関係者から『真面目にやれ』って感じで処罰されてもおかしくなかったのよねぇ。

 

そう。命の危機は私たちが思っていた以上に近くにあったのよ!

 

で、主従揃って二ヶ月前までは一切自覚していなかった命の危機だけど、今は地獄での折檻……いえ、ありがたい教育的指導によって十分以上に自覚しているわ。

 

だからこそ私たちはこれ以上余所様に迷惑をかけるような真似を慎まなければならないのよ。

 

「はい。普通に考えたら俺たちは修学旅行には参加せず、駒王町の管理業務に徹するべき。ですよね?」

 

「えぇ。そうね」

 

……自分は旅行に行っておきながら彼らにそれを許さないだなんて最低な行為だとは思うけど、遊びよりも仕事を優先するのはあたりまえの話。

 

旅行に関してだって、今は無理だけど、私が卒業して管理者じゃなくなった後にいくらでもさせてあげるつもりだし。

 

匙だってそれくらいは理解していると思うけど。

 

「もしかして修学旅行に参加できないことに何か不満でもあるのかしら?」

 

不満がないわけ無いとは思うけど、それは眷属悪魔としては口に出して良いことじゃないわ。

 

私は王で、貴方は部下なの。

 

私が甘やかしたせいでそのへんがあやふやになってしまったのは自覚しているけど、それだって合宿で矯正されたはずよね? もしかして足りなかった? また逝く?

 

「いや、それについては当然だと思ってますんで不満とかはないですよ!」

 

「あらそう。それは良かったわ」

 

いやホントに。もしも匙が不満を抱えているのがシロネ様にばれたら『旅行にいけないのが不満? 主従揃って教育が足りませんね』とか言われた後で『逝きたいなら好きなだけ逝きなさい……地獄に』って感じになるはず! 私は詳しいのよ!

 

「では、結局匙は何が言いたいのですか?」

 

「えっとですね。俺たちの仕事の内容の確認と言いますか」

 

「「内容の確認?」」

 

管理者としてって話よね? 

 

「はい。もう少しでウチの生徒が修学旅行に行くじゃないですか」

 

「ええ。そうね」

 

忘れていたけど。

 

「俺たちは駒王町から動けませんよね?」

 

「そうよ。お仕事が優先だもの」

 

まだるっこしいわね。さっさと本題に入りなさいな!

 

……そう考えていた時期が私にもありました。

 

「でもウチ、って言うか俺たち? いや正確にはリアス・グレモリー様たち? って今テロリストに狙われていますよね?」

 

それがどうしたのって……

 

「「あっ!」」

 

大問題じゃない! 早く言いなさいっていうか、言われる前に気付かないと駄目なことよね! 

 

「向こうに行った生徒が狙われる可能性とか、もしものときに備えて俺たちが管理……って言うか、護衛しないと駄目なのかなぁって」

 

「「……」」

 

どうしよう。

 

やばい。やばいわよ。駒王町を管理することだけを考えていたせいで『生徒の保護』については何も考えていなかった!

 

本来なら駒王町の管理者でしかない私たちが生徒を守護する必要は、ない。

 

だけど私は駒王町の管理者にして駒王学園の生徒会長。なればこそ生徒を護る義務がある。

 

いえ、正確には生徒会長だからと言って生徒の安全に配慮する必要はない。だってそれは本来教員の仕事ですもの。

 

だけど相手が私たちを標的としているテロリストとなれば話は別。無関係の生徒が私たちのせいで事件に巻き込まれることは絶対に避けなければならないわよね。

 

あぁ。もしかしたら『旅行に行った生徒の護衛』っていう名目があったからこそ、去年私たちが京都に行っても『職務放棄』とは見なされなかったのかもしれないわ。

 

って言うか確実にそうよ。

 

……なら今回も向こうに人員を派遣しないわけにはいかない、か。

 

「言いたいことはわかりました。匙の懸念は尤もだと私も思います」

 

本当にね。よくぞ指摘してくれたわ!

 

「それじゃあ?」

 

「えぇ。とりあえず匙たち二年生は旅行に同行してください。あとは……」

 

どうしようかしら。私の代わりに現場の指揮を執らせるとしたら椿姫を派遣するべきよね?

 

口実としては『生徒会の副会長だから』じゃさすがに不自然か。なら椿姫は学生としてではなく私の代理として派遣しましょう。こっちには影武者がいれば良いわよね。実際日本地獄に行っていたときはそれで問題なかったし。

 

「ねぇソーナ」

 

「ん? どうしたの?」

 

椿姫も何か良案を思い付いたのかしら?

 

「いえね。私の代わりにヨシコ=サンを派遣したらどうかなって思って」

 

「ヨシコ=サンを?」

 

彼女は学生じゃないから、私たちが普段学園で勉強(周囲からすれば遊びだけど)している間も巡回業務に当たってもらっているわ。

 

だから彼女の代わりに巡回をしてくれるヒトを実家から派遣してもらえば、彼女がフリーになると言えばフリーになるんだけど、問題は何故そこまでして彼女を派遣するのかって話よね。

 

「えぇ。本来であればソーナが動けない場合は女王である私が代理として別動隊を指揮するべきよね?」

 

「うん。そうね」

 

それはその通り。ときには王の代理となるのが女王の務めだからね。

 

……グレモリーの女王? 何のことかわからないわ。

 

「だけど私の能力って防御には向いているけど、護衛には向いていないじゃない?」

 

「あぁ、確かに」

 

それもその通り。

 

もう少し習熟すれば違うかもしれないけど、少なくとも今の時点では椿姫の神器は範囲も対象も絞れないものね。抵抗力のない一般の生徒には毒にしかならないわ。

 

「守ろうとした生徒の精神を汚染したり破壊したら護衛の意味がないでしょ?」

 

「うん」

 

そりゃそうよ。一切否定できないわ。

 

「その点ヨシコ=サンの神器は応用が効くじゃない?」

 

「まぁ、ね」

 

何しろカンザシ・オセ様謹製の逸品だからね!

 

「それにヨシコ=サンは神器だけじゃなく、兵士としても視野が広いわ。たぶんだけど護衛任務の経験とかもあると思うの」

 

「ふむ」

 

確かに私の眷族の中では彼女が一番経験豊富よね。それにエクソシストなら一般人を悪魔や堕天使から護りながら戦うってケースもあったでしょうから、その点も問題はない。

 

問題があるとしたら『やり過ぎる』可能性があるってことかしら?

 

「……二つ名は『破壊魔』だったけど?」

 

その辺はどう考えているのかしら?

 

「破壊すらできないでテロリストに負けるよりはマシよ」

 

「ごもっとも」

 

正解。壊したら直せばいいだけ。それこそリアスがやったように、ね。

 

いや、証拠隠滅はしないしさせないけどさ。

 

「それに、シトリー家の力を借りるのは仕方がないにしても、借りすぎはよくないと思うの。あぁ、意地とかそういうのじゃないわよ?」

 

「それは……わかっているつもり」

 

ようは程度の問題。

 

今の私が実家の力やオセ家の助力がなければまともに管理できない若僧だってことは紛れもない事実だけど、全部が全部実家やオセ家に頼るのならば私がここにいる意味がない。

 

でもね。オセ家の方々がどう思っているかはわからないけど、少なくとも実家は私の成長を望んでいるのよ。

 

だからこそ私はここで学ぶことをやめるつもりはないわ。

 

むしろ『使えるものは使う。頼るところは頼る。だけど依存はしない』っていう、貴族として、人を使う立場としてのスタンスを学び、貫くのよ。

 

……間違っていたらシロネ様が折檻してでも止めにくるでしょうし。

 

「つまり、今の私たちには椿姫とヨシコ=サンの二人を京都に送り込むだけの余裕はない。それを踏まえた上で椿姫は自分ではなくヨシコ=サンを向こうに送って、私の代わりに眷族の指揮を執らせるのが一番良いって考えたのね?」

 

「えぇ。そうよ」

 

なるほどなー。うん。これは椿姫による責任の放棄ではなく、適材適所を実践した結果。

 

それに、ヨシコ=サンを新参者扱いせず、フラットな視点から正しい評価を下した椿姫の判断は尊重すべきよね。

 

よし。

 

「聞いたわね? 修学旅行中はヨシコ=サンに私の代わりとして指揮を執ってもらいます。異論はあるかしら?」

 

「ありません!」

 

「結構。他のみんなにも伝えておいて頂戴」

 

「サー!イエッサー!」

 

これでよし、と。

 

「あ、ソーナ。修学旅行で思い出したんだけどさ」

 

「なに?」

 

「リアス様のところの眷族はどうなるの?」

 

「え?」

 

どうって、何が?

 

「具体的には兵藤一誠とアーシアさん」

 

え、いや、だって。

 

「兵藤一誠は教育中だし、アーシアさんは、あれよ。自衛もできない眷族を一人で出したりはしないでしょ?」

 

いくら身内贔屓と公私混同に定評のあるリアスだって、まさか、そんな、ねぇ?

 

「ソーナ。考えたくない気持ちはわかるけど、冷静に考えましょう? リアス様が『学生時代の思い出』を優先する可能性は皆無じゃないわ。それに」

 

「そ、それに?」

 

「兵藤一誠が自宅に帰りたがる可能性もあるわ。もしも彼がそれを望んだ場合、修学旅行は格好の口実になると思わない?」

 

「……確かに」

 

家族にはお得意の催眠をかけて誤魔化しているみたいだけど、兵藤一誠自身が帰宅を望む可能性は確かにあるわよね。そして兵藤一誠が望んだことをリアスが却下するとは思えない。

 

「それと護衛に関してだけど、それも問題ないと思う」

 

「……なにかあったかしら?」

 

サーゼクス様が動けない今、グレモリー家に余裕なんてないと思うんだけど。

 

「忘れたの? 現在駒王町にはリアス様の護衛兼教育係として、アザゼル総督がいるわ」

 

「アザゼル総督? 確かに彼はサーゼクス様とそういう契約を結んだらしいけど、さすがに今の状況で旅行なんていかないでしょ? むしろ止めるんじゃない?」

 

術式の研究だってあるでしょうし。

 

「普通ならそうよね」

 

「普通なら?」

 

何かあるの?

 

「アザゼル総督は、先日神使様との会談で京都にいる妖怪勢力と交渉をもつことを認められているわ」

 

「あ」

 

そうだった。

 

「自分から許可を求めてそれが認められたのよ? なら動かないわけにはいかないと思わない?」

 

「そうよね。それはそうよ」

 

なにせ、あの場にいたのは神使様だけじゃないんだもの。いえ、神使様だって妖怪勢力からしたら立派な上司なんだけど、さ。

 

それ以上にやばい方がいたのよね。

 

あの方々を通じてアポを取っておきながら顔を出さない? ありえないでしょ?

 

もしもすでにコンタクトを取っていたとしても、駒王学園の教師としての立場もあるわ。ならば修学旅行に同行して顔を出すくらいは当然の礼儀よね?

 

あれ? その場合って、もしかしたら三大勢力と妖怪勢力の交渉ってことにならない? 

 

だとしたらお姉様も地上にくるわよね? いや、お姉様を相手にするだけなら匙とかヨシコ=サンでも良いとは思うけどさ。それ以外の勢力が関わるとなると……どうしたら良いのかしら?

 

アーシアさんはまだしも、兵藤一誠は駄目よね? いや、もうそういう段階の話ではないわ。

 

「「「……」」」

 

「と、とりあえずアザゼル総督やお姉様に確認してみるわね」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

くそっ! 二人していい返事しやがってぇ! 

 

確かに現場に出るよりも、こんな感じの面倒な調整こそ上司としての私の仕事なんだけどさ、私の仕事なんだけどさぁっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……て言うか椿姫。貴女まさか全部理解した上でヨシコ=サンを差し出したわけじゃないわよね?

 

 




原作さぁ。戦争中に修学旅行とか何してんの?

いや、戦争しているって自覚がないにしても、テロリストに狙われているんだからもう少し、ねぇ? ってお話。




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