転生したら天司長だった件 〜あれそんなん出来たっけ?〜 (皇 刹那)
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森の騒乱編
また死んだ


〜東京都某高校〜

 

みなさん初めましてかな?俺は皇 刹那(スメラギ セツナ)、高校2年生だ。

ただし普通の人間ではない。何故なら………。

 

都合上何回か転生しているからだ!

まあ、その話は面倒だからしないが能力は全て引き継いでしまっているから必死に隠し続けているのでチートとだけ言っておこう。

 

キーンコーンカーンコーン

 

あっ、授業終わった。やっとか……。

 

「いや〜今日の授業超つまんなかったよな」

 

まじで、途中から自分の過去の自慢話みたいな物始めるなよな。

 

「分かる…、分かるぞ!刹那!」

 

分かるか。……っと、こいつは俺の幼馴染で一番の親友である白鷺 春兎(シラサギ ハルト)だ。

 

いい奴なんだこれが。

 

「だろう。やっぱり岡部の授業はつまらない!けどな……」

 

「どうした刹那?」

 

「無駄に時間を浪費することが一番ムカつくんだ……。何故やりたいことが出来ないんだよ……」

 

いや本当、惰眠に耽っていたいのに………。

 

「そんな事誰でも思ってるよ。あんただけが出来ないわけじゃないんだから文句言わないの」

 

このオカンのような事を言っているのは霧崎 由奈(キリサキ ユナ)、俺の幼馴染で事あるごとに文句を言ってくるオカンのような性格をしている女の子だ。

 

「「知ってる」」

 

「なら確りしてよね。(お父さんたちが認めてくれなくなっちゃうじゃん)」ボソボソ

 

「分かったよ由奈」

 

「ホントにぃ〜?」

 

「ホントホント!」

 

キャッキャッ

 

〜放課後〜

 

やっと終わった。マジで疲れたわ〜、こういう時はさっさと帰ってゲームをやるに限る。

 

「あっ刹那、今日家でご飯食べてっておばさんたちが言ってたよ」

 

は?

 

「………」

 

「刹那?」

 

「はぁ!!?」

 

「な、なによ⁉︎」ビクゥ

 

ゲームやろうと思ってたのに、何故こんな日に限って……。許すまじ母さん……!

 

「ドンマイ刹那!」

 

「」ブチ

 

ドガァ!「痛い!なんてことするんだ刹那!!」

 

「黙れボケェ!」

 

まじざけんな!どいつもこいつも俺の楽しみを奪いやがって!皆平等に埋めるぞコラァ!

 

「あぁ、ハルトもだからね」

 

ザマァ。

 

「オルドゥルルラギッタンディスカ!」

 

「ははは!まあなんだ、帰ろうぜお前等」

 

「「おう(ええ)」」

 

 

〜帰り道〜

 

「…………だよな。」

 

「それな。……でも彼処で戦うのって結構辛くないか?」

 

「確かにな」

 

ザワザワ ザワザワ

 

なんだ?

 

「なあ、なんか騒がしくないか?」

 

「有名人でも来てるんじゃないか?佐藤 剣とか松岡 桃李とか」

 

「えっ!ホントに⁉︎」

 

「あ、いや、例え話だから落ち着いて由奈」

 

これは………。マズイ!

 

「今すぐ此処から離れるぞ!」

 

頼む、勘違いであってくれ!頼む………!

 

「なんで?ていうかなんでそんな焦ってるんだ刹那?」

 

そんな事今は……!クソ!ヤバイ!

 

「殺してやる!お前等全員コロシテヤルゥ!!!」由奈にナイフを向けて走り出す男

 

「え?!い、いや!来ないで!」

 

「由奈!!」ダッ

 

クソ!なんで……!

 

「やだ…。来ないで!」

 

間に合え!!

 

「嫌ぁ!!」 「シネェ!!」

 

グサ!!

 

「ぐぅ……。はぁ……はぁ……。ま、間に合っ……た」ドサ

 

「邪魔すんなよぉ!!このクソ野郎がぁ!」ナイフを抜きもう一度刺そうとする

 

「お前は、……はあ…はあ………、ただでは、…はあ………逃がさねえ、………はあ……腕の二、三本……もぎ取らせてもらうぞ……はあ……はあ」

 

「なにを言って……!」

 

シュイーン

 

天照!!

 

ボォ!「ギャ!熱い!熱いヨォ!!」

 

くそ。もう意識が……。

 

「刹那!!大丈夫か!?」

 

背中が焼けるように熱い。なのに、他の所は凍えるように寒い……。なんなんだこれ、今まで転生してきてこんなの初めてだ。

 

《熱変動耐性を獲得しました》

 

身体中が痛い。刺されたからか?……ははは、この程度で死ぬなんて俺も落ちぶれたなぁ。……でも、死にたくねえなあ。

 

《痛覚無効を獲得……成功しました。続いて物理攻撃無効、並びに精神攻撃無効を獲得……成功しました。続いてユニークスキル『不老不死』獲得……成功しました》

 

「………ぁ……め…、お………つな!!」

 

ああ、無理っぽいよ由奈。俺はどうせ、どの世界でも最強の魔王なんだから。ああそうだ、次に転生する時にもアニメやラノベや漫画の技とか使えるのかな?それに、俺の作り出す能力も。

そういえば、春兎に借りた七つの大罪……まだ読み切ってなかったなあ、ごめんな、春兎……。

 

《究極スキル『憤怒之王』並びに『傲慢之王』、『暴食之王』、『色欲之王』、『強欲之王』、『怠惰之王』、『嫉妬之王』獲得……成功しました。続いて神域スキル『創造神(アブソリュート)』並びに『異界之王(オリジン)』獲得……成功しました》

 

《スキル最強の魔王獲得……失敗しました。代行措置として魔王種の肉体を生成……成功しました》

 

グラブルのルシフェルって最後どうなったんだっけ?……ああ、そうだ、天司長を…ぐぅ!やばいな、そろそろ。

 

《情報修正、天司長の肉体を生成……成功しました。魔王種天司長の肉体を生成……成功しました》

 

そういえば昔から覚醒すると言ってしなかったよなあ、……そのおかげでこいつらと一緒に入れたんだけどな。でも最後ぐらい覚醒したいよなぁ……。

 

《『魔王への進化(ハーベストフェスティバル)』を実行……種の発芽に必要な人間の魂を確認します……確認完了。規定条件のクリアを確認しました。これより『魔王への進化』を開始します》

 

《『魔王への進化』により肉体が再構成され新たな種族へと変わります。ユニークスキル『無心者』獲得……成功しました。続いてユニークスキル『魔法者』獲得……成功しました。続いて神域スキル『神威(アルカナム)』獲得……成功しました。》

 

ははは、もうダメだなこりゃ。皆、また俺もそっちに行くよ。早すぎるなんて言わないでくれよ?俺だってこんなに早く行くとは思わなかったんだからな。

 

「は…ると、ゆ……な………」

 

「「どうした(の)」」

 

「ご……め…ん………」ぱたん

 

「あぁ、ああああああ!!!!!!」

 

「いやぁ!!!刹那!!せつなぁ!!!!」

 

《究極スキル『愛受之皇(ハートフル)』獲得……成功しました》



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あれ!?なんかルシフェルになってる!

〜ジュラの大森林 封印の洞窟〜

 

〜刹那 side〜

 

現在、刹那は見知らぬ洞窟のような場所で寝ており、その上では何か得体の知れ無い丸い物体が……。

 

ポヨンポヨン

 

跳ねていた。

 

「っつ、……うぅん」

 

(なんだ?腹の上で何か柔らかいものが跳ねてる?)

 

ポヨンポヨン

 

(本当に何だ?)

 

ムニュン

 

触れて確認した所、柔らかく弾力のある奇妙なものであった。例えるのならばそれは、おっp(殴。

おっと失礼、女性の胸部のような感触であると言えるだろう。

 

(これは………)

 

ぱち………ムク

 

目を開けた刹那の目の前には、丸い水色の物体。否、スライムが映った。

 

「ナンダコレハ」

 

当然のことながら、このスライムは自らの知るスライムの形をしておらず、刹那にとっては謎の物体にしか見えていなかった。

 

すると、突然。

 

《告、これはスライムです》

 

謎の声が聞こえるというホラー現象が起こった。

 

「うぉわあ!!?!?!??」

 

《スライムです(キリ)》

 

「あ、あぁうん分かったから。それ以外の情報は?」

 

突然聞こえた謎の声に驚きはしたものの、色々と知っていそうだということで情報を聞き出し始めたが………。

 

《自我があります》

 

(それって普通じゃね?スライムって無意識生命体?なのか?)

 

《告、本来ならばそのはずです》

 

(じゃあ話せるんじゃない?)

 

《………おそらくは》

 

殆ど何も聞き出すことができなかった。それどころかどんどん口調が雑になっていくので他の事を聞こうとする。

 

「今素が出たね?……まあいいけど。んで、ここは何処なんだ?見たところ洞窟だと思うけど何か強大な力を感じるんだよね」

 

《此処は300年ほど前まで暴れまわっていた暴風竜ヴェルドラが封印されています!えへへ〜、如何ですかマスター!褒めてください!》

 

如何やらここは、300年ほど前まで大暴れして勇者に封印されたと言う、暴力竜や暴れん坊等と呼ばれる伝説のドラゴンが封印されている洞窟らしい。

 

(あぁうん、君の本性それなのね)

 

「取り敢えず、ありがとな。良くやったよ、えっと………」

 

(この子の名前って何だ?っ?!てか何処にいんの!?)

 

《私に名前はありませんよ?それと私はマスターの中にいます!それでですね、えっと〜……名前を頂ければ嬉しいかなぁ〜なんて。えへへ〜》

 

この子には名前が無いらしく刹那に名前を付けて欲しいとせがみ始めた。

 

(か、カワイイ!!)

 

確かに。

 

「えっとその前に君は何者なんだ?」

 

《私ですか?私はマスターのスキルである『神威(アルカナム)』です!》

 

如何やらこの子は刹那の持つスキルの一つが人格得たものであり生まれたばかりだからなのか子供っぽい性格をしている。

 

(そうか。………なら)

 

「なら、アルテミスで如何だ?我ながら厨二臭いと思うが………」

 

《アルテミス………》

 

(やっぱりダメか。まあ、流石に無いと思っていたところだからな……)

 

《良い……。良いですよ!有難う御座いますマスター!!やった〜!マスターから名前を貰えた〜!えへへ〜えへへへへ〜》

 

(お、おぅふ。まさかこんなに簡単に受け入れて、しかもこんなに喜んでくれるとは)

 

「さて、このスライムと意思の疎通をすることは出来るかなアルテミス」

 

《出来ますよ。思考念話というマスターが元から持っているスキルを使えば簡単に出来ます!》

 

「分かった。ちょっとやってみよう」

 

〈そこのスライム聴こえるか?〉

 

(あ、なんかビクってした。って事は聴こえたのかな)

 

〈ああ聞こえるぞ。えっとあんたは誰なんだ〉

 

「アルテミス、俺って名前あるの?」

 

《申し訳ありませんマスター……。マスターにはまだ名前が無いのです。私以外の魔物に名付けしてもらはなくてはならないのです》

 

「それさえわかれば大丈夫だよ。ありがとな、アルテミス」

 

〈てな訳で俺は地球という場所から転生して来た皇 刹那だ。あんたは名前があるのか?〉

 

〈おう、俺も地球から転生した三上悟だ。宜しくな刹那〉

 

如何やらこのスライムは地球から転生して来た三上悟というらしい。

 

⚠︎歩いている最中です。

 

「そういえばスライムって性別あるのかな?ドラクエとかではあるけど此処では違うかもしれないしなぁ。そこんとこ如何なの?アルテミス」

 

《えっと、本来なら性別は無いはずなのですがそこのスライムは女の子みたいなんです》

 

悟は本来性格を持たないスライムに転生したはずなのになぜか性別があるようで、しかも……。

 

「えっ?でも男っぽいんだけど」

 

《おそらくまだ転生して来て直ぐなので魂が不安定になっているのかと思います。なので女の子だという事を伝えてあげてみては如何でしょうかマスター!》

 

世界のバグか何かは判らないが、性転換をしてしまったようであり、しかも魂が不安定になっているという色々と大変な人物。否、スライムなようだ。

 

「だな」

 

刹那は悟が女の子であると本人に伝えた所。

 

〈悟、お前さん女の子らしいぞ〉

 

〈は?いやいや俺男のはずなんだけどそれ何処情報?〉

 

〈スキル〉

 

〈俺も聞いてみる〉

 

〜スライム確認中〜

 

〈俺が女だと……〉

 

〈えっと、なんだ。ドンマイ悟〉

 

〈クソォ!……うぅ…………ぐぅ!がぁーー〉

 

突然苦しみ出してしまった。

 

「悟が壊れた!如何しようアルテミス」

 

《大丈夫ですよマスター。今魂の安定が行われている所だと思うので》

 

これは、魂の安定化が始まったという事らしく精神と肉体の性別が統一されるようだ。

しかし、精神に肉体が引っ張られるという事はなく肉体が精神に引っ張られるため。

 

「てことは、男に戻るってこと?」

 

《いえ、完全に女の子になるということですマスター!》

 

完全に女の子になってしまうらしい。

 

(あぁ、ははは。まあ、ドンマイ悟)

 

〈だいじょぶか〜悟〜〉

 

〈う、うん大丈夫だよ。ていうか私に何かあったの?!って私?!えっ!?なんで!?〉

 

〈悟さんは完全女の子になっちゃったようですよ〉

 

〈う、うそ……〉

 

悟はすでに女の子になっており、刹那が放った言葉により……。

 

〈まあ、そんなに気を落とすなって。此処で知り合った仲だずっと支えてやるからよ!〉

 

〈はぅ!〉

 

(な、なんだ!?)

 

《マスター。鈍感なのはどうかと思うのですが》

 

恋に落ちたようだ。

 

「えっ?これ落としちゃった感じ?まじで?」

 

《はい。目一杯支え続けてあげてくださいねマスター!私もマスターを支え続けていきますから!》

 

(お、おうふ。やばいよ、元男性のスライム女子を落としてしまった。てか、スライムって子供作れるのか?)

 

《普通は無理ですよ、性別が無いんですから。でもこの方は別ですね!早くお子さんの顔を見せて下さいねマスター!!》

 

早く子供の顔を見せろと言うアルテミスは、ある意味刹那の母親のように感じさせてしまう。

 

「はい……。ってそうじゃ無い!まだそうなると決まった訳では……」

 

《なっちゃうんですよマスター》

 

「はい……」

 

そんなこんなと歩き続けていたら突然悟が何かに弾かれる。

 

ボチャ

 

(なんだ!?って悟か!見え無い壁に遮られたのか?)

 

その音に反応した刹那は、一瞬魔物が襲いかかってきたのかと思い音のした方を見るが、その方向で悟が転がっているのを見て何に弾かれたのかと不思議に思っていた。

 

〈大丈夫か悟〉

 

〈うん、でも何に当たったんだろう?〉

 

〈見え無い壁に当たった〉

 

(でも何が………)

 

刹那が考え事に耽っていると、目の前の広いスペースからナニカの声が聞こえてきた。

 

〈聞こえるか小さきものよ〉

 

(!?!?!?)

 

〈聞こえているか?〉

 

(えっ?何こいつ、めっちゃやばいオーラ放ってんだけど)

 

刹那は気づいていないが、目の前にいる生物は300年ほど前に勇者によって封印された暴力ry(殴。

暴風竜ヴェルドラであった。

 

〈聞こえているのかと聞いているだろうがあ!!〉

 

ヴェルドラは、何時まで経っても返事をしない二人に頭にきたのか途轍もない勢いで怒り出した。

 

(なんか切れた!ヤベェよヤベェよ!俺まだ遺書書いてねえよ!如何しようこれ!)

 

〈うっさい、このハゲ頭!私は今考え事をしてんの!だから後にして!〉

 

悟は、考え事に耽っていた為、ヴェルドラの声を邪魔としか思っておらず、ヴェルドラの存在すら知らなかった為、面と向かってハゲ頭等と言ってしまいヴェルドラの怒りをさらに強くしてしまった。

 

(おいぃぃぃぃ!!!何やってんの悟ー!!火に油注いで如何すんだよ!!)

 

〈ほう、この俺をハゲ呼ばわりか……。随分と勇気があるようだな小さきものよ〉イライラ

 

やはりと言うべきかなんというか、ヴェルドラの怒りは最高潮に達してしまったようでずっと精神を擦り減らし続けていた刹那は限界がきたのか。

 

(ほらぁ!さっきより目に見えて怒ってんじゃん!!)

 

「もう俺無理だわ。少し意識が……」

 

と言い倒れこんでしまった。

 

 

 

 

〜数分後〜

 

「ナンダコレハ……」

 

数分後、目が覚めた刹那の眼の前で繰り広げられる談笑?のような物はとてもカオスに見える。

 

〈何が起きたんだ悟〉

 

この状況が気になって仕方のない刹那は悟に聞いてみる事にした。

 

〈あ!起きたんだ刹那!〉

 

〈ようやく起きたか小さきものよ〉

 

〈実はね今名前を如何しようかっていう話してたんだ〉

 

〈うむ。……そうだ、お主に決めさせてやろうではないか!フハハハハハ!!!〉

 

刹那は暴風竜ヴェルドラのファミリーネームのようなものを決める権利を得たようだ。

そして、刹那が付けた名は。

 

〈暴風竜だからテンペストで良いんじゃないか?〉

 

〈テンペストか。フハハハハハ!!!良いぞ良いなだ!!フハハハハハ!!!〉

 

刹那はヴェルドラに名を付けた後悟の名も自分が付けると言い始めた。

 

〈あっ!悟の名前は俺が付けるな〉

 

〈え!?あ、うん。お願い刹那!!〉

 

悟は喜んで受諾したが、ヴェルドラは。

 

〈ふむ、ならその前にお主に名をやろう〉

 

と言い始めた。しかし名がある事は色々とメリットがあるとアルテミスに教えられた為、刹那は「頼む」と一言だけ言って名を付けられる時を待った。

 

〈ふむ、そうだな。ルシフェルで如何だ!なんというかそんな感じがするのだ!よしこれからは『ルシフェル・ペンドラゴン』と名乗るが良い!フハハハハハハ!!!ぬお!?ま、魔素がごっそりと、お主途轍もなく強いな!いつか戦ってみたいものだな!フハハハハハハ!!!〉

 

〈ああ、ありがとなヴェルドラ!〉

 

こうして刹那は新たにルシフェル・ペンドラゴンと名乗る事になった。

 

〈さて、悟の名前は………。そうだな、リムルだ!リムル・テンペストだ!〉

 

〈リムル・テンペスト……。うん、うん。ありがとうせつ、ルシフェル!!〉

 

〈リムルか。良い名だな!これからよろしく頼むぞリムル、ルシフェル!!!〉

 

こうして新しい名を授かりこの世界で生きていく事になったルシフェルとリムル。この先に待ち受けているのは絶望か、それとも幸せか。その先を知るものはまだ誰もいない。

 

〜洞窟脱出実行中〜

 

洞窟から出る為に歩き続けているルシフェルとリムル。そんな中途中にあった池を見つけた。

 

「水か、これなら俺の姿見れんじゃね?」

 

「確かに。でもルシフェルはイケメンだよ?」

 

《はい!マスターイケメンなのです!!》

 

「いや、それでも知りたいんだ!」

 

そうして、ルシフェル池を覗き込み自らの姿を確認した。したのだ。してしまったのだ。

 

「これ……、グラブルのルシフェルじゃねえかあ!!!」

 

旅はまだ始まったばかりである。



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リムル「大変!シズさんが!!」ルシフェル「リムル、パクッといけパクッと」

〜ジュラの大森林 旧ゴブリン村〜

 

➖prologue➖

 

〜ルシフェル side〜

 

おっす、おらルシフェル。ん?ああこれか?やってみたかっただけだから気にすんな。

 

取り敢えずなんだが、洞窟を出てな。その後すぐにゴブリン達が現れたんだよ。何でも牙狼族とやらに村を襲われ続けているらしくてな、それで俺たちが来たからビックリしてしまったまったみたいで急いで何の用か聞きに来たんだと。

俺達としては助けられるなら助けてやりたいと思っていたから助けてくれと言われた時は素直に手伝ってやったね!ブイブイ!

 

牙狼族との戦いは結構あっけなく終わったよ。だって柵立ててその前に俺が陣取れば中々入れるもんじゃないぜ。

とまあそんな感じで始まったんだが、初っ端から族長が突っ込んで来たので捕獲して首チョンパしたんだよそしたら突然。

 

族長の息子「軍門に下ります」

 

的な事を言ってきたので、了承して終わったんだ。

 

んでその後は、リムルと共に寝ようかと思ったらアルテミスが《名付けしてあげたら如何ですか?》と言ってきたので取り敢えず地獄のフルマラソンよろしく名付けマラソンが始まった。

 

計400回の名付けをした所為で魔素がごっそりと亡くなった(誤字に非ず)。亡くなってしまった(誤字に非ず)のでスリープモードなる物になってしまった。

 

起きた時にリムルがめちゃくちゃ焦っていたので大丈夫だと言ってあげたら頭の上に乗っかってきた。ピカチュウかな?。

 

その後俺とリムルは一度村を出て3日程かけて武装国家ドワルゴンと言う国に向かった。

 

そこでリムルが武器屋のおっさん達に絡み絡まれ武器の複製などをしていた。その後打ち上げみたいな宴会をしに酒場に行きリムルの運命の人なるものを探す事となったのだが、占いの水晶に映し出されていたのは綺麗な女性であった。あれは本当に綺麗な人だった。いや、割とマジで。

 

そんな事を考えていたらなんかリムルにど突かれた。何でも「今他の人のこと考えてたでしょ」だそうだ。何故ばれた、解せぬ。

 

ま、まあいいでしょ。んで楽しく飲んでいたら突然変なおっさんが来てあーだこーだと文句を言い続けリムルに酒をかけてきたのでちょっと魔王覇気とアルカナムを使おうと思ったらドワーフの武器職人であるカイジンとやらがそのおっさん(何でもベスターと言うらしい)を殴り飛ばしたのだ。正直スカッとしたね!

 

その後裁判にかけられる事になり何故か俺まで被害を被るという事態が起こった。え?何でかって?何でも俺もその場にいたかららしい。何と言う横暴な事を。まあ如何でもいいけどさ。

 

ただ、巻き込まないで欲しかったというのが真なる気持ちな。

 

その後何か怪我を増やして来たらしいベスターが、「お巡りさんコイツです!」みたいな事をぬかし始めたので「ヤバくねあいつ」みたいな事をリムルと話していた。

 

取り敢えず結果は、英雄王と呼ばれるドワルゴンの現国王『ガゼル・ドワルゴ』が介入した事により国外追放、並びに出禁だけで済んだ。

 

そんなこんなやって、また3日程かけて旧ゴブリン村まで戻ってきたのだ。

 

➖本編➖

 

「ルシフェル様、冒険者の方々が来ておられます。如何様に致しますか?」

 

「へ?まじで?」

 

まだこの村は対外的には知られておらず冒険者が来たとしても討伐目的としか思えないものだが、「この様な事を言っているとなれば此方に危害を加えることはないであろう」という判断を下しリムルと共にその冒険者の下へと向かった。

 

 

「此処だな。よお、邪魔するぜ」

 

「えと、お邪魔します」

 

ルシフェル達が見た先には金髪の女性と厳つい男が2人、そしてあの時の酒場でして貰った占いに出てきた仮面と瓜二つ、否、その仮面を被った女性がいた。

 

「えっと〜……」

 

「「………」」

 

「………?」

 

(何これ気まず!超気まずいんだけど!!だが、多分リムルがあれを言えば何とかなるはず……。よし)

 

などと考え、リムルに対しある事を指示した。

 

「リムル」手招きする

 

「?」

 

「ーーーーー」ボソボソ

 

「!?う、うん。分かった」ボソボソ

 

「「「「???」」」」

 

全く分かっていない冒険者4人組は頭にはてなマークを浮かべることしかできなかったが、次にリムルが発した言葉により……。

 

「ぼ、ボクは悪いスライムじゃないよ!」プルプル

 

「「「?」」」

 

「!?……ぷふ」

 

3人は先ほどと同じ様にはてなマークを浮かべ、黒髪に仮面を付けた女性は顔を横に背けて笑う。

これだけでルシフェル達は黒髪の女性がどこの出身か分かってしまう。否、おそらくであるが同郷であろうということが分かった。

 

「「!?………」」

 

分かってしまった2人はお互いに目を合わせ見つめ合ってしまう。リムルがすぐに顔を背けてしまったが。

 

「で、あんたらは如何して此処に来たんだ?まだ此処はそれほど脅威になる場所でもなかろう」

 

「「「偶々着いた」」」

 

「あ、あは。大丈夫なのそんなんで?」

 

「はあ〜。リムルあと任せた」

 

「えっ!?ちょ!ひどいよ〜ルシフェル〜」

 

「俺まだやる事あるし。それに、リムルの分は俺がやっておくから」

 

「うぅ〜」

 

といった感じでリムルに面倒事を押し付けたルシフェルはただひたすらに建築の手伝いをしたり近くに居る魔獣を狩り食材の確保をしたりと色々と奔走していた。

その様な事をしていたら、突然ランガがリムルの場所に行ってくれと言ってきた為急いでその場に急行した。

そしてその場には、おそらく火の精霊であろう者に操られたシズさんとそれに相対するように並ぶ冒険者3人とリムル。

ルシフェルはカオスとしか言いようがないこの状態で到着した自分に滅茶苦茶呆れていた。

 

(毎度の事ながら俺っていつもタイミング悪い時にしか来れないよね。なんでなんだろ?)

 

仕事をしなさいルシフェル君。そう呆れている時にリムルがルシフェルに気づいたらしく叫んで呼びかけてきた。

 

「ルシフェル!大変!シズさんが!!」

 

「分かってる」

 

(さて如何したもんかね〜これ。あっ!そうだ。アルテミス!この状況如何にかならない?)

 

作戦を立てようと思って考えてみたものの余りにも思い浮かばない為アルテミスに聞くという最終手段をとった。

 

《リムルさんの『捕食者』を使えば万事解決です。あ!勿論イフリートに対してですよ?》

 

(その後シズさんが助かる道は?)

 

《マスターの精霊召喚魔法で上位精霊を呼び出して取り憑かせれば大丈夫です!!》

 

(分かった。ありがとなアルテミス!)

 

《いえいえ!マスターどうかご無事でいて下さいね》

 

(ああ、約束する)

 

こうして無事作戦を立てたルシフェルは、リムルにこの作戦を伝えた。

 

「リムル!パクッといけパクッと!!」

 

「えっ!?如何いうこと!?」

 

「捕食者を使え!」

 

「!!分かった!上の精霊にだよね!!」

 

「ああ!!」

 

そうして、リムルは自らの持つユニークスキル『捕食者』を使い火の上位精霊である『イフリート』喰らった。

イフリートはリムル胃袋の中へと消え残されたシズさんは魔素が暴走してもう直ぐにでも息絶えそうになってしまった。

 

「如何しようルシフェル……。シズさんが、シズさんがぁ!」

 

「安心しろリムル。シズさんは必ず助けてみせる」

 

「これって大丈夫なんですか?」

 

「いや、正直もうちょっと楽だと思ったが……。まあ、シズさんは必ず助けるよ」

 

「「「お願いします!!」」」

 

「まずは………」

 

ルシフェル達はシズさんを空いている部屋へと運んだ。そしてシズさんはルシフェルとリムルだけと話がしたいと言った為冒険者3人とリグルドは席を外した。

そして3人は元の世界、つまりは地球の話をしていた。

しかし、その時間も長くは続かずシズさんはとても危険な状態になってしまう。

そこでルシフェルは、アルテミスが提案した作戦の最後の行動をとることにした。

 

「シズさん!!」

 

「ごめんね……。私はもう長くないわだから……」

 

「スライムさん……私を食べ「いや、その必要はない」」

 

「?如何いうこと?」

 

「シズさんがもう一度精霊を宿せばいい。その為の精霊は俺が用意する」

 

「でも、またイフリートみたいな、支配権を乗っ取ろうとするような精霊だったら」

 

「そんな事にはさせない。だから……」

 

「………うん、お願い。……あ、でも火の精霊以外でお願い」

 

「ああ。……よし。こい!!!」

 

ブォーーー!!

 

「お呼びですか?ルシフェル様」

 

「へ?え、いや、なんでサンダルフォンが出てきてんの!?」

 

ルシフェルは精霊召喚をしたのだが何故か精霊ではなく、グラブルのサンダルフォンが出てきてしまった。しかしサンダルフォンはルシフェルの取ろうとしている行動を読み自ら行動に移すと言った。

 

「そういうことですか。分かりました、ルシフェル様、私はこの世界では精霊として扱われる為宿ることが出来ますが、少し特殊なようでいつでも出てこれるようです。それに当たっての宿主に対する影響は御座いません、なので………行ってきます、ルシフェル様!!」

 

「あ、ああ」

 

フィーン!

 

「んぅ。………だ、大丈夫みたい。……有難うルシフェル君」

 

「ああ。良かった……。本当に良かった」

 

こうして本来失われる筈だったシズこと『井沢 静江』の命は救われ、シズは今まで抱いたことが無かった恋心をルシフェルに対して抱い他のであった。

 

「あっ。?!///」

 

「《はあ……。またやったよ》」

 

「へ?何が?」

 

「っ!……ふふ。負けないわよ」

 

「こっちこそ」

 

「なあ、アルテミス。何やってんだあれ。凄え怖いんだけど」

 

《そろそろ自分で気づいてもいいんじゃないんですかマスター》



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ルシフェル「おーくろーど?何それおいしいの?」リムル「食べ物じゃないよぉ」

ヒロインアンケートですが。本日の19時頃締め切りとさせて頂きます。

ご協力して下さった方々、どうもありがとうございます。


〜???〜

 

〜三人称 side〜

 

薄暗い部屋の中には集まる不穏な4つの影がある。その者達は何やら怪しげな企み事をしているらしく会話の中で不穏な言葉が飛び交う。

 

「もう直ぐあいつの言っていた新しい魔王とやらが誕生するのだな!?」

 

「えぇ、もうそろそろジュラの森で新たなる魔王が誕生します。此処まであの男も良くやっていますよ」

 

「はっ!そんなことは如何だっていい。俺は殆ど興味なんて無いからな」

 

「まあ、正直に言えば私もなんだけどね」

 

「なんだ〜。楽しみでは無いのか〜?」

 

「まあ何れにせよ新たなる魔王が誕生するまであと僅か。そうなればこの場も少しはあのころまで戻るのでは無いでしょうか」

 

「如何だっていい。俺は面白い奴がいれば手に入れるだけだ」

 

怪しげな会合は未だ続いている。そしてその会合がもたらす物が厄災か、それとも世界中の人々の幸せなのかはまだ分からない。

 

〜???〜

 

〜??? side〜

 

凍えるような吹雪が吹き荒れるこの地にも、怪しげな動きを見せる者がいた。その者は氷の城のようなものに大量の悪魔を侍らせ悠々と玉座に座る。そしてその者の傍らにはこの世の者とは思えない程の美貌を持った女性が微笑みながら佇んでいる。

 

「ほう、随分と面白い奴が出てきたな。これはおそらく……。既に真なる魔王へと至っているだろうな」

 

「へぇ、あなたがそんなことを言うだなんて珍しいわね。明日は天使の雨かしら?」

 

「実際に面白い奴だからな。まあいい、何れにせよ勝手に出てくるだろう」

 

「ふふ、そうね」

 

氷の玉座に座るこの者はルシフェル達にどのような影響をもたらすのか。そして、世界にどのような影響をもたらすのか。それを知る者はこの者達だけである。

 

〜ジュラの大森林 旧ゴブリン村〜

 

〜ルシフェル side〜

 

「?!」ブルブル

 

「如何したのルシフェル?」

 

「あ、いや、なんでもねえ。〔(なんだったんだ今の悪寒は)ボソボソ〕」

 

「?風邪でも引いた?」

 

「いや違うから」

 

旧ゴブリン村は現在建築ラッシュである。それ故に彼方此方で人員が足らず、いつもルシフェルが奔走している。その為、リムルやシズとの時間が取れず今のような時間はとても貴重なのであった。

 

「ねえルシフェル、私も人型になりたい!」

 

「えっ?アルテミスさーんこれって出来るんですか?」

 

《はい!リムルさんは女性なので女性の人型の魔物や人間を捕食者で食べれば出来ますよ!あ、あとマスターなら分身体を作ることが出来ますので、その能力を他の女性の方に使えば良いと思います》

 

「あ、はい」

 

「できるの……?」

 

「うん、まあ。て事でシズ、分身作らせて」

 

「?………いいよ?」

 

「ありがと。……よいしょっと」ボン

 

「わあ、シズさんが2人いる〜!」

 

「リムル、これ食べて。もちろん分身の方ね」

 

「え!?どっちか分かんないよ!」

 

「分身の方〜、手を挙げて〜……ハイこっち」

 

「分かった……んー、えい!………あ、やった〜出来た〜!!」シュルルルルル

 

何とも適当な感じでやっているが失敗した時のリスクは途轍もなく大きい。それを平然とやれるこの2人、実に恐ろしい限りである。

 

「私にそっくり……。どうして……?」

 

「そりゃあシズそのものを捕食してるんだからなぁ。シズの体の形を登録したのと同じだろ」

 

「そうなんだ。ルシフェル君は2人の私に言い寄られてるんだね」ニコ

 

「んなぁ!!」

 

そんなこんなで3人で戯れているとランガからの緊急メッセージが届いた。

 

〈申し訳ありません我が主。持ちこたえ切れませんでした〉

 

それを聞き、リムルとシズと共に一瞬でランガの下に移動するルシフェル。そして到着後、開口一番にランガを褒めた。

 

「大丈夫だランガ、良くやった」

 

「うん。ありがとうランガ!」

 

〈はっ!ありがたき幸せ!リムル様もありがとうございます!〉

 

そして、ランガと戦っていた者達を見た。その者達はオーガであった。オーガ達の長?はルシフェルに対してこう言った。

 

「現れたな仮面の魔人!今日こそ我が同胞の仇を取らせてもらう!」

 

そう、シズが付ける必要の無くなった封魔の仮面は現在ルシフェルが付けている為、ルシフェルはオーガ達の言う仮面の魔人だと思われてしまっている。実際は違うのだが。

 

「ちょい待て、俺はお前達と会ったことが無いし第一お前達の里の場所なんて知らねえ」

 

「問答無用!」

 

「ちっ!!人の言う事を聞かない奴らだなぁ!!リムル!お前はピンク色の髪の子を足止めしてくれ。ランガ!お前はシズの護衛だ!」

 

「分かったよ!」

 

〈分かりました我が主!〉

 

こうしてオーガ達とルシフェル達の戦いが始まった。

 

〜ルシフェルandオーガの長と仲間達〜

 

オーガの長はルシフェルに向かって襲いかかる。

 

「はあぁ!!」ビュン!!

 

「甘い!」ヒュ!ガキン!!

 

「!?ぐっ!!!!」ギィィィン!!

 

しかしルシフェルはいとも容易く弾き返し尚且つ体勢を崩させ、追って来られないようにした。

体勢が崩れたの事を確認したルシフェルは一瞬で紫色のオーガの下へ向かった。

 

トン!トトン!

 

着いた直後に紫色のオーガは大きなハンマーのような物を叩きつけようとしたが。

 

「はあ!!」ゴォーー!!ドゴォ!!!

 

これも容易く躱した。しかしその威力は想像を超えており、地面に大きなクレーターが出来た。

 

「おっと。エルキドゥ!!」シュン!ジャラララララ!!

 

そして躱した直後に亜空間から出した黄金色の鎖で縛り付けた。

 

ギチ!

 

「くっ!!」

 

「暫くそこで転がってな」

 

動けない事を一瞬で確認し、向かって来ている黒いオーガを迎え撃つ体勢に入った。

 

「おぉぉー!!」タッタッタッ

 

向かって来る黒いオーガを強力な幻術で眠らせて動きを封じる。

 

「お前は寝てろ。月読!!」キィィィィン!

 

「ぐっ!がぁーー!!?!?!」ドサッ!

 

そして、青いオーガが来ているのを察知した為一瞬で其れを視界に収める。

 

「はぁぁ!」ヒュン!

 

相手の勢いと自らの攻撃の勢いも利用しながら腕を硬化させて鋭く重たい一撃を放つ。

 

「はぁ……。武装色、硬化!!はぁ!!」パキン!ドゴォ!!!

 

「がは!!!」ダンッ!ドサッ!!

 

青いオーガも一撃で倒し残る2人に対してもう一度対話の意思を示す。

 

「なあ、ここらでちゃんと話し合うって訳には行かないのか?」

 

「黙れ!オーク達を利用し我が里を蹂躙した貴様等となど話す必要もない!」

 

「はぁ………。どうしてこうなっ?!」ブォン!ガキン!!

 

「首を切り落としたと思ったんじゃがの〜。儂も耄碌したものじゃ」

 

「マジかよ……」ボソボソ

 

未だ聞く耳を持たないオーガ達に対してどのような対応をするのが良いのか考えると1つの考えが浮かんだ。

それは、圧倒的な力を見せつけ、尚且つ相手に使わない事で本気で敵対する意思がない事を示すという案である。

正直に言うと、成功する確率はあまり高くない。しかし、やるしか無いのである。

 

「はあ……。良くやったよ、お前達は。里を蹂躙され仇を取る為に必死こいて格上相手に立ち向かったんだ」

 

「黙れ貴様に何が解る!!散っていく同胞を見る事しか出来ない事がどれだけ苦しいか!解る筈が無いだろう!!」

 

「ああ、知らねえな」

 

「なら「けどな、お前達にとって里の仲間がどれだけ大事か其れ位なら解る。そしてその大切な仲間が散っていく様を見るのだってそりゃ苦しいだろうさ。けどなぁ」………」

 

「それはお前達が命を無駄にして良いって訳じゃねえんだよ。だからこそ、お前達を護れるだけの強さを見せてやるよ!」

 

「何を…」

 

「はあ!!」バサ

 

ブゥーーーーン!!

 

話している内に内容が変わり当初の目的とは違い、オーガ達を護れるだけど強さを力を認めさせる為に力を見せる事となったルシフェルだが、その覚悟は死地に赴く時のものと同じ程に強かった。

 

「くっ!!」ガクン!

 

「ぐっ!?!?!?」ザッ!

 

「?!?!?」ガクッ

 

「うぅ」ヘナヘナ

 

「約束しよう。必ずお前達の同胞の仇取る為に力を貸すと」

 

「「「「!!!!」」」」

 

起きていたのは4人だけだったが、4人はルシフェルの言葉を聞きゆっくりと、だが、確りと忠誠を誓うように跪いた。

 

「凄い……!」

 

「綺麗……!」

 

〈流石です我が主〉

 

こうしてオーガ達の襲来というトラブルは何とか抑える事ができた。そして、その日の夜襲撃の後に伝えた「一時的だが配下にならないか」という提案の答えを聞く為にオーガ達の下へ向かった。

最近何故か常にやっている宴のおかげで見つけるのに苦労をしたが。

 

「よう。さっきの話考えてくれたか?」

 

「ああ。……だが、もう少し考えさせてほしい。本当に正しいのか分からなくてな」

 

「そうか。俺達はお前達が決めた事なら文句は言わないよ」

 

「すまない」

 

そのやり取りの後、すぐに眠りに就いてしまった為、オーガ達の答えは聞けず終いであった。

しかし、翌日の朝。色々と支度をしているルシフェルの下にオーガの若様が来た。

何でも昨日の件の答えを言いに来たらしい。

 

「そうか。来たって事は答えが出たって事だな」

 

「ああ。俺達はオークの軍勢に里を襲われ今は此処に居る者達しかいない。此れでは仇を取る事はできない」

 

「………」

 

「故に。………貴方様の配下に加わらせて下さい」

 

オーガ達が出した答えは配下に加わる方であった。オーガの若様は昨日と同じ様に、忠誠を誓う様に丁寧に跪いた。

 

「ああ、此方こそ宜しく頼む」

 

「若……」

 

外で待機していたのであろう他のオーガ達が中に入って来た。そして、そのタイミングでルシフェルはある事を告げる。

 

「よし、それじゃあ。名付けをしよう」

 

そう名付けだ。

 

本来なら殆ど行われないと言われているが此処では別なのである。しかし殆ど行われないという環境で育ってきたオーガ達は困惑してしまう。

しかしルシフェルが大丈夫だと一言言うと落ち着きを取り戻した。

 

そして今回も結局スリープモードに入ってしまい。名付けをされたオーガ達は酷く動揺し、リムルとシズが慌てふためくという事になってしまった。

 

そして、スリープモードも終わりもう一度顔合わせを行う事になったのだ。

 

「えっと、まずは赤い髪をしているのがベニマルだよな?」

 

「はい。ルシフェル様より頂戴したベニマルを名乗っております。種族は進化したので鬼人となっております」

 

「ああ。んでピンク色の髪の子がシュナだよな?」

 

「はい、ルシフェル様。私がシュナですよ」

 

「それで紫色の髪がシオンだよな」

 

「はい。精一杯ルシフェル様の秘書を務めさせて頂きますね」

 

「ああ、宜しく頼む。濃い青の髪がソウエイだよな、うん」

 

「はいルシフェル様より頂いたソウエイの名を名乗らせてもらっております」

 

「色々と頼むな。それで黒くて大きいのがクロベエだな」

 

「んだ。宜しくな、ルシフェル様」

 

「最後に、最年長がハクロウだな」

 

「ほっほ。そうですじゃ」

 

「うん。取り敢えずハクロウはこの村にいる戦闘員の奴等を鍛えてやってくれないか?」

 

「構いませんぞ、ルシフェル様」

 

オーガ達、否、鬼人達との顔合わせが終わり解散したのだがルシフェルはシオンが手料理を振舞うと言った為、現在会議室で待機している。

しかし、現在ルシフェルを途轍もない悪寒が襲っており何か良からぬ事が起きるのではないかと必死に周りを見渡している。

だが何も見つからずシオンの料理を待つ事にした。

 

「何なんだ?この悪寒。マジ過去最大級にヤバイ感じがするんだが……」

 

そう呟いた時にベニマルが目を逸らしたが、悪寒に気を取られて気付くことが出来なかった。

そして、シオンが料理を運んできた。運んで来てしまったのだ。

 

「お待たせしましたルシフェル様!」コト

 

置かれた皿の中には料理とは呼べない何かが入っており、先程の悪寒は此れによる者だったという事を理解したルシフェルだった。

 

「お、おう。(えっ?何これ。料理なの?待って、これ本当やばいって!?下手したら死ぬぞ!)」

 

「ルシフェル様?どうかなさいましたか?」ニコ

 

(お、恐ろしい娘や)

 

「よ、よし」カタカタカタカタ

 

(やべえ、震えが止まんねえ!でも………。えぇい男は度胸!!)パク

 

「………」ダラダラ

 

「」バタッ!

 

「えっ?ルシフェル様!?ルシフェル様ー!?」

 

結果、毒無効が付いたらしい。やはりシオンの料理は凶器と言った方が良いのかもしれない。

 

そんなこんなで数日が過ぎた。村の発展も進み待ちといって良いほどまで大きくなった。

そんなある日突然の来訪者が現れた。その者達は最近ゴブリンの集落へ行き配下に加えて行っていると噂されているリザードマンだった。

 

「ルシフェル様。リザードマンの使者?がお見えになっておりますが、何やら意味の分からない事をおっしゃっていまして………」

 

「意味の分からない事?まあいい、すぐに出る先に行っていろ」

 

「はっ!それと、場所はーーーーです」

 

「ん。了解だ。……さて、また面倒な事になってきたね〜」

 

〜旧ゴブリン村 入り口〜

 

「ーーーのだ、だから配下に加えてやろう!光栄に思え!!」バーン!

 

『『『ガッビール!ガッビール!ガッビール!』』』

 

やってきて早々にカオスな状況を見せられたルシフェルは呆れて者が言えないという様な状態になっていた。

 

「リムル。これどういう状況?」

 

「……ごめんよく分かんない」

 

「ですよね〜」

 

適当に話を進めたいところなのに中々話に入れないルシフェルは無理矢理リザードマンの使者とゴブタを戦わせた。

 

そうしたら、なんとゴブタが勝ってしまったのである。しまったのであるという言い方は失礼かもしれないが、勝ってしまったのである。そして、リザードマンの使者達は捨て台詞を吐き立ち去っていった。

 

「覚えてろよ〜!!!」

 

すたこらさっさと逃げていくリザードマン達を見て、ルシフェルは呆れていた。

 

「はぁ……。何だったんだ、本当に」

 

「まあまあ、気にしない気にしない。禿げちゃうよ?」

 

「それは勘弁」

 

軽口を叩きあっているルシフェルとリムルだが、途中、ルシフェルが何かに気付きソウエイを呼び出した。

 

「ソウエイ」

 

「はっ!」

 

「オークの軍勢を調べてきてほしい。出来るだけ早くな………。何か…………、何か嫌な予感がするんだ」

 

「畏まりました。では」

 

そう言い、ソウエイはオークの軍勢を見つける為に偵察へと向かった。

………分身体だけで。

 

その日の夜、会議室にはベニマル達鬼人と、この村の重要人物が集まっていた。

そこで話し合われていたのはオークの軍勢に関する事だった。

色々な意見が出たが、最も可能性が高いオークロードと呼ばれる存在が居るという仮定をして、また偵察をする事となった。

しかし………。

 

「ルシフェル様、偵察中の分身体に接触してきた者がいますが、如何致しますか?」

 

「………呼んでくれ。話だけでも聞きたい」

 

「畏まりました」

 

そうして、会話が終わった時。中央にある長テーブルの上に緑色の光が灯った。

その光は徐々に人の形を為していき、美しい女性になった。

かの女性は目を開けるとルシフェルの元へ行き、ある提案をしてくる。

 

「私は『樹妖精』のトレイニーと申します。今日来たのはあなた方にお願いがあるからなのです。……ルシフェル・ペンドラゴン、そしてリムル・テンペスト。貴方達にオークロード討伐の依頼をしに来ました」

 

「おーくろーど?何それおいしいの?」

 

「食べ物じゃないよぉ〜。ていうかちゃんと話聞いてたのルシフェル!?」

 

「すまん殆ど意識無かった。……トレイニーさんとやら、俺達以外にも強い魔物は居るんじゃないのか?」

 

「いいえ、この森の中に覚醒魔王である貴方以上に強い方はおりませんのよ。ルシフェル・ペンドラゴン」

 

「「「?!」」」

 

「「?どゆこと?」」

 

ズコッ!!

 

自らが真なる魔王である事を知らないルシフェルに、その場にいる全員が盛大にずっこけた。そして、トレイニーは、ルシフェルとリムルに覚醒魔王が何たるかを教えていた。覚醒魔王がどういう存在かを知ったルシフェルとリムルは驚きこそしたがすぐに冷静に戻った。

 

「んで、俺達はそのオークロードとやらを倒せばいいんだな?」

 

「ええ、それで構いませんよ」

 

「ルシフェル君、私も戦うからね。1人で無茶したら駄目だよ……」

 

「ああ、無茶はしないよ」

 

 

 

トレイニーより齎されたオークロード討伐の依頼。その依頼には、ある者達の陰謀が隠されている。ルシフェル達はその陰謀に飲まれる事なく依頼を達成出来るのか。そして、隠された陰謀とは……。




次回、「決戦!オークロード」


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決戦!オークロード

アンケートのご協力ありがとうございました。

今後ルシフェルが作る国における、実質的な正妻はシズさんという事になりました。


〜ジュラの大森林 リザードマンの住処〜

 

〜リザードマン首領 side〜

 

リザードマンの住処であるこの洞窟では、現在オークロードに対する対応を決める会議をしている。

 

「オークの軍勢など我等にかかれば一捻りでしょうぞ」

 

「何を言うか!オークロードが誕生しているのだぞ!そう簡単にいく訳があるまい!」

 

「オークロード等所詮お伽話の産物。我等の敵ではない!」

 

リザードマン達はオークロードに対し他の種族との連携を取るか、リザードマンのみで戦うかと(抗うかと)議論していた。

比較的若い者達は、オークロードは脅威にはならないと判断しリザードマン単体での打破を訴えるが、長く生きる上層部の中でも上位に来る者達はオークロードの脅威を知っている為他の種族との連携を取るべきだと言う。

会議は堂々巡りを続け、ある者がやって来るまで延々と続いた。

 

「だから!「首領!」」

 

「なんだ?」

 

「そ、その……、ルシフェル・ペンドラゴンなる者の使者がやって参りましたが……如何致しましょう?」

 

リザードマン達は、初めて聞くルシフェルという名とその使者に対して疑問を覚えたが、自分達だけで戦えない軟弱者と思い罵り始めた。

 

「首領!我々に対して庇護を求めて来るような軟弱者の使者の言葉等聞く必要は「通せ!」首領!」

 

然し何の達も無く突然やって来たとあらば何か良からぬ事が起きているのではないかと思った首領は、部下の言葉を無視し通すように命じた。

そしてやって来たのは………。

 

「俺はソウエイと言う。ルシフェル・ペンドラゴン様の命により貴殿等リザードマンとの同盟を結びに来た。……来たるオークロードとの決戦の為にもな」

 

ルシフェルの配下であるソウエイだった。

リザードマンの首領は、ソウエイを見た瞬間自らの敵う相手ではないと悟り、息子であるガビルすらも歯が立たないだろうと思った。

そして、これ程までに強い魔物を従えるルシフェルと言う魔物が同盟を結ぶ事を望んでいるのは好機と思い、慎重に話を進めていった。

 

「ほう。同盟と言うからには何かしら此方にも得られる者があるという事かな使者殿?」

 

「ああ、リザードマンに齎される物はーーーーーーー」

 

ソウエイとリザードマンの首領は互いにどういった行動をとればいいかを話し合い、リザードマンの上層部が折れる形となって話し合いは終了した。

 

「では、3日後に」

 

「ええ……………………。全員が聞いたな。オークロードの進行を3日間、何としても食い止めるのだ!そうすれば我等は助かり、これ以上オークロードの脅威に怯える必要が無くなるのだ!心してかかれ!!」

 

リザードマンの首領は、部下にそう言い聞かせルシフェル達の援軍が来るまで必死に耐え忍ぼうとしていた。

然し、そんな時に首領の息子であるガビルが自分の部下を引き連れ、首領の前に現れた。

当然首領は与えていた近隣のゴブリン達の協力を取り付け、その報告に来たのだと思った。事実ガビルはその報告をした。

だが………。

 

「良くやったガビル。後は3日間援軍が来るのを待つのみだ。お前も確りとやれ」

 

「お言葉ですが父上。………何故他の種族を頼るなどと言う軟弱な姿勢を見せるのですか!?オークロード等我等リザードマンだけで十分な筈です!」

 

「そうする必要があるからだ。分かったなら下がれ!」

 

「父上は老いられた………。お前達!」

 

「なっ!?!?」

 

ガビルは報告を終えた後、父である首領に何故自分達だけで動かないのかと叫びながら尋ね、その理由を聞き首領に、父に向かって刃を向けた。

 

「何をなさっているのですか兄上!?」

 

「これも必要なことなのだ。………首領は老いられた!自らの誇りを捨て去り他の種族に助けを求める等、リザードマンの強さをもってすれば必要が無い!故に老いた父に代わり、このガビルが指揮を取る!皆の者ついて来い!!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

「何という、ガビル!!貴様、見損なったぞ!オークロードは我等だけでは勝てん!何故それが解らぬ!!!」

 

「もう父上が若かった頃の話では無い。少し窮屈な思いをさせるが我慢してくれ。………牢へ連れて行け!!」

 

「はい!!」

 

ガビルはクーデターを起こし父を首領の座から引きずり降ろした。そして、リザードマン単体でのオークロード撃破に向け着々と準備を進めた。

その後リザードマンの住処に近付いているオークの軍勢を倒す為に指揮を振るい始めた。

 

 

 

 

 

 

然し………。現実とは非情なものであった。

 

ガビル達リザードマンは最初こそ優勢であったものの、徐々に仲間が倒れて行き、倒れた仲間をオークが捕食した。

すると、オーク達には本来在る筈が無いヒレと水掻きが付いており、それによって湿地帯に於けるリザードマンの優位性である素早い行動も意味を無くし、更に窮地に陥ってしまった。

 

こうなったのは首領とガビルの経験の差であろう。何故なら、首領はオークロードに齎される脅威を言い伝えとはいえ口うるさく両親から教えられ、その脅威がどれ程のものかある程度解っていた。

一方ガビルは、その父である首領から余り教えられていなかった為、オークロードの特性がどんなもので、どういった行動をとるのかを知らなかった。

 

故に、この惨状である。

首領がもう少しでもガビルに対しオークロードの脅威を伝えていれば変わっていたかもしれないが、もう手遅れであった。

 

後一撃で自らも部下達と同じ場所に行く事になるだろうと思っていたガビルは、突然介入して来たホブゴブリンと大型の牙狼族によって救われた。

 

 

 

〜ゴブタ side〜

 

現在ゴブタはオーク軍の幹部らしき者と相対していた。

 

「き、貴殿は!あの村の真の主!?我々を助けに来てくださったのですか!」

 

(えっ?!な、何言ってんすか〜この人……。なんかヤバそうだし逃げるように言って後は無視でもしとくっすね)

 

「えっと〜、がびる?さん、でしたっけ?早く逃げる準備をし他方がいいっすよ」

 

呑気に話しているゴブタであるが、目の前には大量のオーク軍がいる。

その状況で何故そんなに呑気でいられるのかは謎であるが、警戒は怠っておらずいつ仕掛けられても行動が出来る体制をとっていた。

その辺りは流石と言えるが、オーク軍の幹部らしき者は、目の前に居るのにも関わらず会話をしている事に腹を立てた。

 

「ふん、どこぞの木っ端魔物の配下が加わったところでこの状況は……」

 

ドォォォォォォーーン!!!!!

 

オーク軍の幹部?が話し始めて直ぐに謎の大爆発が起こった。然も唯の爆発ではなく、黒い炎による魔法の様なものだった為、ゴブタ達が居る場所まで爆風が来た。

然し、ゴブタは気にならないと言わんばかりに涼しげに立っている。

そしてこう言った……。

 

「大丈夫っすよ!あれは味方の技っすから。……………多分!」

 

ゴブタよ、この場面で多分と言うのは逆効果になる恐れがあると思うぞ。と言いたくなる様な発言であったが、幸い味方に動揺は………多少はあったが、それでも大した事にはならなかった。

 

そしてオーク軍の幹部?は主人であるルシフェルを貶められた事で怒り、オーク軍の幹部?を地理も残さぬ程粉々にしてしまった。

まあ、良かったのであろうが。

 

 

こうして、ガビルの居た戦場は一応の決着が着いた。然し周りではまだ戦っているものが多く、巻き添えを食らう可能性があったが、ゴブタの機転により安全な位置に移動することが出来た。

 

「いや〜良かったっすね〜」

 

 

〜??? side〜

 

ジュラの大森林の湿地帯にてオーク軍とルシフェル達が戦っている頃。此処では何やら怪しげな二人組が話し合っていた。

否、1人はナニカに対する文句を口にし続け、もう1人はそのフォローの様なことをしていた。

 

そしてそこに、『樹妖精(ドライアド)』のトレイニーが姿を現した。すると、怪しげな二人組は突如慌てだし逃げる準備をし始めた。

 

「何やら面白そうな話をしていますね」

 

「んな?!」

 

「私は『樹妖精(ドライアド)』のトレイニーと申します。あなた方は此処で何をしているのですか?」

 

「ななな、何もしてまへんで、なあゲルミュットはん?」

 

(ドライアドやて!?何で森の管理者がこんなとこに出張って来とんねん!?……ああ、こりゃまずいで。如何にかしてこの場を凌がにゃならん。さて如何したものか……)

 

「あ、ああ」

 

嘴の着いた仮面を被る魔人はゲルミュットと言うらしく、一緒にいるピエロの様な姿をした男と共に悪巧みをしていたらしくトレイニーの登場に酷く動揺していた。

 

「管理者として、この森での悪巧みは見逃す訳には参りません。ですので………。此処で消えてもらいましょう」

 

「ま、まて。もうこの森から出て行く。出て行くから!だから!」

 

「穿ちなさい『リーフストーム』!!」

 

ブォーーー!!

 

「クソが!!!」ビュン!!

 

「こりゃまずいわ。でも、失敗やったな〜トレイニーはん」サッ

 

パキャ、ボフン!

 

トレイニーに殺されると思ったゲルミュットとピエロの様な魔人は、直ぐに逃げ始めた。ゲルミュットは飛行し飛び去って行き、ピエロの様な魔人は何やら真珠の様なものを取り出し地面に叩きつけた。

 

「待ちなさい!!」

 

「ほな、さいなら〜!」

 

トレイニーは、仕留める事こそ出来なかったが痛手を与える事は出来た為、後はルシフェル達に託す事にした。

 

(仕留める事は出来ませんでしたか。………後は頼みましたよ、ルシフェル・ペンドラゴン、リムル・テンペスト。この森の命運をあなた達に託します)

 

 

〜ルシフェル side〜

 

ルシフェルは空にいた、………12対24枚の純白の翼を広げて。その隣にはリムルが蝙蝠の様な翼を広げ飛んでいた。

この2人は現在の戦場の様子を伺い、何か問題が起こった場合直ぐにでも行動を起こせる様に、配下達の戦いを見守っていた。

 

「本当に鬼人勢は優秀だね〜」ソワソワ

 

「確かにな。それに、さっきの黒雷は………、恐らくランガだろうな」ソワソワ

 

「えげつない威力だったよね〜」ソワソワ

 

否、ソワソワしていた。

そこまでして早く戦いたいのか、それとも危なっかしいと思っているのか。

 

まあ、……………後者なのであろうが。

 

「「?!?!」」

 

ビュン!!!

 

「なんだ!?敵襲?!」

 

そんな時、突如として謎の魔物が間を通過していった。

その魔物は、否、その魔人はゲルミュットであった。

 

〜ゲルミュット side〜

 

「オークロードよ!いつまで時間をかけている、さっさと喰い尽くせ!!」

 

ゲルミュットは着いて早々にオークロードに対して命令した。

 

「早くしろ、あの方達が見ているのだぞ!早くせねば機嫌を損ねてしまう!だからさっさと殺せ、オークロード!!」

 

「あ、貴方は……!ゲルミュット様、ゲルミュット様なのですか!なんと………。我々を助けに来て下さったのですか!」

 

「煩い!!貴様がさっさとオークロードの糧にならないからこんな事になったのだ!!」

 

「な、何を……!?何故ですか!ゲルミュット様!!?」

 

「貴様はもう用済みだ!!死ね!『デスマーチダンス』!!」ヒュン!!

 

「「「ガビル様〜!!」」」ドンッ!!!!

 

ゲルミュットは、何と自分が名付けをしたガビルに対し攻撃をした。幸いにもガビルに当たる事は無かったが、ガビルを庇った部下達は深傷を負ってしまった。

 

「な、何故………!?大丈夫かお前達!?」

 

「ガビル様が無事で良かっ………た………」バタッ

 

「ああ………!ああぁぁぁぁおぉぉぁぁぁぁ!!」

 

「悪運の強いやつめ……!今度こそだ!死ね!!!」ヒュン!!

 

「ゲルミュット様!ゲルミュット様〜!!!!ああぁぁぁぁぁ!!!」

 

ガビルは死を悟り、目を瞑った。………然し、いつまで経っても衝撃が来ず、恐る恐る目を開けると目の前には攻撃を受け止め?ているリムルがいた。

 

〜リムル side〜

 

「なあリムル、あれ………ヤバくね?」

 

「あ、あはは〜、………確かにね。仲が良いとは言えないけど、知り合いに死なれるのは嫌だからね」

 

「だよな………。ならリムル、………あの攻撃を食べて来て」

 

「ええ〜!……まあ、いいか」

 

リムルはそう言ってガビルに向かって突き進む魔力弾の進路に舞い降りた。

そして、右手をスライム状に戻し回転させながら魔力弾を吸収した。

 

「………?あ、貴方は?!」

 

「ほい!」ポイ

 

「えっ?あ、えっ?とと!」ささっ

 

「回復薬だよ。部下達に使ってあげて」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

ガビルを救ったリムルは、彼の部下の為に回復薬を渡し、それを使わせた。それによりガビルの部下は大事には至らなかった。

ガビルは自分だけでなく部下の命も救ってくれたリムルに対し感謝をしたのであった。

 

「さて。居るんだよねルシフェル」

 

「当然だな。シズは?」

 

「今来たよ」

 

「それじゃあ、やろっか」ニコッ

 

「「ああ(ええ)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ルシフェル side〜

 

「それじゃあ、やろっか」ニコッ

 

(おぅふ………。怖い、怖いですぞリムルよ)

 

リムルの言葉は表情とは真逆であり、その表情からも底知れない黒いオーラが出ていた為、ルシフェルは途轍もなく恐怖した。

然し、そのままでいる訳にも行かず、ゲルミュットとの戦闘へと意識を向けた。

 

「ま、まて!お、お前等も配下にしてやろう!だから、止めてくれ!!」

 

ゲルミュットは、死にたくないのか意味が分からない事を叫び続け、醜く命乞いをし始めた。

当然ながら、そんな事をしてもルシフェル達は止まらない。むしろ怒りを増長させるだけである。故に………。

 

「リムル」「うん」

 

シュルルルルルルルル!

 

「な!?は、放せ!!クソ!」

 

ドガァ!ボコン!バキッ!グシャ!!

 

 

 

「ふぅ……」

 

という風に一方的に痛ぶられてしまう。それに腹が立ったのか、ゲルミュットは自らの背後にいる協力者?の事を言い始めた。

 

「お前等ぁ!許さんぞ!絶対に許さんぞぉ!!あのお方が絶対にお前等を殺す!!!」

 

「へぇ……。なら、あのお方って奴の事を教えてくれよ。小物の主なんだどうせ小物だろう?」

 

「貴様ぁ!殺す!!絶対にぐぼぉるぁ!!!」ドゴッ!!

 

「くどい!もちっと簡潔に頼む」

 

「「あ〜、あはは〜……」」

 

ルシフェルは、ゲルミュットを徹底的に嬲り殺そうとしており、リムルとシズが引くレベルでえげつない事になっていた。

そして、何とかルシフェルから逃れる事が出来たゲルミュットは、オークロードの下に行き、ルシフェル達を殺す様に命じた。

 

然し………。

 

「腹が減った」

 

「黙れこれも貴様がさっさと魔王にならないからこうなったんだ!!」

 

「!?…………魔王とは如何言う事か?」

 

「私はこの森にて新たなる魔王を誕生させる為に種を蒔きまくった!!そこに居るリザードマンもそうだ!そしてお前もな!!だからこそ、お前が新たなる魔王となるのだ!!」

 

ゲルミュットはこの森にて新たな魔王を誕生させる為に、オークロードを生み出し、色々な魔物に名付けをしまくっていたのである。

ルシフェルは、否、ルシフェル達は嫌悪感を顕にしゲルミュットに対し軽蔑の視線を送った。

 

「!………」ノソ

 

オークロードは今の言葉の何かに感銘を受けたのか、それとも腹を立てたのかは知らないが、のそりと動き始めたのである。

 

「は、はは、はははははは!そうだ!!やれ、オークロード!!否、ゲルドよ!!」バッ!

 

「………!」ブンッ!!スパッ!ボトッ

 

《マスター、個体名ゲルミュットの反応が消失しました。これは……》

 

(ああ、最悪の展開だな。然し、正直に言えば負ける事はないから大丈夫だろ)

 

《そうだと良いのですが……。気をつけて下さいねマスター》

 

(ああ)

 

ゲルミュットの首を切り落としたオークロード、否、ゲルドはゲルミュットの死体を喰らった。

そして食べきった直後、世界の声が頭に響いた。

 

《告、オークロード、個体名ゲルドの魔王種への進化を確認。…………成功しました。個体名ゲルドはオークディザスターへと進化しました》

 

「これは………」

 

「だろうなぁ………」

 

「我こそは、新たなる魔王!魔王ゲルドだ!!貴様等を食ってやろうぞ!!!」

 

「マジっすか………」

 

この事態は戦場を、より混乱へと導いた。ルシフェルですらも呑み込み切れていないと言った感じなのである。他の者が動けないのも無理はない。

 

 

 

然し、ベニマルはこの状況を打破する方法を必死に考えた。そして、シオンに対し一言。

 

「行け、シオン!!」

 

「はい!薄汚い豚が、魔王だと?思い上がるなぁ!!」ブォン!!

 

「甘いわぁ!!!」ギィィィン!

 

シオンは、ゲルドに対し攻撃を仕掛けるものの弾かれてしまい、その直後にはハクロウが首を切り落としたが、オークディザスターの持つ超速再生の所為で即座に回復されてしまう。

そんな中、ルシフェルは動き始めた。

 

「退け、俺がやる」

 

「「「「「「?!?!?!」」」」」」

 

「ルシフェル様!?」

 

「此奴は我々だけで十分です。ですからルシフェル様自ら戦う必要など………」

 

「良いから。………あ、あと、リムルにも手伝って貰うからな」

 

「うん!」

 

オークディザスターは、不気味にルシフェル達を見ているが、ルシフェルは、今すぐにでも殺さんと殺気を送り続けている。

そして、戦いは始まる。

 

「フッ!!!!」シュン!

 

「はあぁぁぁ!!!」ダッ!!

 

走り出すルシフェルとリムル。それを迎え撃つオークディザスターだが、ルシフェルは突如として上空へと舞い上がる。

 

バサッ!

 

12対24枚の極彩色に輝く翼を広げ詠唱を始めた。

 

「光ある生の為、この力を振るおう。容赦はしない!」

 

「『パラダイスロスト』!!!」ギィィィーン!

 

魔を滅する聖なる光はオークディザスターへと向かい、刺し穿つ。

然し、オークディザスター無傷でリムルと戦っており、仕留め切る事は出来なかった。

 

だが、これもルシフェルの計算の内であった。

 

「リムル!!!今だ!」

 

「分かってる!!」バシャ!!!

 

リムルは身体をスライム状に戻し、オークディザスターを覆った。そう、リムルはオークディザスター、……ゲルドを『捕食者』にて喰らおうとしているのだ。

 

「な、なんだこれはぁ!!我は魔王ゲルドだぞぉ!!」

 

「君が何であれ私達には関係が無いんだよねぇ。まあでも、ベニマル達が仇を取るためにも君を倒さなくちゃいけないから………」ギュルルル!

 

「クソ!!」バシャ!!!

 

「勝負だよ!君の『飢餓者(飢える者)』と私の『捕食者』、どっちが強いか」ギュオオオ!!

 

「がああぁぁぁぁ!!」

 

リムルの捕食者に捉えられたオークディザスターは逃げる事は出来なくなっていた。ルシフェルはリムル達が何かを話している事には気付いたが、どう言った事を話しているのかは分からなかった。

ただ、最後の最後、オークディザスターが少し柔らかい表情を浮かべた気がした。

その時に世界の声が響いた。

 

《告、オークディザスター、個体名ゲルドの消失を確認しました》

 

「そうか………。終わったんだな」



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ガゼル「ちょっと喧嘩売りに来たぞ」ルシフェル「いや、ちょっ、何故に?」

キャラクロスアンケートを締め切らせていただきました。

結果は。

1位、ハイスクールD×D
2位、SAO
3位、ダンまち

となりました。

ご協力ありがとうございました。


〜ルシフェル side〜

 

➖prologue➖

 

ひゃっはろー!ルシフェルさんだよ〜♪………キモいな。

取り敢えず、俺達はオークロード討伐の依頼を達成した訳なんだが、ついさっきまで今後の方針を話し合っていたんだ。

主な事は、オークロードの配下であったオーク達の処遇、そしてオークロード討伐に参戦した者達の今後の方針だ。

 

オーク達については今回の件での処罰は無し。……と言うより被害を受けた村や集落の復旧に尽力させる事とした。

オークロード討伐に参戦した者達に関しては、今はまだ構想段階ではあるが、俺の考えている"ジュラの森大同盟"に参加する事になった。

 

そして、またもや名付けマラソンという地獄に突入してしまった。

今回はオーク達、新たに加入したゴブリン達、そしてガビルを筆頭としたリザードマン達であった。

 

やはりと言うべきか、スリープモードとなったがそれほど長くはなかった様だ。

ただ、名付けの上書きが出来る事については驚いてしまった。いや、本当。

 

そして現在は村の復旧を進めているのだが…………。おっと、お客さんのお出ましだ。

 

 

〜ジュラの大森林 旧ゴブリン村〜

 

〜ルシフェル side〜

 

「いや〜いい感じに復興して来たね〜。………後どれ位で元通りになるのか」

 

「後少しじゃ無いかな?でもルシフェル君、それ以上にはしないの?」

 

「するよ」

 

ルシフェル達は、旧ゴブリン村の復旧、並びに拡大をしている途中である。

この前、新たに配下へと加えたオーク達に土木建築の仕事を与えている為手が回らなくなるという事はなく、ゆったりのんびりと観察をしている。

 

「リムル〜、何かやること無い?」

 

「無いね」

 

「なんで!?」

 

「だって、ルシフェルがやると色々とやり過ぎちゃうんだもん!少しは他の人達にやらせてあげなよ!」

 

「えぇ〜」

 

そんな、呆れる程にほのぼのとした会話をしている中、ソウエイより報告が入ってきた。

 

「ルシフェル様、警備中の分身体より倒れている人間が複数いるとの報告が」

 

「連れてきて!」

 

「る、ルシフェル様?何故にそんなにテンションが高いのでしょう……」

 

「良いから!早く!」

 

「は!」

 

そう言い、ルシフェル達は急いで会議室へと向かった。

そしてソウエイの分身体がやって来たのであるが、分身体が連れて来た人間は、何と学校の制服の様な者を着ており、明らかに学生であろうと思われる容姿をした者達と、スーツの上から白衣を着た女性。そして、この世界では無い筈のお洒落な服装をした女性が来たのであった。

 

「お連れ致しましたルシフェル様」

 

「ん、ありがと。戻って良いぞ」

 

「いえ、自分は此処に「良いから戻れ」は!」

 

ソウエイは何かあったときの為に残ると言っていたが、おそらく自分達と同じ場所からやって来たであろうこの者達と話すには色々とまずいことがあると思い、仕事に戻した。

 

「さて、色々と聞きたい事は有るけど先ずは。君達は地球から来たって事で良いんだよな?」

 

「あ、ああ。今の言い回しからすると此処は地球では無いのか?」

 

「ん、まあね。此処に来る途中で明らかに人間では無い奴らを見て来たから薄々解っていたと思うけど」

 

「ま、まあな。それで、君達は何者なのだ?」

 

「俺達はこの森の盟主、って言っても解ん無いよなぁ。取り敢えず俺達も魔物だ。俺は天神族、ルシフェル・ペンドラゴンだ」

 

「私はスライムのリムル、リムル・テンペストだよ」

 

「私は人魔族のシズ、本当は井沢静江って名前なんだけどね」

 

ルシフェル達は名を名乗るが、名乗ったところで突然此処に連れてこられた彼等は未だ落ち着いていなかった。

然し、ルシフェルはそんな事を気にせず名前を教えろと催促した。

 

「んで、君達の名前は?」

 

「あ、ああ、すまない。私は平塚静だ、教師をやっている」

 

「私は雪ノ下陽乃だよ。宜しくね〜」

 

「比企谷八幡……」

 

「無愛想な兄は放っておいて、私は比企谷小町です!」

 

「雪ノ下雪乃よ」

 

「葉山隼人です。宜しく」

 

「あたしは由比ヶ浜結衣です!」

 

彼等は日本の総武高校という所から転移して来たらしく、死んだという事では無いそうで、突然目の前が真っ白になって気が付いたら倒れていたらしい。

 

「アルテミス、此奴等の情報を解析出来るか?」

 

「「「「「「「??」」」」」」」

 

《はい、えぇっと、………皆さん人魔族となっています、マスター》

 

 

 

………………………。

 

「おぅふ……。人じゃ無いんすか」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「どういう事ですか人じゃ無いって!?」

 

「ああ、うん。君達は人魔族。まあ、つまりは魔物の一種なんだ」

 

「俺達が、魔物………………?」

 

「信じられんな。本当にそうなのか?例えば調べた時に何かしらのミスがあったりとか……」

 

「無いね、絶対無い。だって、絶対に間違えない奴に調べさせたから」

 

ルシフェルがそう言うと、彼等は落ち込み始めた。静は計測ミスの様な事があったのではないか?と言い、葉山は魔物である事に嘆いていた。

そんな時、ソウエイからある報告が入った。

 

「ルシフェル様、武装国家ドワルゴンよりペガサスナイツが多数、こちらに向かって来ております!」

 

「はあ!?何だってんだ!」

 

「ルシフェル……」

 

「取り敢えずお前等は此処にいろ!安全は保障する!」

 

「「「「「「「は、はい!」」」」」」」

 

ルシフェルは転移して来た八幡達に安全が確保されている会議室から動くなと言い、ペガサスナイツ達の予想到着ポイントへと急いだ。

然し、着いた直後に驚く事となってしまった。

 

何とペガサスナイツ達に混じってドワルゴンの長たる英雄王ガゼル・ドワルゴが居たのだ。

 

「っ?!何であんたが居る!」

 

「なに、この地に居る脅威を余自ら確かめに来たまで。どの様な対応を取るかは貴様等の行動次第だ」

 

「………はあぁ。まあいい、取り敢えず俺がこのジュラの森の盟主、ルシフェル・ペンドラゴンだ。名前ぐらいは知っていると思うが」

 

「………………」

 

「んで、本当は何をしに来たんだ?俺達が脅威だとして、それを確認する為だけにあんた自身が出てくる必要は無いだろう?」

 

「………フン、この森の盟主などと嘯く輩が真に我等の脅威になり得るかの確認。そして、脅威にならないとした場合の対応の為だ」

 

「本当にそんな理由かよ………。ふぅ………。んで、どうすんだ?殺り合うのか?」

 

「手痛い目を見せるだけで充分。第一、貴様が本当にこの森の盟主であるという保証は無い」

 

ガゼル王がルシフェルを貶す様な発言をした直後、突然木の葉が舞い上がる。

そう、トレイニーが現れたのである。

 

「我等が盟主に対して失礼ではありませんか、ガゼル王?」

 

「なっ!?『樹妖族』!?何故この様なところに!」

 

「して、如何なのです、ガゼル王?」

 

「………この森の盟主である事は間違い無い様だ。然し、その実力がどれ程の物か試させて貰おう。……余の一撃を耐えきって見せれば貴様の勝ちとしてやろう」

 

「倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「フン、出来るものならばな」

 

ルシフェルは自分と自分の仲間と配下達の名誉の為に、ガゼルはルシフェル達に対してどの様な対応をするかを決める為に、共にその手に剣を取った。

 

「我が下に集え星の息吹よ」フィーーーン!

 

ルシフェルが翳した手の下に魔素が集う。

 

「顕現せよ、常勝の王剣」

 

その魔素は徐々に剣の形へと押し固められ、凄まじい聖力を放つ。

 

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!」

 

名を叫ぶルシフェルに呼応する様に魔素は剣へとなり、圧倒的なオーラと共に美しい刀身を顕にした。

 

「ほう、中々に良い剣であるな。然し、それだけでは余には勝てん!行くぞ!」ブォン!

 

「如何かな?」ギィィィン!!

 

ルシフェルとガゼルの剣戟は熾烈を極めた。振れば弾き弾かれ、突けば躱し躱され、両者共に決定的な一撃を与える事が出来ずにいた。

然し、ルシフェルの一撃によりその均衡は崩れ去ってしまった。

 

「オラァ!!」ドゴォォォォォン!!

 

「くっ!!」ドカッ!

 

「その程度か?まだまだだね、ガゼル・ドワルゴ」

 

「フ、フフ、フハハハハハハ!これ程とはな、ルシフェル・ペンドラゴン!この森の盟主に相応しい強さだ!」

 

「そりゃどーも。で、これから如何するんだ?まだやるのか?」

 

「否、我々は帰るとしよう。………ただ、1つ聞かせろ。貴様は我等の敵となるのか?」

 

「いや。余程の事が無い限り敵に回る事は無い」

 

「そうか。なら、余の国と協定を結ぼうではないか。不可侵条約と言うだけだが」

 

「ああ、それは一向に構わん。宜しく頼むぞガゼル王」ガシ

 

「ああ」ガシ

 

こうしてジュラの森の盟主たるルシフェル、そしてその仲間達と武装国家ドワルゴンとの不可侵条約が結ばれた。



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