仮面ライダージオウ×Fate/Grand order The KING order (リョウギ)
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第1章
第1話「B.C.2600:謎のウォッチと世界の異変」


「王の話をしよう、」

 

「………と言いたいところだが、諸事情で今は王の話は廃業中なんだ。ごめんね」

 

「代わりと言ってはなんだが、今回は魔王の話をしよう」

 

「過去と未来をしろしめし、時空を統べる最高最善の魔王の話を」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

時計店 クジゴジ堂

 

「ねぇ、ウォズ。このウォッチってウォズが持ってきたの?」

 

窓際の椅子に腰掛けてハードカバーの本を広げていた青年に二階から降りてきた少年が声をかける

少年の手には白い懐中時計のような機構が握られている

 

「………私には心辺りがないね。我が魔王」

 

青年は差し出された白いウォッチを注意深く眺めながら答える

この青年ーウォズは未来からやってきた存在である

荒唐無稽な話だが、今まさにウォッチを差し出してきた少年を、『魔王』へと導くために

 

「それはどこで手に入れたんだい?」

「それが、俺にもわからないんだよね……なんかズボンのポケットにいつのまにか入ってた」

「それはまた唐突だね……」

 

少年から白いウォッチを受け取ったウォズは更に注意深くウォッチを眺めている

 

「ジオウ、おじさんから頼まれたんだが買い物に……何かあったのか?」

 

店の奥から新しく一人の少年が顔を見せる

 

「あ、ゲイツ。いや〜ちょっと変なウォッチ拾っちゃってたみたいで……」

「変なウォッチだと……?」

 

ソウゴと呼ばれた少年が簡単に経緯を説明する。奥から出てきた少年ーゲイツはウォズと同様に不思議そうな顔を見せる

ゲイツはソウゴの友人。同時に、ウォズと同様に未来からきた存在である

その目的は、『魔王』となるソウゴの抹殺ー否、ソウゴを『魔王』へと歩ませないことである

 

「ウォズ、お前何かしたのか?」

「いいや、残念ながら私にもわからないんだよゲイツくん」

 

三人で不思議そうに首をひねっていると、店の奥から壮年の眼鏡をかけた優しそうな男性が顔を出す

 

「あ、ソウゴくん?ゲイツくんにも頼んだんだけど、ちょっと晩御飯の買い出しに行ってくれない?」

 

この店の店主ー常盤 順一郎。ソウゴの叔父であり、保護者にあたる人だ

 

「わかった」

 

順一郎に頷きを返すと、ゲイツの肩を叩いてソウゴが買い物のメモを受け取る

 

「あ、そうそう言い忘ー」

 

ガチンッ

 

突然、ソウゴたち三人に悪寒が走る

と、ソウゴが順一郎に視線を移すとそこには

 

「おじさん⁉︎」

 

灰色に色褪せ、不自然に静止した順一郎の姿があった

 

よく見ると、店内も所々色褪せ、ノイズが走ったように空間が歪んでいる

 

「これは……タイムジャッカーか⁉︎」

 

明らかな異変にゲイツが警戒を始める

 

「いや、彼らの時間操作なら私たちにも影響が出るはずだ」

「とりあえず外に行ってみよう‼︎」

 

ソウゴの提案に頷き、三人は外に出る

 

「これは……」

 

そこには、店内と同じ光景が広がっていた

人々は色褪せ、静止し、風景はノイズが走っている

 

「ソウゴ‼︎ゲイツ‼︎」

 

呆気にとられていた三人に続いて、店内から白い服を纏った少女が現れる

ゲイツと共に未来から来たツクヨミだ

 

「ツクヨミ‼︎ 無事だったんだね…」

「ソウゴたちも……一体何が起きてるの?」

「分からん……」

 

と、ウォズがその手に握っているものに気づく

 

「……我が魔王、これを」

「え?これって……」

 

それは先程ソウゴが手渡した白いウォッチ

渡したときは確かに無地だったそれの盤面にいつの間にか黒い文字が印字されていた

 

B.C.2600

 

「いつの間に……というか、B.C.2600……って?」

「紀元前2600年、そこに何かあるということか?」

「分からないな。罠の可能性もなきにしもあらず、だ」

 

ゲイツとウォズが警戒した表情を浮かべる中、ソウゴはそのウォッチを取る

 

「確かに罠かもしれない。でも今はこれしかないなら、とりあえずこれに従ってみようよ」

 

あっけらかんと、そう告げる

 

「……そうだな。今はそれしか選択肢は無さそうだ」

 

逡巡しながらもゲイツが頷き、取り出した携帯端末に何やら入力する

 

《ターイム、マジーン‼︎》

 

と、どこからかバイクのような大型のマシンが二台現れ、4人の前に停車する

ゲイツとツクヨミが未来からやって来る際に使用していたタイムマシン、タイムマジーンである

ゲイツとツクヨミは赤い車体の方に、ソウゴとウォズは白い車体の方に乗り込む

 

「B.C.2600……っと、」

 

内部のコンソールに年代を入力し、操縦桿を握る

 

「………行こう‼︎」

 

操縦桿を前に倒すと同時に、タイムマジーン二台が浮上、虚空に現れたワームホールへと侵入していった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

B.C.2600 どこかの森林の上空

 

虚空にワームホールが開き、二台のタイムマジーンが現れる

 

「着いた‼︎ ……どこだろここ……」

 

操縦席のソウゴが首を捻る

 

「……今のところは森林しか見えないが……」

『とりあえずは近場に着陸するぞ』

「そうだね、どこかに……ッ⁉︎」

 

ドガンッ!!

 

通信越しにゲイツと話していた中、タイムマジーンに大きな衝撃が走り、機体が大きく揺れる。けたたましくアラートが響く

 

「おわわッ⁉︎ 何、!?」

『くっ、まさか攻撃されてるのか⁉︎』

 

どうやらゲイツの方も攻撃されているようで、通信越しに苦悶の声やツクヨミの悲鳴が聞こえてくる

 

ガンッ‼︎ ドガンッ‼︎

 

更なる衝撃が加わり、完全にバランスを崩した機体は真っ逆さまに落下を始める

 

「うわぁあああああああ⁉︎⁉︎」

 

ソウゴとウォズを乗せたタイムマジーンは森林に、ゲイツとツクヨミを乗せたタイムマジーンは森林から離れてそれぞれ煙を上げながら墜落していった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「王よ、しばしお耳に入れたいことが」

 

どこかの王城か、豪奢な内装の部屋

その部屋の中央奥に鎮座する玉座の前に奇妙な容姿の男が恭しく礼をしながら立っている

部屋の内装に似合わない、というより時代が合わないような近代的な様式が目立つ服を纏い、ソフト帽のようなハットを被っている

その横には無気力そうな少女がボーっと立っていた

男と同じく、場違いなゴスロリのような服を纏い、棒付きキャンディーを咥えている

 

『なんだ?タイムジャッカーとやら。手短に済ませよ』

 

玉座から、風格溢れるーしかしどこか不気味な声が響いてくる

 

「恐れながらも王よ、想定外の事態が起こりました。件の魔王が、この時代に現れました」

 

タイムジャッカーと呼ばれたハットの男は慇懃に告げる

 

「王の統治は絶対、ということは重々承知しております。ですが、この想定外の事態がどこに響くかは我々も想定できません。早急な対策をー」

 

『とうに知っておる』

 

王がつまらなそうに返す

 

『貴様、よもや(オレ)の千里眼を忘れていたとは言うまい』

「はっ、無論にございます」

(オレ)の眼に既にそれは見えている。貴様らが魔王と呼ぶからどんな神性かと思えば、ただの貧相な雑種ではないか。拍子抜けも拍子抜けだ』

 

ふぅ、と王が嘆息を漏らす

 

『だが、その干渉からか、幾ばくかの《英霊》も呼び出されたようだな』

「なんと……⁉︎」

『狼狽えるな、タイムジャッカー。(オレ)のこのウルク……いや、すぐさまこの世界全土に広がるこの《人神統合文明》には瑣末なことよ』

 

くっくっ、と王が愉快そうに笑う

 

『それに、(オレ)が直接手を下す必要性は無い。既に天と冥界の女主人がそれぞれ動いておる。奴らに任せておけばすぐに収束しようよ』

「さすがは王……ぬかりありませんな……」

 

「英雄王、ギルガメッシュ様」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ソウゴ、ウォズの墜落地点 どこかの森林

ぷすぷすと煙を上げるタイムマジーンからよろよろとソウゴとウォズが現れる

 

「いてて……いきなり攻撃なんて……」

「大丈夫かい、我が魔王」

 

ソウゴよりは負傷が少ないウォズがソウゴの手を取る

 

「ありがとう、ウォズ。にしても、ここどこ……?」

 

周りを見回しながら、ソウゴが途方にくれた声を上げる

背の高い木々がそこら中に生い茂った深い森だ

意外にもそこまで暗くはなく、視界も良好ではあるが、いかんせんここはB.C.2600である

 

「地図もデータもほぼ無い、流石にね」

「だよね……」

 

タイムマジーンの中になら、何かデータが見つかるかもだが、墜落でほぼ機能がダウンしてしまっている

 

「参ったな……」

 

ヒュヒュヒュヒュンッ!!

 

途方に暮れるソウゴの耳に妙な風切り音が響く

 

「‼︎我が魔王‼︎」

 

ウォズの叫びに咄嗟にソウゴが横へ飛ぶ

そのコンマ数秒後、凄まじい衝撃音と共に土煙が巻き上がる

 

「な、何⁉︎」

 

見ると先程までソウゴとウォズが立っていた場所にいくつもの小クレーターが形成されていた

反対側に回避したウォズは空を見つめている

その視線を追ったソウゴの目には、

 

空中に浮かぶ人影が写っていた

 

「……人間?」

 

浮かぶ人影は逆光でよく見えなかったが、段々と目が慣れてきた

その人影は女性のようだった。黒髪のツインテールが風に揺れている

服装はかなり軽装で、一見するとビキニ姿にも見えるが、ところどころに煌びやかな装飾がされている

陶器のように艶やかな白い肌には黒い刺青のような模様がいくつも走っている

そして何よりも、ゾッとするほど冷ややかな金色の視線がソウゴの目を引いた

 

「……私を、人間と……フッ、不遜極まりないわね。人間」

 

女性が冷ややかな笑みを浮かべる

 

「いや、違うわね。王の言葉を借りれば『魔王』だったかしら?」

「え?キミ、俺を知ってるの?」

 

予想だにしない女性の言葉にソウゴが思わず聞き返す

それに女性は嗜虐的な笑みを返す

 

「気安いわよ人間。それに、魔王ですって? 不敬極まりないわ。唯一にして絶対のギルガメッシュ王以外にそれを名乗るなんてね‼︎」

 

怒気が溢れる声とともに、女性の背後にその身の丈以上に巨大な弓が出現する

 

「我が魔王、どうやら向こうはやる気のようだよ」

「……だね、なんかやばい気がする」

 

ソウゴが引きつった笑みを浮かべる

 

「でも、やるしか無い‼︎」

 

とソウゴがどこからかバックルのようなものを取り出し、腰に当てる

 

《ジクウドライバー‼︎》

 

それを見たウォズがやれやれ、と愉快そうに笑う

 

「それでこそ我が魔王だ」

 

ウォズも腰にベルトを装着する

 

《ビヨンドライバー‼︎》

 

立ち上がった二人はそれぞれその手に懐中時計のようなものを握りしめ、その竜頭をノックする

 

《ジオウ‼︎》

 

《ウォズ‼︎》

 

音声を発したウォッチをソウゴがそのドライバーにはめ、ドライバー頂部のスイッチを押す

同時に、ドライバーからチク、タク、チク、タクと時計のような音が流れ、ソウゴの背後に巨大で複雑な時計が現れる

脚を広げ、独特な構えを取り、告げる

 

「変身‼︎」

 

ドライバーを、ぐるりと回す

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ ジオウ‼︎》

 

ドライバーの音声と共に、ソウゴの周囲にぐるぐるとエネルギーで構成されたベルトが回転、その内部でソウゴの姿が変化していき、強化服のような姿が完成すると、背後の時計盤から《ライダー》の文字が飛び出し、そのマスクへと収まる

 

仮面ライダージオウ

 

これが、ソウゴが魔王と呼ばれる由縁

いつか時を統べる魔王の正装である

 

「変身‼︎」

《アクション‼︎ 》

 

ウォズもそのウォッチをドライバーに装填、バックルに向けて畳み込む

テクノポップな音楽と共に、その周囲にホログラフじみたエフェクトが現れる

 

《トウエイ‼︎》

《スゴイ‼︎ ジダイ‼︎ ミライ‼︎》

《仮面ライダーウォズ‼︎ ウォズ‼︎》

 

ホログラフがウォズの体に収束、銀の強化スーツを描くと共にそのスーツが実体化し、その身に装着される

そのマスクには、青い《ライダー》の文字が描かれている

 

仮面ライダーウォズ

 

ある手段でウォズが手に入れたジオウと同じ仮面ライダーの力である

 

「準備は終わりかしら? なら死になさい」

 

冷ややかな宣言と共に女性の背後の弓から光の矢が何本も放たれる

ジオウとウォズはドライバーから実体化させた剣ージカンギレードと槍ージカンデスピアでそれを弾く

 

「どうやら、タイムマジーンを落としたのも彼女のようだね」

「どうにか撃ち落とさないと‼︎」

《ジュウ‼︎》

 

ジカンギレードを銃形態に変化させ、宙に浮かぶ女性に向けて放つ

が、その銃撃はその体に命中することなく、見えない壁に弾かれる

 

「なめないでほしいわね。その程度効くわけないでしょ?」

 

涼しい顔をしながら、更に大量の矢が放たれる 

 

「だったら直接、落とす‼︎」

《フォーゼ‼︎》

 

それを見たジオウが新しいウォッチを取り出し、ドライバーの左側に装填する

その間、降り注ぐ矢をウォズがジカンデスピアで弾く

 

「我が魔王、今のうちに」

「ありがと‼︎」

 

ジオウが再びドライバーをぐるりと回す

 

《アーマータイム‼︎》

《スリー、ツー、ワン‼︎》

《フォーゼ‼︎》

 

音声と共にジオウの前に人型にまとまったアーマーが出現

何やら一旦縮こまり、大の字のようなバンザイポーズを決めると人型からロケットのような状態に変化し、宙に浮かぶ女性の前を撹乱するかのようにぐるりと飛行し、ジオウに装備される

最後にジオウのマスクに《フォーゼ》の文字が収まる

 

「宇宙に、行く‼︎」

 

姿を変えたジオウは何やらトンチンカンな宣言と共に、両腕のロケットユニットを点火、件の女性に向けて飛び出す

 

「え、ちょっ、はぁっ⁉︎」

 

流石に面食らったのか、うまく防御姿勢を取れずそのままジオウが腰にしがみつくのを許してしまう

 

「しまっ!?」

「おりゃああああああああ!!!」

 

気合い一喝、そのままロケット噴射の方向を無理やり変え、勢いよく地上に降下し、女性を地面に叩き落とし、離脱する

 

「よし、これでー」

「ーセット」

 

ズガァァァァン!!!!

 

油断していたジオウの背後で凄まじい爆発が起き、盛大にジオウが吹き飛ばされる

 

「おわぁあああああぁああぁああ!?」

 

吹き飛ばされたジオウはウォズの目前に頭から地面に突き刺さる形で落下してくる

 

「大丈夫かい、我が魔王!?」

 

ウォズがジオウを助け起す、と共に、土煙が一気に晴れる

 

「ふ、ふふふ、やってくれたわね、魔王!!」

 

巨大なクレーター状に抉れた地面の中央、そこに墜落したはずの女性がにこやかに浮いていた

 

ーその身からドス黒いプレッシャーを吹き上がらせて

 

「油断したわ、ええ、油断してたわ!!まさかこの天の女主人、イシュタルにそんな汚い手で触るどころか、土を付けるヤツが来るなんて、夢にも思わないものね!!」

 

よく見るとそのイシュタルと名乗った女性のつま先にほんのすこしだけ土が付いていた

 

「え、えぇ⁉︎ それっぽっちの汚れで⁉︎」

「……我が魔王、多分そういうことじゃない」

 

的外れな方向に驚くジオウにウォズがやれやれとつっこむ

が、二人共に即座に警戒態勢をとり、武器を構え直す

 

イシュタルの放つプレッシャーが、更に強烈で冷ややかなものに変わる

 

「いいわ、いいわよ。身の程知らずな人間。この女神イシュタルを、本気で怒らせたこと、億万回でも後悔させてあげるわ!!」

 

「……なんだか、超ヤバイ気がする……」

 

ジオウがマスクの下に冷や汗を垂らした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ゲイツ・ツクヨミ墜落地点 どこかの山岳地帯

 

「ツクヨミ!!」

 

赤いスーツの仮面ライダーの呼びかけに反応し、ツクヨミが飛び退る

同時にその地面から赤い槍のようなエネルギーが噴出、ツクヨミが今まで立っていたであろう場所を焼き払う

 

「人間にしてはしぶといですね。魔王、というものの仲間は特別ということかしら」

 

赤いライダーとツクヨミの前に悠然と歩み出てきたのは黒い装束を纏った金のツインテールを揺らめかせる女性

仰々しい装飾のある黒装束は露出が少ないが、所々から覗く白い肌には黒い刺青が走っている

その手には身の丈以上に巨大で重厚な槍が握られている

 

「大人しくなさい。異分子とはいえ、貴方方も人間。冥界では等しく安寧を、このエレシュキガルが約束します」

 

エレシュキガルと名乗った女性は金色の瞳で冷ややかに二人を睨み、告げる

 

「冥界……つまり死ねということか」

 

赤いライダー、ゲイツが変身した仮面ライダーゲイツが悪態をつきながら立ち上がる

 

「すまんがそれは、できん相談だ‼︎」

《ウィザード‼︎》

 

ウォッチをジオウと同じドライバーに装填、ぐるりと回転させる

 

《アーマータイム‼︎》

《プリーズ‼︎》

《ウィザード‼︎》

 

音声と共にゲイツの頭上に魔法陣が出現、変形し、ローブのようなアーマーとなってゲイツに装着される

 

《ジカンザックス‼︎ おーのー‼︎》

 

ドライバーから斧型武器ージカンザックスを取り出し、先程ドライバーにはめたウォッチを装填する

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《ウィザード‼︎ ザックリカッティング‼︎》

 

ジカンザックスを振り回しながらそれを巨大化、そのまま勢いをつけてエレシュキガルに振り下ろす

 

ギャリィィィィン!!

 

派手な擦過音が響く

巨大化した一撃はエレシュキガルを、

否、その槍に阻まれていた

 

「何ッ……!?」

「緩いわ」

 

易々とエレシュキガルはゲイツの必殺の一撃を跳ね返す

 

「バカな……!?」

「なめないで。女神である私が、貴方ごとき人間に押し負けるとでも?」

 

エレシュキガルが槍を振り回し、稲光るエネルギーをそこに収束させていく

明らかに必殺の一撃だ

 

「くっ‼︎」

「ー地の底まで、落としてあげ……ひッ⁉︎」

 

と、解放寸前だったエネルギーがエレシュキガルのかわいらしい悲鳴と共に霧散する

見るとその脚や腰に何やらボロボロな服を着たオレンジ頭の怪人がまるでゾンビのように縋り付いている

 

「あれは……?」

「ちょっ、引っ張らないでッ⁉︎ 離れなさい‼︎」

 

一喝と共に地面から突き出した杭がゾンビ怪人を貫く

貫かれた怪人たちはぐったりと脱力するとオレンジに泡立ち、消える

 

「ー人が神を超えるのは不可能、たしかにその通りだ」

 

ゲイツの背後から落ち着いた声が響き、一人の男性がその前に歩み出る

 

「えっ……」

「お前は……?」

「何人増えても同じです。人間では、私には……」

「いつ私が人間だと言った?」

 

男が不敵に笑う

 

「……貴方、まさか……⁉︎」

 

余裕綽々と、男は両の手をクロスに構える

ーその手に、ゲームカートリッジのようなガジェットを二つ構えて

 

「私は神、唯一神……檀 黎斗神だァ‼︎」

 

静かな佇まいから一変、ねっとりとした声で叫びをあげる

 

「グレード、X−0。変身‼︎」

 

壇 黎斗神はその手のガジェットをドライバーに装填、そのバックルのレバーを開く

 

《ガシャット‼︎》

《レベルアーップ‼︎》

《マイティアクショーン、X‼︎》

《デンジャー‼︎ デンジャー‼︎(ジェノサイド‼︎)》

《デス ザ クライシス……》

《デンジャラスゾンビ‼︎ Woooo‼︎》

 

目前に出現したボードを突き破り、変貌したその姿が露わになる

黒いボディに、欠損した白い装甲。まるで骨が浮き出したゾンビのような不気味な体を、これまたゾンビのようにぐにゃりと動かし、壇 黎斗神ー仮面ライダーゲンムはその赤と青に輝く双眸にエレシュキガルを捉える

 

「ヴェハハハハハハハハハハハ!!!!神は、私一人で十分だァ‼︎」

 

けたたましく笑いながらゲンムがエレシュキガルに向けて駆ける

 

「し、知らない(ヒト)だわぁーーーーーーー!?!?」

 

明らかに狼狽した様子で、完全にテンパったエレシュキガルの悲鳴が山岳地帯に響き渡った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ズガァァァァン、ズガァァァァン‼︎

 

「わ、わぁああああああ!?!?」

 

苛烈極まる空爆がジオウとウォズを襲う

森林だった一帯はこの空爆で木々がなぎ倒され、ぽっかりとハゲ地ができあがってしまった

 

「死ね、死ねェ!! 私にあんな恥辱を与えた罰よこれはァ!!」

 

天空からイシュタルの怒声が響き渡る

 

「あぁ、あぁッ!!もう我慢ならないわ。王には禁止されてるけど、これだけは流石に別よ別ッ!!」

 

と、イシュタルの背後に金色に煌めく穴が出現、その中にイシュタルが消える

 

「……あれ?助かった?」

 

とジオウが胸を撫で下ろす

その上空

更に遥か上

更に、更に天空

 

「あんなゴミに、これを使うなんてホントは嫌だけど、アレを地上に残しておくのはもっと癪に障る……ッ‼︎」

 

金星の公転軌道上

ヒトが宇宙と呼ぶそこに、イシュタルは漂っていた

 

その左手を金星にかざすと、そこに小さな金星が出現、

金色のエネルギー球に変化し、背後に控える弓、マアンナにつがえられる

 

その照準は無論、地球ージオウたちがいるバビロニア

 

「砕け散れ、《山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)》!!」

 

銀河すら揺れる強大なエネルギーを放ち、矢ーというにはあまりにも強大で、あまりにも暴力的な、正しく神の一撃がジオウたちに放たれた

 

地上にも、光を超えたその一矢は既に確認可能だった

 

「………我が魔王、アレは……」

「え?アレ?あー、金星かな……って、なんかこっち来てるゥ!?」

 

ジオウとウォズでも流石に気づいたが、あまりにも遅い

金星に等しい概念質量の《矢》はもうすぐそこにー

 

【ー人よ、×を××××よう(エヌマ・エリシュ)

 

突然、音が響いた

優しく、包まれるような音が

 

「………あれ?」

 

光の矢に焼き払わられた、と思い硬く目を瞑っていたジオウが、いつまでも来ない衝撃に疑問を感じ、その目を開ける

 

そこには、光り輝く鎖に縛り上げられた光の球体があった

徐々に締め付けを強めているようで、球体はどんどん縮小し、霧散した

 

「え、え??」

 

困惑するジオウとウォズの前に、その鎖がまるで生きているかのように降り、螺旋を描きながら姿を変えていく

体のところどころに苔の生えた、大雑把に人を象ったかのような土人形に

 

「うおっ!?」

【やぁ、大丈夫かい?】

 

声のような音を震わせ、土人形は恐らくジオウに向けて語りかける

 

「え、えっ⁉︎ キミ喋った……?」

【あぁ、すまないね。僕はこういう姿だが、キミたちと同じく知能や思考はあるんだ】

「驚いたな……こんな存在がいるのか……」

 

身振り手振りを合わせて話しかけてきた土人形に困惑しながらも、ジオウとウォズの二人は緊張を解いていく

 

「どういうつもりかしら?エルキドゥ」

 

と、上空から再びあの高圧的な声が響く

戻ってきたイシュタルが土人形ーエルキドゥを睨みつける

 

【どういうつもりも何も、こういうつもりだよ。イシュタル】

 

エルキドゥはそれに毅然と答える

 

【僕はサーヴァント・ランサー、エルキドゥ。ここにいる人間のー人理の味方さ】

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ちょっ、もう‼︎ 寄らないで‼︎」

 

エレシュキガルの一喝と共に放たれた杭状の槍が紅の光を放ち、ゲンムを貫く

ゲンムの胸に表示されたライフゲージがあっけなくゼロになる

 

《GAME OVER……》

 

矢ガモの如き姿になったゲンムが脱力し、項垂れ、霧散する

 

「はぁっ、はぁっ……これなら、ひっ⁉︎」

 

一息ついたエレシュキガルの足元に紫の土管が軽快な音と共に出現、その土管から伸びた腕がエレシュキガルの脚を掴む

 

「ヴェハハハハハハハハハハハぁ……‼︎」

 

飛び退るエレシュキガルを尻目に、土管からゲンムが這い出てくる

胸のライフゲージは当然のごとく満タンになっている

 

「残りライフ、95……中々やってくれたなァ……‼︎」

 

実はゲンムは既に4回死んでいる

冥界の女神でもあるエレシュキガルも、きちりとその命が潰えたことを見ている。間違いなく死んでいた、4回とも

なのに、冥界に送れない。どころかよくわからない土管から這い出してくる

 

(わ、訳がわからない……‼︎ 神にしてもめちゃくちゃすぎるのだわ……‼︎)

 

内心ではめちゃくちゃパニックになっているがそれでも引き下がれない

この後ろには、我らが主神にして偉大なる《王》が統べる国があるからー

 

「ヴェハハハハハハハハハハハ、は?」

 

ゲンムのやかましい笑い声が疑問形に変わる

 

「なんだ、これは……?」

 

その後ろで戦いを見守っていたゲイツたちも困惑を露わにする

三人の周りに、桃色の花弁が舞い、霧が発生してきていたのだ

霧と花吹雪は段々とその勢いを増し、三人の姿を隠していく

 

しばらくするとその霧も、花吹雪も晴れて……

 

「い、いない⁉︎ 逃げられたのだわ⁉︎」

 

ゲイツたちの姿は、忽然と消えていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

山岳地帯 ある洞窟

 

「……ここは……?」

 

花吹雪と共に消えたゲイツたちは、いつの間にかこの洞窟にいた

側には同じく困惑しているツクヨミと、変身解除し落ち着いて辺りを見回している壇 黎斗神もいる

 

「やぁやぁ、急に連れてきてしまってすまない」

 

洞窟の奥から、もう一人分の声と、二人分の足音が聞こえてくる

現れたのは、白いフード付きローブを纏い、大きな杖を携えた青年と黒い鎧を身につけ、身の丈ほどある盾を携えたショートカットの少女

 

「貴様は……?」

 

ゲイツが再び変身しようとウォッチを構える

 

「そう警戒しないでくれ、明光院 ゲイツくん。僕はキミたちの味方……というよりか、依頼主と言った方がいいかな?」

「何……?」

 

青年の妙な言い回しでゲイツがあることを思い出す

 

「あの白いウォッチ、アレは貴様の仕業か?」

「ご明察。急に呼び立てて申し訳ないね…」

 

「改めて名乗ろう。僕はサーヴァント・キャスター。真名をマーリン」

 

「キミたちに、時代の修正を頼んだものだよ」




前々から構想してたのがようやく筆に乗りましたw

拙い出来ですが、楽しんでいただけたら幸いです(о´∀`о)


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第2話 「B.C.2600:人神統合文明」

「人理の味方、ですって?」

 

こちらを見下ろしながら、黒髪の女神は嗤う

 

「私たち、そして私たちを管理する王がいなければ生きてもいけない人間の歴史なんか、存続させてなんになるのかしら?」

【なんになるか、か。それは僕には返答が難しいところだ】

 

女神の詰問に土人形は首を捻りながらも凛然と答える

気にくわないのか、女神は笑顔ながらも眉間にシワを寄せる

 

「はっ、私たちに作られた兵器風情に答えられる質問じゃなかったわね。もういいわ、そこの人間たちと一緒にー」

 

『女神イシュタル』

 

と、4人しかいないはずの森林(跡地)に低く、威厳のある声が響く

 

「‼︎」

 

今の今まで見下した態度を崩さなかったイシュタルが冷や汗を垂らしながら姿勢を正す

 

「お、王よ。い、いかがなさいました?」

 

慣れない敬語でどこか、恐らく先程の威厳ある声の主に伺いを立てる

 

『いかがも何もあるまい。貴様、(オレ)の国にアレを放ったな…?』

 

声の凄みある詰問にイシュタルが更に冷や汗を垂らす

 

「な、なんのことでしょうか?」

『隠し立ては(オレ)の目には通用しないことなど知っているだろうたわけが。アレの使用は禁じていたはずだぞ』

「は、はい……申し訳ありません……」

 

相変わらず声の主はわからないが、声だけでもその苛立ちが伝わってくる

 

『加えて必要のない森林資源の破壊、貴様の大雑把さはなんとかならんのか?ん?』

 

『ーまぁ良い、戒律違反には罰則を下すまでだ』

 

と、それを眺めていたジオウたちに何か違和感が走る

ーと同時に前方の地面に派手な土煙が上がり、衝撃音が響く

 

「……ッあ……‼︎」

 

そこに転がっていたのは、先程まで空を漂っていたイシュタルである

その体にはいくつもの金色に光り輝く武器が突き刺さり、赤い血が滴っていた

 

『下がれ、イシュタル。そこな魔王どもなぞ眼中にない。捨て置け』

「……承知、しました……」

 

先程使ったものと同じ金色の門を開き、イシュタルの姿が消える

 

『感謝しておけよ魔王。女神の気まぐれで死ぬはずだった貴様の命……(オレ)が拾ってやったのだからな』

 

声が愉快そうに告げる

おもむろに動いたのは、エルキドゥだ

 

【キミが、英雄王ギルガメッシュかい?】

『土人形風情に割いてやる言葉なぞ無いが、その通り』

 

と、どこからか巨大な粘土板がジオウたちの頭上に出現する

そこに映し出されたのは金色に輝く豪奢な鎧を身にまとい、腰に歪んだ形状の翠色のベルトを装着した怪人

肩鎧には翼のような意匠があり、頭部はどこか鷹などの猛禽類を彷彿とさせる

 

(オレ)こそ、人を統べ、神を統べた原初の王、ギルガメッシュである』

 

そう仰々しく宣言したギルガメッシュは腰のベルトに手を添える

と同時にジオウたちを再び違和感が包む

次の瞬間、3人の周囲には金の門から出現した夥しい数の金色の武器が敷き詰められていた

 

「なっ……」

 

『理解したか?雑種。これが、人も神も繋げて統べた絶対なる王たる(オレ)の力よ』

 

映像越しでは無い、声が響く

ジオウたちの目前にいたのは、あの映像に現れたギルガメッシュ王であった

ギルガメッシュはおもむろに右手を上げると、展開していた武器を霧散させた

 

『何故イシュタルを下げたのか、そんな下らん質問に先んじて答えてやったまでよ。何、簡単だ』

 

『貴様らなど、いつでも排除できる。それだけよ』

 

ジオウが息を呑む

目の前に立つその王は、そのプレッシャーだけでもイシュタルとは比べ物にならない強烈さがあった

 

【キミが、ギルガメッシュ……そうか】

『……気安いぞ、土人形。貴様ごとき道具が、(オレ)の名を軽々しく口にするな』

 

エルキドゥの呼びかけにギルガメッシュが怒気を孕んだ声を漏らす

 

【すまない。その名前が、何故か僕の記憶領域から離れなくてね】

『フン、まぁ良い』

 

ギルガメッシュが踵を返す

 

『逆らうも逆らわぬも、貴様らの好きにするが良い。だが、それは無駄であると知れ』

 

それだけ言い残すと、ギルガメッシュは出現時と同様に忽然と消えた

 

【…………】

 

エルキドゥは、その後ろ姿をどこか寂しげに見つめていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「時代の修正、だと?」

 

ゲイツがマーリンと名乗った青年を睨みつける

 

「ああ、その通り。これはキミたちの世界にとって必要だし、これが放置されてしまうと、この世界は崩壊する」

 

さらっととんでもないことをマーリンが口走る

 

「世界の崩壊……⁉︎」

「あぁ、そうだとも。なんの比喩でも無い、正真正銘の世界の崩壊さ」

 

近場の岩に腰掛けながら、マーリンが続ける

 

「実を言うと、この事件は僕らにも経緯はわからない」

「なんだと…?」

「気がつけばこの時代に彼女と共に召喚されていて、『狂った時代を修正しなければならない』ということとその方法だけが頭に残っていたのさ。そこまでの経緯はどうやっても思い出せない」

 

やれやれと肩をすくめる

と、マーリンの側にいた少女がおずおずと歩み寄る

 

「自己紹介が遅れました。サーヴァント・シールダー、真名マシュ・キリエライトと申します。マーリンさんと行動を共にしているものです」

 

と丁寧に自己紹介した少女は深々と頭を下げる。それに釣られてゲイツとツクヨミも頭を下げる

 

「さて、話を戻そう。そもそも何故世界が崩壊するのか、簡単な理屈だよ。歴史が歪んだからだよ」

「歴史が歪む……改変されたということか」

「さすがタイムマシンなんてものを使うだけあって理解が早いね。そういうことさ」

「歴史が改変されるなんて、そんな唐突なことが……」

「だが、実際に起こっている。現にここ、バビロニアも大きく歪んでいるんだ。何より、僕たちの知識に残る王と今の王は、あまりに在り方が違う」

「バビロニア……そうか、」

 

マーリンの言葉に何か思い当たったのか、ツクヨミがコンソールを開いて情報をサルベージする

 

「ギルガメッシュ王朝……紀元前2600年に栄えた国……原初の王であるギルガメッシュが統治した王朝……」

「あの年代は、そういうことだったのか……」

「………おかしいわ、これ」

 

ツクヨミがコンソールの文章を指差し、ゲイツ、マーリン、マシュ、そして先程から不気味なほど静かに話を聞いていた壇 黎斗神が覗き込む

 

「ギルガメッシュ王は神の時代に終止符を打って、人の時代を築いた……それなら確かに、あの女神とやらがのさばっている理由がわからんな」

 

そこの文章によれば、ギルガメッシュは神を旧時代として廃し、それにより人間の時代を確立したとある

ここがギルガメッシュが生きた時代ならば、あのような形で権能を露わにした女神がのさばっているはずがないのだ

 

「綻びが早く見つかって重畳だね。恐らく、歪みの原因はギルガメッシュ王で間違いない」

「ならば、タイムマジーンを修復し次第ウルク王朝に向かうのが当面の目標だろうな」

「その前に少しいいだろうか?」

 

おもむろに手を挙げたのは、壇 黎斗神

 

「キミたちがするべきことはわかった。マーリンにマシュ、キミたち二人がここにいる理由もわかった。だが、私がこのような場所にいるのは何故なんだ?」

 

至極真っ当な、それでいて誰もが失念していた疑問であった

 

「………あれ?彼、キミたちの仲間じゃないの?」

「断じて違う。それよりも、聞きそびれていたが何故貴様がここにいる?壇 黎斗王?」

「壇 黎斗神だ。王などと陳腐なものじゃない。私をどこで知ったか知らないが、キミたちには面識が無いはずなんだがな?」

 

ゲイツはその返答に首をかしげる

 

壇 黎斗、この男とゲイツには実は面識があった

何せ彼は、壇 黎斗王を名乗り、アナザーオーズへと変身していた人間だったのだから。それにあの強烈なキャラクターは忘れように忘れられ無い。人違いなどでは無いはずだが……

 

「むぅ……正直なところ、僕にもわからない。ただ、クロト君はどうやらサーヴァントに近い存在としてここにあるようだね」

「……聞き忘れていたな、そのサーヴァント?というのはなんだ?」

「そういえば説明がまだだったね。サーヴァント、それは人類の歴史に刻まれた英雄の伝承の影法師、英霊の現し身のようなものなんだ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「へぇ〜じゃあ、エルキドゥもそんな英雄の一人なんだ」

 

半壊したタイムマジーンから落ちたパーツや、壊れた部品を集めながら、傍に佇むエルキドゥにソウゴが話しかける

 

【まぁ、そういうことになるね。僕自身には、自覚は無いんだけどね】

「自覚がない?それって……?」

【そのままの話だよ。僕は、何故僕がサーヴァントとして召喚されてるかわからない】

 

どこか寂しげに、エルキドゥが続ける

 

【僕は神に造られた兵器だ。ある程度のことはこなせる。だがそれだけなんだ。目的もない、残した偉業もない、それなのに何故かこの土地、この歴史に呼ばれた。サーヴァントとして】

「………」

【ギルガメッシュ、何故かあの王の名前は覚えてる。でも違和感が拭えない。………どうやら、僕は今故障しているようだ】

 

自嘲気味に、エルキドゥが話を切り上げる

 

(見た感じ故障ってわけでも無い気がするんだけどな……)

 

しげしげとエルキドゥを眺めながら、ソウゴも煮え切らない表情を示す

 

「我が魔王、応急処置は完了したよ。一応時間移動もできるが、安全ではなくなっているがね…」

 

タイムマジーンからウォズが顔を出す

 

「お疲れ様。さて、これからどうしようかな……」

 

ソウゴが腕組みをしながら悩む

 

【僕が呼ばれたということは、この時代には何か異常が起きているかもしれない。僕はそれを調べに行くとするよ】

 

エルキドゥがその巨体を起こす

 

「あの王様に会いに行くの?」

【あぁ、あのギルガメッシュ王も気になるけど、何より彼にイシュタルが従うのが考えづらい。手がかりがあるとすれば彼だろうと思うから】

「そっか……」

 

ソウゴがエルキドゥに向き直る

 

「じゃあ、俺も行くよ。王様に会いに」

【………何故だい?】

「なんとなく、かな。エルキドゥとは知り合ってすぐだけど、でも放ってはおけないし」

 

あっけらかんと、ソウゴが続ける

 

「それに、王様は絶対困ってる人は見捨てないと思うから、さ」

 

エルキドゥにソウゴが微笑みかける

 

【………ほんと、おかしな人間だね、キミは】

 

表情はわからないが、それでもエルキドゥは微笑んだように見えた

 

「話勝手に決めちゃってごめんね、ウォズ。俺はこれからエルキドゥと一緒に王様に会いに行くんだけど、一緒に来てくれないかな?」

 

ソウゴの問いにやれやれとウォズは肩をすくめる

 

「私の答えは決まっているだろう、我が魔王。私も向かうよ」

「ありがとう、ウォズ」

 

こうしてエルキドゥという新たな仲間が一旦ながら魔王一行に加わった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「いやぁ、これはすごいな……まさかタイムマシンなんてものに乗れるなんて、サーヴァントにもなってみるものだ」

 

と呑気にマーリンが話しているが、タイムマジーンの狭いコクピットはゲイツ、ツクヨミに加えてマーリン、マシュ、壇 黎斗神を乗せたためにすし詰め状態である

墜落したタイムマジーンをなんとか修理した一行は、ひとまずギルガメッシュ王がいるであろうウルクを目指して、今度は撃墜されないように地上スレスレを走りながら移動していた

 

「しかし……不気味なほど何も無いな」

 

モニターから周囲の景色を眺めながらゲイツが呟く

 

モニターに映し出された周囲の景色は平和そのものだった

都市部に近づくにつれ、作物が豊富に実った畑やら、放し飼いされた羊、整備された水路など、都市機構に準ずるものや、人間の生活の痕跡らしいものがポツポツと現れてきたが、どれも整備が行き届き、荒らされた痕跡などが無い

不気味なほどに綺麗なのだ

 

「不気味なほど、とは言い得て妙だな。あまりにも綺麗すぎる」

「確かに……これじゃあ、まるで人の生活の証拠はあっても、そこに誰かが生きている痕跡がないような……」

 

と、そうこう話しているうちに遠目に大きな神殿のようなものが見えてきた。その城下には升目状に整備された街並みが広がっていた

 

「……私の記憶とは少し違いますが、ウルクが見えてきましたね」

 

少し訝しむような顔をしたが、すぐに緊迫した表情に戻ったマシュがウルクへの到着を一行に告げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『魔王一行とやらがこの街に向かっているな。エレシュキガルめが戦闘した一団は既に目と鼻の先だな』

 

ウルクの王城の玉座に鎮座し、ギルガメッシュが気怠げに告げる

その眼前に平伏していたエレシュキガルが冷や汗を垂らしながらそれを聞いていた

 

(ま、まずいのだわ……‼︎ 私が逃してしまったばかりに、王のお膝元でもあるこの街への侵攻を許してしまったのだわ……‼︎)

『エレシュキガル、』

「は、ひゃいっ!?」

『そう身構えるな。貴様のそれは失敗などではないわ。(オレ)はそのような指示なぞ出してはいない』

 

呆れたようにエレシュキガルに声をかける

 

『彼奴らは捨て置け。歯牙にかけるほどの価値もない』

「し、承知しました‼︎」

「承知しました……」

 

ダラダラと汗を垂らすエレシュキガルと対照的に、同じようにその横に平伏したイシュタルはいささか不満げに応える

 

『貴様らは貴様らの役割を果たせ。イシュタルは天空よりの監視、場合による天誅執行、エレシュキガルはそろそろ《間引き》を始めよ』

「はっ……‼︎」

『それと……』

 

おもむろに、ギルガメッシュが左手を二人にかざす

同時に、二人の女神の眼前にそれぞれ奇妙な形状のガジェットが金の門から溢れ落ちる

 

少し、大型だが壇 黎斗神が使っていた《ゲームガシャット》によく似た形状のものだ

 

「これは……?」

(オレ)からの気まぐれな下賜である。好きに使うがいい』

 

ガジェットを拾い上げ、未だに不思議そうにしているエレシュキガルとはこれまた対照的に、ギルガメッシュの意図を察したのかイシュタルは邪悪に微笑む

 

「承知したわ。イシュタル、監視に行ってきまーす‼︎」

 

挨拶もそこそこに、イシュタルがマアンナを呼び出し、王城からロケットの如く飛び出す

それに続いてエレシュキガルも軽くギルガメッシュに会釈して王城から出て行く

 

『臣下に施すも、王たる責務よ…』

 

ギルガメッシュは盃に並々と注がれた葡萄酒を悠然と飲み干し、笑った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ウルク近郊 ソウゴ、ウォズ、エルキドゥ一行

 

【そろそろウルクが見えてくる頃合いだよ】

 

ソウゴとウォズを乗せたタイムマジーンに並走する形で、脚部をキャタピラ状に変化させて走行しているエルキドゥが告げる

彼(彼女?)の言う通り、遠景に巨大な神殿のようなものが見える

 

「思ったよりも早く着いたね、ウォズ」

「あぁ……」

 

楽観的なソウゴと対照的に、ウォズはまだどこか警戒している様子だった

 

【ー止まって】

 

エルキドゥがソウゴに声をかけ、タイムマジーンを停車させる

エルキドゥは空を見上げている

 

「怪しそうなガラクタと土人形、はっけーん♪」

 

案の定というか、なんというか、エルキドゥの視線の先に浮かんでいたのはあの女神 イシュタルだった

 

【懲りないな、イシュタル。王様にあれだけお叱りを受けたのに、まだ僕らに構うのかい?】

「王のお情けで見逃された自覚がないのかしら、貴方たちは? それに、今は私自身の仕事の最中だからこれは問題ないわ」

 

再びソウゴたちと遭遇した時のような余裕の表情でイシュタルが告げる

 

【仕事……?】

「そう、私の仕事は王が築き上げたこの国、この文明の監視と警備。そのうち必要無くなるでしょうけど、この文明を脅かす身の程知らずな外敵を撃ち殺すのが私の仕事よ」

【女神であるキミが、あの王に従っているのか?】

「不敬な言葉は慎みなさい、土人形。確かに嫌味なところはあるけど、あの王の力は本物よ。私たち神と、人を統治して束ねて平定したあの王は、本物なのよ」

【…………】

「人と神様が共存してるの……?」

 

タイムマジーンから降りてきたソウゴがイシュタルに問う

 

「……人間のクセに、ギルガメッシュ王のことを知らないの貴方…?」

「いや、ギルガメッシュ王は知ってるよ。でも、俺が知ってるギルガメッシュ王とはどうも繋がらなくて」

「………いいわ、冥土の土産に教えてあげるわ」

 

「ここは、人神統合文明バビロニア。半神半人のギルガメッシュ王が神をまとめ、人を諌めた楽園。人は何ものにも脅かされず、神はその信仰を一身に受ける。双方が双方の幸せを享受できる大国なのよ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おや、旅人さんとは珍しい。ゆっくりしていきなさいな」

 

通りすがった女性が、ゲイツたちを見てにこやかに会釈する

警邏などに引っかかることもなく、あまりにも簡単に一行はウルクへと入国できていた

が、そこにはある意味異様な光景が広がっていた

 

人々は、誰も働いていなかった

 

ある人は家の中で真昼だというのに眠りこけ

ある人は大通りのど真ん中で寝転び日向ぼっこをしている

子供たちは自由に騒ぎ、遊び回り、あまつさえそこに大人まで混じっている

 

現代ほどものに溢れた時代ではないとはいえ、農耕などの気配もないのは明らかに異常だった

 

「すまない、ちょっといいかな?」

「おや、旅人さん。何か用かい?」

 

壇 黎斗神が通りすがった壮年の男性に声をかける

 

「何故皆遊び呆けているんだ? 仕事や、日々の生活の為の労働をしなくていいのか?」

「おかしなことを言うもんだな……そんなものいらないだろ? 女神様や、ギルガメッシュ王がなんでも与えて下さるんだから」

 

あっけらかんと、その男は答えた

 

「私たちがするべきことは、王や女神様に祈ることだけだよ。あぁ、今日も平穏と幸福をありがとうございます……」

 

手を合わせ、天に一礼した男はゆったりとまたどこへともなく散歩を再開した

 

「……道中見た景色の違和感はコレか……」

 

ゲイツが道中の景色を思い出し呻く

道中のあまりにも平和なあの景色は、今思い返すと誰もいなかった

水路、畑、どれも管理が必要な設備だ。現代のような自動設備が配備されているならまだしも、この時代に管理している人間が誰一人としていないのは流石におかしい

 

「さっきの男の言葉を借りたら、神々や王がそれらを管理して、作物などを人間に分配している、ということか。いやはや、思ったよりも異様なことになっているな……」

 

マーリンも思わず渋面を作る

と、そんな思案を巡らせる一行の前で遊んでいた子供が倒れた

 

「キミ‼︎ 大丈夫?」

 

ツクヨミとマシュが慌ててその子供に駆け寄る

 

「酷い熱……このままでは危険です、早く手当をしてあげないと…」

「だい、じょうぶ……」

 

心配するマシュに荒い息をあげる子供が弱々しく応える

 

「大丈夫って、そんなわけないわ。早く治療を……」

「これも、えれしゅきがるさまの、おめぐみ、だから……」

「エレシュキガル、先の冥界の女神のことか」

 

と、いつの間にか現れた女性が、ツクヨミからその子供を預かる

 

「この子は、エレシュキガル様に選ばれたんです。あの方の国、冥界で永遠に平穏を過ごす権利を与えられたんですよ」

 

病に苦しむ子供に声をかけることもなく、女性は幸せそうな顔でツクヨミに告げる

 

「冥界に行くということは、死ぬということなんだぞ……⁉︎」

 

あまりにもあんまりな女性の言い分に、ゲイツがたまらず怒声をあげる

 

「そうですよ。私は果報者です。いつか私も行くその先で、子供が待っていてくれるのですから……‼︎」

 

女性が流したのは感涙だったのだろう

あまりの事態に、ゲイツもツクヨミも、マシュやマーリンも言葉が出てこない

 

「そうか。ならば、ありがたく神の恵みを受け取るがいい」

 

動いたのは、壇 黎斗神

どこからか取り出した紫のガジェットーガシャコンバグヴァイザーを周囲にふりかざし、何やらオレンジに煌めくものを散布した

それを浴びた周囲のウルク人たちは一様に苦しみ出し、次々と倒れていく

 

「貴様ァ‼︎何をしている‼︎」

 

あまりの奇行、蛮行に怒りを爆発させたゲイツが黎斗神の胸ぐらを掴み上げる

 

「簡単なことだ。彼らにとって、死が幸福ならば与えてやったまでのこと。時代が違うんだ、新種のバグスターでも誕生すれば、私の利益になるからな」

 

ねっとりとした悪辣な笑みで壇 黎斗神は応える

 

「貴様……‼︎ やはり貴様は……ッ‼︎」

 

「貴方、ほんととんでもないことしてくれるわね」

 

と、凛然とした声が響く

そこに現れたのは黒衣の冥界の女神

突然の出現に、ゲイツも黎斗神を離し、警戒態勢をとる

 

「………ッフ、ハハハ、ヴェハハハハハハハハハハハ!!やはり現れたな!!女神ィ!!」

 

突然の哄笑。弾けたように態度が一変した黎斗神にエレシュキガルが明らかに萎縮する。先の戦闘のゾンビゲーマーがかなりトラウマになったらしい

 

「え、何、何なの貴方……!?」

 

ビクつくエレシュキガルを尻目に、黎斗神は再びバグヴァイザーを構え、今度は周囲の人間からオレンジの粒子ーバグスターウィルスを回収していく

あまりの事態に再びゲイツが驚愕の顔を示す

 

「まさか、演技だったのか……⁉︎」

 

「その通り。冥界の女神の恵みが熱病、しかも死後の魂を手厚く管理しているならば、冥界に送る人数も取り決められていると推定できる。ならばァ、イレギュラーな死者を出そうとすればヤツはそれを阻止せざるを得ない!!」

 

黎斗神がふんぞり返りながら、エレシュキガルを指差す

 

「………まぁ、新種のバグスターが欲しかったのは事実だが」

「おい待て、」

 

途中まで半ば感心した様子だったゲイツがとんでもない黎斗神の独白に噛み付く、

 

「やめちゃうの? 残念、《間引き》の手間が減ったと思ったのに」

 

それにエレシュキガルは心底残念そうにそう返した

 

「………何?」

 

これは流石に予想外だったのか、黎斗神が珍しく呆けた顔を示す

 

「丁度、また人口が増えていたからね。私の権能で、間引く予定だったのです。人口が増え過ぎれば、快適性が損なわれてしまいますから」

「どういうことだ……これは、天命のように、定めてあったものではないのか!?」

 

珍しい黎斗神の怒声に対し、女神は当たり前のように返す

 

「ええ、その子が発症したのは偶然よ。治療はしないけど」

 

「病の治療?そんな資源の無駄遣いは必要ありません。死すら、神の恵みと信じている彼らにはそんな措置はただの信仰の妨げですから」

 

「生贄などという蛮行も必要としない、それでいて資源の無駄な消費は抑えられる、実に有意義ではありませー」

 

「ふざけるなァッ!!」

 

女神を遮り、叫んだのはー壇 黎斗神

 

「神が管理する?それはその通りだ。人間なぞより優れた神がそれらを管理するのは責務であり、特権だ……」

 

「だが、信仰に甘んじて人々を飼い殺し、それを運命にかこつけるだと……? そんなものは神の恵みでは断じてない!!」

 

「神は試練を与える、試練の前に多くの人間は膝を屈する、だが、それを得て人々は前に進む!! 時には、私のように神まで昇り詰めんとするものも出る!!」

 

「愚かな、そんなことになれば、神と人……最後の最後には人々で潰しあいが始まるだけだとー」

 

「それがどうした……? こんな停滞に甘んじた世界など、神である私は認めない。死すらただ運が悪いと割り切り、前に進むことすら忘れた世界も信仰も認めないィ!!」

 

「時に恵みを享受し、時に神に抗う、それこそが真なる信仰であり、人から見た神の存在意義だァ!!」

 

憤慨したまま、黎斗神はガシャットを構える

 

「明光院 ゲイツ、そしてそこのサーヴァント二人、力を貸せ。あの駄女神も、この時代の王も、否定せねばならないィ!!」

「……元より俺は、そのつもりだ」

 

ドライバーを装着し、ゲイツがウォッチを構え竜頭をノックする

 

《ゲイツ‼︎》

 

ウォッチをドライバーに装填、ぐるりとドライバーを回転させる

 

「変身!!」

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダーゲイツ‼︎》

 

背面に現れたデジタル文字盤からエネルギーベルトが展開、ゲイツを包み込み、その姿を赤い仮面ライダーのものに変化させる

変化が終わると共に、《らいだー》の黄色文字がマスクへと収まる

 

「グレード、X−0‼︎」

《レベルアーップ‼︎》

《デンジャラスゾンビ‼︎》

 

黎斗神も、ゲンムゾンビアーマーへと変身を完了する

 

「どこまでも不遜、不敬な人間。貴方には神罰が必要なようね‼︎」

 

エレシュキガルも合わせて神気を解放させる

 

「神罰を受けるのはそちらだァ‼︎ 冥界の女神ィ‼︎」

 

負けじとゲンムも凄む

それに対し、エレシュキガルは悠然と冷たい視線を返しながら、あるものを取り出す

 

「……何ッ⁉︎」

 

ゲイツとゲンムがそれに驚愕の表情を漏らす

 

それは、間違いなくゲンムが使っているものと同じ、ガシャット

 

「特別です。王から賜ったこの力で、貴方たちを魂すら残さずに排除しましょう」

 

エレシュキガルはそう言い放つと、ガシャットを起動する

 

《タドル・ファンタジー‼︎》

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「なんだかすごい国なんだね……今のバビロニア……」

 

ソウゴが感嘆の声を漏らす

 

「今更、そのすごさを理解しても遅いわ。残念ながらね」

 

余裕の笑みを見せながら、イシュタルはその手にガシャットを握る

 

【なんだ、アレは……?】

 

「王から力をもらった私に、貴方たちは今から消し炭にされるんだから!!」

《バンバン・シュミレーション‼︎》

 

ガシャットを起動させたイシュタルはそれを自らの胸に突き立てる

ガシャットはそのまま、イシュタルの中に消え、同時に彼女の周囲に戦艦の艤装のような砲台が出現、マアンナも二つに分裂し、砲台が増設される

 

「蜂の巣にしてあげるわ、魔王様?」

 

最後にその目元に展開されたバイザーを赤く煌めかせ、イシュタルは獰猛に笑った




第2話です‼︎

ギルガメッシュ(仮)の片鱗やら何やら出てきましたが、勘のいい人はもしかすると、もうカラクリに気づいているかも…?



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第3話 「B.C.2600:人と神」

「吹き飛びなさい、魔王!!」

 

武装強化したイシュタルからの雨霰の砲撃、咄嗟に腕を盾のように変化させたエルキドゥがそれを防ぐ

 

【ソウゴ、今のうちに】

「わかった!行こう、ウォズ‼︎」

《ジオウ‼︎》

「あぁ、」

《ウォズ‼︎》

 

「「変身‼︎」」

 

《仮面ライダージオウ‼︎》

《仮面ライダーウォズ‼︎ ウォズ‼︎》

 

エルキドゥの背後から変身した二人が飛び出す

 

「もう一回、撃ち落とす‼︎」

《アーマータイム‼︎》

《フォーゼ‼︎》

 

初戦と同じく、フォーゼアーマーに変身したジオウが空中のイシュタルに肉薄、

が、後方にぐるりと砲座を回したマアンナの砲撃に阻まれる

 

「うわっ!?」

「二度も同じ手は喰らわないわよ!!」

 

振り返ったイシュタルの腕部艤装から強烈な砲撃が放たれ、ジオウに直撃、とうとう墜落する

 

「うわぁあああああああぁああぁああぁああぁああぁああ!!」

「ッ我が魔王!!」

 

アーマー解除し墜落してきたジオウをウォズがキャッチする

 

「ありがとう、ウォズ……」

「哀れ、実に哀れで脆いわね魔王」

 

底冷えするかのような冷たいプレッシャーを放ち、イシュタルが3人を見下す

 

【ー】

 

ジャラッ

 

「無駄よ、」

 

ズガガガガンッ!!

エルキドゥが腕を変化させた鎖の束で攻撃しかけるが、即座に砲撃がそれを弾く

 

「なんでかは聞かないであげるけど、性能の50%も引き出せてない貴方が、私に敵うとでも?」

【やはり、それは知られているか……】

 

エルキドゥが呻く

それを見て飽きたとばかりに盛大なため息をついたイシュタルは、全砲門を3人に向けてエネルギーを溜め始める

 

「もういいわ、死になさい」

 

雨の如き砲撃が、ジオウたちに降り注ぐー

 

《アーマータイム‼︎》

《カメンライド‼︎ ワーオ‼︎》

《ディケイド!ディケイド!》

《ディーケーイードー!!》

 

「まだ、終わってない!!」

 

《ファイナルフォームタイム‼︎》

《フォ、フォ、フォ、フォーゼ‼︎》

 

ギィィィィィィィン!!!!

 

つんざく擦過音、

 

ジオウたちに降り注ぐはずだったエネルギーの奔流は、ジオウたちの前に形成されていた磁力フィールドに阻まれていた

フィールドを作り出したのは、ジオウ

ライドウォッチの力を一段階上昇させて放つ、ディケイドウォッチの力でフォーゼウォッチの力を増幅、磁力を操るマグネットステイツの力を発揮させたのだ

 

「うおりゃああああああ!!!!」

 

そのままエネルギーを収束、それをイシュタルに向けて跳ね返す

 

「はぁッ!?」

 

すんでで跳ね返されたエネルギーを避けるイシュタル

二度の予想外の反撃に、流石に警戒を強めてジオウを睨みつける

 

「イシュタル、だっけ。聞きたいことがあるんだけど…」

「気安く呼ばないで、人間。何かしら?」

「さっき言ってたけど、人間が神様に生かされて、何もできない、する必要がないっていうの、あれって、ギルガメッシュ王のやり方なの?」

 

突拍子も無いジオウからの問いに、イシュタルは顔をしかめる

 

「そうよ、それがどうかしたの?」

「それって、人間は神様がいないと何もできないから?」

「当たり前でしょ。脆くて愚かな人間は、私たちがいなければ自滅して滅びるしか無い。だから私たちがー」

 

「それなら、俺はその王様を認められない」

 

イシュタルの言葉を遮り、ジオウが言い放つ

 

「………何ですって?」

 

引き攣った笑顔でイシュタルが聞き返す

 

「俺は、その王様を否定する。そう言った」

 

ジオウはあっけらかんともう一度返答する

 

「………身の程知らずもここまできたら滑稽ね、ほんと」

 

イシュタルは静かに、マアンナを二つ合体させて、これまでに無いほどのエネルギーを収束させていく

 

「魂すら残さず死になさい。神を否定した神罰としてね!!」

 

イシュタルの一喝

破滅の一矢が、ジオウへと放たれる

 

「悪いけど、俺はまだ死なない」

 

ジオウに神威の矢が直撃するー

 

はずだった

 

《ジオウ・サイキョー‼︎》

《魔王斬り‼︎》

 

その矢は、一文字に斬り裂かれて爆散した

 

「……うそ……何それ……?」

 

イシュタルの顔が驚愕に歪む

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ ライダー‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII‼︎》

 

イシュタルが見据える先に立っていたのは、その姿を大きく変化させたジオウ

マスクに二つの時計盤を収め、より魔王へ近づいたジオウの新たな姿

 

仮面ライダージオウII である

 

「あんたに恨みは無い。でも、あんたが邪魔するなら……」

 

「俺は全力で、あんたを突破する」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「タドル・ファンタジー……何故貴様がそれを‼︎」

 

エレシュキガルが構えたガシャットを見てゲンムが吠える

 

「ギルガメッシュ王より預かったのです。有事の際の、対抗策として‼︎」

 

起動したガシャットを胸に突き刺す

同時に黒衣の上に禍々しい青紫の鎧が出現、その背から黒いマントを展開、たなびくマントに合わせてエレシュキガルの周囲から頭の無い骸骨のような怪人が何体も出現する

 

「アレは……まさか、竜牙兵か? 神代の魔女が使役すると聞いていたが……」

 

油断なく杖を構えるマーリンが呟く

 

「なんて数だ……」

「タドル・ファンタジーは、プレイヤー自身が魔王となり世界を征服していくゲーム……恐らくあの骸骨は、魔王軍の兵隊をあの形のバグスターとして出力しているのだろう」

「何故アレを知っている、黎斗」

「黎斗神だ‼︎ 何故も何もない、あのタドル・ファンタジーは私が開発したゲームガシャット……紛れも無い神たる私の力の片鱗……」

 

どこか憎々しげにゲンムがその拳を握りしめる

 

「私の許可なく私のガシャットを生み出したその王、及び許可なく不正なガシャットを使用した貴様は、ゲームマスターである私が排除するゥ‼︎」

 

ゲンムが駆ける

 

「行きなさい!!」

 

周囲の竜牙兵をエレシュキガルがゲンムにけしかける

が、ゲンムは臆することなく、ドライバーに刺さった白いガシャット《デンジャラスゾンビ》のそれを抜きバグヴァイザーに装填、二つのボタンを同時押しし、続けてBボタンを叩く

 

《クリティカル・デッド》

 

不気味な音声と共にゲンムの足元から影が展開、その中からゲンムとよく似たゾンビのような怪人たちがホラー映画のように溢れ出す

 

「ヒィッ!?」

 

流石に女性陣にはキツイ光景だからか、ツクヨミが口を押さえ、マシュが悲鳴をあげる。マーリンもマーリンで「うわぁ」という顔をしている

 

「ヴェハハハハハハハハハハハ!!神の恵みを受け取れェ!!」

 

ゲンムの指令に従い、ゾンビ怪人たちが竜牙兵に殺到していく

数は圧倒的だが、竜牙兵の方が脆いのか、ゾンビ怪人がしぶといのか、ゾンビ怪人たちが竜牙兵を押し込んでいく

 

「くっ、なんなのだわアレ……!! めちゃくちゃすぎるのだわ!!」

「よそ見していていいのかァ⁉︎」

 

竜牙兵の再召喚を準備し始めた一瞬の隙に、竜牙兵とゾンビ怪人でごった返す中からズルリとゲンムが這い出し、その背にしがみつく

 

「なっ、いつの間に⁉︎」

「フハハハハハハハ!!女神はゲーム慣れしていないと見える‼︎ タドル・ファンタジーの難易度選択を誤ったなァ!?」

《ガシャコン・スパロー‼︎》

 

その両手に鎌型の武器を作り出し、エレシュキガルに次々と切りつける。が、一瞬ふらつきながらも、その手に携えた盾槍を振りかざし、その鎌での連撃を防ぎきる

 

「なめないで‼︎ ハァッ‼︎」

 

その手に蒼炎を纏わせ、エレシュキガルが振りかざすと地面から恐竜の巨大な頭部が出現、ゲンムを飲み込む

 

「ぬぅ、ぬああああああああああああ!!!!」

 

しばらくもがいていたゲンムだが、壮絶な断末魔と気の抜けるライフゲージの全損音を残し、頭部ごと消滅する

 

「とか言って、また土管から出てくるのでしょう⁉︎ 二度は同じ手は食いません‼︎」

 

エレシュキガルが油断なく周囲を警戒する

だが、ゲンムがあの土管から出てくる気配も、土管が出現する気配も感じられない

 

「え、っと……やったのだわ‼︎ あの不気味なのを倒せたのだー」

 

「よそ見していていいのか、女神‼︎」

 

《リバイブ・疾風ゥ‼︎》

《スピードクロー‼︎》

 

「⁉︎」

 

咄嗟に左腕のアーマーで背後をかばうエレシュキガルに素早いながら重い一撃が突き刺さる

 

「ぐぅっ!?あなた、いつの間に!?」

 

そこにいたのは、仮面ライダーゲイツ

 

ただしその姿はより複雑ながらより身軽に変化、スラスターや背中のウィングユニットなどが目立つ新しい姿に変化している

 

仮面ライダーゲイツリバイブ、ゲイツの強化形態である

 

「はっ‼︎」

 

ゲイツリバイブ疾風のクローを使った素早い連撃がエレシュキガルを襲う

先程のゲンムの連撃もそうだが、手にしている武器が大型の盾槍である彼女にはこの手のスピードを活かした戦法は天敵中の天敵である

 

「このっ、まとめて吹き飛びなさい!!」

 

エレシュキガルが地面に槍を突き立てると同時に、ゲイツリバイブの足元が青白く発光、蒼白に輝く業火の槍が噴き出す

これは、スピード特化で装甲が薄いゲイツリバイブ疾風には耐えられない。それを確信していたエレシュキガルの顔が、すぐに驚愕に塗り替えられる

 

《パワードタイム‼︎》

《リ・バ・イ・ブ・剛烈ゥ‼︎》

 

そこに立っていたのは、先程までの軽量な青い装甲から一転、逆三角のマッシブな筋肉を彷彿とさせるオレンジ色の重厚な装甲に包まれた姿

 

「残念だったな。俺はまだ健在だぞ?」

 

ゲイツリバイブのもう一つの形態ーパワー重視の剛烈である

 

「なんなのよ、もう‼︎」

 

次々と更なる力を見せるライダー達に業を煮やし、槍に炎を纏わせて、一体となったエレシュキガルが突撃してくる

 

ザシュッ!!

 

巨大な槍が、その敵を貫く

 

(やったのだわ!!)

 

確固たる手応えに、エレシュキガルが顔を綻ばせる

だが、槍が貫いていたのはゲイツリバイブでは無い

 

そこにあったのは、あの憎たらしい黒と白のゾンビの体

 

「ハッハハハハハハハハハハ!!時間差コンティニューだァ!!」

 

コンティニューによる復活をずらしたゲンムが、必殺の一撃をゲイツリバイブを庇う形で受けていた

……よく見ると脇に表示されている残りライフが95から92に減っており、先程の恐竜の噛みつきは中々大きなダメージだったらしい

 

「ブゥンンン!!」

「しまっ!!」

 

腹に突き立った槍を掴んだゲンムは、力任せにそれを振り回してエレシュキガルを吹き飛ばす

 

「きゃっ!?」

「今だ!!明光院 ゲイツゥ!!」

「わかっている!!」

 

無論ライフゲージがゼロになっていたゲンムはゲイツリバイブに発破をかけながら消滅、すぐに土管から再出現する

槍を失ったエレシュキガルは、最大の防御手段を失っている。またとないチャンスだ

 

《パワードのこ!!》

 

のこモードにチェンジしたジカンジャックローにゲイツリバイブライドウォッチを装填

 

《スーパーのこ切斬!!》

「ハァッ!!」

 

ズガァァァァン!!

剛烈の溢れ出るパワーを乗せた一撃がエレシュキガルの鳩尾を捉える

 

「が、ァッ……!?」

 

流石に女神ゆえか、目立った負傷は見られなかったが、その胸からガシャットが排出、同時に粉々に砕け散る

それに合わせ竜牙兵も次々と消滅。ツクヨミやマーリンを盾で庇っていたマシュも事態の変化に気づき、盾から顔を覗かせる

 

「すごい……あの女神エレシュキガルを……‼︎」

 

周囲で成り行きを見守っていたウルク人達もにわかに騒ぎ出す

 

「女神様を……倒した……?」

「あの人たち、本当に人間なのか……?」

「ヴェハハハハハハハハハハハ!!崇めろ!!私こそが神だァ!!」

 

誰も彼に向けたわけではないのだが、歓声に反応したゲンムがまたやかましく笑い出す

 

「くっ……まだよ……‼︎ まだ私は……‼︎」

 

ボロボロながらもまだ戦意は失っていないらしく、よろよろとエレシュキガルが立ち上がる

それに対し、ゲイツリバイブが警戒態勢を取り、ゲンムがゆらりと振り返る

 

が、ゲンムは何かを見たのか、なぜかゲイツリバイブに駆け寄る

 

《ポーズ……》

 

ゲイツが聞いたのは謎の音声

次の瞬間、目の前には金色の武器に針山のように滅多刺しにされたゲンムの姿があった

 

「ぐっ……おぁッ……‼︎」

 

膝から崩れ落ちたゲンムが消滅、すぐに復活してくる……が

 

「残りライフ、71……フッ、まさか、あの一瞬で私を20回も殺すとはな……‼︎」

 

ゲンムのライフ、コンティニュー回数は20回も減少していたのだ

 

「がはっ……」

 

ゲンムに気を取られていたゲイツリバイブが次に気づいたのは、同じように針山のように滅多刺しに刺され、倒れるエレシュキガルの姿

 

「ギ、ギルガメッシュ王……な、ぜ……!?」

 

何が起こったのか、最期までわからなかったかのように呻いたエレシュキガルは、そのまま地面に倒れ臥す

 

『間引きのついでだ。悪く思うな』

 

荘厳な声が響き渡る

金色の武器が突き刺さり、倒れ伏した人々の死体の只中に、それは立っていた

猛禽のような意匠の金色に輝く荘厳な鎧、腰に巻いた翠に輝くバックルを持つベルト、何よりも、女神すら圧倒せんとする静かながら圧倒的なプレッシャー

 

『少々、見逃してやれば……思ったよりもよく囀るではないか、雑種』

 

この神と人を束ねた国を統べる絶対的な王が、そこに立っていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「このッ!!ざけんじゃないわよ!!」

 

怒声と共にイシュタルが再び砲撃の雨を降らせる

 

《ジカンギレード‼︎ 剣‼︎》

「よっ、はっ‼︎」

 

だがその手にサイキョーギレードとジカンギレードを二刀流に装備したジオウIIは次々とその砲撃を叩き落とす

 

「その王様が作ったこの国は、たしかに幸せかもしれない‼︎」

 

「だけどこれは、国なんかじゃない‼︎」

 

「こんなものは、俺が目指す王様じゃあっちゃいけない‼︎」

 

「そ、れ、が、なんなのよ!!もういいわ、滅びなさい!!」

 

再びマアンナにあの極大のエネルギーが装填、ジオウIIへと放たれ、受け止めるも溢れたエネルギーがタイムマジーンや3人を飲み込むー

 

「ーその未来は、もう見た!!」

 

そんな絶望の未来を、時を統べる魔王は否定する

マアンナの充填が始まる数秒前、ジカンギレードとサイキョーギレードを合体させ、大上段に構える

 

《フィニッシュタイム‼︎》

 

サイキョージカンギレードから光の柱と見まごう巨大な光刃が展開、その刀身に、《ジオウサイキョウ》となんとも自己主張の激しい文字が刻まれる

 

《キング‼︎ ギリギリスラッシュ‼︎》

「ハァッ!!」

 

マアンナへエネルギーの充填が終わるが早いか、その巨大な刃がイシュタルへと振り下ろされる

 

「え、ちょっ、いやあああああああああああああ!!!!」

 

斬撃の直撃を受け、放たれる寸前だったエネルギーも暴発、空中でイシュタルが大爆発する

 

【すごいな……】

「あれが、我が魔王の本気さ」

 

感嘆の声を漏らすエルキドゥにウォズが得意げに返す

 

ジオウIIはサイキョージカンギレードをしまうと、2人を連れてイシュタルの墜落地点へと向かう

そこには、やはりというかボロボロになって倒れているイシュタルがいた。その体は金色の粒子へと解け、少しずつ消えていっている

 

【……イシュタル、キミまさか、サーヴァントだったのか?】

 

エルキドゥが少し驚いた様子で問う

 

「……そうよ、私たちは、アイツが召喚したサーヴァント……」

【なるほど、これでようやく合点がいった。キミが、かの王にいいようにされているのは何故だか不可思議だったからね】

「………」

 

不貞腐れたような顔を見せたイシュタルは、そのままに粒子へと霧散していった

 

【これでほぼ間違いなく、あの王が何やらこの時代をおかしくしているだろうことがわかった。ウルクに急ごう】

「うん、俺もあの王様に言ってやりたいことができた」

 

ジオウとウォズは変身したままタイムマジーンに乗り込み、エルキドゥの変形を待って発進した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ウルク 大通り

イシュタルとの交戦地点から数分、ジオウたちはようやくウルクへと到着した。そこには……

 

「くそっ……‼︎」

「ぐぅッ……‼︎」

 

「ゲイツ‼︎」

 

ボロボロになり、地に伏せるゲイツとゲンムの二人がいた

ゲンムの側には、彼のライフが残り10であることを示すモニターが表示されている

 

「ソウゴ‼︎」

 

大通りの隅でマシュの盾に守られていたツクヨミとマーリン、マシュがジオウたちに走り寄る

 

「ツクヨミ……とそっちは……」

「説明は後だ、常盤 ソウゴくん。想像以上に厄介な相手だよ……かの王は」

 

『ようやく貴様もたどり着いたか、魔王とやら』

 

しばらく前に聞いた、あの声が響く

ゲイツとゲンムの前に立っていたのは、紛れもなくあのギルガメッシュ王であった

 

『全く、そこな二人は実につまらん。エレシュキガルめを倒した故に少しは楽しめるかと思ったが……興醒めだ』

 

二人を一瞥し、つまらなそうに吐き捨てたギルガメッシュは金色の武器が突き刺さった血溜まりを続けてちらっと見てジオウたちに向き直る

 

『イシュタルも、エレシュキガルも、挽回のチャンスをくれてやったというのに、なんとも不甲斐のない。後で召喚し直しておかねばな』

 

「ねぇ、王様。一ついいかな?」

 

気安い一言ではあるが、どこか質量を持ったジオウの声が響く

 

『なんだ?魔王』

 

ギルガメッシュが興味深かそうに首をかしげる

 

「王様は、この国が、この国の人たちが、好き?」

『何………?』

 

ジオウの、ソウゴの問いにギルガメッシュは一度逡巡し、

 

『ククク、ハッハッハッハッ!! 何を問うかと思えば、そのようなことか』

 

どこか愉快そうに笑い、答える

 

『この国?人民?どうでも良いなそんなものは』

 

と、一笑に伏した

 

(オレ)はこの世全てを識り、この世の全ての財を得たものだ。これ以上に欲するものなど、あろうはずがあるまいて』

 

『この国を作り、人を治めたのはひとえに(オレ)が完璧故にである』

 

『人の争い、神の諍い、どれも見るに耐えん。故に(オレ)が管理した。それまでのこと』

 

『そこに生きる人も、国という在り方も(オレ)にはどうでも良い』

 

ギルガメッシュのその答えを聞いて、ジオウは

 

「そっか……やっぱり認められないな、それ」

《ジオウII‼︎》《ジオウ‼︎》

『なんだと……?』

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎》《ライダー‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII‼︎》

 

再びジオウIIに変身し直し、サイキョーギレードをギルガメッシュに向ける

 

「王は、民も国も、みんな大切に思って守るのが仕事だ。民を大切に思わない、信じもしないお前が、最高の王様なはずがない‼︎」

 

『ー言い残すことはそれだけか、愚かな雑種よ』

 

サイキョーギレードとジカンギレードの二刀流を背後から現れた黄金の武器を両手に装備したギルガメッシュが悠然と受け流し、大きく弾き飛ばすと、右腕に新たに取り出した黄金の銃を放ち、ジオウIIの後ろから伸ばされていたエルキドゥの鎖を弾く。その流れで左手にハルバードを取り出し、いつの間にか背後を取っていたウォズのジカンデスピアを弾きその体を強かにうちすえる

しかし、待っていたとばかりにウォズが、ミライドウォッチを換装

 

《デカイ‼︎ ハカイ‼︎ ゴーカイ‼︎》

《フューチャーリングキカイ‼︎ キカイ‼︎》

 

金色のメカメカしいパーツがウォズの周囲に出現し、ウォズの姿がよりロボットに近いマッシブなものに変化、ハルバードと共にギルガメッシュの腕をその万力のような握力で押さえ込む

 

「我が魔王、エルキドゥ‼︎今だ‼︎」

「ハァッ!!」

 

ウォズの合図と共にギルガメッシュの背後からジオウIIが斬りかかり、エルキドゥの鎖も飛来する

 

『小賢しいわ、雑種‼︎』

 

ギルガメッシュの一喝から、その背後に向けて金色の門が開き、黄金の武器が降り注ぐ

 

「ぐあぁあああぁああああああ!!!!」

 

たまらずジオウII、ウォズが吹き飛び、防御が間に合わなかったエルキドゥの体にも深い損傷が生じる

 

『減らず口を叩いておきながら、実につまらんぞ、雑種』

 

ギルガメッシュが飽きたかのように倒れ伏したジオウIIとウォズを見下ろす。エルキドゥには一瞥だけよこし、すぐに視線を戻す

 

「それなら……ッ!」

 

ジオウIIのマスクの時計針が回転する

ジオウIIの能力、簡易未来予知である

ジオウIIの目には、ギルガメッシュがそこから動かず、ベルトに触れる姿が写る。意図は不明だが、再び武器を取り出そうとしていると予測する

 

「ーその前に、倒す!!」

《ジオウ、サイキョー‼︎》

 

サイキョーギレードとジカンギレードを合体、それを腰だめにジオウIIが構え、駆け出しー

 

『ムダだ、雑種』

《ポーズ……》

 

ギルガメッシュがベルトのボタンをクリックすると、周囲の時間がピタリと静止する

 

凍りついた時間の中を悠然と歩き、その手に黄金の宝剣を召喚、ジオウの首に当てる

 

『ーさらばだ、王を騙る愚かな雑種が』

「ー捕らえたぞ、王ゥ!!」

 

ガシリと、自身のみが動けるはずの世界で、ギルガメッシュは何ものかに羽交い締めされた

 

『なッ、なんだと!?』

 

今まで余裕綽々だったギルガメッシュが、初めて驚愕の声を上げる

 

「ヴェハハハハハハハハハハハ!!!!!!思い上がったなァ、ギルガメッシュゥ!!!!」

 

王を羽交い締めしていたのは、唯我独尊を極めた神

壇 黎斗神ー仮面ライダーゲンムが、レベル0の姿でギルガメッシュを押さえていたのだ

 

『貴様、なぜ、なぜ(オレ)の時間で動けている!!』

 

ゲンムを振り払い、宝剣で斬り捨てる

倒れ伏し、消滅するとすぐに土管からゲンムが飛び出す

 

「残りライフ、9か。ここだけで随分と私の貴重なライフが無駄になってしまったな……だがァ、今はそんな運命に感謝してやろう…」

『質問に答えよ、下郎!!』

 

ギルガメッシュが吠える

それにくっくっと静かに笑いながら、ゲンムはギルガメッシュを睨め付ける

 

「我の時間?笑止!! 私が作り上げた《仮面ライダークロニクル》、その最強の戦士の力を流用しているだけで、思い上がるなァ!!」

『仮面ライダークロニクル……?なんだそれは、出鱈目をほざくな‼︎』

 

完全に余裕を失ったギルガメッシュがゲンムに怒鳴り散らす

そんなギルガメッシュを見下ろすように睨め付けながら、ゲンムは一際重厚なガシャットを取り出し、起動する

 

《ゴッドマキシマムマイティX‼︎》

 

「ようやく理解した、何故私のライフが99だったのか……」

 

「何故私がサーヴァントなぞと同じ形式で召喚されたのクァ……」

 

「何故‼︎まだ構想段階だった筈のこのガシャットを持っているのかァァァァ!!」

 

ゲンムが吠える

 

「答えはただ一つ……」

 

「私と、我が父の境地を踏みにじり利用した貴様を、直々に裁くためだァァァッ!!!!」

 

手にしたゴッドマキシマムマイティXガシャットをゲーマドライバーに装填、レバーを開く

 

《マキシマム、ガシャット!!》

《ガッチャーン!!》

《フーーメーーツーー!!》

《最上級の神の才能!!》

《クロトダーン!!クロトダーン!!》

 

荘厳な音楽と共に、彼の自信と自己顕示欲をこれでもかと詰め込んだ歌が騒がしく流れ出す

と、それに合わせて背後に広がったモニターからゲンムの顔をそのまま大きくしたような鎧が出現する

 

「グレード、1.000.000.000(ビリオン) 、変身!!」

 

ガシャットの頂部を、宣言と共にノックする

 

《ゴッドマーーーキシマーーーーーム!!エーーーックス!!》

 

背後に出現したゲンムの巨大な頭部が、ゲンムを飲み込む

次の瞬間、その顔面から勢いよく太く逞しい脚や腕が出現、巨大頭部の頂部から内部に取り込まれたゲンムの頭部が現れ、何やらカッコいいポーズをとり、着地する

 

「神を縛り、人を堕落させ、あまつさえ唯一神たる私の才能を踏みにじった紛い物の王よ、」

 

ゲンムが巨大な腕に備わる拳を、ギルガメッシュに向ける

 

「これより示すは、真なる神の才能である。神の恵みを、ありがたく受け取れェェェ‼︎」

 

『ほざくなァァァァ!!』

 

怒声と共にギルガメッシュが金の門から雨あられと黄金の武器を降り注がせていく

ゲンムは悠然とその黄金の雨の中を進んで行く、間違いなくその巨体に武器は突き刺さっているが、傷一つつかず、無論ライフゲージも小揺るぎすらしていない

 

「ブゥン!!」

 

ズガッシャァァァァァン!!

 

ゲンムの巨大な拳がギルガメッシュを捉え、アッパーの要領でその体を垂直に打ち上げる

 

『ぐぁあああああああああああああ!!!!!!』

 

ギャグかと思うほどの勢いで打ち上がっていくギルガメッシュは、その勢いのまま大気圏を離脱、宇宙へと投げ出される

突然の無重力に狼狽し、もがき、ひっくり返ったギルガメッシュの目に写ったのは、巨大なマスコットじみた顔

 

「その身に余るほどに、くれてやろう」

《ガッチャーン!! カミワザ!!》

《ゴッドマキシマーーーーム、クリティカーーーール、ブレッシィィィィィィィング!!!!》

 

ゴッドマキシマムの極太の右脚に黒く荘厳に輝くエネルギーが収束し、ギルガメッシュに向けられる

 

「これが、神の恵みだァァァァァァァァァァァァ!!」

 

隕石衝突にも等しい、いやそれ以上のエネルギーがギルガメッシュを直撃、打ち上がりよりも更なる加速をつけて赤熱しながらウルクへと落下する

 

ズガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!

《神のォ、一撃ィ!!》

 

衝撃が小クレーターを作り出し、盛大な土煙が静止した世界に巻き上がる

そこから宙返りを決めながら、悠然とレベル0に戻ったゲンムが着地する

 

《リ、リス、タート……》

 

小クレーターの中から断末魔のような音声が響き、世界が動き出す

 

「あ、あれ?……うわっ、何あのクレーター!?」

 

止まっていた間のことは無論知らないジオウIIは目の前に形成されたクレーターに驚きの声を上げる

 

「フハハハハハハハァ!! 私の才能は、やはり今日も恐ろしい!!」

「………誰?」

 

ゲンムの姿を知らないジオウIIが側で高笑いするゲンムに首を傾げていると

 

『グゥルァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

 

クレーターの土煙を吹き飛ばし、獣のような咆哮を上げたギルガメッシュが立ち上がる

 

「まだ生きていたか……」

 

ゴッドマキシマムのクリティカルブレッシングを受けたために、腰のベルトは無残にも粉砕され、黄金だった鎧は煤けて鈍い銀色に変色している

 

『雑種が、雑種どもがァァァァァァァァァ!!許さん、貴様らは、この世界ごと終わらせてくれる!!』

 

ギルガメッシュが右手をかざすと、そこに今までのものとは違う、何やら円柱のようなよくわからない物体が現れる

 

「まさか、バヴ=イル……アレを抜くのか!?」

 

今の今まで飄々としていたマーリンが明らかに焦ったような声を上げる

 

『くるがいい!!我が至高のざー』

 

パシッ

 

と、瞬間ギルガメッシュの右手からバヴ=イルが消える

 

『ーな』

 

すぐに行方を探したギルガメッシュの目に写ったのは、その切り札がシアンに揺らめく怪盗の手に握られている様ー

 

「お宝はいただいたよ、アナザーギルガメッシュ」

 

『な、き、さまァァァッ!!』

「仮面ライダーディエンド⁉︎」

 

予想だにしない珍客にウォズがが素っ頓狂な声を上げる

 

「安心していいよ、今回は味方だから…さっ」

 

ディエンドはその手に収めたバヴ=イルをジオウIIに投げ渡す

 

《アタックライド インビシブル…》

「また会おう、魔王くん」

 

嵐のように現れた怪盗はその姿を透過させ、消える

 

「なんで、俺にこれを?」

 

投げ渡されたバヴ=イルをジオウIIは、ソウゴは不思議そうに眺める

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

気がつくと、ソウゴは真っ白な空間に立っていた

 

「え、あれ⁉︎ ここどこ⁉︎」

 

今まで立っていた筈のウルクの地が影も形もないことに驚きを隠せずうろちょろと辺りを見回す

 

「やれやれ、何やら騒がしくなったと思えば静かになり、果ては珍客とは……どこまでも(オレ)を弄んでくれるな」

 

荘厳な声が響く。アナザーギルガメッシュのような、それでいてそれよりも軽く、柔らかいのに、耳にするだけでその身を押しつぶさんとする圧を纏った声が

息を呑み、振り返るソウゴ

その前に立っていたのは、どこまでも神々しい黄金の鎧と、どこまでも整った面立ちの、一人の男

 

「雑種、喜べ。この英雄王ギルガメッシュに謁見するなど、早々得られん光栄だぞ?」

 

英雄王、ギルガメッシュ

ただ名乗っただけ、それでもー

 

「あんたが、本物の王様なんだね」

 

ソウゴにはそこに立つのが本物であると自覚できた

 

「フン、不敬な物言いの雑種よ。まぁ良い、今は状況が状況故に許しておくとする。だが次はないぞ」

 

「わかった」

 

「貴様……もう良い。突然だが問おう雑種よ。貴様は、王になりたいと望むか?」

 

「うん。俺は、最高最善の魔王になる」

 

「ハッ、最高最善でいて魔王とは、実に酔狂な夢よ。まぁ、貴様のごとき雑種が、王に辿り着くなぞ普通ならば夢物語よ」

 

「そうかなぁ……?」

 

「ー重ねて問おう、魔王を目指す雑種。貴様は、己の民を信じられるか?どれほど愚かでも、どれほど矮小でも、」

 

「………わかんない」

 

「……ほう?」

 

「俺は、まだまだ勉強中だから。民を守るのが王の仕事ってのはわかるけど、信じ切れるかはわからない」

 

「………雑種らしい、曖昧極まる答えよ」

 

「俺が今信じられるのは、人間は前に進めるってことだけ。神様なんかいなくても、自分たちで足掻いて、前に進んでいける、そう俺は信じられる。俺自身がそうだったから。まぁ、ゲイツたちがいたからだけどね」

 

「フッ、フハッ、フハハハハハハハハハハハハ!!」

 

ギルガメッシュは腕を組んだまま心底愉快そうに笑う

それを見たソウゴは首をかしげる

 

「そんなおかしいこと、いった?」

 

「いや、あまりにも青臭い、あまりにも真っ直ぐにすぎる答えに拍子が抜けただけよ」

 

ひとしきり笑ったギルガメッシュは、再び威厳を振りまく表情に戻り、ソウゴを見据える

 

「貴様の覚悟、信念、それは見せてもらった」

 

「ー貴様が王なぞ、まだまだ程遠い」

 

ギルガメッシュの言葉にも、ソウゴは怯まない

 

「ー故に学べ。幸い、これより先に貴様は(オレ)以外に不遜にも王として人理に名を連ねた者たちに、数にして6人ほどまみえるであろうよ」

 

(オレ)以外の王など、所詮ほとんどは愚にもつかない雑種であるが……雑種である貴様にはちょうど良かろう」

 

そう閉めた英雄王は、ソウゴになにかを差し出す

それは、金色に煌めくライドウォッチ

 

「特別だ。(オレ)の力、この時だけ貴様に預けてやる」

 

「王の道の一歩にはあまりにも大きいだろうが、何、旅立ちは盛大な方が興が乗ろうよ」

 

ソウゴがウォッチを受け取るのを見届けた英雄王は、不敵な笑みを浮かべる

 

「ありがとう、王様」

 

「礼なぞ不要だ。疾くあの不敬極まる紛い物を潰して見せよ」

 

と、ソウゴの姿が薄まり、消えていく

消えゆく直前に、ギルガメッシュが再び口を開く

 

「我が友に、よろしく伝えておけ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『ぐぁあああああああああ!!!!』

 

獣じみたアナザーギルガメッシュの咆哮に、ソウゴの意識が現実に引き戻される

 

「夢……?」

 

いや、違う。バヴ=イルを握っていたその手には、英雄王から預かってライドウォッチが握られていた

 

「なんか、行ける気がする!!」

《ギルガメッシュ‼︎》

 

ギルガメッシュライドウォッチの竜頭をノックし、ドライバーに装填、ぐるりと回転させる

 

《キング‼︎ アーマータイム‼︎》

《ギルガメッシュ‼︎》

 

音声と共に、ジオウの眼前に腕組みをした黄金のアーマーが出現、瞬時に分解され、ジオウの体に黄金のアーマーが装着、肩には天地を割く王の剣を模したパーツが装着され、最後にそのマスクに《ギルガメッシュ》と文字が収まる

 

「これは……」

 

さすがのウォズも、魔王が披露した未知なる鎧に困惑し絶句している

ーそんな預言者を尻目に、桃色の花弁を散らしながら白いフードの青年が歩み出る

 

「ー祝福しよう‼︎」

 

「ー過去と未来を統べる時の魔王、その覇道を歩む王」

 

「ー名を、仮面ライダージオウ ギルガメッシュアーマー」

 

「ーかの王はここに、新たに王を学んだのさ」

 

としたり顔でジオウに並び立つマーリンが締めくくる

 

「え、誰……?」

「………私の仕事……」

「ま、マーリンさんが言うんですね…」

「なんでかわからないけど、言ってみたかったのさ。いやぁ、これ気分がいいねぇ‼︎」

 

爽やかに笑うマーリンをマスク越しにもわかる怨嗟の表情でウォズが睨みつける中、ジオウが前に歩み出る

 

「さぁ、決着をつけよう。アナザーギルガメッシュ‼︎」

『ほざくな‼︎』

 

咆哮に合わせ、アナザーギルガメッシュが金色の門から武器を撃ちまくる。が、ジオウも同じように右手を正面に向け、背後に金色の門を開き、大量のジカンギレード(剣モード)を発射し、相殺していく

 

『バカな……んんんんァァァ!!』

 

撃ち合いが不利と判断し、武器を携えたアナザーギルガメッシュがジオウに駆ける。それに対抗してジカンデスピアとジカンザックスを召喚、アナザーギルガメッシュの武器を弾き、その煤けた鎧に二度、三度と攻撃していく

 

「おりゃああああああ!!」

『ぐっァァァァァァ!?!?』

 

ジオウの一撃に、アナザーギルガメッシュが大きく吹き飛ばされる

 

『くそっ、くそォ!!』

 

最早王の威厳をカケラも感じない姿でジオウに背を向け、逃げていく

 

が、突如ジオウの背後から伸びてきた金色に輝く鎖の束がそれを許さなかった

 

『ガッ、ぐぁあああああ!?』

 

鎖に絡めとられたアナザーギルガメッシュが、情けなくジオウの前に叩きつけられる

 

「やっと、やっとわかったよ。僕のこの不調が」

 

女性とも、男性とも取れる声が響く

その声につられ、横を見るとジオウの隣には、簡素な白い服を纏った、長い緑の髪を揺らした中性的な人物が立っていた

その周囲には、先の金色の鎖が渦巻いていた

 

「もしかして、エルキドゥ⁉︎」

 

そのジオウの言葉に、エルキドゥは静かな笑みで応える

 

「ー僕の思考を妨げていたこの渦巻く不快感、これは……怒りらしい」

 

僕の友(ギルガメッシュ)の名を騙り、僕と僕の友(ギルガメッシュ)が愛したこのウルクを汚した罪、贖ってもらおうか」

 

静かながら、怒りが吹き出しているかのようなプレッシャーを放ちながら、エルキドゥはその鎖を己が身に束ね始める

 

「ジオウ、共に決めよう」

「わかった‼︎」

 

エルキドゥに応え、ライドウォッチの竜頭をノックしドライバーを回転させる

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《ゲート・オブ・タイムブレーク‼︎》

 

大規模にジオウの背面から門が展開、大量のジカンギレードやジカンザックス、ジカンデスピアが装填される

 

「いっけぇ‼︎」

 

それら大量の武器が一気に、アナザーギルガメッシュへと降り注ぐ

 

その後方、金色の渦巻く鎖と一体化したエルキドゥが追従してくる

 

「ー呼び起こすは星の息吹。人と共に歩もう、」

 

「ー僕は、故に」

 

「ー《人よ、神を繋ぎとめよう(エヌマ・エリシュ)》‼︎」

 

鎖の束と一体化し、黄金の巨大な槍となったエルキドゥ、降り注ぐ武器でダメージを負ったアナザーギルガメッシュにそれを避ける術は無論あるはずもなく……

 

『あ、ぐギャアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!』

 

金色の流星に余すところなく全身を貫かれたアナザーギルガメッシュは断末魔と共に爆散、ぼろぼろになったみすぼらしい身なりの男が転がり、その側に二つのアナザーライドウォッチが転がり落ちる

 

《ク、クロノ、ス………》

 

緑と黒のライダーの顔が描かれたライドウォッチは粉々に弾け飛び、機能を停止した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「王さま、死んだった」

 

その様を遠く、ウルクの王城から眺めていたゴスロリ少女はつまらなそうに呟く

 

「いやぁ、行けると思ったんだけどな〜このスーパーアナザーライダー君は」

 

と、そのゴスロリ少女の背後からハットを被った男が現れる

その手には、ヒビが入り機能を停止したアナザーギルガメッシュライドウォッチが握られている

 

「オーマジオウの代わり、見つからない?」

「いやいやぁ、落胆するのはまだ早いよ、トレグ。これはまだ7分の1だからねぇ」

 

ハットの男はニヤニヤと楽しげに笑いながらトレグと呼ばれた少女の頭を撫でる

 

「次はそうさなぁ、見世物としては最高に楽しいし、ローマでも覗いてみようかなぁ」




次章予告

「歴史の歪み、残すところあと6つ存在している」

マーリンの導きに応じ、ウルクを出立した一行が次にたどり着いたのは、暴君が支配し日夜血で血を洗う血闘競技が繰り広げられる古代ローマ帝国

「さぁ、命がけで娯楽を享受せよ。余と共に、狂乱たる興行を楽しむがよい!愛しいローマの民たちよ‼︎」

「よろしくね、魔王様。あたしはブーディカ。クラスはライダーだよ」
「ライダー……なんだか親近感ある気がする!」

闘技場で再び巡り巡るサーヴァント、そしてライダーとの出会いー

「ワテクシのプロの技で、観客も皇帝も釘付にしてあげるわ‼︎」
「こっちも負けたら痛い目に会うんだ、悪く思わないでくれよ‼︎」

さらに蠢きだす、黒幕の影

「ジオウ、邪魔い。死んで」
《フェイクタイム‼︎》《王蛇‼︎》

次章 仮面ライダージオウ The KING order
『0054:血闘繚乱遊戯皇国』編


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人神統合文明編キャラ紹介

1〜3話に登場したオリジナル怪人、オリジナル形態の簡単な解説です


・アナザーギルガメッシュ

身長/192㎝ 体重/74kg

特色/王の財宝からの宝具召喚、アナザーバグヴァイザーツヴァイによる時間停止能力

モチーフ/猛禽類

 

英雄王ギルガメッシュの力を封入したアナザーギルガメッシュライドウォッチと仮面ライダークロノスの力を封入したアナザークロノスライドウォッチをウルクに住まうある浮浪者が謎のタイムジャッカーに埋め込まれて誕生した「スーパーアナザーライダー」

ギルガメッシュほぼそのままのスペックを持ち、王の財宝からの宝具召喚はもちろん、千里眼も行使可能。本編では青い怪盗にスられて最後まで使用できなかったが、乖離剣エアも使用できる

加えて仮面ライダークロノスの時間操作能力まで得ており、ジオウたちがカラクリに気づけないうちは王の財宝との合わせ技で彼らを翻弄していた

ウルクの民が変身した割には随分と不遜ではあるが、アナザーとはいえ強力な英雄王の力に飲まれていたとされる。加えてアナザー化で反転した思考となり、あそこまでバグったながら完璧な治世が完成したのである

小ネタとして、乖離剣エアよりも汎用性が高く、原作でもここぞでよく使用されている宝物なのに、アナザーは最後まで使用しなかった宝物が一つ存在している

 

・仮面ライダージオウ ギルガメッシュアーマー

 

ギルガメッシュから下賜されたギルガメッシュライドウォッチで変身したジオウの新形態

ギルガメッシュ同様の鎧で防御力が強化されており、ゲートオブバビロンバビロンから召喚するジオウ、ゲイツ、ウォズの武器を用いて戦う

必殺技はゲートオブバビロンバビロンから大量の武器を一斉に放つ《ゲート・オブ・タイムブレーク》

乖離剣エアや神の鎖も使えるが、王がロックしているために召喚されないようになっている

 

・エルキドゥ(オリジン)

 

ギルガメッシュが人理から消えた為に《神が作った土人形》として登録されたエルキドゥの姿

一応神の鎖に近しいものにも変形できるが、歴史の矛盾などによりスペックが50%も発揮できていない

ギルガメッシュの友として英霊化したノーマルエルキドゥと比べると感情の起伏が少し薄い

 

・イシュタル シュミレーションゲーマー

 

アナザーギルガメッシュより下賜されたガシャットギアデュアルβを使用し、イシュタルが強化変身した姿

ガシャットギアデュアル自体は機械だが、能力を手に入れる媒介代わりに使っている故に問題なく使用できている(起動して胸に刺すだけなので操作が簡単なのもあるが)

依代の少女もある意味で射撃の適性が高いこともあって神代とは縁もゆかりもない能力ながらそれなりに使いこなせている

 

・エレシュキガル ファンタジーゲーマー

 

アナザーギルガメッシュより下賜されたガシャットギアデャアルβを使用し、エレシュキガルが強化変身した姿

兵隊をバグスターとして作り出す能力を如何なく発揮してはいたが、大軍指揮に慣れていなかったか、はたまたゲンムの言う通り難易度選択をミスったのか、思ったよりも力を引き出しきれていない

機械や必要以上の小細工を必要としないこの女神たちにガシャットを預けたのもある意味采配ミスだったのかもしれない



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第2章
第4話 「0064:血闘場と赤髪の乙女」


ウルクでの激闘からしばらくして

 

「これで、歴史の修正は為されるということか」

 

ゲイツが腕組みをしながらマーリンに視線を移す

 

アナザーギルガメッシュが撃破された後、ウルクではすぐに時代の修正が始まった。都市を覆う外壁が現れ、遊び呆けた人で溢れていた大通りは露店や、どこかに仕事に向かう人々で瞬く間にごった返した

流石に未来人が気軽に古代の人々と接触はできないからとマーリンの魔術でウルクの外まで退避することになった

 

「どうやら、僕のここでの役目は終わったようだね」

 

そう告げたのはエルキドゥ

既にその体は、イシュタルが消滅した時と同様に金色の粒子に解けはじめている

 

「そっか……なんだか少し寂しいな……」

 

成り行きの旅だったとはいえ、しばらく共に行動していたソウゴが寂しそうな顔を見せる

それを見たエルキドゥは、薄く微笑んでソウゴの肩に優しく触れた

 

「ーありがとう、ソウゴ。僕の友を取り戻してくれて」

「お礼なんていいよ。俺もあのニセモノにはムカついてたし」

 

それを聞いたエルキドゥはもう一度優しく微笑むと、今度こそ跡形もなく消えていった

 

「貴様も行くのか?壇 黎斗」

 

ゲイツが声をかけたのは、散々この場を引っ掻き回していた男

彼も体が粒子に解け始めている

 

「壇 黎斗神だ。この時代は既にデバッグが終わったのだろう?ならば、私がいる理由がない」

 

素っ気なくそれだけ答えると、ゲイツに背を向けたまま手を振り、そのままそそくさと消滅していった

 

「……全く、どこかの魔王よりも掴み所がないヤツだ」

 

はぁ、と憑き物が落ちたかのようなため息が溢れた

 

二人を見送ったのち、タイムマジーン2台の修復を完了させた一行はいよいよ、元の時代への帰還をはじめようとしていた

 

「……あーその、実に言いにくいのだが……」

 

マーリンの歯切れの悪い発言にゲイツやツクヨミが首を捻っていると

 

「ーまだこんな感じになっている歴史があるんだよね?」

 

とあっけらかんとソウゴが笑って言った

 

「………何?」

「どういうこと、ソウゴ?」

 

訝しむゲイツとツクヨミに向き直り、ソウゴが答える

 

「実はさっき、このライドウォッチを手に入れた時に、王様から伝えられたんだ。『王として人類史に名前を刻んだ者にあと6人出会う。その人達から王を学んでこい』って」

「王様……ギルガメッシュ王でしょうか?」

「英雄王、彼も中々回りくどい言い方するなぁ……」

 

マーリンが彼の様子を思い出したのか、苦笑しながら頰をかく

 

「概ね彼が言った通りで正解だ。まぁ、今回のように王が関与してるかどうかはわからないが千里眼を持つ英雄王がそうだと言うならばそうなのだろう」

「ということは、歴史の異常はあと6つあるということか……?」

「はい、そういうことになります。私達が捉えた歴史の歪みは7つありました。詳細は不明ですが、数はたしかに7つでした」

 

しばらく静観していたウォズがマシュに問う

 

「つまり、我が魔王の時代に起きたあの異変を解決するには、その歪みを全て正す必要がある、そういうことだろうか?マーリン氏」

「ご明察。先の説明では必要なことしか教えなかったから後付けみたいなことになってしまったのは僕からも謝っておこう。だが、魔王……仮面ライダージオウ、キミの力が必要なことは今回の一件で確信した。だから……」

「わかった。手伝うよ」

 

申し訳なさそうに切り出したマーリンに、二つ返事でソウゴは了承を返す

 

「よ、よろしいのですか? 依頼しておいてこういうのもなんですが、決して簡単なことではありません。今回のウルク以上に危険かもしれませんし……」

「たしかにそうかもしれない。でもほら、王様から言われちゃったから、王になりたいなら王を学んでこいって」

 

「ーそれに、困ってる民を助けるのも王の仕事でしょ?」

 

朗らかに笑ってソウゴがそう答える

 

「……でさ、ゲイツー」

「ついてこいとでも言うつもりだろ?」

「わかっちゃった?」

「お前との付き合いも長いからな。嫌でもわかる」

 

やれやれと腕組みをしながらゲイツとツクヨミもマーリンとマシュに向き直る

 

「俺たちも協力しよう。ジオウを一人にしてはおけんからな」

「未来に異常が生じるなら、私達も無関係では無いから。できる限り協力するわ」

 

そう告げる二人を横目で眺めていたウォズにソウゴが話しかける

 

「ウォズはどうする?」

「愚問だね。我が魔王。キミが王へ歩む道なら、私がついていかない理由はないだろう?」

「だよね。ありがとう!」

 

改めてソウゴがマーリンとマシュに振り返る

 

「ってことで、次の王様に会いに行こうか‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

西暦64年 ローマ帝国

都市中央の大型コロセウム

コロセウムの戦闘場に歓声と共に5人の剣闘士が姿を見せる

いずれも筋骨隆々の猛者……と思いきや、何人かは剣闘士のようには見えない、貧相な体格のものがいる

 

『良くぞ、ここまで辿り着いた!! 勇猛なる猛者たちよ!!』

 

明朗な声がコロセウム全土に響く

声の主はコロセウム内の最も豪奢な入場門、その頂部に堂々と立っていた

華奢で小柄ながら、薔薇をあしらった豪華な装束をまとい、その手には巨大な盾と中型の直剣が握られている。そしてマスクに覆われたようなその頭部は、どこか甲殻類のような雰囲気をしている

 

『余は皇帝であるが、今宵は無礼講。余という伝説を超える為に、全霊を賭してかかってくるが良い!!』

 

入場門より軽やかに着地した怪人はその剣を挑戦者の一団に向けて高らかに宣言する

それに合わせてより大きくなる歓声

剣闘士たちが決意を固め、それぞれの手に何か錠前のようなものを握り、構える

 

《マツボックリ‼︎》《クルミ‼︎》《イチゴ‼︎》《ドングリ‼︎》《マツボックリエナジー‼︎》

 

解錠したそれをベルトに装填すると、それぞれの頭上に果物を模した形状の鎧が出現、落下し装着され、仮面ライダーのような姿に変わる

槍、手甲、短刀、ハンマー、三叉槍、各々の手の武器を怪人へと向け構える

 

まず動いたのは、長ものを構えた黒い鎧の二人。槍を振り回しながら怪人に接敵、素早い連撃を放つ、が、怪人は手にした盾で三叉槍を防ぐと片手の直剣で連撃を的確に弾き、持ち主を斬り伏せる

続けて盾を押し上げ、返す刀で三叉槍使いにも強烈な斬撃を2度3度浴びせ、吹き飛ばす

その隙に怪人の頭上からハンマーを大上段に構えた戦士が襲来、そのハンマーを力いっぱい叩きつける。その会心とも思える一撃は一瞥もされずに盾で防がれ、直上に弾き返される

それを見届けた怪人は、黒い錠前を取り出し解錠

 

《ドラゴンフルーツエナジーアームズ‼︎》

 

低い曇った音声と共に怪人の鎧の形状が変化。盾と剣の代わりに中型の弓がその手に握られ、吹き飛ばされた戦士に向けて発射され命中、盛大な爆発が起きる

ハンマー戦士が残した爆発を眺めながら、赤い鎧の戦士が投げ放った短刀を一瞥もくれずに弓で弾き落とし、こちらに駆けてくる拳士の拳を払い、その鳩尾に弓を照準、ゼロ距離で矢を放ちながらその後方の赤い鎧の戦士も共々貫く

 

たった一人の怪人に、5人の剣闘士は完封されてしまった

 

『うむ……中々骨はあったが、まだまだである。もう少し余を楽しませよ』

 

心底残念そうに怪人が呟き、頭を抱える

だが、割れんばかりの歓声を耳にすると手を広げ、満足気にそれを受け止め続けた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「西暦、64年っと」

 

タイムマジーンに次に向かう年代を入力する

次に向かうべき年代をマーリンもマシュも知らず、途方に暮れていたところ、バビロニアへと年代を示したあの白いライドウォッチがまた新しい年代『0064』を記したのだ

一応その時にマーリンにこのウォッチの心当たりを聞いたが、どうも彼も知らないらしい

 

「乗せていただくのは2度目ですが、実際にタイムスリップするのは初めてです。なんだか緊張してきました……」

 

ソウゴ側のタイムマジーンに乗り込んだマシュが緊張したような様子でタイムマジーンの内装を眺めている

 

「警戒する必要はない。まぁ、移動中は大きく揺れるから、そこだけは気をつけたまえよマシュくん」

 

もう一人の同乗者のウォズがマシュに注意を促すと、慌ててマシュは操縦桿があるアームにしがみつく

 

「ーそれじゃ、行こうか。次の王様に会いに‼︎」

 

ソウゴの操縦でタイムマジーンが浮上、それに追従してゲイツたちが乗るタイムマジーンも浮上し、ワームホールへと侵入していく

 

しばしの浮遊感の後、二台のタイムマジーンはワームホールを抜け、別の時代へと着陸する。今度はいきなり攻撃されることはなかった

 

「ここが、新たな歴史の歪みがある時代か……」

 

タイムマジーンから降りたゲイツが周囲を見渡す

そこに広がっていたのは人でごった返す大通り

それなりに高さのある民家が軒を連ね、広場には装飾が多数目立つ噴水、通りには水路も見られる

 

「これは、なるほど……ここは確かー」

「ここは古代の都市国家ローマ帝国で間違いなさそうね」

 

喋りかけたマーリンに先んじてツクヨミが手元のデバイスを見ながら伝える。ゲイツもデバイスを確認するが、なるほど確かに資料画像と都市の様式がよく似ている

 

「古代ローマで、西暦64年……確か、ネロ帝の時代じゃなかったっけ?」

 

タイムマジーンから降りてきたソウゴがゲイツたちに話しかける

 

「ネロ帝?」

「ー確かに、西暦64年付近は、ネロ帝がローマを統治していた時代みたいね」

 

意外なソウゴの知識にツクヨミが驚きながらも関心する

 

「……よく知っていたな、ジオウ」

「そりゃあ王様になるのが夢だからね。勉強はしておかないと」

 

自信満々に告げるソウゴに普段の彼の様を知っているゲイツとツクヨミは頭を押さえる。ウォズは「さすが我が魔王」と超いい顔でそれを見ているが

 

「古代ローマ、ですか……私も以前、この場にいたのはおぼろげながら覚えています」

「へぇ〜、じゃあマシュって、この時代のだれかだったのか」

 

ソウゴの言葉になぜかマシュは表情を曇らせる

 

「いえ……それが、変なんです。実は、ウルクも間違いなく訪れていたことを記憶していて、そこでギルガメッシュ王とも話したことを覚えてはいるんです。ただ、なぜそんな記憶があるのかはわからないんです……」

 

マシュの独白を難しそうな顔をしながらもきちんと聞くソウゴ

 

「私自身が生きた時代は、よく覚えています。円卓の騎士が生きたあの時代を」

「僕も実は円卓の騎士の時代から召喚されている。無論、彼女のこともよく知っているよ」

 

話を聞いていたマーリンがマシュの頭を撫でる

 

「はい、マーリンさんには昔からよく色々教えられていて、大変お世話になっています」

 

と、三人が話している中周囲を警戒していたゲイツが何かを見つける

 

「……なんだ、あれは……?」

 

ゲイツの視線の先に存在していたのは、あまりにも不自然な構造物だった

 

周囲の建物よりも明らかに高い建物が都市の中央にそびえ立っている

高いなんてレベルじゃない、近代でも珍しい、東京タワーに並ぶかもしれないほどの塔が屹立しているのだ

何より奇妙なのはその頂上。なんと古代ローマでも有名であったコロセウムがそこにそのまま鎮座している

時代故か、現代に残るそれよりも遥かに大きく、さらに金色に装飾され、輝いている

なんとも不恰好だが、立地やその姿からまるで世界樹のようにも見える

 

「………何あれ……?」

 

あまりに異様な建造物に、さすがのソウゴも開いた口が塞がらない

その光景に呆然としていた一行は、完全に反応が遅れた

 

「わ、わっ!?」

 

急に下から持ち上げられる感覚と共に、空中へと一行が持ち上げられる。落ち着いてきた思考が捉えたのは、自分たちが網のようなものに包まれているらしいこと

 

「!?なんだ、これは!?」

『安心したまえ、悪いようにはしない』

 

困惑するゲイツの声に応えたのは、何やらノイズ混じりの声

見ると網を支えている車輪のないバイクのような不思議なメカにまたがる大柄な人型から聞こえているらしい

 

「我が魔王とその臣下たちにこのような狼藉……一体何をするつもりかね?」

『ほう、魔王か。これは彼の予想より遥かに面白そうな人物のようだ』

 

『魔王とその一行、我らが皇帝がキミたちを剣闘士として指名した。乱暴ですまないが、このままドムス・アウレア・ユグドまで連行させてもらう』

 

と、ソウゴたちを捉えたマシンはそのままにあの世界樹のごとき建造物へと舵を切った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

謎の高層建造物ードムス・アウレア・ユグド

 

『到着した。控え室を準備するまで観戦でもしておいて欲しい。準備が終われば、ゴーレムが案内に来るだろう』

 

乱暴な連れ去り方ではあったが、存外優しく解放されたのはあの高層建造物、曰くドムス・アウレア・ユグドの頂部コロセウムの観客席

解放が終わり次第、マシンとそれにまたがる人形はそそくさとコロセウム縁部の一際豪奢に装飾されたやぐらへと戻っていく

 

「……潜入の手間は省けたが、やれやれここの皇帝様はいささか強引だね……」

 

ローブのホコリを払いながらマーリンが苦笑する

 

「ー見て、あれ‼︎」

 

観客席の手すりに掴まりながら身を乗り出したソウゴが階下を指差す

 

そこには、コロセウムだから当然ではあるが、闘技場が広がりまさに試合が行われていた

 

割れんばかりのウォークライや歓声の中、かなり距離が開いているにもかかわらずここまで打ち合う音が響いてくる

 

「……さっきの連中、俺たちが『剣闘士として指名された』などと言っていたが、まさかアレに参加させる気か……?」

 

とゲイツが眉をひそめながら呻く

 

「ーちょっと待って、アレ見て‼︎」

 

何かに気づいたのか、ツクヨミが闘技場の剣闘士を指差す

そこにいたのは何やら浮いた姿の剣闘士だった

簡素な鎧、どこか戦国時代の足軽のようなものを纏っており、長槍、もしくは三叉槍を振り回している

よく見ると姿はバラバラではあるが、戦ってる剣闘士たちはみなそれらに似た鎧姿をしている

 

ーいや、その彼らも含めて共通点はあった

 

「あれって……まさか、ベルト⁉︎」

 

そう、そこで戦うものたちの腰には黒、もしくは赤のベルトが巻かれていた。中央に果物が描かれたような物体が装着されている

 

(なんか……どっかで見たことあるような……)

 

ベルトを見たソウゴは、そのデザインにどこか既視感を感じていた

 

ー確か……あの包丁のようなデザインがついた黒いベルトは、アナザー鎧武が巻いていたものと似ているような……

 

「待ってください‼︎ あれ‼︎」

 

何かに気づいたのか、マシュが闘技場の隅を指差す

 

「⁉︎ アレは⁉︎」

 

そこには、周りよりも小柄な剣闘士が別の剣闘士に吹き飛ばされ、変身が解除される姿が

吹き飛ばした剣闘士はその小柄な剣闘士ーだった少女に手にしたハンマーを振り上げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

少女は連れ去られ、命からがら見つけ出したベルトとよくわからない錠前で精一杯戦った

でも、少女の力なんてたかが知れていて、他の鎧に倒され、今、目の前には、自分の命なんて簡単に奪われてしまうだろうハンマーが、振り上げられてー

 

ガギィィィン!!!!

 

ー金切り音が響く

 

「ぐぁっ!?」

 

苦悶の声が響く

恐怖に瞑っていた目を開く

 

「大丈夫?怪我とかしてない?」

 

そこに立っていたのは、純白の軍服を纏った女性

その手には小型のバックラーと細身の直剣

纏めた赤い髪に映える碧眼を煌めかせたその人は、柔らかく微笑みながらこちらに手を差し伸べていた

おずおずとその手を取ると、女性は優しく抱き起こし、隅に座らせてくれた

 

「そこでじっとしてるのよ。すぐに終わらせてあげるからー」

 

向き直った女性は、真剣な表情に戻り、鎧たちに剣を向ける

 

「ー戦士ならまだしも、付け焼き刃の女の子を寄って集って大の大人が……覚悟はできてるんでしょうね?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「あの人、すごい……‼︎」

 

ツクヨミが感嘆の声を漏らす

少女を助けた女性は、生身の姿のままで仮面ライダーらしき剣闘士たちを相手どり、矛を交えてきた三人を翻弄、見事に組み伏せ変身を解いてみせた

 

「彼女は……そうか、サーヴァントか‼︎」

 

しばらく女性を眺めていたマーリンが得心に至ったように頷く

 

「サーヴァントってことは、エルキドゥみたいな人ってこと?」

「そうだね。もしかすると、彼女がこの時代の異変のカウンターなのかも……」

 

『試合、終了である‼︎』

 

明朗な声がコロセウムに響く

そうこうしているうちに闘技場に立っていたのは3名ほどであった

もちろん、あの赤髪の女性サーヴァントもおり、あの少女を抱き上げ、頭を撫でている

 

『勝ち残った勇士よ、よくぞ頑張った!! 特に麗しき女剣士は此度も良い活躍であったぞぅ♪』

 

どこからか響いてくる声は試合の感想をひとしきり述べるとブツリという音と共に聞こえなくなる。どうやらどこからか放送されたものだったようだ

ゲート前に立っていた石像が動き出し、ゲートを開く

残った剣闘士たちがそこからぞろぞろと出て行く

 

「今の放送が件の皇帝というわけか」

「………あれ?ソウゴは?」

 

放送や闘技場の様子を見ていたゲイツたちが、今更ながらもその場にいるはずの魔王がいなくなっていることに気づく

 

「………あの魔王……ッ‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム 下層ロビー

 

「もう歩ける?」

「……うん」

「そっか。よかったよかった」

 

赤髪の女性は助けた少女を立たせると屈み込み、その頭を撫でながら微笑む。その様はどこか母親のようで、不思議と少女は心の底から安心できた

ーが、その顔が再び恐怖に歪む

 

「戦い……闘い……戦いタイ……‼︎」

 

フラフラとした足取りで女性の背後から現れたのは、黒い足軽のような鎧を纏ったーある時代では黒影と呼ばれたライダーによく似た三叉槍持ちの剣闘士

黒影はその三叉槍を無防備な女性の背中に向けて振り下ろしー

 

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

「ハァッ!!」

ギャリィン‼︎

 

ーその槍は、すんでで受け止められる

助太刀に現れたのはソウゴージオウであった

 

「⁉︎」

 

異変に気付いた女性は少女を抱え上げてその場から下がる

 

「えっと、あんたは……」

「あ、あたし?」

「そう‼︎その子をお願い‼︎」

 

そう叫んでソウゴは黒影に向き直り、ジカンギレードを構え直す

 

「邪魔、するなァァッ!!」

《マツボックリエナジーアームズ‼︎》

 

くぐもった音声と共に、黒影の体から黒い蔦が噴出、それと共に腕や脚にさらにゴツい鎧が装着され、さらにもう一本三叉槍が出現する

 

「ヴァァァァァァ!!!!」

 

獣のような叫びをあげながらの連撃にジオウも対処するが、先程よりもかなり力が強く、押し負けて吹き飛ばされる

 

「ってて……そっちがパワーアップするなら、こっちだって‼︎」

 

ソウゴが取り出したのは普通のライドウォッチよりも大きなサイズのマゼンタのウォッチ

 

《ディ・ディ・ディ・ディケイド‼︎》

 

ウォッチを装填、ドライバーをぐるりと回転させる

 

《アーマータイム‼︎》

《カメンライド‼︎ ワーオ‼︎》

《ディケイド‼︎ ディケイド‼︎ ディーケーイードー‼︎》

 

ドライバーから展開されたホロカードが突進してきた黒影を吹き飛ばし、ジオウへと収まり、その体をマゼンタ色に染め上げる

カードがはまったようなフラットな顔面と胸のライン内に《ディケイド》という文字が刻まれる

 

「フルーツ…鎧…あ、やっと思い出した‼︎ お前これに弱いでしょ?」

 

とソウゴが思い出したように取り出したのは橙と青のカラーリングをしたライドウォッチ

 

鎧武(ガイム)‼︎》

 

負けじと向かってくる黒影を手にした長剣ーライドヘイセイバーでいなしつつ、鎧武ウォッチをディケイドウォッチのレールに装填し、回転させる

 

《ファイナルフォームタイム‼︎》

《ガ・ガ・ガ・鎧武(ガイム)‼︎》

 

発声と共にジオウのアーマーカラーが橙と青に変化、顔のディスプレイは鎧武カチドキアームズの顔に、胸の文字も《カチドキアームズ》に変化する

 

「ここからはオンステージだ‼︎」

 

どこか惜しいセリフと共に大剣ー火縄大橙DJ銃大剣モードを取り出し、ライドヘイセイバーと共に構え、黒影に突撃

振りかざされた槍を小回りが利くヘイセイバーで弾き、がら空きの腹に大剣を叩き込み、よろけた黒影に更にダメ押しの袈裟斬りが叩き込まれる

 

「がっ……‼︎ ぐぅ……⁉︎」

 

よろよろと黒影が立ち上がる中、ヘイセイバーにディケイドウォッチを装填、柄の時計の針をぐるぐるぐるりと3回転

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《ヘイ‼︎ 仮面ライダーズ‼︎》

《ヘイ‼︎セイ‼︎ヘイ‼︎セイ‼︎ヘイ‼︎セイ‼︎ヘヘヘイ‼︎セイ‼︎》

「はぁぁ……ッ‼︎」

 

深く腰を沈め剣を構えるジオウに危機感を覚えたのか、黒影がはうはうのていで離脱を図るが、もう遅い

 

《平成ライダーズ‼︎ アルティメットタイムブレーク‼︎》

「おりゃああああ‼︎」

 

敗走しかけた黒影を横並びのホロカードが捕獲、間髪入れずに横薙ぎの一閃が命中。続けて大上段から今度はホロカードと一体になった兜割が黒影を両断する

 

「がっ、ああああああああ!!!!」

 

必殺の一撃を受けきれるはずもなく、黒影はあっさりと爆散

変身者の男とヒビの入った黒い錠前ーロックシードが転がる

 

「ふぅ……」

 

撃破を確認したソウゴが変身を解除すると、誰かが背後からその肩を叩く

 

「あなた……なんだか知らないけど強いんだね。助かっちゃったよ。ありがとう」

 

そこにいたのは、赤い髪のあの女性サーヴァント。柔和な笑みを浮かべながらソウゴに礼を述べる

 

「そっちもすごくカッコよかったよ。えっと……」

 

いい篭るソウゴに女性は手を差し出し

 

「私はサーヴァント……って言っても伝わるかわからないけど、ライダーのブーディカだよ。よろしく」

「ブーディカか。ライダーって、なんかすごい親近感ある気がする……俺は常盤 ソウゴ。王様を目指してるんだ」

 

と二人は握手を交わす

 

「王様が夢って、すごく壮大な夢だね」

「そうかな……? みんなを幸せにするなら、これしか無いって思ったんだけど……」

 

ソウゴの言葉に何か思うところがあったのか、ブーディカが少し悲しそうな顔をして、すぐに暖かい微笑みに戻る

 

「そっか……いい夢だね、王様」

「でしょ? わかってくれる人に会えて嬉しいな〜」

 

と話していると、

 

「ソウゴ‼︎」

 

今までソウゴを探していたであろうゲイツたちが合流してくる

 

「お前はどこをうろついてたんだ……」

「ごめん、どうしてもブーディカと話がしてみたくて」

 

呆れた様子のゲイツにソウゴが頭をかきながら答える

 

「ブーディカ、そうかブーディカか! ブリタニアの女王が呼ばれているとは、なんとも心強いな」

「なんだかそんな風に言われると照れちゃうな……そんな大層なことしてないんだけど。そっちの二人もサーヴァントなんだね」

「はい、シールダーのマシュ・キリエライトと言います。こちらはキャスターのマーリンさんです」

 

と談笑を深めていると

 

「ぐぁあああああぁああぁああぁああぁああ!!!!」

 

和やかになりつつあった空気を裂くように、壮絶な悲鳴が鳴り響く

見ると、黒影に変身していた男が黒い蔦に絡まれながら苦しげにもがいている

ソウゴたちが助けようと手を伸ばすももう遅く、男は全身を蔦に覆われて消滅。後には黒いロックシードのみが残った

 

「……今のは……?」

「……たまにあるのさ。負けた剣闘士、その中でもああいう錠前で武装してる連中が、黒い蔦に覆われて錠前だけ残して消える。あたしにもさっぱりわからない現象だけど……」

 

悔しそうにブーディカがそう呟く

それを見たソウゴはブーディカに向き直り

 

「俺たち、この世界の歪みを直してるんだけど、協力してくれないかな?」

「へ?あたしに?」

 

ソウゴが笑顔で頷く

 

「あんたの力が必要なんだ。俺の直感なんだけど……」

 

と少し照れたように答えるソウゴ

ブーディカはそれをしばらく呆けたように見つめていたが、ぷっと吹き出し朗らかに笑う

 

「そうか、直感か〜面白い王様だね、ソウゴ」

 

ひとしきり笑った後、ブーディカは再びソウゴの手を取って握り返す

 

「いいよ、協力する。さっきのあんたを見てたら、信じてもいいような気がするからね。改めてよろしく」

 

ソウゴは心底嬉しそうにはにかんだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『なんだあれは!? なんと、なんとも面白い‼︎ 気に入ったぞジオウとやら……』

 

コロセウムの縁部、皇帝席として設けられたやぐらで件の皇帝が愉快そうに手を叩く。玉座の前には、先の一部始終を映し出していた板が設置されていた

 

「Arrrrrrrr………」

 

皇帝が腰掛けた玉座の側に立つ背の高い黒い鎧騎士がガチャガチャと鎧を戦慄かせる

 

『どうした狂犬(レインドッグ)?気になる相手でもいたか?』

「Fuuuuuuuuu………」

 

狂犬(レインドッグ)と呼ばれた黒騎士は低い咆哮を漏らすばかりで皇帝の問いには答えない

つまらなそうに肩をすくめ、玉座に深く座り直した皇帝は愉快そうにくっくっと笑う

 

『余の用意したエクストラソルジャー、そして現在もスコア首位を独走し続ける《チームシャルモン》とやら、余のエクストラソルジャーを一度倒して見せたレッドプレイヤー、更に魔王と……くくく、随分華やかになったではないか。良い、実に良いぞ‼︎』

 

『余の楽しみと、民の楽しみ。それが盤石なるローマの礎となるとは、愉快に極まる興行よな……』

 

笑う皇帝は側に備え付けられた酒瓶から葡萄酒をグラスに注ぐと、うまそうに飲み干した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム内 観客席裏

 

「なるほど、古代ローマのコロセウムとは中々面白い時代だね」

 

揺らめくオーロラのような壁から姿を現したのは中背の美青年

その手にはシアン色が眩しい銃のようなものが握られている

 

「さて、この時代のスーパーアナザーライダーは、一体誰と成り代わってー」

 

と辺りを見回していた青年はある異変に気付く

自身が通り抜けてきたオーロラ、それが普段の白色から紺色へと変化したことに

そしてそこから、傘を被った人物が出現したことに

 

「これまた変な世界に飛ばされたかな? 見た感じはどうも前に流れ着いた中世イタリアっぽい世界に似てるんだけど……」

 

その傘で表情がよく見えないが、声から判断すると女性のようだ

見ると服装こそ崩した和服のような出で立ちで奇抜だが、服の上からでも引き締まった、鍛えているのがわかるいい体つきをしている

 

「ー何ものかな?」

 

青年が手にした銃を女性に向ける。それに気づいた女性はわたわたと手を振りながら弁明する

 

「あっと、違うんです怪しいものじゃない……って言っても説得力無いなぁ……信じて欲しいと言っても信じてくれるようなタイプじゃ無いでしょ?あなた」

「鋭いね。そうとも、僕は相当に疑ぐり深いよ?」

 

銃を向けたまま青年が返す

傘の女性ははぁ、とため息をつきながら肩を落とす

それを見た青年は、何を思ったか銃を下ろした

 

「ーたしかに怪しいが、害意は無いことはわかった。気になることは多いが、どこにでも行きなよ」

 

それを聞いた女性は安堵の声を漏らす

 

「よかった〜無頼者とはいえ、いきなり刃傷沙汰になるのは避けたかったから、そう言ってくれるなら助かります」

 

「ーカルデアともマスター(・・・・・・・・・・)とも繋がれなくて散々だったけど、なんとかなりそうで何よりー」

 

パァン、キィンッ

さっきまでの温和な空気が嘘のように張り詰めた空気を噴き出し、刀を一本構えた女性は青年を睨む

 

こちらに向けた銃から硝煙を昇らせる青年を

 

「気が変わった。カルデアと、マスター……君が知っていることを洗いざらい話してもらおうか」

 

青年は一転して鋭い視線で女性を睨み、左手に一枚のカードを取り出して構える

 

「ーそれを知っているということは、あなたも何か関係している、ということかしら?」

 

女性も声色に凄みを込めて、左腰のもう一本の刀の鯉口を鳴らす

 

「さぁね、知りたいなら力づくできたまえ。僕もそうさせてもらうからね」

 

不敵に笑って青年は構えたカードを銃のスリットに装填、銃身を展開する

 

《カメンライド…》

「変身」

《ディエンド‼︎》

 

銃から10枚のシアンに煌めくエネルギープレートが射出、女性へと殺到するが、それを傘と抜き放った2振りの刀で女性は跳ね返す

プレート出現と同時に青年の周囲に現れていた三原色のホログラムシルエットが青年に重なり、完成された灰色のスーツにプレートが収まり、その姿をシアンに染め上げる

 

文字通り数多の世界を股にかける怪盗ー仮面ライダーディエンドがその正装を露わにする

 

「ーただものではないと思ってはいたけど、得体が知れないわねあなた」

 

プレートを防ぐために傘を使い、女性の素顔が露わになる

そこにあったのは、煌めく銀髪をまとめた凛然とした貌

 

「手荒にはしたくなかったのは本心、ですがあなたが彼女らを知るなら話は別です。洗いざらい喋ってもらうわよ」

 

油断なく銃ーディエンドライバーを構えるディエンドに、手にした刀を向ける

 

「ー二天一流、新免武蔵守藤原玄信(しんめんむさしのかみふじわらはるのぶ)、参る‼︎」




はい、おまたせしました新章です‼︎

早速色々と錯綜してますがローマ編もお楽しみあれ‼︎


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第5話 「0064:集う猛者たち」

ガァン‼︎ガン‼︎

キッ、キィン‼︎ キィン‼︎

 

射撃音と擦過音がリズミカルに響き、薄暗い部屋を火花が照らす

 

片やシアンが闇に映える怪盗

片や美麗な剣技を魅せる剣豪

 

どちらも一歩も譲らない、ハイレベルな交戦が続いていた

 

(のらりくらりとこちらの剣をいなしてる。一撃はそんな重くないけど、これはこれで厄介な手合いね……‼︎)

 

加速した思考の中、武蔵は冷静に相手を分析する

『あの人物を、死なない程度に斬りふせる』

武蔵の《天眼》は、その一点の未来だけを見据えていた

 

(何ものかはわからないけど、厄介な相手だ。隙らしい隙を見せてくれないね)

 

ディエンドはディエンドで隙を見せない武蔵に攻めあぐねている

武蔵のような《魔眼》こそなくても、彼は彼で数多くの世界を巡り磨いてきた《眼》があった

 

「ー隙ができないなら作るしかあるまい。達人には達人、侍には忍者、と言ったところか」

 

とベルト脇のホルダーから2枚のカードを取り出し、ディエンドライバーに装填していく

 

《カメンライド 斬鬼‼︎》

《カメンライド 風魔‼︎》

 

武蔵に向けて引き金を引く

武蔵は咄嗟に防御姿勢をとるが、飛来したのは弾丸ではなく、2人の人影

 

かたや、筋骨隆々とした肉体を持つ音撃弦の名手 斬鬼

かたや、神速の絶技を操るニンジャゲーマー 風魔

 

ディエンドは、ライドカードから仮面ライダーを実体化させたのだ

 

斬鬼と風魔は各々の得物を構え、武蔵へと斬りかかる

 

「くっ⁉︎」

 

大上段から斬りかかる斬鬼の一撃を弾き、隙を突いて放たれる風魔の苦無や手裏剣に対処、2体の挟撃を受け止め弾く

 

(忍者は恐らく脆い、ならばー)

 

この窮地すら武蔵の天眼は活路を絞り作り出す

風魔を蹴り飛ばし、斬鬼の一撃を弾くのではなく受け流しその体を懐へと引き込み、膝鉄を一撃

 

「ィヤァッ!!」

 

怯んだ斬鬼を十字に切り裂く。切り裂かれた斬鬼はその姿を歪ませ、消失する

 

「ーそれを待っていたよ」

 

《カメンライド アビス‼︎》

《アタックライド クロスアタック‼︎》

 

ディエンドが新たにロードしたのは新たなライダーを召喚するカードと、召喚したライダー達に必殺技を放たせるアタックライド

ディエンドの側に召喚されたアビスがバイザーにカードを装填

 

《ファイナルベント》

 

ロード終了と同時にアビスの背後から契約モンスターの巨大鮫アビソドンが出現、その危険を察知した武蔵がアビスに向けて斬撃を構えるがー

 

《キメワザ‼︎ ハリケーンクリティカルストライク‼︎》

 

それを阻止すべく、風魔が必殺技を起動。手にした短刀を回転させ、武蔵に向けて投擲する

 

「くっ⁉︎」

 

投擲された短刀は回転しながら武蔵の周囲を包囲、竜巻を形成し行動を縛る

 

「はっ‼︎」

 

そこにアビソドンから強烈な水圧を伴った水流が放たれ、竜巻と同化し激流となる

 

「 南無、天満大自在天時空ー 」

 

封殺したと思われた武蔵の凛とした声が響く

瞬間、水竜巻が弾け、中から4の刀を構えた仁王が姿を現わし、豪剣を振るう。たまらず風魔とアビスが吹き飛ばされ、ディエンドもその剣圧によろめく

仁王の姿が収束、一筋の光が天を突く

その光を構えるは、“空”に至らんとする剣豪

 

「 ー往くぞ、剣豪抜刀‼︎ 伊遮那、大天衝!! 」

 

剣豪の絶剣がディエンドに迫る

咄嗟にアビスと風魔を呼び寄せ、盾にする

2体のライダーはあえなく両断され霧散、衝撃にディエンドが顔を覆う

 

キィィィン‼︎

 

次の瞬間、ディエンドの目に映ったのはーこちらの首筋に刀を添える武蔵の姿

視線だけでこちらを切り裂きかねない鋭い眼光には、恐らくこれからの逆転すら正面から打ち破る未来が映っているのだろう

 

「……降参だよ。僕の負けだ」

 

ディエンドがディエンドライバーを下げ、両手を上げる

武蔵はそれを聞いてもまだ油断なく刀を突きつけていたが、ディエンドが変身解除し、元の青年ー海東 大樹の姿に戻ったのを見てようやく刀を納めた

 

「……では改めて、あなた……」

「僕の名前は海東 大樹だ」

「ありがとう。改めて海東くんが知っていること、洗いざらい話してもらうわよ」

「構わない。代わりに、と言ってはなんだがキミとカルデアに起きたことも話してはくれないか?」

「こちらにそれを話すメリットは?」

「できる限りキミに協力することを約束しよう。信じて貰えるかはわからないが、僕自身この異常事態を好ましく思っていないからね。恐らく僕とキミの利害は一致すると思うんだが?」

 

それを聞いた武蔵は少し思案するような顔をした後、海東の顔ーというよりも瞳をじろじろと見つめる

 

「ーうん、あなたを信じましょう。あなたは確かに悪いことはする人だけど、それでも芯のある信念を持ってることはあなたの目を見てわかりました。今はあなたの信念を信じましょう」

 

と今までの警戒が嘘のように朗らかに笑って武蔵が答える

バツが悪そうな顔をしているが内心海東も一息つく

 

「……約束通り、まずは僕から話そう。僕は世界から世界へ旅を繰り返しながらお宝を集めている怪盗なんだが、今回僕はカルデアという組織に目をつけた」

「いきなり聞き捨てならない言葉が出てきたけど……カルデアの何を盗むつもりだったの?」

「隠し立てしても信用を損なうだけだから答えよう。僕が狙っていたのは、とある宝具さ。とびきりに貴重な、ね」

 

不敵に笑いながら海東は答える

 

「まぁ、残念ながらその宝具はそこにはなかった。無駄足だったわけさ」

「あなたがカルデアって言葉に反応したのってまさか……」

「違うよ。重要なのはここからさ。カルデアから僕の友人がいる世界に帰ってきた時、世界が歪む異変は起きていた。そしてー」

 

「それと同時に、ひとまず繋げていたカルデアとのパスが完全に途絶えていた」

 

武蔵が驚いた顔を示す

 

「何それ……私と同じじゃない……世界が急におかしくなって、だからカルデアに戻ろうとしたらマスターとのパスも、カルデアとのパスも途絶えてて……」

「……なるほど、キミもこれ以上は知り得ない、ということか」

 

海東が残念そうに呟く

 

「ぐ……それを言われたら痛いわね……」

「気に病む必要はない。先にたどり着いたウルクで、ある程度の情報は得られてるからね」

「それなら、あなたの方は何か策があるのかしら?」

 

武蔵の問いに薄い笑みを海東が返す

 

「ああ、あるとも」

 

その笑みにどこか嫌な予感を見出してしまう武蔵であった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ドムス・アウレア・ユグド 剣闘士控え室

 

「あぁ〜………疲れた……」

 

備え付けの割と上等なベッドにソウゴが飛び込み、脱力する

ブーディカが一行に加わった後、岩石で作られた巨像が現れ、先の言葉通りに控え室に通されてから数日

ソウゴたちは毎日毎日闘技場に駆り出されていた

 

「こうも毎日だと、流石に参ってくるな……」

 

近場の椅子に腰掛けたゲイツも疲れた声を漏らす。入り口付近の壁にもたれかかっているウォズや、その向かいの壁に寄りかかって腰を下ろしているマシュも疲労が滲んでいる

相手として現れるのは件の黒影のような仮面ライダーもどきとも言うべき戦士たちばかりでそんなに強いことはないため、苦戦こそしていないが、それでも何度も繰り返されると非常に疲れがたまる

 

「みんな〜広間のゴーレムから水もらってきたよ〜」

 

と、ブーディカとツクヨミが水が並々と入った金色のボトルを手に戻ってくる

この闘技場内の経営はなんと無人で、人の代わりに岩石で製造された人形ーゴーレムが食事などを用意している。それらは剣闘士であれば無料であるらしい

 

「で、何かわかったことある?」

 

皆で机を囲み、水を飲みながら休むのを兼ねてソウゴが問う

 

「……何か、と言われても、正直なところ何も分からんとしか言えないな……」

 

ここ数日の連戦は試合の頻度こそ異常ではあるが、最初に観戦したものと大きく差があるものはなかった

異常なのは参加者の方で、最初のあの試合もそうであったが女性や子供、果ては老人まで紛れ込んで戦っているのだ。熱狂に飲まれているのか、仮面ライダーもどきに変身しているものは皆年齢性別関係なく血気盛んに打ち合っている

 

「女子供まで参加させるなんて時点でロクでもないことしてるってのはわかるんだけどね。ほんと、あの皇帝は何を考えてるんだか…」

 

険しい顔をしたブーディカが嘆く

 

「ともかく、今は試合に出続けるしかないと僕は思うがね。あの皇帝も、勝ち星が多い剣闘士には自分とのエキシビションマッチを認めているようだし、それに選ばれれば曲がりなりにも皇帝との直接の対面が叶うからね」

 

煮詰まった場にマーリンがありあわせながらも提案を示す

確かに試合のたびにわざわざアナウンスしてまで「勝ち星が多い剣闘士は余との直接対決に招待しよう‼︎ 期待して励むが良い‼︎」とあの皇帝は公言している。となると一番手っ取り早い手段はそれしかないだろう

 

「今はそれしかなさそうだね……よし、それじゃしっかり休んで次の試合も勝たなきゃ……」

 

話し合いが終わったや否や、再びベッドに倒れこもうとするソウゴだが、そこをウォズが制止する

 

「休息はもう少し後にしないかい?我が魔王」

「え〜……なんで?」

「先程、ゴーレムが提示していたマッチ表に書いてあったのを見たが、どうやらこの後の試合に《チームシャルモン》という強豪チームが出場するようだ。勝ち星を稼ぐためには、見ておいた方がいいと私は思うんだが…」

「確かに……そのチームにもちょっと興味あるし」

 

ウォズの提案にしばし気だるそうにしていたソウゴではあったが、好奇心が勝ったのか、すぐにベッドから起き上がる

 

「じゃあ、観に行こうか」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム廊下

ウォズの提案を飲んだソウゴに結局みんな同意し、その強豪チームを観に行くことになったために観客席へと向かっていた

 

「ねぇ、ブーディカってもしかして子供好きだったりする?」

 

一行の最後尾をのんびりと歩くブーディカにソウゴが声をかける

 

「え?そう見えるかな?」

「うん。最初見た時に女の子庇ってた時も本気で怒ってたし、さっきも子供が酷い目にあうことが許せないって言ってたし」

「でも、それって普通じゃない? 子供が酷い目にあうのを許せる人の方が少ないだろうし、何より私が見たソウゴたちはそんな人達じゃないだろうし」

「うん、俺もゲイツもツクヨミも、多分ウォズやマシュ、マーリンも、子供があんな風にされるのは許せないと思ってる」

 

きょとんとした顔のブーディカにソウゴが柔和な表情をむける

 

「でも、その気持ちを言葉にまで表してたブーディカは、きっとこの中でもその思いが強いんだろうなーって思ってね」

 

あっけらかんと言ってのけたソウゴにブーディカは少し驚いて、すぐに微笑む

 

「あはは、中々鋭いね王様。その通りだよ」

 

懐かしむような表情になったブーディカが歩きながら続ける

 

「私にはね、2人の娘がいたんだ。これがすごく可愛くてね、いつも一緒にいたくらいには愛おしかった」

 

と、ふとブーディカの表情が曇る

 

「ーでも、2人とも病気で死んじゃったんだけどね。母の私よりも、早くに」

 

そのブーディカの悲しげな言葉に、ソウゴの表情もばつが悪そうに曇る

 

「………なんか、ごめん」

「いいよいいよ、気にしなくて。過ぎたこと、変えようのない過去だもの。ブーディカ(勝利)なんて名前なのに、自分の娘の病気にすら勝てなかったなんて、情けない母親だよね」

「ーそんなことないよ」

 

自嘲気味に笑うブーディカの言葉をソウゴが遮る

 

「……俺、小さい時に父さんと母さんが死んじゃってさ。バスの事故に巻き込まれて、俺だけ生き残って、おじさんがここまで育ててくれたんだ」

 

ソウゴの告白に、今度はブーディカが言葉を失った

 

「物心ついた時は、俺にはおじさんしか家族がいなくてさ。父さんとか、母さんが、俺のことどう思ってたかとか、愛してくれてたのか、よく覚えてなくてさ」

 

悲しげに話していたソウゴだが、一転、ブーディカを見て微笑む

 

「初めてブーディカと会って話した時さ、すごく暖かいな、って思ったんだ。母さんって人を知らない俺だけど、なんだか母さんみたいだなって」

 

柔和な表情を浮かべながらソウゴが続ける

 

「だから、ブーディカともう少しいたかったんだよね、多分。直感とか言ってたけど、実はただのわがままだったのかも」

 

ソウゴのその言葉を聞いて、朗らかな笑みを浮かべながらブーディカがソウゴの背を叩く

 

「いいじゃない、わがまま。せっかくの王様なんだもの。それくらい、きっと許してもらえるよ」

 

いつの間にか見えてきた観客席の入り口を背に振り返り、慈愛に満ちた、それこそ母のような笑みを浮かべる

 

「ありがとね、ソウゴ。こんな私を、お母さんみたいだなんて言ってくれて」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

闘技場 観客席

 

「もう少しで開始、と言ったところか」

 

階下の闘技場を眺めながら一行が各々目線を動かす

そこにはもう既に何人か剣闘士が集まっており、その腰には当たり前のようにあのベルトが巻かれている

 

「ん?あの2人……」

 

何かに気づいたブーディカが声をあげる

その視線の先にいたのは、何やら目立つ二人組だった

 

「……なんだあれ」

 

その二人組のー正しくはその片方の異様さに思わずソウゴが声をあげる

 

かたや、筋骨隆々とした大男。ノースリーブの奇抜な衣装に身を包んだその男は、何やら艷っぽいポーズで闘技場の端に立って辺りを見回している

かたや、メガネをした見るからに軟派な雰囲気の青年。こちらはどこか緊張した面持ちで闘技場の剣闘士たちを見つめている

 

「おー、あの2人に目をつけるとは、いい目してるなァ」

 

2人に注目していたソウゴたちに、その横から声がかけられる

視線を移した先には一人の男が立っていた

何やらぼろぼろの黒いロングコートを羽織り、ヒゲを蓄えたダーティな雰囲気の男は愉快そうにこちらを見て微笑んでいた

 

「食うか?」

 

と男が差し出してきたのはゆで卵。呆気にとられながらもそれを受け取ったソウゴは軽く会釈を返す

それを満足そうに眺めた男は闘技場に視線を戻すとどこからか生卵を取り出し、観客席の手すりで割ってそのまま口に流し込む

 

「まぁ見てな。退屈な連中が多いこのお遊びの中でも、かなり見応えがあるのはアイツらだからな」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「……これ、何回続くんですかね凰蓮さん?」

 

件の二人の片方、メガネの青年が隣に立つ大男に伺う

 

「さぁてね、ほんと流石のワテクシも嫌になるほど連戦させてくるわね……」

 

凰蓮と呼ばれた大男がはぁ、と優雅にため息をつきながら答える

 

「まぁでも、この久しぶりの高揚は悪くないわね」

 

と微笑むと同時に、けたたましい鐘の音が響く

 

『試合、開始である!! 今宵も血湧き肉躍る決闘を!!』

 

あの皇帝の明朗な声が響く。それに続き、周りの剣闘士たちが次々と変身していく

 

「さぁ、城乃内のボウヤ。行くわよ」

 

凰蓮は城乃内と呼ばれた青年の肩を力強くはたきながら激励、その手に刺々しいフルーツをかたどった錠前を構え、解錠する

 

《ドリアン‼︎》

 

「ってて、はい!凰蓮さん‼︎」

 

城乃内もその手にドングリが描かれた錠前を構えて解錠

 

《ドングリ‼︎》

 

解錠に続いて、二人の頭上にそれぞれドリアンとドングリの形をした鎧が出現する

 

《ロック、オン‼︎》

 

二人が同時に腰のベルトー戦極ドライバーに錠前ーロックシードを装填、凰蓮は荒々しくも華麗に、城乃内はぎこちないながらも精一杯に胸を張って構えを取る

 

「「変身!!」」

 

二人同時に、ドライバーのカッティングブレードを下ろし、ロックシードを解放する

 

《ドリアンアームズ‼︎》

《ミスター……デーンジャラース‼︎》

 

《カモン‼︎》

《ドングリアームズ‼︎》

《ネバーギーブアーップ‼︎》

 

解放と同時に鎧が二人に降下、鎧が二人に重なると同時にその体に緑と茶色のボディスーツが装着される

それに続き、被った鎧が展開、装着され、その変化が完了する

 

かたや、ドギツイ緑のスーツに同じく緑のゴツい鎧、ロックシードになっていたドリアンのように全身に鋲が打たれ、実にトゲトゲしい見た目に、モヒカンのような世紀末風な兜がトドメを刺している

 

ー凰蓮・ピエール・アルフォンゾが変身する。その名もアーマードライダー・ブラーボ

 

かたや茶色い地味なスーツと重厚な鎧に身を包み、この時代によくありそうな丸っこい兜を装着している

 

ー城乃内 秀保が変身する。その名もアーマードライダー・グリドン

 

この闘技場に数多溢れるもどき、ではない

ある振興都市で、戦い抜いた正真正銘の仮面ライダーである

 

「さぁ‼︎ 張り切って行きましょうか、ボウヤ‼︎」

「こうなりゃヤケだ。やってやるよ、何度でも‼︎」

 

ブラーボが両の手に携えたノコギリードリノコを振り打ち鳴らし、グリドンが手にしたハンマーードンカチに拳を打ち込み、剣闘士たちへと殴り込んでいく

 

ブラーボたちの実力を知ってか、首級を上げようと考えた剣闘士4人が彼を取り囲む

 

「はぁ、4人がかりとはなってないわね……かかってきなさい。一人一人鍛え直してあげるわ‼︎」

 

まず突撃してきたのは長槍を持った2人

リーチを活かしてドリノコのリーチ外から攻撃するが、片方の槍をドリノコで押さえつつ、その勢いそのままに受け流しもう片方にぶつけて吹き飛ばす

2人を相手する隙を狙ってか、背後から鎖鉄球が襲来するが肘鉄でそれを弾き振り返り、弾いた鉄球を踏みつけ持ち主を拘束すると立ち上がりかけていた槍持ち2人にドリノコを投げつけ再度ダウンを取る

 

「ハァッ‼︎」

 

4人の中で一番の重装甲だったハンマー使いが武器を失った隙を狙い、ブラーボにハンマーを振り下ろすがその一撃は腕をクロスさせて止められる

 

「甘い、甘いわね‼︎ そんな連携じゃワテクシには届かなくてよ‼︎」

 

腕を押し上げ、ハンマー使いを吹き飛ばしたブラーボは新たにドリノコを取り出し、そのがら空きの腹に斬撃を叩き込み、吹き飛ばす

 

《ドリアン、オーレ‼︎》

 

その隙にカッティングブレードを2回倒し、ロックシードのエネルギーを解放、ドリノコに緑色のエネルギーが充填されていく

動きの止まったブラーボめがけて槍使い2人が飛びかかる

 

「アン‼︎」

 

その2人を一刀のもとに切り捨て、同時に振り向き鉄球使いに狙いを定める

 

「ドゥ‼︎」

 

ドリノコにチャージされたエネルギーがドリアン型に収束、それを振りかぶり、鉄球使いに二度、三度と叩きつけ吹き飛ばす

 

「トロワ‼︎」

 

最後にようやく起き上がったハンマー使いに二刀のノコギリが大上段から叩き込まれる

一瞬のうちに、4人の剣闘士たちが昏倒させられてしまった

あまりに鮮やかな戦いに観客席から割れんばかりの歓声が降り注ぐ

 

「フフッ、Merci(メルシィ)〜♪」

 

それにブラーボはご機嫌に手を振って答えた

それを尻目にグリドンは3人を相手に少し押され気味であった

 

「くそっ……‼︎」

 

同じハンマー使いに押され闘技場の壁に叩きつけられる

 

「くぅっ……パティシエ、舐めんな‼︎」

《ドングリ、スカッシュ‼︎》

 

カッティングブレードを倒し、エネルギーを解放。無理やりに突撃を振り切ったグリドンの痛撃がハンマー使いを吹き飛ばす

そこに槍使いが乱入、二度三度とグリドンに槍を叩きつけ、流石の猛攻にグリドンがよろめき、膝をつく

 

「ハァッ!!」

 

その肩口に更に槍の一撃が叩きつけられる。が、グリドンは待ってましたとばかりにその槍を押さえ込む

 

「ヘヘッ、そんなもんかよ。初瀬ちゃんの方が、まだ速いし強かったぜ!!」

《ドングリ、スパーキング‼︎》

 

最大レベルまで解放されたロックシードのエネルギーでグリドンのドンカチが輝き、それをお返しとばかりに身動きを封じられた槍使いに何度も何度もラッシュで叩き込む

たまらず倒れこむ槍使いそれを見届けたグリドンは立ち上がりながら振り返り、遠くで構える短剣使いを睨む

 

《ドングリ、オーレ‼︎》

「これ、でも、くらえ‼︎」

 

ハンマー投げの要領で、ドンカチが短剣使いに投擲され命中

不意の一撃に短剣使いはあっけなく倒れふす

 

それを見たグリドンは脱力し、地面に大の字に寝転がる

 

「はぁ〜やってやったぜ……」

 

太陽が視界に映る中、そこに緑の影が割り込む

 

「ナイスファイトだったわよ、ボウヤ」

 

とブラーボが手を差し伸べる

 

「ありがとうございます……凰蓮さん」

 

しっかりと握ったグリドンを助け起こして、2人は変身を解いて試合終了のアナウンスを背に闘技場を後にした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「すごい……‼︎」

 

ブラーボとグリドンの戦闘を見ていたソウゴが思わず声を漏らす

 

「ああ、だがそれよりも、あの2人のあの雰囲気と装いは……」

「ええ、ソウゴの時代のものだと思う。ということは……」

「なるほど、ウルクで出会った彼のように力になってくれるかもしれないということだね」

 

ウルクで遭遇した壇 黎斗神。彼はサーヴァントのように召喚された存在で、かつ仮面ライダーでもあった

あの2人もこの時代に召喚されたライダーである可能性は大いにありえる

 

「うーん、私にはよくわかんないんだけど、とにかく仲間になってくれる可能性があるってことかな?」

「はい。……まぁ黎斗神さんは、なんというか、かなりアレでしたけど……あの2人の方なら、話を聞いてくれるかもしれません」

「そうと決まったら、早速話してみよう‼︎」

 

ソウゴの言葉にゲイツたちも同意し、早速移動を始める

 

「あ、おじさん。卵ありがとう。美味しかったよ!」

「おう。なんだか知らんけど頑張れよ〜」

 

卵を渡してきた男にお礼をしてソウゴが最後に観客席を後にする

それを笑顔で見送った男は闘技場に視線を戻し、先の試合で蔦に包まれ消えた剣闘士の残した黒いロックシードを睨む

 

それはまるで水面に沈むかのように、するりと地面に消えた

 

それを獲物を狙うような目で睨む男は、新しく卵を取り出して割り飲むと闘技場に背を向ける

 

「ー臭うの(・・・)は、下か?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

件の2人はロビーから控え室に続く廊下ですぐに見つかった

駆けてきたソウゴたちを訝しむように眺める凰蓮に対し、城乃内は驚いたようにソウゴを見る

 

「凰蓮さん‼︎ アレ‼︎あの格好って⁉︎」

「落ち着きなさいボウヤ」

 

明らかに取り乱した城乃内を凰蓮が制してソウゴたちを迎える

 

「ボウヤ、この時代の人ではないみたいだけど、何ものかしら?」

「はじめまして。俺、常盤 ソウゴ。王様を目指してる」

「明光院 ゲイツ、こいつの友人だ」

「同じく友だちのツクヨミです」

 

一行を代表して三人が挨拶をする。案の定というか、ソウゴの王様云々には2人とも不思議そうな顔を返してはいたが

 

「ソウゴのボウヤにゲイツのボウヤ、あとツクヨミちゃんね。ワテクシはシャルモンって店でパティシエをしている凰蓮・ピエール・アルフォンゾ。こっちはパティシエ見習いの城乃内 秀保」

 

と凰蓮が丁寧に挨拶を返す

 

「へぇ〜おじさん、パティシエしてるんだ。それであんなに強いのか……」

 

ソウゴの無遠慮なおじさん呼びに凰蓮の顔が引きつり、城乃内の顔が青ざめる

 

「2人は、この時代に呼ばれてきた感じ、でいいのかな?」

「⁉︎ この状況について何か知ってるのか⁉︎」

 

ソウゴの問いに城乃内が喜びの表情を見せる

 

「うん。多分だけど、この時代の異変を解決したら2人とも帰れると思う。この前の人もそうだったし」

「やった……やりましたよ凰蓮さん‼︎ これでやっと沢芽市に帰れる……」

 

泣きながら喜ぶ城乃内に対し、険しい表情のまま話を聞いている凰蓮

 

「だから、2人にも協力してほしいんだよね。なんとかあの皇帝に会わなきゃならないから、この後の試合なんとか協力してー」

 

「お断りするわ」

 

ソウゴの提案を、凰蓮はきっぱりと断った

 

「お、凰蓮さん!?」

 

城乃内にも想定外だったのか、素っ頓狂な声を上げる

 

「なんで……」

「アナタが、試合を投げろと言ったからよ。ソウゴのボウヤ」

「いや、投げろなんて一言も……協力して勝ち上がろうってー」

「それはつまり、ワテクシにアナタたちという対戦相手を見逃せ、と言っているようなものよ。それは、ワテクシのプロ意識に反するもの」

 

にこやかながら、凰蓮はきっぱりと言い放つ

 

「貴様……そうしないと歪みの解決ができないんだぞ⁉︎」

「その証拠はあるのかしら?」

 

声を荒げるゲイツに凰蓮が反論する

 

「ワテクシたちも、あの皇帝陛下に出会えるまで勝ち進んでなんとかしてもらうつもりだったわ。たしかに、進む先は同じよ」

 

凰蓮の目が鋭くなる

 

「ーでももし、皇帝陛下を打ち破った人のみが帰れるなら?その場合、アナタたちを手伝ったワテクシたちが全くの無駄骨になってしまうじゃない?」

「……それを言われたら、たしかに苦しい所だね……」

 

一利ある凰蓮の反論にマーリンも思わず苦笑する

確かに、皇帝の撃破がこの歪みの修正に必要という確証はない。偶然にもウルクがそうだっただけ、という説も十分にありえる

 

「でも、協力くらいなら……」

 

「ワテクシのプロ意識にそもそも反する、とも言ったはずよ、ソウゴのボウヤ。アナタの目指す王様は、そんなだれかの意思を無下にするような王様なのかしら?」

 

「………ッ‼︎」

 

自身の夢を、ある意味否定するかのような物言いにソウゴが拳を握りしめる

 

「………あんたは、試合を捨てるつもりはないってこと?」

「えぇ、そうよ」

 

「ーなら、俺はあんたを打ち負かす。俺は、あの皇帝に言わなきゃならないことがあるからな」

 

なんとも言えない凄みを込めた声でソウゴが凰蓮に言い返す

それを聞いた凰蓮は、怒るどころか笑みを浮かべる

 

「ワテクシに合わせて、真正面から説得ってわけね。そういうことなら、大歓迎よ」

 

睨み合う2人。それをどこからか見ていたのか、あの皇帝の明朗な声が響く

 

『素晴らしい‼︎ 余のお気に入りの両者が、互いの信念でぶつかり合う‼︎なんとも美しく、面白い‼︎』

 

パチパチパチと大袈裟な拍手の音も混ざっており、尋常じゃなくテンションが上がっているようだ

 

『それを聞いては皇帝としては黙っておれぬ。よし、明日の試合はそなたらの直接対決としよう。他の剣闘士は交えぬ。正真正銘の決闘を約束しよう』

 

『勝ち残った方には、望み通り余との謁見をその場で許すとしよう』

 

皇帝は高らかに笑いながらそう締めくくった

 

「話のわかる皇帝陛下で助かったわね〜♪」

 

心底嬉しそうに凰蓮が小躍りする

そしてソウゴを見据え、凄みを効かせた声で宣言する

 

「全力でかかってらっしゃい。王様」

 

「望むところだ」

 

ソウゴが不敵な笑みを凰蓮に返した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

凰蓮との決闘が決まり、夜も更けた闘技場

その最下層

 

「………なんだか雰囲気が一気に変わったわね」

 

周囲を伺いながら、武蔵が呟く

海東と共に降りてきた最中は、コロセウムの内装としてありふれたーとはいえ全面金ピカで目がチカチカしたがーものであったが、ここはまるで雰囲気が違う

多数のよくわからない機械やコード、パイプが伸び、さらに中央にはエレベーターらしき筒が天井と床を貫いている

 

「コロセウムの内装は、どこに行っても丁寧な地図があって迷わずに移動ができた。だが、外見からわかる通り、このコロセウムには巨大な《幹》が存在している」

 

海東も周囲の機械を見渡しながら呟き、中央のエレベーターに向かう

 

「地図では侵入禁止になっているこの、下層へのエレベーター。つまり、下層はデッドスペースどころか、何かが存在していると考えていいだろう」

「これだけのものを見たら頷かざるを得ないわね……」

 

武蔵が感嘆の声を漏らす

 

「さて、あとはこのエレベーターをなんとかするだけだが……」

 

と海東が振り向き、武蔵にディエンドライバーの銃口を向ける

反射的に手を上げるが、その銃口が自分ではなくその背後を捉えていることに気づき、同じく振り返り刀を構える

 

「何ものだ?」

 

海東の問いに、エレベーターフロアの入り口の暗がりから、人影が姿を現わす

 

「キミは……⁉︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

翌日

闘技場には、4人の人影が2人ずつに分かれて向かいあっていた

 

筋骨隆々なパティシエの凰蓮率いる チームシャルモン

王を目指す少年とその友人 常盤 ソウゴと明光院 ゲイツ

 

互いの意地をかけた2チームが睨み合っていた

 

「ごめんゲイツ。付き合わせちゃって」

 

決闘ということで、ソウゴが連れて行ける仲間はただ1人。一行の中でソウゴが指名したのは、友人であるゲイツだった

 

「何を謝る必要がある。お前の友人なんだ。これくらいはいつでも付き合ってやる」

 

ソウゴの謝罪に、仏頂面ながら優しい言葉を返すゲイツ

凰蓮を睨みながら、腕を鳴らす

 

「ーそれに、俺もアイツには思うところがあったしな」

 

ゲイツのやる気満々な宣言にソウゴが微笑む

 

「よく逃げずに来たわね‼︎ まずはそこは褒めてあげるわ」

 

凰蓮がドライバーを装着し、城乃内も渋々と準備する

 

「俺は王様にならなきゃいけない。これが越えなきゃならない壁なら、俺は逃げない‼︎」

 

ソウゴとゲイツもドライバーを装着

両者睨み合う

 

その間に、一陣の風が流れる

 

それを合図に、動く

ソウゴ、ゲイツはライドウォッチを

凰蓮、城乃内はロックシードを

互いに突きつける

 

『 変 身 ‼︎ 』

 

4人の声が重なる

それぞれの姿が、仮面ライダーのそれへと変化する

 

それを見た観客たちが割れんばかりの歓声をあげる

 

熱狂に茹だった闘技場に負けじと、高揚した声で凰蓮が高らかに叫ぶ

 

「さぁ!! はじめましょうか、破壊と暴力のパジェントを‼︎」

 

決闘の火蓋が、今切って落とされた




はい、ローマ編2話、できました‼︎
おまたせしました……

ここで少し業務連絡、なんですが
感想でご指摘いただいたゲイツのソウゴの呼び方なんですが、ソウゴを友達認定した後もジオウ呼びだったことを私自身把握していなかった故に、今までこの作品でのゲイツのソウゴの呼び方は「ソウゴ」でした
ですが、それを把握した上でもこの作品ではゲイツのソウゴへの呼び方は「ソウゴ」で通したいと思ってます
ソウゴ呼びがあの時の特別なもの、というのもわかります。でも、私としてはゲイツとソウゴの縮まった距離をこの場では描いていたいのです
ワガママなお願いだと思いますが、ご了承頂けるとありがたいです

では、次回もお楽しみに、です‼︎


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第6話 「0064: 譲れない闘い」

《ディ・ディ・ディ・ディケイド‼︎》

《アーマータイム‼︎ ディーケーイードー‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

ディケイドアーマーに変身したジオウがブラーボに斬りかかる。ブラーボはそれをドリノコでいなし、がら空きの腹に刺突、ジオウを吹き飛ばす

 

「あら?なんだかファンキーな姿に変身したけど、そんなものかしら?王様って言ってもその程度なのね〜」

 

膝をついたジオウに腰を振りながらブラーボが挑発する

 

「ッ‼︎ まだまだ‼︎」

 

負けじと立ち上がりウォッチを取り出す

 

《エグゼイド‼︎》

 

取り出したウォッチをエグゼイドウォッチのレールに装填、ファイナルフォームタイムを解放

 

《ファイナルフォームタイム‼︎》

《エ・エ・エ・エグゼイド‼︎》

 

胸のライン内の文字が《ダブルアクションXXR》に、顔がマイティブラザーズXXの顔に変化し、アーマーの色が緑、オレンジのツートンに変色

それと同時にジオウが「2人」に増えた

 

「あら⁉︎ アナタがアナタで、アナタもアナタ⁉︎」

 

流石の光景にブラーボも驚愕する

ジオウLがガシャコンキースラッシャー、ジオウRがヘイセイバーとジカンギレードを構え、ブラーボに突撃する

ジオウLの斬撃を受けたブラーボはそれを受け止め、ドリノコを構えるが間髪入れずにジオウRの連撃がブラーボを襲う

 

「ちょっとちょっと‼︎ 二人掛かりなんて卑怯じゃないのよ‼︎」

「残念だけど2人じゃないよ」

「俺も俺だし、そっちも俺。だから俺1人だよ‼︎」

 

2人のジオウの息の合った連携の前にブラーボも流石に押されー

 

「あら、なら問題なかったわね。ごめんあそばせ‼︎」

《ドリアン、スパーキング‼︎》

 

エネルギーを解放した斬撃が2人のジオウに雨あられと降り注ぎ、大きく吹き飛ばす

 

「ぐぁっ⁉︎」

 

その衝撃にエグゼイドフォームの変身が解け、ディケイドアーマーの姿に戻る

 

「いっちょまえに色々と使うことはできるみたいだけど、やっぱりまだまだお子ちゃまね」

 

倒れ伏したジオウの前でドリノコを弄びながらブラーボが冷然と言い放つ

 

「大人を舐めてると、痛い目に遭うわよ、ボウヤ?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ドムス・アウレア・ユグド

そのタワー部分

 

「驚いたよ。まさか、キミが手助けしてくれるとはね」

 

薄暗い廊下を歩む海東と武蔵、その後ろから彼らに追従していたのは

 

「私も、我が魔王に先んじてこの建物の謎を調べにきていただけのこと。協力はあくまでも、必要であるからだ。勘違いしないでくれたまえ」

 

そう素っ気なく返すウォズ

エレベーターホールで海東たちが遭遇したのはウォズであった

最初こそ警戒していたものの、彼も階下のタワー部分を調べにきたことを知らされ、更に仮面ライダーキカイの力でエレベーターをハッキングし階下への移動を可能にしてくれた故に、一時共闘関係を結ぶこととなったのだ

 

「しっかし、やっぱりというか何というか、随分ときな臭い雰囲気になってきたわね……」

 

3人が歩む廊下には壁に何やらよくわからないパイプラインが構成され、耳を当てると何やら内部を移動しているような音が響いている

 

「どこまでも、このパイプラインが続いているようだが……一体何を輸送しているんだ?」

「ーどうやらその答えはこれらしいよ」

 

廊下から広いスペースに出た海東が周囲を見回しながら呟く

 

そのスペースの壁には今までのパイプラインではなく、緑の培養液のようなものが充填されたシリンダーが壁一面に並んでいた

その中に浮いていたのはー剣闘士たちが使っていたあの黒いロックシード

 

「なるほど……あの消えた剣闘士たちの遺品はここに運ばれていたのか」

 

興味深そうにウォズがシリンダーを眺める

 

「ーここに陛下以外の客人とは、実に珍しいな」

 

静まり返っていたホールに聡明そうな声が響く

3人の前に現れたのは、なんとも奇妙な服装の人影

青いマントと全身を覆うスーツに身を包み、その顔は金色の仮面で覆われている

 

「貴方……アヴィケブロン⁉︎」

「ほう、僕を知っているのか。キミもサーヴァントなのかな?」

 

驚いた表情を向ける武蔵とは対照的にどこか不思議そうに仮面のサーヴァントは首を傾げる

 

「武蔵、キミの知りあいかな?」

「ええ、そうよ……と言いたいことだけど、サーヴァントは召喚の度に記憶を一新されるから、私は知ってると言ったほうがいいわね」

 

覚悟を決めたように武蔵がアヴィケブロンを睨む

 

「彼はキャスター・アヴィケブロン。魔術師のサーヴァント、なんだけど、彼の場合は魔術は魔術でも少し毛色が違うわ」

「やはり僕を知っている、か。以前に召喚した際に戦った相手か、それとも……いや、今は不要な思考だな」

 

パチン、とアヴィケブロンが指を鳴らす

同時にシリンダーを守るように隔壁が出現し、アヴィケブロンの背後に数十体のゴーレムが出現する

 

「皇帝陛下の命令でね。ここはこれ以上は通行止めだ」

 

アヴィケブロンの従えたゴーレムたちが一斉に起動。それを確認したアヴィケブロンは奥の通路へと退避する

 

「成る程、コロセウムのゴーレムたちは彼の作品だったということか」

《クイズ‼︎》

 

ウォズがミライドウォッチを取り出し、起動。ドライバーに装填する

 

「これだけ厳重なら、奥には相当なお宝があるんだろうね」

《カメンライド》

 

どこか愉快そうに呟きながら海東もディエンドライバーにライドカードを装填、自身の真上に銃口を向ける

 

「変身」

《トウエイ‼︎》

《フューチャータイム‼︎》

《ファッション‼︎パッション‼︎クエスチョン‼︎》

《フューチャーリングクイズ‼︎クイズ‼︎》

 

「変身」

《ディエンド‼︎》

 

ウォズがフューチャーリングクイズに、海東がディエンドに変身し、それに合わせて武蔵も刀を抜き放つ

 

《ジカンデスピア‼︎》《ツエスギ‼︎》

 

向かってくるゴーレムにまずうちあったのはウォズ。ジカンデスピアを杖モードに変更し、その拳を受け流す

 

「問題。ゴーレムを停止させるには、その額に刻まれた碑文《シェム・ハ・フォメラッシュ》の最初の一文字を消せばいい。マルかバツか?」

 

出題しながら次なる拳を振り返りながら弾き上げる

 

「正解は、マルだ」

 

ピンポーン‼︎ という軽快な音と共にその肩のパーツが展開。マルが刻まれたパネルが発光する

それに合わせてジカンデスピアから?型のエネルギーをゴーレムの額に発射し、的確に削り取る。宣言通り碑文が削られたのかそのままゴーレムは停止し、土塊へと還る

 

「成る程、そうすればいいのね‼︎」

 

ウォズがゴーレムを撃破した様子を確認した武蔵が、交戦中のゴーレムの拳を回避、地面に突き刺さったその腕の上を駆け上がり跳躍、豪快な一刀で碑文を穿ち、停止させる

 

「僕はもう少し、クレバーにやらせてもらおうか」

 

とディエンドはライドカードを取り出し装填する

 

《カメンライド キカイ‼︎》

 

ディエンドライバーから召喚され金色のアーマーを輝かせるのは、かつてソウゴたちが遭遇した未来の仮面ライダー、仮面ライダーキカイであった

 

「ゴーレムも広く捉えればマシンだ。やれ」

 

ディエンドが召喚したキカイに命令を下すと、キカイは腕を打ち鳴らし、そこからスパナを発射、ゴーレムの一体に命中させる

スパナが命中したゴーレムは一時停止したかと思うと、再起動。ディエンドたちではなく、その隣のゴーレムに拳を振り下ろし粉砕する

キカイの機械操作能力である

キカイにコントロールを奪われたゴーレムは残るゴーレムにタックルし、一箇所に固めたのちに大爆発してまとめてゴーレムを粉砕する

 

「よし、行こうか」

 

エゲツないことをしておきながら涼しい顔をしてディエンドが奥へと歩みを進めていく

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

コロセウム縁部 玉座

 

『良い、実に良い‼︎ なんとも愉快な試合よな‼︎』

 

眼下の試合の様子を眺めながら皇帝が愉快そうな声を上げる

 

『余のローマの民たちも、屈強さには劣らぬが、中々どうして素晴らしいではないか仮面ライダー……』

 

と、その玉座の背後から青い装束の魔術師が姿を現わす

 

「皇帝陛下、報告しよう。《工場》に闖入者が現れた」

『……ほう?余程身の程知らずなものなようだな……』

 

アヴィケブロンの報告に皇帝は少しだけ不快感を声に滲ませる

 

「僕のゴーレムでも時間稼ぎには限界がある。早急に手を打っていただきたいのだが?」

『ふむ、そうさな……』

 

アヴィケブロンの進言に悩ましく応える皇帝。その側に新たな人影が姿を現わす

 

「それならば、《工場》の方は私にお任せいただいても良いでしょうか、陛下?」

 

慇懃に礼をしながら皇帝に進言したのは、例のハットを被ったタイムジャッカー。トレグと呼ばれていた少女もその後ろに控えている

 

『デューマーか。頼んでも良いのか?』

「ええもちろん。私としても、皇帝陛下の統治が続いて欲しいのは同じですから」

 

にこやかに応えるハットの男ーデューマーを見て満足げに頷いた皇帝は即座に指示を出す

 

『ならば任せる。そなたの奇妙ながらも有用な力なら問題あるまい』

「ありがたき、幸せ。少しばかり、陛下の《獣闘士》をお借りします」

『許そう。試験運用にはちょうど良い』

 

陛下の愉快そうな笑みを見たデューマーは踵を返し、部屋から消える

 

『トレグ、そなたは行かぬのか?』

「トレグ、エクストラソルジャー、陛下の、お気に入り」

『うむ、まぁそうであるが……成る程、そなた彼奴等と戦いたいのだな?』

 

皇帝の問いに、トレグはこくりと頷きを返した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ハッ‼︎」

「おりゃぁっ‼︎」

 

ジオウとブラーボが激闘を繰り広げる中、ゲイツとグリドンも熾烈を極めていた

拳と拳、ジカンザックスとドンカチが何度も交差し、火花を散らして闘技場を明るく染める

 

「貴様、城乃内と言ったか。貴様は決闘に乗り気ではないように思えたんだが、なッ‼︎」

 

ジカンザックス おのモードを振り下ろしながらゲイツが問う

 

「よっと‼︎ たしかにそうだな。でも、逃げたら逃げたで俺が痛い目に遭う。それに……俺はもう逃げないッて決めたのさッ‼︎」

 

それを腕の装甲で受けたグリドンはキックでゲイツを押しのける

 

「お前はお前でいいのかよ?」

「何がだ……?」

 

やれやれと呆れた様子でグリドンが答える

 

「あの王様だよ。お前の友達なんだろ?」

「あぁ、そうだとも」

「なら、あっちに加勢してやれよ。凰蓮さんは俺なんかよりもずっと強い。あいつ1人じゃ、間違いなく勝てないぞ」

 

呆れたようにグリドンが指差す先では、今もジオウとブラーボの死闘が続いているが、グリドンの言う通りジオウが圧倒されている

 

「……わかっていないな」

「はぁ?」

「確かに、あの凰蓮というやつの強さも本物だろう。だがー」

 

ゲイツはジオウを遠目に見やりながら、グリドンに視線を戻す

 

「あの魔王は、お前が思うよりもずっと強く、まっすぐで…信念のある男だ……‼︎」

 

「その友達として、俺はジオウを信じてまずは貴様を倒す‼︎」

 

ゲイツはその手に新たなウォッチを取り出し、竜頭をノックする

 

《ドライブ‼︎》

 

ドライブライドウォッチをドライバーに装填し、ぐるりと回転させる

 

《アーマータイム‼︎》

《ドライブ‼︎》

《ドライブ‼︎》

 

ゲイツの背後に腰を屈めた状態のアーマーが出現、分解され、ゲイツの体に装着され、《どらいぶ》の文字がマスクにはまる

 

「ひとっ走り、付き合ってもらうぞ‼︎」

 

腰を屈め、ゲイツがグリドンを睨む

 

「……ヘヘッ、いいぜ。付き合ってやるよ‼︎」

 

気合い充分とばかりにドンカチを打ち鳴らし、グリドンが構える

ドンカチとハンドル剣が衝突、対決が再開された

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ギャリィンッ‼︎

 

「ぐぁあああああぁああぁああ‼︎」

 

ドリノコの鋭い一閃にカチ上げられ、ジオウが大きく吹き飛ぶ

多大なダメージにディケイドアーマーが解除される

 

「頑張るわねぇ、アナタ。でも、残念ながらワテクシには届かないわ」

 

倒れ伏すジオウに、少し優しげな声色でブラーボが諭すように声をかける

 

「さて、決着はついたわけだし、ゴング鳴らして頂戴〜?」

「ーまだだ……」

 

背を向けて手を振るブラーボに、ジオウの声が届く

振り返ったそこには、砂を握り締めながらフラフラと立ち上がるジオウの姿があった

 

「まだ終わってない……‼︎」

 

ジカンギレードを握り締め、再びジオウはブラーボに突撃していく

が、力の入っていない斬撃など届くはずもなく、ドリノコすら使われずに受け流され、あえなく倒れ伏す

 

「終わりよ。これ以上やっても無駄。アナタの力はここが限界よ」

 

だが、それでもジオウは立ち上がる

 

「………確かに、ここが限界かもしれない……」

 

「でも、俺は諦めない……‼︎」

 

「王様になることも、あんたに勝つことも……‼︎」

 

「限界になんて、ぶつかってる暇なんかないんだ‼︎」

 

《ビルド‼︎》

《ベストマッチ‼︎ ビルド‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

気合い一喝、ビルドアーマーに変身したジオウがブラーボに突撃、ドリルクラッシャーで連撃を加える

 

「王様?お子ちゃまらしい夢とは思ってたけど、そんなことにいつまで維持を張っているのかし、らッ‼︎」

 

ドリノコでドリルクラッシャークラッシャーを弾きながらジオウの脚を払い、ストンピングを加えて叩き伏せる

 

「ッ…‼︎まだまだ‼︎」

《エグゼイド‼︎》

《レベルアーップ‼︎ エグゼイド‼︎》

 

エグゼイドアーマーにチェンジしたジオウのアッパーがブラーボをよろめかせる。その隙をついてガシャコンブレイカーブレイカーによるワンツーラッシュがブラーボへと叩き込まれ、《ヒット‼︎》の文字と共にブラーボを吹き飛ばす

 

「もおうッ‼︎ なんでアナタそこまでムキになるのよッ‼︎」

 

ブラーボが苛立たしげに地団駄を踏みながらジオウを睨む

 

「あんた、自分のプロ意識として曲げたくないから、俺たちとの協力は断るって言ったよな?」

「えぇ、言ったわ。それがどうかしたかしら?」

「あんたが俺のことをどう見てるのかはまだわからない。だけど、俺が王様になりたいのも、あんたのプロ意識と同じくらい本気だ‼︎」

 

ジオウが言い放ちながら、新たなウォッチを取り出す

 

《オーズ‼︎》

 

「だから、あんたにこの本気が伝わるまで俺は、諦めない‼︎」

《アーマータイム‼︎》

《タカ‼︎ トラ‼︎ バッタ‼︎》

《オーズ‼︎》

 

タカ、トラ、バッタ型に分解されたアーマーがブラーボに強襲、すかさずドリノコで弾くが弾かれたアーマーたちが変形、ジオウに装着され、赤黄色緑のカラフルなアーマーが完成、マスクには《オーズ》の文字が刻まれる

 

「ハァッ‼︎」

 

腕のトラクローZを展開、虎の手のようにファイティングポーズを構えてブラーボへと突撃する

 

「いいわ。気の済むまでコテンパンにしてあげるわ‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ドムス・アウレア・ユグド タワー部分中層

ゴーレムをなぎ倒しつつ、下へ下へと進んだディエンド一行はタワーの中腹辺りの今までで一番広いエリアに到着した

 

「………これは、予想外のお宝だね」

 

天井付近に浮遊するソレをみたディエンドが思わず呻く

 

そこに鎮座していたのは、林檎のような形状をしている黄金色に輝く果実

黄金の果実がそこに大量のパイプが取り付けられた状態で浮かんでいたのだ

 

「あのパイプを見るに、恐らく上層階のロックシードはこの果実に送られてきているのだろう。だが、これは一体…」

 

首を傾げながら眺めるウォズ。それになにかを知っているのかディエンドが口を開く

 

「似たものを僕は見たことがある。あれはー」

「あれは黄金の果実。またの名を禁断の果実ですよ。模造品ですけどねぇ」

 

ディエンドの言葉を遮り、部屋の暗がりから何ものかが現れる

 

「やぁヤァ、仮面ライダーとサーヴァント諸君。お初にお目にかかるね。私はタイムジャッカーのデューマーというものだ」

 

ハットを取りながらデューマーがディエンドたちに慇懃に礼をする

 

「デューマー、だと……?」

「久しぶりだね〜ウォズ。スウォルツたちは元気かい?」

 

朗らかに笑いながらデューマーがウォズに声をかける

 

「ウォズくん、知っている人間かい?」

「……私もスウォルツ氏から警告を受けただけだが、彼はデューマー。スウォルツ氏と別行動をとるタイムジャッカーでかなりの過激派だ」

 

油断なくジカンデスピアを構えながらウォズが答える

 

「オーマジオウへの歴史を閉ざすためなら、大規模な歴史改変すらいとわない……実に狂った男だと聞いている」

「えー、スウォルツくんそんな紹介してるの〜?傷つくなー私……」

 

おどけた様子を見せるデューマーだが、その目は笑っていない

 

「スウォルツくんたちが悪いんだよ。彼ら、ヌルすぎ……オーマジオウへの歴史を本格的に潰したいならさぁ、国か文明の一つや二つは消しちゃうくらいしないと、さぁ‼︎ ハハハハハハハハハ‼︎」

 

狂ったような哄笑をあげながらデューマーが腹を押さえて膝をつく

 

「失礼、私笑い上戸でねぇ。まぁそれはいいや」

 

パンパンと膝を払ってデューマーが立ち上がり、黄金の果実を指す

 

「これがなんなのか、ッて話だったよね?簡単な話さー」

 

「これは、スーパーアナザーライダーとなられた皇帝陛下、ネロ・クラウディウス陛下の計画のもと生み出された擬似的ヘルヘイムの種さ」

 

信じられない発言に一同が目を丸くする

 

「擬似、ヘルヘイムだって?」

 

ヘルヘイムーそれはかつてウォズたちも遭遇した異次元の《森》

ウォズたちはアナザーライダーが形成した異空間としてのそれしか経験したことがないが、本来のヘルヘイムは黄金の果実を実らせては他の次元を侵食、その次元を《進化》させる《侵略者》のようなものである

 

「そう。あくまでも擬似だがね。陛下が使った仮面ライダーマルスの力ではどう足掻いても本物のヘルヘイムや黄金の果実は再現できないから」

 

デューマーのセリフにウォズが首を傾げる

 

「仮面ライダー……まさか、あの皇帝には仮面ライダーの力が注入されているのか?」

 

「その通り。カルデアから奪った英霊の、その中でも王に名を連ねたものの歴史を一つ。それにこちらで用意した仮面ライダーの力をチョチョイと混ぜて、適当な人間に放り込む。これで生み出したのが、陛下のようなスーパーアナザーライダーってわけだ」

 

あっけらかんとデューマーが答える。そのセリフの中にあった『カルデア』という単語に武蔵が眉を動かす

 

「成る程、しかしいいのかい?それは皇帝にとって、キミたちにとってもかなり重要な情報だろう?」

 

ディエンドとウォズ、武蔵が武器を構えたまま油断なく問いただす

 

「あぁ、問題ないとも」

 

笑みを浮かべたまま、デューマーが告げる

 

「キミたちはここで死ぬんだから」

《デェムシュ‼︎》

《カラスアマゾン‼︎》

 

取り出した黒いライドウォッチを起動。起動と同時にオレンジのラインが走ったそのウォッチを放り投げると地面に落下すると同時にウォッチが展開、その中からホログラムのようなものが出力され、怪人のような姿を形成して実体化する

 

『デェンゴシュデェ ゴロ シャバリャデュ‼︎』

 

判読不能な言語で雄叫びをあげる紅い甲冑のような姿の剣を携えた怪人

 

『………』

 

対照的に直立姿勢のまま静かにピクリとも動かないカラスのような印象の怪人

その2体の怪人がライドウォッチから召喚された

 

「あと、彼らも追加しておこう」

 

デューマーの合図と共に現れたのはインナーだけを纏った男女6名

虚ろな目をしたままの彼らは、左の腕輪の注射器のようなスイッチを押し込む

 

『アマゾン』

 

異口同音に告げた瞬間、6人の姿が赤熱化し変化する

黒い鎧のような、鱗のような外皮に変化した体は鋭利なヒレや鉤爪などの凶器じみた印象を受ける

 

「皇帝陛下が、その力で作り上げた新たなるローマ親衛隊。その名も、《獣闘士》」

 

「か弱い私では君たちを相手にはできないが、彼らは強いよ〜せいぜい、足掻きたまえ」

 

腕組みをしながらニヤニヤと笑うデューマーの側から2体の怪人と6体の獣闘士が三人に襲いかかった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「フンッ!!」

 

ギィンッ‼︎

ジオウオーズアーマーの爪攻撃をかわしたブラーボの力強い袈裟斬りがジオウに膝をつかせる

 

「ぐぅっ……‼︎」

 

流石のジオウも、もう立ち上がれないのか、ドリノコを持つブラーボの手にもたれる

 

「もう流石に、無理でしょう? これでトドメよ」

 

ブラーボがもう片方のドリノコを振り上げる

 

《クウガ‼︎》

 

Pardon(パルドン)?」

 

勝利を確信したブラーボの耳に響くウォッチの起動音

 

「この時を待ってたんだよ‼︎」

 

《アーマータイム‼︎》

《クウガ‼︎》

 

新たにジオウが装着したアーマーは赤い、超古代の戦士のアーマー

変身が完了したジオウは、肩口に叩きつけられていたドリノコを不意をついて奪い取り、構え直す

構え直されたドリノコは、紫の大剣ータイタンソードへと変化する

 

「え⁉︎ ワテクシの武器を⁉︎」

「ハァッ‼︎」

 

一気に重量級の武器に変化した剣がブラーボに叩きつけられ、その巨体を吹き飛ばす

 

「ぁあン⁉︎」

 

地面を転がったブラーボは油断せずにジオウに向き直る

 

《フィニッシュタイム‼︎》

「これで、キメる‼︎」

《タイムブレーク‼︎》

 

アーマーを解除して基本形態に戻ったジオウがドライバーを回転させ、キックの準備体勢に入る

同時に《キック》という文字の形をしたエネルギーがブラーボを取り囲む

 

「………いいわ、ワテクシも……全力で応えましょう‼︎」

《ドリアンスパーキング‼︎》

 

カッティングブレードを倒し、最大限のエネルギーを解放

そのエネルギーを残ったドリノコ一本に収束させ、ブラーボがジオウに向かい合い構え直す

 

「ハァァァァァッ!!」

「セェェェェイッ!!」

 

ジオウのキックとブラーボの一撃

全霊を賭した一撃が衝突し、スパークする

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ハァッ!!」

 

ドンカチのラッシュから回避しながら、数個のタイヤを召喚しグリドンを吹き飛ばす

 

「終わりだ」

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《ヒッサツタイムバースト‼︎》

 

召喚したタイヤたちと共にゲイツの必殺キックがグリドンに放たれる

 

「上等‼︎」

《カモン‼︎》

《ドングリスパーキング‼︎》

 

エネルギーを解放したドンカチを振り回し、ドングリ型のエネルギーを纏って回転するグリドンにキックが衝突。両者のエネルギーが火花を散らす

 

「ハァッ‼︎」

 

競り勝ったのは、ゲイツ

グリドンを大きく吹き飛ばし、着地する

 

「ってて……あー参った参った」

 

ダメージ故に変身解除された城乃内が両手を上げて降参を示す

それを見たゲイツもアーマーを解除し基本形態に戻る

 

「こちらも全力を出さざるを得なかった。大したタフネスだ」

「へっ、パティシエ舐めんなってわけよ」

 

瞬間、轟音がコロセウムを揺るがす

その方向に目をやると、盛大な土煙が巻き上がっていた

晴れていく土煙の中にいたのは、倒れ伏したジオウ

 

「ジオウ‼︎」

 

そして、晴れていく土煙からよろよろと歩み出てきたのはーブラーボ

 

「凰蓮さん……‼︎」

 

倒れ伏したままのジオウに、ブラーボはその手のドリノコを振り上げー

 

パキンッ

 

ーその手のドリノコが折れる

 

「負けたわ。ソウゴのボウヤ」

 

よろめき、膝をついたブラーボの変身が解除される

そのままジオウに手を貸し、彼を助け起こす

 

「……あんた……まさか手加減して、」

「ノンノン‼︎ それはアナタ自身がよくわかっているでしょう? ワテクシは、本気も本気。全身全霊だったわ」

 

清々しく笑いながら凰蓮がジオウの肩を叩く

 

「でも、まぐれと言えばそうなるわね」

「じゃあ、やっぱりー」

 

「そのまぐれを掴んだのは、アナタが諦めずに本気で食らいついたからじゃない」

 

「あっ………」

 

驚いて呆けるジオウに、改めて向き直って凰蓮が言う

 

「アナタの本気、たしかに受け取ったわ。バカにしてごめんなさいね」

 

再び優しく凰蓮が微笑んだ

 

「ソウゴさん‼︎ 凰蓮さん‼︎」

「ソウゴ‼︎」

 

ギッギィィィィィン‼︎

 

突然の擦過音

見るとジオウと凰蓮の前にはマシュとブーディカが、その盾を構えて立ち塞がっていた

 

「ソウゴ‼︎」

「凰蓮さん‼︎」

 

遅れて駆けつけてきたゲイツと城乃内がジオウたちに並ぶ

鋭い視線に戻った凰蓮が、その前に現れたものを睨みつける

 

「……これはなんのつもりかしら?皇帝陛下」

 

『そう怖い顔をするでない。チームシャルモンのオウレンよ』

 

そこに立っていたのは、黄金に輝く鎧を纏い盾と直剣を携えた皇帝ーネロ・クラウディウスだった

その側にはタイムジャッカー・トレグと漆黒の鎧を纏った騎士のような人物

黒騎士の手には、今しがた発砲したかのように硝煙が銃口から登っているハンドガンが握られている

 

「いきなり攻撃してきておいて、怖い顔も何も無いんじゃなくて?」

『それはすまない。そこな狂犬(レインドッグ)はバーサーカーのサーヴァント故に、手綱を離せば止められぬからな』

「Fuuuuuuuuu………」

 

狂犬(レインドッグ)と呼ばれたバーサーカーのサーヴァントは荒い呼吸音をその甲冑の下から漏らす

 

『実に、実に良い戦いであった‼︎ 両者とも、このコロセウムにおいて余にも届きかねん最強ぶりよな。余も実に昂ぶる試合であった』

 

愉快そうに手を叩きながら皇帝が続ける

 

『故に、これより続けて余と余の選んだエクストラソルジャーたる狂犬とトレグとのエクストラマッチを初める‼︎ 今、ここに余が決めた‼︎』

 

皇帝の宣言にコロセウムが沸き立つ

 

「随分と急な話だね……」

『皇帝特権である。特に許しておくと良い♪』

 

上機嫌に答える皇帝の隣から、トレグが歩み出る

 

「ジオウ、超邪魔い。だから……死んで」

《王蛇‼︎》

 

とその手にライドウォッチを取り出しながら、気怠げに告げる

 

「偽装」

《フェイクタイム‼︎王蛇‼︎》

 

起動したライドウォッチをその左手のホルダーにはめると同時にその姿が変化。紫の仮面ライダーー仮面ライダー王蛇へと『変身』した

 

「ちょー、イライラする」

「A rrrrrrrrrrrr………!!」

 

王蛇と狂犬(レインドッグ)が戦闘態勢を取ると共に、皇帝も歩み出て高らかに宣言する

 

『ではこれより、血湧き肉躍るエクストラマッチの開始である‼︎』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『グァアアアアアア!!!!』

 

デェムシュがその大剣を振りかざし武蔵に斬りかかる。それを二刀で受け流し、デェムシュの腹に肘鉄を撃ち込み、斬り吹き飛ばす

 

「このッ‼︎ そこをどけ‼︎化生‼︎」

『………』

 

デェムシュと斬り結ぶ武蔵の横からカラスアマゾンが飛来、咄嗟に防御しようとする武蔵の前にウォズが割り込み、カラスアマゾンを押しのける

 

《カメンライド‼︎ 黒影トルーパーズ‼︎》

 

ディエンドによって新たに三体の仮面ライダー黒影が召喚、既に召喚されていた仮面ライダーキカイと共に獣闘士と戦闘を開始する

 

「……参ったな、これは流石に厳しくなってきた」

 

獣闘士一体の相手をしながら援護射撃を撃ちつつ、ディエンドが苦しげにつぶやく

 

「こんな弱気なこと言うのも何だけど、なんか無いの⁉︎海東くん‼︎」

「そうは言っても、僕としてもこの獣闘士の相手で手一杯だ。これ以上の召喚ができる隙が作れそうに無い」

 

ディエンドの返答に、武蔵が苦い表情を返す

黒影が討ちもらした獣闘士が1人、ディエンドに向かってくる

それにディエンドが銃口を向けたー

 

「おーおー、こりゃ大量だなァ」

 

その場にそぐわない、呑気な声が響くと共に、ディエンドに向かっていた獣闘士が蹴り飛ばされる

そこに現れたのは、ボロボロの黒いコートを纏った長身の男。ソウゴに卵を渡したあの男である

 

「………お前は」

 

ニマニマと余裕を見せていたデューマーの顔が歪む

 

「ちょ、そこのオジ様⁉︎ 危ないから下がって‼︎」

 

武蔵が警告するが、どこ吹く風と言った様子で手にした黒い重厚なベルトで生卵を割り呑み込む

 

「なんだかわからんが、安心しなべっぴんさん」

 

不敵に笑っていた男が、そのベルトを腰に巻き、獰猛な表情へと変わる

 

「アマゾンは、一匹残らず俺が殺してやるからな」

 

男がベルトのグリップを捻り、起動する

 

《ALPHA……》

「ーアマゾン」

《BLOOD & WILD‼︎》

《W・W・W・WILD‼︎》

 

獣闘士の変身時と同様、だがそれ以上の熱量で男が赤熱化

その体が変化する

獣闘士とよく似た姿、それでいて全身に刻まれた緑の生傷、更に血のような真紅の体表

緑の複眼を光らせたそれは、立ち上がり襲いかかってきた獣闘士の心臓を、ひと突きに貫き、斬り伏せる

 

「さぁ、かかってきな。一匹残らず殺してやるよ、アマゾンども」

 

右手に付着した黒い血液を舐めとりながら、心底愉快そうに真紅の凶獣が獣闘士に手招きをした




はい、お待たせしました‼︎ ローマ編第三話‼︎

遂にあの男が、始動です‼︎


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第7話 「0064:愛謳うは薔薇の皇帝」

「それじゃ、もう一仕事と行きましょうか?城乃内のボウヤ」

 

腕を鳴らしながら凰蓮がロックシードを構える

それに習い、逡巡しながらも城乃内もロックシードを構える

 

「手貸してくれるの⁉︎」

「アナタが勝ったのだもの。アナタのやり方にかけてあげるわ、王様」

 

凰蓮が驚くジオウにウインクを返す

 

「ありがとう…助かる‼︎」

 

《ドリアンアームズ‼︎ ミスターデンジャラス‼︎》

 

《ドングリアームズ‼︎ ネバーギーブアーップ‼︎》

 

ブラーボとグリドンに変身した2人が加わり、6人が並び立つ

 

「さぁ‼︎ 行きますわよ‼︎」

「なんか、いける気がする‼︎」

 

2人の宣言に合わせて、ジオウとブーディカは皇帝に、グリドンとマシュは王蛇に、ゲイツとブラーボは狂犬(レインドッグ)へと突撃していく

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr‼︎」

 

向かってくるブラーボとゲイツめがけて狂犬(レインドッグ)が手にしたハンドガンを連射、ゲイツがそれをジカンザックスおのモードで叩き落とし活路を開く。それに合わせて高くジャンプしたブラーボの大上段からのドリノコの斬撃が狂犬(レインドッグ)に迫る

 

「Ruaaa‼︎」

 

それを回避した狂犬(レインドッグ)は鎧からぶら下げていたロックシードを一つ手に取り、握りつぶす。それに呼応して潰されたロックシードから赤い血管が走ったような禍々しいデザインの刀が出現、ドリノコの一撃を迎撃する

更に迫るゲイツに取り出したオレンジロックシードから新たな刀を解放しゲイツの攻撃も防ぐ

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrthrrrrrrrrrrrrrrrr‼︎」

「ッぐっ⁉︎」

「ッ⁉︎」

 

絶叫と共にゲイツとブラーボを吹き飛ばす

 

「Arrrrrrrrrrr………‼︎」

 

どこか虚空を見つめながらも、2人に殺意を滲ませる黒騎士を睨みながら、ゲイツとブラーボが態勢を立て直す

 

「全く……厄介な相手じゃない……‼︎」

 

《ストライクベント》

《ソードベント》

 

錫杖ーベノバイザーにアドベントカードを装填し、その左手にサイの頭のような手甲を、右手にサーベルを召喚した王蛇はグリドンの突撃をその手甲でいなしながら斬り捨て、マシュの盾の一撃を受け止める

 

「押し、切りますッ‼︎」

「無理、無駄」

《アドベント》

 

王蛇を押し込むマシュの隙だらけの脇腹に衝撃が走る

 

「かっ……⁉︎」

 

為すすべなく吹き飛ばされたマシュの目前に迫ってきたのは、サイ型の重量級モンスター、メタルゲラス

 

「しまっー」

「させるかよ‼︎」

 

その突進を、グリドンが身を呈して受け止め、メタルゲラスを横転させる

 

「助かりました…ッ‼︎」

 

ギィィン‼︎

起き上がったマシュが咄嗟に駆け出し、グリドンの目の前に迫っていたサーベルを受け止め、弾き返す

 

「おお、こっちも助かった……さてと、」

 

吹き飛ばされながらも立ち上がる王蛇は首をコキコキと鳴らしながら、新たにアドベントカードを2つ装填

 

《アドベント》

《アドベント》

 

その背後にエイ型のエビルダイバー、コブラ型のベノスネーカーが召喚され、3体のモンスターが並び立つ

 

《ユナイトベント》

 

更に装填されたカードに反応し、3体のシルエットが合体ーより巨大な合体モンスター、ジェノサイダーが完成し、禍々しい雄叫びを上げる

 

「こいつは、どうしたもんかな……」

 

油断なくドンカチと盾を構えながら、静かに殺意を滲ませる王蛇をマシュとグリドンは見据えた

 

《仮面ライダー‼︎ライダー‼︎ジオウ‼︎ジオウ‼︎ジオウII ‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

ジオウIIへと強化変身しながら皇帝へとサイキョーギレードを叩きつける。それを黄金の盾で弾きながら、踊るように直剣で斬撃をジオウIIへと叩き込み、吹き飛ばす

そこにブーディカが駆けつけ、バックラーでの殴打を叩き込むが、今度は直剣でそれを弾き、お返しとばかりに盾でブーディカを弾き飛ばす

立ち上がり、向き直ったジオウIIの目にビジョンが映る

 

皇帝がベルトを操作し、放った斬撃がブーディカを切り裂くビジョンが

 

「ッ‼︎ブーディカ‼︎横に飛んで‼︎」

 

ジオウIIの呼びかけに応えてブーディカが咄嗟に横に飛ぶ

 

《ゴールデンスカッシュ‼︎》

 

先程までブーディカがいた地面を、皇帝の必殺の斬撃が切り裂く

 

「助かったよ、ソウゴ」

 

ブーディカのお礼に頷きを返すジオウII

 

『ーむぅ……そなた、よもや未来が見えておるのか?さすがは時の魔王といったところか』

 

皇帝が訝しむように首を傾げながらジオウIIを見つめる

 

『ーだが、それはこの場ではつまらぬ。疾く使用をやめよ』

 

皇帝が紡いだ言葉が早いか、ジオウIIの姿がなぜかジオウへと変化、ジオウIIライドウォッチが地面に転がる

 

「はっ⁉︎なんで⁉︎」

 

素早く広いあげて竜頭をノックするが、ジオウIIライドウォッチは起動することがない

 

『無駄である。ジオウよ。このコロセウムはそのものが余の宝具。ここでの余の命は絶対である。皇帝特権故に、な‼︎』

 

両手を広げ、自慢するかのようにコロセウムを示す皇帝

 

「なっ、そんなの反則だろ!?」

『皇帝特権である。特に許しておくが良い‼︎』

 

剣を突きつけながら皇帝がジオウへと高らかに告げる

側に駆けつけ、共に油断なく武器を構えたジオウとブーディカを満足気に眺めながら、皇帝は笑う

 

『良いぞ、良い闘志だ。もっともーっと余を楽しませよ‼︎』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ザシュッ‼︎

黒い血液が散る

グシャァッ‼︎

ちぎれた手足が宙を舞う

突如現れた紅い凶獣は、瞬く間に獣闘士を解体していく

 

「ハハハッ‼︎そうだ、もっと来いよ‼︎もっと遊ぼうぜ‼︎」

 

紅い凶獣ー仮面ライダーアマゾンアルファは至極愉快そうに笑いながら、向かってくる獣闘士を殺してバラバラにしていく

 

「なんなの、アレ……」

 

流石の様相にデェムシュと斬り結ぶ武蔵が苦い顔をする

 

「さぁてね、だが彼のおかげでオーバーロードに専念できそうだ」

 

武蔵と鍔迫り合いを繰り広げるデェムシュにディエンドとキカイの援護射撃が炸裂、更によろめいたデェムシュに黒影たちの槍撃が直撃

 

《カマシスギ‼︎》

《フィニッシュタイム‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

そこにジカンデスピアを鎌モードに変化させたウォズの必殺技がデェムシュに炸裂、その紅い体を大きく吹き飛ばす

 

『グゥ……‼︎』

 

よろよろと立ち上がったデェムシュはチラと天井付近に浮かぶ黄金の果実を睨む

すると、そちらに手を伸ばし果実に充満したエネルギーを吸収していく

 

『ヌゥアアアアアアアアアア!!!!』

 

力を吸収し終えたデェムシュは肩の装甲を禍々しく変貌させながら咆哮、放たれたエネルギーに一同が吹き飛ばされる

あまりのダメージに黒影たちとキカイは消滅してしまった

 

「ぐっ、これは、中々厄介だね……」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ディケイドアーマーに変身したジオウが皇帝と剣撃を繰り返し、鍔迫り合いをはじめる

 

「皇帝……アンタはなんで、こんなことを続けるんだ!!」

『ふむ、余と出会いたい理由とはそれか』

 

鍔迫り合いを続けながら皇帝が答える

 

『良い、答えてやろうとも。これは全て余の愛故である』

「愛、だって?」

『ああ、そうだとも。貴様、闘技に負けて消えたものの行方は知りたくはないか?』

「⁉︎ あの人たちをどうしたんだ⁉︎」

『礎となったのだ。余と、民とが愛するこのローマのな‼︎』

 

鍔迫り合いになっていたジオウを弾き飛ばし、皇帝が続ける

 

『余の力でこのコロセウムに闘争本能を刺激する場を作り上げ、あとはあの錠前を与えて鎧と武器を与えて競い合わせる』

 

『闘争本能を伝染させた民は競い合えば合うほどその内に秘めた闘争心を昂らさせていく』

 

『闘争心が最高まで高ぶれば、その体ごとエネルギーとして変換、この下で作り上げた黄金の果実へと錠前ごと蓄積されて行く』

 

『そうして精錬した進化のエネルギーにより、民もろともこのローマを《進化》させる!!』

 

高揚したように皇帝が高笑いしながらこの闘技の真実を告げていく

 

「そんな……そんな身勝手な目的の為に人々を犠牲にしてきたっていうの……!?」

 

怒りに震えた声でブーディカが皇帝を糾弾する

 

『身勝手?何を言うか。余も、尊き犠牲になってきた民もこの国に愛され、そして愛してきた。ならば、その身が愛しきこの国の礎となるならば、何よりも本望であろう?』

 

さも当然の如く皇帝がそう答える

 

「あんな怯えた子供たちまで、喜んで犠牲になったとでも言うのかい⁉︎」

『怯え、そうさな。それもまたあり得る感情よな。だが、それも全て余の愛が受け取ろう。幾たびか剣を交えればその愛も伝わろう。時間の問題というヤツよな』

「ー違う」

 

ジオウが立ち上がり、皇帝を見据える

 

『違う?皇帝として、国と民を愛するのは当然のことであろう?』

不可思議そうに皇帝が首を傾げて尋ねる

「確かに、国と民を愛することは何よりも大切だと俺も思う」

 

「でも、その愛は愛じゃない」

 

『愛じゃない?だと?』

「アンタのそれは、ただ自己満足なこじつけだ。犠牲を正当化して、それを当然として、そんなのは王様がやることじゃない」

 

皇帝を見据えてジオウがそう言い切る

 

「国も民も愛して、民には笑顔でいてもらうように努力する。これが、王様ってもんでしょ」

 

それを聞いた皇帝はつまらなそうに直剣を弄ぶと

 

『高尚な演説は終わりか? 思ったよりもつまらぬヤツよな、ジオウ』

 

そう吐き捨てジオウたちに向き直る

 

「よく言ったわね、ソウゴ」

 

ジオウの隣にブーディカが並び立つ

 

「まぁ、まだまだ王様勉強中の俺の考えだから、アテになんかならないけど」

「そう?私は好きだよ、ソウゴが作りたいその国」

 

悠然と構える皇帝にブーディカが剣を向ける

 

「尚更、あの皇帝はぶっ飛ばさなきゃね」

「うん、この国は……元に戻さなきゃ」

 

『やれるものなら、やってみるがよい。余に勝つことなど、無駄なのだからな!!』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『ヌゥァアアアア!!!!』

 

強化デェムシュが剣を振るい、武蔵とウォズを吹き飛ばす

 

「ぐっ!?」

「くっ!!」

 

倒れ伏す武蔵とウォズを尻目に手に入れた力に溺れているのか、強化デェムシュは剣を滅茶苦茶に振り回し、高笑いを続ける

 

『………………‼︎』

 

獣闘士を殺しつくし、亡骸の上に立つアマゾンアルファにカラスアマゾンが蹴りを放つ。それを受け止めたアマゾンアルファはカラスアマゾンに拳を打ち込むが、体を翻したカラスアマゾンはそのお返しにアマゾンアルファの肩口にチョップを叩き込む

 

「ぐぅっ……‼︎」

 

めり込む手刀が肉を削ぎ、血を吹き出しながらもその腕を掴み押さえると、カラスアマゾンの首根っこを掴み上げ、その顔を引き寄せる

 

「オマエぇ……千翼が気に入ってたヤツか……?」

『…………』

 

睨みつけるアマゾンアルファに反応ひとつも示さずにカラスアマゾンはさらにその手刀をのこ引きながら詰め寄る

 

「なるほど、そういう……手合いか‼︎」

 

押されていたはずのアマゾンアルファがベルトのグリップを捻る

 

《VIOLENT SLASH》

 

電子音声と共にアマゾンアルファの左腕から鋭利なヒレが展開される

 

「ァアアアアァアアアアァアアアア!!」

 

アッパーカットの要領で突き上げられたカッターによりカラスアマゾンの腕が切り飛ばされる黒い血液がその切断面から吹き出し、アマゾンアルファの赤い体表を黒く染め上げる

 

「なら、後腐れなく殺せるなァ!!」

《VIOLENT STRIKE》

 

更にエネルギーを解放したアマゾンアルファはその緑の目を輝かせ、両の脚でドロップキックを放つ

 

「ッシャアッ!!」

 

脚でカラスアマゾンの頭を挟み込みねじ切る

着地したアマゾンアルファの背後で壊れた人形のようにカラスアマゾンがくずおれ、黒い液体へと変貌する

カラスアマゾンの亡骸に一瞥だけくれたアマゾンアルファは立ち上がり、ゆっくりと上を見上げる

 

「………まだいるなァ、あと一匹……」

 

強化デェムシュと斬り結ぶ武蔵を一瞥し、ディエンドがふと尋ねる

 

「武蔵、ひとついいかい?」

「こんな時に、何ッ⁉︎」

「キミ、剣なら刀以外でも使えるかい?」

「はいぃ⁉︎ ん〜………まぁ多分使えるとは思うけど……ッ‼︎」

「なるほど、それなら良かった」

 

とディエンドが取り出したのは一枚のライドカード

 

《カメンライド ブレイド‼︎》

 

召喚されたのはトランプのスペードのような印象を受ける銀と青の仮面ライダー

 

「痛みは一瞬だ」

《ファイナルフォームライド ブ・ブ・ブ・ブレイド‼︎》

 

新たなライドカードを装填したディエンドは召喚したブレイドを背後から撃ち抜く

それと同時にブレイドが『変形』しその形を大剣へと変化させ、武蔵の手元へと飛んでいく

 

「使いたまえ、武蔵」

 

武蔵の下に飛んできた変形したブレイドーブレイドブレードを指しながらディエンドが告げる

 

「なるほど、これなら‼︎」

 

ブレイドブレードを手にした武蔵は一閃、強化デェムシュを大きく吹き飛ばし、更にダメ押しと袈裟斬りを叩き込む

 

『ヌ、グオォ……!!』

 

盛大に火花を散らしながら、強化デェムシュはまだこちらに向かってくる

 

「残念ながら、もう終わりだよ」

 

《ファイナルアタックライド ブ・ブ・ブ・ブレイド‼︎》

《ファイナルアタックライド ディ・ディ・ディ・ディエンド‼︎》

 

《ビヨンドザタイム‼︎》

《タイムエクスプロージョン‼︎》

 

ディエンドのライドカード装填と共にディエンドライバーの銃口から円柱型に並んだカード型エネルギーがデェムシュに向けて展開

更に武蔵が掲げたブレイドブレードからエネルギーが解放、そこに武蔵が持つ力も迸っていく

 

「ハァッ‼︎」

「ー王剣、大天衝!!」

 

ディエンドライバーから放たれたエネルギーの奔流が強化デェムシュを貫き、更にブレイドブレードの一刀がその身を両断する

 

「フッ‼︎」

 

更にウォズからの飛び蹴りがそこに直撃

盛大にエネルギーをスパークさせながら強化デェムシュは爆散した

 

「なんとかなったようだね」

「さて、次はアレをどうにかせねば」

 

ウォズが天井に鎮座している黄金の果実を睨む

と、その時部屋全体が大きく揺れる

 

「なっ、何!?」

 

地響きと共に現れたのは巨大な腕

 

「アレは……⁉︎」

「まさか、ゴーレム⁉︎ しまったアヴィケブロンの宝具か⁉︎」

 

天井を崩しながら現れたそれがディエンドたちに迫ってくる

腕だけで部屋を埋めつくしかねない威容に、一行が覆われる

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ぐあっ⁉︎」

 

皇帝の切り上げを食らい大きくジオウが吹き飛ぶ

 

「ソウゴ⁉︎」

 

ジオウの援護に駆け寄ろうとするブーディカに瞬時に近づいた皇帝はその盾で彼女を吹き飛ばし、コロセウムの壁に叩きつける

 

「かっ……‼︎」

 

衝撃で昏倒したブーディカを眺めた皇帝は再びジオウに剣を向ける

 

『終わりだな、魔王』

 

と、その背後の地面が開き、昇降機から青い装束の魔術師が姿を現わす

 

『何用だ、アヴィケブロン?』

「僭越ながら、皇帝陛下。《工場》が壊滅しました」

『なんだと……⁉︎』

 

今まで余裕綽々だった皇帝の顔に、初めて動揺が滲む

 

「侵入者、主にあのレッドプレイヤーが陛下が生産していた獣闘士を、残らず狩り尽くし、更にデューマーも敗北したようです」

『おのれタイムジャッカーめ……大口を叩いておきながらなんたる失態か!!』

 

皇帝が怒りのままに剣を振るう

 

『黄金の果実は無事であろうな⁉︎』

「ここに」

 

アヴィケブロンが指を鳴らすと、その背後の地面がめくり上がり、巨大な土塊の巨人が姿を現わす

その手には、黄金に輝く果実が

 

『おお、でかしたぞアヴィケブロン‼︎ それさえ健在ならば、一からでもアマゾン細胞を培養できる。いや、このローマの民全てを余の力で進化させることも容易い!!』

 

勝ち誇ったように高笑いをする皇帝

アヴィケブロンはそれを聞いて静かに頷くと、なぜかジオウに視線を移し、

 

「この時を待っていたよ」

 

『何?ッ⁉︎』

 

油断しきっていた皇帝を背後から新たなゴーレムが羽交い締めにする

 

『貴様、何を⁉︎ その腕を離せ!!』

 

皇帝の絶対命令が響く。が、自身を掴むゴーレムはその拘束を緩める気配がない

 

「無駄だよ。これらのゴーレムは、この闘技場の建材を流用している。宝具故か、建材を削ぐそばから再生してくれるから材料には困らなかったよ」

『貴様、裏切るつもりか!!アヴィケブロン!!』

「裏切る?人聞きが悪い言い方はよしてもらいたいな、仮初めの皇帝よ」

 

「キミに召喚されたベオウルフやランスロットと違って、僕はここに呼ばれたはぐれサーヴァントであり、キミの提案に一時乗っただけに過ぎない。元よりそのつもりだったのさ」

 

淡々と事実を告げるアヴィケブロンを、皇帝が睨みつける

すると、その結い上げた髪が解けサソリの尻尾のようにしなり、拘束役のゴーレムを粉砕する

 

『反逆者めが……!! その首をはねよ!!』

 

怒りのままに慟哭する皇帝を尻目に、巨大ゴーレムがその手の黄金の果実をその胸にあてがう

 

「僕の宝具には、強力な魔力の炉心が必要になる。普段であれば、魔術師一人を犠牲にするほどに膨大な、ね。このサイズを起動させるのさえ、僕の霊基のほとんどを注入する必要があった」

『貴様、よせ‼︎やめろ‼︎』

「その問題なら、これで解決する」

『やめろおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

皇帝の斬撃がアヴィケブロンを切り裂く

だが、それは遅すぎた

 

「ー五大元素接続。土塊に生命と武器をー」

 

アヴィケブロンが祝詞を紡ぎあげる

同時に、巨大ゴーレムの周辺から更に土や建材が巨大ゴーレムへと集結し、そのシルエットを巨大化させていく

 

「ー生み出す楽園にて、受難の民を救いたまえー」

 

それは、救世を為す嬰児の誕生を祝福する言葉

今、《材料》を集め終えた巨体から、誕生する

 

「ー起動せよ、《王冠・叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)》!!」

 

空を覆い尽くさんばかりの巨神が、顕現する

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

その巨大な咆哮がコロセウムを大きく揺るがす

 

『ふざけた真似を……!!』

 

怒りに肩を震わせた皇帝が、ベルトに装着されたシリンジをノックする

 

《BLADE LOADING》

 

左手に装備した黄金の鎧が弾け飛び、黒い鉤爪が備わった手甲が現れる。その手甲が展開し、ドロリと長いブレードが溢れ出し成形される

 

『貴様は、ここで死ー』

 

「ーお前が、アマゾンだったわけか」

 

落ち着いた、しかしどこか恐怖を感じる声が皇帝の直上から、衝撃と共に降り注ぐ

 

『がっ!? き、さま……!!』

 

皇帝の頭を鷲掴みにし、地面に叩きつけていたのはアマゾンアルファだった

 

「どういうカラクリかは知らんが、隠すのが上手い野郎だな、オマエ」

『痴れ者が!!』

 

左腕のブレードを薙ぎ、アマゾンアルファを退けた皇帝が立ち上がり彼を睨む

 

「そのブレード……で、その臭い……」

 

しばし、皇帝を値踏みするかのように眺めていたアマゾンアルファ

 

「ーなるほどな、オマエは、俺が殺さなきゃならない相手だ」

『戯言を!!』

 

今までとは比べものにならない殺気を噴き出したアマゾンアルファと、怒りに震える皇帝が衝突する

 

王蛇のラッシュがグリドンに迫る中、ジェノサイダーからブレスが放たれる。それをすんででマシュが防ぎ弾く

 

「っはぁッ、はぁッ……‼︎」

「くそッ……‼︎」

 

2人とも息が上がり、足元もふらついている

 

「そろそろ終わり。死ね」

《ファイナルベント》

 

アドベントカードの装填と共にジェノサイダーが咆哮、その腹部の装甲が展開しブラックホールが開く

 

「ふっ」

 

その対面から王蛇のキックが迫る

 

「ーそれは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷……」

 

「ー顕現せよ、《いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)》!!」

 

マシュの一喝と共にその十字盾が地面に突き立つ

同時に、マシュとグリドンの周囲に巨大な城壁が展開、王蛇の蹴りを防ぐ

 

「ァアアアアァアアアアァアアアアァアアアアァアアアア!!」

 

王蛇の必殺技を全霊で受け止めるマシュの肩を支える形でグリドンも援護する

だが王蛇のキックの衝撃はまだ殺しきれていない

ジリジリと後退する2人の後ろでジェノサイダーがそのブラックホールの出力を上昇させていく

 

《アタックライド ブラスト‼︎》

 

と、王蛇の死角から銃撃がクリーンヒット、その体を吹き飛ばす

 

「セェイッ‼︎」

 

ギィィン!!

ジェノサイダーの背面から斬撃が強襲、王蛇がファイナルベントを失敗したことによりブラックホールを封鎖しながらよろめく

 

「助太刀するよ」

「味方か⁉︎助かった」

 

姿を現したのはディエンドと武蔵。2人ともアヴィケブロンのゴーレムによってここまで運ばれてきたのだ

 

「くっ……」

 

流石のダメージにマシュが膝をつく

 

「マシュ、だっけ?あんたは休んでな。あとは俺たちが‼︎」

 

とグリドンが武蔵と共にジェノサイダーに向かい合う

 

「一気に決めるぞ……‼︎」

「ええ、一緒に決めるわよ‼︎」

 

構える2人の体を花吹雪のオーラが包み込む

 

「あれ?なんか力が……」

 

と振り返る2人の背後にはマシュに寄り添う白ローブの魔術師が

 

「戦いは苦手だが、これくらいなら僕にもできるからね」

 

と、マーリンが2人にウインクを返す

 

「よし、これなら‼︎」

 

《カモン‼︎》

《ドングリスパーキング‼︎》

 

「ー南無天満大自在天神…剣気にて、その気勢を断つ!!」

 

ドンカチと一刀にそれぞれエネルギーを収束、ジェノサイダーも迎撃のために動くが、その巨体故にあまりに遅い

 

「ありゃあッ‼︎」

 

「ー伊遮那、大天衝!!」

 

投げつけられたハンマーと必殺の一刀がジェノサイダーを直撃、爆砕する

 

《ファイナルアタックライド ディ・ディ・ディ・ディエンド‼︎》

 

ディエンドの必殺技が解放、王蛇に向けてカード状のエネルギーサークルが照準される

 

「ハッ‼︎」

 

シアンの渦巻くエネルギーがディエンドライバーから放たれ、王蛇へと迫る

が、エネルギーが直撃する寸前、周囲の時間が凍りつく

 

「今回は、ここまで。バイ、仮面ライダー」

 

左手のホルダーから王蛇ウォッチを外し、変身を解除すると、トレグは気だるげに手を振り、姿を消す

トレグの消失と共に再び時間が動き出し、何もいなくなった地面をエネルギーが焼く

晴れた爆風の中、その中心に目をやったディエンドは必殺の一撃を逃したことを察する

 

「……逃げ足が速い相手だ」

 

「Ruaaaaaaaaaaaaaaaaa‼︎」

 

ロックシードから長槍2本を取り出した狂犬(レインドッグ)はゲイツとブラーボ、両者を寄せ付けずに暴れまわる

ゲイツの脇腹にその一撃が直撃するがー

 

「ー捕らえたぞ‼︎」

 

その穂先をホールドし、一瞬その動きが拘束される

 

「やるわね、ボウヤ‼︎」

 

その反対側からブラーボが強襲をしかける

隙を生み出した絶妙な連携、だがー

 

「Arrrrrr‼︎」

 

咄嗟に槍を手放した狂犬(レインドッグ)は新たにロックシードからブラーボと同じドリノコを取り出し、ブラーボの強襲を防ぎ、弾き飛ばす 

 

「ぐっ、一筋縄じゃいかないわね……‼︎」

 

と、ブラーボをいなした狂犬(レインドッグ)の視線がその直上に移動し、空からの衝撃を防ぐ

狂犬(レインドッグ)が弾き飛ばした空からの強襲者は、ゲイツたちの側に着地する

 

「苦戦しているようだね、ゲイツくん」

「ウォズ⁉︎ 貴様、今までどこに……」

「話は後ださっさと彼を撃破しておこう」

 

ウォズがクイズミライドウォッチを取り出しながらゲイツを促す

 

「言われずとも…‼︎」

 

ゲイツがそれに合わせて負けじとゲイツリバイブライドウォッチを取り出す

 

《ファッション‼︎パッション‼︎クエスチョン‼︎》

《フューチャーリングクイズ‼︎クイズ‼︎》

 

《パワードタイム‼︎》

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

 

フューチャーリングクイズとゲイツリバイブ剛烈に変身した2人がそれぞれの得物を構える

 

「ハァッ‼︎」

 

まずゲイツリバイブが狂犬(レインドッグ)へと突撃ハンドガンやガトリング砲を展開して、迎撃せんとするが、剛烈の装甲にはさしたるダメージが与えられない

 

《のこ切斬‼︎》

 

ジカンジャックローのこモードの一撃が狂犬(レインドッグ)の黒い鎧に大きな傷をつける

 

「Arrrrrrrr⁉︎⁉︎」

「今だ‼︎」

 

ゲイツリバイブの合図と共に、ジカンデスピアとドリノコそれぞれにエネルギーが走る

 

《フィニッシュタイム‼︎》

 

《ドリアンオーレ‼︎》

 

「ふっ‼︎」

「行くわよ‼︎」

 

ウォズが放ったクエスチョンマーク型のエネルギーが狂犬を拘束するが速いか、ブラーボの斬撃が何度も命中する

 

「Ga……aaaaaa………」

 

流石の狂犬(レインドッグ)も力尽きたのか、光の粒子になって消滅していく

それを見届けたゲイツはジオウを見やる

 

「ー後は任せたぞ」

 

完成した巨大ゴーレムはその拳を振り上げると、皇帝ーではなく、彼がかつて腰掛けていた玉座のあるやぐらに振り下ろす

 

ズガァァァァン!!!!

 

凄まじい轟音と共にやぐらを含むコロセウムの一角が倒壊する

 

「今だ‼︎ 仮面ライダージオウ‼︎」

 

アヴィケブロンの呼びかけにジオウが彼の方を向く

よろめきながらも立ち上がり、彼は続ける

 

「これで、あの皇帝の宝具は完璧ではなくなった。今なら、キミたちの力で突破が可能なはずだ。行け‼︎少年‼︎」

 

アヴィケブロンの激励に、ジオウも立ち上がり、アマゾンアルファと交戦している皇帝を見据える

瞬間、ジオウは再び白い世界へと誘われた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「………ここは、またあの場所?」

 

どこまでも白い世界をソウゴが見回す

 

「待ちくたびれたぞ、時の魔王よ。ようやく、ここまで来れたのだな」

 

ソウゴにかけられた声は、あの皇帝と同じ快活で明朗な、それでいて彼よりも華やかな声

振り向いたそこには、赤いドレスのような服を纏った金髪の麗人が腰に手を当てて華やかな笑顔で立っていた

 

「えっと、キミは……?」

 

「何を言っておる?余こそ、誉れあるローマの薔薇の皇帝‼︎ ネロ・クラウディウスである‼︎」

 

ふふん、と自慢げに赤い麗人が答える

 

「え、えぇっ⁉︎ ネロ帝が、女の子……⁉︎」

 

「む?そなたの時代では余は男と語られているのか?まぁ、男装はしておった訳ではあるが……」

 

と不思議そうにドレスの裾をつまみながらソウゴを見やる

 

「コホン、それはさておき……常磐 ソウゴよ。そなたは、王としてあるために何をする?」

 

「俺は……民を助ける王様になりたい。誰も悲しまない、辛い思いをしないために、俺は王様になりたいから」

 

「うむ、良い心意気よな。では、民を助け、誰もが微笑む国に必要なものは何か知っているか?」

 

「……何だろう?」

 

「簡単なことよ。王自身が楽しむことだ。その国の未来に思い馳せ、市井の民草と交流し、それらの様を、国としてあり行く様を」

 

「楽しむ、こと」

 

「いくら良い執政でも、王が深刻そうに悩んでばかりでは、民も笑えぬ。故に、胸を張って楽しむのだ。王であることを、そして民と国を愛することを」

 

そう告げたネロは、どこか寂しげな顔を見せながらソウゴに背を向ける

 

「余もそうだった。余自身が楽しみ、その楽しみを民にも与えようとした。だが、余の愛は民も国も渇かせ、全てを失ってしまった」

 

「ネロ帝……」

 

「……だが、後悔はないぞ? 暴君と成り果て、死なんとする余に手向けをくれた兵はいた。民を飢えさせたこの愛も、届いたものがいたのだ。これほどに喜ばしいこともあるまいて」

 

満面の笑みで、心底愉快そうにネロは胸を張り、笑う

 

「楽しめ、ソウゴ‼︎ 王であることを‼︎ 民草にもその喜びを伝えるために、胸を張って楽しむのだ‼︎ 死なねばわからなかった余と違って、そなたには止めてくれる良き友もあるのだからな‼︎」

 

ソウゴの手を取ったネロは、その手にライドウォッチを握らせる

彼女のドレスを表しているかのような赤と金のライドウォッチを

 

「余の力、特別に貸し出してやろう。余のローマを、民を踏みにじったあのニセモノを、余の代わりに処して参れ‼︎」

 

「うん、わかった。ありがとう、ネロ帝」

 

両者は笑顔で固い握手を交わした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

アマゾンアルファとアナザーネロの攻防が続く中、ジオウはライドウォッチを構える

あの薔薇の皇帝から預かった、赤いライドウォッチを

 

「行こう、ネロ帝‼︎」

 

『そのウォッチは⁉︎ なぜ貴様の手にある⁉︎』

 

アマゾンアルファをいなしながらアナザーネロが叫ぶ

だがそれでもジオウは止まらず、そのウォッチをドライバーに装填

ドライバーをぐるりと回す

 

《キング‼︎ アーマータイム‼︎》

《ネロ‼︎》

 

荘厳な音楽と共に赤いドレスのようにまとまったアーマーがジオウの前に出現、そのままクルクルと優雅に舞い踊るようにコロセウムを舞い、コロセウムを変容させていく

 

「これは……⁉︎」

 

復帰したブーディカが変容したコロセウムを見て感嘆の声を上げる

 

そこに広がっていたのは、どこまでも豪奢で、どこまでも美しい黄金の劇場

正真正銘、ネロ・クラウディウスの宝具《招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)

 

舞い踊り、ジオウの下に戻ったアーマーがジオウへと装着され、その身を赤と金に彩る。そしてそのマスクに《ネロ》の文字が刻まれる

 

「ー祝え!!」

 

「ー過去と未来をしろしめし、王への道を歩む次代の王者!!」

 

「ーその名も仮面ライダージオウ、ネロアーマー!!」

 

「ー薔薇の皇帝たる余の力を受けし、美しくも猛々しいその姿!!」

 

「ー今ここに、万雷の喝采を!!」

 

と、今や聞き慣れた《祝福》が黄金劇場にこだまする

ーいつもよりも快活で、可愛らしい声で

 

その声の主は、ジオウのすぐ隣にフフン、と自慢げな顔で腰に手を当てて立っていたーあの赤いドレスの麗人が

 

「えっえぇぇぇぇぇぇ⁉︎ ネロ帝⁉︎ 何で⁉︎」

 

さすがのジオウも最大限に狼狽しながら隣の皇帝を何度も見直す

 

「皇帝特権である‼︎ まぁなんだ、やはり余もヤツにはキツいお灸をすえてやらねばと思ってな」

 

と、その手に赤い長剣を握りアナザーネロに切っ先を向ける

 

「ジオウと繋がれたが故に、ようやく余に主導権が戻ったのだ。さぁ、ジオウよ。華麗に行くぞ!!」

「なんだか凄いことになっちゃった……でも、いける気がする!!」

 

ネロと同じ剣をその手に握り、ジオウとネロ2人が駆ける

 

『デタラメばかり……ふざけるな!!』

 

アナザーネロがアマゾンアルファを吹き飛ばし、2人を迎撃する

右と左、双方向から踊るような斬撃が迫り、アナザーネロをジリジリと後退させていく

 

「ハァッ!!」

『グゥッ⁉︎』

 

カチ上げられ、盾による防御が失われたアナザーネロの胴体にジオウの斬撃がクリーンヒット

 

「ネロ‼︎」

「うむ、任せるが良い‼︎」

 

ジオウの背を台にくるりと身を翻しながらネロが宙を舞い、アナザーネロの背を十字に切り裂く

 

「よっと‼︎」

「ハァッ‼︎」

 

着地したネロに合わせ、ジオウとネロ2人の斬撃がアナザーネロを跪かせる

 

『グゥッ……‼︎ だがムダだ‼︎』

 

と、アナザーネロが叫ぶとその身に刻まれた傷跡が瞬時に修復されていく

 

「なんと面妖な……」

「任せな、嬢ちゃん。アレは俺の仕事だろう」

 

眉をひそめるネロの背後から、アマゾンアルファが跳躍、アナザーネロにその鋭い爪を突き下ろす

 

『ゴゥフっ⁉︎』

「……俺は、アマゾンには差別しないんだがな。オマエが使ってるその力、そいつは少しだけ訳が違う」

 

「ーアマゾン以上に、オマエは胸糞が悪すぎるんだよ」

《VIOLENT SLASH》

 

グリップを捻ると同時に腕と足のヒレが展開、肘鉄の要領で突き込んだ腕を広げアナザーネロの胸を引き裂く

 

『ガバァッ!?』

 

更に返す動きで、アマゾンアルファの右かかとが首筋に振り下ろされ、袈裟懸けに切り捨てられる

その一撃によりアナザーネロのベルトも大きく破損、傷も修復が始まらない

 

『ぁ、ァアアアア!?余の、余の力が!?』

 

傷を押さえながら狂乱するアナザーネロをアマゾンアルファは非情に突き放す

 

「違うな。それは、七羽さんと、俺の息子が背負ったもんだ」

 

物悲しそうに呟いたアマゾンアルファは呻くアナザーネロの前に立ちはだかる1人に手を振り、その場から去る

 

「アイツの中のアマゾンは殺した。あとは、あんたらに任せるぜ」

 

去ったアマゾンアルファの代わりにアナザーネロに正対したのは、

解いた赤い髪をなびかせる1人の女性

 

「ブーディカ……‼︎」

 

一部始終を眺めていたネロが驚いた声を上げる

 

「………全部、思い出したよ」

 

険しい顔のまま、ブーディカが呟く

 

「私の娘は、病気で死んだんじゃない、ローマに殺されたんだ」

 

それを聞いたアナザーネロは、何かに気づいたのか狂ったように笑う

 

『そうか‼︎そうかわかったぞ‼︎ 余が皇帝になったことで歴史が修正されたんだな‼︎ 故に貴様の娘の運命は病死へと変じた‼︎』

 

さも愉快そうに顔に手を当てながら笑い続ける

 

『コレは、傑作だ‼︎ 余を倒せば、貴様の歴史はあるべく形、ローマに娘を殺される形に収束される‼︎ 惨たらしく殺される運命へと‼︎ そんなこと、娘を愛する貴様にはできまい‼︎』

 

勝ち誇り、叫ぶアナザーネロ

ーその首に長剣が突きつけられる

 

『ーは?』

「確かに、ローマは憎い。私の娘を踏みにじり殺した、許せるはずもない」

 

キッ、と今までで最も鋭い視線でブーディカはアナザーネロを睨む

 

「ーでも、その因縁も怨讐も私が背負って行くもの」

 

「ー歴史を弄って、多くの子たちや民を泣かせたお前の歴史は、たとえその宿命を消せるとしても許さない」

 

「ー私の宿業は、私が決着をつける‼︎」

 

首に突きつけられた剣が押し当てられ、更に白銀に輝く

 

「《約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディカ)》!!」

 

ギャリィィィィン!!!!

 

『ガッ、ぐァアアアアァアアアアァアアアア!!!!』

 

ブーディカの真名解放。果たされることのなかった約束を刻んだ剣がアナザーネロの体を引き裂き、白銀のエネルギーをスパークさせる

 

『がっ、ゴァ……!? か、体がァッ……!?』

 

アナザーネロの体がノイズが走ったように歪む

《ローマ》へと復讐を誓った彼女のスキル。それにより、《ローマ》を背負っていたアナザーネロに多大なるダメージが入ったのだ

 

「ソウゴ、ネロ‼︎ 後はよろしく‼︎」

 

こちらに駆けてきたジオウとネロの肩を叩いてブーディカは決着を託す

 

「ああ、コレで終わらせる‼︎」

「うむ‼︎ 華麗に終わらせてくれよう‼︎」

《フィニッシュタイム‼︎》

《ラウスセント・タイムブレーク‼︎》

 

ジオウとネロ、相対する形で共に腰を低くし剣を構える

その剣に紅蓮の焔が迸り輝く

 

「ハァッ‼︎」

「ィヤァッ‼︎」

 

二振りの斬撃が、アナザーネロの体を切り裂く

 

『ガッあ、ァアアアアァアアアア!!!!』

 

断末魔の叫びと共にアナザーネロが爆散、そこから溢れ出したライドウォッチ2つが機能停止し、弾け飛ぶ

 

「ーうむ、余の…いや、此度はそなたらの独壇場だったな‼︎」

 

自信満々、弾けるような笑顔を浮かべ、ネロがジオウに拳を突き出す

 

「ネロ帝も、ありがとう」

 

それにコツンと拳をぶつけてジオウが答える

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「やれやれ、大仕事だったな、此度の召喚は」

 

体が粒子となって解けていく中、アヴィケブロンは近くにいたソウゴを見やる

 

「常磐 ソウゴ、これを持って行きたまえ」

 

アヴィケブロンが投げ渡してきたのは、禍々しい形をした黒い指輪

 

「……これは?」

「元々はあの皇帝が使っていたものだ。タイムジャッカーたちは、アナザークラウンと呼んでいた」

 

しげしげとソウゴが指輪を眺めているといつのまに現れたのかマーリンがその指輪をつまみ上げる

 

「驚いたな……これは、聖杯か?」

 

珍しく驚いた声を上げるマーリンにアヴィケブロンが頷く

 

「ああ、そうだろうな。尤も、贋作も贋作だからもうすぐ自壊するだろうが」

 

アヴィケブロンが言う通り、マーリンが眺めていた指輪が崩れる

 

「それであの皇帝は、ランスロットやベオウルフを召喚して使役していたらしい。僕にはここまでしかわからなかったが、君たちの手がかりになるなら、幸いだー」

 

それだけ言い残すと、アヴィケブロンは完全に消滅してしまった

 

「……終わったな、ジオウ」

 

ソウゴへと追いついたゲイツが声をかける

後から付いてきた凰蓮と城乃内はアヴィケブロン同様に消滅しかけている

 

「お別れね、王様。ワテクシが認めたその本気、忘れちゃダメよ‼︎」

「短い間だったけど、まぁはちゃめちゃで退屈しなかったぜ。頑張れよ、王様」

 

と別れの挨拶を手短に済ませた2人は共に消滅していった

 

「…………」

 

ソウゴは、光の粒子に解けていくその姿を見つめる

 

「……お別れだね、ソウゴ」

 

柔和な笑みを浮かべてブーディカが声をかける

 

「最後の最後に、何か怖いとこ見せちゃってごめんね。でも、あれがホントの私なんだ」

「………」

「……結局、私は母親としても、王様としても見本になるようなものじゃなかったー」

「ーそんなことない‼︎」

 

ソウゴが声を荒げて反論する

 

「優しくて、子供思いで、何よりも国も娘も民も愛してたんだろ?ならブーディカは、俺の中で最高の王様で、多分俺の母さんの次に素敵な母さんだ‼︎」

 

ソウゴの言葉にブーディカが俯く

そのまま、消えかけた体にソウゴを抱きしめ、頭を撫でる

 

「ーありがとう。嬉しいよ、ソウゴ」

 

「あんたなら、きっといい王様に、優しくて面白い王様になれるよ。応援してあげる」

 

その言葉を残し、ブーディカも消滅する

後に残った光の粒子を一粒握りしめて、ソウゴは顔を拭う

笑顔で空を見上げて、

 

「こっちこそ、ありがとうブーディカ」

 

そう呟いた




次章予告

ローマの歪みを正し、辿り着いた次なる歪みは中国の王朝・武周

女帝により治められたその国家は定められた天命と、その才覚を全うして生きる人々で溢れた楽園であった

「妾の国が続き行けば、オーマジオウは君臨し得ない。ゲイツよ、それはお主が最も望むことではないか?」

女帝の提案に揺らぐゲイツの心

「俺は……ソウゴに魔王となって欲しくない。ならば……」

揺らぎ、迷うゲイツの前に現れたのは旅を続ける僧侶と、かつて迷い子であったある世界の大帝

「迷うのも、苦しいのも、それはあなたが生きてもがいているから。なら、迷ってる時はとことん迷えばいいわ‼︎ それもきっと、御仏のお導きだから」
「迷っても、間違えても、己だけは見失うな。己の心の叫びを、それを信じ己を偽らない。それこそが大切なのだ」

次章、天命統治人国 武周

「ージオウ、俺はお前を、今ここで倒す」


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血闘繚乱遊戯皇国編キャラ紹介

4〜7話のスーパーアナザーライダーや強化形態等の紹介です


・アナザーネロ

身長:160㎝

体重:54kg

特色/皇帝特権による様々な能力、マルスの力を応用したアームズの装備・ロックシードの生産・闘争本能の拡張、アマゾンネオの力を応用したアマゾン細胞培養・あらゆるものの伝染・超再生能力

モチーフ/サソリ

 

アナザーネロライドウォッチとアナザーマルスライドウォッチ、アナザーアマゾンネオライドウォッチで作り出されたスーパーアナザーライダー

皇帝特権で様々な能力を使えるばかりか、自身に与えられたライダーの能力に無理矢理応用させることでドムス・アウレア・ユグドや《工場》、黄金の果実や獣闘士を作り出してローマを支配していた

ゴールデンアームズとドラゴンフルーツエナジーアームズ以外にも使用は可能だが本人が金色を好む為にゴールデンアームズ以外はほぼ使用されない

ドムス・アウレア・ユグドの全体能力向上と皇帝特権による支配により絶対的な力を持つが、逆を言えばそれに能力が偏っている為にそれを崩されたら途端に脆くなる

 

・狂犬(レインドッグ)

アームズウェポンで武装したバーサーカー・ランスロット

皇帝から与えられたロックシードを使い、それらから取り出したアームズウェポンを自身の宝具《騎士は徒手にて死なず》によって宝具化、スキル《無窮の武錬》によりそれら全てを最大限に活用して標的を滅ぼすエクストラソルジャー

作中何度か名が挙がっていたベオウルフはもう一人のエクストラソルジャーでありレッドプレイヤーことアマゾンアルファ/鷹山 仁との対戦で霊核を大きく損傷した為に先に退去していた

 

・獣闘士

アナザーネロがアマゾンネオの力を応用、生産したアマゾン細胞を培養し、闘士から集めたエネルギーにより品種改良、回収した闘士の中でも選りすぐりの者のDNAを注入して生み出したアマゾン兵士

見た目は黒色赤目のアマゾンシグマ。量産型故にアマゾンシグマよりは戦闘力は低いが、生命力は段違いに高く、心臓を破壊されなければ死なない

実は登場した6体以外にも工場内に大量にストックが存在していたが、ディエンドたちと合流する前にアマゾンアルファが皆殺しにしている

 

・仮面ライダージオウ ネロアーマー

皇帝ネロ・クラウディウスの力を持つネロライドウォッチで変身したジオウの強化形態

変身と同時に《招き蕩う黄金劇場》を展開、常に能力が上昇した状態で戦える

この形態に変身している間はネロ本人にも主導権が戻るようで、気まぐれに本人も合わせて呼び出される

必殺技は大剣アエストゥスアエストゥスを使った炎の斬撃《ラウス・セント・タイムブレーク》



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断章 1・2 「0000: 監獄塔に亡霊は惑う」

ゲムデウスクロノスの呼び方について指摘をいただいたので少し修正しました


2068年

 

歴史改変により生じた歪みはこの時代の何もかもをも歪ませていた

ーある一人を除いて

 

ノイズ走る荒野に、かの存在は一人佇み空を見上げる

ふと何を思ったか己の手を一瞥。その手にもノイズが一瞬入るのを目撃する

 

「…常磐 ソウゴ。その試練、超えてみせよ。その先こそが、私が待つ玉座となろう」

 

ノイズの走った手を握りながらー最低最悪の魔王、オーマジオウはそう呟いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ピチョン

 

落ちた雫の音を耳にし、硬いベッドの上でソウゴは目を醒ます

 

「ん………?ここどこ⁉︎」

 

見慣れない景色に跳ね起きる

カビ臭いその部屋には、簡易ベッドと食事台しか存在しない

出入り口らしい場所には鉄格子があり、封じ込めるはずのそれは何故か開け放たれている

 

「え……確か俺って……」

 

と寝ぼけまなこをこすりながらこれまでのことを思い出す

 

ソウゴはローマの異変を仲間やブーディカたちと協力して解決、歴史の修正が始まる中、新しく白いライドウォッチに提示された年代に行くべくタイムマジーンに乗り込みー

 

そこで記憶が途切れている

 

悩むソウゴの耳に入り口の鉄格子がキィキィと軋む音が響く

 

「来い、ってことかな……?」

 

硬いベッドから起き上がり、鉄格子から外へ出る

その先には、長い廊下が続いている。向かって左へ続く廊下のみ、その壁にロウソクが道伝いに灯されている

そのロウソクに従って、ソウゴは道を歩んで行った

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

道を抜けた先、そこには薄暗い広間が広がっていた

 

「……ここは……?」

 

かなり広い広間ではあるが、その先には入り口同様の鉄扉がある

 

ガァアン!!

 

「うおっ!?」

 

瞬間、ソウゴの後ろの入り口が凄まじい勢いで締められる

慌てて扉を叩くが、硬く閉ざされ開かない

 

「いや、嘘でしょ……⁉︎ ちょっと⁉︎だれか⁉︎」

 

流石に狼狽えたソウゴが扉を引っ張ったり押したりするが開く気配は無い

と、その背後ー広間の中央付近から気配がする

振り返ったそこには、黒いオーロラのようなカーテンが広がっていた

 

そこから、一枚のカードのようなエネルギーが現れ、そこから一人のスーツ姿の壮年の男が現れる

 

「助かった……あの、誰だか知らないけど助けー」

 

「商品価値の無いゲームは……絶版だ……」

 

ソウゴの助けを無視して壮年の男は、その腰に緑のバックルを装着する

 

《ガッチャーン……》

「変身……」

《ガシャット……》

《バグルアップ》

 

壮年の男の姿におぞましい怪物の姿が重なる

 

《天を掴めライダー‼︎ 刻めクロニクル‼︎》

《今こそ時は、極まれり!!》

 

その男の直上からカード型のエネルギーが降り注ぎ、その姿を変化させる

禍々しい大剣と盾を携えた、黄金の鎧を纏う赤い目の魔神

ーその名を、ゲムデウスクロノス

 

「ウソ……マジで……⁉︎」

 

驚くソウゴにゲムデウスクロノスはその大剣を向け、ジリジリと迫ってくる

 

「やるしかないか……‼︎」

 

ソウゴも決意を固め、ジクウドライバーを装着、ゲムデウスクロノスの攻撃を避けながらドライバーを回転させる

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

 

変身を完了させたジオウはジカンギレードを振り大剣を弾きゲムデウスクロノスへ斬りかかるだが、盾でいなされ更に大剣での攻撃で吹き飛ばされる

 

「いってぇ……‼︎ だったら‼︎」

 

と、対抗してライドウォッチを取り出し、竜頭をノックする

が、その手に握った黒いウォッチは起動しない

 

「……え?ウソっ⁉︎」

 

狼狽するジオウに容赦なく大剣が叩きつけられる

ゲムデウスクロノスからの容赦ない攻撃にジオウはあえなく吹き飛ばされる

 

「ぐぁっ‼︎」

 

よろよろと立ち上がるジオウは更にライドウォッチを取り出すが、どれも黒く変色していて反応しない

 

「くそっ、なんで……⁉︎」

 

「ここは、己自身と人間の罪に向き合う場所。己の力以外は使えやしないさ」

 

老獪な声が響く

ゲムデウスクロノスの目前に、どこからか一人の男が現れ、ゲムデウスクロノスの蹴り飛ばす

 

「……あんたは……?」

「ここで名なんて大した意味は無い。そうさな……」

 

男が腰をなぞると、そこに白いドライバーが出現

 

「ーゼロスペクター。そう呼んでもらおうか」

 

男はその手に、新たに紫の装飾が為された眼球のようなものを取り出し、スイッチを入れてドライバーに装填する

 

《アーイ‼︎》

《バッチリミロー‼︎バッチリミロー‼︎》

「ー変身」

 

ドライバーのレバーを押し込む

 

《カイガン‼︎ スペクター‼︎》

《レディゴー‼︎カクゴ‼︎ ド・キ・ド・キ‼︎ ゴースト‼︎》

 

瞬間、男の姿が黒い影のようなスーツに変化、更にドライバーから出現した黒と紫のパーカーが飛翔、ゲムデウスクロノスを吹き飛ばしながら男に装着される

 

ゼロスペクターはそのフードを下ろすとその3本ヅノを備えたマスクを露わにし、ゲムデウスクロノスへと攻撃を仕掛けていく

大剣による攻撃をいなし、その身に的確に打撃を与えていく

 

「どうした?コイツを倒さねば、この先への扉は開かんぞ?」

 

ゲムデウスクロノスを吹き飛ばしたゼロスペクターはソウゴを焚きつける

 

「なんだかわからないけど、これなら‼︎」

 

ゼロスペクターに続きゲムデウスクロノスへと攻撃を加え、ダメージを与えていく

大剣攻撃をいなしながら痛打を叩き込んでいくゼロスペクター

盾を強引に弾きながらジカンギレードで攻撃を加えていくジオウ

 

「ハァッ‼︎」

「フンっ‼︎」

 

2人のパンチが同時にゲムデウスクロノスのベルトを穿つ

 

「ぐぁああああぁあぁああああ!?!?」

 

ベルトをスパークさせながらゲムデウスクロノスがもがく 

 

「何故だ……!?何故運営たる私がァ!?」

「運営として、神にでもなったつもりだったのか」 

 

ゼロスペクターがドライバーのレバーをノック、ジオウがドライバーを回転させる

 

「随分と傲慢な話だな」

《ダイカイガン‼︎ スペクター‼︎》

《オメガドライブ‼︎》

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《タイムブレーク‼︎》

 

ゼロスペクターの背後に目のような模様が出現。エネルギーとなって右脚へと収束する

同時にゲムデウスクロノスの周囲をキックという文字が包囲する

 

「ハァァァァッ‼︎」

 

2人のキックがゲムデウスクロノスを穿つ

 

「ぐァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

断末魔の叫びを上げながら、その体が爆散する

 

その様を見届けながら、ゼロスペクターは己の拳を見下ろす

 

「親であることを盾にしていた俺が、言えたことではないだろうがな。俺も、また傲慢だった」

 

ひとりごちたゼロスペクターは変身を解除する

 

「あんた……ゼロスペクターだっけ?ここは……」

 

「ここは監獄塔。人間の罪を知る塔だ」

 

ゼロスペクターを名乗る男は、そう答える

 

「傲慢、お前が目指す王様とやらに一番縁が深い罪じゃないか?」

「たしかに……でも俺は、そんな王様になるつもりはないから」

 

ソウゴの答えに一瞬呆気に取られたような顔をし、ぷっと吹き出す

 

「言い切るか、面白いヤツだ」

 

ギィィ……と次の廊下へと続く扉が開く

 

「ついてこい。次なる亡霊が、俺たちを待っている」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

次の階へと続く階段を上りながらゼロスペクターを名乗る男がこの監獄塔について話していく

 

「ここは言わば、罠のようなものだ」

 

「罠?」

 

「あぁ、その通り。この監獄塔にお前を閉じこめ、彷徨える罪の亡霊にお前を殺させる為に」

 

ゼロスペクターを名乗る男の言葉にソウゴも息を呑む

 

「薄々気づいているだろうが、ここは夢のような場所だ。だが、それでも殺されればお前は死ぬ」

 

「死にたくなければ、勝ち続けろ。それだけだ」

 

男はそう皮肉っぽく笑うと、階段の先の扉を開いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

扉をくぐった2人。お約束のように入り口の扉は硬く閉ざされる

そして、先程同様に黒いオーロラが現れ、中からカード型のエネルギーと共に白い服の男が現れる

 

「何かはわかりませんが、私は忙しいのです。手短に済ませましょう」

《ユートピア‼︎》

 

手にした黄金のメモリを起動、それを腰のドライバーへと装填

その姿を怪人のそれへと変貌させる

《理想郷》の怪人ーユートピア・ドーパントへと

 

ユートピア・ドーパントは手にしたステッキをソウゴと男に向ける

 

「なるほど、コイツらを倒していくしかないってことか……‼︎」

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

 

《カイガン‼︎ スペクター‼︎》

《レディゴー‼︎カクゴ‼︎ド・キ・ド・キ‼︎ゴースト‼︎》

 

ジオウとゼロスペクターに変身した2人はユートピア・ドーパントへと突撃する

 

ジカンギレードでの斬撃を、どういう力かステッキで押さえ込みいなしていく

 

「あれ……?なんか力が、抜けて……?」

『ユートピアの力ですよ。アナタの、王を望む希望、実に素晴らしい力になりますね』

 

ステッキでジオウをいなし、脱力したジオウを突き飛ばす 

 

「厄介な力だな」

 

フラつきながら押し戻されてきたジオウを無情にも脇に突き飛ばし

ゼロスペクターが拳をユートピアに突き出す

悠々とその拳をユートピアが掴み上げる

 

『無駄です。アナタの意思が強ければ強いほど、私の力に……ッ⁉︎』

 

今までの余裕と打って変わって焦った様子でゼロスペクターの拳を掴む腕を引き下げる

 

『……バカな……生きる希望がない……? 貴様、一体何者だ⁉︎』

 

「何者でもない。顔のない亡霊だ」

 

《ダイカイガン‼︎スペクター‼︎》

《オメガドライブ‼︎》

 

ゼロスペクターの背後に目のような模様が再度出現。今度はそのエネルギーが右の拳へと収束していく

ユートピアも負けじと黄金のエネルギーを収束させた拳を突き出し、2つの拳が衝突する

拮抗していたように見えたが、ユートピアの拳がスパークして爆ぜ、ユートピアの体も崩壊し始める

 

『何故……何故だ……⁉︎ また私は、否定されるのか……⁉︎ 私の愛を……⁉︎』

 

「情念は人を強くしていく。だが、それは道を逸れれば途端に罪と化すんだろうよ」

 

素の白服の姿に戻ったユートピアは狂ったように静かに笑う

 

「お前も、人を愛することを、罪と言うのか……」 

 

ドライバーから抜け落ちたメモリが弾けると共に、その姿が泡のように霧散していった

 

「ある意味、こいつは色欲の獣だったのか」

 

変身を解除しながら、ゼロスペクターを名乗る男は白服が消えた場所を眺める

 

「……自ら一度手放したソレを求めてやまない、それもまた色欲ということになるんだろうな」

 

変身解除したまま伸びていたソウゴを助け起す

と、疲れではなく急な眠気が襲ってくる

 

「どうやら今回は、ここまでらしいな」

 

閉じていく瞼の向こうで男が続ける

 

「だが、お前の魂はここに囚われている。いずれまた、ここに誘われるだろうな」

 

その言葉を最後に、ソウゴの意識が途切れた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「う……ん?」

 

ソウゴが目を覚ました先にあったのは、見慣れた白服の背中

 

「お目覚めか、我が魔王」

 

声をかけてきたのは今や見慣れた預言者ーウォズであった

 

「ウォズ、えっと……」

「目が覚めたのね、ソウゴ‼︎ よかった……あなた、タイムマジーンに乗り込むと同時に眠っていたのよ」

 

操縦桿を握るツクヨミが振り返りながらソウゴに声をかける

 

「そうだったのか……なんだか変な夢を見たような……」

「丁度良かった。我が魔王、そろそろ目的の時間に到着するよ」

 

ウォズがソウゴを助け起す

念のために、ソウゴが確認したディスプレイには次なる歪みがある年代が表示されていた

 

0690と



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第3章
第8話 「0690: 運命を支配した女」


一応注意書きです

現FGOでは1.5部の真名を伏せたサーヴァントたちの真名は既に公開されており、そこまで留意することではないとして、この話では真名が伏せられたサーヴァントたちも真名で登場させています

ネタバレとして気になる方はご注意ください


華やかな灯りが溢れる中華風の商店街

人々の喧騒が溢れるその商店街から少し離れた路地裏

 

「………ここ、どこなのかしら……?」

 

1人の女性僧侶が壁にもたれ途方に暮れていた

傘と錫杖を脇に置き、纏った法衣を少しだけ緩めて、体育座りのような姿勢で座り込んでいる

何やら道にでも迷ったのか、正に途方に暮れているといった様子である

 

「サーヴァントとして呼ばれたのはわかるんだけど、ここ中国みたいなんだけど私が知る雰囲気と少し違うし、なんだかマスターも見つからないし……」

 

ぐぎゅるるるるるるるる……

 

盛大な腹の虫が僧侶のお腹から響く

 

「お腹空いたなぁ……」

 

お腹をさすりながら寂しそうに呟く

 

「うわぁーん‼︎ 悟空ぅー‼︎」

 

と半べそで僧侶が弱音を吐いていると、その路地に人影が新たに姿を現す

 

「腹が減っているのか?」

 

僧侶が見上げた先に立っていたのは、不思議な容姿の青年だった

いや、不思議というよりも格好が時代にあっていないといったら良いのだろうか

白のシャツとズボン、その上から緩い緑のセーターを着ている

僧侶が彷徨ったこの街の時代には明らかにチグハグな様子だ

 

「あ、いや、その……」

ぐぎゅるるるるるるるる……

 

流石に恥ずかしかったのか、弁明しようとする僧侶の言葉を腹の虫が遮る

 

「はぅう……」

 

顔を赤らめながら腹を押さえる僧侶を不思議そうに眺めながら、青年は手を差し出す

 

「心配するな。こちらへ」

 

正直なところ、初対面だし、何よりも怪しい見た目な青年に警戒していないわけではなかった

だが、彼女の第六感的なものは彼に邪なものを感じなかったのだ

青年の手を取り、膝を払いながら立ち上がった僧侶は青年の案内に従ってついていく

 

「少し待っていてくれ。すぐに焼き上げる」

 

青年に案内されたのは街から少し離れた場所にあった一本の木、その下に設営された小さな屋台だった

その前のベンチを示し、僧侶を座らせると、青年は屋台に戻り何か作業を始めた

 

しばらくベンチで待っていると、屋台から香ばしい匂いが漂ってきた

あまりに美味しそうな匂いに、思わず垂れそうになったヨダレを拭う

 

「待たせたな。丁度材料の調達が終わっていたから良かった」

 

と屋台から出てきた青年は僧侶に紙パックを渡す

その中には、ソースと鰹節で彩られた丸い焼きものが8個入っていた

屋台から漂っていたのと同じ香ばしいいい香りが鼻をくすぐる

 

青年からパックを受け取るが早いか、焼きものの1つに刺さっていた串を使って早速1つ頬張る

 

「あ、そんな勢いで頬張ったら……」

「あっ、あふっ⁉︎」

 

焼きたてアツアツなために口を火傷しかけたが、じっくり噛み締めて飲み込む

 

「何これ……すごく美味しい!!」

 

僧侶は目をキラキラと輝がせながら二個目、三個目とー流石に懲りたためふーふーと冷ましながら、頬張っていく

 

「気に入ってくれたようでなによりだ」

 

隣に腰掛けた青年が美味しそうに食べる僧侶の様子を見て微笑む

 

「こんな美味しいものをいただけるなんて、お釈迦様に感謝しなくちゃ……これ、なんて食べ物なの?」

「これは、たこ焼きという食べ物だ。私の、恩人から教えてもらった思い出の食べ物なんだ」

 

と、自分用に作ったたこ焼きを心底美味しそうに頬張りながら青年が懐かしむように答える

 

「へぇ〜……暖かい人だったのね、その人」

「何故、そう思うんだ?」

「このたこ焼きを食べてたらなんとなくわかるわ。それに、その人のことを話すあなた、とてもいい顔してるから」

 

その言葉に、どこか気恥ずかしそうにしながら青年は手元のたこ焼きを嬉しそうに眺める

 

「そうか……フミ婆の想いが、また伝わったということだろうか? それなら、なによりも嬉しいものだ」

 

じっくりとたこ焼き味わい、完食した僧侶はしっかりと手を合わせた後、青年に向き合う

 

「改めまして、たこ焼きを恵んでくれてありがとう、優しいお方。修行中の身ながら、道に迷った挙句行き倒れたところを助けられるなんて失態を見せてしまってごめんなさい…」

「構わない。困ったものがいるなら、助け合う。何より私の心が、助けるべきだと、そう示してくれただけだ」

 

頭を下げる僧侶の顔を上げさせながら、青年が自分の胸に手を当て笑顔で答える

 

「道に迷った、と言っていたな。提案なのだが、行く当てが無いなら、私と共に来てくれまいか? 実のところ、私も気がついたらここにいたから、ここのことはほとんどわからないんだ」

「そうだったのね!私も、ここには呼び出されてきたのだけど、本来ならいるべき人がいなくて困ってたの。わからない同士だけど、1人より2人の方が見えてくるものがあるかもしれないしね」

 

「改めまして、私はサーヴァント・キャスター、玄奘三蔵。三蔵法師って方がわかりやすいかしら? 他の人からはよく三蔵ちゃんって呼ばれてるわ」

 

と手を差し出す三蔵。どこか驚いた様子でその顔を一瞬見た青年だったが、笑顔でその手を握り返す

 

「私はアランだ。しばらくの間だが、よろしく頼む」

 

「アランくんね、よろしく‼︎」

 

くぅ〜……

と、何やら気の抜けた音が響く

その音源は三蔵のお腹だった

 

「………おかわり、いるか?」

 

苦笑しながら問うアランに、赤面してうつむきながら、小さく三蔵が頷いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

690年 中国 武周

 

首都 皇帝宮 聖神皇帝玉座の間

 

『ふむ……何やら面妖なものが見えたのう……』

 

荘厳なる装飾に彩られた部屋の最奥、羅盤のような装飾を背にこしらえられた玉座に腰掛けた何ものかが、誰へとも知れずに呟く

玉座に腰を下ろしていたのは、黒地に金の装飾の入ったフード付きのローブを纏った女性

被ったフードからはヤギのような捩じくれたツノと、女性のものである艶やかな紫の髪が伸びている

フードの下の目を桃色に一瞬光らせ、再び呟く

 

『あの妙ちきりんな籠に乗った連中、アレか?貴様らが、んーと、ヅオーとか呼んでおった……』

「恐れながら、ジオウですね、陛下」

 

どこからか現れたデューマーがハットを下げ、礼をしながら答える

 

『あーうん、それじゃそれ。あの魔王とやらが、妾の時代にやってきたということかの?』

 

フードから覗く髪を揺らしながら女帝がどこか愉快そうに問う

 

「はい、その通りです」

『そうか、くっふふふふふふ♪ それは面白くなってきたのう』

 

フードの下から愉快そうな笑みを見せながら肩を震わせて笑う

 

『秦良玉、ここに』

 

「はっ、ここに」

 

女帝の招集に応じ、白い装束を纏い、同じく白い長槍を携えた女性がデューマーの隣に現れ、跪きこうべを垂れる

 

『これよりそなたに見せる一行、この者らをここに。拘束は必要ない。丁重に歓迎せよ』

「よろしいのですか?そこな者曰く、その一行はともすれば、この周の平穏を覆しかねない存在。そのようなものを、この宮殿に招いてしまっても……」

『構わぬ。彼奴らも妾の良きこの国への客人。もてなさねば帝たる妾の器が廃る』

 

肘当てに肘をつきながら女帝は妖艶に微笑む

 

『それに、妾の国を知れば、覆すことを考えることすらやめるであろうよ。何も、問題はあるまいて』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おお……すげぇ……‼︎」

 

そこかしこを見回しながらソウゴが唸る

一行が歩いているのは、タイムマジーンにより導かれた先、690年の中国王朝・武周の首都

その大通りを散策している

 

「あまりキョロキョロしてたら怪しまれるわよ、ソウゴ」

「ゴメン、つい珍しくて……」

 

ツクヨミの指摘にソウゴが少し照れながら答える

 

ソウゴが唸るのも、無理はない

その街はかなり栄えていた

当世風の町並みで、ローマのような異常建築は見られない

行き交う人々は皆笑顔で、仕事に奔走していたりと様々だ

今まで訪れた時代とはまるで違う。時代が歪んでいるのもわからないほどだ

ただー

 

「………あのパーカーのようなものはなんなんだ?」

 

ゲイツが不思議そうに呟いたように、行き交う人々は一人の例に漏れず色とりどりのパーカーを羽織っていた

下の服は当世風の普通の服なので余計に浮いている。いや、むしろパーカーを着ていないゲイツたちの方が逆に浮いてしまっている

 

「たしかに妙な服装だよね……この時代には明らかにそぐわない」

「これが、この時代の歪みのようなものなのでしょうか……」

 

周囲を不思議そうに見回していたソウゴの存在もあり、徐々に注目を集めてきた一行

だが、それとは別に行き交う人々が何故か道を開け始める

 

「ー常磐 ソウゴと、その仲間で間違い無いですね?」

 

割れた人垣から現れたのは、白い装束に身を包んだ女性

その手には白い長槍が握られている

後ろに女官を侍らせているのを見るに、ただのいち市民ではないことは確かだろう

 

「ーだったらどうする」

 

無警戒に歩み出ようとしたソウゴをゲイツとウォズが制しながら、女性を問いただす

と、女性はその手の槍をどういう原理か、消失させ、ソウゴたちに礼をする。合わせて後ろに控える女官たちも慇懃に礼をする

 

「我らが帝が、あなたがたをお待ちしております。これより、宮殿までご案内いたします」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

白装束の女性と彼女が従えた女官に先導され、ソウゴたちは宮殿に向けて歩を進めていた

 

「警戒を解いていただき、感謝します。無用な戦闘は私たちも望んでいなかったので…」

「いやいや、俺たちもできれば話し合いで解決できるならしたかったからさ、お礼を言うならこっちだよ」

「よかった。お優しい方なのですね、ソウゴ殿は。申し遅れました、私はサーヴァント・ランサー、真名を秦良玉と申します」

 

改めて、と白装束の女性ー秦良玉が礼をする

 

「やはり、キミはサーヴァントだったんだね」

「そちらも、サーヴァントのようですね。はい、私は護衛として帝に召喚され、使役されています。もっとも、平和なこの国ではほとんど仕事がないので、このように帝の勅令を受けるものとしての雑用がほとんどですがね」

 

はにかみながらも秦良玉がそう紹介する

 

(おい、いいのか?こいつについて行って……罠かもしれんぞ)

 

ソウゴの襟首を掴み、引き寄せながらゲイツが耳打ちする

 

(たしかにそうかもしれない。でも、向こうが歓迎してくれるなら今は従ってた方がいいと思う。秦良玉の言う通り、この国は歪んでるとは思えないくらい平和だし、もしかしたら話せばわかる人かもだし)

(どうだかな。ここの王、ウォズが会ったデューマー曰くスーパーアナザーライダー達が物分かりがいい相手とは思えないがな……)

 

ゲイツのこの危惧はもっともなところもある

ソウゴとゲイツは、今まで何体ものアナザーライダー達と戦ってきた

多くは、ライダーの力を歪んだことに用いているものだったが、中には同情に値するもの、話のわかるものもいた

だが、どれも結果として歪んでいた

 

『医者が救ってくれないなら、俺が救うしかない』

 

死に近づく息子の為に、多くを犠牲にしようとした者

 

『ふざけるな…何の為に、何の為にここまでやってきたと思ってんだァァァァァァッ!!』

 

希望に生きてきた中で、絶望に阻まれ壊れてしまった者

故に、話が通じるということはつまり安全、善良とはならないのである

 

(確かにそうだけど……話を聞くだけでも、やってみようよ)

 

能天気なのか、大者なのか、ソウゴは怪訝そうなゲイツにそう答え、笑顔を見せる

そんなソウゴにため息をつきながらも、心配そうな視線をよこしていたら、一行の目の前には件の帝が控える部屋への豪奢な扉が現れていた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『遠方、いや遥かな未来からよくぞ参った。常磐 ソウゴ、及びその友達よ。この国、周を代表して聖神皇帝たる妾が歓迎しよう♪』

 

ソウゴ達が部屋へ入るや否や、部屋の奥に存在する玉座からローブをまとった女帝が立ち上がりながらソウゴ達に声をかける

 

「えっと、あんたがここの王様?」

 

『いかにも。妾こそ、この周を治める聖神皇帝・武則天である!!』

 

ローブを翻し、腰に手を当てながらふふん、と自慢げに女帝が答える

 

「武則天……確か、中国唯一の女帝だったような……」

『ほほう、ほほう‼︎ 妾を知っておるのか〜♪ 勤勉じゃのう、そなた♪』

 

ソウゴの言葉に上機嫌そうに武則天が小躍りする

 

「といっても、それしか知りませんけど……」

 

と恥ずかしそうにソウゴが頬をかく

 

「ここまで呼び出して、用件はなんだ?」

 

ソウゴに並び出ながら、ゲイツが警戒心たっぷりに武則天を睨む

 

『そう怖い顔をするでない、明光院ゲイツよ。何も取って食おうとは思ってはおらぬ』

 

フランクにゲイツを制しながら、武則天が更に歩み出る

 

『妾の用件は簡単じゃ。この周の修正は諦め、他の歴史のみ修正せよ。その交渉の為にここまで呼んだのじゃ』

 

扇子で口元を隠し、妖艶に笑いながら武則天は答える

 

「………何?」

『端的に言えば、この歴史は見逃せという訳じゃ』

「ふむ、聞きたいことは色々あるが、随分と消極的な提案だね…今までの王達とは大違いだ」

 

マーリンが言った通り、仮にも王である武則天の発言としては随分と消極的な話である

 

『勘違いするでない魔術師、妾はそなたらを脅威としている故に矛を交えるのを避けると言ってる訳ではない。必要のない争いはいらぬ故の提案じゃ』

 

マーリンにため息を返しながら武則天がやれやれと首を振る

 

『常磐 ソウゴよ、そなたは妾の国を見たのじゃろう?』

「うん。秦良玉に案内されてるあいだに見てきた。なんというか、すごく平和な感じだった。みんな笑ってたし」

『そうじゃろう、そうじゃろう♪ 妾が制定した《天命統治》は完璧じゃから、当然のことじゃがな〜』

 

と胸を張りながら自慢げに武則天が微笑む

スッ、と手招きをすると、部屋の壁から白い球体飾りが脱落し、武則天の手の中に飛んでいく

よく見ると眼球にも似ているそれを愛おしげに撫でながら、ソウゴたちに示す

 

『この珠には、時代に名を残した英傑、偉人たちの魂、技術があまねく保存されておる。これが、妾が天命と呼ぶものじゃ』

 

側に控えていた秦良玉に武則天が目配せする。それに頷いた秦良玉は武則天が手にした《天命》と似たものをその手に取り出し、起動する

 

《ベンケイ‼︎》

 

すると、その《天命》が消失。首元に大きな数珠を巻いたような白いパーカーが出現し、秦良玉へと装着される

同時に、その手には大きな槌のような新たな武器が現れる

 

「フッ!!」

 

秦良玉がその武器を振るい、舞う

その細い体からとは思えない風圧を放ちながら武器は振るわれ、その震脚は宮殿すら揺らしかねないほどの振動を放つ

一通り舞った秦良玉は、そのパーカーを脱ぎ《天命》に戻して礼をする

 

『見ての通りじゃ。秦良玉は素早く、冴えた槍の技を持つ英霊。それだけでも十分じゃが、この通り《天命》を使えば、生前身につくことのなかった力強さを身につけることも簡単にできるのじゃ♪』

 

自慢げに話す武則天の周囲に、複数の《天命》が集まる

 

『豪傑だけではない。学者、芸術家、なんでも時代に名を残したものならば妾がここに使役し、人々に与えることができる』

 

『それにより、人々は約束された《運命》を手に入れる。未来に不安を抱くことも、露頭に迷うこともない、約束された安寧を死するその時まで約束され、幸福に生きることができる』

 

『作物も、学者の《天命》を持ったものの研究により、安定した無尽蔵かつ効率的な供給、配分が約束されておる。故に、誰もが幸福でありながら、誰も飢えない』

 

武則天は更に妖艶に笑う

 

『さて、改めて問おうか。妾の国の、この時代の何が歪んでおるのかの?』

 

武則天の問いに、ソウゴが言葉を飲み込む

家畜同然に人間が扱われていたウルク

消費する換えのきく物品として民が扱われていたローマ

今までの歴史の歪みとは違う、誰も悲しんでいないし、あるはずの幸福を取り上げられていない

武則天の言う通り、完璧なのだ、この国は

 

「それは………」

 

答えにつまるソウゴの前に、ゲイツとウォズが歩み出る

 

「御託はそれだけか? どういう形であれ、貴様が歴史を歪めているのは紛れも無い事実だ。ならば、ここで倒すことは変わらない」

《ゲイツ‼︎》

「珍しくゲイツくんと意見が一致したね。我が魔王の覇道を邪魔するなら、どんな存在であれ倒さねばならない」

《ウォズ‼︎》

 

二人とも、ドライバーを装着しライドウォッチを起動して臨戦態勢だ

 

「二人とも…‼︎ もうっ‼︎」

《ジオウ‼︎》

 

渋々とソウゴもウォッチを起動し、変身準備をする

それを注意深く武則天が眺める

 

「変身‼︎」

「変身」

「変身」

 

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

《仮面ライダー‼︎ゲイツ‼︎》

《スゴイ‼︎ジダイ‼︎ミライ‼︎ 仮面ライダーウォズ‼︎ ウォズ‼︎》

 

三人のライダーが同時に変身、それぞれの武器をージオウだけは渋々と構える

 

「……ッ‼︎」

 

秦良玉が槍を構え、三人を睨みつけるが、それを武則天が制する

 

『良い、丁度良い機会じゃ。妾が何故この時代の修正を諦めよと言うのか、もう一つの理由を説明するにはな♪』

 

武則天が側に浮遊する《天命》を一つ手に取り、起動する

 

《ムサシ‼︎》

《決闘‼︎ズバッと、超剣豪‼︎》

 

《天命》から赤いパーカーが出現、武則天のローブと一体化してそのフードを赤く変色させる

 

「ハァッ‼︎」

「フッ‼︎」

 

その隙を見逃さず、ゲイツとウォズが攻撃を仕掛ける

 

ギャリィィィィン!!

 

『くっふふふ……♪ 遅いのぉ』

「何……⁉︎」

「ッ……⁉︎」

 

確実に隙を突いた攻撃、しかも双方向からのそれを、武則天はどこからか取り出したふた振りの刀で防ぎ、押さえる

そのまま流れるような勢いで二人を弾き、斬りとばす

 

「バカな……ッ‼︎」

『次はこやつじゃ』

 

《ニュートン‼︎》

《リンゴが落下‼︎ 引き寄せまっか⁉︎》

 

新たな《天命》からパーカーを解放、吸収。そのフードを水色に変化させる

 

『ほっ』

「くっ⁉︎」

 

ジカンデスピアを構えて突撃せんとしたウォズを右手から放つ斥力で押さえ拘束、逆に体制を立て直さんとしていたゲイツを左手からの引力で引き寄せ、掌底を連打し弾き飛ばす

 

『ほれ、ドーンじゃ♪』

 

愉快そうに、斥力で拘束した二人を自分の正面に引き寄せて衝突させ、吹き飛ばす

 

「クソッ、ロクに近づくこともできん……⁉︎」

「なら、拘束するまでだ‼︎」

《フューチャータイム‼︎ 仮面ライダークイズ‼︎クイズ‼︎》

《ツエスギ‼︎》

《フィニッシュタイム‼︎》

 

フューチャーリングクイズに変身したウォズがその力を解放、ジカンデスピアの杖モードから?型のエネルギーを展開して武則天を拘束する

 

『ほほーう、なるほど。これは面白い……じゃが、無駄じゃな♪』

《フーディーニ‼︎》

《マジいいじゃん‼︎すげぇマジシャン‼︎》

 

新たな《天命》から紺色のパーカーを装備した武則天は全身を鎖に変化させ、拘束から脱出する

 

「これもダメなのか……ッ」

『では、王らしく決めてみるかのぉ♪』

 

《ツタンカーメン‼︎》

《ピラミッドは三角‼︎ 王家の資格‼︎》

 

《天命》からシアン色のパーカーを解放、それを装備した武則天はその手に大鎌を取り出し、振りかざすと逆ピラミッド型のエネルギーを生成

 

『そーれぃ♪』

 

ゴルフのような要領でそのピラミッド型エネルギーを二人に向けて弾き飛ばし、爆発させる

 

「ガッ‼︎」

「ぐぁっ‼︎」

 

吹き飛ばされた二人は強制的に変身解除される

 

「ゲイツ‼︎ウォズ‼︎」

 

ジオウが吹き飛ばされた二人を助け起こす

 

『くっふふふ〜♪ どうじゃ?妾のこの力。これが、運命をも支配した妾の力じゃ』

 

自身の纏った天命を解除し、武則天が微笑む

油断なくこちらを睨むジオウにすら余裕を見せながら

 

『妾は誰にでもなれる、妾が望めば誰もを英傑にできる。これほどまでに盤石で、絶対なる国家、これが何故否定されねばならんのじゃ?』

 

それを聞いてもなお、ゲイツとウォズは彼女を睨む

 

『……残念じゃな。降りかかる火の粉は払わねばならぬ』

 

残念そうに嘆息する武則天が、ちょいと手招きをするとその後方に女官がズラリと整列する

しかし、秦良玉が引き連れていた女官とは違う。血の滲んだような不気味な衣装を身にまとい、顔を布で隠したものだ

その手には、皆棍棒が握られている

 

『酷吏、そのものらを始末せよ』

「ハッー」

 

酷吏と呼ばれたものたちは、ジオウたちに向けてジリジリと迫ってくる

 

「くっ‼︎」

 

振り下ろされる棍棒をジオウとマシュが防ぐ

 

「一旦退こう‼︎」

 

酷吏たちを弾き飛ばし、入り口へと一行が逃げていく。酷吏たちはそれを執念深く追跡していく

その様を見ながら、武則天はくふふ、と愉快そうに微笑んだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

逃げていく中、散り散りになっていく一行

 

「ハァッ、ハァッ……クソっ……‼︎」

 

ゲイツも脚を引きずりながら、路地へと逃げ込む

その外の通りを酷吏たち数名が通り過ぎていく

 

「今までのスーパーアナザーライダーも、強敵ではあったが……あの武則天とやら、一筋縄ではいかんな……」

『お褒めにあずかり光栄じゃな♪』

 

と、ここで聞こえるはずのない声が響く

 

「……ッ!!」

 

振り向いたその先、路地の奥から黒ローブの女帝が姿を現わす

思わずライドウォッチを構えたゲイツのその手を、女帝の細い指が包む

 

『これこれ、警戒するでない。安心せい、先のはそなたと話をするためのお膳立てじゃ』

「……何?」

 

武則天が驚くゲイツに妖艶に微笑む

 

『妾は、貴様らの処断など考えておらぬ。本気ならば、秦良玉やら他の妾が呼んだサーヴァントを差し向けておるわ』

 

ゲイツたちへの追撃に手心を加えていたことを、堂々と宣言する武則天。ゲイツから離れると、扇子を広げその口元を隠し続ける

 

『明光院 ゲイツ、そなたは常磐 ソウゴの運命を変えたいと思わぬか?』

 

「なんだと……⁉︎」

『卑弥呼の《天命》でそなたらのことはよく知っておる。常磐 ソウゴが、いずれ最低最悪の魔王ーオーマジオウへと変ずることも、そなたらはそれを望んでおらぬことも、な?』

 

動揺を見せるゲイツに武則天は微笑みながら続ける

 

『そなたは、妾のこの国をどう思っておる?』

「……完璧だとは思う。だが、この歴史は歪んだ歴史だ。この時代がある限り、俺たちが生きる未来は崩壊したままだ。だからー」

 

『歪んだこの時代が正史になりうるとしたら?』

 

武則天の紡いだ言葉に、ゲイツが固まる

 

『おや?考えたことなかったのか?もし妾らスーパーアナザーライダーの作り出した時代が修正されず、確固として確立されたらどうなるのか』

 

武則天の言葉から、その未来を予測したゲイツが言葉を飲み込む

 

『簡単な話じゃ。妾が新たなオーマジオウの代わりたる王となる。ソウゴとは違う形でな。タイムジャッカーとやらが妾に伝えた内容が事実ならば、そうなるじゃろうな』

 

扇子を弄びながら、武則天は続ける

 

『もっとそなたの為にわかりやすく言おうか? 妾のこの国が残れば、常磐 ソウゴが最低最悪の魔王となる未来は潰え、幸福なる未来が残る。どうじゃ?こうすれば、わかりやすかろうて』

 

武則天の言葉に、ゲイツは大きく揺れていた

武則天の言った言葉は、真実なのだ

タイムジャッカーたちがアナザーライダーを作り出す目的は、『オーマジオウに代わる王を生み出し、歴史を変える』ため

それは、スーパーアナザーライダーも同じなのだ

今までのように修正されてきた歴史は、ともすれば、ゲイツたちの妨害がなければ、2018年、2068年にも続き得る世界である

この世界、この完成された世界が、修正されなければー

 

(ソウゴは、魔王になることは絶対になくなる……‼︎)

 

それは、ソウゴを友としたゲイツにとって悲願とも言えることだった

 

『取引をしよう。明光院 ゲイツ』

 

武則天がゲイツに歩み寄る

 

『常磐 ソウゴよりジクウドライバーを奪え。それが妾の手に渡れば、妾が次代の王として歴史が決定されよう』

 

女帝は妖艶に微笑む

 

『それをしてくれたならば、そなたらの安寧は約束しようぞ』

 

『賢いそなたならば、後はどうするべきか……わかるじゃろう?』

 

女帝の甘い囁きが、ゲイツの耳をくすぐる

 

「………俺は……‼︎」

 

ゲイツはその拳を力強く握りしめた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「追手は……撒けた?」

 

路地裏に積まれた木箱の影からジオウが顔を覗かせる

追ってきていた酷吏たちは姿を消している

 

「はぁ〜助かった……」

 

脱力しながらジオウが路地に座り込みため息をこぼす

 

「みんなとはぐれちゃったな……早く見つけないと……」

 

変身解除しながら、ソウゴが膝を払って立ち上がる

 

ザッ……

 

「……ッ⁉︎」

 

路地裏の奥から聞こえてきた足音にソウゴが身構える

薄暗がりから現れたのは、よく見知った顔だった

 

「なんだ……ゲイツか。無事でよかった〜……」

 

現れたのはソウゴの大切な友人、明光院 ゲイツだった

 

「ゲイツだけでも出会えてよかったよー」

 

と、ソウゴが言葉を詰まらせる

ゲイツの様子が違ったからだ

今まで閉じかけていた距離を、突き放すかのような冷たい視線

 

まるであの時、オーマジオウになるソウゴを殺そうとしていた時と同じようなー

 

「ゲイツ……?」

「ジオウ、ジクウドライバーを渡せ」

 

唐突な要求にソウゴが眉をひそめる

 

「………渡さない、と言ったら?」

「………力ずくでも奪うまでだ」

 

冷徹に言い放ったゲイツはライドウォッチを取り、起動させる

 

《ゲイツ‼︎》

 

「変身」

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ゲイツ‼︎》

 

静かに変身を終えたゲイツはソウゴを睨みつける

 

「ージオウ。お前を、今ここで倒す」




第三章 武周編開幕しました‼︎

話も軌道に乗ってきて、様々な謎や真相が現れてきます
次回もお楽しみにしていてください!


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第9話 「0690: 奪われた《魔王》」

「ゲイツ⁉︎なんで……ッ⁉︎」

《仮面ライダー‼︎ジオウ‼︎》

 

ジオウへと変身しながら、ゲイツの強襲を受け止める

だが、ジオウ自身動揺が隠しきれていない

 

「お前が、お前が魔王にならない未来のためだ‼︎」

 

ジオウを弾き飛ばし、ジカンザックスの連撃を叩き込んでいくゲイツ

友達になるまでゲイツと共にいたからこそわかる

今のゲイツが本気だと言うことが…

 

《ジオウII ‼︎》

《仮面ライダー‼︎ライダー‼︎ジオウ‼︎ジオウ‼︎ジオウII ‼︎》

 

ジオウIIに変身してゲイツの猛攻に対抗、ゲイツを吹き飛ばす

 

「どういうつもりかは知らない。ゲイツが、本気で俺の為に何かしようとしていることもわかる……」

 

躊躇いながらも決意を固めたのか、ジオウIIはその拳を握り、サイキョーギレードを構え直す

 

「ーでも、俺は王になる夢を、最高最善の魔王になる夢を諦めない。そう決めたんだ‼︎」

 

「……お前なら、そう言うだろうと思っていた」

 

ゲイツが半ば諦めたようにそう呟く

 

《ゲイツリバイブ‼︎剛烈‼︎》

 

その手にゲイツリバイブウォッチを起動しながら

 

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

 

「ーだからこそ俺も、お前を本気で倒す……‼︎」

 

ゲイツリバイブ剛烈へと変身したゲイツがジカンジャックローを装備、突撃。ジカンジャックローとサイキョーギレードが打ち合い、火花を散らす

が、パワー特化の剛烈が徐々にジオウIIを押し上げていく

 

「くそッ‼︎ だったら‼︎」

 

ジオウIIのマスクの時計針が回転、その目に未来のビジョンをー

 

「無駄だ」

 

《スピードタイム‼︎》

《リバイリバイリバイ‼︎リバイリバイリバイ‼︎》

《リバイブ疾風‼︎》

 

リバイブウォッチを回転、パワー特化の剛烈から神速の疾風へとチェンジ

 

「フッ‼︎」

《スピードクロー‼︎》

 

ジカンジャックローをクローモードに変化させて突撃、未来視を終える前のジオウIIを吹き飛ばす

 

「ぐぁっ!!」

 

よろめいたジオウIIに休む暇もなく、次々とゲイツリバイブ疾風の連撃が突き刺さる

 

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

《のこ切斬‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

よろめくジオウIIの背後を取ったゲイツリバイブが剛烈へと変身、のこモードに変化したジカンジャックローののこ歯を叩きつけ、ジオウIIを吹き飛ばす

 

ゲイツの強化形態、ゲイツリバイブは元々『魔王を倒す救世主』の力として存在する

ジオウIIの未来視能力を、そのタイムラグすら追い抜く疾風

強化された攻撃能力を、その強化装甲で防ぎ圧倒する剛烈

格段に高い能力を持つジオウIIにとっても、天敵と言える力を持っているのだ

 

「終わりだ…」

《フィニッシュタイム‼︎》

 

ゲイツリバイブがドライバーを回転させる

 

「……いや、終わらない‼︎」

《フィニッシュタイム‼︎》

 

合わせてジオウIIもドライバーを回転

共に必殺キックの構えを取る

 

《一撃タイムバースト‼︎》

 

《トワイズタイムブレーク‼︎》

 

「ハッ‼︎」

「ハァァァァッ‼︎」

 

ジオウIIとゲイツリバイブ、両者の必殺の一撃が衝突

その衝撃波に世界が揺らぎ、地面がヒビ割れていく

最高最善の魔王を目指すソウゴも、魔王を倒さんとするゲイツも、共に本気なのだ

 

「ぐぁぁっ⁉︎」

 

本気の激突、押し負けたのはージオウIIだった

必殺の一撃故の大ダメージに変身解除されながら、ソウゴが地面を転がる

その目前に転がったジクウドライバーと、ジオウライドウォッチをゲイツリバイブが手にする

 

「……ッ‼︎ ゲイツ……‼︎」

 

ダメージに苦しみながら、ゲイツを見上げるソウゴを振り返り、逡巡しながらもゲイツリバイブは安堵する

 

「……これで、ソウゴは魔王にはならない……」

 

『ご苦労であったなぁ、ゲイツ♪』

 

倒れ伏したソウゴの背後から、武則天が姿を現わす

 

「武則天……‼︎」

 

よろよろと立ち上がりながら、ソウゴが女帝を睨む

 

「……ジクウドライバーはここだ。約束は果たしたぞ」

 

ゲイツリバイブが手にしたジクウドライバーを掲げながら女帝に告げる

 

「約束……?ゲイツ、約束って何?」

「お前のジクウドライバーを奪えば……あの女帝が新たな魔王になり、オーマジオウが生まれる未来を上書きする。そういう約束だった」

「それで……それでゲイツは……」

 

『うむうむ、だがなゲイツ。それはいらぬのだ』

 

「……何?」

 

武則天は何か印のようなものを刻み、油断しきったソウゴの背に手を押し当てる

 

「ぐっ⁉︎あっ……⁉︎」

 

苦悶したソウゴの胸から、灰色の《天命》がこぼれ落ち、武則天の手に収まる

 

「ソウゴ‼︎」

『くっふふふ〜♪ ようやく手に入れたぞ、魔王の《天命》』

 

ソウゴから奪った《天命》を満足げに眺めながら、武則天が微笑む

 

「貴様……‼︎ ジオウに何をした‼︎」

 

ソウゴを助け起こしながら、ゲイツリバイブが武則天を糾弾する

 

『簡単なことよ。常磐 ソウゴの、「生まれながら魔王になる」という《天命》を奪ってやったのじゃ。妾が最初から欲していたのは、こちら故にな』

「何……⁉︎」

 

『そも簡単な話じゃろう? 妾が王としてこの中華、否世界に君臨するならば、それ以外の王など邪魔じゃ』

 

『ましてや、ソウゴとやらは魔王となることが最早運命づけられておるであろう? ジクウドライバーとやらを奪ったところで、そやつは王へと進む』

 

『それならば《天命》を奪ってしまいさえすれば、妾の覇道は安泰であろう?』

 

武則天の言葉に、ソウゴが問いを投げかける

 

「《天命》を奪う……じゃあ、俺は……」

『ふむ、貴様はもう……』

 

『ー絶対に、王にはなれぬ、ということじゃな♪』

 

微笑む武則天の目前で火花が散る

ゲイツリバイブのジカンジャックローの刃と、武則天が取り出した剣がぶつかり合っているのだ

 

「ふざけるな……ふざけるな‼︎ ソウゴを魔王にしないために、なぜそこまでする必要がある‼︎」

『バカか貴様は?こやつは何をしようと魔王、オーマジオウになる。ならばこやつが王になる運命そのものを無くさねば、それは果たせまい?』

「違う、違う‼︎ そいつが、ソウゴが目指す王は、最低最悪の魔王なんかじゃない‼︎」

 

『ならば、なぜ貴様はそれを信じきれなかった?』

 

女帝の言葉に動きを止めたゲイツリバイブを武則天が吹き飛ばす

 

『ソウゴが、最低最悪の魔王にならぬ、なろうとしていないと知りながら、何故妾の甘言を貴様は信じた?』

 

『ーそれは他ならぬ貴様自身が、覆しようの無い運命に気づいておったから、であろう?』

 

「………黙れ……黙れ‼︎」

 

咆哮するゲイツリバイブを眺めながら、武則天は先程奪ったソウゴの《天命》を取り出す

 

『せっかくじゃ、《試着》といこうかの?』

 

《天命》を起動、武則天の手にジオウIIライドウォッチが、その腰にジクウドライバーが出現する

 

「ッ⁉︎」

「バカな……⁉︎」

 

《ジオウII‼︎ジオウ‼︎》

 

驚愕する二人の目の前で、ジオウIIライドウォッチを起動、ドライバーへと装填する

 

『へーんしん、じゃ♪』

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ライダー‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII ‼︎》

 

武則天のその姿が、ジオウIIへと変化する

 

『うむ、悪くないのぉ……なんじゃったか、えーと……』

 

と、何か思案し、思い出したように手を叩き、右手の人差し指を天に向ける

 

『ーなんだか、いける気がする、じゃったかの?』

 

「貴様ァ!!」

 

激昂したゲイツリバイブがジオウIIへと殴りかかる。剛烈のパワー溢れる拳や、蹴りを涼しい顔で受け流していく

 

「返せ……‼︎ その力を返せッ‼︎」

《のこ切斬‼︎》

 

ジカンジャックローのアッパーがジオウIIに迫る

ジオウIIはそれをー避けきれずに吹き飛ばされる

 

『ぬおっ⁉︎』

 

涼しい様だった武則天のジオウIIが少し狼狽した様子を見せる

 

『あたた……なんじゃ、ジオウIIとやらはこんなものなのか?』

 

不思議そうにその手を見るジオウIIを見てゲイツリバイブは思案する

 

(あの攻撃、ソウゴのジオウIIならば避けれたはず。それどころか、先読みを含めて反撃も……)

 

ゲイツリバイブは確信する

 

(ー武則天は、ジオウIIを扱いきれていない‼︎)

 

「ならば‼︎」

《スピードタイム‼︎》

《リバイブ‼︎疾風‼︎》

 

ゲイツリバイブ疾風に変身し、そのスピードでジオウIIへと連撃を仕掛けていく。ジオウIIはジカンギレードとサイキョーギレードを取り出すが、ゲイツリバイブの読み通りその動きをさばききれていない

 

『待て待て、そんなもの反則じゃろう⁉︎』

「速攻で終わらせる‼︎」

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《百烈タイムバースト‼︎》

 

ゲイツリバイブ疾風の連続蹴りがジオウIIを怯ませる、そしてその勢いで飛び上がったゲイツリバイブが必殺の一撃を超スピードでジオウIIへとー

 

『ーかかったのう♪』

 

「何⁉︎」

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《キング‼︎ギリギリスラッシュ‼︎》

 

素早く合体、必殺待機されたサイキョージカンギレードの光刃が高速で迫るゲイツリバイブに、カウンターの要領で叩き込まれる

 

「がっ、ああああああああああああッ!!!!」

 

あまりのダメージに、ジオウIIの遥か後方まで吹き飛ばされ、ゲイツリバイブの変身が解除される

 

「ゲイツ‼︎」

 

負傷したゲイツにソウゴが駆け寄る

 

『そなた、まっすぐじゃのう。それともアレか?友の夢を奪われた怒りで我を忘れておったか?』

 

二人を見下ろし、ジオウIIが嗤う

 

『そなたの未来なぞ、しっかり見えておったとも。故に、それを見越して芝居をし、そなたが確実に倒れ伏す一撃を作った、それだけのことじゃ』

 

サイキョージカンギレードを弄びながらジオウIIが続ける

 

『ソウゴのジオウIIで倒せなかったそなたを、妾のジオウIIは倒した。どうじゃ?これで、名実共にジオウは妾のものじゃ♪』

 

変身解除しながら嗤う武則天を睨みつけ、地面を殴りつけるゲイツ

 

『ふむ、まぁこれでそなたらは用済み。妾の国に不要となった』

 

武則天が指を鳴らし、酷吏を三人呼び寄せる

 

『そやつらを始末しておけ』

「ハッ」

 

武則天が姿を消すと共に、酷吏たちはその手に《天命》を構えて起動

 

《カンウ‼︎》

《アル・カポネ‼︎》

《ヤーノシーク‼︎》

 

《天命》が変化したパーカーをその身に纏い、それぞれの手に青龍刀、マシンガン、斧といった武器を構え、ソウゴたちににじり寄ってくる

 

「おりゃあ!!」

 

先陣を切った青龍刀酷吏にソウゴが突撃し、押さえる

 

「ジオウ…‼︎」

「ゲイツ‼︎逃げろ‼︎」

 

よろよろと立ち上がるゲイツを庇いながら、ソウゴが叫ぶ

だが、そんな抵抗効くはずもなく、青龍刀酷吏はソウゴを押し退ける

 

「ぐっ⁉︎」

 

倒れたソウゴにマシンガン酷吏の銃口が向けられる

 

「ソウゴッ!!」

 

「てぇーい!!」

 

叫ぶゲイツの背後から、何ものかが飛び出し、手にした棒でマシンガン酷吏を吹き飛ばす

 

「ふぅ、危機一髪ってところね。間に合ってよかったわ」

 

現れたのは、白い法衣を纏った若い女性。マシンガン酷吏を吹き飛ばした棒を構え直しながら、酷吏たちを睨む

 

「何かは知らないけど、戦えない子たちを寄って集って攻撃だなんて見過ごせないわ。覚悟しなさい‼︎」

 

他の酷吏たちと乱闘を始める法師に呆気にとられていたゲイツの前に、手が差し伸べられる

 

「大丈夫か?」

 

そこにいたのは緑のセーターを着た青年

そのままゲイツを助け起こし、ソウゴにも肩を貸す

 

「アランくんはその子たちを連れて下がってて‼︎少しキツイかもだけど、ここは私がー」

「いや、手を貸そう。私も戦える」

 

ゲイツたちを下がらせたアランと呼ばれた青年はその手に、《天命》とよく似た緑のデバイスを握り、起動する

 

《ステンバーイ》

 

起動したデバイスを、左腕に装着された別のデバイスに装填、それを立ち上げる

 

《イエッサー》

《ローディング…》

「変身」

 

デバイスのスイッチを起動する

 

《テンガン ネクロム》

《メガウルオウド》

 

デバイスのガイド音声と共にアランの全身が白と緑のスーツに覆われ、デバイスから黒と緑のメカニカルなパーカーが出現、酷吏たちを吹き飛ばしながら、スーツへと装着される

 

《クラッシュインベイダー‼︎》

 

変身完了と共にマスクの単眼と、パーカーを走るパイプが緑に発光する

 

「仮面ライダーだと……⁉︎」

 

驚愕するゲイツに一瞥もくれず、パーカーを下ろしたアランの変身した仮面ライダー、仮面ライダーネクロムは酷吏たちに突撃する

 

「フッ‼︎」

 

法師の背に斧を振り上げていた斧酷吏の斧を受け止め、がら空きの腹にキック、斧酷吏を吹き飛ばす

 

「大丈夫か?三蔵法師」

「うん!なんだかわからないけど、助かったわ‼︎」

 

三蔵と呼ばれた法師が笑顔で答えながら、再び出現させた棒で青龍刀酷吏の得物を弾き、突き飛ばす

その別々の酷吏を相手取る二人に、マシンガン酷吏が銃口を向ける

 

「ーグリム、力を貸してくれ」

 

それを視認したネクロムはその手に緑色の《天命》ー否、眼魂(アイコン)を取り出し、起動。左腕のデバイスーメガウルオウダーに装填、起動する

 

《テンガン グリム》

《メガウルオウド》

 

今まで着用していたパーカーが離脱、新たにメガウルオウダーから出現した深い緑のパーカーがマシンガン酷吏の乱射を防ぎ、斧酷吏を吹き飛ばしながらネクロムへと着用される

 

《ファイティングペン‼︎》

 

「フッ‼︎」

 

襟を正したネクロムの両肩、パーカー部分に装着されていたペン先型ビットがケーブルを伸ばし離脱、立ち上がり再び乱射を始めたマシンガン酷吏の弾丸を弾く

ネクロム本体はそのまま斧酷吏に相対、巧みにその斧を反らしながら攻撃を加え、ダメージを与えていく

 

「ハッ‼︎」

 

マシンガン酷吏をケーブルで拘束し、斧酷吏を蹴り飛ばした方に投げ飛ばす

 

「よっ、と‼︎」

 

三蔵がそれに合わせて斧酷吏たちの方に青龍刀酷吏を突き飛ばす

 

「アランくん、お願い‼︎」

「任せろ」

 

《デストロイ》

《ダイテンガン グリム》

《オメガウルオウド》

 

肩から離脱したビットが酷吏たちの目前に目のような紋様を書き上げ、それに合わせてネクロムが跳躍

 

「ハァッ!!」

 

その紋様ごと、酷吏の三人を必殺のキックが貫く

よろめいた酷吏たちは緑に輝くエネルギーをスパークさせ、黒い液体に弾けて霧散した

 

「すごい……」

 

それを見ていたソウゴが感嘆の声を上げる

変身を解除したアランと三蔵がこちらに向き直る

 

「……ッ」

 

警戒してライドウォッチを取り出しかけたゲイツだが、ダメージが残っていた故に苦悶の表情を示し、膝をつく

そんなゲイツを慌てて三蔵が抱き止める

 

「大丈夫、安心して。私たちはさっきの人?たちとは違うわ。仲間かどうかは、あなたたちの事情を聞かないとわからないのだけど…」

 

ゲイツに肩を貸した三蔵が笑顔でそう伝える

 

「改めて、私はアラン。そちらは三蔵法師、確かサーヴァント、と言っただろうか。訳あって今は共に行動している。ひとまず、私たちの拠点まで案内しよう」

 

そう言いながら手を差し伸べるアランの手を取り、ソウゴが微笑む

 

「俺は常磐 ソウゴ、あっちは明光院 ゲイツ。ひとまずよろしく、アラン、三蔵さん」

「ああ、よろしく頼む、ソウゴ」

 

そんなソウゴをゲイツは一瞥し、すぐに視線を逸らした

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ッ‼︎」

 

ギィンッ‼︎

武周首都、その通りのど真ん中でナイフを携えた酷吏とマシュの激突が繰り広げられている

周囲にいた人々は、皆女官たちがどこかへと避難させ、通りには二人とツクヨミしか残っていない

マシュに切りつけるナイフ酷吏のパーカーにツクヨミのファイズフォンXのエネルギー弾が命中し、火花をあげる

 

「イヤァァァァッ!!」

 

その隙を突いてマシュが十字盾でナイフ酷吏を弾き飛ばす

 

「ツクヨミさん、ありがとうございます……」

 

肩で息をしながらマシュがツクヨミの方を向く

 

「気にしないで、むしろ私にはこれしかできないから」

 

油断なくナイフ酷吏にファイズフォンXを向けながらツクヨミが返答する

瞬間、ナイフ酷吏が動く

 

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

ナイフ酷吏の背から伸びる煙突状パーツから霧のような煙が噴出され、視界が一気に悪くなる

 

「ッグッ⁉︎ ゲホッ、ゴホッッ!!」

 

煙を吸い込んだマシュが口を押さえ、体をくの字に曲げて苦しそうに咳き込む

 

「ケホッ、こ、れは……ッ‼︎」

「マシュ‼︎」

「ツクヨミさ、ケホッ‼︎ 口を、塞いでくださいッ‼︎ゴホッ‼︎これを吸ってはいけないッゴホッゲホッ‼︎」

 

マシュの言葉に従い、ツクヨミも口と鼻を押さえる

マシュの言葉は正しく、口と鼻を押さえた今でも喉や鼻の奥がチリチリする

 

(ッ‼︎マシュ‼︎)

 

よろめき、膝をついたマシュの眼前、そこにナイフを振り上げたナイフ酷吏が現れる

ファイズフォンXを急いで構えるが、間に合わないー

 

「ーなんで、わたしたちの力を使えるの?おねえさん」

 

あどけない声が、霧で霞む夜闇に響く

ナイフ酷吏が周囲を見渡す、が姿は見えない

 

「ーおねえさん、悪いひと? いいひとかな?」

 

再び声が響く

流石の酷吏も恐怖を感じたのか、狼狽しながら周囲を見渡す

 

「ーまぁ、いいや。わたしたちの力使ってるから…」

 

「ー解体するね?」

 

ナイフ酷吏の背後、霧の奥から小さな影が霧を掻き分けてナイフ酷吏に飛来、その体をすり抜ける

ナイフ酷吏の眼前に着地したのは、身軽そうな服に身を包んだ白髪の幼い少女

 

「ッ、新たな標的確認。即時処分をッ⁉︎」

 

少女を視認して、そのナイフを振り上げかけた酷吏がぴたりと動きを止める

 

「ー此よりは地獄、わたしたちは、炎、雨、力……」

 

月夜、霧、そして女性

酷吏はあまりにも《犠牲者》として整いすぎていた

ー霧夜に潜む、ある狂気の犠牲者に

 

「ー殺戮を此処に……」

 

立ち上がった少女は、その手にギラりと輝く不釣り合いなモノを振り払い、その碧眼でナイフ酷吏を振り返りちらと見る

そして、告げるー

 

「《解体聖母(マリア・ザ・リッパー)》」

 

瞬間、ナイフ酷吏の体がバラバラと崩れ、黒い霧状に霧散していく

しゃがんで咳き込むマシュとその背をさするツクヨミの前に少女がしゃがみこむ。二人の目にこちらを見上げる少女の顔が映る

 

「鎧のおねえさん、大丈夫?」

「あ、あなたは……まさッか…」

 

「わたしたち?わたしたちは、サーヴァント・アサシン。うんとね、真名は……言ってもいいのかな?まぁいいや、おかあさんもいないし。真名はジャック・ザ・リッパー。もしかしておねえさんたちもサーヴァント?」

 

ジャック・ザ・リッパーを名乗った少女は首を傾げながらツクヨミたちを見つめる

 

(ジャック……もしかして切り裂きジャック?この女の子が……?)

 

その名を聞いたことの無いものの方が少なかろう

ジャック・ザ・リッパー、切り裂きジャック

かつてロンドンを恐怖に陥れた連続殺人鬼

霧深い夜に暗躍、何人もの女性を殺害、解体してきた形ある狂気

 

それと同じ名前を持つ少女は、今も心配そうにマシュを見つめている

 

「おねえさんたち、なんだか不思議。どうしてだかわからないけど、おねえさんたちは解体しちゃダメな気がする」

 

くるくるとナイフを指先で回しながらそう呟くと、そのナイフをホルスターに収める

 

「で、は……ジャックさ、んは……ゴホッ、私、たちの……」

「うん。解体しないよ。それよりも、鎧のおねえさんは今は喋らないほうがいいよ?多分、肺が壊れかけてるから」

 

マシュをまじまじと眺めたジャックはあどけない声でそう告げる

 

「わかるの?」

「なんとなく。わたしたちのスキルだと思う。それに、さっき解体したおねえさん、わたしたちの力を使ってたならきっと、さっきの霧はすごくものを溶かすから」

 

ジャックの言葉に従い、マシュを近くの壁にもたれさせる

それを近づいてきながら眺めていたジャック。突如その目を細めて通りの向こうに太もものホルスターから抜いた小さなナイフを投擲する

 

「ーおねえさんたち、また来たの?」

 

ジャックが睨む先、そこに現れたのは二人の新たな酷吏

 

「標的確認。命令遂行」

 

《ニコラ・テスラ‼︎》

《ルイス・キャロル‼︎》

 

各々に《天命》を取り出し起動。各々パラボラアンテナ状のモジュールが付いたパーカーと絵本のような装飾が目立つパーカーを装着する

 

「今度は二人……ふふっ、たくさん解体できるね」

 

電気酷吏とブック酷吏を見据えたジャックは、その名に違わない嗜虐的な笑みを浮かべる

 

「ー解体の時間だよ♪」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「うんまい‼︎ このたこ焼きすごいおいしい‼︎」

 

アランに案内された先、街の片隅にあった屋台の側のベンチでソウゴがたこ焼きに舌鼓を打つ

 

「でしょでしょ!アランくんのたこ焼きは最高なのよ♪」

「そこまで言われると、流石に照れる」

 

ソウゴと並んでたこ焼きを頬張る三蔵が笑顔で答え、その言葉にアランが赤面する

 

「ほら、ゲイツも食べてみてよ」

 

屋台の影で三人から離れて佇むゲイツにソウゴがたこ焼きを差し出す

それに一瞥もくれず、ゲイツはソウゴに背を向ける

 

「……さっきのこと、まだ考えてる?」

「当たり前だ。俺は、取り返しがつかないことをしたんだぞ……‼︎」

 

ダンっ‼︎と屋台の壁をゲイツが悔しげに殴りつける

血でも流れそうなほどに握りしめたその手からは、ゲイツのいいようの無い複雑な感情が読み取れてしまう

 

「ねぇ、ソウゴくん…だっけ? その、私たちが来る前に何があったの?」

 

三蔵がソウゴの背後から心配そうに声をかける

 

「私にも良ければ聞かせてくれないか?力になれるかもしれない」

 

アランも屋台から出てソウゴの方を向く

 

「わかった。えっとじゃあどこから話そうか……」

 

「ぎゃてぇ⁉︎ なんて酷いことに……その前の歴史の歪みとかも一大事だけど、それよりもソウゴくんの方が今は大変ね……」

 

ソウゴから今までの事情を聞いた三蔵は申し訳なさそうに俯く

 

「うん、まさかこんなことになるなんて思ってもなかったから、俺も少し混乱している」

「……その割には随分と落ち着いているように思うが…」

 

案外ケロっとした様子のソウゴにアランが不思議そうな顔を向ける

 

「うん、大変だけど、俺がやらなきゃいけないことはもう決まってるからね」

 

食べ終えたたこ焼きの紙パックに視線を落としながらソウゴが続ける

 

「ゲイツを、こんな風に騙したんだ。あの女帝には、一言ガツンと言ってやらないと。それでジクウドライバーも取り戻す」

 

ソウゴの力強い言葉に、沈んでいた三蔵も微笑みを返す

 

「強いのね、あなた。うん、決めた!私もあなたに力を貸すわ、ソウゴ‼︎ あなたの話を聞く限り、多分その女帝を倒すには私の力もいるのでしょう」

 

ソウゴの頭を三蔵が撫でる

 

「それに、ここであなたを見捨てたら、お釈迦様に怒られちゃうものね」

「三蔵法師……ありがとう」

 

屋台を片付け終えたアランもソウゴに告げる

 

「私も無論力を貸そう。ようやく、私が呼ばれた理由がわかった。ならばそれを為すだけだ」

「ありがとう、アラン」

 

二人は硬い握手を交わす

 

それをゲイツは、屋台の影から聞いていた

 

「……俺は、俺は……」

 

頭を抱え、一人呻く

そんなゲイツを三人が心配そうに見つめる

 

「ゲイツくん、相当参っているわね……」

「無理もない。友を思ってやったことが、その友を裏切る形になってしまったんだ……」

 

ネクロムゴースト眼魂(アイコン)を取り出し、握りしめながらアランが続ける

 

「ー私も、同じ誤ちを犯してしまうところだったことがある」

 

項垂れるゲイツの背中をソウゴは呆然と眺める

 

「……ゲイツ……」

 

と、その時、アランの懐から白い眼魂(アイコン)が飛び出し、ソウゴの胸へと入る

 

「なっ、サンゾウ⁉︎」

「へ⁉︎私⁉︎」

「いや、違う。私が持っていた、私の世界の三蔵法師の魂が……」

 

瞬間、ソウゴの姿が変化。その頭に三蔵が被っているものとよく似た帽子を被り、手には錫杖まで握られている。心なしか、雰囲気も変化しているように見える

 

『明光院 ゲイツ、貴方は迷っています』

 

念仏のような抑揚のない声でソウゴ(?)がゲイツに声をかける

 

「………わかっている」

『貴方は信念を見失った。つまり貴方は進むべき道を見失ったということです』

「………」

 

沈黙を続けるゲイツの肩を掴み、振り返らせ、その鳩尾に掌を当てる

 

「⁉︎ 何をー」

『見つめ直しなさい。貴方が進むべき道を』

 

と、ソウゴ(?)が告げるとゲイツの姿が消える

 

「え、えぇっ⁉︎ ゲイツくんどこに行ったの⁉︎」

『案ずることはありません。もう一人の、未だ旅の途上である私よ』

 

ソウゴ(?)が三蔵へと向き直り、微笑む

 

『貴女なら知っているはずです。旅に惑い、その先に辿り着ける強い信念、その力を』

 

ぽかんとその言葉を聞いていた三蔵に礼をし、今度はアランに視線を移す

 

『しばし、この場を離れます。彼を見届けねばなりません』

「……わかった。よろしく頼む」

 

アランの了承に礼をすると、ソウゴから白い眼魂(アイコン)が飛び出し、どこかへと飛び去る

 

「………」

 

呆気に取られた様子の三蔵にアランが向き直る

 

「彼女は、私の世界で出会った貴女とは違う三蔵法師、その魂だ」

「……そっか、アランくんはもう私に会ってたのね」

 

驚いていた三蔵だが、アランの言葉を聞き、どこか得心したように微笑む

 

「あなたと出会えたのは、お釈迦様のお導きかもしれないわね」

 

 

「う〜ん……あれ?ゲイツは⁉︎」

 

サンゾウゴースト眼魂(アイコン)が抜けて気を失っていたソウゴが起き上がり、辺りを見回す

 

「彼はサンゾウが、恐らく修練場に連れて行った」

「サンゾウ……?ここにいるけど……」

「いや、彼女ではない。私が力を借りている私の世界の三蔵法師、その魂だ」

「………なるほど……?」

 

首を傾げながら、半信半疑と言った様子でソウゴが頷く

と、そこに新たな人影が現れる

現れたのは、十字槍と長剣を装備した二人の酷吏

最初から《天命》を身に纏い、臨戦態勢だ

しかもその後方にはゾロゾロと面を隠した酷吏を引き連れている

 

「是が非でもソウゴを仕留めるつもり、ということか」

《ステンバーイ》

《イエッサー》

 

メガウルオウダーを立ち上げ、アランが臨戦態勢を取る

 

「ごめん、力になれないけど…」

「気にしないで、ソウゴ。ここは私たちに任せて‼︎」

 

錫杖を腰だめに構え、三蔵も構える

 

「変身」

《テンガン ネクロム》

《メガウルオウド》

《クラッシュインベイダー‼︎》

 

ネクロムへと変身したアランが三蔵と並び立ち、フードを下ろす

 

「心の叫びを、聞け‼︎」

「御仏の加護、見せてあげるわ‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

二人に増殖したブック酷吏がヒラリヒラリとジャックのナイフをかわしていく

 

「解体、しづらいなぁ、もう‼︎」

 

しびれを切らしたジャックがくるくると舞いながら、二人のブック酷吏をなますに斬り下ろす

だが、斬り刻まれたブック酷吏は両者とも紙のページに変化、その先に電気酷吏と共にエネルギーを貯めるブック酷吏の姿が映る

 

「えっ?」

 

電気酷吏たちが放つエネルギーボールがジャックに着弾、小さな体が大きく吹き飛ばされる

 

「ジャック‼︎」

 

吹き飛ばされたジャックは、すぐに立ち上がる

カラン、

が、その左手からナイフがこぼれ落ちる。その左手はだらんと力なく垂れている

 

「バチバチ、痛いの嫌い……‼︎」

 

右手でナイフを構えながら、ジャックが二人の酷吏を睨みつける

ジャックへと、二人の酷吏が再びエネルギーボールを作り出しながらにじり寄ってくる

 

そんなジャックを心配そうに見つめるツクヨミ、その側に人影が現れる

 

「ちょっといいか?お嬢さん」

「え?」

 

急にかけられた声にツクヨミが驚きながら振り返る

そこに立っていたのは、何やら細長いケースを持ち、現地の人らしい少女を抱きかかえた青年

 

「……あなたは?」

「すまないが、ちょっとばかしこのレディ預かっておいてくれ」

 

抱き上げていた少女をツクヨミに預けると、そのまま酷吏に足を向ける

 

「待って、何するつもり⁉︎」

「決まってるさ、」

 

「レディを守るのはナイトの務め、だろう?」

 

ジャックの背にジャケットが被せられる

 

「ほえ?」

「下がってな、レディ。そんなボロボロな姿じゃ、可愛らしい顔が台無しだぜ?」

 

ジャックを下がらせながら、青年が酷吏の前に立ちふさがり、電気酷吏に手にしたケースを叩きつけ、更に慌てたブック酷吏を蹴り飛ばす

 

「貴様……⁉︎ 何者だ⁉︎」

「何者か?OK、答えてやろう」

 

青年は懐からナックルダスター状のデバイスを取り出し、左手に押し当てる

 

《レ・デ・ィ》

 

「俺は、紅 音也。伝説の男だ」

 

そうキザったらしく名乗った青年は、そのナックルをベルトに装填し、接続する

 

「変身」

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

入力に反応し、ベルトから太陽のようなエンブレムが浮遊、それを中心にして白亜のスーツが構築され、青年ー紅 音也に装着される

金のマスクに覆われ、閉ざされたその面は、まさしく騎士のよう

 

「さぁて、レディを寄って集っていじめる悪い子へのオシオキの時間だ……」

 

酷吏たちを白亜の騎士が指差す

 

「ー覚悟しな」




武周編第2話、おまたせしました‼︎

各酷吏たちですが、多分表記から勘のいい人は元ネタがわかるかと思いますw

激動の武周編、次回もお楽しみにです‼︎


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第10話 「0690: 心の叫び」

「フッ‼︎」

 

白亜の仮面ライダー、仮面ライダーイクサの拳が電気酷吏に撃ち込まれる

よろめいたその体に容赦なくラッシュが叩き込まれ、フィニッシュで蹴り飛ばされる

 

「どうした、アンテナの化け物? その程度か?」

 

肩をすくめながらイクサが挑発する

負けじと両腕から電撃を放ち、イクサをよろめかせるが、イクサはそれをものともせずに近づき、チョップの要領で繰り出された電撃を纏った一撃を受け止め、電気酷吏をホールドする

 

「さぁて、おしりペンペンだ」

 

《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル》

《ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

ベルトを操作、エネルギーをスパークさせながらイクサナックルを取り外すと、それを電気酷吏の鳩尾へと叩き込み、ゼロ距離でエネルギーを炸裂させる

 

「ッ⁉︎ッッ‼︎」

 

全身に流し込まれた膨大なエネルギーの奔流にもがき、力尽きた電気酷吏が爆発、霧散する

 

残ったブック酷吏は分身を作り出し、ジャックたちを取り囲む

 

「う〜やっぱり、斬りづらい……‼︎」

 

斬っても斬っても斬撃が本体に届かず、ジャックが眉をひそめる

 

「そこの嬢ちゃん」

「?わたしたち?」

 

ジャックを呼び止めたイクサが頭を指差す

 

「頭の上に注目だ」

「?」

 

イクサの言う通り、ジャックがブック酷吏の頭の上を見る

すると、大多数のブック酷吏は頭に何も乗っていないのに、一体のブック酷吏だけは頭に鳥が乗っている

 

「‼︎ 見つけた‼︎」

 

ジャックが鳥が乗っているブック酷吏にナイフを投げつける

ナイフが胸に突き刺さり、そのダメージ故にか分身たちが纏めて消滅し、本体が残る

 

「上出来だ」

 

よろめくブック酷吏にイクサナックルからの光弾が直撃、霧散していく

 

酷吏たちを倒し、不調のマシュをツクヨミが支えながら近くの空き家へと移動する

 

「マシュ、大丈夫?」

「コホッ、はい、だいぶ落ち着きました」

 

サーヴァント故か、肺にダメージが入っていたはずのマシュは既に快復、ジャックもけろっとしている

 

「ところで、えっと……」

 

マシュたちの無事を確認したツクヨミは、入り口付近に寄りかかり、つまらなそうに周りを見ている男ー紅 音也を見つめる

 

「あなたは……何?」

「俺が何か?言っただろう、伝説の男だと」

 

ツクヨミの問いに音也が答える。苦い顔をしながら、ツクヨミは確信してしまう

 

(この人、ウルクで会ったあの神と同系統だわ……)

 

脳裏にあの自称神の耳に残る哄笑が響く

 

「聞きたいのは俺の方だ。せっかくゆりとのデートが待っていたってのに、気づいたらこんなとこだ。全く……流石の俺でも何がなんだかわからん」

 

音也がどこか途方に暮れたように肩を竦める

 

「えっと、おそらく音也さんの話を総合すると、以前の歴史の歪みで出会った仮面ライダーの皆さんのように、この歴史の修正に必要な人として呼ばれたのではないでしょうか? はぐれサーヴァントだったジャックさんのように」

「歴史の歪み?なんだそれは聞いてないぞ……いや、そこのガキンチョのアレはそういうことか…?」

 

何か得心がいったように音也が見つめたのは、彼が連れてきていた現地人らしい少女。今はジャックのことを眺めたりしている

 

「そういえば、あの子はなんなの?」

「あいつは、俺がどうしたもんかとこの街をうろついてたら、さっきの化け物どもみたいなヤツらが寄って集って引っ張っていってたんだよ。面倒ごとは避けたかったんだが、つい拾っちまった訳さ」

 

音也がジャックと少女の前にしゃがみこむ

 

「オマエ、名前は?」

「わたしたち?わたしたちはジャック・ザ・リッパーだよ?」

「いや、オマエではなくて……って何か物騒な名前だな、」

「……ラン」

「そうか、ランか。いい名前だ。さて、なんであんなおっかないのに捕まってたんだ?」

 

俯いていた少女がおずおずと答える

 

「……わたし、《天命》をいただいたの。音楽が好きだから、音楽家さんの。でも、《天命》を使ってるのに全然幸せにならなくて……」

 

ランはどこからか灰色の《天命》を取り出す

 

「だから、《天命》を捨てようとしたら、あの人たちが……」

「…………」

 

《天命》を知るツクヨミとマシュがランの独白に苦い表情を見せる

 

女帝は、《天命》を享受させていたのではない、強制していたのだ

確かに才能そのものを得られる《天命》は人々を幸せにするのかもしれない。現にこの街の人々は皆幸せそうだった

だが、才能が与えられ道が定められてしまうなら、その個人の夢や願望はどうなるのか

その答えがこの少女に起こったことなんだろう

 

「そうか……ちょっと待ってな」

 

ランの話を聞いていた音也は立ち上がり、自身が持っていたケースを開く

中から現れたものはーバイオリンだった

 

「おじさん、それなに?」

「おじさんじゃない、音也お兄さんだ。まぁ見てな」

 

とジャックに言い聞かせ、バイオリンを構える

その表情が軽薄そうなものから鋭利なものに変わる

 

優美な音色が、その場を包み込んだ

 

音也の奏でるそのバイオリンは荘厳で、静かでいて大胆で

ーそして何よりも自由な音色だった

あっという間に一曲弾き終わり、音也の顔が普段の顔に戻る

 

「……すごい…」

「……おじさんカッコいい…‼︎」

 

呆然としていたその場に二人の少女の小さな拍手が響く。呆気に取られていたツクヨミとマシュも二人に続いて拍手を送る

 

「まぁ当然だがな。あとおじさんじゃないぞ、ジャック」

 

満足そうにバイオリンをケースにしまい直しながら、もう一度ランを見据える

 

「さて、ラン。どう思った?」

「……すごかった。わたしも、おじさんみたいにやってみたい…‼︎」

「…まぁいい。すごいのは当然だ。なんて言ってもこの俺だからな」

 

と訂正は諦めて音也が笑う

 

「だけどな、ラン。俺みたいになる必要はないんだ」

 

「え?」

「無論、俺のような世界が嫉妬する天才になること自体難しいわけだが、そうじゃない。オマエはオマエの音楽を奏でるんだ」

「……わたしの、音楽?」

 

「そうだ。人の心は音楽だからな。その心に正直に、自由になるんだ。こんなハリボテなんかに頼らなくても、それが見えたなら前に進めるのさ」

 

ランから《天命》を取り上げながら、音也が微笑む

音也の言葉がまだピンときていないのか、ランは難しい顔をして首を傾げている

 

『素晴らしい‼︎ なんと、なんと素晴らしい音色か‼︎』

 

と、突如騒がしい声が空き家の中に響く

 

「あン?誰かいるのか?」

『キミが手に持っているだろう?』

 

と音也がその手の《天命》を見る。すると閉じているようだった瞳部分が開き、声を発する

 

『眠らされていたが、おかげで目が覚めたぞ‼︎』

「おぉわッ!?な、なんだオマエ!?」

 

さすがの音也も驚いて《天命》だったものを放り投げる

それはさも当然のごとく空中に浮遊して留まると、その言葉に答える

 

『私はベートーベン。この器に魂を入れられたものだ』

 

「べ、ベートーベン!?あのベートーベンか!?」

『いかにも』

 

今度は音也が呆けた顔になり、ふよふよと浮かぶベートーベンを見つめる

 

『理不尽な運命に怒り、心のままに音色を奏でる。それこそ真に心を響かせる音楽となる‼︎』

 

どこか興奮した様子でベートーベンがその身を震わせる

 

『こうしてはおれん‼︎ あの女帝‼︎ 我々を利用に利用したあの女への怒りを叩きつけねば……‼︎』

 

と、今度は呆然と話を聞いていたツクヨミの方に飛んでいき、その肩に乗る

 

「え、ちょっと⁉︎」

『諸君らはかの女帝に用があるのだろう?ならば私も同行させてもらうぞ』

「いや、そんな急に…」

 

肩に乗るベートーベンに渋い表情を見せながらも、確かに、とツクヨミが頷く

 

「……でも、ソウゴたちも間違いなくあの宮殿に向かうはずだから、あそこには行かなきゃいけないのね……」

「確かに……今はそれが最良の手段だと思います」

 

とツクヨミに同意し、マシュも立ち上がる

 

「おねえさんたち、行く場所決まったの?ならわたしたちも行く‼︎」

「わ、わたしも……」

 

ジャックとランも二人に続いて立ち上がる

 

「オイオイ、なんだか知らんが何で殴り込むような雰囲気になってるんだ?」

 

ただ一人、音也は乗り気ではないようだが

 

「紅 音也、あなたはついてこないの?」

「勘違いするな。成り行き上さっきは助けただけだ。俺はこれ以上お守りをする気はない……」

 

と、言いつつもまだ悩んでいるような様子のランを見て、仕方がないと言わんばかりにため息をつく

 

「……だが気が変わった。宮殿とやらまでなら俺もついて行ってやる。俺もその女帝とやらには一言言ってやりたいことがあるからな」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

目が覚めたゲイツが見たのは、高い山脈に囲まれた荒地

 

「ここは………?」

『ここは修練場。道を見失った貴方への試練の場』

 

抑揚の無い声がゲイツの疑念に応える

振り返るとそこに立っていたのは奇妙な人物

黒い人間だかなんだかよくわからないものに、白いパーカーが被さっている

幽霊、と呼称した方がしっくりくるような人物だ

 

「修練場、だと……?」

『ここでは貴方が倒すべき敵が姿を見せる。それを見事倒したならば、貴方の信念は証明されよう』

 

幽霊の静かな言葉に、ゲイツが顔をしかめる

 

「倒すべき敵、だと?」

『然り。既にそこに現れている』

 

幽霊はゲイツの後方を指差す

 

そこには、荘厳なる玉座と、そこに腰掛けた最低最悪の魔王の姿があった

 

「オーマジオウ⁉︎ 成る程な……‼︎」

《ゲイツリバイブ、剛烈‼︎》

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

 

その姿を確認したゲイツはゲイツリバイブウォッチを起動、ゲイツリバイブ剛烈へと変身する

 

「確かに、相手にとって不足無しだ‼︎」

 

ジカンジャックローを構え、立ち上がったオーマジオウに向けゲイツリバイブが突撃する

 

「ハァッ‼︎」

《のこ切斬‼︎》

 

ジカンジャックローの刃がオーマジオウに命中するー

 

「ーッ⁉︎」

 

瞬間、ゲイツリバイブがその体を硬ばらせる

そこにいたのは、オーマジオウではなくジオウIIだったのだから

ギャリィィィィン!!

 

「ぐわっ!?」

 

硬直したゲイツリバイブにサイキョーギレードが無慈悲に叩きつけられる

 

「ぐっ、バカな……⁉︎ どういうことだ⁉︎」

『言ったはずです。貴方の倒すべき敵が現れると』

「何故ソウゴが現れる!? オーマジオウでは無いのか!?」

 

『ーいえ、オーマジオウですよ。常磐 ソウゴという名前の』

 

幽霊の言葉にゲイツリバイブが怒りを表す

 

「ふざけるな!! ソウゴが、オーマジオウのはずがない!!」

『では何故貴方はそのソウゴに刃を向けたのですか?』

「それは、あいつを魔王にしないために……‼︎」

『それは貴方がソウゴが魔王になるという未来を否定できていないからではないのか?』

「ーッ!!」

 

幽霊の言葉にゲイツリバイブが再び身を硬ばらせる

 

『私からの修練は変わりません。これを突破できねば貴方はここから帰ることは叶いません』

 

ジオウIIが静かにゲイツリバイブにその刃を向ける

 

『オーマジオウ、常磐 ソウゴを倒しなさい。そして、貴方の信念を証明なさい』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

《ダイテンガン ネクロム》

《オメガウルオウド》

「ハァァァァッ!!」

 

ネクロムの放ったキックが甲冑酷吏と槍酷吏を貫き、霧散させる

同時に取り巻きにいた女官たちも三蔵が最後の一群を吹き飛ばす

 

「大事はないか?ソウゴ」

「うん。任せっきりにしてごめん…」

「心配するな。力を貸すと決めたのは私たちだ。今はただ女帝の打開策をー」

「ちょっと待って、」

 

三蔵が目を瞑り、何かに集中する

 

「こっちで、助けを求める声が聞こえる気がする‼︎」

 

と言うが早いか、三蔵がどこかへと駆けていく。しばし呆気に取られていた二人もそれを追う

 

「いや‼︎離して‼︎いやだ‼︎」

 

大衆が見つめる中、酷吏たちが一人の少年の両脇を抱えてどこかへと連行しようとしている

 

「ハァッ!!」

「てりゃぁっ!!」

 

そこにネクロムと三蔵が割り込み、酷吏たちを退ける

 

「大事はないか?」

「う、うん」

 

助けだした少年を一瞥したネクロムは三蔵とともに酷吏たちに相対する

 

「排除対象、確認…」

 

ゾンビのごとく起き上がる酷吏たちを三蔵が睨む

 

「あなたたち……敵と認識しているソウゴたちを狙うならまだわからなくもないけど、なんでこの国の子供にまで手を上げているの⁉︎」

「あんたら、誰かは知らんがやめてくれ‼︎」

 

糾弾する三蔵の言葉に返答したのは、周囲を囲っていた大衆の一人、初老の男性だった

 

「えっ……?」

 

それを機に堰を切ったように、大衆からの糾弾がネクロムと三蔵に降りかかる

 

「その子は《天命》が合わなかっただけだ」

「だから酷吏に連行されてたんだ」

「帝に新しい《天命》をもらって幸せになるはずだったのに」

「ワシらの幸せを、日常を壊さんでくれ‼︎」

 

大衆からの糾弾に、ネクロムたちがたじろぐ

 

「ちがう!!合わなかったんじゃない!!オレはオレのやりたいことをしたいんだ!! 幸せじゃなくても、それがしたいだけなんだ!!」

 

少年が半泣きで反論しながら立ち上がる

 

「なんて罰当たりな……‼︎」

「《天命》無しに生活なんてできるはずがないわ」

「考え直せ‼︎」

 

あろうことか、大衆たちは少年へと糾弾の的を変えた

少年は耳を塞いで縮こまる

 

「待て、この少年は何故そこまで糾弾されねばならない⁉︎」

「こんな、こんなのって…」

 

大衆の勢いに押され、ネクロムたちが少年から少し目を離す

その瞬間、少年の背後から新たに現れた酷吏がその手を伸ばす

 

「⁉︎しまっー」

 

反応が完全に遅れた。ネクロムも三蔵も間に合わないー

だが、少年へその手が触れることはなかった

 

「大丈夫?」

「ーえ?」

 

少年が恐る恐る顔を上げる

そこには、酷吏を蹴り飛ばしたソウゴの笑顔があった

 

「ちょっと静かに!!」

 

少年を庇い、背後にやったソウゴが叫ぶ。唐突なソウゴの剣幕に民衆も酷吏もたじろぐ

 

「ー俺さ、王様になるのが夢なんだ。王様になって、みんなを守ることが」

 

ソウゴは周囲を見渡しながら告げる

 

「今、訳あって俺は、王様になるっていう運命を、未来を奪われた。もう俺は、王様にはなれないらしい」

 

少し悲しそうに告げる。が、それでも魔王の抜け殻は微笑んで続ける

 

「でも、やっぱり俺は王様になりたい」

 

「運命だからとか、そういう未来だからじゃない」

 

「俺自身が、王様になりたいって、そう思って決めた道だから」

 

「運命を、未来を取られても関係ない。俺は、それでも最高最善の魔王を目指すって決めたから」

 

「この子みたいな子が、夢を見てそれに向かって歩けるような平和な世界にしたいんだ」

 

と、ソウゴが少年の頭を撫でる

 

「う、うるさい‼︎出ていけよ‼︎」

 

そんなソウゴの頭に、どこからか石が投げつけられる

 

「ソウゴ!!」

 

咄嗟に目を瞑る

が、衝撃や痛みはいつまでたっても襲ってこない

 

『ちくと寝すぎたかえ? けんど、いい目覚めゼヨ‼︎』

 

目を開けたソウゴの前に立っていたのは、青いパーカーを纏った黒い影のような人物。まるで幽霊のような、それでいてどこか只者ではないような人物がそこに立っていた

 

「……誰?」

 

『ワシか?ワシは坂本 龍馬ゼヨ‼︎』

 

「龍馬⁉︎ あの坂本龍馬なの⁉︎」

『そうじゃ、正真正銘本物ゼヨ‼︎』

 

青いパーカー、曰く坂本 龍馬はその手に掴み取っていた石を放り捨て、ソウゴを助け起こしその肩を叩く

 

『おんし、デッカい夢持っちょるなぁ〜さっきの演説、ワシの魂にまで響いたゼヨ‼︎ お陰でスッキリ目が覚めた‼︎』

「え、演説ってほど凄いことしてないんだけど……」

『いんや、おんしはデカイ男。ワシはそう確信しちょる‼︎ 何よりも、ワシはそのデッカい夢に惚れたゼヨ‼︎』

 

と、その龍馬の背後から酷吏が棍棒を振りかぶる

 

「龍馬さん、後ろ‼︎」

 

龍馬の頭に棍棒が命中ー

 

ガギィン!!

 

「⁉︎」

 

したかに思えたそこには、すんでで棍棒を受け止める大槌が現れていた

 

『ー己の道を信じ、迷わず進むその心意気。我も目が覚めたぞ、少年‼︎』

 

その大槌を構えていたのは、秦良玉が纏ったものと同じ白いパーカーを纏った黒い影

受け止めた棍棒を弾き返し、酷吏に重い一撃を与えて吹き飛ばす

 

『ー武蔵坊弁慶、ここに参上つかまつった』

 

「え、今度は弁慶⁉︎」

 

文字通り仁王立ちにどっしりと構える弁慶に龍馬が並び立つ

 

『おまんらの国のあり方はこれが正解かもしれん。けんど、夢を手に入れた子供に、ここまでして押し付けたもんは、幸せとはワシは言えん‼︎』

 

『我らの運命は我ら自身の運命。その背に倣うはあれど、同じ道を他者が歩むには能わず。己の運命も、未来も、己を信じ勝ち取るものよ!!』

 

大槌を構え直しながら、弁慶が宣言する

 

『それにな、運命っちゅーもんは案外どうにでもなる。歩みを忘れた過去の亡霊のワシらですら、あの少年のータケルの導きで、新しい夜明けが見れたわけじゃしのお!!』

 

愉快そうに宣言する龍馬の言葉にネクロムが驚く

 

「タケルを知っている……まさか、貴方たちは⁉︎」

『久しぶりじゃのう、アラン‼︎ 元気そうで何よりゼヨ‼︎』

 

ネクロムに龍馬が手を上げて挨拶をする

 

「え、まさか……知り合い?」

 

ソウゴが不思議そうに両者を見つめていると、弁慶が頷く

 

『然り、かつて共に戦い、心と心を通わせた、かけがえのない友である』

 

龍馬が拳銃を取り出し、肩に構えて酷吏たちを睨む

 

『ワシらも、その帝様に言わんといけんことが山ほどある』

『故に、微力ながらも共に行かせてもらおう…』

 

『ー命、燃やすゼヨ(ぞ)!!』

 

二人の英雄が酷吏へと突撃していく

その背をどこか懐かしむようにネクロムが眺める

 

「凄い仲間がいるのね、アランくん」

 

並び立つ三蔵が笑う

 

「ーあぁ、自慢の仲間たちだ‼︎」

 

朗らかにネクロムがそう答え、両者も酷吏へと向かっていく

 

酷吏たちと戦いを繰り広げている4人を民衆たちが呆気に取られながらも眺めている

そんな中、群衆の中から小さな二人の子供が顔を出し、あらん限りの声で叫ぶ

 

「頑張れぇー!!緑の人ー!!」

「お坊さんも負けないでー!!」

 

それは、ソウゴたちを糾弾するものではない

ソウゴたちの背中を押してくれる声だ

 

「頑張れぇー!!」

「王様も負けるなー!!」

 

二人だけじゃない、ソウゴたちを囲んでいた民衆たち、その所々からソウゴたちを応援する声が響き、広がり、割れんばかりの歓声が響きる 

 

「……みんな…」

『見てみぃ、ソウゴ‼︎ これが、おんしの夢が起こした奇跡ゼヨ‼︎』

動揺する酷吏を蹴り飛ばし、駄目押しの射撃を浴びせながら龍馬が笑う

『眠らされたワシらの魂に、そんで夢を忘れとったこん国の人らに火を点けた。それは紛れもなくおんしの力ゼヨ!!』

「俺の……力……」

 

大槌で酷吏を叩き潰しながら、弁慶も続ける

 

『王となる道、決して楽ではないその道を選び迷わず進むその姿、それはそなたに確固たる強さがあってこそ‼︎』

 

4人それぞれの一撃が酷吏を粉砕する

 

「行くぞ、ソウゴ‼︎」

「行きましょう‼︎ お釈迦様もついてるわ‼︎」

『いざ行かん‼︎』

『こん国の夜明けゼヨ!!』

 

4人の、出会ったばかりながらその心を通じ合わせた仲間たちがソウゴを呼ぶ

 

「ーうん、行こう‼︎」

 

その導きに、王を夢見る少年は力強く頷いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ギャリィィィィン!!

 

「ぐぁあああああぁああぁああ!!!!」

 

ジオウIIの切り上げを食らい、ゲイツリバイブが大きく吹き飛ぶ

倒れ伏すゲイツリバイブをジオウIIは冷然と見下ろす

 

『どうしたのですか?貴方は魔王を倒すと決意したのでしょう?ソウゴが魔王となるならば、貴方が止めると約束したのでしょう?』

「わかっている!!」

 

威勢良く反論するゲイツリバイブだが、その心は大きく揺らいでいた

 

(ソウゴが魔王になるはずはない。アイツが、オーマジオウになるはずが……)

 

『そなた自身、ソウゴが魔王になる未来を否定しきれていないのではないか?』

 

女帝の言葉がチラつく

全くもってその通りだった

ゲイツは、ソウゴが魔王になるなんて思っていない。そうなる前に自分が止めるとも誓った

だが、オーマジオウが未だ健在であるならば、本当にそれが可能なのか?とも思っていた

惑うゲイツリバイブに、ジオウIIが迫る

 

「はっ、はっ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

半ばヤケになりながら、ゲイツリバイブが突撃する

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

皇帝宮 聖神皇帝玉座

ガシャァン!!

 

『なんじゃあれは!?』

 

杯を叩き割りながら女帝がヒステリックに叫ぶ

 

『《天命》が、自意識を取り戻した……?何故じゃ⁉︎何故そのようなことができる!?』

 

狼狽する女官には目もくれず、憤慨を露わにしている

 

『ー彼奴らはやはり妾の国に不要、いや妾の国の障害じゃ……秦良玉!! 李書文!!』

 

女帝の招集を聞きつけ、2人の戦士が玉座の間に姿を現わす

1人はソウゴたちも出会っている白衣の槍使い

もう1人は、丸いサングラスをした白髪の老人

 

「はっ、ここに」

「……」

 

秦良玉が跪き、老人ー李書文は軽く一礼する

 

『常磐 ソウゴの一行を始末せよ。彼奴らは妾のこの周の国敵、一人も生かすでない』

「承知しました」

「承知した」

 

頷いた両名は早速玉座を後にする

 

『ならぬ、運命は絶対……それが覆るなどあってはならぬ!!』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

皇帝宮 西門前

 

「随分と自己主張の激しい、悪趣味な宮殿だな」

 

宮殿を見上げながら、音也が呟く

 

「ですが、その目立つ見た目のおかげでここまで迷わずに来れました」

「すっごいピカピカしててわかりやすかったよね」

 

宮殿を興味深かそうに眺めているジャックを眺め、隣で難しい顔をしているランを横目で見やる

 

「ー常磐 ソウゴ、もしくはその仲間で相違ないか?」

 

突如響く老獪な声。それを耳にした音也が門を睨む

その前に、一人の老人がいつのまにか佇んでいた

 

「……常磐 ソウゴ?誰だソイツ」

「む、貴様は奴の仲間ではないのか?」

「知らない名前だな」

 

不思議そうな顔を浮かべる老人と問答しながら、音也がマシュの肩を抱き寄せる

 

「へ、ちょっ⁉︎」

 

突然の事態に困惑するマシュに音也が囁く

 

「ー俺以外を連れて先に行け」

「ーえ」

「いいから、走れ!!」

 

そう叫ぶと、マシュをツクヨミに押し渡し、イクサナックルを老人に向け、エネルギーを放つ

なんでもないことかのように、老人はそのエネルギーを諸手で弾いた

未だ困惑するマシュたちを見やり、音也が叫ぶ

 

「行け!!」

「は、はい!!」

 

困惑しながらも、マシュはツクヨミたちを先導し、門へと走る

それを見た老人はー構えを正しながらそれを見過ごした

 

「へぇ……まさか見逃すとはな……」

「女子供と死合うことは儂の本意ではない。真に障害になるなら、儂以外にも荒事に向いたものはいるからな」

「……あんたなりに仲間を信じてるってわけか」

 

老人と軽口を叩きながらも、音也は油断なくイクサナックルを構える

静かに笑みを浮かべる老人からは、ひりつくほどのプレッシャーが溢れていたからだ

 

「ー可可ッ、良い目だ。飄々としているようで、それでいて周りをよく見ている。安心するがいい、ここにいるのは儂だけだ」

 

老人が愉快そうに笑いながら答える

 

「ー構えよ、若造。儂は、そなたのような強い者と死合うことが生きがいなのでな」

「ハッ、爺さん……ヤケドするなよ」

 

《レ・デ・ィ》

「変身」

《フ・ィ・ス・ド・オ・ン》

 

音也がナックルをベルトに装填し、イクサへと変身、ボクシングのような構えを取る

 

「殺す前に、そちらの名を聞いておこう」

「いいだろう。俺様は紅 音也、伝説の男だ」

「オトヤ、良い名だ」

 

老人が脚を踏み出し、地を揺るがす

その気迫にイクサがたじろぐ

 

「我が名は、李書文。我が八極、とくと馳走してやろうぞ!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

宮殿内 廊下

東門から突入してきたソウゴたちが駆ける

 

「玉座の位置はわかるのか?ソウゴ」

「結構目立つ入り口だったから、多分大丈夫なんだけど……」

「止まりなさい」

 

ソウゴたちの目前、白い影が割り込む

 

「秦良玉……‼︎」

 

それは、ソウゴたちをこの国に迎えてくれた女武人だった

あの時の穏やかな表情とはうって変わり、殺意すら感じる視線をソウゴたちに向ける

 

「……常磐 ソウゴ、貴方はわかっていただけていると思っていました」

 

秦良玉が悲しげに告げる

 

「我らが帝の、この国の平穏を。永世にも続くであろう、幸福を。だからこそ、貴方はあの時の玉座で一人だけ帝に敵意を向けなかった」

「……確かに、」

 

秦良玉の悲痛な糾弾にソウゴが口ごもる

が、すぐに顔を上げ秦良玉を見据える

 

「でも、今は違う。俺は、この国とあの女帝を否定するよ」

「なぜ……!?」

 

「俺は、子供が夢を見ることもできないこんな国は認められない。そんな国は、きっと、幸せでも幸せにはなれないから」

 

あっけらかんと答えたソウゴを睨み、秦良玉はその手の《天命》を起動する

 

《ベンケイ!!》

 

秦良玉に白いパーカーが装着され、その手に槌が現れる

 

「訳の分からないことを……どうあれ、貴方はもう我々の敵……」

 

秦良玉が槌を構える

 

「この秦良玉、全霊を以って貴方を排除する……‼︎」

 

構える秦良玉の前に、弁慶が立ちふさがる

 

『ー先に行け、ソウゴ』

「弁慶………」

『元より、殿は慣れておる。安心しろ、死ぬつもりなどない』

 

弁慶を見据えたソウゴはそれに頷きを返す

 

「行こう、アラン、三蔵法師、龍馬」

「わかった」

 

それに応えてソウゴと共にアランたちが秦良玉の立ち塞がる先に突撃する

 

「させません!!」

 

それを塞ぐように、突き出された槌を弁慶の槌が阻む

 

『そなたの相手は我がつかまつる!!』

「くっ⁉︎」

 

弁慶に攻撃を阻まれ、秦良玉がソウゴたちから離される

残る弁慶の背を心配そうに見つめたソウゴだが、踏みとどまり、玉座へと足を向けた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

聖神皇帝玉座

 

『来おったか、常磐 ソウゴ……』

 

玉座の間に突入してきたソウゴ一行を睨み、玉座から女帝が立ち上がる

 

「お前が女帝か」

『いかにも。妾こそがこの周を治める聖神皇帝、武則天である』

 

ネクロムの問いに悠然と女帝が答える

 

『秦良玉と李書文に任せたが、やはりまだ足りぬか』

 

ニヤリと、女帝が邪悪に微笑む

 

『だが、まぁ良い。妾の思惑には違わぬ』

 

『貴様には最大限の恥辱ある最期を与えようと思っていたからな』

《ジオウII ‼︎ ジオウ‼︎》

 

女帝がジオウIIライドウォッチを起動し、ドライバーに装填し回転させる

 

『変身♪』

《ライダータイム‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII ‼︎》

 

まるで自分のものかのような手慣れた仕草でジオウIIへと変身、サイキョージカンギレードを握り、ソウゴへ突きつける

 

『友に見限られ、夢も絶たれた』

 

『ーそして己の力を奪われ、その力で殺されればさぞかし恥辱であろうなぁ♪』

 

愉快そうに女帝が嗤う

だが、ソウゴはたじろぐことすらしなかった

 

「違うよ、それは」

『違う?何がだ?』

 

「まず、俺は殺される気は無い。変身できないから、今はみんなの力を借りるしかないけど……どうにかジオウの力が帰ってくるまで殺されてやるつもりはない」

 

ソウゴの堂々とした言葉に三蔵が笑顔で頷き、龍馬が鼻をかく

 

「それに、夢も絶たれたわけじゃない。魔王になる運命はなくなったのかもしれないけど、それでも俺は、最高最善の魔王になる。なってみせる。そして、世界を救う」

 

ソウゴの言葉にジオウIIが哄笑を返す

 

『何を世迷いごとを……運命を失った貴様は王になることは叶わない。運命とは絶対不変、夢ごときで変わりはせぬ』

「違うな」

 

女帝の言葉に反論の声をあげたのは、ネクロム

 

「確かに、運命は強大なんだろう。かく言う私も、かつては運命に逆らおうともしなかった。その運命を盲信し、道を失っていた」

 

ネクロムが三蔵を一瞥し、女帝を見据える

 

「だが、その運命に抗うことを、私のかけがえのない仲間や無二の友が教えてくれた。心の声を聞くことを、教えてくれた人がいた」

 

「それ故に私は前に進めた。仲間と共に絶望の運命を覆した‼︎」

 

ネクロムが襟を正す。それを見た龍馬はどこか懐かしそうに頷いた

 

「故に、私も否定する。貴女の運命を盲信し、民の目を塞ぐこの国のあり方を‼︎ 夢を見ることすら許さない、この国の幸せを‼︎」

 

『下らんな』

 

苛立たしげにサイキョージカンギレードを弄びながら女帝が吐き捨てる

 

『たかが夢物語で何が変わる? そのような無駄、民が生きる糧には必要ない。そのような不確かなもの、妾の国に、いやこの世界には不要だ』

 

玉座から降り、ネクロムたちに女帝が相対する

 

『御託が済んだならば、早急に終わらせようぞ。イレギュラーは処分せねば、な?』

「まだもう一つあるよ、御託」

 

不敵に笑うソウゴが続ける

 

「俺の友達は、俺を裏切ってなんかいないってこと」

 

瞬間、ジオウIIに空から衝撃が突き刺さる

 

『ぐっ⁉︎ぉおおおおおおおお!?』

 

咄嗟にサイキョージカンギレードで衝撃を防ぎ、ソウゴたちの方に弾き飛ばす

そこに現れていたのはー

 

「ー遅くなったな、ソウゴ」

 

「いいや、ベストタイミングだよ、ゲイツ」

 

ゲイツリバイブ剛烈ーソウゴの、無二の友の姿だった

 

『明光院 ゲイツ⁉︎ 貴様、なぜ……⁉︎』

「なぜ?愚問だな」

 

ジカンジャックローを構え、ゲイツリバイブがジオウIIを睨む

 

「ー俺の友達の夢を奪った魔王を倒すためだ」

 

並び立つネクロムの手には、ゲイツと共に消えたはずのサンゾウゴースト眼魂が収まっていた

それを見、ネクロムが改めて三蔵を見据える

 

「ー貴女とは違うかもしれない、だが私が教わり、私が歩んだ道を…今こそ貴女に見せる時が来たのだろう」

 

ネクロムの言葉に三蔵が少しきょとんとし、すぐに微笑む

 

「ーそっか、そういうことだったのね。素敵な縁があるものね…」

 

アランの手を取り、眼魂を見つめた三蔵が優しく微笑む

そして、二人がゲイツリバイブに並び立ち、ジオウIIを睨む

遅れて龍馬も並び立つ

 

「色々私からも貴女に言いたいことはあります。でもまずは、お説教から!! 御仏パワー全開で行くわよ!!」

 

三蔵が棒を取り出し構える中、ネクロムはサンゾウゴースト眼魂をメガウルオウダーに装填、起動する

 

《テンガン サンゾウ》

《メガウルオウド》

 

メガウルオウダーから白い法衣のようなパーカーが出現、ネクロムに装着され、その手に手のようなガジェットーガンガンハンドが現れる

 

《サイユウロード‼︎》

 

「ー運命に囚われた女帝よ、私たちの…心の叫びを聞け!!」




本当にお待たせしました……中々まとまりがつかなくて結構間が空いてしまいました……

武周編もいよいよクライマックス‼︎ 次回もお楽しみに、です‼︎


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第11話「0690:繋ぐ想い、繋ぐ手のひら」

「ハァッ‼︎」

 

イクサの拳、蹴りが書文へと牙を剥く

が、それを最低限の動きで悉く受け流していく

 

「ふっ、」

 

突き出された拳を丸め込むように書文が捻り上げ、ガラ空きになったイクサの腹部に発勁が打ち込まれる

 

「ガッ⁉︎」

 

怯んだイクサに、更に連続して拳が叩き込まれていく

 

「ケェイ!!」

「ごはっ!!」

 

書文の渾身の発勁がイクサを大きく吹き飛ばす

 

「……見込みが外れたか。中々に良い目はしているが、全く満足はいかんな。実になっていない」

 

残念そうに書文がため息を吐く

腹部を押さえながら立ち上がったイクサが書文を睨む

 

「言ってくれるな、爺さん……というか、アンタも大概バケモンだな」

「可可ッ、化け物とは。己を限界まで高め、更に高みを目指した境地、これぞ人間業ではあるまいか?」

 

愉快そうに笑いながら書文が構えを変える

 

「興は冷めた。だが、一応あの帝の命ではある。一つ冥土の土産に馳走してやろう」

 

老師の姿がぶれる

瞬間、その姿はイクサの眼前にー

 

「なっー」

「ー噴ッ!!」

 

老師の踏み出した脚に地面がひしゃげ、大地が揺れる

その拳が、イクサを打ち据える

 

「ー七孔噴血、撒き死ねぇい!!」

 

必殺の一撃、イクサの白亜の装甲が、その拳の前にひしゃげ崩れる

 

「がはっ……」

 

音也の悲痛な喀血と共に、その体が項垂れた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ギャリィィィィン!!

サイキョージカンギレードとジカンジャックローが火花を散らす

ゲイツリバイブが弾き上げた隙に、三蔵の棒術がジオウIIを打ち据える、がその棒を掴み上げ、三蔵を蹴り飛ばしゲイツリバイブを斬りとばす

 

『無駄じゃ!!』

 

ギィン!!

更に振り返ったジオウIIは後方からのネクロムと龍馬の射撃を跳ね返す

 

「くっ」

『妾の予知能力の前に不意打ちなど無意味。貴様らが束になろうが、意味などない!!』

 

「ーならその予知よりも早く動くだけだ!!」

《リバイブ、疾風‼︎》

 

ゲイツリバイブ疾風の一撃が背後からジオウIIを強襲する

 

『小癪なァ!!』

 

サイキョージカンギレードを振り回し応戦するが、ゲイツリバイブ疾風の高速移動には届かない

高速攻撃に翻弄され、遂にジオウIIが大きく吹き飛ばされる

 

『何故じゃ……何故貴様は、妾に逆らう!? 貴様も確信したのだろう!?常磐 ソウゴが魔王になることを!!その運命を!!』

 

よろよろと立ち上がりながら、ジオウIIが叫ぶ

 

「確かに、俺は貴様の言葉に迷った。ソウゴが、オーマジオウと成り得る可能性を排除できるなら、と」

 

「だが、その迷いならもう断ち切った。ソウゴは、最低最悪の魔王になるはずがない。俺は、もう迷わない!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

数分前 サンゾウの修練場

 

ぼろぼろになりながら、ゲイツリバイブは立ち尽くしていた

 

(ソウゴ……アイツが、魔王に……)

 

見据える先にはジオウIIが立っている

 

(これが、俺が止められなかった結末……)

 

ジカンジャックローを構える。だが、まだ迷いは晴れない

ゲイツの脳裏には、ソウゴと友として過ごした日々が巡る

 

『俺がもし魔王になったなら、ゲイツが止めてくれる』

 

(……あの約束一つ、果たせないのか……)

 

ふと、ゲイツはその日々を見つめ直す

残酷ながら、それでも誰かを守るために力を使ったソウゴ

自分を殺そうとする相手をも笑って迎えるソウゴ

王になる夢を楽しそうに語るソウゴ

 

(ーなんだ、答えはもう、出ているじゃないか……)

 

ゲイツリバイブはジカンジャックローを構え、そして

ーそれを放り捨てた

 

『……何をしているのですか?』

 

サンゾウがゲイツに問いを投げかける

 

「……見ての通りだ」

『諦める、ということですか?』

「違うな。この試練、これが答えだ」

 

ゲイツリバイブがサンゾウに向き直る

 

「お前は、魔王を倒せと、俺の倒すべきものを倒せと行った」

 

ゲイツリバイブがジオウIIを見やる

 

「ならば、コイツは倒さない」

『何を言っているのです?貴方が対峙している彼こそ、最低最悪の魔王のはずですよ?』

「違う」

 

ゲイツリバイブがきっぱりと否定する

 

「ジオウは、ソウゴは、最低最悪の魔王にならない。なるはずがない。ヤツは、最高最善の魔王になる男だ」

 

「だからこそ、俺が倒すべき相手はここにはいない」

『………』

 

ゲイツリバイブの言葉にサンゾウは沈黙する

次の瞬間、ジオウIIの姿が崩れ、サルと豚と河童の面を付けた三人に変化、その珍妙な三人が何やら喜んだような様子を見せる

 

「な、なんだ……?」

『合格です。明光院 ゲイツ』

 

サンゾウが静かに告げる

 

『貴方は、確かに道を見失った。果たすべき使命を果たせなくなった』

 

『だが、その中で貴方は新しい道を見つけた。そこに、真なる信念を貫き通す覚悟を持って』

 

サンゾウがゲイツリバイブを見据える

 

『貴方は今、それを思い出した。次こそは見失わないように、貴方の道を行きなさい』

 

サンゾウの後ろに並んだ三人も頷く

 

「わかっている。もう、迷いはしない」

 

それにゲイツリバイブも頷きを返す

 

『さぁ、行きましょう。貴方の友、そして私の友が待っています』

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

《リ・バ・イ・ブ‼︎ 剛烈ゥ‼︎》

《フォーゼ‼︎》

 

剛烈に変身し、サイキョージカンギレードを受け止めたゲイツリバイブがジカンジャックローにフォーゼライドウォッチを装填

 

「ソウゴの力、返してもらうぞ‼︎」

《スーパーのこ切斬‼︎》

 

雷光を纏ったのこの一撃がジオウIIを大きく吹き飛ばし、玉座へと叩きつける

 

『がっ………!?』

 

ダメージを受け、変身が解除された武則天の手からソウゴの《天命》が滑り落ち、逃さずゲイツリバイブが掴み取る

 

「ソウゴ‼︎」

 

ゲイツリバイブがソウゴに《天命》を投げ渡す

その手に収まったそれはソウゴの胸の中に消え、腰にはジクウドライバーが戻ってくる

 

「ありがとう、ゲイツ」

《ジオウII‼︎ ジオウ‼︎》

「変身‼︎」

 

戻ってきたドライバーにジオウIIライドウォッチを装填、ぐるりとドライバーを回す

 

《ライダータイム‼︎》

《仮面ライダー‼︎ ライダー‼︎》

《ジオウ‼︎ ジオウ‼︎ ジオウII‼︎》

 

女帝ではない、正真正銘のジオウIIが、ここに戻ってきた

 

「戻ってきたー‼︎」

『はっはっは‼︎ おんしの友も大したヤツじゃのぅ‼︎』

 

喜ぶジオウIIの肩を龍馬が叩く

 

「うん、頼りになるヤツだよ」

 

ジオウIIと龍馬がゲイツリバイブたちに並び立ち、武則天を見据える

 

『くっははははははは!! もう勝ったつもりか?愚か者ども!!』

 

よろよろと立ち上がり体勢を立て直しながら、武則天が哄笑する

 

「往生際の悪いヤツだ……」

 

ゲイツリバイブたちは油断なく得物を構え直す

 

『酷吏ども‼︎ここに‼︎』

 

女帝の号令と共に玉座の間に酷吏たちが現れる

その数数十名

 

「今更数を集めたところで、どうするつもりだ?」

『簡単なことよ……』

 

『洗礼をくれてやるのじゃ』

 

と女帝の目の色が変色し、不可思議な痣が顔に浮かび上がる

同時に周囲の酷吏たちの首筋に半透明な牙のようなものが突立ち、何かが注入されていく

 

「なんだ……⁉︎」

 

噛まれた酷吏たちはしばし苦しそうにもがくと、その体から自らの皮膚を引き裂き、灰色のヒビ割れた体表を持つ白い面を被った怪人の姿を露わにする

 

「ぎゃてぇ⁉︎ なんなのこれ⁉︎」

 

流石の事態に三蔵も驚きの声を上げる

 

「なんだこいつらは……⁉︎」

 

油断なくガンガンキャッチャーを構え直し、周囲に蠢く酷吏だった怪人たちを睨みつける

 

『ーレジェンドルガ』

 

女帝が愉快そうに告げる

それと同時に、女帝の側に別の4体の怪人が姿を現わす

植物のようなもの、ミイラのようなもの、蛇が人型になったようなもの、悪魔の石像のようなもの

どれもまるで神話に名を連ねるような姿を為している

 

『タイムジャッカーとやらが妾に与えた仮面ライダーの力が、《天命》を操る力だけじゃとでも思うたか?』

 

ジリジリと迫る怪人ーレジェンドルガたちに背中合わせに纏まったジオウIIたちが身構える

 

『鏖殺せよ、妾の眷属たちよ』

 

ジオウIIたちに、レジェンドルガたちが殺到した

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『噴ッ‼︎』

「ィヤァッ‼︎」

 

裂帛の気合いと共に白い影が打ち合う

かたや麗しい戦乙女

かたや剛健な怪力無双

見た目は違えど、共に槌を構え、暴風のごとき戦闘を繰り広げている

 

ガギンッ!!ギィンッ!!

 

重たいながら鋭い一撃が弁慶を襲い、鈍重ながら隙の無い技が秦良玉を襲う

 

「ハッ‼︎」

 

秦良玉の足払いが弁慶を捉え、僅かに体勢を揺るがす

 

『ムゥッ⁉︎』

「獲ったッ‼︎」

 

大上段からの一撃が弁慶に迫る

 

ガギンッ!!

 

必殺の一撃は、弁慶がどこからか取り出した十字槍に防がれた

 

「ッ!?」

 

予想外の防御に秦良玉が硬直する

隙はその一瞬で十分だった

 

『ムゥン!!』

ズドンッ!!

 

弁慶の大槌の一撃が秦良玉の鳩尾を捉えた

 

「ガッ……!?」

 

必殺の一撃に喀血、秦良玉が膝をつく

纏っていた白いパーカーが解け、《天命》に戻り砕けた

 

『最後の一撃、動きは十分だが鋭さが欠けていた』

 

倒れた秦良玉を背に弁慶が呟く

 

『いくら豪傑の力を纏おうとも、そなたの道に背くならば、それはそなた自身の力に劣るというものよ』

 

項垂れ、消えゆく秦良玉は静かにそれを聞く

 

『ー次があるならば、十全たるそなたと死合おうぞ。秦良玉よ』

秦良玉を置いて、弁慶が玉座へと向かう

 

「……そうか、私も……迷っていたということか……」

 

消えゆく秦良玉の顔には、自嘲気味の笑みが浮かんでいた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おわっと⁉︎」

 

蛇型の怪人ーメデューサ・レジェンドルガが蛇を伸ばしてジオウIIへと攻撃、なんとかサイキョーギレードでそれを弾いていくが、酷吏レジェンドルガたちがその手にしがみつく

 

「ちょっ、邪魔⁉︎」

『ハッ‼︎』

 

動きの止まったソウゴに天井からターザンロープのような要領で降りてきた植物型ーマンドレイク・レジェンドルガの蹴りが命中し、吹き飛ばされる

 

「ぐわっ‼︎」

 

《リバイブ、疾風‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

疾風に変身したゲイツリバイブは石像型ーガーゴイル・レジェンドルガに攻撃していく

 

『スピード対決では負けん‼︎』

 

と、それに応じ見た目に似合わない高速機動でガーゴイルが応戦してくる

 

『フンッ‼︎』

「ぐぁっ!?」

 

ガーゴイルに集中していたゲイツリバイブの背中をミイラ型ーマミー・レジェンドルガの包帯ムチが打ち据え、撃墜する

 

《ダイテンガン サンゾウ》

《オメガウルオウド》

「ハァッ!!」

 

背に負った戦輪ーゴコウリンで酷吏レジェンドルガたちをネクロムが薙ぎ払う

その背後から酷吏レジェンドルガが飛びかかる

 

「やぁっ!!」

 

それを三蔵が棒で貫き撃破する

 

「助かった」

「気にしないで‼︎」

 

笑顔で答える三蔵だが、息が既に上がっている

 

『くそッ、キリが無いゼヨ……‼︎』

 

拳銃で酷吏レジェンドルガたちを倒しながら龍馬も疲弊した様子で悪態をつく

先程からそれぞれで酷吏たちや他のレジェンドルガを撃破しているネクロムたちだったが、一向に数が減らない

続々と酷吏が玉座に駆けつけ、レジェンドルガ化しているのだ

 

『くっふふふ、手も足も出ないようじゃなぁ♪』

 

玉座に腰掛け、武則天が余裕の笑みを見せる

 

「くっ‼︎」

 

ネクロムと龍馬が武則天を狙い撃つが、酷吏レジェンドルガたちがその身を盾にしそれを防ぐ

 

『ゼヨ……やはり取り巻きが邪魔ゼヨ……‼︎』

「だが、数をこれ以上減らすことは……」

 

「ならこちら側の数を増やせばいい」

 

《カメンライド ナイト‼︎》

《カメンライド ギャレン‼︎》

 

二発の発砲音、同時にネクロムたちの前に二人の仮面ライダーが姿を現わす

一人は、黒衣の騎士のような仮面ライダー。仮面ライダーナイト

一人は、銀の鎧を纏う赤いライダー。仮面ライダーギャレン

 

《トリックベント》

《ジェミニ》

 

それぞれの武器にカードをリードした二人。ナイトの姿が五人に、ギャレンの姿が二人に増える

増加した仮面ライダーたちは酷吏レジェンドルガたちをそれぞれ押し込んでいく。増加速度が撃退速度に負けてきたのか、武則天の前に空きができていく

 

「アンタは…⁉︎」

「仮面ライダーディエンド⁉︎」

 

玉座の間の入り口付近でディエンドライバーを構えていた青い怪盗が驚くゲイツリバイブたちに諸手を上げる

 

《ジカンデスピア‼︎》

《ヤリスギ‼︎》

 

気を取られたジオウIIの目の前に迫ってきたメデューサの蛇を仮面ライダーウォズのジカンデスピアが弾く

 

「我が魔王に手を出すとは、随分と恐れ多い怪人だ」

「ウォズ⁉︎無事だったんだね」

「遅くなってすまないね、我が魔王。少し別件があったからね」

 

ウォズはディエンドを見やる。ディエンドは肩を竦めながら目を逸らし、ガーゴイルを撃ち抜く

 

「ィヤァッ!!」

 

天井からツタでぶら下がっていたマンドレイクのツタが切り裂かれ、地面に落ちる。その目前に立っていたのは、二刀を携えた女剣士

 

「なんだかグッドタイミングだったみたいね。無事そうでなにより」

「アンタ……確かローマの時に…」

「自己紹介がまだだったわね。新免武蔵……宮本武蔵、セイバーのサーヴァントよ」

「え、アンタ宮本武蔵だったの!?」

 

間の抜けた会話を続ける二人に迫るマンドレイクのツタ、だがそれも大盾に弾かれ、なますに切り裂かれた

 

「ソウゴさん‼︎」

「ソウゴ‼︎」

 

駆け寄ってきたのは、マシュとツクヨミ、そしてジャック。さらにー

 

『今こそ‼︎怒りの音楽を奏でる時!!』

 

白黒パーカーの人影が指揮をするかのように音符を操り、周囲の酷吏を吹き飛ばす

 

「ツクヨミにマシュも、無事でよかった……なんか増えてるけど」

「はい、あの方たちは私たちに協力してくれてる人です」

「ちょっと色々あってね……」

 

疲れたようにツクヨミが呟く

ウォズの手を取り、立ち上がったジオウIIの目の前には、目的や生き方は別々ながら繋がった仲間たちが集まっていた

 

「なんだか、超行ける気がする!!」

 

メデューサにウォズの連撃が迫る。蛇を伸ばし応戦するも、それら全てが弾かれ、ガラ空きになった胴にジカンデスピアの連撃がクリーンヒットしていく

 

「ハァッ!!」

 

よろめくメデューサにダメ押しとばかりに武蔵の連斬が突き刺さる

驚異的な生命力を持つメデューサでも、これらの攻撃のダメージは再生しきれない

 

「合わせよう、宮本武蔵」

「応とも‼︎」

《フィニッシュタイム‼︎》

 

ウォズがタッチパネルを操作、武蔵がその瞳を光らせ刀身に闘気を迸らせる

 

「フッ‼︎」

「セヤァッ!!」

 

ウォズの光の槍がメデューサを貫き、動きを止めたその体に武蔵の神速の光刃が二度三度その身を引き裂いていく

 

『ガッ、ァァァアッ!?』

 

全身からエネルギーをスパークさせ、メデューサは崩折れ爆散した

 

 

『ヒャッホウ!!』

 

天井に張り巡らせたツタにぶら下がり、マンドレイクがジオウIIへと連続攻撃を与える

 

「くっ‼︎このっ‼︎」

 

ジカンギレードを振り回すが、マンドレイクは嘲笑うかのようにひらひらと躱す

と、調子に乗っていたマンドレイクが見えない壁に衝突した

 

『!?』

 

「ー捉えました!!」

 

霧が晴れるように現れたのは、巨大な十字盾

マシュがその盾を以ってマンドレイクを捉えていた

 

「目に見えるものばかり信用してはいけないよ。特にー」

 

マシュの背後が霧のように揺らぎ、白いフードの魔術師が姿を現し、愉快そうに微笑む

 

「ー僕のような、魔術師がいる時はね」

「ハァッ!!」

 

マシュがその盾をフルスイングし、マンドレイクを直上に吹き飛ばす

これ幸いとツタを伸ばそうと手を伸ばしたマンドレイクの眼前、天井の梁に碧眼が煌めく

 

「解体するよ?」

 

梁を蹴り跳躍したジャックがマンドレイクを微塵に切り裂き、その胸にふた振りのナイフを突き立てる

 

「ライダーの人、あとはお願い、ねッ!!」

 

その腹を蹴り飛ばし、ナイフを抜きながらマンドレイクを直下に吹き飛ばす

 

「オッケー、任された!!」

《ジオウサイキョー!!》

《フィニッシュタイム‼︎》

 

その先には、サイキョージカンギレードを構えたジオウIIが

退避しようとするが、もう遅い

 

《キング・ギリギリスラッシュ!!》

「どりゃあッ!!」

 

突き上げた剣からジオウサイキョウの文字が刻まれたエネルギーブレードが噴出、マンドレイクを貫き爆散させる

 

「おっとと、よっと」

 

落ちてきたジャックをジオウIIがキャッチする

 

「ありがと、ライダーの人」

 

と、ジャックが笑顔を見せ、その小さな手でジオウIIとハイタッチした

 

 

「彼には、このライダーが相性が良さそうだね」

《カメンライド レイ‼︎》

 

ディエンドライバーから白い、熊のようなシルエットのライダーが召喚される

 

『行こうか。華麗に、激しく』

 

白いライダー、レイのベルトに収まるレイキバットが吐き捨てる

 

《ウェイクアップぅ!!》

 

凍りつくような音色の笛音と共に、レイの両腕に厳重に巻かれた鎖ーカテナが解放、熊のような剛健なクロー展開される

同時に、レイから凄まじい冷気が放出、目の前のガーゴイルーとその相手をするゲイツリバイブ剛烈に迫る

 

「なっ、貴様ッ⁉︎」

 

突然の巻き込みに狼狽しながらもゲイツリバイブが脱出を図る

それをガーゴイルが羽交い締めにしようと手を伸ばす

 

「ムダだ‼︎」

《のこ切斬!!》

 

その腕はあえなくジカンジャックローののこ刃に弾かれる

よろめいたガーゴイルに冷気が到達、そしてクローを床に擦り付けながら迫るレイが同着する

 

「フンッ!!」

 

氷像と化したガーゴイルが、その剛毅な一撃に粉々に粉砕される

仕事を終えたレイはホログラムのように消失した

 

「貴様……ッ!」

 

平気でゲイツリバイブを巻き込もうとしたディエンドにくってかかる、がそこに酷吏レジェンドルガたちが雪崩れ込んでくる

それを受け流しながらディエンドが涼しげに答える

 

「僕はあくまで利害が一致しているからここにいるだけだ。せいぜい背後と懐に注意したまえ」

 

酷吏レジェンドルガを斬り飛ばしながら、ゲイツリバイブが吐き捨てる

 

「そっちこそ、巻き込まれないように気をつけておくんだな」

 

《ムサシ‼︎》

《決闘‼︎ズバッと超剣豪‼︎》

『くっ⁉︎』

 

二刀を手に取り、武則天がガンガンキャッチャーと棒を受け止める

 

「貴女の作り出したこの国、確かに幸せかもしれない」

 

三蔵が武則天へ語りかける

 

「迷ったり、行き止まりに当たったり、そんなことが無いんだもの。迷ってばっかりの私には魅力的だわ」

『ならば何故邪魔をする⁉︎ 貴様もこの幸せに共感している身の上で!!』

 

振るわれる二刀を棒でいなしながら、その二刀を押さえ込む

 

「ーその先に道が無いからよ!!」

 

三蔵が凛とした声で叫ぶ

 

「この国は確かに迷わない。不幸にもならない。でも、歩む道はずっと同じまま、違う道には絶対に行かない」

 

「確かに、迷うってすごく不安だわ。行き止まりに当たるのもすごく嫌な気分になるし……」

 

「でも、それでもその先には新しい道や、新しい仲間、そして新しく前に進んだ自分がいるの‼︎」

 

二刀を弾きあげ、三蔵の押さえ込みを武則天が脱する。そこからの剣撃を三蔵が受け流す

 

『じゃが誰しもがその先には行かぬ!! 迷い、立ち止まり、そのまま堕ち行く人間がほとんどだ!!』

 

二刀を打ち鳴らし、周囲への斬撃でネクロムと三蔵を吹き飛ばす

 

『人は弱い!!弱いからこそ不確定だ!!その弱さを取り除き盤石さを得た我が周が完璧でないはずが無かろう!!』

 

「違う!!」

 

ネクロムの叫びと共にガンガンキャッチャーの光弾が武則天へ着弾する

 

「確かに、人間は弱い。未来に怯え、迷い道を誤る。私も、かつてそうだった」

 

ネクロムが己の右手を見つめ、その手に力を込める

 

「だが、人の想いは繋がる。道半ばで倒れ、その道を見失った者の想いを受け継ぐ誰かがいる!!」

 

ネクロムが立ち上がり、ガンガンキャッチャーを構え直す

 

「人は一人じゃない。誤ちを止めてくれる友がいる。見失った道へ背中を押してくれる人がいる!! 絶望の未来を変えゆく想いを繋げる者がいる!!」

 

三蔵をちらりと見やり、ネクロムが続ける

 

「ー迷子になって泣き言をあげたら叱ってくれるものもいる」

 

「武則天、道を違えた貴女を正す友がいないならば私が貴女の友となり貴女を叱ろう。平穏と幸福を祈るその想いを繋げる者がいないならば私が繋ごう‼︎」

 

メガウルオウダーを立ち上げ、シークウェンスを起動する

 

「哀しき女帝よ。私たちの、そして己自身の、心の叫びを聞け!!」

 

《ダイテンガン サンゾウ》

《オメガウルオウド》

 

メガウルオウダーのサンゾウゴースト眼魂の力が放出、赤、黄色、緑三色のエネルギーが溢れ、ネクロムの前にサル、ブタ、カッパの面を被った三人の奇人の姿を取る

 

「力を貸してくれ」

 

ネクロムの呼びかけに気合十分と三人が頷く

 

「悟空‼︎ 悟能‼︎ それに悟浄まで‼︎ あなたたちも一緒だったのね‼︎」

 

目を輝かせながら肩を抱き寄せてきた三蔵に驚いた様子を見せながらも、三人も嬉しそうな様子を見せる

 

「共に行こう、三蔵法師」

「うん‼︎御仏パワー全開で‼︎」

 

五人が構える

それを苛立った様子で眺めた武則天は頭を搔きむしり叫ぶ

 

『黙れ、黙れ黙れェ!!』

 

武則天の叫びと共に、玉座の間に飾られていた《天命》たちがその身に集まり、巨大な後光、いや孔雀のような羽根をその背に展開する

 

『諸共に滅べ!!愚か者どもが!!』

 

印を結び、その目前に作り出した目のような黒い紋章にエネルギーを貯めて放つ

 

「みんな!!受け取って!!」

 

三蔵が手にした錫杖を放り投げる。するとそれは3つに分かれ、棒、馬鍬、宝杖へと変化し、三人の弟子たちの手に収まる

それを手にした弟子たちは顔を改め、エネルギー弾に突撃。悟能、悟浄が受け止め、悟空の一撃がそのエネルギーを霧散させる

 

『ッ!?』

 

武則天が狼狽する

その目前にはエネルギーのもやから飛び出したネクロムと三蔵が

 

《ダイテンガン サンゾウ》

《オメガウルオウド》

 

「五行山ー」

 

その背に緑に煌めくエネルギーの紋様、金色に煌めく御仏の後光をそれぞれ纏い、その力をそれぞれの左腕と右腕に集中させる

 

「ハァッ!!」

 

「ー釈迦如来掌ォ!!」

 

碧に輝く拳、金色に煌めく掌が武則天を捉え、天井へと叩きつける

 

『が………ハァッ……!?』

 

羽根から《天命》を零し、玉座へとその身体が墜落していく

 

 

『ヌゥン‼︎』

『おぉわッ!?』

 

マミーが龍馬を掴み上げて力任せに放り投げる

 

『ミスター龍馬!! ジャジャジャジャーン!!』

 

吹き飛ばされた龍馬に代わりベートーベンが応戦、しかし放出した音符は全て包帯で弾かれ、ベートーベンもあえなく吹き飛ばされる

がら空きになったその先、ランを庇うツクヨミにマミーが包帯を飛ばす

 

「きゃっ‼︎」

「伏せて!!」

『フンッ!!』

 

その包帯を白い偉丈夫が大槌を以って防ぐ

 

『ナイスタイミングじゃ!!弁慶!!』

『我だけではないぞ‼︎』

 

と、ツクヨミとランの頭上を白い影が飛び越え、マミーの胸に拳を叩きつける

 

《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル》

《ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

叩きつけたそのナックルからエネルギーが迸り、マミーを焼き尽くした

 

「音也‼︎ 無事だったのね‼︎」

 

見慣れたその白いライダーの背を見たツクヨミとランが安堵する

 

「………」

 

イクサはそんな二人を一瞥すると、玉座の方を睨みつける

 

「……音也?」

 

ツクヨミはそんなイクサになんとなく違和感を覚えた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

数分前 西門前

 

「ー終わったな」

 

項垂れたイクサに李書文が静かに告げる

その拳を、イクサの腹から引き抜きー

ーとその腕をイクサの左手が掴み上げた

 

「ー何?」

「まだ……終わってねぇぞ爺さん……!!」

 

《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル》

《ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

がら空きになった老師の腹にエネルギーを纏ったイクサナックルが叩きつけられる

 

「ぐっ!?ぬぅぅ……ッ!?」

 

直撃を受けた老師。だが、倒れない

左腕を引き抜き反撃に移ろうとするが、その手はホールドされて動かせない

 

「貴様ッ!?」

「まだ倒れねぇか……なら、倒れるまで……ッ!!」

 

イクサナックルをドライバーに引き戻し、エネルギーをリチャージしもう一度撃ち込む

 

「ガッ!?」

 

まだ、李書文は倒れない

 

「オラァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

更にエネルギーをリチャージ、渾身の一撃が李書文を穿つ

老師の身体が吹き飛び、門へと叩きつけられる

 

「……ガッ……」

 

喀血し、老師が倒れる

イクサも変身が解除され、ボロボロの音也が姿を現わす

 

「……見事だ……よもや、儂が慢心していようとはな……」

 

門にもたれ、その身体を光の粒子に崩壊させながら李書文が愉快そうに笑う

 

「いや、アンタは……強い。俺は、諦めが悪かっただけだ……」

「違いない。やはり、運命などアテにはならぬな……」

 

老師は懐から《天命》を取り出し、握り潰す

 

「アンタも持ってたんだな……それ……」

「最後まで儂には無用であったよ。やはり儂には、この拳しかないのだ……」

 

疲れたように呟いた李書文は、そのサングラスを取り、鋭い目で、しかしどこか穏やか目で音也を見、笑う

 

「………楽しかったぞ、音也」

 

それだけ残し、李書文は消滅した

 

「爺さんめ……言うだけ言っていきやがって……」

 

さすがのダメージに音也がよろめき、倒れるー

が、その肩を誰かが支え上げた

 

「………オマエ……‼︎」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

獣のような怒声を上げ、玉座から武則天が立ち上がる

 

「しぶといヤツだ……」

 

『アークキバットォオ!!』

 

武則天の呼び声に応じ、どこからか小さなコウモリのようなものがその手に飛んでくる

 

『はいドロン、ドロン〜噛ませて〜』

 

武則天の手に収まったアークキバットは小さな牙を剥く

 

『ガブッ』

 

その牙を武則天は自身の左手に押し当てる

同時にその顔に奇妙な紋様が走る

 

『グァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

《ウェイクアップ!!》

 

アークキバットが逆さまに腰に収まると同時に荘厳な、かつ禍々しい音色が響き、その体が宙に浮く

武則天の小さな身体がボコボコと黒く泡立ち、徐々に肥大化していく

2m、3m、4m、どんどん巨大化し、その体が徐々に変質していく

 

『な、なんじゃあアレ!?』

『……なんと、面妖な……‼︎』

 

細腕は鋭い鉤爪を備えた巨腕になり、肩口からさらにもう一対の腕が生えてくる

か脚は4本に増加、ケンタウロスのような人馬体型に変化

更に頭は凶悪な獣のようなソレに変化。元からフードを貫き伸びていたヤギのようなツノが更に巨大化して悪魔のような形相となる

最後にその背から巨大な一対の翼が生え、天井を覆い隠す

 

【この力まで使う羽目になろうとはなァ………!!】

 

禍々しく変質した声で女帝が吠える

その体表では、無数の目が蠢いている

 

「でっか……‼︎」

「ソウゴさん!!」

「我が魔王!!」

 

マシュの鋭い警告と共に轟音がジオウIIたちの横から迫る

巨大な腕のなぎ払いが、ジオウIIたちを吹き飛ばす

 

「ぐぁっ!?」

「ッ!!」

「クッ!?」

 

間一髪、マシュが防御したおかげでジオウIIとウォズは大事には至らなかったが、ボロボロだ

 

「このッ!!」

《リバイブ、疾風ゥ!!》

「シャァっ!!」

 

ゲイツリバイブ疾風とジャックが共にその背後に迫るが、一度の羽ばたきが両者を吹き飛ばし、壁に叩きつける

 

【無駄じゃ。その程度、蚊が止まるほどでもないわ】

 

哄笑する女帝の顔にディエンドの射撃と武蔵の斬撃、ベートーベンの音符が命中する。が、ビクともしない

 

【攻撃とは、こうするものじゃ!!】

 

武則天が天を仰ぐ

同時にその背から火球が噴出、流星群のように降り注いでいく

 

避けられるはずもなく、ジオウIIたちは満身創痍で床に転がっていた

 

【クハ、クハハハハハハハハハ!! どうじゃ!?これが妾の力!!これぞ運命というわけじゃ!!】

 

女帝の哄笑が響き渡る

 

「違う……」

 

ジオウIIとゲイツリバイブがよろよろと立ち上がる

 

「運命なんかじゃない……‼︎」

「ああ……そうだ。こんなもの、ただの貴様のわがままだ!!」

【負け惜しみとは醜いなァ、魔王ども。貴様らから滅ぼしてくれよう】

 

女帝の巨大な腕が伸びる

 

「ー負け惜しみ、か。確かに負け犬の遠吠えだな」

 

イクサがよろよろと立ち上がり呟く

その視線は、しっかりと女帝を捉えていた

 

「……だが俺は、今のオマエよりもその2人の小僧の方がカッコよく見えるぜ……」

 

イクサがゆっくりと、その背後の通路を振り返る

 

「ー音也、オマエはどう思う?」

 

「あぁ、憎たらしいがオマエと同感だな」

 

そこに現れたのは、ボロボロながらもどこかカッコつけた男ー紅 音也だった

 

「え……じゃあ、あのライダーの中には⁉︎」

 

音也がイクサになっていると思っていたツクヨミがイクサを見やる

イクサはその手で爪を立てるような仕草をし、おどけながら返す

 

「ーなんでもない、ただの“はぐれ狼”だ。お嬢さん」

 

【クッハハ‼︎ たかだか一人増えた程度で何が変わる?】

『一人は一人でも、伝説の男一人だがな』

 

どこからか聴こえてきた高潔な声が女帝に答える

と、ジオウIIたちに伸ばしていた巨腕が紅い小さな影に突撃され弾かれる

紅い影が女帝の目前に躍り出る

ソレは鮮血のように紅い体を持つコウモリだった

 

『滅ぼす、とは、かつてキングに滅ぼされた死に損ないが滑稽な言い回しだな』

 

コウモリはそう吐き捨てると女帝の顔に頭突きをかまし、音也の下へ飛んでいく

 

「運命、ソイツは確かにあるのかもしれん。かく言う俺も運命の出会いに二度、いや三度も巡り合ったわけだからな……」

 

にこやかに、懐かしむように音也が告げる

 

「だがな、従う運命は選ぶ権利がある。お先真っ暗な運命なら俺はゴメンだ」

 

「そんなもんは、真っ向からぶっ潰す。ソレが、俺たち人間ってものだ」

 

『前説は済んだか?音也』

「急かすなよ、もう終わりだ」

 

音也が、右手を掲げる

 

「力を貸せ、コウモリもどき‼︎」

 

『あぁ。喜べ、久々の絶滅タイムだ』

 

紅いコウモリーキバットバットII世がその手に収まる

 

《ガブリ》

 

キバットバットII世の牙が、音也の左手に突き立てられる

少し苦しそうな表情を見せる音也の顔にステンドグラスのような紋様が現れる

静かな、それでいて荘厳な音色と共にその腰に真紅のベルトが出現する

 

「変身」

 

ベルトにキバットバットII世が収められる

音也の身体が泡立ち、その姿を変える

真紅に黒の彩りが入った王の如き鎧、人間の為ではない。ある種族の王の為に作られた正しく王の鎧

黒いマントを閃かせ、女帝を睨む

 

「ーお仕置きの時間だ、デカブツ」

 

音也ーダークキバが駆ける

 

【小賢しい!!】

 

女帝の巨腕が迫る。が、ダークキバはソレをマントでいなしその腕を駆け上がる

 

《ウェイクアップ・ワン‼︎》

「ハァッ‼︎」

 

夜闇に煌めく拳が、女帝の顔面に叩きつけられる

 

【カハッ!?】

 

体勢を崩した巨体が、宮殿の壁にめり込む

 

「すごい……」

 

それを見つめていたジオウII

その意識が、あの白い世界へと誘われた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「運命運命と、なんじゃあやつは!! 妾の名で気持ちの悪いことをほざきおって……‼︎」

 

突如響いた甲高い声がソウゴを迎える

振り返ったその先には小さな少女の姿があった

中国の王族のような、布面積の少ない服を纏った紫のツインテールの少女はぷりぷりとした様子で手にした教鞭を手のひらで打っている

 

「待ちくたびれたぞ‼︎ 次代の魔王とやら‼︎」

 

「キミが、本物の武則天?」

 

「何やら不敬な言い回しじゃが今回は不問にする‼︎ その通り。妾こそ聖神皇帝にして中華唯一の女帝、武則天である♪」

 

武則天は小さい胸を張りながら得意げに答える

 

「其方が王を目指しておるのは知っている。故に問おう、常磐 ソウゴ。其方は、運命を信じるか?」

 

「俺は……運命とか難しくてわかんないな」

 

照れたような様子でソウゴが答える

 

「でも、俺が王様を目指しているのは、俺がそうありたいと願ったからだよ。未来で俺がオーマジオウになるからでも、そう運命づけられてるからでもない。俺自身の夢なんだ」

 

ソウゴが胸を張って答える

武則天はそんなソウゴを険しい顔で睨む

そして、満足したように微笑み頷いた

 

「ー其方には、聞くまでもなかったことか」

 

武則天はその手にライドウォッチを取り出し、ソウゴに渡す

 

「妾から教えられることは一つ。運命に抗え、ソウゴ。星読みが決めた?そうなる運命?知ったことか。そんな陳腐な運命の一つや二つ、己の努力と研鑽で塗り替えよ。王であろうとするならば、それくらいはしてみせよ」

 

「わかった。ありがとう、武則天」

 

「わかったならば行け、魔王。あのニセモノをお仕置きしてこい。……そして、救ってくれ。アレでも、妾の国の大切な民なのだ」

 

武則天の願いに、次代の魔王はしかと頷いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

現実に戻ってきたジオウIIの手に、新たなライドウォッチが煌めく

ジオウIIはそれを一瞥、ゲイツリバイブに差し出す

 

「ゲイツ、今回はそっちに預けるよ」

 

ジオウIIから渡されたウォッチを見つめ、ゲイツリバイブがその顔を見据える

 

「今回は、ゲイツの方がムカついてるだろう?」

「………あぁ、そうだな」

 

ゲイツリバイブが頷き、そのウォッチを起動する

 

《武則天‼︎》

 

ドライバーにウォッチを装填し、ぐるりと回転させる

 

《キング‼︎ アーマータイム‼︎》

 

音声と共に、ゲイツの背後に紫の高貴な様のアーマーが出現。その手の教鞭を一度鳴らすと、ゲイツの体へと装着される

紫紺のマントを揺らし、ゲイツのマスクに《ぶそくてん》の文字が刻まれる

 

《武則天‼︎》

 

「ー祝福しむぐっ⁉︎」

 

「ー祝え‼︎ 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者」

 

「ー我が魔王、仮面ライダージオウがここに、新たに王を学んだ瞬間である‼︎」

 

意気揚々と祝福を述べようとしたマーリンを顔面を掴んで引き下げながら、ウォズが祝福を述べ、ジオウIIに一礼する

 

「あれ、今日はゲイツでも言うんだ」

「不本意だが、アレに私の仕事を取られるのは癪に触るからね」

 

と倒れたマーリンを殺気満々に睨みながらウォズが答える

 

「悪かったな不本意で……」

 

悪態をつきながら、ゲイツが叩きつけられてきた巨腕を弾く

 

【何故、何故貴様が妾の力を使えている!!】

「お前の力じゃない。これは、あるべき王が持つ力だ」

【黙れ、黙れ黙れ黙れェ!!】

 

怒声と共に、アナザー武則天の火球が迫る

 

「フッ‼︎」

「ハァッ‼︎」

 

降り注ぐ火球を駆けつけてきたネクロムとダークキバが砕く

 

「なんだか知らんが、手ェ貸すぜ」

「助かる」

 

ネクロムはその手にネクロムゴースト眼魂を握り直す

その眼魂が、金色に煌めいた

 

「今こそ、私が想いを繋ぐ番だ‼︎」

 

《絆‼︎ カイガン‼︎》

《バースト‼︎》

《俺がバースト‼︎ 絆ファイヤー‼︎》

《繋げてみせるぜ!人の想いを‼︎》

 

メガウルオウダーから飛び出した金色のパーカーにネクロムが包まれる。その姿が、金色に煌めく炎に彩られた

 

《フィニッシュタイム‼︎》

《コクミツ・タイムバースト‼︎》

「ハッ‼︎」

 

必殺技の起動と共にゲイツが跳躍、アーマーの肩パーツが外れツボの形に合体し、アナザー武則天の足元に紫の液体をぶちまける

 

【やらせん!!】

「それはこっちの台詞だ」

 

ダークキバの言葉と共にアナザー武則天の四方にコウモリのような紋章が出現、その体を押さえつける

その一瞬で広がった紫の液体がアナザー武則天の体を飲み込み始める

 

【グッアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!】

 

もがくアナザー武則天、だが沼からは抜け出せない

 

《ウェイクアップ・ツー‼︎》

 

《ダイテンガン》

《絆‼︎バースト‼︎ オメガウルオウド》

 

ダークキバが紋章を足場に跳躍、ネクロムの右脚に金色のエネルギーが集まる

 

「フッ‼︎」

「ハァッ‼︎」

 

ダークキバの夜闇の如きエネルギーを纏った蹴りと、ネクロムの黄金に煌めく蹴りがアナザー武則天の身体を貫く

 

「ハァッ!!」

 

最後に、ゲイツのキックがその胸を貫く

アナザー武則天の巨体が泡立ち、大爆発を起こす

爆煙が晴れたその中には、女性をその腕に抱いたゲイツが立っていた

 

「……終わったみたいだな」

 

ダークキバがふぅ、と安堵のため息を吐いた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

王都から離れた丘

紅 音也は夜闇に煌めく街を遠目に眺めていた

 

「この時代も、悪くないもんだな」

「おじさん」

 

不本意な呼ばれ方ながら、自分への呼びかけに応えて音也が振り返る

そこには、音也から渡された上着を持ったジャックとランが立っていた

 

「これ、ありがとう」

「ん、ありがとな。あと俺はおじさんじゃなくてお兄さん、な?」

「ねぇ、音也おじさん」

「だから……まぁいい、なんだ?」

 

ジャックが少し照れた様子で音也に顔を向ける

 

「わたしたちも、変われるかな?」

「……どうだかな。ま、お前がそう望むなら、変われるかもしれん」

 

キザったらしく言いながら、音也が笑う

 

「オトヤ、わたし……まだわからないの」

 

ランが音也に顔を向ける

 

「音楽は好きなの、でも、わたしの音楽なんて、考えたことなくて…」

「………」

 

それを聞いた音也は、ケースからバイオリンを取り出し構える

 

「よぅく、聞いておけ。特別だ」

 

奏でられたのは、穏やかで優しい旋律

まるで母に包まれているかのような優しい音色

 

その音色に、ジャックもランも目を閉じ聴き入っていた

演奏が終わる

 

「ーCircle of Life、繋ぐはずがなかった想いを、時を越えて繋いだ音楽だ」

 

音也がバイオリンをしまい、ケースを肩がけに持ちながら笑う

 

「今度は俺が、お前にこれを繋げてやる」

 

そう言った音也の身体がうっすらと透け始める。ジャックも同様に

 

「行っちゃうの……?」

「あぁ、俺を待ってる世界と、女たちがいるからな」

 

飄々と答える音也を見据えて、ランが涙を堪えながら声をあげる

 

「わたし、見つけてみせるから!! わたしの、わたしの心の音楽!!絶対に!!」

 

「見つけて、会いに行くから!!」

 

そう叫んだランを驚いたように見つめていた音也だが、その小さな頭をわしわしと撫でて微笑む

 

「俺に惚れるなら十年は早い。その間に、お前の音楽を見つけてみせろ。いつまでも待っていてやる」

 

そう言い残し、音也とジャックは消滅していった

涙を流し、それでも笑って前を見た少女。その近くの木陰にもう一人の人影が覗く

 

「ー相変わらず、食えない野郎だな」

 

薄いサングラスをかけ直した男ー次狼はそう薄く微笑んだ

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ありがとね、みんな。色々お世話になっちゃった」

 

崩れた玉座の間で、ソウゴたちに相対した三蔵が微笑む

 

「助かったのは俺の方だよ。短い間だったけど、ありがとう」

 

ソウゴが三蔵に手を差し出す

その手を、三蔵が優しく握り返す

 

「アランくん、キミにもお礼を言わないとね」

「気にすることはない。貴女とは違うが、貴女から私は大切なものを教わった。その恩を返したまでだ」

 

その手に握るサンゾウゴースト眼魂をアランが見つめる

その手を三蔵が握る

 

「たこ焼き、美味しかったわ。貴方の想い、きっと私も伝えてみせるから」

 

体の消滅が進んだ三蔵が、再び皆に皆に向き直り、元気いっぱいに手を振る

 

「じゃあね、みんな‼︎ 御仏の加護がありますように‼︎」

 

満面の笑顔を残して三蔵が消滅していった

 

「私も、あるべき場所に帰るようだな」

 

透け始めた自らの手を見てアランが呟く

アランはソウゴに向き直り、その手を取る

 

「ソウゴ。お前に私が貰った想いを託す」

 

優しい微笑みを浮かべてアランが続ける

 

「その心に従え。そして、良き王になれよ。ソウゴ」

 

その言葉を残し、アランの姿も消えていく

その温もりがまだ残る手を見て、ソウゴは頷いた

 

「この時代ももうじき元に戻るようだな」

 

ゲイツがソウゴと並びながら呟く

 

「残すところあとの歪みは4つかな。さて、次はどこの時代にー」

 

瞬間、世界が揺らぐ

 

「うわっ⁉︎地震⁉︎」

 

あまりの振動にソウゴたちが膝をつく

一行の目前、玉座があったはずの空間が割れた

 

「なんだ、アレは……⁉︎」

 

割れた空間から、鋭い爪が飛び出し、穴を広げ、巨大なあぎとが顔を出す

ワニのような凶悪さを持つソレは、世界を揺るがすような咆哮を上げた

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『ーここが、余の生きた時代よりも遥か未来か。食いがいのありそうな新天地であるな……』

 

暗がりの中、手綱を握る巨体が愉快そうに笑う

 

『初めよう。これなるは征服、遍く総てを手に入れるこの余の、征服王の蹂躙である!!!!』




次章予告

時の壁を食い破り現れたのは、時を喰らい進む異形の列車
それを駆るは、新たなるスーパーアナザーライダー

『余の蹂躙は終わらぬ!!この世の果て、その総てを喰らい尽くすその時まで!!』

タイムマジーンで押し切り、辿り着いた次なる時代に広がるは大海原

「海賊が征服で負けてたまるかってンだ‼︎ 気合い入れてけテメェら‼︎」
「奪うってのは別にいいけど、食い漁るのはボクらとしてもいただけないな。だよね、アン」
「えぇ、夢の無い略奪にわたくしたちの海原を荒らされるのはたまりませんわ」

海賊、スーパーアナザーライダー、ジオウたち
更に新たなレジェンドたちを交え、争奪戦は加速する

「さて、お仕事と行きますか‼︎」
「悪いが、押し通させてもらう‼︎」

次章 仮面ライダージオウ King order
B.C.336 蹂躙征服大海 ズルカルナイン・オケアノス

「勝負に勝つなら奇計など不要。十全に備え、ただ当然に勝つのみだ‼︎」


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天命統治人国編 キャラ・小ネタ紹介

天命統治人国で登場したスーパーアナザーライダーやキャラクター、強化形態、小ネタの紹介です


・アナザー武則天

身長:158cm

体重:53kg

モチーフ/ヤギ

能力/酷吏の量産・使役、エクストリーマーの英雄支配・使役、アークの洗礼・巨大化能力

 

アナザー武則天ライドウォッチとアナザーエクストリーマー、アナザーアークの力を注入されて誕生したスーパーアナザーライダー

《天命》を使うことで英雄の力を利用することができ、それを民に配布することで完璧な国を作り上げた

普段はエクストリーマーの力を多く使っているが、レジェンドルガを洗礼によって生み出すことが可能で、アークキバットを使い変身することで巨大なアナザーアーク形態へと変身することができる

元々は武則天に使える女官。運命に対する脅迫観念、諦めが強く、その為にこのような形で利用されてしまった

 

・秦良玉・ベンケイ魂

 

秦良玉がベンケイの《天命》を装備した姿

ゴースト同様に大槌を使う

ベンケイゴーストとの勝負の敗因は得物が違う故の動きの鈍り。槍を使っていればまだ互角であった可能性があった

弁慶の言葉はこれを指していたのだろう

 

・酷吏たち

 

序〜中盤に現れたパーカー酷吏たちはゴーストに登場していた眼魔たちのオマージュ。作中の呼び方で酷吏の部分を眼魔にすると元の名前になる(例:ブック酷吏→ブック眼魔)

終盤に現れたレジェンドルガ化した酷吏たちは魔界城の王でレジェンドルガにされたアントライオンファンガイアを灰色にしたイメージ

没案ではファンガイア化する予定だったが、アークとはどうあがいても結びつかないので没に

 

・仮面ライダーゲイツ 武則天アーマー

 

武則天ライドウォッチで女帝の力を纏ったゲイツの強化形態

本編ではフィニッシュホールドのみの登場になってしまい出番がなかったが、酷吏のような影人形を召喚、使役する能力や鎖などの拷問器具を召喚する能力を持つ

必殺技は毒沼に相手を捕縛してキックする《コクミツ・タイムバースト》

 

・仮面ライダーネクロム 絆バースト魂

 

絆バースト眼魂で変身したネクロムの強化形態

言ってしまえばVシネスペクターで登場した友情バースト魂のマイナーチェンジ版、というか名前が変わっただけ。本編の闘魂ブースト魂とトウサン魂の違いのようなもの

何故友情バーストからマイナーチェンジさせたかというと、本編の友情バーストはマコトを止める為に変身した姿で、変身音声の最後も《止めてみせるぜお前の罪を‼︎》となっており、この場で変身させるには友情バーストのままでは畑違いになると解釈してこの名前となった

没案ではこの上から更にサンゾウ魂に変身して釈迦如来掌を叩き込むというものもあったが、これ以上入れ込むと個人的にしつこく感じてしまうので没になった

 

・Circle of Life

 

オリジナルでもなんでもないが、一応小ネタとして紹介

魔界城の王、大好きな映画です



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