最弱の英霊 (初代小人)
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プロローグ(1/2)

FGOにハマってちゃっかり二次創作を書いてしまっている初代小人です
ちなみに嫁はワルキューレちゃん、推しはメルトリリスちゃんです。クールビューティ最高
今回に関しては英霊「初代小人」を形づくる上での土台となる部分なのでFateは全く関係ないです!ごめんなさい。
次から聖杯戦争関わってきますんでよろしくお願いします!


此の世は写し世、幾重にも重なる世界が或る壱面から見ると折り重なった布切れに、叉違った視点で視れば捻れ絡まった糸のように見えたりもする。

そして糸は、布切れは、折れ曲がったり解れたりして時に思わぬ結果を(あらわ)にする。

それを人類(ひと)は運命と呼ぶ。

そして当人にとって都合のいい運命を引き寄せる力を人類(ひと)は運気、或いは単に運と呼ぶ。

これは運のない魔術師(マスター)、そして英霊(サーヴァント)が紡ぐ、悲運と孤独の物語……

 

 

 

 

 

───────────

 

 

或るところに1人の情報屋が居た。

彼は肩書きとしては情報屋であったが、彼は或いは詐欺師、或いは虐殺者であった。

日本人の父と母の元に生まれた彼は異様な程に頭の回転と洞察力に優れていた。

しかし優れた能力が必ずしも幸せをもたらすとは限らない。

 

 

つまり彼の能力は裏目に出た。

よくある話、彼の父親は夜の街の女に溺れていた。

父親はもちろん妻に気取られないように思いつく限りの証拠隠滅をしていたし、常人であれば気づかないほどそれは巧妙なものであった。

しかし残念な事に父親は自らの息子によってその偽装工作は暴かれてしまったのであった。

 

 

そして不運なことに彼は父を気遣うにはあまりに幼すぎた。

故にそれを妻である母に伝えてしまった。

 

結果として彼は愛する家族を離散させ、紆余曲折を経て孤児院に入ることとなる。

 

 

孤児院でも彼は馴染めなかった。

彼は真実を悪戯に伝える事が必ずしもいいことではないと悟ってはいた。

しかし一方で彼は他者が争っているを眺めるのを好むという、ある種呪いのような性質を生来魂に刻まれていた。

 

 

彼はいくつかの孤児院を渡り歩いた。

彼が入った孤児院は全て例外なく子供同士でのトラブルが絶えなくなり、最終的に職員まで巻き込むような事態になった。

死者が出ることまであった。

 

 

 

結局彼を受け入れてくれる孤児院はどこにも無くなってしまった。

普通であれば彼はここで野垂れ死にして、不運にも野犬にでも喰われて終わりだろう。

しかし彼は普通ではなかった。

 

 

彼は不運ながら同時にとても幸運であった。

普通であればそのまま死んでしまうシーンで九死に一生を得る力を持っていた。

 

 

彼は裏社会の情報屋に拾われ、それから情報屋としての能力全てを叩き込まれた。

そして師匠であった情報屋は、次の日何者かによって脇の下から通して心臓を貫かれて命を落とした。。

その師匠も戸籍がない捨て子出身であった。

通り名は「初代小人」

 

 

裏社会でも三本の指に入る名の知れた情報屋初代小人は人知れず正体が変わったのであった。

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

「あーあ、ホントついてねぇわ」

男はそう独りごちた。

裏社会に入って数十年、いや、生まれてこの方自分に運が向いていたことなど一度もなかった。

 

 

「これ死ぬのかねぇ?それならそれで別にいいが」

腹を抑えていた左手を離すとニチャリ、と嫌な音を立てて固まりかけた血が少し糸を引いた。

 

 

「ま、俺もアイツらを大層沢山殺したんだ、因果応報ってやつかねぇ?」

勿論タダで死んでやるつもりはねぇけど。

再び呟いた数瞬の後、彼の体を多くの鉛玉が撃ち抜いた。

最早致命傷を特定できないほどズタボロとなった体は故郷から遠く離れた独逸(ドイツ)、の地で怨みを込めて磔にされて晒され、その後朽ち果て骨となり、風化した。

 

 

同時刻、アメリカに一通の密書が届いた。

そこには独逸(ドイツ)軍が誇る最強の暗号機エニグマの攻略法、そしてドイツ軍部高官全員の名前、顔写真、緊急時の隠れ家についてのリストが書かれていた。

密書には小さくひとつだけ署名があった。

 

 

The founder dwarf(初代小人)

 




生前の話。これがなくては英霊は書けないし、始まらない。
次の話までホントなら一気に繋げるべきなんだけど、体力が持たなかったです…すみません
なるだけ早めに次もあげるように頑張りますね!

ps.本当に良かったらなんですけど、感想、評価、指摘等置いていってください。なるだけお返事も全部させて頂きますので…指摘は優しくしてくれたら嬉しいです


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プロローグ(2/2)

とりあえず召喚シーン。
設定とかあやふやで調べながら書いてるので間違ってないか心配…
あとオリ主を必須タグじゃなくてタグにしてたのはすみませんでした。
速やかに対処しました。


追記:主人公の生前の殺害人数を150万から600万に変更しました。歴史上の話なので調べが甘くて申し訳ないです。


聖杯────イエス・キリストが最後の晩餐で用いたとされる聖遺物。

現代においては『万能の願望器』であるとされるそれは、人類全員と言って差し支えない数の人間が望むもの。

そして聖杯を巡る争い───聖杯戦争はこれまでに幾度となく行われ、数々の死者を生み出してきた。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 我は尽く不運な血を持つもの。

  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

その聖杯戦争にて武力とされるサーヴァントが今まさに召喚されようとしていた。

術者は若い男。齢は17~18位だろうか。本来あるべき術式に余分な詠唱を付け加えてしまったのは極限の集中状態での無意識か、或いは何者かによる作為か

 

  

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

 

               セット

 「―――――Anfang」

 

 「――――――告げる」

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 「誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

 

 

 

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 

何はともあれ彼はサーヴァントの召喚に成功した。

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────────

 

 

あーうん、俺英霊になってたんか、ビックリしたわ。

つーか俺みたいなの召喚したとかまーった運のないやつよなぁ…俺が言えたことちゃうけど。

あ、なんか挨拶せなあかん感じか、うっかりしとったわ〜

 

 

「サーヴァント・アサシン」

 

 

「悪いが真名はあんまり言いたくない、単にアサシンとでも呼んでくれよ。ま、できる範囲内での働きはするからよ」

 

 

─────────

 

 

成功…した!?これまで何をやっても上手くいかなかった俺がサーヴァント召喚に…?

「サーヴァント・アサシン。

悪いが真名はあんまり言いたくない、単にアサシンとでも呼んでくれよ。」

 

「それは気にしないさ。俺も気にしない。ビジネスライクに行こう。俺の事はマスターとか適当に呼んでくれ、まあなんでもいい。別に主従だからって威張るつもりないし、令呪だって持ってはいるけどなるだけ使いたくはない。立場上俺の方が多少優位になるがそれでも限りなく対等に近い関係で居たいと思っているよ」

 

 

とか口先では格好付けてみたけどさ!

いやそもそもよ?突然変異だかなんだかで魔術が使える体で生まれたらしいけどさぁ!

せいぜいマッチ代わりになる位のもんだし、喧嘩は弱いし…それはこのサーヴァントも同じか。

いや、さっきからこのアサシンについて散々(内心で)言ってる自覚はあるけど、それは仕方ないよ。

 

だって身長が…

そこで唐突にアサシンが僕の首になにか冷たいものを押し当てた。

 

 

「今、失礼な事考えてなかったかい?」

下から伸びてきた腕が僕の首を捉えていた。

僕は慌てて頭を振った。

途端に彼は表情を和らげて言った。

 

「いやまあ、しゃーないわな、俺、こんな身なりやし」

それもそのはず、アサシンはかなり背が低く、筋肉らしい筋肉もそう見当たりはしない、かなりの痩身だったから。

いや、そうなんだけど今はそれより気になることがある。

 

「あー、なんで大阪弁かって?そりゃ当たり前やろ、俺大阪生まれ大阪育ちやし。一応取り繕えはするけど疲れるんよ。Hast du verstanden(わかった?)

「え…え?」

「今のはドイツ語、大阪出て東京に住んだ後ドイツに越したんよ。これちなみに大ヒントやで?大阪に生まれてドイツに移り住んだような歴史上の人物、知らんか?」

「思い当たらないが」

「ま、何にしてもこれからは一蓮托生なわけや、よろしくな」

「あ、そうだね、よろしく」

 

 

大阪人はペースが取りづらいし巻き込まれる。

 

 

「ちなみにさっきは俺の首に何を押し付けたんだ?」

「あ?それ聞く?ほんまのとこ言うとICレコーダーや。録音機っちゅうやつやな。俺基本戦闘は苦手やから武器らしいもん持ってないんよ」

俺は一気に不安になった。

 

 

 

────────

 

 

 

ふーむ、これは困った。

とりあえず上っ面だけ取り繕うて軽薄な笑み浮かべて軽口叩いたら召喚者(マスター)ある程度信用されたらしいけど、どういうごっちゃ?

俺は確かにあの戦争でかなりの人間を間接的に殺したはずやし、召喚者(マスター)の様子見るにここは日本で間違いないなら必ず教科書やらに載るはずやろ。

 

 

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第一節 秘め事(1/2)

数日空いて更新です!平常よりも早めの投稿!多分今回が初代小人最初で最後のかっこよく見える(かもしれない)シーンです!


「ほなとりあえず、情報交換と行こか、まあ俺は召喚されたてホヤホヤで情報らしい情報持ってないからマスターから聞くだけになる訳やけどまあその辺は堪忍してや?」

「情報…?俺もそんなに持ってないよ?なんなら君を召喚したのも呪文だけ本で見つけて思いつきっていうかそんな感じだし」

 

本当に。なのにどうして成功したんだろう…嫌な予感がする…

 

 

「や、まあとりあえずわかることだけでええから教えてや、それとも何か?俺の事が信用出来ん?せやんなせやんなゴメンやで、先に詳しく自己紹介しよか」

「ちょっと一旦待って」

「なんや?言いたいことあるんやったらはっきり言わな女の子にモテへんで?」

いやだから1回黙れ。こいつ全然こっちの話を聞かずにずっと話すから会話が成り立たない…

 

「なら言わせてもらう。1つ目。君は騒がしすぎる。というかなんなのそのマシンガントーク、俺はどうやって口を挟んだらいいの?」

「そんなもんはその場のノリやがな〜」

「2つ目。君のことを信用してないわけじゃない。令呪だってあるし。ただ君が何が出来るのか、これをまず先に聞きたい。」

 

「そうやなぁ…あんま威張れる能力でもないけど、今マスター(キミ)が嘘、ついてる事くらいは分かるかな?あと際限なく話す俺に今若干怒ってるやろ?それも分かるで」

 

「何故…それを…?」

驚くことに両方が俺にとって図星だった。

 

 

 

────────

 

 

 

いやー、このマスター、こんな種も仕掛けもある手品で驚いてくれるとか、驚かせ甲斐があるわぁ〜

人が驚いてる時の表情、俺ちんまい(小さい)時から好きやねんなぁ…こればっかりは大人になってからもサーヴァントになってからも変わらんもんやなぁ〜っと、そろそろ種明かししたらな、マスター可哀想やな。

 

 

「さて、その顔見るに両方的中らしいけど種明かししよか、どっちから聞きたい?」

「順番でいい…」

 

マスターったら、可哀想に若干テンション下がってもうてはるやん、しゃーないから精一杯種明かして元気になってもらおか。

 

「ならマスターがついた嘘の方から。マスターさ、俺の事召喚したきっかけなんて言うた?もっかい言うてみ?」

「え、呪文だけ本で見つけて思いつきで」

「うんうん、つまり召喚方法は知ってたけど詳細はあーんまり知らんはずやろ?せやのにアンタ、自分の右の手の甲何回か見てんのに、令呪に全く驚いてないやん」

お、マスター遂に顔(しか)めてもうた、これはアレか?訳あって聖杯戦争を知ってることを隠したかった感じかな?悪い事したかもしれんな、申し訳ない。

 

 

「あと最初に俺が名乗った時。俺はクラスしか名乗ってないのに何も疑問に思ってる様子なかったやろ?アレも聖杯戦争知らんにしては妙やなーと思ったんよ」

「俺の嘘がバレた理由は分かった。でも俺が怒ったのがわかった理由にはならないだろう?」

「うんうん、せやな。マスターがちゃんと情報整理素早くできる子やとわかって俺安心したわ。あ、あとさっき知らんぷりしてた理由後で教えてな?ペンは剣よりも強しとか言うけど俺から言わせてみたら情報はそれより強い、思てるから。まあせやから今俺真名隠してるわけやけど。」

「分かったから早く」

「もう、マスター落ち着きや?せっかちな男の子も女の子にモテへんで?ちなみにあれわかった理由やけどな、勘や」

「…は?」

「いやまあ、もうちょい詳しく言うとな、俺生きとった頃に随分修羅場言うか、そういうのに巻き込まれてな、気づいたら自分に向けられた殺気をなんとなーくやけど感じられるようになったんよ。怒りも突きつめていけば結局は極小さな殺意やからな、俺は俺に対して怒ってるやつを感じられる。分かった?」

「まあ、一応」

「せやかて早口でまくしたてたんは悪かったな、すまんと思うてる。というわけで俺については大概話し終えたから、次マスターが知ってる事教えてな?」

「うん、分かった。俺もカッカして悪かった。」

 

 

この子やっぱりチョロいわぁ…

俺の「サーヴァントとしての能力」についてはなーんも話してない事に気づいてないわ。

愉しい事には愉しいけど大丈夫やろかこの子




今回読んで「いや、十分強いよ、最弱詐欺か?」と思われた方。
ウチの英霊は3話がピークです。次からどんどん情けないところ見せますんでよろしくお願いします。


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第一節 秘め事(2/2)

昨日から描き始めた文章を予約投稿、小人です。
今回からこのサーヴァントの弱さが明らかになっていきますぞー!お楽しみに!

※後書きに今わかってる限りのアサシンの性能出しておきますね


聖杯戦争について知っているのを隠していた理由を教えるからとりあえず俺の家に来て欲しい。

そう説明してから俺は自宅に向けて歩き始めた。

サーヴァントの身体能力は人間を越えていることも勿論知っていたから、アサシンは僕に普通についてくる…と思っていたのだが。

 

 

「………」

歩く。歩く。歩く。

「ハアッハアッハアッ…」

早歩く、早歩く、早歩く。

 

 

 

え、何このアサシン俺より歩くの遅いの?

「もしかして…速い?」

「いや全然?何言うてんの、ワシこれでもサーヴァントやで?そんな訳ないやん」

「ならなんで息切れてるの」

「実の所言うとな、俺全く体力ないんや。」

「は?」

「生前から身体能力が最低クラスやったせいでどうもサーヴァントになってからもかなり低いというかやな…敏捷以外全部E-になるレベルやな」

「え?」

「逃げ足は早かったからな、敏捷は一応C-貰ってるらしい」

「ならどうして今早歩きしてるの?」

「ほら、俺身長低いからさ、君らみたいに普通に身長ある人と並んで歩くと遅れるのよ、歩幅の問題かね?」

「それ、他のサーヴァントと戦う時大丈夫なの?」

「いや、基本戦闘になった瞬間負けるで?武器なんか無いし。あったらさっきICレコーダーなんか突き付けやんし」

 

そうだった…むしろ武器扱いなのかICレコーダー…それもそれでおかしい気がするんだけど…

止めよう、とりあえずこの事を考えるのはやめよう。

 

 

「あ、ただその代わりクラススキルは割と豪華やで。なにせ気配察知と気配遮断のそれぞれ上位互換と単独行動やからね。本気出したら基本誰も俺の事を見つけ出されへんで」

「それは頼もしい…けど武器ないんだよね?」

「おう、せやな。強いて言うならこの口先が武器やな」

 

 

使えない。

この英霊弱すぎる。

というか…そうか、これ俺の不運のせいか…

 

 

「あ、ちなみにやねんけどさ」

「まだ何かあるの?」

「俺生きとった時からずっと運がなかったんよ。たまにええ事あったら揺り戻しで死にかけるくらい」

「えぇ…」

「で、よ。アサシンの中でもこーんな弱い俺召喚したってことは、マスターもしかして奇跡的なくらい運悪い?」

「ああそうだね、トラブルの方が僕に襲いかかってくる勢いで運がない」

「あー…だからか。なるほどね」

「どうしたの?」

「いや、なんでもないで」

「そう。まあともかく、ようこそ、我が家へ」

 

 

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

「これから話す事は簡単に信じられないと思うけど、全て真実として信じて欲しい…いや、信じられないならそれはそれでいいから頭の片隅に留めておいてほしい。」

 

生前も見た事ないような割と大きな屋敷に入ってすぐにマスターはえらく真面目ぶった顔で────いや実際真面目な話をするのだろう────そう切り出した。

 

 

 

「俺…いや、僕には今の‘俺’として生まれる前の記憶がある。気づいたらそんな感じだった。物心ついた頃はそれが普通の事だと思っていて、親にもよくそのことを話していた。親も小さい内は夢の話だろう、とか空想の話だろうと思ってたんだろうけど、それは当然僕がそれなりの年になっても直らなかった。当然だろう、記憶なんだから。」

 

 

そう言って彼は玄関で靴を脱ぎ、横の扉を開けて、俺を迎え入れてから扉を閉め、俺に向き直って、ずらりと並んだ本棚のひとつに向かっていった。

 

「最終的に言うなら僕は親に捨てられた。というか気味悪がられて放逐された。幸い親は金を持っていたし、僕もその記憶の事以外に関しては親と良好な関係を築けていたから、こうして最低限住むところは貰えた。まあ人が住むための建物じゃなくて書庫なんだけどね。ただこれだけが僕にとって幸運だった。」

 

 

 

 

「僕はここで初めて気づいた。この記憶は所謂前世の物なのだろう、と。って言うのもそれ自体は仮定として僕の中に存在していたのだけれど、確信に至る証拠がなかったからね。その証拠がこれさ。」

 

 

 

そう言って一冊の本を抜き出して開いた。

 

 

「これは…聖杯戦争か。」

「ああ。僕の前世の記憶と全く同じ聖杯戦争だ。尤もな話、その記憶の中で聖杯戦争もサーヴァントも、現実の物ではなく、創作物の中の設定と言ったところだったけどね。」

 

 

「僕は202X年の日本で生まれて死んだ、いわゆる転生者、というものらしい。そしてこの世界は前世におけるFate/という世界と酷似した別世界、いわばパラレルワールドであると僕は想定している。」

 

 

 




真名:不明
クラス:アサシン

敏捷D+(逃走時C相当)
幸運E---(測定不能な不運)
宝具C
その他全部E-

クラススキル
偽装工作
真実を偽るスキル。敵を騙す際の成功率上昇
加えて、自らをそこにいないと偽ることで気配遮断スキルと同等に使用可能

悪運察知
気配察知からやや派生したスキル。自らに害のある存在、運命が動き始めた際に発動し、明文化できない「嫌な予感」として察知する。もちろん自分を殺傷しようとする敵を感知することも出来る。
(マスターの苛立ちを察知できたのはこのスキルのおかげ)

単独行動


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第二節 その男の名は

投稿が遅れてしまったことについてまず謝罪すると共にもうひとつ読者様に謝らなくてはならないことがあります。
この物語の根幹に関わってくる主人公の殺害人数を大幅に間違えておりましたので、プロローグ(2/2)での数字を150万から600万に変更しました。本当に申し訳ございませんでした。
あと、サブタイトルの表記法をFGOに則り「第〇節 〜〜」というふうに変更しました。
未熟さを露呈させてしまって誠に情けなく思っております。申し訳ございません。


「それで?マスターは『この』聖杯戦争についてどんだけの事を知ってんの?」

「それについてなんだけどね、俺はこの聖杯戦争が記憶にない。」

「は?でもあんた、自分で今原作知識っちゅうのがあるって言うたとこやん?どういう事なん?」

「この聖杯戦争は、本来のFate/世界では起こらなかった、正史にはない聖杯戦争なのだろうと俺は仮定している。従って俺はこの聖杯戦争について何もわからない。」

「そうか…まあそれは他のマスターも平等なはずやからいいわ。ないもんねだりした所でしゃーないし。」

「俺にはもうひとつ分からないことがある。」

「なんやマスター、言うてみ?わかる範囲言える範囲なら教えれるかもしれんで?」

 

 

 

()()()()()()

不思議なことを言う男だ、俺はそう思った。

そもそも俺自身の真名はマスターに教えていないのに、真名が分かるはずがないのだから。

 

 

「俺はこれでもFateは割と好きだったからね。FGOだって無課金だったけど、サーヴァントの顔くらいは実装されてた子達は全部覚えてる自信がある。それなのに、君には全くと言っていいほど見覚えがない。君は一体、誰なんだ?」

ところどころよくわからない言葉が混じったが、フェイト、というのはこの世界を題材とした文学か漫画か、そのような作品のことだろうと察しはついた。

つまり彼はこの世界のサーヴァントの容姿について網羅している筈なのに俺の顔を知らない事を疑問に思っているということだろう。

 

 

「加えて言うなら、この世界がFate/の世界だと知った時に俺はこの世界の歴史についても学んだ。歴史について学ぶことはサーヴァントについて学ぶことだから。概ねは元いた世界と変わらなかった。その中に、『大阪で生まれ、ドイツに移住した大量殺人者』はどこにもいなかった」

 

 

今度はマスターではなく、俺が驚く番であった。

「今、なんて言うた?」

「君が語った経歴が本当のものなのであれば、僕は君という英霊を形づくる偉人を知らないし、この世界の人類史にそんな人物は凡そ存在しない。」

俺は何も言えなかった。

 

俺は歴史から抹消されたのだろうか。

敗戦国の闇として葬られてしまったのだろうか。

 

だとしたら俺は…俺の罪は…今も肩にのしかかって離れない呪い達は一体どうすればいいのだろうか。

 

寒い…寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い

ああ、寒さはいい。生を実感させてくれる。

もっと寒気(かんき)を、歓喜を、換気を…

 

「おい!しっかりしろ!」

我に帰った時、そこは暖房の効いた部屋であった。

ああ、寒くない…その筈なのに、体の芯まで凍ててしまったのだろうか、どこか寒気が離れない。

まあこの程度仕方あるまい。俺の罪と比べれば安いものだ。

 

 

「大丈夫か?」

マスターは案じて問うてきたがそれよりも俺は聞かなくてはならない。

「ああ、これは俺の問題やから。ただひとつ、聞きたいことあるんやけど、ええか?」

「何だ?答えられる範囲なら構わないが」

独逸(ドイツ)大虐殺(ホロコースト)で死んだ、殺されたユダヤ人は、この世界では何人や?」

大虐殺(ホロコースト)?何を急に言い出すかと思えば…確か600万人程だったと記憶しているが、それがどうした?」

「それは、独逸(ドイツ)が調べたんか?」

「いや、どちらかと言うと戦勝国側が調べたはずだ。どこの国かはさすがに覚えていないが…」

 

 

どういう事や?待てよ?このマスターが別の世界からの転生者ってことは…

 

「ああそうか、なるほどそれも「縁」になったわけか。」

「どうしたんだ?何かわかったことがあるのか?」

「ああ。俺は真名バレを恐れなくていいらしい、ってことが分かったわ」

「どういうことだ?」

「俺も、マスターと同じで平行世界のような所から来た英霊らしいってことかな?名乗らん理由がないならとりあえず名乗っとくわ」

 

 

「我が名は初代小人。ドイツのホロコーストの犠牲者を倍に増やした反英雄のアサシンや。改めてよろしく頼むで」




ちなみに投稿が遅れている間何をしていたかと言いますと、FGOをしていました。
具体的に言うと全体宝具アサシンでめちゃくちゃ可愛いグレイちゃんが欲しくて2部一章と2章を駆け抜けたあと、シナリオをこなしたりタケノコ狩りをしたりしていました。まあ弱小な私のカルデアでは30バトス(謎の単位)くらいが関の山だったわけですが…
事件簿イベ、良かったですね。重過ぎず軽過ぎず、きちんとやれば終わる程度のミッション量。シナリオも多過ぎないテキスト量でいい内容でした。ライネス師匠欲しかったけどアストライアさん当たったからもういいやって諦めました…
あと嫁鯖のワルキューレちゃんが絆10になりました…

あれ?後書きに小説本編の事全く書いてないじゃん…
本編はまだまだ構想を練りつつ書いていく形になりますので亀更新になるかと思いますが、是非とものんびりよろしくお願いします。


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第3節 初会敵(1/2)

さてそろそろ話の続きをどうしようかいよいよ困り始めたので、今後はどれだけ早くかけたとしても予約投稿機能を利用して一週間おきの更新にしようと思います。
リアル忙しくなった時のためのストックも欲しいですし…
ともかく本編をよろしくお願いします。


追記:ルビの不具合を修正しました


「なんやそんなボケたみたいな顔して」

俺は目の前で唖然としているマスターに問いかけた。

 

 

「いや、半分予想はしてたけどやっぱり全く知らない名前だったから」

「まあ本名じゃないんやけど、なんて言うか、ハンドルネーム?みたいな感じって言うたらわかるよな?」

「あ、ああ」

 

 

「そんな事はさておいて」

俺は切り出した。こうして聖杯戦争に呼ばれてしまった以上は俺の正体よりも重要なことがあるだろうと思ったからである。

 

 

 

「つまり俺もマスターも今現在の状況を何も把握出来ておらず、なおかつ自陣サーヴァントは最弱レベルである、と」

「ああ、そういうことになるね」

俺は平静を装いながらも、内心ではかなり焦っていた。というか絶望気味であった。

 

 

俺は最弱の英霊である。

これは紛うことなき事実である。

何故ならサーヴァントとなってなお俺の身体能力は人間の域を出ていないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

人間離れした、という言葉がある。

そのまま人間にはおおよそ出来ないような技術などを指す言葉だが、人間離れとはなんだろうか。

例えば各国の代表が競ってその競技で最も優れた選手を決めるオリンピックで金メダルを取った選手は人間離れしているとしばしば表現されることがある。

 

 

サーヴァントとしての俺は確かに人間ではないし、身体能力も人間としては高いのだろうけれど。

座から与えられた情報が物語っている。

100メートルは9秒台だろうし、他の身体能力もオリンピックの世界記録を超えるか超えないか程度しかないだろう。

つまり、他のマスターの陣営は人の形をした戦闘機を従えているのに、こちらの陣営はオリンピック選手しか連れていないという訳で…

 

 

「まず大前提として、俺らはかなり不利な状況にあるっちゅう話をせなあかん」

「何故だい?」

「サーヴァントは、自分の知名度によって能力が上下するもんや。例えば坂田金時や茨木童子のような日本発祥のサーヴァントは、日本でこそ本領を発揮するし、彼らがあまり知られてない所では弱体化される。同じ世界のサーヴァントですらそうなんや、『別世界から召喚されたサーヴァント』だとその影響はさらに大きいと思わんか?」

「あっ…」

ここで初めてマスターは合点がいったというふうに口に手をあてがった。

 

 

「その上、サーヴァントはある程度元となった人物の特徴が良くも悪くも強調される。そう、例えば先天性心疾患による低い身体能力とかね。」

「え…?」

「いやいや、そんな悲しい顔せんでええよ、もう既に死んでしもてるし、生きるのにそんなに困りはせんかったし。なんにせよ俺は、この世界での知名度の低さと、強調された弱点のせいで能力にかなりの下方調整が入ってしもうてる。元々低いっちゅうのにな。」

 

 

そう、これがサーヴァント初代小人の現状。最弱たる所以。

「でも悲観することも無い。勝ち筋はまだ完全に消えたわけやないからな。」

「と、言うと何か策があるのかね?」

「俺は低い能力値の代わりに、2つ宝具というか、武器がある。まあ片方は実質礼装とかそんなものやから宝具まではいかんけど、戦闘前ではまあ役に立つ。ただ、」

「ただ?」

「準備がめんどくさいねん、ということでこれからちょっと間、図画工作の時間といこか。」

「は?」

 

 

 

 

 

─────────

 

 

「まあこのくらいあれば足りるやろ」

俺のサーヴァントがそう言っただいたいまあ2時間半程度が経った位の頃だった。

凝り固まった首を回すと、若干の痛みと共にボキボキという音がした。

 

 

「さて、やるか。これが俺の第1宝具、」

無造作にひとまとめにして目の前に置いたそれ───紙で作った人型────に向かって初代小人が唱えると、人型達は開け放たれた窓から全て飛んでいき、見えなくなった。

 

「安心しぃ、認識障害かかってるから一般人にも敵対マスターにもほぼバレやんはずや。」

初代小人はそう言った。

「いや、あれはどういう?」

「あれは『人間』や」

「は?」

「人の手によって生み出され、苦労を伴って完成されることで人間という概念に当てはめる。人間が複数いれば噂という情報網が生まれる。その情報網を使ったのが初代小人という暗躍者。だからあの情報網が得た情報は逐一俺に情報を与える。あとは色々探らせながら待つだけ。飯食うなら食うとけよ、敵見つけたら対策考えなあかんし休める時に休んどきや。」

「分かった。」

 

 

あの人型が探知用の術式であった事が分かればもういいか、そう割り切って言われたままに俺は部屋を出た。

 




初代小人の第1宝具に関しては作中の説明通りです。ちょっとご都合気味なのは許してください。

ところで皆さん鳴風荘イベントはやってますか?
どの結末でも面白そうで投票どれにしようかめちゃくちゃ悩みましたね…面白かった……
ワルキューレちゃんを求めて槍ガチャ引きましたけどだめでした…邪ンヌちゃん欲しいなぁ…


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第3節 初会敵(2/2)

なんとか間に合った週一投稿。
15分前に執筆終了しました危ねぇ…今日はあのサーヴァントが新登場しますよ!お楽しみに!(建前)
マジで動かしづらかった(本音)


初代小人が第1宝具を展開してから1時間と少しが過ぎた。

何となく魔力が消費している感じが続いていて、宝具の効果が切れていないことを俺に教えている。

 

「ん?」

唐突に初代小人が声を上げた。

「どうしたんだ?」

「使い魔が潰された。」

「え?認識阻害掛けたんじゃなかったのか?」

「今の俺はあくまでアサシンクラスやから、そんなに魔術には()けてへん。というかなんで俺が暗殺者(アサシン)やねん。謀殺やねんから広義で見たらキャスターちゃうんか」

「文句を言ってても仕方ないよ」

そう言って俺は東京都の地図を広げて、コンパスを使って今居る家を中心に円を描いた。

 

 

 

 

「だいたい10キロごとに円を描いた。どっちの方のどの距離に居る?」

「西側から来て、使い魔をひたすら壊しながら今この辺に居る」

「目黒区と渋谷区の境からまっすぐ攻めてくる…使い魔を壊しながらというのは挑発のつもりなのだろうね。」

「使い魔に掛けた隠蔽(ハイド)が弱かったから自陣防衛特化キャスターと勘違いされたんやろ。使い魔を潰して、あわよくば根城から出てきてくれた方が助かるけど、出てこやんかったらそれはそれで叩き潰せるって魂胆か。随分自信家らしいな、あっちのマスターは」

「でもそれにはそれだけの根拠、つまり強いサーヴァントを連れてるってことだろ?」

「間違いない。そしてそれは困る。何せ俺は戦ったらどのクラスが相手でも5秒も掛からず負ける。」

「じゃあ逃げるのは?」

「それも得策とは言えん。荷物をまとめる余裕はないから着の身着のまま逃げ出すことになる。でもそうすると多分アイツらは俺の使い魔全部ぶっ潰すやろ。そうなったらあの宝具を使ってネットワーク再建するにも大量の紙とハサミ、それからそこそこの時間が必要な以上根城無しには難しい。」

「それならどうするんだよ!」

「まあ見てろ、到着なさったらしい」

「えっ」

そう言った時には初代小人の姿は消えていた。

のと同時に部屋の扉が音を立てて開かれた。

 

 

 

「やぁやぁ我こそは、などと名乗る主義はないので、自己紹介などはしない。手短に決めに行かせてもら……そこに隠れているのは誰だ!」

黒のインナーに赤い外套を纏った銀髪のサーヴァントがの突然投げたナイフは虚空から出現したようだったが、俺にとってそれは至極当然のことだった。

 

 

壁に刺さり、虚空に(ほど)けていったナイフと逆に現れたのは俺のサーヴァントである初代小人。

俺と話していた時と変わらず軽薄な笑みを浮かべている。

 

 

「いや危ないわァ、本気出してない様子やったし様子見のつもりなんやろけど、ホンマに当たってたらどないしますん?」

うわ胡散臭い。しかも地味に訛りを変えて京都寄りにしてるし…っと、念話か。了解了解

 

 

「ほんまに敵わんわぁ、これが最近の暴力的な若者なんかなぁ?ホンマに怖いからやめてや?エミヤさん」

「なっ…!」

 

まあ狼狽えるよね…なんなら真名看破持ちのルーラークラスを疑うレベルかもしれない。

尤もルーラークラスは例外だから知っていればの話だけど。

 

 

「アンタのこともよぅ知っとるで?クラスはアーチャー、投影魔術を得意とし、基本的には干将と莫耶の2振りの短剣を使っての白兵戦を好む、と。ただアーチャーとしての技能も当然持っていて千里眼を用いて超遠距離からの狙撃も可能。まあこんなもんかな?」

「それが分かったからどうした!」

 

 

エミヤは逆上して斬りかかった。

と言うよりは聞いていられなかったのかもしれない。

初代小人は身をかわした。

敏捷は彼の中では一応高いステータスを誇るため、あの程度の単調な攻撃は回避出来たのだろうということが分かったけれど、同時に彼の身体能力を鑑みるに、あと躱せて3回、運が悪くて…いいや、俺も彼も運が悪いようだったから、ほぼ確実に2回程度しか回避出来ないだろう。

そもそもアーチャー含めた3騎士の方が、アサシンを含む四騎士よりも優れているのだから仕方がない所もあるだろう。

 

 

 

とはいえ簡単に諦めたくはないのだが…

((おい、何か策はあるのか?))

((当たり前やろ、まあ見てて))

 

 

 

「話は終わってないんやよ、エミヤさん、俺は正真正銘武器なんて物騒なもんは持ってあらへん、第一今の一瞬の戦闘で実力差はわかりはったと思うんやけど、どうやろか、一旦剣下ろして話聞いてくれへん?」

「…マスターからの許可が下りた。聞いてやるが、もし妙な真似をしたら、今度は手加減なしで殺す」

「殺すやなんて怖いわぁ…いや、なんてことない話、エミヤさんこのまま勝ち残ったとして、最優のセイバーに勝つ算段、なんかあるん?」

「それで?」

「戦争には同盟っちゅうもんがつきもんや思うんよ、そこでどない?いっぺん俺らで組んでみたらええんちゃうかー思うんやけど」

「だが最終的には打倒し合う敵だろう、オレとお前達とは。いずれ潰す相手、今潰してもなんの支障もないと思うんだが?」

「でもその言い方だと今わざわざ殺す理由はないんだよね?つまりこちらがそちらに得をもたらせば組んでくれる、そういうふうに聞こえたけど?」

「…フッ、こちらのマスターも笑っているよ。そこまでして命乞いをするなら条件を聞こう」

「まず、俺の真名を教えとくわ、『初代小人』っちゅうんやけど、当然聞き覚えはないよな?まあこの辺では全くの無名やからしゃーないわ。それで、なんで俺らがこんな申し出してるかまず疑問に思ったと思うんやけどな、理由は簡単やねん、俺が弱すぎる。辛うじて索敵の術式は使えるものの、本来のクラスのキャスターで使うよりだいぶランクは下がるし他のステータスもめちゃくちゃに弱い。そこのマスターなんか酷いで、俺見た瞬間「ああ、今回の聖杯戦争は諦めた方がいいかもしれない」とか言うんやで。それで俺もまあ聖杯に興味なんか全くないからさ、それならもういっそ優勝候補コケさせてせいぜいオモロしたろかなー思うたんよ。どんでん返し的なんっていつ見てもおもろいやん?」

 

 

ここで初代小人は息継ぎをした。

俺は笑ってしまいそうだった。

何だこのアサシンは、偽装工作スキルをフル活用して並べ立てた虚言をそれらしく信じ込ませている…これではまるで、カタログスペック上のステータスを全部口先三寸に集約させたような状態じゃないか。

 

「それで、どうや?俺達は面白いもんを見れる、君らは念願の聖杯に近づける。ここらで俺らと仲良くしてても損は無いと思うけど?」

「…分かった。一時的同盟を受諾しよう」

 

 

そうこうしている間にアサシンはエミヤ(カモ)を騙し仰せて、同盟を成立させていた。

……ちょっと待てこれ大丈夫か?




補足説明ですが、エミヤがアサシン陣営居宅に辿り着いたのは千里眼による索敵中に引っかかったアサシンの使い魔にかけられた隠蔽を、対魔力で剥がし、その使い魔を分析した結果勝つ可能性が高いというマスターの指示です。エミヤはマスターと念話でやり取りしながら索敵、襲撃をこなしました。単独行動を持つがゆえの自由度の高い行動ですね。
ちなみに念話越しのエミヤのマスターまで騙せたのは、エミヤ経由でしかアサシンを見ておらず、アサシンの能力をランク付けで確認できていないことが一番大きな要因です。


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