聖グロリアーナ女学院からの呼び声~英国風淑女たちの秘かな愉しみ (ねこぴよ)
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誘拐は淑女の愉しみ

 目が覚めた時にはすでに四肢をベッドに固縛されていた。

 ここはどこかと見回せば、目に入るのは四隅で真鍮の柱輝く豪華極まる大きなベッド、瀟洒なつくりのカーテン揺らめくこれまた大きな窓、きっちり磨かれたマホガニーの家具類。そして隣には、高価そうなティーカップを掲げるように持った金髪の少女がいた。

 

「あら、目が覚めたようね。御機嫌はいかがかしら」

 

 わけがわからなかった。ここはどこだ。彼女は誰だ。なぜ俺は手足を縛られているんだ。尋ねようにも、タオルで猿轡をされた口ではそれもあたわない。

 俺は不可解なこの状況に混乱した。動かぬ手足をそれでも無理に動かそうとして、じたばた暴れる。しかもこのベッド、見た目より居心地の悪いベッドでたぶんクッションが壊れている。動くたびにぐねぐね動いて今にも分解しそうだった。不快のことだらけだ。

 

「ふふ。落ち着いてくださいな。取って喰うようなことはしませんよ。たぶん。まず、ここはとある学園艦にある寮の中。わたくしは……そうですね、ダージリンと呼んでくださいな。この学園の学園生ですわ。あなたは『招待』されたのです」

 

 声を発せない俺の疑問にどういうわけか答えてくれる。学園艦……俺は学園艦に乗せられているのか。緋色の制服。どこかでみたような……

 

「ここに滞在する間、あなたのことは『チャーリー』と呼ぶことにしますわ。よろしくって? チャーリー」

 

 なにを勝手なことを……不自由を強制されているこの状況とも合わせて、抗議のジェスチャーをする。つまり、首をはっきりと横に振った。

 

「あらあら。ちょっと難しい子なのね、チャーリー。……いいわペコ、いつものように」

「はいダージリン様」

 

 もう一人いたのか。まったく気配をさせずに部屋の片隅にいたもう一人の少女が歩みでる。栗色の髪をきっちり編み上げた少女がベッドに固縛されたままの俺の横に立った。おもむろにかかっていた毛布を取り去る。驚いたことに俺は全裸だった。

 

「チャーリー? わたしは甘くないですからね。まず犬と御主人様の関係とはどういうものかを教えてさしあげますわ」

 

 バシィッ!

 熱い痛みが胸を襲う。目にもとまらぬ勢いで少女の腕が振り下ろされ、俺を打ったのだ。その華奢そうな手には鞭がしっかりと握られている。

 

「んむーっ!」

 

 耐えきれず悲鳴が出てしまった。だが猿轡の中で、くぐもった声が隠されてしまう。

 

「御主人様の言葉は絶対なのです。御主人様が空を飛べ、といったらおまえは空を飛ぶのです。わかりましたか?」

 

 かわいらしい笑顔で恐ろしいことをいう。この娘、気が違っている。

 再び激痛。また鞭だ。

 

「返事がないということは、まだまだ鞭が欲しいということですね。いいでしょう、剥かれたアバラが陽光に晒されるまで打ってあげますわ」

「んひーっ!」

 

 我ながら情けない悲鳴を漏らす。この娘、本気だ。

 

「それにしても」

 

 鞭を握った少女の視線が俺の下半身に移る。

 

「浅ましいこと。やはりオス犬ですね、ダージリン様。鞭で罰を与えられているというのに、ココは生意気にもそっくり返っています」

「そこは元気でいないといけないわね。そのために招待した犬ですもの」

 

 そうなのだ。恥ずかしながら、美しい少女に無情に鞭打たれて、俺の下半身はなぜかすっかり元気になっていたのだ。ぴくん、ぴくんと律動する肉筒を、少女が鞭を持ったまま楽しそうに眺めている。――まさか。

 

「んんー! むむー!」

 

 俺は死に物狂いで首を横に振り、続いて縦に振った。ソコを鞭で打たれたら、たぶんとんでもなく不幸なことになる。そんな悲劇的結末だけは迎えたくなかった。

 

「ほう、従うつもりはないと。では仕方がないですね、ダージリン様、九尾の鞭に変えてもよろしいですか?このわからずやのボローニャソーセージをスライスしてご覧に入れますわ」

「むふーっ!! むふん! むふんんーっ!!」

 

 俺の下半身を見つめる瞳に妖しい炎が灯っている。だめだ。こんな娘に凶器を持たせちゃだめだ。

 

「まあまあ、お待ちなさいペコ。よく考えたら猿轡を外さないと口も聞けませんわ。せめて外しておあげなさい。チャーリー? よく考えて御返事するのよ? スライスされたあなたのボローニャソーセージなんて見たくないものだわ」

 

 狂気だった。この部屋を狂気が支配している。こいつらはきっと、薄笑いを浮かべながら俺の生殖器を破壊するだろう。とにかく今は表面だけでも従うほかない。

 猿轡がようやく外された。もうなりふり構っていられない。

 

「な、なりますっ! 犬のチャーリーになります! 助けてください御主人様っ!」

「ふふ、そうよ。いい子ねチャーリー。いい子」

 

 ダージリンと名乗った少女は、そういうと持っていたティーカップに口をつけた。笑顔ではあるが、視線は鋭い。それは支配者の目だった。

 

「チャーリー。こんな格言を知ってる?『良い猟犬は綺麗な尻をしている』……あなたのお尻も綺麗なままでいて欲しいものね。多くの場合、犬の主人は鞭を振るうことに逡巡がないものよ」

 

 なにをいっているのかわからなかったが、とりあえずうなずいておく。

 

「ああ……まったく……恥ずかしいこと。……あん。大の男が……小娘であるわたしの鞭に怯えて……なにがチャーリーよ……はああ……」

 

 ペコと呼ばれた少女は何か異様な雰囲気に包まれている。二の腕で自分を抱きしめ、恍惚の表情を浮かべていた。小柄な体を左右に揺らし、もどかしそうに短いプリーツスカートの下の腿をすり合わせている姿は煽情的ですらあった。

 

「ペコ。しばらくあなたとアッサムに預けるわ。夜までに調教を済ませておいてね。……なるべく優しくおやりなさい? 後味の悪いことになったら面白くないですもの」

「はぁああああ……あ? あっ、はい、ダージリン様! たとえボローニャソーセージ一本だけの存在になっても今夜にはきっちりお届けしますっ!」

「大丈夫かしら。じゃあよろしくね」

 

 重い音を響かせて、部屋の扉が閉まる。残されたのは、全裸でベッドの支柱に大の字に手足を縛られた俺と、どうやら破壊的方向に向きやすい性衝動を昂らせている少女。こんな部屋に閉じ込められて、俺はいったいどうなってしまうのか。

 

「ああ……おちんちん……おちんちん……切ったら汚いオスの血がたくさんたくさん出るのでしょうね。ふふふ。精液。血しぶき。ぱっくり割れる海綿体。うふふふふ……」

 

 震えあがった。不吉な言葉を歌うように口ずさみながら、ゆらゆら揺れている。怖い。本気で怖かった。あの眼は、もう何人も男を食った獣の目ではないのか。

 

「ペコ。そろそろあたしも始めましょうか。チャーリーの綱を外しておあげなさいな」

 

 くぐもった声がシーツの下から湧き上がる。

 ダージリンと名乗る少女はもう退室したはずだ。いったい誰が。

 その時、背中のさらに下、いびつな感触だったクッションがもぞもぞ動き始めた。

 

「わっ! うわ、うわああああ!」

「ふう。なかなか良い重みだったわ。私好みの犬ね、体は合格よ、チャーリー」

 

 質の悪いクッションが人間に化けた。ベッドの中、クッションの間から現れ出た謎の人物。長い金髪を大きな黒いリボンで後ろにまとめ、今までずっとベッドの構造の中に潜んでいたとは思えない涼し気な目が俺を見つめる。

 

「私はアッサム。暗い所とか狭い所が好きなの。そういう性分なのね。あなたの縛めは解いてあげたけど、逆らおうとか逃げようとかはしないほうが賢明よ」

 

 ようやく解かれた拘束。痺れかけた手足を揉みながら、この奇態な少女の言葉を聞く。大きいベッドとはいえ、どうやってあの中に入っていたのか。どういう理由で入っていたのか。狭い所が好きだからという理由は、潜んでいた理由としてははなはだ不可解だった。どうりで背中の下がぐねぐねするはずだ。

 

「ここは本当に恐ろしい所なの。特にこの子、ペコは、あまりためらわずに致命的な力を行使してしまう暴れん坊なのよ。困ったものよね。でも」

 

 ベッドに座って一息ついていた俺の睾丸が何か大きな力でひねりあげられる。

 

「ぎゃああああっ!」

 

 涼し気な表情を変えずにアッサムが俺を見つめたまま、片手で俺の股間を掴んでいた。痛い。ものすごく痛い。握られたタマがピンチだった。

 

「私もときどきそういう気持ちになるの。だから、逆らったり逃げたりしては駄目よ。おとなしくしていれば、御褒美をあげる。たぶんあなたは素質がある。楽しんだほうが得よ」

「わ、わかった。わかりました。逃げませんから」

 

 こくこくとうなずく。そこでようやくタマが解放される。

 横ではこのやりとりを見ていたペコが、すりすりと互いに擦りあう腿の結合点へ片手を強く押し当て感極まっていた。

 

「ふぁああああ。睾丸。圧搾。破裂。飛び散る精液。血。……血! ああ……!」

「あ、ペコはああいう子なの。怖がらないで……というのも無理でしょうけど、理由もなく襲い掛かったりはしないわ。たぶん」

「たぶんですか……」

「それより、あなた童貞よね? 本土に恋人はいないの?」

「えっ」

 

 ベッドに座る俺の隣にアッサムがそっと腰を下ろす。香水だろうか、上品な香りが鼻腔を優しくくすぐった。

 

「い、いません。俺はただのしがない高校生ですから……」

「そう。じゃあそういうところの遠慮はいらないわね」

 

 下半身に刺激を感じた。見れば、アッサムの白い指が勃起したままだった俺を優しく包んでいる。その部分の硬さを確かめるようにきゅっと締められ、さらに堅くなった海綿体の周囲をゆるゆる上下させ始める。

 

「う……うあ……」

「ほら、どう? 気持ちいい? おとなしくいうことを聞いているなら気持ちいいことしてあげるわ。ね、私たちの体に興味あるかしら? それも自由にできるのよ? 私も、ペコも、ダージリンも。すべてはあなたの、チャーリーの選択次第……」

 

 語っている間にも、アッサムの意外に大きな柔らかい胸が暗青色(ダークブルー)の制服越しに俺の体へ押し当てられる。ブラジャーはしていないようだった。甘い吐息を耳に吹きかけられ、ますますいきり立ってしまう。

彼女たちを自由にできる。つまり俺は性のおもちゃとして誘拐されたということだろうか。俺は彼女たちに自由に使われ、同時に彼女たちを自由にできる。性的に。

 悪くないのではないか。

 通っていた学校なんかつまらないものだったし、幸い今は春休みだ。地方から出てきて下宿生活の俺なら、時間はまだ自由に使える。それに彼女たちもいつかは解放してくれるだろう。この暗青色の制服、確か聖グロリアーナといっただろうか。確かとんでもない御嬢様学園だったはずだ。その学園の娘たちとねんんごろになれる……悪いことではないはずだ。

 ちょっとイカれた娘たちだが、一丁つきあってみるか。もしかしたら彼女たちが、いや俺の冒険的選択が、この味気ない人生を大きく変えてくれるかもしれない。その行き先がどうなるのか、まあ一抹の不安もあるが。

 腹を決めて、気持ちの良い方向めざして走り出すのだ。

 

「アッサム……さん。その……咥えてもらってもいいかな?」

「あら。うふふ、かわいいこというのね。いいわ、じゃあ私のキスがどういうものか、このいたずらっ子のソーセージちゃんに教えてあげるとしましょうか。でも、もちろん今夜咥えるのはお口だけじゃないわよ?

 

 淫猥な笑みが俺を捉える。背中を何かが、ぞおっと駆け上がった。

 さて、果たしてこの先に待っているのは天国か、はたまた地獄か。

 この淑女たちのひそやかな楽しみにつきあってやるとしよう。

 



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ディープスロート・フェラチオは淑女の愉しみ

「ベッドに座って、足を開きなさい」

 

 いわれたとおりに座り、股を大きく開く。彼女がいじっていたせいで、股間の肉砲はすでに半勃ち状態だ。

 

「手を頭の後ろで組んで……そう、そのまま動かないで」

 

 情けなく開かれた足の間にすっくと立ったアッサムの体が入り込む。密着する異性の体。たまらない感触だった。黒ストッキングにつつまれた魅惑的な脚が、もっと広げろというように開いた足をさらに押し開く。興奮で足が震える。これから彼女がフェラを……フェラチオをしてくれるというのだ。

 座った状態で見上げる俺と、立ったまま見下ろす彼女の目とがねっとり絡み合った。視線を絡めたまま、しずしずと彼女の体が低くなっていく。見上げていた彼女の顔がだんだん近づいてきて、ついに同じ高さになる。

 ――キス、してくれるのかな。一瞬期待したが、なにもないまま彼女はさらに下へと屈みこんでいった。

 

「いけない子ね。もうすっかり堅くなっているじゃないの」

 

 吐息を亀頭で感じる。彼女の鼻と俺の亀頭の間はもはや一センチもないだろう。

 かわいい鼻がひくひくと動いている。勃起した俺の匂いを嗅いでいるのだ。

 

「ふふ……獣臭い。最後に射精したのはいつなの?」

「き、昨日の夜。寝る前に一回抜きました」

 

 脈動に合わせて揺れる俺の先端をみつめながら彼女が尋ねる。

 早く口に入れて欲しいのに、なかなか焦らせてくれる。

 

「そう。ね、何をオカズに抜いたのかしら。教えなさい」

「ス、スマホでそういう動画を見て……いつもそうです」

「あら。あまりロマンのないオカズね。いつも見るのはどういうジャンルなの」

「無修正膣内出し動画です。射精された精液が開いたおまんこからどろっと流れ出るシーンでいつも射精しています。それ以外で抜くことはありません」

「そう。膣内出しが好きなのね」

 

 つい早口になってしまう。だが、俺はいったい何を告白しているのか。本来なら口も聞けないようなお嬢様に。

 

「いいわ。じゃああたしの口をおまんこだと思って存分に射精しなさい。ダージリンが帰ってくるまでにこの汚いソーセージを綺麗にしておかないとね」

 

 次の瞬間にはもう飲み込まれていた。

 驚くほど奥まで一気に飲み込まれる。先端が彼女の喉奥に当たった。興奮しているのだろう、かわいい鼻息が俺の陰毛をそよがせている。そこからずるずると引き抜いて行って……亀頭まで戻ったところでそこを甘噛みした。

 短い悲鳴を上げてしまった。

 一瞬本気で噛むのかと思ったのだ。だが、噛みちぎるようなことはなかった。優しく歯を当てただけだった。同年代の、美しい女性の口が俺を頬張っているという実感がさらに肉柱の堅さを上げていく。

 狭い口の中で、熱くて柔らかい舌が激しく蠢いて俺を責め立てた。

 動くなという命令だったが、それは一種の拷問だ。甘美な(くち)まんこに向かって腰が自然とうねってしまう。

 傘周りをねぶっているかと思えば、今度は尖らせた舌で亀頭の先、尿道口をチロチロと責めてきた。

 情けない声が漏れてしまう。刺激に耐えようと込めた力で尻が震える。

 頭の後ろで組んだ腕を下ろして、足の間にあるこの頭をガッツリ引き寄せたかった。力任せに喉奥までぶち込みたかった。だが、それはまだ危険だ。積極的な動きはあのペコを逆上させるかもしれない。動きたくなる衝動が込み上げるのをなんとか耐える。なんとか耐えるが、もう一つ耐えきれない状態まで高まってしまった欲求があった。それは下腹部で渦巻く射精への高まりだった。

 はっきりと俺は童貞だ。

 それがこんなサービス……いや調教なのか? とにかくこんな刺激を受けて、耐えられるはずもなかった。先っぽを責めるように激しく舌で擦られ、次には優しいキスのようにちゅっちゅっと吸引される。こわばった肉幹に歯が当たると、恐怖と快感とが混ざった歓びが脳へと電気を走らせる。

 

「んっ……」

 

 射精が近いことを察したのか。俺の尻に食い込むアッサムの指が、さらに沈み込む。俺を引き寄せ、奥の奥、おそらく食道にまで飲みこもうというのだろう。

 ずずず……と喉の中をを進む。異性の体内を進む快感。彼女の鼻が俺の下腹部にめりこんだ。それでもなお、尻を掴む指は力を緩めない。爪が刺さり、快楽の中にもう一つ痛みを生む。

 俺はうめき声をあげた。これ以上この甘い快感に耐えることはできない。

 もはや絡めとられた下半身を痙攣させる以外俺にできることはなかった。限界まで俺を飲み込んだ彼女の喉は、連結した何かの機械のように俺の膨らんだ肉柱とかっちり嵌って、もう前にも後ろにも動くことはできない。

 

「むっ……!」

 

 決壊するダムのように射精が始まった。俺の下半身から、生命の素がどくん、どくん、と鼓動に合わせて脈動してゆく。昨晩からつくられていた精液達が彼女の食道を通って胃へと殺到する。本来子宮へと注ぎ込まれて生命となるはずだった精子たちは、いま絶望の待つ胃液の海へと落ち込んでいるのだ。それでも麗しい異性の胃液に溶かされるなら本望というものだろう。

 びゅうびゅうと精液は噴出する。彼女は喉奥で叩きつけられる欲望を、要領よくこくこくと飲み込んでいく。  いったい今までどれほどの精液を飲んできたのだろう。そう考えると心が少しばかり疼いた。

 どんな表情で彼女は俺を飲み込んでいるのか。確かめたかったが、俺の腰に顔を埋め、深く呑みこんでいる彼女の顔は確認できない。ただ丁寧にまとめられた美しい金髪しか見えなかった。

 

「おお……射精……絶頂……小さき死! 死!」

 

 周りではペコが不可解な言葉で歌いながらふらふら歩いている。片目で見れば、先程振るっていた鞭の柄の部分……黒革の棒状の部分をすこすこと撫でていた。理解しがたいが、何か性的興奮は得ているようだった。

 

「いて!」

 

 気をそらしていたことがバレたのか。アッサムが根元まで咥えていた俺を甘噛みした。

 射精は止まっていた。しかし甘い痛痒のような快感が未だ残って、肉棒をじんじんと痺れさせる。

 奥まで入り込んでいた俺の男性生殖器は少しずつ引き抜かれていった。亀頭の部分までくると、そこで再び強烈な吸引を食らわされる。痛いほどのバキュームで、残っていた精液が吸い上げられていった。

 最後の一滴まで飲んでやろうというのか。もう出なくなってもまだ俺の先っぽは吸われていた。見上げる彼女の視線に気が付いた。その蒼い瞳はどこか優しく、そして楽しそうに見える。

 そこでようやく解放された。俺の肉柱は久しぶりに空気に触れることができたのだ。

 

「すごいのね。さすがダージリンが目をつけるわけね」

 

 それまでの激しい行為などなかったかのように優雅に立ちあがった彼女は、やや乱れた髪を直す。言葉を発する彼女の桜色の唇が、つい今まで俺を飲み込んでいたと思うとなんだか気恥ずかしかった。唇は美しく、精液などの汚れは一切みられない。すべて、飲み込んでしまったのだ。彼女の腹中に収まった大量の精液のことを思う。興奮する。放出したことによって射精のたかまりはおさまったとはいえ、まだ陰茎には獰猛だったフェラチオによる快楽の残滓がある。痺れたような、じんじんする感触がまだ残っているのだ。

 

「体ごと吸われるかと思いました」

 

 どう答えていいかわからなかったので、そんな返事をする。それでも彼女は微笑んでいた。

 

「ペコ。あなたはどうするの? 次はあなたの順番よ」

 

 先程の行為の間、ペコはただ部屋の中をゆらゆら歩き回っているだけだった。今もまだうわごとのような謎のポエムを口ずさみ、鞭の柄をおそらくペニスに見立ててしごいている。

 いささか正体のわからない少女だ。

 

「摩擦。切断。スキニングナイフ。はああ……あ、アッサム様、お気になさらず。私は途中から適当に楽しみますので」

「……そう。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 のし、っとアッサムの体重が――それは優雅な、と表現する程度の重さだったが――俺の両膝に乗ってきた。

 

「あっ」

「ふふ」

 

 対面座位の体勢になっていた。

 彼女の黒ストッキングに包まれた優美な両脚は大きく開き、俺の腰を挟んでいる。首に回された手が、俺の頭を固定した。

 

「キスしてくださらない?」

 

 いたずらっぽい光をたたえた青い瞳。至近距離に来た端正な顔が、濡れた唇を開いてそんなことをいう。先ほどはキスしてくれなかったのに。キスより吸精が先、ということだったのだろうか。俺の裸の胸には、暗青色のセーターを高く持ち上げる胸が、みっしりと押し当てられていた。柔らかかった。そういえば彼女は下着を着けていないのだ。下は……下はどうなのだろう。ストッキングがあるからまったくの無防備ということはないだろうが、もしかして、着けていないのだろうか。いまさら「セックス」という単語が頭の中をぐるぐる回る。

 

「う、動いていいんですか」

「よろしいですわ。あたしの体を好きなように調べなさい。童貞なら、たくさんあるのでしょう? 知りたいこととか、触りたいところとか。でも最初はまずキスからね」

 

 返事をしないうちに柔らかい唇が俺の乾いた唇に重ねられていた。目は閉じなかった。彼女のあの蒼い瞳もまた閉じずにこちらを見つめていたからだった。俺のファーストキスは俺の意思に関係なくこうやって失われた。

 

「んん……」

 

 歯の間を滑り込んできた舌が俺の舌を絡めとる。抱き合うように絡まったかと思えば、右に左に動き回って、戻ったり入ったり。これは……俺の口中の唾液を集めているのだ。集めた唾液をいっぱいに含み、こくん、と小さな喉を鳴らす。

 

「……おいしい」

 

 胸がどきんと高鳴った。胸を熱くする感情。これが愛というものだろうか。華奢な背中に腕を回し、がっしり抱きしめる。勢いあまって彼女をベッドに引き倒してしまった。

 だが抵抗はない。動いてよいというのは本当のことのようだった。

 俺の上になった彼女の体重が全身に感じられて心地よい。もう一回唇を重ね、今度は彼女の唾液を探っては飲み込んだ。

 

「どうかしら、キスの味は」

「ファーストキスでしたよ。甘い、甘い媚薬の味がします。それも即効性の。……アッサムさん、ここも吸わせてください。大きくて柔らかなここを」

 

 俺の胸にのしかかる重量感がありながらマシュマロのように柔らかい二つの肉。鼻息荒く、それを服の上から揉み上げた。

 

「あん。……そう、おっぱい好きなのですね。いいのですよ、好きなように吸っても。……ほら」

 

 暗青色のサマーセーターをくるっとめくると、真っ白な二つの丸い山がこぼれだした。その頂上にちょこん、と立つ乳首。そこはすでに勃ち上がっていて、彼女の興奮度合いを示していた。

 

「おっぱい。おっぱいだ……同年齢の女の子のおっぱい、初めてみた……」

「あら、うれしい。じゃあファーストキスに続いておっぱい童貞もあたしが貰ったわけですわね」

 

 重力に従い俺に向かって垂らされるおっぱい。その桃色をした先端がだんだん近づいてくる。おっぱい童貞か。そんなものに童貞があるのかどうかは知らなかったが、さっそく喪失のために乳首一つに吸い付いた。

 

「あっ……い、痛……」

「ぷはっ、あ、ご、ごめん」

 

 興奮してつい全力で吸ってしまったのだ。歯も当たってしまったかもしれない。

 

「……構いませんわ。あたし、痛いのも好きですから。もっと強く吸ったり、噛んだりしてもいいですから」

 

 頬が紅潮している。涼しげだった目に、今は淫蕩そうな光が感じられた。……これは、ヤれる。

 

「下になってもらっていいですか? 俺、上からの方が」

「どうぞ」

 

 体勢を入れ替える。俺の眼下にはすっかり発情したアッサムの半裸があった。 

 



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バター犬との遊びは淑女の愉しみ

 彼女の荒くなった呼吸に合わせてゆらりゆらりと揺れるおっぱい。乳房。

 乳房、と呼ぶほかない二つの(いただき)の上でさらなる刺激を求めて天を向くのは濃い桃色をした乳首。それは乱れたセーターの下に咲いた肌色の花だ。

 

「ほらここ。痛くしてもいいのよ?」

 

 頬を上気させたアッサムが、大きな胸を両手で少し持ち上げ、優しい笑顔で誘う。

 たまらなかった。

 有名な怪盗のようにその上へ飛び込んだ。

 

「きゃ」

 

 細い手首を押さえつけ、動けなくなったアッサムの顔を間近に見下ろす。肌に当たる硬くなった乳首と質感たっぷりの乳房。それを俺の体重で圧し潰す。

 

「途中で止められませんからね」

「あら怖い。何をされてしまうのかしら」

 

 余裕の笑顔が憎たらしい。まずは唇を奪う。キスはさっきもしたが、イニシアチブを取るとまた味わいが違った。今はもうなんでもできるような気がした。

 柔らかい唇を割って舌を押し込み、歯の間に無理やり侵入すると中で嬉しそうに彼女の舌が迎えてくれる。夢中で唾液を交換しあった。

 下の方では、彼女の脚が誘うように開いていた。そこに片足を入れ、ストッキングの感触を楽しみながらさらに開いてやる。彼女の手首をつかんでいた指を次の任務に向けなければならない。すべすべの脚に伸ばし、滑らせてその感触を楽しむ。

 

「あ、ああ……」

 

 気持ちいいのか。ディープキスの合間に甘い声が混じるようになった。指を上へ上へと滑らせていけば、やがて熱を持った湿っぽい脚の付け根に達する。

 

「あん。そ、そこは……」

 

 抗議にも構わず、両脚の間、女性の体の中で最も触ってはいけない部分に指を這わせた。

 

「ああん!」

 

 唇の接触が離れ、彼女が仰け反った。

 白い喉を眺めながら、少し体をずらせて二人の間のクッションにされていた二つの鞠のような肉にしゃぶりつく。

 

「はああ……」

 

 剥き出しの乳首をその周りの部分ごと一気に口中へ納めてやった。

 ぞぞぞ、と全体を吸いながらその先の乳首を噛んでやる。

 

「ひ」

 

 噛んでもいい、痛くしてもいいなどというのだからおそらく強く噛まれるのが好きなのだろう。遠慮なく噛みつき、周囲の乳房にも次々と歯形を残していってやる。噛むたびに彼女の体が跳ね、逃げようとするがもう逃さない。大きく動けば大きく動くほど強く噛んでやるのだ。

 おっぱいに自分の歯型をつけると何か不思議な征服感があった。

 未登頂の山に足跡を残したような、未記帳のまっさらなノートに自分の名前を記入したような。

 それが嬉しくて、もう片方の乳房にも噛みついた。

 

「い、いたっ……!」

 

 噛みついたまま、彼女の股間に貼りつけた手に神経を移す。そこはすっかり湿り気を帯びてさらに熱くなっていた。昔は女陰をホト、火戸などと表現していたらしいが、なるほどそうだろうと思った。

 ストッキング越しに伝わる彼女の熱。その中でも一番熱い部分に指を潜り込ませる。

 

「ああっ!……あ、ああああぁ……」

 

 叫び声が上がったが、それ以上の抗議はなかった。

 少し湯溜まりに沈み込んだ指を震わせ、そのあたりをしつこく弄ってやる。すぐに彼女の腰が小さく踊り始め、もっと、というように迎え腰で俺の指を誘う。

 噛んでいた乳房から顔をあげ、彼女の表情をうかがった。

 目が合う。少し潤んではいたが、特に非難するつもりもないようだ。まだいける、ということだろう。

 

「あの……ね、ストッキング……脱がせてくださる? 汚れてしまうから……」

 

 もうすっかり汚れているだろう、いまさら何を、という気もしたが従うことにした。上半身を起こして、彼女の脚の付け根を見る。きれいなプリーツスカートははしたなく捲り上がって衣服としての用をなしていない。黒ストッキングに包まれた下半身がすべて露わになっていて、なんとも煽情的な光景だった。

 両手で腰部分をつまみ――要領よく彼女も尻を浮かせて――一気に引き下ろす。

 

「ああ……」

「おお! これが!」

 

 ストッキングを剥かれて、無防備な色白の下半身が露わになった。やはり、彼女は下着を着用していなかった。

 上の毛よりやや濃い色の柔らかい茂みが顔を見せる。その下の方、茂みの下に肉色の部分がちらり、と見えて、俺の股間がびくんと反応した。初めて目にする異性の生殖器。しかも発情した状態のそれが目の前で熱っぽく息づいている。

 

「アッサムさん。濡れてますよ」

「もう。あなたがそうしたのよ。責任を取りなさい」

 

 ストッキングを抜き去り、大きく脚を開かせた。女性が本来秘するべき場所が露わになる。大理石でできたギリシア彫刻のように美しい両脚が繋がるところ。指先が覚えている、あの熱い泉の湧くところ。

 もっと近くで見たくなって、彼女の脚を高く肩に抱えた。少し浮いたお尻の下にクッションを一つ押し込み、高さを維持する。目の前には夢にまでみた女性の割れ目。太腿の間に挟まれると、彼女の匂いが強く感じられる。これが雌の匂い、というやつだろうか。

 

「お、おやめなさい匂いを嗅ぐのは。本当の犬のようですよ」

「いやらしい匂いがする。匂いの元を調べさせてもらいます」

 

 割れ目に向かってそう宣言すると、ほんのり開き始めた肉の唇にそうっと指を沿わせた。

 

「あ」

 

 視線を彼女に向ければ、さすがに頬を真っ赤に染めて陰毛と恥丘の向こうからこちらを見つめている。彼女はどこまで乱れるのだろう。その不安げな視線を受けながら、ちろり、と出した舌を割れ目の奥に忍び込ませた。

 

「ひ。あ、ああ……」

 

 片方の手で陰唇を大きく拡げ、露わになったサーモンピンクの窄まりの奥底に舌を這わせていく。中から染み出る愛液と俺の唾液が混ざって、柔らかい襞で構成されるそこ一面をぬめる液体で覆った。早くも泡立ち始めた小さい穴の入り口をぞろり、と舐めまわすと、びくんと彼女の腰が震える。

 頭を挟む太腿に強い力がかかって息苦しい。ぱくぱく開閉するかわいい入り口を舐めながら次の部位を探索する。あった。裂け目の上の方、肉の帽子に隠れた秘密のボタン。クリトリスだ。ここではどんな反応が見られるのだろうか。もう片方の手を伸ばして肉芽全体を圧し潰す。

 

「ひゃあんっ!」

 

 反射的に持ち上がった彼女の腰。濡れそぼった花唇に鼻ごと打ち付けられた。

 

「だ、だめ……」

 

 そういいながら俺の頭に彼女の小さな手がまわされる。止められるのかと思った。逆だった。後頭部にまわされた手はぎゅうっと俺を引きつける。引き寄せられ、同時に彼女の腰は前進してきたものだから顔が彼女の恥部に強い勢いで衝突することになった。視界が陰毛に覆われ良く見えない。ただ、女の子の柔毛(にこげ)に包まれた柔らかい恥丘の向こうに恥骨の存在をほんのり感じた。

 

「むむ……」

 

 花唇の間に埋まってしまった鼻のせいで息ができない。顔をもぞもぞ蠢かせて湿地帯から抜け出すと、鼻の先が先ほどの肉のボタンにコリっと当たった。

 

「っ……!!」

 

 腰が跳ね、再び視界が彼女の小さな毛皮に埋もれる。瞬間息を止めたアッサムは破廉恥な俺の鼻にクリトリスを擦り付けるようにして何度も何度も腰を振る。それは振るというよりもはや痙攣に近い動きだった。添えられた手が強く俺を引き寄せ、俺の呼吸を再び阻害する。性器の中心に押し当てられた口元に熱い迸りが当たるのを感じた。絶頂……したのだろうか。

 すっかり発情して熱いぬめりに包まれた彼女の女性の部分。その状態を探るように舌を伸ばすと、先程は狭隘だった洞穴の入り口が弛緩して受け入れるように広がっていた。時折ぴくぴくと襞がうごめき、現在彼女が絶頂から続くなだらかな快感を今も享受してることを白状していた。これは先に進めるかもしれない。

 舌をすぼめてそっと差し入れ、先っぽが入ったことを確認すると……ぬるり、と侵入する。

 

「ひゃ、ら、らめれすよぉ……い、いま、イってるところぉ……」

 

 そんな言葉で興奮がさらに高まってしまう。彼女の性器に顔全体を押し付けながら俺は今、卑しい笑いを浮かべていただろうと想像する。攻略成功なのではないか。このまま童貞喪失のラストまで行けるのではないか。

 それにしてももう少し道をならす必要があるだろう。丸めた舌を熱い膣口の、その先に沈める。伸ばした舌は阻まれることなく複雑な肉襞の間に飲み込まれていった。深い。やはり舌では足りない。ならば次は人差し指だ。長く伸ばした舌を抜き去ると、舌先と膣口の間に透明な糸のアーチが繋がった。名残を惜しむ舌を引っ込めて指を伸ばす。陰唇のまわりにあふれる愛液でしとどに指を濡らし、刺激で少し充血している膣口にそっと沈めてみる。熱で溶けた蜜蝋に指を差し込むがごとく、ぬるぬると指は入っていった。断続的な弱い膣壁の収縮以外侵入を阻止するものはない。

 

「あ……あああ……」

 

 うわごとのような彼女の声を遠くに聞きながら指を進める。入る入る。人差し指は順調に進み、根元まで彼女の花洞に埋まった。弛緩状態は終わったようだ。濃い桃色の肉襞に飲み込まれた指がだんだん締め付けられていく。差し込んだ指先をいじわるに少し動かすと、子犬のような鳴き声をあげて腰を震わせた。

 そろそろ、いいのではないか。

 俺の、誕生以来未使用の聖なる肉連結器はもう痛いほどに張り詰めている。そろそろこいつにふさわしい生肉を与えてもいいはずだ。詳しいことはわからないが、指の感触からして彼女、アッサムは処女ということもないだろう。さほどの抵抗もなく受け入れてくれるのではないかと思った。

 胎内に指を残したまま彼女の表情をうかがう。

 

「アッサムさん。そろそろ、いいかな?」

 

 夢見心地というのだろうか。焦点の合わないアッサムの目が俺を見る。正常な判断ができない状態だったにしても、それは俺の責任ではない。

 

「い、いいですよ。つ、次は二本……指二本で……」

「指よりもっと太くて長い奴ですよ。もう我慢できない。いいでしょう?」

 

 返事はない。

 構うものか。指を引き抜いた。ずっと愛液に浸されていた人指し指はすっかりふやけていた。

 起き上がって、アッサムの脚を肩で担ぐ。

 

「あっ」

 

 半裸状態の彼女。半裸といっても重要な部分は何一つ隠されていない。体を少し引き寄せると大きな乳房が揺れる。圧し掛かった俺の体に合わせて彼女の腰も上向きになり、脚の間で俺を迎える部分が装填位置についた。

 

「いくよ。俺の童貞、もらってくれ」

 

 何か言いたげな唇が少し動いた気もしたがもう止めるつもりはなかった。そそりたった肉棒の先が、濡れた唇の縁に当たる。

 さようなら、俺の童貞。

 

「はぁああああ? そんなこと駄目に決まっているじゃありませんか、駄犬」

 

 突然ペコの声が背後からあがった。

 そういえばもう一人いたんだった。

 

 

 

 

 激痛。今まで体験したことのなかった部分に未知の痛みが襲い掛かってきた。

 南米のジャングルに住むという猿の一種はひときわ大きな声で敵を威嚇し自分のなわばりを主張するという。

 今、その声を連想する叫びが轟いている。

 どこか威嚇的で、それでいて物悲しい雄叫び。それが部屋中に響いていた。もちろん発生源は俺の声帯である。

 

「おわぁああああ! いてええええええ!!!」

「順番を間違えるからですよ駄犬。なに勝手に交尾しようとしてるんですか。発情期ですか」

  

 俺の純真な排泄孔、尻の穴に指よりもっと太くて長いモノ、硬くてどっしりしたモノが差し込まれていた。

 鞭である。おそらくペコが持っていた、あの鞭の柄だろう。それが深々と俺の無防備だった尻の穴に覇者の到来を予言する王者の剣よろしく挿し込まれていた。

 

「とって! 取ってください! い、痛い痛い痛い!」

「二本に増やしてあげてもよろしいのよ? いうことを聞かない駄犬には強い罰が必要ですね」

 

 ペコの大きく見開いた瞳に何か昏い光が見える。怖い。

 

「すみませんすみません! アッサムさんが美しすぎてつい! 魔が差したんです! 気の迷いです!」

「あら、あたしは別に構わなかったのよ?」

 

 のんきにアッサムは笑っている。だが、ペコを止めるつもりもないようだ。部屋の隅に移動して、乱れた衣服を整えていた。

 

「さてどうしましょうか。やっぱり鞭打ち? それとも少しちいさくしてやろうかしら」

 

 「ちいさく」って何をどう「ちいさく」するつもりなのか。気づかぬうちにペコの片手には細長い剣呑そうなナイフが握られていた。いや、これはダガーというのだったろうか。

 

「許してください」

 

 ――殺されてしまうのか? それとも何か不可逆的な拷問を?

 ベッドの上で情けなく這いつくばり、両手を合わせて助命を乞う。ケツにはまだ鞭の柄が入ったままだ。さっきまで威勢よく天井を向いていた息子は別人のように小さく縮こまって恐ろしい刃物から身を隠していた。

 

「血を受けるバケツが必要ですね。いや、優雅にティーカップとソーサーを使おうかしら」

「ひ……痛いのはいやですよおおお!」

 

 細長い大型のナイフの刃先を見つめながら何か恐ろしいことを考えている。部屋からなんとかして逃げるか。いや、不案内な学園内で逃げ切れるはずもない。

 

「あら、騒がしいわね、ペコ。調教の具合はどうかしら」

 

 部屋に良く通る声が響く。

 顔を上げると、扉を開けたダージリンが盛夏のひまわりのように微笑んでいた。



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お散歩は淑女の嗜み

「ダ、ダージリン様! も、戻るのは夜ではなかったんですか?」

 

 ペコはあわてて、鈍く光る剣呑なナイフを隠した。

 

「時間ができたからちょっと様子を見に来たのよ。調教の進み具合はどうかしら。……あらかわいい尻尾ね」

 

 ベッドに突っ伏した俺のそばに歩み寄る。かわいい尻尾とは俺の尻に刺さった鞭の柄のことだろう。

 

「ふうん」

 

 意味ありげに見下ろすダージリン。

 さあ見よ、この理不尽な暴力。そうだ、俺は不当な虐待を受けていたのだ。ここはひとつ、ペコにビシっと……

 

「そうだわ、散歩に行きましょうか、ペコ」

「え……ええっ!」

 

 驚愕するペコ。

 そして飛び出した言葉、散歩。なぜこの状態から散歩という発想に至るのか。

 

「ひ、昼間からですか? 他の生徒に見られたら」

「それがいいんじゃないの。あたしも着替えるから、早く支度してくださいな」

「ど、どうなっても知りませんよ……」

「その時はよろしくね、ペコ。アッサム、あなたはどうする?」

「あたしは遠慮しておくわ」

 

 部屋の奥からアンニュイな声が返ってきた。

 

「ワンちゃんと遊んでいたら涎でずいぶん汚れてしまったから。シャワーを浴びているわね」

 

 涎。だが、半分はアッサムの愛液だろう。しかし反論してもしょうがないので、それについては飲み込むしかなかった。それより。

 

「もう、これ抜いてもらえませんかね。ズキズキ痛くて。血、出てませんか」

「ふふ。ペコは無茶をしますからね。どれ、見せてごらんなさい。ああいけない、抜けかけているわね」

 

 どすん、と音がするような勢いで奥まで押し込まれた。

 暴漢の手で一気に服を剥かれる乙女のような声を上げてしまう。

 尻穴に加えられた暴力に体は哀しく反応して、うなだれていたちんこがびくんと跳ねあがった。

 

「ちゃんと締めておきなさい」

 

 鬼か、と叫びたいが今はただ耐えるしかない。

 

「ダージリン様、ではこちらに御召し物を」

「ああ、ペコ、ありがとう」

 

 ペコが銀のお盆に乗せてきたのは、革紐の集合体。ずいぶん複雑なシロモノでただの紐などではないようだ。紐というより拘束具か。

 

「まったく、最初から結果のわかっている会議ほどつまらないものはないわね。くだらない芝居をみんなで大真面目に演じているの。バカバカしいわね」

「お察しします。はい、これを」

 

 するすると制服を脱いでいく。ダージリンがなぜ脱ぐのか。当然自分に着用されるであろうと想像していたものだったが、まさか。

 暗青色のセーターを脱ぎ、白いブラウスを脱ぎ、スカートを下ろし。絹のように光る黒ストッキングも、その下から現れた瀟洒な下着類もためらいなく脱いでいく。

 あっというまに、ダージリンの生まれたままの姿がそこに出現した。大きな乳房はアッサムより大きい。そして気品あふれるネクタリンのように丸い尻。上品に収まる陰毛。我を忘れて見入ってしまう。

 

「では失礼します」

 

 ペコがかいがいしく側について、黒い革紐の集合体で白い裸体を拘束していく。となると、アレは俺の物ではなくダージリンの物だったのか。散歩をする、というから俺に紐でもつけて歩き回らされるのかと危惧したが大丈夫なようだ。

 

「苦しくないですか」

「苦しいくらいがちょうどいいのよ。もっときつく締めなさい」

 

 ペコがぎゅうっと引っ張ると、革と革に搾り上げられるように両の乳房がひねり出される。

 

「もっとよ、ペコ」

「は、はい」

 

 さらに圧迫される。乳首はすでに勃起して、いやらしくその存在を主張していた。

 見事だった。

 美の女神が姿の見えない暴漢に縛り上げられ、裸体を晒されているかのようだった。白い裸身を交差して締め上げる革。しかし、肝心の恥部はそのまま露わになっている。革で作った淫猥な水着とでもいおうか。彼女は被虐の趣味があるのだろう。

 

「この拘束感。自由にならぬ焦燥感。ああ……たまらないわね。では、行きましょうか。あら何をしているの、ペコ、あなたも準備なさい」

「うう……はい」

 

 まだこれ以上何か準備があるのか。

 するとペコもまた、服を脱ぎ始めた。となると彼女も散歩に参加するのだ。一転、嗜虐の立場から被虐の立場へ。

 ややためらいがちにセーターを脱ぎ、ブラウスをはだけ……つましい胸を覆うブラを外す。そこで、凝視する俺の視線に気がついた。

 

「み、みるな!」

 

 赤面している。ちょっとかわいかった。上半身を腕で隠そうとしているが、隠れるものではない。小さな隆起に小さな突起、微笑ましい発達途上の胸を堪能させてもらう。

 

「チャーリー、あなたもよ。さあベッドから降りなさい」

 

 チャーリー。チャリーって誰だ。

 あ、俺か。

 第二の鞭が振られる前にのそりと降りた。何しろ後ろに異物が挿入されていて、早く動けない。畜生、いい加減に抜いてくれ。

 横ではペコが最後の一枚を脱いでいる。かわいらしい純白パンツだが、クロッチの部分がすっかり粘液で汚れていた。俺とアッサムの戯れを見ながらオナニーしていたのかもしれない。思っていたより淫蕩な娘なのかもしれない。しかし、ということは俺とペコも参加させられるわけだ。そして主人役はダージリン。最初は革で縛られたダージリンが犬役をやるのかとちょっと期待したが。

 

「じゃあ行きましょうか。あなたたちは訓練されているから、首輪も紐もいらないわね。鞭の一本あれば……」

 

 ひゅん、っと耳元を何かが猛烈な速さで通過した。鞭の先端だ。キンタマが少し縮んだ。

 

「大丈夫よね。では、ペコ、先頭を行きなさい。チャーリー、あなたはその後ろ。ああ、その前に」

 

 四つん這いになったペコの小さな尻に手をかける。

 

「犬には尻尾が必要ね」

「ひっ」

 

 手に持っていた鞭を、押し開いた両尻の間に進める。合間にかわいいアナルが見えた。

 

「力を抜いて、ペコ。裂けるわよ」

「う……うわぁあああ……」

 

 早くも弱々しく泣きだす。少女が辱められていく様はなんか端から見ていても興奮するものがある。最初は狂人かという印象だった彼女、なかなかかわいいところもあるじゃないか。人を嬲ることは悪辣に楽しんでも、自分がされる側に回ればこんなもんか。

 そっとあてがわれた鞭の柄に力がこもった。少しずつ、少しずつ飲み込まれていく。

 

「うぐ。く、くぅ、くああああ……」

 

 丸く開いた口から苦悶の声が押し出されていった。

 黒くて長い鞭の柄は、どんどん押し込まれていった。握る部分はほとんど飲み込まれてしまったのではないか。こんな小柄な少女のお尻に、あんな長いものが入るとは。自分の尻に同じものが突っ込まれていることは忘れてしまいたがったが、やはり興奮する。

 

「ごらんなさい、チャーリー」

「は、はい」

 

 すでに見ている。だが、そういわれて晴れて近くから見ることができるようになった。 

 

「この子、どうせアッサムが楽しんでいる間ずっと遊んでいたのでしょう? いつもそうなの。あたしの言いつけをわざと破って、おしおきを貰うつもりなのよ。ほら、もうこうなっているのよ、このいやらしい口」

 

 口といっても、下の口だ。穢れを知らぬ乙女の桃色の二枚貝を開いて、中でひくひくお仕置きを待つ朱色に染まった肉の口。大きく口を開いて鞭を頬張るアナルの下でせわしなく開閉を繰り返す小さな膣口は、なぜか小ぶりなハマグリと小魚の口を連想させた。

 

「み、見ないでぇ……」

 

 顔を真っ赤にして目をつぶり耐えている。これが演技とはとても思えなかった。

 

「あら、本当は見て欲しいのでしょう? この犬に、チャーリーの発情したオスの目で見て欲しいのでしょう、あなたのこの淫らな生殖孔を。おちんちんが欲しくて涙を流すこの浅ましい穴を。ほら、また新しい雫が垂れてきますわ」

 

 すごい。アッサムのおま……おまんこも凄かったけど、これもまたすごい。小さなお尻にはあの鞭の柄を俺なんかよりよっぽど深く呑みこんでお腹は一杯になっているだろうに、なお何かを求めて誘う膣口に女の「欲」というものを感じた。ちょっと掴みにくい感じだったけど、本当はなかなかHな女の子だったんだ。

 

「ダ、ダージリン様の」

「何かいったかしら?」

「ダージリン様の……ダージリン様の御指でイカせてください……」

「あらあら」

 

 なるほど、レズだったのか。それなら俺の股間に興味ないのもわかる。むしろ鞭で切り刻みたかったことだろう。くわばらくわばら。

 

「チャーリー。もしかしてこの娘がレズだったのか、なんて思っていませんこと?」

「え」

 

 読心術みたいな能力を持っているのだろうか。

 

「違うのよ。この娘は極端な恥ずかしがり屋なの。男嫌いのレズを演じて、本当の自分、男のちんぽだーい好きな自分を隠したつもりになっているのよ。でもそんな演技はいつかバレるもの。その証拠にこの娘……隙あらばあなたのおちんちん覗いているわ」

 

 そんなバカな。そう思って向けた目が、あわてて視線を変えるペコの顔を捉えてしまった。

 そうだったのか。ならば俺のちんこがズタズタにされる心配は無用なのではないか。

 

「いつかお気に入りのおちんちんを切り裂いて、フィッシュアンドチップスのように揚げて食べるのがこの娘の夢。熱いうちに、ビネガーと塩を振ってね。いつかかなうといいわね、その夢」

「や、やめてください……は、恥ずかしいっ……!」

 

 紅く染まった頬をさらに濃くして俯くペコ。しかし、恥ずかしいというよりは戦慄するというほうがふさわしい会話だ。

 男性性器を揚げて食べる。それは英国風ユーモアだろうか。まさか、いくらなんでもそんなグロテスクな欲望を持っているとかありえないだろう。冗談にしても恐ろしいのであまり考えないようにした。

 怖い想像をするよりは、目の前にある乙女の秘密を鑑賞するべきだ。乙女。はて、彼女は処女だろうか。

 そんなことを考えながらとろとろと蜜をこぼすペコの欲望の中心に見とれていると、ダージリンの元気な声が上から降ってきた。

 

「さあ、出発しましょう。今日はどこまで行こうかしら」

 

 カチャリ、とドアが開けられる。

 誘拐されて以来この部屋を出たことのない俺にとって初めての外界だ。

 あられもない格好で颯爽と歩み出るダージリン、全裸の羞恥に体を震わせるペコ。最後をやはり全裸の俺が続く。こんな格好、他の生徒に見つかったら何が起きるのか想像もつかない。



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羞恥心は淑女の嗜み

 眼前に広がる寄宿舎の静かな廊下。

 薄青色のカーペットは三人の足音を吸ってその静けさを保つ。

 三人の足音、といってもそのうち二名は四つん這いなのだが。膝に柔らかく当たるこの上質なカーペットのおかげで、考えていたより肉体の苦痛は少なかった。ただし精神的な苦痛はというと……

 

「うう……こんなところ見られたら……」

 

 周囲をきょろきょろしながら、四つん這いでのそのそ進むペコ。

 彼女が受けている恥辱はいかほどのものか。ダージリンによれば彼女の羞恥は欺瞞であって、むしろ楽しんでいるということだったが、とてもそうは見えない。

 それでも俺はただこの状況、この光景を楽しむしかない。俺の身分は今彼女が堕とされているところと同じ、犬なのだ。

 

「は、恥ずかしい……全部見えてしまっています、ダージリン様」

「そうね。でも今のあなたは犬ですもの、恥ずかしいなんて思わないわね? 犬はいつだって裸ですものね」

 

 ときどきちら、と振り返る顔が真っ赤に染まっていて嗜虐心をそそる。俺を犬と断じていても、「男」として見ているわけか。やはり見られれば恥ずかしいのだ。

 恥ずかしい。それはそうだろう。

 歩くたびに小さく震える控えめな二つの乳房も、こちらに向けられた丸くかわいい尻も、当然ながらそのすべてが無修正で克明に見えてしまっている。

 全裸だから。

 一糸まとわぬ姿だから。

 まだ春とはいえ、真っ昼間の強い陽射しが窓からさんさんと降り注ぎ、はっきりとコントラストを際立たせてこの自分と同年代の少女の肢体を――マシュマロのように柔らかそうな割れ目の上に本来ならばひっそりと隠れるべき慎ましやかな肛門が暴力的な鞭の柄によって限界まで押し広げられている様まで――照らし出している。その前を進むダージリンもほぼ裸といっていい姿で、静謐な青い廊下と相まって超現実の絵画を見ているかのような錯覚を引き起こしそうだ。

 

「誰かに見つかったら……誰かに見つかったらどうしよう」

 

 誰か、というのは他の在校生だろうか。もしくは教師か。部屋で見せていた狂気っぷりからすればこれぐらいのことなんでもないだろうと思うのだが、彼女は本気で心配しているようだ。

 

「見つかったときのいいわけは何か考えておいてね、ペコ」

「そんな! 全裸と半裸で校内をうろついて、こんなの何の言い訳もできないじゃないですか!」

 

 それもそうである。

 だがダージリンはこの非日常の中にあって、なおも楽しそうだった。

 

「こんなことわざを知ってる? 『ありのままの姿を見せている時、人は決してありのままの本心を明かさない』いやよいやよも好きのうちということね。さあ、階段を下りるわよ」

 

 

 

 

 静まり返った階段を下りていく。

 階段の壁には「3」という数字が書かれていた。つまりここは三階だったのだ。

 今のところ誰にも遭遇していないが、下の二階はどうだろう。いや、そもそも今は春休みなのだから、皆帰省してしまっていて誰もいないんじゃないのか。そう思って自分を安心させたいが、ダージリン達のような寄宿生が何人いるのかわからない以上確実なことはわからない。

 そしてやってみて実感したことだが、四つん這いで階段を降りるのはなかなか難儀なものだ。

 後ずさりという解釈で足から降りていくならまだいいが「そんな降り方をする犬がいるかしら」とダージリンに尻を叩かれてしまったので、やはり頭から降りるしかない。これがなかなか怖いのだ。

 ただの階段が急斜面の崖に見える。頭から転げそうになる恐怖を押さえて、一歩、また一歩と降りていく。

 

「そう、その調子よ。なかなか板についてきたわね。雌犬の後ろを追いかけるのは楽しいでしょうチャーリー?」

 

 確かに、目の前には同じようにおっかなびっくりで苦労しながら階段を下りていくペコの白い尻と尻尾たる鞭が揺れていた。のんびり眺めながら降りる余裕は俺にはないが、薄い柔毛とストイックに締まった割れ目が眼前にあるというのは悪くない眺めだ。

 

「どう? なにが見えるのかしらチャーリー? おまえが勃起しながら見ている光景をいってごらんなさい」

「や、やめてくださいダージリン様!」

 

 勃起といわれてどきん、とした。そう、俺も全裸なんだから体の状態は彼女たちに丸見えなのだ。意識を股間に向ければ、確かにそうだった。自分でも気づかないうちに勃起していた。ダージリンの言葉につい歩みを止めてしまったのだが、叱るつもりはないようだ。つまり、この場面では哀れなペコを言葉で辱めたいということか。いいだろう。

 ペコがあげた抗議の声は無視されている。

 

「し、尻尾が」 

「尻尾が?」

 

 なぜかかすれた声が出てしまい、いい直す。

 

「女性の丸くて白い尻が突きだされて、そこに刺さる鞭の尻尾が誘うように揺れています」

「い、いやあ……」

「そう。それで?」

「階段を下りるたびに、尻たぶの間にある暗いピンク色をした肛門が……」

「もういやあああ!!」

 

 下半身を評される羞恥に耐え切れなくなったのか、ペコの悲鳴が響き渡る。

 ダージリンの顔に浮かぶ笑みが一段と濃くなった。

 

「肛門がどうしたのかしら」

「尻尾を咥えてきつく張り詰めた肛門が、階段を降りるときに一瞬緩んでいるようです。緩んで下がった尻尾を再び締め付けて振り上げる。一段降りるたびにまるで振るように上下に大きく鞭が揺れるんです。あれは興奮します」

「あら。おまえ、お尻が好きなの?」

「若い女性の肛門が目の前にあれば男は誰でも興奮します」

「あらあら。ずいぶんとペコを持ちあげるのね。ペコ、喜びなさい。あなたの肛門が緩む瞬間もちゃんとチャーリーは観ているそうよ」

 

 本来他人に対して貞淑に隠さなければならない下半身を曝け出し、あまつさえその状況を語られるという恥辱。

 一歩も進めなくなってしまったペコの身体は小さく震えていた。

 それが羞恥心によるものかこの理不尽な状況に対する怒りなのかはわからない。だが俺は犬として、さらに彼女に追い打ちを掛けなければならないだろう。

 動きを止めているおかげで今ははっきりと見える。全長の半ばまで挿し込まれた鞭の柄を精一杯に飲み込んで、ペコの肛門は哀れなほどに張り詰めている。限界まで拡げられたそこが今にも千切れてしまいそうでゾクゾクした。

 ひどい暴力に耐える肛門のその下は、視姦という辱めをはねつけるようにきっちり閉じられた肉の割れ目だ。だが、さらに内側にある桃色の肉唇がわずかに顔を覗かせる部分、肛門にほど近い部分から一滴の輝きが湧き出るのを俺は見た。

 

「あ」

 

 声を上げてしまう。 

 

「見てください。割れ目の上の方に雫のきらめきが見えますよ。尿でしょうか、それとも……」

「ペコ。どうなの? その滲み出てきたものはなんなのかしら?」

 

 答えはなかった。

 ただペコはぶるぶると震えながら、心の内側から沸き起こる何かに耐えているようだった。

 

「そう。答えないのだったらしょうがないわね。チャーリー、もっと近づいて調べなさい。ただし、犬としての矜持は忘れないでね」

 

 犬としての矜持。どういうことだろうか。

 

「まだ手を使っては駄目よ。おまえの鼻と口で調べなさい。あの零れ出る体液が何なのか」

「わかりました」

 

 そういうことか。制限ありとはいえ、自由を得られたわけだ。

 ならば、復讐をせねばなるまい。この狂気を秘めた娘に。勃起していた俺の男根がぎん、と音を立ててさらに勃ち上がった気がした。

 

「ま、待ってください!」

「どうしたの、ペコ」

 

 笑みを崩さずダージリンが尋ねる。

 

「もう……もう許してくださいダージリン様! 二人での『散歩』なら耐えられます。でも、この犬を連れての散歩はあたし耐えられません! は……恥ずかしいです……!」

「……わかりましたわ。では、こうしましょう」

 

 裸同然のダージリンが、するりとその体のどこからか黒いマスク――目隠し用の――を取り出し、ペコの目を覆い隠した。

 

「ひ!」

「これで恥ずかしくないでしょう? マスクをつけた犬というのも奇妙だけれど、あまりつらい思いをさせるのもかわいそうですしね」

 

 ペコの後頭部できつく結ばれていくマスクの紐。視覚を奪われた彼女はしかしさらに頬を紅潮させていく。

 面白い。俺は音を立てないようにゆっくり彼女の裸身に近づいて行った。

 

「見えない……や……やだ……これ……こ……怖いです、ダージリン様!」

「安心しなさい。チャーリーが調べ物をする間、ただじっとしていればいいだけよ。……そう、こんな格言を知っていて? 臆病な七面鳥は頭を隠してから、し――」

「きゃあああ! は、鼻が! 男の鼻がっ!」

 

 ダージリンの蘊蓄は悲鳴にかき消された。

 俺の鼻先が、ペコの白くてまん丸で柔らかい、しかし熱い血潮を秘めた肌表面は空気にさらされて冷たくなっているというみごとな尻たぶに突き当たったからだ。

 

「あら、なぜ鼻ってわかるの? もしかしたらおちんちんかもしれないわよ?」

「い、いやあああ……」

 

 マシュマロのように柔らかい尻肉に強く押し当てた鼻をそのまま中心へ、両尻の優美な丸みが出会う部分へと滑らせていく。やがて、俺の頬に禍々しい鞭の柄が当たった。

 

「ひんっ!」

 

 当たった鞭の柄が動き、直腸深く咥え込んだペコの中に強い刺激を伝えたのだろう。限界まで拡げられたはずの肛門と粘膜が、無慈悲な革製の侵入者を宥(なだ)めるように、また崇めるようにさらに締め付ける。

 俺の脳内に霊感が閃いた。

 突き刺さっている鞭の柄にやにわに噛みつき、上半身の体重を掛けて押し込んでいく。強く噛みしめた歯が革に食い込む。

 

「ひぁ? ひ、ひぁあああ゛あ゛あ゛……!!」

「あらあら」

 

 衝撃にペコの尻が跳ねた。だが逃がすわけにはいかない。それを顔全体で抑え込むようにして歯を食いしばりさらに押し込んでいく。鼻が柔らかい尻肉に深く潜る。

 がくがく跳ね回る尻。すでに彼女の上体は力なく階段にくずおれていた。射止められ、高く掲げられた尻だけが何かの反射のようにびくびく蠕動(ぜんどう)している。

 

「あ……ああ……」

 

 肌触り良い柔らかな尻に埋もれていた俺はようやく鞭から歯を引きはがし、根元まで侵入者を受け入れて震えるばかりのペコの裸体を見下ろした。

 マスクに隠蔽され、彼女の目に浮かぶ感情は見えない。ただ、しどけなく開いた桃色の唇の端から白い泡となったものが滴り落ちるのが見えた。半ばほどまで挿入されていた鞭の柄をとうとうほぼ全長まで飲み込んだ姿は痛々しいが同時にまた煽情的だ。

 

「ふふ、調べなさい、とはいったけれど……」

 

 ダージリンは自分の身体を抱きしめるように腕を回し、締め付けられて零れ出る乳房を震わせている。時折ぎゅっと力に強弱をつけているのは快感からだろうか。

 

「すみません、尻尾が邪魔で良く見えませんでしたので。これからゆっくり調べますね」

 

 

 



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裏門遊びは淑女の嗜み(上)

「う……ううっ……」

 

 (こぼ)れた嗚咽(おえつ)によって彼女が未だ意識を保っていることが判明した。

 たいしたものだ。俺がもし同様の仕打ちを受けたら、失神してしまうのではないか。

 

「調べさせてもらいますよ」

 

 掃除が行き届いて清潔とはいえ、無惨にも階段にくずおれるペコ。そのかわいい臀部に顔を寄せる。

 呼吸に合わせてひくんひくんと揺れる尻尾が、まるで小さくもけなげな彼女の生命力を表しているようで愛おしい。

 脈動を伝える鞭の柄の匂いを嗅ぐ。

 革の匂い、そしてそれを覆い隠すほどに放たれる彼女の匂い。

 それは尻尾が突き刺さる部分より下……今はまだ貞淑に閉じている小陰唇の、柔らかい肉の隙間から漏れ出ているようだ。

 肛門は丹念に綺麗にしているのだろう、そちらから期待したような匂いは得られなかった。

 

「ふんふん。これが、雌の匂いなんだな。どこからこの匂いが出てるんだ? もうちょっと調べなければいけないな」

 

 とはいえ手は使ってはいけないというルールだ。

 ならば。

 

「ひゃ……ひ、あ、ああああ……」

 

 唇で優しく、彼女の下の唇を片方つまむ。顔を動かして持ち上げようとするとそれはすぐに俺の唇の間から逃げ出してしまったが、熱い感触だけは残していった。興奮によって充血しはじめているのだ。

 これで花の花弁をひとつ開くことができた。

 続いて少し力を込めて反対の花弁を咥え、引っ張ってやる。

 開かれた肉の花びら、桃色に発情する小さな入り口が蜜を断続的に零しながらひくひく呼吸するのが見えた。

 

「ああ、ダージリン様、やはりここです。この腿と腿の間、割れ目の奥、奥底で蠢く肉の穴の入り口から甘い糖蜜が流れ出しているようです! うん、尿ではありませんね」

「あら、糖蜜って。チャーリーおまえ、味を確かめたの?」

「はい、今」

 

 ぺろり、と肉襞が合わさる(すぼ)まりを舐め上げる。

 

「あーっ!」

 

 甲高い声と共に途端にその部分が大きくきゅううっと収縮した。咥え込むはずだった何かに想いをはせて、何度も何度もきゅうきゅうと緊張と弛緩を繰り返す。締まるたびに流れ出す蜜に白い粘液が混ざってきた様に見えた。

 ここにぶち込んだら、どれほどの快楽か。

 

「ダージリン様、なかなか深みのある苦みとほどよい塩味の蜜でございます。これこそ彼女……いえ、この雌犬の胎内で生成された蜜に間違いありません」

「そう……香りはどうかしら?」

 

 いわれるままに、すんすんと鼻を穴に近づけて大げさに匂ってみる。

 

「ふんふん」

「いや、いやあああ……! ひ! あっ、あん」

 

 近づきすぎた鼻が、彼女の興奮に合わせてだんだん開いてくる花の低地に触れてしまう。

 もはや溶けたロウのようにその部分は熱くなっていた。

 

「肌の匂いを強くしたような香りでございます。甘いような苦いような、どこかで嗅いだような嗅いでないような、花の匂い。ああ、そうだ、これはスイカズラの匂いでございますね。人に吸われるためにこんな匂いをしているのでしょう。……これが雌の胎内の匂いでございますか。どんな雌もこの匂いを」

「それはおまえがだんだん探求していきなさい」

 

 ダージリンの声が返ってきたが、その表情を見ることはできなかった。

 

「ああ……許して……もう許して……」

 

 ペコが震えている。

 今の彼女の表情を追えないのがくやしい。どんな顔をしているのだろう。あの、目隠し用の黒いマスクの下にある瞳は今どんな光を宿しているのだろう。

 目で見ることはできないが、違う方法で報いることはできる。

 身を起こし身体の向きを変える。うつ伏せで倒れ伏すペコの身体に覆いかぶさってやるのだ。

 すっかり立ち上がってしまった俺の男の部分を、あの気品高く整えられた美しい金髪の中に埋め込んでやるのだ。俺の匂いで満たしてやろう。ダージリンはどう反応するだろう。たぶん、放っておいてくれるのではないか。

 

「な、何? 何を……」

 

 目隠しされ、情報を制限されたペコが俺の動きに怯える。

 嗜虐的な心が震えた。

 俺の顔は白くてまん丸な曲線を見せる彼女の尻の上にある。 

 そこに顎を乗せ、腕で左右から挟んでやる。

 

「や、……もういや……」

 

 剥き出になっている異性の裸の背中を肌で感じながらするすると滑っていく。膝が彼女の頭を打たないように注意して跨ぐと……

 

「ひゃあ?」

 

 勃起した男根の先っぽが後頭部にヒットした。

 擦り付けられる髪の感触が痛気持ち良い。

 腰が自然と踊り始めてしまう。

 

「嫌ぁあああ……!」

 

 嫌悪の声すらなまめかしい。

 先走りを擦り付けながらますます硬さが上がっていく。

 面白がって動かしていると、滑って額側に抜け出てしまった。

 先端にマスクが当たっているのがわかる。

 このマスクと目の間に侵入することは可能だろうか。そう思いつくともう勝手に腰が動いていた。

 

「や……やめ……」

 

 暖かい肌のほうへ向けて押し込んで、押し込んで。何度かチャレンジして、ついにマスクの内側に入り込むことがいた。

 

「……!」

 

 もう言葉はなかった。

 亀頭に当たるのは薄く眼球を保護する彼女のまぶただろう。 妙な征服感に下半身が震える。

 満足して、眼下の尻に頬ずりした。

 ああ、気持ち良い。あんなに扱った花びらを秘めながら、尻の表面は空気に冷やされこうも冷たい。

 もっと汚したい。

 このままかわいらしい眼窩に挿入したい。倒錯した欲求が精巣を刺激し、気づかぬままに俺は射精していた。

 

「ふぁ……? あ! あっ! あああっ! いや、嫌ぁああああ……!!」 

 

 顔面にぶちまけられていく精液の感触を感じてペコが絶叫する。彼女の背中に密着した腹を伝わってその振動が直に伝わる。押し付けられる男根と精液から逃れようと必死に頭を振る動きが、触れるマスクのざらざら感と眼球のコリコリ感とと相まってますます快感が増していく。どくん、どくんと精液が噴き出していった。

 

「あああ……」

 

 放出が止まった。

 高揚感が収まってくると、柔らかくなった亀頭に触れる早くも冷え始めた精液がどれほどの量を放ってしまったのかを自覚させてきた。

 マスクはもうどろどろだ。これでは彼女もしばらく顔を開けまい。

 ふう、と息をついて、彼女の身体からいったん身を離す。

 

「どうしたのかしら、チャーリー。まだ終わったわけではないのよ」

 

 柔和な声とは裏腹に、強烈な圧力が俺の尻に刺さったままの拷問器具に掛けられた。

 

「ぐ……!」

 

 足で押し込んだのだ。深く押し込まれた鞭の柄のせいで、精を放ってうなだれていた肉棒が、ぴん、と跳ね上がった。

 

「ペコ。そろそろいいでしょう。アレをしましょうか」

「う、うう……ダージリン様、それどころじゃないです、目が開けません」

「ふふ。しょうのない子ね」

 

 ダージリンが身を屈めてペコに掛けられたマスクを取り払ってやった。俺の精液でどろどろになり、開くこともできなくなったまぶたを丁寧に舌で拭ってやる。なんのためらいもないその仕草に心がざわついた。

 

「チャーリー」

「はい」

 

 いとおしそうに抱えるペコの頭。そのあちこちにつけられた俺の精液を丹念に舐めている。やりすぎだっただろうか。

 

「用意はできたかしら? さあ、このかわいそうな雌犬に正式な御挨拶をなさい」

「正式な? すみませんどういうことか……」

「ペコ。あなたからお願いしなさい。できるわね?」

「うう……」

 

 ちらちら、とダージリンの顔と俺の顔とを交互に見るペコ。

 

「む、無理です! そんな、アレを……アレをするだなんて」

「ふふふ。ペコ。いいのよ? ならもう一つの方を使っても」

「それは駄目です! それだけは絶対!」

「強情ね」

 

 ダージリンが笑う。笑いながら、一閃。ペコの尻に深く刺さっていた鞭を引き抜いた。

 

「ぎゃああっ!」

 

 聞くにも痛々しい叫びが上がった。

 恐ろしい女だ。

 両の手で尻を抑えたまましばらく動けずに固まっているペコ。

 やがて意を決したのか、起き上がった。全裸のまま階段を下りていく。

 

「こ、こちらに来るのです駄犬。いや、チャーリー」

 

 さっきまで半べそだったくせに、命令口調で俺を呼ぶ。 

 階段の一番下、最後の段で立ち止まり、そこに腰を下ろした。

 

「ここに来て、お、おまえのその汚らしいボローニャソーセージを、あたしの……」

 

 そこまでいいかけて止まってしまう。

 見れば、うつむいてしまった顔が一面真っ赤になっていた。いまさらか。

 

「はい。俺のボローニャソーセージを」

「あ、あたしの……後ろの門に捧げなさい」

「……承知しましたよ、ペコさん」

 

 その言葉を聞いて、ペコがきっ、と顔を上げる。

 

「ペコではありませんよ、無礼者。オレンジ・ペコ。それがあたしの名前です。な、なんでおまえなんかに……」

「はい。失礼しました、オレンジ・ペコ様。今からあなたの後ろの門に俺のボローニャソーセージを捧げます」

「くっ……!」

 

 恨みがましい目で(にら)み、そこで仰向けになった。白く伸びる脚を大きく開く。

 白い肌の間、華奢ではあるが美しい足の間でさきほど堪能させてもらった花が咲いている。少し開花の段階が進んだのだろうか、やや開いた肉の唇の向こうに、濃い桃色をした秘密の洞窟の暗がりがちらりと見えた。

 その下には、いまだ暴力の痕跡を残す後ろの門……肛門がぽっかりと口を開いている。

 これなら簡単に入りそうだ。

 しかし、正常位でやるのか。犬だ犬だというものだから、てっきり後背位なんだろうと思ったのに。

 

「もっと開きなさい、ペコ。犬に羞恥心なんてないのですから」

「は、はい……」

 

 開かれた脚がさらに広げられる。その足の間に体を進めて腰と腰を密着させると、怒張した俺の肉柱がふんわりしたペコの薄い茂みに乗っかることになった。

 ペコの瞳に視線を向ける。

 しかし、視線は絡まなかった。彼女の視線は恥丘に乗せられた俺の分身に向けられていたからだ。

 

「こ、こんなの……こんなのが入るの……?」

 

 ごくり、と飲んだ唾の音が聞こえた。

 開かれた脚、その膝部分を手でそれぞれつかみ、ぐっと押すように進める。彼女の丸い尻が持ち上がってあの尻の穴が丸見えになった。

 このまま入れるべきなのか。なにか潤滑液のようなものは……と探し、ほどなく目の前にそれにふさわしい液体があることに気づいた。

 

「あっ? チャーリー、何を……」

 

 熱く滾った肉槍をペコの――おそらく未開通の――子宮へ続く肉洞の入り口にぴとり、とキスさせる。

 

「だっ、駄目、駄目です、それは絶対に駄目!」

 

 恐れをなしたペコが逃げるように腰を振るものだから、擦られた亀頭の先がやや白濁し始めた粘液によって飾り立てられていく。

 ああ、これが処女の穢れなき女性器。

 ここに突き入れ、精液を思う存分注ぎ込めば新たな生命を作ることができる。生殖のための器官。

 少しばかりその感慨を楽しみ、さらに腹に力を籠めると肉棒の先を下へと移動させた。

 

「あ」

 

 熱い門。本来固く閉ざされているべきその裏門は、今や無情に振るわれた暴力によって開門されていた。

 

「だ……駄目。やっぱり駄目。男の、男のソレをそんなところに入れるなんて……」

「行きますよ、オレンジ・ペコ様」

 

 宣言すると腰を進めた。

 最大の関門をぬるりと通過する。

 

「んん……く。く、くふ……くぁああああ……!」

 

 そのあとはにゅるにゅると奥まで進むことが出きた。下腹部に彼女の尻を感じるところまで押し込んで、そこでようやく視線が合う。

 

「ど、どうですか、オレンジ・ペコ様。俺の……がっ!?」

 

 それ以上言葉を紡げなかった。

 容易に受け入れていたはずの従順な直腸が、突然調教されていない野生の馬のように暴れまわった。

 根元まで飲み込んだ肉棒を喰いちぎらんかという勢いでぎゅうう、と締め付けてくる。その締め付けは、はっきりと苦痛だった。

 

 「ぐううう!」

 

 苦痛。それはペコ同じの様だ。視線と視線を絡めたまま、その苦痛に、眉を歪ませ必死に耐えている。体の奥底まで受け入れてしまった異物、男という異物をぎっちりと咥え込んで握りしめているのは彼女の意思か、体の反応か。

 

「ふぐぅううう!」

 

 凄まじい圧力に一旦は根元まで押し込まれていた肉棒が、どんどん押し戻されていく。いや、これは一種の排泄だろう。俺の身体という侵入者が彼女の消化器官の終わりの部分によって排泄されていく。そう考えるとなんだか笑いがこみ上げてくる。

 

「ひっ……」

 

 笑い声をあげたわけではない。だがこんな状況で笑みを浮かべてしまった俺を見て、ペコが顔を引き攣らせている。

 それがやっぱりおかしくて、口元に笑みを浮かべたまま負けじとこちらも押し返す。括約筋で握りしめてくるペコに抗い、その中心開けて体重を乗せていった。

 

「ひゃらっ、ひゃらああ……あひゅっ、あ、ああああ……おひりひゃらひひゅうりぃいい……ふぁあ……ひゃめ、ひゃめぇええ」

 

 何をいっているのかわからない。だが抵抗が緩くなった。突き込んでいる後ろの穴に、膣穴から流れ出る愛液がまとわりついて潤滑を助けているのだ。苦痛はやがて快楽へと変わり、なんだか征服感のようなものを感じて、楽しく腰を振る。

 腰を突き入れる度ににゅるんと押し戻され、またぎゅうっと突き入れる。

 

「ひゃっ、ひゃめ、ひゃああ、ひゃああ、ひゃああああああ……」

 

 すさまじい圧迫と体の奥を貫かれる苦痛に襲われているはずなのに、ペコの表情はだんだん蕩けてきていた。大きく開いた口の端にはだらしなく(よだれ)までが垂れようとしている。

 忌々しい娘の尻に支配の男根をねじ込み、激しく腰を振る。これが正式の挨拶、排泄器官への挨拶か。ならば、犬の生活というものも案外悪くないものだ。

 俺はそう思って笑みを浮かべた。

 

「は……ははっ」

 

 荒い息遣いの中に笑いが漏れてしまう。

 他愛もない。結局、女とはこのように弱い生き物なのだ。

 

「……ふふ」

 

 静かな笑いがそれに応える。

 頭上では、ダージリンが俺たち二匹の動物を静かに見下ろしていた。

 

 



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裏門遊びは淑女の嗜み(下)

「そこで止まりなさい、チャーリー」

 

 いよいよ、というところでいつもの落ち着いた声がかけれられた。

 いいところなのに邪魔をする。この小綺麗な雌犬の排泄孔に精液をぶちまけたかったのに。

 恨みがましく振り返った目に反抗の意思を見たのだろうか、笑顔のまま革鞭をちらりと見せられた。

 まだだ。まだ抑えなければ。

 いつかこのペコのように、俺の下で愉悦の声を上げながらあさましく腰を揺らすダージリンを見てやる。

 そう決意して、きゅうきゅうと締め付けるペコのアナルからカチカチに勃起した自分を引き抜く。

 

「ああああ……あ。ふ、ふああっ!」

 

 奥まで攻め込まれていたペコが、腸内を占有していた侵入者の退出に悦びの声を上げる。亀頭が肛門を抜けるときにひときわ大きな声を発した。大きく口を開けた秘密の後門からは流れ込んだ愛液かそれとも腸液なのか、何かの液がわずかに流れ出る。

 ずいぶん出来上がったものだ。尻による交接でどこまでこの娘が乱れるのか、限界まで試したかったが止められてしまってはしかたがない。

 

「ペコ、チャーリーを清めなさい」

「ふぁ? ふぁい、らあでぃりんひゃま」

 

 ろれつが回っていない。欲情にほだされた目もなんだか怪しい物だ。それでもよろよろと体勢をを変えて俺の肉竿に吸い付く。もうためらいはなかった。

 

「んちゅ。んん、うふふ、あたしのお尻の匂いがしゅりゅ……♡」

 

 気色の悪いことをいう。

 口に咥えてぺろぺろとまんべんなく舌を擦りつけてくる。

 ざらりとした舌の感触と、強く吸引してくる口中の感触とであやうく射精しそうになるのをなんとかこらえて、大きく深呼吸をする。

 ひとしきり嘗め回すとすっかり肉棒が涎塗れになってしまった。

 

「ああ……おちんちん……おちんちん……もっと、もっと食べたいのに……♡」

 

 熱に浮かされたような目で俺の股間を眺める物だから、なんとも居心地が悪い。少し前まで切断がどうといっていた娘だ。ここまで変わるものなのか。

 

「しっかりしなさいペコ。ほら、誰か階段を上がって来るわよ」

 

 総毛が立った。

 確かに足音がする。見られてしまう。俺を。ペコを。そして、ダージリンを。この異常な格好の姿を、痴態のすべてを。……見られてしまったらどうなってしまうのだろう。

 

「ひっ」

 

 さすがにペコも震え上がった。学園外からの俺はともかく、ペコは全裸、ダージリンもほぼ裸だ。こんな姿を見られたら学園生活もおしまいだろう。

 

「ダ、ダージリン様、逃げましょう」

 

 今までの陶酔はどこへやら、這いつくばってダージリンの腰にとりつくペコ。

 

「何をいっているの、ペコ。ちゃんと犬らしく振る舞いなさい。ほら、チャーリーを見なさい、毅然としているじゃないの」

 

 いや、単に頭が真っ白になっているだけなのだが。

 さて、聞こえている足音は一人分。

 鬼と出るのか蛇と出るのか。

 こんな異常な状況に、俺はなぜか少しわくわくしてきていた。

 

 

 

 



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処女破瓜は淑女の愉しみ (上)

 足音が近づいてくる。もう下の踊り場まで来たようだ。

 四つん這いでその時を待つ俺とペコ。ダージリンは腰に手を当てて悠然と立っている。

 さらに登ってくる。ためらいなくこちらへ向かっている。

 すぐそこの踊り場に影がさし、そして。

 登ってきていた誰かが息をのむのが聞こえた。

 

「ダ……! ダージリン様っ!?」

「ごきげんようルクリリ。少し遅かったわね」

 

 青色の制服を真面目そうにきっちりと着込んだ少女がひとり立ち尽くしていた。

 ペコの顔が下を向く。犬たる今の自分、その姿を見られる恥辱に耐えられないのだろう。

 

「いったい何を! ああっ、あ、ペ、ペコまで! 何をしているんですか、裸で! それにそこの裸の男は!」

「いいかしらルクリリ、淑女たるもの常に冷静であれ。この程度のことで動揺してはいけませんよ」

 

 ルクリリは踊り場で止まったまま、それ以上近づこうとしない。

 それはそうだろう、こちらの三人は明らかに異常な状態なのだから。俺に至っては明らかに見知らぬ侵入者である。

 

「この程度って……! おかしいですよこんなの!」

「ルクリリ。いいかしら? これは訓練なの。聖グロリアーナで戦車道を嗜むものなら誰でもこなさなければいけない当然の通過儀礼なのよ」

「ふざけないでください! こんなの、どこが訓練ですか!」

 

 ルクリリと呼ばれた少女は顔を真っ赤にして抗議している。

 視線がちらちらと揺れるのは俺の裸体のせいだろうか。無理もない。股間では、ペコの後門で埒をあけられなかった怒れる攻城槌が揺れている。普通の少女であれば凝視するのもためらわれるのだろう。

 

「残念ね。あたくし命令は好みではないのだけれど」

「命令ですか。そこまでおっしゃるならあたしだって……」

「知っているのよルクリリ」

 

 楽しそうに言葉を放つダージリン。アクセサリーと革紐を身に付けただけのほぼ全裸という姿であるのに、きっちり制服を着こんだ少女に対してまったく引け目を感じていないようだった。いったいどこからその余裕が生まれてくるのか。

 

「あなた、昨晩は零時十二分から自涜をしていましたね。二十八分後、零時四十分に絶頂。そして今朝は六時零五分に自涜開始。絶頂に至ることなく六時十五分に起床。すべてわかっているのよ」

「な……なんのことですか……? あ、あたしそんな、じ、自涜だなんて」

 

 動揺している。ということはこのつらつらと諳んじられた情報は真実なのだろうか。だとすればダージリン、恐るべき情報力だ。

 

「責めるつもりはないわ。それどころかあなたの体が健康である証拠でもあるもの。でも、それを学園中に公表したらみんなは……どう思うかしらね?」

「あたし、じ、自涜だなんて、そんなはしたないこと絶対しません! しょ、証拠! そう明確な証拠もないのに不名誉な言いがかりはやめてください!」

 

 ふふふ、と静かに笑うダージリン。

 

「証拠はあるのよ。ふふ、でも恥ずかしがるのは当然の反応ね。そうでなくてはつまらないものね」

「ペコ! あなたもどういうつもりなの! 獣のように這いつくばって、いつまでそんな恥知らずな格好を続けているのよ!」

 

 なじられ、ペコの顔が耳まで真っ赤になる。しかし、その姿勢を変えることはなかった。

 

「証拠を見せましょうか。ルクリリ、部屋に行きましょう。ペコ、チャーリー戻るわよ」

 

 

 

 

 驚いたことにルクリリと呼ばれた少女は警戒の表情こそあからさまに浮かべていたが、素直についてくるようだ。ここで逃げ出すという選択もあるだろうに、なるほど先の自涜……つまりオナニー情報は正しいのに違いない。

 

「帰ったわよ、アッサム」

「あら、おかえりなさい」

 

 部屋に戻ると、アッサム体の汚れをすっかり落としてのんびり紅茶を飲んでいた。

 

 

「あ、アッサム様! ひ、ひどいんですよ! 聞いてください!」

 

 部屋にアッサムの姿を見つけたルクリリは教師にいいつける子供のように駆けよる。ダージリン以下二名によるこの狂った痴態をとがめてもらおうというのだろう。

 

「なあに、ルクリリ」

「ダージリン様が……」

 

 優しく答えるアッサムは数枚の写真を手にしていた。

 それはベッドの上でパジャマ姿のまま股間に両手を挟み込んでいるルクリリの写真だ。

 半開きの口、焦点の定まらぬ目、恍惚とした表情までもが鮮明に映し出されている。

 これがこの少女のオナニー姿……謹厳そうな印象の彼女も数時間前はこのように劣情を持て余し、なにがしかの性的対象を想いながらおのれの性器を慰めていたのだ。

 

「あ……ああっ……そ……それは……」

「よく撮れているでしょう?」

 

 微笑みながらひらり、とその写真を見せつける。ルクリリの手がわなわなと震えているのが見えた。

 

「いったい、誰が、どうやって」

「あら、やっぱり気づかなかった? この時あたし、あなたの部屋の中にいたんですけどね」

 

 さらりと答える。

 

「朝は最後までイけなかったのね、ルクリリ。それでイライラしているのでしょう?」

「な……な……アッサム様? アッサム様が? これはいったい……!」

 

 絶望の色がルクリリの顔を覆う。そう、アッサムにダージリンの破廉恥を伝えたとて意味はない。この部屋にいる誰にもそもそも良識などというものはないのだ。

 

「状況は分かりましたかルクリリ」

 

 勝ち誇ったようにダージリンが追い詰める。

 

「あたしに何をしろっていうんですか……」

 

 かわいそうな少女は敗北を認めた。視線を床に落としながら、狂人たちから自分の身体を守るようにぎゅっと抱きしめる。

 

 



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