泣き顔の復讐者【のんびり更新】 (沙香月 雪音)
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3人は友達
慎重に1話目


えー、平成も終わりまして令和元年となりましたね。
正直原作付近まで…一夏達が生まれてから投稿しようと思ってましたが令和になった記念と称して見切り発車いたしました。
友達と二人でアレコレ悩みながら書いてまして大分遅いと言われるかもしれませんが、気になる方、見ていってください。
それでは、1話目よろしくお願いします。


~篠ノ之side~

「なぁなぁしののの!これなんてよむんだ?」

「たばねちゃん!これおしえて!」

『ねぇねぇ!』

 

…なんで私に聞くのに答えさせてくれないの…。

 

「なんでおしえてくれないの?わからないの?」

「しのののさん、これは?」

 

…違う、知ってる。分かってる。でも言うより早く急かしてくる。

 

「おしえてくれないならいいよ!」

「たばねちゃんにも分からないことがあるんだね。」

『もういいや。』

 

…自分達の都合で寄ってくるくせに相手のことなんか考えないくせに自分達は悪くないって顔してる…なんで…私だけのせいじゃないのに…。

 

「ねぇ、しのののさん…だっけ?ちょっとこの字の読み方おしえてくれる?」

 

…どうせ待ってくれないくせに…それぞれのペースだけで私のペースは無視するんだろ…。

 

「ほしみやーソイツはおしえてくれないぞー」

 

…ほら、また私を考えない…ちーちゃんとお喋りしてたいなぁ…。

 

「うるさいなー。今はしのののさんに聞いてるんだからさー。…ごめんねしのののさん。しのののさんが言ってくれるまで待つよ」

 

…待ってくれてる…?なんで…?

 

「ねぇ、君はなんで待ってくれるの…?」

「なんでって今はしのののさんと話してるからだよ?」

「そっか…あ、あとその字の読み方は『おこる』だよ。」

「おこる…わかった!しのののさん、ありがとう!」

「私のことは束でいいよ。よろしくねあーくん」

「うん、よろしく、束!」

 

ちゃんと見てくれた…待ってくれた…久しぶりだなぁ…。

 

 

 

~織斑side~

「ただいま。」

 

返事はない。今日は2人とも遅くなるのは聞いていたし一昨日は2人とも居て一緒に夜ご飯を食べた。でも…

 

「さびしいな…。」

 

父さんも母さんも私がやりたいと言った剣道をやることは賛成してくれた。稽古をつけてくれる柳韻さんも厳しいけど出来ることが増えると褒めてくれる。今年はクラスが違うけど道場でなら束の面白い話も聞ける。でもそれは生徒や友達としてのもので当然私を娘として見てるわけじゃない。娘として見てくれるのは父さんと母さんの2人だけ。その2人も仕事で忙しくて…

 

「あまり美味しくないな…。」

 

母さんが作ってくれた大好きなハンバーグもどこかおいしくない気がしてしまう。

隣の家から声が聞こえる…楽しそうな大人と子ども(家族)の声…。

 

「うらやましいな…。」

 

気付いたらまた呟いていた。

 

 

 

~星宮side~

束と遊ぼうと思ったら宿題と家の『どうじょう』で『けいこ』があるからダメだって言われちゃった。明日また学校で会えるけどもっと色々知りたかったなぁ。宿題なんて無くなればいいのに…めんどくさい。

 

「ただいまー。」

「おかえりー!」

 

お父さんが帰ってきた。お母さんはご飯を作ってるから代わりに僕が玄関まで行っておかえりを言うのが普通になっている。

 

天斗(あまと)ー、ただいま。お、いい匂いだなぁ。今日はカレーかな?」

「あたりー。今日はハンバーグカレーだって言ってたよ。」

「ハンバーグカレーか。急いで着替えないとな」

 

お父さんはお母さんが作るハンバーグカレーが大好きでいつも食べ過ぎるくらいおかわりする。前にどうして食べ過ぎるほど食べるのか聞いたら「思い出の料理だから」って言われたけどそれでももう少し考えて食べればいいと思う。

 

「あなたー、天斗(あまと)ーご飯できたよ」

「はーい」

「お疲れ様~」

「じゃあ、いただきます」

『いただきます』

 

……

………

 

………

……

 

『ごちそうさまでした』

 

やっぱりお父さんは今日も食べ過ぎた…でもちゃんと残さないで食べるのは凄いと思う…

 

「そういえば今朝家の前で隣の織斑さんと久しぶりに会ったよ。いつもあの時間に家を出るなんてよっぽど忙しいんだね。」

「今朝は6時に出たよね?確か織斑さんにも天斗(あまと)と同じくらいのお子さんがいなかったかしら。」

「うん、天斗(あまと)と同じ2年生の娘さんがいるね。織斑さんも『仕事とはいえずっと1人にしてしまってる』って悩んでた。」

「それは心配ね…」

「昼間は本人のやる気もあって『篠ノ之道場』で剣道をしているらしいけど…。」

 

あれ?しのののどうじょう?

 

「夜に放ったらかしになってしまうのが気掛かり?」

「当たり前だけどね。」

「ねぇ、お父さん。」

「ん?どうした天斗(あまと)。」

「『しのののどうじょう』って束の家?」

「うーん…お父さんはその『たばね』ちゃんを知らないから分からないなぁ。どんな子なの?」

「頭がよくてーいろいろ知ってて、今日も家の『どうじょう』で『けいこ』?があるんだって。」

「じゃあその子も篠ノ之道場に通ってるのかな?」

「自分の家が『どうじょう』だって言ってたよ。」

「そっか。天斗(あまと)はその『篠ノ之たばね』ちゃんとは仲良くなったのかな?」

「あれ?束の名字『しののの』って言ったっけ?」

「道場が『篠ノ之』で『家の道場で稽古』って言ったからそうかなって。」

「へー…その『どうじょう』に行けば束とおしゃべりできるかな。」

「道場は練習をするところだからお喋りは難しいと思うなぁ…。」

「そうねぇ…天斗(あまと)、今度剣道見てみない?束ちゃんにも会えるし剣道も面白いかもよ?」

「そうだなぁ…織斑さんと話してからだけど織斑さんのお子さんとも会って話せるかもしれないしな。でも、やりたくなかったり見たくないなら言っていいからな?天斗(あまと)。」

「うーん…明日束に聞いてみてからでいい?」

「うん、いいよ。父さんも織斑さんと明日少しお話しないといけないし。」

天斗(あまと)はたばねちゃんが大好きね。」

「うん!」

 

明日はもっと束と話せる!早く明日にならないかなぁ。




さて、いかがだったでしょうか。
書きながら(天斗何の本読んでるんだろ)とか小2の思考回路じゃないとか思うこともチラホラあったり…
それではまた次回


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サブタイに悩む2話目

えー、見切り発車に見切り発車を重ねて2話目でございまして頑張って書かなきゃなと思ってる雪音でごぞいます。
昨日カノーネ…相方と会ってきまして本当は昨日投稿しようって話も出てましたけど日和ました。すいません缶を投げないでください。
とにかく2話目、よろしくお願いします。


~星宮side~

「束、おはよー」

「あーくんおはよー!」

 

教室に行くともう束が居た。これでも頑張って早く家を出てきたのにそれより早い束は凄いと思う。

 

「束は早いね」

「あーくんとお喋りするのが楽しみで仕方なかったからね!」

「そっかー。あ、そうだ束。『けいこ』って今日もあるの?」

「稽古は基本的に毎日あるよ。しっかりと続けないと身にならないからって。なんでそんなこと聞くの?」

「えーっと…今日見に行けないかなぁって思って…」

「あーくんなら大歓迎だよ!稽古は16時からだよ。」

「4時からだね?わかった!」

「ちーちゃんもいるし楽しくなるね!」

「ちーちゃんって?」

「ちーちゃんはねぇ…

「篠ノ之さん、星宮くん、もうすぐチャイム鳴るから席に座ってくれるかな?」

 

先生に言われて時計を見たらチャイムが鳴り始めちゃった。

 

「束、また後でね!」

「あ、うん」

 

そういえば『けんどう』ってどんな事するんだろ…。まぁ今日見ればいっか!

 

 

 

~篠ノ之side~

あーくんも一緒に剣道するのかな~。そしたらちーちゃんと3人一緒できっと楽しいよね?楽しいに決まってる!

 

…のさん?篠ノ之さん!」

 

あ、授業中だった…。

 

「先生ごめんなさい。ちょっと考え事してました。」

 

いくら退屈でもちゃんと聞かなきゃね。怒られるのもやだし先生が偶にする話も面白いし。

 

「今は音読の時間ですよ?次からは気をつけてくださいね。」

「はーい。」

「では篠ノ之さん、57ページの2行目からお願いします。」

「はーい。ーーー…」

 

早く学校終わらないかなー。あと30分…。

 

 

 

~星宮side~

休み時間に束と話そうとしたけどドッジボールに誘われて話せなかったや…。けんじくんめ…。でももうすぐ授業終わるし…5…4…3…2…1…。……あ、ズレた。あの時計とチャイムってバラバラなんだ…。そんなことより!

 

「束。4時からだよね?」

「そうだよ。あ、でもちょっと早く来た方が良いかも。色んなこと話すと思うしちーちゃんともお喋り出来るし!」

「分かったよ。」

 

そういえば…

 

「ちーちゃんって誰?」

「ん?あぁ、そういえば言えなかったね。あーくんってば遊びに行っちゃうし。」

「けんじくんが誘ってきたんだもん。」

「仕方ないなぁ…。ならちーちゃんとは会ってからのお楽しみにして許してあげよう!ほらほら、早く帰ってお昼ご飯食べた方がいいよ~。」

 

さっきお腹が鳴ったのバレてた…。

 

「う、じゃあまた後でね!」

「うん、待ってるからね~。」

 

今日のお昼ご飯なにかな~。

 

 

 

~篠ノ之side~

「ただいまー。」

「あぁ、束。おかえり。今日はどうだった?」

「うーん、いつも通りかな。あ、そうだ。今日新しい子が見学に来るって」

「そうか。わかったよ。伝えてくれてありがとう。」

 

うーん…やっぱりお父さんは嫌いじゃないけどちょっと苦手だなぁ…。素っ気ないし…。

 

「あら、束おかえり~。学校は楽しかった?」

「楽しかったよ。あーくんが今日見に来るって。」

「あーくんってこの前言ってた新しいお友達?」

「そうだよ!同じクラスの子。」

「なら今日はお友達に良いところ見せなきゃね。」

「うん!」

 

さて、ご飯食べて宿題終わらせちゃおー。

 

 

 

~星宮side~

束の家がある『篠ノ之神社』に『どうじょう』があるって言ってたけど…。

 

「大きいなぁ…。」

 

階段のとこにある『とりい』が凄い大きい。

 

「ほら、天斗行くよ?」

「あ、うん」

 

お母さんと一緒に『とりい』を超えて奥の建物に行く。何かを数える声が聞こえる。まだ3時30分くらいだと思うけど…。もしかして時間間違えちゃってもう始まってるのかな…。

 

「こんにちは~。」

「こ、こんにちは!」

 

お母さんが入っていくからつられて挨拶しながら入ったけど…。

 

「あれ?1人だけ?」

 

動きながら棒を振ってる女の子1人しかいない。

 

「あれ?」

「まだちょっと早かったみたいね。」

「うん…。」

 

束もいないし…。30分前じゃ早いのかな?

 

「あ、あーくん早かったね。」

「ちょっと早めの方が良いってお母さんも言ってたからね。ダメだった?」

「ううん、ダメじゃないよ。今お父さん呼んでくるね。」

 

行っちゃった…。

 

「今のが束ちゃん?」

「うん。」

「ただいまー!」

「君が今日見学する子かな?」

「うん。あ、はい!」

「私は篠ノ之柳韻。ここの師範で…剣道を教える先生をしている。君の名前はなんて言うのかな?」

星宮(ほしみや)天斗(あまと)です。」

「天斗君か。」

 

すごい真面目そうな人だなぁ。

 

「確か束と同じクラスだったかな。」

「はい。」

「ということは2年生か…。今日はよろしく頼むよ。」

「は、はい。」

「こちらこそ今日はよろしくお願いします。」

 

そういえば…。

 

「あの子は?」

「あぁ、あの子は…千冬ちゃん、ちょっと来てくれるかな。」

「は、はい。」

 

棒を振ってた女の子…『ちふゆ』って言うのか…。

 

「えっと…お、織斑千冬です…。」

「おりむら…。あぁ、貴女が織斑さんの娘さんね。私たちはお隣に住んでる『星宮』って言います。これからよろしくね?」

「星宮天斗です。よろしく!」

「よろしくお願いします。」

 

 

 

〜織斑side〜

今日も家に居てもひとりぼっちで仕方ないからいつも通り稽古前から素振りをしていた。扉が開いた音がしたから束かと思って見てみたら男の子とそのお母さんらしき人だった。

自己紹介を聞くと隣の『星宮』さんらしい…。

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

大人の人と喋ることはあまりないけど学校の先生とは少し違う感じの優しそうな人だなぁ。

 

「あ、そうだ!あーくんにはちーちゃんのことは会ってからのお楽しみって言ってたね。この子が『織斑千冬』、千冬だから『ちーちゃん』だよ!」

「そんなの聞いてないぞ⁉︎」

「あれ?そーだっけ?」

「よろしくね、ちーちゃん!」

「ほ、星宮までちーちゃんって呼ぶのか⁉︎」

「ダメ?」

「ダメなの〜?」

 

2人とも本当に分からないのか…いや、束は面白がってるだけだろうけど…聞いてくれるなら…ちょっと恥ずかしいから。

 

「出来れば名前がいいな…。」

「分かったよ千冬ー。」

 

分かってくれたようで良かった。

 

「さて、そろそろ話はいいかな?星宮さんとはこの道場についても説明しなくてはいけないしな。」

「はい。」

 

仲良くなれるといいな。

 

 

 

〜星宮side〜

お母さんと一緒に柳韻さんから『どうじょう』の説明を聞いてるけど…。

 

篠ノ之道場(ここ)では剣道だけでなく古くからの剣術、そこから武器を取り落とした際の無手での格闘術もあり護身術の指導もしています。というよりも剣術や格闘術のほうがメインですね。」

「剣道と剣術?ってなにが違うんでしょうか。」

「はい。剣道はスポーツとしてルールも確約され、礼儀や心身の練磨といった自己の修養を心構えとするものです。一方剣術、格闘術は戦の中でいかに敵を倒すか、自分が生き抜くために発展したものと考えてください。」

 

よく分からないや…。

 

「あの…、そう聞くと剣術や格闘術がとても…その、危ないもののように思えてしまうのですが…。」

「そうですね。星宮さんのおっしゃることはご尤もです。確かに剣術や格闘術では誰かを傷つけることができます。しかしそれらの『力』は使い方次第なのです。」

「使い方?」

 

お母さんは何か分かったのかな。でも誰かが怪我をするのは嫌だなぁ…。

 

「そうだよ、天斗君。そうだな…ハサミを使うときに気を付けていることはあるかな?」

「ハサミは…持ってるときはふざけちゃダメってお母さんも先生も言うよ。」

「そうだね。じゃあどうしてふざけちゃいけないかわかるかい?」

「うーん…。」

 

ハサミは紙が切れるし…

 

「ハサミを持ってふざけて友達に当たっちゃったりしたら怪我しちゃうから?」

「そうだね。ハサミは紙を切るものだけど人を怪我させることができてしまう。だからちゃんと注意して使わないといけない。剣術や格闘術も同じで倒すためのものだけど使う人が気を付ければ友達を傷付けることもないし、逆に剣道の技を使って友達を傷付けてしまうこともある。だから最後は使う人間が大事ということだ。」

 

ちょっと難しいけどちょっと分かった気がする。

 

「後は実際に稽古を見ながらお話しましょうか。」

「はい。」

 

柳韻さんとお母さんの後ろについて行きながら使う道具の名前とかを教えてもらう。来た時に千冬が振ってたのは竹刀って言うのか…。今は束と千冬はどんな稽古(こと)してるのかなぁ。

 

 

 

〜織斑side〜

さっきまでとは違って束と一緒に稽古をする。

足捌きの確認、打ち込みを束とお互いに正しいか見る。なんでも先生が言うには「理解をしていれば見て正しいかどうか分かる」らしい。

 

「ちーちゃんちょっと斜めになってるよ。真っ直ぐ振り下ろさなきゃ。」

「真っ直ぐ…。」

 

自分ではあまり気付かないところも教えてくれる。

 

「束、また胴の時腕と一緒に頭も振ってる…。」

「まだ直ってないか〜。どうしよう?」

「大きく振りすぎなんじゃないか?」

「ふむふむ。」

 

自分も見て気付く事で復習にもなる。

 

「肩から振ると大きくなる。もう少し肘を支点にして振ってみなさい。」

「え?あ、はい。」

 

先生が帰ってきた。束も気付いてなかったようでびっくりしてる。星宮も帰ってきて隅でこっちを見ている。

 

「束、右手が左手の前に来るように出してみるといい。」

「はい。」

「そう、それで大分変わる。」

「ありがとうございました。」

 

 

 

〜星宮side〜

束と千冬がお互いに竹刀を振って考えてって何度か繰り返してる。時々柳韻さんに何か聞いてるみたいだけどまだ分からないや。

 

「そろそろ地稽古に入ろう。」

「「はい!」」

 

じげいこってどんなだろ…。

 

「天斗くんももう少し近くで見るといい。」

「え?」

 

四角に囲んだ中からは出ないから近くで見ていいんだ…。

 

「それでは1本目…始め!」

 

束も千冬も向かい合ったとこから一歩で近づく。千冬の「面」って声に合わせて振られる竹刀を束が竹刀で受け止める。あっ、千冬が後ろに跳んだ。束が逃げた千冬に追いついて「胴」って声と一緒に千冬に竹刀を当てた。

 

「そこまで。」

 

柳韻さんの声で2人が最初のとこに戻る。

 

「「ありがとうございました。」」

 

2人が礼をして防具を取る。

 

「千冬ちゃん、束、それぞれで気付いたことはあるかな。」

「ちーちゃんが面の後距離を取ろうとしたから胴までもっていけたけど…。」

「束と同時に一歩出たから面を打ったけどそれが止められて小手を狙われたくないから下がって仕切り直そうとして…。」

「後ろに跳んでたけど右か左に動けばよかったんじゃないの?」

「あのまま胴を入れられるかと思って…」

 

二人が話し合ってるけどさっぱりわからない。そこに柳韻さんも入って二人が頷いてる。また束と千冬が防具をつけて向き合う。今度は千冬が勝ったみたいだ。また話し合って向き合う。何回かしたらそれでもう終わったみたい。

 

「今日はここまで。」

「「ありがとうございました。」」

 

2人とも柳韻さんに礼をして防具と竹刀を片付けてる。

 

「さて、天斗君、実際に見てどう感じたかな?」

「2人とも凄かったしカッコよかった!」

 

振るのは速いし相手と一緒に動けてて…

 

「やってみたいな…。」

「天斗、やってみる?」

「やる!」

 

僕もあんな風になってみたい!

 

「そうか…なら明日は動きやすい服で来なさい。」

「はい!」

「あーくんもやるんだね〜。一緒に頑張ろ!」

「明日からはよろしく…。」

「よろしくね!束!千冬!」




えー、いかがでしたでしょうか?
書いてる側としては書いてる間は時間長いです。読み直すとアホみたいに文量少ないです。サブタイ通りサブタイに悩みます。なんなら前書き後書きも悩みます。でも書いてる間は楽しいからタチが悪いと言いますか…。
まぁ愚痴はこれくらいにして次は7割程出来てるし…一週間で持ってかれるといいなと思ってます。
それまで待ってくださる方、よろしくお願いします。


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漸く3人が絡む3話目

うへぇ…サブタイキツい…雪音です
どなたかサブタイ付ける才能と文才をください。
さて、相方曰く一番一番好きと好評な3話目、お楽しみください。


~千冬side~

「ただいま。」

 

いつもとは違って星宮が稽古を見て、いつも通り稽古が終わってからも少し自分なりの稽古をして家に帰ってきた。

 

「おかえり、千冬。」

「おかえりなさい。」

 

…あれ?

 

「2人とも仕事は…?」

「まだ少し残ってるけど…千冬と話さないといけない事があるんだ。」

「話さないといけないこと…?」

 

いつも忙しい2人が仕事を残してまで話すこと…。私が何かしてしまったのかな…。

 

「千冬…まずは、すまなかった。」

「…え?」

 

私は何か謝られることをしたのかな…。父さんが私に謝るようなことをなにかしたのかな…。

 

「急に謝られても千冬には何のことだか分かってないわよ。」

「あ、ああ、そうか…。えっと、その…父さんも母さんも仕事が忙しいからって言って千冬をほったらかしにしてしまっているだろ…?千冬がしっかりしているように見えても、僕たちが帰ってこれたときに笑っていてくれてもずっと一人にするのはやっぱり心配なんだ。」

 

一人の時は確かに寂しいけど二人とも仕事で仕方なくて…

 

「私は…大丈夫だから…。」

 

私が我慢すれば父さんも母さんも仕事のために頑張れて…

 

「千冬。」

「…えっ?」

 

母さんに呼ばれながら抱きしめられた。

 

「ごめんね、千冬。お父さんもお母さんも千冬が周りの子よりしっかりした子だって、篠ノ之さんの道場にも通って一人の時間は少ないからって千冬が一人になったときの気持ちを考えれてなかった。」

「忙しいからって千冬に寂しい思いさせちゃって…父さんダメだな…。」

「違う…。」

 

一人の時は寂しいけど二人から嫌われていると感じた事は無いし三人で入れるときはみんなで笑っていられるから。

 

「父さんはダメなんかじゃないよ…。母さんと二人で頑張ってるし、休みの時は疲れてるはずなのに遊びに連れて行ってくれるし、時間があれば宿題も見てくれて、出来たら褒めてくれて…」

「そっか。」

「だから父さんも母さんも駄目じゃないし、一人の時も我慢できる。」

「そうか…ありがとう…。でもな、父さんも母さんも心配だから…隣の星宮さんと話してな。私たちの帰りが遅くなる日は稽古のあと星宮さんの家に居てもらおうってなったんだが…どうだ?」

「えっと…でも、」

「今すぐにじゃなくてもいいから…明日は土曜日だし稽古の後に星宮さんのお宅にお邪魔する事になってるんだ。だから、決めるのはそれからでいいよ。」

「…うん。」

 

星宮って…今日道場で母親と見学しに来てたけど…関係あったのかな?

 

 

 

~天斗side~

「それでね!2人とも凄い音で『バシーン!』ってなってカッコよかった!」

「カッコよかったのか~。他にはどんな事があった?」

「えーっと…柳韻さんが明日は動きやすい服装で来なさいって言ってた!」

「ということは剣道やってみるのか。」

「うん!」

「明日は稽古が終わったら織斑さんが来るから初剣道のお祝いも兼ねて夜ご飯は豪華にしなくちゃな。」

「豪華?すきやき?」

「どうしようかなぁ…。」

「作るのはお母さんなんだけど?」

「あははは…そうでした。」

 

冗談っぽくお母さんが言うとお父さんも冗談っぽく返した。

 

「そうだ、焼肉とかどうかな?」

「焼肉?ほんとに⁉︎やったー!絶対だよ?」

「そうね。焼肉ならそこまで時間かけなくてもいいしいいかもね。」

「よし、明日は焼肉だ!」

「じゃあ天斗、ちゃんと稽古頑張って焼肉たくさん食べれるようにちゃんと寝よっか。」

「うん!」

 

明日は土曜日だから朝からあるらしいからちゃんと寝なきゃ。

 

 

 

~束side~

最近は朝起きると本を読む。朝ごはんは7時だからだいたい30分くらい読める。今日は何読もうかなぁ。

 

「…あれ?この本のこと…何かが違う気がする…。」

 

読んでるのは剣道の解説本だけど…構えてみると明らかに身体の向きがばらばらで…

 

「この前読んだときは何ともなかったんだけどなぁ。」

 

ちょっとはそういうことが分かるくらい剣道が出来るようになったのかな…?

 

「束ー、ご飯出来たわよ。」

「はーい。今行くー。」

 

ありゃりゃ…もう30分経ってたのか。今日はあーくん初稽古だし面白くなるかなぁ。

 

 

 

~天斗side~

今日は朝から稽古があるって言ってたし朝ごはんは少なめにしといた。あんまりいっぱい食べるとお腹痛くなっちゃうしね。

 

「あ、あーくんおはよー。」

「おはよう、束。」

 

家が道場なのはこういう日はずるいと思う。長く寝れるし…。

 

「あれ?今日はお父さんがいるの?」

「そうだよ。なんか今日は話したい人が来るんだって。」

「ふーん。」

 

多分千冬のお父さんとお母さんだと思うけど。

 

「おはようございます。」

「あ、ちーちゃんおはよー。」

「千冬おはよー。」

 

丁度いいタイミングで千冬が来た。後ろにお父さんかな?大人の人もいる。けど…千冬なんかちょっと怒ってる…?でもただ怒ってるのとはなんか違うな…なんだろ。

 

「星宮…この剣道場に来た理由はなんなんだ。」

「え?今日は一緒に稽古するつもりだったけど?あ、着てる服がダメだったとか…

「そうじゃない!昨日お前はどういうつもりで見学に来たんだ!」

「え?ちょっと待ってよ千冬。どうしたの?」

「いいから答えろ!」

「ちーちゃん。何があったかは分からないけどもう人も増えてきたし落ち着こうよ。それが出来ないなら外で話そ?」

「束には関係無い!」

「うん、関係無いよ。だから、外で話してきなよ。」

「千冬、一回外出よ?」

「…分かった。束、すまなかった。」

「いいよ~。ちーちゃんも何かあるだろうし。」

「ごめんね、束。ちょっと行ってくる。」

「あーくんも大丈夫だよ~。ちーちゃんとちゃんと話してきてね。」

「うん。」

「千冬、ちょっと待ってて。」

 

お父さんたちは…あ、いた。

 

「お父さん。」

「どうした?天斗。」

「千冬とちょっとお話ししてくる。」

「そっか。稽古に遅れないように気をつけなよ?」

「うん!」

「あ、ちょっといいかな?」

「え?」

「あ、急にごめんね?僕は千冬の父親なんだけど…千冬のことごめんなさい。急に家に来るかもしれないって聞いて驚いたよね。」

「千冬の…。別に気にしてないし…家の中でも遊べるかもしれないなら楽しそう!」

「そっか…ありがとう。千冬はちょっと頑固なところがあるけどよろしくね。天斗くん。」

「うん!」

 

千冬はもう外にいるな…。

 

「遅いぞ星宮。」

「ごめんね千冬。で、話って何?」

「お前はどういうつもりで昨日来たんだ。」

「どういうつもりって…束の言う稽古ってのが気になって…お父さんが道場に見学に行ったら?って言ったからだけど…。」

「親に言われたからなのか…?言われなかったら来なかった程度の気持ちだったのか?」

「うーん…どうだろね。束の話を聞き続けたら行ったかもしれないけど分かんないや。」

 

うん、もう来ちゃったわけだし面白そうだとは思ったし。

 

「…るな。」

「え?」

「ふざけるな!お前が剣道を見に来なければ父さんが謝る事なんてなかったんだ!母さんもあんな表情(かお)しなくて済んだんだ!家が隣だろうとこんな事にはならなかったんだ!」

「千冬…?」

「お前が来なきゃ!家が隣だからって!父さんと母さんが私に謝る事なんてっ。なかった…のに…。なんで…。」

「えっと…よくわからないけど、まずは泣き止んでくれるかな?止まるまで待つけど一回止まってほしいな。」

「うるさぃ…うぁぁ……。」

 

どうしよう…そろそろ稽古も始まると思うし…。

 

「ねえ、千冬?千冬は僕が中途半端な気持ちで剣道やろうとしてるのが気に入らないんだよね…?」

「ぐすっ…そのせいで父さんは仕事も途中で私に謝ったんだ…。私が一人で家に居るのが心配だからって…ちょうど隣の家のお前が剣道を始めるからって…。」

「千冬を家に呼ぼうとしたのは僕の剣道は多分関係ないよ。」

「でも稽古の後に行くって…。」

「それは千冬の稽古があるからじゃない?」

「お前が剣道をしようとしたのは…」

「千冬から見たら中途半端かもしれないけど自分で『面白そうだ』って思ったからだよ。」

「面白そうだから…?」

「うん。」

 

千冬みたいに真剣にやってる人から見たら適当な理由って思われるかもしれないけどね。

 

「…さい…。」

「え?」

「ごめんなさい。」

「ちょっと千冬⁉︎謝るのは僕じゃないの?」

 

泣かせたし中途半端に見えただろうし。

 

「勝手に思い込んで八つ当たりしたから…。」

「そっか…じゃあ早く稽古行かなきゃね。もうすぐ始まるでしょ?」

「そうだな。」

 

 

 

〜千冬side〜

剣道を『面白そうだから』で始めたのは私も同じだし星宮が自分で決めたことを勘違いで中途半端だなんて言ってしまったんだ…。星宮こそ謝る必要なんて無かったんだ。

 

「ちーちゃん、仲直りはできたの?」

「束…出来たよ。結局私の勘違いと八つ当たりだったが…。」

「ふーん。なら良かった!ずっとギスギスされるのもやだしね〜。」

「それは…すまなかった。」

「いいよいいよ。今日も頑張ろ〜。」

「あぁ。」

 

 

 

〜束side〜

ちーちゃんとあーくんは仲直り出来たみたいだね〜。そういやあーくんどこだろ。

 

「ねぇちーちゃん。あーくんは?」

「星宮ならあそこで足捌きの練習だ。」

「ん?あー…お父さんに捕まってるね。」

 

足捌きは絶対お父さんが教えるらしいからなぁ…。この頃新しい人も居なかったし心なしか楽しそうだし。でも…

 

「……なぁ、束…?」

「…なに?ちーちゃん。」

「もしかして星宮って…。」

「うん、割と不器用。」

 

野球もバット持つ手反対だった気がするし…逆に器用な気もするけど。

 

「そうなのか。」

 

 

 

〜天斗side〜

なんかしっくり来ない…最初はそんなもんらしいけどなんかなぁ…。

 

「うーん…。軸を一本…なんか変…。」

「何度か回数を重ねればそのうち慣れると思うが…。」

「はい。」

 

イチ、ニ。イチ、ニ。…軸ってなんだろ。

 

「先生、軸ってなんなんですか?」

「頭から真っ直ぐ一本の棒を通す事を想像してごらん。」

「真っ直ぐ一本…。」

「身体を回す時、そこはあまり動かさずに回るだろう?」か

「…はい。」

「その軸を意識すると姿勢も伸びて真っ直ぐに動けるはずだ。」

「はい。」

 

軸…難しい。

 

 

 

〜束side〜

あーくんも苦労してたみたいだねー。

 

「あーくん、お疲れ様〜。」

「あ、束もお疲れ様ー。」

「お父さんにみっちり扱かれてたみたいだね。」

「足捌きは基本だからって特にね。」

「星宮、束、隣座ってもいいか?」

「ちーちゃんもおつかれ〜。もちろんだよ。ね?あーくん。」

「いいよー。千冬とも話したかったし。」

「話し…?」

「うん、千冬は足捌きのとき身体の軸って考えてる?」

「軸か…軸と言っていいか分からないが身体の上に頭が常に乗ってる感じだな。」

「動くときはどうするの?」

「動くときは動かす方に少し頭を傾けるというか…頭から動かしてその下に身体を入れるんだ。」

「頭の下に身体…。束は?」

「私は何も考えてないかなぁ。姿勢は日頃からお父さんに言われて気をつけてたから染み付いちゃった。」

「そっか…。」

「星宮、あまり考えすぎずに動いてみるのも手だぞ?私のイメージは私のイメージだ。星宮は星宮に合うイメージをすれば良い。」

「それもそうか。ありがとね、千冬!」

「あ、あぁ。」

 

ちーちゃん戸惑ってるね〜。そりゃ今朝八つ当たりした人間がこんな無邪気に来るなんて戸惑うよね。

 

「ふぅ、ご馳走様でした。」

「ごちそうさまでした。」

「ご馳走様でした。」

 

お昼も食べたし午後の稽古まで少し時間あるなぁ…。あ、そうだ

 

「あーくん、一回足捌き見てみない?」

「どういう事?」

「私やちーちゃんの足捌き見たら何かいい刺激になるかなぁと思ってね〜。」

「そうだな…私も束と見せ合いながらやった覚えがある。」

「なら見せてもらおうかな。」

 

あーくんもやる気だね。

 

 

 

〜千冬side〜

「スッとして…ドンッ!だ。」

「ちーちゃんもう黙って…。」

「む、なぜだ…。」

「千冬のは擬音語しかないよ…。見てるだけで分かるからまだいいけど。」

「え!?あーくん分かったの!?」

「動き方なら…。」

「そ、そうだろう!束はいつと分からないと言うがちゃんと伝わったぞ!」

「動き方だけでしょ?」

「うぐっ」

 

それは…動き方なんて考えてないから仕方ないだろ…。

 

「そういう束はどうなんだ!」

「え?私はちゃんと教えれるもんね。」

「…あ、束、千冬そろそろ時間じゃない?」

「ホントだ。じゃあ午後も頑張ろ〜!」

「あ、束!」

 

上手く逃げられた気がするが…仕方ないか。




ふははは!コンスタントに5000文字書けるようになりたい(´・ω・`)
そろそろサブタイも○話目とかじゃなくちゃんとしたの思いついてみたいです。
書いてて思ったんですけど千冬のメンタル強いです。普通八つ当たりした人間にその日の内によっていけません。流石未来のブリュンヒルデ…。(まぁそう書いたのは私ですが)
次は1ヶ月以内に出せるようにしたいですね。早くIS動かしたい!
誤字脱字には気をつけてますがもしあればご報告ください。
それではまた次回よろしくお願いします。


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星宮家だよ第4話

没サブタイ:星宮家だよ全員集合
はい、冗談です。流石に原作前は話数カウントしたいです。…8話目で使えるんじゃ…。あ、すいません。石を投げないでください!
さて、のっけからグダ感見えてきた第4話。サブタイ通り星宮家が主です。
それではお楽しみ下さいませ。


~天斗side~

「いやぁ、ホントにウチの天斗は人気者で…」

「いやいや!千冬は運動が…」

「束は昔から物覚えが良くて…」

 

…酔っ払いがいる。千冬から聞いたら千冬のお父さんも元々千冬を預けるつもりだったらしいしそれで話が早く終わったのかな?千冬もそれでいいって言ったみたいだし。

 

「あーくんのお父さんいつもあんな感じなの?」

「うーん…あんな風になったのはあまり見たことないけど嬉しいんじゃないかな。すごい楽しそうだし。」

「そっか…お酒って怖いね。」

「ね。」

 

でも多分もうすぐお母さんが…

 

「あなた?飲みすぎじゃない?」

「んーまだ飲めるよ~。」

「飲みすぎじゃないですか?」

「まだ半分も残って…」

「飲みすぎだよね?」

「…はい。」

 

こうやって怒る。怒ると怖いよね…。

 

「あーくんのお母さん…。」

「迫力がすごいな…。」

「束ちゃん?千冬ちゃん?何か言った?」

「「い、いえ、なんでもないです!」」

 

やっぱり怖い。

 

 

 

~千冬side~

星宮の家はいつも外から見るが…

 

「思ったより広いんだな…。」

「3家族が寛いでるもんね…。」

 

外見と比べて広すぎやしないか…?

 

「な、なぁ星宮?なんでこんなにも広いんだ?見た目は私の家と同じくらいのはずなのに…。」

「え?広いの?」

「少なくとも私の家では出来ないことをしてるぞ。」

「そうなんだ。でも友達の家とか行ったことないし家のこともよくわかんないや。」

 

言われてみればそうだな。私も自分の家の建て方とか知らないし他の家も束くらいしか…。

 

「ちーちゃんの家って一階も小分けだからねぇ…。壁の数が増えれば狭くも感じるよ。」

「束って色々知ってて凄いよね。」

「え?そ、そうかなぁ。」

「漢字もいっぱい知ってるし家のことも知ってるし。」

「えへへ…。」

「星宮、あまり束を調子に乗らせないでくれ…。」

「あっ!酷いよちーちゃん!」

「お前が調子に乗っていい事があった試しが無い!」

「そんな事ないよ!ちーちゃんこそこの前『今日は上手くいく気がする!』とか言いながら面打って外れて肩に当ててたじゃん!」

「なっ、それは関係ないだろう!」

「あははは!2人とも仲良いんだね。」

「「どこが!」」

「そういうところが。」

 

あぁ、もう!束の相手だけでも疲れるのに星宮も調子が狂う…!でもまぁ、束と仲が良いのは当然だな。…口には出さないが。

 

 

 

~束side~

ちーちゃんと仲良しね~…。それなりに一緒に居るし当たり前だよねー。…恥ずかしいから言わないけど。

 

「あーくんだってちーちゃんともう仲良しに見えるけど?」

 

ちょっとくらい仕返ししてやろう。

 

「そう?まだまだだと思うけどなぁ…。」

「1日2日でそんなに仲良くなれるはずがないだろ。」

「まぁそれもそうだね~。」

「それに今朝喧嘩したばかりだぞ?本当はこうしているのも大概だと思うが…。」

「喧嘩ってほどでもないけどねー。」

「そういえば今朝の出来事だったっけ…。」

 

今朝の険悪っぷりからは想像つかないよね…。というか本当にこの二人は朝ピリピリしてた二人なんだろうか…。あ、ピリピリはちーちゃんだけか。

 

「束、何か変なこと考えてないか?」

「ん?考えてないよ?やだなーちーちゃん。」

「…ならいい。」

 

危なかったー…人の心読めるなんて聞いてないよ全く。

 

「束がわかりやすいだけじゃないの?」

「そうなのかなぁ…ゑ?」

「ん?」

「私声に出てた?」

「顔に『危なかった』って書いてある。」

「そんなに?」

「うん。」

 

…ポーカーフェイスの練習したほうがいいのかな…。

 

 

 

~天斗side~

束も千冬も仲良いなぁ。なんて思ってたらみんなもうそろそろ帰るみたい。時計見たら8時半だしもうすぐ寝る時間だもんね。

 

「あーくん、明日も今日と一緒だから寝坊しちゃダメだよ?」

「し、しないよ!」

 

明日も稽古はやるらしい。毎日やらないと身につかないんだっけか。

 

「ははは、星宮さん今日はありがとうございました。」

「こちらこそ、織斑さんと篠ノ之さんと楽しく飲ませていただいて…ありがとうございました。」

「それでは、千冬のことをよろしくお願いします。」

「ええ、もちろんです。身体にお気をつけてお仕事頑張ってください。」

「ありがとうございます。」

「あ、でも千冬ちゃんを寂しがらせたらダメですよ?一人ぼっちではないとはいえ千冬ちゃんの親は貴方達お二人しかいませんので。」

「そうですね…。なるべく早く仕事が終わるようにします。」

「そうしてあげてください。」

 

お父さんたちも話は終わったのかな。

 

「じゃあねー、あーくん。」

「また明日だな。」

「うん、また明日ー。」

 

みんなを見送ってから家に入る。今日は疲れたなぁ…。

 

 

 

~千冬side~

目が覚めて時計を見るといつも通り6時30分だった。父さんも母さんも今日は仕事らしく机の上に朝ご飯と手紙が置いてある。

 

「今日は星宮さんの家か…。」

 

あれから5日経ったがこれで星宮さんの家にお世話になるのは2回目だ。

 

「いただきます。」

 

朝ごはんを温め直して食べる。一度冷めても美味しいのはすごいと思う。

 

「ごちそうさまでした。」

 

後はいつも通り素振りをして学校だな。

 

 

 

~天斗side~

金曜…学校…今日…頑張る…明日…休み…

 

「あーくんおはよー!」

「束おはよー…。」

「あれ?元気ないね?どうかしたの?」

「家帰って宿題やって稽古して疲れて大変…。」

「あー、まだそんなに日も経ってないしねぇ。こればかりはちょっとずつ体力つくよとしか言えないかなぁ。」

「だよねー…疲れた…。」

 

机のひんやりが気持ちいい…。

 

「でもよく頑張るよねぇ。地味なことしかしてないのに。」

「ちょっとずつ出来るようになってきて面白いからね。素振りも慣れてきたし。」

「そういえば安定するようになってたね。」

「千冬の素振り見てから真似したら大分ね。」

「ふーん。あ、そろそろ授業だね。また後でねー。」

「また後でー。」

 

ちょっと元気出たし頑張ろー。

 

 

 

〜束side〜

なんか面白くないなぁ…そりゃちーちゃんの素振り先に見てたけど次の日私もやったじゃん。誘ってあげた私の真似してくれても良いジャマイカぁ。

 

「うーん…。」

 

モヤモヤするなぁ。

 

「篠ノ之さん?どこかわからないところでもあった?」

「へ?…あー、大丈夫です。」

「そう?もし分からないところがあったら先生に聞いてね?」

「はーい。」

 

このレベルは全部分かるんだけどね〜っと。そういえば去年の先生は途中から分かるかどうか聞かなくなったっけ…。まぁ分かってたから良いんだけどね。

 

 

 

〜千冬side〜

「ただいまー。」

「お邪魔します。」

 

稽古も終わって今日は星宮さんにお世話になる。

 

「はーい、天斗、千冬ちゃんお帰りなさい。」

「お母さんただいまー。」

由華(ゆか)さん、お邪魔します。」

 

星宮だと紛らわしいから名前で呼んでほしいと前に言われたから名前で呼ぶ。星宮のお父さんは桜叶(おうか)さんだ。

 

「今日は手巻き寿司だからね。手洗ってきなさい。」

「はーい。」

「分かりました。」

 

お世話になってると思いつつも手巻き寿司は楽しみだ。

 

 

 

〜天斗side〜

うーん…。

 

「うーん…。」

「どうした?星宮。そんなに唸って。」

「んー、それだよそれー。」

「それ?」

 

お父さんとお母さんは名前で呼ぶのに何故か僕のことは星宮のまんまってのはどうなんだろう…。

 

「うん。千冬、僕のお父さんとお母さんを名前で呼ぶ理由は?」

「星宮さんだと紛らわしいからだな。」

「僕の苗字は?」

「星宮だな。」

「星宮と呼ぶと?」

「桜叶さんと由華さんにはちゃんと『さん』を付けるから反応するのは星宮だけだな。」

「そうだけどさー…。束は束で呼ぶじゃん?天斗も天斗で呼んでみない?」

「そうだな…。でももう星宮で慣れてしまったというか…。まぁ気をつけよう…天斗。」

「流石ちーちゃん。」

「ちーちゃんで呼ぶな!」

「えー、束は呼んでるじゃんかー。」

「あいつは何を言っても変えないから諦めた。」

「なら僕も呼び続ければいいんだね。」

「おい。」

「じ、冗談だよ。」

「なら許す。…まぁ星宮なら少しだけなら考えてもいいが…。」

「星宮にされた…。」

 

後から考えるだけとか言わないよね…。束じゃあるまいし。

 

「あ、そういえば何で束は束なの?」

「それは…束本人にしか分からないんじゃないか?私は私だし星宮は星宮だろう?」

「え?千冬が呼ぶのに千冬じゃ分からないの?」

「ん?」

「え?」

「…あぁ、もしかして束と呼ぶ理由のことか?」

「そうだけど?」

「それはだな…。」

 

僕のこと苗字で続けるくらいだから何かあるんだろうなぁ。

 

「篠ノ之って呼びにくいだろ?」

「…うん。呼びにくい。」

「だからだ。」

「それだけ?」

「それだけだ。」

 

なんかショックだな…。

 

「お?どうした天斗?何か負けたって顔してるぞ?」

「あ、お父さん。千冬が名前で呼んでくれないんだよ。」

「お、おい!星宮!桜叶さんに言うほどのことでもないだろ!」

「まぁまぁ千冬ちゃんも落ち着いて。で、どうした?天斗。」

「束は名前で呼ぶから聞いてみたら『篠ノ之は呼びにくいから』って言われてなんかショックなんだよ。」

「あー…確かに篠ノ之は呼びにくいよなぁ。」

「で、ですよね!」

「そうだけどさー。もし僕の苗字が篠ノ之とか青天目(なまため)とかぱみゅぱみゅだったら名前で呼んでた?」

「多分呼んでたな…。」

「うーん…ならいいか…。」

 

まぁ強制する気なんてないけど。

 

「もう9時か…。そろそろ帰りますね。」

「なら送ってこうかね。天斗は?」

「行くよー。」

「じゃあ由華さんに挨拶してきます。」

「いってらっしゃーい。」

 

隣とはいえ夜だから危ないもんね。それについてけば星見れるし。

 

「よし、それじゃあ行こうか。」

「いってきまーす。」

「お邪魔しました。」

 

あ、この前とは違う星見っけ。




視点切り替え多い、後半のグダ感ぱねぇとお思いの方。ご安心ください。書いた本人が一番思ってます。ちょっと遊び心をしすぎたか…。
さて、ちーちゃんがちょっとデレたし束さんも何故かモヤっとしてます。
それから主人公の両親の名前出ましたね。これでちょっとずつ進めれる…。
ただここから少々詰まってまして次が明確に言えないですがとりあえず頑張ります(魔法の言葉?)
では、また次回よろしくお願いします


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急な予定変更ってキツいと思う5話目

ちょっとずつ時間すっ飛ばす事を覚えました。お陰で視点変更が増えました。ときどき自分でも読みにくい(p_q*)シクシク
さて、他作者様の作品読みながらポチポチ作ってるわけですが読んでるともう「多少シリアスやりたい」とか「コメディやりたい」とか「お腹すいた」とか思うわけでして、えぇ。
シリアスにせよコメディにせよもう少し土台敷いてからになりそうです。
では、5話目よろしくお願いします。


〜天斗side〜

今日は土曜日!稽古も半日!こんな日は遊びに行くしかないよね。

 

「千冬ー。遊びに行かない?」

「どうしたんだ急に。」

「いや、今日の稽古もう終わりじゃん?」

「暑いからな。」

「午後から自由じゃん?」

「そうだな。」

「遊びに行くしかないじゃん?」

「宿題はやったのか?」

「無いよ?」

「嘘だろ…?」

「先生が土日はよく遊べって言って金曜日は宿題絶対出ないんだよ。束に聞いてみれば分かるよ?」

「…束、宿題は無いのか?」

「ん?無いよー。先生が土日は遊べって。」

「2人ともズルくないか?」

「それは先生に言ってよ。それよりあーくん!なんで私は誘ってくれないのさ!」

「千冬の後に誘うつもりだったんだよ。宿題ないのは分かってたし。」

 

束より千冬の説得の方が大変だし。

 

「ならいっか。」

「それで?千冬、どう?」

「そうだな…。なら行こう。でも何をするんだ?」

「そうだなぁ…釣り!」

「なんでまた…いや、昨日のテレビの影響か。」

「当たりー。」

「あーくんもちーちゃんも2人だけでわかり合ってないで私も入れてよー。」

 

束が拗ねた…。束は一緒に居なかったもんね。

 

「ごめんね、束。昨日テレビで釣りしてるの見て面白そうだなぁって話を千冬としてたんだ。」

「それで、釣り?」

「うん、釣り。」

 

テレビみたいには釣れないかもしれないけど絶対面白いよね!

 

 

 

〜束side〜

むぅ…ちーちゃんがあーくんの家でお世話になる様になってから明るくなった。ちょっとした冗談も言うようになったしちょっとした時も今までよりも楽しい。これはいい。

あーくんとは会ってからそんなに長くないけどコミュニケーションが苦手な私のことをちゃんと待ってくれた。明るいというよりも優しいってのがピッタリだと思う。これもいい。

でもさ…?ちーちゃんとあーくんが会うきっかけの私が除け者ってどうよ?

 

「でもさー、あそこの川なら釣れそうじゃん?」

「あの川までどれだけ遠いと思ってるんだ?」

「うーん…隣町くらい?」

「もっとだ。大体テレビに出るくらいだから人も多いだろう。」

「ならどこにしようかなぁ。」

 

ほら、私の見てないテレビを2人は共有してるんだよ…。ジェラシーだよジェラシー!

 

「うーん…。」

「束…ちょっといいか?」

「どうしたの?お父さん。」

 

稽古終わりにお父さんから呼ぶなんて珍しい気がする。何かあるのかな…?

 

「束、この後なんだが少し小太刀術の稽古をつけようと思うんだがいいか…?」

「小太刀術?って神楽舞の為だっけ?」

「神事の為となると少し変わるがな。そろそろ覚えて損はないはずだ。」

「ちょっとあーくん達に聞いてきてもいい?」

「あぁ、もちろん。天斗くん達と予定があるなら無理にとは言わんよ。」

「分かった。」

 

正直言って今の2人に私は居なくても変わらないよね…。

 

「ちーちゃん、あーくん。」

「ん?なにー、束。」

「どうかしたのか?」

「午後からなんだけど遊べなくなっちった。」

「え?なんで…?」

「ちょっとねー、小太刀術の稽古なんだって。」

「こだちじゅつ…?」

「確か小振りな刀を使うんだったか…?」

「ちーちゃんせいかーい。ウチでは毎年お盆に神楽舞をするからねー。ちょっとずつ覚えて損はないだろうってお父さんが。」

「そうか…なら仕方ないな。」

「…束、それ見てみたいんだけどいい?」

「うーんどうだろ…。」

「構わないよ。」

 

うわっ、びっくりしたぁ…。

 

「いいの?お父さん。」

「あぁ、希望があれば無手や剣、小太刀に限らず薙刀や弓に棒術、鉄扇術まである。」

「そんなにあるんですね…。」

「篠ノ之流は元は戦国に生まれたもの…使えるものは何でも使っていた古武術から派生したものが篠ノ之流だからね。」

「凄いんだなぁ…。じゃあお昼食べたらまた来るね。」

「うん!」

「14時頃から始めようか。」

 

篠ノ之流のことはちーちゃんとあーくんだけで共有出来ないもんねー。仕方ないから許してあげよー!

 

 

 

〜千冬side〜

束のやつ…ジェラシーとか言ってたが確か嫉妬だったか…?それにしても

 

「良かったな天斗。今日は色々見れそうで。」

「うん!これは釣りしてる場合じゃないね。束が来なかったら釣りしてたか分からないけど。」

 

うんうん…。ん?

 

「束が来なかったら釣りしてなかったのか?」

「多分ねー。3人でやってみたかったんだよねー。」

「そうなのか…。」

「千冬と2人でも楽しいだろうけどクラス違っても稽古とかでいつも一緒でしょ?」

「まぁ…そうだな。」

「まぁいいじゃん。とりあえず早く帰ってご飯食べよー。」

「あ、あぁ。」

 

見れなかったら普通に釣りしたかったんだけどなぁ…。

 

 

 

〜天斗side〜

剣道以外のも見せてくれるなら釣りしてる場合じゃないよねって思ったけど千冬はどうだったかな…。勝手に決めちゃったけど…。

 

「ねぇ千冬。」

「………どうした?」

「……勝手に決めちゃったけど良かった?」

「…………釣りのことか?」

「うん。」

「こら、2人とも。食べるか喋るかどっちかにしなさい。」

「ごめんなさい。」

「すいません。」

 

もぐもぐ…暑い日はそうめん美味しいよね。そうめんばっかり食べるのは良くないらしいけどこんなに暑い日は許して欲しい。

 

「……………。」

「………………。」

「………。」

 

みんなして黙っちゃうから凄い静かだなぁ。

 

「……。ふぅ、ご馳走さまでした!」

「はいお粗末様でした。」

「ご馳走さまでした。」

「千冬ちゃんもお粗末様でした。」

 

美味しかったぁ…。

 

「それで、星宮。釣りのことだが小太刀術は私も見たかったし構わなかったぞ。」

「なら良かった。ホントは千冬が釣り行きたかったらどうしようかと思ってたんだよね。」

「あぁ、釣りは行きたいぞ?だから今度束も誘って行こう。」

「…うん!」

 

でも次の休みっていつになるんだろ…?

 

 

 

〜束side〜

「そういえばお父さん。今年も神楽舞はお母さんが舞うの?」

「もちろんだ。いくら束でも1ヶ月では覚えられんだろうし覚えられたとしてもお前はまだ幼いんだから。」

「そっかー…今年もお母さんかぁ。」

 

去年初めて見た神楽舞。いつもはふんわりしてるお母さんがとても綺麗でびっくりしちゃったなぁ…。今年は神楽舞を撮ってみたいから私が舞わないのは都合がいい。

 

「そういえばお父さん。ビデオカメラってどこにあったっけ?」

「ビデオカメラなら確か…2階だな。どうしてだ?」

「お母さんの神楽舞撮るの!」

「…そうか。なら後でちゃんと撮れるか確かめようか。」

 

それから、あーくんが来てから、というよりもあーくんのお父さん達と知り合ってからお父さんが少し柔らかくなった気がする。前までなら多分こんな事聞いてこないし話してない。

 

「そろそろあーくん達来るかなぁ。」

「束、まだ30分あるんだぞ…?少し落ち着きなさい。」

「はーい。」

 

楽しみがいっぱいだね!

 

 

 

〜天斗side〜

「こんにちは!」

「こんにちは!」

 

千冬と2人で道場に入る。束はまだみたいだね。

 

「あと20分か…。」

「思ったよりあるね…。」

「とりあえず待つか…素振りでもしながら。」

「そうだね。」

 

勝手に使っても大丈夫だよね…多分。

 

「あ、ちーちゃんもあーくんも早いねー。」

「束やっほー。」

「束も思ったより早かったんだな。」

「2人ならそろそろ来ると思ってねー。お母さんも着替えてるからもうちょっと待っててね。」

「うん。」

「ん?夏子さんが剣を振るのか!?」

「そうだよ。篠ノ之流は元々戦国時代で生き延びるための剣から徐々に神事になったんだって。なんでも江戸時代に女性のための剣を作る人がいたとか。」

「『しんじ』…?」

「神様のための儀式の事なんだけどね…。あ、今年のお盆もあるんだけどウチでは夏祭りの時に神楽舞って舞いがあってね?そういうのが神事だよ。」

「うーん…?とりあえずお祈りみたいなものってこと?」

「そんな感じかな。」

「なるほど。」

「ふぅ、ごめんね〜。3人ともお待たせしました〜。」

「夏子さんこんにちは!」

「こんにちは。」

「じゃあ早速始めましょうか。」

「「「はい!」」」

 

 

 

〜束side〜

「小太刀も振るう時は重さを意識してね。」

「はい。」

 

お母さんの剣は綺麗だ。

 

「小太刀に限らず剣も大太刀も薙刀も鉄扇に至るまで持ってるものと自分の動きを意識すると動きも変わるからね。」

「はい。」

 

動きは分かっても真似が出来ない。多分目に見えない部分で違うんだろうなぁ。

 

「夏子さん、重さを考えてみても軽くなる訳じゃないんですよね?どう変わるんですか?」

「いい質問だね〜。天斗くんは普段剣を振る時どうやって振ってるかな?」

「どうやって…真っ直ぐ剣先がブレないように…。」

「うんうん、じゃあ身体はどうやって動かしてるかな?」

「後ろの足で蹴り出した力で前に進めて…前の足で踏み込むときに踵から着いて全部使って振ってます。」

「うんうん…千冬ちゃんは?」

「後ろの足で強く蹴り出して踏み込むタイミングで腕を振ってます。」

「そっかそっか…束は?」

「私はなるべくお父さんの動きを真似して…基本ちーちゃんと同じ…です。」

「お父さんの動きも綺麗だからねぇ。よし、じゃあ束と千冬ちゃんは小太刀持ってね。」

「「はい。」」

「天斗くんは…無手と鉄扇どっちがいい?」

「えーっと…まずは鉄扇でお願いします。」

「鉄扇ね。とは言っても普通の扇子で大丈夫そうだね。」

 

鉄の扇(てつのおうぎ)って書いて鉄扇(てっせん)だよね…。それが普通の扇子ってもう鉄扇じゃないじゃん。扇じゃん。

 

「よし、じゃあそれぞれ始めましょうか。」

「「「はい。」」」

 

しょうもない事考えてないで今は頑張ろ。

 

 

 

〜天斗side〜

「ただいまー。」

「おかえりー。」

「おかえりなさい。」

 

つかれたぁ…。これから土曜日はこんな感じらしいけどついていけるかなぁ…。束と千冬はまだ元気そうだったし体力凄いなぁ。

 

「流石に疲れたか?」

「疲れたよー…夜ご飯なに?」

「夜ご飯聞けるなら大丈夫だな。今日はお好み焼きだぞ。」

「お肉いっぱいがいい。」

「お肉もいっぱいあるから早く着替えといで。」

「はーい。」

 

お好み焼き考えた人って天才だよね。野菜も甘いしお肉も美味しいし。

 

「あ、うどんと焼きそばも用意してあるからなー。」

「うどんー?なんでー?」

「それは後でのお楽しみだな。」

「はーい。」

 

とりあえず着替えて…手洗って…。

 

「お待たせ!」

「天斗、ちゃんと手洗ったの?」

「もちろん!」

「よし、じゃあ手を合わせて…。」

「「「いただきます。」」」

「じゃあ一枚目は豚玉で〜。」

「なら端で小さめのモダン焼き作るわね。」

「よろしく。」

「そういえばうどんは何に使うの?」

「この前広島に出張で行った時にうどん入りのお好み焼き食べて美味しかったんだ。モダン焼きみたいにお好み焼きの中に入れるんだけどな?」

「うん。」

「店によってふわふわの店とうどんがカリカリの店とあって凄かったんだ。」

「1日しか行ってなかったよね…?」

「お昼前に仕事終わらせて美味しいところ教えてもらって二軒とも行っちゃった。」

「お父さん…。」

「あなた…。」

 

お好み焼き屋さん2カ所も行くなんて…。

 

「ほ、ほら、そろそろ焼けるしみんな食べよ?ね?」

「はぁ…後で美味しいの作ってくださいね?」

「それはもちろん。」

「カリカリの食べたい。」

「天斗はカリカリか。わかった。」

 

カリカリなうどんってお菓子みたいで美味しそうだよね。




相方からの感想
「食事回」
自覚はあります。お好み焼きのハシゴは私が旅行で実際にやりました。私はカリカリ派です(誰も聞いてない)
次はもう少しちゃんと書いていきたいですね。
ではまた次回よろしくお願いします。


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キャンプに行きたい6話目

…キャンプ行きたい。
でも山とかって虫多いですよね…虫は苦手です
さて、気が付いたらあと少しで天斗君達も夏休み!な回ですね。羨ましい
それから、ちょっとご指摘がありましたがこの世界の織斑家は真っ白です。というか基本的にみんな白というか暗い面があまりないです。…IS出るまでは
さて、第6話よろしくお願いします。


~千冬side~

「千冬、ご飯できたわよ。」

「はーい。」

 

今日は父さんも母さんも一緒に晩御飯だ。

 

「千冬、そろそろ夏休みだろう?どこか行きたいところとかないかい?」

「うーん…行きたいところ…。」

 

稽古もあるしそこまで遠くには行けないだろうし…そういえば天斗達とまだ釣りしてなかったな…。

 

「束達と釣りがしてみたい。」

「釣り…?なら川にキャンプしに行くか?星宮さんや篠ノ之さんも誘って。」

「でも稽古が…それに仕事は?」

「仕事はひと段落ついて土日は休みなんだ。」

「ホントに!?」

「うん、だから明日の稽古のときに篠ノ之さん達に聞いてきてくれないかな?」

「わかった!」

 

楽しみだなぁ。

 

 

 

~天斗side~

「ということで束、天斗、夏休みにキャンプに行かないか?」

「キャンプは行きたいけど稽古とかは…?」

「ふっふっふー!お盆前は神楽舞や夏祭りの準備で稽古は休みになるんだよあーくん!」

「と、いうことだ。」

 

でも千冬はお父さん達となかなか一緒にいれないのに僕たちも一緒でいいのかな…。

 

「うーん…。」

「何か予定でもあったか…?」

「多分予定はないんだけどね?千冬はいいのかなぁって。」

「私が?」

「千冬は久しぶりにお父さん達と遊べるわけでしょ?そこに僕たちが行っていいのかなぁって。」

「なんだそんなことか。何も父さんたちもその日にしか休みがないわけではないし私は天斗たちとも遊びたいんだ。それに前に釣りをするって言っただろう。」

「まぁ確かにそうだけどさぁ。」

「よし、ちーちゃん。あーくんは行きたくないみたいだからあーくんは置いて2人で遊んじゃおう!」

「…そうだな!天斗が遊んでくれないなら仕方ない。柳韻さんたちもちゃんと誘うんだぞ?」

「もちろんだよちーちゃん!あーくんはお留守番ね!」

「遊んでほしいのに遊んでくれないからな。」

 

あー…もう。

 

「分かったよ。僕も遊びに行きたいから連れて行ってよ!」

「あーくん?」

「人にものを頼むときは?」

「連れて行ってくださいお願いします。」

 

あーもうなんか恥ずかしいし2人して笑ってるし…。

 

「ちーちゃんどうする?」

「ここまで言われたら仕方ない。連れて行ってやろう。」

「ちーちゃんも悪だねぇ。」

「束が始めたからだろう?」

「2人とも意地悪だよ。」

「遊びに行こうって言ってるのに変に気を使うお前が悪い。」

「それは同意かなぁ。遊びに誘うちーちゃんなんて滅多に見れないんだよ?」

「そういえば千冬から誘われることってなかったね…。」

「ちーちゃんも成長したんだねぇ。」

「さすがちーちゃんだねぇ。」

「ふ、2人してニヤニヤするな!」

「さっき2人だってしてたもんねー。」

 

だからちょっとした仕返しくらいいいじゃないか。

 

「うっ。た、たしかにしたが…。」

「ちーちゃんもあーくんも謝ったほうがいいんじゃない?」

「「束が一番たちが悪い!」」

「てへへー、バレた?」

「当たり前だ!」

「束だけ何もないなんてずるいと思わない?」

「思わないよ⁉︎」

「そういえばな、天斗。束がこの前お前のことを…」

「わー!ちーちゃんやめて!私も悪かったです!だからそれだけは…。」

「で、束が僕の事を…?」

「あーくんも興味持たないで!ちーちゃんさっきより生き生きしてない⁉︎ねぇ!」

「うるさいぞ束。私はこれからお前をいじらないといけないんだ。」

「そんな必要ないよ!ねぇちーちゃん!」

 

2人はやっぱり仲良いなぁ。

 

 

 

〜束side〜

「ねぇお父さん。稽古休みっていつからだっけ?」

「夏祭りが8月の…3日か。だいたい束が夏休みに入ったらだな。」

「そっか。ねぇ、今度ちーちゃんとあーくんとキャンプに行こうって話があるんだけどお父さん達は行ける?」

「そうだな…。夏祭りの屋台の手配や自治体への対応もあるから難しいだろう。」

「そっか…。その為の稽古休みだもんね…。お母さんは?」

「お母さんも神楽舞の為に仕上げをしないといけないから行けないかなぁ…。」

「なら私もお手伝いした方がいいよね…?」

「…束は行って来なさい。せっかく千冬ちゃんが誘ってくれたのだろう?ならその好意は受け取るべきだ。」

「でも2人ともやる事があるのに…。」

「束に任せられる仕事は無い。だから、キャンプに行って来なさい。」

 

私にできる事は何もないの…?お手伝いしたいのに…。言いたいけど声に出ない…。とにかく今は怖い。ここに居たくない。

 

「…もういいよ。わかった。おやすみなさい。」

「たば

 

お父さんが呼んだ気がするけど今は聞きたくないや。

 

 

 

〜夏子side〜

「またやってしまった…。」

「星宮さんに教えてもらってから少しずつ良くはなってたんですけどねぇ…。」

 

夫は…柳韻さんは優しいけど不器用すぎて伝わらないのよねぇ…。

 

「言いたいことは分かりますけど言い方ですねぇ。やっぱり。」

「うぐっ。それは…分かってるつもりなんだが…。」

「全く…。あの子も手伝いがしたかっただけなのは分かってますね?」

「あぁ…。でも束に任せられない仕事も多いしせっかくなら遊びに行って欲しかったんだ。」

「それは分かってますしちゃんと伝えてあげればいいのに。」

「す、すまない…。」

「言う相手が違いますよ。明日、束にちゃんと謝ってあげてくださいね。」

「はい…。でもどうしたら…。」

「キャンプに行く仕事をあげればいいんですよ。」

「遊びに行く仕事か…。」

 

この人は不器用なだけじゃなく頭も固いんだった…。むしろ不器用だから固いのかもしれないけれど。

 

「ビデオカメラがありますよね?」

「あるな。」

「前に頂いたカメラが修理から返ってきますよね?」

「返ってくるな。」

「キャンプの様子見たくないですか?」

「束が楽しければそれでいいと思うが…。」

「私は見たいです。」

「なら

「着いていこうにも神楽舞や夏祭りの準備で行けません。ビデオカメラとカメラはあります。束は仕事を欲しがってます。分かることは?」

「束に写真を持ってきてもらうのか。」

「そういう事です。それなら仕事もあげれますしね。」

「わかった…。ちゃんと伝えよう。」

「はい。」

 

これで大丈夫そうね。

 

 

 

〜束side〜

目覚まし鳴ってる…6時半だ…起きなきゃ…。昨日あんな風に出てきちゃったけどお父さん怒ってるかな…。

 

「とりあえず何か読も…。」

 

この前のビデオカメラとカメラ関係の本でいいかな…。別にキャンプに行けなくたって使える時は他にもあるんだし。

 

「ちょっと早いけど下いこ…。」

 

読んでても楽しくない。

 

 

 

〜柳韻side〜

「…おはよう。」

「おはよう、束。」

 

いつもより降りてくるのが早いのは昨日のことがあるんだろう。

 

「束…。」

「なに。」

「昨日は…その、すまなかった。」

「…。」

「私は、束の友達と遊んできてほしかったんだ。普段から稽古だなんだと言って周りの子達が遊んでる中お前は道場で竹刀を振っていた。」

「…うん。」

「しばらくして千冬ちゃんが入門してからは楽しそうに剣を振っていた。あの時なんて言ったか覚えてるか?」

「覚えてるよ。『凄い友達が出来たんだ!』だっけ。」

「その後に『もっと仲良くなれたらいいなぁ。」って言ったんだ。」

「…うん、言ったかもしれない。」

「なら、キャンプについて行ってもっと仲良くなりなさい。それが束の1つ目の仕事だよ。」

 

母さん…私だってやれば出来るんだよ…。その『不器用なのに仕事増やせた』みたいな顔はやめてほしい。

 

「でもそんなの

「じゃあ2つ目の仕事だな。」

「え?」

「カメラとビデオカメラを持って行って楽しかったところを私たちにも見せてくれないか?」

「それだけ…?」

「それだけと言われると…。」

「束?お母さんの神楽舞撮ってくれるんでしょ?なら練習しなきゃね。」

「それはそうだけど…。」

「なら束。夏祭りのことは考えない上で聞くぞ?キャンプには行きたいか?」

「行きたいよ。」

「なら行って来なさい。手伝いがしたいなら楽しんで、みんなと写真を撮って来なさい。」

「…わかった。」

 

やっと分かってくれたか…。よかった。

 

「その代わりもしまた別のときにキャンプとかあったら絶対来てもらうからね。」

 

束がそんなこと言うなんてな…。母さんの驚いた顔が目に入る。多分私も似たような表情をしてるだろう。でもまずは…

 

「わかった。必ずとは言えないが行けるようにしよう。なぁ、母さん。」

「えぇ。だから束、どんなことしたか教えてね。」

「うん!」

 

約束をしないとな。

 

 

 

〜天斗side〜

あと3回学校来たら夏休みだよ夏休み。

 

「あまとー、夏休みの最初の土曜日遊びに行かないかー?」

「ごめんねー、最初の土曜日と日曜日でキャンプに行くんだー。」

「そっかー。いつなら遊べるー?」

「どうだろー。稽古とかもあるし分からないかなー。」

「またけいこかよー。まーいいや。遊べるとき分かったら教えろよー?」

「分かったー。」

 

けんじ君には悪いけどいつ遊べるんだろ…。

 

「あーくん、そろそろ先生来るよ?」

「あ、ホントだ。ありがと束。」

「私もそろそろ本しまわなきゃ。」

 

最近束はカメラの本を読んでることが多い。柳韻さんたちから写真を撮って来て欲しいって言われたからって言ってたけど…。

 

「ねぇ束?写真撮るのにカメラはバラバラにはしないんじゃない?」

「それがねー、撮り方の本読んでたらメンテナンスのもあって読み始めたら面白くなっちゃってね。」

「へー、そうなんだ。」

「あ、先生来たしまた後でね。」

「またあとでー。」

 

あんな難しそうな本読んで面白いなんて束って凄いんだなぁ。




φ(..)カキカキ…ン?シノノノケデシテンマワスカ
さて、篠ノ之家で視点回って行きました。アレコレ悩みながら書いてたんですけど出始めると楽しいですねやっぱ
次回はとうとうキャンプに行きます。なお雪音の方はここ数年キャンプしておりません。相方は…知らね←
なのでちゃんと書けるかちょっと不安だったり…
てなわけでまた次回、お待ちください


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夏のキャンプだ第7話

えー、暑くて溶けてました。冷凍庫で凍らせて自然解凍したものがこちらです。嘘です。
さて、最後にキャンプに行ったのが7、8年くらい前の作者によるグダグダキャンプな回です。そのくせある意味1番書きたかった話だったり…。
それではそんな7話目、よろしくお願いします。


~桜叶side~

「そろそろ着きますよーっと。」

 

今は運転手の自分含めて由華ちゃんと秀十(しゅうと)さんと恵理(えり)さんの大人4人と天斗、束ちゃん、千冬ちゃんの子ども3人が一台の車に乗ってる。行きは2列目に子どもたちで大人組はそれぞれ夫婦で隣同士の並びだけど…。

 

「天斗ー、両手の花様たち起こしてあげて。」

「はなさま…?束、千冬、そろそろ着くって。」

 

束ちゃんと千冬ちゃんが途中から天斗を挟んで寝てた。両手に花が羨ましいって言ったら由華ちゃんに睨まれたけど。

 

「…おはよー。」

「…寝てしまったか。」

「千冬ったら昨日なかなか寝付けなかったもんね。」

「か、母さん!それは言わないでって言ったのに!」

「天斗はさっさと寝て4時くらいからソワソワしてましたよ。」

「お父さんなんで知ってるの!?」

「実は超能力者なのだー。」

「嘘だ。」

「せいぜい思考を読むのが精一杯だけどね。」

「じゃあ今何考えてるか当ててみてよ。」

「天斗は今…お父さんが超能力かどうかはおいといてなんで起きたの知ってたんだろ。って考えてる。」

「超能力だー!」

「だから言ったじゃん。」

 

まぁ枕元でゴソゴソされれば気付くしその話してたからその事考えるのは自然なんだけど。

 

「じゃあ束や千冬は?」

「お父さん女性の心読むのはどうかと思うなー。」

「う、なら秀十さんは?」

「仕事の機密情報が流れ込んできちゃったらお父さんの命が危ないなー。」

 

あ、由華ちゃんが笑うの堪えてる。秀十さんも苦笑いしてるけど。

 

「うーん…なら仕方ないかぁ…。あ、最後にもう一回僕の考えてること当ててみてよ。」

「んー…何言われても違うって言おう。」

「………違うもん。」

「はい、当たった。」

「え?」

 

合ってるならそれでよし。間違ってても違うって言うこと読み取ったって言えばいいもんね~。

 

「よし、到着ー。お腹すいたしぱっぱと準備しよう!」

 

深く聞かれたら敵わないけどね。

 

 

 

~天斗side~

「おとうさーん!早く!」

「ちょっと待てー。」

「ちーちゃんまた釣ったの!?」

「なかなか楽しいな。」

 

前に約束した通りに3人で釣りをしてるけど千冬が凄い釣ってる…。

 

「天斗、どうだ?」

「すっごい重い…。」

「あーくんもようやく魚1匹目かな?」

 

今日僕が釣ったもの。長靴、釣竿、空き缶、空き缶。あとお徳用シャケの切り身。もっと上でバーベキューしてた人が落としちゃったらしい。だから

 

「ゴミはやだー!」

「あーくんあとちょっとだよ!」

「頑張れ天斗!」

「釣れ…たぁ!」

 

…ちゃんと大物が釣れた。けど…

 

「…クーラーボックス…?」

「……みたいだね…。」

「撥水加工効いてるし密封性も良くて中のもの濡れてないな…。」

「なんか凄いやつ…?」

「みたいだね…。」

「………あ、また釣れた。」

 

さっきから千冬ばっかり釣ってない…?

 

 

 

~束side~

ちーちゃんもあーくんもよく釣るなぁ…。魚とゴミの違いはあるけど。

 

「束ちゃんは釣らないの?」

「最初の方に釣りましたよ。」

「もう満足?」

「楽しかったですよ。今なら写真も撮れますし。」

 

それに釣竿壊れちゃったし…。

 

「楽しかったなら良かった。で、満足はした?それともまだ釣りたい?釣竿なら貸してあげるよ?」

 

はぐらかそうとしたけどダメみたい。でも…

 

「でもそしたら桜叶さんが…」

「うんうん、束ちゃんは賢いし気遣いも出来るんだね。でもね?まだ子どもなんだから僕たち大人にそんなに遠慮することは無いんだよ?で、どうする?」

「なら…釣竿を貸してください。」

「よし、ならたくさん釣っておいで。」

「はい!」

 

久しぶりにお父さんやお母さん以外にワガママ言った気がするなぁ…。せっかく貸してもらったんだしちゃんとたくさん釣らなきゃ!

 

「ちーちゃーん、あーくーん、間入れてー。」

「束、釣竿は…?」

「桜叶さんに貸してもらったんだー。」

「そうか。なら間に…」

「千冬ちょっと場所変わって!千冬が魚ばっかり釣るから魚がぜんぜん釣れない!」

「魚ばっかりって魚を釣るのが釣りだぞ?」

「そうだけどさー!」

「まぁまぁちーちゃんも変わってあげたら?」

「そうだな…バケツもいっぱいになってきたし。あ、天斗がバケツも釣ってくれるかもしれないな。」

「あははは!そしたらまだまだ釣れちゃうね!よーし、今度はあーくんが魚ばっかり釣りすぎて私をゴミ釣りにさせないでね?」

「千冬があんなに釣ってたからどうかな〜。」

「ゴミ釣りになったらあーくんより上行くからね。」

「またゴミ釣りにする気だよね!?」

「私にも釣らせてくれればいいんだよ〜。」

 

ちゃんと魚釣れるかな~。

 

 

 

~千冬~

「ちょ、ちーちゃん腕増えてない!?」

「腕が増えるわけないだろ!タッチしようと全力で振ってるだけだ!」

「束助けてー!」

「あーくんいっそ一回捕まればいいじゃん。」

「だってもう、あんまり、時間がない。」

 

制限時間30分間の鬼ごっこ。最後に鬼の人は罰ゲームがあるらしいから負けられない。というかそろそろやばい。

 

「くっ!なんで触れないんだ!」

「タッチ、されたく、ないからね!」

 

両手使って…最近少し習った篠ノ之流のジャブよようなものまで使っているのに天斗に触ることができない。時間もあと2分くらい。なら…

 

「束ー!」

「わっ!?ちーちゃんはもっと粘るべきだよぉ!」

 

束に標的を変える。

 

「危なかったぁ…。」

 

フリをして

 

「まだ危ないからな?」

「え?」

 

天斗をタッチして逃げる。

 

「あっ!」

「ちーちゃん…せこい。」

「せ、戦場で正々堂々として負けても仕方ないだろう!」

「ちーちゃん、ここ戦場じゃないからね?」

「なら束が鬼になるか?」

「やだ。」

 

こんなことを言ってる間に天斗との距離も近くなる。残り1分もない。だからやる事は1つ。

 

「束!」

「うん!」

 

全力で散って逃げるだけ!

 

 

 

~由華side~

子ども3人の鬼ごっこの間に夜ご飯の準備をしてたけど…。

 

「恵理さん…切るの早すぎませんか?」

「普段千冬のために短い時間でも作ってあげようと思ったらつい…。火を通す時間は難しいですけど切る時間はどれだけでも早くできますから。」

 

流石に限度はあると思います。

 

「ただいまー!」

「負けた~。」

「ただいま…です。」

「3人ともおかえりなさい。手洗っておいで。」

「「「はーい。」」」

 

3人の鬼ごっこは天斗が罰ゲームみたいね…。おうちゃん無茶な罰ゲーム出さなきゃいいけど。

 

「由華ちゃーん、恵理さーん、ご飯炊けたよー。後は蒸らすだけー。」

「お疲れ様でした、桜叶さん。こちらも後は火が通るのを待つだけですね。」

「わかりました。あ、そういや由華ちゃん鬼ごっこって誰が負けたの?」

「天斗が負けたよ。あ、でもあんまり変なのはやめてあげてよ?」

「わかってるよー。」

 

あの顔は絶対何か企んでるけど…仕方ないかな。

 

 

 

~天斗side~

「よーっしご飯も食べたし鬼ごっこの結果発表しようか。」

 

なかなか言わないから忘れてたと思ったのにちゃんと覚えてる…。

 

「じゃあ先に罰ゲームの発表かな。負けた人見て考えたって思われるのも癪だし。」

「そうね。どうするの?」

「皿洗い1週間!」

「今日だけじゃないの?」

「あ、もちろん家に帰ってからもちゃんとやって貰うからね。」

「桜叶さん、ちゃんとやってるかどうかはどうやって確認するんですか?」

「天斗なら由華ちゃんが基本的に一緒だろうし千冬ちゃんは勝負事には真っ直ぐでしょ?束ちゃんもお手伝いは嫌いじゃないでしょ。」

「僕だけ罰ゲームから逃げるって思ってない?」

「どうせ天斗が負けたと思ってるからごまかす理由なんてなんでもよかったと思ってる。」

「負けた人見てからでも変わらないじゃん!」

「天斗負けてたのかー。気付かなかったなー。」

「棒読みじゃん!ホントは見てたんでしょ!」

「いや、桜叶さんは僕と一緒にご飯炊いてたからそんな暇はなかったよ?」

 

うーん…ならなんでばれたんだろ…。負けたことはお父さんには言ってないし…。

 

「あ、お母さんが教えたな!」

「なんのことかなー。」

「束ちゃんや千冬ちゃんかもしれないよー?」

「僕がホントは一緒にいなっかったのに嘘をついてるかもしれないねー。」

「わ、私が教えたかもしれないぞ!」

「ちーちゃん嘘下手だよねー。」

 

もうわけ分かんない…。

 

「まぁホントはお母さんから聞いたんだけどね。」

「ほらー!なんでみんなして嘘つくのさ!」

「ん?ついてないよ?」

「だって束や千冬から聞いたって!」

「あーくん、私たちはそれに返事したっけ?」

「…してない。」

「でもお母さんだって教えてないって!」

「お母さんなんのことかなーとは言ったけど教えてないとは言ってないけどな〜。」

「うっ…。」

「さて、天斗弄るだけ弄ったし…罰ゲームはコレでおしまいかな。」

「…へ?」

「ん?皿洗いしたかった?いいよ、やる?」

「……暇な時にやろうかな。」

 

なんか断りにくい。

 

「なら明日の朝のお皿洗いから頼もうかなぁ。」

「はーい。」

 

明日の朝は暇なんだろうなぁ。

 

 

 

〜束side〜

「あーくん、ちーちゃんこっち見てー。」

 

秀十さんが花火を持ってきたからみんなでやってるけど…

 

「花火が上手に撮れない…。」

「天斗ー、千冬ちゃんこっち向いてー。」

「今度はお父さん?」

「スマホだけどね。」

「スマホで撮れるんですか?」

「アプリ使うけどね。やってる事は束ちゃんの持ってるカメラと変わらないよ。これをこうして…光の量が……これを変えて…これでどうかな?」

「ちーちゃんこっち見てー。」

「今父さんの方向いてるから待ってくれ。」

「あーくーん。」

「今お母さんの方が向いてるから無理ー。」

「よし、束ちゃんが花火持ちな?撮ってあげるから。」

「え?でも…。」

「柳韻さんたちも束ちゃんの写真欲しいと思うけどな〜。」

 

そう言われると私が写ってる写真ってあんまりないかもしれない…。

 

「それにあまり花火できてないでしょ?」

「なら…お願いします。」

「よし、任せなさい。千冬ちゃん、天斗ーこっちおいで。」

「はーい。」

「よし、じゃあ3人とも火付けて〜。」

「あーくんなんで線香花火なのさ。」

「千冬なんてねずみ花火だよ?」

「何してんのさちーちゃん!?」

「だって父さん『これなら面白いぞ』って…。」

「ちーちゃん早く投げて!早く!」

「千冬ちゃんこのバケツの中に入れといて。」

「は、はい!…うわっ煙出てきた!?」

「ちーちゃんそれ投げて遊ぶやつだから!」

 

バケツの中ですごい音立てながら回ってる…。

 

「千冬ちゃん?秀十さんに遊び方教えてもらった?」

「えっと…面白いとだけです。」

「そっかそっか。ちょっと秀十さんと話してくるから花火はもうおしまいだね。」

 

桜叶さんの笑顔がなんでか怖い…。けどあーくんとちーちゃんはなんで怖いか分かってるみたいだなぁ…。

 

「な、なぁ天斗…桜叶さん怒ってないか…?」

「花火が危ないからじゃない?お父さんそういう事にはよく怒るし。」

「そういえば前に2人で料理してみようとした時も注意されたな…。」

 

そんな事もあったんだ…。

 

「2人は何作ろうとしたの?」

「卵焼きだったな。」

「あとたこさんウインナー。」

「火と包丁で怒られたの?」

「大正解。」

「あの時の桜叶さんは怖かった…。」

「ちーちゃんが怖がるなんて…。」

「なかなか見れないよね。だいぶ前にお皿割った時にオロオロしてたけど。」

「手伝い名乗り出たのに壊してしまったからな…。真っ先に怪我の心配されてしまったが。」

 

そういえばこの2人ずっと一緒にいるんだもんなぁ…。

 

「あ、そうだ!今度あーくんの家泊まりに行ってもいい?」

「いいんじゃない?今度聞いてみるよ。」

「うん、よろしくね!」

 

楽しみだな〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜束side〜

…夜中なのに目が覚めちゃった。

あーくんと桜叶さんと由華さんと一緒にテントにいるけど…起こさないように外に出ちゃお。

 

「うわぁ…。」

 

テントから出た瞬間に綺麗な星空が目に飛び込んできた。ただ星が綺麗とか暗くて怖いとかじゃない。ただそのままに

 

「…凄い。」

 

思ったことを口に出してた。

きっとこの事はずーっと忘れない。




子どもって本当元気ですよね。元気に遊びつくして疲れて寝るまでワンセットな感じがします。
相方にチェックかけてもらって
千冬と天斗の料理で一本書けそう
と言われました。料理をしない料理回とは一体。
さて、テストに追われるので次の更新が1ヶ月程空くかもしれませんが待ってくださる方、お待ちください。追いかけます。
それから、気をつけてはいますが誤字脱字等ございましたらご指摘ください。
それではまた次回、よろしくお願いします


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8話目8月夏祭り!

どうでもいいご報告(空行まで読み飛ばし推奨)
テスト終わって燃え尽き症候群とともにゲームなどの娯楽に対するやる気も無くなってました。続き書こうとしても「え?コレ書いたやつ何考えてたん…。」状態でした。相方と飯食いながら酒飲みながら駄弁って直りました。楽しかったです。
以上、ざっくりとした前回投稿からの雪音の状態でした。


さて、夏本番とかいうクソみたいな暑さですが皆様熱中症など大丈夫でしょうか。朝ごはんは少なめでもいいのでちゃんと食べましょう。しなきゃぶっ倒れます。水分もちゃんと摂りましょう。しなきゃぶっ倒れます。クーラーガンガンの部屋に居続けるのは気をつけましょう。ちょっと出ただけで熱中症一歩手前になった雪音です。
夏の注意喚起はコレくらいにして、久しぶりの泣き顔の復讐者、8話目よろしくお願いします。


~天斗side~

「よっ、ほっ、あぶな!」

「そう言いながら!いつまでよけるんだ!」

「避けるの、だけは、得意だし、ね!」

 

おかげで鬼ごっこに強くなれたんだよ?走るの速くないとすごい狙われるけどタッチ出来ないからって狙われなくなったんだよね。

 

「あーくんもちーちゃんも舌噛むよー。」

 

気をつけよ…。

 

「そこだ!」

「え?どこ!?」

 

千冬の右手での突きを避けてから左手で手首、右腕を千冬の脇に入れて…

 

「舌噛まないようにねー。」

 

千冬の下に入って投げる!…で、合ってるはず。

 

「やっぱり無手ではまだ天斗に勝てないか…。」

「2週間だけでも早く始めたからね~。負けてられないよ。」

「あーくん今度は私と一本やらない?」

「いいよ。ルールは?」

「うーん…投げ技と極め技(きめわざ)無し。」

「極めって関節技だよね…。打撃だけになると痛いと思うけど…。」

「じゃあ寸止めで確実なやつ一本かな。」

「なら私が審判をしよう。2人の弱点まで見抜いてやる。」

「じゃあちーちゃんよろしくね。」

「弱点分かったら後で教えてね。」

「分かってる。5分後の…45分開始でいいか?束から見てさっきどうやって投げられたのか聞きたい。」

「私はいいよ。」

「僕も。」

 

時間はいいんだけどなぁ…投げた本人に聞いてもいいと思うんだけど…。

 

 

 

~束side~

「投げ方…というかちーちゃんが投げられた時は手首掴まれて脇の下に腕を通されたんだよね?」

「腕を通される前に左手で軽く引っ張られたな。それで身体が前に流れて投げられやすくなったんだろう。」

「だねぇ…。投げられた事もだけどちーちゃんって突きが多いよね?なんで?」

「なんで…と言われても剣がない分振って当てるものがないだろう?それに突きから教えてもらって投げ技もまだあまり出来てないんだから限られてくると思うが?」

「蹴りは?」

「…あっ。」

 

珍しくぽかんとしてるしホントに気づいてなかったんだね…。

 

「剣道では確かに蹴りはないけど剣術にはあるよね?」

「まだ教えてもらってはないがな…。」

「ちょっと考えてみたらいいんじゃない?」

「そうだな…。ありがとう、束。」

「どういたしまして、ちーちゃん。」

 

ふぅ…私はどうやったらあーくんに勝てるのかな。

 

「あーくーん、そろそろやるよー。」

「分かったー。」

 

 

 

~千冬side~

「よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「それでは…始め!」

 

開始早々束が天斗に向かって突きを繰り出す。天斗はそれを避ける。束は距離を置いて一度息を吐く。

 

「あーくんに突きはやっぱり避けられるかー。」

「まあねー。」

「じゃああーくんから攻めてもらおうかな。」

 

そう言ってから束は構えを解いて動こうとしない。

 

「束も千冬もいつも攻撃してくるもんね。」

 

そう言って天斗は歩いていく。緩急をつける気なんだろうか。

 

「そこっ!」

 

天斗が右手で突きを放つ。寸止めと決めたからか少し遅い気がする…束なら避けれる程度のものだ。

 

「遅いよ!…っ!?」

「これ入るかな?」

「…は?……あ、い、一本…。」

 

束が突きに対してどう避けるのか分かっていたのか…?今明らかに束が天斗の脚に向かっていったが…。

 

「上手くいってよかった~。」

「あーくんもしかして…誘導した?」

「うーん…普通に攻撃しても避けられるじゃん?なら避けた先に攻撃すればいいかなぁって。でもやっぱり自分から攻撃って難しいね。」

「な、なぁ天斗…?束が避ける先に攻撃をすると言ったがどう避けるかは分かっていたのか?」

「えーっとね…2人とも剣道の時もそうだけど相手から見て右に避けることが多いんだよね…。」

「相手から見て右に入れば相手の右を抜けてく胴をされる可能性は減るからな。」

「だから今回も右に避けるんじゃないかなぁって思ってやってみたんだよ。」

「癖と予測か…。」

「うーん…多分?」

「それじゃあ天斗、今度は私と剣で

「今日の稽古はここまで!」

…出来なかったか。」

「明日だねー、ちーちゃん。」

「だな…。」

 

みんなで柳韻先生に礼をして解散する。

 

「あ、そうだ千冬、束、後で夏祭りの射的で勝負しようよ。」

「あ、あーくん…ウチの夏祭り今年は射的は無いよ?ダーツならあるけど。」

「射的がないの…?この前テレビであんな楽しそうだったのに…。」

「最初は射的だったんだけど前にコルク銃が使えなくなったとかでダーツにしたら大人もハマったから射的とダーツ交互にしたんだって。」

「そうなんだ。」

「なら天斗、ダーツで勝負するか?」

「そうだなー…うん、やろう!」

「もちろん私もやるよー。罰ゲームとか付けちゃう?」

「罰ゲームは無しでいいよ。じゃあ6時に鳥居の前に集合でいい?」

「あぁ、いいぞ。」

「私も多分大丈夫かな。」

「じゃあまた後でね。」

 

そういやお父さん達に千冬達と回っていいか聞いてなかった!

 

 

 

~千冬side~

鳥居に集まったが天斗だけで束がまだ来ない。

 

「束遅いね。」

「そうだな…。まぁ今年は少し手伝いがあるかもしれないと言ってたし見にいくか。」

 

確か居るならお守りを売っているところにいると言ってたな。

 

「千冬は束がどこにいるか知ってるの?」

「おそらくお守り売り場だろう。神楽舞はできないし神社としてやっているならそこくらいだろう。」

「そうなんだ。」

「ちーちゃーん!あーくーん!」

 

そんな事を話してたら束が走ってきた。巫女装束で。

 

「ごめんね。ちょっと遅くなっちゃった。」

「大丈夫だ。手伝いをしてたんだろう?」

「お守り並べたり配ったりだけどね。お母さんに社務所(しゃむしょ)にいるならって装束まで着せてもらっちゃったし。」

「しゃむしょ…?ってなんなんだ?」

「うん、お守りとかおみくじが置いてあるとこだよ。」

「いいなぁ…。」

 

…天斗のそのいいなぁは何に対してなんだ!?服装とか言ったら引くぞ!?

 

「あ、天斗…?いいって一体何がなんだ?」

「え?お守りの場所って入れないじゃん。ちょっと羨ましいなぁって。」

「相変わらずの好奇心だね…。この前も刀とか置いてある倉庫入りたがってたし。」

「色々なもの置いてて面白そうだったんだもん。」

「たしかにそうだな。」

 

確か神楽舞(かぐらまい)にも日本刀を使っていたし昔の甲冑(かっちゅう)も仕舞われていたな…。

 

「よし、それじゃあどこから見てく?」

「まずは何か食べたいかな」

「焼きそばとかたこ焼きならあるよ。」

「甘いものならわたあめやベビーカステラがあるな。」

「千冬も前に来たことあるの?」

「あぁ、剣道は去年の4月からやっていたからな。去年も来たぞ。」

「そうなんだ。とりあえず焼きそばかな。」

「焼きそばならこっちだよー。」

 

そういえば束は出店の位置を全部知っているんだったな。

 

「束は場所知ってるの?」

「昨日お父さんに聞いたら出店の位置は去年と変わってないって言ってたからね~。ちゃんと全部覚えてるよ。」

「さすが神社の子だね。」

「天斗それだと神社が束産んだみたいだぞ。」

 

…ん?ちょっと待て…。

 

「…束今全部覚えてると言ったか?」

「うん。去年ちーちゃんと回ろうと思って地図見て1時間かけて覚えたんだー。」

「へー。1時間で覚えれるんだ。ちょっと見せてよ。」

「今持ってないや…。ちーちゃん持ってない?」

「回る時に見ようと思ってさっき配ってたが……これだな。」

 

ただこの地図…。

 

「コレを1時間は無理だと思うんだけど…。」

 

篠ノ之神社はなかなか広いため夏祭りの規模も大きい。その分出店の数も多いから地図に書かれる情報も多い。

 

「覚えたりするのは得意だからね~。」

「いいなー。テストとか絶対楽じゃん。」

「いいでしょ~。さて、着いたよ。」

「人すごいね…。」

「たこ焼きは中が熱くてあまり売れないみたいだよ。あーくんもすぐに焼きそばって決めちゃったでしょ?」

「まぁそうなんだけどさー。」

「とにかく並ぶぞ。」

 

人も多いが焼きそばもすぐに買えてるようだな。

 

 

 

~天斗side~

「ふー、ごちそうさまでした。」

「じゃあ次はダーツ?」

「そうだね。みんなで勝負だー。」

 

束について行って3人で移動する。そういえば罰ゲームとかどうしようかな。

 

「さて、誰から投げる?」

 

そんなことを考えてたらもう着いた。焼きそば屋さんから近かったんだね。

 

「いらっしゃい!…お、束ちゃんに千冬ちゃんかい。今年はダーツだけど競争するかい?」

「おじさんこんばんはー。今日はちーちゃんだけじゃないんだー。」

「お、新しいお友達かい?」

「うん、あーくんだよ!」

「こ、こんばんは。」

「あい、こんばんは!おっちゃんな、電気屋やってる『ゲン』ってんだ。よろしくな、坊主!」

「星宮天斗です。よろしくお願いします。」

「『アマト』だから『あーくん』ってことか。相変わらずだな束ちゃんも。」

 

元気のいいおじさんだなぁ。

 

「よし!じゃあダーツの説明をしようか!的に得点が書いてあるだろ?矢が刺さった場所に書いてある点が貰えるんだ。」

「その点数で貰える景品が変わるの?」

「そうだ!5回投げて高い得点の3つを足した点数の合計だな。290点から300点なら最新ゲーム機が貰えるぞ!」

 

外から10点、20点、30点って10点ずつ輪っかになってて真ん中が100点なんだね。

 

「一回300円だがやるか?」

「もちろん!」

「去年の射的は束に負けたからな…。今年は勝つぞ。」

「今年も負けないもんね~。もちろんあーくんにも負けないからね。」

「じゃあ誰から投げる?」

「じゃんけんで決めよっか。」

「最初はグー!」

「「「じゃんけん」」」

 

束と千冬はパー。僕はグー。…って

 

「1人負け!?」

「あーくん運がなかったね~。よし、ちーちゃん。じゃーんけーん」

 

束はチョキで千冬はパー。ってことは千冬が最初かな。

 

「私は2番目に投げさせてもらおう。」

「じゃあ私は最初だね。」

「僕は最後か…。って千冬は最初じゃないの?」

「ダーツはしたことが無いからな。最初に投げてもらったのを見てからやりたかったんだ。」

「それじゃあ束は…?」

「最初に良い点取ってプレッシャーかけたいなぁって。」

 

言われてみるとどっちも納得いくし…とりあえず2人の投げるのを見てみよ。

 

「じゃあはい!ダーツ5本ね。」

「はーい。」

 

束が投げたのは5本のうち最初の一本が下ギリギリ。1本は40点で2本は90点。最後の1本はど真ん中の100点だった。

 

「もうちょっとでゲーム機だったのになー。さて、次はちーちゃんの番だよ?」

「あ、あぁ。」

「はい、ダーツ5本!」

「ありがとうございます。」

 

千冬が投げたのは最初の1本が60点。3本は90点で最後の1本は100点だった。

 

「束と同点か…今年は引き分けになりそうだな。」

「でもまだあーくんが残ってるよ?」

「僕が100点2つと90点か100点なら僕の勝ちだもんね~。」

「お、坊主強気だなぁ!ほれ、ダーツ5本!」

「ありがとう!」

 

束と千冬の投げ方を思い出して…こう!

 

「あれ?」

 

1本目は40点だった。

2本目は上の方の70点だ。

 

「んー…あ、そっか。」

「お、何か分かったみたいだな、坊主。」

 

3本目は90点。コツが分かってきた。4本目で100点。次も100点なら僕の勝ちだね。

 

「……こう!」

 

投げた矢は100点から逸れて80点だった。

 

「ははは!流石に2人みたいにはいかなかったか!」

「出来たと思ったんだけどなぁ…。」

「あーくんの負けだねー。」

「あとちょっとだったのになー。」

「束の作戦勝ちだな。」

「よし、じゃあ景品だが…この棚から1つずつだな!」

 

『240から290』って書いてある棚の景品を指差すゲンさん。どれにしようかな…。

 

「あ、私この『浮く鉄球』がいい!」

「わ、私はその…クマのぬいぐるみで…。」

 

どうしよう…あ、

 

「このカメラがいい。」

「鉄球と…クマと…カメラか。よし、3人ともおめでとう!」

「ちーちゃんあとでクマさんもふもふさせてよ。」

「クマ五郎は渡さないからな!」

「クマ五郎って…もう名前付けてるの?」

「あっ、これは…その…」

「可愛いなーちーちゃんは。」

「可愛いねー千冬は。」

「う、うるさい!そんな事よりそろそろ神楽舞の時間じゃないのか!」

「ん?あぁ!後10分しか無い!ちーちゃん、あーくん、早く行こ!」

「あ、ちょっと待ってよ束!」

 

 

 

~束side~

神楽舞にはギリギリだけど間に合って遠いところからだけどちゃんと見れて良かったー。いつもと違うお母さんの真剣な表情は普段ののんびりさとの差もあってカッコいいけどちょっと怖いんだよねぇ…。

 

「凄かったねー。束のお母さん。」

「夏子さんと柳韻さんが戦えば夏子さんが勝つという噂もあるくらいだからな。」

「そうなんだ。」

「お父さんなら『母さんは斬れない。』とか言いそうだよね~。」

「確かに…。」

 

それにしてもお父さんに攻撃当てれるってことは強いんだろうなぁ。

 

「それでも勝つために攻撃当てれるってことは強いんだろうなぁ…。」

 

あーくんも同じ考えなんだ。

 

「確かにそうだな…。篠ノ之流は攻撃を捌くものが多いし…。」

「あっ!そろそろ花火の時間じゃない?」

 

カキ氷食べながら喋ってたらもう20時20分…花火が始まる10分前だった。

 

「もうそんな時間なの?」

「神楽舞終わったのが19時30分(7時半)だったからね。カキ氷買って戻ってきた時には20時(8時)くらいだったと思うよ?」

「そうなんだ。」

「とりあえず移動しよー。秘密の場所があるんだ~。」

 

裏の林に一箇所開けた場所がある。誰も裏の林には行かないし本当に『秘密の場所』なんだよね~。

 

「なら束、少し待ってくれ。虫除けスプレーかけ直す。」

「そうだね~。あーくんは虫除けスプレーある?」

「一応してはきたけど今は持ってないよ。…あ、お父さん見つけたから借りてくるね。」

「うん、わかったー。」

 

あーくん人混みの方に行ったけどあんなにいっぱいの中からよく見つけられたなぁ…。

 

 

 

~天斗side~

「お父さーん、虫除け持ってない?」

「ん?あー、虫除けならあるよ。……ほれ。」

「ありがと。」

 

ちゃんとしといたほうがいいよね。

 

「あ、そうだ天斗。」

「なに?」

「最後惜しかったなぁ。ここの出店とは違うけど今度ダーツしに行こうか。」

「行ってみたい!」

 

今日のダーツも面白かったけどお父さんが言うダーツは的とか距離も大人の人と同じやつらしい。

 

「…ん?そういえばなんでダーツのこと知ってるの…?お父さんいなかったよね?」

「たまたま見かけてなー。…と、そろそろ束ちゃんたちのとこ行ったほうがいいんじゃないか?」

「そうだった!じゃあ行ってくるね!」

「気をつけてなー。」

 

 

 

~束side~

「たーまやー!」

「かーぎやー!」

 

秘密の場所(裏の林)は人が少ないし花火だけが見えて綺麗なんだよね~。

 

「でも本当に凄いとこだね…。」

「去年お父さんに教えてもらってちーちゃんと来たんだよねー。」

「父さんだけ虫除けの効き目が薄くて蚊に好かれてたがな。」

「だから虫除けしてこいって言ってたんだね。」

「そうそう。今日はみんな大丈夫みたいだねー。」

「みたいだな。ただ刺されないだけで蚊は多いが。」

「蚊とぶつからないだけなのかな。花火も終わったし戻ろっか。」

 

楽しかったけど去年はココに来る人が増えるなんて考えてなかったなぁ。もしかしたらもっと友達も増えてココに来る人も増えちゃうのかな…?




はい、気付いたら6000文字でした。拙い戦闘描写も入りました。楽しい夏祭り入りました。過去最長になりました。後半のグダりが目立ちますね。
因みに夏祭りの時は小学校低学年くらいまではちゃんと保護者同伴の元行きましょうね。この回でもちゃんと桜叶さんがこっそりついて行ってます。
えー、わたくし人にモノを教える時もそうですが基本的に話は膨らみ続けます。話を締めるコツとかご存知の方いらっしゃいましたら感想欄でや「しゃーねぇなぁ」と添えつつご教授ください。(おい)
ちょっと活動報告に今後のことを書こうと思うので興味のある方はお覗きくださいませ。
それでは、また次回までお待ちくださいませ。


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弟と妹と将来の夢


大変長らくお待たせしました。今回はだいぶ短いです、すいません。
さて、数字付きのサブタイから…脱出!(最初からやれよ)
尚オーズのタイトルみたいになってるのは仕様です。嘘です。内容ざっくり表すとこうなりました。
さて、言い訳はこれくらいにして第9話、よろしくお願いします。


~千冬side~

「ただいま!」

「おかえりなさい。千冬。」

「一夏もただいま!」

 

もちろん一夏から返事らしい返事は返ってこない。母さんと父さんも一夏にもよくしゃべりかけてるから構わないだろう。それに私がただ言いたいだけだ。

 

「母さん、一夏、いってきます!」

「車に気を付けなさいよ。」

「わかってる!」

 

去年の9月に弟の一夏が生まれた。束の妹と顔を合わせたときはよく泣かれたが一夏は私を見ても泣かない。それどころか笑顔になる。わざわざ学校から道場を通り越して家に帰ってくるのも一夏に一度でも多くただいまを言って笑っているところを見たいからだな。

 

 

 

~束side~

「ただいまー!」

「おかえりなさい、束。」

「箒ちゃんもただいまー。」

 

まぁもちろん箒ちゃんから返事らしい返事は来ないんだよね~。

 

「ぁー。」

「箒も『お姉ちゃんお帰り』って言えたねー。」

「束お姉ちゃんだよ~。」

 

たばねーちゃんでもいいんだよー。なんてね。

 

「束、そろそろ着替えてきたら?」

「あ、もうそんな時間か。着替えてくるー。」

 

箒ちゃん眺めてると時間がグングン進むんだよね。

 

 

 

~天斗side~

「お願いします!」

「お願いします。」

 

今日は千冬が剣術の稽古をつけてもらうらしい。柳韻さんは木刀、千冬は竹刀を構えてる。

 

「あーくん、私たちもやろうよ。」

「束は剣術やらないの?」

「うーん…。前に教えてもらったんだけどもうすこし小太刀術に慣れてからって事になったんだ~。」

「そうなんだ。」

 

だったらちゃんと相手しなきゃだね。

 

「じゃあ、まずは一本…お願いします。」

「こちらこそ…お願いします。」

 

最初は…面が来るなぁ。

 

 

 

~束side~

「めぇん!」

 

あーくんに打ち込もうとするといつも避けられる。でも今回は分かったよ。あーくんはこのまま

 

「どぉ!」

 

胴打ってくるよね。

 

「束、ちょっといい?」

「どうしたの?」

「今僕がどう打つ前から胴打ちに対応してなかった?」

「それ言ったらあーくんも面打つ前に横に動いてたじゃん。」

「だって面打つの見えたんだもん。」

「私だって胴来るなってわかったもん。」

 

仕方ないじゃん。

 

「不思議だねぇ。」

「不思議だねー。」

 

なんか打たれそうなとこがゾワゾワするんだよねー。

 

「じゃあ続きだね。」

「うん。」

 

 

 

~千冬side~

「ただいまー。」

「おかえりなさい、千冬。お疲れみたいだね。」

「覚えることもやる事も多くて疲れたぁ…。」

 

柳韻先生から直接剣術を教えてもらえるのはわかりやすい反面難しい。やり方は分かっても身体をその通りに動かしきれない。

 

「千冬、ご飯出来てるから手、洗ってきなさい。」

「うん。」

 

…洗面所遠い。

 

 

 

~天斗side~

「はい、今日は皆さんに作文を書いてもらいます。」

「えー。」

「めんどくさーい。」

 

何書くんだろ…。

 

「静かにー。作文のテーマは『将来の夢』についてです。みんなも5年生。10歳になりましたね?大人になったらこんな事がしたい。こんな仕事をしたい。そんな事を少し考えてみてください。出来るとか出来ないは考えなくていいです。何がしたいかを書いてみてください。」

 

将来の夢かぁ…。

 

「来週のこの時間で回収するので今日書けなくても宿題になります。」

「はーい。」

「せんせー。どれくらい書けばいいのー?」

「少なくとも原稿用紙の8割…16行目までは書いてくださいね。たくさん書ける人は原稿用紙2枚でも3枚でも大丈夫ですけどたくさん書きすぎると先生が読むの大変だから気をつけてくれると嬉しいなー。」

 

そんなに書ける人いるのかな…。でも将来の夢…なににしよう。

 

 

 

~千冬side~

「作文か…。将来の夢…何書こう。」

 

将来の夢とは言えないかもしれないが…。やりたい事ならあるな。

 

「あーくん達は何にしたの?」

「まだ秘密ー。というか書けてないんだよね。」

「一緒だねぇ…。ちーちゃんは?」

「私か?そうだな…今は道場で剣術習ってるのが楽しいから…篠ノ之流剣術を全部覚えること…くらいか?」

「それって単純に目標なような…。」

「し、仕方ないだろ!やりたい事がこれくらいしか思いつかなかったんだ…。」

「でもそっか…そういうのでもいいんだねー。」

 

篠ノ之流剣術といえば…

 

「束は篠ノ之神社を継いだりはしないのか?」

「あー…そういえばそうだね。どうなんだろ?」

「知らないの?」

「まだそういう話はしてないよ。まだ神楽舞も出来ないしね。」

「そうなんだ。」

「動きだけなら覚えたんだけど神楽舞としてはまだまだみたい。」

「毎回夏子さんの神楽舞撮ってたしな。」

「うん。それで動きだけは覚えれたんだ~。小太刀術も少しずつ慣れてきたし…。」

「そうなんだ。あ、もう神社だね。束、また後でね。」

「うん、また後でね。」

 

そんなことを話していたら篠ノ之神社に着いたか。

 

「また後でな。」

「急いでくるね~。」

 

あと信号2つで一夏に会える…!

 

 

 

~束side~

「ただいまー。」

「おかえりなさい。」

「箒ちゃんはー?」

「箒なら寝てるよ。起こしちゃ可哀想だから静かにお願いね。」

「はーい。」

 

箒ちゃん…あっ。

 

「お母さん今日アルバムってどこだっけ?」

「アルバム?全部押入れに入ってるけど…どうしたの急に。」

「ちょっと宿題が出たから見ようと思って。」

「どう使うかはわからないけど…稽古に遅れないようにね。」

「はーい。」

 

確かあの時撮った写真があるはず…。

 

「あっ、あった!」

 

家族や友達との写真とは別の…2年生の夏休みにキャンプに行ったときから撮り始めた星の…宇宙関係の写真のアルバム。

 

「確か去年の6月19日だから…。見つけた。」

 

女性宇宙飛行士が地球に帰ってきてから講演を開いたときの写真。『性別という壁を超えて宇宙から見た地球は美しかった。』『星も地球から見るのとはまた違う見え方があった。』って言ってたっけ…。

それに宇宙服も完全じゃないとも言ってたし…。

 

「皆が安全に宇宙に行けるような物を作ったみたい…かな…。」

 

まだ誰にも言ってなかった『宇宙』への夢…。行くのかも観測なのかも決めてなかったけど…。

 

「お父さんやお母さんや箒ちゃん、あーくんやちーちゃんと行けたらきっと楽しいよね!」

 

今決めた。誰でも宇宙に行けるようなモノを創る!




気付いたら産まれていた一夏と箒。そして突如決まった束の夢とは一体なんなのか…。
はい、一夏と箒の登場と3人の学年とかなんかそういうのの擦り合わせに悩んでました。楽しかったです。
さて、次は頑張って早めにしますのでまた次回、よろしくお願いします。


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パソコンで沖縄

えー、前回で早く書くと言いました。約1ヶ月。なにも変わっていないじゃないかと打ちひしがれている雪音でございます。日常回って難しい。
さて、言い訳とかなんかそういうのは止めて今回から漸く原作に向けて色々なものが出てきます。…あれ?なんで文字数少ないんだろ。()
ぐだぐだするな?はよつまらない本編見せろ?そこまで言うなら短さとぐだぐだぷりに腰を抜かす準備はいいですか?私は抜けてる。
それでは第10話よろしくお願いします。


~天斗side~

「着いたー!」

「あーくん元気だね…。」

「飛行機なんともないのか…。」

「大丈夫だよ?2人は…大変そうだね。」

「耳が痛い…。」

「気持ち悪い…。」

「束宇宙行きたいのにそんなんで大丈夫なの?」

「大丈夫なやつ作る…。」

 

小学生最後の春休み。みんなで飛行機に乗って…

 

「めんそーれー。」

「め、めんそーれ?」

「沖縄語でようこそだっけ?」

「あーくん沖縄語ってなにさ。せめて沖縄弁でしょ?」

 

沖縄だー!

 

「ほらほら、3人ともそろそろ移動するよ。」

「はーい。」

 

料理とか文化が独特ってお父さん言ってたけどどんなものがあるのかなー。

 

 

 

~桜叶side~

束ちゃんがネットの抽選で沖縄旅行券を当てたおかげで沖縄に来れたけど…夏子さんは箒ちゃんの面倒、柳韻さんは道場、秀十さんと恵理さんは仕事と一夏くんの面倒を見て…由香ちゃんは用事…と。保護者が1人ってのはどうしたものかなぁ…。

3人ともいい子だからトラブルはそんなになさそうだけど…

 

「た、たたた束!大丈夫なのか?」

「あははは!ちーちゃんビビリすぎじゃない?豚の頭だけど飾りだよ?」

「それはそうだが…。」

「千冬ってこういうの苦手なんだねー。」

「うぅ…。」

 

千冬ちゃんが商店街の豚の頭に困惑したり

 

「海だー!」

「綺麗だな…。」

「眩しっ!目がぁ!」

「あーくん大丈夫?」

「サングラスならそこで売ってたぞ。」

「天斗おんぶしてやるからしばらく目閉じてな。」

 

天斗が海で眩しさにやられたり

 

「うねうねしてるー。」

「天斗はこういうの平気なんだな。」

「触ってみると意外と可愛いよ?」

「2人とも…よくナマコなんて触れるね…。」

 

束ちゃんが水族館でナマコに距離置いてみたり

 

「3人とも食べたいもの決まった?」

「読めない…。」

「想像つかない…。」

「なんかこのお茶慣れない…。」

 

夕飯を食べようと店に入ってみんなで地域性にやられてたり…由香ちゃんがいればもう少し楽だったんだろうなぁ。

 

「さて、部屋に着いたのはいいけど…全員で一部屋か…。天斗はいいとしておっさんはどうしたもんか…。」

「えーっと…別に私たちは大丈夫ですよ?ベットも4つありますし…。」

「あー…そうなんだけどね?心配してるのはそこじゃなくてね…。」

 

そう、寝場所は良い。なんなら和室スペースと洋室スペースとあるからむしろ安心だ。ただ問題は…

 

「みんな枕投げするでしょ?おっさんが本気出していいものかと…」

「え?枕投げするの?」

「というか…していいんですか?」

「え?しないの?」

「流石束ちゃん。したいよね?」

「はい!」

「あ、でもお父さん…多分枕投げ一番弱いのお父さんだよ?」

「私たち3人とも武術やってますし…。」

「そういえばそうだった…。」

 

そういえば3人とももう大人相手に負けないって前に呑んだ時に柳韻さん言ってたな…。流石に昔取った杵柄じゃ負けるよなぁ。

 

「まぁ大丈夫でしょ。かかってきなさい!」

「じゃ、じゃあ…。」

「遠慮なく…。」

「行きますよ…?」

「5年前の枕投げチャンピオンの実力を思い知らせてあげよう!」

 

 

 

~天斗side~

「絶対枕投げだけじゃないじゃん!」

「昨日あんだけ負けといてお父様の実力を疑うか!」

「強いけど絶対昔なにか武術やってたよね!」

「強いのと武術はイコールじゃないぞ。特に枕投げと武術が結びつくわけないじゃん。」

 

昨日の枕投げは僕たちのボロ負けだった。お父さんの投げ方も足捌きも普通じゃなかった。

 

「千冬も束もそう思うよね!」

「武術かどうかは分からなかったが…どこを狙ってるのかはわからなかったな。」

「多分枕が離れるギリギリまで投げる場所変えれると思う。」

「ほら!明らかに何かやってた!」

「武術はホントにやってないんだけどなぁ…。天斗、お父さんの得意なスポーツを2つ答えよ。」

「何?急に。」

「いいからいいから。」

 

お父さんの得意なスポーツ…。確か

 

「バスケと…バレーだっけ?」

「せいかーい。」

「それと枕投げとどう関係が…?」

「バスケのパスの要領で投げました。」

「でも避けるのとは関係ない気が…。」

「バレーの球より遅いし予測すれば余裕です。」

「じゃあ僕を倒して上に乗れたのは?」

「天斗は目がいいから倒しときたかった。やり方はただの手品です。」

 

もう訳がわからない…。

 

「まぁ手品は帰りの飛行機で教えてあげるからさ。そろそろ機嫌直して出かけようよ。」

「絶対だよ?」

「分かった分かった。」

「あ、桜叶さん私も教えてもらってもいいですか?」

「私も知りたいです。」

「ダメです!」

 

そんなことしたら勝ちにくくなっちゃうからご遠慮願いたい。

 

「天斗はなに言ってんの…。教えるのはいいに決まってるでしょ。けどちょっと違う手品になるよ?それでもいい?」

「違うものですか…。」

「多分私たちじゃ使えない手品だからだな。」

「千冬ちゃん正解。さて、万座毛行こうか。」

 

うーん…僕に使えて千冬たちには使えない手品ってなんだろ…。

 

 

 

~桜叶side~

「はーい目の前に広がります海を楽しみながら~左手に見えますのがー…ぶっちゃけなんであんな形になったのか訳のわからん象の鼻の岩でございます。」

「すごーい!」

「本当に象の鼻みたいだな…。」

 

波の影響とか色々ありそうだけどホント不思議だよなぁ…。

 

「でもなんで鼻の先は削れたりしないんだろうね…?」

「なんでだろうな。」

「世界七不思議だから触れちゃいけませーん。」

「束ちゃんそんな七不思議ないからね?」

 

そんなことしたら七じゃ足りなくなりそうだし。

 

「さて、後ろに見えますのが寝っ転がるのに最適そうな草原でございます。周りもみんな写真撮ってるし僕たちも撮ろっか。」

「はーい。」

「でもどうやって撮るの?」

「ん?あぁ、それは束ちゃんが良いものを…。」

「持ってるんだよ!」

「その名も…。」

「自撮り君ー!」

「地鶏…?」

「どうやって使うんだ?」

「これはねー、スマホを付けて…これで手元のボタン押せば写真が撮れるんだよ。」

 

ウチの社員が手伝ったとはいえしっかり機能するものを作れたしおじさんは満足ですっと。

 

「これはすごいな…。」

「桜叶さんの会社の3Dプリンター使ったんだ~。」

「誕生日プレゼントで会社のもの使う権利ねだるなんて初めて見たよ…。」

「幾つか束ちゃんにテストを受けてもらって合格した上でちゃんとルールは守ってもらうことが条件だけどね。」

「どんなテストだったの?」

「会社の事もあるから問題の中身は言っちゃダメど入社試験よりちょっと難しくしてあったんだけどね…2週間で受けに来るとは思わなかったよ。」

 

本来なら応用出来るまで時間をかけて学習するはずなんだけどなぁ…。束ちゃんは単純に記憶力が凄いというより学習能力…効率が凄いんだろうな。ま、そんなことより

 

「写真撮るよー。1+1はー?」

「「「にー。」」」

 

 

 

~???side~

「あー…耳痛い…。先輩はなんで平気なんですか。」

「気圧の差で違和感出るなら鼻摘んで鼻から息出せって言ったろ?」

「そうでしたっけ?先輩ときどき話したつもりで話してないときあるからなぁ。」

「今回は言ったはずだが…。まぁ良い。さっさと仕事を済ますぞ。」

「せっかく沖縄に来たのに…。」

「研究所のデータを盗むだけなんだ。さっさと終わらせたら沖縄の飯食って帰れるぞ。」

「あ、じゃあ自分ソーキそば食べたいです。」

「おーおーなんでも好きなんもん食え。そんなことより…そろそろ着くぞ。」

「わかりました。自分は外部からセキュリティの無効化。」

「俺は内部でデータの取得。いつも通り我々に繋がるものは一切残すな。見つからない限りは殺すな。」

「ただし見つかれば殺せ。ですね。」

「分かっているならいい。始めるぞ。」

「「我らの望む國のために」」

 

 

 

〜天斗side〜

「ただいまー!」

「ただいまー。」

「2人ともおかえりなさい。沖縄はどうだった?」

「もう色々凄かった!」

「詳しくはご飯食べながらかな。天斗、手洗いに行くぞ。」

「はーい。」

「今日は手巻き寿司するからちゃんと綺麗にしてきてね。」

「はーい。」

 

てっまきっずし〜。マグロとネギトロどっちから食べようかな〜。




あー…また沖縄行きたい…。
どうでしたでしょうか10話目。大体4500文字近くは書きたいなぁと思う反面追加しようとするとグダるかもっと遅くなるというバグ。(技量不足)
でも書きたいもの書いてこれなので許してください原作近くなったら文字数増えるので(震え声)
因みに相方に見せた時第一声は「枕投げ専用パッケージを作ろう!」でした。そんなことしたら臨海学校荒れますね。楽しみです。
さて、今回なんか謎の視点入りましたね。一体どんな人たちなんでしょうねスットボケ
無駄話はこの辺にして
誤字脱字には気を付けていますがもしあればご報告ください
それではまた次回お会いしましょう


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企業と国

細かいとこ見落としてたのを指摘され助かった雪音です。
珍しく早く書けたと思いきやチグハグなところが多いという典型的なミス。よろしくないですね。
さて、今回三人称視点入れてみました。久しぶりの三人称ちょっと楽しかったです。
さて、第11話よろしくお願いします。


~束side~

「こんにちはー。」

「おー、嬢ちゃんお帰り。今日は何作るんだ?」

「うーんそうだなぁ…。」

 

蜘蛛型ロボットは先週で完成したし…。次は何作ろう…。

 

「何作ろう…。」

「珍しく決まらないみたいだなぁ。」

「先週蜘蛛が完成したし今度は空を飛ばしてみたいとは思うんだけど…。」

「まだどんな形にするのか決まってないのか。」

「うん…。」

 

鳥みたいな羽ばたいて飛ぶのがいいけど明らかに重すぎるし…。

 

「なるほどなぁ…。ならまずは夢の話でもするか?」

「夢の話…?」

「あぁ、夢の話だ。夢と言っても嬢ちゃんの言う『宇宙に行く』ってやつじゃねぇ。嬢ちゃんがモノ造るときにゃこの世界の法則に縛られてるだろ?材料力学やら機械工学やら流体力学やら熱力学とかいった法則から資金やら加工技術やらの物理絡まねえとこまで雁字搦めじゃねぇか。」

「うん。」

「コンピュータ使ったところでシミュレーション結果は現実のものと変わらねぇ。でもな?頭の中でなら自由だろ?プログラムも材質も未知の技術でも自由に使えちまうんだ。」

「未知の技術でも自由に…。」

「そう、その想像の…妄想()の技術を現実に持って来れるかは別だがな。でもよ、こんだけ自由なら一つや二つ思いつくだろ?」

 

存在しなくてもいい…空を飛ぶ技術…。

 

「プロペラ無しでも飛べたり…ある程度重さを軽減できるようなもの…。」

「デカく出たなぁ。なら次だ。実現するならどうすりゃいい?」

「どうすれば…?」

「物体の重さってのは重力によるもんだろ?」

「重力と反対向きの力をかける…。」

「だな。」

「コレがなにになるの?」

「基本的にはリフレッシュだな。それにちょっとワクッとするだろ?」

「するね。」

「ならいい。時々こうやって息抜きしねぇとつまんねぇからな!」

 

確かにずーっと思い詰めても良くないもんね!もう空に浮けるものじゃんじゃん作って…ん?

 

「ゲンさんこれなんの解決もしてないよね?」

「さー、仕事仕事。忙しいなー。」

「ゲンさん!」

 

はぁ…。でもやっぱりちょっと楽しいかな。

 

 

 

~千冬side~

「お願いします。」

「お願いします。」

 

最近柳韻さん(師範)の構えが変わった気がする。見た目が大きく変わったわけではないが明らかに攻め手は違う。

 

「そこっ!」

「甘い。」

 

剣道で言えば面を狙った剣。それを師範は横にズレて避ける。そして私の剣に剣を当て沿わせて近付いて来る。

剣は…左にしか振れない。その場合背を見せる事になる。体ごと左に動けば仕切り直せるか…?

 

「遅い。」

 

左に動く瞬間に下から剣を跳ね上げられ師範の剣は首筋に迫っていた。

 

「参りました…。」

「少し焦ったな。相手が崩れてないのに決めにかかるからただでさえ大振りになるものが更に大振りになる。」

「はい…。避けられて剣を振れる方向を限定され寄られました。ところで師範。ここ2、3日で師範の構えとが変わったと言いますか…体捌きが変わったと言いますか…上手くは言えませんが何か変わった気がするのですが。」

「ふむ…無理にどこがどう変わったかじゃなくていい。どう感じたか言ってみなさい。」

「はい。…前までは…どこか直線的で…爆発的な感じがしました。」

「それから?」

「今は…爆発的な事には変わりないのですが…柔らかい…というか…今まで『グワー!』っと来てたのが今は『スッ』と来るというか…」

「分かった分かった。それにしてもグワーとスッか…。くくっ…」

 

師範が笑いを噛み殺してるのが分かる。感覚を言葉にするなんて滅多にないからやはり擬音になってしまう。

 

「というか師範いつまで笑ってるんですか!」

「…あぁ、すまない。少し嬉しくてな。」

「という事は…。」

「その感覚は正しい。よく見ていたな。」

「ありがとうございます!ただ…見ていたというよりは…感じたんです。こう来るだろうって。」

「感じた…か。ならその感覚は大切にしなさい。そしていつか自分の武器に出来るよう磨きなさい。」

 

自分の…武器…。

 

「はい!」

 

 

 

~Out side~

「経過の方はどうだい?」

 

スーツ姿の男が研究員らしき女に声をかける。

 

「うーん…なかなか上手くいきませんね…。確かに機械としては働きますが生体ナノマシンとしてはまだまだ使えない段階です。」

「そうか。具体的な改良案とかはあるかい?」

「そうですね…まず、ナノマシンとしては8割方完成と言って差し支えないと思います。今足りていないのはナノマシンとして生体に対して害の少なくて済む素材と使用目的の具体性といったところでしょうか…。」

「素材と具体性か…。で、それから?」

「はい、素材がない事には具体性を示されても仕方ないので別の班で素材の研究は進めてもらってます。」

「なるほど。引き続き頼むよ。」

「はい、分かってます。」

 

一頻り会話をした男は離れ電話をかける。

 

Guten Tag. (こんにちは。)Herr.Bruno.(ブルーノさん)

 

 

 

~桜叶side~

「し、社長!ニュース!ニュース見てください!」

「お?慌てるなんて珍しいね。何チャンネル?」

「受信料の取立てが来ないチャンネルならどれでもいいですよ!まずはテレビつけてください!」

 

珍しく慌ててると思ったけど意外と冗談言う余裕はあるのね、っと。

 

『…う国でこれまで知られていない、鉱石のカケラと思われるものが発見されました。ルクーゼンブルク公国では先日隕石の落下が観測されており、一部では隕石の一部ではないか。という説も挙げられておりルクーゼンブルク公国は新発見の鉱石の研究を進めており…』

 

こんな面白そうなものワクワクするね。でもまぁ…見ただけでこうもなるか?

 

「なるほどね。で、確かに面白いがあれだけ慌ててたんだ。何か理由があるんだろう?」

「は、はい。先ほどルクーゼンブルク公国の研究員を名乗る方から電話がかかってきまして…社長を出してくれと。」

「ルクーゼンブルグ公国で新鉱石が見つかったタイミングだったから信ぴょう性もある…と。」

 

言いたいことは分かる。でもなぁ…解析に忙しいであろう公国の研究員が?わざわざこんな日本の一企業に…?

 

「まぁいいか…。ありがとう。電話はどうなってる?保留?折り返し?」

「もちろん折り返しです。」

「わかった。」

 

佐々木くんが出ていくのを見送って電話番号を確認する。検索してみれば詐欺の類ではない…どころが大物だな。

 

「もしもし、(わたくし)天の川コーポレーション社長の星宮桜叶と申します。先ほどお電話頂いたようで…。」

『星宮社長、突然のお電話失礼いたしました。ルクーゼンブルク公国、国立研究所所長のアレス・ハスターです。』

「これはこれは…ご丁寧にどうも。ではハスター所長、単刀直入で申し訳ありませんが本題に入っていただいてもよろしいでしょうか。」

 

この話は確実に新鉱石に関わる。さらに言えば長引くな…。

 

『そうですね。では率直に…もう発表があったと思いますがこの度ルクーゼンブルク公国で未知の鉱石が発見されました。それに伴い私たちも総出で解析を進めているのですが…。』

「なかなか解析が進まないと…。」

『その通りです。』

「そちらが行き詰っていることは理解しました。しかしなぜわざわざ遠く離れた日本の企業(ウチ)に連絡を?」

『機械産業で名をはせる天の川コーポレーションには独自の計測機器があるとのうわさをお聞きしまして…。もしよろしければそれ相応の謝礼を支払いお借りできないかと思いまして。』

「ウチにあるのは独自の計測機器だけではなく社員たちの知識と経験によるものですので…。それに独自と言っても社員が見やすいように改造しただけですしね。」

『そうでしたか…。』

 

わざわざウチを頼りに来てるんだ。ある程度の無茶と提案は出してみるか。

 

「…もしよろしければ天の川コーポレーションと合同研究とさせていただけないでしょうか。」

『合同研究…ですか。確かに下手に行き詰まるよりよっぽど良い…。しかし…』

「国を挙げての解析ということもあり国の面子(メンツ)がある。国益も絡む。だからすぐにはイエスと言えない…と。」

「えぇ、その通りです。」

「ならこうしませんか?今から"合同研究した場合の最終的なこちらに対する報酬やその後"を検討する。それを後から貴方が国で相談して、そうだな…2週間以内に答えを出していただく。これでどうでしょう。」

『確かにそれならば国王や大臣からの指示して仰げます…。分かりました、そうさせていただきます。』

「ありがとうございます。ではこれからどうするのか…文面に残したいのでメールにしませんか?こちらのアドレスは…」

 

さて、あとはどこまで互いに擦り合わせられるか…。未知の物体とか一生に一回解析できるかどうかだし意地でもこじつけようそうしよう。

 

 

 

~秀十side~

「所長、件の生体用マイクロマシンのことなんですが実験用マウスに投与したところマウスの活動による生体電気のみでGPS信号の発信を確認しました。」

「部位別に変化は?」

「一部発信のない箇所もありましたがこれならナノマシンへの転用の目処が立つかと。」

 

今回の実験のデータを所長に渡す。

 

「今回の筋肉内注射で生体に影響は?」

「注射後しばらく炎症は見られましたがそれ以外には特に。」

「素材による拒絶反応は無しか…。」

「このままナノマシンに転用出来ればとかんがえています。」

「なるほど…。この調子で頑張ってくれ。」

「はい。」

 

…19:00にタイマーセットしとくか。

 

 

 

~千冬side~

「ただいま。」

「お帰り千冬。」

「おねえちゃんおかえりー。」

「一夏もただいま。」

 

一夏が母さんの後ろをついて歩いてくる。だいぶしっかり歩けるようになったからか私が帰ってくるとゆっくりでも絶対に自分で歩いて出迎えてくれる。でも決まって

 

「つかれたー。」

「はいはい。一夏はリビング戻ろうね。」

 

疲れたと言って母さんに甘える。

 

「さ、千冬も汗かいてるでしょ?お風呂入っちゃいなさい。」

「ありがとう。」

 

 

 

~束side~

「ただいま〜。」

「おかえりなさい。もうすぐご飯出来るから手洗ってらっしゃい。」

「はーい。」

「おねえちゃんおかえりなさい。」

「箒ちゃんもただいま~。」

 

箒ちゃんがお母さんと一緒に出迎えてくれる。

 

「ほーきもついてくー。」

「よし、箒ちゃんも一緒に手洗いに行こ〜。」

 

最近ちょっと走れるようになってそれが楽しいみたいで箒ちゃんは小走りで洗面所に向かう。お母さんは大丈夫みたいだけど転んだりしないかなぁ…。

 

「箒ちゃん気をつけてよー。」

「はーい。」

 

 

 

〜天斗side〜

「ただいまー。」

「おかえりー。」

 

今日は千冬(剣術)の日だったから空いた時間でひたすら手品の練習して走って大人と組み手して走ってを繰り返してたけど思ったより手品ができない。

 

「母さーん、父さんはー?まだー?」

「今日は遅くなるって電話あったわよ。なんで?」

「ちょっと聞きたいことがあったからー。」

 

手品のコツとかキモとか。

 

「明日の朝なら聞けるかな。」

「2人とも早起きすればね。さ、ご飯出来たよ。」

「はーい。」




いかがだったでしょうか。
主人公出てこない?気のせいです。なんか今回大人が多かったですね。でも書く側はあまり成長とか考えなくて良いので楽だったりします。
さて、次かその次で鬱展開が待ってます。ぶっちゃけ書きたくないです。でも書きます。(うるさい)
今回はこれくらいにしてまた次回お願いします


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自由人

自由人。良くも悪くもマイペースな人間。多分皆さん周りに1人はいる、もしくは自分がそうだってタイプの人間ですね。
正直1話の中で話が飛び飛びになるのも如何なものかと思いながら視点変更でどんどん時間が進んでいきますごめんなさい。(今更)
今回は鬱じゃないです。大丈夫です。
それでは12話目よろしくお願いします。


~Out side~

寝癖のついた男がキーボードを打っている。

 

「はぁ…。微妙に寝足りない…。」

 

あくび混じりに文字列を形成していく。6つの画面に現れたのは6つの会社のページ。

 

「ここらも外れかぁ。」

 

男はぼやきながらまた別の文字を打ち込む。

 

「…あ?」

 

男はある一つのページに目をつけた。

 

生体マイクロマシンに関する報告書

 

「へー…マイクロマシンとはいえ生体からの拒絶反応無しか。しかもアイツがなぁ…これは使えるかもな。」

 

 

 

~天斗side~

「あーくーん。助けてー。」

「束どうしたの?」

「それがねー…最近ちーちゃんがどんどん強くなってくじゃん?」

「うん。確か師範といい勝負って言ってた。」

「でしょー?でさでさー。ちーちゃんったら最近…

「私がなんだって?」

…あっちーちゃん…。」

 

いいとこで千冬が来たせいで束が固まってる。というかこんな漫画みたいなことってあるんだねぇ。

 

「お前は天斗になに吹き込もうとしたんだ!」

「別に何も吹き込もうとはしてないよ!」

「じゃあ何を言おうとした!」

「最近後ろから驚かそうとしても全部バレるって…。」

 

束まだそんな事してるのか…。なんで誘ってくれないんだ!

 

「なんで誘ってくれないのさ!」

「お前はなんでそんなに乗り気なんだ!」

「だってあーくん最近休み時間はずっと男子に囲まれてるじゃん!」

「みんなが寄ってくるんだから仕方ないじゃん!」

「そんなこと言ったってコッチは話しかけにいけないし寂しいんだよ!」

「そもそも私を驚かすのにそんなにヒートアップしなくても…。」

 

千冬が何か言ってる気がするけど今はこっちが大事なんだ!

 

「そんなこと言ったら束だってこの前女子に囲まれてたじゃん!」

「あれは宿題写しに来ただけだし私は一言も会話してませんー!」

 

 

 

~千冬side~

はぁ…なんでこの2人はこんなに話を聞かないんだ…!

 

「束!天斗!」

 

声をかけても2人はこっちを見ない。

 

「おい!」

 

肩を叩こうとしても避けられる。寧ろそこまで見えてるなら止まってくれ。

 

「あぁぁ!もう!天斗!束!」

「「うるさい!」」

「なっ!」

 

なんで私が怒られるんだ!

 

「2人とも…。」

 

威力はいらない…ただ2人の思考を止めればいい…。

 

「人の話を…。」

 

師範が言ってた…力むと遅くなる。いらない力は抜いて…ただ速く…。

 

「聞けぇ!」

 

振り抜く!

 

「ぎゃッ…!」

「ッ!」

 

思いの外すごい音が鳴ったな…。束に関しては声も出ないほど痛いらしい…。

 

「千冬今…何したの…。」

「いつまで経っても人の話を聞かないからはたいた。以上。」

「そうだけど…そうじゃなくて…。」

 

天斗は話せるようだが束はまだまだダメみたいだ。怒りにまかせすぎたな…。反省。

 

「何をどうやったら目で追いきれないぐらい速くなるのさ…。」

「力を抜いて…こう…。」

 

天斗にさっきと同じことをして見せる。どうせ眼が良いんだ。話すよりよっぽど伝わるだろう。

 

「なるほどなるほど…。で、叩いてまで止めたのはなんで?」

「私の話をしていただろう?それについて聞こうと思ってな。」

「あー…千冬が最近強くなったって話でねー。」

「それと驚かすのとなんの関係が…。」

「それは束に聞いてよ。」

「そうだな。」

 

意識して息を潜めてるんだ…痛みからは回復してるだろう。

 

 

 

〜桜叶side〜

「ただいま〜。」

「あら、お帰りなさい。早かったのね。」

「あー…うん、早いんだけどさ…。」

 

うん、たしかに今5時半(17:30)だし普段よりだいぶ早い。でもなぁ…

 

「この後また会社に戻らないと行けないんだよね。」

「珍しい…しばらくはこんな感じになりそうなの?」

「あー…多分1週間くらいはなるかもなぁ…。最悪泊まりかも。」

「鉱石の解析だっけ…?大変ね。」

「まぁさー面白いからいいんだけどさー。面白いんだけどなぁ…。」

「なかなか大変?」

「そりゃもちろん。まぁそんなわけだからしばらく夜ご飯はいりません。」

「ちゃんとご飯は食べてよ?あと睡眠もちゃんと摂ること。」

「わかってるよー。食べるようにするしなるべく寝るようにも」

「ん?」

「ちゃんと食べてちゃんと寝ます、はい。」

 

星宮家家訓第二条、星宮家の女性陣を怒らせてはいけない。なぜか皆怒ると怖いんだよねぇ…いやまぁ怒ってるから怖いのは普通なんだけど。

 

「よろしい。それより時間は大丈夫?」

「ん?あ、そろそろか。じゃあ行ってきます。」

「はいいってらっしゃい。」

 

なんか夜にいってきます言うのも変な感じだなぁ。

 

 

 

〜束side〜

「うーん…これでもないんだよねぇ…。あ、でもこの式を使えば……ダメか。」

 

目の前の紙にどうしたいか書き殴る。重力を消す。もしくは力を生み出して制御する。

 

「これ…も違う。もっと自由な向きに出せるようにしないと。」

 

頭の中にあるありとあらゆる公式を確認して試して否定する。全く違う分野のもの同士でも関係なく混ぜてみる。当てはまるものができない。

 

「どうしたらいいんだろ…。」

 

自慢じゃないけど私は一度見たものは覚えてるし自由に思い出せる。だから勉強は出来るし神楽舞だって覚えた。なんなら箒ちゃんが話したことも一言一句間違えずに言える。証明できる人はいないけどさ。

最初のうちは他の子とも仲良かったけど一年生の三学期からしばらく…あーくんと会うまでは『天才だから自分たちとは違う。』って避けられてたっけ。あ、でもちーちゃんは一緒にいてくれたなぁ。まぁ最近のちーちゃんも大概だと思うけど。

 

「んー…これもダメかぁ。」

 

そういえば…なんであーくんはあの時寄ってきたんだろ?割と色んなクラスに私の噂は広まってたはずなんだけどなぁ。

 

 

 

〜千冬side〜

私は今何を見ているんだ…

 

「見て見て千冬ー。」

 

何をどうやったら…

 

「高速パンチ〜。」

 

サンドバッグを動かさずにあの音の打撃が出せるんだ。

 

「あ"ー…疲れたぁ…。」

「だろうな…。というかなんなんだ今の打撃は。サンドバッグが動かない程弱い打撃な訳ないだろう?それに拳ではなく掌底で撃っていたはずだが?」

 

むしろ弱くてもサンドバッグは多少動く。

 

「高速掌底とかマッハ掌底じゃなんかカッコ悪いじゃん。」

 

あっけらかんとそんなことを言う天斗(バカ)

 

「聞きたいことは名前なんかじゃなくて何をしたかだ。掌底打ちなのは分かっているからサンドバッグが動かない理由をだな…。」

「えーっとね。こう、脚の力は抜いて身体を脚の上に乗せるイメージで…こう。」

 

そう言いながら円状に動きながら手を出す。さっきまでバテてたはずなのに。

 

「今は疲れてるからこれくらいでも大変だけど頑張れば結構速いよ。」

「見たから知ってる。」

「千冬でもこの高速パンチは避けれないはず!」

「でもパンチではないだろう?」

「うん。でもパンチ。」

「だからパンチでは…。」

 

はぁ…名前なんて対象が動けないのに掌底打ちをしてるから掌底地獄とかでいいではないか。言わないが。

 

「よし!千冬組み手しよ!」

「絶対今の技使うじゃないか!第一私は無手は苦手なんだ!」

「一回だけだから!最近誰とも組み手出来てないし!」

「ぐっ…。仕方ない…一回だけだぞ。」

 

確かに剣術…剣道を学びに来る人は多くても無手を習いに来る人はあまりいない。たまには付き合ってやるか。

 

「じゃあ次の分針の音で始めね。」

「分かった。」

 

…そういえば円状に動くなら薙ぎ払えばよくないか?使ってきたらやってやろう。

 

 

 

〜天斗side〜

「薙ぎ払うなんて危ないジャマイカ!」

「なにがジャマイカだ!難なく避けたクセに!」

「だって避けなかったら当たるじゃん!」

「当てに行ってるんだから当たり前だろう!」

「それでも当たらないけどね!」

 

頭の悪い会話してるなぁと思いつつもここで渾身のドヤ顔。千冬って負けず嫌いだからこうしておけばもう一回組み手が…

 

「なんだそのムカつく顔は!」

 

出来ませんでした。綺麗な体重移動だなぁ…一つ目防いだと思って油断したらもっと速い二発目来るなんて…。

 

「うぁぁ…腹いせで篠ノ之流の技使うのはどうかと思う…。」

「今のは篠ノ之流ではないぞ?学んだことを使ってはいるが。」

「え?」

「…ん?」

 

え?それであんな技作れるの?千冬年誤魔化したりしてない?ホントに同い年?

 

「学んだことって…?」

「二刀でやる技を見せてもらってな…。一刀でなんとか出来ないかと練習した。」

「千冬ホントに同い年?年誤魔化してない?」

「同い年に決まってるだろう。」

「だよねー…。じゃあ次は武器アリで一本…。」

「剣を使って良いんだな?」

「なに使ってもいいよ。」

 

千冬は剣持ったときの方がバランス良いからなぁ…才能ってすごい。

 

 

 

〜Out side〜

「これは凄い…。」

 

鉱石を前に男は呟く。

 

「こんな能力まで持っていたなんて…。」

 

隣の男も呟く。

 

「でもなぁ…面白いだけで実用性ないんだよなぁ。」

「そうなんですよねぇ。」

 

神妙な面持ちだった2人(桜叶とアレス)は2人して大きなため息をつく。

 

「凄いエネルギーがありそうなのは分かりました。固有振動数を変動させられることも分かりました。凄いけどそうじゃない!」

「凄いエネルギー秘めた時計でも作りますか?楽器でも良いですよ?」

「この時計には秘められた力がある…使い方は分からんがな!」

「秘められすぎですがね。」

 

この2人もはやヤケクソである。

 

「なんかそれっぽい窪みがあるのは計測されてるんだけどなぁ…。」

「はぁ……。…え?」

「ん?」

「今なんて言いました?」

「ん?って言いましたね。」

「その一個前です。」

「なんかそれっぽい窪みがあるのは計測されてるんだけどなぁ。」

「…窪み?」

「…はい、窪み。」

 

そんなもの今初めて知ったという顔のアレス。

とっくに知ってると思ったという顔の桜叶。

 

「自然発生した傷とか窪みではなく…?」

「サンプル数が無いからなんとも言えないですけど綺麗に空いてるしなんかありそうじゃね?って思える奴ですね。」

「そこ徹底的に解析しますか。」

「もう8時間ぐらいしてますね。」

「…え?」

 

この男本当に社長なんだろうか。ホウレンソウを学び直すべきだろう。

 

「だからほら…人いないでしょ?」

「えぇ…。」

 

えぇ…。




相方の感想「いよいよちーちゃんが化け物じみてきたな」
そんなことを受け私は(まだだ…まだ化け物度が足りない!出席簿から煙は出ない!)なんて馬鹿なことを考えてたとかいないとか。
ちょっとずつ身体能力強化とかされていく3人…3人?束動いてないな…。でもまぁこの3人にはちょっとした特技と言いますか…嘘○い風に言うならスペシャル?メジャーなの行くと鬼○の刃?みたいな特別性がある事に気が付いた方いますでしょうか。居たらちょっと嬉しいですね。居ないなら書き込み不足と飲み込みます。
さて、次は鬱…の下ごしらえになりそうです。また投稿期間開くと思いますがもしよろしければ楽しみに待っていてくれると嬉しいです。
それではまた次回、よろしくお願いします。


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人間の感覚は凄い

サブタイ考えるのが1番面倒。ちょいと病んでましたこんにちは
1話の中で一つの軸があればいいんでしょうけど現段階は8割土台作りなので全て「土台作り1」とかになりそうですね。土台の中で軸作ろう()
そんなわけで13話目よろしくお願いします。


~束side~

「うーん…。もう少しなんだけどなぁ。」

 

空に飛ばすため…浮かす為の装置は理論上完成した。それでもエネルギー源が足りない。動くところまでエネルギーを増幅させようとすると実用性は消える。

 

「うーん…。どうしようかなぁ。」

 

私に今すぐにこれを解決出来るようなものが出来るとは思えない。というかできたら巨大化させてエネルギー問題解決できちゃうね。

 

「あ、そうだ。桜叶さんに聞いてみよ。」

 

しばらくは忙しいって言ってたけど3週間も経ってるしメールなら大丈夫だよね。また機械も触りたいし。

 

 

 

~桜叶side~

「社長ー。ダメみたいですー。」

「またダメかー。」

 

社員からの報告を受ける。それもここ2週間かわり映えの無い聞き飽きたモノだ。結果が欲しくてもこればかりは仕方ない。

 

「お?束ちゃんからメールか…。」

 

解析が始まってからしばらく来ないでもらってたからなぁ。何か作りたくなったんだろう。

 

三谷(みたに)くん、ゲンさん呼んできてくれ。」

「分かりました。」

 

ゲンさんの手が空いてるなら少し束ちゃんに機械を触らせるのもアリだろう。あんなに楽しそうに物が作れる時間は貴重なんだ。

 

「社長さん。なにかご用で?」

「あぁ、ゲンさん。今後3日くらい手は空いてますかね?」

「ハッキリ言うと厳しいな。例の窪み以外計測としては出てねぇが何かありそうなのは分かってるがソレが何かすらわからねぇ。少なくともそれの解析が終わるまではなぁ。」

「ですよね…。」

「でもどうしたんだい。忙しいのは目に見えてるのにそんなこと聞くのはワケがあんだろ?」

「よくお分かりで。実は束ちゃんからメールが来ましてね?何か思い付いたのか『そろそろ工作機械を使いに行ってもいいか』とのことで。」

「嬢ちゃんか…確かにそろそろ1ヶ月近いからなぁ…。あ?そういや社長さんこの解析なんだが…無理は承知なんだが…」

 

ゲンさんが言い淀むなんて珍しい…。まぁ言いたいことは分かるけどさ。

 

「嬢ちゃんに見せてみるってのは…どうだろうか。」

「そういうと思いましたよ…。」

 

一つため息をついて意識を切り替える。

 

「では(みなもと)さん、貴方が部外者である篠ノ之束さんを解析に入れたいというのであればその有用性と根拠を明確に社長()に示していただきたい。」

「根拠と有用性か…。篠ノ之束って人間はな、人より優れた感覚持ってやがんだ。最初教えた時にな、40年加工に携わってきた俺の作ったもん触ったときなんて言ったと思うよ?『ちょっとだけ欠けてませんか?』って言ったんだ。何十年費やした所で加工機械使う以上どうしても出るであろうレベルのモノだぜ?それを触っただけで感じ取っちまった。」

「それが推薦の根拠ですか?感覚…触覚が優れているからといって今回の解析でそれをどう活かすつもりでしょうか。」

「さっき言ったろ?『窪み以外にも計測できないレベルの何かがある』って。鉱石に触れることはできるんだ。嬢ちゃんに触らせて何か分かればそれが有用性ってやつじゃないのかい?」

 

確かに言ってることは正しい。ゲンさんが加工のブレを認めるということは恐らく束ちゃんの感覚は実際に優れているのだろう。ならやるべき事は…

 

「ゲンさん。今からそのときのレベルの加工はできますか?」

「あぁ?誰にモノ言ってるんだ。出来るに決まってるだろ!」

「なら良かった。」

 

アレスさん…もといルクーゼンブルク公国の説得だな。

 

 

 

~天斗side~

「つまり最近桜叶さんに会えてないと?」

「そーなんだよねー。普段も会ってどうこうするわけじゃないけどさー。なんか寂しいというかつまんないというかさー。」

「確かに…一夏が生まれてしばらくは父さんも母さんもいたが母さんが育休になって父さんにあまり会えない時は寂しくい感じがしたな…。」

 

型の確認を終わらせてちょっと喋りながら休憩中。確かに昔はよくご飯食べたり泊まりにきてたなぁ…最近は減ったけど。

 

「そういえば千冬ならまたいつでも来ていいらしいよ。」

「そ、そうなのか?でも一夏もいるし…。」

「気にしないと思うけどね。」

 

むしろ2人とも一夏君に会いたがってるし。

 

「ふーん。ちーちゃんといっくんだけなんだー。」

「うわっ!?」

 

びっくりしたぁ…いつの間に…。

 

「というか千冬!絶対分かってて黙ってたでしょ!」

「いや…全く…気付かなかったぞ…。」

「小刻みに震えてるしめちゃくちゃ途切れるしもう大爆笑じゃん。」

 

第一どんだけコッソリ歩いても足音聞き取る人間に奇襲なんてほぼ無理だよ…。

 

「で、あーくん?私と箒ちゃんはダメなのかな?」

「多分いいんじゃない?千冬と束なんてそう大差ないし。」

「あ、じゃあさじゃあさ!今度お泊り会しようよ!いっくんと箒ちゃんも一緒にさ!」

「僕は良いけど…一夏君も箒ちゃんもまだ小さいのに大丈夫かな?」

「今度聞いてみよう。」

「そうだねー。お父さんたちもなんて言うかまだ分からないし。」

「一応4人泊まれるか聞いとくね。」

「頼む。」

「よろしくね。」

 

みんなでお泊りかぁ…。楽しそうだけど人見知りな箒ちゃんからはちょっと距離取られたしそれ見た一夏君も一緒になって離れられたからお泊り会で仲良くなれるといいなぁ。

 

「あ、そんなことより束が道場来るなんて久しぶりじゃない?どうしたの?」

「作ろうとしてるものが一段落ついてさー。今桜叶さんのとこの機械使えないから剣振ろうと思ってねー。」

「そうなんだ。」

「一応道場来なくても空いた時間で型の稽古と素振りはしてたんだけどやっぱり道場は違うね〜。ちょっと空気がピリッとしてるよ。」

「そういえば昔からそう言ってたな。それで一回『こんな空気やだー』って言って少し泣きながら逃げ出してなかったか?」

「え、えー?そんなの覚えてないなー。知らないなー。…あ、そーだあーくん一本組手しようよ!」

 

これは…逃げたな。千冬の方を見ると千冬も『逃げた』と言わんばかりの顔してる。

 

「いいよー。ルールどうする?無手?武器?」

「最初は武器ありがいいな。神楽舞にも使う一刀一扇でやりたいし。」

「じゃあ今日は普通に剣にしようかな。あ、束が負けたらさっきの話詳しく聞かせてね。」

「泣いた話じゃないよね?神楽舞の話だよね!」

「それは負けてからのお楽しみだよ。千冬、合図お願い。」

 

千冬がこっち見てちょっと顔引きつらせてるけどどうしたんだろ?

 

 

 

〜束side〜

「あ"あぁ〜疲れたー。ただいまぁ。」

 

久しぶりに組手するとはいえ一刀一扇相手に捌き切れない量の攻撃はどうかと思うよ…。しかも高速突きってなんなのさ…もはや動けないから拘束突きだよアレ…。

 

「お姉ちゃん大丈夫?」

「箒ちゃんただいまー。箒ちゃんの顔見たから大丈夫だよ〜。」

 

箒ちゃんが可愛くお出迎えしてくれる。ということはお母さんはご飯の準備してるかな。

 

「箒ちゃん、お母さんは?」

「ご飯作ってるよー。」

「そっか。ありがとー。」

 

箒ちゃんと一緒に台所行ってただいまして洗面所へ。

 

「お姉ちゃん自分の部屋に戻るけど箒ちゃんどうする?」

「うーん…あ、お絵かきする!お姉ちゃんのお部屋で!」

「よし、じゃあ一緒に行こっか!」

 

この前幼稚園でもお絵かきしたって言ってたし箒ちゃんの将来は画家さんかな?

 

 

 

〜千冬side〜

「ただいま。」

「お帰り、千冬。」

 

今日は母さんが出迎えてくれた。一夏のこともあるからか最近はよっぽどの事がなければ早目に帰れるらしい。

 

「ただいま、母さん。」

「手洗っておいで。それから一夏がお昼寝してるからそろそろ起こしてあげて。」

「分かった。」

 

もう6時半(18:30)だが夜眠れなくならないだろうか…。それにしても可愛い寝顔をしてるな…。

 

「一夏、そろそろ起きないか?」

「んー……。」

 

軽く揺すっても眠そうにして起きない。どうしたものか…。

 

「ふむ…仕方ない。」

 

くすぐるか。

 

 

 

〜アレスside〜

「だから!それが信じられないと言っているんです!」

 

星宮社長が社員とウチの研究員に切り上げるように指示してから少し話があると言うので会議室に来てみればそこには星宮社長と確か…ミナモトさんがいた。始めは部外者だが打開策になりそうな人間がいると聞いて喜んだが…

 

「たかだか10歳前後の子供にこんな問題が解けるわけないでしょう!」

「でも解いてしまったんですよ。まぁこんな紙切れ見せたところで信じてもらえるとは思っていませんので安心してください。」

「紙切れ…?各分野に進んだ人間を集めないと解けないような問題の答案が紙切れって言うんですか!?」

 

この問題を解けと言われれば自分の分野を解くことはできる。それは断言できる。それだけの勉強をしてきたつもりだ。ただ他の分野に関してはおそらく解けない。

 

「信用されない以上入社試験として能力値を測るという役目を果たしたコレは紙切れですよ。」

「そ、それは…。」

 

たしかにそれは正論だ。

 

「なので一度会っていただきます。」

「…は?」

「その子に会った上でアレスさんに判断して貰えば文句はありませんよね?」

「僕を納得させられるなら…。」

「アレスさんさえよければその子には後でアポとりますがどうしますか?」

 

自分の目に見せつけられてしまえば信じるしかなくなる。それは合理的だしそれだけの自信があるのだろう。

 

「分かりました。お願いします。」

 

この数週間でこの人が嘘は言わないことと行動に根拠を持っている事は知れたつもりだ。なら賭けてみるしかない。

 

 

 

〜Out side〜

「おーい、新入りちゃん。」

「…なにかしら。新入りと言っても貴方より10は歳上なのだけど?」

「若く見えるから同じくくらいかと思ったよ。」

「あら、それは喜んでいいのかしら?」

「でも長く生きてるだけでしょ?それにまだ君の働きぶりも能力も見れてないからさー。食っただけの歳に払う敬意なんてないし入ったばかりの君の価値は特に無いんだよ。」

 

2人の間の緩いとも言えた空気がガラリと変わる。表情にほとんど変化はない。ただ少し苛立ちを乗せた男の声音が空気を変えた。

 

「ま、呼んだのはそんな新入りちゃんに仕事が出来たからなんだけどね。」

「…仕事…?」

 

苛立ちの消えた男の声に戸惑いながらもなんとか返事を返す。

 

「そ、仕事。」

 

男は軽い調子でそう言った。

 

 

 

〜束side〜

目覚ましを止めて起き上がる。うん、いつも通り6時半(6:30)だね。

 

「夜のうちに来てたメールは…と。」

 

桜叶さんに送ったメールの事もあるしね〜。

 

「夜遅くに来てる…。あーくんも大変そうとは言ってたけど本当に大変なんだなぁ。…え?」

 

機械を使うのはいいけどその前に人に会ってくれないか…?

 

「条件付きな返事なんて初めてだなぁ…。」

 

答えはもちろんイエスだね。




13だ!忌数だ!なぜなのかは知りません。
そういえば昨日は13日の金曜日でしたね。映画は見たことありません。
さて、今回はマイペース社長がメインでした。あとお茶目なちーちゃんと仲良し篠ノ之姉妹。男子陣よ…出番が少ないぞ…。もうしばらくは束とマイペース社長メインになりそうですが。
では書くこともないのでここらでそろそろ
また次回もお越しください


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夢への一歩

シングルヘルの鈴が鳴る。メリークリスマス。
因みに「すず」です。「りん」ではないし「すぶた」でもないです。
さて、そんなことは置いといて今回は相方と2人して「視点切り替え多いな」と意見が一致しながら直せませんでした(反省)
まぁ少なければ良いもんでもないけど増えると読みにくい。でも時間進めるのに便利。そんな感覚で視点切り替えてるのも原因なんでしょうね。
あんまグダグダ前置きしても仕方ないので第14話目よろしくお願いします。


~束side~

「こんにちはー。」

 

返ってきたメールの通りにいつものように工場ではなく会社のほうに来てみたけど…。

 

「なにあの機械達…。」

 

受付の人に案内されて会議室に向かう途中にチラッと見えた多くの機械。なにかの計測のものなのかな。

 

「っと、ごめんね束ちゃん。待たせちゃったね。」

「私が来るのが早かっただけなので大丈夫ですよ。」

 

待ったと言ってもほんの1、2分。それに約束の時間より5分早い。むしろ早く来すぎちゃったかな。

 

「今日来てもらった理由なんだけどね。」

「人と会うんですよね…?」

「うん、そう。ある人と会ってもらいたいんだ。」

 

でもその前に。と、桜叶さんが前置きをする。

 

「篠ノ之束さん。貴女にお願いがあります。」

 

あー…なにか騙されたかもしれない。社長モードの桜叶さんだ。

 

 

 

~アレスside~

星宮社長が入っていった会議室にの扉の前でミナモトさんと2人で待ってるが…。

 

「…ミナモトさんはなにをしてるんですか。」

「なにって見りゃ分かんだろうよ…。盗み聞きだ。」

「盗み聞きって…。」

 

この人はなにを堂々と言っているんだ…。

 

「社長さんから許可は取ってあるし録音もされてるはずだ。まぁまだ嬢ちゃんには伝えてねぇがな。」

「…している事はわかりました。でもなぜそんなことを…?」

「後々必要になってくるからよ。」

「必要に…?」

 

一体何が?

 

「お、そろそろ話も終わるみたいだな。準備しといてもらおうか。」

「え、あぁ、分かりました。」

 

ココの人たちは皆自由すぎないか…?

 

 

 

~桜叶side~

…ちゃんと言いたい事は理解してくれたようだね。それに束ちゃんの夢と結びつきそうなのはワクワクするね。

 

「よし、とりあえず聞かれたくない話はココで終わります。じゃあ会ってもらおうかな。」

「は、はい。」

 

束ちゃんの声はどこか緊張している。会う理由を知ってしまえばこうなるのは当然だろう。

 

「アレスさん、お待たせしました。もう入ってもらって大丈夫ですよ。」

「失礼します。初めまして、シノノノタバネさん。」

「は、初めまして!え、えっと…。」

「あぁ、これは失礼しました。私はアレス・ハスターと言います。」

「えと…初めまして、ハスターさん。篠ノ之束です。よろしくお願いします。」

 

相手が自分の名前を知っててもちゃんと名乗るのは柳韻さんの影響かな。あの人そういうとこ厳しいし。

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

「…ん?アレスさん、ゲンさん…源さんはどうしたんですか?」

「ミナモトさんならさっき工場の方に行きましたよ。なんでも『嬢ちゃんギャフンと言わせたる!』とかなんとか。」

「私を…?」

「何するか大体予想つくけど…とりあえず休憩室でも行きましょうか。なにもこんなとこでお喋りしなくたっていいんだし。」

 

2人して『じゃあなんでココに呼んだんだ』って顔してるなぁ…。あ、束ちゃんは気付いたね。

 

 

 

~千冬side~

「千冬ちゃんちょっと。」

「…?なんですか?」

 

道場に着いて素振りをしていると夏子さんに呼ばれた。

 

「さっき恵理さんから電話があって急な仕事で今日は2人とも遅くなるから一夏くんと星宮さんの家で待っててって。」

「分かりました…。一夏は私が迎えに行けばいいですか?」

「私も箒ちゃん迎えに行くからそのとき一緒に行きましょう?」

「分かりました。」

5時半(17:30)に出るからまたその時呼ぶね。」

「はい。」

 

確か家族じゃないと迎えに行けないんだったな…。後で天斗に伝えないとな。

 

 

 

~アレスside~

「し、信じられない…。本当に…こんな子どもが…。」

 

不躾なのは分かっていたがシノノノさんには星宮社長が前に解かせたと言うテストに近い問題を幾つか出して解いてもらった。流石に目の前で起こった事実だ。間違いなくこの少女は天才だと突きつけられた。

 

「なんで桜叶さんがドヤ顔してるんですか。」

「ん?なんとなく。」

「えぇ…。」

「嬢ちゃんこれでどうだ?今加工してきたが…。」

「55.0006 mm。」

「またダメか。」

 

…マイクロメーターより下の桁言い放つってなんなんだ…。普通セーフだろ。しかもその精度で満足してないミナモトさんは一体…。

 

「さて、アレスさんそろそろ信じて頂けましたか?」

「目の前で見せられてしまいましたから…。解析への参加を…こちらからお願いいたします。」

 

これで加わってもいいだなんて傲慢だ。シノノノさんはそれだけの頭脳を持ってる。

 

「ということで束ちゃん。今話題の新鉱石の解析班へようこそ!」

「え?えっと…はい?」

「社長さん…嬢ちゃん困惑してんじゃねぇか。ちゃんと伝えたのか?」

「手伝って欲しいことがあってそれに参加できるかどうか決めるためにアレスさんに会えとは言われましたけど…。」

「あ、あれー?そうだっけー?」

「目が泳いでるぞ。」

「泳いでますね。」

「人の目って泳げるんですか!?」

 

クロールか平泳ぎかバタフライか…背泳ぎ?背中どっちだ…?

 

「あー…動揺してるってことだ。」

「あぁ、なるほど。」

 

日本語って独特だな。

 

「ま、まぁ…明後日からよろしくね、束ちゃん。」

「…あ、はい。」

 

あ、強引に逃げたな。

 

 

 

~天斗side~

「千冬ー。そろそろ時間なんじゃない?」

 

そろそろ5時25分(17:25)になる。一夏君を迎えに行かないといけないらしいし準備のことも考えるともう終わったほうがいいだろう。

 

「あぁ、そうだな。ありがとう。」

「あ、そうだ。僕も行っていい?」

 

一夏君と箒ちゃんにも会いたいしね。

 

「多分大丈夫だと思うが…。」

「あぁ、天斗君ちょっといいかな?無手について少し話があるんだが…。」

「え?あ、わかりました。じゃあ千冬またあとでね。」

「あぁ、わかった。」

 

ちょっと残念だけど篠ノ之流のことなら断然そっちが優先だよね。

 

 

 

〜千冬side〜

「箒ちゃーん、帰るよー。」

「一夏、迎えに来たぞ。」

 

呼ばれた2人は勢いよく振り向く。保育士さんも気付いたようでこっちにやって来た。

 

「篠ノ之さん、お迎えですね。それから…織斑さん…でいいのかな?」

「はい、一夏の姉の織斑千冬です。両親が忙しいため迎えに来ました。確認するなら保険証があります。」

「…はい、では確認させてもらいますね。」

 

…今の間は子供が迎えに来たこととその理由に余りいい感情を持たなかったからだろうな。

 

「ちゃんと保険証持って来てるなんて用意がいいのね。」

「2人とも忙しいから大きな怪我やなにかあった時のために必ず持ち歩けと言われてまして。それに連絡先もあるからと。」

 

だから落とさないように気をつけろとも言われたな。

 

 

 

〜束side〜

「ただいまー。」

 

桜叶さんの会社の人に車で送ってもらって帰ってきたけど…。

 

「お母さんいないのかな?」

 

箒ちゃんも居ないみたいだしお買い物…でも炊飯器は動いてるし違うかな。とりあえず道場行ってみよっかな。ちーちゃんとあーくんにも会えるしお父さんなら何か知ってるでしょ。

 

 

 

〜千冬side〜

「どうしてお姉ちゃんがむかえにきたの?」

 

夏子さんと一夏と箒ちゃんと4人で歩いていると一夏が尋ねてきた。

 

「そういえばまだ言ってなかったな…。今日母さんも父さんも忙しくなったから迎えに行ってくれと言われたんだ。」

「ふーん。」

「だからまず道場に行って稽古が終わったら星宮家で夕飯を食べさせてもらって母さんが迎えにくるまでそのまま星宮家だ。」

 

私の時は独りで留守番だったからな…。一夏が寂しい思いをしないのは桜叶さんと由華さんに感謝しないといけないな。

 

「いちかもうちにくるの…?」

「あぁ、もし良かったら一緒に遊んであげてくれないか?」

「うん!」

「あそぶ!」

「あ、でもみんな一生懸命お稽古してるから邪魔はしちゃダメよ?」

「「はーい。」」

 

2人とも素直で可愛いな。…この足音は。

 

 

 

〜束side〜

お父さんとあーくんが話し込んでたから他の門下生の人に聞いたらちーちゃんとお母さんの2人で箒ちゃんといっくんを迎えに行ったみたいだね。

 

「…あ、みんなみっけ。」

 

この距離ならもうちーちゃんも気付いてるだろうし…ちょっと悪戯してみよっかな。

踏み込むと同時にちーちゃんが少し3人から離れる。

 

「ちーちゃーん!」

 

ちーちゃん目がけて勢いそのままに飛び付く。

 

「はぁ…。」

 

え?今ため息ついた?ついたよね?

ちーちゃんが振り向いて…両手を広げて…

 

「…残念だったな。無理だ。」

「…へ?」

 

そのまま横にズレた…。

 

「そこは受け止めてよ!」

 

仕方ないから身体捻って〜着地!10点!

 

「避けられてから着地する余裕がある高さだぞ!?せめてもう少し高さを考えろ!」

「高さ考えたら受け止めてくれるんだね!」

 

ちーちゃんがしまったって顔してる。でもそういうことだよね。

 

「束、あまり危ないことしたら…ね?」

「は、はい!」

 

お母さんを怒らせてはいけない。普段優しいけど怒ると怖いんだよねぇ。

 

「そ、そんなことよりどうしたんだ?道場で待っていれば会えるのに。」

「あ、そうだった。」

 

もちろん今すぐにではないだろうけど…。

 

「まだしばらくかかると思うんだけどね?ちーちゃんに協力して欲しい事があるんだ。」

「協力?」

「うん、協力。だいぶ前だけどさ、私の言った夢覚えてる?」

「もちろんだ。『誰もが宇宙に行けるものを造る。それでみんなで宇宙に行く。』だろう?」

「大正解!それでさ、今ぶつかってる問題が解決したら原型が造れるんだよね。」

 

新鉱石のことは秘密にしてくれって言われたからまだ言えない。でも解決したら空も飛べるだろうし障害物や放射線から身を守るバリアの分のエネルギーだって賄えるかもしれない。もちろん時間はかかるかもしれないけど今の内に頼んでも損はないよね。

 

「その原型に乗ってくれと?」

「そゆこと!」

「分かった。乗ろう。」

「うん、ありがとう!」

 

これで一安心だね。

 

「盛り上がってるとこ悪いんだけど…私じゃ何をするかは良くわからないけど2人ともあまり危ない事はダメよ?」

「うん、分かってるよ。みんなで楽しむためのもの造るんだ。危なくないように気をつけるよ。」

「私も束の夢は楽しみですから。大怪我して途中で終わるなんて事ならないように頑張ります。」

「ならよし!」

「お姉ちゃんうちゆう行っちゃうの…?」

「2人とも…?」

「私とちーちゃんだけじゃないよー。箒ちゃんもいっくんもあーくんもお父さんもお母さんもみんなで行くんだよ!」

 

宇宙飛行士のような特別な訓練じゃない。慣れてもらって使いこなせるようになる訓練で行ける宇宙。

 

「…うん、決めた。」

「ん?どうしたんだ?」

「これから造るものの名前だよ。完成まで何年かかるか分からないけどさ。理論上だけど自由に飛び回れる。障害物にはバリアも張れる。人が宇宙で自由に動くための翼になり得るもの。その名も…」

 

きっとそれは人々に宇宙が近付く…ううん、地球(成層圏)を広げる為のものになる。

 

インフィニット・ストラトス (無限の成層圏)!」

 

だったらどこまでも行ける名前にしたいよね!

 

「…そういえば天斗には言ったのか?」

「あーくんには完成してからかな。驚かせたいし。」

 

あーくんロボットとか好きだしきっと驚くだろうなぁ。




最近情緒不安定そして今回視点切り替えの多いこと多いこと。
そんなことはさておき14話目いかがだったでしょうか。
ちょっと実験がてらアンケート機能を使ってみようと思うのでもし良かったらお答えください。
書くことも浮かばないので今回はこの辺で
また次回、よろしくお願いします。

すいません、追記です。
詳しくは活動報告に載せましたが少しの間更新が止まります。元々遅いだろという言葉は呑み込みつつよろしくお願いします。


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焼き肉と真面目な話

えー…みなさまお久しぶりです。沙香月さん家の雪音さんです。1月は投稿しませんとか言って気づいたら6月くらいに休止宣言してました。とりあえずは復活…というか書けるときに書き進めていく感じでやっていきます。
まぁここであれこれ話しても仕方ないので第15話、よろしくお願いします。


~桜叶side~

束ちゃんが解析班に加わって10日。最初は面白そうにしていたが。

 

「違う…これも違う…これも合わない…ここもズレる…。違う…違う違う違う!」

 

ここ5日ほどは荒れている。

 

「嬢ちゃんも荒れてんなぁ。」

「多分ここまで何かに苦戦すること自体久しぶりでしょうしね。」

「だな。」

 

束ちゃんは9聞いて10理解して15に拡張するタイプだからなぁ…。

 

「そういやゲンさん束ちゃんに現状の説明したんですか?」

「ん?あー、伝えてねぇな。嬢ちゃんがいらないとよ。」

「いらないって…。これでも一応国からの要請なんですが…。」

「あぁ、それは伝えてあるよ。」

「その上で束ちゃんが要らないと言ったなら何か考えてると思いますよ。」

 

大方先入観の排除とかかな。

 

「でもまぁ一息入れてもらわなきゃねぇ。」

 

とその前に電話電話…。携帯どこにしまったっけ…

 

「お、桜叶さん…?何かのサインですか…?」

「サイン…?あぁ、ありゃ携帯探してるだけだ。」

「あったあった。」

 

 

 

 

~束side~

違う…これもダメ…。毎度毎度機械から出る予測から逃げるように結果が食い違う。

 

「よーし束ちゃん、一度お昼にしよう。」

「…はい。」

 

桜叶さんに声をかけられて作業をやめる。学校のことを考えると今日みたいな土曜日に糸口を見つけて日曜日も使って掘り進めたいけど仕方ない。

 

「行き詰まってるよね?」

「…はい。」

 

誰が見ても分かる事を桜叶さんから聞かれる。

 

「最近ちゃんとご飯食べてるかい?」

「食べてますよ…。『ヒトという生き物としてのサイクルを亡くさない』社訓だからって最初に教えられましたから。」

 

本来居られない場所に居させてもらう以上社訓は守らないといけない。守って当たり前。

 

「そっかそっか。あ、何か食べたいものある?」

「アレルギーとかはないですしなんでも大丈夫です。」

 

生き物としてのサイクルを守りながら食事時間が短い方が解析に長い時間がかけられるから。

 

「なんでも大丈夫かぁ…。今これが食べたい!ってモノは?」

「特には。」

 

お腹が空いてないわけじゃないけど特に食べたいものもない。

 

「えー…じゃあ食べたくないものは?」

「特にないです。」

 

嫌いなものはないし食べれないものもない。

 

「じゃあなんでもいいかい?」

「はい。」

 

前に使わせてもらった社員食堂のものでハズレがない事は社員さんの反応から分かってる。

 

「よし、じゃあ焼肉行こ焼肉!」

「分かりました。」

 

…ん?社員食堂に焼肉定食はあったけど『焼肉に行く』ってどういう…。

 

「よし、じゃあ一回着替えておいで。匂いついたら面倒でしょ?」

「え、ちょっと待ってください!焼肉って食堂の焼肉定食とかじゃないんですか!?」

「ん?違うよ?焼肉。あ、ちゃんとご飯とか野菜も食べていいから安心して?」

「いや、そうじゃなくて…!そんな時間がかかるものを」

「でも束ちゃん何でもいいか聞いたら『はい』って言ったべ?」

「確かに言いましたけど…」

「嬢ちゃん諦めな。普段の嬢ちゃんなら気づいたと思うんだがなぁ…。」

「ゲンさん…。」

「社長さんの服を見てみな…。」

「スーツじゃない…。」

「つまり焼肉に行く気まんまんだったわけだ。」

「さー行こう!美味しいお肉が待っている!」

 

この人たち解析する気あるのかな…。

 

 

 

~桜叶side~

「そういやアレスさんは宗教的に食べれないものありましたっけ?」

「そうですね…。しいて言えばタコとかイカを食べる習慣がないですね。」

「なら肉や野菜でダメなもんはないんだな。」

「えぇ、大丈夫です。」

 

こんな会話をしている間も束ちゃんは何かを考えているようだ。まぁ十中八九解析のことだろうなぁ…。いややっぱ焼き肉のことに違いない!

 

「社長さんよ…またなんか変なこと考えてねぇかい?」

「んー?束ちゃんが好きなお肉はなにかなと。」

「その前になんか考えてたろう?」

「ちょっとしたことですよ。」

「ちょっとしたことか。」

 

間違いではない。束ちゃんについてちょっと考えただけだから。

 

「さて、着きましたよ。」

「いい匂いですね…。向こう(ルクーゼンブルク公国)にはこういった店はないので新鮮です。」

「自分で肉を焼きながら他人の肉をとってもいいという戦争だから気を付けたほうがいいぞ。」

「日本にある数少ない戦争の場ですからね。」

「日本は平和だと思っていましたがこんなところで戦争が起こるなんて…。」

 

はぁ…。つっこみ役の束ちゃんが機能しない…。

 

「なぁ社長さんよ。ほんとにこんなで嬢ちゃんの調子が戻るのかよ?」

「最近食生活がおろそかになってるみたいでして…。まぁしっかりおいしいもの食べながら考えますよ。」

「そうか…。」

 

解析に気を取られすぎて食事に余裕ができないのは完全に悪循環になっていく。ソースは僕だけど活力やらアイディアなんてそんなもんだ。

 

「さ、行くぞー、食うぞー、のm」

「わかってるとは思うが呑むなよ?」

「の…呑まないぞー。」

「嬢ちゃんも好きなだけ食えよ?社長さんの奢りだからよ!」

「経費!経費で何とか!」

「あのおっかねぇ会計の姉ちゃんに言ってみな。」

「子どもの成長のために…ふむ通る気がしない。」

「だな。」

「入るなら早くしませんか?」

「ん?あぁ、そうだね」

 

束ちゃんのツッコミがないからおじさんは悲しいだす。

 

「すいません、昨日予約した星宮です。」

「昨日!?」

 

 

 

~束side~

桜叶さんの行動は大抵突拍子に見えるけど何か意図がある。それはわかる。今回のこともお母さんから私のことを聞いてやろうと思ったんだと思う…。でもさ

 

「なんで焼き肉なんですか。」

「ミンナ、ヤキニク、スキ。ヤキニク、オイシイ。」

「はぁ…。」

「ため息吐くと幸せが逃げるぞー。」

「ため息は酸素の取り込みやら自律神経の調整やらしてくれますー。」

 

自分が食べたかったのか…。

 

「さ、食べよ食べよ。」

「いろんな種類があるんですね。」

「肉らしい肉から内臓系まであるからなぁ。」

「適当に頼もうか。すいませーん。」

 

 

 

~桜叶side~

「さすがに歳食ったなぁ…。油がキツイ。」

「あはは…。今度はしゃぶしゃぶとかにしますか。」

「今度はってまたこういうことする気なんですか。」

「仕事がちゃんと終わったらね~。」

 

束ちゃんもそこそこ真面目だねぇ。まぁそれもそうか。

 

「さて、おなかも膨れたし本題に入ろっか。」

「本題…?」

「いえーす。本題。束ちゃん最近ちゃんとご飯食べてるかい?」

「食べてますよ。」

「ならゆっくり味わってる?」

「それは…。」

蔑ろ(ないがしろ)にしてるつもりはないけど自信をもってしてないとは言えない?」

「…はい。」

 

自分でも考えてなかった分少しばつが悪いって感じかなぁ…。でも自覚はしてもらわないといけない部分だから仕方ない。

 

「よし、ならこれから意識しよう。確かに今束ちゃんが解析班に入れらるのは束ちゃんの能力によるものだよ。でもその束ちゃんの生活に関することに関して頑張ってるのは柳韻さんや夏子さんなんだ。」

 

束ちゃんならこの話は理解してくれるはずだよね?

 

「さ、そろそろ戻ろっか。ほかの社員に怒られちゃ敵わないからね。」

「そんなこと考えるなら昼休みに焼き肉なんてこねぇだろうよ。」

 

それもそうだ。

 

 

 

~千冬side~

父さんも母さんも仕事、道場も今日は警察官の指導。おかげで一夏と箒と一緒に星宮家にお世話になっているが…

 

「千冬ー、ちょっと助けてー。」

「どうした?一夏の相手に忙しいんだが。」

 

今は一夏のお絵描きを眺めるのに忙しい。天斗よりも優先度が高いことは間違いない。

 

「箒ちゃんが指握って離してくれない!」

「そうか。」

 

1歳くらいはそんなものだろう。一夏だってそうだ。

 

「こんにちはー。」

「あら、束ちゃんいらっしゃい。」

「由華さんこんにちは。」

 

束も来たらしい。ずっと何かを考えこんでいたようだが最近はだいぶいいみたいだな。

 

「あ、束おかえりー。」

「あーくんただいまー。…ってただいまっていうのはちょっと変な感じだね。」

「別にいいんじゃないか?私も最近そうだしな。」

 

一夏が1歳になってしばらくしてから母さんの育児休暇も終わり二人とも遅くなる時や休日にどうしても仕事になったときは星宮家でお世話になっている。感謝してもしきれないが二つ目の家のように思える場所だ。

 

「ならいっか。さてさて箒ちゃん!お姉ちゃんだよ~。」

「ほーら箒ちゃん僕の指を離してお姉ちゃんのところに行っておいでー。」

 

なんかちょっとうらやましいな…。

 

「い、一夏?お姉ちゃんの指は空いてるからな?」

 




いやぁ…小説書くのって難しいですね。小説家の方々普段何喰ってるんでしょうね。
さて、いかがだったでしょうか第15話。くたばりながらこれ書いてる間にPC買ったりいろいろ変化したものはありますがまぁ活動報告のほうに書くので気が向いた方だけ覗いてください。
それでは次回いつになるかはわかりませんがまた次回よろしくお願いします。


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焦りと足掛かり…あと二日酔い

お久しぶりです(定型分)
不調と卒論が終わりこれまでのを読み返して「こいつ何書いてんだ」と思いながらの投稿です

めちゃくちゃありがたいことに応援メッセージももらったので頑張りますとだけ言いたいっす


〜天斗side〜

「天斗ー、遊ぼうぜー。」

「ちょっと待っててー、準備したら行くー。」

 

この頃休み時間に遊びに誘われることが多くなった気がする。

 

「そういえば千冬と束も誘おうかな…。」

「おーい!天斗早くー!」

「ごめーん今行くー!」

 

…また次のときでいいか。

 

 

 

〜千冬side〜

「うーん…。」

「例の鉱石の悩みか?」

「そうなんだよー。ちょっとずつ分かっては来たんだけどさぁ?進まないんだよねぇ…。」

「でも少しは進んでるわけだろう?少し前に比べればいい方じゃないか。」

 

ちょっと前まではここまで話すことが出来ないような形相だった。それこそ鬼のような形相だった。

 

「まぁねー。でもちょっと焦るかな。」

「なんでだ?まだどこの国もお前が発見した段階までたどりついてないんだろう?」

「うん…たださ?いつまで桜叶さんのところで研究できるかわからないわけよ。」

 

言われてみればそうだ。子どもが自由に出入りできること自体おかしいだろう。

 

「わからないことだらけなんだし焦るよねぇ…。」

「いろいろと考えているんだな。」

「いろいろとさせて貰ってるからね。それにほら、私天才だし!」

「そうだな。」

 

実際束の頭脳は小学生の…というよりも高校生のそれと比較するのすら馬鹿馬鹿しいほどだ。

 

「…ちーちゃん?ちーちゃんに素直に肯定されてもなんか恥ずかしいんだけど…。」

「事実だから仕方ないだろう。」

「だからさぁ…。」

「それに…」

 

こんな会話をしてる間にも解決策を考え続けている人間を『天才』の一言で表すことは出来ない。

 

「それに?」

 

とは思っていても言いにくいな。

 

「…何でもない。」

「教えてよー。」

「今度一本取れたらな。」

「言ったね?絶対取ってやる…!」

 

 

 

〜桜叶side〜

「社長さんよ…流石にこれはないだろ。」

「んー?…あー、うん、そだね。」

「…ったく。」

 

あー、ゲンさんそれ捨てないでー。

 

「とりあえずこの箱ん中入れとくから後で整理しろよ。」

「がんばる。」

 

頑張りたくないけど。

 

 

 

〜天斗side〜

「たーだいまー。」

「おかえりなさい。」

「お?どーした天斗ー。こんな時間に起きてちゃ大きくならないぞー?」

 

ダメだ…相当酔ってる。

 

「そんなこと言っても8時だよ?」

「あ?あー…え?マジ?8時!?」

「8時。午前中の。」

 

朝迎えたのに気付かないとかよっぽどだ…というかおかしい。

 

「何かあったの?」

「子どもが気にすることじゃないぞー。」

 

そう言われるのはわかってた。前も似たことを聞いたら『大人の仕事だから子どもは子どもの仕事しな』って言われたし…。

 

 

 

〜桜叶side〜

やっちまっただ…接待して明るい深夜だと思ったら朝だっただよ…。明るい深夜ってなんだ?今夜帰ったら怒られるだろうなぁ。

 

「どうしたよ社長さん。二日酔いか?」

「あー…ゲンさん。二日酔いもあるけど今夜帰ったら怒られるなとね。」

「はっ、んなもん自業自得じゃねぇか。」

「ほんと仰る通りで。」

 

あー…どうしよ。




はい、とりあえずリハビリです
またちまちま書いていきたいですね


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時結晶と束

お久しぶりです(2年ぶり)
精神面の不調がだいぶ和らぎひと心地。書ける時に書いていくをどんどんやっていきたい坂付き雪音です。
あと修正掛けたい箇所がたっぷり見つかってます。徐々に修正していきたいですね。

そんなわけで2年ぶりの17話。どぞ。


〜束side〜

うーん?なんだろ?普段より考えがすごいスラスラと出る。

 

「嬢ちゃん、紙の追加ここに置いとくぞ。」

「ありがとう、ゲンさん。」

 

時結晶を触りながら考える。パソコンに打ち込みながら考える。

止まらない。

紙に書き殴る。じゃ足りない。鉱石を触る。試行する。思考する。今感じる窪みの形は?なぜ結果が食い違う?そもそもこの振動は正しいのか?

 

「……あっ。」

「嬢ちゃん?」

「これだ。」

 

今確かに感じた。窪みが移動した。振動数とともに形状が変化した。

 

「だから結果が食い違ってたんだ。振動数が変化するだけじゃなく表面にも変化が……」

 

だったらやることは一つ。変化するより先にこの迷路を解く。今の私なら……

 

「できると思う。」

 

窪みに指を這わせながら最短で、迷路を解きに掛かる。自然物対人間なんておかしな競争だけど……

 

「絶対解く。」

 

 

 

〜天斗side〜

「千冬ー。」

「どうした?天斗。」

「最近束何か隠してない?」

「?どういうことだ?」

「お父さんの会社にずっといる。」

「やりたいことがあると言ってたな。」

「で、そのやりたいことって?」

「さ、さぁ?私も聞いてないな。」

 

嘘だ。千冬はウソをついてる。勘だけどそう思う。こう言う時は

 

「ほんとに?」

「あ、あぁ。」

「千冬って嘘つく時左手隠すよね。」

 

先に嘘をついて誘導しよう。

 

「なっ。」

 

そう言って千冬は左手を前に出す。

 

「まぁ嘘だけど。」

「騙したのか!」

「千冬だって嘘ついたでしょ。」

「そ、それは……」

「うん。」

「悪かった。でも束からまだ内緒にしててくれと言われていて……。」

「そうならそうと最初から言ってよー。ずっと仲間外れにされるかと思ったじゃん。」

「す、すまない……。束がいつか話してくれるとは思うが私が話すわけには……。」

「うん、わかったよ。ごめんね、急に。」

「いや、いいんだ。」

 

でもまぁ少し寂しいなぁ……。

 

 

 

〜千冬side〜

天斗に束のことを聞かれた時……天斗が少し怖かった。悪気があるわけではないと思うし、敵意とかとは違う……こう、まっすぐ私のことを見て……どこまでも呑み込まれるような感覚。

 

「天斗ー、遊ぼうぜー!」

「ちょっと待っててー!じゃぁ千冬、また稽古でね。」

 

友達に呼ばれて遊びに出る天斗は普段通りだがなんだったんだろうかあの感覚は。

なんてことを考えていると

 

「ちーちゃーん。」

 

束の声が聞こえた。

 

「束か。どうかしたのか?」

「夢が……完成するかもしれない。」

「ということは……?」

「桜叶さんに詳しくは話しちゃダメって言われてるけど進んだんだよ。」

「そうか……そうか!」

 

束の嬉しそうな顔だ。久しぶりに見た気がする。

さっきまで考えていたことを一度放棄して喜ぶ。

 

「まだまだ試作だったり色々とあるけど……」

「出来上がったら……」

「うん。」

 

束の夢の話を聞いてから私もワクワクしていた。宇宙に行ける。というのはピンと来ないが楽しそうに語る束の情熱がそうさせるのだろう。束の夢は剣術以外打ち込むことがなかった私の夢でもあるのだろう。

 

「あ、チャイム鳴っちゃう。じゃあね、ちーちゃん!」

 

そう言って束は自分のクラスに戻る。私も授業の準備をしないとな。

 

 

 

〜桜叶side〜

「さて……どうしたものかなぁ。」

「桜叶さん、これ現実ですか?」

「おー、僕も同じこと思ってた。こりゃ綺麗だ。」

 

現実とは思えないほど美しい光景が目の前にある。

 

「にしても……。」

 

この光景を作り出したのが自分の息子の同級生というのも現実感がない原因の一つだなぁ。

 

「な、なんですか?」

「すごいねぇ束ちゃんは。」

「あっ……ありがとうございます。」

 

こういう時に照れるのは年相応で可愛らしいんだけどなぁ。

 

「束ちゃん、この現象はどういう状態か説明できる?」

「は、はい。数パターンの固有の振動数を持った鉱石の表面の窪みが振動毎に変化してその窪みをなぞることで……。」

「あー……うん、レポートにして出してもらえる?書き方は社員が教える。何ページになってもいいから1週間以内に出してもらえる?」

「1週間……わかりました、頑張ります。」

「よし、オッケー。もし無理そうなら早めに連絡してね。」

「わかりました。」

 

さ、ここからより忙しくなるなぁ。

 

 

 

〜Out side〜

「マイクロマシンからナノマシンへの転用はできたかい?」

「あと一歩といったところよ。」

「ふーん。」

 

男は興味あるのかないのか分かりにくい声色で言う。

 

「まぁいいや。早めにナノマシンに転用してよ。そしたらあの研究所も用済みだしね。」

「わかったわ。……用済みになったらあの研究所は?」

「残すかもしれないし壊すかもしれないねぇ。まぁ君が気にすることじゃないよ。」

 

男が言ったことは本当だろう。どうしようかなぁなどと言いながら研究所をモニタリングしている。

そして思いついたように言う。

 

「あ、織斑秀十。あいつは消したほうがいいね。」

 

だってアイツ嫌いだし。付け加えながら男は写真にバツをつける。

 

「まぁ実動部隊に連絡だけするかぁ。」

「彼らを使うのね。」

「君にさせてもいいけど……そういうの嫌いでしょ?」

 

ヘラヘラと笑いながら男は言う。女との付き合いは長くない。が、男は女の精神性を読み切っていた。

女は嫌だと言わんばかりの表情で外へ出ていった。逃げ出すように。




そういやハピバしたせいで原作ちーちゃんの歳超えました。くそぅ。


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悩む大人たち

大人書いてて楽()

てな訳でもしょもしょ進めていきます。


〜Out side〜

キーボードを打つ音が響く。

 

「時雨さん、これ。」

「あぁ、ナノマシンへの転用の件ですね。進捗としては90%と言ったところです。」

「どこで詰まってるんですか?」

「詰まっていると言うよりは加工に時間がかかると言うところですね。トライに時間がかかるだけで理論自体に間違いはないようです。」

「と言うことは……」

「加工が終われば完成となるでしょう。」

 

時雨と呼ばれた女も男……織斑秀十もキーボードを打つ手を止めない。目線もモニタから動かさない。が、秀十は抑えきれないと言わんばかりに口の端を歪める。

 

「今日中にはできないでしょうし今日はもう帰宅されては?もう20時ですし……奥さんとお子さんもお待ちでしょう?」

「っと、もうそんな時間かぁ。」

 

そう言って秀十は帰り支度を済ます。

 

「じゃあお言葉に甘えてお先に失礼します。」

「えぇ、お疲れ様です、織斑主任。」

 

閉まった扉の向こう。部屋の中で女は笑う。

加工に時間がかかるのは本当だが今日できないなんて嘘っぱちだと。

 

 

 

〜桜叶side〜

「さて、どうしたもんかねぇ。ねぇ?アレスさん。」

「どうしたも何もないですよ。50ページもあるんですからまだ読み終えてません。」

「あ、それは失敬。にしても驚いたなぁ。」

 

束ちゃんが時結晶に変化をもたらしたのが一昨日。で、レポートとして文書を出したのが昨日の夜。

24時間にも満たない。どころが学校の時間、睡眠や食事の時間を考えるとはるかに短い。短すぎる。

 

「三輪さん三輪さん。束ちゃんに書き方ってどれくらい教えた?」

「必要な情報の種類と最低限のマナー程度です。」

「しかもほぼ記憶と思考から引っ張り出してるのでしょ……この文章。」

 

レポートには計測できていた固有振動数についてと窪みについて、その窪みによって迷路が作られていることやその迷路が一定周期で変化するということが書かれていた。

それはいい。が、問題は社外に持ち出せないはずの情報もふんだんに盛り込んで書かれていることだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「語彙、考察における思考力、文章の構成。彼女本当に天斗と同級生?」

「それは社長が一番ご存知かと。」

「まぁそれはそうだ。……と、アレスさん。」

「……なんですか?」

 

読んでるところ申し訳ないけど

 

「国に束ちゃんのことってどれくらい伝えてる?」

「……非常に頭がいい少女が解析に参加しているとだけ。」

「なるほど。」

 

ならいいかぁ……。あと篠ノ之束さんへの報酬何か考えないとなぁ。

 

 

 

〜束side〜

レポートは送ったけどしばらく来ない方がいいと言われたので道場で素振りをする。

 

「……束。」

「?どうしたのお父さん。」

「少し鋒がブレている。ここのところあまり振れてなかったのだろう?」

 

少し見ただけでここ数日素振りもできていなかったことを言い当てられる。

 

「うん……。少し忙しくて……。」

「そうか……。なぁ、束?」

「どうしたの?」

 

珍しく少し不安そうに……。何かを探るような表情 (かお)で私の前に腰を落とす。

 

「私は束に篠ノ之道場を継げるよう、様々なことを教えてきたつもりだ。」

「うん。」

 

お父さんから教えられたことは多い。

礼節から始まり剣術、神楽舞、無手などの古武術。まだ十全に扱うことはできないけど全部覚えた。

 

「そして束はそのほとんどを吸収している。そうだろう?」

 

聞きつつも確信を持った問い。

 

「うん……。一度教えてもらったことは記憶はしてるよ。まだできないこともあるけど……覚えてる。」

「……うん。それで……だな……。」

「?」

「それは……正しかったのだろうか……。」

「どういうこと?」

 

自分の子供に対してじゃない。1人の人間(大人)に対して向き合ってるかのような雰囲気。

 

「束がどんなことをしてたか……桜叶さんから逐一報告をされていたんだがな。」

「うん。」

 

桜叶さんとの約束の一つ、親を心配させないために必要と思ったことは報告するというものに当たるものだろうなー。

 

「その、なんだ……私には詳しいことは分からなかったが……桜叶さんの話を聞くと束がとても活き活きしてると感じたんだ。」

「うん……すごい難しくて……楽しかったよ。」

「それでな?私がしていたのはただのエゴだったのかもしれないと思ってな。」

「エゴ……?」

「この道場を継いでほしい。私はそう思って束に稽古をつけてきた。でもそれは束の感情を無視したものだったのかもしれない、と思ってな。」

「それは……違う、と思う……。」

 

本当は違うと言い切れればいいんだろうけど言い切れない。それは私の物心付く前から行われてきた習慣に近いものだから。それでも

 

「私は稽古が大変だとは思ったことはあるけど、嫌だと思ったことはないしそれがお父さんとの大事なつながりだと思ってるよ。」

「束……。」

「だから、これからも稽古……ご指導の程よろしくお願いします。」

「……そうか。分かった。」

 

ずっとお父さんと続けてきた絆みたいなものだと思う。というかそうだといいな。

 

 

 

〜桜叶side〜

「桜叶さん、お待たせしました。ようやく読み終わりましたよ。」

「お疲れ様ですハスターさん。読んだ感想としては……?」

「まず鉱石についてですが……レポートにもありましたがエネルギー源として使うにはあまりにも不安定すぎるかと。」

「不安定ですか。」

「えぇ。固有振動数が変動する。これによってエネルギーの質まで変動してしまう。電気エネルギーだと思っていたものが熱エネルギーに変化してしまっては電子レンジは動きません。」

 

これは束ちゃんのレポートにも書かれていたしエネルギーの放出を計測した際にも各計測器が周期的に動いたことからも出された結論だ。

 

「そして、篠ノ之束という人物についてですが……天才……の一言で片づけることすら烏滸がましい天才と感じました。」

「天才。ねぇ。」

「瞬間的に見たもの、聞いたことを記憶できる人間というのは確かに存在します。が、彼女はその性質を扱い切れているように感じます。それに……未知への対応、拡張もできるかと。」

「それに関しては同意見です。彼女は10聞いて10を理解し100へと拡張ができる。私はそう思っています。」

「やはり……。」

「そしてここからは本人にも言ってませんが……」

「彼女への報酬……ですか?」

「はい。」

 

アレスさんもどうしたものかと言った顔で唸る。わかる。わかるよぉ。まーじでどうしよう。

 

「一応……彼女の所属としてはどうなってるのでしょう?」

「一時的な研究員……バイトに近い形ですね。ウチに籍はないけど形式としては入っている。そんな感じです。」

「……これは世界初の快挙となります。ルクーゼンブルグ公国そのものの価値が上がる可能性がある出来事。……おそらく国王直々に報酬が支払われる可能性が高いです。」

「なるほど……。……ん?」

「どうしました?」

「いや……束ちゃん1人で外国に放り出すわけにもいかないよなぁと。」

 

天才と言われても彼女は子供なんだし、最大の功労者といえど……うーん。

 

「1人……?桜叶さん来ないつもりなんですか?」

「え?僕も行けるんですか?」

「私は天の川コーポレーション(この会社)に打診したんですよ?もちろんもちろん来て貰います。」

「あー……完全に結果出せなかったから行けないかと。」

「それに保護者は必要でしょう?」

「最悪自費で行こうかと。」

「経費使いましょうよせめて……。」

「あっ。忘れてた。」

「はぁ……。」

 

まぁ行けるならいいや。アレスさんの冷たい視線からは逃げとこう。

 

 

 

〜束side〜

桜叶さんから電話がかかってきた。

 

「束ちゃん今大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」

「連絡事項としては明日会社に来てほしいだけなんだけど……」

「わかりました。10時からでいいですか?」

 

明日は土曜、学校もないから朝から行ける。

 

「うーん、柳韻さんと来てほしいんだ……。」

「お父さんと……」

「今柳韻さんいる?」

「います。呼びますね。」

「お願いします。」

 

電話を保留にしてお父さんを呼びに行く。

 

「桜叶さんが?」

「うん。明日お父さんと直接会って話がしたいみたい。」

「珍しいな……大体メールが来るだけだが……。」

 

そう言ってお父さんは電話を取る。

 

「もしもし、変わりました柳韻です。…………はい、…………はい、それはもう……はい、明日は昼からになってもよろしいですか?……ありがとうございます。それでは失礼します。」

 

桜叶さんの声は聞こえないけどお父さんは明日の昼から何か……多分桜叶さんの会社に行くんだろう。約束をしていた。

 

「束、明日の昼桜叶さんの会社に来てくれと言われたが……」

「そうなんだ。」

「桜叶さんの会社で何か失礼なことはしてないだろうな……?」

「そんなことしてないよ。大丈夫。」

 

それは自信を持って言える。

 

「……ふっ、だな。桜叶さんも穏やかだったし何か別のことだろう。明日は稽古を早めに切り上げなくてはな。」

 

多分鉱石についてだろうけど……まだ言えないよね。



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親子。それから社長

こうやって書いてると
原作に向かうために複数のことを同時進行で書いてるおかげでギリギリ一話分になってるんだなぁ
と思います。設定とか考えるのが好きなんです。

てな訳で視点変更多用が多い原因を理解したところでのんびり読んでもろて。


〜柳韻side〜

束を交えて桜叶さん、鉱石が取れた国(ルクーゼンブルグ公国)の方……ハスターさんとの話し合いが終わった。

内容としては束が行ったことの報酬について、それからルクーゼンブルグ公国国王と話す必要があるだろう。ということだった。

そして今束は鉱石を見に部屋を出ている。桜叶さんとハスターさん、大人のみとの話し合いである。

 

「確かに束は記憶力がいいとは思ってましたが……世界初のことまでしてしまうとは……。」

「それは私たちも驚いています。ただ、実際してしまった。これは事実です。」

 

正直とても驚いてる。頭がいいとは思っていたが娘がこんなこと(世界初)をやったなんて言われたら驚くに決まってる。

 

 

「はぁ……。正直私には小難しいことはわかりませんが……束がすごいことを成し遂げたということだけ理解しておきます。」

「えぇ、それで十分です。それと」

「?」

「成し遂げたことは子供とは思えませんが束ちゃんはまだまだ子供です。柳韻さん、彼女をしっかり褒めてあげてください。」

「それはもちろんです。束は私の……私たち家族の誇りです。」

 

束がすごいことをした。なら褒めるのは親の責務だろう。それを聞くと桜叶さんは満足そうに頷いた。

 

 

 

〜束sidie〜

お父さんたちが話してる間時結晶(タイムクリスタル)を見に行く。迷路を突破した後ほど輝きではないけどエネルギー量などに変化はないみたい。

……このエネルギー、変質していることを利用できるとは思うけど加工の目処がまだ立たない。うーん……エネルギー源というより補助的な機能に使いたい……この前構築した慣性を制御するための装置に使えないかな?

 

「束。」

「あ、お父さん。終わったの?」

「あぁ。全部は理解できていないが……すごいなぁ束は。うん。……私の誇りだ。」

「お父さん……。ありがとう!」

 

普段は厳格なお父さんが柔和な表情で言ったのは手放しで嬉しくなるようなことだった。

 

 

 

〜Out side〜

「これがナノマシンのデータとサンプルよ。」

「解析班に回しといて。これで本物なら……ね?」

「織斑秀十を消すのね……。」

「うん、だってアイツ嫌いだし。」

 

男は『嫌いだから消す』そんなことを軽く言う。その表情はヘラヘラと笑っているが目は全く笑っていない。女はこの男が苦手だった。挙動から真意が掴めない。どれが演技でどれが本気か……いっそ全部演技かもしれない。そう思わされるほどに。

 

「分かったわ。解析にはどれくらいかかるのかしら?」

「5時間もあれば終わるんじゃない?」

「適当ね……。」

「僕は最終目的が達成できれば時間がかかってもいいからね。」

「はいはい。その話は聞き飽きたわ。」

 

男の最終目的。それを何度も聞いている女からすればとっくに聞き飽きた話だった。それに最終目的と言ってもあまりに抽象的で計画の話ですらない。そんなものに毎度付き合う女ではなかった。

 

 

 

〜桜叶side〜

あー……疲れた。

 

「お疲れ様です、社長。」

「んー……。いやぁ流石に緊張するねー……。リモートとはいえ一国の主(国王)と会話するのは。」

「その割には楽しそうなお顔ですね。」

「ん?まー、束ちゃんのことが認められたからね。」

 

そう、ルクーゼンブルグ公国国王に束ちゃんのことが認められた。彼女の天才性、行い、将来性、特異性。これらが国に認められた。つまり、彼女は最悪日本を抜けても公国で研究をすることができる。けど

 

「彼女なんだかんだ人見知りだからなぁ。」

「人見知りとなんの関係が……?」

「いや、束ちゃんのことだけどさ。目上の人と話すのはまだ得意そうだから国王との対談はいいとしても将来的によそ行った時に大丈夫かなぁと。」

 

よそと言っても外国の可能性もあるし……。言語は良さそうだけど。

 

「なるほど。それで社長。篠ノ之さんにはいつ国王に認められたことをお伝えするおつもりで?」

「今日は遅いから明日。それより問題は報酬なんだよなぁ……。」

「篠ノ之さんはちゃんとした社員ではありませんし何より子供ですからね。」

「一応社内の機器で計測したことは公開できるけど鉱石が変質したのは束ちゃんじゃないとできないレベルのことなんだけど

……」

「それが明るみになれば篠ノ之さんの身に危険が及ぶ可能性があると。」

「そ。国王と話して束ちゃんの公表に関してはしない。でいいけど鉱石のことについては解析待ちって感じになったんだけど。」

「まだ何か?」

「今の機器で解析がほとんどできてないらしいんだ。」

 

これが大きな問題点。

解析ができない。というのもエネルギーの種類が切り替わる都合上一つの機器に入れた際に一つのエネルギーデータしか取れず複数種類あるエネルギーの一部しか発見できていない。これはまずい。非常に効率が悪い。

 

「エネルギーが複数……。これは厄介ですね。」

「うん。サンプルが複数あれば変わるかもしれないけどどうしようもないんだよ。」

「それこそ先方に掛け合っては?」

「それも考えたけど利益が確実じゃない。エネルギーが複数あるのはいいけどそれをどう扱えると思う?電気エネルギーだけなら新たなエネルギー源として使える。熱エネルギーなら暖房とかいいかもね。でもそれらの多くを内包してるコレはそう簡単に制御もできない。それが現状の答えだよ。」

「それは……失礼しました。」

「まぁ仕方ないさ。ゆっくり考えよう。」




早くISを……ISを登場させたい!
ここまできたらあと少しで試作ISが作れるはずなんだ!

てな訳でISを登場させるのをモチベに設定をネリネリしながら同時進行的に話を進める雪音の図。


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研究所と火事

戦闘描写のために原作の5巻読んで
え?一夏4年生まで篠ノ之流習ってたのはわかるけど裏奥義を4年生に教えるってなんぞ?それとも交流が最近再興したのか?
と思いましたー。雪音さんです。
今回はちょっとちーちゃんに負担被ってもらいます。頑張って立ち直るんじゃぞ。


〜束side〜

ルクーゼンブルグ公国の国王に会って1ヶ月。ようやく出来た……。

 

「ここが……私の研究所だー!」

 

私の、私だけの研究所。桜叶さんからの報酬とルクーゼンブルグ公国からの報酬。その両方を活用した。

 

「おー、いいねぇ。」

「桜叶さん、色々とありがとうございました!」

「いやいや。報酬としてはPCと資材だからいいんだけど……本当にコレだけでいいの?」

「私が創りたいモノはきっと会社じゃできないので。」

「キッパリ言ってくれるね。ま、束ちゃんなら大丈夫だと思うけど生活には気をつけなよ。」

「はい!」

 

生活サイクルは犠牲にしない。コレは桜叶さんの会社で手伝わせてもらっていた時に口酸っぱく言われた社訓。ここまで来たのもイレギュラーを認めてくれた桜叶さんがいたから。だから絶対にコレは守らないといけない。

 

「では、桜叶社長。コレまでお世話になりました!」

「篠ノ之束さん。今後の貴女の発展、ご活躍を期待してます。」

 

 

 

〜天斗side〜

「天斗、今日はどうする?無手か?剣か?」

「今日は……無手で。」

「分かった。」

 

いつも通り千冬と稽古をする。無手ということで向かい合って構える。千冬の隙はない。から一つ仕掛ける。

 

「ふっ。」

 

軽く息を吐くとともに膝を抜いて滑り込むように千冬の懐を目指す。当然のように迎撃してくる千冬。その手を掴み力の流れを変える。

 

「っ!」

 

千冬は顔色を変えつつも変えられた力に逆らわず動く。そのせいでこっちの狙った突きは外れる。

攻められた千冬も体勢を立て直して突きを出す。これを流しつつ距離を一度取る。

膠着状態になり互いに隙を伺う。フェイント、ジャブ、移動。ジリジリとした感覚が焦ったい。千冬が一歩動こうとする。そこで出すのは

 

「零拍子!」

 

相手の一拍目の前に動く篠ノ之流古武術の裏奥義『零拍子』。実際には一拍になりそうな挙動を見てから動いてるから正しいかと言われると微妙だけど、今はコレが限界値。

零拍子で近づいて繰り出すのは前に出したままの左手での直線的な突き。自分も動こうとした千冬はギョッとして左に回避しようとする。重心が左によった瞬間に出すのは左突きで開いた身体を閉じるように出した右のミドルキック。ローでは跳ばれるハイでは屈まれる。そう思って出したミドルだけど……

 

「はっ!」

 

前に出られて威力を潰された。それだけじゃなく太ももを掴まれた。急いで右脚を脱力。重さを千冬に預けるように左脚からも力を抜く。そして千冬の動きが止まった時点で

 

「……参った。」

 

千冬の顔の前へ寸止めの突きを出す。

最近剣では負けるけど無手では勝ててる。大体交互にやってるから勝率としては半々。そんなことを続けている。

 

「やはり無手では天斗に勝てないか……。」

「僕も剣では千冬に勝てないしね。得意不得意がもろに出てる感じがする。」

「それは……そうだな。」

「じゃあ今度は私と剣で勝負しようよちーちゃん!」

「そうだn……束!?」

「稽古に顔出すのはだいぶ久しぶりだね、束。」

「だね。研究がひと段落したから来たんだー。で、どう?ちーちゃん。」

「私は構わないが鈍ってても手加減はしないからな。」

「もちろん!来てなくても素振りや型はずっとやってたからね!」

 

そう言って束と千冬は手合わせを始めた。

 

 

 

〜千冬side〜

「ただいまー。」

「お邪魔します。」

「天斗、千冬ちゃん、おかえり。」

 

今日は2人とも仕事だから一夏と一緒に星宮家でお世話になる。明日は日曜だしこのまま泊まっていっていいと言われてしまった。

 

「あ、千冬ちゃん、テレビのリモコン取ってくれる?」

「何チャンネルですか?」

「ありがとう。3チャンネルお願いできる?」

「わかりました。」

「〜〜織斑秀十さんと織斑恵理さんの計5名と連絡がつかない状態となっており、研究所内の消火が急がれます。」

「……?……えっ?」

「天斗、お父さんに電話して!私は恵理さんにかけるから!」

「父さんと……母さんは……仕事で……研究所に行ってて……」

「とりあえず父さんに電話してる!……あ、父さん?ニュースt……」

「千冬ちゃん?大丈夫?。まd……」

 

天斗と由華さんが何か言ってる……。なんだろう……。すごい心配そうな顔してる……。心配かけちゃったかな……。まずは謝らn

 

 

 

〜由華side〜

ニュースによると千冬ちゃんのご両親の職場で火事が発生して5人が安否不明。秀十さん、恵理さんとも連絡がつかない状態とのこと。私から恵理さんに電話をかけるものの電波が繋がらないと言う。

そしてニュースを見てから千冬ちゃんの様子がおかしい。汗も多いし目の焦点が合ってない。

 

「恵理s……」

 

千冬ちゃんは何かを言いかけて気を失ってしまった。幸い頭を打つことはなかったけどこの出来事はショックが大きすぎるよね……。

 

「千冬!?」

「天斗、今はしばらくこのまま静かにさせてあげて。それから、目が覚めても火事のことは一旦伏せておいて。」

「わかった。」

 

千冬ちゃんにかかった心理的負担は計り知れない。起きた時に少しでも落ち着いてるといいけど……。

 

 

 

〜Out side〜

「火事にする必要はあったのかしら?」

「逆にどうしろと?電気系統のトラブルで発火、延焼。よくありがちなものじゃないか。」

「織斑秀十以外の人間まで巻き込んで……」

 

女は男に喰いかかる。そもそも織斑秀十を消すこと自体疑問を感じていた女は止まらない。

 

「そもそも本当に消す必要はあったのかしら?たかが1人の研究員よ。消すにあたって動いた人員、発覚のリスク。それに見合うほどのものなのかしら?」

「うるさいなぁ。今更善人面しないでよ。まぁそうだなぁ……消す必要があるかと言えばあるし、見合うかと言えば見合う。」

「……は?」

 

女は予想外の答えが返ってきて呆ける。1人の人間を消すのに使ったリスク、人員が妥当だと言われた。なぜだ。コレまで研究所の破壊などはあった。が、人1人消すのは今回が初めてだ。

 

「アイツはね。生きてちゃいけないんだ。だってムカつくし。」

「っ……!」

「なんて嘘嘘。だけどまぁ消すのが妥当というのは本当だよ。まぁ他の人にも被害があったのはコラテラルダメージってことで。」

 

どこまでが本当か未だ女にはわからなかった。




頑張れちーちゃん。君にはISの試作機に乗ってもらわないといけないんだ!(クズ)
束はこのままIS作れ。天斗は……千冬の支えにでもなってもろて。


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