ストライクD×D (オタク浪漫)
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プロローグ

ストライク・ザ・ブラッドを見て無性に書きたくなりました。こんな作品ですが読んでください。


「此処はどこだ?」

 

 俺は周りを見渡す。真っ白で何もない空間が広がっている。

 俺はなんで此処にいるんだ?たしか家に帰っている途中で―――――――――――――!!

 俺は自分の身に何が起こったか思い出した。

 帰り道に車にはねられたんだ。そのまま意識を失い気づいたら此処にいたんだ。

 

『気がつきましたか』

 

 突如声が聞こえた。俺は周りを見渡すが誰もいない。

 

『無駄です。私には実体はありません』

 

 また声が聞こえる。だけどやはり姿が見えない。

 

「あんたは誰なんだ?此処はどこなんだ?」

 

 俺は姿の見えない人物に質問する。

 

『此処は世界の境界線にある空間世界』

 

 世界の境界線?

 

『そして私は貴方たち人が神と呼ぶ存在です』

 

 か神様~~~~~~~~~!?!!

 あまりのことに驚きパニック状態になる俺。

 

『あくまでそう呼ばれているだけですから落ち着いてください』

 

「な、なんだそうなのか」

 

 それを聞きホッとする。

 

『さて、あなたが此処にいる理由ですが簡単に言えばあなたは亡くなりました』

 

 !!!!~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ・・・・・・・・・・・そうか、俺死んだんだ・・・・・・・・・。

 ショックだったためか目からも涙が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

「すいません。みっともないとこ見せて」

 

『いいえ、無理もないことです』

 

 神様が俺が泣き止むを待っててくれたためなんとか落ち着いて話ができるようになった。

 

『車に撥ねられましたがそれだけが原因であなたは亡くなったわけではありません。あなたが亡くなったのはあなたの魂が元々半分しかなかったのが原因です』

 

「た、魂!?」

 

『そう、魂です。あなたの本来ある魂は誕生した時半分になりそれぞれ別の世界で生を得ました。そのため生命力も元々の半分ずつしか無かったのです』

 

 別の世界?

 

「それってどういう事ですか?別の世界って」

 

『世界は無数に存在しています。それこそ砂漠の砂のように数えきれないほどに。あなたの生きていた世界もその一つです。そして此処はそんな世界同士の間にある境界線上です」

 

 あまりのスケールが大きい話に頭がパンクしそうになった。

 突如目の前に光の玉が現れた。それに目が引きつけれられた。まるで失った存在と会えたような感じがする。

 

『それはあなたの半身たる者の魂です。彼もあなたと同じように亡くなり此処に来ました。そしてすべてを話たあとあなたとの統合を受け入れてくれました』

 

 統合?

 

「それってどういう意味ですか?」

 

『そのままの意味です。あなたたちの魂を統合することによって新たな生を得てもらいそれぞれが住んでいた世界と別の世界に転生してもらいます』

 

「転生!俺、また生きれるんですか!?」

 

『ええ、本来は在り得なかったことが起きてこんな事態になりました。それを解消するのも私の役目です。それと統合により互いの体質や知識、力、記憶も統合されます』

 

 そう言うと光の玉が俺の中に吸い込まれるように入っていく。それとともに知識や力、記憶まで体全体に入ってくる。それ見て感じて理解した。

 ~~~~~これは!これがもう一人の俺の生前持っていたものなのか――――――――!!!

 光の玉が完全に俺の中に入ると、俺は自分に足りなかったものが元に戻ったと感じた。

 

『どうやら統合が上手くいったようですね。それでは転生させます。次の人生は良き人生になることを祈ります』

 

 俺の視界が真っ白になっていく。それとともに意識が遠く――なッ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・転生してもう10年か・・・・・・・」

 

 あれから気づいたら俺は赤ん坊になっていた。最初はパニックたけどそれ見た両親が泣いていると勘違いして俺をあやし始めた。それのお蔭で落ち着いたお俺は転生したと気づくことができた。それから家族と共に平和に暮らしている。・・・・・・・ただ、一つ問題があった。生前のもう一人の俺の体質と力だ。

 

「・・・まさかもう一人の俺がストライク・ザ・ブラッド世界の住人だったとは。しかも、なんだよ第5真祖って―――――!!」

 

 生前読んでいたライトノベル小説、ストライク・ザ・ブラッド。主人公暁 古城(あかつき こじょう)と同じように真祖吸血鬼の体質と宿主の寿命を代償に実体化する異界からの召喚獣。眷獣(けんじゅう)。しかも!暁 古城(あかつき こじょう)が最強なら俺のは最凶と恐れられる12体の眷獣(けんじゅう)がいる!!

 どう考えても俺の人生に平穏は着そうにねぇええええええええええ!!!

 俺、逢魔宗司(おうまそうじ)は転生者で第5真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)でもある。




次回、オリジナル眷獣がでます。


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第5真祖覚醒

始まります。


「ハァ、ハァ、ハァ」

 

 俺は山の中を走っていた。全速力で走っていた。その理由は――――――――――――――――――――

 

「やべぇええええ!このままだと門限に間に合わないぃぃいぃいいい!!」

 

 門限時間までに家に帰るためだ。なんでこうなっているかというと、日曜日の今日、俺は第5真祖たる自分の力、眷獣のコントロールを身に付けるため周りに人や民家が無い山奥まで行った。幸いに真祖になっているだけに身体能力が人間以上あるお蔭で3時間程で人里から離れた山奥に着いた。

 川が流れている広い場所を見つけたので此処で特訓をすることにした。

 

「さて、眷獣ってどうやったら出て来るんだ?」

 

 初めてすぐ特訓に行き詰った。

 原作だと命じれば出て来るようだったな・・・・・・。

 

「いでよ!眷獣!!」

 

バァッ!

 

シ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン。

 

「・・・・・・やっぱそう簡単にはでないか。ハァァ」

 

 がっかりした俺はため息をつく。

 それからもいろいろ試すも眷獣はいっこうに出てこず、疲れたため川辺の岩に腰を下ろし休憩した。

 

「はぁぁぁ、なんで出てこないんだ?何が悪いんだ?・・・・・・・~~~~っ、あー!もう解んねー!!」

 

 出しかたが解らず、俺は八つ当たり気味に喚き散らす。

 

! バァッ!

 

 俺は反射的に岩から飛び退いた。

 

ズガァアアアアアン!!

 

 俺が飛び退いてすぐに空から何か降ってきて岩を破壊した。岩が壊れた衝撃で発生した砂煙のせいで視界が遮られ何も見えなかった。

 ・・・・・・何が降ってきたか解らないが、伝わってくる。これは殺気!

 

ブオン!

 

 俺はすぐさま後ろに飛び退き、砂煙を割いて出てきたものを回避した。

 砂煙を割って出てきた物それは剣だった。しかも、大人の人ぐらいのデカさの大剣。

 そしてその持ち主の姿も見えた。上半身は筋肉ムキムキの男性だったが、下半身が人ではなかった。馬の胴体。そう、俗に言う半人半馬、ケンタウロス。

 

「ま、魔族!?」

 

 まさかこの世界にも魔族がいるのか!?

 いきなり現れた魔族に俺は慌てふためいた。そんな俺の気も知らず、魔族、ケンタウロスは大剣を俺に向かって振り下ろしてきた。

 

ブオン!

 

「!ちょっ」

 

バァッ。

 

 俺は振り下ろされる大剣を慌てて避けた。

 

ズダァアアアアアアアン!!

 

 振り下ろされた大剣の威力で地面が抉れる。

 っなんて馬鹿力!当たったらヤバい!

 そう思った俺はケンタウロスから遠く離れて間合いをとった。

 だが、ケンタウロスもしつこく間合いを詰め剣を振り俺を仕留めようとしてくる。

 

ブン! ブン! ブン!

 

「っくそ、このままだと――――!?」

 

 剣を必死に避けている最中、体が熱くなった。まるでマグマ、いやそれ以上の何かの熱だ。それほどの熱量が体を駆け巡った。その所為で動きを止めてしまった。

 その隙をケンタウロスは見逃さなかった。動きを止めた俺に今までより勢いよく大剣を振り下ろしてくる。

 

「ヴゥオオオオオオオオ!!」

 

ブオォォン!

 

 避けられない!

 俺は魔力を込めた腕をクロスさせて防御する。

 

ズシャァァァァァ!!

 

「ぐっ、っっ~~~~!?!」

 

 腕を斬り飛ばされはしなかったが、腕から鮮血が吹き出し吹き飛ばされる。その瞬間、さっきと同じ、否それ以上の熱量が体から噴出した。それは体の奥から暴れ出ようする何か、その時俺は気づいた。

 眷獣!?まさか眷獣の暴走か!!

 俺は慌てて眷獣を抑えつけようとするが、いっこうに収まらず逆に熱量が上がり、周りが燃え上がった。

 ケンタウロスも突然の事に驚くが本能が危険を報せた。急いでこの場から離れようとするも、圧倒的熱量から発生する熱風が肌を焼き、熱を帯びた空気が肺を焼き、更に体が燃え出し苦しみ動けずもがいていた。

 

「ぐぅううううううう~~~~~~~~」

 

 俺は体の中で暴れる眷獣の所為で動けずいた。いくら頑張っても言うこと聞かなかった。そしてついに俺は限界に達した。

 

「~~~~~っ~~~!!ぐぅおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ、・・・俺は・・・・・・!」

 

ガバァ!

 

 意識を失って倒れていた俺は目覚めた時最初はぼんやりしていたが、すぐにさっきの事を思い出し上半身をお越し周りを見た。

 

「――――なんだよ・・・・・・この光景は・・・・・」

 

 そこには想像だにしない光景が広がっていた。俺を中心にして数キロに及ぶクレーターができていた。地面も赤く融けてまるで硝子のようになっている。川や周りの森の木々もなくなっている。ケンタウロスの姿もなかった。おそらく燃え尽きたんだろう。あとには僅かに炭とかした木が数本残っているだけだった。

 

「これが・・・・・・眷獣の力・・・・・・」

 

 こんな眷獣(ちから)・・・・・俺が制御できるのか?!

 そんな風に思ったが俺はあることに気づく、空が赤いのだ。そしてカラスが鳴いている。

 ・・・・今何時だ?

 俺は腕時計を見る。

 4時44分。

 ・・・・・・・・・・・・・・・っまずいぃいいいいいいいいいい!母さんに怒られるーーーーーーー!!

 俺は全速力で走り下山した。

 

 

 

 

 

 

 

 下山を始めてあれから30分が過ぎ今俺は町が見える所まで来た。

 此処まで来ればなんとかなるな。後はこの先にある神社を通って近道すれば間に合う!

 俺はさらに加速して走る。そして近道の神社を視界に捉える。だが、そこには予想だにしないことが起きていた。謎の集団が女性と女の子を取り囲んでいた。

 なんだあの集団は?囲まれている二人はおそらく母娘かな。・・・・・どう見てもヤバい状況だよな。

 俺は木の上に隠れて様子を窺う。だが、事態はすぐに動いた。集団の一人が剣を出し、女の子を斬ろうとしていた。

 まずい!

 俺は木の上から跳んだ。そして女の子を庇う女の人に剣を振り下ろそうする男に跳び蹴りをかました。

 

ドガッ!

 

「がっ?!」

 

 蹴りで男が吹き飛び、蹴った反動を利用してそこに俺は着地した。

 

すたっ。

 

 いきなりの乱入者に謎の集団も母娘も驚いている。

 ・・・・・・さて、どうするか(汗)

 

 

 

 

 

 

 

 俺は謎の集団の前にして如何しようか悩んでいた。後ろでは襲われていた母娘もいる。

 飛び出したはいいがこのあと如何するか考えてなかった。

 俺は後ろの襲われていた母娘を見た。母娘(ふたり)はいきなり現れた俺に驚いて戸惑っている顔をしていた。俺は安心させるために優しく声をかけた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫だです。あなたのおかげで」

 

「そうですか、よかった」

 

 そんな風に会話をしながら改めて母娘を見る。母娘そろって美女だ。母親からは大人の女性としての美しさと色気や母性がにじみ出ている。娘、女の子はまだ美しとゆうより可愛いさの方がでている。だが、母親がこうなら娘の子の将来も期待できると俺は実感した。

 俺は謎の集団の方に向き直った。相手を見ると一人の男が話しかけてきた。

 

「小僧、貴様何者だ?そこにいる忌まわしき堕天使と子をなした女とその血を持つ娘を殺すのをなぜ邪魔をした」

 

 だ、堕天使?堕天使ってあの堕天使のことか。

 いきなり言われた内容に俺は戸惑った。魔族の存在は知っているが、堕天使が実在しているその事実、そして男の言うとうりなら後ろの二人は母親が堕天使との間に子供を作り、生まれたのがあの女の子というわけだ。

 

「小僧、今一度言う、我らの邪魔をするな。そうすれば貴様だけは見逃してやる」

 

 男の言葉を聞いて後ろにいる母娘は、母親は女の子を抱きしめ守っている。女の子は母親の腕の中で怯えているのか震えている。

 それを見た俺は謎の集団に向き直り前にでた。

 

「ふっ、物分かりがいいな小僧。そう所詮おまえにはか〈ドゴッ〉!?ガアッ!」

 

 俺は男の一人の腹を殴った。男もいきなりの攻撃に反応できず腹を押さえうずくまる。

 周りの男たちは武器を出した。

 

「小僧!どうゆうつもりだ!」

 

「きまってんだろ。俺はこの母娘の味方をする!堕天使だからなんだってんだ!その子が堕天使なら俺は真祖だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は武器を持つ男たち相手に大立ち回りを始めた。相手は剣やら銃やら槍やらで攻撃してくる。それに対して俺は素手で対抗している。もちろんただの素手と侮ることなかれ、俺は真祖の吸血鬼、人間と構造は違うので筋力は人間以上ある。しかもそれ+魔力で強化しているんだくらえばただじゃすまない。その証拠に俺の周りのは俺に殴られたり蹴られた奴らが倒れている。

 ・・・・・残りの人数は9人、さっさと倒すか。

 

ダッ!

 

 俺は足に力を入れて男の一人の懐に入った。相手もいきなり俺が消えたと思ったら自分の懐にいるので驚いていた。

 

「うおりゃ!」

 

ドゴッ!

 

「――がぁっ!!?」

 

どさっ。

 

 腹に俺の一撃をくらい男はそのまま気絶し倒れた。

 

「あと、8人!」

 

 俺は他の奴に狙いを定めたその時。

 

「母様ぁああああああ!」

 

 俺は聞こえた悲鳴に後ろを振り返った。そこには最初に跳び蹴りで蹴り飛ばした男が剣で女の子を斬ろうとするのを母親が女の子を抱きしめ庇おうとする光景だった。

 ! しまった!

 俺は自分の迂闊さを呪い魔力全開で走った。だが男の方が早く剣を振りぬいていた。

 このままだと間に合わない!―――だけど―――――

 

「間に合えぇええええええええええええ!!!」

 

 地面を思いっ切り蹴って跳んだ。その結果―――

 

ズバァ!

 

「――――間に合ったな、っ~~~~~~!!」

 

 剣と母親の間にギリギリで入り母娘を守ることができた。だがその代償として俺が斬られた。背中から大きく斬られた。背骨にまでも達しているだろう。斬られた反動で俺はバウンドしながら転がり地面に倒れた。

 不死身でもこれはキツイなー。

 俺がそう思っていると女の子が俺に駆け寄って来た。その後ろから母親も来る。

 

「大丈夫!?」

 

「しっかりして!」

 

 母親が俺を抱きお越し、女の子が涙目で俺の心配をしてくれいる。

 傷は確かに深いがそこは真祖だから回復するが、今はそれよりまだ謎の集団は全員倒していない。俺が顔を横に向けると男たちがこっちに歩いてきていた。

 体に力を入れるがさっきのように動けそうになかった。このままだとこの母娘は殺されてしまうと俺は思った。

 何か手はないのか!・・・・・・・あった。この状況を打開する手が。だが、この手は使いたくなかった。これをすれば俺は本当に真祖としての道を進む事になる。それが俺は怖かった。いくら俺の半身とはいえただの人間だった俺は自分が人間じゃないことが怖かった。

 でも。

 

「このまま見捨てるよりはましだな・・・・」

 

 俺は目の前の女の子に声をかける。

 

「君、お願いがあるんだけどいいかな?」

 

「お、お願い?」

 

「そう、お願い。君の協力が必要なんだ。そうすればきみやきみのお母さんを守れるんだ。協力してくれ」

 

「・・・・・協力すれば母様を守れるの?」

 

「ああ、守れる。約束する。第5真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)名に誓ってきみやきみのお母さんを守る」

 

「・・・・・わかった。私は何をすればいいの?」

 

 彼女が俺に尋ねた。

 

「俺の傍に寄って」

 

 そう言うと女の子が近寄ってくる。

 俺の近くまで来た女の子を手で引っ張り抱き寄せた。体が密着したためか女の子の匂いがした。

 

「・・・・・いい匂いだ」

 

「へっ///」

 

 女の子もいきなり言われたためか顔を赤くする。俺は女の子の首に牙を突き刺した。

 

ガブッ!

 

「あっ!んぅっ、ぁ・・・はぁ///」

 

 俺の耳元で艶っぽい声がする。それを聞きながら俺は女の子の血を吸うっていた。血を吸うごとに力が漲ってくる。傷も癒えていく。

 ・・・・・・―――――!!

 俺は自分の中の力の一つを掌握したとわかった。

 女の子の首から牙を話して女の子を母親に渡した。女の子は顔を少し赤くしている。その子にむかって俺は言った。

 

「約束は守るよ」

 

 俺は男達の方に歩いていく。男達は俺に驚き動揺している。さっきまで死に掛けていた俺が立ち上がっていることに。

 俺は右手に力を籠める。右手から激しい熱と炎と熱風が吹き荒れる。それに男達と後ろの母娘は驚く。

 右手全体が赤黒くなり蒼白い紋様が浮かびあがる。

 

「・・・・・・・・第5真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)の血脈を受け継ぎし者が命じる。今こそ縛めより開放する。出でよ!第5の眷獣!『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』!!!」

 

『ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 赤き閃光と共にそれは顕現した。圧倒的な超高熱の魔力の塊が獣の形を作っていた。その熱で発生した炎の鬣。顔と体の一部には太陽の黒点のような黒い縞。体から発せられる熱で地面が融解してその熱で体の周りに発生する炎。

 第5真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)の最恐の眷獣の一体、『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)

 

「『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』!!!」

 

『ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 俺に命じられた『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』は男達に突っ込む。男たちは応戦しようとするがそれより速く『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』が終わらせた。

 

ズオォオオオオン!!

 

ジュゥン!

 

 一瞬で男達に突っ込みその圧倒的な熱量で蒸発させた。『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』の通った後も赤く溶けている。

 これが眷獣!・・・・・・迂闊に使えねえな。

 俺は後ろの母娘の方にふりかえる。そこには怯えている女の子の姿があった。

 

 

 

 

 

ピピピピピピピピピ。ピピピピピピピピ。

 

「―――っん、・・・・・・朝か、嫌なこと思い出したな」

 

 俺は目覚ましを止め、ベットから起き上がる。

 

「あの日からもう7年か・・・・・・」

 

 あの後俺は女の子の怯えようにいたたまれなくなりその場から去った。帰った俺を待っていたのは両親からのお叱りだった。だが両親は叱りながらも俺の様子に気づき心配をしてくれた。その時は本当に両親に感謝した。

 それから数か月経ち父さんの仕事の都合で俺はその町から引っ越しこの町に移り住んでいる。それからが平凡な毎日で暮らしている。

 

「そろそろ学校にいくか。・・・・だるいけど」

 

 俺は外に出て学校への道を歩く。日の光の所為で俺は怠い中俺は今朝見た夢を思い出していた。

 

「・・・・・・なんで今更あんな夢を見たんだ?」

 

 そう考え事をしながら俺は校門を通る。

 

 『駒王学園』そこで高校2年目、俺はまたあの時の女の子と再会をする。

 そう、吸血鬼と悪魔として。




感想のほどよろしくお願いします。次回から原作にはいります。


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旧校舎のディアボロスⅠ

今回は主人公の日常と裏関係との接触までの話です。


「・・・・・・・怠い」

 

 俺はようやく授業が終わった教室で机に顔をつけてダレていた。外からは部活動を始めた生徒の声がする。

 一日の授業を受けるだけなのにこんなにキツイとはな。体質の所為とはいえやっぱり怠いな。

 そんな事を思いながら俺は教室でダレていると一人の女子生徒が声を掛けてきた。

 

「宗司、いつもの事だけどなにダレているのよ。たかが授業を受けただけでなんですべてを出し尽くしたようになっているのかしら」

 

「・・・・・・うるへ~、奈織(なおり)。ほっとけ」

 

 俺は声を掛けてきた女子生徒、浅葱奈織(あさぎなおり)に力なく言い返す。

 浅葱奈織(あさぎなおり)、同じ中学に通った同級生であり、学園一の秀才である。なんでか俺の世話を買ってでる変わり者だ。

 ま、こいつには何だかんだで助けて貰っているからなんも言えないんだけど。

 

「ほっとけって、アンタみたいなのほっとけるわけないじゃない!いつも怠そうにして危なっかしいんだから誰かが面倒を見ないといけないでしょう」

 

「それだったらなんでお前がするんだ?他の誰でもいいんだろう」

 

「!――そ、それは/////~~~~」

 

 俺が質問すると何故か奈織は顔を赤くしてゴニョゴニョなにか言っている。

 

ヒソヒソ 「あんな解りやすい態度なのになんで気づかないのかな逢魔君は」

 

ひそひそ 「ほんと、奈織が可哀そう」

 

 なんか外野が騒がしいな。

 

「~~~!アンタの面倒を他の人にまかせたら可哀そうでしょう!だ・か・ら仕方なく私が面倒を見てあげているの!わかった!」

 

「・・・・そうか、良い奴だなおまえは」ニコ

 

「/////わ、分かればいいのよ、ふん////」

 

ひそひそ 「くそ~、浅葱さんにあんな顔させやがってー」

 

ヒソヒソ 「逢魔の奴~、羨まし~妬ましい~」

 

 ・・・・・・やっぱ外野が騒がしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「課題、面倒だな」

 

 あの後教室を出た俺は帰るために玄関に向かっている。廊下には俺のように帰ろうとしている者や部活動に行く学生が多くいた。その中を歩いていると前の方から一人の女子生徒がこちらに歩いて来ていた。

 あれはたしか3年の姫島朱乃先輩。学園の2大お姉さまと呼ばれている一人だったか。

 和風感漂う佇まいと笑顔を絶やさないニコニコスマイル。まさに理想の大和撫子そのものだ。その為男女共に学生からの人気もある。

 まっ、俺には関係ないことだな。

 俺はそんな事を思いながら廊下を進み彼女とすれ違った瞬間、俺の体は変調をきたした。

 ――――!なっ、なんで急に発作(・・)が!?

 俺はとっさに鼻を抑えた。だが間に合わず鼻から血が流れ出す。

 

「あらあら、大丈夫ですか?」

 

 鼻血を抑えている俺に姫島先輩が話しかけてくる。急に花血を出した俺を心配してくれているんだろう。

 

「大丈夫です。何でもありませんから」

 

「そうですか、でも念の為に保健室まで行きましょう。私も付き添いをしますわ」

 

ドクン。

 

「!!いいいいえ結構ですぅううううう!!」

 

ダッ ドドドドドドドドド。

 

 俺は鼻を抑えながら彼女から離れるべく廊下を走った。

 

 

 

 

 

 

 

 朱乃は呆気にとらわれていた。用事をすまし部室に行くため廊下を歩いていた時自分とすれ違った男子生徒が急に鼻血を出していた。朱乃は急に鼻血を出した生徒を心配して声をかけるが男子生徒は鼻を抑えながら心配ないと言い自分から凄い勢いで走り去っていった。

 ―――えっ?

 朱乃は走り去っていく男子生徒の後ろ姿にデジャヴを感じた。自分から走り去る誰かの後ろ姿。朱乃はそれを何処かで見たことがあったような気がした。

 朱乃はそのまま立ち尽くし男子生徒が走り去った廊下を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ、まさかあんなとこで吸血衝動が起こるとはな」

 

 旧校舎の方に来た俺は鼻血が出てる鼻から手を放しポケットからティッシュを鼻に突っ込む。

 

「まさか俺も暁古城と同じ体質なるとはな・・・・・はぁーー」

 

 そう俺はストライク・ザ・ブラッドの主人公、暁古城と同じ性的に興奮すること吸血衝動がおきるのだ。しかもその所為で鼻血がでる始末だ。

 

「・・・・・いつまでこんなとこにいるわけにはいかないなし帰るか」

 

 俺は玄関に向かうべく足を向けるが旧校舎の方から視線を感じたため振り返った。旧校舎の二階の一室の窓から紅い髪の女生徒がこちらを見ていた。

 あれはリアス・グレモリー先輩だったか、さっき俺が逃げた姫島先輩と並ぶ2大お姉さまの一人。

 俺はその容姿を素直に綺麗だと思ったがそれ故に彼女が人以外の何かに見えた。

 ・・・・・・・帰るか。

 考えることをやめた俺は帰るため玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男子生徒・・・・・・」

  リアスは部室内のソファーに座りながら先ほど感じた変な感覚について考えていた。先ほど部室で寛いでいる時に校舎の方から走る音が聞こえた。気になり窓から外を見ると一人の男子生徒がいた。荒い息を繰り返し、少ししたら落ち着きポケットからティッシュを取り出し鼻に詰めていた。

 鼻血、かしら?

 その後何か悩むような仕草をした後校舎に向かい歩き出したが急に旧校舎に振り返り、自分のいる方を見た。

 その時、言い表せぬ感覚を覚えた。自分を見ていたのは一人だけのはずなのに複数に見られている感じがしのだ。

 その後男子生徒はを少しの間自分を見ると再び校舎の方に歩いて行った。

 

「何だったのかしらあの感覚。・・・・・・あの男子生徒調べる必要があるわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吸血衝動が起きた日から5日たった夜、俺は妹に頼まれ近くのコンビニまで買い物に出かけた。時間が時間だけに外を歩いている人は少なかった。

 

「たくっ、こんな時間に買い物を頼むなよな。まっ、俺にとっては快適な時間帯だけどな♪」

 

 夜、それは吸血鬼にとっての活動時間だ。そのため怠くなる朝と違い体が軽くていい気分だ。

 俺は気分よくコンビニに向かい頼まれ物を買って帰り道を歩く。

 ~♪夜の時間帯はやはり気分が良いな~。体は怠く無いし逆に活性化するしサイコ~♪・・・・ひさびさにこの近くの公園でも行くか。

 そう考えた俺は意気揚々と公園に向かった。・・・・・そこで俺の平凡な日常が終わるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処までだな小僧」

 

「がっ・・・・・あぁぁぁ・・・・」

 

 なんでこんな目に遭ってんだ俺は!?

 俺、兵藤一誠は数日前に彼女、天野夕麻ちゃんと出会い彼女が俺と付き合ってと告白されめでたく恋人同士になりデートをする約束をした。初めてできた恋人だったため俺は楽しいデートにするため色々準備をしてデートした。デートは夕麻ちゃんも楽しんでくれて上手くいっていた。そう、あの時までは・・・・・。

 夕方にこの公園来た俺と夕麻ちゃん。夕麻ちゃんはデートが楽しかったと言い俺にお願いをしてきた。

 俺は快く引き受けた。だがそれは俺が思っていたものじゃなかった。

 

「イッセーくん死んでくれる」

 

 その一言ともに夕麻ちゃんの背中から黒い翼が生え、その手から光る槍を俺に投げて俺の腹部を貫いた。

 

ズシャッ。

 

 痛みと混乱が入り混じり俺は倒れた。大量の血が流れていく。夕麻ちゃんが何かを言っているが俺の頭の中には入ってこなかった。

 言いたいこと言ったためか夕麻ちゃんは去って行った。動けない俺の体から血が流れ続けている。

 俺、死ぬのか?・・・・し・・・・死ぬんなら巨乳の美女の胸の中で・・・・・死にたい・・・・・・。

 意識が朦朧とする中俺が最後に見たのは紅い髪の美女だった。

 目が覚めた時には自分のベット中にいた。いつの間にか自分の家に帰ってきており、腹にあった大怪我もなかった。

 昨日のことで携帯で夕麻ちゃんに連絡しようとするが電話番号もメールアドレスも二人の記念に撮った写メも消えていた。

 その日俺は学校に着くなり学友の二人、松田と元浜に夕麻ちゃんのことを聞くも憶えていなかった。そうまるで最初から夕麻ちゃんがいなかったように誰も憶えていなかったのだ。

 あれから学校が終わり松田の家でビデオ鑑賞して最後の作品を見終わると十時になっていたため帰ることにした。時間が時間だけに外は暗く周りには人は歩いてい。

 ・・・・なんか体がオカシイ。体の内側から力が漲ってくる。それに暗いはずなのによく見える。どうなってるんだ?

 俺は自分の体の変化に戸惑っている最中に俺は生まれて初めて本物の殺意を感じた。殺意がくる方を見るとコートを着た男がいた。

 

「これは数奇なものだ。こんな地方で貴様のような存在に会うのだからな」

 

 なにを言っているんだ?

 

「主は誰だ?こんな場所を縄張りにしている輩だ、おまえの主は誰なんだ?答えろ」

 

 男が近づいて来る。

 マズイ!

 

バッ!

 

 俺は振り向き一気に今来た道を全速力で走った。捕まるまいと遠くへ走り続けた。体力も朝に感じた怠さ違い活性化している。夜の所為なのか。そう思った時一つの考えが浮かんだ。

 これって――――まるで吸血鬼みたいだ。

 走り続けて15分は経ったくらいで俺は公園にたどり着いた。俺は噴水近くまで来て一休みして俺は周りを見渡した。

 あれ?ここ・・・・知っている。

 そうだ、ここは夕麻ちゃんとデートで最後に来た場所!

 ・・・・・・なんでここに来てしまったんだ。

 

!ぞくっ。

 

 背筋に冷たいものが走る。

 俺は後ろを振り返るとさっきのスーツの男が立っていた。黒い翼をその背から生やして。

 俺は夢を見ているのか?人の背中から翼が生えているなんて現実じゃありえないファンタジーの話だ。

 

「逃げられると思ったか?舐められたものだな、下級にこのように思われるとは。さておまえの主の名を言え。こんなところでおまえたちに邪魔をされると迷惑なのでな。ん・・・・・・・まさか、『はぐれ』か?主なしならばこの困惑よう説明できる。ならばすぐに始末してやろう」

 

 男の手の中に光が集まりだした。

 こ、これって夕麻ちゃんの時と同じ!

 男の手に集まった光は槍の形になった。

 ―――ヤバい!

 と思ったときにはずでに腹に槍が貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「痛かろう?光はおまえらにとって猛毒だからな。その身に受ければ大きなダメージになる。だが意外と頑丈のようだな次はもう少し光の力を込めてやろう」

 

 ―――っくそ。なんだよ、俺は訳もわからずここで殺されるのか?まだやりたいことがあるのに。

 膝をついている俺に男が槍を向けた。

 

「死ね」

 

シュカッ。

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダダダダダ。 バッ!

 

「おらぁぁぁぁああああああ!」

 

バキャァアアン!

 

「なに!?」

 

「えっ?」

 

 突然のことだった。誰かが飛び込んで来て俺に迫ってくる光の槍を拳で破壊した。

 俺は驚き、スーツの男もいきなりのことに驚いていた。

 

ズザッ。

 

 謎の人物が着地をして立ち上がり俺を一瞥した。その時に顔が見えて俺は謎の人物の正体がわかった。

 !こいつは、駒王学園2年の秀才美少女として名高い浅葱奈織ちゃんを独り占めにしている木場祐斗に次いで全校男子の敵、逢魔宗司!

 

「たくっ、人が気分よく散歩と洒落込んでいるときにこんな現場に出くわすとはな。おい、そこのおっさん!うちの学校の生徒になにしてやがる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 せっかく散歩を楽しんでいたらまさかこんな現場に出くわすなんてな・・・・・・・。

 俺は腹を光で形成された槍で腹を貫かれた同じ学園の生徒を守るように黒い翼を生やしたスーツの男と対峙した。男もいきなり乱入した俺に警戒をして俺を睨みつけている。

 ・・・・・それにしても黒い翼ね。今朝見た夢で話がでた堕天使って奴か。まさか出会うことになるとわな。

 俺がそう思っていると堕天使が話しかけてくる。

 

「きさま何者だ?そこの下級の主か?」

 

 ・・・・・・下級に主ね。話から察するに後ろの男子生徒は下級の魔族で誰かの眷属ということか。

 

「生憎だが俺は後ろの奴が同じ学園に通っている生徒だから助けたんだ。主とかそんなの知らないね」

 

「ならばなおのことだ。きさまは何者だ?その魔力、上級いやそれ以上の桁外れな魔力だ。そんな存在が人間のはずがない。きさまは一体「その子に触れないでちょうだい」!?」

 

 堕天使が俺に問い詰めている最中第三者の声が割って入ってきた。

 俺は声がした方、後ろを見ると予想外の人物が立っていた。

 

「リアス・グレモリー・・・・・先輩」

 

 その紅い髪が印象的で今日たまたま旧校舎で見かけた学園の有名人。まさかの人の登場に俺は驚きを隠せなかった。

 

「・・・・・グレモリー家の者か・・・・・」

 

 堕天使が憎々しげにグレモリー先輩を睨みつける。

 

「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、堕ちた天使さん。そして逢魔宗司くん」

 

 グレモリー先輩は俺にも挨拶すると堕天使を睨みにつけた。

 

「この子にちょっかいをだすなら、容赦はしないわ」

 

「・・・ふふっ、なるほど。その者はそちらの眷属か。ならばこの町もそちらの縄張りにというわけか。今日はこちらの非礼を詫びよう。そして忠告をしておこう。下僕の放し飼いはしないことだ。私のような者に狩られてしまうからな」

 

「ご忠告痛み入るわ。この町は私の管轄なの。私の邪魔をしたら、そのときは容赦なくやるわ」

 

「その台詞、そっくりそのまま返そう、グレモリー家次期当主。そしてきさまが何者か知りたかったが今回は諦めよう。我が名はドーナシーク。再び見えないことを願おう」

 

 そう言うと黒い翼を羽ばたかせ俺やグレモリー先輩と男子を睨み、夜空に消え去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 堕天使が去って公園には俺とグレモリー先輩と男子だけになった。男子は堕天使が去ったためか気が抜けたためか気を失っていた。腹にあいた傷から血が流れ出ている。グレモリー先輩は男子の様子を確認して俺の方を向く。

 

「さて、逢魔宗司くん。この子を助けてくれて感謝するわ。あなたが何者か知りたいとこだけど、今はこの子ことを優先するわ。詳しい話は明日の放課後にしましょう。放課後に迎えを出すわ」

 

 そう言うとグレモリー先輩は男子と共に赤い光に包まれ消えた。

 彼女が消えた後俺は帰りながら頭の中で情報を整理した。

 さて今までの会話から推測するにリアス・グレモリーは人間じゃなく魔族。そしてこの町は彼女の治める縄張りで倒れている男子は彼女の眷属だということ。あの会話から堕天使と魔族は敵対関係である。そして放課後にグレモリー先輩とお話をすることになったことだ。

 

「・・・・・・明日はめんどくさいことになりそうだな。俺の平穏が。はぁぁぁ~~」

 

 俺は気が重くなりながら家に帰り家に着いたら妹に帰りが遅いことで怒られるはめになった。

 俺が何をした。




感想お願いします。それではよいお年を!


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旧校舎のディアボロスⅡ

仕事が忙しく、中々投稿できません。早く投稿できるようにがんばります。


 第5真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)こと俺、逢魔宗司は現在危機に直面している。木場が俺の首にが剣を突きつけ、横で塔城が拳を構えて、背後には姫島先輩が笑顔で微笑んでいるが、俺は彼女から危ない何かを感じった。そして俺の目の前には兵藤を守るように前に立ち俺を警戒して見てくるグレモリー先輩。

 なんでこうなったんだ・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・やっと今日の授業も終わったな」

 

 俺は今日一日の授業が終わったと同時にだれた。吸血鬼なためやはり日が出ている間は体が怠くなる。俺は教室でだれつつ放課後に来るグレモリー先輩からの迎えを待った。

 

「宗司、またダレているの?少しはシャキっとしたら」

 

 俺の様子を見たのか奈織が話しかけてくる。こいつは俺の体質を知らないため俺のために言ってくるが、言われる俺としたら勘弁してほしいものだ。

 吸血鬼(おれ)にとって太陽の日差しはキツイからな。

 

「しかたないだろう。奈織。俺はそういう体質なんだからよ」

 

「? 体質ってなによ?吸血鬼じゃあるまいし」

 

「!! い、いや、俺って夜型だからさ、昼間の時間帯は苦手なんだよ(汗)」

 

「・・・・プっ。なによそれ。それって体質の問題?それはアンタの普段からの生活の所為でしょ」

 

「ははははっ、だよな」

 

 俺はなんとか上手く奈織を誤魔化した。

 

「それはそうと宗司。一緒に寄り道して帰らない?先週の課題を写させてあげた兼もかねてアンタの奢りでね」

 

「なんだよそれ。でも俺は「逢魔宗司くんはいるかな?」!」

 

 廊下の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。俺はそっちの方を見ると金髪のさわやか顔をした男子と昨日助けた男子生徒だいた。

 あの男子が迎えか・・・・?

 

「奈織、わるい。今日は先約ががあるんだ。また今度な」

 

「・・・・・別にいいわよ。また明日ね」

 

 俺は椅子から立ち俺を呼んだ男子に近づいた。

 

「おまえがグレモリー先輩から言われた迎えか?」

 

「そうだよ。僕は木場祐斗、よろしく。それじゃ付いて来てくれるかな。部長の所に案内するよ」

 

 そう言って木場は歩き出した。俺はその後ろを付いて行く。

 ・・・・・・なんでさっきからこいつは俺を睨んでいるだ?

 俺は後ろから一緒に木場に付いていく男子に何故か睨まれている。

 俺が何かしたか?俺がしたことといえば昨日こいつを助けたぐらいだけど?

 そんなこと考えながら俺は木場に付いて行き、昨日グレモリー先輩を見た旧校舎の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 思っていたより中は綺麗だな。

 初めて旧校舎に入ったがもう使われていないはずなのに中は汚れておらず今でも十分使えるものだった。その中進み、木場が一つの教室の前に止まった。俺は気になりプレートを見るとこう書いてあった。『オカルト研究部』と。

 ・・・・・・・魔族がオカルトって(汗)

 

「部長、二人を連れてきました」

 

 俺が唖然としている内に木場が中に確認を取っていた。すると中から「ええ、入ってちょうだい」とグレモリー先輩の声が聞こえる。

 グレモリー先輩は中にいるようだな。

 木場がドアを開け入った。あとに続いて室内に入ると、そこは普通の部屋ではなかった。床、壁、天井に謎の文字が書かれていて中央には教室大半を占める巨大な魔方陣。

 確かにオカルトだな。本物だからこそ一般人にばれないようにするための隠れ蓑か?

 あとはソファーやデスクがいくつかあり、その一つに一人の女子生徒が座っていた。小柄で小学生に見えしまう体。そして綺麗な白髪。

 この子は確か・・・・・・一年の塔城子猫。

 その可愛らしい容姿から学園のマスコット的存在でうちのクラスにも彼女のファンが多数いる。

 無表情で黙々と羊羹を食べている。

 こちらに気づいたのか俺たちを見てくる。

 

「こちら、兵藤一誠くんと逢魔宗司くん」

 

 木場が紹介してくれた。ペコリと塔城子猫が頭を下げてくる。

 

「あ、どうも」

 

 隣の男子が挨拶をしたので俺もした。

 

「よろしくな」

 

 それを確認すると、また羊羹を食べだした。

 なんか変わった子だな(汗)

 

シャー。

 

? 室内で水の音?しかもこれはシャワーの音?

 こんな室内では聞かない音がしたので俺は周りを見る。すると部屋の奥に何故かシャワーカーテンがあり、カーテンに陰影が映っている。

 女性の肢体。女の人がシャワーを浴びていた。

 

ツー。

 

 ! ま、マズイ!!

 俺は鼻を抑えながら後ろを向いた。鼻からは鼻血がもろにでている。

 

キュ。

 

「部長、これを」

 

「ありがとう、朱乃」

 

 背後から聞き覚えのある声がした。そう昨日聞いた声だ。

 

「まさか・・・・・(汗)」

 

 俺が嫌な想像している最中でも背後から音が聞こえた。服を着る音がしている。さっき見た陰影が脳裏に浮かび、その肢体が着替えている姿を想像してしまった。

 

ドクン。

 

 !! まずっ!

 吸血衝動がでたため俺はなんとか落ち着こうする。

 

「・・・・いやらしい顔」

 

 ぼそりと呟く声がする。そちらの方を見るといやらしい顔した男子と俺を見ている塔城子猫。男子も気づいたのか塔城子猫を見るが、本人は知らん素振りで羊羹を食べる。

 

ジャー。

 

「ゴメンなさい。昨夜、(イッセー)のお家にお泊まりして、シャワー浴びてなかったから、いま汗を流していたの。あら?逢魔くん。どうかしたの?」

 

「な、なんでもありあません!」

 

 カーテンが開く音がと共にグレモリー先輩の声が聞こえた。背中を向けている俺に不思議がっているが、俺は誤魔化した。

 なんとか落ち着いた俺はグレモリー先輩の方に向き直った。そこには昨日見た学生服を着たグレモリー先輩がいた。しかも、その隣にはグレモリー先輩と同じく昨日接触した姫島朱乃先輩までいた。

 ! やっぱり、さっき聞いた声は姫島先輩だったのか。この人もここにいるということは姫島先輩も魔族なのか?

 そんなこと考えている内にグレモリー先輩が前に出てきた。

 

「そう。それじゃあ、全員揃ったわね。兵藤一誠くんと逢魔宗司くん。いえ、イッセーとソージ。私たち、オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。悪魔としてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と兵藤はグレモリー先輩から悪魔、堕天使、天使の関係や神器についてと兵藤の事情を説明された。その過程で兵藤は神器を出したが――――。

 なんだよ!プッ、あれはないだろう~~~~~~。

 某格闘マンガの必殺技の真似をしたためおもわず笑ってしまった。

 それから恙なく会話が進み、そのまま終わると思ったが、グレモリー先輩が俺に話しかけてきた。

 

「さて、ここからが本題よ。ソージ、貴方のことを説明してくれるかしら」ニコッ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?

 

「なんのことですか?グレモリー先輩」

 

「とぼけても無駄よ。貴方は何者なのかしら?昨日、貴方から感じた魔力は上級悪魔である私をも凌駕していたわ。そう。最上級、いえ下手をしたら魔王と同格。それほどの魔力をただの人間がもっているわけないわ。この町は私の領地、そこへ危険な人物がいるならそれ相応の対処をしなければならないの。答えて、貴方は何者?」

 

 真っ直ぐな目で俺を見てくるグレモリー先輩。それに合わせて木場や塔城、姫島先輩が動き、俺は囲まれた。木場はどこからか剣を出し、塔城は拳を握り、姫島先輩は扉前をかためている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・如何する。

 俺は悩んだ。俺に関すること説明するにしてもとても信じてもらえそうにない内容だからだ。此処とは違う世界の世界最恐の吸血鬼、第5真祖終焉の暁(エンド・ローウン)。そして自らの寿命を代償に実体化する異界からの召喚獣。眷獣。その全てを受け継いで真祖の吸血鬼になったなんて、どう考えても無理だろう!

 俺は心の中で絶叫する。そして今の状況を打開する案を考えた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理だ。俺の頭じゃどう考えてもいい案が思いつかない。しかたないか・・・・・。

 

スゥ。

 

 俺は降伏の意味で両手を上げた。

 

「わかりました。話します。俺が何者か。ただし、これから話す話ははっきり言ってとても信じられない内容です。それでもいいですか?」

 

「別にかまわないわ。貴方が話してくれるなら。祐斗、剣を下ろして」

 

「はい」

 

 グレモリー先輩に言われた木場が剣を下ろしてくれた。それを見た塔城や姫島先輩も警戒をといでくれる。

 

「ふう、肝が冷えた。さて俺が何者かでしたね。・・・・・・・俺は真祖と呼ばれる吸血鬼です」

 

「真祖!?」

 

 俺の言葉にグレモリー先輩は驚く。兵藤を除く他の部員も驚いていた。

 周りが驚いている理由が解らないイッセーはリアス先輩に聞いた。

 

「リアス先輩、ソージが吸血鬼ってことがそんなに驚くことなんですか?」

 

「・・・・・・イッセー、只の吸血鬼なら私もべつに驚くほどでもなかったわ。ソージ、彼が真祖だからよ」

 

「? 真祖ってなんですか?」

 

 イッセーが質問すると、姫島先輩が答えてくれた。

 

「・・・真祖。最も古く、最も強大な魔力を備えた始まりの吸血鬼。つまり、ソージ君は世界で最初の吸血鬼ですわ。」

 

「ええぇえええーーーーーー!!ソージ!おまえそんなにすごい奴だったのか!」

 

「凄いとかの問題じゃないよ、イッセー君。彼は世界中の吸血鬼達にとって神にも等しい存在。もし僕らが彼に害を及ぼすならそれが原因で悪魔と吸血鬼の全面戦争になりかねなかったんだ」

 

「!?!?」

 

 木場の一言でさらに驚愕するイッセー。皆が誤解し始めたため、誤解を説く為に慌てて言った。

 

「落ち着いてくれ!俺はそんな大層な存在じゃない。真祖といっても俺は元々は普通の人間だったんだぜ」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

 俺の一言を聞いたため皆唖然とした。

 

「それってどうゆうこと!?」

 

「グレモリー先輩、落ち着いて。訳を話しますから」

 

 ソージの言葉を聞いてリアスはソージに詰め寄る。そんなリアスをソージは宥め落ち着かせる。

 

「・・・・・・俺はただ押し付けられただけですよ。この厄介な体質と力を」

 

「? 押し付けられた。誰に?」

 

 兵藤が聞いてくる。それにたいして俺は疲れた様に言う。

 

「先代の真祖にだよ」

 

「! ソージ。貴方、真祖に会ったの!それに押し付けられたっていったい―――――」

 

「・・・・・・すいません。グレモリー先輩。その時のことを話せないんです。いつ何処で会って、どうして真祖になったのか、そこの記憶が無いんです。だから詳しいことは俺自身も解らないんです」

 

 俺は本当のことを隠すため、古城と同じように記憶喪失ということにした。

 ばれないといいが・・・・・。

 

「・・・・・・・わかったわ。記憶のことは置いとく事にしましょう。それはそれとして、ソージ。あなた私の眷属にならない?」

 

「へっ?」

 

 信じて貰えて安堵したがグレモリー先輩がいきなり勧誘をしてきた。

 

「い、いきなりですね。先輩」

 

「ええ、私は元々ソージ、あなたを眷属に勧誘しようとしていたの。あなたの正体を知ってますますあなたを私の眷属にしたくなったわ」

 

 グレモリー先輩は俺を眷属にする予定だったようだ。そして俺の正体を知ってますます俺を気に入ったようだが、俺としては勘弁してほしい。

 俺としては平穏な生活を送りたいんだけど。

 そんな俺の思いを露知らず、周りの皆は新しい仲間への歓迎ムードになっている。

 ―――――断りづらい(汗)

 

「あの~、暫く保留でもいいですか?いきなり言われても困りますし」

 

 俺は保留という形で眷属の話を待ってもらうことにした。それを聞いてグレモリー先輩は少し考えるしぐさをする。

 

「・・・・・・そうね。わかったわ。眷属になるかならいかはしっかり考えた上で答えができたら返事をちょうだい」

 

 ほっ、なんとかなった~~。

 心の中で安堵する。

 

「眷属とは別としてソージ、あなたオカルト研究部に入りなさい。これはあなたの為でもあるの。先日の堕天使がまた襲ってくるかもしれないし、同じ部活なら一緒にいてあなたを守れるわ」

 

 グレモリー先輩の言い分に俺は納得する。確かにまたあんなのに襲われたら堪らない。

 

「わかりました。俺、オカルト研究部に入部します」

 

 俺の返事を聞いてグレモリー先輩は笑顔になった。他の皆も笑顔になっている。ただし、塔城は顔が変わってないため歓迎してくれているか判らないけど。

 

「それじゃ、あらためてイッセー、ソージ。オカルト研究部にようこそ!」

 

 こうして俺はオカルト研究部に入部した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた~~~」

 

 あの後グレモリー先輩からの紹介と説明が終わり、俺は家に帰ってきた。家に着いたらすぐに妹に帰りが遅いことで文句を言われ、そして今は自分のベットの上で横たわっている。

 

「今日は濃い一日だったな・・・・・・・」

 

 放課後に木場に連れていかれてもう使われていない旧校舎に入り、そこにはオカルト研究部なる部活がありそこの部長、リアス・グレモリーや部員一同全員悪魔であったこと。そして聞かされた天使、堕天使、悪魔の三勢力と神が作った神器。オマケに俺にたいする勧誘。本当に色々濃い一日になった。

 

「【力を持つ者は他の力を引き寄せる】か、何かの映画でそんな台詞があったな」

 

 俺は仰向けになり、自分の掌を見つめた。

 

「・・・・・・真祖の吸血鬼としての力が俺の周りに力ある存在を引き寄せているのかな。だとしたらこの体質は本当に厄介なものだな」

 

 俺は目を瞑り、ため息を吐く。今日は精神的に大きく疲れたため何もしたくなかった。俺はそのまま眠た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――!!!やべっ!明日までの課題があった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の街、深夜の時間。街中には誰もいない時間帯。一つのビルの上に一人の少女がいた。艶やかな黒髪。可愛いとも綺麗ともとれる顔立ち。小柄な体だが、出るとこは出ている。服装は駒王学園の女子生徒の服装をしている。ギターケースを肩に掛けて街を見渡している。

 

「・・・・・・・この町に居るんですね。先観の予言にでた。この世界の理から外れた存在、世界最悪の吸血鬼、第五真祖――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ~~、また奈織に貸しを付くちまったな」

 

 俺は玄関で靴を履きながら昨夜のことを思い出していた。

 昨日の夜、今日提出する課題を忘れていた俺は急いで取かかったが全然できず、しかたなく奈織にメールで課題のコピーを頼んだのだ。

 

「はぁ~~、また何かを奢らされるんだろうな~。今月は金欠だな」

 

 憂鬱になりながら俺は玄関を開けて外に出た。

 

 

 

 

 

「おはようございます。宗司くん」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「なんで俺の家の前にいるんですか?姫島先輩」(汗)

 

 俺は昨日入った部活の副部長で先輩である彼女が家の前にいる理由を聞いた。

 

「うふふふ、今日から私があなたの監視権護衛役になりましたの。よろしくお願いしますね。宗司くん」

 

 ・・・・・俺の平穏は何処に行った?




アニメ、ストライク・ザ・ブラッド毎回楽しみです。


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旧校舎のディアボロスⅢ

雪のために仕事が忙しいのと体調を崩して投稿が遅れて申し訳ありません。こんな作者が書いた作品ですがよろしくお願いします。m(__)m


「――――まさか朝から疲れるハメになるとは」

 

 朝の教室、俺は自分の席で机に突っ伏している。こうなっているのは朝の出来事が原因である。

 学校に登校しようと玄関のドアを開けたら姫島先輩がいた。何でいるのかと聞いたら、俺の監視と護衛の為とのことだ。監視はともかく護衛の為の理由に納得して一緒に登校することになった。だが、俺は気づくべきだった。俺の隣を歩いている人がどうゆう人(・・・・・)だったかとゆうことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

ひそひそ 「誰、朱乃お姉さまの隣を歩いている男子?」

 

ひそひそ 「知らない。けど、姫島先輩が男と登校なんて・・・・」

 

ヒソヒソ 「おい、あいつ二年の逢魔じゃないか?」

 

ヒソヒソ 「あのヤロ~、浅葱ちゃんに飽き足らず朱乃さんにまで手を出しやがって~」

 

 視線がキツイな(汗)。

 

 周りの生徒からの視線が俺に突き刺さってくる。

 忘れていたよ、俺の隣を歩いている人がどうゆう人か。

 俺は原因たる横にいる人物を見る。当の本人は周りからの視線を気にしないでゆうゆう歩いている。

 姫島朱乃、駒王学園3年、同学年のリアス・グレモリーと並ぶ二大お姉さまとして学園の有名人だ。そんな彼女が男の学生と登校していたら注目されるのは当たり前だ。その為俺には登校中の生徒からの視線が向けられている。

 俺の視線に気がついたのか姫島先輩が俺の方を見る。そして俺の表情と周りからの視線に気づいたのか、姫島先輩がイタズラ思いついたような笑みうかべるといきなり俺に腕に腕絡めて体をくっ付けてきた。

 

「(^^♪」

 

「っな!?!」

 

「「「「「「「あぁああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」」」」」」」

 

 いきなりの行動に俺は驚き、周りの生徒もその光景に声を上げる。

 俺は顔を赤くし狼狽しながら姫島先輩に叫んだ。

 

「!? ひ、姫島先輩!なんのつもりですか!!」

 

「うふふふ(^^♪」

 

 俺の気も知らず姫島先輩は笑顔で微笑んでいる。そしてさらに俺に体を密着させてきた。

 

ムニュ。

 

 おおぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~!!!むむむ胸がぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~!!!!

 腕に姫島先輩の胸の柔らかい感触が伝わる。その感触に俺の鼓動が大きくなる。

 

ツー。

 

 ! マズイ!吸血衝動が!

 姫島先輩のイキナリの行動のせいで鼻血が出てしまった。俺は急いで鼻を抑える。

 ティッシュをださないと・・・・!

 俺はティッシュをだそうとするが、それより速く姫島先輩がハンカチを出し俺の鼻血を拭いてくれた。

 

「姫島先輩!自分でやりますから「動かないでください。すぐにすみますから」・・・・わかりました」

 

 俺は黙って姫島先輩が拭き終るのの待った。

 

「これでいいですわ」

 

「ありがとうございます。姫島先輩」

 

「うふふふ、どういたしまして」

 

 俺の礼に笑顔で返答してくれた姫島先輩に俺はおもわずドキッとしてしまった。その時―――――。

 

ぞっ。

 

 俺は周りからプレッシャーを感じた。恐る恐る周りを見ると俺に向かってアツイ視線が集まっていた。

 

ひそひそ 「アイツ、アケノオネエサマト」

 

ひそひそ 「オネエサマガヨゴレマス」

 

ヒソヒソ 「ヤルカ?ヤルカ??ヤロウ!!!」

 

ヒソヒソ 「オレダ、Oマッサツケイカクヲショウニンカイギヲシンセイスル」

 

 勿論悪い意味でだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、姫島先輩との登校が終わるまで俺は周りからの視線を浴び続け、教室に着くとともにダウンしたのだ。

 

「これから毎日こうなるのか・・・・・」(汗)

 

 そう思うとさらに疲れてくる気がする。

 

「宗司。なに朝から疲れているのよ」

 

 聞きなれた声がするので顔を上げる。そこには予想どうり、奈織が机に突っ伏している俺を見下ろしていた。

 

「あ~っ、・・・・おはよう奈織。朝いろいろあってな」

 

「おはよう宗司。いろいろってなにがあったのよ?」

 

「! い、いや~それは「宗司!」久瀬(くぜ)!?」

 

 俺と奈織の会話に急に体ごとはいってきたのはクラスメイトの一人久瀬直哉(くぜなおや)だった。こいつは奈織の幼馴染の関係である。奈織と同じく中学の頃からの友人だ。そんな久瀬が血相を変えて俺に詰め寄ってきた。

 

「宗司、朝のあれはなんだよ!姫島先輩との腕を搦め手の登校なんてしやがって!!羨ましいじゃねえか!!」

 

「げぇっ!おまえ!見てたのか!?」

 

「当たり前だろうが!あんな校門から目立つように入ってきて、しかも相手が駒王学園二大お姉さまのかたわれだぞ。十分目立つわ~~~~!!!」

 

「ぐげぇ!!決まってる!ギブギブ!!」

 

 久瀬が俺の首に腕を搦め手絞めてきた。俺は久瀬の腕を叩くが無視される。

 俺は奈織に助けを求めようとしたが奈織の姿が無かった。俺は周り探し見ると奈織がゴミ箱の前にいた。そして手に持っていた紙を破りゴミ箱に捨て始めた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ。

 

「あの・・・奈織さん・・・。それって今日見せていただけるはずの課題じゃ・・・」

 

 俺は奈織に声をかけると奈織は振り返り俺の方を向く。その顔は笑顔だったが、何故か凄味があった。

 

「朝から異性と仲良く登校しているみたいだし当然課題もバッチリよねェ」ニコ

 

ビリ。

 

 奈織の手にあった紙が全て破られてゴミ箱にはいった。

 

「あたしは逢魔君と違って遊んでいる暇はないのー。じゃーねー」

 

 そう言うと奈織は自分の席に向かっていった。

 

「ちょ・・・奈織!・・・・ハハ。最悪だ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の部活までの時間潰しとして俺は街中を歩いていた。この時間帯は当たり前に人が行き来して歩いている。夜の世界とは大違いである。

 

「はぁ~、悪魔の稼業も大変だ」

 

 俺がオカルト研究部に入部して数日が経った。グレモリー先輩、部長からの指示で俺は同じ新入部員の兵藤と共に行動している。

 最初の仕事として悪魔との契約と召喚をするためチラシ配りから始まり、真夜中の街中をチャリで走って配り回った。しばらくはそれが続き少し経ったころになると契約を取りに行くようになったのだが、兵藤が転移に必要な魔力が無かったためにしかたなくまたチャリで行く破目になった。俺自身は魔力に問題なかったが兵藤があまりにも哀れだったため俺もチャリで同行したのだが、ついたらまた別の問題があった。契約の相手がくせ者ばかりだった。

 ・・・オタクの人はまだましだったが、そのあとの相手が恐ろしかった。まさか漢女が実在するとはな。

 契約2回目の相手が化け物(クリーチャー)だったのた。筋肉ムキムキで魔法少女の服を着ていた。

 今思い出すだけでもおぞましい存在だったな。・・・・・・いい加減現実逃避はやめるか。

 俺は背後をチラ見する。そこにはギターケースを担いだ女子生徒がやはりいた。俺を尾行しているつもりなのかときどき遮蔽物に隠れたりしながら付いてきている。

 あの制服からして駒王(うち)の生徒だよな?二年であんな子見たことないから一年か?・・・・そもそもなんで付いて来てるんだ?・・・・・・・・・試すか・・・。

 不意を突くために俺は走り出した。それを見た女子生徒も走り出す。俺は走りながら路地裏まで誘導する。角を曲がり路地裏に入ると反転して立ち止まった。そこへ予定どうりに女子生徒も入ってきた。路地裏に入ると俺が待ち構えていたので驚いている顔をするが、さらに俺の予想だにしないことを言った。

 

「だ・・・第五真祖!!」

 

 ――――――!な・・・なんで知ってんるんだ!!第五真祖。その存在自体がこの世界にない存在をなぜ知っているんだ!!?

 俺は目の前の女子生徒に警戒する。本来この世界の住人が知らないことを知っているこの女子生徒が只の一般人なわけないのだから。女子生徒の方も俺の出方を見ているようだ。ギターケースを開いていつでも中身を出せるようにしている。

 ・・・このままはマズイな・・・こうなったら・・・誤魔化して逃げる!

 

「オゥ!ミディスピアーチェ!アウグーリ!!」

 

「は?」

 

 俺のいきなりの会話に女子生徒は困惑する。それを見逃さず俺はそのまま押し切る。

 

「ワタシ通りすがりのイタリア人です。日本語よくわかりません。アリヴェデルチ!グラッチェ!!じゃ!そういうことで」

 

「な・・・!?待ってください逢魔宗司!!」

 

 そのまま女子生徒の横を通り去ろうとするが女子生徒が俺の名を呼び、呼び止める。俺は観念して立ち止まり首だけ振り返った。

 

「・・・・ハァ。誰だおまえ?」

 

「わたしは獅子王機関(ししおうきかん)剣巫(けんなぎ)姫柊明日菜(ひめらぎあすな) です。第五真祖であるあなたの監視のため派遣されました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女子生徒、姫柊明日菜(ひめらぎあすな)の言ったことに驚き状況が全く呑み込めず俺は頭を抱えた。とにかく事情を整理するため俺は目の前の女子、姫柊明日菜(ひめらぎあすな)に説明を求めた。

 

姫柊(ひめらぎ)・・・さんでいいかな?詳しく説明してくれるかな。その方が俺も助かるんだけど・・・」

 

「・・・わかりました。説明します。しかし説明をするのはこの土地を領地にしているグレモリー家との会見をする時でいいですか?この土地は彼女の縄張りですから断りもなく行動するわけにもいきませんので」

 

「わかった。それじゃさっそく部室に行こうぜ。そろそろ時間だし」

 

 そうして俺たちは駒王学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 旧校舎内に入り部室の前に来ると部室内から部長の声が聞こえた。どうやら兵藤に説教しているようだ。俺は説教が終わるのを待ち、終わると同時にドアをノックした。

 

「部長、部長に会いに来たお客さんを連れてきました入っていいでしょうか?」

 

「客?誰かしら・・・・・・いいわソージ一緒に入ってきて」

 

「失礼します」

 

 俺はドアを開けて中に入り、俺の後ろから続いて姫柊(ひめらぎ)がはいってくる。部室内には姫島先輩を除いた全員が集まっており部長と塔城はソファーに座っていた。

 

「ソージ後ろの彼女がわたしに会いに来てくれた人かしら。見たとこ駒王(うち)の生徒のようだけど・・・」

 

「部長、彼女は「逢魔・・・先輩。ここからは私が説明します」―――」

 

 そう言うと姫柊(ひめらぎ)が俺の前にでる。そして背筋を伸ばし部長に話しかけた。

 

「初めまして、ソロモン七十二柱の一柱、序列五十六番目グレモリー家次期当主、リアス・グレモリー。私は獅子王機関の剣巫(けんなぎ)姫柊明日菜(ひめらぎあすな)です。このたびは御身の統治する領地に入るにあたりご挨拶に伺いました」

 

「―――!獅子王機関ですって!!」

 

「「!!」」

 

「へっ?!」

 

 姫柊(ひめらぎ)の口から獅子王機関の名前が出ると部長は驚き立ち上がり険しい顔をする。木場と塔城はすぐに臨戦態勢をとる。皆の急な行動に兵藤は訳が分からず呆けている。 姫柊(ひめらぎ)ただ真っ直ぐ部長たちを見ている。

 この状況はマズイと思った俺は部長たちを止めにはいった。

 

「部長、落ち着いて!イキナリ戦闘はマズイですよ!俺と兵藤は訳が分からないですから説明をお願いします。ほら姫柊(相手)も戦う気もないようですし」

 

「先輩の言うとうりです。私はあなた達と戦う気はありません。私は逢魔宗司、先輩の監視のためにこの地にきました」

 

「ソージの監視?ソージおまえ何かしたのか?」

 

「いや・・・それは・・・」(汗)

 

 姫柊(ひめらぎ)が宗司の監視のために来たと聞いたイッセーは不思議がりソージに理由を聞くが聞かれたソージは言いよどむ。

 彼女の言葉を聞いたリアスは考える仕草をしてソファーに座りなおした。

 

「・・・いいわ。話を聞きましょう」

 

 ――よかった~。俺の所為で殺し合いになったら嫌だからな。

 部長が話を聞いてくれることに俺はホッとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 姫柊(ひめらぎ)と部長は互いに向き合うように座った。俺は部長側で立っている。

 

「そちらは知っているようだけど名乗らせてもらうわ。わたしはリアス・グレモリー。侯爵家、グレモリー家の次期当主よ。それで獅子王機関の人間が何の用でわたしの領地の来たのかしら?」

 

「私がこの町に来たのは彼、第五真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)である逢魔宗司、先輩の監視ため派遣されました」

 

「? 第五真祖、終焉の暁(エンド・ローウン)?」

 

「はい、この世の理から逸脱した存在。自らも同胞も眷属も作らない孤高の吸血鬼。冷酷非情で快楽主義な怪物です」

 

「・・・ソージがその第五真祖であっていうなら見当違いよ」

 

「・・・どうゆうことですか?」

 

 リアスの言葉に姫柊(ひめらぎ)は疑問に思ったのか聞き返す。

 

「ソージはもともとはただの人間だったそうよ。真祖になったのは譲られてなったそうよ」

 

「――――――そんなことありえません!!!人間が真祖になるなんてできる筈がありません!!!」

 

 姫柊(ひめらぎ)リアスの言葉を聞き、驚愕して否定した。聞いた内容がありえないことことだからだ。

 人間が真祖になる?そんなことは不可の・・・・・・・・―――――――――――!

 姫柊(ひめらぎ)は何かに気づいたような顔をすると俺の方を見た。

 

「・・・先輩、あなたはまさか・・・真祖を喰らってのその能力を自らに取り込んだんですか?」

 

「「「「!?」」」」

 

 姫柊(ひめらぎ)の発言にソージを除いたみんなが驚く。リアスは姫柊(ひめらぎ)に説明を求めた。

 

「真祖喰らう?それはどうゆことかしら・・・」

 

「・・・先ほど言ったとうり人間が真祖になることはできません。ある一つの方法を除いてわ。それが真祖を喰らい自らの肉体に取り込むことです。だからこそ今一度聞きます。先輩、あなたはどうやって真祖になったのですか。そもそも先輩は真祖、 第五真祖終焉の暁(エンド・ローウン)とどうゆう関係なんですか!なぜ第五真祖は先輩を後継者にしたのですか!説明してください!!」

 

 姫柊(ひめらぎ)のあまりの鬼気迫る迫力に飲まれたのか部長たちも俺の方見た。その視線に俺はたじろぐ。俺はため息を吐くと姫柊(ひめらぎ)に部長に言ったのと同じように説明する。

 

「・・・・・悪い、姫柊(ひめらぎ)。俺、その時のことを憶えていないんだ。気づいていたらこんな吸血鬼(からだ)になっていたんだ」

 

 俺の様子に気づき姫柊(ひめらぎ)は申し訳ないように顔を少し俯かせ話し出した。

 

「・・・・・・・・・私は先輩の監視のために派遣されましたがもう一つ命令されたことがあります。先輩がもし危険な存在なら・・・・抹殺するようにと言われています」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?

 

「・・・・・・・・・・・抹殺?」

 

 俺は姫柊(ひめらぎ)からの俺の抹殺命令を聞き固まった。そんな俺に気づかず姫柊(ひめらぎ)は話を続ける。

 

「はい、その理由がわかった気がします。先輩は自身のなってしまったモノ(・・・・・・・・・)強大さがわかっていません!先輩自身がわかっていないその力が・・・あるきっかけで簡単に暴走してしまったらどうするですか?」

 

 姫柊(ひめらぎ)の言葉に俺はぐうの音も出なかった。

 ・・・・確かに俺が掌握している眷獣は『獣王の紅玉(ライガー・アンスラックス)』だけだ。他の眷獣が暴走する可能性がある。

 眷獣が暴走して町が壊滅状態になっている光景を想像して俺は身震いしてしまった。

 

「だから先輩は現時刻をもってわたしが監視します!そうすればもし先輩が暴走してしまった時すぐに殺せ(ヤレ)ますし!」

 

「な・・・・「先輩には拒否権はありません!」・・・はい」

 

 俺は姫柊(ひめらぎ)の言葉にうなだれる。

 リアスはそんなソージを気の毒そうに見る。他の部員の木場は苦笑いをし、子猫は無表情でソージを見て、イッセーは何故か羨ましがっていた。

 

「あらあら、なにやら賑やかですね」

 

 部室に副部長の朱乃が入ってきた。

 

「朱乃どうしたの?」

 

「討伐の依頼が大公から来ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 街はずれの廃屋。そこは使われていないために中はぼろぼろに老朽化して埃も舞う。そんな廃墟にはぐれ悪魔バイザーはいた。上半身は女性の肉体だが、下半身は四本足の巨大な獣。それは完全に人間の容姿からかけ離れた姿だ。

 今夜も自分に騙されてのこのこ付いて来た人間が目の前に居る。この人間の恐怖に染まった顔と断末魔の叫びを聞きながら晩餐を楽しむつもりのバイザーは狂喜の笑みを浮かべる。だが、バイザーは気づいていなかった。

 

「・・・ふっ、この町に来てすぐに悪魔に出会えるとはこれも主のお導きか。感謝します」

 

 目の前の人間が自分の命を刈に来た死神だということを。




次回も遅いと思いますが、なるべく早く投稿できるように頑張ります。


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旧校舎のディアボロスⅣ

文才の無いこの身ですが、なんとか書き上げました。花粉がキツイです~~。


『はぐれ悪魔』 自らの欲望のために己の主を裏切り逃亡した悪魔のことだ。この存在は悪魔にとっても有害な存在なために見つけたらすぐに抹殺するのがきまり。俺たちは部長の領地であるこの町に潜伏しているはぐれ悪魔を討伐するためにそいつの潜む廃墟に向かう。姫柊も俺の監視と言って付いて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的の廃墟に着いた俺たちは早速中に入った。中に入って一番に感じたのは―――――――。

 

「「・・・・・血の匂い」」

 

 俺は服の裾で鼻を覆った。俺と同じように塔城も服の裾で覆っている。どうやら塔城も俺と同じように鼻が良いようだ。廃墟内に蔓延する血の匂い。吸血鬼である俺には本能を誘惑する迷惑な匂いだ。

 廃墟内を探索しながら部長が話し出した。

 

「イッセー、いい機会だから悪魔としての戦いを経験しなさい」

 

「マ、マジっすか!?お、俺、戦力にならないと思いますけど!」

 

 イッセーは自分の無力さを全面的に言った。それを聞いていた俺も心の中で同意する。最近悪魔になった奴がいきなり実戦なんてできるわけないのだから。

 

「そうね。それはまだ無理ね。でも、悪魔の戦闘を見ることはできるわ。今日は私たちの先頭をよく見ておきなさい。それだけでも勉強になるわ。ついでに下僕の特性を説明してあげるわ」

 

 部長の説明が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部長から悪魔の駒(イーヴィル・ピース)とレーティングゲームの説明が終わったが、イッセーはあることが気になり質問する。

 

「部長、聞きそびれていたんですけど獅子王機関ってなんですか?姫柊さんとなんの関係があるんですか?」

 

 聞かれたリアスは言いづらそうな顔をして、視線だけを姫柊に向けた。向けられた視線に明日菜も気づきリアスに話しかけた。

 

「グレモリー先輩、ここからは私が説明します。・・・・獅子王機関は国家公安委員会に設置されている特務機関です」

 

「こ、国家?特務機関?要するに公務員ってことか?」

 

「はい。大規模な魔導災害や魔導テロや人外対策そして神器(セイクリッド・ギア)保持者の監視や保護の為の情報収集や謀略工作や人外戦闘を行う機関です。もともとは平安時代に宮中を怨霊や妖から護っていた滝口武者が源流(ルーツ)なので、今の日本政府よりも古い組織なんですけど」

 

 イッセーの質問に明日菜はスラスラ答えていく。

 一緒に聞いていた内容から俺は源流(ルーツ)ことはわからなかったが公安警察みたいなものだと理解した。

 俺は説明に出てきた内容が気になり姫柊に質問する。

 

「姫柊、神器(セイクリッド・ギア)保持者の監視や保護ってどゆうことだ?」

 

「・・・神器(セイクリッド・ギア)保持者には中にはその力を悪用したりする者やその力故に暴走させて迫害されたり、悪魔によって無理やり眷属にさせられたり・・・・危険な存在とみなされて堕天使や悪魔に殺害されたりするんです」

 

「「!!」」

 

 姫柊の言葉を聞いて俺は部長たちを見た。みな顔を俯かせいる。それだけでそれが事実だと知る。

 イッセーもそれ聞いてショックを受けていた。イッセーが殺されたのは自分の身に宿る神器(セイクリッド・ギア)を危険視されたためだっただけにショックはおおきかった。

 

「部長、本当なんですか?神器(セイクリッド・ギア)を宿している人を無理やり眷属にしたり殺害することがあるんですか?」

 

「・・・確かに、神器(セイクリッド・ギア)を危険視して相手を殺害することは昔からよくあったわ。でも、私はそんなことはしないわ。ましてや相手の意思を無視して無理やり眷属にすることだけは絶対にしない。だから安心して、イッセー」

 

 イッセーの訪いにリアスは否定した。自分はそんなことをしないと、それを聞いてイッセーはホッとした表情をする。

 それを黙って見ていた明日菜が話し出した。

 

「安心してください。兵藤先輩。そうならないように私たち獅子王機関がいますから。もしそうゆうことをする悪魔がいたら即刻抹殺することになっています」

 

「姫柊、それは部長たちの前で言うことじゃないだろう・・・」

 

 姫柊の言った部長たちにはシャレにならない内容に俺はツッコんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ある程度廃墟内を探索した俺たちは一つ部屋の前にたどり着いた。ここから一段と濃い血の匂いがする。はぐれ悪魔はここにいるようだ。

 ギャアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 突如、中から断末魔が聞こえた。俺たちは中に突入する。そこには全身をバラバラに刻まれた悪魔と巨大な斧を持った男がいた。おそらくこの男が悪魔を殺したのだろう。斧から血が垂れている。

 

「・・・今宵は良き日だ。神に仇名すもの、悪魔をこれほど屠れる機会に恵まれるとわ!」

 

 男が俺たちのほうに振り向く。 金髪を短く刈った外国人だ。左目には金属製の方眼鏡(モノクル)を嵌めている。男は聖職者の法衣ようなものをまとっている。長身で体格もよく軍人みたいだ。法衣の下には金属の鎧を装着している。男が只ものじゃないことはあきらかだ。

 男が俺たちに向かって突っ込んできた。それを迎え撃つ様に木場も前に出た。

 木場はどこからか剣を出して男に振るった。男はそれを斧、戦斧で迎え撃った。剣と戦斧がぶつかる。だが、力で負けたため木場は吹き飛ばされた。

 祐斗が吹き飛ばされると同時に子猫も前に出てその小柄な体を生かして男に接近する。男の懐に入り込むと拳を男の腹にめがけて放った。男は放たれた拳を後ろに下がり回避する。そして拳を放った体制の子猫に向かって戦斧を振り下ろす。避けられないその一撃は子猫に振り下ろされる瞬間―――――。

 

若雷(わかいかずち)!!!」

 

 ドゴ!

 いつの間には男の横に移動していた姫柊が男の横腹部に掌底を放ち男を吹き飛ばす。

 男は吹き飛ばされながらも体制を立て直し着地する。男は明日菜を見据えている。

 男が動かない隙に俺たちは急いで塔城と姫柊の傍に駆け寄った。リアスはいの一番に子猫の傍に駆け寄る。

 

「大丈夫!?子猫!」

 

「・・・はい、姫柊さんのおかげです」

 

「そう。・・・ありがとう。姫柊さん。子猫(この子)を助けてくれて」

 

「明日菜で結構です。グレモリー先輩。私も同級生が殺されるのを黙って見ていられませんでしたから」

 

「!―――ふふふ。私もリアスでいいわ。アスナ」

 

「!――はい!リアス先輩!」 

 

 リアスの礼に明日菜も笑顔で返し男の方を見る。男もこちらの様子を窺っている。

 

「戦闘をやめてください」

 

 明日菜が、睨んで男に警告する。

 男は、そんな明日菜を蔑むように眺め、

 

「・・・・若いですね。この国の退魔師(エクソシスト)のようですが・・・・見たところ悪魔の仲間をしているようですね」

 

 値踏みするような表情で淡々と言う。

 男の体から滲み出る殺気を感じて、明日菜は重心を低くする。

 

「この国では、はぐれ悪魔、および犯罪を犯した悪魔以外の悪魔の虐殺行為は、退魔特別措置法で禁止されています」

 

「・・・・悪魔におもねる背教者たちが定めた法に、私が従う道理があるとでも思ったか?」

 

 男は明日菜の後ろにいるリアスたちに向かって加速した。リアスたちも迎撃のために動いたが、それより速く明日菜が動いた。

 

雪霞狼(せっかろう)―――!」

 

 背負ってままのギターケースを開きなにかを抜き放つ。

 それは冷たく輝く銀色の槍だった。

 柄の部分がスライドして長く伸び、格納されていた主刃が穂先から突き出し、戦闘機の可変翼ように穂先の左右にも副刃が広がった。それは十文字槍に似た形だが、洗練された近代兵器のようだ。

 槍を構えた明日菜も走り出し、男に突っ込む。

 男は自分に向かって来た明日菜に戦斧を振るう。明日菜も槍でそれを迎え撃つ。

 ギイイィィィィィン!

 戦斧と槍がぶつかり合い火花と衝撃が発生した。

 

「ほう・・・・!」

 

 戦斧を弾き飛ばされた男は愉快そうに呟く。後方に飛び退き、明日菜に向き直る。

 

「その槍、七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)ですか!?”神格振動波駆動術式(D O E)„を刻印した、かの『神滅具(ロンギヌス)』にも匹敵する。獅子王機関の秘奥兵器!よもやこのような場で目にする機会あろうとは―――獅子王機関の槍使い・・・ということは”剣巫(けんなぎ)„の称号を持つ者ですね!」

 

 男は歓喜の笑みを浮かべる。それを見た宗司はゾッとした。 

 

「ふふ・・・いいでしょう、獅子王機関の剣巫ならば相手にとって不足なし。娘よ、ロタリンギア殲教師、カウス・オイスタッハが手合わせを願います。そこの悪魔たちの命、見事守護してみなさい」

 

「ロタリンギアの殲教師!?なぜ西欧教会の退魔師がこの極東の国で悪魔狩りを――――!?」

 

「我に答える義務はなし!」

 

 オイスタッハは大地を蹴って猛然と加速して、断頭台ごとき勢いで戦斧を振り下ろし明日菜を襲う。しかし明日菜は、完全に見切り紙一重ですり抜け反撃した。攻撃を終えた直後のオイスタッハの右腕へ、旋回した明日菜の槍が伸びる。

 ギイイィィィィィン!!

 回避不能の攻撃をオイスタッハは鎧で覆われた左腕で受け止めた。

 

「ぬぅぅん!」

 

 バキン!

 魔力を帯びた武器と鎧の激突で青白い閃光が発生し、男の左腕の装甲が砕け散る。その隙をついて明日菜は男から離れて距離を稼いだ。オイスタッハは破壊された左腕の鎧を眺める。

 

「・・・我が聖別装甲の防御結界を一撃で打ち破るとは!さすがは七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)―――実に興味深い術式です。素晴らしい!」

 

 オイスタッハは満足げに笑みを浮かべる。彼の方眼鏡(モノクル)も怪しく点滅している。

 オイスタッハの姿に危険を感じた明日菜は表情を険しくする。

 ―――――この男を野放しにするのは危険だ。後々に災いを必ず起こす存在。

 明日菜の剣巫としての直感がそう告げた。

 

「―――――獅子(しし)神子(みこ)たる高神(たかがみ)剣巫(けんなぎ)が願い(たてまつ)る。破魔(はま)曙光(しょこう)雪霞(せっか)神狼(しんろう)(はがね)神威(しんい)をもちて(われ)悪神百鬼(あくじんひゃっき)を討たせ給え!」

 

「むッ・・・これは―――――」

 

 明日菜が厳かに祝詞を唱え、体内で練り上げた呪力を七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)、雪霞狼が増幅させていく。放たれる強力な呪力の波動、オイスタッハは表情を歪める。

 明日菜は一気に加速してオイスタッハに突っ込み攻撃を仕掛けた。

 ドン!

 

「ぬお・・・・!」

 

 ドガガガガ!ギン!ガギン!!

 閃光の速さで銀槍を放つ。オイスタッハは反応して戦斧で止める。しかし、予想に反して腕に伝わる衝撃はおおきかった。その小柄な体では考えられない力にオイスタッハは驚く。

 しかし、明日菜の攻撃は一撃で終わらず、続けざまに嵐のような猛攻の連撃を至近距離で放つ。そのためにオイスタッハは防戦一方の状態になり、その事実にさらに驚愕する。

 霊視による先見と幼い頃から修練で身につけた高度な武技が明日菜のこの動きを可能としているのだ。

 メキ!バキ!バキン!!

 明日菜の連撃により戦斧にひび割れや破砕ができる。

 

「ふむ、なんというパワー!・・・そしてこの速度!これが獅子王機関の剣巫ですか!いいでしょう、獅子王機関の秘呪、たしかに見させてもらいました。――――次はこちらの番です!」

 

 オイスタッハは背後に跳ぶ、それと同時に男が立っていた地面から巨大な金属のような腕が出現した。鈍色に輝きながら、明日菜を襲う。明日菜は雪霞狼で迎撃する。

 ギイイィィィィィィィィィ。

 巨大な力がぶつかり合い、大気が振動する。

 

「ぐッ!」

 

 ズズ・・・!

 

「―――ほう、耐えきりますか・・・」

 

 激突に勝ったのは明日菜の方だった。銀の槍が鋼の腕少しづつ引き裂いていく。このままイケるとオカルト研究部のメンバーは思った。しかし、

 

「―――ですが甘い」

 

 ズリュ―――。

 

 地面からもう一本の腕が出てきた。おそらく左右一対であったのだろう。まるで蛇のごとく動き、頭上から明日菜を襲ってきた。

 ゴオォ!

 

「しまッ―――」

 

 明日菜の表情が凍りつく。

 振り下ろされる致命的な一撃。騎士(ナイト)である祐斗が助けに走るが、間に合わない。

 剣巫の先見によって明日菜も自分の死を確信する。

 祐斗は諦めず明日菜を助けるためにさらに加速する。だが、その祐斗を追い抜き明日菜の傍に誰かが飛び込んだ。

 

「姫柊ぃーーーーーー!うおおおおおおおぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞こえた声、それは第五真祖、逢魔宗司のものだった。宗司は明日菜に迫っていた腕を魔力を込めた拳でを殴り飛ばした。

 ドガ!

 巨大な腕はまるで大型トラックに跳ね飛ばされたように吹き飛ぶ。それによって両腕とも光に包まれ消えた。

 

「なにィ!」

 

 その光景にはオイスタッハは驚愕する。

 明日菜はいきなり自分の傍に現れた宗司を惚けて見ている。

 

「先・・・・・・輩・・・?」

 

「大丈夫か?姫柊」

 

「! はい!って、そうじゃありません!先輩!なんで前に出てきたんですか!」

 

「おまえがやられそうなになっていたからに決まってんるだろうが!このバカ!!」

 

「バ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」

 

 宗司のバカ発言で固まった明日菜。宗司は言いたいことを言って、男の方を向く。

 

「・・・・まさかこの極東の地で吸血鬼に出会うとは思いもよりませんでしたね。しかし、その魔力はいったい?貴族と同等、いや、それ以上。・・・・・・・・――――――――もしや、真祖!始まりの吸血鬼にして伝説の存在ですか!」

 

 オイスタッハは宗司の正体に気づき驚愕する。そして油断なく宗司を睨みつけた。宗司も殲教師を睨み構えた。後ろにいた明日菜も宗司の横に出て、雪霞狼を男に向ける。

 殲教師が宗司たちに向かって加速した。宗司は身構え、明日菜は迎撃態勢をとる。だが、宗司たちの後ろから祐斗が飛び出し男に剣を振るう。

 

「ハアッ!」

 

 ズバッ!

 ガギィィン!!

 オイスタッハはいきなりのことに反応できず、戦斧で受け止めるも後ろに弾き飛ばされる。オイスタッハは吹き飛ばされながらも体制を立て直し着地する。しかし、

 

「ぐっ―――ッ!」

 

「・・・・お返しです」

 

 ドゴン!

 バキャアァァァン!!

 横から子猫がパンチで追撃する。オイスタッハはなんとか反応して戦斧で防御するが、戦車(ルーク)である子猫のパワーで戦斧は砕け散った。オイスタッハは破壊された戦斧の持ち手の鉄芯を子猫に振るおうとする。だが、自分に迫る雷が見え、急いでその場から飛び退く。飛び退いてすぐに、その場に雷が直撃した。

 ズガアァァァァン!

 

「あらあら、避けられてしまいましたわ」

 

 宗司たちの後ろから片手から雷気をパチパチ迸らせている朱乃とリアスが前にできた。その二人の後ろにはイッセーもいる。

 飛び退いたオイスタッハは周りを見まわす。そして破壊された戦斧を棄てた。

 

「・・・・・・どうやら今宵はここまでのようですね」

 

「あら、ここまでやっておいて無事に帰れると思っているのかしら?」

 

 リアスは手のひらにどす黒い魔力を放出する。朱乃や祐斗や子猫もいつでも動けるよう体制をとる。明日菜は宗司とイッセーを守るように二人の前に立ち雪霞狼をに殲教師に向ける。

 その時、殲教師の背後の地面から再び巨大な腕が出現する。リアスたちは身構えるが、腕はリアスたちでなく天井に向かっていき、

 ズガアアアァァァァァン!!!

 天井を破壊した。それによって破壊された天井が落ちてくる。

 リアスは手のひらの魔力を上に放った。

 ドッシゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!

 魔力に呑み込まれて降ってくる瓦礫は跡形もなく消し飛んだ。

 その光景に俺と兵藤は唖然とした。あれだけの瓦礫をたやすく消し飛ばした部長の力に。

 これが、上級悪魔の力!

 宗司が部長の力に驚くなか姫柊が周りを見渡し異変に気づく。

 

「! あの殲教師がいません!」

 

 姫柊の声を聞き、俺たちは殲教師がいたところを見ると男の姿は何処にもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの夜から二日経った。あの後、周辺を捜したが殲教師(エクソシスト)の姿を見つけることはできなかった。あの男の危険性を警戒した部長は次の日から使い魔を使ってこの町の隅々まで探索して行方を追っているが、今だに発見できていない現状だ。

 俺は家に帰るために帰路についている。勿論、俺の監視で姫柊も一緒にだが。

 

「なあ、姫柊。あの危険なおっさん(エクソシスト)本当にまだこの町にいるのか?もう別の街に移ったんだじゃないのか」

 

「その可能性は確かにありますけど、おそらくまだこの町にいます。あの男から悪魔に対する執念を感じました」

 

「執念?」

 

「はい、とても大きなものでした・・・・」

 

 姫柊の言った相手の執念を考える。

 執念。俺には縁のない言葉だな。それよりあのおっさんがまだ俺たちを狙っていることの方が俺にとっては問題だしな。!、そういえば―――――。

 もう一つの気になることがあったので姫柊に再び聞いた。

 

「姫柊、あいつが出したあの腕(・・・・)、何か解るか?」

 

「・・・あれは神器(じんき)だと思います」

 

神器(セイクリッド・ギア)!?あんなものまであんのかよ」(汗)

 

「はい、二日前に見たとうりならあの神器は凄まじい力をもっています。」

 

 姫柊からの情報に俺は更に問題が大きくなったことを確信する。つまり、殲教師(エクソシスト)の相手だけでわなく正体の解らない神器(セイクリッド・ギア)の相手もしないとならないというわけだ。

 俺は平穏に生きたいだけなのに・・・・・・。

 

「あれ、宗司くん?」

 

 ため息を吐いていた時、いつも聞いている声が聞こえた。振り返るとそこには妹の杏沙(あずさ)がいた。大きな瞳が印象的な表情豊かな少女である。その明るい性格と少女から大人の女性に変わり始めた容姿と相まって塔城と並ぶ人気があるらしい。制服姿で手にはスーパーの袋を持っている。おそらく、帰る途中で夕飯の買い物をしてきたのだろう。

 

杏沙(あずさ)、おまえも帰りの途中か?」

 

「うん。そのついでに夕飯の買い物もね。それよりも宗司くんがなんで明日菜ちゃんと一緒にいるの?」

 

「?杏沙(あずさ)、おまえ姫柊のこと知っているのか?」

 

「知ってるもなにもって、明日菜ちゃんは2日前にうちのクラスに来た転校生なんだよ。ねえ、明日菜ちゃん」

 

「はい、転校してきたばかりの私に杏沙(あずさ)さんが話し掛けてきてくれていろいろ教えてもらっています」

 

 妹の、杏沙(あずさ)の世話焼きは学校でも健在のようだ。家でも朝がキツイ俺を問答無用で叩き起こしてくれるのだから。そのおかげで学校への遅刻は免れているために強く言えないのだけれど。

 

「それで、なんで宗司くんと明日菜ちゃんが一緒にいるの?」

 

「!?いや、それはだな―――」

 

 杏沙の質問に俺は返答に迷う。

 

「実は私の引っ越し先が先輩の家のお隣のマンションなのでこの辺りの案内もかねて一緒に下校していたんです」

 

「ええぇぇ~~~!そうなの!?」

 

「はい。先輩とは部活も同じなので良くしてもらっています」

 

 姫柊の発言に杏沙は驚く。俺も姫柊の発言の内容を聞き別の意味で驚いた。姫柊が俺の家の近くに引っ越してきていたことについてだ。

 やっぱり俺の監視為に家の隣に引っ越してきたんだよな。はぁ~~。

 俺は姫柊の、獅子王機関の俺にたいする対応に心労して又ため息でた。

 

「そうなんだ。早く教えてくれればいいのに。―――!そうだ。明日菜ちゃん!今夜家で晩御飯食べない?明日菜ちゃんの歓迎会をしよう!」

 

「ええぇぇ!?そんな、別にそんなことしてもらわなくても「いいのいいの、お隣さん同士になるんだから親睦を深めるためにもね」~~~~」

 

 杏沙のいきなりの誘いに明日菜は断ろうとするも、杏沙の強引さに明日菜は押し負けてしまう。

 

「いいよね?宗司くん」

 

「っ、ああ、・・・・いいんじゃないか」

 

「先輩!」

 

 味方だと思っていた宗司まで了承するので明日菜は逃げ場を失った。

 

「それじゃ、さっさと家に行こう!」

 

 そう言うと杏沙は先に歩きだした。その後ろを宗司と明日菜が付いて行く。

 

「・・・・先輩、助けてくれてもよかったんじゃないですか」

 

「・・・ああ言い出した杏沙は止められないんだ。悪いな姫柊」

 

「宗司?」

 

「ん?」

 

 姫柊と並んで歩いている最中に後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには奈織がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、奈織?」

 

「や、偶然ね!」

 

「どうしてここに?おまえ()ってこっちじゃないよな?」

 

「うん・・・バイト帰り。そうしたら宗司を見かけたから声をかけたの」

 

「へぇー、そうなのか。確かプログラムの管理の仕事だっけ?」

 

「そそ、コンピューターの保守管理(メンテナンス)ってやつ。割が良いの♪・・・・ところでさ――・・・その子、誰?」

 

 奈織が俺の後ろにいる姫柊を見て質問してきた。

 

「ああ、姫柊か。ついこの間うちの学校に転校してきたんだ。妹の杏沙と同じクラスに」

 

 俺が紹介すると姫柊も奈織にたいしてお辞儀をする。

 

「へーそうなんだ。・・・・で、なんでその転校生ちゃんと宗司が一緒にいるわけ?」

 

「それは―――・・・そ、そう、さっきも言ったけど杏沙のクラスに転校してきたって言っただろう。それで杏沙が姫柊と友達になってそれで・・・」

 

「あ!、それで紹介してもらったわけ?」

 

「そうそう」

 

「そっか、杏沙ちゃんの、ふーーーん」

 

 そう言い、奈織は姫柊を見まわす。姫柊も自分を見られて少し硬くなっていた。

 

「・・・・・綺麗な子ね!」

 

「・・・そうだよな・・・ハハハ・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ニコ

 

 奈織は無言で微笑んでいるが、その笑顔からは凄いプレッシャーを感じた。

 

「・・・って杏沙も言ってた」(汗)

 

「そっか。・・・あっ!、もうこんな時間。あたし帰るわね」

 

「! そうか。また明日な」

 

「ええ、また明日」

 

 奈織はそう言うと俺たちとは別方向に行く。だが、途中で振り返ってきた。

 

「バイバイ、転校生ちゃん」ニコ

 

 そう言うと今度こそ奈織は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんだったんだあいつ?」

 

「すいみません先輩。わたしのせいでなにか誤解されてしまったかも・・・」

 

 何故か姫柊が申し訳ないように言ってくる。

 

「いや、ないない。あいつとはただの友達だ。まぁ、腐れ縁というか、男友達みたいなもんだ」

 

「・・・・先輩・・・」

 

「ん?」

 

「・・・いえなんでもありません」

 

 そう言うと姫柊は先に歩き出した。

 

「・・・・なんだってんだ?」




仕事が忙しくなるのでさらに遅くなると思いますがよろしくお願いします。後2,3話で旧校舎編を纏めたいです。


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旧校舎のディアボロスⅤ

お待たせしてスイマセン。仕事の忙しさと気温の変化による体調不良にあいまして遅くなりました。
皆さんも健康に気を付けてください。


 真夜中の街中を俺と姫柊は歩いている。妹の杏沙(あずさ)が姫柊の歓迎会をすると言い出し、それは遅くまで続いた。それにより部活に行くのが遅くなり部長に連絡したところ兵藤はすでに契約を取りに行ったことを知らされた。一度部室に顔を出してから兵藤のもとに行こうと考えたが部長からそのまま現場に向かってくれて言われために俺たちは現場まで移動しているところだ。

 

「悪いな、姫柊。こんな遅くまでつき合せたりして」

 

「いいえ、先輩の監視は私の任務ですから。それに、今夜の歓迎会は私も楽しかったですから」

 

 そう言って明日菜は笑う。その笑顔を見て俺も杏沙()のいきなりの提案が喜ばれいるようで安心した。

 

「そうか、それは良かった。一生懸命に料理した杏沙(あずさ)も報われるよ」

 

高神(たかがみ)(やしろ)ではこんな機会滅多にありませんでしたから」

 

高神(たかがみ)(やしろ)?」

 

 俺は聞いたことがないことを聞いて首を傾げた。

 

「それって姫柊が前にいた学校のことか?」

 

「はい、表向きは(・・・・)神道系の名門校です」

 

「表向きって・・・裏になにかあるのか?」

 

「・・・獅子王機関の養成所です。獅子王機関については解りますよね?」

 

「ああ、俺の監視を姫柊に命じた国家組織だろ」

 

 俺が不満と文句を含めて言うと、姫柊は苦笑した。

 

「仕方がありませんよ。なにせ先輩は危険人物なんですから。誰かが監視をしておかないといけないんです」

 

「・・・・・俺は平穏な生活したいだけなんだけど」

 

 姫柊の言葉を聞いて俺は脱力ともにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちは契約相手の家の前に着いた。が、俺の吸血鬼としての能力が異常を報せる。家のドア開いていてそこから新鮮な血の匂いが漂ってくる。

 明日菜も異常に気付き警戒する。

 ! い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!

 家の中から悲鳴が聞こえた。俺は靴も脱がずそのまま上がり込んだ。後ろから姫柊も付いて来る。俺は血の匂いと気配がする部屋に走り込んだ。

 そこには無残に殺された遺体が上下逆さま壁に貼り付けにされていた。体から内臓がはみ出ていて、体に太く大きな釘を打ち付けられている。そして足に怪我をしている兵藤と兵藤の前に立ち庇う金髪の少女。血の匂いを纏っている拳銃と光の剣(ライトセイバー?)持った白髪の男がいた。

 

「兵藤!!」

 

「! 先輩!!」

 

 俺は傷ついている兵藤に駆け寄った。そこに姫柊の止める声が聞こえて立ち止まった瞬間、横から殺気を感じて横に振り向くと白髪の男が光の剣を俺に振り下ろしていた。いきなりのことで反応できず硬直してしまった。

 や、やばい!斬られる!

 男の剣が宗司を切り裂こうと迫る。

 その時、明日菜は動いた。

 ダッ。

 ギィィィィィィぃィィン!

 加速して宗司と男の間に割って入り男の剣を雪霞狼(せっかろう)で受け止めた。明日菜のいきなりの乱入に男は驚き一瞬硬直する。その一瞬の隙を明日菜は見逃さなかった。力を入れて男を弾き飛ばした。

 

「はあっ!」

 

「! ウヒョッ~!?」

 

 弾き飛ばされた男は明日菜の力に驚くも、いとも容易く着地する。そして笑い顔で明日菜たちを見るて喋りだす。

 

「悪魔のお仲間をブッタギリにしてチョパ~しようとしたらイキナリの乱入者~デスカ。邪魔しないでもらいたいんですけど~」

 

「・・・・・その言動と態度。あなた、はぐれ退魔師(エクソシスト)ですね」

 

「そ~ですよ~。俺サマははぐれ悪魔祓いフリード・セルゼンですよ~。堕天使の籠で悪魔を好きに殺せれば俺サマ的にはハッピーですからね」

 

「なぜ、ここの住人を殺害したんですか・・・?」

 

 明日菜は貼り付けにされた遺体を一瞥して問いただした。男、フリードの返答はすぐにかえってきた。

 

「あぁ~ん?そんなの決まってるじゃん。悪魔を呼び出す奴なんて生きているだけで迷惑、百害あって一利なし~、死んであたりまえなんですよ」

 

「! おまえっ!」

 

 男の言いように宗司は怒りが湧いた。この男、フリードは人を殺すことに躊躇いがない。気に食わなかったらどんな人でも殺す奴だ。宗司はそう確信した。

 

「・・・先輩、兵藤先輩とその人をお願いします!」

 

「姫柊!?」

 

 明日菜は槍を男に向けて構えた。それ見たフリードは好戦的な笑みを浮かべる。

 

「なに?俺サマと(やろ)うってんの?いいですよ。悪魔のお仲間なら即有罪死刑決定デ~ス!だから速やかに俺サマに殺されろやぁぁぁ~~!!」

 

「獅子王機関の剣巫としてあなたを捕縛します!!」

 

 獅子王機関の剣巫、姫柊明日菜とはぐれ悪魔祓い、フリード・セルゼンがぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一誠は目の前の光景に目を奪はれていた。白髪の男の攻撃完璧に見切り紙一重で避けて銀の槍で相手を圧倒している後輩、姫柊明日菜の姿に。

 す、すげぇぇ~!この間のエクソシストとの戦いは速すぎてぜんぜん解らなかったけど明日菜ちゃんってこんなに強いのか!?

 周りを見ると俺を庇ってくれた金髪の少女、アーシアや俺の傍に来た逢魔も俺と同じように明日菜ちゃんに目が釘付けになっている。

 

「~~~~~~~~~!!あぁぁぁぁぁ~~!!おたくなんなんですか!?俺サマの攻撃が当たらないし、そのうえこっちがおされている始末っ~~~!!ふざけんなぁぁ~~~~~~~~!!さっさとくたばれよクソアマ~~~~~~!!!」

 

 自分の攻撃が一向に当たらない状況ににフリードは激怒した。それにより攻撃も大振りになりそれにより隙ができた。明日菜はその隙を見逃さず相手の懐に入り込み、雪霞狼(せっかろう)の柄を腹に叩き込んだ。

 ドガッ!

 

「があっ!?」

 

 どさっ。

 予想外の重い一撃を腹にくらったフリードは膝をついてそのまま前のめりに倒れた。

 

「―――す、すげぇ・・・」

 

「! わわわわっ」

 

「・・・・・姫柊をあまり怒らせないようにしよう」(汗)

 

 明日菜ちゃんの強さに驚いていると、床が青白く光りだした。青い光が走りだし、何かの形を作り出していく。できあがったそれは魔方陣、グレモリー眷属の魔方陣だった。魔方陣が光だし、光の中からオカルト研究部のメンバーが現れた。

 

「兵藤くん、助けにき――・・・もう終わっているみたいだね」

 

「あらあら」

 

「・・・・・無駄足」

 

 木場や朱乃さんに子猫ちゃん!俺を助けるために来てくれたのか!

 

「イッセー!」

 

 部長が俺の前に来た。

 

「ゴメンなさいね。まさか、依頼主のもとにはぐれ悪魔祓いが訪れてくるなんて計算外だったわ。―――! イッセー、あなたケガをしたの?」

 

 部長が俺の怪我に気づく。気づかれた俺は半笑いしながら誤魔化す。

 

「あっ!すみません!その、撃たれちゃって・・・・・でも、明日菜ちゃんが助けてくれましたし・・・」

 

「・・・・・そう。アスナ。また私の眷属の子を助けてくれてありがとう。あなたにまた借りができたわ」

 

 部長はまた自分の眷属()を助けてくれた明日菜ちゃんに礼を言う。

 

「べつに気にしないでください。リアス先輩。それより、この男の処遇は獅子王機関に任せてまらいます」

 

「・・・・本当なら私がしたいところだけど、あなたにまかせることにするわ」

 

「ありがとうございます。先輩たちは兵藤先輩の治療をお願いします。わたしはこのはぐれ退魔師(エクソシスト)が動けないようにして獅子王機関に連絡します」

 

 そう言い明日菜ちゃんは倒れている男に近づく。

 これで助かった。俺はそう思った。だが、

 

「――――――その男を捕まえられるのはまだ困りますね」

 

 危機はまだ続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然聞こえた声に全員動きを止めた。そして声の方、リビングの入口に向くと、あの廃墟で戦ったロタリンギアの殲教師(エクソシスト)がいた。

 

「また会いまみえましたね。悪魔共。そして獅子王機関の剣巫よ」

 

 殲教師の登場に皆が驚く。いち早く平常になった宗司は殲教師、オイスタッハに問いただした。

 

「なんでおまえがここに!?」

 

「そこに倒れている男はついでだが、その少女、アーシアを迎えに来た」

 

「「「!!?」」」」

 

 男の言葉を聞き宗司や明日菜、一誠そして少女、アーシアは驚く。リアスたちは殲教師の発言を聞き警戒する。発言どうりならこの男は堕天使と繋がっているからだ。

 明日菜は相手の真意を探るために尋ねた。

 

「・・・・・・どうゆうつもりですか?殲教師(エクソシスト)がはぐれ退魔師(エクソシスト)、堕天使陣営に協力するなんて」

 

「ふっ、堕天使とはお互いの目的のための一時的な協力関係に過ぎません。その少女も堕天使達に必要な存在。それゆえに迎えに来た。ただそれだけです」

 

「おい!それはどうゆうことだよ。説明しやがれ!!」

 

 オイスタッハの言うないように兵藤がほえた。だが、オイスタッハは体から殺気をだし戦斧を構える。

 

「これ以上悪魔との会話をする必要は我になし・・・・・。今宵この場で神の名のもとに悪魔を断罪する!!」

 

 オイスタッハは一足で宗司たちに接近して戦斧を横に振るった。明日菜は逸早く動き、雪霞狼(せっかろう)をもちいて戦斧を弾いた。

 ギイィィィィィン!

 

「・・・・やはり邪魔をしますか。剣巫!」

 

「あなたのすきにはさせません!」

 

 明日菜とオイスタッハはそのまま互いの武器で討ち合いをする。激しく繰り出される戦斧と槍。俺たちそのため、二人の間に入り込めなかった。

 その状況を皆で見ているなか、朱乃はこちらに近づくものを感じた。

 

「! 部長!堕天使らしきものが複数近づいてますわ!このままでは不利に・・・」

 

「・・・朱乃イッセーとソージを回収して飛ぶわよ。ジャンプの用意を!」

 

「はい!」

 

 部長に促され、朱乃さんが呪文を唱え出した。すると兵藤はアーシアを視線を向け、部長に言った。

 

「部長!あの子も、アーシアも一緒に!」

 

「無理よ。この魔方陣は私の眷属しか移動できないの。ソージは特別に一緒にジャンプできるけど・・・」

 

 ・・・・――――! ちょっと待て、俺は特別(・・・・)。それじゃ・・・・!!

 

「部長!それじゃ姫柊はどうなるんですか!」

 

「っ・・・残念だけどアスナも・・・・」

 

 部長も辛そうな顔している。その顔を見て気づく、部長もつらいのだろう。まだ数日だけのつきあいだが部長も姫柊のことを気に入っていたんだ。

 くそっ!なにか手はないのか?

 

「先輩!」

 

 姫柊が俺を呼んだ。姫柊の方を見ると殲教師(エクソシスト)と鍔迫り合いになっていた。

 

「リアス先輩たちと一緒に脱出してください」

 

「な、何言ってるんだ姫柊!おまえも一緒に「先輩!!」――!!?」

 

「私なら心配いりません。いってください」

 

 姫柊の言葉に俺はやるせない気持ちになる。

 姫柊・・・・・・・・っ。

 

「逢魔くん。アスナちゃんの言うとうりにしよう」

 

「・・・・・いきますよ」

 

 木場と塔城に促されて俺は部長たちの傍に行く。足元の光も強まりがあと少しでジャンプする。

 姫柊をおいていくしかないのかよ・・・・・・・・・・・。

 朱乃さんの詠唱が終了する。床の魔方陣が青く光りだした。

 ・・・・・・・・・・・。

 

「アーシア!」

 

「イッセーさん。また、また会いましょう」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。

 

「―――やっぱり、やっぱりほっとけるわけねえだろ!!」

 ダッ。

 俺はジャンプする瞬間魔方陣から抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は近くにあったソファーを殲教師(エクソシスト)に投げつける。投げつけたソファーは戦斧で容易く破壊されたが、それでできた隙を見逃さず姫柊は攻撃する。殲教師(エクソシスト)は後方に跳びかわすが、姫柊とのあいだに周いができた。

 それを見た俺は姫柊の傍に駆けよった。俺がいることに姫柊は驚いている。

 

「姫柊!」

 

「! せ、先輩!どうして残ったんですか!?」

 

姫柊(後輩)を残していけるか、このバカ!」

 

「バッ!?―――・・・・どちらがバカなんですか!先輩は足手まといにしかなりません!そんなことも判らないんですか!!」

 

 俺と姫柊は言い争いになる。

 

「だいたい先輩は考えなしなんです!自分の存在が世界にあたえる影響を全く理解していません!」

 

「俺は普通に生きたいだけだ!世界とか影響とかしるわけないだろう!」

 

 お互い一歩も引かずに言い合う。その時、俺と姫柊の周りが光りだした。

 

「な、なんだ!?」

 

「! これは・・・・!」

 

 光はさらに強くなり、あまりの眩しさに目を瞑ってしまった。だが、光すぐに治まった。目を開けるとそこははぐれ悪魔がいた廃屋の部屋だった。

 

「・・・ここ「転移させてもらった」・・!殲教師(エクソシスト)!!」

 

 俺たちの後方に殲教師(エクソシスト)がいた。

 

「あの場所では死闘(やり)づらかったのでね。此処なら堕天使(奴ら)の邪魔もない」

 

 ブン。

 オイスタッハは戦斧を勢いよく振るう。それにより埃と砂塵が勢いよく舞う。

 

「心おきなく()の敵を断罪することができるというもの」

 

 オイスタッハの体から殺気があふれる。

 殺気を浴びた俺は体が震えだす。

 ~~~ははっ、冷や汗が止まらねえぇ・・・・。

 俺の隣にいる姫柊は平然として、殲教師に雪霞狼(せっかろう)をかまえいる。

 

「・・・一つ聞かせてください」

 

「なんだ?剣巫よ」

 

「あなたは教会側の人間。それならばなぜ彼女を助けなかったのですか?いくら堕天使と共闘していようとも救いを求める者を助けるのがあなた達の務めのはず・・・」

 

「なぜ、私が魔女を助けなければならない」

 

―――――――――――――――――――えっ? 魔女? あの子が?

 

「それはどういう意味ですか!?」

 

「あの少女、アーシア・アルジェントはその癒しの力をもって多くの人々を助け聖女と呼ばれていた・・・・。しかしある日、彼女は傷ついた悪魔を癒し助けた。悪魔を癒す力、そんな力は教会で認められるはずはない。教会は彼女を異端として教会から追放した。それゆえ彼女は魔女なのです」

 

 ! なっ――――――――――――――――――。

 

「なんだよそれ!助けた相手が悪魔だっただけで魔女呼ばわりなのかよ!」

 

「教会と悪魔は敵対同士、・・・決してあいいれないのだよ。真祖よ」

 

 オイスタッハは冷たく言いはなつ。 

 それを聞いた俺は怒り、怒りをこめて問いただした。

 

「おまえの・・・・、おまえ達の目的はいったいなんなんだ!!」

 

「・・・・・・・・・・堕天使達の目的。彼女、アーシア・アルジェントの体から神器(セイクリッド・ギア)を取り出すことです」

 

「「えっ!!?」」

 

 神器(セイクリッド・ギア)を取り出す!?そんなことができるのか!??

 初めて聞いた内容に俺は驚く。

 そんな方法があれば普通の人として生活ができる。力を望まない人にしてはいい案だ・・・・。真祖(こんな)力をもっている俺としては羨ましい。

 俺はそう思った。しかし姫柊は顔をこわばらせている。

 

「・・・・あなたはその意味を理解しているのですか・・・・・・?神器(セイクリッド・ギア)を体から取り出された者は死ぬということを!!」

 

「!!?」

 

 姫柊の言葉を聞いてさっき以上に驚愕した。

 し、死ぬ!?それじゃあの子は・・・・・・・・―――――!

 

「それがどうしたとゆうのですか、堕天使が魔女を道具として使う。ただそれだけのことです」

 

「彼女は道具なんかじゃありません!!!」

 

「なぜ憤るのですか、剣巫よ?貴方も獅子王機関によって育てられた道具ではありませんか?」

 

「・・・・・それはっ・・・・・!」

 

「不要な赤子と子供を金で買い取って、ただひたすらに異種族に対抗するための技術を仕込む。そして戦場に送り出す。まるで使い捨ての道具にように――――それが獅子王機関のやり口なのでしょう?剣巫よ、その齢で、それほどの技と術をてにいれるために、貴方はなにを犠牲に捧げたのです?」

 

 オイスタッハの指摘に明日菜の全身が凍りつく。無言で唇を噛みしめた彼女の頬が、血の気を失って蒼白になっている。

 そんな姫柊を見て俺の中の何かが切れた。

 

「黙れよ、オッサン・・・・・」

 

「教会から異端とされた故に堕天使の道具として使われる魔女(彼女)と、神の祝福を受けて生まれた人を道具に貶める貴方たち。どちらも罪深き存在でしょう」

 

「黙れと言ってんだろうが、この腐れ僧侶(ボウズ)がーーーー!」

 

 咆哮する宗司の全身を、超高熱が包み込む。それにより熱風が渦巻き、急激に温度差によって周りの空気が歪み陽炎が発生する。握りしめた拳から荒々しい灼熱の炎が灯る。そこいらにいる高校生だった宗司の姿が、撒き散らされた濃密な魔力によって、何倍にも膨れ上がったように見えた。それは宗司が初めて見せる吸血鬼としての権能。自らの肉体を媒介にして、眷獣の魔力の一部を実体化させたのだ。

 

「先輩・・・・・・・!?」

 

 撒き散らされる濃密な魔力に、明日菜が圧倒されたように弱々しくうめいた。

 戦斧をかまえたオイスタッハが、少し驚いたように顔を歪めた。

 

「ほう。なんという強大な魔力・・・・。これが真祖の力。いいでしょう――――鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)!彼らに慈悲を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オイスタッハの言葉とともに男の影から体長五メートルほどの巨人が出現した。全身が鈍色の分厚い肉の鎧で覆ったゴーレムだ。

 それを見た二人はあの時に出てきた腕の正体がこのゴーレムだときづく。

 宗司は相手が動く前に炎を纏った拳で殴りかかる。

 ほんのわずかにも漏れ出た程度とはいえ、その炎は第五真祖の眷獣の力である。喰らえばタダじゃすまないものだ。だが、―――――

 

「ダメです、先輩!」

 

 その光景を目にした瞬間、明日菜は思わず叫ぶ。

 次の瞬間、閃光に包まれて吹き飛んだのは宗司のほうだった。

 

「ぐ・・・・・あっ!」

 

 くぐもった悲鳴を上げながら、宗司はボロ布のように吹き飛んでいく。

 宗司がゴーレムを殴りつけた瞬間、凄まじい爆発が巻き起こって、逆に十数メートル近く弾き飛ばされた。

 倒れた宗司は全身から白い蒸気と肉の焼けるような臭いを漂わす。

 

「先輩っ!」

 

 倒れた宗司を庇うように、明日菜は槍を構えてゴーレムに突撃する。

 明日菜の力に呼応して、銀色の穂先が青白い閃光に包まれる。それは降魔の聖光。いかなる魔族の権能をもってしても防げない一撃。だが、

 

雪霞狼(せっかろう)が・・・・・止められた!?」

 

 槍から伝わってくる異様な手応えに、明日菜はうめく。

 雪霞狼(せっかろう)の刃は、ゴーレムにわずかに触れたところで止まっていた。否、完全に止められている。

 

「どうし・・・・―――! これは・・・共鳴・・・・・!? この能力・・・・・!」

 

「気づいたようですね。そうです、剣巫よ。魔力を無効化し、あらゆる結界を切り裂く”神格振動波駆動術式(D O E)„世界で獅子王機関が実用化に成功した対魔族戦闘の切り札です。だが、我が神器(セイクリッド・ギア)鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)。その力は相手の能力を一度だけ複製すること・・・・。それにより”神格振動波駆動術式(D O E)„の力を手に入れることができたのです」

 

「そんな・・・・・わたしのせいで・・・・」

 

 明日菜は激しく動揺した。自分のせいでオイスタッハに秘術の力を与えてしまったこと。それが原因で宗司が傷つき倒れたしまったことに。

 私のせいで―――――――――――

 明日菜はショックをうけて戦意を失ってしまった。その前にオイスタッハが立ち戦斧を掲げる。

 

「さらばだ、獅子王機関の憐れな傀儡よ―――魔族ではなく人である我が手にかかってしになさい」

 

「・・・・・・・ッ!!」

 

 精神を乱していた明日菜は、殲教師の攻撃に気づくのが遅れてしまった。反応したときには、分厚い戦斧の刃が眼前に迫っていた。

 攻撃をかわすことも防ぐことも不可能と悟り、明日菜は覚悟を決めて目を瞑る。

 だが、衝撃と痛みは一向に襲ってこない。

 ポタッ

 目を開けたて見えたもの、それは自分の前に立ち、明日菜を庇い代わりにオイスタッハの攻撃を受けた宗司の姿だった。

 

「せ・・・・先輩・・・・!?」

 

 自分の方に倒れこむ宗司を慌てて支える。だが、抱きとめた瞬間に、ちぎれた胴体が滑り落ちていく。背骨は砕かれ、胴体は肉片に変わり、砕かれた骨が血とともに床にこぼれている。

 ぶちぶちと音ともに内臓と筋肉がちぎれていく。

 そして、宗司の頭部と胴体をかろうじてつないでいた皮膚が、肉体の重みに耐えかね裂けた。明日菜の手の中には宗司の生首だけが残る。

 床には宗司の身体だったものが散乱していた。そのどれもが無残に引きちぎられ、潰されていた。明日菜はその中に一つ、心臓を見た。

 吸血鬼は不老不死。だが、その能力の根源である心臓は見る影もなく魔力の拠り所の血も流れていく―――

 

「そ・・・んなっ、先・・・ぱい・・・どうして・・・いやあああああああああッ!!」

 

 廃墟に明日菜の悲鳴が響いた。




また次も遅くなりそうです。スイマセン。


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旧校舎のディアボロスⅥ

四ヶ月間投稿できずすみませんでした。仕事に追われる毎日のためになかなか思う道理に執筆できませんでした。こんな作者ですが頑張って作品を続けていきたいと思います。相変わらず下手な文章ですが読んでいただけたら幸いです。


 君はつくづくお人よしだね。人の身代わりになるなんて

 

 なにも無い空間に声、意識だけが響く。

 

 僕の半身のクセにその体たらく、情けないね

 

 その声は俺に話しかけてくる。俺は答えようとするも声がでない。だが、俺の考えは通じているようだ。その姿は見えないがそこにいるのは解った。

 

 君は僕の後継者なんだから、あんな木偶人形に(やら)れないでほしいよね。まったく・・・・

 

 俺が殲教師(エクソシスト)神器(セイクリッド・ギア)にやられたのが不満のようだ。不機嫌さが伝わってくる。

 

 だいたい、人を庇って死んじゃてるんじゃ世話無いね。君は自殺願望でもあるのかい?だ・け・ど、君は不老不死の真祖になったんだからもう死ぬことができないんだよね~♪残念だったね

 

 人をおちょくる発言に俺はイラッときた。だが、つぎにつむがれた言葉でそれは一変した。

 

 不老不死。・・・・聞こえはイイだろうけどそんなものはただの呪いだとなんで誰も気づかないんだろう。そしてなぜそんなのを求めるのだろうね。理解できないよ・・・・・・・

 

 悲しそうな声だ。その声とともに愁いが伝わってくる。

 

 ・・・・・さて、そろ―ろ目覚め――間だ・・・。君の肉――もすでに復元で――いる本―うはもっ――やく目覚め―――ずだったけど―――ここと現実―――時間は違―――しね

 

 声がとぎれとぎれなっていく。それとともに意識が遠くなっていく。

 

 ――――――――――次は無様な姿を見せないでくれよ。宗司

 

 そして俺の意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――・・・・・此処は・・・」

 

 逢魔宗司は目を覚ます。自分の上に布団が掛けられていた。頭には柔らかい感触、枕もあった。どうやらベットに寝かされているようだ。

 布団と枕の柔らかさと温かさが心地いい。このまま二度寝してしまいたいくらいに。

 

「先輩・・・・・・そろそろ起きてもらえませんか?」

 

 横から声がした。どこか拗ねている明日菜の声だ。

 

「あと・・・五百年」

 

ズバン!

 

「殴りますよ・・・・?」

 

 明日菜の拳が枕の横にめり込む。

 

がばっ。

 

「ハイ!オキマス!スグオキマス!」

 

 明日菜の脅しに屈した宗司はベットから跳ね起きた。

 

「まったく、調子に乗らないでください。こんなことしている場合じゃないんですから」

 

 ベットの横を見るとベットのすぐ傍に自分を見ている少女、明日菜に気づいた。

 

「ひ、姫柊?」

 

「ようやくお目覚めですか、先輩?人をあんなに心配させておいて・・・・・・いい御身分ですね」

 

 明日菜の目元は、泣き腫らしたように真っ赤になっていた。

 その表情を見て、宗司はなにがあったのかを思い出す。

 廃墟で俺は――――――

 

「・・・・俺は死んでたのか」

 

「はい」

 

 そのときの光景を思い出したのか、明日菜は唇を嚙んだ。その顔を泣きそうな顔をしながら。

 

「先輩が死んだあと、しばらくしたら傷が勝手に治りはじめたんです・・・・飛び散った血も、まるで時間を巻き戻すように戻って・・・・・」

 

「そのまましばらく寝てたってわけか」

 

 殲教師(オイスタッハ)にやられたとこを押さえて、宗司は訊いた。制服は破れているが、体には傷が一つも無く、胴体も元どおりにつながっている。

 体と傷の具合を確かめるように体の各部を動かす宗司を、明日菜はキッと睨みつけて、

 

「生き返るなら生き返ると、最初に言って死んでください。私がどれだけ心配したと思っているんですか・・・・・・!」

 

 そう言ってぽかぽかと宗司を握り拳で殴り始める。

 宗司はそれを黙って受け入れた。

 

「心配させて悪かった。俺も知らなかったんだ。アルフレアのやつが言ってたのはこういうことか・・・・・ハァ~~」

 

 宗司はやれやれと溜息をつく。

 

「アルフレア?・・・・もしかして先代の第五真祖ですか・・・?」

 

「ああ・・・・・真祖にとって不老不死は、権能なんかじゃない。ただの呪いだそうだ」

 

「呪い?」

 

「真祖は死ねない。心臓が貫かれようが、頭を潰されても生き続ける。そんなこと言われてもピンとこなかったが、ちょっとわかったような気がするよ。永い時を一人永遠に生き続ける・・・・・。オマケに死にたくても死ねない。呪い以外の何物でのないな」

 

 溜息をのように呟く宗司を、明日菜は黙って見つめていた。

 

 吸血鬼は不老不死と言われているが、完全に不死身というわけでない。太陽光や十字架やニンニクや流水など多くの弱点があるし、心臓は致命的な弱点である。

 そこに深刻なダメージを受ければ、確実に死ぬ。

 だが、第五真祖である宗司の肉体は違う。

 完全に破壊されいた心臓までも再生し、流れ出た血すら、その大半が逆流して戻る。

 それはまるで本当の不死、そのものだ。

 

「だからって、どうして私を庇ったりしたんですか!?その呪いで必ず復活する保証はなかったんですよ!生き返れなかったら、どうする気だったんですか!?」

 

 明日菜が、本気で怒っているような口調で宗司を問い詰める。

 それにたいして、宗司は手で頭をかきながら天井を見上げ思考する。

 

「・・・・・・普通はそう考えるよな~。でもよ、俺はこれでよかったとおもう」

 

「なんでですか!なにがよかったっていううんですか!?」

 

「いや、姫柊が無事だったからさ」

 

 宗司が口にした言葉に、明日菜はへたり込みうつむく。

 

「・・・・・て・・・・・・よかったんです」

 

 俯いている明日菜の口から感情のこもらない言葉が聞こえる。宗司は戸惑ったように首を傾げた。

 

「え?」

 

「先輩は、私を庇ったりしなくてよかったんです。もう忘れてしまったんですか。私がここに来たのは先輩を殺すためなんですよ」

 

 うつむいていた顔をあげた明日菜。その顔は感情をなくしたような無表情だった。

 

「殲教師が言っていたことは本当です。私は使い捨ての道具です。実の両親からお金で売られて、ただ、戦うための道具として育てられてきたんです・・・・・・だから、私が死んでも、誰も悲しまない。でも、先輩は違うじゃないですか・・・・・!先輩が死んだら杏沙さんも悲しむし、リアス先輩や、オカルト研究部の皆さんも悲しみます。なのになんで・・・・・!!」

 

「姫柊・・・・」

 

 泣き出すのをこらえるように再びうつむく明日菜。

 オイスタッハとの戦闘中に明日菜が動揺した理由に宗司はようやく理解した。

 ―――ずっと一人でそんな想いを背負ってきたのか・・・誰かに頼ることもしないで、戦う力を手に入れるために当たり前の日常を捨てて・・・。

 それがどれだけつらいことなのかは宗司には想像できなかった。

 ―――でも、たとえそうだとしても・・・。

 

「姫柊、それは違うぞ」

 

「えっ?」

 

 うつむいていた明日菜が顔をあげる。その瞳は涙で潤んでいた。

 

「おまえが死んだら俺は悲しむし、杏沙や部長、姫島先輩、木場、兵藤、塔城たちも悲しむ。だから、だからそんなことを言うなよ。姫ら・・・ぎ!?」

 

 宗司は布団から起き上がろうとするもバランスをくずして明日菜の上に倒れこんだ。

 

「うおっ」

 

「きゃ!?」

 

 そのまま押し倒すかっこうになり宗司は硬直して固まった。まったくの予想外のことに明日菜も硬直して固まってしまう。

 

「あの・・・何をやっているんですか先輩?」

 

「いや・・・死んだ時の後遺症・・・?」

 

 怒った明日菜の睨みをもらいたじろぐ宗司。いそいで姫柊の上からどいた。

 

「やっぱり変態だったんですね、あなたは・・・」

 

「いや、それは違うから!偶々偶然にああなっちゃっただけで・・・」

 

「先輩は偶然で女の子を押し倒すんですか」

 

「それは・・・・御免なさい!!」

 

「・・・・ハァ、もういいです。先輩は変態なのはまえまえからしっていましたし」

 

 明日菜は疲れたように言う。そんな明日菜を見て宗司は安堵した。

 

「・・・よかった」

 

「? 何がですが」

 

「姫柊がいつもの調子に戻って」

 

「!! い、いきなり何を言うんですか!」

 

「なあ、姫柊。おまえは道具として育てられたって言ってるけどおれにはそうは思えないんだ。たしかに姫柊を育てたのは実の両親じゃなかったかもしれないけど、高神の杜の人たちがおまえのことを大切にしていたのは見て判ったしな。そうじゃなかったらさ、姫柊がそんなに可愛いいわけないし」

 

「な・・・・!また何を言うんですか!?」

 

 明日菜は宗司の発言で顔を真っ赤にした。

 その反応を見て宗司は、姫柊はこうでなくちゃと そう思ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ここは何処であの後どうなったんだ?」

 

 明日菜が落ち着いたのを見計らい、宗司は自分が死んでいる間のことを聞く。

 

「ここは私の住んでいるマンションの私の部屋です。先輩はあれから丸一日眠っていたんですよ」

 

「丸一日!?」

 

「はい。先ほど言ったとうりに体自体はすぐに治りましたが、先輩はそれからまったく目を覚まさなかったんです」

 

「そっか、面倒掛けちまったな」

 

「いえ、かまいません。話を続けます。先輩を殺した殲教師は私に対してはあれ以上何もせずに去っていきました。雪霞狼の”神格振動波駆動術式(D O E)„を手に入れ、あの状態の私では自分の障害にならないと判断されたんでしょう」

 

「・・・だとすると、あいつは自分の目的を果たすために動くはずだ。・・・・!姫柊、部長たちはどこにいる!?」

 

 宗司は明日菜にリアスたちの居場所を聞いた。

 

「わかりません。私は先輩の看護していて今日は学校に行っていませんでした。それに先ほど部室に式神をおくりましたが皆さんは居ませんでした」

 

「くそっ!あいつの狙いは悪魔(部長たち)だ。今夜あいつは必ず動く。部長たちが危ない・・・!」

 

 宗司は最悪の状況を想像した。オイスタッハは神器(セイクリッド・ギア)の能力で雪霞狼の”神格振動波駆動術式(D O E)„の術式を手に入れている。魔力で戦う悪魔では無力化されてしまう。

 どうすれば・・・・・・・・!そうだ!!

 

「部長たちを見つけられるかもしれない」

 

「えっ?」

 

 宗司はおもいだしたようにズボンを探りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

 その日の夜、浅葱奈織(あさぎなおり)は自宅の自室でベットに寝転んでため息吐いていた。

 

〖よぅ、お嬢。なに辛気臭そうにため息ついてるんだ〗

 

 部屋に備え付けられているパソコンから声がする。奈織は顔をパソコン画面に向ける。そこにはデフォメルキャラが映っていた。

 ”モグワイ„彼女がバイトをしている会社のスーパーコンピューターの現身(アバター)であり、補助人工知能(AI)だ。演算能力では間違いなく世界最高水準の機械(マシン)だがクセがあり扱いづらいと言われている。しかしなぜか奈織とは不思議と気が合っている。

 

〖せっかくの別嬪さんが台無しだぜ〗

 

「・・・・うっさいわね。つまんないお世辞言ってんじゃないわよ。モグワイ」

 

〖クク・・・察するに恋の悩みってとこか?さすがの天才プログラマーちゃんも色恋沙汰は勝手が違うみてーだな〗

 

「ウイルス流すわよ」

 

 奈織は不機嫌だった。原因は解っている。宗司のことだ。

 最近の宗司は転校生と一緒にいるわよね。

 宗司が自分に対して何かを隠しているのは前々から気づいていた。それが何なのかまでは分からないが。宗司自身が相談してこなかったので自分が無理に聞き出さずにしておいたが―――――――

 あの転校生、姫柊明日菜。あの子は宗司の秘密を知っている。

 長い付き合いの自分が知らない宗司の秘密を転校してきたばっかの転校生が知っている。それが奈織は気にいらなかった。

 私には教えないで姫柊明日菜って子には教えるなんて・・・・。宗司の馬鹿!

 ♪~~♪♪~♪~~ 

 スマートフォンから着信音がした。奈織はスマフォをとって相手を確かめた。

 

「! そ、宗司!?」

 

 今考えていた人物からの突然の電話に奈織は驚く。いそいで気持ちを落ち着けると着信ボタンを押して通話した。

 

「もしもし」

 

『奈織か!こんな遅くにかけて悪いな』

 

「別にいいわよ。まだ起きていたし」

 

 奈織は内心ドキドキしているを隠しながらいつもどうりに会話する。

 

『奈織、頼みたいことがあるんだ。至急に部長、グレモリー先輩達、オカルト研究部のメンバーがどこにいるか見つけてくれないか』

 

「え?ちょっといきなり何を言ってんのよ!?」

 

 いきなりの頼みごとに奈織は戸惑った。

 グレモリー先輩達を捜してくれ?いったいどうゆうことよ!?

 奈織は理由を聞こうとするが、それより速く宗司が喋る。

 

『頼む、奈織!おまえしか頼れる相手がいないんだ!』

 

 宗司のいつもと違う真剣な声に奈織は何か事情があると察した。

 

「――――――!・・・・・・はぁ、わかったわよ。グレモリー先輩達を見つけてあげる」

 

『! 本当か!?「た・だ・し」・・なんだよ?』

 

「駅前のケーキバイキングへ一緒に来て私が満足するまでおごりなさいよね!いい?わかった!?」

 

「お・・・おう!ありがとう。奈織」

 

「・・・ふん」

 

 奈織はベットから起き上がり、椅子に座りパソコンを動かした。

 

「モグワイ、アンタも手伝いなさい」

 

〖OKOK、お嬢の恋を実らすために気合入れますか!〗

 

「・・・・マジでウイルス流すわよ」

 

 奈織は一流のピアニストのような指さばきでキーボードを叩き、町中の電子情報や監視カメラの映像を調べた。

 

「・・・・・・・・!見つけたわ!」

 

『どこだ!?』

 

「○○公園の監視カメラから映像にグレモリー先輩と姫島先輩が映っていたわ。でも、急に二人の姿が映像から消えてしまったの。どうゆうこと?」

 

『!・・・わかった。○○公園だな、ありがとう。姫柊、行くぞ』

 

「姫柊!?ちょっと、宗司『わるいまたな!《プツン》-----』・・・・ッ」

 

 電話の向こうで宗司が呼んだ相手について奈織は訊こうとしたがその前に切られてしまった。だが、宗司は姫柊と確かに読んでいた。それは即ち―――――

 

「なんであの子と一緒にいるのよ!宗司の馬鹿!マジで殺す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜の教会近くの公園。そこでリアスは自分の女王である朱乃と3人の堕天使と対峙していた。公園に入ってすぐに朱乃に結界を頼み逃亡できない状態にして堕天使の前に立った。

 リアスは堕天使たちに「あなた達の目的はなに?」と尋ねる。すると堕天使達はあっさり目的をはいた。顔は余裕の表情だ。人数がこちらより多いのと自分たちを舐めいていためか、冥途の土産のつもりなのだろう。 さらには自分の眷属であるイッセーも馬鹿にし始めた。これには眷属を大事にするリアスの逆鱗に触れた。

 体から膨大な魔力を溢れ出しながらリアスは手を堕天使達に向けた。手からも膨大な魔力、滅びの力を溢れさせて。

 それを見た堕天使達は慌てふためく、舐めきっていた悪魔が自分たちより力が上だったのだから。

 

「あなた達から聞きたいことは聞かせてもらったわ。私の領地で好き勝手するに飽き足らず、私の大切な眷属(イッセー)を侮辱して、ただで済むと思わないことね。堕ちた天使たち、これで終わりにしましょう!」

 

 リアスは手の滅びの力を堕天使に向けて放とうとする。だが、その時異変が起きた。

 足下から突如光が溢れ出した。それと共に地面から魔法陣が出現してそこから光の鎖が飛び出し二人を拘束して魔方陣に縛り付けた。体に魔方陣から出る光と光の鎖によって激痛が襲う。

 

「ッ・・・ぐぅ!!」

 

「! こ、これは!?」

 

 突然の事態にリアスと朱乃は驚きながらもなんとか動こうとする。しかし、体の自由はきかず、光による激痛が続く。

 

「聖光拘束断罪術式、対上級悪魔よう拘束捕縛術式。聖なる光によって作られし断罪の鎖が悪魔を捕らえ動きを封じ、陣から発生する光が鎖とともに悪魔を浄化し続ける上位術式です」

 

 突如声がした。拘束されながらも声の方に顔を向ける。闇夜から誰かが歩いてくる。近づくにつれ魔法陣の光によりその姿がはっきりと見えてくる。

 

「悪魔よ、今宵が貴様らの最後だ」

 

 ロタリンギアの殲教師、カウス・オイスタッハがリアス達の目の前に現れた。

 

「ッ~~~ロタリンギアの・・・殲教師!!」

 

「~~これはあなたの~~仕業ですか・・・!?」

 

 リアスと朱乃は光による苦痛に耐えながらオイスタッハを睨む。

 

「いかにも、堕天使達を使えば必ず貴様らは食いついてくると確信があったのでな」

 

「おい、ちょっと待て!私たちをオトリに使ったのか!?」

 

 堕天使の一人、ミッテルトがオイスタッハに食って掛かる。だがオイスタッハはさも当然のように返事を返した。

 

「なにをいまさら、あなた達は魔女の神器(セイクリッド・ギア)を手に入れるためにこの地の管理悪魔が邪魔だった。そして私は悪魔を滅ぼすために悪魔の居場所が知りたかった。互いが利用し合っていた。ただそれだけの関係だったはず」

 

「! き、キサマ!!」

 

 その言葉聞いてオイスタッハを睨みつける堕天使、ドーナシーク。オイスタッハ自身は堕天使を見向きもしないでリアスと朱乃に近づいていく。

 

「悪魔よ・・・・今宵こそ主の名のもとに断罪してくれる。昨夜滅ぼした・・・・真祖のようにな」

 

「!! ・・・・あなたソージを・・・いえ、ソージとアスナをどうしたの!?」

 

 昨夜に別れてから行方知らずの後輩についてオイスタッハが喋ったため、リアスは驚愕して叫んだ。

 オイスタッハは冷たい目で淡々に答えた。

 

「・・・真祖は私が滅しました。不死身といわれる存在ですがその力の源たる心臓を潰せばば容易いものです」

 

「!? ・・・・よくもソージを・・・・・!!」

 

 オイスタッハを殺気をこめて睨みつけオイスタッハに怒りを向けるリアス。だが、その為にリアスは気づかなかった。隣の朱乃の様子に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――宗司君・・・・」

 

 朱乃は宗司の死にショック受けて愕然とした。朱乃自身何故か解らないが宗司と出会ったあの時から宗司のことが気になっていた。

 出会い事態は単純なものだった。お互い廊下ですれ違った程度だった。普通ならそれだけなら宗司自身と接点を持たなかっただろう。宗司の異変に自分が気づかなかったら。

 彼は急に立ち止まり、鼻を手で押さえていた。それを見た私は彼に声を掛けた。彼は何でもないと言っていたが、手の隙間から血が流れ出ていた。念の為にも保健室で休ませようと連れて行こうとしたが、彼は走ってその場から去っていった。その後ろ姿を見てデジャヴを感じた。

 いつ頃かは思い出せませんが、前にも見た覚えがあった気がする・・・・。

 次の日、祐斗くんが部長、リアスの命で二人の生徒を連れてきた。一人は最近眷属にした生徒、兵藤一誠君。3年にもその名は伝わってる生徒だ。そしてもう一人が昨日の生徒、逢魔宗司だった。

 リアスは彼らに私たち悪魔と天使、堕天使の三勢力と神器(セイクリッド・ギア)、そして堕天使に殺された一誠君がリアスの眷属に転生して蘇生したことを説明した。それを聞いた二人は驚いていました。普通に生きてきた人が聞けば誰だって驚く内容なためあたり前の反応でしょう。だけど、その後から宗司君から聞かされた彼自身のことに私たちも驚かされしまったのだけれど。

 ”真祖„ 始まりの吸血鬼。すべての吸血鬼の始まりであり、吸血鬼の王にして、父、母とも言われる存在。

 まさか伝説上の存在がこんな身近にいたことにあの時は私も心底驚きましたわ・・・・。とうの本人自身は自分の存在がどれほどのものか理解していませんでしたけど。

 リアスが眷属に勧誘していたが、本人は考える時間が欲しいと言って保留になりました。リアスが彼を眷属に勧誘したのはあの子(・・・)ことも考えてのことなのでしょう・・・・。

 二人が帰ったあと、部長の提案により宗司君に護衛兼監視をつけることになった。昨夜の事で堕天使に目をつけられてしまった彼を守るために。

 それを聞いた私はリアスにその役目を任してもらい、次の日に彼の自宅まで出向き家の前で宗司君が出て来るのを待った。

 玄関から出てきた宗司君は私がいたことに驚いていましたわ。私は笑顔で挨拶して一緒に登校した。その道中で宗司君に理由を説明し、そのさいにちょっとしたイタズラも楽しませてもらいましたけど。

 それから数日、宗司君と行動を共にしながらあの時のデジャヴの正体を探りました。宗司君と一緒なら何か解ると思いましたが結局何もわかりませんでした。それで少し落ち込んでいたいましたら宗司君が心配して声を掛けてくれました。

 

『姫島先輩、元気ないですけど大丈夫ですか?』

 

『ええ・・・ちょっとした考え事ですから・・・』

 

 私がそう言うと、宗司君は何か閃いた顔をして私に言う。

 

『・・・・・姫島先輩、部活動までまだ時間がありますから少し付き合ってくれませんか』

 

『え?』

 

 そう言うと宗司君に強引に学校近くの公園まで連れて行かれました。ベンチに私を座らせると「少し待っててください」と言うとどこかに行ってしまった。

 ベンチに座りながら宗司君が戻ってくるの待ちながら周りを見ると子供たちが遊んでいる姿が見える。元気に遊んでいる姿が可愛らしく、思わず笑顔になってしまう。

 子供たちの輪から女の子が一人外れて公園の出口に走っていく。視線で追うと、出口に一人の女性がいる。おそらく母親であろう。女の子を迎えに来たのだろう。女性はしゃがんで走ってくる女の子を受け止める。その光景に朱乃は幼き日、母と一緒に居た時を思いだす。

 母様・・・・・。

 幼き日に亡くなった優しい母、自分を守る為にその命を奪わられた。その時のことを一度たりも忘れたことがない。いや、忘れない記憶・・・・。

 

『――――ぱい、姫島先輩』

 

『え?・・・―――きゃ!!?』

 

『うぉ!』

 

 私はいきなり声を掛けられ驚く。昔ことを思い出して気づかなかったのか、いつの間にか宗司君がいた。

 

『そ、宗司君・・・・・』

 

『すみません。なにか驚かせちゃったみたいで』

 

『いえ、私の方こそ気づかなくてごめんなさい』

 

『じゃ、おあいこということで、どうぞ』

 

 そう言うと、手に持っていたクレープをさし出してきた。私はそのクレープを受け取り食べる。

 

『美味しい・・・!』

 

『気に入ってくれて好かったです。妹が教えてくれたんですよ。隣、失礼しますね』

 

 宗司君は私にことわりをいれ、スペースを一つ開けてベンチに座り自分の分のクレープを食べだす。

 

『うん、美味い!杏沙(あずさ)の言ったとうりだな』

 

『・・・・宗司君』

 

『はい?』

 

『ありがとうございます。どうやら気を使わせちゃったみたいですね』

 

『ははっ、やっぱわかっちゃいますか』

 

 宗司君は悪戯がばれた子供のように笑いながら頭をかく。

 

『俺には姫島先輩が何に悩んでいるかは分かりませんからこんなことしかできせんけど。少しでも気分転換になればと思ったんです。余計なお世話でしたか?』

 

 宗司君はそう不安げに尋ねてくる。 

 本来なら私が気遣う立場だというのに逆に私が気遣われてしまいましたわ。宗司君だって真祖の体質で悩んでいるのに、自分の事より他の人を心配する優しさ・・・・///

 私はそんな宗司君を愛おしく思えた。

 

『・・・うふふ、そんなことありませんわ。私を気遣ってしてくれたんですもの』

 

『そうですか、よかった』

 

 宗司君は安堵した顔をする。

 うふふ、励ましてくれたお礼をしないといけませんわね。(^^♪

 私は宗司君の腕に抱き付いた。

 

『! なっ、姫島先輩///!?』

 

『うふふ///そろそろ時間ですし、部室に戻りましょう』(^^♪

 

 抱き付かれて顔を真っ赤にしている宗司君。そのまま彼を連れて部室に歩いていく。その間宗司君の顔は真っ赤のままだったけど。

 その日、朱乃は逢魔宗司に――――恋をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔たちよ、最後の時です。鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)・・・・!」

 

 オイスタッハは背後から鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)呼び出す。鋼で作られた肉体持った巨人が主の命をおびてオイスタッハの影からその姿を現した。

 

「―――これは・・・・これが神器(あの巨大な手)の正体!?」

 

 廃墟で見た時は腕だけだったためにその正体は判らなかった。初めてその全貌を見てリアスは驚愕する。

 オイスタッハは冷徹な目でリアスと朱乃を見る。そしてゴーレムに命令を下そうそうとしたその時、

 

鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)。神に仇名す悪魔に鉄槌を――――――〈ゴオオオオオオ!〉!!」

 

 自分目がけて飛んでくる火球が見えた。オイスタッハは後ろに跳びぬいて躱す。

 

ズガァアアアアン!!

 

 オイスタッハの居た場所に火球はぶつかり爆発する。その後には焦げついた小規模のクレーターができ小さい炎と煙が燻っている。

 ・・・これは・・・!

 オイスタッハは火球の飛んできた方を警戒して睨みつける。そこにいたのは破れかけた制服を着た少年と銀色の槍を持った少女。

 

「悪いなオッサン・・・今の命令は取り消して(キャンセル)してもらうぜ」

 

 第五真祖――――逢魔宗司が、気怠げな表情で笑っていた。




また遅い投稿になると思います。感想のほどをお願いします。


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旧校舎のディアブロスⅦ

長くお待たせしてスイマセンm(__)mもっと早く書き上げたかったんですが、文才がないのと仕事やら新作のゲームをやっていて遅くなりました。
初の一万越えの文章なので、楽しんでもらえたら幸いです。
今回で旧校舎編は完結します。


「はぁあああ!!」

 

パキィィィン!

 

 明日菜はリアスと朱乃を拘束していた術式を雪霞狼(せっかろう)で破壊した。それにより解放されるリアスと朱乃。二人に宗司と明日菜は駆けよる。

 

「大丈夫ですか?リアス先輩、朱乃先輩」

 

「ええ、助かったわ。ありがとう。アスナ」

 

「本当に助かりましたわ」

 

 二人の安全を確かめる明日菜。助けられたリアスと朱乃は明日菜に礼を言う。

 

「間に合ってよかったです。部長」

 

「ソージ!無事だったのね・・・・!」

 

「宗司君!・・・ご無事で・・・・・良かったですわ・・・・」

 

 リアスは死んだと聞かされた宗司が生きている事に驚きながらも安堵し、朱乃は宗司の無事を知り目じりに涙を浮かべ喜び微笑む。

 

「まあ、何とか生きてますよ。部長と姫島先輩も無事で安心しましたよ」

 

「あなた達の御蔭よ、ありがとう。・・・でも、どうやって私たちの居場所が分かったの?」

 

「・・・・ちょっとした真祖の力です」

 

 奈織をこちら側に巻き込みたくなかったため、宗司はリアスの質問を適当なことを言い誤魔化した。

 宗司はリアス達の前に出てオイスタッハと堕天使と対峙する。

 

「よう、昨晩ぶりだな」

 

「・・・・まさか生きているとはな、真祖よ。確実に仕留めたのですが・・・・真祖の(不死)を見や余っていたようですね・・・・・」

 

 オイスタッハは鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)を背後に待機させ戦斧を構える。

 

「ならば今度こそ確実に断罪してさしあげます。その悪魔たちと共にな!」

 

「・・・なあ、もう止めにしないか。そんなことを続けてもあんたの家族は戻ってこないんだぜ」

 

 宗司の言葉にオイスタッハは硬直した。そしてすぐに殺気を帯びた鋭い目つきになる。

 

「・・・・どうやら私のことを調べたみたいですね」

 

「ああ、姫柊がアンタの事を獅子王機関に伝えて調べて貰っていたのさ」

 

 宗司はここに来る間に明日菜からオイスタッハの経歴を聞いていた。

 

「あんたは元々は殲教師(エクソシスト)じゃなくてただの神父だったんだよな」

 

 宗司の言葉聞いたリアスと朱乃は驚く。これ程の戦闘力を持つ男が只の神父だったということに。

 オイスタッハは宗司に自分の過去を言われたが、何も反応せず鋭い目つきで宗司を見続けている。

 

「家族と共に神に祈りをささげ普通に暮らしていたあんたは善良な神父だった。だけど、そんなあんたたち家族に悲劇が襲った。外に出かけていた家族がはぐれ悪魔に襲われ殺された。だからあんたは殲教師(エクソシスト)になったんだろう。家族を殺した元凶を生んだ悪魔に復讐するために」

 

「・・・・あの日ことは一日たりとも忘れたことはありません。妻と娘が主の敵である悪魔にその命を奪われたのですら・・・」

 

 宗司の話を黙って聞いていたオイスタッハは静かな声で話し出した。

 

「あの日、妻と娘が買い物に出かけていきました。私は二人を見送り教会で神父としての執務をおこなっていました。それから時が立ち夜になりましたが二人は帰ってきませんでした。二人が戻らず私は心配になり主に祈りをささげ二人の無事を祈っていると教会からの使者が私を尋ねてきました。そして知らされました。はぐれ悪魔により妻と娘が殺されたことを。使者の案内で私が連れて行かれた現場にはには大量の血、そして無残な状態の妻と娘の遺体だった。それを見た私の内に湧き上がってきたのは・・・・・家族を失ったための失意による深い悲しみと・・・・・すべての元凶である悪魔にたいする純粋な殺意だった!!!」

 

オイスタッハの全身から激しい殺気が溢れ出した。あまりの殺気に宗司と明日菜、リアスと朱乃は体が竦んでしまう。

 

「その日から私は残りの生涯を悪魔を滅ぼすことのみに費やした!殲教師に逸早くなるために血反吐を吐き、苦行にも耐え抜き、その試練のなかで我が内にある神器(セイクリッド・ギア)鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)を手にし2年の時を経て私は殲教師となった。そして私は主の敵である悪魔滅し続けて今日まで生きてきたのだ。それを邪魔するものは・・・・誰であろうとも排除する!!!」

 

 オイスタッハは冷酷に告げる。

 その前に立ちはだかったのは明日菜だった。殲教師の動きを牽制するように銀の槍、雪霞狼(せっかろう)を向け、凛と澄んだ声で叫ぶ。

 

「あなたの気持ちは分かりました。ですがあなたが復讐のためだけに悪魔を殺す行為、それは自らの欲望のままに生きるあなたの憎悪する悪魔と同じではありませんか。そんなあなたを亡くなった家族の方が望んでいるわけがありません!」

 

「剣巫よ、私が解らないと言ったがそれならば貴方も同じはずだ。亡くなった我が家族の望みが如何なるか解るのか?いな、解るはずもない。それを知っているのは亡くなった者だけ。それに剣巫よ、貴方は目の前に己の家族を殺した相手がいてそれが己に罪の所業も気にせず自由に生きていて許せるのですか?」

 

 オイスタッハの声から、隠しきれないほどの怒り滲み出る。

 明日菜の背中に、一瞬だけ動揺が走る。剣巫として育てられた明日菜は、肉親の顔を知らない。オイスタッハは、それを知った上で明日菜を挑発しているのだ。

 

「・・・・てめえぇ・・・!」

 

 それを聞き激昂した宗司はオイスタッハに詰め寄ろうとする。

 だがそれを、明日が腕を伸ばして静止させた。大丈夫、というふうに強気で微笑んでみせる。

 

「もはや言葉は不要・・・。私の邪魔をするなら悪魔諸共葬るまで・・・鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)!」

 

 オイスタッハの命令を受けて鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)が動き出す。

 

「はぁ・・・結局こうなっちまったか・・・」

 

 嘆息する宗司。だが、そんな態度と裏腹に顔は笑っていた。

 野生の獣ように獰猛に歪めた唇の隙間から、牙がのぞき、瞳が眩い真紅に染まる。

 

「・・・・けどよぅ、おっさん忘れてねえか。俺はあんたに胴体をぶった斬られたんだぜ、その借りをまだ俺は返しちゃいないんだ。鬱憤が溜まってのはあんただけだと思うなよ!」

 

「・・・・この能力(ちから)は・・・!」

 

 オイスタッハは表情を歪めた。

 宗司の全身から激しい熱風が吹き荒れる。宿主の血の中に棲まう眷獣が宿主の意思と呼応してその力を解放しているのだ。

 

「さあ、始めようぜ、おっさん――――こっからは第五真祖( オ レ )戦闘(時間)だ!」

 

 業火をまとった腕を掲げて、宗司が吼える。

 宗司に隣に寄り添うように雪霞狼(せっかろう)構えて、明日菜は悪戯っぽく微笑む。

 

「いいえ、先輩。わたしたちの聖戦(時間)です!」

 

「――――あらあら、それをゆうならなら私たちの黙示録(時間)ですわ」

 

 後ろから朱乃の声が聞こえた。後ろを見ると朱乃が前に出てきて、明日菜と反対側の宗司の隣に寄り添うようたった。

 それに宗司と明日菜は驚く。明日菜は反対側にいる朱乃に慌てて尋ねた。

 

「朱乃先輩、前に出てきて大丈夫なんですか?」

 

「ええ、大丈夫ですわ。部長は一誠君の方に行きましたわ。・・・こちらに罠があったようにあちらにも何かあるかもしれないからと・・・。私は二人に協力するように言われましてここに残りましたの」

 

 宗司は後ろをチラ見して確認するとすると確かに部長の姿は何処にもなかった。

 おそらく俺に気をとられているうちに往ったんだんな、ぶち・・・・~~~~~~!!

 隣から突如感じたプレッシャーに宗司は恐る恐る隣に立った朱乃を見ると笑顔で全身から危険なオーラを放っていた。

 

「ひ、姫島先輩?」

 

「うふふ、先程の御礼を存分に返さしてもらいますわ。うふふふふふふ」(^^♪

 

 そう言い朱乃笑顔では右腕から電撃を迸らせている。

 それを見た宗司は何か薄ら寒いものが背筋を奔った。

 

「・・・・・・・・・む、無理をしないでくださいね。姫島先輩」

 

「うふふふ、わかってますわ」(^^♪

 

「話はそこまです。いきますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に仕掛けてのは、明日菜だった。

 雪霞狼(せっかろう)を構えた明日菜は、閃光の如きの速度で神器(セイクリッド・ギア)鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)と向かった。鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)は明日菜は敵と認識して迎撃する。

 

ズドン!

 

 公園全体をも振動させるほどの拳撃が明日菜に繰り出される。

 しかし明日菜は、その攻撃をしなやかに舞うように受け流した。

 雪霞狼(せっかろう)―――七式突撃降魔機槍(シュネーヴァルツァー)に刻印された神格振動波駆動術式(D O E)鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)を、神器(セイクリッド・ギア)の核ごと貫こうとする。

 

ギィイイイイイイイン!

 

 だが、ゴーレムの体も同様の神格振動波駆動術式をまとうことで、雪霞狼の突きに耐えていた。

 魔族に対して致命傷を与え魔力無効化術式を組み込まれている雪霞狼の攻撃は、ゴーレムの鋼の体の硬度もあって傷すらつかなかった。

 ・・・・・やはり、身体全体に神格振動波駆動術式の結界があってさらに、あの鋼でできた身体の硬度で傷一つつかない。先輩・・・・!

 明日菜は戦いながら宗司の心配をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、この程度ですの?」

 

 宗司と明日菜の上、結界内の上空で朱乃と堕天使ドーナシーク、ミッテルト、カラワーナが対峙していた。

 朱乃は笑顔で微笑んでいるが、堕天使の三人は身体のあちこちが焦げついている。

 朱乃と堕天使との戦いは、朱乃の圧勝だった。朱乃は堕天使に雷を放ち、堕天使達も光の槍を投げ応戦する。だが、朱乃は雷で光の槍を打ち消し、さらに雷を堕天使に放ち続けた。朱乃の攻撃に堕天使達は対応できず追い込まれていった。その様子に朱乃のドS心を刺激する。その結果、堕天使達は朱乃にボロボロにされて今の状態になった。

 

「くそっ、なんなんだあいつは!」

 

「まさかこれほどとは・・・・ッ」

 

「こんなこと聞いていない!」

 

「うふふふ////、まだまだ元気そうですわね。これならさらに強くしても大丈夫ですわね////」

 

バチバチ。

 

 朱乃は恍惚した笑みを浮かべて右腕から激しい雷を発生させる。

 それを見た堕天使達は顔を青ざめさせる。

 堕天使と相対しながら朱乃は下の二人を心配する。

 ・・・・・こちらはどうにかなりそうですわね。宗司くんと明日菜ちゃんは大丈夫でしょうか。ここは早く倒してしまいましょう。・・・・・でも////

 堕天使達の青ざめた表情を見て朱乃は頬を染め舌なめずりをする。

 そんな顔を見てしまいますと・・・・ますます痛めたくなりますわ////

 

「あらあら、そんな顔を見てしまいますと・・・ますます嬲りがいがありますわ////いきますわよ////」

 

ピシャ~~~~~ン!!

 

「「「ギャアアアアアアアアアア!!!」」」

 

「オ~~ホホホホホホッ////」

 

 空に堕天使の悲鳴と朱乃の笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁ!」

 

 高熱の熱風を撒き散らしながら、宗司はオイスタッハに殴りかかる。

 明日菜が鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)の相手をしている間に、宗司が、鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)の主であるオイスタッハを倒す。それが宗司達が最初に考えた作戦だった。現場に堕天使もいたのは計算外だったが、朱乃も加わることで作戦変更せずにすみ、宗司はオイスタッハに一人挑んだ。

 

「ぬぅん!」

 

ブン!

 

 オイスタッハは、敏捷な動きで宗司をかわし、逆に戦斧で反撃してくる。

 

「うおっ!」

 

 戦斧の風圧に耐えながら避ける宗司はオイスタッハの実力に舌を巻いた。

 

「にゃろっ」

 

「貴方の魔力は強大だ。しかし・・・私を捕らえるには命中率掛けていますよ。まるで素人だ」

 

「悪かったな、素人で!」

 

 目に物見せてやる!

 宗司は魔力で掌にバスケットボールサイズの火球をを作り出し、両手で押し潰し野球ボールサイズする。そして野球の投手(ピッチャー)のフォームをとった。

 それを見たオイスタッハは訝しがる。

 

「何のつもりですか?」

 

「へっ、―――くらえ!」

 

 宗司はオイスタッハめがけて火球を投げた。

 一直線に来る火球にオイスタッハは戦斧のによる風圧で掻き消そうと戦斧を振るう。だが、直前に火球は落下した。

 ――――――――!!

 

ドン!

 

 投法の一つフォークボール。それにより振った戦斧は空振り、オイスタッハの足下に火球が当たり爆発した。

 

「どうだ!」

 

 直撃ではなかったものの殲教師から一本とれたことに宗司はニヤケ顔をする。

 たちこめる爆煙。その中からオイスタッハが出て来たが、今の一撃によりオイスタッハは表情を強張らせていた。

 

「・・・なるほど、先程の言葉は撤回です。認めましょう・・・貴方はやはり侮れぬ敵だと―――ゆえに相応の覚悟をもって相手をしましょう!」

 

 オイスタッハのまとう法衣の下に着こんだ鎧が黄金の光を放ち出した。

 なんだ・・・?鎧から黄金の光が・・・―――――――!!

 

ドジュウ!!

 

「があッ!!!」

 

 光を直視した宗司の瞳に激痛が走り、光を浴びた肌が焼ける。

 

「”要塞の衣(アルカサバ)„ 教会の技術によって作られた対魔の光の装甲です。これもちて我が障害を排除する!」

 

「くそっ、そんなもんまで隠してやがったか・・・・」

 

 光による激痛に悶えながら宗司は言う。

 そんな宗司にオイスタッハは近付き、戦斧を振り上げたげ、

 

「今度こそ終わりです。真祖!!!」

 

 勢いよく宗司に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴーレムと戦闘をしている明日菜は宗司の危機に焦った。宗司の助けに入りたいが、ゴーレムを抑えこむのだけで精一杯の状況だった。戦斧を振り下ろされる宗司の姿に明日菜は叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上空の朱乃も宗司の危機に気づいた。助けようとするも距離があり、魔法でも間に合わない。朱乃は殲教師が宗司に止めさそうとする光景に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「先輩/宗司君!!」」

 

 戦斧が宗司を仕留める僅かな時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクッ!?

 

バッ

 

 なんだ・・・今のは・・・?

 オイスタッハは宗司が放つ異様な気配に気づき、宗司から咄嗟に離れた。

 宗司は身体をふらつかせながら立ち上がった。

 

「・・・・・さすがだな。そういうことならこっちも遠慮なくいくぜ。・・・くたばんなよ、オッサン!」

 

 殲教師目がけて突き出した宗司の右腕から鮮血を噴き、右腕全体が赤黒くなり蒼白い紋様が浮かびあがる。

 

「”終焉の暁(エンド・ローウン)„ の血脈を受け継ぎし者、逢魔宗司が、今こそ汝を縛めより開放する!!」

 

 鮮血は、閃光を放つ超高熱に変わる。これまでの熱風や炎と比較にならない膨大な熱量と衝撃。第五真祖の眷獣。

 7年前のあの一件から一度も出さなかった己身に宿る最凶の眷獣。もう二度と使うことはないと思っていた力。それを今、行使する。

 

疾く在れ(出やがれ)、第5の眷獣 ”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)―――――!!!」

 

『ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宗司たちのいる公園から離れたビルの屋上に寝間着姿の少女がいた。本来見えないはずの公園を少女の瞳には公園内の光景がハッキリ見えていた。

 少女は公園内の戦いを無表情で只見ていただけだった。だが、宗司が眷獣を出した姿を見た瞬間、今まで無表情だった少女の顔に笑みが浮かんだ。

 

「・・・”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)・・・・・7年か。・・・短いようで長いものだったが、ようやく使ってくれたか。・・・あの赤き(ドラゴン)の宿す少年には感謝しなければいけないな・・・・・僕の(眷獣)を存分に揮ってくれ。そして・・・・・僕を楽しましてくれ、古城のように・・・期待しているからね。僕の半身(ソウジ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出現したしたのは、超高熱の獣―――――

 戦車ほどもある巨体は、荒れ狂う超高熱の魔力の塊。その全身から目が眩むほどの赤き閃光と近づけぬ程の熱波と熱風を放ち、それにより発生した灼熱の業火を纏い、その咆哮は巨大爆発ように大気を震わせる。

 

「!・・・綺麗」

 

「!! あれは―――――――」

 

 宗司の出した荒々しくも雄々しく輝く眷獣の姿に明日菜は見とれてしまった。

 朱乃の方は眷獣の姿を見て絶句した。

 私は・・・あれを知っている・・・!

 朱乃は今まで忘れていた記憶を思いだした。禁忌の子として殺されそうになったあの日、私たち母娘を助けてくれた少年が襲撃者の前に出て呼び出した・・・・赤き閃光の巨獣。そう、宗司()が呼び出した存在と同じだった。

 間違い・・・ありませんわ!・・・・・・7年前に見たアレと同じですわ。では、あの時助けてくれた少年は・・・・・・宗司君。

 朱乃は宗司を見る。朱乃の記憶の少年と宗司の容姿が重なり、朱乃は確信した。7年前自分と母を助けてくれた少年は宗司だと。そして、あの時の少年がまた自分を助けてくれている。朱乃はそう思うと胸が高鳴った。

 

「なんというすさまじい魔力、召喚術の類か・・・・・これが真祖の力・・・・!しかし、これほどの力をこの結界ないで使うとは、無謀な!」

 

「・・・・・・・行くぜ」

 

 宗司の命を受けた眷獣が動く。高熱の獣の前足が、オイスタッハを目がけて振り下ろされる。

 

ボッ!

 

 その攻撃は、彼をかすめただけだった。だが、それだけでオイスタッハの巨体が数メートル撥ね飛ばされていた。

 

「くっ!」

 

 なんという速さ・・・・そしてこの破壊力!

 火柱が生み出す衝撃波で装甲鎧が火花を散らし、その圧倒熱量が生み出す高温で戦斧の刃が融解する。

 その攻撃の余波は、公園内にも及んでいた。

 超高熱により発生した熱波と熱風と炎が撒き散らされた。設置されていた街灯や防犯カメラはひとたまりもなく吹き飛び、周りの木々にも炎が当たりそれが火種となり燃え出した。

 

「ちっ、鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)――――!!」

 

ダッ

 

「まずい!先輩!!」

 

 主の呼びかけにゴーレムが動いた。明日菜の攻撃を振り切りって、鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)が宗司の眷獣の前に立ちはだかる。

 目の前の存在を敵と認識した”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)が攻撃を仕掛けた。巨大な眷獣の前足が、灼熱と化してゴーレム型の神器(セイクリッド・ギア)を殴りつける。

 

ドガ!

 

 その瞬間、ゴーレムが光輝きだした。

 神格振動波の防御結界が、宗司の眷獣の攻撃を受け止め、

 

ギィィィィィィ バチン!!!

 

反射する―――――!

 ”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)

 ((弾かれた!?))

 

 制御を失った超高熱の魔力が、暴発して結界の上部を襲った。

 

「くっ!」

 

バキャアアアァァァァン!

 

 結界上部で戦っていた朱乃と堕天使達に魔力が襲いかかる。朱乃は咄嗟に全力で魔力障壁で防いだが、堕天使達は対応できず直撃して悲鳴を上げる間もなく一瞬にして跡形もなく蒸発した。魔力はそのまま結界天井部分を破壊した。

 その光景にオイスタッハは歓喜していた。

 

「素晴らしいぃ!!まさかこれ程とは・・・・。これさえあれば如何なる障害も排除できよう!」

 

ガッ!

 

「くそっ!俺の眷獣でも、あいつの結界はやぶれないのかよ・・・・・・!」

 

 宗司は地面を殴った。

 ”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)の一撃を喰らっても、ゴーレムは無傷ままだった。このまま攻撃を繰り返しても結果は同じだろう。

 宗司は自分の不甲斐なさに苛立ち声を震わせる。

 

「先輩・・・・」

 

「宗司君・・・・」

 

 そんな宗司に明日菜と空から降りてきた朱乃がそっと寄り添ってきた。二人の表情にも疲労色の色がこい。明日菜はあれほど強力な神器(セイクリッド・ギア)を相手に生身で戦っていて、朱乃も暴発した宗司の魔力(眷獣)を全力で防いだため当然だった。

 

「悪い、姫柊、姫島先輩。俺、あいつを倒せないかもしれない・・・・・!」

 

 こちらに近づいてくる殲教師とゴーレムを睨めつけながら自分自身の力不足に宗司は悔やむ。

 

「いえ、先輩・・・まだ終わりじゃありません」

 

 明日菜の声に宗司は反応して明日菜を見る。明日菜は何か考え付いたようだ。

 

「わたしに考えがあります。でも、わたし一人ではできません。ですからわたしに二人の力を貸してください!!」

 

「何か思いついたんですの?明日菜ちゃん」

 

「はい・・・」

 

「なら、やってみようぜ。姫柊」

 

 宗司があっさり了承したので明日菜は慌てた。

 

「でも、一か八かなんです。それも一回きりの、そんなあっさり決めて・・・」

 

「大丈夫だ。俺が、俺たちが力を貸す!!なっ、姫島先輩!」

 

「ええ、もちろんですわ」

 

「それに、・・・今は俺たちの聖戦(時間)だろ。なら負けるわけがないだろ・・・・・・?」

 

「うふふふ」(^^♪

 

「先輩・・・・」

 

スッ

 

 二人の言葉を聞いて明日菜は前に出る。

 

「―――――獅子(しし)神子(みこ)たる高神(たかがみ)剣巫(けんなぎ)が願い(たてまつ)る」

 

 銀色の槍とともに、明日菜は舞う。神に勝利を祈願する剣士のように。あるいは勝利を授ける巫女のように、彼女は舞う。

 

破魔(はま)曙光(しょこう)雪霞(せっか)神狼(しんろう)(はがね)神威(しんい)をもちて(われ)悪神百鬼(あくじんひゃっき)を討たせ給え!」

 

 粛々とした祝詞ともに、明日菜の槍、雪霞狼(せっかろう)が輝きを放ち始める。

 仄白いその光は、あらゆる結界を切り裂く神格振動波。その形は細く、鋭く、まるで光り輝く牙。

 明日菜はゴーレムに向かって駆けた。

 明日菜の行動にオイスタッハは訝しんだ。

 

「なんのつもりですか?無駄なことを、叩き潰しなさい鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)!」

 

 鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)が明日菜にその両腕を伸ばした。蛇のようにうねりながら明日菜を襲った。

 

ドゴ!

 

タ タン

 

 明日菜はそれをしなやかな純白の雌狼のように、音もなく宙を舞い躱す。

 ゴーレムの頭上に到達した明日菜はそのままゴーレムを覆っている結界に雪霞狼(せっかろう)を突き刺した。

 

雪霞狼(せっかろう)!!」

 

ドッ!

 

ギィイィイィイイイイイイイイ!!

 

チリ チリ チリ

 

 同じ神格振動波駆動術式(D O E)がぶつかり合いせめぎ合う。

 

「くっっ、~~~~あ あああああああああ!!」

 

ズ ズズ ズン!

 

 せめぎ合いの拮抗が破れた。銀色の槍が、ゴーレムの防御結界を突き破って、顔の無い頭部に深々と突き刺さる。

 

「!! 今です!先輩!!朱乃先輩!!」

 

「そういことか!!朱乃先輩いくぜ!!」

 

「!? ・・・うふふ///ええ、いきますわ!!」

 

 明日菜の呼びかけと今の状態で明日菜の狙いに気づいた宗司と朱乃。明日菜は雪霞狼(せっかろう)をゴーレムに突き刺したまま、飛び退いた。

 

”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)!!!」

 

「雷よ!!!」

 

 宗司の命令より疾く、超高熱の眷獣が動いた。朱乃も魔力全開で雷を放つ。明日菜が突き刺した槍の柄に眷獣の牙と雷が直撃する。

 

『ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

バチ バチ バチバチ バチ!!

 

――――――――――!! 槍で熱伝導させ避雷針代わりにもしただと・・・・・・・・!?

 槍から超高熱に姿を変えた眷獣の魔力と朱乃が放った雷がゴーレムの内部へと流れこむ。

 内部で暴れ狂う真祖の眷獣の圧倒的魔力と朱乃の雷に神器(セイクリッド・ギア)鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)の限界を超えた。

 

ビキ ビキビキ!

 

 ゴーレムの体に亀裂が走った。亀裂からは灼熱の業火が噴出し、ゴーレムを一瞬で包みこみ焼き尽くし、消滅させた。

 

鋼の巨兵(シュタール・ゴーレム)・・・・・ッ!?」

 

 オイスタッハは、呆然とそれを見つめてうめく。だが、その顔は一瞬で憤怒に変わり、全身から殺気が溢れ出した。

 そしてゴーレム破壊の引き金を造った明日菜を睨めつけた。明日菜は力使いきったために息絶え絶えの状態だった。

 

「小娘が・・・」

 

ダッ

 

 明日菜を仕留めるために明日菜に向かって駆けだした。それを見た明日菜は動こうとするが、身体がおもうように動かない。殲教師は目前まで迫ってきた。

 オイスタッハは走った勢いを利用して戦斧を明日菜に振り下ろそうとする。明日菜は恐怖で硬直した。

 

バチ バチ バチ!!

 

「!? ぐあぁあ・・・・!!」

 

「先ほどのお返しですわ!」

 

 その時、振り上げた戦斧に朱乃の放った雷が落ちた。戦斧を握った手を伝って雷が全身を奔る。

 オイスタッハは激痛の中力を振り絞り、戦斧を手放して感電から逃れた。しかし、雷によるダメージは大きく身体の所々が焦げ、硬直した。

 

ザッ

 

「!!」

 

 そこへ明日菜と殲教師の間に宗司が割ってはいる。

 

「終わりだオッサン!」

 

バキャ!

 

 追い打ちのように、宗司がオイスタッハの顔面を殴りつけた。

 力任せの渾身の一撃に、屈強なオイスタッハの身体が、吹き飛んだ。何度かバウンドして、ついに倒れる。

 

「俺たちの・・・勝ちだ!」

 

 倒れた殲教師にむかって宗司は自分たちの勝利宣言をする。

 オイスタッハは倒れたままゆっくりと顔を上げ、こちらを睨んできたが、

 

「く・・・私はまだ・・・」

 

ドサッ

 

 力尽き沈黙した。

 こうして宗司たちとロタリンギアの殲教師、オイスタッハとの死闘は宗司たちの勝利により終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタたちの思惑どおりにいかなかったな。まっ、結果だけみれば予定どうり・・・・ってことかい?」

 

 夜の街中のビルの屋上に一人の男子生徒の姿がある。

 ヘッドフォンを首からぶら下げた少年だ。

 柵によりかかる彼の隣には、一羽の(カラス)

 柵にとまったその烏に少年は気安く話しかけている。

 

「本来なら姫柊明日菜という血の伴侶を得た逢魔宗司は眷獣一体を掌握。こうしてまた一歩、完全な第五真祖に近づいた、シナリオはそうだった。だが、宗司はすでに眷獣の一体を掌握していた。そのおかげでアンタたちは計画がずれちまった。・・・・しかし、宗司の奴もあんな化け物をこんな街中で使うなよな、下手したら街が焦土になっちまうのによ。だいたいアンタらもなんであんなのを目覚めさせようとしてんだ・・・・」

 

 烏は黙って少年の言葉を聞いている。漆黒の羽根の覆われたその体は、奇妙に滑らかで平坦だった。角度によっては、厚みのない、ただの折り紙(ペーパークラフト)のようにも見える。それは本物の鳥でない。呪力によって生み出された式神だ。

 

「だいたいタイミングが良すぎるだろう。どうせあんたらのことだ、ロタリンギアの殲教師が日本に来ていて魔族狩りをしてたことも最初から知ってたんだろ?」

 

 少年は非難するような口調で烏に問いかける。

 

「そんなとこにわざわざ正義感の強い見習い剣巫を、宗司の監視役として送り込むなんて、魂胆バレバレすぎるぜ。まったく、あんな真面目な子にひでえ仕打ちをしやがる」

 

『・・・・それでも、真祖はすでにこの国に存在している。ならばそれを制御する手札は一枚でも多いほうがいい』

 

 烏が不意に口を開いた。嗄れた老人のような声だ。

 

「姫柊明日菜は、眠れる怪物の首につけられた鈴、といわけだ」

 

 憐れむように嘆息して、少年は街に視線を向けた。

 

「たしかに宗司の性格じゃ、あの健気な子を邪険にはできないだろうし・・・・まさか彼女も獅子王機関が、自分を第五真祖の愛人にするつもりで送りこんだとは思っていないだろうな。可哀相に」

 

『この国に、夜の帝国(ドミニオン)を築ける真祖が生まれることなど有史以来かつてなかったことだ。国を滅ぼさぬために、せいぜい上手く立ち回らねばな』

 

 くくく、と烏が嗤うように喉を鳴らす。

 冗談めかしたその口調には、しかし拭いきれない重苦しさが含まれている。

 彼らにとっても、この計画は、大いなる厄災を招き寄せかねない諸刃の剣なのだ。餓えた獣の群れに肉をぶら下げて突っ込むような気分の賭けだったはずだ。

 しかしどうやら今のところ、多少違うが事態は彼らの望むように推移しているらしい。

 姫柊明日菜は、確実に逢魔宗司との距離を縮めている。

 

『それにあの娘が哀れなだけとは限らんさ。帝王の伴侶とは、すなわち王妃ということだからのう』

 

「まあ、そうかもしれないが・・・・・俺としては少々複雑な気分だぜ」

 

 そう言って少年は、ある方角を見る。そちらは彼の幼馴染みの家がある方角だった。逢魔宗司の真の監視者たる彼が、こんな報告をしているとを知ったら、おそらく彼女は怒り狂い、自分もタダじゃすまないだろう。そんな未来を想像したらゾッとした。

 

『さて、自らの悦楽ためなら一国すら滅ぼす第五真祖。その出現が吉と出るか凶と出るか―――逢魔宗司。そう言えば北欧では逢魔、逢魔時を黄昏というのだったな。黄昏、世界の終焉(ラグナロク)を意味するのだったな・・・・ふ、面白い・・・・・」

 

 人間と神々を滅ぼす大きな災禍となる存在か、今しばらく見定めるとしよう―――

 そう言い残して、烏の姿が解けた。

 ただの紙となり、ふわりと風に舞い上がる。

 暗い夜空に吸いこまれていくその姿を見送って、少年はうんざりしたように髪を撫でつけた。

 

「はぁ~~、やれやれだぜ・・・・前途多難だな、親友(ブラザー)

 

 どこか茶目っ気のある彼の呟きが、無人の屋上に吹く風の音で消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逢魔宗司は、放課後の学生食堂の端っこの席で突っ伏している。

 この間の課題忘れにより課題を追加され、課題処理に没頭するはめになったのだ。

 放課後の学校は運動部の部活動の生徒で賑わっている。

 そんな彼らを横目で見ながら、宗司は深々と溜息をつく。

 

「疲れた・・・・怠い。眠い。灰になる・・・・なんで俺だけこんな目に・・・・・」

 

 

 テーブルの上に広げた参考書を眺めて、その量に憂鬱になる。

 唯一の救いは、奈織が俺のためにわざわざ放課後居残って、課題の内容を教えてくれることだ。

 課題のことで頭を悩ませていた俺を見て、久瀬が憐れんで 俺に任せておけ っと言って奈織に話しかけた。最初は奈織は嫌がっていたが、久瀬が何かを奈織に言うと奈織は顔を何故か赤くした。久瀬はそんな奈織にさらに何かを言うと、奈織は俺の手伝いを了承した。

 俺は久瀬にどうやって奈織を説得したのか尋ねると、 乙女心を利用しただけさ っと言ったが、俺には意味が理解できなかった。

 そして今は、その奈織は、飲み物を買うために購買部のほうへ出かけたところだった。

 

「・・・・・・・」

 

 あたしが戻ってくる前にやっとけ、彼女に言われた課題から、宗司は目を逸らす。そして今日までのことをふりかえった。

 

「・・・・あれから3日か・・・」

 

 ロタリンギアの殲教師、オイスタッハとの死闘からもう3日が過ぎていた。

 あの後、殲教師の身柄は姫柊の提案で獅子王機関に一任することになった。この町はグレモリーの管轄で、悪魔側で決めるのが普通だが、男は教会の関係者のため、悪魔側で処理すると教会の方との関係がさらに悪化ことになるので、人間の組織である獅子王機関の方で処理すれば、教会側とも対話ができスムーズに交渉できるためだ。

 以外にもその提案を部長はあっさり了承した。なんでも俺と姫柊に助けられたからその礼だということだ。

 そしてオカルト研究部に新しい仲間が加わった。

俺と姫柊がいない間に殲教師が言っていた、シスターの少女の神器(セイクリッド・ギア)を抜き取る為に堕天使達が儀式を執り行った。兵藤は木場と子猫と一緒に少女を助けに向かったが、兵藤たち目の前で儀式は完成してしまい、少女を救えなかったそうだ。その後、神器(セイクリッド・ギア)を奪った堕天使を兵藤が倒し、そして死んだ少女を前に悲しんでいた兵藤に部長は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を見せて少女を悪魔として転生させることを話、僧侶(ビショップ)の駒を少女の胸に置き、眷属として転生させ助けた。

 アーシア・アルジェント。 癒しの神器(セイクリッド・ギア)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の使い手で、元聖女と呼ばれたシスターの少女で、グレモリー部長の僧侶(ビショップ)の眷属になった少女だ。

 アーシアを紹介された時、俺を見てアーシアの方が驚いた。なんでも殲教師からは俺は死んだと聞かされていたという。死人が目の前にいれば確かに驚く。そんな小さいアクシデントもあったが、アーシアは俺と姫柊ともすぐにうちとけた。

 アーシアは兵藤の家にホームステイとなり、転入生という形で駒王学園の二年生として兵藤のクラスにはいった。

 あと、アーシアは兵藤にゾッコンみたいだ。

 そして、・・・・ここ3日ほど姫柊は学校に来ていない。

 彼女は、逢魔宗司()監視(任務)とは無関係の戦闘をし、それが原因で獅子王機関の秘奥兵器である雪霞狼(せっかろう)を大破してしまったために自分は俺の監視役を解任されるだろう、そして自分より優秀な方が代わりが来てくれます、と言っていた。

 俺としては姫柊を引き留める理由はなかった。だいたい彼女のような子が監視役をすること自体がおかしい。

 しかし、彼女の替わりの攻魔師が俺の監視役として派遣されてくるというのは、なんでか不愉快で嫌な気分だった。

 だいたい姫柊の代わりってなんだよ。俺は・・・・・・・・・・・・・・・そっか・・・。

 そこで俺は気づいた。

 

「姫柊が隣にいるのが・・・いつの間にか当たり前になっていたんだ・・・」

 

 俺は顔を上げ、空を見上げる。放課後の時間帯なので空は赤くなってきている。そんな空を見ながら今までの日々を思いだした。

 

「朝から杏沙に怒鳴られて、久瀬や奈織に呆れらながらも課題を手伝ってもらって、オカルト研究部の皆と楽しく活動したり・・・でも、そこに姫柊もいなくちゃ、もう俺の日常じゃないんだな」

 

 俺にとって姫柊という少女がどれほど必要だと今頃になって気づいた。

 だけど、その姫柊はもう・・・・・

 

「先輩」

 

 突然、俺は聞き覚えのある声が聞こえた。俺は驚いて立ち上がり、後ろに振り向くとそこには、

 

「姫・・・柊?」

 

 夕日を背にした姫柊が立っていた。

 駒王学園の制服姿で、背中にギターケースを背負っている。

 

「え・・・・なんで?監視役を解任させられたんじゃなかったのか・・・・・・」

 

「ええ・・・そうなる予定だったんですが・・・・・」

 

 姫柊は背負っているギターケース見る。

 

「今朝の宅配便できれいに修復された雪霞狼(せっかろう)が届いたんです」

 

「・・・それって、もしかしてこれからも姫柊が俺の監視役ってことか?」

 

「そういうことになりますね。実はわたしにもなんでそんな許可が出た理由はわかりませんけど・・・・・・残念でしたか、先輩?」

 

 そう言って姫柊は、からかうような表情で、ふふっ、と笑った。

 俺は苦笑しながら首を振り、

 

「――――そんなわけないだろ、監視役なんて姫柊だけでたくさんだ」

 

姫柊がいることに喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、

 

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!?」

 

 俺は姫柊の背後を見て全身が瞬時に凍りついた。

 両手に紙コップを持った奈織がいた。その顔は笑顔だが、彼女の背後からは見えてはいけないものが ゴゴゴゴゴゴっと、効果音とともに出ていた。

 

「あら、なんか楽しそうね。あたしもいれてくれない」

 

「べ、べつになんでもない話だって」

 

「それなら・・・あたしにも聞かせなさいよ。気になるじゃない」

 

 奈織が俺に近づいてくる。その一歩一歩の足音が俺にはカウントダウンに聞こえる。

 

「ま、待て、奈織。これには深い事情が―――――ってか、なんでそんなに怒ってんだ?」

 

 俺は咄嗟に全力で謝ろうとするが、

 

「そんなことも解らないんだ。この・・・・・・・・・バカ宗司!!!」

 

バシャ!

 

「ぶ!?」

 

 奈織は手に持っていた紙コップの中身を、容赦なく俺の顔面にぶちまけた。

 

「~~~~ぐふ!げほ!~~~~っ、目と鼻に入った!!」

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

 姫柊がハンカチで俺の顔を拭いてくれる。

 

「ちょっと、あなた!」

 

「え!?」

 

 奈織が俺だけでなく、姫柊にも詰め寄ってくる。

 

「いい機会だからはっきりさせておきたいんだけど、宗司とはどういう関係なの!?」

 

「わたしは逢魔先輩の監視役です」

 

 二人は見えない火花が撒き散らしながらにらみ合う。

 

「監視!?ストーカーってこと?」

 

「違います!わたしは先輩が悪事を働かないようにですね・・・・・・」

 

「だいたい何よ監視って!?」

 

「監視役は監視役です!!」

 

「~~~ちょっと宗司、何なのこの子!!」

 

「先輩!」

 

 言い争っていた姫柊と奈織が俺に詰め寄って来る。

 俺は二人の迫力におもわず後ずさったが、背中にやわらかい何かがぶつかった。

 

「あらあら、宗司君たら////」

 

「へ?」

 

 俺は後ろを振り向くと、姫島先輩がいた。

 

「・・・~~~!!ひ、姫島先輩!」

 

「うふふふ」(^^♪

 

 俺は急いで先輩から離れようとしたが、姫島先輩は両手で俺を抱きしめてくる。後頭部と背中に先輩のデカい胸のやわらかい感触がもろに伝わってくる。

 

「姫島先輩!?」

 

「宗司君、私の胸・・・触りたかったらいつでも触らしてあげますわよ////」

 

「な、////何言いだすんですかいきなり!!」

 

「うふふふ////」(^^♪

 

 姫島先輩の発言に俺は顔を赤くなったが、

 

「宗司・・・・・」

 

「先輩・・・・・」

 

 目の前の奈織と姫柊を見て顔を青くなった。

 

「宗司!あんたこの子だけじゃなく姫島先輩にも・・・・・!」

 

「先輩!朱乃先輩となにをしているんですか!!」

 

「うふふふふ////」(^^♪

 

 大騒ぎの声に惹かれて、周囲に生徒が集まってきた。

 

「逢魔の奴~~~!」

 

「美女をはべらせやがって・・・・・!」

 

「俺だ。今すぐO・S抹殺計画を始動しろ」

 

「女の子を玩んだのね・・・・」

 

「サイテ~~!」

 

「女の敵よ!!」

 

「あ・・・はは・・・」

 

 周りからの視線を感じながら俺は実感する。

 ああ・・・帰ってきたわ。いつもの日常に・・・

 そう思いながら俺は空を見上げて現実逃避をした。空はただ赤かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様、式の準備は順調ですの?」

 

「ああ、問題ない」

 

「そうですか」

 

「ふふ、リアス。迎えにくいくぞ」




次回からは戦闘校舎のフェニックス編です。また遅い投稿になりますが感想などよろしくお願いします。


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戦闘校舎のフェニックスⅠ

長らくお待たせしてすいませんでした。5月に不幸なことが続いて創作意欲がなくなってました。最近ようやく戻り、書き上げました。ブランクもあり文章におかしな部分もありますけど、これが今年最後の更新です。


「最近部長の様子おかしいよな、姫柊」

 

「はい、そうですね」

 

 俺は姫柊と最近の部長の様子おかしいことを話ながら旧校舎にある部室に向かっていた。 

 

「呼ばれいるのにうわの空で聞いていなかったり、何か思いつめてる表情をしてはため息ついていたりなどしていますね」

 

「たしかに、昨日も兵藤が話しかけていた時もそんなんだったな・・・」

 

 俺は昨日の事思いだす。

 昨日の夜。アーシアとのチラシ配りおえて戻ってきた兵藤はすぐ部長に報告していたが、当の部長はボーっとしていて聞いていなかったし、二回目の呼びかけで兵藤に気づきあわてるなど普段の部長ならみせないものだった。

 

「姫柊は何か思い当たるか?」

 

「いえ、わたしは・・・先輩はどうなんです?」

 

「・・・俺もさっぱりだな。姫島先輩なら知っているかも・・・・ん?」

 

 俺は姫柊の方を見ていた視線を前に向けると部室の扉の前に木場と兵藤がつたっていた。そして、木場は何故か顔を強張らせている。

 

「?・・・部室の前で何してんだ。なあ、姫柊・・・!」

 

 俺は姫柊の方を見ると姫柊は険しい表情していた。

 

「姫柊・・・・?」

 

「ここまで近づくまで気がつきませんでした・・・・・・」

 

 姫柊の様子に俺はただ事ではないことに気づいた。

 姫柊は兵藤たちの方へ早足で移動したので俺もその後を追いかけた。

 兵藤と木場が近づいてくる俺と姫柊に気づいた。

 

「明日菜ちゃん。それに宗司」

 

「俺はついでか」

 

「宗司君。アスナちゃん」

 

「祐斗先輩、気づきましたか」

 

「うん、・・・・ここまで近づいて気づいたんだけどね」

 

 木場と姫柊がなにか話しているが兵藤は普通に部室の扉を開いた。

 室内には部長、姫島先輩、塔城、そして―――――。銀髪のメイドがいた。

 だれだ?この人?部長の関係者か・・・・?

 俺がメイドを見ているとメイドが俺に気づいた。

 

「お嬢さま、この方が?」

 

「ええ、彼が逢魔宗司よ」

 

「・・・・・伝説の存在、真祖の後継者・・・・・」

 

 メイドは俺をまるで異質なものでも見るような目で見つめてくる。

 

「えと・・・・俺がなにか?」

 

「いえ、失礼しました。はじめまして。私は、グレモリー家に使えるものです。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

 

「あっ、どうも。俺は逢魔宗司です。部長、グレモリー先輩にお世話になってます」

 

 丁寧にあいさつされたので、俺はおもわずあいさつをかえしてしまった。

 そこへ先ほどから黙っていた姫柊がグレイフィアさんに話しかけた。

 

「・・・グレイフィアさん。質問してもよろしいでしょうか?」

 

「はい、かまいません。姫柊さまは獅子王機関の剣巫の立場がありますので質問されるのは当然ことかと」

 

「待って、アスナ。あなたの質問には私が答えるわ。実わね――――」

 

 部長が姫柊に説明をしようとした瞬間だった。部室の床の魔方陣が光りだし、魔方陣の紋様がグレモリーのものから別の紋様に変化した。

 なんだ、紋様が変わった?

 

「―――――フェニックス」

 

 兵藤の近くにいた木場がそう口から漏らしたのが俺は聞こえた。

 フェニックス?フェニックスって、あの不死鳥の・・・・!

 室内を眩い光が覆い、魔方陣から炎が巻き起こり人影が姿を現す。炎は人影が腕を横に薙ぐと、周囲の炎が振り払われた。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだな」

 

 そこにいたのは、赤いスーツを着た一人の男だった。見かけから俺はホストみたいな男と認識した。

 

「会いに来たぜ。愛しのリアス」

 

 部屋を見渡し、部長を捉えたら男が部長にむかってそう言った。

 それに兵藤があからさまに動揺していた。部長にいたっては半眼で男を見ていた。それにより俺はこの男が部長に歓迎されていないとすぐ理解した。しかし、男は部長の様子など気にせず近づいていき、

 

「さて、リアス。さっそくだが、式の会場を見に行こう。日取りも決まっているんだ、早めがいいだろう」

 

 そう言って部長の手をつかんだ。それにたいして部長は、

 

「・・・・・放してちょうだい、ライザー」

 

 低く迫力ある声で男の手を振り払った。その声だけで部長が怒っているのが判る。男の方は気にせず苦笑していた。

 

「おい、あんた。部長に対して無礼だぞ。つーか、女の子にその態度はどうよ?」

 

 我慢ができなくなった兵藤が男に突っかかた。

 

「あ?誰、おまえ?」

 

「俺はリアス・グレモリーさまの眷属悪魔!『兵士(ポーン)』の兵藤一誠だ!」

 

「ふーん。あっそ」

 

 だが、男は兵藤に興味なさそうな反応だ。その反応に兵藤がコケた。

 俺はさっきから気になっていたので男にに尋ねた。

 

「さっきから気になってたんだけどあんた誰?部長の知り合いみたいだけど・・・・」

 

「あん?・・・・・おまえ悪魔じゃないな。・・・そこの女も人間だな、何故ここにいる?」

 

 男は俺と姫柊を鋭い視線で見てきたが、部長が助けに入ってくれた。

 

「ライザー、彼は私の眷属候補よ。そして彼女は獅子王機関の人間よ。今はわけあって協力関係なの、手を出したらどうなるか解っているわよね」

 

「!―――・・・獅子王機関の人間ね。そいつは怖いな」

 

 男はそう言いながらも姫柊を舐めまわすように見てきた。その視線に姫柊は嫌そうな顔をしていた。それを見た俺は姫柊を庇うために姫柊の前へ出ようとする、しかし、俺より速く兵藤が男と姫柊の間に割って入った。

 

「おい、なに明日菜ちゃんをじろじろ見てんだよ!宗司も聞いたけどおまえはいったい誰なんだよ」

 

「・・・・・あら?リアス、俺のこと、下僕に話してないのか?」

 

「話す必要がないから話していないだけよ」

 

「あらら、相変わらず手厳しいねぇ、リアスは。ハハハ・・・・・・」

 

 男が苦笑する。その態度に兵藤が男にさらに突っかかろうとした。俺は兵藤を止めようとしたが、そこへグレイフィアさんが介入してきた。

 

「兵藤一誠さま」

 

「は、はい」

 

「この方はライザー・フェニックスさま。純血の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」

 

「フェニックス・・・・」

 

 グレイフィアさんが男の紹介をしてくれた。

 フェニックス。それは俺でも知っている名前だった。不死鳥、火の鳥とも言われている伝説上の生物だ。

 しかし、悪魔にもフェニックスがいるのか。でも、そのフェニックスと部長は知り合いみたいだけど、どう見ても部長は嫌っているよな。どういうことだ?

 俺はあれこれ思考している途中、グレイフィアさんが予想を上回る回答を発言した。

 

「そして、グレモリー家次期当主の婿殿であらせられます」

 

 へっ?・・・・それってもしかして・・・・・

 俺は嫌な予想をしてしまった。頭でそれを否定するが、グレイフィアさんが無情にも答えを言う。

 

「リアスお嬢さまとご婚約されておられるのです」

 

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

 

「やっぱりかああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

 自分の予想が当たり、おもわず兵藤と同時に驚いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、リアスの『女王(クイーン)』が淹れてくれたお茶は美味しものだ」

 

「痛み入りますわ」

 

 朱乃先輩のお茶を褒めるライザー・フェニックス。朱乃先輩もニコニコしているが、いつもと雰囲気がちがっていた。

 ソファに座る部長。隣に座ったライザーが部長の肩を抱いたり、髪や手にも触っていた。そうとう嫌なんだろう、部長はそれを何度も振り払っている。

 俺たちは二人から少し離れた席に集まって、二人の様子を見ている。ちなみに俺の両隣に姫柊と朱乃先輩が座っている。他の皆を見ると二隣の兵藤は顔をころころ変えていたりしている。それに俺は呆れていた。そのとき―――

 

バンッ!

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

 机を叩く音と激昂した部長の声が室内に響き渡る。

 視線を向けるとソファから立ち上がった部長がライザーを鋭く睨みつけていた。睨みつけられているライザー(本人)は変わらずニヤけた表情をしている。俺はライザーのその顔が癪に障った。

 

「ライザー!以前にも言ったはずよ!私はあなたとは結婚しないわ!」

 

「ああ、以前にも聞いたよ。だが、リアス、そういうわけにもいかにだろう?キミのところの御家事情はは意外に切羽詰っていると思うんだが、違うか・・・?」

 

「余計なお世話だわ!私が次期当主である以上、相手ぐらい自分で決めるつもりよ!父も兄も一族の者も皆急ぎすぎるわ!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだったのに!」

 

「・・・仕方のないことさ。キミのご両親もサーゼクス様も御家断絶を危惧されているのさ。先の神、堕天使、悪魔の三つ巴の戦で多くの純血悪魔が犠牲になりその所為で断絶してしまった家も多かった。生き残った名家の純血悪魔が手を取り合い純血種と家を守るのは当然のことだろう?キミも純血の上位悪魔同士の新生児が貴重なことは知っているだろう」

 

 ライザーのはカップの紅茶に口をつけて、話を続けた。真面目な話なだけに部長も鋭い視線でライザーを向けながら黙っていた。

 

「最近はキミの下僕のような新鋭の転生悪魔が幅を利かせているが、それでは俺たち古い家系である純血悪魔の立場がない。確かに新しい血も必要だろうが純血の悪魔を途絶えさせるわけにはいかないだろう?キミの兄君であるサーゼクス様は家を出られたお方だ、もはやグレモリー家を継ぐ者はリアス、キミしかいない。・・・・『七十二柱』と称された悪魔が次々と潰える中この縁談は悪魔の未来がかかっているだ。それが解らないキミでもないだろう」

 

 『七十二柱』。姫島先輩から聞いたことがあった。大昔は七十二もの爵位持ちの悪魔の一族がいて、一族ごとに何十もの軍勢を率いていたと。しかし、三つ巴の戦争でほとんど消滅してしまった。部長の家、グレモリー家はその戦争で生き残った純血悪魔一族のひとつだそうだ。

 この男、ライザーの家、フェニックス家もその生き残った純血悪魔一族なんだろう。

 

「悪魔の世界も色々大変なんだな」

 

 俺はそんなことを考えていると部長が話し出した。

 

「・・・・・私は家を潰さないわ婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

 部長の言葉を聞き、ライザーは満面の笑みを浮かべる。

 

「おおっ、では俺と――――」

 

「でも、あなたとは結婚しないわ。私は私がよいと思った者と結婚する。古い家柄の悪魔にだって、それぐらいの権利はあるわ」

 

 ライザーの言葉を遮り、部長はハッキリ言った。

 それを聞いたライザーは目元を細め、舌打ちをした。

 

「・・・・・俺もな、リアス。フェニックス家の看板を背負った悪魔だ。この名に泥を塗られるわけにはいかないんだ。キミのためわざわざ人間界まで出向いたきたが俺は人間界があまり好きではない・・・・この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐えがたいんだよ!」

 

ボウッ!

 

 ライザーの周囲を炎が駆け巡る。

 

「俺はキミの下僕を全部燃やし尽くしてもでもキミを冥界に連れて帰るぞ」

 

 ライザーからでた殺意と敵意が室内に広がる。それを受けた兵藤とアーシアは恐怖で震え、木場と塔城はいつでも臨戦態勢をとれるようにしていた。姫柊もギターケースから雪霞狼(せっかろう)を出せるようにしている。部長は体から紅い魔力のオーラを全身から薄く発し始めた。まさに一触即発の状態になった。だが、

 

「そこまでです―――――――」

 

 グレイフィアさんの介入により一変した。

 

「お嬢様、ライザー様落ち着いてください。これ以上やるのでしたら私も黙って見ているわけにもいかなくなります。私もサーゼクス様の名誉のためにも遠慮などしないつもりです。お二人とも、どうしますか・・・・・?」

 

 静かで迫力ある言葉をグレイフィアさんが口にすると部長もライザーも表情を強張らせた。二人ともグレイフィアさんに畏怖しているようだ。

 

「・・・・最強の『女王(クイーン)』と称されるあなたにそういわれたら仕方ない。バケモノぞろいと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくないからな」

 

 ライザーはそう言って炎を消した。それを見て部長も魔力を止め、臨戦態勢を解いた。最悪な状況にならずに済んで俺は安堵した。姫柊の方を見ると姫柊も安堵の表情をしていた。

 二人の戦意がなくなったことを確認すると、グレイフィアさんが言う。

 

「こうなる事は、旦那様も予想していました。話し合いで解決しないならば最終手段を取るしかありません」

 

「最終手段?」

 

「お嬢様、ご自身の意思を押し通されるのでしら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけてはいかがでしょう?」

 

「レーティングゲーム?それってたしか・・・・」

 

 俺は前に部長が説明してくれた事を思いだす。

 爵位持ちの悪魔が行う下僕同士を戦わせて競い合うゲームだったはず。それで今回の結婚を決めようというのか?・・・あれ?それってたしか成人した悪魔しか参加できないはずじゃ・・・・

 俺は気になりグレイフィアさんに尋ねた。

 

「グレイフィアさん。部長はまだゲームに参加できないはずですけどいいんですか?」

 

「はい、かまいません。ご存知の通り公式なレーティングゲームはお嬢様は参加できません。しかし、非公式のゲームでならば、お嬢様でも参加できます。もっともこの場合、多くは―――――」

 

「身内同士、または御家同士のいがみ合いよね」

 

 グレイフィアさん言葉を嘆息しながら部長が続けた。

 

「つまり、お父様方は私が拒否する事も考慮して、最終的にゲームで今回の婚約を決めようってハラなのね?・・・・・どこまで私の生き方を弄れば気がすむのかしら・・・・・・!」

 

「では、お嬢様はゲームを拒否すると?」

 

「いえ、まさか、こんな好機はないわ。いいわ。ゲームで決着をつけましょう、ライザー」

 

「へー、受けちゃうの。俺は構わない。ただ、俺はすでに公式のゲームを何度も経験しているし勝ち星の方が多い。それでもやるのか、リアス?」

 

 部長を挑発してくるライザー。部長はその挑発にすぐに返答した。

 

「やるわ。ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

「いいだろう。そちらが勝てば好きにするがいい。俺が勝てばリアスは俺と即結婚してもらう」

 

「お二人のご意志は私グレイフィアが確認させていただきました。両家の立会人として私がこのゲームを取り仕切らせていただきます。よろしいですね?」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

グレイフィアさんの問いに部長とライザーが同意した。

 

「わかりました。ご両家の皆様には私からお伝えします」

 

 確認したグレイフィアさんが頭を下げた。

 ライザーが俺達に視線を向けてきた。その視線が兵藤にいくと嘲笑を浮かべた。

 

「なあ、リアス。まさか、そこの獅子王機関の人間とそいつ以外の面子がキミの下僕全員なのか?」

 

「だとしたらどうなの?」

 

「そうか・・・ッ、ハハハ!これじゃ話にならないんじゃないか?キミの女王(クイーン)、雷の巫女くらいしか俺のかわいい下僕の相手になりそうにないな」

 

 そう言ってライザーは指を鳴らすと、魔方陣が光りだした。それとともに魔方陣から続々と人影が出現していく。

 

「これが俺のかわいい下僕たちだ!」

 

 堂々と言うライザーの周囲を総勢15名の眷属悪魔が集結した。

 鎧を着た『騎士(ナイト)』らしき者。踊り子の格好をした者。メイド服を着た者。チャイナ服を着た者。魔導士らしき者。皆色々な格好しているが一つの共通点があった。それは、――――全員女性だった。

 おいおい、これってまさか・・・ハーレム?・・・・マジか!?

 ライザーが自慢する眷属一同を見て俺は驚いた。まさか本物のハーレムをこの目にするとは思わなかったためだ。

 驚いている最中隣から歯ぎしりの音が聞こえてきた。隣を見ると兵藤が号泣していた。

 そこまで羨ましいのか兵藤(こいつ)!!?

 

「お、おい、リアス・・・・、この下僕君、俺を見て大号泣しているんだが、どうしたんだ?」

 

 ライザーは号泣している兵藤を見て引いている表情していた。

 

「その子ハーレムが夢なの。きっと、ライザーの下僕悪魔たちを見て感動したんだと思うわ」

 

 いや、部長。兵藤は感動じゃなくて羨ましがっているだけだから絶対。

 心の中で俺はそう突っこむ。

 

「きも~い」

 

「ライザーさま~、このヒト、気持ち悪~い」

 

「まあそう言うな、上流階級の者が羨望の眼差しで見られるのは世の常だ。とくに下賤な輩にはな。・・・・・!そうだ・・・」

 

 そう言うと、ライザーは眷属の女の子とキスをしだした。しかもネットリと。

 それを見て部長は呆れた顔している。

 

「はぅはぅはぅぅぅぅ・・・・!?!?」

 

「!!?な、っ~~~~~~~~~」

 

 姫柊とアーシアは顔を赤面としている。アーシアにいたっては頭がパンクさせていた。

 

「どうだ、おまえじゃこんなこと一生できまい。下級悪魔くん」

 

「ちくしょう!ブーステッド・ギア!!」

 

「おい、兵藤!」

 

 ライザーはキスを終えると余裕の表情をして兵藤を挑発してきた。それに兵藤は怒り神器を出した。これはマズイと思った俺は兵藤を止めようとしたが、兵藤は制止を振り払いライザーにむかって言った。

 

「おまえみたいな奴は部長と不釣合いだ!」

 

「は?もう一度言ってみろ、下級悪魔くん」

 

「何度でも言ってやる、おまえには部長はに似合わね!第一おまえ、部長がいるのにそんなに女の子をはべらせてどういうつもりだ!」

 

「それがどうした。英雄、色を好む。人間界(ここ)のことわざだったな?人間にしてはいい言葉を考えたものだ。リアスが眷属(おまえ)を可愛がるように俺もこいつらを愛でているだけのことだ。それのどこが悪い?」

 

「何が英雄だ!おまえなんか、種まき鳥、いや、焼き鳥で十分だ!」

 

「焼き鳥・・・・プッ!」

 

 俺は兵藤の焼き鳥発言におもわず笑ってしまったが、言われたライザーの方は憤怒していた。

 

「焼き鳥だと!?下級悪魔風情がぁぁぁぁ!フェニックスである俺を焼き鳥呼ばわりしやがって!リアス、下僕に如何ゆう教育してるんだ!?」

 

 ライザーの問いに部長はそっぽを向けていた。

 

「ゲームなんか必要ねぇ!俺が赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で全員倒してやらぁ!」

 

Boost(ブースト)!!』

 

 兵藤は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動させた。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、十三種類ある神滅具(ロンギヌス)一つでその力は十秒ごとに力を倍化させるある意味反則的な代物だ。兵藤は自信満々の表情をしている。それにたいしライザー呆れたようにため息をしている。

 

「ミラ。やれ」

 

「はい、ライザーさま」

 

 ライザーの命令をうけて塔城と同じくらい小柄な女の子が棍持って兵藤の前にでてきた。女の子は棍を起用に回して、兵藤に向けて構えた。俺はその構えを見ては気づく。

 あの構え方、姫柊の構え方に似ている。だとしたら・・・・・・!

 兵藤に目の前の女の子が兵藤より実力があると気づいた俺は兵藤にそのことを教えようとした瞬間だった、女の子は一瞬にして兵藤の腹に棍を叩き込んだ。叩き込まれた兵藤はその勢いで吹き飛びデスクと衝突した。

 

「ガハッ!」

 

「兵藤!」

 

「兵藤先輩!」

 

「イッセーさん!」

 

 俺と姫柊そしてアーシアは兵藤のもとに駆け寄った。アーシアは兵藤の腹部に手を当てて自分の持つ癒しの神器(セイクリッド・ギア)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の力で治療しだした。その様子を俺と姫柊は見つめる。

 

「弱いな、おまえ」

 

「「!」」

 

 後ろから聞こえたライザーの言葉に俺と姫柊は後ろに振り返る。ライザーはこちらをいや、正確には兵藤を見ていた。おそらく今の言葉は兵藤に向けた言葉なのだろう。

 

「さっき戦ったのは俺の『兵士(ポーン)』のミラだ。俺の下僕の中で一番弱いが、実戦経験も悪魔としての質は上だ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、確かにそれは強力な神滅具(もの)だ。それを使いこなせれば俺どころか魔王や神すらも倒せるだろう。だ・が、使いこなせなければなんの意味も無い。歴代の赤龍帝に神や魔王を倒せた者は誰もいない、それは何故か?」

 

 ライザーはこっちに歩いて来る。俺と姫柊を素通りして倒れている兵藤の前に来て嘲笑った。

 

赤龍帝の籠手(それ)が不完全な神器で使い手も弱者ばっかりだったのさ!おまえも同じようだな。人間界の言葉でなんて言ってたっけかな?・・・・! 思いだした、『豚に真珠』だったな!フハハハ!まさにおまえに相応しい言葉だな!そう思うだろ?リアスの『兵士(ポーン)』!フハハハハ「おい、焼き鳥!」ッ、・・・あん?」

 

「先輩!?」

 

 俺はライザーの態度に我慢できなくなり兵藤を嘲笑っていたライザーを焼き鳥呼ばわりした。それを聞いて再び憤怒したライザーが俺の方に振り返った。

 

「俺を焼き鳥とはおまえもいい度胸だな・・・・ミラ!」

 

「はい、ライザーさま」

 

「そいつにも身の程を教えてやれ!」

 

「わかりました」

 

 ライザーの命令を受けて兵藤を倒した『兵士(ポーン)』の女の子が標的である俺を狙って棍を構え突っ込んできた。普通の人間なら躱せない一撃。だが、

 あの殲教師に比べればこれぐらいの速さなら余裕で躱せる。

 真祖である俺はその並外れた身体能力の御蔭で女の子の動きが見え対応できた。迫ってくる棍を横に移動して避けるため動こうとしたその時、自分の後ろに姫柊がいることを思いだした。

 ! ッ、マズイ。俺が躱すと棍が姫柊に・・・・・!

 後ろの姫柊を守るために俺は避けることを止め、腹部に迫ってくる棍に俺は咄嗟に手刀を打ちつけた。

 

シュカッ!

 

 え?

 

カラン・・・。

 

ブシャァァァァァァァァ!

 

ドシャ。

 

 手刀を打ちつけた棍が先端から綺麗に切れた。そして棍の切れた先端が地面に落ちた瞬間、棍を打ち込んできた女の子の胴体に大きな切り傷が発生してそこから大量の血が噴き出し女の子はそのまま前のめりで倒れた。

 いったい何が起きたんだ?

 目の前の惨状におれは只呆然となっていた。




来年もよろしくお願いいたします!


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戦闘校舎のフェニックスⅡ

暑い夏の中、外でひたすら働く毎日、家に着いたらダウンと新作テイルズで投稿が遅れました。こんな作者ですがこれからもよろしくお願いします~(^^)/


目の前で倒れた眷属を見てライザーは怒り他の眷属に命令した。

 

「キサマ、よくもミラを・・・イーリス!やれ!!」

 

「はい、ライザーさま!」

 

 ライザー名を受けた騎士(ナイト)イーリスは大剣を宗司にむかって振り下ろした。

 

「えっ・・・?」

 

 目の前の光景に唖然となっていた宗司は眼前に迫る大剣を前に動けなかった。

 

「させません!」

 

ギィイイン!

 

 宗司と大剣の間に明日菜が入り込み雪霞狼(せっかろう)で大剣を受け止めた。

 

「なに!?」

 

「はぁああああ!」

 

 自分の剣が止められたことに驚くイーリス。明日菜はそれを見逃さず雪霞狼を持った腕に力を入れて大剣ごとイーリスを弾き飛ばした。

 

「獅子王機関の剣巫として先輩に手出しはさせません!」

 

「――――キサマ!」

 

 明日菜に邪魔をされライザーは苛立ち明日菜を睨みつけた。明日菜は自分の後ろにいる宗司を守りながら雪霞狼を構えライザーにその切っ先を向ける。ライザーも魔力を高ぶらせ背中から炎の翼をだした。いつぶつかるともしれない一触即発の空気が部室内に漂う。

 

「―――――――そこまでです」

 

 そこへ再び静かで迫力ある言葉をグレイフィアが口にした。

 

「先ほども言いましたがこれ以上の振る舞いは許しません」

 

 それだけで室内の空気が重くなった。

 

「・・・・・・チッ」

 

 ライザーは舌打ちをして背中の炎の翼を消した。それを見て明日菜も雪霞狼を下ろした。

 戦闘にならずに済んだのでオカルト研究部の全員安堵するなかライザーはリアスに言った。

 

「おい、リアス。ゲーム10日後にしてやる」

 

「どういうつもりかしら?」

 

「ハンデさ、ハ・ン・デ。君と俺とじゃ大きな差がある。これぐらいのハンデはくれてやるさ」

 

「・・・・・・」

 

「屈辱か?自分の感情だけで勝てるほどレーティングゲームは甘くないぞ。俺は正式なレーティングゲームにも参加している経験者だ。いくら才能があろうと、いくら強かろうと、初戦で力を思う存分に出せず負けた連中を何度も見てきたぞ。」

 

 ライザーは視線を一誠に向ける。

 

「リアスに恥をかかせるなよ、リアスの兵士(ポーン)おまえの一撃がリアスの一撃なんだよ。そして・・・」

 

 ライザーは宗司にも視線を向けた。

 

「キサマには必ず兵士(ミラ)の仮を返してやる覚悟しておけ」

 

そう言いライザーは眷属と共に魔方陣を発動させて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひーひー・・・・・・・」

 

「・・・・ひーひーうるさいぞ兵藤。・・・ぜーぜー・・・・」

 

「おまえも・・・ぜーぜーって、・・・言ってるじゃないか宗司」

 

「ほら、イッセー、ソージ。早くなさい」

 

 部長とライザー・フェニックスの婚約話から一日過ぎた今日、俺たちオカルト研究部のメンバーは十日後のレーティングゲームに向けての特訓のために部長の実家の別荘がある山を登っていた。

 山の風景はよかったのだが、今の俺と兵藤にはそれを楽しむ余裕はなかった。俺たちは尋常じゃない量の荷物を背負って山道を歩いていた。

 

「・・・・・・あの私も手伝いますから」

 

「いいのよ、イッセーはあれぐらいこなさないと強くなれないわ」

 

「一誠先輩にはあれでもまだ足りないくらいなんですよアーシア先輩。・・・先輩も頑張ってください」

 

 遥か前方から俺たちを心配するアーシアと俺たちに激をとばしてくる部長と姫柊の会話が二人に聞こえてくる。

 きつい、だるい・・・・。

 斜面がきつい山道を大量の荷物を背負って歩く。しかも陽射しの中を、吸血鬼である俺にはまさに苦行だった。

 

「部長、山菜を摘んできました。夕飯の食材にしましょう」

 

「・・・・・・お先に」

 

 そんな俺たちをよそに木場は俺たちと同じ大きさの荷物を背負って苦もなくすいすいと山道を登っていき、塔城にいたっては俺と兵藤以上の荷物を背負って二人を横から追い抜いていった。

 

「負けられるか~、うおりゃぁぁぁぁ!」

 

「はぁぁぁぁ・・・・・」

 

 そんな二人を見て触発された兵藤は俺をおいて雄たけびを上げながら駆け登っていった。そんな兵藤の無茶ぶりに俺は呆れて深いため息を吐く。

 そんなことを何度も繰り返し、目的地の別荘にたどり着いたのだった。

 この別荘は普段は魔力で風景に隠れ、人前には現れない仕組みだそうで、今日は使用するので姿を現しているそうだ。

 リビングに荷物を置くと同時に俺は座り込み、その隣では兵藤が倒れこんでいる。女性陣は動きやすい服装に着替えるため二階へ行った。

 

「僕も着替えてくるね」

 

 木場も青色のジャージを持って一階の浴室へ向かったが、急にふり返り俺と兵藤に言った。

 

「覗かないでね」///

 

「「マジで殴るぞ、この野郎!!」」

 

 疲れて余裕のない俺と兵藤は同時に殺意を込めて叫んだ。それを木場は笑顔で受け流し今度こそ浴室に向かった。

 それから少しして体力が戻ると俺と兵藤は別室で着替えを始めた。着替え終わりリビングに行くとみんなすでに集まっていた。赤いジャージ姿の部長が俺と兵藤を視界に捉えると、笑みを浮かべながら言う。

 

「さて、さっくそく修行開始よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッスン1 木場佑斗との剣術修行

 

「よっはっ」

 

「おりゃ!おりゃぁぁ!」

 

 一誠は佑斗にむかって木刀を振り回し当てようとしていた。だが、佑斗は軽やかにそれをいなしている。

 

バシッ!

 

 また木刀を佑斗に叩き落される一誠。そんな二人の修行を宗司と明日菜は見ていた。

 

「そうじゃないよ、イッセー君。剣の動きを見るだけじゃなく、視野を広げて相手と周囲も見るんだ」

 

「木場の奴、すごいな・・・」

 

「はい、あの動きは才能だけで出来る動きじゃありません。土台となる基礎もしっかり身に付いているからこそできるものです。どれだけ祐斗先輩が修練を積んできたのが解ります」

 

 祐斗の動きに宗司はただ驚き、明日菜はその動きから祐斗の技量は修練の賜物だと見抜き関心した。

 

「ほら、まだまだ行くよ!」

 

「くそっ~~~~~!!」

 

 レッスン2 姫島朱乃との魔力修行

 

「そうじゃないのよ。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ」

 

 朱乃の説明を聞きながら手のひらに魔力を集めようとする一誠とアーシア。宗司と明日菜はまたその様子見学していた。一誠は グヌ~~ っと力んでいると横ではアーシアの手のひらに緑色の淡い魔力の塊を作り出した。

 

「できました!」

 

「あらあら。やっぱり、アーシアちゃんは魔力の才能があるかもしれませんわね」

 

「すごいです!アーシア先輩」

 

 朱乃と明日菜に褒められ、頬を赤く染めるアーシア。

 一方一誠は今だできず、なんとか魔力を球体状に出せたが、米粒サイズのシロモノだった。それを見て宗司が笑うと「おまえもやってみろ!」一誠が言ってくる。宗司は渋々やろうとしたが何故か明日菜に止められてしまってやることはなかった。

 その後、一誠は朱乃と何か相談をして朱乃から大量の野菜を渡されていた。それを見ていた明日菜は 「いい予感がしません・・・・・・」 っと言っていた。

 

 レッスン3 塔城子猫との組み手

 

「ぬががあああああ」

 

ドゴッ!

 

 子猫にまた殴り飛ばされている一誠。この光景は十回も続いている。

 

「・・・・・・弱っ」

 

 子猫は痛烈な一言を一誠に言う。

 

「ひでっ・・・・・・」

 

 一誠と子猫の訓練を見て宗司は初めて一誠に同情した。

 

「・・・・・・打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉り込むように打つんです。・・・・・・さ、もう1セットです」

 

 子猫はそう言うと腕をぶんぶんと振り回し、再び一誠に拳の照準を定めた。それを見て一誠は諦めた表情になった。

 

 レッスン4 リアス・グレモリーのスパルタトレーニング

 

「ほーら、イッセー!気張るのよー!」

 

「おおっす!」

 

「先輩、先輩も頑張ってください」

 

「ぐ、ぐおおぉぉぉ!」

 

 宗司と一誠は険しい山道を駆け登っていた。背中の岩を縄で体に巻きつけて。しかも二人の岩の上にはリアスと明日菜がそれぞれ座っている。

 舗装されてない山道をひたすら駆け登っては降りる。口にするのは簡単だがそれをしている宗司と一誠は苦行そのもだった。

 

「次は筋トレね。イッセー、ソージ腕立て伏せいくわよ」

 

「へ、へ~い・・・・・・」

 

「う、う~す・・・・・・」

 

 生まれたての小鹿みたいに足がガクガク震えてる状態の二人は力なく返事をし、腕立て伏せの姿勢をした。そこへリアスが二人の背中に岩を載せて自分も一誠の岩の上に座った。

 

「ぐわっ!」

 

「ぐへっ!」

 

「明日菜、あなたはソージの上に座りなさい。さーて、腕立て伏せ三百回。いってみましょうか」

 

「オースッ!」

 

「ほら、先輩もやりますよ」

 

「っくそ~!」

 

 リアスと明日菜からの激励を受けながら一誠と宗司は腕立て伏せをこなしていき、その後もきついトレーニングを黙々とやらされていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味い!」

 

「うおおお!美味ぇぇぇ!マジで美味い!」

 

「うふふふ。おかわりもあるからたくさん食べてくださいね」

 

 今日の訓練を終えたオカルト研究部は夕食をいただいていた。

 テーブルの上の豪華な食事を空腹の一誠と宗司は一心にかっこみ子猫はそんな二人以上に静かに豪快にパクパク食べていた。

 朱乃はニコニコと微笑みながら三人の出す飯茶碗にご飯を盛って渡していた。そこへお茶を飲んでいたリアスが一誠に訊いてくる。

 

「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」

 

「・・・・・・俺が一番弱かったです」

 

「そうね。それは確実ね。朱乃、祐斗、子猫はゲーム経験がなくても実戦経験が豊富だから、感じをつかめば戦えるでしょう。あなたとアーシアは実戦経験は皆無に等しいわ。それでもアーシアの回復、あなたのブーステッド・ギアは無視できないものよ。相手もそれを理解しているはず。最低でも相手から逃げられるぐらいの力は欲しいわね」

 

「逃げるって・・・・・・。そんなに難しいんですか?」

 

 一誠の質問にリアスはうなずき、明日菜も話に加わってきた。

 

「一誠先輩、逃げることも戦術の一つです。いったん引いて態勢を立て直すの立派な戦い方です。それども、敵に背を向けるという行為事態危険を伴います。しかも自分より格上の相手から逃げるとなればそれは自ら殺してくださいと言ってるも同じことです」

 

「明日菜の言うとうりよ。そういう相手から無事に逃げられるのも実力のひとつ。イッセーとアーシアには、逃げ時も教えないといけないわ。もちろん、面と向かって戦うすべも教えるから覚悟しておきなさい」

 

「了解っス」

 

「はい」

 

「あの~~、部長。質問イイですか?」

 

 話しがひと段落したところで宗司がリアスに質問してきた。

 

「なにかしから?ソージ」

 

「いや、今日俺だけ修行は部長とのトレーニングだけだったのはなんでだろうと思って・・・?」

 

「ああ、それは明日菜からそうするように言われたからなのよ」

 

「姫柊が?なんでだ姫柊」

 

 宗司は明日菜に理由を尋ねる。すると明日菜は簡潔に答えた。

 

「先輩が危険だからです」

 

「・・・・・・へっ?」

 

「先輩・・・、ライザー・フェニックスの眷属(ポーン)に自分がしたことを忘れたんですか・・・?」

 

「!? あ、あれは俺の所為なのか!?俺にも何が起こったのか解らないんだぞ!」

 

 明日菜の発言に抗議する宗司。それに明日菜はため息をついてから言う。

 

「ええ、先輩が自分の意思でやっていないのはそれは解っています。でも、先輩にその気がなくてもレーティングゲーム前の朱乃先輩、祐斗先輩、一誠先輩、子猫さんに同じことをしてしまう可能性があります。リアス先輩の特訓は私が先輩の相手をするから認めたんです」

 

「そ、そんなぁぁ・・・」

 

 明日菜に言われた理由に宗司はショックをうけて項垂れた。

 

「さて、食事を終えたしお風呂に入りましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

 温泉のことを聞いた一誠はだらしない顔に顔になる。それだけで一誠が何を妄想しているか皆察した。

 宗司と祐斗は即座に言う。

 

「僕は覗かないよ、イッセーくん」

 

「俺もだ」

 

「バッカ!お、おまえらな!」

 

「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?なら、一緒に入る?私はかまわないわ」

 

「!? な、何を言いだすんですか!リアス先輩!」

 

 リアスの予想外の発言に顔を赤くして明日菜は叫んだ。

 

「あら、別にいいじゃない。朱乃、あなたはどうなの?」

 

「別にかまいませんわ。うふふ。宗司くん(殿方)の御背中を流してみたいですし」

 

「なっ!? あ、朱乃先輩まで何を言っているですか!いけませんそんなこと!」

 

 リアスの提案に満面の笑みで肯定するする朱乃。それを聞いて明日菜はますます顔を赤くする。そんな明日菜をよそにリアスはアーシアと子猫にも話しかける。

 

「アーシアと子猫はどうかしら。アーシアは愛しのイッセーと入れるわよ?」

 

「えっ!? あ、あのわたし、・・・・・・~~~~~~~~・・・」

 

「・・・・・・いやです」

 

 リアスの問いかけにアーシアは明日菜と同じように顔を真っ赤にしてうつむくが小さくこくりとうなずき、逆に子猫は両手でバッテン印をつくり拒否した。

 

「じゃ、なしね」

 

 それを聞いたとたん目に見えるほど落胆する一誠。そんな一誠を見てリアスは悪戯っぽい笑みで言う。

 

「残念ね、イッセー」

 

「残念 じゃ、ありませ~~~~~~~~~~~~~~ん!!!」

 

 そんなリアスに顔をこれでもかと真っ赤にした明日菜のカミナリが落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 修行二日目になり、午前中は勉強会になった。

 リビングに集まり宗司、一誠、アーシアは悪魔の知識と各勢力の主要人物などを教わる。その過程で一誠は女性魔王レヴィアタンで興奮し、アーシアのエクソシスト講座では好きだった聖書の一説が読めなくてアーシアが嘆いていた。

 ここのまま午前中の勉強会は終わると思われたが、

 

「さ、先輩。次は先輩の番ですよ」

 

「へ?」

 

 明日菜の発言によって変わった。

 

「姫柊、説明ってなんだよ?真祖の説明なら全部話しただろう。まだ俺なんか話すことがあったか?」

 

「ええ、先輩には話してもらうことがまだあります。殲教師との戦いの時先輩が呼び出したモノ(・・)についてです。教えてくれますよね。セ ン パ イ・・・・・・」

 

 怖いほど笑顔の明日菜に凄まれて宗司は顔を蒼くするのだった。

 

 

 

 

 まずい・・・・・・。

 俺は焦った。殲教師の一軒ですぐ訊かれるかと思っていたが姫柊は全然訊いてこないの忘れたのだろうと思っていた。だが、姫柊は忘れておらず、しかも皆がいるこの場で訊いてきた。

 

「先輩、言い逃れはできませんよ」

 

「あらあら、うふふふ、そうですわね。わたしも実はあれから気になっていましたし教えてもらいたいですわ」

 

 姫柊と笑顔の姫島先輩が徐々に詰め寄って来る。背後は壁で逃げ場はない。

 に、逃げ場がない・・・・・・。だが、眷獣のことは絶対話すも

 

 

「センパイ」

 

「宗司くん」

 

「話します」

 

 正直に話すのは大切だよね、うん。

 

 




暑くてやる気がおきないですが、次話も執筆中ですので気長に待ってくれたら幸いです。


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新校舎のフェニックスⅢ

大変お待たせしましたm(__)m
最初は新校舎のフェニックス編を全部書いてから投稿する予定でしたが今のペースだと更に長くなるといたった為今できている分を投稿します。


 俺は部員メンバーの視線を一身に浴びるなか説明をした。

 

「あの時俺が呼び出したのは『眷獣(けんじゅう)』っていうんです」

 

「ケンジュウ?・・・・・・眷属と似た響きだけど同じものなの宗司?」

 

「いえ、違います。眷属と眷獣似ていますけど別物ですよ部長」

 

 部長の質問に答えながら俺は話を続けた。

 

「眷獣は一応使い魔に当たる存在です。宿主の血の中に宿る異界の召喚獣でその能力、姿は様々あります」

 

「「「異界の召喚獣!!?」」」

 

「はい、意思を持った超高濃度の魔力の塊で強大な戦闘力を持つ反面召喚の際宿主の寿命を継続的に削り続けながら実体化します」

 

「「「「寿命を!!?」」」」

 

 俺の説明に皆が驚く。異界の内容に部長、兵藤、木場が、寿命の代償に姫柊、姫島先輩、アーシア、塔城が驚いている。

 

「だ、大丈夫なんですか!?先輩!!寿命を代償なんって・・・・・・!?」

 

「宗司くん!そんなムチャをしてたなんて・・・・・・!!」

 

 説明を聞いて姫柊と姫島先輩が俺に詰め寄って来た。その際、至近距離のため二人の髪の匂いがした。

 あ、二人ともいい匂い・・・って、マズイ!

 咄嗟に両手を二人の前に出して距離をとった。

 

「ちょ、ちょっとおちついてくれ!俺は大丈夫だから・・・」

 

「・・・本当ですか?」

 

「!ッ~~~・・・ ええ、本当です!」

 

 俺は心配する姫島先輩の表情に ドキッ としながら説明を続けた。

 

「ゴホンッ、・・・だから常人の寿命では一瞬で尽きてしまうため、基本的には不老不死の吸血鬼にしか扱えないんです」

 

「・・・・私の知っている吸血鬼にはそんな能力(ちから)はないわ」

 

「真祖である先輩だけの力なのでしょうか・・・?」

 

 俺の説明を聞いて部長と姫柊はそれぞれ思考を巡らせている。

 これで納得してくれるといいんだけど・・・・・・。

 俺は他に隠している眷獣の事を話さずにすんで内心ホッとしていると、姫島先輩が話しかけてきた。

 

「・・・・・宗司くん。一つ訊いてもいいかしら?」

 

「なんですか?姫島先輩」

 

「宗司くんは・・・眷獣を何体持っているのかしら?あの時呼び出した眷獣は5番目って言ってましたし・・・」

 

「――――! たしかに・・・」

 

 姫島先輩の言葉で姫柊もハッっと思いだし顔をした。

 マズイ!”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)だけだと誤魔化せると思っていたのに。

 俺はおもわず視線を逸らしてしまった。そのため俺がまだ隠しごとがあるとを自分で教えてしまった。

 

「あらあら、まだ私たちに隠しごとがあるようですわね」

 

 頬に手を当てながらもう片手からバチバチっと雷を出してる姫島先輩。その笑顔、怖いです。

 

「先輩、知っていることは全て話してください・・・」

 

 姫柊、ギターケースに手を掛けてるの止めないか、雪霞狼は駄目だろう。

 

「ソージ、私たちに隠しごとなんて、解っているわよね」

 

「・・・・・・」 シュッシュッ。

 

 部長、滅びの魔力を出さないでください。塔城、なぜジャブをしている。

 

「アハハッ・・・」

 

「・・・・・・」サッ!

 

「い、イッセーさんなんで急に目を隠すんですか??」

 

 木場、笑ってないでフォローしてくれ、そして兵藤、アーシアの目を両手で塞ぎながら目を逸らして見なかったことにするな!

 

 

 

 

 

 

 

 

疾く在れ(出やがれ)、第5の眷獣 ”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)―――――!!!」

 

ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

「!!―――これが眷獣」

 

「ス、スゲェェェェェ!!」

 

「はわわわわわ!!?」

 

「!? ・・・・・・スゴイです」

 

「まさかこれ程とはね・・・・・・」

 

 追い詰められた俺は早々に降参して部長たちに眷獣を見せている。みんな初めて見る眷獣、”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)に驚愕している。

 

「とんでもないわね、あんなのがまだ複数いるなんて。ソージ、他の眷獣も見せてちょうだい」

 

 ”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)を見ていた部長が振り返り他の眷獣を見せてくれと言ってくる。それにたいして俺はうつむいた。

 

「・・・・・・」

 

「?・・・どうしたですか先輩」

 

 姫柊が俺の様子に気づいて話しかけてくる。

 ・・・・・正直に話すか。ハァァ~~・・・。

 心の中でため息を吐き俺は正直言う。

 

「・・・部長、他の眷獣は出せません」

 

「出せない・・・ですか?」

 

「・・・・・・どういうことことですか?」

 

 アーシアと塔城が不思議そうに訊いてくる。俺は右手で頭を掻きながら理由を言った。

 

「そこにいるってのと自由に使えるってのは全然別の話ってことだ。あいつらは俺の命令なんか聞きかないんだ。俺の事を宿主とも思ってないんだよ・・・」

 

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

 皆俺の説明に驚いている。そりゃそうだ、主の命令を聞かない使い魔など聞いたことも無いだろうし。

 

「そんなことあるんですか!?」

 

「まぁ、かなり特殊だろうな・・・」

 

 姫柊の問いに俺は顔を逸らしながら答える。

 

「そんな使い魔聞いたことも無いわね・・・ソージ」

 

「はい」

 

「あなたの眷獣はどれほどの力を持っているの?」

 

「・・・眷獣一体でもかるく国を滅ぼせるほどです」

 

「「「「「「「―――――――――!?!?」」」」」」」

 

 俺の回答に先ほどと比べ物にならない程皆驚愕している。国を滅ぼせる使い魔なんて前代未聞だろうし、それが複数体いるうえに制御不能なのだから当然の反応だろう。

 

「ソージ!/先輩!」

 

「ハイ!」

 

 部長と姫柊が同時に俺に詰め寄って来た。そのあまりのの迫力に面喰い俺もおもわず返事をしてしまう。

 

「むやみにその眷獣(ちから)を使わないでください」

 

「そうね、制御できるまで眷獣(ちから)を使うのは禁止よ。いいわねソージ」

 

「わ、わかりました・・・」

 

 こうして午前中の勉強会は終わり昼飯を食べまた特訓に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 夜の特訓を終わり皆が寝静まっている中俺は一人外に出て夜空を見ていた。明日のレーティングゲームの事を考えていたら眠れなくなったからだ。

 ・・・・・・レーティングゲーム俺も出られたら・・・って想ってませんか、先輩?」

 

「・・・人の心を読むな姫柊」

 

 何時の間にかいたのか背後から姫柊の声が聞こえた。後ろに振り返ると寝間着姿の姫柊がいた。いつも制服を着ている姫柊しか見たことなかったため寝間着の姫柊におもわず見惚れてしまった。

 

「? 先輩どうかしましたか?」

 

「! いや、ひ、姫柊も眠れなかったのか?」

 

「・・・はい、明日のことをどうしても考えってしまって寝付けなくて」

 

「そうか・・・」

 

 姫柊も俺と同じだと知り内心安堵した俺は再び星々が輝く夜空を見た。街中と違い星の光を遮るモノが無いので星がよく見える。

 

「綺麗だな・・・」

 

「そうですね」

 

 隣にきた姫柊に俺は考えていたことおもいきって姫柊に訊いた。戦闘のプロの姫柊ならいい答えが貰えると思ったからだ。

 

「・・・・・・姫柊、部長たち勝てると想うか?」

 

「・・・ほぼ・・・可能性はありません」

 

 だが、返ってきた言葉は俺が望んだものじゃなかった。

 

「部長・・・リアス先輩たちとライザー・フェニックスとその眷属とでは大きな差があります」

 

「大きな差・・・・」

 

「はい」

 

 姫柊は俺の方に向いて続きを話した。

 

「一つは人数。ライザー・フェニックスは眷属が15人全員揃っているに対してリアス先輩たちはリアス先輩をいれても6人。圧倒的な人数差があります。二つ目に経験の差です。一誠先輩とアーシア先輩以外の皆さんは戦闘経験が多くあるでしょうが、今回のレーティングゲームは初めてです。それに比べて相手の方は何度もレーティングゲームも実戦している経験者、ベテランと素人の差は先輩でも解りますよね」

 

「ああ」

 

「そして最後の理由ですが、相手が”フェニックス„だからです」

 

不死鳥(フェニックス)・・・」

 

「炎の中から幾度も蘇る不死なる鳥、その涙はあらゆる傷を癒す秘薬、その流れる血を飲めば不老不死を得られる命を司る聖獣。それがフェニックス伝承です。そして悪魔のフェニックスも同じ不死の能力をもっています」

 

「不死・・・か」

 

「はい、それがどれほどの能力か真祖(不死)である先輩なら解りますよね」

 

「ああ・・・嫌になる程な」

 

 不死(のろい)がどれほどの能力(もの)かな・・・。

 

「でも、絶対倒せないわけでもないんです」

 

「なに?そうなのか」

 

 姫柊から意外な事実を聞いて俺は純粋に驚く。不死身といっても真祖(おれ)ほどではないようだ。

 

「はい、方法は二つです。圧倒的力で押し通すか、復活するたびに何度も倒して精神を潰すことです」

 

 おいそれって―――――。

 

「それってどっちにしても力と実力が必要だってことだろう」

 

「そうなります。それも相手を圧倒するほどの力と実力が必要です。」

 

 相手を圧倒するほどの実力、圧倒的な力・・・・・・あっ!

 

「兵藤の・・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!あれなら圧倒的力を出せる・・・!」

 

 神すら屠る神滅具(ロンギヌス)の一つである赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。その能力は10秒ごとに自らの力を倍にする反則的なものだ。

 

「ええ、先輩の言う通りです。一誠先輩の赤龍帝の籠手ならフェニックスを上回る可能性があります。それがリアス先輩たちのゆういつの可能性なんです。ですが・・・・・・」

 

 姫柊が何かを言いかけたので気になった。

 

「? ですが?」

 

「いえ、それより先輩に訊きたいことがあります」

 

「訊きたいこと・・・?」

 

「先輩・・・先輩はどうやってあの”獣王の紅玉„(眷獣)を手懐けたんですか?」

 

「?!ぐっ・・・そ、それは・・・」

 

「・・・やっぱり従えるための何か手順があるんですね」

 

 姫柊の視線に耐えられず俺は顔を逸らすが姫柊はジ~っと見てくる。

 

「先輩、正直に話してください。でないと・・・」

 

「でないと・・・?」

 

「先輩が今まで私にしたいやらしいことを朱乃先輩に云います」

 

 姫柊の発言に姫島先輩に知られたらどんな目に合うか想像してしまった。

 あらあら、宗司くんたらいけませんわね。おしおきが必要ですわね。 バチバチ!!

 

「!?! それだけはやめてくれ!頼むッ!!」

 

「なら教えてくれますよね先輩」

 

「!・・・・それは・・・」

 

お し え て く れ ま す よ ね?

 

「・・・はぁぁ、わかった」

 

 姫柊の凄味のある笑顔に屈した俺は渋々説明した。

 

「眷獣は俺が吸血鬼として当たり前の行為をしていないから俺を主人として認めてくれないんだ」

 

「当たり前の行為・・・ですか?それはなんですか」

 

「きゅ・・・け・・つこ・・だ」

 

「? すみません先輩よく聞こえませんでした。もう一度お願いします」

 

 絞りだすほどの声で言うがやはりよく聞こえなかったようで姫柊は聞き返してきた。俺はやけくそ気味に一気に言った。

 

「――――吸血行為だ!!それをしてないから俺は認められてないの!!」

 

「!? そ、そうですか・・・」

 

「それじゃ俺寝るわ、また明日な!」

 

ダッ

 

 いきなりの声にびっくしたのか姫柊は表情が少し引き攣っていたが納得してくれたようだった。いたたまれなくなった俺はそのまま全力で走って別荘に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、はぁ~、はぁ~」

 

 玄関にたどり着いた俺は手を膝に付けて走った所為で乱れた呼吸を整えるために深呼吸した。

 少しづつ息が整っている時、足音ともに声が聞こえた。

 

「宗司くん?」

 

 声に気づいて顔を上げると寝間着姿の姫島先輩がいた。

 いつもの纏めている髪を下ろしているためか寝間着姿と合わさって益々色っぽくみえる姿に内心ドキドキするのを隠しながら俺は会話する。

 

「姫島先輩?どうして・・・」

 

「うふふふ、明日のゲームに緊張して寝付けなかったので夜空でも見ようかとしていましたの」

 

「そうですか・・」

 

「宗司くんこそどうして外にいたんですの?」

 

「俺も同じです。寝付けなくて外で夜空を観てたんです」

 

「そうなの、なら二人とも同じですわね」

 

「ええ、そうですね」

 

 先輩とたわいない会話してると夜風が吹いてきた。

 夜風が姫島先輩の髪を靡かせ先輩はそれを手で押さえる。そのポーズとあいまって増々色っぽく見えてしまった。

 本当に俺の一つ上なのか?そうとはおもえない程色っぽい。・・・・・っ!まずい!!

 姫島先輩に見惚れていたら吸血衝動とともに鼻血が出てしまった。

 

「! あらあら、宗司くん大丈夫かしら?ちょっとまっててください」

 

 そう言うと朱乃さんはリビングに入っていきティッシュ持って戻ってきた。

 

「これを使ってください」

 

「あ、ありがとうございます。姫島先輩」

 

「うふふ、朱乃でかまいませんわ」

 

「それはちょっと・・・」

 

 俺はやんわりと拒むと姫島先輩が少し俯き拗ねた口調になった。

 

殲教師(エクソシスト)との時は名前でよんでくれましたのに・・」

 

「! あっ、あの時は咄嗟で・・・・ッ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 姫島先輩が笑顔で俺を見つめながら近づいてくる。

 その行動に俺は困惑した。

 まっ、まずい!!吸血衝動が!!

 

「!! ひ、姫島先輩ッ!?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 姫島先輩は俺を無視してさらに近づいてくる。

 

ドクン!

 

 やっ、やばいぃぃぃぃぃぃ!!!!

 

「~~~~~~~っ、朱乃さん!!」

 

「! はい (^^♪」

 

 俺は諦めて名前で朱乃さんをよぶことにした。

 そして俺に名前でよばれた朱乃さんは何故か嬉しそうに微笑むのだった。

 

 

 

 

 俺と朱乃さんは玄関からリビングに移動した。

 深夜のリビングには勿論誰も居らず静かだった。

 俺は適当にソファー座った。

 朱乃さんは「お茶を入れてきますわ」言い台所に行った。

 その間俺はソファーでボーっとして、数分後に台所から朱乃さんが湯呑を持って戻ってきた。

 

「お待たせしましたわ」

 

 そう言いながら朱乃さんはお茶を渡してきた。

 

「ありがとうございます」

 

「うふふふ、どういたしまして」

 

 朱乃さんも自分のお茶を持ってが俺の隣に座った。

 

「あ、朱乃さん!」

 

「あらあら、どうしましたの?」

 

 そう言いながらお茶を机に置き俺にもたれかかってくる朱乃さん。

 こ、この人わざとやっているな!!

 内心を表に出さないようにして確信すると朱乃さんが話しかけてきた。

 

「・・・ねえ、宗司君」

 

「? はい」

 

「どうやったら眷獣を制御できるか教えてくれます」

 

「!? はい!!」

 

 朱乃さんのいきなりの質問に動揺して返事してしまった。

 

「なんで急にそんなこと聞くんですか!?」

 

「明日菜ちゃんにはもう教えてさしあげたんでしょう?」

 

「!!なっなぜそれを・・・・(-_-;)」

 

「あらあら、やっぱりそうでしたわ」

 

「!?ひっひかっけましたね!!」

 

「うふふふ(^^♪」

 

 俺はまんまと朱乃さんに騙されたようだ。

 そんな朱乃さんは笑顔で微笑んでいた朱乃さんは何かを思いついた顔をしてから上目使いで俺にのしかかってきた。

 至近距離で朱乃さん顔とその綺麗な髪の一部が俺を顔にかかる。

 

ドックン!

 

 ままマズい~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?

 吸血衝動が出たのと至近距離の朱乃さんの今の状況で俺はパニック状態。

 そこに朱乃さんは更に近づいて来て俺の耳元で囁いてきた。

 

「宗司君。明日菜ちゃんだけでなく私にも教えてくれますわよね?もし、教えてくれないなら・・・」

 

「・・・・なら?(-_-;)」

 

「宗司くんにエッチなことをされたと明日菜ちゃんや浅葱さんに言いふらしますわ(^^♪」

 

 朱乃さんの発言を聴き、脳内で想像した。

 冷たい目で雪霞狼(せっかろう)を構える姫柊。

 目が笑ってない笑顔で洒落にならない威圧感を放つ奈織。

 想像した瞬間命の危機を悟った。

 

「勘弁してください!!」

 

「じゃあ、教えてくれますね」

 

「はい(T_T)」

 

「うふふふ(^^♪」

 

 こうして朱乃さんにも説明するはめになった。

 今夜で生涯の秘密を二人にも知られてしまう俺だった。

 ・・・・・・・女は怖い・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は自室ベットに座りで項垂れていた。

合宿が終わりゲーム当日に部長たちを見送った俺と姫柊がグレイフィアさんが用意してくれた映像で観戦させてもらえた。

 結果は部長たちはレーティングゲームに敗北だった。兵藤は重傷で未だに眠っている。

 アーシアがついているから大丈夫だろうがそれでも心配だった。

 それに今日は部長とライザー・フェニックスの婚約パーティーの日だ。

 俺と姫柊はパーティーに参加できないけど朱乃さん、木場、塔城は参加している。

 ゲーム後にあった部長は自分の所為で兵藤を傷つけたこと対する後悔と悲しみで泣いていた。

 俺は抗議するべきだと部長に言った。だってそうだろう素人対ベテランなんてどう見ても出来レース俺は納得できなかった。しかし、部長からの返事は ごめんなさい だった。

 俺もゲームに出れていれば・・・・・。

 

「くそっ」

 

 苛立った俺は自分の膝の上で握りこぶしを力強く握りしめる。

 

コンコン

 

「先輩、今いいですか?入りますよ」

 

 ドアにノックの音ともに姫柊の声が聞こえた。そのまま姫柊がドアを開け入ってきた。

 

ガチャ

 

「先輩、アーシア先輩から連絡がありました。兵藤先輩が目を覚ましたそうです」

 

「! ほ、本当か!!」

 

「はい・・・」

 

「そうか、よかった・・・」

 

 姫柊の報告に俺は安堵した。

 だが何故か姫柊の表情は憂いた。

 どうしたんだ・・・?

 

「姫柊・・・?」

 

「・・・先輩、兵藤先輩は今冥界にいます」

 

「!? ・・・部長を助けにいったのか!」

 

「はい・・・」

 

「あの馬鹿ッ、病み上がりなんだぞ無茶しやがって!」

 

 兵藤の無茶な行動に俺は苛立つ。

 部長も兵藤も俺の気も知らないで自分で勝手に決めやがって・・・・!!

 俺は更に苛立っていると無言になっていた姫柊がギターケースから雪霞狼を取りだし、くるり、と軽やかに回してみせた。

 一回転と半分―――銀色の穂先が彼女自身にのほうにへと向けれる。

 そして姫柊は、その刃を、制服の襟元からのぞく自分の首筋に押し当てた。

 すっ、と音もなく槍が引かれた。

 姫柊の肌に一筋の赤い線が走り、やがてぷつぷつと血の滴が浮き上がる。

 

「ひ、姫柊!?何を・・・」

 

「先輩、私の血を・・・・・吸ってください」

 

「!? な、なに言いだすんだよ」

 

 姫柊の急な行動と要求に俺は狼狽えうる。

 逆に姫柊は冷静だった。

 

「先輩、今回の事は悪魔(あちら)の内情なので獅子王機関の剣巫の私は手を貸すことができません」

 

 姫柊はつらそうな顔をする。

 

「ですが、後輩として・・・いえ、同じ女性としてリアス先輩を私も助けたいんです。ですから先輩、私の血を吸ってください。そして新たな眷獣()でリアス先輩や兵藤先輩、皆を助けてください!」

 

「姫柊・・・」

 

 姫柊の想いを聞いた俺は突き動かされるように姫柊に近づいていく。

 姫柊も緊張しているのか体が強張っている。

 俺は姫柊両腕で抱きしめ首元に顔を近づけ髪の匂いを嗅いだ。

 

「・・・やっぱりいい匂いだ」

 

「!!? ~~~~~」

 

 俺の言葉に姫柊が反応したの感じながら吸血衝動に身を任せ姫柊の首筋に牙を突き刺した。

 

「あ、()・・・・・先ぱ・・・・・い・・・・」

 

 痛みに耐えているためか、その手が俺の服をきつく握ってくる。姫柊の唇から弱々しい吐息が漏れる。

 やがて俺の腕に抱かれていた姫柊の身体から力が抜けていく。そして、

 

 ・・・・・――――――~~~~~~~~~~~!!!

 

 俺の中で眷獣が覚醒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔界、悪魔の住まう地。

 そこでおこなはれているリアス・グレモリーとライザー・フェニックスの婚約パーティー。

 そこへ乱入した兵藤一誠とライザー・フェニックスの一騎打ちが魔王サーゼクス・ルシファーの計らいで始まろうとしていた。

 

「部長はおまえには絶対渡さない!!」

 

「こい!また格の違い教えてやる!!」

 

 一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)をだして構える。ライザーも炎の翼だした。

 二人の戦いが始まろうとしたその時、二人の間の空間に切れ目ができた。

 いきなりの事に一誠とライザー、フィールドの外から見ていた観客達も驚いていた。

 裂け目から誰かが出て来た。その人物を見て一誠、リアス、朱乃、祐斗、子猫は更に驚く。

 

「「「「「宗司/君/先輩!?」」」」」

 

 人間界にいる筈のオカルト研究部のメンバー逢魔宗司だった。

 

「・・・パーティーには間に合ったみたいだな」

 第5真祖終焉の暁(エンド・ローウン)、逢魔宗司が魔界に現れた。




零時にもう一話投稿しますので待っててください。感想が間違い報告があったらお願いしますm(__)m


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新校舎のフェニックスⅣ

書き貯め最後です。2話しかできませんが楽しんでいただいたら幸いです。


 突然現れた謎の人物に貴族の悪魔達がざわつきだす。

 その中、魔王サーゼクス・ルシファーは落ち着いて現れた宗司を見ていた。

 そして傍らにいる自分の女王(クイーン)、グレイフィアに訊いた。

 

「彼がそうなのかい?グレイフィア」

 

「はい、あの方が真祖の逢魔宗司様です」

 

「第五真祖、彼女(・・)の後継者・・・・かっ」

 

 サーゼクスの脳裏にかつて戦場で一度だけ出会った一人の少女の姿が浮かび上がった。

 

 ・・・・・・君、中々強いね。名前教えてよ!

 

 突如戦場に現れて全軍相手に暴れまわり戦場をひっかけまわした。

 

 僕の名前はアルフレア・ジュピテール。ヨロシクね、サー君!

 

 黄昏時の髪の少女を。

 

「・・・・・ふふっ、さて彼が何かをしでかす前に彼と話し合わないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宗司!おまえどうやってここに来たんだよ」

 

 いきなり現れた宗司に驚き、近づいていく一誠。

 一方宗司は一誠の質問に対して無言だった。

 

「?・・・おい、宗「この、・・・馬鹿野郎!!」ジッ!!?」

 

ゴッ!

 

 宗司は近づいて来た一誠に怒鳴り頭を殴った。

 いきなりの事に反応できず殴られた頭を押さえて痛がる一誠。

 

「~~~~~~っ、い、いきなり何すんだよ!」

 

 いきなり殴てきた宗司に一誠は文句をいう。

 そんな一誠に怒気を出しながら宗司は言った。

 

「俺をおいてったバツだ」

 

「! そ、それは部長の婚約パーティーが今日と聞いたから慌てて・・・」

 

 宗司に睨まれて一誠は慌てて言い訳をする。

 そんな一誠を見て宗司は呆れ顔になると同時にため息を吐いた。

 

「・・・・ハァ~、もういい」

 

「へっ?」

 

 意味を理解できない一誠は首を傾げた。

 宗司は一誠を見ながら言う。

 

「次は仲間外れはなしだからな。俺もオカルト研究部のメンバーなんだし、わかったな」

 

「!―――ああ、わかったまかせとけ!」

 

「よし。さて・・・」

 

 一誠の返事を聞いた宗司は頷く。

 そして二人は向きを変えて好戦的な笑みでライザー・フェニックスを見る。

  

「そこの焼き鳥をさっさとブッ飛ばしてオカルト研究部のメンバー(みんな)と帰るぞ」

 

「おう!」

 

 ライザーはそんな一誠と宗司にたいして炎を全身から放出した。

 

「雑魚が増えたところで、まとめて燃やしてやる!」

 

 三人とも臨戦態勢をとり、戦闘が始まろうとした。

 

『ちょっと待ってもらえないかい』

 

 三人しかいない空間に突如謎の声が響いた。

 謎の声に宗司は警戒するが、一誠とライザーは驚きの声をだした。

 

「魔王様!」

 

「サーゼクス様!」

 

 魔王? サーゼクス?

 

 宗司は急に聞こえた声に驚く二人を見て、今の声の人物について考察する。

 

 魔王はともかくとして、サーゼクスは確かグレイフィアさんの主の名前だったよな・・・。

 

 恐る恐る宗司は謎の声の人物に質問をした。

 

「え~~、サーゼクスさん?でいいんですか?」

 

『フフッ、ああそうだ。私の名前はサーゼクス・ルシファー、現四大魔王の一人にしてリアスの兄だ』

 

「!!部長のお兄さん」

 

 謎の声人物が魔王で部長のリアスの兄であることに宗司は驚き声を出してしまう。

 

『はじめましてだね逢魔宗司君。妹のリアスが世話になっているね』

 

「いえ、こちらこそ部長、リアス先輩にお世話になってます!」

 

『ふふっ、そう固くならくていいよ。普通に話しくれてかまわないさ』

 

「そ、そうですか・・」

 

 魔王と聞いたので怖い人、いや悪魔と想像していたが優しいそうな悪魔だったので宗司は内心安堵していた。

 

『さて、キミの目的も君の隣にいるドラゴン使いくんと同じのようだね』

 

「! はい、俺の目的は部長を自由することです!」

 

『よろしい、君の参戦を認めよう』

 

「?! サーゼクスさま!」

 

「そんな馬の骨とも知れない輩をどうして!?」

 

 宗司の参戦に貴族悪魔達から抗議がでるがサーゼクスは笑顔で対応した。

 

「貴族の方々の言い分も理解していますが彼もまたこのパーティーを盛り上げるほどの人物なのですよ」

 

「それは如何ゆう意味だ?サーゼクス」

 

「父上。それは彼、逢魔宗司が真祖の吸血鬼だからです」

 

『『『『真祖!!?』』』』

 

 サーゼクスの一言に周りから驚愕の声が会場中に響いた。

 

「それは本当なのですか!?」

 

「あのコウモリどもの・・・!」

 

『伝説の真祖と伝説のドラゴンVSフェニックス家の若き天才ライザー・フェニックス。これほどのゲームなかなか見れるものではないとおもいますがどうですか皆さま』

 

 サーゼクスは周りを見まわしながら言うと全員黙り込んだ。

 それを見届けたサーゼクスはゲーム開始を宣言する。

 

『お許しも出たことだし早速ゲ―「まってくれ」ム・・・何かな真祖くん?』

 

 いざゲームが始まろうとしたその時、宗司が待ったをかけた。

 

「願い事の上乗せってできますか?」

 

「『『『「!?」』』』」

 

 宗司のいきなりの訪いに周りが困惑する。

 

「ライザー・フェニックスとその眷属全員対俺と兵藤。それで勝てたらもう一つ願いをもらえますか?」

 

『ほう・・』

 

 サーゼクスは宗司の提案に興味を示した。

 一方一誠は宗司の提案に抗議した。

 

「宗司!なに言いだすんだよ?!」

 

「兵藤、ちょっと黙ってくれ。ちゃんと考えてるからよ」

 

「ほ、本当だろうな・・?」

 

「ああ、まかせろ」

 

 宗司と一誠の短い会話の間に少し思案していたサーゼクスは言う。

 

『いいだろう、君の提案を受けよう』

 

 こうして宗司&一誠VSライザー・フェニックス全眷属との異色のレーティングゲームが決められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールド内は先ほど違い大人数になっていた。

 ライザー・フェニックスとその全眷属を前にした一誠は緊張していた。

 前のレーティングゲームで相手の実力を知っているけどそれは相手も同じだ。俺の洋服(ドレス)崩壊(ブレイク)はこんども通じるのか?

 一誠は色々考えながら隣にいる宗司をチラ見すると宗司は好戦的な顔をしていた。

 !! 本当にこいつがあの宗司なのか?まるで別人だ・・・。

 普段の宗司との変わりように一誠は驚愕する。

 そんな一誠を知らず宗司は一誠に声をかけた。

 

「兵藤・・・いやっ、一誠」

 

「!? なんだよ・・」

 

 驚愕していたところに初めて名前で呼ばれて、一誠はどもりながら返事をする。

 

「勝手に決めて悪かった。でも俺を信じてくれありがとうな」

 

「―――なに言ってやがる。仲間だろ俺たち、信じるのは当然だ!」

 

「! ・・・そうだな。でも言わせてくれ、ありがとう」

 

「おう、どういたしまして!」

 

 宗司の礼に一誠は笑顔で答える。

 

「まったく、下等な輩はやはり下等だな」

 

 ライザーの声が宗司と一誠の耳入ってきた。

 二人はライザーを見るとこちらを見下す顔をしていた。

 

「二対一でなら俺を倒せたかもしれないのに欲を出しそれを棒に振るうとはな」

 

「そうですわね、お兄様」

 

 ライザーの妹レイヴェル・フェニックスも兄に同意して二人を見下していた。

 

「言いたいことそれだけか・・・?」

 

「? 何ですって―――ッ!!?」

 

 レイヴェルは宗司を見て絶句した。

 宗司から滲み出る何かに気圧されたのだ。

 宗司と一誠は互いを見て頷き合うとライザーとその眷属に言った。

 

「今おまえらの前にいるのは赤龍帝との最恐の真祖だ」

 

「その意味をその身体に叩きこんでやるよ」

 

「こっからは―――」

 

「俺たちの―――」

 

「「戦闘(時間)だ!!」」

 

『ゲーム開始です』

 

 第五真祖&赤龍帝VSライザー・フェニックス達の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一誠、おまえはライザー(焼き鳥)と戦う体力を残すためにそこで待ってろ。俺が道を作ってやる」

 

「頼んだぜ、宗司!」

 

 ゲーム開始と同時に宗司は自分の眷獣(ちから)で一誠を傷つけないため一誠から離れた。

 それを見たレイヴェルは兄のライザーより先に声をだした。

 

「あなた達、真祖(その男)を直ぐに倒しなさい!!」

 

 レイヴェルは宗司の危険性を察知してすぐさま命令した。

 それを聞いて猫耳を生やした兵士(ポーン)二人とと顔の半分を仮面した戦車(ルーク)と大剣の騎士(ナイト)が動いた。

 迫ってくるライザーの眷属に宗司は眷獣を呼び出した。

 

疾く在れ(出やがれ)”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)―――――ッ!!!」

 

ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

「「!!!?」」

 

「!!!――――――」

 

「なッ――――!?」

 

 初めて見る眷獣に迫ってきたライザーの眷属は驚き止まった。

 宗司はその隙を見逃さず動いた。

 

”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)!!」

 

ガァオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 宗司の命を受け動いた”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)

 

ボッ

 

ゴッ!

 

 

 その圧倒的熱量で迫ってきたライザー眷属を一瞬で燃やした。

 そして燃やされたライザー眷属はすぐさま光に包まれリタイヤしていく。

 

『ライザー・フェニックスさまの兵士(ポーン)2名、騎士(ナイト)1名、戦車(ルーク)1名リタイヤ』

 

「どうした?ゲームは始まったばかりだろ。さっさと来いよ!」

 

 宗司は眷獣の力を見せつけライザーたちを挑発する。

 それにライザーは苛立ち、眷属に命令する。

 

「!―――調子に乗るなよ吸血鬼!ユーベルーナ!美南風(みはえ)!遠距離から攻撃しろ。奴を近づけさせるな!他は赤龍帝の相手をしてやれ」

 

「「「「「「「はい、ライザーさま!!」」」」」」」

 

 ライザーの指示を聞いた眷属が動く。

 杖を持った魔女風の女王(クイーン)と十二単を着た僧侶(ビショップ)が宗司に遠距離から魔法攻撃をしてきた。

 

ドン!

 

ズン!

 

 宗司は眷獣でそれらの魔法を防いだが、魔法を防ぐため動けない宗司の隙をついて他の眷属は一誠に向かっていった。

 

「! いかせるか!”獣王の紅„(ライガー・アンス)「させると想っているのかしら?」ッ!?」

 

ドン!ドン!

 

ズズン!

 

 

 宗司が眷獣を動かそうとするがそれを女王(クイーン)僧侶(ビショップ)が邪魔してくる。

 動けない宗司をしり目に眷属は一誠に近づいていく。

 それを見て一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出して構えた。

 くそっ!このままじゃ一誠が・・・・・・・・・しかたないか。

 宗司は覚悟を決めた顔して眷獣を消した。

 それを見て女王(クイーン)は呆れ顔をで宗司を見る。

 

「あら?ようやく諦めたのかしら。始からそうしていればよかったのよ。どうあがいてもあなた達がライザーさまに勝てるわけないのだから」

 

「後でいろいろ言われそうだから使いたくなかったんだけどな・・・これを使わせるんだ。後悔しても・・・・遅せからな!!」

 

「? 何を言っているのかしら」

 

 女王(クイーン)が訝しむなか、宗司は右腕を突き出し呪文を唱える。

 

「”終焉の暁(エンド・ローウン)„の血脈を受け継ぎし者、逢魔宗司が今こそ汝を縛めより開放する!!」

 

 宗司の右腕から鮮血を噴き、右腕全体が赤黒くなり蒼白い紋様が浮かびあがり途方もない魔力が溢れ出す。その魔力にけ脅され一誠に向かっていた眷属も宗司の方に振り返り硬直する。

 

疾く在れ(出やがれ)、第3の眷獣”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)――――――ッ!!!」

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 宗司の傍の空間が切断されると同時にそれは顕現した。

 全身が一点の曇りが見えない鏡のようで触ればたちどころに切れてしまう。そうまるで名刀でできた蟷螂(カマキリ)。本来の蟷螂の大きさと違い”獣王の紅玉„(ライガー・アンスラックス)と同等の巨体、その両腕の鎌は妖刀如く妖しくも人を魅了する輝きをはなっている。

 これが、第五真祖の三番目の眷獣、”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な・・・なんだあれは!?」

 

「しょ・・・召喚術ッ!?」

 

「―――あのコウモリが呼び出したのか?!」

 

 ゲームを見ていた貴族悪魔たちは宗司の出した眷獣に驚愕するなかオカルト研究部のメンバーは宗司が呼び出した新たな眷獣に注目していた。

 

「! 見たことない眷獣です・・・」

 

「宗司君、新しい眷獣を使えるようになってたんだ」

 

「そのようね。宗司の話どおりならあの眷獣も凄い力をもっているのかしら。ねぇ、朱乃。・・・・・朱乃?」

 

 リアスは朱乃から返事がないので朱乃を向く。

 

うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!

 

 そこには見る者を魅了する笑顔で微笑みながら全身から雷の魔力を迸らせている朱乃がいた。

 リアスは少し引きながらも朱乃に話しかけた。

 

「!・・・朱・・乃・・?」

 

あらあら、宗司君たら明日菜ちゃんに手を出したようですわね

 

「ちょっと、聞いているの?朱乃」

 

お仕置きが必要ですわね。うふふふ

 

「朱乃?朱乃!!聞いてるの!?」

 

うふふふ

 

 リアスは何度も朱乃を呼ぶが朱乃本人は宗司の方に集中してリアスに気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールド内にいる宗司以外は宗司の呼び出した眷獣、”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)に驚きと警戒で動けずにいた。

 

「―――いくぞ」

 

 宗司は言葉を聴き”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)は動き出す。

 数百年物巨木だろうとを容易く切断できると解る大鎌を振りかぶる。

 それを見た女王(クイーン)僧侶(ビショップ)は何がおきよう対応できるよう身構えた。

 

ブン

 

ズバッ!

 

「―――へっ?」

 

「?」

 

 一誠に向かっていたライザー眷属一同は不意に背中から横一文字で切られた。

 倒れる直前なんとか後ろを振り向いた戦車(ルーク)は在りえないものを見た。空間が切れてそこから大鎌とそれを横に振り抜いた巨大な刃でできた蟷螂とそれを呼び出した男の姿が見えたのだから。

 なに・・・がい・・た・・・い。

 戦車(ルーク)は困惑したまま仲間と共に倒れてそのままリタイヤしていった。

 

『――――ら、ライザー・フェニックスさまの兵士(ポーン)6名、騎士(ナイト)1名、戦車(ルーク)1名リタイヤ』

 

 今起きた謎の攻撃にライザーは恐怖と苛立ち交じりで叫ぶ。

 

「なにをした。――――今何をしたんだ!!」

 

「さあな、何をしたんだろうな?」

 

「! きっ、きさま~~~~~!!ユーベルーナ!!」

 

「はい!ライザーさま!」

 

 ライザーの名を受け宗司に魔法攻撃を仕掛ける女王(クイーン)

 それにたいして宗司は眷獣を動かした。

 

”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)!」

 

 宗司に迫る魔法に大鎌を振り下ろした。

 

ドン!!

 

「?! ぐぁああああああ!!!」

 

「!? ライザーさま!!」

 

「!! お兄さま!!」

 

 ライザーは背後から謎の爆発を食らった。それを見てレイヴェルと眷属はライザーの傍に集まった。

 宗司に負かされているライザーたち見て一誠は興奮して宗司のそばに駆け寄ってくる。

 

「宗司、すげえな!それがその眷獣の力なのか!?」

 

「ああ、そうだ。これが”終焉の暁(エンド・ローウン)„。第3の眷獣”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)能力(ちから)次元(ディメイション)切断(カッティング)だ!!」

 

 第3の眷獣”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)。その両の腕の大鎌を振るい異なる次元ごと対象を切断し切断部分は消滅する反則級の眷獣だ。しかも切断した次元を異なる空間と繋げて移動にも使える。

 宗司はその能力使って冥界(此処)に来たのだ。

 

「~~~~ぐぅうううっ、コウモリの分際でぇえええええええ!!!」

 

「お兄さま落ち着いてください!ここは私に任せて少しでも回復してください」

 

 一方的にやられていることにライザーは激怒するが、レイヴェルはそんな兄を宥めおちつかせると自ら前にでた。

 

「ユーベルーナ!美南風(みはえ)!同時に仕掛けるわよ!真祖(あれ)にこれ以上何もさせていけませんわ!」

 

「「はい!レイヴェルさま!!」」

 

 レイヴェルは残った眷属と共に宗司に一斉に攻撃を仕掛けた。

 女王(クイーン)、ユーベルーナは爆破魔法を、僧侶(ビショップ)美南風(みはえ)は札から大量の魔力弾を放ち、そしてレイヴェルはフェニックスの名に恥じない程の炎の塊を放った。

 迫りくる暴力の塊に宗司は動揺も恐怖もせず眷獣に命じた。

 

”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)!!」

 

ズバン!!!

 

 ”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)が一際大きくその鎌を振り次元ごと魔法を切り裂いて消し去り空間に大きな切れ目ができた。

 

「くっ、ユーベルーナ、美南風(みはえ)もういドヴァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!?!?!「「「きゃぁあああああああ!!!」」」

 

 レイヴェルは再度宗司に攻撃をしようとするが、”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス) が作り出した空間の切れ目から大量の水が飛び出してレイヴェルたちを呑み込んで押し流しその勢いは止まらずライザーの元まで辿り着きライザーも呑み込んだ。

 

「!!――――なあっドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!?!?!?~~~~~~~~~~」

 

「どうだ?世界三大瀑布の一つ、イグアスの滝の水の味は」

 

 宗司は”蟷螂の刃鋼„(マンティス・フィロ・カリュプス)の能力でイグアスの滝の水を引き込みライザー眷属を押し流したのだ。

 空間の切れ目が消え水が止まると水の中からぐしょ濡れのライザーと倒れている眷属の姿が見えた。

 

『ライザーフェニックスさまの僧侶(ビショップ)2名、女王(クイーン)リタイヤ』

 

 アナウンスともに倒れた眷属が消えていった。

 ライザー眷属のリタイヤを見届けた宗司は一誠のもとまで歩き手を上げる。

 それを見て一誠も手を上げた。

 

「交代だ。決めてこい一誠!」

 

「おう、任せろ!」

 

パァン!

 

 互いで上げた手を打ちつけ合う音が響いた。

 第五真祖から赤龍帝にバトンが渡された。




次話は何時できるか未定ですがこれからも続けていきます。
ストライクD×Dをよろしくお願いしますm(__)m


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