GuPx東宝怪獣 アーディアンネクス プロトタイプ (TF1)
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第0話 接触/これが彼との出会い

 接触/これが彼との出会い

 

 ある研究所に二人の兄弟がいた。二人の内兄の方は頭が良く、博士号を持っている。弟の方は助手として兄の研究を支えていた。兄弟には友達がいた。友達と言っても人ではなく、研究所の近くにある保護区に住む巨大な生物達。怪獣だ。もちろん人間の友達も居るが、一番近くで接する友達が怪獣達だった。そんな平和な日々はある日を境に破壊された。ある者によって。

 「ケン、これを倉庫に置いてきてくれ」

 銀髪の白衣を着た青年が弟であるケンに剣のような形をした石器を渡した

 「え?これ研究に使うんじゃないの?」

 「もう使わないからな」

 「そうなんだ。じゃあ置いてくるよ」

 そう言ってケンは兄のいる研究室を立ち去り、地下の金庫室へと向かう。30段もある階段を降りてドアを押し、金庫の前に立つ。だがその時兄の悲鳴が響き渡たる。

 

 それを聞いて驚いたケンは手に持っていた剣状の石器を床に落としてしまう。それに気づかずケンは降りて来た階段をかけ上がり研究室へ、研究室の扉を開けるとそこには血を流しながらもがく兄が居た。

 「兄さん!」

 「ケン・・・外を見てみろ・・・」

 「でも!」

 「良いから見るんだ!」

 ケンは恐る恐る研究所の窓から外を見ると。そこにはおぞましい巨人がケンも見たこともないカブトムシのような怪獣を一匹連れて。保護区や研究所の辺りを燃やし尽くしていた。

 

【挿絵表示】

 

 「あいつに異次元移動装置を奪われたんだ」

 「異次元移動装置!?兄さんはそんな物まで作ってたのか!?」

 ケンの兄は発明家として有名だった。いろんな発明をしていたが、悪用されるのを拒んで弟のケンにも内緒に異次元移動装置を作っていたのだ。 

 「でも兄さん!俺じゃどうにもできない!」

 「だから、お前にこれを渡す」

 何が詰められだリュックをケンに渡す。それ受け取ったケンはリュックを開けると、そこには赤い結晶がはめられた三つのブレスレットが入っていた。

 「そのブレスレットには三匹の怪獣が宿っている。俺達の友達と俺が作った電脳怪獣と言うべき存在がな」

 「でもどうやって使うんだ」

 「使うんじゃない・・・彼らとお前、それか適合する人間と心を通わし彼らが守って・・・」

「兄さん!?」

 ケンの兄、キョウタは力尽き倒れた。ケンは渡されたリュックを背よい兄の手をさわるが徐々に温もりがなくなって行くのを感じとる。

 「兄さん!そんな!嫌だよ!」

 ケンは言葉にならない叫び声をあげ泣き叫ぶ。

「これの使い方も俺にはわからないし、俺はアイツを止められない・・・俺には何も出来ないのか!」

 ケンは研究所の窓から見える巨人と怪物を見ながらそう叫ぶ。だが、ケンの目の前に金庫で落としたはずの剣状の石器が宙に浮かんでいることに気づく。灰色だったその石器は石が剥がれ落ち、青い透明な刃に黄色い大きなクリスタルが付いた形に変化した。それをケンは手を伸ばし、掴む。

 「うわぁ!?」

 ケンの目の前でそれは光だし、とっさに目を閉じた。ケンは光に包まれそのままケンの身体ごと窓を突き破り研究所の外へと出てそのまま巨大化し始め段々と人型の形になる。45mもの大きさの赤い巨人が燃える森に姿を表した。

 「でかくなったのか?」

 突然巨大化し異形の姿になったことを戸惑うケン。だが目の前に兄の発明を奪い、殺したであろう紫と黒色の巨人が怪獣を使役する姿が見える。ケンは飛び上がり空中から奴に蹴りを入れようとするが、避けられてしまう。

 「避けられた!」

 一旦着地し、少し離れた場所に立つその巨人を見上げながら立ち上がる。

 「甘いぞ若造!」

 「お前が兄さんとその発明を!」

 指を指して巨人にそう言った後、走りながら拳を握り殴りかかろうとする。巨人は使役していた黒いカブトムシのような怪獣を盾にし、空中に浮かび上がる。

 「お前に用は無い。お前の兄とやらが作ったこれを手入れたからな・・・」

 巨人は異次元転移装置を握った手を上に上げると空に黒い穴が開く。

 「名前だけ貴様に教えてやる。我が名はオグレス」

 その言葉を残し巨人、オグレスは黒い穴へと消えて行った。盾にしていた怪獣も、羽を広げそこへと向かって行く。ケンもそれを追って黒い穴へと消えていった。

 「逃がさない!」

 黒い穴を抜けると一面赤い霧のようなものが広がる空間に出る。オグレスと怪獣を追い続けるが、オグレスを見失ってしまう。だが、怪獣だけは見失うなずに後をつけその空間を突き進む。怪獣はオグレスが先回りし、兄の発明を使って開けたであろう黒い穴に入り何処かに消える。ケンもその黒い穴に入って怪獣を追い続けた。

 

 曇り空の茨城県つくば市。そこの山岳地帯で大洗女学園と知波単学園による女性達の競技、戦車道の合宿が行われていた。しかしその近くで空に穴が空いたように開いた。

 「なんでありますか?」

 「なんだろう?」

 茶色い制服を着たメガネをかけたお下げ髪の小柄な少女とジャージ姿の赤い鉢巻をした少女がその穴を見ていた。するとそこから空想の存在であるはずの存在が現実に姿を表したのだ。半分に割れたドリルのような腕と、カブトムシのような角を持つ昆虫型怪獣メガロが姿を表した。

 

【挿絵表示】

 

 それを見た少女達は混乱し、戦車を乗り捨て逃げる者、戦車に乗ったまま逃げる者。彼女達は一目散にそれから遠ざかろうとする。

 「皆さん落ち着いてください!」

 「落ち着いて逃げてください!」

 戦車から降りてそう呼びかける二人の少女。メガロはその二人の内一人。その少女にある力を感じとる。睨み付けるかのようにその少女を見下ろした。

「西住殿!あの怪物・・・私達を見ています!」

 「嘘!?」

 二人はその視線に気付き見上げる。

「逃げましょう!」

「そうだね!」

 メガロと目があい、二人は走り始める。だがメガロはそれを見逃さず彼女達を追いかる。逃げてく内に深い森へと入っていき、木々を避けながらメガロから距離をおこうとする。

 「はぁ・・・はぁ・・ ・」

 「まだ追ってきますよあの怪物」 

 追い回され一時間が経過していた。

 紺の長袖の冬用の制服に緑色のスカートを着て、栗色ショートヘアーの少女、西住みほ。同じ服装のショートボブの少女秋山優花里はふらふらになりながら走っていた。

 「私達・・・一体どうなるんだろう」

 「諦めちゃダメですよ西住殿!」 

 優花里はみほを勇気づけようとした、しかしメガロはそれをお構い無しに、彼女達を追いかけていく。

 「キャ!」

 「西住殿!?」

 みほが地面につきだした木の根っこに妻付いてしまう、優花里は彼女を起こそうと身体を抱える。

 「Guooo!!」

 その隙にメガロは左腕を振り上げ彼女達を潰そうとする。

 「優花里さん・・・私達・・・」

 「そうですね西住殿・・・」

 彼女達は目を閉じた。もうここで人生が終わってしまうと感じていたからだ。しかしそんな時、轟音が鳴り響きメガロが痛みを感じたように鳴き始めた。

 「Guogagaga!!」

 その鳴き声を聞いたみほと優花里は目を開ける、そこには倒れたメガロと黄色い目をした赤い巨人が立っていた。

 

【挿絵表示】

 

 「巨人・・・!?」

 「私達を助けてくれたんですよ!」

 巨人は頷くとメガロを持ち上げ彼女達から遠くの方に投げ飛ばす。

 「フゥン!」

 「Guogaga!?」

 巨人は腕を交差させ、エネルギーをためた。拳を握り締めその腕をL字に組み強力な赤い色の光線をメガロに撃ち始める

 「くらえぇー!!」

 「Gagoooon!?」

 メガロに光線があたり身体が光ると同時に爆発した。

 それを見ていたみほ達は歓喜の声援をあげた。

 「やった!」 

 「あの怪獣を倒してくれましたね!」

 巨人は光りながらリュックを背よった男性の姿になる。フラフラになりながら彼は二人の前へやってきて、彼女達にこう言った。

 「この事は誰にも内緒にしてくれ・・・」

 そう言うと彼は倒れこんでしまう。そんな彼をみほと優花里は、自分達が泊まっている宿屋へと肩を持ちながら二人で運んでいくのだった。

 これが異世界から迷いこんだ彼とこの世界に住む彼女達の最初の出会いだった。

 

 それから数日が経過し、ケンは病院のベッドで目を覚ました。最初に目に入って来たのは数日前巨人の姿で助けた二人の少女。みほと優花里だった。 

「君たちはあの時の?」

「お見舞いに来たんです」

「俺にか?」

 二人は軽く頷いた。

「それで・・・お礼じゃないんですけど」

 みほは戦車型のクッキーがいくつも入った袋を差し出す。ケンは起き上がりそれを受け取ろうと手を差し出すと、みほからなにかを感じとった。だが、気づいて無いふりをしてそのクッキーを受けとる。

「ありがとう」

 だがケンはここが何処だか分からず、不安感を覚える。

 そこに緑の制服を着たショートヘアーの黒髪の女性が病室に入ってきた。みほと優花里は慌てて頭を下げる。

「私は自衛隊の蝶野亜美。今日告げであなたの身元引き受け人になったわ。よろしく」

「よろしくお願いします。でも何故俺を?ここは何処なんですか?」

「それは貴方が怪物と巨人が戦っていた場所の近くに居たから、それとここは茨城県土浦市の市立病院よ」

 理由が分かるが聞きなれない組織と聞きなれない地名を聞き、ケンはここが自分が住んでいた世界とは違う世界だとようやく理解した。

「後、身元の確認できる書類も何もないから私に押し付けられたってことくらいしか言えないわね」

「そうですか・・・」

 ケンは渋々今の状況を受け入れることにした。

「あっ!そういえば私達名前言ってませんでしたね」

「そうだね」

 すると二人は改まってケンに名前を名乗る。

「私は西住みほっていいます」

「秋山優花里です!」

 名乗り終わると二人は頭を下げた。

「俺は柏原ケンって言うんだ。いろいろとすまない」

「いい名前ね」

 ケンの名前を聞いた亜美はそう呟く。

「じゃあここは蝶野さんに任せて私達は帰ろっか優花里さん」

「そうですね西住殿!」

 二人はお大事にとだけ言い残し、頭を下げて病室を出て言った。それを見届け、再びベッドに横たわる。今のケンはこの知らない世界で居場所があるか分からず不安になっていた。

「柏原くん」

「なんですか!?」

「そんなにびくびくしなくてもいいわ。何か不安なの?」

 ケンは自分が異世界から来た人間だと言っても信じてくれはしないだろうと感じ、記憶喪失のふりをすることにしてこう言った。

「俺、自分の名前以外なにも覚えてないんですよ。気づいたらあそこの森に居たんで、だから不安なんです」

 亜美は頷いて彼の話を聞いていた。だが、彼が何かを誤魔化しているのではないかと感じる。本当の事を隠しているのではないかと。

「分かったわ。でも全部思い出したら私に言って、力になってあげるわ」

 彼が自分に心を開くまで嘘に付き合ってあげようと亜美は誓いその言葉をケンに投げかけた。その言葉を聞いたケンは安心したような表情をしてベッドに横たわった。

 

 3日後ケンは退院し、亜美と一緒に住み始めた。ケンは亜美との生活で次第に心を開きはじめる。亜美と生活し始めて4か月が経ったある日、ケンは決意を固めて亜美に自分の真実を話した。

「蝶野さん。俺、嘘ついてました!」

「分かっていたわ、貴方が嘘をついて何かを隠しているの」

「えっ?」

「言ってみなさい。誰にも言わないから」

 それを聞いたケンは自分が異世界からオグレスと言う者を追ってこの世界に来た事を話す。みほ達を襲った怪獣を倒し、救った巨人も自分だということ。そしてその怪獣がオグレスに操られている事を話した。

「信じられないわ・・・」

 その話しを聞いた亜美は最初はからかっているのかと思っていたが、彼の真剣な目を見て嘘は言って無い事が分かる。それに赤い巨人とカブトムシのような怪物が現れたのは事実だ、彼の話も事実としか言いようが無い。こうして亜美は彼にパソコンなどを貸し時には自分が空いた時間一緒に図書館に行くなど、この世界に馴染むために協力し始めた。こうしてケンは亜美に世話になりながらなんとかこの世界に馴染んでいった。

   EP0 END

 

 

 



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第1話 始まり/モンスバトラー始めます!

 メガロとケンが変身した巨人の戦いから半年が過ぎ、ケンはこの世界について色々と調べていた。自分が住む世界とは2つの違いを知る。ケンが居た世界に存在する怪獣達は映画やテレビの中の存在であること、そして自分達の世界とは科学技術の差があることを知った。だが、科学技術の差があるとは言っても生活習慣は自分達の世界と変わらなかった。

 

「それで話って言うのはなに?」

 

「蝶野さん。みほの事が気になって仕方ないんです」

 

 亜美が住む自衛隊の寮にある一室で二人は対面してテーブルに座りながら話していた。

 

「どうして?」

 

 亜美のその言葉を聞いたケンは自分のリュックを開け、赤い結晶がはめられたブレスレットをひとつ出し、テーブルに置く。

 

「俺の憶測になるんですが、彼女はこのブレスレットを使える気がするんです。だから怪獣に狙われて襲われたんだと俺は思ってます」

 

 亜美はそれを手に取りまじまじと見てケンに手渡しで返す。

 

「その話が本当だったら西住さんはまた狙われるってこと?」

 

「その可能性があります。だから彼女にこれを渡したいんです」

 

「分かったわ。大洗に手紙を出してみるわ」

 

 亜美はその話を聞きみほと優花里宛に手紙を書きそれを出した。

 

 

 

 

 

 それから数日。西住みほと秋山優花里は土浦に存在するある施設に来ていた、亜美から重要な話があると言われたからだ。

 

「ここが武器学校ですか!」

 

「大きな建物だね」 

 

 みほと優花里は黒いリボンがつき、襟と袖に緑のラインが目立つ白い長袖の上着と緑のスカートの制服姿で白い長方形の建物を見上げていた。

 

「西住殿! あそこにチャーフィーとシャーマンがありますよ!」

 

「今日もパンツァーハイだね優花里さん」

 

 戦車を見て興奮する優花里をみほは笑顔でみつめていた。そんな二人の前に一人の男がやって来た。姿は銀色混じりの髪の毛で赤い半袖の服を着ているその男こそ、みほと優花里を怪獣から助けた巨人の正体、柏原ケンだ。

 

「久しぶりだな、みほ。優花里」

 

 彼女達と年齢が近く見えるが、その目には秘めた勇気と使命感が宿っていた。

 

「久しぶりですケンさん」

 

 彼を見たみほは彼にペコリと頭を下げた。戦車を見て興奮していた優花里も彼に気づき頭を下げる

 

「えっと……それで重要な話って蝶野さんから聞いたんですがなんですか?」

 

 みほはケンに問いかける。するとケンはついてこいと言う合図を出し歩きだした。みほは彼の後ろをついていく。

 

「西住殿! 柏原殿! どこ行くんですか!?」

 

 優花里は彼らに急いでついて行った。そしてたどり着いた所は、木が生い茂った林の中だった。そこにはぽつんと小さな小屋があり、それ以外はほとんど何もない場所であった。

 

<pf>

 

「ケンさん、ここに何かあるんですか?」

 

 みほの質問にケンはコクリと頷き小屋のドアへと歩きだす。ドアについた鍵のパスワードを打ち込み、ドアを開けた。

 

「階段……!?」

 

「この階段を降りるんですか!?」

 

 ケンの後ろにいたみほと優花里は驚いた。ドアを空けるとそこには25段はある階段が地下へと続いていたからだ。

 

「着いてきてくれ。君達を呼んだ人がここに居る」

 

 ケンは階段を降り始めた。彼女達二人はその言葉を聞いて後ろから恐る恐る階段を降り始める。三人は階段を降り終える。機密と書かれたプラスチックの板が貼ってある鉄の扉があった。ケンはその扉を空けると、そこは折り畳み式テーブル4つを合わせたものと4つの椅子だけが置かれた部屋だった。そこに亜美が立って居た。

 

「ようこそ。あなた達が来るのを待っていたわ」

 

「あっどうも」

 

 みほと優花里は頭を下げ挨拶をする。優香里は亜美に質問を問いかけた。

 

「えっーと……何の話で私達をここに呼び出したんですか?」

 

「それはあなた達があのカブトムシの怪物に追いかけられた理由よ」

 

 みほと優花里は唾を飲み込む。

 

「この話は彼が話した方が早いわ」

 

 亜美はケンの顔を見る。ケンはみほと優花里に話し始めた。

 

<pf>

 

「半年前、みほ達を追いかけていた怪獣はみほにある力が秘められてることに気づいた。だから君達を追いかけたんだ」

 

「じゃあ私は狙われたってこと?」

 

 みほは恐る恐る彼に問いかけた。

 

「そうだ。だからまた怪獣に狙われないようにみほに渡したい物がある」

 

 みほの手を優しくつかみ、彼女の腕に赤いクリスタルが埋め込まれた白いブレスレットを付ける。

 

「これは……?」

 

「モンスブレスだ、今俺が名前を付けた。これにみほの相棒になるやつが眠っている」

 

 彼女の手から自分の手をはなす。すると亜美の携帯に着信が入った。

 

「え? 土浦市街で半年前と同じ怪物が!?」

 

 話によれば土浦市街で空に穴が開きその穴から紫色の落雷と共にみほ達を襲ったのと同じ姿の怪物が市街地に降り立ったと言う、それを聞いたケンはすぐに準備を始めた。

 

「あのっ、私達はどうすれば!?」

 

「二人と蝶野さんは一緒に逃げてくれ」

 

 みほと優花里は亜美に案内されながら、地下室に来た階段に走っていった。

 

「まだ彼女に急に戦えとかは言えない。だから俺が……」

 

 するとケンは服から剣のような物を出した。剣にはライトのような黄色いパーツが付いている。するとそれを持った手を天にあげ、光に包まれながらケンの身体は巨人の姿へと変わった。だが大きさは人間と変わらない。地下室から市街地へとテレポートするとそこには壊された建物と地面には巨大な何かが穴を掘った形跡しか残されているだけだった。

 

 

 

 亜美は自衛隊のジープを運転し市街地から離れた田んぼ道を走りながら二人を安全な場所へと送っていた。

 

「安全な場所って言っても怪獣がいる限り安全な場所なんてないと思うんですけど」

 

「大丈夫よ、柏原くんがなんとかするから」

 

 そんな会話をする亜美と優花里に耳を傾けるどころかみほはモンスブレスを見つめていた。するとみほの頭の中に何かの鳴き声が響いてきた。

 

「Kisyaaaan……」

 

「優花里さん。何かの鳴き声しなかった?」

 

「何の鳴き声もしませんよ。市街地からも遠いですし」

 

 しかし、またみほは何かの鳴き声が頭に響く。今度は鳴き声が人の言葉のように意味が分かるのだ。

 

「もしかしてこのブレスレットに眠ってるなにかの鳴き声?」

 

 頷くような卯なり声が聞こえた。そして警戒するような鳴き声が頭に響く。その意味は驚くべき意味だった。

 

「真下に怪獣が居る……」

 

 すると地震のような揺れがジープを襲った。

 

「地震!?」

 

「こんなときに!?」

 

 すると轟音とともに目の前に半年前と同じような光景が現れた。巨大な黒い昆虫怪獣、メガロだ。

 

「嘘でしょ!?」

 

「そんな……」

 

「市街地に居たはずじゃ……!?」

 

 メガロの口がガバッと開き、そこからナパーム弾を吐き出しジープの回りを火の海へと変えた。

 

「私は覚悟はできてるわ……」

 

「もう私達」

 

「駄目かもしれません」

 

 三人は命の終わりを感じ始めた。だが、ある叫び声が聞こえた。

 

 

 

「諦めるな!」

 

 その言葉が聞こえると同時に三人が乗るジープの目の前に巨大な人型の光がメガロを吹き飛ばし現れた。ジープを掴み手のひらに乗せ、炎が囲む空間から離れた安全な場所へジープを置く。直ぐ様メガロの方をむき、こう名乗った。

 

「俺の名はネクス、アーディアンネクス!」

 

 ケンは自分の脳内に浮かんだその名を叫びメガロ目掛け走り出す。

 

「Kieeenee!」

 

 それに応戦するかのように頭に生える角を光らせ稲妻状の光線を発射するメガロ。ネクスはそんな攻撃を手で受け流しながらジャンプし、メガロの頭目掛けてキックを決める。

 

「Kieeenee!?」

 

 顔面にヒットし、吹き飛ばされ倒れるメガロ。だが再び起き上がりネクス目掛け稲妻状の光線を発射する。

 

「そんなもの何回やっても通用しないぞ!」

 

 両手を突きだしバリアを貼り稲妻状の光線を防ぐネクス。通用しないことに気づいたのかジャンプしながら突進を仕掛ける。

 

「そんなもの仕掛けても無駄だ」

 

 突進を仕掛けたメガロの角を掴みそのまま地面に叩きつける。起き上がろうとするメガロを踏みつけ。遠くへと蹴りとばす。

 

「止めだ!」

 

 両手をクロスさせ、エネルギーをためる。拳を握り締めL字に組む光線技ネクスシウムクロスをメガロに向けて発射した。

 

「Kieeen!??」

 

「やったか!」

 

 メガロにネクスシウムクロスは当たり爆発したように思えた。だが、爆煙の中にはもっと撃ってこいと言わんばかりにたたずむメガロが居た。

 

「なに!?」

 

「Kieeenee!!」

 

 すると角を光らせ再び稲妻状の光線を発射する。それに応戦するかのようにバリアを張るもバリアは砕けちり、胸に光線が直撃した。

 

「さっきより威力が上がっている、まさかあの光線を吸収したのか!?」

 

 そう言いながら地面に倒れこむネクス。

 

「Kieeenee!!」

 

 倒れこんだネクスに近づき笑うような仕草で足をくねらせ、左腕を踏見つけ蹴りとばす。

 

「前倒した個体から強化されているのか」

 

 再び起き上がりメガロ目掛けて走り出そうとする。しかしその隙をついてメガロは口からナパーム弾を発射し、ネクスの回りを火の海へと変える。

 

「なに!」

 

 直ぐ様握っていた左腕を開き突きだす、そこから水を出しながら回りの火を消化しようとするがそれを察知したメガロは再び角を光らせ光線をネクスへと直撃させる。それを受けたネクスは膝たちをしてダウンするが、また立ち上がる。

 

「まだだ!」

 

 

 

 爆発音を聞き、気絶していたみほはふと目を覚ます。

 

「ここは?」

 

 ジープのドアを開けふと見上げるとそこにはメガロに追い詰められるネクスの姿が目に入った。

 

「あの巨人、まさかケンさん!」

 

 すると頭の中にあの鳴き声が響く、助けたくないのかと言うように鳴き声が響いた。

 

「私は助けたい。でも私なんかじゃ」

 

「Kisyaan……」

 

 するとモンスブレスに眠る何かはまた鳴き始めた。それが意味するのは自分なら力になれるかも知れないと言う意味だった。

 

「でもどうやって!」

 

 みほは訪ねるとモンスブレスが光だした。頭の中にモンスブレスに眠る者の名が流れ込んできた。

 

「機龍……!?」

 

 鳴き声が頭の中に再び響く。共に戦おうと。

 

「このブレスレットはあなたと一緒に戦うためにあるの?」

 

 みほは機龍に訪ねる。機龍の頷くような鳴き声が頭の中を駆け巡る。

 

「分かったよ機龍。一緒に戦おう!」

 

 そしてモンスブレスから銀と青色の光が飛び出し、銀の機械巨獣が姿を表した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 銀色のボディに黄色い目、銀の背鰭に青いキャノン付きバックパック、両腕には青い二つの砲身がついたレールガン。その姿にみほは何処か見覚えがあった。幼い自分が父に連れられ見に行った包帯だらけの熊の作品。それと共に上映された怪獣映画に出てきたロボット怪獣そっくりだったからだ。

 

「行くよ、機龍!」

 

 そう叫ぶとみほは青い光に包まれ機龍の中へ吸い込まれる。文字道理一体化して共に戦うために。

 

<pf>

 

 アーディアンネクスは光線を発射し続けるメガロに追い詰められていた。

 

「まだ、まだ行ける!」

 

 光線をフラフラになりながら避けるネクス。するとメガロの後ろに銀色の機獣が姿を表したのを目視した。

 

「まさか……!」

 

 銀色の機獣、機龍は後ろからメガロの肩を叩く。そして振り向いたメガロを頭ごと地面に叩きつけた。

 

「Kieeenee !?」

 

 メガロは驚きを隠せなかった。それを見たネクスは再び左手を付きだした。高速で回転しながら水を撒いて回りを囲む炎を消していく。

 

「フゥン!」

 

 そして勢いよくジャンプし機龍の隣に着地する。

 

「大丈夫ですか?」

 

 みほは機龍の中。モンスリンク空間と言う光に包まれた空間からネクスに問いかけた。

 

「あぁ、みほとこいつが来なかったらどうなってたか」

 

 みほはほっと胸を撫で下ろした。そして戦車に乗ったような勇ましい顔でメガロに目を合わせる。

 

「私と機龍はあのカブトムシの怪獣と距離を取って射撃戦に持ち込みます。ケンさんは後ろに回ってあのときの光線を撃ってください」

 

「分かった、挟み撃ちで止めを指すんだな」

 

 ネクスと機龍は二手に別れる。ネクスは走りながらメガロの後ろに回る。機龍は太ももと背中のバーニアを吹かしながらジャンプし、後ろに下がった。

 

「Kieeen?」

 

 メガロは敵が二体に増えことで困惑し、辺りをキョロキョロと頭をふりながら見渡していた。

 

「機龍、今がチャンスかも」

 

「Kisyaaan!!」

 

 みほの言葉に答えるかのように鳴き両腕の二連装レールガンを構え発射する機龍。

 

「Kieeen!?」

 

 メガロは両腕をふって銃弾を避けようとする。機龍はそれをお構い無しに口から黄色い光線をメガロの頭目掛けて発射した。 

 

「Kieeenee! ?」

 

 その光線によってメガロの自慢の角が折れ、メガロは角のがあった部分を痛がるように抑え呻いている。

 

「今です!」

 

「Kisyaaaan!!」

 

 みほの叫び声と機龍の咆哮がネクスの耳に届く。ネクスは腕を交差させそれをL字に組んだ。

 

「ネクスシウムクロス!」

 

 メガロの背中に目掛けて光線を発射する。機龍もまた口から光線を発射した。

 

「Kieeenee !!??」

 

 二手から強力な光線がメガロに撃ち込まれる。メガロは断末魔を叫んだ。

 

「Ki・Ki・Kieeenee……」

 

 倒れ、跡形もなく爆発した。それを見たネクスと機龍は目を合わせ頷き両者光と共に消えていった。

 

 

 

 

 

「ちょっと疲れた……」

 

 モンスリンク空間から地上に降りたみほは疲れたのかフラフラだった

 

「そう言えば優花里さんと蝶野さんは……」

 

 ふと思い出したかのように頭をあげると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「西住殿!」

 

 振り向くとそこには優花里と亜美、そしてケンが居た。

 

「西住殿! ふと起きてジープから出たんですけどね、銀色の怪獣とケンさんが変身した巨人があのカブトムシの怪物と戦ってたんですよ!」

 

 優花里は興奮ぎみだった。

 

「優花里さん、その銀色の怪獣って多分このブレスレットから出てきたんだと思うんだけど」

 

「西住殿があの銀色の怪獣を呼んだんですか!」

 

 驚いた顔をする優花里、そんな優花里をみほは笑顔で優しく抱き締めた。

 

「良かった優花里さんが生きてて」

 

「に、西住殿!?」

 

 そんな二人を近くで見つめるケンと亜美。だがケンはこの戦いがまだ序章に過ぎないと感じていた。

 

「みほ、優花里、これからもよろしくな」

 

 そう呟いた。みほにはその言葉が聞こえたのか優花里から手を放し。ケンの方へと向かう

 

「ケンさん、また怪獣が現れたら今度は私の友達や後輩、家族が狙われるかも知れません。まだ未熟だと思いますけど機龍と一緒に私も守るために戦います」

 

 その言葉を聞いたケンはみほの瞳を見て頷く。ケンはみほの決意を重く受け止めたのだ。

 

 

 

 Ep1 END

 

 



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第2話 脅威/友達助けます!

学園艦、甲板に学校を中心とした街が形成された巨大な船のことである。その学園艦のひとつ大洗学園艦、そこにある大洗女子学園に優花里とみほは通っている。その学園艦にあるアパートの一室、そこに亜美のはからいでケンは住み始めた。

「んんーっ」

白い布団の上で上下赤い半袖半ズボンの無印のパジャマで寝ていたケンは起き上がり、背伸びをして立ち上がる。カーテンを開け、朝日の光を部屋の中へともした。

「まだ慣れないなこの生活」

そんなことを言いながら自分の寝ている場所からリビングに向かう。するとタイミングよくインターホンが鳴り、ケンはあわてて玄関のドアを開ける。そこにはみほが袋を持ちながら立っていた。

「ケンさん、学園艦で会うのは初めてですよね。良かったらこれ食べてください」

みほは戦車の形をしたクッキーが入った袋をケンに差し出す。

「このクッキーはあのときの・・」

ケンは半年前の事を思い返す。メガロからみほと優花里を助けて倒れたケンは、数日間病院で眠っていた。目が覚めた時彼の目の前には戦車型のクッキーを持ったみほと優花里、の二人がいた。そこでケンは初めて二人の名前を知り、亜美出会ったのもその時だった。

「ありがとな、みほ」

「こちらこそ!私はこれから学校に用事があるんでまたお昼頃来ますね」

「今日土曜日じゃないか?」

「急に戦車のことで呼び出されちゃったんですよ」

みほは彼に頭を浅く下げ、彼の住むアパートの一室から去っていく。ケンはみほを見送ると扉を閉めて朝食の準備を始めた。

 

ケンと別れたみほは大洗学園艦にある学校、大洗女子学園へと向かっていた。

「急に用事ってなんだろう?」

ふと、みほは立ち止まり確認のために携帯を開く。

「沙織さんからメールが入ってる、なんだろう?」

武部沙織。みほと同級生で友達だ、彼女とはこの大洗学園艦に引っ越して初めて出来た友達の一人でもある。そんな彼女から送られたメールには驚くべきことが書かれていた。

「えーっと今日は彼とデートしに行くからそっち行けない・・・え、デート!?」

みほははっとした顔をした。沙織に彼氏が出来てさらに彼氏とデートに行くと言う。沙織は異性との出会いに執着心のような物を持っていた。そんな彼女に念願の彼氏ができたことにみほは少し驚いていた。

「よかったね沙織さん。でもなんで私達に隠してたんだろう」

ふとみほは疑問に思った。沙織なら彼氏が出来ていたら嬉々として自分たちに話すだろうと、まさかアマチュア無線二級を取った時のようにサプライズ発表しようとしたのではと思い、戦車道関係での呼び出しに考えを移し学校へと歩いていった。

 

 

その頃。みほの友達であるオレンジ髪のウェーブかかったセミロングヘアの少女。武部沙織は水戸駅の南口にいた。

「思いきってこの服にしたの正解かも!」

そう言いながら黄色いワンピースに白いソックスで身を包む沙織は誰かを待っている。そこに後ろからある人物が沙織の肩を叩いた。沙織が振り向くとそこには、沙織よりひとつ歳上の眼鏡をかけた青いTシャツに黒いジーパン姿の青年が立っていた。

「久しぶりだな沙織。」

「ビックリした・・・黒木かぁ」

沙織はその青年、谷堂黒木の姿を見て安心感に包まれたのか笑顔で彼に抱きついた。

沙織と黒木は半年前。水戸駅で沙織が落とした財布を探してい時、その財布を拾って駅の忘れ物係に届けていたのが黒木だった。その時忘れ物係に来た沙織と黒木は偶然出会う。沙織が財布の中身を見て、何も抜かれてないことを確認すると彼の優しさに一目惚れ。沙織の猛アタックの末に最初は友達関係になる。次第に二人はお互いの性格に惹かれていき完全な恋人同士になった。今日で恋人同士になってから1カ月で、初デートだ。

「久しぶりだからって急に抱きつかなくても・・・ほら人見てるから」

黒木のその言葉に沙織ははっとなり黒木から離れる。

「ごめんちょっと久しぶりだから興奮しちゃった」

沙織は顔を赤くして頭を下げた。そして沙織は黒木に本題を投げ掛ける。

「で?今日はどこ行くの?」

「今日は映画見ようかなってさ。後突然だけど・・・」

黒木は間をおいて目を閉じるとまた目を開き話始める。

「学園艦に引っ越すことになったんだ」

「え!?本当!?」

「ちゃんと移住許可書も書いたし荷物も学園艦にあるアパートに送ったからな」

「じゃあこれから近くで会えるじゃん!」

「そうだな!」

二人は嬉しさのあまりハイタッチをする。黒木は左腕にするデジタル腕時計を見るとそろそろ午前10時になる頃だった。

「もうすぐ映画が始まっちゃうから急ぐか」

「なんの映画見るの?」

「恋愛要素があるヒーロー映画・・・」

だが、そんな二人の幸せそう時間も長くは続かなかった。そう、空に黒い穴が開いたのだ。

「黒木、何アレ?」

「分からない、でも何かヤバイことが起きそうなのは確かだ」

空に開いた穴を見る二人。すると空の穴から紫色の落雷と共に怪獣が現れた。後肢の巨大な爪と背中の重なり合った大きなひだ、そして左右に耳のような鰭がありパグ犬のような顔をした一本角が生えた怪獣。バラゴンが現れた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「マジかよ・・・本物のバラゴンだ・・・」

その姿を見た黒木は怪獣の名前をボソリと呟く。彼は映画の中の存在であるその怪獣が現実に現れたのを目の前にし、好奇心と恐怖心が混じり複雑な心になり体がうごかなくなってしまう。そう、彼は怪獣映画や特撮が大好きな少年のような青年なのだ。

「黒木、ボーっとしてないで逃げよう!」

沙織は彼の手を掴むと、それに気づいた黒木は我に帰る。黒木は沙織の手を引っ張られ走り出した。だがバラゴンは逃げ惑う民衆の中からあの二人だけは見逃さなかった。建物を壊しながら二人に向けて走り出す。

 

 

学校に着いたみほは、戦車の整備の付き添いが終わり一休みしていた。格納庫にある椅子に座り友人と話している。その話相手であるロングヘアで少しアホ毛が目立つ少女、五十鈴華と沙織の件を話していた。

「華さんは沙織さんが彼氏が出来たって話聞いた?」

「ええ、それっぽい話なら沙織さんが私と麻子さんに話してましたよ」

みほの席の隣に立ちながら話す華。彼女はおしとやかな振る舞いで話していた。

「えっ・・・私はそんな話聞いた覚えないんだけど」

「聞いてなかったんですか?」

「うん」

「Kisyaaaan !!」

みほと華が話をしているときみほの頭の中に金属がきしむような鳴き声が響いた。それは怪獣が現れたことを察知した機龍の鳴き声だった。それを聞いたみほはふと天井に顔を向ける。

「どうしたんですか、みほさん?」

「あ、なんか用事思い出したからちょっと行ってくるね」

みほは椅子から立ち格納庫から出ていった。そんなみほを見た華はキョトンとした顔で頭を傾げていた。

「みほさんの用事なんてまだありましたっけ?」

教室を出て数分後。学校敷地内の海に面した野外休憩広場に着いたみほは右腕を海へ向けて伸ばす、ポケットからモンスブレスを出し、装着する。

「行くよ、機龍!」

そう叫ぶとモンスブレスから青い武装をつけた銀色の機獣が海上に姿を表した。

「Kisyaaaan! !」

みほは青い光になり機龍に吸い込まれ一体となる。そして機龍は水しぶきをあげながらバーニアを吹かし地上に向けて飛んで行った。だが、その一部始終を影で眠い目を擦りながら見ている者がいた。ロングヘアにカチューシャをつけた少女、彼女もみほの友達の一人である。

「あれ、西住さんだよな・・・」

 

 

怪獣バラゴンは建物を破壊しながら、ターゲットである沙織と黒木を追いかけていた。二人は自分達がバラゴンに追われていることを知らないまま逃げていた。

「ここでやり過ごそう!」

人混みから離れ、黒木の手を引っ張りながら水戸駅近くの地下駐輪場に逃げ込む。

「でもやり過ごせない気がするな」

黒木がそう言った時、ドンドン天井から音が鳴り始める、その音は段々と大きくなっていく。

「えっ?」

「まずい!」

その音を聞いた黒木は沙織の手を掴み地上に出ようと階段へと向かうと、地上から何かが着地したような大きな轟音、金属ががきしむような音と悲痛な鳴き声が地下に居る黒木と沙織の耳に入って来た。

「なんだ!」

階段を上がり地上へと出ると、二人の目に入って来たのは2体の怪獣だった。穴を掘っていた所を、尻尾から土に埋まっていた農作物ように抜かれた怪獣バラゴン。そのバラゴンの尻尾を掴んでいる銀色の機獣、機龍が二人の目に写っていた。

「まるで映画みたい」

「本当だな」

その光景を見た黒木と沙織はその一言しか思いつかづ唖然と立っていた。

 

「Kisyaaaan!」

「なんとか地下に入るのは止められた」

人獣一体となった機龍とみほは地下へ向かおうとしたバラゴンを尻尾から引き抜いた。しかしふと下を見下ろすと見知った顔が目に入った。

「あれは沙織さん!?」

それに気を取られバラゴンの尻尾から手を放す。するとバラゴンは体を機龍の方へと向け立ち上がった。

「kiyasyaaaaaaaan!」

咆哮を上げた後、機龍に向け赤いマグマのような熱線を口から吐き出す。それに気づいた機龍とみほ、だが沙織と黒木が居るためかその熱戦を避けずに攻撃を受けとめてしまう。

「Kisyaaaan!!」

「うっ・・・!」

機龍は近くにある建造物に倒れこむ。それを見たバラゴンは機龍に向かって飛び上がって馬乗りになり再び熱線を吐こうと口内を光らせた。

「機龍!」

「Kisyaaaan!」

みほは思わず機龍の名を叫ぶ。機龍はそれに応えるかのように両腕に付いているレールガンのうち、左腕のレールガンから刃物であるメーサーブレードを展開。それをバラゴンの脇腹に突き刺し電撃を浴びせる。

「Kiyasyaaaaan!!」

口内の光は収まったが、その攻撃はバラゴンを逆に怒らせてしまった。バラゴンは機龍の体を押さえつけ胸部に段々と頭突きをし始め、じわじわとダメージを与えていく。

「沙織さんと沙織さんの彼氏さんが居なければ自由に戦えるのに!」

みほの初めての戦いが人気の少ない場所だった。人気が少なかったため自由に機龍の機動力生かし戦えたが、市街地の場合は沙織や黒木のような逃げ遅れた人達や建物があるため、それに気を配りながら戦わないと行けない。今のみほと機龍は自由に戦うことが出来ないのだ。

「ケンさんならどう戦うんだろう」

ふとみほの頭にケンの顔が浮かぶ。みほにある考えが浮かんだ。

「そう言えば近くに大きな空き地があったはず。」

ここに向かうとき大きな空き地を見かけたことを思い出したたみほは一心同体となっている機龍の両腕を動かし、バラゴンの頭の角と右腕を掴む。

「行くよ、機龍!!」

機龍の目が光輝く。太ももと背中のブースターを限界まで吹かしながら立ち上がり、その空き地に向けて飛んでいった。

 

その頃ケンはスマートフォンで戦車道や映画の怪獣のことを調べていたが怪獣が現れたことにを察知しスマートフォンをリュックにしまう。

「また怪獣か!」

ケンは靴を履き、住んでいるアパートを出て人気の少ない場所に向かった。

「ここなら大丈夫だな」

人気の少ない路地裏に来たケンは剣状の変身アイテムを服から出すと、それを天に上げこう叫んだ。

「ネクス!」

身体が光に包まれそのまま空に向かって飛び立っていく。

 

機龍とみほはバラゴンを抱えたまま大きな施設の建設予定地と思われる空き地に突っ込む形で降りたつ。バラゴンを両腕で突き放し、左足で蹴りを入れバラゴンから距離を取った。

「Kiyasyaaaaaaaan !」

バラゴンは咆哮を上げながら体当たりを仕掛けようとする。

「今だよ機龍!」

「Kisyaaaan! 」

機龍は咆哮上げた後。口から黄色い光線を発射し、それがバラゴンに命中し向かってくるバラゴンを逆に返り討ちにした。

「機龍、止めを差そう!」

「Kisyaaaan !」

みほのその言葉を聞いた機龍はレールガンを構えてそれを発砲。さらに背中の肩にかかる青いバックパックの砲身からバラゴンに向かって砲撃を開始した。

「Kiyasyaaaaaaaan! ?」

バラゴンは砲撃をまともに受けて怯んでいる。それを見た機龍とみほは最後の一撃を入れようとレールガンを構えたとき、バラゴンは紫色のオーラに包まれ、目が赤く光だした。

「Kiyasyaaaaaaaan! !」

咆哮をあげると角を光らせそこから赤い光線を機龍目掛けて発射した。

「機龍!」

「Kisyaaaan!」

みほと機龍はその光線を避けるも

それを予測していたバラゴンは飛び上がり、機龍に体当たりした。

機龍はその攻撃を受け倒れこんでしまう。

「Kisyaaaan! ?」

「うっ・・・まだ私は!」

機龍とみほは立ち上がろうとするも紫色のオーラにつつまれたバラゴンは機龍の腕を踏みつけ口内を赤く光らせ始めたそのとき、赤い閃光がバラゴンを吹き飛ばす。

「Kiyasyaaaaaaaan !?」

吹き飛ばされたバラゴンは四つん這いになり着地すると再び立ち上がる。その赤い光がバラゴンの前に降りたつと人型へと変化した。そう、アーディアンネクスだ。

「ケンさん!」

「Kisyaan!」

みほと機龍の声を聞いたネクスは軽く頷き、機龍に近づい起き上がらせた。

「さっきまで一人で戦ってたのか?」

「すいません。でも一人で戦ってなければ私の友達が死んでたかも知れないんで。」

「そうか、後は俺に任せてくれ。」

それを聞いたみほは機龍との一体化を解除し、機龍の外へと光に包まれながら降り立つ。そして機龍は青い粒子状になりモンスブレスの中へと戻っていった。

「健闘を祈ります。」

モンスブレスに手をあてながらネクスを見上げてそう言った。ネクスもその言葉を聞きみほの方に頭を向け頷いた。

 

バラゴンの方に頭を向け。ネクスは意を決してバラゴンと相対する。それを見届けたみほは友人である沙織達を探しに向かっていった。

 

機龍に救われた沙織と黒木は歩きながら避難場所に向かっていた。

「怪獣に襲われそうになるなんて思わなかったよ。」

「俺も怪獣に襲われのは映画のなかだけだと思ったよ沙織。」

「そういえばあの襲ってきた怪獣が現れた時なんで黒木はボーっとしてたの?」

「それ聞くのか?話すと時間かかるけどいいのか?」

そんな会話をしている二人の前にの制服姿の少女が歩いてきた。沙織にとってその少女は見慣れた人であった。

「みぽりん!?なんで?」

「やっと見つけた・・・」

沙織を見つけた制服の少女、みほは二人を見つけた安心したからか、沙織の身体の前にもたれかかる。

「ちょっと、みぽりんどうしたの?フラフラだよ?」

さっきまで機龍と一体化して戦っていのと必死で沙織達を探していたため、みほはフラフラになっていた。

「急にもたれかかってごめんね沙織さん。隣の男の人は?」

「あっ、でもそれよりみぽりんはなんでここに」

「話すと、長くなっちゃうけど話して良い内容か分からなくて・・・」

「何があったのみぽりん?」

みほは悩んだ、二人に自分が機龍と一緒に怪獣と戦っていたことを話して良いものかと。話した所で二人は信じてくれないかも知れないと悩んだ。だが今言わないと沙織を心配させてしまう、みほは意を決して話した。

「沙織さん、私はついさっきまであの銀色の怪獣、機龍と一心同体に戦ってたんだ」

「え?意味が分からないけど・・・私達を助けてくれたのってみぽりんって意味?」

「君が俺達をあの三式・・・銀色の怪獣と融合して助けてくれたのか?」

みほは二人に自分があの赤い怪獣バラゴンと戦っていた話をした。学校を抜け出してバラゴンに立ち向かったこと、バラゴンを後一歩の所で追い詰めるも急にバラゴンがパワーアップし、逆に追い詰められたことを話した。

「私達を襲ってきた怪獣はまだ生きてるの?」

「まだ生きてる。でも大丈夫、前に話した私と優花里さんを助けてくれた赤い巨人があの怪獣と戦って倒してくれるから」

「そうなんだ・・・」

「そこに行ったとしても俺達じゃ足手まといになるだけだな・・・」

二人は無力感を感じていた。

 

ネクスとバラゴンは両者睨みあっていた。

「kiyasyaaaaaaaan!」

先に仕掛けてきたのはバラゴンだ。バラゴンはネクスに向け走りながら飛び上がり、そのまま角を突き刺そうとする。だが、ネクスは右手の拳を握りしめてその拳を突きだし、角に向けて光弾を発射した。

「Kiyasyaaan!?」

バラゴンにその光弾があたり、角は折れ、地面に突き刺さる。自慢の角が折られたことでバラゴンは頭を抱え混乱する。

「よし、今だ!今しかない!」

ネクスは叫ぶと腕を交差しエネルギーを溜める。その腕を広げ、左腕を腰にあて、右腕の手を広げながら天に突きだし電気の溜まり場を作り出した。

「ネクスシウムサンダー!」

そう叫ぶと同時に、バラゴン目掛けてその電気の溜まり場を投げつける。バラゴンはそれに気づいたのか熱線を吐こうとするも時は遅く、その攻撃がバラゴンの頭に当たった。

「Kiyasyaaaan! kiyasyaaan!」

バラゴンの体は全身を包み込むかのように痛み、もがき苦しむ。ネクスはバラゴンのその姿を見るやいなや、止めとばかりに腕をL字に組んだ。

「ネクスシウムクロス!」

叫びながら放たれた光線はバラゴンの体を頭から突き抜け、そのままバラゴンは爆発し跡形もなく消え去った。それを確認したネクスは光に包み込まれながら空へと飛び立ち消えていった。

 

「やっと避難所に着いたよ」

「そうだね沙織さん」

「あそこから歩いて50分って所か」

避難所の市立体育館に着いた3人。避難所では、怪獣という空想の産物のはずの物への対応に自治体の人や警察の人が頭を悩ませ、民間の人々は不安を抱いていた。そんな人々に三人は囲まれていた。

「みんな心配してないかな・・・」

「してると思うよ」

みほと沙織は自分達を心配する友達や後輩達の姿が脳裏によぎった。するとみほは体育館の中にある人物が入って来ることに気づいた。

「あれってもしかしてケンさん?」

みほは立ち上がりケンに向けて手を振ると、ケンもそれに気づきみほ達の方へと歩いていく。

「みほ、大丈夫か?」

「私は大丈夫ですよ、ケンさん」

みほはケンに頭を下げる。

「みぽりん?この人ってみぽりんの・・・」

「沙織さん、まだケンさんとはそう言う関係じゃないから!」

「違うんだ・・・」

みほの答えに沙織は少し残念そうな顔になる。

「みほ、そこの二人は?」

「この二人ですか?一人は私の友達、武部沙織さん。もう一人は沙織さんの彼氏みたいですけど初対面なんで、名前が分からなくて・・・」

その言葉を聞いた黒木と沙織はそれぞれ簡単な自己紹介をした。

「俺は谷堂黒木、二人共よろしく。」

黒木は二人に頭を下げる。

「私は武部沙織っていいます。」

沙織はケンに頭を下げた。

「俺は柏原ケン。」

ケンは手を差し出した。黒木と沙織も手を差し出し、順番に握手をする。すると二人からある力を感じ取った。

「そうかあの二人にもこの力が・・・」

「ケンさんどうしたんですか?」

「みほ、彼と彼女はみほと同じ力が眠っている。」

ケンは確かに感じ取った。黒木と沙織に怪獣と共に戦う力があることを。二人の会話を聞いていた黒木と沙織はただ頭を傾げるだけだった。

 

EP2 END



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第3話 仲間/私達も協力します!

 ある日黒木はケンに話したいことがあると言われ学園艦にあるアイスクリーム店でみほ達三人と待ち合わせをしていた。しかし、呼ばれていたみほ、沙織、優花里以外にみほの友人二人がみほ達についてきてしまった。

 

 

「えっ、5人!?」

 

 

 黒木はついてきたみほの友人二人を見て驚く。

 

 

「どうしても一緒にって言うから……ごめん!」

 

 

 沙織は黒木に深く頭下げる。みほもそれにつられて頭を下げた。

 

 

「沙織と西住さん達が最近、私と五十鈴さんに隠し事をしてると思ってついてきたんだ」

 

 

 ロングヘアを白いカチューシャで止めた小柄な少女、麻子はそう答えた。

 

 

 

「わたくしもそう思ってついてきました」

 

 

 黒木以外の5人の中で背の高いロングヘアでアホ毛が目立つおしとやかな少女、華も麻子と同じ考えだった。

 

 

「黒木は華と麻子、ゆかりんと初対面だっけ?」

 

 

「あぁ、そうだ沙織」

 

 

 その沙織の言葉を聞いた3人は順番に自己紹介を始めた。

 

 

「私は冷泉麻子だ。いつも沙織が世話になってるな」

 

 

「わたくしは五十鈴華と申します」

 

 

「秋山優花里です!」

 

それを聞いた黒木も自分の名前を名乗る。

 

 

「三人ともよろしく。俺は谷堂黒木」

 

 三人にそう言うと黒木は気まずそうに頭を掻いた。

 

 

「華さんと麻子さんの事はケンさんに連絡入れときますね。多分、私の友達って言えば大丈夫だと思います」

 

 

「分かった。じゃあそろそろケンの所に行くか」

 

 

 

 そう言うと6人はアイスクリーム店の前を後にしてアパートに向けて歩き始める。

 

 

 

 

 ケンは自分の住む部屋に居た。亜美名義で契約したスマートフォンを使って、今まで自分の戦いに関連する情報を集めていた。動画サイトにあるニュース映像や信頼できるニュースサイトを片っ端から調べている。

 

 

 

「何処も謎だらけとしか書いてないな」

 

 

 それもそのはず、現れた怪獣、メガロとバラゴン。そして味方の機龍も全てこの世界では映画の中で暴れまわるいわば空想の存在、突然現実にそれが現れたらどんな人間でも謎だらけとしか答えように出来ないのだ。

 

 

「ん? なんだ、この記事」

 

 

 ケンはある記事を見つけた。その記事には今度現れるであろう怪獣をアンケートで予想する内容だった。その記事を読むと1位と2位に気になる怪獣の名前があった。

 

 

「1位がゴジラで2位がモスラか」

 

 

 その記事を読んでる途中、そのスマートフォンから着信音が鳴る、みほからの着信だ。ケンはスマートフォンを耳元へと持っていく。

 

 

「みほ、どうしたんだ?」

 

 

「あの、ケンさん。私と沙織さん、優花里さんと黒木さん以外に後2人来て良いですか? 一緒に戦車道やってる友達なんですけど……」

 

 それを聞いたケンはふと考えた。みほのその二人の友達を信用できる人間なのかを。

 

 

「みほ、その二人は信用できるか?」

 

 

「二人共しっかりしてるんで大丈夫です」

 

 

 みほのその言葉を聞いてケンは信用できる人間と判断した。なぜならみほが疑うような人間ならそこまではっきりと答えないと思ったたからだ。

 

 

「分かったその二人も来て良いぞ」

 

 

「ありがとうございます。今そっちに向かってる所です」

 

 

「あぁ、気をつけて来るんだ」

 

 

 それを言うとケンのスマートフォンの電話は切れ、再び現れる怪獣を予想する記事が画面に映しだされた。

 

 

「ここまでにするか」

 

 

 スマートフォンの画面を消す。

 するとケンは自分のバックから、みほが持っている物と同じ2つのモンスブレスを出した。両手に持つとそれに話しかける。

 

「もうすぐ君たちも信頼できるパートナーが出来る。良かったなゴジラ、モスラ」

 

 その言葉に返すかのように2つのモンスブレスから怪獣の声が聞こえた。

 

 

「angyaaaoon!」

 

「kiiin!」

 

 

 その鳴き声を聞くと両手に持ったモンスブレスをテーブルの上に置く。するとすぐにインターホンが部屋に鳴り響いた。玄関に向かい部屋のドアを開けるとそこにはみほ達6人が立っていた。

 

「やっと来たか。入っていいぞ」

 

 

 ケンは6人を自分の部屋へと招き入れた。

 

「あっ、この二人が私の友人、五十鈴華さんと冷泉麻子さんです」

 

 

 みほは手のひらを二人に指しながら紹介する。

 

「どうも」

 

「なんだかわからないが西住さんが世話になってるみたいだな」

 

「あぁ、俺は柏原ケン。よろしく」

 

 麻子と華にケンは自己紹介をすまし、7人は和室で用意された座卓の回りに敷かれた座布団に座る。

 

「それで私達に話ってなんですか?」

 

 

「まず俺がこの世界の人間じゃないことから話さないといけない」

 

 

 真顔でケンはみほ達にそう言った。みほ達は突然言われたその言葉に頭を傾げてしまう。

 

「まず、みんなはパラレルワールドって言葉は聞いたことあるか?」

 

 

「あぁ、俺は聞いたことあるよ」

 

「私もだ、この地球とは別にちがう地球があるって言う話か」

 

 麻子と黒木以外はなんの話か分からずにいた。

 

 

「つまりケンさんは私達とは違う地球からやって来たってことですか?」

 

 

 みほの質問にケンは頷く。自分がこの世界に来た理由を淡々と語り始める。ことの始まりはみほ達の世界に来る前の話から始まる。ケンはある研究所で兄の助手をしながら怪獣と共存して平和に暮らしていた。しかし突如オグレスと言う謎の存在が現れケンの兄、そして仲の良かった怪獣達を殺害。無力な自分にケンは絶望したがそのとき自分の目の前に光輝く剣が浮かぶように現れ、それを握った瞬間気づいたら赤い巨人アーディアンネクスの姿に変わっていた。ケンは戸惑いながらもオグレスと怪獣に立ち向かった。だが兄から奪った異次元移動装置を使い逃亡。それを追って自らも異世界へと旅だって行く。その怪獣の反応を見つけ、追いながらたどり着いたのがみほ達の住む世界だったのだ。

 

 

「つまりケンが赤い巨人で、街を襲う怪獣はそのオグレスってのが送り込んでるってわけだ」

 

「赤い巨人ってみぽりんが前に言ってた怪獣と戦ってる人? ニュースでたまに見るけど本当に?」

 

 黒木と沙織の二人は目の前に居る人物が赤い巨人、アーディアンネクスに変身していることに信じられなかった。

 

「別の地球ってのが想像できません」

 

「そうだよね」

 

みほと優花里はケンが宇宙から来たと考えていたが、その真実は自分達の住む地球とは別の地球と言うことを想像できないほど驚いていた。

 

「じゃあ銀色の怪獣はなんなんだ。私が休憩してるとき西住さんを吸い込んだ銀色の怪獣だ」

 

「えっ……麻子さん!?」

 

みほははっとした表情で麻子を見た。それを聞いたケンは何かを察するようにみほに話す。

 

「みほ、みんなに説明したらどうだ。機龍のこと」

 

「えっと……ケンさんと出会わなかったら銀色の怪獣、機龍に出会わなかったかもしれないんだ」

 

 みほは話した。ケンとの出会いから今までのことを、そんな話にケン以外の5人は頷きながら聞いていた。

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

 

「みほさんがあの時教室を出てったのも、その機龍が怪獣を察知したからなんですね」

 

「でもこのモンスブレスの事が分からなくて」

 

みほはケンの顔を見ると、ケンは話を始めた。

 

 

 

「正直俺も分からないんだ。兄さんに怪獣と人間を繋ぐ道具と言うことしか聞いてないからな」

 

 ケンの憶測では兄がオグレスに対抗するために作ったのではないかと話す。ケンもてっきり怪獣を使役する道具だと思っていた。

 

「渡されたときに相棒になる存在って言ったのはそういう意味だったんですか?」

 

「俺も全部憶測で話したんだ。すまない」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ……うん」

 

 ケンは申し訳なさそうな顔をすると、左拳を口に当て咳払いをし本題を話す。

 

「ここで本題だ、黒木と沙織に渡したいものがあるんだ」

 

 ケンは立ち上がりリビングのテーブルに向かう。そこに置いてある2つのモンスブレスを持って和室に戻ってきた。

 

「ピンと来た方を選んでくれ」

 

2つのモンスブレスを黒木と沙織の目の前に置く。

 

 

「これって」

 

「どれも同じに見えるよ?」

 

 

 黒木と沙織にケンはその2つのモンスブレスを見せる。みほが持つモンスブレスと色も形も同じだ。

 

 

「俺はこっちだ」

 

黒木は右にあるモンスブレスを選び左手で持つ。すると黒木の脳内にある怪獣の鳴き声が響く。

 

「この鳴き声はゴジラ!?」

 

モンスブレスは光る。黒木は左手にそれを装着。

 

「じゃあ私はこれ!」

 

沙織は残った左にあるモンスブレスを選び右手に持つと怪獣の鳴き声と共に光る。沙織は右手にモンスブレスを装着した。

 

「つまり俺達もケンとみほと一緒に戦えるってことか?」

 

 

「じゃあみぽりん見たいに怪獣と一緒に?」

 

 

「そう言うことだ。よろしくな沙織、黒木、そしてモスラとゴジラ」

 

 

 二人はまじまじとモンスブレスを見つめていた。その二人をよそに麻子はタメ口である話を切り出す。

 

 

「そういえば普段ケンさんはアルバイトとかしてるのか?」

 

 

「普段はこの世界のことを調べてる」

 

 

「じゃあ、仕事とかアルバイトはしてないのか?」

 

「あぁ」

 

 

 そんなケンの話を聞いていた華はある仕事を勧めた。

 

 

「まず1日だけお仕事してみませんか?」

 

 

「どういう仕事なんだ?」

 

 

「生け花の展示会のお手伝いです。みほさん達も来ますし、どうですか?」

 

 

「分かった。やってみる」

 

 

 ケンは亜美のスネをかじって暮らしている状態だ。ケンの心のなかでは薄々と仕事を探さねばと感じていたが、なかなか行動に移せなかった。華の勧めをケンはありがたく受け取ったのだ。

 

 

 

 

 

 茨城県の南東部にある霞ヶ浦。その北浦付近にある公民館にケンと黒木は来ていた。

 

「で? なんで俺も一緒なの?」

 

「俺一人だと不安だからだ」

 

 ケンは華に誘われ、華の実家である生け花の名門、五十鈴流による展示会の準備を手伝いに来ていた。黒木もそれに巻き込まれる形でケンに連れてこられたのだ。

 

 

「黒木、このテーブル全部運ぶみたいだ」

 

 

「20個も二人で運べるかな……」

 

 普段は五十鈴流に居る奉公人の男性が一人でやっているが、腕を骨折して休んで居るとケンは華と華の母親、百合から聞いていた。

 

「2つづつ運べばすぐだろ」

 

「ケン、待ってくれ。一気に2つ持つのか?」

 

 

「じゃあ黒木は1つでいいぞ」

 

 そんな会話をしながら折り畳み式のテーブルを運んでいた。そして30分ほどで全てのテーブルを設置させた。

 

「後なにやるんだ?」

 

「展示会が終わったら会場の掃除だ」

 

「1日居ないと行けないのかよ。参ったな……」

 

 黒木の質問に真面目に答えるケン。そのケンの答えに黒木は呆れながら答えた。そんな二人の前に白い花柄模様をした着物姿の華がやってきた。

 

「ケンさんと黒木さんはそろそろ休んでてください。この後の事は展示会が終わってからですから」

 

「あぁ、分かった」

 

「それもそうだな」

 

 二人は華の言葉を受け取り会場の外へと出ていくと、そこには1台の赤茶色の戦車が止まっていた。砲搭にはピンク色の鮟鱇のマークが描かれ、戦車の下回り車台の左右にはシェルツェンと呼ばれる追加装甲が付けられていた。そこに大きく洗と言うマークが書かれていた。

 

「もしかしてこの戦車って」

 

「まさかみほ達が乗ってるやつか」

 

 その戦車、IV号戦車の砲搭の真ん中にあるキューポラから紺のジャケットを着たみほが上半身を出した。キョロキョロと辺りを見回すとケン達を見つけ手を振った。

 

「ケンさん!」

 

 戦車のキューポラから身をのりだし、そのまま外へ降りてケンの前へやって来た。

 

「みほ達も来るって聞いてたけど、こう言うことだったのか」

 

「華さんがどうしてもって言うんでちゃんと許可とってこのIV号を展示することにしたんです」

 

「そうか、凄いな」

 

 みほの話を聞くケン。するとケンは後ろから肩を叩かれる、後ろを振り替えるとそこには亜美が立っていた。

 

「ひさびさね柏原くん」

 

「蝶野さん久しぶりです。でもなんで蝶野さんがここに?」

 

「この戦車を運ぶのを手伝ったのよ」

 

 それを聞いたケンはIV号の隣に自衛隊のセミトレーラーが止まっていることに気づいた。

 

「あれ、俺だけ忘れられてない?」

 

 

 ケンが亜美やみほと会話している隣で黒木は自分が忘れられてるような気がしていた。

 

「ケンさんは西住殿と蝶野教官と親しいですから」

 

「黒木のこと忘れられても仕方ないよね?」

 

 いつの間にかに優花里と沙織が黒木の隣に立っていた。それに気づいた黒木は少し驚いている。

 

「いつの間に居たの君達?」

 

「蝶野教官がケンさんの肩を叩いた時からですよ」

 

 

 優花里の隣で沙織が二回頷き、黒木の肩を叩く。

 

「じゃあ私と湖デートってどう?」

 

「嫌、俺まだ仕事あるし……って麻子はどうしたんだ?」

 

 

「麻子なら戦車の中で寝てるよ。戦車の中だと落ち着いて寝れるんだって」

 

 

「へぇ……」

 

 そして沙織は黒木の腕を掴み湖へと行こうとしたとき、二人の脳内に怪獣の鳴き声が響いた。

 

 

「kiiiiiiiiiin!」

「 angyaaooon!」

 

 

 二人は湖の真上に黒い穴が開いてることに気づく、その穴から紫色の落雷と共に怪獣が現れた。口角にイノシシのような牙を生やしたワニ状の巨大な頭部を持ち、左右2本の蔦のような触手が生えた植物怪獣ビオランテが霞ヶ浦に降りたったのだ。

 

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「黒木あれ!」

 

「あれは怪獣!」

 

 

 二人の声を聞いたケンは亜美と話していたが、話すのをやめ湖の方を見る。

 

 

「やっぱりか……」

 

 そう言ったケンは再び亜美の顔を見て頭を下げる。それを見た亜美はケンの肩をポンッと叩いた

 

 

「行ってきなさい、柏原くん」

 

 ケンは無言で頷きまた頭を下げる。

 

 

「ケンさん、私も行き……」

 

「Kisyaaaan !」

 

 みほがケンと話かけようとしたとき、みほの脳内に機龍の鳴き声が響く。

 

「えっ、機龍!?」

 

「どうしたんだみほ?」

 

 

「ケンさん、機龍はまだ前回の戦いでのダメージが残ってるみたいです」

 

「分かった、みほは待機していてくれ」

 

 それを聞いたみほはケンの顔を見て小さく頷く、ケンは安心したような顔をして近くにいた黒木と沙織の方へと向かった。

 

「黒木、沙織、ぶっつけ本番だが大丈夫か?」

 

「俺は大丈夫だ!」

 

「私も大丈夫です!」

 

「分かった。行こう!」

 

 三人は近くの人気の無い湖の近く木の生い茂った場所に向かっていく。

 

「大丈夫でしょうかあの三人」

 

「大丈夫だよ優花里さん、ケンさんがついてるから」

 

 二人はケン達三人を見送る。そこに遅れて華がやって来るが、みほや優花里達の方には目がいかず湖の方に居る怪獣、ビオランテを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 湖の近くまで来たケン達三人。ケンは剣のような形をした物をかかげ、そして胸にあてて叫ぶ。

 

 

「ネクス!」

 

 黒木は左手、沙織は右手の甲にモンスブレスを装着して叫んだ。

 

「ゴジラ!」

 

「モスラ!」

 

 それぞれのモンスブレスから青い粒子と共に3列に並んだ背鰭と黒い体を持つゴジラ、そして青基調としたカラフルな羽を持つ蛾のような姿をしたモスラ、二匹の怪獣が現れる。そして1体の赤い巨人が立っていた。

 

 

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 黒木と沙織は光に包まれ2体の怪獣に吸い込まれるように一体化する。

 

「行くぞゴジラ!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

「行くよモスラ!」

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

「ネクサァ!!」

 

 2体の怪獣と1体の巨人はビオランテに向かっていく。ビオランテもかかってこいと言わんばかりに咆哮をあげた。

 

「fuaaaaaaan!!」

 

 手始めにゴジラに向けて巨大な2つの触手を伸ばし始めた。それに気づいた黒木とゴジラはその触手を掴みそのまんま背鰭が青く発光させ、ビオランテの頭めがけて青い熱線を口内から発射する。

 

「fuaaaaaaan !?」

 

 熱線が命中し、ビオランテが怯んでいる。そのうちに沙織とモスラは背後に回りこんだ。

 

「クロスヒートレーザー!」

 

 

「Kiiiiiiiiiin !!」

 

 

 沙織は脳内に浮かんだその言葉を叫び、モスラがそれに応えるように鳴くと額の3つの器官から光線を発射した。

 

「fuaaaaaaan!?」

 

 

 その光線がビオランテの背中に命中し、また怯む。それを見たネクスは腕を胸の前で交差させ、拳を握りL字に組んだ。

 

「ネクスシウムクロス!」

 

 そう叫ぶと共にビオランテに向けて光線を発射し、ビオランテの腹部に当たり、爆発した。

 

 

「やったか!?」

 

「Angyaaooo……」

 

「嫌、まだだ!」

 

 

 ネクスの言う通り煙の中からビオランテが2本の触手を伸ばし。その触手がゴジラに巻きついた。先端部の食虫植物のような顎で首に噛みつく。

 

「Angyaaaoon ! ! 」

「この……!」

 

 黒木とゴジラは必死になって絡み付く触手を取ろうとする。それを横目で見た沙織とモスラはビオランテは体当たりしようとした。ネクスも走りながらジャンプして飛び蹴りをいれようとするが、それを察知したビオランテはゴジラを苦しめていた触手ごと粒子となり消えた。

 

 

「あっ!?」

 

「えっ!?」

 

「Kiiiiiiiiiin !?」

 

 そのままネクスとモスラはぶつかってしまう。なんとかそのまま体勢を立て直し水しぶきをあげながら着地するネクス。モスラは空中で羽を一回羽ばたかせながら体勢を立て直した。

 

「すまない……ん?」

 

 

 ネクスが頭を下げモスラと沙織に謝る。だが、背後に再び粒子から実体化したビオランテがネクスの上半身に2本の触手を巻き付けた。

 

「いつのまに!?」

 

「待ってろあんな触手、ゴジラの熱戦で燃やしてやる! 行くぞ!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

 

 ゴジラは再び背鰭を青く光らせ熱戦を発射する。だが、またビオランテは粒子状に変化しネクスの後ろから消えた。

 

「俺の知ってるビオランテは自由にあんなことしないぞ!」

 

「Angyaaaoon ?」

 

 黒木はそう言うと、ゴジラは疑問を抱くように鳴いた。そうしてるあいだにゴジラの熱戦がネクスに近づいていく。それを見た沙織とモスラはネクスの前に入り込みバリアを張って熱戦からネクスを防御する。

 

 

「本当にすまない……」

 

「あの怪獣が悪いんですから!」

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

 沙織のその言葉に賛成するかのようにモスラは鳴く。

 

「下手に光線や熱戦を撃つと回りに当たるし、肉弾戦を挑むと下手したら同士討ちになる……」

 

 

 ネクスは考えるが、その暇をもてあそぶかのようにビオランテは実体化し三人と二匹の怪獣を苦戦させていた。

 

 

 公民館の辺りは避難勧告は出された。ほとんどの人々は避難場所に向かってたが、みほ達は公民館から少し離れた場所にある公園で優花里の双眼鏡を借り、それを覗きながら交代でネクス達の戦いを見ていた。だが、粒子化してネクス達を混乱させるビオランテに驚きを隠せずにいた。

 

「みほさん、あの怪獣はケンさん達を混乱させて同士討ちさせるつもりでは?」

 

「そうかも……」

 

 華は双眼鏡をみほに渡し、みほがその双眼鏡を除いた。するとビオランテが実体化したとき、手をひろげて指を織りながら数を数え始める。そしてあることに気がついた。

 

 

「そうか! あの怪獣は粒子化した後は6秒間くはい粒子にはなれないんだ!」

 

 それに気づいたみほは亜美の方に振り向くとこう話した。

 

 

「蝶野さん。ケンさん達が戦ってる近くまでIV号で行けますか?」

 

「行けるわ。行く許可出来ないけど」

 

「そんなの分かってます! でもあのままだとケンさんや怪獣と共に戦う沙織さん達が同士討ちになると思うんです! だから……お願いします!」

 

みほの必死さをみた亜美は一つ条件を与えた。

 

「分かったわ、でも行くなら私も着いて行く条件付きね。それでも大丈夫?」

 

「大丈夫です」

 

 みほは決意を固めた顔で亜美に答えた。

 

 

「みほさん。わたくしもお供します!」

 

「西住殿に着いていきます!」

 

 

「ありがとうみんな。でも華さんは避難場所に向かってて、お母さん心配すると思うから」

 

 

「そうですか……分かりました」

 

 華にそういった後、みほは優花里方へと近づき肩を叩く。

 

「優花里さん、覚悟は出来てる?」

 

「出来てますよ! いつでも西住殿について行きます!」

 ここに来るまで華の横でベンチに座りながらうとうとしていた麻子はその話を聞くとキリッとした表情に変わる

 

「西住さん、私も行かないと駄目か?」

 

「別に強制はしないよ。優花里さんがかわりに操縦してくれると思うから」

 

 

「あぁ……でも私も覚悟は出来ている。ケンさんの話を聞いた時からな」

 

 麻子はベンチから立ち上がり、みほを見つめる。

 

「西住さん。どういう作戦で柏原くん達を助けるの?」

 

「まず私達がIV号で実体化した怪獣に空包を撃って気をそらします。そのうちにケンさん達に止めをさしてもらう作戦です。ケンさんや沙織さん達とはこのブレスレットで話し合います」

 

 右に付けたモンスブレスを亜美に見せる。

 

「じゃあ、柏原くん達の話し合いは西住さんに任せるわ」

 

「じゃあ皆さん行きましょう!」

 4人は再びIV号戦車が停めてある公民館の方へと走っていく。華はそれを見送りながら手を降った。

 

 

「くらえ!」

 

「fuaaaaaaan!!」

 

 ジャンプをしてチョップをしようとするネクスを察知したビオランテ。また粒子となり消え、ネクスの後ろで実体化する。

 

「ケン! 後ろだ!」

 

「Angyaaaaa!!」

 

 黒木とゴジラはネクスに呼び掛ける。それを聞いたネクスが後ろに振り返った瞬間にビオランテは再び粒子化して消えさる。

 

「これじゃ切りがないよ!」

「Kiiiiiiiiiin!!」

 空中からそれを見渡す沙織とモスラ。沙織とモスラは粒子化しては実体化するビオランテに手を出せないでいた。

 

「どうすれば……」

 

「ケンさん!?」

 

 みほの声がモンスブレス経由で聞こえる。耳の当たりに生えた角に手をあてた。

 

「みほどうした?」

 

「この状況からの打開策があります」

 

 みほはネクスに自分達が戦車に乗って公民館からネクス達が戦っている湖の近くに来たこと、空砲で怪獣の気をそらしネクス達が止めをさす作戦を話した。その話は黒木と沙織のモンスブレスにも聞こえている。

 

「分かったぞ、みほ」

 

 

「じゃあ、私とモスラがあの怪獣をみぽりん達の近くまで行かないようにします」

 

「俺とゴジラはケンと一緒に止めをさすぞ。ビオランテは再生能力があるはずだから火力で再生しきれないほど燃やしてやろう!」

 

「分かった、行くぞ!」

 

 話してる間もビオランテは粒子化と実体化を繰り返している。ネクス達はビオランテの攻撃を避けながら話していた。

 

「次に実体化したら空包を撃ってくれ!」

 

 

「分かりました!」

 

 みほがネクスへと返事をする。みほは麻子に戦車を止めるよう指示を出し、優花里は空包実演用に持ってきた砲弾を装填する。

 

「私が肩を蹴ったら空包を撃って」

 

「分かりました!」

 

 

 それを知らないビオランテは粒子から実体に戻る。IV号戦車のキューポラから身を出してそれを見ていたみほは優花里の肩を蹴りながら叫んだ。

 

「撃て!」

 

 大きな砲撃音が霞ヶ浦に鳴り響く。それを聞いたビオランテは辺りを見渡し再び粒子化しようとするが、空中で待機していた沙織とモスラが燐粉を出しながらビオランテの真上を飛びはじめる。

 

「さっきまでのお返し!」

「Kiiiiiiiiiin!!」

 

 雷のように稲妻を発生させながら燐粉をビオランテに降らせる。その攻撃を受けたビオランテは粒子になるどころか今まで以上に怯んでいた。

 

「良し、行くぞ黒木、ゴジラ!」

 

「OK!」

 

「Angyaaaoon!!」

 

 ネクスは両方の腕を上に真っ直ぐに持ち上げ、拳を握り締め交差させながら下ろしてくる。ゴジラは口内と背鰭が赤く光りだした。

 

「ネクス……アーディニウムバースト!」

 

「Gスパークシュート!」

 ネクスと黒木は叫ぶ。ネクスは交差していた腕を勢いよく開き胸部から黄色い光線を発射した。それに続けてゴジラは口内から赤色の熱戦を発射する。

 

「Kiiiiiiiiiin!!」

「危ない!」

 

 ビオランテに近づく二つの熱戦と光線。沙織とモスラはすぐにビオランテの真上から離れ、ゴジラとネクスの後ろに行く。そしてビオランテに熱戦と光線が命中する。

 

「Fuaaaaaaan! ?」

 

 ビオランテは全身が光、断末魔をあげて爆発した。

 

「やった!」

 

 戦車からそれを見ていたみほはキューポラに手をあてながら喜びの歓声をあげた。

 

 ビオランテが倒されたことで避難していた人々は公民館に戻ってきた。IV号とみほ達。そしてケンや黒木達も戻っていた。

 

「嫌、どうなるかと思ったな……」

 

「もう~消えるなんて反則だよね!」

 

「そうだよな!」

 

 黒木と沙織の話をその横でその話を聞くみほ、そして亜美とケン。

 

「なんとか勝てましたね」

 

「あぁ、本当になんとか勝てた感じだな……みほ」

 

「西住さんがあんな提案してなかったら今頃柏原くん達は負けてボロボロになってたかも知れないわ」

 

 そんな4人の後ろから華がケンと黒木に声をかけた。

 

「黒木さん、ケンさん、まだ私達の手伝い終わってませんよ」

 

 それ聞いたケンと黒木は慌てた表情で華の方を向く。

 

「あぁ分かってる。行くぞ黒木」

 

「あぁ……ってまだ時間あるぞ?」

 

「そうなのか?」 

 

「そうだよ!」

 

 そして二人はベンチに座り話続ける。その二人の会話を聞いていた亜美はケンが段々とこの世界に溶け込んでいることを感じていた。

 

 林の中で遠くからケン達を見ている者がいた。姿は赤い身体に黄緑色の装甲を付け、西洋騎士を想わす頭をしている。黒木と一緒に居るケンの姿を確認すると彼はこう呟いた。

 

「この世界で信頼できる仲間が出来たんだな……ケン!」

 

 

 EP3 END

 

 



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第4話 悪魔/最大の危機です!

ビオランテとの戦いから4ヵ月過ぎた。その間怪獣は現れずケンは学園艦にある戦車道ショップでアルバイトを初めたり、みほ達が参加する戦車道の大会を黒木と見に行ったりと平和な時間が続いていた。そんなある日ケンはみほにドイツから一時帰国する姉と一緒に大洗の街に一緒に行かないかと誘われる。ケンは姉妹の久しぶりの再開を邪魔するのでは?と考えながらも大洗駅の改札前でみほと共にみほの姉、西住まほを待っていた。

「本当に俺も一緒で良いのか?」

「大丈夫です。お姉ちゃんにも連絡してありますから」

「そうか。でも迷惑にならないか心配だ」

「大丈夫ですよ」

みほは笑顔で答える。すると有人改札から白い半袖に黒いスカートが似合う栗毛のショートヘアーをし、みほよりキリッとした顔をした少女が歩いてくる。みほを見つけると柔らかな表情になった。

「お姉ちゃん!」

「みほ。久しぶりだな」

みほはまほを見るや否や抱き付いた。まほもみほの頭を二回撫でると抱き返す。それを見たケンはますます自分が居て良いのか悩んでいた。

「あ・・・あの俺来た意味ないから帰って良いかみほ?」

それを聞いたみほはケンの方を振り向くとハッとした顔でまほから離れた。

「すいません。今日はお姉ちゃんをケンさんに紹介しようと思って・・・」

「もしかしてみほの彼氏か?」

「ち・・・違うよお姉ちゃん!」

みほはアワアワとした表情でまほの言ったことを否定した。

「私は西住まほ。君は?」

「俺は柏原ケン」

「よろしく。どうやらみほが世話になってるみたいだな」

「貴方の妹が世話になってると言うより自分が世話になってるよ」

「そうか」

するとまほはみほの顔を見る。みほは大洗の地図をバックから出してまほに見せ、行く場所を教えていた。

「みほ、あの包帯巻いた熊の所には行かないのか?」

「今日は水族館の方を行こうと思うんだ。その方がお姉ちゃんが楽しめるでしょ?」

「あぁ、あそこは一回みほと行ったら私が置いてきぼりになったな」

「俺はここの水族館にまだ行ったことないんだ、あの熊の博物館は行ったけど」

ケンは。学園艦が帰港日に黒木やみほ達の趣味を知るため彼や彼女達が好きな物を理解しようと大洗にあるそれに関係する場所に行くことがある。それでみほが好きなキャラクター、ボコられグマのボコの博物館であるボコミュージアムに足を運んだことがあった。

「ケンさん行ったんですか!?」

「あぁ、そうだ」

「どうでした?」

「ボコってなんで応援されると負けるんだ?」

「それがボコなんです」

みほは生き生きとした顔でそう答えるも、ケンの頭の中は疑問だらけだった。

「そう言うキャラクターなのかあれ?」

「はい!」

「みほ、もうその変にしとこう。彼も困っているだろ?」

「あっ・・・そうだねお姉ちゃん」 

「そうだ、二人ともどこかでアイスとか食べないか。外暑いだろうし」

ケンは話題を変えるため二人にアイスを食べないかと誘った。この日は曇りだが7月に入ったばかりで大洗は海辺とは言え外は蒸し暑い。

「じゃあアウトレットの喫茶店に入りましょう。そこだといろいろあると思いますよ」 

「私もみほの意見に賛成だ」

「じゃあそうするか」 

三人は駅を出てアウトレットに向かって歩き始めた。

 

ここは異次元空間にある怪しい研究所。そこでケンを監視する者が居た。

「メガロ、バラゴン、ビオランテ・・・我が遺伝子から作り出したクローン怪獣達はあの若造、そしてメガロとバラゴンが始末しそびれた小娘達に倒された」

彼こそがケンの兄を殺し、みほや沙織そして黒木を怪獣に殺させようとした者だった。

「今に見ていろ・・・我とデストロイアが貴様らの息の根を止めてやる!」

彼は腕や足を鎖で止められた悪魔のような赤い怪獣を見てそう叫びどこかへと歩いて行った。

 

ケンと西住姉妹は喫茶店で涼んだ後、大洗の商店街を歩いていた。

「ケンさん、ここでバスを待ちませんか水族館まで歩くの大変ですし」

「そう思っていた所だ」

「私もだ」

三人はバス停の前でバスを待つことにした。

「ケン、君はみほとどういう関係なんだ?みほは男友達を作らなそうなタイプだと思っていたが・・・」

「まほさん。貴方は日本で映画の怪獣が現実に現れて、赤い巨人と仲間の怪獣たちに倒される話は聞いたことあるか?」

「あぁ、ドイツでもネットニュースで流れるからそのことは把握している。だが君とみほの関係に何か関係があるのか?」

「俺はみほとその友達を赤い巨人と一緒に怪獣から助けたんだ。それからいろいろあって今はお互い友達って感じかな?」

「そうか、つまりみほの命の恩人の一人ってわけだな」

「そういうことさ」

まほはケンの話を聞いてあの引っ込み思案の妹に男友達ができた事に納得する。そんなまほの肩をみほが叩く。

「お姉ちゃん、自販機で飲み物買ってくるけど何がいい?」

「私は砂糖が入ってない紅茶を頼む」

「ケンさんは何がいいですか?」

「俺は麦茶だ」

みほは二人から飲み物代を渡され近くの自販機に歩いていく。

「まほさん、貴方の妹は気が利くな」

「みほは少しドジな面もあるがな」

ケンはふと兄の事を思い出した。兄をまほとみほに会わせたかったと思う。だが兄がいたらこの世界には居なかったかも知れないし、みほ達やまほに出会わなかったかも知れない。ケンは複雑な感情になっていた。

「どうしたんだ」

「嫌、なんでもない昔の事を思い出しただけだ」

するとみほが3本のペットボトルの飲み物を抱え二人の前へ戻ってきた。

「お姉ちゃんこれ」

「ありがとう、みほ」

「ケンさんは麦茶でしたよね」

「あぁ、ありがとう」

みほから麦茶を受け取る。

「まだバスは来ないのか」

「そろそろバスが来るはずですよケンさん」

「みほ、なんか嫌な予感がするんだ」

ケンの嫌予感が感じた時、三人の目の前に突然紫色の落雷が落ちてきた。三人は目を一瞬閉じまた開けると、そこには異形の人型が立っていた。

「お前は…オグレス!!」

「久しぶりだな若造。お前達の戦いはすべて我が見ていたぞ…」

「なにっ!」

ケンはみほとまほの前に達オグレスを睨み付ける。ケンに睨み付けられているオグレスは悪びれない態度みほとケンに近づく。

「あなたがオグレス…」

「Kisyaaaaan!!」

みほは近づいてくるオグレスに恐怖を感じ、身体が震える。みほのバックの中にあるモンスブレスから機龍はオグレスを威嚇し咆哮をあげる。

「みほ!ケン!あれはなんなんだ!」

まほは異形の存在を見て今までにない恐怖心を感じるも、何処か冷静さもあった。

「それ以上近づくな!お前は何故怪獣にみほ達を殺させようとした!何故兄さんを殺したんだ!」

「それはそこに居る間抜けずらの小娘がモンスバトラーの適合者だったからだ」

「何故それを知ってる!」

「元々お前達の使っているモンスブレスは我が怪獣を兵器利用するために開発した物だ。お前の兄の者ではない!」

オグレスはケン達にすべてを話す。何故ケンの兄を殺し、みほ達の世界に怪獣を送り込んで居るのかを。

オグレスは様々な世界に、異次元空間にある研究所で作ったクローン怪獣を兵器として売りさばき戦いを煽っていた。だが異次元移動装置が壊れ、ケンの居た世界に迷い混む。その異次元移動装置はどうしても修理不可能だったが、たまたまそこに通りかかったケンの兄キョウタの良心を利用し、異次元移動装置を作らせるよう頼む。その見返りとしてモンスブレスの原型となる技術を教えたのだ。しかしある日キョウタはオグレスの本性を知り異次元移動装置を完成させるも、オグレスには未完成で失敗したと言いケンと共に行方を眩ましていた。しかしオグレスは諦めず5年もキョウタ探し、遂に見つけだして命と完成した異次元移動装置を奪ったのだ。そしてみほ達の世界に怪獣を送り込むのも、商品である怪獣をこの世界に売り込むためのデモンストレーションをしているためだ。そのデモンストレーションの邪魔であるみほや沙織達を怪獣を使い殺そうとした事を語った。

「お前の兄が改良したモンスブレスが機能しているとは想定外だったがな・・・」

「兄さんを馬鹿にするな!」

「フフフッ…だがお前達は今日で最後だ!我の商売の邪魔はもうさせん!そしてこの世界には用はない!」

オグレスの身体が発光し45mもの大きさに巨大化した。それを見たケンは剣をみほはモンスブレスを取り出し構える。

「みほ!ケン!何をするきなんだ!」

「ごめんねお姉ちゃん。今まで内緒にしてて…だから安全な場所に逃げて!」

「行くぞみほ、機龍!」

「はい、ケンさん!」

ケンは剣をかかげると胸の近くに近づけて叫ぶ。

「ネクスッ!」

みほは右手にモンスブレスを装着し、前付きだす。

「機龍!」

青い粒子と共に銀色の機獣が現れ、光となってその機獣に吸い込まれ一体化する。ケンも光に包まれ巨人の姿へ変化した。

「みほとケンが銀色の怪獣と赤い巨人…」

それを見たまほはただ驚愕することしか出来なかった。

 

大洗の地に姿を顕すネクスと機龍、その二体を見たオグレスは挑発するようにこう言った。

「お前たちだけか!二匹足りないようだな」

「ゴジラやモスラの力を借りなくても俺達だけでお前を倒す!」

「まぁいい、まずはお前達を葬ってやる!」

オグレスは右手からナイフを出現させ、ナイフから稲妻を放ちネクスに襲いかかる。ネクスはバリアを張ってその攻撃を防ごうとした。だが、バリアが破壊されその攻撃がネクスに直撃する。

「うわっ!?」

「まだ甘いな!」

倒れるネクスを見て嘲笑う。

「ケンさん!!」

「Kisyaaaaan!!」

みほと機龍はオグレスの後ろを回り込み、機龍の口内から黄色い光線を発射する。だが右手を付きだしバリアを張られ無効化された。

「そんな!?」

「お前も甘いぞ小娘!!」

左手から光弾を発射し、機龍に命中。そのまま近くの旅館の近くに倒れ込む。

「この、よくもみほと機龍を!!」

立ち上がってオグレスに殴りかかろうと左手を付き出すが抑えられそのまま宙に浮かばされ、地面に叩きつけられる。

「ケンさん・・・そんな・・・」

「どうやら市街地で戦うことに慣れていないな」

「だからってお前の好きにはさせない!!」

再び立ち上がりオグレスに向かって行くネクス。

「諦めが悪いやつだ・・・」

オグレスはネクスの胸部目掛け光弾を発射。ネクスはそれを避けてキックしようと飛び上がるが、避けた光弾が再びネクスに向かって飛んでくる。

「なに!?」

背中に命中してマリンタワー付近に落下。その衝撃で逃げた人々が乗り捨てたであろう自動車がハザード音を鳴らしながら吹き飛んでいく。

「クソっ!?」

「威勢は良いがまだまだだな!」

ネクスに近づき腕を踏みつけるオグレス。

「Kisyaaaaan!!」

「機龍!?」

それを見た機龍はみほの意識とは関係なく立ち上がってオグレスの体に掴みかかる。

「まだくたばってなかったか・・・」

左腕を光らせ機龍の頭に光弾を叩きつける。そのまま機龍は吹き飛ばされ、ネクスの上になる形で倒れ込む。

「若造。お前一人だけで怪獣や我に立ち向かっていれば我を倒せたかもしれないな、小娘や小僧を巻き込んで倒そうと考えたからお前は勝てない。仲間の力に頼ってきたんだろ?」

「違う!!」

「黙れ!!」

オグレスは右手に持っていたナイフを左手に持ち。機龍とネクスに目掛け稲妻を叩きつけようとした時、ある怪獣の鳴き声が響き渡った。

「kiiiiiin!!」

オグレスの前にモスラが飛来した。危機を察知したモスラはゴジラに学園艦を任せて、沙織達を巻き込まないよう一匹だけでオグレスの前に姿を表したのだ。

「ゴジラはどうした!?」

「Kiiiiin!!」

質問を無視しモスラはオグレスに体当たりをする。そして倒れたオグレスの真上を飛行して稲妻を出しながら鱗粉をばら蒔いた。

「な・・・なに!?」

オグレスは鱗粉を浴び混乱する。それを見たネクスと機龍、そしてみほはオグレスに止めをさすため立ち上がった。

「行くぞ!みほ、機龍!」

「はい!」

「Kisyaaaaan!」

ネクスは腕を交差させそのまま腕をL字に組む。

「ネクスシウムクロス!」

機龍は左右腕についたレールガンを構え、それを発射する。

「行くよ、機龍!!」

「kisyaaaa」

モスラはそこから離れネクス達の近くを飛行する。そして攻撃がオグレスに命中し爆発した。

「やったか!?」

爆炎の中から無傷な身体のオグレスが姿を表した。

「フフフ・・・」

「なに!?」

「そんな・・・!?」

「あそこまで追い詰めるのは誉めてやろう・・・だが本番はこれからだ!」

ナイフを持った左腕を天に上げ、空に穴を開ける。そこから羽を生やした赤い悪魔のような怪獣が姿を表した。

 

【挿絵表示】

 

「さぁ・・・行くぞデストロイア!!」

オグレスは悪魔のような赤い怪獣デストロイアと一体化し、デストロイアは咆哮を上げる。

「fasyaaan!!」

「みほ、こいつは今までの怪獣とは桁違いの力を感じる!」

「Kisyaaaaa!!」

「機龍!?」

機龍はデストロイアの前へ体当たりしようとするが、デストロイアは両腕で向かってきた機龍の頭を掴み地面へ叩きつけ、首を掴んでそのまま投げ飛ばす。機龍は大洗アウトレットに落下、建物を破壊してしまう。

「うぅ・・・」

「Kisyaaa・・・」

そのまま機龍は光の粒子となり消えた。分離したみほは瓦礫の上でぐったりと気絶してしまう。

「Kiiiiin!!」

それを見たモスラは後ろに周り攻撃を仕掛けようとしたが、デストロイアの尻尾の先に付いた爪に首を捕まれる。デストロイアは身体を一回転させてモスラを放り投げた。モスラは文化会館付近に落下する。

「Kiiiiin!?」

再び翼を羽ばたかせ海側に回り込みデストロイアに接近する。それを見たデストロイアは光線を口内から発射。モスラは一度バリアを展開するもそのバリアが破壊されモスラも粒子となって消えてしまう。

「Ki・Kiiiiin!?」

「モスラまで・・・よくも!よくも!みんなを!」

ネクスは怒りながらデストロイアに殴りかかる。上半身に左手で拳を突きつけようとするが、手を掴まれ、デストロイアに腹部を蹴りつけられた。そして頭部の角、ヴェリアヴルスライサーで胸を切りつける。

「うわぁ!!」

止めの一撃と言わんばかりに光線を発射し。ネクスに貫通するように命中し、光輝きながらネクスはケンの姿に戻り倒れてしまう。

「Guasiyaaaaaan!!!」

デストロイアは勝利の咆哮をあげた。

 

EP4 END

 



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第5話 終止/最後の戦いです!

ネクスを倒したデストロイアは大洗を蹂躙していた。アクアワールド方面に向かったデストロイアはアクアワールド付近から内陸部に向かい市街地を破壊しながら進む。それを重く見た日本政府は百里基地から航空自衛隊に出撃要請を出した。7機の空自の戦闘機が大洗に向けて出撃した。

「Guasyaoooon!!」

デストロイアは空自の戦闘機にミサイル攻撃されるも怯むことなく光線を発射、一瞬にして3機の戦闘機が落とされた。残った4機はデストロイアの後ろに回って攻撃しようとするが、デストロイアは空中に浮上そのまま飛行して二機の戦闘機を掴みそのまま握り潰した。それを見た生き残りの二機のパイロットは怯えて逃げようとするが、デストロイアの光線の餌食となり二機とも落とされた。再び地上に降りて何もなかったかのように歩きだすデストロイアだが、戦闘で疲れたのか、それとも一体化が不安定なのか大洗駅の建物を壊しながら構内で活動を停止した。赤く光っていた目は黒くなりうつ向くように動きが止まる。

 

柏原ケンは暗い闇の中で横になり身体が動けずにいた。微かに誰かの呼び声がするも聞き取れない。すると自分の真上から光が差してくる。そして微かに聞こえた声がはっきりと聞こえるようになった。

「柏原くん!」

その声でケンは大洗学園艦の病院にあるベッドで目を覚ます、最初に目に入ったのは心配する亜美と黒木の顔だった。その隣でみほがまほや沙織そして華と優花里に心配されながら眠っていた。

「あの怪獣は!みほはどうなったんです!」

「あの赤い怪獣は街を蹂躙したあと大洗駅付近で活動を停止してるわ。西住さんは命に別状はないみたい」

「そうですか・・・」

悲しそうな顔で眠っているみほを見つめる。ベッドから起き上がり彼女が眠るベッドの近くにしゃがむ、両手でみほの右手を握った。

「俺の戦いに巻き込んで本当にごめん・・・」

彼は涙ぐみながら目を閉じたみほの顔を見て謝る。それを見ていた黒木と沙織達にも頭を下げた。

「みんなも俺だけが決着をつけるべき戦いに巻き込んでしまった・・・これからは俺だけであの怪獣と決着を・・・」

「そんなの間違ってます!」

その先を言うため口を開けようとした時、目を覚まして一部の話を聞いたみほがケンの言おうとした話を否定した。

「でもみほ・・・」

「私はケンさんの話を途中から聞きました。自分一人で怪獣と・・・オグレスと決着をつけるってそう言おうとしたんですよね?」

「でもみほやみんなを危険なことに巻き込んだんだ。だから今回は俺一人で奴と決着をつける・・・兄さんを殺した奴を!」

取り乱したように話すケン、だがみほは彼にこう言った。

「一人で勝てる可能性はあるんですか?私達がやる戦車道は負けても次があります・・・でも、ケンさんの戦いは負けたら次なんてありませんよね!」

「確かに無いかもしれない。でもやらなきゃ

それは分からないんだ・・・やらなきゃ!」

二人の話を聞いていたまほや亜美、そして黒木と沙織達は話に水を指しては悪いと感じてただ二人の会話を聞くだけだった。

「確かにやらなきゃ分かりません。でも私の気持ちを聞いてください!」

「みほの気持ち・・・?」

「はい、ケンさんに出会えたことは良かったと私は思ってます!」 

「何故そう思うんだ・・・俺が悪いんだぞ・・・」

「怪獣に追われた私を助けてくれる人が悪い人だと思えないんです!」

「嫌・・・俺は!」

「だから自分を責めないでください!」

「みぽりんの言う通りですよ!ケンさんが私にモスラのブレスレットを渡された時、みぽりんの力になれるのが嬉しかったんです!」

「そうだ!俺だって怪獣に襲われて無力感を感じていた所に本物のゴジラと力を合わせて誰かを守れることが出来るようになって嬉しかったんだ!」

その言葉に頷く亜美とまほそして優花里達三人。それを聞いたケンは無言になりその場を去ろうとしたその時、彼らが居る病室の扉が開いた。そこにはいかにも中世の騎士をイメージするような頭部をしたロボットのような者が病室に入ってきた。

「見つけたぞケン!いやー探すの大変だったんだ!」

「誰?」

「嫌!俺だよ!この声聞いたことあるだろ?お前のお兄さんだよ!」

「えっ・・・あっ!?」

ケンはその声を聞いてやっと気づく死んだはずの兄の声がそのロボットから聞こえたからだ。しかし疑う気持ちを捨てきれない。

「オグレスの刺客じゃないよな!?」

「なんだよケン!まぁこんな姿じゃ疑うよな・・・俺がお前の兄であるキョウタだって根拠はこれだ!」

するとケンの兄と思われる謎のロボットは彼にある物をバックから出して渡した。

「これって・・・」

ケンが渡されたものそれはケンが子供の時から大切にしていた背中に無数のトゲが生え、頭に6本の角が生えていて四つ足体型をした15cm怪獣の人形だった。

「これって俺が大切にしていたアンギラス・・・」

「お前の部屋の机に置いてあったんだ。わざわざこっちの世界に持ってきてあげたぞ」

「兄さん・・・本当に兄さんなんだね!」

「やっと分かってくれたか!万が一のこと考えて機械の身体に意識をバックアップしといて良かった・・・」

ケンの兄キョウタは密かに何かあったとき意識だけを機械の身体にコピーしてバックアップしていた。その身体はキョウタが死んだとき起動するように設定され、弟であるケンを心配してみほ達の世界に一人でやってきたのだ。

「みほ、ケンの兄には論理感壊れてないか?」

「確かに論理感壊れてるみたいだけど、多分過保護なんじゃないかなお姉ちゃん」

「まぁ兄として弟心配するのは当然だからな!」

「兄さんって以外とマッドだったんだね・・・」

キョウタが機械の身体にしてまで弟を心配する気持ちに西住姉妹とケン、そして亜美を含めた他の5人は引いていた。

「それで本題だ。ケン、お前は一人でうじうじ何か考えてただろ?顔にかいてあるぞ?」

「あぁ、俺がみほやみんなをオグレスの戦いに巻き込んだじゃないかって。だから一人でオグレスを倒して兄さんを殺されたことに決着をつけたかったんだ。でも兄さんはこういう形で生きている。俺も何をしたいのか分からなくなった・・・」

「そうか。まぁ今の俺はこうやって機械の身体になったが、それは意識をバックアップもといコピーしただけで本来の柏原キョウタではない。ケンのしたかったことは大切な生身の身体の俺を奴に殺され、その復讐の様なことをしたかったんだろうな?だが今は違うはずだ」

「違うって?」

「ケン、お前を心配する今の仲間達のことはどうなんだ?俺より大切じゃないのか?」

それを聞かれたケンはハッとし、思い出した。亜美と二人で生活しながらこの世界について調べたこと、みほにクッキーをもらったり、黒木と生花展示会の手伝いをしたこと。今の自分があるのは彼や彼女達に支えられていたことを。

「みほや黒木達、みんなと居る日常が楽しかった」

「お前が一人で奴が送り込む怪獣と戦ってたら、心が壊れて廃人になってたか奴と同じになってたかもしれないな。彼や彼女達と居たからケンはケンらしく居れたんじゃないか?」

「兄さん・・・」

「お前は何がしたい?復讐か、それとも?」

「俺はみほ達の未来を守りたい!だからみんなとオグレスを倒したい!」

キョウタに自分の決意を語る。それを聞いたキョウタは頷いた。

「よし!なら早速これを見てくれ」

キョウタは腕からホログラム画面を出現させる。そこにはデストロイアの弱点と戦車の砲弾の様な物が写っていた。

「今のデストロイアと奴は不完全な一体化にしかすぎない。つまり弱点の首を狙えば弱体化が可能なんだ」

「つまり私と機龍の一体化の方がオグレスとあの怪獣の一体化より完全ってことですか?」

「そうだ。怪獣の一体化は奴が先に考えたことだが、奴より俺たちの方が完璧なのは皮肉だな」

みほの質問に答える。元々モンスブレスの原型はオグレスが先に作り出したが原型より完全に近い物をキョウタは作り出していた。

「それであの怪獣を倒せるのですか?みほが変身した銀色の怪獣や蝶のような怪獣・・・確かモスラでしたっけ?その怪獣だって敗れました。どう倒す気なんでしょうか?」

「いい質問だ。この砲弾を使うんだ」

まほの質問にホログラム画面に映った砲弾の様な物を指差す。

「こいつを戦車から打ち出す。その戦車に誰が乗るかは君なら分かるだろ?」

「まさか・・・私がですか?」

「君や君達のことは昨日からよーく調べたんだ。寝る暇を惜しんでね」

キョウタはケン達がビオランテの戦った時からこの世界に潜伏。戦いが終わった後森の中からケンの安否確認したあと、今まで起きた怪獣事件を調べてオグレスの動きを探りながらケンの仲間についても調べていたのだ。

「じゃあ私やみほのことも調べたんですか?」

「もちろん。君のことは妹の方を調べてたらたまたま見つけたけどね」

「そうですか・・・」

「話を戻そう。君と秋山さん、そして五十鈴さんと冷泉さん4人が戦車を動かして砲撃して欲しい。その砲弾は奴を弱体化させる事が可能だ」

「でもその砲弾ってどこにあるんでしょうか?」

「実物を見てみなきゃどの戦車に装填出来るか分かりませんよ」

「確かに。そもそもそんなものあるのか?」

華と優花里、麻子はホログラム画面に映る砲弾がそもそも実際にあるのかどうか半信半疑だった。

「もちろんあるさ俺が乗ってきたスーパーXの中にな!」

キョウタは指を鳴らすと銀色の炊飯器の様な乗り物が病院の駐車場の前に姿を表した。光学迷彩でスーパーXは姿を隠していた。

「本当に見たまんまスーパーXじゃないか!」

「黒木、これもゴジラとか怪獣映画に出てくるの?」

病室の窓からスーパーXを見て興奮する黒木に少し呆れる沙織。そんな二人を他所にキョウタは話始める。

「ここにある学校にこいつ置せてくれないか?作業もその学校で行おうと考えているんだ」

「それってわたくし達が使ってる戦車を使うってことですか?」

「鋭いね生徒会長!その通りだ、君達が使うIV号戦車を借りたい。勿論事が終わった元に戻す約束付きだ」

それを聞いた沙織と優花里は戸惑う。

「どうしましょう・・・これは想定外ですよ」

「ねぇどうするの華!?」

華は生徒会長として考える。しかしここで断ってしまったらせっかく戦う覚悟を決めたケンに失礼かも知れない。そう考えた華はキョウタの話を受け入れる事に決めた。

「わかりました。生徒会長としてあなたの意見を受け入れます。その代わりちゃんと約束を守ってください」

「あぁ勿論さ」

こうして大洗駅付近でデストロイアが活動停止して2日過ぎて対デストロイア作戦の計画を練り始める事になった。大洗女子学園にある格納庫でlV号戦車のちょっとした改造。そしてモンスブレスに居る怪獣達の強化をスーパーXの中で行ったり、亜美とみほは作戦立案を担当。黒木とケンは戦いに備え体力の温存していた。大洗女子学園の生徒会は大洗町民の避難受け入れをしながら彼らを受け入れたため華と沙織、優花里は少し忙しそうにしている。そんな日の夜、ケンは折り畳み式の椅子に座りながら缶コーヒーを飲み空を見つめていた。

「今日の夜空って綺麗ですね」

みほは後ろから声をかけて持ってきた折り畳み式の椅子を展開してケンの隣に座る。

「あぁ、作戦はどうなんだ?」

「もうすぐ出来ます。ケンさんのお兄さんにも手伝ってもらいました。今はちょっと息抜きに」

「そっか・・・兄さんは俺より頭が良いからな」

「ケンさんってお兄さんの助手をしていたんですよね?」

「助手って言っても兄さんの言われたことしかやらなかったからな。俺には科学は向いてないよ」

「そうなんですか」

「うん・・・」

みほはケンのしゃべり方が変化していることに気づいた。キョウタが来てから今までのような堅苦しい感じから砕けたようなしゃべり方に変わって居ることに。

「そのしゃべり方がケンさんの本来のしゃべり方なんですね。なんか優しい感じがします」

「どうにか威勢を出そうと思ってたのかもな。でも兄さんが機械仕掛けになって帰ってきたんだ。それが兄さんの意識をコピーしたロボットでも兄さんは兄さんなんだそれが嬉しかった」

ケンは嬉しそうにみほに話す。みほはケンの砕けた本当に嬉しそうな笑顔を見るのは初めてだった。

「今度は絶対勝ちましょう。戦車道と違って負けたら次がある戦いじゃありませんから」

「あぁ!勝とう!」

みほはポケットからブレスレットをだして機龍に話しかける。

「機龍も絶対勝とうね!」

「kisyaaaan!!」

二人と一匹は意を決してデストロイアに立ち向かうことを誓った。

 

作戦それからデストロイアが活動停止して3日目。作戦を決行することになり学園艦は大洗港に帰港した。みほ達や自衛隊の隊員達、使用するIV号戦車を地上に降ろして大洗港を出発する。地上で待機していた陸自の部隊と合流し準備を始めた。作戦展開地域の半径50キロ圏内の住民は避難要請が出され、今大洗駅からマリンタワー付近は無人の状態だ。作戦決行前の2日前に噂を聞き付けた大洗に縁がある戦車道を行う高校から支援の連絡があったが、他校を巻き込みたい華達生徒会は支援を断った。そして今大洗の地でデストロイアとオグレスとの最後の戦いが始まろうとしていた。

「戦車隊、大洗駅付近に展開完了」

「怪獣の頭部に一斉砲火!」

「了解!」

大洗駅付近に7両の自衛隊最新式戦車10式が活動停止状態のデストロイアに頭部目掛けて一斉に砲撃を開始した。デストロイアを目覚めさせマリンタワー付近へわざと誘導させるためだ。

「Guasiyaaaaaan!!!」

「我らをそんな攻撃で倒せると思うのか!」

デストロイア、そして活動停止前は意識がなかったオグレスは自衛隊の戦車隊に熱線を吐こうとする。だが、そこに沙織と一体化したモスラが光と共に現れ光線を発射。熱戦を吐くまえに意識をモスラに持っていく。

「のこのこと現れたか!」

「Guasiyaaaaaan!!」

「私と一緒に一回コテンパにされた分お返しよう、モスラ!」

「Kiiiiin!! 」

モスラは光線を発射した後、デストロイアに背を向けてマリンタワー方面に飛んでいった。

「Guasyaaaaaan!!」

「怖じけついたか!」

デストロイアは羽を羽ばたかせ飛行しモスラを追いかける。その頃大洗港ではケンと黒木、みほとまほ達はデストロイアが到着するまで待機していた。

「そろそろ来るぞ黒木。」

「分かってる。行くぞゴジラ!」

海からゴジラが姿を表した。前回デストロイアとの戦いの時、ゴジラは学園艦の回りを警戒し守るかのように泳いでいた。デストロイアが活動停止して休眠してる間もそのまま警戒していたためモンスブレスに戻らず海の中に居たのだ。

「angyaaaaa!!」

咆哮を上げるゴジラ。黒木は光に包まれそのままゴジラと一体化した。飛んでくるモスラの後ろからデストロイアが迫るのを確認するとめんたいパーク付近に移動してそこから地上に上がると、デストロイア目掛けて熱線を口から発射した。飛行中のデストロイアはマリンタワー付近の温泉施設前に落下した。

「冷泉。そろそろ私達もここを離れよう」

「分かった西住さんのお姉さん」

「まほでいいぞ。言いにくいだろ?」

「じゃあ遠慮せず名前で呼ぶぞだから私のことも名前で言って欲しい、まほさん」

「分かったぞ麻子」

ゴジラが地上に上がった後まほ達IV号の乗組員達は今は破壊されたアウトレット付近に移動して待機する。

「この距離ならもうすぐマリンタワーの近くに来るはずですよ!」

「あぁ、そろそろみほ達も準備できてればいいんだが・・・」

優花里とまほが会話してるうちにデストロイアは起き上がりマリンタワーの前に近づいていく。

「みほ、準備はできてるな?」

「ケンさん、私はいつでも大丈夫です!」

「kisyaaaan!!」

「よし、行こう!」

「はい!」

ケンは右手に剣状のアイテムを天に上げる。そして胸元に掲げて叫ぶ。

「ネクス!!」

ケンの身体は光に包まれ右手を握り空に付きだしながら45mの巨人に変化する。

「行くよ・・・機龍!」

みほはブレスレットを前付きだして機龍の名を叫ぶとブレスレットから青い粒子と共に55mの銀色をした機獣が現れた。みほは青い光となり機獣と一体化した。

「kisyaaaan!!」

「ハァァァッ!」

左手を握り、右手を開きながら付きだして構えながらファイティングポーズを取るネクス。そして機龍は両腕に付いた青いレールガンからメーサーブレードを展開して構える。

「Guasyaaaaaan!!」

「またやられに来たのか!」

「今度こそ倒してやる、いくぞ!」

ネクスはエネルギーが溜まり光る拳を握りしめ、前へ付きだし光弾を発射した。だが、両腕で受け止められた。

「こんな攻撃など跳ね返してくれる!」

「Guasyaaaaaan!!」

そのまま光弾をネクス目掛けて跳ね返す。しかしネクスに気を取られてる内にデストロイアの後ろに回っていた機龍とみほ。機龍はデストロイアの背中に向かって口内から黄色光線を発射した。

「Guasyaaaaaan!?」

後ろを取られ、背中に光線を受けたデストロイアは怯むように鳴く。

「どうやら背中が弱点みたいだな!」

「なに!?」

ネクスは跳ね返された光弾を受け止め、頭部に向かって投げ、デストロイアに命中するがもっと撃ってこいと言わんばかりの態度で咆哮を上げる。

「Guasyaaaaaan!!」

後ろに居た機龍の首を尻尾の先にある爪で挟んで首を絞めた。機龍とみほは小さく唸りながら苦しんでいる

「kisyaaa・・・」

「うぅっ・・・息が・・・」

「苦しめ小娘!」

「Guasyaaaaaan!!」

だが、モスラがデストロイアに体当たりする。その反動で尻尾の爪で掴んでいた機龍を放し、ブラブラとよろめくがまた体勢を立て直す。そこに黒木とゴジラが合流。デストロイアが大洗駅方面を背にしてマリンタワーを挟むかたちでネクス達と相対する。

(挿し絵)

「遂に始まったか・・・」

みほ達が来ているのと同じ紺色のパンツァージャケットを着ているまほ。デストロイアと相対するネクス達を見て麻子に指示をだした。

「そろそろ赤い怪獣の近くに行くぞ」

「分かったまほさん」

麻子はアクセルを踏みながらレバーを引く。優花里は徐に砲弾を拳で押し込み装填した。全ての準備が整いIV号戦車はアウトレットの前からデストロイアのいる場所に向かう。それを密かに目視で確認したネクスはデストロイアに向かって走り、胴体を押さえつける。

ゴジラは右腕を、機龍は左腕を押さえつけてデストロイアの動きを封じた。

「Guasyaaaa!!」

「そんなもので動きを封じられ・・・なに!?」

デストロイアの真上にモスラが飛行し、稲妻を出しながら燐粉をふりかける。

「Guasyaaaa!?」

その背後にまほ達が乗ったIV号戦車が止まる。

「華、任せた」

「はい」

華が主砲の照準をデストロイアの首に合わせる。

「これはケンさんやみほさん達から託されたこと、この一発を必ず成功させてみせます!」

引き金に人差し指が触れ、砲弾が発射された。その砲弾がデストロイアの首に当たりドライアイスのように冷気が発生する。砲弾を撃ち込み終わったIV号戦車は逃げるかのようにその場から離脱する。

「Guasyaaaa!!?」

「何をした!?身体が寒い!?」

「よし!みんな離れるぞ!」

ネクスはデストロイアの腹部に蹴りを入れ、それと同時にゴジラと機龍がデストロイアから離れた。モスラめデストロイアに燐粉をふりかけるのをやめデストロイアから離れる。

「もっと冷やしてあげよう、機龍!」

「Kisyaaaan!!」

「行くよ・・・アブソリュートゼロ!」

機龍の胸部が開き、五角形の砲口から青い光弾が作られそれを発射する。

「なっ!?」

「Guasyaaaa!!?」

その光弾がデストロイアに命中する。デストロイアは身体がさらに凍りつき動きが封じられた。

「今です!!」

「あぁ!!」

「行くぞゴジラ!」

「行こうモスラ!」

ネクスは腕を交差させ胸部にエネルギーを溜める。

ゴジラは背鰭と口内を赤く光らせ、モスラも羽に電気が流れて攻撃体勢に入る。

「ネクスアーディニウムバースト!」

ネクスは腕を開き胸部から光線を発射する。

「Gインフィニットスパーク!」

「angyaaaaan!!」

「スパークリングパイルロード!」

「Kiiiiin!!」

ゴジラが背鰭が赤からオレンジに光って赤い熱線を、モスラは腹部から光弾を発射する。

「動けデストロイア!!」

デストロイアはオグレスの叫びに答えることはなくそのまま動かない。そして3つの技がデストロイアの身体に命中し、デストロイアは爆発した。

「そんな・・・バカな!!」

オグレスもそのまま爆発に巻き込まれ断末魔を上げ消えていった。

「やった!やりましたよ!」

「お見事です」

「やっと終わったのか」

「やったな!みほ、ケン!」

その戦いを少し離れた場所で見ていたまほ達は歓声を上げた。こうしてオグレスとの戦いに終止符を打った。

 

 



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エピローグ 明日へ/未来に向かって歩きます!

戦いは終わった。ネクスから人間の姿に戻ったケンは港で最後まで壊されなかったマリンタワーを眺めていた。

「やっと終わったんだ・・・」

亜美はそんなケンの後ろから肩を叩く

「蝶野さん!?驚かさないでくださいよ!?」

「ごめんね、でもとてもグッジョブだったわ!」

「みほや蝶野さんのおかげです。自分一人じゃ兄さんが言ってた通り心が壊れてたかも知れません」

「そうね、でも柏原くんのお陰であの怪獣と黒幕をやっつけられたんだと思うわ」

「そうですかね?」

「そうよ」

そういうと亜美はケンに忙しいからと言ってその場から去っていった。今度はみほがケンを呼びに来た。

「ケンさん!お兄さんが読んでますよ!」

「あぁ!近くに居るのか?」

「えーと・・・磯前神社の前に居るらしいですよ」

「え・・・なんで?」

「私たちも呼ばれてるんで一緒に行きましょう」

「分かった」

みほとケンは港を後にする。その後優花里や黒木、まほ達と合流し磯前神社の近くまで歩いて行った。歩く途中破壊された建物などがあるため迂回して磯前神社の前にある海が一望できるテラスに着く。そこにはキョウタがスーパーXを止めて待っていた。

「兄さん」

「よく俺の仇をとったなケン!」

冗談ばかしにキョウタはそう言った。

「確かにそれもあるけど・・・みほ達やこの世界の未来を守れた事が良かったと思ってる」

「そうか、お前はこれからどうするんだ?」

「兄さん・・・俺はこの世界が気に入った。だからこの世界に残るよ」

「あぁ・・・分かったよ。元気でな」

キョウタは寂しそうに答えながら肩を叩く。

「これを貴方にお返しします。私達が持ってても意味ありませんから」

みほは3つのモンスブレスをキョウタに渡す。しかし、モスラとゴジラが宿るモンスブレスだけを受け取り、機龍の宿るモンスブレスだけ受け取らなかった。

「これは君が持ってて欲しい。どうやら君と彼の繋がりは他の二匹より強いみたいだからな」

ブレスレットから青い光と共にみほより少し小さな三頭身の機龍が現れた。

「kisyaaaan!!」

「分かったよ機龍。これからもよろしくね!」

それを見た黒木と沙織は少し寂しそうな顔になっていた。

「俺達は途中参加だからやっぱり絆が弱かったのかな?」

「ん~?どうなんだろう?」

その会話に答えるかのように二つのモンスブレスが光巨大なままのゴジラとモスラが海に現れた。

「angyaaa!」

「kiiiiin!!」

「そうか、一様俺たちの事を気に入ってくれたんだな」

「良かった~」

ほっとする黒木と沙織。

「じゃあゴジラ、モスラ、俺たちの世界に帰ろう!」

「angyaaa!!」

「kiiiiin!!」

キョウタはスーパーXに乗り込んだ。スーパーXはそのまま浮上して海に向かう。ゴジラとモスラの前に飛行し、光線を出して異次元空間を開き。二匹と共にその中へ消えていった。異次元空間が閉じると、今までとなにも変わらない景色に戻る。

「さよなら兄さん・・・」

ケンは海を見つめて呟く。

「あの・・・柏原殿、質問いいですか?」

「どうした優花里?」

「柏原殿が変身した巨人の名前ってなんですか?」

「あら、私も聞いてませんでした」

「そうそう、ヒーローには名前が付き物だ!名無しな分けないよな!」

優花里と華、黒木にケンが変身した巨人の名を聞かれる。ケンは自分が変身した巨人の名前を自分から名乗った時は一度きり。しかもみほ達が気を失ってる時で、誰も名前を聞いていないのだ。

「そうか・・・名前をみんなの前で言ってなかったな・・・」

ケン以外の7人は頷く。

「アーディアンネクスって所かな?」

「良いんじゃないか?みほはどう思う?」

「私も良いと思うよお姉ちゃん」

「なんか響きがカッコいいな!沙織もそう思わないか?」

「私は女の子だし黒木みたいにヒーロー物とか特撮見ないから分からないかな~」

「私は素敵だと思いますよ」

「私も五十鈴さんと同意見だ」

「そうか・・・みんなありがとう」

ケンは頭を下げながら礼を言った。アーディアンネクスの名前はみほ経由で亜美達に伝えられ、数日後自衛隊からマスコミを通して公式に巨人の名前として発表され、デストロイアとの戦いも大洗怪獣災害と名付けられ世界中にこの事が発信された。しかしデストロイアを倒し、世界を守ったのがケンやみほ達だと言うことは世間には明かされずに秘密として一部の関係者だけに伝えられた。

 

それから数ヶ月。ケンはみほの役に立つために戦車の整備士になることを決めて勉強をしていた。

「君、吸収が速いね。教えた事がすぐ覚えられちゃうなんて凄いよ!」

ガタイの良いつなぎを着た男性にケンを誉められていた。

「そんなこと無いですよ常夫さん。自分はまだまだ覚える事がいっぱいありますから」

ケンはみほの実家がある熊本で整備士の勉強をしている。みほの勧めでみほとまほの父親、西住常夫に整備士の基礎を教えてもらっている途中だ。

「君なら1年ぐらいで基礎知識を覚えそうだ」  

「頑張ってみます!」

「うん!その意気込みだ!」

ケンの新しい生活がこの世界で始まろうとしていた。

 

END

 

 



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