Fate/dark moon (ガトリングレックス)
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第1章始まり

彼の名は攻城菊【コウジョウキク】。

日本に住む魔法科高校の2年生である。

攻城とは町で有名な魔術師の家系である。

学校では仲のいい友達とお喋りを楽しんだり、魔法の勉強をしていた。

「菊」

「なに?」

「いや、お前ってすげー奴だと思ってさ。だって菊は元々魔術に関わっていなかったお母さんの養子だった。なのに今では魔術師として成長してる、だからすげーんだよ」

「そう言う褒められ方は初めてだ、ありがと」

菊は元々母の息子で、再婚した相手が魔術師だった関係で魔法科に入っている。

父には20代の息子と、中学生の娘がいる。

正直家族といるより学校の方が楽しい。

なぜなら兄と妹にいじめられるからだ。

今では父と母のおかげでなくなったが、中学生の頃、つまり養子になりたての頃はいじめられ、

生きてる心地がしなかった。

それがトラウマになり20代の男性と、小学生から中学生ぐらいの少女が恐怖の対象になってしまった。

「なぁなぁ、菊、学校終わったらゲーセン行こうぜ」

「おっ、良いねぇ」

そんな事を言っている間に休み時間が終わったと言うチャイムが鳴った。

 

彼女は家族を失った。

夫、2人の息子。

もうつらくて、苦しくて。

死にたいと思った。

だから死ぬ。

自分が住むマンションの10階のベランダから自殺しようとする。

「待っててね、今行くから」

泣きながらそう言って飛び出そうとする。

その時だった。

誰かに手を掴まれ、自殺を止められた。

「誰!?」

後ろを振り返ると、そこにいたのはホッケーマスクを被った大柄の男だった。

恐怖の感情が脳に、一気に分泌される。

「あなたは誰?」

「僕はアサシン、君の願いを叶えるために来た」

アサシンは優しい口調でそう言うと、彼女を無理やりお姫様抱っこし、部屋に入った。

 

ここは衛宮家、ここで今、士郎【シロウ】、凛【リン】、セイバーの3人が会議をしていた。

「また起きるのか、聖杯戦争が」

「えぇ、今回は夏画町【なつがちょう】と言うところでやるみたい、まあ聖杯は10年周期で生み出される物、仕方ないと言ったらそうだけど」

「では壊しに行くのですね、聖杯を」

「ふーん、分かってるじゃない、そう、私達は聖杯を破壊するのを目的としたチーム、今回で3回目だけど、私とセイバーが受け持つわ」

「分かった。2人共、気をつけて行けよ」

「はい、行って来ます、士郎」

会議が終わり、バックを持って、凛とセイバーはリビングを出て、玄関に向かう。

そこにドタドタと5歳ぐらいの子ども2人が走って来た。

「お母さん、セイバーちゃん、どこに行くの?」

「どこ行くの?」

実は凛、士郎と結婚しており、子どもが2人いる、30代のママ魔術師なのである。

家事は士郎に任せ、凛は魔術師として働いている。

セイバーはホームステイしている外国人として住んでいる。

「ごめんね、お母さんとセイバーはお仕事でしばらく帰れないの、だからお父さんと待っててね」

「うん、頑張ってね」

姉の蒼【アオイ】は承諾してくれたが、

「嫌だー、お母さんといたいー」

弟の悟【サトル】がぐずり始める。

「たくさんおみあげ買ってくるから、それで許して」

悟はしばらく考え、「分かった」と言ってくれた。

 

学校が終わり、菊は友達の稔【ミノル】と共にゲームセンターに入る。

ガヤガヤとした店内を進み、2D格闘ゲームをやり始める。

10分後、両者共互角の戦いを繰り広げ、帰る事にした。

「やっぱ強えなー、菊は」

「稔こそ、あのコンボは中々出せないぞ、あれは」

そんな事を喋っている間に分かれ道につく、

「じゃあ俺、こっちだから」

「あぁ、また明日な」

そう言って菊は稔と別れ、家に帰った。

「ただいま」

家に帰ると、誰もいない。

するとスマホが鳴り始める。

「お父さんからだ」

通話ボタンをタップし、耳にあてる。

『もしもし、お父さんだ』

「もしもし、お父さん、なんでいないのさ、心配するじゃないか」

『実はな、菊、お前は聖杯戦争のマスターに選ばれたんだ』

「えっ、聖杯戦争って、お父さんが話してた。あの聖杯戦争?」

聖杯戦争、それは7騎のサーヴァントによる願いを叶えるための殺しあいである、

サーヴァントにはそれぞれ、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、イレギュラーとしてアヴェンジャー、ルーラーがいる。

セイバーはランサーに強く、アーチャーに弱い。

アーチャーはセイバーに強く、ランサーに弱い。

ランサーはアーチャーに強く、セイバーに弱い。

ライダーはキャスターに強く、アサシンに弱い。

キャスターはアサシンに強く、ライダーに弱い。

アサシンはライダーに強く、キャスターに弱い。

バーサーカーはすべてに強く、すべてに弱い。

アヴェンジャーはすべてに強く。

ルーラーは弱点を持たず、また得意な者もない。

「だから俺を1人したんだ」

『すまない、一様お金と食料がある、それを使って頑張ってくれ、後サーヴァントを召喚するための触媒もある、それで強いサーヴァントを呼べるはずだ』

「分かった。頑張ってみるよ」

『お父さん達は応援してるからな、じゃあまた』

「じゃあ」

父から電話を切られ、菊はスマホをバックにしまい、2階に上がり、服を着替え、サーヴァントの召喚を行うため、素材である拷問器具の破片を持って、庭に出る。

殺したニワトリの血で魔法陣を書き、拷問器具の破片を置く。

そして呪文を唱える。

「満たせ、満たせ、サーヴァントよ、お前のために鳥の血を捧げよう、強者よ、現れよ」

呪文によって魔法陣が青く光り、召喚されたのはピンク色の髪で鎧を装備しているドラゴニュートの少女だった。

それを見た時、菊は冷や汗をかく。

「ハーアーイ、あなたが私のマスター?」

サーヴァントが挨拶をしたので菊も返事を返す。

「そうだよ、俺が君のマスターだ、まあ威張る様な事はしないから、仲良くやろうよ」

「ふーん、こんなマスターもいるのね、普通マスターってサーヴァントを従わせたくなるのに」

「そんなもんなのかな、とりあえず家に入ってゆっくり話そう、あっ、土足は厳禁だから」

そう言って庭からリビングに入る。

2人はソファーに座り、ゆったりしながら話を始める。

「一応聞くけど、クラスはなに?」

「セイバーよ、真名はエリザベートバートリー」

「エリザベートバートリーって、女性の血を浴びて若返ったって言う」

「それは未来の私、今いる私はそれを変えようとしている過去の存在なの」

「そうなんだ、あっ、もうごはんの時間だ、ちょっと作って来るね」

菊はキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。

「よし、あれを作ろう」

作るのはタラコスパゲティだ。

そんな中、セイバーは足をぶらつかせながら待っていると、頭が痛くなる。

「やだ、やめて、来ないで」

セイバーの悲痛な声に菊は気づき、コンロの火を消し、リビングに戻る。

「どうした!」

その呼びかけと同時にセイバーの髪が赤から白に変わり、目の色も黄色に変わる。

「セイバー?」

セイバーの視線が菊に移った瞬間、ニヤリと笑みを浮かべ、いきなり押し倒して来た。

「この際男の血でも良いわ、飲ませてもらうわよ、マスター」

セイバーは鋭い牙を菊の首に突き立て、血を吸い始める。

「あっ、あっ」 

痛みが走り、暴れて逃げようとするが、力が強く、逃げ出せなかった。

数分後、ようやく吸血が終わり、解放される。

ヒリヒリする首を抑えながら立ち上がり、セイバーの方を見る。

「君、未来のセイバーだよね」

「察しが良いわね、そう、私は多重人格なの、一応真名はカーミラよ、フフフ、これからもよろしくね」

「良いよ、セイバーが多重人格でも、俺は一向に構わない」

「そう言ってくれるとありがたいわ」

未来のセイバーは感謝の言葉を述べ、過去の人格に戻る。

セイバーは慌てた表情をする。

「ごめんなさい、痛かったでしょ」

「仕方ないよ、相手は吸血鬼のカーミラだもん、さあ、俺は自分のごはんを作らなきゃ、悪いな、サーヴァントだとは言え、食事を見せびらかす様な事をするみたいで」

「別に良いわ、ちゃちゃっと食べて、戦いに行きましょ」

菊はキッチンに戻り、ため息を吐いて、タラコスパゲティを作り始めた。

 

一方その頃、もう1人のマスター、軍人であり、魔術師のキールグレイトスは、自分が望んだサーヴァントを呼べて気分が高揚していた。

金に輝く鎧、本物のライオンの毛皮でできたライオンのマスク。

「まさか20年前に猛威を振るった王をバーサーカーとして召喚できるとはなぁ」

バーサーカーは雄叫びを上げ、自分の強さをアピールする。

「ほう、戦いたいか、ならこいつを貯蔵してもらおう」

キールが用意した物、それは、マシンガン、スナイパーライフル、アサルトライフルなど、大量の銃火器だった。

バーサーカーは首を縦に振り、銃を貯蔵し始める。

(普通なら拒否するだろう事を平然とやる、ふっ、バーサーカーはバーサーカーと言う事か)

小バカにしつつ、キールはイスに座り、貯蔵できるまで待った。

 

「擬似サーヴァント化成功、まさかマスター自身がサーヴァントになるとはなぁ」

そう言うのはランサーだ。

スーツを着用し、メガネをかけた普通のサラリーマンに見えるが、中身が違う。

「久しぶりだな、現界するのは。観光もしてみたいが、私はサーヴァント、マスターのために戦わなければ」

ランサーは自慢の身体能力でサーヴァントを探しに向かった。

 

電車で片道1時間、凛とセイバーは夏画町に到着し、これからの事を考える。

まず1人に加勢し、仲間になりすまして、聖杯が出たところでセイバーの宝具で破壊する。

それが凛と士郎とセイバーが聖杯戦争でやっている事。

「スマホで検索したら、この町には攻城と言う有名な魔術師の家があるみたい」

「そこの1人がマスターで間違いありませんね」

夜の道を進み、学校へ向かい、双眼鏡を覗くと、早速戦っているところを目撃する。

「戦ってるのは、バーサーカーとランサーみたいね。バーサーカーの方はステータスが見えないけど」

バーサーカーの方は紺色の鎧で身を固め、バトルアックスを装備、黒いオーラを放出している。

一方ランサーはメガネをかけ、スーツ姿で、2本の槍を持っている。

それを見たセイバーは、かつて戦った英雄の名を口にする。

「ランスロット、再びバーサーカーとして召喚されたのですね」

「ランスロットって、円卓の騎士の?」

「そうです、30年前、聖杯戦争で戦いました。ですが、こんなところで出会ってしまうとは」

手を拳にし、強く握った。

ランスロットはバトルアックスを振るい、ランサーはそれを交わす。

「トレース、オン」

マスターであろう女性が呪文を唱えると、ランスロットの手元にマシンガンが錬成され、スキルで強化、ランサーに向けて連射する。

その光景に凛とセイバーは驚愕する。

「あれって士郎君の」

「えぇ、士郎のトレースオンです、まさか他の魔術師が使え、しかも遠隔で錬成するなんて、驚きを隠せません。さらにランスロットには武器を強化するスキルがあります。まさにこの2人は最高のコンビと言えるでしょう」

「まあ、バーサーカーにされた時点で、ランスロットにとってたまったもんじゃないだろうけどね」

感激するセイバーに、呆れた様に言う凛。

そんな中、ランサーが宝具の力を解放する。

「我が宝具は2本あり、1本目は貫かれた者を消滅させる槍、2本目は狙った者を逃さず貫く槍」

その言葉にまずいと思ったのかランスロットのマスターは呪文を唱える。

「トレースオン!」

すると、ランスロットの前にバリアを展開する装置を複数錬成し、バリアを張る。

両方の槍を逆手に持ち、三又の槍を投げる体制に入る。

「スレイプニル!」

投げた。

さらにそこから素早く金色の先が稲妻の様にギザギザしている槍を投げる体制に入る。

「グングニル!」

投げた。

そのスピードはマッハを超え、バリアを破壊して行く。

そんな中、〈スレイプニル〉が失速し、ランサーの手元に戻る。

しかし〈グングニル〉は止まらない。

バリアを破壊し、ついに最後のバリアを破壊、ランスロットの心臓部を貫いた。

ランスロットは背中から倒れ、動かなくなる。

「決まりね、いくら円卓の騎士でも、あの槍を受けて死なないなんて、まずありえないわ」

凛はランスロットの負けを確信するが、この後とんでもない事が起きる。

ランスロットのマスターが不適切な笑みを浮かべる。

なんと死んだと思われたランスロットが立ち上がったのだ。

「なんで、なんで生きてるのよ!」

「分かりません、ですが、今言える事、それはあのバーサーカーはランスロットではないと言う事です」

「えっ、あれランスロットじゃないの?」

凛の質問に、セイバーは首を縦に振る。

「そうです、鎧やステータスが見えないなど、ランスロットに完璧に偽装していますが、前に戦ったランスロットは蘇りのスキルなど持ち合わせていませんでしたから」

「つまりあいつはニセモノって事?」

「おそらくマスターのトレースオンで作った鎧をサーヴァントが装着しているのでしょう。これはランスロットを侮辱しているのと同じ、もし戦う事になった時は必ず私が仕留めます」

「そうね、裏切り者とは言え戦友だものね、それは殺したくなるわぁ」

一旦双眼鏡を覗くのをやめ、セイバーの方を同情の目で見る凛なのだった。

 

驚きを隠せないランサーにあざ笑うランスロット?のマスター。

「バーサーカーには蘇りのスキルがある、しかも死ねば死ぬほど強くなる。でっあなたの真名が分かった。オーディン、擬似サーヴァントとして召喚されたのね。でもバーサーカーは神だろうが邪神だろうが倒す事はできないわ」

「私達神を侮辱するとは、許さん」

「なんとでも言いなさい。バーサーカー、オーディンを仕留めるのよ」

マスターに言われ、ランスロット?はマシンガンの銃口をオーディンに向け、連射する。

オーディンは銃弾を〈グングニル〉で弾き、逃げる体制に入る。

「逃がさないで!トレース、オン」

呪文を唱えると、ランスロット?の手元に毒付きの銛銃が錬金され、オーディンに向ける。

トリガーを引き、銛が発射されるが、〈スレイプニル〉で弾かれてしまい、そのまま逃げられた。

それを見た凛は呼吸を整え、状況を整理する。

「あのランスロットのニセモノのマスター。自分のサーヴァントに自信がないか、それともものすごい有名な英雄だからそれを隠すためにランスロットと言う仮面を被らせているのか、どちらにしても強い相手であり仲間にしてもらえないチームね」

「私はあの方々と仲間になりたくありません」

「まあね、違うチームを探しましょ」

そう言ってセイバーを連れ、その場を立ち去った。



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第2章ハイスピードショット

夜の9時半。

菊【キク】とセイバーはサーヴァント探しをしていた。

菊にとってセイバーといる事が最も恐怖な事だ。

一様一般人に見えない様霊体化してもらっているが、それでも女の子と一緒にいるのに変わりない。

(なんで女の子なんだよ。もっとこう、大人な男性か女性が良かった。でもお父さんが探し出してくれた触媒で召喚されたサーヴァントなんだ、弱いはずがない)

まだ勉強途中の自分がセイバーとうまく付き合えるだろうか、そんな不安がのしかかる。

すると街灯で照らされた金髪の男子を発見した。

カーボーイハット、カーボーイを思わせる服装、ホルスターにはリボルバーが収められている。

「マスター、あいつサーヴァントじゃない?」

「だよな」

セイバーは姿を現し、背中に背負った剣と盾を手に取り、構える。

それを見てサーヴァントは笑みを浮かべる。

「ねぇ、剣と銃、どっちが早いか勝負しようよ」

「最初からやる気満々って感じね。行くわよマスター」

「待て。あいつは銃を持ってる、つまりアーチャーの可能性がある。セイバーはアーチャーが苦手なんだろう。だから言っておく、油断するなよ」

「それぐらい分かってるわよ。だからこそ先に仕留めなくちゃね」

セイバーは一気に加速し、アーチャーとの距離を詰め様とする。

「早いねぇ、でも僕より遅いかな」

アーチャーの余裕の言葉に、セイバーはイラ立ちを覚える。

だがその言葉はウソではなかった。

リボルバーをホルスターから取り出し、ハンマーを下ろし、トリガーを引く。

それを高速で3回行い、銃弾がセイバーに襲いかかる。

なんとかセイバーは盾で防ぎながらアーチャーの腹を盾で殴る。

それに仰け反るアーチャーだったが、素早くリロードし、構える。

「盾で殴るなんて、暴力的だなぁ」

「うるさいわねぇ、さっさと倒されなさい!」

「煽りに乗っちゃダメだ。それが相手の狙いなんだから」

「分かってる。だけどイラつくこいつは許せないのよぉー!」

アーチャーの狙い通り、セイバーはイラ立ち出す。

するとセイバーの人格がエリザベートからカーミラに入れ替わる。

「まったく、過去の私が迷惑かけたわね、マスター」

「未来のセイバー、良かった。未来のセイバーなら冷静に戦ってくれる」

その光景にアーチャーは少し驚いた表情をする。

「ふーん、クラスチェンジか」

「少し違うわね。クラスは変わらない、だけど法具が変わったり。戦い方が違ったり。細かいところが違うのよ」

「それって細かいのかなぁ」

そう言いながらリボルバーのハンマーを下ろし、トリガーを弾く、

銃弾が発射されるが、それをセイバーは盾で防ぎ、突きをくらわそうとする。

だがその時だった。

どこからか、まるで大砲から弾が放たれた様な音が聴こえて来る。

方角はアーチャーの後ろの方からだ。

アーチャーは素早く振り返り、ハンマーを下ろし、構える。

見える、戦車から放たれた弾丸が向かって来るのを。

トリガーを引き、銃弾が砲弾に命中、爆発を引き起こした。

爆風でカーボーイハットが吹き飛ばない様、手で押さえながら前を見る。

そこにあったのは戦車の軍勢だった。

「あれはドイツ軍の戦車、なんでこんなところに」

「分からない。あれはサーヴァントの宝具よ」

セイバーとアーチャーの言葉で菊はサーヴァントのクラスと真名が分かった。

「クラスはライダー、そして真名は、さまざまな悪事を働き、働かせた。最恐最悪のドイツ軍の司令官・・・」

真名を言いかけて、戦車の3車が一斉に発砲する、

狙いはセイバーだ。

砲弾をギリギリで交わし、攻撃を仕掛け様とする。

だが、今度は兵士が戦車から出て来て、機関銃で攻撃して来た。

銃弾をセイバーは盾で防ぎ、攻めに行く。

すると戦車の1車がいきなり前進して来る。

避けようとするが、避けれず、轢かれた。

「セイバー!」

菊の叫びに答え、立ち上がるが、肋骨が折れてしまい、苦しそうに荒い息を吐く。

サーヴァントはマスターの魔力によって体を修復できるが、時間がかかる。

「ライダー、いや、ヒトラー、貴様ー!」

菊の怒りの叫びを戦車の中にいるライダーとマスターである赤髪の少女があざ笑う。

「ハハハハ、おっかしい。サーヴァントがケガしたぐらいで怒るなんて、怒りのスイッチ浅すぎー。ねぇ。ライダー様」

「ミラの言う通りだ。まあ気持ちは分かるが、これは戦争だ。多少のケガなどで感情的になるのはマスターとしてどうなのだろうな」

赤髪の少女ミラはアインツベルンの刺客で、ホムンクルス、つまり人造人間である。

彼女は前々回冬木の聖杯戦争でアインツベルンの刺客であるバーサーカーのマスターが聖杯を手に入れられず死亡したのでその後玉として参戦した。

サーヴァントはライダーのクラスのヒトラー。

1900年代、ドイツ軍を率いてさまざまな国に戦争を仕掛けた男の司令官。

かつては画家を目指していたが、才能を理解されず、その逆恨みか司令官になった時に兵士に画家の作品を盗み出させたとされている。

さらに黒人であるユダヤ人を尋問、処刑させたと言われている。

尋問に使われたウソ発見器はウソをつくと電流が流れると言う仕組みと謳われたが、実際は都合が良い事しか言えない様にする拷問器具だったとされている。

ヒトラーの最後は処刑だったとされているが、処刑されたのは実は影武者で、村でひっそりと暮らしていたと言う説がある。

ライダーは法具である戦車と兵士を使い、セイバーとアーチャーを仕留めにかかる。

 

それを双眼鏡で見ていた凛は驚きを隠せない。

「なんでサーヴァントの宝具が近代兵器なわけ?、セイバーなら剣、アーチャーなら弓と弓矢、ランサーなら槍、ライダーなら乗り物、キャスターなら魔法に関係する物、アサシンなら殺人術、例外はあるけど大体古代の物が選ばれる事が多いじゃない?」

それを聞いてセイバーはため息を吐く、

「なにを言っているのですか凛、かつてあなたが共に戦ったアーチャーは、パラレルワールドですが、未来の英雄、エミヤシロウだった。つまり古代の英雄でも、最近の英雄でも、未来の英雄でも、関係なくサーヴァントとして召喚されると言うわけです」

セイバーにそう言われ、(確かに)と納得する。

「それにしても反英霊が多いわね、やっぱり聖杯は悪に汚れている、と言う事かしら、これは破壊するしかないみたい」

「そうですね、そのためにも早く仲間できそうなマスターとサーヴァントをみつけましょう」

「いいえ、もうみつけたわ、今回はあのセイバーのマスターを仲間にしましょ」

「いいのですか、あのマスター、まだ未熟に見えますけど」

「だからこそよ、熟練の魔術師じゃあ仲間にしても裏切られるのが関の山、だったら未熟な魔術師に魔術を教えつつ、支援してあげれば良いの、そうすれば信頼してもらえるでしょう」

「さすがは魔法科高校の講師、青年の気持ちが分かるのですね」

「まあねぇ、それじゃあ早速セイバーとマスターを助けに行くわよ!」

こうして凛とセイバーは、もう1人のセイバーとそのマスターを救うため、走り出した。

 

一方その頃セイバーと菊、アーチャーはヒトラーの攻撃に、防戦一方だった。

「本当に、厄介な奴が召喚された物ね」

「待ってろセイバー、今治癒魔術で骨を修復してやる」

「そんな隙をあの戦車が与えてくれるかなぁ」

アーチャーは霊体になろうとする。

「まさか、お前逃げるつもりか」

「当たり前だろう、僕はマスターの願いを叶えるために戦ってる、最初からやられてたらマスターに申し訳が立たないからねぇ。じゃあ、アディオス」

そう言って霊体になり、逃げ出した。

「アハハハハ。アーチャーたら、ライダー様の宝具に怖じ気付いたみたい」

「ふん、当たり前だ、我がドイツ軍の科学力は世界1なのだからな」

ヒトラーはすべての戦車の主砲をセイバーに向ける。

「全体、主砲、撃て!」

号令と共に放たれた砲弾。

それを菊は魔術のバリアで防ぐが、いつまで耐えられるか分からない。

そんな時だった。

「あなた達少し離れてて」

突然現れた女性に菊とセイバーは従う。

「あいつは、ライダー様、逃げるよ」

「なぜだ、あんな小娘、我が戦車で蹴散らしてくれるわ」

「相手はアーサーだよ。あいつのエクスカリバーをくらったら私達はたまったもんじゃない」

「それを早く言えー!」

ミラとヒトラーは戦車を出て逃げる。

「エクスカリバー!」

その叫びと共に〈エクスカリバー〉から放たれた閃光が戦車に襲いかかる。

だがヒトラーが宝具を解除し、戦車が姿を消す。

〈エクスカリバー〉は不発に終わったものの、相手を逃走させる事に成功。

今はそれで十分だった。

「あなた達、一体何者なんですか」

菊の質問に凛は笑みを浮かべる。

「私達はこの聖杯戦争の発端である聖杯を破壊しに来たの」

「なんでそんな事、だって聖杯は願いを叶えるための物なんですよね」

「本当わね、でもこの聖杯は悪に汚染されているの、例えばの話だけど、マスターが世界平和を願ったとするでしょう、すると少しでも悪の感情がある人が死んでしまう」

「そんな、そんなのダメですよ、そしたらたくさんの人が死んじゃうじゃないですか」

「だからこそ私達は聖杯を破壊するの、でも私達は部外者、それでね、あなた達に私達の仕事を手伝ってほしいってわけ、どう、手伝ってくれる?」

菊が了承しようとすると、セイバーが口を挟んで来た。

「私は反対よ、例え本当にそうだとしても、私には叶えたい事がある」

「セイバー、もしそれで女性の血が吸えなくなったら、どうする?」

菊の質問に、セイバーは顔にシワを寄せる。

「分かったわ。でもマスター、一応言っておくわよ、もし血が吸いたくなったら・・・」

「俺の血を吸わせろ、だろ、分かってるよ」

「理解があって助かるわ、じゃあ過去の私に戻るわね」

そう言ってセイバーの人格がカーミラからエリザベートに入れ替わる。

「話は聞かせてもらったわ。いいわよ、どうせ叶えたい願いなんてないしぃ。手伝ってあげるわ」

それを聞いて凛は安堵する。

「立ち話もあれですし、俺の家でゆっくり話をしましょう」

「そうしてくれると助かるわ。あっ、名前を言ってなかったわね、私は衛宮凛【エミヤリン】サーヴァントはセイバーよ。真名はあなたの家に着いたらセイバーに言わせるわ」

「俺は攻城菊【コウジョウキク】。サーヴァントはセイバーです、よろしくお願いします」

攻城と言われて心の中で驚くが、顔には出さない。

「えぇ、こちらこそよろしくね」

そう言って、凛達は菊の案内で、攻城家に歩みを進めた。

数十分後、攻城家に到着し、菊がカギを開ける。

「どうぞ」

菊の膨大な冷や汗がドアから滴り落ちる。

「ちょっとあなた大丈夫なの」

「大丈夫じゃないです、この事についても話ますから、お入りください」

心配しながら、家に入って行く。

菊も家に入り、カギを閉める。

凛は手を洗い、ハンカチで拭き、リビングのイスに腰掛ける。

それに続いて菊もイスに腰掛ける。

「でっ、なんでそんなに汗をかいてるの?」

「実は俺の母が再婚して、その夫が攻城と言う魔術師の一族だった。母の連れ子であり養子の俺の事を義理の兄と義理の妹は気に入らなかったみたいで、いじめられました。今は父と母が注意してくれてなくなりましたが、その影響からか、20代の男性と、小学生から中学生ぐらいの女の子を見ると冷や汗が止まらなくなっちゃたんですよね」

「つまりサーヴァントが中学生ぐらいの女の子だったから恐怖していると」

「そう言う事です、だけどせっかく俺に応えて現界してくれたんです、そんな事でくよくよする自分じゃありません」

「優しいのね、でもその優しさが仇になる事もあるわ、気をつけなさい」

「分かりました」

そう言うと凛の方のセイバーが霊体から実態化した。

「菊、あなたは魔術師としてはまだ未熟のはずです。ですがその割には魔術を使いこなしている。その事に敬意を評して真名を言いましょう。私はアルトリアペンドラゴン。まあ私の宝具を見て分かっていたとは思いますが」

「攻城家の人間として魔術を使いこなせる様にならないと、じゃなきゃまたいじめられる」

いじめ、それはなくならない行為、それは人間として最悪な行為。

それに同情しつつ、凛は菊に優しい笑みを浮かべた。

 

女性のマスターが自分の部屋で、サーヴァントと共に晩酌を楽しむ。

サーヴァントはその醜い顔で缶ビールを飲み、テーブルに置く。

「アゲハごめんね。ランサーを殺せなかった」

「良いのよジェイソン。あなたが悪いんじゃない。悪いのは戦いを放棄したオーディンなんだから」

ジェイソン、本名ジェイソンボーヒーズ。

アメリカで起きたキャンプ場大量殺人事件を起こした殺人鬼である。

少年時代、クリスタルレイクのキャンプスクールでその醜い顔から生徒達にいじめられ。最終的に布袋を被せられ。湖に落とされた。

そんな事が起きればカウンセラーが止めに来るはずだが、なんとカウンセラー達はセックスをしており、その現場を見てなかったのである。

それを聞いて母のパメラは激怒。さらに多重人格になってしまい、カウンセラー達を皆殺しにした。

だがカウンセラーに斧で首を切断され、パメラは死亡する。

それを見ていたジェイソンは母が殺人鬼に成り果てたと言う事を知らず、ただ「無実のママが殺された」と言う事が刷り込まれ、復讐のため肉体を鍛え上げ、復讐を果たす。

しかしそれによって自閉症を患い、母の声が聞こえる様になる。

「復讐しなさい、ママを殺したキャンプ場にいる者達を殺しなさい」

とっ言った感じで母の幻聴に言われ、それに従ってキャンプ場にいるすべての人、動物を殺害する様になる。

だが殺そうとしていた女性の息子、トミーの策略に嵌り、殺されてしまう。

だが皮肉な事に成長したトミーが偶然復活させてしまった。

再び殺戮を繰り返すが、その数年後、甥っ子によって魔法のナイフを刺され、地獄へ落とされる。

そんなジェイソンがサーヴァントとしてここにいる。

別にアゲハは恐怖していない。

願いが叶えばそれでいいのだ。

「カァー!やっぱりビールは最高ね。ジェイソンはどう?」

「初めて飲んだけど、すっごくおいしい。なんで僕生きてる時にビール飲まなかったんだろう」

ジェイソンはビールの事に後悔しつつ、ビールを口に含む。

シュワシュワする炭酸。ちょっとした苦味。それがたまらなく美味しい。

心が子どものジェイソンがここまで絶賛する程ビールはうまいと言う事だ。

晩酌はまだ始まったばかり。つまみを食べながらアゲハとジェイソンは笑い楽しむのだった。



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第3章ニセモノの意地

1日目が終わり。

マスター達は全員就寝。

そして2日目を迎える。

今日は水曜日。

菊【キク】はお風呂に入り、制服に着替え、ごはんを作る。

凛【リン】とアルトリアはホテルで泊まると言って攻城家を出た。

だからまたセイバーと2人だ。

冷や汗を大量にかきながら換気扇を回し、シャケをフライパンで焼いて行く。

なぜ網焼きにしないのか、それは母からの教えがあったから。

母が言うには網焼きをすると他の料理ができなくなるから、らしい。

それを守り、菊はフライパンでシャケを焼く。

さらにインスタント味噌汁を作り、白飯を茶碗にのせ、焼けたシャケを皿にのせ、朝ごはんが完成する。

リビングのテーブルに朝ごはんを1つずつ持って行く。

そして全部持って行ったところでイスに座る。

「いただきます」

朝ごはんを食べ始め、それを未来セイバーはじーと見つめる。

その行動に菊は箸を止めため息を吐く。

「分かったよ。後で血吸って良いから」

菊の言葉に未来セイバーは尻尾をブンブンと動かした。

 

一方その頃、凛とアルトリアはコンビニ弁当を食べ終え、歯磨きを済ませ、これからの事を公園で考える。

「まずはあのニセランスロットをどうにかしないとね」

「正直今すぐニセモノを倒したいところですが、まずはあの蘇生スキルをなんとかしなければなりません」

「そうよね、倒すには完全に肉体を消滅させるしかない、エクスカリバーならそれができる。だけど燃費が悪いから1発で決めなきゃならない。と言うわけでしょ」

「えぇ、ですがニセランスロットのマスターは投影魔術が使えます。エクスカリバーでさえ防いでしまうかもしれません」

「それはないわ、だってエクスカリバーのランクはEX。魔術師でどうにかなる代物じゃないでしょ」

「そうですね、少し謙遜しすぎました」

「そうよ、だから自信持ってニセランスロットを倒しましょ」

「はい」

ニセランスロットを倒したい、そんな思いを胸に秘め、アルトリアは決意を硬めるのだった。

 

一方そのニセランスロット事ジェイソンのマスターであるアゲハは2人分の朝食を作っていた。

と言っても納豆ごはんとウインナーと卵焼きの安価な物だ。

しかしジェイソンにとって日本の朝食は初めてであり、楽しみにしていた物である。

食事がテーブルに置かれ、日本の礼儀座法である「いただきます」をしてからジェイソンは慣れない手つきで箸を使って食べ始める。

「どう、日本の味は」

「おいしいよ、でもママのごはんの方がおいしいかな」

「本当にママの事が大好きなのね」

「うん、もし聖杯を手に入れたらママを蘇らせるんだ」

「そうなんだ、私は家族を蘇らせたい」

「2人で叶えようね、願いをさあ」

「そうね、そのためにも力をつけなくちゃ」

「うん、食べよ食べよ」

アゲハは元々魔術師の家系で、夫は父と母が決めた魔術師だった。

最初は戸惑ったが、次第に惹かれ合い、結婚、2人の子どもも生まれ、幸せな生活を送る、はずだった。

車に乗り、スーパーへ買い物に向かっていたその時、夫と2人の子どもは後ろに座っていて、アゲハは運転していた。

すると後ろから暴走したトラックが追突して来た。

アゲハは前の席に座っていて助かったが、夫と2人の子どもは即死した。

暴走したトラックの運転手も死亡しており、事件の原因はトラックの運転手が持病によって死亡し、その影響で急発進、車に激突したと考えられた。

家族を失い、心を痛める中、冷たいカメラのレンズとネタを見つける事しか考えていない記者の嵐でアゲハの心はボロボロ。

友達に勧められたメンタルクリニックにも通ってみたものの、「安定剤を処方しますね」と、返答は同じ。

友達や父と母は優しくしてくれたが、それだけではアゲハの心は癒えなかった。

最終的に自殺に追い込まれ、マンション10階から飛び降り様とした。

その時止めてくれたのはサーヴァント、クラスアサシンのジェイソンだった。

最初は恐怖したが、同じ境遇であったジェイソンに共感を持ち、さらに聖杯戦争で勝てばなんでも願いが叶うと言う。

聖杯戦争に勝つため、早速実家で聖杯戦争の文献を調べた。

そこには第4次聖杯戦争の際出場したバーサーカーのランスロットの姿が写真に収められていた。

「これだわ」

そう言って思いついた作戦はジェイソンにランスロットの鎧を装備させるという、不可能な事だった。

そう、普通の魔術師なら。

なんとアゲハは見ただけで物をトレースオンできるのだ。

例えばテレビショッピングでフライパンを見たら、それをトレースオンできる。

という形でランスロットの鎧をトレースオンし、ジェイソンに装備させた。

この事によってジェイソンはバーサーカーのランスロットの魔力によって武器を強化するスキルと相手にステータスがバレなくなるスキルが付与された。

またジェイソンの固有スキルを説明すると、

肉体が完全に死滅しない限り何度でも再生、強化、復活する。

ただし肉体は腐敗して行き、理性が失われて行く、

さらに決まった回数復活するとスキルが増え、クラスチェンジする。

〈恐怖再びEX〉

どんな物でも武器として使いこなせる。

〈殺人のエキスパートA〉

どんな環境でも生きる事ができる。

〈環境完全対応A〉

母の幻聴のサポートにより、敵を追い詰める。

〈母の助言B〉

無限に活動できる。

〈悪魔の心臓A〉

早く泳ぐ事ができる。

〈泳ぎの達人B〉

心は子どものまま。

〈時は止まったままC〉

激しい水流を浴びる事で弱体化し、子どもに戻ってしまう。

〈子どもの頃のトラウマA〉

となっている、

ジェイソンはかなり有名で、見られたらすぐに真名がバレるので、それを防ぐためランスロットの鎧を装備し、戦い挑む。

そんな経緯で今戦いに備えて朝食を食べている。

アゲハは元々魔力が少なく、ジェイソンに供給するほどの魔力はない。

その足しになればとごはんを作り、食べさせている。

「おかわり!」

「はーい、今装ってあげる」

こう見ると、まるで自分の息子の様に思える。

その考えが後でとんでもない事になるとは、アゲハは思いもしなかった。

 

夜、菊とセイバーは凛、アルトリアと合流し、サーヴァントを探しを始める。

数十分後、海の近くに面する倉庫であのニセランスロットとマスターのアゲハを発見した。

アルトリアは礼装を装着し、セイバーは剣と盾を構える。

するといきなりニセランスロットが叫びを上げ、剣を二刀流にして、アルトリアに襲いかかった。

アルトリアはインビジブルエアーでカモフラージュした〈エクスカリバー〉で攻撃を防ぐ。

「アーーーサーーー!」

「あなたが例えランスロットを完全にマネしても私には分かる、あなたはニセモノだ! ニセモノになる、それはホンモノを愚弄する事を覚悟してやる事。もしそれがないのなら、私は絶対に許さない!」

アルトリアの怒りの叫びに、ニセランスロットは叫び返す。

「セイバー、凛さんのセイバーさんを援護してくれ、俺がサポートする」

「オッケー、行くわよニセモノ!」

セイバーはニセランスロットを後ろから強襲する。

「トレースオン!」

アゲハは詠唱をすると、ニセランスロットの後ろにバリアを展開する装置を錬成され、セイバーの強襲を防ぐ。

「まずはあのマスターをなんとかしないと」

「なら2人で攻撃しましょう」

「ダメよ、あいつにはトレースオンがある。バリアを張られておしまい」

「じゃあどうするんですか」

「新名、サーヴァントの新名さえ分かれば倒せるんだけど」

「ならこれでどうですか」

菊はセイバーに身体能力を上げる魔術をかけ、サポートする。

それにより、バリアを破壊する事に成功、後ろから攻撃する。

だがフルアーマーのニセランスロットには剣が歯が立たず、逆に腹パンをくらう。

その威力はすざまじく、鎧が大きくへこみ、大きく吹き飛ばされ、アスファルトの地面に叩きつけられる。

「なっ、なんて力なの」

もし鎧を装備していなければ腹に穴が開きあの世行きだった。

それほどの強敵。

一体どうすれば勝てるのか?。

そんな事を考えている間に新たなサーヴァントが出現する、

「あれは、英雄王ギルガメッシュ!?バーサーカーとして召喚されていたのね」

凛が言うギルガメッシュとは、40年前、第4次聖杯戦争の際、召喚されたアーチャーのクラスのサーヴァントである、

10年後の第5次聖杯戦争にて、その傲慢さから衛宮士郎【エミヤシロウ】に敗れ、この世からいなくなった。

今回はバーサーカーとしての参戦。

凛にとって2度と会いたくなかったサーヴァント。

まあギルガメッシュの方は忘れているだろうが、それがサーヴァントの定めである。

「セイバーーーーー!」

ギルガメッシュはそう叫びながら、宝具、〈ゲート・オブ・バビロン〉を発動し、なんとマシンガン2丁を取り出し、装備、アルトリアに向けて乱射する。

「なんであいつ銃なんか貯蔵してるのよ!?」

「えっ、だってそう言うサーヴァントなんでしょう?」

「あいつは古代の物しか貯蔵しないの、だから近代兵器が貯蔵されてる事がおかしいのよ」

凛の説明に、納得の菊、

アルトリアはニセランスロットから一旦離れ、〈エクスカリバー〉で銃弾を弾く。

「アーーーサーーー!」

「セイバーーーーー!」

2騎のサーヴァントにもはや呆れを感じる凛。

「ニセモノのランスロットに理性を失ったギルガメッシュ。もうわけがわからないわ」

マスターにはサーヴァントのステータスを見る事ができる。

菊はそれを使い、ギルガメッシュのステータスを確認する。

「オールステータスAの化け物じゃないですか!?」

「元が強いからね、バーサーカーにしたらとんでもない事になるわ。マスターは頭が良いわね、傲慢な性格で本気を出さないギルガメッシュを理性を失わせる事で本気を出させ、言う事を聞かせやすくするなんて」

「つまりずっと本気モードって事ですか!?」

「そう言う事、銃もおそらくマスターが貯蔵させた物でしょう、だけどセイバーにはそんな物効かないわよ」

凛の言う通り、アルトリアはギルガメッシュの攻撃をすべて防ぎ、斬りに行く。

だがギルガメッシュはマシンガンを捨て、〈ゲートオブバビロン〉から〈ゲイボルグ〉の原型となった〈ゲイボルグプロト〉を取り出し、〈エクスカリバー〉から身を守る。

「アーーーサーーー!」

そこにニセランスロットが乱入しようとする。

しかしセイバーが攻撃を行い、気を逸らさせる。

「ニセモノ、あなたの相手はアーサーじゃなく私よ」

「アッワーーーーーー!」

ニセランスロットはアルトリアからセイバーに標的を変更し、剣を振り回す。

それを盾で防ぎ、攻撃の隙を伺う。

「トレース、オン」

アゲハは詠唱すると、ハンドガンが錬成され、手に収まり、撃ってニセランスロットを援護する。

セイバーが銃弾を盾で防いでいる間に、ニセランスロットが攻撃してくる。

良いコンビネーションだ。

だが、菊とセイバーのチームも負けちゃいない。

菊はセイバーの前にバリアを展開、ニセランスロットの攻撃を防ぐ。

「そろそろ私も、援護しないとね」

凛は持っていたアタッシュケースを開く。

そこに入っていたのは大量の宝石。しかも魔導石だ。

「私の魔術は宝石がないと始まらないのよ」

そう言って魔導宝石を5つほど取り、魔力を注ぎ込み、ギルガメッシュに投げる。

宝石はギルガメッシュの腹部に命中、爆発を引き起こす。

だがその程度ではダメージを与えられず、逆に逆鱗に触れてしまった。

ギルガメッシュは〈ゲイボルグプロト〉を構えながら凛に襲いかかる。

「させるかー!」

そこにアルトリアが割り込み、〈エクスカリバー〉でギルガメッシュの攻撃を防ぎ、鎧を傷つけた。

「セイバーーーーー!」

「バーサーカーにまで落ちましたか。まあそれはマスターの策略による物でしょう。だとしても英雄王、あなたのその姿は見たくなかった」

アルトリアの嘆きの言葉に、ギルガメッシュは少しうろたえのか、後ずさりする。

が、すぐ持ち直して、〈ゲイボルグプロト〉を捨て、ゲートオブバビロンからアサルトライフルを取り出し、アルトリアに向けて乱射する、

「そんな物!」

アルトリアは〈エクスカリバー〉で銃弾を弾き、一気に距離を詰める。

「てりゃー!」

斬りこもうとしたその時だった。 

ギルガメッシュは最強の宝具〈エア〉を取り出し、〈エクスカリバー〉を防いだ。

一方その頃、ニセランスロットとセイバーの戦いは、ニセランスロットが優勢で事が進んでいた。

連撃に追い詰められ、ピンチになる。

「さっき、もう1人のセイバーが、ニセモノになる事はホンモノを愚弄する覚悟があるからできる事、なんて言ってたけど、そんな物さらさらないわ。これは勝つための行為。ニセモノだろうがホンモノだろうが関係ない。ただ勝てれば良いのよ」

アゲハのその言葉に菊は「確かに」と納得する。

「納得してる場合!、あなたのセイバーがやられそうなのよ!少しは心配しなさい!」

「心配?、セイバーはそんなカンタンにやられる様なサーヴァントじゃないですよ」

その言葉を聞いたセイバーのやる気が上がり、なんとニセランスロットの剣を両方吹き飛ばした。

あまりの衝撃に、手が痛み、後ずさりする。

ニセランスロットは吹き飛んだ剣を取ろうとすると、パメラの幻聴が聞こえてくる。

『ダメよジェイソン。その剣を取ったらその隙にやられてしまうわ。こう言う時はアゲハがトレースオンしてくれるのを待つのよ』

(分かったよママ)

ニセランスロットは剣を取るのをやめ、アゲハがトレースオンしてくれるのを待つ。

「隙やり!」

その隙をついてセイバーが剣を振り下ろす、

しかしフルアーマーのニセランスロットにまた剣が弾かれる。

「こいつ強すぎでしょう!?」

そう叫びたくなるほど鎧が硬く、力も強い。

一体どうすれば良いのか。

菊は1つ思いついた。

それは服を脱がす魔術〈スティール〉を使用する事である。

元々イタズラ目的で使うために独学で覚えた魔術だが、まさかこんな緊急事態に使うとは思わなかった。

「スティール!」

その言葉に凛、そしてアゲハは顔を赤くし、恥ずかしくなる。

〈スティール〉の影響で、ニセランスロットの鎧が脱げ、正体がバレる。、

ホッケーマスクを被り、薄い緑のシャツに上に茶色いジャケットを着込み、ジーンズを皮製のベルトで留め、紺色の靴を履いている。

「ニセランスロットの正体がジェイソン!?」

「まさかアサシンとして召喚されていたとはね、菊君、弱点は水よ、ジェイソンを海に誘導して突き落とせば勝ち目があるわ」

「分かりました。セイバー、話は聞いてたよなぁ」

「オーケー、任せておきなさい!」

セイバーはジェイソンに攻撃を仕掛け、作戦を実行するのだった。 

 



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第4章キャスターであり漫画家である

ジェイソンをセイバーは連続攻撃し、攻める。

「トレースオン」

アゲハはジェイソンの手元に大剣を錬成し、すぐに反撃に入る。

「鎧が脱げたのは驚いたけど、僕が弱体化したなんて思わないでね」

「バーサーカーになりすませるぐらい強いのは承知の上よ、だから誰もあなたをバカにする人なんていないわ」

セイバーの言葉に、ジェイソンはホッケーマスクで隠れているが、喜んでいる。

だがそれで戦いをやめるはずもなく、大剣を片手でセイバーを両断しに行く。

セイバーは華麗に大剣を交わし、逆に腹を斬りつけ、傷付け、血を流させる。

『ジェイソン!、大丈夫!』

(全然平気だよママ)

ジェイソンは大剣をセイバーに投げつける。

思わず剣で弾くセイバーだが、その隙を突かれ、ジェイソンに首を掴まれる。

「セイバー!」

菊【キク】は叫びを上げると、魔弾をジェイソンに向けて放つ。

魔弾がジェイソンの背中に命中し、怯んでセイバーから手を離す。

セイバーはジェイソンの胸に剣を突き刺し、貫通させる。

それによってジェイソンは横に倒れ、動かなくなる。

「なによ、簡単にやられたじゃない」

「油断しないで、ジェイソンには蘇生のスキルがあるわ」

セイバーは笑みを浮かべ、それを凛【リン】は注意した。

一方アルトリアとギルガメッシュは、熾烈な戦いを繰り広げていた。

「セイバーーー!」

「くっ」

ギルガメッシュの〈エア〉、

アルトリアの〈エクスカリバー〉、

どちらも最強の宝具、

アルトリアは隠しても仕方ないと、〈エクスカリバー〉のインビジブルエアーを解除し、本気モードで挑む。

「行きますよ英雄王、私も本気で行かせてもらう」

解放された〈エクスカリバー〉を横に振り、それをギルガメッシュは〈エア〉で防ぐ。

その時だ。

銃声が聞こえ、銃弾がアルトリアの左ふくらはぎに命中する。

体制が崩れた隙を見逃さず、ギルガメッシュは〈エア〉でアルトリアを攻撃する。

「ぐわっ!」

あまりの力に大きく吹き飛ばされ、アスファルトの地面に叩きつけられる。

「セイバー!」

「大丈夫です、それより気をつけてください、この近くにもう1人のサーヴァントがいます」

銃を使うサーヴァント。

「アーチャーが不意打ちを仕掛けた?」

果たしてそうだろうか。

カーボーイのアーチャーが不意打ちなどするだろうか、

凛がそう考えた時、ある考えが閃く。

「キャスター、そうよ、キャスターよ」

「なにを言ってるんですか、キャスターは魔術師ですよ、銃なんか使うわけが」

「この聖杯戦争のサーヴァントはかなりの確率で近代兵器を使ってる、だからアーチャーと決めつけるのは良くないわ」

凛の言葉に、不服そうな菊。

自分の中の常識を否定されたのだ、思春期ならなおさらである。

とりあえず後ろを振り返ると、アーチャーとは違うサーヴァントが銃の銃口を向けていた。

40代と思われるが白髪と黒髪が入り混じったボサボサな髪をしており、英語で泥棒と書かれた黒いシャツの上にダウンジャケットをパスナーを開けた状態で着込み、ホルスターを2個が取り付けあり、白いズボンをベルトで留め、刀をベルトを入れる場所に収めている。

「あなたがキャスターね、不意打ちとは良い度胸してるじゃない」

「ディレクターにもそんな感じの事を言われたよ。まったく自分の作品にケチをつけられるとは、本当にいやになるよ」

キャスターはそう言いながらホルスターからリボルバーを取り出し、二刀拳銃になる。

「まさか自分が、自分の作品のスキルと宝具を使えるなんて、嬉しいなぁ」

左手にはワルサーP38、右手にはリボルバー。

リボルバーのハンマーを下ろし、トリガーを同時に弾き、ギルガメッシュ、セイバーに向けて銃弾が発射される。

ギルガメッシュは〈エアー〉で弾き、セイバーは盾で防ぐ。

次の瞬間、ジェイソンが復活し、セイバーの足を掴み、転ばせる。

そして再びセイバーの首を絞め、殺そうとする。

そうはさせじと、菊は魔弾を、凛は魔導石を放つ。

「トレース、オン」

アゲハの投影魔術によってジェイソンの側にバリアを展開される装置が錬成され、バリアが展開、魔弾と魔導石を防ぐ。

「これで終わりにしてあげる」

「それは、どうかしら」

セイバーは人格をエリザベートからカーミラに入れ替わる。

「私の宝具、とくと味わいなさい」

そう言うと、宝具が発動し、後ろから処刑器具、アイアンメイデンこと〈ファントムメイデン〉がジェイソンを吸い込んで行く、

「君も道連れにしてやる」

ジェイソンはセイバーを側に引き寄せ様とする、

しかしその前に〈ファントムメイデン〉にジェイソンの体が入る。

そして閉じる。

手は入っていないが、倒すには十分だろう。

ジェイソンの手から力が抜け、大量の血が溢れ出す。

血を浴びて幸せそうなセイバーに、アゲハは笑みを浮かべる。

それを見た菊はその理由を分かっていた。

ジェイソンはなんとでも復活する、宝具を使ったところでなんにもならない。

それぐらいセイバーも分かっているはずだ。

〈ファントムメイデン〉が消滅し、ジェイソンが出て来て、横に倒れる。

「この隙に〈エクスカリバー〉を放ってれば良いんだけど、今絶賛戦ってるからできないのよね」

凛が独り言を言っている間にキャスターは凛にワルサーP38の銃口を向ける。

それを見た菊は凛の後ろに立ち、バリアを張る。

放たれた銃弾はバリアによって防がれた。

「ふーん、ならこれはどうかな」

ワルサーP38とリボルバーをホルスターにしまい、刀を鞘から引き抜き、逆手で構える。

「ぜやー!」

勢いのまま、バリアを斬りつける。

すると、バリアが真っ二つになる。

さらに斬りに行くが、菊の魔弾をくらい、後ずさりする。

「結構痛いなぁ、サーヴァントになってもここは変わらない訳か」

まるで試しているかの様な発言をする。

それに菊は容赦なく、キャスターに向けて魔弾を放つ。

だがキャスターは刀で魔弾を斬る。

「そんな物かい」

「やっぱり試していたのか、自分の、サーヴァントとしての耐久力を」

「そう言う事だよ、元々サーヴァントはただの人間だ、だから実感が沸かない、でも大体分かった。自分のステータスをね」

「あんたバカなの、そう言う時はマスターに見てもらえば・・・」

「言ってみたさ、だけど断られたんだ、なんでか知らないけどね」

なんとも不思議なマスターだ。

普通、ステータスを見て今後の戦いに備えるのが普通だ。

だがそれをしない。

そこまで勝ちを確信しているのか、またその逆か。

そう考えている間に、キャスターが刀で攻撃を仕掛けて来る。

それを見たセイバーが加速し、キャスターの攻撃を盾で防ぐ。

「キャスターのくせに魔法を使わないのね」

「僕は魔法使いじゃない、漫画家さ」

その言葉でだいぶ新名が絞り込めたが、まだ分からない。

「僕を忘れないでよ」

いつの間にかジェイソンが復活し、セイバーに大剣を振り下ろす。

それに追い打ちをかける様に、キャスターがリボルバーの銃口をセイバーに向けて発砲する。

絶対絶命のピンチにアルトリアが魔力放出でジェイソンを吹き飛ばす。

そして銃弾をセイバーは盾で防ぐ。

その間にギルガメッシュが〈エアー〉でアルトリアに攻撃を仕掛けて来る。

だが瞬時に反応し、〈エクスカリバー〉で防ぐ。

立ち上がったジェイソンは「マママ、キキキ」と息を吐く。

「アゲハ、弓とゲイボルグをお願い」

「分かった。トレース、オン」

アゲハは文献で見た第5次聖杯戦争でランサーが使っていたと言う〈ゲイボルグ〉とアーチェリー用の弓をジェイソンの手元に錬成する、

弓に〈ゲイボルグ〉を弓矢の様にセットし、弦を引き絞る。

狙いはギルガメッシュだ。

魔力が〈ゲイボルグ〉から放出し始め、魔力の量を感じさせる。

「ゲイ、ボルグ」

放った。

あまりの威力に弓が粉砕される。

一直線にギルガメッシュの心臓部に向かって行く。

それに気づいたギルガメッシュは鉾盾で登場した最強の盾と商売人が唄った〈防技〉を〈ゲートオブバビロン〉から取り出し、防ごうとする。

〈ゲイボルグ〉が〈防技〉と激突し火花を散らす。

アルトリアは巻き込まれない様に後ろに素早く下がる。

「うおー!」

叫びを上げるギルガメッシュ。

「トレース、オン」

そこに追い打ちをかける様にジェイソンの手元に3本の弓矢を放てる弓と〈ゲイボルグ〉3本を錬成する、

「そんなのあり!?」

凛の叫びを尻目にジェイソンは弓に〈ゲイボルグ〉3本をセットし、ギルガメッシュに狙いをつける。

アゲハの凛の夫である士郎【シロウ】と違い、投影魔術は見ただけで錬成でき、ランクが落ちない、そのかわり改良や修理、強化ができない。

共通点として神聖持つ物、例えば〈エクスカリバー〉や〈エア〉などを錬成すると、あまりの力に自滅してしまう。

「ゲイ、ボルグ、3連弾!」

放った。

あまりの威力に弓が粉砕される。

3本の〈ゲイボルグ〉がギルガメッシュに襲いかかる。

〈防技〉で防ぐが、その威力は凄まじく、さらに大爆発を引き起こす。

「オールAランクの化け物があんな事でやられるはずがない」

「そうよ、あのギルガメッシュが簡単に死ぬはずがない、なにか仕掛けて来るわよ」

凛の言葉にセイバーとアルトリアは身構える。

爆発で起きた土煙から高笑いとエンジン音が聞こえる。

なんとバイクに乗ったギルガメッシュがジェイソンを轢きに来た。

『避けるのよジェイソン!』

突然の事だったが、〈母の助言B〉が発動し、避ける事ができた。

それを見たアルトリアは〈エクスカリバー〉の力を解放し、振りかぶる。

「エクス、カリバー!!」

放たれた閃光がギルガメッシュとジェイソンに襲いかかる。

『避けるのよジェイソン、早く!』

母の声に応え、ジェイソンは攻撃を交わすが、ギルガメッシュは気づく間もなく巻き込まれた。

「やった。ジェイソンには避けられたけど、ギルガメッシュをやれたぞ」

「えぇ、これで後5人ね」

勝ったと確信する凛と菊。

だが次の瞬間、その考えは間違いだと実感する。

なんと〈ゲートオブバビロン〉から雄叫びを上げながらギルガメッシュが出て来た。

「自分自身を貯蔵してエクスカリバーを回避するなんて」

「クッ、これ以上エクスカリバーは撃てません、もう策がなくなった」

アルトリアの言葉にアゲハはチャンスと言わんばかりに、ジェイソンの手元ににガトリングガンを錬成し、アルトリアに向けて乱射させる。

それを援護する様にギルガメッシュは〈ゲートオブバビロン〉からマシンガンを取り出し、連射する。

菊はアルトリアの前にバリアを張り、銃弾を防ぐ。

するとキャスターが菊の背中にワルサーP38の銃口を向ける。

笑みを浮かべ、トリガーを弾く。

しかしセイバーが瞬時に反応し、銃弾を防ぐ。

そしてセイバーはキャスターに急接近し、剣を振り下ろす。

攻撃をワルサーP38とリボルバーをクロスさせて防ぐ。

すぐに弾き返し、キャスターはワルサーP38の銃口をセイバーに向け、さらにリボルバーのハンマーを下ろす。

だが接近戦において銃よりも剣の方が強い。

セイバーは剣を振るう。

しかし剣が触れる直前に霊体になられてしまい、逃げられた。

それに舌打ちしつつ、カーミラからエリザベートに入れ替わる。

ターゲットをジェイソンに切り替え、加速する。

ガトリングガンが弾切れになり、その場に捨てるジェイソン。

それを見たアルトリアはその隙をついて〈エクスカリバー〉を構えながら、ジェイソンに襲いかかる。

「セイバーーーーー!」

叫びを上げたギルガメッシュがアルトリアの攻撃を〈エア〉で邪魔をする。

それを見たアゲハは魔力がそろそろ切れそうなので、ジェイソンを霊体化させ、撤退する。

「待って!」

アルトリアは叫び、セイバーが追跡しようとする。

「よせセイバー、単独行動は危険だし、なにより罠かもしれない」

「なによ、マスターはジェイソンのマスターを倒したくないの」

「そう言う事を言ってるんじゃない、俺が言いたいのはセイバーが心配だって事だよ」

「本当にマスターは心配性ねぇ、まあ良いわ、言う事を聞いてあげる」

「ありがとう、セイバー、まずはギルガメッシュを倒そう、できるだけ強いのは排除したい」

「オーケー、行くわよアルトリア、あいつを倒すわよ」

「えぇ、共に英雄王を倒しましょう」

アルトリアとセイバーは一斉にギルガメッシュに襲いかかる。

『戻れバーサーカー、いくらお前でも2体の相手はきついだろう』

マスターであるキールのテレパシーを聞いてギルガメッシュは〈ゲートオブバビロン〉からバイクを取り出し、乗り込み、その場から退散した。

「逃げられた。と言うより見逃してくれたのかしら」

「そうでしょうね、今の私達ではギルガメッシュもジェイソンにも勝ってない」

「ならどうすれば良いんですか?」

「とりあえず分かった事、それはアルトリアのエクスカリバーでジェイソンを肉体残さず蹴散らす、ギルガメッシュは私、アルトリアで倒す、そう言う事でしょう」

セイバーの説明に菊と凛は納得する。

だが簡単にまとめられてアルトリアはため息を吐く。

「そんな簡単に言わないでください、エクスカリバーの解放は凛の魔力を持ってしても1発が限界、さらにギルガメッシュは強敵です、しかもバーサーカーになった事で武器を放つのではなく使う様になった。つまり20年前の第5次聖杯戦争よりも強くなっていると言うわけです」

「なによ、あなた勝ちたくないわけ?」

「おいおい、ケンカを吹っかけるなよ、ごめんなさいアルトリアさん、ウチのセイバーが失礼な事を言ってしまって」

「いえ、こちらこそ指揮を削ぐ様な事をすいませんでした」

お互い謝るところがシュールで凛は笑う。

「ハハハ、とりあえず敵もいなくなったし、私はホテルに行くわ、攻城君も気をつけて帰りなさい」

「分かりました。これからもよろしくお願いします」

凛とアルトリアはホテルへ、菊とセイバーは家に帰った。

 

一方その頃オーディンは服を軽装に着替え、コンビニに行って、ハンバーグ弁当を購入し、アパートに帰り、レンジでチン、座卓に弁当を置き、フタを開ける。

ハンバーグを箸で小さく切り、食べる。

「うまい、今の人類はこんなうまい物を安く食えるのか」

擬似サーヴァントと言うのは食事を摂らなくてもいいのだが、オーディンは人類の進化を体感するため、食事をする。

「だが食べたら歯磨きをしなければいけない、だがこれも人の文化だ、やるしかない」

歯磨きをしなければならない事を仕方なさそうに弁当を食べるのだった。

 



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第5章1人目脱落者

ジェイソンが死んだ回数、4回。

3回目で〈怪力A〉を獲得。

アゲハはイルミネーションが行われている噴水のある公園のベンチに座っている。

「ジェイソン」

「なに、アゲハ」

「明日の朝ごはんなにが良い?」

「うーん、あっ、前スーパーで見たスンドゥブって言う辛いスープが食べたいな」

「分かった。じゃあスーパーで買いましょうか」

「うん、楽しみだなぁ」

ベンチから立ち上がり、スーパーに向かった。

 

次の朝、

菊【キク】は学校で授業で歴史を学んでいた。

個人的には好きな項目で、日本で好きな偉人は弁慶。海外で好きな偉人はジャンヌダルクである。

だがここは魔法科高校、授業では魔術師の歴史を学ぶ。

歴史の教師が聖杯戦争の歴史についての事を喋る。

「聖杯戦争とは英霊、サーヴァントを召喚し戦い合うバトルロワイヤルで、基本は7騎のサーヴァントの殺し合いだ。サーヴァントはそれぞれクラスがある。ゲームで言うところのジョブだな。ステータスが高いセイバー。遠距離攻撃を得意とするアーチャー。魔力消費が低くいランサー。乗り物を武器として扱うライダー。魔術を得意とするキャスター。隠密攻撃を得意とするアサシン。ステータスを強化したバーサーカー。イレギュラーとしてアヴェンジャー。召喚する事できないサーヴァント聖杯戦争を管理するルーラー。この9種類のサーヴァントがいるわけだが、サーヴァントは自分では選べない。しかし選別できる方法がある。それは触媒を用意する事だ。例えばアーサー王の持つエクスカリバーの鞘を触媒にすれば確実にアーサー王がサーヴァントとして召喚される。ただしこの場合は入手が困難な物が多く、マスター達の悩みの種だった。そしてマスターは誰でもなれるわけではない、聖杯に選ばれた者しかマスターにはなれない。さらにサーヴァントを従わせる事ができる令呪と言う物が存在する。しかし令呪は使い捨てで、3回しか使えない。言わば従わせるための最後の手段と言うわけだ」

分かりやすく説明してくれているのはありがたいが、これによって聖杯戦争をやりたがる生徒が出てきたらどうするつもりなのだろうか。

菊は令呪が刻まれた左手を包帯を巻いて隠している。

友人と教師には包丁で切ったと説明している。

「さて、聖杯戦争では様々な事件が起きていた。まず第4次聖杯戦争でシリアルキラーがマスターになってしまった。さらに第5次聖杯戦争では戦いを管理するはずの神父がマスターを殺害した。さらにサーヴァントがサーヴァントを召喚した。別の聖杯戦争ではマスターを次々とサーヴァントに殺害させるマスターが現れた。さらに8番目のサーヴァントアヴェンジャーが召喚された。とっ、色々な事件があった。みんなにはできればマスターにならないでほしいと願っている、マスターになると言う事は、死を意味する事だからな」

歴史の教師は真剣な顔で死を強調する。

とっ、終わりのチャイムが鳴る。

「授業はここまで、もしマスターになってしまった者がいれば令呪をすべて使って、指定された教会に保護してもらってくれ」

そう言って歴史の教師が出て行った。

すると稔【ミノル】が菊に話かけてくる。

「なあ菊、菊の家てっ有名な魔術師の家系だろう」

「もしかして俺か俺の家族が聖杯戦争に出ている、なんて思ってないか? そもそも聖杯戦争なんて起きてるか分からないのにさぁ」

「そうだけど、もし聖杯戦争が起きてたら菊とその家族がマスターになる確率が高いだろう」

「なに言ってるんだよ、それを言ったらみんなマスターに選ばれる確率だって低いわけじゃない、先生が言ってただろうシリアルキラーでもマスターになれるって」

「まあな、悪い、へんな事言っちまって」

「へんな事?、いつそんな事言ったんだよ?」

「菊はなんかところどころ、抜けてるよな」

「ほえ?」

菊の鈍感さに、稔は苦笑した。

 

一方その頃オーディンは、戦いを備えるため、〈スレイプニル〉を槍から、幻獣に変化させる。

それは馬の様な姿で足が8本あり、装甲を持つ。

「行くぞスレイプニル、私達は願いを叶える、そのためにはまず、サーヴァントを倒さなければならない」

オーディンの願い、それは、自分が戦死した戦争、ラグナロクをなかった事にすると言う物。

〈スレイプニル〉を走らせ、サーヴァントを探しに向かった。

数時間後、変装しているアーチャーを発見する。

なぜ分かったのか、それは1度戦っているからだ。

あの時はすぐに逃げられたが、今度は倒すとアーチャーに近かづく。

「貴様、こんなところでなにをしている」

「オーディンか、君こそ昼間から幻獣なんかに乗って、悪い意味で目立ってるよ」

アーチャーの言う通り、人が写真を撮り、ツイッターに拡散したり、警察を呼んでいたり、悪い意味で目立っている。

「殺し合いに目立つも目立たないもないだろう、さあ戦え、私の固有結界でな」

「まさか、第3宝具!?」

「そのまさかだ、今度こそ息の根を止めてやる、ラグナロク!」

オーディンの第3宝具、〈ラグナロク〉が起動する。

一瞬のうちに固有結界が広がって行き、夕焼け空が暗く、地面には武器が突き刺さり、炎が燃え上がっている。

アーチャーは礼装を装着し、リボルバーを素早く取り出し、オーディンに銃口を向ける。

だが〈スレイプニル〉を走らせ、加速するオーディンに、狙いが定まらない。

「討ち取れ、グングニル!」

〈グングニル〉を逆手に持って、アーチャーに向けて投げつける。

魔力を放出しながら、マッハのスピードで飛んで行く。

そんな物を避けれるはずがなく、〈グングニル〉はアーチャーの腹を貫き、オーディンの手元に戻って来る。

ドボドボと血が流れ、血を吐くアーチャー。

悶え苦しみ、右手で傷口を塞ぐ。

オーディンは突き刺さっているハンマーを拾い、アーチャーに向かって行く。

(やっぱ人間の僕じゃ神には敵わない訳か、ごめんマスター、願いを叶えられなくて、でも最後のあがきぐらいしてみせるよ)

諦めを感じつつ、アーチャーはオーディンの頭に銃口を向け、宝具を発動する。

宝具の名はサンダラー。

リボルバーを敵に向けて3連射する大技。

「アーチャーよ、お前のその覚悟、しかと受け止めよう、さあ決闘だ」

〈スレイプニル〉を走らせ、ハンマーを振りかぶるオーディン、

どんどんと近づいて来る、

(ギリギリで撃つ、そうすれば確実にあいつを倒せる)

死ぬかもしれない状況で、アーチャーの手は震えていない。

極限状態で放たれる必殺の3連射。

(ここだ!)

リボルバーを3連射し、とどめを刺しに行く。

だが銃弾をオーディンは〈スレイプニル)を飛び降り回避、ハンマーをアーチャーに向けて投げる。

さらに〈グングニル〉を投げ、2段構えをとる。

〈グングニル〉がアーチャーの心臓部を貫き、次にハンマーが顔面に命中し、頭蓋骨を破壊する。

戦闘不能になったアーチャーは、光になって消えて行った。

「これこそ、人が言うオーバーキルって奴だな、これで標的は後5人、行くぞスレイプニル、次の戦いに向かうぞ」

固有結界である〈ラグナロク〉を解除し、〈スレイプニル〉に乗り、人目を気にせず、走り出した。

 

一方その頃菊は稔と共に、教室でおにぎりを食っていた。

食べているのはコンビニの冷えたおにぎりだ。

だがコンビニのおにぎりと言う物は冷えてもうまい。

タラコおにぎりを頬張り、10回ほど噛んで、飲み込む。

「聞いたか稔、今日はあのゲームで新キャラが出るぜ」

「もちろんだ、後でゲーセン行こうぜ」

そんな話をしていると、女子3人組が呆れた表情で近づいて来た。

「あんた達ってホントゲーム好きよね」

「悪いかよ、人の趣味をバカすると言う事は自分の趣味をバカされてもいい覚悟があると言う事、お前らにそんな覚悟があるのかな」

「そんな中二病言葉を言う奴に言われたくない」

「正直キモい」

「お前らだってスマホゲーぐらいやるだろう」

「やるわよそれぐらい」

「ならお前らも同じだな」

「はぁー!?」

「なによそれ、マジキモい」

「一緒にしないで」

「まったく、悪口言うぐらいなら俺達に構わないでくれ、みんなの飯が不味くなるだろ」

「さっさとトリオ揃って弁当食えよ、時間がなくなるぞ」

正論を言われ、悔しく思いつつ、弁当をバックから取り出し、教室を出て行った。

 

一方その頃、アゲハとジェイソンはアゲハの実家に帰り、武器の資料を見ていた。

「アゲハ、これで僕達勝てるかなぁ」

「いいえ、こんなんじゃあいつらには勝てない、風の軍神にアーサー王、英雄王までいる。ジェイソン、あなたは私の大事な友達よ、だからこそ私はあなたの願いを叶えたいの」

「アゲハの願いも叶えないと、でなきゃ友達失格だぁ」

「ありがとう、ジェイソン、あなたを私は絶対に裏切らない」

「僕もだよ、アゲハ」

友情が高まったところをオレンジジュースとお菓子を持って来た母に見られる。

「本当に仲が良いのね」

「お母さん!?」

「どうしたの?、アゲハ」

「ふふ、恥ずかしいのよね」

「恥ずかしい?、なにが?」

「あのねジェイソン、マスターとサーヴァントには3つの生き方がある、1つ目は仲良く一緒に協力して戦う、2つ目は令呪で使かって従わせる、3つ目は絶対服従、アゲハとジェイソンは1つ目にあたるわね、そっちの方が個人的には良いんじゃないかしら、仲が良いと言う事はそれだけ信頼が厚いと言う事、あなた達ならきっと聖杯を手に入れられるわ、さっ、休憩して、お菓子を食べてちょうだいな」

「ありがとうお母さん」

アゲハとジェイソンはお菓子の詰め合わせを食べ始め、リフレッシュするのだった。

 

一方その頃、凛【リン】とアルトリアは、スーパーで弁当とお茶を買い、テーブル席で食べていた。

「セイバー、まずはジェイソンを先に倒すわよ、じゃないと後で後悔する事になるわ」

「そうですね、ですがジェイソンを倒すには完全に肉体を消滅させなければ倒せない、何回も言いますが私の宝具は凛の魔力では1発しか撃てません、しかも相手には私の真名が複数のサーヴァントにバレています」

そう言いながらアルトリア、弁当の生姜焼きを食べる。

「モキュモキュ、もう1つの手として、ランサーの倒させる、と言う物があります、マスターはランサーの槍を警戒し、バリアを張った。つまりランサーの槍にはジェイソンを消滅させる力がある」

「問題はジェイソンのマスターの投影魔術よ、あれをなんとか封じないとジェイソンは倒せないわ」

「マスターを倒せば・・・・・失礼、聞かなかった事にしてください」

アルトリアは申し訳なさそうにそう言うと、ご飯を食べ、タケノコの醤油づけを幸せそうに食べた。

 

夜、菊は待ち合わせの場所である公園に向かう。

「確かここだよなぁ」

「間違いないでしょ」

辺りを見回していると「攻城君!」と凛が菊に近づいて来る。

「凛さん、こんばんは」

「こんばんは、今回もみんなで頑張りましょ」

「はい!」

サーヴァント探しに向かいに行こうとすると、金髪の女性が不機嫌そうに立っていた。

無視して公園を出ようとすると、金髪の女性は阻んで来る。

「私達になにか様かしら?」

凛の問いかけに、申し訳なさそうに「申し訳ございません」と謝罪する。

「私は夏画の聖杯戦争を管理しているシスターです」

「ふーん、あなたが言わゆるゲームマスターさんね」

「そうです、そして8人目のサーヴァントでもあります」

「つまりルーラーって事?」

「いえ、クラスはシールダーです、ただ私が憑依してるシスターがこの聖杯戦争を完全な物にするために力がほしいと擬似サーヴァントになりました。ちなみにですが、7割がシスター、3割が憑依した神霊の人格となっています」

「聖杯戦争を完全な物にねぇ、聖杯が悪に染まっているのよ、その時点で完全ではないわ」

「確かにそうですね、ですが、始まってしまった以上、役目は果たさなければいけません、なので部外者には消えてもらいましょうか」

「部外者?、凛さんとアルトリアさんを倒しに来たって事!?」

「そう言う事です」

シールダーは霊装を装着し、剣と盾を構え、戦う戦闘体制に入る、

「逃げるわよ攻城君」

「はい!」

凛と菊はシールダーから逃げ出す。

「逃がしませんよ」

剣を構えながら、追いかけるシールダー。

そこにオーディンが立ち開かる。

「ランサー、退いてください、部外者は速やかに排除しなければなりません、協力してあの方を倒さなければ」

「なにを言っている、お前は私にとって部外者だ、さっきまでの話は聞かせてもらったが、私はアルトリアと言う剣士と戦ってみたい、だからお前にやらせるわけにはいかない」

「さすがは軍神と言ったところでしょうか、私も戦いの女神、戦える事に今興奮してます」

「ほう、ならばここで殺し合いを始めるとするか、行くぞ、シールダー!」

 

「追いかけて来ないですね」

「たぶんだけど、サーヴァントに襲われてるんじゃないかしら、ルーラーじゃなくてシールダーだからかもね、このまま距離を離して、サーヴァントを探しましょ」

「凛さん、質問なんですけどいいですか?」

「なに?」

「凛さんは聖杯を壊しに来た部外者なんですよね、だからシールダーに狙われてる」

「そうよ、だから私とお別れしても良いのよ」

菊は「なにを言ってるんだ?」と言う表情をする、

「俺が1番嫌いな事、それは仲間が俺のためにいなくなる事です、だから、だからそんな事言わないでください」

以外すぎる返答に、凛は驚きを隠せない。

そしてすぐに薄っらと笑みを浮かべ、一呼吸。

「ごめんなさいね、私ったら、なんか大人ぶった事言っちゃって、分かった。攻城君、あなたがそう言うなら、絶対に4人でこの聖杯戦争、勝つわよ」

「はい!」

団結が高まったところで、マスターとサーヴァントを探す。

その時だった。

銃声が聴こえて来る。

菊はとっさにバリアを張り、銃弾を防ぐ。

撃った犯人は、バーサーカー、ギルガメッシュだった。

アルトリアとセイバーは霊体から姿を現わす。

アルトリアを見て、ギルガメッシュは叫びを上げ、〈ゲートオブバビロン〉から〈デュランダル〉と〈ゲイボルグプロト〉を取り出し、アルトリアに襲いかかる。

アルトリアは〈エクスカリバー〉を手に取り、攻撃を防ぐ。

「セイバーーーーー!!」

「あなたを不憫だとは思わない、それどころか滑稽に思える、そのままの方が良い、そう思えるぞ英雄王」

ギルガメッシュの攻撃を弾き返し、その隙をセイバーは逃がさない。

「テリャー!」

剣を振り下ろし、鎧の隙間を縫って、肩を斬りつける。

血が流れ出し、ギルガメッシュは悲鳴の様な叫びを上げた。

 

 



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第6章バーサークアサシン

菊【キク】と凛【リン】、アルトリアとセイバーがギルガメッシュに襲われている頃、アゲハとジェイソンはかなり遅い夕飯を食べていた。

その理由は実家から帰るまでに高速道路が渋滞し、こんな時間になってしまった。

ジェイソンは腹を空かせ、アゲハが買ってきた牛丼特盛を食べ始める。

添えられた紅生姜を食べてから牛肉を食べる

シャキシャキとし、ピリリと辛い紅生姜とそれに合う牛肉。

10回ほど噛んで、飲み込む。

「うん、これはおいしい、食リポみたいな事できなくてごめん」

「良いのよ、あなたが美味しいと思うならそれで良いの」

アゲハの言葉にジェイソンは縦に首を振る。

アゲハも牛丼を袋から取り出し、食べ始めた。

 

2時間経過した頃、ミラとヒトラーはキャスターと交戦していた。

宝具〈パンツァーアンドソールドエーテン〉で召喚した戦車と兵士でキャスターを攻撃する。

だが、キャスターは逆手に持つ刀で砲弾を切断する。

「あの刀をなんとかしなければ、あいつを倒せない」

「ライダー様、どうするの、このままだと逆にやられちゃうよ」

「分かっている、ドイツ軍の技術をなめてもらっては困る」

かつてドイツ軍の指揮官だったヒトラー。

キャスターを倒すため、兵士に砲弾を詰めさせ、放つ。

さらに戦車達が一斉に砲弾を放つ。

それにキャスターは刀で砲弾を切り裂く。

「でぃやー!」

戦車に向かって、刀を振るう。

すると戦車は両断され、兵士達は動揺しながら戦車から出て、アサルトライフルを構える。

「僕がまさか自分のキャラクターみたいに戦えるなんて、楽しいねぇ」

アサルトライフルから放たれる銃弾を刀で斬って行く。

「でぃやー!」

刃が兵士達を斬り殺し、ヒトラーの乗る戦車に接近、斬りに行く。

戦車に乗っていた兵士達はヒトラーを守るため、戦車から出て、アサルトライフルをキャスターに向けて連射する。

それでもキャスターは刀で銃弾を斬り、兵士を〈ワルサーP38〉で撃ち抜く。

「体が軽い、これがサーヴァントになると言う事か」

笑みを浮かべながら、刀を構え、ヒトラーが乗っている戦車を両断しようとする。

「その時を待っていたぞ!」

ヒトラーの叫びに、ミラは死霊術で兵士の死体を動かし、キャスターを捕まえる。

「なに!?」

驚きを隠せないキャスターに、ヒトラーは兵士の起爆スイッチを押す。

すると兵士が爆発する。

血が飛び散り、戦車にかかる。

おそらく兵士のチョッキに爆弾を仕掛けてあったのだろう。

「アハハ、兵士さんかわいそう、ライダー様を守って死んだのに、最後は爆発オチなんて」

楽しそうに言うミラに、ヒトラーは冷たい表情をする。

「兵士は戦争において捨て駒に過ぎない、だから感情移入する事は死を意味する」

「ライダー様残酷だねぇ、でもそれでこそライダー様だよ」

「・・・、褒め言葉として受け止めておこう」

ミラとヒトラーの前で消滅して行くキャスター。

「結局あいつの真名分からなかったね」

「私の思う限り、あれはルパン3世の作者のモンキーパンチだ」

「なんで分かるの?」

「今回の聖杯戦争は私もそうだが近代兵器を使うサーヴァントが多く召喚されている、キャスターは〈ワルサーP38〉〈リボルバー〉、おそらくだが〈斬鉄剣〉と3つの宝具を使用していた。そこから考察するに、ルパン3世とその仲間達の印象がサーヴァントとしてのモンキーパンチに受け付かれたのだろう」

「なんと言うか、人の印象でスキルとか宝具とか決まるサーヴァントっているよね」

「その通りだ、その影響で強いサーヴァントが出てくる可能性はある、気をつけなければ」

そう言って、〈パンツァーアンドソールドエーテン〉を解除し、霊体になる。

ミラはこれからの事を考え、とりあえずアインツベルンの別荘に向かう。

夏画の聖杯戦争用に用意された別荘、そこにはサーベルを鞘に納めている執事兼監視役の雉乃コウガ〈キジノコウガ〉が門の前に立っていた。

「お帰りなさいませ、ミラ様」

「ただいま!、あのねあのね、今日はライダー様がキャスターを倒したんだよ!」

「それはすごい、さすがはライダー様ですね、立ち話もあれなので別荘に入りましょうか」

「うん!」

別荘の庭を通って、玄関のドアのカギを開けて中に入る。

「さあ、夜遅いですから、お部屋でゆっくりしててください」

「はーい」

ミラは元気よく階段を上り、2階の自分の部屋に入る。

「さて、いるのでしょう、侵入者さん、ミラ様を狙う事は私が許しません」 

コウガはサーベルを引き抜き、構える。

後ろから近づいて来る者の気配に気がつき、後ろを振り返り、サーベルを振るう。

そこには誰もいない。

「なに?」

驚いた表情をすると、突然後ろから引き寄せられる様に首を掴まれ、持ち上げられる。

『素晴らしいはジェイソン、執事になりすました兵士をこうも簡単に捕まえるなんて』

「ありがとうママ、今殺すから待っててね」

ジェイソンの握力が強くなっていき、骨が悲鳴を上げる。

さらに鉈を背中から刺す体制に入る。

(これが今回のアサシン)

この別荘には何人か従者兼監視役はいるが、皆仕事をしていて、しかも首を掴まれ叫ぶ事ができない。

サーヴァントと人間では大差がありすぎる。

それを思い知らされる。

だがその事は想定内だった。

(こんな言う時のために魔術があるんですよ、おバカさん)

魔術を使い、魔力に反応する罠を起動させる。

なんと床から剣山が飛び出し、ジェイソンを串刺しにする。

手に力が抜け、コウガは難を逃れた。

首を3回ほど回し、他の従者に報告しに行く。

(おそらくこれでアサシンは死んだと思いますが、一応報告しておきましょう)

次の瞬間、ジェイソンは蘇り、剣山を破壊、コウガに向けて鉈を投げる。

剣山を破壊する音に気がつき、コウガは後ろを振り返り、鉈を弾く。

ジェイソンは胸ポケットからハンドガンを取り出す。

その隙を突き、魔術で自分の身体能力を強化し、コウガはサーベルで斬りに行く。

マママ、キキキ、と言う吐息を吐きながら、ジェイソンはコウガに銃口を向けて連射する。

だがサーベルで銃弾を弾かれ、肩を斬られてしまう。

痛みに悶えるジェイソンに容赦なくサーベルが引き抜かれ、さらに心臓部を突き刺された。

サーベルを引き抜き、コウガは血をハンカチで拭う、

「これは新しい物を買わなければダメですねぇ」

倒したと確信し、余裕の言葉を言う。

しかし、サーヴァントであるジェイソンが一向に消滅しない。

すると、肉体の再生が不完全のまま、心臓が完全に再生し、動き出す。

腐敗している肌を見て動揺しつつ立ち上がり、ハンドガンを構える。

「しつこいですね、そんなんじゃ女性に嫌われますよ」

「うるさい、黙って死ね」

ハンドガンを連射する。

発砲音に目を覚ましたミラが部屋から出てくる。

「ミラ様お退がりください、今このサーヴァントを始末しますから」

「人間にはサーヴァントに勝てない!、だから逃げて!」

その叫びに反応し、マママ、キキキと息を吐き、コウガからミラに標的を移す。

「アゲハ、もし僕のこの姿を見たら怖がるかなぁ」

「なによそ見しているんですか!」

サーベルを斜めに斬りかかる。

「だからうるさいんだよ、お前」

イライラしながらパンチでサーベルをへし折る。

「この破壊力、やはりあなたはアサシンにふさわしくない」

「アサシン?、違うよ、僕はすでにクラスチェンジをしている、お前のおかげでね」

「クラスチェンジ?、なんなのそれ」

クラスチェンジとは、特定の条件を満たすことでクラスが変化すると言う物。

だがこれはアインツベルンにとってイレギュラーな事であり、知らなくて無理はない。

ジェイソンの場合、死亡回数が6回目を迎えた時、アヴェンジャーにクラスチェンジしている。

その条件をコウガが達成させてしまった。

「僕とママ、そしてアゲハの邪魔をするなら、みんな殺してやる!」

ジェイソンは怒りの叫びを上げ、ベルトに取り付けてある人工の皮のケースからアゲハのトレースオンしてもらったサバイバルナイフと同じくクレイモアを取り出し、二刀流の体制に入る。

そこに銃声に気づいた従者達がホールに集まり、思い思いの武器を構える。

(ライダーは宝具を使えなければただの人間同然、ここは私達が仕留めなければ)

従者のメイドがアサルトライフルの銃口をジェイソンに向けてトリガーを引く。

銃弾を受けるが、まるで神経がないかの様にもろともせず、ミラを殺すために階段を上る。

そうはさせじと従者が火炎弾を放つ。

それにも動じず、突き進んでいく。

「ば、化け物だ」

「怯むな、我々はミラ様を守るのが使命だ、決してこれを破ってはいけない、破れば、分かるな」

コウガの言葉に従者全員が恐怖で心が締め付けられる。

そしてそれが焦りを生み、一斉に攻撃を仕掛ける。

「邪魔なんだよ」

ジェイソンはクレイモアで従者達を斬り殺して行く。

遠距離攻撃を仕掛ける従者達にはサバイバルナイフを複数取り出し、投げつけ、刺し殺す。

マママ、キキキ、そんな吐息を吐き、階段を上る、

(みんな、みんな死んじゃう、私のために、ホムンクルス【人造人間】の私のために、みんな死んじゃう、そんなのいや、私は使い捨ての兵器なんだよ、なのになんで)

涙を零しながら逃げるミラ。

そこにヒトラーが実態化し、ミラを抱えて部屋に入り、窓を開け、脱出用の滑り台で降りる。

〈パンツァーアンドソールドエーテン〉で1台の戦車を召喚、乗り込んで走らせた。

戦車の移動音に気づいたジェイソンは階段を下り、ミラとヒトラーを追いかけ様とする。

だがコウガが火炎弾を放ち注意を引こうとする。

「お前には様はない、僕は聖杯戦争で勝たなきゃいけないんだ」

歩きながらそう言って玄関のドアを蹴りで破壊し、外に出た。

門を抜け、歩いて行くが、ミラとヒトラーの影すら見つからない。

「逃げられた。しかも拠点を移された。これはまずいかな」

後々の事を考えると面倒な事になりそうだ。

そう感じながら霊体に戻り、アゲハの元へ戻った。

 

朝。

アゲハがレトルトカレーを温めていると、ジェイソンが食卓に座る。

「おはよう」

「おはようジェイソン…………なにその姿!、ゾンビみたい!」

「やっぱり怖いよね、昨日ライダーと戦ってたらやられちゃてこうなっちゃた」

確かに恐怖を覚える姿だ。

人の事を悪く言うのは実に簡単な事である。

しかし親友にそんな事を言いたくない。

「怖い?、なに言ってるの、ジェイソンはジェイソンでしょ、ママの事が大好きで、優しいジェイソン、姿が変わっても、それは変わらない、そうだよね?」

「うん、ありがとう、僕を受け入れてくれて」

感謝の言葉を言い、ニヤリと笑う。

「さっ、今日はレトルトカレーよ、すっごく美味しいんだから」

レトルトカレーをフライパンから取り出し、皿にご飯を粧い、レトルトカレーをかけ、出来上がり、食卓にスプーンと一緒に置く。

「いただきます」

「はい、召し上がれ」

フーフーと息で冷まし、口にする。

「どう、今日は中辛にしてみたんだけど」

カレーを飲み込み、返事を返す。

「うん、美味しいよ」

「良かったー。じゃあ私も食べよっと」

アゲハは皿にご飯を粧い、レトルトカレーをかけ、スプーンと共に食卓に持って行く。

「いただきます」

スプーンでカレーとご飯を掬い、食べた。

 

一方その頃、菊は昨日の戦いの疲れが取れないまま、学校であくびを我慢しながら、授業を受けていた。

授業内容は魔術回路ついてだ。

魔術回路と言うのは誰もが持っているが、一般人では数が少なく、魔術は使えない。

魔術師の血筋を持つ者。

もしくは偶然にも魔術回路を多くして生まれた者が魔術師になれるのだ。

菊の場合、偶然にも魔術回路が一般人よりも多く、普通の魔術師より少ない。

だがそれを補うほどの知識がある。

授業とは別に、独自に図書室で勉強をしている。

これも義理の兄と義理の妹に認められるため、今は聖杯戦争に勝つため、たくさんの量の知識を欲した。

 

「ギルガメッシュよ、お前に新たな武器をやろう」

ギルガメッシュのマスター、キールが差し出したのは、魔力で刃を生成する、言わゆるビームサーベルである。

「今のお前なら使いこなせるはずだ、存分に暴れろ」

キールの言葉に反応し、叫びを上げるギルガメッシュ。

早速〈ゲートオブバビロン〉に貯蔵し、戦いに備えた。

 

「あーもう、ギルガメッシュ強すぎ、なんなのあいつ、バーサーカーになったらあんなに強くなるなんて聞いてない!」

「まったく、バーサーカーは理性を失う代わりにすべてのステータスが上昇します、英雄王の場合理性を失った事で武器を「放つ」のではなく「使用」します、つまり武器の本来の力を引き出せると言う事、さらに重火器やバイクなども貯蔵している、おそらくですがマスターが〈ゲートオブバビロン〉に貯蔵しろと命令したのでしょう、理性を失った英雄王ならすんなりと従うでしょう、しかしその逆もしかり、機嫌を損ねればマスターは簡単に倒されてしまいます」

アルトリアはため息を吐き、コーラを口に入れる。

シュワシュワを感じながら、呆れた表情で凛を見る。

「何回この説明をすれば良いのですか?、本当に覚えが悪い」

「そうじゃないわよ、私はただ動揺してるだけ、サーヴァントとして強すぎるのよあいつ、バーサーカーのステータス上昇と武器を使いこなす技術、そして重火器、まあ、重火器に関してはセイバーに関係ないと思うけど、問題は自分自身を貯蔵して攻撃を回避する事よ、あれをやられるとエクスカリバーとか、攻城君のセイバーの宝具が確実に避けられる、でも逆に言えば出てきた瞬間を狙えば勝機はあるわ」

「そうですね、私とセイバーならそれは可能でしょう、協力を得られればの話ですが」

「まだそんな事言ってるの、私達はチーム、協力していかなくてどうするの?」

「あの性格に私がついていけと、理解に苦しみます」

そう言って、コーラを飲む。

凛はできれば今すぐにもこの聖杯戦争を終わらせたい。

シスターのシールダーの能力や宝具がどんな物か分からない。

そんな状況で聖杯を破壊するのは無理がある。

しかもアルトリアと菊のセイバーの相性がかなり悪い。

このままではチーム内で争いが起きる。

すっかり温くなってしまったペットボトルのカフェオレを飲み、頭をシャキっとさせる。

「このままじゃダメ、もっと攻城君達を知らないと、行くわよセイバー、攻城君の居候になるわよ!」

「またとんでもない事を、仕方ありません、今回のマスターは士郎【シロウ】ではなく凛です、あなたに従いましょう」

こうして魔導講師と騎士王は攻城家に向かい、菊を待つのだった。



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第7章 戦いの連続

夜。

攻城家にお世話になる事になった凛【リン】とアルトリアは菊【キク】と食事を取っていた。

アルトリアは凛が作ったポテトサラダをプラスチックのオタマで皿に装い、箸で食べる。

「うん。これはお見事です」

その光景を目の辺りにしたセイバーは疑問に思う。

「なんでサーヴァントのあなたが食事をしてるのよ」

「私は食事を楽しむのが好きなだけです。なにか問題でもありますか?」

「あるわよ! 食事を取るなんて事したら食費がかさむからマスターの迷惑になるじゃない!」

「なにを言っているのですか。あなたは戦闘においてマスターである菊の言葉を聞かなすぎる。だからあなたではなくカーミラと言う人格の方に信頼を置かれるのです」

「なんですってー!」

凛と菊はケンカを無視して、味噌汁を飲み、テーブルに置く。

「この聖杯戦争、おそらくなにか裏があるわ」

「確かに。反英霊の多さ。シスターが擬似サーヴァントになっている。どう考えてもおかしいですよね」

「しかもギルガメッシュまでこの戦いに参戦しているとなると結構まずい。あいつは元々慢心して手加減をする奴だったけど、バーサーカーになった影響で本気を出し続ける様になった。このままだと私達は確実に負ける」

「俺はアサシンであるジェイソンとマスターを警戒してます。不死身であり武器を使いこなすジェイソン。投影魔術が使えるマスター。理想のコンビだと思いますね」

意見を言い合い、今後の事について語った。

 

一方アゲハとランスロットの鎧を装備しているジェイソンはオーディンと戦闘を行なっていた。

「トレースオン」

投影されたロケットランチャーをジェイソンはオーディンに向けて撃つ。

しかし〈スレイプニル〉で弾を防がれる。

「グングニル!」

膨大な魔力を放出しながら〈グングニル〉が放たれる。

マッハのスピードで飛んで行く〈グングニル〉がジェイソンの頭を貫いた。

これで7回目の死を遂げたのでスキルが追加される。

戻って来る〈グングニル〉を掴み取り、倒れるジェイソンの方へ近づき、〈スレイプニル〉で滅多刺しにする。

「このまま朽ちろ!」

一撃をくらわせ様と〈スレイプニル〉を心臓部に突き刺そうとする。

だがジェイソンは復活し、〈スレイプニル〉を掴み、ものすごい力で奪い取った。

「貴様! スレイプニルを返せ!」

立ち上がり、〈スレイプニル〉を攻撃に使うジェイソンにオーディンは怒りを覚える。

ジェイソンはランスロットを思わせる叫びを上げ、〈スレイプニル〉で突きを繰り出す。

しかし〈スレイプニル〉が幻獣の姿に戻り、蹴り飛ばされる。

〈スレイプニル〉は鼻を鳴らし、オーディンを背中に乗せる。

「お前の様な愚か者にスレイプニルは扱えず好かれん! 私の相棒をその醜い心で汚すな!」

その言葉にカチンときたのはアゲハだった。

親友、いや、心友を他人にバカにされて黙っていられなくなる。

「醜い心? 今バーサーカーが醜い心を持っていると言ったわね!」

「お前もそうだぞバーサーカーのマスター。バーサーカーを召喚した時点でサーヴァントのことを信用していない。バーサーカーと言うクラスは強化を付与する代わりに理性が失われる。それによって言う事を聞きやすくなる。まあ逆もしかりだが。しかもバーサーカーはお手軽に召喚できる。なぜなら呼び出す呪文にバーサーカー専用の呪文を付け加えればいいのだからな。元々強いサーヴァントを呼び出せればより利用できる化け物として機能する。だから召喚したのだろう。バーサーカーのマスター」

アゲハは最初ジェイソンを願いを叶えるために利用していたが、段々と信頼関係ができていき、最終的に心友になった。

それをランスロットとして偽装しているとはいえ心友を侮辱され、自分のやり方を否定された。

許せない、そんな感情が爆発する。

「バーサーカー、いえ、ジェイソン。もう自分らしい戦いをして良いわよ」

ジェイソンは?マークを浮かべ、アゲハの方を向く。

「だからね、もう良いの。今までごめんね、私のやり方に付き合わせちゃって。でもこれからはジェイソンのやり方で戦って良いの。カッコいいところを私に見せて」 

『ジェイソン。アゲハはあなたの素敵な殺戮を見たいんですって。神を殺すなんてすごい事はあなたしかできないわ』

2人の言葉でジェイソンは本来の戦いの体制に入る。

猫背だったのをピンと背を伸ばし、ゆっくりとオーディンに近づく。

「トレース、オン」

ジェイソンの手元にクレイモアが錬成され、片手で振りかぶる。

(そんな遅い動きで私を倒せると思っているのか)

オーディンには軍神としてプライドがある。

ここでこの隙を見逃す事は絶対にない。

「第3宝具、ラグナロク!」

固有結界〈ラグナロク〉を発動し、夕暮れになり、武器が多量に地面に刺さった戦場に変わる。

〈スレイプニル〉を走らせ、〈グングニル〉を構える。

すると視界にノイズがかかり、ジェイソンが消えた。

それにアゲハは笑みを浮かべる。

「どこだ。どこに消えた!」

声を荒げるオーディンは周囲を見回し、ジェイソンを視界に入れようとする。

空気を斬る音が聞こえる。

(後ろか!?)

後ろを振り返るとクレイモアがこちらに向かって飛んで来ていた。

思わず〈グングニル〉で防ぐが、今度はジェイソンが弓を引き抜き、矢が放たれる。

〈グングニル〉で弓矢を弾き、ジェイソンに突進して行く。

だが再び視界にノイズがかかる。

(次はどこから!?)

疑心暗鬼になるオーディン。

すると後ろからジェイソンに首を絞められた。

〈スレイプニル〉から落馬したオーディンの首からメキメキと音が鳴る。

(まずい。このままだと首がへし折れる!?)

神がサーヴァントとは言え神聖を持たない人間に負けるなどあってはならない。

(こんな、こんな者に負けてたまるか。もし負けたら他の神に示しがつかない)

相棒のピンチに〈スレイプニル〉がジェイソンに向かって行き後ろ蹴りを繰り出す。

しかしその程度の攻撃ではビクともせず、オーディンの首の骨にヒビが入る。

あまりの激痛に泡を吹き、気絶仕掛ける。

〈スレイプニル〉は相棒のためにジェイソンをひたすら蹴る。

「これで終わりにしてあげる」

ジェイソンがそう言った次の瞬間、オーディンの首がへし折れた。

〈スレイプニル〉の嘆きの鳴き声と共に〈ラグナロク〉が解除され、〈スレイプニル〉は消滅して行った。

殺し合いに勝利したジェイソンはアゲハの方へ歩いて行く。

「勝てたね。アゲハ」

「よく頑張ったねジェイソン。明日の晩ご飯は豪華に焼き肉でも食べよっか」

「お肉!すごく食べたい!」

「明日だから、明日食べるんだよ」

明日も生きのびていられるかわからない。

しかしそれでは臆病者と思われてしまう。

この戦い終わっても自分はジェイソンと一緒にいたい。

そう感じてしまうほど今の状況が幸せに感じられた。

 

夜中をゆっくりと歩く黄金の鎧を着ているライオンマスク。

彼の望みは殺戮。暴走。破壊。

本来の彼なら誰に対しても見下し、本気を出す事をしなかった。

出したとすれば、かつての親友と災害を起こした幻獣。

第4次聖杯戦争の時に恋した戦いの乙女。

そして自分の事を侮辱し、片腕を斬り落とした投影魔術師。

彼の名はギルガメッシュ。最古の王であり、最強のサーヴァントの一角。

それがバーサーカーとして召喚された。

マスターの犬に成り下がったギルガメッシュは〈エア〉を構えながら今日もサーヴァントを探す。

「ウゥー」

唸りを上げ、雲に包まれた空を見つめる。

すると砲弾が飛んで来たので〈エア〉で斬り落とす。

「ウゥー」

〈ゲート・オブ・バビロン〉から4連装バズーカを取り出し、構える。

戦車の軍勢がギルガメッシュに砲弾を発射してくる。

だが〈ゲート・オブ・バビロン〉に自分自身を貯蔵し、攻撃を回避する。

そして〈ゲート・オブ・バビロン〉から戦車の軍勢の後ろに出現し、ビームサーベルと〈エア〉で戦車を破壊して行く。

つまらない。そんな感情で顔を歪ませながら、出てくる兵士を殺戮する。

しかし殺したはずの兵士達が立ち上がりアサルトライフルを連射してくる。

邪魔だと言わんばかりにビームサーベルで銃弾を防ぎ、〈エア〉で兵士達をぶった斬る。

その隙を突き、戦車から兵士が機関銃で攻撃してくる。

だがそんなものがギルガメッシュの鎧を貫通するわけがない。

ビームサーベルを貯蔵し、ロケットランチャーを取り出す。

照準を戦車の1車に合わせ、トリガーを弾く。

ロケット部分が発射され、戦車に直撃、爆発する。

爆発での誘爆を避けるため、戦車達は逃げる様に移動する。

戦車内ではミラが怖がりながらヒトラーの方を見る。

「あんな強いサーヴァントがいるなんて聞いてないよぉー!?」

「これは戦略的撤退だ。ミラしっかり捕まっていろ」

撤退して行く戦車達を見逃すほどの慢心を持ち合わせていないギルガメッシュは〈エア〉の力を解放し、振りかぶる。

「オーーーー!」

振り下ろされる〈エア〉。

そこから放たれる閃光。

これこそ〈エア〉に選ばれし者にしか使えない必殺の一撃。

〈エヌマ・エリシュ〉だ!。

次々に消し炭になって行く戦車。

閃光に包まれ、ヒトラーとミラは消し炭になった。

つまらない。

本当につまらない。

そう思いながらギルガメッシュは再びサーヴァントを探しに向かった。

 

一方その頃、シールダーは教会で十字架に祈りを捧げていた。

神を憑依させているとは言え素体はシスター。

神への祈りは欠かさず行なっている。

「今日もシスターとして頑張りますよ」

そう言って教会を出るとアルトリアを探しに向かう。

聖杯を破壊しようなどと言う部外者は排除しなければならない。

そんな思いを胸に秘め、見慣れた道を歩いて行く。

夜の道を散歩をしている若者の男性がシールダーを見て不思議そうに思う。

それもそうだろう。

シスター姿をした女性が通りすぎたのだから。

「あれってシスターだよな。なんでこんな時間にシスターの服着て町を歩いてるんだ?」

見慣れない格好をしていて戸惑う。

しかも日本人の様な顔立ちをしているのにもかかわらず目は青く、金髪だった。

「シスターがカラコンとか染めたりしないよな。じゃああいつコスプレイヤーか? だったらマジでヤバイ奴と出くわしちまった。オーコワ」

男性は独り言をボヤきながら散歩を続けた。

悪口を言われているとはつい知らず、シールダーは魔力を感知し辺りを見回す。

するとアゲハとジェイソンが楽しそうに会話をしているのを発見する。

「こんばんはアサシンのマスターさん。こんばんはアサシンさん。すいません間違えました。訂正します。今はアヴェンジャーのマスターさんとアヴェンジャーさんでしたね」

「こんばんはシスターさん。いえ、シールダーさんと言った方が良いですか?」

「フフ、どちらでも良いですよ」

「僕達は今お話をしてるんだ。邪魔しないでよ」

握り拳を作り殺意をむき出しにするジェイソン。

「落ち着いてジェイソン。あの人はとても偉い人なの。殺したら私達の願いは叶わないのよ」

「それはいやだな。ママを蘇らせられないなんて事があったら僕いやだな」

「そうでしょ。だからシスターさんを殺すのはやめましょ」

「うん。そうする」

アゲハは素直なジェイソンに優しく笑みを浮かべ、それからシールダーを真剣な目で見る。

「良いですね。あなた達が仲良くしてるのを見てホッとしました。これぐらいみんな仲が良いと良いのですが・・・・・令呪を使わないでここまで登り詰めるなんて、それほどに信頼を寄せているのでしょうね」

「私達は心友です。ねっ、ジェイソン」

「そう、僕達は負けない。誰にもね」

「そうですね、あなた達は強い。だからお願いがあります」

「なんでしょう」

「あなた達に不正に参加しているもう1人のセイバーを討伐してほしいのです」

「それはお願いではなく命令ですか?」

「命令と言ったらそう言う事になります。あのセイバーは私達が行っている聖杯戦争を終わらせるため、聖杯を破壊しようとしているのです」

その発言に驚きを隠せない2人。

「それは本当の事ですか!?」

「はい。残念ながら事実です」

シスターの言葉にアゲハはあの4人がフラッシュバックする。

「もしセイバーを倒してくださればアヴェンジャーさんに強化を施しましょう。令呪などあなた方には必要ないでしょうから」

「分かりました。ジェイソン。私達の力でセイバーを倒すわよ」

「分かった。僕アゲハが一緒なら誰でも殺せる」

「でっ、セイバーの居場所はどこですか」

シスターが居場所を伝えると、ジェイソンはアゲハをお姫様抱っこをして、瞬間移動を連続で行い、セイバーのクラスであるアルトリアを殺しに向かった。

 

一方その頃菊と凛、アルトリアとセイバークラスのエリザベートは教会に来ていた。

「ここに元凶のシスターがいるんですね」

菊の質問に凛は頷く。

「そう。あいつを倒せばおそらく聖杯が出て来る。そこを〈エクスカリバー〉で破壊するわよ」

作戦通り菊は扉を開け様とする。

「どうやら敵が来た様です」

アルトリアの呼びかけで後ろを振り返ると紺色の鎧を装備した大柄の男とそのマスターの女性が立っていた。

「またランスロットの真似を! 許さん!」

「僕はもう真似をしない。僕はただこれを着けてるだけさ」

アルトリアの怒りの表情を見てアゲハは目を細めニヤリと笑みを浮かべる。

「勝つためには手段を選べないの。だから存分に利用させてもらうわ。さあジェイソン。あいつらを倒しましょう」

「分かったよアゲハ。4人共殺してやろうよ」

「トレース、オン」

呪文を唱えるとバトルアックスが錬成され、ジェイソンはゆっくりとした足取りでアルトリアとエリザベートに向かって行く。

(ノロい。これが本来の敵の戦い方か。まるで生ける屍の様だ)

アルトリアは〈エクスカリバー〉を構え、向かって行く。

すると視界にノイズが入る。

(消えた)

菊がそう思ったのもつかの間、アルトリアが後ろを振り返る。

ジェイソンが後ろからバトルアックスを振り下ろして来るのに直感で気づいたのだ。

振るわれる〈エクスカリバー〉がバトルアックスを破壊する。

「スティール」

菊の魔術によってジェイソンの鎧が崩れ脱げる。

「ナイスマスター! このまま倒しちゃうわよ!」

エリザベートは剣をジェイソンの心臓部に突き刺す。

そして勢いよく引き抜き、血を浴びる。

ジェイソンは倒れ、それにアゲハは動揺する。

だがそれも一瞬。

復活し、立ち上がると、セイバー2人を見つめる。

「アゲハ。僕宝具使うね。これじゃあこいつらに勝てないから」

「分かった。私も全力で援護するね」

「行くよお前達。これが僕の宝具。クリスタルレイクだ!」

宝具の名を言うと、固有結界が張られる。

そこはアメリカのにある夜のキャンプ場だった。

 



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第8章トラウマを武器に

「ここってキャンプ場、ですよね」

「すごく暑いわ。マスター、これじゃあ体力が持ってかれるわよ」

「しかもマスターとそのサーヴァントの気配が感じられません」

どこから攻撃が来るか分からない。

暑さで体力の消費量が増える。

本来楽しいはずのキャンプ場。

それが殺人鬼が潜む恐怖の場所へと変貌した。

「こう言う時固まって動いた方が良いんですよね。なにより瞬間移動が使える敵ですし」

菊【キク】の提案に凛【リン】は魔導石を取り出しながら承諾する。

「当たり前だけどそれは良い案だと思うわ。セイバー、相手は不死身の化け物よ。チャンスがあれば〈エクスカリバー〉の力を解放してちょうだい」

「分かりました」

アルトリアは〈 エクスカリバー〉を構え、凛を守る体勢をとる。

その時だった。

〈エクスカリバー〉で銃弾を防ぎ、位置を把握する。

しかし相手は瞬間移動ができる。

位置などすぐに分からなくなるだろう。

一方ジェイソンにはこちら位置などとっくに分かっていた事になる。

(まずい。このままだと体力負けしてみんな一方的にやられる)

位置が分かってもすぐに瞬間移動で逃げられる。

暑さで体力が奪われる。

まさしく敵の術中にハマった。

エリザベートが盾で放たれた銃弾を防ぐ。

敵は真っ向から戦うつもりはない。

それが分かると余計に動きづらくなる。

しかし近づかなければセイバークラスである2人はジェイソンに攻撃すらできない。

「とりあえずあの大きなコテージに入って体勢を立て直すわよ」

凛の言葉に3人は納得し、2階建のコテージに入る。

そこにはダンカンテレビやソファーなど、くつろげる物がある反面ジェイソンが武器にしそうな物が散りばめられている。

とっ、視界にノイズがかかる。

次の瞬間アルトリアは後ろを振り返り〈エクスカリバー〉振るう。

すると忍びよって来ていたジェイソンの包丁を持つ左腕が切断された。

ジェイソンはなにが起きたのか分からず動揺する。

それでも遠距離から投影される鉈を右手で掴み取り、菊に襲いかかる。

だがエリザベートによる剣撃をくらい腹部分を傷つけられる。

ドス黒い血を吹き出しながら「マママ、キキキ」と息を吐く。

そして鉈を捨て、エリザベートの首を掴み上げる。

「殺す」

首を圧し折ろうとしたその時。

「てりゃー!」

アルトリアの剣技がジェイソンの右腕を斬り落とす。

ジェイソンの手から脱出できたエリザベートは剣と盾を回収する。

「これでお前は私達に攻撃できない。潔く死ぬがいい」

「僕は死なない。願いを叶えるまで。僕は。僕は」

「そんなの私達にとってはどーでもいいの。さっ、私の歌を聴かせてあげる」

そう言うと突然スピーカーが大量に取り付けてある城が床を貫き、コテージを破壊する。

「これがセイバーの宝具」

「これはかなり範囲がありそうね。セイバー、攻城君、離れるわよ」

「「はい」」

3人はエリザベートの宝具の範囲外にまで離れる。

エリザベートは剣を地面に突き立て、持ち手に立つ。

「さあ行くわよー。〈バートリ・エルジェーベト〉!」

オペラ歌手が歌う様な美しい音色が城のスピーカーで増幅され爆音に変わる。

ジェイソンの体が爆音に耐えきれず傷づき、血が溢れ出す。

骨が露出し、ホッケーマスクが砕け散り、醜い顔が丸見えになる。

顔の皮膚が破け、頭蓋骨が露出する。

ジェイソンは最後の力を振り絞り、瞬間移動を行った。

 

監視塔にいたアゲハの前に現れたジェイソンはすでにボロボロになっており、倒れた。

「ジェイソン! そんな。起きてよジェイソン! ねえ!」

返事がない。

「そうだった。ジェイソンの復活には時間がかかるんだったはね。ハハ」

ジェイソンの復活を待つアゲハ。

だが何分待っても復活しない。それどころか再生する事もない。

「どうして!? どうして起きてくれないの!? 私はジェイソンを失いたくない。だってあなたは私を救ってくれた。支えになってくれた。心友になってくれた。だから起きてよ! ジェイソン!」

涙を流しながらジェイソンのスキルを確認する。

そこには追加されたスキルが表示されていた。

それを見たアゲハは笑みを浮かべる。

「ジェイソンは私の心友、だからおいで。一緒にあいつらを倒そ」

まるでジェイソンを受け入れる様に上着を脱ぎ始めた。

 

一方その頃4人はジェイソンを探しにクリスタルレイクを探索していた。

「ジェイソンは死に至る技を使わなければあそこまで追い詰められるんですね」

「でもあの宝具をくらえば再生するのに時間はかかるはずよ」

「そこを叩くってわけね。やってやろうじゃない」

「油断は禁物です。敵はどこにいるか分かりません。注意して行きましょう」

話し合いながら歩いていると、ジェット噴射音が聞こえて来る。

急いでエリザベートが音を頼りに盾を構える。

すると左上斜めから4連弾のミサイルが飛んで来た。

菊はバリアを張り、ミサイルを防ぐ。

ミサイルとバリアがぶつかり合い、爆発を引き起こし、バリアが砕け散る。

あまりの衝撃に全員吐き気が出る。

爆発と言う物は人体にも害がある。

爆風によって人体は耐えられず破裂する。

今回はバリアによって爆風は軽減され吐き気だけで済んだが、もしエリザベートが盾で防いでいたら全員爆風で死亡していただろう。

「あの角度からしてあの建物ですよね」

「ならあいつもそこにいるのね。よーし。行くわよー」

そう言ってエリザベートは建物に向かって加速する。

「おい待てよ」

「仕方ありません。追いかけましょう」

3人はエリザベートを追いかけると、ノイズが視界に入る。

するとマシンガンの連射音が聞こえてきた。

(後ろから!?)

アルトリアは後ろを振り返り銃弾を斬って行く。

再びノイズが視界に入り、今度は左から手斧が縦に回転しながら菊の方へ飛んで来る。

バリアを張ろうとするが間に合わない。

もうダメだと思ったその時、凛が放った風の魔導石が手斧にぶつかり合い吹き飛ばした。

感謝の言葉を言っていたら隙が生まれるため言わず、攻撃された方向に放つために火炎弾を準備する。

しかしまたもやノイズが視界にかかる。

(またか)

今度はどこから、なにで攻撃してくるのか。

3人の脳内にそんな事が過ぎる。

しかし一向に攻撃が来ない。

「まさかセイバーのところに向かったんじゃあ」

「急いで行くわよ。セイバー、護衛は任せたわ」

「分かりました。まったく、困ったサーヴァントです」

菊、凛、アルトリアは夜のキャンプ場を駆け、エリザベートを追いかけた。

しばらく走っていると、エリザベートが戦闘を行っていた。

戦っている相手を菊と凛は確認する。

「あれって、アサシンのマスター?」

「よく分からないけど。セイバー。やっちゃて」

「言われなくても」

アルトリアは一気に加速し、〈エクスカリバー〉を構えながら攻撃を仕掛ける。

アサシンのマスター、いや、アヴェンジャーのマスターことアゲハは〈ゲイボルグ〉で攻撃を防ぐと、投影魔術で弓を錬成し〈ゲイボルグ〉を射出する。

赤き槍がアルトリアを殺しにかかる。

だが〈エクスカリバー〉による一撃で破壊されてしまう。

「さすがは騎士王よね。簡単に〈ゲイボルグ〉を打ち砕くんだから」

「褒め言葉など無用です。なぜマスターであるあなたがもう1人のセイバーと戦っているのですか? ジェイソンに戦わせればいいでしょうに」

「ジェイソン? ジェイソンはここにいるわよ」

「なにを言っているのですか。ジェイソンはここには・・・・・」

「なにを言ってるの? 僕はここにいるよ」

「そのとおりよジェイソン。あなたはここにいるは」

「なに独り言言ってるのよ」

エリザベートの言葉にアゲハは不思議に思うが、すぐに言葉の意味を理解する。

「私達は2人で1人。ジェイソンのスキル〈寄生〉によって私はジェイソンになった」

「そして僕はアゲハになった」

「私達は負けれない」

「僕達は死ねない」

「だから代わりにあなた達が死になさい」

投影魔術を使用し、2本の剣を錬成してエリザベートに襲いかかる。

寄生された影響で力がジェイソンと同じ強靭的なものとなっている。

剣と盾が触れ合い、火花が飛ぶ。

(私に代わりなさい)

カーミラの言葉で人格がエリザベートからカーミラにスイッチする。

ピンクだった髪が白に変わり、瞳が黄色に変色する。

剣をそらす様に受け流し、隙を作る。

体勢を立て直そうとするアゲハの腹に剣を刺す。

「うぐっ」

「ただ合体すれば良い訳じゃないのよ。おバカさん」

痛みに悶えるアゲハから剣を引き抜き、蹴りで吹き飛ばす。

痛みを感じるアゲハの神経のせいで戦いづらくなったのも事実。

だが9回目の死亡した際に追加された〈寄生〉によって復活したジェイソンの感情を失いたくない。

そんな思いがアゲハは踏ん張る。

荒い息を上げながら剣を捨て、ハンドガンを錬成、瞬間移動で凛に近づく。

(マスターがいなければ騎士王はこの世からいなくなる)

(そうすれば僕達は強くしてもらえるそしたらあの金色の奴にも勝てる)

勝利を確信し、後ろからトリガーを弾こうとする。

だがそれはできない。

なぜなら凛が後ろに投げた魔導石が爆発し、吹き飛ばされたからだ。

アルトリアとカーミラは爆発音に気づき、そちらに向かう。

アゲハは傷口を手で押さえながら銃口を向け、連射する。

だが菊のバリアによって防がれ、弾切れになる。

その隙をアルトリアがつき、〈エクスカリバー〉をアゲハの腹に突き刺し、力を解放する。

「消え失せなさい。エクス、カリバー!」

0距離から放たれる閃光が寄生したジェイソンの心臓ごとアゲハの体を包み込み、消滅させた。

固有結界が消え、教会の入り口に戻る。

ホッとしながら魔力の事も考え攻城家に戻る事にした。

 

「あのアヴェンジャーさんがやられるなんて、まったく、忌々しいセイバーさんです」

シールダーの言葉でバーサーカーのマスターであるキールグレイトスとバーサーカーのクラスのサーヴァントであるギルガメッシュは次に戦うのが自分達だと悟る。

「今度はあなた達に依頼しましょう。やれますね」

「分かりました。バーサーカー、頼んだぞ」

キールの命令にギルガメッシュは吠えた。

 

1日が終わる。

そして朝になる。

今日菊は学校を休み、疲れない様に家でゆっくりとする事にした。

いつものカーミラとの吸血を終了し、朝ごはんを作る。

「よくもまあ今まで血を提供できたわねぇ」

「仕方ないですよ。パートナーであるセイバーの頼みです。断れませんよ」

「あのね攻城君。別に私はサーヴァントと仲良くするなとは言わない。でもね、これだけは言っておくわ。このままだとあなた、身を滅ぼすわよ」

身を滅ぼす。

それぐらい菊は理解していた。

自分が使い魔ごときに命を削られるなど以ての外である。

しかし今まで戦って来たパートナーとのコミニケーションとして行っていた事。

それをやめろと言われているのだ。

「それでも俺は続けます。セイバーと一緒に居れて本当に嬉しいんですよ。家に居場所なんてなかったですから」

ここは冷静に対応する。

凛は呆れた様にため息を吐いた。

 



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第9章王の成れの果て

夜。

シールダーとギルガメッシュは教会でアルトリアとエリザベートを待っていた。

必ず自分達を倒すためにやって来る。

それを分かっていて礼装を装着し、ここで待つ。

「来ましたね」

「セイバーーーーーーーーーーー!」

叫びを上げるギルガメッシュと冷静さ保つシールダーの前にアルトリアとエリザベート。

そして菊【キク】と凛【リン】がこちらに向かって来る。

「さあ始めましょうか。鬼退治ならぬセイバー退治を」

「セイバーーーーーーーーーーー!」

シールダーとギルガメッシュが手を組んでいる事に必死さが伝わって来る。

「俺達はシールダーを倒します」

「じゃあ私達はギルガメッシュを。どこまでやれるか分からないけど」

「行くぞセイバー!」

「セイバー。勝って士郎君に豪華なご飯を作ってもらうわよ!」

2人の熱い言葉に2人のセイバーは首を縦に振る。

ギルガメッシュは〈ゲート・オブ・バビロン〉からアサルトライフルを取り出し、アルトリアに向けて乱射、しかし銃弾は簡単に躱されてしまう。

「無駄だ英雄王。私にその様な武器が通じると思うか」

「セイバーーーーーーーーーーー!」

アサルトライフルを貯蔵し、〈エア〉を取り出す。

「ヤァーーーーー!」

〈エクスカリバー〉と〈エア〉がぶつかり合い、火花が散る。

「セイバーーーーーーーーーーー!」

叫びを上げ、ギルガメッシュはアルトリアを吹き飛ばし、さらに追撃を仕掛ける。

(バーサーカーになった事でステータスが上昇している。だが)

アルトリアは魔力を攻撃に転換し、突風を引き起こす。

これによりギルガメッシュのマスクが破れ飛び、顔が露わになる。

「セイバーーーーーーーーーーー!」

所詮は真名を隠すための被り物。

そんな物は必要ないと言わんばかりに戦闘を続行した。

 

一方その頃菊とエリザベートはシールダーのあまりの耐久力に翻弄されていた。

「そんな剣撃では私には勝てませんよ」

「ただ防御してるだけじゃない。そのくせに随分余裕ね」

「私一応シールダーですから」

盾を構えるシールダーに、菊は策を練る。

(相手の隙を作る方法。そうか! 相手は女性。ならこの魔術しかない)

少し気は避けるがやるしかない。

シールダーに右手を向ける。

「スティール!」

その魔術によってシールダーの礼装が菊の手元に送られ、下着だけになる。

「キャー!」

あまりの恥ずかしさに悲鳴を上げるシールダー。

これはチャンスと言わんばかりに指示を出す。

「今だ! シールダーに宝具で畳み掛けろ!」

「オーケー!」

剣を地面に突き立て、持ち手に立つ。

すると後ろから大量のスピーカー付きの城が出現する。

それを見た菊と凛、アルトリアは耳栓を取り出し、耳に入れる。

「私の歌に酔いしれなさい。バートリ・エルジェーベト!」

美しい歌声がスピーカーに伝達され、爆音に変わる。

シールダーは盾を構えるが、爆音にそんな物が通じるわけがなく、さらにギルガメッシュも嘆きの叫びを上げる。

(今しかない)

〈エクスカリバー〉を振り被り、騎士王は力を解放する。

「エクス・・・・・」

ならばと英雄王は〈エア〉を振り被り、力を解放する。

「カリバーーーーー!!!!!」

「セイバーーーーー!!!!!」

ほぼ同時に振り降ろされる〈エクスカリバー〉と〈エア〉。

〈エア〉から放たれる〈エヌマ・エリシュ〉。

〈エクスカリバー〉から放たれる閃光。

この2つがぶつかれば災害以上の被害が出るだろう。

「ウオーーーーー!」

それでも倒したいと言う欲望がギルガメッシュにはある。

本気を出す事が負けだと慢心し戦い、そして第5次聖杯戦争で雑種如きに負けた。

だが今は慢心などない。

理性を失った時点で〈英雄王〉と言う肩書きなど有って無い物なのだから。

「ヤァーーーーー!」

すぐにこの戦いを終わらせ、聖杯を破壊したいと言う野望がアルトリアにはある。

悪に染まった聖杯で願いを叶えたところで最悪な結末を迎える。

それならいっそ消してしまえばいい。

もしこの対決に負ければ確実に凛、菊、エリザベートを巻き込んでしまう。

だが凛はアルトリアの事を信じている。

絶対に勝つと。

必ず勝つと。

アルトリアが放つ閃光が〈エヌマ・エリシュ〉を打ち消して行く。

「ウオーーーーー!」

ギルガメッシュは叫びを上げながら閃光に包まれる。

負ける。

この自分が負けるのか。

自分が恋した乙女に負けるのか。

爆音が鳴り響く教会前の庭と言う名の戦場で、黄金の鎧を着た王の成れの果ては消え去った。

これによって6体のサーヴァントの魔力が聖杯に満たされ、この場に現れる。

シールダーは聖杯を見て諦めた様に武器を地面に置く。

「降参です。セイバーのマスターさん。セイバーさん。そしてもう1人のセイバーのマスターさん。もう1人のセイバーさん。あなた達には聖杯を使う権利がある。願いを叶えるのも破壊するもご自由にどうぞ」

「あなたはそれで良いんですか?」

菊の質問に「フフ」と上品に笑う。

「私はただの監視役です。と言っても色々と邪魔をしてしまいました。深くお詫びします」

「いーえ。私こそ謝るところはたくさんあるからお互い様よ。さあセイバー。聖杯を破壊して」

「大丈夫なのですか? 顔が引きつってますよ」

「平気平気。とにかく、さっさと終わらせましょう。この戦いをね」

「分かりました」

アルトリアは〈エクスカリバー〉を振りかぶり、力を解放する。

「聖杯よ、2度とこの世に現れるな。エクス、カリバー!」

放たれる閃光が聖杯を破壊して行く。

禍々しい物が壊れる瞬間を菊は見届ける。

するとエリザベートが切なそうにこちらを見て。抱きしめて来る。

「おいおい、いきなりなん・・・・・」

「私、マスターとずっと居たい。死ぬまでずーっと」

「当たり前だろ。まさか俺が令呪を使って自害させると思ってたのか。ハハ、そんな事するわけないだろ。エリザベート」

「私を真名で呼んでくれるのね」

「まあ戦いも終わったしな」

優しい笑みを浮かべ、菊はエリザベートを見つめた。

 

その後菊は凛を駅まで見送り、家に帰った。

交代でお風呂に入り、菊の部屋で共に寝るのだった。

 

それから数日後。

キールはアメリカに戻ると、軍隊に戻り戦場に戻った。

だが武器を隠れて日本に密輸した事が噂になってしまっている。

 

凛は魔術行使としての仕事に復帰した。

衛宮亭に帰り、玄関を開ける。

「ただいまー」

「お帰り凛」

「子ども達は・・・もう寝ちゃったかぁ」

「ごはん作るから少し待っててくれ」

「よろしく頼むわね」

疲れた体にはやはりお風呂だと思い、ゆっくりと廊下を歩く。

自室に入り、バッグやコートなどの荷物をしまう。

その後廊下を通って、洗面所で服を脱ぎ、洗濯機に入れ、お風呂に入った。

 

菊はエリザベートとスマホで動画を観ている。

観ているのはアニソンメドレーだ。

最初は曲を最後まで聴けないのが不満だったエリザベートも、慣れると楽しそうにメドレーを聴いていた。

その光景が気に入らない義理の兄と義理の妹。

再婚相手の息子が聖杯戦争に勝ち、共に戦ったサーヴァントと仲良くしている。

2人にとってこんなにも嫌な事はない。

しかしそんな事を知られれば父にお叱りを受ける。

あいつが幸せになる事が許せない。

そんな感情が2人の顔を歪ませるのだった。



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