趣味の小説 (アルクトス)
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ワカりり
二人の日常
いや、違うんです。私最近何気に忙しくて移動が多いんですよ。
で、移動中は原作片手に書いてるSAOとかビルドの方を書けるわけもなく、こっちなら移動時間中にメモにささっとかけるのでこっちの方が先に進んでしまうんです。
――ちなみに、シチュエーションは先輩から頂きました。
あ、僕の個人的解釈としてりりは8~9歳くらいなもんだと思っているので漢字も相応レベルの物しか使ってません。
……最近、ワカバがぜんぜんわたしに構ってくれない。
転写がうまくいかなくて、色んなところがいっぺんに崩れちゃったんだって。
「ぶぅ……」
『ピ?』
ちかくにいたむしっちが首をかしげるみたいに体をかたむけた。
モニターには『リリ、ドウシタ?』って書いてある。
「ワカバはまたおしごとって……。こんなにかわいいりりをおいてくなんてひどいと思うんだ」
『ピ……』
むしっちは答える。モニターには『シゴト、ダイジ』……わかってるもん。
おとなはおしごとをしなきゃいけないこと、りりはかしこいからちゃんとわかってる。
「…………」
ねむくなってきちゃった。
でも、ワカバが帰ってくるまではおきてる。
『ピ?』
むしっちが『リリ、ネル?』って聞いてくるけど、ねない。
ワカバに「おかえりなさい」って言うんだ。
「ワカバ、まだかな……?」
◆◆◆◆
「……あれ、りり寝ちゃってる?」
『ピ!』
生成していた建物の土台が安定しなくて崩落してしまった場所への対処で、ちょっと出ることになってしまって、その間りりを待たせちゃってたんだけど……寝ちゃったみたいだ。
ぬしっちからは『ワカバ、オソイ!』と怒られてしまった。
「タハハ……。いっつも悪いと思ってるんだけど、仕事だからそこは中々ね」
『ピピピ!!』
言い訳は許されなかった。ぬしっちからは『リリ、ハヤクネカセル』とのことだ。
「わかってるよ、風邪ひいちゃうからね」
まぁ、体調を崩してもみどりで無理矢理治すこともできるけど、りりはみどりの臭いが嫌いみたいだし、そもそも体調は崩さない方がいいに決まっている。
「りり、ほら起きないと風邪ひいちゃうよ?」
「……ぅ~ん」
揺り起こそうとしてみるけど、返ってくるのは鈍い反応で完全には目覚めていないようだ。
なら、どうしようかな? と少し悩んで、良い手を一つ思いついた。
「りり、起きてこないと怖い話しちゃうぞ~」
以前に、リリはこの手の話を嫌がった。
すると、やっぱり怖い話は嫌なのか、寝惚けながらでも拒絶の意思を示してくる。
「……ぃや」
「じゃあ、ちゃんとしたところで寝ないとだよ?」
促せば、りりはもぞもぞと動き出そうとするけど、眠気の方が勝るのか中々と動けない。
そのうちに、リリは自分で動くことを諦めたらしく、僕の方に向けて両手を伸ばす。
「……だっこ」
「抱っこ?」
――思えば、りりにこうも無邪気に甘えられるのは初めてだ。
普段は、早く大人になりたいって背伸びしているから、ちょっと新鮮だ。
「……しょうがないな」
また寝息を立てだしたりりを、そっと起こさないように抱える。
……軽い、でもそれ以上に温かい。
「……ヮカバ」
守ってあげなきゃ、と思う。
本星にリリのことがバレたらと思うと、それからのことに頭が痛くなるけど……どうにかしよう。
「……ぅーん」
と、抱かれ具合が悪かったのか、りりが腕の中でモゾっと動いた。
「ぅひゃっ!?」
その時に偶然、リリの手が首筋を撫で、その感覚にみっともない声が漏れた。
「……みどりを吸い過ぎたかな。調律どころか、感覚が強化されちゃってる……」
りりとの時間を確保するために仕事を圧縮したツケがこんなところで出てきたみたいだ。
でも、よく考えると最近は毎日とみどりを吸っていた気がするから、こうなるのも必然だったのかもしれない。
「……ワカバ?」
どうやら今の声で起こしちゃったみたいだ。
腕の中のりりが、まだ眠気でとろんとした目で心配げに見上げてくる。
「あ、いや……大丈夫だよ」
そう答えるけど、勘のいいりりには今の声の原因がわかってしまったようだ。ニヤリと、意地悪な笑みを浮かべると、その小さな手で僕の身体をまさぐりだした。
「こちょこちょ~」
「わっ!? 待って、りり! くすぐったいよ!」
本当に身体の感覚が鋭くなっているみたいで、りりによる拙いくすぐりですらその刺激に耐えられない。
「アハハハハ!! 待って、待って! お腹痛い……っ!」
でも、だからと言って、抱えたりりを振り落とすわけにもいかない。
だから必死でりりのくすぐり攻撃を耐えるけど、それも結構限界に近い。
「こうなったら、お返しだ……っ!!」
「キャ~!」
最終手段のくすぐり返しに、腕の中のリリが身を攀じる。
今の鋭い感覚だと、それさえ刺激になってしまって、笑いを堪えられない。
「ワカバ、くすぐったい……!」
「こ、降参……っ?」
「する! するからもうやめて~!」
りりの投了で、互いをくすぐり合うという争いは終わった。
二人して息を切らせて、疲れ切っているけど、どこか楽しくもあった、そんなくすぐり合戦。
「ふぅ……寝ようか?」
「……うん」
こんな日常をりりと過ごせるように、これからはもう少しだけ仕事の量を減らそう――そう思った。
やっとのこと、受験の際に一旦と貸していたくめゆの原作書籍が手元に戻ってきた……。
いやはや、卒業すると中々後輩と会う時間も取れないものです。
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0.5~0.9話まで
0.55話
ドジった……。あんなの、ずるいじゃん。
みんなで壁を壊して、新しい島に行けるってときに、あんなに大きいあかむしが出てくるとか反則。
でも、りょうとりつの声が聞こえたし、あの二人なら倒せるかな?
「りょく!」
私を呼ぶ声、だれの声?
「……りん?」
「ああ、私だ……」
今にも泣きだしてしまいそうな顔。
ほんとに、この姉はすぐに顔に出るじゃん。
「……ほんと、あんたはストレートだね」
「りょく……」
そう、私を呼ぶ声が遠い。
身体が、意識が消えかかってるじゃん。
――もう永くないのかも。
「りょく……っ!!」
消えかかっている私の意識を、どうにかして繋いでおきたいんだろう。
りんはボロボロと泣きながら、何度も呼びかけてくるけど……その声も、もうほとんど聞こえない。
「りん、泣かなくてもいいじゃん?」
「……だが、お前は言っていただろう! 新しいことをたくさん知りたいと、これから次の島に行くんだぞ!!」
……そんなこと、覚えてたんだ。
あの時、りんに話した私の《好き》。次の島には、今までの島にはなかった新しいものがたくさんあるんだろうけど……もう、私じゃ見に行くことはできない。
「……じゃあさ。私の目を、あんたにあげるよ。それでさ、あんたがその目で……色んなところを、見てまわってよ……」
「なにを……おい、りょく!」
りんが必死に呼びかけている。私にはもう聞こえないけど、何を言っているのかはなんとなくわかるじゃん。
涙をこぼすりんに微笑みかけながら、散りだしている私の身体から本体を取り出す。
――それを最後に、あんなにも色鮮やかに広がっていた視界から、色が消えた。
「……ほら」
手渡すと、りんは感触なんてわからないはずなのに、私の本体をぎゅっと握りこむ。
……あー、ヤバいじゃん。本体を取り出したせいで、もう意識が飛びそう。
「りょく!」
最後に見る姉妹が、私の《好き》を聞いてくれたりんなのは、悪い気はしない。
――でも、どうせなら泣いてるんじゃなくて、笑顔で見送ってほしかったな。
「逝くな、りょく!! おい!!」
「……じゃあね、りん姉さん」
一度もそう呼ぶことはなかった。
だから、最後に「姉さん」って呼んで、ちょっと恥ずかしいかも……。
《後書き》
はいどうも、アルクトスです。
一か月近くもだんまり決め込んで何してたかというと、この作品の執筆です。
たった千文字に時間かけ過ぎだという声も多いでしょうが、今回ばかりは訳が違います。
何よりも、今回取り扱ったのは『ケムリクサ』という作品。
皆さんもご存知でしょう、そうあの名作『けものフレンズ』を作り上げたたつき監督の最新作です。
と、そんなケムリクサですが、とても評価の高い作品です。
全てが善意から起こる緻密なストーリー、揺れ動く心情を丁寧に描く演出が光った稀代の作品を取り扱うにあたって、僕は約二か月かけて、作品の隅から隅まで考察してきました。その結果がこの千文字です。
――まあ、ただ熱だけぶつけても伝わらないとは思うので、言語化して解説します。
《解説》
>りょくの最期
明確な描写が存在していないので、作中の台詞等からの推察です。
ではまず、作中からりょくの死亡に関する重要な情報を抜き出してみましょう。
・りょくは単独行動をすることが多かった。(0.5話)
・りょくの『目』は、りょくの死亡時点でりんに託されている。(9話他)
・だいだいさんに記された日記の内容から、りょくは壁の仕組みについて正確な認識を持っていた。(8話)
・過去に壁を壊した際は、《6人がかり》だった。(7話)
・「りょくの時はあかぎりが濃かった」(1話)
・一島から二島へ渡る際、りなは「やられないんだからナ~」と気合を入れ、りんは駅帽に詰められた姉妹たちの遺品を撫でる。(3話)
――以上から推察できる、りょくの最期は以下となる。
一島を探索する中、姉妹たちは幾度とあかむしと遭遇した。
しかし、それらは小型の物ばかりで、特段と苦戦することもなかった。
やがて一島の探索を終えた姉妹たちは、次なる島である二島に《全員》で渡ろうとした。
だが、そんな姉妹たちの行く手を、島と島を阻む壁が阻む。
それを、りょくは調べ通り抜ける方策を探ったが、成果は出ずに結局力ずくでの破壊をすることになった。
りょうの尽力で、やっとのことで壁を破壊した姉妹たち。
壁を越え、一行は進むがその時すでに足元にはあかぎりが充満していた。
そんな中、知識欲が深いりょくは新たな島へ行けることに心躍らせて、一人先行する。
咎める者はいない。今まで、別段と危険はなかったし、りょくの単独行動はいつものことだ。
――しかし、今回は違った。
突如と、足元のあかぎりから大型のあかむしが現れたのだ。
初見での対応に難のあるりょくは、大型のあかむしの攻撃に本体を損傷してしまう。
あかむしの対応は、りょうとりつだ。無敵の布陣というのはここからだろう。
そして、この頃は戦闘メンバーではなかったと思われるりんが、りょくの最期を看取る。
その最中に、りょくは『目』をりんに託す。
自身の『好き』を聞き、頼りにしているとまで告げてくれた姉に、『好き』を味わって欲しかったから。
『目』を託し、『好き』も託したりょくは、満足げに消えていく。
りょくを襲ったあかむしは、りょうとりつに倒された。
第3話で見えた、一島と二島の間のあかむしの死骸はその時のものだろう。
――ここまでが、作品内に散りばめられた情報で推察した『りょくの最期』です。
あくまで個人の意見なので、参考にする程度に収めてもらえると幸いです。
では、また次回。今度は《趣味の小説 0.65話》でお会いしましょう。
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