神様転生した者だけど毎日が苦痛 (八雲 紅)
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プロローグ

輪廻転生という言葉がある。

難しい事は忘れたが、肉体と記憶は無くなっても魂は消えずに新しい生を受ける。

とか、そんな感じ、だった気がする。

 

何故、いきなりこんな事を話し始めたのか、それは俺が実際にそれを体験したからである。

 

まず第一に、俺は死んだ。

高校を卒業し、社会人になるまでの間に車の免許を取った俺はドライブに出た。

ああ、今でも驚いている。正直、嫌な予感はしてた。

俺はその日、交通事故で死んだ。なんで事故ったのかは……思い出したくない。

 

死んだはずの俺は、気付いた時には辺り一面真っ白な空間に存在していた。

死後の世界なのかと思って辺りを見回していると、神様を名乗る男性が現れた。

その神様が言うには、俺は本来あそこで死ななかったらしいが、何かしらの原因で死んでしまったため、こうしてお詫びに来たらしい。

 

次の転生先は、この作品なんてどうだろう、サポートとして他の転生者を、物語に絶対関わるようにしよう。

など、俺を置いて話はどんどん進んでいった。

 

なんで何も言わなかったか?……混乱してたからに決まってるだろ。直ぐに理解したり納得するなんて実際あり得ないから。

 

そんで、気が付いたらいつの間にやら赤ん坊さ。

 

 

……以上が俺の経験した転生。

ちょっと違う?まぁ、別にいいじゃないか。

俗に言う神様転生ってやつ?そういうのを本気で考えてた時期が俺にもありました。

 

 

なんにせよ、俺は現状を楽しんでいる。

神様には本当に感謝している。

二度目の人生万々歳!記憶があってニューゲーム状態、最高!

神様は何か色々言っていたが、まぁ、大丈夫だろう。気にしない気にしない。

俺のためを思って、転生させてくれたんだ。悪い事は起きないはず。

 

 

……そう、この時までは。

あの事件が起こる迄はそう思っていた。

 

様々な波乱が巻き起こる前触れとなり、ここがどういう世界なのかを俺に教えてくれた。

 

その名は『白騎士事件』

 

日本に大量のミサイルが飛んで来たが、どこからともなく現れた白い人型の何かがミサイルを全て撃墜し、日本を守った、という内容の事件だ。

 

そう。かの有名な作品「インフィニット・ストラトス」に登場する、重大な事件(イベント)である。

 

 

この時、俺は初めて神様を思いきり殴りたくなった。

なんでよりにもよってISの世界なのか、と。

 

 

俺の名前は如月 鋼夜(きさらぎ こうや)

何の変哲もない一般人……いや、転生者。だと思いたい。

ISの知識は……アニメを見ただけ。あと薄い本を少々。

……大丈夫だろうか?俺。

 



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苦痛じゃなくて退屈な第1話

シングルヘールシングルヘール
すまないね、八雲サンタはしょうもない話をプレゼントすることしか出来ないんだ


桜の花が散って迎えた中学最後の春。

 

白騎士事件から何年か経って俺は中学三年生となった。

 

「はぁ……」

 

教室の自分の机に座り、校庭を眺めながらため息を吐く。

クラスの中は騒がしいが、俺の心は冷めていた。

 

「あぁ、鬱だ」

 

そうつぶやくと、俺は元凶であり、恩人でもある神様を思い浮かべた。

神様は言っていた。

俺は第二の人生を生きていけたら良かったのだ。何がどうしてこうなった。

善意なのだろうが、俺にはいい迷惑だ。

 

別にインフィニット・ストラトスという作品が嫌いな訳では無い。

が、この世界は少々厄介なのだ。

 

 

IS、正式名称「インフィニット・ストラトス」。宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。開発当初は注目されなかったが、「白騎士事件」によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワードスーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった。

 

ISは核となるコアと腕や脚などの部分的な装甲であるISアーマーから形成されている。その攻撃力、防御力、機動力は非常に高い究極の機動兵器。特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリアーや「絶対防御」などによってあらゆる攻撃に対処でき、操縦者が生命の危機にさらされることはほとんどない。ISには武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域があり、操縦者の意志で自由に保存してある武器を呼び出せる。ただし、全ての機体で量子変換容量によって装備には制限がかかっている。ハイパーセンサーの採用によって、コンピューターよりも早く思考と判断ができ、実行へと移せる。

 

ISは自己進化を設定されていて、戦闘経験を含む全ての経験を蓄積することで、IS自らが自身の形状や性能を大きく変化させる「形態移行」を行い、より進化した状態になる。第三形態までが確認されている。コアの深層には独自の意識があるとされていて、操縦時間に比例してIS自身が操縦者の特性を理解し、操縦者がよりISの性能を引き出せるようになる。

 

ISには謎が多く、全容は明らかにされていない。特に心臓部であるコアの情報は自己進化の設定以外は一切開示されておらず、完全なブラックボックスとなっている。原因は不明であるがISは女性にしか動かせず、それが原因でこの世界は女尊男卑の世の中になってしまった。

 

コアを製造できるのは開発者である篠ノ之束のみであるが、ある時期を最後に束はコアの製造をやめたため、ISの絶対数が467機となり、専用機を持つ者は特別扱いされることが多い。コアの数に限りがあるため新型機体を建造する場合は、既存のISを解体しコアを初期化しなくてはいけない。

 

 

復習ついでに携帯でISについてのウィキさんの項目を眺めながらため息を吐く。

 

そう、女尊男卑。

ISに乗れるのは女性だけ。そのせいで女性の権力が上がってしまい、ISとは無関係な一般の女性でさえ男性をこき使ったりする時代になった。

ひっそり生きるには辛すぎる世界になった。

ていうか女尊男卑とかアニメで見てないし聞いてないよ、マジビビったよ。

 

 

……しかも神様はこんな事も言っていた。

俺を原作に絶対関わらせると。

 

あの時は混乱していて分からなかったが、今なら分かる。

俺は多分ISを動かせるのだろう、と。

 

そうでない事を願いたい。間違いであってほしい。

 

 

「というか、原作に関わらせたいならなんで一夏や箒と幼馴染ないし同じ学校じゃないんだよ……」

 

むしろそうしてくれた方が早くから諦めが付いたし、色々動けたのだが。

 

原作に関われるかどうかが定かでない状態で第二の人生など楽しめる訳がない。

ちなみに俺個人としてはあまり関わりたくない。

感情移入という言葉があるが、この作品は自分が参加するより傍観者として見るからこそ楽しめる作品だと思う。

 

だって俺アニメしか見てないし。好きなヒロイン居ないし。ラブコメ興味無いし。ていうか主人公の一夏マジ爆発しろだし。

 

もしIS学園行ったらあのアニメであったラブコメを目の前で見せ付けられるんだろ?そんで巻き込まれるんでしょ?無理無理。

絶対に一回は死ぬし一夏に対しての嫉妬がヤバい事になる。いや嫉妬というより女の子の気持ちに気づかない怒りだな。

後ろから刺してのnice boat待ったなし。

 

機械のIS自体は好きなんだけどなぁ。

ラスボスの福音とかかっこよかったよね。

 

 

 

でもなー、関わるんだろうなー、神様の言った事だしなー。

 

 

俺が通っている学校は本編主人公の一夏が居る学校ではない。

というか、都市部ですらない。田舎である。

さすがに小中含めて全校生徒が一桁なんてド田舎ではないが。

 

「あぁ、鬱だ」

 

この言葉を言うのは何度目だろうか?もう口癖になりかけた。

 

 

「お前らー、席つけー」

 

そうこうしているうちに担任と思われる教師が教室に入り、HRが始まった。

 

「あー、いきなりだが今日は転校生を紹介する」

 

担任の言葉にクラスは騒然とする。

転校生ねぇ、こんな田舎に珍しい。

 

「入りなさい」

 

「失礼する」

 

……ん?なんだか聞き覚えがある声だな。

少し気になったので、前へ視線を向ける。

 

教卓の横に立っていたのはやや不機嫌そうな顔をした、艶やかな黒髪をポニーテールにし、主張が激しい身体をした一人の女子生徒。

 

そして……

 

「日笠 箒だ。よろしく頼む」

 

「ぶふぉあっ!」

 

俺は盛大に吹き出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

衝撃のHRが終わり、休み時間となった。

幸い、転校生が来た瞬間に教室のテンションが最高潮となり、騒ぎ出す生徒が居たため俺が吹き出したのは上手くバレなかった。

 

ちらり、と俺は隣の席を見やる。

 

隣の席は、転校生に話し掛けるクラスメイトでごった返しているが、その中心に居るのは黒髪ポニーテールの女子。

 

どう見てもファースト幼馴染の箒さんですありがとうございました。

 

篠ノ之 箒(しののの ほうき)

IS開発者、篠ノ之 束(しののの たばね)の妹にして本編主人公の織斑 一夏(おりむら いちか)のファースト幼馴染である。

インフィニット・ストラトスという作品においてはかなり重要な人物であり、確かなんとか保護プログラムのせいで家族離れ離れになって各地を転々としていたと記憶しているが……なるほど、ついにこの田舎に白羽の矢が突き刺さったのか。

恐らく今の名前も偽名なのだろう。

……もっと他のチョイスは無かったのだろうか。

 

 

「どこから来たの?」

 

「…………」

 

「あれ?日笠さん?」

 

「…………」

 

 

なんで全部無言なんだろうあの人。

……あぁ、なんか友達居ないとかそんな設定あったような無かったような。

すぐ転校するから友達作りたくないのかね?

 

まぁ、俺の知った事ではない。

 

何も起きない事を祈り、今日の授業を寝て過ごした。

……勉強?するわけないじゃん、だいたい分かるのに。

 

 

「あぁ、鬱だ」

そして退屈だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

篠ノ之箒が転校してきて数日経った。

最初こそはみんな興味津々で話し掛けていたが、彼女の素っ気ない態度により次第に彼女の周りに人はいなくなった。むしろ避けられ始めている。

 

「…………」

 

ぼっち弁当だよ。なんか俺も貰い泣きしそうだよ。

さすがに見ていられないので、隣の席である俺から時々話を振る事もあるが彼女の態度はあまり変わらない。

 

 

ここで篠ノ之箒が転校してきたのは、神様の気遣いなんだろう。

そして「ちゃんと原作には関わるからね」という確定申告でもあるのだろう。

あれ?つまり逃げ場無し?

 

諦めなきゃならないの?

いや、まだだ、まだ活路が……!

 

 

 

 

 

無理だった。

さらに数日経ったが流石にぼっち弁当を何度も見るのは辛い。もうやめてあげて。

もしかして俺がアクション起こさないとこの子ずっとぼっちなの?こっちの良心ガリガリ削るの?俺の良心のライフはもうゼロよ!

 

いいぜ神様!そっちがその気ならば俺も腹をくくろう。

 

サヨナラ、退屈。

こんにちは、刺激。

かかってこいよ、原作!

 

 

 

 

 

「よし、解散!」

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

「お前、今日も残るの?」

 

「ああ」

 

「俺は疲れた。またなー」

 

 

 

放課後。

所属している剣道部の練習が終わり、仲間は帰ってゆく。

剣道は前世でもやっていたから、というのが所属した理由だ。

 

みんな中学最後の夏の大会に向けて必死に練習している。

一応、部活の主将を務めている俺も例に漏れず、部活が終わった後でも居残り練習をしている。

 

二人で。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

片方は俺。

そしてもう一人はいま噂の篠ノ之箒さん。彼女は女子剣道部に所属している。

お互い、一心不乱に竹刀を素振りしている。

こういう機会は何度もあったが未だに会話は無い。

 

 

 

 

さて、少し柄でもない事をしてみようか。

 

彼女の今の現状、さすがにこれは見ていて辛い。かつての自分を思い出してしまいそうで泣ける。

 

それに俺は彼女の未来を知っている。

そう、ヒロイン(笑)になってしまう彼女の運命を!モッピーと呼ばれてしまう運命を!

 

……どうせなら、おもしろおかしく運命を変えてもいいんじゃないか?

 

 

俺が原作に関わりたくない理由の大部分はラブコメ騒動だ。

 

もし彼女が上手く一夏とくっ付いたなら、俺は一夏に嫉妬する事もないし、俺がラブコメ騒動に巻き込まれる事は無い。

 

俺は平和に学園生活を満喫できる。

彼女は一夏と結ばれる。

win-winじゃないか!

 

 

 

俺は素振りを止め、少し離れたところで練習を続ける彼女に呼び掛けた。

 

 

「ねぇ、篠ノ之箒(・・・・)さん」

 

 

彼女の本来の名前で。

 

 

「!?」

 

彼女は見事に反応した。

竹刀を止め、ひどく驚いた表情でこちらを見つめている。

 

「お、合ってた?」

 

確信犯なのではあるが、一応それらしい反応をしておく。

 

 

「なぜ、知っている?」

 

「昔道場やってた?親戚があの辺住んでて何回か行ったことあるんだよね。んで、もしかしてと思ってね」

 

キッ、と睨んでくるが怯まずに受け答えする。

ちなみに親戚云々は嘘である。

 

「……そうか」

 

理由を聞いて納得したのか、とりあえず睨むのは止めてくれた。

 

「ていうか、ドヤ顔で「篠ノ之流剣術~」って言って型を普通にやってたよね。普通に分かる人が見れば分かると思う」

 

「……見てたのか?」

 

「たまたま」

 

俺の言葉を聞いた篠ノ之さんは頭を抱えた。

 

「まぁ、その、深くは聞かないでおくよ」

 

篠ノ之なんて苗字はそうあるものじゃない。彼女の身の上を察したフリをして、アハハと取り繕った笑顔を向ける。

 

「そうしてくれると私も助かる。それと、この事はあまり口外しないでくれ」

 

「あぁ、分かってる。今日はこれで上がらせて貰うよ。戸締まり頼んだ」

 

そう言って俺は武道場を後にした。

 

 

「掴みは上々、さてどうするか」

 

これで箒は俺を無視する事は出来なくなった筈だ(願望)

 

完全俺プロデュースによる「モッピー脱却計画」が今、始まる!

きっかけは俺の悪戯心。動機は退屈凌ぎ。後悔も反省もしない。

多分、きっと、めいびぃ。




編集したら主人公が早くもアホになった

はよIS学園にぶち込みたい


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色々始まってきた第2話

計画といっても大した事はしない
箒の口調が分からないぜ、いえーい

年内最後の投稿になりそう


さて、軽く自己紹介でもしとこうか。

 

俺の名前は如月 鋼夜(きさらぎ こうや)。性別は男。年齢は15。現在は中学三年生。剣道部に所属してます。

あと、転生者です。バリバリ前世の記憶があります。

両親は健在。父は普通のサラリーマン、母は専業主婦だ。兄弟や姉妹は居ない一人っ子。

 

趣味は読書と、体を動かすこと。仲間や友達とワイワイするのは嫌いじゃない。

ルックスについては黒髪黒目の純日本人です。

顔については……自分ではなんとも言えない。イケメンかどうか、それを決めるのは自分ではなく他人だと思う。それに人の趣味はそれぞれだから一概にイケメンとは分からないと思う。

例えるなら……きのこたけのこ?みんな違ってみんないい?

 

でも前世より鼻は高くなったし、目も二重になったから、マシな部類ではあるのかもしれない。

まぁ、色恋沙汰なんて前世今世含めて一度も無いけどね!

 

前世の俺か?ただのオタクだったよ。アニメと漫画とゲームが好きな健全なる青少年だったよ。

童貞でしたよバカヤロー。

 

今世では読書好きな真面目くんで通してるよ、ぶいぶい(死語)

 

そんな俺はただいまインフィニット・ストラトスの世界にて第二の人生を歩んでおります。

原作はアニメと薄い本を少々。

 

 

「所属している党は……」

 

「何を突然ブツブツ言っている」

 

「ん、すまんな箒さんや。推理小説の犯人が気になってたんだ」

 

昼休み、自分の席で弁当箱を広げて物思いにふけっていると隣の席の箒さんから声を掛けられたので適当にごまかす。

 

箒さんの本名を言ってみた日から結構経ったが、こうしてツッコミを入れられるくらいの仲にはなった。あと名前にさん付けで呼ぶようになった。偽名は好きじゃないから、とのこと。

最初は警戒されていたが、接し続けていく度に向こうの警戒も解けていき、今の状態になったとさ。

もう俺は原作に関わる事を前提で行動する事にした。

 

実は事情を察してくれる友達とかが欲しかったんじゃないかなぁ、と思う。そう考えると素直じゃないなぁ。

 

「ツンデレ乙」

 

「誰がツンデレだ!」

 

貴女ですよ貴女。

こうして昼休みは平和に過ぎて行く。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「キェアアアアアア!」

 

「イェアアアアアア!」

 

「アイエエエエエエ!」

 

「よし、止め!今日はここまで」

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

放課後の部活動。

居残りをしようと準備をしていると、制服に着替えた箒さんを見掛けたので声を掛けた。

 

「あり?残らないの?」

 

「ああ、少し用事があってな」

 

この時俺に電流走る。

今こそ『モッピー脱却計画』を始動させるのだと閃いた。

まぁ、計画と言っても大した事はしない。ちょっと箒さんを素直で明るくするだけである。淑女にするだけである。

 

とりあえず箒さんには友達を作ってもらおう。

 

君のためでもあるし、俺の未来の安寧のためだ、許せ。

 

 

「へぇ、じゃあ他の女子と一緒に帰れば?」

 

ちなみに箒さん、俺がそれとなく指摘をしたおかげで無言は辞めてくれた。

それでも必要最低限の会話で、しかも話をぶつ切りにするけど。

 

 

「あぁ……無理だな」

 

「え?なんで?」

 

「帰りは護衛が付くし、車だからだ」

 

「……すまんかった」

 

そういえば一回見たことあるが箒さんは登下校が車でしたね。しかも黒塗りの大型車。

んで、確かSPみたいな人も付いてたね。

 

……ダメじゃん。

 

 

 

 

 

 

「でも負けない」

 

「何を言っているんだお前は」

 

翌朝。

箒さんからの開幕ツッコミをいただきました。

箒さん、そのノリならすぐ友達作れるよ。ツッコミ役って貴重だから。

 

「まぁ、そんなことより」

 

俺は自分の鞄からあるものを取り出した。

 

「一狩り行こうぜ!」

 

取り出したのは某3Dになる携帯ゲーム機。ソフトは協力プレイが可能な某狩猟ゲー。

ドラえもんが道具を出した時のSEが欲しい。

 

「校則違反だぞ」

 

「お堅いですね箒さん。持ってないの?」

 

「持っていない。……やはり男はそういうゲームみたいなものは好きなのか?」

 

ありゃ?食いついた?

ふーむ、よく分からんがここは普通に反応しておこう。

 

「好きなんじゃない?みんなやってるし」

 

「そうか……そういうものなのか」

 

そう言って箒さんは俺から視線を外す。会話終了の合図だ。

むぅ、人間関係の潤滑油と名高いゲームでこの教室の生徒(ハンター)と触れ合って欲しかったのだが……。それをきっかけに友達作って欲しかったんだがな……。

 

しかし途中での箒さんの質問……男……あっ(察し)

 

 

計画の道は、険しい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

私、篠ノ之箒は何度目になるかも分からない転校をした。

転校してきた学校は地方にある田舎の中学校だ。

 

「ねぇ日笠さん」

 

適当に自己紹介を済ませ、休み時間の質問責めには無言で通した。

転校する度に何度も何度も繰り返してきたこの行為にいい加減に嫌気がさしたからだ。

それにこうすれば次第に人も寄り付かなくなる。どうせ転校するんだ、どうせ。

ちなみに日笠というのは重要人保護プログラムで与えられた偽名だ。

私の姉はISの開発者。その家族に被害が及ばないようにするための措置だそうだ。しかしこの名前、偽名のはずなのにしっくりくる。

 

 

数日経てば思惑通り、誰も私を気にかけなくなった。

それでいい。その方が私も気が楽だ。

 

「日笠さーん」

 

だが、例外が居る。

私の隣の席の男子……たしか如月という名前だったか。

そいつは未だ私に声を掛ける。

そして今日もまた私は彼を無視する。

 

 

 

驚いた。彼が私を知っていた。

隣の席の男子、如月鋼夜。

男子剣道部の主将だった。

 

彼は私の父が開いていた道場に来た事があるらしく、私を覚えていた。こちらの事情を察したようで深くは聞いてこなかったが。

しかし剣術の型を見られていたとは……今度から気をつけよう。

 

道場か……あの頃が懐かしい。

一夏は元気にしているだろうか?いまも剣道を続けているのだろうか?

 

 

「おはよう箒さん」

 

あの日以来、隣の彼と話すようになった。

下の名前で呼んでいるが、単純に偽名があまり好きではないからだ。私は篠ノ之箒、それ以上でもそれ以下でもない。

なぜだろう?私の事情を知ってもらえて嬉しいからか?……まさか。こんな事を考えるとは、鍛錬が足りない証拠だ。

 

それとなく無言は止めろと言われた。善処しよう。

しかし、彼は何がしたいのだろう?私の気を引きたいのだろうか?私なんかと話して楽しいのだろうか?

 

そういえば、一夏以外の男子とまともに話すのは初めてな気がする。

 

 

「先生待って下さいこれは違うんです」

 

隣の彼はゲーム機を先生に没収されていた。

やはり最近の男子はああいったものが好きなのだろうか?

一夏は……いや、一夏はそんなものに現を抜かす軟弱者ではない。ではない……はず。

 

 

……ちょっと政府の人に頼んだら買って貰えるだろうか?




主人公は箒に惚れません
箒も主人公に惚れません
箒は相変わらず一夏一筋です


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途中経過の第3話

年内最後になると言ったな、あれは嘘だ



「で、どうなんだ?」

 

「あ?」

 

「とぼけんなよ、噂になってるんだぜ」

 

「話題の転校生とお前の恋仲が、な」

 

 

世の学生が大好きな曜日である日曜日。

俺は自宅に友人を呼び、三人でゲームに勤しんでいた。

その最中に、友人の一人が唐突に話題を振って来た。

 

「お前らが考えてる事は違うからな」

 

友人の問いに俺は嘆息しながら答える。

でもゲームのコントローラーを動かす手は止めない。

 

「いやいやいや、絶対出来てるよお前ら」

 

「あり得ない」

 

話題を振ってきた張本人である友人の天田玲児(あまだ れいご)に短く、ぶっきらぼうに返す。

黒寄りの青い、片方の目が隠れるか隠れないかの絶妙な長さの髪型にクールな印象とは正反対の人懐こい笑顔が特徴だ。

 

「でも日笠がお前以外と話してるとこ見たことないぞ」

 

少し長めのツンツンした黒髪と一般中学生より少し高い身長の友人、黒川泰河(くろかわ たいが)が追撃してくる。

 

 

この二人とは小学校からの仲で、なんというか……波長が合うのだ。

一緒に居て心の底から楽しいと思える奴らだ。

 

 

俺は泰河を無視してゲームを進める。……よし!

 

「おら!ハイドラ完成!」

 

「「ちょっ!?」」

 

二人は驚愕の声を上げ、ゲームへ向き直った。

今俺たちがしているのは超生命体ピンクボールが不思議なマシンに乗って争う、三大友情破壊ゲームとして名高いとあるゲームだ。

 

 

「フフフ、怖いか?」

 

「や、止めろ!俺のデビルに近寄るなァァァーーーーーッ!!!」

 

「に、逃げるんだよォォォーーーーッ!!!」

 

「このハイドラの前では全てが無駄無駄無駄ァッ!」

 

 

 

如月鋼夜、結構中学生ライフを満喫しております。

 

 

 

「で、日笠とお前の関係についてまともに話をしよう」

 

「誤魔化せなかったか」

 

「当たり前だ」

 

ゲームを中断し、各々が持ってきた菓子やジュースを摘まんでいると泰河が先程の話を蒸し返してきた。

 

「お前はなんたって『日笠係』だしな」

 

「泰河、それは辞めてくれ」

 

日笠係とは、転校初日に凄まじいぼっちっぷりを発揮した箒さんに度々俺が話しかけているのを目撃したクラスメイトやその他生徒が俺に言い渡した役目みたいなものである。下の名前で呼ぶのはマズかったか、反省している。

 

「日笠はお前に任せる!応援してるから!」「とりあえず如月くんお願い!応援してるから!」と、盛大に誤解を受けて任命されたのだが大元は接しにくい箒さんを俺に押し付けたかったのだろう。イジメか。

……まぁ、そのおかげで俺も結構動けるようになって今では箒さんもクラスに馴染んでいるし計画が多いに進んだのは嬉しいが、周りのクラスメイト達の反応が非常にうっとおしい。

 

「この間の調理実習なんて、脈アリだろ?」

 

「玲児……違うんだよ」

 

あの子は良くも悪くも一途なんだよ……。

 

玲児が今言った調理実習。

それはつい先日の出来事なのだが家庭科の調理実習の時、日笠係の俺はクラスメイトの陰謀により箒さんとペアを組んだ。

まぁ、それは別に良かった。しかしこの後が問題だった。

この時授業ではチャーハンを作ったのだが、いざ食べてみればチャーハンには味が無かった。味の無いチャーハンだった。ディアッカのチャーハンの方がまだマシに見える。

何かのデジャヴを感じながら箒にこの事を伝えると、彼女は俺にこう言ったのだ。

 

「やはり料理は出来た方が男は喜ぶのか?」、と。

 

特になんでもない一言。

ツッコミ所を上げるとしたら何故俺に聞いた。一夏の事を思うのは別に構わないけどさ。

 

しかし周りの奴等の脳内は絶賛ピンク一色のお花畑。

この言葉をいいように湾曲させた奴等によって俺と箒の恋仲説はどんどん尾ひれが付いていった。

 

ノリ良すぎだろお前ら……。

ノリがいいのは嫌いじゃないが、ノリが良すぎるのも問題だと思うんだ。

 

ちなみに箒は終始、頭に疑問符を浮かべていた。

箒も大概に鈍感だよね。あの時はそれに感謝したけど。

 

 

「それに一緒に東京まで行ったんだろ!?」

 

「どっからどう見てもお似合いだぜお前ら」

 

「部活の全国大会に行っただけだ馬鹿」

 

 

これは剣道の夏の全国大会で、個人戦県代表になったのが俺と箒だっただけの話だ。

団体戦は惜しくも負けたため、俺と箒の二人が東京に行く事になった。

ちゃんと引率の先生居たからね?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なぁ、如月」

 

「なんだい箒さん」

 

「トーナメント表に織斑一夏という名前はあったか?」

 

「いや、無かった」

 

「……そうか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

っていうエピソードがあったけども。

 

ちなみに一夏の名前は大分前に聞いた。話し始めて直ぐに「あの道場に織斑一夏という奴が居たんだが覚えているか?」と聞かれたからだ。その問いには「知らんがな」と答えておいた。

その時に織斑一夏が、初代モンド・グロッソの覇者である織斑千冬(おりむら ちふゆ)の弟だという事も聞いた。

 

 

……前世という色眼鏡を外しても、その時の箒さんの反応は恋する乙女にしか見えなかった。

 

あ、ちなみに剣道の大会は俺も箒も優勝しました。

 

 

「お前ら付き合ってんだろ?」

 

「白状しろよ」

 

「……お前らには教えてやろう」

 

これ以上誤解されるのもうっとおしいので俺は親友二人に説明した。

日笠さんは小さい頃に離れ離れになった幼馴染の男の子に恋している、というかなり大雑把な説明だが俺のいらない疑惑を払拭するには充分だ。

 

 

「ふられてやんのー」とか「元気出せよ」と、文面では伝わりづらいが一言一言の間にwが入っていそうな慰めの言葉を二人から貰った。

 

 

「お前らそんなに俺のゲムヲを本気にさせたいか」

 

「「やめてくださいしんでしまいます」」

 

「だが、無意味だ」

 

 

慰めのお返しに、俺は二人を二つ目の三大友情破壊ゲームである某大乱闘ゲームでフルボッコにした。いやぁ、神ゲーだよね。

良い子の皆はリアルファイトに気を付けてね。




実は主人公が日笠係になるのは強制イベ
話しかけようが無視しようが箒に関わるのは強制でした

え?親友二人が何処かで見たことある?気のせい気のせい(迫真)

次回でようやく原作に介入出来そうだ
年内投稿はこれが最後です、皆さんよいお年を


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サプライズ告白な第4話

新年あけましておめでとうございます
この作品共々、今年もよろしくお願いします


夏休みも終わり、新学期を迎えた。

田んぼの稲も緑から黄金色になり、赤とんぼがそこいらに飛ぶようになってきた秋頃の季節。

数字にするなら9月18日。

特別、今日の学校は何時もと変わらない一日だった。

 

 

「鋼夜ー!学校終わったら遊ぼうぜ!」

 

「泰河の家に集合な!」

 

「分かった」

 

 

部活の剣道は全国大会優勝という有終の美を飾り、部長の引き継ぎも終わったため放課後は基本的に遊んでいる。

 

この時期ならそろそろ進路を決める頃だが、俺も玲児も泰河も近くの公立高校へ行く事にしている。何気に玲児も泰河も勉強はできる方なので、このままでも合格できるラインではある。

 

 

「如月、ちょっといいか?」

 

先に教室から出て行った二人を追いかけようと荷物を纏めていると箒さんから声を掛けられた。

 

「ん?なに?」

 

「少し、時間あるか?」

 

なんだろう、と思い顔を上げて箒さんを見やれば何時もとは違う真剣な雰囲気を感じた。

 

「ああ、構わない」

 

二人を追いかけたいところだが、多少遅れても問題は無い。

それに、彼女は恐らく真面目な話をするつもりなのだろう。

 

「ここでは話しにくい。屋上に行こう」

 

 

俺は箒さんと一緒に屋上へ向かった。

 

 

「なんだ?」

「つ、ついに!?」

「夕焼け、放課後、屋上。後は分かるな?」

「いいか?二人の邪魔をするなよ?絶対だぞ?」

 

 

……教室を出る際に大量の野次馬が好き勝手言っていた。親友二人には説明したが、こいつらは依然として勘違いしたままだ。

いや、ねーから。告白とか一番無いから。

 

 

 

 

「もう秋か、時間が経つのは早いな」

 

放課後の屋上。転落防止のフェンスに手をかけて夕焼け空を眺めながら箒さんは呟いた。

その姿はなかなか様になっている。

 

「で、何の用だ?」

 

そんな中で俺はさっさと要件を述べるよう箒さんを促す。

健全な青少年であれば、こんなギャルゲーのワンシーンみたいな光景に胸をときめかせるのだろうが生憎と俺は色々ワケありの人間。トキメキのトの字も無い。

 

「うむ。……私は近い日に転校する。お前には色々世話になったからな、先に伝えて起きたかった」

 

その言葉で全てを察する。

わざわざ先に伝える事か?と思うが彼女は重要人保護プログラムで守られている人間。転校するにしてもいきなり転校した方が都合がいいのだろう。

 

「そっか」

 

「ここでの生活は楽しかった。ここの生徒は皆いい人ばかりだ。……私は人と接するのを忘れていた。お前がいなければずっとあのままだっただろうな」

 

ああ、ずっとぼっちだっただろうな。

と言うほど俺は恥知らずではない。

その言葉を飲み込む。

 

「いいや、それはお前自身の頑張りのお陰だ。俺はきっかけを作っただけさ。転校先でも上手くやれよ」

 

俺の言葉に箒さんは微かに微笑む。

自然と出た笑みなのだろう。

 

「ああ。ありがとう」

 

そして俺に向けて頭を下げた。

 

 

「おう。織斑一夏との結婚式には呼んでくれよ?」

 

「な、な、なななななな!?」

 

いい話で終わらせるのも面白く無いので箒が頭を上げた瞬間に爆弾投下。

みるみるうちに彼女の顔が真っ赤になっていく。

 

「気付いて無いと思った?正直バレバレだったぞ」

 

あぅあぅ、と言葉にならない呻きを上げる箒さん。かわいい。それなら一夏もイチコロだと思う。

 

「そ、そんな関係ではない!そんな事思っていない!」

 

大声で否定する箒さん。その反応自体が既に肯定の意を成しているんですがそれは。

 

「ほう、そうかそうか。……なあ、箒さんや。今、俺たち二人って周りの奴等からは出来てるって思われてるらしいよ?」

 

俺の言葉に反応したのか、屋上の入り口からガタッと音が鳴る。いや、気付いてたよ?クラスの奴等が付けてる事くらい。

 

「そうなのか?勘違いも甚だしいな」

 

「……もしここで俺がお前に告白したらどうする?」

 

意地悪な笑みを浮かべて箒さんに問いかける。

箒さんは最初、訳が分からないという顔をしていたが理解が及んだのか、また顔をみるみる赤くして……

 

「ば、馬鹿者が!」

 

殴り掛かってきた。

うん、色々あって頭が処理落ちしかけてるんだね。

 

「あらー、フラれた。じゃあ最後に俺からのお節介。自分の気持ちには素直になろうね。でないと愛しの一夏くんは落ちないと思うよ」

 

箒さんの右ストレートを一歩後退する事でかわし、箒さんに一言告げて回れ右。そして屋上を後にする。

 

 

「……すまない」

 

 

屋上から出る前に、箒さんのそんな呟きを聞いた気がした。

 

 

 

 

「で、なに盗み聞きしてんだお前ら?」

 

「え?…………アッー!」

 

勿論、ストーカー共への制裁も忘れずに。

 

 

 

 

 

 

数日後、箒さんは転校した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

箒さんが転校して何日もの時が過ぎた。

季節は秋から冬に変わり、新年も明けた。

数字にするなら2月20日。

 

 

「面倒だな、勉強」

 

「全くだ」

 

「これ終わったらゲームしようぜ」

 

俺、泰河、玲児の三人は受験が近いということもあり、放課後に玲児の家で勉強会をしていた。

しかし三人で受ける地元の高校は俺たちの素の実力でもB判定以上は取れるため、あまり勉強するムードにはならなかった。

 

(それに、俺は二人と一緒には行けないだろうしな)

 

そう。受験シーズンの今、そろそろ織斑さん家の一夏くんがやらかしてくれる時期なのである。

どうやって原作に関わるかは分からないが、向こうもそろそろ仕掛けてくる筈だ。

 

「よし、ゲームしようぜ」

 

「じゃあ今日はパーティーするか」

 

「お前にスターは渡さねぇからな」

 

勉強を止めて三大友情破壊ゲームの最後の一角である某パーティーゲームをセットしようと玲児がテレビに電源を入れた時だった。

 

 

『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』

 

何処かのチャンネルに繋がっていたテレビだが、玲児が表示を入れ替える前に画面は今までやっていたドラマから緊急のニュース放送に切り替わった。

 

「なんだまた地震か?」

 

「アメリカでテロか?」

 

「…………」

 

上から玲児、泰河、俺。

三者三様の反応を示しながらテレビを見つめる。

 

『たった今入った情報によりますと、世界で初めての男性IS操縦者が日本で見つかったそうです!詳しい情報が入り次第、またお伝えします!』

 

やはりというか、なんというか、緊急ニュースの内容は俺の予想通りだった。

 

「は?」

 

「これ、マジ?」

 

「ところがぎっちょん、現実だそうです」

 

 

上から玲児、泰河、俺である。

 

この日は結局ゲームをせずに、三人でもしISを動かせたらどうするか?という話題で盛り上がった。

 

 

……正直胸が痛かった。

 

 

 

 

玲児の家から帰り、再びニュースを眺めると三日後に全国の男子学生を対象とした一斉適性検査を実施するという発表があった。

 

「なるほど、これが神様の言っていた……マジで強制イベントかよ」

 

しかも政府直々に行うとの事。

 

断る理由が無いし、政府が関わっている以上ズル休みという手は使えないだろう。まさか「動かせるから、行きません」と言う訳にもいかないし……。

 

 

あれ……俺、詰んだ?

原作の魔の手からは逃れられぬのか?

 

 

そして俺は考えるのを止めた。

 




原作入り待ったなし
そして主人公の苦痛が始まる


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逃れられぬ第5話

 

「あぁ、鬱だ」

 

やってきました、一斉検査。

 

俺、如月鋼夜は学校中の男子がひしめく体育館で一人ため息をついた。

 

政府が直々に行うと宣言した全国一斉検査。

俺は結局学校へ来た。休む理由が無かったからだ。

 

検査は一年からやるようで、俺たち三年の順番はまだである。

 

 

「元気ねーな、どうした?」

 

「授業潰れるんだし喜ぶところだろ?」

 

 

元気の無い俺の姿を確認したのか、玲児と泰河が近寄ってきた。

俺を心配する親友二人に「なんでもない」と返す。

 

しばらくすると、三年の順番になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

いよいよ俺のクラスの順番になった。

 

俺より先に受けた玲児は「残念だなー」とは口で言っていたがもともと本気にしていなかったようだ。

そして俺の名前が呼ばれた。

玲児が大丈夫なら俺も大丈夫だろ、という謎の自身を得た俺は腹をくくって向かった。

 

偉い人は言っていた。

なるようにしかならんさ、と。

 

 

場所は体育館横の武道場。

入って目に付いたのは、至るところにコードが繋がっているIS。

……?なんだこのIS?打鉄でもラファールでも無い?

しかしそのISに俺は見覚えが無かった。この世界に住んでいるためアニメに出た機体は勿論、第三世代前の機体だって見たことある。

しかし目の前の機体には全く見覚えが無かった。

 

(まぁ……関係無いか)

 

ISから意識を外して再び視線を動かす。

そしてコードの集まった先に手が置けそうな何かのタッチパネルを発見。置けそう、というよりここに置くのだろう。

そのタッチパネルの周りにはスーツを着込んだ女性に白衣を着た女性とうちの学校の教師が数人いる。

 

 

「如月鋼夜くんね?それじゃあ、そのタッチパネルに触れてちょうだい」

 

スーツの女性はこの作業の繰り返しに飽きたのか、面倒な感情を隠さず俺に言ってきた。

俺だって、出来れば貴女をそのまま退屈にさせときたいよ。

退屈にさせときたいよ。

 

言われるがまま、パネルに手を置く。

 

そして、キンッという金属音と共に頭に様々な情報が流れ込んでくる。

しばらくすると、それは収まったのでふと俺は辺りを見回す。

 

信じられないと言った顔で俺を見る者。手に持つ端末とISを見比べる者。まだフリーズしたまんまの者。

反応は様々だった。

 

それも長くは続かず、現状を理解すると皆バタバタと慌て行動し出した。

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

それを眺めながら、俺は口癖となった言葉を呟いた。

 

 

こうして俺は二人目の男性IS操縦者となった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あのあと、怪しまれるのを避けるためにさっさと教室へ返された俺は放課後に校長室へ呼ばれた。

親友二人には遊ぼうと誘われたが用事があると言って断った。

ちなみに泰河も玲児と同じくISは反応しなかったようだ。

 

 

担任に連れられ校長室へ入ると、校長室には俺の両親が居た。

 

「如月くん、そこに座りなさい」

 

両親の対面には校長先生と、検査場に居たスーツの女性が居た。

 

そして俺が来た事により話は始まったが、俺は半分は上の空だった。既に分かっていた事なのだから。

俺は「はい」とか「そうですね」など適当に相槌を打つだけ。

 

スーツの女性は政府の者であり、俺の身柄は政府で保護し、安全のため俺をIS学園へ入学させるらしい。

 

俺の両親も最初は「うちの息子が!」と喜んでいたが、重要人保護プログラムの話になると表情を強張らせた。

 

重要人保護プログラム。簡単に言うと、重要人の家族に被害が及ばぬように別の戸籍を作って全くの別人として生きてもらう事で保護するプログラム。

箒さんが受けていたプログラムだ。

 

両親と、離れ離れになる。

俺はふと、隣に座る父と母を見る。

この世界で、俺をここまで育ててくれた。俺の、この魂の本来の父と母とは違うが、同じくらい大切な家族。そう、家族だ。

改めて意識すると、目頭が熱くなってきた。人前だというのに、こんな年だというのに、涙が零れそうになる。

 

誰かが察したのかどうかは分からないが、話はここまでで終わった。

政府の人は名刺を渡して近いうちに連絡をするよう頼んできた。

 

 

校長先生や担任が何か言っていたが、聞こえなかった。

俺の頭の中は家族の事で一杯だった。

 

 

「ちょっとトイレ……」

 

「わかった、父さん達は車で待ってるからな」

 

一人になりたかった。泣きたかった。父さん達は察してくれたのか、何も言わなかった。

 

フラフラとした足取りで、近くのトイレへ向かう。

 

ドンッ!

 

「いてっ」

「あてっ」

 

トイレへ向かう途中の廊下の曲がり角で、誰かとぶつかったみたいだ。

お互いに尻餅をつく形で倒れた。

 

「だ、大丈夫です…か……?」

 

慌て立ち上がり、相手を起こそうと手を差し出すが俺の言葉は止まる。

 

「ん、だいじょぶだいじょぶ」

 

大丈夫と言いながら俺の手を握って立ち上がる目の前の彼女。

立ち上がったのに彼女は俺から手を離そうとしない。

 

「やっと目標(ターゲット)に会えたんだからねっ!ケガの功名ってやつかな?」

 

紫色のロングヘアーに不思議の国のアリスのような水色のエプロンドレス。そしてトドメは頭のメカメカしい兎耳。

 

「キミが……如月鋼夜くんだね?」

 

彼女は笑顔で語り掛けて来るがその目は決して笑っていない。

 

ISの生みの親にして天才にして天災。

篠ノ之束(ラスボス)が、そこに居た。

 




アニメだとただのアホのお姉ちゃんって感じだけど実際は色々ヤバいラスボス束さんの登場だよー

原作集めはじめました


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拉致られた第6話

初めてランキングにのっちゃいました、皆さん、ありがとうございます
突発的に始めたこの作品を読んでくれている人が多くて驚きです
思わず職場で小躍りしました

さて、少しお知らせですが今回の話から
路線がギャグ全開になります
オリキャラが増えます
他作品ネタが増えます(主にガンダム)

好き嫌いが分かれるジャンルが増えますので、以上の内容が苦手な方はお気を付け下さい

それではどうぞ


 

「篠ノ之束……」

 

ISの生みの親にして箒の実の姉。

現在進行形で世界中から指名手配されているトップレベルの重要人。

篠ノ之束博士が俺の目の前に居る。

 

「そそ、天才の束さんだよー!初めまして、二人目の(・・・・)男性IS操縦者の如月鋼夜くん……で、合ってるかな?合ってるよね?」

 

妙に高いテンションで自己紹介すると、握ったままの俺の手をブンブンと揺らす。握手のつもりだろうか?

 

いや、重要なのはそこじゃない。今こいつなんて言った?

 

二人目の男性IS操縦者。

こいつ、既に俺の事を知っている……!?

 

俺は彼女に掴まれている手を離そうと思い切り腕を引き戻そうとするが、凄い力で掴まれているのか離れない。

待てよ、大人とはいえ相手は女性だぞ!?

 

「ふふふ、何処へ行こうというのかね?」

 

目の前の篠ノ之束ーー束博士と呼ぶことにするーーは、相変わらずニコニコと笑顔を浮かべている。

ただし、その目は決して笑っていないが。

そう、これはまるで養豚場の豚を見るような……。

 

 

「な、何が目的ですか」

 

勇気を出して束博士に質問する。

 

「別に取って食べる訳じゃないから安心しなよ。一緒に来て欲しい場所があるんだ」

 

一緒に来て欲しい、と言っているが恐らく俺に拒否権は無いだろう。態度で分かる。

くそっ、アニメを見る限りだとアホなお姉ちゃんキャラかと思っていたがそんなチャチなもんじゃねえぞこの人。

 

「分かりました……予定はいつですか?」

 

「今から♪」

 

「…………親に電話していいですか?」

 

「直ぐ済ませてね~」

 

 

これから俺はどうなるんだ……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ドナドナドーナー。

人間がーロケットにー乗せられてー拉致られてゆーくーよー(適当)

 

おっす、オラ鋼夜。絶賛現実逃避中。

束博士とエンカウントした後、親に束博士とエンカウントした事を正直に言った。親は納得していなかったが横から携帯を奪い取った束博士が半ば脅しをかけていた。

そして束博士に連れられるがままホイホイついていったら変なニンジン型ロケットに乗らされた。そして空の旅へ。今ここ。

 

と、思ったら少しの浮遊感を感じた。そしてロケットが少し揺れた。

 

「着いたよー」

 

「はやっ!」

 

まだ学校を出て数十分しか経ってないよ!?

 

「束さんは天才だからね!さ、かもんかもーん」

 

ロケットの扉が開く。俺の腕を強引に掴み、駆け出す束博士。引っ張られているため俺も走る羽目になる。

 

辺りは薄暗く、見渡すと照明が幾つかあり、それが光源となっていた。ここは地下のようだ。

 

少し走るとエレベーターの入り口を発見。束博士はボタンを押して中に入る。俺も入らざるを得ない。

 

そして彼女は最上階のボタンを押した。というかこれ、最上階らしきボタンと地下のボタンの二つしか無い気がするんだけど。

 

「ここは何処なんですか?」

 

「まぁまぁ、来れば分かるよ」

 

何処かのビルだとは思うのだが。

聞いてみるが束博士は先ほどから同じ返答しかしない。ロケットの中でもこんな感じでした。気まずかった。そして今も気まずい。

 

エレベーターがゆっくり止まり、チーンという音と共に扉が開く。最上階に着いたようだ。……助かった。

 

そして束博士にまたまた連行されて少し歩く。

そしてとある扉の前で立ち止まる。

その扉には「社長室」と書かれているがその文字は二重線で消され「あっくんのお部屋」と書かれている。

これ多分、束博士が書いたんだろう。扉いっぱいにハートとかそんな落書きが飛んでるし。

 

そして束博士はようやく俺から手を離すと勢いよく目の前の扉を開けて

 

「あっく~~~~ん!会いたがってた二人目を連れてきたよ~~~」

 

奇声を発しながら部屋に突っ込んでいった。

 

恐る恐る部屋へ入るとそこには

 

「そぉい」

 

「やぁん」

 

束博士を抱きながらくるくる回転するスーツの男性の姿が。

二、三回転するとその男性は束博士をストン、と優しく着地させた。

 

「なにこれカオス」

 

俺はそう呟くしか無かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「見苦しいところを見せてしまったね」

 

「あ、いえ……」

 

部屋にあった応接用のソファに俺とスーツの男性は向かい合って座っている。

 

あのあと束博士と目の前の男性は二三言ほど会話を交わし、束博士は「終わったら呼んでね」と言い残して部屋を出て行った。

嵐のような人だった。天災の名は伊達じゃないな。

 

「彼女の事だ、半ば拉致みたいな形で君を連れて来たんだろう?彼女に代わって謝らせてもらうよ」

 

そう言うとスーツの男性は頭を下げた。

彼女というのは束博士の事だろう。

 

「おっとすまないね、まずは自己紹介でもしようか。私はこういう者だ」

 

目の前のーーパーマのかかった栗色の髪をした、二十代後半くらいーー男性は名刺を渡してくれた。

 

名刺には「ラビアンローズ代表取締役兼技術開発総責任者 西條 輝(さいじょう あきら)」と書かれていた。

 

えーと、ラビアンローズって確か数年前に起業したにも関わらず圧倒的な技術力で瞬く間に世界に名を知らせる大企業になった会社だよな。確かISも取り扱ってた。

緑色の巨大MSに撃墜されそうな名前だったから覚えてる。

で、そこの代表取締……え?

 

「しゃ、社長であらせられますか!?」

 

「うん、一応ね」

 

なんと!?目の前の男性があの大企業の社長ですと!?

 

「大変失礼いたしやがりました!」

 

「とりあえず落ち着こうか。あと、無理して敬語使わなくていいからね?」

 

な、なんてお優しいお方なんだ。

とりあえず社長さんから差し出されたコーヒーを口に含んだ。

何も入れて無かったからブラックだった。吐き出さなかった俺は偉いと思う。

でも、お陰で少し落ち着いた。

 

「落ち着いたかい?」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

「なら、良かった」と、社長さんは微笑んだ。

そして一呼吸置いて話しだした。

 

「さて、まずは君をここに呼んだ理由から話そうか。本当なら日を改めて君の都合に合わせたかったんだけどね」

 

社長さんはすまないね、ともう一度謝ると話を続けた。

 

「私はずっと待っていたんだ。二番目(・・・)に発見される男性IS操縦者を」

 

社長さんが言った言葉が少し引っかかる。

これはまるで二人目が出現するのが分かっているような……。

そこまで思い至った瞬間にハッとする。

 

 

「どうやら気付いたみたいだね」

 

にっこりと笑いかける社長さん。

俺は彼の言葉と笑顔に反応出来なかった。

 

「私も君と同じ転生者なんだよ、如月鋼夜くん」

 

ああ、そうだ……(ヤツ)はおれを原作に関わらせる以外にも言っていたじゃないか……!

 

俺のサポートとして他の転生者を送る、と。

 




初っ端の伏線回収
実はクロエを出したかったがキャラが分からないから束さんでごり押しした罠
ていうかあの人参ロケット、本当どうなってんのかね?

あれおかしいな、主人公が一向にIS学園に行かないぞ?


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お話する第7話

ニセコイ見てた筈なのにISを見ていると錯覚してしまった俺は悪くない(錯乱)

箒「こんなのただのダイジェストよ!」
鋼夜「だったら見ればいいだろう」

会話ばっかりの、詰め込み過ぎの、本当にダイジェストな回


 

転生者カミングアウトの後、お互いの自己紹介を再開した。

 

 

「ガンダム、好きかい?」

 

その途中で社長さんは机のカップに入ったコーヒーを口に含むと、俺に聞いてきた。

 

「うん、大好きSA☆……好きです」

 

……しまった、ついチャー研ネタで反応してしまった。

俺は恐る恐る社長さんの反応を待った。

 

「気にするな!」

 

社長さんは笑顔で宣言した。

まるで絶体絶命の状況下の砂漠でオアシスを発見した時のような、言葉の通じない異国で日本人を見つけた時のような、そんな笑顔だ。

 

この時、俺の中で何かを確信すると共に何かが弾けた。

 

「トゥッ!」と、俺。

 

「へァーッ!」と、すかさず社長さん。

 

「「モウヤメルンダッ!」」

 

最後は二人一緒。

 

 

「流派東方不敗は!」

 

 

 

「王者の風よ!」

 

 

「全新!!」

 

 

「系裂!!」

 

 

「天破侠乱!!」

 

 

「「見よ!東方は紅く燃えている!!!!」」

 

 

分かる人には分かるネタをひとしきりこなした俺と社長……いや、同志輝さんと熱い握手をした。

人は分かり合えると心で実感した瞬間だった。

 

 

「さて、話を戻そうか。僕はメカとかロボットが好きでね。この世界に来る前はそういう世界に行ってたんだ。最初はファーストガンダムの世界に行ったね。いやあ……懐かしいなぁ」

 

輝さんは話を再開した。

分かり合えた俺達は先程までの固い雰囲気から、友達との会話のような軽い雰囲気に早変わりしていた。

 

なるほど、輝さんがこの世界に来たのもメカ、というかISがあるからか。

 

「全作品のガンダムの世界に行ったんですか?」

 

「いや、宇宙世紀や割と最近のガンダム世界には行ったけど全部では無いなぁ。それに私は技術者側、というかMSが好きだからね。本編にはあんまり関わって無い……な、うん、多分」

 

「会社の名前がラビアンローズなのも、その関係?」

 

「まぁ、ラビアンローズは思い入れがあった場所だからね」

 

「具体的には?」

 

「エマリーに惚れたんだ」

 

「具体的過ぎます」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、大事な話をしよう」

 

輝さんとの熱いガンダム談義も一旦落ち着いたところで、輝さんが真剣な表情になる。

 

「分かっている通り君は二人目のIS操縦者となってしまった。政府の情報規制で君の存在を知る者は少ないが、完全とはいかない。君は今、危険な状態なんだ」

 

ISは女性しか起動できない。だが俺は動かせてしまった。何故なのか?世界の奴らはこぞって俺を調べたがるだろう。下手すりゃホルマリン漬けもあり得る。せめて輪切りに、あ、やっぱしなくていいです。

 

「それは分かります。でも、輝さんはどうして俺の存在が分かったんですか?」

 

しかし今の輝さんの言い分だと、何故俺の事を知っていたのか。

輝さんは初対面のはずなのに俺の名前を知っていた。

二人目の出現が分かっていても素性までは分からないはずだ。

 

「ああ、君の学校にISを貸し出したのが偶然にもうちの会社でね。社員から報告があったのさ。まぁ、二人目の出現は分かっていたから君が何処に居ても私達は君を見つけるつもりだったよ」

 

と怖い事をさらりと言う輝さん。

ていうか政府の情報規制が(笑)状態じゃないか。速攻でバレてるじゃん。

 

 

「じゃあ、束博士は……」

 

束博士。俺をターゲットとか言っていたあの人。養豚場の豚を見るような目をしていたあの人。

 

「……君が発見された時に私がついうっかり二人目の存在を言ってしまってね。まぁ、彼女ならいずれ自分で見つけるだろうからソレは良かったんだが……つい「会いたい」と呟いたら「じゃあ連れてくるよ!」と目にも止まらぬ速さで部屋を出て行って……。正直すまないと思っている」

 

「あ、いえ……」

 

輝さん、貴方も苦労してるんですね……。

 

「あ、じゃあ束博士とはどういう関係で?」

 

これも気になった事。

束博士は指名手配されている。アニメしか見てないが束博士は一人で行動していたはず。

それに見た限り束博士と輝さんは仲が良いように見える。

専用の通路と隠れ家(俺が拉致られた際に通った道。束博士が勝手に改修したらしい。確かに正式な社長室の扉が落書きされてたら色々ヤバい。ちなみに隠し扉は社長室側からだと見えない)があるくらいだ。

 

 

「白騎士事件は知っているね?」

 

「はい。……束博士と織斑千冬が引き起こしたと言わてれるんですよね」

 

「うん、その通りだよ」

 

俺の問いに社長は難しい顔をしながらも答えた。

アニメの最後で事件についての意味深な会話をしていたのを俺は覚えている。

 

「知っているならいい。束はISを世界に公表した。しかしISは評価されなかった。……物好きな一つの企業を除いてね」

 

「まさか……!」

 

輝さんは俺の想像が答えだと言わんばかりにニヤリと笑う。

 

「そう、その物好きな企業がここさ。でもまぁ、企業一つじゃ満足しなかったんだろうね。結局事件は起こり、ISの有効性は証明されたが束はISの製造方法を唯一知っている重要人として世界から追われる事になった。……まぁ、その時の縁で顔と名前は覚えて貰ったのさ」

 

「で、今に至ると」

 

話を聞いて納得した。

ISは元は宇宙へ行くためのパワードスーツ。ガンダムの世界に居た輝さんにとっては興味の湧く対象だったのだろう。

 

「ああ。しかし皮肉なものだね。宇宙開発のために作られたISは軍事用に転用され、各国はISの開発資金を宇宙開発へ回していたものから取っていったんだから」

 

そう言って輝さんは遠い目をする。

 

確かにISは軍事利用、というか兵器としては開発されているがISを宇宙で使うという事は聞いた事が無い。

 

 

「さて、なんやかんやで大事な事を言い忘れてたよ」

 

遠い目を辞め、再び真剣な表情で俺を見つめる輝さん。

 

「私は君をラビアンローズのテストパイロットとしてスカウトしたい。もちろんタダで、とは言わない」

 

「では、お願いが二つあるんですがいいですか?」

 

俺の返答に輝さんは微笑む。

 

「ふふ、交渉とは中々やるじゃないか。いいよ、叶えられる範囲なら協力しよう」

 

「ありがとうございます。では一つ目なんですが、専用機が欲しいです」

 

「その点なら抜かりはない。君の出現に合わせてちょうど我が社の試作ISの開発が間に合うようにしておいた。君がIS学園に入るまでには完成するよ。君の要望が取り込めないのが残念だが、しばらくは我慢してくれ」

 

俺が望んでいた以上の答えを出す輝さん。

 

「充分過ぎますよ、ありがとうございます。二つ目は、家族についてなんです」

 

家族。この世界で、俺をここまで育てくれた両親。とても感謝している。

 

「なるほど、重要人保護プログラムの事だね?」

 

輝さんの問いに俺は頷く。

俺がIS学園へ行き、存在が明らかになれば俺の両親は重要人保護プログラムによって家族離れ離れになるだろう。

 

前世の俺は親孝行出来ずに死んだ。

今世の俺は家族をバラバラにしようとしている。

とんでもない親不孝者だよ俺は。

 

「はい。俺をここまで育ててくれた、大事な家族なんです。無茶なお願いだということは分かっています。でも、それでも、お願いします!」

 

そして俺は頭を下げる。

しばしの沈黙。

緊張が辺りを包む。

 

「やれやれ、そこまでされたら本気になるしか無いじゃないか。政府に掛け合ってみるよ」

 

輝さんの言葉に俺は頭を上げた。

 

「君は優しい子だね」

 

輝さんは満面の笑みを浮かべながらそう言ってくれた。

そして、俺の前に再び手が差し出される。

 

「ありがとう、ございます。……そして、よろしくお願いします」

 

泣いてたかもしれない。呂律が回ってなかったかもしれない。酷い顔だったかもしれない。

でも、俺は確かに、その手を取った。

 

 

 

 

 

「いけないいけない、つい話が弾んでしまったよ」

 

シリアスな雰囲気を切り替えたかったのか、難しい顔を笑顔に変えてそう言った。

輝さんの言葉で、ふと部屋に備えられている時計を見れば既に18時を過ぎていた。

 

「あ……」

 

思い出した、帰りどうしよう。

束博士に拉致られて着の身着のままだよ俺。

ていうか親が心配してそう。絶対してる。

 

「親御さんへ連絡するのかい?」

 

携帯を取り出すと、輝さんが声をかけてきた。

 

「ええ、一応。迎えに来てくれるかどうかは分かりませんが」

 

「……本当にすまないね」

 

「いや、輝さんは悪く無いですよ……」

 

ほとんど束博士のせいだと俺は思う。

 

「ほうほう、では全部束さんが悪いと言っちゃうんだね?」

 

唐突に誰かに肩を掴まれる感覚がした。

そして自分のすぐ後ろから聞こえる第三者の声。

 

「ああ、全部君が悪い。それと彼から離れてくれないかい?」

 

「あちゃー、あっくんってば手厳しいね」

 

いつの間に俺の背後に現れたのだろうか、束博士が肩を掴んでいたようだ。

束博士はしぶしぶといった表情で俺から離れると輝さんの隣へ立った。

 

「待ってろ、と言っただろう」

 

「だってお話しが長いんだもーん」

 

嘆息しながら束博士に注意する輝さんだが当の本人はどこ吹く風といった様子で笑って受け流す。

 

「ほーんと不思議だよねー。あっくんの言ってた通り、いっくん以外の子が出てきちゃった。ねね、この子調べていい?」

 

笑いながら、さらりと怖い事を言う束博士。

しかも相変わらず目が笑っていない。

何をされるかは分からないが恐らく彼女に捕まったら最後だろう。

 

「彼は我が社に迎え入れる事にしたんだ。手を出すなら、たとえ君だろうと許さない」

 

「冗談だよじょうだーん」

 

束博士を抑えた輝さんすげぇ。

「あっくんが言うなら仕方ないよねー」と呟くと、束博士はくるりとこちらを向く。

 

「えーっと、如月鋼夜くんだよね?長いから「こうくん」でいい?いいよね?はい、けってーい」

 

「え、ちょ、え?」

 

「束さんの事は好きに呼んでくれていーよ☆」

 

束博士のマシンガントークに圧倒される俺。

や、ヤツの目が養豚場の豚を見るような目から新しい玩具を見つけたような目になってやがる!

 

「じゃ、じゃあ、束さんで」

 

「んー、まぁいっかな。よろしくねー、こうくん」

 

初対面の時のように無理やり握手され、手をブンブン振り回される。

 

「IS学園に行くんならちーちゃんといっくんと仲良くしてねー。あ、あと……」

 

束さんは手を振り回すのを辞め、俺に近づき。

 

引き続き(・・・・)箒ちゃんをよろしくね」

 

そう、耳元で囁いた。

ゾクリと、背筋が寒くなる。

 

束さんは何事も無かったかのように笑顔に戻ると「じゃ〜ね〜」と言い残し、部屋から去って行った。

 

「……あ、帰り……」

 

「……親御さんには私から話そう。携帯を貸してもらえるかい?」

 

俺は携帯を取り出し家族に連絡を入れる。

繋がった瞬間の母さんの怒鳴り声で一瞬耳を携帯から離した。

父さんも母さんも本気で心配していたようだ。まぁ、本当に拉致られたし。

 

事のあらましを両親に伝え、輝さんへ携帯を渡す。

 

両親と輝さんの交渉の結果、俺は輝さんの家に一晩泊めて貰える事になった。やったぜ。

 




輝邸(豪邸)

輝「アストナージさんは僕の師匠でもあり尊敬する人だよ」
鋼夜「……サラダでした?」
輝「ああ……サラダだったよ」

鋼夜「ISの世界に来る前はどこの世界に?」
輝「GジェネレーションOW」
鋼夜「やべぇよ……やべぇよ……」

輝「どんなISがいいんだい?」
鋼夜「人類を導くISで」
輝「流石に無理かな」

二人は幸せな会話をして終了


次回からIS学園へ飛びます、キンクリします
このままだと主人公が一向にIS学園に行かないので
空白の期間は回想か何かでやります(適当)

そういえばまたランキングに載ってました
こんな作品と作者ですが、よろしくお願いします


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苦痛の始まる第8話

主人公激おこ
そしてネタ回


 

時は飛んで、今日はIS学園の入学式。

俺は学園行きのモノレール乗り場の入り口に居た。

 

 

 

「ついにこの日が来たね」

 

 

そう声をかけてきたのは輝さん。

ラビアンローズ所属のテストパイロットになってから今日まで訓練漬けの日々だった。

先輩パイロットさん達から優しく手ほどきを受け、日々頑張ってきたが輝さんの存在があったからここまで来れた。輝さんは癒し。あと、俺はホモじゃない。

 

 

「頑張れよ、親友」

 

「たまには連絡くれよな」

 

泰河と玲児の親友二人も見送りに来ている。

IS学園の入学式は一般の学校より早い。

なので、彼らがここに居るのは不思議な事ではない。

 

 

「ご両親の方は来られないけど、君の入学を祝っていたよ」

 

今、この場に居るのは俺を含めたこの四人だ。

 

結論から言うと両親と俺は離れ離れにならなかった。

ラビアンローズが管理する土地に護衛付きで暮らす事になり、父さんがラビアンローズに務める事になったが、家族の縁が切られることは無かった。政府が引き下がったらしい。

 

「ラビアンローズって凄い会社だろう?お父さん重役になっちゃったよ」「趣味に精が出せるわ」と、逆に二人から感謝された。

まぁ、喜んでくれてなによりだ。

 

 

「ありがとうございます」

 

俺は三人に礼をすると、必要最低限の荷物が入ったスポーツバックを担ぎ、モノレール乗り場のホームへ向かう。

ちなみに、着替え等の大体の荷物は既に学園に運びこまれているらしい。

 

 

いざ、IS学園への一歩を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

踏み出さなかった。

 

 

スポーツバックをその場に下ろし、回れ右。

その場からダッシュで駆け出す。

 

親友二人の脇を抜け、外へ脱出

 

「逃げるな!」

 

「これで何度目だ!」

 

出来なかった。二人に捕まった。

親友二人は俺の行動などお見通しと言わんばかりに手際良く俺の逃走を妨害してきた。

 

「やだ!小生やだ!絶対行きたくない!HA☆NA☆SE!」

 

「キャラがブレてるよお前」

 

ジタバタと暴れ、二人の拘束から逃れようとするが離れない。

 

逃げようとするのはこれが初めてではない。

何故逃げようとするのか?それは今日の早朝まで遡る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう鋼夜くん」

 

「おはようございます」

 

今日の早朝に俺は社長室に呼ばれた。

理由は勿論、今日がIS学園の入学式だからだ。

 

 

「いよいよ今日だね」

 

「ええ、やっとこの日が来ましたよ」

 

俺と社長は応接用のソファに座ってコーヒーを飲みながら会話している。

 

「あ、そうだ。ハニートラップには気を付けてね」

 

いつもの他愛ない会話。

その途中でふと気付いたように輝さんは言った。

 

「ハニートラップ?」

 

なにそれ、初耳。

 

「簡単に言えば、色仕掛けだね。君やISの情報は貴重だから、女の子を使って色々してくるかもしれない。ルパン三世の峰不二子と言えば分かるかな?」

 

おーけいわかった。

わかりたくないけどわかった。

 

ぎぎぎ、と壊れたからくり人形のようにゆっくりと首を輝さんに向ける。

 

「恋愛、ダメなんですか?」

 

「IS学園は女の子だらけだからね。でも代表候補生は目立った真似は出来ないから大丈夫なんじゃないかな?それに代表候補生ってヒロインでしょ?」

 

そう言ってニッコリと微笑む輝さん。

違う、違うんだよ。

 

「童貞、捨てれないんですか?」

 

「気持ちは分かるけど、既成事実は一番怖いんだ。そういうのは厳禁だよ」

 

へー、そっかー、恋愛ダメなんだー。

ふふふ、ふふっ、ふふふっ。

あははははははははははははははははははは。

 

 

「ラブコメの世界で恋愛出来ないとかふざけんなぁぁぁァァァァァァァ!!!こちとらそれが楽しみで今日まで頑張って来たんだよ!!返せよ!俺の生きがい返せよ!」

 

俺は立ち上がり、咆哮を上げた。

叫ばずにはいられない!

 

「ち、ちょっと落ち着いて鋼夜くん。代表候補生は目立った真似が出来ないから、それだけで身の潔白を証明出来てるんだよ?ヒロインと恋愛出来るんだよ?……多分」

 

慌てて弁解、もといフォローを入れる輝さん。

だが違う、全然違う。

 

「その身の潔白が証明されているヒロインは全員主人公に惚れるんですけどぉ!?そもそも俺はヒロイン全員に興味無いし一夏のラブコメ騒動に巻き込まれたく無かったから最初は原作に関わりたく無かったんだよ!」

 

ISに乗れるのは確かに魅力的だよ。

それにモブとはいえ、一人一人が美人だったと記憶しているIS学園。

ひっそりと美人モブと恋愛したかったという密かな下心で原作介入してもいいかな、って思って今日まで頑張ってきたんだよ!俺は!

前世で「脇役スキー」「ヒロインキラー」「ギャルゲー殺し」と呼ばれた俺を舐めるなよ!初めてやったギャルゲーのリトバスで好きになったキャラはクドでも小鞠ちゃんでも無い、佐々美の取り巻き三人だぞ!凄いだろ!自分でも悲しくなった!

 

「俺は主役になれなくていいんだよ!エンディングか何かで主人公とヒロインの結婚式に、先にモブキャラと結婚してて画面の端っこで嬉しそうに主人公とヒロインを見守る親友ポジでいいんだよ!ていうかそれがいい!IS学園なんかに行ってられるか!俺は部屋に帰るぞ!」

 

「だ、ダメだよ!鋼夜くんの事はもう世間に発表しちゃったんだから!」

 

「んなもん知るかァァァァ!!!くぁwsでfrgtyふじこIp;@」

 

「ゲキガンパンチ!」(物理)

 

「たわらばっ!」

 

俺の記憶は一旦、ここで途切れている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以上。今日の早朝の出来事。

それから何度か逃亡を図ったがことごとく阻止された。

わざわざ見送りに来た親友二人に事情を説明したが二人は阻止隊の方へ裏切った。ナンテコッタイ。

 

 

「死なば頼朝!お前らも学園に来い!」

 

「お前の事情は分かったよ!俺達も一緒に行ってやりたいよ!」

 

「でも事情が事情だ。受け入れるんだ鋼夜。メールでも電話でもいい、愚痴とか相談とか聞くからさ」

 

ああ、悲しきかな。親友の気遣いが痛い。

俺は最高の友を持ったよ。

 

でも学園には行きたくない。

 

いや、学園に行く意味が無いのだ。

俺は前世で満喫出来なかったハイスクールライフ(もちろん恋)をやりたかったのと、ISに乗れるから学園に行こうと、原作に介入しようと思ったのだ。

だが恋愛はダメときた。ならば残るのはISのみ。

だが正直、学園に行かなくてもISには乗れる。てか実際、昨日までラビアンローズの特訓施設で乗ってたし。それにハニトラ蠢く高校生女子軍団より、ラビアンローズの先輩操縦者たちの方が遥かにマシである。

 

さて、楽しみが無い状態で、死亡フラグ&面倒なイベント盛りだくさんの学園に行きたいか?

答えはノーである。

 

だから、学園に行く意味が無いのだ。

 

なんで俺こんなに悩んでるの?俺なにかした?

 

あーもう、どれもこれも全部織斑一夏が悪い。なんもかんも一夏が悪い。お前がさっさと誰かとくっついてりゃ良かったんだよ!だからホモって呼ばれるんだよ、あのホモ野郎が!

 

 

「ホモのくせにバカにしやがってよぉぉぉ!!何が二人目だ!俺はふ◯◯◯かよオラァァァ」

 

「止めろ!今ここに人は居ないからいいが止めてくれ!」

 

「あとさりげなく自虐すんな!」

 

俺は他の生徒とは時間をずらして登校するため、今このモノレール乗り場には俺達以外に誰もいない。他の生徒は既に学園に居るだろう。

 

時間をずらしたのは未だに俺を狙う奴がいるから、だそうだ。

 

 

「玄武剛弾!」(物理)

 

「げじゅぺんすとっ!」

 

いつの間にか近付いていた輝さんの一撃により意識が遠のいてゆく。

最後に視界に入ったのは怒りのオーラを全身に纏った、笑顔の輝さんだった。

 

輝さんは怒らせてはいけない。教訓にし…よ……。

 

そして俺は意識を手放した。

 




主人公がIS学園に行かない(物理)

タイトル回収完了
鋼夜くんの(苦痛に満ちた)IS学園での日常がはっじまっるよー

鋼夜くんの知識はアニメ一期だけです、ここ重要
あと鋼夜くんはヒロイン勢をdisってる訳では無いです
もしそれだったら序盤で箒に話し掛けませんし

ガンダムかっこいいよね、でもボールが一番だよね
って感じです


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遂に来ちゃった第9話

一日でお気に入りが200も増えるってどういうことなの……
すっごい今更だけど、これネタだよ?
話の60%をネタでごり押しする内容になるよ?シリアスのシの字も無くなる予定だよ?残りの40%は優しさだよ?

ボールの人気に嫉妬
みんなどんだけボール好きなのw

とりあえずこれからも頑張って更新します


(ヤバい、マジでキツい)

 

男子でありながらISを動かした、通称一番目の男性操縦者である織斑一夏は困惑していた。

それは何故か。

答えは当然、男子が自分一人だけだからである。

いや、正確にはもう一人居るのだがそいつはまだ見ていない。

 

今日は高校の入学式だ。その初日。

これが普通の高校の入学ならどんなに良かったか。

俺が今居る場所はIS学園。この学校はISの操縦者を養成する学校。

ISは女子にしか反応しないはずだが、何の手違いか。俺はISを起動させてしまった。

そして女子校とも言えるココ、IS学園に俺は放り込まれた。

 

そして今、この教室に男子は自分一人だけなのである。

さっきから視線を感じるのも、そのせいである。自意識過剰ではない。

しかも席も悪い。なんで真ん中の最前列なんだ。目立つ上にクラスメイトの視線が背中に突き刺さりまくりだ。

 

ちらりと窓際に目を向ける。

窓際の席には六年ぶりに再会する幼馴染の篠ノ之箒が居る。

救いを求めて視線を投げかけるが、箒は辺りを見回すと何かを悟った顔をして、謝るような視線と共に窓の外に顔を逸らした。

 

どうやら頼みの綱の幼馴染も、俺と同じく目立ちたくないらしい。

そして俺は自分の隣の空席を一瞥し、ため息をついた。

 

 

(だ、誰か!この状況をなんとかしてくれ!ていうか早く来てくれ二人目!)

 

「みなさんおはようございまーす」

 

祈りが通じたのか、教室の前の扉が開いて誰かが入ってきた。

このタイミングで来るという事は担任の教師だろう。

助かった!と俺は思った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………ハッ!?」

 

意識が覚醒する。ここはどこ?私は誰?

いや、大丈夫だ、問題ない。俺の名前は如月鋼夜。で、場所は……。

 

辺りを見回すと、目の前に海が見えた。そして視界が動いているのと、座席が見える事から何かの乗り物の中だろう。

 

「くそっ、やられた!」

 

自分が何処に居るかを理解すると俺は悪態をつく。

ここはIS学園行きのモノレールの中だ。恐らく気絶した俺を放り込んだんだろう。

 

しかし数分で目覚めるように気絶させるって、輝さん、そんな優しさいらないから。

そういえばあの人「Gガンの世界はやる事なかったから格闘技してた」って言ってたな。

よし、今度から逆らうの止めよう!

 

携帯を確認すると、三通のメールが入っていた。

 

「殴ってごめんね」と輝さん。

「頑張れよ」と玲児。

「達者でな」と泰河。

 

三通のメールを確認し、ため息をつきながら携帯を閉じる。

 

「しょうがない、腹くくりますか」

 

頬をパンパンと軽く叩いて気合いを入れる。

それと同時にもうすぐIS学園へ着くというコールが鳴った。

 

 

 

モノレールを降りてしばらく歩くと学園の正門に着いた。

でけーなー。いくら金使ってんだろ。

 

「お前が如月鋼夜か?」

 

そんなくだらない事を思っていると正門の前でスタンバってた人が声をかけてきた。

黒のスーツにタイトスカートで、背の高い、クールな印象を受ける女性だ。

うん、実は結構前から視界に入ってて無視したかったけど駄目みたいですね。

 

「はい」

 

とりあえず返事をしておく。

無視するなら何をされるか分からないし。

 

「お前のクラスの担任の織斑 千冬(おりむら ちふゆ)だ。詳しい紹介は教室で話そう」

 

黒スーツで長身の女性はそう名乗ると身を翻し、「付いてこい」とだけ言って歩き出した。

 

織斑千冬。主人公、織斑一夏の姉にして公式最強と言われる人物。

初代モンド・グロッソで優勝し、その戦いぶりから『ブリュンヒルデ』と評された。

まぁ、つまり、すごくすごい人。

 

 

「あのブリュンヒルデが担任なんて、光栄ですよ」

 

教室へ向かう道中、話しかけてみる。

 

「その呼び名は好きではない。あと、ここでは織斑先生と呼べ」

 

「はい、織斑先生」

 

まぁ、聞いての通り織斑先生はこの異名が好きじゃないみたいだが。

 

 

そうしていると「1年1組」のプレートがある教室の前に着いた。

教室に入ろうとした直前に、教室からガタタッという音がした。

あー、これって……。

 

「少し待っていろ。呼んだら入って来い」

 

はぁ、とため息をついた織斑先生は出席簿を構えて先に教室へ入っていった。

 

その直後に教室からパァン!と音が鳴る。そしてもう一回パァン!

すげぇ音だな。空気破裂してるんじゃね?

 

そして「キャーーーー!」という女子の黄色い声援、いや、もはやソニックブームを二回、出席簿のパァン!を一回経て遂に織斑先生からお呼びがかかった。

 

「如月、入って来い」

 

なんで名前を先に言った。

というツッコミを外へ押しやり深呼吸。

 

偉い人は言っていた。焦ったら負ける、攻めろ!と。

 

……よし、行くか。

 

意を決して教室の入り口の扉に立つ。

近未来的な、独特の効果音と共に扉が開き、俺は教室へ足を踏み入れた。

 

 

教室へ入り、教卓の横へ立って正面へ向き直る。

突き刺さる視線、視線、視線。

この教室に居る全員が俺に注目している。少し恥ずかしい。

 

ちらりと窓際の席を見る。

酷く驚いた様子の箒と目が合った。

 

今度は自分の正面の少し下を見る。

頭を抑えたままポカン、とした表情の黒髪の男子と目が合う。

 

そして改めて正面へ向き直る。

 

「如月鋼夜です、至らない点もあると思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

そして礼。

 

さて?クラスの反応は?

 

「あれ?どっかで見たことあるような……」

「あれだよ、剣道で優勝してた人」

「あ、確かに」

「剣道で優勝してた男子だ」

 

……意外と知名度あるんだなぁ、俺。

しかし剣道ばっかだな。いや、確かに剣道頑張ってたけどさ。

 

「うーん……どう?」

「織斑君と比べるとねぇ」

「普通……かな?」

 

泣いていいかな?これ。

 

「え、えっと……メガネ似合いそう」

「インテリ系ってことかなぁ?」

 

……ありがとう左端の子。こんな特徴が無いのが特徴なジムカスタムみたいな俺の容姿を褒めてくれて。泣きそう。(結婚しよ)

 

「時間が無いので自己紹介はここで打ち切る。すまないが後は休み時間で各自、確認し合え。では、授業を開始する」

 

わーい。入学式の日に授業あるとかマジかよ。

 

「ああ如月、お前の席は織斑の隣だ」

 

最前列じゃねえか。あんまり好きじゃないんだけど。

 

俺は空いた席、一夏の隣に座りスポーツバックから教科書類を取り出した。

 

隣の一夏や少し離れた席の箒が何か言いたそうにしていたが授業が始まったため、チラチラ見てくるだけだった。

 

 




鋼夜、IS学園に立つ

鋼夜とワンサマーの初解逅
鋼夜の席は一夏、相川さんの隣
……実はシャルの席なんだよなぁ

プロフィール的なものはセシリア編が終わったら書きます


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ホームシックな第10話

ボールってどうやってISにすりゃいいんだよ……
あれか鎧武のスイカみたいにすりゃいいのか
いや、ボールをISにする気は無いけどね?

みんな気軽に感想書いていいのよ?ボールとかボールとかボールとか(開き直り)


一時間目のIS基礎理論授業が終わった。

初めての授業は少し緊張したが、つまづく事なく授業の内容は理解出来た。

 

IS学園に入学する前に届いた、「必読」とデカデカ書かれた参考書をちゃんと読んだ俺に隙は無い。

ちゃんと予習はしてきたし、予習のノートも持ってきてある。

ガンプラの説明書とか、設定資料とかを見るのが好きな自分にISの授業はもはやご褒美だ。

だけど計算式とかはやめて下さい死んでしまいます。

 

いやぁ、予習に付き合って貰って、しかもポイントとかも色々教えてくれた真理亜さんには本当に感謝だな。操縦を教えてくれた江里さんやレイチェルちゃんは元気だろうか。

元気だと思いたい。実は今朝にラビアンローズで会ってるけど。

 

はい、現実逃避終了。

今は休み時間なのだが、教室が色々凄い。

クラスメイトは俺達から距離を取り固まって此方の様子を伺っている。

しかも互いに互いが牽制し合っているため誰も話しかけてこない。

つまり「話しかけて来て下さい」オーラが逆に半端無いのだ。

廊下?他のクラスの生徒で一杯だよ。

 

あー、帰りたい。ラビアンローズに帰りたい。

警備員の岩野おじさんと一緒に笑点見たい。カっちゃんとシスちゃんと一緒にゲームしたい。

クレアと輝さんの三人で馬鹿騒ぎしたい。

 

 

「お互い大変だな」

 

先程まで教科書片手に机で撃沈していた隣の織斑が話しかけて来た。

 

「あぁ。織斑……一角だっけ?」

 

このネタは言わずにはいられない。

 

「一夏だよ。一に夏で一夏(いちか)だ」

 

苦笑しながらも訂正する一夏。

 

「すまん、冗談だ。俺は如月鋼夜。鋼に夜で鋼夜(こうや)だ」

 

「俺のことは一夏でいいよ。俺も鋼夜って呼んでいいか?」

 

「あぁ、いいぜ。少ない男子同士、仲良くやろうぜ一夏」

 

「ああ!よろしくな、鋼夜!」

 

互いの自己紹介を終え、握手を交わす。

爽やかで真面目な好青年。一夏の第一印象はこれだ。

 

「握手!握手したわ!」

「まさしく愛だ!」

「どっちが受けでどっちが攻めかしら」

「目標を確認、次の新刊への作業を開始する」

 

途端に教室の一端が騒がしくなった。握手しただけでこれか。

 

「なあ、鋼夜……」

 

「あぁ、次から気を付けよう」

 

 

「ちょっといいか」

 

「え?」

 

クラスメイトに腐女子が居る現実を一夏と嘆いていると唐突に話しかけられた。

 

お、ようやく来ましたか。

そう思いながら一夏と共に声の主へ振り返る。

 

そこに居たのは俺にとっては半年、一夏にとっては六年ぶりの再会となる人物、篠ノ之箒だった。

 

「箒?」

 

「……あ、ああ。少し話したい事がある」

 

一夏の確認するような呼び掛けに、なんとか反応する箒さん。

そしてチラリとこちらを見る。

 

「少し一夏を借りてもいいか?」

 

「あぁ、いいよ」

 

むしろドンドン貸すから。売っちゃうから。はよ落としてくれ。

箒さんは「すまない」と一言。

そして一夏を伴って教室を出て行った。

それに続いて何割かの生徒が教室を出て行った。

 

「ふむ。計画は成功か」

 

先程の一夏とのやり取りを見て俺は満足気に呟く。

計画とは無論「モッピー脱却計画」の事である。

確かアニメだとあのシーンのやり取りは箒がひたすら無言だったはず。

だが今の箒はなんとか返事を返していた。これは微笑ましい事だ。

 

…………さて。

 

一夏達は教室を出て行った。それに何人かの生徒が着いていった。そう、全員が行った訳ではない。

つまり、一夏と分散していた視線が全部俺に突き刺さる訳でして。

 

辛い。メゲたい。逃げ出したい。

 

 

「ねぇねぇ~」

 

脳内で某高校生麻雀のカタカタ先輩を想像しているといきなり話しかけられた……のか?

クラスがざわついたから多分誰かが俺に声をかけてくれたんだろうか。

俺は振り返った。

 

そこに居たのは茶髪のツーサイドアップの髪型で手の部分が隠れている変わった制服を着た、ほんわか垂れ目の子が居た。

 

「俺?」

 

「そうだよ~」

 

のほほんとした雰囲気の子だな。

……確かアニメに居たな。変な着ぐるみ着てた子か。

 

「何か用か?」

 

「織斑先生が休み時間に自己紹介しなさいって言ってたから~」

 

あぁ、なるほど。確かに言ってたな。

教室のあちこちから「その手があったか!」と声が上がった。うん、俺も忘れてた。

 

「そういえばそうだったね。俺は如月鋼夜、よろしく」

 

「私は布仏 本音(のほとけ ほんね)だよ~。ねぇねぇ、こうやんって呼んでいい?」

 

「よろしく、布仏さん。で、なにそれあだ名?」

 

「うん。鋼夜だからこうやんだよ」

 

あだ名かぁ……あんまりいい思い出が無いなぁ。あだ名ってからかいを込めて付けられる物だと思うの。前世の経験的に。

 

この子は純粋に、からかいとかそんなの無しで付けてくれてるんだよね?信じよう。

 

「なんだそりゃ。じゃあ俺も布仏さんにあだ名つけていい?」

 

「ばっちこーい」

 

笑顔で胸を叩く布仏さん。

山田先生ほどでは無いがなかなか立派な胸部装甲をお持ちの様で……お餅。

 

んー、どうしよっかな。

のほとけほんね。のほとけほんね。うーむ…………。

数秒考える。そしてこの時俺にプレッシャー、ではなく電流走る。ニュータイプ特有のてぃきぃーん!のSEが欲しい。

 

「のほほん、なんてどうかな?のほとけほんねを縮めてのほほんさん」

 

それに布仏さん自身もなんかのほほんってしてるし、と付け加える。

馬鹿にしてる訳ではない。

 

「お~、いいねぇいいねぇ~。全然おっけー」

 

良かった。これで「却下」なんて言われてたら軽く凹んでた。

 

 

「すまねぇな、鋼夜」

 

すると教室の扉が開いて一夏が入って来た。あれ?早くね?

後ろには箒さんも居る。

 

「いや、全然構わん」

 

「おう、そうか」

 

「ねえねえ~」

 

とりあえず一夏に返事を返すと、のほほんさんは一夏と話し始めた。

 

 

「久しぶりだね、箒さん」

 

「あぁ……久しぶりだな、如月」

 

そして俺は一夏の後ろに居た箒さんに声を掛けた。

が、その表情は少し複雑だ。

 

キーンコーンカーンコーン。

その時にちょうど二時間目の開始を告げるチャイムが鳴った。

 

「まぁ、話はまた後で」

 

「あぁ」

 

短い会話を交わし、箒さんは自分の席へ戻った。

チャイムが鳴ると廊下に居たギャラリーは散って行き、教室の隅で固まっていたクラスメイトも各々の席に戻っていった。

 

「ばいばいおりむー」

 

「またな、のほほんさん」

 

のほほんさんも帰っていった。

おりむーって……織斑だからおりむーなのか。

 

「なあ鋼夜。お前、箒と知り合いなのか?」

 

先程のやり取りを見ていたのか、一夏が聞いて来た。

 

一夏の問いには「まぁね」とだけ答える。

 

そして教室に山田先生が入って来た事により二時間目の授業が始まった。

 

 




セシリアかと思ったか!?
残念!のほほんだよ!

久しぶりにアニメ一期見直した
最初の箒が無言過ぎワロタw
ここの箒は少し喋るよ!

回想で色んな人の名前が出ましたね
まぁ、本編に出るかどうかは分からないけど
勘のいい人は元ネタに気付くかな?


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金髪お嬢様襲来の第11話

鋼夜くんの頭の中は意外とハッピーです
すぐネタに走ります

いつの間にかお気に入りが1000を越えていた
皆さん、ありがとうございます


「ーーーーで、あるからして、ISの基本的な運用はーーーー」

 

二時間目の授業が始まり、副担任の山田真耶先生が前で教科書を読んでいる。

緑色の髪にやや大きめの黒縁眼鏡。

第一印象としては彼女は教師というよりは同級生に見える。

それくらい背が低いし童顔なのだ。

しかし彼女の一番の特徴はなんといってもその見かけから繰り出されている途轍もない大きさの胸部装甲である。でかい。マジで。

 

きっと時代が違えば立派な胸部装甲を持つ重巡洋艦として登場したに違いない。

 

 

 

さて、山田先生による二時間目の授業が始まったのはいいんだが。

 

「………」

 

さっきから隣の席の一夏がチラチラこっちを見てくる。

机の上の教科書を手に取りパラパラとめくってこっちをチラ見。それの繰り返し。

そして俺はそれを無視。

 

前世の知識で、何故一夏がこんな行動をとっているのかは知っているが正直助けられない。

 

「織斑くん、何か分からないところがありますか?」

 

一夏の行動をたまたま目にした山田先生は一夏に訊いていた。

 

「あ、えっと……」

 

「分からないところがあったらなんでも訊いて下さいね。なにせ私は先生ですから」

 

先生の部分をやたら強調し、胸を張る山田先生。

 

先生、何人かの女子が胸に手を当てて自信喪失したような顔で俯いています。今すぐその姿勢をやめて下さい。

 

 

一夏は教科書に一度視線を落とす。

そして何かを決心した表情をすると教科書を閉じて山田先生に向き直った。

あ、これはやらかしますね。

 

「先生!」

 

「はい、織斑くん!」

 

「ほとんど全部わかりません!」

 

「え……。ぜ、全部、ですか……?」

 

そして奴は開き直りとも見えるような毅然とした態度で正直に言い放った。

山田先生?今ので笑顔が引きつったよ。見るからに困ってるよ。

 

「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階で分からないっていう人はどれくらい居ますか?」

 

挙手を促す山田先生だが、手を上げる生徒などいない。

当然俺も。

 

「如月くんは大丈夫ですか?」

 

ここで俺に白羽の矢が立つ。

まぁ、男子の片割れの一夏があんな状態なんだ。俺にも聞いてくるだろうとは思っていた。

 

「ええ、大丈夫です」

 

「そ、そうですか。分からないところが出てきたら訊いて下さいね」

 

俺がそう答えると山田先生はホッとした表情に戻り、反対に一夏は仲間が居ない事に困惑している。

 

今の授業は最初という事もあって、ISの基本的な用語や決まり等の簡単なおさらいや補足、解説である。

ぶっちゃけ参考書の最初の方のページの復習である。

加えて山田先生の教え方に不備は無い。むしろ分かりやすい。

 

なので、今のこの時点で授業が全く分からない方がおかしいのだ。

 

「織斑、入学前に渡された参考書は読んだか?」

 

教室の隅で授業の様子を観察していた織斑先生が一夏に問いかけた。

織斑先生の言う参考書。「必読」とデカデカと書かれた、電話帳ほどの厚さがある本。入学前に新入生全員に配られる。

俺はもちろん読んでいる。

 

そして一夏の出した答えは……。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

瞬間、織斑先生の手から出席簿が投擲されそれは一夏の頭にクリティカルヒット。

スパァン!と、人体のどこから発生しているか分からない音を上げた一夏は頭を抑えて悶える。

 

いやぁ、ほんと清々しいくらいフォロー出来ない理由だよな。

 

「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」

 

投擲した出席簿を回収しながら織斑先生は一夏に言った。

おっしゃる通りです。

ていうか無くしたんなら学校に言おうよ。それなら少なくともこんな公開処刑(一部に物理を含む)を受けなくて良かったのに。

 

「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」

 

「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」

 

「やれと言っている」

 

「……はい。やります」

 

反論しようとした一夏だが織斑先生の圧倒的目力で封殺される。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

織斑先生は一夏だけでなく教室の生徒全員に向けて言った。

正論だ。ハサミだって使い方を知らなければ凶器になる。

 

ていうか俺と一夏がISを動かした事自体が既に事故だよね。

不備はあっちにしか無いけどね。俺は悪くねぇ!

 

ていうか規則規則言いますが、それだとアラスカ条約さんが既に息をしていないんですが。

ISの軍事利用はダメ、ってどこかにあったはずなのにISを管理してるのは大体が国軍なんですがそれは。ドイツとアメリカとかモロだし。

自国の防衛のため?なら仕方ないねー(棒)

 

あぁ、帰りてぇ。

 

 

「貴様等、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」

 

探るような視線を感じ、前を見る。

「等」と言った辺り、どうやら織斑先生は俺と一夏に向けて言っているようだ。

 

とりあえずその質問については思っていないです。帰りたいとは思ったけども。……あ、これがダメだった?

 

……んで、質問の意味については当たり前だろ。誰がこんな危険地帯に進んて来たがるんだよ。

前世の知識無しにしてもハニトラが居るってだけで来たくないし。

状況がもうちょっと良かったら自ら望んで突貫したかもしれないけどね。

 

今なら織斑先生とロンパバトルしても勝てる気がする。

今の私は汚いドラえもんすら凌駕する存在だ!

まぁ、出席簿が飛来して来そうだから言わないけどね。

 

「望む望まざるに関わらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」

 

よーし、誰か某中立国(笑)が作った革命の一号機を持ってこい!いくらでも人間辞めてやるぞ!

 

……そろそろ、ふざけないでまともに考えよう。

 

つまり織斑先生は現実を見ろと言っているのだ。

そうは言いますが、あまりにもツッコミ所が多いと納得いかないのが人間の性だと思う。

 

……まぁ、言葉が辛辣だけど言ってる事は至極まっとうなのよね。

 

 

再び現実に意識を向けると、何故か山田先生がこけていた。

 

「うー、いたたた……」

 

(大丈夫なのか?この先生)

 

おそらく、クラス中の思いが一致した瞬間だと思う。

 

 

 

 

「鋼夜ー、助けてくれー」

 

「敢えて言わせてもらおう。自業自得であると」

 

二時間目の授業が終わるなり一夏は俺の元へ泣きついてきた。

が、俺はバッサリと切り捨てる。

 

「なんで鋼夜は分かるんだよ……」

 

「一夏と違って俺は参考書を捨てなかったからな」

 

そう言って机の隅に置いていた参考書を持って一夏に見せる。

一夏はこれを一週間で覚えないといけないのを思い出したのか、うなだれた。

 

「無くしたんなら学園に言えば良かったのに。そしたら再発行してもらえたはずだぞ」

 

「……返す言葉もございません」

 

どよーん、という言葉が浮かびそうなくらい落ち込む一夏。

まぁ、自業自得なのでしょうがない。救いは無いね。

 

 

すると、ツカツカと誰かがこちらに歩み寄る音がする。

……むっ、これは女の声!

……女子しか居ないから当然だけど。

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

「へ?」

 

「き……なんだ?」

 

ついノリで「来たなプレッシャー!」と言いそうになったが寸でのところで言い直す。

 

話しかけてきたのは少しロールのかかった鮮やかな金髪と透き通ったブルーの瞳を持つ女子。

ただ立っているだけでも彼女の雰囲気から高貴な気品を感じる。

このクラスで、しかも今の時期で金髪は現時点では一人しか居ない。

 

「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

俺たちの返答が気に入らなかったのか、目の前の女子はわざとらしく声を上げた。

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

 

「自己紹介も途中で終わったしな」

 

ここは一夏に便乗する。

いや、まぁ、メタ的な事を言えば俺は知っているのだがここで下手に言う必要はない。

それに一夏の発言は最もである。だって自己紹介は一夏の次に乱入した俺の番で終わったし。

あいうえお順にやってたんなら一夏以降、つまり、「おり」以降は紹介していないことになる。

 

 

しかし目の前の女子には俺達の答えは気に入らなかったらしい。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

目の前の女子ーーオルコットと呼ぼうーーは、信じられないといった顔だ。

 

「へぇ、セシリアっていうのか。俺は織斑一夏。よろしく」

 

「えぇ、よろしくお願いしま……って違いますわ!」

 

一夏はオルコットに自分の名を教える。

ああ、オルコットを自己紹介に来た奴だと思ってるのね。あながち間違いではないが。

しかし素晴らしいノリツッコミだ。

どうやら大阪の文化はイギリスでも通じるらしい。

 

「如月鋼夜だ。オルコットさん、これからよろしく」

 

「貴方も乗らなくていいですわ!」

 

挨拶は大事だよ。本当。

ぜーはー、ぜーはーと肩で息をするオルコットさん。

 

よし、この隙に逃げよう。

 

「じゃ、俺ちょいと野暮用あるから」

 

「え、ちょ、ま」

 

驚く一夏を尻目に素早く席を立ちその場を離れる。さらば一夏。

 

 

 

「やあ箒さん」

 

「……如月か」

 

一夏をスケープゴートにし、向かった先は箒さんの席。その表情から察するに今は不機嫌だな。

 

「なんなのだあの女は……」

 

間違いなくオルコットの事である。

箒さんはチラチラこっち見てたし。

 

「イギリスから来た人だってさ。それより半年ぶりだね」

 

「ああ、久しぶりだな」

 

少し微笑んでみせる箒さん。

その仕草に俺も自然と頬が緩む。

 

「愛しの一夏に会えた気分はどう?」

 

「ひゅっ!?」

 

恋バナの先制攻撃だべ!

 

「な、な、な……」

 

みるみると顔を赤くする箒さん。変わって無いなぁ。

 

「しっかり援護するから、頑張れよ」

 

そんな箒さんに笑顔でサムズアップを送る。いま最高にいい笑顔だと思う。

この学園からの逃げ道は無いみたいだしな。だったらここは腹くくって当初の目的である「モッピー脱却計画」のシメである一夏と箒の関係を良くすることに力を注ぐっきゃない。俺の平和な学園ライフのためにも。

 

「…………」

 

箒さんは何も言わずに俯いた。

あれ?ツッコミ待ちなんですが。

 

「お前は……いいのか」

 

「え、何が」

 

「あの……その……だな、中学の時の、噂が……」

 

途切れ途切れに言葉を紡ぐ箒さん。

……ああ、勘違いの噂か。そんなに言いにくい事か?

 

「ああ、別に箒さんにも一夏に対しても気にしてないけど?そもそもNTRする趣味とか無いし」

 

「えぬてぃーあーる?」

 

「あ、知らなくていいよ。まぁつまり俺は恋する女の子の味方という訳さ」

 

「……そんなにわかりやすかったか?」

 

「うん。とっても」

 

正直に答えると箒は顔の前で手を組み顔を隠す。

どこのネルフの司令官だお前は。

 

「ま、頑張ってね箒さん」

 

「待ってくれ」

 

自分の席に戻ろうとしたら箒さんに呼び止められた。

 

「改めてよろしく頼む。それと、これからは呼び捨てでいい」

 

「分かった。俺も呼び捨てで構わない」

 

そして箒と軽く握手を交わし、俺は自分の席へ戻……オルコットさんまだ居るよ。

 

「……!あ、あなた!」

 

「はい?」

 

「あなたも入試で教官を倒したのですか!?」

 

戻ってきた途端に物凄い剣幕のオルコットさんに迫られた。

IS学園の入試には、実際にISに乗って教師と模擬戦を行なうという内容の物がある。

オルコットさんが言っているのはそれだ。

 

「倒しては無いな、条件はクリアしたが」

 

まぁ、条件満たさなくても学園には入れるのだが一応ということで受けた入試だったが、その時の俺はラビアンローズで基礎は学んでいたので結構動けた。

 

条件が試験官のISのシールドエネルギーを50%にする……だったかな?

なんとか達成したよ。その時にはこっちのシールドエネルギーは五分の一切ってたけどね。

 

 

俺の返答に微妙な顔をすると彼女はまた一夏に食ってかかろうとするがそこで次の授業を知らせるチャイムが鳴る。

 

「っ……!また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

「「よくないです」」

 

俺と一夏の答えが完全一致した時だった。

 

チャイムが鳴り、捨て台詞のようなものを言いながらオルコットさんは席に戻っていった。

 




箒は鋼夜をフッた事に(一応)なりますし一夏は箒の想い人
鋼夜はこの二人に思う事は無いのか、と
まぁ、これが箒の言いたかった事ですね
相変わらず恋愛事にウブで口下手でしたが彼女は律儀なイメージがあるからこういうのとか謝りそう

そしてセシリア登場
テンプレな流れになりそうだったからカットしたけど構いませんね!


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学校終わりの第12話

1月23日に日間一位とか冗談でしょ……冗談でしょ……

皆さんありがとうございます
嬉しくてつい職場でハンドスプリングしました
硬い地面でハンドスプリングしてはいけない(戒め)

それでは本編どうぞ




「鋼夜、一緒に飯行こうぜ」

 

昼休み。

授業が終わるなり隣の一夏は真っ先に俺の席へ向かって来るなりそう言ってきた。

先の授業でも訳が分からない、といった顔だったが必死にノートを取っていた一夏。

たぶん気分転換したいのだろう。あと、この針のむしろのような視線から逃げたいというのもあるだろう。

 

 

「いや、俺はいい」

 

しかし俺は一夏の誘いを断った。

 

「え、なんでだよ」

 

当然、一夏は聞き返してくる。

俺も一夏と同じ状況。思っている事は一緒だと思って誘ってくれたんだろう。

 

「箒と行ったらどうだ?久しぶりに会ったらしいし、二人でゆっくり話したらいいよ」

 

俺は空気の読める男だ。

さっきからチラチラこっちを見ている箒の視線にだって気付いている。

 

「鋼夜も箒と知り合いなんだろ?ならいいだろ。別にいいよ気を使わなくて」

 

しかし流石と言うかなんというか。こっちの意図にまったく気づかないのである、こいつ。

ていうか恋愛云々は抜きにしても普通に頷けよ、そういう対応するから気を使うんだよ。

くっ……これが鈍感主人公か。なかなかの強敵だ。

 

「気なんて使ってねーよ。飯行く機会なんて幾らでもあるさ。俺は他のクラスメイトの子と行くよ、一年間は一緒だし少しは交流しとかないとな」

 

一気にまくし立てつつ俺は席を立ち、一夏が何かを言う前に教室を出て行った。

ああいう手合いは断ってもしつこく誘って来るだろうから、こうやって強制終了させた方がいい。

箒、場所は整えたぞ。あとはお前次第だ頑張れ。

 

 

(さて、教室を出たのはいいんだが……)

 

廊下には見渡す限り人がたくさん居た。埋め尽くされていると行ってもいい。

 

やっべ、どうしよ。一回教室帰るか?いや、あんな事言ったのに教室に帰るのは流石に格好悪いしまた一夏に絡まれる。

それと勢いで教室出たせいで一緒に行くクラスメイトも誘うの忘れてたよ。しかも俺知ってるクラスメイトってのほほんさんとオルコットくらいしか居ないんだけど。

頼みの綱ののほほんさんも恐らく教室。しかし前述の理由があるため教室にはもう入れない。

 

仕方ないので俺は一人で学食に向かう事にした。

まぁ、これから一人で食べる事もあるかもしれない。そのために今から慣れとこう、って事で納得した。

 

 

 

しかし学食に向かおうにも人の群れで行き先は塞がれている。

と、思えばささっと人が移動してモーゼの海割りみたいに廊下の真ん中に道が出来た。

学食に向かうにはこの両サイドが女子で埋め尽くされているこの道を歩くしかない。これなんて拷問?

 

しかし道を開けてくれたのならば通るしかあるまい。

意を決してその道を通る。

 

 

「あれが噂の男子?」

「二人居たよね、どっち?」

「カッコイイ方が千冬様の弟よ」

「じゃあこの子は二人目ね」

「普通ね」

 

 

両サイドから聞こえてくる自身への評価に、早くも心が折れそうになった。

ちくしょう、世の中顔かよ。

 

 

 

 

そんなこんなで学食に着いた。

既に俺の心はボロボロである。

原作の一夏はよく耐えれたよな、本当。そこだけは尊敬する。

 

しかし学食に着いても好奇の視線は変わらず送られてくる。

早いとこ慣れないとなぁ、と思いつつ券売機へ移動しラーメンセットを購入。

今はラーメンが食べたい気分なのだ。

 

「おばちゃん、食券頼む」

 

「はいよ」

 

そして食券をカウンターへ持っていく。恰幅のいいおばちゃんが笑顔で食券を引き取り、厨房へ戻っていった。

ラーメンセットが届くまでカウンターで待機。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

気まずい、超気まずい。

あの、みんな、俺は気にしないで昼を食べてくれ。

あと俺の後ろに並んでいる人。そんなに俺を見ないでくれ。

 

は、はやくラーメンセットを!

 

 

「はい、ラーメンセットお待ち」

 

この言葉を待っていた。

学食のおばちゃんが女神に見えた。

 

「ありがとう、おばちゃん」

 

おばちゃんに笑顔で礼を言ってラーメンセットを受け取ると、俺は席を探した。

 

瞬間、学食の空気が変わる。

これは教室で体感した「私に話しかけてオーラ」に似ている事から恐らく「私の席に座ってオーラ」と予想する。

 

すげぇぜ、学食に居るほとんどの人が笑顔で俺を見ているぜ。

しかしいくら誘われようと見ず知らずの人の席にいきなり乗り込むスキルなど俺には無い。

 

俺は無難に一人用のカウンター席を目指した。

 

「隣、失礼します」

 

「あ……どうぞ」

 

ちょうど良くカウンター席の一番端っこ、壁側の席が空いていたのでラーメンがこぼれない速度で早歩きし席を確保。

その際に隣の水色の髪で眼鏡をかけた女子に一声掛けて席に座った。

 

俺が頼んだラーメンセットの内容は豚骨ラーメンにチャーハンと餃子というお決まりのセットである。

 

「いただきます」

 

そして俺は昼食を食べる。

ラーメンうめぇ。チャーハンうめぇ。餃子うめぇ。

さすがIS学園だ。設備だけでなくご飯も美味い。うまうま。

 

 

しかしさっきから隣の水色の髪の眼鏡っ子がやけにチラチラ見てくるな。

まぁ両サイドから見られるよりはマシだけど。壁さんありがとう。

 

 

水色の髪ねぇ……そういえばこの学校の生徒って髪の色凄いよなぁ。

普通のギャルゲーとかってだいたいモブの髪色って黒か茶なのにIS学園はカラフルなんだよなぁ。クラスメイトに紫とかオレンジとか赤居たし。

この学食にいる生徒だってそうだ。カラフル過ぎる。

変わった髪色はヒロインの特権っていう常識を見事に覆したな。そのうちピンクとか出てくるんじゃね?探したら居そう。

 

あと箒とかオルコットの制服を見たら分かるけどこの学校って制服を改造してもいいらしいな。

 

改造制服に自由な髪色……超次元高校生麻雀かな?夏のインターハイに出るのかな?

あ、麻雀したい(唐突)

 

 

現実逃避?知ってる。

だって、こうでもしないとあらゆる方向から飛んでくる視線に耐えられない。

 

 

ラーメンを食べ終えて教室へ戻る時にも俺の心は折れかけた、とだけは言っておく。

 

 

 

 

 

 

「う、うおぉ……」

 

「お疲れ」

 

放課後。机の上でぐったりうなだれている一夏を尻目に帰りの支度をする。

 

「い、意味が分からん……。なんでこんなにややこしいんだ……?」

 

ISについての勉強はとにかく専門用語の羅列だ。

事前学習をしていない一夏からしてみれば正に訳が分からないよ状態。

そしてこの有様(机の上で撃沈している)なのである。

 

「それには同意だな。辞書くらい作って欲しい」

 

でもまぁ、確かに辞書の一つもないのはどうかと思う。

日本語にだって辞書はあるんだぜ。

 

 

「あ、織斑くんと如月くん。まだ教室に居たんですね。よかったです」

 

「はい?」

 

「あ、山田先生」

 

呼ばれてそちらを見れば書類を片手に持った山田先生が教室に入ってくる。

 

「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」

 

そういって部屋番号の書かれた紙と部屋のキーを渡す山田先生。

ここIS学園は全寮制。生徒は全員が寮で生活することが義務づけられている。理由は生徒の保護のため。

世界は常に優秀なIS操縦者を求めている。学生の頃からあれこれされないように、という事だ。

 

「俺の部屋、決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

 

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……織斑くん、そのあたりのことって政府から聞いてます?」

 

 

一夏と山田先生が話し始めた。

 

ちなみに俺は最初から寮を申請している。自宅から通う?ラビアンローズ本社からでも余裕で一時間はかかる。通えなくは無いが面倒くさい。

 

 

……さて、凄い嫌な予感がするなぁ。

どうやら一夏の話が終わったみたいだ。俺は嫌な予感を振り切るために質問する。

 

「なぁ一夏。部屋番号いくつ?」

 

「え、一緒だろ?1025だけど」

 

手元の紙を見る。1030号と書かれている。何回見ても数字は1030と書かれている。

 

フフッ、終わった。

俺は一夏に紙を見せた。一夏の表情が驚きに染まる。

 

「な、なんで鋼夜と一緒じゃないんですか!?」

 

「そうだそうだ!」

 

紙を見た一夏が山田先生に詰め寄る。そして便乗して俺も。

一夏と一緒じゃない=同室は女子。

ハニトラ待ったなし。

 

「す、すみません!政府特命の一時的な処置で、あの、すみません!」

 

顔を赤くし、見るからに慌て謝る山田先生。なんだかこちらが申し訳ないと思えてくる。

 

俺も一夏も直ぐにハッとし、山田先生から離れて謝罪する。

 

 

「はぁ……あのー、話は分かったんで今日はもう帰っていいですか?」

 

「俺も帰っていいですか?」

 

たぶん一生戻って来ないけど。

 

「如月くんは寮申請して荷物運ばれてましたよね!?」

 

チッ。

思わず舌打ちしそうになるが脳内だけにしてこらえる。先生の前で舌打ちはいけないよね。

 

「それと、織斑くんの荷物ならーー」

 

「私が手配しておいてやった。ありがたく思え」

 

もう一方の教室の入り口から織斑先生が現れた。

 

「ど、どうもありがとうございます……」

 

「まあ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器が、あればいいだろう」

 

わぁ、本当に生活必需品だけだなぁ。一夏が落ち込んでいるのが目に見えて分かる。

大丈夫だ一夏、携帯一つあればしばらくは持つから。

 

「では時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。各部屋にはシャワーがありますけど大浴場もあります。でも、織斑くん達は今のところ使えません」

 

「え、なんでですか?」

 

一夏が聞き返す。アホだろこいつ。

 

「男子は俺たちしか居ないんだ、当然だろ」

 

「あ、そうだった」

 

うんうん頷く一夏。少し考えれば分かるだろ。

 

「おっ、織斑くんっ、女子とお風呂に入りたいんですか!?だっ、ダメですよ!」

 

この先生も大概だなぁ。

 

「い、いや、入りたくないです」

 

「ええっ?女の子に興味が無いんですか!?それはそれで問題のような……」

 

どうしてこんな結論になってしまうのか。織斑先生なんてため息ついてるぞ。

 

ちなみに俺は犯罪にさえならないなら入ってみたい。健全な男の子だもん、しょうがないね。

 

 

「織斑くん、男にしか興味ないのかしら……?」

「それはそれで……いいわね」

「もしかして如月くんも?」

「中学時代の交友関係を洗って!すぐにね!明後日までには裏付けとって!」

 

聞こえない。腐女子の会話なんて俺には聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

「まさか部屋が違うなんてなぁ……」

 

「まったくだ……」

 

教室での出来事のあと、俺と一夏は一緒に寮へと向かっている。

だが、その足取りはどちらも重い。

 

「違うってことはつまり……」

 

「ルームメイトは女子だろうな」

 

俺の答えにハァ、とため息をつく一夏。

 

「俺たちを一緒にすりゃいいだけじゃねぇか……」

 

「本当にな」

 

一夏の呟きに大きく頷く。

俺は自宅が離れているため寮生活は絶対だった。俺はちゃんと寮申請したのに何故一夏と一緒じゃないのか。おかし過ぎる。時間はあっただろ。

 

ここは一夏みたいに家が近い女子を自宅通学にさせろと思う。

 

何故に男女が一緒にならねばならんのか。フリなのか、フリなのか?

まぁそんなのは学生の身分故に生殺し以外の何物でもない。

 

しかもこれ、もしルームメイトがハニトラだったらヤバいじゃねえか。マジで。

何が保護(笑)だよ、ラビアンローズから通った方がまだ安全だわ。

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

誰に言う訳でもなく、ボソっと呟く。

 

久しぶりとなるその呟きと共に、俺と一夏は寮へ入っていった。

 




ご都合主義だろうが暗黙の了解だろうがツッコむうちの主人公
ていうか一話に一回は帰りたがる主人公

中途半端なところで切って申し訳ないと思っている
だが私は謝らない
ボール改修型(という名ばかりのただのボール)あげるから許して下さい


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新たな一日の第13話

今さらながら、この展開は原作ではなくアニメが元となっております
原作は即セシリアの机バァン!だからね

業界初!(か、どうかは知らない)
邪魔する系主人公!

箒への異常な援護射撃


 

「一夏、先に俺の部屋来てくれないか?」

 

一年生用の寮へと入り、一夏と一緒に割り振られた部屋へと向かいながら提案する。

 

「別にいいけど、なんで?」

 

「これからお互いの部屋にはちょくちょく行く事になるだろうから先にルームメイトに挨拶しときたいんだ」

 

俺の返答に一夏はなるほど、と頷く。

 

「でも番号的に俺の部屋の方が近く無いか?」

 

と、一夏が疑問を口にする。

 

「ちょっと荷物整理手伝って欲しいんだよ。漫画とか貸すからさ。……それにほら、着替えのパンツとか女子に見られたくないじゃん」

 

「あー、そういうことか。いいぜ、手伝ってやるよ」

 

「すまんな、一夏のも手伝うから」

 

いいって、お互い様だろ。とのセリフと共にイケメンスマイルを放つ一夏。このスマイルでさっきから後ろに着いて来ている女子達の一割が倒れた。

 

 

ふぅ、なんとか一夏を部屋から遠ざける事には成功した。

 

そう、この後に起こるイベントは一夏がバスタオル一枚の箒と遭遇するラッキースケベイベントなのだ。

言い方は悪いが箒の暴力系ヒロインというキャラが決まってしまった瞬間でもある。

箒と一夏をくっつけたい俺としては、なんとしてもこのイベントだけは回避したいのである。だから今だけは一夏を部屋から遠ざけるのだ。

 

それにこれは俺のためでもある。

一夏がちょくちょく来るよ、と伝える事によってハニトラの動きを封じる作戦である。

もしかしたら初日から何かしてくるかもしれない。なので、一夏と一緒に行く事で「二対一にかなうわけ無いだろ!」状態にするという訳だ。

 

俺、天才。

 

まぁ、ルームメイトの子がハニトラじゃないのが一番なんだが。

 

 

ほどなくして1030号と書かれた部屋の前に到着した。

まずは扉をノック。

 

「入らないのか?」

 

「相手の反応を待つのが普通だろ?しかも向こうは女子だし」

 

「そんなもんなのか」

 

「そんなもんさ」

 

そんな会話を一夏とする。

一夏にはデリカシーが無い。今日一日接しただけだが確定。有罪です。

 

 

「はいは~い、ちょっと待って~」

 

1030号の部屋から妙に間延びした、聞き覚えのある声がした。

ガチャリ、と扉が開き中から現れたのは……。

 

「わー!こうやんにおりむーだ!どうしたの?どうしたの?」

 

今日、俺に真っ先に話し掛けてきたクラスの女子、のほほんさんこと布仏本音さんだった。

 

よっしゃのほほんさん来たぁ!よっしゃ勝ったぁ!

思わず俺はその場でガッツポーズをする。

誰かBGMでUC流してくれ。今の俺は完全勝利してるから。

 

 

 

「こうやん、いきなりガッツポーズしてるけどどうしたの?」

 

「ルームメイトが知り合いだから嬉しいんじゃないかな」

 

 

一夏とのほほんさんが居たが俺はお構いなしだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「と、いうわけでのほほんさんのルームメイトは俺になった訳です。よろしく」

 

「俺も、ちょくちょく来るかもしれないからよろしくな」

 

「よろしくね~」

 

部屋に運びこまれていた荷物を一夏と共に整理する作業が終わり、改めてのほほんさんに挨拶した。

一夏ものほほんさんに挨拶する。

 

寮の部屋は基本二人部屋で、部屋には二つの大きなベッドと二つのデスクに共用のクローゼットが最初から配置されている。あと山田先生が言っていたシャワールーム。

窓際のベッドとデスクはのほほんさんに占拠されていたが、まぁ早い者勝ちとして譲ってあげた。レディファーストというやつだ。俺は紳士だからね。

 

 

「じゃ、一夏の方にも挨拶行ってくるよ」

 

「またな、のほほんさん」

 

「いってらっしゃーい」

 

のほほんさんに見送られ、一夏の部屋である1025号室へ向かう。

これだけ時間をずらせば大丈夫だろう。

 

「俺のルームメイトは誰なんだろうな」

 

「さあ?」

 

そんな会話を交わし、目的地へ到着。

1030号室から意外と近い。

一夏は扉をコンコンコンと三回ノック。どうでもいいけどノックの回数って状況によっては二回だったりするよね。何の時かは忘れたけど。

 

「少し待ってくれ」

 

扉の向こうから箒の声がした。

やっぱり箒なのね。ちょっと時間ずらして良かった。

 

ガチャりと扉が開き、中から剣道着姿の箒が出てきた。

 

「同室の者だな、入ってく…………一夏……?」

 

「お、箒じゃないか」

 

「俺も居るぞ」

 

箒は一夏を確認するなり言葉を止めた。

 

「し、しばし待て!」

 

そしてもの凄い勢いで扉を閉めた。

箒の対応に俺と一夏は顔を見合わせる。

 

「どうしたんだろうな?」

 

「さあ?」

 

一夏の疑問をはぐらかすと、また扉が開いて箒が現れた。

 

「すまなかった、入っていいぞ」

 

そして箒に案内されて一夏と一緒に部屋へ入った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、お前が同居人なのか!?」

 

「おう、そうらしいぞ」

 

箒に事情を説明。そしてそれを聞いた箒の第一声が部屋に響く。

 

「鋼夜!本当なのか!?」

 

「マジ。俺は1030号室だからよろしく」

 

ひらひらと部屋番号が書かれた鍵を箒に見せる。俺につられて一夏も鍵を見せる。

それを見た箒は「ぐぬぬ……」と唸っていたが、納得したようだ。

 

 

「いやー、でも助かったぜ箒が同室で。あ、このベッド柔らかい」

 

「んなっ!?何を言っている!」

 

安心したのか、そばにあったベッドに飛び込む一夏。確かに柔らかそうだ、部屋に帰ったら俺も試そう。

 

「ベッドがモフモフ」

 

「違う!そ、その……最初に言った方だ……」

 

おっと、夫婦漫才が始まったぞ。お邪魔虫は退散せねば。

 

「よし、俺もベッドモフモフしてくるわ。ちょくちょく部屋くるかもしれないからよろしくな、箒」

 

一夏と箒にそう告げて部屋を出る。

如月鋼夜はクールに去るぜ。

 

箒よ、幸運を祈る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こうやんひどいよ~」

 

「自分で起きろよ……」

 

「むぅー」

 

 

おはようございます、如月鋼夜でございます。

俺は今、教室でルームメイトののほほんさんに絡まれてます。

 

事の発端は早朝に遡る。

 

俺はトレーニングをするために通常より早く起きてジャージに着替えて外へ出た。

一周五キロもあるグラウンドを三周したのちに腹筋などの各種筋トレをこなす。

ラビアンローズに居た時はこれより厳しかった。初日とか地獄だった。

 

そして一度部屋へ戻ったのだが、ルームメイトののほほんさんこと布仏本音は俺が帰って来ても寝たままだったので、まぁ、そのうち起きるだろと食堂に行った結果ッ!

 

「どうして起こしてくれなかったの~」と、教室にておこ状態ののほほんさんとエンカウントする事になったのだ。

朝食をあまり食べれなかったようです。

 

 

「起こしたら起こしたで何か言いそうじゃん」

 

「優しく起こしてほしいな~」

 

「のほほんさん、素直に目覚まし時計を買おう」

 

「え~」

 

 

言っては悪いがのほほんさんにハニトラの疑惑が無くなった訳ではない。ハニトラとは思いたくないが……警戒するに越したことはない。

というより会って間も無い異性にそういうこと頼むのもどうなんだろう。

 

まぁ、可愛いから許す。可愛いは正義。

 

 

「おはよう諸君」

 

その後も少しのほほんさんと話したが織斑先生が教室に入って来たため会話は終了。他の生徒も各々の席に着く。

 

 

「さて、授業を始める前にクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

いつもは山田先生が立つ教壇に織斑先生が立つ。そして織斑先生からは例のイベントが告げられた。

そう、オルコットさんが色々言い出すとこである。

箒と一夏をくっつけたい俺としてはなんとしてでも邪魔したいイベントである。

 

本人もチョロリアさんマジセシい、なんて言われなくなるんだから。これも本人のためだから。多分。

 

 

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス長だな。ちなみに一度決まると一年間変更は無いからそのつもりでな」

 

説明が終わるとざわざわと教室が色めき立つ。まぁ、クラスの顔が決まるんだしさわがしくなるのは当然か。

さてと、立候補されるなんて面倒事はゴメンだ。

俺よ、気配を消すんだ、ステルス鋼夜だ。

 

 

「自薦他薦は問わないぞ」

 

「はい!織斑くんを推薦します!」

 

早いなおい!

 

「私も織斑くんが良いと思います」(便乗)

 

「そうだよ」(便乗)

 

「なのです!」(便乗)

 

便乗ばっかりだな、人間の心理の怖いところだよ。

一夏よ、ご愁傷様だ。まぁ計画通りなのだが。

 

「はいはーい!こうやん……じゃなくて如月くんを推薦しまーす!」

 

布仏えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!!??

 

「えー、織斑くんでしょ?」

「かっこいい織斑くんが代表の方が映えるよ」

 

そこは黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!なんか傷つくからぁぁぁぁぁぁ!!

 

「わ、私は如月くんを推薦します!」

 

ありがとう隣の席の相川さん。結婚しよ。

 

って、違う違う。

 

もうこれステルスとか言ってる場合じゃねえよこれ。もう行動しなきゃまずい。

 

「さて、候補者は織斑一夏と如月鋼夜か。他には?」

 

確認を取る織斑先生。

まずいな、オルコットさんの机バァン!まで時間が無い。

 

チラリと隣の席の一夏を見る。

一夏は今にも立ち上がって織斑先生に抗議しようとしている。

 

「一夏、一夏」

 

「なんだよ鋼夜」

 

机から少し身を乗り出して一夏に話し掛ける。教室は俺派と一夏派の女子の争いで少しさわがしい。

 

「代表になるのは嫌か?」

 

「当たり前だろ、面倒だし」

 

「そうか。なあ、こういうのってエリートさんの出番だよな?」

 

にやり、と意味深な笑みを一夏に向ける。

最初は首をかしげていたが理解したのか、一夏も俺と同じイイ笑顔で頷いた。

 

「行くぞ一夏、俺に続け」

 

「任せろ」

 

最後に一夏とアイコンタクトを交わし、俺は席を立った。

 

「先生、俺はセシリア・オルコットさんを推薦します」

 

「俺もセシリアを推薦します!」

 

俺はセシリアを推薦する。

続いて一夏が立ち上がり、俺に便乗する形だが推薦を言い放った。

 

これが俺の考えた作戦!

今から俺と一夏が降りるのは不可能。

ならばオルコットさんにも同じ壇上に上がってもらう!

これなら文句は無いはずだ。多分。

 

が。

 

「候補者の推薦は却下だ」

 

俺と一夏の連携は織斑先生の容赦無い一言により切り捨てられた。

なんでダメなんですかぁ。責任逃れしたい気配を読まれたからか?確かに責任逃れする気満々だったけども……。

……ワハハ。なんにせよもうオシマイダァ。

 

 

 

バァン!

 

「待って下さい、納得いきませんわ!」

 

甲高い声が響き、後方から机を叩きオルコットさんが立ち上がる。

 

 

 

 

……ああ、今回もダメだったよ。原作キャラ(あいつら)は人の話を聞かないからな。

 

 

俺は現実から逃げ出した。

 




鋼夜、迫真の布仏呼び

最近、主人公の思い通りに事が進んでたのでこの辺で流れを止めました


Q.のほほんさんがヒロインだな?
A.消去法でいったらルームメイト候補がのほほんさんだけになった、俺は悪くねぇ、のほほんさんをヒロインとは言ってねぇ

Q.セシリアはあの後(11話以降)寄ってきたの?
A.その後の様子

「金剛デース!」
「くおえうえーーーるえうおおwwwwwww」
「カミーユが女の名前で悪いか!」
「ちゃちゃのんじゃー」

「ハイ、ヨロシクゥ」

こんな感じで自己紹介されてて近寄れなかった



苦労戦士コウヤの次回のツッコミにご期待下さい


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ツッコミ多忙の第14話

だいたいセシリアが酷い目にあってるシーン
うちの主人公の場合はこうなりました


「待ってください、納得いきませんわ!」

 

バンッと机を叩いて立ち上がったのは、たった今俺と鋼夜が推薦したセシリアだ。

確かに納得いかないだろう、推薦されたのに却下されたんだ。

まったく、千冬姉も酷いことするもんだ。

 

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

……お、おう。なんか凄い言われようだな。

しかしクラス長になるんだから、こうやって自分の意見を強く言えるってのは大事だよな。そう思おう。

 

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。まぁ、わたくしの実力を分かって推薦する頭はあったようですが、それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ」

 

くっ……言ってくれるなこいつ。

そんなに言うならさっさと立候補すれば良いじゃねえか。なんで俺と鋼夜が馬鹿にされなきゃならないんだ。それにイギリスも島国だろ。

 

好き勝手言うセシリアに憤りを感じながら俺は隣の鋼夜を見た。

 

「…………」

 

鋼夜はただ前を見ていた。ボーッとしてる、ともいう。

あれ?どうしたんだろう?

 

山田先生が「如月くーん?」と言いながら手を振っているが鋼夜に反応は無い。

 

すると、千冬姉が出席簿を鋼夜目掛けて投げつけた。

 

ちょっ、千冬姉なにしてんだ!?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ボールが一機。ボールが二機。ボールが三機。ボールが四機。ボールが五機。

それを三組。

 

フハハー。ボール一個大隊だぞー。強いぞー。カッコイイぞー。一マス空けの砲撃を喰らうがいい。反撃できないだろー。フハハー。

 

見ろ!ザクがゴミのようだ!

ヒャッハー!溺れてやがるぜこのザクはよぉ!

 

四方八方をボールで囲めばドズルのビクザムだって落とせるしジオン水泳部にはフィッシュアイを差し向けられるし、やはりギレンの野望でのボールは最強だな!

 

戦いは数だよ兄貴!

 

フハハー、ボールが一機。ボールが二機。ビグ・ラングが一機……あれ?

 

あ、あなたは技術中尉のマイさん!?何故ここに!?

あれ?なんでボールをその立派なクローアームで掴むんですか?なんで振りかぶるんですか?

ボールを相手のゴールにシュゥして超エキサイティンなんですか?

 

ボールが放り投げられるその瞬間、現実世界の俺の脳内に閃きが走る。

意識を向ければ目の前に山田先生。だがそれを理解する前に危険を知らせる自らの本能に従い頭を下げた。

 

瞬間、俺の頭があった場所を何かが通り抜けた。

教壇を見れば何かを投げた後のモーションの織斑先生が。

……出席簿か!

 

ヒュルヒュルヒュル……パシッ。

出席簿は風を切る音と共に織斑先生の手元に帰ってきた。

先生、その出席簿はマイダスメッサーとかフラッシュエッジか何かの類いですか。

 

「私の前で惚けるとはいい度胸だな」

 

「すみません現実逃避してました」

 

怖いので素直に頭を下げて謝っておく。

織斑先生を下手に怒らせればあの出席簿はブーメランから対艦刀に変化するに違いない。

 

「次は無いぞ」

 

「はい、すみません」

 

もう一度頭を下げる。

なんだが不満そうな顔をしていたが、そんなに当てたかったんですか出席簿。

 

「で、一夏。どこまでいったのこれ」

 

口を開けたままポカンとしている一夏に話し合いは何処まで進行したのか聞いてみる。

 

「え?あ、えっと……」

 

「……し」

 

「ん?」

 

「信じられませんわ!」

 

口ごもる一夏とは別方向から声が聞こえてきたのでそちらに振り向く。

声の主は案の定オルコットさんだった。

 

「わたくしの話を聞かずに……呆れましたわ。いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」

 

現実逃避して何が悪い。

それと、オルコットさんの理論だと実力あるなら後はなんでもいい、素行は悪くてもいいって解釈になるんだが。

 

「まぁ……」

 

「そりゃねぇ?」

 

俺と一夏は顔を見合わせる。

そもそも俺と一夏はオルコットさんを推薦した訳だし。却下されたけど。

ていうかこれ怒るなら俺らじゃなくて普通、織斑先生じゃね?

 

「授業中に話を聞かなかったり方や代表候補生の意味すら知らない方など論外ですわ!」

 

これは言い返せないな。

これには周りのクラスメイトも苦笑いだ。

 

「でもセシリアの言う事も一理あるよね。負けたら他のクラスからなめられる訳だし」

「えー、せっかくだし男子がいいんじゃない?」

「織斑くんが代表の方が絵になるよ」

 

ふむ、今の流れで女子の意見が割れ出してきたか。

 

それに気分を良くしたのか、オルコットさんは怒濤の剣幕で言葉を荒げる。

 

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でーー」

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

あー、始まった。

我慢の限界が来たのか、一夏はオルコットに言い返してしまった。

 

こうなってしまってはしょうがない、最終手段だ。

 

 

「なっ!?イギリスにだって美味しい食べ物はたくさんありますわ!」

 

「そうだね、ちゃんと料理すれば美味しいよ」

 

一応フォローする。

 

イギリスがメシマズと言われている理由は早さを求めて料理を適当に作るからだ。

しっかりと、ちゃんと作られたイギリス料理は美味しいのだ。

 

「あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

「先に侮辱したのはそっちだろ!」

 

「そうだね、そっちが先だね」

 

コッピー知ってるよ。聞いてなかったけど極東の猿とか言ってたんでしょ。

 

「「お前(あなた)はどっちの味方なんだ(ですの)!?」」

 

二人からツッコまれた、なんでさ。

 

「まぁお二人さん落ち着きなさい。とりあえずオルコットさんに質問あるんだけど」

 

「あら。なんですの?」

 

二人の間に入って手を下げるジェスチャーをして落ち着かせ、俺はオルコットさんに向き直った。

 

「ISを開発したのって誰?」

 

「……ハァ、そんな事も知らないのですか?それはーー」

 

そこまで言ってオルコットさんはハッとした顔になり言葉を切った。

勘違いしてもらっちゃ困るが開発者くらい知ってるし、それどころか何回も会ったし。

 

「ISを開発した人が生まれた国は?ISについての技術が一番進んでる国は?IS学園がある場所は?」

 

質問を重ねる度にオルコットさんの顔が青くなる。

 

「どうしたんですか?イギリス代表候補生(・・・・・・・・・)のセシリア・オルコットさん?」

 

そしてトドメ。

まぁ、つまり、自分の発言には気をつけろよ、お前イギリス代表候補生だろ。それがイギリスの言葉になるんだぞ。と、言いたかっただけである。

ちょっと意地悪く言ったのは……まぁ、俺も内心イラついてたから。

 

わなわなと全身を震わせながらオルコットさんは俺をキッと睨みつける。

が、俺はそれを受け流して一夏の方を向く。

 

「ま、あれだ。喧嘩は良くない。挑発には乗らないように。言っちまえば俺達は男代表なんだから」

 

「お、おう。なんかすまん」

 

 

「……ですわ」

 

一夏にも注意をして席に戻ろうとするとまた後ろから声が聞こえてきた。

えー、まさか。

 

 

バァン!

 

「決闘ですわ!」

 

再び机を叩いてオルコットはそう宣言した。

 

……俺の言った事分かってんの?

それ「戦争をしましょう」って言ってるようなもんだぞ?

ツンドラさんですか?口の中ホッチキスですか?あれ地味に痛いだろうから辞めて欲しい。

 

 

「……あ、貴方達にISでの模擬戦を申し込みますわ!」

 

あ、言い直した。顔がちょっと赤くなってる。

そういえばこれってクラスの代表決めるんだったな。熱くなってて忘れてた。

 

「おう、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

 

答えたのは一夏。

俺は方向転換して今オルコットさんと向き合った。

 

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使いーーいえ、奴隷にしますわよ」

 

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 

ほう。オルコットさんは今、奴隷と申したか。

 

「じゃあ、もし俺や一夏が勝ったらオルコットさん奴隷になるの?」

 

「えっ……」

 

「え?」

 

なにその反応怖い。

 

「……ま、まぁ何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

 

はぐらかしたよこの人。

自分が奴隷になるリスクも背負わずに真剣勝負とか、ふざけてるんですかねぇ?人生賭けたんだからそっちも人生賭けろよ、ってジョジョでバービーだかボービーが言ってた。

 

「ハンデはどのくらいつける?」

 

「あら、さっそくお願いかしら?」

 

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」

 

と、一夏が言った瞬間クラスからドッと爆笑が巻き起こった。

 

「織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」

「織斑くんや如月くんは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎだよ」

 

みんな本気で笑っている。

ISは戦車や戦闘機や戦艦などの既存の兵器を軽く凌駕する。

男と女が戦争しようものなら男は三日と持たないと言われている。

 

あれ、なんでだろう。輝さんが居る限り負けない気がするんだけど。

あの人平気でMSとか作りそうだし最終的に黒歴史∀とか使って全てを終わらせてきそうなんだけど。

 

 

「…………」

 

一夏はしまった、と言いたげな顔をしている。

 

「じゃあ一夏、俺と組もうぜ」

 

そこに俺からの救いの一手。

俺の言葉に一夏は驚き、オルコットさんは「あら」と口に手を当てて笑う。

 

「オルコットさんには喧嘩を売られたから買うが、俺はお前と戦う理由が無いからな」

 

「鋼夜……」

 

「良かったではありませんか、これで少しはまともな勝負になりそうですわ」

 

一夏は何か言いたそうにしていたが俺はそれを無視し、嘲笑を浮かべるオルコットさんに向けて言い放った。

 

「いやいや、むしろ感謝するのはそっちだろ?二対一なら負けても言い訳出来るしさ」

 

挑戦的な笑みもプラスで追加。

俺の言葉を聞いたオルコットさんは再び怒りに顔を歪めるがそれは呆れへと変わり嘲笑に戻った。

 

「せいぜい頑張ってくださいな」

 

 

「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後の第三アリーナで行う。織斑、オルコット、如月はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

 

ぱんっと手を打って織斑先生が話を締める。

ていうか見てないで何か言って欲しかったなぁ、オルコットさんとかオルコットさんとかオルコットさんについて。

 




セシリアが怒ってもしょうがない感じにしてみた
ボールを崇めれば出席簿も避けられるよ!

マイダスメッサー、フラッシュエッジ
ガンダムSEEDに登場する武装でビームの刃のブーメラン
SストライクやSインパルスなどのMSが持ってる
似たような武器がいくつかある


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仕込み始めの第15話

進まない……
まぁ、序盤は仕込みをちゃんとしないといけないからね

どうでもいいけど箒と艦これの矢矧って似てるよね


朝一番にオルコットさんが宣戦布告してきたが、午前の授業も終わり昼休みになった。

 

「千冬姉のためにも負けられない」と、授業を真面目に受けると意気込んでいた一夏は早くもダウンしている。

そんな一夏から学食へと誘われたが教室から出る際に織斑先生に呼び止められた。

 

 

「織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

 

「へ?」

 

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

 

事の重要さをまったく分かっていないのか、一夏はずっと頭に疑問符を浮かべている。

 

「せ、専用機!?一年の、しかもこの時期に!?」

「つまりそれって政府からの支援が出てるってことで……」

「あー、いいなぁ。私も専用機欲しいなぁ」

 

会話を聞いていたらしいクラスメイト達がさわぎだす。

 

 

「……助けてくれ鋼夜」

 

「いや、何故俺に振る」

 

「馬鹿者。教科書六ページを音読しろ」

 

ため息混じりに織斑先生が命令すると一夏は慌て教科書を開き、音読を始めた。

 

……教科書の内容は長いので要約すると、ISのコアは467個しか無い。コアが作れるのは束さんだけ。専用機を与えられる人は特別。

 

こんな感じだ。

一夏は貴重な男性操縦者だ。データ収集のために専用機が配備されても不思議ではない。

 

「ちふ……織斑先生。専用機って俺だけなんですか?鋼夜は?」

 

ようやく内容を理解した一夏が織斑先生に質問をする。

 

「如月はお前と違って企業所属だからな、詳しい事は分からん。如月、お前の方はどうなんだ?」

 

「模擬戦までには間に合いますよ」

 

織斑先生の問いに俺は答える。

俺の専用機は誠意製作中らしいが既に完成しているらしく、今は細かい調整をしているのだとか。

まあ、夜に輝さんに電話してみよう。

 

織斑先生は俺の答えに「そうか」と頷くと、何かを思い出したのかもう一度俺に視線を向けた。

 

「ああ、それと如月」

 

「はい?」

 

「お前には少し手伝いをしてもらう。居眠りの罰だ」

 

「……はい」

 

俺はしぶしぶ従った。

一夏から哀れみの視線が送られて来る。すまんな、昼は箒と二人で食べるといい。

 

「あの、織斑先生。篠ノ之さんってまさか篠ノ之博士の関係者なんでしょうか?」

 

織斑先生が教室から出る前にクラスメイトの一人が質問した。

まぁ、珍しい名字だしバレるよね。

 

「ああ。篠ノ之はあいつの妹だ」

 

そして織斑先生はあっさりとバラした。それ結構大事な個人情報なんですけど。

 

クラスの皆は騒然とし、一斉に箒に向かって詰め寄っていった。

織斑先生はその様子を一瞥するとため息をついて教室を出たので俺も慌てて後へ続いた。

 

 

 

 

織斑先生に連れられて職員室へ向かっている訳ですが、周りからの視線が半端ないです。

ブリュンヒルデ+話題の男性操縦者という組み合わせだからだろう。

 

 

「織斑先生」

 

「なんだ如月」

 

その道中、前を歩く織斑先生に話し掛けてみる。

 

「さっきのクラス代表の件ですけど」

 

話の内容は朝のやり取り。

オルコットさんの発言は相当に過激なものだったのに、なぜ織斑先生は止めてくれなかったのか。

俺、気になります。

 

「どうしてオルコットさんを止めなかったんです?」

 

「まぁ、大人の事情だ」

 

俺の問いに織斑先生は歩みを止める事なく答える。

大方、イギリス関連だろうな。下手に言うとイギリスにいちゃもん付けられるからだろう。オルコットさんはこの時点では見るからに「女尊男卑デース、エリートの私偉いデース」な人だし。

IS学園は独立した場所ではあるが所属は一応日本だし日本の権力とかお察しレベルだし。

学校始めのこの時期だ、向こうも神経張っているのだろう。

 

「しかしまぁ、お前達のおかげでいい感じにおさまりそうだ」

 

おさまるのか?アレ。

まぁ、国が直接関わるよりは全然マシか?

 

そう言うと織斑先生は歩みを止めて微かに笑みを浮かべ、顔だけこちらへ振り向いた。

 

「あれだけの事を言ってのけたんだ、お前達は絶対にオルコットに勝て。私達、教員にいらない仕事を増やさないためにもな」

 

そして顔を前に戻した。

かなりレアですよね今の表情。

 

「元より負ける気はありません」

 

俺は織斑先生にそう答えた。

俺にも負けられない理由がある。

 

そう、全ては俺の平穏のために。

え?今回の事に巻き込まれている時点で平穏じゃない?……言うな。

 

 

 

 

余談だが「先生も一夏を貶されて怒ってるんですね」と織斑先生に聞いたら完全不意打ちの振り向きざま出席簿横一閃をお見舞いされた。

やっぱり出席簿は対艦刀へ進化した。

 

バックステップしてなかったら死んでた。

織斑先生に質問した瞬間に唐突に脳内でハイネの最期のシーンが浮かんだのだ。

ありがとうハイネ。

 

そして織斑先生をからかうのは辞めようと心に誓った。

 

織斑先生。

暴力、いくない。ガンジー、偉大。

 

 

 

「山田君、手伝いを連れて来たぞ」

 

「あ、織斑先生。ありがとうございま……えっ、如月くん!?」

 

「あ、はい。如月ですけど」

 

連れて来られたのは職員室の隣にあった資料室らしき場所。何の部屋なのか分からないが、中には作業中と見られる山田先生が居た。

しかしなぜ驚かれたのだろうか。

 

「居眠りの罰だ。山田君、好きにこき使ってやれ」

 

「えっ、あっ、はい。い、居眠りの罰なら仕方ないですよね。じゃあ如月くん、ちょっと先生を手伝ってくれますか?」

 

「はい、了解です」

 

どうやら俺への罰は山田先生のお手伝いらしい。

 

「それでは頼みました」

 

そう言って織斑先生は出ていった。

 

「手伝いってどうすればいいですか?」

 

「えっと、そうですね……此方の資料を仕分けてくれませんか?」

 

「了解です」

 

俺は山田先生と一緒に作業に取り掛かった。

 

作業の途中で「暗い部屋……教え子と二人きり……あぁ、だめですよぅ」とかいう声が聞こえたかもしれないけど気のせいだと思いたい。

気のせいだと、思う事にする。

 

 

 

手伝い自体は早く終わり、俺は昼食に間に合う事が出来た。

まぁ、ぼっちになりましたけどね。

またカウンター席だったけどね。壁際だったけどね。

 

今日はオムライスを頼みました。オムライス美味い。

 

さすがに隣の子が昨日と同じ眼鏡の子だとは思わなかったけど。あの席はあの子の特等席なのだろうか。

 

 

 

 

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

 

午後の授業の休み時間にまたオルコットさんがやってきた。

授業終わりでげんなりとしていた一夏の顔がさらに暗くなった。

 

その腰に手を当てたポーズ好きだね。何気に決まってるね。

 

 

「まあ?一応勝負は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね」

 

「まさかそっちからフェアなんて言葉が出るとはね。どうやら格下叩きが趣味のエリートさんという評価は改めてあげようか」

 

「よく口が回るお方ですわね。でも、自分の身の程を弁えた方がよろしくってよ?」

 

「へー。なあ一夏、ブーメランって知ってる?」

 

「知ってる知ってる。千冬姉の出席簿だろ」

 

 

一夏が微妙にズレた回答をする。

ちなみに今の織斑先生の出席簿はブーメランから対艦刀に進化したぞ一夏。

 

売り言葉に買い言葉。

俺の言葉の意味を理解したオルコットさんは苦々しい顔をするが、すぐにいつものドヤ顔に戻る。

 

「私はイギリスの代表候補生。現時点で専用機を持っていますの。貴方達みたいに、ただ珍しいからという理由で専用機を持っている訳ではありませんわ」

 

「どういうことだ?」

 

「ISのコアは全部で467機。六十億を越える人類の中で専用機を与えられる人数は限られていますの。専用機持ちとは六十億の人間の中から選ばれたエリート中のエリートだということですわ!」

 

 

「そーなのかー」

 

「へー」

 

俺と一夏のやる気の無い返事。

 

「そうですわ」

 

それに気付かず腕組みをしてふんぞり返るオルコットさん。

 

「人類って六十億超えてたのか……」

 

「そこは重要ではないでしょう!?」

 

一夏の机をバァン!と叩くオルコットさん。

なに?机バァン!しなきゃ気が済まないのこの人。

 

「良かったね、専用機持ちとの二対一なら負けても取り付く瀬があるね」

 

「……あなたは本気で仰ってますの?」

 

「マジだ」

 

しばし、俺とオルコットさんの間で火花が散る。

 

視線を外したのはオルコットさん。

オルコットさんは呆れたのか、肩を竦めると自分の席へ帰って行った。

 

 

「一夏」

 

「ああ、絶対勝とうぜ!」

 

俺と一夏は打倒セシリアへの思いを一層強くするのだった。

 

 

 

 

 

放課後。

 

「俺、箒に教えて貰う事にするよ」

 

「お、そうなのか?」

 

やったな箒。これでヒロインへ一歩近づいたな。

 

「ああ。鋼夜は先輩に教えて貰うんだろ?」

 

「……へ?」

 

なにそれ初耳。

 

「あれ?食堂で三年の先輩が俺に「ISの事教えてあげる」って言ってくれたんだ。箒が居るから断ったんだけど、てっきり鋼夜のとこに行ったと思ったんだけど?」

 

前世の記憶を思い返し「あったなそんなイベント」と思い出す。

が、今日の記憶を振り返ってもそんなイベントが俺に起こった記憶は無い。

食堂で一人だったけど誰かが話し掛けて来た事は無い。

 

 

ワハハ。

ふふっ。ふふふふふふっ。

 

「だ、大丈夫か鋼夜?」

 

「ああ大丈夫だ、大丈夫だとも。至って正常さ」

 

「お、おう。今日の夜にお前の部屋で作戦会議だよな?箒と一緒に行くから」

 

「ああ。じゃあ、俺はオルコットさんの情報でも集めて来るよ」

 

そう言って俺は教室から出る。

一夏は何かを察したのか、何も言って来なかった。

それでいい。今は一人になりたい。

 

あれ?なんでだろう?目からGN粒子がこぼれてるよ。ふふふっ。

 

「はぁはぁ、私ってば教室に忘れ物しちゃうなんて……って如月くん!?どうしたんですか!?」

 

「ふふふっ」

 

 

後から聞いた話だと俺は涙を流しながらうわ言のように「やっぱり世の中顔かよ畜生が」と、ずっと呟いていたらしい。

部屋まで送ってくれた山田先生には凄く感謝している。

 

翌日、朝一番にお礼を言うと

 

「頼ってもらっていいんですよ?私は先生ですから。辛い時は言って下さい。相談に乗ります」

 

と、言って下さった。

山田先生マジ天使。

 




主人公がセシリア相手に強く出てるのは致命的な弱点を知ってるから
これが別の人だとこんなに強くは出ない

先輩イベントについては実際に二人目が居たとしたらこんなになると思ってます
一夏はイケメンでさらに身内が千冬ですから
あの先輩が純粋な好意で近づいたならまだしも、見る限り完全に興味や好奇心や下心ありありで近づいているようにしか見えないんですよね
鋼夜は不細工という訳では無いですが一夏という強力な比較対象が居ます
なので、まぁ……お察しください
それにもし先輩が鋼夜に話し掛けても鋼夜はそれをハニトラとしか受け取らないでしょう、状況によりますが必ず断ります
そりゃあもう心でGN粒子をこぼしながら
タイトルは伊達じゃないんですよ

どうでもいいけど木曾改二とクロスボーンガンダムって似てるよね


GN粒子
ガンダムOOに登場
ソレスタルビーイングのガンダムが背中から出してる緑色のアレ

ハイネ・ヴェステンフルス
ガンダムSEED DESTINYに登場するザフトのパイロット
機体の胴体部分をガイアに切り裂かれ戦死した
「邪魔だぁぁぁぁぁぁ!」「ハイネェェェェェェ!」


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作戦会議な第16話

相変わらず進まない
主人公、喋る、マジ喋る


「はい、それでは作戦会議を始めます」

 

「おー」

 

俺の宣言と共にのほほんさんが拍手をし、つられて一夏と箒も拍手する。

 

時間は夜。一夏は約束通りの時間になると箒と共に部屋へ訪れた。

 

 

 

部屋の隅でひたすら「イケメンは皆殺しだ」と、某揚げ物老害司令ばりに不吉な事を呟いていたらしい俺をのほほんさんが発見して電気を出しそうな黄色いネズミ人形を俺に投げつける事で俺は正気を取り戻したという話があるが省略させてもらう。

 

 

のほほんさんの手により正気を取り戻した俺はその後のほほんさんと共に食堂へ向かうと、のほほんさんの友達である谷本さんと夜竹さんと四十院さん、そして隣の席の相川さん達と夕食を一緒にした。

一緒にした、というよりは俺とのほほんさんが一緒に食堂へ来たところを偶然居合わせて強引に彼女達が付いてきた、というのが正しい。

 

 

ちなみに夕食はチキン南蛮定食。

美味しかった。

 

美人との食事。

ハニトラの疑惑さえ無ければ純粋に楽しめたのだが……ちくしょう、L5状態のK1ってこんな感じなのか。

そりゃ帰れ帰れ言うわな。俺の場合は帰りたい、だけど。

 

 

案の定、食事の最中に模擬戦の事を聞かれた。

ここにいる子たちは俺と一夏を応援してくれている。

だが教室で女子に笑われた出来事からわかるように、内心では俺達を馬鹿にしている生徒も少なくは無いようだ。

そりゃそうだ。今は女尊男卑の世の中だし。

あいつらの言葉って文字で表すと一字一句に絶対wがついてるよ。

「勝wつwとwかwほwんwきwでwいwっwてwるwのw?」って感じで。

 

頑張るか、模擬戦。

男だってやれることを証明しなきゃあな。これは負けられない。

 

 

 

夕食を食べた後に部屋へ戻り、自前のノートパソコンを使いセシリア・オルコットについての情報を集める。

この世界って検索エンジンがグーグル先生じゃないんだよね。そのせいでググれカスが使えないんだよなぁ。

 

とりあえず合同演習や博覧会など、セシリア・オルコットの専用機であるブルー・ティアーズが少しでも関わっている情報を徹底的に集める。

スペックなどはさすがに載っていなかったが、俺には画像一つあれば充分だ。タイプくらいなら絞る事が出来る。……まぁ、前世の知識で色々知ってるからあんまり意味無いけど。

 

「私も手伝うー」と協力を申し出てくれたのほほんさんと共に、一夏達が来るまで俺達は情報を集めていた。

 

 

 

そして今へ戻る。

来客用のテーブルに座布団を四つ。

俺の正面に一夏。のほほんさんの正面に箒。という配置だ。

 

 

「で、あれだ。話に入る前に聞きたいんだが二人は今日の放課後に特訓したらしいな。なにしたんだ?」

 

俺は右隣に座る箒に聞いた。

箒は「うむ」と頷くと一夏を一瞥し、話し始めた。

 

「一夏の実力を見ようと思って武道場にて剣道をしていた」

 

「結果は?」

 

「一夏の実力はIS以前の問題だと思い、今日はずっと剣道をしていた」

 

箒の言葉に一夏は「うぐっ」と苦しそうな声を上げる。

そんな一夏に俺は声を掛ける。

 

「箒から聞いたことがあるけど一夏って剣道やってたらしいな。なんで中学で辞めたんだ?」

 

まぁ、中学で剣道辞める奴なんて珍しく無いけど。

 

「中学は三年間帰宅部でバイトしてたんだ。家計の助けにするためにさ」

 

俺の質問に「待ってました」と言わんばかりに自信満々に答える一夏。

その答えに箒はバツが悪そうな顔をする。

あ、ちゃんと一夏から理由を聞いたのね。

 

「なら仕方ないな。よし、特訓の話は終わりだ」

 

俺はそう返し、特訓の話を終える。

 

 

「ほい、それでは本題に入ります。今日の朝未明、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットと俺と一夏の二人で来週の月曜日にISを使っての模擬戦をする事が決定しました。この会議では、どうやってオルコットさんに勝つかを話し合いたいと思います」

 

俺が一気に話し終えると、三人とも真剣な表情になる。

 

「向こうはイギリスの代表候補生で専用機持ち。対してこっちは素人二人がかろうじて専用機を持っているだけだ」

 

と、ここで一夏が手を上げる。

ていうか俺が進行役なの?別にいいけど。

 

「はい、一夏」

 

「おう。素人丸出しですまねえが、代表候補生ってどれくらい凄いんだ?」

 

「構わねえよ。代表候補生は国から支援を受けて万全の、しかも充分な訓練を受けていて、IS搭乗時間は三百は越えるらしい。これだけでかなり手強いが、しかもオルコットさんは専用機持ち。エリートだと自分で言うだけはあるって事だ」

 

「お……おう。で、どれくらい凄いの?」

 

「……ハンバーガー三個分?」

 

「…………」

 

「とりあえず、凄く凄い」

 

「……おう」

 

一夏は理解したのか理解してないのか、よくわからない表情だが引き下がった。

正直お前の強さの基準が分からないんだよ。

まさか全部織斑先生で換算してるんじゃないだろうな?

 

 

「はいはーい、こうやんはどれくらいISに乗ったの?」

 

と、今度は左隣ののほほんさんから声が上がる。

 

「一応基礎は履修したが、代表候補生や長年乗ってる人には敵わないよ。知識は詰め込みだし搭乗時間も詰め込み。かろうじて三桁いってるかいってないかだ」

 

「つまり、オルコットは鋼夜が三人分ということか?」

 

箒、その例えはやめてくれないか?

 

「おー、こうやんが三人分かー」

 

のほほんさんもやめなさい。

 

 

「あー、次いくぞ。次は機体についての話だ。布仏くん、例のものを」

 

「は~い」

 

俺の指示でのほほんさんがノートパソコンを机の上に設置し、画面を二人に見せる。

 

「これ、セシリアか?」

 

と、一夏が聞く。

パソコンの画面には青いISを纏ったセシリア・オルコットの姿が映っている。何気にドヤ顔。

 

「ああ、とある軍関係のパレードでの写真らしい。さすがに明確なスペックとか戦ってる映像は調べられなかった」

 

と、次々と画面を切り替えながら説明する。

 

「さて、オルコットさんの機体の名称は『ブルー・ティアーズ』。蒼い雫って意味らしい。で、色んな画像やイギリスの開発ラインを見るからにこの機体は射撃重視の機体だと思う」

 

「なぜ、そのように思う?」

 

箒から疑問の声が上がる。

 

「いい質問だ。オルコットさんの画像にはこの青いライフルが映っていることが多い。ていうかぶっちゃけいつもコレしか持ってない」

 

と、俺はオルコットさんが装備しているスコープ付きの青いライフル銃を指差す。確かレーザーライフルだったよね、これ。

 

「そしてブルー・ティアーズという機体はイギリスが研究しているBT兵器の使用を実現化した試作ISなんだ。それにオルコットさんは俺たち二人掛かりが相手でも気にも留めなかった。機体が多人数との戦闘も想定されているものだとしたら納得できる。多人数との戦闘も視野に入れて作られたなら射撃メインの機体という考えにもなるしな」

 

と、ここで箒と一夏の両名から手が上がった。

 

「ほい、まずは一夏」

 

「びーてぃー兵器ってなんだ?」

 

「操縦者のイメージを反映、具現化して独立稼働ユニットを操作する兵器だ。簡単に言うと頭で動かすラジコンだな」

 

「おお、分かりやすいな」

 

一夏はうんうん頷く。理解してくれたようだ。

 

「で、次は箒」

 

「なぜ多人数想定の機体が射撃メインなんだ?」

 

「じゃあ逆に聞くが近接装備だけで射撃装備を持つ数人の相手に勝てるか?なお、互いの実力、機体スペックは同じものとする」

 

「気合いで」

 

「ねーよ」

 

「千冬姉なら」

 

「あの人と比べんな」

 

確かにあの人ならなんでもできそうだけども。

生身で一人で武装集団とか鎮圧できそうだけども。

 

 

「まぁもしかしたら使ってないだけで武器はまだあると思うがさすがに資料が無いので何も言わないでおく。下手に予想立てて混乱するのも嫌だしな。とりあえずこの機体はBT兵器を使う射撃メインと想定する」

 

俺がそう締めくくると皆頷いた。

異論は無いということだろう。

 

「次は模擬戦での立ち回りだ。一夏が斬る。俺が撃つ。以上」

 

「……は?」

 

俺の作戦を告げると一夏はポカンと口を開けた。

 

「うむ、シンプルだな」

 

箒はうんうん頷いている。

 

「シンプルだねぇ~」

 

のほほんさんは笑っている。

 

「いやいやちょっと待て!適当過ぎないか!?もうちょっと、こう、あるだろ何か!なあ!?」

 

しかしそこで気を取り直した一夏が俺に食って掛かる。

おいおい机を叩くな詰め寄るな、お前はオルコットさんか。

 

「そうは言うが一夏。お前、連携訓練する時間あるのか?基礎すら知らないのにか?そもそも空飛べるのか?銃撃てるのか?専用機はどんなタイプだ?ていうか体力持つのか?」

 

「…………すみませんでした」

 

俺の怒涛の反論を受けて一夏は頭を下げ、申し訳なさそうな顔で自分の席に戻った。

 

「俺も悪かった。まぁ、俺がお前に合わせる形にしよう。剣道やってたならそれを伸ばそう。付け焼き刃にしかならんが大方はマシだ」

 

そして俺はちらりと箒を見る。

 

「一夏はそのまま箒に教えて貰え。その方がいいだろ」

 

「なに!?」

 

俺が箒を指名すると箒は驚いたのか、素っ頓狂な声を上げた。

 

「俺はいいけど……箒はいいのか?」

 

「な、しし、しょうがないな!そこまで言うなら私が見てやろう!同門のよしみだ!鋼夜からの許可も出たしな!」

 

うわー、めちゃくちゃ嬉しそう。

いまの箒は顔赤くして腕組んで一夏から顔そらしてる。ナイスツンデレだ。

 

「おう、よろしく頼むよ箒」

 

「ふん、手加減しないからな!」

 

「そういえば高校から突きが解禁だったな。箒、突き多めで頼む」

 

「了解した」

 

「ちょ!?」

 

俺の提案に声を上げたのは一夏。

高校生の剣道から突きが解禁され、打突部位に新たに喉元が加わる。

突きはモロに入ると痛い。

 

「一夏、これも訓練だ」

 

突きは銃と同じ点の攻撃に近い。

突きに対応出来るようになれば射撃にも少しは対応出来るのではないか?と考えたのだ。

 

 

「訓練か……ならISに慣れないといけないんじゃないか?模擬戦前にISに乗りたいな」

 

と、一夏がふと思いついた事を口にした。

話題を変えたいんだろう。このままいくと無茶振りな訓練が追加されると思って。

 

 

あー、ついに来たかこの質問。

 

「一夏、すまんがそれは無理そうだ」

 

「え?なんでだよ?」

 

「昼休みに山田先生に聞いたんだ。そしたら学園の訓練機は全部予約がいっぱいだって……」

 

「なん……だと……」

 

いつから訓練機に乗れると錯覚していた?

昼休みに山田先生の手伝いをした時に訓練機の事を聞いたのだ。そしたらこの答えが返ってきた。

 

「専用機が間に合うことを願うしかないのか?」

 

「そうなるな」

 

一夏ははぁ、とため息をついて机に倒れ込む。ドンマイ。

 

 

「あ、でも山田先生が放課後の補習授業をしてくれるって。あれ、俺も受ける事にするから」

 

「あー、あったなそれ。……はぁ」

 

補習とは一夏の参考書の件の事である。

一夏は織斑先生より参考書を一週間で覚えろと言われている。

あの参考書の厚さを思い出したのだろう。角で殴ったら間違い無く人が死ぬよ、アレ。

 

 

「あー、喋った。今日はここまで。次回は未定で。はい解散」

 

俺が解散を宣言し、今回の会議はお開きとなった。

 

模擬戦、頑張りますかね。

 

……あ、そうだ輝さんに電話しとこ。

 




鋼夜の観察眼!
次回は刺激のある回にしたい

確かブルー・ティアーズはコンセプト上は一対多を想定してるらしい
ちょっと開発者を小一時間問い詰めたい
どうみても支援機の装備だろ、ブルー・ティアーズって
むしろ一対一でもキツいだろ


主人公のISを考えてたらいつの間にかMS化してる……なんでや……MS化はしないって言ったのに……

皆さん好きなガンダムとか居ます?
私はガンダムヘブンズソードです
鋼夜の脇役趣味は自分の趣味でもありますので、うへへ


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専用機登場の第17話

北海道へ社員旅行に行ってました
そのせいでモチベやらなんやらで遅れてしまいました、申し訳ない

と、思ってたら推薦されましたね
これは元々無いに等しい文才を総動員して気合い入れて更新するしかないですね
マーサーさん、推薦ありがとうございます

そしてお気に入り2000突破!
もうびっくりです、皆さんありがとうございます


いえーい。

決戦当日になったぜ。

 

オルコットさんに宣戦布告されて一週間くらい経った約束の月曜日。

俺と一夏は第3アリーナのピットに居た。

 

 

「ついにきたな」

 

「ああ」

 

「俺たちはこの一週間」

 

「頑張ってきた」

 

IS専用のスーツに身を包んだ俺と一夏はお互いに頷き合う。

 

山田先生による放課後の補習授業は真面目に受けたし一夏は箒の指導の下、訓練を重ねていた。

 

 

「ドッジボールは凄かったな、鋼夜はよくあんな方法考えたよ」

 

「楽しめたなら何よりだ」

 

「特訓で楽しむのもどうかと思うけどな」

 

楽しい方がいいだろ?

そりゃそうか。ハハハ!

と、お互いに笑い合う。

 

ドッジボールとは、俺がこの一週間の間に行った特訓の一つである。

のほほんさんをはじめとするクラスの女子たちに協力を要請し、俺と一夏の二人だけとクラスメイトのチームでドッジボールをするという内容だ。

このドッジボールは通常と違い、数分経つたびにボールが一つずつ追加されていく。

 

外野と内野から迫るボールをオールレンジ攻撃に見立てて、それを避ける事を目的とした特訓だ。

これ特訓なんだけど、いざやってみると普通に面白い。

 

協力してくれたみんなに感謝。

 

 

「鋼夜は凄かったよな、どこまで残ったっけ?」

 

「8球が限界」

 

「いや凄い凄い。俺なんて3球でダメだったもん」

 

ふふ、ドッジボールの避け専で小学校の昼休みを潰した俺の本気を出せばこんなものよ。

しかし8球もボールを増やして、それで避けれたとか自分が怖くなるな。

 

 

 

「それにしても一夏のスーツは面白いな」

 

「俺も鋼夜みたいなやつの方がいいなぁ」

 

 

そして他愛も無い話に花を咲かせる。

 

ちなみに一夏のISスーツはグレーの生地に白い縁取りがされている上下のインナーだ。ぴっちりしてるのと臍が出ているのは仕様だ。

俺のスーツの構造は一夏と同じだが色が白で青いラインが入っている。あと臍が出てない。

 

IS専用のスーツというだけあって、見かけによらずかなり頑丈で機能も充実しているらしい。吸汗性で速乾性だったり拳銃くらいの弾なら受け止めたりとか。

 

普通のインナーとしても人気が高い。確かラビアンローズがISスーツの廉価版インナーを作って売ってた。

 

「いいんじゃない?このスーツって機能いいから普通に下着とかになってるし。あ、お求めの際は是非ラビアンローズの製品をお願いします」

 

「ははっ、考えとくぜ」

 

俺のもはや隠れていないステマに笑って対応する一夏。

対戦前だというのにお互い非常にリラックスしている。

 

 

 

「こないなー、機体」

 

「ああ。結局、練習には間に合わなかったな」

 

俺と一夏がなぜピットでずっと駄弁っているのか。

それは原作通り、一夏の機体が来ないからである。

俺の機体はもうすぐ届くけどね。

その辺は輝さんに確認済みだ。

 

いま、この場所には俺と一夏しか居ない。

先生達は機体の到着を待っている。

 

あの話をするなら今が好都合だ。そろそろ切り出そう。

俺は真剣な表情を作り、一夏の方へ向き直った。

 

 

「一夏。俺はお前に謝らなきゃならない」

 

「え?」

 

突然の事に一夏は間抜けな返事をするが俺の真剣な表情を見て、ただ事ではないと悟ったようだ。

 

「今回の模擬戦。俺はお前を利用した」

 

「どういうことだ?」

 

一旦、間を置いて深呼吸をする。

話す内容を頭でまとめて話を再開する。

 

「一夏、お前は現状の自分の立場が分かるか?」

 

「立場って……自分で言うのも恥ずかしいけど、『世界で初めてISを動かした男性操縦者』だよな?」

 

俺のいきなりの質問に一夏は少し考える素振りを見せた後、そう答えた。

 

「ああ、そうだ。でもその答えは満点じゃない。お前には更に『織斑千冬の弟』『篠ノ之束に近い人物』というのが加わる。そして俺は『二人目の男性操縦者』だ。だが、それだけだ」

 

俺の話を聞いた一夏は疑問符を浮かべて頭を捻らせる。

 

「それがなんで鋼夜が謝る事になるんだ?」

 

「例えば今回の模擬戦が、俺と一夏とオルコットさんの三つ巴になったとする。さあ、どうなる?」

 

「どうなる?って……考えたくないけどセシリアが全勝して鋼夜が俺に勝って俺が全敗……か?」

 

「正解。その場合、オルコットさんは調子に乗って俺たち男は肩身が狭くなり更に俺や一夏への風当たりが酷くなる。俺は『二人目風情が、お前よりイケメンな千冬様の弟様に勝つなんて、空気読めよこの野郎』と言われる。一夏は『ブリュンヒルデの弟なのに』と言われそうになるが後ろに居る人達が強烈過ぎて何も言われない。ちなみに一夏が俺に勝っても多分変わらない」

 

「…………うわぁ」

 

あれ、おかしいなぁ、目の前が霞んできたぞ。

 

「次に俺が全勝した場合。一夏については省略。オルコットさんに勝った場合、あの人は諸々の責任を取らされ、しかも素人に負けたというレッテルを貼られてIS学園を退学、最悪、あの人は代表候補を降ろされる。そしてそれに関連して俺が何か言われる」

 

「鋼夜……もういい、もういいから……」

 

泣いてない、泣いてなんかない。

 

「次に一夏がミラクルを起こして全勝した場合。これが一番丸く収まる。『ブリュンヒルデの弟だから』で全部解決。でもオルコットさんは多分退学。たぶん俺が『ただISに乗れた男と千冬様の弟様とでは格が違うのよ』的な事を言われるだけだから。もし俺が一夏に勝っても最初と同じ事を言われるだけだから」

 

「ごめん鋼夜!俺が悪かった!お前が謝る事なんてないから!俺が喧嘩なんて吹っかけなきゃ良かったんだ!」

 

「ワハハ、もう泣かないぞ。アハッ、アハハハハハハハハハハハハハハ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「すまない皆、見苦しいところを見せた」

 

「いいんだよ。こっちこそゴメンな、鋼夜が色々考えてるのに気付けなくてさ」

 

「よーしよーし」

 

「まぁ、何があったか深くは聞かないが……」

 

俺の涙腺がトランザムしてバーストした時、ちょうど箒と一緒に応援に駆けつけてきてくれたのほほんさんのぬいぐるみ投げで正気を取り戻した俺は現在、のほほんさんに頭を撫でられている。恥ずかしいが、癒される。

 

「まぁ、全敗したくない俺のわがままでお前を巻き込んじまった。謝る」

 

「いや、鋼夜が謝る事は無いって!むしろ謝るのは俺の方だよ!」

 

頭を下げて謝罪する俺を、慌てて起き上がらせる一夏。

 

「鋼夜はさ、なんにも分からなかった俺を助けてくれたし、ISについても教えてくれたんだ。本当に感謝してるんだぜ?この勝負、絶対勝とうぜ!」

 

「……ああ。男の底力を見せてやろう」

 

 

そして一夏とハイタッチをした。

気合いを入れるにはハイタッチと決まっている。古事記にもそう書かれている(適当)

 

 

 

「……どういうことだ?」

 

「まぁ、やる気になったんならいいんじゃないかなー」

 

現状が飲み込めない箒とのほほんさんは終始疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

「セシリアは既に準備してるのか」

 

箒とのほほんさんによると、既にオルコットさんはアリーナにて俺達を待っているそうだ。

専用機が来てないから行こうにも行けないけどね。

 

「ああ。一夏、お前の専用機は来てないのか?」

 

「来てないなぁ……」

 

「こうやんも専用機来てないの?」

 

「うん」

 

どうしようか?という空気が辺りに漂い始めた頃、パタパタと誰かが走ってこちらに向かって来る音が響いた。

 

「き、来ましたよ!織斑くんと如月くんのISが!」

 

バタン、と扉を開けて現れたのは山田先生。

本当に急いでいたのか、顔が少し赤い。

そして一呼吸置いて山田先生は俺の方を向く。

 

「それと、如月くんには会社の方がお見えになってますよ?」

 

「え?」

 

会社……ラビアンローズから?一体誰だろうか。

 

すると、山田先生の後ろから二人の人物が現れる。

 

 

「やあ、鋼夜くん。久しぶりだね」

 

一人はラビアンローズの社長であり同志の輝さん。

いや、社長でしょあなた。ここに居ていいのか。

 

「おーう、久しぶりー」

 

次に現れたのは赤いシャツに黒い上着でアポロキャップをかぶった金髪の女性。

あ、あなたは……!

 

「姉御!ケイの姉御じゃないですか!」

 

「その呼び方は辞めろって!」

 

この女性は仁室 圭(にむろ けい)さん。ラビアンローズのIS開発チームの整備士である。通称「姉御」

俺が使っていたラビアンローズの訓練用ISを見ては使い方が荒いとよく怒ってた。

 

「ごめんね、遅くなっちゃった」

 

「いえ、構いませんよ。それで、俺の機体はどこに?」

 

「慌てんなって。ほれ、もうすぐ来るよ」

 

姉御に言われ、機械の駆動音がする巨大な扉、ピットの搬入口に注目すれば斜めに噛み合うタイプの扉が音を上げて開く。

 

 

そこには『銀』が居た。

飾り気の無い、素材そのままの色。

一つの鋼の塊がそこに居た。

 

 

「カラーリング代さえ無かったのかラビアンローズは……」

 

「いや違うからね、一次移行(ファーストシフト)したらちゃんと色が付くからね」

 

「冗談ですよ冗談」

 

輝さんのツッコミを受けながら俺はISに近付き、銀の装甲に触れる。

 

これが、俺の専用機。

俺の、相棒。

 

その事実を改めて実感し、思わず笑みがこぼれる。

 

「これが君の専用IS『四天(してん)』だ。お気に召したかな?」

 

「最高ですよ。輝さんも圭さんも、ありがとうございます」

 

輝さんと姉御に頭を下げ、俺は早速自らの専用機に搭乗するべく装甲が開いた状態の四天に乗り込む。

 

かしゃかしゃと装甲がせわしなく動き、装着されていく。

視界がISのハイパーセンサーを通したクリアなものに切り替わる。

 

「ふむ、既に乗っているな。すまないがフォーマットとフィッティングは実戦でやるように」

 

いつの間にか来ていた織斑先生が俺にそう告げる。

 

「分かりました」

 

そう答えると同時に装着が完了し、ピピッという音と共に視界に情報が表示される。

表示された情報は一夏のISとオルコットさんのISについてだった。

ふと、向かい側に意識を向けてみればISを身にまとった一夏の姿が見えた。

 

 

「どうだ?調子は」

 

ふと、姉御から声を掛けられた。

 

「すごぶるくらい良好です」

 

「そいつは良かった。ああ、そういえばパイロット連中から伝言貰ってるよ。「無様な戦いはするな」だとさ」

 

今回の事をみんなは知っているのか。

そうだな、負けたら俺を教育してくれた先輩たちの顔に泥を塗る事になるんだ。

絶対に負けられない。俺のためにも、みんなのためにも。

 

 

「こうやん、頑張ってね~」

 

「おう、任せとけ」

 

決意を新たにし、のほほんさんからのエールを受け取りカタパルトへ向かう。

 

 

「お、それが鋼夜のISか?」

 

カタパルトには既に一夏が居た。

 

「おう。俺の専用機『四天』だ」

 

「俺のは『白式(びゃくしき)』だぜ」

 

「言うほど白くないな」

 

「ぶっちゃけ俺も思ってた」

 

そんな事を一夏と話して居ると入場を促すアナウンスが入った。

 

「じゃ、お先」

 

「おう」

 

一夏に断りを入れ、カタパルトに乗り込む。

指定の場所に脚部を固定させ、後は流れに任せる。

 

「如月鋼夜、『四天』、いっきまーす!」

 

アリーナへの入り口が開き、俺は空へ飛び立った。

 

 

 

 

俺にとって、色んな意味で大事な最初の戦いが始まった。




ISはボールじゃないんです
ISはボールじゃないんです
大事なことなので二回言いました
ボールを期待していた方(が居るかどうか分からないけど)申し訳ない

新キャラの圭さん、勘のいい人なら直ぐに気付きますね

ぶっちゃけもし一夏がセシリアに勝ってたらセシリアは退学してたかもしれない
鋼夜が言ってる事もあながち冗談ではない、と思う

そして一次移行前の最初の状態の白式は全然白くない、むしろ灰色だと思う


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戦闘開始の18話

戦闘描写が難し杉内
精進しなきゃ(使命感)


「……ふぅ」

 

ピットのゲートから飛び立った俺は久しぶりとなる空の感覚を味わう。

だが今はその感覚の余韻に浸る暇は無い。

敵がそこに居るからだ。

 

 

「おわっ、うわっ、とと」

 

俺より少し遅れてピットから飛び立った一夏が、なんとか飛行して俺の隣へ並ぶ。

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

俺たち二人が揃ったのを確認した眼前の青いIS、『ブルー・ティアーズ』の操縦者セシリア・オルコットが腰に手を当てたポーズをしながら言い放った。

 

ちなみに試合開始の鐘は鳴っている。

いきなり武器をコールしての不意打ち(アンブッシュ)からのオラオララッシュをしてもいいのだが、それをすると俺への批判がヤバい事になるので辞めておく。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

「俺はこれ」

 

「あ、分かった。俺はこれみたいだから」

 

オルコットさんが何か言っているが無視だ無視。

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないことも……って聞いていますの!?」

 

「あ、すまん聞いてなかった」

 

「どうせ謝れとか言ってたんだろ?なら断る」

 

オルコットさんが自分の話を聞かれていない事に気付いた。

つーか試合が始まってんのに何を話しているんだか。

俺と一夏?これは別。

 

「……そうですか、貴方達がふざけているのはよく分かりましたわ。それならーー」

 

四天がアラート音と共に被ロックオンと敵からの射撃の警告の情報を表示する。

 

「お別れですわね!」

 

オルコットさんは宣言と共に左手に握っていたレーザーライフル『スターライトmkⅢ』を構えた。

 

耳をつんざく独特の音を立ててライフルから閃光が吐き出されるが、俺は紙一重でそれを躱す。

 

「うぉっ!?」

 

一夏も危なっかしい動きだがなんとかレーザーを回避していた。

 

「あら、やりますわね。ですが、幸運は続きませんわよ」

 

今の一撃を避けたのが意外だったのか、少し驚いた表情を見せるオルコットさん。

 

確かアニメだと今のシーンで一夏は被弾してた。たぶん特訓の成果だろう。

さすが主人公。成長速度が化け物並みだ。

 

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

オルコットさんは高らかに宣言するとライフルを構え直し、俺と一夏を交互に狙う。

 

 

「一夏、作戦通りに頼む」

 

「分かった」

 

俺と一夏はレーザーの雨を避けながら、右と左に分かれて散開した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さすが代表候補生というだけあって、セシリアは俺たち二人を交互に狙いながらでも正確な射撃を行っている。

だが、反応出来ないレベルではない。俺が白式に慣れる事が出来れば、反撃のチャンスが生まれるだろう。

箒とのあの地獄の剣道や鋼夜との特訓や放課後の補習授業は無駄ではなかったって事だ。

 

 

だが、ただ待ってばかりのやられっぱなしで終わる訳にはいかない。

 

「武器、武器は無いのか!」

 

自らのISである白式に呼び掛けると、現在展開可能な武器の一覧が現れる。ーーが。

 

展開可能武装

近接ブレード(名称非公開)

無し

無し

無し

 

…………えっ?

これ、武器一覧だよな?刀一つしか無いように見えるんだが。

しかも名称非公開ってなに?

 

 

「こ、鋼夜ぁ!」

 

俺はオープンチャネルであることを気にせず鋼夜に呼び掛けた。

困った時は鋼夜の出番だ!あいつならなんとかしてくれる!

 

「どうした一夏」

 

頼れる友と回線が繋がる。

 

「武器が刀しか無い!」

 

「無いよりはマシだ」

 

なんてことだ、頼れる友もこの事態は解決できないらしい。

 

「えぇい!やってやる!」

 

俺は怪しい近接ブレードをコールし、展開する。

右腕から放出される光の粒子が形となり、手の中に収まる。

展開されたのは一振りの刀だった。

 

 

「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうだなんて…笑止ですわ!」

 

 

これしかないんだよ!

 

俺は心で叫びながらセシリアの射撃を身をひねることでかわす。

 

 

「……一夏。アレ教えただろ。そっちを頼む」

 

……いや、神はまだ俺を見捨ててはいないようだ。俺は鋼夜の言う、アレをすることにした。

 

戦闘前に鋼夜から教えてもらった秘匿回線?を入力。後はぶっつけ本番!

 

脳で話すイメージだっけ。

ようはテレパシーだな、テレパシー。

脳内に直接語りかけるんだ!

もしもしもしもしもしもーし!

 

 

『聞こえてる聞こえてる』

 

俺の頭に鋼夜の声が響く。やった!通じたぞ!鋼夜も俺と話しているから回線が入力出来たみたいだな。

 

『プライベートチャネル、成功だな』

 

繰り出されるセシリアの攻撃をギリギリでかわしながら、なんとか鋼夜と通話する。

 

プライベートチャネルとは個人間でのやりとりに使われる通信で、その名の通り対話している相手にしか内容は分からない通信……らしい。俺も今初めて使った。

 

鋼夜からのアドバイスや放課後の補習で知識としては知っていたが、いざ使ってみると中々に不思議だ。

 

 

『鋼夜、武器が刀しか無いんだがどうすればいい?』

 

『何の問題も無いだろ。打ち合わせ通りお前が斬って俺が撃つ。ちょうど相手を油断させることも出来たし、そのまま避け続けてチャンスを待つぞ』

 

『……分かった』

 

『落とされるなよ』

 

そして通話は一時中断。

結局刀一本で頑張るしかないのか。

 

「やってやるさ」

 

刀を握り締め、意識を現実へ持ってくる。

引くわけにはいかない。

この勝負、絶対に勝つんだ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ひとまずはうまくいったか」

 

 

一夏が上手くプライベートチャネルを使えた事に安堵し、通話を一時中断。意識を現実へ戻す。

 

通話しながら攻撃を避けるのは中々骨が折れたが相手は二対一の状況で、俺と一夏を交互に攻撃してくるため飛来してくるレーザーの数が少ないのが救いだった。

一対一だったらここまで上手くはいかなかっただろう。

 

 

「くっ、ちょこまかと……いい加減落ちなさい!」

 

それに加えてオルコットさんは冷静さを欠いている。

射撃の荒が目立ちだし、それが多くなってきた。

 

 

俺と一夏の作戦は、まず相手の攻撃を避け続けることだ。

これを一次移行が終了するまで続ける。一夏には「相手の動きや動作を見ろ」と言ってある。

機体が一次移行してない、なんて未来を見通してるような事を言うわけにはいかないからだ。

一次移行が済んだら後は反撃タイム。俺が撃って一夏が斬る。

幸いにも前世の知識で俺はオルコットさんの致命的な弱点を知っている。

そこを容赦なく攻撃させてもらう寸法だ。

 

 

「さて、俺もやるか」

 

俺は展開するための武器の一覧を呼び出す。

 

展開可能武装

近接ブレード「篝火(かがりび)

 

他武装、非固定武装、一次移行まで使用不可

 

 

四天(ブルータス)、お前もか。

これ絶対輝さんの仕業だろ。

ガンダムが最初はビームサーベルで敵を倒すのを意識してるよ。

初代ガンダムは最初の起動の時でバルカン撃ってたしジュドーのZガンダムはジャンクをポイ捨てしてたぞ。割とサーベル以外も使ってるんだから銃使わせてくれよ。

 

 

まぁ仕方ない。

相手の勘違いを加速させるのにちょうどいい、と捉えておこう。

 

俺は右手に近接ブレード「篝火」を呼び出す。光の粒子と共に現れたのは一夏の使用しているブレードより少し大きい刀身を持つ刀だった。

 

 

「あなたも近距離格闘装備……わたくしを馬鹿にしていますの?」

 

俺の展開した武器を見たオルコットさんは呆れたような顔で聞いてきた。

 

「そいつはどうかな?身を隠す障害物も無ければエリアの範囲が制限されているアリーナで、しかも最初からお互い捕捉された状態で戦うなら中距離射撃が一方的に有利だとは思えないけどね」

 

それに対して俺は思っていた事を答えにした。

いや、アニメで見てからずっとツッコミ入れたいと思ってたんだよ、あのオルコットさんのセリフ。

むしろ近距離格闘の方に分があるよ。

 

 

「その減らず口、二度と叩けないようにしてあげますわ!お行きなさい『ブルー・ティアーズ』!」

 

オルコットさんの機体の非固定武装(アンロック・ユニット)の一部が分離して独立して動き出し、俺と一夏に二機ずつ迫ってきた。

 

俺の反論が気に障ったのか、ついにオルコットさんは切り札であるBT兵器を使用してきた。

ていうか機体と同じ名前とかややこしい。

 

「わたくしのISはBT兵器『ブルー・ティアーズ』を搭載し、実戦投入された一号機。だから機体にも同じ名前が付いているのですわ」

 

俺の心を見透かしたかのように解説をするオルコットさん。そんなの聞いてないです。

 

ビットだビット。次からビットって呼ぶ。

俺はアレをファンネルとは認めん。

 

 

「俺たちの戦いはこれからだぁ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「二十七分。よくもまぁ、こんな時間まで逃げ回りましたわね。このブルー・ティアーズを前にして、初見でこうまで耐えたのは貴方達が初めてですわね」

 

「そりゃどうも……」

 

「やったぜ」

 

「ですが、ただ逃げ回るというのはあまりにも芸がありませんわね。ふざけているのですか?」

 

ブルー・ティアーズを撫でながら、呆れを含ませた声で告げるオルコットさん。

はい、オルコットさんが仰る通り俺も一夏もまだ一次移行が済んでおりません。

 

 

「ふざけられるそっちが問題なんじゃないの?逃げ回る素人も落とせないエリートさん」

 

「……まだ言いますの?このまま続けても貴方達に勝ち目はありませんわ。降参するなら今のうちですわよ」

 

うーむ、確かにこれ以上時間を掛ける訳にもいかないな。

確かアリーナが使える時間は限られてたし、判定負けとか一番嫌だし。

 

「だが断る」

 

「今さらやめられるかよ!」

 

よし、そろそろやりますか。これ以上時間をかけて一次移行を待つ訳にもいかない。

それに、言われっぱなしはやはり性に合わない。

 

俺達の言葉に何の反応もせずにオルコットさんは右腕を横にかざす。

周りに浮いていたビットが俺と一夏目掛けて接近し、レーザーを放ってくる。

 

 

『一夏。一次移行のためにこれ以上待つのは無理そうだ。オルコットさんが油断してる今のうちに決めちまおう』

 

迫るレーザーの雨を避けながらも一夏とプライベートチャネルで通話する。

 

『分かった。俺もだいぶISを操縦するのに慣れてきたぜ』

 

確かに、一夏は最初こそ被弾などの危なっかしい場面があったが今はそれが少なくなっている。

 

『さすがだ一夏。さて、オルコットさんを攻めるに当たってお前から何かあるか?』

 

『……ある!あるぜ!さっき気付いたんだけど、セシリアはビットを飛ばしてる時は動けないんだ。何回か確認したから間違い無いぜ!』

 

一夏の自慢気な声が聞こえてくる。

さすがだ。それに気付いてくれなきゃどうしようかと思っていた。

 

オルコットさんの致命的な弱点。

それはビットを操作している時は動けないことだ。

間違いは無い。

実際、この弱点が無かったら俺と一夏はビットとライフルの飽和攻撃で既にリタイアしているはずだからだ。

 

『オーケイ一夏。じゃあ、次にオルコットさんがビットを飛ばしてる時にチャンスを見て切り込むぞ。先陣は譲ってやる』

 

『了解!』

 

通話を切り、攻撃の回避に戻る。

 

あ、ミサイルビットの存在……まぁいいか。

どうせ一次移行したら装甲が一新されるし。ミサイル数発くらいなんとかなる。多分。

一夏の左手が荒ぶってたけど気にしない。

 

 

 

 

「もぉらったぁ!」

 

「ーーかかりましたわ」

 

ビットのレーザーを避け、動けない状態のオルコットさんに向かって一夏は加速して突っ込む。機体のスペックにものを言わせた速さだ。

 

だが、案の定オルコットさんは隠していた最後のミサイルビットを展開。一夏の白式はミサイルの爆発に巻き込まれた。

オルコットさんはドヤ顔で、恐らくボロボロになったであろう白式を見ようと煙に包まれた方を見ていた。

 

 

誰かが言っていた。

人が何かをやり遂げた瞬間は最も隙だらけだと。

今がそれだ!

 

 

「なんとおぉぉぉ!」

 

「きゃっ!?」

 

立ち尽くしたままのオルコットさんへ詰め寄り、篝火を振り下ろす。

それに対してオルコットさんは驚いたような声を上げるがなんとかライフルで篝火を受け止めた。

この距離なら相手はミサイルを使えない。自分も巻き込まれるからだ。

 

「くっ、油断していましたわ」

 

「油断する方が悪い」

 

「ですが、残りはあなた一人。降参するなら今のうちですわよ?」

 

「そいつはどうかな?……失礼!」

 

オルコットさんの機体へ蹴りを入れ、その反動を利用しスラスターを吹かせ距離を取る。

相手は蹴られて体勢を崩されたため追撃は来なかった。

 

 

 

「ああ、その通りだ!」

 

俺以外の男の声が響く。

煙が晴れ、そこから現れたのは純白の装甲を纏った一夏だった。

装甲からは薄ぼんやりとした光を放っており、先ほどまで負っていた実体ダメージが全て消えていた。

 

「わりぃ鋼夜、ヘマしちまった」

 

「結果オーライさ」

 

俺は一夏の横へ機体を動かす。

何も妨害が無いのは、多分オルコットさんは驚いているからだ。

 

「一次移行!?まさかあなたは初期設定の機体で戦って……ハッ!?」

 

途中まで言ってオルコットさんは驚きに染まった顔を俺の方へ向ける。

 

「まさかあなたも……!?」

 

「その通り。俺の機体も初期設定状態さ」

 

そして俺の機体が輝き始める。

視界には『初期化と最適化が終了しました。一次移行へ移ります。』の文字が。

 

「!?や、やらせませんわ!」

 

すぐさまこちらにビットを飛ばすオルコットさん。

変身中に攻撃するとかやめてくれよ。

 

「やべぇ、動けねぇ」

 

「任せろ!」

 

一夏は俺の前に踊り出る。

 

「いいですわ!まずはあなたから!」

 

オルコットさんが右腕を振りかざすと三機のビットが一夏に向かっていく。

 

「なめるなぁ!」

 

後ろ右斜め上のビットのレーザーを下に潜り混んで回避し急上昇して刀で斬りつけ破壊。一機目の近くに居た二機目をISの無重力機動による蹴りで破壊。残った三機目は一夏に背後を取られ真っ二つになった。

 

ビットの攻撃をかわしながら一つ一つビットを破壊していく一夏。

主人公ってすげー。

 

「なら、あなただけでも!」

 

そんなことを考えていると残った一機が俺に向かってきた。

 

「えい」

 

今まさに攻撃する直前のビットに俺は持っていた篝火を投げ付けた。

ビットに篝火が直撃!ビットは爆発四散!ショッギョムッジョ。

 

「な、なんですのそれー!?」

 

オルコットさんの悲鳴みたいなものが聞こえるが無視。

世の中には盾とか岩とかジャンクとか核を投げつけてくる奴が居るんだぞ。

 

そうこうしているうちに一次移行は完了したようで、光の粒子が収まっていく。目に見える範囲でも、装甲が変化しているのが分かる。

 

 

『一次移行完了。全武装、非固定武装のロックを解除します』と表示され、続いて『完了』の文字を確認。

 

キィィィンという金属音と共に機体の情報が頭に流れ込む。

 

オッケー全てを理解した。

さあ、ここからが本番だ。

 

 

「行くぞ一夏!」

 

俺は武器一覧からアサルトライフル『泉花(せんか)』を右手に呼び出す。

 

「おう!」

 

一夏は一次移行によって解放された近接ブレード『雪片弐型(ゆきひらにがた)』を構える。

 

 

「覚悟はいいか?俺は出来てる」

 

「守られるだけは、もう終わりだ!」

 

それぞれの得物をオルコットさんへ突きつけ、それぞれの思いを宣言する。

 

 

「っ!?……調子に乗らないで下さいまし!」

 

オルコットさんが再びミサイルを放つ。

一夏が動こうとするが俺は手でそれを制する。

 

「一夏、俺に任せろ」

 

そして一夏の返事も聞かずにミサイルに真っ正面から向かっていく。

 

「お、おほほほほ!何かと思えば捨て身の特攻ではありませんか。いいですわ、あなたから沈めて差し上げます!」

 

追加でミサイルを放つオルコットさん。

既に眼前には最初に放たれたミサイルが迫って来ている。

 

「この瞬間を待っていたんだ」

 

俺がニヤリと笑むのと同時にミサイルが爆発。遅れて迫ってきたミサイルも連鎖爆発。

 

アリーナのほとんどが煙で覆われた。

 

そしてーー

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

アリーナには俺のリタイアを告げるアナウンスではなく、銃声と、オルコットさんの悲鳴に似た叫び声が響き渡る。

 

 

煙が晴れた時、会場は騒然としただろう。

攻撃をしたはずのオルコットさんの機体がダメージを負っているのに対し、攻撃を食らったはず(・・・・・・)の俺の機体が無傷で現れたのだから。

 

「あ、あなた、一体何をしましたの!?」

 

オルコットさんの質問に対し、俺は自分の背後に浮いている非固定武装(アンロックユニット)を指差す。

俺の非固定武装は両肩の上部分に浮いている大型のシールドだ。

 

「こいつはヴァリアブルフェイズシフト搭載防御兵装『天岩戸(あまのいわと)』だ。一言で説明するならこいつに物理攻撃は効かないんだよ。そんでお前の攻撃を防いだ後にお前が居た方向に銃を撃ちまくった。納得?」

 

衝撃までは無効にできないけどね。

そして俺は弾薬が空になった泉花を粒子に戻す。

 

「な、ならばこれは防げないでしょう!?」

 

そう言ってオルコットさんはスターライトmkⅢを構える。

 

「うん、普通にレーザーは無理」

 

「そうでしょう。ならば食らいなさい!」

 

いままさに俺に向けて引き金を引こうとするオルコットさん。

 

ていうかさーー

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

あと一人居るの忘れてね?

 

一夏が加速してオルコットさんへと突撃する。

一次移行したこともあり、その速度は先ほどの初期状態の時よりも遥かに速い。

 

「作戦通りだ。俺が撃ってーー」

 

「俺が、斬る!」

 

エネルギーの光を帯びた雪片で袈裟斬りを放つ。

オルコットさんは片手を突き出して何かをしようとしたが間に合わなかったようで、そのまま一夏に斬られる。

 

 

エネルギーが一気に減った事でISが強制解除され、空中に放り投げられる形となったオルコットさん。

すかさず一夏が彼女を受け止めた。お姫様だっこで。

 

 

『試合終了。勝者ーー織斑一夏、如月鋼夜』

 

そして試合終了を告げるブザーが鳴り響いた。

結果は俺たちの勝利だった。

 

「やったな一夏!」

 

勝利の喜びを分かち合うために一夏の元へ向かう。

そして俺は見てしまった。

 

一夏に抱きかかえられ、頬を朱に染めるオルコットさんの姿を。

 

一夏が何か言っていたような気がするが俺の耳には何も入って来なかった。

あるのは、形容し難い敗北感。

 

 

シロー、ノリスさん。

試合に勝って勝負に負けるってこういう事なんだね。

 




拙い文章で申し訳ありません(土下座)

Q一夏強くね?
A原作の剣道地獄だけであそこまでやれたなら、ちゃんと練習したら凄い事になると思いました
主人公ってすげー

Qセシリア弱くね?
A本人は慢心からの油断、相手は二人がかりでしかもメタ対策付きという素敵仕様ですから
しかも戦闘中に驚きの連続
省いてるけど割と鋼夜と一夏の二人は結構被弾してます、特に通話中
なんもかんも発動が間に合わなかったインターセプターが悪い

Q(セシリアが)堕ちたな
A(やっぱり阻止は)ダメみたいですね


キャラとかISの設定は近いうちに上げます
VPSの理由も後で語ります

ノリス・パッカード
シロー・アマダ
ガンダム08MS小隊に登場
主人公はシロー、ノリスは敵
ガンタンクの護衛任務の際に二人は戦う
みるみるうちに倒されるガンタンク
シローが駆るガンダムEz-8は辛くもノリスが駆るグフ・カスタムを倒すが彼の死を恐れぬ特攻により残った最後のガンタンクが倒されてしまう


四天のシールドはフォビドゥンみたいにグイッと前に出すタイプ

クロボンのMS好き、ランスかっこいい
でも会長が既に持ってるんだよね……

でもヤッピー知ってるよ
ISと一番相性がいいのはSEED系列の機体だってこと……


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機体説明の第19話

輝「我がラビアンローズの技術開発力は宇宙一ィィィィィィィィィィ!!!!!」
鋼夜「割とシャレにならない」


「なかなか良い勝負だったよ」

 

「ま、頑張ったんじゃないか?」

 

試合が終わり、ピットに戻って来た俺を出迎えてくれたのは輝さんと姉御だった。

一夏も一緒に戻って来ている。

オルコットさんは一夏に降ろされるなり、そそくさとその場から立ち去った。ヤツに関しては何も言いたくない。

 

「なんで武器が刀一本だったんですか」

 

戻って一番に聞いたのが四天の装備について。

 

「最初から全武装オープンなんて、つまらないでしょ?」

 

うわぁ、本当に俺の予想通りだったよ。

マジで刀一本で倒させる気だったのかこの人。

 

 

「んじゃ、順序が飛び飛びですまないけど『四天』について説明させてもらうよ」

 

すると姉御が携帯端末を取り出した。

 

「そいつはラビアンローズが設計、製作した第三世代型のISだ。コンセプトは『あらゆる状況、場所への対応』を元にしてある。換装することでより様々な形態となりあらゆる状況に対応する事を考えている機体だ。今回は何も換装していないが、それでも既存の量産型ISを上回る性能を持ってるよ」

 

ほう、なるほど。

つまりは量産機のいいところを残してより性能高い機体を作ろうぜ!って事か。

 

 

俺は無人の状態で展開してある自らのISに目を向ける。

 

形式は部分展開のIS。

一夏の白式と同じく白をベースに、青と赤のトリコロール、俗に言うガンダムカラーの塗装が施されている。

機体の背部には大型のメインスラスターが二つと方向転換に使用する小型のスラスターが二つ搭載されている。

機体の肩の部分には非固定武装として二つの大型シールド『天岩戸』が搭載されてある。

 

ガンダムじゃないか。

 

 

「フランスのラファールをパク……もとい、参考にしたから機動性は折り紙付き。でも運動性は当初の予定よりちょいと下がったけどね」

 

「いや、それでも充分凄いと思うんですが」

 

姉御が携帯端末を操作して四天のスペックを俺に見せてきた。

あんなに搭載しても運動性がなんとラファールより少し上です。

どこがちょいと下がったんでしょうね。

 

「武装は全部ラビアンローズ製だよ。まぁ、アンタも一応は社員なんだから把握してるだろ」

 

四天の武装は、

俺が最初に使った近接ブレードの「篝火」

一次移行してから使ったアサルトライフルの「泉花」

今回は使わなかった、ビーム拳銃の「召雷(しょうらい)」が二丁。

ビーム兵器は最近作られた試作のものだ。拳銃とは名ばかりで、なんとか片手で持てるが少しでかい。

そして非固定武装のヴァリアブル・フェイズシフト搭載防御兵装「天岩戸」だ。

 

「天岩戸」以外は知っている。

初期で入っていた武装はこれくらいだった。

 

「四天は換装するのを前提で作られているから拡張領域(パススロット)や容量が大きい。ま、換装分の容量を圧迫しない程度に自分に合う武装を詰めりゃいいさ」

 

そう言って姉御は持っていた携帯端末を閉じた。

 

 

「仁室くんご苦労様。後は私が説明しておくよ」

 

「頼みます、私は先生方と少し話して来ますんで。……おい、鋼夜」

 

姉御は端末を輝さんに渡すと俺の方へ向かって来ると背中に手を回して密着し、顔を近付ける。

アニメとかでよく見る、秘密の会話をする時によくやるアレだ。

 

姉御、近いです。あと当たってます。それと凄い良い匂いがします。

 

「スイッチの入った社長の意味の分からない会話についていけるのは社内広しと言えどお前くらいだ。辛いかもしれないが……頼んだ」

 

姉御は妙にシリアスな表情でそう言う。

輝さんの意味の分からない会話とは、俺の世界で使われていたネタの事である。

輝さんは発作と称して様々なネタを口走る。だがそんなものは同じ世界出身の俺以外は理解できない。そのせいで輝さんは社内では変人扱いされている。

この世界で「バルス!」って言っても通じないんだぜ?世界の「バルス!」が。

 

ちなみにジョジョは通じる。この世界にはジョジョがあるからだ。

やはりARAKI先生は偉大であるという事が判明した。

 

 

「わかりました」

 

「じゃ、頼んだ」

 

姉御はそう言い残し、俺から離れるとピットから出て行った。

 

 

「鋼夜くん、何かあるかい?」

 

「四天って何をモデルにしたんですか?」

 

笑顔で聞いてくる輝さんにさっそく質問をぶつける。

 

「ストライクとインパルスだね。換装するの前提で作ったから」

 

正直、カラーリングとVPSとハード・ポイントシステムとビーム二丁拳銃の時点で予想はしてました。

 

「じゃああの……ゲシュタルトヴィッヒパンツみたいなシールドは?」

 

フォビドゥンの後ろについてる饅頭みたいなシールドしやがって。

 

「『ゲシュマイディッヒパンツァー』ね。まぁ、あれとはちょっと違うんだけど。本来は四天を換装パーツと一緒に届けようと思ってたんだけど間に合わなくてね。あのままだとパッとしない速さだけのISになるからさ……急造で仕上げて装備させたのが『天岩戸』さ」

 

「急造でフェイズシフト装甲作れる方がおかしいと思うんですがそれは」

 

「それにはちょっと仕掛けがあるんだ。それに、IS用じゃないけど技術は既に確保してたからね。あ、四天をしばらく預かる事になるけどいいかな?フェイズシフトのデータを纏めなきゃならないんだ」

 

ラビアンローズは大企業だ。

ISだけではなく様々な分野が存在している。

特徴としてラビアンローズは「ISのために新技術を生み出す」のではなく「生み出した新技術をISにも使えるか試す」という方針である。圧倒的技術力を持つラビアンローズだからこそ出来る事だ。

フェイズシフトも元々は別の用途に使うのだろう。

……自分で言っておいてなんだがフェイズシフトってIS以外の何に使うつもりだったんだろう。家の壁とか?電気代が凄い事になりそうだ。

あ、でも色が付くって部分は使えそうだ。

 

 

「別にいいですよ」

 

「ありがとう。さて、次は装甲とかの材質について説明しよう」

 

「フェイズシフト装甲じゃないんですか?」

 

俺の質問に輝さんは首を横に振る。

 

「フェイズシフトはソレの一部に過ぎない。お見せしよう!これがラビアンローズの科学の枠を集めて開発した夢の装甲、『多機能搭載可変性ナノスキン装甲』だぁぁぁぁ!」

 

端末のグラフやらなんやらが写った画面を見せながら高らかに宣言する輝さん。

 

「な、なんだってー!?」

 

ナノスキン装甲といえば∀に出てくる装甲で、簡単に言うと損傷してもその部位をナノマシンが治す装甲である。

その装甲が多機能搭載でしかも可変性だって!?

 

「…………それって、どう凄いんです?」

 

「ふふふ、この世界にはナノマシンが存在していたから色々やりやすかったよ。修復のためのナノマシンをISの機能の補助に回し、ナノマシンが機体の仕様に合わせて様々な役割を果たす事でこの装甲一つで色んな機能を使用する事が可能なのだ!」

 

「なん……だと……」

 

VPSも再現可能とか便利過ぎるだろナノマシン。

これがGジェネOW帰りの実力だと言うのか。

 

「まぁ流石に一つの機体にフェイズシフトとラミネートを一緒にー、とかいう併用は無理だけどね。今回は試験的にVPSの機能を天岩戸に使用してみたよ」

 

「シールドだけなんですか?機体にVPSは使って無いんですか?」

 

俺の質問に輝さんは困ったような顔をする。

 

「あー、当初はその予定だったんだけどね……コストに合わなかったんだ。稼働時間が物凄い短くなるし、それにISの装甲って薄いし四天は部分展開のタイプだからさ……実弾のダメージは無効に出来ても衝撃まではどうにもできないし」

 

「なるほど……確かに」

 

「一番の理由は、ぶっちゃけ実弾を無効化する時の振動で絶対防御が発動する可能性があるんだ。だから全身をフェイズシフトにするのは馬鹿らしい。って事になったよ」

 

「うわぁ……」

 

「ハイパーセンサーと連動して被弾する部分を予測してその部分だけに電流を流す方法も思い付いたんだけど、そうまでして機体の装甲にフェイズシフトを使う理由が無いんだよね。それなら非固定武装にバッテリーを内蔵してVPSの機能を組み込んだシールドをフォビドゥンみたいにアームで固定すれば展開範囲は限られてくるけどかなり実用性のある装備になるからね。これで衝撃の問題もクリア出来たという訳さ」

 

とりあえず装甲と輝さんの発想が凄く凄いのは分かった。

 

 

「どうしてISとSEED系の機体はこんなに合うんですかねぇ」

 

「コンセプトが一緒だからじゃないかな?ほら、後ろに取って付け」

 

「それ以上はいけない」

 

 

その後、二、三言会話をして四天を輝さんに渡して更衣室でシャワーを浴びて俺は部屋へ戻った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おめでとー」

 

「ありがとう。今日勝てたのも、のほほんさんの協力のおかげだよ」

 

「えへへー」

 

部屋に戻るとのほほんさんが大量のお菓子を用意して待っていた。

「こうやんの勝利を祝ってプチ祝勝会を開くよー」との事。

 

 

「ジュース買ってくるよー。こうやんは待っててね」

 

「いや、それくらい俺が」

 

「こうやんは祝われる立場なんだからだめだよー」

 

そう言ってのほほんさんは部屋を出て行った。

今のご時世には珍しい、いい子じゃないか……。

俺がしみじみとそう思っていると、部屋の扉がノックされた。

 

「いま開けます」

 

のほほんさんは祝勝会って言ってたから誰か呼んだのだろうか?

とりあえず扉を開けて来訪者を確認する。

 

最初に目に入ったのは外国人特有の綺麗な金色の髪。

それだけで誰が来たのか、俺は察した。

 

「こ、こんばんは……」

 

「……こんばんは、何か御用ですかオルコットさん」

 

少し無愛想な返事になってしまった。

そう、訪ねて来たのは今日の対戦相手だったセシリア・オルコットである。

いま一番会いたくない人だった。

 

ちなみに今二番目に会いたくないのは箒。理由は申し訳ない気持ちでいっぱいだから。

 

「少しお話しがあります。お時間、よろしいでしょうか?」

 

真剣な表情で訪ねてくるオルコットさん。その目には当初に存在していた軽蔑など、人を見下しているものが無くなっていた。

 

「いいよ」

 

俺は二つ返事で了承した。

 

「はい……まず初めに、これまでのご無礼の数々について謝罪します。申し訳ありませんでした」

 

そして深々と頭を下げるオルコットさん。

あのオルコットさんが頭を下げた。驚いた。

 

「……あぁ、いいよ。俺もつい色々言ったしさ、こっちこそ謝るよ」

 

「いえ、鋼夜さんが謝ることはありませんわ。私の発言であなた方を不快な思いにさせてしまったのは事実です。ですから……」

 

何気に俺を名前で呼んだよ。

やだ、数時間で何があったのこの子。

 

「頭を上げてくれ。俺は別に気にしてないから。でも、謝るなら一夏の方にもな」

 

「一夏さんの方には既にお伺いしましたわ。「俺は気にしてないから、鋼夜の方に行ってやってくれ。あと、これからよろしくな」と」

 

すると、オルコットさんは少し顔を赤らめながらそう答えた。

そうですか、”一夏さん”ですか。

 

……パターン青、フラグです。

ていうかなんなの?俺が努力して、模擬戦二人掛かりで更にお互い活躍して、確率をむちゃくちゃ改変して、そもそもバトルに勝って即惚れるという展開を天文学的な数字でないと実現しないレベルでのフラグをことごとく引き当ててフラグ建築しといて回収しないってなんなの?バカなの?死ぬの?

パワポケランダム彼女候補が攻略出来ない人に喧嘩売ってんの?

 

……確かに、オルコットさんが俺に惚れないかなー、って下心は正直あったよ。あれか、下心あったからダメなのか。俺も男なんだよちくしょう。

 

…………まぁ、流石にピンチを助けられて、しかもそれがイケメンで、女の子の夢のお姫様だっこにイケメンスマイルが追加ならしょうがない……のか?

いや、やっぱり許せないな。

あいつの家に大量のエロ本でも送りつけてやろうか。割とマジで。

あ、ダメだ、千冬さんに焼かれる図しか浮かばない。

 

 

「鋼夜さん?」

 

「……ああ、すまん。ボーッとしてた」

 

内心でやさぐれていると心配した表情のオルコットさんが声を掛けてきた。

 

「そうですか。では改めまして、わたくしの事はセシリアと呼んでください。クラスメイトとしてよろしくお願いしますわ」

 

「俺も鋼夜でいいよ。よろしく、セシリア」

 

そして俺とセシリアは軽く握手を交わした。

 

「あれー、こうやんどうしたの?」

 

すると、ちょうどいいところにペットボトルを抱えたのほほんさんが戻ってきた。

 

「そうだ、今から菓子パひらくんだけどセシリアも参加する?」

 

祝勝会を菓子パに変更。

流石に祝勝会に対戦相手を呼ぶとか当てつけでしか無いし。

 

「おお、セッシーも参加する?する?」

 

のほほんさんはどうやら空気を読んでくれたようだ。助かる。

 

「……ご一緒してもよろしいのですか?というより、セッシーってもしかしなくてもわたくしの事ですの……?」

 

「いいんだよ、クラスメイトじゃないか」

 

「セッシーも参加けってーい!」

 

のほほんさんの強引な押し切りによりセシリアは参加が決定してしまった。

 

最初、セシリアはぎこちなかったが菓子パが終わる頃にはすっかり打ち解けていた。

今度、イギリスの紅茶をご馳走すると言っていた。

 

なんというか、反省したセシリアは普通にいい子だった。

 

一夏関係でジャブを繰り出してみたが手応えはありまくりだった。

反応が分かりやす過ぎた。一緒に居たのほほんさんもニヤニヤしてたし。

 

手遅れみたいだ……もう彼女の恋路の邪魔は出来そうにない。

 

 

箒、すまん……。




鋼夜「それにしてもナノスキンなんてよく作れましたね」
輝「僕の友達にあらゆる金属を複製出来るヤツが」
鋼夜「異文化交流(物理)は辞めろ」
輝「冗談だよ、普通に不眠不休で頑張ったよ」


よく考えなくても主人公ってセシリアを普通に挑発、罵倒してますからね
あれで惚れる方がおかしい
あれで惚れるのはドM


多機能搭載可変性ナノスキン装甲
すごくすごい装甲
難しく考えたら負け

パワポケランダム彼女候補
パワポケ7ブラックの悲劇を忘れてはならない


四天、ボッシュート

原作読み返して分かった事なんですけど、鈴が来る前の時点の一年生だけで代表候補生って四人(うち二人はセシリアと簪)もいるんですね
……あれ?鋼夜の嗜好で行くと名無しの代表候補生二人(低確率で簪)に走る可能性高くね?
でもそれだとオリキャラ×オリキャラになってもはやISじゃなくていいだろ、みたいな事になりますね
と、いうわけでこの作品では現時点での代表候補生はセシリアと簪の二人だけです、鋼夜に救いは無い(ゲス顔)

しかし簪って一巻から専用機持ちとして存在が示唆されてるのに初登場まで専用機のせの字も出来てなかったよね
なんで専用機持ちとしてカウントされてたのか全然わかんないんだけど

キャラ設定とかはそのうち


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日常に戻った第20話

資格取得の勉強とかで忙しかったので遅れました
久しぶりに書くとネタに走りたくなるね
それではどうぞ


「では、一年一組の代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

模擬戦の翌日、朝のSHR。

教卓の前で山田先生が嬉々として喋っている。

その言葉にクラスの女子は大いに盛り上がり、反対に一夏は「なんで?」と言いたげな顔をしている。

 

「山田先生、質問です」

 

「はい、織斑くん」

 

一夏が挙手をし、それに山田先生が応える。

 

「なんでいつの間にか俺がクラス代表になってるんでしょうか?」

 

「それはーー」

 

「それはわたくしが一夏さんを推薦したからですわ」

 

山田先生の言葉を遮り、立ち上がったのはセシリアだった。

 

「まずはじめに、この場を借りて皆さんに先日のご無礼を謝罪しますわ。そしてこれは昨日、鋼夜さんと話した結果ですの」

 

そしてクラス中の視線が俺に集まった。一夏の恨めしそうな視線も感じる。

 

やれやれ、俺に回ってきたか。

 

「模擬戦が終わった後に話す機会があったからセシリアに聞いてみたんだよ。推薦するなら俺と一夏のどっちかを。そしたらセシリアは一夏と答えたから俺が辞退したんだ。俺も元々一夏を推薦する予定だったしな」

 

昨日の菓子パの時に聞いて見たのだ。

それに俺は元からクラス代表になるつもりは無かったしちょうど良かった。

 

「え、でも俺より鋼夜の方が」

 

「一夏、俺の事を思ってくれているんならクラス代表になってくれ。お前は俺の立場を知っているだろ」

 

まだ納得していない様子の一夏に真顔で迫る。

 

仮に俺がクラス代表になるとしよう。

答えは火を見るより明らか。

「なんで千冬様の弟じゃないの!?」といった感じの非難が集中してくるだけだ。

 

ハハハ、四天と一緒に俺もラビアンローズに帰りたかった。

 

俺の様子を見て全てを理解した一夏が申し訳なさそうな顔をする。

ハハハ、だいたいお前のせいだよ。

お前なんかタンスに足の小指をぶつけて死んでしまえ。

 

 

「わ、私は如月くんでもいいかなー、なんて」

 

いつもフォローありがとう隣の相川さん。黒くなってた俺の心が浄化された。結婚しよ。

 

 

「……分かりました、俺が代表やります!」

 

一夏がクラス代表になることを承諾した瞬間、クラスの女子の喧騒が最高潮になった。

 

「いやぁ、如月くんとセシリアはわかってるね!」

 

「織斑くんを推薦したから許して欲しいですってかぁ?許してやるよぉ!」

 

「そうだよねー。せっかく男子が一緒のクラスなんだから持ち上げないと損だよねー」

 

「私たちは貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。一粒で二度美味しいね」

 

しかしクラスメイトを売るのはどうなんだろうか。

それに俺の情報なんて買うやつ居ないだろ。居たら居たで怪しい。絶対ハニトラとかそのあたりだろ。

 

「そこで一夏さん、よろしければわたくしがISの操縦を教えてーー」

 

「あいにくだが、一夏は私が教えている。私が、直接頼まれたからな」

 

セシリアが全部言う前に箒が割り込んだ。

うん、頼んでたね。俺のサポートも入ってたけどね。

 

「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かご用かしら?」

「ら、ランクは関係ない!」

 

セシリアが言っているランクとはISの適性のランクである。

高いほどISとシンクロ……という表現が正しいのかは分からないが、とにかくランクが高い=ISの操縦が上手いらしい。

 

ちなみにCは普通にISを起動できるくらいのレベル。

だからセシリアのAは結構凄い。

 

「ランクかぁ。鋼夜はなんだった?俺たしかBだった」

 

隣の一夏が聞いてきた。

呑気だなお前。あっちは戦争一歩手前なのに。

しかも箒への当てつけに聞こえるぞ、それ。

 

「お前と同じBだ」

 

それだけ言って俺は嫌な予感を察知し速やかに着席した。

 

 

「さっさと座れ馬鹿共」

 

そして教室の扉が現れた我らの担任の織斑先生。

織斑先生は教室へ入ってきた先生に気付かず言い合いを続けていた箒とセシリアと、ついでに一夏の頭に出席簿を振り下ろしていった。

 

セシリアと箒と一夏の脳細胞は犠牲となったのだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、如月。試しに飛んでみせろ」

 

ついに授業でISの操縦を行える日がやってきた。

なんで四天が未だにラビアンローズから帰って来て無いのに俺の名前が呼ばれたか?

授業が始まる前に打鉄をスタンバイさせていた織斑先生のせいさ。

 

 

そして、セシリアがISを即座に展開する。

一夏はまだのようだ。ガントレットを掴んで唸っている。

 

俺は訓練機を使用しているので既に展開済みだ。細かい設定で時間食ってたけど。

 

打鉄は日本の倉持技研が開発した第二世代型ISで、防御に重点をおいたISだ。黒い、鎧武者の様な外見をしており、両肩部に浮いている非固定武装のシールドは再生が早いとかで使いやすい。

安定した性能と換装、OSの切り替えが容易であることから日本の主力ISとなっている。

 

 

最適化(フィッティング)を済ませたISは操縦者のアクセサリーの形状となる待機形態となる。

セシリアは左耳のイヤーカフス。一夏は右腕のガントレット。俺の四天は眼鏡だった。

 

……お、ようやく一夏がISを展開したようだ。

 

「よし、飛べ」

 

それを確認した織斑先生が指示を飛ばす。

まずセシリアが急上昇。それに続く形で俺も発進。遅れて一夏が動き出す。

 

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が二人より上だぞ」

 

通信回線から織斑先生のお叱りの言葉が聞こえた。

一夏よ、量産型に負けるのはさすがにヤバいと思うぞ。

 

「自分の前方に角錐を展開させるイメージってどんなイメージなんだよ……」

 

俺は角錐の代わりにZガンダムでイメージしたぞ。

ジ・Oを目指すイメージも追加すれば更にプラスだ。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

「そう言われてもなぁ……鋼夜はどうなんだ?」

 

「俺?」

 

と、ここで唐突に話題を振られた。

 

いや、スイカバーですけど。

ていうか空飛ぶイメージとか精神が14歳で止まってる俺にとっては朝飯前ですけど。中二病なめんな。

スイカバー理論は通じないだろうしなぁ……。

 

「ロボットとかの姿を自分に重ねてみたらどうだ?ジェット戦闘機とかでもいいけど」

 

俺は無難と思われる答えを出す。

それを聞いた一夏は「なるほどなぁ」と、一応は納得してくれた。

 

「空を飛ぶ理論は説明しても構いませんが、長いですわよ?半重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

 

「わかった、説明はしてくれなくていい」

 

「そう、残念ですわ。ふふっ」

 

セシリアは楽しそうに微笑んだ。

見て分かる通りセシリアは一夏に惚れた。

あの試合以降、何かと理由を付けては一夏のコーチを買って出ている。

当然、それが気に入らない箒とはたびたび衝突している。

 

俺は四天をラビアンローズに預けているので練習には参加していない。

いやあ、ISを預けてて助かった。

さすがに修羅場に放り込まれるのは御免だ。

 

 

 

「…………」

 

隣のセシリアと一夏のやり取りを無視し、俺はずっと下を見ていた。

ここは地上二百メートル。

ISのハイパーセンサーは凄い。この距離からでも山田先生の夢がいっぱい詰まった胸部装甲が見える。

ちなみにISのハイパーセンサーはこれでも制限がかかっている方だ。本来は宇宙空間で何万と離れた星の光で自分の位置を把握するためのものだからだそうだ。

いま隣でセシリアが言ってた。

 

 

……ええ、覗きですけど何か?

 

クラスメイトはみんなIS専用のスーツを着ている。

はい、このIS専用のスーツ。女子のタイプの形状がまんまスク水なのである。つまり目の保養なのである。

どうせお前らハニトラだろ?そういうことしてくるんだろ?なら見てもいいよね減るもんじゃ無いし遅かれ早かれ見せてくるんだから(暴論)

 

……俺、いつからこんなゲスになったんだろう。

 

 

『指定のポイントに着いたみたいですね。では急降下と完全停止をして下さい、目標は地表から十センチです』

 

ゲスと化した自分に軽く絶望していたら通信回線から山田先生の声が響く。

 

 

「了解です。では一夏さん、鋼夜さん、お先に」

 

そう言ってセシリアは先に降下。

おー、さすが代表候補生。急降下も完全停止も難なくクリアしてる。

 

「じゃ、お先に」

 

そして次は俺。

打鉄はあまり乗った事は無いが……なるようにならあね!

 

スラスターを吹かせて降下する。

ぐんぐんと近づいてくる地表。

集中しろ、そしてイメージするのは阿修羅すら凌駕するあの人!

 

スラスターを切り、後は重力に任せて…………ここだっ!

 

「これぞ人呼んでグラハム・スペシャル!」

 

地表から数十メートルのところでくるりと前転。それと同時に脚部のスラスターを全力全開!

凄い圧力やら重力やらGが身体にかかるが根性で耐え切り、姿勢を安定させる。

 

そして俺のISは地表の少し上で完全に停止。

ふぅ、PICと絶対防御が無かったら死んでた。

 

「わざわざ回る必要は無いぞ馬鹿者。クラスメイトの手本としての自覚があるのか。まぁ、完全停止と目標十センチを達成したから今回は見逃してやろう」

 

「はい、すみませんでした」

 

何気に十センチ達成だったのか。

完全にマグレなんだがおかげで命拾いした。

 

 

そしてーー

 

《警告!ISが高速接近中》

 

打鉄のハイパーセンサーから警告アラートが鳴る。

あー、そういえば……。

 

 

ギュンッーーーーズガァンッ!

 

 

「……馬鹿者。誰が地面に突き刺され、と言った」

 

「わ、わりぃ千冬ね」

 

スパァン!

 

「織斑先生だ」

 

「ハイ」

 

一夏が墜落してきた。今の一夏の状態は、白式の両脚が地面に突き刺さっている状態である。

しかし、ただ墜落したアニメと違ってちゃんと完全停止をしようとした節がある。

一夏も成長しているのか。

まぁ、まったく成長してないとこもあるが。叩かれるの何回目だよまったく。

 

「それと、すまないな如月」

 

「いえ、当然の事です」

 

一夏が墜落してくるのを思い出した俺は素早くクラスメイトの前に立ち、両肩部に浮いているシールドを展開してクラスメイトや先生たちを土や石から防いだのだ。

 

「こうやんありがと~」

 

「あ、ありがとう如月くん!」

 

「ありがとぴょーん!」

 

「礼は言わぬ…」

 

……別にお礼を言われたかったからやった訳じゃないんだけど。……でも嬉しい。

 

ふと一夏の方を見れば、セシリアと箒に助け出されていた。

が、二人の間に火花が散り、居心地悪そうにしている。

 

「こっちに来い馬鹿者共」

 

が、我らが織斑先生の手によりそれは終わりを迎えた。

出席簿ってすげぇ。改めてそう思った。

 

 

その後は武器の展開の授業になった。

といっても俺の乗ってる打鉄の初期装備は近接ブレード「葵」とアサルトライフルの「焔備」の二つだけだ。楽勝過ぎる。

 

 

とりあえずセシリアが展開した「スターライトmkⅢ」が俺の頭に直撃してしばらく悶えた事だけは言っておく。

クラスメイトの皆、くれぐれも武装を横に向けて展開しないように。

あ、のほほんさん。頭さすってくれるの?ありがとう。

 

しかしセシリアのブルー・ティアーズって近接武装あったのか……知らなかった。

 

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑はグラウンドを片付けておけよ」

 

そして授業が終わった。

一夏が手伝って欲しそうな顔をしていたが無視した。

インガオホー、ショッギョムッジョ。

……ちょっと違うか。

 




ああ!ネタに!ネタに!
走った結果がこれだよ

主人公のやさぐれ具合が半端ない
まぁ彼も男だし、多少はね?

スイカバー
Zガンダムの先端がそう見えてしまう現象
パプテマス・シロッコと一緒に検索

グラハム・スペシャル
グラハム・エーカーがノリでやってのけたフラッグでの空中変形
フラッグは本来、戦闘中の、しかも空中での変型は考慮していない機体である



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パーティーとセカンド幼馴染襲来の第21話

この辺りは会話ばっかりなのでつまらないよ(言い訳)


「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

 

「おめでとー!」

 

パンパンパーンとクラッカーが乱射され、紙テープが空中を舞う。

 

夕食後の自由時間の寮の食堂では一組メンバーによる「織斑一夏クラス代表就任パーティー」が開催されていた。

各自飲み物やお菓子を手にワイワイ盛り上がっている。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるね」

 

「ほんとほんと」

 

「紅茶が飲みたいネー」

 

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

「なのです」

 

人気者だねー、一夏。ていうかよく見たら別のクラスの人が混じってるな。

 

俺?何故か一夏の右隣に座ってる。

「男同士だし隣に座ろうぜ」と、こいつはよかれと思って言ってくれたんだろうがいい迷惑である。

右隣のセシリアの視線が痛い。

俺だってこんなところに居たくねーよ。

 

一夏の左隣を確保出来た箒は上機嫌でお茶を飲んでいる。

幸せそうでなによりです。

 

 

「はいはーい新聞部でーす。話題の新入生に特別インタビューをしに来ました~!」

 

すると新聞部を名乗る、リボンの色が違う女子が食堂へ入ってきた。

その女子、恐らく先輩は俺たちの姿を確認すると笑顔でこちらに向かってきた。

 

「二年の黛薫子です。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はい名刺」

 

黛先輩から名刺を受け取り、名前を確認する。

すごい複雑な名前だ。時々、黛と薫を逆に書いてしまうに違いない。

 

 

「ではまずは織斑くんから!クラス代表になった感想をどうぞ!」

 

黛先輩がボイスレコーダーを一夏に向ける。

 

「えーと、まぁ、頑張ります」

 

「えー、もっといいコメントちょうだいよー」

 

「自分、不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!」

 

コッペパン食べたくなってきた。

特につぶあんマーガリン。

 

「じゃあ適当に捏造するとして、二人目の男性操縦者の如月鋼夜くん!何か一言お願いします!」

 

と、今度は俺の方へ。

 

「皆さん、何かをお買い求めの際は是非ラビアンローズへ」

 

「宣伝かよ!」

 

黛先輩のツッコミが炸裂した。

 

「えー、ダメですか?」

 

「別にダメじゃないけどさぁ。確かキミ企業所属だっけ?よし気に入った、新聞の最後に載せてやる」

 

「ありがとうございます」

 

何かをメモ帳に書き込むと黛先輩はセシリアに向かってインタビューしていたがすぐに切り上げた。切り上げるならなぜセシリアにインタビューしたし。

 

「写真欲しいからさー、専用機持ちの三人で並んでくれない?」

 

「わかりましたわ!」

 

カメラを構えた先輩がそう言うやいなや、セシリアは素早い動作で一夏の隣を確保した。

俺はセシリアの邪魔にならないよう、一夏が中心となるように移動した。

 

「あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」

 

「そりゃもちろん」

 

「でしたら今すぐ着替えを」

 

「時間かかるからダメー」

 

そして先輩に急かされて並ぶ。

一夏の右がセシリア。左が俺。一夏が中心。

 

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」

 

「74.375」

 

「お、正解」

 

感心する声と共にパシャリ。とデジカメのシャッターが切られた。

とっさに答えたが、なんでこんな捻くれた問題を出したのか。

 

いや……それよりも。

 

「なんで全員入っているんだ?」

 

「あ、あなたたちねえっ!」

 

一夏の疑問とセシリアの怒ったような声が聞こえた。

そして案の定、俺たちの周りには一組の全員が撮影の瞬間に集結していた。

 

「セシリアだけずるいよ」

 

「クラスの思い出になっていいじゃん」

 

「ねー」

 

みんなセシリアを丸め込もうとしており、セシリアはそれに対して何も言い返せず黙る。

一夏は頭にずっと疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

写真撮影が終わり、黛先輩は帰っていった。

そして解散……て事にはならず、まだまだ騒ぎ足りない女子達に俺も一夏も絡まれる事となる。

 

 

 

「鋼夜くんって、ラビアンローズに勤めてるの?」

 

一夏達のテーブルを離れ、何故か付いてきたトリオ(夜竹、谷本、のほほん)とお菓子を食べていたら他の子から話しかけられた。

 

「鏡さん、だっけ。確かに俺は一応ラビアンローズの社員だけど、どうかした?」

 

話しかけてきたのは鏡ナギさん。

一夏の後ろの席の子だった。

 

「あ、かがみんだ~」

 

「のほほんさん、そのあだ名は色々ヤバいよ」

 

のほほんさんに軽くツッコミを入れた所で鏡さんがテーブルに入ってきた。

 

「大した事じゃないんだけどね、私のお姉ちゃんもラビアンローズに勤めてるから知り合いかなぁ、って」

 

ふむ、ラビアンローズに鏡なんて人居ただろうか。

……あ、確か居たな。

 

「ひょっとしてルナさんの事?受付の鏡ルナさん」

 

「あ、うん、そうそう。合ってるよ」

 

俺の答えに頷く鏡さん。

 

「へぇ、あの人に姉妹居たのか」

 

鏡ルナさん。ラビアンローズの受付嬢。

事務仕事を天職と呼んでいる人で、社内ではちょっとした有名人だ。

事務仕事を天職と呼ぶなんていったい何があったんだろうなー(棒)

 

 

そこから話は兄弟、姉妹の事になり、その話題でみんな盛り上がった。

 

 

「兄弟かぁ、俺一人っ子なんだよなぁ」

 

「私にはお姉ちゃんが居るよ~」

 

お菓子を片手に嬉しそうに喋るのほほんさん。食べるか喋るかのどっちかにしなさい。

 

「のほほんさんのお姉さんか……」

 

この癒しを上回る癒しの持ち主なのだろうか。会ってみたいな。

 

「三年生で~生徒会の会計なんだよ~」

 

意外!それは同じ学校の生徒!すぐに会えるよ、やったね。

 

しかし生徒会か……この学校にもあったんだな、生徒会。

 

「私も~生徒会の役員なのだ~」

 

「なにそれ初耳」

 

谷本さん達も初耳らしく、驚いている。

 

「本音が生徒会って……」

 

「生徒会といえば、会長に直接スカウトされないと入れない謎の秘密組織……」

 

「なにそれ怖い」

 

生徒会なのか悪の組織なのかどっちなんだろう。

 

「でも~私が行くと、むしろ仕事が増えるから、ってお姉ちゃんに言われてから行って無いけどね~」

 

のほほんさんって実は凄いんじゃね?という空気が四人の中で流れたが、やはりのほほんさんはのほほんさんだった。

 

 

「よし、せっかくだしトランプでもしようか!」

 

「そうだね、やろやろ」

 

トランプを手にした谷本がそう提案。

俺たちは快く承諾した。

 

「勝った人は如月くんとポッキーゲーム!」

 

「罰ゲームの間違いだろ、それ」

 

「わ、私も参加していいかな!?」

 

「かわむーも参加?よーし、負けないよ~」

 

と、相川さんがいきなり飛び入りで参加して来た。なんでさ。

 

 

「さあ、はじめようか……闇のゲームを!」

 

「ただの大富豪だろ」

 

テンションが最高潮に達しているらしい谷本にツッコミを入れつつ、俺のファーストキスを賭けたトランプが始まった。

 

 

 

このあと滅茶苦茶トランプした。

 

 

結果は全部俺の一着。

いや、正直ポッキーゲームとかヤバいだろ、ブログとか炎上するわ。

そういうのやってないけど。

 

織斑一夏クラス代表就任パーティは夜中の10時まで続いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おはよう如月くん。ねえねえ、転校生の噂聞いた?」

 

翌朝、何時ものトレーニングをこなし食堂で朝食を摂り途中でのほほんさんを拾って教室に入ると夜竹さんから話しかけられた。

今はどこもかしこもその噂で持ちきりらしい。

 

「いや……知らん」

 

「今日に隣の二組に転校が来るらしいんだけど、噂によるとその人が中国の代表候補生らしいの」

 

「へぇー、そりゃ珍しい」

 

ごめんなさい、知ってます。

もう、色々と。

 

適当に相槌を打っていると一夏が教室へやって来た。

一夏が席へ着くとクラスメイト達が一夏の席へ集まり出した。

やっぱり転校生の話をするらしい。

 

「こうやん興味無さげだね~」

 

荷物を自分の席へ置いてきたのほほんさんがやって来た。

 

「まあな。このクラスならまだしも隣のクラスだし、関係ありそうなのはクラス代表の一夏くらいだろ」

 

そう答え、俺はISの教科書を開く。

 

「如月くん勉強?真面目だねー。そういえばいつも朝に走ってるよね」

 

そんな俺の様子を見た夜竹さんが思い出したように聞いてきた。

 

「ああ、俺はまだまだ弱いからな。模擬戦でセシリアに勝ったのだって、あれは機体の性能に頼ってた。もっと努力して、俺自身が強くならないといけないんだ」

 

あの模擬戦。

正直、四天の高い性能があったから俺は勝てたような物だ。

何回か学園の訓練機であるラファールや打鉄に乗ってセシリアと手合わせしてもらったが、セシリアは強かった。

五回やって一勝できたら最高。勝てない時の方がほとんどだ。

さすが代表候補生だ。

 

ある意味、四天をラビアンローズに預けたのはいい選択だったかもしれない。

自分の実力も分かったし、目標も出来た。

 

「ふーん、そうなんだ。手伝える事があったら手伝うから、頑張ってね」

 

そう言って夜竹さんは自分の席へ帰っていった。

 

「こうやんの機体っていつ帰ってくるの?」

 

「五月の始めのゴールデンウイークくらいだって聞いた」

 

「クラス対抗のちょっと前だね~」

 

「そうなるね」

 

 

「ーーその情報、古いよ!」

 

のほほんさんとそんな事を話していると教室の入り口から聞き覚えのある声がした。

 

脇の出た改造制服を着た、ツインテールのちっちゃい女子生徒が腕を組んで不敵な笑みを浮かべて立っていた。

……ついに来たか。

 

「二組も専用機持ちが代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

「鈴……?お前、鈴か?」

 

と、ツインテール女子に反応する一夏。

あ、後ろのセシリアと箒の目が光った。

 

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音(ファン・リンイン)。今日は宣戦布告に来たってワケ」

 

「なに格好付けてるんだ?すげえ似合わないぞ」

 

「んなっ……!?なんてこというのよ、アンタは!」

 

一夏がからかうと気取った喋り方から一転して男勝りな喋り方になった。

こっちが素なんだろう。

 

…………ん、そろそろ言わなきゃマズイな。

 

「ヘイ転校生。そろそろ教室帰った方がいいぞ」

 

「何よアンタ!?アタシはいま一夏と「ここの担任は織斑先生だ」またあとで来るからね!逃げないでよ一夏!」

 

担任の名前を出した途端、転校生は一夏にそう言い残すと回れ右をして物凄いスピードで二組へ帰っていった。

織斑先生ってすげえ。

 

そして俺の忠告を聞いたクラスメイト達も各々の席へ戻っていった。

 

「……一夏、今のは誰だ?」

 

「い、一夏さん!?今の方とはどういう関係で!?」

 

訂正。セシリアと箒の恋する乙女二人は一夏に迫っていた。

 

そして案の定、この二人は教室へやって来た織斑先生の出席簿の餌食となった。

 

 

授業が始まったが、その後もセシリアと箒は織斑先生の出席簿の世話になり続けていた。

 




鈴は邪魔できないから、駆け足で時が進みます
主人公が介入するとこ無いし(言い訳)

またまた名前だけのオリキャラ
まぁ、元ネタ同じだから分かりますよね
鏡ナギは普通に原作に居ます、一夏の後ろの席の子です、確か


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痴話喧嘩の第22話

更新がおせーよ八雲!
そして相変わらず会話しかないよ!


最近、決闘者に復帰しました
どれもこれも全部マドルチェってカードのせいなんだ
自分が遊戯王やってた時は開闢終焉が出て強すぎって時でした
かーなーりー昔ですね、十年くらい前?


昼休み。

セシリアと箒に絡まれている一夏を放置し、彼らを追う形で学食へ向かう。

 

 

「転校生と織斑くんの関係とはなんなのか?その謎が今明かされる……!」

 

「ノリノリだな、谷本隊員」

 

「そういうこうやんもノリノリだね~」

 

「こうでもないと、やってけない」

 

その際に目的が同じである谷本とのほほんさんを仲間に加えて移動する。

 

 

券売機の前には話題の転校生である凰鈴音がラーメンの乗ったお盆を持ってスタンバイしていた。

 

券売機前で一悶着あったが、一夏達ご一行がテーブルについたのを見て俺たちも通路を挟んだ隣のテーブルに座る。

 

ちなみに俺は焼肉定食。

谷本さんはレディースランチ。

のほほんさんは日替わり定食のようだ。

 

 

各自が頼んだ昼食を食べながら、隣のテーブルの会話に意識を向ける。

 

 

「へぇー、幼馴染なんだあの子」

 

「小学校高学年で出来た友達って幼馴染なのか?」

 

「言っちゃだめだよー、そういうのは」

 

アニメ見た時から思ってた。

幼馴染の範囲って普通は小学校までの、保育園とか幼稚園からの期間。もしくは小学校低学年からの付き合いだと思うんだが。

 

一夏の理論が通るなら俺は幼馴染が軽く五十人を超えるぞ。

 

 

そしてセシリアや箒が自己紹介をするのだが。

 

「なーんか険悪だねー。織斑くんってやっぱりライバル多いんだ」

 

あっちの席に行かなくて良かった。

やはりイベントは避けるに限る。

 

 

「あ、ちょっと待ってくれ。おーい鋼夜」

 

と、思ってた結果がこれだよ。

リビングデッドの呼び声なんて使ってんじゃねえよ、俺を墓地(隣の安全地帯)に居させろよ、バトルフィールド(隣の修羅場)に呼ぶんじゃねえよ。

しかし俺に奴の罠を対処する方法は無い。リアル世界には賄賂も神警も神宣も無いのだ。

 

呼ばれるがまま、隣の奴のテーブルへ移動。

席を立つ際に谷本さんが笑顔でサムズアップしてきた。なんでさ。

 

 

 

「鋼夜にも紹介しとくぜ。こいつ俺のセカンド幼馴染で鈴って言うんだ」

 

「どうも。二人目の操縦者の如月鋼夜です、よろしく」

 

意識を切り替え営業スマイルを浮かべてにこやかに挨拶。

 

「中国の代表候補生の凰鈴音よ、よろしく。鈴でいいわ。その代わりあたしも鋼夜って呼ばせて貰うから」

 

「よろしく」

 

「ん、こっちこそ」

 

なんというか男らしいというか、明るくてさっぱりした印象を受ける。

 

そして鈴は俺を一瞥したあと、一夏へ向き直る。

 

「話は変わるけど、一夏ってクラス代表なんでしょ?良かったらあたしがISの操縦を見てあげてもいいけど?」

 

あ、修羅場の気配だ。離脱しよう。

 

「じゃ、俺、飯食うから」

 

適当に理由を付けて撤退。

案の定、俺が離脱した瞬間にテーブルを叩く音が聞こえてきた。

 

 

「ただいま」

 

「おっかえりー」

 

「おかえりなさ~い」

 

修羅場から帰還した俺を谷本さんとのほほんさんの二人が出迎える。

 

「どうだった?」

 

「すごく……居心地が悪かったです」

 

「おつかれさま」

 

のほほんさんに癒されながら俺は残った昼食の焼肉定食を食べ始める。

 

隣では一夏に操縦がどうたらこうたらで騒いでいる。

操縦か……。

 

 

「俺も本格的に練習しないとなぁ」

 

「織斑くんたちと一緒にすればいいんじゃない?」

 

俺の呟きに谷本さんが反応した。

 

「……あれに混ざれると思うか?」

 

俺が指をさしたのは隣の席。

そこにはラーメンを食べ終えて去ってゆく鈴を憎々しげに見つめているセシリアと箒の姿があった。

 

「ごめん」

 

それを見て谷本さんは素直に謝ってきた。

 

別にいい、と答えて俺は焼肉定食を完食するのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こうやんに~朗報がありま~す」

 

今日の授業が全て終わり、放課後になった。

教室で放課後の予定を考えているとのほほんさんから声を掛けられた。

 

「なに?なんかあったっけ?」

 

「お昼にこうやんが言ってたよね~『本格的にISの操縦をしたい』って。なんと私には~心当たりがありま~す」

 

「なんと!?」

 

驚いたのでついグラハムで反応してしまった。

が、ちょっと待て、いまのほほんさんはなんと言った?

 

「せっしーがおりむーに教えてるみたいに~こうやんも誰かに教えてほしいんだよね~?」

 

「はい、それはもう」

 

今度はハイネ。

のほほん先生、ISを教えてくれる教官が欲しいです。

 

「それだったら~私にいい考えがあるよ~」

 

「教えて下さい布仏司令!」

 

「んっふっふ~。それなら購買でお菓子を買ってくれたら教えてあげる~」

 

「オーケー、購買ごと買い取ってやろう」

 

これでも超一流企業の社員なんでね、お金ならたくさんあるよ!

俺が居る会社って事で最近ますます売れてるらしいからねラビアンローズ。印税って凄いよ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここがあの女のハウスね……」

 

のほほんさんの情報を頼りにやって来たのはハウスとは程遠いIS学園のIS整備室。

各アリーナに隣接する形で存在しており、俺は現在その一つにいる。

 

 

ーー回想ーー

 

「私の幼馴染のかんちゃんなら~たぶんこうやんに教えてくれるんじゃないかな~?」

 

購買でお菓子を買ってあげたらのほほんさんは上機嫌で教えてくれた。

 

搶槓(チャンカン)?」

 

なにその槍が降ってきそうな名前。

 

「違うよ~かんちゃんだよ~」

 

嵌張(カンチャン)?」

 

手牌に入ったら嬉しそうな名前だなぁ。

 

「今度は発音が違うよ~」

 

 

麻雀知ってるの?うん。じゃあ今度やろうよ。いいよ~。あ、もちろんノーレートで。お菓子~お菓子を所望する~。

 

 

 

「かんちゃんは~整備室に居ると思うよ~」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして~」

 

 

ーー回想終了ーー

 

 

 

最近独り言が多くなったと感じる。

元々、独り言をする方だが最近増えた。こうでもしないと精神状態を保てないくらい追い詰められているのだろうか。

 

まあいい、中に入ろう。

 

入り口の自動ドアが開き、中の様子が露わになる。

あらゆる場所にIS関連の物と思われる機械が設置されており、いかにも『整備室』という感じが現れている。

 

その中に彼女は居た。

ISと思われるもののそばでメカニカル・キーボードを打ちながら空中投影型のディスプレイを凝視している人物。

セミロングの水色の髪に赤みがかった瞳で眼鏡の……ん?なんか見覚えが……。

 

「あ、食堂で隣だった人か」

 

そうだそうだ食堂のカウンター席で隣だった人か。ビビりながら行った初日と二日目だから覚えてる。そういえば最近見てなかった。

 

向こうがこちらに気付いたらしく、ディスプレイから目を離すと軽く会釈をした。

 

こちらも会釈を帰し、彼女の方へ向かう。

 

「初めまして、如月鋼夜です。更識 簪(さらしき かんざし)さんで合ってる?」

 

「……そうだけど。何か、用?」

 

話し掛けるとディスプレイの操作を止めてこちらを向く。

大人しそうな子だ。

 

「更識さんにISの指南役をお願いしたいんだ」

 

俺がそう告げると、更識さんは驚いたのか、細めていた目を見開く。

 

「……私に?」

 

「いきなりで申し訳ない。更識さんって日本の代表候補生なんだよね?俺もISの操縦者だからさ、強くなりたいんだ。だから強い人から教えを請いたい」

 

「……」

 

「別に今すぐ教えてくれ、って訳じゃない。今はクラス対抗戦の時期だから、それが終わってからでいい」

 

「……代表候補生なら、貴方のクラスにも居たと思うんだけど」

 

セシリアの事か。それはもっともな質問だ。

 

「セシリアはうちのクラスの代表の一夏に付きっ切りだ。ちなみに二組の転校生も」

 

「…………貴方も、苦労してるんだね」

 

「ははは……」

 

何故だろう、更識さんから妙な親近感を感じる。

貴方「も」って事は、更識さんも一夏関連で何かあったのだろうか?

まぁ、後でのほほんさんに聞いてみよう。

 

 

「……ISの指南の事だけど」

 

「アッハイ」

 

「……ごめんね」

 

「…………えっ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「断られました」

 

「……ざーんねーん」

 

夕方の寮。早めに自室へ戻るとテレビを見ながら俺が買ったお菓子を食べているのほほんさんが居たので結果を報告した。

報告した時に一瞬、本当に一瞬だがのほほんさんが何かを思う表情をしていた。次の瞬間には何時もの天真爛漫な笑顔に戻っていたが。

 

「なんでも『早くこの子を、打鉄弐式を完成させないと』って言ってた。のほほんさん何か知ってる?」

 

「んーとね……」

 

俺が聞くとのほほんさんは教えてくれた。

何故、必死になってISを組み立てているのか。何故、一夏をよく思っていないのかを。

 

 

 

 

 

「……無責任過ぎるだろ、倉持技研」

 

のほほんさんから話を聞いての俺の第一声である。

 

のほほんさんが話した内容を完結に纏めると

倉持技研が打鉄弐式の製作を決定しパイロットを簪に指名→一夏発見→弐式作ってる場合じゃねぇ!と、倉持技研は弐式の開発30%くらいのところで一夏の白式の製作に移行→コアとパーツだけの状態で放置

という内容だ。

 

しかも間が悪い事に

 

姉さんがISを一人で製作した→私だってやれば出来るんだ!姉さんには負けない!→私一人で作ってやる!→作業なう

 

という、私的な事情が挟まった事で更識さんはISの製作に躍起になっているのだという。

 

「更識さんってお姉さん居たんだ」

 

「この学校の二年生で生徒会長だよ~」

 

へぇー、どれどれ。と、俺は自前のノートパソコンを使って検索をする。

 

更識 楯無(さらしき たてなし)……この人か」

 

パソコンの画面には扇子を構えた軽い外ハネで短めの水色の髪で更識さんと同じ赤みがかかった瞳の女性が映っていた。

 

…………あー、なんか見た事あるわ、薄い本で。

アニメしか見てなかったから「誰こいつ?」ってなったキャラだわ。忘れてた。

 

 

IS学園二年生。生徒会長。所属国家はロシアで国家代表。専用機は『ミステリアス・レイディ』

 

名前からして思いっきり日本人なのになぜ所属がロシアなんだ。

しかも機体名がバリバリ英語なんだが。

おい、ロシア語使えよ。

 

 

…………ん?国家代表?

国家代表候補生ではなく国家代表……?

 

「いや、まさかまさか」

 

俺はパソコンを操り各国の代表が載っているページを開く。

 

「アメリカ代表イーリス・コーリング。フランス代表カミーラ・アルメイダ。イギリス代表アリリア・ワールバーク。ロシア代表更識楯無……うわ、マジだ」

 

開いたページには更識姉の名前と顔画像が載っていた。

俺の一個上で国家代表とか凄い人だな。

 

「そのうち会いに来るかもね~」

 

「年上かぁ……苦手だなぁ」

 

なんというか、この人からは面倒なオーラを感じる。会った事ないしアニメに居なかったけど、生徒会長って事は主要キャラだろ?……たぶん強烈なキャラしてるんだろうなぁ。

 

 

 

 

「のほほんさん、ちょっと売店行って来る」

 

数分後、部屋の冷蔵庫から飲み物が消失していたのを発見したため寮の中にある売店へ向かった。

 

「ん……?」

 

のだが、部屋を出た時に一夏の部屋からとある人物が出てきたのを目撃してしまった。

 

「鈴……さん?どうしたの?」

 

その人物とは隣のクラスの転校生で一夏のセカンド幼馴染の凰鈴音だった。

俯いて歩く姿を見てつい声をかけてしまった。

 

そういえばそんなイベントあったなー、というのを思い出したが仮にも知り合いが目の前で落ち込んでいるのだ。これはスルー出来ない。

 

「あ、あら、二人目の……鋼夜だっけ、鋼夜。……なんでもないわよ」

 

顔を上げてこちらを確認する鈴。

笑って誤魔化そうとしているが、その目尻には涙が浮かんでいる。

 

「おおかた一夏が何かやらかしたんだろう?うちの部屋くるか?今ならお菓子あるし愚痴くらい聞くよ」

 

多分のほほんさんが。多分。

 

「お菓子で喜ぶなんて子供じゃないわよ!……でもまあ、せっかくだしお邪魔するわね」

 

今の発言はのほほんさんを敵に回したな。

 

「飲み物買ってくるから先に部屋に入っていてくれ」

 

鈴の事をのほほんさんに任せ、自分は本来の目的である売店へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それでね!一夏の奴、なんて言ったと思う!?『飯をおごってくれるんだろ?』って言ったのよあいつ!約束なんて全然覚えていないじゃない!」

 

「苦労してるんだな」

 

「よしよ~し」

 

鈴を部屋に招き入れたのはいいが、さっきからずっとこの調子である。

確かに愚痴を聞くとは言ったが、これほどまでとは……。

 

 

「でもまぁ、あいつは一応『鈴が作った酢豚を食べさせてくれる』って部分は覚えてるね。意味を考えずにそのまま捉えてるけど」

 

「っ!?……それは、そうだけどさ……」

 

「……短い期間の付き合いだが、あいつがデリカシーに欠けているのは俺でも分かった。中学からの付き合いなら、一夏がああいう奴なのは理解してるよな?」

 

俺がそう言うと鈴は黙った。

 

「……でも、期待したっていいじゃない。そのために頑張ってきたの……代表候補生になって、学園に来たのも……」

 

鈴は絞り出すように言葉を発する。

初対面の時に見せた勝気な笑みは無く、ただただ辛く涙を堪えている。

ヤバい、マジで泣く五秒前だ。

女の子泣かすとか有罪確定だな。

これは一発くらいは殴られても文句言えない。

 

「よーしよーし。お菓子食べる~?美味しいよ~?」

 

「……一応もらっとくわ」

 

鈴を励まそうとのほほんさんは購買で売っていた限定品のお菓子を勧めていた。

 

「よし、ここで俺が一つ面白い話をしてやろう!」

 

パンパンと手を叩き、この雰囲気を払拭するためテンション高めの声でそう言う。

 

「ある所に一人の少年が居ました」

 

鈴が「いや、別にいいけど」と言っていたが構わず続ける。

 

「少年は小学を卒業し、中学生へとなりました。少年には、保育園の頃に将来を誓い合いキスまでした女の子が居ました。しかし二人は住んでいる地区が違ったため、小学校は別々でした。中学でようやく再会し、その子に話し掛けた少年。そして話し掛けられた彼女は言いました『誰?』と。少年は……」

 

「分かった分かった、分かったわ!謝るから泣くの辞めなさい!」

 

「おいおい、何謝ってんだ?笑うところだぞ。面白い話なんだからな。あは、あははははははははは」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ごめん」

 

前世の経験を語っていたらいつの間にか涙腺トランザムバーストしていた俺をのほほん博士が慰めてくれたお陰で平常心を取り戻した俺は鈴に謝った。

 

「いいわよ、あたしはまだマシだって分かったし。……うん、一夏は約束を覚えててくれたし」

 

「ああ。どうでもいい奴の約束なんか覚えないさ」

 

俺がそうフォローすると鈴は顔を上げる。

その顔にはいつもの勝気な笑みが戻ってきていた。

 

 

「そうよね!まだ終わった訳じゃないもの。ありがとね、鋼夜に本音」

 

「ふぁいとだよ~りんりん」

 

「あたしはパンダか!」

 

ツッコミを入れれるくらい元気になっていた。良かった。

 

「まぁ、まずは一夏と仲直りしろよ」

 

「分かってるわよ!……それじゃ、そろそろ帰るわ。今日はありがと、お陰で楽になったわ。鋼夜、お礼にISの訓練くらいなら付き合ってあげるわよ」

 

座っていた椅子から立ち上がり、扉に手をかける前に振り向いて鈴は言った。

 

「ありがとう、一夏のついでに頼むよ」

 

「ふふっ、アンタ分かってるじゃない。じゃ、おやすみ」

 

「おやすみ~」

 

俺の返事に笑顔を浮かべた鈴は自分の部屋へ帰っていった。

 

 

 

……さて、シャワー浴びて寝ますか。




主人公の知識はアニメと薄い本(二回目)

簪ルートかと思った?残念、フラグが立ってませんでした!
フラグが建たない限り簪は弍式開発に集中すると思う

そして鋼夜が生徒会の存在を知りました
会長?書類に追われてるんじゃない?(適当)

最後の鋼夜の面白い話は実話です
はい、私の


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クラス対抗戦の第23話

感想欄が凄い事になってて驚きました、八雲です
皆さん、励ましの言葉をありがとうございます
某オレンジ髪みたいに割り切ったので問題はありません

では、どうぞ


 

「なんで居るのお前」

 

「う、うるさいわね!別にいいじゃない!」

 

翌日。クラス対抗戦の日程表が張り出され、一回戦で一夏と鈴が当たると分かった日の放課後。

 

一夏達が使っているアリーナとは別のアリーナで今日はラファールに乗っているとISを纏った鈴と遭遇したのだ。

 

視界内にISの情報が表示される。

 

 

中国の第三世代型IS『甲龍(シェンロン)

 

紫と黒のカラーリングで装甲が刺々しく、両肩部のアンロックユニットにもスパイクが付けられている、かなり特徴的な機体だ。

 

 

 

「まぁいいや。で、一夏とはどうだ?ちょうど一回戦で当たるらしいし、話すきっかけは出来ただろ?」

 

「あたしだってそうしようと思ったわよ。でもね、あいつ全ッ然反省してないのよ!謝ろうとしてるのは分かるけど、なんで謝らなきゃいけないのか分かってないのよ!態度の変化もナシなのよ!」

 

俺がそう聞くと鈴は不機嫌そうに顔を歪め、固く拳を握りしめながら声を荒げた。

 

「……まぁ、確かにな。一夏が昨日の事を俺にも少し話して来たが『とりあえず謝っとこう』って感じだったな」

 

昨日、一夏の部屋から出てきた鈴は泣いていた。

一夏も鈴が泣いたのはわかったんじゃないのか?

確かに、約束についての件はなんとも言えないが相手は涙を流したのである。女の子が泣いたのである。

それであの対応は……さすがにどうかと思う。

一夏、有罪、ギルティ、死すべし。

 

「ま、あいつの事は今はいいわ。反省するまで無視してやるから」

 

「つまらん意地は張らない方がいいぞ。一夏の性格的に考えてずっと無視する羽目になりそうだ」

 

多分あいつは一生気付かないだろうから。

 

「分かってるわよ。でも、こうでもしないと気が収まらないのよ!」

 

鈴はISの青龍刀のような武器を展開するとそれをブンブン振り回し始めた。

相当頭にきてるらしい。

 

「そうだ、ちょうどいいわ。鋼夜、あんたの練習に付き合ってあげる」

 

しばらく武器を振り回していた鈴は思い出したように俺に提案してきた。

 

「辞めてくれよ、サンドバックにする気か?」

 

「失礼ね。昨日の恩があるあんたにそんなことしないわよ。ISの操縦を見てあげるって言ってるの。あたしだって代表候補生なんだから」

 

ふむ。これは嬉しいな。

鈴は中国の代表候補生だ。ISの操縦については俺より詳しいだろう。

これで最低でもクラス対抗戦までは彼女に操縦を見てもらえるだろう。

 

「じゃ、よろしく頼むよ」

 

俺は彼女の申し出を受けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……ないわー、マジないわー」

 

アリーナの使用時間ギリギリまで練習した俺は更衣室のシャワーを浴び、長椅子に寝そべっていた。

 

鈴にISの操縦についての指導をしてもらったのだが……。

 

「分からない?感覚よ感覚!」

 

「そこは気分よ」

 

「考えないで感じるのよ」

 

こんな感じだった。

教えるのが下手とか根性論ってレベルじゃねーぞ。ニュータイプもびっくりの感覚理論だよ。

 

 

さりげなく指摘する俺の態度が効いたのか、最後らへんは模擬戦オンリーになったし。

指導受けるより模擬戦した方が良いってどういうことなの。

まぁ、俺は元々実戦経験というか実際に動かす方法が向いているんだろう。

 

代表候補生になるだけあって、鈴は強かった。

なんだよあの見えない砲撃。

本物を初めて見て体験してみたが本当ヤバいぞあれ。

何発かは気合いで避けれたみたいだが怖い。だって気付いたら後ろの壁にドカンって衝撃走ってるんだもん。

 

「まあ、模擬戦が出来るだけでもありがたい」

 

箒とセシリアは一夏に付きっ切りだし。

 

箒。鈴は抑えておくからセシリアをなんとかしてポイント稼いどけよ。

時間は待ってくれないからな。

 

次に転校して来るのは相当に強烈な奴等だから……。

 

そして俺は戸締まりをして更衣室を出た。

鈴は明日も付き合ってくれるって言ってたな。よし、明日は打鉄に乗るか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なんであいつは何もしてこないのよ!」

 

クラス対抗戦まであと一週間となったある日の放課後。

鈴と共にアリーナへ向かっていると、唐突に鈴が叫んだ。

 

「何週間も経つのになんで謝りに来ないのよあいつ!本当なんなのよ!」

 

鈴はこう言っているが実際には一夏は謝ろうとしている。なんで自分が悪いのかは未だに分かってないが。

「約束は覚えてたんだけどなぁ」と奴は言っているがさすがに約束の意味を俺から言う訳にもいかない。

 

だがまぁ、鈴もただ謝られるだけなのは納得いかないのでずっと意地を張って無視を続けていたが。

 

 

そして今回で我慢の限界が来たようだ。

 

「私の気持ちも知らないで他の女子とイチャイチャして……ああもう思い出しただけで腹が立ってきたわ!」

 

しかも間の悪い事にセシリアと箒が一夏に付きっ切りなせいで鈴の怒りはますますヒートアップしていく。

女の子って怖い。

 

 

「こうなったらあたしから直接言ってやるわよ!ついてきなさい鋼夜!」

 

「え、やだ」

 

俺は即答する。

自分から修羅場に飛び込む訳ないだろ。

 

「……分かったわ。じゃあ先に第四アリーナに行ってて」

 

鈴は俺の即答に目をぱちくりさせるといったん深呼吸をし、落ち着いた声でそう返すと一夏達が使っている第三アリーナの方へ駆けていった。

 

 

 

 

その後、怒りのオーラを纏った本気の鈴と戦う羽目になった。

 

一夏、お前は百回死ね。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時は流れに流れてついにクラス対抗戦当日になった。

俺はラビアンローズから戻って来た四天の待機状態である眼鏡を掛けてアリーナの観客席に座っている。

 

織斑先生に管制室に来いと誘われていたが俺はそれを断ってこっちに来た。

 

実はこの眼鏡、ISのハイパーセンサーをそのまま流用しているのでなにげに高性能で色々できる。まぁ、少し機能に制限があるが充分だ。

 

ラビアンローズってすげー。

 

 

「織斑くん頑張ってー!」

 

「フリーパスを私たちにー!」

 

 

俺は一組の子達と集まって観戦している。

 

ちなみにこのクラス対抗戦で優勝すると優勝クラスに食堂のデザートが半年は無料になるフリーパスが与えられる。

スイーツに目がない年頃の女の子にとっては狂喜乱舞ものである。

 

 

「こうやんはどっちが勝つと思う?」

 

右隣ののほほんさんが訪ねてくる。

 

「普通に考えたら鈴だな」

 

もし一夏が鈴に勝っても次で当たるであろう四組代表の簪さんには勝てないだろうし。

 

「ちなみに賭けの倍率は二組が圧倒的に高いよ」

 

ここ数日間の放課後での訓練の日々を思い出してそう答えれば後ろの谷本さんが会話に入ってきた。

ていうかクラスメイトを売るな、賭けるな。

 

「如月くん、放課後はいつも二組の子と練習してたよね」

 

左隣の相川さんも会話に乱入。

 

「ああ。セシリアが一夏に付きっ切りだからな、鈴に模擬戦と指導をお願いしてたんだ。言っとくけど情報を売ったりはしてないからね?」

 

「分かってるよ~」

 

「あ、始まるみたいだよ」

 

夜竹さんがそう言うと、観客席から一斉に歓声が上がった。

眼鏡状態の四天がISの存在を感知した。

表示されたのは甲龍の情報。

先に会場へ入ってきたのは鈴だった。

 

会場に設置されている巨大なスクリーン……パブリックビューイングだっけ?にはISを纏い、余裕綽々の笑みを浮かべている鈴の姿が映されていた。

 

 

「あれが相手のISかぁ」

 

「如月くん、あの機体ってなんなの?」

 

数人のクラスメイトに鈴についての質問を受けた。

 

「中国の第三世代ISで名前は『甲龍』。タイプは近接に重点を置いてる。安定性や燃費の問題を解消して高い実用性を得るのを目的としたISだよ」

 

俺が当たり障りの無い範囲で答えると、みんな納得してくれた。

 

 

「さてさて、主役の登場か」

 

四天からの情報を受け取った俺がそう呟くと、また観客席から歓声が上がる。

 

「あ、織斑くんよ!」

 

「きゃー!かっこいい!」

 

「素敵!抱いて!」

 

一夏が専用機、純白のIS『白式』を纏ってアリーナへ入場すると観客席のテンションが最高潮になった。

 

 

「一夏、今謝るなら少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげるわよ」

 

「雀の涙くらいだろ。そんなのいらねえよ。全力で来い」

 

「一応言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」

 

おい、お前らオープンチャネルで何を話してんだ。物騒過ぎるぞ。観客の何人かが引いたぞ。

 

『……両者、試合を開始してください』

 

空気を読んだ審判がそう告げると、ビーッと開始を知らせるブザーが鳴った。

 

ブザーが切れる瞬間に両者は動いた。

 

一夏は刀の形状をした近接武器の『雪片弐型』を、鈴は二振りの青龍刀を連結させた近接武器の『双天牙月』を展開して斬り合いを演じる。

 

が、状況は一夏が不利。

鈴の繰り出す変則的な斬り込みについていくのがやっと、という感じだ。

 

そして不利を悟った一夏が距離を取ろうと後退した時、鈴のアンロックユニットのアーマーがスライドして光った。

瞬間、一夏が吹き飛んだ。

 

「え?え?」

 

「何があったの?」

 

「まるで意味が分からんぞ!」

 

「教えて如月くん!」

 

観客席のみんなも何が起こったのか分からないようで俺に説明を求めてきた。

 

「あれは衝撃砲っていう第三世代型兵器で、空間に圧力をかけて砲身を作って余った衝撃を砲弾として撃ち出す。簡単に言うと見えない砲台だな。そして怖いのはどの角度でも撃てるところだ。真上とか真下や真後ろにだって撃てる。……こんなとこ」

 

俺が説明を終えると拍手が起きた。

照れるじゃないか。

 

「こうやん凄いね~」

 

「経験者は語るのね」

 

「アレの怖さは身をもって体験したからな」

 

でも衝撃砲は意外な方法で攻略出来る。

スモークグレネードを投げればいい。そうすれば煙の乱れで砲弾の距離や速度が分かる。運が良ければ砲身も分かる。

まぁ、ハイパーセンサーのせいでISに対してスモークグレネードはあまり意味が無いのだが。

 

ふと、試合に目を向けると何かを決心した表情の一夏が見えた。

 

「鈴」

 

「なによ?」

 

「本気で行くからな」

 

そして真剣に鈴を見つめる一夏。

最初から本気出せよ、とツッコんではならない。

 

「な、なによ……そんなこと、当たり前じゃない……。とっ、とにかくっ、格の違いってのを見せてあげるわよ!」

 

あー、イケメンさんは何をしても絵になりますねー、はいはい凄い凄い。

俺が同じ事をすれば通報されるのがオチだ。

 

そして一夏の白式が動く。

鈴の甲龍は双天牙月を構え直す。

 

 

瞬間、白式が爆発的に加速し、甲龍に迫った。

 

瞬間加速(イグニッション・ブースト)か」

 

エネルギーをスラスターに溜め込んで解放することで爆発的な加速をする技術、だっけ。

かつて織斑先生が愛用した技だ。

 

一夏の機体は雪片弐型しか武装が無い。

故に、瞬間加速を見切られてしまえば後は衝撃砲で削られてそのまま負けてしまう。

しかしもし零落白夜が決まれば、一夏にはまだチャンスがある。

まさに賭け。

 

「うおおおおっ!」

 

雄叫びと共に一夏の雪片弐型が白い光の刃を形成する。

そして白い光の刃が鈴に迫る瞬間。

 

 

《警告。ISによる射撃攻撃及び所属不明のISの反応あり。》

 

 

四天の警告と、突然アリーナに大きな衝撃が走ったのは同時だった。




鈴って怒りっぽいところが無くて暴力振るわなかったら普通にいい子だよね

……あれ?これヒロイン全員に言える事だね、アハハ



昨日サイバーデッキ相手にフォーチュンで挑んだらオベリスクを出されました
相手のライフが1200だったからライティーに強制脱出でファイリー呼んで効果でサイバードラゴン破壊して勝ったけど凄い申し訳ない気持ちになった


最近TF6を勝ったので更新が遅くなりました、許して下さい!
なにあのデュエルが出来るギャルゲー
ゆきのんとレイン恵が可愛いくてアキがヒロイン(笑)な件

あ^〜遊戯王転生ものが書きたいんじゃ〜
5D's見たこと無いけど(ボソッ

はいスミマセンこっちに集中しますスミマセン
積みは増やしませんスミマセン

それでは


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学園襲撃の第24話

ニューキング更新しようと思ったらホモの方を更新してた(驚愕)


「失礼します」

 

「やあ。久しぶりだね、鋼夜くん」

 

 

五月の始めの連休。

 

ゴールデンウィークの間に四天を受け取るためにラビアンローズを訪れた俺はまず社長室へ来た。

社長室に入ると輝さんが笑顔で迎えてくれた。

 

「お久しぶりです輝さん。どうですか最近は?」

 

「会社の運営は順調だよ。鋼夜くんはどうだい?そろそろ学校には慣れてきたんじゃないかな?」

 

「休日が楽しみになるくらいには慣れました」

 

「ごめんね」

 

「輝さんは悪く無いですよ。それより、束さんは居ないんですか?」

 

謝る流れを断ち切るために話題を変える。

 

「ああ、彼女なら今は居ないよ。……そういえば、もうすぐクラス対抗戦だっけ」

 

「ええ。束さんに何か変化とか怪しい動きは?」

 

「……いや、特に無いよ。確かクラス対抗戦に無人機が乱入してくるんだよね?」

 

輝さんも話の内容を聞いて真剣な表情で答える。

輝さんには一通り俺が知っている範囲の出来事を話している。

 

「ええ。俺の知ってる範囲では差し向けた犯人は分かっていませんが、束さんが関わっているのは間違いないと思います」

 

ISのコアを作れるのは開発者である束さんだけだ。

新規のコアを使用した無人機を作れる人物といえば彼女しか居ないだろう。

 

「ふーむ。彼女が怪しいことしてる気配は無いんだけどねぇ」

 

「まぁ、束さんは俺がアニメで見た時の印象とは結構違いますから」

 

あの人アニメだと最後くらいしか出番無かったけど。

 

 

ここの束さんは輝さんと一緒に宇宙へ行くために色々している。

 

束さんに拉致られた後、つまりラビアンローズで訓練に勤しんでいる時に数回ほど会話したが、あの人は本気で宇宙へ行こうという気持ちに満ち溢れていた。

 

「箒ちゃんやいっくんに宇宙を見せてみたいんだよねー。あ、当然こうくんも一緒にね!」とも言っていた。

 

あれが嘘には見えない。

 

 

 

「ま、何も起こらないのが一番ですね」

 

これ以上考えるのは無駄と判断し、そう締めくくる。

輝さんもこの話題をしたくないのか、軽く頷く。

 

「そうだね。よし、そろそろ四天を受け取りに行こうか。専用の強化パックもあるから仁室くんの説明を聞くといい」

 

「ついに四天からスターク四天に進化するんですね」

 

「その発想は無かった。ま、強化パックは見てのお楽しみだよ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

フラグかよ畜生!

 

俺はラビアンローズでの出来事を思い出しながら内心で悪態をついた。

 

観客席の生徒は何が起こったのか分からず、辺りは静寂に包まれる。

 

何が起こったのか分かっていないのはフィールド内の一夏と鈴も同じであり、穴の空いたアリーナのシールドバリアーとその下で巻き起こっている砂煙を交互に見つめていた。

 

そして砂煙が晴れ、侵入者が姿を現した。

 

「は……?」

 

その姿を見た瞬間、俺は言葉を失った。

ありえない。なんでこいつがここにいるんだ。

 

 

兜をかぶったような頭部に心電図のような黒いカメラアイ。

出っ張った胸部の装甲に翼と尻尾のような腰部と背部のユニット。

そして灰に近い藍色のカラーリングの全身装甲(フルスキン)

その姿を一言で表すなら『怪物』。

 

「ガフラン……」

 

そう、ガンダムAGEに登場した敵のMS『ガフラン』だった。

 

ガフランの姿を確認出来たのは一瞬だけだった。

ガフランが姿を現したと同時に観客席が遮断壁で覆われて辺りが暗くなる。

 

突然の出来事により観客席の生徒はパニックに陥り出口に殺到する。

幸いなことに俺の呟きは喧騒でかき消された。

 

「うわわっ」

 

すると誰かに突き飛ばされたのか、のほほんさんが倒れそうになる。

 

「おっと、大丈夫?」

 

ほぼ反射で動いた俺は咄嗟に倒れそうになったのほほんさんを支える。

 

「う、うん。こうやんありがとう」

 

「どういたしまして」

 

のほほんさんの無事を確認し、眼鏡状態の四天を起動し管制室へ連絡を取る。

 

『こちら観客席の如月です。何があったんですか?』

 

数秒もしないうちに繋がり、ハイパーセンサー上に慌てた表情の山田先生の顔が映る。

 

『こちら管制室です!大丈夫ですか如月くん!?』

 

『こちらは大丈夫です。先生、落ち着いて下さい』

 

先生がパニックになってどうするんだ。

 

『落ち着け山田くん。……こちら織斑だ。如月、お前は観客席のどこに居る?』

 

山田先生が画面から消えて代わりに織斑先生が現れた。

アリーナの観客席は西側と東側で二つに分かれている。

 

『俺が居るのは西側です。パニックになった生徒が出口に殺到してます。一体何が起こったんですか?』

 

『正体不明のISが学園のシールドを破って侵入してきた。観客席の遮断壁もあのISのシステムハッキングによるものだろう。現在、三年の精鋭や教員がクラッキングをしている』

 

『閉じ込められた訳ですか。でもそれって相手も逃げられない訳ですよね』

 

『アリーナのシールドを破って侵入する相手だ、あまり効果は無いだろう。侵入者については織斑と凰が対応している』

 

『了解しました。それと織斑先生』

 

『なんだ』

 

『観客席の出入口の扉を壊しても構いませんか?』

 

『可能なのか?』

 

『ええ。試作品ですがこちらにも光学兵器があります。危険ですから西側の扉の人払いをお願いします』

 

『……わかった。今は非常事態だ、やむを得ないだろう。扉の破壊を許可する』

 

『ありがとうございます』

 

そして通信を終了する。

よし、これで扉を壊しても大丈夫。

 

「さてさて、残る問題は……」

 

俺はそう呟いて目の前の光景に意識を向ける。

 

「出して!出してよ!」

 

「誰か助けて!」

 

「やだ……やだぁ……」

 

出入口にはパニックになった生徒が殺到していた。

扉を叩く人、泣きじゃくる人、助けを呼ぶ人。色んな人がいる。

 

 

「な、なにが起きたの?」

 

「怖いよぉ……」

 

俺の周りにいた一組の子たちは他の子たちよりは比較的落ち着いているが、それでもこの異常事態のせいで怯えている。

 

「いま織斑先生から扉を壊す許可を貰った。だから少し待っててくれ」

 

少しでも安心させようと思ってクラスメイトにそう告げ、俺は出入口の方へ向かおうとするが扉の前はパニックになった生徒で埋め尽くされている。

 

この人混みの中を行くのは自殺行為だろう。

かと言って大声を出すのも良くない。

 

ではどうするか?

 

「こうします」

 

俺は四天の待機状態である眼鏡を外し、それを掲げる。

 

すると、眼鏡のレンズが懐中電灯のように光った。俺はそれをモールス信号のように点滅させる。

 

このライト、通称メガネビームは四天の便利機能の一つである。

 

 

観客席は遮断壁のせいで日光が入らず暗くなっている。その中でいきなり何かが光ったのである。

まず手前にいた生徒が何事かと振り向く。

そして後ろから押されなくなった真ん中の生徒がこちらへ振り向く。

一人、また一人とこちらを振り向く。

そして全員が振り向いた。みんな

行動を止めてこちらを見つめている。少し恥ずかしい。

 

「俺がISを使って扉を壊す。だから皆は離れてくれ」

 

俺がそう皆に告げるといつぞやのモーゼの海割りのように道が出来た。

俺がその中を歩いて扉の前へ到着すると、扉に殺到していた生徒はぞろぞろと後ろへ下がっていった。

みんな一応落ち着いたらしい。

 

「危険だからギリギリまで下がってくれる?うん、そう、そこでいいよ」

 

 

さぁて、責任重大だ。

これで扉を破壊出来なければ恥ずかしい。

織斑先生に頼んだから扉の向こうに人は居ないだろう。

よし、いっちょ派手にやるか!まさかこんな形で役に立つとは思っていなかったが換装して生まれ変わった四天の力を見せてやろう。

 

「行くぞ!」

 

換装後の四天をイメージしてISを展開。

俺の身体が光の粒子に包まれる。

 

《警告!敵ISよりロックオン。こちらへの射撃を確認》

 

「え?」

 

何の光ィ!?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

「馬鹿!全然当たってないわよ!」

 

気合いの雄叫びと共に繰り出す斬撃はかわされた。

 

俺と鈴は突如現れた謎のISと交戦している。

呼びかけても答えない。全身装甲製のため搭乗者は分からない。なぜIS学園に侵入したのかも分からない。

ほんと謎だらけだ。

 

さっきから鈴との連携で攻撃はしているものの、敵ISはいともたやすくかわしてしまう。

変な音もするし、あいつのスラスターどうなってるんだよ。

 

「来るわよ一夏!」

 

「分かってる!」

 

敵ISが両の手のひらをこちらに向け、小型のビームを連続して撃つ。

敵はこちらの攻撃をかわすと決まってこう反撃してくる。

いくらなんでもワンパターン過ぎる。

 

と、そこまで思ったところで閃いた。

 

迫るビームを避け、鈴と隣り合う。

 

 

「なあ、鈴」

 

「なによ一夏」

 

「もしかしてあいつ、人が乗ってないんじゃないのか?」

 

「は?ISは人が乗らなきゃーー」

 

先ほど閃いた内容を言うと鈴は信じられないという反応をしたが思い当たる節があるのか言葉を止めた。

 

「確かに、動きがワンパターンっていうか機械染みてるわね。今だってあたし達が話しているのに何もしてこないし」

 

「それにさ、いくらなんでも腰が細すぎるだろ」

 

「……アーマーで隠れてて気づかなかったわ。よく見てるわね、アンタ」

 

「鋼夜が言ってたんだよ。相手をよく観察しろ、ってな」

 

「……で?仮に無人機だったらどうするわけ?無人機だったら勝てるの?」

 

「ああ、勝てる!」

 

人が乗ってないなら容赦無く全力で攻撃しても大丈夫だ。

零落白夜を叩き込めば勝てる。

 

「その自信はどこから……あら?」

 

鈴が何かに気付いたようだ。

数秒かからず俺も鈴と同じような反応をした。

 

《ISの展開を感知。機体名『四天』ーー》

 

四天……鋼夜か!

反応はどうやら西側の観客席らしい。

 

「……!?一夏!アイツを止めるわよ!今すぐ!」

 

鈴の叫び声で意識を敵ISに向けるとアイツは尻尾?みたいに背中についていたものを担いでいた。射撃武器か?

その先にはーーーー観客席!?

まずい!観客席には遮断壁とシールドがあるがアイツはそれを破ってきたからここに居るんだ!シールドと遮断壁は意味が無い!

 

「やらせないわよ!」

 

鈴が衝撃砲を放って牽制するがアイツは意にも介さない。

 

「やめろおぉぉぉぉぉ!」

 

俺もアイツに向かって加速するが追いつかない!

 

そしてーーーー

 

独特の発射音が鳴り響く。

尻尾型の射撃武器からビームが吐き出される。

黄色いそれは観客席のシールドと遮断壁を貫通しーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー謎のISの方に戻ってきた。

 

戻ってきたビームはそのまま尻尾銃(仮命名)に命中。尻尾銃は爆発した。

 

 

 

「は?」

 

「え?」

 

唐突な展開に俺も鈴も呆然とする。

そういう武器なのかと思ったが謎のISの動きが一瞬鈍ったことから、武器が爆発したことからそれは無いと判断する。

 

……ビームが跳ね返った?

 

 

 

「あー、びっくりした。立つ瀬ないじゃん、俺」

 

俺以外の男の声が聞こえる。

この学園に俺以外の男で、こんな事が出来そうな奴は一人しか居ない。

 

 

「「鋼夜!」」

 

鈴とハモりながら、俺はそいつの名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

例えるならそれは明け方の太陽。

俺と同じ白ではなく、光の輝きを放つ綺麗な金色(こんじき)

 

 

「待たせたな」

 

 

観客席の遮断壁とシールドの穴から太陽のような黄金のISを纏った鋼夜が現れた。

 

 




黄金のIS……一体何ツキガンダムなんだ……?


ガフランほど悪役って感じのするMSはなかなか居ない気がする

AGEはユリンが死んでから見てません(小並感)

デシル死ね(直球)
やーいwwwやーいwwwお前のゼダス2マス無しwww

ハイスミマセン調子乗りましたマジスミマセン


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襲撃者退治の第25話

自分でも何がしたいのかよく分からなくなってきた


「なんだこれは。たまげたなぁ」

 

「四天専用の換装パック『(あかつき)』を装備した姿さ。気に入ってもらえたかな?」

 

輝さんと共に向かった先はIS専用の整備室。

そこには生まれ変わった四天が居た。

 

純白の装甲は一変し、派手な黄金色と黒の縁取りで彩られたカラーリングになっていた。

 

うん、ていうかさ、これさ……。

 

「そのまんまじゃねーか!」

 

まんまSEED DESTINYのアカツキじゃねーか!

 

「確かに名前だけ聞けばそうだね。でもこいつには鋼夜くんの要望も取り込んであるんだよ?」

 

俺の要望?

 

「なにかありましたっけ」

 

「ふふふ、四天のアンロックユニットを見てみたまえ」

 

輝さんに言われるがまま四天の肩部分を見れば、そこには通常の四天の武装である大型シールド『天岩戸』の代わりに別のパーツが搭載されていた。

 

中心部にガラスみたいなものが埋め込まれている黄金の球体にひし形の何かがひいふうみい……八つ刺さっている。それが二つ。

 

例えるならプロヴィテンスやレジェンドのドラグーンみたいなのが両肩部に搭載されていた。

 

 

「ドラグーンじゃねーか!どっちかって言うと俺はファンネル派だよ!」

 

「それは違うよ!これはリフレクタービットだよ!」

 

「よし!許す!」

 

 

……ほら、なんかリフレクタービットの方がカッコよくない?

ビーム反射するとこカッコよくない?しかも防御にも攻撃にも使えるんだよ?

 

ファンネルよりリフレクタービットの方が好きです。

 

 

即興の漫才みたいなやり取りになってしまったが輝さんが咳払いをして話を戻す。

 

「ゴホン……こいつの正式名称は対光学兵器仕様試作自立機動兵器『八咫ノ鏡(やたのかがみ)』さ。イギリスの機体と同じくイメージインターフェイスを使用している」

 

装甲の名前じゃないだけでやっぱりアカツキじゃないですかやだー。

ていうかイメージインターフェイスねぇ。

 

「サイコミュ?」

 

「サイコミュ」

 

気になって輝さんに聞いてみれば即答。

 

「ちょっと待て殺す気か」

 

サイコミュってニュータイプ専用のマジキチ装置じゃん。一般人が使うともれなく頭がイカレるか死ぬかの素敵仕様じゃないですかやだー。

俺、ニュータイプじゃないんですけど。

いや、確かに輝さんと話した時に「ファンネルって男のロマンですよね」って言った記憶あるよ?でも殺してくれって頼んでないよ?

 

 

「大丈夫だよ鋼夜くん。宇宙世紀の後半には科学の発展で一般パイロットでもサイコミュが使えるようになってたから」

 

あれ有線限定だった気がするんだけど。

 

「……まぁ、これを使う機会が来ないことを祈ります」

 

これ使ったら間違いなく色んなとこからツッコミもらうだろうからな。

特にセシリア。特にイギリス。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

やっぱりフラグだったよこん畜生!

 

 

学園に侵入してきた謎のISーーガフランと対峙しながら心で本日二度目の悪態をつく。

 

ガフランは爆発したビームライフルの影響で顔面と右腕の装甲の一部が破損している。右腕はかろうじて動くようだが恐らく掌の小型ビームは使えないだろう。

 

破損した右腕の装甲からは剥き出しになった機械類の部品しか見えず、やはり相手が無人機であることを証拠付けていた。

 

 

「とりあえず火事場のなんとか、って奴か」

 

俺は四天の周囲に展開されている『八咫ノ鏡』を見て呟く。

警告を受けた後に俺は無我夢中でISを展開し、八咫ノ鏡を発動させた模様だ。でないと俺は今ごろ黒コゲだっただろう。

 

 

「大丈夫か鋼夜!?」

 

「まったく、無茶するわね!」

 

「サーチされてるとは思わなかったけど大丈夫だ。むしろ俺はお前ら二人に大丈夫なのかと言いたい」

 

ガフランが動きを止めた隙に俺の側へ来る一夏と鈴。

二人は俺を心配してくれているようたが俺はそれに対して涼しい顔で返す。

 

「大丈夫に決まってんだろ!」

 

「あんたに心配されるほどじゃないわよ」

 

「そいつは良かった……おっと」

 

ゆっくり話をする時間は無いようだ。

ガフランが再び動き出し、残った腕からビームを撃ってきた。

一夏と鈴はビームを回避し、俺は八咫ノ鏡を操作してビームを地面や上空に反射する。

 

 

「鈴、一夏。こいつは俺が引き付ける。二人は観客席の皆を避難させてくれ。遮断壁が降りてきて閉じ込められてるんだ」

 

「まさか一人で残る気なの!?」

 

鈴は俺の提案に驚いたようで、隣の一夏もそんな感じの表情をしている。

 

「さっきまで戦ってたお前らはもうエネルギーがそんなに残ってないだろ。大丈夫、あいつの武装は俺には効かない。さっきビームを反射して西側の扉は穴を開けといたから鈴はそっちの誘導頼む。一夏は東側の観客席をこじ開けてくれ。織斑先生から許可は出てる」

 

会話の最中だというのにガフランは空気を読まずにビームを乱射してくる。

それに対して俺は八咫ノ鏡を操作して必死にビームを反射する。この操作技術には自分でも驚くくらいだ。

 

 

「あんたのそれ、一体どうなってるのよ……。分かったわ、誘導が終わったらすぐ先生を呼ぶからそれまでに落ちないで待ってなさい!」

 

「鈴。時間を稼ぐのはいいがーー別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「……思いっきりやりなさい!」

 

「了解した」

 

ふふふ、あのガフランは六回殺す。

 

 

「……分かったよ鋼夜。その金色ってすげーかっこいいな!後で教えてくれよ!絶対だからな!」

 

ねえ一夏。さりげなくフラグを重ねないでくれる?このセリフってかっこいいけどただでさえ死亡フラグなんだから。

 

 

 

 

八咫ノ鏡を操作し、一夏と鈴の移動を援護する。

空気読めよこのガフラン。退避中だぞ。

 

「行ったか?よし、行ったな」

 

鈴と一夏が離れたのを確認。

それと同時にガフランも標的を俺に絞ったらしく、俺に腕を向けてビームを放つ。

 

片腕の小型ビームくらいならアリーナのシールドでも防げるだろう。

尻尾のビームライフルは破壊したからシールドを破られることはもう無い。

 

「さて、やりますか」

 

俺は八咫ノ鏡を呼び戻し、新たに武器を展開する。

 

現れたのは二メートルはある大型のライフル。

暁の初期装備であるビームショットライフルの『散雷(さんらい)』だ。

通常のビーム弾とビームの散弾に切り替えられる優れものである。

 

「いくぞ!」

 

散雷を散弾に切り替え、ガフランが放ってきたビームを避けると共に俺は左に向かって動き出す。

 

ガフランは残った左手で俺を狙う。

そう、左手。

 

ガフランは既に右腕を失っている。

では失った腕の方向へ回避すればどうなるか?

答えは簡単。俺を追いかけるために身体の向きを変える。

つまりそこに僅かな隙が生まれる。

 

「くらえ!」

 

ガフランがこちらに向き直る前にスラスターを吹かせて接近し、散雷の引き金を引く。

腰だめに構えた散雷から光学兵器独特の音と閃光が放たれ、ガフランへ殺到する。

 

ガフランは攻撃のモーションを止めて回避に移るが完全な回避とはいかず、数発被弾していた。

 

よし、これを繰り返せば勝てる!

人間が操縦しているならまだしも、相手はAIだ。

これでしばらくは戦える。

 

地味?知らん。勝てば官軍だ。

 

しかし四天に比べると少し機動力が落ちている気がする。

八咫ノ鏡を搭載しているせいだろうか。

 

「固定砲台みたいな戦い方のが合ってるな」

 

相手の攻撃を跳ね返しつつこちらも高火力のビームで追撃する。

アカツキよりサイコガンダムやシャンブロの方が近い。

 

「まぁ、一部の相手にしか効かないけどな!」

 

この世界は実弾メインだ。

まともに使うならこいつ()はセシリアくらいにしか使えないな。

 

再びガフランの周りに八咫ノ鏡を配置し、牽制する。

 

「今度はビームサーベルか」

 

八咫ノ鏡に自身の射撃は効かない事を理解したのか、ガフランは掌に光の刃を出現させて八咫ノ鏡を狙って切り払う。

 

壊されてはたまらないので俺は八咫ノ鏡を一旦帰投させる。

これをチャンスとみたガフランは俺目掛けて一気に加速。腕を振り上げ掌のビームサーベルで俺を貫かんとする。

俺もセシリアと同じく、八咫ノ鏡を操作しながらの射撃は行えない。

散雷を構えるのも間に合わない。

 

無駄に再現されたガフランのスラスターの音がスローに聞こえる。

 

 

だが、これでいい。

 

 

 

「引っかかったな、バーカ」

 

 

両肩部のアンロックユニット。

八咫ノ鏡が突き刺さっている球体から拡散ビームが放たれる。

 

 

拡散ビーム砲『百雷(ひゃくらい)

 

ただの八咫ノ鏡の充電器じゃないんだよこいつは。

 

暁は百雷と散雷から放たれるビームの散弾を八咫ノ鏡で反射することでオールレンジ攻撃を可能とさせた機体だ。

別に相手がビーム兵器を使わなくても充分戦える機体さ。

 

……八咫ノ鏡さえ満足に使いこなせればね。

 

 

 

 

至近距離からのビームによるカウンターは見事にガフランに命中。

腕を振り上げた姿勢のガフランは脚部から頭部まで満遍なくビームを喰らう。

カメラアイから緑色の光が消え、機体の各所各所からスパークを発生させながらガフランはぐらりと倒れて地に落ちた。

 

爆発すると思い、スラスターを急発進させて高速バックする。

距離をとってしばらく時間が経つが爆発する気配は無かった。

 

 

「……やったか?念のためコアを回収しとくか」

 

無人機とはいえISはIS。コアが存在する筈だ。

それさえなんとかしてしまえば、どうということはない。

 

ガフランは頭部がコクピットだったっけ。

ならコアも頭部にありそうだな。

 

俺は物言わぬ鉄クズとなったガフランに近づく。

ハイパーセンサーによるスキャンで改めて人が乗っていないことを確認すると共にコアの場所をサーチ。

やっぱり頭部にあった。

 

俺はガフランのヘルメットみたいな頭部へ手を伸ばす。

 

と、ここでハイパーセンサーから警告のアラーム音が響いた。

 

《敵ISの再起動を確認!ロックされています!》

 

ガフランのカメラアイに微弱な緑色の光が灯り、目が合う。

その光は「ざまーみろ」と俺に向けて言ったように感じた。

 

ガフランの胴体部から光がほとばしる。

あぁ、確かこいつも拡散ビーム使えたっけ。

 

俺はガフランの側に膝をついている態勢だ。避けられない。八咫ノ鏡も間に合わない。

 

 

 

ふと視界の端に助けに来たであろう、一夏と鈴とラファールを纏った山田先生をはじめとする先生方が見えた。

 

最初から先生方に任せておけばよかったのかなぁ。

 

 

『鋼夜ぁ!』

『鋼夜!』

『こ、鋼夜さん!』

『如月!』

『如月くん!』

 

一夏、鈴、セシリア、織斑先生、山田先生。

色んな人から通信が入ってくる。

 

ごめん一夏。暁の説明、できそうにないや。

 

 

そして俺の視界と意識は真っ白になった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

っていう夢を見た。

目を覚ませば知らない天井だった。

 

 

「いやいや、夢じゃないでしょ」

 

身を起こし、辺りを確認する。

 

「保健室か……」

 

何処かの部屋のベッドに俺は寝かされていたらしいが仕切りで覆われている。

仕切りを少しずらして覗いた部屋の窓から見える景色がIS学園のものだったので、そう結論付けた。

日は傾き、部屋は綺麗な夕焼け空の色に照らされている。

 

「き、気が付きましたか如月くん!」

 

豪快にカーテンの仕切りを開いて現れたのは山田先生だった。

 

「心配したんですよ私!如月くんに何かあったら、一生目覚めなかったらどうしよう!って心配したんですよ!」

 

「お、おう」

 

「あっ……すみません、大声出しちゃって」

 

ひとしきり喋った後に山田先生はシュン、と落ち込む。

それだけ心配しているということは、それだけ生徒の事を思っているいい先生だと分かる。

 

「いえ、先生は悪く無いです。あれは勝手な事した俺が悪いんです」

 

あれは本当に自分の自業自得だ。

コアの回収まで俺がする必要は無かった。

 

「それより、あの後どうなったんですか?」

 

山田先生の性格から考えると恐らくこのあと謝ってばかりになりそうなので話題を変える。

 

「謎のISは如月くんに攻撃した後に完全に沈黙して身柄はIS学園が拘束しています。織斑くんと凰さんはいま織斑先生に事情聴取を受けています」

 

俺の質問に山田先生は真剣な表情で答えてくれた。

そして思い出したように「如月くんも同じく事情聴取を受けることになると思うのでお願いしますね。……今からじゃないですよ!?今日は安静にしていてください!」とも言った。

 

「病院行かなくて大丈夫なんですか?」

 

いくら絶対防御があるといっても至近距離でビームの直撃を受けたのだ。

いくら最先端の学園の保健室だとはいえ、病院に行かなくて大丈夫なのか俺。

 

「如月くんのISの防御(・・)が間に合ったおかげで大事には至ってません。……ヒヤヒヤしたんですよ、あの時!」

 

防御?防御ってなんぞや?八咫ノ鏡は間に合わなかった筈だが。

 

「えーと、あの時は頭が真っ白でよく覚えてないんですけど何が起きたんですか?」

 

「こう、オーラというか……バリアー?みたいなのを如月くんのISが展開してそれでビームを防いでいたんですよ。でも如月くんは倒れちゃって……本当に心配したんですからね」

 

「……ありがとうございます。それと、すみませんでした」

 

 

山田先生にお礼と謝罪の言葉を述べ、保健室から出られるか聞いてみたら寮の前まで付いてきてくれたので再びお礼を言って解散した。

 

……なんだか山田先生にはお世話になりっぱなしな気がする。

山田先生マジ女神。

 

 

そして部屋に戻った俺にのほほんさんのぬいぐるみ投げが炸裂したのは別の話だ。

 

 

近いうちにラビアンローズに寄ろう。

輝さんとは色々話さなければならない。

色々と、ね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………」

 

クラス対抗戦に謎の侵入者が登場した事により授業は全て中止し、生徒は自室で待機することになった。

 

 

クラス対抗戦にあまり乗り気でなかった四組代表の更識簪は自室にいた。

 

ルームメイトにバレないよう布団を頭まで被り、その空間で携帯電話に接続した空中投影ディスプレイでアニメを見ていた。

 

『超必殺!ライトジャスティス!』

 

『ぐわぁー!』

 

画面の中では完全無欠のヒーロー達が悪の組織を相手に戦っている。

 

「ヒーロー……かぁ」

 

そう呟いて思い出すのは今日のクラス対抗戦での出来事。

試合に出るからには真面目にやろうと、そしてなにより織斑一夏が戦うと聞いて彼女は偵察がてらにあの試合を観戦していた。

西側の観客席で。

 

 

謎のISが現れ、アリーナ中がパニックになった時に現れてみんなを助けた彼。

そして黄金のISを駆って謎のIS……敵に向かっていく姿。

 

あの時の如月鋼夜は更識簪の中ではまさしくヒーローだった。

 

 

「そういえば……断っちゃったなぁ……」

 

彼はISの事を教えて欲しいと頭を下げてきた。

でも私にはやるべき事があったから、申し訳ないと思いながら断ってしまった。

 

「……でも……息抜きも、必要だよね?」

 

言い訳するように呟く。

思えば、誰かに頼られることなんてあまり無かった気がする。

みんな私より……。

 

自分の脳裏に姉の姿が浮かぶ。

 

「っ……あの人は関係ない」

 

深く考える前に、アニメに集中しようと意識を戻す。

 

『ガッチャ!今日も世界の平和を守ったぜ!』

 

「あ……」

 

アニメは終わっていた。

 

彼……如月鋼夜についてはまた出会った時に聞いてみよう。

もう一回最初から見ようと簪はディスプレイを操作するのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「この映像で全部?」

 

「はい。侵入者を迎撃した三人の戦闘の映像はそれで全部になります」

 

「……へぇー。織斑先生の弟くんに隠れがちだけどこの子やるわね」

 

「如月鋼夜、ですか」

 

「そそ。相性もあるとはいえ一人で侵入者を撃退したのよ。おねーさん気になっちゃうわ。ちょっと早いけど会いに行ってみようかしら」

 

「会長。会うのは自由ですが、仕事を終わらせてからにして下さい」

 

「……はい。……あーあ、アリーナの修理費とか委員への書類とか嫌になっちゃうわ」

 

 

 




ほーらフラグだよー(棒)

アカツキかと思った?残念サイコガンダムでした!

初見殺しは基本
ナマエ・ゴッチャヤネンさんマジリスペクト
キュベレイに全俺が興奮した

機体説明は次回

とりあえず一巻のメインの範囲は終了
二巻は皆大好きなヒロインが出るから……壊れるなぁ


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覚醒する第26話

何がしたいのかよく分からなくなった結果
ややスランプかも

前回の事後処理的な話なのでシャルやラウラはまだ出ません許して下さい!なんでもはしませんけど!


「おはようございます、死ね!」

 

「おはよう鋼夜くん、待ってたぁぁぁぁぁぁあああああ!?!??」

 

 

皆さんオハヨーゴザイマス。

好きな言葉は見敵必殺(サーチアンドデストロイ)

開幕男女不平等パンチの如月鋼夜です。

ラビアンローズに寄る機会が出来たので現在ラビアンローズに居ます。

 

ラビアンローズの社長室へ入った俺は輝さん目がけて殴りかかる。

 

 

「ちょちょちょ、ちょっとどうしたの鋼夜くん!?拳に殺気が込もってるよ!?」

 

慌てながらも俺の不意打ちとも言える拳を華麗に避ける輝さんはやはり化け物だと思う。

 

「申し訳ありません。つい手が滑ってしまいまして」

 

「そっか、なら仕方ないね」

 

そして何事も無かったかのように応接用の椅子へ座る輝さん。

 

さすが、察しが良くて(・・・・・・)助かる。

そして俺も輝さんに続いて応接用のソファに座る。

 

 

「今日ここへ来たのは、例のクラス対抗戦のことかい?」

 

「ええ。……束さんは居ますか?」

 

俺は輝さんの問いに頷き、辺りを警戒する。

そう。ラビアンローズへ来たのは先日のクラス対抗戦の事を報告するため。

それに、今回の話は内容が内容だからだ。

 

……まぁ、それだけじゃないけど。

 

 

「大丈夫、彼女は居ない。この部屋の盗聴と監視の心配もない。……どうやら、何かあったみたいだね」

 

「是非とも見ていただきたいものがあるんです」

 

俺は四天の待機状態の眼鏡を取り出し、輝さんにパソコンか携帯端末を用意するよう頼む。

 

輝さんは自分のデスクの上に置いていた携帯端末を用意。

輝さんと協力して四天の情報が見れるように端末を接続する。

接続どころか端末をジャック出来る四天のハイスペックぶりに驚きつつ、準備が整ったので俺は四天に保存させたとあるデータを呼び出した。

 

「これは……」

 

それを見た途端、輝さんの顔が驚きに染まる。

 

俺が見せたのはガフランがアリーナに乗り込んできた時の画像だ。

四天の記録を調べて見つけた時に保存した。

 

そして画像から映像に切り替わる。

俺とガフランの戦闘を四天が記録していたものだ。

 

 

それらの映像を真剣に見つめる輝さんは事の重大さを理解したようで、映像が終わるとあごに手をやり考えこむ。

 

 

「鋼夜くん。これは……」

 

「こいつがクラス対抗戦で乱入してきたISです」

 

何度も映像を見つめ、信じられないといった表情の輝さんに俺は答えた。

 

 

「一応言っておくけど、私は違うよ」

 

「分かってます」

 

 

俺という同じ転生者が居るのを知っていて、なおかつ俺と親しくしている輝さんがこんな事をする理由は無い。

そもそも輝さんが本気で世界征服を企むならISではなくMSを持ってくると思う。

∀とかターンXとかデビルガンダムとかエクストリームガンダムとか色々ヤバい奴らをたくさん。

 

 

「もし私がガフランの設計を考えていたなら、この会社に裏切り者が居るという事が考えられる。だが……私はそんなの作っていないし考えてもいない」

 

「……でも、ガフランを知っている人間は転生者である俺と輝さんの二人だけ」

 

お互いがしばらく無言になる。

 

ヴェイガンが本当に存在していて襲撃してきたという可能性?

……いや、それはない。

わざわざ地球の人間が使うISに対して奴らがこちらに合わせてISを使う必要が無いからだ。

MSなり巨大兵器なり、なんなりを作ればいいのだ。

 

 

「今考えるのはよそう。これは下手に結論づけるべき問題じゃない」

 

輝さんはお手上げといった様子で椅子から立ち上がり、そして俺の方へ振り向く。

 

「私達というイレギュラーが存在している時点でこの世界が鋼夜くんの知っている世界とは別の世界になっているということを理解しておいてくれ」

 

真っ直ぐ俺を見つめる輝さんの瞳はいつになく真剣で、本気であることが分かった。

 

凄く説得力のある言葉だった。

そうだ、輝さんは俺なんかよりずっと……

 

「分かりました」

 

俺はそう答えるしかなかった。

 

 

 

 

「で、他にも輝さんに聞きたいことがあるんです」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

俺の言葉に輝さんは首を傾げた。

じーつーに、白々しい。

 

 

「最初は、勘が良くなったと思ったんです」

 

「?」

 

「クラス対抗戦が終わった後なんですけど。歩いてる人を見て右の道に行くかな、って思ったら当たったり。教室に入って来る人がふと頭に浮かべばその人が実際に入って来たり」

 

「…………」

 

「極め付けはさっきの出来事ですね。ここに来る前にカッちゃんとミィちゃんと岩野おじさんの三人と会ったんですけど、いきなり倒れたんですよね。俺を含めた四人で仲良く」

 

輝さんは滝のような汗を流して俺から視線を逸らす。

ああ、焦っている輝さんの気持ちが伝わってくる。

 

「凄い頭痛がして、心の中に誰か入って来る……自分の中のものが全部引っ張り出される感覚でしたね。内臓吐くかと思いました。……輝さん、心当たりないですか?」

 

「おめでとう!鋼夜くんはニュータイプに進化した!」

 

「ふざけんなオラァァァァァァ!」

 

「あべしっ」

 

開き直って笑顔でそう告げた輝さんに右ストレートを放つ。

輝さんはソファを巻き込んで派手に床に倒れこむ。ゴウランガ!

 

「誰が強化人間にしろって頼んだよ!そうまでしてファンネル使いたくねーよ!n-i-t-r-oか!デルタカイか!一夏がバナージだからか!どうしてそんなものを積んだ!言え!」

 

マウントポジションから輝さんの襟元を掴んで揺さぶる。揺さぶる。揺さぶる。

 

おかしいと思ってたんだよ、俺が八咫ノ鏡を使えたことに!

青い炎は確認出来なかったが、山田先生が言っていたバリアーは恐らくZZ後半のマシュマーがやってたアレだろう。サイコフィールドだっけ?名前は忘れたがそれなら納得がいく。

 

 

「待って……落ち着いてくれ鋼夜くん……」

 

「あと俺はリディが一番嫌いなキャラなんだよォォォォォォ!」

 

「待って……ほんと……朝飲んだコーヒー吐いちゃう……」

 

俺はハッ、となり掴んでいた手を離す。

何してるんだよ俺は……!人に手を上げるなんて最低じゃないか、僕は屑だ……。

 

「すみませんでした!」

 

急いで輝さんの上から退いて土下座した。

 

「顔をあげてくれ、私は大丈夫だ。まぁ、お茶でも飲んで落ち着きなさい」

 

輝さんは立ち上がって服装を正すと俺にそう告げて部屋にある冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して俺に渡す。

なんでペットボトル?

 

「我が社とコラボキャンペーン中でね、一ボックス貰ったんだ」

 

俺の疑問に答える輝さん。

あ、そうですか。

割と普通の理由だった。

 

俺は渡されたペットボトルのフタを開けてお茶を飲む。

 

「落ち着いたかい?」

 

笑顔で輝さんは尋ねてくる。

右の頬にできた赤い腫れが目に入り、心が痛む。

 

「はい。すみませんでした」

 

俺は立ち上がって深く頭を下げる。

輝さんは「大丈夫だよ」と答え、座るよう促してきたのでそれに従い再び座った。

 

 

「落ち着いたなら話を始めよう。さて……まずは鋼夜くんの誤解を解いておこう。私は君に強化処理を施した事はない。鋼夜くん、君は強化人間ではなくニュータイプだ。純粋なニュータイプとして覚醒した。これは私が自信を持って断言しよう」

 

輝さんから告げられる衝撃の事実。

何も知らなかった前世の俺なら「ニュータイプキタコレ!」とか言って喜んだかもしれないがいざ、そう告げられると微妙な心境だ。

 

「ニュータイプへと至る理由は明確には分かっていない。……恥ずかしながら私も分からない。だが一説には新環境、それからくる強いストレス、刺激に適応するために進化した人類というのがある」

 

アムロなどの歴代主人公は大方この部類に入る。と輝さんは付け加える。

 

この説は確かジオン・ズム・ダイクンが提唱してたやつだったか。

まぁ、それに似てる。

 

 

「そしてもう一つ。人の影響によって覚醒するパターンだ。強いニュータイプ能力を持つ者と過ごす事でその人の影響を受けて自身もニュータイプになるパターンがある」

 

ララァを失ったシャアもこれに当たるのか?

 

カミーユと共に居たファは戦場で消えていく命を感じていた。

ジュドーは「子供はみんなニュータイプ」という名言を残し、彼と共に戦ったシャングリラメンバーもニュータイプになった。

 

「鋼夜くんはこの二つが織り混ざって覚醒したんだと私は思うよ。……この世界にはニュータイプに近い力やそれに対する研究もあるからね」

 

 

ドイツの遺伝子強化人間とイギリスの脳波研究ですね分かります。

 

 

新環境……強いストレス……これは間違いなくIS学園ですね。

 

と、なると

 

「輝さん、それって影響を受ける人……つまりは始まりとなるニュータイプが居るって事ですよね」

 

「…………」

 

俺がそう切り出すと輝さんは顔を背けた。

 

「おい、こっち向けよ」

 

「……すまない」

 

「過ぎた事は忘れます。給料30%アップしてください」

 

「30%と言わず50%アップしてあげるよ」

 

「わーい」

 

お金って凄い。

忘れてないじゃん、というツッコミは無しの方向で。

 

 

 

 

俺は渡されたペットボトルのお茶を飲み干し、一息ついた。

 

 

「この後はどうするんだい?」

 

「今日はここに居ます」

 

輝さんの問いかけに俺は時計を見ながら返事する。

時間は昼近い。

実は今日は平日。学園は授業中だ。

 

クラス対抗戦の事を会社に報告するという事で学園は公欠にしてラビアンローズに来ている。

今から戻るのも面倒だし、たまにはゆっくり休みたい。

なんかもういろいろ疲れた。

生きるのって難しいね。

 

 

このあと気分転換にラビアンローズ内を散歩した俺は何回も倒れこむ羽目に陥るがそれは別の話。

 

 

 

帰り際に輝さんからアッガイの抱き枕とボールのぬいぐるみを貰った。

昼に飲んだお茶とのコラボキャンペーンで当たる景品らしい。

案の定、シールを集めるタイプだった。

 

 

なぜアッガイとボールなのか、と聞いたら可愛いからという簡潔な答えが帰ってきた。

いやまぁ、確かにそうだけども。

 

ラビアンローズのマスコットとしてこれから売り出すらしい。

頑張れ輝さん。

 

 

通称のアッガイとシークレットのべアッガイの二つを貰ったので寮に帰ってきた際にベアッガイの抱き枕とボールのぬいぐるみをのほほんさんにプレゼントしたらかなり喜んでいた。

 




対象の商品についているシールを集めてハガキで応募しよう!
抽選で100名様にアッガイの抱き枕とボールのぬいぐるみがもらえるよ!(大嘘)


覚醒値30以上でなおかつ異能持ちの三人にジェットストリームアタックされた結果
鋼夜くんのニュータイプ覚醒フラグはところどころにあったから(震え声)

未だに名前だけのラビアンローズ社員ェ

ニュータイプについては完全に自己解釈
公式ですらよく分かってないってなんなの……

IS学園に行けばニュータイプになれる、多分
鋼夜の苦痛は終わらない

次回で本編にもどります
シャルロッ党やブラックラビッ党の皆さんに石を投げられないように頑張ります


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金銀転校生の第27話

前回の話ではUCのネタバレをしてしまい、申し訳ございませんでした
問題の部分は消しましたので多分大丈夫です

では続きをどぞ


「……はぁ」

 

「どうした」

 

ある日の寮の食堂で一人で居た箒と一緒に夕飯を食べているとため息が聞こえた。無論、箒のものだ。

一夏?鈴と食べてるよ。

 

「いや……なんでもない」

 

「一夏関連だろ」

 

「うぐっ」

 

はぐらかそうとした箒だが俺が『一夏』という言葉を出すと反応した。

 

「大丈夫だ箒。前にも言ったが幼馴染というアドバンテージがあるお前の方が他の奴らより一歩リードしているんだ」

 

「……それはアイツも同じだろう」

 

そう言って箒は一夏と一緒に夕食の席についている鈴を見やる。

 

「正直、あれを幼馴染にカウントしていいのかどうか」

 

一夏が鈴と出会ったのって小学五年からだろ?幼馴染ではないよな。

 

「しかし、一夏と昔からの付き合いというところは同じだ」

 

そう言って箒は再びため息をつく。

 

「焦らずにゆっくり距離を詰めればいいさ。一夏の鈍感さを考えればそれが確実だ」

 

変な作戦でも考えれば鈍感一夏節が炸裂してたちまち暴力エンド。

鈴の毎朝酢豚がいい例だ。

 

 

「しかしだな……」

 

「手っ取り早く一夏を手に入れたいなら既成事実でも作れ」

 

「すみません無理です」

 

箒の言わんとすることを先読みして答えれば箒は顔を赤く染め、顔を伏せた。

 

「幼馴染でポニーテールでおっぱいでかい大和撫子。お前、かなりスペック高いぞ?自信持てよ」

 

「……さらりとセクハラされた気がするのだが」

 

ジトっとした目で俺を見る箒。

ツッコミを入れられるくらいには調子を戻したようだ。

 

「俺が一夏なら好意を持つ持たないは別として、好意を向けられているんなら嬉しいし付き合うレベル」

 

まぁ本物の一夏はその好意にすら気づかないけどな。

ホモなんじゃないのかと最近真剣に考えている俺がいる。

 

「ほ、本当か?」

 

頬をさらに染めた箒が嬉しそうに聞いてくる。

 

「マジ」

 

実際、箒ってスペック高い。

料理出来るし家事も出来そう。

 

「あー……でも、すぐカッとなって手を上げてくるのはマイナス」

 

「うっ……」

 

まさに上げて落とす。

俺が唯一にして最大のマイナス点を指摘すると箒は黙りこくる。

 

「ていうか好み云々以前に、人に暴力を振るうのはどうかと」

 

「…………そうだな」

 

箒の声のトーンが下がった。

あ、ヤバい。地雷踏んだ。

 

「ま、まぁ、これからも俺がサポートするからしっかりやれよ」

 

俺は食べていた夕食のきつねうどんを平らげ急いで席を立つ。

 

「待ってくれ」

 

しかしにげられなかった!

席を立った瞬間に箒に声をかけられた。

俺は黙って箒の方へ振り向く。

 

「前々から気になっていたんだ。……なぜ鋼夜は私の、お、応援をしてくれるんだ?」

 

なんだ、そんな事か。

 

「ずっと相手を想っていた奴が、想っていた相手をパッと出の人間に取られるなんて間違ってると思わないか?」

 

俺はそう答え、箒の元から離れた。

ちなみに箒は俺の失恋話を知っている。

 

……ま、そういう事だ。

『モッピー脱却作戦』の事もあるが今言ったことも一応理由になる。

 

別にセシリア達をアンチしている訳ではない。

恋をするのも、恋に落ちるのも人の自由だ。そこは否定しない。

そもそも相手を選ぶのは全部一夏の自由なのだ。他人が口出しすることではない。

 

でもさ、なんか報われないじゃん?スッキリしないじゃん?

……まぁ、つまりはそういうこと。

 

 

あっれー、でもこれって鈴にも言えることじゃん。

……あぁ、めんどくせえ。

 

 

箒、はやく一夏をなんとかしてくれ。

俺の精神が正常であるうちに。

 

 

 

食堂を出た俺はそんな事を思いながら部屋へ帰った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「デュノア社に動きが?」

 

『うん。具体的にはデュノア社の人間を学園に生徒として入れるみたいだよ』

 

俺は寮の外にある適当なベンチに腰掛けて輝さんと通話していた。

部屋に帰る途中にコールがきたのである。

 

「当てましょうか?三人目でしょ」

 

『ふふっ。正解だよ』

 

そんな時期かと思いつつ輝さんにそう答えると輝さんは小さな笑いと共に肯定した。

 

『フェニックスからの情報でね。今も彼に調べてもらっているよ』

 

「あー、鳳凰院さん?」

 

『それ、彼の前では禁句だからね』

 

鳳凰院さんとは、輝さんお抱えのエージェントの一人で「俺にかかればどんな場所でもフリーパス」と豪語するくらいの凄腕ハッカーだ。

フェニックスはコードネームで、本名の鳳凰院さんって呼ぶと怒る。

 

「アメリアスさんは?」

 

『彼女は最近見つけた怪しい組織に潜入中さ。連絡は取れないけど生きてる……と、思うよ』

 

アメリアスさんはフェニックスさんと同じ輝さんお抱えの凄腕エージェントだ。アメリアスはコードネーム。

この人は秘密が多い。本名すら俺は知らない。

女には秘密の一つや二つがあるものだとは聞いたがアメリアスさんは秘密だらけだ。

まぁ、一回しか会ったことないからそう思うのかもしれないが。

 

「あの人なら大丈夫でしょうね。で、要件はそのデュノア社の奴に気を付けろって事ですか?」

 

『ああ。あと一緒にドイツからも軍人が生徒として入るらしい。知ってると思っていたけど一応ね』

 

「了解しました」

 

『うん。それじゃ、おやすみ』

 

「失礼します」

 

そして通話を終了。

 

そっか、もうそんな時期か。

 

ドイツとフランスからの刺客に俺はため息をつく。

ラビアンローズは巨大とはいえ一企業にしては8個という破格のコア所有数を誇る。

輝さんが束さんを匿っていた事が関係しているのだがそれを気に入らない存在は多く、フランスのデュノア社もその一つだ。

 

「面倒だなぁ……」と呟きながら輝さんが覆面の襲撃者を一人で残滅していたところを見たことがある。

味方で良かった、輝さん。

 

ただでさえ面倒なイベントが更に面倒になると思えるだけで鬱になってくる。

 

俺は自室に戻るとシャワーを浴びて即寝た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あぁー……」

 

「今度はお前か」

 

「……あー?なんだ、鋼夜かぁ」

 

翌朝の寮の食堂で机の上で生気の抜けた鈴を見つけたので隣に座る。

一夏と何かあったのだろうか。

 

「どうした」

 

「……なんでもないわよ」

 

そう言って鈴はそっぽを向く。

 

「そうか」

 

なんでもないなら仕方ない。

俺はそう返し、朝食として頼んだサンドイッチを食べ始める。

たまごときゅうりがいい味出している。

 

 

「いやいや、そこはもっと詮索いれるところでしょーが……」

 

むくりと起き上がると鈴はずびしとツッコミを入れるがいつものキレが無い。

 

 

「リンー、持ってきたよー……って、如月くん!?」

 

声のした方を向けばそこには金髪ショートで碧眼に白い肌。

外人の生徒が両手に朝食が入ったトレイを持って立っていた。

 

「ありがとティナ。鋼夜、あたしのルームメイトのティナよ」

 

ティナと呼ばれた子からトレイを奪う鈴。

 

「えっ!?あっ、ティナ・ハミルトンです!カナダから来ました!」

 

鈴からトレイを奪われて現実世界に戻ってきたであろう彼女が慌て自己紹介をする。

 

「如月鋼夜です、よろしく」

 

「よ、よろしくお願いします。如月くん」

 

「鋼夜でいいよ」

 

「わ、私もティナって呼んで下さい」

 

流れで握手をする。

……ハミルトンさんの顔が赤い。

 

 

「…………はぁ」

 

おおぅ。鈴が死んだ魚みたいな目で俺たちのやり取りを見ている。

 

 

「本格的に何があった」

 

「気にしないで。リンが勝手に自爆しただけだから」

 

「調子に乗るんじゃないわよティナ!……ねえ鋼夜。変な噂聞いてない?」

 

噂は聞いていないが心当たりはある。今日の朝、ここに来るまでにいつも以上の視線を感じた。

確かにこの時期は原作でそんなイベントがあった気がするが……なんで鈴が?あれは箒が原因だった気がするのだが。

 

 

「昨日の夜のことよ……」

 

ため息と共に鈴は昨日の夜に何があったのかを語った。

 

簡単に言うと

 

無人機のせいで約束がうやむやに→近いうちに学年別トーナメント?よし!それだ!→一夏の部屋へ乱入→一夏と話すうちにヒートアップし「優勝したら付き合え」と言う→翌日(今日)、何故か約束が噂として広がっていた

 

である。

箒じゃなくて鈴が原因になっているがだいたい同じだ。

 

 

「なんというか、頑張れ」

 

「あんたも関係あるのよ。噂では「優勝者は織斑くんか如月くんのどちらかと付き合える」って事になってるらしいから」

 

そう言い終えて再びため息をつく鈴。

 

「なんだよそれ」

 

俺のオマケ感が半端じゃない。

というか当の本人達が了承してない時点で色々問題があると思うんですけど。

 

しかもこの学年別トーナメントってタッグになるから益々問題しか残らないんだが。

優勝者が二人になるから、誰が一夏に告白するかで揉めるよね。

俺?ノーカン。俺は最初からいないものとする。

 

ていうか原作だと仮に優勝者が出たら一体どういう感じで処理しようとしたんだ。

原作は一夏一人だぞ。

絶対また戦争が起きたと思う。

 

 

 

さらなる騒動が起きることに呆れながら俺はサンドイッチを食べ終えた。

 

ハミルトンさんが横で「優勝……かぁ……」とか呟いていたが無視する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「いやいや性能的に見てミューレイだよ」

 

朝の教室。

クラス中の女子が手にISスーツのカタログを持ってわいわいと賑やかに談笑している。

 

「織斑くんと如月くんのISスーツってどこのやつなの?見たことない型だけど」

 

「あー。特注品だって。男のスーツがないから、どっかのラボが作ったらしいよ。えーと、もとはイングリッド社のストレートアームモデルって聞いてる」

 

「俺のはラビアンローズの完全オリジナル製」

 

クラスメイトから質問が飛んできたので一夏と共に答える。

 

「私の出番ですね!」

 

すると山田先生が現れ、胸を張りながらスーツの解説をしだした。

先生。前にも言いましたがそのポーズはやめて下さい、何人もの女子が自信喪失しますから。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

 

もうGガンのモビルトレースでいいんじゃないかな(適当)

 

風雲再起の搭乗シーンって痛々しいよね。

もうやめて!お馬さんがかわいそう!って感じで。

 

 

「諸君、おはよう」

 

「お、おはようございます!」

 

そんなことを思っていたら織斑先生がやって来た。

織斑先生が来ただけでさっきまで騒がしかった教室が一気に静まり、皆が席に着いた。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人、気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」

 

たぶん皆「いや構うだろ!」と心の中でツッコミを入れただろう。

そういえばIS学園の水着ってスクール水着だったな。

体操服はブルマだし。

まぁ、俺には関係ないけど。

 

「それでは山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ」

 

連絡事項を言い終えた織斑先生は山田先生にバトンタッチ。

山田先生は慌てて教卓に立つ。

深呼吸をしたのちに山田先生は話し始めた。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

「「「ええええええっ!?」」」

 

いきなりの転校生紹介にクラス中がざわつくが、俺はハァとため息をつくだけだった。

 

ああ、教室の外から感じる二人分の気配なんてとっくに気付いてるさ。

 

「あぁ、鬱だ」

 

ぼそりとそう呟くと、教室のドアが開いた。

 

「失礼します」

 

「…………」

 

クラスに入ってきた転校生を見た瞬間、ざわめきが止んだ。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

転校生の一人のシャルル・デュノアはにこやかな顔でそう告げて一礼する。

礼儀正しい立ち振る舞いと中性的な顔立ち。鮮やかな金髪を首の後ろで丁寧に束ねている。

 

そして一番の特徴は『男子の制服を着ている』ということ。

 

 

玲児を金髪にして髪伸ばさせたらこんなになりそう。

あいつ元気かな。親が再婚したとか言ってたけど。

 

 

「お、男……?」

 

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入をーー」

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

あ、ヤバい、耳塞ごう。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁーーーーっ!」

 

俺が耳を塞いだ瞬間に歓喜の叫びという名のソニックウェーブが発生した。入学以来だ。

 

「男子!三人目!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「ICK×SYRR……いえ、KSRG×SYRRからの大団円も……」

 

 

もうやだこのクラス。色んな意味で。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

先生方が言ってようやくしずまる。

 

残ったのは、輝く銀髪を腰近くまで下ろしている赤目の少女。

左目に黒い眼帯をつけている。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

いきなり織斑先生へ敬礼するラウラなんとかさん。その行動にクラス全員がぽかんとしている。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

そして織斑先生へまた敬礼するとこちらへ向き直る。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「……え、以上、ですか?」

 

「以上だ」

 

ボーデヴィッヒはこれ以上話すことはないと言った感じで再び口を閉ざした。

 

はい、どこからどう見ても軍人ですありがとうございました。

山田先生もお疲れ様です。

それと、少しの間とはいえボーデヴィッヒと一緒に居たデュノアに同情する。

 

 

と、ボーデヴィッヒがこちらに気付いてツカツカとやってきた。

あー、このイベントね。

 

 

ボーデヴィッヒは俺と一夏の席の間に来ると俺と一夏を見比べ、口を開いた。

 

「どっちが織斑一夏だ」

 

なんでやねん!憎い相手なら顔くらい覚えとけよ!

 

「一夏はあっち」

 

というツッコミを飲み込み、俺は素直に答えた。

 

俺の言葉を聞いたボーデヴィッヒさんは一夏をロックオン。

特に理由のない平手打ちが一夏を襲う!

 

ボーデヴィッヒさんはそのまま右手を振り上げてーーーー

 

「ストップ」

 

一夏に振り下ろされる前に俺はその手を掴んだ。

右手を掴まれたボーデヴィッヒは俺を睨みつける。

 

「失礼。お前、いま何をしようとした?」

 

「離せ、不愉快な奴め」

 

「だから失礼だと言っている。で、俺の質問に答えろ」

 

「……私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

一夏を睨みがらそう宣言したボーデヴィッヒは掴まれた腕を無理やり振りほどき、勝手に後ろの席へ向かって着席した。

そして何事もなかったかのように俺も自分の席へ着席した。

 

後に残ったのは固まったままのクラスメイト達。

 

 

「あー……ゴホンゴホン!ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

織斑先生が手を叩いて行動を促してやっとみんなが動き出した。

 

 

 

はぁ。予想してたとはいえ面倒な事になりそうだ。

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺は金銀の転校生を見ながら再びそう呟いた。

 




学年別トーナメントとか、実際優勝者いたらどうなってたんだろう
まぁ二人一緒に告白しようが片方蹴落として告白しようが一夏の「いいぞ、買い物か?」で撃沈するのは確定ですが


IS関係のスレ見てると一夏がホモとしか思えなくなる不思議
なんjの人気投票で一位とかICKさんなにやってんすか


TF6のシェリーが鬱ルート過ぎて泣ける
やっぱりヒロインは龍可だね
アキ?あっちでナオミと開花が待ってるよ

TFはバーンが強いってハッキリわかんだね
でもセットした罠カードを勝手に使うCPUは絶許

TFの二次書きたくなってくるヤバいヤバい……


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実習授業の第28話

ツッコミを全て堪えて耐える鋼夜UC


「おい織斑、如月。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

HRが終わる際に織斑先生は俺と一夏にそう言った。

まぁ、当然と言えば当然か。

 

「初めまして。僕はーー」

 

「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 

「?……あっ、そうだね」

 

一瞬考えてから返事をするデュノア。

……ノーコメントで。

 

「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替えるんだ。実習のたびに移動するから早めに慣れてくれ。行くぞ鋼夜」

 

「了解」

 

一夏は簡潔に説明するとデュノアの手を取って教室を出たので俺も後を追った。

 

「うわわっ」

 

一夏に手を取られたデュノアが顔を赤くして素っ頓狂な声を出す。

…………いや、何も言うまい。

 

階段を下って一階へ下りると、大量の人の気配を感じた。

 

「来るぞ一夏」

 

「分かってる!」

 

HRが終わったクラスから情報収集のために生徒が殺到してくるのだ。

 

「転校生、大発見!」

 

「しかも織斑君と如月君も一緒!」

 

すると、曲がり角から生徒の群れが現れた。

捕まれば最後。質問攻めから授業に遅刻からの織斑先生によるお仕置きトレーニングの流れになるだろう。絶対に嫌だ。

 

「目標の転校生を発見!」

 

「他クラスの支援を要請する!」

 

「駄目だ!」「駄目だ!」「駄目だ!」

 

賑やかですね!楽しそうですね!

思いっきり皮肉を込めてそう叫びたい。

 

「な、なんでみんな騒いでるの?」

 

「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」

 

「……?」

 

おいデュノア。なぜそこで困り顔というか疑問符を浮かべるのか。

 

「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところ俺たち三人しかいないんだろ?」

 

「あっ!ーーああ、うん。そうだね」

 

…………もういいや。この包囲網を切り抜ける事だけを考えよう。

 

 

 

 

心を無にしてひたすら走り、ついに目的地である第二アリーナ更衣室へ到着した。

織斑先生の写真(一夏提供)を取り出し、数枚をばら撒いて女子たちの注意を逸らす作戦で俺たちは包囲網を突破したのだ。

 

 

「とりあえず一安心だな。時間は……ちょっと余裕あるな」

 

一息ついて時計を見れば本当に少しだが時間に余裕があった。

 

「とりあえず自己紹介しとく。如月鋼夜だ。鋼夜でいい」

 

「俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん。よろしく二人とも。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「よろしくな、シャルル。よし、着替えるか。千冬姉の授業は遅れたらヤバいからな」

 

簡単に自己紹介を済ませた俺と一夏は着替えを開始する。

 

「わあっ!?」

 

途中でシャルルが変な悲鳴を上げたが無視して着替えを続行。

 

「どうしたシャルル?着替えないのか?遅れるぞ」

 

「き、着替えるよ?でも、その、あっち向いてて……ね?」

 

無視無視無視。

そしてあっという間に俺は着替え終わった。

 

「うわ、鋼夜早いな」

 

「下に着てるからな」

 

スーツって下着みたいなものだし。

実際、技術を流用して下着になってるし。

 

「俺もそうしようかな。これ着るときに裸になるから着づらいんだよなぁ。引っかかって」

 

「ひ、ひっかかって?」

 

「おう」

 

何がなんなのか分からない様子のシャルルに一夏は至って普通に返した。

そして理解したのか、シャルルの顔が赤くなる。

 

 

「……じゃ、俺は先に行くから」

 

このままだと俺の中で何かが爆発しそうなので自主退場した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「遅い。さっさと並べ」

 

一夏とシャルルは少し遅れてきたので織斑先生に怒られた。

あとなぜかセシリアと鈴が騒いだので出席簿を喰らっていた。

 

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

「はい!」

 

ちなみに今日の授業は一組と二組の合同実習だ。人数が倍のため、返事がいつもより大きく、気合いが入っている。

 

 

「…………」

 

だいたい何が起こるか分かるため、先生の話を聞き流してボケーっとしながら周りを見回す。

右にはISスーツ姿の女子。

左にもISスーツ姿の女子。

前もISスーツ姿の女子。

後ろもISスーツ姿の女子。

 

眼福である。

四天のカメラ機能でも使ってやろうか、もちろん無音。

動画撮影でも可。

 

 

…………はぁ、これじゃあただの変態じゃないか。

 

俺が尊敬する変態はVPのレザードだけだ。変態は変態でもレザードみたいなスタイリッシュな変態がいいです。

 

 

《警告!ISが接近中!》

 

ゲスな思考を巡らせていると唐突に四天からISの接近のアラートが表示された。

あー……アレか。一夏、ご愁傷様。

 

アラートの方を向けば緑色のISと思わしき物体がこちらに向かって落ちてきていた。

 

 

……ん?こっち?え?マジで?

 

 

「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」

 

ただの落下物なら四天の天岩戸で弾いてハイ終了、というところだがあいにくこちらに向かって落ちてきているのは取り扱い注意なものなのでそれは出来ない。

 

 

俺は即座に四天を展開し、落下物……山田先生が搭乗しているラファール・リヴァイヴを真正面から受け止めた。

 

「ぐあぁっ!」

 

背中から倒れ、何回か地面をバウンドしながら数メートル吹き飛ばされる。

全身に凄い衝撃が襲い掛かり、危うく意識が飛びそうになるがなんとか意識を保ったまま堪える事が出来た。

 

「うー…………はっ!?大丈夫ですか如月くん!?私なんてことを!?起きてください如月くん!」

 

我に返った山田先生に肩を掴まれて揺さぶられる。頭痛い。気持ち悪い。

 

「俺は大丈夫です……先生の方は?」

 

「如月くんのおかげでなんともありません。私、先生なのに……ごめんなさい」

 

「あのー……すみませんがどいてもらえますか?俺が立てないですし」

 

現在の俺と山田先生の体勢。

山田先生が俺を押し倒しているように見える図。

……逆よりはマシか。うん。

 

「あぁ!ごめんなさい!」

 

と、山田先生は慌ててISを解除して俺から離れる。

それに続いて俺もISを解除して立ち上がる。

 

「ヒュー」

 

「まやまや大胆だねぇ」

 

「ハラショー。こいつは力を感じる」

 

「やまぴーあざとい!」

 

「やまちゃんドジっぽい?」

 

「や、やめてくださいよ!私、先生ですよ!?」

 

山田先生が生徒にからかわれていた。

織斑先生もやれやれといった様子で額を指で押さえる始末である。

 

ほんと大丈夫か、山田先生。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぐぐぐぐっ……!」

 

「ぎぎぎぎっ……!」

 

目の前には仲良く積み重なって戦闘不能になったブルー・ティアーズと甲龍があった。

セシリアと鈴は唸り声を上げながら互いに睨み合っている。

 

セシリア、鈴による即席ペア対山田先生の模擬戦が行われていたのだが、結果は山田先生の勝利だった。

二人の連携のとれてなさを突いた誘導でグレネードを使って一網打尽にするところは非常に上手いと思った。

いつものおどおどしててドジな山田先生とは違う一面だったので、失礼だが別人じゃないのかと思った。

元とはいえ代表候補生まで登り詰めた実力は伊達ではないという事か。

 

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

織斑先生がパンパンと手を叩いてそう告げる。

とりあえず山田先生の扱いがこれで少しは良くなるだろう。多分。

 

 

「専用機持ちは織斑、如月、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒか。ではこれより6人グループで実習を行う。専用機持ちはグループリーダーとして班員を指導しろ。では分かれろ」

 

織斑先生が言い終わると同時に大量の人が一夏とシャルルに殺到した。

 

 

 

「……これはこれで」

 

「なかなかクるものがあるわね……」

 

「…………」

 

がらーん、としているのはセシリア、鈴、ボーデヴィッヒのところだ。

ボーデヴィッヒはともかく、セシリアと鈴は少し可哀想ではある。

 

 

「「「織斑くん!よろしく!」」」

 

「「「デュノアくん!分からないとこ教えて!」」」

 

大量の女子に囲まれて困った顔を見せる二人。

 

俺?俺の方は……

 

 

「こうやん、よろしくね~」

 

「よっろしくぅ~」

 

「よ、よろしくね、如月くん」

 

 

のほほんさんと谷本さんと夜竹さんのトリオを中心としたいつもの一組女子で構成されていた。

良かった。さすがにゼロ人はヘコむ。精神的にヤバい。

 

 

「この馬鹿者どもが……さっき言った順番で出席番号順にグループに入れ!次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるぞ!」

 

この現状を見かねた織斑先生の一喝で女子達はすばやく移動を開始し、二分とかからずグループは出来上がった。

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

ごもっともです。

 

 

「えへへ~」

 

出席番号の関係で最初からこっちにいた数人が離れたが、のほほんさんは奇跡的にこっちに残っていた。

 

「……どうかした?」

 

「なんでもないよ~」

 

何故か笑顔ののほほんさんに何事かと問いかければはぐらかされた。

 

 

班員と一通り軽いあいさつを交わし、みんなで使うISを取りに行く。

今回使用するのはラファールだ。二機しかないので急いで確保した。

 

今日の授業の午前中は動かすところまでやれ、とのこと。

 

 

「最初、誰がやる?」

 

「私に任せろ!」

 

「任せた」

 

トップバッターに谷本さんを迎えて俺は指導を行うのだった。

 

装着、起動、歩行と順調にこなしていく。

 

ーーーーが。

 

 

「おい、次の人が乗れないだろ」

 

「てへぺろ☆」

 

谷本さんは片目をつぶり、舌をちょこっと出して可愛いポーズを取る。

てへぺろ、じゃねーよ。それは箒がやるべきだろ。

 

じゃなくて、問題発生。

谷本さんはISを解除する時に立ったまま解除してしまったのだ。

訓練機の場合はしゃがんで解除するのが基本なのだが俺も谷本さんもド忘れしていた。

 

「こうやんこうやん」

 

と、次に乗る予定ののほほんさんが話しかけてきた。

 

「ああすればいいんじゃないかな?」

 

と、のほほんさんが指差すのは一夏の班。

一夏が白式を展開して同じクラスの岸里さんを立ったままの打鉄まで運んでいた。

 

やれと。アレをやれと。

いや、まあ、確かに俺が四天を展開して運ぶのが一番確実だが、いいのか、色々と。

 

「はやくはやく~」

 

「……分かった。先に謝っとく」

 

もたもたしていると織斑先生が飛んできそうなので俺はのほほんさんの案を採用した。

 

俺は四天を展開。

純白の装甲が俺を包み込んだ。

 

「今日はぴかーってしてないね」

 

「ああ、換装外した。アレ色々問題があるんだよ」

 

俺はISを暁から通常の四天に戻してある。

色々問題といったが、それは主にセシリアとかイギリスの事だ。

サイコミュは使い手を選ぶとはいえ、国が開発したシステムより優秀なシステムを一企業が作っちゃったっていうね。

 

対抗戦の後に機体に興味を持っていたセシリアから模擬戦を挑まれたが、ほぼ一方的な勝負にしてしまったという罪悪感もある。

 

性能に頼りっぱなしになる、というのが一番の理由ではあるのだが。

 

 

「失礼」

 

「んっ」

 

断りを入れて、俺はのほほんさんを抱きかかえる。俗に言うお姫様だっこというやつだ。

 

「……えへへっ」

 

「!?」

 

何を思ったのか、のほほんさんは俺の身体に手を回してきた。

女子特有のいい香りと柔らかい肢体の感触。それらが一気に俺を刺激する。しかも体勢的に彼女は上目遣いでこちらを見ている。

 

 

無心だ無心。明鏡止水だ俺。

 

 

 

「到着」

 

「はーい」

 

時間にして僅か数分の出来事だが、俺の理性は削られまくった。

今ならハイパーモードになれるんじゃないか、というポーカーフェイスでなんとかこの場を乗り切った。

 

ラファールのコックピットに着いたのでのほほんさんを丁寧にコックピットに降ろす。

 

「起動とか大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

「それじゃ、谷本さんと同じ感じで頼む」

 

「りょうか~い」

 

 

のほほんさんも順調にメニューをこなして交代する時間となった。

 

「ハイ、じゃあしゃがんで解除してね」

 

また立ったまま解除されてはたまらないので先手を打った。

のほほんさんは既定の位置にラファールを移動させると、装着したままニコッとした笑みを浮かべてこっちを見る。

 

 

「……あ、手が滑っちゃった♪」

 

「え」

 

何を思ったのか、のほほんさんはISを立ったまま解除した。

 

「如月くーん、これじゃあのれないなぁー?」

 

「私たちも乗せて?」

 

くるりと後ろを振り返れば順番待ちの皆様が笑顔で俺に迫ってきていた。

 

……なるほど、無言の圧力か。

 

 

「だが私は謝らない」

 

ふと、元凶の谷本と目が合うと彼女は含んだ笑みと共にそう言った。

ふざけるな。

 

 

 

午前中の授業はずっと女子を運ぶ羽目になった。




鋼夜は対抗戦の後に一年女子の間では株が上がった感じです

そして暁はボッシュート
セシリアと被るし装備的に下手したら国際問題だからね、仕方ないね

通常装備でセシリアをdisる雪羅装備の一夏?
言うな



もしISキャラが遊戯王をしたら
一夏→銀河フォトン
箒→六武衆
セシリア→青眼
簪→E・HERO
のほほん→マドルチェ

ここまで予想できたよハルトォォォォォォ!


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ツッコミ炸裂の第29話

この話を読んだあと、てめーは「これが言いたかっただけだろ!」と言う!


「なぁ鋼夜、シャルル。一緒に昼を食わないか?」

 

「いいの?」

 

「ああ、いいんだよ。シャルルの歓迎会も兼ねてな。鋼夜もいいだろ?」

 

「……ああ」

 

午前の授業が終わり、昼休みになった時に一夏に昼を誘われた。

考えごとをしている俺は一夏に生返事で返す。

 

 

 

シャルル・デュノア。

中性的な容姿にこれまた中性的な声。高貴な雰囲気のある仕草などが特徴の三人目の男性IS操縦者。

 

だが女だ。

 

むしろ女よりも女らしい。

 

だが女だ。

 

男の制服が似合っている。

 

だが女だ。

 

その立ち振る舞いはまるでいい育ちの御曹司のよう。

 

だが女だ。

 

シャルル目当ての女子が騒がしいな……。

 

だが女だ。

 

「僕のようなもののために咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから」

 

だが女だ。

 

今の台詞を聞いた女子の一部が失神した。

 

だが……女だ。

 

 

 

 

いや、もうね、我慢の限界。

午前中だけで何回シャルルにツッコミを入れそうになったか。

 

俺の前世の知識の有る無しに関わらずツッコミ所が多すぎる。

 

 

まずこいつは自分がスパイだという自覚が無い。

しかも自分が男として潜入してるのをいちいち忘れるなど論外だ。

 

あと外見。

ISスーツを改造してサラシにしてたようだが胸が無いだけで誤魔化せると思うなよ。

もう高校一年だぞ。色々成長する時期だぞ。

この時期で喉仏が無いのはあり得ない。あと声も高い。

声変わり前ってレベルじゃねえぞ。

 

 

まぁ、これらも重要なファクターではあるのだが一番のツッコミ所は経歴である。

 

シャルル・デュノアは三人目のIS操縦者にしてラファールを生み出したフランスのデュノア社の社長の息子にしてフランス代表候補生である。

 

三人目のIS操縦者。

これは二人目がいたんだから三人目がいてもおかしくないと思えるから今は置いておく。

 

次にデュノア社の御曹司。

ラファール・リヴァイヴという名機を生み出したデュノア社だがラファールは第二世代。

第三世代へ移行する各国にフランスは付いていけず、デュノア社もこれにより数年前から経営不振に陥っている。

これは企業間の活動に触れる機会の多い人なら誰でも知っている。

 

……男性操縦者は貴重である。

俺を迎え入れたラビアンローズは売り上げが格段に伸びたと輝さんは言っていた。

印税で俺の口座もバグったゲームの所持金みたいになった。

 

それを考えると「シャルルは偽物なんじゃない?」という考えも出てくる。

それに経営不振のデュノア社がいまさら「三人目」を発表するのもおかしい。

デュノア社はなりふり構っていられないのだ。俺と同時期に発表されるならまだしもいまさら三人目を発表するなど、むしろ胡散臭い。

 

トドメは「代表候補生」という肩書きだ。

代表候補生なんて数ヶ月でなれるものじゃない。天才肌の鈴でさえ一年はかかっている。

 

プレミアを付けるため?一夏より先に発見されたシャルルはデュノア社が温めてきた秘密兵器?

 

それこそおかしい。

デュノア社はわざわざシャルルを温める必要がない。シャルルの存在をさっさと発表すればいい。

「世界初の男性操縦者」という肩書きだけでお釣りが帰ってくる。

 

俺と同時期に発見されたシャルルは超天才で瞬く間に代表候補生レベルに成長した?

それこそ馬鹿らしい。

 

 

……これら全部を合わせるとシャルルを「超天才の三人目」と考えるより「男装したデュノア社の工作員」と考える方が自然である。

 

 

うん、完全に代表候補生って肩書きいらないよな。

これが俗に言う死にスキルか、まさか現実で見る事になろうとは。

 

 

ていうかデュノア社もよくこんなバレバレの工作員を送ってきたな。

シャルルがバレたら一巻の終わりだぞ?

しかもシャルルはフランス代表候補生だからフランス政府も連帯責任だしIS学園に入学しちゃったからIS委員会にも責任行くんじゃない?

 

素晴らしい芋づる式だ、この世界の大人はアホしかいないのか。

 

 

 

大人といえば織斑先生あたりなら余裕でシャルルに気付きそうなんだがなぁ……。

まさか見逃してる?

 

……そうか、シャルルがIS学園にすんなり入れたのは政府や委員会の中に協力した奴が居るからだろう。

不用意にシャルルを摘発すればそいつらを刺激して面倒ごとになるから、か。

 

なるほど。

藪蛇ならぬ藪バジリスクか。

……シャルルは放置してもいつかボロを出して勝手に自滅するだろう。

放置して問題無いならわざわざバジリスクを呼ぶことはしないか。

織斑先生ならバジリスクくらい余裕で倒せそうだけども。

 

 

 

「……鋼夜?鋼夜!」

 

「ん!?」

 

「どうしたんだよボーッとして。昼にしようぜ」

 

誰かに呼びかけられ、意識を現実へ戻せば目の前に一夏が。

考え事をしている間に昼食の準備が出来たらしい。

 

「すまん、考え事してた」

 

素直に謝り辺りを見回す。

 

俺たちは屋上に来ていた。

円テーブルにイス完備で季節の花が咲く花壇と庭園を思わせる石畳が敷き詰められている。

ていうかまんま庭園。

 

次にメンバー。

弁当が入っているであろう包みを持った箒。

酢豚の入ったタッパーを持った鈴。

笑顔でサンドイッチ入りのバスケットを持ったセシリア。

困惑顔のシャルル。

修羅場に気づかない一夏。

 

よし、いつも通りだな。

 

 

「ほら、鋼夜にもあげる」

 

と、鈴が酢豚入りのタッパーを渡す。

鈴は俺の右隣に居たので手渡しだ。

白米は無いのか白米は。

 

「鋼夜さんも、おひとつどうぞ」

 

今度はセシリアがサンドイッチを勧めてくる。

俺は笑顔でそれを受け取り、最後の最後まで食べないと決める。

一夏は恐らくセシリアの料理を知らないので犠牲になってもらう。

 

 

「うぐっーーーー!?」

 

「い、一夏!?」

 

噂をすればなんとやら。

セシリアから受け取ったサンドイッチを一口食べた一夏。

目は白黒し口元を押さえ顔は青ざめ脂汗をかいている。

……本格的に食べないで良かった。

 

「ど、どうですか一夏さん?」

 

「あ、あぁ。……美味しいよ」

 

なんとか笑顔を作ってそうセシリアに答える一夏。

それを聞いたセシリアは顔を綻ばせる。

 

「うわぁ……」

 

「うむ……」

 

「あはは……一夏も大変だね」

 

鈴、箒、シャルルである。

三者三様の反応を示しつつ、彼女らは内心で一夏に手を合わせているだろう。

 

 

「……一夏」

 

「お、箒の弁当か?ありがたいな!」

 

おずおずと差し出した箒の弁当を嬉しそうに受け取る一夏。

まぁさすがにアレの後だからな……。

 

弁当の中身は鮭の塩焼きに鶏肉の唐揚げにこんにゃくとごぼうの唐辛子炒めなどなど、バランスのいい美味しそうな献立である。

 

「ありがとな箒」

 

「あ、あぁ…………どういたしまして」

 

一夏の笑顔を受けた箒は赤くなり、小声で返事をした。

普段のギャップと相まって可愛く見える。が、肝心の一夏は弁当に夢中で気付いていない。

一夏死すべし。

 

「お前にもあるぞ」

 

と、箒が一夏のよりは少し小さいが弁当の入った包みを渡してきた。

 

「残り物になってしまったが……」

 

「いや今ちょうど白米食べたかったんだよ、ありがとう」

 

「ちょっと、あたしの酢豚にケチつける気?」

 

「白米くらいつけろ」

 

鈴が「なによー!」とか言ってきたが無視して貰い物の昼食を食べることにした。

途中で一夏と箒が「はい、あーん」をしたりセシリアがそれに嫉妬してサンドイッチを全部一夏に食わせたり「僕、来て良かったのかな」と呟いた同じくアウェーなシャルルと少し話して昼は終わった。

俺が貰ったサンドイッチ?セシリアが一夏に迫った時にこっそりバスケットに戻した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…………」

 

放課後。

俺は一人でアリーナへ向かっていた。部屋に四天に使う荷物を取りに行ったためだ。

一夏たちは先に行っており、俺も誘われたのでアリーナへ向かっている。

 

「なぜこんなところで教師など!」

 

「やれやれ……」

 

近道をしようと校舎裏を通るルートを通ろうとした時だった。

聞き覚えのある声が響いたのでそちらの方へ行ってみる。

 

そこにはボーデヴィッヒと織斑先生がいた。

あ、確かこんなイベントあったな。

 

「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」

 

「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」

 

ボーデヴィッヒは声を荒げるが織斑先生は目を細めるだけだった。

 

「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」

 

あ、それ同意。

織斑先生って教師より隊長の方が似合う。性格とか色々考えても。

まぁ、本人が教師したいって言ってるから別にいいじゃん。

 

「ほう」

 

「大体、この学園の生徒など教官が教えるにたる人間ではありません」

 

「なぜだ?」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を割かれるなどーー」

 

「そこまでにしておけよ、小娘」

 

「っ……!」

 

ボーデヴィッヒの言葉を遮る織斑先生。言葉の一つ一つに凄味と覇気が含まれている。

 

仕方ないね、だって日本は平和の国だし。

……いや、ボーデヴィッヒの言う事も一理あるけどね、だからこその織斑先生じゃないの?そういう未熟な人を導くのが。

ていうか思いっきりドイツに勧誘してるな。学園の特記事項仕事しろ、国の介入はアウトじゃないのか。

 

 

「少し見ない間に偉くなったな。十五歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

「わ、私は……」

 

ボーデヴィッヒは言葉を発しようとするが言葉にならない掠れた声だけが出ただけで、織斑先生に背を向け早足に去っていった。

 

織斑先生ー。もうちょっと優しい言葉をかけることは出来ないんですかね?

 

「そこの男子。盗み聞きか?異常性癖は感心しないぞ」

 

あらら、バレてる。

俺は隠れるのを止めて校舎の陰から出る。

 

「いえ、通りすがれるような雰囲気ではなかったので」

 

「私は別にそれで良かったんだがな」

 

いいのかよ。空気ぶち壊して良かったのか。

織斑先生ははぁ、とため息をつくとこちらをチラリと見る。

 

「まぁ、見て分かると思うがあいつはついこの間まで軍に居たんだ、この状況に慣れていないだけだ」

 

「いや、そんなレベルじゃないですよねアレ。それにあの人、織斑先生以外の言う事を聞かないと思うんですけど」

 

「仮に私がラウラに「お前らと仲良くしろ」と言う。確かにラウラは私の言葉に従うだろうが、それだけだ。あいつはいつまでも私に頼りっぱなしで自分で知ろうとしない、悪く言えば成長しない」

 

「……なるほど」

 

要約するとボーデヴィッヒは織斑先生離れしろ、と。

 

「まぁ……ラウラの事を頼んだ。あいつは悪い奴ではないんだ。……ではな。私は仕事が残っている」

 

それだけ言うと織斑先生は踵を返し、去っていった。

なるほど。厳しい口調の裏にはそんな思いがあったのか。

 

 

 

……………………ん?あれ?

ひょっとして俺いま厄介事押し付けられた?盗み聞きの罰なのか?

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺は誰に言うでもなく、口癖となったその言葉を呟くのだった。

 




鋼夜のツッコミ炸裂
このツッコミはずっと作者が思っていたことでもあります
……別にシャル嫌いじゃないですよ?


ISの9巻買いました
カラーページだけでお腹いっぱいになりました
で、他の脇役の挿絵はまだですか?(真顔)


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厄介事の第30話

ラウラとν-13ってそっくりだよな
とふと思った今日の昼
イマサラタウン


織斑先生とボーデヴィッヒのやりとりを目撃し、厄介事をなすりつけられた俺は当初の目的地である整備室に来ていた。

 

 

「あ……」

 

「どうも」

 

 

なにやら作業中だった更識さんと軽く挨拶を交わし、俺は機体を置く所定の場所に四天を無人で展開させる。

そして展開した四天にその辺から伸びているケーブルを接続していく。

 

今日ここに来たのは四天の武装が増えたので学園でも武装を編集できるようにするために、まずは四天を学園の整備のプログラムにアクセスして色々設定するためだ。

 

 

「……?」

 

さっきからやけに更識さんからの視線を感じるのだが、何故だろう。

うーむ。変な気配は感じないから問題は無いんだろうけど。

 

 

 

武装は作られ次第ラビアンローズが作った外部の記憶領域に入れられ、そこに四天がアクセスして好きな武装を出したり入れたりできるようになる。

ISの生体認証を使っているのでセキュリティは万全。この記憶領域にアクセスできるのは俺と製作者の輝さんだけだ。

 

 

さーて、後は整備室のパソコンを使ってこの右手にあります武装専用の記憶領域へのアクセスを可能にするディスクを四天に読み込ませればあら不思議。

設定が完了すれば俺のパソコンで四天の武装を編集できちゃいます。

武装だけでなく換装もパソコン一つで出来たらいいんだけどなぁ。

 

「……あらら?」

 

と、ここで問題発生。

整備室のパソコンのパスワードが分からない。

パソコンを開くのは問題無いがIS関係についてのデータを開けばガッデム。パスワード入力画面に遭遇しちまった。

 

パスワード?なんだろうか。

下手に変なの入力したら爆発しそうだな。

 

 

「……なにかあったの?」

 

パソコンの前で考え込んでいたら更識さんが声をかけてきた。

おお、救世主登場。

 

更識さんに事情を話すと彼女はカタカタとキーボードを操作し、パスワードを解除してくれた。

更識さんはここの設備を普段から使っているから知っていた、とのこと。

 

「……これで、大丈夫」

 

「ありがとう」

 

「気にしないで」

 

更識さんに礼を述べ、俺は作業に取り掛かる。更識さんも戻っていった。

 

ディスクを四天に読み込ませ、試しに記憶領域へアクセス。

 

 

四天

【装備中】

ビーム拳銃 召雷×2

ビームショットライフル 散雷×1

近接ブレード 篝火×1

アサルトライフル 泉花×1

 

【ボックス】

サブマシンガン 流花×2

ハンドガン 花綾×2

近接ブレード 篝火×1

 

 

ざっと一覧に目を通すが新しい武器は特に無いようだ。

四天はあらゆる状況に対応できるのを目標に作られた機体だ。

換装後の武装も流用できる。

暁が持っていた散雷を装備しているのがいい例だ。

 

確認を終え、作業が終わった。

役目を終えたディスクを回収し、四天の元へ。

 

 

「……あ、ごめんね」

 

「別にいいよ。減るもんじゃないし」

 

と、そこには四天を熱心に観察していた更識さんがいた。

 

 

「いい機体だね」

 

「俺の相棒だからな」

 

俺は少し自慢気になりながら四天の装甲に手を触れる。

 

「でも正直こいつの性能頼りなとこもある。まだ俺はこいつを使いこなせちゃいない。だからこそ、俺は強くならなくちゃいけないんだ」

 

まぁ、男代表だからなめられないためってのもあるけどね。

と、付け加える。

 

「…………」

 

更識さんは黙って俺の話を聞いていた。

 

……しまった。機体の話にしろ俺の話にしろ完全に地雷じゃねーか。機体はもちろん、更識さんが指南役受けてくれなかった事への当てつけに聞こえるし。

すっごい嫌味な奴に見えてるのかな俺。

 

 

「……如月くん」

 

「ハイなんでございましょう」

 

唐突に更識さんに声をかけられて変な返事になった。

殴られますかね、これは。殴られても文句言えない。

 

 

「……ISのこと、教えてあげてもいいよ」

 

「…………はい?」

 

なんだ?今もの凄いありえない言葉が聞こえてきた気がしますが。

……え?マジで?

 

「いいの?忙しいんじゃなかったっけ?」

 

「……たまには息抜きも必要だから」

 

なんということでしょう。驚きです。

諦めていた放課後の修羅場を回避できそうです。

息抜きついで?知らん、それでも嬉しい。

 

 

「ありがとう更識さん」

 

「……簪」

 

「へ?」

 

「更識さんは二人いるから、名前で呼んで」

 

頭を下げて礼を述べれば名前呼びの許可。

しかしこれは友好的な意味合いというよりは「更識」という名字が嫌いだという意味っぽい。

 

 

「じゃあ、簪さんで。よろしく、俺も鋼夜でいいよ」

 

「よろしく……鋼夜、くん」

 

「うん。で、簪さん。俺の訓練に付き合ってくれるお返しに俺も何かするよ。機体作るのとか手伝うよ?」

 

俺がそう提案すれば簪さんは驚いたような表情を見せた。

 

「……知ってたの?」

 

「失礼ながらのほほんさん……布仏さんから事情を聞いちゃったんだ」

 

簪さんはのほほんさんの名前が出た途端に何かを思いつめた表情をする。

……地雷踏んだ?

 

「…………」

 

「これでも一応俺も企業所属のISの操縦者だし、多分役には立つよ?」

 

内心で「やってしまった」と思うが今さら言葉を取り消す訳にはいかないので不自然にならないところで言葉を切る。

 

 

「……ありがとう」

 

何かを考える素振りをしたあと、顔を上げた簪さんは怒るでも不機嫌になるでもなく、そう言った。

 

「気持ちは嬉しいけど……私はもう少し一人で頑張ってみる」

 

……間違いなくお姉さんが絡んでるよなぁ。まぁ、家族の問題なので深入りはしないが。

 

「分かったよ。何かあったら協力するから」

 

「その時は……よろしく」

 

 

その後簪さんと二、三言会話をするがアリーナで一夏達が待っているのを思い出したので俺は四天を回収し、簪さんに挨拶をして整備室を出た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

整備室で簪さんと分かれた俺はすぐさま隣の第三アリーナへ向かう。

話し込んで少し遅くなってしまった。

 

ISスーツに着替えて更衣室を出た時だった。

 

 

「あ」

 

「貴様は……!」

 

同じくISスーツに着替えていたボーデヴィッヒとエンカウントした。

グレーのISスーツに身を包んだ彼女は俺を目にした途端に不機嫌そうな顔になる。

 

「そこをどけ。私は織斑一夏に用がある」

 

俺は眼中に無いってか。

 

「別にいいけど、何をする気なんだ?」

 

「貴様には関係ない」

 

そう切り捨て、俺の脇を通り過ぎようとするボーデヴィッヒ。

ですが、そうは問屋が卸しません。

 

「一夏に喧嘩売るなら辞めとけ」

 

「……なんだと?」

 

俺の発言が気に障ったのか、怒りの感情を滲ませながらボーデヴィッヒがこちらへ振り向く。

 

それに対して俺は平然とした顔で返す。

 

「勝敗は関係なくても一夏と問題を起こした時点でお前は織斑先生から嫌われると思うぞ。いや、ボコボコにされるかもな」

 

「……っ、貴様!」

 

いや、だってたった一人の家族だし?

それにお前が一夏を恨んでる理由の原因であるあの事件を考えればこれくらい分かるだろうに。

 

表に出さないし公私を区別してるからだけど、織斑先生って本当に一夏を気にかけてるよ。

 

 

「それに今のお前は生徒であの人は教師だ。普通、教師が問題児にいい感情を持つか?軍でも一緒だろ。命令違反した部下をお前はどうする?どう思う?」

 

こちらに殴りかからんとする勢いのボーデヴィッヒだったが俺の指摘が効いたのか、怒りは引っ込み、次に若干だが怯えの感情を感じる。

 

大方、さっきの織斑先生とのやり取りを思い出したのだろう。

 

「また拒絶されるかもしれない」といった感じか?織斑先生が凄んだ時は遠くから見てただけだけど凄い動揺してたし。

 

「つーか軍人が民間人に手を出しちゃいけないでしょ」

 

「くっ……」

 

そしてトドメ。

俺の言葉を言い返せないのか、ボーデヴィッヒは恨めしそうにこちらを激しく睨みつける。

 

「……興が醒めた」

 

しばらく睨み合っていたがボーデヴィッヒの方が先に折れた。

彼女はくるり、と方向を変えるとその場から立ち去っていった。

 

 

……これでボーデヴィッヒも頭を冷やしてくれればいいんだが。

 

ていうか軍で例えるのって使いやすいな。

これからあいつが何かしようとするたびに軍例え使うか。

 

彼女が去ったのを確認し、俺は一夏達のところに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(言っちゃった……)

 

多数の機器が並ぶ整備室に彼女、更識簪は居た。

 

(流石にいきなり過ぎたかな…)

 

彼女は無言で空中に浮かぶキーボードを叩く。

 

(でも彼……鋼夜くん、喜んでた)

 

エンターのボタンを押すと空中のディスプレイにエラーの赤文字が表示される。

 

(でも……私の事は本音から聞いたみたい)

 

再度、キーボードを操作して別のコードを入力してもエラーが表示される。

 

 

布仏本音。私の幼馴染みで大切な親友。

彼女とは最近話していない。

私が、避けているから。

だって、彼女は姉さんから何か言われているだろうから。

 

……まさか鋼夜くんも?

ううん、考え過ぎかな。

だって、彼は姉さんを知らなかった。

 

彼女の脳裏に、姉の姿が再び現れる。

自分よりずっと綺麗で、強くて、頭も良い、自分とは全く違う姉が、あの言葉を……。

 

自己嫌悪に陥りかけるが、頭を振ってその光景を脳から追い出す。

 

 

「……こんな時間」

 

そろそろアリーナが閉まる時間になった。

弐式製作があまり進まない事にため息をつきながら、簪は戸締まりをするために辺りを確認する。

 

「……あれ?」

 

ふと、簪はあるものを見つけた。

ISを設置する台座。先程まで鋼夜のISである四天が展開していた場所に一枚のディスクが落ちているのを。

普通なら気付くだろうが、あいにく作業に没頭していて気づかなかった。

 

「届けなきゃ……うん、届けないとダメだよね」

 

半ば自分に言い聞かせて彼女は落ちていたディスクを拾う。

一通り確認が終わった簪は整備室を後にした。

 

(そうだ……訓練の予定も話し合わないと)

 

自分でも不思議に思うくらい心を躍らせて彼女は寮へ帰っていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ああ、疲れたぁ」

 

一夏達との訓練を終えた俺は軽くシャワーん浴びて着替えを済まし、寮の自室へ戻っていた。

 

自室に着き、部屋をノックする。

が、反応なし。

ノブを捻るが鍵が掛かっていた。

 

「あれ?のほほんさんいない……の…か」

 

 

ポケットから部屋の鍵を取り出してロックを外す。

うん、のほほんさんは居ないな。

のほほんさん(・・・・・・)は。

 

「…………」

 

ガチャリ、と俺は無言でドアを開ける。

いつもならつい癖で誰もいなくても「ただいま」と言ってしまう自分だが今は違う。

 

「おかえりなさ~い」

 

「……」

 

「ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

 

そこには裸エプロンの生徒会長がいた。

 

バァン!

 

俺はドアを勢い良く閉じた。

 




ほーらみんな大好きなフラグだよ(恋愛とは言っていない)

遊戯王……ついにやっちゃったよ
つい衝動的に書いちゃったよ
向こうもよろしくです


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修羅場疾走の第31話

???「狭いとこが落ち着くのってなんだろうね、あれ」


俺は部屋の番号を確認する。

 

『1030号室』

 

うむ、間違ってない。

 

次は辺りを確認。

 

うむ、一年生の寮だ。

 

 

次に部屋の扉を開ける。

 

「わたしにしますか?わたしにしますか?それともわ・た・し?」

 

バァン!

 

俺は再び勢いよく扉を閉めてポケットからスマホを取り出す。

 

「織斑先生の番号は……」

 

「ちょ、待って!織斑先生はシャレにならないから!」

 

いつ挟んだのか、ドアの間に扇子を挟んでいたようで強引に部屋から出て来た生徒会長が慌てて俺からスマホをひったくる。

 

「返してください」

 

「いやよ」

 

短く答えると生徒会長は部屋へ入っていった。

 

このまま逃げてもいいのだがスマホという人質があるし、そもそも自室に帰れないので会長に続いて部屋へ入る。

 

「おかえりなさいませ♪ご飯にします?お風呂にします?それともわ・た・し?」

 

結局やるのかよ、それ。

なんというか逆に清々しい。

 

 

「じゃあ風呂で会長を食べます」

 

 

「…………えっ?」

 

 

おい。

 

 

 

 

おい。

 

せっかく乗ったのになんでそこで意外そうな顔をするんですか。

俺がアホみたいじゃないか。

 

 

「……あ、ごめんなさい。ちょっと意外だったからおねーさんびっくりしちゃったわ」

 

バッ、と開いた扇子には達筆な文字で「驚愕!」と書かれていた。

 

「そんな格好されて何も感じない男なんて居ませんよ」

 

そう、会長の今の格好は裸エプロン。

四天のハイパーセンサー越しに見てますが何か?

 

「あ、これの下は水着だから」

 

そこ重要?

まぁ、そんな事だろうと思ってました。

 

「それより、これはなんですか?」

 

そう言って俺は来客用のテーブルの上を指差す。

そこには誰かの手作りの料理が置かれている。

寮の部屋には小さいがキッチンがある。そこで簡単な調理は可能だ。

 

「私が真心込めて作った手料理よ?ささ、座って座って」

 

と、会長は俺を無理矢理席に座らせると自身も俺の正面に座った。

あとスマホも返却された。

 

せめて着替えろよ。

 

「如月鋼夜くん」

 

と、いきなり会長にフルネームで呼ばれる。

 

「先日のクラス対抗戦では助かったわ。貴方の勇気ある行動で被害は最小限に留められました。全校生徒を代表してこの私、生徒会長の更識 楯無がお礼申し上げます」

 

そう言って会長は頭を下げる。

 

 

「……どういたしまして?」

 

いきなりの事で呆気に取られた俺はこんな返答しか出来なかった。

 

「と、いうことよ。この料理と格好はサービスよ」

 

再び扇子を開けばそこには「感謝」と達筆な文字で書かれていた。

文字変わってる、とかツッコんだら負けなのか。

 

……胡散くさい。

なんとなくだが、嫌な感じがする。

 

 

俺は目の前の料理を見る。

炊きたてなのか、湯気のたっている白飯に湯気のたっている味噌汁。

白身魚の塩焼きにそして肉じゃが。

 

新婚さんの料理か何か?

 

毒とか入ってないよな。

毒とは言わないがタバスコ入りとかありそう。会長とはいま会ったばかりだがそういうのをこの人は平気でしてきそうだ。

 

「だいじょぶだいじょぶ。変なものは入ってないわよ」

 

そう言って会長は肉じゃがをパクりと一口。

よく見れば食事の準備は二人分。あなたも食べるんですか。

 

 

 

 

「それでね、如月くん。おねーさんちょっと個人的な話があるんだよねー」

 

コンッ……コンッ。

 

会長が話し始めるのと部屋の扉がノックされるのは同時だった。

 

間隔の空いた、控えめで遠慮がちなノック。

 

 

ーーーーっ!?ちょっと待てこの気配はヤバい!

 

 

「あら?誰か来たみたいね、おねーさんが出ようかしら」

 

辞めろ!ただでさえその格好で出られたらややこしい事になるのに今出られたら本格的にヤバい!

 

扉の向こうから感じる気配。

間違いない、いま部屋の前に居るのは簪さんだ!

 

俺の修羅場センサーが激しく非常警報を鳴らしている。

いま会長が出てしまえば修羅場どころか完全に俺がとばっちりの冷戦が始まってしまう。

 

会長はどうかは知らないが、簪さんは会長の事をよく思っていないのは確か。

 

修羅場はなんとしても阻止しなければ!

 

 

 

「出ないで下さい!」

 

俺は会長の手を取りクローゼットまで連行すると扉を開いて会長を中に押し込む。

このクローゼットは共用なので頑張れば人が隠れられるくらいには大きい。

 

さぁ、あとは俺が何食わぬ顔で対応を……

 

「えいっ」

 

後ろから会長に引っ張られ、俺もクローゼットの中に引きずり込まれた。

そして会長は素早くクローゼットの扉を閉める。

 

「な、なにするんですか!?」

 

「いやぁ、つい。それより大声出すとバレるわよ?」

 

共用で大きいクローゼットとはいえ二人で入れば窮屈だ。

…………会長の顔が近い。女の子特有のいい匂いがする。裸エプロンだから会長の身体の感触ががががが。

 

「こういうのって、ドキドキするわね」

 

無心だ無心。明鏡止水だ俺。悟れ、悟りのハイパーモードだ。反応したらいけない。ほら見ろ会長のにやけた顔を。楽しんでるぞこの人。反応してはいけない。

 

くそっ!今思えば何故シャワールームじゃなくてクローゼットにした。完全に失敗だ。

 

 

 

「…………」

 

何度か扉をノックされたが留守と判断したのか、簪さんは去って行った。

部屋が防音製で助かった。

 

 

去って行ったと判断すれば俺は急いでクローゼットから飛び出す。

 

「なにするんですか本当……」

 

「てへ☆」

 

てへ☆じゃねーよ。可愛いじゃないかこんちくしょう。

まったく反省する気ゼロだこの人。

 

「で、そろそろ着替えていいかしら?」

 

「……どうぞ」

 

制服片手に会長がそう言うがもうツッコむ気力も起きない。

マイペース過ぎるよ、この人。

 

「覗かないでね」と言い残して会長はシャワールームに引っ込んだが数分で出て来た。

覗く暇ないじゃん。

 

 

 

 

「味はどう?」

 

「美味しいです」

 

そして奇妙な食卓。

軽い世間話をしながら会長が作ったという肉じゃがを食べる。

味は普通に美味しい。

 

知ってるか?俺と会長は初対面なんだぜ?いや、本当に奇妙だ。

 

 

「会長」

 

「なにかしら?」

 

食事の手を止めて会長を見る。

会長も箸を置いて俺の言葉を待つ。

 

俺は前から気になっている事を聞くことにした。

 

 

「会長のISは会長自身が製作したって本当ですか?」

 

「そうね。システムや設計は確かに私が考えたわ」

 

俺がそう聞くと会長は得意気な顔で語ってくれた。

 

「でも70%は既に出来ていた機体を改修して作り直したって言った方が正しいわね。さすがに私でも篠ノ之束みたいに一からISを作る事は出来ないし、それに何人もの人が手伝ってくれたから完成したの。私一人じゃ無理だったわ」

 

「いや、充分凄いと思いますよ。尊敬します」

 

「ふふっ、ありがとう。でもいきなりどうしたのかしら?」

 

「会長って、妹さんが居ますよね?四組の簪さん」

 

俺が会長の疑問に答えるために逆に質問を投げかければ会長の表情が一瞬だが変わった。

 

「えぇ、そうよ。簪ちゃんは私の大切な妹よ」

 

何ともないように答えているが、会長の雰囲気が変わった。

先程のおちゃらけた空気と打って変わり、ピリピリと緊迫した状況になる。

 

内心で地雷を踏んだか、と後悔するが黙る訳にもいかず、全部話す事にする。

 

「簪さんが一人で自分のISを製作しているのは知っていますか?簪さんから理由を聞いたら、その中に会長のお話が出て来たんです。それに俺はこれから彼女にはお世話になる予定ですから、お礼に彼女のIS製作を手伝いたいと思っていたので」

 

俺もISに関わる事が多い立場ですし、簪さんの気持ちは分からなくもないですから。と付け加える。

 

「そういうことなのね。そっかそっかー」

 

俺の言葉にうんうんと頷きながら、納得した表情を見せる会長。

 

 

「……簪ちゃんに近付くな、って言えなくなっちゃったわね」

 

扇子を広げて口元を隠しながら会長は小さくそう呟いた。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「なんでもないわ」

 

扇子を閉じ、笑顔で会長はそう答える。

すみません、その呟きは思いっきり聞こえました。

 

 

「さあさあ、冷めないうちに食べちゃいましょう」

 

誤魔化すかのように会長に急かされ、奇妙な食卓は続いたのだった。

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末さまでした」

 

合掌。

ちょこちょこ会長と話しながらの食卓も終わりを迎えた。

会長の手料理は美味しかった。

 

皿を片付け、食器を洗う。

皿洗いは俺がする、と言ったのだが会長が自分がするから、と言うので皿洗いを任せた。

 

 

「如月くんって好きな子とかいるのー?」

 

「居ても恋愛なんて出来ません」

 

「なんかゴメン」

 

「いえ」

 

などなど、冗談を交えながらの世間話が続いた。

 

 

 

「なかなか楽しい時間だったわ。なにかあったらすぐ言いなさい、生徒会長であるおねーさんがカッコ良く助けてあげるわ」

 

それほど量も無かったので皿洗いもすぐに終わり、会長ももう帰るようだ。

部屋の前で会長を見送れば彼女は俺にウインクし、頼もしい言葉を言ってくれた。

 

「色々と、ありがとうございます」

 

「じゃあね、おやすみ。あ、本音ちゃんは後で帰って来ると思うから」

 

 

やっぱりのほほんさんと打ち合わせ済みだったか。そういえばのほほんさんって生徒会役員だったな。

 

会長が曲がり角を曲がって見えなくなるまで見送り、俺は辺りを見回してから部屋へ戻った。

最後まで警戒は怠らない。この光景を簪さんに見られてもアウトだから。

 

 

 

「はぁ……」

 

扉を閉めると身体にドッと疲れが一気に押し寄せてきた。

 

着替えを取り出し、シャワーを浴びようと脱衣場へ向かう。

服を脱ぎ、シャワールームへ入り蛇口をひねる。

シャワーからちょうど良い温度のお湯が出て自分の体を濡らしていく。

 

疲れた……肉体的にも精神的にも。

 

生徒会長が常識人かと思ったらただのシスコンだった。

いやまぁ、常識人という希望は最初の裸エプロンで粉々に散った訳だが。

 

会長から感じた嫌な気配は外れていなかった。

会長が俺に会いに来た理由は恐らくお礼もあっただろうが、一番は妹の簪さんについてだろう。

「妹に近寄るな」的な。

 

地下室連行からのゴルフクラブかな?下手したらあり得たかもしれなかった。

……なんでシスコンで真っ先に出るのが桜ノ宮なんだ。シスコンっていうよりシスヤンだよあれ。

俺の精神はもうヤバいのか。

 

 

しかし簪さんが部屋に来るとは思わなかった。あれは全力で回避して正解だった。

もし二人が鉢合わせていたらと考えると……やっぱり考えたくない。

 

なんでこうピンポイントで二人は喧嘩しててピンポイントでイベントが被っちゃうのかなぁ?

こういう修羅場は一夏の担当だろうが。なんで何もしてない俺に厄介事が来るんだよ死ね。

イケメン死ね、慈悲はない。

 

それに家族関係だから俺が口出せる事じゃないし。

 

まぁ、会長は話が分かる人みたいだし最終的に俺が何もしない事を理解してくれたようだから良かった。

 

前向きに考えれば生徒会とのコネが出来た。訓練相手が出来た。それでいいじゃないか。

そう思おう。

 

考え事も程々に、俺は髪と身体を洗ってシャワーを終える。

髪をドライヤーで乾かし、その後に帰ってきたのほほんさんと会話して一日を終えた。

 

 

あ、週末にラビアンローズに寄ろう。

 




一夏だったら会長の裸エプロンに反応しなかった
一夏だったら会長の呟きが聞こえなかった
一夏だったら修羅場だった
つまり一夏はホモ(暴論)

会長ってギャグもシリアスもこなせる万能キャラですよね
修羅場にしても良かったけど、そうすると完全に鋼夜の学園生活が終了してしまいそうになるのでこうなりました
つまらない?申し訳ありません


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会社散歩の第32話

原作までの時間潰しオリジナル回
オリキャラ注意報
ネタ注意報


「輝さん」

 

「なんだい鋼夜くん?」

 

「三人で合体して一つになるIS作って下さい」

 

「うん、それ最早ISじゃないよね」

 

 

俺が居るのはラビアンローズの社長室。

すっかり通い慣れたこの場所でこの会社の主である輝さんと談笑するのが唯一の楽しみだ。

 

 

「感覚を共有し合って気持ち良くなれる感じで」

 

「いやいや、無理だから」

 

「失望しました、カーチャのおっぱい吸って強くなります」

 

「タイトルのノリは一緒だけどまったくの別物だからね、あれ」

 

「俺のドリルは『言わせないよ』こいつ、直接脳内に!?」

 

 

学園に行く前は何時もやっていたやり取りも、今ではたまにしか出来ない。

俺のボケや輝さんのツッコミに不思議と力が入る。

しかし輝さんって何でもいけるんだな。前に「君が何歳だったのか分からない」と言われたが俺のネタについてくる輝さんの方が恐ろしい。

 

そしてナチュラルにテレパシー使うのはやめてほしい。

ニュータイプ同士だから出来るらしいけど頭に閃きみたいなの走るからびっくりするんだよ。

 

 

「いやぁ……いいねぇ。こうやって話が通じるのは」

 

「外国で日本人を見つけて喜ぶ日本人旅行者の気持ちが良く分かりますね」

 

「んー、こうやって適度に羽を休めないとね。鋼夜くんが最近来ないから朝礼でジーンの演説でも言おうかと思ってたよ」

 

「いやダメでしょ、あれ」

 

若本ボイスだし、演説終わったら兵士が発狂して仲間に向けて銃撃ちだすぞ。

ジョナサンが死んだのはショックだった。

 

 

 

と、第三者から見れば奇妙奇天烈な会話をしていると唐突に社長室の扉がノックされた。

 

「入りなさい」

 

すぐさま営業モードに戻る輝さん。

俺も身だしなみと姿勢を整えソファに座り直す。

 

「失礼します」

 

入ってきたのは青いタイトスーツにスカートの女性。

 

「社長。アプロディア様が海外視察より帰ってまいりました」

 

「分かった。霧島くんご苦労様。彼女は今どこだい?」

 

「恐らく食堂かと。後で此方に向かうと言っておりました」

 

「分かった、ありがとう」

 

入ってきたスーツ姿の女性は秘書の霧島 風花(きりしま ふうか)さんだ。

ややつりあがった目と肩にかかる青色のセミロングヘアが特徴だ。

上品で気品のある美人さんだがテンションが上がり過ぎたり怒ったりすると……本人のためにこれ以上は黙っておこう。

 

 

「では、失礼しました」

 

一礼し、部屋を出て行こうとするが霧島さんは俺に気付くと微笑み、一礼して部屋から出た。

 

ああしてれば普通に美人なんだけどな、あの人。

 

 

「鋼夜くん。一緒に来るかい?」

 

「じゃあご一緒させてもらいます」

 

 

輝さんはこれから副社長のアプロディアさんを迎えに行くのだろう。あの人とは数回しか会ったことないが一緒に行くことにする。

 

 

社長室を出てエレベーターに乗る。

ちなみにラビアンローズのビルは50階くらいある。でかい。

降りる感覚がするのでこのエレベーターは下の階へ向かっているのだろう。

しばらくすると目的の階層に着いた。

扉が開いたのを知らせる音が鳴り、輝さんと一緒にエレベーターから出た。

 

 

ラビアンローズにある社内食堂はとにかく豪華だ。世界各国の料理がお手頃な価格で味わえる。

ラビアンローズは日本人の他にも様々な国のスタッフや社員が居るから食堂もそれに対応している。

 

時間が朝のため、食堂にはあまり人が居ない。

だからこそ、彼女は一際目立った。

 

 

「……社長?」

 

「あ、大丈夫。そのままでいいから」

 

食堂の一席で麻婆豆腐を食べている金髪赤目の女性。長い金髪を後ろで束ねている。

この時間にスーツ姿でしかも麻婆豆腐食べてるとか、目立ち過ぎている女性。

この女性こそがラビアンローズの副社長にして、その柔和な雰囲気と女神のような微笑みで皆を癒すラビアンローズ全社員のお母さん、アービィ・アプロディアさん。

 

 

「申し訳ありません、お腹が空いていたのでつい……」

 

「いや、時間を無視して来たのはこっちだから気にしないで」

 

 

麻婆豆腐っていうのが笑える。

意外と庶民派なんですね、アプロディアさん。

 

 

「お久しぶりです、鋼夜」

 

「お久しぶりです、アプロディアさん」

 

俺に気付いたようで、笑顔でこちらに挨拶する。

 

「学園での生活は順調ですか?」

 

「はい。お陰様で」

 

「近頃あまり良くない噂を聞きます。安全な学園内とはいえ気を付けて下さいね」

 

「ありがとうございます」

 

「鋼夜くん。私は少し彼女と話すから、君は今日は自由にしていいよ」

 

アプロディアさんと会話していると輝さんがそう言ってきた。

 

「わっかりましたー」

 

俺はそれを了承し、二人に挨拶をして食堂を出た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お、鋼夜じゃないか」

 

「あ、鳳凰院さん」

 

食堂を出て会社を回っていれば声を掛けられ振り返れば、そこにはスーツを着てサングラスをかけた、長い赤髪の男性がいた。

 

その姿を確認し、返事を返すと同時に頭に鋭い痛みが走る。

 

「いたっ」

 

「バカヤロウ。フェニックス様と呼べ」

 

そう言われ、殴られた事に気付く。

この人こそ、輝さんお抱えのスーパーハッカーのフェニックスこと鳳凰院さんその人だ。

ラビアンローズに来てたのか。

 

 

「ま、それは置いといて社長を知らねーか?部屋に居なかったからよ、探してんだ」

 

「輝さんなら食堂に居るよ。アプロディアさんと一緒に」

 

「ほぅ、アービィも一緒か。よし分かった、ありがとな」

 

手を上げて礼を述べると鳳凰院さんは食堂へ向かっていった。

 

 

さて、散歩を再開……

 

「おそーーーーーーい!」

 

「うぼぁっ!」

 

しようと前を向けば赤い何かに体当たりされた。

 

「いたた……何するんだよ、カッちゃん」

 

しかも鳩尾に入った。

本当に痛い。

 

「お話が終わったら遊ぶって約束してたー!お兄ちゃんの嘘つき!」

 

「……やめて。お兄様が困ってる」

 

俺に抱きつく赤髪おかっぱの女の子を引き剥がすのは癖毛の茶髪をサイドアップにした女の子。

 

赤髪の女の子の名前はカチュア・リィス。あだ名はカッちゃん。

癖毛の女の子はシス・ミットヴィル。あだ名はミィちゃん。

 

ニュータイプに覚醒した際にジェットストリームアタックで俺を卒倒させた三人のうちの二人だ。

 

ラビアンローズにテストパイロットとして入社した際に輝さんから二人を紹介されたのだがそれ以降二人に懐かれてしまい、今ではラビアンローズに来る度に二人が襲撃してくる。

この二人は輝さんが何処かから引き取った養子らしい。

輝さんが何処かの研究所から助け出した被験者だとかいう

噂がある。噂が。

 

「あー、こらこら二人とも部屋に帰り……おお、鋼夜くんじゃあないか」

 

「あ、岩野おじさん」

 

現れたのは警備員の格好をした40代くらいの金髪の男性。

入社してガチガチに緊張していた自分にダジャレを交えつつ気さくに話しかけてきたいい人だ。

 

ジェットストリームアタック最後の一人で、輝さんが出社している時はカッちゃんとミィちゃんの二人の面倒を見ている。

日曜夕方五時は警備員室のテレビで笑点を見るのが楽しみだとか。

 

おじさんは俺に気づくとニカッとした笑みを浮かべてこっちにやってきた。

 

「今日も来てたのか」

 

「女だらけの学校って結構キツイんですよ」

 

「わはは!確かに女の園には憧れるがそこで生活しろと言われると儂も同じ気持ちになるな」

 

そう岩野おじさんと話していると唐突に腕を引っ張られる。

 

「お兄ちゃん!遊びに行こ!外いこ外!」

 

「え、あ、ちょっと……」

 

チラリと岩野おじさんを見るとおじさんは笑って手を振った。

 

「いいぞ、遊んで来なさい。社長には儂から説明しておこう」

 

 

「ありがとうございます」

 

「……行ってきます」

 

「行ってきまーす!」

 

 

その後、カッちゃんに連れられて外の公園で他の子供を交えて鬼ごっこをしたりして遊んだ。

辺りが暗くなるまで遊んだ俺達カッちゃんとミィちゃん二人の希望でファミレスに行き、その後ショッピングモールを回って楽しんだ。

 

一通り回ってベンチで休憩していると二人が疲れて寝込んでしまったので、俺は輝さんに迎えを頼んだ。

 

 

「随分モテモテだね、鋼夜くん」

 

「茶化さないで下さい」

 

迎えに来た輝さんの車に二人を起こさないように後部の座席へ運んだ俺は助手席に座っている。

二人を運んでいたら警察に声を掛けられたハプニングがあったが必死に説明したお陰で事なきを得た。

 

 

「でも、子供はいいですね。素直で純粋ですから」

 

変にドロドロしてないし。

素直でいい子だし。

本当、子供は可愛いし癒される。

 

何考えてるか分からない同級生やアホな大人より遥かにマシだ。

 

「鋼夜くん、私は場合によっては君を警察に突き出さなければならないんだが」

 

「ロリコンちゃうわ。アレです、シャアがララァをずっと求めていた気持ちが分かるって事です」

 

ロリおかん、最高。

 

「やっぱりロリコンじゃないか」

 

「違います」

 

性的な目で見たり恋愛感情を持つのは流石にないです。

 

アレだ。カッちゃんとミィちゃんの二人はこのまま、純粋で素直なまま育ってほしい。

間違っても将来パーティー会場を爆破するような悪女になって欲しくない。特にカッちゃん。

 

 

「明日、どうするの?学校でしょ?」

 

「今日は家に帰ります。学園には朝一で」

 

「分かったよ。何かあったら連絡するから、頑張ってね」

 

 

 

さぁて、明日からまた学園かぁ。

あぁ……鬱だ。

 




名前だけだったラビアンローズ社員を数人紹介
ラビアンローズがチート戦力過ぎ?細けェこたぁいいんだよ!

鋼夜はロリコンじゃないです
でもまぁ、あんな状況の場所に放りこまれればロリやホモに目覚めてもしょうがないんじゃないかと最近思えてきた

つまり一夏はホモ(これが言いたかっただけ)


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ツッコミ詰め合わせの第33話

タイトル通り
ツッコミツッコミアンドツッコミ


「おはよう、鋼夜くん」

 

「おはよう、簪さん」

 

朝。食堂で何を食べるか迷っていたら簪さんに声を掛けられたので振り向いて自分も挨拶を返す。

 

「……鋼夜くん。これ、忘れてたよ」

 

そう言って差し出されたのは一枚のディスク。

あ、これは……。

 

「ありがとう!無くしたと思ってたんだ」

 

四天を弄った時に使った記憶領域関連のディスクである。

無くしたのに気付いて三時間くらい部屋を探したけど無かったから諦めてたんだ。

 

「整備室に置いていったままだったよ」

 

……なるほど。この間、簪さんが俺の部屋を訪ねてきたのはこういう理由だったのか。

 

「ありがとう。朝、一緒に食べる?」

 

「……うん。あ、それと放課後についてだけど……」

 

俺と簪さんは朝食を一緒に摂りながら、放課後の練習について話し合った。とりあえず今日の練習は無いみたいだ。

ちなみに今日の俺の朝食はホットケーキだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時は流れてお昼休み。

何事も無く午前の授業が終わり、俺はのほほんさんをはじめとする数人のクラスの女子と学食へ向かっていた。

 

 

「かなりんは何にする~?」

 

「うーん、日替わりランチかな?」

 

「では、私はきつねうどんにします」

 

「シャケ召喚!」

 

「せっかくだから私はこのレディースランチを頼むぜ!」

 

券売機の順番を女子に譲り、一歩離れて何を頼むか決めようとした時。

 

「あ」

 

「…………」

 

振り向けばクラスで絶賛ぼっち中のボーデヴィッヒが居た。

 

「……ふん」

 

一瞬目が合ったが向こうはこちらを一瞥しただけで券売機の列に並んだ。

あ、普通に並ぶのね。

 

 

「後ろに立つな」

 

「並ぶのに無茶言うな」

 

 

券売機の列に並んだらいちゃもんつけられたがボーデヴィッヒは既に何を買うか決めていたらしく、素早く食券を購入していった。

 

よし、今日は唐揚げ定食だ。

食券を購入してそれをおばちゃんに渡す。

しばらくすると頼んだ唐揚げ定食が届く。

おばちゃんに礼を言って俺はクラスの女子がいる場所へ向かった。

 

「ごめん、俺ちょっとボーデヴィッヒと一緒に食うわ」

 

が、向かったのは一緒に昼食をとるためではなくその約束に断りをいれるためである。

 

「え……あのボーデヴィッヒさん?」

 

谷本が驚いたような顔で俺を見る。

ボーデヴィッヒはクラスで浮いている。

喋らないし、空気が重いし、一夏に手を出すのを阻止したとは言え転校直後の第一印象は悪く、とにかく近寄り難い。

 

「このままぼっちって可哀想じゃん?ちょっと特攻してくる」

 

一人ぼっちは寂しいもんな。

 

「生きて帰ってきてね」

 

夜竹さんが無駄にいい笑顔でそう言ってきた。

生きて帰ってこいって……どのくらい危険人物だと思われてるんだボーデヴィッヒよ。

いや、まぁ、あながち間違いではないが。

 

「俺……帰ったら結婚するんだ」

 

「如月くん、誰と結婚するのか詳しく」

 

「なんでさ」

 

妙に食いついてきた相川さんを適当に流して俺は一人でハンバーグを食べているボーデヴィッヒの元へ向かった。

 

理由としては一夏へのフラグ及び今回の騒動フラグが折りやすいから。

箒との同盟はまだまだ継続中だし、戦闘なんて嫌である。

 

それに織斑先生からも頼まれたし、クラスの関係がギスギスするのは正直見てられない。

今はまだ「近寄り難い子」程度の認識だから修正は効く、かもしれない。

 

 

一人で黙々と食事をしているボーデヴィッヒに声をかける。

 

「一緒にいいか?」

 

「…………」

 

「沈黙は肯定と見なす」

 

「勝手にしろ」

 

許可が出たのでボーデヴィッヒの向かい側に座る。

ボーデヴィッヒはハンバーグを食べている。なんか……微笑ましく見える。何故だ。

 

しばらくの沈黙。

お互いの間に料理を咀嚼する音だけが流れる。

気まずい、これは失敗した。

 

「……おい」

 

と、向こうが沈黙を破ってくれた。

俺は顔を上げてボーデヴィッヒを見る。

 

 

「貴様、何が目的だ」

 

「特に無いな。強いて言うならお前の応援か?」

 

「なに……?」

 

俺から応援という意外な言葉を聞き、ボーデヴィッヒは眉を吊り上げる。

 

「この間のお前と織斑先生との会話を偶然聞いてな。アドバイスをしてあげようと思ったんだよ」

 

「……ほう。言ってみろ」

 

「確認なんだがお前はどうしてIS学園に来たんだ、ドイツ軍シュヴァルツェア・ハーゼ隊の隊長ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐?」

 

「ふん、お前はあの男や他の女共よりは少しマシなようだな」

 

嘲笑を浮かべながら腕を組んだ彼女は自信満々に語る。

 

「教官を連れ戻すためだ。あの人の手腕は我がドイツで振るわれるべきであり、もっとも力を活かせる場所だ。こんな場所で腐っていく教官を、私は見たくない」

 

織斑先生が活躍してた時代には行動がファン以上に逸脱した、いわゆる信者が沢山出たらしい。

彼女は重度の織斑先生信者だと思われる。間違いない。

 

「IS学園の特記事項の中に『あらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意無しの介入を禁ずる』っていうのがあってだな」

 

なので、まず俺は正面から突破することにする。

 

「教官が同意すれば問題ないだろう?」

 

「アホか。お前が学園に生徒として入学した時点で色々アウトだよ。それにどうやって同意させるんだよ」

 

「それは……」

 

と、ここで初めてボーデヴィッヒが口ごもる。

前なら多分「織斑一夏をぶっ潰す」的な事を言ったかもしれないが、まぁ、こいつも色々考えてるんだな。

 

「確かに織斑先生は教師するより軍で教官やってる方が似合うと思うよ?俺もそう思う。でも先生本人が教師やりたいって思ってるんならそれは他人が簡単に口を挟むことじゃないよな?」

 

織斑先生が望んで教師やってるのかは知らんけどな。望んでるって事にしとこう。

 

「だが、ここの生徒が教官が教えるに足る人間ではない」

 

「意識が甘くて危機感が無くてISをファッションか何かと勘違いしている、て事か?」

 

「ああ、まさしくその通りだ」

 

ボーデヴィッヒの言葉を先に答える。

 

「否定はしない。確かに、軍に居たお前から見たらそう感じるかもしれない。でもな、考えろ」

 

「何をだ」

 

「今、何月だ?」

 

「六月だな」

 

「お前は何を言っているんだ」と言いたげな目で俺を見るボーデヴィッヒ。

そこまで分かってて、俺の言いたい事が分からないお前にその言葉を返したい。

 

「俺たちが入学したのは四月だ。授業でISに実際に触れたのは先月の半ば。しかもここは学校だ。ISのための学校とはいえ四六時中ISに触れてる訳じゃない。……胸を張って言えることじゃないが、まだまだ勉強中なんだよ俺達は」

 

それに日本は平和の国なんだよ。

軍に居た人から見たらおかしいかもしれないけどね。

 

「ふん、偉そうなことを言った割にはこの学園の程度が知れるな」

 

俺の言葉を聞いて再び嘲笑を浮かべるボーデヴィッヒ。

なんかイラっとくる。

 

「へー、ドイツって新兵をそのまま戦場に放り込むんだー。まともな訓練もないのかー。すげー」

 

「……なんだと?」

 

「え?お前が言ってた事を総合したらドイツはそういうことなんだろ?俺、何か変なこと言った?」

 

「くっ……」

 

鋭い視線で俺を睨むボーデヴィッヒ。

自分で言ってて思うが煽るのだけは上手いな俺。

 

「それと『この学園の生徒』ってお前は言ったけど、二年生と三年生の方も見て言ってるのか?」

 

「見ていない」

 

自信満々に答えるとこじゃないと思うよ、そこ。

 

「じゃ、見てこいよ。それで先輩方がちゃらんぽらんだったら俺は何も言わねぇ」

 

その場合は本当に何も言えねぇ。

 

「……いいだろう。たった一、二年学んだだけの奴らに私が負ける筈がないからな」

 

ほー、そこまで言いますか。そこまで言って負けたら恥ずかしいよそれ。

……いいこと思いついた。適任が居るじゃないか、最近知り合った俺の知ってる唯一の先輩が。

 

「じゃあ、俺の知り合いの先輩に模擬戦を頼んでおくよ。時間は放課後ね」

 

 

俺はスマホを取り出し、何故か登録されていたとある連絡先にメールを送るのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

またまた時間は流れて放課後。

 

俺は第一アリーナの観客席に居た。

 

アリーナでは既にIS同士の模擬戦が始まっており、ボーデヴィッヒと俺が呼んだ先輩……更識楯無生徒会長が戦っていた。

 

ボーデヴィッヒの機体は『シュヴァルツェア・レーゲン』

無骨な黒い装甲に背部の大型カノン砲が特徴の機体だ。

 

ボーデヴィッヒの機体は知識により知っているからいいが、更識会長の機体に俺は注目していた。

 

 

『ミステリアス・レイディ』

装甲の少ない水色のIS。

が、性能や機能が馬鹿げていた。

四天から送られて来る情報によると、ミステリアス・レイディはナノマシンの混入した水を操るISらしく、水のヴェールを纏えば防御に使える。ランスに纏わせれば攻撃に使える。とにかく水、水、水。

 

機体も凄いが、会長自身の技量も凄かった。

ボーデヴィッヒの繰り出すワイヤーブレードを軽々と避けて反撃する。

カノン砲も普通に避ける。

 

さすがはロシア国家代表。IS学園最強。

 

機体データばかり見ていたせいで勝負はあまり見ていなかったが模擬戦は会長の勝利で終わった。

 

途中からボーデヴィッヒに同情してしまうくらい会長は強かった。

なんだよ最後の「ねぇ、やけに湿っぽいと思わない?」って。

じゃあ俺は「なァ、粉塵爆発ッて知ッてるかァ?」って言えばいいのか、わかりません。

しかも水蒸気爆発ってお前……究極の初見殺し過ぎる。あれって対策あるの?PS装甲で耐えれるんなら希望はあるけど。

 

 

「っと……行きますか」

 

俺は四天の情報を整理したあと観客席からピットへ向かった。

 

「あら」

 

その途中で着替え終わって制服姿の会長と出くわした。

 

「どうだった?おねーさん強かったでしょ?IS学園最強の名は伊達じゃないのよ」

 

バッと開かれた扇子には「勝利」の文字が。

前に聞いたのだが生徒会長=IS学園の生徒最強、ということらしい。

通りで二年で生徒会長やってるわけだ、少し納得。

 

「はい、とても強かったです。今日は急なお願いを聞いてくれてありがとうございます」

 

会長は急なお願いにも関わらず了承してくれた。本当にありがたい。

 

「いいのよ、学園生活を楽しく送れるようにするのも生徒会の仕事だから。じゃあね、如月くん」

 

「では」

 

会長と分かれて俺は目的の場所へ向かった。

 

ピットには悔しそうな顔をしたボーデヴィッヒが居た。ISスーツのままだ。

 

「……なんだ、私を笑いにきたのか」

 

こちらを確認すれば、彼女はかなり弱った表情となる。

 

「いや、全然」

 

「……約束通り、この学園に対する評価は考え直そう」

 

ボーデヴィッヒは自嘲気味に答えると俺からくるりと背を向ける。

 

「あー、待て待て」

 

そして俺は彼女を呼び止める。

自己完結してもらっては困る。

 

「なんだ」

 

「最初に言っただろ、アドバイスをするって。正直言うとお前が言った事、ISに対しての意識とか的を射ている事もある。……いい方法があるぞ、お前の不満も織斑先生の評価もどうにかできる方法が」

 

「……言ってみろ」

 

もうどうにでもなれ、といった様子のボーデヴィッヒに笑顔を向けながら俺は言った。

 

「うちのクラスの奴らを指導してやればいいさ。お前が知識や技術で頭一つ飛び抜けてるのは知っている。クラスメイトが気に入らないなら自分の指導で引っ張っていけばいい。織斑先生が教師に向いてないと思ってるなら、いっそ先生の仕事を奪う勢いで……そうだな、模範生になってみたらどうだ?優秀な生徒を嫌う先生は居ないからな」

 

俺がそう提案すると彼女はいったん考える素振りを見せ、表情が徐々に明るくなっていった。

 

「……だが、私は奴を、織斑一夏を許さない」

 

が、一夏の事を思い出したのか。

すぐに恨めしそうな表情を浮かべる。

……恐らく、彼女はもう分かっているはずだ。一夏を恨んでも意味は無いと。だが、理屈ではないのだろう。

……これに関して俺は何も言えない。当人達で解決してくれ。

 

「それについては何も言わんが……まぁ、学年別トーナメントまで待てばいいさ。そしたらあいつと合法的に戦える」

 

「ふん……礼は言わんぞ」

 

もう俺は用済みとばかりに、彼女はピットを出て行った。

 

 

 

「ちょろい!」

 

誰もいなくなったピットで俺はそう呟く。

 

これでいい。

計画通り。

これでボーデヴィッヒ関係の問題はどうにかなるだろう。多分。

織斑先生の名前は本当に凄いな。

 

ボーデヴィッヒが素直な子で助かった。

 

 

問題を片付けて清々しい気分になるが、もう一つ特大の爆弾があるのを思い出し今度は沈んだ気分になった。

 




コウヤ=サンのクチサキジツ!

ラウラは素直
なんだかんだで鋼夜に言われた事を守ってます
ラウラのキャラが崩れてる?気にするな!

次はシャル
またツッコミだらけになると思うのでご了承下さい


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衝撃告白の第34話

シャルロッ党の皆様、お許し下さい!


 

「はぁ!」

 

「なんの!」

 

打鉄の射撃武器であるアサルトライフルの『焔備』から吐き出される銃弾を肩部のアンロックユニットであるVPS製の大型シールド『天岩戸』を前方に展開して防ぐと同時に今まで持っていた近接ブレードの『篝火』を粒子に戻し、ビームショットライフルの『散雷』に切り替える。

 

「おらぁ!」

 

ビームの散弾が吐き出され、それは相手が操る打鉄へ殺到する。

 

「まだ……!」

 

なんと相手はシールドを前へ突き出し、アサルトライフルから近接ブレードの『葵』に切り替えてビームの中を突っ込んできた。

 

「もらった……!」

 

一気に俺の前まで詰め寄ると、ブレードを大上段に構えて振り下ろす。

 

「なんとぉ!」

 

『篝火』の展開は間に合わないので『散雷』を掲げて銃身でブレードを受け止める。

 

と、そこでアリーナの使用時間終了を知らせるアナウンスが流れてきた。

 

お互いに武器を下ろし、粒子に戻してピットに戻った。

 

 

 

 

 

「やっぱり強いね、簪さんは」

 

「鋼夜くんもすごいよ……ISに乗って数ヶ月とは思えない」

 

「簪さんのおかげだよ」

 

俺がそう言うと簪さんは少し微笑んで「ありがとう」と言ってくれた。

 

四天を待機状態にさせてISスーツから着替えた俺は今まで対戦していた簪さんと一緒に整備室に来ていた。

 

今日の訓練は簪さんの専用機『打鉄弐式』を製作するために必要な機体のデータを取るためだったのだ。

 

「ごめんね、付き合ってもらって……」

 

「気にしないでいいよ。そうだ、四天のデータも使う?学園にある量産機はあらかたデータを取ったと思うし、同じ日本製だから相性はいいと思うよ?」

 

俺がそう提案すれば彼女は驚いたような表情を見せる。

 

「いいの?会社に何か言われるんじゃ……」

 

「その辺は大丈夫だよ。むしろ簪さんの事情を話せば喜んで協力するよ、うちの会社は」

 

前に輝さんに話したら「技術者の風上にも置けない」って言ってたし。

倉持が弐式を放置した理由がアホ過ぎるからフォローのしようがないというね。

 

弐式製作に他企業の俺が関わって倉持が何か言うかもしれない?そもそも弐式を放り投げて簪さんに押し付けた倉持が今さら何かを言える立場ではない。

 

「でも……」

 

「俺がいいって言ってるんだからいいんだよ。はい」

 

渋る簪さんに半ば無理やりに四天のデータが入ったUSBを渡す。

彼女も観念したように、それを受け取った。

 

「……ありがとう鋼夜くん。私、頑張るね」

 

「おう。手伝って欲しい事があったら教えてくれな」

 

 

お礼と共に向けられた彼女の笑顔に少しドキッとしたのは内緒だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「む~」

 

「どうした、のほほんさん」

 

簪さんと別れて部屋へ戻れば、黒い着ぐるみパジャマ姿で不機嫌なのほほんさんがベッドの上でうなっていた。

 

「なんでもないですよ~だ。かんちゃんとこうやんは仲が良いのに私だけ未だにかんちゃんに避けられてることなんて気にしてないですよ~だ」

 

思いっきり口に出していることはツッコんじゃいけないのか。

 

「俺にそう言われても……まだ簪さんに避けられてるの?」

 

「ぷっぷくぷ~」

 

頬をふくらませ、不機嫌気味に頷くのほほんさん。

 

そう。簪さんの事を紹介してもらった時にそのような事をちらりと聞いた。

そして会長やらの件を聞いた時に、はっきりと「避けられている」と言った。

 

 

「別にのほほんさんは会長に何か言われた訳じゃないんだよね」

 

「うん。私は純粋にかんちゃんのお手伝いがしたいの」

 

俺が前にプレゼントしたベアッガイの抱き枕を抱きながらのほほんさんは頷く。

どうでもいいが、可愛い。

 

「じゃあ今度、俺から話してみるよ」

 

「ありがとう~」

 

パタパタとパジャマの袖を振りながら笑顔でお礼を言うのほほんさんさん。

こちらこそありがとう。その笑顔だけで俺はあと十年は戦える。

 

 

俺のメンタルが崩壊寸前になった時に励ましてくれたのは彼女だ。

ただ人形を投げられただけの気もするが、助けられたのは本当だ。

 

のほほんさんによるこの癒し空間が無ければ俺は潰れていたかもしれない。

のほほんさんが俺と相部屋なのは恐らく会長の命令だろう。それに感謝したい。

 

 

 

「鋼夜、いるか?」

 

しかし俺の癒しの空間は突然訪問してきた一夏により崩壊した。

 

俺に用があると言う一夏に対して嫌な予感を覚えたが、俺は不機嫌になりながらも黙って一夏に付いていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

案内された一夏とシャルルの部屋へ入ると中にはシャルルが居た。

ジャージ姿で、女性特有の胸のふくらみがある状態の。

 

俺はそれを見て一瞬で全てを理解した。

 

「いいか、落ち着いて聞いてくれ」

 

「シャルルは女なんだろ。知ってるよ」

 

ドアの鍵を閉めた一夏が恐る恐る切り出すが、俺は言わんとしていることを先読みして言葉を遮った。

 

「え……知ってたのか?」

 

「気づかない方がおかしいレベル」

 

面食らった表情の一夏に対してため息をつきながらそう答える。

気付けよ。いや本当、マジで。

 

「あはは……やっぱりバレてたかぁ」

 

自嘲気味に笑うシャルル。

まぁ、一夏と違って少し丁寧に接し過ぎたからか?シャルルも気付いていたようだ。

 

「呼ばれた理由はだいたい分かった。口裏は合わせるしこの事は誰にもバラさない」

 

避けては通れない道とは薄々感じていたが、厄介事を避けるためと二人を安心させるために求められているであろう回答を告げる。

 

「……理由、聞かないの?」

 

と、理由を聞かれると思っていたのか。シャルルが俯いていた顔を上げて問いかけてきた。

 

「余計な詮索はしない方がそっちもいいだろ?」

 

「そうだぞシャルル。無理しない方がいい」

 

「ありがとう二人とも。でも、もう一夏に話しちゃったから、どうせだし話すよ」

 

俺と一夏の静止に弱々しい作り笑顔を浮かべて彼女は自分の出生から今に至るまでを語った。

 

前世の知識と同じく、彼女はデュノア社長と妾の間に出来た子供で、母親が死んだ後にシャルルのIS適性が高いことを知ったデュノア社が彼女を引き取り、その後に男装させてこの学園に送り込んだという内容だった。

 

俺は無言で、無表情でそれを聞いていた。

 

「……こんなところかな。僕については。今まで嘘ついててごめんね」

 

一通り話し終えたシャルルは微笑んだあと、深々と俺に頭を下げた。

 

「そうか。じゃあ俺は帰る」

 

「……いや、ちょっと待て待て!」

 

適当に流して部屋を出ようとしたら一夏に止められた。

 

「なんだよ」

 

「いや、もうちょっと何かあるだろ!こう、さ!」

 

一夏は俺がシャルルに対して慰めの言葉か何かをかけると思っていたのか、自分でも何が言いたいのか分からず身振り手振りで伝えようとする。

 

「それはシャルルに言ってくれ」

 

「……え?」

 

俺はため息を吐きながらそう告げた。

まさか自分が呼ばれるとは思わなかったのか、シャルルは驚いた表情でこちらを見る。

 

「なんだ?笑えば良かったか?……なあシャルル。お前、これからどうするんだ?」

 

「どうって……」

 

「学園の特記事項でIS学園はどこの干渉も受けないから三年間は大丈夫だ」

 

シャルルの代わりに生徒手帳を手にした一夏が答えた。

 

「一夏、お前は黙れ。俺はシャルルにどうしたいか、どうしてほしいかを聞いているんだ。でないと俺はなんにもできないんだが」

 

「僕は……」

 

俺の問いに答えず言葉を詰まらせるシャルル。

 

「このままフランスへ帰って親子仲良く牢屋行きか?罪も無い会社の社員も巻き込むのか?復讐したいと思うならそれも一つの案だな。一会社員でもある俺から見れば迷惑極まりないし普通に殺意が沸くレベルだ」

 

「そんな……僕は……」

 

「おい鋼夜!」

 

一夏が怒鳴るが無視して俺は言葉を続ける。

 

「正直な、どうでもいい身の上話をされて勝手に俺を面倒事に巻き込んでおいて何なのこれ」

 

「鋼夜ぁ!」

 

 

 

「一夏さん、いらっしゃいます?夕食をまだ取られていないようですが、体の具合でも悪いのですか?」

 

我慢できなくなった一夏が怒鳴り、一触即発の空気になるが、そこに救世主とも思える第三者の介入が。

 

 

「セシリアか?俺だ、鋼夜だ」

 

セシリアの気配を読んでいた俺は適当に返事をする。

そしてジェスチャーでシャルルに隠れるよう指示を出す。

シャルルは何のことかを理解すると即座に布団を被った。

今のシャルルは誰がどう見ようと女にしか見えないからな。

 

「鋼夜さん?どうして一夏さんのお部屋に?」

 

「シャルルが具合悪いらしくてな、なんか呼ばれた」

 

と、ここで一夏にもジェスチャーで何か言うように指示を出す。

 

「そ、そうなんだ。シャルルの様子を見てたから夕食はまだなんだ」

 

多少慌てているが、一夏もなんとか合わせてくれた。

 

「まあ、そうなんですか?」

 

「ああ」

 

「そ、そういえばそんな時間か」

 

セシリアが引き取ることを願い、必死にごまかす俺と一夏。

 

「まだ夕食はとっていないということですね?ではわたくしも夕食はまだですし、ご一緒しませんか?」

 

よしきた!いけ一夏!

 

「わ、わかった!もう少しシャルルの様子を見るから先に行っててくれ。後で行くから」

 

「む……分かりましたわ。先に行って待っています。デュノアさん、お大事に」

 

不満気な声を漏らしたが納得して彼女は部屋の前から去っていった。

 

「はぁー」

 

「ふぅ」

 

緊張の糸が切れ、一夏やシャルルからため息が漏れる。

 

 

「さっきは色々言い過ぎた。頭冷やしてくる」

 

「あ、うん……」

 

「……行くぞ、一夏」

 

「あ、ああ」

 

シャルルに向き直り、そう一言告げて一夏と共に部屋を出た。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「鋼夜」

 

「怒るなよ」

 

部屋を出た途端に詰め寄ってきた一夏を落ち着かせる。

廊下で話をするのはマズいのでこっそりと寮の外へ移動する。

 

俺と一夏は適当なベンチに腰掛けて話を再開させる。

 

「お前の言いたい事は分かる。でもな、これはシャルルの問題なんだ」

 

「でも、仲間が困っていたら助けるもんだろ。俺はシャルルを放っておけないんだ」

 

そう言う一夏の瞳には強い決意が見て取れた。ああ、確か一夏は親がいないんだったか。どおりで。

 

「むしろなんで鋼夜は怒ってるんだよ!シャルルは今、弱ってるんだぞ!」

 

「あいつの態度にイラっときたから。なあ一夏、さっき学園の特記事項を提案したのはお前か?」

 

怒鳴る一夏の言葉をバッサリ切り捨て、さらに問いを重ねる。

 

「ああ、そうだよ」

 

怒りの感情を滲ませながら一夏は答えた。

 

「なんで、それを提案した?」

 

「なんでって……シャルルのために決まってるだろ!あんなの理不尽過ぎる!」

 

「落ち着け一夏。じゃあ最後の確認だ」

 

身を乗り出して迫る一夏を抑えながら、深呼吸して再び問いかける。

 

「シャルルは、お前に助けを求めたか?」

 

「はぁ!?んなもん関係無いだろ!目の前で困ってる奴がいるんだ!仲間を助けるのが悪いのかよ!?」

 

今更何を聞いているんだ、という顔で一夏は俺の胸ぐらを掴んだ。

 

「……はぁ、分かった。落ち着けよ」

 

観念したように俺が両手を上げれば一夏は慌てて俺から離れる。

 

「っ……スマン。熱くなり過ぎた」

 

「俺も同じでおあいこにしよう。……一夏、シャルルはお前に任せる。俺は関わらない方がいいだろ」

 

ベンチから立ち上がり、寮へ向かって歩き出す。

背後で一夏が何か言っているが、今は聞く気が起きない。

 

俺は夕食も取らずに部屋へ帰った。

 

 

のほほんさんは夕食のために食堂へ向かったからか、いなかった。

いまはそれでいい。

 

背中からベッドに倒れこみ、深いため息をつく。

 

嫌になる。自分でもどうしてあんな態度を取ったのか分からない。

シャルルの態度が気に入らなかったのは本当だ。

 

最初は、罪もない無関係のデュノア社の社員を巻き込もうとしたシャルルに腹が立っただけだった。

 

 

しかし話を聞くうちに俺は気付いた。いや、感じてしまった。シャルルの感情を。

 

彼女は諦めている。抵抗せず状況に流されるままに過ごしている。自分の意志など既に消えていた。

これだけならまだ良かった。

 

それなのに俺は彼女から「自分は救われて当然」という感情も読み取ってしまった。

彼女は現状を変えようとせずに流されたまま悲劇のヒロインを気取って生きている。

 

なぜ抵抗しないのか。なぜベストを尽くさないのか。なぜ自分の本心を告げないのか。なぜ自分を隠すのか。

 

それが許せなかった。

 

 

思い当たる節はある。

彼女は一回も自分の気持ちや感情を俺や一夏に打ち明けていない。「助けて」とも「放っておいてくれ」とも言っていない。泣いてもないし悲しんでもいない。

 

一夏の提案に乗っかり、流されただけだ。

 

それに俺や一夏が止めたのに彼女は俺に自分のことを話した。巻き込んできた。

話して楽になりたかった、もしくは無意識のうちの行動なのかはわからないが悲劇のヒロインを演じて俺に助けさせようとした可能性はある。

 

 

「ハッ。鈍感過ぎるのは論外だが、敏感過ぎるってのも考えものだな」

 

そう自嘲気味に呟き、目を閉じる。

 

 

正直、一夏が怒るのも無理は無い。

一夏からしてみれば俺がいきなりシャルルに追い打ちをかけるみたいに怒ったんだから。

第三者から見れば大体俺が悪く見える。

 

 

明日からどうしよ。二人とは気まずくなるな。

とりあえずシャルルのフラグ阻止は失敗だな。印象が悪くなり過ぎた。

一夏とのフラグは時間の問題だろう。

 

この流れだとなんやかんやでボーデヴィッヒも無理かもしれない。

 

箒、すまん。




石投げないで!ちょ、顔はやめ、アッー!


原作でシャルが自分の本心も何も言わずに流されてるのはさすがに許せませんでした

彼女自身は自分の気持ちとか本心を言ってないですよね?
「助けて」とか一言も言ってないし
大浴場で「ここにいたい」って言ってたけどあれ一夏が「ここにいろ」って言ったからそうしただけですし

(主人公のシャルルートは)ないです

ていうか気付けば主人公がヒロインのフォローをして回っている風潮



箱買いしてもシャドールが出ねぇぞどうなってんだKONMAIこの野郎!(ガチャガチャ
ペンデュラムのホロとかいらんわ!
シャドールシャドール言うけどテラナイトも大概じゃねえか!
KONMAIは音女シリーズ増やせよ(ガチャガチャ

そしてHEROお前ら性能壊れすぎ


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フォロー巡りの第35話

こいついつもフォローしてんな(困惑)

自分でも何言ってるのか分からなくなってきた(混乱)
今回は酷いよ!(錯乱)


 

ここ数日の学園内で変わった事といえば、まずラウラ・ボーデヴィッヒのことが上がるだろう。

 

どこか冷たく近寄り難い雰囲気を持ち、実習で他生徒の指導にまともに参加していなかった彼女がいきなり指導を率先して行うようになった。

軍隊並の厳しい指導で「そんな事で教官の指導を受けられると思うな!」が口癖になっている。

が、元々IS学園には織斑先生のファン……いや、もはや熱狂的な信者とも言える生徒が多数いる。

「織斑先生のためなら!」と、なんやかんやでやる気になっている生徒も多く、ボーデヴィッヒに関しても「自分達と同じ織斑先生のファン」と認識され、彼女の指導は厳しいながらも間違った事はしていないので結構皆からも受けいれられ始めている。

 

この変貌ぶりにさすがの織斑先生も驚いたらしく、俺に何事かと聞いてきた。

「先生の名前を使わせてもらいました」と答えれば少し微妙な顔をしたが前よりはマシという結論に辿り着いたようで、引き継ぎボーデヴィッヒを頼むと言われた。

いや、なんでやねん。ボーデヴィッヒに関してはもうゴールしていいだろ俺。

 

 

 

そしてもう一つ。

俺、一夏、シャルルの男子三人組についてである。

 

あの一件以来どうもギクシャクしており、お互いがお互いを避けている。一夏とシャルルは普段通りだが。

 

その光景を見た腐っているクラスメイトから『シャルル争奪戦に敗れた如月』やら『一夏をNTRれた如月』などという噂が広まっている。

ふざけるなよ腐女子共、俺はホモじゃねぇ。無駄に可愛いのに残念な思考回路しやがって。

陽性反応出させるぞ、何のとは言わんが。

 

 

俺を落としたいなら不二咲か宮小路お姉様かシュライバーかマオか名も無き双子かアストルフォか結城蛍かポイズンか鞠也か水嶋咲かガーデン・アイリスでも連れてこい。ギャスパーやブリジットでも良いぞ、フハハハハハ。

 

 

…………はぁ。さすがにこれは無いわ。ヤバいね色々と。精神が。

 

 

 

そーいえば大浴場が使えるとかいう話があったな。

前は時間をズラして使う予定だったらしいが多数の生徒の異議申立てにより見送られたそうな。

俺は気にしなかったが一夏が悲しんでいた。

ていうか理由が『私たちのあとに男子が入るなんて、どういう風にお風呂に入ったらいいかわかりません!』とか、なんだよ。

時間を前にすれば『男子のあとのお風呂なんてどういう風に使えばいいんですか!』とかふざけてるとしか思えない。

前者は意味不明。

別にお前らの残り湯でご飯炊く変態なんていないしそもそも設備が整ってるなら大量にシャワーもあるし浴場の湯は循環しながら洗浄されてるだろ。

後者は分からん事も無いが……別に浴槽のお湯は貯めっ放しって訳じゃないだろ……。循環しながら洗浄されるだろ……。

 

これが女尊男卑かとあの時は思った。

イラついたから腹いせに俺たち二人も女子と全く同じ内容で異議申立てしといたけどな!

慌てた山田先生が面白かったのを覚えている。

 

 

 

 

「鋼夜」

 

「ん……箒か」

 

放課後の教室に一人で黄昏ていると箒に話し掛けられた。

 

「少し付き合ってもらいたい。いま、時間あるか?」

 

いつもなら一夏に着いて行ってアリーナに居るはずの箒がわざわざ残って俺に声を掛けてきた。

ということは大事な話があるのだろうと判断し、俺は箒の誘いを承諾した。

 

 

「悩みでもあるのか?」

 

箒に着いて歩いていると、そう聞かれた。

 

「些細な事さ」

 

あるといえばあるのだが、ホイホイ言える内容ではない。

俺は適当に流すことにした。

 

「一夏のことか?」

 

さすがに最近の男子の態度を見れば俺と一夏の間で何かあるのは一目瞭然。案の定、そこを突かれた。

 

「少し喧嘩してな。まぁ、そのうちどうにかなる」

 

箒は俺の答えに不服そうな顔をするが「そうか」とだけ答え、それ以上は追求してこなかった。

 

 

「ついたぞ」

 

「武道場か」

 

箒が俺を連れて来たのは武道場だった。

いつもなら柔道や空手や剣道といった部活動で使われているはずだが、今は誰もいなかった。

 

「今日は偶然にもここが空いていると聞いてな」

 

そう答えると箒は中へ入っていく。

俺も黙って後へ続く。

箒も俺も、入る時に一礼するのを忘れない。

 

「懐かしいな。中学の頃を思い出す」

 

「あぁ、よく居残り練習してたよな」

 

箒が正座したので俺も正座。

お互いに向き合う形で正座していると、ふと箒が口にした。

 

 

「鋼夜は覚えているか?」

 

「何をだ?」

 

「中学最後の全国大会が終わった時のことだ」

 

真剣な表情になった箒は俺に尋ねてきた。

箒の言ったことなら覚えている。色んな意味で衝撃的だったから。

 

「あぁ、覚えてるぞ。こんなものいらなーい!とか言ってトロフィーと賞状を投げ捨てようとしてた時だろ」

 

中学最後の夏の剣道全国大会。

見事に個人戦で優勝した俺と箒だが、箒は優勝して控え室に戻った途端にいきなり泣き出してトロフィーと賞状を投げ捨てようとしたのだ。

あれにはびっくりした。

 

 

「……あぁ。あの時の私は純粋な気持ちで相手に挑んでいなかった。ただの腹いせ、八つ当たり、暴力で相手を叩き潰していた。そして優勝した。あの時の自分が醜くかった。相手の大会に望む思いを身勝手なわがままで踏みにじっていた自分が」

 

やはりあの時のことが尾を引いているのか、苦々しい顔をしながらも箒は語る。

 

「じゃあその時のお前に俺が何て言ったか覚えてる?」

 

「ああ、覚えている。『それに気付いたんならお前は大丈夫だ。最後までそれに気づかない奴だっているんだ。成長できたと思って糧にしろ』だったな」

 

 

……よく覚えてるな。

あの時は俺も自己嫌悪に陥ってたから何を言ったかまでは覚えてないんだよな……。

俺は二度目の人生ってチートを使って優勝した。優勝して、箒の話を聞いた途端に俺も同じ自己嫌悪に陥った。

 

最終的に「そんな事情知ってるのは俺だけだし別にいいか」って結論に至ったから開き直って割り切ったけど。

 

「『そもそも大会なんて優勝したい!っていう自分のわがままを押し通すためのものだし気にする必要は無いだろ。参加者の思いを踏みにじりたくないなら笑顔でトロフィーと賞状を学校に持って帰るんだ。それが優勝した俺たちの義務だ』とも言っていたな。……本当、お前には助けられてばかりだな」

 

微笑みながらそう語る箒。

 

そんな事まで言ってたのか俺。

いや、まぁ、あの頃はなんやかんやで楽しかったしな。

カッコつけててもおかしくない。

 

 

「で、それがどうかしたか?察するにお前も悩みがあるんじゃないのか?」

 

俺がそう問いかければ箒は一旦目を閉じ、そして真剣な表情になり口を開く。

 

「私は力が欲しい」

 

「力か」

 

俺が聞き返すと箒は頷く。

 

「一夏も最近は腕を上げてきた。あの調子ならすぐにでも私を追い抜くだろう。それは嬉しいんだ」

 

嬉しさ半分悔しさ半分といった顔で彼女は静かに語る。

 

「だが、それと同時に怖いんだ。一夏が私を追い抜いたら私はいらないと思われるんじゃないか、用済みなんじゃないか、足手纏いになるんじゃないかと思っていた」

 

顔を伏せ、表情を暗くしながらも彼女はなんとか言葉を絞り出していく。

 

「一夏や鋼夜、セシリアや鈴には専用機がある。だが私には何も無い。私だって一緒に強くなりたい、一夏の隣に立ちたい、一夏のために戦いたい。……クラス対抗戦のとき、私は何も出来なかった。見ているだけだった。だから私は……力が、専用機が欲しい」

 

彼女は目尻に涙を貯めながらも強い決意のこもった表情で最後まで言い切る。

彼女から様々な思いや葛藤を感じる。

 

「自分が凄いわがままを言っているのは分かる。中学の頃から何も変わっていない。だが……」

 

「分かった、だから無理するな。一旦落ち着け」

 

無理して言葉を紡ぐ箒を手で制し、深呼吸するように言う。

赤椿だっけ?あれを頼んだ裏にこういう思いがあったとはな……。

 

 

落ち着いたのを見計らって俺は口を開く。

 

箒は本当に悩んでいる。そして勇気を出して俺に打ち明けてくれたんだ。

ならば俺も、其れ相応の態度で臨む必要がある。

 

「まず力を持つこと、もしくは力をつけることは間違いじゃあない。力を持つ過程も大事だが、肝心なのは力の使い方、使い道さ」

 

「…………」

 

箒は黙って俺の話を聞いている。

 

「力の使い道や使い方を誤らないこと。これは専用機以外のあらゆる事にも言える。そして力を持つことに対しての覚悟も大切だ」

 

「覚悟……か」

 

箒が繰り返した言葉に俺は頷く。

 

「ああ。覚悟は大事だ。俺も専用機を、力を持つ者として覚悟はしていた。専用機を持つってことは、色々な責任やプレッシャーがのしかかる。ISなんて機密情報だらけだし力の塊だし壊せば金がかかるし盗まれたら大変だ。皆、それを納得して専用機に乗っているんだ。覚悟を持つことは俺が専用機を受け取った一番最初に言われた事さ」

 

「…………」

 

「それと、自分が納得できるかどうかも大事だぞ。自分が専用機を得たとして、その過程や結果に納得できるかどうかだ。それで少しでも後悔が残るなら、考え直せ」

 

俺の答えを聞いた箒は俺の言葉の一つ一つを丁寧に吟味し、考えている。

 

「ふっ……大事なことだらけだな」

 

「語学力が低いのは自覚している」

 

答えに至ったのか、何処か吹っ切れた表情になった箒は軽口を飛ばせるくらいにはなったようだ。

 

「ありがとう。お前に相談して良かった」

 

「そう思ってくれるなら何より」

 

「ああ。私はまだまだ未熟だということを改めて知ったよ。もう少し自分を見つめ直して精進していこうと思う」

 

そう答え、正座から立ち上がる。

俺も箒に続いて立ち上がる。

 

「時間を取ってすまなかった」

 

「いいのいいの。あ、じゃあ少しおせっかい。一緒に戦わずとも、ずっと隣に居て支え続けることもアリだと思う」

 

俺のおせっかいを聞いた箒は驚いたように目を丸くすると、少し微笑みながら「覚えておこう」と言った。

 

 

箒と一緒に武道場を出ると俺の携帯に一通の着信が届いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「鋼夜、少しいいかな?」

 

その後、することが無かったので部屋へ帰ると部屋の前でシャルルが待ち構えていた。

 

「……いいぞ。いま部屋を開ける」

 

のほほんさんは多分、簪さんと仲直り中だと思うのですぐには帰ってこない。

今朝は簪さんと朝食が一緒だったから、それとなく話しておいた。

 

 

シャルルが俺の元へ来たのは、あの話をするためだろう。

俺はシャルルを部屋へ入れた。

 

「紅茶でいいか?」

 

「うん、ありがとう」

 

ルームメイトがお菓子好きなため、必然的に飲み物も多くストックがある。

 

 

来客用のテーブルに座るシャルルに紅茶を出し、俺も座る。

 

しばらく沈黙が流れたが、シャルルが切り出す。

 

「あのあと、何があったか一夏に聞いたんだ」

 

あのあと、というのはシャルルの正体が分かり俺と一夏が部屋を出た時のことだろう。

 

「一夏って、すぐ顔に出すから分かりやすいんだ。それで、思い切って来たんだ」

 

そうか。それはこっちとしても好都合だ。

 

「一夏から話を聞いて、色々考えて分かったんだ。鋼夜の言ってた事はその通りだった」

 

「あの時は言い過ぎた。謝る」

 

「ううん、謝らなくていいよ。むしろ謝るのは僕の方だから」

 

シャルルは紅茶入りのカップを持ちながら、少し自虐的な笑みを浮かべる。

 

「……単刀直入に言おう。これからどうするんだ?それを話しに来たんだろ?」

 

「あはは……本当にいきなりだね。……僕は学園に残るよ」

 

シャルルの答え。

……正直、これは予想出来た。

 

「だから僕は戦うよ。デュノア社と、父と」

 

シャルルは戦うことを選択した。

会社と、父と。

……うん、いいんじゃないかな。

 

「方法はあるのか?」

 

腐るほどあるけどな。と内心で思いつつ聞いてみる。

 

「まだ分からない。でも学園の特記事項で三年間は大丈夫だから、在学中……ううん、今年中になんとかするよ」

 

弱々しいが、笑みを浮かべて明るく振る舞うシャルル。

さて、頃合いですか。

 

「シャルル、俺から提案がある。お前も助かるしデュノア社にも迷惑をかけない、穏便に済ませる方法がある」

 

俺のいきなりの提案にシャルルは驚いたような表情となる。

 

「シャルルの事情を知ったラビアンローズ……俺の所属してる会社が協力してくれる。でも、それはシャルルを利用する形になってしまう。よく考えて、それから返事をしてくれ」

 

シャルルによく考えるよう促し、今日は解散となった。

シャルルが去り際にお礼を言ってきたので軽く手を振って答えた。

 

 

 

ラビアンローズの件は武道場を出てすぐにかかってきた着信の内容だ。

輝さんが言うには「裏付けその他もろもろの準備はあるから、ちょっくらデュノア社を落とそうぜ」らしい。

入学前にシャルルの正体に気付いてたからなぁ、ラビアンローズは。

 

 

 

……なーんかヒロインのフォローをしてばっかりだよな、俺。

普通、こういうのって主人公の役目じゃないのか?

 

俺ははぁ、とため息をつくとテーブルの紅茶を一気に飲み干した。

 




誰がデー!ダデルート進んでも!オンナジヤオンナジ ヤオモテー! ンァッ↑ハッハッハッハーwwwwwwア゛ン!

このニこの小説ンンンッハアアアアアアアアア↑↑↑アァ ン!!!!!!アゥッアゥオゥ ウア゛アアアアアアアアアアアアアーーー!

コノ小説ァゥァゥ…… ア゛ー!テンプレを…ウッ…ガエダイ! オリ主の行動はぁ…グズッ… ISのみンドゥッハッハッハッハッハアアアアァァ↑ D×Dのみンゥッハー↑ 遊戯王のみならずぅー! ハーメルン……二次創作の問題やないですかぁ… 命がけでッヘッヘエエェエェエエイ↑↑↑↑ア゛

アダダニハワカラナイデショウネエ…



シャルはパパパッとラビアンローズに任せて、終わりっ!
正直、遺恨なく物語を進めるにはこうするしかないと思うんだ


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二人会議の第36話

【悲報】壊れかけの鋼夜


ラビアンローズ本社の最上階にある社長室。

その場所は、俺の心が安らぐ数少ない場所だ。

俺の休日はだいたいここから始まる。

 

 

「女の子って、消耗品じゃないと思うんですよ」

 

「いつにも増して唐突だね」

 

俺の呟きに反応する輝さん。いつもありがとうございます、少し付き合って下さい。

 

「敵役の女の子って居るじゃないですか。敵女ってやつ。そういうのが殺されたりする度に思うんですよ、勿体無いって」

 

「まぁ、人の好みはそれぞれだよね」

 

「殺すくらいなら俺にくれよ、って最近本気で思ってるんですよ。女の子は殺すものじゃなくて愛でるものですよね?まぁ、そういうので興奮しちゃう自分もいるわけですが」

 

「鋼夜くん、君は疲れているんだ」

 

 

本気で心配している表情の輝さん。

まだ大丈夫ですよ。まだ。

 

 

「二次元とリアルの区別くらい付きますよ。脇役好きだから結構損してるなぁ、ってだけです」

 

ここは元々、二次元の世界だけどな。

 

「鋼夜くん。学校はそんなに酷いのかい?その、例の彼が」

 

さすがニュータイプ。輝さんは即座に俺の悩みの種を当てて見せた。

 

「もうね……限界ですよ」

 

愚痴を聞いてくれるらしいのでお言葉に甘えさせてもらうことにする。

盛大にため息をついて輝さんに語る。

 

 

「一夏と行動する度に、睨んでくる奴等は何なんでしょうね」

 

「……うん?」

 

俺の言葉に疑問符を浮かべる輝さん。

そうだよね、そうなるよね。

 

「例えば一夏が「放課後の訓練は鋼夜とやる」って言うじゃないですか。そしたら本来の一夏のコーチ達に……誰とは言いませんが……睨まれるんですよ」

 

今は別行動しているからいいものの、最初の頃は酷かった。

お昼に誘われただけで睨んでくるとか、どうしろと。

ていうか、誘った相手が女子なら分かる。でも俺よ?男よ?なんで睨まれるの?しかも誘うのは一夏の方からだよ?

確かに、君の理想と違う結果になったかもしれないけどなんで睨む必要があるの?プレッシャー出すの?

男と男が、友達が一緒に行動しちゃいけないの?

 

箒を見習えよ。箒は嫉妬するどころか一夏が他の女子と付き合わずに済んだ、って考えれるんだぜ。

て言うか、そう考えるのが普通じゃないのか。

 

俺と仲が噂されるくらい一夏がホモっぽいのも原因だけどさ。

 

 

「あといつも言ってますけど、あいつは鈍感です」

 

「それは聞いたよ。胸を押し付けられても何も反応しない、告白されれば真っ先に買い物と答え、自分が注目されているのはただ自分が珍しいからと思い、世話を焼いてくれる女子にいつもどうして俺なんかに?と疑問を抱いている……だっけ?」

 

輝さんの言葉に頷く。

あいつと過ごして嫌になるほど分かった事だ。

まぁ、大半はアニメでの先入観のイメージが入っているがこのままいけばそれと変わらない結果になるだろう。

 

「アニメ見てて、暴力系ヒロインとか最悪だな、主人公は鈍感だけどさすがに不憫だなって思ってたけど最近だとあいつは殴られてもしょうがないと思えてしまうんですよね。いや、むしろ殴られろ」

 

「そもそも好きな相手に手を上げること自体がおかしい気もするけどね」

 

「自分も悪いところがあるとはいえ、殴ってくる相手を好きになるわけないですよね。常識的に考えて」

 

暗黙の了解?起承転結?話のお約束?知るか。

 

ラブコメ騒動は俺の見えないところで好きにしてくれ。ツッコミはするけどな。

 

 

「正直俺としては、ヒロイン全員あげるからフラグ建てても回収する気もない脇役やモブを俺に残して下さい。って感じです」

 

ヒロインですらフラグ回収しないのにその他にフラグ建てるのはおかしいよな?おかしいよなぁ?

ぶっちゃけ一夏のせいで、まぁ例の事件で一年の中では改善されたけど上級生は未だに俺と一夏を比べてるからね。もちろん一夏マンセーの方向で。

 

 

「野暮だとは思うけど……教えないの?」

 

困惑した表情でそう質問する輝さん。甘い、甘いです。

 

「一夏はですね、下手をしたらアイツ化する可能性があるんですよ」

 

「アイツ?」

 

「嫌いな主人公第一位のアイツです」

 

「あぁ……」

 

俺の答えに輝さんは納得する。

そう、事あるごとに死ねと言われるアイツである。

 

「もし一夏が、自分がモテる奴だと自覚したらどうなります?……これ、例のアイツと同じパターンなんですよ、アイツも最初は鈍感で両想いに気付いてなかったんですから」

 

一夏もアイツも、基本は優しい奴だからね。似てるからこそ怖い。

 

しかもIS学園って女子校だからね、もし一夏がクズ化したらスクイズ以上に悲惨な事になるだろう。

割とマジで。

 

あれは唯一と言っていい幸せなルートがスピンオフだしなぁ。

 

スピンオフ……クロスゲイズ……あっ(察し)

 

……一夏ってマジでホモなんじゃないのか?

ていうかホモの方が幸せだな。うん。

 

 

「…………」

 

さすがの輝さんも言葉を失っている。

さて、このままだと流れが良くないので話を変えよう。

 

 

「というわけで輝さん。プルシリーズ下さい。十五人くらい」

 

「何がという訳なの!?グレミーもびっくりだよ!」

 

「そういえば特殊な細胞を使えば親がいなくても子供が出来るらしいですよ」

 

「何言ってるんだ鋼夜くん!?」

 

「大丈夫ですよ、全員幸せにしますから」

 

「そういう問題じゃないよ!」

 

「無敵のラビアンローズの科学力でなんとかして下さいよォ~~」

 

「ごめん、本当ごめん」

 

と、少しふざけたら輝さんにマジの謝罪をされた。

嫌だなぁ、冗談なのに。冗談。

 

 

「分かりました。じゃあ艦娘でいいですよ」

 

「それ全然妥協してないよね。むしろハードル上げてきたよね」

 

「俺は謙虚だ、駆逐艦娘9人でいい」

 

「おいィ!?」

 

「俺って量産型ハーレムとか好きですから」

 

中学生の妄想を絵にしたような、広告バナーのエロ漫画とか好きだし。

 

高嶺の花より隣の花畑。

 

いま自分で作った言葉だが、なかなかいいな。しっくり来る。

 

例えるならヒロイン一人より周りのモブ五人。って感じだな。

 

届かないから、苦労するから高嶺の花なんだ。

だったら苦労せずに、同じ苦労をするのでも花畑で満足だろ。

花畑だって綺麗なんだから。

 

 

 

輝さんのツッコミは珍しいのでもう少しボケようかと思ったらまたマジ謝りされたのでこちらも謝ってボケるのを辞めた。

 

途中から本心だった?割と本気だった?

ははは、そんなことあるわけないじゃないか。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「落ち着いた?」

 

「はい」

 

言いたいことを言ってスッキリした俺は輝さんと向かい合って座っている。

 

「それは何より」

 

冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しグラスに注ぐ。

よく見ればまたラビアンローズがコラボする製品らしい。

しかし一等がまたボール人形か。

人気あるんだな、ボール。

 

 

「鋼夜くん、例の件は大丈夫かい?」

 

輝さんが真面目な表情でそう聞いてきた。

例の件、というのはデュノア社関連の事だ。

 

「ええ、それは大丈夫です。彼女は俺達のデータをまだ取ってすらいませんでした。あの二人の部屋は隅々まで確認して監視系統は排除しましたし、彼女の専用機のラファールも点検して怪しい機器は取り除きました。抜かりはありませんよ」

 

「安心したよ。彼女が既にデータを渡していたらアウトだったからね」

 

懸念の一つが解消された輝さんはホッと一息ついてコーヒーの入ったグラスを傾ける。

 

「明日には学園側に事情を話す予定です」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

 

あの後、シャルルはラビアンローズの誘いに乗ることを俺に話した。

一夏も彼女の意思を聞いたようで、俺に謝ってきた。

 

答えを聞いた俺はすぐさま二人の部屋へ向かい、監視カメラ等の機器の捜査を始めた。

部屋に怪しいものは見つからなかった。

 

次に俺はシャルルの専用機のラファールを調べた。

すると案の定、通常の備品とは違う装置を発見したので解析。

結果はクロ。装置には記録データが保存されており、ISの用途とは違う目的のものだと判断した。

 

そして明日には学園の織斑先生や生徒会にシャルルについての話を通す予定だ。

一夏が最後までいい顔をしなかったがシャルルと俺の説得によって渋々だが了承した。

一夏が織斑先生に、俺が生徒会に、という感じだ。

生徒会と知り合いなのは俺しか居ないし。

 

 

「しかし、どうやってデュノア社を落とすんですか?まぁ、相手は脅せば落ちるレベルですけど」

 

「それについてはまず、デュノア社の経営不振について説明しないといけないね」

 

そう言うと輝さんは自分のデスクの鍵付きの引き出しを開けて中から書類がいくつか入っているクリアファイルを取り出した。

 

 

「経営不振の理由ですか。デュノア社は第三世代の開発が進まないからフランスからの支援を減らされて、しかもイグニッションプラン……欧州のIS連合みたいなのからも外されてしまうから、ですよね?」

 

「ああ、その通りさ」

 

シャルルから聞いた話を答えると輝さんは頷く。

 

「でも満点ではない。最大の疑問は、なぜデュノア社がそこまで追い込まれたのか、だ」

 

輝さんはクリアファイルをパラパラとめくってとあるページの紙を取り出す。

 

「デュノア社のラファールは世界のシェア率でも上位を誇る。第三世代の開発が進んでいる国でもその安定性から運用されているところが多い。ISに限った話じゃないけど新型というのは忌避されやすい傾向がある。ベテランが未だにラファールを選ぶのも珍しくはない。実際、私だってラファールの性能は評価している。……さて、そんな安定感溢れるデュノア社が目に見える範囲で経営不振に陥った理由がここにある」

 

そう言うと輝さんは手に持っている書類を渡してくれた。

 

聞けば聞くほど疑問が増える。

疑問の答えが記されている書類を輝さんから受け取る。

 

「……これ、誰です?」

 

書類の画像に写っているのは豪華な格好をした金髪のオバサンだ。

 

「デュノア夫人だよ」

 

それを聞いて理解する。シャルルの義母ね、なるほど。

 

そして書類を読み進めていくうちにだんだんと事態の推移を理解していく。

 

「デュノア夫妻の夫婦仲はあまり良くなかったみたいだけど、数年前から一気に変わったみたいだ。夫人の金使いは荒くなり、会社の経営にも幅を利かせてきた」

 

「数年前……恐らくシャルルの存在が関係していますね」

 

夫が浮気するくらいだからお互いの夫婦仲は良くなかったんだな。

シャルルの存在が発覚してそれにキレた夫人が好き勝手やりだした、ってとこか?

女尊男卑の世界だから手を出すに出せないんだろう。

 

「夫人が会社の金を勝手に横領した証拠もある。それにデュノア社はうちに何度も過剰な干渉をしてきたからね、その辺りの証拠もバッチリだよ」

 

「証拠がよく集まりましたね」

 

「フェニックスが一晩でやってくれました」

 

鳳凰院さん、ご苦労様です。

今度、ラーメンを奢ろう。

 

内心で頼れる兄貴分に感謝しつつ、話を進める。

 

「つまり、デュノア社が経営不振になった理由は……」

 

「だいたい夫人のせいだね。だからフランス政府も援助を減らしたんだろう」

 

「そして追い詰められたデュノア社は苦肉の策としてシャルルを男に仕立て上げて学園に送り込んだ、と」

 

「それ以外の理由もあるだろうけどね、大体合ってるよ」

 

導き出された結論を聞いて納得する。

しかしそれでよくフランス政府はシャルルを通したな。

輝さんが言ってる通り、まだ何かあるんだろう。

 

 

 

「確か、近々IS学園でトーナメントがあったよね?その時にデュノア社に仕掛けるよ」

 

カレンダーを見ながら輝さんはそう言う。結構早いですね。

 

 

「そんなに上手くいきますか?」

 

「相手はこの話に乗るさ、絶対にね」

 

俺の疑問に輝さんは笑顔で答える。

輝さんがそう言うなら成功するんだろう。

 

 

その後はトーナメントまでにシャルルをラビアンローズに連れて来て打ち合わせをするという旨を話し合った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「楽しい話をするよ!鋼夜くん、これを見てくれ!」

 

やたらテンションを上げた輝さんがタブレットを取り出し、操作する。

そして見せられたのは……。

 

「ISの設計図ですか?」

 

「草案だけどね」

 

 

部分展開型のISらしく、全身にダークグレーのカラーリングが施されている。

丸い頭部にはゴーグルが装備され、ウサ耳のようなセンサーが左右から伸びている。

手足は丸みを帯びており、左腕には三本の突起が見られる。

背部にある四枚のウイングスラスターは正面から見るとX状に見える。

 

これって……。

 

 

「ゲシュペンストじゃねーか!」

 

それはまさに、よくスパロボとかに出てくるオリジナル機体のゲシュペンストだった。

 

「ラビアンローズが考案した第三世代型の量産機の『幽鬼(ゆうき)』さ」

 

やっぱりネタが分かって貰えて嬉しいんだろうか。

自信満々といった顔で答える輝さん。

 

「もう作ってるんですか?」

 

「いや。まずは鋼夜くんの四天の換装を全部作ってそのデータからこいつを作る予定だからまだまだだよ」

 

ふーむ。まだ作ってないのか。

結構好きな機体なんだよねこいつ。完成したなら是非とも乗ってみたい。

 

「そういえば、四天の新しい換装パックはまだですか?」

 

もうそろそろ新しいパックが届いてもいいはず。

前回の暁が(性能が良過ぎて)封印という残念な結果になったため、新しいパックに期待が高まる。

 

「ごめん、まだなんだ。トーナメントで使いたいんだろうけど、間に合わないなぁ」

 

「なんと!?」

 

トーナメントに間に合わないとな。

仕事が早いラビアンローズにしては珍しいな。

 

「その代わり、今回はかなり力を入れて製作してるからね。なんとフェニックスもプロデュースしてくれた特別製さ。臨海学校までには完成するから期待して待っているといい」

 

なにやってんだ鳳凰院。

 

「力を入れるのはいいんですけど暁みたいな事は御免ですよ」

 

「…………善処するよ」

 

おい、なんだその間は!?

やめてよね!?輝さんが本気でかかったら世界の技術者が逃げ出すレベルなんだからね!?

 

「ちなみにパックっていくら作る予定で?」

 

「あと三つかな、はい」

 

俺の質問を受け、タブレットを操作する輝さん。

渡されたタブレットの画面を確認する。

 

「近接特化強襲型『陽炎(かげろう)』、遠距離殲滅砲撃型『天風(てんぷう)』、特殊電子工作型『残雪(ざんせつ)』……最後のやつ大丈夫なんですか」

 

画面に表示されているデータを見て呟く。

電子工作って……軍事利用だとかなんとかでうるさくなりそう。

 

「まぁ、大丈夫だよ。多分」

 

多分って……乗るの俺なんだけど。

嫌よ?軍法会議とか。

 

 

「それより鋼夜くん。一緒に幽鬼の武装を考えようよ」

 

話を誤魔化すかのように輝さんは笑顔でそう提案してきた。

 

「いいですとも!武装はロマン全開でいきましょう!とりあえずパンチとキックは基本として後付けでいいんでパイルバンカーをですね……いや、いっそソウルゲインの武装を逆輸入するのも……」

 

 

 

このあと滅茶苦茶ヒーローごっこした。

 




シャル問題はかなりやっつけアンド自己解釈
不明な部分は追い追い話します
そろそろ鋼夜が壊れそう、どうしよう

前回の感想で多数の紳士が居てたまげたなぁ……
自分はシンビーと一日中イチャイチャしたいですハイ

一夏と誠は似ている、間違いない

関係ないけどスクイズは世界が悪いと思う
世界が出しゃばらなければ誠と言葉様は幸せなキスをして終了してた
世界が何もしなければ誠が調子に乗ることも無かったんだよなぁ……
ちなみに刹那派です、妻です

アカメのアニメのナジェンタの棒はどうにかならんのか
アニメのおかげでアカメssが増えて嬉しい反面ちょっと複雑な気持ち
自分では原作通りのダークな雰囲気が出せないから書きませんがね

活動報告に遊戯王の新パック開封結果を上げました
興味ある人はどうぞ


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生徒会接触の第37話


眼鏡のおねーちゃー

デュノア社問題はポイーで


 

楽しかった休日の日曜日をラビアンローズで過ごした翌日。

 

世の学生諸君が憂鬱になる月曜日。

他人の目を気にしつつ、シャルルや一夏と過ごす一日が終わって放課後となった。

 

そして俺はとある場所に向かっていた。

 

 

「ここが生徒会室か」

 

そう。

シャルルの事情を生徒会側に説明するために会長に会いに来たのだ。

そして来たのが生徒会室。

会長には事前にメールで生徒会室に伺う事は知らせておいたので居るだろう。

 

意を決して扉をノックする。

一呼吸置いて中から「どうぞ」という返事がしたので扉を開ける。

 

 

「失礼します。一年一組の如月です」

 

部屋へ入り扉をちゃんと両手で閉めた後に軽く一礼する。

 

 

「話は伺っております。会長はまだ来ていないのでこちらでしばらくお待ち下さい」

 

 

生徒会室には会長は居なかったが役員と見られる人が居た。

長い髪を三つ編みにした眼鏡姿の女子……リボンの色から察するに三年の先輩はにこりと微笑み、書類を机の上に置くと作業を一旦中断した。

俺を応接用のソファに案内すると部屋の隅でお茶の準備を始めた。

 

 

することが無いので俺は首を回して生徒会室を眺める。

 

会長用と見られる大きな机の近くには今お茶を準備している先輩が座っていた机ともう一つ別の机がある。

机の上がお菓子まみれなので恐らくあの席はのほほんさんのものだろう。生徒会役員って前に言ってたし。

 

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

そんな感じで推理をしていると先輩がティーカップを持ってきた。淹れたのは紅茶のようだ。

 

「いただきます」

 

俺は早速出された紅茶を口に含む。

紅茶なんて久しぶりだ。

 

先輩はにこりと微笑みお盆を片付けると、俺の正面に座った。

 

 

「初めまして、如月くん。いつも妹がお世話になっています。本音の姉の布仏 虚(のほとけ うつほ)です」

 

 

先輩の自己紹介で思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

 

なんだって?のほほんさんのお姉さん!?

あ、ああ。そういえば前にお姉さんがいるって言ってたな、忘れてた。

 

「一年の如月 鋼夜です。よろしくお願いします、布仏先輩」

 

なんとか平静を取り繕って返事をする。

 

「よろしくお願いしますね。如月くんの事は本音や会長がよくお話していますよ?」

 

「そうですか……ちょっと気になりますね。なんて言っているんですか?」

 

「それは秘密です」

 

布仏先輩からの意味深な発言が気になり、問いかけたが先輩はくすりと笑うだけで教えてくれなかった。

 

お姉さんは俺が妹さんと同室なのはどう思っているんだろう。

 

 

 

「はいはーい、お姉さんが来たわよー。よしよし先に来てるわね、えらいえらい」

 

と、そこで生徒会室の扉が開いて会長がやって来た。

 

そして布仏先輩が会長に一礼する。

さすがに会長と役員だからって畏まる必要は無いと思うが……二人はどういう関係?

 

「さてさて、大事な話があるって聞いたけど何かしら?」

 

会長が自分の机に座り、こちらに視線を向ける。

疑問を頭の外に追い出し、スイッチを切り替える。今は真面目にやらないと。

 

「ひょっとして告白かしら?」

 

「それは無いので安心して下さい」

 

 

「肉食!」と書かれた扇子を会長が広げるが速攻で否定する。

しかし、なんでもありだなその扇子。

 

 

ふぅ、と一呼吸置いてから俺は話を切り出す。

 

「シャルル・デュノアの件についてです」

 

俺がそう切り出すと、会長が目を細める。

 

「へぇ、やっぱり気付いてたの?」

 

扇子で口元を隠しながら会長はそう聞き返した。

反応を見る限り、会長も既に気付いていたようだ。

 

「ええ。お話というのは彼女を見逃して欲しいんです」

 

「理由を聞いてもいいかしら?」

 

紅茶を口に含み、喉を潤して会長にラビアンローズの提案を話す。

 

ラビアンローズが彼女を使って元凶のデュノア社をどうにかしたいので学園はその間は彼女に干渉しない、彼女を見逃して欲しい。

 

ということを話した。

 

 

「ふーん」

 

話を一通り聞いた会長の第一声。

 

「いいわよ。生徒会は彼女に干渉しないことを約束するわ」

 

そしてあっさり許可を下ろした。

あまりにあっさりし過ぎていたので俺は拍子抜けしてしまう。

 

「実は学園側には既にデュノア社から連絡が来てるのよ。「そっちに我が社の人間が行くけど手を出さないでくれ。あとシャルル・デュノアは女だから」って感じでね。そうでなければ織斑先生が黙っていないし、そもそも入学すら出来ないわよ」

 

そんな俺の様子を察してくれたのか、会長が説明してくれた。

しかしちょっと待って欲しい。既に学園に話が通っている?

 

「結論から言うと、学園側は貴方達を邪魔しないわ。むしろ応援したい気分よ。話が通っているとはいえあんな爆弾みたいな存在をいつまでも抱えたくないもの」

 

「まぁ……確かに。事情を知らない一般生徒にバレたら大変ですからね」

 

俺がそう付け加えると会長はため息をついた。

会長も大変なんですね。

 

「話は以上かしら?」

 

「あ、はい。わざわざお時間を作っていただきありがとうございます」

 

立ち上がり、一礼する。

そんな俺の様子を見て何やら頷く会長。

 

「礼儀があるね。えらいえらい、おねーさんはいい後輩を持った」

 

「会長はもう少し礼儀を持つべきだと」

 

「私はいいのよ、会長だから」

 

 

虚さんと会長が何やら漫才をしている。

……そういえば簪さんとのほほんさんは幼馴染みだったな。

ならば姉妹であるこの二人もそういう仲なのかもしれない。

 

 

「鋼夜くんに冷蔵庫のケーキを持ってきてあげなさい」

 

「いえ、お気遣いなく」

 

「まま、遠慮しないで」

 

そろそろお暇しようと席を立てば会長がケーキを勧めてきた。

さて、非常に嫌な予感がするぞ。

 

 

「それでね、鋼夜くん。ケーキやお話のお礼って訳じゃないけど、最近の簪ちゃんの様子をおねーさんに教えて欲しいなーって」

 

そして会長は「情報求む!」と書かれた扇子を広げる。

 

 

「もういい加減仲直りしろよ」

 

 

思わずそうツッコんだ俺は悪くない。

 

「家庭の事情だからあまり言いませんけど、俺の後ろをつけまわすのは辞めてくれません?」

 

「なんのことかしら?おねーさんわからないわ」

 

平静を装っているが会長が焦っているのが伝わる。

ええ、気付いてましたよ。いつも整備室の隅とかアリーナの観客席の隅から会長が覗いてくるの!

 

シスコンここに極まれり、と何回呆れたことか。

 

 

「如月くん、替えの紅茶とショートケーキです」

 

いいタイミングで虚さんが入ってきた。

 

「如月くん、会長はこういう人なの」

 

「ちょっと、私がストーカーみたいな言い方しないでよ!」

 

「ストーカーなんて言ってませんが」

 

と、まぁ色々会長が自爆しているが意地悪は辞めて正直に簪さんの事を話した。

一通り話し終えると会長は満足そうな顔をしていた。

 

 

流石にいつまでも姉妹喧嘩をされていてはこちらも窮屈だ。さっさと仲直りして欲しい。どっちが悪いのかは知らないけど。

 

 

そんな事を思いつつご馳走になったケーキを口に運ぶ。

 

美味しいな、このケーキ。

 

ああ、そうだ。夜には輝さんに連絡しないと。

 

 

 

「あ、そうだ。お礼にいいことを教えてあげるわ」

 

ケーキと紅茶を頂いたお礼を述べ、生徒会室を出ようとしたところで会長に呼び止められた。

 

「学年別トーナメントがタッグ戦になったの。三日後には発表されるんだけど、今のうちにペアを見つけておいたらどうかしら?」

 

会長がウインクと共にそう告げる。

遠回しに簪さんと組めって言ってますよね、それ。

 

「情報ありがとうございます。それでは失礼しました」

 

礼と共に退室。

俺は生徒会室を出て、真っ先に寮の自室へ向かう。

 

 

部屋に帰ったらとりあえずは輝さんへの報告。

そしてーーーー

 

「タッグを誰と組むか、だな」

 

ついに面倒なイベントだ。

巻き込まれは必須だが、どう行動するか。

 

「あぁ、鬱だ」

 

俺はおなじみとなったその言葉をポツリと呟くのだった。

 




キャー虚さーん

37話はこんな感じです
会長は犠牲となったのだ、シスコンという属性の犠牲にな……

前回アカメが斬る!の作品を書かないと言ったな、あれは嘘だ
詳しくは活動報告をご覧下さい
タイトルが完全にネタな奴です


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パートナー選びの第38話

生徒会とお話しした日から三日が経過した。

会長が忠告をしてくれた日でもある。

放課後になり、いよいよイベントが起きるという日だ。

 

今、俺は第三アリーナにいる。

 

 

 

 

「これで、どうかな!」

 

シャルルの雄叫びと共に繰り出されたのはシールドに内蔵された大口径の杭。

パイルバンカーと呼ばれる武装だ。

 

この武装は威力は大きいが隙が多い。故に奥の手と言ってもいい。

さすがは代表候補生。回避も間に合わない、奥の手にはうってつけの完璧なタイミングだ。

 

 

「『天岩戸(あまのいわと)』ぉぉぉぉぉ!」

 

それに対して俺は両肩部に存在するアンロックユニット、VPS製のシールド『天岩戸』の右を前面に展開する。

 

最強の盾(ヴァリアブル・フェイズシフト)最強の矛(シールド・ピアース)が衝突し、火花が散る。

 

両者一歩も引かず。

己の得物の行く末を見つめる。

 

勝ったのは、『天岩戸』だった。

衝撃全てを相殺されたパイルバンカーは勢いを失うと煙を上げた。

 

「むぅ……盾殺し(シールド・ピアース)のパイルバンカーを防ぐシールドがあるなんて、デタラメもいいとこだよ」

 

模擬戦を中断し、パイルバンカーを粒子に戻したシャルルが不満そうに呟いた。

 

「こればかりはラビアンローズの技術力ということで納得してくれ」

 

笑顔でシャルルに答えながら、俺は内心で輝さんに感謝した。

輝さん、マジでありがとう。

 

 

最近の放課後は俺とシャルルと一夏で過ごしている。

シャルルのためなのは言わずもがな。

 

今の実験はちょっとした好奇心で試したものだった。

パイルバンカーVSフェイズシフトがやってみたかった。

結果はフェイズシフトに軍配が上がった。マジで凄いな、フェイズシフト。

 

「実弾無効なんて、本当に僕と相性悪過ぎだよ」

 

「いや、あのまま続けてたら怪しかったな」

 

拗ねた様子でシャルルが呟くのでさりげなくフォローする。

 

それが四天の持ち味なのでどうしようもない。しかも換装したらビームも無効化する親切設計。

 

 

『まぁ、俺の零落白夜が通じるのには驚いたけどな』

 

 

観戦していた一夏が自慢気な顔で通信を回してきた。

 

一夏の零落白夜は刃にエネルギーを集めてそれで斬る、という原理なのでビームに近い。なので防げない。

 

 

『そうか。よし、じゃあ次はシャルルと一夏の切り札勝負でもしてくれ』

 

『えぇっ!?』

 

『一夏をいじめちゃダメだよ鋼夜。さ、今日はもう上がろう』

 

 

シャルルがそう締めくくり、今日の練習はお開きとなった。

見たかったんだがなぁ、一夏がボコボコにされるとこ。

 

 

 

シャルルの性別の問題で更衣室の使用には注意している。

俺と一夏が見張りとして入口に待機し、シャルルが着替え終わってから俺達が着替える。

 

面倒だが、問題に決着がつくまではこれを続けるしかない。

 

 

 

「そういえば、もうすぐ学年別トーナメントだね」

 

着替えが終了し、寮へ戻る道中にシャルルがそう口にした。

 

「ああ、そうだな」

 

「やるからには一夏にも鋼夜にも負けないよ!」

 

「おう!望むところだ!」

 

「そうだな」

 

横で二人が盛り上がっているが、タッグ戦になる未来を知っている俺からしたら微妙な心境だ。

 

いや、しかしよく考えたらタッグにしろシングルにしろ参加人数ってどうするんだ?

 

専用機持ちやクラス代表や国家代表候補生は必ず参加として他の一般生徒はどうなんだろう。参加できる人数に制限があるとか?

いや、確かアニメでタッグ相手が居ない人は抽選云々があったから全員強制参加なんだろうな。

それで箒がラウラと組まされてた訳だし。

 

しかしそうなると……

 

1クラスの人数は約30人。

各学年は4クラスある。

 

だから参加人数は約120人。

 

 

そしたらトーナメント表がヤバい事になるんだが。植物の根みたいなトーナメント表になるぞ。

 

タッグにしても約60組の参加。

スポーツの全国大会より多いとか、どういうことだよ。一日あっても一回戦すら全部終わらないだろ、これ。アリーナ全部使って制限時間を設けてやっと回るくらいか?

 

改めて考えると恐ろしいな。

 

 

「あれ?なんか人だかりが出来てるよ?」

 

あれこれ考えていると寮へ着いたようだ。

シャルルが言った通り、寮の入口のフロアにある情報掲示板の前に人だかりが出来ていた。

 

 

「あ!男子三人を発見!」

 

人だかりの一人が俺達の姿を確認して声を上げた。

それに反応して人だかりの全員がこちらへ振り返ると、一斉に押し寄せてきた。

 

あー……ついにきたか、このイベント。

 

「三人とも!これを見て!」

 

最前列に居た子が掲示板の通知を引っぺがし、それを俺達三人に見せる。

 

「えーっとなになに……『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』ーー」

 

「ああ!そこまででいいから!」

 

一夏が紙の内容を読み上げていたが、途中で紙を引っ込められた。

そして周りの子全員の手が一斉にこちらに伸びてくる。

 

 

「私と組もう、織斑君!」

 

「私と組んで、デュノア君!」

 

「私と組みましょう、如月君!」

 

全員目をギラつかせながらこちらの答えを待っている。

その姿はまるで獲物を追う肉食獣のようだ。

 

「え、えっと……」

 

と、困り顔のシャルルが助けを求めてこっちを見るのを感じた俺は一夏をこっそりと肘で小突く。

それで一夏もシャルルの様子に気付いたようだ。

 

「悪い、俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

周りの女子に聞こえるようにはっきりと宣言する。

一夏は俺の予想通りシャルルと組んだ。はい、計画通り。

 

 

「じゃあ如月君でいいや、組も!」

 

「お願い如月君!」

 

 

と、今度は俺に集中して手が伸びる。

 

「少し考えさせてくれ」

 

とりあえず俺はそう答えておいた。

既に組みたい相手は決まっている。

 

それに最初から俺に頼んできた子はともかく、一夏とシャルルが無理と分かった途端に俺で妥協する奴なんかと組みたくない。こちらから願い下げだ。

 

 

「分かったよ」

 

「まぁ、いきなりだし仕方ないか」

 

とりあえず俺達の言葉に全員納得したようで、ぞろぞろと解散していった。

 

 

「ありがとう一夏、鋼夜。助かったよ」

 

去っていったのを確認したデュノアはほっと胸を撫で下ろし、一夏と俺に感謝した。

 

「気にするなよ。事情を知ってるのは俺達だけだし、サポートするのは当然だろ?」

 

「一夏に同じく」

 

「そんなことないよ。……二人は優しいんだね」

 

そう言うとシャルルはニッコリと微笑んだ。まるで天使の笑顔だ。

 

 

……ん、廊下の向こう。

こちらに迫る二つの気配を確認。

厄介事になる前に退避退避。

 

 

「そう言えば鋼夜は誰と……あれ?いない?」

 

「一夏っ!私と組みなさい!」

 

「一夏さんっ!わたくしのペアになってくださいまし!」

 

 

気配を消して俺はその場を離れた。

入れ替わるように鈴とセシリアが一夏の方へ向かった。

背後で一夏が何か叫んでいたが俺は無視した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一旦部屋に戻って着替えた後に俺は食堂へ向かった。

 

食堂へ来るまでに何人もの女子にタッグの申し出を頼まれたが丁重にお断りしながらここまで来た。

 

ざるそばを注文した俺は容器を持ってとある人物を探す。

 

 

「お、いたいた」

 

「む……貴様か」

 

 

目的の人物……カウンター席に居るラウラ・ボーデヴィッヒの隣に俺は座った。

努力の甲斐あって、ボーデヴィッヒとはこうして普通に話せるくらいの仲にはなった。

 

 

「なんの用だ」

 

「学年別トーナメントについては聞いたか?」

 

ハンバーグをつつくボーデヴィッヒにそう聞けば彼女は「いいや」と答えた。

 

「ルールが変わってな、二人組で参加しないといけないようになったんだとよ。これが証拠だ」

 

ここに来るまでに入手した通知の紙をボーデヴィッヒに渡した。

彼女はそれを受け取る。

 

「……ほう」

 

それに目を通したボーデヴィッヒは目を細めた。俺が何を言いたいのかが分かったのだろう。

俺は目的を正直に言う事にする。

 

 

「単刀直入に言おう。俺のタッグパートナーになって欲しい」

 

頭を下げてお願いする。

一応こちらが頼んでいる立場なので最低限の礼は尽くす。

 

「……ふん、いいだろう」

 

「感謝する」

 

まさかまさかの許可が出た。

顔を上げた俺は感謝の言葉を述べて礼をする。

 

「パートナーなぞ必要ないが、教官からの命令なら仕方ないな。それと、貴様の態度に免じて話に乗ってやろう。ただし私の足を引っ張る真似はするなよ」

 

かなり上から目線だが、実際に実力はあるので仕方ない。

俺もそこは評価している。

 

ボーデヴィッヒはふん、と凄んだ後に目を閉じて何やら思案する素振りを見せる。

そしてゆっくりと目を開くが、その瞳には憎悪の感情がこもっていた。

 

「……織斑一夏は私の獲物だ。私が、必ず、墜とす。それを邪魔するなら貴様も墜とすぞ」

 

「了解ですよ、少佐殿」

 

俺がそう答えれば彼女はもう一度目を閉じる。再び目を開いた時には憎悪は引っ込んでいた。

 

 

トーナメントまでも、トーナメント当日も、何も起こらなければいいんだが。

 

何も起こりませんように。

 

ひっそりと、そう祈りながら俺はざるそばをすすった。




短い(小並感)
フェイズシフトってレールガン耐えるんだからパイルバンカーも耐えるよね?
内部が多少イカレるけど耐えれるよ……ね?

遊戯王の新しいパック出たけど見送り
DDシリーズは気になるけどほとんどが再録ですし

アカメの方をやっちまいました
興味ある方はどうぞ(ステマ)


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最終確認の第39話

久しぶりに書くと、書き方を忘れる


 

日曜日。

俺は一夏とシャルルを連れて学園を出ていた。

 

 

「でかいな……」

 

「ぼ、僕もいいのかな?」

 

「輝さんに呼ばれたんだからいいんだよ。さっさと入ろうぜ」

 

 

現在三人でラビアンローズの本社前に来ている。

デュノア社の件で輝さんがシャルルと話をするためだ。一夏はおまけで付いてきた。

 

 

ラビアンローズの正面入り口へ突入する。

一夏とシャルルが後に続く。

 

自動ドアがスライドして開き、冷房の冷たさを肌に感じつつ受付へ向かった。

 

「おはようございます、ルナさん」

 

「あ、鋼夜くん。おはよー」

 

受付嬢の一人に声を掛ける。

黒髪ショートのこの女性は鏡ルナさん。同じクラスの鏡ナギさんの姉である。

事務仕事を天職と呼ぶ変人だと社内では有名である。

 

「社長に連絡をお願いします。あと、来客証明を二つ」

 

ルナさんは俺の言葉に笑顔で頷き、頼んだものを渡すと内線の電話をかける。

 

「はい、これ。首からかけといて」

 

俺はルナさんから受け取った来客を示す札を二人に渡す。

二人は指示通り、それを首にかけた。

 

「鋼夜くん。社長が上で待ってるって」

 

「了解しました。一夏、シャルル、着いて来てくれ」

 

ルナさんの言葉を聞いて、俺は二人を連れて近くのエレベーターに乗り込む。

ボタンは最上階。

 

「おぉ、50階もあるのか……」

 

一夏がエレベーターの中を見て驚きの声を上げた。

 

「外国の方がもっと高いと思うけどな」

 

100階建てのビルとか聞いた事あるし。

 

「そうだね。デュノア社はもっと大きいかな?でもラビアンローズってISだけを開発する会社じゃないんだよね?」

 

シャルルの質問に俺は頷く。

 

「元々は何でも屋みたいなものだからな。ISを動かす試験場は離れた別の場所にあるから、デュノア社よりは不便だし」

 

そんな事を話しているとエレベーターが止まった。

最上階に到着したようだ。

 

エレベーターから出てしばらく廊下を歩くと「社長室」と書かれた扉の前に到着した。

 

「準備はいいか?」

 

振り向いてそう聞くと二人とも頷く。

それを確認した俺も意識を切り替え、扉をノックする。

中から「入りなさい」という声がしたので扉を開けて部屋へ入る。

 

「失礼します。デュノアと織斑の二人を連れて来ました」

 

「ご苦労様。二人ともそこに座りなさい」

 

部屋へ入ると既に輝さんが応接用のソファに腰掛けている。

輝さんは一夏とシャルルに対面のソファに座るよう促した。

俺は輝さんの隣へ座る。

 

「わざわざ来てもらってすまないね。西条輝だ。ここ、ラビアンローズの社長をやってるよ」

 

「は、初めまして。シャルル……いえ、シャルロット・デュノアです」

 

「お、織斑一夏です!」

 

二人はどもりながらも挨拶を交わす。

そんな二人の様子を見た輝さんはクスリと笑う。

 

「そんなに緊張しなくて大丈夫さ」

 

「は、はい」

 

輝さんの言葉により二人の緊張はいくらか和らいだようだ。

 

「鋼夜くん、お茶を持ってきてあげなさい」

 

「了解しました」

 

輝さんに言われて俺は部屋を出てこの階にある給湯室へ向かった。

さすがにあの部屋の冷蔵庫を使う訳にはいかない。二人はあくまで来客だ。

 

 

冷たいお茶を用意して部屋へ戻る。

既にデュノア社の件について話し始めており、一夏もシャルルも、真剣な表情で話を聞いていた。

 

まぁ、話といっても大した事ではない。

 

まずはシャルルが学園に送り込まれるまでの出来事を話した。

 

そして取り引きの事。

ラビアンローズのする事に全面的に協力すること、デュノア社についての情報を提供すること。

その代わりラビアンローズは彼女を保護する。

 

そのような内容の会話を交わす。

話し合いは一時間くらいで終わった。

だいたいの事は俺を通じて話がお互いに入っているので、最後の確認のようなものだ。

途中で一夏が質問していたが、特に変わったことは無かった。

 

 

 

「よければ、見学して行かないかい?」

 

解散かと思われたが、輝さんの提案により二人は会社の工場を見学する事になった。

秘書の霧島さんが二人を一階まで連れていった。

 

俺?

俺は輝さんに引きとめられたので、そのまま社長室に残った。

 

 

「お疲れ様です」

 

「うん、これでしばらくは一安心かな」

 

そう言って輝さんはソファに腰掛けたまま大きく伸びをする。

 

 

「彼女も大変だね」

 

「俺たちがそれを言うのも変ですけどね」

 

「本人の同意ありとはいえ、僕たちは彼女を利用してる立場だからね」

 

俺の返事に輝さんは苦笑いしながら答えた。

 

「未だに世界に影響を及ぼすデュノア社を傘下におけるメリットは大きい。それこそ、強引な手を使ってでもね」

 

ちゃんと彼女との約束は守るから、と輝さんは付け加えた。

 

トーナメントまであと数日。その日にラビアンローズは学園に来るであろうデュノア社の関係者に接触する。

 

 

「そこで、鋼夜くんに重大な任務がある」

 

「なんでしょうか?」

 

真剣な表情になる輝さん。

真面目な話になる気配を感じ取った俺も表情を変える、

 

「フェニックスに調べさせたところ、実は今度のトーナメントの日のIS学園には夫人自らが来るらしい」

 

「なん……だと……」

 

夫人ってデュノア夫人?

問題になってる人が直接?なんで?

 

「流石に向こうも勘付いたようだよ。それに今は彼女がここ、ラビアンローズに一夏くんや鋼夜くんと一緒に入ったのは決定的とも言えるしね。彼女がこちら側に来たのは完全にバレたと考えていい」

 

「あぁ、それもそうですね」

 

輝さんの話を聞いて納得する。

彼女には会社への報告を辞めるように言っている。流石に向こうも気付いたみたいだ。

 

「だから鋼夜くんには彼女を見張って欲しい」

 

「輝さん、それは俺では無く一夏に言った方が良いのでは?」

 

輝さんのお願いを聞き、俺は疑問に思ったので思ったことを返す。

さっきの会話では二人にそんな事は言っていなかった。

それに、シャルルといつも一緒に居るのは一夏だ。何故、俺なんだ?

 

「ああ、確かにそうするのが普通かもしれない。……だが、一夏くんは優し過ぎる。万が一の時には彼女を止められないかもしれない。そしてシャルロットさんは精神が非常に不安定だ。覚悟したとはいえ、実の父親を陥れるんだ。その心の隙を利用されては危険だ」

 

「……まぁ、それなら色々事情を知ってる俺が適任ですよね」

 

輝さんの答えを聞き納得する。

確かに二人ともにそういう節はある。

 

「向こうも焦っている。だからこそ、何をしてくるか分からない。学園も完全に安全ではない。特記事項だって適当な事を吹き込んで嘘でもいいから彼女本人の同意を得られたらこちらは打つ手無し。……だから、お願いするよ」

 

確かに、シャルルは貴方を許すとかなんとか言って学園の保護から引きずり出されたら完全にアウト。

恐らく彼女は存在を消され、事件にならず会社内で揉み消されるだろう。

 

不安定な今のシャルルならば相手の甘言に釣られる可能性がある。

 

そして一夏は踏み込みが足りない。

あいつは優し過ぎるからどこかで遠慮して大切な事を逃すかもしれない。ていうかシャルルの変化とかに気付かない可能性の方が高い。

 

なるほど、俺が適任だ。

 

 

「なるほど分かりました。お任せあれ」

 

「ははっ、頼んだよ」

 

大袈裟に敬礼して答えれば、輝さんは笑って返す。

 

 

 

「トーナメントの方はどうだい?タッグになったって聞いたけど」

 

デュノア社についてはひと段落ついたので、輝さんがトーナメントについての話題を振ってきた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒと組みましたよ」

 

「あぁ、ドイツの子か」

 

相手の名前を聞いた輝さんはそこで意外そうな顔をする。

 

「でも、その子って鋼夜くんの話だとかなりの問題児じゃなかったかい?次の騒動の発端だって言ってたよね?」

 

「まぁ、色々ありまして。ボーデヴィッヒと組んだのは騒動とかのフラグを折るためですよ。あと、あいつは一年の中だと一番強いですし。やるからには優勝目指したいですから」

 

「なるほどね」

 

答えを聞いて納得した表情で頷く輝さん。

一夏を合法的にボコれる、という超私怨的な理由は言わないでおいた。

まぁ、言わなくても伝わると思うし。

 

 

「でも、彼女は代表候補生で専用機持ちだよね?よく同じ専用機持ちである鋼夜くんと組むのが認められたね」

 

気になったのか、ふと輝さんが疑問を口にする。

だよね、そこ気になるよね。

 

「これ、トーナメントについての詳細です」

 

俺はポケットに折り畳んで入れていた紙を取り出し輝さんに渡す。今言った通り、今回のトーナメントのルールが書かれている。

 

「時間とフィールドと競技ルールと……あれ?これだけ?レギュレーションは無いの?」

 

紙に一通り目を通した輝さんは首を傾げる。

 

「はい。無いんですよ。専用機持ち同士代表候補生同士で組んでOK、武装は制限無しで積めるだけ積んで良しです」

 

「えー……それはやり過ぎでしょ。せめて組む相手の制限くらいはするべきなんじゃないかな。ちなみにこのトーナメントって強制……だよね。僕たちみたいなのが見に行くんだから当然か」

 

「ええ。山田先生に聞いてみたら、まずは好きにやらせてみるそうです。一年はあまり注目されないとはいえ、見る人は居ますから」

 

下手に制限を付けて一人一人の個性や特徴見極めるため、そしてそれを潰さないためだそうだ。

よって、こんな無法地帯が出来た訳だが。

 

「ただでさえ差があるのにISの練習も触れる機会も俺たち専用機持ちより少ない一般生徒は涙目ですよね。もしかしたら何かする前に封殺される可能性があるんですから」

 

個性とか持ち味とか輝きとかを見せる以前の問題だと思うの。

俺がもしラビアンローズに拾われないで専用機も与えられてなかった一般枠なら余裕でやる気を失うレベル。

 

「まぁ……これ以上は言わないでおくよ」

 

さすがの輝さんも口を噤んだ。

 

正直、一般生徒は怒っていい。

優勝景品があるから多分、誰も何も言わないんだろうけどね。本当、優勝したら一夏に告白云々のアレが無かったら暴動が起きてたと思う。

 

 

ツッコミはもう充分と思い、俺は話題を切り替える。

 

「そういえば、念のためにドイツの方もお願いしますね」

 

「分かってるよ。『VTシステム』のことだよね?……やっぱりどこの奴も同じことを考えるんだな」

 

火星ジオン軍を思い出すなぁ……と輝さんは呟く。

そうだね。あいつらも同じような事してたね。

 

今回の騒動の原因はドイツが作った変なシステムだ。

アレさえ発動させなければ今回はデュノア社を除けば平和に終わる。

事後処理も頼もうと輝さんに話を持ちかけた次第だ。

 

 

「まぁ、ドイツは私じゃなくて束がやるだろうね。彼女は少し前に気付いていたみたいだ」

 

束さんか。

ここはアニメで見た通りかな?

確か「ちーちゃんの偽物を作るとは有象無象の分際で、生意気なんだよぉ!」って感じで生産工場を見つけて爆破したんだったか。

 

「まぁ、何も起こらないのを祈るだけだよ」

 

「そうですね」

 

 

 

こういう言葉はだいたいフラグになる。知ってる。

でも、祈らずにはいられない。

 

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

一夏とシャルルを追いかけるために輝さんに別れを告げ、下りのエレベーターに乗りながら呟いた。

 





普通にレギュレーションが無いってヤバくね?
専用機持ち同士で組まれたら経験も機体のスペックも差があり過ぎる一般生徒涙目だし
最低でも専用機持ちもしくは代表候補生同士で組むのは制限するべきだろ
しかも武装制限無いと専用機持ち内でもシャルが圧倒的に有利だし

まぁ、そうすると一夏とシャルが組めないからなんだろうけども
ぶっちゃけシャルの代表候補生設定は本当に死にスキル
シャルの経歴の矛盾もだいたいこれのせいだし本当にいらなかっただろこの設定

判明してる代表候補生のセシリアと鈴はどうせ試合に出さないしラウラは抽選にさせるんなら、原作はシャルの代表候補生設定を捨てて制限をやっとくべきだったと思う


まぁ、原作はそもそもイベントはまともにやる気がないというかどうせ中止になるから設定適当なんだろうなぁ

襲撃者が普通に来たり性別詐称が普通に入学するしテロリストが普通に入ってくるし主人公はホモだしあの学園どうなってんだよ(今更)


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相手発表の第40話

やっぱりフラグには勝てなかったよ……


 

「……おはよう、鋼夜くん」

 

「おはよう、簪さん」

 

月曜日の朝のIS学園。

日課のトレーニングを済ませてシャワーを浴びた後に制服に着替えた俺はのほほんさんを起こし、朝食を摂るため食堂に向かった。

 

そこで簪さんと出会った訳である。

 

 

「かんちゃん、おはよー」

 

「おはよう、本音」

 

前は簪さんがのほほんさんを避けていたが、いつの間にかそれも解消されたようで今では普通に会話する仲になっている。

 

簪さんを交えた三人で朝食を摂ることになり、それぞれのメニューが届くとテーブル席へ向かう。

 

簪さんが先に座ったので反対側に座ったらのほほんさんが隣に座った。

いや、この流れだと君は簪さんの隣に座るべきだと思うのだが。

 

 

 

「そういえば今日はタッグの発表だね~」

 

頼んだサンドイッチを食べているとのほほんさんがふと口にした。

 

「こうやんは誰と組んだの?」

 

「ボーデヴィッヒ」

 

「ああ……ドイツの人」

 

別の人と組んだことは教えたが、相手までは言っていなかった。

数時間後には分かることなので俺は正直に答えた。

 

「む~、てっきりかんちゃんと組むかと思ったのに~」

 

そう答えればのほほんさんは不満そうな顔で頬を膨らませる。

確かに今までの経緯を見ればそう思えるが、こちらにも事情があるのだ。

 

「あいつの面倒を見るよう織斑先生に頼まれたんだ」

 

必殺、責任転嫁。

実際に頼まれたのは本当だし。

 

「それは知ってるけど……」

 

「もういいよ本音。……鋼夜くん、私達と当たった時はよろしくね」

 

引き下がらないのほほんさんを簪さんが止めた。

この口ぶりからすると簪さんとのほほんさんの二人で参加するようだ。

 

「ああ。やるからには優勝したいからね、お手柔らかに頼むよ」

 

「うん……」

 

そしてお互いの健闘を祈る。

……のほほんさんは最後まで不満そうな顔をしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「よろしく頼む」

 

「うむ。素直に私に教えを請いに来たのはいい判断だ」

 

 

放課後のアリーナにて俺とボーデヴィッヒはISを展開して向かいあっていた。

 

ペアが発表されたため、こうして堂々と練習が出来る訳である。

だから俺も行動を起こした。

 

ちなみにペアについてはボーデヴィッヒが問題を起こしていないのと俺の介入で色々変わっていた。

セシリアと鈴が参戦しているのが大きな理由だ。

 

一夏は原作通りシャルルと。

鈴は同室のハミルトンさんと。

セシリアは意外なことに箒と組んでいた。

そして簪さんとのほほんさんはやっぱりペアだった。

 

ボーデヴィッヒと組むことは今まで訓練に付き合ってくれた簪さんには申し訳ないが、彼女も「本音と仲直りするいいきっかけ」と納得してくれた。

簪さんには本当に感謝しなければ。

 

だからこそーー

 

 

「よし、では教官直伝のツーマンセルによる特訓を開始する!途中で音を上げることは許さんぞ!」

 

「了解!」

 

 

トーナメントでの騒動を阻止し、優勝して俺を鍛えてくれた皆の恩に報いること。

 

そのためにもこのトーナメント、本気でいかせてもらうぞ。

 

 

「いい闘志だ。まずは小手調べに貴様の実力を図らせてもらう。私と模擬戦だ」

 

腕を組んでそう宣言すれば彼女のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭載されている大型のカノン砲がこちらに照準を合わせる。

 

 

「あまり男をなめるなよ?」

 

それに対し、俺はアンロックユニットの『天岩戸』をいつでも展開出来るように起動する。

 

 

ニヤリと笑ったボーデヴィッヒがカノン砲を放ち、俺がそれを『天岩戸』で弾く。

 

それが開始の合図となった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「貴様……中々やるな……」

 

「それはどうも……」

 

 

お互いに肩で息をしながら武器を構えて睨み合う。

すると、ちょうどいいタイミングでアリーナ使用の交代の知らせが流れた。

 

 

「さすがに止めにしませんか」

 

「そうだな……そうしよう」

 

 

終了するよう提案すれば彼女は了承した。武装を粒子に戻し、それぞれがピットへ戻る。

 

『四天』の簡単な整備と補給を済ませて更衣室へ向かい、シャワーを浴びて着替える。

 

 

「はぁー」

 

更衣室内にあるベンチに転がり、ため息をつく。

 

ボーデヴィッヒとの勝負は意外にも拮抗した。

 

ボーデヴィッヒはカノン砲が効かないと分かると即座にそれをパージしてブレード付きのワイヤーと手から展開するプラズマブレードで接近戦を仕掛けてきた。

 

ボーデヴィッヒの機体に積まれているとされる『AIC』の恐ろしい効果を知っている俺は四天の機動力と勘で接近戦を避けて射撃武器で牽制した。

しかし相手もそれは想定しており、通常の火器は『AIC』により止められ例え当たっても分厚い装甲なためダメージは薄い。

『AIC』に有効とされるビーム兵器は装甲に施されたコーティングにより威力は減少される。

 

ボーデヴィッヒの操作技術も凄まじく、俺自身もワイヤーのコンボで何度もピンチに陥りかけた。

 

そんないたちごっこをさっきまで続けていた。

 

 

「飯、行くか」

 

反省もそこそこにして俺は更衣室を出た。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時は流れに流れて学年別トーナメント当日。

ボーデヴィッヒとのドイツ式特訓を乗り越えてついに訪れたのだ。

 

厄介な一日が。

 

 

 

だだっ広い更衣室で対戦相手の発表を待つ俺と一夏とシャルルの三人が居た。

トーナメントの対戦相手は直前に発表するタイプのようだ。

 

 

「見ろよ、凄い人だぜ」

 

更衣室のモニターから観客席の様子を見ていた一夏がそう言う。

VIP専用の席を映し出した画面には各国政府関係者や研究員や企業の上層部といった見るからに偉そうな人達が一堂に会していた。

 

普通なら一年の試合なんて見る奴は少ないだろうが、今年は俺と一夏というイレギュラーが居る。

 

噂の男性操縦者を見たい。

 

それが大きな理由だろう。

 

 

 

「あ、鋼夜。輝さんが居るぞ」

 

一夏に言われてモニターを見れば、画面には高そうなスーツに身を包み、ニコニコと笑みを浮かべる輝さんが写っていた。

ボディーガードと思われる黒いスーツ姿の若い男女が後ろ左右に立っている。

あれは……マークの兄貴とエルフリーデさんか。

 

 

そして輝さんに近づく人物が一人。

派手な装飾品と格好の金髪のババア。

デュノア夫人である。

 

「…………」

 

画面を見つめていたシャルルが微かに震えた。

横から一夏が「大丈夫だ」と言って彼女の手を握る。

シャルルは顔を赤くしながら「ありがとう」と呟いた。

 

パターン青、フラグでーっす。

いい加減にしろよこの野郎。

 

怒りを紛らわすためにモニターに集中する。

 

画面の中ではデュノア夫人が厳しい顔で何やら言っているが輝さんは笑顔で受け流している。

あの様子なら大丈夫そうだな。

 

 

「しっかし驚いたぞ。鋼夜があいつと組んでるなんて」

 

「本当。僕もこの間の発表でびっくりしたよ」

 

話題を切り替えるためか、一夏がそんな事を言った。

二人が言っていることは俺がボーデヴィッヒと組んだことだろう。

 

「やるからには優勝したいんでね。強い奴と組ませてもらった」

 

俺の答えに一応納得したのか、二人は頷いた。

 

「でもさ、あいつって俺を見るたびに睨んでくるんだよな。初対面の時は引っ叩かれそうになったし」

 

「心当たりは?」

 

「まぁ……あるといえばあるな」

 

どうやら一夏も公にはなっていないドイツの一件が関係していると薄々感じているようだ。

真面目な雰囲気なのを察してか、シャルルは何も言ってこなかった。

 

 

「まぁ、なんにせよ、当たっても手加減しないからな!」

 

「僕も全力で行かせてもらうよ!」

 

「ああ……俺も本気で、容赦なく、全力で、やらせてもらう」

 

 

笑顔で宣言する二人に俺も笑顔でかえす。

一夏は気づかなかったが、俺の滲み出るドス黒い感情に気付いたシャルルは一瞬だけ凍り付いていた。

 

 

「……あ、発表されるみたいだよ!」

 

シャルルの一言で俺も一夏も画面に注目する。

 

ある意味、このトーナメントの組み合わせで全てが決まると言っていい。

 

手っ取り早いのは俺達と当たる前に一夏達が負けるのがいい。

ボーデヴィッヒと一夏が戦わなければ彼女が暴走する可能性はほぼ無くなる。

 

それに、このトーナメントには鈴とセシリアが参加しているというイレギュラーが発生している。

優勝景品によって燃えている彼女達と一夏達がぶつかれば敗北ワンチャンあるかもしれない。

 

それに彼女達が参加したということは枠が増えた。つまりはズレが生じたということ。

 

原作のように一回戦第一試合でぶつかるなんて事は無いだろう。

 

 

 

そして表示される文字、トーナメント表。それらを三人で食い入るように見つめる。

 

 

「「「ーーえ?」」」

 

俺、一夏、シャルルの反応がシンクロする。

しかし出した言葉は同じなれど、俺の言葉は二人とは微妙に意味が違う。

 

 

この時、俺はフラグめいた事を口走ったことを非常に後悔した。

 

 

 

 

モニターに出た対戦表。

 

 

学年別トーナメント一年

一回戦第一試合

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ

如月鋼夜

VS

織斑一夏

シャルル・デュノア

 

 

 

俺は見事にフラグを立ててしまったようだ。

 





相性悪いよラウラちゃん
実際、ラウラの機体って一番強いと思うんだ
あとはラウラがゲルマン流忍術を使えるようになれば完璧だな!(錯乱)

さらっとオリキャラ
マークとエルフさんの二人はずっとボディーガードで出したかった
これ以降に出番は無いと思うので忘れていただいて結構です


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タッグマッチの第41話

これが本当のサンライズ


「よく考えたら当然だな」

 

「……む?」

 

「いや、この組み合わせ」

 

 

俺達はアリーナのピットに居た。

お互いの機体の最終調整も終わり、後は開始を待つだけの状態。

 

目を閉じ、腕を組んでシュヴァルツェア・レーゲンにもたれかかっていたボーデヴィッヒが俺の呟きに反応した。

 

 

「話題の男性操縦者が三人。それでそれぞれが候補生と組んでるんだ。一般生徒のためにも早めに手の内晒して対策立てられるように最初にしたんだな、と」

 

よくよく考えてみたら確かにそうだなと納得した。

しかしこれは失敗だったな、まさか自分からフラグを引き寄せてしまうとは。

 

「奴と戦えるなら、それでいい」

 

ボーデヴィッヒはぶっきらぼうにそう答えた。

 

「分かっていると思うが、織斑一夏は私が墜とす。如月、お前はもう一人のフランスの相手をしろ」

 

相変わらず一夏に固執しているが、もうしょうがない。

自分でも分かっていると思うが止まらないんだろう。

 

何気に訓練を通して名字で呼んでくれるようにはなった。

 

 

「任せろ」

 

「ふん、私の顔に泥を塗るようなマネだけはするなよ」

 

それだけ言うと彼女は再び目を閉じた。

言われなくても分かっている。

 

彼女とは一応、作戦会議みたいなものは開いたが……まぁ、どうだろうか。

 

ボーデヴィッヒと一夏が戦っても普通に勝てると思う。

シャルルが邪魔しなければ。

 

問題は俺がシャルルを倒せるか。

いや、倒すまではいかなくても足止め出来ればいい。

 

だが、彼女は強敵だ。

機体、技能共に万能で様々な戦法を取ってくる。

機体性能の相性でいけば俺に軍配が上がるが、それだけでは駄目だ。

 

やはり、あの二人の作戦を潰さなければならないだろう。

 

恐らく原作通り一夏がシャルルの銃を拾って撃ってくるだろう。

最近あの二人が射撃訓練してるのよく見るし。

 

しかしどうやって潰すか……。

 

 

 

試合開始のアナウンスが鳴るまで俺は考え込んでいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

場所は代わり、アリーナの中。

天井は開き、雲ひとつ無い快晴の空が広がっている。

 

フィールドには既に一夏と白式とシャルルのラファール、そして俺の四天とボーデヴィッヒのレーゲンが睨み合っている。

 

 

「一戦目で当たるとはな」

 

「なぁ、なんでお前は俺を目の敵にするんだ?」

 

試合開始数秒前に一夏とボーデヴィッヒが言葉を交わした。

 

「それすら分からんか」

 

「どうやら、この勝負が終わったらお前とは話し合う必要があるな」

 

試合開始の合図が五秒前を切った。

 

「「まずは、倒す!」」

 

二人の叫びと同時に試合が開始される。

 

 

「おおおっ!」

 

先に動いたのは一夏だった。

一夏は『雪片弐型』を展開すると瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使い、ボーデヴィッヒに迫る。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に距離を詰めて先制攻撃を与え、流れを持ってくる魂胆だろう。

 

「ふん……」

 

しかし一夏の奇襲は既に想定済み。

ボーデヴィッヒは『AIC』を発動して一夏を拘束した。

 

 

「じゃあ俺も」

 

近接ブレードの『篝火』を展開し、加速。

今まさに一夏を助けようと武装を展開するシャルルに斬りかかる。

 

 

「やっぱりそう来るよね!」

 

シャルルは右手のショットガンを加速して接近する俺に発砲し、左手のサブマシンガンをボーデヴィッヒに向けて放つ。

 

俺は『天岩戸』の右側を全面に展開して散弾を防ぎつつ、そのまま突っ込む。

 

ボーデヴィッヒのカノン砲があらぬ方向に飛んでいくのをセンサーが教えた。

今のシャルルの邪魔が間に合ったのか、ちくしょう。

 

 

「はっ!」

 

「させないよ!」

 

接近し、『篝火』を振り下ろすがシャルルはショットガンとサブマシンガンを粒子に戻すと『ブレッド・スライサー』という名称の小型ブレードを展開して受け止める。

 

「『高速切替(ラピッド・スイッチ)』か。俺も欲しいぜまったく」

 

高速切替。

その名の通り、装備を素早く切り替える機能。いや、技術だったか。

ただでさえ武装を大量に積んでいる専用のラファールから望んだ武装を即座に取り出せるのはやはり搭乗者自身の技量によるものだろう。

 

「僕の特技だから、ねっ!」

 

そう言い放つとシャルルは空いた方の手にハンドガンを展開すると、こちらに向けて放つ。

 

「おっと!」

 

シャルルのブレードを弾き返すように篝火を横に振り抜き、スラスターを起動して横にズレてハンドガンの照準をずらす。

避けながらこちらも右手で篝火を握り、空いた左手にハンドガンの『花陵(かりょう)』を展開して引き金を引く。

 

 

「まさか反応するなんて!」

 

反撃に驚いたシャルルは腕のシールドを展開し、ハンドガンで牽制しながら後退する。

 

 

反応したとはいえ数発もらってしまい、エネルギーが少し減った。

 

 

「っと、行かせねぇよ」

 

『篝火』と『花陵』を粒子に戻してビームショットライフの『散雷』を展開する。

ライフルモードにしてボーデヴィッヒの妨害に入るシャルルを移動しながら狙撃。

移動しながらの射撃なので流石に当たらないが、二人の連携の邪魔は出来た。

 

 

 

「しつこいなぁ!」

 

「固いこと言うなよ」

 

 

散弾に切り替えた『散雷』を二つ展開し、両脇に抱えてビームを放ちながらシャルルを追いかける。

連結すれば巨大なビームが撃てそうな格好だが、生憎そういう武装ではないので不可能だ。

 

まぁ、散弾を撃っているのも理由がある。

さっきからシャルルがポイ捨てしている武器を狙ってのことだ。

地表から離れていないところを飛行していて助かっている。

 

しかし、逃げながらも隙を見ては一夏の援護をするシャルルは流石と言える。

ボーデヴィッヒと斬り合っているのを見かけるが、一夏も中々しぶとい。

 

 

「えいっ!」

 

シャルルがいきなり軌道を変え、垂直に上へ飛んだ。

俺も追いかけるために上へ機体を移動させるが……。

 

 

「しまった……!」

 

視界が強烈な光に包まれる。

とっさに手で光を遮ろうとするが、そこで自らの失敗を悟った。

 

「引っかかったね」

 

太陽を背にしたシャルルが意地悪く言った。

シャルルが何かを展開し、構える。

そして表示されるロックオンのアラート。

 

「普段は滅多に使わないけど、その盾を攻略するのに入れておいて良かったよ」

 

うっすらと俺の視界に映るのは長い砲身とこちらに向く銃口。

ーーーー大口径の対戦車ライフル。

 

 

……いやいや、お前がそれ使って、しかも人に向けて撃っちゃダメだろ!

 

 

独特の銃声と共に発射される銃弾。

『天岩戸』を前面に展開して防御するが衝撃は殺せず吹き飛ばされる。

シャルルは二発、三発と続けて発射。

スラスターによる推進も間に合わず、地面に叩きつけられる。

 

 

「ぐえっ」

 

背中から落ちたせいで変な声が漏れる。

ロックが外れているのを察した俺は視界を塞いでいる『天岩戸』を戻し、落ちた拍子に手から零れ落ちた『散雷』を拾って立ち上がる。

 

 

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと!?」

 

「今、初めて使ってみたのさ!」

 

そして目撃したのは瞬時加速を使い、上からボーデヴィッヒに強襲するシャルル。

 

「しかし!私の停止結界の前では無力!」

 

迫るシャルルにAICを発動するボーデヴィッヒ。

あともう少しというところで変化は起きた。

 

「き、貴様っ!?」

 

「任せたぜ!シャルル!」

 

唯一の武装である雪片弐型を投げ付け、ボーデヴィッヒのAICを妨害する一夏。

 

 

俺は状況を理解してすぐさま『散雷』をライフルモードにして二人に向けて放つが、間に合わない。

 

 

「『盾殺し(シールド・ピアース)』……!」

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

雄叫びと共にシャルルは切り札であるパイルバンカーを展開する。

 

 

「がっ、はっ……」

 

俺の静止も虚しく、シャルルはボーデヴィッヒに向けてパイルバンカーを叩きつける。

あまりの衝撃に、地面がへこんでいた。

 

 

「……やっちまったな」

 

その光景を見て、呟く。

恐れていたことが、現実になった。

 




銃が無ければ刀を投げればいいじゃない

Q.展開早くね?
A.早くしないと一夏が墜ちるから
Q.ラウラ弱くね?
A.舐めプしてたんだよきっと

頑張ります
短くてマジすみません


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弾け飛んだ第42話

小学生VS小学生


「もう一発いっとく?」

 

「いや、させねーよ」

 

シャルルのパイルバンカーはリボルバー式で連射が可能なため、もう一撃放とうとするシャルルを妨害するために『散雷』を向けてビームを放つ。

 

飛んでビームを避けながらもしっかりマシンガンで倒れたままのボーデヴィッヒに追い討ちをかけるシャルルさんマジ容赦無い。

 

 

「はい、一夏」

 

「おう、さんきゅ。……さて、これで一対二だぜ?」

 

シャルルが落ちていた雪片弐型を回収し、それを一夏に渡した。

一夏はそれを受け取ると不敵な笑みを浮かべてそう言ってきた。

 

 

殴りたい、あの笑顔。

 

 

一夏の問いには答えず、俺は無言で両脇に抱えた『散雷』の引き金を引いた。

黄色いビームの光が二人に迫るが、避けられる。

 

 

計画は失敗。

ボーデヴィッヒは恐らく戦闘不能。

 

こうなってしまってはしょうがない。

もう俺にはボーデヴィッヒの謎システム発動の不発を祈ることしかできない。

そして、一人でこの二人と戦うこと。

 

圧倒的に不利だが、やるしかない。

最低でも一夏だけは道連れにしてやる。

 

抱えていた『散雷』を放り投げ、右手に近接ブレードの『篝火』を、左手にビーム拳銃の『召雷(しょうらい)』を展開。

 

一夏も雪片弐型を正眼の形に構え、シャルルも両手にサブマシンガンを展開する。

 

 

 

 

そして今、まさに動き出そうとした時にそれは起きた。

 

 

「ーーっ!?」

 

唐突に頭痛とも貧血とも例えようのない不気味な感覚が脳に襲ってきた。

 

気分が、悪い。

自分の中に何かが無理やり流れ込んでくる感覚がする。

 

 

劣等感、絶望、嫉妬、怒り。

それらが混ざり合った憎悪の感情が俺の中に無理やり流し込まれる。

 

「ぐっ……が…ぁ…」

 

試合中というのも忘れて武器を離し、頭を抑える。

痛い、気持ち悪い。

 

そんな様子を見て一夏とシャルルが何事かと動きを止めた。

 

息が荒くなる。ドス黒い感情が波のように押し寄せる。

そして流れ込んでくる感情と霞みがかったどこかの光景。

これは、ひょっとしなくてもーーーー。

 

 

 

 

「うあああああああっ!!!!」

 

突如、戦闘不能と思われていたボーデヴィッヒがいきなり絶叫し、彼女の機体がスパークした。

 

 

「えっ!?」

 

「なんだ!?」

 

突然の事に驚き、一夏とシャルルが振り返る。

 

その視線の先では、ボーデヴィッヒの機体が変形していた。

黒い装甲は全て溶け、生物のように蠢き、ボーデヴィッヒを飲み込んでいく。

 

 

くそっ……始まったか。

 

痛む頭を抑えながらなんとか『篝火』を拾い、黒い物体へ向けて加速。

シャルルと一夏を押し退けて『篝火』を大上段に振りかぶり、蠢く黒い物体へ斬りかかる。

しかし俺の決死の一撃は届く事なく、黒い物体から放たれた電撃により弾き飛ばされた。

 

 

「うっ、ぐぅ……あぁ!」

 

飲み込まれまいともがいていたであろうボーデヴィッヒだが、彼女の全身は黒い何かに包み込まれた。

 

 

「鋼夜、だいじょうぶ!?」

 

電撃で弾き飛ばされた俺の元へシャルルが駆け寄る。

この異常事態を前に、試合どころでは無いと判断したのだろう。

シャルルの助けを借りて俺はなんとか起き上がる。

 

情けねえ。

しかも、まだ頭が変だ……。

 

 

「なんだよ……あれ……」

 

完全に姿を変えた、ボーデヴィッヒだったものを見て一夏が呟いた。

 

そこに現れたのは全身が黒い装甲で覆われたISのような『何か』。

各部の装甲はどことなく日本製のISである『打鉄』に似ている。

そして右手には一振りの日本刀。

 

 

「『雪片』……!」

 

一夏が刀の名前らしき単語を呟く。

確かに、この黒い物体が持っている刀は一夏の『雪片弐型』と酷似している。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

 

一夏が黒い物体に向かっていくが数回打ち合いが続くが一夏の方が弾き飛ばされた。

 

「ちくしょう!ふざけやがって!」

 

それでも一夏は立ち上がり、何かに取り憑かれたように黒い物体へ向かっていく。

 

何故だ、一夏が黒い物体に向かっていくたびに頭が痛い。変になる。

止めろ、辞めろ、ヤめろ。

 

 

 

「駄目だよ一夏!」

 

見兼ねたシャルルが向かっていく前に後ろから一夏を押さえる。

 

「それじゃあ機体が保たないよ、とにかく落ち着いて!」

 

「離せシャルル!あいつ、あいつ!」

 

それでもなお、一夏は動きを止めない。

黒い物体はというと一夏を弾き飛ばした後は微動だにしていない。

 

 

「どうしたんだよ一夏!なんで向かっていくの!?」

 

「あれは、千冬姉のデータだ!それは千冬姉のものだ、千冬姉だけのものなんだよ!それを……くそっ!」

 

横で一夏が何やら叫んでいる。

正直、意味が分からない。

うるさい。頭が痛い。口を閉じろ。

 

「それだけじゃねぇよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されてるラウラも気にいらねぇ。ISとラウラ、どっちも一発ぶっ叩いてやらねえと気がすまねえ」

 

 

一夏が何か言っている。

 

 

誰のせいでこうなったと思っていやがる。

お前が大人しくやられないからだろうが。

 

いや、お前はいつもそうだ。

俺は望んでもいないのにこんな場所に連れて来られた。

お前は俺の思い通りに動かない。

そしていつも余計な事をする。

俺の努力は空回り。

尻拭いはいつも俺。

 

 

理不尽?勝手?我儘?逆恨み?自業自得?

そんなことは分かっている、分かり切っている。

 

でも、このやり場の無い怒りはなんだ?どうすればいい?

 

これは流石に、我慢の限界なのよね。

 

 

……ああ、頭が、痛い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……あちゃー、失敗かぁ」

 

ドイツの子の機体が変形していくのを見ながら僕は呟く。

まさかあんな形で『四天』を攻略されるなんてね、予想外。

一夏くんも唯一の武装の刀を投げるって……それくらい彼女を信用してたのかな?

 

まぁ、鋼夜くんはともかくドイツの子は凄い舐めてかかってたけど。

 

 

ふとドイツのお偉いさん方を見てみると、すごいすごい。皆が顔面蒼白。

各国に弱みを握らせちゃったね、可哀想に。

僕も有効活用させてもらおうかな。

 

 

『非常事態発令!トーナメントの全試合は中止!状況をレベルDと認定、鎮圧部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!』

 

ふと、放送が入る。

この声は織斑千冬か。

まったく、イベントが豊富だね。この学校。

 

 

「社長、急いで避難を」

 

「分かったよ」

 

連れて来た護衛の二人に促され、VIP用の観客席を後にする。

もっと見たかったんだけどなぁ。

 

「それにしても、凄い感情の波だなぁ」

 

様々な感情が入り混じった波を感じながら呟く。

自分のアイデンティティを否定されて出来損ないと言われてどん底に落ちたけど恩師に救われ頑張るけど恩師の大切な存在に嫉妬してしまう。

そんな感じ。

ドイツの子のだろうか。

 

こんなにもストレートに流れ込んでくるのは彼女が強化人間に近い類いの存在だからだろう。

 

「大丈夫かな、鋼夜くん」

 

鋼夜くん、成り立てだし。

壊れちゃったら大変だなぁ。

せっかく見つけた仲間なのに。

 

「……ん?」

 

ふと、ドイツの子とは違う感情の波を感じる。

波というかこれは……ふふっ、そういうことか。

 

「頑張ってね、鋼夜くん」

 

彼の無事を祈ろう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ほら!鎮圧部隊が来るから!僕たちが出る必要は無いんだよ!」

 

「だから、無理に危ない場所へ飛び込む必要はない、か?」

 

「そうだよ!鋼夜だって動けないみたいだしーー」

 

「違うんだシャルル。全然違う。俺が『やらなきゃいけない』んじゃないんだよ。これは『俺がやりたいからやる』んだ。他の誰かがどうだとか、知るか。大体、ここで引いちまったらそれはもう俺じゃねえよ。織斑一夏じゃない。……シャルルは鋼夜を連れて下がってくれ」

 

「勝手に役立たず扱いするな」

 

言い争っている一夏とシャルルの二人の間に鋼夜が割って入る。

『篝火』と、黒い物体に向かっていく際に先程拾い損ねたビーム拳銃の『召雷』を左手に持っている。

 

「時間稼ぎは俺がやる。シャルル、一夏を連れて下がってくれ」

 

「鋼夜!聞いただろ、あれは俺がやるんだ!」

 

吠える一夏の言葉を聞いた鋼夜の顔が歪む。

 

「うるさい黙れ、大人しく従え」

 

「嫌だね!」

 

しかし一夏は鋼夜の言葉を無視して再びじたばたと暴れる。

それをシャルルが必死で押さえる。

 

 

「離せ!邪魔するなら二人ともーー」

 

 

「頭に響くんだよ、この馬鹿があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

一夏が何かを言い終える前に鋼夜は感情のままに『篝火』を振り上げ、そして感情のままに『篝火』を振り下ろし、刀の峰を一夏の頭に叩きつけた。

 

突然の強襲。まさかの不意打ち。

一夏は何が起こったのかを理解する間も無く崩れ落ちる。

 

 

「…………えっ?」

 

 

隣のシャルルが、放送席の教師が、避難途中の人々が、凍りついた。

 

 

 

「ふふっ、ふふ、ふふふふっ」

 

その中で、肩を震わせながら本気で笑いをこらえる人物が一人。

如月鋼夜である。

 

 

「あっはっはっは!やった!やった!ついやっちまった!あはははははははは!マジかよ、あはははははははははは!」

 

しかし堪えきれなかったのか、今度はダムが決壊したように笑い出す。

 

 

 

今までの理不尽。

学園での騒動。

複雑な人間関係。

変わってしまった自身。

毒電波のように流れ込んでくる負の感情。

 

これらが同時に襲い掛かってきた鋼夜は思った。

なぜこんなに自分は苦労しているのか、苦痛を受けているのかと。

 

そして彼は脳がまともに働かないので理性や正常な価値観や論理観を捨てて本能に従って単純に考えた結果、ある結論に至った。

 

 

「これ全部アイツ(一夏)のせいじゃね?」と。

 

 

そう、つまり彼はーー

 

 

 

ハジけたのだ。




?「恨み晴らすからなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

鋼夜が遂に爆発
理不尽ってレベルじゃねーぞ

鋼夜の謎の頭痛の理由
一夏に反応して黒い物体の中のラウラも反応する→VTシステムは憎しみや怒りで動いてるからそういう感情しか出ない→鋼夜が巻き添え食らう
そんな自己解釈です

全てはVTシステムってやつのせいなんだ

度重なるストレス+訳わからん俺理論+ドイツ製毒電波
だから仕方ないね

毒電波をカミーユって言うのは止めたげてよぉ!

次回、マジギレ鋼夜対VTシステム


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偽物退治の第43話

残念だったな少佐、トリックだよ



「はははっ」

 

イラついたから一夏を刀で殴った。

殴りたくなったから殴った。

善悪とか理性とかそんなのお構いなしに感情のまま殴ってやった。

ついカッとなってやった。

 

普段の自分では考えられない行動。

だが、後悔は無い。

むしろ、清々しいくらいの爽快感がある。

 

 

「はっ、あははははははは!」

 

 

そしたら笑えてきた。なんだか分からないが、笑いが出てきた。

 

だから笑った。

 

試合中だとかなんとか、そういうのも忘れて。

 

 

「あは、あははははっ……ふぅ」

 

笑いの波が引くと同時に俺は辺りを見回す。

 

一夏は気絶している。

シャルルは一夏を抱えたまま、ポカンとした顔でこちらを見ている。

黒い物体はご丁寧に中央で待ってくれている。

 

 

「……あっ。こ、鋼夜!」

 

ふと、我に返ったであろうシャルルが声を上げた。

見るからに困惑しているのが分かる。

 

 

「一夏をよろしく」

 

「待って、まさか本当に一人で」

 

「よ ろ し く !」

 

 

シャルルの言葉を途中で遮り、俺は単身で黒い物体へ向かっていく。

 

元凶の一夏は黙らせた。

ならば後は残ったこの邪魔な黒い物体を片付ける。

気分のいい、今のうちに。

 

迫る俺を敵と認識したのか、黒い物体は腰を引き、居合の構えを取った。

 

「耳障りなノイズばかりで、うるさいんだよぉ!」

 

そして繰り出される一閃。

俺は『天岩戸』を展開し、雪片擬きを防ぐ。

衝撃で機体がブレるが、倒れないようになんとかサブのスラスターで制御する。

 

初撃が防がれたのに構わず相手は勢いそのままに上段に構え、振り下ろす。

 

「実体剣じゃあ、こいつは攻略出来ねぇよ!」

 

袈裟斬りも『天岩戸』で受け止める。

無理矢理押し込もうとする相手に対してスラスターを全開にして対抗。

そしてガラ空きになっている相手の胴体部分目掛けて『召雷』でビームを撃ち込む。

 

ビームが数発被弾するが、俺の機体に蹴りを放つ。

俺が体勢を崩し、立ち直るまでの僅かな隙に距離を取ると刀を正眼の形に構えた。

 

こいつは突然変異しているが、元はボーデヴィッヒのISだ。

元の損傷やダメージを考えると、こいつもエネルギーは残っていないはず。

 

 

「そういえばお前にも言いたい事があったんだわ」

 

『召雷』でビームを放つとそいつはビームを避けながらも素早い動きで接近し袈裟斬りを放つ。

 

まともに受け止めずに『篝火』を斜めから下にさげることで振り下ろされる刃を受け流す。

 

すかさず相手が切り替えすより早く懐へ入る。

 

 

「一夏に気を付けろ、って言ったのに聞かなかったよな」

 

 

この間合いでは日本刀は扱えない。

相手が距離を取ろうと行動するが、俺はそれより早く『天岩戸』を全面に展開した。

目の前には謎の物体。ISの胸部に当る部分がある。

そこにアームで押し出された『天岩戸』が迫り、相手はそれをまともに食らってぐらつく。

盾で殴ってやったのだ。

 

 

「タッグなのに全然こっちを援護しないしよ」

 

すかさず左手に構えた『召雷』を撃ち込む。

数発の被弾を確認したが、数発を刀による防御で軌道を逸らされた。

 

 

「本気出さずに一夏ばっかりに固執してよ」

 

『召雷』を相手に向かって投げ捨て、サブマシンガンの『柳花(りゅうか)』を代わりに展開し、滑るように移動しながら乱射する。

 

相手は投げつけた『召雷』を刀で弾き飛ばし、銃弾も弾く。

伊達に織斑先生をコピーしていないようだ。

 

 

「お前のカノン砲なら俺にライフル撃ってる時のシャルルを狙えたよな?なんで撃たなかったの?援護してくれなかったの?だからこんな事になってるんだよ?分かる?この罪の重さ」

 

弾切れするまで撃ち尽くした『柳花』を投げつけ、今度は『篝火』を展開。

すると、弾丸の雨が止んだのを好機と見たのか黒いISが突っ込んできた。

 

 

「……それ、篠ノ之流だろ」

 

繰り出される斬撃を防ぎ、受け流しながら俺は確信した。

中学の頃に何度か箒と打ち合ったり、型を見たりした事がある。だから分かった。

こいつの動きはそれに似ている。

 

束さんと仲のいい織斑先生が箒の道場に通っていたとしてもおかしくない。

 

当然だが、俺の問いに黒い物体は何も答えない。ただ淡々と、俺を倒すために剣を振るっている。

 

 

「…………」

 

その剣を無言で捌いていく。

炎のように爆発するような怒りの波は鎮み、代わりに氷のように冷えた静かな怒りが湧き上がる。

 

確かにこれは織斑先生に、篠ノ之流の技だ。

しかしいくら相手が織斑先生をコピーしてもそれはコピーでしか無い。

しかもAIなら尚更。

 

目の前のそれは必死に織斑先生の真似をする人形だ。

形はそうだが、剣へ込める覇気が無い。思いが無い。

力任せ。いや、それこそ本当に力に振り回されている。

 

篠ノ之流に触れたから、そして俺も剣士の端くれだから分かる。

こいつは、非常に滑稽だ。

 

 

一夏が怒るのも分かる気がする。

 

では、一夏を殴った事を後悔しているか?と言われれば、それとこれとは別問題。

殴った事は後悔も反省もしていない。むしろ良くやったと思いたい。

 

 

「そろそろケリをつける」

 

数回切り結んだ後に急速後退。

こちらの動きを読んだのかは知らないが、向こうも後退する。

 

『篝火』を両手で握り、構え直す。

刀を握る手を右の腰の辺りまで下げ、刃を後ろに向け身体で刀身を隠す形になる。

 

脇構え、という名前の構えだ。

かの剣豪、佐々木小次郎が使ってたとか使ってないとか。

 

剣道では構えの性質上からまったく使われないが、ISを用いた戦いならば話は別だ。

移動中の構えに便利なので格闘戦になったら俺はよく使う。

 

 

そして動く。

俺は瞬時加速を使えない。なので真っ直ぐ突っ込んでいく形となる。

 

迎え撃つ相手は居合の構えを取る。

範囲に入れば、必殺の一閃をお見舞いされるだろう。

だから範囲に入る前に『天岩戸』を前面に展開する。

 

しかし異変が起きた。

白く輝いていた『天岩戸』の色が灰色へと変わっていったのだ。

フェイズシフトダウンーー簡単に言うと電池切れ。

物理攻撃を防ぐ無敵の盾は、このタイミングでただの鉄塊へと変わってしまった。

 

「しまっーー!」

 

急いで減速しようとスラスターを操るが、急には止まれない。

この状況で突っ込めばダウンした『天岩戸』は破壊され、続く袈裟斬りで俺の機体は切り裂かれて敗北するだろう。

 

 

そして範囲内へ入り、繰り出される必殺の一閃。

『天岩戸』と雪片擬きがぶつかり合う。

ーーーーが。

 

 

「なんてな」

 

俺は即座にアンロックユニットの『天岩戸』をパージして飛び上がる。

黒い物体の繰り出した一閃は『天岩戸』を斬り飛ばす。

しかし当然だが、そこに俺は居ない。

 

 

落下に合わせながら大上段に振りかぶった『篝火』を盛大に空振りをした黒い物体目掛けて振り下ろし、肩から股まで真っ二つに叩き斬った。

 

 

どうやら勝負は付いたようだ。

黒い物体はスパークしながらどろりと溶けるように変形していき、元のシュヴァルツェア・レーゲンに戻った。

 

そして中から現れた、恐らく気を失っているであろうボーデヴィッヒを抱きかかえる。

 

「……ふぅ、スッキリした」

 

 

全てが終わり、安堵した直後に突然目の前が真っ暗になった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

不思議な夢を見ていた。

 

 

人の手によって少女が生まれる光景。

戦うために作られ、鍛えられる少女の光景。

とある事故により落ちこぼれと呼ばれる少女の光景

尊敬する恩師のために色々と頑張る少女の光景。

 

これは誰かの記憶なのだろう。

ーー俺は、この少女を知っている。

 

 

 

「……なんだ、ここ」

 

気付けば周りが暗い宇宙空間のような場所に俺は浮かんでいる。

 

しかし今見た夢のようなものは、恐らくボーデヴィッヒのもの、彼女の記憶だろう。

何故、俺が他人の記憶を?

 

 

 

「……なぜ、ここにいる」

 

聞き覚えのある声がしたので思考を止め、振り返ると全裸のボーデヴィッヒが居た。

全裸と言っても大事な部分は透けたり変な光が入ったりで見えない。

身体の輪郭と顔だけがはっきり見えるだけだ。

自分の姿を確認すると自分も同じだった。

 

「ここはどこだ?」

 

「……私にも分からない」

 

どうやらボーデヴィッヒにも分からないらしい。

確かアニメで一夏もここに来てたけど、この空間が何かは分かって無いんだよな。

 

 

「っ……見たのか?」

 

OOの謎裸空間と同じなのか、と考えているとボーデヴィッヒからそう質問された。

 

「え?」

 

「妙な言い方かもしれないが……私の中にお前が入ってくる感覚がしたんだ」

 

思わず聞き返すと彼女は顔を赤くしながらそう告げた。

何時もの高圧的な態度はどこへ行ったのか。

 

 

「……見たといえば見た」

 

「そうか……ははっ、見たのか」

 

恐らくは夢のことだろう。

正直に答えると彼女は乾いた笑いを上げると俯いた。

 

「笑いたければ笑うがいい」

 

「いや、笑わねーよ?」

 

むしろどこに笑うポイントがあったのか。

俺がそう返せばボーデヴィッヒは意外そうな顔をする。

 

「確かにやり方はアレだったがお前が織斑先生を尊敬して、先生のためを思っているのは分かった」

 

「だが、その結果がこれだ。私は織斑一夏に負けた。機体が暴走して、そのせいで教官の顔に泥を塗った。……お前にも、迷惑をかけた」

 

「まさか……」

 

俺の呟きに反応し、ボーデヴィッヒは頷く。

 

「ああ。全部聞こえていたし、感じていた。お前の怒りや織斑一夏の怒りもな。……私を止めてくれた事は感謝する」

 

……VTシステムが暴走していた時、意識だけはあったのか。

それはそれで厄介だな。

 

「まぁ、あれは不可抗力だろ。機体に変なもの積まれてたんだ、お前は悪くない。気にするな」

 

これも全部、ドイツの奴らのせいなんだ。

ていうか自国で内密に使うならまだしも、何故IS学園に留学する予定の代表候補生の機体に積んだままなのか。

フランスといいドイツといい、この世界の大人はアホとしか思えない。

 

「今回のことで教官には見捨てられただろう」

 

俺が気にするなと言っても彼女の表情は晴れない。

あの放課後の会話での一言はかなり効いたらしいな。

 

 

「私は、どうすればいいんだろうな」

 

その暗い表情のまま、さらに言葉を紡ぐ。

 

「どうもしないだろ」

 

俺がそう答えればボーデヴィッヒは疑問に満ちた表情で首をかしげた。

 

「それは自分で決めることだ。今回の件はお前に非は無い。学園に残るのもドイツに帰るのも自由だ」

 

「……自分で、か」

 

俺はボーデヴィッヒの呟きに頷いて続ける。

 

「でも、せっかく織斑先生を追いかけて日本に来たんだろ?目的も達成していないのにドイツに帰るのはちょっと勿体無いと思うぞ」

 

「…………」

 

ボーデヴィッヒは黙り込んだ。

しばしの間、沈黙が流れるがボーデヴィッヒが急に顔を赤くして俺の方へ振り返る。

 

「目的?……ま、まさか貴様、私の……見たのか!?」

 

どうやら俺の含みのある言い方に勘付いたようだ。

 

「それについては謝ろう。しっかし一途だねぇ。『教官に褒めてもらう』ためって」

 

「う、うぅ……」

 

『目的』とやらを口に出すと彼女は更に顔を赤くし、ついには手で顔を隠した。

何時もの毅然とした態度はどこへやら。

 

 

彼女の記憶の中で感じた思い。

 

 

ーーーー教官のお陰で自分は頑張れました。

ーーーードイツの代表候補生まで登り詰めました。

ーーーーだから、どうか、頑張った私を見て下さい。

 

 

彼女はただ一言、褒めて欲しかっただけなんだと感じた。

その思いが捻れに捻れてこんな事になったんだろう。

 

……ボーデヴィッヒも織斑先生も、素直じゃないよな。

 

 

「別に笑うつもりは無いさ。勝手に覗いといて言うのもアレだけどさ、凄いと思うよ。俺なら途中で折れてた」

 

見たままの、正直な感想を言う。

俺なら絶対折れてた、断言する。

 

「う……うむ。いざ言われてみると戸惑うな……」

 

ボーデヴィッヒは気恥ずかしそうに顔を逸らした。

 

「すまないな、織斑先生じゃなくて」

 

「いや、いいんだ」

 

ボーデヴィッヒが何か言葉を繋げようとした瞬間、俺の身体が透けていった。

それに伴って意識も薄くなっていく。

 

そして感じる第三者の意識。

これは……あいつか。

 

「如月!」

 

「時間切れみたいだ」

 

消えていく俺の姿を見たボーデヴィッヒが声を上げる。

 

「これにて前菜は終了、メインディッシュがお待ちです。……言いたい事や聞きたいことは次のやつに言ってくれ」

 

だんだんと意識が遠退いていく。

ぼやけていく視界の中で、ボーデヴィッヒが何か言った。

最後の力を振り絞って、笑顔で手を上げて応える。

 

そして俺の意識はまた沈んでいった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……ん?」

 

視点がクリアなものに切り替わる。

気付けば現実世界に戻っていた。

 

ふと、自らの腕を確認する。

そこには抱きかかえられたISスーツ姿のボーデヴィッヒが眠っている。

 

「ありがとう、か」

 

俺はボーデヴィッヒを見ながらそう呟く。

まさかこいつからそんな言葉を貰うとは思わなかった。

 

 

そして俺はピットから次々と現れるラファール装備の先生方を見ながら、今後をどうするか考える事にした。

 




バトル難しい
いや、なんかもう、難しい

それと前々話くらいにシャルの中の人ネタいれたのに誰も反応しなかった、悲しい

VTシステム弱くね?とお思いの方がいると思いますが

原作で不完全状態の一夏が倒した→ボーデヴィッヒが元だし動かしてるのはAI→剣道未経験のボーデヴィッヒが無理矢理動かされているから?

と解釈しました
ドイツにカラテはあれどケンドーは無い、いいね?

例えるならプロサッカー選手に野球やらせる感じ
まぁうちの主人公も一応、剣士の端くれ()ですし

ディストーションタックルならぬVPSタックルで相手を完封するという展開も思い付いたがさすがにどうなのかと思って辞めた

謎の裸空間はとりあえず一夏に丸投げ
ちょうど気絶してますし
それに鋼夜に強さの理由とか聞かれても彼の場合だと「…………」って無言になるから

代わりに鋼夜には原作ではスルー気味のラウラの心情について触れてもらいました
見る限り、ラウラって千冬に褒めてもらったり自分を見て欲しいって感じですし
頑張った成果を褒めてもらおうと思ってるのに「選ばれた人間気取り」とか言われたらそりゃ闇堕ちしますわ

まぁ、お互いに問題ありありだから仕方ないですけど


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事情聴取の第44話


大変、主人公が息をしてないの



 

謎の黒い物体は沈黙した。

気絶したボーデヴィッヒと一夏が担架で運ばれていき、事後処理を先生方に任せて俺とシャルルがピットに戻ったことでこの騒動は一応、終わりを迎えた。

 

今更になって凄い事をしでかしたと自覚した俺は更衣を済ませ、全速力で輝さんの元へ逃げ込もうと画策するが更衣室前で待ち伏せしていた織斑先生に捕まり、強制連行された。

 

 

案内された場所は窓の無い狭い部屋で、中央に電気スタンドの乗った四角いテーブルにパイプ椅子が二つある。

取り調べる気、満々ですね。

 

 

「座れ」

 

「はい」

 

先にパイプ椅子に座った織斑先生に促されて俺も椅子に座った。

 

「初めに言っておくが、今回に事は重要機密になる。他言無用で頼むぞ」

 

「はい」

 

素直に答える。

しかし、よりにもよって厄介な人にさらわれたものだ。

山田先生ならなんとかなるが……正直、この人だけはどうにもならない。勝てない。

 

 

「簡単に事情を聞くだけだ。まずはボーデヴィッヒについてだが、お前はアレが何だったのかを知っているか?」

 

「知りません」

 

本当は知っているが、そう答えた場合はかなりややこしい自体に発展しそうなので早速嘘をつく。

 

「あれはVTシステム……正式名称はヴァルキリー・トレース・システムというものだ。過去のモンド・グロッソの部門優勝者の動きをトレースするシステムだ」

 

織斑先生って確か『ブリュンヒルデ』って呼ばれてたね。

だから部門優勝者(ヴァルキリー)なのか、成る程。

 

他にも『スクルド』とか『スルーズ』とか『ロスヴァイセ』とか居るの?

 

勝手に別の事に納得していると先生は更に続ける。

 

「これは条約でどの国や組織や企業においても研究や開発が禁止されている。使用なんて論外だ」

 

「……それが、ボーデヴィッヒのISに積まれていたと?」

 

俺の言葉に織斑先生は「ああ」と頷く。

 

「巧妙に隠されていたがな。あれは操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして何より操縦者の意志や願望が揃う状況下で発動するようになっていたらしい。……まぁ、ドイツには学園が今、問い合わせている」

 

淡々とした口調で語っているが、言葉の節々に静かな怒りが滲んでいるのが分かる。

 

 

「さて、本題に入ろうか」

 

織斑先生は一つため息をつくと仕切り直しというように表情を変えた。

 

「今回の騒動はお前のお陰でなんとか収まった。……しかしな、織斑を気絶させたのはどういうことだ?」

 

剣のような鋭い視線が俺に突き刺さる。

 

「確かにあの時の織斑は……まぁ、怒りによって冷静さを欠いていた。あの状態の奴は足手纏いにしかならないだろう。気絶させたのは少々やり過ぎだとは思うが、間違ってはいない……しかし、その後の高笑いは何だ?私はそれが聞きたい」

 

逃げ道を潰されましたー!

ちくしょう!冷静さ云々に足手纏い云々で気絶させたのを正当化する作戦が看破された。

 

「あー、えっとですね」

 

あなたの弟にイラっと来たのでとりあえずぶん殴りました。

 

なんて、言える訳が無い。

 

なぜ、織斑先生なんだ。

山田先生ならまだ言えたのに。

どうしよう。マジどうしよう。

 

 

「…………」

 

織斑先生の無言の圧力は続く。

 

 

「色々と我慢の限界で、一夏にイラっと来たのでついやってしまいました。殴ったのはやり過ぎだと思ってました。すみませんでした、本当にごめんなさい」

 

俺は机に額をぶつける勢いで頭を下げた。

 

負けました。

後悔も反省もしないと言ったが撤回します。めちゃくちゃ後悔しています。

 

 

「そ、そうか……」

 

怒涛の謝罪に面食らったのか、織斑先生は怒るでもなく驚いていた。

 

 

「まぁ……お前には苦労をかけさせたな」

 

怒られるかと思ったら急に優しい声に変わった織斑先生に驚き、俺は顔を上げた。

 

 

「ボーデヴィッヒの事を頼んだのは私だ。それに学園でたった二人の男子だ、色々と苦労があったんだろう。……我々は教師だ、生徒を守る義務がある。私や山田くんを頼れ、そして今回みたいな事が無いようにしろ」

 

織斑先生が心配してくるレベルなのか……今の俺はどんな顔してるんだろうか。

 

気持ちは嬉しいです。

でもね、俺の悩みは正直言って貴方達の手に負えるレベルじゃないんですよ。

 

織斑先生には「ありがとうございます。申し訳ありませんでした」と答える。

 

織斑先生は事情聴取を切り上げ、俺は解放された。

 

 

なんつーか、眠い。だるい。疲れた。

取り調べ室を出た俺は真っ先に部屋へ戻ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

鋼夜を解放した後、織斑千冬は保健室へ向かった。

千冬が部屋へ入るとベッドで横になっていた人物が声を上げた。

 

「気がついたか、ラウラ」

 

目的の人物であるラウラに声を掛ける。

 

「教官……」

 

「織斑先生だ、何度言えば分かる」

 

相変わらず呼び方を変えない教え子の様子を見てため息を吐くが、いつも通りのラウラを見てどこか安堵する。

 

「申し訳ありません……。あの……私に、何が起こったのでしょうか?」

 

適当にはぐらかすつもりだった千冬だが、察したラウラに真実を話すことにした。

 

「答えてやるから大人しくしていろ。一応、これは重要案件である上に機密事項だからな」

 

無理して上半身を起こそうとするラウラを止めながら、千冬はVTシステムの事を話した。

 

「…………」

 

その間、ラウラは黙って話を聞いていた。

全て聞き終えたラウラは悲痛そうな表情でシーツを握りしめた。

 

「私が……望んだからですね」

 

ラウラはそれだけしか言わなかったが、千冬には全て伝わった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「は、はいっ!」

 

いきなり名前を呼ばれたラウラが驚きながらも顔を上げながら返事をした。

そして千冬は問い掛けた。

 

 

「お前は誰だ?」

 

「わ、私は……。私……は……」

 

言葉の続きは出てこない。

しかし千冬はラウラが答えに近づいていることが分かった。

 

「誰でもないならちょうどいい。お前はラウラ・ボーデヴィッヒだ。他の誰でもない。自分自身と向き合え、心配しなくても時間はあるぞ。なにせ三年間はこの学園に在籍しなければいけないからな。まぁ、たっぷり悩むがいい」

 

千冬の言葉が、ラウラには意外だった。

てっきり拒絶されるかと思っていたが、まさか自分を励ましてくれるとは思ってもみなかった。

そして……

 

「……まぁ、最近のお前は頑張っていたな」

 

「……え?」

 

唐突に褒められた。

 

 

「お前が学園に馴染めるか、最初はかなり不安だったが最近のお前を見ていると安心していられる。その調子で頼むぞ」

 

それお前のこと問題児だって最初から決め付けてたの?

と、思わなくもない言い方だがこれは織斑先生の最大限の照れ隠しである。

そして呆然としていたラウラは気づかない。

 

 

「……教官!」

 

そしてハッと我に返った彼女は顔を赤くしながら千冬を呼び止めた。

 

「なんだ?」

 

訂正も入らない。

ラウラはいける!と確信した。

 

「もう一度褒めて下さい!」

 

「調子に乗るなよ、小娘」

 

 

千冬はラウラにデコピンを食らわせた。

ピシッと指が額を叩く音が鳴り、ラウラは額を押さえて悶えた。

しかし、した方もされた方も両者共に笑顔である。

 

「お前を止めたのもあいつだったか。……如月には感謝しろよ」

 

「如月……鋼夜」

 

その名前を出せばラウラは目を見開き、考え込む素振りを見せた。

 

 

「……私はもう行くぞ」

 

そう言うとラウラは顔を上げて千冬の方を向いた。

そして千冬を見つめるラウラの視線が変わる。

眼帯が無いため露わになっている金色の左眼と赤色の右眼のオッドアイが寂しそうに潤む。

 

いつの間にお前は表情豊かになったんだ、とラウラについて一瞬そう思うが千冬はそれをスルーしてドアに手を掛け部屋を出て行った。

 

 

「…………」

 

千冬が出て行って数分後。

ラウラは保健室の白い天井を眺めながら考えていた。

今日の不思議な出来事について。

 

 

あの空間で出会った織斑一夏は強さについて教えてくれた。

決着をつけることは叶わなかったが、彼の『誰かを守りたい』という思いは分かったし、本物だった。

最初に抱いていた嫌悪感はもう、無い。

今なら彼を認められる。

教官の弟に相応しい男であると。

 

 

「如月鋼夜……」

 

思うだけでなく、口に出てしまった。

入学早々、私に絡んできた男。

 

あの空間で出会った彼は、私の全てを理解して、受け止めてくれた。

不安定になっていた『私』という存在を導いてくれた。

 

私も、彼の全てを知りたい。

自分が見られたから、ということではない。

彼のことを知りたい。もっと分かり合いたい。

 

……何故だ、彼を思うと胸がおかしい。

織斑一夏とは違う、別の感情。

 

これは、この気持ちは、一体なんなのだろうか。

 





織斑千冬は教師です
織斑千冬は教師です

許されたよ、やったね鋼夜
織斑先生も「心労が絶えない」って言ってるくらいだから理解されたんだよきっと(適当)
あと原作ヒロインが一夏に暴力振るってても何も言わないし(暴論)

前回の感想でたくさんありましたのが、一夏の謎空間介入についてです

あれは一夏の特殊能力だと自分は考えてます
オリ陣営を除けばあの現象は一夏だけが使えるみたいですし
鋼夜に「なんでお前強いの?」って聞かれてもリアリストの鋼夜が答えられる訳が無いので一夏を投入した次第です
あとラウラとの和解のきっかけも欲しかったですし


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トーナメント後の第45話

展開が色々おかしいかもしれない
非力な私を許してくれ……


「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した……」

 

 

織斑先生から解放された俺は部屋へ戻った。

あまりにも疲れた俺はさっさとシャワーを浴びて着替えるとベッドへ飛び込んだ。

 

そのまま眠りに入れれば良かったのだが、ふと先程の事を思い出していた。

否、思い出してしまった。

 

 

一夏を殴った後に高笑いしたこと。

マジギレしながら暴走したラウラに向かって行ったこと。

 

 

冷静になった状態でそれらを思い出した俺は、恥ずかしさのあまり悶えた。暴れた。叫んだ。落ち込んだ。

 

 

学園の生徒だけでなく各国の主要人物が居る中でのあの行動である。

黒歴史確定。死にたい。

 

 

「はぁ……」

 

 

 

部屋へ戻ってきたのほほんさんのボール人形投げが炸裂するまで俺はずっと塞ぎ込んでいた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………」

 

「こうやん、元気出しなよ~」

 

 

俺は今、のほほんさんと一緒に食堂へ向かっている。

のほほんさんは普通に接してくれているが、明らかにすれ違う子達の態度が変だ。

 

あの時の俺はどう見ても、一夏を殴ったと思ったらいきなり高笑いしだした人、だ。

 

そんな人間に対して当然の反応だろう。

よそよそしくなるのが普通だ。

 

 

「はぁ……」

 

「だめだよ、ため息なんてしたら幸せが逃げちゃうよ?」

 

「……忘れちまったよ、幸せなんて言葉」

 

 

幸せってなんだっけ。

俺に幸せなんて来るんだろうか。

 

必死に励まそうとしているのほほんさんの気持ちがありがたいけど辛い。

 

 

そんな会話をしていると食堂に到着。

鯖の味噌煮定食を注文してテーブル席を二人で確保する。

 

 

「あ、かんちゃーん」

 

「本音と……鋼夜くん……」

 

ちょうど良く、夕食をトレーに乗せて席を探していた簪さんをのほほんさんが発見。

彼女も一緒に食べるように誘い、それを承諾。

正面にのほほんさん、簪さんが座る形になった。

 

 

「鋼夜くん……大変だったね」

 

「ああ……うん」

 

 

簪さんに同情された。

今は同情なんてするな、と言い返す気力も無い。

 

 

「でも……」

 

と、簪さんは前置きして、いきなり真面目な顔になる。

 

 

「彼に裁きを下したことを、私は大いに褒めたい」

 

そして無駄にきりりとした顔で彼女はそう言った。

……そういえば簪さんも、一夏に思うところがありましたね。

 

 

「……ありがとう」

 

簪さんから微妙にズレている励ましを貰った。

 

「まぁ深くは聞かないよ。こうやんも色々と苦労してると思うからね~」

 

のほほんさんもそう言ってくれる。

二人の優しさが嬉しい。

 

 

「でも~、喧嘩はダメだよ?」

 

「分かってるよ」

 

 

のほほんさんに言われるまでも無い。

ほとんどが自分の勝手や自業自得というのさ分かっている。

分かっているからこそ、余計に質が悪いのだ。

 

そして再びため息をつく。

 

それを見かねた簪さんが話題を変えるため、思い出したように「重大な告知があるらしい」と言ったので三人でテレビに注目する。

 

テレビには洋画劇場でが写っているが画面に帯が入り、文字が流れ出した。

 

「……『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係するため、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各自個人端末で確認の上、それに従って下さい』、か」

 

流れてくる文字を読み上げていく。

それはトーナメントの中止を知らせるものだった。

うん、知ってた。

 

 

「あちゃ~、やっぱり中止になっちゃったね」

 

「……流石に、あの後にやるのはね」

 

二人も内容を見ると「やっぱりか」といった表情になった。

 

 

「優勝……チャンス……消え……」

 

「交際……無効……」

 

「かゆ……うま……」

 

「……うわああああああんっ!」

 

 

しかし周りの女子はそうでは無いらしく、告知が終わるとそんなことを呟きながら、食堂中の雰囲気が落胆していった。

そして大多数の人間が食堂から走り去っていった。

 

トーナメントが中止→優勝なんて無い→景品無効→絶望

 

と、いったところだろう。

食堂に残ったのは当事者である俺と一夏や、噂を知らなかったであろう数人の女子くらいである。

 

 

「……ねえ、鋼夜くん」

 

落ち込んだ雰囲気を断ち切るように簪さんが話し掛けてきた。

 

「優勝したら鋼夜くんと付き合える、って噂は本当だったの?」

 

どうやら簪さんも噂を知っていたようだ。

 

「そんな訳ないだろ、女子が勝手に言ってるだけだ。そもそも俺は鈴に聞くまで自分が巻き込まれているのを知らなかったんだからな」

 

それに対して俺は嘆息しながら答える。

 

「そうなんだ……」

 

「そもそも当事者が知らない時点で色々察してくれ」

 

そう言って俺は未だに食堂での一連の出来事が分からずに疑問符を浮かべている一夏を指差した。

それを見て彼女は納得したようだ。

 

 

 

それにしても妙な話である。

 

『トーナメントで優勝したら一夏と付き合える』

 

これを一夏本人が『優勝した奴と付き合ってやるよ!』と言ったんならまだしも、これを言ったのは一夏では無いしそもそも誤解である。

 

まぁ、それは抜きにしよう。

 

一番おかしいのは『一夏がその噂を理解してないのに一夏と付き合える』と思っていることである。

 

しかも一夏が噂を知らないのを彼女達は知った上で。

そして一夏に噂のことを秘密にしていた。

 

教室で一夏に必死に噂を誤魔化すクラスメイトを俺は見た。

 

噂を知らないのにいきなり「優勝したぞ!付き合え!」と言われて「はい!喜んで!」という展開になると思っているのだろうか。

 

「え?」という困惑の返事が返ってくるに決まっている。

一夏じゃなくても言う。俺でも言う。誰だってそう言う。

 

 

正しくは『優勝したら一夏に告白できる』では無いだろうか。

周りの女子の状況から考えて、誰かに抜け駆けをさせないために。

 

……なるほどねぇ。

専用機持ちを侍らせている一夏にとって、関わりをあまり持てない一般生徒は大きく差がある。

 

それを埋める一発大逆転のチャンス。

それが無くなったのなら、あの落ち込みようも理解出来る。

 

 

「…………」

 

一夏メインで考えてたら、なんだか悲しくなってきた。

 

もう過ぎた事だし忘れよう。

 

 

「悲しい顔しないでよ、こうやん」

 

のほほんさんにそう言われる。

顔に出ていたようだ。

 

「大丈夫だ」

 

本当、大丈夫だから。

 

 

 

 

夕食を食べ終え、食堂から出ようとした時に山田先生が大浴場を使えることを知らせに来た。

 

「織斑くんとデュノアくんは先に行ってますと思うので……喧嘩はダメですよ?」

 

山田先生に去り際、そう言われた。

確かにあの光景を見たあとならそう見られても仕方ない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

着替えを取りに部屋へ戻って大浴場へ行くと入り口で山田先生が待っていた。

 

「織斑くんとデュノアくんは先に入ってますよ。ゆっくりしていって下さいね」

 

「ありがとうございます」

 

山田先生にお礼を述べ、俺は脱衣場へと入る。

 

山田先生にはああ言ったが、正直に言うと困っている。

一夏に会いたくないのもそうだし、シャルルについての事もある。

あいつ女だし、どうしようか。

 

 

「あっ」

 

「鋼夜か……」

 

 

脱衣場には既に一夏とシャルルが居た。

一気に辺りの雰囲気が気まずくなる。

 

 

「……とりあえず、どうする?」

 

しばら沈黙が続いたが、俺はそれを断ち切る。

黙っていても始まらない。最低でも風呂はどうするか決めなくてはならない。

 

「お、お風呂のことだよね?僕は脱衣場で待ってるから二人で入って来なよ」

 

「それなら素直に好意に甘えるよ。ありがとうな、シャルル」

 

シャルルの提案を一夏はそのまま了解した。

 

シャルルも色んな意味で気を使ってくれたんだろう。

それに一夏とは少し話し合わなければならない。

 

「すまないな、シャルル」

 

俺もシャルルにお礼を述べ、着替えを持って移動し、着替える準備を始める。

もちろん、シャルルからは見えない位置に移動する。

 

 

 

服を脱ぎ、腰にタオルを巻いて待機状態の四天(眼鏡)をかけた俺は何故か入り口で待ち構えていた無言の一夏と共に大浴場へ向かった。

 

 

 

「広いなー」

 

「ああ」

 

大浴場へ入った一夏の第一声。

中は広い。そして、サウナや泡の出る湯船や檜風呂、さらにはサウナや打たせ滝や全方位シャワーなど、銭湯並みの設備が充実していた。

 

 

俺は身体をお湯で簡単に流してから一番大きい湯船に入る。

 

いい湯だ。やはり温泉はいい。

こんな状況で無ければ、鼻歌とか出ていたかもしれない。

 

 

少し遅れて一夏も入って来た。

一夏は俺の隣へ来ると腰を下ろし、肩まで浴槽に浸かる。

 

お互いに何かを話すでもなく、しばらく沈黙が訪れる。

 

 

「鋼夜」

 

その沈黙が破られる。

顔を横に向ければ一夏が何かを決心した顔でこちらを見ていた。

 

「皆から聞いたよ。お前がラウラを止めたんだってな」

 

やはりと言うかなんというか、一夏はさっきのトーナメントの事について話出した。

 

「俺さ、あの時はどうかしてたと思う。白式のエネルギーは少なかったし、下手したら二人を攻撃しようとしてた。鋼夜が無理矢理止めてくれなきゃヤバいことになってたかもしれねぇ」

 

一夏は落ち着いた調子で語る。

あの時のような怒りは感じない。

 

「箒やセシリアや鈴に言われたよ。『もっと自分の身を安じろ!』ってな。……意地張ってないで三人で戦えば良かったんだ」

 

一夏は淡々と語る。

だが、急に声のトーンを落とし、顔を俯けた。

 

「でもよ……納得出来ないんだ」

 

そう言うと一夏は俯けていた顔を上げる。

 

「あの時、鋼夜が俺を止めた。鋼夜があの偽物を倒した。状況を見たらそれが正しいことだって分かる。分かるけどよ……どうしても、納得出来ないんだ。千冬ねぇは俺の家族で、姉で、母親で、師匠で、恩人で……とにかく言葉で言い表せないほど大切な人なんだ。だからあの千冬ねぇの偽物が出た時は、怒った。俺が絶対倒してやるんだ、って」

 

小さな感情の爆発。

大切な人を侮辱された怒りが伝わってくる。

一夏は長い独白を終え、深呼吸をすると

 

「子供みたいな事言ってるのは分かってる。そんな自分が嫌になる。でも……これだけは譲れなかったんだ」

 

言いたい事をひとしきり喋ってスッキリしたのか、一夏の表情が少し良くなった。

 

「だから……」

 

「おっと、謝るのは少し待て」

 

俺は一夏の言葉を遮る。

自己完結してもらっては困る。

 

「その様子だと、俺がお前を気絶させた時のことは聞いてないみたいだな」

 

俺の確認に一夏は「あ、ああ」と頷いた。

 

「俺さ、お前殴った後に笑ったんだよね」

 

「……え?」

 

俺の言葉を聞いて一夏は思わず素の返事をしていた。

 

「相方は突然変異するわ頭痛いわでイライラするわお前がうるさかったからで、八つ当たりでつい殴った。実は何も考えてなくてさ、そしたらその後に笑いが込み上げて来て、なんか面白くて、つい笑っちまった」

 

呆気にとられた表情の一夏は、ただ黙って話を聞いていた。

困惑しているのが伝わる。

 

「だから謝ろうと思ってたけど、一夏がそう思ってたなら謝るの辞めた。……だから、一夏も謝らなくていいぞ。おあいこだ」

 

「……分かった、俺も謝らねぇよ」

 

 

「お前がシスコンだとは思わなかった」

 

「俺こそ、お前の気が狂ったと思ったぜ」

 

 

そう言ってお互いにニヤリと笑う。

分かり易い宣戦布告。

 

 

「でも、このまま引き下がるのはお互いすっきりしないだろ?」

 

「ああ、そうだな」

 

「ここは男らしく、真剣勝負で決着をつけよう。ちょうど向こうにサウナがある、我慢対決といこうか」

 

「ああ、いいぜ!」

 

 

 

そして二人でサウナに入って我慢対決をすることになるが、途中でシャルルが四天に向けてのプライベートチャネルで連絡してきた事により勝負は次の大浴場解放まで延期となった。




男って単純!
一夏はシスコン!
そういうことにしといて

シャルの入浴?無いよ
鋼夜居るからどう考えても無理です


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騒動決着の第46話

腐れ夫人に出番など無い


 

学年別トーナメントの翌日。

あの騒動の事後処理のためか、学園が休みとなったため俺はトーナメントの報告や例の件について聞くためにラビアンローズへ来ていた。

 

 

「こんにちは」

 

「お疲れさま、鋼夜くん。異常は無かったかい?」

 

「はい、一応は大丈夫です」

 

 

社長室の扉を開ける。

中に居た輝さんに挨拶し、俺は応接用のソファへ座る。

 

今の時間は昼。

朝に会社に来て、今までメディカルチェックを受けていた俺はやっと解放されて社長室へやってきた。

 

さすがに昨日は色々あったから会社にお呼ばれされて俺も『四天』も治療らしい。

『四天』は姉御に預けた。

俺が向かった先にはカウンセラーとか居てびっくりした。

 

そしてそれも終わった。

だから残り少ない自由時間を安らかに過ごすためにこの場所へ来た。

それに昨日の件も気になるし。

 

 

「昨日は大変だったね」

 

「いやぁ、本当です。……昨日は見苦しいところを見せました。申し訳ありません」

 

「仕方ないさ、VTシステムが負の感情を流すものだとはわからなかったんだから。鋼夜くん、君が謝ることじゃない。これは対処や対策を施さなかった僕に責任がある」

 

 

俺は謝るが、輝さんは気にするなと返す。

そして上手く感情をコントロールする方法やニュータイプ機能の制御を教えてくれると約束してくれた。

 

 

そして俺は気になっていることを聞くために話題を変えた。

 

 

「輝さん。昨日のアレ、どうなりました?」

 

「音声録音してるけど聞く?」

 

「お願いします」

 

 

輝さんはデスクの鍵付きの引き出しを開けて中からボイスレコーダーを取り出す。

 

 

「早く動きましたよね」

 

「向こうも焦ってたんだよ。ドイツがあんなことをしたんだ、委員会の介入を各国も警戒するさ。フランスは特にね」

 

 

フランス。

 

そう、昨日サウナで一夏と我慢対決していた時に入ったシャルルからの通信。

あれは一向に出て来ない俺と一夏を心配してのことでもあるが、彼女は最後に「話がある」と言い残した。

 

風呂上がりに彼女に詳しい事情を聞くと、プライベートチャネルでの会話を頼まれた。

 

そして彼女から話された内容は『義母から呼び出された』ということ。

場所は近くの港の倉庫街。

しかもご丁寧に今から、一人で、来いという。

 

教えてくれた彼女に感謝し、俺は輝さんに連絡を入れた。

その後に会長や織斑先生の元へ向かい、事情を話して彼女の外出許可を取った。

 

輝さんにシャルルの事を頼み、俺と一夏は彼女の無事を祈って学園で待つ事になった。

 

 

そして今日。

輝さんから「上手くいった」ということは聞いたが詳細は知らないのでずっと気になっていたのだ。

 

 

「案の定、デュノア夫人は彼女を回収するつもりだったよ」

 

そう言うと輝さんはボイスレコーダーのスイッチを押した。

 

 

『あら、来たわね』

 

 

レコーダーから流れてきたのは女性の声。

 

「誰?」

 

「デュノア夫人」

 

「どういう状況なんです?」

 

「シャルロットさんにボイスレコーダーを持たせて一人で行ってもらった」

 

 

輝さんの説明に納得して意識をボイスレコーダーに戻す。

なんだか即席の実況みたいになってしまった。

 

 

『約束通り、一人で来ました』

 

『本当に一人で来たみたいね、えらいわ』

 

 

シャルルの声も入っている。

 

 

「実際は?」

 

「こっそり追跡して腕利き集めて突撃。見張りを無力化して、たぶん今は皆で周りを絶賛包囲中」

 

「ですよねー」

 

 

ラビアンローズの警備員やSPってISの登場で仕事を失ったり人員削減でリストラされた元軍人だったりするから肉体派が多いんだよね。

 

それにボイスレコーダー渡してる時点で何かする気満々みたいですし。

 

 

『それで、お呼び出しの用件とは何でしょうか?』

 

『白々しいわね』

 

 

シャルルが用件を聞けばデュノア夫人は一変。

猫なで声から不機嫌を隠さない荒い声に変わる。

 

 

『知っているのよ?貴女があの若造の元へ逃げたことくらい』

 

 

若造って輝さんのことだろうか。

 

「知っているのになんで呼び出したんだろうなー」

 

「普通に考えれば、彼女の情報提供から今までのあんな短時間でデュノア社に対抗する準備が整うとは思わないからね」

 

それを聞いて納得した。

それについては俺達が特別過ぎるだけである。

シャルルが学園に来る前から準備してるとは普通思わないよね。

 

 

『貴女の行動は我がデュノア社の存続に繋がっているのよ。貴女が下手をすれば罪の無い社員までもが貴女のせいで被害を被るのよ?あまり私を困らせないで頂戴』

 

 

「お前が言うな」

 

「お前が言うな」

 

俺と輝さんのツッコミがリンクする。

会社の金を勝手に使っているお前が言うな。

会社の経営を傾けているお前が言うな。

 

 

その後、シャルルを脅すような会話が繰り広げられる。

夫人は会社や社員を盾に取り、ラビアンローズとの協力を取り消し一夏と俺のデータを持って会社に戻ってくることを命令する。

 

しかしシャルルも中々に強かで、夫人がボロを出さないかと言葉の一つ一つに食いついている。

シャルルにボイスレコーダーを持たせたのはこのためか。

 

 

『いちいちうるさいわね。強引にでも連れて帰らせてもらうわよ』

 

『……っ!』

 

シャルルの息を飲む声が聞こえた。

 

 

「どういう状況?」

 

「夫人の護衛が数人居たんだ。そいつらが銃を構えたんじゃないかな」

 

 

輝さんに状況を聞き、納得。

なるほど、と思いボイスレコーダーに耳を傾ける。

 

 

『一つ言っておくけどISは使わない方がいいわよ?許可された場所以外でのISの使用は禁止されている。……男だと発表されたあなたが女とバレたらどうなるかしらね?まぁ貴女も道連れになるから無駄ね』

 

 

「これで本当にシャルルが道連れにする気だったらどうしたんだろうか」

 

「こういう状況は強気に出なきゃいけないからね。見栄張るしかないさ」

 

 

緊迫した状況なのは分かるが、ツッコミが抑えられない。

 

 

『まぁ、それは厄介だから外しちゃいましょうか。やりなさい』

 

剥離剤(リムーバー)……!』

 

 

シャルルが言ったリムーバーというものはISを使用者から強制的に装着解除させるもので、結構えげつないものだったりする。

一度使われるとISに耐性が付いてしまうため一回しか使えないが。

 

 

『……最後に、教えてください』

 

『なに?』

 

『私、聞いたんです……お義母様が父の財産だけでなく会社のお金にまで手を出していると……会社の経営難は、貴女のせいだと。本当なんですか?』

 

『だとしたら、どうなの?』

 

 

あ、認めた。

言質とったね。

 

 

『やっぱり……!』

 

『貴女が知ったところで何も出来ないでしょう?使えないながらも、充分利用させてもらったわ』

 

 

シャルルちゃん大ピーンチ!

 

 

『ぐぇっ!』

 

『ぐはっ!』

 

『げふっ!』

 

唐突に男の野太い声が響き、何かぎ倒れる音がする。

そして数人の人間の足音が近付いてくる。

 

 

『どうもこんばんは、お昼はどうも』

 

『貴様は、西条輝!』

 

 

シャルルのピンチに駆けつけたのは我らが輝さん!

輝さんに助けてもらえるとか、負ける気がしない。

 

 

「キャー輝さーん」

 

「なんか恥ずかしいな……」

 

 

いよいよクライマックスか。

ボイスレコーダーから焦った夫人の声が聞こえてくる。

 

 

『何の用だ!』

 

『彼女は我々の大事な客人なんだ。手荒な事をされては困る』

 

『私に歯向かってタダで済むと思っているのか!?』

 

夫人はさっきまでの余裕のある雰囲気や言動から一転して小物みたいなことを言い出す。

 

『この会話は録音させてもらっています。貴女が何を喚こうが無駄なことです』

 

『なん……だと……。……しかしそこの小娘が性別を偽りスパイとして学園へ潜入したのは事実!お前も道連れだよ!』

 

「本当に小物ですね」

 

思ったことを呟くと隣の輝さんも苦笑する。

それくらい、なんというか、小物っぽい。

 

 

『ああ、貴女は知らないようですが彼女の存在を学園は認知しております。なんでも社長直々に彼女のことを学園に頼んだらしいですね。……彼女をスパイと思っていたのは本人を除けば貴女達くらいのものですよ』

 

『えっ……』

 

『おのれ、あの男!余計な事を!』

 

 

困惑している様子のシャルルと激昂する夫人。

 

「既に学園が彼女の正体を知っていたのはこういうことですか」

 

「そう。どんな理由があっての行動なのかは分からないがね」

 

 

と、ここで録音が終わった。

なので俺は気になったことを早速聞いてみる。

 

 

「この後、どうなったんです?」

 

「お前だけでもぉぉぉ!って言いながら夫人が銃を取り出そうとしたから銃を取り出す前に接近して気絶させたくらいかな」

 

「なんでそこまで録音してないんですか」

 

おもしろそうな場面なのに。

 

 

「輝さん、シャルルは?」

 

「こちらが用意した部屋で休んでいるよ。今はそっとしてあげよう」

 

 

シャルルは昨日帰って来なかったから心配したが、無事ならなによりだ。

決心していたとはいえ自分の義母と対立し、傷付くことを言われたのだ。

しばらくは一人にさせた方が正解かもしれない。

 

 

「デュノア社や夫人はどうなりました?」

 

「夫人は警察に引き渡したし、デュノア社については後日に社長と話し合う形になったよ」

 

「じゃあ、デュノア社については……」

 

「解決かな?鋼夜くん、お疲れ様」

 

「よっしゃァァァァ!」

 

 

俺はガッツポーズをすると共に叫ぶ。やっと終わったぞ!

 

 

「まぁ、事後処理や難しいことはこっちに任せて鋼夜くんは休んでいなよ。……って言いたいところなんだけどね」

 

途中で輝さんは言葉を濁し、バツの悪そうな顔をする。

まだ、何かあるのか……。

 

「VTシステムの騒動を治めたのが鋼夜くん、って情報が漏れたらしくてね……今、各国から問い合わせが殺到しているんだ」

 

「問い合わせ?」

 

俺の疑問に輝さんはひとつ頷いて答える。

 

「如月鋼夜を是非我が国に紹介しろ!とか、契約するから如月鋼夜を寄越せ!とか、そんなのばかりだよ」

 

ため息と共に輝さんは答えた。

 

「凄い手のひら返しを見た気がする」

 

いや、本当。マジで。

お前ら今まで俺に見向きもしなかっただろ。

 

「しまいには、日本には男が二人居るんだから片方寄越せ!とか言い出す国もあるんだよ」

 

なんだそれ。

 

「俺も一夏も日本国籍ですから所属は日本でしょう。それに一夏はともかく、ラビアンローズ所属の俺は本社が日本にあるんですから日本所属は確定のハズですよ」

 

そもそも学園在籍中に声を掛けるのはアウトじゃないのか。

まぁ俺本人じゃなくて会社だからギリギリセーフなのかもしれないが。

 

 

「それで納得してくれたらいいんだけどね……」

 

輝さんはやれやれといった表情と仕草で再びため息をついた。

 

 

「まぁ、学園に居る間は大丈夫だから。でも諸外国の留学生や代表候補生に気を付けてね。ハニートラップまがいのことを命令された子がいるかもしれないから」

 

「……はい」

 

「そんな顔をしないでくれよ、鋼夜くん……」

 

「いえ、大丈夫ですから……」

 

 

いま、どんな顔をしているのだろうか。

輝さんが真面目に心配してくれている辺り、酷い顔をしているに違いない。

 

 

「あぁ……鬱だ」

 

明日の学校、行きたくないなぁ……。

 




鋼夜「あったよ!夫人を倒す方法が!」
輝「でかした!」

デュノア社乗っ取りはしばらく後になります


最近マキシブースト始めました
ピッカピカの新兵です

練習してるのに他のプレイヤーが入ったら強制的に対戦になるのは止めてくれ
ノーベルガンダムに乗った初心者が少将とか訳分からん称号持った廃人に勝てるわけないだろ……
アーケード慣れてないからあのスティックとボタンは苦手なんだよ……よりによってPS3とかのコントローラーじゃないから、ちくしょう!

バンシィ・ノルンに乗った新兵のこうやんを見かけたらボコボコにしてどうぞ


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終わったけど終わらない第47話

ついに、ついに来たよ、この場面に


デュノア夫人の事の顛末を聞いた翌日。

急遽入った休みは終わり、元の学業へと戻る日。

 

俺、如月鋼夜は朝一でラビアンローズから学園へ戻った。

自室へ戻って制服へ着替え、眠ったままののほほんさんを起こした後に食堂へ向かった。

 

 

「……爽やかな朝だなぁ」

 

俺の表情はいつもより明るい。

それは間違いなく、輝さんのおかげだろう。

 

輝さん直伝の『マル秘脳量子波制御方法』なるものによって俺の心と脳は大分安らいだ。

 

ニュータイプが持つ特殊な脳量子波を制御して普通の人間レベルまで落とそうぜ、という事らしい。

これを極めた輝さんは今や任意でニュータイプ能力のオン、オフの切り替えが出来るらしい。

 

 

この方法を教えてもらって、早速変化があった。

以前はそこらへんの人間のどうでもいい雑念まで感じとっていたが、今は強い思い以外はシャットアウト出来るようになった。

強い思いといってもだいたいは「お腹減った」とか「眠い」とかのものなのでさほど気にならない。

 

 

「お、鋼夜じゃないか」

 

「一夏か」

 

入り口で一夏と遭遇する。

前の俺だとこれだけで不機嫌になったが、今は気分がいい。許してやるよォ!

 

 

「おはよう。シャルルは一緒じゃないのか?」

 

「遅れて来るだろ、多分」

 

 

一夏に言われた通り、シャルルと俺は一緒に帰って来ていない。

輝さんと少し話をしてから行くと言っていた。

十中八九、今日の朝にでも彼女は正体を明かすだろう。

 

まぁ、彼女が今このタイミングで「実は女でしたー」と言っても被害は無い。

 

デュノア社やフランス政府は既に恩のあるラビアンローズに逆らえない。

学園側は味方なので適当に合わせてくれる。

問題は委員会だが、デュノア社とフランス政府と学園と俺達が口裏を合わせれば問題は無い。どうとでも誤魔化せる。

 

 

「あの夜のこと、教えてくれよ。俺、心配でさ」

 

 

気付けば日替わり定食を持った一夏が目の前に居た。

両手に日替わり定食を持っている事から、片方は自分のものだと推測する。

 

 

「あ、俺と一緒のやつで良かったか?」

 

「別にいい。……そうだな、話せる範囲で話そう」

 

周りに聞かれないように警戒しながら、あの大捕物に経緯や経過を一夏に話して朝食は終わった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その後、一夏と共に教室へ向かったのだが皆の視線というか驚いたような顔が半端なかった。

 

まぁ、喧嘩していた(ように見えた)二人が仲良くやって来たのだ。

そりゃ驚く。

 

それを察した一夏が「俺達はもう大丈夫だ」と言ってくれたのでとりあえず俺へ集中する視線は減った。

 

その察しの良さをもうちょっと生かしてくれないかな。

そしたら言うこと無いんだけど。割とマジで。

 

 

「一夜で仲直り……」

 

「仲直り(意味深)」

 

「いったいナニをしたんですかねぇ」

 

 

こうして貴腐人が沸く辺り、何時もの一組だと安心してしまう。

いや、安心しちゃいけないんだけどね。

 

 

「鋼夜」

 

「箒か」

 

 

席へ荷物を置くと箒が話し掛けてきた。

一夏の方にはセシリアが行っている。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「ああ。心配かけた」

 

一見、箒は心配してくれているように見えるが彼女はさりげなく言葉を濁している。

俺は箒が何が言いたいのかを理解した。

 

「一夏が言った通り、一応決着みたいなのは付いた。それよりごめんな、一夏を殴って」

 

「いや……二人が納得しているならいい。それと、一夏を止めたのは正しい判断だと思う」

 

いきなり笑い出すのはどうかと思うがな、と彼女は付け加えた。

 

ははは、人の黒歴史を掘り返すくらいたくましくなったね箒ちゃん。お父さん嬉しい。

 

 

「そろそろ先生来るぞ。席へ戻れ」

 

「では、そうさせてもらおう」

 

時計を見ると時間がいい感じだったので箒を追い出す。

しかし箒はああ、と思い出したように呟くと再び振り向く。

 

「我が道場の、篠ノ之流の誇りを守ってくれて感謝する」

 

 

そう言い残して彼女は席へ戻っていった。

 

道場の誇りか。

彼女も怒っていたのだろう、自分の家の剣術が使われたことに。

確かにあれは一種の侮辱にも見えるからな。

 

 

そう納得していると教室の扉が開いて山田先生が入ってきた。

 

「み、みなさん、おはようございます……」

 

挨拶も元気が無く、どこかふらふらとしている山田先生。

教室を見回すとシャルルが居ない。

あとおまけでボーデヴィッヒも居ない。

 

これは確定ですね。

 

俺は調整を受けたばかりの『四天』の待機状態である眼鏡をくいっと上げる。

 

 

「ええとですね……今日は皆さんに転校生を紹介します。転校生というか既に紹介は済んでたり……えっと……」

 

山田先生の訳の分からない説明にクラスが騒然とする。

俺は眼鏡をそっと外した。

 

「見てもらった方が早いですね……入って下さい」

 

「失礼します」

 

聞こえてきたのは予想通り、シャルルの声。

そして教室に女子の制服を着たシャルルが入ってくる。

 

「理由があって男として過ごしていましたが、それが解決したので改めて自己紹介します。シャルロット・デュノアです、皆さんよろしくお願いします」

 

そしてぺこりと一礼。

クラスメイトの全員がぽかんとしたまま固まっている。

 

世界の時が止まったようだ。

 

「デュノア君はデュノアさんでした、ということです。はあぁ……また寮の部屋割りを組み立て直さなきゃ……」

 

山田先生、お疲れ様です。

とりあえず男子は本当に俺と一夏だけになったんで俺達を一緒にすれば解決ですね。

 

 

「え?デュノア君って女……?」

 

「この真夏のサマーデビルの目を持ってしても見抜けなんだ……」

 

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったのね!」

 

「平坦なバストから繰り出される豊満なバスト!意味不明!アイエエエエエ!」

 

「あぁっ、岸里が倒れた!衛生兵!岸里の遺言の翻訳と治療を頼む!」

 

「男の時と女の時で胸の大きさが違い過ぎるよ!まるで意味が分からんぞ!、とのことです!」

 

 

教室内が一気にカオスになった。

やっぱり気付いたり疑問に思ってる人は居たのね。

 

胸については同意。サラシってレベルじゃねーぞ。

命をかけてツッコんでくれた岸里さんに合掌。

 

デュノア社のその技術はラビアンローズの衣類開発部辺りがありがたく頂戴するだろう。

 

 

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」

 

「織斑くん同室だし、気付かなかったってことは無いわよね!?」

 

 

誰かが発した一言により再び教室内の時が止まる。

 

 

「……あっ。えっと、僕は二人の護衛だから二人とも最初から理解してーーーー」

 

 

俺達の護衛というのはシャルル……いや、シャルロットが男装していたのを正当化するための嘘だ。

このことはラビアンローズもデュノア社も学園側も了承しており口裏を合わせてくれる。

 

突如、隣のクラスから殺気を感じた。それは徐々に近付いてくる。

シャルロットが全部言い終わる前に教室のドアが勢いよくスライドして開き、その殺気の正体が現れた。

 

 

「い~ちぃ~かぁ~!!!」

 

 

その正体は案の定、鈴だった。

ISの『甲龍』を纏い、双天牙月を構えて息を荒くしながら一夏を睨みつけている。

 

「最後に何か言い残すことはあるかしら?」

 

衝撃砲の装甲をスライドさせながら鈴は告げる。

 

 

「待て、鈴!話せば分かる!」

 

「そ、そうだよ!落ち着いてよ!」

 

どこぞの首相の様な事を言う一夏とそれを庇うシャルロット。

 

 

「どきなさいシャルル!そいつ殺せない!」

 

「だから話を聞いてよぉ!僕は二人の護衛として入学したんだから二人は最初から知ってたんだよ!」

 

 

怒り心頭の鈴にシャルロットは中断された話の内容をすべて言い切る。

よくやったシャルロット、これで鈴も納得するだろう。

 

 

「……一夏、それ本当?」

 

「えっ、俺も初み……いや、知っていたぞ!シャルロットのことは!」

 

 

ぎぎぎ、と首を動かし機械のモノアイのような眼差しの鈴が一夏に確認を取る。

一夏は正直に答えそうになるがギリギリで意味を理解して話に乗った。

 

「……ふーん」

 

半信半疑の様子の鈴は次のターゲットをシャルロットへ移した。

 

「シャルル……じゃなかったシャルロット。二人に間違いは無かったのね?」

 

「ま、間違いって?」

 

「こいつのラッキースケベやセクハラに巻き込まれたかどうかってことよ」

 

鈴はシャルロットにぶっきらぼうに答える。

ラッキースケベはともかくセクハラって……そういえば一夏って鈴に貧乳って言ってたな。

シャルル状態の時もストーカーみたいに一緒に着替えに誘ってたし。

そもそも男バレしたのも一夏がラッキースケベでシャルロットの裸を見たからなんだよな。

 

普通に有罪ですね。

 

 

「…………」

 

鈴の質問にシャルロットは顔を赤くしながら沈黙した。

多分、俺と同じことを思っているのだろう。

そしてしばらく考えたのちに彼女は一夏の方へ向いた。

 

「……一夏のえっち」

 

「なんで無言になるんだよぉ!なんで今それを言うんだよぉ!」

 

まさかの裏切りに一夏は叫ぶ。

そして追い討ちをかけるかのように『四天』がセシリアの『ブルー・ティアーズ』の展開を知らせる。

哀れ織斑一夏。

 

 

「よし殺す」

 

一夏絶対殺すマンと化した鈴が双天牙月を構えてゆっくりと近付く。

シャルロットは諦めたような表情で鈴に道を譲った。

 

 

そろそろ危なくなって来たので他のクラスメイトが一斉に教室の後ろへ退避しだした。

ちなみに俺も退避する人間の一人だ。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

一夏は教室から逃げようと走り出すが、その進行方向に青い何かが立ち塞がった。

 

「あら、一夏さん。どこへ行かれるのですか?私、少し一夏さんにお聞きしたいことがありますの」

 

 

進行方向を塞いだのはセシリアが飛ばしたビットだった。

そのセシリアも冷たい笑顔を浮かべながらゆっくりと一夏へ近付いている。

 

 

「鋼夜ぁ!箒ぃ!助けてくれぇ!」

 

前門のブルー・ティアーズと後門の甲龍に挟まれた一夏は俺と箒の名を叫ぶ。

 

 

「無理」

 

「……すまない」

 

「即答かよ!」

 

俺は今『天岩戸』を展開してクラスメイトの盾になっている。

箒はISが無い。よって無理。

 

しかしこのまま彼女達の蛮行を見逃す訳には行かない。

山田先生はさっきからオロオロしているばかりで頼りにならない。

ならば、あの人に頼るしかあるまい。

 

 

「伝令!織斑先生を呼んでこい!」

 

「了解!」

 

打ち合わせをした訳では無いが、俺が一声掛けると谷本さんが飛んでいった。

 

 

「というわけだ一夏。耐えろ」

 

「無茶言うなよ!」

 

「織斑先生ですか……」

 

先生の名前を出せば止まると思ったが、それは正解だった。

セシリアは踏みとどまった。

 

「千冬さん……厄介ね、さっさとしなきゃ」

 

しかし鈴だけは違った。

 

「せめてもの情けよ、苦しまずに逝けるよう1発で仕留めてあげる」

 

一夏絶対殺すマンと化した鈴には聞かなかった。

彼女は双天牙月を振りかぶり、勢いよく振り下ろした。

 

 

ーーーー瞬間、黒い影が両者の間に割り込んだ。

 

 

「……あれ?」

 

「へ?」

 

一夏と鈴の間の抜けた声が聞こえた。

鈴の振り下ろした双天牙月は間に割り込んだ第三者、黒いISによって止められていた。

 

 

「ら、ラウラか。すまん、助かった」

 

介入した第三者、ラウラ・ボーデヴィッヒはAICを発動して一夏を守ったようだ。

彼女のISである『シュヴァルツェア・レーゲン』は大型カノンが無い以外は修復が終わっている。

 

「借りを返しただけだ。それにお前が居なくなると教官が悲しむ」

 

それだけ告げると彼女はISを解除し、スタスタと歩く。

彼女の席は教室の後ろだ。そのまま席に座るのかと思えばそのまま通り過ぎ、こちらへやって来た。

 

彼女が騒動を収めてくれたので俺は天岩戸と共にISを解除し、待機状態の四天を掛け直す。

 

 

「もう動いて大丈夫なのか?」

 

そう声を掛けるが彼女は無視する。

しかし歩調は緩めず、俺の方へ向かって来る。

 

「…………」

 

そしてついに目の前まで来た。

瞬間、目の前のボーデヴィッヒから花畑というかピンク色のイメージが伝わってきた。

 

まさかこれ、アカンやつだ。

 

 

次に起こることを即座に理解した俺は後退ろうとするがそれより早くボーデヴィッヒは動いた。

 

ニュータイプの機能を制限していたのが逆に仇になったらしい。

 

襟を掴まれる。体勢が崩れる。

目の前にボーデヴィッヒの顔が見える。目が合う。それが徐々に近付いてくる。

 

唇に、柔らかい感触が、温かい感触が。

 

そんな感触が、しばらく続いた。

数十秒かもしれない。数分経ってたかもしれない。

 

キスされた、と理解するのに時間はかからなかった。

 

 

唇と唇が離れる。

彼女の朱に染まった頬と恥ずかしそうな表情が真っ先に目に入った。

 

 

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

 

 

そして、唐突の告白。

 

へたり込んだままの一夏、ISを展開したままの鈴とセシリア、棒立ち状態の箒とシャルロット、クラスメイトのみんなと山田先生、野次馬として集まった他クラスの女子、遅れて谷本さんと共にやって来た織斑先生。

 

全員の時間が、停止した。

 

「お、お前は私の全てを視たんだろう……?せ、責任を取ってもらうからな……」

 

やはり恥ずかしくなったのか、身体をもじもじさせ、顔を更に赤くしたボーデヴィッヒは小声で続けた。

 

 

女の子から、告白された。

しかも相手は美人だ、普通ならば嬉しい。

 

 

だが、それにも時と場合がある。

 

 

俺は感じるまま(・・・・・)に辺りを見回した。

 

 

俺の後ろにいたのほほんさんは悲しいとも不機嫌とも言える表情でこちらを見ている。

その隣にいた相川さんはショックを受けたような表情をしている。

山田先生は機能停止している。顔を赤くしたまま動かない。

鈴を呼びに来たであろう二組のハミルトンさんは教室の外の扉の前で固まっている。

野次馬で来ていたであろう簪さんはうっすらと泣いているのが分かる。

生徒会室の方から殺気が飛んで来るのを感じる。

 

 

その後、正気に戻った織斑先生の号令により野次馬は散っていき俺達も席に戻った。

鈴やセシリアはそのまま先生に引きずられて行った。

 

 

「……一時限目は教室を移動しますので遅れないようにしてくださいね」

 

山田先生がそう言い残したところでSHRの終了を知らせるチャイムが鳴った。

 

 

しかし時間になっても誰一人として動かない、言葉を発しない。

 

 

「よ、嫁よ。その……一緒に行かないか?」

 

 

ただ一人、ボーデヴィッヒ(彼女)を除いて。

 

 

あらゆる方向から視線が突き刺さる。

 

 

「あぁ、鬱だ……」

 

 

教室の白い天井を仰ぎながら呟いた。

どうやら、俺の苦痛は終わらないらしい。




彼 女 さ え で き れ ば
報 わ れ る と 思 っ て い た の か ?


ほら、みんなの望みを叶えてあげたよ!(暗黒微笑)


(面倒事は)終わったけど(苦痛は)終わらない

ついに来たよ二巻ラスト!一番書きたかったとこ!
ようやくタイトルフラグ回収出来たよ!
鋼夜の苦痛はこれからだ!

いや、むしろこれからが本番と言えよう
次回から三巻の範囲に突入します


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恋愛真意の第48話

まさかの主人公不在
会話文が三割増し


学年別トーナメントが終わり、多少のいざこざはあったがIS学園は通常の業務を続けていた。

 

 

 

「ふんふーん♪」

 

先日、金髪ブロンドの貴公子から金髪ブロンドの恋する乙女へと見事なジョブチェンジを果たしたフランス代表候補生のシャルロット・デュノアは朝早く寮の自室にて、鼻歌交じりに出掛ける準備をしていた。

 

彼女がご機嫌なのには理由がある。

学園の行事の臨海学校が間近に迫るのだが、それで臨海学校にて着るための水着を買うショッピングに意中の男性である織斑一夏を誘えた事。

いわゆるデートに誘えたのだ。

 

 

「まずはラビアンローズに寄らないとなぁ……」

 

デートの時間は昼で、現地集合という形になっている。

朝は少し彼女に用事があったのだ。

 

ラビアンローズとは、彼女の友達である如月鋼夜が所属する企業で彼女はそこに呼ばれていた。

 

 

と、そこで部屋の扉が開いた。

 

 

「むぅ……」

 

唸りながら部屋へ入ってきたのは長い銀髪に眼帯にパジャマというインパクトのある格好をした女の子。

 

「おはようラウラ。また鋼夜のとこに行ってたの?」

 

「うむ。しかしいざ嫁の部屋へ入ろうとしたら嫁が私の存在を察知したらしくな、向こうから扉を開けてきたと思ったらハリセンなる武器で成敗された。次はバレずに潜入しなければ……」

 

「……鋼夜も大変だなぁ」

 

 

この少女はラウラ・ボーデヴィッヒという名であり、シャルロットのルームメイトだ。

最初は近寄り難かった彼女とも、今ではこうして日常会話をするくらいに親しくなった。

 

恋は人を変えるとはよく言ったものだ。

 

恋……か。

 

自身にも当てはまる事に行き当たったシャルロットは顔が赤くなるのを感じ、かぶりを振って思考を追い出す。

 

 

「シャルロット。その格好、何処かへ出掛けるのか?」

 

「え?あっ、うん。ちょっと用事があるんだ」

 

ラウラにより現実世界へ引き戻されたシャルロットは慌てながら答えた。

 

ラウラは「そうか」と短く答え、シャルロットの様子には触れなかった。

 

 

「ふむ。シャルロットも出掛けるのか」

 

「も?」

 

ラウラの言葉が気になったシャルロットはつい返事をする。

 

 

「ああ。買い物に誘ったのだが嫁も今日は用事で出掛けるらしくてな。残念だ」

 

「へぇー」

 

ラウラはそう言って少し落ち込む様子を見せる。

鋼夜の用事は恐らくラビアンローズからの呼び出しだろうと彼女は予想した。

そして彼女は次の疑問を口に出す。

 

 

「ねぇ、ラウラ」

 

「なんだ?」

 

「前から気になってたんだけどさ、なんで鋼夜のことを『嫁』って言ってるの?」

 

先ほどからラウラが言う『嫁』とは如月鋼夜を指す。

ある日突然、彼女は鋼夜のことをそう呼び出したのだ。

ご丁寧にキャラまで変えて。

 

彼女と鋼夜の間に何があったのか、気になったのだ。

 

「シャルロットよ、知っているか?」

 

「何を?」

 

ラウラはシャルロットの疑問に答えず勿体振った口調になる。

 

「この国には気に入った者を『嫁』と呼ぶそうだ!部下から聞いた!」

 

「それ、絶対間違ってると思うよ」

 

 

ラウラの言葉を優しい目で否定しながら彼女は思う。

 

彼女には、ちゃんとした常識を教えてあげよう。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒのルームメイト、シャルロット・デュノアは密かにそう決心した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

4組のクラス代表でもあり、日本の代表候補生でもある更識簪は寮の自室にて、ルームメイトでもあり親友である布仏本音と話していた。

 

 

「……鋼夜くん、出掛けるみたいだね」

 

「そうだね~。私達の誘いも断られちゃったね~」

 

「……ボーデヴィッヒさんの誘いも断ってたみたい」

 

「会社に呼ばれたって言ってたよ~?」

 

「……はぁ」

 

「かんちゃーん。元気出しなよ」

 

「やっぱり、勝ち目なんてなかったのかな……」

 

「私はかんちゃんの味方だよ?」

 

「嘘。本音は昔から油断ならない」

 

「酷いな~」

 

しくしく、と泣くふりをする親友を見ながら簪は思い返していた。

 

 

「……どうして、こうなったんだろうね?」

 

「たぶん、みんな同じだと思うよ~……間違いなく」

 

両者ともにため息をつく。

そして全く同じタイミングで口を開く。

 

「ボーデヴィッヒさんと鋼夜くんがキスしたのを見て自分の気持ちにいまさら気付いた」

「らうらうとこうやんのキスを見てみんな自分の気持ちにいまさら気付いたと思うよ~」

 

口調や言葉のスピードに若干の違いはあれど、二人の言ったことは同じだった。

 

「……はぁ」

 

「はぁ~」

 

改めて口に出し、そしてその事実を改めて確認した二人は再びため息をつく。

 

そう、この二人は同じ異性に恋をしている。

 

「……いつから?」

 

簪は短く、本音にそう聞いた。

全て言わずとも、彼女には通じるからだ。

 

「気付いたら。でも、一番のきっかけはクラス対抗戦の時かなー?」

 

「…………」

 

クラス対抗戦、と聞いて簪は息を呑む。

それを知ってか知らずか、本音はそのまま進める。

 

「えっと……アレが出てきて、いきなり観客席から出られなくなった時にね、みんなパニックになったの。でもこうやんは皆を落ち着かせて、突き飛ばされた私を助けてくれて……うぅ、恥ずかしいよぉ……状況とか雰囲気もあったけど、あの時からかなぁ?こうやんを意識しだしたの」

 

顔を真っ赤にしながらも、彼女は語り終えた。

そして笑顔で、簪が語るのを待つ。

簪も頷き、話を始める。

 

「……私も、本音と一緒かな。きっかけはクラス対抗戦だったと思う。それで、機体の練習とか整備とか色々と付き合っていって、次第に意識しだしたのかな。……でも、馬鹿だよね。あんな事が起きないと、自分の気持ちにすら気付かないなんで」

 

一気に語った後、簪は自嘲気味に笑った。

 

彼女の言葉に思うところがあるのか、本音は真剣な表情で黙ったままだ。

 

しばらく沈黙が続くが、その中で簪は唐突に呟いた。

 

 

「臨海学校、休もう……」

 

「……え~、どうしてそうなるの~。一緒に行こうよ~」

 

シリアスだった雰囲気はどこへやら。

本音は簪の手を引っ張るが、彼女はなかなか動こうとしない。

 

「いいの、惨めになるだけだから……」

 

自分と同い年であるハズの親友が自分とは全然違う大きさの、とある部分を見ながら彼女は呟いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おっはよー。……って、リン。何してるの?」

 

「あら、起きたのね。おはよう」

 

 

カナダからの留学生、ティナ・ハミルトンは目覚めてすぐに出掛ける準備をしているツインテールの少女、ルームメイトの凰鈴音の姿を目にした。

 

 

「出掛けるの?」

 

「一夏が誰かと出掛けるみたいだから、セシリアを引き連れて尾行するのよ」

 

「……わぁお。なんかリンらしいわね」

 

平然とストーカー行為の宣言をする友人に呆れ半分、賞賛半分にティナはそう返した。

 

「これくらいやらなきゃダメよ。ティナもそれくらいの覚悟がないと」

 

「えっ、私?」

 

なぜ自分までストーカーまがいにされたのか分からず、疑問符を浮かべる。

その様子を見た鈴はふふん、と鼻を鳴らすと腕を組みながら答えた。

 

「アンタが鋼夜のことを好きなのは分かってるのよ」

 

「なん……だと……」

 

ティナは驚いた。

まさか鈴に自分の恋心がバレているとは思っていなかったからだ。

 

「アタシの目は誤魔化せないわよ!まぁ、そういうのは置いといて。気になるわね、ティナがアイツを好きになったきっかけ」

 

そう言うと鈴はジリジリとティナへ近づく。

ティナは逃げようとするが、ここは室内でありあいにくと入り口側に鈴がいるため逃げられない。

 

「さぁ、白状しなさい!アンタだけ私の恋を知ってるなんて不公平だわ!」

 

それはリンが勝手に言い出して自爆したこと、という言葉が喉まで出るが何を言っても無駄と判断したティナは大人しく喋る事にした。

 

「最初はね、如月くんより織斑くんの方が気になってたの」

 

「ほう」

 

「でもさ、クラス対抗戦の時に如月くんって私達をアレから守ってくれたじゃない?それで、なんかカッコ良く見えてさ……その時からかなぁ、意識しだしたの」

 

「なんかの物語か!ってくらいベッタベタね」

 

ティナの話を聞いた鈴は率直な感想を述べた。

自分もそうだろ、とツッコんではいけない。

 

それに対してティナは「言わないでよ」と顔を赤くした。

 

「学年別トーナメントの事は残念だったなぁ。ねぇ、鈴?」

 

「そうよね、せっかくティナと組んで今まで練習してたのに全部パーになっちゃった」

 

そして二人は先日の出来事を思い出す。

 

トーナメントで優勝した組は織斑一夏と如月鋼夜と付き合える。

 

これを知ったティナは真っ先に利害が一致しており、実力も高い鈴をパートナーに選んだ。

鈴も、狙っていた一夏が既に(まだ男として過ごしていた)シャルロットと組んでいたため、快く彼女の申し出を受けた。

 

 

結局、トーナメント自体が中止になったことで全てが潰れた訳なのだが。

 

「学年別トーナメントの時の如月くん、カッコよかったなぁ」

 

「いやー、アイツがあんなに強くなってるとは思わなかったわ」

 

ティナの言葉に心当たりのある鈴はトーナメントや練習の時の様子を思い出した。

 

「全体的に……なんというか、予測射撃とかが上手くなってるのよね。相手の動きや思考が分かってるような、変な戦い方よね」

 

そういえばクラス対抗戦の練習に鋼夜とよく一緒に練習していた鈴は彼の変化に驚いていた。

 

「……クラス対抗戦の後くらいかしらね」

 

あの変な金ピカに乗った日くらい。

 

「そうだよねー。クラス対抗戦の後くらいに如月くんって時々、物憂げな表情を見せるようになったよねー」

 

「ん?」

 

「あーあ、もっと早くアプローチしとけばよかったなぁ。そしたらドイツの子に先を越されることもなかったのかもしれないし」

 

微妙に話が噛み合ってない事に気付いた鈴はふとティナを見た。

 

「でもでも、あの考え込む姿とか、妙に達観してるとことか、たまらないよねー。母性本能がくすぐられちゃう!」

 

「はいはーい、アタシからふっかけといてアレだけど戻ってきなさーい」

 

鈴が暴走したティナを元に戻すのには、しばらく時間がかかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一組のクラスには何故か周りとは独立した一つの派閥がある。

 

それは織斑一夏を想う女子で構成されるグループ。

 

織斑千冬の弟であり、世界で最初にISを起動させた男である織斑一夏はその恵まれたルックスも合間って非常に人気が高い。

 

現に、数人の女子が想いを寄せる程だ。

 

後は残り多数の女子となるのだが、一組には近々もう一つの派閥が出来上がる。

 

 

「YOU、答えちゃいなよ!」

 

「うぇっ!?」

 

「とぼけちゃって」

 

「貴女が如月くんを想っているのは誰が見ても明白かと」

 

 

IS学園、一年一組、出席番号一番の相川清香は寮にある談話室で同じ一組のクラスメイトに囲まれていた。

 

 

「そ、そそそんな、いったい何を……」

 

「ボーデヴィッヒさんが如月くんにキスした時に清香、めちゃくちゃ反応してたじゃん」

 

清香は否定しようとするが、谷本癒子の指摘により彼女は固まる。

 

「清香が何かしら如月くんを気にかけていたのは分かりますからね」

 

「アレで気付くなって方が無理だと思うよ」

 

続く四十院神楽と夜竹さゆかの追撃により清香は逃げ場が無い事を悟った。

 

「……そんなに、わかりやすかった?」

 

「「「とっても」」」

 

三人のタイミングぴったりな返答を受けて清香は項垂れた。

僅かに見える耳が真っ赤になっている。

 

「だからさぁ、白状しちゃいなよ」

 

「私達は清香の味方だよ?」

 

「うぅ……分かった。笑わないでね?」

 

若干、癒子が不安ではあるが清香は顔を上げて三人に話す。

自分が、如月鋼夜に惹かれた理由を。

 

 

「一目惚れ、なんだ」

 

「「「え?」」」

 

「な、何よその反応!」

 

「アッハイ、続けて下さい」

 

三人は思った。意外に普通だ、と。

と同時に、色々と納得した。

 

「な~るほど。確かに今思えば清香って何気に如月くんを気にしてたよね」

 

うんうんとさゆかは改めて納得した様子で頷く。

 

「で、なんやかんやあってどんどん如月くんを好きになっていくけど恥ずかしくて言い出せずにいたらこの間のボーデヴィッヒさんの行動でショックを受けた、ってとこ?」

 

「…………」

 

「図星のようですね」

 

癒子が言った予想が見事に当たっていた清香は再び顔を赤く染めた。

 

「確かに如月くんって織斑くんと比べると色々劣ってるように見えるけど、最近はそうでもないよ?」

 

「えっ?」

 

「クラス対抗戦や学年別トーナメントでの一件で注目されているようですね。この間、上級生の先輩方と話しているのを見ましたわ」

 

「見たところ本音は完全にアレだし、聞いたところによると四組のクラス代表も如月くんを狙ってるらしいよ」

 

次から次へと入ってくる衝撃の事実に清香は目を回す。

女子の情報網というのはなかなか侮れない。

 

「頑張れ、清香」

 

癒子が親指を立てていい笑顔で清香にエールを送った。

 

「大丈夫、清香は可愛いから。絶対いけるって、応援してるから」

 

さゆかも、清香を応援する。

 

「あんまり遅いと、如月くんは私が頂戴しちゃいますよ?」

 

「止めて、それだけは超辞めて」

 

「冗談です。応援してますわ」

 

神楽の心臓に悪い冗談に清香は素のトーンで返した。

 

しばらく悩んだのちに彼女は決心した。

 

 

「……そうだよね。ありがとう、みんな。私がんばってみるね」

 

「よっしゃ、その意気だよ!」

 

「そうと決まればさっそく今から行動開始!」

 

「そういえば静音から聞いたんですが、今日のお昼に篠ノ之さんが織斑くんと買い物に行くそうです」

 

「「それだ!」」

 

神楽の言葉にさゆかと癒子が食いつく。

当の本人である清香より張り切っているように見えるのは気のせいではない。

 

「もうすぐ臨海学校だよね?」

 

「寮の購買ではなく、わざわざ街に出てまでするこの時期の買い物と言えば当然……」

 

「「「水着!」」」

 

癒子、さゆか、神楽の三人の声が重なる。

 

「ま、まさか……」

 

清香は嫌な予感を感じ、三人を見る。

三人は満面の笑みで頷いた。

 

 

「そのまさかよ清香」

 

「如月くんを誘うのよ!」

 

「あわよくば最後まで行っても構いませんわ」

 

 

清香は予想通りの答えにため息をつくと共に、神楽ってこんなキャラだったっけ?という疑問が浮かんだがそれをすぐに頭の片隅にやる。

 

 

しばらく三人は計画を立てるなど盛り上がったが、鋼夜が会社へ行くという事を聞いた途端に真っ白になっていた。

 

 

 

 

一組に新たな派閥が生まれるのは、もうすぐだろう。





10月22日はとっくに過ぎたのに隣の家に戦術機が降って来ないんだが


前回、会長がニュータイプとかいう感想をもらいましたが
鈴がIS使った反応が出たので監視カメラ覗いて泣いてる簪を発見しただけです

ティナや簪が廊下にいたのは鈴のせいということで


今回はヒロインが鋼夜に惚れた経歴をざっと書きましたがどうですかね?
だいたいの人が自分の気持ちに気付かずに過ごしていたがラウラが鋼夜にしたキスによって自分の気持ちを自覚する、って感じですね

こうして見ると皆が好意を自覚するとこがギャルゲーの鈍感主人公みたいなパターンですね
手元から離れかけて、やっと気付くってとこが

こうしてみると鋼夜のポジションがヒロイン……
はっ、まさかこの作品のヒロインは鋼夜だった……?(錯乱)

こんなヒロインとか絶対嫌だけど


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受難続きの第49話

もうそろそろストレスで死ぬんじゃないかな、この主人公(無責任)


 

一方、多数のお誘いを断った如月鋼夜はシャルロット・デュノアと共にラビアンローズへ訪れていた。

 

会社に入ってすぐにシィちゃんとカっちゃんの二人による愛の殺人タックルをお見舞いされるというハプニングはあったが。

 

 

「凄いね」

 

「何が?」

 

「シスちゃんとカチュアちゃんだっけ?あの二人の子は鋼夜に凄く懐いてたよね」

 

「まあな。兄貴分として、みっともない姿は見せられないから」

 

 

その様子を見ていたシャルロットに話を聞かれながら、エレベーターに乗り込み最上階へ向かう。

 

到着までの間、ふと彼女の格好を見て思った事を聞いてみた。

随分とお洒落だ。化粧もしているように見える。

 

 

「えらく気合いが入ってる格好だが、何処かへ行くのか?」

 

「うん。この後、一夏と一緒に買い物に行くんだ」

 

「……そうか」

 

彼女の素直な返答。

これから臨海学校で使う水着でも一緒に選んでもらう魂胆なのだろう。

 

しかし、とある事実を知っている俺は驚くと共にそっけない返事をすることしかできなかった。

 

 

「鋼夜も何処か行くんでしょ?ラウラから聞いたよ?」

 

と、今度はシャルロットから質問が飛んできた。

それについての答えは用意してある。

 

「中学の頃の友達が遊びに来るんだよ」

 

「あー、それなら学園の友達は呼べないよね」

 

シャルロットは皆まで聞かずに理解してくれたようだ。

 

さすがにこれは学園の友達を呼べない。色々な理由で。

一夏ならともかく、女子は呼べないし、絶対に気まずくなるだろう。

 

そう話しているとエレベーターが目的の階に着いたようで、自動ドアが開いた。

 

 

「すまん、ちょっとトイレ行ってくる」

 

「わかった。そこで待ってるね」

 

シャルロットにそう告げて俺はトイレへ駆け込む。

そして携帯を取り出して箒の番号へ連絡した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やあやあ二人とも、せっかくのお休みに呼び出して申し訳ないね。まぁまずはそこに座って」

 

 

シャルロットと共に社長室へ向かうと、笑顔の輝さんが出迎えた。

輝さんに促され、二人で応接用のソファに座る。

 

「二人を呼び出したのは他でもない。この間の結果についてさ」

 

シャルロットの表情が変わった。

 

この間、というのはデュノア夫人を捕まえた時の件だろう。

具体的にはデュノア社はどうなるのか、シャルロットの身柄はどうなるのか、ということになるだろう。

 

 

「ははっ、そんな顔をしなくても大丈夫さ。正式にデュノア社が我が社の傘下に入るのが決まった。これはデュノア社やフランス政府やらの諸々の関係者から許可は貰っている。デュノア社はラビアンローズのフランス支社という名目で活動を存続、結果を出すという条件で政府からの援助も取り付けた。混乱を避けるためにラビアンローズとデュノアの名前はそのまんまだけどね」

 

その他、経営やらの様々な情報や結果が輝さんの口から飛び出す。

 

結果を言えば、ラビアンローズは勢力拡大。

デュノア社は名前がややこしくなったものの、存在は残った。

まぁ、デュノア社……フランス支社の方には監視としてアプロディアさんや数名の人間が動くらしいが。

 

「向こうのトップはしばらくはそのまま。それでシャルロットさんの身柄や所属は日本に居る間は我が社が預かるということになったのでよろしく」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

シャルロットの返事が室内に響く。

 

どうやら経営陣も一部を除けばそのままらしい。

 

しかし……まさかシャルロットが同僚か。人生、何が起こるか分からないものだ。

 

「シャルロットさんのラファールについては臨海学校の時にフランスから新開発された装備が送られてくる。鋼夜くんの装備と一緒に当日送るからよろしくね」

 

「はい」

 

「はい」

 

「難しい話は以上。お疲れ様」

 

輝さんは笑顔で話を締めくくった。

シャルロットはいくつか質問をした後に礼をして部屋を出て行った。

 

そして俺は何時ものように部屋へ残っている。

 

 

 

「輝さーん。『四天』の強化パックって完成してます?」

 

「バッチリ完成してるよ。楽しみにしててね」

 

俺がそう質問すれば輝さんは冷蔵庫から冷えたお茶を取り出しながら答えた。

 

 

「しかし……よくフランス政府がデュノア社の件を頷きましたね」

 

輝さんが取り出したお茶をグラスに注ぎながらそう切り出す。

シャルロットは居ないので聞きたい放題だ。

 

「デュノア社を切り離すのはフランスにとってみれば苦肉の策。それが多少の貸しで片付きつつ以前よりマシな状況まで持って来れるんだ、絶対に乗ると思っていた」

 

まぁ、デュノア社の諸悪の根源を除けて政府にも責任が及ぶシャルロットの件を解消出来て更にイグニッション・プランに再び参加出来るチャンスとなれば多少のリスクを払ってでも話に乗るだろう。

 

「でも、それだけではないでしょう?」

 

「……よく気付いたね」

 

俺が食い下がるのを見て輝さんは目を伏せると共に認めた。

 

「大方、俺の存在が関係しているでしょう?今はそうでもないですが近いうちに『フランスに支社があるなら如月鋼夜はフランス所属だ!』とか言い出しますよ」

 

それくらい、男性操縦者には価値がある。

もし俺がラビアンローズに所属していなければ、こう上手く話は進まなかっただろう。

 

「そして、シャルロットさんは一夏くんと親しい関係だ。もしかしたら結婚したりするかもしれない。そうなれば、なんの後ろ盾も無い彼をフランスは取り込みにかかるだろう。…………結果だけみればフランスは、今回の大博打に勝ったのさ」

 

状況を良くしつつ、更にでっかいチャンスが舞い降りた……それが今回のフランスだ。

 

 

「……はぁ」

 

「どうしたんだい?」

 

いきなりため息をつく俺が気になったのか、輝さんが訊いてくる。

 

「いや……一夏に『シャルロットはハニトラだぞ』って言えば俺にとっては都合がいいんですよ」

 

箒を応援している俺からすれば、現時点で強敵のシャルロットが消えるのは最高な訳でして。

 

「でも……これから同僚として働く相手にそんなこと出来ないじゃないですか」

 

顔を合わせるたびに間違いなく気まずくなる。

 

「……そうだね」

 

「もう、どっちでもいいのかもしれない」

 

一夏を落とすのは箒だろうがシャルロットだろうが、誰でもいい気がしてきた。

 

 

「あ、そうだ。最近の学園はどうだい?」

 

「最近の学園ですか……」

 

話題を変えて流れも変えようとしたのだろう。

輝さんが唐突にそう切り出すが、言った後で『しまった』という顔をした。

 

いいでしょう、話してあげますよ、最近のこと。

 

「トーナメントの後に色んな人に声を掛けられるようになりましたよ。主に外国人に」

 

「あぁ……やっぱり?」

 

「はい。ほとんどスルーしましたがね」

 

先輩なんて会長くらいしか知らなかったが、あの一件以降色んな先輩に声を掛けられた。

そのほとんどが下心ありありだったり自分の意思ではなく誰かの命令だったりするものがほとんどだったが。

 

 

三年の専用機持ちであるダリル・ケイシー先輩はこちらに挨拶したら興味無くしたのか、さっさと何処かへ行ったし。……まぁ、これはマシな方。

 

二年のフォルテ・サファイア先輩は女尊男卑の典型的な人だった。

こちらをあからさまに見下してくるのは、申し訳ないが入学当初のセシリアを思い出した。

 

先輩と勝負になった時は『暁』の使用も考えとこう。

 

 

まともな人とか、セシリアと同じイギリス代表候補生のサラ・ウェルキン先輩とあと数人くらいしか居なかった。

 

 

「まさか手のひら返しをリアルで見ることになろうとは……」

 

しかもその様子が分かっちゃうニュータイプ機能のおまけ付き。

 

 

「ごめん」

 

「大丈夫です、もう慣れました」

 

 

俺はそろそろ約束の時間であるということを輝さんに伝え、社長室を後にした。

 

 

久しぶりに二人に会える。

俺の気分は少し弾んでいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっほー、こうくん。久しぶり」

 

「なんで居るんですか束さん」

 

 

社長室を出てエレベーターに乗った直後、俺の目の前にはエプロンドレスに機械のうさ耳といったいつもの格好をした束さんが立っていた。

 

 

「酷いなぁ。せっかく忙しい中の僅かな時間を見つけてはるばる会いに来たのにそんな態度なんて、束さん悲しいよぉ」

 

いきなり泣き真似までする始末。

そしてよく見ればエレベーターも止まっている。

 

「何かあるんですか?」

 

「あるよ、超あるよ。とりあえず着いて来て」

 

閉まっていたはずのエレベーターの扉が開いた。

束さんは泣き真似を辞めて笑顔に戻ると俺の手を引いて走り出した。

 

 

隠し扉をくぐり、消火栓内の秘密通路を通ったり排気口に潜入したりしながら、俺達はは束さんがよく使う地下の部屋へ到着した。

ここに来るのは束さんに初めて拉致られて以来だ。

 

会社の中を色々改造し過ぎとツッコミたいがもう諦める。

 

 

「こうくんと二人きりになるなんて久しぶりだよね」

 

「そうですね」

 

「私が初めてこうくんと会った時だよね」

 

どうやら束さんも俺と同じことを思っていたそうで、笑顔で話しはじめた。

 

「ねえねえ。初めて会った時から、ずっと思っていたことを聞いていい?」

 

と、思えば今度は質問だ。

まったく、何を考えているか分からない。

 

「答えられる範囲なら」

 

束さんは断ってもしつこく迫ってくるタイプだ。

ならば、素直に答えよう。

 

 

「ん。それじゃあね、聞きたいんだけどーーーーこうくんって、何者?」

 

無邪気な笑顔と共に告げられた言葉。

背筋が一気に冷えていくのを感じる。冷や汗が流れる。

 

「別に、改めて名前とか出身地とか聞いてる訳じゃないよ?」

 

追い詰めるような物言い。

そして理解した。

束さんは俺の存在を疑っている。

 

 

「自分で言うのもアレなんだけどねー、束さんって興味の無いものは本当にどうでもいい人なんだよねー」

 

答えられない俺を置いて、束さんは勝手に話し始めた。

俺は黙ってそれを聞くしかなかった。

 

「そんな中、紆余曲折を経て束さんはあっくんと出会ったのです。そして束さんは驚いたね、まさか自分と同じ目(・・・・・・)をしてる人が居るんだよ。しかもその辺の有象無象はともかく、この超天才の束さんの前ですら同じなんだよ。束さんショックでその日は八時間も寝ちゃったよ」

 

「……え?」

 

輝さんが、束さんと同じ?

 

「だから、興味が出たんだよ。この束さんを有象無象扱いするあっくんと、あっくんが唯一興味を持ったこうくんにね」

 

「…………」

 

束さんが話す内容は衝撃の事実ばかりだった。

束さんが、なぜ輝さんや俺に興味を持ったのかを理解した。

と同時に、輝さんの事が心にずしりとのしかかった。

 

 

「……ありゃりゃ。その様子だと、こうくんは何もわからなかったっぽい?」

 

束さんは俺の目の前で手をひらひらさせながら心配そうな表情のまま尋ねた。

 

「はぁー、まぁいっか。答えなくていいよ。束さんの頭脳でも正解は分からないし、はっきりとした答えが出たらまた聞くから」

 

心配する表情から残念そうな表情へ。

残念そうな表情から一変し、再び元の笑顔へ戻る。

 

それよりも、聞きたいことがある。

 

「束さん。輝さんが束さんと同じって、どういうことですか」

 

束さんが人を人扱いしないのは知っている。

だが、輝さんが……?

少なくとも、その話は嘘としか思えない。

 

「あっくんはね、人を見てないよ。人を通り越して、ずっと遠くばかりを見てるよ。こうくんと話すとき以外はね」

 

この束さんと話すときですら、目を見てくれないんだよ?

と、頬をふくらませて続けた。

 

そのことが、自分の中で引っかかった。

……いや、この引っかかりの正体は分かっている。

そして、輝さんの事も。

 

それは恐らく、自分でも感じていたこと。

目を背けていたこと。

 

 

「でも」

 

と、束さんがいきなり俺に近づく。

顔を掴まれる。目の前に束さんの綺麗な顔が見える。

束さんは真剣な表情でじっ、と俺を見つめる。

 

 

数秒だったかもしれない。数分経ったかもしれない。

しばらく見つめあった後、束さんは満足したような笑顔になり手を離した。

 

「こうくんは、ちゃんと束さんを見てくれるんだね」

 

そう言うと束さんは「臨海学校でまた会おう!」と言い残して走り去っていった。

こちらが止める暇もなく、あっと言う間だった。

 

 

彼女が去った後、俺は地面にへたりこんだ。

 

俺の正体や輝さんの事がバレることの緊張もあったが、俺は子供のような無邪気さと好奇心しか(・・・・・・・・・・)感じなかった束さんに恐怖に似た感情を抱いていた。

 

 

 

「……とりあえず、出るか」

 

脱出に少し手間取ったが、なんとか無事にラビアンローズから出られた。

 





大博打に完全勝利したフランスUC
シャルのポジションを有効利用しない手は無いでしょう
でなければ原作のフランスもデュノア社もシャルを放っておくわけが無い

ダリルとフォルテはどこの代表候補なんだよ
それくらい紹介してよ、原作さん
英語圏の国なんてたくさんあるよ


束さんはラスボスかわいい
束さんはラスボスかわいい

原作の束さんなら普通に感づくと思う
まず二人目の時点で確実にロックオンされるし

ラビアンローズは既に束さんの手により魔改造済みです
クーちゃん出そうと思ったら出せなかった


もう鋼夜の胃はボロボロ


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自分真理の第50話

久しぶりに更新

今回の話は賛否両論あると思います
ていうか鋼夜がクズいです


ラビアンローズから脱出した俺は街の中を歩いていた。

毎回、外出する時は眼鏡と帽子で軽い変装はしている。

一夏ほどでは無いが俺の存在はかなり重要だ。めんどくさい事態を避けるためにラビアンローズからいろいろ言われている。

 

一夏もよく外出しているのを見かけるが、あいつは変装せずにそのまま出ている。

制服姿の時とかあった。ある意味すごい。

まぁ、主人公だし仕方ないか。

 

 

と、そこまで考えてため息をついた。

つまり、こういうことなんだろう。

 

俺はいま一夏を主人公だと思った。

今まで一夏を人間としてではなく、インフィニット・ストラトスの作品のキャラとして見ていたという事になる。

 

極端な話がこれだ。

 

俺は一夏だけでなく、箒やセシリアや他のみんなも無意識にアニメのキャラとして見ていた。

 

いや、無意識ではない。

わざと考えなかっただけだ。

 

 

ここが俺の知る世界じゃないから。

……いや、ある意味知ってる世界だからこんな変な感じになるんだろう。

 

今なら輝さんの気持ちが凄い理解できる。

それに輝さんは今まで戦争ばかりの世界に居たんだから俺より酷かっただろう。

 

 

神という存在も知っている。

この世界が作られたものだということを、俺は知っている。

 

一夏の活躍を知っている。

学園生活のほとんどを知っている。

アニメで見たから、その先入観のせいで、俺はあいつらを普通とは違う目で見ていた。

 

 

じゃあ、俺はこの世界に住む他の人の事をどう思っている?

アニメとは関係ない、写っていない、でも同じ世界に存在する人を。

 

 

……どうすればいい。

俺は、どんな顔で、あの二人に会えばいいんだ。

 

 

ため息をついてしばらく考え込むが、一向に答えらしいものは浮かばない。

 

 

「……つーか、遅くね?」

 

何の気なしに開いたスマホで時間を確認して、思わず呟く。

二人との待ち合わせ時間がとっくに過ぎている。

待ち合わせ時間十分前には既にスタンバっているのがデフォもだった二人の遅い到着に少し不安になる。

 

かといって、こちらから通話するのも気が引ける。今はそういう気分ではない。

 

 

数分待ったが連絡が無いので俺は直接二人を探すことにした。

 

今、俺がいる場所は巨大なショッピングモールの入り口だ。

あいつらが先に中に入った可能性がある。

俺はショッピングモールの中へ移動した。

 

ここのショッピングモールは五階まであり、一階は主に食品売り場、二階はカフェやレストラン、三階は主に服売り場、四階は様々な店が、五階はゲームセンターや本屋等がある。

 

あの二人が行きそうなのは三階から上だろう。

本当に二人がいるかどうかはわからないが、探している途中に連絡が来るならそれはそれでいい。

 

 

エスカレーターに乗り、三階へ向かう。

 

 

意外にも、二人はもう見つかった。

エスカレーターを降りてすぐの婦人服売り場に見覚えのある二人の後ろ姿を発見した。

どうやら先に来ていたようだ。

 

しかし、同時に厄介な空気を感じた俺はため息を一つ吐いた後にメガネを外して服の胸ポケットへ入れて二人の元へ向かった。

 

 

 

「いや、それを俺たちに言われても困るんですが」

 

「何よ、あんたたち男でしょ?いい加減にしないと警備員呼ぶわよ?」

 

 

二人は女性に絡まれていた。

二十代前半くらいの若い女性は腕を組みながら不機嫌そうな顔で二人に迫っていた。

 

聞こえてきた内容と相手の態度だけで、これがナンパ関係でないことがはっきりと分かった。

 

 

「玲児、泰河、ここに居たのか」

 

俺は空気を読まずに突貫。

俺の登場に親友の二人は驚いて振り返った。

 

 

「探したぞ。さ、行こうぜ」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

二人を連れてこの場を離れようとするが案の定、女性から待ったが入った。

 

「あんた、この二人の友達?ならちょうどいいわ。あの服、片付けてくれる?」

 

そう言って女性が指差した方向を見れば、婦人服売り場の一角に売り物であろう服が乱雑に積まれていた。

 

 

女尊男卑。

ISの使用ができる女性は全てにおいて優遇された事によって引き起こされた現象。

 

何をどう勘違いしたのか。

一般社会にもこの現象は起こり、女性=偉いという風潮により世の中の男性はこうしてパシられたりすることが多々ある。

 

二人は運悪く、面倒な女性に引っかかってしまったのだ。

だから婦人服売り場という場違いな場所に居る。

 

 

「鋼夜、俺たちはいきなりこの人に声をかけられたんだ」

 

「婦人服売り場なんて入ってないし、ましてや服なんて漁ってないし」

 

「状況が分かりません。なぜ、俺達が?」

 

泰河と玲児の証言を聞いたのちに、再び女性に問いかける。

すると女性は俺の態度が気に入らなかったのか、更に表情を険しくする。

イライラしているのが目に見えて分かるレベルになった。

 

 

「男なら私の代わりに動くのは当たり前でしょう?とっとと片付けてきなさい」

 

「代わりに、という事は、あれは貴女がやったんですよね?それを俺たちに頼むのはおかしいと思いませんか?」

 

「男のくせにうるさいわね!さっさとやりなさいよ、警備員呼ぶわよ!それとも警察がいいかしら!?」

 

我慢の限界がきたのか、女性は声のトーンを上げて脅すように言ってきた。

女尊男卑の風潮のせいで、警察や警備員も女性には逆らいにくい。だからこんな馬鹿げた事態でも相手が女性なら応対しなければならない。

 

警察という単語に反応したのか、後ろで二人が焦っているのを感じる。

が、俺は表情を変えずに女性と向き合い続ける。

 

「今、認めましたよね?」

 

「ええ!だからなに?あんたら男は黙ってーーーー」

 

俺は女性が言い切る前に服の胸ポケットへ指を突っ込んだ。

 

『あんた、この二人の友達?ならちょうどいいわ。あの服、片付けてくれる?』

 

「ーーーーえっ?」

 

そして、聞こえるのは女性の声。

唐突に流れてきた自信の声に、目の前の女性は言葉を止めた。

 

『男なら私の代わりに動くのは当たり前でしょう?とっとと片付けてきなさい』

 

「えっ、ちょっ、これって」

 

「今の会話は全部録音させてもらいました」

 

俺がそう答えれば、女性はキッと俺を睨みつける。

だが、そんなもので動じる俺ではない。

 

「警察や警備員呼んでもいいですよ?まぁ、罰されるのは間違いなく貴女でしょうけど」

 

「くっ……」

 

「この件は無かった事にしましょう。時間の無駄になるでしょうし、それがお互いのためです」

 

非常に悔しそうな表情をしているが、さらに何か言ってくる気配は無い。

騒ぎを起こしても自分が不利なのはわかりきっている。

だから、このまま解散するのが本当にお互いのためなのだ。

 

 

「さ、行こうぜ」

 

「あ、あぁ」

 

「お、おう」

 

ポカンとしていた二人に一言掛けた後に、俺たちは二階に降りて適当なカフェへ入った。

 

 

 

「あー……まさかあんな事になるとは」

 

片目が隠れている黒髪の少年、天田玲児は注文したカフェラテを一口飲んだ後にそう切り出した。

 

「都会が女尊男卑ってのはマジだったんだな……」

 

玲児に続いたのはツンツン頭でガタイのいい少年、黒川泰河だった。

キャラメルラテのクリーム部分をストローで弄ったのちにやっと口をつけた。

 

「とりあえず……久しぶり、二人とも」

 

アイスコーヒーを机に置き、改めて二人に挨拶した。

今日、会う約束をしていた二人とは親友であるこいつらの事だ。

 

メールやらでやりとりは交わしていたものの、住んでいる場所が場所だけに直接会うことは難しかったが今日ようやく再会出来た。

 

 

「おう、久しぶり!背伸びた?少しやつれた?眼鏡かけた?イメチェン?」

 

「本人の前でやつれた?とか聞くか、普通」

 

玲児のいつもの人懐こい笑みと冗談が懐かしく感じる。

最後に会ったのは三ヶ月前だったか。

 

「鋼夜。元気そうで何よりだ」

 

「ああ、お前ら元気だな」

 

「ちょっと引っかかる言い方なのは気のせいか」

 

泰河のツッコミも久々に聞いた。

相変わらずキレがある。

そして妙に心配性なのも変わっていない。

 

 

「鋼夜、さっきは助かった。玲児がアレにほいほいと付いて行ってな……」

 

「中入ろうぜ、って言ったのは泰河じゃん!」

 

「ああ、うん、なんかだいたい察した」

 

待ち合わせ時間より早く着いたから先に店内を見て回って時間を潰そうと思ったらさっきの女性に捕まった、と。

 

「都会は冗談抜きであんなのが居るからな、今度からは気を付けろよ」

 

「ボイスレコーダーも持ち歩きたくなる訳か」

 

「都会怖い」

 

あれは厳密にはボイスレコーダーではなく四天の便利機能の一つなのだが言わないでおく。

親友といえど、ISについてはおいそれと語っていいことではない。

 

 

「やっぱりあっちは平和か?」

 

「平和平和。高校っていっても田舎だし、都会の風潮なんて入ってこない」

 

「男子も女子も普通だぞ」

 

「遊佐っちとか元気?」

 

「元気元気。あ、でもこの間ぜっちゃんが右腕骨折してた」

 

「虫大好きのぜっちゃんか!ぜっちゃんに何があった」

 

「えっとねー……」

 

 

と、地元の話題で会話に花を咲かせる。

他の友達の進路、空き地にコンビニが出来た、彼女が出来ました、などなど。

三ヶ月もの空白を埋める勢いで会話は弾んでいく。

 

 

「ま、こんなとこか?」

 

「話すこといっぱいあったんだけど、いざ話すとなると浮かばなくなるな」

 

「みんな元気そうで良かったよ」

 

二人以外の友達やクラスメイトとは連絡を取っていないため、二人の話は非常に新鮮で、懐かしく感じた。

 

 

「やっぱり鋼夜がIS操縦者になったって聞いた時は皆驚いてたな」

 

「誰が一番驚いたか、って俺が一番驚いたわ」

 

「そりゃそうか」

 

 

ハハハ、と三人で笑う。

笑った後に一瞬の沈黙が流れ、それを頃合いとみたのか、玲児がニヤリと笑う。

 

 

「さてさて、次は鋼夜のことについて聞こうか」

 

「おい俺は今必死にその話題避けてたんだぞ。もうお前らの近況が聞けただけでいいんだよ。このまま綺麗に終わらせろよ、割とマジで」

 

「切実だな……」

 

 

案の定、俺についての事を聞いてきた玲児にガチのトーンで答えれば泰河が哀れみの表情を向けてきた。

 

「愚痴ばっかりだよ?楽しくないよ?こうして久しぶりに会ってまで愚痴は聞きたくないだろ?」

 

二人にはたびたびメールでやりとりを交わしているが、内容のほとんどが俺の愚痴だ。

 

「ごめん。そんなマジになるとは思わなかった」

 

「でもな、鋼夜。玲児が最初に言ったように、見るからに様子が悪い方に変わった親友を放ってはおけないだろ?」

 

泰河が諭すように言葉を投げかける。

その優しさが辛い。タンバリン叩きたい。

 

正直、俺の話は普通の人間では理解が追いつかないレベルだ。

そして内容なんてほぼ愚痴か特定の誰かの陰口みたいなものになる。

 

なんというか……陰口叩く自分が女々しくて、みっともなくて、許せない。

二人とのやりとりも、愚痴ばかりになってきたから最近はしていなかった。

 

だから、この二人には話したくない。

 

なので、俺は別の事を話して誤魔化すことにする。

誤魔化しとはいえ、死活問題でもあるこの話を。

 

 

「ありがとう。だったら、一つ相談があるんだ。経験豊富な二人にしか話せないことだ」

 

「お、その口振りはまさか?」

 

「いいぞ、話してくれ」

 

 

悩みを打ち明けてくれることと、俺の意味深な言葉で察したのか二人は笑顔で了承してくれた。

 

 

「四人の女の子に同時に好意を向けられているんだが、どうすればいい?」

 

「ファッ!?」

 

「へァッ!?」

 

 

驚きのあまり玲児と泰河が奇声を上げた。

 

二人はせいぜい「気になる女の子ができた」「女の子に告白された」くらいのレベルを想定していたが、まさか「五人の女の子に好かれている」といった内容だとは予想していなかった。

 

「どういう経緯でそんな状況になったんだよ……」

 

「そこを詳しく頼む」

 

二人の続きを促す言葉に頷き、俺は経緯を語る事にした。

 

「学園の生活は散々だ、って結構愚痴ってきたけど友達は出来たしそれなりに楽しくは過ごせるようになったんだ」

 

「織斑一夏だっけ?もう一人の男。さすがに男同士は仲良くないと辛いもんな」

 

「ああ。まぁ一夏とも上手く付き合えたし、先生たちやクラスメイトたちにも認められてきた時に、それは起こったんだ」

 

「それ、とは?」

 

無人機の襲来、その時の出来事、ニュータイプへの覚醒、学園へ戻って感じた一部の人間の態度。

詳しくは話せないが、それらを思い返しながら俺は話を続けた。

 

「ふと気付いたんだ、友達のそれとは違う恋愛的な好意に。でも俺はそれに応えなかった」

 

「……何故?」

 

「自惚れてるって思うかもしれないけど、俺の立場って面倒だし特別なんだ。誰かと付き合うなんてしたら国が動きかねない。その子にも迷惑がかかる。だから、俺は自分からは動かなかった」

 

「自分からは、って事は向こうが告白してきたら考えたって事か?」

 

「そうだな。……その子の事は嫌いじゃなかったし、俺は鈍感じゃないから、告白に近いアピールをされたら応えるつもりだった。俺は自分にそういうルールを設けた」

 

「あっ……」

 

そこで察したのか、玲児が短く声を上げた。

泰河も額に手を当てるポーズをしている。

 

「お二人さんの予想通り、つい最近まで動き無しだったよ。でも、それも長く続かなかった。……この間、ISを使ったトーナメント戦があったんだが、それで一悶着あってな……」

 

「せんせー、ひともんちゃくってなんですかー?」

 

玲児がぼかそうとした部分をつつく。

誤魔化しても食らいつく玲児に観念した俺は正直に話すことにした。

 

「……タッグパートナーにキスされた。しかも教室で、みんなの前で」

 

「エンダァァァァァァァ」

 

「落ち着け玲児、まだ早い。ここで結ばれたなら相談の意味がない。俺の予想だとタッグパートナーと惚れてる女の子は別人じゃないのか?」

 

泰河は騒ごうとする玲児の口を押さえながらそう尋ねる。

さすが泰河だ、察しがいい。

 

「当たりだ。……凄い失礼だが、俺はその子の事は眼中に無かった」

 

正直、ラウラは一夏に行くと思っていた。

いいとこ一夏には惚れなくても友達かライバル止まりだと思っていた。

 

それがまさか180度方向転換してこっちに来るとはさすがの俺も予想出来なかった。

 

 

「いや、別にタッグの子は嫌いじゃないよ?普通のライバルだと思ってたよ。……だからキスされた時は、鳩がアウトレンジからの砲撃喰らったような気分になったよ」

 

しかも告白されたけどその告白も微妙にズレてるというね……。

 

「それに触発されたのか……翌日からかな、一部のアプローチが強くなったのは。しかも先輩方からも声をかけられるようになったよ。主に外国人」

 

「それで、脈アリっぽいのがそれら合わせた五人と?」

 

それはちょっと違う。

泰河の言葉に俺は首を横に振る。

 

「いや違う。ハニートラップとか下心とかそういうのを全部除外して四人」

 

「…………」

 

「…………」

 

玲児も泰河も言葉を失う。

これらを統合すれば、普通に修羅場の状況にあるということは誰でも容易に想像できる。

 

 

「俺はどうすればいい?どうすればよかった?」

 

自分でも切実だと思える声と表情で問いかけた。

教えてくれ、四天は何も答えてくれない。

 

 

 

しばらく沈黙が続いたが、泰河がそれを破った。

 

 

「……俺はな」

 

そう前置きし、そして意を決して話し出した。

 

「その子の気持ちを知ったんなら、知っていたのならお前が、鋼夜が先に動くべきだったと思う。……俺は鋼夜がどんな立場になのかは分からない。だが、少なくとも俺はそう思った」

 

「……ありがとう。そう言ってくれるのは嬉しい」

 

申し訳なさそうな顔をしながらだが、泰河は自分の意見を言ってくれた。

 

「いやいや、ちょいと厳しくないか?仮に付き合うことになっても三年間は学園に居ることになるんだよ?学園に二人しかいない男子の片方を独り占めって危ないと思うよ?中にはさっき出会った女性みたいなのも居るだろうし、保留は間違ってないと思うけど」

 

と、ここで玲児が泰河の言葉に意見を出した。

玲児は俺の選択には賛成派のようだ。

 

「だが、結局はもつれ込んでの修羅場じゃないか」

 

「まぁ、結果論だし仕方ないね。……鋼夜はさ、その五人をどうしたいの?どうされたいの?どう思ってるの?」

 

玲児の問いかけに俺は考え込む。

 

 

「嫌いじゃない。全員可愛い。だから、誰かを選ぶことなんてできない」

 

あの五人は嫌いじゃない。みんな俺には勿体無いくらい可愛い。だから選べない。応えたくない。嫌われたくない。

 

小鷹先輩、マジごめんなさい。

クズとか言ってすみませんでした。

こんな状況だと難聴のフリだってしたくなる。え?なんだって?を連呼したくなる。

 

 

「なるほどね、分かるよ」

 

俺の正直な気持ちを聞いた玲児は頷きながら理解の言葉を示した。

 

 

「これはあれだ。全員責任を取るしかないな」

 

「ファッ!?」

 

そして続く玲児の言葉に俺は驚いた。

おまけに変な声も出た。

 

「鋼夜。世の中にはこんな格言がある。『来る者拒まず、去る者追わず』と」

 

「いやいや、それはさすがに……」

 

「なんで?いい案だと思うよ?成功すればハーレムだし」

 

問題ありまくりだろ、とツッコミそうになるが確かに玲児の言っていることも一理ある。

 

受け入れてくれるなら、そこまで俺の事を思ってくれていると分かる。

断られても、向こうが勝手に愛想を尽かしてくれるのだ。俺が直接断るよりもダメージは少ないし『所詮、相手はその程度の気持ちだった』と割り切れる。

 

 

……あれ?これ結構いいアイデアじゃないか?

 

 

 

「……もしもし鋼夜さん?大丈夫?」

 

呼びかけられて我に返る。

気付けば玲児が顔を覗きこんでいた。

 

「ありがとう玲児。やっぱり持つべきものは親友だな」

 

「いや、今のは自分でも自覚できるくらいゲスいこと言ったんだけど」

 

「泰河もありがとう」

 

「まぁ、その、なんだ、上手くやれよ」

 

「俺、全力で頑張るよ」

 

改めて二人に礼を言い、カフェを出ることにした。

俺が二人の代金を支払う。

 

これでも一応、会社員だ。

給料も出ているし口座もある。

二人分の代金を奢るくらいワケが無いね!

 

カフェを出た後にモール内を散策し、その後は街に出て俺のオススメのスポットを二人に紹介しまくり夜遅くまで遊んだ。

 

 

「またなー」

 

「次は夏休みに会おう」

 

「臨海学校の写真、楽しみにしとけよ」

 

駅のホーム。

帰っていく二人を見送り、次に会う約束を交わす。

そして、二人の乗った電車が見えなくなるまで手を振った。

 

 

 

家までの帰り道。

今後の事をずっと考える。

 

今まで世界がどうとか悩んでいたが、俺は二人を見た瞬間に何も考えずに助けた。

 

これが答えだ。

結局、世界なんて関係ないのだ。

 

そもそも、そんな事を自覚もしくは認識できる方が異常であり、普通のやつはそんな事を考えもしないし気付きもしない。

俺や輝さんや束さんが例外なだけだ。

 

 

誰も分からない事を、一人で悩んでも意味が無いじゃないか?

 

結論は、自分さえ納得出来ればいいのだ。

 

だから俺は考えるのをやめた。

そのままでも、いいじゃない。

 

 

そう結論付けた俺は自宅へと歩を進めて行った。

 




自分でもゲスいと思いながら書いてます

親友再び
もうはがないの小鷹を馬鹿にできないや
あの閉鎖されてるような学園で恋愛するなら、もう全員公認のハーレムしかないと思います
杉崎とかイッセー(10巻以降)って神だわ

鋼夜の選択は「開き直る」ことです
誰も分からない事で悩んでいるのが馬鹿らしいことに気付いた鋼夜は無理やり自分を納得させました
ていうか過去にもこんなノリで割り切ってたよコイツ

こんな考えに至る奴が一人くらいいてもいいじゃない、人間だもの


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臨海学校の第51話

ネタ全開
みんなの魅力をうまく説明できない不甲斐ない私を許してくれ……


 

 

「海だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「いえーい!」

 

「敵の潜水艦を発見!」

 

「駄目だ!」

 

「駄目だ!」

 

「駄目だ!」

 

 

バスの中で、女子が声を上げる。

視線を窓へ移せば、確かに青々とした海面が広がっていた。

 

「海一つでこんなにはしゃぐか、普通」

 

「海そのものより皆と見る海に興奮してるんだと思う」

 

ボソッと言い放った俺の呟きに隣の一夏が反応した。

確かに、その場のテンションやノリは大切なものだろう。

 

「鋼夜、向こうに着いたら泳ごうぜ」

 

「いいぞ」

 

「箒もな!」

 

「う、うむ」

 

一夏は笑顔で俺と後ろの席に座っている箒に誘いをかけた。

なんやかんやで一夏自身も楽しみにしているのだろう。

 

臨海学校を。

 

 

今、俺たちは臨海学校のためにバスで移動している。

正直、俺は全然楽しみではない。

何が起こるか知っているから。

 

臨海学校の目的は屋外でのISの使用を学ぶためだ。

そして専用機持ちは各国や企業から届く新装備のデータを取るために参加する。

 

ラビアンローズからも装備が送られてくるし、そもそも男性操縦者はこういう行事には強制参加なので嫌々ながら参加している。

 

 

面倒事は早速起きた。

バスの座席決めだ。

なんと山田先生が決めるのを忘れていたらしく、早速クラス内では一夏争奪戦が始まった。

 

かくいう俺も、のほほんさんの無邪気な笑顔とラウラの恥じらいだ表情による無言の威圧の板挟みを受けた。

 

そして俺は苦肉の策として一夏と座ることを選んだ。

 

男同士で座る。

これなら全員は納得せざるを得ない。

 

色んな方々からの視線が刺さるが気にしない。

ていうか、男に嫉妬するってどうなのよ。今更だけども。

 

現実逃避のため、車内はほとんど寝ながら過ごしていた。

まぁ、女子のせいでついさっき目覚めたが。

 

 

「そろそろ目的地に到着する。全員席に座れ」

 

織斑先生の号令に全員が従う。

騒ついていた車内が静かになった。

 

それからすぐ、バスは目的地であろう旅館の前に到着した。

1クラス一台……四台のバスからIS学園の一年生が次々と降りてくると整列した。

 

「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないよう注意しろ」

 

「よろしくお願いします!」

 

全員が旅館の女将さんらしき人に挨拶をした。

届かぬ思いですがね、と心の中で毒づきながら俺もそれに続いた。

 

「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね。当、旅館の女将をしております清洲景子です」

 

三十代か二十代後半くらいに見える着物姿の女性はぺこりと頭を下げた。

 

「それではみなさん、お部屋へどうぞ。海へ行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますからそちらをご利用なさってくださいな。何かわからないことがあれば、お気軽に従業員に訊いてくださいまし」

 

全員がそれに返事をすると多数の従業員の先導の元、旅館へ入っていく。

 

「お前たちはこっちだ」

 

俺と一夏は織斑先生に捕まり、清洲さんのところへ連れて行かれる。

 

「織斑先生、こちらが噂の?」

 

「はい。ほら、挨拶をしろ」

 

「お、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

「如月鋼夜です。ご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」

 

織斑先生に促されて挨拶と共に頭を下げた。一夏も同じく。

 

「ご丁寧にどうも、清洲景子です。織斑先生、二人とも元気そうないい子ですね」

 

「元気過ぎて問題を起こすのが玉に瑕ですがね。今回は二人居るために浴場分けが難しかったでしょう、申し訳ありません」

 

「いえいえ、いいんですよ」

 

織斑先生と清洲さんが会話をしている。

 

せんせー、俺はどっちかと言うと問題は起こしてませーん。

起こされたり巻き込まれたりしてます。そして、今回もそうなりまーす。

 

 

心の中で清洲さんに謝罪しながら俺はため息をつくのだった。

 

 

「こうやん、こうやん」

 

「どうした、のほほんさん」

 

旅館へ行かず、この場に残っていたのほほんさんが話しかけてきた。

 

「こうやんの部屋ってどこ~?一覧に書いてなかったよ?」

 

「あ、本当だ。俺達の名前が無いな」

 

横で一夏が声を上げた。

俺はのほほんさんにそう言われ、自身の手元にある部屋割り一覧を見る。

確かに俺と一夏だけ載っていない。

 

いや、普通に考えれば当然なんだけどね。よからぬことを考える人がいるかもしれないから。

 

「お前たちはこっちだ。ついてこい」

 

と、清洲さんとの会話を終えた織斑先生がやってきた。

 

「のほほんさん、またあとで」

 

「ばいばい、こうやん、おりむー」

 

先生に呼ばれたので俺はのほほんさんに別れを告げ、一夏と共に先生の後を追った。

 

 

「ここだ」

 

「ここですか」

 

織斑先生がドアの前で立ち止まる。

しかしそのドアには『教員室』というプレートがある。

 

「間違えてません?」

 

「いいや、合っている」

 

一夏の疑問を織斑先生はすっぱりと切り捨てる。

 

「お前は私と同室だ。如月は山田先生と。理由は時間外に押し寄せてくる女子生徒対策だ、分かったな?」

 

織斑先生は一夏の疑問に対する答えと共に一覧に名前を載せなかった理由を明かした。

確かにそうだ、と一夏は納得していた。

 

わざわざ分けなくても教員室の隣の部屋に俺達二人一緒でいいのでは?

という疑問が浮かぶがどこぞのゲルマン忍者がこの間、寮のベランダから自室に侵入しようとしたのを思い出したためこの疑問は自己完結させた。

もしかしなくてもラウラである。

ちなみにラウラはハリセンで撃退した。

 

 

 

確か……ラウラの奇行はドイツの部隊の副隊長の入れ知恵だったか?

まぁ、今度からラウラはシャルロットに頼んでなんとかしてもらおう。

 

 

「如月、部屋の準備は出来ているぞ。入らないのか?」

 

「今行きます」

 

いつの間にか部屋の準備が終わったみたいだ。

俺は一夏達の隣の部屋へ入った。

 

 

「すげェ!」

 

部屋へ入って思わず声を上げた。

ドアを開けて部屋へ入ると、二人部屋にしては広かった。

窓からは海が見え、室内風呂やトイレが完備されていた。そして洗面所は完全に個室だ。

ご丁寧に部屋の中央には仕切りがあった。これで山田先生も大丈夫だろう。

 

荷物をどこに置くか迷っていると、入り口のドアが開けられた。

 

「きっ、如月くんっ!?」

 

「あ、山田先生。お先にお邪魔しております」

 

「そ、そうでした。確か同室でしたね」

 

入って来たのは山田先生だった。

俺の姿を見た瞬間に素っ頓狂な声を上げたが、すぐに同室ということを思い出したのか、驚いた拍子にズレたメガネを直すと調子を落ち着ける。

 

「ごめんなさい、迷惑かけちゃいました」

 

「いえ、大丈夫です。邪魔にならないようにするんで臨海学校の間はよろしくお願いします」

 

「はい、こちらこそ」

 

挨拶とともに頭を下げる。

お見合いだとかは言ってはいけない。

 

「えっと、お風呂の件についてお知らせしておきますね。如月くんと織斑くんは一応、大浴場も使えますが時間が限られています。これが使用できる時間帯が書かれたプリントです。その時間外は部屋の方を使って下さいね」

 

「了解です」

 

そう答え、山田先生から大浴場の使用について書かれたプリントを受け取り、それに目を通す。

 

「山田先生。使うスペースは奥と手前、どっちにします?」

 

「如月くんが先に決めていいですよ」

 

「じゃあ奥で」

 

俺は部屋の奥へ荷物を置いた。

山田先生も荷物を床へ下ろした。

 

「今日一日は自由時間です。楽しんできてくださいね」

 

「わかりました。それでは行ってきます」

 

 

荷物から着替えと水着を取り出し、山田先生に見送られながら俺は部屋を出た。

 

 

更衣室がある別館へ向かう途中、爆音のようなものが聞こえたが俺はそれを無視した。

 

 

「……おぉ、鋼夜か」

 

別館の更衣室で着替えていると疲弊した様子の一夏がやってきた。

 

「何かあったのか」

 

「いや、何も……」

 

残念ながら俺には分かる。

大方、束さんに会ったんだろう。

一夏には「そうか」とだけ答え、この間買った海パンを履いてメガネを装着する。

 

「あれ、泳ぐのにメガネかけるのか?」

 

「いや、だってこれISだし」

 

「ああ、そっか」

 

俺自身、これから泳ぐのにメガネをしたままなのは違和感があるが四天を置いておく訳にはいかない。

ちなみに一夏の白式の待機状態は腕輪だ。邪魔にならない点ではいいと思う。

 

しばらくすると一夏も着替え終わったので、二人一緒に更衣室を出る。

 

男子更衣室は別館の一番奥にある。

そして別館は直接浜辺に出られるようになっている。

 

つまり、俺達が浜辺へ向かうにはいくつもの女子更衣室の前を通過しなくてはならない。

 

さすがに中は見えないが、声は聞こえてくる。

 

「ちょっとティナ。それ大胆じゃない?」

「ふふん、これくらいは普通よ」

「この牛みたいな胸も普通だって言うのかしら?あー?」

「ちょっ、リン、どこ触って、やめっ……ひゃぁん!」

 

 

明らかに知り合いであろう人物のやり取りが聞こえてきた。

 

 

「あいつ、何やってんだ……」

 

「今回は一夏に同意するよ」

 

 

俺達は何も聞かなかったことにして浜辺へ向かった。

 

 

 

「いやー、海とか久しぶりだな」

 

「そうか?むしろ海は毎年に一回は行くだろ」

 

準備体操をしながら一夏とそんな会話をする。

 

「海水浴場とか遠くて海に行く機会がなかなか無くてさ」

 

「所詮、俺は田舎者だよ」

 

田舎の夏なんて楽しみは山か川か海くらいしか無いんだよ。

 

 

「織斑くんと如月くんだ!」

 

「うそっ!私の水着、変じゃないよね!?大丈夫だよね!?」

 

「二人ともいい身体してますね~」

 

「帰ったら夏の新刊に取り掛からなきゃ、ヤバイヤバイ」

 

 

周りから様々な視線が突き刺さる。

こう、改めて注目されると恥ずかしい。

 

 

「いっちかー!」

 

「のわっ!」

 

準備体操中の一夏に何者かが飛び付いた。

先ほどハミルトンさんにセクハラを働いていた疑惑のある鈴だった。

 

鈴の水着はオレンジと白のストライプになっているスポーツタイプのやつだった。

 

 

「準備体操終わった?なら一緒に泳ぐわよ」

 

「それはいいけど抱きつくな移動するな肩車になるな!」

 

「いいじゃない、監視塔みたいで。鋼夜、一夏を借りるわよ」

 

「ああ、どうぞ」

 

面倒事が起きる前に俺は一夏を鈴に押し付けて貸し出されているパラソルとシートを取りに向かった。

 

泳ぐのもいいが、まずは楽しもう。

 

 

借りてきたシートとパラソルを設置し、日陰に座り込む。

着替えを終えた女子達が続々と浜辺を駆けている。

 

IS学園の女子のレベルは高い。

下手なアイドルより可愛い人が多い。

そんな女子達の水着姿を眺めずして男と言えようか。

 

いつぞやの実習訓練の時のスク水のようなISスーツも良かったが、今回はそれぞれが自分の個性満載の水着姿だ。

 

既に新聞部の一年には匿名でこの臨海学校での写真を予約している。

玲児や泰河に見せる用だ。

 

そしてこの四天にはハイパーセンサーを流用した超視力がある。

どんな距離だろうと覗き放題。やったぜ。

 

 

「こうや~ん」

 

ふと、聞き慣れた間延びのある声に振り返る。

 

「どうかな?可愛い?」

 

「……いや、可愛いけどさ」

 

振り向いた先に居たのはのほほんさんだった。

彼女はその場でくるりと回り、自分の姿を見せるが……

 

「それ、水着?」

 

「水着です」

 

すっぽりと黄色い布に覆われた身体、耳のついたフード、だぼだぼの袖。

彼女が水着と言い張るものは、どう見ても何かのマスコットの着ぐるみにしか見えなかった。

 

「かんちゃんも出てきなよ~」

 

そう言ってのほほんさんは振り向いて手招きする。

そこには建物の端っこから頭だけを覗かせた簪さんが居た。

簪さんは観念したのか、しぶしぶといった様子で出て来た。

 

「なんで簪さんも着ぐるみなの?」

 

出て来た簪さんはのほほんさんと良く似た茶色の着ぐるみを着ていた。

のほほんさんの着ぐるみが狐ならば、彼女は狸だろう。

 

「は、恥ずかしい……」

 

水着を見せるのが恥ずかしいのだろうが、今の格好も恥ずかしいというジレンマに陥っている一言だった。

 

「ほれほれ~良いではないか良いではないか~」

 

「ちょっと、やめてよ本音……」

 

殿様のようなノリでのほほんさんが簪さんの着ぐるみを引っ張る。

 

いや、下に水着を付けてるから大丈夫なんでしょうけどね、男の前でやるものじゃないよ。

 

 

「こうやんに見せないと、せっかく海に来た意味無くなるよ?」

 

「そ、それはそうだけど……別にそれだけで海に来た訳じゃないし……」

 

 

そして二人で固まり、会議のようなものが始まった。

既に聞いてはいけないものを聞いてしまったのだが……ああ、辛い。

俺はどんな反応をすればいいんだろうか。

 

 

「……分かった、着替える。でも、本音も着替えて」

 

「うん、いいよ~。と、いうわけで着替えてくるから楽しみに待っててね~」

 

「楽しみにしとく」

 

のほほんさんに引っ張られ、簪さん達はは別館へ向かっていった。

一瞬こちらへ振り向いた簪さんの頬は朱に染まっていた。

 

 

 

「ヤバいよ清香、このままじゃ出遅れるよ」

 

「本音が去った今がチャンスよ」

 

「突撃あるのみですわ」

 

「う、うん」

 

 

そして俺の背後、少し離れたところでは相川さん、夜竹さん、谷本さん、四十院さんの四人が会議を開いていた。

会話の内容までは分からないが、気配や雰囲気でだいたい察した。

 

 

「鋼夜ー」

 

「シャルロット……と、ラウラか?」

 

声をかけられ振り向けば、そこにはオレンジのひらひらした水着姿のシャルロットとタオルをぐるぐる巻いてミイラ状態のラウラが居た。

 

「ほら、大丈夫だって」

 

「わ、私が大丈夫ではない……」

 

デジャヴを感じながら、目の前のシャルロットとラウラのやり取りを見守る。

 

「せっかく着替えたんだから見てもらいなよ。おかしなところなんて無かったよ?」

 

「し、しかし……」

 

「えーい、こうなったら剥いちゃえ!」

 

「な、何をッ!?」

 

痺れを切らしたシャルロットはラウラの身体に巻かれたバスタオルを掴むと、一気に引っ張った。

 

そして、水着姿のラウラが目の前に現れた。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい……!」

 

 

レースをふんだんにあしらった、ひらひらした黒の水着。

シャルロット以上にひらひらしているそれは一見すると、あぶないしたぎに見えるかもしれない。

そしていつも下ろしている銀の長髪は左右で結ばれ、ツインテールになっている。

 

「……普通に似合ってるけど」

 

俺は正直な感想を言った。

大人びている格好とラウラ自身の背格好。

普段の堂々としている姿とは違う、恥じらいの表情。

それら全てのギャップが見事に当てはまっている今のラウラは……正直、可愛い。

 

「ほらほら、自信持っていいんだよ」

 

「しゃ、社交辞令などいらん」

 

「お世辞じゃない。正直な感想だ」

 

ラウラは俺の言葉でさらに顔を赤くした。可愛い。

 

 

「ちなみにラウラの髪型は僕がセットしました」

 

「いい仕事をした。シャルロットもその水着、似合ってるぞ。早く一夏に見せに行ってこい」

 

「ありがとう。じゃあ、ちょっと一夏を探して来るね」

 

いえーい、とシャルロットとハイタッチをすれば彼女はそのまま一夏を探しにいった。

 

そして残ったのは赤面したラウラと俺。

 

「水着、自分で選んだのか?」

 

「う、うむ。しかし私はこういうものに疎いからな。部隊の部下に少しアドバイスを貰った」

 

俺が声を掛けるとラウラは慌てた様子で返事をする。

なるほど、あれは部下の趣味か。

いいセンスだ。

 

「だ、だから!今度、何かを買う時は一緒に来てくれないか?よ、嫁が選んだものなら私は……嬉しい」

 

「おうふ」

 

つい、変な声が出た。

150kmど真ん中の剛速球を頂きました。

デートのお誘いに持ってくるとは……恐ろしい子!

 

 

「やべぇよやべぇよ……」

 

「ヤバいですわ」

 

「わわわ、私、どうしよう!?」

 

「まだ慌てるような時間じゃない。私にいい考えがある」

 

今のやり取りに聞き耳後ろの四人組が騒ぎ出した。

 

 

「とりあえず、嫁はやめような」

 

俺はそう答えるしか無かった。

 

 

「如月くん。一緒にビーチバレーでもしない?」

 

「今ならハンドボール部の期待の新星である清香が着いてくるよ!」

 

と、ここで先程から後ろで騒いでいた四人組が声をかけてきた。

ビーチバレーの提案だ。

 

「いいぞ。ラウラもやるか?」

 

「夫婦の共同作業だな」

 

「こっちも大丈夫だってさ」

 

「ボーデヴィッヒさん!ちょっと手伝って!」

 

俺はラウラをスルーし、谷本達の提案を了承。

彼女達はそそくさとコートの設置に取り掛かっていった。

が、ラウラを連れて行った。

 

残ったのは俺と相川さん。

 

「…………」

 

会話が無い。

隣で相川さんがもじもじしているのは分かるのだが、かける言葉が見つからない。

 

ふと、相川さんの姿を見る。

 

白いスポーツタイプの水着。鈴のやつに近い。

露出は少ないが、相川さんのイメージから考えるとかなり似合っているといえる。

 

相川さんといえばそう、健康的なエロスだ。

 

「似合ってるよ」

 

「えっ!?」

 

「ごめん、セクハラだった」

 

つい口に出してしまい、それを聞いた相川さんは顔を赤くしながら慌てる。

 

「だ、大丈夫だよ。むしろありがとう!」

 

しどろもどろになりながら彼女は言う。

俺ももう一度彼女に謝り、この件は終わった。

 

そして俺が視線を外すと、彼女は消え入りそうな声で「えへへ……」と嬉しそうに呟いていた。

 

 

 

「なにしてるんだ?」

 

「お、一夏か」

 

コートの設置を眺めていると、声をかけられた。

声をかけてきたのは鈴をおぶった一夏だった。

 

「溺れたのか」

 

「調子が悪かっただけよ……」

 

「なんかゴメン」

 

何があったかを察したので、からかってみれば鈴が本気で危なそうなトーンの声で返事してきたので素直に謝った。

 

「もう大丈夫だから……ちょっと休んでくるわね」

 

「お大事に」

 

鈴は一夏の背中から降りると、ふらふらとした足取りで別館の方へ戻っていった。

 

 

「出来たよ!ビーチバレーのコートが!」

 

「でかした!」

 

そうこうしている間にコートが完成した。

 

「面白そうだな、俺も参加していいか?」

 

「なら、俺と一夏で別れるか」

 

と、ここで一夏が飛び入り参加を希望。

それを聞いた一部の女子の目が光る。

 

 

「ビーチバレーは二人一組……一夏さん!わたくしとペアになってくださいまし!」

 

「一夏!学年別トーナメントみたいにまたペアになろうよ!」

 

「えっ……少し困るな」

 

どこからともなく現れたセシリアとシャルロットの申し出に一夏は困惑する。

かく言う俺も様々な場所から視線を感じるので……

 

「多人数でやりたいなら、ドッジボールにしようぜ」

 

「いいねぇ、痺れるねぇ」

 

「私達も参加するする!」

 

「水球用に持ってきた手頃なボールがあったよ!」

 

「でかした!」

 

俺がそう提案すればセシリアとシャルロットはしぶしぶながらも納得した。

谷本達には申し訳ないと思っていたがノリノリで水球のボールを持ってきていた辺り、あまり気にしていないと判断する。なので私は謝らない。

 

相手は一夏、セシリア、シャルロット、夜竹さん、谷本。

こちらは俺、相川さん、ラウラ、ハミルトンさん、四十院さん。

 

外野は……他クラスの生徒ばかりで良くわからない。

 

そして何故かナチュラルにハミルトンさんがこちらのチームに加わっている。

 

「頑張ろうね、如月くん!」

 

ハミルトンさんの水着はシンプルな赤いビキニだった。

シンプルゆえに、彼女の魅力であり武器とも言える抜群のプロポーションが惜しげも無く発揮されている。

まさに絵に書いたような外国人の水着のお姉さんだ。

 

「ああ」

 

俺はポーカーフェイスを崩さずに返事をするので精一杯だった。

 

 

このあと滅茶苦茶ドッジボールした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「……疲れた」

 

ドッジボールを終えた俺はパラソルの下に敷いたシートの上に寝転がっていた。

他の生徒や一夏達は昼食のために別館へ向かっていた。

 

 

ドッジボールはあの後、一夏と俺による戦争が始まったり、織斑先生と山田先生が乱入したり、セシリアとぶつかった一夏がそのまま彼女を押し倒すラッキースケベが発生したりと色々大変だった。

 

俺はプレーに集中しながら動き回る女子達をポーカーフェイスで眺めていた。

 

投げるときとか、避けるときとかを見てると……ね?

ばいんばいんでしたよ、特に山田先生。

 

 

「こうやん、おっつかれ~」

 

妙に間延びした声と共に、おでこにひんやりとした感触がした。

上体を起こして振り向けば、そこには冷えたスポーツドリンクを持った水着姿ののほほんさんと簪さんがいた。

 

 

「…………」

 

「こうやん、どうしたの?」

 

「……やっぱり、変?」

 

 

二人の水着姿について解説しよう。

 

まずのほほんさん。

首に引っ掛けるタイプの白いやつを着ている。そのせいで胸が強調されている。

くそっ水着は詳しくないからよく分からん!

 

肝心の胸部装甲。

でかい、説明不要。

 

ISの実習訓練の時から気になっていたが、やはりのほほんさんは、デカかった。

 

 

次に簪さん。

彼女はラウラと同じようなタイプの水着で色も黒と、同じだった。

しかしラウラほど過激ではない。

頭には黒いウサミミのようなアクセサリーを付けている。

 

彼女は顔を赤らめ、恥ずかしそうにもじもじしている。

普段目立たない子が頑張ってオシャレをした感が満載である。

 

しかし、それがかえって彼女の魅力を引き立てている。

 

 

「二人とも、凄い似合ってるよ。俺、死んでもいいかもしれない」

 

「大袈裟だよ~」

 

「あ、あ、ありがとう……」

 

 

その後、赤くなった二人とともに昼食をとるのだが、自分が割とシャレにならない事を言ったのを思い出して落ち込んだ。

 

 

さすがに死にたくは無い。

 





一年経ちました、やったー(まだ三巻)
これからもこの作品をよろしくお願いします

簪が来てるけど別にいいよね!(ラウラと水着が被る痛恨のミスをしながら)

のほほんさんはでかい
相川さんは健康的
ティナは、ぼんきゅっぼーん
ラウラは可愛い
簪はエロい

よし


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宿泊中の第52話

新年あけましておめでとうございます
今年も頑張って更新します


 

「はぁ……」

 

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、時間は夜へ。

 

俺は部屋についている風呂に入っていた。

 

もうすぐ夕食の時間となり、大宴会場では多数の生徒が夕食をとることになる。

 

 

さて、ここでも問題は発生した。

男子の隣を巡る座席争いである。

 

一定間隔で膳が一列に並べられているこの会場で有利な座席は狙う男子を中心とすれば、それの左隣か右隣か正面だろう。

 

何故か旅館のルールで食べる時は正座でないと駄目らしい。

 

正座が苦手な外国からの留学生用に皆でぐるっと卓を囲めるテーブル席はあるものの、俺はそちらへ行く訳にはいかない。

いや、正直そっちへ行きたいが正座が平気な俺があちらへ行くと色々勘付かれる可能性がある。

 

こいつ私達の気持ちを知ってるんじゃね?といった具合に。

 

そうなってしまうとかなり面倒な事になるので、今回はプレッシャーに耐えるのを覚悟で席に着かなければならない。

……ああ、鬱だ。

 

「……上がるか」

 

俺は風呂から上がり、準備されてあった浴衣に着替える。

夕食は浴衣姿で無いと駄目という謎ルールがもう一つある。

本当に謎だ。

 

着替えが終わった俺は重い足取りで部屋から出た。

夕食はクラスごとに座るから、簪さんとハミルトンさんはどう頑張っても一緒になれない。

 

のほほんさんとラウラと相川さんが座席を争うだろう。

 

……いや、ここはむしろ三人で収まって良かったと考えるべきだろう。絶好のポジションは三つなんだから。

 

ははっ、笑えてくる。

 

 

 

 

「奇遇だな、嫁よ。一緒に行かないか」

 

「数分前から部屋の前の廊下で待ち伏せているのを奇遇とは言わない」

 

 

部屋を出た瞬間、ラウラが声をかけてきた。

少し前から気配を察知していたのでスルーしたかったがダメだった。

 

だいたいの生徒は一夏と俺の部屋へ押しかけようとしたらしいが先生方と同室という事実を知れば織斑先生の狙い通り近付くのを辞めた。

 

だが、例外は居たようだ。

確かにラウラならば織斑先生も山田先生も平気だ。

 

 

「ぶっ」

 

「どうした?」

 

 

くるりと振り向けば浴衣姿のラウラが居た。

それはいいのだが、ラウラの格好に問題があった。

 

「浴衣というものは初めて着たが、なかなかいいものだな!」

 

この言葉から分かる通り、ラウラは浴衣が初めてなのだろう。

 

 

今のラウラの格好は……

 

帯を結ぶ位置をミスしており、前のスリットが全開。

そもそもサイズが合っていないのか、肩の部分がはだけている。

たぶん、はいてない。つけてない。

 

結論

見えそう。

 

 

「お客様の中にシャルロット・デュノア様はいらっしゃいませんかぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ど、どうした嫁よ?」

 

いきなり叫ぶ俺を見てラウラが驚くが知らん!

 

どうして一人で浴衣を着せた!こんな姿は誰にも見せられねーよ!犯罪的過ぎるわ!

 

「いいかラウラ、回れ右をして自分の部屋へ帰れ。お前は浴衣の着方を間違えている、シャルロットにセットしてもらえ」

 

「ならば嫁がセットしてくれないか?その方が早いだろう」

 

なんでこんな事を言うんですかねこの子は。

自分の姿がどんなものなのか分かってるの?

俺か一夏じゃなかったら即エロ同人的展開になるよ。

 

ラウラの場合は襲い掛かっても返り討ちに遭いそうだけど。

 

「男物と女物は違うんだ。俺じゃ無理だ」

 

「む……そうか。それなら仕方ないな、急いで戻って着替えるとしよう」

 

即席でそれっぽい理由を作れば効果覿面。

ラウラは信じたようだ。

 

「よし、急いで帰れ」

 

「また後で会おう」

 

そう言うとラウラは去って行った。

ラウラが角を曲がったのを確認した俺は一目散に駆け出した。

 

 

「あ、こうやん。……どうしたの?」

 

「いや……なんでもない」

 

宴会場へと逃げ込むように入れば、浴衣姿ののほほんさんがいた。

のほほんさんは俺の様子を見て何事かと声をかけてくれるがそれを適当に誤魔化す。

 

危ねえ、別の人に見られてたら本格的に死んでた。社会的な意味で。

 

 

「ねえねえこうやん、どこに座る?」

 

「適当にあそこでいいよ」

 

「分かった~」