ポケモンの世界にTS転移したら、ヤンヤンサーナイトにレ〇プされた話 (シャケ@シャム猫亭)
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ポケモンの世界にTS転移したら、ヤンヤンサーナイトにレ〇プされた話

初めてR-18書きました。


 それは久しぶりに部屋の模様替えをしようと本棚を動かした時だった。

 ズズズと本棚を引きずる音の中に、微かにカタリと本棚の裏に何かが落ちる音がした。当然、そんな音がすれば一体何が落ちたのかと俺は本棚の裏を覗き込む。

 

「んー……おお! なつかしー」

 

 壁から離すように動かしたお陰で腕一本が入る隙間が空いていて、そこに落ちていたものを拾い上げる。

 随分と長い間放置されていたのか埃にまみれていたが、ふっと息を吹きかけて埃を払うと透き通るような緑色のカセットが姿を現した。

 

「ポケモンエメラルドじゃん、昔やりこんだなぁ」

 

 その名の通り宝石のような見た目をしたアドバンスのソフトで、いわゆる第三世代と呼ばれている。俺が小学生の頃に発売され、当時はのめり込むようにやったゲームだ。

 掃除とかをしていると無性に他事に手を出したくなるもので、DSにカセットを差し、ゲームを起動させる。もちろんふーふーしてから奥まで差した。

 流れるオープニングムービーに懐かしさを感じ、全部見てから『つづきから』を選択するとポケモンセンターでパソコンの前に立つ男主人公が現れた。

 早速メニューを開いて記憶の呼び起こしを試みる。

 

「ええっと、バッジは8つで殿堂入り済み。所持金は50万ちょっとで、手持ちはサーナイトの『サナ』のみ……」

 

 ああ、そうだ。この子は初代『サナ』だ。

 俺は第三世代以降、サーナイトには『サナ』のニックネームを付けて連れ回してる。何でかって? 一目惚れしたからに決まってるだろ、言わせんな恥ずかしい。

 いやいや、待て待て、引くようなことじゃない。サーナイトがパートナーポケだって人は多いはずだろ。可愛いくて美しくて、何より強い。俺が特別なわけじゃないはずだ。

 

「しかし、100レベか。通信ケーブル持ってなかったから、対戦のためにレベル上げたわけじゃないよな。ただ上げたくて上げたんだっけか?」

 

 ああ、段々思い出してきたぞ。

 そうだ、夜中に親の目を盗んでひたすら四天王参りしてたんだ。布団の中に懐中電灯を持ち込んでさ。

 

「懐かしいなぁ……橋の下のハルカ強かったな……」

 

 何回挑んだんだっけ? 多分、2、3回ではないはず。

 今なら楽に突破できるだろうか。できるだろうな、当時は補助技何それ美味しいの状態だったし、タイプ不一致80がタイプ一致60より強いとか思ってたし。

 

「……やるか、はじめから」

 

 あの頃に戻れはしないけど、あの頃を思い出すことはできる。

 セーブデータを消した俺は、『はじめから』を押した。

 せっかくだから、今回は女の子ではじめよう。そんなことを思いながらオダマキ博士の話を聞いていると、

 

 

 

 とつぜん めのまえ が まっしろ に なった

 

 

 

 

 

 

 

 

 倒れている。

 俺は倒れている。

 どうしてかは分からないが、俺は仰向けに倒れている。

 むせ返るような緑の香り、湿った土の匂い、さわさわと風に揺れる草木の音。

 目を閉じていても分かる。ここは外だと。そして、ここはとても居心地がいいと。

 まるで夢見心地、いやいや、これは夢なのだろう。

 昼寝をするためにあるかのような柔らかさの下草をベッドに、鳥たちの話し声をBGMに。

 ああ、何てのどかな夢だろう…………。

 

 チチチッ、チュンチュンチュン。

 チチチッ、ピジョーッ!

 

「……ピジョー!?」

 

 聞き流せない鳴き声がして、俺は慌てて飛び起きる。きょろきょろと見回して鳴き声の主を探して……見つけた。

 頭上に枝葉を茂らせる木々の隙間から、大型の鳥が上空で羽ばたいているのが見える。その羽を広げた姿は1メートルを超えているだろうか。その力強い羽ばたき、流れる赤いタテガミ、間違いない。

 

「ぴ、ピジョン……」

 

 悠々と空を飛ぶ姿に、何度も目をこすってみるがそれが消えることはなく、試しに頬を抓ってみるも、やけにすべすべして柔らかい肌がむにーんと伸びて痛いだけで、夢から覚める気配はない。

 思考停止したまま、ただただピジョンを追って視界を動かし、何も出来ずに見送った。

 そうしてたっぷり10秒は経っただろうか、ゆっくりと頭が回り始めた。

 

「ポケモン……うん、ポケモンだったな」

 

 あの大人気ゲームに登場するキャラクターの一匹が、足に何か丸いものを掴んだまま飛んでいた。

 CG……ではないだろう。俺の前には画面もスクリーンもない。スチームか何かをスクリーンにする技術があるらしいが、そういった大型設備も痕跡もない。

 

「……つーか、ここどこだ?」

 

 正真正銘、変哲もないただの森。その上空をピジョンが飛んで行った。

 そしてその森の木々をよく見れば、キャタピー、ビードル、トランセルと、様々なポケモンが見当たるではないか。

 

「は、はははっ……なんてこった」

 

 そういう娯楽小説があることは知っているし、俺もたまに読んでいる。だがそれが、まさか自分に降りかかってくるなんて夢にも思わないだろう?

 まあ、妄想を夢と言うなら思いはするかもしれないが。

 

「俺、ポケモンの世界に転生しちまっ……転生?」

 

 待て待て、転生なのか?

 転生ってのは、輪廻転生だから『死んで生まれ変わる』のが条件だ。俺に死んだ記憶はない。というか、さっきまでポケモンをはじめからやろうとしてただろ。

 というか、落ち着け。落ち着いて自分の身体を見ろ。

 手、ちっちゃい。腕、細い。身長、低い。髪、長い。声、高い。服、実にガーリッシュ。

 

「てぃ……TSぅ」

 

 転生じゃなかった、転移じゃなかった。

 近くに転がっていたバックを漁って取り出した手鏡が写したのは、14、5歳ぐらいの、可愛いが綺麗に変わり始めてちょうど混在している、美をつけても全く問題ない少女だった。

 俺の面影は全くない。妹とも全く似ていない。

 

「こいつぁ、憑依か」

 

 よりにもよって、だ。元の人格やら人生やらに影響を及ぼす、一番面倒なパターンを引いたらしい。

 一眠りしたら元の世界に戻ってるとかないだろうか? ないだろうな。

 何とも言葉で説明しにくいのだが、わかる。これが現実で、寝て起きても変わらず森の中というのが、すとんと胸の内に落ちて理解している。

 それでも納得は出来ないものだ。だが、深く考え始めた途端に混沌とした感情が湧き始め、叫びだしたくなる。

 

「ダメだ落ち着け落ち着け………出来ることをやろう、深く考えるな」

 

 そうだ、手鏡を出したバック。あれの中身を確認しよう。

 とにかく何かに手を付けないと、この感情が爆発する。

 

「よ、よし、まずはこの手鏡。これは水筒、これはキズぐすり、これはなんでもなおし……」

 

 バックに入っていたレジャーシートの上に、一つ一つ声に出して確認しながら物を広げていく。全体としては、旅行セットぽい印象ではあるが、食料とかの量的に精々二日分程度だ。

 

「そして最後が……」

 

 腰のベルトに一つだけついていたモンスターボールである。指で摘めるほど小さかったが、アニメで見たように真ん中のスイッチをポチッと押すと一気に膨らみ、野球ボール程の大きさになった。

 中には何が入っているのだろう。一匹しかいないのだから御三家だろうか。

 

「あ、どうやって出すんだ?」

 

 取り敢えず、アニメで見たように真上に放り投げてみると、パアァンっと音と共にモンスターボールが開き、赤い光が地面に照射される。

 その光がポケモンの形を作り、光を出し切ってボールが落ちてくる頃には、俺の目の前には見覚えあるポケモンが立っていた。

 白いワンピースを着込んだような、緑髪の人型。

 

「サーナイト、だよな」

 

 祈るように手を組んで俯いていたサーナイトは、俺の声に反応したのかゆっくりと頭をあげる。そして俺を見た途端、信じられないものを見たかのようにルビーのような瞳を大きく見開き、じわじわとその瞳が潤み始める。

 

「お、おい、どうし──」

(ああ、マスターッ!)

 

 次の瞬間には、俺はサーナイトのたいあたりをくらい、受け止めきれずに押し倒されるような形で地面に倒れた。

 背中を打ち付け痛みに涙が出てくる。だがそれ以上に、

 

(ぐすっ、マスターマスターますたぁぁああ、ぅああ信じられない夢見たいまた会えたどうして私だけみんな居なくなって連れてって、うわあああああぁあぁぁ!!)

 

 今の俺よりも少し背の高いサーナイトが、胸に縋り付いて泣く。大粒の涙が俺の服を濡らすが、俺にはどうすることもできず、ただ黙ってサーナイトが落ち着くのを待つしかなかった。

 

 

 

 あれから10分ほど経ち、ようやくサーナイトが落ち着いてきた。泣き声は鳴りを潜め、今はひっくひっくと時折しゃくり上げるだけになる。

 今なら話が出来るだろう。縋り付いたサーナイトをそのままに、俺は身を起こす。流石はBMI19のモデル体型、それほど重さを感じることなく起きることができた。

 それから話をするため肩に手を置き、サーナイトを身体から離そうとしたが、がっしりと胸元を掴み離れようとしない。どうやらもう少しだけ時間が必要なようだ。

 サーナイトをあやすように背中を軽く叩きながら空を見上げる。木々の隙間から見える空は青く澄んでいて、太陽は中天に輝いていた。

 不意にガサガサと音がした草むらを見ればコラッタが顔を出し、こっちに気づくと慌てて逃げていく。

 

 ホントにポケモンの世界なんだなぁ

 

 今はもう叫びだしたくなるような感情が湧いてこない。サーナイトの涙に大半は吹き飛ばされ、残りは時間かけて自分の中に浸透した。理解に感情が追いつき、ああそうなんだと認められる。

 そうしてまた幾許かの時間が経ち、今度はサーナイトの方から俺の身体を離れ立ち上がった。俺も背中やお尻についた土や枯葉を、パンパンと払い落としつつ立ち上がる。

 

「もう、大丈夫かな?」

(はい……申し訳ありませんでした)

 

 俺の問いかけに、音を介さず直接返事が返ってくる。

 多分、テレパシーによる会話だろう。アニメでミュウツーもそんなことやってた。

 

「ええっと、サーナイト。君は俺のポケモン……で、いいんだよな?」

(? 何言ってるんですか。ラルトスの時に出会い、キルリアとして共に旅をし、サーナイトとして四天王戦を切り抜けたマスターの相棒、サナです。まさか、お忘れですか!?)

「ああ、いや、忘れたというか何というか……」

 

 さて、どうやって説明したものか。俺が別世界から来たと言って、彼女は信じるだろうか。

 いや、ポケモンの世界は時を超えた遭遇や異世界、はたまた平行世界まで確認されているのだ。信じてくれるかもしれない。

 

(それよりもマスター、今まで何してたんです!? あれほど私たちとポケモンバトル漬けの生活をしてたのに、突然私たちを置いてどこかへ行って……しかも数年前に急に帰ってきたと思ったら、私を残して皆を何処かに送って、またそれっきり。私が、どれほど、さび、し……か……ひっく)

「あああ、悪かったって! 泣くな泣かないでくれ。ほら、こうしてまた会えただろ?」

(……ぐすっ、はい、そうですね。こうしてまた会えた、まずはそれを喜ぶべきです。それに、今度はこうして触れることが出来るのですし)

「ああ、そうだろ? こうして触れ──」

 

 自分で言って、その違和感に気が付いた。

 

「なあ、サーナイト」

(サナとお呼び下さい)

「あ、うん。えっと、サナ。今度はこうして触れられるって、どういう意味だ?」

(どういう意味も何も、そのままの意味です。魂のない人形のようなモノを介せず、こうして直接会えた。いえ、モノにマスターの魂が宿ったと言った方が正しいでしょうか。モノは前と違っていますが、私にはマスターだと分かります)

「ちょ、ちょっと待て! つまりは、サナは俺がゲームの向こう側、プレイヤー、別の世界の人間だってことを知っているのか!?」

(いいえ、そこまで詳しくは。ただ、ここにはいないことだけはわかってました)

「……わかった、順を追って話そう」

 

 話は長くなる。レジャーシートに広げた道具をバッグに仕舞い、サーナイトと腰を下ろした。

 

 

 

「……というわけでホントに突然、この世界に迷い込んだってわけ」

(そうですか、そんなことが……)

 

 俺の身の上を話し終えるのに一時間くらいはかかっただろうか。ポケギアとか、そういう時間が分かる道具が無いので感覚でしかないが、日の位置は中天から少し傾いている。

 

「しかも、TSしちゃってるしなぁ」

(女の子になってしまいましたね。でも、話を聞いて安心しました。やはりマスターは身体が違っても世界を跨いでも、私のマスターなんだと)

「そう、なのか?」

(そうです。マスターが語った旅の思い出は、全部思い当たる事がありました)

 

 それに、と言葉を切ったサーナイトは目を閉じると、俺の胸に手をかざした。

 途端に俺の胸に何か暖かいものが流れ込み、サーナイトと俺との間に(パス)が繋がったような感覚がする。

 

(間違いなく、マスターはマスターです。こうしてシンクロすることができるのですから)

 

 そう言ってサーナイトは微笑んだ。

 初めて見るその笑み、その美しさにどきりっと胸がなる。

 

「あ、あー、その、何だ、サナの話も聞かせてくれないか?」

(私のですか?)

「ああ。この世界の俺が、サナたちとどんな冒険をしたのか聞かせて欲しい」

 

 きっとそれは、どきどきわくわくの冒険だったのだろうから。

 

(わかりました。私と出会う前のことはあまり知りませんが、出会った後ならいくらでも語れます)

 

 そしてそれは、正しくどきどきわくわくの冒険だった。

 確かに大筋はエメラルドのストーリーに沿っているものの、ゲームでは無かったバトルやハプニング、日常がたくさんあった。たった数十時間のプレイがこっちでは数年のことなのだ。あんな何気ないシーンが、たまたまキズぐすりを忘れて買いに戻った数十秒のことが、こっちでは笑い話や涙した思い出になる。

 何で俺がそこに居なかったのかをちょっぴり悔やむほどだ。

 サーナイトが楽しそうに話す思い出を、俺は身を乗り出して聞く。楽しいと人は時間を忘れるもので、気づいた時には空が緋色に染まり始めていた。 

 

「やっば、もう夕方じゃん!」

 

 このままでは野宿になってしまう。

 

(野宿など、何度もしたではないですか)

「いやこっちの俺はそうだろうけど、今の俺はそうじゃないから」

 

 キャンプですら数える程しかしたことがない。そんな俺に野宿は少々ハードルが高い。

 

「取り敢えず、町に行かないと。サナ、町まで案内頼める?」

(お任せを……と言いたいところですが、申し訳ありません。ここは何処なのでしょう?)

「え、マジ?」

(はい、見覚えない森ですね。ホウエンでは見ないポケモンもいますし)

 

 そう言ってサーナイトが指差す先にはビードルが一匹、木をよじ登っていた。

 確か、ビードルはホウエン地方に出ない。見覚えがないのも納得だ。

 

「……もしかして、遭難?」

(ソーナン……コホンっ、何でもありません。それより、それほど悲観することではありませんよ、マスター。私たちが知らないなら聞けば良いのですから)

「聞くって、誰に?」

(そこにいるポケモン……はあまり行動範囲が広くなさそうなので、そうですね……」

 

 ふと、サーナイトが頭上を見上げ、俺もそれにならって空を見る。

 一匹のオニスズメが上空を通り過ぎようとしていた。

 

(ふっ!)

 

 サーナイトが小さく息を吐く音が聞こえたかと思うと、途端にオニスズメの動きが止まった。いや、正しくは、羽ばたいているのに前に進まなくなった。そしてそのまま、俺たちのところまで引き寄せられる。

 突然のことにオニスズメは驚き、激しく暴れるが、抵抗も虚しく俺たちの前でふわふわと浮かぶこととなった。

 

「……サイコキネシス?」

(はい、こういう時に便利です。さて、少々教えていただきたいことが──)

「ギャー、ギャー!!」

(ええ、すみません、乱暴になったのは謝ります。ですが私たちも困ってまして)

「ア゛ーギャー!」

(そう仰らずに、教えて欲しいことがあるだけですから)

「ガガガ、ギャー!!」

(いえ、ですから)

「ギャー、フッ」

(今のは聞き捨てなりませんね。この辺で燻ってるだけのオニスズメに、ポケモンマスターとなられたマスターをそんな風に言う資格などありません。このまま首を捻じ切っ──)

「す、ストップストップ!! ダメだって、サナ!」

 

 オニスズメが何を言ったのかはわからないが、明らかにサーナイトの空気が変わったのをみて、慌てて止めに入る。

 今夜の夕食はオニスズメです、なんて勘弁して欲しい。一部のポケモンが食用にされていることを知っていても、いきなり現実を突きつけられたくはない。

 俺が止めに入ったおかげか、サーナイトのサイコキネシスから逃れたオニスズメだったが、逃げることなくフラフラと地面へ落ちる。レベルの差を直に味わったせいか腰が抜けたようで、空へと飛び立てず地面でもがいていた。

 見ていてあまりにも気の毒だったので、せめて落ち着くまで抱き抱えてやる。

 

「ごめんな、オニスズメ。でも、俺たちホントに困ってるんだ。何を言ったか知らないけど俺は許すからさ、侘びのつもりで教えてくれないか?」

「…………ギャー」

(聞くだけ聞いてやる? 貴方はまだ自分の立場が分かっていないようで──)

「サナ!」

(うっ……すみませんでした)

 

 またも、熱くなりかけたサーナイトを見て、今度はすぐに諌める。少し強めに止めたせいか、サーナイトはしゅんとしてしまったが、今は置いておいてオニスズメに町の事を聞く。

 

(……ここから南の方に町があるそうです)

「距離はどれくらい?」

「カー、アー」

(ざっと五キロだそうです)

「そっか、教えてくれてありがとう」

 

 お礼に数度撫でて羽を整えてから、オニスズメを放した。もう腰が抜けたのは治ったようで、すぐに羽ばたいて空へと消えていく。若干、逃げるようだったのは目をつぶる事にした。

 

「それじゃ急ごうか、五キロといっても森の中を進むんだから」

 

 整備された道を行くわけではないので、どうしてもペースが遅くなる。急がないと日のあるうちに森を抜けられないかもしれない。

 だが、俺の言葉に反して、サーナイトは動かない。

 

(……ずるいです)

「は?」

(確かに私も悪かったです。ですが、オニスズメを捕らえて通訳したのは私なんですから、私にも何かあってもよいのではないですか)

「何かって、何さ?」

(ですからその……撫でていただける、とか………)

 

 自分で言ってて恥ずかしくなったのか、段々とサーナイトの声は小さくなり、終いには真っ赤になりながら俯いて黙ってしまった。

 サーナイトの身長は160センチ、一方俺は推定150センチ。普段は俺の目線より高い位置にある頭が、今は同じか下にある。

 だから、つい、その頭にぽんっと手を置いてしまう。

 

「ありがとな、サナがいてくれて助かったよ」

(~~~っっっ!!)

 

 これで良かったのだろうか。良いのだろうな。

 サーナイトの顔を見れば分かる。

 

「さ、もう行くぞ」

(はい、マスター!!)

 

 サーナイトが俺の三歩後ろに控えたところで、俺は今、ポケモン世界への第一歩を踏み出した。

 

(あの、マスター。私、こうしてまたマスターと冒険できたら、やりたいことがいっぱいあったんです)

 

 ボールに閉じ込められ、長い長い間、ずっとずっと夢見てた。マスターが迎えに来たら何しようか、ずっとずっと考えていた。

 

(でも、今はこうして一緒に歩くだけで、幸せです)

「……そっか」

 

 目先の事ばかり考えていた。けど、そうだ。ここはポケモンの世界なんだ、ちょっと考えればやりたいことの一つや二つ、いいや数え切れないほどあるじゃないか。

 

「なあ、サナ。旅をしないか?」

(え……?)

「ああ、行きたい所がいっぱいあるんだ」

 

 カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ。

 外伝含めたら、もっともっとある。この目で見たいものが、いっぱいいっぱいある。

 

「それでさ、ジムを回って、リーグ制覇して。もう一度、今度は俺が、ポケモンマスターになりたいんだ」

(……ほ、ホント、ですか?)

「ああ。その旅に相棒として付いて来てくれないか? もちろん、お前さえ良ければだけど」 

(嫌なわけありません!)

「そっか。改めて、よろしくな」

(はいっ!!)

 

 俺の差し出した手を、サーナイトは両手でぎゅっと握りしめた。

 それから俺たちは、町に向かって歩き始めた。旅は何処に行こうか何てことを話しながら。

 

「カントーはおつきみ山でピッピの踊りを見たいな。ジョウトはスズのとうに登ってみたい」

(観光ですか、楽しみです)

「ホウエンはサナと旅した道を、もう一度回りたい。今度はこの目で見たい」

(それならミシロタウンからですね。案内はお任せ下さい)

 

 わくわくしてた。ドキドキしてた。

 きっとこれから楽しい冒険が待ってるって、そう確信してた。

 

「シンオウは最強と名高いシロナとバトルしてみたい。あ、そうだ、てんかいのふえを探すのもいいな」

(てんかいのふえ、ですか?)

「うん、俺たちの世界じゃ未実装の道具でね。それを持ってやりのはしらに行くとアルセウスに会えるらしいんだ」

(あ、アルセウスに!?)

「未実装だからホントにあるかわからないけど、それを探すのも面白そうだろ?」

 

 だから、

 

「それにアルセウスなら、俺を元の世界に戻せるかもしれないし」

(…………え?)

 

 たった一言で、全てが変わるなんて、思ってなかった。

 

「ああでもどうだろ、アルセウスより空間を操るパルキアかな。あるいはアローラでウルトラホールに突っ込んだ方が確率高いか?」

(……マスター、帰られるのですか?)

「そりゃまあ、向こうには家族や友人がいるし、心配してるだろうからさ。一回は帰らないと」

 

 もしかしたら、向こうで俺は死んでしまっていて、とっくに葬儀が終わってるかもしれない。俺が戻ることで不都合があるかもしれない。

 それでも帰りたいと思う。

 だって、お別れも言えてないから。

 

(マスターには向こうに大切な人がいて……だから帰るんですね)

「大切な人……まあそうだな」

(だったら────)

 

 

 

(もっと大切な人がいれば、帰らないですよね?)

 

 

 

「は? そりゃどういう意味──」

 

 俺は振り返りながら、訝しげに問いかける。だがその言葉を全て言い切ることは出来なかった。

 

「んんんっっっ!?」

 

 サーナイトの顔が間近にあり、俺の口が塞がれる。あまりに突然のことで、頭が真っ白になった。

 唇に落ちるカスタードのように甘くて柔らかな蕩ける感触に、ようやく自分がキスされていることに気づく。

 慌てて離れようとするが、サーナイトが俺の頭を両手で抑えており、下がることができない。サーナイトを思い切り突き飛ばすようにして、ようやく離れることができた。

 

「ぷはぁっ、い、いいいきなり何してんだ!?」

(何って、キスです。知らないのですか?)

「知ってるよ! そうじゃなくて、何で突然キスしたのかって聞いてるの!?」

(マスターが好きだからです。それと──)

 

 

(マスターが逃げられないように、ですね)

 

 

 突然、膝がかくんと落ちて俺は尻もちをついた。

 

「あ、あれ?」

 

 立ち上がろうとしても脚に力が入らない。いや、脚だけじゃない。全身の力が抜けている。地面に手をついて半身を支えている腕も震えており、気を抜いたら倒れ込んでしまいそうだ。

 

「ま、まさか、さっきのキス……」

(はい、ドレインキッスです。流石はマスター、私のことは何でも知ってるんですね)

 

 突き飛ばしたことで離れた距離を、サーナイトは一歩ずつ優雅に詰め寄る。本能が警鐘を鳴らし、後ずさりして離れようとするが、そんなのはたった1秒か2秒、サーナイトが傍に来るのを遅らせるだけだった。

 

「や、やめ──んんっっ!!」

 

 またもサーナイトに唇を奪われる。今度は先程とは違い、暴力的に甘く深海のように深く、頭の天辺から爪先まで電流が走る。もがいたところで決して抜け出せない、奈落のようなキスだった。

 

(ん、んむっ……)

 

 サーナイトの舌がずるりと唇を破り口内に侵入してくる。だがそれ以上の侵入は許さないと俺は歯を食いしばる。閉じられた門を数度舌でノックするも、開かぬことを理解したサーナイトは一度舌を引き戻す。

 息継ぎしたいが、頭はサーナイトの手で固定され、口は塞がれたまま。サーナイトもその隙を狙っているのか、舌がちろちろと唇の周りを様子を窺うように這っている。

 だが幸いにも、鼻は塞がれていない。荒く短い呼吸を繰り返して酸素を取り込む。

 

「ふー、ふー…………んんっ!?」

 

 再度、侵攻が始まった。だが今度は舌だけではなかった。

 ただでさえダルい身体からさらに力が抜けていく。いいや違う、唇を介して吸われている。

 ドレインキッスだ。

 

(ああ、なんて甘美、甘美! どんなきのみよりも、どんなポロックよりもッ!!)

「ん~~~っ!! んむっ………ん……」

 

 ピチャピチャと淫靡な音が脳に響く。何度も何度もサーナイトの舌が歯に攻撃を仕掛け、その度に歯を食いしばり侵入を拒む。

 だが、どんどんと体力と思考が奪われるなか、ついには呼吸の一瞬の隙を突き、歯の隙間に舌をねじ込まれてしまった。

 

(ああ、やっと……いただきます)

 

 そこからはあっという間だった。一気に奥まで侵入すると舌は歓喜に震え、口内の蹂躙を始める。

 俺の舌に絡みつき、歯の裏を這い回り、唾液を絡め取って回収したかと思えば、今度はサーナイトの唾液をたっぷりと送り込み、ありとあらゆるところに塗りたくった。

 あまりに濃密なそれは、俺の思考をどろどろと溶かしていく。抵抗する力を奪われた俺は、されるがままになるしかなかった。

 真っ先に時間の感覚がなくなり、最早何秒何分何時間キスされているかわからなくなる。

 永遠に続くのではないかと思われた蹂躙。だがそれは名残惜しげに舌が這い回りながらも終わり、ゆっくりとサーナイトの顔が離れる。

 恍惚としたサーナイトの唇は艶めかしく光り、俺との間に透明な橋をかけていた。

 

「はーっ、はーっ……けほっ」

(ふふ、どうでしたかマスター、私とのキスの味は?)

「………んで」

(はい?)

「なん、で、こんな……こと………」

 

 俺の頭を抑えていた腕が外され、支えを失った俺の身体はどさりと地面に横たわった。

 もはや全身に力が入らないなかでも気力で首を動かし、サーナイトを見上げる。

 

(どうして、どうしてって、マスターはそればっかりですね。私がマスターを好きだからじゃ納得できないんですか?)

 

 先程まで恍惚としていたサーナイトの顔から表情が消え、声も歓喜の色を失い暗く沈んでいた。

 サーナイトは倒れた俺へ覆いかぶさるように四つん這いになると、俺の胸元からへその当たりまで、すっと手で撫でる。するとまるでカッターを当てられたかのように、俺のシャツと肌着が綺麗な断面を晒して切り別れ、健康な色をした肌に年相応に膨らんだ胸と、小さな桜色の突起が露わになった。

 それを静かに見つめたサーナイトは、俺の胸を覆うようにして触れ、人差し指と親指で突起をきゅっと摘んだ。

 

「ひぅっ!!」

 

 摘まれた瞬間、あまりに強くて甘い痛みに口から高い悲鳴が漏れ、びくんと身体が跳ね上がる。

 

「あっ──んん…………っ」

 

 サーナイトは無表情のまま、ぐにぐにと胸を揉みしだく。強く、弱く、速く、遅く。変化が起きる度に何かが俺の中に積み上げられ、まるで風船のようにゆっくりと膨らんでいく。

 

(マスターは感じやすいんですね。女の子になったばっかりで、初めてなのに)

「かん……じてなん、か……くっ!」

(無理は良くないですよマスター)

 

 虚勢を張ったところで意味はなく、身体が高まっていくことに只々困惑を覚える。

 しらない知らないシラナイ。指を沈ませ、円を描くように回し、寄せてあるいは離して、マッサージとは根本的に違うこの感覚を、俺は知らない。

 

(ほら、こんなにも乳首がコリコリになってますよ)

「それ、は、お前に抓られたせいで腫れ────いいいっ!!」

 

 突然、サーナイトが乳首を抓み、思いっきり引っ張り上げた。あまりの痛みに腰が浮き、少しでも痛みを減らそうと身体が弓なりに反り上がる。

 

(私の名前はサナです。お前じゃありませんよ?)

「痛いいたいイタイっ! わかった、わかったからっ!!」

 

 俺の懇願を聞いてくれたのかあるいは満足したのか、サーナイトは指を離し、俺は痛みから解放された。

 

「はーっ、はーっ、はーっ……」

 

 胸はジンジンと痛み、目が涙で滲む。そんな中、サーナイトが俺の頭を両手で掴んだ。

 またもドレインキッスかと身構えたが、違った。

 

(マスター、私を『見て』下さい。そう、目を逸らさずに)

「なに……を……」

 

 サーナイトの紅い瞳が怪しく光る。頭にモヤがかかり始め、マズイと思った時にはもう遅かった。

 すでに十分に効いており、サーナイトが俺から離れて命令する。

 

(さあマスター、『スカートをたくし上げて』下さい)

 

 力が抜けてだらりと地面に付いていた手が独りでに持ち上がり、スカートの裾を掴むとそのまま引き上げ始める。

 

「待って、なんで……やだ……」

 

 嫌だ、だめ、止まれといくら思っても、それに反して手は動き続け、ついには白いショーツが露わになった。

 

(さいみんじゅつとあやしいひかりの複合です。マスターが育ててくれたお陰で、こんなことも出来るようになったんですよ?)

 

 先ほどの無表情と違い、サーナイトは暗い笑みを顔に貼り付かせていた。ルビーのように綺麗だった瞳は、汚泥のようにどろりと濁っている。

 白くたおやかな手が俺のショーツに触れ、その膨らみをなで上げた。

 

「ひっ……んっ………あっ」

 

 触れただけなのに、ぞくぞくとした快楽が脊髄を通り脳へと届く。

 その快楽から逃れようと懸命に身体を動かすも、力が抜けた身体では精々腰しか動かず。見ようによってはふりふりと、まるで誘っているかのように動くだけだった。

 

(ふふっ、初めての感覚に戸惑うマスター……可愛いです)

 

 サーナイトがショーツを撫で上げる度にシュッシュッと布が擦れる音が鳴る。数度往復したことで形を把握したのか、今度は割れ目をなぞるように擦り始めた。

 

「や……ダメ、だって……」

(安心してくださいマスター、私とマスターはシンクロで繋がっています。マスターが気持ちいいということ、私にはちゃんと分かってますから)

 

 それにと、ひと呼吸置いてサーナイトは手を止めると、ゆっくりと肌とショーツの隙間に手を潜らせた。

 人よりも体温が低いサーナイトの手はヒヤリと冷たく、けれど生き物の暖かさが確かにある。まるで蛇のような手は止まることなく進み、秘部をひと撫でして出てくると、それを俺にまざまざと見せつけた。

 

(例えシンクロが無くたって、マスターの身体は正直ですから)

 

 白い指は透明な液体で濡れ、2本の指が開いたり閉じたりする度にニチャニチャと音を立てる。白く泡立ちながら、指の間に細い橋が何本も掛かっていた。

 あまりの恥ずかしさに正視することができず、顔を背け目を閉じる。

 

(ああ、羞恥に震えるマスターっ! もっと、もっといろんな顔を見せて下さい!)

 

 またも愛撫が始まる。だが今度はショーツの上からではなく、直接恥丘へと侵攻してきた。

 

「っっっ!!」

 

 サーナイトの細い指が一本、ズブズブと割れ目をかき分け入ってくる。感じたことのない異物感に思わず股を閉じ、サーナイトの腕を退かそうと咄嗟に腕を掴む。

 

(あら、手が動いて……でもまあ、意味ないですけど)

 

 サーナイトの指は止まらず、入っては抜け入っては抜けを繰り返す。

 

「あ、あっ──ひっ、く……っ!」

(狭いし、ぎゅっぎゅって締め付けて。やっぱり未経験なんですね)

「あっ……るっさい……んっ…いいから、やめ──」

(こんなに狭いと心配ですね……もっと(ほぐ)しましょう)

 

 その言葉とともにサーナイトが愛撫のペースが上がる。

 

「ひゃあああっ! だめ、だめだめダメだめダメっ!!」

 

 まずいマズいまずい!

 どんどん身体が高まっていくのが分かる。クチュクチュとした湿った音は、早くもグチュグチュとした水音に変わり、下腹部が熱を帯びていく。

 何かがクる(・・・・・)。それが来た途端、自分の中の絶対的な何かが変わってしまう。

 頼む止んでくれと願いながら歯を食いしばり、それがクるのを堪える。

 だがそれは、あっさりと崩壊した。

 

(えいっ)

「あっ────」

 

 グチョグチョになった秘部を攻める最中、サーナイトが突如人差し指と親指で陰核をキュッと摘む。

 完全に不意打ちだった。

 

「ああああああぁぁあっぁっ! っっっ!!」

 

 プシャァ、プシュゥ!

 

 頭の中で何かが弾け、目の前が真っ白になった。身体の制御がきかず、びくん、びくんと痙攣を起こす。

 

(イキましたね。どうですか、女の子として初めてのオルガスムスは?)

「あ……うぅ………あぁ…………」

(聞こえてませんね。それにしても派手にイッたものです)

 

 ショーツはぐっしょりと濡れ、それだけでなく尻を付けた地面には透明な水溜まりが出来ている。

 当然、至近距離で潮吹きを受けたサーナイトの手もびしゃびしゃに濡れており、ショーツから引き抜けば愛液と混ざり合ったメスの匂いが立ち上った。

 サーナイトは液で濡れた指を一本一本丁寧になぶる。

 

(ああ、これはいけません。(たぎ)ってしまいます、匂いだけで達してしまいます)

 

 雫一滴たりとも逃すまいと丁寧に、舌で絡め取った液は味わい尽くすようピチャピチャとテイスティングを繰り返す。

 俺が意識を取り戻し、けれど身体は小さく痙攣を繰り返していた頃には、指はすっかり舐め尽くされ、今度はサーナイトの唾液でテラテラと光っていた。

 

(ようやく戻ってきたのですね、マスター。それじゃあ、そろそろ本番と行きましょう)

 

 もう私、がまん出来そうにありません。

 そう言葉を続け、サーナイトは俺のショーツをするりと脱がした。べちゃりと音を立ててショーツが地面に落ちる。

 最早、秘部を守るものは何もなく、つるりとした玉のような肌が外気に晒された。ぐしょぐしょに濡れているせいか、かすかな風さえも感じてしまう。

 

「はーっ、はーっ……サナ、もうやめて、くれ……」

(嫌です……マスターが悪いんですよ)

「なに、を──」

(マスターが帰るなんて言うからっ! もう二度と、私は、マスターと離れたくないのに……)

 

 向こうの世界に家族が、友人が、大切な人が居るから帰ってしまう。

 向こうの世界に思い出が、未練があるから帰ってしまう。

 

(なら、私がマスターの一番になれば……)

 

 マスターと私の間に子供ができて、一番になれば。

 

(マスターは帰らない。そうですよね?)

「サナ……お前……」

(だからマスター、私に全てを委ねてください。『シンクロ』のお陰で、どうして欲しいのか全てわかりますから)

 

 最高の思い出を作れるから。

 そうしたら、きっと、マスターはこの世界に残ってくれるのでしょう?

 

「そん、な、ことしても俺は……大体、俺は人間、サナはポケモン。種族が違うのに子供なんて出来るはずが──」

(私はっ! 私たち(ポケモン)は種族が違っても子供が出来ますっ!! きっとマスターとも出来るはずですっ!)

「いいや、できない!」

 

 万が一、億が一ヒトとポケモンで子供ができるとしても、俺とサーナイトの間に子供は出来ない。

 なぜなら、

 

「今の俺は、女だ。種族が違っても子供ができるポケモンでも、メス同士で子供が生まれることは絶対無いんだよ!」

 

 サーナイトの動きがぴしりと止まる。

 そのまま2秒、3秒と時間が流れ、かくりとサーナイトがうな垂れた。両手で顔を隠し、肩を震わせる。

 キツく言いすぎただろうか。いいや、これで良かったのだ。あれだけはっきりと強く言わなければ、きっとサーナイトは止まらなかった。

 そう……だから、これでよかっ────どうして、笑っている。

 

(あはっ、あはははははははっ!! そうですかそうですか、マスターはそんなことも忘れてしまったんですね。それほど向こうの世界が楽しいのですねっ!?)

 

 サーナイトは涙を流しながら、にっこりと笑って、言った。

 

 

 

(マスター、サナは(オス)ですよ?)

 

 

 

 はらりと白いスカートをめくった先。雄々しき証が先端からヨダレを垂らし、天へとそびえ立っていた。

 

 

 

「ひいっ!? な、な、なっ」

(問題解決ですね。さあ、続きと行きましょう)

 

 サーナイトは俺の太ももを掴むと、ぐいっと股を広げ、自身の腰を近づける。

 

「ま、まてマテ待て! む、無理無理無理そんなの入らないから!?」

 

 股下からへそまでを簡単に超えるイチモツ。そんなもの入るわけがない。

 

(大丈夫です、()れますから)

 

 いいや、器が小さかろうと関係ない。挿れる、ただそれだけだ。

 サーナイトのモノが、入口を探して割れ目を上下に擦る。

 

「頼むサナ、考え直してくれ!」

 

 何とか思い留まらせようと、必死に懇願する。

 嫌だ嫌だと首を振り、目の端には涙が浮かんでいたかもしれない。

 

(マスター…………すみません)

「サナっ! わかってk──」

 

 

(それ、逆効果です)

 

 

 ずんっ

 

 

「こふっ……」

 

 

 ぐるりと、世界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……タ………マス……、マスター起きてください)

 

 誰かが呼んでいる。

 誰だったか。

 親じゃない、妹でもない、友人じゃない、同僚じゃない。

 身体を揺さぶられ、目を開ける。ぼんやりと写ったのは、緑の髪をした綺麗な……

 

「サー……ナイト」

(サナ、ですよ?)

 

 そう、サナ、サナだ。

 

「っ!!」

 

 カチリとスイッチが切り替わるように意識が一気に覚醒した。同時に、下腹部を激しい異物感が襲う。

 恐る恐る見れば、サーナイトの腰が俺の秘部と密着していた。

 

「あ……あ………あ……っ」

(おはようございますマスター、挿れた途端に意識が飛ぶなんて、そんなに気持ち良かったですか?)

 

 じんじんと痛い、熱い。

 あの逸物が、全て俺の中に。

 腹が膨れて、くっきりと形が。

 

(マスター、そろそろ動きますよ)

「───っ!!」

 

 返答する間もなくサーナイトがゆっくり腰を引き、ズルリとペニスが中程まで抜かれた。たったそれだけのことなのに、脳がちかちかし、腰はびくびくと痙攣を始める。

 そして同時に理解した。あとちょっとでも切っ掛けがあれば、飛んでしまう(・・・・・・)と。

 

「やめ──」

 

 パチュン!

 

「あっ、あああああああああああああああああああああっっっ!!」

 

 手で飛ばされた時の何倍もの衝撃が脳を襲い、あっという間に蹂躙した。

 身体は弓なりに跳ね上がり、地面でバウンドを繰り返す。

 

(たった一突きで果てるなんて。マスターは才能ありますね)

 

 そんな俺のことをサーナイトは満足そうに見つめ、快楽の波が引くのを待つ。

 

(でも、ダメですよマスター。イクときはイクって(おっしゃ)らなくては)

「はっ、はーっ………けほっ……なん、だって?」

(次からは、ちゃんと仰って下さいね)

 

 じゃないと────

 

(加減、しませんから)

 

 ずるるる、パチュン!

 

「っっっ!!」

 

 パチュン、パチュン、グチュッパチュン

 

「あああっ! ふあッ! んっ! やっ! ああっ!」

(どう、ですかっ、気持ちいい、ですかっ?)

 

 パンッ、パンッ、パチュン、パンッ

 

「んあああッ! ダメッ! やめッ……さなぁ! あ、あっ! あ~ッ!!」

(私は、気持ちいいッ、ですよっ! マスターの膣内(なか)、温かくて、柔らかくてっ!)

「ひゃううッ! ダメッだめっ!! サナのが、はんッ! サナのがあああッ!!」  

 

 ずちゅっ、ずチュッ、どチュっじゅぼッ

 

「ヤメッ!! お、なかっ……苦しッ! うぁ!」

(でもその割に、マスターの膣内(なか)は離そうとしてませんよ)

「んんっ! おッ……ぁ、あああッ!! くぁ、あ……あああッ!!」

 

 制止などまるで聞かず、サーナイトは突く。突く突く突くつくツク突く。

 

(ああ、イイッ! イイですよマスターッ!!)

「よくないッ! 良くないからっ! だから──だからッ!!」

(いいえ止めませんッ……このまま、このままッ!」

「えっ……ウソだろッ、なかで大きくッ……!? だ、ダメッ! だめだめだめだめダメだめ──ッ!!」

(出しますッ、だしますよッ……マスターッ!!!)

「ダメっ……やめッ──ッ!!」

 

 ビュッ

 

「あッ…………」

 

あああああああ(ビュルルルルルル)アアアアアアぁ(ルルルルルルルル)ぁあああぁああ(ルルルルルルル)ッッッ(ッッッ)!!!!」

 

 熱い熱いあついアツイッ!!

 注ぎ込まれる、出される、膨らんでいく。

 どくんと脈動する度に勢いよく雄汁がお腹に叩きつけられる。器はあっさりと満杯になり、それでもなお射精は止まらず、入りきらなかったものが結合部の僅かな隙間から染み漏れていく。

 身体の痙攣が止まらず、まるで壊れたオモチャのように跳ね回る。

 

(っっっ!! はーっ、はーっ、はーっ…………ふうっ……どうですか、マスター?)

「……あ…………ぅあ…………ああ………」

(また意識が飛んでしまいましたか。イクときは宣言するようにと言いましたのに…………まあ、シンクロの必要がないくらい身体が正直なのでわかりますが)

 

 よいしょっと。

 そんな掛け声と共に、ズルリと男根が引き抜かれる。

 

 ゴポッ、ゴポゴポ……

 

 途端に勢いよく精液が膣道を逆流し、ポッカリと開いた秘部からドプドプと溢れ出した。

 菊座を覆い、臀部を伝い、白濁した塊が地面に落ちて山となっていく。

 

(うわぁ……(われ)ながら、随分と出ましたね)

 

 だが、これで終わりではない。こんなもので、満足できない。

 未だサーナイトの逸物は力強く反り返っている。

 サーナイトは放心しているマスターをうつ伏せにすると、自身は膝立ちになりながら、その腰を掴んで持ち上げる。

 上半身はだらりと投げ出されて臀部だけ持ち上がるなか、サーナイトは逸物で秘部にキスをして、

 

(さあ、二回戦の開始ですよ)

 

 再びヴァギナを貫いた。

 

「おごぉ……ッ!!」

 

 先に膣道を占領していた精液は、逸物の挿入で外にはじき出され、ボトリッボトリと地面に落ちる。

 

「何、がッ!? ごふッ……おっ、おっ! あ゛あ゛あ゛ッ!!」

(気持ちいい気持ちいい、イイッ満たされるッ!! そうでしょう、そうでしょうッマスターッ!?)

「ひいいいいぃぃッ!! やだっやだッ!! お願い……だからッ!!」

(あああああッ、わかります分かりますッ! 私にも分かります分かるんですッ!! ココがイイのですねキモチイイのですねッ!!)

「ふわぁあぁあッ!! ダメッダメッ、そこだめえええええええええッ!!」

(ああ締まる締まるッ! ここが弱点ですねっ!? こうかばつぐんですねッ!!)

「ひゃああああああああああああっっっ!!」

 

 ぷしゃっ、ぷしゃっ、プシャアァッ!

 

(潮まで吹いて喜んでッ! もっと、もっともっともっともっともっと気持ちよくしてあげますッ!! 気持ちよくさせてあげますッ!! 私なら出来ますッ!!!)

「お゛え゛ッ! ……お゛ッ、お゛ッお゛っ!! ああああぁぁぁっ────ッッ!!」

 

 息が、出来ない。

 絶え間なく襲いかかる快楽の荒波は方向感覚を奪い、どちらが上か下か右か左か、顔を出すべき水面を見失う。

 

(できるできるできる出来るんですッ! 私ならマスターなら私たちならッ!! そうすればマスターは帰らないからッ!! ずっと一緒にいられるからッ!!!)

「あ゛~ッ! あ~ッ! あああ゛~ッ!! おぁッ……おおおおおおッ!!」

(いやだいやだ嫌だいやだいやだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ!! もう置いていかれるのは嫌です待つのは嫌です一人ぼっちは嫌です寂しいのは嫌ですッ!!)

 

 冷たい雫がサーナイトの頬を伝い、ぽたりと落ちた。

 

(だからッ!! だからだからだからだからマスターが帰らないよう私が一番にならなくちゃッ!! 私が一番になるためにッ!!!)  

 

 

 

(──────孕ませます)

 

 

 

 ごつんと子宮が押しつぶされた。

 

「あああああああああぁぁぁああああアアアアぁぁぁぁッ!!!」

(さあ、さあさあさあさあさあさあさあッ! でますよ出ますよ出しますよッ!! 一番奥にッ!! 大事な大事なだいじな大事な所にッ!!!)

「やだッ、やだやだヤダヤダやだッ!! やめてやめて止めてやめて止めて…………ッ!!」

 

 サーナイトのまなざしが、くろく染まる。

 

(マスター、マスタマスタますたマスターますたーッ!! 逃がしません外しません絶対に当てます孕ませますッ!!!)

「ふああああッ!! ひいいいッ──ああああッ!! やあああああああああッ!!!」

(いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱい出しますからッ!! デキて下さい生んで下さい孕んで下さい孕めッ!!!)

「ダメッ、だめダメダメだめダメだめ──クるッ! 何かクルッ!! 来ちゃう!!」

(あああああああああっ、イクッ! いくいくイクイクイクイクいくイクッ!!!)

 

 最後の一撃は、一際深く、深く貫いた。

 

 

 

 

 

 あッ……ああああああ(イううううう)ああああああ(うううううう)ああああああ(うううううう)ああああああ(うううううう)ああああああ(うううううう)ッッッ(っっっ)!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 子宮口を易々と突破し、最奥で精を吐き出す。

 まるで噴火のようなそれは、いつまでもいつまでも続き。子宮を満杯にしても卵巣すら犯し尽くしても止まらず。

 行き場の無い精はそれでも居場所を作ろうと、外へ外へと腹を膨らませる。長い長い永い射精がようやく終わる頃には、とうに臨月を迎えていた。

 

(ああ、これで……これでずうっと一緒にいられますね、ますたー)

「あ………あ………ははっ……えへへっ…………あ~っ……」

 

 サーナイトは繋がったまま、マスターの身体を仰向けにすると愛おしげにその腹を撫でた。

 まるでそこに、生命があるかのように。

 

(マスター、大好きです……)

 

 サーナイトはマスターを抱き寄せ、深い深い口付けを落とす。

 二人の瞳は、もはや何も写してはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、性癖全開のヤンヤンサーナイト略してヤーナイトにレ〇プされる話でした。
初めてR-18小説書いたので、感想や評価、ご指導頂けたらなぁと思っております。
ほら、色々拙い所があると思うのですよ。
そもそも一万八千字は長すぎるとか、こんな表現があるよとか、こんなシーンが欲しい(あるいは盛り上がる)とか、お前久しぶりの投稿がこれかよとか、生きてたんかお前!?とか。

ああ、一言「抜いた」だけでも結構です。

では、またどこかで、機会があればお会いしましょう。


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