SOLEIL ~咲き誇る太陽~ (いゆ)
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引きこもりの薔薇

「変身!!」

 私だって、こう言いたかった。私も、変身して敵と戦いたかった。

 でも、仮面ライダーなんて存在しない。最新の映画では存在すると言っていたが、あくまでも映画の世界の話だ。

 ああ、イマジンがいればなあ、ガイアメモリがあればなあ。そんなことを考えながら育ってきたから、今のようになっている。

 今の私は、いわゆるオタクだ。しかも、引きこもりの。月一程度で外に出るが、その時はオフ会やイベントの時だ。

 私の名前は、澤谷薔薇(さわたにばあら)。中学校までしかいない友達からは、キバーラと呼ばれていたが、キバーラはあまり好きではない。ディケイドを刺したシーンが衝撃的すぎた。

 そんな私に、小さめのダンボールが届いた。頼んだ覚えはない。母親のものかと思ったが、それも違うらしい。宛名のところには、私の名前が書いてある。フォロワーさんからのプレゼントかな?

 自分のところに来たなら間違いかもしれないが、開けるしかない。間違えた方が悪いのだ。

「カッターナイフを使う時は、よく気をつけようねー。」

 そう呟きながら箱を開ける。すると、梱包材に包まれた、見たことの無い、仮面ライダーのベルト?のようなものが入っている。

 私がベルトを手に取ると、信じられないことに、それは自ら浮遊し、私の腰に巻きついた。

 私が混乱していると、さらに信じられないことに、ベルトが喋った。これは夢なのか!?

「君ちょっと太り過ぎじゃない?」

 おい。失礼すぎるだろ。いくら夢でも。

「まあいいや。君が1番僕のパートナーに相応しいスキルを持ってるからね。」

「私の、スキル?」

「そう。君は仮面ライダーソレイユになれる。僕と変身すれば、君...ばあらは今の10倍、いや、100倍もの力を手に入れられる。それで、僕達の世界で戦ってもらうよ。」

「仮面ライダー...ソレイユ?」

 聞いたことの無い名前だ。本当に...私だけのライダーだ。

「じゃあ、そこの扉を開けて。」

 私は言われるがままに、扉を開ける。すると、デンライナー、には乗れないが、洞窟のような紫がかった空間だった。

「ここは?」

「ここは、僕の家...だった、今は僕の世界を破壊しようとしている、ナイトメアの手下が住んでるんだけどね。」

「え?じゃあここには....」

「そうだよ。君に変身してもらって、まずこの家から救ってもらうんだ。」

 私が...変身...どうなっちゃうんだろ....

「大丈夫、君ならできるさ。」

 なんか、少し怖くなってきた....私に敵を倒すなんて....

「やるしかないよ。」

 まだ私の心の準備が出来てないまま、ベルトは待機音に入る。

『フラーワ...フラーワ...フラーワ...フラーワ...』

 手元に、バラの形の機械的な何かが入る。

 もうやるしかない。

「変身!!」

 それをベルトに差し込み、さらにもう一度押し込む。

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』

「仮面ライダーソレイユ! ここに誕生!!」



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仮面ライダーの薔薇

 そこには、緑色の腕に赤い仮面の騎士がいた。

 それは、棘の鎧で攻撃し、薔薇とは思えない身体能力を発揮し、すぐに敵を全滅させた。

「なんだ!?この力....」

 僕が持ってる力よりも...遥かに....

「いやあ、案外簡単だったね!ありがとう!」

「う、うん。君が思ったより強いから、僕、驚いちゃったよ。」

 驚いた....そんな言葉じゃ済まされない。彼女のパートナーは僕でいいのだろうか...彼女について行くと、僕はきっと....

「ベルトの名前は?」

「あ、僕はミラ。待って、怪人態になるから。」

 僕は地球では「怪人」と呼ばれている姿になる。

「イマジン!!」

「ちがうよ。イマジン達とは関わっては行けないことになってるの。掟として。」

 まだ彼女のことを知りたい。僕が追いつくために。

「僕はフラーワドライバー態、人間態、怪人態になれるんだ。フラーワドライバーっていうのは、君が言うベルトね。」

「なるほど。」

「これからどうぞよろしく。」

「うん!」

 こうしているが、僕はとても疲れている。彼女の攻撃について行くだけで、僕は精一杯なのだ。

「おい、お前。」

 聞いたことのある声が聞こえてくる。

「しゃがんで!」

 とっさの攻撃にびびってしまった。

「何?」

「俺はナイトメア様の手下、ウェズンだ。新しい仮面ライダーが誕生したと聞いて、倒すつもりでここへ来た。」

「行くよ、ミラ。」

「うん!」

 僕は彼女に巻き付き、フラーワを彼女のポケットに入れる。

「あれ、花は?」

「ポケット。」

「あった。」

『フラーワ...フラーワ...フラーワ...』

「変身!」

『激しく燃える、情熱の赤!薔薇!』

「仮面ライダーソレイユ!」

 ウェズンは不敵な笑みを浮かべる。

「出たな、仮面ライダー。女のライダーはこの世界には無用なんだよ!!!」

 仮面の上からでもわかる。彼女は怒っている。彼女から最初の変身より強いパワーを感じる。

「あんまり無理をしないで....!」

「あなたは許さない。女でも仮面ライダーになれる。」

「ははん?そうか、じゃあ見せてみろ!その力を!」

 ウェズンが置いた扉から強面の男性が出てくる。

 ウェズンは彼にベルトとして巻き付き、待機音を出す。

『フラーワ...フラーワ...フラーワ...』

「行くぞ。ウェズン。」

『匂いは強烈、豪烈な赤!ラフレシア!』

 変身音にもある通り、いるだけで倒れそうな匂いがする。その中で戦うのは無理に等しい。

「ばあら、行けるかい?」

「よ、余裕よ」

 無理をしないでと言ったが、彼女の意思は変えられない。

「変身」

 仮面ライダーソレイユは、2回目の戦いにも関わらず、ものすごい力を出している。



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夢見がちの太陽

 ソレイユの攻撃にラフレシアのライダーも対抗する。異臭を放して敵の攻撃を抑える邪悪なライダーのその名前は、仮面ライダースメルという。

 スメルはソレイユの攻撃を軽く止める。そして容赦なくベルトを殴る。ベルトを破壊すれば変身が解けるのだ。

 やはり、体力、体格の差でソレイユはボロボロの体になってしまった。ミラも、ベルトの姿を保ってるのが限界になってきている。

「ばあら、もう....僕...」

 しかたない、と怯んだソレイユが変身を解除しようとした時、ウェズンの攻撃が止まった。

「うおっ!?」

 ウェズンが驚いて向いた方向には、もう1人の桃色と白色のライダーがいた。それは、日本刀のような長刀をスメルの首に当てる。

「今すぐここから去らないとここで貴様の首を取る。」

「わかったわかった。」

 仕方なさそうにウェズンはどこかへ消えていった。

「あの...さっきは助けてくれてありがとうございます...」

 薔薇は返信を解除して言うと、ライダーは無言で名刺のような長方形の紙を地面に置き、その場を去っていった。

 立ち去る時のその後ろ姿は、薔薇には優しく笑っているように見えた。

「仮面ライダー....裂羅《サクラ》...」

 裂羅。達筆な字でその2文字だけが書かれた紙を、薔薇はポケットにしまう。

 自分の部屋に戻った薔薇は、今日はよく寝ることにした。夜更かしもせず、明日最高のパフォーマンスが出せるようにするのだ。

 薔薇は裂羅から貰った紙を机に置いて、部屋の電気を静かに消した。

 

「変身。」

 低く太い声がする。顔はよく見えないが、男の人だ。

「私は仮面ライダー裂羅。危ない目にあっていたようなので、お護りします。さあ、私のバイクに乗って。」

 裂羅は薔薇を後ろに、どこまでも連れていった。

「ねえ、寄っかかっていい?」

「もちろん。」

「私、好きになっちゃったかも、」

 裂羅は変身を解かずに静かに笑う

「私を見つけてごらん。」

 そういうと、裂羅はどこかへ消えていった。

 

「夢か。」

 薔薇が目を覚まして直ぐに発した言葉はそれだった。

「おお、薔薇、おはよー。」

「誰!?」

 薔薇のベッドの横には、知らない男が座っていた。ただ、声は聞いたことがあった。

「え、僕だよ。ミラ。あ、人間態は見たこと無かったっけ?」

 あのミラの人間態が、こんなにウェイ系の大学生っぽいとは誰も想像できなかっただろう。

「え、え、かっこいいね。」

 薔薇がそういうと、ミラは女物の服を纏った細マッチョの腕を振りながら、可愛らしい笑顔を見せる。

「まあ、これは薔薇の服なんだけどね。」

 薔薇は親からの仕送り20万円の札束を見て何かを考える。

「よし、服買いに行こうか。」

「うん!」

 薔薇は今月初めて外に出る。



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二人目のラフレル

「店内どうぞごゆっくりご覧下さいませー。」

 ミラの「ここがかっこいい!」という勢いから入った店は、サインのようなロゴのスケートボードブランドの店だった。店員も少し悪そうな感じで、薔薇は少し緊張している。

 ただロゴが入っただけのTシャツ。それでも、ミラが着るとかっこいい。ミラは自分の服を選び終えると、今度は薔薇の服を選び始めた。

 赤色の生地にロゴが胸のあたりに書かれているTシャツを持ってきた。

「私ももう23だし、あんまり若々しい格好は出来ないかな...」

 そういうと今度は赤色のロゴ入りパーカーを持ってきた。どうやら薄い生地を使っているらしく、夏でも着れるらしい。試しに試着すると、薔薇はとても驚く。彼女は自分が赤がよく似合うことに気づいた。

「よし、ミラ。これにするよ。」

 ほかにも何枚か赤を基調としたTシャツや開襟を何枚か持ち、レジへ持っていく。

「えー、6点で、42204円です。」

 さすが海外ブランド、少し高い。渋々現金で金を払うと、今度は別の店へいく。

 (買い物って、楽しい!)

 次は、マリオに出てくるはてなブロックを削って逆三角形にしたようなブランドに入っていった。これは唯一薔薇が知っているブランドだった。薔薇はすぐに定番のTシャツを手にもつ。するとミラが、「こういうのは定番じゃないやつを買うの!」というもんで、ついつい流されて高いものを買ってしまった。

 やっぱり彼女は赤だった。

 

 色々なところで買い物をした彼らは、もう満足だった。一番高かったのは、ハイブランドのネックレスだった。

 

 が、あくまでも仮面ライダーの薔薇。普通にこの話がおわるわけもない。彼らの帰りの電車は止まってしまった。

「いくぞ、エレン。」

 薔薇達と同じ列車に乗っていた二十代くらいの男が、前に座っている女に言う。

「わかった。この列車にソレイユがいるんだな?」

「あぁ。調べてある。」

「人間でもこれくらいのことはやってくれるんだな。礼を言おう。」

「邪魔な奴は消すぞ。」

「そうだな。」

 女は怪人態、そしてフラーワドライバーとして、男に巻き付く。一緒に乗っていた人間は、女の変体に驚き、叫ぶ。

『フラーワ フラーワ フラーワ フラーワ』

「変身。」

『匂いは強烈、豪烈な赤!ラフレシア!』

 車内には言葉では表現出来ないような悪臭が漂う。倒れる人も多い。

 もちろんそれには薔薇達も気づき、男が乗ってる車両の方に向かう。

「これ、僕の知り合いかも...」

 ミラはそう言うと、ドライバーとして薔薇の腰に巻き付く。

 ドアを開けると、悪臭の霧の中に1人、仮面ライダーが立っていた。

「やっぱり...君だったんだね......シャウラ...」

「ああ、あたしだ。」

 ドライバー二人はどうやら、知り合いのようだ。

「なあ、さっさとやっちゃっていいか?」

「わかった。ただ、ソレイユについてるドライバーは壊さないようにね。」

「ああ。」

「薔薇、僕は君の見方だよ。手加減なしで戦おう。」

「変身。」

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』

 ソレイユの腕の棘がきらりと光る。

「俺は仮面ライダーラフレル。お前に俺は倒せない。」

 ラフレルというそのライダーは、ブーメランのような武器を投げて攻撃する。

 とっさのことだったので、ソレイユはそれをよけられない。

「うああっ!」

 仮面ライダーソレイユは、暴走中の列車の中で飛ばされ、倒れる。



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ソレイユの敗北

 ソレイユの変身は解除され、薔薇とミラは別々になる。薔薇は気絶し、何かにうなされてるようだ。

 警戒しているミラに、ラフレルはさらに攻撃を続ける。

「殺すなよ。」

「ああ。」

 ラフレルはそう言って高く飛び、よくあるライダーキックの体制になる。

「テリブル ライダーキック!!」

 ミラを倒したラフレルは、彼をどこかへ運んでいく。

 

   ◆◇◆◇

 

 目覚めるとミラは、まったく別の場所にいた。そこは監獄のような場所で、牢ごしにシャウラがいる。

「どうしたミラ、パートナーと別々になって悲しいか。」

「薔薇はどこ!」

「お前のそのばあらとやらはあの電車に置いてきた。」

 ミラは絶望に更けた顔をして、シャウラを攻撃するために怪人態になる。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その瞬間、ミラは感じたことのない痛みに犯される。

「残念。その中で怪人態になると特殊な電磁波ですべての痛覚を犯されるんだ。」

「なんで...僕をどうする気だ!!」

 シャウラはニヤリと不敵な笑いをすると、そばにあった鞄からベルトのようなものを出し、腰に巻き付ける。

『Seed on!』

 二つの立方体の凹凸をかみ合わせると、ベルトの待機音が鳴り始める。

『Carnivour growin' now Carnivour growin' now Carnivour growin' now』

「ふふふ 変身...」

 彼女がそう言ってかみ合わせた立体をベルトにはめ込むと、黄色の光がベルトとミラを結ぶ。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ミラ!お前のフラーワの力はこのカニバルドライバーのエネルギー源となって完全な人間となる!そのほうがお前にとっても、都合がいいだろう?」

 そういうシャウラの顔は、まさに悪魔だった。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「さよなら、仮面ライダーソレイユ。」

 ミラはずっと薔薇のことを考えていた。

 

   ◆◇◆◇

 

 一方、電車に一人取り残された薔薇は気が付いたらなぜかバイクの上で寝ていた。運転するのは全然知らない男だった。

「誰!?」

「やっと目が覚めたかソレイユ。俺は湊 敬一。仮面ライダー裂羅だ。」

「裂羅さん!?」

 敬一は俳優のような渋い笑顔を見せて、薔薇に問う。

「ソレイユ、君は相棒をラフレルから取り戻したいかい。」

「もちろんです。すぐにでも...ミラに会いたい...!!」

「そうこなくっちゃ!」

 そう言うとバイクのエンジンを大きく鳴らし、目の前にはアニメでよくある世界の割れ目のようなものが現れる。

「いくぞ!サクラ!」

「わかったわ!さ・く・らさん。」

「からかうなって、君と同じフラーワを助けに行くんだぞ。」

「ふふふふふ、かわいいおねーちゃん連れてねぇ...」

 彼はバイクごと割れ目に突っ込んでいく。a

 割れ目の中は雲の上のような景色で、すべてが白黒で描かれている。その中で敬一はシャウラが映っている出口を見つけ、そこに向かう。

「ミラ..今、裂羅さんと一緒に助けに行くからね。」



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仮面ライダーのカニバル

「君、俺に体を貸してくれない?」

 男は真っ暗な場所で、何かに言われる。

「いやだ...来るな!」

「そっか...だったら俺も強硬手段でいくよ。」

 その《何か》は、男に近づき手のようなものを男の胸の前にかざすと、心臓を取り出す。

 当然男は死に、倒れる。男の口から《何か》は中に入り、《男》として動く。

「次はドライバーか...いいのがあるね。」

 男は手からモニターのようなものを出し、そこに移る《何か》に似た怪人と、光で結ばれたもう一つの怪人とベルトを見つめる。

「これがカニバルドライバーか。」

 男は時空の割れ目を作り出し、そこへ飛び込んだ。

「やっぱり、まだ誰もいないかな。邪魔ものがいないならそっちのほうが楽でいいんだけど。」

 男がさっきのモニターそっくりの情景が描かれている割れ目から出る。

「ここか....」

 そこは薄暗く牢獄のような場所だった。

「やっぱり君だよね。シャウラちゃん。」

 シャウラはミラからエネルギー吸収を止めないように返事をする。

「お前は誰だ?」

「僕だよ、忘れたの?」

「声には聞き覚えがある。」

 その返答に男はニヤリと笑い、姿を変える。

「レグルス=スカーレットかい!?」

「あったりー!サー・レグルス=スカーレットだよ。」

 レグルス=スカーレット。シャウラとおなじブルーム族なら誰でも知っている名前だ。彼は昔のブルームの世界をナイトメアから守ったことがある。その時彼は英雄として称えられたが、天狗になった彼のわがままには誰も耐えられなかった。

「そのドライバーは俺がもらっていくよ。」

 彼がそう言い終わると、ミラから出ていた光は消え、ドライバーが静かに光っている。

「僕の力を!!!」

 ミラは怪人態になり無理やり檻を破壊しようとしたが、その力が奪われてしまった。

「かわいそうにね。ミラ=グリーンウッド。あと、シャウラ=アゼリアちゃん。」

 彼はそう言うとものすごい速さでドライバーを自分の手に載せた。

「速い...!」

「僕は英雄だよ?」

 そう言ってさっきのドライバーを腰にまきつける。

 その時、絶望していたミラの目の前に時空の割れ目が表れる。

「つかまれええええええ!!!!」

 牢を破壊しながら出てきたのは、バイクに乗った仮面ライダー裂羅と、ミラのパートナー、薔薇だった。

「薔薇!」

 ミラはパートナーとの再開に歓喜し、思わず声を上げる。

「会いたかったよ!ミラ!」

 ミラは薔薇に事情を話し、強くハグする。

 一方シャウラとレグルスは、まだいがみ合っている。

「おいレグルス。お前はもう英雄なんかじゃないんだ。そのドライバーを返せ。英雄はこのわたしだ。」

「そうかな。俺の力じゃないと変身の力に耐えられないと思うんだけどね。」

 煽られたと悟ったのか、シャウラは怪人態に姿を変える。

「僕は君と戦うつもりはないよ。」

「その余裕な表情が私を怒らせる!!」

 シャウラ怪人態はその大きく爪の生えた腕でレグルスに襲い掛かる。

「でも正当防衛はさせてもらうよ。変身!」

 レグルスはドライバーに二つの立体をはめ込んで、変身する。

『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』

 どこからか出てきた巨大な食虫植物に食べられ、空中で解放される。解放された後のその姿は見たことのない形だった。

「やっほー、俺が仮面ライダーカニバルだよー。」

「ふざけてる!!」

 レグルスは女性だからと容赦なくシャウラに攻撃する。そのときシャウラの攻撃はまったく当たっていない。

「そろそろとどめかな。」

 カニバルは地面を強くたたく。すると、シャウラの下から巨大な食虫植物が出てき、彼女はそれに咥えられる。

「離しなさい!」

 そしてカニバルはライダーキックの体制になり、自分より高い位置にいるシャウラにキックを見舞う。

「カニバル・ライダーキック!!」

 牢屋の中で大爆発が起き、シャウラはその中央に倒れる。

 レグルスは変身を解除して、敬一と薔薇たちのほうに近づく。

「僕は普通の人と同類にされるのは嫌だけど、君たちはナイトメアを倒そうとしてるらしいね。だから僕と一緒に目的を手伝ってくれないか。」

「ちょっと癇に障るところはあるが、悪いやつではないらしい。いいだろう。薔薇もいいだろう?」

「もちろん!よろしくね!」

 彼らの冒険はまだ始まったばかりだった。



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偽物のソレイユ偏
ソレイユの友達


 やっと仲間が3人になったソレイユ一行は、意外にも暇を持て余していた。なんと日本に出現する悪いフラーワ達が一行が行く前に次々と討伐されているのだ。

 薔薇の部屋で集まっていた時、敬一がネットでとある記事を見つけて仲間に見せる。

「これ、『仮面ライダーの格好をした殺人鬼がカメラに映る』って記事。気にせずにいられないよな。」

 その記事には、仮面ライダーソレイユの格好をした何者かが血のついたナイフを持っている姿があった。

「やばいね。」

「やばいな。」

 すると、レグルスは財布を持ってどこかへ行こうとする。

「じゃ、俺はバイト代入ったから服でも買いに。」

 そう言うと彼は薔薇の家の窓から街の方へ抜けてしまった。

「ちょっとレグルス!仕方ないか、うちらで解決しよう。」

「そうだね...」

 レグルスのマイペースさに呆れた薔薇は、早速外へ出る。ほかのみんなも情報収集のためすぐに散らばった。

 しかし、外に出るのに慣れていない薔薇は、いきなり一人になってどうすればいいのかわからなくなっていた。

「うちらで解決しようとは言ったけど...」

 一人になった薔薇はとりあえず近くのカフェに入った。マスターにカフェモカを一杯頼むと、すぐに出てきて、空いている二人席に座る。落ち着こうとして飲むとアイスだと思っていたそれはかなり熱めのホットだった。

「あっつ!」

「しかし彼女は言いに行くほどコミュ力を持っていないので、仕方なくホットを飲んだ。意外なことに猫舌で、安久二番目のサブライダーにふさわしくないと、自分を少し責めてしまう。そう、彼女こそが仮面ライダーμ。」

 とっさに、彼女は言う。

「違う!私はソレイユ!てか誰!さっきからナレーターみたいなことしちゃって!」

「おっと、これは失礼。私の名前はM。旅人であり作家さ。」

 そういうとMは彼女が座ってないほうに相席する。

「やっぱり君が仮面ライダーソレイユか。この世界の元号、安久は本来の世界では令和となっている。君は仮面ライダーソレイユでなくっちゃ、私、この世界、さらに君たちの仲間はすべて消えてしまう。あ、君もね。君は何があっても仮面ライダーをやめちゃだめだよ。それだけを伝えに来た。」

「は、はい...」

「まあ意味はこの物語の最終回くらいにはわかるだろう。」

 薔薇がきょとんとしていると、そこへスーツを着たガタイのいいが三人ほど集まってきた。

「貴様がソレイユか、話はあとだ。今から貴様と連れの貴様も署へ連れていく。覚悟しとけ、犯罪者め。」

 そういわれると腕をつかまれて外に停まっていた大きめの車に投げ入れられた。

「やれやれ、君のお友達かい?」

 Mが尋ねるとのんきなことに少し苛ついている薔薇が嫌味を込めて答える。

「そうに見えますかね。」

 暫くして、車が止まり、二人は降ろされる。そこは警察署だった。

「廊下を少し掃除したほうがいいんじゃないかな?」

「よく手錠をかけられてるのにそんなことを言えますね。」

 ガタイのいい男たちに連れられて二人が入ったのは牢屋だった。鍵をかけられ少しすると、今度はスーツを着た中年の男が入ってきた。

「ソレイユ、本当にありがとう。君のデータはほとんど受け取った。だから今日はそのお礼にさっきまで君の仲間のふりをしていた悪の帝王様のお言葉を聞かせに来た。」

「礼を言われているよ、ソレイユ。きっと君のお友達だろう。」

「違うって!」

 彼女は覚悟をした。それと同時に、帝王が誰なのか少し気になった。

「それでは、悪の帝王様の御成り!!」

 時空の割れ目が開き、そこには見たことのある人が立っていた。

「楽にしろ。驚いた?ば、あ、ら?」

「これは君のお友達かい?」

 薔薇は驚いて倒れそうになったが、震える声で答える。

「うん....私の..お友達...」



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Mの活躍

「俺がありがとうって言ってるんだから、笑ってよ。薔薇。」

 さっきまで仲良くしていた友達が悪の帝王として自分の目の前でたたえられていたら、それはとても驚くことだ。

「仕方ないなぁ。んじゃ、薔薇の友達くんから処分していきまーす。どうでもいいからね。」

 彼、レグルスは部下らしき人にタンポポの花を渡す。するとそれは色のある透明な物体になり、彼の腰にはフラーワドライバーのようなベルトがまかれる。

『フラーワ フラーワ フラーワ フラーワ』

「出来立てほやほやの自家製フラーワだ..!変身!」

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

 その場にはいかにも悪人顔の仮面ライダーが立っている。しかし、Mは一切顔色を変えない。

「君のお友達のお友達には悪いけど、私には勝てないよ。」

 そう言ってコートの内ポケットから機械的な何かを出し、腰に当てる。すると、例のように腰に巻き付く。

『ワー・ドライバーver.β』『M』

「私以外の物語では私は無敵だ。」

 その言葉に怒ったのか、蒲公英のライダーは葉の形をした剣で檻ごとMを切り裂く。

「変身。」

 ライダーの刀はMの変身により跳ね返された。

「お前も仮面ライダーなのか!?」

 蒲公英のライダーは驚き、レグルスはにやりと笑う。

「別の世界の仮面ライダー。しかもダークライダーさ。ネタバレだけどね。」

 Mがドライバーの銃のマークを押すと、『M Magnum』と音声が流れる。Mの手には大型の銃が現れ、それを使い攻撃する。

 しかし、蒲公英ライダーが手から綿毛のようなものを出し、それが着地するとそこに人間サイズの人型の蒲公英が現れ、それが無限に続く。

「だめだ....君はここから逃げろ!」

『M Multiple』という音声とともにMは五人に増殖し、一人が『M Magnum』で窓を破壊する。そして薔薇を抱きしめ、「お友達にさよならは言ったかい?」といい『M Moon』で落下する。

 以外にも逃げた薔薇にレグルスは、「ばあらには絶望をしってもらわなくちゃね。」と部下に告げただけで何もしなかった。

 一方、薔薇についていったMは彼女を地上に降ろしたところだった。

「今回は幸運だったね。君たちの今後の活躍を期待しているよ。仮面ライダーソレイユ。」

 そう言い残して風と共に消えていった。

 

 薔薇は、今回のことを仲間に話した。

「薔薇、僕はレグルスを最初から信頼していなかった。予想が当たったんだ。僕今とっても怒ってるよ。明日、薔薇が囚われたところに戻ろう。あいつを殺すよ。サクラ、敬一さん、協力してくれるよね。」

「「う、うん」」

 ミラの怒りは本物で、無意識のうちに人間態から怪人態になっていた。



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蒲公英のソレイユ

 次の日、ミラは怪人態のまま起きて、無表情のまま薔薇たちと一緒に例の場所へ行く。

 存在しないはずの警察署のような建物は、黒い雲をかぶっていた。

「僕は怒っているよ。薔薇、さっさとやるよ。」

 そういってミラは薔薇に巻き付き、待機音を鳴らす。

『フラーワ...フラーワ...フラーワ...』

「いや、ミラ。きっと訳があるんだと思う。私はレグルスをいい人だと思ってるし、もし裏切るにしても早すぎると思う。」

 薔薇は少しの希望を最後まで信じていた。

「だからミラ、少し落ち着いて...」

『フラーワ...フラーワ...』

 ドライバーの待機音は止まらないが、少し考えなおそうとミラが思ったとき、上のほうから声が聞こえた。

「おおー!きたかーソレイユ!あ、これ見て!!」

 レグルスだった。彼はそう言って後ろから何やらガサゴソと取り出すと、薔薇たちの目の前にそれを落とした。

「ソレイユ...私が負けないといったね..どうやらそれは嘘に終わったみたいだ...」

 上から落ちてきたのは、仮面ライダーMだった。

「この人徹夜で戦ってたんだー!だけど倒したの蒲公英一人だけ!しかも蒲公英のフラーワなんていくらでも作れるしぃ、めっちゃ弱かった!」

 ボロボロになったMを見てレグルスは喜んでいるようだった。それを見た薔薇の目からは光が消える。ずっと信じてたのに、最後まで信じてたのに...

「ミラ...いくよ。」

「ああ。僕の準備は万端だ。」

「俺たちも行くぞ!サクラ!」

「うん!」

「「変身!」」

『激しく燃える!情熱の赤!バラ!』

『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!裂羅!』

 変身した二人は、レグルスのところまでひとっとびするが、途中で蒲公英のライダーに落とされる。

「お前はこのままレグルスを慕ってていいのか!」

「貴様に口出しされる筋合いはない!」

「じゃあ油断はするな!」

 そう吐き捨てると裂羅は相手の顔の目の前に黄色の花の半透明の物体=フラーワエナジーを見せる。

「ソレイユ!これを!」

 そういって蒲公英のフラーワエナジーをソレイユに投げて、彼女はそれをキャッチする。

「ミラ!」「うん!」

 ソレイユは薔薇のフラーワエナジーを抜いて、蒲公英を入れる。

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

 さっきの蒲公英ライダーとは違った、蒲公英を基にしたソレイユになった。

「仮面ライダーソレイユ!デンデリオンフォーム!」

『デンデリオン・イリュージョン』

 黄色のソレイユは何人かに増殖して戦う。デンデリオン・イリュージョンこそがその技名だ。そして、なんと増殖した何人かのうちだれにでも纏められるのだ。

 それを利用して彼女はレグルスのところにたどり着いた。

「おっと、ソレイユ。よく来たねぇ!あ!別の花になったんだ!だったら、俺の作戦に協力してくれるね!」

 レグルスは友好的に話をしてくるが、ミラは聞かない。

「薔薇!君は一回騙されてるんだ!僕は信じないよ!」

「二回目は、ないね。」

 薔薇もソレイユも完璧に戦う体制になっていた。

「君らがその気なら俺も相手になっていいけど、君らが負けたら僕の話をちゃんと聞いてね。」



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敵のレグルス

「やれ!俺の仲間たち!」

 レグルスがそういうと、後ろにいた怪人たちが四人前に出てくる。それはおそらく彼のボディーガードのようだ。

「お前は戦わないのか!!」

 ドライバーのミラが怒鳴る。

「君一人だったら俺じゃなくてもいいと思ったからね。さ!やっちゃって!俺の話を聞いてもらうために、殺しはしないでね。」

 彼らは胸ポケットからレグルスのドライバーと同じ形のものを出すと、手の中のフラーワエナジーをソレイユのほうへ見せつける。形はクローバーだ。

『Comant growin' now Comant growin' now Comant growin' now』

 四人同時にドライバーにフラーワエナジーを挿入すると、変身音とともに姿が変わる。

『Go G G G Going!』

「仮面ライダーコマントだよ!俺の仲間たち!」

 コマントは四人同時に容赦なく襲い掛かってくる。それに対しソレイユも四人に増え、マンツーマンで戦う。しかし、ソレイユの体力は1/4なので体力的にも厳しかった。

「四人同時は...無理かも...!」

『Finished by Comant!』

 コマントはフィニッシャーの音声を鳴らし、胸の四つの銃口からソレイユを射撃する。ソレイユはガラスの窓を割り真っ逆さまに地面へと落下する。

「うわああああああああ!!」

 ミラの意識は飛び、薔薇は謎の爽快感からか少し楽しんでいるが、地面に墜落して死亡するということはなかった。落下中のソレイユを誰かがキャッチしてくれたのだ。

「君は負けたんだ。」

 それはレグルスだった。レグルスは食虫植物を萎ませながら話す。

「約束だよ。俺の話を聞いて!」

 負けたのが恥ずかしいソレイユは、目を合わさず黙る。

「まあいいや。聞いて。まず、だまして裏切ったと見せかけたのはごめん。俺はソレイユの敵になろうとなんかしてないよ。Mさんも自分の世界に帰っただけ。さっきのコマント達は俺の本当の部下。彼らといっしょに組織をだまして内側から破壊するつもりなの!だから協力して!」

「本当なの?レグルス。」

「ほんとのほんとだよ!だから俺は君に直接傷つけてないの!」

 これにはミラも納得し、黙って様子を見る。

「あと、偽物のソレイユのことなんだけど...」

 それを説明しようとしたところで、レグルスの首元に刀が突き付けられる。

「カニバル!貴様どういうつもりだ!」

 仮面ライダー裂羅だった。ソレイユは変身を解除して裂羅に説明すると、二回目でようやく理解した。

「すまない!ただもうちょっとわかりやすくしてほしかった...」

 レグルスは組織の内部に入りわかったことを説明する。すると信じられないことが発覚する。

「僕に兄がいるのかい...!」

 ミラは自身の兄の存在を知らなかった。しかもそれが、ソレイユの偽物として活動していることすらも。



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ミラの兄

「もうそろそろミラ達が僕の存在に気づくはずだろう。工作員としてきたのがバレバレさ。」

 そういったのは、ミラの兄且つ帝国軍第一将軍のディフダだった。彼は生まれた後すぐに迷子で捨て子として育てられ、四歳ですぐに独立した。フラーワの一歳は人間の三歳に相当しており、彼はとても意思が大きかった。

「ウェズン、僕のエナジーを使っていいから、ちょっと様子見てきてよ。」

 仮面ライダーソレイユに最初に倒されたライダー、ラフレルの変身者の一人、ウェズンはあの後ディフダに助けられ、彼のもとで生活している。

「わかりました。でもまだ量産型のフラーワドライバーが試験版ですぜ。」

「大丈夫さ。試験版のを使えばいい。君ならいけるさ。」

 そういってディフダはウェズンに試験版のフラーワドライバーを持たせ、地球へ向かわせる。

「わかりましたディフダさん!俺は絶対戻ってきます!人質としてこのラフレシアのエナジーを預けるので、行ってきます!」

 ウェズンは割れ目を作るとそこへ静かに入る。そして地球がある出口へ行く。

「待ってろよソレイユ。今の俺は強い。」

 

◇◆◇◆

 

 あったこともない自分の兄が自分のふりをして悪事を働いていることを知ったミラは、驚きを隠せていなかった。そんなところに手紙が一通届く。薔薇がポストからとって宛名には『仮面ライダーソレイユ』と書いてあったので、みんなの前で封を開ける。

「ええと、『初めまして!僕の弟、そしてその仲間たち!僕がミラの弟、ディフダということはもう知っていることだろう。まず仮面ライダーソレイユ、君には謝らなくちゃならない。僕は君を活動的にさせるために君の偽物として地球で少し遊ばせてもらった。すまないと思っているよ。なんで活動的にさせるかって?それはミラ!君に帝国軍として一緒に戦ってほしいからだよ!今日、そっちに僕に忠誠を誓った一人を送ったから、詳しくは彼に聞いてね。それじゃあ、いい結果になるように願っています。 君の兄、ディフダ=グリーンウッド』だって。」

 ミラはディフダの要求は断っている。自分の家族が、帝国軍と戦って危険にさらされているからだ。

「僕は絶対に要求に応じないよ。たとえ、兄と決裂しても。」

 その時、サクラのケータイにニュース速報が流れる。

「また偽物ソレイユが出たっぽい!」

 サクラは敬一に巻き付き、ミラも薔薇に巻き付くと、ミラが言い出す。

「敬一、バイク持ってたよね。実は僕もあるんだ。」

 ミラは薔薇の玄関のドアをフラーワの世界につなげて、そこから自分のバイクを出す。

「これ!名付けてソレイユ号!今日から薔薇のものさ!」

 薔薇は喜び、早速運転をする。バイクの免許は調子に乗って十八の時に取ったのだ。もちろん敬一達もついていく。

 捕まるんじゃないかというスピードで目撃された場所へ行くと、そこでは少し黒味がかかったソレイユが店や道で暴れていた。記者も続々ときている。

「なんでみんな見ているだけなんだ...仕方ない、行こう!ミラ、敬一さん、サクラ!」

 彼らは記者や警察の間を通って偽ソレイユの前へ出る。警察には止められたが、目を盗んで変身する。

「私たちが相手だ!変身!」

『『フラーワ...フラーワ...フラーワ...フラーワ...』』

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』

 彼らが変身すると周りはざわつき、カメラのフラッシュが刺さる。

「フラッシュ撮影は禁止です!」

 裂羅が叫んでも周りは聞かない。仕方がないので警察に周りを抑えてもらう。

「君が...僕の兄なのかい....?」

「ソレイユ!俺はお前の兄なんかじゃねぇ!俺はお前をここで殺す!」

 偽のソレイユは大声を張り上げてソレイユに向かっていく。ソレイユは対抗するが、ウェズンの怒りの勢いに勝てない。

「うっ!!!!」

 偽ソレイユのライダーパンチを食らったソレイユは膝から倒れてしまう。

「ソレイユ!」

 彼女には裂羅の言葉は届いているかはわからない。



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偽物のソレイユ

 偽ソレイユのライダーパンチをまともに食らったソレイユは、その場に倒れてしまった。

「見たか!この瞬間を!悪の仮面ライダー、ソレイユとはこの俺だ!!!たった今仮面ライダーソレイユは極悪の殺人犯としてこの世の歴史に刻まれるんだよ!!!」

 記者はすぐさまカメラを回す。

「ソレイユ...」

 ウェズンの目は裂羅に向けられる。

「さあ!次はお前だ!」

「さあこい!」

 覚悟を持って構えている裂羅にウェズンが向かったとき、ウェズンは何かに足を引っかけた。

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

「なーんてね。私たち二人分のパワーが一人で変身してるお前に負けるわけないでしょ!」

 彼が足を引っかけたのはソレイユの根だった。それは彼の足にうまく絡みつき、彼はその場から動けなくなった。彼は腕を根にこすりつける。

「こんなもの!薔薇の棘で外せるわ!」

 しかしそうはさせない。その場にはウェズン以外のライダーが二人いるのだ。

「風桜剣!」

 裂羅は風桜剣という剣で偽ソレイユの腕を攻撃する。

「ソレイユ!いまだ!」

 裂羅の合図でソレイユは高く飛び上がり、技を打つ。

「リオン・ライダーキック!」

 ソレイユからライオンの化身のような影が浮かび上がり、彼女はライオンが獲物に飛びつくようにライダーキックを打つ。ちなみに、蒲公英の英語のdandelionのlionはライオンからきているらしい。

 場に大爆発が起こり、薔薇たちは面倒なことが起こる前に物影に隠れた。

 彼らの活躍の一部始終はニュースの生放送で流され、仮面ライダーは日本中で話題になった。

「結局振出しに戻っちゃった。」

 物影で人間態のミラは悲しそうに言う。

「ごめん。次は絶対逃がさないようにしよう。」

「謝る必要は無いよ。僕と血が繋がってる兄のことだ。僕に似てるからきっと自分から出てくるよ。だからそれまでちょっとゆっくりできるかな。」

 ミラは冗談を混じえながら話す。

「なんか会ったことないのに血繋がってるって思ったら、不思議だなぁ。人間はどう兄弟と接してるのかわからないけど、いい人だといいなあ。」

 薔薇は兄弟がいないので黙るが、敬一が答える。

「人間の兄弟は弟が兄を尊敬する。兄は弟に生き方を教える。そういう関係だ。ミラの兄もきっといい人で、色々なことを教えてくれるはずだ。」

 そう言うとミラは嬉しそうな顔をする。

 

 家に帰ると、レグルスがいた。彼はととても焦っている。

「レグルス?どうしたの?潜入捜査は?」

 サクラが聞くとレグルスは冷や汗を床に落として言う。

「俺はソレイユの強化のためのエナジーを盗んだんだ。でもそれが上にバレて、しかもなんか俺が潜入捜査だということがバレてて、どうしよう。」

 レグルスは盗んできたものを震えた手でミラに渡し、押し入れに入り出てこなくなってしまった。

「赤色のチューリップ.....」

 それはミラは良く見覚えがあった。

「僕の昔からの親友はチューリップのフラーワエナジーをアクセサリにしていた.....」



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兄の誘い

「ミラ!薔薇!サクラ!レグルス!第三公園でフラーワが子供を襲ってるって!チューリップ使うチャンスだから行こう!」

 レグルスが押し入れに引きこもってから三日、突発的にフラーワの情報がネットに流れた。

「俺はいいよ。ここにいる。」

 レグルスはチューリップのフラーワエナジーを敵の本拠地から盗んだのがばれてそれにおびえている。

「ここでぐずぐずしている暇はないでしょ!僕らは行くよ!レグルス!」

「いってらっしゃい。」

 レグルスはやっぱり来なかったので、ソレイユと裂羅だけで出発した。

「これで僕の兄に会えるかもしれない...」

「ミラの兄にあったらソレイユの濡れ衣がはがれるかもしれないからな。」

 半ばワクワクして公園に向かうと、そこにはチューリップのフラーワが二匹、子供をいじめているだけだった。

「あれ?すくない。まあいい!とりあえず子供を助けるよ!」

 薔薇は薔薇のフラーワエナジーを出し、それと同時に敬一も桜のフラーワエナジーを出す。

「「変身!」」

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』

「仮面ライダーソレイユと!」「仮面ライダー裂羅だ!」

 二人は一体ずつ相手にして確実に倒していく。子供は知らない間に逃げ、二人はフラーワを倒したところだった。

「いいねぇ。仲間がいて。これでこそ僕の弟だ。」

 倒したフラーワの一体が起き上がる。

「本当の偽物か!」

 薔薇が言うと面倒くさそうに答える。

「偽物なんてとんでもない。僕が最初で、ミラがまねした感じだよ。大体僕はそんなに野蛮なことはしないしね。」

 ミラは変身を解除して怪人態になり、襲い掛かる。

「お前は一体誰なんだ!僕に兄なんているのか!?」

「僕は正真正銘君の兄、ディフダ=グリーンウッドだよ。」

 チューリップのフラーワはミラの攻撃をよけながら姿を変えてミラとそっくりの形の怪人になる。

「さあ、我が弟。一緒に帝国軍として戦おうじゃないか。そっちのほうが安全だ。これは敵としてではなく、君の兄として言っている。」

「嫌だ!」

「だったら力ずくで引き入れてやる!」

『フラーワ・ドライバー』

 彼は腰に量産型のフラーワドライバーを巻き、手の中には薔薇のフラーワエナジーが入る。

「さあ君たちも一緒に戦おう。シャウラ、ウェズン。」

 木の後ろからはシャウラとウェズンが出てくる。彼らはどちらも量産型のフラーワドライバーをつけている。

「いくぞ。ウェズン。」「ああ。シャウラ。」「僕もね。」

 彼らは前とは違い、感情のこもっていない声で話す。

「「「変身。」」」

『激しく燃える 情熱の赤! バラ!』

『『匂いは強烈、豪烈な赤!ラフレシア!』』

「俺が仮面ライダーソレイユだ。」「仮面ライダーラフレルだ。私たちは将軍様の手によって改造され、さらに強くなり軍事用になった。」

「私たちも行くよ!ミラ!」

「ああ!」

「変身!」『激しく燃える 情熱の赤! バラ!』

 その場にはソレイユが二人いて、片方は悪、片方は正義のソレイユだ。



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兄との闘い

「うおおおおおお!!!」

 二人のソレイユは互いにぶつかり合う。

「私たちは二人分の力だ!お前になんかまけない!」

「それはどうかな。僕一人で君ら二人分かもしれないよ。」

 その通り、二人のソレイユは互角であった。

 そして裂羅のほうも苦戦していた。今までソレイユが簡単に倒していた弱いはずの敵も、二体同時に、しかも強化されて戦ったら簡単に倒せるはずがない。

「君たちはディフダのペットでいいのか!」

「私たちは反乱軍のフラーワを殺す。それ以外教えられていない。」

「俺たちはそれに従っているだけだ。」

 やはり感情のない声で答える。それに裂羅は違和感を覚えて、ディフダに問う。

「おいディフダ!お前自分の部下に何をした!」

 ディフダは薔薇と戦うのを休まずに答える。

「何もしてないよ。強いて言えば、僕に従うように脳を改造したとか?」

「信じられない!本当にミラの兄なの?」

 薔薇が問うとディフダは余裕そうに答える。

「ああそうだよ。それより君の体、もうやばいんじゃない?」

 ディフダが言うように薔薇の体は傷だらけだった。

「エナジーを変えて!そしたら少しは治るよ!」

 ミラが言う。薔薇は蒲公英のエナジーを出してドライバーに入れる。

「チェンジエナジー!」

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

 一度も行ったことのない掛け声で薔薇はダンデリオンフォームへと変わる。

「お前にはできない行為だ!」

 薔薇が煽るとディフダは白い花のエナジーを持つ。

「残念。僕も違うの持ってるよ。」『コットンローズ!』「変身。」

 その瞬間、ディフダの前に男が入る。

「ソレイユ!とれた!」

『二つの色は 危険か!やりすぎか! コットンローズver.DANGER』

「お前がナイトメア様を一回倒した!」

「そ!俺がレグルスだよ。バラのエナジーはここで破壊するね。」

 その男は、押し入れに引きこもっていたレグルスだった。彼は奪ったエナジーを足の下に置き、勢いよく踏みつぶす。『バラ!』という音声とともに彼は足を上げると、プラスチックの破片と中から漏れた液体があるだけだった。

「これで偽物は消えたね!やったねソレイユ!」

「ふざけやがって!おい!ウェズン!シャウラ!やれ!」

 しかし返事はない。そこには敬一がいただけだった。

「あー、彼らね。サクラと一緒に戦いながらどっか行っちゃった。」

 仮面ライダー裂羅は変身を解除し、サクラが一人で戦っているのだ。

「何してんの敬一さん!これ使ったら倒せるよね!私これ使うから!」

 薔薇はドライバーから蒲公英のエナジーを抜き、敬一に渡す。そして薔薇はチューリップのエナジーを手に持つ。

「俺も変身する!」『Florwe Driver Proto』『Conivorous plants』

「変身!」「チェンジエナジー!」

『冠と盾と剣! 赤い戦士! チューリップ!』『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』

「俺たちが相手だ!」

 ディフダは何かを決めたように顔を動かした。

 

 そのころ、裂羅も変身していた。

「サクラ!お待たせ!」

「おそい!」

「いくよ!変身!」

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

「桜じゃないの!?」

 サクラはいきなりの新フォームに驚いている。

「仮面ライダー裂羅!ダンデリオンフォーム!」



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兄の決心

 仮面ライダー裂羅は初めての新フォーム、ダンデリオンフォームに変身した。

「こんなの裂羅じゃないじゃん!多無捕々じゃん!」

 サクラが言うが敬一は戦い始める。

「裂羅ノ剣!」

 裂羅が叫ぶと彼の手の中に桜風の剣が出てくる。

「さあ、お前たちを同時に倒す!」

『桜!』

 桜のフラーワエナジーを出し、剣のスロットに入れる。すると、近代的な待機音が流れる。

「裂羅・蒲公英切!!」

 裂羅はものすごい勢いでテイクバックを振り、そのまま風が大きな音を立てるくらいの速さで敵を横に切る。

「はあああああ!!!」

 あたりには大爆発が起こる。

「これでシャウラとウェズンともお別れか。」

 裂羅は変身を解除しながら言う。

「少し寂しいような、うれしいようなかんじね。」

「まあな。さて、薔薇のところに向かうか。また変身だ。」

 いつまでたってもサクラはドライバーになろうとしない。

「どうした?」

「たまには、人間の男と女みたいなことしない?」

 サクラは敬一の運転するバイクの後ろに乗り、しっかりと敬一につかまって、薔薇のところへ向かった。

 

 そのころ、薔薇たちはというと....

 薔薇はチューリップフォームの効果で盾と剣を持っていた。彼女は剣をディフダに突き付けて言う。

「お前が弟をどんなに悪に染めようとしても、私の相棒は正義に生きる!」

 ディフダはあたりを見回すような素振りをして、にやりと微笑み、最後には声を出して笑う。

「はっはっはっはっは!!僕はこんな世界は初めて見たよ!やっぱり僕たちフラーワは、人間と相性がいいんだ!ははは。」

「何を笑っている..!」

 ディフダは笑うのをやめずに、動きを止めて言う。

「僕は人間が好きだ!地球侵略計画、フラーワ全土ナイトメア帝国化計画はなしにすることを上に言っとくよ。だからミラ、お前はその人間の言う正義のために生きろ。僕はこんなところで失礼するよ。」

 ソレイユはあっけにとられている。

「さ、この辺でいいかな。」

 ディフダは時空の割れ目を作り、そこに入る。

「それじゃあ皆さん。さようなら。あ、ミラ、君にはこれをあげる。正義のために戦えよ?」

 ディフダは割れ目の中から見たことのあるようなないような花のエナジーを投げる。

「これは..?」

『パンジー!』

 その花の正体はパンジーだった。それを確認したら、ちょうど敬一達が到着した。

「あれ?ディフダは?」

「帰ったよ。平和に解決するように上に言っとくって。」

「そっか。ならよかったよ。戻ろう。」

「平和に解決したらこの冒険が終わっちゃうんだね。」

「だね。まあ結果的にはよかったのかもね。」

「一週間くらいゆっくりしてから帰りな。」

「そうさせてもらうよ。」

 ミラ達は今日は帰り、ゆっくりと寝た。

 

「はあ~。やっぱり人間は最高だなぁ。僕も人間になりたいみたいな?はは。」

 ミラの兄、ディフダはソレイユの世界に戻り、地球の余韻に浸っていた。

「ディフダ=グリーンウッド。ここで死ね。」

「へ?」

 いきなり、ディフダは何者かに腹を刺された。

「お前....!!」

 口から出てくる紫色の血液はディフダの顔をなぞった。

「ドライバーとエナジーはもらっておく。さよならを言うのは人生にのようだな。」

 その何者かは彼のドライバーとエナジーをもって、仕事に戻った。



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ナイトメアの登場

「久しぶりだね、ナイトメア。俺だよ、覚えてる?」

 洞窟で2人のライダーが話している。

「ああ、久しぶりだ。あの頃はお互い若かったなぁ。レグルス。」

「わかってると思うけど、俺は今日は君を倒しに来たんじゃないよ。」

 レグルスは四角い物体のボタンをポケットの中で押す。

「エネルギーが吸われてる気がするのは気のせいかな?」

「気のせいじゃないかな。」

 そう言ってレグルスはドライバーを巻く。

『カニバルドライバー』

「おやおや、お前は変わってないねえ。だが今のお前の力じゃ俺には勝てないんだよ。」

「そんなことぐらい知ってるよ。ねえ、君はソレイユに近づいて何をする気?」

 レグルスは変身して攻撃を始める。

「お前は気づいていたか。レグルス。今回はお前の組織に攻撃はしない。だからせいぜい仲良くやろうよ。」

 老けた声でナイトメアはいい、レグルスを蹴り飛ばす。

「じゃあな。ソレイユには全部話すつもりだ。」

 下からとがった葉が出てきたと思えば、それは花火のようなきれいな花を咲かせ、それが消えるとともにナイトメアは消えていった。

「まったく、ソレイユはなんていうだろうかな。あは。」

 

◆◇◆◇

 

 ディフダとの件がいい方向に終わり、ミラ達は帰る準備をしている中、レグルスがバイトから帰ってきた。

「ただいまー。」

「おかえりー、ってここ私の家だし!早く準備して?!」

 薔薇が突っ込みを入れると、レグルスはやれやれというように椅子に座る。

「ああ、そのことなんだけど。」

「うん?」

「僕らまだ当分お世話になるかもね。」

 少しの間沈黙が流れる。

「え?レグルスにしては面白くない冗談だね。」

 ミラ達は信じない。

「今にわかるさ。」

「あ、これ。」

 レグルスが言ったとたんに敬一がスマホを見せる。

「フラーワの情報?いったいなんで?ディフダがかえって説得したんじゃないの?」

 薔薇はみんなに言う。サクラが答える。

「ディフダ、死んだとか?」

「いったい誰に?」

 敬一が言う。

「とりあえず、行かないと被害が増えちゃうよ~。」

 レグルスがまとめてそれぞれのバイクで現場へ向かう。

「うわー。これはひどいねー。」

 現場は工場で、フラーワの巣窟となっていた。

「みんな。いくよ。」

『『フラーワ....フラーワ...フラーワ...』』『Carnivorou growin' now Carnivorou growin' now』

「「「変身!」」」

『バラ!』『サクラ!』『Ca Ca Ca Carnivorou』

 フラーワ達は音で気づいたのかソレイユたちを襲ってくる。ソレイユたちももちろん戦う。

「なんか黒くない?」

「多分バラだ!薔薇、これはエナジーにすればソレイユを強化できるかも!」

「まじで!いっくぞー!!チェンジエナジー!」

『冠と盾と剣! 赤い戦士! チューリップ!』

「またまた量が多いな!俺たちもチェンジエナジーだ!薔薇、エナジーくれ!」「いいよ!それ!」

『寒波でも耐える芸術花伝! パンジー!』

「はっ!はっ!」

 パンジーフォームになった裂羅は氷の弓で戦う。

『パンジー!』

 エナジーを弓のスロットに入れるとかっこよさげの音声が鳴る。

「凍れ!パンジーブリーズエクスプロージョン!」

 弓からは無数の氷の矢が発射され、敵に当たるとそれは凍る。それをソレイユがチューリップの剣で倒す。

「ソレイユ!早くエナジーに変えろ!」

 裂羅は怒鳴る。

「そんなに言わなくても...」

 そう呟きながらエナジーにして、音声を確認する。

『ブラックローズ!』

 それはいつものエナジーより低い声で、どことなく強い力を感じた。

「それ貸して?」

「はい。」

 ソレイユはブラックローズのエナジーを裂羅に渡す。すると、敬一は変身を解除してサクラを押しのける。

「何するのよ!」

「やっとこれが俺のものになる時が来た。協力ありがとう。ソレイユ。」

 敬一はどこからかフラーワドライバーを出し、腰に巻き付ける。

「まさか...」

 サクラの察したような声に無視をして敬一はまたどこからか知らない大きなエナジーを出す。

「ははははは。みんな驚いてるなあ。俺は予想通りの反応でうれしいよ。ソレイユ、悪いけどパンジーのエナジーは貰っていくよ。」

 誰の言葉も待たずに、敬一は大きなエナジーに普通のエナジーを差し込む。

『ナイトメアフラワー!』『ユーカリ!』

 待機音が鳴る。

「俺がナイトメアだ。ははははは!変身!」

『悪夢!ユーカリ!メアユーカリ!』

 ナイトメアは仮面ライダーメアに変身した。

「またあおう。仮面ライダーたちよ。」

 ユーカリの花は彼を覆い、それが消えるとともに彼も消えていった。



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フラーワの世界偏
敵のナイトメア


 三日が経った。サクラはずっと悲しんでおり、敬一のいない日常はいつもより少しだけ寂しかった。

 サクラは敬一がおかしい姿を二回だけ見ていたが、それはみんなに心配をかけないでという敬一の要望により報告しなかったのだ。

「そろそろ、私たちも動かなきゃね。」

 薔薇が提案する。しかしミラは賛同しなった。

「どうして?」と薔薇が聞くと、レグルスが答える。

「俺たちフラーワはしょせん花の化け物。悲しいことがあるとすぐに萎れて何日も戻れないんだよ。」

 ミラもうなずく。

「そっか。」

 しかしレグルスはカバンからドライバーを取り出す。

「でも、それは普通のフラーワの意見。俺らは仮面ライダーだし、敵が目の前に現れてくれたんだよ。行動するにきまってんじゃん!ミラ、サクラも悲しんでる場合じゃないよ。」

 レグルスはサクラが中で泣いている押し入れを開ける。

「ほら、敬一の体を取り戻すチャンスだよ!サクラ!」

「でも...私変身できない..」

 サクラは泣き止んだが変身しないと力が足りない。

「なんとこのセルフのフラーワドライバーを貸し出します!全部《秘密結社エボル》製ね。」

 秘密結社エボルとは、レグルスがリーダー幹部の一人のサイバー犯罪組織だ。

「わかったわ。ナイトメアと直接私が戦うわ。」

 そういい舞台は近くの公園に代わる。何かの前兆なのか公園には限りなく緊張感が流れる。

「僕たちはどうすればいいの?レグルス。」

「仮面ライダーソレイユが現れるところに、ナイトメアは現れる。だからソレイユに変身して。」

「わかった。変身!」

 薔薇のフラーワエナジーをベルトに挿入する。

 

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』

 

 赤いマスクに緑を基調としたライダーがそこに現れた。

「仮面ライダーソレイユ。ここに見参。」

 

「仮面ライダー。現れたか。」

 聞いたことのある男声が聞こえ、その場にはユーカリのとがった葉が地面をつく。

「久しぶりだな。仮面ライダーソレイユ。」

 仮面ライダーメア・ユーカリフォームだ。

「お前ふざけんなよ!うらぁ!!」

 ミラが薔薇の体を動かし、殴りかかる。

「無駄だよ。」

 メアは地面からユーカリの葉をだし、跳ね返す。

「まあまあお手柔らかに。本気を出すのはソレイユの究極を見つけてからだ。」

「その強さで....本気じゃない..だと..」

 ミラは驚き、体が震える。

「君たちはおろかだ。俺はソレイユに初めて会ったときからずっと、仮面ライダー裂羅としてだましていたんだよ。なのに誰も気づかなかった。唯一気づいたのが途中から入ったレグルスだった。まあ彼も最近だったんだが。俺はこれからもフラーワの世界を支配し続けるつもりだ。」

 レグルスは自分の名前が出てきたことにやれやれとそぶりを見せ、そのまま聞く。

「私も...だましていたの?」

 サクラはずっと一緒にいた敬一がずっとナイトメアだったことを知り、またもや絶望する。

「敵として言わせてもらうが、お前たちは仮面ライダーとして戦うには本気を出していなさすぎる。本気の戦いをしたいならフラーワの世界を俺達から救って見せろ!俺はラスボスとしてちょくちょく現れる!お前らは本気で世界を救え!わかったな!」

 みんなは決意する。空は青く快晴だ。

 

「返事は!」

 

「「「「はい!」」」」

 

「よろしい。それじゃあ俺を倒せるようになってからまたかかってこい。ソレイユ!お前にはこれをやる!ラスボスからのヒントだ。」

 メアはソレイユに黒い何かを投げる。それはエナジーのようだ。

 

『ブラックローズ!』

 

 黒く透明のその機械は、低い声で鳴り響く。

「これが強化フォーム...」

「ブラックローズだね。」

 メアは割れ目を作り出し、ソレイユたちを包み込む。

「じゃあな。俺の敵。」

 ソレイユたちはその場から消え去った。

「どんどん強くなれ。俺の息子よ。」

 そう呟いてメアも自らを割れ目に包み、割れ目ごと消え去った。



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南の都市 センニブル
大海原でのソレイユ


 一行はフラーワの世界についてから宿を借り、そこに住みこんでいた。舞台は少し前のヨーロッパ風で、町の人も気軽に受け入れてくれた。

「反乱とかはそんなにないね。」

 薔薇が言うが、ミラがそれを否定する。

「今はちょっと落ち着いてるだけで、本番はよるさ。」

 ミラと薔薇の部屋と、サクラとレグルスの部屋で分かれている。

「ガランガラン」

 ミラ達の部屋に、ベルが鳴る。

「僕が出るよ。はい?」

 ミラが扉を開けると、そこには鎧を着た金髪の二十代くらいの気の強そうな女性が立っていた。

「誰..ですか..?」

 女性はすぐに答える。

「私はジャンヌ=ハイヤー、ここ、ムウェンの騎士だ。君たちは...仮面ライダーソレイユだね。今すぐに城に来てほしい。」

「失礼ですが、人間ですか?」

 ジャンヌはフラーワにしてはやけに人間すぎる。

「いや、私はサボテンだ。頑張って人間に寄せてみたが、ところどころに棘や葉が残っている。ほら。」

「いやいや見せなくていいんですが。準備をするのですぐに待っていてください。」

 ミラと薔薇はすぐに準備をし、サクラとレグルスを呼んだ。彼らも支度が整うと、一緒に城へ向かった。

「いやー。仮面ライダーというものに出会えて私は実に光栄だ。あ、私たちはドライバーになる訓練を受けてないので変身はできないんだ。まあ万が一の時には私のエナジーを使って構わない。」

 ジャンヌは昔から仮面ライダーのうわさを聞いており、仮面ライダーにあこがれていたのだ。

「ここが城だ。大きいだろ。私が《誠実なる青王子》のところまで案内する。ついてこい。」

 おとなしくついていくと、そこには別名に《誠実なる青王子》を持つムウェンの王子がいた。

「ムウェンへようこそ。仮面ライダーたち。私が君たちに任せたいのはただ一つ。ムウェンをナイトメアから守ること。ナイトメアによれば、ムウェンは君たちの世界の君たちの国とほとんど同じ形をしているらしい。ナイトメアは南から攻めると言い残した。今ならまだ間に合う。だから南から守ってほしい。頼んだぞ。仮面ライダー。」

 王子直々に頼まれたことに、ミラ達は断るわけにはいかなかった。

「わかりました。」といい近くの船着場から南行の船へ乗った。

 船にはジャンヌとその仲間四人が同行し、旅が始まった。思いのほか船は早く動き、すぐに大海原まででた。

「長い旅になりそうだね。レグルス、サクラ。」

「私は早く敬一に会いたいわ。それだけを目指して戦うの。」

「俺はナイトメアを知りたい。それだけさ。」

 そんなことを話していると、いきなり騎士の一人が叫んだ。

「前からナイトメアマークの船が来た!戦闘用意!」

「なんだと!?仮面ライダー!敵だ!変身の準備をしてくれ!」

 敵船は大きく、どんどんこちらに近づいてくる。

「そこに仮面ライダーがいるな?」

 敵の船員は言う。

「ああ。いるがそれがどうした。」

 ジャンヌが答える。

「なら話は早い。ここでこの船を沈没させるだけさ。戦闘用意だ。」

 その船員は怪人からまた更に姿を変える。

「強化怪人態が使えるのか!」

 ジャンヌは剣を挙げて、叫ぶ。

「戦争だー!早く船員がゼロになったほうが負けだ!命を懸けて戦え!」

 薔薇達も上に出ると、ベルトを巻き変身する。

『フラーワ...フラーワ...』『フラーワ...フラーワ...』『Carnivorou growin' now Carnivorou growin' now』



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船上の戦い

 仮面ライダーソレイユと仮面ライダーカニバル、そしてサクラとジャンヌは敵の船上に乗り込み、戦う。

「負けねえよ!俺たちは強いからな!」

「そんなことない!私たちは仮面ライダーだ!はああああああ!!!」

 ソレイユは棘の腕でパンチするが、それはしっかりと入らない。

「硬い...!」

 彼女はもう一度同じくパンチをするが、またもや入らない。

「なんで..!」

「仮面ライダーも大したことねぇな!」

 今度は敵がこぶしを握る。そしてソレイユにパンチを入れる。

「うらぁ!!」

「うっ!!!」

 パンチはソレイユの急所に入り、飛ばされたソレイユは倒れこむ。

「薔薇、いったん引こう。」

 ミラがソレイユの体を操り起き上がり、自分の船に戻ろうとする。が、「そうはさせねえよ。」と道は敵に回り込まれていた。

「地球から来た仮面ライダーなんてしょせん人間だ。やっちまえ。」

 ソレイユをパンチした上級っぽいフラーワが言うと、五人ほどのフラーワがだんだんと近づく。

「この世界は戦争真っ盛り。そこに足を踏み入れたらただじゃ帰さねえよ!!」

 フラーワ達がソレイユにとびかかってきたとき、そこに閃光が走る。

「うわああ!」「なんで!」「ぎゃあ!!」

 フラーワ達の悲鳴とともに、彼らが久しぶりに見る姿が現れた。

 

『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』

 

 仮面ライダー裂羅だった。裂羅は慣れたように剣を使って下っ端だと思われる敵を薙ぎ払ってゆく。

「いやー、騎士として鍛えた腕が光るな!」

 仮面ライダー裂羅、それはムウェンの騎士、ジャンヌだった。

 これにはレグルスも驚いて見ていた。

「サクラ!いいの?」

「もちろん!」

 裂羅が参戦して形勢逆転かと思えば、意外にもそうではなかった。

「馬鹿か。一人がドライバーになってただでさえ少ない人数が減ってるじゃないか。俺たちも行くぞ。」

 一人が言うと、船の中からまた更に強そうなフラーワが出てくる。

 薔薇に戻ったソレイユが攻撃してもなかなか入らない。

「またこのタイプか...!」

「俺は硬いよ姉ちゃん。実は俺の俺も硬いんだ。試してみない?」

 一人のフラーワがソレイユに近づく。しかしその言葉にソレイユは彼を押し飛ばす。

「死ね!」

 するとそれに怒ったのか彼はソレイユに襲い掛かる。

「調子に乗るなよてめぇ!女だからって優しくしてればいい気になりやがって!死ね!死ね!うらぁ!俺がぶっ殺してやるよ!」

 彼はソレイユを押し倒し、興奮状態で彼女のマスクを殴りながら叫ぶ。

「お前を殺した後この世界と一緒にお前の体もばらばらに犯してやるよ!覚悟しとけ死ね!」

「あちゃー、あいつすぐ怒るし怒るとああだから好きじゃないんだよねえ。ま、僕たちは他から倒しますか。」

 ソレイユはずっと殴られている。

「お前.....うっ!...ああっ!...」

 その間も裂羅とカニバルは戦い続けている。

「ほっ!はっ!!てや!」

「君たちもなかなか強いね!でも私は負けないよ!ほらっ!」

 ソレイユが半分意識が飛んでいるところに、大きなユーカリの花が咲く。ナイトメアだ。

「ナイトメア様!今、仮面ライダーたちを倒しているところでした!」

 ソレイユを殴っていたフラーワが立ち上がりすぐに挨拶をする。

「おおー、そうかそうか。でもこれは君の感情をぶつけてるだけだよね?残念ながらそんな花材は俺は求めていない。」

 そういってナイトメアは敬一のまま彼を蹴り、その勢いで彼は大海原に落下する。

「仲間にまでそんなことを...!」

「なんでそんな反応なんだよ。俺はお前たちが負けそうなところを救ったじゃないか。というかソレイユ!お前はブラックローズを使えてないじゃないか。」

 ソレイユはブラックローズのエナジーを手に取る。

「それだ。それを上手に使えばこのピンチを抜けることができたのに、全く俺は残念だよ。」

 ナイトメアは今度はフラーワに向けていう。

「お前らもなあ。あんまり強化怪人態を乱用したら自分の力に負けて危ないぞ。今日みたいな時はいいが、弱い市民とかのためには使わなくていい。こっちも残念だ。」

 文句だけを残してナイトメアは自身の武器にユーカリのエナジーをセットする。

「邪魔して悪かったな。どっちも負けないように頑張れよ。」

『ユーカリ!』

 武器からはユーカリの花が咲き、それが消えるとともに彼も消え去った。

「よし、再開しよっか。」

「うおおおおお!!!」

 ソレイユたちの船の戦いはまだ終わらない。



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ブラックのソレイユ

 戦を再開したソレイユたちは、まだまだ劣勢だった。

「ジャンヌ!これを!」

 ソレイユは裂羅に蒲公英のエナジーを投げる。彼女はそれを受け取り、ドライバーに入れる。

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!』

「おお!蒲公英か!これは使えるかもしれないね!」

 ジャンヌは剣のスロットに蒲公英のエナジーを入れ、それで敵をなぎ倒す。

 これでやっと強いフラーワが一体倒れた。

「これで一体か。薔薇!ブラックローズを使ってみて!」

「うん!」

『ブラックローズ!!』

 低い声の黒いバラのエナジーは船上に鳴り響く。

 ソレイユはそれを静かにドライバーにセットする。『フラーワ...フラーワ...』と待機音が鳴る。ソレイユの周りにはどこから生えてきたのか大きな黒いバラが咲く。

「お前らやっちまえ!!」

 強いフラーワが攻撃するが、ライダーの変身中は無敵なので全く効かない。

 

「チェンジエナジー!」

 

 ソレイユはエナジーをさらに押し込み、周りの黒いバラの蔓が伸び、ソレイユに巻き付き、締め付ける。それのせいか、彼女はかなり苦しむ。

「あああああああ!!!!」

 

『その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』

 

 ソレイユの体は黒を基調としたバラになり、通常の赤いバラと形状もかなり変わっている。

「うらあああああああああああああ!!!」

 ソレイユは強いフラーワをどんどん蹴散らしてゆく。

「おおっ!強いね!」

「そうだねレグルス!私にはまねできないよ!」

 しかし、ソレイユの様子が少し変だ。彼女は一体倒すたびに体に稲妻が走る。そのたびに彼女は苦しむ。

「ソレイユ!大丈夫かい?」

 彼女は返事をしない。

「ああああああああああああああああ!!!」

 最後の一体を残して、ついに彼女は倒れた。

「あいつが倒れたらこっちのもんだ!うらっ!」

 倒れたソレイユに最後のフラーワがキックを入れようとするが、横からレグルスがキックを見舞う。

「なわけないでしょ!」

 フラーワは海に落下する。フラーワは全滅した。

「勝った...の?」

 レグルスが言うとジャンヌが答える。

「これでこの船を沈没させれば勝ちさ。」

 レグルスはソレイユを変身解除させ、自分の船に寝かすと敵の船から大きめのエナジーを見つけた。。

「これか...」

 彼はそれをポケットにしまい自分の船に戻った。

 ちょうどその時ジャンヌに氷を当てられた薔薇とミラが目を覚ました。

「は!!船は?」

「今から沈没させるところ。それより大丈夫?」

「私は大丈夫。多分ミラも大丈夫だと思う。」

「僕は大丈夫。」

 ミラは片手でグッドサインをする。

「いやー、みんな無事でよかった。さ、何もなければあと二時間ちょっとでつくよ!」



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フラーワ世界のあらすじ

 一行はフラーワの船を沈めた後は、意外にも普通に走り、南の港へ着いた。しかしそこはとても荒れ果てており、海のほうが平和ともとられた。

 壊れかけの看板には《センニブル》と書いてあった。

「センニブル市....僕は昔行ったことがあるけど、ずいぶんと荒れ果てたなぁ。」

 ミラは転がってる石を拾いながら言う。

「まさに激戦区、といったところだね。王子が言うにはこの辺に私たちの宿舎があるらしいが...」

 ジャンヌは地図を見て、廃墟を指さす。

「ジャンヌ、まさかここじゃないよね?」

 レグルスは嫌がるが、ジャンヌは首を横に振って入っていく。あとから彼らもついていくが、その中にはぎりぎりベッドと呼べるかどうかのものとラジオが人数分あるだけだった。

「とりあえず荷物おいて休もう。」

 薔薇はベッドに荷物を置き、疲れた体を癒すために果物を食べる。それは敵の船にあったもので、案外とてもおいしかったのだ。

「ミラ、一回この国の情報を整理してよ。」

 薔薇はミラにみかんを渡す。

「わかったよ。まずこの世界は薔薇がいた地球より発展が遅れてる。ただたまに地球に留学に行ったりしてるからめちゃくちゃ発展してるものもあるんだけど、基本的には遅れてる。」

「うん。」

「今回僕らの国、ムウェンが戦争状態に陥ってるのは隣国、《ランダン》からのいきなりの戦線布告からだといわれている。で、ランダンの元帥が僕たちの敵、ナイトメアだ。」

 ミラはみかんのかけらを一つ見せて、食べる。

「ここまでは倫理的には何もおかしくはない。だけど問題はナイトメアのほうなんだ。彼はもともとムウェンの防衛大臣だった。けど上がナイトメアの要望に応えなかったかなんかでナイトメアは大暴れ、以後昔からのライバル国家、ランダンと裏で手を組みムウェンを破壊しようとした。」

 そこでレグルスが口をはさむ。

「その時に、俺と仲間たちが一回はナイトメアを討伐したんだ。」

「そう、その時にはナイトメアを慕っていた人たちは内戦に巻きこまれてたくさん死んだ。」

 彼はみかんのかけらを二つ一気に食べる。

「今回ナイトメアが一番上に立って支配しようとしてるのはなんでかが分からないんだ。普通に考えたら国の領土を広げるんだけど、ランダンは去年に広い領土を手に入れて大きいはずなんだよ。」

 彼はみかんを食べ終わると、皮をレグルスに投げる。レグルスはそれをキャッチすると目の上で皮を絞り、痛がる。

「ほえー。それで人間の力を借りたってわけ?」

「いや、それが僕にはわからないんだ。僕は箱詰めされて薔薇の家で開封されるまでの記憶が一切ないんだ。きっとそれはサクラも同じだと思う。」

 サクラは首を縦に振る。

「教えてやろうか?」

 いきなり、聞きなれた声が聞こえた。

「あ、さっきぶりだな。ブラックローズは使えたか?これからいうことは全部真実だ。ミラ、サクラ、レグルス、薔薇、覚悟はできてるか?ああ、ジャンヌもいたか。」

 空間に緊張が走り、全員がうなずく。



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ソレイユの真実

「これを聞いたお前たちがどうなろうと俺は知らない。ただ俺を倒すことだけはあきらめるな。」

 ミラ、サクラ、レグルスの三人は万が一に備えて怪人態になる。

「まあそう焦るなって。」

 彼は咳ばらいをし、改まって話し始める。

「まず今のミラの話の間違ったところから直そう。俺は上に何も要望なんてしてない。全部俺の勝手な判断で昔の戦争を起こした。あれから俺は植物を支配することにはまってしまったんだよ。」

 ナイトメアは笑いながら言う。

「その戦争はなんで起こしたんだよ。」

「あの戦争は俺がランダン政府をだまして報復という名で起こした。ムウェン政府がランダンの国民をエナジーにしてるって言ったんだ。そしたらあいつらは本気にして戦争を起こした。そこで俺は元帥を任されたんだよ。」

 ナイトメアは武勇伝のようにそれを語る。

「でその時、俺はレグルスに倒された。もしそうだったら今は元帥を任されてないだろう。レグルス、お前には感謝してるよ。レグルスは俺に日本円で三十億やるから倒れたふりをしてくれと頼んだ。俺は三十億をもらい、レグルスに首を落とされた。そのあと仲間の治癒能力で元に戻った俺は仲間たちと一緒にランダンへ戻った。」

 レグルスは口笛を吹きごまかしている。

「なんでレグルスもそんなことしてるんだよ!」

「まだ話はあるぞ。ミラ!サクラ!お前が人間のところに送られた時の話だ。」

 ミラとサクラは息をのむ。

「お前らを眠らせて箱詰めしたのはこの俺だ。その時はこの戦争は始まってなかった。そのあと戦争をおこし、その映像をお前らの脳内に植え付けて、適当な人間の住所に送り付けた。俺の予想通り、お前らは見事人間に助けを求めてここまでやってきた。よくできた話だろう?」

 ミラは話が何も分かってないことに気づくと、それを一気にぶつけた。

「おい!いったいなんでサクラの送り先がお前なんだよ!なんでお前は仮面ライダーを求めたんだよ!」

「ああ。敬一のことは後々わかってくるだろう。俺が仮面ライダーを求めたのはただ刺激がほしかっただけさ。」

 ミラは怒りナイトメアに襲い掛かろうとするが、レグルスとサクラが全力で止める。

「ついでに言っとくがレグルス!お前がフラーワドライバープロトを衝動的に手に入れようとしたのもあの時だけ割れ目が使えたのも偶然じゃないからな!」

「俺?それはうそでしょ。俺今でも割れ目使えるよ。ほら。」

 レグルスは手で四角を描く、が、何も起こらない。

「え!?」

「俺はお前が初めて人間を乗っ取ったときにフラーワドライバープロトの映像をお前の脳内に一瞬だけ映し出した。その効果だ。お前が仮面ライダーになることは俺にプログラミングされてたんだよ。しかもお前と戦った時に五回だけ割れ目の力を使えるようにするって言っただろ!これに関してはお前が忘れてるだけだ!」

 レグルスは自分の頭をたたく。

「それじゃあお前達の強さを見てやる。外にいるからかかってこい。」

「わかったよ!見てろよ、私たちの変身。」



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ナイトメアとの闘い

「変身!」「変身。」「変身さ!」

『バラ!』『Cournivour』『サクラ!』

 彼らはナイトメアを追いかけて外に出る。外ではナイトメアも変身していた。

「さあ!俺にこの旅の成果を見せてみろ!」

「うおおおおおお!!!」

 ソレイユは勢いをつけてナイトメアの腹にパンチを一つ入れる。

『蒲公英!蒲公英!』

 そのあとすぐにエナジーを変え、三人に分裂する。

「はっ!!」

「動きがどんどん早くなってるな!いいぞソレイユ!うわっ!」

 ナイトメアがソレイユに気を取られているすきにカニバルがそこにキックを入れる。

「レグルスもだんだん回復してきたか。」

 しかしナイトメアも黙ってはいない。彼は地面から大きな木をはやす。それはユーカリの木だ。

 木は自由自在に動き、ソレイユをなぎ倒す。

「そっちがそれなら俺はこれだ!」

 カニバルが地面に手をかざすとそこから巨大な食虫植物が出てきた。それはナイトメアのユーカリの木と戦っている。

「なんだやるじゃないか。ただまだ俺に強いダメージは食らわせられてないがな。はっはっは。」

 ナイトメアは武器を持つ。

『ナイトメアドリル!』

『ナイトメアフラワー!』

 ナイトメアフラワーのエナジーをドリルにセットし、ナイトメアは技を繰りだす。

「ソレイユ、カニバル!まだまだだ!はっ!!」

 ナイトメアはドリルをソレイユに近づけて振り回し、当て、ソレイユは飛ばされる。同じことをカニバルにもやる。

「うわぁ!!」「痛い!」

 そして二人をまとめて、飛び上がり、ライダーキックをする。その時のナイトメアはドリルのようだった。

「なかなかやるなと思ったがまだまだなようだな。ん?」

 ライダーキックをし終えた仮面ライダーメアの腹からは何かとがったものが貫通していた。

「お前...いつの間に...!?」

「私はムウェンの騎士だ!気配を消すのもお手の物さ!」

 裂羅が剣を抜くと、ナイトメアは変身を解除した。

「おいおい。ブラックローズを使ってないじゃないか。仕方ない。これはお前にやろう、ジャンヌ。」

 ジャンヌは花瓶のようなものをもらう。それは半透明でボタンがついていた。

「それは! ソレイユの強化アイテム...」

 ボロボロのレグルスが言う。

「薔薇!ブラックローズの時に苦しまずに変身できるアイテムがある!だから起きて!」

 薔薇はレグルスに起こされる。

「ふぇ?」

 ジャンヌはそれを受け取り、ボタンを押す。

 

『フラーワベース!』

 

「ベースは英語で花瓶。それはソレイユがブラックローズに変身するときにエナジーから分泌されるエネルギーを軽減するアイテムだ。もちろん、直接変身したほうが力は強いが、その分自分に与えられるダメージも強い。だがそれがあれば自分へのダメージはほぼゼロになる。代わりに力は少しだけ弱まるが今のお前には十分だろう。どうだ。まあせいぜいがんばれよ。しばらくしたら俺は北に行く。その時にまた声をかけるよ。」

 そのあと、ミラ、薔薇、レグルスの三人は二人に介抱されて傷を治した。彼らの戦いはまだまだ続く。



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仮面ライダーのひなた

 フラーワの世界の小さな国、ムウェン、その中の南にあるセンニブル市は戦争の真っ盛りだ。そんな中、一人の人間の女性が立ちあがった。彼女の名は、ひなた。苗字はない。

「この戦争、あたしが終わらせてやるよ!!」

『フラーワドライバー!』『ヒマワリ!』『フラーワ...フラーワ...フラーワ...』

 彼女は自分から激戦区に行き、ドライバーをつけ、変身する。

「変身!」『太陽に向かう大きなフェイス! ヒマワリ!ヒマワリ!』

 天真爛漫な彼女は仮面ライダーだ。十年前にフラーワ世界に迷い込んでからずっとフラーワに育てられ、今はフラーワ達を悪から守っている。

「私はフラーワの平和を守るライダー!仮面ライダーサン!」

 そういうと彼女はランダンの強化怪人態フラーワに一つ蹴りを与える。するとそれは彼女の力に耐えられず、その場で爆発とともに消滅する。しかもそこにはそれのものと思われるエナジーが落ちる。

「あたしにはこれは使えない。」

 彼女は寂しそうにエナジーを拾い、見て、それをポケットに入れる。

「いつかあたしにも人間の恋人ができるのかな。」

 彼女は恋に飢えている。長年フラーワしか見ていないので、一度でも人間を見てみたいのだった。

「俺が恋人になってやるよ。」

 彼女に声がかかる。

「誰?」

「俺は湊敬一。お前と一緒でフラーワ世界に迷い込んだのさ。」

 彼は湊敬一、人間、のふりをしたナイトメアだ。

「ほんと!?」

「ほんとだよ。だが俺は十年以上お前以外の人間を見ていない。だから俺も恋がしてみたいんだ。俺がお前の恋人になりたい。恋人じゃなくても、人間同士仲良くしよう。」

「なりたい!あたしあんたと恋人になる!あたしの名前はひなた!よろしく!」

「これで今日から俺とお前は恋人同士だ。さて、お前はナイトメアからムウェンを守りたいんだろ?」

 ナイトメアはうまい口で彼女を誘っていく。

「ああ。」

「だったらいい情報を教えてやる。もうすぐナイトメアに言われて地球から仮面ライダーがやってくる。彼らはランダン軍を攻撃するふりをしてこの地を征服しようとしてるらしいんだ。その名はソレイユ、裂羅、カニバルだ。お前の強さなら簡単に勝てるはずだ。」

 彼女は彼がナイトメアだとわからないまま、標的をソレイユに当てる。

「わかったよ。あたしがこの国を守る。」

 ナイトメアは彼女が簡単に了承してくれたのでとてもうれしがる。

「面白くなってきたぞ~~。」

 彼は自らの基地に戻ろうとする。彼女はそれを引き留める。

「敬一、あたしたち恋人だよね。」

「ああ。付き合いたての恋人が一日中一緒にいられるわけじゃない。じゃあな。」

 彼女が腑に落ちないまま、ナイトメアはがれきの陰に消えていく。

「まあいっか。」

 彼女は気を取り直してランダン軍のフラーワと戦いに出ていく。



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サンとの闘い

 ソレイユ一行がセンニブルに来てから一日が経った。傷は治ったが、いろいろ疲れたという理由でずっと廃墟で休んでいた。

「そろそろ、本来の目的にうつりますか。」

 薔薇が言う。薔薇以外のみんなは全員健康だったので勿論了承し、その場を後にする。

「で、全滅させればいいんだっけ?」

「そうだ。仮面ライダーの使命はそれさ!」

 ジャンヌは外に出ると一目散に敵に攻撃を仕掛ける。

「はぁ!」

 彼女は剣でフラーワを一刺し、できなかった。

「なんで!?」

 彼女が戸惑っている間にフラーワは彼女を投げ飛ばす。

「うわぁ!」

 彼女は変身したカニバルにキャッチされた。

「敵がどんどん強くなっている!」

 それを聞いた薔薇たちはすぐに変身する。

『蒲公英!』『Counivour』

 ソレイユはさっきジャンヌを投げ飛ばしたフラーワを攻撃する。

「はぁ!!」

 しかしそのフラーワはとても硬い。簡単にはダメージを与えられなかった。

「それでも数を増やせばこっちのもの!」

 蒲公英のソレイユは三人に増え、同時に攻撃をする。

 レグルスは敵を吊り上げて落とすという作業を繰り返していたが、食虫植物は剣によって切られ、自身で戦うしかなかった。

「なんでこんな硬いの!」

 ソレイユたちは全然ダメージを与えられない。ただ一方的にやられているだけだ。

 とそこに、ある一人の仮面ライダーが来る。それは橙色を基調としたかわいらしい見た目のライダーだった。

「最近はランダン政府の非人道的な花体実験で強制的に体を硬くさせられたフラーワが増えている。それはお前らが知ってることだろ。ソレイユ、カニバル、裂羅。今からあたしはお前らを倒す!」

 それはソレイユが戦っていたフラーワを一撃で倒しながら言う。

「ちょっと待って!あなたは誰で、なんで私たちに敵意があるの!」

 薔薇が聞く。ライダーは剣を持ち、いう。

「あたしは仮面ライダーサン。恋人に言われてムウェン侵略の人間を倒すという使命を持った。」

 サンはまずレグルスのほうに向かった。

「俺!?いいよ。かかってきな。」

 レグルスはいつものようにサンの下に食虫植物をはやし、吊り上げる。

「卑怯な手は嫌いだ!」

 しかし、サンはその頭を切り落とし、空中からレグルスのほうに向かってくる。

「なんで!?」

「うおおおおお!!」『ヒマワリ!』

 サンはレグルスを切り落とす。

「うわああああ!!」

 レグルスは大爆発を起こし、飛ばされる。

「こんどはお前だ。」

 サンはそのままの勢いで今度は裂羅に向かう。

「仕方ないね!私の剣術、見せてやろう!」

 裂羅はサンの右に行き、上から切り落とすと見せかけて足に怪我を負わせるという手を考えていたので、まず右に向かった。しかし、サンはそれが読めていた。

「あたしの剣術のほうがまだ上だ!」

 裂羅はサンに胸を刺されると悟ったので、それをよけるためによろける。が、そこを狙われてしまった。

「はあっ!!」

 裂羅は何も言う暇もなく、サンにやられてしまった。

「最後はお前だ。」

 サンは迷いもなくソレイユに近づく。ソレイユも戦う準備をする。

『バラ!』「仕方ない。チェンジエナジー。」『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』

 ソレイユはローズフォームに変身し、準備は万端だ。サンも剣を強く握り、襲い掛かる。



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サンとソレイユの戦い

 サンはソレイユに持っている剣を突き刺す。しかし、ソレイユは全くよけようともせず、そのまま刺された。

「ぐっ..!」

「お前、なんでよけようとしなかったんだよ。」

 ソレイユは腹に剣が刺さったまま言う。

「ふふ、よけようとはしたよ。」

 サンは笑っているソレイユに混乱して言う。

「そんなわけねえだろ!あたしの目をなめるな。」

 サンは深く突き刺し、とうとう貫通した。

「うっ...!私が今本気の戦いをしたら、君は負ける。そしたら君と君の恋人は悲しい気持ちになるだろう。だから私はよけなかったの。」

 サンはその言葉に怒り、剣をソレイユから抜く。

「あたしは本気の戦いを求めてるんだ。お前の勝手なやさしさなんていらない!」

「抜くと結構ダメージ食らうんだね...本当にいいんだね?」

「ああ。死んでもいい。」

 ソレイユはブラックローズのエナジーと、花瓶のエナジーを出す。

『ブラックローズ!』『フラーワベース!』『フラーワ...フラーワ...』

「チェンジエナジー!」

『パワーサプレッション!その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』

「あたしが求めてたのはこれさ!」

 走ってきたサンに切り付けられたソレイユはそのまま剣を跳ね返した。

「硬い...!?」

 ソレイユはそのまま自分の攻撃に移る。

「ロゼリアソード!」

 彼女の手の上には剣が出てくる。彼女はそれを持ち、風を切る音が聞こえる速さでサンを切り付ける。そしてサンが倒れたところで剣を突き刺し、高く飛ぶ。

「本気で戦ったら負けるって言ったよね。ブラックニードルライダーキック!!」

 彼女に棘のエフェクトがかかり、一直線にサンに刺さり、着地する。サンは大爆発とともにそこに倒れた。

「これがブラックローズの力か!」

 彼女は変身を解除する。裂羅とミラはかなり疲れが出ている。すると、そこへ一人の男が現れた。

「すまないなぁ、ソレイユ。俺の恋人が迷惑をかけた。あ、今回は助言も何もない。ただこいつを連れて帰るだけだ。」

 ナイトメアだった。ナイトメアは変身が解除されて気を失っているサンを割れ目で包む。

「じゃあな。ブラックローズ、よかったぞ。」

 彼自身も割れ目の中に入り、消え去る。

「ってお前の恋人だったんかい!どうりでおかしいと思った..」

 薔薇はみんなを起こし、ひとまずは廃墟へ戻る。

「いやあ、ブラックローズは恐ろしいなぁ!!」

「ほんと、俺でも倒されちゃうと思う。はは!」

 そこでは薔薇によるブラックローズ武勇伝が語られていた。

「うん、とっても恐ろしいよ。ブラックローズは....」

 ミラだけは本当に怖がっていた。ブラックローズの負担は使用者だけでなく、ドライバーもかなり強い。しかもドライバー側はブラックローズの力を使用者より多く受けるのでミラは変身するたびに気絶しかけていたのだ。ミラはただでさえ大きな薔薇のソレイユの力には耐えてきたが、ブラックローズの力にはもう耐えられないことを悟って今度、ソレイユに言うつもりでいる。



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ミラの秘密

 薔薇たちはセンニブル市での防衛をしながらもう一か月がたった。三週間目くらいから敵の量が減ってきてだんだん優勢になってきたのだ。今日もいつものようにソレイユが戦っていると、そこにはナイトメアが変身してやってきた。

「ちょっと久しぶりだな。今回はミラに話があってやってきた。」

 ナイトメアは戦う意思がないのか、変身を解除する。

「僕に話って、いったい何?」

「お前もこいつらに聞かせたくないと思うからちょっと来い。」

 ソレイユは少しためらったが変身を解除し、ミラを行かせた。

 ミラもナイトメアについていく。建物の後ろでナイトメアは話をする。

「ミラ=グリーンウッドは俺からこの国を守りたい。それは正しいな?」

「ああ。」

「最初に言っておく。今のお前じゃそれは無理だ。」

「なんでお前にそんなことがわかる?」

 ミラは自分を勝手に下げられ、怒るが、次の言葉で驚愕する。

「当たり前だろう。俺は本当のお前を知っているからだ。」

「本当の僕?僕は記憶力はいいはずだが...?」

「それが全部箱詰めされるときに俺が書き換えたとしたら?」

 ミラは焦る。自分の昔からの記憶がすべて正しいとは言い切れない。

「まあ今回はそんな話をしに来たわけじゃない。お前の体の話だ。」

 ナイトメアはミラの焦りを全く気にせず話を変える。

「僕の体?」

「そうだ。お前、ブラックローズの力に耐えきれてないだろ。」

「そんなことない。」

「俺はお前よりお前を知っている。安心しろ。」

 ナイトメアはミラの治っていない傷を指さす。ミラは傷を隠すようにして言う。

「敵に言うわけないだろ。そんなこと。」

「じゃあ仕方ない。一応言っとくが、お前はこのまま我慢していたら数回のブラックローズフォームの変身で死ぬ。お前が死んだら澤谷薔薇はとても悲しむ。しかもこの世界はこのまま俺たちに支配される。それでもいいってことだな。」

 ナイトメアは少し脅すように強く言い、消えようとする。

「待って!僕に助かる方法を教えてください。」

「そう来なくっちゃ。助かる方法はただ一つ、強化怪人態になることだ。まあ強化怪人態になった時のデメリットは少なくないがな。」

 ミラは数秒悩み、答える。

「僕、強化怪人態になるよ。」

 ただ、ミラは強化怪人態のなり方を知らない。というか知っていたらもうすでになっていることだろう。

「強化怪人態はお前の身体的能力を倍以上に一気に上昇させる。そのトリガーはお前のパートナー、薔薇にある。ソレイユがサンに刺されたとき、お前はなりかけていた。」

「その理論でいえば、薔薇の傷が僕の力を引き出している...?」

 思えば、ソレイユが初めて変身したとき、彼は薔薇に強大な力を感じていたが、ソレイユが劣勢の時はミラ自身の力が大きくなっていることがミラも感じていた。

「そんなこと...僕にはできないよ...」

「それが愛ってものだ。ミラ。」

 ミラは無意識のうちに薔薇が傷つくことを否定していた。

「愛...それだ!」

「やっとわかったかミラ!俺はお前の成長を見れてとてもうれしいよ!フラーワも人間も感情の価値は変わらない。さあ、帰った帰った!お前の使命は平和を守ることだ!」

「ありがとうナイトメア!」

 ミラは薔薇たちのもとに走る。それを後ろから見るナイトメアはやはり物影にいき消え去った。

「ミラ!いったい何を言われたの?」

「いいの!さ、戦争の続きだ。」

 ミラはドライバーになり、ミラの腰に巻き付く。

「みんな、いこっか!」

「うん。」「ああ!」

 サクラはジャンヌの腰に巻き付く。

「「「変身!」」」



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北国 シルヴァン地方
北国への移動


 ソレイユたちの防衛により、ムウェン南部、センニブル市に攻めてくるランダン軍はほとんどいなくなった。しかしその代わりに、ランダン軍は北から侵略することをムウェン政府に宣告していた。しかし、防衛ができていない仮面ライダーたちに対し怒り心頭だったムウェン王家は、彼らを強制的に城まで戻させた。

 薔薇たちは、《誠実なる青王子》の説教を聞くために集められ、城の硬い床に座らされていた。

「ミラ、俺たち早く北に行ったほうがいいんじゃないのかなぁ?」

 レグルスが小声でミラに話しかける。

「僕もそう思うんだけど、相手は王子だ。絶対勝手に行ったら怒ると思う。」

「当たり前でしょ。二人とも静かに待ってなさいよ。」

 サクラが二人をまとめる。すると、《誠実なる青王子》がやってきた。もちろん、表情はきつく、怒っていた。

「全く、私は君たちの適当さに怒っている。仮面ライダーとは名前だけなのか全く。今から君たちには北国のシルヴァン地方へ行ってもらう。返事は待たない。すぐに行け。絶対に守れよ。」

 王子は怒りを乱暴にぶつけることなく、ジャンヌ達に薔薇たちを連れて行かせた。北国までは蒸気機関車が通っているので簡単に行けるた。

 蒸気機関車は城から田園地帯を抜け、黒い煙が立つ工業地帯に通った。

「ここの地下に《秘密結社エボル》の基地があるんだよ。」

 レグルスが言う。レグルスは懐かしそうに外を眺める。しかし、戦時中だからなのか人は誰もいなかった。

 そのあとまた田舎の線路を通り、長いトンネルに差し掛かった。するといきなり、トンネルの中で蒸気機関車は止まった。

 乗務員が客車にやってくる。彼はしかめっ面で話す。

「すまない。ここで機関車は行き止まりだ。トンネルを抜けたら線路に深い雪が積もってるんだ。」

 薔薇たちは客車を降りてみてみると、レグルスの肩のあたりまで雪が積もっていた。

「これじゃ機関車は通れないね。」

「私たちならいける。行くよ、ミラ。」

「え?ああ。」

 ミラは薔薇の合図で彼女の腰に巻き付く。

『パンジー!』『フラーワ...フラーワ...』「変身」

『耐寒のコモンフラワー!その顔は何を言う? パンジー!』

 仮面ライダーソレイユはパンジーフォームに変身をする。パンジーは寒いところに強いのだ。

「パンジーリムーバル!」

 ソレイユの手はパンジー模様のスコップになり、それは巨大化し、一気に雪をどかす。すると、大きな街が見えてきた。

 ソレイユは変身を解除し、走っていく。あたりは真っ白で、反射した日光が彼らを輝かせる。

「雪ってテンション上がるね!!」

 レグルスは雪で遊び始める。

「戦争なんて関係ないや!」

 ミラも遊び始めるが、サクラが二人を止める。

「いくわよ、もう!」

 街はセンニブルほど壊されてなく、足りないのは人だけだった。宿もちゃんとしており、一人一部屋暖かい部屋だった。早朝だったが明け方全く寝ていない薔薇たちは、宿についたらすぐに休んだ。

「おはよう!薔薇!」

 薔薇がうとうとしていると、窓からナイトメアの声がした。

「わわわ!?何もう!ひとが一番気持ちいいときに!」

「邪魔して悪かったな。一つだけ報告に来た。」

 薔薇は裸眼じゃ何も見えないので、眼鏡をかける。

「何?」

「ミラの兄が時空の割れ目の隅に遺体で見つかった。」

 薔薇はミラの兄、ディフダのことを思い出す。

「それって結構前じゃない?」

 ディフダが上に丸く収めるようにといって帰ったのはかなり前のことだ。

「そうらしい。あいつは結構かわいい部下だった。ミラと同じでもともとの力はないが、その分伸びしろが相当あるから惜しいやつをなくしたよ。」

 ナイトメアは悲しむ。

「お前がやったんじゃないの?」

「俺はあの時湊敬一としてラフレル達と戦っていた。サクラも一緒にいた。」

「じゃあ、ほかにディフダ殺しの犯人がいるってこと?」

「そうなるな。まあ気が向いたら犯人探しを手伝ってくれ。あ、ついでに言っておくが、俺らにとってもこの地は相当寒い。だから朝や昼は軍が起きれないから夜にやろう。頼むぞ。」

「なんだそれ。」

 ナイトメアはそれを言い残すと帰っていった。薔薇はミラにはそれを伝えなかった。

 

◇◆◇◆

 

 ナイトメアはランダンに帰るときは必ず変身して帰る。ランダンの王は人間が嫌いだからだ。

「お前らもよくやるよ。全く。俺に感謝しろよ。」

 ナイトメアはランダンの王に言う。

「ムウェン侵略の件については、本当に感謝しているよ。だが、もうこの城に金はほとんどない。月三億なんてくるっている!」

「はははは。金がなくなったら俺はこの国から出ていく。死んでも金を集めろ!まあムウェン侵略が達成できたらそこから巻き上げればいいさ。」

 王とナイトメアは笑う。王はその言葉の安心さに、ナイトメアはその言葉を簡単に信じる王に笑っている。

 いきなり、ナイトメアのマスクの下の顔から笑みがなくなる。

「ああ、俺はこの国が心配だよ。」

「どうしてだね?」

「ムウェン侵略を目標にしたらムウェンに全部兵を出しちまうんだもんなぁ。馬鹿げたことだよ。」

 王は意味が分からず首をかしげる。

「今ならランダンはどっからでも攻め放題ってことさ。ついでにお前も殺し放題。」

 ランダンの王の後ろから召使の人間の女性が来る。

「はははは!お前ごときが私を殺そうなどと考えるな!私は王だ!この国の!この世界の!」

 召使の女性は立ち上がり、王に会釈をする。ナイトメアは腕がとがった葉になる。

「おい召使!この危険な思想の持ち主の相手をしろ!」

「わかりました。王様。」

 女性はそういい、ランダンの胸に自身の剣を突き刺す。

「そんなことをしていいと思っているのか!?」

 その問いにはナイトメアが答える。

「残念ながらこの国の、この世界の王は俺だよ。」

 ナイトメアは玉座から小太りの男性の死体を蹴落とし、そこに座る。

「これからは俺らの国だ。ひなた。」

「やっとあたしを名前で呼んでくれたね。敬一。」

 召使の人間の女性とは、仮面ライダーサン/ひなたのことだった。



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ミラの暴走

 ジャンヌの仲間は五人いる。全員訓練施設で知り合って、彼女の同期といったところだ。すべてサボテンのフラーワで、ジャンヌと同じである。彼らは初めて仮面ライダーに変身したジャンヌを隅から隅までサポートしようとしている。名前はトーマス、ヘンリー、デリック、ジャック、ヒューイだ。

 

◆◇◆◇

 

 夜、ナイトメアの宣言通りランダン軍は街に攻めてきた。もちろん薔薇たちはすぐさま反応し、変身する。

「市民の皆さんはすぐに安全な建物の中へ逃げて!」

 ジャンヌの仲間達が市民を保護する。その間にもソレイユたちはランダン軍と戦う。

「うらっ!なんでまた強くなってるんだよー!」

 レグルスはセンニブルの時よりランダンの兵が強くなっていることに気づく。

「本当だ!攻撃が全然入らない!よし、ミラ!ブラックローズを使うよ!」

 ソレイユはブラックローズのエナジーを出し、フラーワベースのエナジーに入れる。

『ブラックローズ!』『フラーワベース!』

 その音は、ミラにナイトメアの言葉を思い出させる。

《あと数回でお前は死ぬ。》

「....ああ..強化怪人態になれるまで耐えてやる....!!」

 ソレイユはそんなミラのことなど気にせずチェンジエナジーをする。

「チェンジエナジー!」

『パワーサプレッション! その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』

 ミラには稲妻が走る。

「こんな量も一瞬っていうのがブラックローズの力だ!!」

 ソレイユは敵兵の周りを走り回る。すると敵兵は爆発しながらどんどん消えていく。最後、大爆発とともに敵兵は全滅した。

「やった!」

 彼女らは一日目の侵略を防げたことに喜ぶ。しかし、爆発の中から一人、フラーワが出てくる。

「まだ生きてるランダン兵がいるのかい?」

 彼はのそのそとソレイユたちのほうへ近づく。そして裂羅の前で止まる。

「私に何かようかい?」

 裂羅は聞くが彼は答えない。

「変身。」

 彼の腰にはドライバーがついていた。彼はドライバーにエナジーを入れると、彼の周りのみ泥沼になり、そこからは大量の目玉が出てくる。途端、きれいな花が咲いたと思えばそれは分解されて彼に張り付く。

『マッドのマッドなモッドライダー ハンドレッドの目! ハス!』

 彼は変身後も落ち着いている。

「ランダンもムウェンに手加減してる場合ではない。ここでは真面目にやらせてもらう。」

 彼は地面を泥にして、攻撃を始める。

「なんか動きにくい!!でもこれで!」

『粘り根を張る 黄色の戦士!蒲公英!蒲公英!』

 ソレイユはダンデリオンフォームになり、増殖する。

「増えても一緒だ。はぁっ!」

 敵はソレイユ三人を一つにまとめてライダーキックを見舞う。その時ソレイユは逃げようとしたが、体が動かなかった。

「マッド・ライダーキック!!はぁああああ!!!」

 ソレイユは見事にやられる。ほかのライダーも見てるだけにはいかない。

「ソレイユ!!俺も黙っちゃいられない!おらっ!!」

 敵の下には大きな食虫植物が生え、持ち上げる。

「はぁ!カニバル・ライダーキック!!」

 カニバルのライダーキックは決まった。敵は落下し、地面に倒れこむ。

「ナイス!カニバル!」

 しかし、彼は立ち上がる。

「ムウェンのライダーはこんなものか...ぬるい..」

 彼は埃を払いながら自己紹介をする。

「俺はハリー。仮面ライダーマッドだ。ランダンの未来のために戦っている。」

 そう言い残すと、ハリーは物影に隠れ消え去った。

 ソレイユは起き上がり、変身を解除し、宿に戻る。

 

 宿では、薔薇がミラの部屋で座っていた。

「ミラ、話があるの。」

「なに?」

 薔薇は決心した。ミラなら現実を受け止めてくれると思ったのだ。

「ディフダの遺体が見つかったんだって。」

「兄さんの遺体が....」

 ミラは驚きを隠せない。今頃、なぜ。

「遺体には刺された跡があったらしいんだ。」

「誰かが兄さんを殺したんだね。初めて会ったのに。僕の大切な兄を...」

 ミラの様子がおかしい。薔薇はそれに気づきミラに抱き着く。

「やめてよ薔薇。犯人はこの中にいるかもしれないでしょ?」

 ミラは薔薇を振り払い、窓を割り広い外に出る。薔薇はジャンヌ達を呼び、ミラを止めようとする。

「僕の兄、ディフダを殺したのは誰だい?」

「ナイトメアじゃないの?」

「薔薇がナイトメアじゃないって。君たちのだれかじゃないかな。」

 ミラは興奮状態に陥っている。

「ああ、僕ももうすぐ死ぬからもういいかなぁー。仲間も敵も関係ない。僕の怒りが収まるまで倒し続けるよ。」

「ミラもうやめて!」

 薔薇は止めるが、ミラは続ける。

「薔薇もさぁ、僕の気持ち考えてよ。君が変身するたびに僕にダメージが入ってるの!わかんないかな?あとかつては敵だったけどたった一人の家族が殺されたの。君にはわからないよね。」

 ミラは姿を変える。それは、ミラの強化怪人態だった。

「薔薇気を付けて!ミラが自分の力を制御できてないと思うの!」

 ミラは強化怪人態のままフラーワドライバーとしてミラの腰に巻き付く。バラのフラーワエナジーが勝手に引き寄せられ、薔薇は変身する。

「ミラ...なんで...!!」

「知らない。僕が兄さんに愛があったってことじゃない?どうでもいいや。みんな僕が倒してやる。」

 ミラはソレイユの体を操り、ジャンヌやレグルス達に襲い掛かる。

「どうやらミラを止められるのは俺達しかいないみたい。ジャンヌ、サクラ、行くよ!」

「「変身!」」

『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』

 それに対抗したのかソレイユはエナジーを変える。

『ドライフラーワ! バラ!』

 バラのエナジーに見たことのないエナジーをかぶせるようにセットし、チェンジエナジーをする。

「僕は人間を消す。チェンジエナジー。」

『ドライドハートは還らない!ドライフラーワ・バラ!! フラーッワ!』

 彼自身、自分を見失っていた。しかしそれはもはや彼自身で止められる問題ではなかった。

「今の僕は...わからない!」

 仮面ライダーソレイユ、ドライローズフォームはミラの心も乾かした。



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マッドとの闘い

 仮面ライダーソレイユ・ドライローズフォームは自身を見失い、レグルス達に襲い掛かった。

「これたぶん一回倒さなきゃだめだと思う。」

 カニバルは冷静に考え、ミラと戦う。

「はっ!!うらっ!ミラ...強いね..でも負けない!」

 ソレイユは黙ってカニバルを攻撃し続ける。後ろから裂羅が攻撃しても、それを無視して続ける。

「ミラ!君の攻撃はワンパターンかな?」

 カニバルはいつものように地面から食虫植物をはやそうとするが、ミラの攻撃の勢いでそれをすることができない。

「やばいかもしれない...」

 カニバルはソレイユのパンチが一撃入ったようでその場にうずくまる。

「ミラもうやめて!!」

 あきらめて変身を解いたサクラが叫ぶが、聞かない。

 ソレイユはそのまま高く飛び上がり、カニバルにライダーキックを決める。

「ドライド・ブレイク!!」

「うわああああああ!!!」

 カニバルは大爆発を起こす。その爆発の勢いでソレイユは変身が解ける。

「レグルス!!」

 薔薇はレグルスのほうへ走る。一方ミラはその場で固まっていた。

「僕は一体...なんで自分のフォームチェンジで自分がわからなくなるんだ...?」

 ミラは考える。そこに、激怒したサクラが怒鳴りこむ。

「ミラ!!自分が何をしたかわかってんの?」

 サクラは人間態になり、ミラの顔を平手でたたく。

「サクラ...みんなごめん...僕..強化怪人態になると、自分がわからなくなるんだ。まるで僕の中にもう一人僕がいるみたいに...」

 ミラは涙とともに訴える。すると、ジャンヌの仲間、トーマスが言う。

「でも、ミラさん..ブラックローズの時は強化怪人態にならないと死ぬって...」

 トーマスはミラとナイトメアの話をたまたま聞いていたのだった。

「ナイトメアと話してましたよね。」

 ミラ以外の仲間はそれを聞いて驚く。

「ミラ!そんなことなら早く言ってよ!私もブラックローズ使わなかったのに!」

 薔薇は自分が気づけなかったというおろかさに自分を責める。

「やめて薔薇...」

「やめないよ!ミラ...私の力はあなたがあってこそなの!あなたが死んだら...私は生きていけない...」

 ミラと薔薇は互いを見て涙を流す。

「じゃあ僕と薔薇は一旦距離を置こう...」

 ミラが沈黙を破り、怪人態になる。

「あなたが死なないためには、あなたと離れることが大切かもね...」

「ちょっとミラ!薔薇も嘘ばっかりじゃない!」

 サクラが双方を止めるが、ミラは遠くへ歩いていく。

「これでいいの。今のミラとは、一緒に戦えない...」

 薔薇の言葉はミラには聞こえていなかった。

 レグルスを宿に運び、あたりは暗くなる。

 夜になっても、ミラは帰ってこなかった。しかし薔薇は心配する素振りも見せなかった。ジャンヌが薔薇を呼ぶ。

「薔薇ー、防衛に行くがくるかい?」

 サクラがジャンヌを止めたが、ジャンヌはやめなかった。

「行くよ。」

 薔薇はジャンヌの仲間、デリックから借りた甲冑を着て前線に出る。この時レグルスは気を失っているので、仮面ライダーは実質一体だけだった。

 戦は始まる。甲冑を着ただけの薔薇の力は小さく、ジャンヌもあわてて変身する。

「変身!」

『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』

「はあっ!!それっ!!やっぱり...硬い...!!」

 強化怪人態のフラーワはとても硬い。それはミラも同じで、だから裂羅が攻撃しても無視できたのだった。気づけば、敵に薔薇が吹き飛ばされていた。

「裂羅!!これを!」

 薔薇は裂羅にエナジーを投げる。すぐさまそれをドライバーに挿入する。

「ありがとう!チェンジエナジー!」

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』

 裂羅はローズフォームになった。

「これがソレイユの力!!」

 裂羅の腕からは棘の蔓が伸びる。蔓は敵をまとめ、そこにライダーキックを入れる。

「裂羅・バラ蹴!!」

 裂羅は敵を倒す。だがまたもや爆発の中から仮面ライダーが現れる。

「また会ったな。俺だ。」

 マッドだ。マッドは何かを探すようにあたりを見回す。

「お前は裂羅だな。ソレイユがいないなら俺はお前を倒す。」

 薔薇が前に出ようとするが、裂羅が止め、先に出る。

「上等だよ。私がお前の相手になってやろう!」

 裂羅はバラの力で攻撃するが、マッドはそれをいとも簡単に跳ね返した。

「お前の生ぬるい攻撃など俺には効かない。俺は本物を求めている。」

「私の力を知らないのかな!騎士の道はそう甘くない!厳しく鍛えられているんだよ!」

 二人はぶつかり合う。剣を持ち、それで戦う。

「ああ!どうやらここではソレイユより活躍できるようだね!」

 裂羅は剣のスロットにサクラのエナジーをセットする。

『サクラ!』

「はぁ!裂羅切!!」

 彼女はマッドのほうに走っていき、切り付ける。

 が、マッドはそれを剣で受け止める。

『ハス!』

「お前見習いか?おらっ!ロータスデッドアタック!!」

 マッドは裂羅より強い力で裂羅を飛ばし、彼女を切り付ける。

「うわああああ!!」

 裂羅は切られ、その場に落下し変身が解ける。

「これで終わりだ。」『ハス!』

 彼はエナジーをドライバーに戻し、飛び上がる。

「マッドマッドサッドネス!!」

「やめろおおお!!」

 彼がジャンヌにライダーキックを入れようとしたとき、ジャンヌとマッドの間にフラーワが駆け込む。

「よせ!!」

「はああああ!!!」

「俺が止めて見せる!!」

 その間に入ったのはジャンヌの仲間、トーマスだった。彼は体の力を全部使い、マッドのライダーキックからジャンヌを守った。

「ジャンヌ...俺は君の男にはなれませんでした...だけど!最期に君を守れてよかったよ!早く逃げてください!ジャンヌ!サクラ!」

「逃げれるわけないだろ!」

「もう...だめだ...!!」

 トーマスはもう限界だった。マッドはそのままキックを続ける。

「余計な邪魔が入ったか!死ね!!」

「うあっ!!!」

 サクラがジャンヌを運ぶと、マッドはトーマスを貫通し、爆発した。

「トーマス!」

 ジャンヌは地面をたたき泣き叫ぶ。爆発が収まっても、そこにはマッドがいるだけでトーマスはいなかった。

「残念ながらあいつなら死んだ。」

「うわああああ!!!」

 ジャンヌはマッドにとびかかる。

「死ね!死ね!お前なんてフラーワじゃない!!私の大切な仲間を!!!」

 そのとき、彼女の体が光り、姿を変える。ジャンヌは強化怪人態になったのだ。

「ほら、これをやる。お前の仲間だ。」

 マッドはジャンヌにエナジーを投げる。

『サボテン!』

 ジャンヌはそれを握り、通常の怪人態に戻った。



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ナイトメアの悪巧み

 ランダン王はナイトメアたちに殺害され、国の政権はナイトメアが握っていた。今、ランダンでは元帥且つ絶対王政の王が他国に一気に攻めているのだった。

「ナイトメア様、将軍からのメッセージです。」

 幹部がナイトメアに手紙を渡す。

「何?一般市民だったハリー(本名は不明)に秘密裏にフラーワドライバーが渡り勝手にムウェンに攻め込んだ? おお!ついに市民にまでドライバーが渡ったか!!」

 ナイトメアはうれしがる。幹部はそれを止める。

「ナイトメア様、将軍は怒っています。一般市民にドライバーを流したのはナイトメア様なんですか?」

 ナイトメアは足を組みドリンクを飲む。

「お前にも貸してやろうか?」

「ナイトメア様!お言葉ですがもうこれ以上一般市民を洗脳して改造するのはやめてください!僕は市民に楽しく生活してほしいだけなんです!!」

「うるさいなぁ。楽しく生活しながら戦争ができると思うなよ。領土を増やすだけじゃない。俺の命のためでもあるんだよ。俺はこの世の強いやつの力を吸わなければ生きていけない。お前も俺の忠実な部下だ。協力してくれるよな?」

 ナイトメアはドライバーを巻き付けて脅す。が、幹部はそれに応じない。

「俺はランダン王ナイトメアの忠実な幹部・アダム!それも今日でおしまい!俺はお前をここで殺す!!」

「やめておけと言っておくがな。変身。」

『悪夢!ユーカリ!メアユーカリ!』

 アダムは剣でメアに攻撃するが、メアはそれをよける。そして一撃のパンチでアダムを倒す。

「うわあああ!!」

「やめておけといったからな。」

 アダムはエナジーになり、その場に落下する。

「お前も大したことはなかったな。」

 ナイトメアはそれを拾い上げ、音を鳴らし驚く。

『ブリーズオブサクラ!!』

「やった!!また強い敵が現れそうだ。」

 ナイトメアはエナジーをしまい、割れ目を通して出かける。そこは城のような場所だった。

「おはよう。《誠実なる青王子》はお前か。」

 そこはムウェンの城だった。王子はナイトメアを敵対視する。

「ランダンのお前が、ムウェンに何の用だ!!」

 部屋にはムウェンの兵が剣を構えて入ってくる。

「おいおい面倒だろ。いい商談があると思ってきたのに。」

 王子はそれを無視し、兵にナイトメアを襲わせる。

「はぁ...」

 ナイトメアは面倒そうに兵と戦う。なんと強力なナイトメアは五人の兵を全員一撃で倒してしまったのだ。

「俺はお前を今からでも殺せる。話を聞け。」

「わ、わかった。」

 王子の部屋のドアからはランダンの兵が出てくる。

「お前のライバル、ランダンの王は死んだ。だからランダンをムウェンに引き渡そうと思ってな。そうすりゃムウェンは世界でも有数の強国だ。どうだ?」

 王子はナイトメアの話に笑いが止まらない。

「ははははははは!!」

「ただし新しく攻めるものがある。」

「なんだね?」

 ナイトメアは青く丸い星の絵を見せる。

「地球だよ。それとこのことは仮面ライダーたちには内緒にしろ。わかったならこの紙にサインをかけ。」

「地球って!私たちが偵察に行ってる...」

「早くかけ!」

 王子は契約書にサインをし、ナイトメアもランダン王の名でサインをする。

「これでこの国とランダンはお前のものだ。はははははは!!」

「ははははは!!」

 二人で暫く笑いあい、ナイトメアは割れ目から人間を出す。

「お前に人間態をあげよう。さあ!早く乗っ取れ!」

 王子はナイトメアに言われた通り人間を襲う。彼は口から人間の中に入り、乗っ取る。

「ほら、ドライバーだ。」

 ナイトメアにフラーワドライバーとエナジーをもらった王子は、ドライバーを腰に巻き付けて早速変身する。

『バンクシア!』

「私が地球を滅亡させる。変身。」

『バン!バン!奇妙な実はトラウマを作る! バンクシア!』

「それはランダン王の力だ。大切に使えよ。"仮面ライダーバンクシー"」

 そう言い残してナイトメアは今度は薔薇のところへ行く。

 夜なので、もう薔薇が戦っているところだった。戦火で明るいところに割れ目ができ、そこからナイトメアは出る。

「よお、元気にやってるか?」

 薔薇は甲冑を着て戦っていたが、まるで力になれていない。

「ちょっと久しぶり。何か用?」

「ああ。裂羅はどこだ?」

「あっちで戦ってるよ。」

 裂羅は川の向こうでランダン軍と戦っている。ナイトメアは割れ目を使って薔薇のほうへ移動する。

「久しぶりだな。元気そうで何よりだよ。」

 ランダン軍は攻撃をやめ、ナイトメアに頭を下げる。

「裂羅、お前をもっと強くするアイテムを持ってきたぞ。」

「もらっておくよ。ランダンの仮面ライダーマッドを倒すためにな。」

 裂羅の中に入ってるジャンヌはマスクの上からでも起こっているのが分かった。

「ああ、それは悪かったな。ただこれだけ聞いてくれ。ランダンは戦争に負けた。これからはムウェンに支配される。」

「なんだと...!?」

 それを聞いたランダン軍は次々と膝から倒れこむ。中には泣いている者もいた。

「本当だ。お前らは戦争に勝った。だが別の組織が地球を攻めるらしい。だから地球に戻れ。もうやばいかもな?」

 ジャンヌは変身を解除し、サクラとともに薔薇のところへいく。薔薇に訳を話すと、彼らは急いで宿に戻った。

「明日、俺がお前らを地球まで運んでやる。朝の六時にここを出る。それまでに仲間を集めてこい。」

 薔薇はミラが帰ってないことを心配する。

「じゃあな。」と言ってナイトメアは割れ目に消えていった。

 次の日の午前六時にはミラもいないとならないのだ。



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ミラの復活

 ナイトメアに言わ地球に帰ることになった薔薇たちは、ミラを探していた。この前ミラと別れてから一度も会っていないのだ。

「ミラー、ミラー、どこにいるのよー!」

 サクラが森の中でミラを探しているが、降っていた雪はだんだんつもり極寒に耐えていた。

「寒い...ミラ!!どこなの!もうみんな怒ってないわよ!!」

 サクラが震えながら叫んでいると、三人のフラーワが現れた。

「ねえちゃん、俺らとあったかいとこ行かない?」

 フラーワの一人がサクラの腕を握る。

「やめてよ!」とサクラは振りはらうと簡単にはいかないと思ったのかほかの二人がサクラを押し倒す。

 怪人態のサクラはもちろん強いが、フラーワは元から怪人態なのでほとんど変わらない。しかも相手は男性なので力的には三人に負けている。

「なあ、俺んちにかわいい花あるんだよ、一緒にいこうじゃねえか。」

「おとなしくしてりゃ痛いことはしないって。」

 サクラは手首を一つに縛られる。

「何よこれ!外しなさいよ!」

 彼女は一人の腹をける。するとそれに逆上したのか二人が足を押さえつけてけられたものがサクラの腹にパンチを入れる。

「うっ!!」

「お前うるせえな。ちょっと黙ってろよ。」

 サクラは睡眠薬のようなものを飲まされ、すぐに気を失ってしまった。

「桜の女は美形がおおいなやっぱり。」

 三人はサクラを工場のようなところに運び、両腕と両足を縛り付けて彼女を起こす。

「おい。起きろよ桜のねえちゃん。」

 サクラは顔を三発ほどたたかれ目を覚ますと、自分が今ある状況を把握する。もちろん最初は体を動かし暴れるが、すぐに無駄だと察した。

(仲間がきっと来てくれる。)

 彼女はずっとそう願っていた。だが同時に、この男たちに何をされるかを覚悟していた。

 一人の男は彼女が思っていたこととは違うことをしてきた。彼は彼女の上に座った。

「男をなめてるからこうなるんだよ!!」

 一発、腹を殴られた。

「おめえらもやれ。」

 その男の命令でほかの二人からも一発ずつ殴られた。

「お前犯されると思ってたんだろ。どんな変態女だよ。俺はなぁ!!性欲なんてないただ花を殺してえだけの狂った野郎なんだよ昔っから。」

 彼女は黙って話を聞く。

「昨日まで戦争やってただろ。俺は死ぬために何度も前線に行ってきた。けど幸運なのか全く死ねねぇ!だから俺は死ぬまで花を殺すことにした。夜中に一人でいたら俺みてえな怖い花に殺されちゃうってことを世間に知らせるためにな!!」

 《!》のタイミングで彼女は顔を殴られる。あたりには血が流れ、もう何度殴られたのかわからない。

 彼女自身も半分気を失っていた。

「仮面ライダーっているだろ。あいつはいいよなぁ。戦争で何人も殺してんだろ。俺もああなりてえよ。」

 彼女は仮面ライダーという単語に反応し、頭を起こす。

「勝手に顔起こしてんじゃねえよ!!」

 男はサクラの顔面を踏みつける。

「お前ら、バット持って来いよ。」

 二人の男がバットを持ってくる。

「やるぞ。」

「「ああ。」」

 三人は一斉にサクラを殴る。サクラは黙って殴られているだけだった。

「はっはっはっはっは!!死ね!」

 サクラは本当に死にそうだ。

(誰か....助...け..)

 サクラがそう願ったとき、ドオン!!と大きな音がした。

「なんだ?」

 サクラへの暴力は一旦止み、三人は扉のほうへ近づく。

「誰かいるのか。いるならかかって来いよ。」

 三人はバットを構えるが、何も音はしない。ただ廃工場の鉄扉は木っ端微塵だった。

 後ろから、かさかさと音がしたので、振り返ると一人の男が物体と一緒に飛び回っていた。

「ううぉおおおおおおおああああああ!!!!」

 物体と一人は柱にたたきつけられ、二人のほうにぐにゃぐにゃに曲がった鉄バットが飛んできた。

「スケ!!」

 物体はたたきつけられた一人に強力なパンチを入れると、男は稲妻とともに消滅した。

「おい!行けよカク!!」

 もう一人も男が言う前に空中から床にたたきつけられ、物体の蹴りと稲妻によって消滅した。

「お前は何なんだよ!!気持ち悪い!」

 物体はゆっくり男のほうを向く。サクラも姿を確認し、驚いた。

「....ミラ...?」

 その物体、それは強化怪人態のミラだった。

「うおおおおあああああ!!!!」

 ミラは男に襲い掛かる。が、間にあるライダーが入ってそれは阻止された。

「やめろ。これは貴重なあたしの仲間だ。」

 ライダーはミラを剣で一突きし、ミラの強化怪人態を解いた。

「僕...サクラ!!」

 ミラがサクラを解放しているうちに、ライダーは驚いて気絶している男を割れ目の中に放り込み、自分も入り消えた。

 サクラは強化怪人態で暴走しなくなったのかと思ったが、そんなわけはなかった。

「僕、もう強化怪人態にならないようにする。」

「なんで?」

「強化怪人態にならなくても死なないように、訓練してきたんだ。」

「どこでよ。」

「ナイトメアのところで。」

 ミラはナイトメアに怪人態のすゝめをしっかり教えてもらったのだ。

「ナイトメアは俺のためでもあるからってしっかり教えてくれたんだよ。」

「そうなんだ。あ!もうこんな時間。」

 サクラは時計を見て焦る。時間は午前五時だった。

「地球に戻るよ。」

 

 午前五時五十分、ジャンヌの仲間を含むみんなが集まった。

 薔薇は最初は怒っていたものの、今では元通りミラと仲良くしている。

 六時になり、ナイトメアが現れた。

「おはよう!みんな揃ったな!」

「うん。揃ったよ。」

「忘れ物はないな。始めるぞ!」

 みんなは時空の割れ目に包まれ、そのまま薔薇の家の近くの公園に移動した。

「達者でな。」

「ナイトメア。もう二度と会わないといいな。」

「言ってくれるじゃねえか。地球を守れ。仮面ライダー。」

 ナイトメアは割れ目の中に戻っていく。

 今日は薔薇の家には薔薇、ジャンヌの仲間四人とフラーワ三人の計八人が寝泊まりした。

 彼らの旅はまだまだ続きそうだ。



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ナイトメアのアジト

「ムウェンのライダーは出揃った。地球を攻める準備はできてるか?」

 ナイトメアは変身した状態で《誠実なる青王子》に問う。

 ランダンとムウェンを合併し領地が増えた王子は喜びの余韻に浸り、次の敵の地球をどう攻めるかのみ考えていた。

「ああ。できている。ナイトメア、君には感謝するよ。」

 自分にとって都合がいいことを持ち込まれるとすぐに手のひらを返しナイトメアに屈する王子はもはや《誠実》なんかではなかった。というか《誠実なる青王子》という名前も彼自身がそう呼んでいたのが始まりだったのだ。

「まあまあ、感謝するのはまだ早い。ムウェンが地球の、まず日本を支配できれば地球全体も簡単だ。俺たちの世界の誕生だよ。」

「はっはっはっは!!」

 ナイトメアが地球に標的を変えたのはムウェンのためなんかではない。強大なエネルギーが眠っている星、地球を支配して自分のエネルギーに変えるのが彼の目的である。ナイトメアは邪魔なムウェン王子など仮面ライダーに敗北した時点で捨てるつもりである。

「こないだ渡したドライバー、大事につかえよ。」

 ナイトメアは王子の肩をたたき、割れ目に消えていく。

「偉そうにしやがって、地球に侵略をし始めたらすぐ捨ててやる。」

 王子は言い、部屋に戻った。

 

 アジトに戻ったナイトメアは、ハリー、ひなたともう一人の仲間を連れていた。

「お前の使命は人間を殺すことだ。」

 もう一人はナイトメアの言葉を聞き、その場に倒れた。

「こうやってあたしたちの記憶を変えてたんだ。」

「わるいな。俺も仲間が欲しいんだよ。」

「まあいいや。どうせ私はあんたの恋人ってことしか知らないし。」

「それでいいんだよ。ハリーも、地球制圧を目指して頑張ろうじゃないか。」

 ハリーは何も言わなかった。

 彼ら二人はナイトメアに元の記憶を消され、埋め込まれた記憶でナイトメアに従っているのだ。ひなたたちがソレイユたちと戦っているのもそのせいだ。

「ナイトメア...俺はフラーワでも全部殺す..記憶をなくした俺がお前に勝ったら...全部を返してくれ..」

 もう一人の仲間が立ち上がった。彼の眼は殺気に満ちていた。

 彼の要望にナイトメアは当然のように答えた。

「ああいいよ。お前が俺に勝てたらな。」

「ちょっとここで始めるの?」「俺たちに迷惑はかけるなよ。」

 ナイトメアは当然アジトで戦うつもりはなかったが、彼がいきなり襲い掛かってきたのでそうせざるを得なかった。

「お前ら邪魔はするなよ。」

 ナイトメアは不公平だといい変身を解き、敬一の姿で戦う。

「ああーー!!この感じ!死ね!!」

 彼はナイトメアの首を絞め、顔を殴る。

「ははははは。変身前でもこの力か...」

 彼はナイトメアの顔を蹴り、ナイトメアはその場で動かなくなる。

「おい見たか!!俺はナイトメアに勝ったぞ!!俺をなめてたから痛い目見たんだよバカ!!」

 彼は有頂天だった。あんなに自分になめた態度をついていたナイトメアを自分の力のみで倒したからだ。

「馬鹿なのはお前のほうかもしれないな。」

 瞬間、断末魔とともにナイトメアのアジトには一人のフラーワが倒れていた。

 それはナイトメアではなく、そのもう一人だった。

「残念だったな。さ、お前の仲間の仇を打ちに行くぞ。」

「う...うう...」

 ナイトメアは彼を起こすとかれに名前を付け始めた。

「お前は今日からキラーだ。」

「そのままじゃん!!」

 ひなたがつっこみを入れ、その場の雰囲気は和んだ。

「さ、キラー。これがお前のドライバーだ。」

 ナイトメアはキラーにフラーワドライバーを渡した。エナジーはユリだ。

「お前は仮面ライダーユリだ。」

「またそのまま!!」

 こんどはキラーが突っ込むが、場は和まなかった。

 こんな感じでナイトメアのアジトは案外楽しくやっていたのだった。

 しかしその時のナイトメアはすでに地球への侵略の準備を着々と進めていたのだった。彼の仲間のライダーはもうすでにソレイユたちと互角で戦える数にあった。あとは日本を破壊するだけだ。



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我らの土地 地球偏
戦争の始まり


 深夜、日本の首都、東京で大きな音とともに巨大な地震が起こった。それと同時に東京都のみ高く浮遊した島となり、人間達は謎の力により振り落とされた。

 もちろん、仮面ライダーたちは黙っていない。千葉県にある薔薇の家で寝泊まりをしていた彼女らは地震に気づき飛び起きた。

「嘘...」

 巨大な光とともに東京が消滅した。と思ったら浮遊しているのだから驚きは隠せない。次の瞬間、家のテレビが自動的につき、見たことのある顔が現れた。

「おはよう!!時刻は午前四時だ。東京に出勤や通学をしている人は残念だったが今日はあきらめろ。東京はもう俺の街だ。これから日本とフラーワ世界の全面戦争を行おう。俺たちが負けたら東京を返してやるよ。」

 その顔、いや、マスクは正真正銘仮面ライダーメア、ナイトメアだった。

「俺の力を見せつけるためにまずは日本に部外者が入れないようにしてやるよ。海のほうを見とけ。はぁ!!」

 ナイトメアはそばにあったレバーを引く。するとまた大きな爆発音とともに海に巨大な檻が建った。

 やりたい放題のナイトメアは、なんと海に日本を囲むように巨大な檻を立てたのだ。

「残念ながらこの檻は俺の力じゃないと壊せないよ。さあ!戦争の始まりだ!!」

 ナイトメアがそういったとたん、テレビは消えた。というか日本中の電気が止まったのだった。

 静かな夜がナイトメアの侵略により一気に破壊された。ライダーたちも混乱しており、すぐには向かえなかった。

「ナイトメア...一体何が目的なんだ...!!」

 彼の目的は強大なエネルギーが眠る地球を破壊すること。それができればどんな手でも使う。彼の目的は誰にも知らされていないのだ。

 

 ~ナイトメア率いるムウェン軍によって、日本は破滅の危機に陥っていた。そんな中、仮面ライダー達はその地での新たな戦いの幕を明けた。~

 

「やっぱり僕たちが行くしかないよ!!」

 本来ムウェン軍のはずのミラは、葛藤しながら日本の防衛を試みようとしている。幸い、千葉県の薔薇のに家はそこまで被害は被らなかったのだ。

「そうだね。だけどどうやって?」

「僕たちフラーワの力を信じて。」

 街では自衛隊がかつて東京だった場所の周りを囲んでいる。万が一のフラーワの本土進出の時に対策しているのだ。

「多分、それは無理だよ。」

 街の様子を見に行っていたレグルスが帰ってきて言う。

「俺らフラーワは狙われている。人間態を持っていないフラーワ、ジャンヌは姿が見えただけでバーンだよ。」

「いやあ、それは心配ないね。私たちはフラーワ。そしてムウェンの騎士。地球人になんてまけるわけないよ。」

「ならいいんだけど...俺が考えてる方法は、人間と真向に戦う!それだけ!!」

 レグルスの考えを聞き、出発した彼らは驚いた。街にはもうフラーワがあふれていた。ナイトメアが日本全土に撒いた謎の粉末によってすべての花がフラーワ化しているのだ。

 フラーワ達は自由に動き、自分たちがいままで踏まれてきたことなどの恨みを晴らすために人間達を襲っている。

「っしゃ、やりますか。」

「やった!俺戦いたかった!」

「雑魚狩りかな。私もやらせてもらうよ。」

 ミラ、サクラはドライバーになり、レグルスもドライバーを巻く。変身した彼らは次々と敵を倒していく。ミラも強化怪人態にはならず、ブラックローズも使わずにどんどん倒していく。

 しかし物事がそんな順調にいくわけがない。彼らが敵を倒していくところに一人、見たことのある者がいた。

「....」

 彼が現れるとあたりは泥の床に変化する。

 その名は仮面ライダーマッド。

「お前も地球に来てたのか...!!」

 ソレイユが驚く。すると、後ろから女性の声が聞こえる。

「お前じゃなくてお前達、ね。」

 彼女が現れると周りには向日葵の花が咲く。それは普段のように美しくなく、ハスのような恐ろしい形をしていた。

 その名は仮面ライダーサン。

「あたしがソレイユを殺る。だからあんたは裂羅を頼むよ。」

 レグルスは次から次へと現れるフラーワと戦っている。

「...」

 サンはソレイユのほうへ近づく。今までにないくらいの威圧だ。

「サンは太陽。ソレイユは日光。どっちが強いかな!!」

 サンは静かに剣を抜く。

 ソレイユもエナジーを変える。

『チューリップ!!』

「日本...妙に懐かしい響きだ。だがその地であたしはお前を倒す!!はぁ!!」

 サンはソレイユを切り付けるが、ソレイユは盾で守る。

「私は!荒れた土地に現れる一筋の光!!」

 ソレイユはサンと剣の戦いをしながら叫ぶ。

「仮面ライダー!!ソレイユ!!」

 今度はソレイユがサンを切り付ける。サンは一瞬隙を見せる。それをソレイユは見逃さない。

「お前にそんな強さがあったなんてな!!」

「太陽は自分から放たれる光を知らないのか?」

 ソレイユはサンに剣を突き刺す。見事、ソレイユの剣はサンの胸に刺さる。

「あたしはまだ...強くなる....!!!」

 ソレイユが剣をサンから抜くと、サンは自らが作った割れ目の中に消えた。

 一方、裂羅は予想以上に接戦だった。

「ふんッ!!!」

「はっ!!」

 裂羅とマッドがお互い同じような技で戦っているからだ。裂羅の剣はマッドによって泥の中に放り投げられたので、裂羅は体で戦うしかなかった。

 しかも、裂羅になっているジャンヌの心にも問題があった。

「お前だけは...絶対許さない...!!!」

 裂羅はジャンヌの感情だけで戦っている。戦法なども全く考えず、ただ自分の仲間を殺した仇討ちとして。

「これで終わりだ。」

 マッドは高く飛び上がる。マッドの足の先にいる裂羅は動けない。

「ふんッ!!」

 しかし、また裂羅とマッドの間に邪魔が入る。今度は三人だった。

「やめてくれぇ!!!」

「俺たちはやめない。ジャンヌ、ありがとう。」

 先頭の一人がジャンヌに別れを告げると、マッドと彼らは爆発とともに消えていった。

「ヘンリー、私はどうすればいいんだろう?」

 絶望、悲しみ、恨み、ジャンヌの言葉にはいろいろな負の感情が現れていた。

「大丈夫。みんなの分も僕がついてるよ。」

 ヘンリーは優しい笑顔でジャンヌを包み込む。

 そこへ、ミラ達が来る。

「ジャンヌ...僕たちもついてるよ。」

「そうだね。みんな、みんなありがとう。」

 ジャンヌは涙を流す。

 その時のジャンヌの感謝の言葉には、ジャンヌの決心が詰まっていた。



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裂羅の強化フォーム

 仮面ライダー裂羅のジャンヌは、精神的にも身体的にも疲労がたまっており、体も限界を感じていた。しかし、彼女の仲間が残り一人になってからは彼女から怒りの力しか感じられなかった。最も、それが彼女が限界を超え、強化怪人態になるトリガーとなったのだった。

 前回マッドと戦ってから特に激しい戦いはなく組織の幹部とも出会っていないが、彼女は彼女なりに決心していた。

 彼女は強化怪人態で生活することを決めたのだった。彼女の体は人間に擬態しているだけで、人間態が存在しない。なので少しでも体を自然に動かすため、そして力を最大限まで生かすために強化怪人態になった。

 彼女の強化怪人態が不思議なことなのは薔薇、ミラ、レグルス、そしてサクラもわかっていた。

「強化怪人態なのに自らの意思で動けている..」

 初めてジャンヌが宣言したとき、誰かが言った。

 これはジャンヌも不思議に思ったが、悪いことではないので特に気にしなかった。

「まあ、私は仲間たちの仇を打たなきゃならないからな。ん?」

 悲鳴が聞こえた。

「いくぞ!」

 彼らは駅のほうへ走る。街では自衛隊がフラーワを狙撃しようとしているが、強化怪人態の彼らには全く効いていない。

「うわぁ!!」

 ついに反撃された。フラーワは無双状態で自衛隊を一人一人つぶしていく。そこに、ジャンヌが走っていく。もちろん、彼女は強化怪人態なので自衛隊に狙撃される。

 銃が飛び交う中、彼女の腰にいるサクラは待機音を鳴らす。

「敵でも味方でも関係ない。私は日本に攻めているフラーワを倒す!!」

 薔薇は自衛隊を離し、自身も待機音を鳴らす。もちろん、レグルスもだ。

「やっと邪魔な銃声がなくなったね。いくよ。」

「多分だけど、裂羅のいるところにはマッドが出てくると思うんだ。」

『フラーワ...』『フラーワ...』『Counivour..growin'..now』

「「「変身!!」」」

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』『あなやあなやといひけれど!はるのさくらのたたかへば!サクラ!』『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』

「ふんッ!!」

 仮面ライダーたちは一斉に攻撃をする。しかし通常の強化怪人態にしては敵がやけに硬い。

「ナイトメアの改造か...!!」

 しかし今まで倒してきた相手がただ硬いだけ。何回も攻撃すればすぐに倒せる。しかし、そう簡単にはいかなかった。

「うわっ!!」

 ヘンリーの声がし、裂羅は振り向く。

 ヘンリーの頭からは血が流れていた。自衛隊がすきを見て撃ったのだった。

「。」

 ヘンリーは血を流してそこに倒れる。ジャンヌは見ているだけで何も言わなかった。しかし、敵に攻撃するのをやめ、ずっと攻撃を受けていた。

「裂羅!何やってんの!!」

 裂羅は無視をしていた。変身を解除されないようにレグルスが守る。 

「、」

 ジャンヌが動かないので、サクラがジャンヌを操作する。

「ジャンヌ!今は闘いよ!!」

 そこに、仮面ライダーが現れた。

「俺だ。」

 マッド。ではなかった。見たことのない仮面ライダーだった。

「仮面ライダーバンクシー!!」

 彼は自己紹介をし、彼らに攻撃を仕掛ける。

「どこかで聞いたことのある声。」

 そう、仮面ライダーバンクシーはランダンの王子。通称《誠実なる青王子》だった。

 闇落ちした王子に気づかないソレイユはすぐにパンチやキックを入れる。

「ふはははは!!俺には効かない!!俺の力は最高だ!!」

 彼は空中に絵を描くと、その絵が動き、攻撃するのだ。

「ははははは!!」

「薔薇。ブラックローズを使おう!」

「いいの?」

「言ったでしょ。訓練はしたって。」

 ミラの言葉を信じた薔薇はすぐにエナジーを取り出した。

『ブラックローズ!!』

 ブラックローズを使った。久しぶりの仕様なのでやはりミラの体には稲妻が走る。

「大丈夫。今の僕は負けない!!」

 さっきと同じように彼女はバンクシーにキックやパンチを入れる。するとさすがは強化フォーム。すごい力が入る。

「なんだと!?この力は!!」

「これがソレイユだよ!!」

 彼は絵を描こうとするが、途中でソレイユに攻撃されてうまく描けない。しかも、持っていたエナジーを落としたのだ。

 ソレイユはすぐさまそれを拾い、裂羅に投げる。

「ジャンヌ!かたき討ちに使えるアイテムだ!!」

 裂羅はそれを受け取る。マスクの中の彼女の表情は怒りに満ちていた。

 サクラはジャンヌに代わり、敵が離れるまで通常の裂羅で戦う。

「私は!!仲間といつでも一緒さ!!」

 改造された強化怪人態の敵も勢いで倒してゆく。

「そろそろこれの使い時か!!」

 ブラックローズでバンクシーと戦うソレイユの後ろで、裂羅はあるエナジーのボタンを押す。

『ブリーズオブサクラ!!』これにすぐさま桜のエナジーを挿入し、『サクラ!』

 フラーワが三体同時に襲い掛かってくるが、すぐさまそれをドライバーに挿入する。

「チェンジエナジー!」

『桜花 今そ盛りと 人は云へど われはさぶしも 君としあらねば! フラーーッワ!!』

 仮面ライダー裂羅のフォルムは変わり、水色を基調としたとても美しい、優雅な姿になった。その力は絶大で、強化怪人態のフラーワを通常攻撃で吹き飛ばすことができるのだ。

「仮面ライダー裂羅、ドライブフォーム。」

 彼女は硬かった敵をどんどん倒していく。

「私はこの力でマッドを倒す!!」

 そして、ソレイユもバンクシーに強烈な一撃を与える。

 ソレイユは飛び上がり、

「ブラックニードルライダーキック!!」

「ぎゃああああ!!!!」

 ソレイユはバンクシーを貫通し、着地する。

 爆発とともに《誠実なる青王子》が転がってソレイユのもとにくる。

「お前だったのか!!」

 王子はにやりと微笑み、走って逃げていった。

 カニバルと裂羅がソレイユのもとへ来る。

「バンクシーの正体は、王子だった。」

「くそっ!!あいつが黒幕なのか!」

 今まで自分たちを受け入れてくれた王子が黒幕だったなんて、彼らは思ってもいなかった。

「私はもう、ランダンの騎士なんかじゃない。」

 ジャンヌが変身を解除して言う。

「地球を守るライダーさ。」



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廃墟の東京

 早朝。薔薇の家は自衛隊や警察に囲まれていた。怪人が部屋から出てきていると通報があったからだ。

 コンコンとドアが鳴る。もちろん薔薇たちは出ない。

「そこにいるのはわかっている!!出てきなさい!」

 中では、レグルスがとある提案をしていた。

「俺が、全員殺す。」

「人殺しはだめよ。」

 サクラが止める。しかしレグルスはドライバーを巻き付ける。

「俺は悪の力で強くなるんだ。だから人でもなんでも殺せる。ナイトメアと種類は変わらない。」

 地味に爆弾発言をしたレグルスに、みんなは謎の納得をして任せた。

 ドアを開ける。

「残念。人間ごときが俺に勝てないよ。」

 レグルスは怪人態の爪で人間の胸を刺す。勿論あたりには血が飛び散り、人間の死体が転がる。

 銃撃が始まる。さすがに銃には勝てないので、変身する。

『Caniv Ca Ca Ca Canivorou』

 銃の攻撃が効かないと察した人間は車で去ろうとするが、それは不可能だった。

 カニバルは車のタイヤを割った。その場の人間を全滅させたのだ。

「ナイトメアの暴走の原因はどうせお前達だ。」

 意味深な言葉を残し、死体を蹴り飛ばした。

 そんなカニバルの行動を黙認した薔薇は、人間とは言えないだろう。これが人間を守るために必要なことだとしても。

「薔薇、何も思わないの?」

 戻ったレグルスが薔薇に聞く。

 薔薇は少し考えて「何も。」という。

 変わった。

 フラーワの死体は爆発によってほとんどが消え去る。それに涙を流した薔薇は、人間の死体で気持ち悪いとすら思わないのだ。それがなぜか。簡単だ。

 彼女はもう死体や悲鳴で涙を流さない、"英雄"になりかけていた。

「世界を救うためには、ね。」

 

◇◆◇◆

 

 家の外に転がっている死体を掃除し、今回いよいよ挑戦する東京への作戦を考えていた。

「東京か。」

 薔薇はミラと買い物に行ったあの日を思い出した。

「懐かしいね。今と比べて全然平和だったよ。」

 そんな話をして、作戦を決行に移した。

 まず彼らは、バイクでかつて東京だった大穴に向かう。そこは崖のようだった。

「本当に、東京がなくなったんだね。」

 薔薇が上を向くと、そこが変わり果てた東京だった。

「もう生やしちゃうよ。」

「いいよ。」

 レグルスは変身し、下から食虫植物を出す。

 大きな音とともに、すごい勢いで生えてくる。それは巨大で、一つ間違えれば本当に食べられそうなくらいだった。

 三十秒ほどで東京に着いた。そこには人間の死体が転がり、フラーワであふれかえっていた。

「ここが東京。」

「変わり果ててるね。」

 ミラは微妙な表情だった。

 するとそこへ、フラーワが現れた。色がこの間戦った硬い強化怪人態フラーワと一緒だ。

「いくよ。みんな。」

 薔薇が声をかけると、変身の準備をした。

「今回はフラーワベース、忘れないでね。」

「前回忘れてたからね。」

『フラーワベース!』『ブラックローズ!』

『ブリーズオブサクラ!』『サクラ!』

『Canivour growin' now』

「変身!」「変身!」「変身。」

『パワーサプレッション!その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』

『桜花 今そ盛りと 人は云へど われはさぶしも 君としあらねば! フラーーッワ!!』

『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』

 彼らは変身をし、フラーワをどんどん倒していく。

「はぁっ!!ほっ!!」

 しかし、一人だけとても強かった。

「ふんっ!!」

 彼は力でソレイユを離す。そしてドライバーを巻く。

「仮面ライダーなのか!」

『ユリ!』『フラーワ...』

 彼はナイトメアの三体目のライダー。その名もユリ。

「覚えているか姉ちゃん。俺はお前を殺そうとした。変身。」

 サクラは思い出した。彼は自分を恐怖に陥らせた者。そして、ミラに倒されかけたもの。

『かわいいものには棘がある!ユリ!ユリ!』

 彼は手から球根のようなものを出し、それを投げつける。

「吸うな!」

 レグルスが叫ぶがもう遅い。彼らはそれを吸って、変身したままその場に倒れた。

 仮面ライダーユリの球根は爆弾のようになっており、それが地面に強く打ち付けられるとあたりには毒の煙が出る。それを吸ったものはその場に倒れるのだった。

 彼は変身を解除した。ナイトメアが、後ろから現れた。

「よくやったキラー。俺がお前に目をつけてよかったよ。」

 ナイトメアは割れ目の中にソレイユたちを入れ、フラーワ世界へ戻った。

 

 フラーワ世界の大国、ムウェンの中心部には地球から吸い取った力でナイトメアの塔が建っていた。それと同時に王子が闇落ちした国はだんだんと滅びていき、栄えていた城下町も今では寂しい街になっていた。

 かつてはランダンだった地区も、花口が減り廃墟化していた。

「すべて俺の計画通りだ。」

 ナイトメアはつぶやいた。

 フラーワ世界がこんなにもさびれてしまったのは、ナイトメアがエネルギーを吸ってしまったからである。ナイトメアはそれを使って今度は日本からもエネルギーを吸おうとしているのだ。

「ははははははは!!!」

 ナイトメアは笑う。

 しかし、ナイトメアは自分で自分を否定した。

「何がおかしい!!俺の体でサクラたちを傷つけやがって!」

 ナイトメアは自身の問いに答える。

「大丈夫だ。俺はお前は生かすつもりだ。」

「俺がお前を止めて見せる!」

「だからお前の体はいらなくなったら帰してやるって言ってるだろう。それまで待っててくれよ。」

「サクラたちを傷つけたら許さない!」

「はいはい。」

 ナイトメアは自身のもう一つの人格、湊敬一を面倒くさそうにあしらい、仮面ライダー達を運んで行った。



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コットンローズのナイトメア

 ナイトメアは眠っている仮面ライダー達を仲間と一緒に檻の中に入れた。そこはレグルスと初めて出会った、あの場所だ。

「いいかひなた!キラー!ハリー!俺たちは今から地球という一つの星の破壊にまた一歩近づくんだよ!!」

 仲間のライダーたちは興奮気味に見ている。

 ナイトメアは小さな箱を何個も持ってきて積み重ねる。

「これが完成すると、東京とフラーワ世界が直接つながる。」

 そしてすぐに箱は巨大なものとなった。

 それには今までに見たことのないほどの力があふれ出ていた。

「東京がつながった後、余った力はすべて俺達のものだ。地球を支配するのももう時間の問題だな。」

 箱の銅線にレバーをつなげる。

 ナイトメアは笑いながらそのレバーを引く。すると強い光が箱から出、日本にはまたもや大きな地震が起こった。大穴だった東京の下は時空の割れ目に変化した。そこはさびれたムウェン中央につながっている。

 ナイトメアの計画は成功した。

「さて、力のほうは...」

 ナイトメアが余った力を確認しようとするが、一向に姿を見せない。もうすでに手に入ったと思いきやそんなはずもなかった。

「力はどうした!」

「コアがないんだね。」

 檻の中から声がした。

「ナイトメア。俺の力をためてくれてありがとう。これで本当の姿を見せられるよ。」

 声の主は檻をいとも簡単に破壊し、自分で時空の割れ目を作りそこに仲間たちと一緒に逃げ込んだ。

 ナイトメアたちは唖然としていた。

 レグルスの本当の姿。それはナイトメアに酷似したものだったからだ。

「くそっ!!俺が怒るなどめったにないことだ!!これで終わりだと思うなよ!!」

 

◆◇◆◇

 

 家に戻ると彼らは目を覚まし、驚愕した。なんと一緒に倒したはずのレグルスが自分たちを解放しているのだ。彼は少し笑った。

「振出しにもどっちゃった。」

「レグルス。ありがとう。」

 ジャンヌが礼を言うと、レグルスが照れる。

 そんな和やかな空間は一瞬でぶち壊された。

 大きな騒音とともに薔薇の家の窓が割れる。

「はははははははは!!!」

 そして笑い声が聞こえた。ナイトメアだ。彼はレグルスに自分の計画を壊されてから怒りに駆られてしょうがないのだ。家の中にハリー、ひなた、キラーの三人が乗り込む。

「お前ら!全員ぶっ殺す!!」

 キラーが言う。勿論戦う準備をしていないライダーたちは逃げ出す。止まったら殺される。

 公園まで来たら、今度は自分たちのターンだ。ナイトメア軍がドライバーを巻き付けると、自分たちもそうする。

『ユリ!』『ヒマワリ!』『ハス!』

『フラーワベース!ブラックローズ!』『ブリーズオブサクラ!サクラ!』『Carnivorou』

 六人は一斉に変身する。

『かわいいものには棘がある!ユリ!』『太陽に向かう大きなフェイス! ヒマワリ!ヒマワリ!』『マッドのマッドなモッドライダー ハンドレッドの目! ハス!』

『パワーサプレッション!その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』『桜花 今そ盛りと 人は云へど われはさぶしも 君としあらねば! フラーーッワ!!』『Carniv Ca Ca Ca Carnivorou』

 仮面ライダーが六体。戦争の始まりを告げた。

「はぁぁぁぁぁ!」

 ソレイユが叫び、一斉に戦いが始まる。

 ナイトメアはただそれをじっと見ているだけだった。そこに、仮面ライダーが現れる。

「ふんッ!」

 彼はいきなりナイトメアに剣を振りかぶる。惜しいところでナイトメアにはよけられた。

「みんな元気だなぁ。だけどお前は俺には勝てないんだよ!!」

 ナイトメアは攻撃をよけつつドライバーを巻く。

「新しい力を見せてやるよ。」

『ナイトメアフラワー! コットンローズ!』

「変身。」

『悪夢!悪夢!メア・コットンローズ!』

 仮面ライダーメア・コットンローズフォームは仮面ライダーにパンチを入れる。

「これはお前がくれた力だ。それで倒されるとは情けないなぁ。」

 仮面ライダーは持っていた剣で上から切り付ける。しかしそれは腕で跳ね返された。

「はははははは!!」

 ナイトメアは高く飛び上がり、ライダーキックの姿勢になる。

「まさか!最初から弱い力を...!!」

「さあな。」

 仮面ライダーは悲鳴を上げながら空中にがむしゃらに絵を描く。

「さよならだ。仮面ライダーバンクシー!!」

「うわあああああ!!!」

 仮面ライダーバンクシー、もとい、《誠実なる青王子》は死んだ。その瞬間、フラーワ世界の大国、ムウェンの最高権力者はナイトメアとなった。

 もちろんソレイユたちはその爆発に気づいた。

「ナイトメア...!!」

 ライダーたちは闘いをやめずに驚いている。

「どうだ俺の新フォームは。コットンローズっていうんだが。」

 その言葉にソレイユは振り向き、薔薇より先にミラが叫んだ。

「俺の兄さんを殺したのはお前か!!」

 ミラはドライバーのまま強化怪人態になり、ナイトメアのほうに走り出す。

「よせミラ!!」

 レグルスが止めるが、敵も強くミラに構っていられなかった。

「うおおおああおおおあああ!!」

『ドライフラーワ! ブラックローズ!!』

 ナイトメアは不敵な笑みを浮かべている。

「ふはははははは。」

 素早い動きで襲ってくるソレイユをナイトメアはひらりとかわし攻撃をする。

「お前は兄には勝てないだろう!!ミラ!!」

 激怒で自我を保てていないミラを彼は煽り続ける。

「所詮お前たちは俺達には勝てないんだよ!!」

 実際、マッド達はレグルス達に押し勝っているし、ソレイユもろくに攻撃を当てられていない。

「その命中率で勝てるのか?」

「勝てるにきまってる...!!」

 ナイトメアが余裕で問いかけてるとき、誰かが答えた。

「やれやれ、この体も潮時か...」

「サクラ!!俺はお前を!お前たちを愛している!こんな俺もどきになんて負けるな!!レグルス!これを!」

 ナイトメアは何を思ったのか、いきなりレグルスのほうへナイトメアフラーワのエナジーを投げつけた。

「余計なことをしやがって...」

 彼は一人で言い争う。

 なんと、レグルスにフラーワを投げたのはナイトメアではなく、湊敬一本人だったのだ。

「俺はもうどうなってもいい!ただ..お前を止めるだけだ!」

 ナイトメアは笑いをこらえられなかった。



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湊敬一の復活

 湊敬一の人格が現れたことにより、ナイトメアの計画はいきなり狂い始めたのだった。

「仕方ない。俺はお前を殺すしかないようだ。せっかくいい体を見つけたと思ったのに。」

 ナイトメアは敬一の口から霧のように出て、怪人態としてその場に出た。ナイトメアの憑依が消え去った敬一は疲れからかその場に倒れこんだ。

「お前らが今から俺に抵抗したらその時点でこいつの心臓を一突きする。」

 ナイトメアは剣を敬一の胸に当てる。

「さあ、レグルス。エナジーとコアを俺に渡せ。」

 レグルスは戸惑い、まずはナイトメアフラーワのエナジーを見つめる。

「これが俺の強化アイテム...返したりはしない。」

 ドライフラーワのソレイユも下手に動くと昔からの仲間の敬一を殺すことになってしまうので、ただ立っているだけだ。

「敬一...」

 サクラがドライバーのまま呟く。

「許して...」

 フラーワドライバーのサクラはかすかに涙を流した。

「時間切れだ。こいつを殺す。」

 ナイトメアは敬一の胸に剣を突き刺そうとした。しかし、それは失敗に終わった。

 なんと、敬一が起き上がりナイトメアの剣を弾き飛ばしたのだ。

「!?」

「体が軽いな。」

 湊敬一、完全復活だ。

 彼は驚くナイトメアに素手で殴り、蹴る。

「俺が人間単体に負けるわけないだろう。」

 気を取り直したナイトメアも強烈なパンチを敬一に入れる。勿論その衝撃で敬一は飛ばされる。

 刹那、カニバルが輝いた。

『ナイトメアフラーワ! カニバルフラワー!』

「ふんっ!完全復活なのは敬一だけじゃない。この俺、サー=レグルス=スカーレットも同じだ!!」

 輝きの中には一人の仮面ライダーが立っていた。ナイトメア軍のライダーは輝きの衝撃で一旦隙を見せる。

『噛砕!噛砕!ピラニア・カニバル!』

 仮面ライダーカニバル・ピラニアフォームだ。ナイトメアフラーワの力を使うカニバルは、ナイトメアと力の大小関係は一緒だった。しかもナイトメアは怪人態なので今はカニバルのほうが断然強い。

「俺はお前を超える。」

 カニバルは口調が変わりずいぶんと英雄らしくなっていた。

「おいお前ら!すきを一切見せるな!!」

 ナイトメアは焦ったのか三人ライダーに指示をする。彼らは動き出すが、強化怪人態のミラ、ドライブフォームの裂羅そしてピラニアフォームのカニバルには勝ち目がないことが分かっていた。

 ライダー二人とナイトメアは東京のくぼみに飛び込み、消えていった。しかし、サンだけは違った。

 一人取り残されても、ナイトメアの指示を最後まで達成しようとしたのだ。

「みんな腰抜けだなぁ。こんなのあたしだけでも倒せるよ。」

 本当は泣きそうなサンは、震える声で呟き、剣を抜いた。

「ソレイユ。あたしはお前を倒す!!」

 彼女は持ち前の速さでソレイユのところへ駆け込む。しかしソレイユは強化怪人態なのでサンは力負けしている。

「うおおおおあああ!!」

 ソレイユはサンの胸倉をつかみ木を何個も倒しながらまっすぐ進んでいく。

 誰も彼を止められない。

「お前ソレイユじゃない!!あたしはソレイユに倒されたいのに!!」

 サンは粉々になりそうな脳と戻ってきた過去の記憶で生を保っている。

 彼女は死ぬ。

 宿敵ソレイユではなく、ただのフラーワ、ミラの力によって。

 バイクを使って裂羅達が横からミラを止めようとしているのが少しだけ見える。

 敵が何か言っている。もしかしたら、自分を救おうとしているのかもしれない。

「」

 彼女も何かを言おうとしたが、瞬間に地面に叩きつけられる。

 爆音は静音になり、ソレイユのライダーキックで起こった爆発により彼女は消滅した。

 ミラと薔薇は変身を解除し、その場に倒れ気絶する。

 裂羅がバイクから降り、まだ半分燃えている土地をゆっくり眺める。

「私、もう仮面ライダーをやめるよ。」

 彼女は変身を解除し、サクラと別れ、どこかへ消えていった。

「ミラは...自分を止められなかった。」

 敬一が言う。

「確かに彼女は俺達の敵だ。だけど、サンも、薔薇もこんな最期を望んでないはずだ。」

 これに、レグルスも付け足す。

「でも俺たちは英雄になる。それには感情なんて関係ないんだ。最初にナイトメアを討伐したときも、俺は何度も許しを請う敵を見てきた。けど倒さなきゃ自分が危ない。泣きながら殺害したさ。」

 ミラの行動は少しも間違っていない。

 彼らはナイトメア討伐に一歩進んだのであった。

 雨が降る。雨はミラ達を叩き起こし、ジャンヌがいないという現実だけを告げた。

「彼女はやり切った。俺の代わりに裂羅として戦い、死んでもない。」

 誰も理由は教えなかった。これ以上にミラの心身に負担をかけると本当に止められなくなるからだ。

 ミラと薔薇は安心し、みんなで薔薇の家に帰った。

 東京へ行くことは今回もダメだった。

 

 あれから十何回目かの朝が来た。敬一と一緒の朝だ。誰も一度もジャンヌを見ていない。

 彼らはいつものように作戦を練り、いつものように出発する。

 ナイトメアは、あれから現れていない。

 変わったことは埼玉が消えたことと自衛隊風の格好をした硬いフラーワが時空の割れ目から出てきていることだけだ。それと、日本政府が復活したこと。

 政府は首都を臨時で被害の少ない大阪へ移し、硬いフラーワの名前を《ガムフラーワ》と名付け、東京と埼玉の大穴にできた割れ目を《エクスポーター》といった。

 ガムフラーワやエクスポーターの存在も民衆に広まり、ソレイユたち仮面ライダーが高い人気を集めた。

 しかしテレビで放送されていた仮面ライダーの存在は消滅していた。これもナイトメアの仕業なのだろうか。そんなことも考えられないまま、ソレイユたちもテレビ版仮面ライダーの記憶が消え去っていた。



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ナイトメアのフォーム

「っっだあ!!っ...はぁ....」

 自身の腹から二つのナイトメアフラーワエナジーを取り出したナイトメアは、悲しそうな顔をしてキラーとハリーにそれを渡す。

「これを早めに渡しとけば.....ひなたも助かっただろうに。」

 ひなたの訃報がムウェンに知れ渡ったのは彼女が殺害されてから一週間後だった。ナイトメアは声を挙げもせずにただ「仕方ないことだ。」と言ったのだった。

 

◆◇◆◇

 

 日本の東京や埼玉が廃墟化すると同時にムウェン大国もかなりの勢いで滅びていった。政治の中心の王子が死んだ瞬間は皆ほとんど絶対王政だった政治が終わったことに喜んでいたが、次第に治安の悪化と民衆への徴兵令で笑顔がなくなっていった。

 そして《誠実なる青王子》の城はナイトメアの力によって消滅し、日本とつながるエクスポーターに変化した。

 ある日、人間がエクスポーターから出てくる。彼女は着地した後フラーワに変化する。

「英雄さんが忘れ物でもしたか。」

『Comant!』

 男四人が現れ、彼女を囲みドライバーを巻きクローバーのエナジーを出す。

「ああ、少し忘れ物をしてね。」

『Go G G G Going!』

 彼らは四人同時に同じ仮面ライダーに変身した。名前は

「俺達は仮面ライダーコマントだ。かつて秘密結社エボルとしてレグルスと手を組んでいた。」

「だがあいつは自分の力に飢え、俺達を捨てた。」

「ナイトメアと手を組むつもりはないが、レグルスとその仲間をぶっ殺す!!」

「まずはお前からだ!ジャンヌ...」

 そういうとコマントは手を鳴らしジャンヌに襲い掛かる。パンチが、一発決まる。

「うっ!」

 ジャンヌが倒れこむと一人が飛び上がる。

「四人出る意味はないな。はぁ!!」

『Finished by Comant!!』

 ドライバーの音声とともにライダーキックが行われ、ジャンヌは大爆発する。

「うわああああ!!!!」

 爆発の後ろではきれいに着地したコマントの一人がマスクの中でにやりと笑う。

「いくぞ。俺達の敵、レグルスを倒しにな。」

 四人は変身したままエクスポーターに飛び込む。

 

◆◇◆◇

 

 ミラがひなたを倒してからちょうど一週間後、ミラ達はまた東京に来ていた。ナイトメアらは必ずエナジーを取り返しに来る。その時がナイトメアを倒す絶好のチャンスだ。それを狙っている。

「ここでナイトメアを倒さなきゃ日本は終わる。」

 薔薇がそういったとき、陰からフラーワが出てくる。

「ひなたのためにも、俺らが相手だ。」

 仮面ライダーユリと仮面ライダーマッド、そして硬いフラーワだ。

「しかたない。私たちもいくよ!」

『フラーワベース! ブラックローズ!』『ブリーズオブサクラ!』『ナイトメアフラーワ!カニバル!』

「「「変身!」」」

 ソレイユはマッド、裂羅はユリ、そしてカニバルはフラーワと戦う。

 ナイトメアと同じ力を持ったカニバルはいとも簡単にフラーワを倒していく。

「この姿の俺がフラーワなんかに負けるわけねえだろ!!おらっ!!」

 何人ものフラーワがカニバルに負けていく中、やはりそこにナイトメアが現れた。ナイトメアは倒されたフラーワの力を吸収したらしく、さらに強くなっていた。

 すかさずナイトメアに攻撃するが、それは軽く抑えられる。

「この先ずっとその力が続くと思うな?ナイトメアフラーワには副作用があるんだよ!」

「何!?」

 ナイトメアがパンチを入れる。

「もともとその力は俺の体から取り出したものだ。俺以外の使用者はいずれ消滅する。」

 カニバルは反撃して連続でパンチをするが、ナイトメアにはあまり効いていない。

「お前ごときが俺に勝てると思うな。」

 ナイトメアはひなたが持っていた剣を持つ。

「これなんて言うかわかるか。サンシャインブレードだ。俺は彼女が死んでとっても悔しかった。だからお前達をこれで殺す!」

『コットンローズ!サンシャイニング フィニッシュ!!』

「ぬああああああっっ!!!」

 その場には大爆発が起こるが、中からカニバルが出てくる。

「悪いな。俺も愛する人をなくしてるんだ。」

「ああ、ジャンヌか。そんなことなら俺が殺る価値はねぇ。キラー!やれ。」

 ナイトメアが言うとユリがすぐに出てくる。

「裂羅はどうした?」

 カニバルが聞くとユリは後ろを指さす。そこにはボロボロになった裂羅の姿があった。

「きっと久しぶりだから力をうまく使えてなかったんだろう。情けないやつだ。だがお前には本気を出さなきゃ勝てなそうだ。」

『ナイトメアフラーワ! ユリ!』

 ユリはナイトメアフラーワエナジーを出し、ユリのエナジーをセットしてドライバーに挿入する。

「存分に戦え。仮面ライダーユリ・メアフォーム!」

 ナイトメアはそう言って割れ目に包まれ消えてゆく。

「ははははは....チェンジエナジー!!」

『悪夢!悪夢!メア・ユリ!』

「それ、メアのユリフォームじゃないの?」

 カニバルの突っ込みによって場は風の音が聞こえるほど静かになる。が、ユリの攻撃によってすぐに沈黙は破られた。

「うるせぇ!!ぶっ殺すぞ!!」

 ナイトメアの力を使いさらに好戦的になったユリはもはや自分の本能でカニバルに攻撃している。

「お前も力に慣れてないか!!」

 カニバルは割れ目を使い攻撃をよけ、一発一発確実に攻撃を入れてゆく。

「俺はナイトメアを殺すために生きてきた!!お前みたいにフラーワという抽象的な目標じゃない!はぁ!!」

 カニバルのパンチでユリは一気にダメージを負う。そこでできた隙にさらにカニバルが時空の力を使いユリを動けなくする。

「お前はもう終わりだ!!新フォームがかわいそうだな。はぁ!!」

 カニバルは飛び上がり空中でフラーワを抜きまた挿す。

『カニバル・ナイトメア・フィニッシュ!!』

 彼はライダーキックの体勢になり一直線にユリに向かう。しかもその間に割れ目を作りユリを固めている割れ目から出てくる。しかもそれを繰り返すのだ。勿論ユリには大ダメージが入り、爆発を起こし消滅する。

「ユリ!!」

 ソレイユと戦っていたマッドが爆発に気づき声を上げる。しかしもうそこに仮面ライダーユリ(キラー)の姿はなかった。

「ソレイユ!!俺はひなたやキラーの分までお前を倒す!!」

 彼はそういったとたん複眼が赤く光る。彼の殺意が彼を生長させたのだ。スーツの中の彼は強化怪人態になった合図だ。

『ナイトメアフラーワ! ハス!』

「絶対に負けねぇよ.....チェンジエナジー!!」

『悪夢!悪夢!メア・ハス!!』

 仮面ライダーマッド・メアフォーム。それはナイトメアより狂気じみたライダーなのかもしれない。



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レグルスの仲間

 マッドのメアフォームはソレイユが有利だった戦場をいきなり形勢逆転させた。彼はブラックローズのソレイユをキック一発で動けなくした。

「体が動かない!?」

「まずはお前からだ!はぁ!!」

『マッド・ナイトメア・フィニッシュ!!』

 彼は飛び上がりライダーキックの体勢になる。そしてソレイユに突っ込んでいく。

 が、失敗に終わった。

「何?」

 カニバルが時空の力を使いソレイユ、裂羅、そして自身を安全な場所へ移動させたのだ。

 だがマッドにも余裕があるようだ。

「ははははははは!!」

 彼はキラーが落としていったユリのエナジーとナイトメアフラーワのエナジーを拾い、自身をエクスポーターに包み込んだ。

「この世界を支配するのはナイトメアだ。」

 一方、東京にあるエクスポーターの近くに出てきたソレイユたちは自らの傷を癒していた。その場にいた自衛隊らが応急処置の道具を持っていたのだった。

 特に裂羅こと敬一とサクラは大けがを負っていたのですぐには回復しなかった。

「私の家まで行ったほうがよかった?」

 薔薇が包帯で体をぐるぐる巻きにされている敬一を見て言う。が、彼は「大丈夫だ。」の一点張りだった。

 彼らが東京で戦っている間、また日本の都市が一つ消えた。今度は栃木県だ。しかし栃木は東京や埼玉とは違って空中に行かず爆発により廃墟化したのだった。

 その事実がたった今仮面ライダー達に伝わる。

「ナイトメアが力をつけたということか。」

「それは違うな。」

 敬一の意見に誰かが答える。その声は妙に懐かしく、圧があった。

「俺達の宣戦布告だよ。」

 一人が言った後、同じような姿の人間がエクスポーターから三人出てくる。

「久しぶりの地球だな。」

「うん!久しぶりだね。コマント達!」

 最後の一人が言うと、レグルスが嬉しそうに返す。

 彼らは仮面ライダーコマント。かつて秘密結社エボルとしてレグルスと一緒に戦っていた者だ。

「もっといたでしょ。ほかのみんなは?」

「ああ、皆辞めていったよ。お前が俺達を捨てたからな!!」

『Comant growin' now Comant growin' now』

 一人がベルトを巻き付け待機音を鳴らす。レグルスは状況を理解していないのか戦う準備すらしていない。

「俺と一緒に戦うの?」

「いいや、俺たちはお前と戦う。戦争で死んだ仲間たちのためにもな!!変身!!」

『Go G G G Going!』

 ベルトの音声とともに彼の周りには巨大なクローバーが生える。そしてそれは彼の両肩と胸、顔に装着され、仮面ライダーコマントのスーツへと変形する。

「レグルス=スカーレット!!死ねぇ!!!」

 レグルスはまだ変身していない。

『Finished by Comant!!』

 コマントはレグルスに向かって走り、全身の力を右拳に込めてレグルスの腹を殴る。しかしレグルスは一切の抵抗をしない。そしてフィニッシャーを受けたら起こるはずの爆発も不発に終わった。

 

「これでナイトメアフラーワのエナジーを取り返すことができた。協力ありがとう。」

 

 レグルスがナイトメアの声でそう言った。レグルスがナイトメアになったのだ。

 ナイトメアは人間態レグルスが鞄にしまっておいたナイトメアフラーワのエナジーを取り、ドライバーを巻く。

「まさか仲間に裏切られた挙句、敵に体を憑依されるとは思わなかっただろう。」

 ナイトメアはそういうと倒れたコマントの体に触れる。すると彼は液体状になり、ナイトメアの体に入ってゆく。

「俺はどんどん強くなる。お前たちに負けない程にな!」

『ナイトメアフラーワ! クローバー!』

「変身。」

『悪夢!悪夢!メア・クローバー!』

 残された三人はドライバーを巻こうとする。が、それは不要だった。

「その前に倒せばいいことだ!変身!」

『ブラックローズ!!』

 薔薇がソレイユに変身したからだ。

「おっと、レグルスの体は大丈夫なのかな?」

 この状態でナイトメアを倒すと、同時にレグルスも倒すことになってしまう。ソレイユは、一方的にやられているだけだ。

「ははははははは!!仮面ライダーにはなったものの、攻撃ができなければ意味がない!仮面ライダーソレイユは今日で終わりかな!」

 ナイトメアはエナジーをドライバーに抜き差しする。

『ナイトメア・フィニッシュ!』

「死ね!」

 そして抵抗できないソレイユに近づき、下から上へと蹴りを入れる。

「あああああああああ!!!」

 必殺技が決まり、その場は大爆発した。

「ソレイユ!」

 裂羅が声を上げる。

「薔薇は無事だよ。」

 爆発の中から声がする。これもまた聞き覚えがある懐かしい声だ。

「ああ、久しぶりだね。ちょっとこれを取りに行ってて。」

 煙が止んだところで声の主は薔薇を抱えて姿を現し、片手で持っているエナジーを皆に見せた。

「ジャンヌ!」

 ナイトメアに憑依されているはずのレグルスが叫ぶ。

「くそっ!!また愛とやらに計画を邪魔された...」

 ナイトメアは悔しそうにレグルスの体から出、時空の割れ目に包まれ消え去る。

「まだ生きてたのか。」

「ああ、私は不死身さ!」

 コマントの一人がドライバーを巻く。

「運よく生き延びたが、それもこれまでだ!!変身!」

『Go G G G Going!』

 ジャンヌのほうへ走り、エナジーを出し入れしてフィニッシャーの準備をする。

『Finished by Comant!』

「やめろおおおおおおおお!!!」

『Carnivorous!!』『Finished by Carnivorous!!!』

「うわっっ!!」

 間に合った。

 カニバルはジャンヌに襲い掛かっているコマントを蹴り飛ばしたのだ。彼はほっと胸をなでおろした。

 一方かつての秘密結社エボルは仲間が二人死んで絶望に浸っていた。

「俺達と一緒に行こう。」

 そこに現れたのはナイトメアだ。

「どうやらそうするしかないようだな。」

 レグルスの部下だった彼らはついに最悪の集団と手を組んだのだった。



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日常のソレイユ

 レグルスがナイトメアの力を使えなくなったので、彼女らはバイクで家まで帰った。途中にフラーワに出会ったが、変身して軽々と倒していった。今の彼女らにはガムフラーワなど通用しないのだった。

 日本はフラーワ世界からの襲撃に結構な被害を受けていたが、薔薇の家は全然無事だった。

「あーーーーーーーーーー。やっと落ち着ける!」

 薔薇は家に帰ると一番最初にベッドに飛び込む。

 しかし予想外に彼女は落ち着けなかった。

 ミラ、レグルス、敬一の三人がうるさすぎたからだ。しかもサクラとジャンヌはフラーワ世界の戦争を長い間経験していたせいでちょっとやそっとの騒音を全然気にしないのだ。

「うるさーーーーーい!!あ、お風呂はいろ!」

『フラーワー!!』

 薔薇の攻撃は三人の英雄には全く効かなかった。なので彼女は風呂に逃げた。

 薔薇が風呂に逃げている間、敬一が何やらぐしゃぐしゃのカードのようなものを出した。

「そうだ、俺家からずっとトランプ持ってきてたんだ。」

『ナイトメアフラーワ!』

 それを見て、「ぐしゃぐしゃすぎ。」とレグルス。「これトランプって言えないでしょ。」とミラ。

「なんだと!せっかくのパーティーグッズなのに!ほらほらやるぞ!」

 そんなことも気にせず敬一はぐしゃぐしゃのトランプを広げる。

「ちょっと敬一。あんたこれいつから持ってたの。」

 サクラがそれを止めてすべてをゴミ箱の中に捨てた。敬一はしょんぼりとした表情をし答える。

「ナイトメアに体を乗っ取られる前。」

『悪夢!』

 ミラは棚から薔薇と服を買いに行ったときに買ったトランプを出す。

「最初からそれだせばよかったじゃない。ってジャンヌちゃん、何してるの?」

 ジャンヌは何やら後ろを向いて棒をいじっているようだ。

「ああ、この棒はどういう武器なのかなぁとね。」

 ジャンヌはさっきからいじっている棒を見せる。

「それ突っ張り棒だよ。薔薇がつけられなかったんじゃない。」

 レグルスが答える。

 ちょうどそのタイミングで薔薇が風呂から出てきた。

「サクラたちも入っていいよー...ってジャンヌ!?何してんの?」

『ブリーズオブサクラ!』

 ジャンヌは怪人態になり、爪で突っ張り棒を削り尖らせていた。

「薔薇、この娘集中したら聞かないタイプだったの。」

「もーーー!ゴミが出ちゃうでしょー。ほらちょっと男子!掃除して!」

『あなやあなやといひけれど』

 薔薇に箒を渡されたミラ達は「なんで俺達が」など言いながらやっていたがレグルスがバランスを取り始めてからふざけ始めたのだった。

 とうとう薔薇は怒り、箒を取り上げ玄関から外に投げる。

「俺達の箒が!!」

 男性達が箒を取りに外に出たところで、彼女はドアを閉め鍵をかけた。

「もう!」と彼女はふくれっ面でベッドに座る。

 しかし同時に、「でも、そういうとこもないと疲れちゃうよね。」と呟いた。

「ジャンヌ、サクラ、一緒にお風呂入っておいで!」

「いただくよ。」

 

 彼女らが風呂から上がると、男子たちがまたトランプをしていた。

「敬一さんババ抜き以外よわいね。」

 ミラが言うが、敬一は聞かずにある発見をする。

(おい、これ今からお風呂入ればサクラの残り湯にはいれるってことか....)

『ブリーズオブサクラ!』

 この最悪な発見はもちろんレグルスもしていた。

(敬一には悪いけど俺は実質ジャンヌと一緒にふろに入るっていう空間を味わうため!)

『ピラニア・カニバル!』

「「うおおおおおお!!」」

 彼らは必死で服を脱ぎだすが、サクラが

「ごめん!お湯抜いちゃった。」

「え。」

 半裸の敬一とレグルスは吹いた風に体を震わせる。

「聞こえてたのか!?」

「丸聞こえだよ。気持ち悪すぎ。」

 

 

「どうしたのよ。今日ばっかりは楽しい雰囲気なんだから気抜いてもいいんじゃないの?」

 ベッドに座り神妙な表情をしている薔薇に、サクラが声をかける。

「仮面ライダーになって、こういう楽しい場が増えたなっておもって。」

「そうね。ふざけあって、喧嘩もする。そんな仲間が私にできたことがすごいと思うし、何しろ敬一があんなに無防備な笑顔を見せたことはめったにないわ。それが見れてうれしいわ。」

 薔薇も一瞬ミラを見るが、彼は素が余裕ある者だったのであまり変わらなかった。

「私、仮面ライダーになるまでずっと引きこもりだったんだ。学生時代も友達すらできなくて。大学を辞めてから親の電話以外人と話さなかった。」

 澤谷薔薇は彼女の人生を振り返った。

「でも、初めてミラと出会って、裂羅とカニバルとも出会って、こんなに人生が楽しいって思えたことはなかった。今のみんなとずっと一緒にいられないかなとか、思ってる。」

 薔薇はナイトメアの顔を思い出す。

「ナイトメアも、人類に危害を加えなかったらずっといてほしいんだ。ナイトメアがいる限り、私たちはつながってられるから。」

 薔薇がそういったとき、そのナイトメアが、テレビに映った。

『はははははは!仮面ライダー、見てるか?俺だ。明日の朝に埼玉県へ来い。俺と最後の戦いをしようじゃないか。一応言っておく、仮面ライダー。お前たちがいなくなったら地球は完全に俺のものだ。俺以外で地球上に仮面ライダーより強いやつはいないからな。地球の皆さん!この世界は仮面ライダーにかかっています。ぜひとも応援してあげてください!はははははは!!』

 そのあとニュースはずっとその内容を繰り返していた。この放送は全家庭に放送された。彼は全テレビのネットワークをジャックして放送したのだった。

「よし、これをあげるからがんばってくれよ。仮面ライダー!」

 ジャンヌが言い、薔薇にエナジーを渡す。

「これは?」

「私の仲間、トーマスのエナジーさ。」

 薔薇はしっかり受け取る。これにはジャンヌとその仲間の思い出が全部詰まっているのだ。

「よし、今日はもう寝るか!」

 薔薇はそういって電気を消し、ベッドに入った。

「ついに明日...決着をつけなきゃいけなさそうだね。」

「僕も頑張るよ。お休み。」

「うん、お休み。」

 仮面ライダーソレイユの澤谷薔薇は目を閉じる。

 

 次の朝、どことなく空気が緊張している中彼らはバイクに乗って埼玉県のエクスポーターへ向かった。彼らは小さなエクスポーターに包まれ、空中の廃墟化した街へ移動した。

「おはよう!早速これからお前達を全員倒すんだが、準備はいいか?」

 ナイトメアは手の骨と首を鳴らし、準備万端を示している。

「勿論だよ。倒されるのはお前だけどな!行くよ、ミラ。」

「ああ!」

 ミラは薔薇の腰に巻き付く。

「俺らも行くぞ!」

「うん!」

 サクラも敬一の腰に巻き付き、レグルスもドライバーを腰に巻き付ける。

「ああそうだった。レグルス。お前にはこれを貸すよ。」

 ナイトメアはレグルスの手の上にエクスポーターを作り、そこからはナイトメアフラーワのエナジーが出てくる。

「そんなにハンデつけちゃっていいんだね。俺達は容赦しないよ。」

『フラーワベース! ブラックローズ!』『ブリーズオブサクラ! サクラ!』『ナイトメアフラーワ カニバルフラワー!』

「最後の戦いだから、私たちは全員本気だ!」「「「変身!」」」

『パワーサプレッション!その黒色は何の色!正義のためか悪のためか!ソレイユ_ブラックローズ!!フラーワー!!』

『桜花 今そ盛りと 人は云へど われはさぶしも 君としあらねば! フラーーッワ!!』

『噛砕!噛砕!ピラニア・カニバル!』

 仮面ライダーソレイユ・ブラックローズフォーム、仮面ライダー裂羅・吹雪、仮面ライダーピラニア・カニバル。彼らは三人でナイトメアに襲い掛かった。



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最後の戦い

「さあ、お前たちに俺が倒せるかな?」

「うおおおおおおお!!」

 彼らは全力でナイトメアに襲い掛かる。

『悪夢!悪夢!メア・ユーカリ!』

 カニバルは小さめの食虫植物を生やしナイトメアにかみつかせる。ナイトメアがそれを取り払おうとしているところに裂羅が連続でパンチをし、ソレイユがライダーキックをする、という作戦だ。

 だがその作戦はいきなり失敗に終わった。

 ナイトメアがカニバル中心に攻撃をしているのだ。

「くそっ!ピラニア・カニバルを舐めやがって!!」

『ピラニア・フィニッシュ!!』

 カニバルが助走をつけてライダーキックをすると、それはナイトメアの懐に綺麗に入った。カニバルには食虫植物の幻影がつき、ナイトメアに噛みつく。

「ぬわぁ!!」

 ナイトメアはハスのエナジーを落とす。カニバルはそれを拾う。

「お前にそれを持つ資格はない!!」『ナイトメア・フィニッシュ!』

 ナイトメアはカニバルにユーカリの葉を飛ばす。とがったその葉がカニバルを惑わせ、その間にパンチをする。

「やはりお前は俺を倒せない!」

「ぐわああああああああ!!!!」

 大爆発が起こり、ボロボロのカニバルがそこから出てくる。

「ごめんよ。俺は一旦引くとするよ。」

 カニバルは自身でエクスポーターを作りそこに入る。

 裂羅とソレイユはそれを気にせずどんどんナイトメアを攻める。しかし彼にはあまり攻撃が効かない。

「なんで攻撃が効かないんだ!」

 ソレイユが言うとナイトメアは答える。

「受けた攻撃の半分以上のエネルギーを俺のものにしてるからだよ。」

 彼は笑いをこらえられていない。今日ソレイユたちと最後の戦いをしようと誘ったのも自分のエネルギーを貯めるためだったのだ。ソレイユはまんまとそれに引っ掛かり、本気でナイトメアを倒そうと努力していたのだ。

「お前!!私たちを騙したのか!」

「騙されるほうが悪いんだよ。例えお前達が勝ってもこの世界は終わりだ。」

「お前ええええぇぇぇ!!!!」『マウンテンサクラ!』

 マウンテンサクラエナジー。先日、薔薇がジャンヌからもらったトーマスのエナジーだ。それにはジャンヌの仲間達との記憶が入っている。

「なんだそのエナジーは。」

「うおおおおお!!!チェンジエナジー!!」

 ソレイユはフラーワベースとブラックローズをドライバーから外し、マウンテンサクラエナジーを差し込んだ。

 しかし、そううまくはいかなかった。

 フラーワドライバーからは煙が出て、体には稲妻が走る。ソレイユに変身している薔薇自身にも痛みや激しいめまいが出てきたのだった。

「使うのをやめろソレイユ!!お前が死んじまうぞ!」

 裂羅が忠告したが、ソレイユは聞かない。

「ぬわあああああ!!!」

「はっ!」

 裂羅はナイトメアに一発かなり強いダメージのパンチを入れて怯ませ、苦しむソレイユのエナジーを抜き自分のドライバーに刺した。

「桜のエナジーは俺のものだ!チェンジエナジー!」

『世界に桜を咲かせる者!仮面ライダーサクラ・マウンテン!!フーラーワー!!』

 仮面ライダー裂羅・マウンテンフォームが誕生したのだった。

「なんで裂羅は使えるの?」

 薔薇が聞くが、それは裂羅自身にもわからない。

「サクラの力を使うのは俺だからな!いくぜソレイユ!」

 ナイトメアはいきなりの新フォームに混乱している。

『ブラックローズ・フィニッシュ!』『マウンテン・フィニッシュ!』

「そんな攻撃も全部力を吸ってやる!!」

 ナイトメアの周りには裂羅ほどの大きさの山がたくさん造られ、ナイトメアを固める。そしてそこに裂羅とソレイユがライダーキックを入れて山ごと破壊する。それがソレイユと裂羅の必殺技だ。

「「うおおおおおおお!!」」

 ナイトメアが必死で二人の攻撃に耐えている中、後ろからもドライバーの音声が聞こえる。

『カニバル・ナイトメア・フィニッシュ!!』

「はぁっ!!」

 後ろからのカニバルの一撃にナイトメアは大爆発をし、消滅した。

「なあああああああああああ!!.....ははっ」

 爆発の周りで、三人の仮面ライダーが着地する。

「ナイトメアが死んだ...」

「俺の強化フォームも見てほしかったけど...」

「俺の最後のキックのおかげだね。」

「お前逃げただろー!!」

 変身を解除してみんなが喜ぶ中、ソレイユだけは違和感を覚えた。

「いや、ナイトメアは死んでない。」

 ソレイユは静かにドライバーからエナジーを抜き話を続ける。

「ナイトメアはなんでマッドを連れてこなかった??」

「それはあいつがマッドを殺したくなかったからだろ。」

「だとしてもなんでマッドは来なかった?いつもなら当然のようにエクスポーターから出てくるのに。」

「マッドが逃げたとかじゃないの?」

 薔薇はそれが引っかかって取れない。が、低い声で自問自答をる。

「それは、俺がそんな簡単に仮面ライダーにやられないという確証がハリーにあったからだよ。」

 なんと、ソレイユはナイトメアに憑依されていたのだった。

 ナイトメアは今までに使っていたものとはまた違うドライバーを巻く。

『ナイトメア・ドライバー!』「やっとこの時が来た。感謝するよ仮面ライダー。ハリーへの土産だ。」

 ナイトメアはナイトメアフラーワのエナジーに薔薇のエナジーを入れ、変身する。

『究極!究極!ナイトメア!』

「フェーズ1、2、3、4、そんなものは関係ない!!全部フェーズ∞だぁぁぁぁぁああああ!!!」

 仮面ライダーナイトメアはもう一回ドライバーにエナジーを挿し、フィニッシャーの音を鳴らす。

『ローズ・フィニッシュ!』

 ナイトメアが手を広げるとそこにはバラのガムフラーワが大量に落下してきたのだった。

「俺は澤谷薔薇の戦闘データを全部コピーさせてもらった。そのためにこいつの体を使って変身したのだ。俺は死んでなんかいない。最後の戦いはまた今度だ!!はははははは!!」

 ナイトメアは薔薇の体を捨ててエクスポーターへ去っていった。

「究極のナイトメア...俺が昔戦ったときは見たことなかった...」

 仮面ライダー達も薔薇の家にエクスポーターを使ってワープした。



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ラフレルの復活

 ナイトメアが完全体になって、日本の崩壊はさらに速度を上げていった。仮面ライダーナイトメアにとって、建物を一つ破壊することなどとても簡単だった。だが彼自身はそんなに破壊活動をしていなかった。代わりに、ナイトメアの手下の生き残り、マッドとかつての上司であったレグルスを倒したいコマントが仮面ライダー達をおびき寄せるために街を破壊していた。

「全部!全部破壊してやる!」

「くれぐれも忘れるな。俺達の目的は仮面ライダー達からエナジーを奪うことだ。」

 今日も、いつものように建物を破壊していた。するとついに仮面ライダーがバイクに乗って表れたのだった。

「ついに現れたか。仮面ライダー。」

 しかし、バイクに乗っていたのは彼らの敵ではなかった。

「やってるなぁ。」

 ナイトメアだ。彼はすでに変身しており、攻撃の準備は万端だった。

「お前が出る必要はない、ナイトメア。」

「そんなことはわかってるよマッド。だが、言い忘れたことがあった。仮面ライダー裂羅には気をつけろ。ただものじゃないからな。」

 ナイトメアはそういってエクスポーターに消えていった。

「わかってるさ、俺は人間なんかにまけない。」

 

◇◆◇◆

 

 ナイトメア軍の破壊活動を止めるために、ソレイユ一行は毎日大忙しだった。彼らが地球に送り出すガムフラーワは倒しても倒しても数が減らないのだった。

 どこから現れているのかわからないガムフラーワは、何も考えずに破壊活動をしているのだった。

「ソレイユ!仮面ライダーの情報だ!今はそっちに行くぞ!」

 裂羅がソレイユに呼びかける。だがソレイユは「私はこっちにいるから!」といっていかなかった。

「仕方ねぇ。ソレイユ!ジャンヌ!そっちは任せた!」

 そういうと裂羅とカニバルはバイクに乗ってメールに書いてあった場所に向かう。彼らは海辺の町に着くと、バイクを降りて仮面ライダーを探す。

「どこだ!!」

「はぁ!!」

 裂羅が後ろから誰かに剣を刺される。気づいたカニバルが攻撃して追い払おうとするが、攻撃は全く当たらない。

「なんなんだお前は!!」

 カニバルが叫ぶと、それは変わり果てた姿をあらわにする。

「俺だよ。仮面ライダーラフレルだ。もっとも今は仮面ライダーメアラフレルだがな。」

 ラフレルは二人いる。裂羅がそれに気づいたときには、もう手遅れだった。

「ふっ!!」

 カニバルはもう一人のラフレルに背中を刺され、変身解除し倒れこむ。

「ラフレルは二人とも死んだはずじゃないのか!!」

 裂羅が言うと女声のほうが答える。

「私たちは一回死んだ。だが地球エネルギーをナイトメア様に分けてもらって、今を生きているのだ。」

 そして、男声のほうが、

「これで終わりだ。もう地球のエネルギーが吸い取られ始めていることを把握しといたほうがいいかもな!!」

『『ラフレシア・ナイトメア・フィニッシュ!!』』

 辺りには表現できない臭いがたちこみ、人間の状態のレグルス達にライダーキックを与える。

「英雄でも、死ぬのは怖いもんだねぇ、敬一。」

「誰だってそうさ。」

 彼らはもう、死ぬ覚悟を決めていた。しかし、

『ブリーズオブサクラ!』

 彼らが受けるはずだったライダーキックは、不発に終わった。

「もう一人の...裂羅....?」

 そうそこには、仮面ライダー裂羅・ドライブフォームが彼らを助ける姿があった。

「忘れたのかい?私も裂羅なんだよ!」

 中身はジャンヌだった。

「さぁ、市民の皆さんに介抱してもらって!ソレイユ、行こうじゃないか!」

 ブラックローズのソレイユが遅れて登場する。そして、裂羅が使ってるフラーワドライバーは、彼女が裏ルートでランダン市民と取引したものである。

「相手は一回死んでるんだ!ミラ、ジャンヌ!余裕でしょ!!」

 裂羅はシャウラと、ソレイユはパートナーの意識が存在しないウェズンと戦う。

 シャウラが攻撃を受け一瞬の隙を見せた時、裂羅は見逃さなかった。

「終わりなのはお前だ。」

『裂羅吹雪・フィニッシュ!』

 いきなり降ってくる桜は、巨大な隕石となりシャウラを攻撃する。そしてシャウラの目の前に隕石が降りかかった瞬間、ライダーキックでその隕石とともにシャウラを破壊するのだった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 一方ソレイユはウェズンとは根本的に何かが違った。一番最初に倒した敵である彼は、ソレイユにとって何も勝ち目がなかったのだ。

「あの時とは、レベルが違う...しかし...」

『ラフレシア・ナイトメア・フィニ『ブラックローズ・フィニッシュ!!』

 ソレイユとラフレルはライダーキックでぶつかるが、途中でラフレルの体が真っ黒になり、その場へ落下したのだった。

「これがソレイユの力....」

 一つにまとめられたウェズンとシャウラにはもう勝ち目がなかった。

「私たちを殺してももう遅い...地球のエネルギーはもう吸われ始めてるからなぁ!!!」

「ああ、お前達の無駄な努力は俺達にとってはバカとしか見れねえ。だけどな、同時に褒めてやりたくなるんだよ。だから俺達はお前たちの力になる。」

 ウェズンは自分のエナジーを出す。そこにシャウラが手をかざす。すると、エナジーが光りだし姿が変わる。鉄でできたただの物体だった。

「俺達にできるのはここまでだ。ナイトメアによろしくな。」

「私も、健闘を祈ってるよ。」

「「地球のエネルギーも大したことねぇなああぁぁぁぁぁ!!」」

 そういって二人の変身は解除されずに、大爆発もせずに、消滅した。

「なんか、毎回毎回胸糞悪いな。」

「ラフレル達は最後に私たちに希望をくれた。これで私たちができることを探さなくちゃ!」

 そこに、フラーワを引き連れた仮面ライダーが現れた。あてはまるのはただ一人、マッドだった。

「地球エネルギーを与えたふりをすれば、少しは強くなったと思ったんだがなぁ。」

「どういうつもりだ!」

 マッドは全種類のフラーワでソレイユたちに攻撃する。

「あんな雑魚たちにはエネルギーは与えない。だが今回は違う!地球エネルギーを過剰に摂取し本能のごとく戦っているガムフラーワその名も!《ネオフラーワ》と戦え!」

 ネオフラーワは生成された時から地球エネルギーが充満する部屋で鍛えられ、普通のガムフラーワの15倍の強さを持っているのだ。

「ちなみに...俺もナイトメアに内緒でネオフラーワと一緒の部屋で生活していた!!」

 地球エネルギーの影響か、彼はテンションが高くなっている。

「はははははは!!地球は終わりだ!!」

 ソレイユ達は、ネオフラーワと戦うが、攻撃は全然入らない。



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ソレイユの敗北?

 ソレイユたちは全然攻撃の入らないネオフラーワに混乱していたが、徐々にやり方を覚えていった。

「ソレイユ!カニバル!ジャンヌ!必殺技だけでも当てろ!!」

「わかった!」

『ピラニア・フィニッシュ!』『マウンテン・フィニッシュ!』『裂羅吹雪・フィニッシュ!』

「はあああ!!!」

 数あるライダーの技の中で必殺技だけが確実にヒットしたのだった。

 だが、問題はここからだった。まだまだ量があるネオフラーワ。ライダー達が必殺技を使うには体力が足りなすぎるのだった。

「ナイトメアに代わって!この俺が!地球の最後を見届けるのだ!!」

 狂気に満ち溢れたマッドは笑い転げている。町の住民の悲鳴が、彼の神経を刺激するのだった。

「お前は許さない。私が絶対に倒す。」

 一人だけ体力が有り余っているソレイユは、攻撃してくるネオフラーワを無視してマッドに近づいていく。

「僕はいつでも大丈夫だよ。薔薇。」

「つらくなったら頼ってね。ミラ。」

 ソレイユの手の中には色が抜けた薔薇の花びらのフラーワが入る。それと一緒に、バラのフラーワも起動する。

『ドライフラーワ! バラ!』

 ミラの姿が変わる。

「ソレイユ!大丈夫なのか?」

 戦っている裂羅が気づき言う。しかしそれにソレイユは答えない。彼女は無言でドライバーにセットする。

『ドライドハートは還らない!ドライフラーワ・バラ!! フラーッワ!』

 仮面ライダーソレイユ・ドライローズフォームがそこに現れた。

「今の僕は...わからない。」

 ソレイユの複眼は赤く光り、すごい速さでマッドに向かっていく。しかしマッドはその速さにも簡単に追いつけている。ソレイユの攻撃を手で受け止め、カウンターまでしようとしているのだった。

「ソレイユの力もこんなもんか。はぁっ!!!」

 マッドの一発の蹴りで、ソレイユは遠くへ飛ばされる。しかしソレイユもそれに懲りず、必殺技の準備をする。

『ドライド・ブレイク!』

 ソレイユはマッドに向かって飛び、時速300kmでライダーキックを入れる。

「うわああああああああ!!なんてな!」

 だが、力の差は速さでは埋められなかった。マッドはそれすらも片手で受け止めた。

「地球人のくせに地球エネルギーの大きさも知らないのか!!」

 マッドは片手でフラーワを抜き差しする。

『マッド・ナイトメア・フィニッシュ!』

 ソレイユの足をつかんだまま、横から強烈なキックをしたのだった。

「やめろおおおおお!!!」

 レグルスが叫ぶ。しかし、ソレイユの横腹には確実に足が当たっていた。

 ソレイユは回転しながら灯台に叩きつけられ落下する。

 灯台は大爆発を起こし、倒れた。

「地球エネルギーをあなどったな。」

「お前ふざけんなよ!!ぶっ殺してやる!」

 裂羅がネオフラーワを振り払い、剣を出し襲い掛かる。『蒲公英! 裂羅・蒲公英斬!』

 剣の幻影が十ほどに増えて相手を攻撃するのだが、マッドと裂羅の間にネオフラーワが入り、マッド自体に攻撃は全く入らなかった。

「うわああああああああああ!!」

 裂羅は怒った。怒り狂ったのだった。ソレイユが殺されたことで、もう地球の命はないと悟ったのだ。

 これには、ジャンヌもレグルスも黙って下を向く。

「お前ら!そこに跪け!!」

 マッドは笑いながらライダーに命令する。

「...」

 ライダーは変身を解除する。もう、抵抗はできない。

 『ドサッ』という音とともに、敬一が跪いたのが分かった。それに合わせて、ジャンヌとレグルス、サクラも同じことをする。

「お前ら、あれをつけろ。」

 かつての英雄たちにネオフラーワ達が集まる。そして腕には何語かわからない焼印が入れられた。

「その焼印を入れられたものは俺の地球エネルギーを使って消滅させることができる。はぁっ!」

 彼は試しにということで一人、ネオフラーワを消滅させた。ネオフラーワの最期は叫び、とても辛そうだった。

「お前らが抵抗しないようにだよ。今からお前達はナイトメア軍だ!」

 それを言ったところで、ネオフラーワの後ろからあるライダーが現れた。

「何一人ですすめちゃってんだよ。」

 ナイトメアだった。

「遅いと思ったらこんなことをしてたのか。あんま調子に乗るなよ。」

 ナイトメアはマッドの肩をポンポンと叩く。

「調子に乗ってなんかない!俺はあなたのために!」

「わかってるよ。どっちみち『世界』の崩壊に近づいてはいるんだ。まあせいぜいがんばれ。」

 そういい、ナイトメアは物影に隠れる。

 すると、何かが高速でその場を走り、直後にネオフラーワ達が大爆発を起こす。海の見える丘で、《何か》は止まり正体をあらわにする。

「私は世界を救う仮面ライダー!ソレイユだ!」

 ただ、仲間達の知っている姿ではない。

「はぁっ!!」

 ソレイユはそこそこ遠い丘の上からライダーキックの体勢になる。足裏から出る標準は勿論、マッドだ。

「お前...!仲間が死ぬ場をここで見るがいい!はぁっ!」

 かつての英雄たちはソレイユにすべてを託し、死を決心した。

 しかし、何も起こらない。

 マッドは驚き、戸惑う。

「なぜだ!は!お前、何をした!!」

「さあね!私はお前の攻撃を受けただけだよ!」

 マッドが地球エネルギーをフルに使ってソレイユの攻撃をしたとき、薔薇が着ていたパーカーの腹ポケットに入れていた鉄の塊がマッドのエネルギーをすべて吸収したのだった。そして彼女が落下して変身解除したとき、その鉄の塊は彼女の変身アイテムになっていたのだった。その名も《ラージソレイユ》。

 彼女は微かに残った力でラージソレイユを使い変身し、仮面ライダーソレイユガーデンになったのだ。

 爆発はその時のものなのだった。

「だが使い慣れていない新フォームで勝てるわけがない!!」

「私は...挑むよ。はぁっ!!」

 ソレイユはそのままの体勢で、マッドに突っ込んでいく。

 しかしマッドも負けていられない。彼は両手で彼女の攻撃を抑える。

 これが貫通すれば、マッドは死ぬ。ソレイユは最終フォームでそれを狙っている。

「私たちの地球を!!返せ!!」



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ソレイユのガーデン

「だああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 ソレイユの最終フォームはマッドの防御中の体にキックの体勢で粘っている。それに対し、マッドはだんだん防御が薄れていっているのがわかる。

「いけ!ソレイユ!」

 裂羅達はソレイユを全力で応援する。すると、ソレイユの体が少しずつマッドに入っていく。

「俺が仮面ライダーなんかに負けるはずがない...!!」

「お前は絶対に許さない!!だぁああああああ!!」

 仮面ライダーソレイユはどんどんマッドの体を貫通して、ついに背中から足が出てきたのだった。

 マッドは体が震え、マスクの外からでも伝わる悔しさに満ちた顔面を見せている。

「あとは頼んだ...ナイトメア...」

 マッドは顔を陰のほうへ向ける。それに気づいた裂羅はそこにいる者に気付きソレイユを止める。

「ソレイユまて!倒すな!!」

『ガーデニング・フィニッシュ!!』

 だが、もう遅かった。ソレイユには裂羅の声が聞こえず、マッドをライダーキックで倒してしまった。ソレイユが着地した後ろでは、マッドが倒れ、大爆発が起きる。大爆発の跡地には一つのエナジーが残っている。

「ソレイユ、まだ終わってない...」

 裂羅はエナジーを拾うが、それは手から離れて、陰のほうへ引かれていった。

「ここからが本当の戦いかもしれないな...」

 裂羅は陰のほうへ行くが、そこには何もいなかった。ソレイユたちは変身を解除した。

 家に帰り、皆は疲れを癒すために寝たりするが、薔薇だけは一休みもしなかった。

 地球の運命が自分にかかっている。そのことを自覚している彼女は、すぐにミラと出かけて行った。

 ジャンヌが、心配になって隠れてついていった。

 街は、大量のフラーワであふれている。

「人間が植物に支配されるなんて、馬鹿げたことだよミラ。」

「何が起こるかわからないってことさ。薔薇。」

 ミラが、薔薇の腰にドライバーとして巻き付く。

「ナイトメアに打ち勝つために、鍛えぬくよ!」

『ガーデニング!ライディング!』

 新しい変身アイテムのサウンドを鳴らし、ドライバーにセットする。当然、聞いたことのない音楽が流れる。

「僕の知らない機能だ。」

「変身!」

 瞬間、薔薇の周りが花畑のような、美しい花がいくつも咲いている空間になる。

『どこまでも広がる花畑!みなぎるエナジー!ソレイユ・ガーデン!!ボクサイキョ―!』

 音声とともに、たくさんの花が体にまとわりつき、スーツとしてくっ付いた。それが、仮面ライダーソレイユ・ガーデンだ。赤を基調としたスーツで、いろいろな色の花が一つになった鎧が胸のところについている。そして手元にはチェーンソーのような紫色の武器がある。

 勿論、見たことのないライダーを見つけたガムフラーワは、そこに襲い掛かってくる。

 ソレイユは、武器を腰につけ、素手で攻撃する。なんとブラックローズの通常攻撃があまり効かなかったガムフラーワが、一撃で大ダメージを負うようになっているのだった。

「武器も使ってみよう!」

 ソレイユは腰の武器を手に取り、電源を入れる。

『ボクノブレイカー!』

 ボクノブレイカーと名乗った武器には挿入口があり、そこにエナジーが二つ入れられるようになっている。

『バラ! パンジー!』

「みんなまとめて!」『ボクノ・ダブル・ブレイク!』

 ソレイユがボクノブレイカーを振り回すと、巨大化したチェーンソーの幻影が敵を攻撃し一掃するのだった。

「まだ残ってるの、敵の多さが出てるね。ミラ、行けるよね?」「うん!」

『ガーデニング・フィニッシュ!』

 地面がまた、花畑になる。その花はフラーワの動きをとめて、そこに、ソレイユがライダーキックを入れるのだった。

 辺りは大爆発をした。ソレイユはきれいに着地をし、変身を解除する。

「いやぁー、こんな強い力だとは思わなかったよ!」

「ナイトメアも僕たちが倒せちゃうかもね!」

 そう彼女らが喜んではねていると、後ろから、拍手が聞こえてきた。

「やっぱり仮面ライダーは別格に格好いいなぁ。俺はそんな仮面ライダーと戦うことができてとっても嬉しいよ。」

 声の主は、ナイトメアだった。

 ミラが、薔薇の前に出て威嚇をするが、ナイトメアはそれを気にしない。

「ミラ、俺は悲しいよ。昔はあんなに人間を嫌っていたのに..」

 ミラは話の続きが気になって、立てていた爪をしまった。

「僕が人間を嫌っていたって、どういうことだ!!」

 ナイトメアはにやりと笑い言う。

「まだわからないのか。お前とお前の家族は、『こっち側の者』だったんだよ。」

 ミラは単語の意味を理解し、驚愕する。

「そんなはずはない!僕は人間が大好きだし、記憶にもない!」

「お前の記憶は俺が変えた。戻すこともできる。はぁっ!!」

 ナイトメアがミラの頭に手をかざすと、ミラはとても苦しんだ表情をしてもがく。

 十秒ほどでその苦しみは止まったようだが、ミラは放心状態になっている。

「どうやら、勝負あったようだな。こい!グリーンウッド!」

 ナイトメアがそういってドライバーを取ると、ミラがナイトメアの腰にドライバーとして巻き付く。

「さすがに生身の人間を殺すのはよくないからなぁ。」

 ナイトメアは薔薇に近づき腰にドライバーを当てた。すると、ナイトメアのフラーワドライバーが薔薇の腰に巻き付いたのだった。

『バラ!』

「あ、そうそう。隠れてソレイユについていってたジャンヌなんだけど..」

 ナイトメアがそういうと、後ろからジャンヌがゆっくりと歩いてくる。腰には、ナイトメアドライバーがついているのだった。

「そろそろ時間だ。変身。」

『激しく燃える、情熱の赤!バラ!』



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愛のライダー

 ナイトメアが変身した仮面ライダーソレイユは、明らかに邪悪なオーラを放っている。

「なんでミラとジャンヌがお前のほうにつくんだ!!」

 薔薇が怒ると、ナイトメアが答える。

「当たり前だろ。俺はフラーワの味方だ。お前ら人間に洗脳されているフラーワを救ってるんだよ。

 もともと、ミラには人間の生態を調査してもらっていたんだよ。だがミラは人間を知りすぎた。だからいっそ記憶を変えて人間のほうへスパイとして一緒に生活させたんだ。ミラに人間態があるのはなんでか知ってるか?こいつが人間の体を奪ったからだよ。もともとフラーワに人間態はない。お前はそんな奴と生活し戦ってたんだよ。」

 ナイトメアはドライバーのミラを触りながら言った。

「ミラ...私はあなたを愛している...たとえスパイで人殺しだったとしても..変身!」

『冠と盾と剣! 赤い戦士! チューリップ!』

「最終フォームに変身できないと悟ったか。それならこっちのもんだ!」

 ソレイユは剣で攻撃するが、ナイトメアも薔薇の腕で防御している。

「強化フォームなんかに頼りすぎてるからそうなるんだよ!はぁ!」

 薔薇はナイトメアに腹をパンチされ飛ばされる。

「うぅ...チェンジエナジー!」

『耐寒のコモンフラワー・その顔は何を言う? パンジー!』『パンジー・フィニッシュ!』

 薔薇とナイトメアの周りには大量の雪が出て、ナイトメアを固める。そして薔薇はライダーキックの体勢になるが、キックは失敗したのだった。

「うわぁ!」

 何者かにキックを入れられ、薔薇は落下した。

「ジャンヌまで...」

 キックを入れたのは怪人態のジャンヌだった。

「...」

 ジャンヌは何もしゃべらず、ただドライバーを巻いているだけだった。

「やれ。」

 ナイトメアがそういうとジャンヌはヒマワリのエナジーを鳴らし、ナイトメアフラーワにセットする。

「変身。」

『悪夢!悪夢!メア・ヒマワリ!』

 仮面ライダーサン・ナイトメアフォームが誕生したのだった。

「二対一だ。お前は俺に勝てない。」

 ナイトメアとサンは一斉に薔薇を攻撃する。薔薇は二人同時には抵抗できず、一方的に攻撃を受けているだけの状態だ。

「ミラ!ジャンヌ!!目を覚まして!」

 ソレイユの訴えは誰も気にしていない。

「俺達もいるよ!ソレイユ!」

『噛砕!噛砕!ピラニア・カニバル!』

『世界に桜を咲かせる者!仮面ライダーサクラ・マウンテン!!フーラーワー!!』

 二人、ライダーが現れた。これで三対二。ソレイユたちに勝ち星が見えたのだった。

「ジャンヌ!目を覚ませ!」

 カニバルはジャンヌを攻撃しながら言う。

「なんで!なんで!」

『ピラニアスクラッパー』

 カニバルの手元にはスコップの形をした武器が現れる。

「ごめんジャンヌ!はぁっ!」

 カニバルは武器のレバーを引き、攻撃する。

『ピラニア・スクラップバン!』

 ジャンヌの体を強くたたくと、彼女は転がりながら変身を解除する。

「はっ!私は一体...」

「取り戻したんだ!やった!ナイトメアからミラを取り返すよ!」

 ナイトメアは「くそっ」と呟き、薔薇のホルダーからソレイユガーデンのエナジーを奪い、セットする。

『ガーデニング!ライディング!』

「素人が使ってあれだけ強かったんだ。俺が使えばもっと強いはずだ。変身。」

「やめろ!!」

『どこまでも広がる花畑!みなぎるエナジー!ソレイユ・ガーデ...』

 音は、そこで止まってしまった。

 そこにいるすべての生物が驚き戸惑った。

「なんだ...?」

 ナイトメアがそういうと、ドライバーは彼の腰から外れ、怪人態のミラが現れた。

「ナイトメア。僕と薔薇はそう簡単に離れない。それはお前が教えてくれたはずだ。」

 ミラはナイトメアから教えられた愛についてを語り上げた。そして、

「僕は地球、そして人間を愛している!それを破壊するお前を許さない!」

 叫ぶとナイトメアを殴った。

「あまり調子に乗るなよ..うわあっ!!」

 ナイトメアは悲鳴を上げた。

『マウンテン・スプラッシュ!』

 その音声は裂羅の武器「マウンテンスパークリンガー」の音声だった。ハンマー型のそれは油断したナイトメアを脳天からダメージを与えたのだった。

 そのすきに薔薇はフラーワドライバーを取りジャンヌに渡し、ミラを腰に巻いた。

『ガーデニング!ライディング!』

「私は愛のライダー!ソレイユだ!」

『どこまでも広がる花畑!みなぎるエナジー!ソレイユ・ガーデン!!ボクサイキョ―!』『ボクノブレイカー!』『バラ!』『ボクノ・シングル・ブレイク!』

「たあーーーーー!!」

 ナイトメアはソレイユの攻撃を直に受けて、その場に倒れた。

「俺が...負けるはずは...ない...」

 場に沈黙が走る。

「ナイトメアが死んだ...?」

 誰かが言うが、言い終わる前にエクスポーターからライダーが現れる。

「完全に殺さなければ!はぁっ!」

 それはコマントの声で、彼は倒れたナイトメアの胸をナイフで刺した。

 緑色の血液が流れる。

「コマント?」

「レグルスには謝らなければならない。俺達はナイトメアを暗殺するために極秘で組織に忍び込んでいた。だが今は俺一人..ついに、この瞬間、ナイトメアを殺せた。本当に済まない。俺はもう生きた。はやくあいつらに会いたい。ナイトメアは永遠に、この世界から破滅しないだろう。俺の力を思い知るがいい。」

 コマントは喋っていたが、いきなり様子がおかしくなった。

『ナイトメアドライバー』

「俺は死なない。愛ってものを体験しちまったからなぁ。」

『パーフェクトエンペラー!』

 死んだはずのナイトメアは今度はコマントに乗り移り、見たことのないエナジーを鳴らす。

「これは俺の仲間、ひなた、キラー、ハリーのエナジーをすべて合わせたものだ。これでこの世界をぶっ壊し、愛など存在しない世界にしてやる!!」

『悪夢!帝王!エンペラー・ナイトメア!!』

 コマントの姿は仮面ライダーとは思えない姿に変身した。

「俺が最恐の仮面ライダー。エンペラー・ナイトメアだ。」



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なかなか粋の計らい

「それが本当のお前の姿か!!」

 エンペラー・ナイトメアは凶悪なマスク、半分裂けたような体、胸にある大きな眼球、赤く血のような色の翼が特徴的である。

「地球ではいい生活ができると思ったんだがなぁ...」

 ナイトメアはネオフラーワをエクスポーターから大量に出し、仮面ライダーを襲わせた。そして自らをエクスポーターでワープさせ、フラーワ世界にある城の頂上に着陸させた。城にはバリアを張りワープできないようにしたのだった。

「ナイトメア!どこへ行った!!」

 裂羅が闘いながら言うが、返事はない。

「多分、あそこの中じゃないかな。」

 レグルスが指をさした先には、大きなエクスポーターが壁のように張ってある。そこがつながっているのはナイトメアの城の荒れ果てた城下町だった。

「世界が終わる前にナイトメアを止めよう!」

「当たり前だよ。あいつなんかに世界を終わらせたりしない。」

 ソレイユたちはネオフラーワをある程度倒すと、残りをジャンヌに任せてエクスポーターに向かった。ジャンヌは裂羅ドライブフォームに変身し、ネオフラーワと戦っている。

 三人は城下町を抜け、城の前にたどり着いたのだった。

「ここがナイトメアの城...」

「誠実なる青王子のとことは大違いだね。」

「全員で絶対、あいつを倒す。一人抜けてたりしても意味がねぇ。全員で、だ。」

 目の前には大きな柵があるが、そこでナイトメアの声が聞こえてくる。

「世界が終わる日を目の当たりにしたくてここに来たか。指紋認証で仮面ライダー三人だとわかったら開けてやろう。」

 柵の中からタッチパネルが出てくる。彼らは変身を解除して普通に指を触れる。指紋認証は成功し、大きな柵が大きな音ですべて開く。

「さあ来い。楽しませてやるよ。」

 中に入ると薄暗い空間だった。パイプなどがむき出しで、いかにも悪の組織という感じだ。

 するといきなり、陰が三人の前に飛び出した。

「なんだ!?」

 それは彼ら、特にミラがよく見たことのある姿だった。

「久しぶり、ミラ。そしてお世話になっている皆さん。僕だよ、ディフダ=グリーンウッド。今日は君たちを倒すために来たんだ。というか、そのためだけに復活させられた感じ?まあ、君たちに対する情なんかないから。容赦なくいきまーす!」

 ディフダ=グリーンウッド。かつて偽物のソレイユとしてソレイユに濡れ衣を着せ、最後は殺害され死んだはずのミラの兄だ。

「兄さん!本当は人間が好きなんでしょ!?僕知ってるよ!」

「あ、ベルトがなんか言ってるー。まいっか。へんし~ん。」

『二つの色は 危険か!やりすぎか! コットンローズver.DANGER』

 変身したディフダは早速襲い掛かる。それに対し、ソレイユたちも変身する。

『ガーデニング!ライディング!』『マウンテンフラーワ!桜!』『ナイトメアフラーワ!カニバルフラーワ!』

 三人はドライバーにエナジーをセットし、変身する。

『どこまでも広がる花畑!みなぎるエナジー!ソレイユ・ガーデン!!ボクサイキョ―!』

『世界に桜を咲かせる者!仮面ライダーサクラ・マウンテン!!フーラーワー!!』

『噛砕!噛砕!ピラニア・カニバル!』

 同時に変身した彼らはソレイユ中心にディフダを攻撃する。ディフダもカウンターをするが、三人同時に相手はできないようだ。

「三人同時でも勝てないことはない!」

 彼はそう言ってエナジーを抜き差しして音声を鳴らす。

『コットンローズ・フィニッシュ!』

「ディフダ。ミラはあなたを信じてた。だけどあなたが裏切るなら、ミラもこの選択が正しいっていうと思う。」『ガーデニング・フィニッシュ!』

 ソレイユはディフダをライダーキックでたたき落とし、そのまま着陸した。

 叩き落とされたディフダは変身を解除せず、消滅した。ソレイユ一行はそのまま階段で登っていった。

 順調かと思いきや、彼らの考えは甘かった。ナイトメアはフラーワ世界から地球を破壊している。このペースでいくとナイトメアの地球破壊を止められなくなってしまうのだ。時間がない中考えたのは、

「頂上で会おう。」

 と、一人が部屋で戦ってる間にほかが進んでいくということだった。

 次の部屋には、仮面ライダーコマントが四体いた。

「ここは俺が行くよ。かかってきな!」

 コマント達は一斉にカニバルに襲い掛かる。だがカニバルも強い。カニバルはコマント達の攻撃を一つ一つ落ち着いてよけて、カウンターを与えている。余裕があるようで「先に行ってなよ!」と一言添えた。

 次の部屋には仮面ライダーバンクシーがいた。彼は攻撃事態は弱いが、その強靭な体力で全然ダメージが入らないのだった。そこは裂羅が担当した。

「お前は俺が相手だ。」

「桜ごときが俺に勝てると思うな。」

 バンクシーは裂羅に殴りかかるが、裂羅はそれをよける。そして言う。

「お前はなぜ裏切ったナイトメアの味方をしている?」

 

 カニバルと裂羅が敵と戦っているとき、ソレイユは螺旋階段に出てくるフラーワ達を倒して上層部まで進んでいった。

「薔薇、もうすぐ最上階だ...僕たちは..世界を守るんだ!」

「うん!ナイトメアなんかに負けない!」

 そう話していると、彼女は誰かにぶつかった。フラーワかと思い武器を振るとすごい速さで体を殴られた。

「普通のフラーワじゃないのか....!!!」

 ソレイユは姿を見て驚いた。

「普通のフラーワには見えないよね...」

 ソレイユが驚いていると、彼女はさらに攻撃してきたのだった。

「あたしはサン。君たちの相手になるつもりはない。」

「?」

 ソレイユには彼女の言っていることがわからない。

「あたしは、ナイトメアにずっと騙されてきた。今まであたしがしてきたことはここで謝る。だからどうか、あたしといっしょにナイトメアを殺させて!」

 彼女は頭を下げ、武器を捨てる。

「薔薇、どうする?」

 薔薇はミラの質問に少し考えて答える。

「...わかった。一緒に行こう。」

「ありがとう!これが本当の人間の"やさしさ"かぁ!!」

 彼女は調子がよくなり屋上へ進んでいく。ついに屋上の扉の前についた。

「ここで、裂羅達を待つんだ。『屋上で会おう』って約束したから。」

 ソレイユは手を止めそこへ座る。

「そうなんだ。じゃああたしも待っちゃおうかな。」

「ひなたがいて驚かないかな!」

「そうかもね~!」

 彼女らは笑いあいながら、つかの間の楽しみに浸っていた。



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物語のおしまい

「君たちはやっぱり俺の部下レベルだねぇ。」

 レグルスはコマント達の攻撃を傷一つ残さずよけ、カウンターを仕掛けている。もう笑いそうである。

「油断させていく作戦なのかな?それなら油断させすぎだけど。」

 レグルスは植物を生やすという攻撃を一切使わず、キックやパンチだけでコマント達を一掃した。

「昔の仲間だからって俺は容赦しないよ。」

 コマント達は階段を駆けていくレグルスの後ろで全員消滅した。

 一方、裂羅はかなりてこずっていた。バンクシーが裂羅を縛り上げて、身動きが取れない状態で力強い攻撃をしてくるのだ。その時の声は狂気じみていた。

「なぜナイトメアの味方かを聞いたな。理由は一つ。俺は強いものの味方だからだよ!お前みたいな弱い人間は今みたいに強いやつに負けるんだ!はっはっはっはっは!!!」

 バンクシーはその間も裂羅を殴っていた。

「人間が弱いだと?」

 裂羅が、訊く。

「ああ。どうした?反抗したくなったか?」

「もちろんだ....俺達人間はなァ!!少なくとも強いやつの味方にしかなれないお前よりかは強いんだよ!!!」

 ぺりぺりと、裂羅を縛っている線が破れていく。

「なんだと...?」

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 そしてついに裂羅は解放され、武器を手にする。

『マウンテンスパークリンガー!』『マウンテン・スプラッシュ!』

 彼は見えないほどに素速くく移動し、バンクシーの脳天に一撃を入れた。

 爆発とともに、バンクシーは消滅した。

 

 レグルスと裂羅は、螺旋階段を上っているときにばったり会った。そして、屋上の扉の前で変身を解除して話している薔薇とひなた、その横で警備をしているミラを見た。

 裂羅はひなたに近づいて来るや否や、マウンテンスパークリンガーの先のとがったところを彼女に突き付けた。

「いったいなぜ敵なはずのお前がいる。」

「待って。」と薔薇が説明しようとすると、自動的に扉が開いた。

 扉の向こうには、エンペラー・ナイトメアが一人、玉座のような椅子に座っていた。

「待ちくたびれたよ。そこで一体なにをしてるんだ?」

 彼は胸にある大きな眼球をぐるりと回した。

「ほぉう....それじゃあ最後の決着をつけようか。手加減はナシだ。」

 ひなた、薔薇はドライバーを巻く。

「「変身!」」

『太陽に向かう大きなフェイス! ヒマワリ!ヒマワリ!』『どこまでも広がる花畑!みなぎるエナジー!ソレイユ・ガーデン!!ボクサイキョ―!』

 ナイトメアはネオフラーワを出現させ、そのあと裂羅のほうへ向かった。

 そして、「ふん!」と腹を殴ると、そのノックバックで裂羅は壁へ激突した。

「全然違う...!」

 彼はすぐに壁からナイトメアのほうへとびかかる。そして、『マウンテン・スプラッシュ!』と音声を鳴らし攻撃を仕掛ける。

 角度やら距離やらは完璧だった。

 が、何かが足りなかった。

 なんと、スパークリンガー自体がナイトメアの一撃によって破壊されてしまったのだ。それに驚き一瞬の隙を見せた裂羅は、ナイトメアに連続で攻撃され、変身解除すれすれまでダメージを受けた。

「裂羅!!」

 ソレイユの声が聞こえるが、彼の意識は朦朧としていた。

「お前ごときが....人間に勝てると思うな...!」

 裂羅は震えながら立ち上がる。

 が、腹を刺されたのだ。

「お前...」

 彼の腹を刺したのはスコップの形をした武器だった。

「ナイトメア。俺はあなたの味方だ。」

 そういったのはカニバルだった。

 

「ふはははははは!!はははははは!!」

 

 ナイトメアの声は、屋上、いや、フラーワ世界の全土に響き渡った。

「ソレイユ!お前の味方はもういない!」

 ソレイユは戦いながら叫ぶ。

「お前は、、、絶対に許さない!!」

 すると、後ろにいたサンがナイトメアにとびかかる。

「お前はあたしが止める!」

 サンは自前の剣でナイトメアの腹を挿そうとする。

 が、彼女は地面から生えてきた食虫植物に噛みつかれる。

 サンもそれに抵抗する。彼女の得意な剣術で見事植物の首を切り落とした。

「やった..!」

 が、それは一瞬だった。

 ピラニア・カニバルは無限に植物を生やせる。それを考えていなかった。

 彼女は左右両方から噛みつかれ引っ張られ、必死で抵抗するも及ばず、体の上下が切り離されてしまった。

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 彼女は人間だった。床には赤色の血液が飛び散り、ソレイユは今にも吐きそうだった。

 やがてひなたの体は消滅し、それと同時にネオフラーワを倒し終えたソレイユがカニバルと戦う。

「はぁっ!!おまえも!!てきだったのか!!」

「騙してごめんね!」

 カニバルとソレイユはぶつかり合い、そこにあった装置に衝突した。

 ナイトメアはそれを見て「離れろ!」と怒鳴る。

 そしてカニバルはソレイユのボクノブレイカーを奪い、その装置に突き刺したのだ。装置からはガスのような色付きの気体が流れ出る。それはすべてカニバルにかかっている。

「お前...!」

 ナイトメアとソレイユは両者とも戸惑っている。

「俺にできるのはここまでだよ。ソレイユ、がんばって。」

 カニバルは震える声でそういうと、その場に倒れこみ、動かなくなる。

「カニバル...?」

「これで一対一かぁ。カニバルがなんで死んだか教えてやろう。その装置は地球エネルギーをかなりの濃度で保管する装置だ。それを一気に浴びたから死んだんだよ。」

 結局、カニバルは味方だった。地球エネルギーが戻っていっているということは、いずれ地球はもとに戻る。

「だけど私はお前を倒す。仲間たちの死を無駄にしないためにも!!」

「上等だ。かかってこい。」

「はあああああああ!!」

 彼らは互い、相手にパンチを食らわせる。

「愚かな者が帝王に刃向かって殺される。それがこの人間社会じゃないのか?」

 それにソレイユはすぐに答える。

「だが悪事を働いたものは排除される!」

「それが悪事か決めるのは強いやつなんだよ!」

 二人は闘いながら言いあった。

「そうやって強さばっかり気にしてるからひなたに裏切られたんだよ。」

 ソレイユが勢いでそういうと、ナイトメアの動きが止まった。

 彼は小さな声で答える。

「お前に俺の気持ちがわかると思うな。」

 ナイトメアはそういって刺さっているボクノブレイカーを取り、ソレイユのドライバーに向かって一突きする。

 彼女は絶体絶命だと思った。だが気づくと間には女性が入っていた。女性は口から血を流している。

「ああ、なかなか....きくね...少し.....遅かったかも...しれない...な..」

 それによりソレイユの仲間は本当にいなくなった。

 彼女は無言でドライバーに手を当て、必殺技を構える。

『ガーデニング・フィニッシュ!』

 飛び上がり、キックを入れるだけの、いつもと変わらないライダーキック。

 ナイトメアも、それに対抗しようと必殺技を構えようとする。が、間に合わない。

 ナイトメアの体にソレイユが刺さる。

 彼は一瞬驚くがすぐに行動に移る。仮面ライダーソレイユの地球エネルギーを吸い取り地球に戻して、ソレイユ自体の力をなくそうとするのだった。

 ナイトメアの体力とソレイユの力、どちらがなくなるかの勝負だった。

 だが、彼はソレイユの勝ちを確信した。

 彼は後ろに気配を感じてそっちを見ると、怪人態のミラもキックをしてるのだった。

 それがわかったからだ。

 しかし変だ。音がない。

「」

 彼は喋ろうとしたが、何も聞こえない。次の瞬間、ナイトメアの体は爆ぜた。

 

 フラーワ世界では巨大な爆発がムウェンで起きたというニュースが四六時中流れていた。

 悪も正義もないこの世界は、平和に帰った。

 街では商人が果物を売り、家では赤子が泣いている。

 ついでに、新しい王が生まれた。

 しかしその王はナイトメアや青の王子などとは違い武力で治めず、すべて自身の演説で統制していた。

 数か月もたつと、街などもかなり栄えてきたのだった。

 少なくとも、この地でかつて地球人と戦ってきたことがわからないぐらいに。



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最終回 薔薇のその後ー第0話 OPEN

 目が覚めると、私は自室のベッドの上に横になっていた。

 

 長い夢を見ていた気分だ。

 

 まさか、自分が世界を救うなんて思ってもいなかったから。

 

 私は静かに窓を開けて、深呼吸をした。

 

 平和な地球。

 

 花の化け物などいない、普段の日本。

 

 今まで私がやってきたことが、嘘だったような。

 

 もしかしたら全部本当に夢だったんじゃないかってくらい、平和だ。

 

 そうだ。 私は作文用紙を闇雲に開いた。

 

 世界を救ったのが仮面ライダーだということはみんな知っているだろう。

 

 しかし、私がやりましたと大々的に言うのは、私の美学に反する。

 

 仮面ライダーの小説をかいてやるのだ。

 

 私はペンをとり、題名を書き始める。

 

 

SOLEIL ~咲き誇る太陽~

 

 

 

 

 ナイトメア城の崩壊により地球エネルギーがもとに戻り、人々の体には生気が、浮遊島となっていた埼玉県なども何もなかったかのように元にもどった。

 ナイトメアの存在は人々に知れ渡っていたが、薔薇の存在は知れ渡ってはいないのだった。

 新聞には写真のないまま、【謎の仮面ライダーに救われた】などが太文字で書かれている。

 地球と日本は完璧に元の平和にもどったのだった。

 一方、フラーワの世界は未だに復旧作業が続いているのだった。日本とは違い、ただ爆発が起こっただけなので、自動復活などの効果もなかったのだ。

 ミラは、今、ムウェンの防衛大臣として国を支えている。

 もう、地球とフラーワ世界は行き来できない。ミラが考えて考えて、地球とつながるエクスポーターを消滅させたのだ。

 彼は爆発の勢いで薔薇が気絶した時、薔薇の家まで戻り変身を解除し、そのままフラーワ世界に戻り、地球エネルギーが全部地球に戻ったことを確認し、エクスポーターを消滅させた。

 仮面ライダーソレイユは、もう存在する意味がなくなったのだ。それを思ってミラはそうしたのだった。

 これにて、仮面ライダーソレイユの物語は、本当に終了である。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「いらっしゃいませー。」

 普通の女性、澤谷薔薇は、ファミレスでアルバイトをしていた。

 すると、見たことのある顔の客が入ってきた。

「何名様でしょうか。」

 客は答える。

「二名だよ。ソレイユくん。」

 薔薇はハッとして尋ねる。

「どうしてそれを...」

 客は特殊なベルトをちらりと見せて、中性的なイントネーションでしゃべる。

「私だよ。Mさ。いつか言ったのを覚えているかい?私の友達を連れてきたのさ。」

 Mと名乗る男性はもう一人の男性に目配せし、挨拶をさせる。

 もう一人の男性はスーツの内ポケットからベルトのようなものを出す。

「ちょちょちょ、とりあえずお席へ....」

 薔薇は彼らを席へ案内し、ちょうど退勤時間になったので支度を済ませ、その席に座る。

「私は....まあTとでも呼んでおけ。」

 Tは先ほど出しかけたベルトをテーブルの上に置く。

「これは...?」

 薔薇が問うと、Tは解説する。

「これは私たちの世界のライダーシステムで変身させる『Zドライバー』だ。」

 Tの話にMが付け加える。

「私たちの世界というのは、君やナイトメアが存在していない世界...つまり今いる世界とは別の世界のことさ。」

 なるほど、とソレイユはうなずく。

「それで、どうして私のところに?」

 その質問の答えは即答だった。

「最低限、仮面ライダーだった君と戦えるように、と思ってね。」

 薔薇はその言葉に困惑する。

「どういうこと?」

 そういおうとした薔薇の前には一瞬で、見たことのない仮面ライダーが現れた。

 Mがすかさず、薔薇の腰にベルトを巻き、薔薇の手に花の形の機械を入れる。

「そういうことか.....わかった!変身!」

 かつてのように変身したソレイユは、ライダーとつかみ合いになりながらファミレスの窓を突き破り、近くの公園へ飛んで行った。

 ソレイユとライダーは全力で戦う。

「この世界にかつて仮面ライダーであったという記憶がある人間はおそらくお前だけだ。Zのスーツに学習させるついでに、ライダーがいた歴史も消す!」

 ライダーはソレイユを蹴り飛ばす。しかし、ソレイユも伊達に仮面ライダーをやってたわけではない。

 すぐに立ち上がり、ライダーキックの体勢に入る。

 Mは興奮して声を上げる。

「ドライバー完全コピーってスゲー!」

 そしてソレイユはそのライダーにキックを入れる。

 が、それは失敗に終わった。

 ソレイユの横から仮面ライダーMが攻撃し、ソレイユはそのまま地面に墜落したのだった。

「お前ら....卑怯すぎる!」

 変身を解除した薔薇はボロボロになりながら言う。

「ナイトメアに教わらなかったのか?これが戦いだ。」

 そういってライダーは薔薇に近づく。しかしそこで、ライダーの変身が解除された。

「何?」

 Mがライダーのドライバーを引きはがしたのだった。

「君のじゃないんだよ。あんまり調子に乗ってると君が消されるよ。」

 Mはカバンから銃を取り出す。

「私の世界では銃が普通に使えるんだよ。」

 そう薔薇にいって、MはTの胸に向かって発砲した。

 その時点で薔薇も力尽きた。

「私が新しい物語の語り手だ。」

 Mは、Zドライバーを片手に元の世界へ戻っていった。




ありがとうございました!


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