魔族と人間が共存する世界に何をなせるか?(仮タイトル) (ローファイト)
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①北から来た男

とりあえずご意見いただければ助かります。
タイトルも仮、いろんなものが仮作品です。
設定自体は2年前のもの、作成したのは1年前


魔族と人間が共存する世界。

魔法や魔術が存在する世界。

人間と魔族が共存し発展してきた世界。

 

世界には魔族が治める国が存在し、その中でも真祖と呼ばれる強力な魔族、吸血鬼の王が収める3つの大きな国が存在する。

第一真祖【忘却の戦王(ロストウォーロード)】が治める東欧に位置する戦王領域。

第二真祖【滅びの瞳(フォーゲイザー)】が治める中東に位置する滅びの王朝。

第三真祖【混沌の皇女(ケイオスブライド)】が治める中央アメリカに位置する混沌領域。

 

そして、日本における小笠原より南方の人工島の、魔族と人間が住まう魔族特区絃神島に、存在しないとされる第四真祖が現れる。

 

この世界のバランスは徐々に壊れて行き、滅びの道へと進みつつあった。

それを止める事が出来るのは、存在しないはずの吸血鬼の王、第四真祖だと。

 

 

 

 

 

そんな絃神島にとある男が現れる……

 

 

 

 

 

「今日からこのクラスの副担任になるのが彼だ。要するにだ。私の使いっ走りだ」

 

クラスの担任教師からそんな紹介され、壇上に立ったこの若者は、デレデレとだらしない笑顔をさらし、教師にあるまじき自己紹介をする。

 

「ボク、横島忠夫21歳!!彼女は常時募集中!!女の子の個人レッスンは、いつでもウエルカム!!放課後は喫茶店でお茶しながらでもどう!?」

 

「ほうっ、貴様。使いっ走りの分際で、着任早々に私の目の前で公然と生徒をナンパするとはいい度胸だ」

漆黒のゴシックロリータ調の服を着こなし、小学生中学年ぐらいに見える美幼女。いや、このクラスの担任、南宮那月自称26歳は、その容姿とは異なりクールなまなざしで、そのアホな自己紹介をする新任教師を睨み付け、苛立ちをあらわに手にもつ扇をピシピシと鳴らしていた。

 

「あは、あはははっ!ほんの冗談、冗談っすよ!なつきちゃん先生!」

 

「ほう貴様、まだわかってないようだな。今日会ったばかりの上司に向かって、名前呼びの上に子ども扱いか……貴様には後程、どのようなペナルティーを与えてやろうか?」

南宮那月は横島というこの新任らしからぬ態度をとる部下の額に、鳴らしていた扇をピタッとあてがい上目遣いで凄んでいた。当然だが南宮那月は相当ご立腹の様だ。

 

生徒は担任と新任の副担任のそのやり取りに、苦笑するしかなかった。

窓際に座る眠たげな眼をした男子生徒、暁古城は欠伸をしつつも、そのやり取りを楽し気に見聞していた。

 

私立彩海学園高等部1年B組。5月初旬、とある日の朝のホームルーム風景だった。

 

 

 

その後の休み時間。

 

「古城、なんか変な先生が来たわね。しかも見た目は私達とそう変わらないわよ」

金髪に髪を染め見た目派手な美少女、藍羽浅葱は、机にダルそうにうつ伏せてる幼馴染の暁古城に声を掛ける。

 

「確かにな。しかしだ。なつきちゃんをああも怒らせるなんて、アレだ」

古城は体を起こしながら浅葱に同意する。

 

「そうだな。ぷっ、あの新任教師、放課後に説教のフルコースだな」

同じく古城と浅葱の幼馴染である、茶髪にいつもヘッドホンを肩にかけてる矢瀬基樹は、思い出し笑いをしながら、その話に入ってくる。

 

「いきなりナンパだからな。しかも、なつきちゃんを子ども扱いだぞ」

古城も、ニヤつきながら矢瀬基樹に同意した。

 

「あんたもね。…それにしても、こんな時期に急な赴任って、しかも副担任なんて、変ね」

浅葱がそう言うのももっともな話だ。すでに新学期が始まって1か月が経っていたのだ。

 

「まあそうだな。しかし、副担任ってのは妥当じゃないか?あの新任教師に、いきなり担任をやらせるのはどう見ても無理だろ。それの配慮じゃないか?」

 

「という事はだな。要するに、なつきちゃんがあのナンパ新任教師の教育係ってことか。それに数学の稲島先生が休職して、化学の田中先生がしばらく代役してただろ。それのかわりってことだろ?」

 

「まあ、この絃神島でこの学校に教師として赴任してくるぐらいだから、訳ありなんだろうけどな」

基樹はそう言って、アホな言動を繰り返していた新任教師がさっきまで立っていた壇上を見据える。

 

 

絃神島。魔族と人間が共存する特殊な環境のこの島は、東京から南方330㎞に位置する人工島。日本から魔族特区に指定されたのが、南海の孤島のこの島である。

この世界では、魔法や魔術が普通に存在し、魔族と人間が共存していた。

数こそ人間の方が多いが、身体能力は圧倒的に魔族が勝る。そして、世界には大きく魔族が支配する国家が3つ存在する。世界最強の吸血鬼が支配する国だ。魔族と人間はお互いの存在を認めてはいるが、両者にとって別種の生き物でしかない。ただそれでも、この世界は共存する道を進んでいた。

 

そして、暁古城は4か月前、とある事件にて、人間から吸血鬼へと変貌してしまった。

存在するはずがない第四真祖(四番目の吸血鬼の王)として……

 

 

 

 

授業を終えた古城は一人、帰宅のために校門に差し掛かると。

「先輩、では行きましょうか」

 

「姫柊。やっぱ、毎日ついて来るつもりか?」

 

「当然です。私の仕事は暁先輩を、第四真祖を監視することなのですから」

 

「はぁ、勘弁してくれ。ただでさえ、お前といることで変な噂が流れるんだ」

そう、姫柊という少女は中学三年生で、しかもかなりの美少女ときた。それが突如として、暁古城と登下校を共にするようになったのだ。それをやっかむ者や、面白がって噂を立てる者は後をたたない。

 

彼女は暁古城が第四真祖に変貌したという事実を知る、数少ない人物の一人だった。

 

第四真祖に変貌してしまった暁古城ではあったが、魔族の王になるつもりはさらさらない。

ただ、平和な日常を過ごしたいだけだった。

吸血鬼に変貌したことを隠し、そして、このまま日常が過ぎていけばいいと、考えていた。

 

だが、時代が彼をそうはさせてくれなかった。

獅子王機関、魔導災害や魔族の監視などを行う政府機関。

獅子王機関に暁古城は第四真祖だという事を知られる。

第四真祖を危険視する獅子王機関は、第四真祖の監視を行うため、暁古城の元に適任者を送る。

古城はそうして獅子王機関から派遣された一つ下の美少女、姫柊雪菜に四六時中監視されることになったのだ。

姫柊雪菜は古城が住むマンションの隣に居を構え、彩海学園中等部、古城の妹暁凪沙のクラスに転入し、ほぼ、四六時中古城の監視を行っていた。

この姫柊雪菜、ただの女子中学生ではない。身寄りのない雪菜は、獅子王機関の下部組織、高神の杜で、幼少の頃から攻魔師として育てられた剣巫(ケンナギ)であった。

退魔術から近接格闘術まで習得し、高い戦闘力を誇っていた。

 

そして、二人は一週間前、ある大きな事件に巻き込まれ、古城は第四真祖の膨大な力をうまくコントロールすることができなかったが、雪菜の協力の元、力の一部を解き放ち、雪菜と共に事件に終止符を打つ。そして絃神島創成の闇を見ることになった。

 

それは、事件の一旦でしかない。この世界の絶妙に保っていたバランスは傾きかけていたのだ。

 

 

この世界には重大な秘密がある。

世界の住人は知らない。この世界の成り立ちを。そして過去を……

魔族は元の世界で言う。妖怪妖魔に属する存在だった事も。

 

 

 

その頃、学園の旧校舎では。

「ほほう、まだまだいけそうだな。意外と手際がいいな」

 

「何でこんな目に!!シゴキだ!!職権乱用だ!!」

横島は南宮那月に、この学園にある古い書庫の片づけをさせられていた。しばらく使っておらず、本は乱雑に山積みになっており、それを本棚に入れる作業だ。

 

「貴様が生徒にナンパまがいな自己紹介などするからだ。その罰だ」

 

「ただの、挨拶じゃないっすか―――なつきちゃん!」

 

バシ!バシ!

 

「上司を子ども扱いするなと何度言ったら分かる!!」

那月は手に持った扇を折りたたんで横島の頭を叩く。

 

「しくしく、今日は引っ越しなんすよ。今日の朝、飛行機でこの島に来たばっかしなのにーー、なつきちゃん先生~」

 

横島は涙をちょちょ切らせながら、手を止めず書庫を片付けていく。この手の作業は手慣れたもので、テキパキと作業が進み、まるでゴミ屋敷のような様相だったこの書庫は、短時間で嘗ての様相に戻っていく。

 

「貴様は!また!…まあいい。性格はアレだが、丁稚や使い走りには使えそうだな」

那月は片付いて行く書庫を見て、満足そうに頷き、そんな事を言っていた。

 

「しくしく、こんなんばっかしーーーー!!」

 

 

横島忠夫、彼はこの世界の住人ではない。

しかし、彼はかつての友人に請われ、この世界に来たのだ。

彼は、かつて英雄ともよばれ。そして世界創生以来、最大の禁忌をおかした天界の罪人。

運命に逆らいし咎人であった。




という感じです。


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②その男、隣に引っ越す

続きどうぞ。


 

学校帰りの学生服姿の男女が、街路樹の影が掛かった歩道を歩いていた。

暁古城と姫柊雪菜だ。

 

「姫柊、うちで飯を食ってけって凪沙からメールが来てる」

 

「そんな、そう頻繁に悪いですよ先輩」

 

「別に気にすんな。お前にはいつも助けられてるからな」

 

「凪沙ちゃんにも迷惑がかかりますし」

 

「2人分作るのも、3人分作るのも大して変わらないし、凪沙も姫柊と一緒に夕飯を食いたいんだろう」

 

「その……ありがとうございます」

 

「その代わり、夕飯の食材を買うのを付き合ってくれよな」

 

「もちろんです。先輩の監視役ですから、どこにでもついて行きますよ」

 

暁古城と姫柊雪菜は、監視対象者と監視者という立場ではあるが、それを超えて奇妙な関係を気築いている。古城の妹凪沙にはこの事情を伏せているが、その凪沙はクラスメイトでお隣さんの雪菜を気に入っており、親しい友人の一人として見ていた。

 

今のこの二人が隣り合って歩いている姿は、まるで恋人同士に見えるだろうが……

最初の頃は、古城が歩く後を、コソコソと付け回す雪菜という感じではあったが、一週間前の事件以降、こうして並んで歩くようになっていた。

 

 

 

買い物を終わらし、自宅マンションに戻った古城と雪菜。

雪菜は一度自宅に戻り、何時も肌身離さず肩に下げてるハードギターケース(雪霞狼という対魔族用の槍が収納されてる)と鞄を置いてから、制服姿のまま隣の古城の家に行く。

 

既に古城の妹、凪沙が台所に入って、料理の準備をしていた。

暁家は4人家族だが、両親ともに仕事の関係で滅多に家に帰ってこない。

料理は古城と凪沙が交代制で作っていた。

 

「雪菜ちゃんは座って待ってて」

雪菜は凪沙を手伝おうとしたが断られ、リビングのソファーに座ってる様に言われる。

手持ち無沙汰になりながら、ちょこんとソファーに座る雪菜に、古城が冷たいお茶を出す。

 

「そういえば、うちのクラスに副担任が新しく赴任したんだけどな。その新任教師が……」

古城が雪菜に何か世間話でもしようとしたのだが……

 

ガタン!ガタガタガタ!

隣から大きな物音がする。雪菜が住む部屋とは反対の隣の部屋(家)からだ。

 

「凪沙、隣の家の石田さんは、確か1週間前に引っ越したよな。新しい人でも来たのか?」

 

「うーん。聞いてないよ」

 

「まさか泥棒か?」

 

ガタンガタン!

『あーーー!!アリス!!ここではライオンはダメだって!!直しなさい!!』

『ガルルルル!!』

『ていっ!!ブリキの兵隊もダメ!!』

隣から若い男の大きな叫び声が聞こえるが、古城はその声を最近どこかで聞いたことがあるような気がした。

 

「ど、泥棒じゃなさそうだな」

「でも、古城君。ら、ライオン!?」

古城はホッとし、凪沙は驚いていた。

因みに凪沙は兄と父を君付けで呼んでいる。

 

「へー、このマンション。ライオン飼えるんですね。見てみたいですね」

雪菜はそんな事を真面目な顔で言っていた。

 

「雪菜ちゃん。マンションでライオン飼えないから!てか、普通居ないから、それ本気で言ってる?」

「姫柊、どこの世界でライオンが飼えるマンションがあるんだよ。しかもライオンは絶滅危惧種だぞ!」

凪沙と古城は呆れた顔をしながら、雪菜に思いっきり突っ込む。

 

「そうなんですか?」

雪菜は閉鎖的な環境で育った影響で、かなり世事に疎い。

そんな事情から、こんなボケた事を度々言葉に出してるため、学校のクラスメイトからも天然が入ってる子という認識をされていた。

 

 

 

ピンポーン。

暁家にチャイムが鳴り響く。

 

「古城君出て!」

「はいよ」

 

古城はインターホンのカメラを使わず、直接玄関を開け来訪者に対応しようとした。

扉を開けると……

「あ、あんたは!新任のナンパ教師!?」

そう、玄関の前に立っていたのは、今日いきなりナンパまがいな自己紹介をした、あの横島という新任教師だった。

 

「よっ!ここお前んちだったんだな!今日となりに引っ越してきた横島だ。よろしく!えーっと」

 

「…暁古城です」

 

「暁古城……古城か、学校でもよろしくな。それとこの子が妹のアリスだ。自己紹介は?」

 

横島の後ろから、黒のゴシック調の服を着こなした小学生中学年ぐらいの少女が顔だけを出し、恐る恐る自己紹介をする。

「アリスです。お、お兄ちゃんの妹です」

 

「なになに、古城君!お隣さん新しく引っ越してきたの?」

凪沙が古城の驚く声とやり取りする声が聞こえ、料理の手を休め、玄関まで足早に来た。

 

「ああ、そうなんだが、その……」

古城はそんな凪沙に、隣に引っ越してきた人物が意外な人物だっただけに、曖昧に返事をする。

 

「隣に引っ越してきた横島だ。それと、今日付けで私立彩海学園高等部1年B組副担任に就任したんだ。えーっと、君とその後ろの子は?」

横島は後から現れた凪沙と、その後ろで玄関の様子を伺っていた中等部の制服を着たままの雪菜に向かって、自己紹介をする。

 

「え?古城君のクラスの副担任の先生?私は古城君の妹で、中等部3年生の暁凪沙です」

凪沙は驚きながらも自己紹介をする。

 

「私は凪沙さんのクラスメイトで、ここの隣に住んでます姫柊雪菜です」

雪菜も凪沙にならい自己紹介をする。

 

「おお?みんな同じ学校か。よろしくな。ほら、アリスも……」

 

「あ、アリスです」

 

「かわいい!!古城君!!この子凄くかわいい。まるでお人形さんみたい!!」

はしゃぐ凪沙にアリスは横島の後ろに隠れ、恥かしそうに顔を隠す。

 

「………」

雪菜は、挨拶をする横島を下から上へと目を鋭くして、見据えていた。

 

そんな中、アリスは横島のズボンを後ろを引っ張り、上目使いで一言。

「……お兄ちゃん、お腹すいた」

 

「作るからちょっと待っててくれ」

横島は苦笑しながら、アリスに返事をする。

 

「よかったら、夕飯一緒にどうですか?」

そんなアリスと横島を微笑ましそうに見ていた凪沙は、この二人を夕飯に誘ったのだ。

 

「初対面なのにいいのか?」

 

「いいですよ。丁度今から作るところでしたんで、古城君がお世話になるし。アリスちゃんとも仲良くしたいですしね。ねー」

 

「アリスもいい?」

横島が後ろにしがみつくアリスにそっと聞くと、アリスは恥ずかしそうに頷く。

 

「じゃあ、お言葉に甘えるか」

 

 

こうして暁家で、横島、アリスを加え、お隣さん歓迎会という名目で5人で夕食をとる事になったのだ。

凪沙は、終始興味深そうに、横島とアリスに質問攻めをし、横島は笑いを交えながら返事をする。

アリスは、恥ずかしそうに横島にくっ付き、頷く程度であった。

古城ははしゃぐ凪沙に苦笑しつつ、横島という人間が悪い人ではなさそうだという印象をもった。

雪菜はあまり会話に入らず、横島とアリスを探るように見ていた。

 

 

 

自室に戻った雪菜は、今日一日の古城の監視報告書を作成しながら、思いに深ける。

(このタイミングで、第四真祖である暁先輩の隣に引っ越し、しかも学校の副担任に就任。横島忠夫。やはり、第四真祖を監視するためにどこかの組織が派遣したエージェントであると見た方がいいでしょう。気を探ってみましたが、どう見ても人間ですね。妹さんは不思議な感じがありましたが、反応は人と同じ。という事はいずれかの夜の王国(魔族の国家)や魔族結社の差し金の可能性は低いでしょうね。獅子王機関とは別口の日本政府別組織の攻魔官?いえ、軍?……日本本国から飛行機で来たと本人は言ってましたが……もしかすると、流暢な日本語を操っておりましたが日本人を装った他国のスパイかもしれません。いずれにしろ、獅子王機関に横島忠夫なる人物を検索してもらい、指示を仰いだ方がよさそうですね)

 

雪菜は横島を、第四真祖暁古城を監視、又は何らかの目的で接触を図る組織のエージェントと疑っていたのだ。

 

 

 



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③その男ロリコンじゃない(ハズ)

続きです。


「えーっと、俺の担当は数学だよな。教科書はと……おーい、今どこまで行ってるんだ?」

1年B組の教壇に立つ、ジーパンにTシャツ姿の年若い新米教師は、慌てて教科書を捲りながら生徒に聞く。

 

「横島先生。43ページです」

 

「おっ、助かった!ありがとな、後でお茶でもどう?えーっと」

 

「築島倫です。先生、そう言うの良いんで、早く進めてください」

 

「……ド、ドライだな……43ページ。い、因数分解?……どうやるんだっけ?」

数学教師のハズの新任教師横島は、因数分解の数式を見て、焦りだす。

 

「「「はぁ!?」」」

生徒全員が一斉に呆れた声を出す。

 

「いやいやいや、ちょっとまて!基本に立ちかえるんだ。1+1=2 1-1=0 1×1=1………」

横島はそんな生徒の呆れた声に待ったを掛け、教科書を物凄い眼力で睨みつけながら、小学生低学年レベルの算数問題を口ずさみ始めたのだ。

基本に立ち返るのは良いが、立ち返り過ぎているようだ。

 

「「「………」」」

生徒達は呆れて声も出ない。

 

「古城。あの教師大丈夫なの?」

「知らねーよ」

「あんたの家の隣に引っ越してきたんでしょ?」

「俺も昨日会ったばっかりだ。話した感じは悪い人じゃなさそうなんだけどな」

コソコソと浅葱と古城は教壇でぶつぶつ言ってる若い教師を見ながら話していた。

 

 

「ビッグバーンが起こる前の宇宙は細密充填の面心立法の可能性があるからπ/√18≃0.74048……」

壇上の教師はぶつぶつ言いながら黒板に膨大な見たことも無い数式を書き出したのだ。

 

「……おい、浅葱、あれは何をやってるんだ」

「あの教師おかしいわよ。因数分解できないくせに、ケプラーの予想証明を解きだしたわよ」

「なんだそりゃ?」

「そんなのもわからないの古城は?数式証明の難関の一つで、400年かけてようやく解かれた証明式よ」

「普通の高校生がそんなもん知るか!」

浅葱は天才的なプログラマーであり、数式を見ただけで理解できる脳を持っていたのだ。

浅葱にとって、数字は馴染みあるもので、難問数式をすらすらと説き始めた横島を見て感心しだしていた。

しかし、黒板に書かれた数式は、古城や一般の生徒にとって、何をやってるのかさっぱりわからないだろう。

 

「おお!?わかったぞ!因数分解!あはっあははははっ、じゃあ、授業はじめるか」

 

(((ええーー?因数分解ってこんなに複雑怪奇だったっけ?)))

生徒達はその膨大な数式を見て驚き、呆れ果てていた。

 

結局、その日の数学の授業はその若い数学教師、横島が因数分解を思い出すために殆どを費やしていた。

 

 

 

放課後……

「横島先生っ、中等部でなにやってるんですか?」

凪沙は昨日隣に引っ越した兄の古城の副担任である横島が、何故か中等部の校舎でうろついているところを見かけ、声を掛ける。

 

「おお!?凪沙ちゃんと雪菜ちゃんか……いや~、ちょっと笹崎先生にご挨拶をと!」

 

「先生は多分、体育館の準備室ですよ」

 

「ビンゴーー!?じゃね~凪沙ちゃんと雪菜ちゃん」

横島はそう言って雪菜が指さす方向へ、物凄いスピードで走り去った。

雪菜はその後姿をいぶかし気な目で見ていた。

 

 

そして中等部の体育館2階にある準備室では……

「ボク高等部新任教師の横島!中等部一の美人と噂に高い笹崎先生!帰りにお茶でもいかがですか!」

 

「あの、校内で困ります。横島…先生?……昨日、那月先輩の副担任で赴任して来たって言う、生徒にいきなりナンパした新任教師の横島先生?」

 

「げっ、もしかして……笹崎先生は……なつきちゃん先生とは仲良しだったり?」

 

「げっ、とは何だ横島……貴様、昨日ナンパを禁止させたはずだが」

何時の間にやら南宮那月が横島の後ろに現れ、厳しい口調で横島を問いただす。

 

「でたな。なつきちゃん!生徒へのナンパは禁止されたが!教師へのナンパは禁止されてな――い!?しかも大人どうしは自由恋愛だ!!」

こんな事を堂々と語る横島。

 

「笹崎……こいつを殴って良いぞ」

那月は横島を睨みつけ、こんなことを言う。

 

「那月先輩いいんですか?」

 

「私が許可する。幸いここの体育館2階には生徒は滅多に来ない。最悪殺してしまっても良いぞ」

 

「先輩の指示では仕方ないですね。では、死なない程度に」

 

「な…何を物騒な、なつきちゃん先生?冗談ですよね。いやだな笹崎先生も何を?グボべーーー!!」

 

笹崎先生の拳が目にもとまらぬ速さで横島の鳩尾に突き刺さり、横島の体は九の字に体が折曲がる。

 

笹崎岬、彼女は中等部の教師である前に、武術と仙術の融合格闘術、四拳仙の達人であり、仙姑の異名を持つ程の実力者だった。

その笹崎岬に横島は滅多打ちにされる。

 

「グハ!?グボーーー!!……ちょっちょっまったーーーー!しゃ、しゃれにならない!!ひえーーー!!、アガガガガ!?」

 

「ほほう。貴様。これで気絶しないとは根性だけは中々あるではないか」

那月は扇を片手に目を細めていた。

 

「ガボ!?なつきちゃーーん。もうしないから、許して――――!?」

 

「何度言ったら分かる。上司を子ども扱いするなと。笹崎、ちょっとこいつを私の部屋に連れてきてくれ」

 

「ごめんなさいね。新任の横島先生。先輩には逆らえないと言うか……」

こうして、ボロボロになった横島は、南宮那月の部屋、何故か学校の最上階に位置する場所の豪華絢爛な広い個室に連れていかれた。

 

 

そしてカーペットの上に正座をさせられる横島。

どこの世界でも横島の扱いはいつも同じのようだ。

先ほどまでボコボコにされ、傷だらけだった体は元に戻っていた。

 

那月はその小さな体に不釣り合いな大きなリクライニングチェアーに座り、メイド服を着た中学生位の少女に紅茶を入れて貰っていた。

「アスタルテ、こいつがおかしなマネをしないように縛っておけ」

 

「アクセプト」

アスタルテと呼ばれたメイド服の少女は無表情に那月に返事をし、横島を丈夫そうな紐でぐるぐる巻きにする。

この少女は、一から人の手で作られた人工生命体、いわゆる人造人間だ。先日の事件で捨て駒のように使われていた所を暁古城らに助けられ、今は攻魔官である那月の監視下にある。

 

「アレ?なんか久々の感覚っ!?って、なつきちゃーん、悪かったって!!謝ってるのにーーー!?」

横島はアスタルテにぐるぐる巻きにされながらも、意外と余裕そうだ。

 

「ふう、横島忠夫。確かに日本本土からこちらで教師になるように手続きがされている。書類上には不備は見られない。だが、このタイミングで絃神島のこの学校に、私の副担任になるとはどうも解せないな。貴様、何者だ?」

そんな横島の叫びを無視し、手元のタブレットを操作しながら、横島に尋問のような質問をする。

どうやら、那月は横島をナンパの罪で折檻するために連れて来たのではなく、横島の素性を怪しみ、尋問するために連れて来たようだ。

那月は私の副担任とは言ったが、実の所、第四真祖暁古城クラスの副担任として赴任してきたことを問題視していたのだ。ただ、横島の素性は疑いはしているが、はっきりとはしていないため、こんな言い回しをしていたのだ。

そして、南宮那月は暁古城が第四真祖であることを知る人間の一人だった。政府からの指示で攻魔官南宮那月として、第四真祖の監視役も担っていたのだ。

 

「何者かって、言われても横島忠夫なんだけど、……そういうならなつきちゃんだって、うちの妹と同じぐらいの年恰好の癖に教師なんておかしいだろ!」

 

「貴様堂々とまあそう言う事が言えるな。こう見えても私は26歳なのだよ。この体はな、とある事情で成長が止まったままでな」

 

「うーん。心は26歳……でも体は10歳くらい。いや、流石に……しかし、体は26歳で心は10歳とどちらかと言われると……心が26歳の方が、いや流石にうーん」

横島は縛られたまま、なつきをじいッと上から下へと舐めるように見定める。

 

「貴様!!何を考えている!!」

那月は自らの体を抱きしめ、横島を汚物を見るような目で刺すように睨む。

 

「いや~、お付き合いしようとするとどっちの方が良いのかなーって?心は26歳で体は10歳。心は10歳で体は26歳……なかなか深いテーマだ!」

横島は真面目な顔で頷いていた。

 

「ななななな!?き、貴様などと付き合うつもりは無い!!」

那月は顔を真っ赤にして、手に持っていた扇を横島に投げつける。

 

「心が26歳ならこの不肖横島忠夫、ロリコンではないですが、いつでもなつきちゃんの相手を務めさせていただきます!!」

横島の中で結論が出たようだ。大真面目な顔でこんなことを言ってのける。

 

「馬鹿か!?貴様は馬鹿なのか!?貴様など要らん!!ぐっ……」

 

「マスター、大丈夫ですか?精神の乱れを確認、異常値に達しようとしてます」

アスタルテは無表情で那月にこんなことを聞いてきた。

 

「それはいかん!直ぐにベッドへゴー!!」

横島はいつの間にか、ぐるぐる巻きにされていた縄を脱し、那月を抱き上げようとしたのだ。

 

「このロリコンの変態めーーー!!私に触るな!!」

那月の小さな拳が横島の顔面に突き刺さる。

そして、那月の後ろの何もない空間から鎖分銅のような物が複数飛び出し、横島を殴りつける。

南宮那月は欧州の魔族からは『空隙の魔女』と恐れられ、空間を操る魔術を極めたとされる超一流の功魔官だった。

 

「グボバ!?」

横島はそのまま扉まで吹っ飛ばされる。

 

「もういい!貴様のような変態をスパイだと疑った私がバカだった。今日は帰れ!!」

那月はそういい放ち、横島はアスタルテによって廊下の外に放り出された。

 

「あいつは何なんだ?ロリコンにはストーカーされたとこはあったが、あいつはほんと、なんなんだ!?」

那月は顔を真っ赤にしながら、息まき、声を上げていた。

 

 

 

 



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④その男、横島忠夫

いきなりのシリアス展開です。
シリアスは長続きしない。
それはもはや世の理w

人物設定が分かりにくいかもですね。
人物設定集でも作った方が良いかもしれませんね。

ピート登場です。


引っ越し早々、暁家で夕飯を馳走になり、自室に戻った横島とアリスは……

 

(とりあえず暁古城と接触できたのはいいが、これからどうしたものか。暁古城、第四真祖。確かに吸血鬼と同じ反応だな。体内をめぐる気も相当ある。眷属、いやこの世界では、眷獣か……何体か内包してるが……でっかいエンジンを積んでるが、本人に操縦技術がないために、全く使いこなせていないような感じだ。それよりもだ。妹の凪沙ちゃんだ。彼女も眷獣と同じ反応の物を一体内包してる。しかも厄介そうな奴だ。聞いてないぞ、まったく。あとは姫柊雪菜ちゃんか……あの子、霊能者だな。相当な使い手だろう。多分日本政府が派遣したとかいう暁古城の監視役か……まだ、中学生じゃないか、どこの世界も同じか……)

 

「アリス。さっきの三人の本は抜き取れた?」

 

「はい。なぎさお姉ちゃんの本は二冊ありました。でも、一冊は違うお名前です」

アリスはそう言って、手から四冊の本を顕現させた。

 

アリスは横島の血縁の実の妹ではない。

さらに年下ですらない。実年齢は横島よりはるかに年上だ。

アリスは宇宙創成期から存在する全世界図書館の管理者。宇宙のすべてを記録する使命を帯びている。そして、最古の神である創造神や冥界の王と同じく、宇宙が創造された時からその身は存在していたとされる。その存在は神、魔とも分類できず、現在も神や魔の最高指導者すらもその扱いに憂慮してる状態であった。アリスは基本的に宇宙や世界にとって無害な存在だ。ただ、その特殊な存在故に利用される可能性もあった。実際に魔神の一柱に、最近本人の意思とは無関係に利用されたのだ。

幸いな事に、その魔神とは因縁があった横島がその魔神を倒すことで解決をしたのだった。だが、それ以降アリスは横島を兄の様に慕うようになる。そんなアリスをこれ幸いと、神と魔の最高指導者は横島にそのまま押し付けたのだった。

 

アリスは全世界図書館の管理者の能力として、人に触れることで、その人の人生を自動で書き綴る本を一瞬にして作成(抜き取る)する事できるのだ。そしてそれを、自らが管理してる異空間に存在する全世界図書館に納めていく。こうして、宇宙すべての存在を記録していくのだ。普段は自らの分身体ともいえる眷属(分霊)が無数に存在し、それらがその役目を負い、全宇宙から記録を集めている。

 

 

「凪沙ちゃんから二冊?」

横島はアリスから古城と雪菜、凪沙の本を受け取り、その本をちらりと一通り目を通す。

人から取り出せる本は普通は一冊だ。

人の人生は高々100年程度。その人生は綴るのに一冊で十分なのだ。もし一冊の範疇に収まらない量の情報量があるのであれば、その後二冊、三冊と増えていくのだが、よっぽどの特殊な例だろう。

しかし、どう考えても凪沙は14歳の人間の女の子だ。二冊出てくるとは到底考えにくい状況だった。

 

「アリスも読みたい、です」

 

「はい、また後で見せてね。……なるほど、凪沙ちゃんの一冊は前の第四真祖アブローラの物か」

横島は再度凪沙から取り出した二冊の本をちらりと中身を見てから、アリスに四冊の本を返す。アリスは早速、ソファーに腰かけ床につかない足をぶらぶらとさせながら、受け取った本を気分よさげに読み始めた。

凪沙から取り出した本の二冊の内の一冊は、前第四真祖アブローラ・フロレスティーの物だった。

そう、凪沙にはアブローラの魂が混在してるのだ。そのため、凪沙から二冊の本が出現したのだった。

 

「相当厄介だな。あいつがこの世界が滅びかけてると言ったのも、強ち間違ってはないかもしれない」

横島は先ほど、ちらりと目を通した前第四真祖アブローラ・フロレスティーの記録をつづった本の内容を思い出し、独り言ちる。

 

 

 

横島が言う《あいつ》とは……

 

 

 

 

 

2週間前、北極海の海上。

雷鳴が鳴り響き、大気は震え、海がうねり、さながら惑星創世期の様相であった。

 

 

 

「ピーーーーーーーートォーーーーーー!!」

 

「横島ーーーーーーー忠夫ォォォーーーーーーーー!!」

 

 

海上上空では二つの人影が人の目では到底追い付かないようなスピードで、入れ替わり立ち替わり交差し、激しい戦闘を繰り返していた。

 

 

黒髪にバンダナをした青年は、右手に霊気を内包した小さな珠を数個浮かび上がらせ、左手に燦燦と輝く剣を振るう。

金髪の青年は、眷獣を十数体従え、手からは霊気を収束させたビームのような物を出しながら、ありとあらゆる攻撃を黒髪の青年に放っていた。

 

 

2時間程だろうか、そんな天変地異さながらの攻防を繰り広げた後。

二人は戦闘をやめ、海上に浮かぶ小さな岩礁に並んで腰を下ろしていた。

 

「横島さん相変わらずですね。元気そうでよかったです。神に咎人として囚われたと聞いていたので……僕も相当力を付けたんですが、まだ貴方に勝てる気がしません」

 

「ピート。久しぶりだな!……それと、すまなかった」

 

「事情はほぼ、知ってます」

 

「すまん。勝手にこんなことをした上に、記憶まで奪って……本当にすまん」

 

「僕の眷獣の一つが過去と未来を見据える事が出来るんです。ようやく最近、本来の力を最大限に発揮できるようになり、それで分かったんです。そして記憶と取り戻しました。今迄、永遠に近い命を持つ第一真祖である僕が、なぜ1200年間までの記憶しかないのか疑問に思っていました。この世界の前に別の世界で生活していた事を、本当の……その前の世界では800年生きていた事、本当の名はピエトロ・ド・ブラド―であった事……そして、あなたの事を……」

 

ピートはこの世界で第一真祖忘却の戦王(ロストウォーロード)キイ・ジェランバラーダ、世界最強の吸血鬼にして、夜の国、戦王領域の王として君臨していたのだ。

 

「すまん」

 

「謝らないでください。僕は事情を知ってると言いました。でも記憶を取り戻した時の僕は何故この世界に居るのかがわからなかった。第一真祖キイ・ジェランバラーダとしてここに存在したのかを……僕はその事を必死に探しました。そして、僕に従う72の眷獣の一つである主人の魔神が教えてくれました」

 

「その眷獣の主人というのは、ネビロスの手の者か?」

 

「……察しが良いですね。魔神が眷獣を通し僕に教えてくれました。そう、あなたが妖怪妖魔と人間の争いを止めるために最終手段として、世界分離を果たした事を……そして、あなたはその罪で天界の咎人となった事」

 

そう、横島たちが魔神アシュタロスを倒した数年後に、人間と妖怪妖魔の間で決定的な亀裂が入り、世界を巻き込む戦争が起こらんとしていたのだ。

横島はその戦争を阻止するために、人間と妖怪妖魔の間に入り、ピートや他の仲間の力を借り、和解折衝を行っていたのだが、ついには止めることができず、全面戦争に……

そこで、横島は最後の切り札を使ったのだ。

『世界分離』

横島は888個の文珠を操り、世界を二つに分ち、人間と妖怪妖魔の世界を次元ごと二つに分離しようとしたのだ。お互いがこれ以上傷つかないようにするために……

それは奇しくも、アシュタロスが目指した宇宙再創世とほぼ同じ。宇宙の理の禁忌であった。

そもそも、横島がなぜそのような神や魔神にもなせないような事が出来たのかは、また別の機会に。ただ、その頃の横島は斉天大聖老師の下で、斉天大聖老師に匹敵する力を手に入れていたとだけ言っておこう、

横島が成そうとした宇宙の禁忌である『世界分離』に、最高神が寸でに気が付き、横島の世界分離を阻止するために動く。

横島も最高神の動きに気が付き、世界分離を急がせた。

何とか分離に成功させたのだが、事を急いだ結果、分離した世界とは別に、偶発的にその中間のような世界が3つ出来上がってしまったのだ。

当初の目的通り、一つは元の世界、人間だけが住まう世界。分離した先の世界、妖怪妖魔や悪霊などが住まう世界。

そして偶発的にできた世界は3つ。

一つは霊的エネルギーが満ち溢れているが、生命が存在しない死の世界。

一つは特殊能力者や亜人たちが存在する世界。

そして、もう一つはこの世界、元の地球と似通った世界。人と人種に近い妖怪妖魔が同時に存在し共存する世界。

 

横島が行った世界分離は、元居た生命体も分離した世界に振り分け分するという荒業であった。

 

さらに横島は世界分離を敢行する前に、自分という存在をなかった事にするために、人類から自分の足跡、要するに記憶を消したのだ。特に親しい人間に対しては入念に。

 

 

 

「………」

 

「本来ならこの世界はなかった。完全に分離するところを最高神に止められたため、この丁度中間のような世界が偶然出来上がったと、僕ら妖怪妖魔の一部と人の一部がこの世界の始祖となったと……」

 

「すまん」

 

「横島さん、いつからそんなにネガティブになったんですか?僕はこうして生きてますし、こう見えてこの世界で僕は一番強いんですよ。しかも広大な戦王領域、大国の主です。僕の一言で世界を動かす事だって出来るんです。……それに一番苦しかったのは横島さんじゃないですか」

 

「いや……俺はみんなを裏切ったもいいところだ」

 

「裏切った?いや、僕たちに力が無かったからです。そして横島さんにすべてを押し付けてしまった。横島さんにはその力があったから。だから僕たちを救ってくれた」

 

「……カオスのじーさんも、マリアも同じような事を言ってくれたよ。俺はその言葉でだいぶ救われる。ありがとうピート」

 

「何を言ってるんですか、お礼を言うのは僕達のほうです。世界を分離し僕らを救った神のような存在の癖に……というよりも、ドクターカオスとマリアに会ったんですか?ネビロスの手の物の話によると、そっちの世界では100年後と聞いてましたが……いや、カオスとマリアだったら生きてますよね」

 

「ピート、聞いて驚くなよ。カオスのじーさん。こっちの世界では世界一の金持ちで成功者だ。ボケてないしな」

 

「えーーーー!?あのドクターカオスが?」

 

「そうだぞ。しかし、迷惑度が数段階上がってるけどな」

 

「ふふふふっ、なんだか楽しそうですね」

 

「いろいろあったけど、まあな」

 

 

 

 

「………横島さん。タマモさんはたぶん僕より先に記憶が戻ってます」

 

「タマモ!?タマモもこの世界に?しかも記憶が?なんでだ?」

 

「タマモさんはこの世界では第三真祖ジャーダ・ククルカンと名乗り、混沌界域の王ケイオスブライドとして君臨しております。おそらく彼女も眷獣の力で記憶を取り戻したものと」

 

「タマモが……」

 

「僕は記憶が戻り、ジャーダがタマモさんだと確信しておりました。今のタマモさんは当時とは違い、傾国の美女そのものです。姿は変わろうとも面影はあった。だから、思い切って聞いてみました。すると『二度とその話はするなと』怒りをあらわにし、横島さんをいつか殴り飛ばして八つ裂きにすると息巻いてました」

 

「……まじで怒ってるなタマモの奴。まあ、それは俺の罪だ。甘んじて受けるしかないな」

 

「だから、僕は横島さんをこの世界に呼ぶ事を話してません。彼女の介入があったら、僕のお願い事に支障がでますからね」

 

「俺を魔神と神を通して呼んだ要件ってなんだ?」

 

「この世界は壊れかけてる。神と魔が間接的に介入できるこの世界は、欲望を持った邪な人間や妖怪妖魔、ここでは魔族ですが、その力を利用し、お互いの種を滅しようとしている……しかもそれすらも口実なのかもしれない。この世界を我が物にしようと暗躍する何者かの存在が蠢いている。今迄、僕ら魔族側の三大長である第一真祖から第三真祖が何とか抑えてきました。しかし、僕らだけでは抑えが効かなくなってきたのです。そこで僕たちは、こうなる事を見込み、何百年もかけ、新たな真祖、第四真祖を生み出した。しかし、不完全なもので、今はある人間の少年がその業を背負う事に……僕の願いは、新たな第四真祖暁古城少年を、陰ながら支えてほしい。一年でいいんです。彼は人間から第四真祖となり、日が浅い。未だ眷獣すらまともに扱えない未熟な真祖だ。彼を亡き者にしようとする者、利用する者も現れるでしょう。彼をそんな輩から守り、彼が自分を守れるぐらい力を得られるよう。……できれば導いてほしい。一年あれば、世界を救ったあなたなら出来るはずだ」

 

「導くって言ったってな~、真祖って吸血鬼だろ?俺はこう見えても人間だぞ。お前やお前のお仲間の方がいいんじゃないか?」

 

「僕はバンパイアハーフですが、僕を本当の意味で鍛えてくれたのは、人間の唐巣神父です。……それに恥かしい事ですが、身内は信用できる者が少ないんです」

ピートは首を横に振る。

 

「陰ながらって、本人に知られない様にって事か?」

 

「それが本当は望ましいですが……まかせます」

 

「わかった……ピート。俺は皆に大きな借りがある。その願い引き受けた」

 

 

 

 

「ところで、話の途中で急に瞬間移動のように現れて、横島さんの膝の上で楽しそうに本を読みだしたこの子は?」

戦闘を終え、ピートと岩礁の上で話をしている横島の膝の上にアリスが突如として現れ、何もなかったように本を読み始めていたのだ。

 

「アリス。今は俺の妹だ」

 

「え?どういうことですか?横島さんに妹なんて……」

 

「……カクカクシカジカだ!(前記述参照)」

横島はアリスについて大まかな説明をする。

 

「えーーーーー!?それって最高神や魔の最高指導者と同格、それよりも上の存在ってことじゃ……」

 

「まあ、そうなるな」

 

「……もう、驚かないと思ってましたけど、いつも横島さんには驚かされる。……でも良いんですかね、この世界に現れて」

 

「いいんじゃない?今は俺の妹だし、神でも魔でも無いんだし」

 

「軽いですね……まあ、横島さんだし」

 

 

元の地球と環境がそっくりなこの世界は、人と、そして人種に近い妖怪妖魔が混在する世界だった。

横島が世界分離を行った後。時代は遡り、1200年前の状態からこの世界独自の歴史が始まり、そして今に至ったのだ。元の地球と大きく異なるのは、魔族(妖怪妖魔)と人間との勢力が拮抗していたため、それぞれが国を建国し、歴史を重ねて来た。

その歴史の中では人間と魔族との争いは多くあった。もちろん人間同士、魔族同士の争いも絶えなかった。

近年は争いも無くなり、ある程度の緊張保った拮抗した状態となり、平和な時が流れていた。

その平和は、最も力を持った魔族、第一真祖、第二真祖、第三真祖がこの世界のバランスを維持するために尽力した所が大きい。

 

そして、その第一真祖キイ・ジェランバラーダの本性は、世界分離前の地球での横島の親友、バンパイアハーフのピエトロ・ド・ブラド-であった。

第三真祖ジャーダ・ククルカンもまた、その本性は横島の同僚のタマモ…九尾の狐、大妖怪玉藻前だったのだ。

 

しかし、世界のバランスは悪意を持った人や魔族、さらには天使の介入もあり、崩れ去ろうとしていた。

 

記憶を取り戻したピートは願った。

崩れ行くこの世界の平和に楔を打ってもらうために……横島忠夫に会いたいと。

 

 

 




ピート登場、そのうちタマモも……

次からいよいよ、ストブラの戦王の使者編に本格参入。
ギャグは忘れないよ。多分><




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⑤獣王の使者編1

感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。




暁古城は、とある豪華客船の客として呼ばれていた。

何故か姫柊雪菜も一緒にだ。

 

 

「ようこそ我が客船オシアナス・グレーブへ。第四真祖、いや暁古城、歓迎するよ」

2人を呼んだのはこの豪華客船の主、ディミトリエ・ヴァトラー。戦王領域に自国領を持つ、第一真祖の血族の有力な臣下だ。

同族を食い力を得た戦闘狂であり、その力は真祖に一番近いと目されている。

 

「俺に何の用事だ?」

 

「そう、警戒しないでくれ。獅子王機関の剣巫の君も…君たちをどうこうするつもりは無いよ。ただアブローラ(前の第四真祖の女性)の血を受け継いだ君に会いたかったのさ」

不敵な笑みを湛えながら、豪華客船の船内を案内するバトラー。

バトラーの今回の目的は本当に、ただ単に現第四真祖である古城に会いたかっただけだった。

バトラーは確かに古城に会いたかったという事もあったが、真の目的は別にあり、わざわざ東欧の戦王領域にある自国領アルデアル公国から船で絃神島に来訪したのだった。

 

古城と雪菜はそこで、もう一人の人物と出会う。

煌坂紗矢華。

女子高のブレザー姿の長身ポニーテールの美少女は、雪菜と同様キーボードケースのような物を背負っていた。

彼女も獅子王機関の舞威媛(呪詛や暗殺専門の功魔師)だった。

雪菜の元ルームメイトであり、その戦闘力は雪菜よりも上だという。

ここに居た理由は、獅子王機関の命令でバトラーの監視役を担っていたのだ。

その彼女だが、男嫌いな上にシスコンの気があるようで、雪菜が監視役をしている古城に対し、出会ったばかりではあるが敵意むき出しだった。

 

 

 

この様子を横島は上空から眺めていた。

「さっそく、トラブルに巻き込まれてるんじゃないか?暁古城……ディミトリエ・バトラーか…ピートの孫らしいがまったく言う事を聞かないらしいな。しかもトラブルメーカーときたもんだ。日本にこいつが来ること知ってて、俺にこいつの情報をしらせたのか、……イケメンだな!……ピートって確か奥さんが20人ぐらい居るって言ってた!?うーーらーーやーーまーーーしーーーいっ!!うらやまし過ぎる!!嫉妬で呪ってやろうか!」

横島は血の涙を流していた。

 

「……それにしても、あのポニーテールの子!!着やせするタイプだ!隠しているが88のEだ!!着替えとかしないかな!?……ふぅ、獅子王機関ってのはあんな女の子をこんな危険な奴の所に派遣するのか?くそったれだな……まあこの様子だと今日は大丈夫だろ。凪沙ちゃんにアリスを預けてるし、とっとと帰るか」

横島はそう言って、夜空を一飛びで帰宅する。

 

 

 

 

 

翌日の学校では……

 

「あの~、なんで、す巻きになって吊るされてるんすか俺は?」

横島は何故か、那月の学園でのプライベートルームの天井から、芋虫のように吊るされていた。

1時限目の数学授業を終えた横島は、アスタルテに無理やり連れていかれ、訳が分からないうちにす巻きにされ、こんな状態になっていたのだ。

 

「ふん、貴様には死をもって償ってもらう」

那月は鋭い目つきで、扇で横島を指す。

 

「じょ、冗談きついなーー、なつきちゃん」

 

「貴様!わ……わ……わ」

那月は何故か徐々に顔を赤くしていく。

 

「わ?」

 

「わ、私のパンツを返せ!!」

真っ赤になった顔で、那月はこんな事を横島に言った。

 

「ええーーーー!?ちょっと待って、なつきちゃん!!流石に妹と年恰好が同じなつきちゃんのパンツとか取らないし!冤罪だ!!」

確かにこの横島という男はロリコンではない。中学生以下には興味がわかないのだ。

横島にとって全く身の覚えが無い事だった。

 

「何!?だったら貴様!!大人の女性のパンツは取るのか!!」

 

「………い、いえ……これでもきょ、教師なんで取らないことも、あることもないです」

横島はしどろもどろになる。この男、過去に女性のパンツを獲った経験があるのだ。しかもバイト先の上司の。

 

「貴様ーーー!!私は26歳で立派な大人だ!!パンツを盗んだのは貴様しかいない!!私の部屋に昨日入ったのは貴様だけだ!!」

 

「だから、俺はロリコンじゃないっすよ。なつきちゃん。クマさんパンツとかウサギさんパンツとか見ても何もかんじないっすよ~!!」

横島は自分がロリコンじゃない事を例えで訴えたつもりだったのだが……

 

「き、きききききき貴様ーーーーーー!!なぜそれを知ってるーーーー!!やはり貴様だったか!!」

 

「へ?なつきちゃん。26歳なのにクマさんとかウサギさんパンツ履いてるの?」

どうやら、南宮那月26歳はクマさんやウサギさんパンツを愛用していたようだ。

 

「わわわ悪いか!!私が貴様に手を上げない内に早く返せ!!」

 

「悪くはないけど……うちの妹と同じっすよそれ」

 

「貴様ーーーー!!死をもって償え!!」

那月は顔を真っ赤にして、那月の周囲の何もない空間に術式陣を展開させ、鎖分銅をす巻きになった横島に対し、飛ばしたのだ。

 

「ひ、ひえーーーー!!お助けーーーー!!」

 

 

そこにメイド姿のアスタルテが奥の部屋から出てきて、そんな状況にも興味がないような無表情で、那月に報告する。

「マスター・古くなったクマさん・ウサギさん・ゾウさんパンツの修繕を完了いたしました」

 

その手には、フリルの付いたおしり部分に、動物の可愛らしい絵柄がプリントされた白いパンツ3枚を持っていた。

 

 

「そうか、アスタルテご苦労……厳重にしまっておいてくれ」

那月は真っ赤だった顔が普段のツンとした表情に戻り、アスタルテに労う。

空間から飛び出した鎖分銅は横島の手前で消え去る。

 

「アクセプト」

アスタルテはそう言って、この部屋の洗面所へと静かに向かう。

どうやらパンツは盗まれたわけではなく、アスタルテが修繕していたようだ。

 

「……なつきちゃん…この落とし前どうつけてもらおうか~~ああん!?」

横島は何時の間にか自分をす巻きに拘束していた縄を解いて、那月に対して手の平を返したように高圧的な態度を取る。

この男、場が有利となるとすぐにこんな態度を取る。

 

「ふん、悪かったな」

那月に悪びれた風はない。

 

「人を散々ロリコン扱いして!パンツ泥棒の濡れ衣を!!……いいんだ。そんな態度を取って……クラスの連中に言いふらしてやる!!なつきちゃんのパンツはクマさんパンツとウサギさんパンツとゾウさんパンツだって!!ふはははははっ!!」

横島は下衆な笑みを浮かべ、こんな事を言い出した。

 

「き、貴様!!卑怯だぞ!!」

 

そこに電話が鳴り、アスタルテが那月にスマホを渡す。

「…………わかった」

那月は電話を取り、相手に何かの了承をする。

 

「私は出かけないといけなくなった。貴様と遊んでいる暇はない。………パンツの件、生徒に言いふらしたら、後でどうなるかわかってるだろうな?」

 

「ちょ、なつきちゃん!!逃げるつもりか!!」

 

「アスタルテ、留守は任せた」

那月はそう言って奥の部屋に消えるとともに、気配も消えた。

 

(瞬間移動?いや空間転移か?)

横島はその気配を読み取り、那月が既にここかから消えた事を察知していた。

 

 

横島は那月の部屋を出た後、札を取り出し、鳥の姿をした式神に変化させ、外の空に放つ。

横島は那月の居場所を突き止めるため式神を放ったのだ。

(なんか、厄介ごとの予感がするな)

 

 

横島は4時限目の授業を終えた後、那月の居場所を式神が察知したため、昼休みに学校を抜け出し、様子を伺いに向かった。

 

そこでは、銃を使った戦闘が繰り広げられたいた。

獣人の姿をした魔族と、防弾服を着用している一団が港で対峙していたのだ。

所々聞こえてくる会話から、魔族側がテロリストらしい事と、防弾服を着用した一団はこの島の防衛を担ってる兵隊や、対魔族特殊部隊だということを横島は把握。

その対魔族特殊部隊の指揮を、那月が後方で取っていたのだ。

 

横島は凡そ高度1万キロメートル上空からその様子を見ていた。

(なんだこりゃ?この島では日常的にこんな事が起こってるのか?防弾服の一団もなつきちゃんも手慣れたようだし……はぁ、厄介だな)

 

 

 

 

 

 

 

学園では昼休みの終わり頃、暁古城は何故か煌坂紗矢華と屋上で対峙していた。

「雪菜だけじゃなく、他の女とも……第四真祖暁古城!!女の敵!!」

 

「なんであんたが学園にいるんだ?何を言ってるか意味がわからん?」

 

「雪菜が監視役だからと良いことに!!汚らわしいその手で雪菜を毒牙に!!しかも、他の女にまで!!許さないわ暁古城!!私の可愛い雪菜のために今ここで死んで!!」

紗矢華は背負ってるキーボードケースから剣型の武器を手にする。

六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)“煌華鱗(こうかりん)”という可変型武器、近接では剣、遠距離では弓形状に変形する強力な武器だ。

シスコンを高レベルで患っている紗矢華は雪菜が心配で、早朝から雪菜と古城の様子を監視していたのだ。

そこで出した結論がこれだった。

完全に紗矢華の思い込みだった。

 

「いや、何言ってるんだ?」

 

「問答無用!!」

紗矢華は古城に、煌華鱗を手に切りかかる。

 

「うわっ、あぶね。おい!!今、本気で殺そうとしただろ!!」

古城はギリギリのところでその攻撃をかわす。

 

「当り前じゃない!!殺そうとしたんだから!!雪菜の為に大人しく死になさい第四真祖!!」

 

「まじか?頭おかしいんじゃないか!?ぐわっ!!まて、レグルスアウレム!!」

紗矢華の鋭い剣撃に、古城の防衛本能に反応し、獅子の眷獣レグルスアウルムが飛び出し、激しい電撃を放ちながら紗矢華に襲い掛かる。

レグルスアウルムは主人である古城の危機を察知し、現れたのだが、古城の言う事を全く聞かず、暴走状態となっていた。

 

「本性を現したわね!!第四真祖!!」

紗矢華は煌華鱗でレグルスアウルムなんとか押さえつけるが、レグルスアウルムはより一層、力を解放し、電撃をまき散らしていた。

その衝撃は勿論学校にも被害が拡大し、窓ガラス等が割れる。

 

丁度、古城を探していた幼馴染の藍羽浅葱が屋上に訪れるが、電撃の衝撃余波に当てられて吹き飛び、気絶。

 

異変を察知した、雪菜が霊槍雪霞狼を携え屋上に飛び込み、魔力無効化術式を展開しレグルスアウルムに打ち込み、暴走を抑えたのだ。

 

 

「二人とも何をやっていたんですか?一つ間違えば、学校の人たちも怪我をしてましたよ」

雪菜は、古城と紗矢華に屋上の床に正座をさせ、説教を始める。

 

気絶した浅葱は、同じく駆けつけたアスタルテによって保健室に運ばれた。

外傷はなく、気を失っただけの様だ。

 

「こいつが悪いのよ!!雪菜にくっ付いたり、他の女に手をだしたり!!」

「はぁ?いつ俺がそんな事をやった?お前の妄想だ!」

古城と紗矢華は言い争う。

 

「2人とも反省してください!」

雪菜は二人にぴしゃりとそう言って、半壊した屋上を出て行く。

雪菜は気絶した浅葱の元へ、保健室へと向かった。

 

 

「あんたが悪いのよ。雪菜に怒られたじゃない」

「そもそも、お前が襲ってくるのが悪い」

「だって、雪菜が男の傍なんて……」

「シスコンかよ」

「こっちに近づかないでよ!変態!」

「はぁ?何もしてないだろ?」

「今、1cm近づいた!」

「はぁ、なんなんだ?勘弁してくれ……ところで俺達は何時まで正座してればいいんだ?」

「雪菜が良いって言うまでじゃない?」

「………はぁ」

古城は盛大にため息を吐く

紗矢華との相性は最悪の様だ。

 

 

横島は学校の方で、古城の眷獣が暴走したことを察知し、急遽戻ったのだが、既に雪菜が収めていた。

 

「次から次へと……暁古城は全く眷獣を扱えていないってことか。ピートの言う通り、これじゃいざと言う時にやばいかもな。まだ雪菜ちゃんがいるから良いものの。どうするべきか……」

 

横島は、上空から正座をする古城と紗矢華を一瞥した後、抗争を広げてる港の方へ再び向かった。

 




やはり、人物相関図とか設定集みたいなのを載せた方が良さそうですよね。


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⑥番外:設定集

このお話の設定集です。

ご質問等が有れば感想欄にでも書いていただけると助かります。
また、設定間違いがあれば容赦なくご教授を!



『ストライク・ザ・ブラッド』の世界にGS美神の横島くんを放り込んだお話なのですが……

正直言って設定がややこしくし過ぎて、書いてて収拾がつかなくなっちゃいました。

というわけで、この横島君(GS美神)とストライク・ザ・ブラッドのクロス設定と、1~5話のおさらいです。

 

 

 

先ずは原作の設定を軽く。

 

『ストライク・ザ・ブラッド』

魔族と人間が共存する世界。時代背景的には現代の世界と一緒。

魔族は人間を上回る身体能力や特殊能力を持ってます。

特殊能力の一つに眷獣と呼ばれる強力な召喚獣を使役する能力などがあります。

その魔族の中でも世界最強の魔族が第一真祖、第二真祖、第三真祖と呼ばれる吸血鬼の長です。

真祖は強力な眷獣を何十体も使役し、とてつもない力を持っております。

世界には、魔族が支配する国や地域がありますが、真祖たちが治める国が魔族最大の国々となっております。

世界の人口割合は圧倒的に人間の方が多く、魔族は少数派です。

この世界の人間も、魔族に匹敵する力を持つ人々が居ます。

霊能者や魔女や魔術師、錬金術師、神の力を行使する一族等など、多種多様に存在します。

魔術や霊能力、神の力、そして魔獣やドラゴンなどが存在する世界なのです。

 

魔族と人間はお互いの存在を認めていますが、完全に両者が溶け込んでるわけではありません。

過去には戦争や諍いなどもありましたが、しばらくは平和な時代が続いています。

 

そんな世界で、魔族と人間は絶妙なバランスをとって地球上に存在しているのが『ストライク・ザ・ブラッド』の世界です。

 

舞台は東京から南330㎞沖合の人工島、絃神島。

ここは日本でも、魔族と人間が共存する魔族特区と呼ばれる地域です。

ここに、存在しないと言われている第四真祖、四番目の吸血鬼の長の血を引き継いだ元人間の少年暁古城が高校に入学し学園生活をしていました。

古城は高校に入学する前に、妹の凪沙と共にとある事件に巻き込まれ……第四真祖の血を引き継ぎ、吸血鬼となった。

しかし、古城は吸血鬼となったばかりで、強力なその力や眷属をまともに扱う事が出来ない中途半端な存在であった。

古城自身、吸血鬼の王になろうなどとは思っておらず、普通に生活を送りたいと願っていた。

そんな古城の前に、日本政府の魔導災害や魔導対策を担う特務機関、獅子王機関から、第四真祖を監視するために若干14歳の見習い功魔師、姫柊雪菜が派遣されたのだった。

 

第四真祖となった少年暁古城とその監視役の若い見習い剣巫(巫女剣士)姫柊雪菜が織りなす、学園アクションファンタジー『ストライク・ザ・ブラッド』

 

 

 

『GS美神極楽大作戦!!』

現代社会に幽霊や妖怪妖魔、悪魔、神様、オカルトのすべてが存在する世界がGS美神の世界。

主人公はイケイケ美人で守銭奴で性格に難がある超一流のゴーストスイーパー美神令子とその使い走りのスケベ・変態・下衆を体現したような少年横島忠夫がこの物語の主人公この二人を中心にハチャメチャな非日常を描いた作品です。

後はWIKI参照よろしくお願い!!

 

 

 

 

 

舞台は『ストライク・ザ・ブラッド』の世界、原作小説2巻目、アニメ5話からのお話になります。

 

主人公はGS美神の横島忠夫。

しかも、かなり魔改造された横島忠夫です。

GS美神終了4年後の横島君21歳です。

 

主人公の横島忠夫の略歴をさらっと……

 

現在21歳

元ゴーストスイーパー見習い。

世界最強の人間

陰陽術、古武術、特殊霊能文珠の使い手。

 

横島17歳

美神令子除霊事務所でアルバイトとして働く。

魔神アシュタロスを倒した英雄の一人となる。

 

原作終了後

横島17歳~18歳

ルシオラの魂融合が原因で自壊寸前に陥るが驚異的な精神力と機転で自力で脱する。

この時文珠を使い、前世の高島の記憶を記録として入手して、陰陽術を使いこなすようになる。

文珠の存在やアシュタロスを倒した事で、悪魔や人間に狙われるようになる。

周りに迷惑が掛かる事を懸念し、妙神山に黙って逃げ込み、斉天大聖老師の直弟子になる。

 

この頃、地球では魔神アシュタロスの影響なのか、人間と妖怪妖魔の間には軋轢が生まれだす。

 

横島19歳~20歳

キヌと恋人関係になる。

この頃の横島は斉天大聖老師と同等の霊力を得て、魔神二柱を滅ぼす。

地球では人間と妖怪妖魔による血で血を洗う戦いに発展。それを止めるべく嘗ての仲間と共に奔走するも、魔神ベリアルの暗躍により手遅れとなる。

 

横島20歳

人間が妖怪妖魔に滅ぼされる一歩手前で、究極の禁忌、世界分離を敢行する。

その際、自分の存在を完全に抹消するため、人々から横島に関する記憶を消す。

文殊888個を操り、人間と妖怪妖魔の世界を二つに分離しようとする。

最高神にその事が露見し、最後の仕上げの際止められる。

その結果、人間と妖怪妖魔の二つの世界以外に偶発的に三つの世界が誕生した。

合計五つの世界が誕生することになる。

 

一つ目は人間だけの世界。

100年余りかけ、魔法が科学的に発展した世界へと変貌し、人間同士の争いが絶えない。

 

二つ目は妖怪妖魔の世界

 

三つ目は生命が存在しない死の世界。

霊力や魔力が無尽蔵に存在する。

現在、魔界の住人達が、好き勝手使って、遊んでいる(戦いを行ってる)

 

四つ目は亜人や人間が住まう世界。

人口は少ない。

神が降り立ち人達と一緒に娯楽に興じている。

娯楽とはとあるダンジョンを攻略するのが目的。

 

五つ目は一部の人間や、人間に近い妖怪妖魔が共存する世界

要するにこの『ストライク・ザ・ブラッド』の世界。

 

横島は禁忌を犯した罪で100年間神界の魂の牢獄と呼ばれる場所で幽閉される。

 

横島20歳~21歳

100年経ち魂の牢獄から解放され、世界分離後の人間だけが住まう世界の地球へと戻る。

100年が経ち既に知り合いが1人も居ない世界。

魔法が科学された世界で学生としてやり直す横島。

そこで友人にも恵まれ、さらにはドクター・カオスとマリアに出会う。

1年が過ぎ……

神や魔神を通じて嘗ての親友ピエトロ・ド・ブラド―の願いでこの五つ目の世界にやって来る。

 

 

 

 

このストライク・ザ・ブラッドの世界成り立ち。

 

横島が人間と妖怪妖魔を別々の世界に振り分けるため世界分離を行う。

最高神の介入の余波で出来上がった世界の一つ。

 

人間と妖怪妖魔が共存する世界が出来上がった。

この世界は時代を遡って始まる。

凡そ現代から1200年前遡る。

 

元の世界からこの世界に振り分けられた横島の知り合いで、現在確認されてる人物。

ピエトロ・ド・ブラド-(ピート)

タマモ

 

ピート→第一真祖、忘却の戦王(ロストウォーロード)キイ・ジェランバラーダ

     世界最強の魔族の一人として君臨

     横島をこの世界に呼んだ張本人。

     元は横島の親友で同業者のバンパイアハーフ

 

タマモ→第三真祖、混沌界域の王(ケイオスブラッド)ジャーダ・ククルカン

     世界最強の魔族の一人として君臨

     横島を殺したいぐらい憎いと思ってるらしい。

     元は横島の同僚で大妖怪玉藻前の生まれ変わり。

 

(シロ????予定のつもり)

 

 

 

この世界での横島君の役割、

 

不完全な第四真祖である暁古城を影ながら見守り、鍛え上げる事。

そのため、古城が通う彩海学園の新米教師として潜り込む。

さらに古城が住むマンションの隣に引っ越す。

 

 

 

 

人物紹介

オリジナルキャラ

 

『アリス』

横島の妹を名乗るが血のつながりはない。

見た目は10歳程度の黒髪の美少女。

ゴシックファッションに身を包んでいることが多い。

 

その実は全宇宙の記録が収められてる全世界図書館の管理者。

宇宙創成期から存在する。

冥界の王や創世神と同等の存在と目されている。

その使命は、この世に起きるすべての事象を記録する事。

多量の分霊を生み出し、あらゆる世界の記録を集め、全世界図書館に本として納めている。

使い魔として、ライオンやブリキの兵隊、藁の案山子を好んで召喚する。

アリスと言う名は偶然、全世界図書館に迷い込んだ人間に名をつけられた。

精神性は10歳の女の子と変わらない。

少々内気で人見知りをする。

 

魔界ではダンタリオンと呼ばれ、魔神の一柱と目されていた。

 

100年後の人間だけの世界で暗躍する魔神ベリアルに利用されていたアリスをベリアルを倒した後に保護する。

なぜかアリスは横島に懐く。

神界や魔界では創世神と同等の存在であるアリスを扱いきれないとし、横島に託した。

 

基本的にアリスは人畜無害であり、その思考は全世界の記録を抑える事に傾けられ、楽しみはその記録を読む事だった。それ以外には興味がなかったが、横島に出会う事で変化していく。

 

 

 

 

『ネビロス』

魔神の一柱。強力な悪魔。

横島を自らの主にしたいと企んでいる。

 

 

 

ストライク・ザ・ブラッド

 

『暁古城』

彩海学園高等部1年

元人間の吸血鬼の王第四真祖。

家族は両親と一つ下の妹の凪沙。

両親は滅多に家に帰ってこないため、実質凪沙と二人暮らし。

 

『暁凪沙』

彩海学園中等部3年

古城の妹。

明るく人懐っこい性格。

 

『姫柊雪菜』

彩海学園中等部3年14歳

黒髪の華奢な美少女。

第四真祖暁古城を監視するために獅子王機関から派遣された国家功魔師の資格を持つ見習い剣巫(ケンナギ)

霊能力者で魔術を無効化する霊槍『雪霞狼』を扱う。

近接戦闘を得意とする。

幼いころから功魔師となるべく閉鎖された場所(高神の杜)で育ったため、世間ズレを相当起こしており、ゴルフクラブを武器だと勘違いするレベル。

服装などにも無頓着。

 

『煌坂紗矢華』

獅子王機関に所属する舞威媛(呪詛や暗殺専門の功魔師)

剣と弓の可変武器、煌華鱗(こうかりん)を扱う。多彩な魔術や攻撃手段を持つ一流の功魔師。

雪菜が5回勝負して1回勝てるかどうかというぐらいの実力の持ち主。

年齢は不明だが、高校の制服を着ている事から、高校生だと思われる。

高身長、スタイル抜群の美少女、長い髪をポニーテールでまとめている。

現在、吸血鬼の公王 ディミトリエ・ヴァトラーの監視役を行っている。

幼い時は雪菜のルームメイトで妹のようにかわいがっており、シスコンを患っている。

更には大の男嫌いでもある。

色々と残念美少女。

 

『藍羽浅葱』

古城の幼馴染、同級生。

見た目金髪ギャルっぽい。

明らかに古城に好意を持っている。

「電子の女帝」の異名を持つ天才プログラマーで、この世界では名が知れ渡っている。

絃神島の管理公社でセキュリティ運営のアルバイトをしている。実家は金持ち。

古城が第四真祖に変容したことを知らない。

 

『南宮那月』

古城達の担任教師。

自称26歳だが、見た目10歳かそこら。所謂合法ロリ。

超一流の功魔官でもあり、『空隙の魔女』として魔族や同業者からも恐れられている。

空間干渉系魔術を得意とし、高度な魔術を行使できる。

守護者(ジョジョのスタンドのようなもの)を召喚できる。

 

『矢瀬基樹』

古城と浅葱の幼馴染でクラスメイト

二人には隠しているが、ハイパーアダプターという音を操る超能力者。

更には絃神島管理公社から、秘密裏に第四真祖の監視役を担っている。

 

 

 

とりあえず第一弾です。

 

 

 

 



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