ISx超ロボット生命体 (F15C)
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ISx超ロボット生命体

―――地球。それは青く美しい星と宇宙飛行士は語る。

 

 

 

そこは大勢の命が育まれ、そして消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――だからなのだろうか? 『彼ら』がこの惑星に目をつけたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球、某所森林地帯。

そこでは一人の女性が走って……否、後方をしきりに気にしながら低空で飛んでいた。

 

「ああもう! お前らしつこいんだよ!」

 

 

その女性は頭に兎のカチューシャをつけ、服装はまるでおとぎの国に出てくるような服装をしている。

しかし、体に纏うのはそれとはまるで正反対のような機械的で近未来的な鎧であった。

 

 

その鎧の名はIS-「インフィニット・ストラトス」。

それを纏いし女性、「篠ノ之束」によって生み出されたマルチフォーム・スーツである。

 

それは既存の常識を破り、人のサイズでありながら空を自由に飛び、そして理論上では宇宙空間でも稼動が可能なほどの高性能な装備でそれと同時に既存の兵器をも凌駕する戦闘能力を持っている。

 

 

しかしそれなら何故そのISを装備した篠ノ之束が逃げているのか? それは―――――

 

 

 

『お嬢ーさん! おー待ちーなさい!』

 

後方よりキャタピラ走行で森を突っ切ってくる戦車が後を追ってきているからである。それは空を自在に飛び交い、戦闘機と同等の速度で飛べるはずのISと同じかそれ以上の速度で彼女に迫り来る。それもISよりも巨大で木々をへし折りながらというおまけ付きで。

 

「待てといわれて待つ束さんじゃないよ!」

 

『そーかい! それなら鬼ごっこはまだ続くなあ! ほれぇ!』

 

 

その状況下でも逃げ切ろうとする束に対し、戦車は脇に搭載されている銃口を彼女に向け、光線を放った。

 

「くっ!?」

 

『わはははは! まだかわせるだけの体力はあるみたいだなあ! だがいつまでもつかなあ?』

 

「そんな火力を持った戦車、何処で作られたって言うのさ!? 束さん知らないよ!」

 

その光線をかわしながら悪態をつく。それもそのはず、その光線はいとも容易く木々を貫通しながら迫り来るからである。

それもハイパーセンサーで感知すればそれはISが持ちうるシールドすら容易く打ち抜かれるであろう出力を表示していた。故に彼女は森林地帯に逃げ込み、振り切ろうとしたのだが相手はそれすらをも気に留めずに迫り来る。

それに束は言いようのない恐怖すら感じ始めていた。

 

 

『ほらほらぼさっとしていると捕まっちまうぞぉ!?』

 

「このっいい加減に………っ森が無い!? どうして!? ここはまだ森だったはず!」

 

後ろから迫り来る追跡者から逃げるために森に入ったというのに突如眼前に広がるのは一面が切り開かれた森の跡地だった。

 

 

『残念、我々からは逃げられないのですよ? 一足先に逃げる方向の森林を伐採させてもらいました』

 

愕然とする束の上空から声がしたために見上げれば、これまた巨大な戦闘機が2機、上空で待機していた。

そしてその片方の垂直離着陸型に先手を打たれ、苦々しく顔をゆがめる。

 

『残念だがあきらめろ。我々からは逃げられん』

 

「……誰がそんな事決めたのさ?」

 

『ほう? それじゃあこの状況から逃げられるとでも言うのか?』

 

そして後ろからは先程から追いかけてきた戦車にとうとう追いつかれてしまった。その状況に束は額に汗をはしらせた。

 

『森林に逃げ込み、我々空の追跡を逃れようとしたようですがその程度の策略が読めない私ではありません。一応言っておきますがおとなしく投降すれば命はお助けしますよ?』

 

「そんな保証はないしお前達に従う理由も無いね」

 

『おろかな。貴様一人が何をしようが無駄な足掻きだと何故分からん?』

 

「そうかな? やってみないと分からないよ!」

 

上空からの言葉に反するように束は瞬時に展開した巨大な砲台を後ろの戦車に向けて光線を放った。

 

『うおおおおお!?』

 

戦車から聞こえる悲鳴と同時に着弾地点は大きな爆発が発生し、黒煙がたちこめていった。

「はいおわり。どうかな? これが束さんの実力だよ! これ以上追いかけてくるようならお前たちも墜とすけど?」

 

『『…………』』

 

その光景を自慢げに眺めつつ今度は上空にいる2機に砲身を向けた。

それに2機は何も答えず、静かにその場で滞空していた。

 

「おやおや~? 束さんの開発したこのビームが恐ろしくて声が出せないのかなぁ~?」

 

『ふっ…ふははははははは!!!』

 

『おほほほほほほ!!!』

 

「なっ!? 何がおかしいのさ!?」

 

突如沈黙を破り、盛大に笑い始めた2機に対し怒りを露にする束。

 

『これがおかしくないわけが無いだろう!』

 

『まったく持ってその通り! いやはや、地球の生命体はおかしい事をおっしゃられる!』

 

「な、何がだよ……何がさ!?」

 

高笑いする2機にもはや困惑の色を隠せない束。そんな彼女に戦闘機から非常な言葉が掛けられた。

 

 

 

『後ろを見てみることだな』

 

「え?」

 

その言葉で振り向けば、「巨大な手」が、黒煙の中から彼女の体をわしづかみにして、持ち上げていた。

 

「きゃあああああ!?」

 

『ふぅ、まったく。驚いたぞ。…ほんのちょっぴりだが』

 

伸びた腕の先はまったく見えなかったのだが、その声は間違いなく追いかけてきた奴だと分かる。

だがこの腕は一体?と篠ノ之束が頭を捻らせていればやがて風が黒煙を払った。

 

 

 

 

「なっ!? 何だよこいつ!」

 

 

 

 

彼女が驚くのも無理は無い。彼女を掴んでいたのは先程まで戦車『だった』人型のロボットだったからだ。

両肩に先程まで撃ってきた砲台や自分を掴む指と化している形状からしても間違いなく先ほどの戦車と分かる。

 

 

 

 

―――しかし、ありえない。こんなロボットだなんて知らない。だれが乗っている?

それにこいつには先程の攻撃は通用しなかったのか?

 

そんな事を考えていれば更に上空から2機が『変形して』降りてきた。

 

 

『おい「アイアンハイド」。勢いあまってそいつを握りつぶすなよ? その生命体は我々のターゲットなのだから』

 

『うるせえぞ「スタースクリーム」。そこまでヘマはしねえよ』

 

『果たしてどうでしょうか?』

 

『なんだ「スラスト」まで。すこしは自分を信頼しろ』

 

それぞれがロボットであり、人型であった。

 

「こ、こいつら一体……何? 束さん知らないよ。こんな兵器が世界のどこかで作られていただなんて」

 

『残念だが我々はこの星のものではない』

 

『その通り。下等な生命体であるあなたには分からないでしょうがね。さて「アイアンハイド」、その生命体を連れて行きなさい』

 

『言われるまでもねえ』

 

「くっ、この!」

 

間違いなくどこかに連れて行かれることは目に見えているこの状況下から抜け出すために必死でもがき、もう一度光線をアイアンハイドに向けて放った。

 

 

それは確かに直撃した。しかし、アイアンハイドの装甲に傷をつけるには至らず、精々汚れを増やすだけだった。

 

「そ、そんな……」

 

『ふん、その程度の攻撃、殴られたくらいにしか感じないぞ。それと抵抗するな、おとなしくしていろ!』

 

その言葉と共にアイアンハイドは腕に力を『軽く』込めた。

 

 

 

 

 

その瞬間、ぼぎりとイヤな音を立て、何かが砕け散った。

 

「あ……あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

みればアイアンハイドの指が束のあばらに食い込み、彼女の肋骨をへし折った事を証明しており、彼女の表情は一瞬にして苦痛を浮かべ、悲鳴を上げた後頭を下げた。

 

『あ、これはいかん! 少し強く握りすぎたか』

 

『やれやれ、これだから頭でっかちは。この星の生命体など脆弱な肉体だという事を忘れてしまっていたようですねえ?』

 

『う、うるさい「スラスト」! しかし参ったなあ、悲鳴を上げた後はぐったりして何も反応しなくなったぞ』

 

『それはいけませんねえ。早めに直すためにも基地に持ち帰りましょう』

 

スラストがそう言い、砕けたあばらによるあまりもの激痛で意識を失った束に手を伸ばそうとした瞬間、彼らの後方から一台のトレーラーが突っ込んできた。

 

 

『なんと!?』

 

『こいつはまさか!?』

 

スラストとスタースクリームはそのトレーラーを飛んでかわしたがアイアンハイドはそのトレーラーの突撃をもろに受け、束を手放した。

 

 

『ごはぁ!?』

 

『ああっ、いけません! ってあいたぁ!?』

 

アイアンハイドが吹き飛ばされた表紙に手放し、宙に浮かび上がった彼女を回収しようとスラストが動いた時に更に黄色い車が飛び上がり、スラストを轢きながら彼女を車内に入れて着地した。

 

『しまった!? おのれ、貴様らもここに来ていたのか!』

 

スタースクリームはその2台に言葉を掛けるがそれよりも早く2台は動き出した。

 

『うぐぐ…貴様よくもこのアイアンハイド様をってゴハアッ!?』

 

そしてトレーラーのほうに吹き飛ばされ、ようやく回復したアイアンハイドを更にトレーラーが上を乗り越えて走っていった。

そのあとを追うように黄色い車も走り、森の中へと姿を消していく。

 

 

『いけません! アイアンハイドすぐに追うのです!』

 

『くぅ……無茶言うなぁ……』

苦悶の言葉と共に起き上がるアイアンハイドの顔には轢かれた証拠であるタイヤ痕がくっきりと写っていた。

『この役立たずめ! お陰でターゲットを奪われた挙句、奴等にまで逃げられたではないかぁ!』

 

『やかましい! それなら貴様が追えば良いだろうスタースクリーム!』

 

『貴様ぁ、この期に及んで口ごたえするか!!』

 

お互いむやみにののしりあい、口論を始める2機にスラストは肩を震わせ、怒りをあらわにした。

 

 

 

 

 

『ああもう、いいかげんになさい! 作戦が台無しです!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3機が争っているうちに離脱したトレーラーとスポーツカーは並走しながら大きな通りへと出た。

そこでようやくそのありえない状況に気付かされた。トレーラー・スポーツカー共に

 

動いているにもかかわらず「運転手」が不在なのである。

 

無人のままハンドルは切られ、ひとりでにギアはチェンジしていく。それを微かに意識を取り戻した束は見ながら、言葉を呟いた。

 

 

「……助け…て………ちー、ちゃん」

 

 

 

そしてそのまま走った後、突如空間が歪むかのようにシルエットは伸び、それが進んだ瞬間、2台はその場から消え去った。束を乗せたまま……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きなモノレールが走るショッピングモールが見える海岸沿いを少年、「織斑一夏」は一人、散歩をしていた。

別にたいした理由は無く、ただぶらぶらとしているだけ出会ったりする。

 

「久々にこうやって一人で海辺を歩くのも悪くないよなあ。やっぱ海の匂いを嗅ぎながら散歩ってのもありだよな。つっても、人工埠頭だから何かあるわけでもないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ん? 何だアレ?」

 

ぶらぶらしながら遠くに大きなギガフロートが見渡せるエリアを一人目的もなく歩いていると前方で彼は光り輝く何かを見つけた。

それが気になり、近づいて見てみればそれは丁度30センチほどの五角形状の金属で出来た不思議なプレートであった。

 

「なんだこれ、何かの看板か? ……それにしても綺麗な色だなあ。お、それに軽いのに結構硬いんだな」

一夏は興味津々にそのプレートを触る。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが地球―――――――否、全銀河をも揺るがす運命の金属生命体だとは気付かず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたはいったい……!?」

 

『それを渡せ。それはわしの物だ』

 

「それってこいつのことかよ!?」

 

「逃げろ一夏! こいつはっ…………!」

 

『ええい、邪魔だ! 下等な生物どもよ!』

 

「ち、千冬姉ぇーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた等はいったい何の目的でここに来たのさ?」

 

『我々には大いなる使命がある。そのためにも地球の生命体である君達に協力を願いたい』

 

「使命?」

 

『そう。我々、ひいてはこの星のためにも。「彼ら」を解放するために』

 

「ふーん、まあ別にそんな事興味ないけどさ? 私はあんたらには興味があるよ。ねえ、あんた名前は?」

 

『あんたってお前! 司令官になんていう口の聞き方を!』

 

『よせ。私の名前か。良いだろう、私の名は―――――――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「許さねぇ……! てめえは絶対許さねぇ!! 千冬姉を、よくも千冬姉を!」

 

『ぬははははは!!! 威勢だけはいいようだな小僧! だがそれだけでこのわしに敵うと思っておるのか? 力なき存在よ!』

 

「くっ!?」

 

「逃げろ一夏! こいつは我々だけでどうこうなる存在ではない!!!」

 

『その女の言う通りよ小僧! さぁて…わしに刃向かった罪、その身をもって償ってもらうぞ?』

 

「やめろ! 千冬姉に手を出すんじゃねえ!」

 

「だめだ一夏! お前まで死ぬようなことは……!」

 

「いやだ! 千冬姉は俺が守る!」

 

『ぬははははは! なんと感動的な姉弟愛だことだ!! それなら一緒に葬ってくれるわ!』

 

「ち、千冬姉ぇ!」

 

「一夏ぁ!」

 

『さらばだ『待てぇ!』……ぬう!? この声は!!!』

 

『それ以上は貴様らデストロンの好き勝手にはさせん!!! 覚悟しろ!!!』

 

「こいつは……味方なのか……!?」

 

「何者だこいつは………!?」

 

『ふ、ふははははは!!! とうとうサイバトロン司令である貴様もこの星にやってきたか! いいだろう。長きにわたる戦い、ここで決着をつけてくれるわぁ!!!』

 

『私には使命がある! そう簡単にやられると思うな! いくぞ、「メガトロン」!!!』

 

『その意気だ、来ぉい! 「コンボイ」!!!』

 

 

 

 

 

 

―――――遥かかなたより飛来した伝説の戦士二人が邂逅した時、大いなる伝説は始まる。



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