暇潰しで生かされた人達 (死人さん)
しおりを挟む

探索者紹介

探索者紹介的なやつ。偏見だらけ


影山次狼

かげやまじろう

 

男。なんかめっちゃハイスペックな旅人

どこか飄々とした性格のように見えて、実はちょっとだけおっちょこちょいなかっこつけたがりっぽい性格。けど実際やることなすことがかっこよくて主人公補正付いてる。ギャグだとツッコミ担当

 

 

 

水上渚

みなかみなぎさ

 

女。落ち着いた外科医の女性

この仮想卓の紅一点。クールビューティな雰囲気のある、真面目で優しいお姉さん。無自覚で他者を引っ張り回すっょぃお姉さん。ギャグだとボケ担当

 

 

 

山崎時雨

やまさきしぐれ

 

男。犯罪歴沢山の義賊怪盗

世話焼きの人間不信子ヤクザお兄さん。ヤママン。料理が得意、オカン、面倒見が良い、頭がキレるなど、こちらも中々のハイスペックお兄さんだが如何せん闇が深すぎる。ギャグだとツッコミ担当

 

 

 

七親光

ななおやひかる

 

男。親の七光り御曹司

サラリーマンみたいな薄っぺらい笑みを浮かべたよく居そうな胡散臭い青年。社畜製造機みたいな技能持ってる。人の恨みを買って出そうなタイプにしか見えない。けどなんだかんだ言って他人に優しいところもある、ほんの少しだけ真人間。ギャグだとボケ担当

 

 

 

点野和明

しめのかずあき

 

男。好奇心旺盛なカメラマンボーイ

死を顧みず自身の心的好奇心に響くものに直行していく、馬鹿だけど芯の強いカメラマン。考えのない言動が多いが、どことなく感じる頼れる男感は探索者故だからなのか、何なのか。ギャグだとボケ担当

 

 

 

紫艶怜

しえんれい

 

男。とんでも闇ヤブ医者

どこか落ち着いた雰囲気のあるヤクザ面の男性だが、突然知らない屋敷に招かれ屋敷を完成させてくれと言われても荒らげる事の無い冷静さを持つ。知的タイプ。しかし彼の中に眠る心は、きっと激情家タイプであろう。ギャグだとツッコミ担当

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他、軽いNPC紹介

 

 

薬師寺光忠

やくしじみつただ

 

男。22歳SIZ8のショタ心療内科医

左目に眼帯を付けた物腰柔らかな青年。数ヶ月前からとある患者を抱えている。水上の知り合い、山崎の友達の知り合い

 

 

 

闇達零

やみだちぜろ

 

男。発言がたまに怪しい外科医

褐色肌の眼帯を付けた男。同じ病院出身である薬師寺とは仲が良く、プライベートでもゲームをして遊ぶほどらしい。紫艶と七親の同級生、影山の元担当医

 

 

 

 

舞台設定

とある大都会。

病院、教会、ビル街、山沿いの学校、河原など自然豊かで人が住みやすい街並み。探索者達はこの街に住んでいる設定となる

 

 

尚、探索者の関わりはほぼこじつけで決めていくものとする(限界突破)

 

 

 

 

 

簡易あらすじ

 

貴方達探索者は、何気ない日々を過ごしている。しかし、ある日突然やって来たメールで、貴方の日常は突然姿形を変えていくのだ。街並みも、人も、何もかもを呑み込んで、貴方の世界を変えていった

 

期限は、一週間だけ。

 

 




こんな感じで本当にダイス振りながら物語を適当に書いていくやつです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

0日目:深夜??時

それは、束の間に見た夢の話だった。
恐らくこれは、あの一週間の前日譚に近い話だったのだろうと、今になってわかった事だった


ふと、目を見開けば目の前に見えたのは俺が住んでいる街の交差点だった。交差点の大通りの前を真昼間に、じっと佇んでいた

 

車の気配も、人の気配も一切感じない交差点で、俺はなんでこんな所にいるんだろうと首を傾げる事もなくじっと立っていた。その時、ふと交差点の向こうの、噴水広場の奥に人影が見えた。ふらりとどこかへ歩いていくその姿を見て、俺はなぜだか追いかけなきゃ行けない気がして、動かせない体がゆらりと傾いた。

 

一歩、一歩と足を動かして景色が少しずつ変化していく街並みを横目に、人影を求めて俺は歩いた。噴水広場前の階段を一段一段ゆっくりと歩いて上り、見えた噴水広場の更に先の、駅の大階段に、人影がひとつ見えた。

 

 

 

 

口も動かせなくて、けれど、どうする事も出来ないこの現状に、俺は居た堪れない気持ちになり、必死に抗おうとした

 

 

 

【POW×3】ロール:成功値45

1d100→2 成功 クリティカル

 

 

 

 

その気持ちが届いたのか何なのかは、分からない。ただ一つ、俺はその人影に待ってくれ、と声をかける事だけが叶った。

人影は俺の声を聞き取ったのか、ぴたりと立ち止まった。そして、少しの間をあけて、影はこちらへ振り向いた。

 

 

 

酷くノイズの走った気味の悪い顔は、まるで赤ん坊のような、爺さんのような、カエルのような、無機物のような、不思議な顔を浮かべていた。けれど、ひとつだけ、その口元は確かに俺に向けて、そう訴えていた

 

助けてと。

 

 

 

 

 

 

そんな夢を見たのが昨夜。

その後、すぐに目を覚まし目覚まし時計を掴んで時間を見れば、まだ朝の六時半過ぎだった。嗚呼、喫茶店の準備まであと二時間あるな、なんて考えれば俺の次の行動といえば、二度寝だった。

 

しかしふと、何か違和感を拭えなくて、俺は無理矢理目を開いてベッドから体を起こし、部屋を見回した。部屋は変わらず、喫茶店のビルのオーナーである山崎から借りた部屋の内装のままで………そもそも、俺はなんでこの部屋で寝泊まりしてるんだったか

 

 

寝惚けた頭はたった数週間前の事すら思い出せず、小さく首を傾げてぼうっと思い出した。

 

 

 

俺は影山次狼。それで、旅人

いつもは適当なホテルで寝泊まりをしているが、喫茶店のビルの部屋の一室で寝泊まりしている理由としては、単純に小遣い稼ぎのためのバイトだった。

そうだった。それで、無理を言って、俺はここで数週間だけバイトをさせてもらう事にして……それで、岡本の退院祝いをして、それで

 

 

 

そこまで考えて、俺は違和感の正体に気付いた

そうだ、"そうであった"はずだ。それはもう2ヶ月も前の話で、俺は街から出たはずだ。そして他県へと旅を再開して、ついでにうどんを食べようとかなんとか考えていたはずだったんだ

 

それなのになぜ、俺は、ここに居るんだ

 

 

言いようのない、じわじわと滲んでやってきた違和感に不審感を感じた。

 

 

 

【SANチェック】:成功値88

1d100→55 成功

減少値無し

 

 

 

違和感を拭いさろうと、これは夢であると考えた俺は、ある仮説を本にスマホを手に取り今日の日付を確認した。11月の24日、クリスマスイブだった

 

俺が旅をしていた頃はまだ春先であったと記憶しているが、なぜ冬になっているのか……否、戻ったという可能性もある。しかし、俺がこの喫茶店で住み込みバイトをしてきた頃は少なくとも春であったはずだが、なぜ俺はここにいるんだ?全く持ってわからない。ただ言えることとしたら、また変なことに巻き込まれたって所だろうか

 

 

俺は急いで、服を着替えて普段着を身にまとい、喫茶店を営んでいる1階へと階段を駆け下り、扉を開いた。その先には、喫茶店のテーブル席で肩を組んで座り込んでいる、喫茶店オーナーの山崎の姿があった

 

 

 

「…山崎」

 

「………影山、お前…」

 

 

 

顔を見ただけで十二分に理解出来た。困惑のような、不快感を感じているその表情はおそらく、俺と同じ思考なのだろうと理解し、俺は山崎の元へ歩み寄り向かい側の席に座る

 

 

 

「とりあえず、久しぶり、とも言い難い状況だな…」

 

「本当だ。朝起きたら、なんでか冬になっちまってる……不思議ったらありゃしねぇさ」

 

「俺は、なんでこの喫茶店に戻ってきてるんだ?一切記憶に無いんだが」

 

「俺が知るかよ。とりあえず、頭冷やそうと思ってここに来たは良いが……なんにも思考がまとまりゃしねェ。分かってんのは、またなんか変なことに巻き込まれたって事ぐらいだ」

 

「それは同感だね。…ん?おい待て。山崎、"また"ってのは?」

 

 

 

一人で先にコーヒーを飲んで居たのだろう、テーブルの上のマグカップを手に取りカウンターにてコーヒーを煎れ直す山崎の言葉に引っ掛かりを持ち、掘り返し聞き返す。

山崎は手にマグカップを二つ持って、テーブルに置いてから答えた

 

 

 

「以前、船の上や屋敷の中で変な事に巻き込まれた事があってね。まぁ、昔の話さ……その言い草じゃ、影山もってかい?」

 

「嗚呼……何度か、な。一番記憶に新しい事だと、この喫茶店に初めて来た日だ…美術館で絵の中の世界で旅して回ったな」

 

「嗚呼…なるほどな。通りで変なラインナップだとは思った」

 

 

 

山崎のコーヒーマグカップを片手に、手短に礼を述べてからひと口だけ口に含んだ。

苦ったるいコーヒーの味を舌に染み込ませ、飲み込んで小さく溜息を吐いた。たった2ヶ月ぶりのこの味が、何故だか懐かしいとでさえ思えている

 

 

 

【アイデア】:成功値75

1d100→31 成功

 

 

 

マグカップをテーブルにおいて、俺はふと、またもうひとつの違和感に気づいて山崎に問い掛けることとなる

 

 

 

「……おい山崎」

 

「なんだい?」

 

「"長谷部"、見掛けたか?」

 

 

 

俺のその言葉を聞いた途端、山崎は一度呆けた顔を見せ、考え込んでから、顔を一度上げて呟いた

 

 

 

「……大切な仲間だってのに、いま、名前を言われても、顔が思い出せなかった」

 

 

 

 

山崎のその言葉でようやく、俺も、長谷部が誰なのか、長谷部がどんな顔だったか、はせべがなにであるのかという疑問を理解することとなった




影山くん視点


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1日目:深夜??時

目を開いて見れば、そこには暗闇があって、けれど確実に私以外の誰かがそこに居た。

辺りを見渡せば、私と同じように何人かの人が佇んでいて、皆警戒するように、誰にも話しかける事など無かった。

 

仕方ないかもしれない。幾ら暗闇であってもこれだけ近ければ人の顔くらい見えても良い筈なのに、一切人の顔が見えずに、瞳ぐらいしか認識できないのだから

 

 

 

「お集まり頂けたかな?」

 

 

 

前方の人影から声が聞こえた。ゆったりとした口調で話す男性の声だった

男性は私達を置いて、淡々と話を広げていく

 

 

 

「ここは夢の世界。だが、お前達はあと一週間で死んでしまう…人類が滅亡するのだ。お前達はそれを阻止する為のゲームの"参加者"に選ばれた」

 

「ゲーム?へぇ、随分してくれるじゃねぇか。具合的に何をすればいいんだ」

 

「ははは、話が早くて助かるなぁ。どこかの刀とはおおちが…嗚呼、すまない、話を進めよう。

ルールは簡単、お前達はこのゲーム主催者である"奴"を殺せばいい……一週間以内に必ず見つけて殺すのだ。殺した暁には、お前達の願いを叶えてやろう。何でも良いぞ」

 

 

男はそう言うと、ほけほけと笑った。

この口ぶりからして、そのゲームの主催者というのは"男"で、そして今"目の前にいるこの謎の男ではない"という事は確かである。

 

 

 

「おい待て、なんで俺が…いや、俺達が選ばれた?」

 

「そうだな…ひとつ余計な事を言うとしたら、"元々はお前達では無かった"………ただ、奴らは、決まった運命の元で、必ず"奴"を殺すだろう。それじゃあ詰まらない……だから連れてきたんだ、お前達6人を」

 

 

 

男がそう言うと、私は違和感で周りを見渡す事にした。周りの人影は………数えて、私を含めて14人だ。それなのに、6人とはどういう事だろう?

それはつまり、他の8人は、何らかの別の理由で連れてきたという事なのだろうか…?

 

 

 

「……悪趣味な事してくれるじゃねぇか」

 

 

 

誰かがそう呟いた。

男はにっこりと微笑むと、大袈裟に、演じるように淡々と幕を切った

 

 

 

「それでは子らよ、俺はお前達の不確かな勝利を楽しみにしているぞ!何故なら、お前達は"探求者"だから!!」

 

「っおい、話は終わって…」

 

 

男はそう言って両腕を空に掲げた。そんな男に対して、私の近くにいた人影が話を続けようとしたけれど、それは叶わなかった。何故ならそのすぐに、私は…いや、きっと私達全員が現実世界へと意識を戻したからだろう。

 

 

言いようのない、何とも不思議で、何とも形容し難いこの不思議な夢からの目覚めは、心地良いものでは決して無かった。夢だ、とだけで決めつけ終えるには非常に現実的だったからだ

 

布団から身を起こし、突然感じた寒気に身を縮こませてそういえば、と思い出した。

つい昨日、何故だか目が覚めれば、冬になっていた……こんな事普通じゃ有り得ないけれど、それは本当だった。スマホやカレンダー、テレビや新聞…どれを見ても、今日は11月の25日…しかも年を確認してみれば、今は2017年…今から2年前だった。

 

 

寝て起きても変わらない現状に、思わず目眩が起きたような感覚を感じた。もしかすると昨日の夢も、この現状と何か、関係があるのかもしれない……

そう考えていれば、突然スマホの通知が鳴った。こんな朝早くに何だとスマホを手に取り開けば、メールが届いていた。ロックを開き確認してみれば、差出人は"薬師寺光忠"………私の勤務する病院の、心療内科担当の医者だ

 

彼とは少し訳があって、暇な時があればよく世間話をする程度に仲が良い。科は違えど、関係無い。よく話の弾む人だ

何故だか右目に眼帯を付けているが、その理由を聞いたことは無い。聞くほどの仲でも無いと思っているから、というのもあるけれど。

 

 

彼からメールだなんて珍しい、と思いながらメールを開いて見れば、そこには…要約すると、「自分の担当している患者が逃げ出して、行方不明だから暇があれば君も街で探してみて欲しい」…との事だった。

彼の患者と言えば、何度か彼から軽く話を聞いた事がある。未成年で、私と同じ女の子であるという事だけは知っている。彼がお土産にその患者へのプレゼントが何が良いかとメールで尋ねられた事があったからだ

 

 

 

「………探して、みようかしら」

 

 

 

普段なら、あまり気乗りがしない事だったかもしれないし、一応友人である彼からのお願いだから街に出掛けた時には気にかけていたかもしれない、そんな程度だった筈だ

けれど、今回は、今日は……彼の患者を探す手伝いを、ちゃんとするべきかもしれない。

 

 

 

あんな変な夢に、この奇妙な出来事に追われるのもどうかとは思うけれど…私には前歴がある。美術館に行ったら絵の中の世界に吸い込まれたという前歴が。

もしかするとあの時の不思議な出来事と、似た事なのかもしれないな、なんて考えては、私は布団から飛び出し衣服に着替えようとしながら、メールの返信を返した




水上渚視点


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1日目:昼12時頃、交差点にて

スマホを片手に昼間の街並みに溶け込んでみても、楽しい気分には何一つなれやしない。白衣の上から着たコートで寒さを凌いではいるが、だからといって寒くないとは言えない。そもそもなぜ俺は外に出ているのかという話になるなら、高校時代の同級生から突然きたメールだった

 

 

久々に連絡を寄こした、闇達零という俺の友人は、俺が住んでいる街の病院に勤務している外科医だった。

褐色肌に白い髪の目立つあの男からきたメールには、「知り合いの医者の患者が街で行方を眩ませた。暇があれば探してくれないか」と書いてあった。まぁ確かに、闇達は科もあって忙しいのだろう。しかしその知り合いとやらは何故、自身の患者を自分自身で探しに行かないのかと、少し疑問を持った

 

 

しかし、同じ医者として、患者の身が心配であることはよく分かる。その気持ちに同情した俺は、その行方を眩ませたという患者を探すべく、街を歩いている。

 

メールで詳しく聞けば、その行方不明だという奴の名前は"倅屋要"というらしい。恐らく青いパーカーを着ていて、髪はボサボサで長い茶髪だと、闇達がメールで教えてくれた。

 

 

そんな特徴的なやつがこんな街に居たら、すぐに見つかりそうだがと思って探してみてはいるが、なかなか見つからない。

中々面倒なことを引き受けたかもしれないと溜息を吐けば、ふと右肩を叩かれたことに気付く。後ろを振り返り俺の肩を叩いた人間が誰であるかと確認しようとすれば、そこには数年ぶりに見た男の姿があった

 

 

「久しいな、紫艶。」

 

「…七親か!…と、いうか…久しい?」

 

 

肩を叩いたのは、一応…数ヶ月前にある屋敷の中で出会った会社の御曹司を名乗る男、七親光だった。

屋敷の中でそんな御曹司と闇医者の俺が会うなんて状況、普通は考えられないが、あの出来事はそもそも普通では無かったという事を考えると、深く考えなくて良いのかもしれない。

 

久しい、という言葉に一度違和感を持った俺は、まさかと思い七親に問いかける

 

 

 

「…お前、いきなり冬になった事を自覚してるタチか?」

 

「嗚呼、そうだ。つい昨日…起きたら春から冬に、しかも2年前に戻っていると知った時は驚いた……まさか、同じように自覚してる人間が他にも居て…しかも、お前とはな」

 

「俺が驚いてるっての。………なら、この変な現象も、また俺達が変な事に巻き込まれたと予想して出歩いてたって訳か?」

 

「ご名答。そしたら、たまたま貴方と出会えた!…やはり何か仕組まれているのか、何なのか…」

 

「いや、仕組まれてる訳ではねぇよ……俺が出歩いてる理由は………」

 

 

そこまで言おうとした時、俺はふと、首を傾げた。そういえば、七親と言えば、他にも接点があったはずだと考えて、俺は言葉を繋げた

 

 

「そうだった。お前、闇達から連絡来てないのか?」

 

「………闇達?」

 

 

 

七親はそう呟くと、一度顎に手を添え深く考える素振りを見せてから、ぱっと顔を上げて思い出したように言った

 

 

 

「ああ、闇達零か。久しい名前だな…闇達がどうしたって?」

 

「あいつの知り合いの患者が街で行方を眩ませたから、探してくれないかって言われてな。絶賛探してたが…まぁご覧の通り」

 

 

 

そう言うと、俺は肩を竦めた。そんな俺を見て、ふと七親は腕時計に目をくれた。俺もつられて七親の腕時計に目を向けるが、ちょっと待て、俺知ってるぞ…その腕時計、俺の昔の年収の5倍以上はする…いや、これ以上はやめよう。

 

そんな事を考えていれば、七親が顔を上げて頷いた

 

 

「俺も時間がある。時間まで付き合おう」

 

「いいのか?七親は確か…セブンズライト・コーポレーションだったか?そこの御曹司だとかどうとか、前に聞いたが…」

 

「構わないさ。それに、旧友の頼みなら、聞くのは当たり前だろう?」

 

 

そう言って薄ら微笑む七親に押され、俺はじゃあ頼んだ、と頷いた。そうして俺と七親は、一先ずと目の前に見えたショッピングモールに足を向けてみる事にした

 

 

 

 

 

「こういう所には久々に顔を出すが、今日は平日なのもあって人はあまりいないな」

 

「だな。もしここに居たら、案外早く見つかるかもな……話によると、青いパーカーを着ているらしい」

 

「それは目立つな」

 

 

 

七親と共にショッピングモールの長い通路を歩いて周りを見回す。七親の言う通り、平日の月曜日という事もあり、人はあまりいない。

 

 

 

紫艶【目星】ロール:成功値80

七親【目星】ロール:成功値66

1d100→10.56 両方成功

 

 

 

「…だが、それらしいのは見かけないな。」

 

「そうだな……む、今日はバザールもやってるのか」

 

「見たかったのか?なら少しだけ覗こう」

 

 

 

七親の好意に甘え、俺達はバザールの広場へと立ち行く。全体的に、小物類や食器類が売られている様子が見られた

 

 

 

紫艶【幸運】ロール:成功値70

1d100→51 成功

 

 

 

俺はふと、手前のバザールにて見えた食器に目を向ける。食器は少し深めの、スープなんかを飲む為の白い皿で、奥に小さく花模様があしらわれている。

 

 

 

「日用品を見たかったのか?」

 

「まぁ、そんなところだ……ちょうどいい、買うか」

 

 

 

七親に会計を済ませてくると伝え、皿を片手にレジへと向かった。そうして何円か支払い、皿の入った袋を片手に七親と合流した。

 

 

 

「さて、他をあたるか」

 

「だな…見つかりそうにない。ほかならどこにいると思う?」

 

「……この街で特徴的といえば、ビル街か?」

 

「商店街もあるぞ?」

 

「…なら商店街に行くか」

 

「了解」




紫艶くん視点。

現在全員のSAN値
紫艶くん→65
七親くん→48
影山くん→88
山崎くん→80
点野くん→79
水上さん→81


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1日目:昼12時頃、教会にて

訪れた教会の扉を開いて、私は小さく深呼吸をして教会の床を踏んだ。何だか、異世界に隔離されたような不思議な雰囲気に、私は新鮮味を感じてぼうっと教会の中を見回した。

 

人は私以外に、神父と思わしき人が一人居るくらいで、到底ここに人が毎日拝みに来てるようには思えなかった。それでも存在する理由としては…否、考えるのはよそう。

 

 

首を小さく横に振り、1歩、1歩と教会の中を歩いていけば、不意に扉がひとりでに閉まったようだった。私が扉の方へ振り返りぼうっと見ていれば、ふと神父らしき男性がこちらまで歩み寄ってきた

 

 

 

「どうも、こんにちは。こんな場所に、何か用ですか?」

 

「あ、こんにちは……用というか…人探しをしているんです、その…青いパーカーを着た茶髪の女の子で…」

 

 

 

私がそこまで言うと、ふと神父の男性は首を傾げ、考えてから口を開いた。

 

 

「その子なら、2時間くらい前にここに来てましたね。」

 

「そ、そんな前に…」

 

 

ああ、来るのが遅かったか、とため息を吐いた。けれど、少なからず探している子はこの街に居るのだと分かり、他に探していない場所は無いかと首を傾げて考える。

 

するとふと、神父の男性が話を始めた

 

 

 

「さがしものが見つからなくて困った時や、これから先に悩んだ時は、ここにおいで」

 

「え…?」

 

 

神父の男性は、前髪に小さく触れて、藤色の瞳を小さく細めて微笑んだ

 

 

「その子、商店街の方に行くって言ってましたよ。もしかするとまだ、いるかもしれませんし」

 

「…あ、ああ、有難うございます!」

 

「構いませんよ。人助けに理由など、ないですから」

 

 

 

神父の男性はそう言うと、行ってらっしゃいと微笑んだ。私は慌てて頭を下げ、礼を述べて教会から立ち去る。

何だか不思議で、浮世離れしたような場所だった。神父の男性も、神父というには不思議な服装だったと思い浮かべる……私の知る神父服といえば真っ黒い服だが、彼の服は…カソックに近かったように思えた

 

教会を出て数歩で立ち止まり、少しだけ考える。商店街なら、ここから右に…南に下っていけば、大体15分程度で着くはず。

そう考えればすぐで、商店街へと歩いていけば、平日だというのにもが変わらず、人はそれなりに居て、見る限り40代過ぎの女性が多く見られた。専業主婦なんだろうな、なんて考えては通り過ぎて、目当ての青パーカーの子を探してみるのは良いものの、全く持って見当たらない。

 

また先程のように誰かに声をかけようか、なんて考えた時にふと目の前に見えたのは、帽子をかぶりカメラを構えている青年だった。青年がカメラを構え、写真を撮ったのを見計らい、私は青年に話しかける

 

 

 

「すいません、少しよろしいでしょうか」

 

「え、なんですか?」

 

「商店街で、青いパーカーを着た女の子を見かけませんでしたか?」

 

「青いパーカー……?あー、なんか見たような…見なかったような?」

 

「ちょっと、家出、みたいな感じで…その子を心配している人が居るんです」

 

「んー、ちょーっと待ってねー……」

 

 

青年はそう言うと、首を傾げて深く考え込む素振りを見せた。カメラを片手に、首を傾げる青年をじっと見つめて待つも、一向に思い出してくれそうな気配は無い。

 

 

 

水上【アイデア】ロール:成功値65

1d100→79 失敗

 

??【アイデア】ロール:成功値85

1d100→38 成功

 

 

 

何も思い出せそうにないなら、諦めて他の人に声をかけようかと思ったその時、青年はああ!と声を上げ、空へとカメラを持って掲げた

 

 

「どうしたんですか?」

 

「これだよこれ!ここ数時間ずっとここで写真撮ってたから、もしかするとここに写ってるかも!!」

 

 

 

青年はそう言うと、カメラのアルバム機能を起動させ、1枚1枚写真を確認し始めた。成程、考えつかなかったな、なんて考えながら私は青年がたまたまカメラを趣味とした人でよかった、と安堵する。

待つこと数十秒、青年が写真を一つ一つ眺めていると、青年が突然私に声をかけた

 

 

「これこれ!この子じゃないですか!?奥の喫茶店の子!!一人で喫茶店に居て、なんか絵になるなぁ、って思って写真撮ってたんすよ一枚!あ、ちゃんと本人に許可もらったんだけどね」

 

 

 

青年がそう言って見せる写真には、薬師寺さんから話を聞く通りの、茶色のボサボサな長い髪に、青いパーカーを着込んだ…高校生くらいの女の子だった。薬師寺の患者だと言うのだから、そういう、心に傷を抱えた子なのだろうと察してはいたけれど、ぱっと見るだけじゃそんなふうには見えなかった。

身嗜みが整っていないから分かりにくいけれど、よく見れば顔は整っている事は確かだった。どこか遠くを見つめるようにぼうっとした表情が収められていて、この子が一体どんな傷を抱えているんだろう、だなんて不謹慎にも思ってしまった

 

 

ずきん、と少しの頭痛を感じた気がした。首を傾げ、急に何だろう、なんて考えこめかみに手を触れれば、ふと青年が首を傾げて問いかけた

 

 

 

「あれ、目当ての子じゃなかった?」

 

「あ、いえ…恐らくこの子です。写真、有難うございます。この子のいたその喫茶店、どこですか?」

 

「喫茶店はなぁ、ちょっと入り組んだとこにあるんだよね。いわゆる隠れ名店ってやつ?案内するよ、俺もちょうど喉乾いてた所なんだ」

 

 

青年はそう言うと、被っていた帽子を浅めに被り直して微笑んで言った

 

 

 

「俺は点野和明。その辺の、どこにでもいるカメラマン。よろしくね」

 

「私は水上渚…しがない外科医です、宜しくお願いします、点野さん」

 

 

 

私たちはお互い自己紹介をし合えば、点野さんが右手を差し出した。私はその右手を見つめ、ワンテンポ遅れてから握手する事となった




水上さん視点。

導入なので、少しずつ皆集まっていきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1日目:昼13時頃、喫茶店にて

昼過ぎの喫茶店で、一人でコーヒーを飲んで落ち着く少女の姿を写真に収めたカメラマンが去って、もう1時間は経つ。長いこといるな、なんて思うけれど、かと言って今は少女以外の客も居ないので気にすることは無い。

 

そういえば、冷蔵庫にケーキをいれてあったなと思い出せば、俺はお嬢や姫の分を取り置いて、客の少女に出すいちごのショートケーキを小皿に乗せ、軽く盛り付けてからフォークと共に少女の座るテーブル席のテーブルの上に置いた

 

 

 

「…え?えっと…」

 

「サービスですよ、お気になさらず。」

 

「いや、気にするっつの!!…です!!あ、えっと、お金は…」

 

「だから構いませんって。私の気分で出しているだけですので」

 

 

 

俺はそう、慌ててパーカーのポッケから財布を出す少女に向けて笑って答えた。そう言うと、少女は渋々といった様子で財布を仕舞い、有難うございますと呟いた

少女がフォークを手に持ったのを見て、俺もカウンターへと戻る。何故、今日初めて来た客にこんな事をしたのかと言われたら、単純に気まぐれだった

 

というのも、今朝朝早くから姫が騒いでいた事を思い出したというのがきっかけだった。

従兄弟の患者が行方不明だから探してくる!!!!と叫んで出ていったっきり、音沙汰のない姫……薬師寺透にメールを送り、ケーキ食わせてるから早く迎えに来てやってくれと連絡をした。

 

まさかこんな形で姫の言っていた青いパーカーを着た茶髪の少女が見つかるとは思いもしなかったが。従兄弟の患者、と言っていたなら…この少女は何やら病を抱えているんだろう。しかし、何かしらの理由で病院から抜け出し、今に至ると。

 

 

流石にいつ倒れられるか分からない子を放っておくことも出来ず、とりあえず姫に連絡をしたのは良いものの、これ以上長居する可能性も低い。さて、どう足止めをしたものかとまた二度と考えた頃

 

喫茶店の扉のドアベルが小さく響いた。俺はほぼ癖で、いらっしゃいませと声を張る。扉の方へ目を向ければ、そこには二人組の男性客が居た。

男性客は入って来て早々、テーブル席で呑気にケーキを食べる少女の元へ歩み寄っていった

 

 

「青いパーカー、茶髪…完璧だな」

 

「貴方、"倅屋要"さんですね?貴方の担当医の人が心配していますよ」

 

 

長い紫髪を一括りにした男が、少女の見た目を見て呟く。その隣で、黒髪のサラリーマン風の服装の男が少女に向けて問いかけた。

どうやら、姫以外にも捜索届けが出されていたようだった。まぁそうするのは間違いない事だ、と顔も名前も知らない姫の従兄弟に向けて頷く

 

 

 

「…光に、…光忠が?」

 

「ああ、朝早くにな。居ないと知って、慌ててたんだろうな…ほら、ケーキ食ったら早く帰るぞ」

 

「それに、俺達…彼に連絡をくれたのも、その担当医の方ではなく、闇達という男性です。恐らく貴方のお知り合い、ですよね?彼も心配しています」

 

 

 

少女はそう言われると、少し俯き考える素振りを見せる。そうして数秒ほどその光景を眺めていれば、またドアベルが小さく響いた。

扉に目を向けると、買い出しに行って帰ってきた影山と、その後ろに1時間ほど前にこの喫茶店にやって来ていたカメラマンの青年と、茶髪の女性が立っていた。

 

 

「おう、ただいまー山崎」

 

「おかえり。そして、いらっしゃいませ」

 

「おう。んで、水上、探してる人ってのは?」

 

 

影山はそう言って振り返ると、茶髪の女性に目を向ける。女性は数歩ほど歩いて喫茶店を見回すと、先程から男性二人組に囲まれてる少女に目を向けた

 

 

「…あら、居ましたね」

 

「……え、俺?」

 

 

水上と呼ばれた女性が少女の元へ歩み寄ると、少女は驚いた様子を見せた。その隣にいる黒髪の男二人組も、同様に驚いた様子を見せたが、途端二人はすぐに納得した表情を見せる

 

 

「そういうこった。俺達以外にも、この女性もお前の事を探していたってワケ……如何に闇達やお前の担当医が心配しているのか分かるだろ?」

 

「ええ。薬師寺さんも、とても心配していました……貴女に何かあると心配だと言ってました」

 

「………」

 

 

少女は女性にそう言われると、申し訳なさそうな表情を浮かべ、目を逸らして小さく呟いた

 

 

「…強く言いすぎたし、謝んないと」

 

「…んじゃ、よくわかんねぇけど、そのケーキ食ったら行こうぜ。俺もついて行くわ」

 

「おい待て影山、喫茶店空けるなよ」

 

「別にいいだろ?それに、この時間じゃ当分客は来ねぇだろ。確か、薬師寺もなんか今朝騒いでたし、多分これの事だろ?なら薬師寺も途中で拾おうぜ」

 

「あ、じゃあ俺もついて行きますよ!俺もよくわかんないけど、良い写真撮れたしそのお礼、みたいなノリで!」

 

「え、いつの間に撮ってたんですか、点野さん!?」

 

「いやぁ、なんか良い感じに皆集まってるから、こう、後ろからぱしゃっと」

 

「……ってかおい、そこのカメラ男お前、点野か!!?」

 

「………すんません、誰っすか」

 

「数ヶ月屋敷でお前と一緒になった奴だ!ほら、あの、本だらけの部屋とか、赤い靴とか、桜とか……」

 

「…ああ!!!シェランさんとセブンズさん!!!」

 

「紫艶だよどんな覚え方してんだお前!!」

 

「ついでに言うと俺は、七親ですけど…」

 

 

何やら一気に騒がしくなる、商店街の路地裏にあるこの喫茶店の一室。

何だか、姫が二人に増えたような感覚を感じながら溜息を吐けば、隣で冷蔵庫に荷物を詰めている影山が「幸せ逃げちまうぞー」なんて呟いた。

影山の背中を軽く叩いてうるせぇ、と言ってから、エプロンを脱いでテンガロンハットの帽子を被り直してから、俺達は少女を連れて行くのだった




山崎くん視点

ようやく全員合流しました。おめでとう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1日目:昼14時頃、学校にて

ケーキを食べ終え、店を一旦閉め、ぞろぞろと人を引き連れやってきたのは、学校だった。

紫艶が探していたと言う女…倅屋要が、病院へ帰る前に寄りたい所があると言って、連れてきた場所だった。俺は成り行きでずっとついて歩いてるが、何故か本当に成り行きのように、数ヶ月ぶりに見たいつかの知り合いも着いてきていた

 

 

 

「というか点野、お前…自覚はあるか?」

 

「え、自覚ってなんすか」

 

「あー、あれだ…こう、いきなり、2年ー、みたいな」

 

「にねん……?」

 

「…2年?待てよ、まさかアンタらもか?」

 

「え、アンタら…って、山崎も!?」

 

 

ふと揃いに揃って歩きながら話していれば、突然二年という単語に山崎が食いついた。この反応からして、まさか、たまたま訪れた喫茶店の店長ですら、突然二年前にタイムスリップしたというこの出来事を自覚しているようだった。

 

 

「え、待て。俺も何だが」

 

「それなら、私も、自覚しています」

 

「おいおい……まさかこんな所で、自覚してる奴が6人も集まんのか…なんつー奇跡だよ」

 

「おい、なんの話してるんだ?二年って、何なんだ?」

 

 

その会話につられ、山崎の元でアルバイトをしているという影山と、その影山の友人だという水上も手を上げた。紫艶がまじかよ、と小さく呟いて頭を軽くかいているその横で、倅屋が首を傾げて俺達の顔を見る

 

 

七親【アイデア】ロール:成功値45

1d100→23 成功

 

 

 

「…ここまで来たら一つ気になる事があるんですが」

 

「何なんだ?」

 

「もしかして俺達は昨夜…変な夢を見ませんでしたか?周りには何人か人がいて、黒いスーツを着た男が、ゲームだとか、人類滅亡だとかどうとか…そんな話をしている夢です」

 

 

 

俺がひとつ、そう全員に向けて問いかけると、全員驚いた表情を見せた。やはりそうか、と顎に手を添え考えこもうとした時、ふと違和感に気づいて俺は倅屋に目を向けた

 

すると倅屋は、小さく手を上げて呟いた

 

 

「…俺もそれ、見たんだけど」

 

「……え!?自覚してねぇのにか…?」

 

「どうなってんだ?これ」

 

「自覚がどうとかわかんねぇけど…ここにいる7人は皆、その変な夢見たってわけだよな…こんなの偶然で済ませて、いいのか?」

 

 

 

そう、考え込むように倅屋は腕を組んだ。

突然二年前の冬に時が戻り、その次の日の夜にこの場にいる人間が全員変な夢を見たと口を揃えて話す………そして、いつの日か、共に不思議な時を過ごした"仲間"も揃いに揃っているこの現状………どう考えても、"普通"ではない。

 

 

この現状に、俺だけじゃない、この場にいた全員が確かな不安感を覚えたことは確かだった

 

 

 

全員【SANチェック】:成功値??

1d100→76.71.96.55.53.64.18

七親、紫艶、影山 失敗

山崎、点野、水上、倅屋 成功

 

失敗者、1の減少

七親→47、紫艶→64、影山→87

 

 

 

俺は少しだけ、気味の悪さに背筋を伸ばした。溜息を吐いた音が聞こえた気もする。全員、その場で沈黙する中、不意に倅屋が声を発した

 

 

 

「…とりあえず、目的地はすぐだ。裏庭にあるんだ、来てくれ」

 

 

倅屋はそう言うと、先導して廊下を歩き始めた。こんな時間だと言うのに部外者が入っていいのかとか、そもそもこの学校が倅屋の出身校なのかとか色々聞きたいところは皆あったとは思うが、とりあえずは口に出さない事にした。

 

とりあえず皆、今はそんな気分ではないことは確かだったはずだ。

 

 

 

倅屋に連れられやってきた裏庭には、小さな小池があった。こじんまりとした雰囲気のその場所は、ただの学校の小池だというのにも関わらず、どこか心安らぐ雰囲気を感じる。

 

 

「ちょっと近くによって座ってみろよ。ここでぼうっとしてたらさ、なんか、落ち着くんだよな」

 

「お、ならいっちばーん!!」

 

「小学生かよ」

 

「って言いつつ走って追い掛けるのね…」

 

「誰だって学生に戻りたい気持ちは同じ、ってやつか?」

 

 

 

走って小池の近くに駆け寄る点野を追いかけるように小走りで駆け寄った影山。そんな二人を見届ける水上と、首を傾げて苦笑いを浮かべる紫艶。

 

そんな五人を置いて、勧めた倅屋は同じように小池の近くに寄って、立ち止まり座った。座ることはしないが、水上や紫艶も近くに寄っている。

そんな様子を見て、俺も最後に寄って小池を眺める事にした

 

 

 

【SAN回復】:回復値2

点野→81、影山→89、倅屋→??

 

 

 

倅屋がぼうっとした表情で見つめる小池の中を覗くと、小池の中には魚1匹いなかった。ただ、水が風に煽られ水面を揺らすさまを、見ているだけのようだった

静かに水の流れる音が聞こえる。そんな様子を見て、こいつは何が楽しいのかはよく分からないが…まぁ、水の音が心地いいというのは、よく聞く話だ

 

 

「……気持ちいいっすね、冬なのに」

 

「冬でもいいだろ」

 

「こういうのは心で感じるもんだしな」

 

「何それらしい事言ってるんだよ」

 

「影山さんが言うとあまり言葉に価値観を感じませんね…」

 

「おいどういう事だ水上!!?」

 

 

ほんの少しの間だけ、静かな空間が生まれたと思えばすぐに騒がしくなる。まだ学校は授業中だってのに大丈夫なのだろうか、と考えたが…パッと見近くの校舎は教室が固まった校舎では無さそうなので恐らく大丈夫なのだろう、多分。

 

 

「…すまねぇな、付き合わせて」

 

「俺は構わないさ。良い自然を見れたからね」

 

「まぁ、この街ではあまりない自然だもの。ここに来て落ち着きたくなるのも、なんだか分かるわ」

 

「そうっすね、写真に収めたいくらいです。…けど、ここは、収めたくないなぁ」

 

 

点野がそう言うと、カメラを空に掲げてまた来たい!と叫んだ。そんな言葉に、つられて頷く紫艶や影山。

確かに、この街に自然といえば思い浮かぶのは、南の河原か、ここか…自然ではないが、教会も心休まる場所といえば当てはまるだろうか

 

この御時世、あまり自然に関わる機会が無いのも事実だ。そういう意味では確かに、この場所は、倅屋が何度も訪れる程の魅力がある場所なのかもしれない

俺には全く分からんが

 

 

「…んじゃ、帰っかな」

 

「あ、そういえば薬師寺拾ってねぇ」

 

「やくしじ…光忠のこと?」

 

「いんや、そいつの従姉妹の方。あの喫茶店で働いてんだ」

 

「…にしても変だな、姫からの連絡がまだ返ってきてない」

 

「俺探しで夢中になってんのかもな……なんか、やっぱり申し訳ねぇ…色んな人に迷惑かけたな…」

 

「そう思うんだったら、二度と担当医や闇達を心配させねぇ事だな。」

 

「…うん、ごめん。あと、今日は本当に有難う……短い間だったけど、アンタらと話せて楽しかったよ」

 

 

倅屋はそう言うと、薄ら笑みを浮かべた。

そうして、俺達は倅屋を病院の前まで送り、倅屋が病院の中へ入っていったのを見送ってからそれぞれ解散した。

今日はなぜだか酷く、長い一日だったと思った。




七親くん視点
さらっと影山くんがファンブルしてますが、SANチェックではクリファンは無効にしています


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2日目:朝10時頃、病院にて

「え、薬師寺さんが行方不明?」

 

「…ああ」

 

 

今朝早くに病院に…仕事場に来たは良いものの、人が見当たらず不審に感じていれば、ふとたまたま病院内で出会った薬師寺光忠の友人を名乗る男…闇達零と出会った。そういえば昨日、何度か彼の名前を聞いたと思い返す

 

そんな彼、闇達さんがなぜ私に話しかけたのだろうと思えば、どうやら闇達さんは私が来るよりも前に早くここに来ていたが、私以外の医者や患者が居なくなっていたのだとか。

そして、自身の友人である薬師寺光忠さんに連絡を入れるも、彼とも連絡が取れず彼の住んでいる家の同居人にも連絡を入れてみれば、同居人とも連絡が付かず。

 

 

事件か何かに巻き込まれたか、あるいは…などと考えている所にたまたま、来たばかりの私を見かけて合流したのが流れだそう。

 

 

「…可笑しいですね。不自然すぎます…今朝、普通に外に人はいましたし…」

 

「ああ、あまりにも不自然だ……水上、だったか。アンタ、携帯は使えるか?」

 

 

 

闇達さんにそう問われ、私は仕事着である白衣のポッケから自身のスマホを取りだし確認してみた。すると何故か、スマホの電波が圏外を表示していることに今気付く

 

 

 

「いいえ、何故か、圏外になっているわ…」

 

「さっき、休憩室のテレビでニュースを確認したが、特にこの圏外について騒がれてる様子もない……色々と、不自然が重なりすぎている………」

 

「…不自然…」

 

 

私はふと、闇達さんのその言葉に、昨日の"偶然"を思い浮かべる。私達が知らないところで何か、大きなものが動き出している…そんな暗い予兆を感じ、私の心は不安に覆われた。

 

 

水上、闇達【SANチェック】:成功値??

1d100→51.67

 

水上成功、闇達失敗

闇達、SAN値1の減少

闇達→??

 

 

けれど、私はそんな不安に駆られている場合では無い、と首を横に振り不安を振り払うように、声色を明るくし闇達さんに話を持ちかける

 

 

「闇達さん、私は少し、外の様子を見てきます。もし闇達さんが薬師寺さんの住所先を知っているなら、薬師寺さんの家も訪ねてみます……闇達さんは、もしかするとこの病院に人がまた来るかもしれないので、ここで待機して貰えませんか?」

 

「……ああ、そうしよう。情けねぇな…俺が行くべきだってのに」

 

「構いません。それに、闇達さんの方が確か…私より歴は長いはずのですよね?もしもの為に、私より医術に長けた貴方がここに残った方が、私も安心できます」

 

「たったの三年だろう、違いなんか。まぁ、いいさ……薬師寺の、光忠の住所はこれだ…すまないが、頼んだ」

 

「困った時はお互い様ってやつです。有難うございます」

 

 

 

私はそう言うと、闇達さんから薬師寺さんの家の住所のメモを受け取る。無人の病院の玄関先で、闇達さんに見送られながら私は薬師寺さんの家がある方へと歩き始めた

 

 

 

 

サブクエスト【焔を探して】受理

サブクエスト、【焔を探して】が更新されました

 

 

 

薬師寺さんの家がある方をスマホで調べようとしたが、今は圏外である事を思い出し、なんとか分からないものかとメモ用紙を見つめると、メモ用紙にはよく見ると、この街の住所が書かれていた

 

 

「あら、なら…私にもすぐにわかる場所かもしれないわね…」

 

 

水上【EDU×3】ロール:成功値54

1d100→38 成功

 

 

メモ用紙の住所を思い返すと、薬師寺さんの家の場所は恐らく商店街の近くだ、と推測した。

ここから商店街の方へ、約10分ほどだと考え歩き出す。薬師寺さんの家へと向かう途中、人とすれ違う事は多々あった。すれ違う人達を軽く観察してみても、特に何も変わった様子はなく、いつも通りとも見て取れた。

 

何故、こんなにも他の住民は"普通"なのだろうかと溜息を吐いてしまう。そうして商店街の中にやって来て、この辺の住所だったはずだと商店街外れの道を探そうと歩いていれば、ふと前方に見覚えのある人が見えた。

 

 

 

「あれ、山崎さん…?」

 

「っ!…ああ、水上さんでしたか…」

 

 

 

私から背を向ける形で佇んでいる彼、山崎さんに話しかけると、山崎さんは何やら驚いた様子でこちらに振り返り見た後、呟くように言った。

その反応を見て私は、問いかけるように冗談交じりで話す

 

 

「水上です。私で残念でしたね」

 

「え、ああ、いや…すいません。実は、昨日から、知り合いの音沙汰が無くて……」

 

「…もしかして、薬師寺さんの従姉妹さん?」

 

「はい……それに、もう一人の店員も音沙汰無く行方が分からなくて……こんな日、一度もなかったんですけど…」

 

 

山崎さんはそう言うと、帽子に手を添え、参ったなぁ、と呟いて俯いた。その様子は、どこか行方のわからない家族を想う父親のような、母親のような表情を浮かべていて……ふと、闇達さんの表情と重なって見えた

 

 

 

「……私の仕事場でも、今、似たような状況が起きてるんです。私と…闇達さんという方以外の医者や、患者が皆いなくて空っぽなんです……もしかすると、それと関係があるのかもしれません」

 

「……昨日の、"偶然"の続きってかい?」

 

「十二分にあります。それに、山崎さんも恐らく…携帯が圏外なのでしょう?……今から、薬師寺さん…ああ、医者の方の薬師寺さんの家を訪ねるんです。少し気になりますし、一緒に行きませんか?」

 

 

私がそう彼に話すと、山崎さんは一度考えるように黙った後、深く頷いた。

 

 

「もしかすると、その従兄弟の家にいるのかも知れませんねぇ……本当、困った姫とお嬢様だ」

 

「ふふ、面白い呼び方をしてるんですね」

 

「お転婆姫のお守りは疲れますよ。その分、行動屋お嬢はまだマシですけど」

 

「楽しい"仲間"じゃないですか」

 

 

私がそう言うと、山崎さんは違いない。と言って笑みを見せた。私はその笑みを見て安堵した後、山崎さんが喫茶店を一度閉めてくる、と言って喫茶店の佇む路地へ消えていくのを眺めて、山崎さんを待つ事にした

 

 

 

 

 

山崎【EDU×4】ロール:成功値68

1d100→9 成功

 

 

 

「ん〜、これだと…こっちの方ですね」

 

「あれ、反対でしたか……」

 

「まぁ、入り組んでますから。ここから先は俺が案内しますよ」

 

 

 

合流した山崎さんに、目的地の書いてある住所のメモを見せれば、山崎さんは私が歩んでいた方と反対方向を指さして言った。

山崎さんを先頭に歩きながら、私はふと山崎さんに話しかける

 

 

「そういえば、影山さんはどうしたんですか?」

 

「ん?ああ、影山はちゃんと今朝見た。同じように姫やお嬢の行方がわからないから、一人で探しに行くつって、それっきりだ。携帯も連絡が取れねぇから、とりあえずと思ってアイツの帰りを待って……で、ついさっき水上さんと再会したってわけだ」

 

「…影山さんは無事だったんですね」

 

 

私は少しの安堵と共に小さく息を吐いた。

山崎さんはメモを片手に、こっちですと言って右を曲がる。私はそれについて行けば、山崎さんが一度立ちどまる。私はその山崎さんの横に立ち止まれば、山崎さんはふと腕を組む

 

 

「…さて、この路地の家のどれかなんですけど……パッと見無いな、薬師寺の表札…」

 

「……無いですね」

 

 

今目の前の路地のどの家の表札を見ても、薬師寺とは書いておらず、私達は首を傾げる。その時ふと、そういえば闇達さんが光忠の同居人だとかどうとか、言っていたことを思い出す

 

 

「あ、待ってください。そういえば闇達さん、薬師寺さんが誰か、同棲してる的なことを話していましたね……もしかすると、その方の苗字の家に住んでるから…」

 

「……ああ、成程。…とりあえず、虱潰しで見てきます?」

 

「…運任せって奴ですね、良いですよ」

 

 

 

お互い、目を見合って笑い合えば、私は並ぶ五軒の家を見つめる。

 

 

水上、山崎【幸運】ロール:成功値??

1d100→90.25

 

 

私は水色屋根の家のインターホンを押してみる。しかし、幾ら待っても反応が無く、肩を落とす。

そして、山崎さんの方を見ると、山崎さんも今から茶色屋根の家のインターホンを押そうとしていた所だった。

 

山崎さんがインターホンを押すと、数秒後、インターホンの通話が始まった音がした。私は慌てて山崎さんの元へ近寄る

 

 

「どちら様ですか」

 

「すいません、私、山崎時雨といいまして…薬師寺光忠さんの知り合いなのですが、薬師寺さんは御在宅でしょうか?」

 

 

山崎さんがそう問いかけると、インターホンの声の主である男性は少し間をあけてから、インターホンを切った。そして数秒ほど待つと、家の玄関扉が開かれた

 

扉の先には、茶色の毛先に赤いメッシュがあしらわれた髪に、闇達さんに負けず劣らずの褐色肌の目立つ琥珀色の瞳の男性が立っていた。

パッと見だと私より年下だろうか、と考えていれば、ふと男性が口を開いた

 

 

「…光忠なら、病院に居るはずだが」

 

「その薬師寺さんが、未だ病院におらず行方が分からないんです。闇達さんが連絡を取ろうとしましたが、その、圏外で……」

 

 

 

そこまで言うと、男性は少し目を逸らし黙った後、右手で家の廊下の先を指差し、入れと言った。私と山崎さんはお互い顔を見合せたあと、私は失礼しますと小さく返した。

家に入る前に、ふと私はこの家の表札を見る。表札には、"伊達"と書いてあった




水上さん視点

現在探索者のSAN値メモ
水上さん→81
山崎くん→80
影山くん→89
紫艶くん→64
七親くん→47
点野くん→81


現在受注中のサブクエスト
【焔を探して】のみ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2日目:朝11時頃、伊達家にて

伊達家の中へ入り、廊下を進むとすぐ目の前にリビングに通じるのであろう扉が見え、男性…もとい伊達さんが扉を開き中に入る。

私と山崎さんも続いてリビングに入れば、伊達さんが台所へと歩みながらテーブルを指差し座れ、と言った。何だかぶっきらぼうな人だな、なんて思いながら椅子に座る。

 

 

部屋は全体的に明るくシンプルで、二階建てである事は外で見た時から分かっていた。何だか薬師寺さんらしさがあるような気もして、本当にこの二人で住んでるんだろうな、なんて考えていれば伊達さんがコップにお茶を入れ、私と山崎さんの分を持ってきて机の上に置いた

 

 

 

「…で、圏外、だったか」

 

「はい。闇達さんが貴方に連絡を入れたと言ってましたが、届いてましたか?」

 

「今初めて聞いた。……ニュースにもそんな話、無かった」

 

「……だから、俺達は今、街中を探索がてら、薬師寺さんの行方を追ってるんです。えっと…」

 

「伊達、伊達廣光。……ハッカーをやってる」

 

 

伊達さんはそう言うと、席を立ち近くのソファの上に置いてあったノートパソコンを手に取り、テーブルの上に置いてパソコンを開き、何やら弄り始めた

 

 

「…ハッカー?ホワイトハッカーか?」

 

「…………」

 

「……一応、肯定と受け取っておきますね」

 

 

少し伊達さんの職業が危うくなって気がするけれど、今は構ってられる暇もない。お互い触れない事にし、お茶を一口飲んで待つ。

少し待ってみると、伊達さんの表情が歪んだのが見えた

 

 

「……停止してるな」

 

「停止?」

 

「通信会社粗方見たが、どれも停止してる……対応に追われてる様子も無い。何なら、人も居ない…」

 

「…病院と、同じ……?」

 

「……こんな大事に、何故報道しない?何故対応しない…」

 

 

伊達さんはそう呟くと、顎に手を添え少し考える素振りを見せてから、回線を繋ぐ、と一言呟いてパソコンを弄り始めた。

 

 

「……さらっととんでもない事言ったぞ」

 

「…仕方ない事、にしましょう。非常事態だもの」

 

「…まぁ、そう……だな、うん…うん……」

 

 

山崎さんがそう呟くと、帽子越しに頭を抱えた。何となく山崎さんの普段の性格が見えてきたな、なんて他人事に考えて待つ事数分ほど

 

 

 

伊達【コンピュータ】ロール:成功値??

1d100→25

 

 

伊達さんは舌打ちをした。更に顔を歪める伊達さんを見て、山崎さんが声をかける

 

 

「どうした?」

 

「理由は分からないが、何者かが回線に介入して邪魔をしてる……」

 

「…つまり、意図的に、この状況を作ってるってこと?」

 

「何の利があるってんだ…!?」

 

「……少なくとも、"普通の機械精通者"では無いだろうな」

 

 

伊達さんはそう言うと、お手上げというようにパソコン画面から体を離す。

そんな伊達さんに向けて、山崎さんが質問をする

 

 

「薬師寺さんは、今朝本当に病院へ向かったんですね?」

 

「…ああ。見送った」

 

「……なら、病院からこの家までの間に、何かが起きた…?」

 

「そう考えるのが自然だな」

 

 

伊達さんはそう言うと、足を組む。

ふと私は、そんな伊達さんを見て思い至った事を提案してみた

 

 

「…伊達さんのそのハッキングで、周辺のカメラで今朝の薬師寺さんの動向は分からないんですか?」

 

「…そのカメラに直接通じる機械を見ないと、どうにも」

 

「……とりあえず、道中また通りがかった人に聞いてみます?」

 

「いえ…まともに話が通じる気が、正直しないです」

 

「……まともに話が通じる奴、他に居ないのか」

 

 

伊達さんにそう問われ、私達はふと考える

最初の闇達さんを初めに、山崎さん、影山さん……そして伊達さん。

他にまともに話が通じそうな人、と考えた時ふと頭に浮かんだのは、昨日の人達だった

 

 

 

「…山崎さん、やはり、昨日の人達で集まってみるべきではないでしょうか?」

 

「…奇遇だな水上さん、俺もちょうど、そう考えてた所さ」

 

 

山崎さんはそう言うと、帽子の唾を掴んで笑った。私はその笑みを見て頷けば、椅子から立ち上がり伊達さんに向かう

 

 

「今から少し、外で話の通じそうな人を探しながら…薬師寺さんの行方も追ってみます。態々、有難うございました」

 

「また、ここに来る事になると思います」

 

「…来なくていい」

 

 

伊達さんはそう言うと、顔を逸らしながら薄ら微笑んだ。言葉とは反対だが、恐らくまた来ても良いと歓迎されてるのだろう

短い間だったけどこう話していると、なぜだか…心強さを感じる。

 

不思議な人だな、なんて思いながら、私達は伊達さんに玄関先まで見送られ、私達は次に…紫艶さん達と出会う為、一度闇達さんのいる病院へ戻る事にした

 

 

 

 

 

 

闇達さんはそうか、と呟くと顎に手を添え腕を組んだ

 

 

「…という訳だ。一応念の為、行きがかりに他の住民に話しかけてみたが、どういう訳か…誰一人俺達の声に応じる人間は居なかった」

 

「……分かった。紫艶の診療所の住所も教える」

 

「有難うございます」

 

「緊急事態だからな。…それと、水上、山崎」

 

 

闇達さんは改めるように私達の名前を呼ぶ。私と山崎さんはそれに応えるように見つめ返すと、闇達さんが窓ガラスの先の、街並みを見ながら言った

 

 

「…さっき、上から街を見てたら…何か変なもんが空を飛んでるのを見た。この異常事態だ…十二分に気を付けろ」

 

 

闇達さんはそう言うと、メモ用紙に住所を書き込み、私達に手渡した。

変なもん、と言われても見かけなかった私達は首かしげる事しか出来ないけれど……確かに気をつけるべきだろう

 

私と山崎さんは闇達さんに礼を述べて、再び見送られながら、今度は山崎さんと共に紫艶さんの診療所のある…学校方面へ向かう事となった




水上さん視点

不穏要素が現れ始めてきました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2日目:朝11時頃、ビル街にて

どういう訳か、俺が声を掛けても走って逃げていても、街の住民達は素知らぬ顔をしていて、まるでその場に俺が居ないようだった

舌打ちをし、追ってくる謎の生物に目を向けた。ヤツは、どことなくベルゼバブなどのハエのような、醜悪のような何かを連想させる見た目をしている。ピンク色の甲殻類のようでもある

 

脳みそのような楕円形の頭を持ち、腕には代わりというようなハサミを持ち、そして一対の蝙蝠のような羽が背に生えている

 

 

見た瞬間、俺にはこいつらがこの世の普通の生き物ではないことを、こいつらが俺を探していることを、容易に察することができた

 

 

 

影山【SANチェック】:成功値89

1d100→37 成功

 

減少値1d3→2

影山→87

 

 

??【???】:1d3

1d3→3

 

 

 

追い掛けてくる三体の謎の生物から対抗策を考え逃げるも、このままでは俺の体力が先に尽きる事は明白だった。どこかで身を隠そうと、走りながら辺りを見渡す

 

 

影山【目星】ロール:成功値68

1d100→1 クリティカル

 

影山【隠れる】ロール:成功値68

クリティカルによる恩恵→自動成功

 

 

 

咄嗟に目に入ったビルとビルの間の路地裏に身を滑り込ませ、そのまま俺はすぐに近くの物陰に身を潜める。急な俺の方向転換に追いつけなかったのか、ワンテンポ遅れて路地裏にやってきた生物達はそのまま俺の真横を通り過ぎ、どこかへと不愉快な羽の音を鳴らしながら飛んでいった

 

それを見送り、荒くなった息を整えながらヤツらが去っていった方を見つめ、安堵により俺は肩の力を落とした

 

 

 

「……突っ込んでいくべきだったんだろうが、流石に数が悪すぎる…」

 

 

 

一時撤退の要因となった理由を小さく呟いて、俺は雑に頭をかいた。何故こうなったのか、理由があるとすれば、薬師寺透とエニアの二人を探してる間に突然あの変な生物が空からやって来たからだった

 

街中で突然現れてそいつに俺は驚き、数体いることを確認し今はやるべきじゃないと判断した俺は一度逃げることにした。しかし中々奴らも諦めることなくずっと付け回し、そうしてようやく今逃げ切ったところだった

 

 

 

地面から立ち上がり、建物の壁を支えにするがやはりまだ息は荒い。久々にあれほど長いこと走った、と考えてから、俺はある一つの仮説に出る

 

薬師寺、エニアの二人が既にあの生物に殺されている可能性、だった。あまり考えたくないものだが、視野に入れておくべきなのは確かだ。

流石にSM女王をやってると言う薬師寺もあんな生物を尻に敷く事も、自称魔法使いの手品師であるエニアも手品であの生物の足止めをする事も到底不可能だ。

 

 

あんな生物が街中で普通にうろついて、かつ周りの住民があんなにも無反応である事は、色々と可笑しい。

この街に、何かが起きている

 

その異変に気付けただけでも収穫だった。

いっその事街の外へ逃げるかとも考えたが、おそらくこういう時ほど街の外に逃げる手段というのは閉ざされているものだ。

如何にこの街で生き延びるか、そこからだ

 

 

そう考えた時、ふと脳裏に、あの夢を思い出した

 

『奴を殺せばいい』

 

その言葉が妙に、今の状況にしっくり来る気がする。……あの夢はどんなものだったか

少しの間目を瞑り、考える。確か、一週間以内に…ゲームの主催者とやらを殺さないと、人類が滅ぶとかどうとか言ってた気がする。

 

そして奴に関するヒントといえば、恐らく奴は男であることぐらいだ。

何ならあの夢を見たという者達の中にいても可笑しくはない…しかし、ここまで来てしまえばもう、あの夢を見たという彼らに合流するしかないのかもしれない

 

 

話が恐らく通じるであろう者達に

 

 

 

そこまで考え、俺は路地裏から顔を出す。すると何の偶然か、すぐ目の前には見覚えのあるカメラを持った青年がいた

 

 

 

「………」

 

「…よお」

 

「………ぼ、ぼっちでかくれんぼっすか」

 

「絞めんぞ」

 

 

 

反射的に苛立ってそう言うと、カメラを持った青年……点野は冗談じゃないすか!と苦笑いを浮かべた。

そんな点野に、俺はちょうど良いと話を切り出す

 

 

 

「ところで、点野だったな」

 

「ああ、そっすよ。そういうアンタは確か、影山さんすよね?」

 

「おう。まぁ話がある……点野、お前はこの街の異変に気付いてるクチか?」

 

「…まぁ、嫌ってほど、わかってるっすけど……ようやくまともに話せる第一村人に会えた、って気分です」

 

「俺も今、ようやくまともに話せる人間に会えて安心したところだ」

 

「……その言い方、なんか、…いや聞かないでおきます」

 

「安心しろ話してやる。ついさっきまで、変な虫に追われてた」

 

「やめてくださいよ!!!!」

 

 

何故だか拒否反応を示すように叫ぶ点野。

その理由は分からんがまぁ、情報共有しない理由はない。知らないまま過ごしてたら、もし出会った時にでもパニックを起こされんのは困るし、警戒はするに越したことはない。

 

 

 

「…とりあえず、まともに話せる仲間を増やそうぜ。山崎ん所に一旦戻るか」

 

「山崎さんっすか?山崎さんも無事なんすね」

 

「ああ。……あの変な虫に遭遇してなけりゃいいがな」




影山くん視点。

少しずつ進展していきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二日目:12時頃、学校にて

ドン!!!と言う音と共に、俺は倒れ込む。そのまま教室に駆け入った倅屋は教室の扉を閉め切り、鍵をかける。

 

 

「……っ、んだよ…あれ……!!?」

 

「…何ですらないだろ。…まぁなんだ、助かった…有難う」

 

「……たまたま鉢合わせたしな。見知った顔がいたらそりゃ、助けんだろ」

 

 

 

倅屋はそう言うと、扉からゆっくり離れて近くの椅子に座った。俺も床から起き上がり、近くの椅子に座って落ち着く。

まず、状況整理をしよう

 

 

 

「……で、だ。まず、何があってああなってたんだ?」

 

「分かる範囲で言うなら……今朝、一旦家に帰ろうとしたらスマホの電波が圏外だし、ニュースにもなってねぇから気になって街中歩いてみたら、あの変な鳥に…」

 

 

そこまで言うと倅屋は小さく顔を顰める。そこから先は、逃げ続け、同様に不審に思い外を出歩いた俺とたまたま出会った、という訳なのだろう。

その結果、学校に逃げ込むことになったのだが

 

 

「……あの鳥は、何なんだ…?」

 

「…………俺、なんか…あの鳥、見覚えあるんだ」

 

 

倅屋はそう言うと、机に肘を着く。俺は倅屋を見て、その言葉の先を待つ。

 

 

「……あんな、シマエナガかと思ったら腹から口が割くようなやつ、普通ないぞ」

 

「…わからない、けど…けど、どこかで…」

 

 

倅屋はそう言って頭を抱える。俺はそんな倅屋から目を離し、辺りを見渡す。ここは学校の教室…なのは確かだが、それにしたって少し、違和感がある

 

 

 

七親【アイデアロール】:成功値45

1d100→83 失敗

 

 

 

「……倅屋」

 

「な、なんだ?」

 

「教室に何か、こう、違和感みたいなの感じないか?」

 

「違和感……?」

 

 

俺がそう促すと、倅屋は抱えてた頭を上げて、教室全体を見渡す

 

 

倅屋【アイデアロール】:成功値??

1d100→プラス補正により自動成功

 

 

「……あれ?…ここ、何処だ!?」

 

 

倅屋はそういうと、椅子から立ち上がり教室を見回して驚いた表情を見せる。俺は訳が分からず、立ち上がりながら倅屋に問いかける

 

 

「どこ、って、学校の教室だろう? 」

 

「違う!!うちの学校の教室じゃない!……こんなにボロくねぇし椅子もこんなに少なくない!」

 

 

倅屋にそう言われ、俺はふと気付く。

確かに昨日、ちらっと校舎を見た感じだと、多少年季はあれど、木造建ての校舎ではなかった記憶はある。あんなに見た目は大きい学校なら、大人数教室に構えても可笑しくないが、この教室はどう見ても十人程度しか机と椅子がない

 

 

「……俺達、昨日の学校に、逃げ込んだんだよな?」

 

「…その、はず…なんだけど」

 

 

俺達はようやく、あの鳥から逃れられたと言うのに、今度は安全だと思い込んでいたこの学校さえ、なにかが可笑しいと、歪んでいるという現実に気が付く。

俺達の心にはまだ、安堵は許されないようだった

 

 

倅屋、七親【SANチェック】:成功値??

1d100→88、58

 

双方失敗、1d3の減少

七親:47→44、倅屋:??→??

 

 

 

「……探索するか?」

 

「鳥の気配だけ、常に警戒しておこう」

 

俺がそう言うと、倅屋は当たり前だと言うように俺の後ろを着いて歩いてきた。

 

 

七親、倅屋【聞き耳ロール】:成功値??

1d100→43、84

 

双方失敗

 

 

「…わかるか?倅屋」

 

「……すまねぇ、耳は良い方なんだが…」

 

 

二人並んで教室の外に聞き耳を立てるも、二人とも聞こえたかどうかはわからない。仕方ないか、と考え俺は鍵をあけ、扉を開く。その先に続く廊下を見渡しても、あの鳥の姿はどこにもない。諦めてどこかに行ってくれたんだろうか

 

 

「……行くか」

 

「右行くか?左行くか?」

 

「適当だ、左」

 

 

来た道から戻らない方向へと俺が足を向けると、倅屋は後ろから歩いてくる。こうして見ると何かの、RPGゲームのように見えてくるが、実際の世界観は酷いものだ

 

 

「そう、いえば……七親さん、あんたのそれ、素か?」

 

 

ふと倅屋に思い出したように問われ、俺は顔だけ倅屋の方に向けて見る。倅屋は俺を見上げてじっと見ており、その様子からして返答を待っているようだった

 

 

「…慌ててると、敬語なんて忘れるもんだ」

 

「…そうか。まぁ、そのままで話してくれよ。俺はその方が話しやすいしさ」

 

 

倅屋はそう言うと、楽しそうに笑った。俺は倅屋から顔を逸らし、前を向いて歩みを進める。そうして数分歩いて、ふと俺は立ち止まり影に隠れる。倅屋も俺に倣って、俺に小声で話しかける

 

 

「ど、どうしたんだ?」

 

「この教室から今、話し声が聞こえた……人がいる」

 

 

俺はそう言うと、扉にそっと耳を当てる。倅屋も足音を立てぬように歩み寄り、聞き耳を立てる

 

 

七親、倅屋【聞き耳ロール】:成功値??

1d100→9、90

 

七親のみ成功

 

 

「……そこそこ居るな」

 

「…ぜん、っぜん聞こえねぇ…」

 

「…どうする?入るか」

 

「……俺は入ってみて良いと思うぞ。なんか、あるかもしれねぁだろ…俺達と同じ境遇の奴がいる可能性だってある」

 

「それもそう、だな」

 

 

俺達は立ち上がり、教室の扉を見つめる。そうして、俺は静かに木製の扉にノックした。

ノックしても止まない、なにかの話し声。俺は構わず扉を流し、開いた

 

その先には、普通の教室があった。

その教室には何人かの制服を着た男女が椅子に座り、机に肘ついて頭を抱えたり突っ伏したり、またはぼうっと座ってどこかを見つめていたり。

黒板の前、教卓の前には一人のスーツを着込んだ男が椅子に座っており、教室の隅には、皺だらけの老婆がロッキングチェアに腰掛けている。どうやら話し声の正体は、その老婆のようで老婆は絶え間なく何か、ずっとぼそぼそと話し続けている

 

 

 

「……なんなんだ…」

 

 

 

俺が思わずそう呟くと、ふとスーツ姿の男が俺達の方を見て、読んでいた本を閉じて立ち上がり声を掛ける

 

 

 

「ああ、客が居たか。すまない、気付かなかった」

 

「いや、それは構わないが…それよりも、ここは何だ?…こいつらは、何だ?」

 

「…ここは端的に言えば、とある学校の中だ。ここは特殊でね……話そうとしたら長くなる。それに、俺はそれについて詳しくは言えない立場なんだ」

 

 

スーツ姿男はそう言うと、困ったように微笑む。

俺は思わずその言葉に顔を顰めて、男に問掛ける

 

 

「…お前、あの変な夢の主催者側か?」

 

「…そうとも言えなくはない、かな。まぁ解釈は好きにしてくれて構わない……俺はただの敵とかじゃなくて、君達の、助っ人みたいなものだから」

 

「じゃあこの変な現状の打開策を教えてくれ」

 

「それは俺の役割には無い。……すまない、俺の役割は、これから先行くべき場所を伝える事、だけなんだ」

 

「…その言い方だとさ、あんた以外に助っ人がいる、って事にならないか?」

 

 

倅屋がそう言うと、スーツ姿の男は頷く。

 

 

「俺以外にもこの街にはあと、二人ほど助っ人がいる。…まぁ約一名はちょっと、別件で手放せない用事があるらしいから、来れるのは……数日後じゃないかな」

 

「それいいのかよ……」

 

「仕方ない。決まり事みたいな所は、あるからね」

 

 

スーツ姿の男はそう言うと、困ったように肩を竦めて笑う。

ふと俺は、教室を見渡し、机に座り込んだままの生徒、と思わしき彼らを見て問いかける

 

 

「…聞けるかは知らんが、この、女子生徒男子生徒と思わしき彼らは、一体どうしたんだ?」

 

「"この場所"の影響だろうね。ゲーム参加者以外がこの学校に居ると、皆ああなってしまう……ここでこうなってしまった彼らはもう、元には戻らないよ」

 

 

そう言うと、スーツ姿の男は本に目を向けた。

倅屋はそんな男を見て、ふと思い出したように問いかけた

 

 

「……そういや、あんたはなんて名前なんだ?」

 

 

スーツ姿の男はそう聞かれると、ふと老婆の方を見てから少し考え込むように黙って、そしてすぐに答えた

 

 

「俺は、安室零。元、警官だよ」




七親視点

もうなんか書きたいところだけ書いて終わりたい気もするが頑張ります


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 5~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。