ハイスクールD×G~駒王町の規格外品 (Tokaz)
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第1話 二度目の転生で悪魔になった件


新連載です。

投稿間隔は不定期の自己満小説ですが、よろしければご覧下さい。


 

 

(まるで血に染まってるみたいだ───)

 

 俺、駒王学園三年、不破一輝(ふわかずき)はバイト帰りに夜空に浮かぶ満月を見上げて、そんな風に思った。

 

 

 

 

<><><><><><> 

 

 

 

 

 俺はこの駒王町で生まれ育った。十歳までこの町で育ち、父親の転勤で別の町に引っ越したら突然の不幸に襲われた。両親が交通事故で他界したのだ。居眠り運転のトラックが両親の乗っていた路線バスに衝突し、乗っていた乗員乗客合わせて十名全員が死亡するという大惨事だった。

 両親を亡くした俺は悲しみに暮れる間もなく、唯一の肉親である父方の祖父に引き取られた。

 この祖父が所謂武術家という奴で、山奥に一人で住んで修行しているという変人だった。

 引き取られたその日から祖父の使う武術を教え込まれた。正直両親を亡くしたばかりの孫にやるか、という位厳しい修行を課せられ、何度も死ぬような目に合ったが、お陰で悲しんでる暇はなく、日々はあっという間に過ぎていった。

  

 

 

 

 瞬く間に五年の歳月が過ぎ、俺は十五歳になっていた。幸い俺には素質があったらしく、この五年でかなり腕を上げ、組手で祖父から一本取れるようになった。尤も祖父に言わせればまだまだらしいが。

 だが、これを機に祖父の元から独立する事を許された。

 中学の卒業(麓の村の生徒数三人しかいない分校に往復二十Kmの距離を毎日走って通ったのだ)を機に、生まれ故郷の駒王町に帰り、高校に通う事にした。

 幸い両親の遺産を祖父が管理してくれてたので、贅沢しなければ大学卒業するまでは余裕で暮らせる位の金が手元に残っていた。俺は両親と祖父に感謝して、新年を迎えると共に祖父の元から旅立った(中学は課題を提出すれば卒業させてくれるそうだ。山奥の分校故のゆるさだ)。

 

 懐かしの駒王町に帰り、かつて家族三人で暮らしていたマンションに居を構えると、近所にある私立駒王学園の入試を受けて、無事合格する事が出来た。

 

 

 

 

 四月になり、俺は駒王学園1年A組に配属された。

 この駒王学園は元々女子校だったそうで、共学になってから日の浅い、圧倒的に女子の多い学園だった。

 この学園には可愛い娘が多いのだが、俺のクラスには学園でも指折りの美少女達がいた。

 紅髪のロングに青い瞳のリアス・グレモリーと黒髪のポニーテールに紫の瞳の姫島朱乃。「学園の二大美少女」と云われる二人だ。

 二人共十五歳にして大人顔負けの美貌と抜群のプロポーションを誇り、特にその胸は爆乳と呼べる程だった。初めて二人を見た時にはこんなに綺麗な娘がいるのかと、ただ見蕩れる事しか出来なかった。

 このクラスで良かったと思いながら、学園生活が始まった。俺は家計の為にバイトをする必要があったので部活をしなかった。五年近く祖父としかまともに会話してないせいか口下手になっていた俺は、クラスではいつの間にか寡黙な奴という地位に落ち着いていた。

 そんな俺にもクラスの皆は優しく接してくれて、友達も出来た。俺はごく普通の学園生活を過ごしていた。

 

 

 

 

 楽しい学園での日々はあっという間に過ぎて、俺は三年生に進級した。

 クラスは3年A組。このクラスには「学園の二大お姉さま」と呼ばれるようになっていたグレモリーさんと姫島さんもいた。これで三年連続同じクラス。ラッキーだ。 

 

 

 

 

 今年も去年と変わらぬ普通の日々が続くと思っていた。

 だけど日常は急速に終わりを告げ、俺は非日常に足を踏み入れる事になる。

 

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

 

 既に深夜と呼べる時刻、バイトを終えた俺は家路を急いでいた。

 血に染まったような紅い満月に嫌な予感を感じながら、俺は一刻も早く家に帰ろうと普段は通らない近道をする事にした。

 近道した先には見覚えのある廃教会があった。亡き母は熱心なクリスチャンで、俺も日曜になるとミサに連れて行かれたのを思い出す。

 そう言えばこの教会を管理していた牧師さんに俺よりひとつ年下の娘がいたっけ。女の子なのに外で走り回る方が好きで、よく男の子に間違われる元気な娘だった。

 俺の事を一兄(かずにい)と呼んで慕ってくれたあの娘は今頃何をしてるんだろう。父親である牧師さんが転属になり、イギリスへ引っ越した彼女。俺もその後、父が転勤になりこの町を離れたから、あれからどうしたのか分からない。

 後任の管理者が配属されなかったらしく、思い出の教会はすっかり廃墟と化していた。

 

 俺が昔を懐かしんでいると、突然教会から眩い光が発生し、次の瞬間、凄まじい爆音が鳴り響いた。

 

 何かが爆発したのだろうか、俺は咄嗟にしゃがみ込んだ。光と音はすぐ止み、教会は元の静けさを取り戻していた。

 何があったのかは気になるが嫌な予感が強くなって、俺はここから立ち去る事にした。その時、何かをぶち破る音が聞こえると、教会から何かが飛び出して来た。

 それは着地するとふらつきながらも真っ直ぐ俺のいる方へ走って来る。扇情的な衣装を纏ったその女の背には、ぼろぼろの黒い翼が生えていた。

 

(何だこれ? 映画の撮影か───!?)

 

 訳が分からず呆然とする俺にその女は、

 

「邪魔だ!どけえーーーーっ!!」

 

 そう叫びつつ、俺に向かって右手をかざす。

 

 元々は美しかったであろうその顔は、恐怖と狂気で醜く歪んでいた。そして、

 

 

 ズンッ!!

 

 

 鈍い音がして、女の手が俺の胸を貫いた。

 

 攻撃されたと判断した俺の身体は、長年の修行で培った感覚で反射的に反撃した。

 

「ガハッ!?」

 

 反撃される事など考えてなかった女は、俺の拳をまともに喰らい、吹っ飛ばされた。

 

「・・・・・ゴフッ」

 

 そこで力尽きた俺は、血を吐いてその場に倒れた。

 

 

 

 

 何も見えない。周りの音だけが聞こえる。

 

「くっ、こいつ何て往生際の悪い! 滅びろ!!」

 

「ギャアアアアーーーッ!!」

 

「夕麻ちゃん・・・・、くっ!」

 

「部長! 人が倒れてます!」

 

「何ですって!? どうして結界の中に?」

 

「! リアス、この人・・・・」

 

「どうしたの朱乃?・・・・! 嘘でしょ? どうして彼がこんな所に・・・・」

 

「部長? お知り合いですか?」

 

「・・・・ええ、クラスメイトよ」

 

「・・・・どうします? 部長」

 

「どうもこうもやるしかないわ、朱乃!」

 

「はい!」

 

 複数の男女の声がする。中には聞き覚えのあるような声もあった。

 やがて何かが自分の中に入って来る感覚がして俺はうっすらと目を開く。視界にはただ、鮮やかな紅だけが映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。目を覚ました俺はパニックに陥っていた。

 見慣れた自室のベッドで寝ていた俺。その隣りに全裸の女性が眠っているのだ。しかも、その女性はあのリアス・グレモリーだ!

 憧れの女性の一糸纏わぬ姿に心臓が激しく高鳴る。

 

(・・・・・・綺麗だ)

 

 普段はキリッとした美貌も、眠っていると年相応のあどけなさがある。鮮やかな紅髪はサラサラと波打ち、白い肌に張り付いて艶かしさを醸し出す。横向きでありながら巨大な胸は垂れる事無く美しい曲線を形作り、それが極上の枕のような柔らかさを想像させる。

 とても十七歳とは思えない色香に俺はゴクリと喉を鳴らした。

 

(え? どういう事? 昨夜何があった?)

 

 まさか知らない間に童貞喪失してしまったんだろうか? だとしたら何て勿体ない! あのグレモリーさん相手にイタしておいて何も覚えてないなんて!!

 

「ううん、もう朝・・・・?」

 

 そんな馬鹿な事を考えてるとグレモリーさんが目を覚したようだ。寝ぼけ眼をこすりつつ身体を起こすと俺に焦点を合わせ、じっと見つめる。

 掛けていたシーツが落ちて豊満な胸も、そのピンクの頂も丸見えだ。俺は再度喉を鳴らした。

 彼女は手を伸ばして俺の腹の辺りを撫でる。ひんやりとした手が動く度に背筋がゾクゾクした。

 しばらく何かを確めるように俺の腹を撫でていた彼女は、手を離すとホッとため息を吐いた。

 

「良かったあ。傷は完全に塞がったようね。・・・・気分はどう? 不破一輝君」

 

「あ、ああ。問題ない、と思う」

 

「そう。良かったわ。・・・・・さて、状況の説明が必要よね。貴方はどこまで覚えてる?」

 

「えっと・・・・・教会の前を通りかかったら、もの凄い光と音がして、その後エロい服を着た女に攻撃されて、反撃したけど力尽きて・・・・・その位か?」

 

「あら、反撃したの? お腹に大穴開けられてたのに凄いわね、貴方」

 

 腹に大穴? 俺は思わず自分の腹を見たが、当然穴なんてない。

 

「言ったでしょ? 傷は塞いだって。魔力が足りないから私の魔力を貴方に与えて傷を癒したの。貴方が私の眷属だから出来る芸当よ」

 

 魔力? 眷属? 彼女の言ってる意味が良く分からない。俺のそんな様子を察したのか、彼女はベッドから立ち上がり、俺に背中を見せる。

 傷ひとつない白い背中に紅い髪が映えて実に美しい。丸く引き締まったお尻が丸見えで、途撤もない色気を醸し出している。思わず凝視していると、次の瞬間、その背中に黒い翼が広がった。

 

「───え?」

 

 蝙蝠のようなその翼は何かを連想させる。これはまるで───

 

「これで分かったかしら? わたしは悪魔よ」

 

 彼女が自分の正体を明かす。そして、更なる衝撃の一言を口走った。

 

「そして不破一輝君。貴方も今日から私の下僕の一人。つまりは悪魔となったのよ」

 

 

 

 

 

 

 その後、リアス・グレモリーから説明を受けた。

 この世界は天使と悪魔、堕天使の三大勢力が覇権を争っていた。だが、大昔に起きた戦争で三大勢力全てが大量の犠牲者を出し、それぞれの勢力を維持するのが精一杯の状況に陥っていた。結果、今も大きな戦争を起こせる程回復せず、小競り合いが起きる程度なのだという。

 悪魔側は現在『悪魔の駒(イーヴィルピース)』というアイテムを人間に与えて転生させ、転生悪魔とする事によって、勢力を回復させているという。

 『悪魔の駒』とはチェスに見立てた十五の駒をキングたる上級悪魔が人間に与え、眷属とする能力を持つマジックアイテムで、それぞれの駒に添った役割があるという。俺の駒は『兵士(ポーン)』。チェスの中では最弱の駒だ。つまりは俺の『(キング)』が彼女、リアス・グレモリーであり、俺は彼女の下僕になったという訳だ。

 

「あの時、貴方を救う為にはこうするしかなかったの。私達の不注意であの堕天使を逃がしてしまったせいで、本当にごめんなさい」

 

「いや、俺もまだ死にたくなかったし、それはいいんだ。寧ろ貴重な駒を使わせてしまって、却って申し訳ないと言うか・・・・」

 

「(クスッ) ありがとう。貴方はやっぱりいい人ね。私もね、貴方を眷属にした事を後悔してないわ」

 

 そう言って、眩しい位の笑顔を彼女は魅せてくれた。

 

「グレモリーさん、俺の事知ってるの?」

 

 俺は不思議に思い、聞いてみた。

 

「三年間同じクラスだったでしょ? 貴方は確かに目立つ方じゃなかったけど、文化祭や何かで大変な時、率先して手を貸してくれてたじゃない。ちゃんと見ていたわよ」 

 

「それはどうも・・・・」

 

 まさか彼女がそんな風に俺を見ていてくれたなんて、何だか嬉しかった。そんな時、

 

「うっ!?」

 

 突然頭痛がして、俺は倒れかけた。だが、そんな俺をリアスさんが受け止めてくれた。柔らかくて、いい匂いのするクッションに顔を覆われ、その正体を知り顔が熱くなる。

 

「す、すまん!」

 

「いいから。まだ本調子とはいかないみたいね。もう少し寝てなさい」

 

 そう言って彼女は俺をベッドに横たえた。

 

「幸い今日は日曜日。そのまま眠ってしまいなさい。詳しい話は明日学園でしましょう」 

 

「ああ、すまない・・・・」

 

 そのまま俺は深い眠りに就いた。そして───

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。目を覚ました時、俺は前世の記憶を思い出していた。

 

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

 

 前世の俺は三十代半ばのごく普通のサラリーマンだった。

 泊まり掛けで報告書をまとめて、朝食を買って来ようと近くのコンビニに出掛けた時だった。横断歩道を渡っている子供に居眠り運転のトラックが突っ込むのを目撃した。咄嗟に身体が動いて子供を突き飛ばしたまでは良かったが、代りに俺がトラックに跳ねられて、そのまま死んでしまった。

 

 

 

 次に意識を取り戻すと、俺は何にもない真っ白な空間にいた。

 

《目が覚めましたか?》

 

「・・・・・えーと、俺は?」

 

《残念ながら、貴方は死んでしまいました》

 

「あ~やっぱり。じゃあここはあの世という奴ですか?」

 

《いえ、その一歩手前です》

 

「はあ・・・・あの、俺はこれからどうなるのでしょう?」

 

《貴方には二つの道があります。ひとつはこのまま天に召される事。もうひとつは別世界に転生する事です》

 

「別世界に転生!?」

 

《はい。貴方の助けた子供は本来死ぬ筈でした。ですが貴方が助けた事によりその子の運命が切り開かれました。彼は将来科学者となり、世界の平和に貢献する偉人となります。その偉人を生んだ功績から貴方には新しい人生を生きる権利が与えられたのです。それで、どうしますか?》

 

「・・・・では転生でお願いします」

 

《分かりました。では転生先は───こちらです!》

 

 途端にドラムロールが鳴り、やがて止まると、ファンファーレが響き渡る。

 

《貴方の転生先は───『ハイスクールD×D』の世界です!》

 

 ハイスクールD×D!? ラノベじゃねーか!

 

《あら、ラノベと馬鹿に出来ませんよ。この世界で生まれた数多の物語。それを支持する人の想いが新しい世界を生み出すのです》

 

 つまりは読者が多ければ多い程、新しい世界が生まれているらしい。だとすれば納得出来なくもない。でも、ハイスクールD×Dかあ。俺も買って読んでたけど、途中までしか覚えてないなあ。でもまあ、俺が主人公達に絡まなければいいだけだ。うん。

 

《ああ、因みにバッチリ主人公達の近くに転生させますからお楽しみ♪》

 

 いらねーよ、そんなサービス。てかこの声の主、女神さまか? 段々キャラが崩れてきてないか?

 

《コホン。失礼しました。それでは転生特典を決めましょうか》

 

「転生特典? そんなのが貰えるんですか!?」

 

《はい。貴方には生前の功績により三つの特典が貰えます。何がいいですか?》

 

「えっ? 何でもいいんですか!?」

 

《はい。余程の事がない限りご要望のものを用意出来ますよ》

 

 そう言われて俺は考えた。バトル前提の世界だ。生き残る為に戦闘力は必須。だとすれば高い戦闘力が得られ、命を守るのに最適なモノ───

 

《決まりましたか?》

 

「はい。まずひとつは頑健な肉体を」

 

 何をするにも身体が資本だ。病気や怪我にも強い頑健な肉体は必要だ。

 

《受諾しました。お次は?》

 

「その前に聞きたいんですが、指定した武術を使えるようには出来ますか?」

 

《可能です。何を使えるようになりたいのですか?》

 

「では二つ目は陸奥圓明流を使えるようにして下さい」

 

 バトル前提の世界だ。ならば武術を使えるのが望ましい。これが使えればまず負けないだろう。

 

《・・・・受諾しました。最後に何を?》

 

「三つ目は『ユニット・ガイバー』を下さい」

 

 命を守りつつ、戦闘力が得られる最適のモノ。これならばドラゴンとだって戦えるし、細胞の一片でも残っていれば復活出来る。

 

《ユニット・ガイバー?・・・・・・受諾しました。これで三つの転生特典が決まりました。それではこれより転生を開始します。よろしいですね?》

 

「はい。お世話になりました」

 

《いえ。では、善い旅を───》

 

 その声を最後に俺は意識を失った。

 

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

 

 俺はベッドの上で頭を抱えていた。って女神さま、記憶を消してどうする!? 転生した事を忘れてたら特典の意味がねーじゃねーか!

 だがこれで祖父のイカれた修行に耐えられた理由が分かった。転生特典で貰った頑健な肉体のお陰だった訳だ。そして祖父から教わった武術こそ陸奥、いや不破圓明流だったんだ。そして───

 俺は洗面所へ行き、鏡に背中を映して見た。肩甲骨の上の当たりに植物の細胞のような奇妙なアザがあった。思い起こせば中二の秋、学校からの帰り道で奇妙なモノを拾った。今思えばそれが『ユニット・ガイバー』だった。それを拾った俺はついスイッチに触ってしまい、ユニットに取り込まれ気を失った。目を覚ましたらもう日が暮れていて、修行をサボった事を祖父からしこたま怒られた。その後いつもの倍の修行を課せられたせいで、その事をすっかり忘れていた。

 ともあれ、三つの転生特典も受け取り、記憶も取り戻した訳だが、よりにもよってグレモリー眷属になってしまうとは・・・・・一番の激戦区じゃねーか!

 

 とにかくもう時間だ。学園に行かなければ。俺は急いで制服に着替えると、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

このまま3話まで連続投稿しますので、よろしければ続けてご覧下さい。


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第2話 ライザー・フェニックスの挑戦


続けて第2話を投稿します。
ご覧下さい。


 

 

 今朝は遅刻ギリギリで3年A組の教室に駆け込んだ。自分の席に座ると、リアスさんと姫島さんがこっちを見ていた。俺が目礼をすると、彼女らはニッコリと微笑んでいた。

 

 

 

 

 その日の授業が終わり、放課後となった。詳しい話は明日と言ってたが、どうすればいいのだろう? そんな事を考えてる俺の元に姫島さんがやって来た。彼女は俺の耳元に唇を寄せると、

 

「不破君、私と一緒に来て下さい。部室にご案内しますわ」

 

 そう呟き、ニッコリと微笑んだ。

 

「ああ、分かった」

 

 彼女の後に続き教室を出る俺の姿にクラスメイト達は唖然としていた。

 

 

 

「あ~、姫島さん?」

 

 聞きたい事があったので声をかけたが、彼女は唇に指を立てて黙るように示した。

 しばらくして、旧校舎に入ると彼女は立ち止まり、こちらに振り向いた。

 

「ここなら大丈夫。人払いの結界が張ってあるので普通の人は入って来れませんわ。悪魔の事は出来るだけ聞かれないようにしませんと、ね?」

 

 そう言われて気付いた。彼女は学園の人気者だ。どこで誰が彼女の事を見ているか分からないんだから気をつけなくては。

 

「すまない。迂闊だった」

 

「うふふ。次から気を付けてくれればいいんですのよ。それで、何かしら?」

 

「ああ。というかもう分かった気がするが、姫島さんもやはり・・・・・・?」

 

「ええ。私も貴方と同じ転生悪魔ですわ。リアス部長の『女王(クイーン)』を務めていますの」

 

 成る程。確かに彼女はいつもリアスさんと一緒だった。親友同士だと思っていたが、王とその眷属、それも女王というなら納得であった。

 

「ってリアス部長?」

 

「ええ。リアスはオカルト研究部の部長を務めています。私達眷属は部に所属し、彼女の事を普段は部長と呼んでいます。貴方も今日からオカ研に所属して貰いますわ」

 

「成る程。俺もそう呼んだ方がいいのか?」

 

「おそらくそうなるでしょう。では参りましょうか」

 

 そう言って彼女は歩みを進める。俺達はやがてオカ研部室の前まで来ると、彼女が扉を開けて言った。

 

「ようこそオカルト研究部へ」

 

 

 

 

 部室に入ると五人の男女がいた。男が一人、女が四人。俺達が中に入ると、一番奥の大きな机に座っていたリアスが立ち上がった。

 

「良く来たわね一輝。あ、一輝と呼ばせて貰うわね。貴方は私を部長と呼びなさい」

 

「はい部長」

 

「よろしい。それでは貴方の仲間である私の眷属を紹介するわね」

 

 リアスが目配せをすると、最初に姫島さんが口を開いた。

 

「ではまず私から。三年の姫島朱乃です。リアス部長の『女王(クイーン)』です。朱乃と呼んで下さい。よろしくお願いしますわ、一輝君」

 

 次にソファーに座ってお菓子を食べていた小柄な娘が立ち上がる。

 

「一年、塔城小猫。『戦車(ルーク)』です。よろしく一輝先輩」

 

 次に真新しい制服を着た金髪の娘が立ち上がる。

 

「えと、えと、わ、私はアーシア・アルジェントと言います。『僧侶(ビショップ)』の、二年生です。私も眷属になったばかりなんです。新人同士仲良くして下さい、一輝さん」

 

 次にこの場にいる俺以外の唯一の男が立ち上がった。

 

「二年、兵藤一誠。部長の『兵士(ポーン)』をやってます。俺以外の男が入ってくれて嬉しいっす。よろしく一輝先輩!」

 

 イッセーにそう言われて俺は疑問を感じた。あれ? 俺以外の男? 木場は? あのイケメンはどこに行った? そんな俺の疑問に答えるかのように、この場にいる最後の一人が立ち上がった。  

 

「二年、木場祐美です。リアス部長の『騎士(ナイト)』を務めています。気軽に祐美と呼んで下さい。よろしくお願いします、一輝先輩」

 

 美しい少女だった。亜麻色の長い髪と深い蒼の瞳。整った顔立ちの、制服の上からでも分かる抜群のプロポーションをした魅力的な美少女だ。って木場?祐美?何で女になってんの!?・・・・そう言えば何巻かは忘れたが、女体化した木場のイラストがあった。確かにそれそっくりだ。俺は原作との大きな違いに驚きを禁じ得なかった。

 

「・・・・俺は三年の不破一輝。故あってリアス部長の『兵士(ポーン)』になった。皆これからよろしく」

 とにかく俺は、驚きながらも表面上は平静を装って、皆に挨拶した。こうして眷属との対面は終わった。

 

 

 その後、新人悪魔である俺とアーシアは悪魔稼業の説明を受けた。悪魔も客を取らねばならないとは世知辛い世の中だ。とは言え給料が貰えるのは有難い。これならバイトを辞めても生活出来そうだ。

 こうして俺は新たな人生(悪魔生?)をスタートさせた。

 

 

 

 

 

 それから、契約を取る為に色々な人に呼び出されたり(俺とアーシアは問題無く魔方陣を使えた。イッセーがチャリで移動してるのを見て、悪いが笑ってしまった)、皆で戦闘訓練をしたり、はぐれ悪魔や堕天使を討伐したりして時は過ぎていった。

 

 俺は前世の記憶を思い出したせいか、以前よりリアス部長に魅力を感じなくなっていた。

 彼女は原作ではイッセーがいなければ眷属が全滅していた場面がいくつもある程、王として未熟な所が多かった。今の彼女にもその片鱗が見て取れる。おそらく幼少時から出来が良くて、大きな失敗をした事がないのだろう。そんな人特有の自信過剰な所が彼女にはあった。

 だから俺は彼女を王と認め、命を預ける気にはなれず、訓練でもはぐれ悪魔の討伐でも本気を出す事はなかった。幸い俺は駒消費一の兵士。眷属中最弱と見なされていたので、特に何も言われなかった。

 

 

 

 

 

 ある日の放課後、掃除当番で遅れて部室に行くと何だか不機嫌そうな部長と、その傍らには笑顔ながら妙にピリピリしている朱乃さんと場違いなメイド服を着た銀髪の美女がいた。あの女性(ひと)は確か───?

 俺はこの雰囲気に居心地悪そうにして固まっている皆に声をかけた。

 

「何やってるんだ、皆して?」

 

「一輝先輩。それが、その・・・・」

 

 俺が訊ねると祐美が言い難そうにしていた。

 

「ふうん? まあいいや。あの美人のメイドさんは?」

 

「あの人はグレイフィアさんと言って、グレモリー本家のメイドさんです」

 

 ああ、そうだった。彼女はグレイフィア・ルキフグス。確か魔王ルシファーの妻でありながら何故かグレモリー家のメイドをしているという、正直どう扱っていいのか分からない『最強の女王』と呼ばれている女性(ひと)だ。

 因みにリアス部長の義姉だった筈。いかんな、前世の記憶がすっかり薄れている。まあ原作を読んでから二十年近く経っているんだから仕方がないか。

 

「グレモリー本家のメイド? 何でそんな人が?」

 

「それは・・・・・」

 

 そんな事を話していると、部室の床に魔方陣が描き出された。でもそれはいつも見ているグレモリー家の魔方陣じゃなく、

 

「───フェニックス」

 

 祐美がそう呟いた。フェニックス家。グレモリー家と同じ72柱の上級悪魔の名門だ。その魔方陣から二十代前半の、どこか軽薄なホストのような雰囲気のイケメンが姿を現した。

 

 その男はライザー・フェニックス。フェニックス家の三男で、リアス部長の親同士が決めた婚約者だそうだ。だが部長はこの縁談を断固拒否しており、言い争う二人に部室内は次第に険悪な雰囲気になっていった。

 この雰囲気を破ったのはグレイフィアだった。彼女は最後の手段として、リアスとライザーのレーティングゲームで決着を着ける事を提案した。

 

 

 

 ───レーティングゲーム

 

 

 それは王たる上級悪魔が自らの眷属を率い、あらゆるルールの元に競い合う冥界独自の競技。元々は眷属を損なう事なく実戦訓練をする場であったが、後に様々な種目が考案され、今では冥界屈指の娯楽として冥界全土に放送される程の人気があるという。

 ゲームの種目により、戦闘力だけでなく、知略やスピード、技術(テクニック)、果ては運すら必要となる王たる者の裁量が試される競技なのだ。その為、現政権ではゲームの成績が王たる悪魔の評価に反映されている。

 

 

 

 本来未成年の部長にゲームの参加資格はないが、純血悪魔同士であれば非公式になら参加出来るらしい。尤もその場合は今回のように揉め事を解決する為が多いらしい。

 とは言え、渡りに船とばかりに部長はゲームを受けてしまった。これってグレイフィアさんの筋書き通りじゃないのか? ライザーは成人。既にゲームを何戦もしていて、白星の方が多いらしい。更に眷属も十五人全員が揃っている。

 対するリアス部長は未成年でゲームは初めて。眷属は六人しかいない。これで勝てると思う方がおかしくないか? 案の定ライザーに食ってかかったイッセーがライザーの眷属の娘にあっさりと返り討ちに合っていた。

 ともあれ、ライザーの温情でゲームは十日後に行われる事になり、俺達グレモリー眷属はその日に向けて修業する事になった。

 

 

 

 

 

 魔方陣でとある山中に転移した俺達はグレモリー家所有の山荘を拠点として、修業を開始した。

 祐美による剣術修業。朱乃さんによる魔力修業。小猫ちゃんによる格闘修業。部長による基礎力アップ等々。俺とイッセーは徹底的にしごかれた。イッセーはヘロヘロになっていたが、俺は祖父とここより険しい山の中で育ったので、苦にならなかった。

 

 この修業で俺は魔力による身体強化を身に付けた。一口に身体強化といっても、腕力や脚力だけではなく、極めれば視力、聴力、内臓や神経までも強化出来る、大変便利な能力だ。俺は新たな能力を得た事で自信をつけていた。

 

 逆にイッセーは自分の弱さを痛感して、落ち込んでいた。【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】という伝説級の【神器(セイクリッド・ギア)】を持っていたとしてもイッセー自身はごく普通の一般人だ。祐美や小猫ちゃんは勿論、俺にまで模擬戦で負けた事がショックだったらしい。

 確かに【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】は十秒毎に力を倍加するという恐るべきものだが、だったら速攻で倍加する前に倒してしまえばいい。俺が身体強化で近付き、目の前で拳を止めた時も全く反応出来ず、呆けた顔をしていた位だ。倍加するまでの十秒間を今のイッセーは凌げないのだ。

 加えて祐美や小猫ちゃんとの模擬戦で、自分が手も足も出なかった相手と自分より弱いと思っていた俺が渡り合うのを見て、自分が一番弱いと自覚しショックを受けていた。

 

 修業で自信をつけるどころか、自信を失っていたイッセーをどうするべきかと思っていたら、翌日修業前に部長がイッセーと祐美に模擬戦をやるよう命じた。それもイッセーに2分間力を倍加させてからだ。

 結果は引き分け。イッセーは祐美の攻撃に耐える耐久力や、山を吹き飛ばす程の魔力を見せた。部長はイッセーに自信を付けさせる為にこの模擬戦をさせたようだ。

 確かに今のイッセーには自信を付ける事と今の基礎練習が無駄ではない事を示す必要があった。だが、二分間力を増大させてこれなのだ。それだけの時間をイッセーに与えてくれる敵が果たしているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 十日後、修業を終えた俺達はライザー眷属とのレーティングゲームに挑んだ。

 魔方陣に乗って行き着いた先は、見慣れたオカ研の部室だった。ここはゲームの為に駒王学園を模して作られた一種の仮想空間であるらしい。本物と寸分違わぬ出来に初めて見た俺とイッセー、アーシアは驚いていた。

 

 ゲームの内容は駒王学園を舞台にした遭遇戦。俺達は旧校舎のオカ研部室、ライザー眷属は新校舎の生徒会室を本拠地として、互いの王を倒すまで戦い続けるというシンプルなルールだ。このルールも、俺達に地の利がある駒王学園を舞台にしたのもゲーム初心者である俺達に対するハンデなのだろう。

 尚、このゲームはグレモリー、フェニックス両家の当主並びに四大魔王の一人、ルシファー様が観戦するという。因みに魔王ルシファー様は部長の実のお兄さんとの事だ。その事を聞い部長は妙に張り切っていた。

 

 

 キンコンカンコーン!

 

 

 聞き慣れたチャイムが鳴り、ゲームが開始された。祐美がどこからか出したのか学園の全体図を広げ、作戦会議が始まった。

 会議の結果、敵本拠地のある新校舎への足掛かりとして、体育館を占拠する事になった。一先ず本拠地防衛の為、祐美と小猫ちゃんが森にトラップを仕掛けに行った。他のメンバーは二人が戻るまでここで待機。その間イッセーは部長に膝枕して貰い、号泣していた。それを見たアーシアが頬を膨らませている。ゲーム中だというのに緊張感のなさに呆れていると、

 

「羨ましいですか?」

 

 いきなり朱乃さんに耳元で囁かれた。俺が驚いて目を向けると、

 

「よろしければ私の膝をお貸ししましょうか?」

 

 耳元にかかる甘い吐息に誘われ、ついその気になりかけたが、俺は何とか耐えた。

 

「魅力的なお誘いだが止めておくよ。緊張感を切りたくないからな」

 

 俺がそういうと、朱乃さんは蠱惑的な笑みを浮かべる。

 

「ウフフ、残念。フラれてしまいました」

 

 そう言って俺から離れていった。彼女は時々ああして俺を揶揄ってくるから心臓に悪い。と、そうこうしている内に祐美と小猫ちゃんが戻って来て、作戦開始となった。

 

 配置はイッセーと小猫ちゃんで体育館を占拠。俺と祐美は遊撃、朱乃さんは独自の判断で参戦を許されている。部長とアーシアが本拠地に残り、指示を出す。俺達は各々走り出した。

 

 途中、体育館へ向かう二人と別れ、俺と祐美は運動場へ向かった。その途中、

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)三名、戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

 と、アナウンスがあった。体育館組は上手くやったようだ。俺と祐美は笑みを交わす。だが、次の瞬間、

 

『リアス・グレモリー様の戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

 とのアナウンスにその笑みが凍り付いた。小猫ちゃんがやられた。撃破した直後の隙を狙われたのか、さぞ悔しかっただろう。イッセーが怒り狂ってるのが目に浮かぶようだ。

 いずれにせよ、ただでさえ少ない人数が減らされて喜んでいられなくなった。俺達は気を引き締めて運動場へ向かった。

 

 運動場には見回りをしているのか、三人の人影があった。どうやら俺達には気付いてないようだ。

 俺と祐美は顔を見合わせ頷き合う。三人が俺達の前を通り過ぎたその時、祐美が騎士特有のスピードで襲いかかった。瞬く間に二人を打ち倒すと、突然の事に反応出来ないでいるもう一人を俺がボディブローで眠らせた。

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)三名、リタイヤ』

 

 敵兵士三人を撃破したすぐ後でイッセーが合流した。イッセーによると、小猫ちゃんは敵の女王にやられたそうだ。今、その女王は朱乃さんと一騎打ちの最中らしい。

 イッセーの報告を聞いていると、運動場の真ん中で「正々堂々と戦え!」と宣う敵騎士が現れた。その誘いに祐美が乗った。名乗りを上げ、剣を交わす騎士二人。俺とイッセーは二人の戦いを見守っていたが、そこへ敵僧侶一人と、戦車が現れた。

 イッセーは「あの戦車は俺が。先輩は僧侶を頼みます!」と言うと、【赤龍帝の籠手】を具現化して戦車に立ち向かった。

 残された俺はやる気のなさそうな僧侶に声をかけた。

 

「で? 君はどうする。()るのか?」

 

「お断りですわ。実際私、戦う気なんてありませんもの」

 

 西欧のお姫様が着るようなドレスを着た、金髪縦ロールの美少女僧侶はそう言った。

 俺は彼女の言葉が真実だと感じ、隣でイッセーと祐美の戦いを観戦していた。

 

「いいのか? 主の結婚が掛かった大事なゲームなんだろ?」

 

「それは貴方も同じでしょう? 私は、まあオブザーバーのようなものですから参戦はしませんわ」

 

「オブザーバー?」

 

「申し遅れました。私はレイヴェル・フェニックス。ライザーの妹で、『僧侶(ビショップ)』を務めています」

 

 ああ、そう言えばいたな、そんな娘。

 

「ご丁寧にどうも。俺はリアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』、不破一輝だ。よろしくレイヴェルさん」

 

「よろしく。私もそうですけど、貴方からもやる気が感じられませんわね。リアスさんがお兄様と結婚してもいいのですか?」

 

「これは純血の悪魔を絶やさない為の政略結婚だろ? 悪魔社会の為には寧ろいい事だと言える。政略結婚なんて貴族の義務の内だし、彼女だってそういう教育を受けて来た筈だ。正直リアスがあそこまで結婚を拒否する理由が分からないんだよなあ」

 

「・・・・貴方変わってますわね。以前リアスさんから聞いた話ですが、彼女は恋愛結婚に憧れているそうですわ」

 

「え? それがこの騒動の理由?」

 

「だと思いますわよ」

 

「──クク、」

 

「?」

 

「クク、アハハハッ!」

 

 俺はレイヴェルの話を聞いて思わず笑ってしまった。たかだか恋愛結婚したいが為にこんな騒動を引き起こすとは。

 

「ククク、リアスは分かってるのか? 負ければ即結婚の上、無謀な戦いを挑んだ愚か者として、勝っても貴族の義務を放棄したワガママ姫として、どちらにしても自分の『(キング)』としての評価はガタ落ちだって事に」

 

「おそらく気付いてないでしょうね。今のリアスさんはお兄様と結婚したくない一心なのでは?」

 

「だろうな。いやはや『(キング)』失格だな」

 

「随分はっきりと言いますわね、貴方」

 

「『(キング)』には苦言を呈する者も必要だろ? うちの眷属はイエスマンばかりだからな」

 

「確かに。貴方中々面白い方ですわね」

 

「そうか? まあ誉め言葉として受けておくよ」

 

 そんな風にレイヴェルと話していると、イッセーが『洋服崩壊(ドレスブレイク)』という新技を炸裂させ、戦車の彼女の服をバラバラに弾き飛ばした。

 俺達の間に居たたまれない空気が流れる。

 

「何と言うか、うちの馬鹿がすまない」

 

「・・・・・・最低ですわね」

 

 イッセーはその隙に戦車を撃破。あいつはハーレム王になりたいとか言ってるくせに、女から嫌われるような技を編み出してどうする!? 味方ながら頭が痛くなって来た。すると、

 

「来たようですわね」

 

 レイヴェルが呟くとその背後に四人の人影が。兵士二名に騎士と僧侶一名ずつ。女王を除いた残りのライザー眷属が全員集合してしまった。

 そして告げられる最悪の事態。部長がライザーの誘いに乗って、王同士の一騎打ちを受けてしまったそうだ。何考えてるんだあの人は! 王自らが戦場に出てどうする!? 最早一刻の猶予もない。俺はイッセーに指示を出した。

 

「イッセー行け。部長を守るんだ」

 

「一輝先輩!? でもこの人数相手じゃ」

 

「『(キング)』を取られたら終わりなんだぞ。優先順位を間違えるな」

 

 未だ迷いをみせるイッセーに祐美からも言葉が飛ぶ。

 

「一輝先輩の言う通りよイッセー君。ここは私達に任せて早く!」

 

「くっ、二人共すまん!!」

 

 祐美の言葉に背中を押されて、イッセーが走り出した。

 ライザー眷属は余裕をみせて、イッセーを追おうともしない。俺達を片付けてからでも間に合うと思っているらしい。

 

「フフ、「ここは任せて先に行け!」ですか。物語なんかで良くあるカッコいい場面ですけど、すぐにやられては意味がありませんわよ?」

 

 レイヴェルが見下したように嘲笑(わら)う。

 

「そのつもりはない。俺も祐美もお前らを倒してイッセーを追いかける」

 

「そう。言っておきますけど、一対一なんてしませんわよ。全員でフルボッコですわ」

 

 レイヴェルがそう言い終える前に、騎士の前に一瞬で移動した俺は、拳を軽く彼女に当てる。

 次の瞬間、騎士が吹き飛んだ。

 

『ライザー・フェニックス様の騎士(ナイト)一名、リタイヤ』

 

 みぞおちの辺りに拳大の陥没跡を付けて騎士が退場する。一瞬の出来事にライザー眷属は全員目を丸くしている。

 

「な、何をしたの!?」

 

「不破圓明流【虎砲(こほう)】」

 

 祖父から教わった不破圓明流の技。魔力による身体強化を加えて放った一撃は敵騎士を撃破するに至った。俺は未だ呆然としている獣娘の兵士に襲いかかる。

 

「ニャッ!?」

 

 俺の放った左回し蹴りに反応して、逆方向へ飛ぶ彼女。だが、その方向には俺の右回し蹴りが既に飛び、カウンターで彼女に命中した。

 

「不破圓明流【双龍脚(そうりゅうきゃく)】」

 

 本来双龍脚は圓明流の技ではなく、主人公のライバルの技なんだが、俺を転生させた女神様がアバウトだったらしく、圓明流だけでなく『修羅の門』全般の技を使えるようにしてくれたらしい。現に祖父からは圓明流の技として教わっていた。

 

「よくもやったニャッ!!」

 

 相棒をやられたもう一人の獣娘が、怒りのままに頭上から襲いかかる。俺は拳を頭上に置いて、タイミングを合わせて飛び上がる。拳が当たった瞬間、アッパーの要領で更に拳を叩き込んだ。

 

「不破圓明流【浮嶽(ふがく)】」

 

『ライザー・フェニックス様の兵士(ポーン)二名、リタイヤ』 

 

 アナウンスが流れる。三名の敵眷属を撃破するのに約二十秒。辺りに沈黙が流れる。味方である祐美ですら呆然として俺を見ていた。それらの視線を無視して、俺は残る僧侶に向けて走り出す。

 

「ひっ!」

 

 次の標的が自分だと覚ったのか、ひきつりつつも魔力障壁を張る僧侶。だが遅い。俺は走りながら拾った石を投げる。強化した腕力で投げた石は弾丸のように一直線に飛び、僧侶の魔力障壁を破壊した。

 俺は前方宙返りして、左右の踵落としを叩き込む。

 

「不破圓明流【斧鉞(ふえつ)】」

 

『ライザー・フェニックス様の僧侶(ビショップ)一名、騎士(ナイト)一名、リタイヤ』

 

 見ると、祐美も相手の騎士を倒したようだ。これで残るはレイヴェルを除けば女王とライザーのみ。

 

「・・・・貴方一体何者ですの? とても駒消費一の『兵士(ポーン)』とは思えませんけど?」

 

「生前、武術をかじった事のあるただの『兵士(ポーン)』だよ」

 

 レイヴェルの問い掛けに俺はそう答えた。その時、

 

『リアス・グレモリー様の女王(クイーン)、リタイヤ』

 

 朱乃さんの敗北を知らせるアナウンスが流れる。次の瞬間。俺は祐美に抱き着いた。

 

「祐美!!」

 

「え? きゃあああっ!!」

 

 さっきまで祐美のいた場所に凄まじい爆発が起こる。一瞬遅れていたら、祐美が撃破されていた所だ。

 

「危なかった。大丈夫か祐美?」

 

「は、はい。ありがとうございます、一輝先輩」

 

 頬をほんのり染めて祐美が言った。今の攻撃は間違いなく、

 

「『女王(クイーン)』・・・・!」

 

 空中には残念そうな顔をした敵女王が浮かんでいた。

 

「チッ、逃げられたか」

 

 あいつ、小猫ちゃんと同じ要領で祐美を撃破しようとしてたらしい。同じ手を食うかっての。

 

「先輩。ここは私に任せて行って下さい」

 

「祐美・・・・?」

 

「相手は不死身のフェニックスです。イッセー君だけでは部長を守りきれないかもしれません。だから先輩も行って下さい」

 

 暫し祐美と見つめ合う。彼女の真摯な瞳に俺は決心する。

 

「分かった。あれは任せるぞ」

 

「はい! 部長を、私達の『(キング)』をお願いします!」

 

 俺は頷いて、走り出した。

 

 

 

 

「まだ戦りますの?」

 

 フェニックスの炎の翼を広げ、レイヴェルが隣を飛んでいた。

 

「素質は認めます。数年後ならば貴方達が勝つでしょう。でも、今回は私達の勝ちですわ」

 

「何故そう言い切れる?」 

 

「これまでの戦いで貴方達の体力は限界の筈。いくら元聖女の『僧侶(ビショップ)』が傷を癒やせても、体力まで戻せないでしょう?」

 

 彼女はそう言って懐から小瓶を取り出す。

 

「【フェニックスの涙】。我がフェニックス家の特産品ですわ。その効果は如何なる傷をも瞬時に回復させる事が出来るんですのよ」

 

 つまりこれがあるから自分達の負けはないと言いたいらしい。その後フェニックス家が如何に裕福かを自慢気に話していたが、無視して加速した。後方から金切り声が聞こえた気がしたがこれも無視した。

 

 新校舎に到着した俺は非常階段を足掛かりに飛び上がり、一気に屋上へ到達した。

 そこで俺が見たのは、ボロボロになってもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 ライザーとの一騎打ちを受けて、リアス()とアーシアは新校舎の屋上へ移動した。

 私に宿る滅びの力。これならば不死身のフェニックスをも倒せると思っていた。だけど、滅びの力を宿した魔力弾をいくら放っても悉く再生するライザーに私も打つ手を失くしかけていたその時、

 

「部長ォォォォッ! 兵藤一誠、只今参上しましたぁぁぁッ!」

 

 イッセーが来てくれた。彼は不思議な子。どんな絶望的な状況だろうと、彼がいれば何とかなる。そんな気にさせてくれる、眷属のムードメーカーだ。

 勝負はまだこれから、仕切り直しだ、と私はそう思っていた───

 

 これまでの戦いで身体を相当酷使して来たのだろう、イッセーの体力は既に底を突いていた。彼は悪魔に転生して日が浅い。戦いなんて縁のない生活を送っていたのだ。そんな彼が戦場へ身を置けば、その緊張感から体力や精神力を疲弊させるに決まってる。持ち前の元気とスケベ心で何とか持たせていたが、それも限界だった。

 【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を具現化して力を何倍にして攻撃してもライザーには効かなかった。最初は嘲笑っていたライザーも途中から憐れみの視線をイッセーに向けていた。

 ライザーの炎を食らう度、アーシアに癒されて、また立ち向かう。その様は最早幽鬼のようだった。そして、とうとう力尽き、イッセーは倒れた。それでもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿に私の心は遂に折れた。

 ああ、私は大切な眷属達に何て事をしてしまったんだろう。私のワガママに付き合わせて、こんなに傷だらけにしてしまった。朱乃、祐美、小猫、アーシア、一輝、そしてイッセー。ごめんなさい。駄目な王である私を許して。私は全てを諦め、敗北を認める言葉を口にする。

 

投了(リザイン)───」

 

 その時、腕を誰かに掴まれた。

 

 

 パンッ!

 

 

 乾いた音と共に左頬が熱くなる。顔を上げると、そこには見た事のない険しい表情をした一輝がいた。

 

「一輝・・・・?」

 

 どうして彼がここにいるのだろう。イッセーによれば彼と祐美はイッセーをここへ向かわせる為に残りのライザー眷属全員を相手にしていた筈。彼がここにいるという事は───?

 

「何をしようとした?」

 

「え?」

 

「今、何をしようとしたのか聞いてるんだ。答えろ、リアス・グレモリー」

 

「・・・・・もういいのよ、一輝。このゲームは私達の負けよ。私はもう眷属の皆に傷付いて欲しくないの・・・・」

 

 私がそう呟くと、一輝は怒りのままに私の襟首を掴み上げた。

 

「ふざけるな! アンタのやろうとしてるのは眷属(俺達)全員を侮辱する行為だと分からないのか!?」

 

 どうして? 私はもう諦めたんだから、それでいいじゃない。こんな思いをするなら大人しく婚約を認めるべきだった。

 

「それが嫌だから戦う事を選んだんだろう。まだ眷属(俺達)が諦めてないのに、アンタが真っ先に諦めてどうする!?」

 

 でも、ライザーは強いわ。いくら攻撃しても再生する。不死身のフェニックスには敵わないのよ。

 

「ならアンタは面と向かってあいつに諦めろと言えるのか? 目を見開いて良く見てみろ!」

 

「え?」

 

 一輝にそう言われ、私の目に映ったのは、ボロボロになってもまだ立ち上がろうとするイッセーの姿だった。

 

「い、イッセー!?」

 

 イッセーは呼吸も荒く、身体中血と汗にまみれている。力が入らないのか、身体がフラついているが、それでも目だけは光を失わず、真っ直ぐにライザーを見つめていた。

 

「あいつは馬鹿でスケベで、だけど真っ直ぐな奴だ。アンタが諦めるというのは俺達に、そして何よりあいつに対する裏切りだと思え」

 

「ああ───!」

 

 何という事だろう。私はまた間違える所だった。私が諦めるという事はここまで戦ってくれた皆に対する裏切りに他ならない。私は皆の『王』なのだ。他の誰が折れても私だけは折れてはいけない。私が始めた戦いに私は責任を取らなくちゃいけない。私は強くならなくちゃいけない。もっと心を強く持たなくちゃいけないんだ!

 

「ごめんなさい一輝、そしてイッセー。私が間違っていたわ。私はもう諦めない。このゲーム必ず勝ってみせるわ!!」

 

 涙を拭いて、リアス・グレモリー()は再び立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 一輝()は立ち上がろうとしているイッセーの肩に手を置いた。

 

「イッセー、聞いたか? 俺達の『(キング)』が復活したぞ。もういい。後は任せろ」

 

「か・・・ずき、せ、ん、ぱい・・・・?」

 

「ああ」

 

「・・・・後、は・・・頼、・・・す・・・・」

 

「イッセー!?」

 

「大丈夫、気を失っただけだ。アーシア!」

 

「は、はい!」

 

 気を失ったイッセーを抱えて、アーシアを呼ぶ。

 

「イッセーを頼む」

 

「はい!」

 

 イッセーをアーシアに預けると、俺は部長に訊ねた。

 

「部長。教えて欲しいんだが、何故ライザーとの結婚をそこまで嫌がるんだ? これは政略結婚であり、悪魔社会には必要な事だと理解してるんだろ?」

 

「それは・・・・・」

 

 果たして何と答えるだろうか。やがてリアスは顔を上げ、キッパリと言い放った。

 

「だって・・・・だって私、ライザーみたいな節操のない女たらしは嫌いだもの!私は私が好きになった人と激しい恋愛の末に結ばれたいの!それが子供の頃からの夢なの!文句ある!?」

 

 あろう事か何の脚色もなしに、自分の本心を言い放った。この場で聞いていたライザーもレイヴェルも、アーシアさえ言葉を失っていた。おそらくこの試合を観ている両家の当主と魔王様、退場した両眷属も同様だろう。

 

「───プッ」

 

 静寂が支配するこの場で、

 

「ククク、アハハハハッ!」

 

 俺の笑い声が木霊した。

 

「な、何よう・・・・」

 

 呆気に取られていたリアスは羞恥なのか怒りなのか分からないが、顔を真っ赤にして、ちょっと涙目になっていた。

 

「まさかレイヴェルの言った通りだとは。大当たりだぞ、レイヴェル」

 

 レイヴェルは宙に浮かんだまま、額に手を当てていた。

 

「ククク、なあリアス。アンタこのゲーム、勝っても負けても自分の評価はガタ落ちだって気付いてるか?」

 

「え!?」

 

 気付いてなかったようだ。俺は先程レイヴェルと話した事を説明する。リアスは「あっ!」と口走り、呆然としていた。

 

「あ~笑った。で、どうする? まだやるか、それともやめるか?」

 

 リアスはプルプルと震えていたが、やがて意を決したように吼えた。

 

「やるわよ! どうせ評価が落ちるなら、勝って結婚を回避しなくちゃ何にもならないもの!」

 

 涙目で吼えるその顔を、俺は不意に可愛いと思ってしまった。

 

「了解だ、我が『(キング)』」

 

 俺は愕然としているライザーに向かって歩みを進める。

 

「部長」

 

「・・・・何よ」

 

「皆は呆れるかもしれないが、俺はいいと思うぞ」

 

「え?」

 

「好きな人と恋愛結婚したい。女の子なら誰だって夢見る事だ。なら貫けよ。貫いて好きな人を見つけて恋愛すればいい」

 

「一輝・・・・・」

 

「『(キング)』としての評価なんて後からいくらでも取り戻せる。だからアンタは想いのままに真っ直ぐ進めばいい。その為の力に眷属(俺達)はなる」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 リアス()はライザーと対峙する一輝の姿を見つめる。その大きな背中に自分の心臓が早鐘を打つのを感じながら───

 

 

 

 

 

「よう、フラれたな色男」

 

 ライザーの真正面で声をかけると、ライザーがようやく正気を取り戻した。

 

「くっ、貴様ァ、よくも舐めた口を──!?」

 

 ライザーの台詞の途中で俺は【虎砲】を撃った。

 

「ガハッ!?」

 

 血反吐を吐いて吹き飛んだライザーだったが、次の瞬間、炎が巻き上がると無傷のライザーがそこに立っていた。

 

「舐めた口だあ? 俺の仲間(イッセー)をズタボロにしておいて、ほざくなよ。お前もズタボロにしてやるから覚悟しろ」

 

 殺気を振り撒きながら、俺は宣言する。

 

「ぐっ、そうか・・・・貴様格闘家だったのか」

 

 ライザーは心臓の辺りを擦りながら言った。俺はライザーの様子を観察しながら訊く。

 

「これがフェニックスの再生力・・・・死ぬ程の攻撃を受けると自動的に再生されるのか。しかし、痛みは感じるんだろう?」

 

「ふん! だからどうした!!」

 

 ライザーが両手に炎を纏わせ殴りかかる。当たればかなり熱いんだろうが、その動きは何の訓練もした事の無い素人の動きだった。これならば正直眷属の娘達の方が強い。俺はライザーがフェニックスの不死性のみを頼りに戦って来た奴だと確信した。

 ライザーのパンチが伸びきった所で、俺はクロスカウンターの要領で腕を叩き付け、肘を折った。

 

「グアアッ!」

 

「不破圓明流【獅子吼(ししこう)】」

 

 肘を折られた事などなかったのだろう。痛みにライザーがのたうち回る。だが暫くして炎が巻き上がると、無傷のライザーがそこにいた。

 

「ほう。自分の意志で再生する事も可能なのか。ならば地道に痛みを与え続けるべきか?」

 

「貴様アア!!」

 

 ライザーが激昂する。だがライザーは怖くない。怖いのはフェニックスの不死性だけだ。確かに地道に痛みを与え続ければいずれ心が折れるだろうが、時間がかかりそうだ。

 

「おのれ! 地獄の業火に焼かれて骨も残さず朽ち果てるがいい!!」

 

 炎の翼を広げて、ライザーが空へ舞い上がる。その両手に魔力が集中していく。

 

「この俺を本気で怒らせた事を地獄で後悔しろ!!」

 

 紛れもない全力の魔力砲撃が俺に向けて放たれる。

 

 こればかりは今の俺には防げない。このままではライザーの言う通り、骨も残さず朽ち果てるだろう。

 だから喚ぶ。時空を越えて届けとばかりに、もう一人の自分というべきモノを、俺は喚んだ。

 

「ガイバーーーーーーッ!!」

 

 俺の喚び声と共に、ライザーの炎の魔力砲撃が着弾した。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通り木場が「木場祐美」にTS化しました。
イラストで見て一目惚れした結果、こうなりました。
もう一人重要キャラがTS化する予定です。
誰になるかはお楽しみに。


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第3話 出現! 驚異の強殖装甲



連続投稿の第3話です。

この後はストックがないので間隔が空きます。ご了承下さい。


 

 

「一輝!!」

 

 リアスの叫びは凄まじい爆音に掻き消された。

 ライザーの砲撃で新校舎は斜めにごっそりと熔け落ちていた。焼け焦げた鼻につく臭いのする屋上にライザーは着地した。

 

「ハア、ハア、ざ、ざまあみろ。この俺を怒らせるからこうなるんだ」

 

 荒く息を吐きながらライザーは言う。まるで自分は悪くないと言い訳しているようにレイヴェルには聞こえた。

 

「お兄様、流石にやりすぎでは?」

 

「何を言うレイヴェル。これは試合(ゲーム)中の事故だよ、事故」

 

 兄の言い様に不快感を覚えるレイヴェルだったが、実際手遅れだ。ライザーの全力の魔力砲撃を喰らえば骨も残さず朽ち果てただろう。

 

(面白い人でしたけど、残念ですわね・・・・)

 

 もう少し話をしてみたかったとレイヴェルは思い、悲痛な表情をしているリアスを見つめた。

 

 

 

 

(一輝、そんな・・・・)

 

 自分の不手際で一度は死なせてしまったクラスメイト。クラスでは決して目立つ方じゃなかったけど、困った時は率先して力を貸してくれる優しい人だった。

 自分に対する言動やあの驚異的な武術等聞きたい事は沢山あったのに、彼は自分の前から永遠に消えてしまった。

 恥ずかしくて朱乃以外の眷属に結婚したくない理由を話せなかった。自分の気持ちを包み隠さず話した時、笑われたけど否定はされなかった。寧ろ貫けと、そう言ってくれた。その時感じた気持ちは今まで感じた事のないものだった。彼ともっと一緒にいればこの気持ちが何なのか分かっただろうか? でもそれはもう叶わない。彼は炎の中に消えてしまった。

 沸々とこれまでにない怒りがリアスの心に満ちて来る。

 

(よくも一輝を、よくも私の大切な人を───!)

 

 怒りのままにリアスが魔力を爆発させようとしたその時、

 

 ズシャッ!

 

 何かが着地した音が隣から聞こえた。

 何かと思い顔を上げたリアスの目に映ったのはライザーとレイヴェルの驚愕する表情だった。何を驚いているのかと隣を見上げたリアスは二人と同じ表情をした。

 

「な───!?」

 

 そこにいたのは、異形の鬼神。

 頭頂部には角のようなものが生え、額のメダルが月光を反射して輝いていた。全身は装甲に覆われているが、金属的な感じはなく、まるで甲虫のように何処か生物的に見える。関節部が何かの細胞のようなものに覆われてるのがそれに拍車をかける。とにかく見た事のない異形の存在だ。

 全身を紅の装甲に覆われたその異形の鬼神はリアスをジッと見つめている。その視線に何処か温かいものを感じたリアスは、まさかと思いつつ頭に浮かんだ男の名をそっと呟く。

 

「・・・・・一輝?」

 

 その瞬間、異形の鬼神が微笑んだようにリアスには感じた。

 

「良く分かったな、部長」

 

 その声は紛れもない一輝の声だった。

 

「一輝!!」

 

 今度は満面に喜びを浮かべて一輝に抱き着いた。

 

「良かった無事で!・・・・でもその姿は一体?」

 

「この姿は、まあ俺の【神器(セイクリッド・ギア)】のようなものだ」

 

「貴方の【神器(セイクリッド・ギア)】・・・・」

 

「詳しい話はライザーを倒してからにしよう・・・・

離れてくれ、部長」

 

「うん・・・・気をつけて、一輝」

 

 リアスは一輝から手を離し、見送った。

 

 

 

 

「待たせたなライザー。第二ラウンドといこうか」

 

「貴様・・・・何故生きている!?」

 

「お前の炎程度じゃこの【ガイバー】の【強殖装甲】には通じなかったようだな」

 

「ガイバー? それがその【神器(セイクリッド・ギア)】の名か?」

 

「それを知った所でお前の未来は変わらないぞ」

 

 そう一輝、いやガイバーが言うと同時に額から一条のビームが放たれ、ライザーの額を穿った。

 

「!?」

 

 そして倒れると同時に、炎に巻かれてライザーが復活した。

 

「くっ、何だ今のは!?」

 

 何をされたか全く分からない内に倒されてライザーは混乱していた。だがガイバー(一輝)は何も答えず勝手に話を進める。

 

「不死身ってのはいいよな。お陰でお前を──何度でも殺せる」

 

「!!?」

 

眷属(仲間)達の分までたっぷり返させて貰うぞ、ライザー!!」 

 

 一瞬でライザーの前まで来たガイバー(一輝)は腰部の重力制御球を発動させ、重力を纏った拳【グラビティ・ナックル】を放つ。

 

「まずは小猫ちゃんの分!」

 

「ガハッ!!」

 

 拳が突き刺さると、炎が巻き上がりライザーが復活する。

 

「くっ、おのれ!」

 

 次にガイバー(一輝)は両腕の突起を伸長させ、【高周波ソード】を発動する。

 

「次は朱乃さんの分!」

 

 【高周波ソード】がライザーの両腕を斬り落とす。

 

「ぎゃああああっ!!」

 

 蹲るライザーが炎に巻かれて、復活する。

 

 次にガイバー(一輝)は再び重力制御球を発動させ、重力を腕に集中、【プレッシャーカノン】を発射する。

 

「これは祐美の分!」

 

「グハッ!!」 

 

 身体中に大穴を空けライザーが倒れるが、再び炎に巻かれて復活する。心なしか炎の勢いが弱い。

 

 次にガイバー(一輝)は額のメダルの上にある器官から【ヘッドビーム】を数発発射する。

 

「これはアーシアの分だ!」

 

 頭部を穴だらけにされライザーが倒れるが、再び炎に巻かれて復活する。やはり炎が弱くなっている。

 

「うぐ、く、くそ!」

 

 次にガイバー(一輝)は重力制御球を発動させ、宙を飛ぶ。そのまま足に力場を纏わせ、【グラビティ・キック】を放つ。

 

「これはイッセーの分だ!」

 

「ぐああああっ!!」

 

 【グラビティ・キック】の威力にライザーが吹っ飛ぶ。倒れたライザーは再び炎に巻かれて復活するが、炎の勢いは益々弱くなっていた。

 そして復活したものの、ライザーは倒れたまま動かなくなった。

 

「どうするライザー、投了(リザイン)するか?」

 

 その一言がライザーに再び火を点けた。そしてライザーは炎の翼を広げて宙に舞う。

 

「ああああっ!! 貴様許さん、許さんぞ!!」

 

 空に舞い上がったライザーはどうすればガイバー(一輝)に勝てるかを必死に模索する。そして見付けた。ガイバー(一輝)の後方で戦いを見守るリアスと倒れたイッセーを治療するアーシアの姿を。

 

「ククク、そうだ。これはゲームなんだから、先に『(キング)』を取られた方が負けなんだ!!」

 

 ライザーは自分に残った全ての魔力を集中させ、先程よりも大きな炎を作り出す。全身に炎を纏わせたその姿はまさしく伝説の不死鳥(フェニックス)のようであった。

 

「喰らえリアス、お前の負けだあああっ!!」 

 

 

 

 

 ライザー・フェニックスは冥界のエリートだった。

 72柱の名門フェニックス家の三男として生まれ、ゲームではフェニックスの不死性により連戦連勝。負けたのは家同士の付き合いによる接待試合だけで、実質無敗を誇って来た。

 眷属も全員が美女、美少女のハーレムを築き上げ、当然の如く全員抱いていた。まさに順風満帆であったが、ひとつだけ懸念する事があった。それが自分の地位であった。

 家督は長兄が継ぎ、次兄はその補佐に当たる事が既に決定していて、今のままでは自分は所詮フェニックス家の三男でしかない。その事を不満に思っていた矢先に同じ72柱のグレモリー家との婚約話が舞い込んで来た。

 グレモリー家は魔王を輩出した家系で、それを機に発展し、現在ではフェニックス家よりも勢力の強い家だ。婚約相手のリアス・グレモリーは次期当主に指名されている有名な才女であり、尚且つライザー好みの美少女だった。

 ライザーからすればこの話は自分の地位を向上させ、好みの女をモノに出来る上、数少ない純血の悪魔の血を残すという、悪魔社会にも貢献出来るメリットしかない、すぐにでも乗るべき話であり、事実二つ返事で引き受けた。

 唯一の懸念があるとすれば、当のリアスが自分との婚約を拒否している点だが、そんな物結婚してしまえばどうにでもなる。リアスは自分の眷属が女ばかりで、皆に手を着けているのが気に入らないらしいが、そんなのは処女故の潔癖症なだけで、一度抱いてしまえば気にならなくなるだろうと、リアスの豊満な身体を自分のモノに出来る日を楽しみにして来た。

 だが、リアスは頑なに自分との婚約を拒否し続け、このままでは情愛深い事で有名なグレモリー家当主も意見を変えかねなくなって来た。焦ったライザーは父に働きかけ、一気に話を進めようとして今回の騒動と相成った。

 グレイフィアの提案でゲームによる勝敗で決着を着ける事になったが何の心配も無かった。自分は眷属全員が揃っており、ゲーム経験者。対するリアスは眷属が六人しかいない上にゲーム初心者だ。ましてや自分は不死身のフェニックス。これで負けると思う方がおかしい。確かにリアスの眷属には二つ名持ちの女王や複数の【神器】持ちがいて侮れないが、あくまで将来的にはだ。現時点で恐れる者は何も無い筈だった。

 ノーマークだった駒消費一の兵士に眷属を五人も撃破され、今、王たる自分が追い詰められている。妖しげな武術を使うだけでなく、鎧のような【神器】まで持っているなんて何の情報も無い上に、その戦闘力はまさに驚異だ。一試合でこれだけ復活した事など無い。大抵は二、三度復活して見せれば、自分の攻撃が効かないと諦める物なのに、こいつは何度でも殺せると嬉々として攻撃して来る。その与えられる痛みや恐怖にライザーの心は折れかけていた。

 フェニックスは不死ではあるが滅せない訳では無い。神クラスの圧倒的な一撃で叩き潰すか、何度も倒し続けて精神を疲弊させれば復活出来なくなるのだ。

 最早形振り構っていられないとばかりにライザーは後方で試合を見守るリアスを狙う。王であるリアスを撃破すればこのゲームは終わる。ただそれだけを考えてライザーは炎の魔力を放った。

 

 

 

 

「ちっ、追い詰め過ぎたか!?」

 

 ライザーの狙いが自分ではなくリアスであると気付いたガイバー(一輝)は魔力を足に集中させると、魔力による身体強化とガイバーを纏う事による強化の相乗効果により、瞬間移動と見紛うスピードでリアスの前に現れた。

 

「! 一輝!?」

 

「部長はそのままで。大丈夫、必ず守る」

 

 一輝の声に確かな自信を感じて、リアスはそのまま動かずにいた。自分を狙った攻撃が迫っているというのに、リアスの心は不思議と落ち着いていた。

 

「ええ。貴方を信じるわ、一輝」

 

 リアスの信頼を込めた言葉に一輝の心は高揚していた。それは己が王を危機から守ろうとする『悪魔の駒(イーヴィルピース)』が作用しているのか、自分がリアスから信頼される喜びから来るのか一輝には分からなかった。唯一つ分かるのは自分の内に今までになかった想い(ちから)が充ちている事だった。

 ガイバー(一輝)は自ら胸部装甲を左右に引き剥がす。そして、胸部に宿る太陽の如き光をライザーに向かって撃ち放った!

 

 

「最後にこれは、お前に散々嫌な思いをさせられたリアスの分だ!!」

 

 

 【胸部粒子砲(メガスマッシャー)】。ガイバー最大の攻撃が光の奔流となってライザーに襲いかかる。

 

「バ、バカなああああーーーーっ!?」

 

 光の奔流はライザーの炎を飲み込み、真っ直ぐにライザーへ伸びて行く。そしてライザー自身をも飲み込むと、夜空の彼方へと消えていった。

 

 しばらくすると、空から残り火のような小さな火が落ちて来た。屋上に落ちた火は燃え広がり、ライザーの肉体を構成すると消えてしまった。

 

「お兄様!?」

 

 レイヴェルが駆け寄り様子を見ると、ライザーは完全に意識を失っていた。

 

 

『ライザー・フェニックス様のリタイヤを確認。よってこのゲームはリアス・グレモリー様の勝利です!』

 

 

 グレイフィアのアナウンスが響く中、リアスは殖装を解いた一輝に抱き着いた。

 

「ありがとう!ありがとう一輝!!」

 

 涙を浮かべ自分に抱き着くリアスを軽く抱き返して一輝はポツリと呟いた。

 

「あっ、俺の分を返すのを忘れてた」

 

 そんな一輝の言葉にリアスは苦笑を浮かべた。

 

「もう。あれだけボコボコにしたのにまだ足りないの?」

 

 そんな一輝にリアスは破顔しつつ、両手で一輝の顔を挟むと、

 

「部長? ───んむっ!?」

 

 次の瞬間、リアスは自らの唇を一輝のそれと重ねた。

 突然の事に狼狽える一輝だったが、たっぷり数十秒もの間、初めての甘い感触に酔いしれた。

 

「───ぷはっ」

 

 その間息を止めていたのか、唇を離した途端、リアスは大きく息を吸った。

 

「き、今日頑張ってくれたお礼よ。その、人間界ではファーストキスって大切な人にあげるものなんでしょ? わ、私も初めてだから、その、そ、そういう事で、ね」

 

「あ、ああ・・・・・」

 

 何がそういう事なのか一輝には今ひとつ分からなかったが、取り敢えず、顔を真っ赤にして想いを伝えるリアスは殺人的に可愛かった。

 

(そんなつもりじゃなかったんだけどなあ・・・・)

 

 そんな事を考えていると、

 

「ああああああーーーーーっっ!!」

 

 目を覚ましたらしいイッセーの叫び声が聞こえた。

 そちらを見ると、顔を真っ赤にしたアーシアと愕然とした表情のイッセーが口をパクパクしていた。

 

「イッセー、目を覚ましたのね」

 

「起きたかイッセー」

 

 リアスと一輝が声をかけるが、イッセーはまるで聞いておらず、

 

「一輝先輩、そりゃないっすよおおおおおーーーーっ!!」

 

 イッセーの悲痛な叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

 

「いやはや、こういう結果になるとは・・・・フェニックス卿、申し訳ないが今回の話は無かった事に」

 

 紅髪の紳士がそう言うと、もう一人の金髪の紳士が答える。

 

「良い話でしたが、致し方ありませんな。リアス嬢は自らの力で自らの望みを勝ち取ったのですから。・・・・それにしてもあの『兵士(ポーン)』の彼。彼には礼を言わなければいけませんな」

 

「ほう? それはまたどうして?」

 

「息子はフェニックスの不死性を過信しすぎてましたからな。今回の敗北はあやつにとって良い薬になるでしょう。それにしても彼のあの力、あの武術といい、あの【神器(セイクリッド・ギア)】といい、何者なのでしょうな?」

 

「確かに。お前は何か聞いてないのか、サーゼクス?」

 

「いえ、何も聞いてません。恐らくリアスも知らなかったのではありませんか、父上」

 

 その部屋にいたもう一人、紅髪の青年が答えた。

 

「ふむ、力を隠していたという事か。だとしたら何故だろうな?」

 

「さて・・・・いずれにしても彼とは一度話をしてみたいものですね」

 

 紅髪の青年は何処か楽しそうに呟いた。

 

「いずれにせよグレモリー卿、リアス嬢は良い眷属を持った。『雷の巫女』を始め、何人もの【神器(セイクリッド・ギア)】使い。そして何より『赤龍帝』とあの『ガイバー』、これからの冥界は面白くなりそうですな」

 

「ハハハ、いや、恐縮です」

 

 グレモリー家とフェニックス家の両当主が和やかに語り合う中、紅髪の青年───四大魔王の一角、サーゼクス・ルシファーは一人思案を巡らせる。

 

(赤き龍が目覚めた。ならば白き龍もいずれ姿を現すだろう。それにしても『ガイバー』のあの力。現時点で既に上級悪魔に匹敵する。・・・・見極めねばならんな、彼を)

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で今日から私もこの部屋に住むから。よろしくね、一輝!」

 

「いや、どーいう訳だよ?」

 

 あのゲームの夜からしばらくして、部長が俺の部屋に押しかけて来た。俺の部屋よりあんたが住んでる部屋の方が確実に広くて住みやすいだろうに、何故だ?

 

 

 

 

 あれから部長とライザーの婚約は正式に破談になった。ライザーはあの敗北以来、ショックで自室に閉じこもっているそうだ。

 

 リアスの『王』としての評価は思ったより落ちなかった。どうやら『赤龍帝』であるイッセーと『ガイバー』である俺を眷属にした事が評価に加算され、差し引きで若干マイナスになった程度で収まり、彼女もホッとしていた。

 

 眷属の皆も元気だ。リタイヤした朱乃さんと小猫ちゃんの怪我もアーシアの【聖母の微笑み(トワイライトヒーリング)】の能力で全快した。祐美もライザーの『女王(クイーン)』と戦いながら、軽傷ですんでいた。

 一番重傷だったイッセーだが、いくらアーシアでも身体の傷は治せても心の傷までは治せないようで、落ち込んでいた。よっぽど部長が俺にキスしたのがショックだったらしい。まあイッセーの事だからエロい事があればすぐに復活するだろうから、心配はしていない。 

 

 俺の力については大まかに説明しておいた。両親を事故で亡くして祖父に引き取られ、祖父の元で「不破圓明流」を教わった事。今まで使わなかったのは「不破圓明流」が人殺しの技だからと説明しておいた。事実、その威力を目撃した部長や祐美はこの説明で納得してくれた。

 「ガイバー」については自分にも良く分からない、悪魔に転生してから使えるようになった【神器】のような物だと説明した。イッセーも悪魔に転生してから【赤龍帝の籠手】を使えるようになったので、これについても取り敢えず納得してくれた。

 皆に嘘を吐くのは心苦しいが、転生特典で謎の女神様に貰ったとは流石に言えない。あの女神様がどの神話体系に属するのか分からないし、完全に外なる神(アウター・ゴッズ)だった場合、益々ややこしくなりそうなので、黙っている事にした。

 

 

 

 

「で、何でだ?」

 

「だって・・・・こういうの憧れてたんだもの」

 

「こういうの?」

 

「だから、その、好きな人と一緒に暮らすのが・・・・」

 

 俺はその大胆な行動力に頭を抱えた。

 

「だからっていきなりすぎるだろ」

 

「そうかもしれないけど・・・・でも一輝は貫けって言ってくれたわ。一輝は私と暮らすのは、嫌?」

 

 不安そうな上目づかいで見上げる部長。くっ、反則だ。可愛すぎだろ!

 

「別に嫌って訳じゃ・・・・」

 

「ホント!? ならいいわよね♪」

 

「・・・・ああ」

 

 俺から言質を取ると、部長は「やったあ!」とウキウキしながら荷ほどきを始める。取り敢えず物置にしている部屋を片付けるとしようか。

 

「ところで部長」

 

「リアス」

 

「え?」

 

「だから、私の事はリアスって呼びなさい」

 

「・・・・何で?」

 

「ゲームの時は散々リアスって呼び捨てにしてたじゃない。だから貴方には今後もそう呼ぶのを許すわ。・・・・ううん、そうじゃない。私が貴方にそう呼んで欲しいの。駄目?」

 

 だからそれは反則だ。俺はため息をひとつ吐くと、改めて部長───リアスを見つめた。

 

「分かったよ、リアス」

 

「ええ、一輝!」

 

 リアスは輝くような笑顔を見せた。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

まずはリアスがヒロイン化しました。
次回は初のエロ回になる予定です。お楽しみ。


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第4話 薔薇色の新生活☆(朱乃)


まさかのタイトル別週間総合評価1位!
思いがけない好評価に驚きました。
皆さんありがとうございます。
これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。

今回は初のエロ回。エロを書くのは初めてなので、楽しんでもらえたらいいのですが・・・・
尚、エロがある回にはタイトルの横に☆印を、本番がある回には☆☆印を付ける事にしますので、ご了承下さい。

それでは第4話をご覧下さい。




 

 柔らかい温もりに包まれて一輝()は目を覚ました。

 衣更えを間近に控え、蒸し暑くなって来た昨今だが、明け方はまだ少し肌寒い。そんな中、この温もりは何物にも代え難い。ましてやこの柔らかな感触と甘い匂いが加われば、起きるのが勿体なく思える。

 そこまで感じてはたと気付いた。感触?甘い匂い? 何故そんなものを感じるんだ? そこでようやくハッキリと目を覚ました俺は、左隣りにいる彼女に目を向けた。

 

「リアス・・・・・・」

 

 いつの間に潜り込んだのか、俺の主である紅髪の美少女、リアス・グレモリーが幸せそうな寝顔で抱き着いていた。

 彼女が同棲というか、俺の部屋に押しかけてから一週間が過ぎた。彼女の部屋は別に用意したというのに、俺が眠りに就くといつの間にか俺の寝床に潜り込んでいるのだ。それもほぼ毎日、全裸でだ。

 流石の俺も彼女が好意を持ってくれてるのは分かるし、正直に言えば俺も彼女に惹かれている。だからって毎晩全裸で男の寝床に潜り込むのはどうだろうか。

 彼女は冥界の貴族グレモリー家の次期当主。つまりは本物のお姫様だ。そんな娘に下僕である俺が迂闊に手を出せばどうなる事か。明るい未来が待ってるとは思えない。

 よって俺はご馳走を前におあずけを食うしかなく、彼女の裸体を目に焼き付け、空しく自家発電に勤しむ日々を送っていた。

 

 いつものようにため息を吐いて彼女を見つめる。相変わらず彼女は美しい。こんなに美しい娘に好かれるなんて男冥利に尽きるが、一体彼女は俺の何が気に入ったんだろう。ゲーム中は結構暴言も吐いたし、乱暴な口調で名前を呼び捨てにもした。確かにゲームに勝利をもたらしたのは俺だが、そんな事で惚れたらチョロ過ぎるだろ。

 そんな事を考えていると、視線を感じたのかリアスがゆっくりと目を覚ました。目を開いた彼女は俺に視線を固定すると、花が咲いたような笑顔を見せた。

 

「おはよう、一輝」

 

 彼女は俺の首に両手を絡めて唇を重ねる。甘く柔らかな感触にしばし酔いしれてから唇を離した。

 

「おはよう、リアス」

 

 朝の挨拶を交わして彼女の紅髪を手櫛で軽く梳る。リアスは心地良さそうに微笑みながら、俺の胸に頬を寄せた。

 

「ふふっ♪」

 

「どうした?」

 

「ううん。ただ、幸せだなあって思って・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 しばしそのままでいた俺達だが、やがてリアスが名残惜しそうに身体を離した。

 

「さて、シャワーを浴びて来るわ。シャワーを浴びたら朝食を作るから少しだけ待っててね♪」

 

 彼女はそう言って、再び触れるだけのキスをすると、バスルームに歩いて行った。

 これがここ最近の毎朝の出来事だ。さて、今の内に自家発電に励むとするか。

 

 

 

 

 

 朝食を摂り、二人で登校する。

 外に出るとリアスが自然に腕を組んで来る。初めて二人で登校した時、歩き難いから勘弁してくれと言ったら世界が滅亡したかのような絶望的な顔をされたので、諦めて好きにさせている。

 

「おはようございます。部長、一輝君」

 

「あら、おはよう朱乃」

 

「・・・・・おはよう朱乃」

 

 しばらく二人で歩いていると、いつもの場所で朱乃が待っていた。

 あのゲームの後、俺がリアスを呼び捨てしてるのを知ると、朱乃にも呼び捨てして欲しいと懇願された。最初は抵抗があったのだが「王を呼び捨てにするなら女王の私も」と押し切られてしまった。

 リアスが俺の部屋に押しかけてから、朱乃は毎朝の登校時にここで待っていて三人で登校している。それだけならいいのだが、朱乃もまたリアスの反対側で腕を組んで来るのだ。しかも鞄を持ったままでは腕を組めないので、彼女が俺の鞄を持って登校するのだ。

 つまり俺は自分の鞄を朱乃に持たせ、二人の美少女と腕を組んで登校している事になる。その美少女が学園でも人気の「二大お姉様」だとしたら? そんな奴が周りからどう見られるかは説明しなくても分かるだろう。

 

「ねえ朱乃? 私は一輝と二人で登校するから迎えはいらないって言ったわよね?」

 

「ええ、言いましたわね」

 

「だったら!」

 

「ですが私にも『女王(クイーン)』としての責務がありますから。そう思いませんか、一輝君」

 

「そんな事ないわよ! 『(キング)』の命令の方が絶対でしょ、一輝!」

 

「・・・・・・」

 

 とまあ、こんな風に仲良くケンカしながら登校してると、当然こうなる。

 

「ああ、俺のリアスさんがあぁ!」

「くっ、俺の朱乃さんがあんな奴に!?」

「何故お姉様方があんな根暗に!?」

「・・・・・・殺す」

 

 男女問わない嫉妬の視線がいくつも俺に向けられる。

 彼等の怨嗟の声が聞こえて来るようだが、リアスも朱乃も有象無象の声など気にしませんとばかりに二人で言い合っている。ていうか何故お前もそっち側にいる、イッセー。

 逃げたくても両腕をガッチリ二人に組まれている為逃げられない。更には二人の爆乳が両腕に触れて、えも言われぬ心地良さも感じている。

 ここ最近、俺は登校時に地獄のような幸福な時間を味わっていた。

 

 

 

 

 

 昼休み。リアスに呼び出され部室へ行くと、イッセーとアーシア以外の全員が集まっていた。そして、部室内には俺達眷属以外にもゲストが二人───男の方は知らないが女の方は知っている。この駒王学園の生徒会長、支取蒼那さんだ。

 

「こんにちは、不破君」

 

「・・・・こんにちは、支取会長」

 

 何故この二人が部室にいるのだろうか? そう訝しむ俺だったが、二人から魔力を感じたので隣にいた祐美に聞いてみた。

 

「祐美、この二人ひょっとして・・・・?」

 

「分かりますか一輝先輩。そうです。あのお二人は私達と同じ悪魔です」

 

 そう言われて俺は原作を思い出した。すると、部室にイッセーとアーシアが入って来て、リアスが二人を紹介した。

 支取蒼那会長は本名ソーナ・シトリー様。グレモリー家と同じ72柱の上級悪魔で、リアスの幼馴染みかつ親友でもある。彼女の姉も四大魔王の一人、レヴィアタン様だ。

 連れの男は匙元士郎。駒王学園の二年生で、ソーナ会長の『兵士(ポーン)』。俺達と同じく最近悪魔になったばかりの新人だそうだ。

 どうにも居丈高な奴で、自分達が悪魔だと感じ取れなかったイッセーを鼻で笑うような真似をして、ソーナ会長に怒られていた。

 こいつも確か(ドラゴン)の【神器(セイクリッド・ギア)】持ちだった筈。同じ龍の【神器】持ちであるイッセーにライバル意識でもあるのか、やけに挑戦的な物言いをしていた。

 だがこれはいけない。この場は両眷属の新人同士の顔合わせの場であって、決して力を誇示する場ではないのだ。匙の物言いは両眷属の友好を崩し、尚且つ主に恥を掻かせる行為でもある。

 案の定、匙はまたソーナ会長に怒られた。その時に会長自ら俺達の事を紹介したが、俺がライザーを倒したと聞くと、目を丸くしていた。

 こうして顔合わせは終わった。因みに現生徒会メンバーは全員ソーナ会長の眷属だそうで、近い内に紹介してくれるそうだ。

 

 

 

 

 

 放課後。オカ研のメンバーは何故か全員が俺の部屋に来ていた。

 先日のライザー戦の映像が編集し終わったので、反省会を兼ねて皆で観ようという事になったのだ。それはいいのだが、何故俺の部屋で観る必要があるのだろう。

 リアスによると、毎月一回、旧校舎の清掃を使い魔にさせているらしい。今日がその日であり、部室が使えないから俺の部屋で反省会をしようというのだ。

 分かるようなよく分からない理由で部屋を占拠された俺は、取り敢えず人数分のお茶を煎れようとキッチンに向かう。だがそこには既に朱乃がお茶を煎れていた。

 

「キッチンお借りしてますわね」

 

 朱乃がいつもの朗らかな笑顔で言う。

 

「ああ。お客さんにやらせてしまって悪いな」

 

 俺はお茶受けに買い置きしてあったポテチの大袋を器に明け、朱乃が煎れてくれたお茶と共にリビングに持って行った。これで準備完了だ。

 

「それじゃあ始めるわよ。取り敢えず通しで一回観て、気になる所は後から話し合いましょう。それでは、VTRスタート!」

 

 リアスがリモコンを操作して、映像が再生される。

 

 

 

 

 

 ラストシーンが終わり、エンディング曲と共にスタッフロールが流れている。

 俺は今、居たたまれない気持ちで一杯だった。

 序盤はともかく、中盤ではイッセーと祐美が戦っているのにレイヴェルと談笑しているのを白い目で見られ、そうかと思えば、ライザーの眷属四人を瞬く間に倒すと、直接見ていた祐美以外は目を丸くしていた。

 そして終盤、リアスの頬を張ったり、結婚したくない理由を聞き大笑いしたり、挙げ句の果てにガイバーに殖装してライザーを殺しまくる等、要するにはっちゃけ過ぎたのだ。

 しかもこのビデオ、ラストシーンは俺とリアスのキスシーンで幕を閉じているのだ。

 

 

「散々貶してから肯定する。落として上げるとはテクニシャンですわね、一輝クン?」 

 

 いや、そんなつもりはなかったんデス、朱乃サン。

 

「私の分も焼き鳥男をブッ飛ばしてくれて、スッキリしました」

 

「そうね。『これは祐美の分!』って言ってくれて嬉しかったです、一輝先輩」 

 

 そう、良かったね。でも、あんまり繰り返されると恥ずかしくて胸が痛いから勘弁して下さい、祐美サン、小猫サン。

 

「はわわ、やっぱりすごいです。でもちょっと怖いです・・・・」

 

 ああ、怖がらせてごめんね、アーシア。

 

「ううう、部長の、部長の唇があ~~~(泣)」

 

「あの時の一輝・・・・・・うふっ❤」

 

 ラストシーンを思い出してトリップすんな、イッセー、リアス・・・・イッセーは取り敢えず涙と鼻水を拭こうな。だから垂れ流すな、拭け!

 っていうか、誰だよこんな風に編集したのは?・・・・・・って、グレイフィアさんかよ! スタッフロールが流れたけど撮影、演出、編集、音楽、効果、全部あの人だよ! 暇なのかあの人!? 無駄に技能が高いな!?

 

 とまあ、こんな風に収拾が付かなくなり、最早反省会どころではなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 しばらくして、ようやく反省会を再開した。

 皆はビデオを観ながら色々と話し合っている。ビデオを観て各々に思う所があったようだが、眷属(俺達)の想いはひとつ、「もっと強くなりたい」であった。今もどうすればもっと強くなれるか、真剣に話し合っている最中だ。 

 その間に俺はトイレに立った。戻る途中で自室に人の気配を感じ、ドアを開けると、

 

「朱乃?」

 

 中にいたのは朱乃だった。朱乃は悪戯が見つかった子供のような顔をしていた。

 

「うふふ、見つかってしまいました」

 

「・・・・何してるんだ、人の部屋で?」

 

 俺が訝しんで聞くと、朱乃はベッドに腰掛け、

 

「・・・・少し話をしませんか?」

 

 そう言って自分の隣をポンポンと叩いた。何か話があるらしいと踏んだ俺は指定通り、朱乃の隣に腰を下ろした。

 

「で? 話って何だ?」

 

「・・・・この部屋、一輝君だけじゃなくてリアスの匂いがします」

 

「!!」 

 

 その一言で俺の呼吸が止まった。

 

「・・・・そりゃあまあ、一緒に暮らしてるんだから当然じゃないか?」

 

 俺は何とか誤魔化そうとしたが、

 

「・・・・ベッドの中が一番匂いが濃いんですけど?」

 

 あっさり撃沈した。ていうか嗅いだのか?人のベッドの匂いを!?

 

「それは・・・・」

 

 必死に誤魔化そうとする俺を横目に、朱乃がクスリと笑った。

 

「(クスクスッ) ごめんなさい、分かってますわ。リアスが勝手に潜り込んで来るのでしょう? あの娘とは長い付き合いですから、あの娘のやりそうな事位大体予想が着きますわ」

 

 どうやら揶揄われていたらしい。

 

「でも一輝君も大変ですわね。リアスは裸じゃないと眠れないし、側にあるものに抱き着く癖がありますから」

 

 流石親友。良く分かっている。朱乃の言葉に俺はうんうんと頷く。

 

「かと言って主であるリアスに手を出す訳にもいきませんもの、お辛いでしょう?」

 

 俺は理解者を得た喜びに、更に強く頷いた。

 

「・・・・だからですのね。この部屋に栗の花の匂いがするのは」

 

「!?」

 

 その一言で再び呼吸が止まった。俺は錆び付いたロボットのように、ぎこちなく首を朱乃の方へ向ける。朱乃はネズミを痛ぶる猫のようなドS全開の笑顔で俺を見ていた。

 

「一輝君。おなにい、しましたね?」

 

 反論しようと思えば出来た筈だ。「年頃の男なんだから当たり前」とか「そんなの誰だってやってる」なんて。だが何も出来なかった。同い年の女の子に自分がオナニーしていた現実を突きつけられるのがこんなに居たたまれないとは思わなかった。

 何も言えず、意気消沈する俺に朱乃は先程とは正反対の聖母のような慈しみのある笑みを浮かべて言った。

 

「ごめんなさい。責めてる訳じゃないんです。ただ事実を知りたかっただけなの。だからそんなに落ち込まないで。ね?」

 

 そう言われ少しだけ持ち直したが、朱乃の顔を直接見る事は出来なかった。

 

「そうよね。リアスが毎晩全裸で抱き着いて来るのに、何も出来ないんですもの。溜まってしまいますわよね・・・・それなら、私に任せて下さい」

 

 エ? イマナンテイッタ?

 

「主であるリアスに手を出すのはマズいですが、私なら問題ありませんわよね?」

 

 チョット、アケノサン?

 

「大丈夫。経験はないけど、やり方なら大体知ってますから」

 

 そう言って朱乃は頬を染めて、ピッタリと俺にくっついた。彼女のリアス以上の大きさを誇る胸の柔らかな感触やリアスとは違うどこか蠱惑的な匂いが俺を刺激する。

 

「ちょっと待て! 落ち着け朱乃!!」

 

 これ以上はマズいと朱乃から距離を置こうとしたが、彼女が俺の太股に手を当て、動きを封じる。

 

「朱乃!「──それとも、私じゃイヤ?」─!?」

 

 声を荒げようとしたが、朱乃の言葉と憂いを帯びた表情に全てを封じられた。そんな事ある訳ない。朱乃はリアスと同じか、それ以上に魅力的な美少女だ。そんな彼女にここまで言わせてしまうなんて、俺は何をやってるんだ? もう体裁を取り繕うのはやめだ。自分の欲望に正直になろう。

 

「・・・・いいんだな?」

 

「はい❤」

 

 そう言われて、俺は彼女に全てを任せた。

 

 

 

 

 

「うふふ、ズボンの上からでも分かります。こんなに硬い・・・・」 

 

 朱乃の右手がズボンの上から一輝のモノを擦る。その刺激に一輝のモノはどんどん硬く、大きくなっていく。一輝はズボンの上からの刺激に物足りなくなり、朱乃に続きを促す。

 

「朱乃、早く」

 

「うふふ。はい、分かりましたわ」

 

 朱乃は蠱惑的な笑みを見せてズボンのファスナーを下ろすと、中に手を突っ込み、一輝の肉棒を引きずり出した。

 

「!ふわっ、・・・お、大きい・・・・」

 

 引きずり出した肉棒の大きさに思わず声を上げる朱乃。初めて見た屹立した男性器。その迫力に知らず知らずにゴクリと喉が鳴った。

 

(えええーーーっ、こ、こんなに大きいの!?・・・・は、挿入(はい)るのかしら、こんなの?)

 

 想定外の一輝の大きさにまじまじと見つめる朱乃に一輝は焦れて催促する。

 

「朱乃」

 

「! は、はい! それでは始めますね・・・・」

 

 朱乃は一輝の肉棒を握ると、前後に擦り始めた。

 

「・・・はあ、はあ、ん・・・ゴクッ、はあ、はあ・・・・」

 

 シュッシュッと朱乃の手が肉棒を擦る音がする。初めて触る男性器の硬さと熱さ、そして生臭いすえた臭いに朱乃は興奮の度合いを深め、自然に呼吸が荒くなっていく。

 

「もっと強く握ってくれ」

 

「! は、はい!」

 

 一輝の催促に朱乃は握る力を強め、擦り続ける。

 

「───あっ、」

 

 やがて一輝の肉棒から先走りが滲んで朱乃の手を汚し始める。先程からの乾いた音からニチャニチャと濡れた音に変わっていく。

 

(男の子も気持ちいいと濡れるんだ・・・・)

 

 知識として知っていた現象を目の当たりにし、尚且つ自分が一輝を気持ちよくしてる事に気を良くした朱乃は夢中になって手を動かす。

 だが一輝が射精する気配は一向に訪れない。先走りは大量に溢れ、朱乃の手を汚し続けているのに、肝心の射精には至らないようだった。

 そして一輝は次の指示を出す。

 

「朱乃、舐めてくれないか?」

 

「!・・・・・・はい」

 

 朱乃は一旦手を止めて、ベッドから降りて床に直接座る。

 

 ──クチュッ!

 

 股間が床に触れた時、小さく、だが確実に濡れた音がした。

 

(嘘───私、濡れてるの!?)

 

 まだ一輝の肉棒を擦っただけ。自分は何もされていないというのに、朱乃の股間は既に熱い蜜を滴らせていた。その事に驚き、動きが止まると、

 

「朱乃?」

 

「は、はい。ただ今!」 

 

 一輝の声にビクリと反応して、朱乃は行為を再開する。一輝の股間に身体を入れて、先走りが零れる亀頭に舌を這わせる。

 

「───ん、ちゅ、レロ、レロ、・・・んちゅ、ちゅ」

 

 零れる先走りを舐め取るように亀頭に満遍なく朱乃は舌を這わせる。やがて亀頭だけでなく、肉棒自身にも舌を這わせ、しばらくすると一輝の肉棒は朱乃の唾液で満遍なくコーティングされていた。

 

「───ん、ん、ちゅ、んむ、ちゅ、んあ、あん」

 

 一輝の肉棒を舐めている内に、最初は臭いと思っていた肉棒の臭いがたまらなくいい匂いに思えて来た。そう思うのと同時に、自分の股間からも大量の蜜が溢れて来るのを朱乃は感じていた。

 

(ああ、この匂いたまらない。硬くて、熱くて、臭くて、最高に感じちゃう───!)

 

 いつしか朱乃は舌で肉棒を舐めながら右手で一輝の肉棒を擦り、左手では自分の股間をまさぐるようになっていた。

 

(あ、すごい、気持ちいいーーーっ!)

 

 すっかり官能の虜となった朱乃に一輝の更なる指示が飛ぶ。

 

「ん、朱乃、咥えてくれ」

 

「んちゅ、ふぁい」

 

 そう言われて朱乃は躊躇なく肉棒を口に含み、前後に動かした。

 

「ん、ん、んあ、んちゅ、ちゅ、んぼ、んも!」

 

 夢中で肉棒をしゃぶる朱乃。その表情は完全に発情した雌そのもので、今の彼女は一輝を射精させる事しか考えていなかった。

 だが朱乃はフェラチオは初めてだ。熱心なのはいいが微妙にポイントがずれていて、一輝からすればもどかしくて仕方がない。この部屋に来て既に十分が経過している。これ以上時間をかけられないと一輝は決断した。

 

「朱乃。かなり乱暴になるけど我慢しろよ?」

 

「!?」

 

 一輝はそう宣言すると、朱乃の頭を掴み、自分で腰を振り出した。

 

「んむう!? んも! んぼ!? か、一輝、ちょっと待───!?」

 

 しかし一輝は朱乃の懇願など聞く耳を持たず、より激しく腰を振り続ける。

 

「んぼ!んぼ!んぼ! げほっ、おええっ!」

 

 口腔内を蹂躙され、喉奥を突かれてえずいても、一輝は止まらない。朱乃は涙と鼻水、涎を垂れ流し半ば白目を剥いていて、日頃の美貌は見る影もない。だが一輝はそんな朱乃を美しいと思った。そして、それ故に汚したいと感じて、腰の動きを早くした。

 

(どうして? こんな扱いされてるのに、どうして私、こんなに気持ちいいの───!?)

 

 一方の朱乃も自分の感覚に戸惑っていた。

 朱乃が今されてるのはイマラチオ。奉仕である女が自分から行うフェラチオをとは似て非なる行為。それは男が自分の快楽の為に、女の口を道具として扱う一方的な蹂躙に他ならない。

 こんな行為苦しいし、痛いし、臭いし、女からすれば気持ちいい筈ないのに、朱乃は自分が今気持ちいいと感じている事に困惑していた。

 朱乃は自他共に認めるドSだった筈。それなのに一輝から乱暴に扱われると身体の芯が熱くなり、もっと激しくして欲しいと願ってしまう。その証拠に朱乃の下着は股間から溢れ出た愛蜜でぐっしょり濡れて、最早下着の役目を果たしてなかった。朱乃は自分が新たな性癖に目覚めたのを自覚した。

 喉奥を突かれる度にさっきから何度もイって、潮を吹いているので、朱乃のスカートの中もびしょ濡れで、足下には水溜まりが出来ていた。

 

「はあ、はあ、いいぞ朱乃、もうすぐだ!」

 

 一輝がラストスパートに入り、腰の動きが更に激しくなる。

 

「んぼ!んも!ぶぼ!ぶほ!ちゅ、むちゅ、んむ❤」

 

「くっ、出るぞ!!」

 

 一輝はそう宣言して、朱乃の最奥を突いた所で腰を止めて、そのまま己が衝動を解き放った。

 

 ブビュルルルッ!ビュルルルッ、ビュルッ!

 

「ん~~~~~~~ッッッ❤」

 

大量の白濁液が朱乃の口腔内を満たしていく。その量は朱乃の口腔内に収まる量を越えており、口の端からダラダラと濃厚な雄の精液が朱乃の豊満な胸に零れて、染みを作っていく。

 

「ううっ、飲め、朱乃!」

 

 そう一輝に命令された朱乃は、躊躇する事なく口腔内に満ちた精液を喉を鳴らして飲み干した。

 

「・・・・ん、ゴク、ゴク、ん、ん~~~~~~ッッッ!?❤」

 

 プシャアアアッ!

 

 口腔内の精液を飲み干した朱乃は、そのまま絶頂に達して、またもや大量の潮を吹いた。

 

(───ああ、凄い。こんなの私、気持ち良くって、またイッちゃうーーーーッッ❤)

 

 今まで感じた事のない凄まじい快感の中で、朱乃は意識を失った。

 

 

 

 

 

 行為が終わり、興奮が冷めると、目の前の惨状に俺は頭を抱えたくなった。

 朱乃は所謂レイプ目で気を失っていた。彼女の制服は酷い有り様で、あちこちに精液や愛液が染み付いて、これを着て帰るなんて、とても出来ない状態だった。フローリングの床には朱乃が作った水溜まりがあり、何よりこの濃厚な男女の臭い。部屋中に満ちたこの臭いが、この部屋で何があったかを雄弁に語っていた。

 どうしようと途方に暮れていた俺だったが、しばらくすると朱乃が目を覚まして、魔力を使って綺麗にしてくれた。

 魔力で水をお湯に変え、自分の身体と制服を着たまま洗うと、今度は風を温風に変えて乾かした。フローリングも同様に掃除すると、最後に風で室内の換気までしてくれた。これは朱乃が魔力操作に長けているから出来る事で、身体強化特化型の俺にはとても真似出来ない。

 いずれにしても助かった。俺が礼を言うと、朱乃は恥ずかしそうにもじもじして、

 

「いいの。貴方の役に立てたのなら何よりだわ・・・・あの、私はいつでもお相手しますから、ご自分でするなんて勿体ない事は、もう・・・・」

 

 と、何だか様子がおかしかった。

 話を聞くと、今まで感じた事のない快楽にすっかり虜になったと言うのだが、おかしい。俺はただ自分が気持ちよくなるようにしただけだなのに、どうしてこうなったんだろう。

 取り敢えず時間もないので、この日はお開きとした。リビングから離れてもう二十分も過ぎている。これ以上遅くなると皆が捜しに来かねない。

 俺達は間隔を空けてリビングに戻った。

 

 

 

 

 

 リビングに戻っても幸い何も言われる事はなかった。それだけ強くなる為に真剣に話し合っていたという事なんだが、その裏であんな事をしていた身としては、些か肩身が狭い。

 ともあれ、話し合っている内にすっかり日も暮れたので、今日は解散となった。

 

「それじゃあ皆、気を付けて帰りなさい」

 

 俺と共に見送る側に立ってリアスが皆に言った。

 

「あれ、部長はまだ帰らないんですか?」

 

 一緒に帰ろうとしないリアスにイッセーが訊ねる。あ、これはヤバい。俺はリアスの口を塞ごうとしたが一歩遅く、

 

「ええ。だって私、ここに住んでるから」

 

 と、言ってしまった。

 

「「えええええーーーーっ!?」」

 

 イッセーとアーシアが揃って驚愕の声を上げた。

 

「ちょっと! 近所迷惑なんだからやめなさい!」

 

 リアスが注意するも、二人は聞いてなかった。

 

「え?・・・・そ、それって、同棲・・・?」

 

「え、ええ。まあ、そうなるかしらね」

 

 イッセーの問いかけにリアスは頬を赤らめ、いやんいやんと身体をくねらせる。

 そんなリアスにイッセーとアーシアの二人は対称的な反応をみせた。

 

「お、俺の部長が穢された~~~~(泣)」

 

 一瞬でどこまで妄想したのか、イッセーはその場に崩れ落ちて号泣する。

 

「ふわあ~、す、素敵です! おめでとうございます、部長さん、一輝さん!」

 

 反対にアーシアは興奮か羞恥か分からないが、顔を真っ赤にして祝福する。彼女の中では同棲=結婚という図式でも出来上がってるのだろうか?

 

「ありがとうアーシア。でも貴女だって同じなんだから、頑張りなさい」 

 

「?・・・・ふわわっ、そ、そうですね。が、頑張ります!」

 

 リアスの一言で自分もイッセーと同棲してるのと変わらない事に気付いたのか、アーシアは可愛く気合を入れる。イッセーもすぐ側にこんなにいい娘がいるんだから、さっさと気付けばいいのにな。

 そんな風に思いながら、俺は他の娘達の反応が気になった。

 既に知っている朱乃はともかく、小猫ちゃんは無表情にリアス達を見ている。

 

「小猫ちゃんは驚かないんだな?」

 

「はい。私は知ってましたから」

 

 訊く所によると、元々小猫ちゃんはリアスと一緒に暮らしていたそうで、リアスが俺の部屋に転がり込むのも最初から訊いてたという。今は二人で暮らしていた高級マンションの一室に一人で暮らしているらしい。

 

「寂しくないか?」

 

「にゃあ。寂しくはないですが、部長のごはんが食べられないのはちょっと・・・・」

 

 成る程。リアスは貴族のお姫様なのに料理が上手い。しかも和食が最も得意で、俺は魚を上手に焼ける女子高生がいるのを知って感動した位だ。今では俺もすっかり胃袋を掴まれている。

 

「そうか、それは辛いな」

 

「にゃあ」

 

 小猫ちゃんはコクリと頷いた。この辺の事は何か考えないといけないなあ。

 

 そしてもう一人、祐美はというと、騒ぎをそっちのけである一点を凝視していた。

 

「どうした祐美?」

 

 俺は祐美に声をかけると、彼女はこちらを向かず、逆に訊ねて来た。

 

「一輝先輩。この写真は?」

 

 玄関からリビングへ至る廊下の壁には、殺風景だからと昔撮った家族の写真を額に入れて飾ってある。子供の頃の俺と両親。そしてもう一組の父子が一緒に笑っている写真だ。

 

「俺の家族の写真だが、それがどうした?」

 

 祐美が何を気にしているかが分からず、そう答えた。だが、

 

「違います。私が訊いてるのはこっちです」

 

 祐美は直接写真の気になる所を指差した。それはもう一組の父子の父親が携えている一本の西洋剣。

 

「これに見覚えは?」

 

「ふむ・・・・流石に小さかったから覚えてないな」

 

「そうですか・・・・こんな事もあるんですね。思いがけない所でこれを見かけるなんて・・・・」

 

 祐美の声のトーンが一段低くなる。俺は危うい気配を感じて祐美に声をかけようとしたが、

 

「これは聖剣です」

 

 振り向いた祐美の、憎悪に満ちた瞳に声を出せなかった。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通り初のエロ相手は朱乃になりました。
本番行為はもう少し先になりますのでお楽しみに。



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第5話 再会は突然に☆(朱乃)


早くもUAが12000を突破しました。
皆さんご愛読ありがとうございます。

それでは第5話をご覧下さい。


 

 

 ───私は聖剣(エクスカリバー)を許さない。

 

 

 

 

 

 

 室内にピチャピチャという湿った音が響く。

 

「ん、んむ、んぼ、ちゅ、ん❤あむ、んむっ❤」

 

「はあ、はあ、あ、朱乃、もう───」

 

「んむ? イキそう? いいのよ。そのまま出して?」

 

「朱乃、くっ!」

 

 旧校舎のとある空き教室で朱乃は一輝の肉棒を咥えていた。

 あの日、一輝の部屋で初めてしてからほぼ毎日、彼女は一輝の性欲処理を行っていた。いや、寧ろ朱乃が誘惑して、一輝が流されて行為に至るのが最近の流れであった。

 それ程に朱乃は一輝との行為にハマっていた。

 

「ん、ああ、いいわ、ちゅ、出して❤ いっぱい、一輝の濃いの朱乃に飲ませてっ!!❤」

 

「あ、朱乃っ、出るぞ!!」

 

「んむ~~~~~~っっ!!❤」

 

 朱乃の口腔内に大量の白濁液が流れ込む。朱乃はさも美味しそうに喉を鳴らして飲み干していく。全部飲み干すと、朱乃は一滴も零さんとばかりにチュウチュウと音を立てて、肉棒内の残った精液をすすった。

 

「───ズズ、んむ、ちゅぽ、んああ、美味しい❤」

 

「はあ、はあ、朱乃・・・・」

 

「ん❤」

 

 一輝は無意識なのか朱乃の頭をそっと撫でる。頭を撫でられた朱乃は主人に甘えるペットのように一輝の肉棒に頬を擦り寄せた。自分の頬が残った精液で汚れるのも構わずに。

 

「───ぷはぁ。今綺麗にしますわね」

 

 そう言って朱乃は一輝の肉棒を根元まで咥え込む。

 

「───ん、ちゅっ、んむ、れろ」

 

「ん、ああ、朱乃・・・・」

 

 ほぼ毎日一輝の肉棒を咥えているせいか、朱乃は一輝の感じる所が分かるようで、巧みな舌技の前に、一輝のモノはあっという間に元の硬さを取り戻し、雄々しく屹立していた。

 

「───ちゅぽっ。はあ❤ うふふ、またこんなに硬くなって・・・・それで、どうします?」

 

 朱乃は悪戯っぽく艶然と微笑んだ。

 

「・・・・続けてくれ」

 

「はい❤」

 

 空き教室内に再び湿った水音が響き出した。

 

 

 

 

 

「なあ朱乃」

 

「はい? どうかしましたか一輝君?」

 

 あの後一発を朱乃の顔に、もう一発を口に発射してようやく衝動が治まると、魔力を使って室内の後始末をしていた朱乃に一輝()は話しかける。

 

「最近おかしくないか?」

 

「おかしい、とは?」

 

「とぼけるなよ。祐美の事だ」

 

「・・・・・・」

 

 最近祐美の様子がおかしい。普段はポーッとしている事が多いのに、訓練の時には今までにない殺気を込めて剣を振るっている。その様子にイッセーや小猫ちゃんも戸惑いを隠せない。

 俺達が気付いている位なんだから、(キング)であるリアスや眷属のまとめ役たる女王(クイーン)の朱乃が気付かない訳がない。

 思い返すと皆が俺の部屋に来たあの日、俺の家族が写った写真を見てから祐美はおかしくなった。あの写真には俺の両親ともう一組の父子が写っていた。

 亡き母は敬虔なクリスチャンで、日曜日には毎週教会のミサに通っていた。俺も毎週付き合わされ教会に通う内に、その教会を管理する牧師さんの娘と仲良くなった。俺にとっては所謂幼馴染みであり、問題の写真は全員が集まった時に撮った物だった。

 その時牧師さんが携えていた剣、祐美が言うにはあの剣は聖剣だという。だが祐美と聖剣にどんな関係があるのか。前世の記憶によると、「木場祐斗」は人工聖剣使いの実験体だった筈。原作とは違い女性化しているが、祐美もまた同様の過去を背負っているのだろうか。

 

「・・・・その事については、近い内にリアスから説明があると思います」

 

「近い内か・・・・分かってるだろうが、何かあってからじゃ遅いぞ?」

 

「ええ、分かってますわ・・・・」

 

 朱乃はそう言って、窓の外を見た。外はいつの間にか雨が降っていた。

 

 

 

 

 

 

 どしゃ降りの雨の中、祐美()は傘も差さずに歩いていた。熱くなった頭を冷ますにはちょうどいい。

 

 ───怒らせてしまった、部長を。

 

 最近の私はどうかしていると叱責を受けた。

 違う。今までの私の方がどうかしていたんだ。聖剣(エクスカリバー)への復讐心を忘れた事など一日たりともない。平和な学園の空気に染まり、私はちょっと呆けていた。

 部長には新たな力を、生活を、名前を与えて貰った。頼りになる仲間も増えて、少し気が抜けていたようだ。

 あの日、一輝先輩の部屋で見た一枚の写真。あの写真に写っていた聖剣を見て、自分のすべき事をはっきりと思い出した。

 

 今、目の前に一人の神父が倒れている。私がやったんじゃない。勿論憎き神の名を語る者など一刀の元に切り捨てるのも吝かではないけど、今はこの周囲に満ちた異様な気配の方が問題だった。

 

「!!」

 

 突然背後から殺気を感じ、咄嗟に【魔剣創造(ソード・バース)】で魔剣を創り出した。

 

 

 ギイィィンッッ!!

 

 

 咄嗟の判断が私の命を救った。背後から襲いかかった銀光を弾き飛ばして襲撃者を見やる。そこにいたのは倒れている男と同じ格好の神父───非常に不本意だけど顔見知りだった。

 

「やっほ、おひさ~~」

 

 嫌らしい笑みを浮かべる白髪の少年神父───フリード・セルゼン。私達にとって因縁浅からぬ敵だ。

 

「まだこの町に潜伏していたのね。何の用? 自殺志願なら今すぐその首を斬り落としてあげるわよ」

 

「ヒャヒャヒャッ!! いや~~可愛い顔して相変わらずおっかないね~~! 俺っちの方は君と再会出来て、感謝感激雨あられでございますよ~~、ヒヒッ!」

 

 相変わらず癇に障る口調。本当にムカつく。とっとと斬り捨てて終わりにしようと魔剣を構えると、奴の長剣が聖なるオーラを発した。

 

「!?」

 

 この光、このオーラ、この輝き、誰が忘れるものか、憎き聖剣を!【 エクスカリバー】を!!

 

「ちょうど良かったぜえ~~。神父狩りも飽き飽きしていた所でよ~、お前さんの魔剣と俺様の聖剣(エクスカリバー)、どっちが上か試してみようぜ? な~に、お代はアンタの命で結構だぜ~~、ヒャハハハッ!!」

 

 

 

 

 

 

「聖剣計画?」

 

 イッセーの言葉にリアスは頷いた。

 

「そう。祐美はその計画の生き残りなの」

 

 部活動を終えて帰る間際、リアスは一輝()、イッセー、アーシアを呼び止めた。「話がある」と。

 そして聞かされたのは祐美の過去だった。

 

 数年前、キリスト教内で聖剣エクスカリバーを扱える人間を人為的に生み出そうとする計画が存在した。

 聖剣は対悪魔武器としては最高の物であるが、困った事に使い手を選ぶ。真に使いこなせる人間は数十年に一人出るかどうか。そんな人間が現れるのを待ち、折角の聖剣を遊ばせて置くのが無駄だと考える者がいた。

 そして素質があると見込まれた子供達に「聖剣使いとしての因子」を人為的に植え込み、聖剣に適合する人間を生み出そうとしたのが「聖剣計画」。

 だが結果は失敗。被験者の子供達は全員聖剣に適合出来ず、「不良品」と見なされ処分された──筈だった。

 祐美はその被験者の唯一の生き残りなのだという。

 仲間達が処分される中、彼らの手で辛くも逃げのびた祐美は、瀕死の重傷を負って倒れていた所をリアスに保護された。

 リアスは祐美を救う為に悪魔に転生させ、眷属とした。それは戦力を欲したという事ではなく、聖剣によって人生を狂わされた祐美に悪魔として新たな生を送って欲しいというリアスの優しさだったのだろう。

 転生したばかりの祐美は聖剣や教会関係者に対して強い憎しみを抱いていたが、リアスに見守られ成長する内にその憎しみに蓋をして、笑顔を見せるようになった。

 だがその蓋は今開かれてしまった。祐美は再び聖剣への復讐心に囚われ暴走している。切っ掛けとなったのは間違いなくあの写真。自分のせいだとは思わないが、何とも居たたまれない気分だ。

 

 

 

 

 

 話が終わった。各々祐美の様子に気を配るという事でイッセーとアーシアは先に帰らせた。

 

「すまないリアス。祐美の暴走の切っ掛けは間違いなくあの写真だ」

 

「貴方が悪い訳じゃないわ・・・・でも一輝、貴方の身内に教会関係者がいるの?」

 

「いや、母は敬虔なクリスチャンだったが、もう亡くなっている。あの写真は幼馴染みとその父親である牧師さんと写した写真で、その人達も今はどこにいるか分からない」

 

「そう・・・・ごめんなさい、変な事を訊いて」

 

 俺はリアスの肩にそっと手を置いた。

 

「いいさ・・・・心配だな」

 

 リアスは肩に置いた俺の手に自分の手を重ね、そっと頬を寄せる。

 

「そうね・・・・」

 

 二人で窓の外を眺める。雨はまだ止まなかった。

 

 

 

 

 

 翌日、事態は急変した。

 放課後、ソーナ会長に呼び出されたリアスは、俺と朱乃を連れて生徒会室を訪問した。

 そこで聞かされたのは教会から派遣された二人の聖剣使いがこの駒王町を統括する悪魔、リアス・グレモリーと交渉したいと申し出ているという話だった。

 二人の聖剣使いは明日の夜、オカ研部室に訪問する事、その際、一切の攻撃をこちらに加えない事を約束して帰ったそうだ。

 ともあれ、交渉したい理由などは一切話さなかったそうで、リアスとしてはこの交渉に臨まない訳にはいかなくなった。交渉には眷属全員が立ち合う事にして皆に連絡をしたが、事態は更に厄介な事になっていた。

 学園から帰宅したイッセーの自宅に例の聖剣使いが訪問していたのだ。

 何でも聖剣使いの一人がイッセーの幼馴染みであり、この町に来たついでに挨拶に来たらしい。裏の事情を何も知らないイッセーのお母さんが懐かしさに彼女を招き入れ、談笑していた所にイッセー達が帰宅したそうだ。

 当然双方共お互いが何者か分かっていたが、その場では何も起きなかった。教会側としてはリアスとの交渉前に揉め事を起こす気はなかったようだし、イッセーは絶対に勝てないと踏んだからだが、ナイス判断だ。

 彼女らはイッセーのお母さんと三十分程談笑して帰ったそうだが、その間イッセーは生きた心地がしなかったそうだ。

 その事を聞いたリアスが慌てて転移魔方陣でイッセーの部屋に跳んで様子を見に行ったが、幸い二人には異常はなく、ホッとした。

 とにかく、イッセーの幼馴染みが聖剣使いになっているとは厄介な事だ。だが後日、その厄介事が自分にも降りかかるなんて、俺は夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 次の日の夜、俺達グレモリー眷属は全員部室に集合していた。応接用のソファーにはリアスと朱乃が座り、例の二人が来るのを待っていた。室内にはピリピリとした緊張感が漂っている。

 悪魔にとって聖剣使いは最悪の敵だ。使い手によっては一撃で消滅させられかねない。そんな相手が来る事による緊張感もあるが、この緊張感の最大の原因は祐美だった。

 祐美はずっと扉を凝視している。まるで聖剣使い達が現れたらすぐにでも斬りかかろうとしているかのようだ。いざとなったら俺達が止めなければならない。俺はイッセーと小猫ちゃんとアイコンタクトをして頷き合った。

 

 やがて扉をノックする音がした。

 リアスが「どうぞ」と返答すると、扉を開けてソーナ会長が入って来た。

 

「リアス、お客様をお連れしたわ」

 

「ありがとうソーナ。中へ入って貰って」

 

 リアスにそう言われてソーナ会長が例の二人に入室を促す。入って来たのは俺達と同年代の二人の少女だった。

 一人は青髪のショートヘアに前髪の一房だけ緑のメッシュが入った、ややキツい目付きの少女。

 もう一人は栗色の長髪をツインテールにした人懐っこい笑顔を浮かべる少女。

 二人共この部屋にいる少女達と遜色ない位の美少女だ。イッセーの幼馴染みというのはおそらく栗色ツインテールの方だろう。だがこの少女、何故か見覚えのある気がする。どこで見たのか思い出そうとしている内に栗色ツインテールが口を開いた。

 

「本日は私共の申し出を受けて頂き感謝致します。私は紫藤イリナ。こちらは相棒のゼノヴィア。二人共教会に所属する戦士です」

 

 そう名乗った彼女の顔を凝視する。すっかり女の子っぽくなっているが、良く見ると小さい頃の面影がある。

 

「イリナ?」

 

 だからつい、声が出てしまった。

 皆の視線が俺に集中する。栗色ツインテールは突然名前を呼ばれて訝しげに俺を見ているし、隣の青髪ショートなんか相棒を呼び捨てにされて不快そうに俺を睨みつけている。

 

「一輝、どうかしたの?」

 

「ああ、いや、その・・・・」

 

 俺がどう説明すべきか頭を悩ませていると、

 

「一輝?・・・・え? ひょっとして、一兄(かずにい)?」

 

 イリナが声を上げた。その声に顔を上げると俺とイリナの視線が交錯する。間違いない。彼女はやっぱり───

 

「やっぱりイリナか!」

 

「え? 嘘! 本当に一兄なの!?」

 

 気が付けばイリナが駆け寄って、

 

「会いたかったよ、一兄!!」

 

 俺に抱き着いていた。

 子供の頃とは違う甘く、爽やかな香り。戦士として鍛えられながら決して女性らしさを失わない柔らかな身体。すっかり美しく成長した妹のように思っていた幼馴染みとの再会に俺も彼女をそっと抱き締めた。

 

「久しぶりだなイリナ。俺も会いたかったよ」

 

「え? 一兄駒王町に帰ってたの? 引っ越したって聞いてたのに!」

 

「ああ。お前がイギリスへ引っ越した後、父さんの転勤に合わせて引っ越したんだけど、高校進学を機に帰って来たんだ」

 

「もう! それなら早く教えてよ!」

 

「無茶言うな。こっちはお前がどこにいるか知らないんだぞ?」

 

「むう、それもそうか・・・・じゃあ、おじさまとおばさまは? 元気?」

 

「・・・・イリナ。父さんと母さんは八年前に交通事故で亡くなったんだ。報せるのが遅くなって、ごめん」

 

「そんな!?・・・・じゃあ一兄はその後どうしてたの?」

 

「唯一の肉親の祖父に引き取られてね、そこで暮らしてた。で、さっきも言ったが高校進学を機にこの町に戻って来たんだ」

 

「そっか・・・ごめんね。私何にも知らなくて・・・・」

 

「謝る必要はないよ。それにもう八年も経ってるしな・・・・」

 

「嘘。何年経ったって辛いものは辛い筈だよ・・・・おじさまもおばさまも私の事本当の娘みたいに接してくれて、優しくて大好きだった・・・・」

 

「イリナ・・・・父さんと母さんの為に泣いてくれるのか?」

 

「うん・・・・それに一兄の為にもね。一兄泣いたらおばさま達が心配するからって、泣いてないでしょ?」

 

「! そっか・・・・ありがとうイリナ」

 

「うん・・・・・・」

 

 

「「「「ウオッッホンッ!!」」」」

 

 

 突然の咳払いに俺とイリナがそちらの方を向くと、皆がこちらをジト目で見つめていた(アーシアだけは顔を真っ赤にしていたが)。リアスがトゲのある声で詰問する。

 

「・・・・それで? いい加減説明して欲しいのだけど?」

 

「ああ、えーとイリナは・・・・」

 

「その前にいつまでくっついてるのよ、貴方達は!?」

 

「「・・・・・・あっ!」

 

 言われて気付いたが、俺達は最初にイリナに抱き着かれたまま、ずっと抱き合って話をしていたのだ。こ、これは恥ずかしい・・・・

 

「す、すまんイリナ」

 

「う、ううん。こっちこそごめんね、一兄」

 

 そう言って頬を染めるイリナは子供の頃のギャップと相俟って、物凄く可愛かった。

 

「一輝!!」

 

「は、はい!!」

 

 またも見つめ合う俺達にリアスの叱責が飛ぶ。

 

「お前もだイリナ。いつまでやっている」

 

「ご、ごめんゼノヴィア、つい・・・・」

 

 イリナも相棒に怒られていた。

 

「全く、いくら懐かしいからといって、そいつはもう悪魔なんだぞ? 分かってるだろう!?」

 

「!!?・・・・一兄、悪魔になっちゃったの?」

 

 相棒の言葉にショックを受けたイリナは愕然とした表情で俺を見つめる。

 

「あ、ああ」

 

「そんな、どうして!?」

 

 イリナはそう言って俺にすがりつく。

 

「イリナ、俺は堕天使に襲われて死ぬ所だった。そこをリアスが悪魔に転生させて救ってくれたんだ。俺は彼女に感謝してるし、悪魔に転生した事を後悔していないよ」

 

「そう・・・・なんだ」

 

 そう言ってイリナはその場に崩れ落ちた。

 

「何て事。イッセー君だけじゃなく一兄まで悪魔に堕ちてるなんて───」

 

「しっかりしろイリナ! お前があの男とどういう関係か知らないが神の戦士としての責務を思い出せ!」

 

「そ、そうね。私には神への信仰があるわ!」

 

「そうだ! 神は常に私達を見守っている!さあ、共に祈ろう、イリナ!」

 

「そうね、ゼノヴィア!」

 

「「ああ、主よ・・・・!」」

 

 何だか良く分からないが、ゼノヴィアの励ましでイリナは復活したようだ。あんな極端な娘だったかな・・・・?

 

「で? あの娘とはどういう関係なの、一輝?」

 

 リアスがジト目で俺に詰め寄る。

 

「ああ、幼馴染みなんだ。あの例の写真に写っていた子供の方だよ」

 

「「「え!?」」」

 

 それを聞いて皆が驚いていた。あの写真に写っているイリナは男の子にしか見えないし、今の美少女然としたイリナとは似ても似つかないから無理もない。

 俺は彼女との馴れ初めを話すと皆もようやく納得してくれた。ただ、祐美の視線が益々険しくなったのは困り物だ。

 取り敢えず双方共ようやく落ち着いて、本題に入る事になった。

 

 

 

 

 

「コホン、大変失礼しました。それでは本題に入らせて貰います」

 

 復活したイリナがこの地を訪れた理由を話し始める。その内容は驚くべき事だった。

 キリスト教の各教派カトリック、プロテスタント、正教会で管理、保管されていた聖剣エクスカリバーが奪われ、この駒王町に運び込まれたというのだ。

 本物の聖剣エクスカリバーは大昔の戦争で折れた。その欠片を拾い集め、錬金術によって新たに再生させたエクスカリバーが七本存在するという。七本のエクスカリバーは一本は戦争中行方不明になり、各教派が二本ずつ管理していたが、その内の一本ずつが今回奪われたのだそうだ。

 追手としてカトリックからはゼノヴィアが、プロテスタントからはイリナが各々聖剣を携えて派遣された。正教会は万一の場合に備えて最後の一本を死守するつもりらしい。

 今回エクスカリバーを奪ったのは堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』。しかも幹部であるコカビエルが動いているというのだ。コカビエルは聖書にも名前が記載されている大物。そんな奴がこの町で暗躍しているなんて大事件だ。

 話を聞いて、俺は彼女らの交渉内容はコカビエルの捜索に我々の力を借りたいのだと思ったが、それは違っていた。ゼノヴィアが言うにはこれから起こる教会と堕天使の戦いに一切手を出すなと言うのだ。

 これは交渉なんかじゃなく、一方的な宣言でしかない。案の定リアスがキレていた。ゼノヴィアの言は「お前の土地でドンパチするけど黙って見てろ」と言ってるに等しい。リアスからすれば許容出来ないに決まっている。

 どうやら教会側としてはリアスが堕天使と手を組む可能性も考慮しているらしく、牽制のつもりもあるようだ。リアスは自らの誇りに賭けて堕天使とは手を組まないと宣言し、ゼノヴィア達もその言質を取った事で良しとし、部室を辞そうとしたが、ここでもう一悶着あった。

 ゼノヴィアが偶然見かけたアーシアを「魔女」と蔑んだのだ。案の定イッセーが大激怒。教会全てを敵に回す発言をし、更に爆発寸前だった祐美もイッセーの言に乗り、一触即発の空気となった。

 リアスも対応に困った状況をまとめたのは当のゼノヴィアだった。上層部には知らせない私的な決闘としてイッセーと祐美の挑戦を受けてくれたのだ。

 校庭に結界を張り、イッセー対イリナ。祐美対ゼノヴィアで決闘が始まった。

 イッセー対イリナは正直酷かった。「洋服崩壊(ドレスブレイク)」でイリナを脱がそうと今までで一番いい動きを見せたイッセーだったが、イリナに巧くかわされて「洋服崩壊(ドレスブレイク)」が誤爆。アーシアと小猫ちゃんの衣服を弾き飛ばし、小猫ちゃんの鉄拳を喰らいダウン。その後イリナの聖剣の一撃を受け、あっさり敗北した。

 祐美対ゼノヴィアは【魔剣創造(ソード・バース)】で多種多様な魔剣を創り出す祐美に対してゼノヴィアは【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】の破壊力でそれを上回り、結果祐美も敗北した。

 決闘が終わり、イリナ達は去った。去り際にイリナが何か言いたそうにしていたが、結局何も言わず去って行った。

 そして祐美もまた眷属から抜けると宣言し、リアスの元を去った。リアスが必死に止めるも聖剣への復讐心は消せないどころか先程の敗北で更に燃え上がったのか、リアスの静止も聞かず、この場から姿を消した。

 

「私は仲間達のおかげで逃げのびる事が出来ました。だからこそ、彼らの恨みを私は晴らさなくちゃいけないんです・・・・」

 

 姿を消す前に言った祐美の言葉がやけに俺の心に引っ掛かった。

 

 

 

 

 

 

 あの夜から数日後、俺はリアスからひとつの密命を受けた。その密命とはイッセーと小猫ちゃんが隠れて何をしているのかを探る事だった。

 最近のイッセーは放課後になると小猫ちゃんと共にこそこそと何処かへ出掛けている。隠してるつもりなんだろうが俺らからすると何かやましい事をしているのがバレバレで、問題を起こす前に俺に何をしてるのか探って、場合によっては止めるように命じられたのだ。俺はイッセー達から200m程離れて魔力で視力と聴力を強化して様子を窺っていた。

 イッセーと小猫ちゃんは校門でシトリー眷属の匙と合流すると、そのまま校外へ出て、近くの公園で祐美と合流した。あれから学園も欠席しており、リアスの電話にも出ないから心配していたが、思ったよりも元気そうで安心した。

 それから四人で人気のない所をあちこちと歩き回っている。どうやら堕天使側の襲撃を誘っているようだ。

 人気のない所を歩いているせいか、そういう所に屯する不良やチンピラなんかが祐美や小猫ちゃんを見てはイヤらしい顔をして寄って来たが、当然の如く一蹴され、男二人の出番は全くなかった。

 夕方から夜に変わる頃になって捜索は終わった。町の治安に貢献した以外収穫はなく、何日も繰り返しているのか、皆の顔に疲労が見える。その時、事態は動いた。

 突然白髪の少年神父が聖剣を手に襲って来た。祐美は憎悪のままに魔剣を創り出し相対する。一方、匙の神器から黒いラインが伸びて少年神父に巻き付いた。どうやら支援系の神器のようだ。イッセーも【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を出すが、接近戦主体のイッセーや小猫ちゃんでは聖剣相手に迂闊に手が出せない。

 俺は懐からスマホを出すとリアスに電話を掛ける。コール三回でリアスが出た。

 

『一輝? 何かあったの?』

 

「ああ。イッセーと小猫ちゃん。祐美と何故か生徒会の匙の四人が聖剣を持った神父に襲われてる」

 

『! それで戦況は!?』

 

「今の所互角かな? 祐美が戦ってて匙が支援。イッセーと小猫ちゃんは聖剣相手だから迂闊に手が出せないみたいだ。──お?」

 

『何? どうしたの!?』

 

「どうやらイッセーが新しい能力に目覚めたぞ。倍加した力を相手に譲渡出来るみたいだ。戦術の幅が広がりそうだな」

 

 力を譲渡された祐美が少年神父を追い詰める。だが嵐のような魔剣の攻撃をその少年神父はかわしきり、反撃に出る。

 

『そうね。それでどうなってるの?』

 

「凄いなあの神父。倍加した筈の魔剣の攻撃を凌ぎきったぞ・・・・イッセーがフリードって呼んでたが知ってるか?」

 

『! ええ。貴方が眷属になる前に戦った奴よ。教会のエクソシストでありながら堕天使に与する戦闘狂の背信者よ』

 

 リアスが忌々しげに答える。成る程。因縁の相手だったのか。ともあれ祐美達は徐々にフリードを追い詰めていく。中でも光っているのは匙だった。匙の神器【黒い龍脈(アブソーブション・ライン)】は巻き付いて動きを封じたり、力を吸い取ったり出来るらしく、支援(サポート)系として十二分の働きをしてくれてる。だが、

 

「おや。新しい敵が出て来たぞ・・・・バルパー・ガリレイっていうジジイの神父なんだけど、知ってるか?」

 

『・・・・いえ、知らないわ』

 

「───ちっ、リアス。あのバルパーってジジイが『聖剣計画』の子供達を処分させた張本人だそうだ。祐美が怒りまくってる」

 

『な、何ですって!?』

 

「また動きがあった。イリナとゼノヴィアが来たぞ」

 

 フリードと刃を交えるゼノヴィア。流石に不利と見たのかバルパーに撤退を促すフリード。

 

「どうやらフリード達は撤退するようだ。俺は奴らを追う。イッセー達は任せていいか? 場所は駅前の───」

 

『───分かった。ソーナとすぐに転移するわ』

 

「会長も一緒なのか。お、撤退した。イリナとゼノヴィア、それに祐美が追ってる。切るぞ、後よろしく」

 

『ええ。貴方も気を付けて』

 

 俺は電話を切って、祐美達の後を追った。

 

 

 

 

 

 リアス()がソーナと共に現場に現れるとイッセー達は驚いた後で気不味げな顔をした。

 近くの公園に場所を移して噴水の前で正座させる。何があったかは一輝から訊いてたので、何故こんな事をしたのかを問い詰める。

 イッセーが言うには祐美の復讐心を満たす為、ゼノヴィア達と交渉してエクスカリバーの破壊を手伝わせて貰ったと言うのだ。ゼノヴィア達も二人だけでは戦力不足だと感じていたようで、正体がバレないようにするなら構わないと意外にも認めてくれたそうだ。私に対してあんなに頑なだったのは何だったのかと問い質したい位だわ。

 とにかくゼノヴィア達の許可も取ったので祐美も呼んでエクスカリバー破壊の為の協同戦線を張る事になったそうだ。その時既に祐美はフリードと刃を交えていたそうで、黙っていた事については後できっちり叱っておかなくちゃ。

 隣でペシペシと音がするのでそちらを見ると、ソーナが匙君のお尻を叩いていた。ふむ、いいわねアレ。おしおきにはちょうどいいかしら。

 

「あの、祐美がフリード達を追ってるんですが・・・・」

 

 イッセーがおずおずと手を挙げるが、

 

「そっちは問題ないわ。一輝が追ってるから」

 

「一輝先輩が!?」

 

 一輝が見張っていた事を伝えると、イッセーも小猫も驚いていた。流石に200mも離れた場所から見ていたら気付かないわよね。

 

「とにかく祐美の事は一輝に任せるわ。さて、貴方達は───」

 

 私はそう言ってチラリとソーナ達を見た。相変わらずソーナが匙君のお尻を叩いている。それを見てイッセーと小猫は自分の運命を覚ったのか、顔を青くする。 

 

「さあイッセー、小猫。お尻を出しなさい♪」

 

 私はニッコリ笑った。

 

 

 

 

 

 夜の町を逃走す(はし)る、追走す(はし)る、疾走す(はし)る。

 逃走するバルパーとフリードを追い、ゼノヴィアとイリナ、そして祐美が駆ける。その後を一輝()が追いかける三つ巴の追走劇が繰り広げられていた。

 しかし、フリードは携える聖剣【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】の恩恵なのだろうが、バルパーはジジイの癖に何故あんなに速いのか。つくづく気味の悪いジジイだ。

 祐美は『騎士(ナイト)』の特性故、ゼノヴィアとイリナより前を走っている。翼を広げて空から追った方が速いと思うのだが、それに気付かない程、仇敵の登場に頭に血が上ってるのだろうか。

 祐美は先程のフリードとの戦闘や先日のゼノヴィアとの決闘でも聖剣への憎悪が先走り、実力を発揮し切れていなかった。彼女本来の実力ならあそこまで下手を打たなかった筈だ。

 

「!!」

 

 そんな事を考えていると、突然上空に強大な魔力を感じた。その悪意ある魔力に敵だと判断した俺は身体強化の倍率を上げて加速する。クソ、間に合え!!

 あっという間に追いついたイリナとゼノヴィアを左右に突き飛ばし、先行する祐美に追いつくのと上空から魔力が放たれたのはほぼ同時だった。

 

「───祐美!!」

 

「え!?きゃああああ!!」

 

 祐美に抱き着いた直後、強大な魔力砲の衝撃に俺達は吹き飛ばされた。

 魔力砲が着弾した衝撃で吹き飛ばされた俺は祐美を抱き締めたままゴロゴロと転がり、ガードレールに背中を強く打ち付けてようやく止まった。

 

「ぐっ! だ、大丈夫か、祐美」

 

「うう・・・一輝先輩? どうしてここに・・・・?」

 

「そんな事より上だ、警戒しろ!」

 

「!?」

 

 空を見上げると、装飾を凝らした黒いローブに身を包んだ美丈夫が月をバックに浮かんでいた。その背には十枚もの黒い翼を広げている。

 

「ほう。俺の魔力砲撃をかわすとは、中々やるではないかリアス・グレモリーの下僕共よ」

 

 その男は楽しげな笑みを浮かべつつ、ゆっくりと地上に降りて来た。名乗りはしないが間違いない。

 

 

 『神の子を見張る者(グリゴリ)』幹部、堕天使コカビエル。

 

 聖書にも名前が載る大物が今、俺達の前にその姿を現した───

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

アンケートを記載しますので、よろしければご協力下さい。


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第6話 騎士の帰還


アンケートにご協力して下さった皆さん、ありがとうございます。
協力して頂いて何ですが、話の都合上、今回はエロ無しです。
折角のアンケート結果を反映出来ず、申し訳ありません。

それでは、第6話をご覧下さい。



 

 

 ───堕天使コカビエル。

 

 聖書にも名前が載る大物中の大物。その男が地上に降り立ち、俺達を楽しげに眺めている。

 

「一兄!!」

 

 声のする方へ一瞬だけ視線を向けると、イリナとゼノヴィアがこちらに駆けて来るのが見えた。

 一輝()はコカビエルから視線を外さずに声をかける。

 

「二人共無事か? すまんな、突き飛ばして」

 

「ううん。おかげで砲撃に巻き込まれずにすんだわ。ありがとう」 

 

「そうだな。助かった」

 

 そう言って俺達の元へ到着した二人はコカビエルの方を見やる。

 

「あれが・・・・!」

 

「そのようだな・・・・お前がコカビエルだな!?」

 

 ゼノヴィアの問い掛けにコカビエルが答える。

 

「いかにも。我が名はコカビエル。堕天使の幹部に名を連ねる者だ。ようこそ、リアス・グレモリーの下僕に教会の聖剣使い達よ」

 

「お前が奪った聖剣エクスカリバーを返せ! さもなくば───」

 

「さもなくばどうする? この俺を滅するのか?」

 

 コカビエルは面白そうにこちらを見つめている。こいつ、楽しんでる?

 

「おうよ! 私達は元よりその為に派遣されたのだからな!!」

 

 ゼノヴィアがそう啖呵を切ると、コカビエルは肩を震わせて笑い出した。

 

「ククク、クハハハハーーーーッ!! お前ら如きがこの俺を滅する? そう言う台詞は手にした武器に相応しい腕前になってから言うべきだぞ。あまりに滑稽だ!」

 

 コカビエルは暗にゼノヴィア達の未熟さを嘲笑う。その言葉に憤慨したゼノヴィアは、

 

「言ったな! ならば聖剣の力、その身で確かめろ!!」

 

 【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】を構え、コカビエルに突撃する。何て無茶な!

 

「ちょっ、ゼノヴィア!?──ああ、もう!!」

 

 相棒(ゼノヴィア)を放っておく訳にもいかず、イリナは懐から取り出した紐のような物を振ると、それは一本の刀へと変化した。

 【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】。イリナは自らの聖剣を手にゼノヴィアの後を追う。

 

「フッ、来るがいい。教会の小娘共よ」

 

 コカビエルは両手に光の剣を作り出すと、二人を迎え撃つ。

 悪魔程ではないが、堕ちた存在である堕天使にとっても聖剣の聖なるオーラは毒になる筈。だがコカビエルは聖なるオーラを輝かせ自らを滅しようとする聖剣を物ともせず、余裕綽々で二人の攻撃を凌いでいる。

 

「そらそら、どうした、この程度では俺を滅するなぞ到底出来んぞ!?」

 

「くっ! これ程とは!?」

 

「こっちは二人がかりなのに!?」 

 

 二人はコカビエルに圧倒されていく。

 

「くっ! このままじゃ・・・私も行きます、一輝先輩!」

 

「な!? 待て祐美!!」

 

 このままでは埒が明かないと感じた祐美は、俺の静止も聞かず魔剣を創り出すと、コカビエルに向かって行く。

 だが祐美も加わった三人の攻撃も効果はなかった。いや、寧ろ祐美という不協和音が加わったせいでイリナ達のコンビネーションが崩されて、さっきより酷い状況になっている。

 

「邪魔をするな、木場祐美!」

 

「邪魔してるのはそっちよ、ゼノヴィア!」

 

「ああもう! こんな時にケンカしないでよ!」

 

 と、まあこんな風に敵を前にして呑気に喧嘩しているのだ。流石にコカビエルも呆れたのか、光の剣を振り、三人を吹き飛ばした。

 

「「「きゃああああっ!!」」」

 

 コカビエルに吹き飛ばされ三人は俺の所まで転がって来る。

 

「邪魔しないで! ゼノヴィア!!」

 

「な!? それはこっちの台詞だ!!」

 

「もう! 二人共いい加減にしてよ!!」

 

 この期に及んで喧嘩を続けるこいつらにいい加減俺も切れた。

 

 ゴツッ!ゴツッ!ゴツッ!!

 

「あっ!」

「いっ!?」

「うう~~っ? な、何するんですか一輝先輩!?」

 

 拳骨を喰らい、涙目で抗議する三人を俺は怒鳴りつけた。

 

「やかましい、このアホ娘共が! 敵を前にして呑気に喧嘩なんかしやがって!!」

 

「「「うっ!・・・・・・」」」

 

「もういい! 後は俺がやる。お前らは引っ込んでろ!!」

 

 俺はそう言うとコカビエルの元に歩みを進めた。

 

「ほう・・・・中々良い殺気を放つではないか。小娘共よりは余程ましだな」

 

「あんなアホ共と一緒にするな」

 

「ククク、それは失礼した。で? お前は俺を楽しませてくれるのか?」

 

「その前にひとつ訊きたい。何故この町に来た?」

 

 俺は手を伸ばせば届く距離まで近付き、コカビエルに訊ねる。

 

「・・・・どういう意味かな?」

 

「この町は魔王の妹であるリアス・グレモリーの領地だ。この町でお前のような大物が事件を起こすというリアスの手に余る事態になれば、必ず魔王が出て来る。お前は三大勢力の均衡を崩し、戦争をおっ始める気か?」

 

 俺がそう言うと、コカビエルは満面の笑みを浮かべた。

 

「戦争? そう、戦争だ! 俺は戦争がしたいのだよ!! あの大戦から随分と永い時が過ぎた。その間にどいつもこいつも腑抜けてしまった。ミカエルも、サーゼクスも、アザゼルもだ! アザゼルの奴め『もう二度と戦争をする気はない』などとほざきやがった! ふざけるな、ふざけるな!ふざけるな!!」

 

 コカビエルの言葉は段々と熱を帯びていく。

 

「あのまま戦争が続いてたら俺達が勝てたかもしれないんだ。大勢の仲間を殺されておきながらなぜ矛を収める必要がある!? 中途半端に終わらせて何も得る物がなければ、死んでいった仲間達の恨みは何処へいけばいいのだ!?」

 

 俺はコカビエルとそっくりの言葉をつい最近聞いた覚えがある。他ならぬ祐美が言った言葉と良く似ているのだ。

 

「・・・・つまりお前の目的は戦争を起こす事そのものなのか」

 

「そうだ! 俺は再び戦争を起こす。天界、冥界、人間界、全ての世界を巻き込んだあの大戦を今再び、この俺が起こすのだ! フハハハハーーーーッ!!」

 

 哄笑を上げるコカビエルの目には狂気が宿っていた。

 かつては死んだ仲間達の仇を討ちたいという純粋な願いだったかも知れない。だが永い時を経てその願いは歪み、捻れ、狂気に染まってしまった。今のコカビエルには戦争を起こす事、それだけが目的であり、その為ならば誰がどうなろうと、おそらく自分ですらどうなっても構わないのだろう。

 

「・・・・哀しい奴だな、お前は」

 

 俺がそう言うとコカビエルは激怒した。

 

「貴様如きが俺を憐れむな!!」

 

 コカビエルは光の剣を俺に向けて振り下ろす。俺は一歩前に出て奴に密着し、拳を胸に当てた。

 

「!?」

 

 次の瞬間、コカビエルが吹っ飛んだ。だが奴は何事もなかったかのように立ち上がった。

 

「・・・・驚いたな。何だ、今のは?」

 

「【虎砲】が効いてないのか?」

 

「ふん。俺クラスになると膨大な魔力が自然と防御フィールドを作り出すのだ。俺に攻撃を入れるにはまず俺の防御フィールドを破らねばならんぞ」

 

 成る程。流石というべきか、厄介だな。コカビエル(こいつ)は全力でなければ倒せない。俺は切り札を切る決意をした。

 

 その時、コカビエルの元にフリードから念話が届く。

 

《もしもーし、聴こえますか、ボス。バルパーのジジイが準備OKだそうなんで、さっさとこっちに来てくれって言ってますけど?》

 

「ちっ、面白い所で・・・・分かった、すぐに行くから待っていろ」

 

《ういーっす。ジジイに言っときまーす》

 

 相変わらずのふざけた口調でフリードの念話は切れた。

 

(ふん。下品で口も悪く到底好きにはなれん奴だが、使える駒が少ない今はやむを得まい。それよりも今は───)

 

 コカビエルは一瞬で俺の前から姿を消した。俺は咄嗟に振り向いて、祐美達に警告する。

 

「みんな散れーーーっ!!」

 

「「「!!!?」」」

 

 俺の警告と同時にコカビエルが祐美達の背後に現れた。と、同時に放った光の剣の一撃を祐美とゼノヴィアは何とか回避したが、一瞬反応の遅れたイリナはその身に受けてしまった。

 

「きゃああああっ!!」

 

「「イリナーーーーーッ!!」」

 

 俺とゼノヴィアの叫びが木霊する。

 ゼノヴィアは倒れたイリナに駆け寄り、俺は二人を守るようにコカビエルとの間に立ち塞がる。だがコカビエルは俺達に目もくれず、イリナが落とした【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】を拾った。

 

「こいつは貰って行く。本当は青髪の娘の聖剣も欲しい所だが、まあ四本もあれば充分であろう」

 

「貴様! 聖剣(エクスカリバー)をどうする気だ!?」

 

 ゼノヴィアが相棒の聖剣を奪われて激昂する。

 

「【エクスカリバー】と言えば最も有名な聖剣だ。それが何本もあるなんておかしいと思わんか?」

 

「な!? まさか聖剣(エクスカリバー)をひとつにしようと言うのか!?」

 

 コカビエルはゼノヴィアの言葉にニヤリと笑う。

 

「まあ俺はどうでもいいんだが、バルパーが拘っていてな。という訳でこれは貰っていくぞ」

 

 そう言うとコカビエルは翼を広げ、宙に舞う。

 

「待て、コカビエル!!」

 

「お前達の相手はこいつらがする。生き残れたら駒王学園まで来るがいい・・・・無理だと思うがな」 

 

 いつの間にかコカビエルの周りには黒い翼を羽ばたかせ、七人もの堕天使が現れていた。

 

「全員殺せ。ああ、あの青髪の娘の聖剣を回収するのを忘れるなよ」

 

「ハッ!」

 

 コカビエルは堕天使に指示を出すと、そのまま飛び去った。

 残された堕天使達は敵意を剥き出しにして俺達を睨んでいる。

 

「ゼノヴィア、イリナを頼む。祐美、後を追いたいだろうがこいつらを片付けるのが先だ。いいな」

 

「分かった、任せろ」

 

「・・・・はい」

 

 ゼノヴィアはしっかりと、祐美は不満げに返事をする。

 

 堕天使達が攻撃する前に俺と祐美は左右に散る。一瞬どちらを攻撃しようか迷わせればこっちの物だ。

 

「ハッ!!」

 

 ゼノヴィアの【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】から衝撃波が疾り、堕天使達を分断する。後は俺と祐美が混乱している間に仕止めるだけだ。

 俺はジャンプして手前にいた堕天使に右ストレートを放つ。顔面への一撃を堕天使はガードしたが、それが狙いだ。俺は拳を止められた勢いのまま右腕を折り曲げて、肘撃ちを胸に叩き込んだ。

 

「グハッ!?」

 

「不破圓明流【蛇破山(じゃはざん)】」

 

 蛇破山を喰らい落下する堕天使を踏み台にして、すぐ側にいた堕天使へ後ろ廻し蹴りを放つ。そのまま連続で近付いて来た堕天使に廻し蹴りを放った。

 

「グッ!?」

「ガッ!!」

 

 二人の頸骨が砕けた感触がして、そのまま落下していく。

 

「不破圓明流【(つむじ)】」

 

 ここで俺は翼を広げて滞空する。少し離れた所にこちらを見ている堕天使がいる。瞬く間に仲間を三人殺られて呆然としてるが、戦場でそれは愚行だ。

 俺はその堕天使に向かって猛スピードで飛ぶ。

 

「ヒイッ!?」

 

 堕天使は悲鳴を上げるがもう遅い。俺はそいつの頭を掴むと猛スピードで地面に叩き付け、そのまま膝を落とした。頭がグシャリと潰れた感触がする。

 

「不破圓明流【巌颪(いわおろし)】」

 

 これで四人。残りの三人は───

 

「はあっ!」

 

「グワアッ!!」

 

 ちょうど祐美が最後の一人を斬り捨てた所だ。俺はイリナの容態を確認しようとゼノヴィアの元に向かう。

 

「ゼノヴィア、イリナの容態はどうだ?」

 

 俺が訊いてもゼノヴィアは呆然としたまま、こちらを見てる。

 

「ゼノヴィア?」

 

 再度声をかけると、ようやく俺に気付いたようだ。

 

「お前、一体何者だ!? あれだけの堕天使を、しかも素手で倒すなんて・・・・」

 

 ゼノヴィアがそんな事を訊いてくるが、今はそんな事どうでもいい。

 

「それよりイリナは?」

 

「! あ、ああ。かなり深い傷で血が中々止まらないんだ。早く病院に連れて行かなければ」

 

 イリナは背中をバツの字に斬り裂かれ、そこから今も血が流れている。意識を失いながらも苦悶の表情を浮かべていた。

 俺は制服の上着を脱ぐと、包帯代わりにイリナの傷口に当てて、腹の方で袖をきつく縛り付けた。これで少しでも血が止まってくれればいいんだが・・・・

 

「駒王学園に行こう。コカビエルが向かったならリアス達が相対している筈だ。アーシアならこの傷を治せる」

 

 俺がそう言うと、ゼノヴィアは顔を曇らせ、気不味げに視線を反らす。

 

「いいのか? 私はアーシア・アルジェントを『魔女』と罵ったのだそ?」

 

 俺はゼノヴィアの発言に呆れ、思わず声を荒げる。

 

「アホか! アーシアはそんなつまらん事を気にして目の前の怪我人を放っておくような心の狭い娘じゃねーよ! あんまりうちのアーシアを馬鹿にするな!!」

 

「!・・・・そうか、すまない」 

 

 ゼノヴィアは良く知りもせずアーシアを侮辱した事を後悔しているのか、唇を噛み締める。

 

「悪いと思うならイリナの治療が終わった後で誠心誠意謝るんだな」

 

「うん・・・・そうする」

 

「よし、分かったなら行くぞ」

 

 俺はゼノヴィアの手を借りてイリナを背負う。

 

「待たせたな祐美、行こう」

 

 俺がそう言うと、祐美は返事もせずに走り出した。どれだけ気が逸ってるんだか。だが俺は祐美に言わねばならない事がある。

 

「祐美。訊いてもいいか?」

 

「・・・・何ですか?」

 

 走りながら訊ねる俺を見ようともせず祐美が応える。俺はどう話そうかと一瞬悩んだが、どうせ口下手なんだから思ったままに話を切り出す事にした。

 

「さっきのコカビエルを見て、どう思った?」

 

「・・・・どう、とは?」

 

「俺には今のお前の行き着く先が奴だと思えたよ」

 

「!?───どういう意味です?」

 

 祐美が聞いた事のないドスの効いた声で訊ねる。流石にコカビエル(あれ)と同類扱いされるのは心外なのだろう。

 

コカビエル()が言ってたよな。『死んでいった仲間達の恨みは何処にいけばいいのか』って。俺は最近あれと良く似た言葉を聞いた覚えがある・・・・祐美。他ならぬお前が言った言葉だよ」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 一輝先輩に指摘されるまで気付かなかった事に、祐美()は愕然とした。

 

「お前がゼノヴィアに負けて、リアスの元を去る時に言った言葉だ。覚えてるよな」

 

「・・・・・・はい」

 

 大恩ある部長に背き、決別した日の事だ。忘れる訳がない。

 

「で、あれが復讐者の末路って訳だ。お前はあんな風になりたいのか?」 

 

「なっ! 違います! 私はあんな風にはなりません!!」

 

 一輝先輩の言葉を懸命に否定する。だけど、

 

「どうかな? 奴とて最初はああじゃなかった筈だ。戦力を整え、いつか再戦する日を夢見ていたんだろう。だがその日が来ない事を知って狂ったのかもしれない。祐美、お前の復讐はどうすれば終わる? バルパーを殺せば? 聖剣を全て折ったら? 聖剣計画なんてものを推し進めた教会関係者全員を殺せば終わるのか? 教えてくれ、祐美」

 

「わ、私は・・・・・・」

 

 私は一輝先輩の詰問に何も答えられない。

 

「バルパーを殺すのはともかく、聖剣七本の内の一本は行方不明だと言うし、教会関係者に手を出せば天界との間に軋轢が生じる。その責任は主であるリアスに行く事になるが、お前はそれでいいのか?」

 

「わ、私は既に眷属を抜けた身です。部長の迷惑には・・・・」

 

 既に眷属を抜けた事を主張するも、先輩は現実を突き付ける。

 

「リアスが認めればな。彼女は情愛深いと云われるグレモリー家の直系だぞ。お前が抜けるのを許す訳ないだろう。そもそも俺がここにいるのがその証拠だ」

 

「あっ・・・・・・」

 

 そうだ。一輝先輩がここに、私の側にいる事こそ部長が私を見捨てていない証になる。

 一輝先輩は眷属になって日は浅いけど、既に部長の懐刀として皆から認められている。その一輝先輩を私の側に遣わした事が部長の心情を物語っている。

 

「部長・・・・」

 

 散々命令に背き、眷属を抜けるとまで言った私を未だに見捨てずにいてくれる。そんな部長の情愛深さに涙が滲んで来る。

 

「祐美。俺はお前の復讐を否定する気はない。だが少しだけ考えてくれ。お前の仲間達は本当に恨みだけを残して死んでいったのか?」

 

「───え?」

 

 一輝先輩が何を言いたいのか良く分からない。

 

「彼らが死の間際、恨みだけを残して逝ったとは俺には思えない」

 

 思わずカッとなり、気付けば私は足を止め、怒鳴っていた。

 

「ふざけないで! 貴方に私達の何が分かると言うの!?」

 

 怒りの籠った視線を一輝先輩にぶつける。だけど先輩はただ哀しそうな目で私を見つめ返す。どうして、どうしてそんな目で私を見るの!?

 

「祐美。逆に考えて欲しいんだが、お前じゃない別の子が助かって、お前が死んでしまうとするなら、お前は最後の瞬間、その子に自分の復讐を望むのか?」

 

「!!」

 

 言われて初めて気付いた。私ならその子に自分の分まで生きて、幸せになって欲しいと願うだろう。

 

「わ、私・・・・・・」

 

 身体がガタガタと震える。私がそう思うなら、優しかった皆もそう思ったかもしれない。勿論全く恨みがないとは言わないけど、でも、だとしたら私の復讐は間違っていたの? 皆の想いをねじ曲げて自分の復讐心を満たそうとしていたの? だとしたら私は───!

 

「落ち着け、祐美」

 

 パニックを起こしかけた私をそっと包む優しい温もりがあった。

 間近で聞こえた一輝先輩の声に顔を上げると、先輩は片手で私を抱き寄せ、そっと頭を撫でてくれていた。

 

「・・・・・先、輩?」

 

「ごめん。少し突っ込みすぎた。俺はただ、彼らが死の間際に恨みだけを残して逝ったと思えなかっただけで、決してお前を動揺させたかった訳じゃないんだ。本当にごめん」

 

 抱き寄せられ、先輩の熱さが伝わって来る。私を本当に心配してくれてるのを肌で感じる。戦闘の後だからか先輩は少し汗臭い。でも嫌な感じは全然しない。トクントクンと鳴る先輩の鼓動と、今まで感じた事のない男性の温もりに包まれて、私の心は不思議と落ち着いていった。

 

「祐美?」

 

「・・・・大丈夫です先輩。落ち着きました」

 

 私は顔を上げて先輩に笑顔を見せる。それを見て、先輩はようやく安心してくれたみたい。

 

「・・・・みんながどう思っていたのか今では知る事は出来ません。でも私もみんなが最後に残したのが恨みだなんて思いたくありません。・・・・私の復讐心は一人生き残った事に対する罪悪感から来てたんですね・・・・それでみんなの想いをねじ曲げて、復讐しなきゃと思い込んでたなんて、私って何て馬鹿なんだろう・・・・」

 

 私は自嘲の笑みを浮かべる。

 

「でもそれに気付けたなら、まだ間に合うさ」

 

「はい。・・・・先輩、私はこの町の平和を乱すバルパーやコカビエルを許せません。だから私は戦います。仲間達の復讐の為ではなく、リアス・グレモリーの眷属、『騎士(ナイト)』として」

 

 私は決意も新たに宣言する。一輝先輩は優しい目をして私の欲しかった言葉を言ってくれた。

 

「お帰り、祐美」

 

「はい!!」

 

 私は先輩と見つめ合い、微笑みを交わした。

 

 

 

 

 

「あの~、そろそろいいだろうか?」

 

 声のした方を見ると、ゼノヴィアが所在なさげに佇んでいた。

 

「いたの? ゼノヴィア」

 

「いたのか、ゼノヴィア」

 

「な!? 酷いぞお前ら!!」

 

 癇癪を起こすゼノヴィアを尻目に私達は走り出す。

 部長、勝手な事ばかりしてごめんなさい。朱乃さん、いつも見守ってくれてありがとう。アーシアさん、心配かけてごめんね。そして小猫ちゃん、イッセー君、二人は復讐にかられた私を何の得もないのに助けてくれた。一緒に町中を捜し回っていた時、とても心強かった。「いなくならないで」と小猫ちゃんに言われた時、涙が出そうな位嬉しかった。私の帰る場所は、帰りたい場所は眷属の元(ここ)なんだとはっきり分かった。

 帰ったら皆に精一杯謝ろう。そして目一杯叱られよう。私は沢山迷惑も心配もかけてしまったんだから。

 

 だから、今帰ります。皆の仲間として、リアス・グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』として───

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

自分の中では祐美のCVは戸松遥さんをイメージしています。

次回は皆さんお待ちかねの本番ありの予定です。
果たして一輝の初めてのお相手は誰になるでしょうか。お楽しみに。


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第7話 騎士の告白☆☆(祐美)


遅くなりましたが第7話を投稿します。

今回は予告通り初の本番があります。楽しんで貰えたら幸いです。

それでは第7話をご覧下さい。




 

 ───物語は少し前に遡る。

 

 

 

 

 部長のオシオキが終わって、イッセー()は部長と小猫ちゃんと一緒に帰路に着いていた。

 それにしても尻がジンジンする。触ると熱いのできっと腫れ上がっているのだろう。隣を歩く小猫ちゃんも痛そうに腰を引いて小股で歩いてる。でもお尻を叩かれていた小猫ちゃんは、何というか妙にエロかった。

 痛みに耐える苦悶の表情。潤んだ瞳と上気した頬。時折洩れる艶を含んだ声。それらを思い出すだけで、顔がニヤけてしまう。

 

 ドスンッ!!

 

 そんなエロい事を考えた俺の腹に小猫ちゃんの鉄拳が突き刺さる。

 

「こ、小猫ちゃん、何を・・・・?」

 

「エロい事を考えてる顔をしてました」

 

 はい、すいません! でもエロは俺のエネルギー源なんだよ。妄想位させて下さい!!

 

「・・・・駄目です」

 

 って、何で考えてる事が分かるの!?

 

「先輩、口に出てます」

 

「え? マジ!?」

 

「マジです」

 

 何てこった! 妄想ダダ洩れだったなんて!! 俺が頭を抱えていると、先頭を歩いていた部長が立ち止まった。

 

「部長・・・・?」

 

「そこにいるのは分かってるわ。出て来なさい!」

 

 突然暗がりに向かって部長が鋭い声を飛ばす。一体何事かと思ったら、

 

「お~~やおや、流石だね~~、グレモリーのお姫様。俺っち見つかるとは思わなかったZe☆」

 

 その暗がりからさっき逃げられたフリードが現れた。

 

「フリード!?」

 

「よ! イッセーどん。さっきぶり~~」

 

 相変わらずのふざけた口調。でも何でこいつがここに? 祐美やイリナ、それに何より一輝先輩が追っていた筈だ。

 

「フリード、お前祐美達はどうした!?」

 

 フリードはニヤニヤしながら言う。

 

「ああ~~、あの騎士(ナイト)ちゃん? 可哀想だけどお亡くなりになっちゃったんじゃないっスかあ? 何たってウチのボスがお相手してたみたいだし?」

 

「ボス?───まさかコカビエルが!?」

 

「ピンポーン、お姫様正解! っちゅー訳であの娘らは諦めた方がいいんじゃね?」

 

 驚愕する部長にフリードはヘラヘラしながら答えた。馬鹿な! 祐美や先輩がやられたっていうのかよ!?

 

「お前───!!」

 

 俺の怒りに呼応して【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】が具現化する。だがフリードは俺達から飛び退いて距離を取った。

 

「おーーっと、ここでやる気はないぜ。今の俺っちはメッセンジャーなんだよ」

 

「メッセンジャー?」

 

「そっ、ボスからの伝言(メッセージ)だ。『駒王学園に来い』ってさ───俺達の決着もそこで着けようぜ、なあイッセーどん」

 

 一瞬、剣呑な表情を見せると、フリードはあっという間に走り去り、見えなくなった。奴の聖剣【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】の能力だ。ちくしょう、逃げられた!

 部長はスマホを取り出し、電話をかけたけど、相手は出なかった。

 

「駄目。一輝も祐美も電話に出ないわ」

 

 部長はスマホを握り締める。例え堕天使の幹部が相手だったとしても、一輝先輩や祐美が簡単にやられるとは思えない。

 

「イッセー、貴方は急いで家に帰ってアーシアと待機してなさい。魔方陣で迎えに行くわ。小猫、私達は一足先に学園へ行って朱乃と合流するわよ」

 

「「はいっ!!」」

 

 部長の指示が飛び、俺達は行動を開始した。

 

 

 

 

 俺はすぐに家へ帰ると、アーシアに事情を話して待機していた。しばらくすると、部屋に魔方陣が現れ、中から部長が出て来た。

 

「アーシア、事情は聞いてるわね。覚悟はいい?」

 

「は、はい。皆さんが怪我をしても私が治します!」

 

「いい返事ね。それじゃあ行くわよ」

 

「「はいっ!!」」

 

 俺達は魔方陣を通り、駒王学園の校門前に転移した。

そこには朱乃さんと小猫ちゃん、そしてソーナ会長と匙がいた。

 既にシトリー眷属にも事情は知らされていて、会長と匙以外の眷属が学園一帯を結界で覆っていた。部長は会長と打ち合わせをして、会長達が結界の維持を、俺達がコカビエルに対処する事になった。

 コカビエル相手に俺達だけでは無謀であり、魔王様に援軍を頼むべきだとの会長の指摘に部長は難色を示した。だが、朱乃さんが既に援軍を要請したと聞き、渋々ながらそれを認めていた。

 援軍の到着は一時間後。それまで俺達だけでコカビエルの相手をしなくちゃならない。それだけじゃない、祐美の宿敵であるバルパー・ガリレイや、フリードまでいるのだ。フリード相手にも遅れを取っていた俺が果たしてどこまで出来るだろうか。

 

《心配か、相棒》

 

 突然声が頭の中に響いて来た。この声の主の名はドライグ。俺の神器【赤龍帝の籠手】に封じられた、かつて気に入らないという理由だけで三大勢力に喧嘩を売ったという二天龍の一角、赤龍帝王(ウェルシュ・ドラゴン)ドライグその人(?)だ。

 俺はライザーとのゲームが終わった辺りからこいつと話が出来るようになった。それ以来、戦闘に不馴れな俺のアドバイザーとして助言をしてくれる存在だ。

 最初は伝説の(ドラゴン)なんておっかなかったけど、話をしてみると案外気さくないい奴で、今ではお互い「相棒」と呼び合う間柄だ。

 

《そりゃあ、な》

 

《な~に、いざとなったら以前話したようにお前の身体の一部を捧げろ。そうすりゃあ俺がお前に力を与えてやるよ》

 

《コカビエルも倒せるか?》

 

《そりゃあお前次第だ。まあ、少なくとも魔王が援軍に来るまで動けなくする位は出来るだろう》

 

 おお、そいつは頼もしいぜ!

 

《頼りにしてるぜ、相棒!》

 

《任せろ相棒! コカビエルなら相手にとって不足なしだ。伝説の(ドラゴン)の力、篤と見せてやろうぞ!!》

 

 

 

 

 

 俺達は会長と匙の激励を受けて、正門から堂々と校内へ侵入した。

 ここは既に敵地。俺は『兵士(ポーン)』の特殊能力【昇格(プロモーション)】で『女王(クイーン)』に昇格して力を底上げする。そして俺達は校庭で異様な光景を見た。

 校庭の中央に巨大な魔方陣が敷かれている。そこに四本の聖剣が宙に浮いて、輝きながらクルクルと回っている。すぐ側にはバルパーがいて、何らかの呪文を唱えている。って四本!?

 

「・・・・これは一体」

 

「聖剣をひとつに統合してるのだよ」

 

 俺の呟きに空中から答えが返って来た。驚いて宙を仰ぐと、椅子に座った男が宙に浮いていた。

 

「───貴方がコカビエルね?」

 

「いかにも。ようこそ魔王の妹リアス・グレモリーとその眷属達。歓迎するぞ」

 

 黒いローブを着たその男は慇懃無礼な態度で部長の問い掛けに答える。こいつがコカビエル!? 堕天使の幹部というからもっとオッサンかと思ってたが、想像していたよりずっと若々しい。悔しいけどイケメンだ。

 

「それで? 貴方の目的は何なのかしら?」

 

「目的か。取り敢えずお前の領地であるこの駒王町で暴れさせて貰う。そうすればサーゼクスが出て来るであろう?」

 

「!? そんな事をすれば三大勢力の拮抗を崩す事になるわ。貴方はまた戦争を起こす気なの?」

 

「その通り! 俺は戦争がしたいのだよ。全くエクスカリバーを盗めばミカエルが戦争を吹っ掛けると思ったのに、思った以上に腑抜けていて当てが外れたわ。ならばお前を犯してから殺せば今度こそ怒り狂ったサーゼクスが出て来るだろう? それにしても・・・・小娘かと思ったが中々に実っているではないか。これなら犯しがいもあるというものだ」

 

 この野郎、部長を犯すだと!? そんなの絶対に許さん!!

 

「───ゲスが!」

 

 コカビエルに視姦された部長が舌打ちして殺気を漲ぎらせる。こんなにブチ切れた部長を見るのは初めてだ。

 

「ククク、何とでも言うがいい。・・・・バルパー、後どれ位かかる?」

 

「五分もかからんよ、コカビエル」

 

 コカビエルの問いにバルパーが答える。

 

「そうか・・・・で、サーゼクスは呼んだのか? リアス・グレモリー」

 

「お兄様の代わりに私達が相手になるわ!」

 

 部長の答えにコカビエルはつまらなそうに嘆息する。

 

「何だそれは・・・・話にならんな」

 

「ちょっと待て! 盗まれた聖剣は三本だった筈。もう一本はどこから持って来たんだ!?」

 

 俺が問い掛けると、コカビエルは俺をジッと見つめる。

 

「貴様が今代の赤龍帝か・・・・あまり期待出来そうにないな。まあいい。もう一本はバルパーを追いかけて来た聖剣使いの一人から奪った物だ。栗色の髪の娘の方だったな」

 

 イリナの事か!? じゃあイリナは?

 

「聖剣使いと一緒に私の眷属が二人いた筈だけど、二人はどうしたの?」

 

「さてな。後は部下に任せて来たから知らんよ。まあ選りすぐりの堕天使達が相手だ。とっくにくたばってるだろうよ」

 

 部長の問いにコカビエルがあっさりと答える。一輝先輩と祐美を殺しただと!?

 怒りで目の前が真っ赤になる俺だったが、以外にも部長は冷静だった。

 

「そう・・・・貴方が直接手を下した訳じゃないのね?」

 

「そうだが・・・・それがどうした?」

 

 訝しげに問うコカビエルに部長は自信たっぷりに答えた。

 

「生憎、堕天使如きに遅れを取る二人じゃないわ。一輝と祐美は必ずここに来る。断言してあげるわ」

 

 そう言って不敵に笑う部長。二人に対する信頼が部長にここまで言わせるのだろう。ちょっと羨ましい。

 

「ほう、面白い。ではそれまで俺のペットと遊んでいて貰おうか」

 

 コカビエルはそう言ってパチンッと指を鳴らすと、闇夜の中から巨大な何かが近付いて来る地響きがした。

 闇夜から現れたそれは、三つの頭を持つ獰猛な魔犬だった。

 

「ケルベロス!?」

 

 部長が魔犬を見て声を上げる。ケルベロスと言えば地獄の番犬と呼ばれる俺でも知ってる有名な魔物だ。

 

「聖剣の統合が終わるまでの余興だ。精々楽しませろ。やれ、ケルベロス!」

 

 そう言ってコカビエルは俺達にケルベロスをけしかける。戦いが始まった!

 

 

 

 

 

 対ケルベロス戦で俺はサポートを命じられた。さっき目覚めたばかりの【赤龍帝の籠手】第二の能力【譲渡】。高めた力を仲間に譲渡して仲間をパワーアップさせる能力だ。これはチーム戦で大きな力になる。

 部長と朱乃さん、小猫ちゃんがケルベロスを食い止める間に俺はひたすら力を高めていく。だが、俺の背後から唸り声が聞こえて振り向くと、もう一頭のケルベロスが三つの頭から涎を垂らして俺とアーシアを見ていた。って二頭目!?

 ヤバい! 攻撃を受けたら折角高めた力がリセットされてしまう。どうする───!?

 

 ザンッッッ!!

 

 その時、鋭い斬撃音と共にケルベロスの首のひとつが宙に飛んだ!

 

「加勢するぞ」

 

 そこには聖なるオーラを輝かせ、聖剣を振るうゼノヴィアの姿があった。

 ゼノヴィアは着地すると、そのままケルベロスに斬りかかる。聖剣は魔物相手に特効がある。瞬く間にケルベロスの身体が煙を吹き、消滅していく。

 

「これで終わりだ」

 

 最後にケルベロスの胸元に聖剣を突き刺すと、ケルベロスは絶叫を上げて消滅した。凄え!これが聖剣の威力か!?

 その時、【赤龍帝の籠手】の宝玉が点滅し出した。何事かとドライグに訊くと、部長か朱乃さんに譲渡すればケルベロスを倒せる力が溜まったという。早速部長に報告すると、部長と朱乃さんの二人に譲渡するように言われ、俺は二人の肩に手を置いた。

 

「行くぜ、ブーステッド・ギア・ギフト!!」

 

『transfer!』

 

 俺の身体から圧倒的な力が二人に流れて行く。力の高まりを感じ驚いていた二人だったが、行けると感じたのか部長が滅びの魔力を、朱乃さんが雷撃を繰り出した。パワーアップした二人にケルベロスはなす術もなく逃げようとしたが、その足を無数の魔剣が貫き、動きを封じる。

 

「逃がさないわ!」

 

 そこに現れたのは俺達の頼れる騎士(ナイト)、祐美だった。

 

「祐美!!」

「祐美ちゃん!!」

「祐美先輩!!」

 

 部長が、朱乃さんが、小猫ちゃんが俺達の騎士の帰還に喜びの声を上げる。

 

「朱乃さん、今です!」

 

 祐美の声に呼応し、特大の雷撃を放つ朱乃さん。その雷撃を食らい、ケルベロスは跡形もなく消滅した。

 ケルベロスが消滅すると共に部長がコカビエルに向かって特大の滅びの魔力を放った。

 

「食らえ、コカビエル!!」

 

 部長の放った魔力弾はまっすぐコカビエルに向かって行く。いつもの十倍はある大きさだ。例えコカビエルと言えどもこれを食らえば消滅は必至の筈。だがコカビエルは片手を前にかざすと、その魔力弾を受け止め、そのまま空中に弾き飛ばしてしまった。嘘だろ!?

 

「ほう、赤龍帝の力があればリアス・グレモリーの力がここまで引き上がるのか───面白いな。実に面白い」

 

 そう言ってコカビエルは哄笑を上げる。その時、

 

「───完成だ」

 

 バルパーの声がする中、四本のエクスカリバーが更に輝きを増し、光と化す。眩い光の中で四つの光はひとつになっていく。やがて光が収まるとそこには青白いオーラを放つ一本の聖剣(エクスカリバー)が在った。

 

「エクスカリバーがひとつになった事で下の術式も完成した。あと二十分程でこの町は崩壊する。解除するにはコカビエルを倒すしかないぞ?」

 

 なっ!? バルパーの奴とんでもない事を言いやがった! 後二十分でこの町が滅ぶ!? 魔王様の援軍も間に合わないじゃねーか!?

 

「フリード!」

 

「はいな、ボス」

 

 コカビエルに呼ばれ、フリードが姿を現す。

 

「最後の余興だ。ひとつになったエクスカリバーの力、見せてみろ」

 

「へいへい。まーったく人遣いが荒いよ、うちのボスは。でもまあ、ひとつになったエクスカリバーが使えるなんて俺ちゃん超ラッキーみたいな?それじゃあ一丁悪魔をチョッパーしちゃいますか!」

 

 意気揚々と聖剣を手にするフリードの前にゼノヴィアと祐美が立ち塞がる。そして祐美はバルパーに自分が「聖剣計画」の生き残りである事を告げた。憎悪を向ける祐美に対してバルパーもまた「聖剣計画」の正体を告げる。それは驚愕すべき事だった。

 バルパーは幼い頃から聖剣に憧れていた。それ故に自分に聖剣使いの素養がない事を知り深く落ち込んで、人工的に聖剣使いを作り出す研究に没頭した。そしてその研究は祐美達によって完成した。

 聖剣を使うには必要な因子──聖剣因子が必要だが、祐美達一人一人が持つ因子は弱く、誰もが聖剣使いになれる程ではなかった。そこでバルパーは聖剣因子のみを抽出し集める事は出来ないかと考え、聖剣因子を持つ者から因子を抜き取り、結晶化する事に成功した。

 バルパーは懐から自慢気に光輝く結晶体を取り出して哄笑(わら)った。

 聖剣因子とはそれを持つ者の生命そのもの。つまり聖剣因子を抜き取られた者は死に至る。現段階では人工的に聖剣使いを作り出すには犠牲を払わねばならなず、その犠牲をバルパーは祐美達に強いたのだ。

 教会はバルパーを異端として追放した。だがバルパーが追放されながらゼノヴィア達新たな聖剣使いが誕生しているという事はバルパーの研究を引き継ぐ者がいて、今でも犠牲は出続けている筈。ゼノヴィアも聖剣を使う為にイリナや他の戦士達がその結晶を身体に埋め込まれるのを見たそうで、結晶体の正体を知って、嫌悪感を顕にしていた。そういう点ではイリナ達も犠牲者と云えるのかもしれない。

 結局バルパーの目的は自分の研究を認めず追放した教会への復讐だった。その為の尖兵として聖剣使いを大量に作り出し、各地の教会で保管されている伝説の聖剣を強奪し、教会と天界に戦争を仕掛けるというのだ。

 仮にも教会の大司教であったバルパーがどうやって堕天使のコカビエルと結び着いたのか疑問だったが、戦争を起こすという理由で結び着いたのか。くそ、最悪のタッグだ!

 

「・・・・そんな事の為に私の仲間達は殺され、死して尚その魂は囚われたままだなんて・・・どこまで生命(いのち)を弄べば気がすむの、バルパー・ガリレイ!!」

 

 怒りを爆発させた祐美がバルパーに斬りかかるが、フリードがそれを防ぐ。

 

「おーーっと、ダメダメ。アンタのお相手は俺っちだぜ、騎士(ナイト)ちゃん!」

 

「邪魔を、するなーーーーーっ!!」

 

 激しく斬り合う祐美とフリード。だが剣士としては互角でも、得物が違った。フリードの聖剣(エクスカリバー)は七つに分かれた内の四つが合わさった全盛期の半分以上の力を持った物だ。祐美が【魔剣創造(ソード・バース)】で創り出した魔剣とは悔しいが格が違う。剣を合わせる端から魔剣が折られていく。

 

「くっ───!?」

 

「ヒャハハハーーーーッ!!やっぱり俺ちゃんのエクスカリバー、超・最・強!大人しくチョッパーされちゃいなーーーっ!!」

 

 そんな祐美の危機を救ったのはゼノヴィアだった。

 

「させん!!」

 

 ゼノヴィアの【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】は力だけならフリードの聖剣(エクスカリバー)と互角に渡り合っていた。

 魔剣を折られ、倒れる祐美はそれでもバルパーが手にする結晶に向かって手を伸ばす。

 

「仲間を、みんなを返してっ!!」

 

 だがバルパーはそんな祐美を嘲笑う。

 

「ククク、返してどうする。死んだ者はもう還らんのだ。それなら私の役に立った方が死んだ者達も浮かばれるという物だ。そうだろう?」

 

「くっ、バルパァァーーーッ!!」

 

 悔しさのあまり涙を滲ませる祐美。だが次の瞬間、バルパーが「ぎょぺ!?」と情けない声を上げて吹っ飛んだのを見て、呆気に取られた。

 

「「「えっ!?」」」

 

 祐美だけじゃなく、俺達も何が起きたのか分からなかったが、

 

「いい加減にしろ。この腐れジジイ」

 

 バルパーのいた所に一輝先輩の姿を確認し、何が起きたのかを理解した。

 

 

 

 

 

 駒王学園に到着した一輝()と祐美、ゼノヴィアの三人は正門にいたソーナ会長から事情を訊くと、すぐに校内に突入した。

 校庭では二頭のケルベロス相手に戦うリアス達の姿があった。祐美はリアス達の、ゼノヴィアはイッセーの加勢に向かい、無事ケルベロスを倒した。

 俺は後方で皆を見守っていたアーシアを捕まえてイリナの治療を頼むと、アーシアは何の躊躇もなく治療を開始した。やはりうちのアーシアは天使であった。

 しかし誰もアーシアの護衛に付かないなんて、彼女に何かあったらどうするんだ。アーシアは眷属の要。彼女がいなければ継戦能力がガタ落ちだというのに。皆イケイケで戦闘に参加してしまうこの脳筋志向はうちの眷属の課題だな。

 取り敢えずイリナの治療が終わるまでアーシアの護衛に回る事にした俺はこの場で戦況を見守る。だが四本の聖剣が一本に統合されると、魔方陣の術式が起動して、二十分後にはこの駒王町が崩壊するという。それを止めるにはコカビエルを倒すしかないと云われて、黙っている訳にはいかなくなった。

 

「一輝さん、終わりました!」

 

 ちょうどその時、イリナの治療が終わり、意識を取り戻した。

 

「うぅ・・・・・・」

 

「イリナ!・・・・アーシア、容態は?」

 

「傷は完全に治しました。でも私の神器、【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】は傷の治療は出来ても失った体力や血液までは戻せませんから、戦闘はとても無理です」

 

「分かった。お疲れ様、アーシア」

 

 俺が頭を撫でるとアーシアは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

「はい!」

 

「私からもありがとうアーシアさん・・・おかげで助かったわ・・・・」

 

「いえいえ。あ、まだ起き上がったら駄目ですよ!」

 

 アーシアに礼を言って、イリナは身体を起こそうとしてアーシアに止められた。

 

「大丈夫よ。・・・・一兄、行って」

 

「イリナ、だが・・・・」

 

「アーシアさんの護衛は私がするわ。戦闘は出来ないけどいざという時、連れて逃げる位は出来るから・・・・だから一兄は戦って」

 

 俺はイリナの提案に思案する。そしてアーシアと視線を合わせると彼女が頷くのを見て覚悟を決めた。

 

「分かった。でも無理はするなよ。──アーシア」

 

「はい。任せて下さい!」

 

 俺は二人に見送られ、戦場へ駆け出した。

 

 

 

 

 戦闘ではゼノヴィアとフリードが激しく剣を交えていた。祐美は魔剣を折られ、倒れながらも仲間達を返せと訴える。だがバルパーはそんな祐美を嘲笑う。

 

(あいつは死刑決定だが、その前に───)

 

 俺は音もなくバルパーの背後に忍び寄ると、奴の背中を力一杯蹴り飛ばした。奴が何の身体強化もしてないなら確実に背骨が砕けた筈だ。俺は奴が吹っ飛んだ拍子に落した結晶体を拾う。

 

「・・・・・・先、輩?」

 

 祐美は未だに何が起きたのか把握してないようで、キョトンとした表情が何だか可愛らしい。

 

「大切なものなんだろう? もう失くすなよ」

 

 俺は結晶体を祐美に手渡した。

 祐美は結晶体を大切そうに受け取り、哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに撫でると、もう離さないとばかりにそっと胸に抱きしめた。

 

「みんな・・・・・・」

 

 祐美の目から零れた一雫の涙が結晶体に落ちる。すると突然、結晶体が眩い光を放った。

 

 

 

 

 

 突然結晶体から放たれた光は瞬く間に周囲に広がった。すると地面からいくつもの光の球が浮き上がり、祐美()の周りに集まると、それはやがて青白い光を放ちながら人のカタチを形成していく。

 これが何なのか私にははっきりと分かる。誰もが皆懐かしい、私の仲間達だった。私はずっと胸に秘めていた思いを告白する。

 

「みんな・・・・私、ずっと思ってたの。私が、私だけが生きてていいのかなって。・・・・皆を差し置いて私だけが優しい人に救われて、平和に暮らしてる事にずっと罪悪感を抱いてたの・・・・」

 

 私の告白を聞いた一人の少年──彼はマルコ。将来はサッカー選手になりたいと言っていた子だ──が言った。

 

《僕達の事はもういいんだ。だから君は僕達の分まで生きて、幸せになって、イザイヤ》

 

《そうよ。折角私達が逃がしたのに、そんな風に考えてたら人生勿体ないわ》

 

 彼女はフローネ。私よりも年上で女子のリーダー格だった娘だ。

 

《そうそう。折角美人になったんだから恋のひとつや二つしなくちゃ駄目よ、イザイヤ》

 

 彼女はルーシー。恋愛話が大好きだった娘だ。

 

《僕達の願いはひとつだよ。君のこれからの人生に幸多からん事を───》

 

 彼はローラン。一番年上で私達のリーダーだった子だ。

 

 ああ、ああ! 皆の想いが伝わって来る。私に生きろと、幸せになれと言っている。いつしか私は涙を流していた。 

 皆はやがて歌を歌い出す。それは苦しかったあの日、過酷な実験の中、明日を信じて皆で口ずさんだあの歌───聖歌だった。私も聖歌を口ずさむ。あの時明日を、未来を信じて歌った聖歌(うた)。いつの間にか私の涙は止まり、皆と笑顔を交わしていた。

 

《僕達は一人では駄目だった──》

 

《私達だけでは聖剣を扱う因子が足りなかった。けど──》

 

《みんなが集まれば、きっと大丈夫──》

 

 皆は再び光の球に変わり、私の周り巡っている。

 

《聖剣を受け入れて──》

 

《もう怖くなんかない──》

 

《例え神が見ていなくても──》

 

《例え神から愛されなくても──》

 

《僕達──》

 

《私達は──》

 

「───ひとつよ」

 

 皆の魂が天に昇り、ひとつの大きな光となって降り注ぐ。神々しい光に包まれて、私の魂と皆の魂が融合する。ひとつになっていくのを感じる。

 

「───ずっと一緒だよ、みんな」

 

 私は立ち上がると【神器(セイクリッド・ギア)】を起動し、剣を創り出す。

 魔剣であって魔剣でなく、聖剣であって聖剣でない。魔なる力と聖なる力が融合した新しい剣が誕生しようとしているのが伝わって来る。

 皆の、眷属(仲間達)の声援が聞こえる。さあ、行こう。この胸の想いを解き放って───

 

禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

 私の声に応えて【魔剣創造(ソード・バース)】が形を変えていく。神々しい輝きと禍々しいオーラを放つ一本の剣に───

 完成したよ皆。私はその剣を高く掲げる。

 

禁手(バランス・ブレイカー)双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)】。聖と魔の力を有するこの剣の力、受けてみなさい!」

 

 私は聖魔剣を見て下品に喚き立てるフリードに斬りかかる。何合か打ち合って私の聖魔剣の方が威力が上だと分かると、フリードはエクスカリバーの特殊能力を使った搦め手で攻めて来た。でも今の私には通じない。私はフリードの攻撃を悉くかわしきった。

 そこでゼノヴィアが驚く事にもう一本の聖剣【デュランダル】を召喚して、エクスカリバーとの二刀流を繰り出した。ゼノヴィアは私のような人工聖剣使いとは違う天然の聖剣使いだったのだ。これにはバルパーやコカビエルさえも驚いていた。

 ゼノヴィアの援護を受けつつ、私の聖魔剣はフリードごとエクスカリバーを打ち砕いた。

 

 

 

 

 

 祐美がついにエクスカリバーの破壊に成功した。フリードも斬られて動かない。バルパーはもう逃げられない。残る敵はコカビエルのみ。一輝()は上空のコカビエルを睨み付ける。

 

「第二ラウンドといこうか、コカビエル」

 

「ふん。一人も倒せんとは役に立たん部下共だ。よかろう。この俺が直々に殺してやる」

 

 コカビエルはそう言うと、指をパチンと鳴らした。

 暗がりから現れたのはまたしてもケルベロス。だが大きさが違う。さっきのが6、7mだったのに対し、こいつは10m以上はある。ひょっとしてさっきの奴らの親か?

 ケルベロスは怒りの咆哮を三つの首から上げて、リアス達に襲いかかった。パワーもスピードもさっきの奴ら以上だ。このままでは皆が危ない。

 

「祐美、ゼノヴィア。リアス達を頼む」

 

「先輩!?」

 

「お前、まさかコカビエル相手に一人で戦う気か!?」

 

 二人は驚愕の声を上げる。コカビエル()の強さは先程戦って実感し、無謀だと思っているのだろう。

 

「大丈夫、勝算はある。信じてくれないか?」

 

 俺はコカビエルと視線を交えたまま二人に頼む。

 

「・・・・分かりました。行きましょうゼノヴィア」

 

「正気か木場祐美! 確かにあいつは強かったが、それでもコカビエルに勝てるとは──「大丈夫よ。先輩にはまだ切り札があるから」!?」

 

「ああ。今それを見せてやる。ガイバーーーーー!!」 

 

 俺の声は時空を越えて、遥か次元の彼方からもう一人の俺を喚ぶ。眩い光の中、俺は強殖装甲を殖装する。

 光が収まるとそこに現れたのは紅の鬼神。強殖装甲を纏ったガイバー()がいた。

 

「こ、これは・・・・・」

 

「行け! リアス達を頼む!」

 

「はい!!」

 

 祐美は呆気に取られるゼノヴィアの手を引き、走り出した。

 

「ほう。それがお前の切り札か・・・・成る程、面白い」

 

「行くぞ、コカビエル!」

 

 俺は腰の重力制御球(グラビティ・コントローラー)を起動して宙に舞い上がる。

 

「よかろう、来い!」

 

 コカビエルは光の剣を作り出し、俺を迎え撃つ。光の剣と高周波ブレードが交差し、凄まじい音を立てた。

 

「むうっ!!」

 

「おおっ!!」

 

 力は全くの互角。俺は魔力による身体強化を掛けた上にガイバーによる強化も加わっているというのに押しきれない。堕天使の幹部は伊達じゃないと言う事か!

 

 

 

 

 一方、コカビエルも驚いていた。

 

(何と、この俺と互角に戦えるとはこいつ何者だ!? これ程の手応えあの大戦以来だぞ!? ククク、面白い、実に面白い!!)

 

 久方振りの手応えにコカビエルは歓喜に包まれた。

 

 

 

 

「ならば、これでどうだ!!」

 

 コカビエルの手に光が集まる。バルパーを追跡した時に撃たれた魔力砲撃。あれよりも更に大きな魔力がコカビエルに集まっていく。

 まともに受けたら消滅は必至。俺は両手を掲げて重力制御を集中させる。やがて両手には黒い渦のようなものが形成された。

 

「喰らえーーーーっ!!」

 

 コカビエルの魔力砲撃が放たれた。だが放たれた砲撃は俺の両手の黒い渦に吸い込まれ、跡形もなく消え去った。

 

「なにいっ!?」

 

 コカビエルは驚愕し声を上げる。

 俺は重力制御を集中させて両手に【ブラックホール】を作り出したのだ。

 前世の記憶を取り戻し、ガイバーの力を得てから、俺は夜な夜な力の扱い方を訓練していた。俺が注目したのはガイバーの重力制御能力。原作では宙に浮いたり、【重圧砲(プレッシャーカノン)】のような攻撃方法として使われていたが、俺は寧ろ防御に使えないかを検討した。

 その結果、重力制御を最大にまで高める事で光すら吸い込む【ブラックホール】を作り出す事に成功した。実戦で使ったのは初めてだが上手くいったようだ。

 

「ククク、クハハハーーーーッ!! 素晴らしい、素晴らしいぞ貴様は!! これだ! 俺が求めていたのはこんな戦いだったのだ!!」

 

 コカビエルは狂ったように哄笑(わら)う。

 魔方陣の術式が発動するまでもう時間がない。

 

「決着を着けよう、コカビエル」

 

 俺はコカビエルに向かって真っ直ぐに突っ込んだ。コカビエルは哄笑いながら迎撃の光を放つ。だが、その悉くは左手に作り出した【ブラックホール】が吸収していく。

 

「おおおおおーーーーーっ!!」

 

 凄まじい衝撃と共に、俺の拳がコカビエルの防御フィールドを突き破った。

 

「グオオオッ!?」

 

 そのまま二人は地上に落下した。

 もうもうと土埃が舞い散る中、コカビエルは何とか立ち上がった。一目見ただけで相当のダメージを受けているのが分かる。

 

(くっ、まさかこれ程のダメージを喰らうとは・・・・リアス・グレモリーはとんでもない怪物を眷属にしているな)

 

 事前に調査した限りではバラキエルの娘である女王(クイーン)と赤龍帝位しか注意すべき眷属はいなかった筈だが、騎士(ナイト)の娘は『禁手(バランス・ブレイカー)』に至り、更にはあの規格外の怪物までいるとは。

 

(───俺はまだ()れるぞ。さあ、次はどう来る!?)

 

 コカビエルは両手に光の剣を作り出し、身構える。次の瞬間、土埃を突き破り、紅の影がコカビエルに迫る。

 

「甘いわ!!」

 

 光の剣がガイバー(一輝)の強殖装甲を斬り裂き、両肩に食い込む。血飛沫を上げて一輝の突撃が止まった。

 

「ぐうっ!!」

 

 だが一輝はそのまま右手を伸ばし、拳をコカビエルに添えた。

 

(そんな状態で何が出来る───!?)

 

 コカビエルはそのまま力を加え、両断しようとしたその時、

 

 ───ドクンッッ!!

 

 コカビエルの全身に、身体中がバラバラになるような衝撃が疾った。

 

「ガハッ!!」

 

 血を吐き、身体中の力が抜けていく。

 

(何だ? 俺は何をされたのだ!?)

 

 力が入らず、そのままガイバー(一輝)に凭れかかるコカビエルに一輝の呟きが届く。

 

「不破圓明流奥義、【無空波(むくうは)】」

 

「・・・・・そう、言えば、まだ貴様の名を・・・訊いて、な・・・た、な・・・・」

 

「リアス・グレモリーの兵士(ポーン)、【ガイバー】不破一輝」

 

「・・・・その名、忘れ、んぞ・・・・・・」 

 

 コカビエルは薄れゆく意識の中、己を破った男の名を心に刻んだ。

 

 

 

 

 

「「はああああーーーーっ!!」」

 

 祐美の聖魔剣とゼノヴィアのデュランダルがケルベロスの首を斬り落とした。

 

「これでとどめよ!!」

 

 最後にイッセーから力を譲渡されたリアス()の滅びの魔力がケルベロスを消滅させた。

 厄介な敵だったけど、何とか倒す事が出来た。残るはコカビエルだけど一輝はどうなっただろう?

 

 その時大きな音がして、そちらを見ると土埃が舞い上がっていた。そして土埃が収まると、そこにはガイバーに変身した一輝とコカビエルが交錯する姿が。

 一輝は両肩に光の剣を食い込ませて血を流している。あんな傷を負った一輝は初めてだ。だけど次の瞬間、コカビエルが血を吐き、一輝に凭れかかるとそのまま倒れた。

 コカビエルが倒れると、魔方陣の光が段々小さくなっていき、やがて消えた。

 

「・・・・・勝っ、た?」

 

 一輝がコカビエルを倒して、バルパーの魔方陣が停止した。良かった、これで駒王町は救われた。私が万感の想いで一輝の元へ駆け出そうとしたその時、

 

「「一輝」先輩!!」

 

 私より速く駆け抜ける影が二つ。誰あろう朱乃と祐美だ。二人はあろう事か一輝の両腕に抱き着いた。

 んな!? 朱乃が何となく一輝に気があるのは気付いてたけど、祐美まで!? どうやら今回の件で私の知らない内に一輝に惹かれてしまったみたい。あんな祐美の顔を見るのは初めてだわ。私も端から見たらあんな恋する乙女のような顔をしているのかしら。

 いつの間にか皆が一輝の周りに集まっていた。

 アーシアは届かないからか一輝を座らせ、肩の治療をしている。朱乃と祐美は一輝の両腕に抱き着いたまま。イッセーは興奮気味に一輝に話しかけ、小猫もその隣でコクコクと頷いている。ゼノヴィアとイリナはお互いの無事を讃え合っていた。そう言えば彼女、コカビエルに聖剣を奪われて傷を負ったそうだけど平気みたいね。アーシアが治したのかしら。

 そこにいるのは悪魔と教会の戦士。本来は敵対する間柄なのに、私は不思議と一緒にいる光景に違和感を感じなかった。

 すると突然、一輝の額から一筋の閃光が疾った。

 

「ひょええっ!?」

 

 いきなり上がった悲鳴にそちらに目を向けると、バルパーが這ったまま逃げようとしていた。何て往生際の悪い! 一輝は逃げようとしたバルパーを止める為にビームを撃ったみたいだ。

 

「ちっ! フリードには逃げられたか。逃げ足の速い奴だ・・・・このジジイはどうする、リアス?」

 

 気付けば祐美に斬られた筈のフリードがいない。一体いつの間に逃げたのか。ともあれバルパーをどうするか、か・・・・

 

「祐美。貴女はどうしたい?」

 

 私はバルパーを恨んでいるだろう祐美に訊いてみた。祐美はしばらくバルパーをジっと見つめると、口を開いた。

 

「部長にお任せします」

 

 そう言ったのが意外だったのかイッセーが祐美に訊いた。

 

「いいのかよ祐美? あいつがお前の仲間達を処分した張本人なんだろ?」

 

 だけど祐美は立ち上がり、吹っ切れたように言った。

 

「いいのよ。みんなとひとつになって分かったの。みんなは私が幸せになる事を望んでいてくれた。だから許す事は出来ないけれど、私は手を下す気はないわ。それに部長の眷属である私が私怨で勝手にバルパーを斬れば、また部長に迷惑をかけてしまうわ」

 

「祐美・・・・・」

 

 祐美は私の前まで来ると、その場に跪いた。

 

「・・・・部長、私は眷属のみんなを、何より大恩ある貴女を裏切ってしまいました。お詫びする言葉が見つかりません」

 

 私は祐美の頬をそっと撫でる。昔、落ち込んだこの娘を慰めた時のように。

 

「でも貴女は帰って来てくれたわ・・・・私はそれだけで十分。彼らの想いを無駄にしては駄目よ?」 

 

「はい。・・・・部長、私は改めてここに誓います。私、木場祐美はリアス・グレモリーの眷属、『騎士(ナイト)』として、貴女と仲間達を終生お守りします」 

 

「貴女の誓い、確かに受けました・・・・お帰りなさい、祐美」

 

 私は祐美をそっと抱きしめた。

 

 

 

 

 

 木場さんがリアスさんと和解出来たみたい。こういう場面を見ると、悪魔であっても仲間を大切にするという想いは、イリナ()達と違わないんだなぁと思ってしまう。

 その時、場にそぐわない狂ったような哄笑が聞こえて来た。

 

「──ククク、そうか、そうだったのか・・・・。聖魔剣、反発し合う二つの要素が混じり合って生まれた、本来あり得ないモノ・・・・こんなモノは聖と魔のバランスが崩れてなければ出来ん筈だ・・・・すなわち、魔王だけではなく、神もまた・・・・」

 

 バルパー・ガリレイがブツブツと何かを呟いている。

 

「・・・・お前、何が言いたい?」

 

 ゼノヴィアがデュランダルをバルパーに向ける。だけどバルパーは一向に訊いてない。

 

「コカビエルよ、そういう事なのか!?」

 

「・・・・その通りだ、バルパー」 

 

 バルパーの叫びに応えた存在に私は戦慄する。

 

「コカビエル!? 貴方まだ───!」

 

 リアスさんが緊張した声を上げた。だけどコカビエルは、

 

「・・・・・安心するがいい。ガイバー(そいつ)の一撃を受けて、未だに身体が動かん。全く、とんでもない怪物を眷属にしたものだな、リアス・グレモリー」

 

「怪物なんかじゃないわ。一輝は私の大切な男性(ひと)よ」

 

 リアスさんの発言に、私の胸が何故だかチクリと痛んだ。

 

「ククク、そうか・・・・さて、バルパーよ。お前の思った通りだ」

 

「何だ? 何を言っているんだ、お前らは!?」 

 

 ゼノヴィアが訝しげな声を上げた。すると、

 

「つまり仕えるべき神はもう、この世にはいないという事だ」

 

 とんでもない爆弾発言をバルパーはした。

 

「は!? え・・・・・?」

 

 ゼノヴィアが混乱するのも分かる。神がいないなんて、そんな・・・・・!?

 

 そしてコカビエルは訥々と話し始めた。

 かの大戦で神は四大魔王と戦い、相討ちになった。

 戦後で残されたのは神を失った天使、四大魔王と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外のほとんどを失った堕天使と、どの陣営も疲弊どころか壊滅に近い状態で、最早人間に頼らなければ種の存続が出来ない程落ちぶれてしまったそうだ。

 堕天使は天使が堕ちれば数は増えるけど、純粋な天使は神を失った今、増える事はない。だからこそ人間と交わり、数を増やそうとしているという。『悪魔の駒』で転生悪魔を増やしている悪魔も似たようなものだ。

 

 隣でゼノヴィアが項垂れている。周りを見ると皆愕然とした表情をしている。特にアーシアさんが酷い。今も呆然として何かを呟いているけど、イッセー君に支えられないと立っていられない程だ。

 私も正直どうしたらいいのか分からない。そんな時、変身を解いた一兄がコカビエルに訊ねた。

 

「そんな重大な事を俺達に話してどうするつもりだ? 祈る相手もいないのに祈りを捧げ続けるアーシア達を嘲笑いたいのか?」

 

「──ククク、何、単なる意趣返しだ」

 

 コカビエルは倒れたまま、意地の悪そうな顔で答えた。

 

「チッ、こいつやっぱり最悪だ。リアス! 結局こいつらはどうするんだ!?」

 

「・・・・そうね。もうすぐ来るお兄様の援軍に身柄を引き渡しましょう」

 

 一兄の問いにリアスさんが答えた。だけど、

 

「ああ、それは待って貰える?」

 

 上空から、この場にいる誰のものでもない声が突然聞こえた。

 

 

 

 

 

 突然聞こえた声にそちらを見ると、そこにはいつの間に現れたのか、純白の影が在った。

 その影は純白の全身鎧(プレートアーマー)を纏い、背中の八枚の光の翼が闇夜を斬り裂くように輝いている。

 

白い龍(バニシング・ドラゴン)・・・・・何しに来た?」

 

 コカビエルが呟く。白い龍!? じゃあこいつがドライグの言ってた二天龍の片割れ、白龍皇帝(バニシング・ドラゴン)アルビオンが封じられた神器【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】の使い手、今代の白龍皇なのか!?

 

《相棒。奴は既に禁手(バランス・ブレイカー)に至っている。つまりはお前より遥かに強いという事だ。気を付けろ》

 

 突然ドライグがイッセー()に警告した。何だって!? それじゃああの姿が───

 

「何しに来たとはご挨拶ね。無理矢理にでもお前を連れ戻すようにアザゼルに頼まれて来たんだけど

・・・・まさか負けたとは思わなかったわ」

 

「ちっ!」

 

 コカビエルは悔しそうに舌打ちする。

 驚いた事に白龍皇の声はハスキーではあるものの、間違いなく女の声だった。

 

「まあ、運びやすくて助かるわ・・・・という訳でこいつらは貰って行くわ、構わないわね、リアス・グレモリー?」

 

「くっ!?」

 

 部長が悔しそうに唇を噛む。部長にも分かってるんだ。こいつとの力の差が。立っているだけだというのに、さっきから凄まじいプレッシャーが俺達に浴びせられている。ちくしょう、何て奴だ!?

 

《無視か、白いの》

 

 コカビエルとバルパーを両脇に抱えて、光の翼を広げた白龍皇にドライグが話しかけた。

 

《起きていたのか、赤いの》

 

 白龍皇の宝玉が点滅して、声が聞こえて来た。

 

《久し振りに会えたというのにつれないではないか。随分と戦意が低いな?》

 

《ふん。今戦っても結果は見えている。お前の宿主には今少し時間が必要だろう》

 

《・・・・確かに。感謝するぞアルビオン》

 

《いずれ戦う運命だ。それまでに鍛えてやる事だ。また会おうドライグ》

 

 そうして二天龍の会話が終わると、白龍皇は何事もなかったかのように飛び去ろうとした。 

 

「くっ! おい、待てよ! 俺には何の挨拶もなしかよ!」

 

 俺だって今代の赤龍帝だ。俺は意地を総動員して白龍皇に声をかけた。だが白龍皇は俺の方を見ようともせず答えた。

 

「正直、君よりも彼の方が私は気になるわね」

 

 白龍皇は俺には向けようとしない視線を一輝先輩に向けている。くそっ! 俺は眼中にないってのか!?

 

「今の君は全てが足りない。力も、知識も。精々強くなりなさい、私の宿敵(ライバル)くん」

 

 そう言って白龍皇は今度こそ飛び去った。

 

「・・・・・終わった?」

 

 誰かの漏らした呟きが、今回の事件の終わりを告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 あの事件から数日が経った。

 あの夜、白龍皇が去ってからしばらくして、グレイフィアさんが援軍を率いてやって来た。

 すぐに事情聴取が始まり、リアスは勿論、一輝()や祐美、果てはイリナ達にまでその手は及んだ。尤も教会組は神がいない事を知らされたショックから放心状態で、何も話せなかったが。

 とにかく事情聴取から解放され、ようやく一息吐けるようになった。リアスと朱乃の二人は未だに事情聴取から解放されず、イッセーはショックで倒れたアーシアの介抱に忙しい。小猫ちゃんは戦いの疲れを癒す為に食っちゃ寝してる。

 そして祐美は────

 

 

「先輩!!」

 

 祐美は元気一杯だった。

 放課後。部長、副部長が不在の為、部活は休み。俺は一人で家に帰ろうとしていた所、祐美から声をかけられた。

 

「先輩、お帰りですか?」

 

「・・・・ああ」

 

「ご一緒してもいいですか?」 

 

「・・・・ああ」

 

「やった! じゃあ帰りましょ♪」

 

 満面の笑みで隣に並ぶ祐美。その笑顔に周りの男共はハートを撃ち抜かれていた。それと同時に周りの男共のヘイトも俺に集まっていた。

 祐美は二年ではNo.1との呼び声も高い美少女だ(最近ではアーシアと共に双璧と称されている)。そんな彼女が満面の笑顔を向ける男が俺なのだ。リアス、朱乃に続いて祐美までも俺の毒牙にかかったのか、と男子連中の妬みの籠った視線が痛かった。

 

「ねえ先輩。今日の夕食はどうするんですか?」

 

 祐美は周りの視線なぞどこ吹く風とばかりに話かけて来る。

 

「ん? ああ、今夜はリアスが戻らないからな。外で適当にすませるよ」

 

 リアスは朱乃と共に冥界に出掛けているから、今夜は一人なのだ。

 

「あ、あの! 良かったらうちで一緒に食べませんか? その、この間のお礼というのも何ですが・・・・」

 

 ふむ。一人で外食するより、祐美の手料理を振る舞って貰う方が余程いいか。

 

「そうだな。折角だからご馳走になるか」

 

「はい! あ、じゃあスーパーに寄って帰りましょう。先輩は何が食べたいですか?」

 

 祐美は嬉しそうに返事をすると、俺の腕を引いて、駆け出した。

 

 

 

 

 

 買い物をして祐美の住むマンションに案内された。元々祐美はリアスのマンションで小猫ちゃんと三人で住んでいたそうだが、高校進学と共に独立。今のマンションに引っ越したそうだ。

 今更だが一人暮らしの女の子の部屋に招待されるのは初めてで、少し緊張する。

 

「それじゃあお料理しますから、先輩はテレビでも見ていて下さい」

 

 そう言って先程着替えた部屋着の上からエプロンを着けて料理をする祐美の姿に、俺はさっきからドキドキしっ放しだった。

 

 

 

 

 

「ごちそうさま」

 

「ふふ♪ お粗末様でした」

 

 祐美の手料理はお世辞抜きで美味かった。リアスもお嬢さま育ちなのに料理は上手かったが、祐美も負けず劣らずの腕前だった。

 食後のお茶を飲みつつ祐美と色々な話をした。学園の事、眷属の事、今までの事とこれからの事、そして───

 

「先輩、本当にありがとうございました」

 

「お礼なら何度も言われたぞ?」

 

「先輩に言われた通り、みんなは恨みを抱いて逝ったのではなかった。みんなは私の幸せを願ってくれていました。それに気付けたのは先輩のお陰ですから・・・・」

 

「・・・・そうか」

 

「はい。・・・・ねえ先輩、私はみんなの願い通り幸せになりたいと思います」

 

「ああ、それがいい」

 

「私、幸せになる為にはどうすればいいのか色々考えました。それで思ったんです。好きな人と結ばれる事、それが一番の幸せじゃないかなって」

 

 祐美は立ち上がり、視線を逸らす事なく、ゆっくりと俺に近づいて来る。

 

「そう思った時、私の胸に浮かんで来たのは先輩でした」

 

「祐美・・・・・」

 

「貴方が好きです、一輝先輩」 

 

 祐美はそう言って、俺に唇を重ねる。

 十秒程で唇が離れる。その顔を真っ赤に染めて、祐美は幸せそうに微笑んだ。

 

「ふふ、しちゃいました♪・・・・先輩には部長がいる事は分かってます。でも私はこの想いを無かった事にはもう出来ません。だから部長の次でもいいんです。私の事も愛してくれませんか?」

 

 祐美の深い青の瞳が不安そうに揺れながらも、まっすぐに俺を見つめている。

 

「いいのか? 後で後悔する事になるかもしれないぞ?」

 

「クスッ、そういう貴方だから好きになったんです。だから私が後悔しない位、沢山愛して下さい・・・・」

 

 祐美は再び唇を重ねた。俺もそれに応え、今度は深く、深く彼女の唇を貪った。

 

 

 

 

 祐美の寝室は甘い香りで満ちていた。

 彼女をそっとベッドに横たえる。祐美の瞳は期待と不安に揺れていた。まずはリラックスさせようと俺は祐美と唇を重ねる。

 

「あ、先輩・・・ん、ちゅ、んむ、ん──」

 

 重ねた唇から舌を口腔内に侵入させて蹂躙する。ピチャピチャという水音が響き、俺の舌が祐美の舌を絡め取る。

 

「ん・・・あ、先輩。んむ・・・ちゅ、んあ、ズズ、ちゅ、あん」

 

 祐美の唾液をすすり、飲み込む。彼女の唾液は不思議と甘く感じた。反対に俺の唾液を送り込むと、彼女もまた喉を鳴らして唾液を飲み込んだ。

 

「はあ・・・ん、ちゅ、んちゅ、んあ、ん・・・コク、コク、んん! っはあ❤」

 

 祐美の爪先がピーンと伸びる。どうやら軽くイッてしまったらしい。かなり敏感なようだ。

 

「はあ、はあ、せ、先輩・・・・」

 

「脱がすぞ、祐美」

 

 彼女は頬を赤くして、小さくコクリと頷いた。

 ブラウスのボタンをひとつひとつ丁寧に外すと、見た目以上に大きな山脈が姿を現した。白い肌に鮮やかなピンクの頂き。その頂きは既に固く屹立している。そう、彼女はブラを着けていなかった。

 

「祐美・・・・?」

 

「あう。その、脱がす時、下着は邪魔かなあって・・・・うう~」

 

 どうやら祐美は最初からその気だったようで、着替えた時に下着を外していたらしい。

 

「じゃあ、もしかして下も?」

 

 そう言って右手を彼女のスカートの中に這わせると、クチュッという湿った音がハッキリと聞こえた。

 

「ひん!?」

 

 思わず上げた自分の声に驚き、祐美は両手で口を閉ざす。その声を聞き、俺は意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「ふ~ん、祐美はノーブラノーパンで料理を作るような娘だったのか」

 

「あう。それは・・・・」

 

「こんなに乳首を尖らせて」 

 

 屹立した乳首をキュッとつまむ。

 

「ひん!?」

 

「こんなに股を濡らして」 

 

 縦スジを軽く撫で上げる。

 

「はぁん!!」

 

「祐美がこんなにエッチな娘だったなんて、俺は知らなかったなあ?」

 

 俺の言葉責めで顔を真っ赤にして、羞恥に身を焦がす祐美の姿はたまらなくエロかった。恥ずかしさで泣き出す寸前の彼女に俺は、

 

「でも、俺はそういうエッチな娘は大好きだよ」

 

 そう言って祐美にキスの雨を降らせた。

 

「ああん! せ、先輩・・・あん❤」

 

 額に、頬に、唇に、胸に、乳首に、おへそにと徐々に下へ唇と舌を這わせていく。

 

 祐美は身体中を俺の唾液でテカらせて、すっかり蕩けていた。俺は頃合いと見て、スカートを捲りあげた。スカートの中に籠った熱と濃密な女の臭いが俺を直撃する。

 

「あ、先輩、そこは!」 

 

 祐美は反射的に声を上げたが、それだけだった。祐美の股間には透明な蜜が溢れ、洪水を起こしていた。

 髪と同じ亜麻色の薄い繁みは蜜に濡れて、入口はパクパクと小さく口を開けて、そこからは絶え間なく蜜を溢れさせていた。

 そのあまりにもエロい光景に、俺はゴクリとツバを飲み込む。

 

「・・・・・すげえ」

 

 思わず感嘆の声が漏れる。

 

「ううう~~」

 

 可愛らしく唸り声を上げる祐美に我慢出来なくなり、俺はその源泉にむしゃぶり着いた。

 

「ひぁん! 先輩、そこは・・・あん!駄目!そこ、き、汚ないです・・・・ああん!」

 

 祐美の静止も聞かず、彼女の股間を舐めしゃぶる。縦スジに舌を這わせ、溢れる蜜をすすり、小さな入口に舌を差し込む。そして、淫芯の皮を剥き、中のお豆を剥き出しにして甘噛みした。

 

「!?ひっ、ひやああぁぁぁんん!!」

 

 プシャアアア!!

 

 高らかな噴出音を響かせ、祐美は潮を吹いてイッた。

 

「はあ、はあ、あ、うう・・・・」

 

 祐美の潮を盛大に浴びて顔を上げると、祐美は虚ろな目で、息を荒げていた。

 

「祐美・・・・・」

 

「んああ、先、輩・・・んむう、ちゅ、」

 

 俺が啄むようにキスをすると、祐美は無意識に両手を首の後ろに回して、深く吸い付き、舌を絡めて来た。

 

「ん──ふぇん、ぷぁい・・・ちゅ、ちゅぷ・・・ん、」

 

「祐美・・・・いいか?」 

 

 唇を離して祐美をみつめる。意識を取り戻した祐美は俺を見つめてコクリと頷いた。

 

「はい。先輩、来て下さい・・・・」

 

 そう言って、迎え入れるように大きく手を広げた。俺は下着ごとズボンを脱ぎ捨て怒張を顕にすると、祐美の股間に擦り付け、たっぷりと蜜を塗り付けた。

 

「あ、先輩・・・・」

 

「行くぞ、祐美」

 

 俺はいきり立った肉棒を祐美の入口に突き入れた。

 

「ん、ぐううっっ!?」

 

 祐美の入口は狭くてキツい。俺のモノでは大きすぎるのか、これだけ濡れてるのに中々入っていかない。祐美も痛そうに顔をしかめている。

 

「祐美・・・・このままだと痛いだけだから一気にいくぞ?」

 

「は、はい───!」

 

 俺は一度肉棒を入口近くまで抜くと、祐美にキスをして、胸を揉み始めた。

 

「ふわ!? せ、先輩?・・・んちゅ、あ、んああ・・・❤」

 

 痛みが来ると思っていた祐美は予想外の快楽に身体を悶えさせる。

 

「はあ、はあん!・・・先輩、んああん!」

 

 祐美がいい感じで解れたのを見計らい、俺は肉棒を一気に突き入れた。

 

 ズズズズ、ブチッ!!

 

「んああああっっ!!!」

 

 一瞬抵抗を感じたが、構わず一気に突き入れると、そのまま奥にコツンと当たる感触がした。

 

「ハアー! ハアー! あ、うううっ──」

 

 祐美は相当痛かったのか、激しく呼吸を乱しながら、涙と涎を零していた。

 

「痛かったか祐美。良く頑張ったな」

 

 俺はギュッと祐美を抱きしめた。

 

「先輩・・・・私、ちゃんと出来ました?」

 

「ああ、全部挿入(はい)ったぞ」

 

 祐美の痛みが治まるまで動かないで、祐美の頭を撫でたり、身体をまさぐったりしていた。

 しばらくすると、祐美も痛みが治まって来たのか、俺を見つめて言った。

 

「あの、先輩。私大分痛みが治まって来ましたから、その・・・・動いても、いいですよ?」

 

「大丈夫か?」

 

「はい。その、先輩も動かないと辛いでしょう?」

 

 祐美の言う通り、挿入してるだけなのに、祐美の膣内(なか)は俺を強く締めつけて、正直そのまま射精()してしまいそうだった。

 

「分かった。行くぞ」

 

「は、はい! ん、んんんっっ!!」

 

 奥まで入っていた肉棒を亀頭を残して抜くと、一気に膣奥まで突き入れた。ゆっくり抜いて一気に挿入れる。

何度か繰り返す内に段々祐美の膣内(なか)が解れて来た。

 

「んあ、あん! んんん! はあん! あん!」 

 

 祐美の膣内は狭くてキツい。突き入れる度に強く締めつけて来る。

 前世で経験はあったが、「不破一輝」に転生してから初めてのセックスだ。約二十年振りの快楽に溺れて、初めてだというのに、祐美の膣内を激しく突きまくった。

 

「あああ!先輩、先輩!こんなの私、私知らない!ああん!先輩、私、私もう───!」

 

 一方、祐美は初めてでありながら感じているらしく、嬌声を上げながら強く俺を締めつけていた。

 

 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

 激しく肉の打ち合う音が部屋中に響き、

 

 ブチュッ!ボチュッ!ブチュッ!ブチャッ!

 

 祐美の愛蜜と破瓜の血、俺の先走りや互いの汗。あらゆる体液が混じり合い淫靡な音を奏でる。

 

「祐美、祐美! 祐美!!くうっ!!」

 

「先輩、先輩! 先輩!!あぁぁんんっっ!!」

 

 俺はもう限界だった。今の俺には目の前の女の膣内(なか)を己が精液で満たす事しか頭になかった。

 

「祐美!射精()すぞ!このまま、膣内(なか)に!!」

 

射精()して!先輩の、いっぱい、このまま射精して!!」

 

 俺の肉棒が祐美の最奥を突くと同時に、熱いマグマを放出した。

 

「んああぁぁぁぁーーーーっっっ!!」

 

 絶叫と共に祐美の身体がピーンと反り返り、硬直する。

 

「はあ、はあ、祐美・・・・」

 

「はあ、はあ、一輝、先輩・・・・」

 

 息も絶え絶えに見つめ合う俺達は、そのまま唇を重ねた。

 

「ん、ちゅ、先輩・・・私、今幸せです・・・・・」

 

 祐美は本当に幸せそうな、無垢な微笑みを浮かべて言った。

 

「ああ、俺もだ」

 

 俺達はそのまま抱きしめ合う。すると、

 

「あん❤ ・・・・あの、先輩?」

 

「ええと・・・・」

 

 俺の肉棒は射精した筈なのに、未だ硬く屹立したまま祐美の膣内を圧迫していた。

 

「あの・・・・男の人って一回終わると、その、小さくなるんじゃないんですか?」

 

「普通はそうなんだが、俺はその、特別らしくてな。一回位じゃ満足出来ないんだ」

 

 転生特典のひとつ「頑健な身体」。俺は頑丈で、怪我や病気に強い健康な身体のつもりで頼んだのだが、女神様が大盤振る舞いしてくれたらしく、高い身体能力や運動神経を持った高スペックな身体にしてくれたようだ。そして副次的な物だと思うが、精力まで強くなっていた。お陰で朱乃に何度抜かれても衰えないという困った状態でもあったのだ。

 

「俺の女になったからには、一回や二回じゃすまないから覚悟しろよ?」

 

「の、望む所です!・・・・それじゃあ、今からします?」

 

「言ったな。後悔するなよ!」

 

「はい。あ、でも・・・・」

 

「でも何だ?」

 

「・・・・優しくして下さいね」

 

 そんな祐美が滅茶苦茶可愛くて、俺達はそのまま二回戦に突入した。

 

 

 

 

 

 その日は膣内に五回、身体に三回も射精して、祐美を気絶させてしまい、結局優しくは出来なかった。

 眠りに就いたのは朝日が昇ってからだった。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通り一輝の初めての相手は祐美になりました。リアスや朱乃は先を越されてしまいましたが、彼女達の逆襲はこれからですので、お楽しみに。

祐美に続いて白龍皇ヴァーリも女性化しました。女になった彼女はイッセーとどう絡んで来るでしょうか。

報告が遅れましたが一輝のガイバーの形態はガイバーⅠです。装甲の色は紅で関節は黒、目は黄色になります。

次回は聖剣編の完結の日常回の予定です。

また、アンケートを募集しますので皆さんのご意見を聞かせて下されば幸いです。


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第8話 新たなる仲間☆☆(祐美、リアス)


第8話を投稿します。

UAが35000を突破しました。皆さんのご愛読ありがとうございます。

それでは第8話をご覧下さい。




 

 スマホのアラームが鳴って一輝は目を覚ました。眠りに就いたのが日が昇り始めた四時半頃。大体二時間位は眠れたようだが、正直まだ眠い。

 ふと、隣で眠る祐美を見つめる。穏やかな寝顔は普段より少し幼く感じる。そんな彼女を相手に昨夜は頑張り過ぎた。

 転生してから初めてのセックスに無我夢中になり、祐美は正真正銘初めてだったというのにかなり無茶をしてしまった。でも、言い訳させて貰うと祐美のような極上の美少女は前世でも抱いた事がなかったから、夢中になっても仕方がないと思う。昨夜の祐美の乱れようを思い返すと、朝勃ちしていた股間が更に大きくなってしまった。

 

「う、ううん・・・・」

 

 視線を感じたのか、祐美がうっすらと目を開いた。

 

「おはよう。身体は大丈夫か?」

 

「あ、はい。おはようございます、一輝先輩。・・・・先輩?」

 

 朝の挨拶を返した祐美はまだ寝惚けているのか、一輝が隣にいる事を不思議そうにしている。だが、

 

「~~~~~!!」

 

 昨夜の事を思い出したのか、突然顔を真っ赤にするとシーツを被って全身を隠してしまった。

 

「・・・・おーい祐美、どうしたんだ?」

 

「~~~~~」

 

 返事がない。恐らく昨夜の事を思い出して、恥ずかしがっているだけなんだろうが、そんな祐美に何もしない一輝ではなかった。

 

「もしかして昨夜何があったか覚えてないのか?」

 

(お、覚えてますう~~!)

 

 祐美は昨夜何があったかはっきりと思い出していた。だからこそ恥ずかしくて一輝の顔を見れないのだ。

 

「自分から誘った事も?」

 

 シーツに隠れた身体がビクッと跳ねた。

 

「初めてなのに膣内に出されてイッた事も?」

 

 身体が更にビクッ、ビクッと跳ねた。

 

「涎を垂らしながら自分から腰を振って、「もっと、もっと」っておねだりした事も?」

 

「そ、そんな事してません!!」

 

 身に覚えのない行為に反発するかのように飛び起きる祐美。すると、

 

「はい、捕まえた」

 

 待ち構えていた一輝に抱きしめられてしまった。

 

「せ、先輩ズルい!」

 

「ズルくて結構。そんなに恥ずかしがる事ないだろう? とっても可愛かったよ」

 

「ううう~~」

 

 不満げに唸り声を上げる祐美だったが、一輝の胸に顔を埋め、優しく背中を撫でられる内にようやく大人しくなった。

 

「落ち着いたか?」

 

「・・・・はい。すいません先輩、取り乱しました・・・」

 

 ようやく顔を上げた祐美の頬はまだ赤かった。

 

「いいよ。無理もない。それより身体は大丈夫か?」

 

「え? あ、はい。・・・・えっと、少しダルいですけど、大丈夫です。多分」

 

「そっか・・・・それじゃあ流石に無理かな?」

 

「無理って・・・・え? それって・・・・ひゃああっ!?」

 

 何気に視線を下に向けた祐美は、雄々しくそそり勃つ一輝の肉棒を直視して、驚愕の声を上げた。

 

(えええーーーっ! こ、こんなに大きいのが私の膣内(なか)に入ってたの!?)

 

 思い返せば、初めて貫かれてから一輝はいくら達しても硬度を失わず、抜かないまま何度も膣内(なか)射精(だし)され、途中で祐美は気を失ってしまい、一輝の肉棒を間近で見るのはこれが初めてだった。

 その威容に祐美はゴクリと喉を鳴らした。一輝自身を凝視し、自然と手を伸ばそうとした時、

 

「祐美、取り敢えずシャワーを浴びよう」

 

「へ? せ、先輩?」

 

 一輝はそう言って祐美の手を引き、浴室へ向かった。そして───

 

 

 

 

「はあ、あん! 先輩、そこは・・・・」

 

 全身泡まみれの祐美の身体を一輝は素手で洗っていた。洗っている途中で色々と触れてしまうのは仕方がない事だ。そう嘯いて一輝は祐美の身体を撫で回した。

 背後から祐美の豊満な胸を揉みしだく。祐美の胸はリアスや朱乃のような爆乳とまではいかないが、充分に巨乳と云え、その揉み心地はまだ芯に若干の固さが残るものの、極上の感触を一輝に与えていた。

 

「まだ痛いか?」

 

「ふう、んん! 痛みは、大分、失くなりました、けど・・・・」

 

「けど、何?」

 

「んんん!・・・へ、変な感覚が、ゾワゾワって背筋を上がって来るような・・・はぁん!!」

 

 固く尖った乳首をコリコリとされて、祐美は喚声を上げる。

 

「それがイクって事だよ、祐美」

 

「イ、イク・・・・? これが・・・あ、あああ!」

 

「そうだ。そのまま、感じるままに声を出してごらん。もっと気持ち良くなれるから」

 

「も、もっと気持ち良く・・・・」

 

 祐美はゴクリと唾を飲み込む。ただでさえ未知の快感に身を焦がしているというのに、今よりもっと気持ち良くなるというなら自分はどうなってしまうのだろう。祐美の心は未知への恐怖と好奇心の間で揺れていた。やがて───

 

「あ、あぁ、いい、気持ちいい! 先輩、もっと、もっとして! 祐美のおっぱい、いっぱい触って───!!」

 

 好奇心が勝ったのか祐美は感じるままに声を上げ始めた。その声に気を良くした一輝は祐美の膣内に指を入れた。

 

「あああ! 先輩、そこは・・・そこはダメ、んんん───!!」

 

 祐美の膣内からは昨夜の名残りというべき白濁と祐美自身の愛蜜によりニチャニチャと湿った音を響かせて二人の官能を盛り上げる。

 

「祐美。ここが何ていうか分かるか?」

 

「え? こ、ここは・・・・はぁ、んん!?」

 

「知らないなら教えてやる。おまんこっていうんだ」

 

「お、おまんこ・・・・?」

 

「そう。だから次にイク時には~~~~」

 

「! そ、そんな・・・・」

 

「言えるよな、祐美」

 

「ううぅ、・・・・はい」

 

「よし、いい娘だ」 

 

 何やら祐美に教えこんだ一輝は祐美が了承したご褒美に後ろからキスをした。

 

「あ、ん、先輩・・・ちゅ、むふぅ・・・・」

 

「よし、それじゃあ行くぞ?」 

 

 そう宣言して一輝は指の動きを速くした。

 

「あっ!あっ!あっ! 先輩、先輩!!」

 

 人差し指と中指で祐美の膣内を掘削する。そこは大量の蜜に溢れ、指の動きを遮る事なく深く受け入れていた。一輝はただ出し入れするだけでなく、手首を捻らせる事により、指をドリルのように回し、祐美の膣内を刺激する。

 

「ああああ!先輩、先輩!私、もう、もう───!!」

 

 激しい動きに晒されて、祐美は限界に達しようとしていた。

 

「いいぞ祐美、教えた通りイッてみろ!」

 

「は、はい!・・・・い、イキます! 祐美のおまんこ、先輩に気持ち良くされて、イク、ああん、イクーーーー!!」

 

 祐美の腰が激しく痙攣すると、

 

 プシャアアアァァァ!!

 

 大量の潮を吹いて、祐美は達した。

 

「あああああーーーー!!」

 

 嬌声を響かせて、祐美はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 一輝の目の前には尻を高く上げた祐美がいた。祐美の股間は達した証しとして、大量の愛蜜を滴らせ、小さな入口がパクパクと口を開けて、まるで一輝を迎えいれるかのようだった。

 こんな光景を見せられて黙っていられる程、一輝は枯れていなかった。

 既に戦闘体勢に入っていた自身を支え、誘うかのようにヒクついてる祐美の入口に宛がう。そして、祐美の了承も得ないまま、根元まで一気に突っ込んだ。

 

「おほほううう~~~~~!!」

 

 変な声を上げながら祐美がまたも達する。

 狭く、固かった祐美の膣内は昨夜からの情事で大分解れたようだ。狭く締め付ける感覚は変わらないが、最初は痛い位だった締め付けが今では心地いい位に変わって来ている。これを一輝は祐美の身体が自分を完全に受け入れた証しと思い、その悦びから腰の動きを速めた。

 

「あん!あん!あん!あん! 先輩、先ぱ~~い❤」

 

「いいぞ祐美! もっと声を出せ! 自分の感情に正直に、感じるままに声を上げてみろ!!」

 

 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

 肉のぶつかり合う音と二人の喘ぎ声が朝の浴室に反響して、高く、大きく響き合う。

 

「先輩! 私、気持ちいいです!」

 

「何処だ。何処が気持ちいい!?」

 

「んあぁ! お、奥・・・・奥の方が気持ちいいです!」

 

「奥?・・・・こうか!?」

 

 一輝は抜ける寸前まで怒張を引き抜くと、一気に膣奥目掛けて突っ込んだ。コリッとした固い感触が亀頭に伝わる。

 

「あああっ!! それ、いいいいーーーーっ!!」

 

 一輝の先端が祐美の子宮口に突き当たる。

 

 プシャアアア!!

 

 その衝撃に祐美はまたしても潮を吹いた。

 

「~~~~~~~~~!!」

 

 声にならない悲鳴を上げて、祐美はもう何度目かも分からない絶頂を迎える。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ」

 

 荒く息を吐きながら一輝は祐美の様子を観察する。昨夜から何度もイカせているせいか、息も絶え絶えで、体力的には限界だろう。だが、それでも祐美の膣内は一輝をきつく締め付けて、もっと突いてとばかりに蠕動している。

 イカせる度に女として色艶を増していく祐美に、一輝はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「はあ、はあ、はあ・・・・ああ、ん、先、輩」

 

 スベスベの祐美の尻を撫でて、意識をこちらに向けさせると、

 

 パァァァンッ!!

 

「はぁぁんっ!!❤」

 

 一輝は再び祐美の膣奥を突き始めた。

 

「先輩!私、もう無理!?・・・・これ以上されたら、おかしくなっちゃうううっ!!」

 

 祐美の叫びを無視して、一輝はガンガンと子宮口を突き込む。それは祐美の膣内を自分のカタチに変えるかのような、激しい突き入れだった。

 

「先輩、ひぇんぱぁぁい!ずっとイッてる!祐美ずっとイッてるのおおおっ!!」

 

 一方の祐美は先程絶頂して、まだ降りて来ない内に再開されたので、所謂イキっ放しの状態に陥っていた。こうなると何をされても気持ちが良くて、一輝のされるがままだった。

 一輝は後背位で祐美の胸を鷲掴みしながら、激しく腰を振り続ける。

 

「ああ!あん!んんん!ひゃぁぁぁんっ!!」

 

「祐美、祐美!いいぞ、お前の膣内、凄く気持ちいいぞ!!」

 

「先輩!私も!私も先輩のおちんちん、凄く気持ちいいの!!❤」

 

 パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!

 

「祐美!祐美!祐美!!」

 

「先輩!先輩!先輩!!」

 

 激しく子宮口を突かれて、祐美は何度も潮を吹き、絶頂を迎えたままイキ続ける。その顔は快楽に蕩けて、十七歳の少女とは思えない色香を放っていた。

 石鹸の匂いがしていた浴室は既に交じり合う男女の性臭に満たされ、立ち込める臭いに二人は興奮を高めていった。

 

「くっ、祐美!もうすぐだ。もうすぐ射精()すぞ!?」

 

「はい!射精()して!先輩の精液で、祐美のおまんこいっぱいにしてえっっ!!」

 

「っ祐美ぃ!!」 

 

「んあああぁぁぁぁ~~~~~っっ!!❤」

 

 ブビュルルルッ!!ビュルルルッ!!ビュルッ!!

 

 祐美の最奥の子宮口に当たった一輝の肉棒から、その先へ届けとばかりの激しい勢いで熱い白濁液が注がれる。

 

「あぁぁん!───あ、熱いのが、お腹、いっぱい❤」

 

 今までで最大の絶頂の中、祐美は一輝の熱さを自身の内側から感じて、その幸せの中で気を失った。

 

 

 

 

 木場祐美は町を歩けば十人中十人が振り返る程の美少女だ。今まで何人もの男(あるいは女)から告白されたが、恋愛に興味を持てず、誰とも付き合った事はなかった。それはリアスの『騎士(ナイト)』として彼女を守ると心に決めていた事と、何よりも聖剣に対する復讐心が祐美に恋愛させるのを許さなかったせいだろう。

 そんな祐美が初めて気を許した男がイッセーだった。学園ではスケベ三人衆の一人として悪名高いイッセー(実際に着替えを覗かれた事もある)だが、眷属として付き合ってみると、真っ直ぐな気性の好漢であった(視線が胸にばかりいくのは少々困ったが)。

 だからリアスに逆らってまで小猫と共にアーシア救出に力を貸した。だがアーシア救出は失敗。彼女は命を落とし、イッセーが赤龍帝として覚醒する切っ掛けとなった。覚醒したイッセーは堕天使レイナーレを倒し、アーシアはリアスの眷属『僧侶(ビショップ)』に転生して、万事上手く収まった───筈だった。

 

 だが、レイナーレは逃亡。そして新たな犠牲者を出してしまう。その犠牲者が不破一輝だった。祐美達がレイナーレを追って駆けつけた時、一輝は既に重傷を負い、その命は消える寸前だった。その場に倒れていたレイナーレをリアスが滅し、『悪魔の駒(イーヴィルピース)』で一輝を悪魔に転生させる事で命を救った。

 あのライザー・フェニックスとのゲームまで一輝の印象は寡黙で目立たない人というものだったが、あのゲームで彼の評価は一変した。

 凄まじい武術の腕とあの【ガイバー】の力。ライザーの眷属四人を秒殺した手並みは目の当たりにした祐美でさえ信じられない程だった。明らかに戦い馴れている。こんな人が普通に高校生をしていたなんて一体どんな人生を歩んで来たのか、祐美は初めて男に興味を持った。

 でも一輝はあのゲームでリアスに見初められる。主の恋を応援しようと祐美は芽生えかけた想いに蓋をした。

 だが、あの聖剣事件で眷属を抜けようとした自分を見守ってくれた事。仲間達の想いを見つめ直す切っ掛けをくれた事。仲間達の結晶体を取り戻してくれた事。どれもが強く祐美の心に響いて、気付けば蓋をした筈の想いは大輪の花を咲かせていた。

 自らの想いを自覚したものの、恋愛経験のない祐美にはどうしたらいいのか分からなかった。そんな時、クラスメイトが彼氏との体験談を話をしているのを横から聞いて、思い切って想いを伝える事にした。結果的に祐美の告白は成功し、一輝に全てを捧げた。

 祐美は処女を失ってまだ十時間も経っていない、それまでオナニーすらした事のない性の初心者だった。そんな祐美に対する一輝の仕打ちは酷いものだったが、それでも祐美は一輝の精をその身に受けて、今までにない多幸感を感じていた。

 

 

 

 

 結局、この日は二人揃って遅刻した。

 

 

 

 

 

 

 幸い遅刻したその日にリアスと朱乃は来なかった。事情聴取が長引いてるようで、戻るのは放課後になるとメールがあり、正直助かった。リアスがいたら外泊した事をどう説明すべきか頭を悩ませる所だったのでホッとした。

 まるで浮気をした夫が妻への言い訳を考えてるみたい(ある意味その通りなんだが)だが、しなくてすむならそれに越した事はない。

 

 放課後、部室へ向かう途中で前を歩く祐美を見かけた。

 

「祐美!」

 

 祐美は振り向いて俺を見つけると、満面の笑顔でヒョコヒョコ駆け寄って来た。

 

「こんにちは先輩! 先輩も部室にご用ですか?」

 

「ああ。・・・・所で身体は痛むのか?」

 

 駆け寄る時、変な走り方をしているなあと思い聞いてみた。すると、祐美は顔を真っ赤にして俺の手をそっと握った。

 

「・・・・先輩のがずっと入ってたから、その、あそこに凄い違和感があって・・・・」

 

「そ、そうか・・・・」

 

 こればかりは男の俺には分からない感覚だ。俺は頭を掻いて誤魔化した。

 

「・・・・あの、先輩。私はいつでもOKですから、だからまた、その・・・・・」

 

 顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらも、次の逢瀬を約束しようとする祐美が可愛くて仕方がなかった。こんな場所じゃなければ抱きしめて熱いキスを交わしてやるのに、残念だ。

 

「じゃあ、近い内に必ず、な」

 

「はい!」

 

 そう嬉しそうに返事をすると、祐美は俺の腕に抱きついた。そうして部室までの道のりを二人でゆっくりと歩いた。

 部室の前まで来ると扉が開いていて、

 

「何でお前がここにいるんだよ!?」

 

 中からイッセーの声が聞こえた。俺達は顔を見合わせると、中を覗き込んだ。

 室内には入口にイッセーとアーシア、奥にはいつも通りお菓子を食べる小猫ちゃん、そして中央のソファーには真新しい駒王学園の制服を着たゼノヴィアの姿があった。

 

「「ゼノヴィア!?」」

 

 思わず声を上げた俺達を見て、ゼノヴィアはにこやかに挨拶して来た。

 

「やあ、木場祐美。それに一輝センパイ。また会えて嬉しいよ」

 

「ゼノヴィア・・・・貴女どうして・・・それにその格好は?」

 

「ああ、それは───」

 

 ゼノヴィアは俺達に背を向けると、次の瞬間、その背中から悪魔の翼が広がった。

 

「リアス・グレモリーの誘いを受けて悪魔に転生した。今日から私も眷属の一員だ。そして駒王学園にも編入させて貰った。二年生だから同級生という事になるな。よろしく頼む」

 

「眷属? それに同級生って、お前が!?」

 

「ああ、『騎士(ナイト)』の駒を頂いた。デュランダルが凄いだけで私自身は普通だったからな。駒ひとつの消費ですんだよ」

 

「しかし、教会の戦士だったお前が、いいのかよ・・・・?」

 

 イッセーが若干呆れたように訊くと、

 

「ふふふ、仕えるべき神がいないと知ったからな・・・・半ばやけくそで誘いを受けてしまったよ。でも、やっぱり魔王の妹の誘いとは言え早まっただろうか? いや、でも・・・・」

 

 何やらブツブツと呟いて落ち込んでいるゼノヴィアに俺は気になっている事を訊く。

 

「ゼノヴィア。イリナはどうした?」

 

 神の不在を知ったイリナはゼノヴィア以上にショックを受けていたようだった。

 

「イリナは私の【破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)】と破壊した聖剣(エクスカリバー)の核を持ってヴァチカンの本部へ戻った。貴方によろしく伝えてくれと言っていたよ」

 

「大丈夫なのか? 彼女も神の不在を知ったのなら、異端扱いされて処分、なんて事は・・・・?」

 

「それは大丈夫だろう。彼女のお父上は教会上層部の人間だ。孤児院出の私と違って後ろ盾がしっかりしてるから、そんな物騒な話にはならないと思う」

 

 確かに親バカな人だったから、あの人なら全力でイリナを守るだろう。

 

「とは言え、私が悪魔に転生した事をとても残念がってたよ。今度会う時は敵かもしれないな・・・・」

 

 少し寂しそうにゼノヴィアが呟く。

 

「いいえ。もしかしたらそうならないかもしれないわよ?」

 

 突如床の魔方陣が輝き、中からリアスと朱乃が現れた。

 

「部長!朱乃さん! お帰りなさい!」

 

 イッセーが喜色を上げて二人を迎える。

 

「ただいま。ちょうど揃っているみたいだから改めて紹介するわね。今日からゼノヴィアが眷属に加わったわ。みんなよろしくね」

 

「『騎士(ナイト)』のゼノヴィアだ。よろしく頼む」

 

 ゼノヴィアの挨拶に各々が頷いた。

 

「それよりリアス、さっきのはどういう意味だ?」

 

 俺が訊ねると、リアスは自分の席に着いて説明し始めた。

 

「教会側から悪魔側──つまり魔王に今回の件で打診があったわ。『堕天使側の動きが不鮮明の為、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』──てね。それとバルパーを過去に取り逃がした事については謝罪して来たわ」

 

 過去に取り逃がした事については(・・・・・・・・・・・・・・・)、か。つまり今回の件では謝罪しないって事か。やれやれだ。

 

「堕天使側からも天界、冥界双方に釈明があったわ。『今回の件はコカビエルの独断であり、堕天使側の総意ではない』と。コカビエルは三大勢力の均衡を崩し、再び戦争を起こそうとした罪により『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍刑に処されたそうよ」

 

 死人に口なしというが、果たしてどこまで本当なのかね。天界側、冥界側の立ち会いがあったならともかく、堕天使側からの連絡のみで刑が処されたと言われても信じていいのか? 敵の言う事を鵜呑みにしてどうするんだ。

 

「部長、バルパーはどうなったんですか?」

 

「バルパーは教会に引き渡されたわ。恐らくは異端として処分される事でしょう。あいつも神の不在を知った訳だしね」 

 

「そう、ですか・・・・」

 

 バルパーの行く末を訊かされて、複雑そうな顔をする祐美。俺は彼女の肩を軽く叩き、じっと見つめる。彼女は俺の視線に気付くと、そっと肩に置いた俺の手に自分の手を重ねて「大丈夫」とばかりに頷いた。また暗黒面に堕ちないかと心配したが、杞憂だったようだ。

 

「(コホン) それで近々堕天使総督であるアザゼルが天界側、冥界側の代表を招いて会談を開くそうよ。その会談に私達も招待されてるわ。事件に直接関わった者として話を訊きたいそうよ」

 

 偉いさん同士の会談なんて面倒なだけなんだがな。どうにか出ずにすまないものか。

 

「ち・な・み・に、私の眷属は全員出席だからそのつもりで。いいわね」

 

「「「はいっ!!」」」

 

 ち、逃げ道を塞がれたか。

 

「よろしい。日程は決まり次第連絡するわ。報告は以上よ。では解散!」

 

 リアスが解散を宣言するとゼノヴィアは真っ直ぐアーシアの前にやって来た

 

「アーシア・アルジェント。私は君に謝らねばならない。私は君を誤解していた。神の不在を知り、私自身が異端扱いされて、初めて君の苦しさを理解した。本当にすまなかった」

 

 そう言うとアーシアに向かって深々と頭を下げた。

 

「そ、そんな!? 私は気にしてませんよゼノヴィアさん!───それに私は今の生活に満足しています。悪魔にはなりましたが、そのお陰で大切な人に、大切な方々に出会えました。私は今、本当に幸せなんです」

 

 アーシアは隣にいるイッセーを、そして周りの俺達を見て、聖母のように慈愛に満ちた笑顔を浮かべた。

 本当にうちのアーシアちゃんはいい娘だなあ。お兄さん感動だよ。本当にイッセーの奴は果報者だ。アーシアを不幸にしたらこの俺が絶対に許さん!思わず殺気を向けてしまい、イッセーがブルっていた。すまん。

 

 ゼノヴィアは暫しその笑顔に見惚れていたようだったが、ふと表情を緩めた。

 

「そうか・・・・私も君のように幸せを見つけたいものだな。・・・・では、失礼するよ」

 

 そう言うと、ゼノヴィアは寂しそうに笑いながら踵を返した。

 彼女が俺達に馴染むまではしばらく時間がかかるだろう。彼女がここで自分の幸せを見つけられたらいいのにな───

 

 

 

 

 

 その日の夜───

 

「ん・・・ちゅ、ふむん・ちゅ、んあ、一輝❤・・・ちゅ、ズズズ、ちゅ」

 

「ああ、リアス・・・ちゅ、ズズズ・・・ちゅ、──はあ」

 

 一輝の部屋のベッドで口づけを交わし合う二人の姿があった。

 

「あああ──寂しかったわ、一輝。ちゅ、んん・・・」

 

「寂しかったって・・・・たった一日だろ?」

 

 一輝がそう言うと、リアスは途端にムッとした。

 

「もう! 一輝は私と離れていて寂しくなかったの!?」

 

「ああ、いや、勿論寂しかったよ」

 

「本当に~~~?」

 

 リアスが疑わしげな視線を向ける。

 

「本当だよ。ん・・・・ちゅ」

 

 一輝は誤魔化すようにリアスの唇に激しくむしゃぶりついた。

 

「あん! もう、ズルいわ一輝!・・・んんん!ちゅ、ちゅ、むふううう~~~!」

 

 唇を深く重ねて、舌を絡め合う。リアスの口腔内に舌を這わせて、頬の内側や歯茎の裏、満遍なく舌を這わせて唾液を流し込む。

 

「んんん!・・・コク、コク、ぷはあ!、一輝・・・んん」

 

 リアスは流し込まれた唾液を喉を鳴らして飲み込むと、お返しとばかりに自分の唾液を一輝の口腔内に流し込んだ。

 

「ああ、リアス・・・コク、コク、・・・・はあ」

 

 リアスの甘い唾液を飲み干すと、一輝は唇を重ねたままリアスの口腔内を蹂躙する。舌を絡め合い、唾液を交換して、リアスの全てを吸い込まんと激しく唇を重ね合う。

 

「んむうう!ちゅ、ちゅうう、ズズ、むう、ふんむううう!!」

 

 リアスは息が出来なくて苦しいのに、口腔内を這い回る舌の感触に一輝のなすがままになっていく。やがて一輝はリアスの舌先を甘噛みした。

 

「ふむうううう~~~~~っ!!❤」

 

 リアスは舌を噛まれた衝撃に、爪先をピーンと伸ばして、イった。

 

「はあ、はあ、はあ、はあ、」

 

 リアスは口の回りを唾液だらけにして、息も絶え絶えで、半ば意識を失っていた。 

 全裸のリアスの胸は先端を固く尖らせ、股間はびっしょりと濡れていた。

 

「リアス・・・・」

 

「んん、一輝・・・・」

 

 一輝は軽くリアスに口づける。二人はそのまま抱き合って眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

今回のエロは前回の続きで祐美との朝風呂エッチがメインとなりました。
今回も祐美のターンで、リアスと朱乃の逆襲は次回からとなります。楽しみにしていた方、すいません。

次回から原作第4巻のエピソードに入ります。


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第9話 魔王襲来☆(リアス)


第9話を投稿します。

UAが40000を突破しました。皆さんのご愛読ありがとうございます。

今回から原作4巻のエピソードに入りますが、今回は原作とは違う展開になりますのでご了承下さい。

それでは第9話をご覧下さい。




 

 あの聖剣事件から半月程が過ぎた。

 

 日中は蒸し暑い日々が続く中、早朝の今位の時間はまだ涼しく感じられる。ウォーミングアップがてらランニングで駒王学園の旧校舎側のグラウンドへ行くと、そこには先客がいた。

 

「おはようッス、一輝先輩!」

 

「おはようございます、一輝さん」

 

「一輝先輩、おはようございます」

 

「おはよう、イッセー、アーシア、祐美」

 

 眷属の皆と朝の挨拶を交わす。そこには最近始めた朝の自主トレに参加するいつものメンバーが集まっていた。

 あの聖剣事件の後からもっと強くなりたいとイッセーから請われて、早朝の自主トレに参加する事にした。元々イッセーはライザーとのゲームの後から自主トレをしていたようだが、一人では捗らないらしく、聖剣事件の後から俺と祐美も参加するようになった。

 因みに眷属全員に声をかけたが、基本ここにいる四人が毎日参加し、他のメンバーは出たり出なかったりしている。自主トレだから仕方がない。

 

「それじゃあ始めるか。アーシア、頼む」

 

「はい!」

 

 アーシアが結界を発動させる。アーシアは眷属でもリアスや朱乃に次ぐ魔力の持ち主だ。性格的に攻撃には向かないが防御や支援系の魔法を使えるように訓練していて、今では結界を張る位はお手の物だ。

 

「よし、イッセー、祐美、【神器(セイクリッド・ギア)】を」

 

「「はい!!」」

 

 二人は神器を具現化する。イッセーは左手に【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を、祐美は【双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)】を各々手にする。

 

「よし、いつでもいいぞ」

 

 俺がそう言うと、祐美が騎士特有のスピードで一気に距離を詰める。だが迫る祐美をかわして、俺は逆にイッセーとの距離を詰めた。

 

「くうっ!!」

 

 俺の正拳突きを【赤龍帝の籠手】で受けるイッセー。だが魔力による身体強化をした正拳は軽々とイッセーを吹っ飛ばす。

 

「うわあっ!?」

 

 ゴロゴロと地面を転がり、倒れるイッセー。

 

「くそっ!!」

 

 慌てて体勢を立て直し、周囲を伺うが、

 

「はい、アウト」

 

「あいた!?」

 

 既に背後に回っていた俺が脳天にチョップを食らわせた。それを見たアーシアがホイッスルを吹く。

 

「一本目、終了です」

 

 一本目を終えて改善する所を指摘する。

 

「イッセー。吹っ飛ばされてもすぐに体勢を立て直したのはいい。だけど敵から目を離したらどうしようもないぞ。俺の今のスピードはフリードと同じ位だ。このスピードに対処出来なきゃ奴には勝てないぞ」

 

「うう、はい・・・・」

 

「祐美。お前は聖魔剣に頼りすぎだ。確かに聖魔剣は強力だ。だけど敵に易々とかわされてしまっては宝の持ち腐れだ」

 

「はい・・・・」

 

「思えば聖魔剣を手に入れてからそれ以外をあまり使わなくなったよな。元々多種多様な魔剣を状況によって創り出す器用さがお前の持ち味だった筈だ。今だって一度かわされても風の魔剣で加速したり、大地の魔剣で壁を作り動きを止める事も出来たんじゃないか?」

 

「あっ!・・・・確かにそうですね」

 

「聖魔剣を使いこなそうとしているのは分かるが、お前自身の持ち味を消してしまっては元も子もないぞ。状況を見極めて常に最善の手を打てるようにしないとな」

 

「はいっ!」

 

 今やってるのは多対一の戦闘を想定した訓練だ。

 俺が敵なら真っ先にイッセーを狙う。イッセーの【赤龍帝の籠手】は十秒毎に力を倍加するという厄介な代物だ。力を倍加すれば自分で使うも味方に譲渡してパワーアップさせるも思いのままだ。

 今後戦う敵がその事を知らないなんてあり得ないだろう。だからこそイッセーには倍加するまでの時間を耐え抜く事を、祐美には敵をイッセーに近付けないようにする事が要求される。

 

「よし、それじゃあ二本目行くぞ」

 

「「はいっ!!」」

 

 イッセーと祐美は軽く打ち合わせをしながら所定の位置に歩いていく。祐美はともかく、イッセーは実戦経験が圧倒的に足りない。今は色々な攻撃パターンを繰り出し、経験を積ませて脳を鍛える位しか出来ない。

 

 この日、時間の許す限り模擬戦を行ったが、中々上手くいかなかった。まだ始めたばかりだ。長い目で見るとしよう。

 

 

 

 

 自主トレを終えて、俺と祐美は魔方陣から自分達の部屋へ、イッセーとアーシアはチャリの二人乗りで帰宅した。

 部屋へ帰るとまだリアスは寝ているようだったので先にシャワーを浴びさせて貰う。

 熱いお湯が身体の汗を洗い流していく心地良さに身を浸していると、カラカラと軽い音を立てて浴室の扉が開き、背中に大きくて柔らかいモノが押し当てられた。俺はこの感触を良く知っている。

 

「リアス!?」

 

「うふ、当たり。正解のご褒美よ♪」

 

 リアスはそう言って押し当てた胸にボディソープをかけると、そのまま俺の背中を洗い始めた。

 

「うんしょ、うんしょ・・・どう一輝、気持ちいい?」

 

「ああ。スゲー気持ちいい」

 

 柔らかくも張りのあるリアスの胸が背中を上下する感触に俺は得も言われぬ心地良さを感じていた。

 

「んん、あん・・・んしょ、ふぅ・・・・んん、あん!」

 

 更には何度も上下する内にリアスの先端が固く尖って来た。柔らかさの内にあるコリコリした感触と、擦れて感じ始めたリアスの熱い吐息が否応にも俺の官能を高めていく。

 

「リ、リアス・・・・」

 

「はあ、はあ・・・ん、一輝・・・もっと気持ち良くしてあげるわね」

 

 そう言うと背後から俺の胸を撫でていたリアスの手が、段々と下へ移動していく。胸から腹へ、腹から股間へと伸びていく。そして遂にいきり勃った怒張を両手で掴まれてしまった。

 

「くおっ!?」

 

「ああ、凄く硬いわ、一輝・・・・」

 

 さっきからのリアスの行為で俺のモノは完全に戦闘態勢に突入していた。擦られる度に先走りが溢れ、クチュクチュと湿った音を発ててリアスの手を汚していく。

 

「くっ、あああ、」

 

「ふう、ふう、・・・いっぱい、気持ち良くなって、一輝」

 

 リアスは後ろから首筋に舌を這わせる。くすぐるような舌の感触に俺は思わず身体を捩らせた。

 

「リアス・・・・キスしたい」

 

「一輝?・・・・うん、私もしたい」

 

「リアスの顔を見ながらしたい。いいか?」

 

「もう・・・いいわよ。じゃあ、こっち向いて?」

 

 リアスはキスが大好きだ。舌を絡ませ合うディープキスも、啄むようなバードキスも、触れるだけのソフトキスも全部好きだ。リアスはキスをすると本当に幸せそうな顔をしてくれる。そんな彼女の表情が見たくて、初めてのキスから何度唇を交わしあっただろうか。

 

「リアス・・・」

 

「一輝・・・・ちゅ、ちゅ、んむ・・・ん、ちゅ、」

 

 お互いに向き合いながら啄むようにキスを交わす。その間もリアスの右手はそそり勃つ俺の肉棒を擦り続ける。俺もお返しとばかりに彼女の秘裂に指を這わせた。リアスの秘裂からは既に蜜が溢れ、触れるとクチュクチュと湿った音を響かせた。

 

「ふぅっ!?・・・ううん、ちゅ、──んああ!」

 

 いきなりの刺激に驚いたリアスだったが、生来の負けず嫌いを発生させ、右手の動きを速くした。

 

「んん!?──ちゅ、ズズズ、」

 

 だが、俺も負けるものかとリアスの肉芽を摘まむ。

 

「ふうううんんんんっっ!!」

 

 キスで口が塞がってる中、リアスがくぐもった叫声を上げた。右手に熱い雫が広がる。どうやら軽くイったようだ。

 これに気を良くした俺は肉芽の皮を剥き、更なる刺激を与える。

 

「ふ、ふん、んむう!・・・・ちゅ、んあ、むう・・・」

 

 浴室内には上の口と下の口からなる異なる水音の二重奏が響いていた。

 リアスの快楽に蕩けた表情と彼女から与えられる刺激に俺は限界を迎えようとしていた。

 一緒にイこうとリアスの秘裂の中に指を差し込み、来たる日の為に入口を拡げていく。更なる刺激に彼女も達しようと頂点へと駆け上がる。

 

「!!」

 

「!?、んんん~~~~~~~~~!!」

 

 プシッ!プシッ!

 

 熱い飛沫が俺の手にかかり、

 

 ブビュルルル!!ブビュッ!ブビュッ!

 

 白濁した液がリアスの豊満な胸から引き締まった腹を満遍なく汚していく。

 お互い肩で息をしながら、押し付けたままの唇をゆっくりと離していく。銀色の橋がお互いの唇を繋ぎ、やがてプツンと切れた。

 

「一輝・・・・❤」

 

「リアス・・・・」

 

 彼女は幸せそうな笑顔で俺に抱き着き、俺も彼女をそっと抱きしめた。

 

 

 

 

「ごめんなさい一輝。その、本当はこの先もしたいでしょう?」

 

 俺の背中を流しながらリアスが言った。

 

「それはまあ、したくないと言えば嘘になるが、リアスには立場があるから仕方がないさ」

 

 彼女と同棲(?)を始めて間もない頃、グレイフィアさんがやって来て二人で住む条件をいくつか突き付けられた。その内のひとつにセックス禁止があった。

 リアスは冥界の貴族、グレモリー家の次期当主。加えてあの美貌であるから当然の如く結婚の申し込みは多かった。だがライザーを倒して婚約を破棄した事が知れ渡ると、「あのライザーが勝てないなら」と諦める者が続出した。

 リアスはライザーとの婚約を破棄して自分の結婚相手を自分で決める権利を得て、自分の眷属である俺を婚約者に指名した。だが、これにはグレモリー家当主、つまりリアスのお父さんも難色を示した。

 リアスは約束が違うと怒っていたが、これは当然だ。いくらライザーを倒したと言っても所詮俺は転生したばかりの下級悪魔。次期当主の夫に相応しいとは思わないだろう。そして話が難航している時、「聖剣事件」が起きた。

 「聖剣事件」に於いてリアスは堕天使幹部コカビエルの襲撃から領地である駒王町を守ったとして高い評価を得た。更にイッセーが新たな能力『譲渡』に目覚めた事や祐美が『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った事、俺がコカビエルを撃破した事も加わり、今やリアスの評価はライザー戦の前よりも格段に上がったという。図らずも『(キング)』としての評価など後から取り戻せると言った俺の発言を達成させた事になった。

 それらを加味してリアスのお父さんは暫定的に俺との婚約を認めた。ただ、あくまで暫定であり、未だセックス禁止は解かれていない。だが、多少のお目こぼしはあったようで、所謂ペッティングまでならOKとなった。

 先日再びこの部屋にやって来たグレイフィアさんからその事を真面目な顔で説明され、リアスは顔を真っ赤にし、俺も居たたまれない気分になったものだ。

 ともあれ、一応のお墨付きは貰ったので、その夜はリアスが率先して手コキでイかせてくれた。存外にやる気なリアスに戸惑い訊ねてみると、彼女も我慢していたそうで、リアス曰く「好きな人と一緒に寝ているのにその気にならない方がおかしい」と拗ねられてしまった。そんなリアスが可愛くて、持てる技術を駆使してイかせまくった。

 リアスからすれば俺に最後までさせないのを申し訳なく思っているようだが、俺からすればリアスと出来ない事は朱乃や祐美としているから問題ないのだ。

 先日遂に二人と、特に祐美とは最後までした事をリアスに告白した。我ながら最低だと思いつつリアスの判決を待っていると、彼女は深くため息を吐いて「多分そうだと思った」と苦笑していた。朱乃が俺に気がありそうなのは何となく分かっていたし、祐美に至っては「聖剣事件」の後からあからさまに俺との距離が近くなったと感じていたそうだ。

 貴族出身の彼女はハーレムには寛容で、自分が正妻になり、きちんと愛してくれるなら他に女を作っても構わないそうだ。特に自分の眷属の娘達は心に傷を持つ者が多く、いずれ信頼出来る男に嫁入りさせたいと思っていたそうで、逆に「あの娘達をお願い」とまで言われてしまった。とは言え、自分を放っとかれるのも嫌なようで、「私の事も忘れちゃイヤよ?」と不安そうにする彼女が可愛くて、その夜は気を失うまで何度もイかせてしまった。

 正式に婚約者と認められるにはこれまで以上の手柄が必要だと云われているが、「聖剣事件」のような大事件が何度も続いて欲しくはないものだ。

 

「俺なら大丈夫だから、無理しなくていいんだぞ?」

 

「いいの! これは私がやりたくてやってるんだから」

 

 シャワーで泡を流しながらリアスが言う。流し終えると彼女は再び後ろからそっと抱き着いた。

 

「早く貴方に抱かれたいわ、一輝・・・・」

 

「・・・・頑張るよ」

 

 リアスの甘い囁きに、彼女の手を握ってそう答えた。

 

 

 

 

 

 その日の夜、新たなる騒動が湧き上がった。

 いつものように眷属の皆と悪魔稼業に勤しんでいると、チャリで出掛けていたイッセーが顔を真っ青にして帰って来たのだ。

 恐怖に青ざめたイッセーから話を訊いてみると、今夜のイッセーの客はとんでもない奴であった。

 

 堕天使総督アザゼル。

 

 『神の子を見張る者(グリゴリ)』のトップであり、聖書にも名前が載る大物が勝手にこの町に入り込み、ここ数日イッセーを指名していたのだ。テレビゲームの相手をしていた時に赤龍帝と呼ばれ、いきなり十二枚の黒い翼を広げて名乗られた時には生きた心地がしなかったそうだ。

 

「こ、怖かった・・・・」

 

 今も白眼でガクブルするイッセーをアーシアが膝枕で慰めている。

 

「全く、冗談じゃないわ」

 

 当然の如くリアスはご立腹だ。

 先日の「聖剣事件」の後、件のアザゼルが天界、冥界の代表者を集めて会談を申し出たが、その三大勢力のトップ会談がここ駒王町で行われる事が決まったそうだ。アザゼルはその下見に来たのかもしれないが、こちらへ何の連絡もなしに勝手に侵入し、連日イッセーを呼び出していたとは正直ゾッとする。

 イッセーの話では悪意はなく、何処か面白がっているように感じたそうだが、分かったものじゃない。堕天使というのは己が欲望を追求し、天の使命を捨てて堕ちた連中なんだから。

 

「アザゼルは【神器(セイクリッド・ギア)】に強い興味を持ってると言うわ。やっぱり【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】が目当てでイッセーに近づいたのかしら・・・・

祐美、それに一輝。貴方達二人も気をつけて。祐美の【魔剣創造(ソード・バース)】は『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った貴重な神器だし、一輝の【ガイバー】はリストにも載ってない正体不明の神器だもの。アザゼルが欲しがっている可能性は大きいわ」

 

 俺達は揃って頷いた。

 

「でも部長、当面はどうします? あちらの思惑が分からない以上、下手に動く訳にはいきませんし・・・・」

 

「そうね・・・」

 

 朱乃の言にリアスが思案を巡らす。そこに、

 

「アザゼルは昔からそういう男だよ、リアス」

 

 突然聞こえた男の声にそちらを見ると、メイドを従えたスーツ姿の紅髪の美男子がにこやかに微笑んでいた。

 

「お、お、お、お兄様!?」

 

 リアスの悲鳴にも似た声に俺、イッセー、アーシア、ゼノヴィアの新参組もこの人が何者なのか理解した。

 リアスの兄にして現四大魔王の一人、『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』サーゼクス・ルシファーその人の登場だった。

 

「アザゼルはコカビエルのような真似はしないよ。まあ、今回のような悪戯はするかもしれないがね。・・・それにしても随分と早い到着だったね、総督殿は。それだけこの地に興味を惹かれるものがあると言う訳か」

 

 何やら思案顔の魔王様だったが、当のリアスはそれ所ではなかった。

 

「お、お兄様? いつこちらへ・・・・?」

 

「ついさっきね」

 

「もう・・・・お兄様には立場があるのですから、勝手に動かれては困ります!」

 

「いやあ、すまない」

 

 突然の来訪に戸惑っているものの、久し振りにお兄さんに会えてリアスも何だか嬉しそうだ。

 

「所で今回はどのようなご用事で?」

 

「うん。実は近々三大勢力のトップ会談がこの駒王町で行われるのは聞いてると思うが、その会場をここ駒王学園にしようかと思ってね。リアスの授業参観を機に下見に来た、という訳なんだ」

 

 この発言には皆も驚いていた。でも何で学園なんかで? 正直何処かのホテルや料亭でやってくれれば警備もし易いだろうに。

 

「それに功績を上げたお前の眷属達に直接声をかけたくてね」

 

 そう言って魔王様は俺達を眺めつつ、自己紹介を始めた。

 

「さて、朱乃君、祐美君、小猫君の三人以外は始めましてだね。私は四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファー。知っての通りリアスの実の兄でもある。今日はプライベートなので、そんなに固くならずに普段通り接してくれ」

 

 そう言われても困るが、俺達が戸惑っていると魔王様は自ら近づき、一人一人に声をかけていった。

 

 

 

「あの赤龍帝がリアスの眷属になるとは驚いたよ。君も色々大変だと思うが頑張ってくれ。よろしく頼むよ、イッセー君」

 

「は、はい!」

 

 

「君の境遇は聞いたよ。大変だったね。だが安心して欲しい。リアスの眷属となったからには私の庇護下に入ったも同然だ。何も心配せず、楽しく暮らしておくれ、アーシア君」

 

「は、はい! よろしくお願いします、魔王様」

 

 

「まさか伝説の聖剣であるデュランダルの使い手がリアスの眷属になるとは・・・・聞いた時は耳を疑ったよ。だが頼もしいよ。とにかくよろしく、ゼノヴィア君」

 

「魔王ルシファーにそこまで言われるとは・・・私も出来る限り頑張らせて貰おう」

 

 

「・・・・ようやく会えたね、不破一輝君。君とは是非ゆっくり話をしたいと思っていたんだよ」

 

「・・・・はあ」

 

「(ボソッ) 取り敢えず今夜、時間を貰えるかな? 君自身について色々と訊かせて欲しいんだが?」

 

 そう、俺にだけ聞こえるような小声で囁かれた。

 

「・・・・はい」

 

 俺にはそう答える事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 魔王様達は駅前のホテルに明後日まで宿泊して、明日は町の視察(という名目の観光)に出掛けるそうだ。

 その夜は解散して俺とリアスは部屋に帰った。そしてリアスが眠ったのを確認して、俺はそっと部屋を出た。

 

 夜の町を疾走(はし)り、駒王学園に到着する。グラウンドから強大な気配を感じてそちらに歩いていくと、そこには魔王サーゼクス・ルシファーが待っていた。

 

「・・・・来たか」

 

 先程の友好的な雰囲気など微塵も感じない冷徹な雰囲気を纏い、そこに在るだけで息が苦しくなる程の圧倒的魔力が溢れていた。どう見ても話を訊くだけですむとは思えない。

 そう思ったら突然グラウンド全域に結界が張られた。魔力の発生源にチラリと視線を向けると、銀髪のメイドの姿があった。

 

「・・・・何の真似ですか?」

 

「言っただろう? 君には色々訊きたい事があると」

 

「話をするのに結界は必要ないのでは?」

 

「何、話をする前にちょっとしたレクリエーションをしようじゃないか・・・・私と手合わせしよう」

 

 顔を合わせた時から感じていたが、どうやらこの人は俺がお気に召さないようだ。とは言え、仮にも魔王が自らやるような事か? 

 

「・・・・拒否は出来ませんよね?」

 

「当然だよ。ここで退くような男に大事な妹は任せられないからね」

 

 ああ、そう言えばこの人重度のシスコンだっけ。

 

「それじゃあ」

 

 俺は身体に魔力を走らせ、身体強化すると、一気に魔王の懐に入り、

 

 ズドォォンッッ!!

 

「!?」

 

 挨拶代わりに【虎砲】を叩き込んだ。だが、

 

「・・・・ふむ。この技は【虎砲】と言ったか? 中々の威力だ」

 

 魔王は僅かに後退しただけで、スーツの埃をパンパンと払った。なる程。コカビエルと同じ防御フィールドが膨大な魔力によって自然に発生しているのか。

 

「そのままでは話にならない。【ガイバー】になりたまえ。君の本当の力を見せて貰おう」

 

 確かに魔王の言う通りか。ならば、

 

「ガイバーーーーーッ!!」

 

 俺の喚び声に応え、眩い光の中、次元の彼方から紅の躯が現れ、俺の身体に装着される。

 

「ほう・・・・それが」

 

 魔王の声には感嘆と、何故か興奮が窺える。

 

「行くぞ、魔王ルシファー!」

 

 俺は先程と同じく、一気に距離を詰め、再び【虎砲】を放つ。

 

「ぬううっ!!」 

 

 先程以上のパワーとスピードで放たれた【虎砲】は、魔王ルシファーを吹き飛ばした。だが、数十mも吹き飛ばされながら、魔王は倒れる事なく立っていた。

 

「驚いた・・・私が吹き飛ばされるなんていつ以来か」

 

 今のでは防御フィールドを破れないか。ならばと俺は両手を突き出し、【重圧砲(プレッシャー・カノン)】を撃った。が、魔王は翼を広げて宙に舞い、重圧砲を回避する。

 

「砲撃戦がお望みかい? では私のターンだ!」

 

 魔王は掌に魔力を集中させる。リアスと同じ紅い魔力光を放ち、魔王が魔力弾を放った。

 

「!!」

 

 俺は腰の重力制御球(グラビティコントローラー)を起動させ回避する。魔力弾の落ちたグラウンドには大穴が空いていた。爆発したのでも熔解したのでもない。消滅したのだ。

 リアスが宿す滅びの魔力。それは彼女の母親が大王バアル家の出身の為だと言う。元々バアル家特有の力である滅びの魔力をリアスが使えるのはそのせいであり、その兄であるサーゼクスが滅びの魔力を宿しているのも必然だろう。

 とは言え、リアスの魔力弾とは威力が桁違いだ。先日イッセーの譲渡によりパワーアップしたリアスの魔力弾よりも、今魔王が放った魔力弾の方が遥かに強大だった。恐らくあれでもまだ全力じゃないだろう。

 

「・・・・何て威力だ」

 

「良くかわしたね。では、これはどうかな!?」

 

 魔王はそう言うと、今度は魔力を散弾状に撒き散らした。

 

「くっ!」

 

 俺は重力制御で空を飛び、散弾を辛うじて回避し続ける。その間にも魔王の魔力が触れた箇所は綺麗に消滅していく。

 回避しながら俺は嫌な予感がした。散弾は一定の間隔で放たれ、俺の行方を遮る。これは、誘導されてる!?

 気付いた時には既に遅く、散弾でコースを変えられた俺に向かって、特大の消滅魔力砲撃──【消魔砲】が放たれた。

 

「くそっ!!」

 

 俺は急ぎ両手にブラックホールを生成して消魔砲を防ごうとした。だが、

 

「ぐわああぁぁぁっっ!!」

 

 【消魔砲】を辛うじて防いだ俺の両腕は、肘から先が消滅し、そこから鮮血が飛び散った。

 

 

 

 

 

 一輝がいない。

 夜中にふと目が覚めて、いつもの温もりがない事に気付き、リアス()は飛び起きた。

 嫌な予感がする。『悪魔の駒(イーヴィルピース)』で繋がった私の眷属に何かが起きている。そんな漠然とした不安が胸をザワつかせる。

 私は急ぎ制服に着替え、夜の空に飛び出した。

 

 空を飛んでいると、駒王学園に結界が張られているのに気付き、急ぎ学園へ向かう。

 学園にはグラウンド全体を覆うように結界が張られていて、結界の外にはその結界を張ったであろう人物が魔力のスクリーンを展開して中の様子を窺っていた。

 

「グレイフィア!!」

 

 私の接近なぞとっくに気付いていただろう彼女は、メイドらしく完璧に一礼する。

 

「一体これは何事なの? 中では何が───って一輝!?」

 

 結界内部ではガイバーに変身した一輝がお兄様と戦っていた。何これ? どうして二人が戦ってるの!?

 

「何?何なのこれは!?説明しなさい、グレイフィア!!」

 

 激昂する私にグレイフィアは、嫌になる位冷静に私を諫める。

 

「お嬢様、落ち着いて下さい」

 

「これが落ち着いてられる訳ないでしょう!? いいから早く「落ち着きなさい、リアス(・・・)──!!」

 

 一瞬、メイドから義姉の顔になったグレイフィアの声に私は気圧されてしまった。

 

「───失礼しました。ですがこれは我が主、魔王ルシファー様の命令なのです」

 

「・・・・お兄様は何故?」

 

「恐らくは一輝さんを見極めようとしているのでしょう」

 

 その言葉に私の表情はまた険しくなる。

 

「見極めるですって!? 一輝は私の眷属で、暫定ではあるものの婚約者なのよ? 何を見極める必要があるというの!?」

 

「ではお嬢様は彼の何をご存知なのですか?」

 

「!!」

 

 そう言われて、思わず口を噤んでしまった。

 一輝とはこの二ヶ月、仮にも恋人として時間を過ごして来た。彼の事は沢山知ってる。食べ物の好物も、好きなテレビ番組も、彼の感じる所もだ。でもグレイフィアが訊いてるのはそういう事じゃないと分かっている。それは一輝の本質。そして私は何も答えられなかった。そんな時、

 

 

「ぐわああぁぁぁっっ!!」

 

 一輝の叫び声が聞こえた。

 スクリーンを見ると、一輝の両手が無い。その傷跡から大量の鮮血が溢れていた。

 

「一輝!?」

 

 

 

 

 

 両腕を失ったガイバー(一輝)はその場に崩れ落ちた。

 

「ぐううっっ・・・・!」

 

 痛い、というより熱い。強殖細胞が咄嗟に傷口を塞ぎ血が止まる。段々痛みが治まって来たが、この傷では再生には時間がかかるだろう。

 片膝を付いて身体を起こすと、頭上には魔王サーゼクス・ルシファーが悠然と佇んでいた。その姿はまさしく魔王。圧倒的強者として君臨する姿は恐ろしくも美しかった。

 

「ここまでだな。良く戦った、と言いたい所だが、思った程ではなかったな」

 

 一輝は悔しさに歯噛みする。

 

「残念だが不合格だ。君にはリアスを任せる事は出来ない。リアスの兄として命じる。リアスとは別れたまえ」

 

「・・・・・・」

 

「コカビエルを倒したと言うが、奴も随分と衰えたものだな。君程度の男に敗れるとは」

 

「・・・・・・黙れ」

 

「? 何か言ったかな?」

 

「黙れ。その無駄にいい声でほざく口を今すぐ閉じろ!」

 

「・・・・ほう。まだそんな台詞を吐けるのか」 

 

 サーゼクスは面白そうに口元を歪める。

 

「当たり前だ。俺はまだ死んでない。俺を倒したと勝ち誇りたいなら、俺が死んでからにしろ!!」

 

 一輝はそう吼えて、【ヘッドビーム】を連射する。当然防御フィールドに阻まれるがこれは牽制だ。だが顔面に撃たれたビームの眩しさにサーゼクスは一瞬、一輝を見失う。

 一輝は魔力を爆発させ、一気にサーゼクスの頭上まで飛び上がる。

 

「喰らええええーーーーっ!!」

 

 そのまま右脚に重力を纏わせ【グラビティキック】を放った。重力を纏ったガイバーのキックは、流星のように一直線にサーゼクスへと突き刺さる。

 

「ぐうう!」

 

「うおおおおーーーーっ!!」

 

 ガイバーのキックがついにサーゼクスの防御フィールドを破り、二人はそのまま地上に落下した。

 

「ここだあああーーーーっ!!」

 

 ガイバーはここぞとばかりに攻撃に転じる。廻し蹴りの二連撃【(つむじ)】、上段廻し蹴りと見せかけて途中で鳩尾に変化させる蹴り【紫電(しでん)】、前方宙返りからの踵落とし二連撃【斧鉞(ふえつ)】。不破圓明流の蹴り技のオンパレードに防御フィールドを破られた魔王は始めて地に伏した。

 

 

 

 

 

「───信じられない」

 

 いつも冷静なグレイフィアが目を丸くして驚いている。グレイフィアをして、サーゼクスのあんな姿を見た事があっただろうか? 少なくとも彼の妻となってからは初めての事だ。

 今回の企みは一輝の真意を探り、彼自身を見極める事にあった。確かに一輝は強い。不破圓明流という武術に加え、あのガイバーの力。戦闘力だけなら既に上級悪魔に匹敵する。それはあのコカビエルを単身撃破した事で証明している。

 だが、そのガイバーは正体不明だ。一輝も何故あんな力を持っているのか知らないと言うし、正体不明の強大な力など危険極まりない。だからこそガイバーの戦闘力と、使い手である一輝の真意を知る必要があった。

 サーゼクスが一輝を適当に痛めつける。そこで降伏勧告をしても尚立ち向かってくれば良し、折れたらそこまでと見極めるつもりだった。

 だが蓋を開ければガイバーの力はこちらの予想以上だった。サーゼクスを追いつめる姿など誰が想像しただろうか。

 

「一輝・・・・・すごいわ」

 

 さっきまで散々喚いていたリアスだったが、今は戦う一輝の姿に見惚れている。

 

(───でも、あの人はまだ全力じゃない)

 

 それでも最後に勝つのはサーゼクスだとグレイフィアは信じていた。それ故にやり過ぎない事を祈っていた。

 

 

 

 

 

「フ、フフフフフ・・・・」

 

 不意に倒れたサーゼクスが笑い出す。

 

「参ったな・・・・前言撤回しよう。合格だ、私は君とリアスの婚約を認めよう」

 

「んな事はどーでもいい」

 

 ゆっくりと立ち上がったサーゼクスは一輝の言に訝しげに訊ねる。

 

「? リアスの事はどうでもいいと?」

 

「違う。肩書きなんてどうでもいいと言ってるんだ。例え婚約者だと認められなくても、俺はリアスを離さないし、誰にも渡さない。あいつはもう俺の女だ」

 

 しばらくポカーンとしていたサーゼクスだったが、

 

「フ、ククク、アハハハハーーーー!!」

 

 突然、爆笑し出した。

 

 

 

 

 

「・・・・・・一輝❤」

 

 グレイフィアは目をハートにしたリアスを見て、ため息を吐いた。好きな男から「自分の女」呼ばわりされたのだから無理もない。ないのだが、ちょっとチョロ過ぎないだろうか? これではグレモリー家次期当主として不安になる。

 

(育て方を間違えたかしら・・・・?)

 

 グレイフィアはもう一度ため息を吐いた。

 

 

 

 

 サーゼクスの笑いがようやく収まった。

 

「仮にも兄である私の前で、堂々と自分の女だと宣言するなんて。君は凄いな、色々と」

 

「馬鹿にしてるのか?」

 

「いやいや。紛れもなく称賛してるんだよ一輝君。・・・・いいだろう、リアスは君に任せよう。だが、男として決着は着けなくてはな」

 

「ああ、同感だ」

 

 サーゼクスは翼を広げ、宙に舞う。

 

「一輝君。今から私は全力の【消魔砲】を撃つ。これをどうにか出来れば君の勝ちだ」 

 

「・・・いいだろう」

 

 一輝の承諾を得て、サーゼクスは魔力を高める。突き出した両手に魔力が集まり巨大の球を作り出す。その球は徐々に圧縮されて小さくなっていく。小さくなっても魔力の密度は先の【消魔砲】の数十倍。その威力は推して知るべし、である。

 

 魔力を高めるサーゼクスに一輝は呟く。

 

「魔王サーゼクス・ルシファー。ガイバーの更なる力を見せてやる。───来い!!

 

 ガイバーの額のコントロールメタルが輝き、背後に巨大な物体が現れる。ガイバーの強殖装甲と似た材質の、まるで“蛹”のようにサーゼクスには見えた。

 

「ガイバーーーー、巨人殖装(ギガンティック)!!」

 

 白かった蛹はガイバーの装甲と同じ紅に染まると、展開してガイバーの身体を覆っていく。

 

「なっ!?」

 

 サーゼクスは今日何度目かになる驚愕の声を上げた。

 ガイバーが蛹に覆われ、変化していく。大きく、力強い姿に。『ガイバー・ギガンティック』に変わっていく。

 

「・・・・一輝君、その姿は一体、」

 

「この姿はまあ、俺の『禁手(バランス・ブレイカー)』のようなものだ」

 

「君の『禁手』・・・・フフ、面白い。勝負だ、一輝君。いや、ガイバー!!」 

 

「おお!!」

 

 ガイバー・ギガンティックは胸部装甲を引き剥がし、胸部粒子砲を顕にする。

 サーゼクスの【消魔砲】が迫る中、ガイバー・ギガンティックは胸に宿る太陽を解放する。

 

「ギガ・スマッシャーーーーー!!」

 

 二つの強大な力がぶつかり合う。一瞬の均衡の後、勝ったのは【ギガ・スマッシャー】だった。

 

「!!?」

 

 地上に現れた太陽はサーゼクスの【消魔砲】を飲み込み、真っ直ぐ天に昇って行く。それは結界に衝突すると、そのまま結界を突き破り、彼方へと消えていった。

 

「・・・・・・素晴らしい」

 

 サーゼクスの呟きが、結界の消えた夜空へと溶けていった。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

アンケートの結果、ゼノヴィアが一輝のハーレム入りする事が決定しました。
ご協力ありがとうございます。
次回早速ゼノヴィアが一輝に迫ります。

次回はエロメインのプール回になります。ご期待下さい。


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第10話 リアスとの約束☆(リアス)


遅くなりましたが第10話を投稿します。

書いていたら思いの外長くなりすぎたので、2話に分ける事にしました。
11話も明日には投稿します。

それでは第10話をご覧下さい。




 

「んん・・・・ちゅぱ、あむう、ちゅぽ、ちゅぽ、んふ、」 

 

「くっ・・・ああ、リアス!」

 

「んふ、ひもひいい、はうひ?」

 

「ああ。すげーいい」

 

 一輝の部屋のベッドの上で、全裸になったリアス()は一心不乱に一輝の肉棒を咥えていた。彼のモノは大きすぎて、根本までは咥えきれないけど、それでも亀頭と肉茎の半分位までは私の唾液に塗れていた。

 

「でもリアス、どうしてこんないきなり・・・・」

 

「ん・・・だって、してあげたかったんだもの・・・・嫌だった?」

 

 私がそう訊くと、一輝は優しく頭を撫でて言ってくれた。

 

「嫌な訳ないだろ。でも急にして来るなんてどうしたのかと思ってさ」

 

 もう。案外鈍い所があるのよね、一輝って。あんな事を言われて私は完全に火が点いているのに。本当なら今すぐこの身の全てを捧げたいと思ってるのに。

 

「・・・・私は貴方の女だもの。貴方に尽くすのは当然でしょ?」

 

 私がそう言うと、ようやく思い至ったのか、一輝は苦笑する。

 

「リアス・・・・無理しなくてもいいんだぞ?」

 

「無理なんかしてない! 本当は! 約束なんて関係なく、今すぐ貴方に抱かれたいと思ってるのに! 私はこんなに熱くなってるのよ!?」

 

 そう言って私は一輝の右手を取って自分の股間に導く。彼の手が触れると、グチュッと重く湿った音が部屋に響いた。

 

「リアス・・・・こんなに!?」

 

 一輝が驚きつつも指を動かす。

 

「んああ! 一輝、そこ、いい!」

 

 一輝の指が動くにつれ、私の入口はパックリと口を開け、滾々と蜜が溢れて来る。秘芯はプックリと屹立し、彼が触れるのを今か今かと待ち構えていた。

 

「ふ、ううん!・・・ん、ああ、一輝、一輝!」

 

 一輝の指が私の膣内に入って来る。いつもは私を労るように優しく動かすのに、一輝も興奮しているのか、二本の指をかなり深い所まで入れて、激しく動かす。

 

「ん・・・ああ、一輝・・・イ、イク、んあああ!!」

 

 私はあっという間にイってしまった。熱い息を吐きながら、私は濡れた瞳で一輝を見つめる。

 

「一輝・・・・もういいよね? 一輝が欲しくてたまらないの。だから挿入れてもいいよね?」

 

 私はそのまま一輝に覆い被さり、腰の位置を合わせる。私がこのまま腰を降ろせば・・・・

 そう思うと自分の鼓動が激しく高鳴ってるのを感じる。緊張と興奮に、股間から垂れた蜜が一輝の亀頭に落ちて、透明な橋で繋がる。

 私がゴクリと唾を飲んで、腰を降ろそうとした時、

 

「駄目だよリアス」

 

 一輝が私の身体をそっと押した。私はそのまま彼の太股の上にお尻を落とした。

 

「・・・・・・かず、き?」

 

 拒絶された!? 一瞬、絶望が私の胸をよぎる。だけど、

 

「ごめんリアス・・・・本当は俺だってしたい。リアスの膣内に挿入れて、精液を射精して、名実共に俺の女にしたい! でも、今はまだ駄目だ。駄目なんだ!!」

 

 一輝は私の両肩に手を置いて、そう言った。

 

「・・・・どうして? お兄様も認めてくれたわ。だったらお父様だって認めてくれる筈よ? ほんの少し事が後先するだけだわ」

 

「・・・・それでも駄目だ」

 

「どうして!?」

 

「それが『約束』だからだ!」

 

「!?」

 

 一輝の強い口調に、私は思わず口を閉ざす。 

 

「・・・・リアス、俺達は試されてる。リアスが次期当主に相応しいか。そして俺がその夫に相応しいかどうかを。それは分かるよな?」

 

 私は頷く。

 

「確かに今結ばれたとしても大したお咎めはないかもしれない。だけど俺はもうグレモリー卿から信用して貰えないだろう。約束を軽んじる奴として

・・・・だから今はまだ駄目だ。正直リアスが求めてくれて凄く嬉しい。俺は近い将来必ず大きな功績を立ててみせる。だから、だからリアスももう少しだけ我慢してくれないか?」

 

 そう言われて、私は彼の肩に頭を乗せた。

 

「・・・・私って、やっぱり駄目な主ね」

 

「リアス・・・・」

 

「欲望に負けて約束を破ろうとするなんて・・・・本当、主失格だわ」

 

 一輝だって我慢しているのに、私が率先して約束を破ろうとしてどうするの!? どうやら私は思った以上にお兄様に言われた事で落ち込んでいたらしい。

 私は先程の、一輝とお兄様の戦いが終わった後の事を思い出していた───

 

 

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

 

 

「ハハハッ! いやあ~参った参った。私の負けだよ一輝君。いや、大したものだ」

 

「はあ、ありがとうございます」

 

 ベタ褒めするお兄様に、一輝は困惑しているようだった。

 

「しかし私の結界を破壊するとは・・・・凄まじい破壊力ですね」

 

 隣に控えるグレイフィアも呆れとも感心とも取れる何とも言えない表情をしている。そして、

 

「お兄様! 説明して貰えるんでしょうね!?」

 

 そして、リアス()はとても怒っていた。

 私に何も報せず、一輝を傷つける真似をするなんて、いくらお兄様でも許せない!

 

「分かった分かった。説明するから少し落ち着きなさい・・・・さて、お前にも一輝君の存在が規格外なのは分かるね? 彼は戦闘力だけでいえば既に上級悪魔。いや、このギガンティックになれば最上級悪魔に匹敵するだろう。それ程の存在がお前の兵士とは。どうして彼が駒消費一で済んだのか理解に苦しむよ」

 

 それは私も思っていた。イッセーは兵士の駒七つで転生出来た。当時はイッセーが赤龍帝だと知らず、これだけの駒が必要だった事に驚いたが、今では納得している。

 ならば一輝は? あのガイバーを宿す一輝が兵士の駒ひとつで転生出来たのはおかしくないだろうか?

 これについては明確な答えは出ていない。『悪魔の駒(イーヴィルピース)』の製作者でもある四大魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブ様に聞けば何か分かるだろうか?

 

「彼の力は既にお前を超えている。それがどういう意味か、分かるね?」

 

「うっ・・・・はい」

 

 私は渋々と頷く。

 

「眷属が『王』たる上級悪魔の力を超える場合、不幸が起きる事が多々あります」

 

 一輝がよく分かってないと察したのか、グレイフィアが説明していた。

 

「不幸、ですか?」

 

「はい。良くも悪くも悪魔とは強さを信条とするものです。現に大戦で亡くなった先代魔王の後を継いだのは当時最強だった四人の若手悪魔でしたから。そして眷属が王より強くなると、主を軽んじたり、力に溺れて主に牙を剥く『はぐれ悪魔』になる事があるのです」

 

 主が制御出来ない眷属など危険極まりない。つまり今回の一件はガイバー(一輝)がどれ程の力を持っているか、そして主である私を裏切らないか試す為だったのだ。

 

「それで? 俺は合格したんですよね?」

 

「勿論だとも! 魔王たる私が君を認めよう。・・・だが、問題はリアスの方だ」

 

「!!」

 

 私はお兄様に言われて、ビクッと反応してしまう。

 

「リアス。お前の眷属は着々と揃って来ている。だが、赤龍帝のイッセー君然り、聖剣デュランダルの使い手であるゼノヴィア君然り、そして『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った祐美君然り。これだけの眷属が近い将来お前を超えるだろうと予想される。お前は彼らをまとめきれるかい?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「残念ながら、お嬢様は高校生になってから然程成長していません。今のままでは彼らを御し得ない可能性もあります」

 

「グレイフィア!?」

 

「ふむ・・・・私も昨日会ったがお前の眷属にはぐれになるような子はいないと思いたい。だが、常に最悪の事態は想定するべきだ。特にイッセー君には気をつけなくてはいけないよ、リアス」

 

「イッセーに? そんな、あの子が力に溺れるなんて───」

 

「歴代の赤龍帝は皆力を暴走させて短い生涯を終えたそうだよ。彼がそうならないとは誰にも言えないんじゃないか?」

 

「・・・・・・」

 

「そうならない為にも『王』は眷属に己が器量を見せつけねばならない。それは力であったり、頭脳であったり、魅力であったり、王によって其々だ。お前がどんな王を目指すのか、もう一度良く考えてみなさい」 

 

「・・・・はい」

 

 お兄様とグレイフィアの言葉が重く私に伸し掛かる。私はすっかり落ち込んでしまった。

 

「とは言え、一輝君。今夜はすまない事をしたね。急ぎフェニックスの涙を───」

 

「いえ、その必要はありません」

 

 一輝はそう言って【巨人殖装(ギガンティック)】を解いた。ギガンティックが瞬時にサナギ状に戻り、何処かへ消えていく。そして一輝の両腕は──復元されていた。

 

「これは・・・・!」

 

「完全に元通りになってますね・・・・」

 

 一輝は殖装を解いて、説明する。

 

「簡単に言うとガイバーは手足の欠損位なら復元出来るんです。尤も復元が終わるまで殖装は解けないんですが」

 

 そんな能力があるのなら事前に教えて欲しかったわ!心臓に悪い。

 

「殖装・・・・? ガイバーに変身する事をそう言うのかい?」

 

 お兄様が興味深げに訊いている。

 

「はい。『殖装』して『強殖装甲』を纏う事によって【ガイバー】になります」

 

「成る程。つまりは【強殖装甲ガイバー】という訳か・・・・いいね!」

 

 お兄様は何だか浮かれていた。対して一輝は何故か分からないけど、妙に驚いていたみたい。そして、グレイフィアが困った風に額に手を当てていたのは何なのかしら。

 

「それでは今夜はこれで失礼します。・・・・帰ろう、リアス」 

 

 一輝はお兄様に断りを入れて、意気消沈している私を促した。

 

「一輝・・・・うん」

 

 一輝は私の手を引いて歩き出した。

 

「ああ、一輝君。【ガイバー】とはどういう意味なのか分かるかい?」

 

 お兄様にそう言われて、一輝は歩みを止めた。

 

「・・・・どこの言葉か分かりませんが、初めてガイバーに殖装した時、頭に浮かんだ言葉があります。

──『規格外品』というらしいですよ」

 

「『規格外品』か・・・・言い得て妙だね」

 

 その言葉に何も答えず、一輝は私を抱きかかえると、翼を広げて飛び去った。

 

 

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

 

 

 そして部屋に帰るなり、リアスは一輝()を押し倒した。そして現在に至る。

 

 

 不意にリアスがポツリと呟く。

 

「お兄様の言う通りだわ。一輝は勿論、祐美もイッセーもどんどん強くなってる。それに比べて私は・・・・」

 

 どうやら魔王様のお小言が効いてるらしい。リアスはいつになく落ち込んでいた。

 彼女は案外打たれ弱い。元々高スペックの持ち主で、今まで失敗らしい失敗をして来なかったせいか、いざ壁にぶち当たると途端に弱さを露呈してしまう。ライザーとのゲーム然り、祐美が眷属を抜けると言い出した時然りだ。

 このままという訳にもいかないが、口下手な俺がリアスを励ませるだろうか。分からないが、思った事をそのまま言葉にしてみようと思う。

 

「なあリアス。リアスは強くなる為に、今まで特別にして来た事ってあるか?」

 

「特別に? う~ん、魔力の扱いなんかはお母様やグレイフィアに教わったけど、特別何かした事はなかったと思うわ。それがどうしたの?」

 

 つまりは持って生まれた才能だけでここまで来たと。ある意味凄い事なんだがなあ。

 

「なら大丈夫さ。リアスはもっと強くなれるよ」

 

 俺が断言すると、リアスは目を丸くして訊いて来る。

 

「どうしてそう断言出来るの?」

 

「リアスは俺を強いと思うか?」 

 

 俺は逆に訊いてみる。

 

「勿論よ。不破圓明流の武術にガイバーの力。あのお兄様に傷を負わせるなんて、冥界でも片手で数えられる位よ?」

 

「ありがとう。ではその力が簡単に手に入ったと思うか?」

 

「それは・・・・」

 

 良かった。ここで「うん」と言われたらどうしようかと思った。

 

「あまり思い出したくもないが、祖父(ジイ)さんの修行は酷かったよ。例えば───」

 

 俺は祖父さんに課せられた不破圓明流の修行の一端をリアスに話した。あまりの過酷な修行内容の為割愛するが、訊いていたリアスの顔がどんどん青くなっていった。

 

「そ、そう・・・・凄い修行だったのね」

 

「ああ。酷かったよ・・・・」

 

 俺も思い出しただけで気分が悪くなって来る。つくづくうちの祖父さんはイカレてると再確認してしまった。

 

「まあ、流石にリアスにそこまでやれとは言わないが、まずはトレーニングを始めてみたらどうだ? 変わりたいと思うなら、まず動き出さなきゃ何も変わらないぞ?」

 

 リアスは俺の言葉を吟味するように、しばし思案する。

 

「うん。・・・そうね。一輝の言う通りだわ。動き出さなきゃ何も変わらないものね・・・・うん! 一輝、私は変わってみせるわ。だから、見ててね?」

 

 そう言った彼女の瞳にはさっきまでの弱々しい光はなかった。あるのはいつもの強気で活力に満ちた、俺の惹かれた光があった。

 

「ああ、ずっと見てるよ」

 

 俺達の顔は自然に近付き、やがて唇が重なった。 

 

 

 

「ん・・・・ちゅ、むふ、ん・・・ちゅ、ちゅぱ、ちゅ」

 

 始めは軽く唇を合わせるだけ。そこから段々と深く、激しく舌を絡ませて唾液を交換し合う。

 

「ちゅぷ、んん!・・・ズズズ、ん、ゴク、ゴク、んん~~~!?ズズ、ちゅぱ、ぷはあ!」

 

 唾液どころか酸素までも吸い尽くす勢いで吸い続け、流石に息苦しくなって唇を離す。

 

「ハア、ハア、か、一輝・・・・」

 

「ハア、ハア、リアス・・・・続き、してくれるか?」

 

「うん♪」

 

 リアスは嬉しそうに返事すると、そのまま俺のモノを咥えようとした。

 

「あ、ちょっと待った。リアス、お尻をこっちに向けてくれないか?」

 

「ええ!?」

 

 俺の頼みにリアスは驚いたものの、言われた通りお尻をこちらに向けた。

 

「一輝・・・・これって凄く恥ずかしいんだけど?」

 

 今の体勢は所謂シックスナインという奴だ。そして俺の眼前には絶景が広がっていた。

 リアスの入口は挿入()れて欲しいとばかりにパクパクと口を開き、滾々と蜜を溢れさせ、髪と同じ紅色の繁みはぐっしょりと濡れている。淫芯は皮がめくれて硬く屹立し、赤茶けたお尻の穴まで丸見えだった。

 その凄まじくエロい光景と、間近に感じる発情した雌の匂いに我慢出来ず、俺はリアスにむしゃぶり付いた。

 

「ひぃぃん!? ん、あああ!一輝、そこ駄目、そこは・・・・ん、く、んひいいぃぃぃっっ!?」

 

 両手でリアスの張りのあるお尻を撫で回しながら、舌が当たるのを幸いにリアスの局部を舐めしゃぶる。蜜の溢れる縦スジに舌を這わせ、蜜を啜り、淫芯を口に含み、お尻の穴に舌を突っ込む。

 

「そ、そこは駄目! 汚いから!お願いよ・・・ふわあ!、んく、く、くほほほおーーーっ!!」

 

 尻穴に舌を挿入れたのは初めてで、大丈夫かなと思ったが、どうやらリアスは気に入ってくれたようだ。今まで感じた事のない未知の快楽に、リアスは堪らず潮を吹いた。

 

「ハア、ハア、な、何? 今のは・・・・?」

 

 リアスは何をされたかよく分かってないみたいだ。ならばと右手の指を膣内に挿入し、左手で淫核を摘まむ。そして舌先を尻穴に再び突っ込んだ。

 

「んはあ!?・・・・く、くうん、んは、はぁん!!」

 

 三点同時攻撃の前にリアスはまたも潮を吹き、絶頂した。

 

「ぶふっ!?」

 

 その結果、足に力が入らなくなったリアスは、俺の顔面にそのまま腰を落とした。彼女の柔らかな秘肉が顔面に乗り、甘酸っぱい淫臭が広がる。そこからは今も淫蜜が湧き出て、俺の顔を濡らした。

 流石に息が苦しくなった俺はリアスの尻を退かそうと、彼女の尻穴に指を突っ込んだ。

 

「んほおぉぉぉっっ!!」

 

 リアスが飛び上がり、四つん這いになった。

 

「一輝お願い! お尻はやめて!これ以上されたら私・・・・」

 

「感じすぎちゃうか?」

 

 懇願するリアスが可愛くて、つい悪戯っぽく訊いてみる。

 

「もう、意地悪!・・・そういう人はオシオキよ!!」

 

 そう言ってリアスは俺の肉棒を咥え込んだ。

 

「んむ・・・んぽ、じゅぽ、ジュル、ズズ、ちゅぱ、んも」

 

 リアスは俺の肉棒を激しく責め立てる。

 

「ん──ちゅぱ、・・・どう、一輝? 参った?」

 

「リアス・・・これじゃオシオキというよりご褒美だぞ?」

 

 俺はドヤ顔で訊いて来るリアスに苦笑する。

 

「むう~~、降参しないの?」

 

 膨れっ面のリアスに俺はひとつ提案する。

 

「それじゃあリアス。先にイかせた方が勝ちで、負けた方は勝った方の言う事を何でもひとつ聞くって事にしないか?」

 

「お尻は駄目よ!? お尻にしないのなら・・・・いいわ」

 

「よし、それじゃあ・・・・スタート!」

 

 俺のかけ声と共にリアスが俺の肉棒を頬張り、激しく責め立てる。

 

「ん、んぽ、じゅぽ、ズズズ、んぽ、んも、」

 

 だが、まだまだリアスの口技は拙い。こうして咥えるのもまだ二回目で、嫌悪感なく咥えてるだけで大したものだと感心する。

 一方俺はリアスとの行為が解禁されてから、ほぼ毎日リアスの身体を開発して来た。リアスは何処が弱いか彼女以上に知っている自信がある。例えば───

 

「くひいぃぃぃぃんっっ!!」

 

 剥き出しの淫芯を摘まみ上げただけでリアスは俺の顔に飛沫を飛ばした。

 

「イったな?」

 

「ハア、ハア、い、イってないわ・・・んむう、ぐぽ、ぢゅぽ、ふんむ、ちゅ、」

 

 負けを認めようとせず、リアスは再び肉棒を咥える。全く、仕方がない。俺は目の前でポタポタと蜜を零す蜜壺に指を挿入れた。

 

「ふんん!?・・・・ん、ちゅ、ぢゅぽ、ちゅぽ、ズズズ、んぽ、んも・・・」

 

 俺が指を挿入れたのを感じたのか、リアスが一瞬硬直する。だが今度は負けまいと一心不乱に顔を動かしているが、俺がリアスの膣内の浅い所にあるザラついた部分を擦り上げると、

 

「ひゃああぁぁぁんんっっ!!」

 

 リアスはまたも呆気なくイった。

 

「イったよな?」

 

「~~~~! い、イってないもん。ふんむ、ちゅ、ぢゅぽ、ちゅぱ、・・・んんん、」

 

 これは何度イかせても認めそうもないな。俺は勝ちを諦めてリアスの与えてくれる快感に身を委ねる事にした。

 

「んぽ、ぢゅぽ、ちゅ、ズズズ・・・んあ!一輝、気持ちいい?」

 

「ああ、気持ちいいよ」

 

「うふ。・・・・じゃあ、もっと気持ち良くしてあげる!」

 

 俺の台詞に気を良くしたリアスは、更に激しく肉棒を舐めしゃぶる。俺もされるだけじゃなく、イかせない程度の刺激をリアスに与え続ける。

 

「ズズズ、ちゅぽ、・・・ぷはあ! リアスの蜜は美味いな」

 

 俺がリアスのおマンコに舌を挿入れて、蜜を啜ると、

 

「あむ、んむ、ちゅぱ、・・・一輝のお、おチンポも美味しいわ。・・・このまま射精して。一輝のおチンポ汁、私に飲ませて!」

 

 リアスもこの前俺が教えた淫語を恥ずかしがりながらも口にする。リアスの口から出た淫語に精神的な満足感を覚え、段々射精感が込み上げて来た。

 

「む・・・ズズズ、ああ、リアス、もう・・・・」

 

「・・・む? いいわよ。そのまま射精()して? 一輝のおチンポ汁、全部私にちょうだい!」

 

 リアスのその声に押されるように、俺は彼女のクリトリスに甘噛みし、欲望を解放した。

 

「くっ、リアス!」

 

「んん!? ~~~~~~!!」

 

 リアスが盛大に潮を吹いたのと同時に、俺の精液がリアスの口内に発射された。そして、

 

「ぐっ!? ~~~~ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ!」

 

 やはり全部を飲む事は出来ず、リアスは盛大に咽せて、口内から精液を溢していた。

 

「ああやっぱり。無理するから」

 

 俺は身体を起こして、リアスの背中を擦り、ティッシュで口の回りを拭いた。

 

「ゴホッ、ゴホッ、・・・・ごめんなさい一輝。量が多くて、ほとんど溢しちゃったわ・・・・」

 

 申し訳なさそうに謝るリアスに苦笑しつつ、俺は彼女の肩を抱き寄せた。

 

「謝る事ないよ。リアスは一生懸命俺を悦ばそうとしてくれたんだ。その気持ちが一番嬉しいよ」

 

 元々精液なんて飲めた代物じゃないんだ。リアスが飲めないのも無理はない。とは言え、朱乃が最初から飲んだのは教えない方がいいよな、やっぱり。

 

「うん・・・・所で一輝。勝負は私の勝ちよね?」

 

 ・・・・本来ならリアスの負けだし、今だって同時にイったから良くて引き分けだと思うのだが、まあ仕方がない。今回は勝ちを譲ろう。

 

「いいよ。リアスの勝ちで。で? 俺は何をすればいいんだ?」

 

「・・・・それじゃあ今夜はずっと抱きしめていて」

 

「それじゃいつもと変わらないんじゃないか?」

 

「いいの! ほら一輝!」

 

 リアスの催促に俺は両腕を広げて彼女を迎え入れる。

 

「いいよ、おいで」

 

 リアスは嬉々として俺の腕の中に飛び込んで来た。

 リアスのお願いは取るに足りないいつもの事。正直こんなのでいいのかと思ったが、他ならぬリアス自身のお願いだ。俺は彼女を抱きしめて、ベッドに横になった。

 

 

 

 シャワーを浴びてないせいか、リアスからは色々な体液の醸し出す複雑な臭いがする(決して臭いとは言ってない)。尤も俺もリアスの愛液を大量に浴びているので、その辺はお互い様だ。

 リアスのような美少女からこんな臭いがするというだけで、射精したばかりなのに、またも股間が熱くなって来る。そんな事を考えていると、抱き着いているリアスの力が強くなっている事に気付いた。

 これは最早抱き着くというよりもしがみ着くといった感じで───

 

「リアス・・・・?」

 

 不審に思い、俺の胸に乗っているリアスの顔を見ると、月明かりしかない室内でキラリと光るものがあった。

 

「リアス!? どうしたんだ?」

 

 リアスが泣いている事に驚き、声をかけると、彼女はしばらくしてからポツリと呟いた。

 

「・・・・・・怖かった」

 

「怖かった? 何がだ?」

 

「・・・・貴方がお兄様と戦ってるのを見て、心臓が止まるかと思ったわ」

 

「あ・・・・・・」

 

 そうか。リアスからすれば恋人と実の兄が自分に黙って戦ってたんだから驚くのも無理はない。サーゼクス様に認められた事に浮かれて、リアスのメンタルケアをするのを怠っていた。

 

「貴方の両腕が消滅()された時なんて、目のが真っ暗になったわ」

 

「・・・・・・」

 

「ねえ、一輝。私は貴方と出会えて幸せよ。もう貴方と出会わなかった頃の生活が思い出せない位に・・・・

貴方はどう?」

 

「勿論俺も幸せだよ。君と出会ってから俺は世界が色鮮やかに見えるようになった。以前も言ったが俺は悪魔に転生した事を感謝しているよ」

 

「・・・・良かった。貴方が重傷を負ったのは私のミスよ。例え命を救う為とはいえ、勝手に転生させた事を悪いと思ってたの。でも、貴方にそう言って貰えて本当に良かった。・・・・ねえ一輝。私の心は貴方に相当占められているのよ。だからお願い。私の側にいて。貴方がいない生活なんて、私にはもう出来そうもないから───」

 

 潤んだ瞳で俺を見上げるリアスを俺は強く抱きしめた。

 今、俺の胸にはリアスへの申し訳なさとそれ以上の愛しさが溢れていた。両親が亡くなってからこんなに俺を愛してくれたのは彼女が初めてだ。

 

「うん・・・・心配かけてごめん。そして心配してくれてありがとう。これからも俺は君と共に在る。約束するよリアス」

 

「うん・・・・約束よ、一輝」

 

 俺達の顔がゆっくりと近付き、唇が重なる。舌を絡めるでもない、ただ触れただけのキスなのに、今までになく、心まで満たされるような気分だった。

 

 

 

 

 

 明後日、視察(という名目の観光)を終えた魔王様は沢山のお土産を手に冥界へ帰った。去り際に「また来週の授業参観で会おう!」と言ってたが、本当に来るのかね、あの魔王(ヒト)

 

 ともあれ台風一過の日曜日、全国的に休日だというのに、俺とリアスは制服に着替え、学園へ出掛けた。

 途中、いつものように朱乃と合流して、二人の美少女に挟まれて登校する。

 

「うふふ、一輝君の為にセクシーな水着を選んで来たんです。楽しみにしていて下さいね?」

 

 朱乃が右腕に爆乳を押し付けながら、耳元で囁く。

 

「何言ってるのよ朱乃! 一輝は私の水着を楽しみにしてるのよ!?」

 

 するとリアスが対抗するように、左腕に爆乳を押し付けて言った。

 

「あらあら、では勝負といきましょうか、リアス?」

 

「望む所よ!」

 

 あの夜は酷く落ち込んでいたリアスも、今ではすっかり元に戻って、朱乃といつものように仲良くケンカしている。

 二人に挟まれてオカ研の部室に着くと、部室には既に全員が集合していた。

 

「さあみんな、今日は私達限定のプール開きよ!」

 

 全員を見渡して、リアスが宣言した。

 そう、何故折角の日曜日に学園に集まったかというと、プール掃除をする為なのだ。

 明日から駒王学園も水泳の授業が実施される。生徒会が一番にプールを使える事を条件に各部活にプール掃除を呼びかけた所、いの一番にリアスが立候補して、今日の集まりと相成った。

 俺達はプールの更衣室で男女別に別れて、着替え始める。

 

 

 男子更衣室で着替えた俺は隣で着替えるイッセーを見る。イッセーの目は血走り、鼻息は荒く、ニタニタ笑っているという町中で見かけたら通報されても文句の言えない顔をしていた。いい機会だから少し話しておくか。

 

「イッセー、少しは落ち着け」

 

 イッセーは声をかけられてハッとすると、

 

「い、嫌だなあ一輝先輩。俺は十分落ち着いてますって!」

 

「嘘吐け。・・・なあイッセー、この際だから訊いておきたいんだが、お前はハーレム王を目指してるんだよな?」

 

「ウス! 将来上級悪魔になって、可愛い女の子を眷属にしてハーレムを築くのが俺の夢っス!」

 

 即答だった。

 

「・・・・なら、なんで女の子に嫌われるような事ばかりするんだ?」

 

「そ、それは・・・・!?」

 

 イッセーは駒王学園中の女子から嫌われている。同じクラスの松田と元浜と共に、教室内で平気でエロい話をしたり、女子更衣室を覗いたりして「変態三人組」と呼ばれている。何度も注意を受けているが一向に止めず、正直停学にならないのが不思議な位だ。

 

「その、迸る若さを抑えられないと言いますか、駄目だと思ってもその場の誘惑に勝てないと言いますか・・・・」

 

 などと言い訳しているが、要は意志が性欲に負けてるって事か。全く・・・・

 

「ハア。・・・話は変わるが、お前はアーシアをどう思ってるんだ?」

 

「勿論、守るべき大切な女の子です!」

 

 今度も即答だった。だが訊きたいのはそういう事じゃない。

 

「そうじゃなくて、アーシアと恋人になりたいとは思わないのか?」

 

「アーシアと!? そんな、そりゃあなれたらいいなあとは思うけど、アーシアが俺に懐いてるのは初めての友達だからだし、アーシアからすれば俺は兄貴みたいなもんだろうし・・・・」

 

 などと言い訳するイッセーに俺は呆れていた。

 

「アホかお前は! 誰がどう見たってアーシアはお前に好き好き光線を出してるだろうが!!」

 

「えええ!?」

 

 全然気付いてなかったのか、こいつ。

 

「イッセー、お前アーシアを抱きたくないのか?」

 

「アーシアを、抱く!?」

 

 イッセーがゴクリと唾を飲む。

 

「・・・・でも、アーシアは大切な、守らなきゃいけない娘で・・・抱くって、その、あの」

 

「・・・・イッセー、女の子にも性欲はあるんだぞ」

 

「!!」

 

 俺の一言にイッセーは驚愕の表情を浮かべた。

 

「お前はアーシアを妙に神聖視してるが、アーシアも年頃の女の子なんだ。当然そういう事に興味もあるだろう。もしかしたらあの娘も待ってるかもしれないぞ」

 

「アーシアが、待ってる・・・・」

 

 イッセーは呆然としている。これ以上は野暮というものか。 

 

「マゴマゴしていて他の誰かに奪われなきゃいいけどな。それといい加減スケベは控えろ。じゃなきゃアーシアが悲しむぞ?」

 

 俺はそう言って更衣室を出た。イッセーはまだ呆然としていた。

 

 

 

 

 

 プールサイドに出ると、プールはリアスの使い魔によって既に掃除されていて、今は水を貯めている所だった。やはり掃除とは名ばかりで遊ぶ気満々のようだ。

 

「先輩!」

 

 呼ばれて振り向くと、そこには水着姿の祐美がいた。

 

「その・・・・どう、ですか?」

 

 祐美の水着は、可愛らしいフリルの付いた白いビキニだった。巨乳と呼べる大きな胸にくびれた腰、丸く引き締まったお尻から伸びる長い足と、女として理想的なスタイルをしている。そんな彼女の水着姿はグラビアアイドルなぞ比べ物にならない素晴らしさだった。

 

「ああ・・・・とても良く似合ってるよ。凄く、綺麗だ」

 

 俺がそう言うと、祐美は嬉しそうに抱き着いた。

 

「やった!・・・・先輩には一番に私を見て欲しかったんです。部長と朱乃さんの水着は私から見ても凄かったから、少しでも記憶に残って欲しくて・・・」

 

 そう言って身体を擦り寄せる祐美に思わず反応してしまう。

 

「出来る事ならこの場で押し倒したい位だよ。でも白い水着って濡れたら透けたりしないか? ここにはイッセーもいるんだぞ?」 

 

「先輩・・・もしかして妬いてます?」

 

「当たり前だ。俺は自分の女の裸を他の男に見せて悦ぶ趣味はないぞ」

 

 祐美は暫し目を丸くして俺を見ていたが、やがて満面の笑顔で抱き着いた。

 

「えへへ、嬉しい! このフリルが大事な所を隠してくれるから、多少透けても大丈夫です。・・・・今は流石に無理ですけど、機会があったらこの格好で抱いて下さいね♪」

 

 そう言って祐美は俺から離れる。人が来る気配を察知したようだ。程なくしてアーシアと小猫ちゃんがやって来た。

 

「あ、一輝さん」

 

 驚いた事に二人はスクール水着だった。紺のスク水に胸元の「あーしあ」「こねこ」という名札が眩しい。だが、

 

「アーシア・・・小猫ちゃんも、それ以外の水着を持ってないのか?」

 

「持ってないです」

 

「私も水着を着るのは初めてで・・・・その、おかしいでしょうか?」

 

「いや、似合う似合わないで言えば似合うんだが、遊びに行くのにその水着はTPOに合わないと思うぞ?」

 

「そうですか?」

 

 アーシアが若干落ち込んだ様子を見せる。気に入ってたのか?

 

「祐美。今度二人の水着を見繕ってやってくれ・・・・それとも二人っきりでイッセーに選んで貰った方がいいか?

 

「か、一輝さん!?」

 

 アーシアにだけ聞こえるように囁くと、彼女は途端に顔を真っ赤にした。そんな時、

 

「ア、アーシア・・・・」

 

「! イッセーさん・・・・」

 

 イッセーの声にアーシアが振り向き、そのまま見つめ合って固まった。俺が煽ったので二人共お互いを意識しているようだ。だが、

 

「みんな、待たせたわね!」

 

 朱乃と共にリアスがやって来た。そして、二人を見た途端、イッセーが鼻血を吹いて倒れた。

 

「い、イッセーさん!?」

 

 慌てたアーシアがイッセーを膝枕して【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】を発動させる。イッセーは幸せそうな顔をして気絶していた。

 

「ま、まあイッセーはアーシアに任せましょう。所で一輝、どっちの水着が好き?」

 

 イッセーの奇行に驚いていたリアスだったが、勝負してたのを思い出したのか俺に迫る。

 リアスは髪の色に合わせた赤いビキニだった。突き出た爆乳を覆う小さめのブラとハイレグのパンツ。抜群のプロポーションを惜し気もなく晒し、立っているだけで健康的な色気を醸し出している。

 一方の朱乃は紫のビキニだった。リアスと違い肩ヒモのないブラは極めて小さく、下乳横乳がはみ出ている。パンツははみ出さないか心配になる程際どいハイレグで、全体的にリアスより肉付きの良い身体が妖艶な魅力を醸し出している。

 正直どちらも素晴らしく、甲乙付け難い。

 

「・・・・どっちもいいというのは」

 

「「駄目!!」」

 

「だよなあ」

 

 さて困った。どっちもいいというのは本心なんだが。

 

「私の方がいいですわよね、一輝」

 

 決めかねてると朱乃が後ろから抱き着いた。柔らかな感触が背中にピットリと貼り付いて、無茶苦茶気持ちいい。

 

「私を選んでくれたら、リアスが出来ない気持ちいい事を一杯してあげますわ」

 

 そう言って朱乃は俺の耳に息を吹き、甘噛みした。

 

「うう、」

 

「ん・・・レロ、むちゅ、」

 

 そのまま朱乃は俺の耳を舐める。耳を這う舌の感触に背筋がゾクゾクする。このまま朱乃のもたらす快楽に屈しかけたその時、

 

「ちょっと朱乃!? 勝てないからってそんな風に私の一輝を誘惑するなんて卑怯よ!」

 

「あら? 誰が勝てないですって? 私は貴女が出来ない事をしているだけですわよ? それに一輝も気持ち良さそうにしているわ」 

 

 リアスが口を挟むも、朱乃は挑発で返す。

 

「ねえ一輝。私もそろそろ奪って欲しいです。一輝の逞しいモノで満たされて、身体中を蹂躙されたら私、どうなってしまうのかしら?」

 

 朱乃の舌が耳から首筋を這い、両手は胸から腹をゆっくりと撫で擦る。その時、

 

 ボヒュンッ!!

 

 猛スピードで紅の魔力弾が俺の真横を飛んで行った。魔力弾は壁に着弾して大穴を空ける。壁を見て、飛んで来た方を向くとリアスが俺達を睨んでいた。

 

「朱乃・・・・調子に乗りすぎよ。祐美はともかく貴女にまで遅れを取るつもりはないわ」

 

 リアスが全身に紅いオーラを漲らせて宣言すると、朱乃は俺から離れて全身から雷を纏った黄金のオーラを漲らせた。

 

「あらあら。そんな風にされると私も困ってしまいますわ───私は引かないわよ、リアス?」

 

 朱乃の台詞を切っ掛けに二人のオーラは更に激しく燃え上がった。

 

「一輝は渡さないわ──卑しい『雷の巫女』さん?」

 

「ちょっと位いいじゃないの──『紅髪の処女姫』さま?」

 

「! 貴女だって処女じゃないの!!」

 

「あら、私は今すぐにでも一輝に処女を捧げられるわ!」

 

「そんなの駄目!! 大体朱乃は男が嫌いだった筈でしょ? よりによってどうして一輝に興味を持つのよ!?」

 

「そう言うリアスだって男なんて興味ない、みんな一緒に見えるって言ってたじゃないの!?」

 

「一輝は特別よ! やっと強くて優しい理想の男性(ひと)にめぐり逢えたのよ!!」

 

「私だってそうよ! そもそも一輝に目を付けていたのは私が先なのよ!?」

 

 二人は魔力弾を撃ち合い、言い争う。流れ弾があちこちに飛んで行く。流石に危なくなって来たから皆を避難させようと思ったが、皆は既に避難した後だった。俺も咄嗟に近場にあった用具室へと避難した。

 

 

 

 

「やれやれ、参ったな」

 

 用具室に避難して俺はため息を吐いた。

 自分で蒔いた種ではあるが、二人共過激すぎる。そもそもリアスはハーレムを肯定していた筈なのに、いざ朱乃と事に及ぼうとするとこんな風にキレるのだ。

 リアスは朱乃を親友であると同時にライバルだと思っている。負けず嫌いなリアスは朱乃に遅れを取りたくないのか、ムキになっているみたいだ。

 

「おや、そこにいるのは一輝センパイか?」

 

 声の方を見ると、そこには水着に着替えたゼノヴィアがいた。

 

「ゼノヴィア? 何でこんな所に───」

 

「うん。初めての水着だったので着方を間違えたようでね、ここで直してたんだが───どうかな?」

 

 そう言ってゼノヴィアは水着姿を晒す。髪と同じ色の青いビキニを着たゼノヴィアの胸の大きさは祐美と同じ位で、彼女より若干筋肉質に見える。それでも女性らしさを損なわない見事なスタイルをしていた。

 

「ああ。良く似合ってるよ」

 

 俺がそう言うと、ゼノヴィアは顔を綻ばせた。

 

「そうか、良かった。・・・・所で外が騒がしいが何かあったのか?」

 

「ああ。今は出ない方がいいぞ。巻き込まれる」

 

「ふうん? なら、そうするか」

 

 ゼノヴィアはそう言うと、俺の隣に腰を下ろした。

 

「水着が初めてって、やっぱり教会は規則が厳しいのか?」

 

「まあそうだね。というよりも私自身がそういう事に興味がなかったのが大きいんだが──他の修道女や女戦士は不満を漏らしていたよ」

 

 教会は固いイメージがあったが、やっぱり所属してる者にも不満はあるらしい。

 

「とは言え私も悪魔に転生したからには、そう言った娯楽にも目を向けようと思ってね」

 

 ゼノヴィアはそう言って、柔らかい笑みを浮かべた。

 

「いい事だと思うぞ。まあ俺に出来る事なら協力するから言ってくれ」

 

 俺がそう言うと、ゼノヴィアは暫し考え込み、意を決したように真っ直ぐ俺を見つめた。

 

「では一輝センパイ。折り入って頼みがある」

 

「何だ?」

 

「私に貴方の子種をくれないか?」

 

「・・・・・・は?」

 

 え? 今何て言ったこの娘?

 

「ん? 良く聞こえなかったのか? ではもう一度、

──私と子作りしよう、一輝センパイ」

 

 ゼノヴィアがはっきりと言い直した。聞き間違いじゃなかったか。俺は頭痛を感じて額に手を当てた。

 

「お前、いきなり何を・・・・」

 

「うん。順を追って説明しよう」

 

 そう断ってゼノヴィアは語り出した。

 

 

 孤児であったゼノヴィアは、ローマにあるキリスト教の施設で育てられた。幼少時に聖剣使いとして高い因子を持つ事が分かると、神の戦士となるべく厳しい訓練を受け、やがて聖剣デュランダルを継承した。

 神の戦士として教会の命ずるままに悪魔や堕天使、背教者を斬って来た。それが神への信仰と信じ、疑問も感じず戦って来た。だが聖剣事件で神の死を知り、その結果異端扱いされ、半ばやけくそでリアスの誘いを受けて悪魔に転生した。

 悪魔に転生したものの、今まで命令に従っていただけのゼノヴィアは何をすればいいか分からなかった。主であるリアスに相談したら「欲望に逆らわず、好きに生きてみなさい」と言われたそうだ。

 好きに生きろと言われて、ゼノヴィアは教会で育てられる内に心の中に封じ込めた欲望を開放する事にした。

 そして、開放した彼女の欲望───夢は女の喜びを知る事、即ち子供を産む事だった。

 

 

 

「女の喜びを知るには男とセックスするのが一番だとクラスメイトから教わった。どの道子供を作るにはするのだから一石二鳥という訳だ」

 

 誰だ!? そんな事ゼノヴィアに吹き込んだ奴は!!

 

「お前なあ・・・・いきなり子作りって、何段階ふっ飛ばす気だ」

 

 俺が呆れてそう言うと、ゼノヴィアは怪訝そうに首を傾げた。

 

「何かおかしいのか?」

 

「おかしい事だらけだ。そもそも何で俺だ?」

 

「うん。私は子供を作る以上、強い子に育って欲しいと願ってるんだ。その為にも父親はより強い男であるべきだと考え、私の身近で最も強い男である一輝センパイにお願いしたいと思ったんだ」

 

 つまりは恋愛感情はない、と。

 

「あのな。普通は恋愛の先に子作りがあるんだよ。それをすっ飛ばして関係したってお互い不幸になるだけだぞ」

 

「だが、こういうのを『後腐れのない関係』と言うのだろう?」

 

「・・・・それもクラスメイトから教わったのか?」

 

「うん。そうだが?」

 

 俺はその場にへたり込んだ。誰だそのクラスメイトは!? 思いっ切りゼノヴィアに悪影響を及ぼしてるじゃねーか!!

 どうするべきか頭を悩ませたその時、

 

「話は聞かせて貰いました!」

 

 突然、祐美が用具室に乱入した。

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

続きは明日までに投稿しますのでお待ち下さい。


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第11話 赤と白の邂逅☆☆(祐美、ゼノヴィア)



第11話を投稿します。ご覧下さい。





 

 

「祐美!? 何故ここに?」

 

「先輩がここに入るのを見て、ここなら二人きりになれるかと思ったんですけど、ゼノヴィアとの話が聞こえて来たので、聞き耳を立ててました!」

 

「そ、そうか」

 

 一輝は堂々と盗み聞きをしていた事を告白する祐美に戦慄を覚えた。

 

「それよりゼノヴィア。いきなり子作りしようなんて、そんなの無理よ」

 

「何故だ? ただ男性器を女性器に挿入して射精して貰えばいいのだろう?」

 

 ゼノヴィアの言い様はまるで保険体育の教科書のようだ。

 

「・・・・いい、ゼノヴィア。セックスするにはまず男女共に準備が必要なの。貴女どうすればいいか分かってる?」

 

「いや。それは一輝センパイに教わればいいと思っていた」

 

「そういう事は事前に勉強しておくべきよ。いいわ、私がお手本を見せてあげる」

 

 そう言うと、祐美は一輝の前に跪いた。

 

「先輩、失礼しますね」

 

 そう断って、祐美は海パンを下ろして肉棒を露出させた。

 

「ほう。それが・・・・」

 

 ゼノヴィアが興味深げに見つめて来た。祐美はゼノヴィアの視線を気にせず、一輝の肉棒を擦り始めた。祐美の手によって一輝の肉棒はどんどん硬く、大きくなっていった。

 

「ほう! これは・・・・!!」

 

 ゼノヴィアが興味深げに顔を近付ける。

 

「ね? 凄いでしょう。でも、まだまだこんなものじゃないのよ」

 

 そう言って祐美は大きくなった肉棒を舐め始めた。

 

「ん・・・レロ、レロ、んちゅ、んむ・・・ちゅ、」

 

「き、木場祐美!? そんな物舐めるのか!?」

 

「ゼノヴィア、何を言ってるの?・・・レロ、ちゅ、貴女は先輩の子種が欲しいんでしょ?、んむ、レロ、レロ・・・なら先輩のおチンポにご奉仕するのは、レロ、ん、ちゅ、当然よ?」

 

「そ、そうなのか?」

 

 ゼノヴィアが驚愕しつつ、ゴクリと喉を鳴らす。

 

「こうやって、全体を唾で濡らしたら・・・あむっ」

 

 祐美は肉棒を咥えて前後に動かし出す。

 

「んん、んぽ、んぽ、むうう・・・ちゅ、んむ!」

 

 ゼノヴィアは顔を赤らめながら、祐美の行為から目を離せなかった。

 

「んんん、ちゅぽっ!・・・・ほらね? また大きくなったでしょう?」

 

「あ、ああ・・・・」

 

 ゼノヴィアはさっきより更に大きくなり、完全に戦闘状態になった一輝の威容に度肝を抜かれていた。

 

(す、凄い! こんなに大きいモノが私の中に入るのか───!?)

 

「さあゼノヴィア。貴女もやってみて」

 

「わ、私もやるのか!?」

 

 祐美の勧めにゼノヴィアが後ずさる。

 

「大丈夫、怖くないから。さあ、そっちに座って」

 

「う、ああ・・・・」

 

 祐美に手を引かれて、ゼノヴィアも祐美と同じように跪く。

 

「さあ、まずは触ってみて」

 

「う、うん・・・・! か、硬い。それに、熱い・・・・」

 

 ゼノヴィアは一輝の肉棒に触れて、ゆっくり撫で擦る。ゼノヴィアの息が段々と荒くなる。

 

「そうでしょう。硬くて熱い、これが先輩のおちんぽよ。さあ、そのまま舐めてみて」

 

「う、うん・・・・う、オエッ!?」

 

 口を近付けた途端、嗅いだ事のない鼻に突く異臭を感じる。「本当にこれを舐めるのか」と祐美に視線を向けると、彼女はゆっくりと頷いた。進退極まったゼノヴィアは恐る恐る舌を伸ばし、一輝の肉棒を舐めた。

 

「うう、ん・・・・レロ──!」

 

 舌先に痺れるような苦みを感じ、ゼノヴィアは思わず顔を離してしまう。すがるように祐美を見ると、「続けろ」と目で訴えている。ゼノヴィアは諦めたように顔を近付けて、肉棒に舌を這わせた。

 

「んん、・・・レロ、ちゅ、レロ・・・ちゅぷ、オエッ」

 

「ふふ、そんなしかめ面しないで。これが先輩の味よ。どう?」

 

「ちゅぷ、・・・・不味い」

 

 しかめ面で答えるゼノヴィア。

 

「ふふ、でしょうね。でも、その内美味しく感じるようになるわ。こんな風に・・・・ん、レロ、ちゅぷ」

 

 そう言って祐美は味わうように肉棒を舐める。ゼノヴィアには祐美が美味しそうに肉棒を舐めてるのが信じられなかった。

 

「さあ、次のステップよ。こうやって咥えるの・・・ん、んん、ちゅ、・・・ちゅぽ、むふ、ちゅぱ、んん」

 

 祐美は何の躊躇いもなく、一輝の肉棒を咥え、前後に動き始めた。

 

「んん、んぽ、、ぢゅぽ、ん、んあ、あむ、んぷ、ちゅ、ズズズ」

 

 舐め、しゃぶり、啜る音が決して広くはない用具室に響く。祐美の顔は恍惚として、一輝の肉棒を本当に美味しそうにしゃぶっている。

 目を潤ませ、頬を赤く染めて、口の端からは涎すら垂らしている。いつもの清楚な祐美とは真逆の淫靡な姿にゼノヴィアは目が離せなかった。

 

(あの木場祐美がこんなにも淫らになるなんて・・・・

しかもあんな不味いモノをあんな風に咥えるとは・・・・

もしかして本当に美味いのか? 私の舌がおかしいのだろうか?)

 

「う、祐美、そろそろ」

 

「んちゅ、ぷあ、・・・・ふぁい」

 

 一輝の合図で祐美が口を離す。祐美の唇と一輝の肉棒の間に透明の橋が伸びてプツッと切れた。その光景がゼノヴィアにはたまらなく淫靡に見えた。

 

「さあ、ゼノヴィア。貴女の番よ」

 

「う、うん・・・・あ、んむう、」

 

 祐美に促され、ゼノヴィアが一輝の肉棒を咥えた。

 

(ううう、く、臭い! それに何かヌルヌルする!?)

 

 だがゼノヴィアは咥えただけで動けなかった。それを見た祐美はため息をひとつ吐いて、

 

「先輩、やっちゃって下さい!」

 

 そう言ってゼノヴィアの頭を後ろから押さえた。祐美に促され一輝は自ら腰を動かした。

 

「!? ぶふっ、むふ、ぶほっ、オエエッ!」

 

 一輝の巨大な肉棒に咽奥を突かれ、ゼノヴィアは嘔く。逃げたくても祐美に頭を固定されて逃げられず、口内を蹂躙される苦しさに自然と涙が出て来る。どんなに苦しい任務にも耐えて来た自分がこんなにも簡単に涙を流している事にゼノヴィアは驚きを禁じ得なかった。

 今やゼノヴィアの整った顔は涙だけじゃなく、涎や鼻水で汚れていた。息苦しさに意識が朦朧とする中、

 

「く、出すぞ!」

 

 と、一輝の切羽詰まったような声が聞こえた。出す?何を?と思ったその時、熱い塊がゼノヴィアの口内に飛び込んで来た。

 

(何?何だこれは!? 熱くて苦くて、それにネバネバするう!?)

 

「飲め、ゼノヴィア!!」

 

 一輝がそう命じるが、

 

(飲む?これを!?無理だ!こんなの飲める訳ない!?)

 

 あっという間に口一杯になり、尚も送り込まれる精液を飲む事が出来ず、ゼノヴィアはとうとう噴き出した。  

 

「ブフウッ! オエエエッ、ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ」

 

 ゼノヴィアは我慢出来ず、肉棒から口を離してしまう。未だ噴出する白濁した飛沫を顔や胸に浴びながら、激しく嘔き、口内の精液を吐き出した。

 

「ああ、勿体ない!」

 

 祐美の声が聞こえるも、ゼノヴィアは白濁したネバネバを吐き出すのに必死だった。だがどんなに咳き込んでも口内にはり付いたネバネバは取れなかった。

 

「ゴホッ、ゴホッ、な、何だこれは!? こんなの飲める訳ないじゃないか!?」

 

「・・・何を言ってるのゼノヴィア。それが貴女の欲しがっていた先輩の子種よ?」

 

「な! これが!?」

 

 ゼノヴィアは思わず声を上げた。性知識がほとんどないゼノヴィアは精液がどんなものか知らなかった。自分の胸にかかった精液をすくい取り、まじまじと見つめた。

 

「そんな事じゃあ先輩の子種はあげられないわね・・・

先輩、今綺麗にしますね」

 

 そう言って祐美は汚れた肉棒を何の躊躇もなく咥え込んだ。

 

「ん・・・ちゅ、ズズ、ちゅぽ、レロ、レロ・・コク、コク、───ぷはぁ❤」

 

 肉棒に付着した精液を丁寧に舐め取り、残りの精液を啜り、美味しそうに飲み込む祐美の姿にゼノヴィアは驚愕の視線を向けた。

 

「ん・・・・ズズズ、ちゅぽ、・・・ふう。先輩、綺麗になりました」

 

「ご苦労様、祐美」

 

 一輝に頭を撫でられて祐美は嬉しそうに微笑んだ。そして、そのままおねだりをする。

 

「先輩。ゼノヴィアはお相手出来そうにないから、私に挿入()れて下さい」

 

「いいよ。おいで」

 

 一輝は祐美を抱き寄せ、彼女のパンツに手を突っ込んだ。

 

「ああん❤ せ、先輩!」

 

 祐美の股間は白い水着が透ける程グッショリと濡れて、既に準備が出来ていた。

 

「もう準備OKじゃないか、祐美」

 

「はい。だから祐美のグショ濡れのおマンコに、先輩の硬くて大きなおチンポを挿入れて下さい!」

 

「良く言えたな。それじゃあ挿入れるぞ」

 

 一輝は祐美のパンツをずらし、秘裂を露出させると、そのまま一気に突っ込んだ。

 

「! んはあぁぁぁんん!!」

 

 立ったままの姿勢で奥まで一気に突っ込まれ、祐美はあっという間に達してしまった。

 

「相変わらず敏感だな。そら、動くぞ」

 

 一輝は祐美の両足をを抱え上げ、所謂駅弁の体勢になると、下からガンガン突き上げた。

 

「んああ! せ、先輩、これ深い! 奥に当たって私・・・くああぁぁぁんんっ!!」

 

「祐美は、奥の方が、感じるんだもんな!」 

 

「ああん! はい、はい! 奥、気持ちいいです!」

 

 パンパンと肉のぶつかる音が響く中、ゼノヴィアは二人のまぐわいを見つめて呆然としていた。

 

(何だこれは!? これがセックス? こんな、こんな激しいものだったなんて───)

 

 ゼノヴィアの位置からは祐美の様子が良く見える。普段の清楚なイメージは見る影もなく、一輝に突かれる度快楽に蕩けた声を上げている。

 

「んあ! あん! んんん! 先輩、先ぱ~い!、イク、イクううう~~~~~!!」

 

 ビクンと身体が跳ねると同時に祐美の股間から透明の飛沫が飛び散る。

 

(漏らした? 高校生にもなって漏らしたのか、木場祐美!?)

 

 性知識のないゼノヴィアには潮とオシッコの区別が付かなかった。そんな祐美を見つめていると、

 

 ───クチュッ

 

 突然、すぐ側で湿った音がした。何かと思って音のした方に視線を向けると、自分の右手が股間をまさぐっている事に気付いた。

 

(えええーーーーっ!? ちょっと待て! 私は何してるんだ!?)

 

 だがゼノヴィアの手は気付いた後も止まらなかった。今まで洗う時以外触れた事のない股間を自分の手が勝手にまさぐり、そこからクチュクチュと濡れた音がしている。

 

(何だこれは!? 何でこんなに、き、気持ちいい────!?)

 

 今までにない刺激を受けて、ゼノヴィアは呆気なく達した。

 

「ハア、ハア・・・・こ、これは一体───」

 

 息を荒げて自分の右手を見ると、その手はグッショリと濡れていた。自分の身体の反応に戸惑い、救いを求めるように祐美を見るが、

 

「んん──ちゅ、ふうん、ちゅば、ああん!先輩、先輩❤」

 

 祐美は一輝とのセックスに夢中になって腰を動かし、唇を重ねていた。

 その淫靡な姿にゼノヴィアはゴクリと唾を飲むと、再び股間と、今度は豊かに実った胸にも手を這わせていった。

 

「はぁん! んん、あん、あん、凄い、いっぱい!いっぱいクル!」

 

「く、祐美、そろそろ───」

 

「はい!射精()して!祐美の膣内(なか)を先輩の精液で、子種でいっぱいにして下さい!!」

 

 パン!パン!パン!パン!

 

「祐美、祐美、イクぞ!」 

 

「来て、来て、奥までいっぱい来てーーーー!!」

 

 ブビュルルルッ、ビュルッ、ブビューーーッ!!

 

「んああぁぁぁんんっっ!! イク、イックゥーーーー!!❤」

 

 祐美の最奥に肉棒が当たると同時に、激しい勢いで白濁液が膣内を満たしていく。そして、それとほぼ同時に、

 

「! ふううぅぅぅんんっっ!!」

 

 自分で弄っていたゼノヴィアもまた、絶頂を迎えた。自らの膣内を子種で満たされて、満足そうに微笑む祐美を見て、

 

(ああ、本当に幸せそう───これが女の喜びか。いいなあ───)

 

 羨望の眼差しを浮かべたまま背中から倒れた。自分の胸にかかっていた精液の残滓を指ですくうと、ペロリと舌で舐め取った。さっきまで不味いと思っていた精液が美味しいと感じたのが不思議だった。

 

 

 

 

 

 

 ああ、やっちまった。こんな所でゼノヴィアと、しかも祐美とは最後までシてしまった。

 祐美は息も絶え絶えで一輝()に寄りかかり、ゼノヴィアは自分でシてたのか、水着に手を突っ込んで倒れている。

 

「祐美、抜くぞ。一人で立てるか?」

 

「ハア、ハア・・・・ふふ、先輩まだ大きいままです。抜いちゃってもいいんですか?」

 

 甘い声で祐美が囁く。

 

「私はこのまま続けてくれてもいいんですよ❤」

 

 魅力的なお誘いだが、流石にこれ以上は無理だろう。

 

「そんな元気があるなら一人で立て。ほら、抜くぞ」

 

 俺は腰を引いて祐美の膣内から肉棒を引き抜いた。

 

「ぁん!❤・・・・ああ、抜けちゃった」

 

 祐美はまだしっかり立てないらしく、俺に支えられゆっくりと歩いていく。肉棒を抜かれた膣口からはポタポタと白濁液が零れて、祐美の歩いた後に点々と跡を作っていた。

 

「見てたでしょゼノヴィア。どう? これがセックスよ」

 

 ゼノヴィアの傍らに座り、祐美が話しかける。

 

「木場、祐美・・・・身体が変なんだ。お前達のセックスを見ていたら、その、身体がどうしようもなく熱くなって、股間から変な液体が・・・・私の身体はどうしてしまったんだ!?」

 

 涙目で訊ねる姿に、つくづくゼノヴィアは性知識がないのだと実感した。教会では性教育はしてないのだろうか?

 

「大丈夫よゼノヴィア。女はね、性的に興奮するとおまんこが濡れちゃうものなの。そうやって男性を受け入れる準備をするのよ」

 

「そう、なのか?」

 

「そうよ。現に私が先輩とシてる時も濡れてたでしょ?」

 

「確かに! ビショビショに濡れていたな」

 

「・・・・そうハッキリ言われると恥ずかしいわね。と、とにかくそれは正常な反応だから心配いらないわ」

 

「そうか・・・・良かった」

 

 祐美にそう言われ、ゼノヴィアはようやく安心したようだ。

 

「木場祐美。教えてくれてありがとう。良かったらこれからも色々と教えて欲しい」

 

「(クスッ) 祐美でいいわよ。眷属(なかま)なんだから」

 

「ああ、よろしく頼む。祐美」

 

 美少女同士が微笑み合う光景は実に素晴らしいのだが、彼女らの身体に付着する白濁した塊が台無しにしていた。取り敢えずシャワーを浴びなければ。と思ったその時、

 

 ガチャッ!

 

「一輝いる!? 埒が明かないから朱乃と水泳で、勝、負────何をしているのかしら?」 

 

 突然用具室の扉を開いて現れたリアスが、室内を見渡すと、声が一気に氷点下まで下がった。

 その後ろからひょっこり顔を覗かせた朱乃は「あらあら、まあまあ」といつもの調子で笑っていたが、その笑顔が妙に怖かった。

 

「・・・・一輝。私は確かに貴方が祐美と関係したのは許したし、ハーレムを作るのも認めたわよ。でもね、私がすぐ側にいるというのに、これはないんじゃないかしら?」

 

「・・・・はい。ごめんなさい」

 

 俺は即行で正座していた。まるで浮気がばれた亭主のような気分だ(実際その通りなんだが)。

 

「祐美、状況を説明しなさい。貴女が一輝を誘ったの?」

 

 リアスは次に祐美に目を向けて、状況説明を促す。

 

「はい部長。そもそも発端はゼノヴィアの性教育の為で───」

 

 祐美は全く悪びれず、理路整然と事情を説明した。その姿は実に堂々としており、ともすればリアスの方がやや押され気味になっていた。この中で唯一俺と結ばれているという自負が彼女を強くしているんだろうか。

 

「そう・・・・ゼノヴィアが一輝と子作り、ねえ」

 

「うん。以前リアス部長に相談した通り、好きなようにしようと思ってね。一輝センパイにお願いしたんだが、私は不勉強だった。だから祐美が手本を見せてくれたんだ」

 

「・・・・・・」

 

 リアスは頭を抱えていた。ゼノヴィアが俺と子作りするのは納得出来ないが、自分の言った事を撤回するのもプライドが許さないようで、ホトホト困り果てていた。

 

「(ボソッ) やはり現時点で一歩リードしてるのは祐美ちゃんでしたか。リアスなんかに構ってる場合じゃありませんでしたわ。しかもゼノヴィアちゃんまで参戦するとは、これじゃあ私の番がちっとも回って来ないじゃありませんの! 何とかしませんと・・・・」

 

 朱乃はさっきからブツブツと何かを呟いていて、役に立ちそうもなかった。

 

「あの、部長? 私達シャワーを浴びて来たいんですが、構いませんか?」

 

「・・・・ええ、行ってらっしゃい」

 

「はい。行きましょうゼノヴィア」

 

「うん。では失礼する」

 

 リアスに断りを入れて、祐美がゼノヴィアの手を引いて用具室を出て行った。

 

「それじゃあ俺も・・・・」

 

「一輝は駄目」

 

「・・・・はい」

 

 便乗して逃げようとしたが駄目だった。

 

 それから約一時間、その場でリアスに説教された。足が痺れただけですんだのは果して僥倖と言えるのだろうか。

 

 

 

 

 

 楽しかったプールの時間が終わった。とは言ってもイッセー()は半分位は鼻血を出してブッ倒れたんだけどな。

 それにしても部長と朱乃さんの水着はヤバかった。二人が素晴らしいスタイルをしているのは分かっていた筈なのにあの破壊力。つくづくあの二人から好意を寄せられている一輝先輩が羨ましいと思ってしまう。

 半分位は鼻血を出してブッ倒れていたが、残り半分はアーシアや小猫ちゃんに泳ぎを教えたりして、それなりに楽しく過ごした。一輝先輩は何故だか部長と朱乃さんに囲まれ説教されていたし、祐美はゼノヴィアと真剣な表情で話をしていた。随分仲良くなったな、あの二人。

 

 ともあれ、夕方になって楽しい時間は終わり、俺はいち早く着替えを終えて、皆を待っていた。───そんな時、白銀の輝きが俺の目に映った。

 

 外国人だから良く分からないが、おそらくは俺と同年代か若干上の年頃。腰まで伸ばした長い銀髪の人目を惹く美形だった。

 黒いブラウスに白のジーンズというどちらとも取れる服装をしている為、一見男にも見えるが俺の目は誤魔化せない。微かな胸の隆起とジーンズの上からでも分かる蠱惑的なヒップラインが女である事を物語っている。

 何気なく校舎を見上げているだけなのに、その様が何とも絵になる美少女だった。

 しばらく彼女に見惚れていると、俺の視線に気付いたのか彼女がこちらを向いた。彼女は俺を見ると、微笑みながらこちらへ歩いて来た。

 

「やあ。いい学校ね───兵藤一誠クン」

 

「えっと・・・・・・まあね」

 

 俺は誤魔化すように笑みを浮かべる。誰だ? 少なくとも学園の生徒じゃない。これ程の美少女なら俺が知らない筈がない。じゃあ何で俺を知ってるんだ? 俺が必死で思い出そうとしてると、

 

「ああ、そうか。そう言えば素顔で会うのは初めてだったわね。──私はヴァーリ。今代の白龍皇、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』よ」

 

 ・・・・え? この娘何を───

 

「こうして会うのは二度目ね。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』──赤龍帝・兵藤一誠クン?」

 

 【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】が勝手に具現化する。ドライグが彼女の中の『白龍皇(アルビオン)』に呼応してるみたいだ。

 それを見た彼女───ヴァーリが笑みを深める。ちくしょう、こんな所で赤と白の宿命の対決をおっ始める気かよ。今の俺が果たして彼女に勝てるのか? どうする? どうすればいい!?

 ヴァーリは不敵に笑って俺に手を伸ばす。

 

「意外ね。君の方からやる気になるなんて。でも本当にやるの?」

 

 俺は金色の瞳に魅入られたように一歩も動けないまま、彼女の伸ばした手が俺の頬に触れようとしたその時、

 

 シャキンッ!

 

 二本の銀光がヴァーリの首元に当てられた。祐美の聖魔剣とゼノヴィアのデュランダルだ。

 

「そこまでよ、白龍皇」

 

「こんな所で二天龍の決戦を始めさせる訳にはいかないのでな」

 

 二人共怖い位に真剣な目をしている。まるで少しでも動いたら斬るといわんばかりだ。だが、そんな状況にもヴァーリは全く動じていない。

 

「聖魔剣と聖剣デュランダルか・・・・中々の力だが止めておいた方がいい。それは君達自身が一番分かってるんじゃないかな?」

 

「「くっ!・・・・」」

 

 ヴァーリの言葉に祐美とゼノヴィアが悔しそうに歯噛みする。どういう意味だ?

 

「恥じる事はない。相手との実力差が理解出来るのは強い証拠だよ。私と君達の力の差は歴然、君達では私に勝てないわ」

 

「「・・・・・・」」

 

 嘘だろ!? 二人とヴァーリの間にそれ程の差があるっていうのかよ!?

 だがヴァーリの言う通り、良く見ると二人の手元は細かく震え、額には脂汗が浮いている。普段の訓練で二人がどれ程強いかは分かっているつもりだが、そんな二人が顔を強ばらせている。それ程にヴァーリは強いっていうのか!?

 

「・・・・・・でも君とはいい勝負が出来るかもしれない。ひとつ試してみる?───【ガイバー】不破一輝」

 

 言われて気付いたが、ヴァーリの背後にいつの間にか一輝先輩が現れていた。先輩の登場に祐美とゼノヴィアも喜色を浮かべる。

 流石のヴァーリも一輝先輩は無視出来ないらしく、相変わらず不敵な笑みを浮かべながらも警戒している。

 

「その気はないな。お前と戦うのはイッセーの役目だ。だが今は待て。今のイッセーはお前の足元にも及ばないが、じきに俺より強くなる。その時こそ思う存分戦えばいい。弱い相手を一方的に倒したって、お前は面白くないんじゃないか?」

 

 ───ちょっ、先輩!? 何言ってんすか!? 俺が先輩より強くなる!? 無理無理無理! あんまり俺を買い被らないでくれよ!! 俺の目標は美少女ハーレムであって、こんなのと宿命の対決なんて将来の予定にはないっつーの!!

 

「ふふ、確かに君の言う通り、弱い相手と戦ったって面白くも何ともないわね。まあ、元々兵藤一誠と事を構えるつもりはなかったのよ───少なくとも今はね」

 

「ならば何をしに来たんだ?」

 

「何、私はアザゼルの付き添いでここに来たのだけど退屈でね。先日訪れた学校というものを見てみたくなっただけなのよ。ここで君達と会ったのは全くの偶然・・・・・・いや、もしかしたら私達はやはり惹き合ってるのかもしれないね、一誠クン?」

 

 ちくしょう。正体が分かっていながら、これ程の美少女から艶然とした笑みを向けられると、つい鼻の下が伸びてしまう。そんな場合じゃないのは分かってるんだ。だから無言で尻をつねるのはやめてくれ、アーシア。

 後ろを見るといつの間にか部長以下、眷属が全員集合していた。全員が既に臨戦態勢だ。

 

「ふ~ん。バラキエルの娘に黒歌の妹、か。生憎この場で私の脅威となるのは一人だけね。もっと強くなりなさい、兵藤一誠。───私を楽しませる為に」

 

 ヴァーリがそう言うと朱乃さんと小猫ちゃんの顔が強ばった。何の事だ? だが当のヴァーリは首元の聖魔剣とデュランダルを軽く押しやると、一輝先輩の横を通り過ぎて、この場から去って行った。

 ヴァーリの姿が見えなくなって、ようやく皆は緊張を解いた。俺の汗ばんだ手をアーシアが心配そうに握ってくれる。俺は彼女に「心配ない」と伝えるようにその柔らかな手を握り返した。

 

 

 白龍皇・ヴァーリ。

 

 

 宿命のライバルとなる彼女との邂逅に、俺の「強くならなきゃいけない」という思いは益々強くなっていった。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

今回はゼノヴィアの性教育の回となりました。彼女の本番行為はしばらくお待ち下さい。

女ヴァーリ登場。キャラクターイメージは「IS」のラウラ。彼女の身長を高くして、眼帯を外した感じです。因みにイメージCVは沢城みゆきさんです。

次回は授業参観から会談開始までの予定です。




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第12話 二人目の魔王



大変遅くなりました。
第12話を投稿します。

今回はあの魔王少女が登場します。
果たしてどうなるのか、ご覧下さい。




 

 

 明けて翌週末の金曜日。ここ駒王学園では授業参観が行われる。

 高校生にもなって授業参観?と疑問に思うだろうが、この行事は正確には「公開授業」といい、高等部の父兄が見に来るのは勿論、中等部の生徒や近隣の中学生も授業や校内の見学が出来るようになっている。

 父兄の方々には授業参観として。中等部の生徒や近隣の中学生にとっては進路を決める為の参考になるようにと数年前から行われている行事だ。

 見学者が来るという事で皆何処か浮き足立っており、何だか落ち着かない空気が学園中に蔓延していた。

 

 一輝()のクラスである3年A組の教室も同様の雰囲気であったのだが、とある一団が教室に入って来ると皆の視線はその人達に釘付けとなった。

 ダンディーな紳士と年若い美青年。二人の共通点である紅髪から誰の親御さんかは容易に想像出来る。更には銀髪の美人メイドまでいるのだから注目されるのは当然だろう。ていうか、本当に来たんだな、あの魔王(ヒト)

 チラリとリアスの方を見たが、彼女は頑なに教室の後ろを見ようともせず、ただ前だけを見つめていた。

 

 

 

 

 授業が終わるとリアスはダッシュで教室を出て行った。よっぽどあの人達に捕まりたくなかったんだろう。騎士の祐美すら凌ぐ素晴らしいスピードだった。

 とは言え、あの人達を放っておくのもマズイ気がする。俺は朱乃と視線を交わすと、魔王様達への対応を彼女に任せ、リアスの後を追った。

 

 

 

 

「リアス」

 

 屋上でリアスを見つけた。声をかけたが、彼女はしゃがみ込んで顔を膝に埋めたまま応えてくれなかった。俺はため息をひとつ吐いてリアスの反応を待った。

 

「あああ~~~!もういや~~~っ!!」

 

 やがて、リアスが立ち上がり叫んだ。

 

「いっつもああなのよ! 授業参観とかはみんな揃って見に来て、ビデオや写真を撮ったり、所構わず声をかけたりして、周りや私の迷惑なんかちっとも考えてくれないんだから!!」

 

 ああ、確かに酷かった。あれじゃあリアスがこうなるのも無理はない。魔王様はリアスが当てられると「頑張れリーアたん!」などと声をかけたり、正解すると周りの父兄に「うちの妹なんですよ。凄いでしょう!」なんて自慢気に語っていた。

 本来なら先生が注意すべきなんだが、魔王様方の高貴なオーラに圧倒されて、何も言えなかったみたいだ。

 

「大体何でお父様もお兄様も忙しい筈なのに来ちゃうのよ!? グレイフィアもグレイフィアよ! 何で止めてくれないのよ! いっつもいっつも私に恥ずかしい思いをさせて、何なのよ、もうーーーーっ!!」

 

 ひとしきり叫ぶと、リアスはゼイゼイと肩で息をしていた。しばらく待ってある程度吐き出せたと思って声をかける。

 

「少しは気が晴れたか?」

 

「・・・・そうね。少しだけスッキリしたわ」

 

 リアスはようやくこっちを向いてくれた。

 

「まあ、色々と抱えてる人達だからな。多少破目を外す位は許してやれよ」

 

「・・・・後で恥ずかしい思いをするのは私なんだけど?」

 

「今回で最後なんだ。そう思えば我慢も出来るだろ?

・・・・それに、そうやって見に来る家族がいるだけいいじゃないか」

 

「! あっ・・・・・・」

 

 うちの眷属の中で家族が健在なのはリアスとイッセーだけだ。祐美とゼノヴィア、アーシアは教会の施設育ちだし、朱乃と小猫ちゃんは家族と生き別れになっているらしい。そんな俺達からしたら、家族が来てくれるだけマシだろう。

 

「ご、ごめんなさい、私・・・・・・」

 

「ああ、いや、そういうつもりで言ったんじゃないんだ。ただ、こういうのも後からいい思い出になるんじゃないかと思ってな」

 

 後悔するように顔を青ざめたリアスに、俺は慌てて弁明する。それを訊いてリアスは俺の肩にそっと頭を乗せた。

 

「・・・・でもあれは酷すぎると思うんだけど?」

 

「それは同意する。まあ、人間諦めが肝心って事だ」

 

「(クスッ) 私達悪魔よ?」

 

 そう言ってリアスはようやく笑顔を見せてくれた。

 

「メンタリティは悪魔も人間もあまり変わらないんじゃないか?」

 

「それもそうね・・・・ねえ一輝。後で傷心の私を慰めてくれる?」

 

「君が望むならいくらでも」

 

 俺はリアスの紅髪をそっと撫でる。リアスは嬉しそうに微笑んだ。

 

「よし!・・・・さあ、戻りましょう!」

 

 元気を取り戻したリアスはそのまま歩き出した。その足取りは軽い。その様子に苦笑しつつ、俺はリアスの後に続いた。

 

 

 

 

 

「あらイッセー? 皆もどうしたの?」

 

「あ、部長! それに一輝先輩も」

 

 屋上から校舎に戻ると三階でイッセー、アーシア、祐美、ゼノヴィアの四人が階段を降りようとしていた。

 

「いや、何でも魔法少女が撮影会をしてるって聞いたんで、ちょっと見に行こうかと思って」

 

 俺とリアスは思わず顔を見合わせて首を傾げた。魔法少女?

 

 

 

 

 

 

 パシャパシャとカメラのシャッターを切る音が二階の廊下に響く。大勢の男子生徒が集まって撮影しているが、何を撮ってるのかは人垣が邪魔でさっぱり分からない。

 

「オラオラ、こんな所で撮影会なんて許可してねーぞ! 解散しろ解散!!」

 

 俺達のいる方の反対側から高圧的な男の声がする。聞き覚えのあるこの声は生徒会の匙だ。その声に集まっていた生徒達は渋々といった感じで去って行った。

 人混みがバラけてようやく撮影対象が見えたが成る程、確かに魔法少女だ。そこにはアニメに出て来るようなスカートの短い可愛らしい衣装を着た美少女が、ステッキを片手に笑顔を振り撒いていた。

 青みがかった黒髪をツインテールにしたかなりの美少女が、明るい笑顔で色々なポーズを取っている。しぶとく撮影を続けるカメコの注文に応え、際どいポーズを取っているのでパンチラが・・・・

 案の定イッセーが鼻の下を伸ばしてアーシアに尻をつねられていた。

 

「オラ!解散つったろうが!公開授業の日に騒ぎなんか起こすんじゃねーよ!!」

 

 未だ未練がましく残っている生徒も匙にドつかれて、ようやく去って行った。残ったのは俺達と匙、そして謎の魔法少女だけだった。

 

「あんたもそんな格好で校内をうろつかないで下さいよ。もしかして父兄の人? だとしてもその格好は困りますよ」

 

「えー、だってこれが私の正装だもん☆」

 

 匙が注意するも、魔法少女は可愛くポージングして聞く耳を持たない。匙はギリッと歯噛みしたが、リアスがいる事に気付くと頭を下げる。

 

「っと、これはリアス先輩。ちょうど今、先輩のご父兄方を会長と一緒に案内してた所なんですよ」

 

 そう言って頭を上げた匙が訝しげな顔をしていた。それもその筈、リアスは魔法少女を見て驚きのあまり固まっていたのだ。

 ああ、そういえばこの魔法少女(ヒト)って───

 

「どうしました匙。問題は簡潔に解決しなさいといつも言って───!!」

 

 その時、廊下の向こうから紅髪の男性二人と銀髪のメイドを案内しつつ、朱乃と黒髪ロングの眼鏡美少女を引き連れ現れたソーナ会長が、魔法少女を見て言葉を失った。

 

「ソーナちゃん、見つけた☆」

 

 魔法少女は会長を見ると、嬉しそうに抱きついた。その状況に目を白黒している面々を尻目にサーゼクス様が魔法少女に声をかけた。

 

「やあセラフォルー。君も来ていたのか」

 

「あ、サーゼクスちゃん。ヤッホー☆」

 

 親しげに挨拶を交わす二人を見てイッセーがポツリと呟く。

 

「・・・・セラフォルー? 何処かで聞いたような・・・・?」

 

「レヴィアタン様よ」

 

「・・・・・・?」

 

「あの方はセラフォルー・レヴィアタン様。現四大魔王の一人にして、ソーナの実の姉よ」

 

「「「ええええええーーーーーっっ!?」」」

 

 イッセー、アーシア、匙の三人が驚愕の声を上げた。祐美やゼノヴィアも目を丸くして驚く中、俺は前世の記憶を思い出してため息を吐いた。

 セラフォルー・レヴィアタン様は四大魔王の紅一点。かつてはグレイフィアさんとその座を競ったという最強の女性悪魔だ。確かこのナリとノリで冥界の外交を一手に取り仕切っている筈。大丈夫か冥界?

 

 レヴィアタン様は極めて軽いノリでリアスやサーゼクス様と挨拶を交わしているが、それを見る皆は唖然としている。

 レヴィアタン様は会長が授業参観がある事を知らせなかった事にショックを受けたと言ってたが、こんな身内がいると俺達に知られた会長の方が余程ショックだろう。現に会長の顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。

 妹が顔を真っ赤にしている理由に気付かぬままレヴィアタン様は楽しそうに会長に話しかけている。だが、二人の気持ちは平行線のまま全く噛み合っていない。会長はもう泣き出す寸前だ。

 

「もう私、耐えられません!」

 

 とうとう羞恥心が限界に達したのか、会長がこの場から逃げ出した。

 

「待って、ソーナちゃん! お姉ちゃんを置いて何処へ行くの!?」

 

 咄嗟にレヴィアタン様が会長を追って走り出す。

 

「付いて来ないで下さい!」

 

「いやあぁぁん! 待ってえ、ソーナちゃあああん!!」

 

 走り去るシトリー姉妹を俺達は半ば呆然として見送った。

 

「うむ。シトリー姉妹は仲が良くて結構だな」

 

 グレモリー卿(リアスのお父さん)が頓珍漢な事を言うと、サーゼクス様もリアスと仲が良い事をアピールしようと「リーアたん」と呼んで、リアスに嫌がられていた。その時、

 

「来ないでって言ってるじゃないですか!!」

 

「いやぁぁん! お姉ちゃんを見捨てないで、ソーナたあぁぁん!!」

 

「『たん』付けで呼ぶなああああっ!!」

 

 校舎を一周して来たのか、シトリー姉妹が追いかけっこをしながら戻って来た。

 ソーナ会長は日頃のクールさの欠片もなく、涙を浮かべながら顔を真っ赤にして逃げている。レヴィアタン様は遊んでるつもりなのか、何処か楽しそうに会長を追いかけていた。

 二人の、特に会長の顔を見て、その顔がさっきまでのリアスと重なると、俺の中に沸々と怒りが沸き上がって来た。

 ソーナ会長が駆け抜け、レヴィアタン様が俺の前を通過しようとした時、

 

「───いい加減に、しろ!!」

 

 パアアァァンッ!!

 

 俺はレヴィアタン様のお尻を引っ叩いた。

 

「ひゃんっ!?」

 

 可愛いらしい悲鳴を上げて、レヴィアタン様は飛び上がった。

 

「ふえっ!? 何、何!?」

 

 驚いて周りをキョロキョロ見渡すレヴィアタン様が俺に視線を向けた。

 

「───君がやったの?」

 

 俺は彼女の真正面に一瞬で移動すると、

 

「いい加減にして下さい、レヴィアタン様!!」

 

 鼻がくっつく位の至近距離で怒鳴った。レヴィアタン様は驚きのあまり目を真ん丸にしている。

 

「貴女はここに会長の姉として授業参観に来たんじゃないんですか!? ならそれに相応しい格好というものがあるでしょう!?」

 

「で、でもこれが私の正装だし・・・・」

 

「ほう・・・・それが妹が生徒会長を務める学園に、父兄として来訪するのに相応しい格好だと本気で言ってるんですか?」

 

「うっ!? そ、それは・・・・」

 

 レヴィアタン様は俺の冷たい視線に耐えきれず目を反らした。

 

「外交を担当する貴女ならTPOを弁えた服装位出来る筈です。・・・・大方久し振りに会う妹に構って欲しくて、わざとそんな格好で来たんでしょう?」

 

 俺がそう言うと、肩がビクッと反応した。やっぱりな。俺は大きくため息を吐く。

 

「いい加減にしないと、本っっ当に会長から見捨てられますよ?」

 

「ふええっ!? そんなのヤダ!!」

 

 涙目で訴えるレヴィアタン様。

 

「だったら! どうすればいいか分かりますよね?」

 

「・・・・・・着替えて来ます」

 

 そう言ってトボトボと歩き出したレヴィアタン様。俺は周りを見回して相応しそうな人物に声をかける。

 

「朱乃、レヴィアタン様の服装を見繕ってくれないか?」

 

「え? あ、はい!」

 

 朱乃がレヴィアタン様に付き添おうとしたが、

 

「朱乃、私が行くわ」

 

 黒髪ロングの眼鏡美少女が自ら志願してくれた。彼女は新羅椿姫(しんらつばき)。生徒会副会長にして、ソーナ会長の女王(クイーン)だ。

 

「なら頼むよ新羅さん」

 

「ええ。・・・・ありがとう、不破君」

 

 新羅さんはレヴィアタン様を連れてここから去って行った。後は彼女に任せよう。

 ふと気付くと皆の視線が俺に集中していた。

 

「な、何だ?」

 

「一輝・・・・貴方仮にも魔王様のお尻叩くなんて・・・・」

 

「あ~~、やっぱり不味かった?」

 

「当たり前──「不味いどころか大助かりです!!」!!?」

 

 

 流石に不味かったのか、リアスからお小言を食らおうとした所でソーナ会長が横から割り込んで来た。

 

「不破君! ありがとう、本当にありがとう!!」

 

 ソーナ会長は本当に感謝しているのか、涙を浮かべながら俺の両手をギュッと握り締める。彼女の細い手は少し冷んやりとして、滑らかな感触がした。

 

「ああ、いや、俺もお姉さんのお尻を叩いちゃって・・・・」

 

「その位全然OKです! いえ、寧ろじゃんじゃんやっちゃって下さい!!」

 

 大丈夫か会長? キャラが壊れかけてないか?

 

「あの人は私が何を言ってもちっとも聞いてくれないし、魔王の地位があるから誰も注意してくれなくて、だから私本当に困ってて・・・・本当に、本当にありがとう不破君!!」

 

 そう言って感極まったのか、会長は俺に抱き着いて来た。

 

「───ちょっ!?」

 

 いきなりの事にどうすればいいか分からず、助けを求めようと周りを見ると、驚く者、怒る者、面白がる者と様々だった。

 会長は抱きしめたら折れてしまいそうな位華奢で、リアス達とは違う爽やかなミントのような香りがした。

 

「ちょっとソーナ!いつまで一輝に抱き着いてるのよ!!」

 

 そしてリアスの雷が落ちた。それで俺に抱き着いてる事をようやく意識したらしい会長が慌てて離れた行った。

 

「ひゃああっ!? ご、ごめんなさい不破君!」

 

 会長の顔はこれ以上ない程に真っ赤に染まり、恥ずかしそうな様子が普段のクールさとのギャップでとても可愛かった。

 

「ご、ごめんね。私なんかが抱きついても気持ち良くなかったでしょう?・・・・私はリアスと違って色々小さいから、あはは」

 

 自分を卑下するような事を言って、諦観の笑いを洩らす会長。彼女が自分の魅力に気付いてないのが勿体なく思えて、俺は会長の耳元でそっと囁いた。

 

「確かにボリュームは少なかったけど、会長の肌はスベスベしてて、いい匂いがして気持ち良かったですよ?」

 

「!!!?」

 

 そう囁いた途端、会長は耳まで真っ赤になると、俺から飛び退いて、ワナワナと震えた。

 

「にゃ、にゃにを!?・・・スベスベ、いい匂いって・・・・・・きゅう」

 

 意味不明の言葉を羅列すると、会長は目を回して倒れてしまった。床に倒れる寸前で受け止めたが、完全に意識を失っていた。

 

「か、会長!?」

 

 気を失ったソーナ会長を匙が俺から引ったくると、俺を一睨みして一目散に駆け出した。

 

「会長しっかりして下さい!今俺が(・・)保健室に連れて行きますから!!」

 

 会長を抱えて走り去る匙を見送りつつ、俺は祐美に声をかけた。

 

「祐美、保健室まで行ってくれないか? 万一先生がいなかった場合、あいつに介抱させる訳にはいかないしな」

 

「分かりました。ちょっと行って来ます」

 

 祐美は二つ返事で引き受けて、匙の後を追った。

 

「一輝・・・・ソーナは男に免疫がないんだから」

 

「不味かったか?」

 

 リアスは黙って頷いた。それは悪い事をした。悪魔に転生してから女の子、それも美少女と親しく接する機会が多くなって、つい距離感を誤ってしまった。そんな時、

 

「あれ? ソーナちゃんは?」

 

 その声に振り返ると、着替えを終えたレヴィアタン様がいた。

 

「おお・・・・・・!」

 

 思わず感嘆の声が洩れた。

 何処で調達したのか膝丈スカートの紺色の女性用スーツを身に纏い、ツインテールだった髪を解いてストレートのロングヘアになったレヴィアタン様はメリハリの利いたスタイルといい、うっすら化粧をしている事といい、先程と違い随分と大人っぽく見える。

 これなら先程の魔法少女と同一人物とは誰も思わないだろう。それ程までに今のレヴィアタン様は美しかった。

 

「どう・・・・かな?」

 

「素晴らしい、とてもお綺麗ですよレヴィアタン様。これなら会長のお姉さんと言われて、誰もが納得しますよ」

 

「そう?・・・・えへへ、良かった」

 

 俺の素直な賞賛にはにかむレヴィアタン様はあまりにも可愛らしくて、思わずドキリとしてしまった。それを誤魔化すように新羅さんに親指を立てる。

 

「新羅さん、グッジョブだ」

 

 新羅さんも親指を立てて返礼する。

 

「ねえ君・・・・名前を教えてくれる?」

 

 レヴィアタン様に上目使いで訊ねられ、俺はその場に跪いて自己紹介と先程の無礼の謝罪をする。

 

「申し遅れました。リアス・グレモリーが眷属、『兵士(ポーン)』の不破一輝と申します。先程は魔王レヴィアタン様に対して大変失礼致しました」

 

「不破一輝?・・・・そうか、君が噂の【ガイバー】君なんだ」

 

「・・・・自分の事をご存知とは光栄です。レヴィアタン様、先程の無礼は自分が勝手にした事、私自身は如何様にも罰を受けます。ですから我が主と眷属はご容赦願えませんか?」

 

 俺のした事は妹であるソーナ会長が許したとしても、本来無礼討ちされても文句の言えない行為だ。だからこそ罰を受けるなら俺だけにして、リアス達に類が及ばないように願い出た。

 

「いいのよ、顔を上げて一輝君。今はプライベートだし私も調子に乗ってたから。だから君は勿論、君の主や眷属を咎める事はしません。・・・・それにね、あんな風に諫めてくれたのは君が初めてでね、だからちょっとだけ嬉しかったの♪」

 

 うっすらと頬を赤らめ、はにかむレヴィアタン様は殺人的に可愛かった。ともあれお咎めなしと言われてホッとした。

 

「ありがとうございます、レヴィアタン様」

 

 俺が改めて礼を言うと、レヴィアタン様は何だか不満そうに頬を膨らませた。

 

「むう、その呼ばれ方は好きじゃないなあ・・・・ねえ、かずくんはサーゼクスちゃんの事を何て呼んでるの?」

 

 いきなり愛称で呼ばれてしまった。そんな呼ばれ方をしたのは小さい頃、両親や友達に呼ばれて以来だ。だが屈託のない笑顔で訊いてくるレヴィアタン様を見ると文句も言えなくなる。

 

「えっと、普通に魔王様か、サーゼクス様と呼んでますが?」

 

 俺が正直に答えると、

 

「いかんよ一輝君! 私の事は義兄さん、または兄貴と呼んでくれたまえ!」

 

「嫌です」 

 

 思わず即答してしまった。危うく殺されかけたし、今日のバカ兄振りを見てしまうと、正直親しく付き合いたいとは思わない。

 

「じゃ、じゃあ、私の事は『セラお姉ちゃん』って呼んで?」

 

「いや、それは流石に・・・・」 

 

 何がじゃあなのか分からんが、ハードルが高すぎて承諾出来ん。流石に断ろうとしたのだが、

 

「・・・・駄目?」

 

「・・・・・・『セラ姉さん』なら」

 

「うん!決定ね!!」

 

 は、しまった。セラフォルー様の上目使いからの「駄目?」攻撃に思わず承諾してしまった。恐るべし魔王レヴィアタン!

 

「一輝・・・・・・貴方ねえ・・・・」

 

 リアスや皆の視線が冷たい気がするが、だって仕方がないじゃないか! こういう時、昔の偉人の言葉を思い出す。曰く、「可愛いは正義」と。俺が半ば開き直っていると、

 

 キンコンカンコーン!

 

 次の授業の開始を告げるチャイムが鳴った。

 

「いけね! 次の授業が始まっちまう!?」

 

 イッセーが魔王様方に一礼して、慌てて駆け出すと、他の二年生達もイッセーに倣い一礼し、自分達のフロアである三階へ駆け上がって行った。

 俺もこれ幸いと教室に向けて駆け出した。

 

「あ、一輝待ちなさい!?」

 

 リアスの静止する声も無視して俺は走る。

 

「かずく~~ん、頑張ってね~~☆」

 

 魔王レヴィアタン様───いや、セラ姉さんの声援を受け、俺は教室へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、皆行ってしまったな・・・・」

 

 次の授業の開始を告げるチャイムが鳴って、生徒達は皆教室へ戻ってしまった。今ここにいるのはサーゼクス()と父上、グレイフィアとセラフォルーだけだった。

 

「さてセラフォルー。さっきのはどういうつもりだい?」

 

「うん? 何が?」

 

 私が訊ねると、彼女は可愛らしく小首を傾げる。生憎一輝君じゃないんだから、付き合いの長い私には通用しないよ。

 

「勿論先程の『お姉ちゃん』発言だよ」

 

 一輝君は我が妹リアスの眷属で非公式ながらも婚約者だ。そんな彼に自分を姉呼ばわりさせようなんて、まるで一輝君がリアスよりソーナ君を選んだかのように端からは見えるじゃないか。

 

「ん~~、別に深い意味はないよ? ただ、ソーナちゃんみたいな可愛い妹もいいけど、かずくんみたいなちょっと生意気だけど優しい弟もいいなって、ね☆」

 

 セラフォルーはウィンクしながらこちらを向いた。

 

「それにおじ様が認めてないんだからリアスちゃんとの婚約はあくまで仮なんでしょ? だったらその隙にソーナちゃんがかずくんと仲良くなっても問題ないんじゃないかな?・・・・幸い本人にも脈がありそうだし──ね、ソーナちゃん!」

 

 そこには保健室から戻ったのか、ソーナ君と匙君、そして祐美君の姿があった。

 

「わ、私が不破君と・・・・?」

 

 自分で言って想像したのか、ソーナ君はたちまち顔を真っ赤に染める。

 匙君は主の姉であるセラフォルーの言葉に愕然とし、祐美君は不満そうに頬を膨らませていた。

 

「まあ、男女の仲なんていつ、どう転ぶか分からないもんだしね。・・・・まあ、場合によっては私が相手でもいいんだけど、ね❤」

 

 その何処まで本気か分からないセラフォルーの仕種に私は思わず額に手を当てた。ああ、何だかややこしい事になりそうだ。

 父上は朗らかに笑いながらうっすらと汗をかいている。大体父上がさっさとリアスと一輝君の婚約を認めないからセラフォルーに付け込まれるんです。母上に怒られても私は知りませんよ!?

 こうなればリアスが一輝君をきちんと繋ぎ止めてくれる事を祈るばかりだ。頼むぞリーアたん!

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

ご覧の通りシトリー姉妹にフラグが立ちました。これからどうなるのかご期待下さい。

次回はいよいよあのヒロインとの初エッチの予定、でしたが、誠に申し訳ありませんが、本作は暫く休載させて頂きます。
理由は自分が現在入院中であり、右腕が動かせず思うように執筆出来ない為です。
これからリハビリして、身体を治して帰って来ますので、気長にお待ち下さい。



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第13話 朱乃の告白☆☆(朱乃)



お久し振り、退院したら世界がすっかり変わっていたTokazです。
身体も良くなって来たので投稿再開します。
ご覧下さい。


 

 

 あの色々問題のあった授業参観から一週間が過ぎた。

 

 授業参観が終わった後、サーゼクス様達はイッセーのご両親と出会い意気投合、そのまま兵藤家に招待された。 

 このままでは何を話されるか分かったもんじゃないと、リアスはそのまま一行と共に兵藤家に同行したのだが、夜遅くに帰って来た時には真っ白に燃え尽きていた。

 何があったのか聞くと、「今までの人生で最大の辱しめを受けたわ・・・・」とまるで精気のない声で呟いていた。何をやったんだあの魔王(ヒト)

 ともかく燃え尽きたリアスを復活させるのに、えらく手間がかかった(散々宥めすかし、たっぷりと慰め甘やかして、最後にはイカせまくった)。

 因みにセラフォルー様、いや、セラ姉さんと会長は二人仲良く(?)帰って行った。別れ際、「また来るね、かずくん♪」と言って笑っていたセラ姉さんと、終始顔を真っ赤にして一輝()をチラチラと見ていた会長の態度が妙に印象に残った。

 

 そしていよいよ明日の夜、『三大勢力会議』が駒王学園にて開催される。

 会議場は既に生徒会、つまりシトリー眷属の手により設置され、当日の警備も彼女らが担当する。俺達グレモリー眷属は会議に出席する為、警備を手伝えないからと会場の設置を手伝ったのだが、監督していた会長に俺が話しかける度に「ひゃあ!」とか「ひ、ひゃい!?」という奇声を発していたので、具合が悪いのかと彼女の額に手を当てたら、顔を真っ赤にして倒れてしまった。やはり具合が悪いのに無理してたらしい。責任感が強いのも困った物だ。

 

 そんなこんなでやる事を終えた今日、俺は朱乃に呼び出され、彼女の家へ向かっていた。

 朱乃が住んでるのは駒王町の外れにある古びた神社だった。何故悪魔の朱乃が神社に住んでいられるのか不思議だったが、この神社は既に祀る神のいない廃神社であり、彼女の生家でもあるそうだ。その為特殊な結界を張り、彼女が生活出来るように施しているらしい。

 そういった理由はさておき、神社へと続く長い石段を登っていると、妙に懐かしく感じる。石段を登りきり周りを見渡すと、町を一望出来る景色や所々傷んだ社殿に俺は既視感を覚ていた。

 

(───俺はここに来た事がある、のか・・・・?)

 

 思い出せそうで思い出せないもどかしさを感じていると、

 

「いらっしゃい、一輝君」

 

 その声に振り返ると、そこには白衣と緋袴の巫女装束にその身を包んだ朱乃がいた。その姿に暫し見惚れていると、不意に同じ巫女装束を着た小さな女の子の姿が重なった。

 

(!? あの娘は・・・・・)

 

 その女の子の姿に、幼い頃の記憶が甦った気がした。

 

「───君? ───き!? 一輝!!」

 

 気が付くと朱乃が心配そうな顔で覗き込んでいた。

 

「朱乃・・・・・」

 

 俺が返事をすると、朱乃は安心したようにホッとため息を吐いた。

 

「もう・・・・急にどうしたんです? いきなり固まってしまったからびっくりしましたわ」

 

「え? ああ、すまん。朱乃の巫女姿につい見惚れてた」

 

「あらあら、まあまあ。ふふ、そう言って貰えて嬉しいですわ。・・・・もし良かったらこの衣装でご奉仕しましょうか?」

 

 朱乃は艶然とした微笑みを浮かべながら、眷属一の大きさを誇る胸を押し付け、腕を組んで来た。腕が沈んでいく柔らかな感触の中にあって、歩く度に固い何かが擦れる感触を感じる。どうやら朱乃はノーブラらしい。

 思わずそのまま押し倒したい衝動に駆られたが、何とか我慢する。

 

「そういうのは後でな。何か大切な用事があるんだろ?」

 

 俺がそう言うと、朱乃はちょっと残念そうにしながらも態度を改めた。

 

「そうですわね。実は今日来て貰ったのは貴方に会いたいという方がいらっしゃるからなんです」

 

 俺に会いたい? 朱乃の口調からかなり偉い人のようだが、もしかして三人目の魔王様か? でも今回の会談はルシファー、レヴィアタンの両魔王が担当すると聞いてたんだが・・・・

 

「!──来ます。気を強く持って!」

 

 いきなり緊張感を増した朱乃に驚いたが、次の瞬間、その理由が分かり、俺は戦闘態勢を取っていた。

 

 そこに降臨したのは圧倒的な光の気配。膨大で濃密な光が俺達の目の前に降り立ち、俺達はあまりの眩しさに目も開けられなかった。

 朱乃が警告するのも当然だ。こんな光をまともに浴びたら悪魔の俺達は消滅しかねない。

 

「朱乃!何だこれは!?」

 

「光を弱めて下さいミカエル様!私達を消滅させるおつもりですか!?」

 

 俺の問いに答える余裕もなく、朱乃が絶叫すると、

 

《おや、これは失礼しました》

 

 目の前の光が発したらしい声が辺りに響くと、光は急激に圧力を弱めて行く。光が収まりようやく目を開けると、そこには頭上に金色の輪っかを浮かべた金髪碧眼の美男子が十二枚の黄金の翼を広げていた。

 

「すいませんでした。何分地上に降臨するのは久し振りで、加減するのを忘れていました」

 

「そうですか・・・・ですが会談の時はくれぐれもご注意願います。さっきみたいに降臨されては一発で消滅する者も出かねませんから」

 

「ええ、気を付けます。・・・・所で彼が例の?」

 

 美男子は俺に視線を向けて訊ねた。

 

「はい。彼が【ガイバー】不破一輝です」

 

「そうですか、貴方が・・・・・初めまして。私は天界で天使長を務めるミカエルといいます。どうぞよろしく」

 

 ───天使長ミカエル。

 

 神亡き世界で、天界のトップたる人物が俺の前でにこやかに笑っていた。

 

 

 

 

 詳しい事情は分からないが、どうやら俺はこのミカエル様に呼び出されたらしい。朱乃に案内された本殿で俺は彼と対談する事になった。

 

「それで、天界のトップである貴方が俺に何の御用でしょうか?」

 

 朱乃の煎れてくれた緑茶で喉を潤してから、俺は訊ねる。

 

「そうですね。・・・・あまり時間もないので用件をすませますか。不破一輝君、貴方に受け取って欲しい物があります」 

 

 ミカエル様がそう言うと、朱乃が襖を開けて台座に置かれた一振りの剣を運んで来た。

 その剣のオーラには覚えがある。この輝きと聖なる波動は間違いない、聖剣だ。

 

「【聖剣アスカロン】。かつて聖ゲオルギウスが用いたという龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の聖剣です」

 

「龍殺し・・・・・? どう言う事です? 聖剣は聖剣因子がなければ使えない筈。そんな使えない物を、しかも悪魔の俺に渡すなんて・・・・貴方は俺に何をさせたいんです?」

 

 聖剣アスカロンを俺に預けようとする真意が分からず、俺はミカエル様に訊ねる。

 

「この剣は使い手のいないまま永らく天界で保管されていましたが、この度三大勢力の和平の証として、天界(我々)から悪魔陣営(あなた方)へ贈る事になったのです」

 

「三大勢力会議は明日なのでは? もう和平は成ったのですか?」

 

「トップ同士の意思の確認は出来ています。どの陣営もこの期に及んで戦争をしたいとは思ってませんよ」

 

「それは朗報ですが、だとしたら余計に疑問に感じます。改めてお聞きしますが、この聖剣を俺に預けてどうしたいんです?」

 

 俺が改めて訊ねると、ミカエル様は苦笑しつつも答えてくれた。

 

「このアスカロンを貴方に預けるのは、簡単に言えばもしもの時の保険としてです」 

 

「保険・・・・?」

 

「一輝君。三大勢力の和平が成った後、次に脅威となるのは何だと思いますか?」

 

 そう言われて少し考えてみる。

 三大勢力の和平が成立すれば、天使、悪魔、堕天使が表立って争う事はなくなる。ではその他の神話勢力か? それとも『禍の団(カオスブリゲート)』? いや、この時点で他の神話勢力とは協力関係を築こうとしてたし、『禍の団』の動きは知られていなかった筈だ。だとしたら・・・・いや待てよ、この聖剣は『龍殺し』の聖剣。龍・・・(ドラゴン)だと・・・・!? 俺は最悪の答えにたどり着き、ハッと顔を上げた。

 

「ミカエル様・・・・貴方は、貴方達はまさか・・・・・」

 

 ミカエル様は苦笑を深め、俺の考えを肯定した。

 

「そう。この聖剣は二天龍、赤龍帝と白龍皇が暴走した時の為に貴方に預けるのです」

 

「!!?」

 

 その答えに俺は困惑を深め、目の前の天使長に疑問をぶつける。

 

「暴走!? どういう事です?」

 

「一輝君、貴方は二天龍についてどの位知っていますか?」

 

「あまり詳しくは・・・・昔、三大勢力相手に大暴れして、その結果神によって討伐されて、その後【神器(セイクリッドギア)】に封じられたって位しか・・・・」

 

「大方そんな所でしょうね。ですがその暴れっぷりは凄まじかった・・・・・」

 

 ミカエル様の沁々(しみじみ)と語る姿にもしやと思い訊いてみる。

 

「もしやミカエル様も参戦していたのですか?」

 

「はい。私だけではなくサーゼクスやセラフォルー、アザゼルやコカビエルも参戦していました。何故なら二天龍が大暴れした戦場は、我々三大勢力の決戦の場だったのですから」

 

 その後、ミカエル様は戦いの様子を語ってくれた。

 決戦の場に突如顕れた二天龍は、最初は三大勢力を無視してお互いに争っていた。いつまでも争っている二天龍を邪魔に思い、追い払おうと牽制攻撃した所、「俺達の邪魔をするな!」と逆上した二天龍が三大勢力全てに襲いかかった。

 最初はたかが龍如きすぐに討伐出来るとどの勢力も思っていたが、二天龍は予想を遥かに越えて強かった。どの勢力も甚大な被害を被り、最早三大勢力で争ってる場合ではなくなると、一時休戦して先に二天龍を討伐する事になった。

 激しい戦いの末、二天龍は倒され、その魂は神の手により【神器(セイクリッドギア)】に封じられたという。

 余談ではあるが、この後二天龍との戦いで疲弊したまま神と四大魔王は戦い、結果、共倒れになったそうだ。

 

「その後二天龍は神の手により神器【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】と【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】に封じられて尚、互いに引き合うかのように同じ時代に現れては新たな宿主に宿り、戦い続けました。その戦いはいつの時代も凄まじいもので、歴代の赤龍帝や白龍皇はその力を暴走させ、若くしてその身を滅ぼして来たのです。分かりますか一輝君、私達は二天龍の恐ろしさを身を持って知っている、だからこそ危険視しているのです」 

 

「・・・・成る程、貴方が赤龍帝(イッセー)白龍皇(ヴァーリ)を危険視してる理由は分かりました。でも何故俺に?」

 

「二人が戦うとすれば、その場には貴方達グレモリー眷属がいると予想されます。そしてグレモリー眷属の中で暴走した二人に対処出来る可能性があるのは【ガイバー】である貴方しかいない。この聖剣はその時の助けとなるべく貴方に預けるのであり、悪魔の貴方にも使えるように既に特殊な処理を施してあります」

 

「・・・・無理ですよ。俺にそこまでの力はありません」

 

「そうですか? 貴方を推薦したサーゼクスは自信たっぷりでしたが?」

 

 あの魔王(ヒト)は! くそ、やはり【巨人殖装(ギガンティック)】を見せたのは失敗だった!

 

「・・・・魔王様が了承済みなのは分かりましたが、俺の主はリアスです。彼女はこの事を知っているのですか?」

 

「ええ。今頃サーゼクスから話を聞いてる事でしょう」

 

「・・・・・・」

 

 リアス自身は納得出来ないだろうが、魔王からの勅命となれば聞かざるを得ないだろう。となれば俺がやるしかない。剣なんて使った事無いが、リアスは勿論、祐美やゼノヴィアにも仲間を斬るなんて真似させる訳にはいかない。

 

「・・・・・手に取ってみても?」

 

 俺が台座に置かれたアスカロンを見つめて言うと、ミカエル様は「どうぞ」とばかりに頷く。

 アスカロンを手に取り、少しだけ引き抜くと、聖なる光が俺を照らしたというのに特に異常はなかった。特殊な処理とやらは問題ないようだ。

 俺は意を決して剣を鞘に収めると、チンッ!と澄んだ音が社殿に響いた。

 

「分かりました。聖剣アスカロンは俺が預ります。ですがあくまで万が一の時の保険としてです。俺はイッセーが力に溺れて暴走なんてしないと信じてますから」

 

 俺がきっぱりと言い切ると、ミカエル様は先程までのような苦笑とは違う優しい微笑みを浮かべた。

 

「ふふ、まあいいでしょう。アスカロンを貴方に預けるのが私の役目ですからね。では、私はこれで失礼します。明日の会議でまたお会いしましょう」

 

 そう言ってミカエル様はさわやかな笑顔を見せると、光となって帰って行った。

 

 

 

 

 

 ミカエル様が帰った後、朱乃に誘われて奥にある彼女が実際に生活している部屋に通された。社殿と違いここには朱乃が生活している気配が感じられて何だか落ち着く。

 

「朱乃はミカエル様とここであの剣を?」

 

 朱乃の用意してくれたお茶とお菓子を頬張りながら、疑問に思った事を聞いてみた。

 

「はい、この神社でアスカロンに処理を施しました。魔王様からの依頼でもありましたし、ここは廃神社ですが神域としての力も僅かに残っていましたから」

 

「神域?」

 

「はい、ミカエル様のような強い光の持ち主が悪魔の領地である駒王町に降臨するには神域でなければならない、というルールがあるんです。・・・・まあ戦争目的で来るなら話は別ですが」 

 

 成る程。確かにあれ程強大な光が突然降りて来たら、天使が攻めて来たと誤解されても仕方がない。和平を結ぼうというこの時期に余計な波風を立てないように配慮してた訳か。

 

「ここには私も住んでいますし、貴方への橋渡しという点でも都合が良かったんですわ」

 

「そういう事か」

 

「はい」

 

 そう言って会話が途切れた。でも気不味い感じはしない。朱乃と二人きりだと、こうエロい雰囲気になる事が多かったんだが、今は彼女と二人でいる空気が心地良かった。

 その空気に押されて、俺はこの神社に来てからずっと気になっていた事を訊いてみた。

 

「・・・・・なあ朱乃」

 

「はい?」

 

「俺は、この神社に来た事があるよな?」

 

「・・・・・はい」

 

 やっぱり。じゃあ巫女装束の朱乃を見た時に重なったのは幼い頃の朱乃自身───

 

「・・・・あーちゃん、なのか?」

 

「・・・・ええ。そうよ、かずくん」

 

 幼い頃の呼び方でお互いを呼ぶ。ふと見ると、微笑む朱乃の目には涙が滲んでいた。

 

 

 

 

 

 八歳の誕生日に父が自転車を買ってくれた。

 行動範囲が広がり、今まで行けなかった所へ行き、今まで知らなかった景色を見て、俺の世界は一気に広がった。

 ちょうど今と同じ初夏の事だった。いつものように自転車に乗って出掛けた俺はその日、山の方まで足を伸ばしてみた。だが八歳の子供に山道はきつく、途中でへばった俺は道端に腰掛け休憩していた。

 そんな時、何処からか綺麗な歌声が聞こえて来た。その歌声に惹かれた俺は山に入り、草木の生い茂った獣道をかき分ける内に小さな神社にたどり着いた。

 そこには巫女装束の綺麗な女の人と俺と同じ年頃の小さな女の子がいた。──それが朱乃と、彼女の母親である朱璃さんだった。

 迷い込んだ俺を朱璃さんは驚きつつも優しく迎えてくれた。朱乃は同じ年頃の子供を見るのが珍しいらしく、朱璃さんの後ろに隠れつつ、興味深そうに俺を見つめていた。そんな朱乃に俺は手を伸ばし、「一緒に遊ぼう」と誘った。

 

 それからは俺が神社に行くと、二人は嬉しそうに迎えてくれた。朱乃とはすっかり仲良くなり、お互い「あーちゃん」「かずくん」と呼び合って日が暮れるまで一緒に遊んだ。朱璃さんはそんな俺達を優しく見守り、時には俺がここに来る切っ掛けになった歌声を聞かせてくれた。

 その神社は不思議な所で、神社に続く石段はあるのに何故かそこからは入れず、俺はいつも最初に入って来た獣道からしか入れなかった。今思えば結界が張ってあって、俺の入った獣道には綻びがあったのだろう。

 二人が何故こんな町外れに住んでいるのか不思議に思ったが、当時の俺は朱乃や朱璃さんに会えるのが嬉しくて、深く気にしなかった。

 

 そんな日々が二ヶ月程続いたある日、神社からの帰り道で夕立に降られた俺は、風邪を引いて暫く神社へ行けなくなった。何日か経ち、熱が下がって動けるようになった俺は久し振りに神社へ行った。──だが、そこにはもう誰もいなかった。

 綺麗だった神社はあちこち壊れ、焼け焦げた跡があった。俺は駆け回って朱乃と朱璃さんを捜したがどこにも二人の姿は無く、家に帰って両親にその事を話したが、二人にはそんな所に神社なんて無いと言われてしまった。

 そんな馬鹿なと思ったが、結局、両親に否定されては八歳の子供に出来る事は無く、時折神社に行ってはみたが二人が戻った形跡は無かった。

 そうして年月が過ぎ、身体が成長するにつれ、獣道を通れなくなると俺は神社へ行けなくなった。

 やがて俺は二人の事を記憶の奥底に閉じ込め、思い出さなくなった。

 

 

 

 

 

 そのあーちゃんが朱乃だった。

 

「いつから気付いてた?」

 

「二年前、同じクラスになって暫くした頃かしら」

 

「そんなに前から!? 言ってくれれば良かったのに・・・・」

 

「あの頃とは立場が違うもの。私は悪魔になってたし、人間である貴方の迷惑をかけると思って。それに・・・・」

 

「それに?」

 

「再会したらすぐ気付いて貰えるよう、あの頃からずっと同じ髪型にしていたのに、かずくんったらちっとも気付いてくれないんですもの・・・・」

 

「うっ、悪い・・・・・」

 

 朱乃からジト目で見つめられて言葉に詰まる。

 

「クスッ、冗談よ」

 

 朱乃の悪戯っぽい微笑みに、俺は頭を掻いて苦笑した。そして、

 

「なあ朱乃、俺が行けない間に一体何があったんだ?」

 

 俺は思いきって訊ねてみた。朱乃は急に沈んだ表情を浮かべると、暫くして意を決したように立ち上がった。

 そして背中を向けるとおもむろに白衣を肌けた。シミひとつ無い白い素肌は十七歳とは思えない色香を放っていて、俺は思わず生唾を飲んだ。そして、

 

 バサッ!

 

 朱乃は翼を広げる。右はリアスのような悪魔の翼、だが左は黒い──堕天使の翼だった。 

 

「朱乃、これは───」

 

「ご覧の通り、私は堕天使と人間のハーフなんです」

 

 そう言って朱乃はあの日何があったのか教えてくれた。

 

 

 

 朱乃の母、朱璃さんは五大宗家の一つ姫島家の出身でありながら、堕天使の幹部バラキエルと恋に落ち、朱乃を産んだ。

 その事から半ば追放のような形で姫島家を出て、この町に隠れ住んでいたが、朱乃の存在を快く思わない姫島家の者から襲撃され、朱璃さんは亡くなった。

 朱乃は母の危機に間に合わなかった父バラキエルを恨み、やがて堕天使そのものを憎むようになった。父と決別した朱乃は朱璃さんから教わった術で追手から逃げのび、各地を放浪していたが、偶々この町に戻った時リアスと出逢い、やがて眷属になったそうだ。

 

 

 

 朱乃の過去はほぼ原作通りだった。違うのはこの駒王町に住んでいて、俺と幼い頃に出会っていた位か。

 

「貴方と再会した時、とても嬉しかったわ。でも貴方は私の事を忘れてるみたいだからこのまま距離を置こうと思ったの。・・・・でも貴方は堕天使に命を奪われ眷属になった。そんな貴方に私が堕天使の血を引いていると知られるのが怖かった。自分の側に自分を殺した堕天使の血を引いた女がいる、ましてや自分に好意を抱いているなんて、そんなの許せる訳無い! そうでしょう!?」

 

 声を震わせて告白する朱乃。背中を向けているから顔は見えないが、彼女は泣いていた。

 そんな朱乃を見て、彼女が心の奥底でずっと怯えていたのだとようやく気付いた。

 彼女は自分が悪魔になった事を、堕天使の血を引いてる事を俺に知られるのをずっと怖がっていた。その根底には幼馴染みだった俺から嫌われたくないという怯えがあったのだろう。それなのに自分の過去を、自分の正体を、そして自分の想いを告白した朱乃に俺は何をしてやれるだろうか。

 俺は立ち上がると、背中を向けたままの朱乃の両肩に手を置いた。

 

「朱乃・・・・その考え方はちょっと極端すぎだよ。人間にだっていい奴もいれば悪い奴もいる。でもそれは悪魔も天使も、そして堕天使も同じじゃないか? だから俺はお前が堕天使の血を引いてるからって嫌ったりはしないよ」

 

 俺は朱乃の両肩に置いた手に力を入れて、こっちを向かせると、紫の瞳に浮かんだ雫を指ですくって言った。

 

「確かに俺は堕天使が嫌いだ。けど朱乃は好きだよ。俺にとっての朱乃は頼りになる女王(クイーン)で、優しい副部長で、気になるクラスメイトで、大切な幼馴染みだ。俺はそんな朱乃を守りたい。お前を傷つける全てから。だからもう怯えなくていい。お前の怯えも想いも、全部受け止めるから。だからもう、どこにもいかないで、俺の側にいてくれ」

 

 朱乃は涙を浮かべながらキョトンとした顔をする。

 

「・・・・いいの? 私のような、堕天使の血を引く女が貴方の側にいていいの?」

 

「ああ」

 

「私って結構黒いわよ? ニコニコ笑っていても心の中では何を考えてるか分からないわよ?」

 

「そんなの誰だってそうだよ。だから話をしたり一緒に過ごしたりしてもっと知ろうとするんじゃないか。俺は朱乃の事をもっと知りたい。だからこれからも一緒にいて、俺に教えてくれないか?」

 

「!~~~~~、一輝!!」

 

 感極まったのか、朱乃は俺の胸に飛び込んだ。

 

「・・・・殺し文句、言われちゃいました。・・・・そんな事言われたら、私もう貴方から離れないわよ?」

 

「ああ、離すもんか」

 

「うん。もう離さないで、ん──」

 

 朱乃はそのまま唇を重ねて来た。俺は拒まず深く、深く唇を重ね続けた。

 

 

 

 

 

 

「ん──ちゅ、ちゅぷ、ん・・・んあ、ちゅ、ぢゅぷ」

 

 二人の初めてのキスは最初から激しい舌の絡め合いになった。唇を重ねた次の瞬間にもう舌が入って来た。ヌルヌルと口内を這い回る朱乃の舌に、一輝は負けじと舌を絡め、お返しとばかりに唾液を流し込む。朱乃は嬉しそうにコクコクと喉を鳴らして唾液を飲み干した。口の端から零れた唾液が、裸の胸に垂れていく様は堪らなく淫靡で、二人はより深く舌を絡め合う。

 やがて朱乃がキスをしながらゆっくりと後ろへ下がり、襖にたどり着く。朱乃が後ろ手で襖を開けると、隣の部屋は寝室なのか、布団が敷いてあった。しかも枕元には数枚のタオルと箱ティッシュ、更には水の入ったペットボトルまで用意してあった。

 それを見た一輝は、朱乃が最初からヤル気だったと気づいてニヤリと笑う。

 

「朱乃~? お前最初からその気だったな?」

 

「あ、そ、その・・・・」

 

 既に上半身裸で、その柔らかそうな爆乳もピンク色の頂も丸見えなのに、恥じらいの表情を見せる朱乃は堪らなくエロ可愛かった。

 

「で? ここまで用意しておいて、俺にどうして欲しいんだ?」

 

 朱乃の顎をクイっと掴んで目を合わせる。彼女は紫の瞳を羞恥に揺らしつつ、何かを伝えようと口を開く。

 

「あっ・・・わ、私・・・・・」

 

 上手く言葉に出来ず、目を背けようとするが一輝が顎クイをしているので目を逸らせない。

 

「朱乃」

 

 催促するように名前を呼ぶと、朱乃はビクリと肩を震わせ、やがて恥ずかしそうに呟いた。

 

「・・・・はしたない娘だって、嫌いにならない?」

 

「ああ」

 

「・・・・・・抱いて一輝。私の全てを教えてあげる。

・・・だから貴方の全てを、私に教えて?」

 

 そう言い終わると同時に、一輝は朱乃の唇を塞ぎ、そのまま布団に押し倒した。

 

「んむ、ちゅ、ちゅぷ、ん・・・あ、一輝、んん・・・・」 

 

 唇を離すと二人の間に銀色の橋が架かり、プツンと切れた。一輝はそのまま切れた橋を追いかけるように彼女の胸の谷間へ顔を埋める。

 

「んんっ・・・はぁん、か、一輝・・・・」

 

 朱乃の胸に挟まれると、リアスとも祐美とも違う甘い匂いとつきたての餅のような柔らかな感触がして、得も言われぬ幸福感に包まれる。

 

「んんっ、あ、一輝、そこは・・・・ふうん!」

 

 胸の谷間に挟まれながら朱乃の両胸を揉みしだく。どこまでも柔らかな胸は一輝の指によって形を変えていく。それが面白くて、朱乃の反応を確かめつつ胸を揉み続けた。

 やがて肌が汗に濡れ始めると、朱乃の頂は固く屹立していた。一輝はそこに指を伸ばし、左右を一斉に摘まんだ。

 

「!!───っひぃぃん!!」

 

 突然の刺激に朱乃は悲鳴を上げる。一輝は構わずに固く尖った乳首を容赦無く摘まみ上げ、口に含む。指と舌を使い朱乃の胸を唾液まみれにしていった。

 

「んああ! そこ駄目、駄目、駄───っあああん❤」

 

 不意に乳首を噛むと、朱乃は身体をピーンと伸ばし、脱力した。

 軽くイッた朱乃は呼吸を荒げ、汗と唾液に濡れた胸を上下させる。その艶かしい姿に一輝の準備も完了していた。素早く衣服を脱ぎ捨て、固く屹立した肉棒を朱乃の口元に持っていく。

 

「朱乃、ほら」

 

 一輝は朱乃の鼻先に肉棒を突き付ける。半ば意識が朦朧としていた朱乃は鼻をヒクつかせて匂いを嗅ぐと、匂いに釣られるように口を大きく開いた。

 

「・・・・あ~ん、ちゅううっ・・・んん、一輝・・・・? んぼ、んぼ、───ん、ぢゅぷ❤」

 

 朱乃は美味しそうに音を立てて、肉棒を舐めしゃぶる。舌を這わせ、歯を立てないよう唇でしごき、喉奥へと丁寧に導いていく。

 シャワーを浴びていない一輝の肉棒は生臭い匂いを発し、とても咥えられるような物ではないだろうに、朱乃はそんな事は関係ない、いや、むしろそれがいいと言わんばかりの恍惚の表情で肉棒を咥えていた。

 

「ん、んぷ、ぢゅぷ・・・んあ──ん、一輝の、美味しい❤ ん、もっと、ちゅ・・・んぼ、むぼ!」

 

 本番にこそ及んでいないものの、肌を合わせた回数はリアスや祐美よりも朱乃の方が多い。特にフェラチオは最も多く経験しており、朱乃はすっかり一輝の肉棒の味を覚えていた。

 

「んんんっ、ぢゅぽっ! あん!───ん、一輝?どうしたの・・・・?」

 

 もうすぐ達するという時になって、一輝は突然朱乃の口から肉棒を抜いた。朱乃は何か失敗したのかと不安そうに訊ねる。

 

「朱乃はそのままで」

 

 一輝はそう言うと、朱乃の唾液をたっぷりとまぶした肉棒を朱乃の胸の谷間に差し込む。

 

「胸を両側から押さえてくれ」

 

「ん、と・・・・こう?」 

 

 言う通りに胸を両側から押さえると、一輝の肉棒は豊かな胸の谷間に埋没して隠れてしまった。

 

「うん、それでいい・・・・動くぞ?」

 

「あ、これって・・・・」

 

 たっぷりとまぶした朱乃の唾液と先走りを潤滑液として、ヌチュヌチュと湿った音が響く。そう、一輝は朱乃にパイズリをさせていたのだ。

 

「ん・・・ふ、ふ、んん・・・・ねえ一輝、これって気持ちいいの?」

 

 朱乃が不思議そうに訊ねる。確かにパイズリは男も女もあまり気持ち良くないと云われているが、「そんな事を言う奴らは本物の感触を知らないだけだ!」と一輝は心の中で叫ぶ。それ程に朱乃のパイズリは圧巻だった。

 

「う、ああ・・・すげー気持ちいい」

 

 朱乃の大きく柔らかな胸はただでさえ極上の触り心地なのに、そこに最も敏感な器官が包まれているのだ。気持ちいいに決まっている。一輝は極上の快楽に酔いしれていた。

 

 朱乃また、初めて経験するパイズリに戸惑っていた。

 知識としては知ってたけど、正直胸を刺激されるなら直接乳首を弄って貰う方が気持ちいい。でも一輝が気持ち良さそうにしているからと頑張って続ける。すると、

 

(わあっ・・・これって結構凄いかも・・・・?) 

 

 何度か突いて感覚が掴めたのか、一輝の動きが速くなる。それにつれ、肉棒の先端が胸から飛び出すようになった。

 フェラチオとは違う目の前に怒張が迫って来る迫力に、朱乃はいつしか夢中になっていた。

 

「あ、朱乃・・・・く、朱乃の胸、スゲーいい!」

 

 一輝は朱乃の上で必死に腰を振る。快楽に蕩けた顔を見て、朱乃は悦びに奮えていた。

 

「は、は、うん、いいよ。私の、朱乃のおっぱいでいっぱい気持ち良くなって──んちゅ❤」

 

 私は劣情の昂るまま、眼前に迫る肉棒の先端を咥えます。

 

「うああ、朱乃それは───!」

 

 左右の挟む力を強めて亀頭を刺激されて、一輝はもう決壊寸前だった。

 

「ふ、んちゅ・・・レロ、レロ、ん───ズズズッ、ん、ジュル、ん~~~!」

 

「あ、朱乃、もうイク、このまま───!」

 

 朱乃の乳圧と舌使いの激しさに、一輝は欲望を解き放とうと声を上げる。

 朱乃はそんな一輝を一瞥し、そのまま射精()して欲しいと咥えた肉棒を啜った。そして───

 

「うああ、朱乃、イク、イクぞーーー!!」

 

 ブビュルル! ブビュル! ブビュ!!

 

「ふむぅーーーーー!! んぷ、ぷふぁああああっ!?」

 

 一輝の欲望が濁流となって朱乃の口内に注がれて行く。

 全部飲み干そうとした朱乃だったが、あまりの勢いに咥えていた肉棒が外れてしまい、顔や胸に大量の白濁液を浴びてしまった。

 

(んんん! これ、すごい匂い・・・・❤)

 

 朱乃は顔と胸を大量の白濁液で染められたまま、口内に残った残滓を喉を鳴らして飲み込んだ。

 

「ン──、ゴクッ、ゴクッ、んんんっっっ!・・・・はぁ❤」

 

 白濁液に染められて、朱乃は興奮か快楽か分からずに身体を震わせた。そんな朱乃を見て、一輝の肉棒は小さくなる所か、益々硬くそそり勃っていた。

 

 

 

 

「んん、ジュル、チュプ・・・ん、美味し❤」

 

 顔や胸に付着した白濁液を、指ですくって朱乃は口に運ぶ。

 その様子をジっと見つめていた一輝に朱乃は艶然とした笑みを向け、両手を広げた。 

 

「───来て、一輝」

 

 その一言を引き金に一輝は朱乃に襲いかかった。

 朱乃の緋袴に手を掛けると一気に引き抜き、股間を顕にする。

 朱乃は当然の如く下着を着けておらず、淫蜜に濡れた秘部に微かな光が当たりキラキラと輝いている。一輝は淫蜜を吸って重くなった緋袴を投げ捨てると、朱乃の股間にむしゃぶりついた。

 

「はぁん! ふ、おおぉ! ああん、一輝、そんな、いきなり───!!」

 

 暫く二人の間に会話は無く、ピチャピチャという卑猥な水音と朱乃の喘ぎ声だけが室内に響いていた。 

 

「んん、ああん! 一輝、一輝! イク・・・イクの!私もう──イ、クーーーーーッッ!!」 

 

 プシュッッッ!!

 

 陰核の皮を剥き、甘噛みすると朱乃は盛大に潮を吹いて絶頂に達した。飛沫は当然一輝の顔面を直撃したが、一切気にする事無く、秘部から溢れる淫蜜を啜り続けた。

 

(・・・・これだけ濡れてれば充分だろう)

 

 一輝は身体を起こすと限界まで張りつめた怒張を掴み、朱乃の秘穴の縦スジに沿って溢れる淫蜜を塗りたくる。

 

「行くぞ朱乃」

 

 一輝の肉棒が朱乃のまだ誰も踏み入った事の無い膣内(なか)に突入した。

 

「ぐっ!? ううう・・・んん、い、痛・・・・」

 

 朱乃は膣内をたっぷり濡らしているのに、少し進む度に苦悶の声を上げる。一輝も気をつけながら進んでいる内に弾力のある膜にぶち当たった。

 

「朱乃、もうすぐだ。このまま一気に行くから我慢してくれ」

 

 朱乃は涙を滲ませ、唇を噛みしめながらコクコクと頷く。

 一輝は一旦腰を限界まで引くと、そのまま一気に朱乃の膣奥まで貫いた。

 

「───ふぐうっっっ!!?」

 

 勢いをつけた肉棒は朱乃の処女膜を突き破り、一気に膣奥にまで到達した。

 

「~~~~~~!!!」

 

 朱乃は声にならない絶叫を上げて背中を仰け反らせた。脱力し、その背中が布団に落ちてから朱乃を見ると、端整な美貌は涙や涎に塗れ見る影もなく、口をパクパクさせて失神していた。

 

「朱乃?」

 

 頬を軽く叩いてみると、朱乃は呻き声を上げつつ目を覚ました。

 

「・・・・・かず、き?」

 

「ああ。痛かったろ、大丈夫か?」

 

 朱乃はそっと手を伸ばす。

 

「うん、痛かった。・・・・・・凄く痛かったわ」

 

「う、そうか」

 

 そして伸ばした手を一輝の頬に当てて、愛おしそうに撫でた。

 

「でも不思議ね。こんなに幸せな痛みは生まれて初めて・・・・きっと、一生忘れないわ」

 

「・・・・朱乃」

 

「ねえ、動いて一輝。一生忘れられない痛みを、もっと私に刻んで・・・・貴方のものになった証を、私にちょうだい?」

 

 この時一輝の胸に浮かんだのは溢れんばかりの愛おしさだった。一輝はその想いのままに唇を重ねた。

 舌も絡めない、唾液の交換もない、ただ深く重ねただけのキス。それはこの先何度も交わす朱乃とのキスの中で最も印象深いキスになった。

 

「動くぞ」

 

「うん・・・・んんんっ!? ああ! ん、んあああん!」

 

 ゆっくりと引き抜き、ゆっくりと突き込む。何度も続けて一輝は朱乃の膣内を自分のものにすべく拡張していく。

 朱乃の膣内は破瓜の血と愛液に濡れて肉棒を招き入れる。最初あんなに拒んでいたのが嘘のように、もっと奥まで来て欲しいとばかりに蜜を溢れさせていた。

 

「んん、あ、ああん、い、いい❤ いいの、一輝!」

 

 始めは痛がっていた朱乃も暫くすると感じて来たのか、苦痛からではない嬌声を上げ始める。

 一輝が突き入れる度に快楽に蕩けた美貌が、艶やかな喘ぎ声が、三桁を越えるサイズの揺れる爆乳が、芳しい雌の臭いが、適度な締め付けと柔らかく包み込む膣内の感触が一輝の動きを加速させる。

 

「あん、あん、あん、ぁん、んんん! 一輝、わ、私もう───!!」

 

 十七歳にして女として完成された朱乃の極上の肉体に夢中になり、一輝はより強く、より速く腰を打ちつけた。

 

「俺もイクぞ! 朱乃、どこに射精()して欲しい!?」

 

「ああん❤ な、膣内(なか)膣内(なか)射精()して! 一輝の精液、全部朱乃の膣内に射精してーーー!!」

 

 朱乃の答えに満足して、一輝は目の前の極上の女を征服すべく、自らの欲望を解放した。

 

「朱乃、イクぞ!」

 

「来て一輝! 私の膣内(なか)にいっぱい来てーーーーっっ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュルル! ブビュゥゥゥッッッ!!

 

「んおおおおっっ!!」

 

 欲望が激流となって朱乃の膣内に雪崩れ込む。

 

「んあああああっっっ! イク、イッックウウウゥゥッッ!!」

 

 絶叫を上げて、朱乃の身体が跳ね上がる。

 

「お゙、お゙、お゙、お゙お゙お゙~~~~~っっっ❤」

 

 跳ね上がった身体が力尽きたように降りて来る。その間、一輝の肉棒は朱乃の膣内に精液を注ぎ続けた。

 

「ハア、ハア、ハア、あ、朱乃・・・・」

 

「ハア、ハア、ハア、か、一輝、んん・・・・」

 

 二人は汗だくで、呼吸も荒いまま見つめ合い、唇を重ねた。

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
再開早々内容の変更を考えています。
内容は「イッセーのヒロインを誰にするか」です。
因みにイッセーのヒロインになるとエロシーンは書きません。
アンケートを募集しますので皆さんの意見を聞かせて下さい。


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第14話 三大勢力会議☆(朱乃)


復帰早々感想ならび誤字報告ありがとうございます。
それではご覧下さい。


 

 

「ハア、ハア、朱乃・・・・・」

 

「ハア、ハア、一輝、ん・・・・・❤」

 

 全部射精()し切った一輝()は朱乃に軽くキスをすると、柔らかな身体に崩れ落ちた。そのまま彼女の首筋に顔を埋め、汗ばんだ白い肌に指を這わせる。

 朱乃は俺の身体を跳ね退けもせず、されるがままになっていた。

 

「さて、抜くぞ朱乃」

 

 暫くして呼吸が落ち着くと、膣内の肉棒をゆっくりと抜き始めた。

 朱乃の膣内から腰を引くと、淫蜜と破瓜の血にまみれた肉棒が出て来て、

 

 ヂュポッ!

 

 という派手な音を立てて抜け落ちた。

 膣口からはゴポリという音と共に大量の白濁液が溢れ出し、朱乃の初めての証と混ざってシーツの上でマーブル模様を描いた。

 

「うわあ~、我ながら凄い量が出たな」

 

「んん! もう、射精()しすぎよ・・・・・」  

 

 我が事ながら呆れる俺に、朱乃は気怠げに呟いた。

 

 

 

 

 それから俺は枕元にあったタオルやウエットティッシュで自分と朱乃の身体を拭いて、出来る限り後始末をした。

 

「・・・・・ごめんなさい、一輝」

 

「いいさ、まだ身体が動かないんだろ。あれだけ激しくしたんだから無理も無い。もう少し休んでろよ」

 

「うん、ありがとう・・・・」

 

 後始末を終え、未だ布団から起き上がれずにいる朱乃の隣に腰を下ろし、彼女の黒髪を撫でる。

 しかし、祐美の時といい今回といい、どうやら俺は興奮するとやり過ぎる傾向があるみたい。

 祐美や朱乃のような極上の美少女が相手とは言え、足腰立たない位に激しくするってどれだけ鬼畜なのか。猛省せねば。

 

「ねえ、一輝」

 

 そんな風に考えていると、朱乃が声を掛けて来た。

 

「ん?」

 

「一輝はその・・・・・き、気持ち良かった?」

 

 朱乃はタオルケットを口元まで上げて、恥ずかしそうに訊ねる。

 

「ああ。最高に気持ち良かったよ」

 

「そう・・・・・良かった」

 

 そう言って微笑む朱乃は、あれだけの恥態を見せた娘とは思えない位可愛らしかった。

 

「朱乃はどうだった?」

 

「え?」

 

 そんな朱乃の態度についイタズラ心が湧いて、思わず訊ねてしまった。

 

「うぅ・・・・その、き、気持ち良かった・・・・また、したいわ」

 

 そう言うと朱乃はタオルケットを頭まで被って身悶える。

 そんな朱乃に先程の猛省もどこ吹く風、と落ち着いた筈の肉棒が再び屹立した。

 

「朱乃・・・・・」

 

「うん、もう大丈夫。・・・・だから来て、一輝」

 

 タオルケットを剥ぎ取り、朱乃の裸身を顕にする。男を知ったその肉体は匂い立つような色香を発していた。

 俺はゴクリと喉を鳴らし、彼女に覆い被さろうとしたその時、

 

 カッ!!

 

 突如畳の上に魔方陣が走った。

 その魔方陣の紋様はいつも見ているグレモリー家のもの。そして中からは紅髪の美少女、リアスが姿を現した。

 

「・・・・何をしてるのかしら? 一輝、朱乃」

 

 俺達の体勢と室内に満ちた濃密な性臭にナニをしていたのか言わずとも分かるだろう。それでも訊いて来るのは認めたくないという気持ちの表れだろうか。

 取り敢えず姿勢を正(正座)してリアスに応じようとしたが、俺より先に朱乃が答えた。

 

「え~とリアス「あら、この状態を見て分からないのかしら。たった今、私の初めてを一輝に捧げた所よ、リアス」・・・・・」

 

 ちょっ、何でそういう言い方をするかな!? そりゃあ確かに事実ではあるけど、もっと言い方があるだろ!?

 リアスは無表情、対する朱乃は余裕そうな微笑みを浮かべて見つめ合っている。俺は二人の間で息を潜めて正座していた。

 

「そう・・・・結局貴女にまで先を越された訳ね」

 

「ええ。最高に幸せな時間だったわ」

 

 ほうっと色っぽい溜め息を吐いて、朱乃は頬に手を当てる。その態度にリアスはギリギリと歯噛みする。

 

「くっ、よくも抜け抜けと・・・・!」

 

「あら? 私や一輝に当たるのはお門違いよ、リアス。祐美ちゃんという前例もいるのだし、一輝がハーレムを作るのは貴女自身認めていた筈でしょう? そこに私が加わった、それだけの話よ」

 

「・・・・・・」

 

「貴女にはグレモリー家次期当主という立場があるからジオティクス様の言い付けを守らなきゃいけないんでしょうけど、私や祐美ちゃんまでそれに付き合う必要は無いわ。そうでしょう?」

 

「むうう~、一輝!!」

 

「は、はい!!」

 

 朱乃の言ってる事は完全に正論であり、言い返せないリアスは悔しさをぶつけるように俺を呼ぶ。

 

「聖剣は!?」

 

「貰いました!」

 

「ミカエルは!?」

 

「帰りました!」

 

「なら、ここにはもう用は無いわね!? 帰るわよ!!」

 

 リアスはそう言って、俺の腕を掴んで部屋を飛び出そうとするが、

 

「貴女が羨ましいわリアス。どれだけ抱かれても、結局一輝の一番は貴女なんですもの・・・・・」

 

 朱乃の一言に足を止めた。 

 俺は今の内にと慌てて衣服を着ける。

 

「何が一番なもんですか・・・・・」

 

 そう悲しげに呟くと、リアスは今度こそ俺の手を引いて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

「リアス、ちょっと待ってくれ!」

 

 一輝の声にリアス()は石段の途中で足を止めた。

 先を越された悔しさに無理矢理引っ張って来たからか、一輝は辛うじて衣服を引っ掛けている状態だった。私が足を止めると、一輝はホッとして服装を直した。

 

「リアス、その・・・・お前の許しも得ず朱乃を抱いたのは俺が悪かった。でも朱乃を責めないでくれないか?」

 

「・・・・・・随分と朱乃の肩を持つのね。抱いて情が移ったの?」

 

「そういう言い方をするなよ。実は───」

 

 朱乃を庇う一輝に拗ねた態度を取る私に、一輝は事のあらましを説明した。

 

 

 

「そう、そういう訳・・・・・」

 

 一輝の話を聞き終えて私は納得していた。

 思えば朱乃の一輝に対する距離感は最初からかなり近かった。朱乃は対外的にはいつもニコニコしているけど、実は男嫌いの気がある。そんな朱乃が眷属とは言え一輝には自分から近付き接しているのを不思議に思っていたけど、幼馴染みというなら納得出来る。

 私が朱乃と出会ったのは十歳の時、最愛の母を亡くし、母を救えなかった父と決別し、実家からの追手と戦いつつ放浪していた頃だった。その頃の朱乃は今のあの娘からは想像が出来ない位傷付き薄汚れて、他人を信じない昏い瞳をしていた。私はそんなあの娘に興味を持った。

 そして私は将来の為に領地運営を学ぶ場として【日本神話】からこの駒王町を借り受ける際、姫島家とも交渉し、彼女の身柄を引き取る事に成功した。

 最初は疑い、信用しなかった朱乃も時が経つにつれて変わり、中学に上がる頃に私の最初の眷属『女王(クイーン)』になってくれた。

 それからの朱乃は公的には女王として私の補佐を、私的には親友兼ライバルとして常に側にいてくれた。そして小猫や祐美が眷属になる頃には『雷の巫女』の二つ名で呼ばれる自慢の女王になっていた。

 そんな朱乃を私は女王として信頼していたけど、同時に親友として心配もしていた。

 あの娘は母を救えなかった堕天使の父を、そしてその血を引く自分すらも嫌悪していた。その事から自分を卑下し、軽んじる嫌いがあり、そんなあの娘がどうすれば幸せになれるのか悩んでもいた。

 そんな朱乃にとって、幼馴染みである一輝との再会は良い切っ掛けになったのだろう。朱乃にとって一輝は幸せだった母との思い出を共有出来る唯一の存在で、多分一輝と話をするのを怖れながらも待ち望んでいたのだと思う。そしてその望みが叶った事で感情が抑え切れず事に及んだ、と。

 確かに私は朱乃を心配していたし、朱乃が一輝と結ばれ精神的に安定したのは喜ばしい。喜ばしいんだ・け・ど!

    

(たった今私の初めてを一輝に捧げた所よ)

 

(ええ。最高に幸せな時間だったわ) 

 

(あら? 私や一輝に当たるのはお門違いよ)

 

(私や祐美ちゃんまでそれに付き合う必要は無いわ。そうでしょう?)

 

 何というか、言葉の端々から優越感が感じられて物凄くムカつく!

 ムウ~~、私だって一輝とシタいのに、精一杯我慢してるのに、あの娘はもお~~~!!

 

 そんな風にモヤモヤしてる私の肩に一輝が手を置いて、そっと自分に引き寄せた。

 

「なあリアス。もしお前が望むなら、俺が正式に婚約者と認められてお前と結ばれるまで、他の娘達との関係を断とうか?」

 

「えっ?」

 

 私は一輝の言葉に思わず振り返った。

 

「お前がそんなに辛いなら、祐美も朱乃もお前と結ばれるまで抱かないようにする。どうする?」

 

「・・・・・・」

 

 一輝の思わぬ提案に言葉を失う。

 正直感情に従って「イエス」と言いたい。でもそんな事をしたらあの娘達から確実に怨まれるわ。下手すれば女王と騎士が眷属から離反、何て事になったら一大事よ!

 

(って、しっかりしなさいリアス! 要は私が一輝の正妻としてあの娘達を管理すればいいのよ!!)

 

 そう、夫の奥の管理は正妻の役目。今からオロオロしていてはやっていけないわ。

 一輝の温もりを背中に感じつつ、ようやく頭の冷えた私は首を横に振った。

 

「ううん。いいわ、私がしっかりすればいいんだもの。貴方はこれからも祐美や朱乃に優しくしてあげて」

 

「・・・・分かった」

 

 さっきまで感情的だった私の雰囲気が変わったのを察したのか、一輝はそれ以上何も言わなかった。

 

「ねえ一輝」

 

「ん?」

 

「貴方にとって私は何?」

 

 そんな一輝に私は訊いてみる。彼は何て言ってくれるだろう?

 

「そうだなあ・・・・俺にとってリアスは主とか婚約者である前に、これからもずっと共に在ると誓った唯一人の女性(ヒト)だよ」

 

「あっ・・・・・・」

 

(覚えててくれたんだ・・・・・)

 

 以前二人で交わした約束。それを持ち出されて私はクスリと笑みを漏らす。

 

(ズルいんだから、もう!)

 

 さっきまでの苛立ちや焦燥が無くなった訳じゃないけど、私にだって一輝と二人だけの思い出はあるんだから! いくら朱乃が幼馴染みだったからって負けるもんですか!!

 

「さ、帰るわよ一輝」 

 

 私は一輝の左側──いつもの位置に着くと彼と腕を絡め、そして、

 

「ち・な・み・に・今夜は寝かせてあげないから、覚悟しなさい❤」

 

 そう耳元で囁いた。

 

 

 

 次の日、私達は二人揃って朝寝坊した。

 

 

 

 

 

 翌日。いよいよ「三大勢力会議」がここ駒王学園で開催される。

 会議の開始は二十二時。会場のセッティングは終わっているとはいえ、何が起こるか分からないので、俺達グレモリー眷属と会長のシトリー眷属は早目に会場入りする手筈になっている。

 集合時間ギリギリに到着した一輝()とリアスは会長に注意されつつも、其々仕事を始めた。

 俺の仕事は見回り。駒王学園には昨夜から人避けの結界が張られ、関係者以外立入り出来なくしているが、念の為異常は無いか確認するのだ。

 そんな風に見回りをしている時、俺は唐突に重要な事(原作)を思い出した。 

 

(あれ? そう言えばギャスパーがいねえ!?)

 

 

 

 

 それからリアスは勿論朱乃や祐美、小猫ちゃんにもそれとなく聞いてみたが、リアスの眷属はここにいる七人のみで、原作にいたもう一人の『僧侶(ビショップ)』、ギャスパーはやっぱりいなかった。

 考えてみれば原作では以前からもう一人僧侶がいる事を匂わせる会話があったけど、今まで聞いた事無かったもんなあ・・・・・迂闊だった。

 この世界は俺という異物が混入し、既に原作から乖離している。ギャスパーには悪いとは思うが縁があったらいつかめぐり会えるだろう。

 

(さて、そうなるとこの先ってどうなるんだ?)

 

 確かギャスパーの神器を利用され、襲撃されるんだったような・・・・・でもギャスパーいないしどうなるんだ?

 俺の原作知識もかなり朧気だ。もうこれに頼るのも危ないかもしれない。とそんな事を考えていると、

 

「───さて、行くわよ」

 

 リアスの声がして皆が立ち上がった。時刻は間も無く二十二時、いよいよ「三大勢力会議」が始まる。リアスを先頭に俺達は部室を出る。 

 会議場は駒王学園新校舎の職員会議室。今日の事は各勢力でも機密とされ、其々小数の護衛しか連れて来ていない。その護衛達も互いに睨み合いを続けていた。

 会議場の重厚な扉の前に立つと、リアスは深呼吸を二度繰り返す。そして扉をノックした。

 

「失礼します」

 

 扉を開けた室内には本来置かれていた物とは比べ物にならない位豪華絢爛なテーブルとイスがコの字に並び、各辺に二名ずつ、各勢力の代表が座っていた。

 

「皆様こちらへ」

 

 給仕係をしていたグレイフィアさんが俺達を席に案内してくれる。案内された席にはソーナ会長が座っていて、その隣にリアス、そして朱乃が座り、俺達も適当に腰を下ろした。

 

「これで揃ったな。ではこれより『三大勢力会議』を開催する。尚、この会議に参加する者は全員が最重要禁則事項『神の不在』を認知している事を前提に話を進める」

 

 俺達が席に着いたのを確認し、サーゼクス様が高らかに宣言した。

 

 

 

 

 

 会議は腹の探り合いから始まった。

 雑談のような会話から各勢力の状況を知ろうと話を振る者、情報を小出しにする者やとぼける者、ニコニコ笑ってかわす者など流石は悠久の時を生き、各勢力のトップに君臨する強者達というべきか、とても真似出来そうにない。

 悪魔側代表は魔王サーゼクス・ルシファーと同じく魔王セラフォルー・レヴィアタン。天使側代表は天使長ミカエルと四大熾天使(セラフ)の一人ガブリエル。そして堕天使側は『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼルと白龍皇ヴァーリ。いずれも錚々たるメンバーだ。

 とはいえヴァーリ以外はお互いの性格ややり口を知り尽くした者同士。ある種同窓会のような空気の中、それでも緊張感を孕んで会議は進んで行った。

 

 

「さて、次の議題に行く前に改めて紹介しよう。リアス、ソーナ君、立ちたまえ」

 

「「はい、ルシファー様」」

 

 サーゼクス様に促され、リアスとソーナ会長の二人が立ち上がる。

 

「私の妹のリアスとセラフォルーの妹のソーナ君だ。二人とその眷属は先日の襲撃事件を解決した功労者だ。実際に何が起きたのかを今から説明して貰おう。では二人共よろしく頼む」

 

「はい。ではまず私から───」

 

 

 先にソーナ会長が説明を始める。

 まず駒王町で起きていた神父の連続殺害事件からゼノヴィアとイリナの来訪までを話し、リアスと交代する。リアスはその後のコカビエル戦を一部始終語り、説明を終えた。

 

 

「───以上で私達とその眷属が関与した事件の報告を終わります」 

 

「ご苦労、座ってくれ」

 

 サーゼクス様に言われて二人が着席する。二人共かなり緊張していた様で席に着いた途端、大きく息を吐いていた。

 

「お疲れ様リアス、会長」

 

 リアスの後ろの席から役目を果たした二人に小声で労いの言葉を掛ける。二人はチラリと視線を向けると微かに笑みを浮かべた。

 貴族家の次期当主と言えど二人はまだ十七歳。こんな各勢力のトップが集う会議の場で報告するのは相当緊張しただろう。それを堂々とやり遂げた二人はまた『王』として成長した。眷属として誇らしい限りだ。

 

「さてアザゼル。今の報告を聞いて堕天使総督としての君の意見を聞きたい」

 

 サーゼクス様の問いに全員の視線が一ヶ所に集中する。堕天使の総督は頭をポリポリ掻きつつ、面倒臭そうに話し始めた。

 

「ん~、つってもなあ・・・・その件に関しては先日報告書にまとめて送った通り、コカビエルの野郎が俺や他の幹部に黙って単独で起こしたものだ。

奴はそこの【ガイバー】に倒された後、白龍皇が俺の前に引っ張って来て、直ちに軍法会議の元、刑に処された。『地獄の最下層(コキュートス)』での永久冷凍刑だ。もう出ちゃ来れねーよ」

 

「ハア、説明としては最低の部類ですが、貴方が我々と事を起こしたく無いというのは事実でしょうから本当なのでしょうね」

 

「ああ、俺はもう戦争なんて興味はねえよ」

 

 ミカエル様が嘆息しながら言うと、アザゼル総督はきっぱりと言い切った。

 

「アザゼル、ひとつ訊きたいのだが、近年神器所有者をかき集めているのは何故だ?」

 

「別に戦争に利用する気なんざねーよ。あくまで研究の為さ。何なら研究資料の一部をお前らに提供しようか?・・・・・何だよその不審そうな目は? ったく俺の信用は三大勢力の中でも最低かよ」

 

「それはそうだ」

「そうですね」

「その通りね☆」

「そうよねぇ」

「プッ、ククク───」

 

 サーゼクス様の問いに苦笑しつつ答えるアザゼル総督だったが、余程信用がないのかサーゼクス様、ミカエル様、セラ姉さん、ガブリエル様から不審がられ、あろう事か味方であるヴァーリからも笑われていた。ある意味当然だと思うが・・・・

 

「チッ、まあこそこそ研究するのもいい加減面倒だしな・・・・・あー分かったよ。──ならとっとと和平を結ぼうぜ。元々お前らだってそのつもりだったんだろ?」

 

 アザゼル総督の一言に一同が驚きに包まれる。「まさかこいつから提案するとは」という空気の中、ミカエル様が微笑んだ。

 

「まさか貴方から言い出すとは・・・・ですが我々天使は賛成です。これ以上三すくみの関係を続けても世界の害になるだけです」

 

「我々悪魔も同じだ。次に戦争が起こればどの勢力も滅びが待っているだろう」

 

「そう。次に戦争が起これば俺達全員共倒れの上、人間界にも多大な影響を及ぼし世界は終わる。俺達はもう戦争は起こせない」

 

 ミカエル様に続きサーゼクス様も和平に賛同する。するとアザゼル総督がさっきまでのふざけた調子から一転し、真剣な表情をする。

 

「神のいない世界は間違いだと思うか? 答えはノーだ。世界は衰退どころか発展してるし、俺達も元気に生きている。───神がいなくたって世界は回るのさ」

 

 アザゼル総督が両腕を広げて言った。

 アザゼル総督は非常に胡散臭い人物だが、今の言葉は俺の胸にスッと入って来て、やけに印象に残った。

 

 

 その後も会議は続いたが、先程より緊張感が和らいだ気がする。やはり会議の最大の焦点である和平が成立すると分かったからだろうか。 

 

「───と、こんな所だろうか?」

 

 会議が始まって二時間弱、粗方の議題は片付いたようだ。

 サーゼクス様やセラ姉さんもホッと息を吐いてグレイフィアさんの淹れた紅茶で喉を潤している。

 リアスや会長も安堵して室内の雰囲気が柔くなっていた。

 

「それではこの後、和平協定の調印に入りたいと思う。異論はあるかね?」

 

 サーゼクス様の宣言にミカエル様とアザゼル総督が答えようとしたその時、

 

 

 ズガアアァァァンンッッ!!

 

 

 爆音が轟き、新校舎が揺れた。

 

「何だ!?」

 

「襲撃?」

 

「チッ、やっぱり来やがったか」

 

 各勢力のトップが呟く中、俺達は状況を確認しようと窓際に駆け寄った。

 校庭には爆音と閃光が走り、魔法使いのような黒いローブを着込んだ連中が護衛達に襲い掛かっていた。

 

「ありゃあ所謂魔術師って連中だな。放たれてる魔術の威力からして全員中級悪魔クラスの魔力を持ってやがる。見てみろよ」

 

 アザゼル総督に言われそちらを見ると、校庭の各所で魔方陣が輝く度に魔術師が現れる。さっきからそれが繰り返され、魔術師()の数が次々と増えていく。 

 

「ここで籠城してれば痺れを切らした黒幕が出て来るとは思うんだが、それまで持ちそうにねえな・・・・ヴァーリ」

 

「なに? アザゼル」

 

「外に出て敵の目を引け。白龍皇が出れば連中も焦って動くかもしれない」

 

「・・・・了解」

 

 ヴァーリは嘆息しながら頷き、窓から外へ身を投げた。カッと白い光が輝くと白い全身鎧(プレートアーマー)を纏ったヴァーリが飛翔して行く。

 

「私達も行くわよ! 何者か知らないけど、これ以上好きにさせるものですか!!」

 

 リアスが気炎を発し、眷属(俺達)に命じる。だが、

 

「待ったリアス。全員で行ってはここが手薄になる。リアスともう一人か二人残した方がいい」

 

 俺はそう意見した。原作通りならここにも敵が現れる筈だ。

 

「そうね・・・・・なら一輝は私とここに残って。アーシアは怪我人の治療。イッセーはアーシアの護衛を。祐美、ゼノヴィア、小猫は迎撃。朱乃、指揮は任せるわ」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 眷属(仲間)達が外へ飛び出して行く。それを見送ってから俺はアザゼル総督に訊ねる。

 

「アザゼル総督、貴方にお訊きしたい」

 

「何だ?」

 

「・・・・貴方はさっき「やっぱり来たか」と言いましたよね。襲撃者に心当たりがあるんですか?」

 

「・・・・まあ、三大勢力(俺達)の和平に反対する奴等はいくらでもいるだろうが、あれだけの魔術師を揃えられるのはひとつだろうな」

 

「それは一体・・・・・?」

 

「───禍の団(カオス・ブリゲート)

 

 アザゼル総督が神妙な顔でその名を呟いた。 

 

「カオス、ブリゲート・・・・・? 聞き覚え無いな。ミカエル、君はどうだ?」

 

「私も知りません。何者ですか?」

 

 サーゼクス様やミカエル様も知らないようで、アザゼル総督に説明を求める。

 

 

 ───禍の団(カオス・ブリゲート)

 

 三大勢力の和平を良しとせず、破壊と混乱を起こそうとするテロリスト集団。三大勢力からあぶれた危険分子が集い、中には『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った【神器(セイクリッド・ギア)】所有者が何人も存在するという。

 『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスを頂点に戴いているが一枚岩ではなく、旧魔王派、英雄派、魔術師派等の複数の派閥が其々の思惑で行動している。

 原作では白龍皇ヴァーリも自らのチームを率いて参加するのだが、果たして───

 

 

 アザゼル総督の説明を聞いたサーゼクス様達は『禍の団』の存在を知り顔を曇らせる。その時、

 

『フフフ、流石はアザゼル。───そう、貴方の言う通り、禍の団(私達)のトップはオーフィスです』

 

 聞いた事のない女の声が室内に響くと、会議室の床に知らない魔方陣が浮かび上がる。

 

「そうか・・・・今回の黒幕は───」

 

 その魔方陣を見たサーゼクス様は舌打ちし、セラ姉さんは顔を曇らせる。

 魔方陣から現れたのは眼鏡を掛けた褐色の肌の女性。イッセーが喜びそうな胸元が大きく開き、深いスリットの入った扇情的なドレスを纏っていた。

 

「ごきげんよう。()魔王サーゼクス殿」

 

 不敵に笑い、褐色の女性は慇懃無礼に挨拶する。

 

「───カテレア・レヴィアタン。旧魔王の血を引く君がどういうつもりだ?」

 

 カテレア・レヴィアタンはその名の通り、先代魔王レヴィアタンの血族。先代魔王が神と相討ちになり滅び、新たな魔王にサーゼクス様やセラ姉さんらの力のある若手が選ばれた時、最後まで反対し、徹底抗戦を訴えた者達───旧魔王派と呼ばれる者の一人。

 旧魔王派はサーゼクス様達が樹立した新政権に対して戦いを挑むも敗北し、冥界の隅に追放されたそうだ。そのカテレアら旧魔王派は現政権への恨みから『禍の団』へ参加し、今や一大派閥を形成しているという。

 

「カテレアちゃん、どうして!?」

 

「黙れセラフォルー! 私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!! ・・・・・正統なるレヴィアタンの血を引く私こそが魔王に相応しいのというのに!!」

 

「カテレアちゃん、私は・・・・・」

 

「何だ、要はただの嫉妬か。つまらん奴だな」

 

 さっきから自分に代わり魔王となったセラ姉さんに不満をぶつけているカテレアに向かい、俺はそう言い放つ。

 

「貴様、今何と言った・・・・!?」

 

 俺の放った言葉に驚く者や呆然とする者、興味深そうな顔をする者の中、カテレアは顔を引きつらせる。

 

「聞こえなかったのか? あんたはさっきから自分こそが魔王に相応しいと言ってるが、あんたの正統性は血筋だけだろ? 強さも美しさも人気も何もかもセラフォルー様に敵わないじゃないか。

あんたがしてるのはただの嫉妬だ。そもそもセラフォルー様が魔王になってどれだけ月日が経ってると思ってるんだ。そんな過去の話を今更蒸し返したって、何の意味がある?」

 

 俺がそう言うと我慢出来なかったのか、アザゼル総督が吹き出した。

 

「プッ、クククク・・・・・」

 

「・・・・何がおかしいのです、アザゼル」

 

 現れた時の不敵な顔は見る影もなく、カテレアは苛立ちに顔を歪めていた。

 

「いや、そいつの言う通りじゃねえか。御大層な名目を掲げてもお前のやってる事の根底にはセラフォルーに対する嫉妬が丸見えだ。浅いんだよお前は。まるで一番最初に死ぬ敵役みたいだぜ?」

 

「アザゼルッ! どこまで私を愚弄すれば気がすむのか!!」

 

 アザゼル総督の挑発に切れたカテレアが全身から魔力のオーラを漲らせた。

 アザゼル総督はニヤリと笑い、一歩踏み出そうとするが、その前に俺が進み出る。

 

「ダメですよ、アザゼル総督。人の獲物を盗らないで下さい」

 

 俺とアザゼルの視線が一瞬交錯すると、アザゼルは嘆息しつつ引き下がった。

 

「チッ、わーったよ。確かにお前が先約だ」

 

「どうも。サーゼクス様、セラフォルー様、構いませんね?」

 

 俺は視線を二人の魔王に向けた。

 

「カテレアちゃん、降るつもりは無いの?」

 

「ふざけるな! あの小僧の次はお前だセラフォルー! お前を殺して私こそが真の魔王だと世に知らしめてくれるわ!!」

 

 セラ姉さんの勧告にカテレアは従う様子を見せない。まあ当然だな。

 

「残念だよカテレア・・・・・・。一輝君、やりたまえ」

 

「了解」

 

 サーゼクス様の許可が下りた次の瞬間、俺は魔力を脚に集中させ、一気にカテレアに接近する。

 

「なに!? グフゥッ!!」

 

 最近おなじみとなって来た【虎砲】による開戦の一撃を食らい、カテレアは窓を突き破り外へと吹っ飛ぶ。

 

「行って来る」

 

「ええ、気をつけて」

 

 リアスと短く言葉を交わし、俺はカテレアを追って外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
ご覧の通りギャスパーはリアスの眷属ではありません。
2人目の僧侶は別の人になります。
ギャスパーは後々出す予定なので、気長にお待ち下さい。
次回は全編バトル、エロなしになります。


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第15話 赤と白の激突


感想並びに誤字報告ありがとうございます。
今回はエロなしですが、ご覧下さい。


 

「はあっ!」

 

 祐美()の聖魔剣が防御障壁ごと敵魔術師を斬り裂く。かなりの数の敵を斬ったというのに数が減った気がしない。

 周りでは小猫ちゃんの拳やゼノヴィアのデュランダル、朱乃さんの雷で大勢の魔術師が倒されているのにおかしいと思っていたら、後方に設置された複数の魔方陣から未だに魔術師が次々と出現していた。

 

「・・・・・キリがないわね」

 

 私達の後方には傷つき倒れた三大勢力の護衛達がアーシアさんの治療を受けている。イッセー君が護衛に付いているとは言え、この数ではいつ突破されてもおかしくない。

 私達より先に飛び出した白龍皇は敵を倒しつつ校舎裏に回ったから姿が見えないけど、私達より強い彼女がやられるとは到底思えない。とにかくあの魔方陣を潰さなければこちらが消耗するだけだし何とかしたいんだけど、数が多すぎて手が回らない。

 そんな風に焦りを募らせていた時、

 

 ガシャアァァンッ!!

 

 窓ガラスが割れる音がして、何かが会議室から飛び出した。それは翼を広げると空中で体勢を整える。

 

「ガハッ! おのれ、下等な転生悪魔風情が!!」

 

 その褐色の肌の女悪魔は血を吐きながら忌々しげに呟く。そして、その後を追って先輩が窓から飛び出した。

 

「ガイバーーーーーー!!」

 

 先輩が光に包まれ、紅の鬼神──ガイバーと化す。

 ガイバーに殖装した先輩は宙に浮かびながら、

 

「かかって来いよ、カテレア・レヴィアタン」

 

 挑発するように手招きする。女悪魔──カテレアは地上(ここ)からでも分かる程怒り狂い、先輩に襲いかかった。

 

「はああっ!!」

 

「おおおっ!!」

 

 上空で轟音が轟き、閃光が瞬く。

 ガイバーに殖装した先輩とカテレアの激突。その余波は周囲に伝播し、戦場全体が震える。 

 旧魔王の血族だけあってカテレアが漲らせるオーラは上級、いや最上級悪魔に匹敵する。でも、そのカテレアと一輝先輩は互角以上に渡り合っていた。

 カテレアの放つ魔力弾は先輩の作り出した【ブラックホール】に吸い込まれ届かないが、先輩の【プレッシャーカノン】もまた、カテレアの魔力障壁に阻まれる。けど先輩は【プレッシャーカノン】を連射、防御に掛かりきりになったカテレアの一瞬の隙を突いて【グラビティキック】を放った。流星のようなその一撃はカテレアの魔力障壁を破壊した。

 一輝先輩は不破圓明流の達人で接近戦のスペシャリスト。カテレアも接近戦では歯が立たず、先輩の拳を受け、身体をくの字に折れ曲がった。そこに左右同時の回し蹴り【双龍脚】が放たれカテレアを吹き飛ばした。

 

「ぐはぁっ! おのれ! 下等な転生悪魔風情が真の魔王たる私によくも!!」

 

 吹き飛ばされながら、何とか空中で体勢を立て直したカテレアは屈辱に顔を醜く歪ませると、懐から小瓶を取り出した。

 

「・・・・くっ、こうなればやむを得ん。私の真の力、貴様の身で確かめるがいいわ!!」

 

 カテレアはそう言うと、小瓶から飛び出した黒くて細長いモノ──あれは蛇?を飲み込んだ。

 

 次の瞬間、突然膨れ上がった力の波動が戦場全体を揺るがした。

 

「これは!?」

 

 凄まじい力の波動に立っていられず、敵も味方関係なく吹き飛ばされる。私は聖魔剣を地面に突き立て辛うじて耐えると、空を見上げ驚愕した。

 カテレアの全身から膨れ上がった魔力が炎のように迸り、不気味なオーラを形成していく。そのオーラは以前見たサーゼクス様と同じ位強大だった。

 

(こ、これが魔王の血族の力!?)

 

 一輝先輩は【プレッシャーカノン】を撃つけど、迸るオーラに遮られ、まるで通用しない。

 

「ククク、この私を侮辱したのだ。楽に死ねると思うな!!」

 

 魔王クラスにまでパワーアップしたカテレア・レヴィアタンが再び一輝先輩に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

(成る程、これがオーフィスの“蛇”か)

 

 オーフィスの“蛇”を飲み、パワーアップしたカテレアが先程より強く鋭い攻撃を放つ。だが一輝()はその攻撃を見切り、軽々とかわしていく。 

 この先『禍の団(カオス・ブリゲート)』と戦うに当たり“蛇”によるパワーアップがどれ程のものなのか確かめる為、わざとカテレアが“蛇”を飲み込むのを見逃したが、本来敵がパワーアップするのを黙って見過ごすなどあり得ない。

 

(見た所通常の五倍から十倍、瞬間的には更に力が増しているようだが、残念ながらその力を扱い切れてないな)

 

 確かにカテレアの力は想定以上に上がっていたが、ただそれだけだ。強化された力を制御(コントロール)出来てないから振り回すだけで当たらない。折角の魔力も収束せず垂れ流してるだけだから魔力の無駄遣いでしかない。

 所詮オーフィスの“蛇”も道具にすぎず、結局は使う者次第という事か。

 

「くっ! バカな!? オーフィスの“蛇”で強化された私の攻撃が通じないなんて!? そんな事はあってたまるか!!」

 

 必死の形相で攻撃し続けるカテレアだったが、奴の力は既に見切った。

 今のカテレアよりあの夜に戦ったサーゼクス様の方が何倍も強く、そして恐ろしかった。

 俺はあの高みを目指す。大切な人達を守る為にあの高みに到達しなくちゃならない。その為にもこんな借り物の力に振り回されている奴に負ける訳にはいかない。

 

「食らえええーーーーーっ!!」

 

 カテレアの放った百発近い魔力球が俺の周囲で爆発する。成る程、単発では防がれるから数による飽和攻撃に切り替えたのか。だが───

 

「やったか!?」

 

 喜色を浮かべるカテレアだが、その台詞はフラグだぞ。

 

「これで終わりだ、カテレア・レヴィアタン!」

 

 俺は爆煙を潜り抜けカテレアの真正面に姿を現すと、両手でカテレアの頭を挟む。

 

「!!!?」

 

 一瞬の交錯の後、俺はカテレアから静かに手を離した。

 

「不破圓明流奥義、【菩薩掌(ぼさつしょう)】」

 

 呆然としたまま宙に浮かんでいたカテレアは、やがて口や鼻だけじゃなく、目や耳からも血を垂れ流し、

 

「バ、バカな・・・・・」

 

 そのまま地上に落下すると、もう二度と動かなかった。

 

 

 

 

 

 一輝が勝った。愛する人の無事な姿にリアス()はそっと胸を撫で下ろした。

 

「良かった、一輝・・・・・」

 

 私がホっとして呟くと、

 

「オイオイ、あの状態のカテレアを一撃かよ。ヤベーな、あいつ」

 

 アザゼルが嬉々として言った。その時、会議室の床に魔方陣が走り、白い鎧を纏ったヴァーリが現れた。え? あの魔方陣の紋様って───

 

「ヴァーリか。状況は?」

 

「つまんない。弱い奴ばっかりよ」

 

 ヴァーリは鎧のマスクを開いて、端整な顔を顕にする。そして───

 

「だから私は向こうに付く事にするわ、アザゼル」

 

 ズンッッ!!

 

「ヴァーリ、お前・・・・・」

 

 アザゼルの身体をヴァーリの貫手が貫いた。

 血を吐き、床に倒れるアザゼル。彼の腹部からドクドクと血が流れていた。

 

「アザゼル! いかん、リアス、至急アーシア君を!」

 

「は、はい!」

 

 アザゼルに駆け寄ったお兄様に指示されて私は至急『(キング)』のみが使える眷属を召喚する魔方陣を開き、アーシアを喚んだ。

 

 

 

 

 

 突然足下に魔方陣が走り、アーシアとすぐ側にいたイッセー()はいきなり転移した。

 転移先はさっきまでいた会議室。何故か足下にアザゼルが血を流して倒れている。何だ? 何が起きてるんだ?

 

「アーシア、アザゼルの治療を!」

 

「は、はい!」

 

 事情を把握する前に部長の指示が飛んだ。

 突然の召喚に驚いていたアーシアだったが、部長の指示に急ぎアザゼルに駆け寄り、彼女の神器【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】を発動させる。優しい光に包まれ、アザゼルの傷が癒されていく。

 室内は緊迫感に満ちて、誰もが白い鎧を纏ったヴァーリを注視している。

 何がどうなってるのかさっぱり分からん。誰か説明してくれ!

 

「・・・・すまねえな、聖女の嬢ちゃん。身内がこれとはな。・・・全く、俺もヤキが回ったもんだぜ」

 

 アーシアの治療を受けながらアザゼルが呟く。

 

「なあ、いつからだ? いつからお前はそうなった?」

 

「コカビエルを連れ帰る途中で誘われたのよ。悪いわねアザゼル。こっちの方が面白そうだから」

 

 事情の分からない俺を置いてきぼりにして、二人の会話は続く。

 

「ヴァーリ、白龍皇であるお前がオーフィスに降るのか?」

 

「いいえ、あくまで協力するだけよ。だって『他の神話勢力と戦ってみたくないか?』──なんて魅力的なオファーをされたら私は断れないもの」

 

「白龍皇、いくら貴女でも神々と戦っては無事ではすみませんよ?」

 

「関係ないわ。私はただ強い相手と戦いたい。それだけよ」

 

 ミカエルさんに言われてヴァーリが素っ気なく返す。何だこいつ、破滅願望でもあるのか? 折角美人なのに勿体ない。

 

「私も聞きたい。君の魔方陣、あれは───」

 

 サーゼクス様の問いかけにヴァーリは微かに笑みを浮かべる。そして───

 

「そうよ。私の本名はヴァーリ、ヴァーリ・ルシファー」

 

 そう静かに、だがはっきりと名乗った。

 

 ヴァーリ・・・・・ルシファー(・・・・・)だって!?

 

「じゃあ、お前も悪魔なのかよ!?」

 

「正確には混血児(ハーフ)よ。私は大戦で死んだ先代の魔王ルシファーの孫である父と人間の母との間に生まれたの。【白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)】は半分人間だから宿ったものよ。偶然だけどね」

 

 ヴァーリはそう言って苦笑を浮かべる。

 

「そんな・・・・・嘘でしょう!?」

 

 部長がヴァーリの正体に驚愕する。

 

「・・・・事実だ。恐らくは過去現在未来に至るまで最強の白龍皇になるだろうな。ったく、冗談みたいな存在だぜ。で? 『禍の団(カオス・ブリゲート)』への手土産に俺の首を取ろうってのか?」

 

 アザゼルが皮肉げに言うと、ヴァーリは顎に手を当てて小首を傾げ考える仕草をする。ちくしょう、ちょっと可愛いじゃねーか!

 

「う~ん、最初はカテレアがセラフォルー・レヴィアタンを殺して『禍の団』の存在をアピールする筈だったんだけど、何であいつ不破一輝と戦って、しかもやられてるのかしらね? ・・・・・流石にこの面子と真正面から戦うつもりは無いから、今日の所はお暇するわ」

 

 なっ!? これだけの騒動を起こしておいて帰るだと!? ふざけやがって!!

 俺が不満気に睨み付けていると、それに気づいたヴァーリがニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ふ~ん、正直君にはそこまで期待してないし、どうするか迷ってたんだけど、そんな目をされちゃ無視出来ないわね・・・・・ねえ兵藤一誠君、運命って残酷だと思わない?」

 

 ヴァーリが突然俺に問いかける。

 

「私みたいにな魔王プラス伝説の(ドラゴン)といった思い付く限りの最強の存在がいる反面、君のようにただの人間に伝説の(ドラゴン)が憑く事もある。いくら何でもこの偶然は残酷だと私は思うの。だっていくら『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』がライバル同士戦う運命だからって、所有者である私達に差がありすぎるわ」

 

 ぐっ、悔しいけど奴の言う通りだ。何も言い返せねえ。

 

「君の事は少し調べさせて貰ったわ。両親はいたって普通の人間で、先祖に特殊な力を持つ者がいた訳でもないし、天使や悪魔に関わってもいない。平凡で普通などこにでもいる男子高校生、それが君よ。本当に【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】以外、何もない。まあ、人並み外れたスケベではあるみたいだけど」

 

 ヴァーリの目に哀れみが浮かぶ。悪かったな!人並み外れたスケベで!!

 

「つまんない。あまりにつまんな過ぎて君の事を知った時、思わず笑っちゃったわ。『ええ~、これが私のライバルなの!?』って。せめてこう、何かあれば

・・・・・そうだ、こういう設定はどう? 君は復讐者になるの!」

 

 いきなりいい案が閃いたと言わんばかりに浮かれるヴァーリに戸惑いを隠せない。こいつは一体何が言いたいんだ? そう思っていた俺に聞き逃せない言葉が飛び込んで来た。

 

「私が君の両親を殺すの!」

 

 ───ア゙?

 

「そうよ、そうすれば君の身の上が少しは面白くなるわ。宿命のライバルである私に両親を殺され、君は両親の亡骸を前に私への復讐を誓う──うん、これは盛り上がる! そう思わない?」

 

 ───コイツイマ、ナンテイッタ?

 

「どうせ君の両親なんてこれから先、普通に老いて死ぬだけでしょ? だったら私達の対決を盛り上げる役に立つ方がずっとマシだわ! どうかしら?」

 

 ───ヤクニタツ? ズットマシ? ソンナコトノタメニトウサントカアサンヲコロスダト!?

 

「ざけんな、殺すぞこの(アマ)

 

 自分の声だというのが信じられない位低い声が漏れる。心の中に激しく、ドス黒い感情が沸き上がって来る。怒りを通り越して芽生えたこの感情───そうか、これが殺意か!

 

 気付けば俺は【赤龍帝の籠手】で奴を殴っていた。

 

「グッ───!?」

 

 窓際まで吹っ飛ぶヴァーリ。咄嗟にガードされたから大して効いてないだろう。だったら効くまで殴り続けるだけだ。

 

「うおおおおおーーーーーっっ!!」

 

 奴に近付き、鎧の上から構わず殴り続ける。

 右に左に、ガードされるのも構わず連続して拳を叩き付ける。鎧の上からでも、拳から血が流れても構わずに。

 痛みなんか感じない。とっくにブチ切れて、もうこいつをブン殴る事しか考えられなかった。

 

「何で!お前の!下らねえ思惑で!俺の父さんと母さんが!殺されなくちゃならねーんだ!! ふざけんな! お前が!父さんと母さんを!殺すってんなら!その前に俺が!お前をブッ殺す!!!」

 

 怒りのままに、殺意のままに俺は拳を叩き付ける。十秒毎に【赤龍帝の籠手】が力を倍加し、威力が増していく。やがて、

 

 ピシッ!!

 

 乾いた音を立ててヴァーリの鎧に亀裂が入った。チャンス! 一気に畳み掛けてやる!!

 そう思って拳を降り下ろした俺の目に、ヴァーリがニヤリと笑うのが見えた。

 

「ぐふっ!?」

 

 しまった、ヴァーリの放った蹴りをカウンターで食らっちまった。壁際に吹き飛ばされ崩れ落ちる俺を見下ろし、ヴァーリがゆっくりと立ち上がる。

 

「フフ、アハハハ! 凄いじゃない一誠君! まさか私の鎧に傷を付けるとは驚いたわ。どうやら君は私の思ってた以上の“爆発力”を持っているようね。

うん。これならもう少し様子を見てもいいかな?

今の君に免じてご両親を殺すのは延期してあげる。

じゃあ、次の機会を楽しみにしてるわ」

 

 白い鎧がみるみる修復されていく。あれだけブン殴ったのに効いてないのか。悔しさに歯噛みする俺に嘲笑を浮かべつつ、ヴァーリはマスクを閉じると光の翼を広げて飛び出した。

 

「ま、待ちやがれヴァーリ!!」

 

「赤龍帝!」

 

 痛む身体に鞭打ち、ヴァーリを追おうとした俺にアザゼルが何かを放った。何だこのリングは? 何かのアクセサリーか?

 

「持ってけ。そいつは【神器(セイクリッド・ギア)】をある程度抑える効果がある。お前『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』の力を使いこなせないんだろ? なら嵌めろ。短時間なら『禁手(バランス・ブレイカー)』状態になれる筈だ」   

 

 マジかよ!? これを嵌めれば俺も『禁手』に!?

 

「但し一回こっきりの使い捨てだ。『禁手』になったら魔力も体力も急激に消耗するから気を付けろ」

 

「感謝するぜアザゼル!」

 

 俺はヴァーリを追って窓から飛び出した。

 

「やるぞドライグ!!」

 

《おお! 白いのに目に物見せてやろうぞ、相棒!!》

 

「行くぜ、禁手化(バランス・ブレイク)!!

 

『Welsh Dragon Balance Braker!!!』

 

 【赤龍帝の籠手】の宝玉がかつて無い程眩い光を発して、俺の全身を包む。赤い光が止むと、俺は龍を模した赤い全身鎧(プレートアーマー)を纏っていた。これが【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の禁手(バランス・ブレイカー)、【赤龍帝の鎧(ブーステッドギア・スケイルメイル)】か!! 凄え! 全身に力が漲って来る。これなら!!

 俺は上空を翔ぶヴァーリを見据えると、龍の翼を広げ、ヴァーリ目掛けて翔んだ。

 

《相棒、この状態(バランス・ブレイカー)だが、今のお前では三分しか持たんぞ》

 

 今の俺には『禁手』になる地力が足りない。アザゼルのブレスレットのお陰で無理矢理なってるだけだし仕方がないんだがたった三分かよ!? でも!

 

「三分で充分だ! 三分であいつをブッ飛ばす!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』 

 

 力を倍加し続け、赤い光の矢と化した俺は一直線にヴァーリ目掛けて突っ込む。

 

「逃がさねえぞ、ヴァーリ!!!」

 

 振り向いた奴に俺はそのまま衝突し、勢いのままに拳を振り下ろした。

 

「うおおおおーーーーーっっ!!!」

 

 バキャンッ!!

 

 力を増大させた俺の拳はヴァーリのドテっ腹に命中し、奴の鎧を粉砕した。

 

「ガハァッ!?」

 

 砕けた鎧の破片を撒き散らしながらヴァーリは地上へ落下する。

 

「食らいやがれーーーーっっ!!!」

 

 そのまま俺は威力を倍加させた【ドラゴンショット】を落下するヴァーリ目掛けて撃った。

 

ズドオォォンッ!! 

 

 爆発音と共にもうもうと土砂が舞い上がる。土煙りが晴れると、巨大なクレーターが出来ていて、その中心にはヴァーリが倒れていた。

 

「ハア、ハア、や、やったか!?」

 

 アザゼルの言った通り、『禁手』は魔力も体力も無茶苦茶消耗する。正直座り込みたい気分だ。

 ヴァーリは完全に意識を失っているようで、ピクリともしない。俺はホッとため息を吐くと、ヴァーリを連行する為、クレーターへと降下する。だが───

 

「───フフ、」

 

 不意に聞こえた笑い声に俺は上空で停止した。

 

「フフフフ、アハハハハッ!」

 

 心底楽しそうな笑い声を上げて、ヴァーリがムクリと起き上がった。

 

「いいね! 素晴らしいよイッセー君! 現時点で君がここまでやるとは思わなかったわ!!」

 

 何だコイツは? ダメージを負っている筈なのに嬉しそうに、楽しそうに笑ってやがる。奴の笑い声が妙に腹立たしい。

 

「何が、何がおかしいんだ、テメーは!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!』

 

 怒りにまかせて俺は拳を振るう。だが、

 

『Divide!』

 

 白龍皇の宝玉から音声が聞こえると、俺の力が一気に消失する。何だこれは!?

 

「ガアッ!?」 

 

 突然の事態に動揺した俺にヴァーリの回し蹴りが炸裂し、吹っ飛ばされる。ちくしょう、何て威力だ!?

 

「くそっ! 何だ今のは!?」

 

《気を付けろ相棒。あれが奴の能力『半減』だ》

 

 半減!? 俺の倍加と対を成す能力が奴にはあるのかよ!?

 

《その通りだ相棒。それから奴に半減された力は俺の倍加で戻るが、攻撃時に半減された力は奴の力になる。さっきの回し蹴りみたいにな》

 

 ちくしょう、そういう事かよ。だがこっちは時間制限があるんだ。迷ってる場合じゃねえ!

 

「っの野郎ーーーっ!!」

 

『BoostBoostBoostBoost!』

 

「失礼ね、私は女よ?」

 

『Divide!』

 

 空中で激しく打ち合う俺とヴァーリ。だが、俺が必死に力を倍加させても奴は余裕で半減させてしまう。

 

《相棒! もう時間がないぞ!!》

 

 ドライグの声がするが、俺の拳は奴には届かない。そして───

 

『Time Over』

 

 無情にも宝玉から音声がすると、俺の鎧が赤い光となって散った。アザゼルから貰ったリングが砂のように崩れ、『禁手』が解けちまった。

 途端に激しい脱力感と倦怠感に見舞われ、膝から崩れ落ちる。立ち上がろうにも力が入らない。

 

「やれやれ、お粗末な結末だけど中々楽しかったわ、イッセー君」

 

 ヴァーリが手刀を振り下ろす。だが、避けようにも俺にはもう動く力も残っていなかった。

 

(ちくしょう、ここまでか───!!)

 

 迫る手刀がスローモーションのように見える。その時、俺の視界が一面の紅に染まる。

 

 ギィィン!!

 

「諦めるなんてらしくないぞ、イッセー」

  

「か、一輝先輩!?」

 

 目の前には【高周波ブレード】でヴァーリの手刀を受け止めるガイバー(一輝先輩)の背中があった。

 

 

 

 

 間一髪間に合った。

 魔方陣で喚び出されたイッセーが白龍皇(ヴァーリ)を追い、『禁手(バランス・ブレイカー)』になって戦い始めたのには驚いた。

どうやら一輝()が早々にカテレアを倒してしまったからか、かなり展開が変わったようだ。

 目の前で繰り広げられる赤と白の激突。その趨勢は次第に白へと傾いていった。そして『禁手』の制限時間(タイムリミット)が来たのか、イッセーの鎧が解除され、ヴァーリの前に無防備な姿を晒してしまう。俺はイッセーを救うべく、二人の間に割り込んだ。そして───

 

「フフ、今日はいい日だわ・・・・・赤龍帝(イッセー君)だけじゃなくガイバー()とまで戦えるとは!」 

 

「裏切ったのか、ヴァーリ?」

 

「ええ、強者との戦いこそ我が望み! 戦いの無い平和な世界なんて私には我慢出来ないわ! だからこそ私は『禍の団(カオス・ブリゲート)』に身を投じたのよ!!」

 

 戦闘狂め・・・・・いいだろう。望み通り相手になってやる!

 

 俺が静かに構えを取ると、ヴァーリもまた口を閉ざし構えを取った。マスク越しに互いの視線が交錯し、次の瞬間、俺達は真正面から激突した。

 互いの拳がその身を掠めるがクリーンヒットは一発も出ない。ならばと右回し蹴りを放つと、奴もまた同じく回し蹴りを放った。蹴りの激突が周囲に衝撃波を撒き散らす。

 

「チッ!」

 

「フフッ」

 

 まるで俺に出来る事は自分にも出来ると言わんばかりのヴァーリの態度に腹が立つ。だったら、これならどうだ!

 さっきと逆で左回し蹴りを放つ。ヴァーリは右手でガードしたがそれと同時に俺の右回し蹴りがヴァーリの側頭部にカウンターで命中した。

 

「カハッ!!」

 

「不破圓明流【双龍脚】」

 

 ヴァーリの身体がグラつく。俺は勝機と見て【虎砲】を放った。だが、

 

『Divide!』

 

 【虎砲】の威力を半減され、ほとんどダメージを与えられない。実際対峙してみると、この半減の能力はかなり厄介だ。ならばと俺は右ストレートを放つと、

 

『Divide!』

 

 再び半減されるが、本命はこれじゃない。ストレートを放った勢いそのままに、肘を折り曲げてヴァーリの胸を撃ち貫いた。

 

「不破圓明流【蛇破山】」

 

「グハァッ!!」

 

 今度は半減が間に合わなかったのか、まともに入った。ヴァーリのマスクから鮮血が溢れ、白い鎧を赤く染める。白い鎧に亀裂が入り、砕け散るが、それでもヴァーリは倒れない。いや、それ所か嗤っていた。

 

「フフ、フフフ、アハハハーーーー!! 素晴らしい、これが不破圓明流か! 今まで見て来たどの武術共違う古流の武術。長年人を倒す為に研鑽され続けた技術の何と素晴らしい事か! 全く、今夜は最高の気分だわ!!」 

 

 ・・・・・戦闘狂だとは思っていたが、これ程とは思わなかった。ここまで来るとイッセーとは別のベクトルの変態だと云えそうだ。

 

「さあ、続けましょう! 血沸き肉躍る戦いを!!」

 

 変態(ヴァーリ)が嗤いながら襲いかかる。【双龍脚】と【蛇破山】は確実に入った。いくら鎧で軽減されたとしてもかなりのダメージの筈なんだが、効いてるようには見えない。アドレナリンが出て痛みを感じてないのか?

 

(こうなれば一撃で意識を断つ───!)

 

 そう決断した俺は大技を放つ隙を伺っていた。そして、激しい攻防の最中、ヴァーリが左回し蹴りを放つ。反射的に不破圓明流の防御技【浮身(ふしん)】で反対側に跳んだその時、

 

『Divide!』

 

 という音声が聞こえると同時に左側頭部に衝撃を受けて、俺の意識は闇に沈んだ───

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回はヴァーリ戦の決着とあのヒロインとの初エッチをお送りします。


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第16話 修羅の如く☆☆(祐美、ゼノヴィア)


アンケートに大勢協力していただき、ありがとうございます。
アンケートの結果、イッセーのヒロインはアーシアに決定しました。
流石原作でも鉄板のカップル、2位と大きく差をつけての1位でした。
よって本作ではアーシアの濡れ場はありませんので、ご了承下さい。

それでは予告通りあの娘との初エッチをお送りする、第16話をご覧下さい。





 

 

 祐美()は目の前の光景が信じられなかった。

 あの一輝先輩がヴァーリの一撃を受けて倒されている。

 

「信じらんねえ・・・・・一体何があったんだよ!?」

 

 イッセー君の声がこの場の眷属(私達)共通の気持ちだろう。一輝先輩は不死身のライザー・フェニックスや堕天使幹部コカビエルさえ打ち倒した私達にとって最強の代名詞と云える人だ。その先輩が白龍皇に倒された光景は私達には受け入れ難い、信じられないものだった。

 

「見えたか祐美。白龍皇の放った技を」

 

「ええ、見えたわゼノヴィア。間違いない、あれは【双龍脚】よ」

 

 私の言葉にゼノヴィア以外の皆が驚愕する。無理もない。速さに特化した私達騎士(ナイト)だから見えたけど、その私達ですら信じられないのだから。

 

「しかも一輝センパイのオリジナルよりも威力は上だ」

 

 ゼノヴィアの言葉にイッセー君が噛み付いた。

 

「バカな!? ヴァーリの技は一輝先輩の猿真似だろ!? なのに何で先輩のより威力があるんだよ!?」

 

「・・・・半減、ですわね」

 

「朱乃さん? 半減って・・・・?」

 

「そうだ。白龍皇は左回し蹴りの後に半減の力を使ったんだ」

 

「でもゼノヴィア、一輝先輩はガードしただけで攻撃は・・・・あっ!」

 

「気付いたかイッセー。白龍皇はセンパイの防御力を半減したんだ」

 

「それだけじゃないわ。イッセー君も知ってるでしょう? 不破圓明流の防御技【浮身】を」

 

「えっと、確か攻撃を受けた際、自分から反対側に跳ぶ事でダメージを受けなくするって技だよな?」

 

「そうよ。先輩は普段から無意識の内に【浮身】を使ってたの。そこに白龍皇の【双龍脚】を受けてしまったら?」

 

「!・・・・じゃあ先輩は自分からカウンターを貰いに行っちまったのか!?」 

 

 そう。防御力を半減された上に自らカウンターを受けに行ってしまった。相乗効果で先輩のオリジナルより威力は上だろう。あれでは意識は慮か下手したら命まで───!! 

 

「一輝先輩!!」

 

 思わず駆け出そうとしたその時、凄まじい闘気が巻き起こった。あれは───!?

 

 

 

 

「どこへ行くのです、お嬢様」

 

 ヴァーリ・ルシファーに倒された一輝さんを見て、駆け出そうとするリアスを(グレイフィア)は止める。

 

「決まってるでしょう!? 行くわよアーシア!!」

 

「はい!!」

 

 激情のままにリアスが叫ぶ。やれやれ、少しは成長したと思っていましたがまだまだですね。

 

「少し落ち着きなさい、リアス」

 

 私がメイドでなく義姉(あね)として命じると、リアスは気圧され、悔しそうに唇を噛む。全く、心配しながらも状況を見守るソーナさんを少しは見習って欲しいものです。 

 

「それにしても、ヴァーリ・ルシファー・・・・恐るべき戦闘センスですね」

 

「まあな。言ったろミカエル、最強の白龍皇だって」

 

 アザゼルが自慢気に語っていますが馬鹿ですか?馬鹿でしたね。ついさっき腹に穴を空けられた癖に何を言ってるんですか。

 

「サーゼクスちゃん・・・・・かずくん、大丈夫だよね・・・」

 

「・・・・大丈夫だセラフォルー。彼はこの程度では終わらない」

 

 不安そうに訊ねるセラフォルーにサーゼクスはそう答えますが、サーゼクス自身も自分を信じ込ませようとしているのか、唇を噛みしめ倒れた一輝さんを見つめています。

 一輝さん、貴方はここで終わってしまうのですか? あの夜、私の予想を覆し驚かせた貴方の姿をもう一度私に見せて下さい。───と、その時、凄まじいまでの闘気が突如戦場に発生しました。あれは───!?

 

 

 

 

 

 不破一輝との戦いは最高だった。

 近頃ヴァーリ()は強くなりすぎたのか、心の底から満足のいく戦いは出来なかった。自分が最強だなんてまだ(・・)言わないが、今の私を倒せるのはそれこそアザゼル(クラス)の者だけになってしまった。

 まだ不破一輝は生きているようだが、私は久し振りに心から戦いを楽しんで、すっかり満足していた。

 

「楽しかったわ、不破一輝。また戦い(やり)ましょう」

 

 私を楽しませてくれた彼にそう呟いて、私は踵を返した。その時────!

 

 

 ドンッッ!!

 

 

「!!!?」

 

 突如背後から凄まじい闘気を感じて、その場から跳び退いた。

 

「今のは───!?」

 

 焼き尽くされそうな灼熱の闘気に心臓が早鐘を打ち、全身の毛穴から冷や汗が滲む。それでも私は気を強く持って、闘気の発生源──ゆっくりと立ち上がるガイバー(不破一輝)を睨んだ。

 

「───ひとつ、思い出したよ」

 

 ガイバー(不破一輝)はゆっくりと私に向かって歩き出す。

 

「圓明流は地上最強を目指し、数多の強者と戦い1000年もの間無敗を誇って来た。だが不破圓明流は時代の闇に生き、人を如何に殺すかを1000年に渡り突き詰めて来た──人殺しの技だ。

祖父から半ば無理矢理叩き込まれたが、平和な世の中で使い途は無いし、俺の代で途絶えるのもいいかと思っていた。だが、悪魔に転生して戦いに身を置くようになると・・・・・疼くんだよ。身体が、心が、そして何よりも血が。俺に流れる不破の血が敗北する事を許さないんだ。

───ヴァーリ・ルシファー。魔王の血を引き、伝説の(ドラゴン)の力を持つお前は強い。だが俺にもう敗北はない。───俺に流れる血を、『不破』の名を思い出しちまったからな・・・・・・」

 

 ガイバー(不破一輝)が一歩一歩近づいて来る。まるで炎のように燃えさかる闘気に私の警戒心が最大限に高まり、自然に構えを取った。

 

「ふぅん───ならばその血の力とやらを見せて貰おうか!!」

 

 私は接近するガイバーに攻撃すると、奴は難なく受けて反撃する。突きや蹴りの応酬から投げ技、間接技とガイバーは多彩な技で私を追いつめる。私も薙ぎ、払い、時には半減の力を使って反撃する。私達は互角の攻防を繰り広げ、互いにダメージを積み重ねる。そして───

 

「ク、フフフッ───」

 

「フ、ハハハッ───」

 

 その内、自然に声を上げて笑っていた。

 

(ああ───何て、何て愉しいの!)

 

 美しかった純白の鎧はあちこち砕け、血と泥にまみれている。正直限界が近い。それでも私はこの戦いをやめたくなかった。

 私はずっと戦って来た。アザゼルに拾われ、白龍皇として覚醒する前からずっとだ。

 戦いは愉しい。戦いの中でこそ私は生きてるって実感を得られる。だが私が愉しめる程の強敵は各陣営でもトップの一握りだけ、これで和平が成立してしまえば戦う機会を失ってしまう。だからこそ『禍の団』からの誘いを受けた。そして今、私は最高の気分を味わっていた。

 灼熱の闘気を纏った回し蹴りが首を掠め、炎のような激しい拳打が私を打ちのめす。威力を半減させてる筈なのに身体の芯まで響く衝撃に私は歓喜して反撃する。

 

(ああ───いい! これだ、これこそ私の求めていたものだ! この歓喜! この愉悦! もう、もう────濡れる!!!)

 

 拳を、命を交わす度、あまりの悦楽に私の股間はいつしかグッショリと濡れていた。

 

 

 

 

 

 

「一輝・・・・・・」

 

 一輝とヴァーリ。二人は戦いながら、互いに必殺の一撃を放ちながら嬉しそうに、楽しそうに笑っていた。

  

「やはり彼にはまだ先があったな」

 

「お兄様・・・・・・?」

 

 まるで一輝のあの姿を予想していたようなお兄様をリアス()は見上げる。

 

私と戦った時(あの時)からずっと感じていた。彼にはそう、リミッターが掛かっていると」 

 

「リミッター・・・・?」

 

「ではあの状態でも彼は手加減していたと?」

 

「いや、全力ではあったのだろう。でもそれはあくまで理性を保った状態でだ。今の闘気を剥き出しにした状態とはまるで別物だ」

 

 私やグレイフィアの問いにお兄様が答える。

 

「・・・・あの凄まじい闘気、まるで“修羅”だな」

 

 アザゼルの言う通り、今の一輝はまさに“修羅”だ。私はゴクリと唾を飲み込み、戦いの行く末を見守っていた。

 

 

 

 

 

 何度も突きや蹴りが入り確実にダメージは与えている筈なのに、それでも(ヴァーリ)は攻撃して来る。正直一輝()も限界が近い。蓄積したダメージに身体に力が入らなくなって来ていた。

 

(奴を倒すには一撃で意識を奪うような技──奥義を放つしかない。だが奴に半減されてしまえば意味がなくなる。───どうする?)

 

 その時、不意に思いついた。そうだ、あの奥義なら───!

 

「どうしたの? 急に距離を取って」

 

 最後の一撃を放つ為に、俺は奴から距離を取った。そんな俺を訝しみヴァーリが訊ねる。

 

「今から最後の技を放つ。絶対不可避のこの技を見事避ける事が出来たら──お前の勝ちだ」

 

 構えを取る俺にヴァーリは砕けたマスクの下から淡麗な顔を覗かせ、笑みを浮かべた。

 

「面白い───受けて立とう!」

 

  ヴァーリが言い放つと同時に俺は真っ直ぐダッシュする。そして───

 

 

 

 

 不破一輝(ガイバー)が真っ直ぐヴァーリ()に向かって来る。正面からの攻撃を避けるなんて容易いと思った私の前から突然奴の姿が消えた。

 

(消えた?───何処だ!?)

 

《右だ、ヴァーリ!》

 

 アルビオンの声に右を見ると、そこに奴の姿が。だがその姿はまたも消えた。

 

(今度は何処に───!?)

 

《下だ、ヴァーリ!!》

 

 アルビオンの声に下を見ると、倒立の状態から両脚を龍の顎のように大きく開いた奴の姿が──

 

(これが本命か!? くっ、間に合え───!!)

 

 私はこの技が電光石火のスピードで視界から逃れ、この蹴りで首を落とす技だと見抜いた。

 

《飛べ、ヴァーリ!!》

 

 アルビオンの声と同時に私は飛んだ。不破一輝(ガイバー)の脚は一瞬遅く交差し、空を切った。

 

(───勝った!!)  

 

 トンボを切って着地し、勝利を確信した私に不破一輝(ガイバー)の声がした。

 

「不破圓明流奥義、【龍破(りゅうは)】」

 

 その声は私と同じ、勝利の確信に満ちていた。そして───

 

 ブシュッッ!!

 

 突然私の首筋から大量の血が噴き出した。身体に負ったダメージに大量の出血が重なり、意識が遠くなる。

 

(そうか───これが【龍破】・・・・・・)

 

 この時私は【龍破】の正体を知った。龍の顎のように開いた両脚、それで首を落とすも良し、落とせずとも両脚が交差した時に発生した真空の刃が首を刈る二段構えの技だったのか。確かに蹴りはかわせても真空の刃は避けられない、不可避の技とは良く言った物だ。

 

「ああ❤・・・・絶頂し(イっ)ちゃった。また戦い(やり)ましょう・・・・・・」

 

《ヴァーリ!しっかりしろ、ヴァーリ!!》

 

 白龍皇()の鎧が解除される。アルビオンの声に応える力もなく、私の意識は闇に沈んで行った。

 

 

 

 

 

「終わった・・・・・・」

 

 殖装を解除して一輝()はその場に座り込む。これ程疲れたのは久し振りだ。所々傷が残ってるが後でアーシアに癒して貰おう。とその前にヴァーリだ。裏切ったとは言えこいつの力はこれから必要だ。アザゼルへの貸しにもなるし、先にアーシアに癒して貰おうと思ったんだが、

 

「───で? お前は何者だ?」

 

「まぁまぁ、固い事言うなぃ。こいつこのままじゃ死んじまうからよぃ」

 

 気配もなく、いつの間にか現れた中華風の鎧を纏った男がヴァーリに呪符を貼り付けていた。癒しの呪符らしく、ヴァーリの出血が止まっている。

 

「悪いがこいつは貰ってくぜぃ。元々今回のヴァーリの役目はカテレアの監察役でよ。カテレアが三大勢力のトップ暗殺に失敗して殺られたんならさっさと引き上げれば良かったのによぃ、どうやら悪い癖が出ちまったみたいだが───とは言えまさかヴァーリが負けるとは思わなかったぜぃ」 

 

「・・・・今日はもう戦る気はない。連れてくなら好きにしてくれ」

 

「そうかぃ。それじゃ貰ってくぜぃ」

 

 俺が投げ遣りに言うと、男はヴァーリを担ぎ上げる。

 

「名乗り忘れてたが俺っちは美猴。ヴァーリの、まあチームメイトだと思ってくれよぃ。よろしくな、ガイバー」

 

「ああ、覚えておくぜ──孫悟空(・・・)

 

 俺がそう言うと、美猴はニヤリと笑い、

 

「チッチッチ、俺っちは美猴──仏になった初代と違って自由気ままに生きるのさ───あばよ」  

 

 美猴は手にした棍で地面を軽く突くと、足元に黒い闇が広がり、そのままズブズブと沈んで行った。

 

「───今度こそ、終わった・・・・・・」

 

 二人が闇に消えるのを見送って、俺はようやく安堵のため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「カテレアの件は悪魔側の問題だな・・・・」

 

 深刻な顔でサーゼクスが呟く。

 

「いや、こっちもヴァーリが迷惑をかけた」

 

 アザゼルが溜め息混じりに漏らす。

 

「確かにヴァーリ・ルシファーの裏切りは大きい。ですが──」

 

「ええ。白龍皇には逃げられましたが、幸いこちらに被害はありませんし、皆さん良くやってくれたのではありませんか?」

 

 ミカエルとガブリエルがその件について意見する。

 

「うん。皆頑張ってくれたよ。それに共通の敵が現れたんだから、私達の結束も強まるんじゃないかな?」

 

 セラフォルーが戦った者を労いつつ、今後の展望を語る。

 

「セラフォルーの言う通りだな。では正式に和平を結びたいと思うが──」

 

「「「「異議なし!!」」」」 

 

 サーゼクスの問いかけに一同が賛成した。そして調印が行われ───

 

「──では我々『天使』『悪魔』『堕天使』の三大勢力の和平の成立をここに宣言する───!!」

 

 

 

 この日、天使長ミカエル、魔王サーゼクス・ルシファー、『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼル、三名の連名で三大勢力の和平協定が調印された事が世界中の神話勢力へと発信された。それと同時にテロリスト集団『禍の団(カオス・ブリゲート)』の存在も公表され、各勢力に警告を促した。

 これからは三大勢力間の争いは禁止とされ、協調体制へと移行して行く───

 

 そして、この和平協定は舞台となった学園の名を採り、『駒王協定』と称される事になる。 

 

 

 

 

 

 

 

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!

 

「あぁん! 先輩! 先輩!──奥・・・奥がスゴいの!」

 

 ジュプッ、ジュプッ、ジュパッ、ジュポッ!

 

「んああ! 当たるぅ!・・・おっきいのがズンズンって、いっぱい当たってるのぉ───!!」

 

 朝の校舎裏に艶かしい女の嬌声が響き渡る。

 

「先輩、私もうダメ!──イッちゃう!・・・またイッって・・・・イ、イクーーーーー!!!」 

 

 ブビュルル、ブビュ、ブビューーーー!!

 

「───んああぁぁぁんんっっっ❤」

 

 当たり前のように膣内に射精()された白濁液が祐美の膣奥へと雪崩れ込む。今朝三度目の膣内射精を受けて、祐美は意識を半ば失っていた。

 

「ハア、ハア、ハア、ハア・・・・」

 

 荒い息を吐きながら、一輝は一向に治まらない猛りに抜かぬまま動き始めた。

 

「はおおぉっ~~~~~!!・・・・しぇ、しぇんぱい、しぇんぱ~~~い、お願い・・・もう、もう許して~~~! さっきから、じゅっと、じゅっ~~とイキっ放しで、もうちゅらいのおおおおっっっーーーーー!!」

 

 無理矢理覚醒させられた祐美が堪らず懇願するが、一輝は聞く耳を持たず、ひたすらに祐美の膣奥を穿ち続ける。

 突く度に中出しした精液が溢れ、下腹部を濡らすも構わず何度も打ち続ける。

 

「お゛、お゛、お゛、お゛お゛お゛~~~~!!」

 

 祐美の身体はとっくに限界を迎え、力が入らず何度も絶頂している。だがその度後背位(バック)から打ち付けられる衝撃に身体を跳ね上げられ、覚醒させられる。

 

「無理! もう無理! これ以上されたら、私・・・ホントに死んじゃうーーーー!!!」

 

「ぐっ、んおお!!」

 

「んおほほほほーーーーーっっっ!!!❤」

 

 ドビュルル、ドビュ、ビュルルルーーー!!

 

 プッシャアアアッッ!!

 

 四度目の膣内射精を子宮に浴びた衝撃に、祐美は潮と小便を撒き散らしながら白い闇に沈んで行った。

 

 

 

 一輝が肉棒を抜くと祐美の身体がズリ落ちる。足に力が入らないというのに一輝の肉棒によって無理矢理姿勢を保たされていたのだから無理もない。

 祐美は腰を高く上げた状態でその場に崩れ落ちている。普段の清楚さは見る影もないアヘ顔を晒し、膣からは入りきらなかった大量の白濁液が間欠泉のように溢れ、身体は白と黄金のマーブル模様の水溜まりに沈んでいた。

 

 どう見ても限界、これ以上ヤれば死んでしまうと思えるこの状況で、一輝は未だ硬度を保っている肉棒を祐美の膣に挿入しようとしたその時、

 

「か、一輝センパイ・・・・もう止めてくれ!これ以上シたらゆ、祐美が死んでしまう───!!」 

 

 一輝が視線を向けた先には身体を震わせるゼノヴィアの姿があった。

 

 

 

 

 

「今日はここまでにしておこう」

 

 一輝センパイが朝のトレーニングの終了を告げる。

 

「え!? もう? 先輩、早くないっすか?」

 

 イッセーがいつもより早い終了に不満を漏らす。確かにいつもの半分位しかやってない。かく言うゼノヴィア()も消化不良気味だ。

 

「無理をするなイッセー。確かに傷はアーシアに治して貰ったが、疲れがまだ身体に残ってる。お前も俺も休養が必要だ」

 

 先日の和平会議で私達はテロリスト集団『禍の団』の襲撃を受けた。中でも一輝センパイとイッセーは裏切った白龍皇と死闘を繰り広げたのだから、未だダメージが抜けなくても仕方がないだろう。

 元よりリアス部長と朱乃副部長が冥界に行って不在の今、唯一の三年生である一輝センパイの指示に皆も大人しく従った。

 

「祐美、私達も帰ろう───って、祐美?」

 

 自転車で帰ったイッセーとアーシアを除き、私と祐美、小猫は魔方陣で帰ろうとしていた。小猫が先に帰り、同じマンションに住む祐美(リアス部長の計らいで祐美の隣の部屋に住まわせて貰っている)に声を掛けたが姿が見えない。一輝センパイもいないし、どこに行ったのか・・・・

 

 旧校舎の周りを捜していると、校舎裏の方から何やら音がする。パンパンとリズミカルな音に惹かれ歩みを進めると、何やら切羽詰まった声が聞こえて来た。

 

「この声は・・・・祐美?───祐美!?」

 

 祐美に何かあったのかと思い、慌てて駆けつけた私が見たものは───

 

 

「んあ! んあ! イク! 先輩、私、私ぃ・・・イク、イッックーーーーー!!」

 

「おおおっ!!」

 

 ブビュルルル! ビュルル! ビュルーーー!!

 

「んああぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 朝から激しく交わり合う二人の姿だった。

 

 

 

 

 声を掛ける訳にもいかず、私は隠れて二人の様子を覗いて(見守って)いた。

 二人は間髪入れず第二ラウンドに入り、その後も激しい交わりは続き、今では四ラウンドに突入していた。二ラウンド辺りまで祐美が上げていた悦びの嬌声が段々と苦しそうな悲鳴に変わって行く。その変わり様が恐ろしくて、私は股間を濡らしながらガタガタと震えていた。

 

(何だアレは!? 前に見たのと全然違うじゃないか!? あの時はもっとこう、甘い雰囲気だったのに、センパイは一体どうしたんだ───!?)

 

 一輝センパイは無言で激しく腰を打ちつける。祐美が止めてと懇願しても聞く耳持たず、まるで性欲を満たす道具のように扱っていた。

 このままでは祐美が危ない。でも一体どうすれば・・・・

 

「無理! もう無理! これ以上されたら、私・・・・ホントに死んじゃうーーーー!!!」

 

 そうこうしている内に四ラウンド目が終わった。祐美は股間から入りきらなかった精液と潮、そして小便まで垂れ流して失神していた。

 どう見てもこれ以上は出来ない。だというのに一輝センパイは一向に小さくならない怒張をまたも祐美の股間に擦り付ける。

 

(このままじゃ祐美が死んでしまう───!)

 

 そう思った私は恐怖に震える身体を叱咤し、飛び出した。

 

 

 

 

 

「か、一輝センパイ・・・・もう止めてくれ!このままではゆ、祐美が死んでしまう───!!」 

 

 祐美に五回目の挿入をしようと未だ精液を滴らせる割れ目に肉棒を擦らせていた時、ゼノヴィアが姿を現した。誰かが覗いていたのは分かっていたが、彼女だったか。

 

「センパイ! 祐美を良く見てくれ! 祐美はもう限界なんだ。だからもう───!」

 

 ゼノヴィアにそう言われて、改めて祐美を見る。そして一輝()は愕然とした。

 

(───何だこの惨状は!?・・・・これを俺がやったのか!?)

 

「お、俺は・・・・・・」

 

 ショックのあまり俺はその場に膝をついた。その様子を見て、ゼノヴィアが祐美に駆け寄り介抱する。

 

「祐美、しっかりしろ!・・・・完全に気を失ってる。貴方らしくもない・・・・一輝センパイ、一体どうしたんだ?」

 

 俺がこんなになった理由は何となく分かっている。

 昨日の戦い、その中で俺は自分に眠る不破の、───修羅の血を覚醒させた。

 修羅の血の覚醒は俺に高い戦闘力を与えはしたが、それと同時に血の滾りが抑えられなくなっていた。

 朝のトレーニングでも気を緩めると皆を叩きのめして血を見ずにいられなくなりそうで、尤もらしい事を言って早目に解散させた。だが帰り際、俺の様子がおかしいと気づいた祐美が側に来て、彼女の甘い匂いを嗅いだ瞬間、俺の理性は限界に達した。

 俺は祐美を旧校舎の裏へと引っ張り込み、彼女の唇を奪った。後は獣のように祐美を貪り、ゼノヴィアに言われるまで我を失っていた。

 

 

 

 

 

「───そう、だったのか・・・・」

 

 一輝センパイがいつもと違う理由がようやく分かった。それは教会の戦士として生きて来たゼノヴィア()には分かる気がした。  

 激しい戦闘の後、その滾りを鎮める為に女を抱くというのは良く聞く話だ。かく言う私にも似たような経験はある。エクソシストの同僚が任務の後、夜の街に消えて行くのを見た事はあるし、相棒であったイリナが毛布にくるまって悶えているのも見た事がある。今思えばあれはそういう事なんだろう。しかし、

 

「だからと言ってやり過ぎのような気もするが、セ、センパイはその、鎮まってない、のか・・・・?」

 

 センパイの肉棒は未だ硬く聳え立ったままで、その威容に私は思わず唾を飲んだ。

 

「ああ・・・・だがまあ、何とかするさ」

 

 力無く微笑む一輝センパイの姿に、私は決意した。

 

「セ、センパイ! 祐美の代わりに私が相手をしよう!!」

 

「・・・・・・ゼノヴィア?」

 

「私もあれから色々学んだ。だから大丈夫、だと思う・・・・」

 

 不安が無いと言えば嘘になる。もしセンパイがさっきのように暴走したら、私も祐美のようになるかも知れない。それでも私はやっぱり一輝センパイの、この強い男の子種が欲しい。その思いは先日の戦いで益々強くなった。だから今、私は勇気を振り絞って一輝センパイに挑む。

 

「・・・・・・いいんだな」

 

「ああ、来てくれ」

 

 次の瞬間、私は一輝センパイに抱きしめられ、唇を奪われていた。私は初めてのキスで激しく舌を絡め取られ、訳も分からぬ内に快楽の海へと放り込まれた。

 

 

 

 

 

「ん・・・・あ、センパイ・・・んん、ああ・・・・」

 

 舌で口内を蹂躙され、唾液をたっぷり交換した後、着ていたTシャツを脱がされ、首筋から鎖骨、ブラの上から一輝の舌と指が這い回る。ゼノヴィアはくすぐったさと同時に性的な快楽を確かに感じていた。

 

「んん! セ、センパイ、そこはダメだ・・・・き、汚いからぁ、ん・・・あぁん!」

 

 トレーニング後でたっぷり汗を掻いた腋に鼻を押し付けて臭いを嗅がれると、流石に恥ずかしくなってゼノヴィアは堪らず抗議する。だが一輝は鼻を鳴らして臭いを嗅ぐだけじゃなく、味わうように舌を這わせた。

 

「や、やめてくれセンパイ! そんな所・・・・んん!?・・・やぁん!」

 

「そう恥ずかしがるなよ。うん、ちょっぴり芳ばしいけどゼノヴィアの腋、美味しいぞ」

 

「う、ウソだ! そんな所美味い訳・・・・ああ! んん、あ、あるか~!」

 

 暗に臭いと言われてる気がして、ゼノヴィアが悲鳴を上げた。

 確かにリアスや朱乃、祐美と比べてゼノヴィアの体臭は濃い。ただでさえ濃いのに汗の臭いがミックスされ、芳ばしいとまで評されると、十代の乙女であるゼノヴィアは恥ずかしさに涙を浮かべ、身体を捩らせた。

 だが一輝は逃がすまいとゼノヴィアの身体を壁に押し付け、ゼノヴィアが左腕を下ろさないよう右手で固定し、左手でブラの上から胸を弄り、舌で左腋を舐め続ける。

 

「んん、イヤぁ・・・・センパイ、もう許して・・・はぁん!❤」

 

 執拗に舐められる内にゼノヴィアの身体に変化が生じる。始めは嫌悪感と羞恥しか感じなかったのに、背筋がゾクゾクして下腹部に快感が生じるようになっていた。

 

(ウソだろ!? あんな所を舐められて、私は気持ち良くなっているのか!?・・・・でも、でも気持ちいいーーー!!)

 

 ゼノヴィアの変化に気付いた一輝はゼノヴィアのブラを剥ぎ取り、その深い谷間に顔を埋めた。途端に薫る濃厚な臭いに一輝は深く息を吸い込んだ。

 

「きゃ! センパイ、そこは・・・んんん、はぁん!❤」

 

 ゼノヴィアのおっぱいはリアスと同じロケット型。触って欲しいとばかりに突き出た胸に一輝は美味しそうに吸い付く。

 

「センパイ、センパイ! わ、私もう・・・・く、んんん!❤」

 

 それまでに散々弄り回されていたせいか、乳首への刺激でゼノヴィアは呆気なくイッた。

 今のゼノヴィアに怯える様子は見受けられず、ただ快楽に蕩けた顔をしていた。頃合いと見た一輝はゼノヴィアのスパッツを下着ごと一気に下ろして下半身を露出させた。

 

「あああっ!!」

 

 堪らず悲鳴を上げるゼノヴィア。彼女の秘裂はたっぷりと蜜を溢れさせ、一輝の到来を今か今かと待ち受けているように見えた。一輝は当然のように鼻を寄せ臭いを嗅ぐ。ゼノヴィアは諦めたのかされるがままだ。

 

「・・・・どうやら準備万端のようだな。このまま挿入れるぞ?」

 

 ペロリと割れ目を一舐めして一輝が訊く。

 

「ひぃん!・・・・う、うん、いつでも来てくれ」

 

 ゼノヴィアは一輝が入れ易いように股を大きく開いた。

 ゼノヴィアの割れ目に肉棒を何度か擦らせ、淫蜜を馴染ませると、一輝はゼノヴィアの中心に狙いを定めて突っ込んだ。

 

「んああぁぁぁんんっっ!!」

 

 ブチリという音と共に、ゼノヴィアは熱い塊が自分の胎内に入って来るのを感じ、悲鳴を上げた。

 

「大丈夫か、ゼノヴィア?」

 

「だ、大丈夫・・・・思ったより痛く無かったよ。私は大丈夫だから・・・だから一輝センパイ、動いてくれ」

 

「分かった、行くぞ」

 

 一輝はゼノヴィアの身体を壁に押し付け膝裏に手を入れると、そのまま抱え上げて深く突き上げた。

 

「あぁぁんっ!!」

 

 足が宙に浮き、一輝の肉棒で身体を支えられてる為、衝撃が一点に集中し、ゼノヴィアの最奥まで一気に到達する。たっぷりと溢れる淫蜜と破瓜の血を潤滑液にして一輝は強く、深く腰を打ち付ける。

 

「アン、アン、アン、アン、んああ! お、奥・・・奥に当たる・・・・んんん!❤」

 

 ゼノヴィアは本当に痛くないのか、快楽に蕩けた声を上げている。その時一輝はふと視線を感じて振り返る。そこにはようやく気が付いたのか、祐美がこっちを見ていた。

 それに気付いた一輝は悪戯っぽく笑うと一旦動きを止めた。

 

「あん!・・・・センパイ?」

 

 いい所で中断されて、ゼノヴィアは不満そうな声を上げる。一輝は繋がったままゼノヴィアを抱えて歩き出した。

 

「え、センパイ? ち、ちょっと───!?」

 

 慌てて一輝にしがみ付いたゼノヴィアは、移動する方向に祐美がいる事に気付くと途端に焦り出した。

 

「セ、センパイ待って、ちょっと待っ───」

 

 駅弁の体勢からゼノヴィアを祐美の真ん前に下ろす。そしてバックの体勢に移り、ゼノヴィアの両腕を掴むと、 

 

 スパアァァンッ!!

 

「ひいぃぃんん!!❤」 

 

 後ろから激しく突き始めた。一撃で子宮口まで達する激しい突き上げにゼノヴィアの口から嬌声が上がる。

 ゼノヴィアは体位が変わると当たる所も変わると初めて知り、より一層淫蜜を溢れさせる。

 一輝は更に滑りが良くなった膣内の感触に勢いを増し、更に強く、深く突き入れた。

 

「あ゛、お゛、うう、お゛お゛お゛~~~~!!❤」

 

 獣のような嬌声を上げ、一輝の肉棒が与える快楽を甘受していたゼノヴィアだったが、その時不意に祐美と目が合った。

 

(え、祐美? 起きてたのか・・・・え、いつから? いつから私は見られてたんだ? え、見られていた? こんな淫らな姿をか───!?)

 

 祐美に見られていた事に気付いたゼノヴィアの心に激しい羞恥心が沸き上がる。

 

「ス、ストップだ一輝センパイ! 祐美が、祐美が見ている!!」

 

「? それがどうした?」

 

「なっ───!?」

 

 ゼノヴィアは一輝が移動し、体勢を変えた意味にようやく気付いた。友である祐美に自分の淫らな姿を見せる為だったのだ。

 ゼノヴィアの脳裏にさっきまで見ていた祐美の淫靡な姿が甦る。獣のような嬌声、千切れんばかりに揺れる双丘、イヤらしく響く打擲音と水音、快楽に染まった表情。

 それらの姿が全て自分に置き変わり、祐美に見られていたと知って、ゼノヴィアの中で何かが弾けた。 

 

「ああああっ!! み、見られてるぅ! 私の恥ずかしいところ、全部・・・・ぜんぶ見られちゃってるのぉーーーーー!!❤」

 

「くっ───!?」

 

 突然ゼノヴィアの締め付けがキツくなり、一輝は苦悶の声を上げた。

 処女であったゼノヴィアの締め付けは元々キツかったが、今の状態は比にならない程一輝の肉棒をキツく締め付けていた。だがキツいだけではなく、膣内の蠕動が更なる刺激を与えている。それはまるでゼノヴィアの膣が目覚め、真に一輝を受け入れたかのように感じられた。

 

(くっ、急に膣内(なか)の感触が変わった。ゼノヴィアの奴、ひょっとして露出狂の気があるのか?)

 

 そう思った一輝はゼノヴィアの羞恥心を煽るように言葉を紡いだ。

 

「ゼノヴィア! お前ようやく祐美が見ている事に気付いたのか!? ハハハ、案外鈍いんだなぁ。もう随分前から見られてたんだぞ!?」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

「そうだ。お前がイヤらしく悶えるのも、気持ち良さそうに喘いでるのも全部見られてたぞ!」

 

「あああっ、イヤぁ! み、見ないでくれ、祐美ぃ~~~!!❤」

 

 口ではイヤがるものの、本当に拒絶してない事は繋がっている一輝には良く分かっていた。故に一輝は動きを止めた。

 

「んんん!───えっ、センパイ・・・・?」

 

「本当にイヤか? イヤならもう止めるぞ?」

 

「えっ───!?」

 

 ゼノヴィアはさっきから何度も小さく絶頂し(イッ)て、もう少しで大きい波が来ると思った矢先に中断され、心も身体も焦れていた。見られるのは恥ずかしい、でももっと気持ち良くなりたいとゼノヴィアは唇を噛んで懇願した。 

 

「───動いてくれ」

 

「えっ、何だって?」

 

「~~~~動いて! センパイはもう分かってるんだろ!?」

 

 ゼノヴィアの言う通り一輝には分かっていた。繋がった肉棒からゼノヴィアの膣が蠕動と締め付けを繰り返し、早く続けろと訴えているのを感じていたから。でも───

 

「俺はお前の口から聞きたいんだ。ゼノヴィア、どうして欲しい?」

 

(ううう、分かってるくせに! 私がもっとして欲しいって知ってるくせに! この後に及んで私を辱しめようだなんて、何て酷い男だ!・・・・・・でも、もう私は───)

 

「───動いて! 私の膣内(なか)をグチャグチャにかき回して!!」

 

 堪え切れず、ゼノヴィアは絶叫した。

 

「いいのか? 祐美が見ているぞ?」

 

「いいの! いや、寧ろ見られてるのがいいの!! お願いセンパイ、私をもっと、もっと気持ち良くしてくれーーーーー!!」

 

 淫らに懇願するゼノヴィアに一輝は亀頭を抜ける寸前まで引き抜いて───

 

「はおぉぉんんっっ!!❤」

 

 一気に根元まで挿入した。

 まるで引き絞った弓が矢を放つように一輝の肉棒がゼノヴィアの中心を射抜く。その衝撃にゼノヴィアは一気に絶頂に達した。

 

 プシャアァァッッ!!

 

 噴水のように潮が噴き上がり、その飛沫は祐美にまで降りかかる。だがゼノヴィアは気にする余裕もなく、一輝から与えられる快楽にその身を焦がしていた。

 

「あん! あん! スゴい、センパイのが、奥に、私の奥に当たってるぅ~~~!! いいの! スゴくき、気持ちいいの~~~~!! ああ、見て! もっと見てくれ祐美! 私のエッチなところ、全部見てくれ~~~~~!!❤」

 

「・・・・うん、見てるわ、ゼノヴィア」

 

 ゼノヴィアの絶叫に祐美が応えた。その瞬間、ゼノヴィアは更なる絶頂に達した。

 

「~~~~~~~!!❤」

 

 声無き絶叫を上げてゼノヴィアがプシュプシュと間欠泉のように潮を噴き、身体を弛緩させる。

 その表情は淫らに上気し、汗と涙、涎や鼻水まで垂れ流し、普段のクールな美貌は見る影も無かった。

 

「ゼノヴィア、まだ俺がイッてないぞ」

 

 一輝はゼノヴィアの腕を離し、完全に四つん這いの体勢にした。

 その体勢は祐美とゼノヴィアがシックスナインのように覆い被さり、お互いの性器が真正面に来るようになっていた。祐美からはゼノヴィアが一輝に貫かれているのが、ゼノヴィアからは一輝の精液が溢れる祐美の淫穴がハッキリと見えていた。

 

「しっかりと祐美に見て貰えよ、そら!」

 

 一輝がラストスパートとばかりに激しく動き出す。ゼノヴィアの溢れる淫蜜がポタポタと祐美の顔に落ちると祐美はその雫を嫌がりもせず、ペロリと舐めた。

 

「ああ! 私、私おかしくなってるぅ! センパイに突かれて、祐美に見られて、私の身体、おかしくなってるの~~~~~!!

 

「・・・・おかしくなんて無いわ」

 

「そうだぞ。素直になったゼノヴィアはとても可愛いよ」

 

 ドクンッ!!

 

 可愛い、と言われてゼノヴィアの鼓動が高鳴る。

 可愛いなんて初めて言われた。自分が祐美やアーシアのように可愛い女では無いと分かっている。自分の評価は「美人」とか「クール」とか「カッコいい」というもので、可愛いなんて言われる事は無いと思っていた。

 でも一輝はそんな自分を可愛いと言ってくれた。その言葉が自分でも意外な程嬉しくて、胸がキュンと締め付けられる。

 後から思い返せば、この時がゼノヴィアにとって一輝が「子種の提供者」から「恋する男性」に変わった瞬間だった。

 

「か、可愛いなんて・・・・私は、そんな、ああ!」

 

「嘘じゃないよ。ほら、こっち向いて可愛い顔を見せて」

 

「あ・・・・ダメ、センパイ、んん・・・ちゅぷ、むふぅ・・・ふん、ちゅぱ、ん・・・レロ、レロ・・・・コクン」

 

 一輝は強引にゼノヴィアの顔を横に向けると、唇を奪い舌を絡め唾液を流し込む。

 上の口も下の口も蹂躙されて、初めての快楽にゼノヴィアはもう限界寸前だった。だが、それは一輝も同じで露出に目覚めたゼノヴィアの締め付けに限界を迎えようとしていた。

 

「くっ、行くぞゼノヴィア!」

 

「ああ! 来て! 私の膣内(なか)に、センパイの子種をいっぱい注いでーーーー!!」

 

「くっ、ゼノヴィア!!」

 

 ブビュルル! ブビュ! ビュルルーーー!!

 

「っっんあああぁぁぁーーーーーっっ!!!❤」

 

 プシャアアアァァァ────

 

 熱い塊が自分の胎内に注ぎ込まれるのをゼノヴィアは感じていた。そして感電したかのように身体を震わせ、その場に潮と小便を撒き散らしてゼノヴィアは意識を失った。

 

 

 

 

 

 ゼノヴィアを抱いて落ち着いたのか、肉棒がようやく小さくなってくれた。それと同時に理性が戻ると、俺は周囲の惨状に目を覆いたくなった。

 祐美は目を覚ましていたが身体が動かず、ゼノヴィアは完全に気絶していた。取り敢えずこの場を片付けるのは後にして、俺は二人を担いでオカ研部室へと転移した。

 二人の身体に付着した汚れをシャワーで洗い流し、何故かあった女子用体操服(今時珍しいブルマだ)に着替えさせ、ようやく一息吐いた。

 もうすぐ授業が始まるが二人はこのまま休ませるべきだなと、そんな事を考えていると床の魔方陣が光を放ち、リアスと朱乃が姿を現した。

 

「あら、かず、き・・・・・・で? これはどういう状況なのかしら?」

 

 ソファーで横になる祐美とゼノヴィアを見て、リアスの声が一段低くなる。朱乃は「あらあら」と笑顔を浮かべているが、その笑顔はとても怖かった。

 

 

 

 

 

「う・・・ん、・・・・・・ここは・・・・・・?」

 

「あ、起きたにゃ」

 

「おう、やっとお目覚めかぃ?」

 

 ヴァーリがようやく目を覚ましたにゃ。黒歌()と美猴は顔には出さないけどホッとしてたにゃ。何せ傷だらけで運び込まれてから三日も目を覚まさなかったんにゃから。

 

「黒歌・・・・美猴・・・・そうか、私は不破一輝に敗れて・・・・」

 

 ヴァーリは私達の顔を見て、自分の身に何があったかを思い出したみたいにゃ。

 

「そうだぃ。そのお前を俺っちが回収してやったんだぜぃ。感謝しろぃ」 

 

「そう・・・・私の怪我は?」

 

「肋骨が二本と右拳が骨折してる他、あちこちの骨にヒビが入ってるにゃ。特に首、あと数ミリ深かったら頸動脈が断ち切られて助からなかったにゃ。美猴の呪符と私の仙術で癒してるけど、暫くは絶対安静にゃん」

 

「そう・・・・『禍の団』の方は?」

 

「カテレアを殺られて旧魔王派がいきり立ってやがるが、三大勢力の和平のついでに俺達の存在も明るみに出ちまった。暫くは様子見って事になりそうだぜぃ」

 

「・・・・・・そう。ならちょうどいいわね。暫くは静養させて貰うわ」

 

「それがいい。大人しく寝てろぃ」

 

「お休みにゃ~ん」

 

 再び眠りに就いたヴァーリを残して私達は部屋を出たにゃん。肩を並べて廊下を歩いていると、

 

「・・・・つってもうちの大将がやられて黙ってるっつーのも後味悪ぃよなぁ・・・・」

 

 そう美猴が言って来たにゃん。

 

「何をするつもりにゃ?」

 

「な~に、グレモリー眷属に探りを入れて、ちょいと嫌がらせでもって、なぁ?」

 

「・・・・・・いいんじゃにゃい。私も手を貸すにゃん」

 

「おっし、決まりだぃ!」

 

 美猴が悪戯っぽく笑う。グレモリー眷属、そこには白音がいる。あの娘を取り戻すいいチャンスかもしれにゃい。一丁気合いを入れてやってみるにゃん!

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り、うちのゼノヴィアは露出狂(というか見られると感じる娘)になりました。
彼女のこれからの活躍にご期待下さい(笑)。

次回から原作第5巻のエピソードに入ります。


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第17話 冥界へ☆☆(朱乃、リアス)



今回から原作5巻のエピソードに入ります。
ご覧下さい。


 

 

「てな訳で今日から俺がオカルト研究部の顧問になった。アザゼル先生と呼べ」

 

 放課後、オカ研部室に着崩したスーツ姿で現れたアザゼルがそう宣言した。

 

「・・・・どうして貴方がここに?」

 

 額に手を当て、物憂げにリアスが訊ねる。

 

「何、最初サーゼクスに頼んだらセラフォルーの妹に言えと言われてな。頼んだらこの役職を貰ったのさ」

 

「聞いてないわよ! もう、どうしてソーナはそんな事を・・・・」

 

 一輝()は扱いに困った会長に体よく押し付けられたんじゃないかと思ったが、黙っていた。

 

「俺がこの学園に滞在する目的は『禍の団(カオス・ブリゲート)』に対する抑止力としてお前達グレモリー眷属とシトリー眷属を鍛え上げる事だ。赤龍帝やガイバーを始め、数々の『神器(セイクリッド・ギア)』保持者と色々鍛えがいがありそうだしな」

 

「戦争が、始まるんスか?」

 

 アザゼルの目的を聞いたイッセーが不安気に訊ねる。

 

「いや、起きるとしても精々小競り合い程度だろう。俺達も奴等も今は準備期間だ。五、六年は戦争なんざ起きないだろうってのが上層部(俺達)の見解だ。──その間に俺が鍛えてやるよ。取り敢えずお前は長時間戦える身体作りからだな」

 

「・・・・はい」

 

 イッセーも自分の未熟さを痛感してるのか、きつく唇を噛みしめている。

 

「何、難しく考えるな。赤龍帝──イッセーでいいか。イッセー、お前ハーレムを作るのが夢らしいな」

 

「はい! それが俺の最終目標、夢です!!」

 

 重くなった雰囲気を吹き飛ばすようにアザゼルが訊ねるとイッセーは即答した。

 

「なら俺がハーレムの作り方を教えてやるよ。俺は過去数百回ハーレムを築いた男だぜ? 聞いておいて損はねえぞ」

 

「!!!?」

 

 ハーレムと聞いてイッセーが食い付いた。

 それからアザゼルの体験談を聞いて、イッセーが目を輝かせる。人間の女の胸を揉んで堕ちたという話を聞いて堕天使に親近感まで持つ始末だ。だが───

 

「イッセー、貴方って子は・・・・」

「あらあら、困った子ですわね」

「イッセーさん、私ではダメなんですか・・・・」

「最低です」

 

 リアスと朱乃が呆れたように、アーシアが悲しそうに、小猫ちゃんが冷たい声で呟くが、イッセーは気付かない。これでハーレムって、無理じゃないか?

 

「ハイハイ、向こうは放っておいて聞いてちょうだい。皆、夏休みになったら冥界に行くわよ」

 

 リアスがパンパンと手を叩いて話を進める。

 

「近く冥界で若手悪魔の会合が行われるの。私もその会合に出席するから当然皆も冥界に来て貰うわ。会合ではゲームも開催されるし、特訓も冥界でやる事になるわね。長期の旅行の準備をしておきなさい」

 

「「「「はい、部長!!」」」」

 

 冥界か・・・・原作知識も薄れて来てるし、何より俺がいるせいか、原作からルートが逸脱して来ている。果たして冥界では何が待つのだろうか───

 

 

 

 

 

 夏休み初日の朝、左右からの柔らかい感触で俺は目を覚ました。

 ん? 左右(・・)の? 左側にいるのはリアスだろう。では右側は? 俺はそっと視線を向ける。

 

「すぅ、すぅ・・・・」

 

 そこには安らかな表情で眠る朱乃がいた。

 

「・・・・・・・・」

 

 えっ、と・・・・・・何で朱乃がいるんだ?

 昨夜はリアスに祐美とゼノヴィア相手にやり過ぎた件で怒られはしたが、訳を説明して許して貰うとそのままイチャイチャしてから眠りに就いた筈だ。

 朱乃はいつベッドに入って来たのか・・・・そのまま朱乃の寝顔を見つめる。

 普段のポニーテールを解いた黒髪は艶やかで甘い匂いがする。まつ毛が思ったより長いのも初めて気付いた。そして浴衣の胸元がはだけてスイカのように大きな胸が半分以上はみ出ていた。

 俺はあまりの色っぽさに息を飲み、時間も忘れてその寝顔に見惚れていた。

 そんな時、俺の耳に痛みが走った。

 

「ちょっと一輝! 何私を放っといて朱乃に見惚れてるのよ!」

 

「イテテテ! す、すまんリアス!」

 

 俺はいつの間にか起きていたリアスに耳を引っ張られていた。

 

「もう!一輝は私だけを見つめてればいいの!」

 

 リアスの唇が俺に近付く。だが重なる寸前で俺の身体は後ろへ引っ張られ、引っ張った張本人──朱乃に唇を奪われていた。

 

「あ、ああああ朱乃ーーーーー!?」

 

「───ん、ちゅ・・・・ふふ、おはようかずくん♪」

 

「・・・・おはよう朱乃」

 

「あん、二人きりの時はあーちゃんって呼んで?」

 

「いや、二人きりじゃないんだが」

 

「そうよ朱乃! 私を無視して何盛り上がってるのよ!!」

 

「・・・・朝からうるさいわよリアス。近所迷惑でしょ?」

 

「近所迷惑な訳無いでしょ!? 改築(・・)したばかりなんだから私達しかいないわよ! 大体朱乃はすぐ私の大事なものに触れようとするから嫌なのよ!!」

 

 リアスが投げた枕が朱乃の顔面にヒットする。ポテンと落ちた枕を拾い、いつものニコニコ顔(目は笑ってない)で投げ返す。

 

「ちょっと位いいじゃない。貴女ってホントケチよね、リアス!」

 

 ボスンッ!!

 

「この部屋は私と一輝の聖域なの! 朱乃の好きにはさせないんだから!!」

 

 ボスンッ!!

 

「サーゼクス様は眷属皆で仲良く暮らしなさいって言ってたわ! 妹だからって魔王様の意向を無視する気!?」

 

 ボスンッ!!

 

「そんなの知らないわよ! どうして朱乃もお兄様も私と一輝の邪魔をするのよ、もう!!」

 

 ボスンッ!!

 

「ふふん、すぐ感情的になって・・・・これだから処女は嫌なのよ!!」

 

 ボスンッ!!

 

「言ったわね! 朱乃だってまだ一回しか抱かれてないじゃない!!」

 

「お生憎さま。1×2=2になるけど、0には何を掛けても0のままよ」

 

「ムキーッ! 何よ、朱乃のスカポンタン!」

 

「ふんだ、リアスのオタンコナス!」

 

 枕の投げ合いから始まった二人の諍いは、いつしか子供のような口ゲンカへと変わっていた。その中でふと違和感を感じ、俺は室内を見渡した。

 

「・・・・・・えっ、と」

 

 室内が色々豪華になっている。俺の部屋は六畳の2LDKだった筈だがこの部屋だけで優に倍以上の広さがある。リアスと朱乃が言い争うこのベッドだってキングサイズに変わってるし、昨夜寝た時はいつも通りだったのに、一体何があったんだ?

 そう言えばリアスが改築とか言ってた気がするが、まさか・・・・

 慌てて部屋を飛び出した俺が見たのは、豪華に変わり果てたマンションだった。

 

「ハハハ、マジかよ・・・・」

 

 どうやら原作でイッセーの実家に起きた変化が俺の住むマンションにも起きたようだ。

 

 

 

 

 

 何という事でしょう。俺の住んでた築二十年、四階建のマンションは一夜にして地上十階地下三階、敷地面積が六倍にもなった高級マンション(億ションていうのかコレ)に変わってしまった。何故こんな風になったかというと───

 

「お兄様が『禍の団』対策の一環として、眷属はなるべくまとまって暮らした方がいいとおっしゃるの。だからこの機会に一気にリフォームしてみたのよ。今日中には祐美やゼノヴィア、小猫も引っ越して来るわよ」

 

 リアスと朱乃が作った朝食を食べながらリフォームの経緯を聞く。うん、事情は分かったけど、せめて事前に一言欲しかったな。

 

「同じマンションや周りに住んでた人達は?」

 

「大丈夫。別の住居を用意して移って貰ったわ。勿論円満によ」

 

「ならいいが、イッセーはどうするんだ? あいつには家族がいるだろ?」

 

「そっちも手配済みよ。ご両親に承諾いただいて、リフォームついでに安全対策もバッチリしておいたわ。家も前より広くなったから喜んで下さると思うわ」

 

 俺が訊くまでも無かった。その後リフォームしたマンションの説明をして貰ったが、いやぁ凄いわ。

 地下にはジムや室内プール、シアターや図書館、温泉まで完備されていて、地上一階はロビー、二階は食堂やバー、会議室やレクリエーションルームなど公共の場、三階から上が住居となっていて、どの部屋も二十畳以上の広さで俺達の部屋もここにある。上階はゲストルームも兼ねて現在空室だ。敷地内には強力な防御結界が張られ、いかなる物理、魔術攻撃にも耐える。

 海外の一流ホテルにも引けを取らない豪華な設備に根っからの庶民である俺は圧倒されっ放しだった。

 

 

 

 

 

 その日の夜、リアス()は無事引っ越しを終えた朱乃、祐美、ゼノヴィアを部屋に呼んだ。こうして同じ家に住むに当たり、話し合う必要があると思ったからだ。

 

「さて、皆に集まって貰ったのは他でもないわ──一輝の件よ」

 

 私の一言に皆の間に緊張が走る。  

 

「安心なさい。咎めようという訳じゃないわ。寧ろ逆よ」

 

「逆とはどういう事、リアス?」

 

 キョトンとした顔で朱乃が返す。うん、説明が必要よね。

 

「皆も一輝の性欲の凄さは知ってるでしょう? そこで訊ねるけど、貴女達一輝の夜の相手を一人で出来ると思う?」

 

「「「うっ・・・・・・!?」」」

 

 皆の顔色が変わった。無理もないわね。一輝は何度放っても衰えない底無しの精力の持ち主。

私も一晩で何回もイカされて、朝を迎える頃には失神していた事が何度もあった。あの時の感覚を思い出す度、下腹部がキュンと疼いてしまう。

 先日の祐美やゼノヴィアのように限界を越えてまでシていたら身体が持たない。だからこそ一輝の女である私達は協力し合う必要がある。

 それらを皆に説明すると、

 

「そうですわね・・・・一輝ってあれで結構Sっ気がありますから・・・・」

 

「ですよねぇ。やめてって言っても、ちっともやめてくれないし」

 

「わ、私も散々辱しめられてしまった。でも──」

 

「「「そこがまた、イイのよねぇ・・・・・・」」」

 

 三人はほうっと色っぽく溜め息吐いた。あれは一輝との行為を思い出して濡らしているわね、私みたいに。

 

「とにかく、一輝の相手は一人では無理よ。戦闘の後は特にね。今後はなるべく複数で一輝の相手をするわよ。そしてハーレムのメンバーを増やす方向で考えます」

 

「メンバーを増やす? ひょっとして小猫ちゃんですか?」

 

 祐美がそう訊ねる。確かに現時点では小猫が一番の候補なんだけど、今はまだ───そう思って私は首を横に振った。

 

「いいえ。でもあの娘も心に傷を負ってるから、展開次第ではもしかしてって思ってるわ」

 

「そう、ですわね・・・・」

 

 小猫の心の傷は深く、未だに癒されていない。実の姉に裏切られたんだから無理もない。でも私は願ってる。いつかあの娘の傷が癒され、心からの笑顔を見せてくれるのを───

 

 

 

 

 

 コンコンとドアをノックする音がして、二人の美しい少女が入って来る。

 湯上がりの火照った身体をバスローブで包んだリアスと浴衣姿の朱乃の二人だ。 

 入浴前にリアスから今日は三人で寝ると宣告され、ベッドルーム(今朝目覚めた部屋)で待っていた一輝は湯上がりの色香を放つ二人に目を奪われていた。

 

「お待たせ、一輝♪」

 

「うふふ、お待たせしました、一輝❤」

 

「ああ・・・・」

 

 ベッドの腰掛ける一輝の左からリアス、右から朱乃がしなだれかかる。

 

「一輝、ん──ちゅ、ちゅぷ、ちゅ、ちゅ、んん───」

 

 リアスが一輝に口づける。触れるだけのソフトキスから啄むようなバードキスに移り、一輝にキスの雨を降らせる。

 

「あん、リアスばかりズルいわ♪ 一輝私も──んん・・・・ちゅ、ちゅぷ、ちゅぱ・・・・んん、レロ、レロ、ちゅぶ、ズズ、んん・・・うふ♪」

 

 朱乃はリアスから一輝を奪うと、いきなり激しく舌を絡め、唾液を交換させ、深く唇を交わす。ピチャピチャと湿った音が響き、三人の官能が高まっていく。

 

「また朱乃は・・・・一輝の唇は私のよ──むちゅ、ちゅぶ、ふぅむ・・・ジュル、ズズズ・・・・コク、コク、んふん」

 

「もう、リアスったら・・・・・うふ、でしたら私は──こちらをいただきますわ」

 

 唇をリアスに奪回された朱乃は、ムクムクと勃ち上がる一輝自身を見てこちらに標的を移した。

 

「───まあ❤」

 

 トランクスを下ろして一輝の肉棒を露出させると、その威容に朱乃は頬を染め、ため息を吐く。そして肉棹を握ると前後に擦り始めた。

 

「んん、リアス、朱乃・・・・」  

 

 上をリアス、下を朱乃に責められ一輝は思わず声を漏らす。一輝の声に気を良くしたリアスはTシャツの中に手をいれて一輝の乳首を刺激し、朱乃は先走りに濡れた肉棒に舌を這わす。

 

「うふ♪ やっぱり男の子もここは感じるのね・・・・ちゅぷ、どう、気持ちいい?」

 

「んふぅ、ピチャ、ピチャ、レロ、エロ・・・・ああ、熱くて硬くて・・・・素敵❤」

 

「くう、二人共・・・・」

 

「ん? もうイキそう? だったら・・・・朱乃」

 

「ヂュパ、ん・・・・ええ、リアス」

 

 リアスの合図に朱乃は頷き、浴衣をはだけて巨きな胸を露にする。リアスもバスローブを脱いで全裸になると、朱乃と対面して一輝の股間の横にしゃがんだ。そして───

 

「ぐう!? り、リアス・・・朱乃・・・・うああっ!!」

 

 一輝の肉棒はリアスと朱乃、四つのおっぱいに包まれ、擦られていた。 

 

「スンスン、んん~! 相変わらず凄い臭い・・・・レロ、うふ、でも美味しい♪」

 

「うふふ❤ 一輝ったら益々バキバキになって・・・・んん、気持ちいいんですのね。いいわ、もっと気持ち良くなって」

 

 リアスのハリのあるロケット型おっぱいと朱乃の柔らかい釣鐘型おっぱい。四つのおっぱいが一輝の肉棒を包み、シゴきあげる。

 一輝の先走りを潤滑液にニチャニチャと湿った音を響かせ、淫らな臭いが室内に漂う。それは一輝の肉棒だけではなく、パイズリを続ける二人が発する発情した雌の臭いもプラスされ、三人の官能を否応もなく燃え上がらせた。

 

「ああ! リアス、朱乃、も、もう・・・・!」

 

「ああ、イクの一輝? いいわよ、いつでもイって───ん、ぢゅぶ」

 

「んん、いいわ。私達のおっぱいに一杯ピュッピュッてして下さい───レロッ」

 

 おっぱいから突き出た亀頭に唇と舌を這わせて、リアスと朱乃は一輝をイかせようと刺激した。そして───

 

「ぐああ、イ、イクッ!!」

 

 ブビュルル!ブビュル!ビュルルーーー!!

 

「「はああぁぁぁんんっっ!!❤」」

 

 火山が噴火したように白いマグマがリアスと朱乃に降り注ぐ。熱い白濁を顔や胸に浴びて、二人の少女は恍惚のあまり喚声を上げた。

 

「ん、ちゅぷ・・・あん、勿体ないわリアス・・・・ちゅ、レロ・・・・」

 

「アン♪ 朱乃ったらもう・・・・ちゅぷ、レロ・・・・コクン」

 

 暫く呆けていたリアスと朱乃だったが、やがて身体に飛び散った白濁をお互いに舐め始めた。額や頬に舌を這わせ、胸の谷間に溜まった精液を吸い、喉を鳴らして嚥下する。

 恍惚の表情を浮かべる二人の前に一輝の肉棒が突き出された。

 

「二人共、綺麗にしてくれ」

 

 射精したというのに全く威容を失わない肉棒に二人は笑みを浮かべて丁寧に舐めしゃぶり、残った精液を嚥下した。  

 肉棒が綺麗になると一輝はベッドに横になる。

 

「朱乃」

 

「・・・・はい♪」

 

 名前を呼ばれると、朱乃は嬉しそうに返事して一輝に近寄った。

 

「自分で入れられるか?」

 

「・・・・やってみます」

 

 ゴクリと唾を飲み込むと、朱乃は一輝の肉棒を握り、位置を調整しつつゆっくりと腰を降ろす。亀頭が秘裂を擦るだけでクチュッと湿った音がして、朱乃の腰がビクッと跳ねた。

 

「・・・・挿入し(いれ)ますわね」

 

「ああ」

 

 朱乃はそそり勃つ肉棒に向かって腰を降ろした。

 

「んんん!・・・・あ、ああああ~~~~、あはぁん!!❤」 

 

 ズブズブッと音を立てて、胎内に熱い塊が入って来る。朱乃は堪らず嬌声を上げた。

 大量の淫蜜に導かれ、一輝の肉棒は奥まで達した。コツンと奥に当たり、腟内をゴリゴリと拡げる肉棒の感触に、朱乃は苦しいような気持ちいいような相反する感覚を味わっていた。

 

「動けるか、朱乃?」

 

「ふぅ、ふぅ、んん!・・・・や、やってみます・・・・ふっ、ううん・・・・んん、あぁん!!」

 

 朱乃は一輝の肉棒が抜ける寸前までゆっくり腰を引き、再び腟奥まで押し入れる。初めての体位故、腰を引き過ぎて抜けてしまったり、上手く行かない事もあったが、段々慣れて来たのか抜ける事も無くなり、徐々にスピードも上がって来た。

 

「はあ、ああ、ん、いい、気持ちいいです!」

 

 一輝の腹に手を置き、朱乃は一定のリズムで腰を動かす。時には腰を回して当たる位置を調節し、感じる所を探るように動いた。

 普段と違って自分のペースで動かせる騎乗位は、朱乃にとって非常にやり易い体位だった。

 

 

 

 

 リアスは恋人と親友が繰り広げる恥態に目を奪われていた。

 知識としてセックスのやり方は理解していた。だが、今リアスの前で繰り広げられる光景はそんな知識など吹き飛ばす程、淫らで生々しいものだった。

 一輝の上に跨がり、一心不乱に腰を動かす朱乃。その姿はどこまでも淫靡で、自分の良く知る親友とは思えなかった。

 

「・・・・ああ、ん・・・はあ、はあ、す、凄いわ、二人共・・・・」

 

 いつしかリアスは二人の恥態を見つめながら、自分の股間に指を這わせていた。

 

 

 

 

 

 一輝は自分の上で腰を振る朱乃を満足そうに見上げていた。

 長い黒髪を振る度に珠の汗が飛び散り、甘い芳香が漂う。スイカのように巨大な双丘は大きく弾み、繋がった股間は熱くぬかるんで絶妙に締め付ける。

 艶然とした笑みを浮かべ、自分を見つめる朱乃に一輝の胸に愛しさが湧き上がる。その時ふと朱乃以外の視線を感じ、一輝はそちらに目を向ける。

  

「はあ、はあ・・・・んん、ああぁ・・・・・・」

 

 そこにはグチョグチョに濡れた股間をいじりながら、こちらをジッと見つめるリアスがいた。

 リアスは上気した顔で、羨ましそうに、もどかしそうにこちらを見ている。

 そんなリアスに一輝はフッと微笑み、声を掛けた。

 

「おいで、リアス」

 

 それを聞いたリアスは四つん這いで一輝の元へやって来る。どうすればいいかと戸惑うリアスに一輝は指示する。

 

「リアス、こっちに来て・・・・そう、足をこっちに」

 

「ええっ・・・・!? 一輝、これ凄く恥ずかしいんだけど・・・・」

 

 一輝は自分の顔にリアスを跨がらせる。目の前にたっぷり蜜を滴らせる秘裂が近づき、その、あまりにイヤらしい光景に一輝は堪らずしゃぶりついた。

 

「んはあぁぁんんっ!!」

 

 割れ目に舌を這わせ、溢れる淫蜜をすすり、秘口に指を入れて、淫核を甘噛みする。

 その刺激にリアスは腰を落とし、一輝の顔に乗ってしまう。

 

「あお、おお、か、一輝・・・・そこは、んん!?・・・ダメ、い、イク・・・・はぁぁん!!❤」

 

 求めていた刺激を与えられ、リアスはあっけなくイってしまう。溢れる飛沫が顔をビショビショにするが、一輝は気にせずクンニを続ける。

 

「あぁん、あん、一輝、一輝ぃ・・・・私イった、イったから・・・・お願い、少し休ませてぇっ!!」

 

「駄目」

 

「あぁん!い、意地悪ぅ~~~!!❤」

 

 プシュッと潮を噴きながらリアスは苦悶と快楽の入り混じった嬌声を上げる。

 力が抜けて倒れかけたリアスを朱乃が支えた。

 

「朱、乃・・・・・・?」

 

「うふふ、リアスのイク所、可愛かったですわよ」

 

「い、意地悪・・・・」  

 

「うふふ・・・・私達も気持ち良くなりましょう、リアス」

 

「朱乃? 何を・・・・・・ん、はあ、んん・・・・あぁん」

 

 朱乃はリアスと手を繋ぐと、再び腰を動かして胸を擦り合わせる。尖った乳首同士が擦れ合い、新たな官能が二人を焦がした。

 

「「! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~!!?」」 

 

 リアスと朱乃は上と下から込み上げる快楽に揃って喚声を上げた。

 

「あ、朱乃・・・・」

 

「リアス・・・・ん──」

 

 気付けば二人は倒錯した雰囲気に流され、唇を重ねていた。

 

「朱乃、んん、ちゅぷ──」

 

「あぁん、リアス・・・・ちゅ、ふぅん──」

 

 いつしか二人のキスは激しさを増し、舌を絡め、唾液を交換し合うようになっていた。その時、

 

「「ふあぁぁぁんんっっ!?❤」」

 

 突如感じた衝撃に二人は喚声を上げた。

 

「全く、お前等俺を無視して勝手に盛り上がるな、よ!」

 

「「ふひいぃぃぃぃんんっっ!!❤」」

 

 すっかり蚊帳の外に置かれていた一輝がリアスのお尻の穴に指を入れ、朱乃を下から思いきり突き上げたのだ。

 

 プシャアアアッッ!!

 

 たちまち昇り詰めた二人は身体を痙攣させ、潮を噴いた。だが一輝は許さず、益々腰と指の動きを速める。

 

「ああ!ああ!あん!あぁん! 待って・・・一輝待ってぇーーーっ!!」

 

「ああ!おお! ご、ごめんなさい、ごめんなさい一輝・・・・ゆ、許してぇーーーっ!!」

 

「許さん」

 

「「はおおおぉぉぉぉっっ!!?」」 

 

 一輝は更に激しく二人を責め立てる。

 リアスの前と後ろの穴に指を入れ、抉るように出し入れする。リアスは間欠泉のように潮を撒き散らし、一輝の指をきつく締め付ける。

 朱乃の膣奥まで深く突き入れ、子宮口を連続でノックする。朱乃は初めて感じるポルチオへの刺激に膣内を蠕動させ、歓喜に蜜を滴らせる。

 一輝は二人から与えられる悦楽に、一気に頂点へと駆け昇る。

 

「おお! ああ! 凄い! オマンコも、お尻も、両方気持ちいい~~~~!!」

 

「あぁん! いい! 凄い、おっきいのが・・・あん、奥に、オマンコの奥に当たるぅ~~~~!!」

 

「くっ、リアス、朱乃・・・・行くぞ!!」

 

「ああ! 私も、私もまたイク・・・・!」

 

「あああ! 来て一輝! 私の、朱乃のオマンコにいっぱい射精()してーーーーっ!!」

 

 リアスと朱乃は手を繋ぎ、巨きな胸を擦らせながら最後の瞬間を待つ。  

 一輝はリアスの淫核を強く噛み、朱乃を深く突き上げ、朱乃の腟奥──子宮口で白いマグマを噴火させた。 

 

 ブビュルル! ビュル! ブビューーーー!!

 

「「ああああ! イ、イグ、イッッッグゥ~~~~~!!!❤」」

 

 淫核に強烈な刺激を受けたリアスは腰を震わせ潮を撒き散らす。そして子宮に直接、熱く、重い噴火を受けた朱乃もまた、激しく身体を震わせると、快楽の海に溺れ、意識を手放した───

  

 

 

 

 

 

 夏休みに入って暫く後、(一輝)達グレモリー眷属+アザゼルは駒王学園最寄りの駅に集まった。正装にも使えるという事で皆駒王学園の制服だ。それから悪魔専用のルートを通って秘密のプラットホームへ通された。

 そこに用意された列車に乗って、俺達は冥界へ出発した。 

 

 

 列車の乗り心地は快適だった。

 リアスを先頭車両、俺達を中央の車両に乗せ、列車は暗い通路を進む。隣に座る朱乃の話によると、この列車は次元の壁を通過して冥界に辿り着くようになっているらしい。

 いつものように魔方陣から転移すればいいのではと思ったら、俺やイッセー、アーシア、ゼノヴィア等の新しく眷属になった者は一度正規ルートで入国し、手続きをしなければ違法入国になるからだそうだ。

 

 暫くすると、リアスが車掌姿の男性を連れて来た。彼が持つ機械を俺達新規組にかざす度に「ピコーン」とクイズに正解したような電子音が鳴る。それで手続きは完了したそうで、俺達は無事入国出来る事となった。

 

 列車に乗って一時間程経つと、周りの風景が一変した。

 空が紫色なのを除けば、山や森、湖など人間界と大差ない、風光明媚な景色が続いている。リアスによると、ここはもうグレモリー領だそうでイッセーやアーシアを始め、皆は初めて、もしくは久し振りの冥界の景色にはしゃいでいた。

 そんな中、小猫ちゃんだけは騒ぎに加わらず、流れる景色をボーっと見つめていた。

 無口なのはいつもの事だが、今の彼女からは何やら昏い影を感じる。確か原作ではこれから彼女の身に困難が降りかかる筈だが、さて、これからどうなるのか、そして俺はどうするべきか───

 

 列車は間もなく目的地である、グレモリー本邸に到着する───

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。


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第18話 若手悪魔たち(ルーキーズ)☆(リアス)



感想及び誤字報告ありがとうございます。

第18話をご覧下さい。


 

 

 列車から降りた途端、熱烈な歓迎を受けた一輝()達はグレイフィアさんに案内され、どう見てもヨーロッパ風の城にしか見えないグレモリー本邸に到着した。

 スケールの大きさに圧倒されてる内にリアスの甥のミリキャス君やリアスのお母さんのヴェネラナ様と出会い挨拶を交わした。

 ミリキャス君は十歳位の利発そうな紅髪の男の子。サーゼクス様とグレイフィアさんの息子だけあって、将来勝ち組間違いなしの美少年だ。

 ヴェネラナ様はリアスに良く似た、見た目は十八、九の美少女にしか見えない亜麻色の髪の女性だ。リアスと並ぶと姉妹にしか見えず、ともすればグレイフィアさんの方が年上に見えてしまう。

 何でも歳月を経た悪魔は魔力で見た目を自由に変えられるそうだが、その姿はご主人の好みなのだろうか? 因みにリアスのお母さんだけあってとても胸が大きい。イッセーがエロい目で見てアーシアからつねられていた。

  

 その日の夜、夕食を終えた俺とリアスはリアスのお父さん──ジオティクス様に呼び出された。

 部屋に案内されると既にジオティクス様とヴェネラナ様が揃っていた。お二人の後ろにはグレイフィアさんが控えている。

 対面のソファーに俺達が座るとジオティクス様が話を始める。

 

「さて、二人に来て貰ったのは他でもない。二人の婚約についてだ」

 

「お父様、一輝はもう充分実績を上げた筈です!」

 

「まあ聞きなさい、リアス。確かに一輝君は堕天使幹部コカビエルを始めカテレア・レヴィアタン、そして白龍皇ヴァーリ・ルシファーまで倒している。実績としては申し分ないだろう」

 

「───だったら!」

 

「確かに力は認めよう。だが知識はどうだね?」

 

 知識か・・・・確かに俺は悪魔の、それも貴族の知識に疎い。悪魔になってから激戦続きだったし、勉強する暇も無かったしなぁ。とは言えそんな事この人達にとって言い訳にもならないだろう。

 

「それは──! 一輝は悪魔に転生してまだ三ヶ月なのよ。知識が足りないのは仕方がないわ」

 

「仕方がない?・・・・リアス、貴女はグレモリー家次期当主なのよ。その夫になる者がそれで済むと思ってるの?」

 

「うっ・・・・・」

 

 ヴェネラナ様に言われリアスが口ごもる。流石母親、えらい迫力だ。とは言えリアスが黙っていては話が進まない。俺は仕方なく手を挙げる。

 

「すいません、質問よろしいですか?」

 

「何でしょう、一輝さん」

 

「それは結局、リアスとの婚約は認めないという事ですか? それとも然るべき知識を得れば認めて貰えるのですか?」

 

「ふむ。知識を得ると言うが、リアスの婿として知識や教養を身に付けるのは大変だぞ?」

 

「その件ですが、俺はグレモリー家に婿入りする気はありません。いや、正確にはグレモリー本邸(ここ)に来てその気が失くなりました」

 

「なに!?」

「・・・・あらまあ」

「・・・・・・!?」

「一輝!?」

 

 俺の発言に皆が驚く。そして一気に雰囲気が険悪になる。

 

「・・・・それはどういう意味だね? 君はうちの娘を傷物にしておいて、捨てるつもりかね?」 

 

 ジオティクス様が殺気を放つ。隣でリアスが不安そうにしているので安心させるつもりで彼女の手を握る。 

 

「そんな事しませんよ。俺はリアスと別れる気も誰かに渡す気もありません。俺からリアスを奪おうと言うなら戦ってでも守ります。例え相手が神や魔王であっても、ね」

 

 そうして俺は一瞬だけジオティクス様に向かって殺気を放つ。

 

「ぐむっ・・・・!」

 

 俺の殺気に気圧されジオティクス様が口ごもる。実戦から遠ざかっているとは言え流石グレモリー家当主、気を失わないだけ大したものだ。

 

「志は立派ね。母として娘が愛されてるのも嬉しく思います。ですが婿にならないとはどういうつもりです?」

 

 ジオティクス様に代わってヴェネラナ様が訊ねる。ジオティクス様のように殺気剥き出しにされるより、彼女のように静かな方が怖いな。

 

「順を追って説明します。リアスはグレモリー家次期当主、彼女と結ばれるにはその婿にならねばならない。そうですね?」

 

「その通りです」

 

「ですが本当にリアスは当主になれるでしょうか。なるとしてもその期間はかなり短くなるのではありませんか?」

 

「・・・・何故です?」

 

「ミリキャス君がいるからです。魔王の息子にしてグレモリー直系の男子。彼が成人する頃には寧ろ彼を次期当主に、と推す声の方が多くなるのでは?」

 

「・・・・・・」

 

 ヴェネラナ様は何も言わない。予想は当たっているみたいだな、話を続けよう。

 

「このままではリアスの存在がネックになる。彼女は次期当主に正式に選ばれ、民からも人気があり、次期当主に見合う功績も挙げている。そんなリアスを差し置いて、ミリキャス君を次期当主に指名すれば、将来リアス派とミリキャス派の二つにグレモリー家が割れる恐れがある。ですがリアスが他家に嫁げばどうです?」

 

「それは───!? 確かにミリキャスが次期当主になるのに問題は無くなる・・・・」

 

「・・・・一輝さん。つまり貴方は」

 

「はい。俺は上級悪魔になって、新たに不破家を立てる。そしてリアスを嫁に迎えます」

 

 俺はそう宣言した。   

 

「成る程・・・・貴方はそれをずっと考えていたのですか?」

 

「いえ、今日ミリキャス君に会って思い付きました。彼の評判をメイドさんや執事さんから聞いて、直系の男子がいるなら彼が次期当主になる方が自然では無いかと。ジオティクス様とヴェネラナ様がどうお考えなのかは分かりませんでしたが、その様子を見ると案外的外れでも無かったようですね」

 

 俺がそう返すと、ヴェネラナ様は手を口に当てて上品に笑った。

 

「フフフ、こちらの望みを見抜き、その上で自分の要求を通す手腕、実にお見事です一輝さん。貴方がそのつもりなら話は早いわ。リアスにはミリキャスが成人して次期当主に相応しく成長するまで、これまで通り次期当主の務めを果たして貰います。そしてミリキャスが次期当主に就任した暁には貴方に嫁がせると約束しましょう。──いいわね、リアス」

 

 ヴェネラナ様がそう宣言したが、リアスから返事が無い。おかしいと思って隣を見れば、彼女は顔を真っ赤にしてトリップしていた。

 

「何をしているの、リ・ア・ス」

 

「───ひっ! お、お母様!?」

 

 殺気混じりのヴェネラナ様の声を聞いて、リアスがようやく戻って来た。

 

「リアス・・・・貴女いつから話を聞いて無かったの!?」

 

「だ、だって一輝が私を奪おうとするなら神でも魔王でも戦うって・・・・そんなカッコいい事言われちゃったらもう・・・・・・」

 

 リアスは赤くなった頬に手を当ててくねくねと身体を捩る。ヴェネラナ様はそんなリアスを見て深くため息を吐くと、お説教を始めた。

 

「あ~、では一輝君。リアスとの婚約は君が上級悪魔に昇格してから正式に認める。それまではこれまで通り暫定婚約者という事で構わんね」

 

「はい。なるべく早く昇格してみせます」

 

 ジオティクス様に言われ、俺は誓いを新たにした。

 

 

 

 

 

 その日の夜、リアス()は一輝の部屋に来ていた。

 

「ん──ちゅぷ、んん・・・・一輝ぃ」

 

「んん──、ああ、リアス・・・・」

 

 ベッドの前で一輝と抱き合い深く唇を重ねる。

もう何度、一輝とキスしただろう。何度しても飽きないし、何度も繰り返す度に愛しさが溢れる。

 

「一輝・・・・むちゅ、ちゅぷ・・・・んふぅ、ちゅ・・・・ズズ、ジュル・・・・ん、コク、コク」

 

 舌で唇をなぞり、舌を絡め合い、唾液を交換する。舌で歯茎をなぞり、絡めた舌を甘噛みし、唾液を啜り合う。 

 熱く、激しく唇を吸い合い、1mmも離れたくないと、きつく抱きしめ合う。

 一輝の逞しい身体に包まれるだけで幸せを感じる。一輝の匂いは太陽の、お日様の匂い。その匂いに包まれてると、お腹の下がキュンキュンと疼いてしまう。

  

「んん、ちゅぱ・・・・・・フフ、」

 

「どうした、リアス?」

 

「ううん・・・・ただ幸せだなぁって」

 

 彼の首筋に顔を埋めてそっと呟く。

 

「俺も幸せだよ。でも今日はここまでだな。そろそろ部屋に戻らないと・・・・」

 

 一輝に部屋に戻れと言われてしまう。でも、

 

「イヤ」

 

「・・・・リアス」

 

「イヤよ。私はもう一輝が一緒じゃないと眠れないんだもの。だからイヤ」

 

「あのな・・・・ご両親がひとつ屋根の下にいるのに、それは不味いだろう?」

 

「大丈夫よ。お父様はともかくお母様は認めて下さるわ」

 

「本当かよ・・・・」

 

「ム、何よ、一輝はイヤなの?」

 

 私がムッとして睨むと一輝は苦笑して、

 

「イヤじゃないから困ってるんだよなぁ」

 

 と言って私をベッドに押し倒した。 

 

「あん、一輝・・・・ちゅぷ、ちゅ、んん・・・・あぁん」

 

 ベッドに押し倒された私は、唇を重ねながら制服のボタンを外される。ブラの上から胸を揉まれて電気が走るような刺激に身悶えする。

 一輝の手が背中に回ろうとしたのでその手を止める。

 

「ん、一輝・・・・これフロントホック」

 

「あ、こっちか」

 

 一輝の指が胸の間のホックを押すと、ブラが弾けて生のおっぱいが露出する。

 大きいおっぱいが好きな一輝はブルブルと揺れるおっぱいに見惚れている。たまに見せる一輝のこんな所が可愛くて堪らない。

 

「いいのよ。私のおっぱいは一輝のものなんだから、一輝の好きにして、ね」

 

 一輝は胸の谷間に顔を埋めると、左右のおっぱいを鷲掴みして円を描くように揉みしだく。 

 

「ふぅん! んん、ああ、一輝・・・・んん、ああ!」

 

 胸を揉まれると、くすぐったいような気持ちいいような心地好い快感がじんわりと身体中に広がる。

 

「んひぃ! くぅっ・・・・はぁん!」

 

 乳首を摘ままれ、クリクリと捩らされるとビリッと電気のような刺激が身体に走る。ましてや乳首を舐められ、甘噛みされたなら、

 

「ひゃああぁぁぁんんっっ!!」

 

 その刺激で一気に私は絶頂し(イッ)てしまった。

 

「ハア、ハア、ん・・・・一輝ぃ」

 

 甘い快楽の中、私は続けて欲しいとばかりに脚を開いておねだりする。

 一輝はスカートの中に手を入れ、下着を一気に脱がした。床に落ちた下着はペシャリと湿った音を立てる。

 

「んん、ああ、はぁん・・・・くひん、ふぁ、ふああっ!」

 

 下着に籠った臭いが解放され、私にまで漂って来る。イヤらしく淫らな臭いを直接一輝に嗅がれていると思うと、恥ずかしさに身体中が熱くなる。やがて一輝の指や舌が私の秘肉を責め立てて、私は快楽の海に投げ出される。

 

「ふああ、あん、んん・・・・一輝、一輝ぃ! そこは・・・・んああ!!」

 

 たっぷりの蜜に濡れた秘穴を指が掘削し、溢れる愛蜜を啜り、陰核を指で弾く。一輝から与えられる刺激に私は再び絶頂に達した。

 

「あああ! もうダメ、一輝、私、私ぃ・・・・い、イクーーーーー!!」

 

 陸に上がった魚のように、私の身体がビクビクッと跳ねる。

 

 プシャアアアアッッ!!

 

 イクと同時に私は大量の潮を噴いて失神した。

 

 

 

 事後、私は一輝の腕枕に頭を乗せ、彼に身を委ねていた。さっきまでの半裸じゃなく、二人共全裸だ。

 

「───フフッ」

 

「どうした?」

 

 つい思い出し笑いをした私に一輝が訪ねる。

 

「ううん、さっきのやり取りを思い出して・・・・ねぇ一輝、私をお嫁さんにしてくれるのよね」

 

「勿論。嫌かい?」

 

「もう・・・・嬉しいに決まってるわ」

 

 お父様とお母様の前で一輝が私をお嫁さんに迎えると言ってくれたのが嬉しかった。条件付きとは言え二人が認めてくれたのも。

 

「愛してるわ一輝。いつまでも一緒にいてね」

 

「ああ、俺も愛してるよ、リアス」

 

 私達はもう一度唇を重ね、抱き合って眠りに就いた。

 

 

 翌朝、二人で眠っている所をメイドに見られて一騒動起きたのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 翌日、イッセー()達は若手悪魔の会合が行われる魔王領へ向かった。

 この会合は要は魔王様を始めとした悪魔の重鎮と今年十八歳の成人を迎える若手悪魔の顔合わせで、毎年行われる恒例行事だそうだ。

 会場だという魔王領の中でも一際大きな建物に入ると、俺達と同じような一団がいた。

 

「サイラオーグ!」

 

 その中に知り合いがいたのか、部長が声を掛けると、一人の男性が歩いて来た。

 黒い短髪に紫の瞳の野性的なイケメンで、プロレスラーのように体格(ガタイ)がいい。何処となく部長、というかサーゼクス様の面影がある。

 

「久し振りだな、リアス」

 

 見るからに強そうなこの人はサイラオーグ・バアル。冥界で魔王の次に偉い大王家の次期当主で部長の従兄弟だそうだ。

 部長がサイラオーグさんと話していると、ズズンっと重い音がして建物が震えた。何事かと思ったら部長とサイラオーグさんが走り出した。俺達も後に続くと、その先に破壊された大広間が見えた。

 眼鏡を掛けた冷たい視線の美少女──シーグヴァイラ・アガレスと下品なヤンキーのような兄ちゃん──ゼファードル・グラシャボラスが諍いを起こしていた。

 サイラオーグさんが仲裁に入るもヤンキーが噛みついて来る。だがサイラオーグさんが拳を一閃、ヤンキーは壁まで吹っ飛ばされそのまま気絶した。ヤンキーの眷属がいきり立って睨むが、サイラオーグさんの迫力に主を連れて大広間を出て行った。

 つ、強え! あの一撃、一輝先輩の【虎砲】並みの威力だぞ!? 先輩と戦ったらどっちが強いんだろう。

 サイラオーグ・バアル。越えるべき壁としてその名が俺の胸に刻まれた瞬間だった。  

 

 

 

 スタッフにより大広間が修復されてから、俺達は他の人達と挨拶した。中には匙達シトリー眷属も来ていて、知った顔を見てホッとしてしまった。

 暫くしてスタッフに呼ばれた俺達は部長を先頭に会場に足を踏み入れた。

 会場は大学の講義室みたいに俺達のいる所を見下ろすように段が設置されている。初老の悪魔や若い悪魔、何人もの偉いさんが俺達を見下ろしている。段の高い程身分が上らしく、一番高い所にはサーゼクス様とセラフォルー様、他にも二人の男性がいた。あのお二人は恐らく魔王ベルゼブブ様と魔王アスモデウス様なのだろう。 

 俺達は主を先頭に一列に並ぶ。並び順は決まってるらしく、部長の後ろには女王の朱乃さん。以後アーシア、小猫ちゃん、祐美、ゼノヴィアと並び、兵士である俺と一輝先輩は最後尾に並んだ。

 

 サイラオーグ・バアル。

 シーグヴァイラ・アガレス。

 リアス・グレモリー。

 ソーナ・シトリー。

 ディオドラ・アスタロト。

 ゼファードル・グラシャボラス。

 

 六人の若手悪魔(ルーキーズ)が一堂に会し、会合が始まる。 

 

 

 

 会合は異様な雰囲気の中、始まった。

 高い所から俺達を見下(みお)ろす悪魔達の視線、それは俺達を見下(みくだ)し、嘲りを含んだ物凄く嫌な感じがするものだった。

 息を飲む事さえ憚るような静寂の中、今後のゲーム展開やら禍の団への対応やら難しい話が続いたが、正直俺にはチンプンカンプンだ。そんな中、最後に今後の目標を訊ねられる。

 魔王を目指すというサイラオーグさん、レーティングゲームの王者になるという部長と其々が目標を掲げる中、最後にソーナ会長が冥界にレーティングゲームの学校を建てるという目標を語るが、偉いさん達は難色を示す。更にその学校が今ある特権階級や上級悪魔だけが通えるものと違い、下級悪魔や転生悪魔でも通える分け隔てのない学校だと知ると、今度は爆笑し出した。それは楽しくて浮かべる笑いではなく、多分に嘲りを含んだ──嘲笑だった。

 俺も匙も訳が分からなかった。何だよ、夢を語れって言いながら何で会長を嘲笑(わら)うんだよ! おかしいだろ!?

 堪らず匙が偉いさんに噛み付くが、逆に下僕の教育がなってないと会長が叱責される始末だ。正直もう我慢出来ない! だがそんな俺の肩が後ろから掴まれる。  

 

「堪えろイッセー。ここでお前が吠えてもリアスが叱責されるだけだぞ」

 

 一輝先輩が俺の耳元で囁く。

 

「くっ! でも先輩、先輩は悔しく無いんスか!?」

 

「悔しく無い訳無いだろ。だがリアスが、何より会長が堪えてるのに下僕(俺達)が爆発してどうする!?」

 

「!!!?」

 

 ちくしょう! 一輝先輩の言う通りだ。俺が感情のまま動けば主である部長に迷惑を掛けちまう。悔しくて唇を噛んだその時、セラフォルー様がブチギレた。

 偉いさんも魔王様に逆らう気は無いのか、反応に困っている。

 セラフォルー様はソーナ会長がゲームに勝てるなら文句は無いだろうと主張、それを受けたサーゼクス様が部長と会長のゲームを提案、双方それを受諾し、非公式ながら俺達はゲームをする事になった。

 

 

 

 

 

 会合が終わり、一輝()達はさっさと帰る者やロビーに残って話をする者に別れていた。リアスは残ってサイラオーグらと話をしている。

 暫くして俺はトイレに立った。用を足してトイレから出ると、廊下に一人の少女が佇んでいた。 

 

「どうしました会長?」

 

 俺は彼女──ソーナ・シトリーに声を掛けた。

 

「えっ・・・・ああ、不破君か・・・・」

 

 ソーナ会長は力無く微笑む。俺は彼女の隣に立ち、壁に寄り掛かった。

 

「お疲れ様、大変でしたね」

 

「・・・・ありがとう。でもどこの世界でも重鎮って呼ばれる人達ってこんなものよ?」

 

「老害ってのはどこにでもいるんですね・・・・」

 

「(クスッ) もう・・・・駄目よ、そんな事言っちゃ」

 

 会長はおかしかったのか、クスクスと笑う。

 

「・・・・どうしてあの人達は人の夢をあんな風に笑えるんだろうね・・・・」

 

 ソーナ会長が不意に呟く。

 

「会長は立派だったと思いますよ。あれだけ笑われても貴女は最後まで折れなかった。まぁ結局セラ姉さんがひっくり返しましたが」

 

「姉さんってばもう・・・・」

 

 会長は額に手を当てて苦笑する。けど、どこと無く嬉しそうに見える。

 

「・・・・会長、俺は貴女の眷属じゃありませんし、ライバルの若手悪魔でもありません。だから愚痴や弱音位いつでも聞きますよ。駒王学園の同級生として」

 

「不破君・・・・」

 

「今日の会合は頑張りましたね。カッコ良かったですよ」

 

 俺は自然に彼女の頭を撫でていた。不意に彼女の瞳に涙が滲む。

 

「・・・・成る程。こうやってリアスも堕としたのね・・・・ズルい(ひと)

 

「・・・・人聞きの悪い」

 

「でも、今だけは甘えさせて貰うわね・・・・・・

(グスッ) 悔しいよぅ・・・・」

 

 ソーナ会長は俺の胸に頭を押し当て、そう零した。俺は彼女の華奢な背中に手を回し、泣き止むまでそっと叩き続けた。

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい。不破君の厚意に甘えてしまって・・・・私ったら本当にもう・・・・」

 

 暫くして泣き止んだソーナ()は顔を真っ赤にしながら不破君に謝る。恥ずかしくて彼の顔がまともに見れない。

 

「気にしないで下さい。自分から言い出した事ですから」

 

 そんな風に彼は笑ってくれた。彼の気持ちはとても嬉しい。背中を叩いてくれた優しい感触に心が温かくなる。でも私には一つだけ不満に思う事があった。

 

「ねぇ不破君。貴方リアスは呼び捨てにしてるのよね?」

 

「ええ。そうですが」

 

「姉さんは?」

 

「セラ姉さんと・・・・知ってますよね?」

 

「・・・・じゃあ私は?」

 

「・・・・会長」

 

「むう~、どうして私だけ役職で呼ぶのよ!?」

 

 私は不満を爆発させた。

 

「えっ、と・・・・それは名前で呼んでもいいって事ですか?」

 

「えっ・・・・!?」 

 

 そう言われて、はたと気付いた。不破君に名前を呼ばれる? そんなの恥ずかしい! でも嬉しい!! うう、ど、どうしよう・・・・ 

 

「えっ、と、大丈夫ですか、ソーナ?」

 

 ソーナ。そう呼ばれて益々顔が熱くなる。私は恥ずかしくて下を向きながら、

 

「・・・・敬語も禁止」

 

 と言った。不破君は苦笑しつつ言ってくれた。

 

「分かったよ、ソーナ」

 

 我ながら単純だけど、さっきまで嫌な気分はいつの間にか吹き飛んでいた。

 

 

 

 

 

 翌日からアザゼル指導の元、特訓が始まった。

 シトリーとのゲームまで約二十日、グレモリー邸の広大な庭の一角で、ジャージに着替えた一輝()達はミーティングを行っていた。

 

「先に言っておくが、今から俺が指示するのは将来を見据えての訓練だ。すぐに効果が出る者もいれば、長い目で見なきゃならん者もいる。不満もあるだろうが、お前等はまだまだ発展途上、方向さえ間違えなきゃ上手く成長するだろうさ」

 

 そう前置きしてから、アザゼルは個々の特訓目標を言い渡した。

 リアスは基礎トレーニングの他、ゲームの映像記録やデータを研究し、『(キング)』としての機転や判断力を身に付ける。

 朱乃は自分に流れる堕天使の血を受け入れ、雷に光を乗せた『雷光』を放てるようにする。

 祐美は『禁手(バランス・ブレイカー)』を最低一日は維持出来るようにし、戦闘力を底上げする。

 ゼノヴィアはデュランダルを今以上に使いこなせるよう、剣の精度を上げる。

 アーシアは基礎トレーニングによる体力と魔力の向上に加えて【神器(セイクリッド・ギア)】の強化。目標は離れた所に回復のオーラを飛ばせるようになる事。

 小猫ちゃんは『戦車(ルーク)』として申し分ない能力を持ってるが、グレモリー眷属には彼女以上の攻撃力の持ち主が大勢いる。彼女がこれからも戦力になる為に、自分の本性を晒け出せと忠告されていた。

 そしてイッセーは自力で『禁手(バランス・ブレイカー)』になる事。それには実戦形式が一番だそうで、その相手としてバカデカいドラゴン──元龍王で最上級悪魔のタンニーンがやって来た。イッセーは彼に連れられ、遠くの山の中で特訓(サバイバル)するそうだ。合掌。 

 

 それぞれが訓練を開始した。だが、

 

「あの、アザゼル先生? 俺だけ何も言われて無いんですが?」

 

「ああ、一輝か。お前はなぁ・・・・」

 

 アザゼルは頭を掻いて目を逸らす。

 

「お前はまあ、好きにしろ」

 

「はあ?」

 

「いや、正直お前に教える事ってねえんだよ。ある意味完成してるからな」

 

「そう、なんですか・・・・?」

 

「不破圓明流という武術の使い手で、身体強化の魔術を使い、【ガイバー】というリストにはない正体不明の【神器(セイクリッド・ギア)】まで持っていて、変身、いや殖装すればコカビエルやヴァーリすら倒す。そんな奴に今更俺が教える事っつってもなぁ・・・・」

 

 そう言われてしまった。喜んでいいのか良く分からん。とその時、

 

「それならちょうど良かった」

 

 いきなりグレイフィアさんが割り込んで来た。

 

「おまっ・・・・どっから涌いた?」

 

 アザゼルがそう言うと同時にグレイフィアさんの鋭い拳がアザゼルの腹にめり込んだ。

 

「げふっ・・・・!」

 

「失礼な、私は虫ですか・・・・(コホンッ) 一輝さん、一緒に来ていただけますか?」

 

 その言葉で呆然としていた俺は我に返った。

 

「あ、はい。でもどこに?」

 

「魔王領へ。サーゼクス様がお待ちです」

 

 俺は魔王様の召集に従い、グレイフィアさんと共に魔王領へ向かった。

 

 

 

 

 

 転移魔方陣で魔王領にあるサーゼクスの執務室前に一輝()とグレイフィアさんは転移した。

 

「サーゼクス様。一輝さんをお連れしました」

 

「ご苦労。良く来てくれたね、一輝君」

 

「いえ。それで俺に何の用です?」

 

「うん。君の手腕を見込んで仕事を頼みたい。──これを見てくれ」 

 

 サーゼクス様が差し出した書類を手に取ると、ある人物の手配書と彼女の調査報告書だった。

 

「SS級はぐれ悪魔、黒歌。彼女が冥界に入り込んだとの報告を受けた」

 

 俺は報告書を斜め読みしながらサーゼクス様の話を聞く。

 

「彼女の正体は猫又、その中でも強い力を持つ猫魈という種族で、その力を見込まれある貴族の眷属──僧侶(ビショップ)になりました。ですが力が増大するにつれて主の制御を外れ、最後には主を殺して『はぐれ』になりました。その後多くの追っ手が差し向けられましたが、悉く返り討ちされ、今では迂闊に手を出す事が出来ない危険指定──SS級に認定されています。因みに──彼女は小猫さんの実の姉です」

 

 グレイフィアさんの説明に驚き、俺は眉をひそめた。

 

「・・・・その黒歌が冥界に入り込んだのが先日確認された」

 

 サーゼクス様が数枚の写真を渡す。その写真には長い黒髪に猫耳の妖艶な美女と中華風の鎧を纏った若い男が写っていた。

 

「この男は───」

 

「やはり見覚えあるかね?」

 

「はい、こいつは美猴。白龍皇──ヴァーリの仲間です」

 

「成る程、ヴァーリ・ルシファーの・・・・」

 

「その者と行動を共にしているとなれば、黒歌もまた白龍皇の仲間なのでしょう」

 

 SS級のはぐれ悪魔と孫悟空の孫のコンビか。こういう連中は正面から来ないで術を使った搦め手で攻めて来そうで厄介だな。 

 

「それで俺に頼みたいというのは、この黒歌の捕縛ですか?」

 

「その通りだ。頼めるかい?」

 

 サーゼクス様に訊かれ、俺は暫し考える。

 

「黒歌だけじゃなく美猴もいるとなれば捕縛、という訳にはいかないかも知れませんが・・・・?」

 

 『禍の団』の情報を掴む為にも捕縛が望ましいが、美猴もいて二対一となればそうもいかないかも知れない。出来れば小猫ちゃんの姉を殺したくは無いが、場合によってはその可能性もあると暗に匂わせ、訊ねてみる。

 

「その時は君の判断に任せよう。それで? 依頼を受けてくれるかい?」

 

 俺は暫し考えて決断した。

 

「・・・・分かりました。その依頼、お受けします」

 

 

 

 

 

「よろしいのですか? 一輝さん一人に任せて。かなり厄介な相手ですよ」

 

「勿論だ。これは彼の最終試験でもあるからね」 

 

 グレイフィアの問いに彼女の淹れた紅茶で喉を潤わせてからサーゼクス()は答える。

 

「彼の戦闘力は充分見せて貰った。だが『(キング)』になるにはそれだけでは駄目だ。黒歌と対峙して彼がどうするのか、見せて貰おうじゃないか」

 

 一輝君。君が『王』としての器を持っているか見せて貰うよ。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
私のスマホでは猫ショウのショウという字が出てきませんでした。
そこだけ片仮名や平仮名にするのも、当て字にするのも雰囲気が出ないので、本作では猫ショウという言葉は使わない方向でいきます。

 →20211113、修正しました。 


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第19話 黒歌の真実☆(祐美)



第19話をお送りします。ご覧下さい。




 

 

 SS級はぐれ悪魔、黒歌の捕縛を命じられてから数日が過ぎた。

 黒歌と美猴は冥界入りを確認された後、姿をくらませており、現在魔王直轄の諜報部隊が二人の行方を捜していた。

 一輝()の出番は黒歌を捕らえる時なので、見つけ次第連絡が来る手筈になっている。それまでは眷属の訓練相手を務める事にして、皆の様子を伺っていた。

 

 

 

 

 

 クチュクチュと湿った音が室内に響く。

 

「はあ、はあ、んん・・・・はぁん! せ、先輩、そこは・・・・」

 

「ん? ここがどうした?」

 

「んん! そんなにされられたら、私・・・・んん、ああぁ」

 

 俺はベッドに腰掛けた祐美の背後から彼女のスカートに手を入れて、下着の上から割れ目に沿って指を動かしていた。 

 

「ほら、訓練はまだ始まったばかりだぞ。頑張れ祐美」

 

「ふ、くぅん・・・・だ、だって先輩が・・・・」

 

「俺が?」

 

「先輩が、私のアソコをクチュクチュするからぁ・・・・あぁん!」

 

 祐美の下着は溢れた淫蜜を吸い重くなって、既に下着の役目を果たしていなかった。その下着をずらすと指を二本、祐美の秘穴に挿入した。

 

「んはぁぁぁんんっっ!!」

 

 祐美は身体をビクリと震わせ、動きを止めた。それと同時に右手に握っていた聖魔剣の禁手(バランス・ブレイカー)状態が解除され、元の魔剣に戻った。

 

「三十分か・・・・これじゃあ駄目だな」

 

「ハア、ハア・・・・だって、こんなの耐えられっこ無いですよぅ・・・・」

 

「何があっても禁手を解除しない。これはその為の訓練だぞ。耐えなきゃ駄目だろ?」

 

 俺達はただ祐美の身体をまさぐっていた訳じゃない。禁手状態を維持する訓練の手助けをしていたのだ。本当だぞ。

 

「・・・・だったら、加減して下さい。先輩、激しいんだもん・・・・」

 

「何言ってんだ。加減したら訓練にならんだろう。ほら、続けるぞ」

 

「はぁい・・・・あ、ちょっと待って下さい」

 

 祐美はそう言うと立ち上がり、淫蜜を吸って重くなった下着を脱いで、濡れた股間をティッシュで拭いていた。

 俺の所からは後ろ姿しか見えないが、あの祐美が自分でスカートを捲り上げ、がに股になって股間を拭いてる姿はそそるものがあるな。

 

「お待たせしました・・・・・・いきます、禁手化(バランス・ブレイク)!!

 

 祐美は精神を集中し、禁手【双覇の聖魔剣(ソードオブビトレイヤー)】を顕現させる。

 

「よし、今度は一時間は持たせろよ」

 

「ん・・・が、頑張ります・・・・ふう、あぁ・・・・」

 

 室内に淫らな水音と祐美の喘ぎ声が再び響くまで然程時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 次の日の朝、小猫ちゃんが倒れた。

 原因はオーバーワークによる過労。アザゼルに渡されたメニュー以上のトレーニングを自分に課して倒れたのだ。

 怪我ならばアーシアに治療して貰えるが、過労ではそうはいかない。ゲームまで日がない事と自分の力不足を感じて焦っていたようだ。様子がおかしい事には気付いていたが注意を怠った自分が恨めしい。

 

 小猫ちゃんの様子を見ようと部屋を訪れたら朱乃とイッセーも来ていた。

 ベッドに横たわる小猫ちゃんの頭には普段は隠している猫耳がピョコンと可愛く生えていた。

 

「イッセー、戻ってたのか?」

 

「あ、一輝先輩。先生に小猫ちゃんが倒れたって聞いて、つい・・・・」

 

 仲間思いのイッセーらしい。俺は労るように肩を叩くと、聞き役をイッセーに任せて朱乃の隣に立った。

 

「倒れたって聞いて心配したよ。具合はどう?」

 

「・・・・・・」

 

「色々聞いたけど身体は労らなくちゃ駄目だよ」

 

「・・・・なりたい」

 

「え?」

 

「強くなりたいんです。先輩達みたいに心も身体も。私は『戦車(ルーク)』、戦う事しか出来ないのに、私が一番弱くって・・・・このままじゃ本当に役立たずになっちゃいます・・・・」

 

 小猫ちゃんは目に涙を溜め、猫耳を伏せて呟いた。

 

「けど本性を晒け出せって言われても内に眠る力を、猫又の力を使うのは・・・・・・使ってもし姉さまみたいになったら・・・・怖い、あんなのはもう、イヤなんです・・・・」 

 

 自分の胸の内を吐露して小猫ちゃんは一雫の涙を零す。感情を滅多に表わさない彼女の涙は酷く胸に響いた。

 彼女の姉黒歌は彼女の目の前で力を暴走させて主を殺害、彼女を置いて去ったらしい。その姿が小猫ちゃんの脳裏に今も焼き付いているのだろう。彼女から怯えを拭い去るには姉と対峙して乗り越えなくてはならない、そう思えた。

 

「イッセー君、後は私達が付いてますから」

 

「そうだな。お前はお前の成すべき事を成せ」

 

「朱乃さん、一輝先輩・・・・」

 

 小猫ちゃんに掛ける言葉が見付からないのか、イッセーは悔しそうに拳を握り締め、何かを決意したように立ち上がった。

 

「朱乃さん、一輝先輩、俺行きます・・・・小猫ちゃん、俺は自分の成すべき事を成すよ」

 

 そう言ってイッセーは部屋を出て行った。

 

「さて、俺も行くか。それじゃあ小猫ちゃん、お大事に」

 

 イッセーに続いて俺も部屋を出る。・・・・さて、俺も用事を片付けるとしようか。 

 

 

 

 

 

 数年振りに見た妹の姿に、黒歌()の胸に様々な想いが湧き上がる。

 本音を言えば直接あの娘に会いたい。でも、やむを得なかったとは言え、まだ小さいあの娘を置き去りにした私がどの(ツラ)下げて会えるというのだろう。

 元気、とはいかないが、一目顔を見られただけでも良しとしよう。そう思って塀から飛び降りたその時、

 

「覗き見とは悪趣味だな。───お前何者だ?」

 

 降りた先にいた黒髪黒瞳の男に声を掛けられた。ビックリしたけど今の私は黒猫の姿、誤魔化せる筈だ。

 

「ニャ~~オ☆」

 

 猫撫で声を出して男の脇を通り抜けようと試みる。けど、

 

「無駄だ。いい加減本性を顕せ」

 

「・・・・・・チッ」

 

 誤魔化せなかったか。私は舌打ちして声を上げた。

 

「にゃんで分かったのかにゃ?」 

 

「あのなぁ、お前みたいな気配の猫がいるかよ」

 

 返事が返って来るとは思わなかったが、その男は呆れたように返答した。

 

「気配って・・・・しっかり消してたと思うんだけど?」

 

「確かにな。だがお前みたいに気配を消してる猫なんて逆に怪しいだろうが」

 

 ・・・・盲点だった。今後は気を付けよう。

 

 

 

 

 

 ボンッという音と共に黒猫が消えて、代わりに長い黒髪に猫耳を生やした妖艶な美女が姿を現した。と同時に瞬時に結界が張られる。速度といい強度といい朱乃を上回る、見事な物だ。

 

(──写真と同じ顔。間違いない)

 

「SS級はぐれ悪魔、黒歌だな。お前には魔王から捕縛命令が出ている。無駄な抵抗はせずに大人しく捕まれ」 

 

 一輝がそう言うと、黒歌は警戒の度合いを深める。

 

「ふぅん、お前刺客か。何者にゃ?」

 

「リアス・グレモリーが眷属、『兵士(ポーン)』不破一輝」

 

「!・・・・そう、アンタが噂の【ガイバー】」

 

 ヴァーリを倒した相手の登場に黒歌が一気に戦闘態勢に入った。紫色のオーラが立ちのぼり、身体中に闘気を漲らせる。

 それを見た一輝もまた、構えを取り戦闘態勢に入る。

 

「シャアアアッ!!」

 

 素早い動きで黒歌が迫る。伸びた爪による鋭い爪撃が一輝を襲うが、間一髪で回避に成功、髪が数本宙に舞う。予想以上の速さに一輝は舌打ちする。

 

()ッ!」

 

 反撃とばかりに足を刈ろうとローキックを放つが、黒歌は軽やかに宙に舞い、着地する。

 

(流石猫又、敏捷性が高いな)

 

「・・・・お前がホントにヴァーリを倒したガイバーにゃのか? 思った程じゃないにゃ」

 

 黒歌は不敵な笑みを浮かべる。一輝はふうっと息を吐くと、

 

「言ったな。ならばっ!」

 

 一輝は身体中に闘気を漲らせた。炎のように燃え上がる強大なオーラに黒歌は目を見張った。

 

(───こいつ、闘気を操れるのか!?)

 

 闘気を身に纏い、戦闘力を上げるのは彼女のような仙術使いの奥義。それを自分以上のレベルで使う一輝に黒歌は戦慄を覚える。そして次の瞬間、一輝が目の前に現れた。 

 

「!!?」

 

 一瞬で距離を詰めた一輝の回し蹴りが炸裂する。

 

「ぐ、うぅっ!?」

 

 咄嗟に腕でガードしたが、それでも黒歌は吹き飛ばされる。

 

「くっ、化け物め! これでも食らうにゃ!!」

 

 黒歌は掌に闘気を集中し闘気弾を作ると、一輝目掛けて撃ち放った。迫る闘気弾を一輝は避けようともせず、腰を落として迎撃する。

 

「ハッ!」

 

 気合と共に【虎砲】を放つ。闘気弾は【虎砲】と激突すると、その場で雲散霧消した。

 

「にゃにっ!?」

 

 驚愕する黒歌。一輝は追撃しようと足を踏み出し──その場に崩れ落ちた。

 

「ぐっ!? これは・・・・?」

 

「ふふ、やっと効いて来たみたいね。この霧は悪魔や妖怪にだけ効く毒霧にゃん」

 

 いつの間にか辺りには霧が発生していた。この霧に晒された一輝の身体から力が抜け、息が苦しくなる。

 

「ヴァーリを倒したアンタは危険にゃ。悪いけど今の内に始末させて貰うにゃ」 

 

 黒歌は跪く一輝に向かって爪を突き出した。だが一輝は間一髪の所で黒歌の腕を掴み、辛うじて貫かれるのを防いだ。

 

「まだそんな力が残ってるの? でももう終わりにゃん!」

 

 ジリジリと黒歌の爪が食い込み、一輝の胸元から血が零れ落ちる。絶体絶命の危機であるのに一輝は薄く笑った。

 

「流石SS級、一筋縄じゃいかないな・・・・」

 

 黒歌の腕を掴む一輝の力が徐々に強くなる。ミシミシと嫌な音を立てる腕を引き抜こうと黒歌は必死になる。

 

「───こいつ!? は、離せ!」

 

「誰が離すか───ガイバーーーーー!!

 

 黒歌と密着した状態で一輝はガイバーを喚ぶ。

 

「ウニャア───ッ!?」

 

 強殖装甲を殖装する際、装着者の周囲の邪魔な物体を吹き飛ばすバリアが発生する。その衝撃は並の悪魔や堕天使を容易く消滅させる程で、それをまともに受けた黒歌は── 

 

「───ゲハァッ・・・・・・」

 

 バリアの衝撃と吹き飛ばされた時、樹木に激突してボロボロになっていた。

 闘気によって身体強化していたから耐えられたが、黒歌は元々術主体で戦うウィザードタイプ、肉体は然程鍛えていない為、既に満身創痍、意識を保つので精一杯だった。

 

(───不味い、逃げなくちゃ・・・・でも身体が動かない・・・・)

 

 仙術で治療しつつ立ち上がる黒歌の元に、足音を立てながらガイバーが近づいて来る。強殖装甲が完全に防いでいるのか、その足取りはしっかりしていて、毒霧の影響を感じさせない。

 

「くっ、こうなったら奥の手にゃ!」

 

 黒歌は右手に妖術、左手に仙術と異なる力を集中させ、一挙に放出した。

 黒歌が放ったのは触れただけで生物の命を奪う呪殺弾。黒歌にしか使えない彼女の切り札たる一撃は、螺旋を描きつつ混じり合い、ガイバーに迫る!

 だがガイバーが左手をかざすと、呪殺弾は左手に吸い込まれ、跡形もなく消滅した。

 

「! そんなバカにゃっ!?」

 

 自分の切り札たる呪殺弾をあっさり無効化され、黒歌は愕然とする。

 

「ば、化け物・・・・」

 

 その場にへたり込む黒歌の目の前にガイバーが立ち塞がり、右腕の【高周波ソード】を伸ばして振り被る。

 黒歌にはそれが死神の鎌に見えた。

 

(ああ──これまでかにゃ・・・・・・)

 

 ここに来て黒歌は観念した。ガイバー(一輝)には敵わないと自分の心が認めてしまった。

 

(思えば碌でもない人生だったにゃあ・・・・)

 

 黒歌の胸にこれまでの人生が走馬灯のように浮かんでは消える。両親や元の主、ヴァーリ達今の仲間、中でも最も強く浮かんだのは──最愛の妹、小猫(白音)だった。

 

(グレモリー眷属・・・・ガイバー(こいつ)ならきっと白音を守ってくれるかな?・・・・ごめんね白音、辛い目に合わせてばかりで・・・・悪いお姉ちゃんの事なんて早く忘れて、どうか───)

 

「幸せにね、白音───」

 

 ガイバーが【高周波ソード】を振り降ろした。

 

 

 

 

 

「幸せにね、白音───」

 

 白音に別れを告げ、最後を受け入れようとした黒歌()だけど、いつまで待ってもその時が来ない。不思議に思った私がそっと目を開くと、

 

「!!?」

 

 ほんの数㎝先で紅の刃が止まっていた。その事に思わず私は息を飲む。

 

「どう、して・・・・・・?」

 

 思わずそう漏らすと、ガイバーは変身を解除した。紅の躯が異次元に消えていくのを不思議そうに見つめる私に奴が尋ねる。

 

「黒歌・・・・お前本当に力に溺れて主を殺したのか?」

 

 今まで何回も真実を話したけど、誰も信じてくれなかった。所詮こいつらには真実なんてどうでもいい。こいつらが望むシナリオ通りの悪役──力に溺れた愚かな転生悪魔が欲しかっただけ。だから私は真実を告げるのを諦め、奴等のシナリオを受け入れた。

 そんな私に何て意味のない質問、私は呆れつつ、嘲笑を浮かべて答えた。

 

「本当にゃん。確かにあのクソ主は私が殺した。どう? これで満足?」

 

 だけど奴は私から視線を逸らさず、じっと見つめている。その視線に居心地の悪さを感じ、私は吐き捨てるように言った。

 

「まあ今更どうでもいいにゃん。私はもう動けないから好きにすればいいにゃん。それとも──動けないのをいい事に犯すつもりにゃ? ふふ、いいにゃ。お姉さんのテクで天国に連れてってあげるにゃあ❤」

 

 挑発するように着物をはだける。肩を露出させ、胸も上半分が丸見えになる。それでも奴はじっと私の目を見続ける。そして、

 

「確かにお前が主を殺したのは事実だろう。だが俺が聞きたいのはその動機だ。何故お前は主を殺したのか──誤魔化さずに真実を話せ」

 

 ハッキリそう言い放った。

 

 

 

 

 

「ふざけるにゃ! 今更私が真実を語って何の意味があるんにゃ! お前等は貴族の権威を守る為なら簡単に真実をねじ曲げる! そんな奴等に真実を語って、一体誰が信じるって言うのにゃあ!?」

 

 黒歌が怒りを込めて叫ぶ。それは虐げられ、理不尽に運命を歪められた怒りと哀しみを含んだ魂の叫びだった。 

 成る程、誰も彼女の言葉に耳を貸さず、ただ貴族の権威を守る為、彼女に「力に溺れたはぐれ悪魔」というレッテルを貼り付け、始末しようとしたのか。

 何とも酷い話だ。だからこそ一輝()は彼女──黒歌に言ってやらねばならない。

 

「俺が信じる! お前の言葉は俺が全て信じてやる! だから諦めるな! 諦めないでお前が本当にいるべき所に帰れ!!」

 

「───な、にゃにを・・・・・・?」

 

 俺の剣幕に圧され、黒歌は呆然とする。

 

「・・・・何で? どうして私を信じてくれるにゃあ?」

 

「・・・・お前の最後の言葉だ。死を受け入れた瞬間、お前は妹の、小猫ちゃんの幸せを祈った。死の間際に他人を思いやれるのは力に溺れてない証拠だ。本当に力に溺れた者ならば最後まで自分の事しか考えないからな」

 

「・・・・そんな事で」

 

「俺にとってはそれで充分だ。だから黒歌、話してくれないか?」

 

 俺が改めて尋ねると、黒歌は深く息を吐いた。そして、

 

「分かったにゃ。私は───」

 

 それから黒歌は自分の身に何が起きたのかを話してくれた───

 

 

 

 

 

 黒歌は人間の研究者であった父と猫又の母の間に生まれた。父は研究にしか興味が無く、生まれた娘を認知すらしない男だった。

 実験中の事故により両親を亡くした黒歌は幼い妹を育てる為、父の伝手を頼り上級悪魔ナベリウス家を訪れた。そこで会った男から眷属の誘いを受けた黒歌は、妹の白音に手を出さない事を条件に契約を交わし、男の眷属──僧侶となった。

 だが黒歌の主は眷属を強化する為なら非道な手段も厭わない男だった。

 黒歌は猫又の力を覚醒させ、順調に力を伸ばしていたが、眷属の中には妙な実験を受け、命を落とす者さえいた。

 やがて実験は眷属のみならず、その家族にまで魔の手を伸ばすようになる。そして主は白音に目を付けた。まだ幼い白音に契約を無視して死の危険のある仙術を使わせようとしたのだ。

 それを知った黒歌は妹を助けようと実験場に乗り込み主を殺害、間一髪で白音を救出した。だが白音を連れて逃げようとした所で邪魔が入り、黒歌は一人で逃げるしか無かった。

 黒歌が事情を説明しようとするも追手は黒歌の言葉に耳を貸さず、捕縛ではなく抹殺しようとして来た。いつしか黒歌は弁解する事を諦めた。そして、迫り来る追手を始末する内にSS級はぐれ悪魔として指名手配されていた。

 唯一気掛かりだった白音は姉が主を殺した責任を取らされ処分されそうになった所、グレモリー家に引き取られ、次期当主リアス・グレモリーの眷属になったと聞いた。

 行く宛も無くさ迷っていた時、『禍の団』からスカウトされた。そこでヴァーリと出会い、現在に至る───  

 

 

 

 

 

 話を聞いて俺は呆れた。聞いてた話とはまるで違う。黒歌は力に溺れて主を殺したのでは無く、妹を助ける為にやむを得ず殺してしまったのだ。しかも悪いのは明らかに主の方だ。「悪魔は契約を重んじる」──俺はリアスからそう聞いた。契約違反を犯したのなら殺されたって文句は言えないだろう。

 原作知識で黒歌が力に溺れた訳じゃないと分かってはいたが、細かい事情までは忘れていた。とにかくこの件は色々おかしい。果たして魔王(あの人)は知っているのか? 下手をすれば魔王(あの人)自身が黒幕という事もある。でも───

 

「・・・・なあ黒歌、お前妹の──小猫ちゃんの力になる気は無いか?」

 

 俺は黒歌の肩に手を置き、まっすぐに見つめる。

 

「私が妹の──白音の力に・・・・?」

 

 黒歌の金色の瞳が不安気に揺れている。

 

「ああ、あの娘は今、過去に囚われ前に進めずにいる。お前の助けが必要なんだ」

 

「・・・・白音が私を・・・・本当かにゃん・・・・?」

 

「あの娘が秘めた力を使いたがらないのは、力に対する恐怖が心の奥底に根付いているからだ。その恐怖を払拭出来るのは原因であるお前しかいないと俺は思ってる。上手くいけばその後も姉妹一緒に暮らせるようになるかもしれない。全てはお前次第だ。───どうする?」

 

 黒歌は一旦目を瞑ると、決意したかのように再び目を開いた。

 

「分かった。お前を信じるにゃ、ガイバー」

 

「OK、交渉成立だ。それと俺の名は不破一輝だ。一輝と呼んでくれ」

 

「分かったにゃ、一輝!」

 

 黒歌の金色の瞳は強い意志を宿し、もう揺れてはいなかった。

 

 

 

 

 

 不思議な気分だった。

 あんなにも恐ろしく、一時はこの命を諦めた死神のような存在だった筈なのに、今ではその黒い瞳で見つめられるだけで、何故か胸騒ぎがする。

 思えば今まで誰かに信じて貰った事が黒歌()にあっただろうか? 長い逃亡生活の中、他人を信じず、欲望や打算に塗れた視線にすっかり慣れっこになって、他人なんて利用するものだとばかり思っていた。

 『禍の団』の誘いに応じたのは身を隠すのに都合が良かったからだし、ヴァーリのチームに入ったのも強い者の側にいれば生き残れるだろうという打算からだった。

 でも一輝は違った。信じるという言葉と真っ直ぐ見つめる瞳からは強い意志が感じられた。誰かに信じて貰える、それがこんなに嬉しいなんて私は知らなかった。 

 絶大な戦闘力を持つといっても、一輝は所詮転生悪魔、権力の前には何も出来ないかもしれない。そんな事分かっているのに私は何故一輝を信じたのだろう?

 今は分からなくてもいい。せめてその理由が分かるまでは付き合ってやるとするにゃん。

 

 

 

 

 

 翌日。一輝()は再びサーゼクス様の執務室に来ていた。

 

「忙しい所お時間をいただきありがとうございます」

 

「構わないよ。今日はどうしたんだい、一輝君?」

 

「黒歌の件でナベリウス家の再調査をお願いしたいんです」

 

 サーゼクス様は仕事の手を止め、姿勢を正す。

 

「詳しく説明して貰おう」

 

「はい。先日黒歌と接触して彼女の話を聞いたのですが、どうも最初に聞いた話と食い違う点があるんです」

 

「それで再調査か・・・・黒歌は何と?」

 

 俺は黒歌から聞いた話を伝える。

 

 

 

「・・・・ふむ。一輝君、君は彼女の話を信じるのかい?」

 

「はい。俺は黒歌を信じます」

 

「我々政府の調査より犯罪者の言葉を信じると・・・・何故かね?」

 

「俺は黒歌と直接話をして、彼女の話に嘘は無いと感じました。それに、俺は冥界上層部に不信感を持っていますから」

 

「・・・・・・」

 

 サーゼクス様は何も言わない。続きを促してると感じ、俺は話を続ける。

 

「先日行われた若手悪魔の会合、トップである魔王様方はともかく、他の方々からは会合に参加した若手全員を嘲る気配がありました」

 

 そう、下級悪魔や転生悪魔を対象としたレーティングゲームの学校を作ると言った会長──ソーナは勿論、魔王になると言ったサイラオーグやゲームの王者を目指すと言ったリアスまで、奴等は「出来る訳無い」と高を括り、内心嘲笑っているのが見え見えだった。

 

「黒歌の話では主が契約違反をして、妹の小猫ちゃんに危害を加えようとしたのでやむを得ず主を殺害したそうです。そんな醜聞を貴族(あの連中)がそのまま発表するでしょうか? 寧ろ転生悪魔との契約など守る必要無いと思ってるんじゃありませんか?」

 

「・・・・・・」

 

「更に黒歌の追手は問答無用で彼女を殺そうとしました。本来なら彼女を捕縛して尋問すべきなのにです。これはナベリウス家が事件を揉み消そうとして動いた為だと思われます。ですからナベリウス家の再調査をお願いしたいのです」

 

 俺は言うべき事を言ってサーゼクス様の沙汰を待つ。

 

「やはりそうだったか・・・・・・一輝君、黒歌は今どこに?」

 

「俺が保護していますが・・・・」

 

「彼女に会わせて欲しい。確かめたい事があるんだ」

 

 何やら真剣な表情でサーゼクス様が迫る。暫し考え、俺は虚空に向かって声をかけた。

 

「という事だが、どうする黒歌?」

 

『・・・・分かった。今行くにゃ』

 

 俺の声に応えて着物を着崩した猫耳の美女──黒歌が虚空から現れる。彼女は虚空に身を隠し、俺達の会話を聞いていたのだ。

 空間を操る術は高等技術、それを自在に使いこなす黒歌にサーゼクス様は目を見張った。

 

「何と・・・・君が黒歌か。私は四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーだ。以後よろしく」

 

「・・・・黒歌にゃ」

 

 サーゼクス様の挨拶に黒歌は短く答える。

 

「うん。単刀直入に聞こう。君は元の主との契約書をまだ持っているかい?」

 

 「悪魔は契約を重んじる」──その言葉通り、通常眷属になる時は主と契約書を交わす。その時契約書を二通作り、主と眷属がそれぞれ保管するのが習わしだ。俺も後からではあるがリアスと契約を交わしている。 

 

「・・・・あった、これにゃ」

 

 黒歌が虚空に手を突っ込み、一枚の羊皮紙を取り出した。

 それは黒歌がナベリウス家の一員であった元の主と交わした契約書。だが通常黒一色で書かれている契約書は主の名が赤く染まり、全体に大きく×印が浮かんでいた。これは・・・・

 

 黒歌も契約書の変化に気付かなかったらしく驚いている。

 

「サーゼクス様、これは一体・・・・」

 

「一部の上級悪魔しか知らない事だが、悪魔の契約書にはある細工が施してある。契約に違反した時、違反した者の名が赤く染まり、契約が無効になった証として全体に×印が浮かび上がるんだ。これによってどちらが契約を破ったか明らかになる」 

 

「ではこれは十分な証拠になると?」

 

「うむ。・・・・実を言うとこの件は以前から疑惑があってね。ナベリウス家の不正の証拠を探していたんだ。そこで黒歌が契約書を持っていれば証拠になると考え、彼女が冥界に現れたのを機に君に捕縛を頼んだんだよ」

 

 聞いてない裏の事情を聞かされ、俺は天を仰ぐ。

 

「教えて下さいよ、そう言う事は!」

 

 下手をすれば黒歌を殺してしまう所だった。

 

「ハハハ、いやあ、すまない。こちらにも事情があってね。──とにかく黒歌、君の身柄を私に預けて欲しい。流石に無罪放免とはいかないが、かなりの減刑は出来ると思う。どうだろう?」

 

 良かった、これで魔王の保護を受けられる。だが黒歌はピタリと俺に寄り添い、条件を付けた。

 

「・・・・一輝が一緒ならいいにゃ」

 

「黒歌!?」

 

 俺の出番は終わったとホッとした矢先で驚いたが、黒歌の不安気な顔を見て覚悟を決めた。

 

「サーゼクス様、このまま黒歌の護衛をさせて下さい。俺には彼女の行く末を見届ける責任がある」

 

 サーゼクス様は寄り添う俺達を見て、笑みを浮かべる。

 

「分かった。ではお願いしよう」

 

 

 

 

 

 一輝君と黒歌を別室で待機させ、部下に色々手配しているとノックの音がしてグレイフィアが入室して来た。

 

「どうでしたか、一輝さんは?」

 

 開口一番に訊ねるグレイフィアにサーゼクス()は微笑んだ。

 

「予想以上だったよ。与えられた情報を鵜呑みにせず、黒歌の証言を得て事の真相に辿り着いた。

これで一輝君が戦闘力だけの男ではないと証明出来るだろう」

 

 これで近年黒い噂の絶えないナベリウス家に司法の手が入れられる。その切っ掛けとなったなら、アジュカもファルビウムも納得するだろう。

 元より一輝君の力は最上級悪魔に匹敵する。その力を遊ばせておくのはあまりに勿体無い。

 

「───では?」

 

「ああ。少し早いが彼にはその実力に相応しい地位へと上がって貰うとしよう」

 

  

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。


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第20話 黒歌と白音☆☆(黒歌、小猫)

  

久しぶりにコソっと投稿します。
ご覧下さい。


 

 

 あれから三日が過ぎ、ナベリウス家の強制捜査が開始された。

 黒歌の積極的な協力もあり、スムーズに捜査が進むと、これまで隠されていたナベリウス家の不正や不当な実験の証拠などが山のように発見された。

 これによってナベリウス家の当主を始め、主だった者が逮捕された。

 仮にも72柱の名門が起こした不祥事に冥界全土が震撼した。

 四大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーは二度と同じ過ちは起こさないと宣言、上級悪魔の眷属に対する不当な扱いを禁止し、取り締まる旨を発表した。 

 

 

 

 

 

 魔王領。

 先日若手悪魔の会合が行われた建物の一室に72柱の貴族、その中でも保守派と呼ばれている者達が集まっていた。奇しくもその顔触れのほとんどが、先日の若手悪魔の会合に出席し、嘲笑を浮かべていた者達だった。

 

「しかしナベリウス家にも困った物だな」

 

「全くだ。あそこは派手にやり過ぎだよ」

 

「だが魔王が動いてる。我々も当分は大人しくするしか無いだろう」

 

「しかし魔王共め・・・・下僕をどう扱おうと我々の勝手ではないか!? それが貴族の特権だというのに全く! あいつらは何も分かってない!!」

 

 好き勝手に文句を並び立てる貴族達。その時扉が大きな音を立て、勢い良く開いた。

 

「よくもまあ、好き勝手に吠えたものだな」

 

「観念して貰うわよ、オジさま方」

 

 姿を現したのは二人の魔王、サーゼクスとセラフォルーだった。

 

「ま、魔王様・・・・」

 

「サーゼクス、セラフォルー・・・・何故ここに?」

 

 貴族達は秘密の会合に現れた魔王に驚愕し、呻き声を上げた。

 

「ナベリウス家を摘発すれば尻尾を出すと思っていたが、まさかこんなに堂々と会合を開いているとは・・・・」

 

「オジさま達、私達を舐め過ぎよ!」

 

 サーゼクスとセラフォルーから紅と蒼のオーラが迸る。その強大さに貴族達はこの二人が最強の悪魔故に魔王に選ばれたのを思い出し、今更ながら怖じ気付いた。

 

「お前達は特権を振りかざし、冥界の秩序を乱した。これからの冥界には不要な存在だ──連行しろ!」

 

 サーゼクスの命に配下の悪魔が一斉に室内に入り、貴族達を拘束する。

 

「待て! 私は何も悪くないんだ!」

 

「待ってくれサーゼクス! いやサーゼクス様! 話を、話を聞いてくれ!」

 

「やめんか! わしを誰だと思っている! わしは72柱の貴族だぞ! 貴様らのような下賤な悪魔が触れていい存在ではないのだぞ!!」

 

 連行される間も貴族達は立場を振りかざし、自己弁護や自分勝手な主張を繰り返し、見苦しい事この上なかった。

 

「・・・・バカな人達。悪魔()達はもう、他種族の力を借りなきゃ成り立たなくなってるのに」

 

「全くだ。現実を見ようとせず、特権にすがり付く──愚かなものだよ」

 

「でも、これで少しは風通しが良くなるんじゃないかしら?」

 

「そうだな。冥界の闇は深い。少しずつでも変えていかねばな。次の世代の為に」

 

 二人は頷き合うと、踵を返し、誰もいなくなった部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 ナベリウス家の摘発から芋づる式に同様の貴族も摘発された。

 その間、一輝()は黒歌の護衛として四六時中張り付いていた。というより───

 

「カ・ズ・キ~♪ 暇だから私と遊ぶにゃん☆」

 

「おわっ! く、黒歌!? 分かったから離れてくれ!」

 

「ん~? いやにゃん♪」

 

「こ、こら! どこ触ってんだ!?」

 

 何故か黒歌の方が俺を離さない、というか暇を見つけてはやたらとくっ付いて来る。最初は鬱陶しいと思ったのだが、ある日黒歌の手が微かに震えている事に気付いてから好きにさせていた。

 

「んふふふ、ホントは嬉しい癖に・・・・うにゃ!」

 

 リアス並みに大きく、朱乃並みに柔らかい胸が押し付けられ、とても気持ちがいい。この三日、グレモリー本邸には帰らず、ここで黒歌の護衛に着いている為、俺も色々と溜まっているので正直勘弁して欲しい。

 そんな風に黒歌にじゃれ付かれていると、ノックの音がしてサーゼクス様とグレイフィアさんが入って来た。

 

「やあ一輝君、黒歌、お邪魔するよ」

 

「サーゼクス様、グレイフィアさんも。どうかしましたか?」

 

「ああ、うん・・・・仲が良さそうで何よりだ。今日来たのは事態が粗方片付いた事を報せようと思ってね」

 

 そう前置きしてサーゼクス様は事態がどうなったかを教えてくれた。

 

 

 サーゼクス様達四大魔王は旧態然とした冥界を変えようとしていた。だがその改革は保守派と呼ばれる旧くからある名門貴族に邪魔され、思うように進まなかった。

 いかな魔王とて数少ない純血の悪魔である貴族の意向を無視する訳にもいかず、魔王達改革派は転生悪魔が増え、悪魔社会が立ち直るのを待ち、改革を進める為の突破口を探していた。

 近年になってナベリウス家で起きた事件から黒歌に白羽の矢が立ち、彼女と接触する機会を窺っていた。そして今回、黒歌の証言からナベリウス家を始めとした反対勢力の摘発に成功したのだ。

 

「今回の成功は二人の協力無しにはあり得なかった。よって二人には報奨を与える。まず黒歌。君の犯した罪はやむを得ないものであり、情状酌量の余地がある。今回の功績と相俟って条件付きで無罪となった」

 

「条件付き?」

 

「そうだ。その条件とは派遣された監察官の指示に三年間従う事だ」

 

「・・・・・・」

 

 黒歌が嫌そうな顔をする。自由奔放な黒歌にとって誰かに従うのは苦痛でしか無いのだろう。

 

「安心したまえ。監察官は一輝君だから」

 

 だがサーゼクス様も分かっているのか、俺を監察官に指名した。俺何も聞いてないんだが・・・・

 

「一輝君、事後承諾で悪いがよろしく頼む」

 

 そう言ってサーゼクス様はウインクする。その時俺はこの役目が周りを納得させる為の方便だと気付いた。確かに黒歌の行く末を見届ける責任があると宣言した事だし、仕方がないか・・・・

 

「分かりました。黒歌もいいな?」

 

 黒歌はコクコクと頷く。驚いてるのか、目を丸くしているのが可愛らしいんだが、良く分かってないみたいだ。

 

「要は俺と一緒ならある程度自由に行動出来るって事だ」

 

「!───それじゃあ」

 

「ああ。これで小猫ちゃんに会いに行けるな」

 

 黒歌は俺にしがみ付き、絞り出すように小さく呟いた。

 

──ありがとう、ありがとう、一輝・・・・・・

 

 黒歌の手が小さく震えている。俺はそんな彼女の手に自分の手を重ね、軽く握った。

 

「一輝君、君にも功績に見合った報奨を与えるから楽しみにしてくれ」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 サーゼクス様が何をくれるつもりか分からないが、何が貰えるのか楽しみにしていよう。

 

「では、早速監察官の役目を果たそうと思います」

 

「ああ。そうしたまえ」

 

「はい」

 

 俺はサーゼクス様に断りを入れると、俺は不思議そうに見つめる黒歌に向かって手を差し伸べた。

 

「黒歌、小猫ちゃんに会いに行こう!」

 

 黒歌は目を丸くすると、何かを堪えるように俯く。そして───

 

「───うん!」

 

 満面の笑顔で俺の手を取った。

 

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 小猫()の気合を込めた一撃は大木を揺らすだけで折る事は出来なかった。

 

「ハア、ハア・・・・」

 

 駄目だ。何度やっても上手くいかない。これ位の太さの木、一輝先輩やイッセー先輩なら容易くへし折れるだろう。祐美先輩やゼノヴィア先輩なら剣で真っ二つに、部長や朱乃さんなら滅びの魔力や雷で消し飛ばせる。私だけ、私だけがどうする事も出来ない。

 

「私ってやっぱり役立たずだ・・・・」

 

 私はその場にへたり込み、唇を噛んだ。今以上の力を得るには仙術を、猫又の力を使うしかないのは分かってる。 

 でも怖い。姉様みたいに力を暴走させてしまったらと思うと怖くて堪らない。私はどうしたらいいんだろう・・・・

 

「いやぁ、そんな事ないと思うぜぃ」

 

 そんな時、突然木の上から声がした。そこには中華風の鎧の男性の姿が。この人どこかで・・・・?

 

「お前が白音だな? 黒歌の妹の」

 

 姉様の名前を出されて、ようやく思い出した。この人三大勢力会議の時、白龍皇を迎えに来た人だ。つまり『禍の団(カオス・ブリゲード)』!?

 そう気付いた私は大きく飛び退いて、遅まきながら戦闘態勢を取る。

 

「へえ♪ お前さんやる気かぃ? いいぜ、遊んでやるよ」

 

 その男はどこからか取り出した棍を一振りすると、ゆっくりと近付いて来る。その態度は余裕綽々でニヤニヤと笑っている。だったらその顔を歪ませてやる!

 

「ふっ!」

 

 呼気を発して拳を繰り出す。だけど私の全力のパンチはあっさり止められてしまった。ならばと蹴りを放ったけどこれも軽々と受け止められた。私は攻撃を繰り返すが、男には通用しない。最初は面白がっていた男も途中から訝しげな表情で呟いた。

 

「弱えなぁ・・・・お前さん本当に黒歌の妹かぃ?」

 

 ズキンと胸に鋭い痛みが走る。

 

「だがまぁ、人質としては役に立つか。そらよ!」

 

 男は棍を一回転させ、私の足を刈り、仰向けに倒れた私を足で踏みつけた。

 

「カハッ!」

 

 肺を押し潰されるような衝撃に思わず息を洩らす。

 

「大人しくしろよ。お前さんには黒歌を呼び出すエサになって貰うからよぃ」

 

 姉様を呼び出すエサ?

 

「どう、いう事・・・・?」

 

 無理矢理絞り出した私の声に男が反応する。

 

「ん? それは・・・・なぁ!」

 

 男は突然棍を振り回し、飛来した魔力弾を弾き返した。今のは───!?

 

「美猴! 白音を離せ!!」

 

 長い黒髪を靡かせて、猫耳を生やした美女が乱入して来た。数年振りだけど間違いない。

 

「ねえ、さま・・・・・・」

 

 私は姉、黒歌と数年振りの再会を果たした。

 

 

 

 

 

 魔王領からグレモリー本邸にやって来た黒歌()は黒猫の姿になって一輝の肩に乗り、邸に入った。

 白音の部屋に行くと誰もいない。一輝が通りかかったメイドに訊ねると、訓練に行ったと言われた。過労で倒れたと聞いてたけど、大丈夫なのかにゃ・・・・

 白音の訓練場所を聞いた私達は、早速転移して白音を捜した。

 山中を捜していると、近くで誰かが戦ってる気配がしたので行ってみると、そこには白音を踏みつける美猴の姿が!

 

「!!」

 

 怒りのままに放った魔力弾は、美猴が如意棒を一振りして弾き返した。

 

「美猴!白音を離せ!!」

 

 私は二人の前に降り立つ。美猴はニヤニヤと笑い、白音は愕然としている。

 

「ねえ、さま・・・・・・」 

 

 白音は踏みつけられてはいるけど、大した怪我は無いみたい。私は怒りを込めて美猴を睨み付ける。

 

「美猴、その足をどけろ。私の妹に手を出すなんてどういうつもり?」

 

「ハッ、お前こそどういうつもりだぃ? 勝手に姿を消したと思ったら悪魔の捕物に手を貸すたぁよぅ。グレモリー眷属にヴァーリの落とし前を付けに来たってのに、目的を履き違えてんじゃねーよ。・・・・それとも黒歌、お前チームを抜けるつもりかぃ?」

 

 美猴の言葉に思わず息が詰まる。けど、

 

「そうよ。私はチームを・・・・『禍の団(カオス・ブリゲート)』を抜けるわ」

 

 私はキッパリと言い切った。

 

「ふぅん・・・・お前がその気なら止めねえよ。だが落とし前はつけて貰わねえ──とぉぉ!?」

 

 その時、姿を消していた一輝が美猴に襲い掛かった。一輝の奇襲を美猴は如意棒で防ぎ、そのまま吹き飛ばされながらも態勢を整える。

 

「あっぶねぇ~、おいおい、いきなり何しやがる?」

 

「それはこっちの台詞だ。ウチのマスコットをいたぶりやがって・・・・黒歌を説得したのは俺だ。落とし前なら俺がつけてやるよ」

 

 拳を握る一輝に美猴はニヤリと笑う。

 

「いいねぇ! お前さんなら大歓迎だぜぃ!!」

 

 美猴はヴァーリと同じく戦闘狂。強い相手と戦うのを喜びとしている。一輝は美猴の目を白音から巧く逸らしてくれた。

 

「一輝、センパイ・・・・」

 

 白音が心配そうに声を掛ける。一輝は白音を一瞥すると安心させるように笑った。

 

「大丈夫、後は任せろ」

 

 その一言に私は不思議と安堵していた。まだ出会ったばかりなのに一輝の言葉には不思議と説得力がある。彼に任せれば大丈夫だとそう思ってしまう。それは白音も同じなようで、信頼の籠った眼差しを一輝に向けていた。

 

「小猫ちゃん。突然黒歌が現れて混乱してると思うが、黒歌の話を聞いてやってくれ。きっと君の悩みを解消してくれると思う」

 

 一輝は美猴の元へ歩みを進めながら言う。

 

「黒歌。怖れるな。妹を信じて思いの全てを吐き出してこい。小猫ちゃんならきっと受け入れてくれるさ」

 

 一輝は美猴と数mの距離を空けて立ち止まる。

 

「二人共、ちゃんと仲直りしろよ」

 

 そう言い残して、一輝は美猴と共にその場から掻き消えた。場所を移したのだろう、遠くで二つの闘気がぶつかり合う気配がする。後に残されたのは私と白音だけだった。私は意を決して白音に話しかけた。

 

 

 

 

 

「白音、手を───」

 

 姉様が小猫()の手を取ると、温かい何かが流れて来る。その温かさに身体から痛みが消えていく。

 

「これは・・・・?」

 

「仙術は生命の流れを操る術。これ位なら貴女にだってすぐ出来るようになるわ」

 

 姉様はそう言うけど、私にはとてもそうは思えなかった。

 

「仙術を暴走させるのが怖い?」

 

 姉様はそんな私の胸の内をあっさり言い当てる。 

 

「ねえ白音。今まで隠していた、貴女の知らなかった真実を話すわ・・・・私の話、聞いてくれる?」

 

 姉様の真剣な眼差しが私を射抜く。真実とはなんだろう? 知るのが怖いと思う反面、知らなければいけないとも思う。

 私は姉様を見つめ、コクリと頷いた。

 

「ありがとう。あのね───」

 

 そして姉様はあの日の真実を話し始めた。

 

 

 

 

「そんな───」

 

 姉様の話を聞き終え、私は愕然とした。

 

 当時幼かった私にとって、あの日は力に溺れた姉様に捨てられた最悪の日として記憶していた。

 優しかったナベリウス家のご主人様を姉様が殺した。止めに入った眷属や屋敷の者までも。

 全身を血で赤く染め、狂ったように暴れ回る姉様の姿が恐ろしくてたまらなかった。

 そして姉様は私を置き去りにして逃亡した。一人取り残された私は姉様が『はぐれ』になったと聞かされ、私自身も主殺しの身内として処刑される事になった。

 

 幸い処刑はサーゼクス様の横槍で中止となり、私はグレモリー家に保護されたが、心に深い傷を負った私はこの日の記憶に蓋をして思い出さないようにして来た。

 でも姉様の話を聞いて、当時の記憶が呼び起こされると、幼かったあの頃の私には気付けなかったものが見えた気がした。

 優しいと思っていたご主人様。でも優しいのは口調だけで、その目は実験動物を観察する(見る)ような冷徹な眼差しをしていた。

 血塗れで狂ったように暴れる姉様。でも本当は私を助ける為、必死に戦っている姿だった。

 今まで姉様に捨てられたと思っていたけど、それが間違いなのだと気付かされた。

 

「姉様、私は───」 

 

 後悔の念に堪えきれず涙を流す私を姉様は優しく抱きしめてくれた。

 

「大丈夫。白音は決して悪くないわ。悪いのは全部私なんだから───ごめんね白音、今までたくさん辛い思いをさせて。でも、これだけは信じて。───今までも、そしてこれからも、私は白音を愛してるって」

 

「! 姉様!!」

 

 私は姉様に抱かれて子供のようにワンワンと、声を上げて泣いた。気付けば姉様も同じように涙を流していた。

 私達は数年間のわだかまりを洗い流すかのように二人して声を上げて泣いた。互いの温もりを分け合うように抱き合いながら───

 

 数年間のすれ違いを経て、この日、私達はようやく姉妹に戻れた。

 

 

 

 

 

 ようやく白音と仲直り出来た。

 懐かしいあの娘の温もりを感じて、やっと白音を取り戻せたと実感すると、思わず涙が溢れる。とその時、

 

 ズドオォォンッ!!

 

 黒歌()達の近くに何かが落ちて来た。

 

「!!?」

「な、何!?」

 

 ビックリして涙が引っ込んだ。白音も猫耳と尻尾が出ている位だ。もうもうと立ち込める土埃で何が落ちて来たのか分からない。

 

「いつつ・・・・ちくしょう、あのバケモノめ」

 

 土埃の向こうから聞こえたのは美猴の声、という事は───

 

「二人共大丈夫か?」

 

 ガイバーに殖装した一輝が空から降りて来た。

 

「一輝!」

「一輝先輩!」

 

 一輝の登場に私達は喜色を浮かべる。どうやら美猴は一輝にぶっ飛ばされたみたいだ。

 

「その様子なら無事仲直り出来たようだな──さて美猴、勝負あったな。大人しく捕まるなら良し、さもなくば───っ!?」

 

 一輝は突如振り向き、腕の突起を伸ばして振るった。

 

 ギイィィィンッッ!!

 

 鋼のぶつかり合う音が響く。いつの間に現れたのか、スーツ姿の男が一輝に剣を振るっていた。あいつは───

 

「お見事。噂通りの腕前のようですね、不破一輝君」

 

 金髪眼鏡のその男──ヴァーリ・チームの剣士アーサーは紳士的な態度で声を掛ける。

 

「アーサー!? 何でお前がここにいるんでぃ?」

 

「何でも何も、貴方達を連れ戻しに来たに決まってるでしょう。全く、勝手にいなくなって騒ぎを起こさないで下さい」

 

 どうやらアーサーは美猴と私を連れ戻しに来たらしい。それにしてもアーサーの持つ剣、いつ見ても凄まじい聖なるオーラを発していて、見てるだけでゾッとする。

 

「・・・・ここまでのようだな。美猴を連れて、さっさと引き上げてくれ」

 

 一輝が疲れたように言った。

 

「おや、見逃してくれるのですか?」

 

「ああ。美猴だけならともかく、アンタを相手にするなら死戦を覚悟する必要があるからな。但し黒歌は置いて行って貰うぞ。黒歌まで連れ戻そうっていうなら──アンタも覚悟を決めろ」

 

 アーサーの疑問に一輝は静かに答える。私を渡さないと言って貰えてとても嬉しい。でも私が浮かれてる間に二人の間には静かな、刃のような殺気が充満する。そして───

 

「ふう、分かりました。私も今は(・・)君と事を構えるつもりはありませんし、大人しく退くとしましょう。黒歌、それでいいんですね?」

 

「・・・・ええ、私は一輝と、白音と共に行くわ」

 

 私は決別の意志をアーサーに示す。

 

「分かりました。ヴァーリに何か伝言は?」

 

「そうね・・・・“あまり無茶するな”って伝えておいて」

 

 云えた義理ではないけど、ヴァーリは無茶をする娘だから・・・・

 

「分かりました・・・・お元気で。行きますよ、美猴」

 

「ちっ、次は決着を付けるぜ。あばよ」

 

 最後の言葉を交わして、二人は姿を消した。

 私は安堵してホッと息を吐く。すると殖装を解いた一輝が、突然その場に膝を突いた。

 

「一輝!? 怪我したの? 診せてちょうだい!」

 

「先輩、どうしたんです!?」

 

 一輝は顔を汗で濡らし、苦しそうに息を荒げている。慌てて私達が駆け寄るも、一輝は手で制して近付くのを許してくれない。

 

「・・・・大丈夫だ。放っておいてくれ」

 

「何言ってるの!? こんなに苦しそうなのに放っておける訳ないでしょ!?」

 

「先輩大丈夫? どうすればいいです?」

 

「分かった! 説明する! 説明するから落ち着いてくれ!!」

 

 矢継ぎ早に問い詰める私に根負けしたのか、一輝が大声を上げる。ビックリして私達の手が止まった。

 

「ハア・・・・その、簡単に説明するとヴァーリ戦の後から戦闘の後は異様に血が昂るようになってな。その昂りを抑えるのに少し時間が掛かるんだ。放っておいてくれれば収まるから気にしないでくれ」

 

「そうなの・・・・?」

 

「私も初めて聞きました」

 

 白音に訊ねるが、白音も知らなかったみたい。どうして白音には話さなかったんだろう? 私は不思議に思って訊いてみる。

 

「その血の昂りを抑える方法は無いの?」 

 

「・・・・無い事も無いが、放っておけば治るんだ。大丈夫だよ」

 

 私は一輝の言葉に嘘を感じた。嘘を吐かれるのが悲しくて、私は一輝に詰め寄る。 

 

「どうして嘘を吐くの一輝。そんなに私が信用出来ない?」

 

「違っ!?・・・・分かった、言うよ。血の昂りを抑える一番簡単な方法は──女を抱く事だ」

 

「・・・・・・え?」

 

「???」

 

 ・・・・え? 女を抱くって、もしかしてそういう事!? 

 

「ただでさえこうなっているのに、お前等の匂いを嗅いだら余計に抑えられなくなりそうだったから、近付くなって言ったんだ」

 

 一輝が自分の股間を指差す。

 

「───うにゃっ!?」

 

「!!?」

 

 一輝のズボンは大きく盛り上がり、テントを張っていた。

 

(あんなに大きくなって、一輝辛そう・・・・)

 

 私は一輝の股間を凝視しながら、気付けば手を伸ばしていた。

 

「く、黒歌!?」

 

「(ゴクッ) ・・・・こんなに大きくなって痛くないの?」

 

 盛り上がった股間を撫で擦りながら私は呟く。

 

「まあ、それなりには・・・・って、おい黒歌! 小猫ちゃんも見てるんだぞ!?」

 

 言われて白音を見ると、白音は顔を真っ赤にしながら私の行為を見つめていた。私はいい事を思い付いてニンマリと笑う。

 

「白音も触ってみる?」

 

「ふぇっ!? ね、姉様!?」

 

「白音だって興味がない訳じゃないんでしょ? ほら、手を───」

 

「ね、姉様!? ちょっ──ふわ!?・・・・え? こんなに硬い・・・・?」

 

 白音の手を強引に取って一輝の股間に這わせると、白音はそのまま擦り続ける。

 

「ちょっ、小猫ちゃんまで!?」

 

 私達に股間を擦られ感じている一輝を見て、私は舌舐めずりをした。

 

 

 

 

 

「待っててね一輝、今楽にしてあげる・・・・」 

 

 黒歌は一輝のズボンのチャックを手に取り、ゆっくり下に下ろす。

 

「うにゃ? 中で引っ掛かって・・・・!!」

 

 黒歌が一輝のズボンから肉棒を引っ張り出す。下着に引っ掛かり、出て来なかった肉棒が開放され、ブルンと揺れて勢い良くそそり勃つ。

  

「うにゃっ!?」

「!!?」

 

 二人は一輝の肉棒を凝視し、その威容にゴクリと唾を飲み込む。

 

(───え? 嘘? 男のモノってこんなに大きいの!?) 

 

(・・・・・・スゴい、おっきい・・・・)

 

 小猫がまじまじと見つめる中、黒歌は肉棒を握り、ゆっくりと上下に擦り始めた。

 

「ん・・・・どう一輝? 痛くない?」

 

 興奮に息を荒げつつ黒歌が訊ねる。

 

「ああ・・・・黒歌、もっと強く握って、動きも早くしてくれ。これじゃあイクにイケない」

 

「あ、うん・・・・この位?」

 

「うん・・・・ああ、いいぞ、気持ち良くなって来た」

 

 最初より強く肉棒を握り締め、シュッシュッと音がする位に早く動かしていると、段々慣れて来たのか、動きが滑らかになっていく。やがて鈴口から先走り漏れて来て、ニチャニチャイヤらしい音と共に漂う匂いに黒歌は興奮して唾を飲み込む。

 

(うわ、何これ? ヌルヌルする~。それにこの匂い。スンスン・・・・何だろう、臭いんだけど、何だか癖になりそう・・・・) 

 

 一方、小猫もまた眼前で繰り広げられる恥態に興奮して、顔を赤らめていた。

 

(先輩も姉様もスゴい・・・・あんなに大きくなって、それに・・・・スンスン、凄くエッチな匂い・・・・どんな味がするんだろう・・・・?)

 

 気付けば小猫もまた、小さな手を伸ばして亀頭を撫で回していた。

  

「ハア、ハア・・・・凄い、こんなに硬くなるなんて・・・・それに凄く熱い・・・・これが男の人のオ、オチンチン・・・・」

 

 妹は亀頭を、姉は肉竿を懸命に撫で擦る。溢れる先走りに細い指も小さな掌も濡らして、姉妹ならではの絶妙なコンビネーションで一輝を攻めたてる。

 そのコンビネーションに一輝も限界に達しようとしていた。

 

「う、く、黒歌、小猫ちゃん、もう───」

 

「うん、いいにゃん。いつでもイッて。一輝のイク所、私にも見せて───」

 

「私も、先輩のイク所見てみたいです・・・・」

 

「黒歌、小猫ちゃん・・・・う、くあっ!!」

 

 ついに限界を迎えた一輝は快楽のままに白いマグマを噴火させた。 

 

「───うにゃあ!?」

「!!?」

 

 勢い良く噴き出したマグマは、二人の顔や髪に降り注ぐ。

 

(んん!・・・・凄い匂い。頭がクラクラしちゃうにゃあ・・・・)

 

(ん───ペロ・・・・これが男の人の精液・・・・あんまり美味しくないです・・・・でも、妙に後を引く味です)

 

 二人は顔や胸にかかった白濁をペロリと舐めて恍惚とする。

 

「ん──どう一輝? これで収まっ・・・・・・てないわね?」

 

「・・・・男の人って一回射精()せば小さくなるんじゃないんですか?」

 

「あいにく俺は一回射精した位じゃ収まらなくてな・・・・面目ない」

 

 苦笑する一輝に呆れながらも、大きいままの肉棒を見つめて黒歌は決意を固めた。

 

「んもう・・・・仕方がないにゃあ・・・・また私が射精()してあげるにゃん。どこに射精()したい?」

 

 妖艶な色香を発しながら、黒歌は一輝に選択を迫る。

 

「ここ?」

 

 唇を指差して舌舐めずりし、

 

「それともここ?」

 

 着物をはだけ、豊満な胸の谷間を見せびらかし、

 

「それとも、やっぱりここかにゃあ~?」

 

 着物の裾を見えるか見えないかの絶妙な位置まで捲り上げ、一輝に艶然とした笑みを向けた。

 むせ返るような色香に一輝はゴクリと唾を飲み込む。

 

「黒歌・・・・俺にはその───んむ!?」

 

 一輝はリアスとの関係を話そうとしたが、その前に黒歌によって押し倒され、唇を塞がれる。

 黒歌は一輝に唇を押し付けると、そのまま舌を絡めて深く、深く唇を貪った。

 

「───ぷはっ❤」

 

 たっぷり数十秒、一輝の唇を味わうと黒歌は身体を起こし、満足そうに息を吐いた。

 

「黒歌・・・・」

 

「好きよ一輝。私を信じてくれて、白音と仲直りさせてくれた貴方が大好き。貴方に婚約者がいるのは分かってるわ。でも貴方は? 貴方は私が欲しくない?」

 

「欲しいよ」

 

 一輝の即答に黒歌は嬉しそうに微笑む。

 

「うん、あげる。だからその・・・・白音共々可愛がってね」

 

 そう言ってはにかむ黒歌。その美しさに見惚れながらも、一輝は台詞のおかしさに首を傾げる。

 

「・・・・・・え?“白音共々”って、どういう意味?」

 

「? どうもこうもそのままの意味よ? 姉妹揃って一輝の女にして欲しいの」

 

「いや、どうしてそうなるんだ。そんなの勝手に決めて小猫ちゃんの意志はどうなる? あの娘の気持ちを無視する気か!?」

 

「あら? そんな事ないわよ。ねえ、白音?」

 

「え?」

 

 そう言われて黒歌の視線を辿ると、そこには頬を赤く染め、瞳を潤ませる小猫の顔が迫っていた。

 

「ん──」

 

 小猫は四つん這いで近寄ると、一輝の唇に自分の唇をそっと重ねる。十秒程で唇を離すと、小猫は切なげな瞳で一輝を見つめる。

 

「姉様が勝手に決めたんじゃないです。先輩が私の為に姉様と仲直りさせてくれたのも、危ない所を助けてくれたのも感謝してます。だから、だから私も先輩の為に何かしたい。・・・・それとも、私じゃ駄目ですか・・・・?」

 

 小猫がこんなに長く話すのを一輝は初めて聞いた。彼女の真摯な告白に応えない訳にはいかないと、一輝は不安そうに震える小さな身体をそっと抱きしめた。

 

「ありがとう・・・・改めてよろしく、小猫ちゃん」

 

「先輩・・・・・・はい!」

 

 滅多に見れない小猫の笑顔、その愛らしさに一輝は暫し見惚れていた。

 

 

 

 

「小猫ちゃん、ん───ちゅぷ」

 

「あ、先輩・・・・ふぅむ、ちゅぷ・・・・ふぅむ、ふん・・・・ちゅぷ、ふんむ、ちゅ・・・・ふにゃあ・・・・」

 

 一輝は小猫と唇を重ねると、そのまま舌を這わせ、口内に侵入させる。先の黒歌との行為を見ていたからか、小猫はたどたどしくも舌を絡めて応える。

 黒歌や小猫の舌は猫又の特徴なのか、普通よりザラザラしている。最初は少し違和感があったが、慣れるとその刺激が心地良い。

 

(スゲェな・・・・この舌でフェラなんかされたらどうなるんだ・・・・?)

 

 そんな事を考えつつ、たっぷり小猫の口内を蹂躙し、唾液を交換してから唇を離すと、小猫の顔は快楽に蕩けていた。

 一輝はそのまま制服のブラウスを捲り上げ、ノーブラの小猫の胸を露出させる。

 

「あっ、や───」

 

 だが小猫はすぐに両腕で胸を隠してしまう。

 

「小猫ちゃん、ブラしてないのか?」

 

「だって──必要ないですから・・・・・・小さいから

 

 胸の大きさを気にして恥ずかしがる小猫に一輝は苦笑を漏らす。

 

「そんな事ない。可愛かったよ。ほら、もっと良く見せて」

 

「あ、やだ、せ、先輩───!」

 

 小猫を宥めつつ、一輝は再びブラウスを捲ると小猫の胸をジッと見つめる。小猫の胸は幼い容姿と相俟って微かに膨らんだ、おっぱいというよりちっぱいというものだった。

 だが一輝は微かな膨らみとパールピンクの頂にリアスらとは違う新鮮味を感じ、そのまま頂を口に含んだ。

 

「───んひぃぃん!」

 

 突然感じた事のない刺激を受けて、小猫の身体がビクンと跳ねる。

 

「ああ、んん、先輩、ダメ、ダメです・・・・んにゃあ!!」

 

 自分でも風呂以外では触らない部位への刺激に小猫はくすぐったいような、心地いいような感じた事のない感覚に身悶える。

 

「大丈夫よ。私の妹なんだから、白音だってすぐ大きくなるにゃん。・・・・なんだったら一輝が大きくしてくれるでしょ♪」 

 

 後退ろうとする小猫の背後にいつの間にか黒歌が現れ、そのまま小猫のちっぱいを優しく撫で擦る。

 

「ふにゃあ───んん、姉様、やめて・・・・んふう」

 

「んふふ。可愛いわよ白音。このままいっぱい気持ち良くしてあげるにゃん」

 

「黒歌・・・・邪魔するなよ」

 

 黒歌に邪魔されて乳首から唇を離した一輝が不満そうに呟く。

 

「ふふ。上は私がやるから、一輝は下をお願いするにゃ」

 

「下って・・・・まあいいか。それじゃ───」

 

「ふにゃあん! 先輩そこダメ! き、汚いです───!」

 

「大丈夫大丈夫・・・・・・おお!?」

 

 一輝は小猫のスカートを捲り、純白の下着を一気にずり降ろす。白日の元に晒された小猫の陰部は毛が生えておらず、うっすらと湿り気を帯びた綺麗な縦スジが丸見えだ。 

 何故か尊いものを汚すような背徳感を感じて、一輝はゴクリと唾を飲み込む。

 

「んん!・・・・いや、先輩・・・・うにゃあああっ!」

 

 無毛の丘を撫で、微かに湿った割れ目に指を這わせると、小猫は堪らず声を上げる。その声は今までの小猫には無い艶を含んでいた。

 

「白音も感じて来たみたいね。それじゃ私も本気でいくにゃん」

 

「んああ───! ね、姉様、先輩! んんん、あぁぁん!!」

 

 乳首を黒歌に、女陰を一輝に弄くられ、小猫は未知の快楽に身悶える。

 

(しかし狭いな。これじゃ俺のモノを挿入れたら裂けちまいそうだ。今は───)

 

 一輝は小猫の狭さに現時点での挿入は無理と判断して、少しでも解そうと刺激を与え続ける。

 

「ふぅ、うん、んあぁ・・・・せ、先輩、姉様ぁ! 変です、私の身体、何か変になって───んんん!」

 

 小猫は初めて感じる奇妙な感覚に身体を震わせる。

 

「大丈夫よ白音。貴女は今、気持ちいいって感じてるの」

 

「気持ち、いい・・・・?」

 

「そうだよ。怖くないから素直に感じてごらん」

 

「ん・・・・先輩、んん、これが“気持ちいい”?」

 

 一輝と黒歌は小猫を初めての絶頂に導こうと指の動きを早める。そして───

 

「あぁぁ、先輩、姉様ぁ!・・・・私、んん・・・・き、気持ちいい────!!」

 

 小猫の小さな身体がビクンと跳ねると、そのまま力尽き、黒歌の胸に倒れ込んだ。 

 

 

 

 

 

「ありゃ? 気を失っちゃった・・・・よっぽど刺激が強かったみたいね」

 

 黒歌は優しい眼差しで気を失った小猫を見つめる。そのまま地面に寝かせると、黒歌は立ち上がり、着物の裾をゆっくりと捲り上げた。

 

「一輝・・・・私のここ、こんなになっちゃった・・・・どうする?」

 

 黒歌の股間は既にグッショリと濡れて、キラキラと光っていた。

 その淫靡な光景に一輝は黒歌を押し倒し、堪らずむしゃぶり付いた。

 

「んああ! い、いい! いいわ一輝! もっと・・・・もっと深く・・・・あぁん!」

 

 両手で割れ目をくぱぁと開き、露出した秘穴に舌を這わせる。滾々と溢れる愛蜜を啜り、舌を奥へ奥へと差し込むと、汗と愛液のブレンドした甘酸っぱい臭いが口の中に広がる。一輝は夢中で舌と口を動かした。

 

「ああ、ああ、もうダメ、ダメ、ダ・・・・・・イッ、~~~~~!!」

 

 一輝が陰核を噛むと、黒歌の身体がビクンと跳ねる。それと同時に大量の愛液を噴き出して、黒歌は絶頂を迎えた。

 

「はあ、はあ、んん───一輝・・・・もう、もう、限界・・・・お願い・・・・・・来てぇ」

 

 下腹部の甘い疼きに我慢出来ず、黒歌は挿入を懇願する。だが、我慢の限界なのは一輝も同じ。一輝は黒歌の両膝を立てさせ、M字に脚を開かせると、ダラダラと涎を垂らす陰穴に狙いを定めるように肉棒を割れ目に擦らせた。

 

「行くぞ黒歌」

 

「うん・・・・挿入()れて、一輝」

 

 一輝は発情した雌の臭いを漂わせ、己を誘う陰穴に一気に体重をかけた。

 

「ふうぅ・・・・ううん・・・・んん・・・・く、うう、んああぁんっ!!」

 

 一瞬の抵抗の後、一輝の肉棒は黒歌の処女膜を突き破り、彼女の膣内へ侵入した。

 

「大丈夫か、黒歌?」

 

「んもう・・・・一輝のおっきすぎにゃあ・・・・・・裂けちゃうかと思った・・・・んんん、んああっ!」

 

 黒歌は目に涙を滲ませながらもおどけた調子で答える。その間にも一輝の肉棒はズブズブと音を立てながら掘り進め膣奥に到達すると、黒歌の純潔の証が一筋零れ落ちた。

 

(何これぇ・・・・熱くておっきな塊が私の膣内(なか)でビクン、ビクンッて脈打ってる・・・・・・これがセックス・・・・?)

 

 黒歌は初めての衝撃に身体を震わせる。

 

(くっ・・・・これが黒歌の膣内(なか)・・・・膣全体がキュッと締め付けて・・・・くう、もう我慢出来ん!)

 

 一方、一輝も黒歌の膣内の気持ち良さに最早一刻の猶予もないと、腰を動かし始める。

 

「んんん・・・・!? か、一輝?・・・・そんないきなり・・・・あん、んん・・・・ふあぁん!」

 

「黒歌、黒歌の膣内(なか)、物凄く気持ちいいぞ! 黒歌は? 黒歌はどうだ!?」

 

「あああ!・・・・うん、わ、私も・・・・私も気持ちいい! 一輝のオチンチンにいっぱい突かれて気持ちいいのーーー!!」

 

 黒歌は一輝にしがみ付き、肉の快楽にその身を委ね、嬌声を上げた。途端に肉棒がキュウっと締め付けられ、あまりの快感に一輝は限界を迎えた。

 

「くああ、だ、射精()すぞ黒歌!!」

 

「うん、射精()して! 一輝の熱いの、いっぱい私の膣内(なか)射精()してーーーーっ!!」

 

 ブビュルル! ビュル、ブビューーーッ!!

 

「はああぁぁぁんんっっ!!❤」 

 

 一輝が噴出した白濁は一滴残らず黒歌の胎内に吸い込まれる。

 

(───ああ、これがセックス・・・・・・こんなに気持ちいいなんて・・・・これじゃあ癖になっちゃうにゃあ❤)

 

 一輝にしがみ付きながら、黒歌は恍惚の表情を浮かべる。その顔は快楽に染まった雌の表情に他ならならず、一輝は堪らず黒歌の唇を貪った。

 

「ふむう───ちゅぷ、ぢゅぷ・・・・んん、か、

一輝ぃ・・・・・・」

 

 唇を重ねながら、一輝は腰を動かし始める。下腹部に広がる快感に黒歌は嬌声を上げる。

 

「むふぅ!?・・・・ぢゅぽっ、一輝!? んん、ま、また・・・・? ああ、んはああ!!❤」

 

「悪いな黒歌。まだまだ付き合って貰うぞ」

 

 一輝の肉棒は硬さを失わないまま、激しく黒歌の膣奥を突いて、甘い刺激を誘う。陰穴からはさっき射精した精液が掻き出され、小さな水たまりを作っていた。 

 

「いいわ! 私が全部受け止めてあげる! だから、だからいっぱい、私の膣内(なか)で気持ち良くなってーーーー!!」 

 

 黒歌の許しを得て、一輝の動きは益々ヒートアップしていく───

 

 

 

 

「ん──んんん・・・・・・?」

 

 眠りに就いていた小猫がうっすらと目を開ける。

 

(あれ? 私どうしたんだっけ・・・・?)

 

 ムクリと起き上がった小猫は、目の前の光景に愕然とした。  

 

 

「ああ! あん! スゴい! スゴくいい! 一輝のが私の奥にコツン、コツンって・・・・いっぱい当たってるのぉっ!!」

 

「いいのか!? いいのか黒歌!!」

 

「いい! いいの! もっと・・・・もっといっぱい突いて!!」

 

 目の前で繰り広げられる先輩と姉の恥態。現実離れした光景に呆然としつつ、小猫は何があったかを思い出した。

 一輝と黒歌の二人からの激しい愛撫を受け、失神してしまった。初めて知った甘美な悦楽。思い出すだけで下腹部がキュンと疼いて、小猫の手は自然と割れ目を擦り始めた。

 

「んん、あ、ふう、ふう、んん・・・・先輩、姉様ぁ」

 

 クチュクチュと水音を立てる自らの割れ目に指を這わせる小猫は、熱の籠った眼差しで交わり続ける二人を見つめる。

 所謂種付けプレスの態勢で深く腰を打ちつける一輝。黒歌の陰穴からは一体どれだけ膣内(なか)射精()されたのか、白濁液がダラダラと溢れ、白い水たまりは更に大きくなっていた。

 清浄な森の空気でも浄化しきれない濃厚な性臭に三人の興奮はピークに達しようとしていた。

  

「黒歌、またイクぞ!」

 

「んあああ! 来て! 来て一輝!!」

 

「はあ! はあ! んん、先輩、姉様・・・・私も、私ももう・・・・!」

 

 一輝は強く早く腰を打ちつけ、黒歌は嬌声を上げながら離すまいと脚を絡め、小猫も指の動きを早める。そして───

 

 ブビュルル、ビュル、ブビューーー!!

 

「んはああぁぁぁんんっっ!!❤」

 

「───ふうぅ! ふう、ん、んん・・・・・・❤」 

 

 同時に三人は達した。

 

 一輝は本日何度目かの大量の精液を黒歌の膣内に噴出した。黒歌もまた激しく身体を震わせ、潮を吹いた。そして小猫も、陰核を摘まみ上げて絶頂を迎えた。

 一輝はようやく落ち着いたのか、黒歌の膣内から肉棒を抜いた。途端に溢れ出す大量の白濁。白い水たまりが更に広がった。

 

「はあ、はあ、はあ───」

 

 呼吸を荒げて一輝は黒歌の隣に寝転がる。

 

「ふふ、凄かったにゃあ・・・・」

 

 気づけば黒歌は一輝に寄り添い、胸板に指を這わせる。

 

「・・・・私も忘れちゃ嫌です」

 

 更に小猫が反対側に寄り添い、同じように指を這わせた。

 

「これからよろしくね、一輝❤」

 

「よろしくです、一輝先輩❤」

 

 猫又姉妹が一輝の頬をペロリと舐める。一輝は二人を抱き寄せ、そっと目を閉じた。

 

 

  

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り猫又姉妹がヒロイン入りしました。
小猫とのエッチについてアンケートを募集しますので、よければご協力下さい。

次回は修業を終えたグレモリー眷属が集結します。





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第21話 二つの誓い☆☆(全員) 


第22話をお送りします。
ご覧下さい。


 

 

「全く、貴方って人は・・・・」

 

 リアス()は思わぬ事態に額に指を当て、ため息を漏らした。

 

 お兄様に仕事を頼まれ、出かけていた一輝が三日ぶりに帰って来た。それも一人ではなく、小猫とその姉である『SS級はぐれ悪魔』黒歌を連れてだ。

 黒歌の事は私も聞いてたから、出会ったら絶対消滅させてやると息巻いてたのに、一輝と他ならぬ小猫に止められてしまった。そして一輝はお兄様に頼まれた仕事の内容を教えてくれた。

 

 話を聞いて私は驚いた。まさかつい最近行われたナベリウス家の摘発に絡んでいるとは。

 ナベリウス家の契約違反は貴族として決して許されない事だ。そのせいで辛い目に合ってきた黒歌と小猫には同情を禁じ得ない。禁じ得ないんだけど・・・・・・

 

「・・・・成る程。事情は分かったわ。でもね・・・・・・二人共、何でそんなに一輝にベッタリなのよ!?

 

 そう、話を聞いている間小猫は一輝の膝の上に座り、黒歌に到っては背後から一輝に抱き着いて頬ズリしてるのだ!

 こうなった理由(わけ)は分かってる。一輝がまた(・・)やらかしたのだ。

 辛い時、苦しい時に優しく手を差し伸べられ、自分や自分の大切な人を救われれば、好きになるのも無理はない(現に私もそうだったし)。

 確かに私はハーレムを肯定してるし、いずれは小猫も、と考えてはいたけど、三日間も放ったらかしにした挙げ句、新しい女を連れて来るなんてもう───! 取り敢えず今夜はたっぷり甘えてやるんだから!!

 私は怒ってるのか嘆いてるのか、よく分からない複雑な気持ちのまま、深くため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 あれから暫しの時が過ぎた。

 その間一輝()は眷属の修業を手伝ったり、ミリキャス君と勉強をしたり、ヴェネラナ様やグレイフィアさんから貴族としての教育を受けたりと忙しい日々を送っていた。

 

 あれから小猫ちゃんは黒歌から仙術を教わっている。ウイザードタイプの黒歌と違って、小猫ちゃんは闘気の扱いに秀でたパワータイプらしく、俺も時々修業に付き合って組手をしている。

 黒歌との和解により恐怖を克服した小猫ちゃんは、やはり素質があったのか、急速に仙術を習得していった。

 成長著しい彼女に俺はひとつの技を教えた。シトリー眷属とのゲームで切り札になればいいんだが、果たしてどうなるか。 

 

 

 

 

 

 そうして夏休みも残り僅かになった頃、修業のタイムリミットを迎えた。

 明日にはグレモリー領で魔王主催のパーティが開催される為、修業に出ていた皆が戻って来る。久し振りにグレモリー眷属が勢揃いするのだ。

  

                    

 いつものように庭で鍛練をしていると、巨大な影が一輝()を覆った。何事かと空を見上げると、そこには巨大なドラゴンの姿が。

 

「一輝先輩!」

 

 ドラゴンの背からイッセーが飛び降りた。

 

「帰ったか、イッセー。・・・・・・へえ」

 

 久し振りに会ったイッセーは、上半身裸でズボンの残骸を引っ掛けて辛うじて大事な所を隠しているという酷い格好ではあったが、余計な贅肉が取れて筋肉が付いたせいか、ガッシリとした良い身体になっている。魔力も以前より充実し、身に纏うオーラが濃くなっていた。

 

「うん・・・・良くこの短期間でここまで鍛えあげた。頑張ったな、イッセー」

 

 俺が混じり気のない称賛をして肩を叩くと、突然イッセーが号泣した。

 

「ゔ、ゔゔゔ~~~! づ、(づら)かったっス、一輝(がずぎ)ぜんぱ~~~い!!」

 

 話を聞くと、イッセーの修業は誰もいない山の中でサバイバルをしながら、元龍王で現最上級悪魔のタンニーンと戦うという過酷なものだった。

 いくらタンニーンが手加減しているとは言え、今のイッセーでは戦いにならず、結局朝から晩まで追いかけ回されていたというが、正直これは酷い。しかも食料は自給自足。川で魚を捕ったり、木の実や山菜を採ったり、挙げ句に冥界産の兎や猪を狩ってたというのだから呆れる他ない。

 タンニーン以外にはたまに様子を見に来るアザゼルにしか会っておらず、なまじっかイッセーのサバイバル能力が高かったのが災いしたのか、アザゼルも介入する機会を逸して、結局最後までサバイバル生活を送る羽目になったそうだ。

 

「そうか・・・・辛かったな。でも頑張ったな、イッセー。うん、お前は凄い。大したもんだ」

 

「ううう~~、分かってくれますか、先輩!」

 

「ああ、分かる。分かるぞイッセー。お前は偉い!」

 

 話を聞いている内に俺も爺さんとの修業を思い出してしまい、涙が滲んで来た。

 

「あ~~、ゴホン、では俺はこれで失礼する。またパーティの日にな、兵藤一誠、ドライグ」

 

 俺等のやり取りに若干引いたのか、タンニーンが遠慮がちに声を掛ける。

 

「グス・・・・うん、ありがとうおっさん。パーティでまた!」

 

《すまんなタンニーン。また会おう》

 

「タンニーン殿、イッセーがお世話になりました。ありがとうございます!」

 

 イッセーとドライグが別れの挨拶を交わすのに便乗しつつ俺もタンニーンに礼を言う。

 

「なに、礼には及ばん。俺も楽しかったからな。ではまたな!」

 

 タンニーンが翼を広げ飛び去る。イッセーは姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 

「さてイッセー。取り敢えず風呂に入って来い。その格好で皆に会う訳にはいかないだろ?」

 

「そうっスね。んじゃ、ひとっ風呂浴びて来ます!」

 

「ああ、また後でな」

 

 そう言ってイッセーは邸に入って行った。それを見送っていると、後ろから声を掛けられた。

 

「一輝先輩! ただ今戻りました!!」

 

 振り返ると、笑顔を浮かべた祐美がいた。

 

「ああ、お帰り祐美。どうだった、修業は?」

 

「あはは、師匠に徹底的に鍛え直されました」

  

 その笑顔に若干の疲れは見えるが、イッセー同様、身に纏うオーラが濃くなっている。修業は上手くいったようだな。

 

「そうか。お疲れ様、頑張ったな」

 

 そう言って亜麻色の髪を撫でると、祐美はそっと俺に抱き着いた。

 

「修業も辛かったですけど、先輩に会えないのはもっと辛かったです・・・・」

 

「祐美・・・・」

 

 祐美は俺を見上げてそっと目を閉じる。俺も目を閉じると顔を寄せて───

 

「あーーっ! ズルいぞ祐美!!」

 

 鋭い女の声に動きが止まった。

 

「その声・・・・もしかしてゼノヴィア?」

 

「何を言ってる? たった一月足らずで私を見忘れたのか!?」

 

 ゼノヴィア?はそう言うが、祐美の発言は尤もだ。何故ならそこには全身包帯に覆われたミイラ女しかいないからだ。

 

「・・・・その格好はどうしたんだ、ゼノヴィア?」

 

「いや、修業して怪我して包帯を巻いて──を繰り返してたら、いつの間にかこうなってたんだ」

 

 堂々と言い放つゼノヴィアに俺と祐美は呆れていた。

 ゼノヴィアは爪先から首までと、頭と左目を包帯に覆われ、特徴的な青い髪とその声で辛うじてゼノヴィアと判断出来る位だ。しかもコイツ、このシルエットから見るに服を着ていない。全裸に包帯を巻いているだけで、魅力的な身体のラインが丸見えだ。

 

「ゼノヴィア・・・・その、恥ずかしくないの・・・・?」

 

 堪らず祐美が指摘する。しかし、

 

「フフフ・・・・確かに。今の私は衣服はおろか下着すら身に着けていない。辛うじてこの包帯で隠しているだけだ。ここに来るまでにも大勢の視線に晒されて来た。───だが、それがいい!!

男達の情欲に塗れた視線、女達の蔑むような視線、子供達の奇異なものを見る視線、その全てが私の身体を熱く、熱く燃えたぎらせ、私は、私は────あ❤」

 

 熱く語っていたゼノヴィアが自らの身体を抱きしめ、ビクンと震えた。

 正直ドン引きだった。コイツ、初めて会った時はクールなライバルキャラだった筈なのに、どうしてこうなったんだろう。いや、現実逃避はやめよう。分かってるんだ。認めよう。俺が、俺がゼノヴィアの禁断(変態へ)の扉を開けてしまったんだと。

 

「先輩・・・・責任取って下さいね・・・・」

 

「ああ、うん・・・・・・」

 

 祐美の氷点下の言葉に、俺は頷くしかなかった。

 

 

 

「あらあら。どうしましたの、こんな所で?」

 

 甘い女の声と共に俺の後頭部が大きくて柔らかいモノに包まれる。この感触を俺は良く知っている。

 

「お帰り朱乃」

 

「うふ♪ 只今戻りましたわ、一輝❤」 

 

 思った通り、そこにはいつもの優しい微笑みを浮かべた朱乃がいた。

 

「あぁん! 会いたかったわ、一輝!」

 

 朱乃がギュッと俺の頭を抱きしめる。久々に感じる柔らかな感触と甘い香りに幸福感が溢れて、思わずニヤケてしまう。

 

「朱乃さん、ズルいです!」

 

「そうだ! 一人占めはズルいぞ!?」

 

「あらあら。いいじゃない、久し振りなんだし」

 

「そんなの私達だって同じですよう!」

 

「そうだそうだ!」

 

「あらあら、あら?・・・・貴女ひょっとしてゼノヴィアちゃんですの?」

 

 祐美とゼノヴィアの抗議に朱乃の感触が離れていく。やれやれと嘆息してると、再び頭に幸せな感触が。 

 

「カ・ズ・キ~~、ただいまにゃん♪」

 

 思った通り黒歌だった。そして俺の左手をキュッと握る小さな手の感触が。

 

「お帰り黒歌、小猫ちゃん」

 

「ただいまです」

 

 今の俺は黒歌に後ろから抱きつかれ、小猫ちゃんと手を繋いでピッタリくっ付かれている状態だ。そんな俺を見て、彼女らがどういう反応をするか。

 

「ちょっ──え? 小猫ちゃん? どういう事!?」

 

「何者だ貴様ぁ! 一輝センパイから離れろ!!」

 

「あらあら? 貴女もしかして・・・・」

 

 当然こうなるわな。さて、どう説明しようかと思ったその時、パンパンと手を叩く音がその場に響いた。

 

「はいはい、皆そこまでよ」

 

「「「部長───!?」」」

 

 いつの間に現れたのか、そこには我らが主、リアス・グレモリーが苦笑を浮かべていた。

 

「部長? 彼女はもしかして──「はいはい、聞きたい事は色々あるだろうけど、取り敢えず修業の汗を流してらっしゃい。話はその後にしましょう」

・・・・分かりましたわ」

 

 朱乃の質問を遮ってリアスが言う。

 

「まあ、簡単に説明すると一輝がまた(・・)やらかしたって事よ」

 

 リアスがそう付け加えると、朱乃達三人は「ああ・・・・」と納得とも呆れとも取れる呟きを漏らし、一斉にジト目を向けて来た。

 俺はその視線から逃れるように小猫ちゃんの頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細める小猫ちゃんだけが俺の心の癒しだった。

 

 

 

 

 

 祐美()達外出組が帰還して修業の汗を流し終えると、眷属全員が談話室に集結した。談話室はグレモリー邸でも比較的(・・・)小さな部屋で、高級そうなソファーやテーブルセットが置かれ、ちょっとした話をするには持って来いの場所だ。私達は思い思いの場所に座って、メイドさんの淹れてくれた紅茶で喉を潤していた。

 全員が揃うのはほぼ二週間振り。皆魔力が充実し、一段と強くなったみたい。

 特に成長してるのがイッセー君と小猫ちゃん。イッセー君は前より筋肉が付いて身体付きがガッシリしている。野性味が増して、元々顔立ちも悪くないので、黙っていれば女の子からモテそう。でも私達の胸を見て鼻の下を伸ばしてるから、やっぱり無理かな。

 小猫ちゃんは自信喪失していた以前とは別人のように気力も魔力も充実し、静かに佇む姿は確かな実力に裏打ちされた自信さえ伺える。・・・・伺えるんだ・け・ど、

 

どうして一輝先輩の膝に座ってるの!?

 

 そう、小猫ちゃんは談話室に入って来た途端、まるでそこが自分の指定席だと言わんばかりに、一輝先輩の膝の上に収まった。私達外出組は何が起きたのか理解出来ず、開いた口が塞がらなかった。 

 

「待たせたわね、皆」

 

 そんな私達の前にさっき一輝先輩にくっ付いていた美女と共に部長がやって来た。

 長い黒髪に猫耳を生やしたその美女は、部長や朱乃さんに匹敵する肢体を着崩した和服に包み、妖しい色気を醸し出している。イッセー君なんか鼻の下を一段と伸ばして、アーシアさんにつねられていた。

 

「まず紹介するわ。小猫の姉、黒歌よ」

 

「よろしく。黒歌にゃん」

 

 その美女──黒歌が紹介された途端、イッセー君が立ち上がった。

 

「お前が黒歌だと!? お前どの(ツラ)さげて──「座りなさい、イッセー」──部長!?」

 

 声を荒げるイッセー君を部長が嗜める。

 

「でも部長! コイツのせいでどれだけ小猫ちゃんが苦しんだか・・・・!」

 

「分かってるわ。その事についても説明するから、話を聞きなさい」

 

 感情的になるイッセー君を部長はあくまで冷静に嗜める。

 

「イッセーさん、座って下さい。落ち着いて部長さんの話を聞きましょう?」

 

 私達より先に事情を聞いているのだろう、アーシアさんがイッセー君のシャツを引いて着席を促す。

 

「アーシア・・・・分かった。部長、すいません」

 

 アーシアさんにそう言われ、イッセー君は部長に謝ってソファーに座る。部長は小さく頷くと再び口を開いた。

 

「さて、事情を知ってる者はイッセーと同じ気持ちでしょうね・・・・でも暫くは黙って私の話を聞いてちょうだい」

 

 部長はそう断って話し始めた。貴族の思惑に翻弄された哀しい姉妹の話を。

 

 

 

 

 

 リアス()が話を終えると、皆は怒りを堪える者や涙ぐむ者など各々違う反応を見せていた。皆にとってさぞショッキングな話だろう。私は常日頃から「悪魔は契約を重んじる」と皆に教えていた。それなのに貴族の契約違反が小猫を苦しめる原因になっていたとは私にとっても頭の痛い問題だ。

 

「・・・・でも姉様も条件付きですが無罪になるそうですし、誤解も解けて和解する事が出来ました。今はこうして一緒に居られるだけで私は幸せです」

 

 そう言って小猫は本当に嬉しそうに微笑んだ。あの娘のあんな顔、私ですら初めて見たわ。その笑顔に皆の怒りや涙も吹き飛んだみたいで、同じように笑顔を浮かべていた。

 

「部長、お願いがあります。私は暴走への恐怖から本名の白音を名乗れず、部長に『塔城小猫』という新しい名前を貰いました。でも姉様と和解した今、私はようやく前に進めます。だからこれからは本名を、『塔城白音』と名乗りたいと思います。・・・・・・許して貰えますか?」

 

 申し訳なさそうに告げる小猫に、私は笑顔で応える。

 

「ええ、勿論。この時をずっと待っていたわ小猫──いいえ、白音」

 

「ありがとうございます。・・・・私、塔城白音はリアス・グレモリーの眷属『戦車(ルーク)』として立ち塞がる者を粉砕し、貴女と眷属を守る盾となる事を改めて誓います」

 

 白音は一輝の膝から降りると私の前で跪き、そう宣誓した。

 

「貴女の誓い、確かに受けました。・・・・・・改めてよろしくね、白音」

 

「はい!」

 

 そう言って小猫、いえ白音は再び満面の笑顔を見せた。さて、残るは───

 

「それで? 貴女はどうするの、黒歌?」

 

 私は黒歌に水を向ける。

 

「そうね・・・・・・うん、白音がカッコ良く決めたんだから、私もいい加減決めなくちゃね。・・・・リアス・グレモリー、貴女の申し出を受けます」

 

 黒歌もまた、白音の隣に来ると私の前で跪いた。

 

「黒歌、貴女にこの駒を授けます。私の新たな眷属として、これからは共に在りなさい!」

 

 私は『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』──『僧侶(ビショップ)』の駒を黒歌に差し出す。『悪魔の駒』は光を放ち黒歌の胸に吸い込まれて行く。かつて黒歌の眷属化には僧侶の駒二つが必要だったと言うが、果たして───

 黒歌の身体がパアッと眩い光を放つ。よし、成功したわ!

 

「私、黒歌──いえ、『塔城黒歌』はリアス・グレモリーの眷属『僧侶(ビショップ)』として妹と共に貴女と眷属を支える事を誓いましょう。願わくばこの誓いが永遠(とわ)に破られん事を───」

 

 そう宣誓して黒歌は艶然と微笑んだ。その笑みはまるで「お前に私を従える器量があるのか?」と問われているように私は感じた。いいわ、見てなさい! 私が貴女の主に相応しいと、必ず認めさせてやるわ!

 

「という訳で皆! 新しい眷属(なかま)、『僧侶(ビショップ)』の黒歌よ。よろしくね!」

 

 談話室に歓迎の拍手と歓声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 それから談話室に料理や飲み物が運ばれ、黒歌の歓迎会兼修業の慰労会が始まった。

 リアスの音頭で乾杯した後、皆思い思いの料理や飲み物に手を伸ばし、談笑する。そんな光景に黒歌は目をパチクリさせていた。

 皆が黒歌にどう接するか心配だったが、思いの外積極的に話し掛けていて、逆に黒歌の方が戸惑っているようだった。その様子を見て一輝()もようやく安心して料理に手を伸ばした。

 

 

 

「どうした? こんな所で?」

 

 バルコニーでグラス片手に佇む黒歌に声を掛ける。

 

「一輝・・・・うん、ちょっとね」

 

 黒歌は嬉しいような、ふて腐れたような複雑な表情で遠くを見つめていた。俺は彼女の隣に立ち、黒歌が口を開くのを待つ。

 

グレモリー眷属(こいつら)って変な連中にゃ・・・・私みたいな女に気安く話し掛けたり笑い掛けたりして・・・・」

 

 そう呟く黒歌に俺は苦笑を漏らす。何の事はない。どうやら黒歌は照れてるようだ。照れ隠しにそんな態度を取る彼女が何だか微笑ましい。

 

「・・・・何よ、その目は」

 

 唇を尖らせ、黒歌がジト目を向ける。

 

「いいや。でも今日からお前もその変な連中の仲間入りだ。これからはこんな日々が日常になるから覚悟しておけよ」

 

 そう言った俺に黒歌は柔らかく微笑む。

 

「フフ、それもいいにゃ・・・・白音と、一輝がいてくれるなら・・・・」

 

 黒歌は風に靡く黒髪を押さえ、俺を見つめる。俺が顔を近づけると彼女はそっと瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 その夜───

 

「はあ、はあ、ああ、あん、もうダメ! 私また! またイク! イッックウ~~~~~!!」

 

 一輝の部屋から防音処理が施されていなければ邸中に聞こえる程の女の絶叫が響く。もう何度目か分からない精を朱乃の膣内(なか)に放ち、一輝は一息吐いた。

 一輝が肉棒を抜いてベッドに倒れ伏した朱乃の尻を撫でると、朱乃の膣口から大量の白濁液が零れ落ちる。

 

「一輝、今綺麗にするわね」

 

「あ、部長私も」

 

 精液と愛液で汚れた肉棒をリアスと祐美が左右から掃除する。

 

「ん・・・・ちゅぷ、レロレロ・・・・うふ、またいっぱい出たのね」

 

「ちゅぷ・・・・先輩まだ硬いまま・・・・まだ出来ますよね?」

 

 二人は肉棒を舌と唇で綺麗にしながら、欲情に塗れた瞳を一輝に向ける。

 

「そうだな。なら次は・・・・お前の番だ!」

 

「うにゃん!」

 

 肉棒を掃除する二人を羨まし気に見つめていた黒歌の手を取り、一輝はベッドに横になる。ベッドには先にダウンしたゼノヴィアと朱乃が寝ていたが、キングサイズのベッドにはまだ余裕があった。

 

「おいで、黒歌」

 

「うん・・・・・・ん、んんん!・・・・んはあ!!❤」

 

 肉棒に跨がった黒歌はそのまま腰を降ろした。熱く大きい肉の塊が自分の中心を貫く。初めてを捧げた日から何度となく快楽を与えてくれる一輝との行為に黒歌は完全に嵌まっていた。

 

「んんん、あはぁん!・・・・ああ、いい! 一輝のオチンチン、奥まで届いて・・・・ああ、気持ちいい!!」

 

 自ら腰を動かし、一輝の上で踊る黒歌。長い黒髪を乱れさせ、喘ぎ声を上げる彼女は他の少女達から見ても堪らなく淫靡で、美しかった。

 それに触発されたのか、少女達もまた動き出した。

 

「一輝、私にもして・・・・」

 

「先輩・・・・指、動かして欲しいです・・・・」

 

「先輩、お願い、舐めて・・・・」 

 

 右手をリアス、左手を白音が取り、自らの股間に導く。そして祐美が一輝の顔に跨がり腰を降ろした。

 柔からな恥肉の感触と濃厚な淫蜜の臭いに誘われるように、一輝は両手の指と舌を動かした。

 

「んん、んはあ!・・・・ああ、そこ・・・・そこいい!!」

 

「ふう、ふう・・・・んん、せ、先輩の指が・・・・あああ!」

 

 たっぷりの淫蜜に濡れた恥肉は容易く一輝の指を迎え入れ、もっと来てとばかりに奥へ奥へと誘う。

 二人は顔を真っ赤にし、瞳を潤ませながら一輝の手を取り、もっと気持ちいい所に当てようと腰を動かす。

 

「んはああっ! 先輩の舌が奥まで・・・・ああ、スゴい、スゴいの来ちゃう・・・・!」

 

 一輝の顔面に跨がった祐美は舌で舐められた途端、あまりの快楽に腰を落とし、完全に一輝の顔面に乗ってしまう。

 完全に口を塞がれた一輝は新鮮な空気を求め、祐美の尻を退けようと舌を動かしたが、逆に恥肉を押し付けられ、更に苦しくなる。

 こうなったら早くイカせて離れるしかないと、一輝は左右の指と舌、そして腰を激しく動かした。

 

「あああ! スゴい! スゴいの! 一輝のオチンチンが私の奥をノックして・・・・いっぱい気持ち良くなっちゃうのおぉぉぉーーーーっ!!」

 

 髪を振り乱し、豊満な胸を自ら揉みしだく黒歌はきらめく汗を撒き散らしながら、一輝の動きに合わせて激しく腰を振る。

 

「ふああ! 一輝・・・・! そんなにクリトリスをクリクリされたら、私・・・・私スグにイッちゃうーーーっ!!」

 

 リアスは膣内よりも感じるクリトリスを責められ、絶頂寸前に陥り、涙や涎でその美貌を汚している。

 

「先輩、先輩、先輩の指が二本も・・・・私の膣内(なか)、いっぱい拡がっちゃいますぅーーーーっ!!」

 

 白音は早く一輝を受け入れるようになりたいと、指を二本挿入され、小さな入口を拡張させようと頑張って腰を動かす。

 

「おおお! 私イク! 先輩にオマンコ舐められて、私またイッちゃうーーーーっ!!」

 

 祐美は一輝の舌の動きに淫蜜を溢れさせ、絶頂に備えて唇を噛む。そして────

 

 ブビュルルル! ブビュ! ビュルルーーーーッ!!

 

「「「「んはあぁぁぁんんっっ!!!❤」」」」

 

 一輝が黒歌の膣内(なか)で果てると同時に、四人もまた絶頂を迎えた。

 激しい絶頂に崩れ落ちる四人の下からようやく抜け出した一輝はベッドの縁に腰掛け、深く息を吐いた。

 

 

 

 

 

「流石に限界だな。一体何発射精()したのやら・・・・」

 

 そんな一輝()の背後から濃密な精臭が漂い、汗に濡れた柔らかな裸身が押し付けられた。

 

「ンフフフ・・・・皆の前であんなに激しく責め立てるなんて、一輝センパイはホント鬼畜だね」

 

 そこには最初に陥とした筈のゼノヴィアが艶然とした笑みを浮かべていた。

 

「さぁセンパイ。第二ラウンドといこう。相手してくれるよね?」

 

 そう言って色っぽく舌舐めずりをするゼノヴィア。更に───

 

「ウフフ、一輝、私もして・・・・だって、まだ三回しか膣内(なか)射精()されてないんですもの」

 

 いつの間に復活したのか、朱乃が真正面からやわやわと肉棒を刺激していた。

 

「待ってくれ。それをいうなら私は二回しか射精()して貰ってないぞ!?」

 

「あらあら。だってそれはゼノヴィアちゃんが呆気なくイッてしまうのが悪いんですもの。自業自得ですわ」

 

「ムウ~、ならばどちらが先に一輝センパイをイかせるか勝負だ!」

 

「あらあらあら。私に勝とうだなんて十年早いですわ! いいでしょう、受けて立ちますわ!!」

 

 復活した朱乃とゼノヴィアが一斉に俺の股間目掛けて襲い掛かる。

 

 

 結局、俺は朝まで眠る事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り、黒歌がグレモリー眷属入りしました。
ギャスパーファンの方、申し訳ありません。
一応話が進めば出て来る予定ですので、気長にお待ち下さい。

初の7Pはいかがだったでしょうか?
感想を貰えたら幸いです。

次回はいよいよメインヒロインとの初エッチです。
ご期待下さい。



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第22話 パーティの夜☆☆(リアス)



アンケートに大勢協力して下さってありがとうございました。
アンケートの結果、白音の初エッチは「大きくなって、黒歌と姉妹丼」でする事になりました。
従って彼女が「白音モード」を会得するまで本番はおあずけとなりますのでご了承下さい。

さて、いよいよ予告した通り本作のメインヒロイン、リアスとの初エッチの回です。
散々待たせて自分でハードルを上げた気がしますが、楽しんで貰えたら幸いです。

それでは第22話をご覧下さい。



 

 

 時刻は昼過ぎ。ようやく目が覚めた一輝()は、熱いシャワーで昨夜の情交の跡を洗い流した。

 7Pなんて初めてだったからペースが分からず、頑張り過ぎたせいか正直腰が重い。でも朱乃達外出組とは二週間振りだったし、あれだけの美少女達から乞われて退く程俺は枯れてない。全員をK.Oして眠りに就いたのは明け方近く。お陰ですっかり寝過ごしてしまった。

 取り敢えず腹が減った。何か食べさせて貰おうと俺は食堂に向かった。

 

「! お、おはようございます・・・・」

 

 食堂には俺の専属メイドのミュセルがいた。彼女は俺に気付くと顔を真っ赤にして深々と頭を下げる。これは・・・・また見られたかな?

 

「おはよう、って時間でもないか。皆は?」

 

「あ、はい。リアス様を始め、女性の皆様はパーティのお召し物を選んでいらっしゃいます。イッセー様はお庭でトレーニングをなさってます」

 

 まだ若干頬を染めながら、ミュセルが教えてくれた。

 

「そうか・・・・所で何か軽く食べられないかな? 腹が減っちゃって・・・・」

 

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

 ミュセルは食堂を出て、暫くすると料理を持って戻って来た。

 

「お待たせしました。生憎料理人が全員パーティの準備で出払っておりまして、こんな物しか出来ませんが・・・・」

 

「ミュセルが作ってくれたのか? 充分だよ。ありがとう」

 

 ミュセルが作ってくれたサンドイッチを頬ばる。うん、美味い。

 

「美味いよミュセル」

 

 俺がそう言うと、ミュセルは嬉しそうに微笑む。 

  

 ミュセルはこの邸に滞在中、俺の専属メイドとして色々世話をしてくれてる娘だ。

 ライトブラウンの髪をツインテールにした美少女で、仕事振りはまだ拙いものの、心優しい性格と柔らかな笑顔でグレイフィアさんからの信頼も篤いメイドだ。

 邸に滞在した日から眷属の一人一人に世話役としてメイドが宛がわれた。俺に宛がわれた彼女──ミュセルもまた転生悪魔で、こう見えてもグレイフィアさんの兵士(ポーン)である。

 因みに、このグレモリー本邸に勤めるメイドの一部はグレイフィアさんの眷属なのだそうだ。

 彼女には初日にリアスと裸で寝ている所を見られて以来、何度もそういう場面を見られている。色々と迷惑を掛けてもいる(グショグショに汚した部屋の後始末など)ので、その内何かお礼したい所だ。駒王町に帰るまでに何か考えておこう。

 

 

 

 

 

「あ、一輝先輩!」

 

 食後、庭に出るとイッセーが筋トレしていた。

 昨日も思ったが、いい身体付きになった。これなら地力も底上げされて【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の効果も更に増すだろう。

 今回の修行では残念ながら『禁手(バランス・ブレイカー)』には至れなかったそうだが、修行の方向性は間違っていない。流石はアザゼルといった所か。

 

「イッセー。軽く組手をしてみないか?」

 

「えっ!?」

 

「お前がどれ位強くなったのか、俺に見せてくれ」

 

「ウス!!」

 

 イッセーは瞳を輝かせて返事をする。イッセーも自分がどれ位強くなったのか試してみたいのだろう。

 

「ルールはいつもと同じ。先に一発当てた方の勝ちでいいな?」

 

「ウス! いきます、【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】!!」

 

 イッセーの左手に【赤龍帝の籠手】が具現化される。

 

『Boost!』

 

 十秒毎にイッセーの力が倍加されて行く。俺も身体に魔力を通して身体強化を施す。今までのイッセーなら30%も強化すれば充分だったが、さて、どうなるかな。

 

『Boost!』

 

 一分が経過し、イッセーが構える。次の瞬間、イッセーが視界から消えた。どこから来る?

 

(右? いや、(こっち)か!?)

 

 今の位置から一歩後ろへ下がると、左からイッセーの拳が(はし)る。かわしてそのままボディーへ一撃。だが腕でガードされた。以前ならふっ飛ぶ所だが、しっかり踏みとどまってる。

 

(スピードと防御力は合格。ならパワーはどうだ?)

 

 イッセーの拳が顔面に疾走(はし)る。俺がその手を払い上げ反撃しようとしたその時、イッセーの拳が止まる。稚拙なフェイントだがまあいい。俺はそのままイッセーの左ボディーブローをわざと腹に受けた。

 

「ぐうっ!?」

 

 咄嗟に【浮身】でダメージを軽減させたが、かなりの威力だ。パワーバカと揶揄されるだけある。

 

「え、先輩!?」

 

「いてて・・・・うん、いいパンチだ。お前の勝ちだよイッセー」

 

 イッセーは暫し呆然とした後、いきなり憤慨した。

 

「でも! 一輝先輩は全然本気出してないじゃないスか!?」

 

「言ったろ、軽い組手だって。そもそもイッセー、先に一発当てた方が勝ちというルールなんだからお前の勝ちだ。それに俺は今までと同程度の身体強化を施して歯が立たなかった。それだけお前が強くなったという何よりの証拠だよ」

 

「一輝先輩・・・・」

 

「自信を持てよ兵藤一誠!・・・・お前は強くなった」

 

「一輝先輩・・・・・はい!!」

 

 諭すように肩を叩く俺にイッセーは力強く頷いた。その顔には今までに無かった自信が窺えた。『禁手』になれなかった事で落ち込んでたようだが、少しは気持ちが上向いたみたいだな。これならシトリーとのゲームも大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 夕刻になり、イッセー()と一輝先輩は談話室でパーティの支度をする皆を待っていた。俺達の格好は駒王学園の夏服。左腕にはグレモリーの紋章入りの腕章を付けている。

 先輩と話していると匙が入って来た。何でも会長のお供で椿姫副会長と来たのだが、二人は部長に挨拶しに行ったので、俺達のいる談話室に来たのだそうだ。因みに他の眷属は直接会場に向かったらしい。

 前に会った時より匙のオーラが濃い。こいつも強くなったみたいだな。相手にとって不足は無い、ゲームが楽しみだぜ。

 

 その後、男三人で色んな話をした。

 匙の夢は先生になる事。会長の夢であるレーティングゲームの学校で兵士の事を教える先生になりたいそうだ。俺も先輩もいい夢だと言うと、照れ臭そうに笑っていた。

 先輩の夢は上級悪魔になって新たに『不破家』を興す事。お祖父さん以外身内のいない一輝先輩は、家を興して家族を作りたいのだそうだ。そんな中、ハーレム王になりたいという俺の夢は何だか恥ずかしい気がしたけど、二人は「お前らしい」と言って笑っていた。

 

 そんな風に話をしていると、

 

「お待たせ一輝、イッセー!」

 

 扉が開いて部長を先頭に皆が入って来た。すげえ! 皆パーティ用のドレスで着飾っていて、とても綺麗だ。

 お姫さまのような部長を始め、セクシーな朱乃さんやゼノヴィア、清楚な雰囲気の祐美やアーシア、小猫ちゃんもとい白音ちゃんもロリロリなドレスで着飾ってる。中でも黒歌はいつもの和服じゃなく、胸元から背中が大きく開いたセクシーなドレスを着ている。おっぱいが溢れ落ちそうで正直たまんねえ!

 

「ッテエ!!」

 

 脇腹に痛みを感じて思わず声を上げると、頬を膨らませたアーシアが脇腹をつねっていた。

 

「皆さんが綺麗なのは分かるけど、私も見てくれなくちゃイヤです」

 

 はい、ごめんなさい!! 可愛く睨むアーシアを抱きしめたい衝動を堪えつつ、平謝りする俺。ホント、ウチのアーシアちゃんは最高です!

 

「リアス様、タンニーン様と眷属の方々がお見えです」

 

 そんな時、メイドさんがタンニーンのおっさんの来訪を告げた。

 

 

 

 

 

 タンニーン殿と彼の眷属に送って貰い、グレモリー領の端にあるパーティ会場に到着する。

 今回のパーティで一輝()はリアスのエスコートを命じられている。彼女と腕を組んで会場入りすると、色々な人から声を掛けられ、あっという間に囲まれてしまった。中でも厄介なのがリアスの婿の座を狙う貴族の子弟(ボンボン)達。さっきから俺を憎らしげな目で睨んでいる。俺はリアスの人気の凄さを改めて思い知った気がした。

 

 

 

 

「それじゃあ一輝、挨拶回りに行くわよ!」

 

 その後リアスに連れられ、貴族への挨拶回りをする。何でもコカビエルや白龍皇を倒した俺は貴族から注目されているらしく、あちこち連れ回され挨拶をした。貴族に対する礼儀作法はヴェネラナ様に仕込まれていたから何とか恥をかかずに済んで、一通り回ってからやっと解放された。

 俺は馴れない事をしたせいでヘロヘロだったが、パーティ馴れしたリアスは平気な顔で、今は朱乃と共に同年代の少女達に囲まれて話をしていた。

 

「お疲れ様です、先輩」

 

「ほら、飲み物を持って来たぞ、センパイ」

 

 礼を言ってゼノヴィアから飲み物を受け取る。喉がカラカラだったのでありがたい。

 俺も大変だったが皆も大変だったらしい。リアスの眷属となれば注目度は抜群。パーティ経験のある朱乃や祐美のフォローがなければ危なかったと誰もが疲れた顔をしていた。

 

「お久し振りですわね、“ガイバー”さん」

 

 そんな風に休息している俺の前に現れたのは、かつて戦ったライザー・フェニックスの妹、レイヴェル・フェニックスだった。

 

「久し振りだな、レイヴェル。その後ライザーはどうだ?」

 

「お兄様なら貴方に負けて、リアスさんを奪われたショックで引きこもってますわ。全く情けないったら・・・・困ったものです」

 

 頬に手を当てて、ほうっとため息を吐くレイヴェル。その態度はまるでライザーの件を何とも思ってないようで・・・・

 

「レイヴェル・・・・君はあいつの眷属でもあるんだろう? 俺を恨んでないのか? 」

 

 てっきり恨み言でもぶつけるつもりかと思ったんだが、そうも見えない。思い切って聞いてみると、

 

「ふん、勘違いなさらないで。ゲームでの敗北はお兄様より貴方の方が強かっただけ。フェニックスの不死性を過信しすぎていたお兄様にはいい薬ですわ。それに私は今、トレードによってお母様の『僧侶(ビショップ)』になってますから」

 

 初めて知ったが『(キング)』たる上級悪魔同士が同意すれば眷属の交換(トレード)が出来るらしい。それによってレイヴェルはライザーの眷属から抜けたらしい。成る程、そんな方法があるのか。

 

「だから貴方が気にする事はありませんわ、“ガイバー”さん」

 

「その“ガイバー”はやめてくれ。前にも名乗ったが俺は不破一輝だ」

 

 そう言うとレイヴェルは青い瞳を丸くすると顔を赤らめ、急にモジモジし出した。

 

「えっ? お名前で呼んでもよろしいんですの!?・・・・そ、それじゃあ一輝さまと呼ばせて貰いますわ!!」

 

 いや、何で俺が呼び捨てなのにお前が様付けだよ。そうツッコミたかったが、その時、

 

「お話中失礼致します。一輝さん、サーゼクス様がお呼びです。一緒に来ていただけますか?」

 

 突然現れたグレイフィアさんにそう言われた。するとレイヴェルは両手でスカートの裾を摘まんで優雅に一礼した。

 

「それでは一輝さま、今宵はこれで失礼いたします。今度我が家のお茶会に招待いたしますわ。来て下さったら私お手製のケーキでおもてなし致しますわよ。では、ご機嫌よう」

 

 妙に浮かれた足取りで去って行った。あの態度って・・・・でも、あの娘に好かれる理由はないし、まさかなぁ・・・・

 

「はぁ、またですか先輩・・・・」

 

「・・・・あの焼き鳥娘ェ」

 

 祐美と白音が呆れたように呟く。不穏な気配を感じた俺はさっさと行く事にした。

 

「それじゃあ行きましょうか、グレイフィアさん」

 

「はい。・・・・ですがその前に一輝さん」

 

「は、はい!?」

 

「程々にして下さいね」

 

「はい・・・・」

 

 グレイフィアさんの静かな迫力に、俺はただ頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 案内されたのは会場の二階の貴賓室。そこにはサーゼクス様とセラ姉さんの他、リアスとグレモリー夫妻が勢揃いしていた。

 

「やぁ来たか一輝君。──では始めるとしようか」

 

 サーゼクス様はセラ姉さんと共にバルコニーへと移動する。そこからは会場が一望出来、魔王様が姿を見せた事に気付いた会場から拍手と歓声が沸き上がる。

 

「諸君! 今宵は良く集まってくれた!」

 

 右手を上げて歓声を鎮めると、サーゼクス様は話し始める。

 

「本来なら例年通りに交流を深めたい所だが、その前に皆に話しておかねばならない事がある。皆の記憶にも新しいだろう。ナベリウス家を始めとした上級悪魔が犯していた愚かな犯罪を」

 

 会場にはサーゼクス様の言葉に悲痛な顔をする者、不快そうに顔をしかめる者、怒りを露にする者など様々な者がいた。

 

「純血の悪魔なんて現在(いま)では全体の一割程しかいないわ。私達悪魔は最早他種族の血を取り入れなくては成り立たない種族だという事を皆も自覚して欲しいの。私達魔王は冥界の統治者として、こうした貴族の愚かな犯罪が二度と起こらないように努めるとここに誓うわ!」 

 

 続いてセラ姉さんが普段のユルい姿を微塵も感じさせない威厳に満ちた態度で言葉を発する。その美しさに会場のあちこちからため息が漏れ、再び会場が拍手と歓声に包まれた。

 

「さて、ここで皆に紹介したい者がいる。リアス、一輝君、こちらへ」

 

 歓声がある程度鎮まってから、サーゼクス様は俺とリアスを傍らに呼び寄せる。

 

「紹介しよう、我が妹リアス・グレモリーとその眷属、【ガイバー】不破一輝だ」

 

 会場がザワめき、いくつもの視線が俺に突き刺さる。

 

「彼の噂を聞いた事のある者もいるだろう。彼は堕天使幹部コカビエルを始め、禍の団(テロリスト)と化した旧魔王派のカテレア・レヴィアタン、そして白龍皇の打倒と数々の功績を上げていて、その戦闘力は並みの上級悪魔を遥かに凌駕する」

 

 突き刺さる視線には驚愕や称賛が半分、不審や嫉妬が半分って所だ。実際自分の目で見た訳じゃないから仕方ないだろう。

 

「『禍の団(カオス・ブリゲート)』の暗躍や貴族の不正摘発など昨今のあらゆる事情から冥界は今、力を欲している。そこで我等四大魔王の名の元に、これまでの功績から彼──不破一輝の上級悪魔への昇格を特例として認める!!」

 

 会場がどよめきに包まれる。イッセー達眷属も、ソーナやレイヴェルといった知り合いも、見ず知らずの者達も誰もが驚いている。俺も、そしてリアスも突然の宣言に驚いていた。驚いてないのは事前に知っていたであろうグレモリー夫妻とセラ姉さん、グレイフィアさんだけだ。

 だが驚愕はこれだけでは済まなかった。サーゼクス様は更に言葉を重ねる。

 

「そして、彼と我が妹リアスとの婚約の成立を重ねて宣言する───!」

 

 今日一番の爆弾が炸裂し、会場が更なるどよめきに包まれた。

 

「これが君への褒賞だよ。気に入ってくれたかい?」

 

 サーゼクス様が悪戯に成功した子供のような笑みを浮かべる。何をくれるのかと思いきや俺が望んでもやまないものをくれるとは・・・・本当にこの人には敵わないな。

 

「はい。最高です」

 

 そう答えて傍らのリアスを見つめる。リアスは口に両手を当てて、大きく見開いた目には涙が滲んでいた。

 

「どうやら思ったより早く、約束が叶えられそうだ。──リアス、改めて俺の妻になってくれるかい?」

 

「──うん、なるわ一輝。貴方の妻に──」

 

 そう答えるリアスを抱きしめようとしたその時、

 

「お待ち下さい魔王様!!」

 

 会場に怒声が響いた。

  

「お待ち下さい魔王様! 百歩譲ってその男の昇格は認めましょう。ですが何故リアス姫との婚約という話になるのですか!?」

 

「そうだ! 納得がいかん!!」

 

「いや、私は昇格にも納得出来ない! そいつの力を直に見せて貰わねば!!」

 

「そもそも本当に強いのか!? コカビエルやカテレアなど所詮ロートル、白龍皇だって噂程じゃないのかも知れん!」

 

 見れば会場にいる若い貴族達が不満を爆発させていた。良く見ればそいつら全員、リアスが会場入りした途端にすり寄って来て、俺に憎らしげな視線を向けていた連中だった。

 

「ほう・・・・君らは魔王の決定に異論があると?」

 

 静かな迫力のある笑顔を浮かべ、不満分子を眺めるサーゼクス様。その迫力に若い貴族達は一瞬怯むも、お互いを鼓舞しつつ異論を唱える。

 

「お、恐れながらその通りです! そいつにリアス姫を与えるなど・・・・やはり納得出来ません!!」

 

「しかも上級悪魔となれば我々貴族の仲間入りするという事ですぞ!?」

 

「ふむ・・・・君らが納得しようとしまいと関係ないのだがな・・・・どうする、一輝君?」

 

 サーゼクス様が俺に判断を委ねる。

 

「構いません。力を見せれば納得出来なくとも理解はするでしょう」

 

 俺は不満を漏らす貴族達を眺める。・・・・十三人か、全員ブッ飛ばせば楽なんだが遺恨が残るのも面倒だな・・・・・・よし!

 

「グレモリー卿、よろしいですか?」

 

 俺は自分の計画をジオティクス様に耳打ちし、許可を得ようとお願いする。

 

「・・・・・・ふむ、いいだろう。好きにしたまえ」

 

 話を聞いたジオティクス様は頷いてくれた。よし、領主の了承は得た。

 

「ちょっと行って来る」

 

 散歩にでも行くような気軽さで俺が言うと、

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

 リアスは笑顔で見送ってくれた。俺は微笑み返してバルコニーから飛び降りた。

 

 

 

 

 

「望み通り力を見せよう。付いて来い」

 

 一輝が貴族達を連れて会場からバルコニーへ移動する。リアス()達も急いで下に降りたけど、バルコニーは既にギャラリーで一杯だった。

 

「リアス、こっちよ!」

 

 ソーナが私に手を振る。私達が近付くと人混みが左右に割れて、私達はソーナと合流する。

 バルコニーには不満を漏らす貴族達の他、私の眷属とソーナの眷属、それにレイヴェルがいた。

 

「一輝は?」

 

「あそこよ」

 

 ソーナが指差す方向には翼を広げて飛ぶ一輝がいた。あんな所で一体何を・・・・?

 そんな風に考えていると、一輝の姿が紅い光を発して変わる。ガイバーに殖装した一輝にギャラリーからもザワめきが漏れる。

 

「奴め・・・・何をする気だ?」

 

 若い貴族が忌々しげに呟く。どうやら一輝が何をする気なのか聞かされてないみたいね。

 やがて一輝は上空で静止する。どうするんだろう、その先には山しかないのに。

 するとガイバー(一輝)から凄まじい魔力が放出され、身体から眩い光が漏れる。次の瞬間、周囲が太陽の如き光に包まれた!

 あれはガイバー(一輝)必殺の【胸部粒子砲(メガスマッシャー)】。光の洪水が辺りを照らし、轟音が轟く。

 咄嗟にグレイフィアが結界を張って、会場のホテルを守るも衝撃でビリビリと結界が揺れる。暫くしてようやく衝撃が収まり、周りを見た私達は別の衝撃に言葉を失くした。

 

「や、山が失くなっちゃった・・・・・・?」

 

 誰が呟いたのか分からないけど、その通りだった。あそこには1000m級の山が連なっていた筈なのに、それが跡形もなく消え失せていた。

 

「何という・・・・・・あの時以上ですわ・・・・」

 

 レイヴェルの呟きに私も激しく同意する。ライザーとのゲームより強敵との戦いを経て、一輝はここまで強くなっていた。その力を目の当たりにした若い貴族達は言葉を失っていた。

 

「バカな・・・・・・何という力だ・・・・」

 

「これで分かっただろう? 私が特例にしてまでも彼を昇格させる理由(わけ)が。あれ程の力を遊ばせておく余裕は悪魔(我々)にはないのだよ。理解したかね?」

 

「はい・・・・悔しいが認めるしかありません」

 

 どうやら一輝の力を認めたようだ。彼らだけじゃない、今夜この光景を目にした者は認めるしかないだろう。一輝の、私の愛する人の力を───

 私は殖装を解いてこちらへ飛んで来る一輝に向かって両手を広げた。

 

「おかえりなさい、一輝!」

 

 

 

 

 

 

「リアス───」

 

「うん・・・・ちゅ、ちゅぷ・・・・・・んん、一輝ぃ」

 

 一糸纏わぬ姿で抱き合い、一輝とリアスが唇を重ねる。

 

 ここはパーティ会場であるホテルの最上階にあるロイヤルスイートルーム。ヴェネラナの計らいで二人はこの部屋に来ていた。

 上級悪魔への昇格が決まり、一輝は晴れて暫定ではなく正式な婚約者となった。それによってついにセックスが解禁された。

 パーティ終了後、ヴェネラナから「しっかり励みなさい」と部屋の鍵を渡された二人は、部屋に入るなり自然と唇を重ね、互いの服を脱がし合う。

 

「んふう、ちゅぱ、ぢゅぷ・・・・んん、ちゅ、ちゅぷ・・・・んふ、一輝・・・・」

 

「ふう、ちゅぷ・・・・リアス」

 

 啄むように何度もキスを交わし、ようやく落ち着いたのか、二人の唇が離れる。二人の唇にかかった銀色の橋がプツンと切れて、リアスの胸の谷間に消えていった。

 

「・・・・ようやくこの時が来たのね」

 

「ああ。今まで辛い思いをさせて済まなかった」

 

「ううん、いいの。貴方はちゃんと約束を果たしてくれたもの」

 

「リアス、お前を誰にも渡さない。お前の全てを──俺が貰うぞ」

 

「ええ。私の全ては貴方のものよ。だから一輝───私を抱いて。貴方の女だという証を私に刻み付けて」

 

 高価なドレスも下着も脱ぎ捨てて、二人は誓いを交わすように再び唇を重ねた。

 

 

 

 

 お姫様抱っこでリアスを抱え上げた一輝は、ベッドの上にリアスをそっと横たえる。

 何度も見て、触れた筈なのにその美しさにため息が漏れる。柄にもなく緊張しながら一輝はリアスの肌に触れた。

 

「ん──はぁ、はぁ、ああ・・・・ぁん❤」

 

 首筋から鎖骨、胸の谷間から柔らかくハリのある乳房へ指と舌を這わせると、リアスは身体を捩らせ喘ぎ声を漏らす。

 リアスの大きく突き出たロケット型のおっぱいはたっぷりの量感と共に、いつまでも触っていたい心地好さを掌に伝える。

 

「はぁ、はぁ、んん、一輝ぃ・・・・」  

 

 リアスが潤んだ眼差しで一輝を見つめる。一輝は頷くと、触って欲しいとばかりに勃ったピンクの乳首の片方を口に含み、もう片方を指で摘まみ上げた。

 

「はあぁぁぁんん!!❤」

 

 待ち望んだ刺激にリアスは身を捩り、嬌声を上げる。緩急をつけた一輝の責めに、リアスはたちまち昇り詰めて、

 

「ああ!あん!ダメ!ダメ!──イッ、~~~~❤」

 

 乳首を捻り上げられ、リアスは呆気なくイッてしまった。

 

 一輝は呼吸を荒げるリアスを見つめ、次いで股間へと指を這わせる。リアスの股間は溢れる愛蜜でグッショリと濡れて、既に一輝を受け入れる準備が整っていた。

 

「リアス・・・・もう挿入れたい」

 

「一輝・・・・うん、挿入()れて。一輝のおっきなおちんぽで私を女にして」

 

 リアスは一輝を迎え入れるように両手を広げる。一輝は熱く滾る肉棒を握りしめるとリアスの割れ目に擦り付け、愛液をまぶした。

 

「いくぞ」

 

「うん・・・・・・んん、・・・・く、うぅ・・・・んああ!」

 

 一輝の肉棒がゆっくりとリアスの膣内(なか)に挿入っていく。これまで散々開発して来たせいか、僅かな抵抗はあるものの、案外スムーズに処女膜を破り、リアスの膣奥に達する。膣口からはリアスの純潔の証が一筋零れ落ちた。

 

(ぐぅっ!? 何だこの感触は!?)

 

 リアスの膣内は挿入れた途端、ウネウネと蠢く肉襞と絶妙な締め付けがかつてない快楽を伝え、暴発しそうな所を一輝は歯を食い縛って耐える。

 

(これが一輝の・・・・熱くて、おっきい塊が私の気持ちいい所全部に当たって・・・・んん! ウソ、挿入れられただけなのに私───!)

 

 一輝の肉棒が挿入った時、痛みも感じたがそれ以上の幸福感をリアスは感じていた。

 処女膜を破り膣奥まで達した肉棒はリアスの気持ちいい所を余す事なく擦り付け、ようやく結ばれたという思いと相俟って、肉体的にも精神的にも想像以上の快楽をリアスに与えていた。

 

「くぅっ!? ダメだ、出る!!」

 

 ブビュルル! ビュル! ブビューーー!!

 

 あまりの快楽に堪えきれず、一輝は暴発気味にリアスの膣内に射精した。

 

「んああ!? 熱いのが、いっぱい・・・・! ダメ! 私も───んあぁぁぁっ!!❤」

 

 白いマグマを膣奥に浴びて、リアスもまた絶頂を迎えた。

 

(あ、熱いものが私の膣内(なか)に注がれてるのが分かる・・・・これが精液・・・・・・?)

 

「はあ、はあ、はあ・・・・ごめんリアス」

 

「はあ、はあ、ううん・・・・スゴかった・・・・❤」

 

 一輝は挿入れただけでイッてしまったのが悔しくて、強く唇を噛む。これまで何人もの女を抱いて来たが、挿入れただけでイッてしまったのは初めてだった。

 

(リアスの膣内がこんなにイイとは・・・・だがまだだ!!)

 

 一輝は決意も新たに、抜かないままリアスの膣内で動き出した。

 

「んん!・・・・一輝、また・・・・?」

 

「まだだ。俺が一回位で満足しないのは知ってるだろう?」

 

「そうね・・・・でもイッたばかりなんだから、優しくしてね?」

 

 おねだりするリアスが可愛くて、一輝は軽くキスをするとゆっくり腰を動かした。

 

「んん、ああ、うっく・・・・んはあ!」

 

 正常位で腰を動かしながら、一輝はリアスの胸を揉みつつ、乳首を口に含む。

 

「んはあ! ああ・・・・そこ! そこイイ!──ふむん!・・・・ちゅぷ、ちゅ、んふ・・・・ああ❤」

 

 快感に身体を震わせ、喘ぐリアスの唇を塞ぎ、舌を絡ませ唾液を送り込むと、リアスもそれに応えるように舌を絡める。

 二人の舌が生き物のように絡まり合い、ピチャピチャと淫らな水音が室内に響く。

 

「ん──ちゅ・・・・く、あぁ・・・・リアスの膣内スゴいぞ。熱くぬかるんで、キュウって締め付けて・・・・最高に気持ちいいぞ!!」

 

 蜜壷とは良く言ったものだ。熱い粘液で満たされた蜜壷は入れてるだけで気持ちがいい。一輝は夢中になって腰を振った。

 

「ズズ──コクン・・・・んはあ。一輝のおちんぽも気持ちいいわ。熱くて硬くて・・・・私の気持ちいい所に全部当たるのぉっ!!❤」

 

 リアスもまた、初めて知った快楽に絶叫を上げた。一輝の肉棒はリアスの膣内を圧迫し、Gスポットや子宮口など気持ちいい所を擦り続ける。指では満たされなかった場所への刺激に、リアスは細かく絶頂する度に何度も身体を震わせた。

 リアスがイク度に膣壁がキュウッと締まって、一輝は再び限界を迎える。

 

「リアス! イクぞ!」

 

「ああ──来て! 私の膣内(なか)に、一輝の精液いっぱい射精()して!!」

 

 リアスは膣内で一輝の肉棒が更に大きくなるのを感じ、もうすぐ射精するのだと理解した。

 

(ああ──来る! さっきよりスゴいのが来る───!?)

 

 ブビュルルル! ブビュッ! ビュルーーーー!!

 

「んあああ! イッ、イックゥ~~~~!!❤」

 

 さっきより大量の精液がリアスの膣奥に放出される。リアスは目をチカチカさせ、脳が痺れるような感覚に潮を噴いて絶頂した。

 

(ああ、また・・・・私の膣内が熱い精液で満たされていく・・・・・・皆の気持ちが分かるわ。この快楽を知ったら、もう一輝から離れられない・・・・)

 

「はあ、はあ、リアス・・・・」

 

「ふう、ふん・・・・一輝ぃ❤」

 

 二人は繋がったまま唇を重ねる。

 二度の射精を得ても一輝の肉棒はまだ硬度を保ったまま、リアスの膣内を圧迫し続けていた。

 

「一輝ぃ・・・・もっと。もっとちょうだい」

 

 リアスは激しく呼吸しながらおねだりする。

 

「リアス・・・・大丈夫なのか?」

 

 初めてのリアスに気を使い、一輝は訊ねる。

 

「だって・・・・ずっと待ってたんだもの。今まで出来なかった分、今夜はいっぱいシて欲しいの・・・・」

 

 リアスは覚えたての快楽に嵌まったのと、他の女達に遅れを取っている事から貪欲に一輝を求める。

 だがこの時を待っていたのは一輝も同じ。リアスが求めるなら元より異論はなかった。

 

「分かった。いくぞ?」

 

 そう言って一輝は腰に力を入れた。

 

 

 

 

 それから───

 

 

 

「うああ、あん、あん❤ 一輝これイイ! これイイの!」

 

 リアスの胸の谷間に顔を埋め、体面座位で突きまくる一輝。リアスは一輝の頭を抱きしめ、快楽に塗れた嬌声を上げる。

 

 ブビュルル! ブビュル! ブビューーーー!!

 

「はおおぉぉぉんんっ!!❤」

 

 膣奥に精液を浴びて、リアスは呆気なくイッた。

 

 

 

 

「くっ、射精()すぞリアス!!」

 

 パイズリで奉仕していたリアスに精液がかかる。

 粘性のある精液が自慢の紅髪から美しい顔、ハリのある胸にかけて噴出し、リアスの身体を汚した。

 リアスは恍惚としながら、唇に垂れて来た精液をペロリと舐める。

 

「ん───コクン、コクン・・・・ん、美味し・・・・❤」

 

 

 

 

 パンパンと肉の打ち合う音が響く。

 寝バックの態勢で激しく腰を打ち付ける一輝に、枕に顔を埋めてくぐもった声を漏らすリアス。やがて───

 

 ブビュルル! ビュルル! ブビューーーー!!

 

「むふぅ~~~~~~っっ!!❤」 

 

 膣奥に精液を浴びて、リアスは絶頂に達した。

 リアスが抱えていた枕は、汗と涙と涎でビショビショに濡れていた。

 

 

 

   

 シックスナインの態勢で互いの性器を舐め合う。 

 

「んむ・・・・ちゅぱ、ちゅぷ、むふん・・・・ズズズ、んはぁ・・・・」

 

 上になったリアスが自分の愛液と精液で汚れた肉棒を、一心不乱に舐めしゃぶる。

 下になった一輝は眼前でイヤらしく蠢くお尻の穴を見てほくそ笑んだ。そして──

 

「ほひぃぃぃんんっっ!?」

 

 お尻に舌を入れられ、リアスは悲鳴を上げた。

 

「か、一輝!? そこは・・・・!?」

 

「ここを弄られるのリアスは好きだろ?」

 

「そ、そんな事ない! お願い一輝、オマンコならいくらシてもいいから、お尻は、お尻の穴は──あお、お、お゛お゛お゛ーーーーーっっ!!❤」

 

 リアスの懇願を無視して、一輝は更に深く舌を突っ込む。その衝撃でリアスは絶頂を迎えた。

 

(あぁ、私お尻でイっちゃった・・・・・・イヤなのに・・・・どうして? どうしてこんなに気持ちいいの・・・・?)

 

 お尻の穴で絶頂する背徳感に浸るリアス。快楽に蕩けたその顔は堪らなく淫靡で、美しかった。

 

 

 

 

「んひぃ!? 一輝そこダメ! 全部一緒に攻められたら、私おかしくなっちゃうーーー!!」

 

 背面座位でリアスを貫く一輝。膣内を肉棒で貫くだけじゃなく、乳首とクリトリスを摘ままれたリアスは潮を噴いて、そのままイッた。

 

「まだ俺がイッてないぞ、リアス!!」

 

「ひあああっ!? 待って! 待って一輝! イッたばかりだから! イッたばかりで・・・・またイクゥーーーー!!」

 

 ブビュルル! ビュル! ビュルル! 

 

 膣内(なか)射精()され、連続で絶頂するリアス。

 今の彼女に貴族の姫として領民に慕われていた面影はなく、快楽に溺れた雌の顔を晒していた。

 

 

 

 

 パン! パン! パン! パン!

 

「はおぉ! おぉう! ふぅん! はぁん!」

 

 種付けプレスの態勢で強く腰を打ち付ける一輝。リアスは一輝から与えられる快楽にその身を委ね、濡れた嬌声を上げていた。

 

「これで最後だ! 受け取れリアス!!」

 

「んあああ! 来て一輝! 一輝の精液、全部私の膣内に射精してーーーー!!」

 

 ブビュルル! ブビュル! ブビューーー!!

 

「ひああぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 リアスは間欠泉のように潮を噴いて、何度目かも分からない絶頂を迎えた。

 流石に限界なのか、ようやく小さくなった肉棒を引き抜くと、リアスの膣からはゴポリと音を立てながら、信じられない位大量の精液が溢れる。

 一輝はリアスの隣に倒れ、大きく息を吐いた。

 

「一輝・・・・・・」

 

 意識を朦朧とさせながらリアスが手を伸ばす。

 

「ここにいるよ、リアス・・・・」

 

 一輝がその手を取ると、リアスは安心したように微笑み、そのまま眠りに落ちた。

 

「おやすみ、リアス・・・・」

 

 眠るリアスにそっと唇を落とし、汗ばんだ肢体を抱いて、一輝もまた眠りに就いた。

 

   

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

リアスの初エッチ、いかがだったでしょう?
ご意見ご感想を聞かせて貰えたら嬉しく思います。

「アウトブレイクカンパニー」のミュセルがグレモリー家のメイド兼グレイフィアの兵士として登場。
彼女は今後も出て来る予定です。

次回はシトリーとのゲーム開始です。

 
P.S
今書いている文庫5巻分のエピソードの後、夏休みの閑話を何話か書こうかと考えてます。
アンケートを募集しますので、ご協力下さい。



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第23話 激突!シトリーVSグレモリー☆☆(リアス)



第23話を投稿します。

今回は予告通りシトリーとのゲームが開始します。
ご覧下さい。



 

 

「ん──ぅうん・・・・」

 

 ふと目を覚ました一輝()は今何時頃かと時計を見る。時刻は朝の六時。昨夜力尽きて眠ったのは三時頃だったから、三時間は眠れたのか。

 隣ではリアスが眠っている。

 その穏やかな寝顔を見ているだけで愛おしさが募る。宝物のように彼女の頬をそっと撫でると、くすぐったかったのか、リアスは小さく身動(みじろ)ぎして、うっすらと目を開いた。

 

「一輝・・・・・・?」

 

「おはようリアス。身体は大丈夫か?」

 

「うん・・・・大丈夫よ」

 

 そう答えて身体を起こしたリアスと軽く唇を交わす。

 

「よし。なら風呂に入ろう」

 

 昨夜はそのまま寝てしまったから、身体に汗や精臭が纏わり付いて正直かなり臭う。 

 リアスを立たせようと手を引くと、

 

「あっ───やっ!?」

 

 声を上げてリアスがその場にしゃがみ込んだ。

 

「どうした?」

 

「その・・・・昨夜のが垂れて来ちゃって・・・・」

 

 リアスは恥ずかしそうに頬を染める。足元を見ると、股間から垂れた精液が白い足跡を残していた。昨夜は二桁近く膣内(なか)射精()したのだから、こうなるのも無理はない。 

 

「仕方ないか・・・・そら!」

 

「えっ?───きゃ!?」

 

 俺はリアスをお姫様抱っこしてバスルームに向かった。

 

 

 

 

 

「んん・・・・ぁん。ちょっと一輝、イタズラしちゃ・・・・はぁん! もう、ダメェ・・・・」

 

 泡塗れの胸を背後から揉みしだかれてリアスは抗議する。

 

「何で? 気持ち良くない?」

 

「それは気持ちいいけど──んん! 乳首クリクリしちゃダメェ・・・・!」

 

「どうして?」

 

「だって・・・・また欲しくなっちゃうからぁ──あぁん!」

 

 胸を揉まれて感じてる中、乳首を摘まみ上げられリアスは嬌声を上げる。朝から可愛い声を上げるリアスに気を良くして、一輝は身体を押し付ける。

 

「我慢する必要あるのか? 俺はいつだってリアスが欲しいよ」

 

「それは──ふぅ、うぅん! 硬いのがぁ・・・・あ、当たってる、んん!」

 

 首筋を舐められ、乳首を摘ままれ、お尻には硬くなった肉棒を押し付けられたリアスは陥落寸前だった。

 

「だ、ダメよ・・・・今日は午後から【昇格の儀式】があるのよ。ふぅん! だ、だからぁ、こんな事してる暇はないぃっ──ひぃん!」

 

 更に陰核を摘まみ上げられたリアスは、軽く達してしまい堪らず声を上げた。 

 

「午後からならまだ時間があるじゃないか──本当に駄目?」

 

 自分に凭れ掛かるリアスの身体を撫で回しつつ、耳元で囁く一輝。リアスの股間はお湯や汗以外の粘液でグッショリと濡れていた。

 

「はぁ、はぁ・・・・い、一回だけなら・・・・」

 

 リアスを四つん這いにして張りのあるお尻を撫で回す。この態勢はリアスの濡れた膣口も赤褐色のお尻の穴も丸見えだ。女が全てを曝け出すこの態勢が一輝は好きだった。

 一輝は腰の位置を合わせて、いきり勃った肉棒を濡れた割れ目に擦り付けるとそのまま突っ込んだ。

 

「んんんんんーーーっっ!!❤」

 

 リアスの膣内は熱い蜜をたっぷりと滴らせ、挿入れてるだけで気持ちがいい。現に昨夜は挿入れただけで暴発してしまった位だ。でも何度かしている内に馴れたのか暴発する事は無くなったが、それでも気を抜いたら一瞬で持っていかれそうだ。一輝は気合いを入れて腰を動かした。

 

「はぁ、はぁ、ああ、あん」

 

 パンパンと肉を打ち付けるリズミカルな音が広いバスルームに木霊する。リアスの漏らす喘ぎ声と相俟って二人の官能を盛り上げる。

 腰を打ち付ける度にお尻が大きく波打ち、リアスの身体中に快感が伝播する。その度に長い紅髪が踊り、芳香が広がる。一輝は五感全てでリアスを感じていた。

 

「リアス、前を見てみろよ」

 

 一輝は腰の動きを早めながらリアスに指示する。背後からの快楽に翻弄されながらリアスは顔を上げた。

 

「ひ!?──う、ウソ! わ、私こんな・・・・い、いやぁ!?」

 

 そこにあるのは全身を映せる大きな鏡。一輝に後ろから突かれ、快楽に染まった自分が余す所なく晒されている。

 リアスは羞恥で顔を真っ赤に染め、堪らず顔を伏せた。

 

「ほら、顔を上げて。自分がどんなにイヤらしい顔をしてるのか見てごらん」

 

 一輝は両腕を後ろに引っ張り、強引に顔を上げさせる。リアスは再び快楽に染まった自分を直視する。

 

(ああ──何てイヤらしいの。私こんな顔を一輝に見られてるなんて・・・・は、恥ずかしい!)

 

 だが恥ずかしいと思うのと同時にそれまで以上の熱さと悦楽が身体中に広がり、いつしかリアスも無意識の内に腰を振っていた。

 

「ああぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 プシャアアァァッ!!

 

 そしてリアスはあっさりと昇り詰めた。盛大に潮を噴いて身体から力が抜ける。繋がったままリアスの上半身が落ちた。

 一輝は汗に濡れた身体に指と舌を這わせながらゆっくりと肉棒を抜いて行く。そして亀頭が引っ掛かるまで抜くとリアスのくびれた腰に手を置いて、

 

 スパアァァンッ!!

 

「んひぃっっ!!❤」

 

 力一杯打ち付けた。

 

「ひぃ! ひあぁ! ひやあぁぁんんっ!!❤」

 

 一輝は勢いを付けてリアスの膣内を蹂躙する。子宮口に当たるまで深く突き込み、亀頭が抜ける寸前まで引き抜く。それを何度も繰り返す内にリアスがまたも絶頂する。だが、それに構わず一輝は腰を振り続ける。

 

「ひやあぁぁ!❤ 待って・・・・待って一輝! イッてる! 私イッてるからぁっ!!」

 

「俺はまだなんだ。もう少しだから頑張れ!」

 

 一輝は更に腰の動きを早くする。

 

「そんなの無理! これ以上されたら頭おかしくなる! 一日中チンポの事しか考えられない変態になっちゃうぅっっ!!」

 

 リアスの膣内はイキッ放しの状態に陥り、激しい痙攣が絶えず一輝の肉棒を締め続ける。 

 

「いいぞ! そうなったら一日中リアスの膣内にチンポを挿入れてやる!」

 

 一輝の言葉にリアスは一日中この快楽を受け続けるのを想像して、身体を震わせた。

 

「あああ! 狂う! そんな事されたら私狂っちゃうーーーーっっ!!」

 

 収縮する膣内の動きに堪え切れず射精する寸前、一輝は目の前で口を開くお尻の穴に深く指を突っ込んだ

 

「ひやああぁぁぁぁんんんっっ!!❤」

 

 ドビュルルル! ビュル! ブビューーーーッッ!! 

 

 昨夜あれだけ射精したのが信じられない位、大量の精液がリアスの子宮目掛けて放出される。リアスは身体の内側に広がる熱を感じながら背中を大きく反らし、絶叫した。

 

(ああ──こんなにいっぱい射精されちゃったら、いくら悪魔でも妊娠しちゃう・・・・・・でも、それもいいかも・・・・一輝との赤ちゃんか、ウフフ❤)

 

 幸せな妄想の中、リアスの意識は白い闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

「んもぅ・・・・朝から激し過ぎるわよ」

 

「しょうがないだろ。リアスが可愛過ぎるのが悪い」

 

「・・・・・・バカ❤」

 

 一戦を終えたリアス()達は身体に付着した汚れを綺麗に洗い流し、今は二人で湯船に浸かっていた。

 

「それに・・・・んん、何でまたおっぱいを揉んでるの?」

 

 私は一輝に寄りかかり、背後から抱きしめられている。でも最初はお腹に回っていた一輝の手が、いつの間にか私のおっぱいに回っている。

 くすぐるようなソフトタッチが先程とは違うむず痒いような甘美な快楽となり私の身体を侵す。

 

「何でって・・・・好きだから?」

 

「んん・・・・もう、何よそれぇ・・・・あん❤」

 

 一輝の指先が私の乳首を掠め、そのもどかしさに思わず声が漏れる。それと同時に私のお尻の割れ目に硬いモノが押し付けられる。

 

「ふぅ、うぅん・・・・もう、またおっきくなっちゃったの?」

 

「ああ。いいかリアス?」

 

 一輝が右手でおっぱいを揉みながら、左手で割れ目を擦る。私のあそこはお湯とは違う粘液で濡れていた。

 

「んもぅ、仕方ないんだから・・・・これで最後よ?」

 

「ん、分かった」

 

 一輝は後ろからキスすると私の身体を持ち上げた。お湯の浮力で簡単に持ち上がった身体はそのままそそり勃つ一輝の肉棒へ着地する。

 

「んんん! んあぁぁぁーーーーっっ!!❤」

 

 

 

 結局この後、お風呂で三回もシてしまった。

 我ながら流され易いかな、とは思うけど、一輝に求められたら仕方がないわよね。だって私は一輝のお嫁さんになるんだもの。

 そんな風に誤魔化しながら、私は一輝から与えられる甘美な熱に蕩けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 魔王領・魔王府。

 一輝()とリアスはそこにある【昇格の間】に来ていた。 

 神殿を思わせる広い部屋の中央の一段高くなった場所に祭壇が置かれ、その前で四大魔王が勢揃いして俺達を待っていた。

 俺とリアスは階段を昇り祭壇の前に到着した。サーゼクス様が俺達を見て頷き、厳かに宣言する。

 

「これより【昇格の儀式】を執り行う」 

 

 祭壇に立った俺はサーゼクス様から承認証を受け取ると、リアスの前に跪く。彼女から『(キング)』の証である王冠を被せて貰った後、隣にある石碑に触れるように言われたので手を触れると、石碑がパアッと紅く輝いた。 

 新しく上級悪魔に昇格した者は『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』と同じ素材で作られたこの石碑に魔力を登録する必要があり、紅く輝いた時点で登録は完了する。

 

「おめでとう一輝君。これで君は上級悪魔(貴族)の一員として【準男爵】の地位を得て、【不破家】の当主となった。これからの君の活躍を期待しているよ」

 

 サーゼクス様が俺の肩を叩いて言った。

 貴族の階級は一番上が魔王。次いで大王と大公(この二つはバアル家とアガレス家が占有している)。それから公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵となる(因みにグレモリー家やシトリー家は魔王を輩出した功績から公爵位、フェニックス家は『フェニックスの涙』で荒稼ぎした財力から侯爵位に叙されている)。

 今回俺が叙された準男爵という爵位は一代限りのもので世襲が認められていない。世襲が認められるのは男爵からで、このままでは子供が出来てもその子は下級悪魔扱いになり、爵位を継がせられないそうだ。

 よって今後の俺の目標は更なる功績を挙げて、爵位を男爵以上に上げる事になる。

 

「ではこれを君に──」

 

 アジュカ・ベルゼブブ様から小箱を渡される。箱を開けると、中には上級悪魔の証である十五個の紅い駒──『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』があった。

 

(どんな人が俺の眷属になってくれるんだろうか───?)

 

 俺はまだ見ぬ自分の眷属に思いを馳せ、期待に胸を膨らませる。

 こうして【昇格の儀式】は終了した。だが、

 

「それでだ、二人に知らせなきゃならない事があるんだが───」

 

 折角の気分を台無しにする知らせをサーゼクス様が告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「えええーーーーーっ、出場禁止!?」

 

 シトリー眷属とのゲームまで後三日。その日のミーティングで発した部長の言葉にイッセー君が大声を上げる。祐美()達も思わぬ事態に声を失っていた。

 

「そうなのよ───『今回のゲームは若手の力量を見る為のもの。不破一輝が上級悪魔に昇格した今、公式戦ならともかく、今回出場させては公平性に欠ける』って意見が上がってね・・・・結局それが認められて、今回一輝は出場出来なくなったわ」

 

 デビュー前の若手の眷属に上級悪魔がいるのは初めての事らしい。

 確かに今のグレモリー眷属(うち)には『(キング)』が二人いるようなもの。公平性に欠けると言われればそれまでかもしれないけど・・・・

 

「パーティの時のデモンストレーションが裏目に出たな・・・・すまん皆、迷惑をかける」

 

 一輝先輩が申し訳なさそうに頭を下げる。

 一輝先輩がいない。それだけで私の心に不安がよぎる。駄目だなぁ私、出場出来なくて悔しいのは先輩の方なのに・・・・

 

「大丈夫っスよ! 先輩の抜けた分は俺がカバーします! だから先輩は大船に乗ったつもりで見ていて下さい!!」

 

 と、そんな風に考えた時、イッセー君が勢い良く立ち上がった。 

 

「そうだろ皆! 俺達何の為に強くなったんだよ! いつまでも一輝先輩にばかり負担をかけないようにする為だろ!? だったら今回はいいチャンスじゃないか! 一輝先輩がいなくても、俺達だけでも戦えるんだって証明してやろうぜ!!」

 

 そうイッセー君が檄を飛ばした。

 それを聞いて私の心が奮える。そうだ、イッセー君の言う通りだ! それなのに先輩が出場出来ないからって不安がって、私ったらもう!!

 

「イッセーの言う通りだ! 私達がどれだけ強くなったか一輝センパイに見せてやろう!!」

 

「わ、私も頑張ります!!」

 

「あらあら。うふふ、イッセー君も頼もしくなったものですわね」

 

「わぁお♪ 赤龍帝ちん、やる気マンマンにゃん♪」

 

 皆も同じ気持ちみたい。ゼノヴィアが、アーシアさんが、朱乃さんが、黒歌さんが其々の気持ちを露にする。白音ちゃんも無言でシャドーボクシングをしてやる気を表している。

 

「良く言ったわイッセー! そうよ、私の眷属は一輝だけじゃないわ! 私の自慢である眷属(あなた)達の力を冥界中に見せつけて、必ず勝利するわよ!!」

 

「「「「はいっ!!!」」」」

 

 一輝先輩が出場出来ないと聞いて不安になった私達だけど、今は誰も不安なんて感じていなかった。寧ろ一人一人がやる気に満ち溢れている。 

 今、私達の心は必ず勝利するという思いの下、ひとつになっていた。

 

 

 

 

 

 

「今回の件、リアスと一輝君には悪い事をしたかな・・・・」

 

「だが一輝の実力は折り紙付きだぜ。出場させたらワンサイドゲームになるだけだ。観る方もそれじゃあつまらん」

 

 ため息と共に呟くサーゼクスに、アザゼル()は正論を語る。

 

「確かにね・・・・悔しいけどソーナちゃんの眷属でかずくんの相手になる子はいないわ。それにたった一人の強力な眷属が全てを決する──何て事になったら『若手の力量を見る』っていう趣旨に反するもの」

 

「あのう、ガイバーに変身するのを禁止すれば良かったのでは?」

 

「あいつは生身でも強えんだよ。不破圓明流で一人一人沈めてくのが目に浮かぶぜ・・・・生身では格闘主体のテクニックタイプ、ガイバーに殖装すればゴリゴリのパワータイプときた。・・・・ったく『規格外品』とは良く言ったモンだぜ」

 

 セラフォルーに続きガブリエルも意見を述べるが、若手悪魔のゲームに一輝を参戦させるのはやっぱり面白味に欠ける。

 

「ふむ・・・・噂のガイバーの力、是非この目で見てみたかったのですが、残念ですね」

 

「一輝が自分の眷属を連れて参戦すればいいんだがな・・・・昇格したばかりのあいつには流石に酷だろう。まぁリアスの眷属には一輝以外にも赤龍帝(イッセー)聖魔剣士(祐美)聖剣デュランダル使い(ゼノヴィア)とタレント揃いだ。一輝抜きでもソーナには分が悪いと思うぜ?」

 

 ミカエルが残念そうに呟く。将来的には一輝も今の若手悪魔達(ルーキーズ)に並ぶだろうが、今すぐ眷属を集めろというのも酷だろう。

 

「ふん。何じゃい、噂のガイバーとやらは参戦せんのか。楽しみがひとつ減ったのう」

 

 突然扉が開き、現れた神物(じんぶつ)に俺等はド肝を抜かれた。

 

「──おいおい、久し振りじゃねーか、北のクソジジィ」

 

 俺は突然の大神物(ビッグネーム)の出現に驚きながらも悪態を吐く。

 現れた神物の正体はオーディン。北欧神話の主神にして俺等と違いれっきとした()だ。背後には護衛だろう美人の戦乙女(ヴァルキリー)を連れている。

 

「久しいの悪ガキ烏。最近和平を結んだばかりじゃというのに、随分と仲がいいのう?」

 

「ハッ、田舎のジジィ共と違って、俺等は思考が柔軟なのさ」

 

「ふん。儂から見れば貴様等など神や魔王(おや)を失った挙げ句、各々が勝手にし出した悪ガキの集団でしかないわい。全く、絶滅しかけておいて、仲直りするまで何万年かけとるのやら」

 

 相変わらず口が減らねえな、このクソジジィ! 俺がジジィを睨み付けていると、

 

「お久し振りです、【北欧神話】の主神オーディン殿」

 

 サーゼクスが席を立って、空いてる席へ着席を促す。

 

「サーゼクスか。招待に応じて来てやったぞい。何でもお主の妹とセラフォルーの妹が戦うそうじゃの? 流石は悪魔、タチが悪いのぉ?」

 

 着席しつつ、クソジジィが嫌味を漏らすも、

 

「まぁ観ていて下さい。悪魔の未来は明るいと彼女等が証明してくれるでしょう」

 

 サーゼクスは笑って応える。その様子にクソジジィの目に興味が浮かんだのを俺ははっきりと見た。

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ決戦の日がやって来た。

 一輝()はグレモリー夫妻とミリキャス、アザゼル先生と共に転移用魔方陣で皆が転移するのを見送ると、要人専用の観戦会場へ転移した。

 そこには三大勢力だけではなく、他勢力のVIPも招待されている。彼等の視線に居心地の悪さを感じる。

 

「皆様こちらへ」

 

 グレイフィアさんに案内されて席に着く。回りは偉いさんばかりで胃が痛くなりそうだ。これからはこういうのにも馴れなくちゃな・・・・

 そんな事を考えながらも俺は前方の巨大スクリーンに注目する。

 リアス達が転移したのはいくつものイスやテーブルが置かれた場所──どこか見覚えがあると思ったら、駒王学園の近くにある巨大デパートの中だった。ここがゲームの舞台か!?

 

『お待たせ致しました皆様、これよりグレモリー家とシトリー家のレーティングゲームを開始致します。私はこの度審判(アービター)役を仰せつかりましたルシファー眷属が女王(クイーン)、グレイフィア・ルキフグスでございます。

早速でございますが本ゲームのルールを説明させて頂きます───』

 

 グレイフィアさんが審判(アービター)として挨拶した後、ルールの説明をする。

 簡単に説明すると、今回のバトルフィールドは駒王学園近くのデパートでの屋内遭遇戦。シトリーは一階西側、グレモリーは二階東側に本陣を置いて戦う。ルールとして今から三十分間作戦タイムを設ける事、『フェニックスの涙』を一チームひとつずつ支給する事、そして出来るだけデパートを破壊しない事が挙げられる。

 このルールはグレモリー眷属(うち)にはかなり不利だ。なんせうちはイッセーを筆頭にパワーバカが多い。このデパートを破壊し尽くすならともかく、パワーを抑えての戦いは皆経験ないんじゃなかろうか? こうなると頼みの綱は祐美と黒歌か・・・・頼むぞ皆!

 

 

 

 

 

 

 作戦タイムの三十分が過ぎてグレイフィアさんのアナウンスが流れる。

 

『開始時間となりました。これよりゲームを開始致します。尚、このゲームは制限時間三時間の短期決戦(ブリッツ)形式となります。───それでは、ゲームスタートです』

 

 ついにゲームが始まった。部長が立ち上がり、イッセー()達に指示を飛ばす。

 

「作戦はさっき説明した通りよ。イッセーと白音は店内から、祐美とゼノヴィアは立体駐車場から二手に別れて進行。黒歌は術を使っての店内の監視と報告、場合によっては遊撃に出て貰うわ。進行具合によっては私と朱乃、アーシアが店内側のルートで進行します。──何か質問は?」

 

 誰も何も言わない。自分が何をすべきか皆分かってるんだ。そんな俺達を見て、部長は満足そうに頷く。

 

「よろしい──皆、冥界中の人達が、そして何より一輝が観ているわ」

 

 一輝先輩の名前を出され、皆の顔が引き締まる。

 

「今回は一緒に戦えないけど、一輝の心は私達と共にあるわ。行きなさい、私の可愛い眷属(あなた)達! 必ずこの手に勝利を掴むわよ!」 

 

「「「「はいっ!!!」」」」

 

 流石部長、全員に気合が入った! そうだ、先輩と約束したんだ! このゲーム、絶対勝つって!!

 

「行くわよゼノヴィア!」

 

「おおっ!!」

 

 騎士(ナイト)コンビがそのスピードを生かして先行する。こっちも負けていられるか!

 

「イッセー先輩、私達も」

 

「おおっ! 行くぜ!!」

 

 白音ちゃんと共に俺も駆け出した。

 

 

 

 

 白音()とイッセー先輩は周囲を警戒しながら進む。私は猫耳猫尻尾を出した猫又モードで索敵しながら進んでいると、前方に気配があった。

 

「───います。真っ直ぐ向かって来るのが二人」

 

「どの位で遭遇しそうか分かるかい?」

 

「このままのペースで進めば、十分以内に遭遇します。どうしますか?」

 

 私は判断をイッセー先輩に委ねる。

 シトリー眷属の内訳は(キング)一、女王(クイーン)一、戦車(ルーク)一、騎士(ナイト)一、僧侶(ビショップ)二、兵士(ポーン)二の計八名。一輝先輩を除けば人数は同じ。ここで交戦するか、それとも───

 

「進もう。短期決戦なら人数を減らした方が有利だ。蹴散らすぞ」

 

「はい」

 

 やっぱり先輩は戦う方を選んだか。私も同意見、ならばと思った時、離れていた筈の反応をすぐ側で感じた。この反応は──!?

 

「先輩、上!!」

 

 鋭く警告するも敵の方が速かった!?

 

「見付けたぜ兵藤! まずは一撃ぃ!!」

 

「匙か!? ぐうぅっ!!」

 

 鈍い衝撃音を発してイッセー先輩が後方に吹っ飛ぶ。心配なさそうだ。派手に飛ばされたけど【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の上からだし、何よりイッセー先輩は自分で飛んだのだ。

 

 不破圓明流【浮身】。

 

 勿論モドキではあるが、日頃の一輝先輩との模擬戦からイッセー先輩は不破圓明流の防御技を体得しつつあった。

 

「ちっ、あんま効いてねーみてえだな兵藤」

 

 接敵したのは二人の兵士。二年の匙元士郎(さじげんしろう)先輩と同じ一年の仁村留流子(にむらるるこ)さん。どうやら匙先輩は神器(セイクリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーブション・ライン)】から出る黒い蛇をロープ代わりにしてターザンよろしく接近して来たらしい。それも仁村さんを背負って。

 見ると『神器』が前に見た時から変化している。以前は一匹だけだった黒い蛇が今は何匹もいてとぐろを巻いている。正直あまり気持ちのいいものじゃない。しかもその内の一匹が既に【赤龍帝の籠手】に巻き付いている。右腕にもラインが繋がってるけど、こっちは匙先輩の『神器』とは繋がってない。あれは一体・・・・?

 

「まぁ俺も修業したって訳さ。お前に負けないようにな」

 

「ざっけんな! お前にバカデカいドラゴンに一日中追いかけ回される気持ちが分かるか!?」

 

「・・・・はぁ!?」

 

 何だかシリアスな空気が吹き飛んでしまった。イッセー先輩、夏の間タンニーンに追いかけ回されたのがトラウマになってるみたい。大丈夫かな?

 ともあれ、おしゃべりしてる暇はない。とっとと戦闘開始しよう。

 

「───行きます」

 

 取り敢えず匙先輩はイッセー先輩に任せて私は仁村さんを相手にしよう。

 

「──うわぁ! いきなり!?」

 

 私の攻撃を仁村さんはかろうじて回避する。結構素早い。油断出来ない相手だ。

 それからも私の拳打を仁村さんはかわし続ける。確かに素早いんだけど、一度も反撃して来ないのはおかしい。わざと隙を見せても反撃して来ないのを見て、私は彼女の目的が時間稼ぎだと確信した。

 

(ならば───!)

 

 私は全身に白いオーラを漲らせ、闘気による身体強化を施し襲いかかる。

 

「! くっ、速い!?」

 

 私の格闘能力は一輝先輩との訓練により、以前とは比較にならない程上がっている。

 堪らず反撃する仁村さんの攻撃をかわして、懐に潜り込む。

 

「───フッ!」

 

 オーラを纏った私の拳がボディに命中し、仁村さんはその場に蹲る。

 

「気を纏った拳を打ち込みました。──貴女はもう動けません」

 

 仙術によって気を纏った私の拳は、身体の外側よりも内部を破壊する。仁村さんは体内の気脈を断たれ、もう魔力を練る事も身体を動かす事も出来ない筈だ。

 

「・・・・匙先輩、ごめんなさい」

 

 仁村さんの身体が光を発して消えて行く。ダメージ過多と判断され、リタイヤしたんだ。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士(ポーン)、一名リタイヤ』 

 

 グレイフィアさんのアナウンスが流れる。

 

「イッセー先輩!?」

 

 私が振り返ると、そこには至近距離で殴り合うイッセー先輩と匙先輩がいた。ラインで繋がれているから、まるでチェーンデスマッチみたいだ。【倍加】の力を使ってないようだけど、どうしてだろう?

 

「加勢します、先輩」

 

「・・・・待った白音ちゃん。匙とはサシでやらせてくれ」

 

 先輩の頼みに私は難色を示す。既にかなり時間稼ぎをされてる。ここは二人掛かりで一気に倒すべきだ。

 

「頼むよ。あいつがその気なら白音ちゃんにもラインを繋いでいくらでも妨害出来た。でもあいつはそれをしなかった。何故だと思う?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・悪いな塔城白音ちゃん。俺はタイマンで兵藤に、赤龍帝に勝ちたいんだ。一兵士(ポーン)である俺がかの有名な赤龍帝を倒したとなれば、会長の夢である学校設立にも信憑性が増す。冥界全土に放送されている今がチャンスなんだ! 俺の夢の為、俺は兵藤を、赤龍帝を倒す!!」

 

「って訳だ。命賭けて挑んで来るダチから逃げたら、俺はもう部長にも、一輝先輩にも顔向け出来ねえ。だから頼む!」

 

 駄目だ。これはもう止められない。ここで止めたら一生恨まれそうだ。私は拳を降ろして後ろに下がった。

 

「・・・・ありがとう。行くぜ匙!!」

 

「おお! 来い兵藤ぉっ!!」

 

 再び至近距離で殴り合う二人。鈍い打撃音が響く中、二人は必死に、けどどこか楽しそうに拳を交わしていた。

 

(男ってバカだな・・・・)

 

 二人共身体はもうボロボロだ。どちらが勝ってもこれ以上ゲームに参戦出来ないだろう。決着の時は近い。

 

「お前も、不破先輩もスゲエよ・・・・『ガイバー』『赤龍帝』、実績を上げて名前も上げて・・・・先輩なんてもう上級悪魔だ。パーティの前に三人で話した夢をあっという間に叶えちまった。本当にスゲエよ・・・・でも俺には何も無い。同時期に悪魔に、兵士(ポーン)になったっていうのに、俺だけ何も無いんだ・・・・俺にあるのは夢だけ。だからその夢の為に、お前をここで倒す! それが出来れば俺には夢を叶える力があるって自信を持てる! だから兵藤、俺は今こそ、お前を倒す!!」

 

 匙先輩の血を吐くような言葉。私にはそれが自分への“誓約”のように思えた。

 

「おおおおおーーーーーっ!!」

 

 匙先輩が手元に魔力を集中させ、魔力弾を作り出す。大きい。あれではこのフロア一帯がを崩壊してしまう。そう思っていたら魔力弾は徐々に圧縮され、やがてソフトボール大に収まった。

 

「・・・・これで周囲に影響を及ぼさず、お前だけを破壊出来る。これで最後だ、兵藤ぉっ!!」

 

 匙先輩の渾身の一撃が撃ち出される。イッセー先輩は避けようともしない。よく見ればラインが足元にも繋がってる。動けないんだ!

 

「イッセー先輩!!」

 

 声を上げた時はもう遅かった。

 

 

 ズドオオォォォンッ!!

 

 

 匙先輩の一撃は確実にイッセー先輩に命中した。着弾の衝撃と共に黒煙が舞い上がり、視界を閉ざす。

 先輩は無事だろうか・・・・そう思った時、黒煙を切り裂いてイッセー先輩が現れた。

 

「サジィィィッッ!!」

 

「グハァッ!?・・・・・・兵藤、その姿は・・・・?」

 

 イッセー先輩の姿は左腕と右腕の一部、それと胴体が赤い鎧に覆われている。鎧と化した右拳が匙先輩のボディを貫いていた。

 

「・・・・悪いな匙。確かに俺は今回の修業で『禁手(バランス・ブレイカー)』に至れなかった。でもな、修業の成果で短時間なら部分的に鎧化出来るようになったんだよ」

 

「そういう事かよ・・・・ちくしょう・・・・・・」

 

 匙先輩の身体が光を発して消えて行く。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士(ポーン)、一名リタイヤ』

 

「匙・・・・お互いもっと強くなったら、またやろうぜ・・・・」

 

 イッセー先輩の呟きが、静かなフロアに響いていた。  

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

シトリー戦の前半戦が終わりました。
原作と違いうちのイッセーは禁手に至ってませんが、擬似的に禁手を経験した事もあるので、部分的に鎧化出来るようになってます。

次回はシトリー戦の後半戦をお送りします。



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第24話 決着!シトリーVSグレモリー



感想並びに誤字報告ありがとうございます。
今回はシトリーとのゲームの後半戦をお送りします。
それでは第24話をご覧下さい。


 

 

 ギイィィィンッ!!

 

 白刃が交わる鋭い金属音が駐車場に響く。

 祐美()とゼノヴィアもシトリー眷属との戦闘に突入していた。

 私の相手はシトリーの『女王(クイーン)森羅椿姫(しんらつばき)副会長。手にした長刀を縦横無尽に操り、付け入る隙をみせない。

 ゼノヴィアは『騎士(ナイト)』の巡巴(めぐりともえ)さんと戦っている。巡さんはテクニックタイプの騎士で、パワータイプのゼノヴィアは相性が悪い。日本刀を繰り出し、巧くデュランダルをいなしている。

 そしてもう一人、『戦車(ルーク)』の由良翼紗(ゆらつばさ)さんがジッと戦況を見つめている。恐らく私かゼノヴィアのどちらかが有利、あるいは不利になったら加勢するつもりなのだろう。先程シトリーの兵士が一人リタイヤしたとアナウンスがあった。それから振るう刃が苛烈になった気がする。

 ゼノヴィアのデュランダルは勿論、私の聖魔剣も悪魔に対する特効がある。一太刀浴びせれば一気に優位に立てる筈。そう考えていると巡さんがゼノヴィアの一撃を受けて吹き飛ばされた。デュランダルの強烈な聖のオーラに消耗したらしい。ゼノヴィアがチャンスとばかりにデュランダルを振りかざす。だが、二人の間に由良さんが割り込んだ。

 

反転(リバース)!!」

 

 由良さんの放った波動を浴びた途端、デュランダルから聖なるオーラが消えた。由良さんはデュランダルを白刃取りするとゼノヴィアを蹴り飛ばした。

 あれは何? 術式? 神器? 反転というからにはデュランダルの聖なるオーラを魔のオーラに変えて無効化したという事?

 いずれにしてもゼノヴィアとは相性が悪い。ここは───

 

「ゼノヴィア、スイッチ!」

 

 私は森羅副会長を弾き飛ばすと、由良さんへと駆け出す。ゼノヴィアも起き上がると副会長に襲いかかった。

 これでいい。森羅副会長と剣を合わせたけど彼女は防御が固い。私ではパワー不足だけど、ゼノヴィアのパワーなら突破出来る。

 その考えが当たったのか、ゼノヴィアの猛攻に副会長は長刀を取り落とし、壁際まで追い詰められた。

  

「貰ったぞ!シトリーの女王!!」

 

 ゼノヴィアがトドメの一撃を振り降ろしたその時、森羅副会長の前に巨大な鏡が出現した。

 ゼノヴィアは勢いを止められず、そのまま鏡を破壊した。

 

 ガシャァァァンッ!!

 

 鏡の割れた音が響く。そして割れた鏡から凄まじい衝撃が発生し、そのままゼノヴィアに襲いかかった。

 

「────っ!!?」

 

 ゼノヴィアは衝撃をまともに浴びて、鮮血を撒き散らしながら倒れた。あれは一体!?

 

神器(セイクリッド・ギア)追憶の鏡(ミラー・アリス)】。この鏡は破壊された衝撃を倍にして相手に返します。私はカウンター使いよ。パワータイプのゼノヴィアさんを私に当てたのは失策だったわね」

 

 やられた! 先に由良さんの『反転』を私に見せて、相手を替えるよう誘われたんだ!

 私は倒れたゼノヴィアに駆け寄り、悔しさのあまりきつく唇を噛む。

 

「ごめんなさいゼノヴィア。私のせいで・・・・」

 

 手玉に取られたのも悔しいけど、何より自分の判断ミスでゼノヴィアを負傷させたのが悔しかった。ゼノヴィアの黒い戦闘服はあちこちが破れ、露出した肌が鮮血に塗れている。この傷ではもう戦えまい。転送され、リタイヤするのを待つだけだ。

 

「謝るな・・・・カウンターを喰らったのは私のミスだ。立ち塞がる物を破壊しようとする・・・・フフ、これだから一輝センパイから“脳筋”なんて言われるんだろうな・・・・」

 

「バカね・・・・分かっているなら直しなさいよ」

 

「善処しよう・・・・祐美、下を向くな。前を向いて戦え。お前が勝利する姿を私に見せてくれ」

 

 私はゼノヴィアの手を握り締める。

 

「ええ。見ていてゼノヴィア」

 

 私は立ち上がって振り返る。

 

「攻撃して来ないなんて随分と優しいんですね」

 

 シトリー眷属の三人が10m程離れた所でこちらを見つめている。

 

「野暮な事はしたくないの。それで? 覚悟は出来たかしら?」

 

 代表して森羅副会長が答える。

 

「出来ましたよ───貴女達三人を倒してゼノヴィアの仇を討つ覚悟が!」

 

「愚かな・・・・三対一で勝てると思ってるの!? 」

 

 副会長の声と共に三人が襲い来る。私は聖魔剣を消して新たな力を紡ぐ。

 

「【魔剣創造(ソード・バース)】! 私の想いに応え、カタチを変えて顕現なさい!!」

 

 私の想いに応えて【魔剣創造】が今までとは違うカタチで発動する。

 

「あ、あれは───!?」

 

 私の背後にいくつもの魔剣が出現し、由良さん達目掛けて射出される。

 

「くっ! 何だこれ!? こんな能力聞いてないぞ!?」

 

「駄目! 反転を使う隙がないよぅ!?」

 

 副会長は長刀で、由良さんは拳で、巡さんは日本刀で飛来する魔剣を迎え撃つけど、数が多くて対処仕切れず、徐々に傷付いて行く。そして遂に魔剣が由良さんと巡さんの身体を貫いた──!

 

「「きゃああぁぁぁっっ!!」」

 

『ソーナ・シトリー様の戦車(ルーク)一名、騎士(ナイト)一名リタイヤ』

 

 ダメージを負った由良さんと巡さんが光を発して消えて行った。私の魔力も限界だ。私が一旦【魔剣創造】を解除すると、森羅副会長が力尽きたように膝を付いた。

 

「はあ、はあ、い、今のは一体・・・・?」

 

「今回の修業で身に付けた【魔剣創造】の新形態、【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】です」

 

 【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】。このアイデアをくれたのは一輝先輩だった。

 

 

『思えば、聖魔剣を手に入れてから他の魔剣を使わなくなったよな。状況に応じて多種多様な魔剣を創り出す器用さがお前の持ち味の筈だ──』

 

 

 かつて朝練の最中に一輝先輩からそう指摘された事がある。

 それ以来私は【魔剣創造(ソード・バース)】の『禁手(バランス・ブレイカー)』以外の使い方を模索していた。そんなある日、先輩と一緒にとあるアニメを観た。

 そのキャラクターの技をヒントに編み出したのが【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】だ。

 私の【魔剣創造(ソード・バース)】の能力は魔剣を創り出す事。手元に創り出すのが一番簡単だけど、これまでだって地面からいくつもの魔剣を創り出して敵を攻撃する事は出来た。ならば自分の指定した場所に魔剣を創り出し、射出する事も出来るのではと考え、修業の末にようやく会得したのだ。

 今の私が一度に創り出せる魔剣は八本。まだ本数も少なくコントロールも甘いけど、私の魔力が続く限り攻撃し続けられる。何より近接攻撃しか出来なかった私が遠距離攻撃出来るようになったのは大きい。

 

 

「──やられたわ。悔しいけど退かせて貰うわ。機会があったら再戦しましょう・・・・」

 

 捨て台詞を吐いて森羅副会長が逃走した。残念だけど仕方がない。今は───

 

「ゼノヴィア!?」

 

 私が振り返った時、ゼノヴィアは光の中に消える所だった。

 

「────」

 

 彼女は私に向かって強く頷くと、笑顔で光の中に消えていった。

 

『リアス・グレモリー様の騎士(ナイト)、一名リタイヤ』

 

 私しかいなくなった駐車場にアナウンスが流れる。

 

「・・・・また負けられない理由が増えちゃったな」

 

 私は拳を握り締め、侵攻を再開した。

 

 

 

 

 

 匙を倒したイッセー()と白音ちゃんは侵攻を再開した。

 それは良いんだが不安材料がひとつ。俺の右腕に繋がったラインが消えないのだ。ラインを作った匙は倒したというのに黒いラインは消えず、ショッピングモールの奥へと繋がっている。何だかスゲエ不気味だ。

 白音ちゃんのパワーでも千切れないので、祐美かゼノヴィアと合流して聖剣で切って貰うしかないか、と結論付けた時、うちの騎士一名とシトリーの騎士と戦車がリタイヤしたというアナウンスが流れた。敵二名の撃破は喜ばしいが、うちからも被害が出てしまった。どっちだろう?

 

「恐らくゼノヴィア先輩でしょうね・・・・」

 

 うん、俺もそう思う。祐美はライザーとのゲームでも最後まで生き残ってたし、最近のあいつはメキメキ強くなっている。正直祐美がやられるのが想像出来ない。

 だとすれば、ゼノヴィアの奴悔しかったろうな。初めてのゲームだってあんなに張り切ってたのに・・・・

 

『オフェンスの皆、聞こえる? これからの作戦を指示するわ』

 

 そんな事を考えていると部長からの通信が届いた。ゲームはいよいよ終盤に入ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 ショッピングモールの中心部に広場のように開けた場所がある。そこに結界に覆われたソーナ会長が静かに佇んでいた。

 結界を張ってるのは二人の『僧侶(ビショップ)』、二年の花戒桃(はなかいもも)先輩と草下憐耶(くさかれや)先輩。そしてイッセー先輩に繋がったラインは花戒先輩が持つバッグから伸びていた。

 

「ごきげんよう、兵藤一誠君、塔城白音さん。・・・・成る程、匙と留流子を倒したのは貴方達ですか」

 

 ソーナ会長の冷徹な眼差しが白音()達を射抜く。その会長の隣にどこから来たのか、森羅椿姫副会長が舞い降りて長刀を構えた。

 部長からの通信では祐美先輩と戦い、深手を負った筈なのにそんな様子は見当たらない。という事は会長は彼女に『フェニックスの涙』を使ったのか。

 

「珍しいわねソーナ。慎重な貴女が前線に出て来るなんて」

 

 私達の後ろから部長と朱乃さん、アーシア先輩と姉様が姿を見せる。更に反対側から祐美先輩も現れ、会長達を完全に包囲した。

 

「貴女は相変わらず自分から前に出て来るのね、リアス」

 

「どのみちこのゲームも終盤。それに『(キング)』自ら動かなければ下僕は付いて来ないわ」

 

「フフ、その持論も変わらないのね・・・・いいでしょう、決着を付けましょう」

 

 いざ決戦となったその時、イッセー先輩が立ちくらみを起こし、その場に膝を着いた。

 慌ててアーシア先輩が治療するけど効果がない。私はその時、イッセー先輩の生命力が減っている事に気付いた。

 

「無駄よリアス。確かに赤龍帝の力は驚異だわ。でも、何より厄介なのは兵藤君自身。ライザー戦で見せた決して諦めない“根性”や白龍皇戦で見せた“爆発力”は、例え敗れたとしても貴女達を奮い立たせる。だから彼には何も出来ないまま退場して貰います。その為の布石を匙は打ってくれたわ」

 

 花戒先輩がバッグの中からラインの繋がった──あれは血液パック?を取り出した。

 やられた! あのラインはイッセー先輩の血液を吸い取っていたんだ! 血液の半分も失えば致死量だ。そうなれば戦闘不能とみなされ強制的に転送されてしまう。あの時間稼ぎはこの為だったんだ!

 祐美先輩が短剣を創り出し、ラインを切断するも遅かった。ラインから噴き出した血液が辺りを赤く染める。

 

「ち、ちくしょう・・・・」

 

 イッセー先輩はそのまま血の海に倒れ、光を発して消えて行った。

 

『リアス・グレモリー様の兵士(ポーン)、一名リタイヤ』

 

 無情なアナウンスが流れる。

 完全にしてやられた。私がイッセー先輩の生命力が減ってる事にもっと早く気付いていれば! 姉様ならきっと気付いただろう。自分の未熟さに怒りを覚える。

 

「・・・・やってくれたわねソーナ!」

 

 部長は怒り込めて会長を睨むも、会長は変わらぬ冷徹な眼差しを部長に向け、冷笑を浮かべた。

 

「ふふ、相変わらずねリアス。眷属に対する情愛が深いのは貴女の長所でもあるけど、レーティングゲームでは短所になるわよ。『(キング)』は常に冷静でいないと」

 

「・・・・そうね。でも追い詰められた時、貴女は冷静でいられるのかしら?」

 

「? 何ですって・・・・!!?」

 

 その時、常に冷静だった会長の顔に驚愕が浮かんだ。

 

「馬鹿な・・・・何故貴女がここにいるの、朱乃(・・)!?」

 

 会長の台詞にこの場にいるシトリー眷属の顔色が変わる。それと同時にこの場にいる部長と朱乃さん、姉様の姿がスゥっと消えた。

 

「幻術・・・・!?」

 

『そうよ。そこにいた私と朱乃、黒歌は幻術で作った幻よ。黒歌の術は大したものでしょう?』

 

 アーシア先輩の通信機から流れる部長の声に、シトリー眷属は悔しそうに顔を歪めた。 

 

 

 

 

 

 朱乃の通信機からリアスの声が流れる。

 ソーナ()はこの時、自分の作戦が破綻した事を悟った。

 

「どうして分かったの? 広場にいる私は虚像で、本体はここ屋上にいるって」

 

「全てはグレモリー眷属(私達)の『僧侶(ビショップ)』、黒歌さんのお陰ですわ」 

 

 朱乃はチラリと後ろに視線を向ける。そこにはいつの間に現れたのか、猫耳を生やした和服美女が退屈そうに欠伸していた。そう、彼女が・・・・

 

「黒歌さんは仙術の達人。ゲーム開始当初から、彼女は斥候として貴女達の動向を探っていたのです。貴女が単身屋上に向かったと聞いたリアスは、私達を向かわせてこう命じました──ソーナ、貴女を倒せ、と・・・・」

 

「ではリアスは今・・・・」

 

「ええ。彼女は本陣を一歩も動いてませんわ」

 

 ───そうか。今回のゲームでの最大の失敗はリアスを見くびった事か。

 彼女は情愛深いと云われるグレモリーの直系。私がここにいる事を知れば、眷属が傷付くのを嫌ってあの娘自身が出向いて来る、私がリアスに勝つには『(キング)』同士の直接対決しか手はないと思っていた。少しでも戦力を消耗させようと広場に誘き寄せたのに全てひっくり返されてしまった。

 

「──という訳です。ではよろしくて?」

 

 朱乃の身体から黄金のオーラが迸る。以前とは桁違いのオーラ量、彼女もまた強くなってる。

 私は朱乃に、そして後に控える黒歌に勝てるだろうか───

 

 

 

 

「馬鹿な・・・・何故貴女がここにいるの、朱乃!?」  

  

 突然会長が叫んだと思ったら、その姿が映りの悪くなったテレビのようにブレて消えてしまった。

 

「会長は今、朱乃さん相手に戦い始めた頃でしょう。貴女達の策は破綻しました。ここまでです」

 

 祐美()は降伏勧告のつもりで告げた。だけど、

 

「まだよ! 急いで貴女達を倒して救援に行けば、まだ間に合うかも知れない! 私達は決して諦めないわ!!」

 

 森羅副会長の声に二人の僧侶──花戒さんと草下さんも意を決したように身構える。そうよね。同じ立場なら私もそうするわ。

 貴女達を会長の救援に行かせる訳にはいかない。必ずここで倒す!

 

「アーシアさん、下がって」

 

「はい。気を付けて下さいね」

 

 アーシアさんを後ろに下げて、聖魔剣を創り出そうとしたら、白音ちゃんがもう副会長に戦いを挑んでいた。彼女とは決着を着けたかったけど仕方がないか。

 

「私の相手は貴女達か・・・・」

 

 花戒桃さんと草下憐耶さん。事前情報では二人はディフェンスやサポート向きで攻撃力は高くないらしい。やはり気を付けるのはあの『反転』の術式か。ならば反転する隙を与えず、一気に仕止める!

 

「【魔剣創造(ソード・バース)】!!」

 

 私は虚空に魔剣を創り出して射出する。その数十二。魔剣は二人を囲むように床に突き刺さり、魔剣の円陣を形作る。そしてひとつの魔剣から雷が迸ると、連鎖するように一本、また一本と雷が疾り、やがて十二本全てに雷が疾り、円陣内は雷の檻と化した。

 

「「きゃああああーーーーーっっ!!」」

 

 これが新たに編み出した【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】の派生技、【雷の魔剣の檻(ソード・バース・サンダージェイル)】。

 【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】はただの魔剣を射出したものだけど、【雷の魔剣の檻(ソード・バース・サンダージェイル)】は属性付加した雷の魔剣で檻を作り、対象を焼き尽くすものだ。一本一本の威力は弱いけど、十二本束ねれば朱乃さんの雷撃にも匹敵する威力を発揮する。

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶(ビショップ)、二名リタイヤ』

 

 激しい雷の中、二人の姿は消えて行った。

 

 

 

 

 地を這うような低い姿勢からボディへ一撃。だけど副会長の長刀に邪魔されてしまう。この人巧い! ただでさえリーチに差があるのに防御が固くて拳を打ち込めない。ならば!

 私は掬い上げるように迫る長刀の柄に足を掛けて、振り上げる勢いに乗って自分から飛んで距離を取った。

 

「───ふっ!」

 

 私は気を込めた拳を床に打ち込む。そこから衝撃波が疾り、副会長を襲った。

 

「くあぁっ!!」

 

 これは仙術の一種で、闘気を遠くへ飛ばす“遠当て”と呼ばれる技のひとつ。一撃で倒せる程の威力はないけど、隙を作るにはこれで充分!

 

 その時、激しい雷が迸り、二人の僧侶が撃破されたとアナウンスが流れる。祐美先輩がやった。ならば!

 私は闘気による身体強化を施し、白いオーラを纏う。一輝先輩! 教えて貰った技、今こそ使わせて貰います!!

 

 一瞬で距離を詰めた私は、副会長のボディに軽く拳を添えた。

 

「───破っ!!」

 

 拳だけのスピードで副会長の身体を撃ち抜く。その衝撃に吹き飛ぶ副会長。彼女の腹部には拳大に陥没した跡があった。

 

 不破圓明流【虎砲】。

 

 闘気を使った戦闘を身に付けた私に、ぴったりの技だと一輝先輩が教えてくれた技だ。未だモドキではあるが、先輩からは及第点を貰っていた。

 

「くっ、ごめんソーナ・・・・・・」

 

『ソーナ・シトリー様の女王(クイーン)、リタイヤ』

 

 森羅副会長が光の中に消えて行く。

 

 広場での戦いは終わった。後は───

 

「後は頼みます、姉様、朱乃先輩」

 

 

 

 

 

 

 大量の水が渦巻き、雷鳴が轟く。

 二人共大した威力だにゃん。同じウイザードタイプでも朱乃ちんはパワー寄り、ソーナちんはテクニック寄り。サポート寄りの黒歌()には無い威力の魔法を繰り出していて、少し羨ましいにゃん。

 フェニックス家が炎を操るようにシトリー家は水を操る。彼女が屋上(ここ)に陣取った理由は屋上には巨大な貯水タンクがあるからなんだろう。今も貯水タンクから取り出した水を操り、朱乃ちんの雷撃を水の防壁で防いでるにゃ。

 これには朱乃ちんも驚いてる。確かに水は電気を通す筈だし、なんで感電しないのかにゃ?

 

「無駄ですよ朱乃。私の操る水は不純物を除去した“純水”です。電気を通さない“純水”に貴女の雷撃は通用しません」

 

 大したものにゃ。知識といい純水を精製する速さや正確さといい、ソーナちんの技術(テクニック)は私以上かもしれないにゃん。

 でも得意の雷撃が通じないとなると、朱乃ちんに勝ち目は無いかにゃ?

 

「朱乃ち~ん、交替する?」

 

 攻めあぐねる朱乃ちんに声をかける。まぁ答えは分かってるけど。

 

「無用です。貴女はのんびり見物していて下さい」

 

 だろうにゃ。自分の得意技が効かない位で退くようじゃ、眷属の女王(クイーン)は務まらないにゃん。なら見せて貰うにゃん、『雷の巫女』の真価を。

 

 

 

 

 

 黒歌さんに煽られ、思わず答えたけど、私の心は暗かった。

 ソーナの純水の防壁を打ち破る力が今の私にはある。けど私は今回の修業で身に付けたこの力を出来れば使いたくなかった。そんな時、

 

『ソーナ・シトリー様の僧侶(ビショップ)、二名リタイヤ』

 

『ソーナ・シトリー様の女王(クイーン)、リタイヤ』

 

 立て続けにアナウンスが流れた。皆がやってくれたんだ。皆が立派に役目を果たしてくれたのなら、女王(クイーン)の私もやらなくては!

 私が決意を固めようとしたその時、

 

「朱乃ち~ん? ここでソーナちんを倒したら、今日のMVPは決まりにゃ。そうしたら一輝が一杯褒めてくれるかも知れないにゃ~ん?」

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 ドンッという音がして空間が震える。

 

「なっ・・・・・・!?」

 

 驚きのあまり声を漏らしたソーナ()の前に、全身から黄金のオーラを立ち昇らせる朱乃がいた。

 朱乃のオーラは空に届く程強大で、溢れ出る魔力が雷に変換され、バチバチと放電を繰り返していた。

 その強大さに私は唾を飲み込む。当の朱乃は何やらブツブツと呟いていた。

 

──うふふふふ。一輝が褒めてくれる。ううん、きっと褒めるだけじゃ終わらないわ。優しく頭を撫でて、抱きしめてくれて、そのままキスされたりして、二人共盛り上がっちゃったらもう最後までイクしかないわ。始めは優しくしてくれるんだけど、一輝ったら段々夢中になってガンガン腰を振ってくるわ。一輝のおっきなモノで乱暴に突かれたら私何回イッちゃうのかしら?でも一輝は一回位じゃ治まらないから、何度も何度もイかされて、最後には足腰立たない位無茶苦茶にされたら私、私は────っあ❤」

 

 いつしか朱乃は身体を抱きしめ、クネクネと悶え始める。頬を染め、瞳を潤ませた朱乃は同性の私から見ても色っぽかった。しかもあの娘、段々声が大きくなってるから最後の方は丸聞こえだわ!?

 

「朱乃!? あ、貴女何ハレンチな事を口走ってるのよ!!」

 

 私が顔を真っ赤にして注意するも、朱乃は全く聞いてなかった。

 

「うふふふふ。待ってて一輝♪ まな板会長をサクっと倒して、貴方の朱乃が参りますわ~❤」

 

 

 ブチッ!!

 

 

 朱乃の一言で私は切れた。

 

「誰がまな板よ! 少し位なら段差はあるもん!!」

 

「あら失礼。まな板じゃなくって洗濯板でしたわね。まぁ私には違いが全く分かりませんけど?」

 

「ふん! 朱乃みたいに無駄に大きかったら、将来絶対垂れるに決まってるんだからぁ!!」

 

「誰が垂れるかぁっ!!」

 

 私は青の、朱乃は黄金のオーラを漲らせて再び激突する。

 朱乃の後ろで黒歌がお腹を抱えて笑ってる。あの性悪猫め! あいつは後回しだ。取り敢えず朱乃を先に殺る! 

 私は大量の水を操り、水の(ドラゴン)を作り出す。

 

「喰らいなさい、朱乃───!!」

 

 私の命令に水の龍が襲いかかる。けど朱乃は両手に雷球を作り出すと一気に放出した。

 

 ドガガガガアアァァァッッンン!!

 

 雷鳴が轟き、朱乃の雷撃が水の龍を貫く。その衝撃が伝わり、私は苦悶の声を上げた。

 馬鹿な! 純水で作った龍に衝撃が伝わるなんて、これは今までの雷撃じゃない!?

 

「無駄よソーナ。これはただの雷撃じゃなく光を乗せた【雷光】。純水では防げないわ」

 

 朱乃が再び【雷光】を放つ。

 眼前を染める白い光の中、私は意識を失った。

 

 

『ソーナ・シトリー様のリタイヤを確認。よってこのゲームはリアス・グレモリー様の勝利です!』

 

 

 グレイフィアさんのアナウンスがゲームの終了を告げた。

 

 

 

 

 

「ホッホッホ。・・・・成る程のう、これが冥界の未来か。サーゼクス、お主が自慢気に語るのも分かるわい」

 

「恐縮です、オーディン殿」

 

「シトリーも赤龍帝を倒した戦略は見事じゃった。あの『兵士(ポーン)』の小僧は大事に育てるが良いぞ、セラフォルー」

 

「勿論よ、オジ様」

 

「何より今回グレモリーで評価すべきなのは猫耳の姉ちゃんの働きと、お主の妹が最後まで動かなかった事じゃな」

 

「リアスと黒歌ですか?・・・・新しい能力を発現した祐美君や白音君ではなく?」

 

「其奴らもいいが今回のゲーム、勝利の決め手となったのは猫耳の姉ちゃんが的確にシトリーの動向を掴んでいたお陰じゃ。それがなければ広場での戦いでシトリーは遅滞戦術を仕掛け、グレモリーは無駄に消耗していたじゃろう。あの姉ちゃんはあの中では頭ひとつ抜きん出た実力(ちから)があるぞい」

 

「確かに・・・・」

 

「リアスも情報を正確に分析し、最後まで動かず朱乃でソーナを獲った。これは今までのリアスには無い、『(キング)』としての成長の賜物だ。評価すべきだと俺も思うぜ」

 

「烏の親分の言う通りじゃな。・・・・しかしこのチームにあ奴(・・)が加わったら・・・・レーティングゲームは益々面白くなるかもしれんのう」

 

 ジジィはアザゼル()等のいる席から少し離れた席でミリキャスと話している一輝を見ていた。

 確かに成長著しいあいつらに一輝が加われば、不動のレーティングゲーム上位者にも一泡吹かせられるかもな。

 全く、鍛え甲斐のある連中だ。あいつらのお陰で毎日が楽しくて仕方がないぜ。

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

祐美と白音の新技のモデルは某英雄王の宝具と餓狼伝のパワーウェイブです。本作の祐美と白音は普段から一輝と訓練を積んでるので、原作より強い設定です。

原作ではここでイッセーのパイリンガルが炸裂しますが、筆者があの技が好きじゃないので、本作では無かった事にします。
これでイッセーの変態度は下がりましたが、また少し弱体化してしまいました。

次回はゲームのその後と冥界からの帰還をお送りします。


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第25話 夏の終わり☆☆(祐美、黒歌)



アンケートに大勢協力していただき、ありがとうございます。
アンケートの結果、原作6巻のエピソードに入る前に閑話を3話共書く事になりました。
鋭意執筆中なのでお楽しみに。

今回はシトリーとのゲームの後日談と駒王町への帰還までをお送りします。




 

 

「・・・・・・・知らない天井だ」

 

 一度は言ってみたかったネタ台詞が口から漏れた。

 改めて周りを見ると、どうやらここは病室のようだ。イッセー()はベッドに寝かされ、輸血を施されていた。周りはカーテンに仕切られているが、気配がするので誰かが隣に寝かされているみたいだ。

 俺は徐々に何があったのかを思い出していた。

 

「そうか・・・・負けちまったんだな、俺・・・・」

 

 最後の方は失血で意識が朦朧としてたから良く覚えてないが、結局俺は何も出来ないままやられちまったのか・・・・ 

 

「ちくしょう・・・・何が『先輩の抜けた分は俺がカバーする』だ。ちっとも出来てねえじゃねぇか・・・・」

 

 悔しい。折角先輩が強くなったって認めてくれたのに、匙を倒したと思っていたら、あいつの能力と会長の戦術の前に戦いもせずリタイヤするだなんて、これじゃあ先輩に会わせる顔がねぇよ。

 そんな風に悔しがっていると、コンコンとノックの音がした。

 

「イッセー、起きてる?」

 

「部長?」

 

 俺が応えると、カーテンが開いて部長が顔を覗かせた。

 

「具合はどう?」

 

「ちょっとクラクラしますけど大丈夫です。・・・・あの、ゲームはどうなったんですか?」

 

「勝ったわ。うちで獲られたのは貴方とゼノヴィアの二人だけ。シトリーは全滅よ」

 

「そうですか。・・・・すいません部長。俺、何も出来ませんでした」

 

 下手を打った事を部長に謝罪する。

 

「そんな事無いわ。貴方は匙君を倒したじゃない。鎧を一部とは言え具現化したのには皆驚いていたわ」

 

 部長はそんな俺を慰めてくれた。でも、

 

「でも結局は匙の能力でリタイヤさせられました。これじゃあ勝ったなんて口が裂けても言えません!」

 

 そう、俺は匙の能力と会長の戦術にまんまと嵌まって無様にリタイヤした。この体たらくで誰が勝ったと認めてくれるんだ!?

 

「そうね・・・・確かにソーナにはしてやられたわ。けどそれは『(キング)』としての私の落ち度。貴方のせいでは無いわ」

 

 悔しくて憤る俺の頭を優しく撫でて、部長は語りかける。

 

「けど──「納得出来ないというなら・・・・イッセー、強くなりなさい」・・・・部長」

 

 部長の青い瞳が真っ直ぐに俺を射抜いた。

 

「今回のゲーム、私はソーナの戦術に嵌まって、貴方が消えて行くのをただ見ている事しか出来なかった。悔しかったわ。あんな思いはもう沢山よ!

・・・・私は同じ失敗を二度と繰り返さないよう、今よりもっと強くなるわ! だからイッセー、貴方も私と、私達と一緒に強くなりなさい!!」

 

「・・・・・・はいっ!」

 

 部長の台詞に涙が溢れる。そうだ、俺は一人じゃない。部長が、眷属(みんな)がいる!・・・・やろう! 俺はもっと強くなる! もっと鍛えて、もっともっと強くなって、いつか匙やヴァーリだって倒してみせる! そしていつか【史上最強の赤龍帝】になってやる!!

 俺は決意と共に、新たな誓いを胸に刻んだ。

 

 

 

 

 

 扉をノックする。「どうぞ」と返事があったので、一輝()はアーシアを連れて室内に入った。

 

「お疲れ様。ナイスファイトだったな」

 

「そうかしら?・・・・結局予想通り負けてしまったわ」

 

 ベッドで寝ていたソーナが身体を起こして苦笑する。

 

「そんな事無いさ。元々戦力ではグレモリー(うち)が有利だったのに、イッセーとゼノヴィアを()られたんだ。あの『反転』の術式や、イッセーをリタイヤに追い込んだ手並みはVIP席の連中も称賛していたよ」

 

「そう・・・・それで? 不破君達は何をしに来たの?」

 

「君のお見舞いと、許可を貰いに、ね」

 

「許可?」

 

「君の眷属を治療する許可を。うちのアーシアの能力は知ってるだろう? それに森羅さんと仁村さんは白音に“気”を撃たれてるから、仙術じゃないと治療出来ないしな。一応主の許可を貰いたくてね」

 

「そう・・・・分かったわ。治療をお願いします」

 

 ソーナの許可を貰い、アーシアは治療を始める。緑色の優しい光がソーナの身体を包み、傷を癒して行く。僅か一分足らずで治療は完了した。

 

「凄い、こんな僅かな時間で・・・・・・ありがとうアーシアさん。うちの娘達の治療もお願い出来るかしら?」

 

「はい! 任せて下さい!!」

 

 アーシアは元気良く返事すると、ペコリとソーナに一礼して病室を出て行った。

 

「凄いのね彼女・・・・前に見た時より能力が上がってない?」

 

「この夏、あの娘が頑張った成果だよ。・・・・それより大丈夫か?」

 

「? 怪我なら治療して貰ったわよ?」

 

「そっちじゃない。こっちの方だよ」

 

 俺が指で自分の胸を叩くと、ソーナは顔を暗くした。

 

「・・・・・・」

 

「前に言っただろ?『俺は君の眷属でもライバルの若手悪魔でもない。だから愚痴や弱音位、駒王学園の同級生としていつでも聞く』って。今がその時かと思ってね」

 

「・・・・貴方だって今や『ライバルの若手悪魔』の一人じゃない」

 

「あ~~~、そうなるのは当分先の話さ。なんせこっちはなりたてのホヤホヤ、眷属の一人もいないんだぜ?」

 

「──プッ、クスクス・・・・随分虫のいい話のだけど・・・・いいわ、聞いてくれる?」

 

 そう言うとソーナはベッドから下りて俺の前に立つ。そして頭を俺の胸に押し付けた。

 

「・・・・負けちゃった。色々策を弄して、精一杯頑張ったけど、駄目だったわ」

 

「ああ」

 

「色々読み違えたわ。木場さんや塔城さん、朱乃の新しい能力(ちから)に新戦力である黒歌の実力の高さ、何よりリアスの『(キング)』としての成長は私の予想以上だった。・・・・そうよ、シトリーの敗因はこの私。私がもっとリアス達の成長を予測していたら、結果はもう少し違ってた筈よ。ごめんね皆、ごめんね・・・・」

 

 ソーナの零した涙が床を濡らす。その涙を見て俺は決意した。

 

「あのなソーナ。朱乃やイッセーはともかく、祐美や白音については俺がコーチしたんだ」

 

「そうなの?」

 

 ソーナが顔を上げた。俺は彼女の目尻に滲む涙を指でそっと拭った。

 

「ああ。それで提案なんだが、俺達と一緒にトレーニングしないか?」

 

「貴方達とトレーニングを?」

 

 ソーナがキョトンとした顔で呟く。

 

「ああ。俺達のゲームは終わった。ゲームを終えてお互い『もっと強くなりたい』って思ったんじゃないか?」

 

「・・・・そうね」

 

「ならば一緒にトレーニングした方が、お互いいい刺激になるんじゃないか?」

 

 元々匙はイッセーをライバル視していたし、今回のゲームでイッセーも匙を意識するだろう。そもそもリアスがソーナをライバル視してるんだから、競い合う相手が側にいる方が張り合いが出るんじゃないだろうか?

 

「・・・・そうね。私達としてはありがたい話だわ」

 

「まぁ、こっちもリアスに話を通してからになるからな。お互い話し合ってやるとしよう」

 

「うん、分かったわ。・・・・ありがとう不破君。気を使ってくれて」

 

 ソーナの顔にようやく笑顔が戻った。うん、女の子はやっぱり沈んだ顔より笑顔でいる方がずっといい。それに───

 

「・・・・ふぅん。ソーナの素顔って初めて見たな。眼鏡有りもいいけど、無いのも新鮮だなぁ」

 

 そう、さっきまで寝ていたソーナは、いつもの眼鏡を掛けていなかったのだ。お陰で俺は彼女の素顔を独り占めしていた。

 普段は眼鏡のせいでクールな印象のある彼女が、以外(と言っては悪いが)に愛らしい素顔をしている事に気付いた。こうして見ると姉妹だけあってセラ姉さんと良く似ている。

 

「~~~~!!」

 

 眼鏡を掛けてない事に気付いたソーナは、途端に俺に背を向けた。耳まで真っ赤になってるから、恥ずかしがってるのが丸分かりだ。

 そんなソーナを見て、俺の心に沸々と悪戯心が浮かび上がった。

 

「どうして隠すんだ? 折角の可愛い顔、もっと良く見せてくれよ」

 

 ソーナの両肩に手を置いて、耳元にそっと囁く。

 

「んん!・・・・・・そんな・・・・可愛いなんて・・・・」

 

 俺の声に反応して、ビクンと背筋を震わせるソーナ。耳が感じるのか彼女の反応は何とも可愛らしい。

 

「ほぅら、ソーナ。こっちを向いて?」

 

「! ひぃんっ!!」

 

 俺がふぅっと耳に息を吹きかけると、ソーナは短い悲鳴を上げた。調子に乗った俺は彼女に更なる悪戯を仕掛けようとしたその時、

 

 ジーーーーーーッ

 

 と、こっちを見ている視線に気が付いた。

 

「あの・・・・セラ姉さん? 何をしてるんです?」

 

「うん? ソーナちゃんとかずくんの仲が良くって嬉しいなって、つい見ちゃってたの☆」

 

 そこには満面の笑みで俺達を見つめる、セラ姉さんこと魔王セラフォルー・レヴィアタンがいた。

 

「ね、姉さん? いつからそこに・・・・」

 

 ソーナが目を丸くし、ワナワナと震えながら訊ねる。

 

「ん~~、『凄いのね彼女・・・・前に見た時より能力が上がってない?』って辺りからかな?」

 

 あっけらかんとセラ姉さんが答えた。

 

「結構前からじゃない! どうして声をかけないのよ!?」

 

「え~~、だって二人がイチャイチャしてるんだもん。お姉ちゃんとしてはずうっと見ていたくなるもんじゃない?」

 

「ンな事知るかぁ~~~~~っ!!」

 

 気付けば姉妹の追いかけっこが始まっていた。どうしてこうなったと思いながらも、ソーナが元気になったから、まぁ良しとしよう。

 

 

 

 

 

 

 その後、病室を出た一輝()はリアスと合流して、歩きながらゲームの総評を聞いた。

 原作では結構辛辣な評価をされていた俺達だが、そんな事はなく、寧ろ新たな能力(ちから)を多くの者が示した事もあり、かなりの高評価を得た。

 イッセーとゼノヴィアが奪られた事も、寧ろシトリーが上手くやったと思われ、然程マイナスにはならなかった。

 MVPに選ばれたのは祐美。八人中四人を撃破する活躍と『魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)』の印象により選ばれた。やはりあの技(・・・)を参考にしただけあって派手だし目立つ。アザゼルなんかは大はしゃぎしてたしな。

 敢闘賞に選ばれたのは黒歌と匙。黒歌は的確なサポートでチームの勝利に貢献したと評価され、匙はその能力でイッセーをリタイヤに追い込んだのを評価されての授賞だ。

 原作では高評価された匙だったが、今回はそれ程でもなかった。理由はイッセーが原作程活躍していなかった為、イッセー打倒=グレモリー打倒という印象が少なかったのと、その後の皆の活躍がより印象深かったせいだろう。実際俺がいる為にイッセーは原作より弱体化している。現時点で『禁手(バランス・ブレイカー)』に至ってないのが何よりの証拠だ。この先テコ入れの必要があるかもな。

 

「おう、サーゼクスの妹ではないか」

 

 廊下を二人並んで歩いていると、後ろから声をかけられた。VIP席で見掛けた白髪の老神(ろうじん)だ。背後には護衛だろう銀髪の美女を引き連れている。

 

「【北欧神話】の大神オーディン様ですね。お初にお目にかかります。魔王サーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーです」

 

「その眷属、『兵士(ポーン)』の不破一輝です」

 

 俺はリアスに倣って一礼する。そうか、この老神がオーディン・・・・すると後ろの彼女が戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセか。

 

「ふむ・・・・今日のゲーム、中々見応えがあったぞい。これからも励むがええ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 オーディン神のお言葉にリアスが一礼する。だが、

 

「グフフ、しかし大きいのぉ。実に触り心地の良さそうなええ実り具合じゃわい!」

 

「え?」

 

 さっきまでの厳かさが嘘のように、オーディンが好色そうな笑みを浮かべてリアスに手を伸ばす。だが、その手はリアスに触れる前に俺が掴んだ。

 

「ひょえ!?」

 

「悪戯が過ぎますよオーディン様。我が主に気安く触れようとするのはお控え下さい」

 

 警告を込めて俺はオーディンを睨む。だがオーディンは涼しい顔をしている。

 

「何じゃい、減るもんじゃなしええじゃろが。老い先短い老神の楽しみを奪うでないわい」

 

「殺しても死にそうにない癖に何を言ってるんです? そもそも触りたいなら後ろの彼女を触ればいいじゃないですか」

 

「ふぇっ?」

 

 いきなり話を振られたロスヴァイセが狼狽える。

 

ロスヴァイセ(こいつ)はのぅ・・・・手を出し難いんじゃよ」

 

「と、言いますと?」

 

「こいつは見た目は申し分無いんじゃが、堅物でのう・・・・なもんじゃから彼氏いない歴=年齢っちゅう情けない奴じゃから、迂闊に手を出したりしたら、責任取れと面倒くそうて敵わんのじゃよ」

 

「ちょっ!──オーディン様ぁ!? 何人を面倒くさい地雷女みたいに言ってるんです!? 信じちゃったらどうするんですかーーーー!?」

 

 ロスヴァイセが顔を真っ赤にして反論する。

 

「責任を取れって、まさか妻にしろとでも?」

 

「いや、好みの男を紹介しろとうるさいんじゃ」

 

「あぁ、成る程。それは残念ですね、せっかく美人なのに・・・・」

 

 ロスヴァイセを揶揄うオーディンに便乗して、俺がため息を吐くと、

 

「貴方も信じないで下さーーーーい!!」

 

 ロスヴァイセはムキになって絶叫する。成る程、これは楽しい。オーディンが側に置いておく訳だ。

 そんな悪ふざけをする俺の頭を、リアスがコツンと叩いた。

 

「一輝、いい加減にしなさい。オーディン様もおふざけが過ぎますよ?」

 

 リアスが呆れたように言うと、オーディンは愉快そうに笑った。

 

「ホッホッホ! すまんのぅ・・・・つい愉しくて。ほれロスヴァイセ。いつまで騒いどる?」

 

「は!?・・・・え?」

 

 何だか分からず狼狽えるロスヴァイセを尻目に、オーディンは態度を改める。

 

「改めて名乗ろう。【北欧神話】の大神、オーディンじゃ。こ奴は護衛のロスヴァイセ。戦乙女(ヴァルキリー)じゃよ。おふざけが過ぎたのぅ」

 

「いえ、こちらも便乗してしまいましたのでお気遣いなく」

 

 俺も改めて頭を下げる。

 

「うむ。お主中々ノリが良いのぅ。また会う時を楽しみにしとるぞい。・・・・ほれ、行くぞロスヴァイセ」

 

「へ? あ、待って下さいオーディン様!」

 

 ロスヴァイセはペコリと一礼してオーディンの後を追った。

 【北欧神話】の大神オーディンと戦乙女ロスヴァイセ。原作では深く関わる事になる二人だが、果たしてどうなるのか・・・・

 

 

 

 

 

 

 『魔王の妹』リアス・グレモリーと【ガイバー】不破一輝との邂逅を終えたオーディン様はさっきからずっと楽しげにしている。

 

「どうしたんです、オーディン様。さっきからずっとニヤニヤして」

 

 気持ち悪い、と付け足さないのはロスヴァイセ()なりの処世術だ。そんな私の態度を気にもせず、オーディン様が訊ねる。

 

「のうロスヴァイセ。お主あ奴と戦って勝てるかの?」

 

「え?・・・・あぁ、不破一輝さんですか? そうですねぇ・・・・接近戦ではあちらに分がありそうですから、距離を取って魔法戦に持ち込めば勝てると思います」

 

 私は見た感じから分析して判断を下す。けど、そんな私にオーディン様は呆れた顔をする。

 

「駄目じゃのう・・・・そんな事じゃから、お主はいつまで経っても彼氏の一人も出来んのじゃぞ」

 

「な!? それとこれとは関係ないでしょう!?」

 

 反論する私にオーディン様はため息をひとつ吐くと、私の目の前に右手を掲げた。

 

「何を・・・・! こ、これは!?」

 

 何事かとその手を凝視した私は次の瞬間、驚愕した。オーディン様の右手首には掴まれた跡がくっきりと残っていたのだから。 

 

「これ・・・・あの時の?」

 

 リアスさんに触れようとしたオーディン様を止めた、あの時に付いた跡だ。

 

「うむ。仮にも儂は【神】じゃ。その儂の腕を掴み、跡を付けるなどそこらの木っ端悪魔には出来ん芸当じゃよ。あ奴の【ガイバー】はリストにも載ってない『神器(セイクリッド・ギア)』じゃと聞いたが、もしかするとあれは【神滅具(ロンギヌス)】なのかもしれんのぅ」

 

「【神滅具(ロンギヌス)】・・・・・・」

 

 それは神すら滅ぼす力を持つ上位神器(セイクリッド・ギア)。つまり彼ならオーディン様を滅ぼせるという事。もし彼が刺客として現れたのなら、私はオーディン様を守りきれるのだろうか? 私が深刻に頭を悩ませていると、

 

「なに、そう深く考えんでもよい。要は儂らが悪魔、いや『聖書勢力』と敵対しなければいいんじゃからな。国元に戻ったら皆に、特にロキ辺りにはきつく言い含めんといかんな。・・・・・・全くサーゼクスめ。良い駒を手に入れたもんじゃて」 

 

 そう言いながらもオーディン様は、停滞しきった情勢が動き出そうとしている事を喜んでいるようだった。

 私はこの日、要注意人物として、不破一輝の名を心に刻んだ。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜───

 

「はぁ、あん、ぁん、んんん───!」

 

 一輝の上で一心不乱に腰を振る祐美の喘ぎ声が部屋中に響く。亜麻色の長い髪を振り乱し、恍惚とする祐美は十七歳の少女とは思えない色香を放っていた。

 

「ああ、先輩、先輩!・・・・私、私もう・・・・!」

 

 祐美の限界が近いと悟った一輝は、祐美の動きに合わせて下から腰を強く突き上げた。

 

「んん! はぁん! あぁ・・・・い、イク、またイク・・・・私また・・・・イ、くぅ~~~~~!!」

 

「くぅっ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュ!ビュルーーーー!!

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ~~~~っ!! あ、熱いのがいっぱい、私の膣内(なか)に広がってるぅ~~~~!!❤」 

 

 そのまま力尽きて上体を倒す祐美を抱き止めた一輝は、汗に塗れた祐美の身体を抱きしめ、唇を重ねる。

 

「ふむぅ・・・・ちゅぷ、ふぅん、ひぇんぱぁい・・・・ちゅ❤」

 

 啄むようにキスを繰り返す祐美の背中やお尻を一輝は労うように撫で回す。やがて祐美は一輝の腹に手を置いて肉棒を抜いた。その途端、

 

「はぁ~い祐美ちん、交代にゃん!」

 

 ドシンと柔らかな肢体がぶつかって、祐美は弾き飛ばされた。

 

「きゃっ!? ちょっと黒歌さん!? いきなり何するんですか!?」

 

「いいじゃない。・・・・大体祐美ちんズルいにゃあ。もう四回も射精()して貰ったんだから、いい加減交代するにゃ!」

 

 そう、今夜の一輝の相手はゲームで活躍したご褒美として、祐美と黒歌の二人になった。決まった時、朱乃が「話が違う!」と黒歌に喰ってかかったが、黒歌は笑って誤魔化していた。

 取り敢えずMVPの祐美に先を譲った黒歌だったが、抜かずに四回も膣内に射精された祐美が肉棒を抜いた瞬間、我慢出来ずに体当たりをして強引に入れ代わっていた。

 

「祐美ちんは少し休憩してるにゃ。・・・・・・んん、んんあぁぁ!❤」

 

 黒歌はすっかり準備完了した自分の泥濘に一輝を導き入れた。

 

「んあぁ!・・・・あぁ、これにゃあ・・・・このおっきいのが欲しかったのにゃあ❤」

 

 待ち望んだ肉の快楽に黒歌は一気に頂点に達した。

 

「あ? あ!・・・・ダメ! 挿入れただけなのに・・・・・・んんん!!❤」

 

 ビクビクっと全身が震え、膣壁がキュウっと締まる。いきなりの快楽に一輝は必死に暴発を堪える。

 

「ハァ、ハァ・・・・やっぱり一輝のオチンポ最高にゃあ❤ 一輝ぃ・・・・これ、もっと欲しいにゃあ・・・・」

 

 黒歌は一輝を見下ろしながら、ペロリと舌舐めずりをする。その淫靡さに一輝は上体を起こすと正常位に移行し、そのまま強く腰を打ち付けた。

 

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!

 

「は!? あ! あ! ああぁ!・・・・んあ! 硬いのが奥まで・・・・奥まで来るぅっ!!」

 

 リズミカルに腰を打ち付けながら、一輝は黒歌と恋人繋ぎをしながら唇を重ねる。

 

(あん❤・・・・・・上の口と下の口を同時に塞がれて・・・・んん! これ、気持ちいいにゃあ・・・・)

 

「ふんむ、ふぅ、んむぅ・・・・ちゅぷ、んん、一輝ぃ・・・・ちゅ、ちゅぷ」

 

 舌を絡め合う水音と交換する唾液の臭いが本能を刺激し、二人の興奮を高めていく。そして、

 

「んん!」

 

 ドビュルルル! ビュル! ブビューーーー!!

 

「んむうぅぅぅ~~~~~っっ!!❤」

 

 上と下で繋がったまま、一輝は黒歌の膣内(なか)射精()した。ビクビクと震え、黒歌もまた白目を剥いて絶頂に達した。

 

「むふう、ふう、ふぅ・・・・ハァ、ハァ・・・・・・」

 

 空気を求めて呼吸を荒げる黒歌。口を塞がれ激しい運動をしてたのだから呼吸困難になるのも当然だ。だが一輝は素早く呼吸を調えると黒歌の上体を起こし、対面座位の態勢から再び強く突き上げた。

 

「んおおぉぉぉぉっっ!!❤」

 

 子宮口まで届く衝撃に黒歌は絶叫する。一輝はそのままベッドのスプリングを利用して突き上げながら、黒歌の爆乳を舐めしゃぶる。

 

「ふぁ、ひぉ、ふぅん、ひぃん!」

 

 プックリと勃ち上がり、舐めて欲しいと主張するピンク色の乳首を口に含み、舌でコロコロと転がすと、敏感な部分への刺激に黒歌は身を悶えさせた。

 快楽に蕩ける黒歌に、一輝は更なる刺激を与えようと口内の乳首を甘噛みした。

 

「ふひいぃぃぃんんっ!?」

 

 今までと違う鋭い刺激を受けて、黒歌はまた絶頂に達する。それでも一輝は締め付けを増した膣内を強く突き上げる。

 

「ひぃ、ひぃん! か、一輝・・・・私イッた! イッたの!」

 

「ああ。何度でもイかせてやる」

 

「そんな!・・・・これ以上気持ち良くされたら私、バカになっちゃうにゃあ・・・・!」

 

「でも黒歌は気持ち良くされるの好きだろう?」

  

「好き! 好き! 一輝のオチンポで気持ち良くされるの大好き!!」

 

「よし、ならもっと気持ち良くしてやる!」

 

 一輝は肉棒を突き上げながら、再び乳首を甘噛みする。

 

「ひあぁぁっ!! ダメ! それダメ!・・・・私もう・・・・!」

 

 黒歌は膣内を突き上げる肉棒が更に大きくなる感覚に、一輝の噴火が近いの感じていた。

 

「ああ! 射精()して一輝! 一輝の熱い精液、私の膣内(なか)に全部射精()してーーーー!!」

 

「ああ! 行くぞ黒歌!!」

 

 ブビュルル! ビュル! ブビューーーー!!

 

「ああぁぁあーーーーんっ!!❤ 熱いのがいっぱい・・・・火傷しちゃうにゃあ・・・・・・」

 

 黒歌は一輝と抱き合いながら絶頂に達する。黒歌は大量の精液を胎内に受けて、心が満たされていくのを感じていた。

 

「ふぅ~~」

 

 流石に疲れたのか、一輝は黒歌と繋がったままベッドに倒れる。黒歌が腰を上げて肉棒を抜くと、膣口からは大量の精液が溢れ、ベッドを汚した。

 

「先輩・・・・今綺麗にしますね」

 

 六回も射精し、流石に軟らかくなった肉棒に祐美が舌を這わせる。 

 

「あン、祐美ちん私にもしゃぶらせて・・・・」

 

 祐美の反対側から黒歌もまた、肉棒を舐め始める。

 

「ちゅぷ、ちゅば、んむぅ・・・・ちゅ、レロレロ・・・・んん、ちゅぷ」

 

「ん──ちゅ、ちゅ・・・・ん、レェロ、エロ、レロレロ・・・・にゅぱ、ん・・・・ズズズ」

 

「うっ、くぅ・・・・祐美、黒歌・・・・・・」

 

 数分後、祐美と黒歌の情熱的な舌使いに一輝の肉棒は再び硬さを取り戻し、雄々しくそそり勃っていた。

 

「うふ❤ 素敵です、先輩」

 

「美味しそう・・・・それじゃあ、いただきま~す❤」

 

「ちょっと黒歌さん! 次は私の番ですよ!?」

 

「何言ってるにゃ! 私はまだ二回しか射精()して貰ってないんだから、まだ私の番にゃあ!」

 

 二人は一輝を放置してどちらが先か言い争う。暫く待っても収まらない言い争いに、一輝は呆れてため息を吐くと、

 

 パシイィィンッ!

 

「「うひいぃぃんっ!?」」

 

 祐美と黒歌はお尻を叩かれて飛び上がる。そんな二人に一輝は()めた目を向けた。

 

「えっ、と・・・・先輩?」

 

「か、一輝?・・・・目が怖いにゃあ・・・・」

 

「よぉく分かった・・・・お前ら、そんなにコレが欲しいなら、たぁっっっぷりくれてやる!」

 

「! ひいぃぃぃっっ!?」

 

「ふにゃああぁぁぁんっっ!!」

 

 一輝は祐美と黒歌に襲いかかる。そして───

 

 

「ひぃ! おぉ! あひぃ!・・・・無理! 先輩もう無理いぃぃっっ!!!」

 

「あひぃ! 死んじゃう! これ以上されたら、私死んじゃうにゃあぁぁぁっっ!!!」

 

 

 祐美と黒歌はどちらにどれだけ射精()したのか分からない位大量の白濁液を身体の内外に浴びて、朝を迎える頃には二人仲良く気を失っていた。

 

 

 

 

 

 シトリーとのゲームが終わってから一週間が過ぎた。

 その間、一輝()はシトリー眷属と合同トレーニングをしたり、新たな能力を開発したり、ヴェネラナ様やグレイフィアさんから色々(・・)と教育を受けたり、レイヴェルのお茶会に招待されたり、冥界のメディアから取材を受けたり、サーゼクス様から仕事?を頼まれたりと忙しい日々を過ごしていた。

 気付けば夏休みも残す所あと僅か。色々な事があった冥界を後にして、俺達は今日、駒王町へ帰る。

 

 来た時以上に盛大な歓声に包まれ駅に着いた俺達は、ホームで見送りに来てくれたグレモリー家の皆さんと別れの挨拶を交わして列車に乗り込んだ。

 

「色々あったなぁ・・・・」

 

 車窓に映る冥界の景色を眺めながら、俺は感慨深く溢した。

 グレモリー眷属としては若手悪魔の会合や黒歌の加入、シトリーとのゲームがあり、俺個人としても上級悪魔への昇格とリアスとの婚約、そしてリアスとようやく結ばれ、黒歌、白音とも関係を結んだ。

 これで俺が関係を結んだ女はリアスを筆頭に六人になった。俺はこの先彼女らを幸せにする為に頑張らなくちゃならない。取り敢えず爵位を上げる事を目的として、まずは眷属集めから始めるとするか。

 

「何を考えているの、一輝?」

 

 そんな事を考えていると、隣のリアスがそっと手を重ねて訊ねて来た。

 

「ん? いや、色んな事があったなぁと思ってな」

 

「そうね・・・・今年の夏はきっと一生忘れないわ」

 

 リアスもまた、感慨深く呟く。

 

「そうだな。リアス、頑張るよ俺」

 

 そう言って俺はリアスの手を握り返した。

 

「・・・・うん。頑張って、“ア・ナ・タ”」

 

 リアスはそう言って優しく微笑んだ。

 

 ふと車内を見ると、夏休みの宿題がまだ終わってなかったイッセーが、朱乃と祐美に教えて貰いながら宿題を片付けようと奮闘している。アーシアとゼノヴィアは二人で信仰について語り合い、猫又姉妹は我関せずとお菓子を頬張っていた。

 

 列車は冥界を後に、間もなく駒王町に到着する。そして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーシア、君を迎えに来た。───僕の妻になって欲しい。君を愛してるんだ」

 

 駒王町に着いた途端、新たなトラブルの種が舞い込んで来た。

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回で原作5巻のエピソードが終了、第26話から原作6巻のエピソードに入ります。
天使なあの娘が再登場したり、原作では死んだ筈のあの娘が復活したりしますが、基本はイッセーとアーシアを中心に展開します。
お楽しみに。

次回は閑話をお送りします。


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閑話1 ヴェネラナの性教育☆☆(リアス、ヴェネラナ) 



明けましておめでとうございます。
今年も本作をよろしくお願いします。

今回から予告通り閑話をお送りします。
第一回はヴェネラナ編、ちゃんとヴェネラナらしく書けてるか不安はありますが、取り敢えずご覧下さい。


 

 

 それはシトリーとのゲームが終わってから暫く後の事───

 

 

  

 

 

 

「んぁ! はぁん! あはん! んぁぁ一輝! 私もう───」

 

「俺ももうすぐだから、頑張れリアス!」

 

 一輝()はリアスの膝裏に手を入れ、身体をひっくり返した。正常位から種付けプレスの態勢に移行してガンガン突き下ろす。

 

 ジュポッ!ジュポッ!ジュプッ!ジュポッ!

 

「ふお!んお!んん!ふあぁんっ!❤」

 

 リアスが苦しそうな、でも気持ち良さそうな嬌声を上げた。膣壁が収縮して俺のモノをキュウっと締め付け、子宮口が吸い付く。お互いもう限界だ。俺は更に深く、強く突き下ろした。

 

「んあぁ!おあぁ!・・・・もうダメ!イク!・・・・私、イっちゃうぅぅっ!!」

 

「くぅ、リアス!!」

 

 ブビュルルル! ビュル! ブビューーー!!

 

「ふうぅぅぅんっっ!!❤」

 

 リアスの身体がブルブルと痙攣する。リアスという極上の女を征服するこの瞬間は肉体的にも精神的にも最高の快楽を俺に味わわせる。

 大量の精液をリアスの膣内(なか)射精()してから肉棒を抜く。 

 

 ゴポォッ。

 

 入りきらなかった精液が膣内から溢れる。俺はリアスの上に倒れ込み、軽く唇を交わしてからようやく一息吐いた。

 

「ん──ちゅ・・・・気持ち良かったわ、一輝・・・・」

 

「ああ、俺も気持ち良かった」

 

 俺達は手を繋いで微笑み合い、幸福を実感する。けれどそんな幸福を破る声がすぐ側でした。

 

「ん~~六十点、という所かしら」

 

「「!!?」」

 

 突然の声にそちらを向くと、そこには頬に手を当てて何やら思案するヴェネラナ様がいた。

 

「お、お、お、お母様ぁ!? 何でここにいるんですかぁ!?」

 

「あら、そんなの決まってるじゃない。視察よし・さ・つ」

 

「視察って・・・・何のですか!?」

 

「決まってるでしょう? 貴女達がきちんと子づくり出来てるか、のよ」 

 

「子づくりって───!?」

 

 リアスが顔を真っ赤にして言葉を詰まらせ、次の瞬間、猛然と食ってかかった。

 

「い、いきなり何を言うんですお母様!!」

 

「あら、大事な事よ。貴女だって悪魔の出生率の低さは知ってるでしょう? 今からでもしっかり励まなくちゃ駄目よ」

 

「それは分かるけど、だからって気が早すぎるわ!」

 

「あら、貴女は一輝さんとの赤ちゃんが欲しくないの?」

 

「それは!・・・・・・欲しいけど」

 

「だからよ。それで貴女達の様子を見せて貰ったんだけど・・・・・・まず一輝さんは及第点よ。大きさといい持続力といい射精の量といい、随分と立派なモノをお持ちね」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

 俺は思わず礼を言った。

 

「けどペニスの大きさにかまけて力任せに責めるのはいただけないわね。もっと女の身体を知ってテクニックを研かなきゃ」

 

「・・・・・・はい」

 

 上げて落とされた。うう、気にしてる事を・・・・

 

「でも何より問題なのは貴女よ、リアス」

 

「わ、私ですか!?」

 

「そうよ。貴女ったら一輝さんに気持ち良くして貰うばかりじゃない。知ってる? 貴女みたいな女を人間界ではマグロって言うのよ」

 

「ま、マグロ・・・・」

 

 リアスはショックを受けてワナワナという震えている。そんなリアスを見てヴェネラナ様はクスリと笑う。

 

「だからね、リアス。私が教えてあげるわ。殿方を気持ち良くする方法を」

 

 そう言ってヴェネラナ様は俺達に背を向け、亜麻色の長い髪を束ねて持ち上げた。

 

「一輝さん、ファスナーを下ろして下さる?」

 

「は、はい・・・・・・」

 

 俺は言われるままにヴェネラナ様に近づき、背中のファスナーを摘まんだ。

 

「(ゴクッ)・・・・それじゃあ下ろします」

 

「ええ、お願い」

 

 軽い音を立ててファスナーを下ろすと、高級そうな紫色のブラとショーツが露出する。うなじから背中、そしてお尻へと続く滑らかなラインは凄まじい色気を発して俺を圧倒した。

 

「ありがとう」

 

 ヴェネラナ様はそのまま腕を抜き、腰を振りながらドレスを絨毯に落として振り返った。

 ドレスから開放された濃い女の匂いが俺を直撃する。彼女は俺に見せびらかすように両手を頭の後ろで組んで身体をしならせる。そのプロポーションは美事(みごと)という他なかった。

 胸やお尻は明らかにリアス以上のボリューム。少しお腹が弛んでいて、処理を怠っていたのか亜麻色の繁みが腋に生い茂ってはいるがそれが寧ろ妖艶さを増して、リアス達のような少女にはない大人の女の魅力を(たた)えている。

 少女のような瑞々しさと女の妖艶さの融合、そんな不思議な魅力をヴェネラナ様の肢体は醸し出していた。

 

「(クスッ) 分かるリアス。服の脱ぎ方ひとつで殿方のやる気を高めるものよ。現にほら──」

 

 ヴェネラナ様は悪戯っぽい笑みを浮かべて俺のモノに顔を寄せ、面白そうに(つつ)く。小さくなっていたそれはいつの間にか戦闘態勢を整えていた。

 

「うふふ、本当に立派。ねぇリアス、フェラチオはした事ある?」

 

「それは、ありますけど・・・・」

 

「そう。でもただ咥えるだけじゃ駄目よ。まずは───」

 

 ベッドに乗ったヴェネラナ様が俺のモノを握った。

 

 

 

 

 

 

 

「まずはこうやって、ちゅ、ちゅ──」

 

 ヴェネラナは一輝の亀頭にキスの雨を降らす。

 

「亀頭はペニスで一番敏感な所よ。だからこうやって刺激すると──ほら、先走りが溢れて来たわ」

 

 柔らかな唇に刺激された一輝の肉棒は亀頭から先走りを溢れさせ、チュクチュクと淫らな水音を立てる。

 

「うふふ。いい感じに濡れて来たわね。さぁ貴女もやってみなさい。でもすぐに咥えちゃ駄目よ。ほら、こうやって───」

 

「えっと、こうかしら・・・・?」

 

「うう、うあぁ・・・・!」

 

 ヴェネラナの指導の元、リアスは竿から亀頭へと懸命に舌を這わせ、一輝の肉棒は先走りとリアスの唾液でコーティングされていく。

 

「後はここを弄るのも効果的よ。──あんむ、レロレロレロ・・・・」

 

 そう言ってヴェネラナは一輝の睾丸を口に含んで舌で転がす。

 

「くっ、う、あぁっ!」

 

 初めての感覚に一輝は苦悶の声を上げる。 

 一輝にそんな声を上げさせる母親に対抗心を燃やしたのか、リアスが亀頭を口に咥えた。

 

「んも、んむ、むちゅう・・・・ちゅば、ちゅぷ」

 

「れぇろ、れろ、えろ・・・・んんん・・・・うふ♪ リアス、咥えたなら一輝さんの顔を良く見なさい」

 

 リアスは言われた通り上目遣いに一輝を見上げる。

 

「ただ咥えればいい訳じゃないわ。どこをどう舐めたら気持良くなるか、一輝さんの反応を探りながら舐めるのよ」

 

(言われてみれば今までは無我夢中で舐めるばかりだったわね・・・・それならこうしたらどうかしら・・・・?)

 

 リアスは肉棒を口に含みながら、舌で円を描くように亀頭をゆっくりと舐め回すと、肉棒がビクンと跳ねた。

 

(気持ち良かったのかしら・・・・?)

 

 一輝の反応に嬉しくなったリアスは、色々試してみようと積極的に舌を動かす。

 

「うふん・・・・ちゅ、ちゅ、ちゅぷ・・・・んん、レロレロ、むふん、ちゅう、ちゅ・・・・ジュルジュル、あぁん・・・・ちゅうぅっ」   

 

 唾液が零れないように注意しながら亀頭に啄むようなキスを降らし、裏筋から雁首へと舌を這わし、割れ目から溢れる先走りを啜り、再び肉棒を咥えると強く吸い付く。

 

「んん、んおぉ・・・・リ、リアス!」

 

 今までとは違うリアスのフェラチオに快楽に震える一輝。そんな一輝の様子にリアスは満足そうな笑みを浮かべる。

 

「うふふ、上手よリアス。後はもっと音を立ててみなさい。貴女の立てるイヤらしい音が一輝さんの官能をより高めるわ」

 

 誉められて気を良くしたリアスはヴェネラナの言う通り、下品な音を立てて肉棒を舐めしゃぶる。

 

「はぶちゅ! ぢゅぷ! ぢゅぷ! ズズズ・・・・んふぅ、ぢゅぽ! ぢゅぽ!」

 

「くおぁっ、リアス、もう───!」

 

 リアスとヴェネラナの絶妙な舌使いに一輝は限界を迎える。

 

「いいわ、射精()して一輝さん! リアスの口に貴方の熱い精液を一杯射精()して!」

 

 そう叫びつつ、ヴェネラナが一輝の肛門に指を突っ込んだ。

 

「! うああぁぁっ!?」

 

 肛門に入れた指をくの字に曲げ、前立腺を責められた一輝は堪らず爆発した。

 

「むふぅ~~~~~っ!?」

 

 雪崩れ込む大量の精液をリアスは喉を鳴らして懸命に飲み込むが、凄まじい勢いに全部は飲みきれず、泡立った白濁液が口の端から零れ落ちた。

 

「ブフゥッ!!・・・・ブフッ・・・・ん、ゴキュ、ゴキュ・・・・んん・・・・凄い、いっぱい・・・・・・」

 

 口から肉棒を外したリアスに尚も精液が降りかかる。涙を滲ませて噎せるリアスの顔面が白く染まり、白い粘液が胸の谷間に零れて小さな水溜まりを作る。 

 

「あらあら、凄い勢いね・・・・リアス、射精()された精液は全部飲むようになさい。精飲は征服欲や支配欲を満たす殿方が最も喜ぶ行為のひとつよ。その行為ひとつで殿方をその気にさせるわ」

 

 背中を擦るヴェネラナにリアスが頷く。

 

「フウ、フウ・・・・はい、頑張ります」

 

「・・・・それにしても一輝さんのペニスは凄いわね。全く衰えてないわ。これならすぐ出来そうね」

 

 そう言ってヴェネラナはリアスの背後に回り、脚を大きく開かせた。

 

「きゃっ! お、お母様!?」

 

「さぁ一輝さん、いらっしゃい♪」

 

 驚くリアス無視してヴェネラナは一輝に挿入を促す。一輝はこの異様な状況に戸惑いつつもリアスの秘部に肉棒を挿入した。 

 

「あぁっ!・・・・・・一輝ぃ❤」

 

 すっかり馴染んだ感触にリアスは悦びの声を上げた。いつものように激しく腰を動かす一輝。だがそんな一輝にヴェネラナからの“待った”が掛かる。

 

「待って一輝さん。激しく責めるのも大事だけどそれだけじゃ駄目。もっと緩急を付けてご覧なさい」

 

「緩急、ですか・・・・?」

 

「ええ。戦闘でもフェイントを入れたりするでしょう? セックスでもそれと同じよ。相手を良く見て、どこが弱いのか探りながら動くのよ」

 

(・・・・成る程、理に叶ってるな)

 

 ヴェネラナの指導に内心頷くと、一輝は腰の動きを緩めた。深く突き入れるのではなく、ゆっくりと入れてゆっくりと抜く。

 

(あっ、コレいいかも・・・・❤)

 

 膣壁を擦る感触がダイレクトに伝わり、一輝の肉棒の硬さや大きさをいつもよりはっきりと感じる。

 

(ん・・・・気持ちいい。でも・・・・)

 

 快感と同時にもどかしさを感じるリアス。と、その時、

 

 スパアァァンッ!

 

「んひぃっ!?」

 

 いきなり膣奥深く突き入れられ、リアスは悲鳴を上げた。だが衝撃は一度だけ。またゆっくりとしたペースに戻ってしまう。

 

(今の凄かった・・・・今のをもう一度・・・・)

 

 そう思った矢先、再びの衝撃がリアスを襲った。

 

「んはあぁぁんっ!❤」

 

(あっ、来たコレ───!!❤)

 

 緩やかな快感に馴れた所を一気に膣奥まで強く突かれ、リアスは落雷のような快感に打ち震える。それから一輝は緩いピストン運動を続けながら、要所要所に深く突き入れてリアスを悶絶させる。

 

「おふっ❤うぎっ❤おふっ❤あおぉぉんっ❤」

   

 段々強くなるピストン運動にリアスが嬌声を上げる。

 

「んあぁっ! 一輝のが奥に当たって・・・・んん、気持ちいいの!!」

 

「リアス、どこが気持ちいいのかはっきり言いなさい」

 

「んあぁ! おマンコの奥を一輝のデカチンポでグリグリされるの、スッゴく気持ちいいのーーーーっ!!」 

 

 涙と涎を零しつつ、快楽に蕩けたリアスが絶叫する。その時、

 

「ほらリアス、もっとおマンコを締めなさい。ここに力を入れるのよ!」

 

 ヴェネラナはそう言ってリアスのお肛門に指を入れてグリグリと捻った。

 

「おほほーーーうっ!!❤」

 

 肛門括約筋がキュッと締まると同時に、リアスの膣が痛い位に一輝を締め付けた。

 

「ぐうぅっ、イクぞリアス!!」

 

「あああっ! 来て一輝、リアスのおマンコにいっぱい射精()してーーーーっ!!」

 

 ブビュルル!ビュルル!ブビューーーーッ!!

 

 かつてないリアスの締め付けに一輝は堪らず爆発した。熱い粘液がリアスの子宮口に広がり、リアスは身体を震わせる。

 

「あ゛、お゛、お゛お゛お゛お゛~~~~❤」

 

 深い快楽の中、リアスは意識を失った。

 

 

 

 

 

 一輝がゆっくりと肉棒を抜くと、リアスの膣口から大量の白濁液が溢れた。

 

「あらまぁ、三回目だというのに沢山射精したのね」

 

 ヴェネラナがリアスの呼吸を確認し、ほっと息を吐いた。

 一輝は朦朧とした意識の中、下着姿でこちらに背を向けるヴェネラナのお尻を見て唾を飲んだ。

 

(ヴェネラナ様、濡れてる───?)

 

 紫色のショーツの股間の色が濃くなっている。ヴェネラナが自分達のセックスを見て興奮した証を目の当たりにして、一輝の射精したばかりの肉棒が雄々しくそそり勃つ。

 

「きゃっ!? か、一輝さん!?」

 

 気付けば一輝はヴェネラナのショーツを下ろしていた。ヴェネラナのリアス以上にボリュームのあるお尻が露出し、濡れた秘部からお尻の穴までが一輝の眼前に晒される。

 ヴェネラナの秘部は手入れを怠っていたのか、お尻の穴までびっしりと毛が生えていて、ツンとした臭いが鼻を突く。黒ずんだ淫唇は大きく口を開き、淫蜜を垂れ流していた。

 リアスや朱乃といった今まで抱いて来た女とは違う人妻の経験豊富なおマンコを直視した一輝は、グロいと思いつつも異様な興奮を抑えきれずむしゃぶり付いた。

 

「おほうっ!? んん・・・・あぁ駄目よ一輝さん・・・・んんん! あぁ、ダメェ・・・・!」

 

 尻たぶに手を置いて大きく開かせると、淫唇から肛門へと舌を這わせる。ツンとした刺激臭が鼻をくすぐり、生い茂った恥毛が口に入るが、一輝は夢中になって舐め回す。

 

「ほひぃ、ひぃん! やめて一輝さん! そんな所舐めちゃ・・・・んひぃっ、駄目なの・・・駄目なのに・・・・・・ダ、メェ・・・・・・!!」

 

 プシャアアァァッッ!!

 

 恥毛に隠れた肛門に舌を突き入れると、ヴェネラナはビクンと身体を反らして潮を噴いた。

 

(ウソ・・・・私お尻の穴を舐められてイっちゃったの・・・・? でも、こんなに気持ちいいのなんて何年振りかしら・・・・?)

 

 リアスの隣に崩れ落ちながら、ヴェネラナは荒い息を吐く。だがこれで終わる筈もなく、興奮した一輝は自分の肉棒をヴェネラナの濡れた割れ目に擦り付ける。

 

「んん! ああぁぁ・・・・・・」

 

 淫唇を擦る硬い感触に、ヴェネラナは熱い吐息を漏らす。

 

「・・・・挿入()れてもいいですか?」

 

「ふああぁぁ・・・・・・だ、駄目よ一輝さん・・・・私はリアスの母親なのよ? そんなの許されないわ・・・・」

 

「でも、ヴェネラナ様のここはそう言ってませんよ?」

 

 クチュクチュと湿った音が室内に響き、肉棒の先端が膣口をノックする。

 

「ほら、挿入()れて、挿入()れてって、ずうっと啼いてる」

 

「やん❤ 駄目、駄目よ。挿入()れちゃ、ダメぇ・・・・❤」

 

 そう言いながらヴェネラナは肉棒を呑み込もうと無意識に腰を動かす。それを見た一輝は膣口に亀頭の先を埋めたまま動きを止めた。

 

「あん!? 一輝さんどうして・・・・?」 

 

 ヴェネラナは不安そうに声を漏らす。

 

「だって駄目なんでしょう?・・・・俺は動きませんから、欲しかったら自分で挿入()れて下さい」

 

「あぁそんな・・・・一輝さんの意地悪ぅ・・・・!」

 

 興奮に息を荒げながらヴェネラナは眉根を寄せた。

 

 

 

 ヴェネラナはリアスを妊娠した十九年前以来、セックスレスであった。

 元々悪魔は長寿故かその出産率は低い。それは位階が上がる毎に顕著になり、上級悪魔に至っては数十年から数百年に一人産まれればいい方だと云われていた。であるからか、いつしか悪魔という種族全体の性欲は低下し、夫婦や恋人同士であってもセックスする回数は極端に減っていた(それでも性欲旺盛(スケベ)な者や他種族や下級悪魔を性的に弄ぶ下種はいたが)。

 

 ───閑話休題。

 

 ヴェネラナの夫ジオティクスは性に淡泊な男であり、千年以上も妻として寄り添いながら身体を交わしたのは百回にも満たない。リアスを出産してから夫婦間の性交渉はなく、魔力で肉体年齢を二十歳頃にしているせいか性欲もその頃と同じ位旺盛なヴェネラナはリアスを産んでから身体をもて余し、一人慰める日々が続いていた。

 そんな時、メイド達の噂で一輝とリアスが夜毎激しく絡み合ってると聞いて興味を持ち、夫が会合で留守の今夜、こっそりと覗きに来たのだ。

 二人のセックスは若さに委せた激しいものだったが、力任せのセックスではいつかマンネリになり、自分達のようにセックスレスになるかもと危惧したヴェネラナは、二人に少しだけ教育を施す事にした。

 ヴェネラナの指導で二人の技術(テク)が向上したのはいいが、ほんの少しだけ口に含んだ一輝の肉棒が忘れられない。味や臭い、硬さや熱さが忘れかけていたヴェネラナの欲望を刺激し、身体を火照らせていた。

 

 

 

(───ああ、私はどうしたらいいの!? )

 

 このまま肉欲に溺れ一輝に身を委せるか、理性を保って一輝を拒むべきか、ヴェネラナは思い悩む。そんなヴェネラナの耳元で一輝が囁いた。

 

「大丈夫、これは“教育”です。ヴェネラナ様は至らない俺に自ら“教育”してくれるだけ。そうでしょう?」

 

 一輝(悪魔)の囁きがヴェネラナの耳をくすぐる。

 

「教育・・・・そう、よね・・・・?」

 

「そうですよ。それに欲望に忠実なのは悪魔の本質でしょう? ならいいじゃないですか。欲望に素直になっても」

 

「欲望に、素直に・・・・」

 

「そうです。コレ、欲しくないですか? ヴェネラナ様が一言“欲しい”と言ってくれたら・・・・・・後は分かりますよね?」

 

「はあぁっ、ううん・・・・ズルいわ一輝さん・・・・」

 

 一輝の甘い囁きと膣口に当たる肉棒の熱さに我慢出来ず、ヴェネラナは遂に禁断の言葉を口にした。

 

「ほ、欲しい・・・・・・」

 

 やっとの思いでヴェネラナが振り絞った小さな呟きに答え、一輝は腰に力を入れてゆっくりヴェネラナの膣内に進入する。

 

「お゛、あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~❤」

 

 ゴリゴリと音を立てながら一輝の肉棒が膣壁を削り、奥へ奥へと突き進む。ゆっくり馴染ませるように、狭かった膣道を拡張しながら突き進む肉棒はやがてコツンと弾力のある壁に阻まれる。

 夫では届かなかった最奥への刺激に堪らずヴェネラナは絶叫した。

 

「んあぁぁんっ❤ おっきいのが奥まで挿入(はい)って来るぅっ!!❤」

 

 ヴェネラナの最奥に到達した肉棒はグリグリと子宮口を刺激する。その未知の快楽にヴェネラナは絶頂し(イッ)た。

 

(ウソ! 挿入れられただけで私イッちゃったの・・・・? こんなの知らない、こんな気持ち良すぎるセックス、私知らない───!?)

 

 待ち望んだ、いやそれ以上の衝撃にヴェネラナの身体が歓喜に震える。夫では届かなかった最奥まで埋め尽くす圧倒的な肉の快楽に膣内は痙攣し、奥からは大量の淫蜜が溢れる。

 身体を支えていられず、ヴェネラナはシーツに突っ伏した。そんなヴェネラナを一輝は寝バックの態勢からゆっくりとしたペースで責め始める。

 

「確か・・・・こうですよね!」

 

「おひぃっ❤ それイイ! そんなにされたらまた

・・・・き、気持ち良くなっちゃうぅっ!!」 

 

 教えた通り緩急を付けたピストン運動にヴェネラナは嬌声を上げる。

 

「どこが気持ちいいんです? 教えて下さい」

 

「おあぁっ、ま、マンコ・・・・ヴェネラナのおマンコが気持ち良くなっちゃうのおーーーーっ!!」

 

 一輝のピストンが徐々にペースを上げていく。

 シーツに埋めていたヴェネラナの顔は涙や涎に塗れ、快楽に蕩けていた。

 

(違う・・・・このおチンポ私が今まで味わって来たモノと全然違う! 本番まで許すつもりはなかったのに、一輝さんのデカチンポ、気持ち良すぎる~~~~❤) 

 

 

 ヴェネラナの若い頃は神や堕天使の軍勢との戦争が激化し、当時バアル家最強の女悪魔と呼ばれていたヴェネラナもまた先代魔王と共に戦場に赴き、その“滅びの力”を存分に振るい、『亜麻髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』と呼ばれ恐れられていた。 

 明日をも知れぬ戦いの中、多くの男と関係して来たヴェネラナだったが、大きさといい硬さといいここまで規格外のモノは初めてだった。 

 

 

「あう! うん! あお! おぉん!」

 

 子宮を圧し潰すように突き込まれ、ヴェネラナが苦しそうに声を上げる。でもその声はどこか艶を含んでいて、一輝を益々ヒートアップさせる。

 

「く、ヴェネラナ様、そろそろ・・・・!」

 

「んあぁ! 来て! 射精()して! 一輝さんの精液で私をお腹いっぱいにしてーーーーっ!!」

 

 ブュルルル、ブビュル、ブュルーーーーっ!!

 

「んああぁぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 ヴェネラナの胎内が熱い精液で満たされていく。十九年振りのその感覚にヴェネラナは歓喜に震える。

 

(ああぁぁ・・・・・・コレよ・・・・私はずうっっとコレが欲しかったの・・・・) 

 

膣内射精(なかだし)されて震えるヴェネラナの身体を抱え上げ、背面座位の態勢になると、一輝は再び動き出した。

 

「あぁ・・・・スゴい・・・・一輝さんの、射精したのに硬いままで・・・・私の気持ちいい所にグリグリって当たってるのぉっ!!❤」

 

 腰を動かしつつヴェネラナのブラを剥ぎ取り、ベッドの下に投げ捨てた一輝は、露になったヴェネラナの乳房を両手で荒々しく揉みしだく。

 

「おひぃっ!? そ、そんなに乱暴にされたら、おっぱい壊れちゃうぅっ!!」

 

 ヴェネラナのおっぱいはリアスに比べて張りは少く、赤褐色に染まった大きめの乳輪が目立つ。だがそれ以上に指が沈み込む程に柔らかく、揉むと面白いように形を変える。その感触は硬く尖った乳首と相俟って一輝を楽しませた。

 一輝はヴェネラナの右腕を挙げさせ、両手でおっぱいを揉みながら露になった右腋に鼻先を突っ込むと、大げさに鼻を鳴らした。

 

「いやぁぁん、一輝さん! そんな所の臭いを嗅がないでぇっ!!」

 

 濃密な女の汗の臭いに一輝は夢中になってヴェネラナの腋に舌を這わせた。

 

「お願いよ!・・・・んん、そんな所、夫にも舐められた事ないのにぃ・・・・あぁん!」

 

 羞恥心と背徳感にヴェネラナは身悶える。そんなヴェネラナの様子に一輝は深くゆっくりと膣内を押し拡げるような動きを変えた。

 

「あ゛あ゛あ゛っ! 拡がるぅ! 私の膣内が一輝さんのサイズに拡がっちゃうぅっっ!!❤」

 

 ヴェネラナは自分の膣内が一輝の肉棒に合わせて拡がっていくのを実感していた。

 

「あぁ、ああ! イク・・・・私またイっちゃうぅっ!!❤」 

 

 ヴェネラナの様子を見た一輝は乳首を弄っていた右手を淫核に這わせ、深く突き上げると同時に乳首と淫核を捻り上げた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! イグ、イッッッグぅぅ~~~~~!!❤」

 

 ブビュルルル、ブュッ、ビュルーーーッッ!!

 

 ヴェネラナの膣内に熱い精液が広がっていく。目の裏にチカチカと光が走り、圧倒的な快楽にヴェネラナの背中がアーチを描き、ブルブルと震えた。

 

(あぁ・・・・これ駄目だわ・・・・こんな圧倒的な快楽を知っちゃったら、私もう・・・・) 

 

 薄れゆく意識の中、ヴェネラナは自分が抜け出せない沼に嵌まった事を悟った。

 

 

 

 

 

「ん───えっと、ここは・・・・?」 

 

 ヴェネラナ()は真夜中にふと目を覚まし、自分が腕枕されてる事に気付いた。

 

「一輝さん・・・・? そうか、私・・・・」

 

 ゆっくりと身体を起こして周りを見ると、反対側にはリアスが一輝さんの腕枕で眠っていた。どうやら気を失った私とリアスを一輝さんが介抱してくれたみたいね。

 

「しちゃったのよね・・・・参ったなぁ」

 

 最初はあくまで二人に教えるだけのつもりだったのに、一輝さんとセックスしてしまった。

 彼はリアスの婚約者、近い将来自分の義理の息子になる男だ。本来なら(ジオティクス)にも(リアス)にも顔向け出来ない行為をしてしまったというのに、何故か私の心は安らいでいた。

 

「悪魔の本質は欲望に忠実な事・・・・貴方の言う通りだわ。だったら私もそうしたっていいわよね、一輝さん❤」

 

 私は眠る一輝さんの頬に軽くキスすると、床に散らばった服を着ける。

 

(取り敢えず無駄毛の処理をした方がいいかしら? どっちが好みか明日にでも聞いてみましょう♪)

 

 そう聞いた時の一輝さんの困った顔を想像して微笑むと、私はそっと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ヴェネラナを書くのは難しかった・・・・
皆さんがどう思ったか、感想を聞かせて貰えたら助かります。

次回は皆大好きグレイフィア編をお送りします。


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閑話2 グレイフィアの性活指導☆☆(グレイフィア)

 

遅くなりましたが閑話その2を投稿します。
第二回は予告した通りグレイフィア編です。
大人気の彼女をこんなにして許されるのか。
不安はありますがご覧下さい。




 

 

 ある日、昼食を終えて寛ぐ一輝()とリアスの前にグレイフィアさんがやって来た。

 応接用のソファーに腰掛けたグレイフィアさんは無表情のまま俺達をジッと見つめている。何やら重苦しい雰囲気にリアスが息を飲んだ。

 

「・・・・それで、何の用なのかしら?」

 

「・・・・まずはこれをご覧下さい」

 

 思いきって訊ねるリアスの前に一冊のファイルが差し出された。何だこれ? 察するに中を見ろというのだろう。ファイルを開くリアスの隣から俺はファイルを覗き込んだ。

 

 

 

 読み終えたファイルを閉じて俺はため息を吐く。リアスはブルブルと震えていた。

 ファイルは俺とリアス達の性事情が事細かに記載された呆れた内容の物だった。ていうか良く調べてある。こんな物調べてどうする気だ?

 

「何なのよこれは!? どういうつもりなのグレイフィア!?」

 

 案の定リアスが爆発した。その顔は怒りからか羞恥からか真っ赤に染まっている。

 

「良く調べてありますが、流石にプライバシーの侵害では? こんな物どうするつもりです?」

 

 俺も非難を込めた視線をグレイフィアさんに向けた。

 

「私はグレモリー家のメイドであると同時にグレモリー眷属のスケジュール管理も任されています」

 

 だがグレイフィアさんは意に(かえ)さず、坦々とした口調で話し出す。

 

「それがどうしたって言うのよ!?」

 

「その私から言わせて貰います。リアスお嬢様、一輝さん、貴女方の情事には目に余るものがあります。よってこれからは私が管理させて頂きます」

 

 グレイフィアさんはキッパリと宣言した。

 

「はあ!? 貴女何を言って・・・・」

 

 リアスが困惑しながら訊ねるが、

 

「本来ならリアスお嬢様がすべき事ですが、眷属を御する所か自分も一緒になって快楽に溺れていては残念ながら無理だと判断しました」

 

「なっ・・・・・・!?」

 

 グレイフィアさんは意に反さず切って捨てる。

 

「一輝さん、貴方もです。貴方が邸のあちこちで性交しているのをメイド達が目撃して、仕事に手が付かなくなる者が続出して困っています」

 

「はあ、すいません・・・・」

 

 更には俺まで駄目出しされる始末。これは反論出来ん。

 

「何も一切の性交渉を禁止しようというのではありません。TPOを弁え、節度を守って欲しい言っているのです。さすれば私もとやかく言うつもりはありません。お二人共分かって貰えますね?

 

「「は、はい・・・・・・」」

 

 あまりの迫力に俺達はただ頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 こうしてグレイフィアさんによる取り締まり──“性活指導”が始まった。

 それからというもの、リアス達とエッチしていると突如グレイフィアさんが現れ、邪魔されるようになった。例えば───

 

 

「あん、あん、ああ一輝、イク・・・・私イっちゃうぅっ!!」

 

「ぐう、リアス!」

 

 リアスの膣内に射精する。リアスは快感に身体を震わせ、射精された精液を受け止める。

 

「はあ、はあ、良かったわ一輝・・・・ねぇ、もう一回」

 

「はあ、はあ、ああ・・・・行くぞリアス」

 

 俺達は見つめ合い唇を重ねてから、二回戦に入ろうとする。だが───

 

「いいえ、今夜はこれで終わりです」

 

 すぐ側でグレイフィアさんの“待った”がかかった。

 

「グ、グレイフィア!? 貴女一体──!?」

 

「明日は朝早くからグレモリー領の視察の仕事があります。即刻お休み下さい」

 

「えっ? でもまだ一回しか───」

 

「一回で充分です。それとここで寝かせたら続きをするかも知れないので、お嬢様は自室にお戻りを」

 

「ちょっと待って! 待ちなさいってばグレイフィア! だからちょっと───!」

 

「・・・・・・」

 

 リアスは問答無用でグレイフィアさんに引き摺られて行った。

 

 

 

 他にも───

 

 

「あぁ、もう我慢出来ない・・・・お願いだ一輝センパイ、私のココにセンパイのを挿入()れて欲しい」

 

 グレモリー邸の庭の片隅で木に凭れかかり、お尻を向けたゼノヴィアが自分で秘所を開いて俺を誘う。

 

「ゼノヴィア、ちゃんと言ってくれないと分からないぞ。ほら、俺にどうして欲しいって?」

 

 ゼノヴィアの濡れた膣口に指を出し入れして俺はゼノヴィアに言い直させる。

 

「ふぅ、うぅん・・・・わ、分かった・・・・わ、私のグショグショに濡れたおマンコに、一輝センパイの硬くて大きなチンポを挿入れて欲しい!」

 

「挿入れるだけか?」

 

「あああっ! 奥まで突っ込んで力一杯かき混ぜて、私をイかせてくれぇっ!! ホントにもう我慢出来ないんだ・・・・・・!!」

 

 切なげに懇願するゼノヴィアに満足して、彼女の膣口目掛けてブチ込もうとしたその時、

 

「はい、そこまでです」

 

「「グ、グレイフィアさん!!?」」

 

 挿入寸前でグレイフィアさんの“待った”がかかった。

 

「一輝さん、ゼノヴィアさん、こんな所での性交は公序良俗に反します。即刻中止して下さい」

 

「いや、ちょっと待ってくれグレイフィアさん! 私はもう我慢出来ないんだ! 貴女も女ならこの辛さが分かるだろう!?」

 

「・・・・分かりません。そんなに性欲過多ならば訓練で発散すればいいんです。いい機会ですから私が直接指導しましょう。行きますよゼノヴィアさん」

 

「はぁ!? いや、私は───ちょっと待って! た、助けてくれセンパイ、センパーーーイ!!」

 

 ゼノヴィアは問答無用でグレイフィアさんに連れ去られた。

 夕食の時に見かけたゼノヴィアは真っ白に燃え尽きていた。

 

 

 

 更に───

 

 

「ほらほら、こっちにゃ一輝♪」

 

「お、おい黒歌、そこは───」

 

 黒歌に連れ込まれたのは男性用トイレだった。俺を個室に連れ込み黒歌はしっかりと施錠する。

 

「んふふ♪ 最近グレイフィアに邪魔されてご無沙汰だったから、もう限界にゃん」

 

 黒歌はズボンの上から俺の肉棒を撫でる。ズボンには大きくなった肉棒がくっきりと浮かんでいた。

 

「おい黒歌、流石にここはマズイって」

 

「大丈夫大丈夫。それにここならいくらグレイフィアだって入ってこれないにゃん?───それよりほら、触って」

 

 黒歌は俺の右手を自分の股間へと導く。そこは既にグッショリと濡れていた。

 

「黒歌、もうこんなに・・・・」

 

「んふふ♪ ね、一輝、シよ❤」

 

 ズボンのチャックを下ろして肉棒を露出させた黒歌は、俺を便器に座らせると着物の裾を捲り濡れた恥部を晒した。

 

「それじゃ、いただきま~す♪」

 

 顔を上気させ、自ら挿入しようとする黒歌。

だが、

 

 バタァァン!!

 

 いきなり大きな音を立てて、個室の扉がこじ開けられた。そこには───

 

「グ、グレイフィアさん!?」

 

「にゃ!? にゃんで!? 男子トイレに入って来るにゃんて何て非常識な女にゃ!!」

 

「その男子トイレで性交しようとしてる人に言われたくありません。さぁ、行きますよ!」

 

「あぁっ! ちょっと待つにゃ! せめて先っちょだけでも・・・・ふにゃあぁぁんっ! 一輝、助けてにゃーーーー!!」

 

 黒歌は問答無用でグレイフィアさんに連れて行かれた。

 後程見た黒歌は相当搾られたのか、ヘロヘロになっていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな日々が続いたら当然───

 

「もう我慢出来ません!!」

 

「そうだ! あれはあんまりだ!!」

 

「非道すぎるにゃ! 生殺しだにゃーーー!!」

 

「・・・・ブっ潰します」

 

「いっそ闇討ちしてしまいますか?」

 

「気持ちは分かるけど、貴女達少しは落ち着きなさーーーい!!」  

 

 眷属からの抗議にリアス()は絶叫で返した。

  

 グレイフィアの“性活指導”は予想以上に厳しいものだった。

 夜、部屋でヤる以外の行為は一切認めようとせず、それに違反した者はペナルティーとして夜の番が回って来なくなる。しかも肝心の夜でさえ複数人では認めず、常に一輝との一対一。一輝を独り占め出来るのはいいんだけど、翌日に差し支えるからと一回しかさせて貰えない上に一緒に寝る事も許さないのだ。

 これには当然、皆の不満が怒りとなって爆発した。でも相手はあのグレイフィア。最強の女王(クイーン)の名は伊達じゃなく、力ではとても敵わない。だからいくら不満があっても私にはどうする事も出来なかった。そんな時、

 

「成る程、話は分かりました」

 

 私達の元に救世主が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 その日、グレイフィア()ヴェネラナ(奥様)に呼び出された。

 

「良く来たわねグレイフィア。そこにお座りなさい」

 

 奥様は私にご自分の対面に座るよう促すが、メイドとしてお仕えする主の対面に座るなんて不作法、する訳にはいかない。

 

「いえ、私はここで──「いいからお座りなさい。これは命令よ、グレイフィア」・・・・かしこまりました。では、失礼致します」

 

 断る私に命令してまで奥様は私を座らせる。なにやら私に話があるようですが・・・・

 

「近頃随分とリアス達に厳しくしているようね?」

 

 ! 成る程、お嬢様が奥様に泣きついたという訳か・・・・でも、

 

「私は私の職責に則ってお嬢様方に“性活指導”をしています。──そもそもお嬢様達の性事情はあまりに乱れています。朝方まで複数人で性交して翌日の仕事に差し支えたり、邸のあちこちで昼間から、しかも人目に付く所で性交するなんて邸内の風紀を乱す行為、許す訳には参りません」

 

 私は普段から感じている憤りを奥様に告げた。そんな私に奥様は苦笑を浮かべる。

 

「まあね・・・・でも多少は大目に見てあげてもいいんじゃないかしら? あの娘達はまだ若いわ。あの娘達が覚えたての性の快楽に夢中になるのはある意味仕方がない事よ。貴女だって身に覚えがあるんじゃない?」

 

「いえ、私は・・・・・・」

 

 奥様は私の事情(・・)を知ってるくせに・・・・全く、お人が悪い。

 はっきり言って私は性交が、セックスが好きではない。いや、それこそ事情(・・)があって嫌悪感すら抱いている。

 サーゼクスの事は無論愛している・・・・でもそれとこれとは話が別、夫に抱かれ幸福を感じた事はあっても、セックスが気持ちいいと感じた事は一度もない。

 だから私にはお嬢様達の乱れようが理解出来ない。何が良くてあんなに夢中になるのか・・・・あれじゃあまるで盛りの付いたサルみたいだ。 

 

「そうだったわね・・・・・・ねぇグレイフィア、確かにリアス達は乱れているけど、貴女の“性活指導”もまた厳しすぎる。私には貴女がまるで自分が望んでも得られない快楽を得ているリアス達を羨んでるように見えるわ」

 

「なっ───!!?」

 

「貴女の事情は分かってるし、それについては申し訳なく思う。でもだからといって若いあの娘達に自分の満たされない感情をぶつけるのは間違ってると思うの」

 

「そんな!? 私、私は・・・・・・」

 

 奥様の言葉を否定したかったが、同時にそれが真実であると私は心の奥底で認めてしまっていた。

 セックスを嫌悪する気持ちが私の満たされない鬱屈した思いと相俟って、お嬢様達を取り締まっていたのかと思うとショックを隠せない。

 だが、そんな私に奥様は更なる衝撃的な提案をした。

 

「グレイフィア、貴女一輝さんと寝てみなさい」

 

 

 

 

 

 ヴェネラナ()の提案にグレイフィアが目と口を0にして呆然としている。この娘のこんな表情珍しいわね。でも無理はないか。

 

「お、奥様? 一体どういう・・・・・・?」

 

 呆然と聞き返すグレイフィア。

 

「どうって、そのままの意味よ。リアス達が夢中になっている一輝さんとのセックスを貴女も経験してみたらどうかなって」

 

 ワナワナと震えていたグレイフィアが絶叫した。

 

「何をおっしゃっているんです!? 一輝さんはリアスの、義妹(いもうと)の婚約者。つまりは義弟(おとうと)になるんですよ!? その一輝さんと寝ろだなんて・・・・!」

 

「あら? 私は寝たわよ、一輝さんと」

 

「はぁ・・・・・・・・って、はあ!!?」

 

 さらっと溢した私の言葉にグレイフィアがフリーズする。この娘こんなに面白かったのね。一分程経過して、ようやくグレイフィアが再起動した。

 

「あの、お、奥様? それって一緒に寝ただけってオチですよね・・・・?」

 

「何を言ってるの。セックスしたに決まってるじゃない」 

 

「セッ───!?」

 

 狼狽えるグレイフィアに私は一輝さんとの馴れ初めを話した。

 メイド達の噂で聞いた一輝さんとリアスのセックスを見に行った事。今後の為に二人に技術(テク)を指導した事。向上した二人のセックスに見惚れて股間を濡らしたのを一輝さんに見付かり、そのままセックスしてしまった事。そして、今まで味わった事のない快楽を身体に刻まれた事。

 最初は狼狽えていたグレイフィアも話を聞く内に興味が湧いたのか大人しくなり、何やら考え込んでいる。

 思えばこの娘も不憫な娘だ。一途な愛情故に息子(サーゼクス)以外の男を知らず、それ故にセックスの快楽を知らずに生きて来た。私のように複数の男と関係していれば違ったかもしれないが、今となってはこの娘が他の男と関係するのは難しいだろう。『銀髪の殲滅女王(クイーン・オブ・ディバウア)』──最強の女王としてグレイフィアは有名になりすぎた。今のあの娘が男を誘いでもしたら、たちまちサーゼクス(魔王)醜聞(スキャンダル)として広がり、折角大人しくなった貴族至上主義者が息を吹き返してしまうだろう。

 でも身内なら? この邸内での事とするならば外に洩れる心配はない。そう考えると相手はやはり一輝さんしかいない。

 

「ねぇグレイフィア。貴女はサーゼクスの妻としてもミリキャスの母としても良くやっているわ。本来する必要のない当家のメイドをしながらね。でも義母(はは)として尋ねるわ。貴女は今幸せかしら?」

 

「お義母(かあ)様・・・・」

 

「私は貴女が心配なの。貴女が仕えてくれるお陰で私達はとても助かっているわ。でも貴女自身は? 貴女がそのメイド服を脱いで心から裸になれる時間はあるのかしら?」

 

「・・・・・・」 

 

 この娘がメイドを続ける理由なんてもうないのに、いつまで旧魔王派に属して敵対していた過去を引き摺っているのだろう。

 

「グレイフィア、貴女だって安らぎを、幸せを求めてもいいのよ。時には妻からも母からも、そしてメイドからも開放されて、ただの一人の女として自分の幸せを求めても・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

 私の言葉にグレイフィアは考えをまとめるように俯く。何も絶対に一輝さんと寝ろという訳じゃない。ただ、私を変えたようにこの娘も変えてくれたら──もしくはその切っ掛けになってくれたらいい、そう期待しながら私はグレイフィア()が答えを出すのを待つ。

 やがて答えが出たのかグレイフィアは私を真っ直ぐに見つめて、そして───

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、私は一輝さんの部屋の前にいた。

 奥様、いやお義母様の薦めるままに一輝さんに抱かれる為に。

 この選択が倫理的にも人道的に間違ってる事は分かっている。私は人妻でありながら夫も息子も裏切って、義弟(おとうと)とはいえ他の男に抱かれようというのだから。

 でももう認めてしまおう。私は愛する(ひと)に身体を委ね、私の知らない性の快楽を謳歌するリアス達が羨ましかったのだと。 

 私はとある事情があってセックスが気持ちいいと感じた事がない。お義母様は一輝さんから与えられた快楽の凄さを語ってくれたが、果たしてどうだろうか。私は期待と不安と諦めを胸に扉をノックした。

 

 「どうぞ」と返事があってから私は一輝さんの部屋に入る。

 今夜は一輝さんの身体を休ませる、とリアス達には言い聞かせたから部屋には一輝さん以外誰もいない。これも日頃の教育の賜物だろう。

 お義母様が話を通しておいてくれたからか、一輝さんはベッドから立ち上がり、私を迎えてくれた。

 

「その、ヴェネラナ様から話は聞いてるんですが、本当にいいんですか?」

 

「はい───一輝さん、私を抱いて下さい」

 

 私がそう言うと、頭をガリガリと掻いてから大きく息を吐いた。

 

「分かりました。えー、とキスはOKですか?」

 

「はい。構いません───ふむぅ」

 

 OKと言ったら一輝さんはいきなり私の唇をキスで塞いだ。そのまま啄むようにキスしながら、一輝さんは私を抱きしめ身体を撫で回す。一輝さんの手が胸やお尻をまさぐっても気持ちいいという感覚は沸いて来ない。やっぱり駄目みたいだ。

 やがて私が何の反応も返さないのを訝しく思ったのか、一輝さんの手が止まった。

 

「グレイフィアさん・・・・?」

 

「すいません。先に言っておくべきでしたが───私は不感症なんです」

 

 

 

 

 

 

 グレイフィアの告白に一輝は戸惑いを隠せなかった。

 

(不感症って・・・・それじゃあ今までどうしてたんだ?)

 

 当然の如く疑問が浮かぶが、訊ねる前にグレイフィア自身が答える。

 

「ですから私は今までセックスで感じた事がないんです」

 

「えっと、それはサーゼクス様相手もですか?」

 

「はい。というより私は夫以外知りません」

 

「そう、なんですか・・・・」

 

(これは気合いを入れ直さないとな・・・・)

 

 一輝は気持ちを新たにグレイフィアに話しかけた。

 

「分かりました。俺、グレイフィアさんが感じられるように頑張りますから」

 

「・・・・はい、よろしくお願いします」

 

 そんな一輝にグレイフィアは微笑んだ。

 

 

 

 

 

「それじゃあ、いきます」

 

「はい、どうぞ」

 

 一輝はグレイフィアのメイド服のリボンタイをほどきブラウスを肌けると、純白のブラに包まれたグレイフィアの胸が現れた。一輝はゴクリと唾を飲んでフロントホックを外すとグレイフィアのおっぱいがポロンと零れ落ちた。

 

(綺麗だな・・・・・・)

 

 グレイフィアのおっぱいは大きさといい形といい、まさに理想のおっぱいそのものだった。乳首も鮮やかなローズピンクで肌の白さとのコントラストが映えて、その美しさに一輝は暫し見惚れていた。

 

「一輝さん?」

 

「! あぁ、すいません。あまりに綺麗だからつい見惚れていました」

 

「そう、ですか? ありがとうございます」 

 

 流石のグレイフィアもおっぱいをガン見されるのは恥ずかしいのか、その頬はほんのりと赤く染まっていた。

 

(そうか・・・・不感症といはいえ“恥ずかしい”とは感じてるんだよな・・・・だったらそっちから攻めてみるか)

 

 一輝はグレイフィア攻略の糸口を掴んだ気がした。

 

「それじゃあ触りますね」

 

「はい、どうぞ・・・・」 

 

 一輝は背後に回り、後ろからグレイフィアのおっぱいに手を伸ばした。

 

「おお、凄いです、グレイフィアさん」

 

「な、何がですか!?」

 

「グレイフィアさんのおっぱい、凄く柔らかいです。ほら、指が沈み込んでグニグニと形を変えるし、肌触りも滑らかで触ってるとスッゴく気持ちいいんです。まさに最高のおっぱいですね」

 

「そ、そうですか・・・・?」

 

 一輝のベタ褒めにグレイフィアの顔は益々赤くなる。その美貌を褒め讃えられる事も多いグレイフィアだが、こんな風に直接褒められたのは若い頃、サーゼクスにされて以来だった。

 

(何かしら・・・・不思議な気持ち・・・・)

 

 一輝はグレイフィアを褒めながらおっぱいを揉み続ける。グレイフィアは今まで感じた事のない不思議な感覚に熱い息を吐いた。

 

(んん・・・・胸を揉まれて感じてる訳じゃないけど

・・・・何だろう、心地いい・・・・?)

 

 初めての感覚にグレイフィアは戸惑う。

 それから延々と揉み続けるとグレイフィアのおっぱいは乳首が微かに勃ち始めた。

 

「あれ? グレイフィアさん、乳首が勃って来ましたよ。もしかして気持ち良くなって来ました?」

 

「いえ、これはただの生理現象です。今までもくすぐったくて勃つ事もありましたし・・・・」

 

 申し訳なさそうにグレイフィアが呟く。

 グレイフィアは確かに性的な快感は感じてないようだがマッサージ的な心地良さは感じているらしく、血行が良くなって身体が熱を帯びて来た。それと共に芳しい芳香が周囲に漂い始める。

 

「ふむ・・・・成る程、それじゃあそろそろ下の方、いいですか?」

 

「あ、はい。・・・・どうぞ」

 

 グレイフィアは一輝が触り易いよう軽く膝を立てて、自ら大きく股を開く。

 一輝はグレイフィアを寝かせて正面に回るとスカートを捲り上げた。

 

「───!」

 

 途端に濃密な女の香りが広がる。純白のショーツに包まれたグレイフィアの股間は同色のガーターベルトやストッキングが更なる色気を掻き立てる。あまりの色気と芳香に一輝の股間が大きさを増した。

 ほうっと息を吐き、一輝は純白のショーツに触れる。ショーツは湿っていたが残念ながら濡れている訳じゃなく、汗で湿ってるだけだった。

 

「色っぽい下着ですね。それに・・・・スンスン、石鹸と汗の混ざったいい匂いがします」

 

「や!? 一輝さん、そんな所の匂い嗅がないで!?」

 

 股間の匂いを嗅がれ、グレイフィアは恥ずかしさに思わず股を閉じる。だがそこには当然一輝の頭があり、グレイフィアの行為は計らずも一輝を自らの股間へと導く結果となった。

 

「ふんん───!?」

 

 顔面を股間と太股に挟まれた一輝は柔らかな感触と甘酸っぱい匂いに酔いしれ、ショーツの上からグレイフィアの股間に舌を這わせる。

 

「んん・・・・やだ、気持ち悪い・・・・!」

 

 自らの汗と一輝の唾液に濡れた下着が肌に貼り付いてグレイフィアは不快感に顔を歪める。

 だがそんなグレイフィアの様子に気付かず、一輝はショーツをずらして割れ目に指を挿入れた。

 

「あっ、一輝さん、痛い・・・・」

 

 まだ充分に濡れていないグレイフィアの膣は一輝の進入を拒もうと指を押し返す。一輝は一旦指を抜くとその指を鼻先に近づけ、鼻を鳴らして臭いを嗅いだ。

 

「やだ、やめて一輝さん!」

 

 自分の膣内の臭いを嗅がれ、グレイフィアの顔は真っ赤に染まる。だが一輝はそれだけでは終わらず、グレイフィアに見せつけるようにその指を口に入れ、味わうように舐めしゃぶった。

 

「うん、美味い」

 

 味の感想を聞かされ、グレイフィアは呆然とした。かつてサーゼクスにも股間を舐められた事はあったが、快感どころか嫌悪すら感じた。その事を思い出してグレイフィアの声に固さが宿る。

 

「やめて下さい一輝さん。私はそういった変態的行為を好みません」

 

 声の固さに気づき、一輝はグレイフィアの様子を伺う。

 

(これ以上やると本当に拒絶されそうだな。うん、ならば───)

 

「それは失礼しました。でも指は挿入()れさせて下さい。膣内(なか)が濡れてないとお互い痛いだけですから」

 

「・・・・分かりました。続けて下さい」

 

 グレイフィアは再び股を開いた。一輝はたっぷりと指にまぶした唾液を潤滑液にして、グレイフィアの膣内に再び挿入した。

 

「ふうん、んん・・・・」

 

 異物が胎内に入って来る感触にグレイフィアは眉をひそめる。

 

(やっぱりこんなの気持ちいいなんて思えない・・・・)

 

 やっぱり一輝でも駄目だったかとグレイフィアは諦めからため息を吐く。だが一輝は全く諦めてはいなかった。

 

(くすぐったいとか痛いとかは感じてるんだ。感覚が鈍い訳じゃない筈だ。グレイフィアさんの身体はまだ眠っているだけ。探すんだ、どこかに必ずあるグレイフィアさんを目覚めさせる弱点を──)

 

 一輝の必死の捜索は続いた。丁寧にそして丹念に膣襞の一本一本を探るように指を這わせる。

 やがて時間が過ぎ、膣内が生理的反応でうっすらと濡れ始めた頃、グレイフィアが口を開いた。

 

「一輝さん、もう準備は出来ましたから挿入して下さい」

 

「でもグレイフィアさん──」

 

「いいんです。一輝さんもそのままでは辛いでしょう? ただ、私達が悪魔だといっても妊娠の危険はありますから、ゴムは着けて下さいね」

 

 一輝の股間は大きく盛り上がっていて、見るからに辛そうだった。

 

(ちくしょう、駄目だったか───)

 

 と、一輝が諦めかけたその時、奥の方に入れていた指先にザラッとした感触がした。

 

「んひっ!?」

 

 その途端にグレイフィアの腰がビクンと震える。

 

「「───!!?」」

 

 思わず顔を見合わせる二人。そして、

 

(見つけた───!)

 

 ようやく見つけた弱点を一輝は重点的に責める。優しく、かつリズミカルに弱点──Gスポットを刺激した。

 

「んひぃ!? ひあぁ!? な、何これ、全身が痺れて・・・・やだ、ふうぅぅん!?」

 

「それが感じるって事です」

 

「あぁ、これが“感じる”って事・・・・? ふああっ、こ、声が勝手に出て・・・・んん、止まらない、あああっ!」

 

「いいんですよ。今まで感じなかった分、素直に声を上げて感じて下さい!」

 

「んひうっ、ああ、やだ、止まって一輝さん・・・・感じすぎておかしくなりそうなの・・・・お願い、一回止まって!」

 

 混乱した状況を整理したくてグレイフィアは懇願するが、一輝はそうはさせじとGスポットを叩く指の動きを速くした。

 

「んあああっ!? 止まってって言ったのに

・・・・あひぃ、何で激しくするのおぉっ!?」

 

「どうです? 気持ちいいって感覚は?」

 

「あああっ、駄目・・・・これ駄目・・・・! 気持ち良くって頭バカになるぅっ!?」

 

 グレイフィアの膣内は今や熱い淫蜜を分泌し、指を動かす度にクチュクチュと粘り気のある水音を立てている。

 グレイフィア自身も感じて来たからか、乳首がピンと勃ち上がり、全身汗に塗れ、強烈な女のフェロモンを撒き散らしている。  

 

(そろそろ頃合いか・・・・?)

 

 グレイフィアの初めての絶頂が近いと察した一輝は、興奮しながらもどこか冷静にその時を待つ。

 

「ああ、全身がガクガクして、気持ちいいのが止まらないの・・・・ああ、駄目、駄目、何か変なの、何か気持ちいいのがいっぱいになって・・・・んああ、く、来る、何か来るぅっ!?」

 

「大丈夫、それが“絶頂(イク)”って感覚です。感じるままにその感覚を受け入れて下さい」

 

「ふああっ、い、イク・・・・? これがイクって感覚・・・・ああ、ああ! い、イク、イクの、私、イッッックぅぅぅ~~~~~!!!?」

 

 プッシャアアァァッッ!!

 

 身体を弓なりに反らしたグレイフィアは電気ショックを受けたように全身を震わせると、盛大に潮を噴きながら初めての絶頂を迎えた。

 

「ああっ!? ごめんなさい一輝さん!」

 

 噴き上がった潮が正面にいた一輝の身体に降りかかる。だが一輝は嫌な顔ひとつせず、どこか恍惚としていた(実際一輝にはご褒美だった)。

 

「いえ・・・・それよりどうでした? 初めての絶頂は?」

 

「はい・・・・とても気持ち良───!?」

 

 会話の途中でグレイフィアの声が止まる。

 

「グレイフィアさん?」

 

「あ、ウソ、こんな時に・・・・イヤ、ダメ、ああ、一輝さん、避けてええええっっ!!」

 

 チョロチョロ・・・・シャアアアァァァ───

 

「あああっ! イヤぁ・・・・ごめんなさい、ごめんなさい一輝さん・・・・・・」

 

 潮噴きが止まると同時にグレイフィアは突如込み上げる尿意を堪えきれず、一輝に向かって放尿した。

 

(ああ・・・・この年でおしっこを漏らすなんて・・・・あまつさえそれを一輝さんに・・・・ああ、ごめんなさい、本当にごめんなさい・・・・)

 

 込み上げる悦楽と羞恥心の中、自身のおしっこに濡れる一輝を見つめながら、グレイフィアは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

「ここは・・・・?」

 

 目を覚ますとグレイフィアは自分が何をしていたのか思い出し、顔を青くする。

 

「私とんでもない事を・・・・・・! 一輝さんは!?」

 

 身体を起こしたグレイフィアは着ていたメイド服が脱がされている事に初めて気づいた。下着も脱がされ、身に着けているのはガーターベルトとストッキング、それと頭のホワイトブリムだけだった。ベッドには何枚もバスタオルが敷かれ、微かに残るアンモニア臭があれが現実だとグレイフィアに知らしめていた。

 

「あ、グレイフィアさん、目が覚めましたか?」

 

「一輝さん・・・・・」

 

 一輝の姿を確認したグレイフィアはポロポロと涙を零した。

 

「ちょっ───グレイフィアさん!?」

 

 慌てて駆け寄る一輝にグレイフィアは涙混じりに謝罪する。

 

「ごめんなさい一輝さん。貴方は私を気持ち良くしてくれたのに、その貴方におしっこをかけて、あまつさえその後始末まで押し付けるなんて・・・・・・私は最低です。どうか一輝さんの気の済むようにして下さい・・・・」

 

 涙ながらに話すグレイフィアを一輝は優しく抱きしめると、落ち着かせるように頭を撫でる。

 

「一輝さん・・・・?」

 

「落ち着いて下さい。俺は気にしてませんから。いえ、寧ろ俺が謝らないと」

 

「? どうして貴方が謝るの?」

 

 グレイフィアは不思議そうな顔で訊ねる。

 

「激しい快感っていうのは尿意の後に来るものだそうで、尿意を我慢すると上手く快感を得られない事もあるんだそうです。だから絶頂した後、おしっこを漏らしてしまう事も良くあるんです」

 

「そう・・・・なんですか?」

 

「はい。・・・・因みにリアス達だって漏らしちゃう事あるんですよ。あ、これ俺が話したって内緒ですよ?」

 

「あ、はい・・・・」

 

 一輝の説明を聞いてグレイフィアは決して自分が異常な訳じゃないと知ってホっと胸を撫で下ろした。

 

「でもおしっこをかけてしまったのは事実だわ」

 

「いいんですよ。寧ろご褒美でしたし」

 

 再び謝ろうとしたグレイフィアは一輝のカミングアウトに思考が止まった。

 

「・・・・・・えっ、と一輝さん? そういうご趣味が・・・・?」

 

 おそるおそる訊ねるグレイフィアに一輝は慌てて説明する。

 

「いや!? そういう意味じゃないんです! その、何て言えばいいのかな・・・・・・えっと、普段はおしっこ何てしません、て顔で澄ましてるグレイフィアさんが魅せる恥ずかしい姿がツボっていうか、普段は綺麗とか美しいとか云われるだろうグレイフィアさんが魅せる可愛らしさにグッと来るというか、あれ?俺何言ってるんだろう・・・・?」

 

 上手く説明出来ず狼狽える一輝にグレイフィアは、

 

「プッ、ククク・・・・」

 

「グレイフィアさん?」

 

 堪えきれず、笑い声を漏らした。

 

「そう、一輝さんは女を辱しめて悦ぶ変態さんなのね?」

 

「いやぁ、その・・・・」

 

「違うの?」

 

「ああ、そうです! どうせ俺は変態ですよ! でもね、男はすべからく変態───」

 

「ウフ、ウフフフ、アハハハッ」

 

 グレイフィアの楽し気な笑い声が室内に響く。その時のグレイフィアの笑顔はあどけない、心底楽しそうな笑顔だった。その笑顔に毒気を抜かれ、一輝もまた嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 そして二人は再びベッドに移動した。

 仰向けに寝たグレイフィアの上に一輝が覆い被さり見つめ合う二人。二人の間に最初の頃の固さはなく、リラックスした雰囲気が流れていた。

 

「それじゃあ、行きますよ」

 

「はい。・・・・来て下さい」

 

 一言だけ言葉を交わして一輝はグレイフィアの濡れた割れ目に馴染ませるようにゴムを着けた肉棒を這わす。そして、

 

「い゛!?」

 

 グレイフィアの膣内へ一気に突き入れた。

 

「んあああっ、は、挿入って来たぁ~~~!」

 

 さっき見つけたGスポットを目掛けて一輝は突き入れる。だが一輝の巨根はGスポットごと周りの膣肉を圧し拡げ、奥へと突き進む。

 

「んあぁ!?・・・・・・何これぇ・・・・? 膣全体が・・・・あ、うぅん!」

 

(あれ? もしかしてGスポットだけじゃなく、膣全体で感じてる?)

 

 グレイフィアの反応に不感症が解消され始めてると感じた一輝は、膣全体を刺激するように激しく動き始める。

 

「んあああっ! ウソ・・・・私感じてる! 一輝さんのぺニスが擦れる所、全部気持ちいいのぉっ!!」

 

 快感を味わう経験がなかったからか、目覚めたグレイフィアの膣は刺激を求めて貪欲に蠢く。

 

「グレイフィアさん! グレイフィアさんの膣内(なか)、キュウって締め付けて、スッゴく気持ちいいです!」

 

「ああ、ああっ! 私も! 私も気持ちいい! 一輝さんのぺニス、スッゴく気持ちいいの!」

 

「グレイフィアさん! ぺニスじゃなくてチンポです!」

 

「あああっ! ち、チンポぉ! チンポいい、チンポいい、チンポいいのぉっ!!」

 

 グレイフィアの腰がビクビクと震える。何度も小さい波が来ているようで、震える度に一輝の肉棒を締め付ける。そして、

 

「あああああっ! 私イク! 一輝さんのチンポで、私またイク! イク、イクイクイク、イッッックぅ~~~~~!!!❤」

 

「くあぁっ、俺も射精す()る!!」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ブビューーーーー!!

 

「お゛、あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~っっ!!」

 

(何これぇ・・・・・・熱い何かが身体中を駆け巡って

・・・・あ、ダメ、また出ちゃうぅっ!!❤)

 

 プシャアアァァッッ!!

 

 快楽のあまりグレイフィアはまたしても潮を噴いた。

 

「あは、はえぇ・・・・」

 

 意味不明な言葉を呟きながらアヘ顔を晒すグレイフィア。そこには『最強の女王』たる威厳は欠片もなかった。

 

「ん・・・・よっ、と」

 

 肉棒を抜いた一輝は使用済みのゴムを外して口を結ぶ。そして枕元に置くと新しいゴムを装着した。

 

「さぁグレイフィアさん。第二ラウンドを始めますよ」

 

「ふえ!?」

 

 これで終わりだと思っていたグレイフィアは驚きに変な声を上げる。

 

「え? 待って一輝さん。これで終わりじゃ・・・・?」

 

 そう言いかけて一輝を見たグレイフィアは驚愕した。一輝の肉棒は未だ威容を保ったまま、雄々しくそそり勃っていた。

 まじまじと見つめるグレイフィアの視線に気づいた一輝は苦笑を浮かべつつ、頭を掻いた。

 

「ああ、俺って一回位じゃ満足出来ないんですよ。だから普段は二人以上でリアス達は相手をしてくれてるんです」

 

「なっ!?」

 

 グレイフィアはリアス達が一人で何回もしたり、複数人でする意味をやっと理解した。

 

(あれは性欲に溺れていた訳じゃなく、意味のある行動だったのね・・・・邪魔して悪い事をしたわ)

 

 反省するグレイフィアだったが、リアス達はそういう建前でセックスに夢中になっていたのは事実なのだから、謝る必要はないのだが・・・・

 

 

 閑話休題。

 

 

「それじゃあ、行きますよ」

 

「あっ、待って一輝さん。少しだけ休ませて・・・・」

 

「さっき俺の気の済むようにしてくれって言いましたよね?」

 

「あっ・・・・・・」

 

「それじゃあ気の済むまで付き合って下さいね」

 

 

 

 

 

 

 それから───

 

 

 

「んあああああっっ!!」

 

 後背位で挿入され、グレイフィアは絶叫する。

 

「ほら、もっと腰を振って!」

 

 揺れるお尻を軽く叩きながら、激しく腰を振って一輝はグレイフィアの膣内(なか)を蹂躙する。正常位とは体位が違うと当たる所も違うのだと、グレイフィアは初めて知った。

 

「あああ、イク、またイクぅ~~~~~!!」

 

 ゴム越しに熱い精液が拡がるのを感じて、グレイフィアは絶頂し(イっ)た。

 

 

 

「ああ、ああっ! これ・・・・この体位いいの・・・・!」

 

 対面座位で繋がる二人。豊満なグレイフィアのおっぱいに顔を埋め、一輝は激しく腰を振る。

 グレイフィアのおっぱいは不感症だったのが信じられない位乳首がすっかり勃起して、一輝が口に含むと気持ち良さそうに嬌声を上げる。

 

「はあぁぁん、おっぱい・・・・乳首も・・・・あん、噛んだら・・・・あぁん、ダメぇ、乳首噛まれてイッちゃうぅーーーーっっ!!」

 

 グレイフィアの脚が交差して一輝の腰に巻き付く。決して離れぬよう、きつく一輝にしがみ付いてグレイフィアは絶頂し(イっ)た。

 

 

 

 駅弁の態勢で繋がると、一輝はグレイフィアを抱えて歩き出す。

 

「んああっ!? んん・・・・一輝さん? どこへ・・・・ふぅん!」

 

 歩く度に振動が膣内(なか)に伝わり、喘ぎ声を上げながらグレイフィアは訊ねる。 

 一輝は何も答えず、目的地に向かって歩き続ける。やがてグレイフィアにも目的地が分かって来た。

 

「え? ち、ちょっと一輝さん!? そっちは───!?」

 

「あまり大声を上げると気づかれますよ?」

 

 一輝は悪戯っぽく笑うと、バルコニーへの扉を開いて外に出る。

 グレイフィアは咄嗟に一輝の胸に顔を埋めた。

 

「何で外に出るの!? 誰かに観られたら───」

 

「興奮します?」

 

「!? っもう、バカぁ・・・・!」

 

 小声で抗議しながら一輝にしがみ付き、快感を享受するグレイフィア。その時グレイフィアは庭に誰かいる事に気づいた。

 

(あれはゼノヴィアさん!? そうだ、この時間は───!?)

 

 庭ではゼノヴィアが剣を振っていた。シトリー戦でリタイヤしたのが余程悔しかったのか、彼女が毎晩この時間に訓練しているのをグレイフィアは知っていた。

 外でする事でお説教したというのに、もしゼノヴィアに見つかったらどんな目で見られるか──

 

(絶対に知られる訳にはいかない───!)

 

 グレイフィアは一輝にしがみ付き、声を上げないように唇を噛む。

 一輝はグレイフィアが激しくして欲しいのだと勘違いし、グレイフィアの身体を抱え直し、下から強く突き上げた。

 

「んふぅ!? ふむん、ふぅん! うううん!!」

 

 声を上げるのを我慢しているグレイフィアに是が非でも声を上げさせようと、一輝は更に深く強く突き上げた。

 

「んひぃっ!? ダメぇ、お願い一輝さん・・・・今は、今はダメ、ダメなの、んんん! ダメなのにぃ・・・・・・んああああーーーーっっ!!❤」

 

 我慢出来ずグレイフィアが声を上げて絶頂し(イっ)た。

 ゼノヴィアは声が聞こえたのか、辺りを見回している。ゼノヴィアから見えないように一輝はしゃがんでその身を隠した。

 グレイフィアは荒い息を吐きながら、ゾクゾクと背筋を駆け上がる奇妙な感覚に身体を震わせる。

 

(もし誰かに見られていたら・・・・私どうなるんだろう・・・・・・?)

 

 初めて感じるスリルに、グレイフィアはゼノヴィアが外でしたがる理由が分かった気がした。

 

 

 

「はうん、ふおぉ、あぁん、いい! 奥まで・・・・いっぱいにぃ・・・・!!」

 

 部屋の扉に凭れかけ、立ちバックで繋がる二人。一輝の激しい突き入れに、グレイフィアは気持ち良さそうな嬌声を上げる。

 

「グレイフィアさん、不感症はすっかり治ったみたいですね?」

 

「ああ、はい・・・・あんなに何も感じなかったのに、今は・・・・はぁん! か、一輝さんのぺニ・・・・ち、チンポが気持ちいいんですぅっ!!」

 

 グレイフィアは恥ずかしそうに顔を伏せながらも快楽を感じられるようになったのが嬉しいのか、素直に答える。

 そんなグレイフィアに一輝は悪戯っぽい笑みを向けた。

 

「そうですよねえ・・・・だって一人で腰を振ってるんだもんなぁ?」

 

「えっ!?」

 

 グレイフィアが慌てて首を後ろに向けると、腰を振っているのは自分だけで一輝は一切の動きを止めていた。

 

「ああ、そんな・・・・」

 

 グレイフィアはその光景に愕然とした。

 

「そんなに一生懸命腰を振って・・・・俺のチンポ、そんなに気に入ってくれました?」

 

「ああ、ううう・・・・」

 

(何て浅ましいの私って・・・・不感症が治ったと思ったら自分から腰を振ってチンポを求めるなんて・・・・でももう我慢出来ない。一輝さんのチンポが欲しい! この快楽を知ってしまったら、もうあの頃には戻れないわ!)

 

 今まで不感症故に性の快楽を知らなかったグレイフィア。彼女にとって初めて知った性の快楽は、まるで麻薬のように彼女の心を狂わせていた。

 

(ああ、ごめんなさいリアス。貴女達の気持ちがようやく分かったわ。お義母様の言う通りだった。一輝さんのチンポの味を知ってしまったら私はもう・・・・)

 

 人知れず覚悟を決めたグレイフィアは自ら腰を振って一輝に懇願する。

 

「お願い一輝さん! 動いて、貴方のおチンポで私を気持ち良くして!!」

 

「ん~、もう少し具体的に」

 

 だが一輝は更にグレイフィアを辱しめようと未だ動かない。

 

「~~~! か、一輝さんの大きなチンポで私・・・・グレイフィアのグチョグチョに濡れたお、おマンコをいっぱいかき混ぜて欲しいの! 一輝さんのおチンポでグレイフィアをいっぱいイかせてぇ! お願い──はおぉぉぉんっっ!!❤」

 

 台詞の途中で一輝はグレイフィアのおっぱいを鷲掴みすると、膣内へと激しく突き入れた。そのままグレイフィアをイかせようと一気にスパートをかける。

 

「はぁん! いい、いいのこれ!・・・・あぁん、はぁん、い、イク・・・・一輝さんのチンポ、気持ち良くって私・・・・んああ、イク、イク、イッッックぅ~~~~!!❤」

 

 ゴム越しに熱い衝撃を感じてグレイフィアは絶頂し(イっ)た。防音性の高い扉の向こうに聞こえる程の絶叫を上げて・・・・

 

 

 

「はぁん、あぁん、ああ、これ・・・・奥まで当たって・・・・んんん! い、いいの・・・・」

 

 騎上位で繋がる二人。グレイフィアは一輝に跨がり、気持ち良さそうに腰を振っている。

 

「上手いですよグレイフィアさん。そのまま自分の感じる所を探しながら動いてみて下さい」

 

「ああ、はい・・・・んん、こんな感じかしら・・・・はぁん! か、一輝さんのチンポが気持ちいい所に当たって・・・・あぁぁ」

 

 グレイフィアは貪欲に快楽を求め、自ら積極的に腰を動かしている。その顔は恍惚としていて、今や妻でも母でもない一人の女、いや雌の顔をしていた。

 

「あぁん、一輝さん、もうイキそう・・・・イってもいい?」

 

「ん、ちょっと待って。俺ももうすぐだから一緒にイこう」

 

「あぁ、うん・・・・一緒、一緒にぃ・・・・!」

 

 一輝も動き出し、二人の動きが同調する。

 

「あぁ、ああ、一輝さん気持ちいいわ・・・・」

 

「うん。俺もグレイフィアさんの膣内(なか)、凄く気持ちいいです」

 

 一輝の視界で銀色の三つ編みと柔らかそうな爆乳が揺れる。視線が交差すると、グレイフィアは幸せそうに笑った。そして、

 

「くあぁ、射精す()る!」

 

「んあぁぁぁんっっ!!❤」 

 

 微笑みを浮かべたまま、グレイフィアは絶頂し(イっ)た。

 

 

 

 

 

 そして───

 

 

 一輝は精液のたっぷり入った使用済みのゴムの口を結んでグレイフィアの枕元に置く。総数十二、グレイフィアが用意したゴムは全て使い切っていた。

 

「ゴムがもう無いな。今夜は終わりですね」

 

「もう、終わり・・・・?」

 

 汗だくでベッドに倒れていたグレイフィアは一輝の言葉に上半身を起こした。

 

「ええ。これ以上は妊娠の危険がありますから」

 

 そう言って一輝は仰向けにベッドに倒れた。一輝の肉棒は十二回も射精したというのに、未だに硬さと大きさを保ちそそり勃っている。

 その威容にグレイフィアは無意識に唾を飲んだ。

 

「大丈夫、グレイフィアさんの不感症は治ってますよ。これからはサーゼクス様としてもきっと感じられます」

 

 不安そうなグレイフィアを励ますように一輝は笑顔を浮かべる。だが、グレイフィアの心は曇ったままだった。なぜなら───

 

(これで終わり?・・・・そうよね、私は人妻なのだし、これ以上夫や義妹を裏切る訳には・・・・でも、本当にいいのグレイフィア? この夜が明けたらもう一輝さんとは出来ないのよ? 本当にこれでいいの!?)

 

 そう、グレイフィアが不安そうにしていたのは不感症云々ではなく、もう一輝と出来ないと思ったからだった。それ位、初めて快楽を与えてくれた一輝とのセックスに、グレイフィアは嵌まっていた。

 

 

『グレイフィア、貴女だって安らぎを、幸せを求めてもいいのよ。時には妻からも母からも、そしてメイドからも開放されて、ただの一人の女として自分の幸せを求めても・・・・』

 

 

 その時グレイフィアの脳裏に義母(ヴェネラナ)の声が甦った。

 

(そうだわ。お義母様の言う通り、今だけは一人の女として───)

 

 決意を固めたグレイフィアは未だそそり勃つ一輝の肉棒に顔を寄せた。

 

 

 

 

 

 

「グ、グレイフィアさん!?」

 

 突然肉棒に感じた刺激に一輝は驚愕した。

 

「はぶぅ・・・・ちゅ、ふむん、むふ、むぅ・・・・ちゅぷ、ちゅぷ・・・・あぅむ、ちゅ」

 

 情事の終わりを告げたばかりだと言うのに、グレイフィアがフェラチオをしてるのだ。

 

「ちゅぱっ、んん・・・・一輝さん、お願いです。もう一度これを・・・・貴方の逞しいおチンポを私のおマンコに入れて下さい」

 

 グレイフィアが肉棒から口を離して懇願する。その表情は憂いに満ち、堪らない色気があった。今までのグレイフィアにはなかったその色気に、一輝は思わず唾を飲んだ。

 

「分かりました。ではもうゴムがないから外に射精()しますね」  

 

 グレイフィアが不安がらぬよう一輝は言った。だが、

 

「いいえ。そのまま膣内(なか)射精()して下さい」

 

 きっぱりとグレイフィアが言い返した。

 

「グレイフィアさん!?・・・・いいんですか?」

 

「はい。お願いします」

 

 そう言うとグレイフィアは横たわり脚を大きく開いた。

 グレイフィアの秘部は銀色の繁みと大量の淫蜜でキラキラと光り、陰唇がパクパクと口を開いて一輝を誘っている。

 

「ひとつだけお願い。今だけグレイフィアと呼び捨てにして。貴方の女として扱って欲しいの」

 

「・・・・分かった。行くぞグレイフィア」

 

 一輝はそう言ってグレイフィアの膣内に突入した。

 

「んん、んああぁっ! 大きいのが入って・・・・うぅ、うあぁぁんっ!!❤」

 

(何これぇ・・・・・ち、違う。さっきまでとは全然違う! 一輝さんの硬さや熱さが直接伝わって・・・・ゴムがないだけでこんなに違うの!?)

 

 グレイフィアは初めての生の感触に衝撃を受けていた。

 

「ダメ・・・・こんなの耐えられない・・・・挿入()れられただけで・・・・い、イっちゃうぅっ!!」

 

 グレイフィアが絶頂してビクンと身体が跳ねる。グレイフィアの呼吸が落ち着くのを待って、一輝は動き出した。

 

「ひあぁぁぁんっ! 待って一輝さん、イったばかりだから・・・・あう、ううぅ・・・・うあぁぁぁんっ!!❤」

 

 一輝の肉棒がグレイフィアの膣内を掘削し、一気に子宮口まで到達する。

 

「あひぃぃぃっ! ダメぇ、またイク、イックぅ~~~~!!」

 

 間髪入れずにグレイフィアが続けて絶頂する。背中が美しいアーチを描き、雷の魔法を受けたように全身が震える。

 

「ヒュー、ヒュー・・・・」

 

 荒い呼吸を繰り返すだけでグレイフィアは何も言えない。汗だくの身体から濃密な女、いや雌の臭いを撒き散らし、一輝の官能を刺激する。

 

「あ・・・・?」

 

 一輝はグレイフィアの脚を抱えまんぐり返しの態勢を取ると、肉棒を抜けるギリギリまで引いて奥深くまで一気に貫いた。

 

「はあぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 一輝はグレイフィアの膣内(なか)を強く激しく突き下ろす。一輝から与えられる圧倒的な肉の快楽にグレイフィアは嵐に遭遇した小舟の如く、ただ翻弄されるだけだった。

 

「んああ、あぁん、ダメぇ・・・・気持ち良すぎて頭がおかしくなるぅ!!」

 

 助けを求めて伸ばしたグレイフィアの手に一輝の手が重なる。

 

「大丈夫、大丈夫だグレイフィア。俺が一緒だから安心して俺に身を委ねろ!」

 

 激しい快楽に怯えを感じていたグレイフィアを一輝は優しく包み込む。その温もりにグレイフィアはその身を委ねた。

 

「はぁ、あぁ、来る・・・・スゴいのが来ちゃう!」

 

「ああ、イクぞグレイフィア。どこに射精()して欲しい!?」

 

「あぁ、膣内(なか)膣内(なか)射精()して! 一輝の赤ちゃんの素、私に全部注ぎ込んでぇーーーっ!」

 

 一輝がラストスパートに入り、動きを更に速めた。

 

「くうぅ、射精()すぞグレイフィア!!」

 

射精()して! 一輝の精液、私のおマンコに全部射精()してぇっ!!」

 

 ブビュルルル! ビュル! ブビューーーー!!

 

 グレイフィアの膣内(なか)で一輝の肉棒が噴火した。

 

「おあぁぁぁっ! イッッックぅ~~~~!!」

 

 白いマグマが大量に雪崩れ込み、グレイフィアの子宮を白く染める。

 

「あ゛、お゛、お゛お゛お゛お゛お゛~~~~~ぅ❤」  

 

(あぁ、スゴい・・・・こんな気持ちいい事、私知らなかった・・・・こんなの忘れられない・・・・これが女の幸せ・・・・リアス達が嵌まるのも分かるわ・・・・)

 

 頭が真っ白になる程圧倒的な快楽の中、グレイフィアは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 明け方、一輝より先に目を覚ましたグレイフィアは眠る一輝をそのままに、魔力を用いて昨夜の情事の後始末をした。

 濡れたシーツを乾かし(特に自分の失禁跡は念入りに)、濃密な性臭を換気すると、使用済みのゴムを手に取った。

 

(・・・・これは仕舞っておきましょうか)

 

 一輝の精液が入った使用済みのゴムをグレイフィアは大事そうに亜空間に仕舞った。そしてメイド服を着ると、眠る一輝の顔を見つめる。

 

「ありがとう一輝さん。素敵だったわ」

 

 そう呟いて一輝の頬にキスするとそっと部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 ───余談ではあるが、リアス達へのグレイフィアの性活指導はこの日をもって解除された。

 リアス達は当然の如く喜んだが、何故解除されたか、その理由を知る者は誰もいなかった。 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

グレイフィア編、いかがだったでしょうか。
ご意見ご感想を聞かせて貰えたら幸いです。

次回はレイヴェル編、というかいくつかの閑話を集めた短編集みたいにしたいと思います。


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閑話3 冥界の騒がしい日常☆(レイヴェル)



前回のグレイフィア編、沢山の感想ありがとうございます。
彼女の人気の高さを改めて感じると共に概ね好評をいただき、ホっとしています。
次の原作第6巻のエピソードが終わったら、また閑話で続きを書きたいと思うので、気長にお待ち下さい。

今回の閑話は予告した通り短編集をお送りします。
後の伏線となる話もあるのでお楽しみ下さい。



 

 

3ー1 ヒーロー誕生

 

 

「ヒーローショー、ですか?」

 

「うん、そうなんだよ!」

 

 ある日、サーゼクス様に呼び出された一輝()はいきなりグレモリー家の新ビジネスとしてヒーローショーを企画していると教えられた。

 冥界の娯楽は少ない。何せ最大の娯楽がレーティングゲームの試合だという位だ。

 確かにレーティングゲームは観るのもやるのも面白い。でもゲームの内容は多種多様、競技によってはルールも複雑で時間の掛かるものもある。つまり子供は飽きてしまうのだ。

 そこでサーゼクス様は冥界の未来を担う子供達の為の娯楽として、人間界で観たヒーローショーを開催し、それを定着させようというのだ。

 

「結構な事だと思いますが、俺を呼んだのは何故です?」

 

 何となく嫌な予感がして訊ねると、我が意を得たりとばかりにサーゼクス様が笑った。嫌な予感確定だ。

 

「うん、実は君にヒーローショーの主役をやって欲しいんだ!」

 

 やけに嬉しそうにサーゼクス様が言い、咄嗟に逃げようとした俺を引き止める。

 

「まあまあ、話位聞いてくれてもいいだろう? 座りたまえ。グレイフィアお茶を」

 

「はい。──どうぞ一輝さん」

 

 あっという間にテーブルに紅茶とクッキーが並べられる。この早業、流石だ。

 

「さぁ座って。このクッキーはグレイフィアのお手製だ。美味いよ」

 

 俺は黙って腰を下ろした。あ、本当に美味い。

 

「・・・・俺を主役に、という事はショーの要であるヒーローに“ガイバー”を据えるつもりですか?」

 

 紅茶とクッキーを口にしながらサーゼクス様と話をする。

 

「うん、そうなんだよ」

 

「成る程。俺自身が演じれば低予算、なおかつ短期間で開催も出来る。加えてリアス達の出演も期待出来ると」

 

「うんうん、その通りだよ」

 

「更に言えばこのショーで顔と名前を売って、来たるべき『禍の団(カオス・ブリゲート)』との戦いまでにガイバー=ヒーローという図式を作り上げ、子供達に希望を持たせよう、といった所ですかね?」

 

「凄いな、完璧だよ!」

 

 サーゼクス様は満面の笑顔だ。確かにそう考えればいい事ずくめだ。

 俺自身としても顔と名前を売れば眷属志望者が現れるかもしれないし、成功すれば単純に金が儲かる。創設したばかりの我が『不破家』にはとにかく予算が足りない。リアスの眷属として働いてそれなりに稼いではいるが、貴族家の創設費用としてはまるで足りないのだ。

 いつまでも嫁の実家に頼っていては貴族の沽券に係わるし、金はいくらあってもいい。そう考えるとこの話は渡りに船なんだが・・・・

 

「成る程。いい話だと思います」

 

「だろう! では協力してくれるね!?」

 

「ですがその前に、ガイバーのデザインって子供ウケしますかね?」

 

「えっ、と・・・・・・?」 

 

「自分でいうのも何ですが、ガイバーってちょっとグロい所がありますから果たして子供達に受け入れて貰えるか・・・・」

 

 頭部センサーがグリグリ動く所とか、必殺技である胸部粒子砲(メガ・スマッシャー)を発射する所とか中高生位の年代にはウケると思うが、幼児に泣かれでもしたら目も当てられん。

 

「う~ん、盲点だった・・・・」

 

「どうします? やめときますか?」

 

 俺の言葉にサーゼクス様は考え込む。子供達の為のヒーローショーでガイバーが出て来たら、下手すれば怪人と勘違いされかねんぞ?

 言葉を失い考え込む俺達。そんな俺達にグレイフィアさんの呆れたような声が舞い降りた。

 

「・・・・取り敢えず少人数子供達を集めてプレ公演してみてはいかがです? その反応を見て中止か続行か決めたら良いのでは?」

 

 鶴の一声に俺とサーゼクス様は顔を見合わせた。

 

「「じゃあそれで」」

 

 

 

 

 余談ではあるが俺達の不安に反してプレ公演は大成功。心配していたガイバーのデザインだが、子供達は問題なく受け入れてくれた。冥界の子供達は逞しいな。

 

 こうして冥界初のヒーローショーとして、『強殖装甲ガイバー』は正式にスタートした。

 

 

 

 


 

 

 

3ー2 ああ、お師匠さまっ

 

 

 魔方陣に乗って移動した先は、空気の美味い風光明媚な所だった。

 

「先輩こっちです」

 

 祐美に連れられて暫く歩くと、平屋建ての順日本風の屋敷が見えて来た。

 

「ここか?」

 

「はい。───お師匠さま、祐美です! いらっしゃいますか!?」

 

 開けっ放しの門前から祐美が叫ぶと、

 

「祐美かい? 庭にいるから入っておいで」

 

 そう答える声があった。 

 

「行きましょう、先輩♪」

 

 門を潜って左へ進む。角を曲がって抜けた先には大きな一本の桜の木があった。春には綺麗な花を咲かせるだろう木の下には一人の少女の姿があった。

 大正時代のような桜色の着物と緋色の袴、更にはブーツらしき物を履いた、まるで桜の化身のような少女だった。

 

「お師匠さま!」

 

 桜の少女に向かって手を振る祐美。その声に反応して彼女が振り向いた。

 

「やぁ、良く来たね祐美。それに───」

 

 桜の少女が琥珀色の瞳を一輝()に向ける。

 美しい少女だった。チェリーブロンドとでも言うのか、光の加減によっては桜色にも白っぽい金髪にも見える不思議な髪と黒い大きめのリボンが風に揺れている。肌は病的な程に白く、儚げな印象を彼女に与えていた。

 聞いてはいたんだが、目の当たりにするとやはり信じられない。何せ彼女は日本では知らぬ者がいない程の有名人なのだから───

 

「お初にお目にかかります。グレモリー眷属の兵士(ポーン)、不破一輝と申します」

 

 桜の少女に挨拶をすると、彼女は柔らかく微笑んで挨拶を返した。

 

「ご丁寧にどうも。私は沖田総司(おきたそうじ)、祐美の師匠をやってます」

 

 こうして俺は祐美の師匠である沖田総司───沖田さんと出会った。

 

 

 

 

 

 話は少し前に遡る───

 

「先輩、一緒に行って欲しい所があるんですけど、午後は予定ありますか?」

 

 昼食を終えて寛いでいると、突然祐美が尋ねて来た。

 

「いや、特にないから大丈夫だ。どこに行くんだ?」

 

「その・・・・私のお師匠さまが先輩に会いたいから、一度連れて来なさいって」

 

 祐美の師匠って確か・・・・

 

「あら、沖田さんに会いに行くの? 気を付けてね一輝」

 

 俺達の会話を聞いていたのか、リアスが何やら気になる事を呟く。

 

「何だよ? 祐美の師匠ってそんなに物騒な人なのか?」

 

 前世の記憶で知ってはいるが、初めて知ったかのように俺は嘯く。

 

「そんな事ないです!? お師匠さまは素敵な人ですよ?」

 

 リアスに向かって祐美が頬を膨らまして抗議する。

 

「まぁ普段はね・・・・沖田さんてお兄様の眷属、騎士(ナイト)なんだけど、何と正体はかの有名な沖田総司なのよ!」

 

「あっ!? 部長ズルい! 私が言いたかったのに!」

 

「沖田総司ってあの新撰組のか!?」

 

「そうよ。グレイフィアが『最強の女王(クイーン)』と呼ばれているように、彼女(・・)も『最強の騎士(ナイト)』と呼ばれてるわ」

 

 へぇ・・・・・・・・ん? 今何かおかしなフレーズがあったような・・・・・・って、彼女!?

 

「リアス? 今彼女って・・・・」

 

 恐る恐る訊ねる俺に、リアスはさも当然とばかりに言い切った。

 

「そうよ。沖田さん──沖田総司は女よ」

 

 

 

 

 

 

 そう言われはしたが、まさか縁側に座るこの少女があの(・・)沖田総司だとは・・・・

 

「祐美、お茶を煎れて来てくれるかい?」

 

「あ、はい」

 

 祐美は靴を脱いで屋敷に上がると、勝手知ったる感じで奥へと進んで行った。

 

「いやぁ~、わざわざすまないね。祐美の話を聞いて、君には一度会ってみたいと思ってね」

 

 彼女──沖田さんは自分の隣を叩いて座るように促す。

 

「いえ、俺も祐美の師匠である貴女にお会いしたかったので」

 

 一礼しつつ、彼女の隣に腰を下ろそうとしたその時、

 

「!!!」

 

 凄まじい殺気を感じ、俺は咄嗟にその場から飛び退いた。

 振り返ると、そこには沖田さんが何事もなかったかのように微笑んでいた。

 

「うんうん、私の殺気に反応するとは見事見事。噂通りの使い手のようだね。気に入ったよ」

 

 今のは彼女なりのテストって所か。とんでもないな・・・・

 

「それはどうも。いつも初対面の相手にこんな事を?」

 

「まさか! 人を人格破綻者みたいに言わないでおくれよ~。君は特別さ、ト・ク・ベ・ツ♪」

 

 嫌な特別扱いだな・・・・俺は改めて沖田さんの隣に腰を下ろす。もう殺気は飛んで来なかった。

 

「テストの理由は可愛い弟子の側にいる男の品定めですか?」

 

「まぁそんな所だね。それに現代の圓明流の使い手がどれ程の者か見てみたくてね」

 

 沖田さんの言葉に驚愕する。

 

「!?・・・・圓明流と戦った事があるんですか!?」

 

 沖田さんは微笑んだまま空を見上げる。

 

「懐かしいな・・・・私の死因は知ってるかい?」 

 

「病死だと聞いていますが・・・・?」

 

「違うよ。病死じゃない、私は戦って死んだんだ。陸奥圓明流の使い手とね」

 

「!!?」

 

 えっ、それって・・・・・・

 

「一人取り残され、病で日に日に衰えていく私の前に“あの人”は来てくれた」

 

 沖田さんは懐かしそうに目を細める。

 

「初めて会った日からいつか戦いたい、そう思っていた私の願いを“あの人”は叶えてくれたよ。色々と悔いはあったけど、私は最後の時を剣士として過ごせた。だから感謝してるんだ、“あの人”には・・・・」

 

「沖田さん・・・・」

 

「だから“あの人”と同じ圓明流の使い手である君に興味があったんだ。いやぁ~、まさかリアスちゃんの眷属になって、しかも祐美の“好い人”だとは。世間は狭いねえ」

 

「ハハハ・・・・」

 

 沖田総司が女になってるだけじゃなく『修羅の刻』の記憶を持ってるなんて・・・・どうなってるんだ? これもやっぱり俺のせい? 俺はもう笑うしかなかった。

 

「・・・・私にとって祐美は弟子であると同時に娘のようなものだから、あの娘がどんな男を選んだのか心配だったんだけど・・・・うん、君なら必ずあの娘を守ってくれるだろう。・・・・不破一輝君。祐美の事、よろしく頼みます」

 

 そう言って沖田さんは俺に頭を下げた。何の事はない、俺をここに呼んだのは祐美()の恋人を見極めようとする師匠()としての親心だったのだろう。だって───

 

「はい。必ず祐美を幸せにします」

 

 そう答えた俺に、沖田さんは紛れもない母親の顔をして笑っていたのだから───  

 

 

 

 

 

 

 その後、祐美の煎れたお茶(当然緑茶)と手土産に持って来た水ようかんを口にしながら三人で談笑した。楽しい時はあっという間に過ぎて、気づけば夜の鐘が鳴っていた(冥界には太陽がなく、一日中薄暗くて時間の経過が分かりずらい。その為一日四回、朝夕の六時と十二時に鐘を鳴らして昼夜を区別している)。 

 すっかり長居してしまい、お暇しようとしたその時、庭に黒い影が飛び込んで来た。

 

「グギィ? 何だ貴様らは!? まさかもう追っ手が来たというのか!?」

 

「追っ手?」

 

 飛び込んで来たのは青白い肌をした一人の男。血走った大きな目で俺達を睨んでいる。こいつは・・・・

 

「先輩、あれは“はぐれ悪魔”です」

 

 祐美が耳元で囁く。でも何故こんな所に? そう考えていると、沖田さんが奴に歩みを進めた。

 

「まぁここにいる理由なんてどうでもよろしい。大方主を殺して逃げて来た所、偶々遭遇したんでしょう」

 

「ぐぬうぅ・・・・」

「悪・即・斬が私達(・・)の掟───速やかに主の後を追わせてあげましょう」

 

 沖田さんの台詞にはぐれ悪魔が激昂した。

 

「ふざけるな!! この俺様を貴様のような小娘が斬るだと!? やれるもんならやってみろ!!」

 

「そう。・・・・それじゃ」

 

 その時、沖田さんの気の質が変わり、

 

 ───バサッ!!

 

 浅葱色の風が吹いた。

  

 一瞬で沖田さんの衣装が変わった。

 黒いマフラーが風に舞い、その身に纏うは袖口を白いダンダラ模様に染めた浅葱色の羽織。その姿は紛れもなく、

 

「───新撰組」

 

 そう、時代劇などでお馴染みのこの衣装。これを見れば誰もが理解するだろう。この少女が、

 

「貴様、その衣装・・・・まさか、まさか貴様があの(・・)魔王の騎士(ナイト)の・・・・・・!?」

 

「新撰組一番隊隊長、沖田総司、参る───!」

 

 幕末の京の町を震撼させた人斬り集団『新撰組』、その中でも最強と謳われた天才剣士──沖田総司その人だという事を。

 

 

 

 

 

「ここの処理はやっておくから君達はもう帰りなさい」 

 

 はぐれ悪魔を一刀の元に斬り伏せた沖田さんは、懐からスマホを取り出して言った(この時にはもう、元の桜色の着物に変わっていた)。

 

「はい・・・・それじゃあ失礼します・・・・」

 

「うん。祐美、一輝君───またね」

 

 朗らかに笑う沖田さんに見送られ、俺と祐美は屋敷を出た。

 

 

 

 二人並んで歩きながらも、さっきの光景が頭から離れない。沖田さんの剣は鮮烈に、そして強烈に俺の脳裏に刻まれていた。  

 

「凄かったなぁ・・・・」

 

「はい・・・・太刀筋がまるで見えませんでした。やっぱりお師匠さまは凄いです!」

 

 それは祐美も同じなのだろう。興奮冷めやらぬ様子で拳を握り締めている。  

 

「今の私じゃあ足元にも及ばない──先輩、明日も訓練に付き合って下さい!」

 

「ああ、もっと強くならなくちゃな!」 

 

 そう決意する俺の腕に、祐美は腕を絡めて寄り添う。

 

「はい。──ねえ先輩、私を幸せにするって、そう言って貰えて嬉しかったです」

 

「・・・・聞いてたのか」

 

 沖田さんとの会話を聞かれてたらしい。気恥ずかしくもあったが、どこか身の引き締まる思いがした。

 自分ではかなり強くなったつもりだったが上には上がいる、沖田さんはそれを教えてくれた。沖田さんとも約束したんだ、俺は祐美を、皆を幸せにする為にもっと強くならなくては!

 

「私も頑張ります。だから先輩も──」

 

「ああ、一緒に頑張ろうな」

 

 俺達は誓いを交わすように唇を重ねた。

 

 

 その日の夜は祐美と共に激しく燃え上がった。

 

 

 


 

 

3ー3 才能の塊

 

 

 只今グレモリー邸の庭で、シトリー眷属との合同訓練中、今は同じクラスの者同士で各々訓練をしている所だ。

 

 

 

 (キング)同士、リアスとソーナは過去のゲーム映像を見て、互いに検討し合っている。

 

 

 

「フフ、魔力では貴女に軍配が上がるけど、接近戦では私が上のようね!」

 

「くっ、やってくれますわね、椿姫!」

 

 女王(クイーン)同士、朱乃と真羅さんは接近戦に持ち込まれた朱乃が苦戦している。

 

 

 

「くぅ、ううぅ・・・・」

 

「憐耶、しっかりなさい! 二対一で負けるなんて恥よ、恥!」

 

「わ、分かってるよぅ!」

 

 二人の魔力が上がり、相対するアーシアが押され始める。 

 

 僧侶(ビショップ)同士行ってるのは、魔力による押し合い。魔力の底上げと魔力操作の向上に効果的で、ウイザードタイプの訓練の基本なのだそうだ。

 最初二対二でやったのだが、黒歌の魔力量が圧倒的で勝負にならず、今は黒歌を抜かした二対一で行っていた。

 最初は負け続けていたアーシアだったが、何度も繰り返す内に拮抗するようになっていた。

 

「んんん、ま、負けません!」

 

 アーシアの魔力が上がり、押し返そうとする。

 

「ほーれほれ、アーシアちん、頑張るにゃ~」

 

 黒歌は庭に寝転がり、気の抜けた声援を送る。こいつの訓練は何か考えないとなぁ・・・・

 

 

 

「でりゃあああーーーーっ!!」

 

「───ふっ!!」

 

 戦車(ルーク)同士、白音と由良の戦いは互角の攻防が続いている。

 一輝()の見る限り、力、技共に互角、体格の差で由良が一歩有利に思える。女にしては背が高く手足の長い由良は、理想的な戦車としてシトリーの攻守の要となっている。

 対する白音は小さな体躯が災いして、戦車としてのパワーと防御力を十全に発揮しきれずにいた。

 

 

 

「勝負だ、兵藤おおおっっ!!」

 

「かかって来いや、匙いいいっっ!!」

 

 当初の予定を無視して、イッセーと匙がいきなり激突する。熱血思考の宿敵(ライバル)同士、訓練で顔を合わせる度にすぐバトルに突入してしまう。それでいて訓練後には二人共強くなっているもんだから文句も言えん。全く、困った奴らだよ。

 

「やれやれ。仕方がない、仁村ちゃんはこっちで」

 

「あ、はい」

 

 もう一人の兵士(ポーン)、仁村留流子ちゃんは騎士(ナイト)組に混ざって鬼ごっこだ。スピード特化型の彼女は騎士に混ざっても引けを取らない。寧ろイッセー達とやるより有意義かもしれない。

 

 

 

 そんな風に皆の訓練の様子を窺っていると、

 

「兄様っ!!」

 

 元気な声が飛び込んで来た。

 

「ミリキャス、勉強は終わったのか?」

 

「はい! そうしたら兄様達が訓練してるって聞いて。あの、見学してもいいですか?」

 

「勿論構わないよ」

 

 俺が頭を撫でるとミリキャスはくすぐったそうに破顔する。

 ミリキャスは俺が上級悪魔に昇格し、正式にリアスの婚約者になると、「じゃあ、姉様と結婚するなら兄様ですね!」と言って、それ以来俺を“兄様”と呼んで慕ってくれている。

 母親(グレイフィア)の教育が行き届いているのか、転生悪魔である俺達にも分け隔てなく接する良い子で、俺も弟が出来たような気がして、時間をみつけては一緒に遊んだりしている。

 

 ミリキャスが目を輝かせて皆の訓練風景を眺める。やはり男の子だからか、強くなる事に興味があるようだ。

 ミリキャスは今年で十二歳。来年には駒王学園の中等部に入学予定だと聞いたが、ミリキャスにはまだ眷属がいないらしい。俺も眷属を募集中なので気持ちは分かる気がする。

 ミリキャスは将来、魔王の息子として嫌でも注目される事になる。その為にも強くなる必要があるんだが、この子は今どれ位強いのだろう? 不意にそんな興味が浮かんだ。

 

「ミリキャスもやってみるか?」

 

 だからだろうか、そんな事を聞いたのは。

 

「いいんですか、兄様!?」

 

 俺の提案にミリキャスは喜色を浮かべた。俺は振り返って、背後で佇むグレイフィアさんに訊ねる。

 

「いいですか、グレイフィアさん」

 

「はい。──但し、相手は一輝さんにお願いします」

 

 

 

 

 

 という訳で、急遽一輝とミリキャスの模擬戦が行われる事になった。

 皆も訓練の手を休めて二人の模擬戦に注目している。

 

「しかし、如何にミリキャスが魔王の息子だとしても、一輝センパイの相手にはならんだろう」

 

「だよなぁ。手加減した一撃が入って終わりじゃないか?」

 

 ゼノヴィアとイッセーがそんな風に話している。周りの皆も同意見みたいだけど、そんな中でリアス()と朱乃の表情だけが固い。

 

「リアス?・・・・朱乃も、どうかしたの?」

 

 私達の表情が固いのに気づき、ソーナが訊ねる。

 

「ミリキャス君は魔王ルシファーと最強の女王の息子。その血筋は伊達ではないんです・・・・」

 

 朱乃は畏れを堪えるように、自分の身体を抱きしめる。無理もない、見ていただけの私にだってあの光景(・・・・)はトラウマものなのだ。ましてや直接受けた朱乃は───

 

 

 

「武器はどうする?」

 

「出来れば剣、ううん、刀がいいんですけど・・・・」

 

「刀か。・・・・祐美、頼む!」

 

「はい」

 

 模擬戦用の武器として刀を望んだミリキャスに祐美が【魔剣創造(ソード・バース)】で創った刀を渡す。

 

「はい。訓練用なので強度はあまりないですから、気をつけて」

 

「ありがとう祐美姉様」

 

 受け取った刀を馴染ませるように、型に沿って刀を振るうミリキャス。何だか妙に様になってるわね。

 

「お待たせ、兄様」

 

 一頻り刀を振って納得したのか、ミリキャスの準備が出来たみたい。

 

「ああ、それじゃあ始めようか」

 

 模擬戦を始めようと、私達から離れる二人。そんな二人の背中にグレイフィアが声をかける。

 

「一輝さん、くれぐれも本気でお願いします。ミリキャス、貴方も全力で一輝さんに立ち向かいなさい」

 

 二人は緊張した面持ちで頷いた。一気に緊張感が増し、私達も固唾を飲んで二人に注目する。

 

「では───始め!」

 

 試合開始の合図がグレイフィアから飛んだ。

 

 

 

 

 

 試合開始の合図と共にミリキャスが一直線に突っ込んで来た。迅い! 眷属中最速の祐美と然程変わらないスピードだぞ!?

 

「シッ!」

 

 だがその位なら対処出来る。一輝()は上段から斬りかかるミリキャスの右手を冷静に掴む。そのまま投げ飛ばそうとしたその時、ゾクッとした戦慄が俺の背中を駆け上がる。咄嗟に手を離して身を翻した。

 

 ボヒュンッ!!

 

 さっきまで俺の頭があった所に、ミリキャスの魔力弾が通り過ぎる。魔力弾は地面に当たり、そこにクレーターが出来る。あの(クレーター)は見覚えがある。地面は爆散したのでも熔解したのでもない。消滅(・・)したのだ。

 

「マジか・・・・!?」

 

 ミリキャスの父であるサーゼクス様得意の消滅魔力砲撃──消魔砲。血統的に“滅びの魔力”を受け継いでると思ってはいたが、まさか消魔砲まで・・・・弱冠十二歳でそれを使うとは、末恐ろしい才能だ。

 

「!!?」

 

 息吐く間もなく追撃が迫る。鋭い斬撃が繰り出され、回避するので精一杯だ。魔力に関しては両親の才能を受け継いだのだろうが、この剣の才能は誰から受け継いだのか? 俺が知らないだけでサーゼクス様かグレイフィアさんが剣の使い手なのだろうか?

 ミリキャスは才能の塊だ。このまま成長すれば将来魔王に届く器だろう。だがあくまで将来は、だ。俺にも意地がある。兄と慕ってくれる弟分に簡単に負ける訳にはいかない。俺はギアを訓練用から試合用に一段階上げた。 

 

 ミリキャスに向かってダッシュする。ミリキャスはその場に立ち止まり刀を振り下ろすが、直前でサイドステップ、ミリキャスの左側面に回り込む。だがミリキャスも振り下ろした刀を逆袈裟に斬り上げた。うん、それ位はするよな。予測していた俺は刀を回避すると、刀を持った左腕に飛び付き、関節技を極めようとする。

 

 ───不破圓明流【飛燕十字蔓(ひえんじゅうじかずら)

 

 だが技を極めようとしたその時、強烈な悪寒を感じた俺は咄嗟に腕を離した。

 

 ボヒュンッ!!

 

 一瞬後に“滅びの魔力”が(はし)り抜ける。

 ミリキャスは関節を極められる寸前、刀から手を離して左手で“滅びの魔力”を放って危機を脱したのだ。

 

「見事だ・・・・!」

 

 素直に称賛しか浮かばない。今のミリキャスの行動は俺の攻撃を防ぎつつ、反撃にも繋がる最適解だ。それを誰に教わるでもなく、自らの戦闘センスで繰り出したのが素晴らしい。

 俺は久々の強敵(・・)との戦いに、自然と笑みが浮かぶのを抑えきれなかった。

 

 

 

 

 

 イッセー()は開いた口が塞がらなかった。見れば模擬戦(いやもうそんなレベルじゃない)を見学していたグレモリー、シトリー両眷属も同じように愕然と、呆然としている。いつも冷静な会長すらもだ。

 

「マジかよ・・・・あの坊っちゃん、あんなに強えのかよ・・・・」

 

「びっくりです」

 

「ハハハ・・・・あれ、私より速くないか・・・・?」

 

「・・・・太刀筋が全然見えないんですけど」

 

 匙の呟きに白音ちゃんが反応し、ゼノヴィアと巡さんがショックを受けていた。マジでとんでもねえ。ミリキャス君ってもしかして俺より強いかも・・・・?

 

「・・・・一年程前だけど、朱乃とミリキャスが模擬戦した事があるの」

 

 すると部長が訥々と話し始めた。朱乃さんが? おいおいまさか!?

 

「・・・・皆も予想は付いていると思いますが、結果は私の負け、いいえ、惨敗でしたわ」

 

 予想していたとはいえ、あの朱乃さんが惨敗だって!?・・・・・・ハハハ、前言撤回、確実に俺より強いわ。

 

「一年前には朱乃を敗北させ、今は不破君を追い詰めてるなんて・・・・流石、冥界最高のサラブレッドと云われるだけあるわね・・・・」

 

 会長の言葉にグレイフィアさんが辛そうに顔を歪める。何故だろう? 息子が評価されたら嬉しい筈なのに・・・・?

 

「あ・・・・・・!」

 

 その時、祐美が突然声を上げた。

 

「どうしたの木場さん?」

 

 花戒さんが祐美に訊ねる。

 

「先輩、笑ってる・・・・・・」

 

 それを聞いて先輩の方を見ると、一輝先輩は愉しそうに、嬉しそうに嗤っていた。

 

 

 

 

 

 

 今度はミリキャスから仕掛ける。素速く距離を詰め刀を水平に薙ぐ。一輝()はバク転で回避するも二撃目、三撃目が追撃して来る。俺は同じく二転三転し、そのまま刀を持つ手を蹴り上げた。その衝撃にミリキャスは両手を挙げたバンザイ状態になる。ここだ!

 俺は一気に距離を詰め、【虎砲】を放つ。

 だがかわされた!? インパクトの瞬間、ミリキャスは【浮身】の要領で後ろに跳んで、最小限のダメージで【虎砲】を回避したのだ。

 やるな、と思いつつも驚きはしない。この子はこの位やる。だから俺はそれを想定して次の動きに繋げる。

 【虎砲】をかわしたとは言え、ミリキャスは態勢を崩している。だがそんな態勢からミリキャスは起死回生の突きを放った。   

 

「はあっ!!」

 

 烈迫の気合いで放たれた突きは、惜しいかな態勢が崩れて威力が半減されている。そんな突きは俺には通じない。俺は突き出された両手を取って、

 

「頭をガードしろ、ミリキャス!」

 

「えっ!?」

 

 そのまま一本背負いでミリキャスを投げて、ローキックでミリキャスの頭部を刈り取った。

 

「不破圓明流【(いかづち)】」

 

 【雷】を受けて吹き飛ぶミリキャス。よし、言われた通り頭をガードしているからダメージも最小限だろう。

 

「───それまで!!」

 

 グレイフィアさんが模擬戦の終了を告げた。

 

 

 

 

 

「負けちゃいました・・・・やっぱり兄様は強いです! 僕も強くなりますから、また相手して下さいね!!」

 

 アーシアの【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】で治療して貰ったミリキャスは、元気一杯に帰って行った。

 

「一輝、流石にやり過ぎじゃない?」

 

 ミリキャスとグレイフィアさんを見送りながら、リアスが咎めるように言うので、俺は呆れたような溜め息を返す。

 

「あのなぁ、この中にミリキャス並みに俺と渡り合える奴が何人いる?」

 

「「「「「うぐっ!!?」」」」」 

 

 痛い所を突かれた連中が胸を押さえている。

 

「ミリキャスは本当に強かったよ。さて、年下に負けたままでいいっていう奴はいるか?」

 

 俺がそう言って煽ると、

 

「さぁ皆、訓練再開よ!」

 

「よし、やるぞ!!」

 

「ねえ、もっと実戦に近い訓練をしたいんだけど」

 

「が、頑張りましゅ! はうぅ・・・・」

 

 皆は気持ちも新たに訓練を再開した。気合いが空回りして噛んだアーシアが可愛い。

 

 俺は一息吐こうと用意されていたスポーツドリンクを飲む。そうしてクールダウンしなから、模擬戦中ずっと気になっていた事を思い返していた。  

 

「そうか・・・・沖田さんの剣に似てるんだ」

 

 ミリキャスの剣に見覚えがある気がしていたんだか、つい先日見た沖田さんの剣とどことなく似てる気がした。

 

(もしかしてミリキャスは沖田さんに剣を教わってるのかもな・・・・)

 

 父親の眷属なんだから不思議じゃないと考えながら、俺はスポーツドリンクを飲み干した。

 

 

 


 

 

3ー4 フェニックス家のお茶会

 

 

 ある日、俺の元に一通の招待状が届いた。

 それは先日のパーティで言っていた、レイヴェルからのお茶会の招待状だった。

 こういうのが初めての俺はどうすればいいのか分からず、リアスに相談したら、

 

「いいんじゃない? 行って来たら?」

 

 リアスはあっさりと言った。

 

「いや、行く事は決まってるんだが、どうすればいいんだ? 着て行く物は? 手土産はいるのか? 誰か同伴するべきなのか? どうすればいいのかさっぱり分からん!」

 

 俺は軽く混乱しつつ訊ねる。リアスはやや呆れながらも教えてくれた。

 

「そんな事で威張んないの! 少しは落ち着きなさい! 全く・・・・いい? 招待状を送って来たのはレイヴェル──フェニックス家よ。あちらは一輝の事情も分かっているし、ごく私的なお茶会だと招待状にも書いてあるから、着て行く物は制服でいいわ。手土産は・・・・そうね、食べ物はやめておきなさい」

 

「何故?」

 

「レイヴェルはお菓子作りが得意なの。多分お手製のケーキでもてなしてくれるだろうから、食べ物以外にした方がいいわ」

 

「成る程」

 

「それと・・・・誰かを同伴するかだけど、今回は一輝だけで行った方がいいわ」

 

「そりゃまた何故?」

 

「今回の目的が一輝、貴方だからよ。レイヴェル、というかフェニックス家は貴方と親交を深めたいの。不破家は新興の貴族、貴方の力に目を付けて自分達の派閥に加えたいと狙ってる家はいくつもあるわ。でもグレモリー家が後ろ楯に付いているから簡単には手が出せないの。でもフェニックス家はその・・・・私が強引に婚約解消した件で借りがあるからこちらも強く出れないのよ」

 

「・・・・フェニックス家は俺に何を望んでるんだと思う?」

 

「正直分からないわ。フェニックス家は『フェニックスの涙』で荒稼ぎしてるし、ゲームの戦績も順調だわ。だから何が目的かと言われても・・・・」

 

「・・・・成る程。取り敢えず手土産を用意して、向こうの出方を窺ってみるよ」

 

「そうね・・・・決して敵に回るとは思えないけど注意して」

 

 俺は頷いてリアスの元を去った。

 

 

 

 

 

 

 翌日の午前中、俺は街に出ていた。

 グレモリー邸を中心に広がるこの街は、色んな店が軒を連ね、大いに賑わっている。俺はこの街には詳しくないので、ミュセルに付き合って貰っていた。 

 

「それで一輝様、何を贈るか決まったんですか?」

 

「うん・・・・花なんてどうかな、って」

 

「花ですか・・・・無難でいいんじゃないでしょうか?」

 

「無難て・・・・まあいいや。ミュセル、花屋に案内してくれ」

 

「はい。こちらです」

 

 俺はミュセルに案内され、花屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 案内された花屋で、俺はレイヴェルに贈る花束を購入した。

 

「ありがとうミュセル。付き合ってくれて」

 

「いえ、お役に立てて良かったです!」

 

 ミュセルが嬉しそうに笑う。ピョコピョコ揺れるツインテールが可愛い。

 

「それで・・・・これはそのお礼だ」

 

「えっ!?」

 

 俺はミュセルに小さな紙袋を差し出す。彼女は驚きつつ、反射的に受け取った。

 

「あの、これって・・・・?」

 

「だからお礼だよ。今日だけじゃなくいつも世話になってるからな」

 

「そんな!? いけません、私なんかに・・・・」

 

「・・・・もしかして贈り物を受け取ったら怒られたりするのか?」

 

「いえ! そういう訳ではありませんが・・・・」

 

「ならいいじゃないか。それに俺はもうすぐ人間界に帰るから、記念と思って受け取ってくれないか?」

 

「あ・・・・・・」

 

 俺がそう言うと、ミュセルは暫し紙袋を見つめて佇むと、大切そうに紙袋を胸に抱えた。

 

「ありがとうございます、一輝さま・・・・」

 

 そう言ってミュセルは、花が咲いたような可憐な笑顔を向けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 フェニックス邸はグレモリー邸に勝るとも劣らない大きな城だった。

 目の前に聳える巨大なヨーロッパ風の城に、グレモリー邸で慣れたつもりだった俺は、圧倒されて言葉が出なかった。

 

「一輝さま!!」

 

 暫し呆然としていると、正面の扉が開きレイヴェルが飛び出して来た。貴族の令嬢らしいチェリーピンクのドレスが良く似合って、とても可愛らしい。

 

「ようこそいらっしゃいました!」

 

「こんにちはレイヴェル。今日はお招きありがとう。──これを君に」

 

「まあ! これを私に・・・・?」

 

「正直こういう場に招かれたのは初めてで、何を贈ればいいか分からなくて、気に入って貰えたらいいんだが・・・・」

 

 俺がそう言うもレイヴェルは聞こえてないようで、渡した花束を見つめてうっとりしていた。

 

「綺麗・・・・・・ありがとうございます、一輝さま。とても嬉しいですわ。──では、ご案内します。ようこそ、フェニックス家へ!」

 

 

 

 

 

 

 フェニックス邸の内部はその豊富な財力を誇示するように豪華な作りだった。

 そんな作りだからか、案内された部屋もまた豪華だった。その部屋には一人の女性がいた。長い金髪を編み上げた、二十代半ば位の美しい女性だった。どことなくレイヴェルに似た雰囲気から恐らくは───

 

「お母様! お連れしました!!」

 

「まあレイヴェル、大声を上げるなんてはしたないわよ。──娘が失礼致しました。私はフェニックス家当主の妻、マリアヴェル・フェニックスと申します」

 

「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。不破家当主、不破一輝です。本日はお招きいただきありがとうございます」

 

 案の定レイヴェルのお母さんだったフェニックス夫人──マリアヴェルさんに挨拶されて、俺もまた貴族として返礼する。俺が挨拶を返すのを見て、フェニックス夫人は上品に笑った。

 

「フフ、結構。貴族として最低限の礼儀は仕込まれているようですわね。お座り下さい一輝さん」

 

 勧められた椅子に腰掛けると、レイヴェルが嬉しそうに贈った花束を夫人に見せた。

 

「見て下さいお母様! 一輝さまがこんなに綺麗な花束を贈って下さったんです♪」

 

「あら、綺麗な花・・・・これはアイリスね。・・・・・・レイヴェル、素敵な贈り物をいただいたわね。一輝さん、ありがとうございます」

 

「いえ、気に入って貰えたなら幸いです」

 

 俺の贈った花束をジっと見つめていたマリアヴェルさんは意味深な笑みを浮かべた。・・・・何だろう? 何かやっちまったか?

 

「さ、それではお茶会を始めましょう。今日はレイヴェルが全部自分でやって、一輝さんをおもてなしするんだって張り切ってますのよ」

 

「お母様!!」

 

 恥ずかしそうに頬を染める娘の姿に、マリアヴェルさんの唇が楽しそうに弧を描く。

 レイヴェルは頬を染めつつも、手慣れた様子で紅茶を淹れる。

 

「どうぞ、一輝さま」

 

 三人分の紅茶を淹れて、レイヴェルが席に着く。彼女の熱視線に急かされ、紅茶を一口。

 

「うん、美味いよレイヴェル」

 

 俺がそう言うと、レイヴェルはぱぁっと明るい笑顔を浮かべる。その様子をマリアヴェルさんが微笑んで見つめていた。 

 

 

 

 お茶会は美味しい紅茶とお菓子、マリアヴェルさんの巧みな話術によって穏やかな雰囲気で進んでいた。最初は緊張していた俺も今ではすっかりリラックスして、お茶会を楽しんでいた。 

 

「そうなんですか? いいなぁ~」

 

「ウフフ、そう、楽しい学園のようね」

 

 駒王学園の話を聞きたがるレイヴェルに学園での出来事話すと、レイヴェルだけじゃなく、マリアヴェルさんも興味深げに聞いていた。

 

「さてと、そろそろケーキが焼き上がる頃ですから、持って来ますね」

 

 レイヴェルがお手製のケーキを振る舞う為に、一旦部屋を出る。彼女がいなくなると、マリアヴェルさんが真剣な眼差しで訊ねて来た。

 

「一輝さん、貴方にお願いしたい事があります。実はレイヴェルを駒王学園に編入学させたいと考えているの」

 

「駒王学園にですか?」

 

 成る程。だから学園の話を聞きたがっていたのか。

 

「ええ。ですがあの娘はご存じの通り世間知らずですから、何か問題を起こさないか心配で・・・・」

 

 マリアヴェルさんは頬に手を当て、ほうっと溜め息を吐く。

 

「成る程、でもご心配には及びませんよ。レイヴェルは俺のような転生悪魔にも気軽に話しかけられるし、頭の回転も速いから話題にも付いていけます。それにあのお嬢様然とした性格もウケるでしょうし、何よりとびきりの美少女です。必ず受け入れて貰えますよ。俺も彼女が学園生活に慣れるまで、出来る限りサポートしますから」

 

「・・・・そうですか、貴方がそう言ってくれるなら安心ね。一輝さん、レイヴェルの事くれぐれ(・・・・)もよろしくお願いしますね」

 

 そう言ってマリアヴェルさんは笑みを深める。その笑みに何やら寒気を感じたが、俺何かやっちまったか・・・・?

 

 

 

 

 

 その後、レイヴェルが戻ってお茶会が再開した。

 

「お口に合うといいんですが・・・・」

 

 レイヴェルが切り分けたケーキを一口、口に運ぶ。芳醇なバターの香りと生クリームの程良い甘さ、スポンジの柔らかな食感に得も言われぬ幸福感が広がる。結論、とても美味い。

 

「俺好みで甘さがちょうどいい。美味いよレイヴェル」

 

 俺がそう言うと、レイヴェルはぱぁっと花が咲いたような笑顔で喜びを露にした。

 

「ありがとうございます! おかわりもありますから、沢山召し上がって下さい♪」

 

 そんなレイヴェルを眺めつつ、マリアヴェルさんが口を開く。

 

「そう言えば一輝さん、眷属の当てはあるのかしら?」

 

「いえ、流石にまだ・・・・」

 

 昇格したばかりで眷属がどうこうと言える段階じゃない。そう説明すると、

 

「そう・・・・所でレイヴェルなんですけど、以前はライザーの眷属でしたが、今は交換(トレード)で私の眷属になってるのはご存知かしら?」

 

「はい。先日のパーティで聞きました」

 

「そう! レイヴェルは今やライザーじゃなく私の(・・)眷属です! そこの所間違えないようお願いしますね」

 

「は、はぁ・・・・」

 

 これは暗にレイヴェルを眷属に、と勧められてるのか? レイヴェルをチラッと見ると、赤く染めた頬に両手を当てて、イヤンイヤンと首を振っている。

 

「でもレイヴェルも『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を貰ってるのでしょう? でしたら俺と同じ眷属を探す立場なのでは?」

 

「いいえ、『悪魔の駒』を貰ったからといって、必ずしも眷属を集めなければならない訳じゃありません。現に私も眷属を持っていませんし」

 

 眷属を募り、レーティング・ゲームに勝利して位階を上げるのが上級悪魔のステータスではあるが、中には『悪魔の駒』を貰っても使わず、眷属を作らない者もいるという。

 そういう人は大抵マリアヴェルさんのように地位的にも経済的にも恵まれていて、無理に位階を上げる必要もない者が多いらしい。

 

「私は『(キング)』になるよりも『王』を補佐する者になりたいと思ってるんです。ですから眷属を集めるつもりはありません」

 

 レイヴェルが俺の目を見つめながら、キッパリと言い切った。これは・・・・・・俺も真剣に答えなきゃならないな。俺が口を開こうとしたその時、

 

 バタンッ!!

 

「おい! 誰もいないのか!?」

 

 強く扉が開く音がして、一人の男が怒鳴り声を上げて入って来た。

 

「何事ですライザー!! お客様の前ですよ!?」

 

 髪はボサボサで無精髭を生やし、すっかり頬が痩けたその男は信じられないがあのライザー・フェニックスだった。

 

「客ぅ!? 一体誰、が・・・・・・・・・・ひぎゃあああああーーーーっっ!!?

 

 変わり果てた姿に目を丸くする俺と目が合うと、ライザーは悲鳴を上げて逃げ出した。

 

「ちょっ、お兄様!? 一輝さま、すいません!」

 

 レイヴェルがライザーの後を追った。何だかんだ言っても心配なんだろう。

 

「あの子は全く・・・・一輝さん、申し訳ありません。少し失礼しますわね」

 

「あ、はい」

 

 続いてマリアヴェルさんも部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 一人残された俺は暫らく待っても誰も戻って来ないので、今の内にとトイレに立った。

 

「ええと、どこだろう・・・・?」

 

 トイレを探して暫らく歩いていると、それらしい小部屋を見付けた。ドアノブを回すと鍵は掛かってない。俺はゆっくりと扉を開いた。

 どうやらここは手洗い場らしい。という事はこの先がトイレか。そう思って扉を開くと、

 

「「───えっ?」」

 

 何故か下着姿で用を足しているレイヴェルと目が合った。

 

 チョロチョロ・・・・シャアアァァァ───

 

 彼女は白いショーツを足元に引っ掛け、洋式便器に座っている。大きく股を拡げているから金色の茂みが丸見えで、そこから出るオシッコが便器を叩く音だけが二人の間に響いていた。

 

「えっ、一輝さま・・・・・・? えっ!?ウソ!?なんでぇっ!?」

 

「えーと、その・・・・」 

 

 マズイ! 衝撃の展開に頭が働かない! 俺は異様な状況でただオシッコをするレイヴェルを凝視していた。 

 

「いやぁ・・・・! お願い一輝さま、観ないで・・・・レイヴェルのはしたない所、観ないでぇ・・・・・・!!」

 

 レイヴェルは顔を真っ赤にして涙混じりに懇願する。だが俺は彼女から目を離す事が出来なかった。

 

 ショオオォォ───チョロ、チョロ・・・・ピチョン。

 

 レイヴェルのオシッコが終わった。仄かに漂う尿の臭いが鼻をくすぐる。

 レイヴェルはこれ以上ない位顔を赤く染め、涙目でプルプルと震えている。俺は何て声を掛けたらいいか分からなかった。

 

「出て行って下さい・・・・・・」

 

 そう呟くレイヴェルに従い、俺は出て行った。

 

 

 

 

 

 

(観られた! あんなはしたない姿を、よりによって一輝さまに! あんな所観られたら軽蔑されちゃう!!)

 

 レイヴェル()は激しく動揺していた。

 ライザー兄様を追ったが自室に閉じ籠ってしまった。数日振りに出て来たというのに逃したのを残念に思いつつ、一輝さまの元へ戻ろうとした時、不意に尿意を催して近くのトイレに駆け込んだ。

 この時鍵を掛け忘れたのが失敗だった。まさかトイレに一輝さまが入って来るなんて! ドレスを着たままじゃ用を足せないから脱いで来たのに、置いてあったのに気付かなかったみたいで、ちょうど出始めた時だったから途中で止める事も出来ないまま、最後まで観られてしまった。

 

(全部観られた上に臭いまで嗅がれて・・・・ああもう! どんな顔で一輝さまに会えばいいのよ!?)

 

 憧れの人に女として最も恥ずかしい所を観られ、あまつさえ臭いを嗅がれてしまうとは!?

  一輝さまに小便臭い女だなんて言われたら、私は死ねる自信があるわ!

 

 などといつまでも現実逃避をしてる場合じゃない。

 私がトイレットペーパーで股間を拭くと、オシッコじゃないヌルヌルした液体で股間が濡れていた。

 

(こんな時にどうして───!?)

 

 一輝さまに観られて感じてしまったとでも言うのか、エッチな気分になった時のように濡れた股間を何回か拭いた私は、ショーツを履き直して水を流した。

 憂鬱な気分で手を洗い、ドレスを着てトイレを出ると、そこには思いもかけず一輝さまが待っていた。

 

 

 

 

 

 顔を真っ赤にして、レイヴェルが出て来た。

 一輝()がいる事に驚いていたが、すぐに視線を反らして俯いてしまう。

 思えばこの反応は当然だ。年頃の女の子がトイレで用を足すのを観られたんだから、俺の顔なんてみたくもないだろう。でも俺はとにかくすぐに謝らねば、という気持ちだけが先行していた。

 俺は深く頭を下げて、ひたすらレイヴェルに謝った。俺も動転してたから、途中良く分からない事を口走りながら。その言葉に反応して、レイヴェルがポツリと呟いた。

 

「私、臭くないですか・・・・?」

 

 臭い? レイヴェルが? そんな訳ないだろう!? そう思った俺はレイヴェルの肩に手を置いて、彼女の首筋に鼻先を埋めて思い切り息を吸った。  

 

「ちっとも臭くない。レイヴェルからは女の子のいい匂いしかしないよ」

 

 俺がそう言うと、レイヴェルは更に顔を赤くして、俺のシャツを摘まむと、ポツリと一言呟いた。

 

「責任・・・・取って下さいね・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 こうして波乱のお茶会は終わった。

 あれから俺とレイヴェルは変に意識し合い、まともに会話出来なくなった。妙にくすぐったい気もするが、悪い気分じゃなかった。

 もしレイヴェルが本気で俺の眷属になる事を望むなら、俺に断る理由はない。今ではそう思う位彼女に好感を持っていた。

 いつしかその思いが是が非でも欲しいという風に変われば、俺の方から申し込むかもしれない。でもそれは当分先の話だと思っていたが、

 

「そう言えば一輝さん。貴方に贈っていただいたアイリスの花ですけど・・・・一輝さんはアイリスの花言葉を知ってるかしら?」

 

 お茶会が終わり、帰ろうとする俺に見送りに来たマリアヴェルさんが訊ねる。花言葉なんて薔薇の“情熱”位しか知らないぞ。俺が素直にそう言うと、

 

「そう・・・・アイリスの花言葉は“吉報”そして“愛の約束”。特に白いアイリスは“あなたを大切にします”という意味があるのよ。──良かったわねえ、レイヴェル」

 

 途端にレイヴェルの顔が真っ赤に染まる。否定しようにも出来ない雰囲気が辺りに漂っていた。

 

「それじゃあ、娘をよろしく(・・・・)お願いしますね、一輝さん♪」

 

「ハハハ・・・・はい」

 

 俺は力なく笑った。

 終わってみれば、終始マリアヴェルさんの掌で弄ばれたような気分だ。今日の出来事を素直に報告したら、リアスやヴェネラナ様が何て言うか。

 帰りの馬車の中、俺は深い溜め息を吐いた。

 

 

 


 

 

3ー5 メイド達の噂話

 

 

 どうしよう。自分でも浮かれているなと思う。でも、手にした白いリボンの存在に喜びが溢れて止まらなかった。

 

「どうしたのミュセル。ご機嫌じゃない」

 

「本当・・・・こんなに浮かれてるミュセルさん、初めて見ますね」

 

 自分でも分かる位だから、当然他人にも分かるのでしょう。ミュセル()の同僚である二人から興味ありげな視線が浴びせられる。

 

「それで? 何があったんです?」

 

 私と同じグレイフィア様の兵士(ポーン)──黒髪ショートのシエスタさんが訊ね、

 

「ほれほれ。さっさと吐きなさいって」

 

 赤髪ツインテールの騎士(ナイト)、アイリさんが揶揄うように追求する。

 別に隠すような事でもないので、私は昼間の出来事を二人に話した。すると、  

 

「マジ!? ミュセル脈ありじゃん!」

 

「おめでとうございます! 一輝様は今や貴族、玉の輿ですね!」

 

「そ、そんなんじゃありません!!」

 

 そう、そんなのじゃないのは分かってる。だって一輝さまはとはもうすぐお別れなんだから。その時、

 

「あぁ、一輝様と云えば聞いてる? 人間界の一輝様のご自宅にメイドを派遣するって話」

 

 ───えっ?

 

「ええ、私もグレイフィア様から聞きました。何でも近日中に数名選ぶ予定だとか」

 

 ───えええっ!? 私初耳ですよ!?

 

 驚きのあまり固まった私に二人が話し掛ける。

 

「良かったじゃん、ミュセル。ワンチャンあるかもよ?」

 

「頑張って下さい!」

 

「え、あ、はい・・・・」

 

 私が選ばれると決まった訳じゃないけど、もし選ばれたら・・・・・・

 私は一輝さまに贈られたリボンを両手で包み、そっと胸に抱きしめた。 

 

 

 


 

 

3ー6 天使と堕天使と

 

 

 ローマの某プロテスタント教会に、その日天使長ミカエルが降臨した。

 

「という訳で、貴女には天界側のスタッフとして駒王町に行って欲しいのです」

 

 ミカエルは目の前で跪く少女に告げる。

 

「ミカエル様・・・・よろしいのですか? 私は・・・・」

 

「無論全て分かっています。いえ、だからこそ貴女が選ばれたとも言えますね。かの地にいる者は皆“神の不在”を知っています。そういう者でなければこの任務は務まらないでしょう。それにかの地には貴女の知己が何人もいますから、何も知らない者より早く関係を構築出来るでしょう」 

 

 そう言われて少女の脳裏に懐かしい顔が浮かぶ。青髪に一部緑のメッシュが入ったかつての相棒、少しエッチな所のあるヤンチャな幼馴染み、そして子供の頃から大好きだったひとつ年上の男の子───

 それらを思い浮かべ、少女は決心した。

 

「分かりました。その任務、お受けします」

 

 少女の言葉にミカエルは満足そうに頷いた。そして懐に手を入れると、一枚のカードを取り出した。

 

「では貴女に私の加護を──貴女を我が眷属、

御使い(ブレイブ・セイント)に任命します」

 

 ミカエルがそう言うと、カードが少女の元へ飛び、光を発してその豊満な胸に吸い込まれた。

 

 パアァァ───ッ!!

 

 神々しい光が少女に宿り、少女の頭と背中に光の輪と一対の翼が出現した。

 その姿は少女の美しさと相俟って、紛う事なき天使そのものだった。

 

「これで貴女は天使に転生しました。お行きなさい紫藤イリナ。我が御使い(ブレイブ・セイント)(エース)として」

 

 少女──紫藤イリナは立ち上がる。

 

「はい、ミカエル様」

 

 天使となった少女は再び駒王町に舞い降りる。

 

 

 

 

 

 

 冥界・魔王領、サーゼクスの執務室にて、簡易的な首脳会談が行われていた。

 

「あん? じゃあ天界側のスタッフとして転生天使を駒王町に派遣するのかよ」

 

『ええ。駒王町は今後多くの勢力の注目を集めるでしょう。場合によっては闘争の渦、その中心になるかもしれません。その地に天界の者が一人もいないのは問題ですから』

 

 アザゼルの問い掛けに、モニターの向こうでミカエルが答える。

 

「成る程なぁ・・・・て事は俺らも考えねえとな」

 

「何だ? 駒王町には君自身が駐留するのだろう? だったら──」

 

「いやあ、俺は仮にも総督だからな。色々と忙しくて常駐する訳にもいかねえんだよ」

 

「成る程、仮にも(・・・)総督だしな」

 

仮にも(・・・)総督ですしねぇ・・・・』

 

「お前らなぁ・・・・」

 

 サーゼクスとミカエルの辛辣な評価にアザゼルが憤慨する。

 

「まぁいい。実は堕天使側(うち)にもあいつらと面識のある奴がいるんだよ。そいつを堕天使側のスタッフとして派遣するわ。・・・・まぁ、受け入れられるかは分からねえがな」

 

 アザゼルの意味深な発言にサーゼクスが訝しげな顔をする。

 

「何だ? この期に及んで面倒はごめんだぞ?」

 

「分かってる。受け入れられない時は──俺が始末するさ」

 

 アザゼルの覚悟を決めた声に、サーゼクスもミカエルもそれ以上言葉を発せなかった。

 

「それで? 誰を派遣する気ですか?」

 

 そんな中でその場にいた最後の一人──グレイフィアの冷静な声が響く。

 

「ああ、今は罪人として収監しているが──堕天使レイナーレだ」

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

短編集いかがだったでしょう?
ご意見ご感想を貰えたら幸いです。

ではそれぞれの解説を。

一話目は原作の「赤龍帝おっぱいドラゴン」に代わる特撮作品誕生のエピソードです。どんな展開になるかは考えてません。

二話目は祐美の師匠、沖田総司の話。
お分かりと思いますが、モデルはFGOの沖田さんです。
先に言っておきますが、彼女と一輝のエロは現在考えてません。

三話目はミリキャスの話。
実は本作のミリキャスには出生の秘密があります。
勘のいい読者は分かるかもしれませんが、次のグレイフィアの閑話で明かしたいと思います。

四話目は本命のレイヴェルの話。
だったのですが、何だかマリアヴェルの方が目立っていたような?
因みにマリアヴェルという名は適当に付けました。
要はレイヴェルの眷属化フラグが立つという話です。

五話目はメイド達の話。モデルは以下の通りです。
ミュセル──アウトブレイク・カンパニーより。
シエスタ──ゼロの使い魔より。
アイリ───クイーンズ・ブレイドより。
この話は次回からの伏線になります。

六話目は再登場するキャラの話。
イリナはともかく、もう一人は以外だったのでは?

本当は四話だけのつもりだったのですが、急遽浮かんだ五話六話を書いてたら遅れてしまいました。

次回から原作第6巻のエピソードに入りますが、少し間が開くかもしれません。





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第26話 新学期・波乱の幕開け☆☆(ゼノヴィア、イリナ)



お久し振りです。
何とか二月中に投稿出来ました。

今回から原作6巻のエピソードに入ります。
大分原作とは変わってきますがご了承下さい。

それでは第26話をご覧下さい。



 

 

 リンゴーン! リンゴーン!

 

 教会にウエディングベルが鳴り響く。

 オルガンが奏でるのは結婚式の定番「結婚行進曲」。白いタキシードのイッセー()は扉を開けて教会に入った。

 そこには目映いばかりの白いウエディングドレスを着たアーシアがいた。

 

「アーシア・・・・」

 

 普段から可愛かったけど、今のアーシアは神々しい程に美しかった。あまりの美しさに俺はアーシアから目を離せなかった。

 

「イッセーさん・・・・」

 

 アーシアが幸せそうに微笑む。日だまりのようなその微笑みに俺は見惚れていた。だが───

 

「今までありがとうございます。私はあの人のお嫁さんになって、幸せになります!」

 

「え゛っ!!?」

 

 その一言に俺の心臓が止まった。

 

 アーシアはそんな俺に見向きもせず、いつの間に現れたのか、白いタキシードの金髪イケメンと腕を組んだ。

 あ、あいつはこの前いきなりアーシアにプロポーズした若手悪魔の───

 

「アーシアはこの僕、ディオドラ・アスタロトが幸せにしますよ。お兄さん(・・・・)」 

 

 こ、こいつ何を言ってやがる!? 俺は二人に近付こうとするけど足が動かない!? いつしか俺の着ていたタキシードは見馴れた駒王学園の夏服に変わっていた。

 

「アーシア、愛してるよ」

 

「はい、ディオドラさん。私も愛してます」

 

 抱き合った二人の唇がゆっくりと近付き───

 

「や、やめろ、やめてくれえぇぇぇぇーーーーっっ!!!」

 

 俺の叫びも虚しく、二人の唇が重な───

 

 

 

 

 

 

「はっ!!?」

 

 机に突っ伏して寝ていたイッセーがいきなり飛び起きると、ここがどこか確かめるように辺りを見回して、ホっとしたのか再び突っ伏した。

 

「大丈夫ですか、イッセーさん?」

 

 アーシアがハンカチでイッセーの汗を拭いている。ゼノヴィア()も心配になって二人に近付いた。

 

「ありがとな、アーシア」

 

「随分夢見が悪かったみたいだな、イッセー・・・・やはり例の件か?」

 

「あっ・・・・・・」

 

 私の言葉にイッセーは顔を歪め、アーシアは申し訳なさそうに口をつぐんだ。

 

 冥界からの帰還早々、待ち受けていた若手悪魔の一人、ディオドラ・アスタロトがいきなりアーシアにプロポーズした。

 ディオドラはアーシアが異端扱いされ、教会を逐われた原因となった悪魔で、助けてくれたアーシアをずっと捜していたそうだ。

 冥界での会合でアーシアを見付けたディオドラは、アーシアがグレモリー眷属になった事情を調べ上げ、彼女を自分の妻に迎えたいとプロポーズして来た。

 突然の事で何も言えないアーシアに代わってリアス部長が対応、交換(トレード)を申し出たディオドラをリアス部長は当然の如く却下し、ディオドラも取り敢えずその場は退いた。

 だが翌日からディオドラのプレゼント攻勢が始まった。毎日のラブレターと共に服やアクセサリー、映画や演劇のチケット、果てはベッドやクローゼットなどの高級家具に至る大量のプレゼントが送られて来て、対応するイッセーのお母さんが悲鳴を上げているという。

 そんな状況下だからか、ここ最近イッセーの機嫌が悪い。ムードメーカーのイッセーがこの状態だからか眷属のムードも下降気味だ。今日から新学期だというのに何とかならないものか・・・・

 と、その時クラスメイトの男子が駆け込んで、

 

「大ニュースだ皆! このクラスに転校生が来る! しかも女子だっ!!」

 

 開口一番、そう報告した。

 このクラスに転校生が来るのはアーシア、私に続いて三人目だ。一体どんな娘が来るのか・・・・

  

 

 

「イギリスから転校して来ました紫藤イリナです! 皆さんよろしくお願いします!!」

 

 明るい笑顔を振り撒き、挨拶するかつての相棒──紫藤イリナの登場に、私は驚きを禁じ得なかった。

 

 

 

 

 

 

「駒王学園へようこそ。紫藤イリナさん、私達は貴女を歓迎するわ」

 

 部室にイリナを迎え、リアスがそう宣言する。

 

「ありがとうございますリアスさん。改めて皆さんもよろしくお願いします!」

 

 持ち前の明るさですぐ皆と打ち解けたイリナ。同じクラスになったゼノヴィアやアーシアとも仲直りしたというし、元々顔見知りばかりというのを差し引いても、このコミュ力の高さは大したものだ。

 そんな事を考えていると、イリナが一輝()の前にやって来た。

 

「久し振り、一兄(かずにい)。元気だった?」

 

 以前と変わらぬ明るい笑顔で訊ねるイリナに、俺は苦笑を返す。

 

「それはこっちの台詞だ、イリナ。何の挨拶もなく帰っちまったから心配してたんだぞ?」

 

 あの『聖剣事件』で“神の不在”を知ってしまったイリナは失意のまま、何も言わず帰国した。

 コカビエルに奪われた聖剣の奪還は果たしたものの、“神の不在”を知ってしまったイリナが幽閉、もしくはアーシアのように異端扱いされ追放でもされてないか心配していたのだ。

 『駒王協定』締結後、ミカエル様に尋ねるも「調べてみる」と言われたまま音沙汰が無く、心配していた事を話すと、イリナは一歩下がって目を閉じ、祈るように手を組んだ。

 

 ───バサッ!!

 

 イリナの背に一対の白い翼が広がり、頭上には光の輪が浮かび上がった。

 その姿はまるで神話にある天使の姿そのものだった。

 

「これは・・・・!」

 

「ほう・・・・! おもしれぇな。イリナ、お前天使に転生したのか!?」

 

「はい。私はミカエル様の祝福を得て、転生天使になりました!」

 

 誇らしげにイリナは頷く。

 

「天使に転生って、そんな事出来るんスか!?」

 

「今までは不可能だった。だが・・・・?」

 

 アザゼルはイリナに意味深な視線を向ける。

 

「はい。天界の熾天使(セラフ)の方々は『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の技術を転用して、それを可能とされました」     

 

 それにイリナは頷いて説明してくれた。

 ミカエル様を始めとした十名の熾天使は、自らをトランプの(キング)に見立て、(エース)から(クイーン)に倣った十二名の転生天使『御使い(ブレイブ・セイント)』を作る事に成功した。因みにイリナの(カード)(エース)だそうだ。

 今は熾天使だけだが、将来的には他の天使にも実装させて、オリンピックのように悪魔とのレーティングゲームも行ってみたいと考えているようで、面白くなりそうだとアザゼルがワクワクしていた。

 『駒王協定』で三大勢力の和平は成立したが、今の所交流が始まってるのは上層部の一部だけで、実際に現場に出る中級・下級の悪魔や天使は今までと変わってないらしい。人間界でも教会に通達はされたが、現場のエクソシストまで浸透してないようで、小さな衝突が起きているという。

 そんな状況だから、実際そうなるには十年から二十年はかかる見込みだというし、イリナが転校して来たのも現場レベルで交流の始まっていると喧伝する目的もあるんだろう。いずれは天使や堕天使の大使館などが建てられ、この町を闊歩する日が来るかもしれない。

 

「という訳で、この町出身で皆さんと面識があるという事で私、紫藤イリナが派遣されました。ミカエル様のAとして頑張りますので、よろしくお願いします!」

 

 こうして俺はイリナとの再会を果たした。

 

 

 

 

 

 

「所でイリナはどこに住むんだ?」 

 

「あれ? 一兄の所に住まわせて貰えるって話だけど──聞いてないの?」

 

 イリナの歓迎会をしようという事で皆でうちのマンションに向かう途中、何げなく聞いてみたら、イリナはキョトンとした顔でそう言った。

 

「聞いてないぞ・・・・?」

 

 イリナの反対側にいるリアスに視線を向けると、彼女も聞いてないようで首を横に振った。

 部屋は沢山空いているから構わないんだが、そういう事は事前に報せて欲しいものだ。サーゼクス様といいミカエル様といい、この世界のトップは報連相(報告・連絡・相談)がなってないな。

 

「あの・・・・もしかして駄目だった?」

 

 不安そうな顔をするイリナに苦笑を向ける。

 

「いや、大丈夫だ。ただ聞いてなかったから驚いただけだよ」

 

 俺がそう言うとイリナは「良かった」と言って明るく笑った。

 

 

 そんな風に話しているとマンションに到着し、玄関を潜ると───

 

「「「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様!!」」」

 

 横一列に並んだメイドさん達に出迎えられた。

 

「グレイフィアさん? これは一体・・・・?」

 

 グレイフィアさんの隣に並ぶ三人のメイドは、全員夏の間世話になったグレモリー本邸のメイド達だ。

 

「奥様の提案で皆様のお世話と当マンションの管理をする為、こちらの三名を人間界に派遣する事になりました。三名共私の眷属ですが私自ら教育し、一輝さんとリアスお嬢様を主と仰ぐよう言い含めてあります。どうぞよろしくお願いします」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 グレイフィアさんに続いて三人のメイドが綺麗に会釈する。リアスに視線を向けると、彼女も知らなかったのか首を横に振った。だから報連相しろっての!

 冥界からの帰還後、今十九歳の黒歌に駒王大学に通うかと提案したら「面倒だから嫌にゃ」と言われ、表向きマンションの管理人に就いて貰った。だが自由奔放な黒歌には向いてないのは分かってるし、ちゃんとした管理人は必要だとは思っていた所だから渡りに船だ。彼女達なら信用出来るから断る理由もない。

 

「分かりました。こちらこそよろしくお願いします」

 

「受け入れて下さってありがとうございます。では改めて自己紹介を──」

 

 俺が承認すると、グレイフィアさんはメイド達に自己紹介を促す。

 

「はい。グレイフィア様の兵士(ポーン)、シエスタと申します。家事全般を担当させていただきます」

 

 黒髪おかっぱのシエスタはアーシアの専属をしていた娘だ。

 

「私はアイリ。グレイフィア様の騎士(ナイト)で、主に警備を担当しまーす」

 

 赤髪ツインテールのアイリはゼノヴィアの専属をしていた娘で、他の二人と違いミニスカのメイド服を着ている。ミニスカ・ニーソ間の絶対領域が眩しい。

 

「グレイフィア様の兵士(ポーン)、ミュセルと申します。状況に応じて二人のサポートを担当致します」

 

 最後はミュセル。俺の専属をしていたライトブラウンの髪をツインテールにした娘で、一番世話になった。ツインテールを結ぶ真新しい白いリボンに思わず笑みが浮かぶ。

 

「以上三名が皆様のお世話をさせていただきます」

 

「「「よろしくお願いします!!」」」

 

 という訳で当マンションに三人のメイドさんがやって来た。

 

 

 その後は生徒会の仕事を終わらせて合流したシトリー眷属も交えて、イリナの歓迎会を行った。

 

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん♪」

 

 お風呂上がりのイリナ()はご機嫌な気分で廊下を歩いていた。

 

「それにしても凄いなぁ。部屋もお風呂も広くて豪華で・・・・これが一兄のものだなんて・・・・」

 

 この地上十階地下三階、総敷地面積が東京ドーム並みの高級マンションが一兄個人の所有物だとは(本来はグレモリー家の持ち物だったが、一輝の昇格祝いとして譲渡された)。

 

「偉くなっちゃったんだなぁ・・・・」

 

 今や一兄は上級悪魔で貴族の一員。前に会った時から僅か二ヶ月位しか経ってないというのに、すっかり偉くなってしまった。それに───

 

「婚約かぁ・・・・」

 

 そう、昇格と同時に一兄はリアスさんの婚約者になっていた。

 大好きだったひとつ年上のお兄ちゃん。その人の婚約を私は素直に祝福出来ずにいた。

 一兄の周りにはリアスさんを筆頭に美少女ばかり。昔は私だけの一兄だったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。やっぱりパパの転属に合わせて引っ越しちゃったからかな・・・・とそんな風に考え事をしながら歩いていると、

 

『ん──あぁ・・・・』

 

 不意に濡れた声が私の耳に届いた。

 

「今の声って・・・・?」

 

 今通り過ぎた部屋から聞こえた、妙に艶っぽい声に私は足を止めた。

 慌ててネームプレートを確認すると、そこはゼノヴィアの部屋だった。

 

「じゃあ今の声はゼノヴィアの───」

 

『んああ、はぁん!』

 

 またも聞こえた声に私はビクッと飛び上がった。

 

(何? 何をしているの、ゼノヴィア───?)

 

 ゼノヴィアの部屋の扉は微かに開いていて、そこから声が漏れてるらしい。

 私はゴクリと唾を飲み込むと、好奇心に負けてそっと中を覗き込んだ。そこには───

 

 

 

 

 

 

「んん・・・・ああ・・・・ちゅ、うぅん、ふぅん」

 

 背後からゼノヴィアの胸と秘唇を弄りながら、一輝は唇を交わし舌を絡める。

 

「はぁん・・・・んん、センパぁイ・・・・ちゅぷ、あふん・・・・」

 

 豊満な胸は面白いように形を変え、指先の刺激に乳首が固くそそり勃つ。髪と同じ青い陰毛は淫蜜でしとどに濡れ、クチュクチュとイヤらしい水音を立てながら一輝の指を受け入れていた。

 

 

 

(嘘・・・・一兄とゼノヴィアがあんな事を・・・・でもどうして? 一兄はリアスさんと婚約したって言ってたのに・・・・?)

 

 イリナが扉の隙間から見た光景は衝撃的なものだった。元相棒のゼノヴィアが幼馴染みの一輝に身体をまさぐられ悦んでいるのだ。

 そう、ゼノヴィアは悦んでいた。表情は甘く蕩け、瞳はイヤらしい期待に濡れ、見た事のないだらしない表情をしている。明らかに自ら望んでゼノヴィアは一輝に身を委ねていた。 

 

(何でゼノヴィアが一兄と・・・・はぁ、はぁ・・・・あ、あんな所に指を入れられて・・・・ゴクン、す、スゴい・・・・)

 

 イリナは熱い視線を二人に送りながら、段々息が荒くなっていた。

 

 

 

「んん、フフ・・・・センパイ、私の尻に硬いモノが当たっているぞ? もう挿入れたくなったか?」

 

「ん? 挿入れて下さいの間違いだろ?」

 

 ゼノヴィアは淫靡に微笑むと、一輝の膝の間から立ち上がり、振り返ると一輝の股間からいきり勃つ肉棒を取り出した。

 

「ほぅらやっぱり。こんなに大きくして・・・・ちゅ、フフ、いつ見てもスゴいな・・・・あ~ん♪」

 

 ゼノヴィアは肉棒を口に含み、わざと音を立てて舐めしゃぶった。

 

 

 

 その手慣れた動きは二人の関係が昨日今日始まったものではないとイリナに教えていた。

 

(うわぁ・・・・あれが一兄の・・・・ゴクリ、あ、あんなに大きなのを頬張ってゼノヴィアったら・・・・何てエッチなの・・・・!)

 

 明らかに興奮した面持ちでイリナは二人の情事を凝視する。いつしかイリナの手は自然と自らの股間に伸びていた。

 

 

 

「ん、いいぞゼノヴィア」

 

「んん、ちゅぽ!・・・・ンフフ、まだまだこれからだぞ、センパイ」

 

 ゼノヴィアは艶然と笑うと、その胸で一輝の肉棒を挟み、たっぷりまぶした唾液と一輝の先走りを潤滑液にして、熱心に動き出した。

 

「ん、フフ、どうだセンパイ。私のパイズリは気持ちいいか?」

 

「ああ、気持ちいいぞ」

 

「そうか。それじゃあもっと気持ち良くしてやるぞ

・・・・ん、ちゅ、ちゅぷ、んん・・・・レロレロ・・・・」

 

 一輝の反応に気を良くしたゼノヴィアは、胸の間から出て来る亀頭を口に含み、舌を這わせる。一輝はあまりの心地良さに身体を震わせた。

 

 

 

(スゴいわゼノヴィア・・・・一兄のお、おチンチンをあんなに美味しそうに・・・・ゴクリ、アレってそんなに美味しいのかしら? 一兄も凄く気持ち良さそう・・・・

ハァ、ハァ、んん、イヤだ私ったら・・・・こんなに濡れてる・・・・)

 

 二人の情事を覗き、股間をグッショリと濡らしたイリナは、自らの陰裂に指を這わせて呼吸を荒げていた。

 元は敬虔な神の戦士とは言えイリナも年頃の少女。教義で姦淫は禁じられていても、戦闘の後や生理などで火照った身体を一人慰める時はあった。その時の快感とは比べ物にならない快楽に、イリナは身体を震わせる。

 

 

 

「うあぁ、ゼノヴィア! それスッゲぇ・・・!」

 

「ンフフ、ちゅぽ、いいぞセンパイ。いつでも好きな時に射精()してくれ」

 

 ゼノヴィアはラストスパートとばかりに挟む力を強くし、速く動き始めた。

 敏感な亀頭を走るザラついた舌の感触と、柔らかくもハリのある乳圧に一輝は限界を迎える。

 

「うあぁ、射精する(だす)ぞゼノヴィア!」

 

「ちゅぱ、射精()してセンパイ! センパイの子種を私にかけてくれ!!」

 

 

 

(ハァ、ハァ、え!? 出すって一兄、射精するの!? ゼノヴィアもかけてって、そんなの、んん! あぁダメ、ダメぇ! 私も───んんん!!)

 

 

 

 ブビュルル、ビュル、ブビューーーー!!

 

「んんん!? ンパァ、んああ・・・・・・ああ、センパイの精液が、いっぱい・・・・ん、ちゅ、ズズズ・・・・コクン」 

 

 射精の勢いに唇が外れてしまい、白濁した粘液がゼノヴィアの顔や胸に降り注ぐ。ゼノヴィアは恍惚とした表情でそれを拭い、口に含んで嚥下した。

 

 

 

 一方、覗いていたイリナもまた二人と同時に果てていた。

 

(ああぁ、イっちゃった・・・・あれが男の人の射精・・・・あ、あんな勢いで出るんだ・・・・ゼノヴィアったらあんなに舐めて・・・・え!? 飲んじゃったの? アレを!?

・・・・あんなの飲んでお腹壊さないかしら・・・・ゴクリ)

 

 洗ったばかりの股間をグッショリと濡らし、荒い息を吐きながらイリナは未だ二人から視線を外せなかった。

 

 

 

「フウ、フウ、ちゅぷ、ん・・・・美味し・・・・センパイ、もう我慢出来ない。お願いだ、私のココにセンパイのを・・・・」

 

 発情した雌の顔で懇願するゼノヴィア。

 

「おねだりの仕方は教えたろ? ほら、ちゃん出来たら挿入()れてやるよ」

 

 だが一輝は揶揄うようにゼノヴィアのお尻をペチペチと叩き、やり直しを要求する。

 

「そんなぁ・・・・んん、センパイは意地悪だ・・・・わ、私の・・・・ゼノヴィアのグチョグチョに濡れたイヤらしいおマンコに、一輝センパイの熱くて大きなおチンポを挿入れて下さい!グチャグチャにかき混ぜて、私の子宮を精液でいっぱいにしてぇっ!」

 

 一輝の要求通り、ゼノヴィアは絶叫した。

 

 

 

(ああ、あのゼノヴィアがあんなにイヤらしい台詞を吐くだなんて・・・・あぁん、ふぅ、うぅん・・・・ヤダ、手が止まらない・・・・止まらないよぅ、ああぁ・・・・)

 

 イリナはかつての相棒がチンポを欲しがる姿に、昏い興奮を覚えていた。 

 イリナの股間から溢れた淫蜜はそのまま床に垂れ、淫らな水たまりを作っていた。

 

 

 

「よしよし、良く言えたな。それじゃあ挿入れてやるよ」

 

「あ・・・・・・♪」

 

 頭を撫でられて悦ぶゼノヴィアは、まるで主人に褒められて尻尾を振る雌犬のようであった。

 四つん這いで待つゼノヴィアの膣口目掛け、一輝は自慢の肉槍を突き刺した。

 

「んああああっ! は、挿入って来たぁ~~~~!!❤」

 

 一気に子宮まで貫く衝撃に、ゼノヴィアは歓喜の絶叫を上げた。

 ゼノヴィアは優しくされるよりも激しくされる事を好む。一輝は最初からクライマックスとばかりに激しく腰を打ち付け、ゼノヴィアの膣内を蹂躙する。

 

「あお! おぉ! くうぅ・・・・ふあぁぁん! ああ、スゴい、スゴいぃ! センパイのおチンポ、私のおマンコの気持ちいい所に擦れて・・・・ああ、き、気持ちいいのぉっ!!❤」

 

 

 

 廊下に少女の荒い息と淫らな水音が響く。

 イリナは一輝とゼノヴィアの情事を覗きながら、夢中で自らの秘所に指を這わせていた。

 

(ハァ、ハァ、スゴい二人共・・・・あれがセックス・・・・ゼノヴィアったらあんなに乱れて・・・・そんなに一兄のが気持ちいいの?・・・・んん、あぁ・・・・ズルいよ一兄

・・・・ゼノヴィアにばっかり・・・・あぁん、わ、私も・・・・) 

 

 いつしかイリナの頭上には天使の輪が浮かび、興奮を表すかのように明滅していた。

 

 

 

 ゼノヴィアの汗が滲む背中に舌を、豊満な胸に両手を這わせ、一輝は身体の内外から刺激を与え続ける。

 

「ちゅ、ちゅぷ・・・・レロレロ・・・・うん、相変わらずゼノヴィアの汗は濃いな。味といい臭いといい実に芳ばしいぞ」

 

「んひぃ!? あぁ、ヤダ、やめてくれセンパイ! 汗なんて舐めたら・・・・き、汚いからぁ!」

 

「汚くなんてないさ。ただちょっと人より濃いってだけだよ」

 

 背中から首筋へ、一輝は耳元に届くようにわざと大きな音を立てて舌を這わせる。途中臭いを嗅ぐように鼻を鳴らすのも忘れずに。

 ゼノヴィアも自分が人より体臭が濃いのは分かってるので、好きな男に体臭を嗅がれるという行為が恥ずかしくて堪らなかった。だが、

 

(何故だ!? 体臭を嗅がれ、辱しめを受けているというのに、何故私の身体はこんなに熱くなっているんだ!? こんなに恥ずかしいのに・・・・イヤな筈なのに・・・・私はいつしかこの刺激を求めるようになってしまった・・・・あぁ、もうダメだ・・・・私はこの人に、一輝センパイに変えられてしまった・・・・この快楽を知ってしまったら、もう戻れない・・・・!!)

 

「ああああ! もっと! もっとゼノヴィアを辱しめて! センパイになら何をされてもいいから!!」

 

 突如発したゼノヴィアの絶叫に一瞬驚いた一輝だったが、ならばと態勢を背面座位に移行する。

 

「いいぞ、望み通りにしてやる! ほら、ゼノヴィアはここを舐められるのも好きだよな!?」

 

 一輝は背後からゼノヴィアの右腋に頭を入れて、そのまま舐めしゃぶった。

 

「あああ! 好き、好きぃ! 腋も乳首もおマンコも! お、お尻の穴だって舐められるの大好きなの!! だから、だからもっと───!!❤」

 

「全く・・・・可愛いよ、ゼノヴィア」

 

「あ、センパイ・・・・はむちゅ、ちゅぷ、んん・・・・」

 

 ゼノヴィアの告白に一輝は腋から頭を離すと、ゼノヴィアの顔を強引に寄せて唇を奪った。一瞬驚いたゼノヴィアだったが、一輝の唇を受け入れそのまま濃厚なキスを交わす。

 

「ん、ちゅ、好き、好き・・・・ちゅぷ、好きだ一輝センパイ・・・・ふぅん、ちゅ」

 

「ああ・・・・ちゅぷ、俺も好きだよゼノヴィア・・・・」

 

 

 

(ああぁ・・・・あんなに涎が溢れる位濃厚なキス・・・・私もしてみたい・・・・あんなキスされたら、私どうなっちゃうんだろう・・・・んんん!)

 

 ビクンと身体が震える。もう何度目だろう、イリナは小さい絶頂を繰り返していた。オナニーの経験はそれなりにあるイリナだったが、こんなに連続で絶頂したのは初めてだった。

 「もうやめよう」と思っても顔を真っ赤に染め、荒い息を吐きながら、イリナは濡れた瞳を二人から離せなかった。そしてまた指先が自然に股間へと伸びる。

 いつしかコップの水を溢したような水たまりは、バケツの水をひっくり返したように大きくなっていた。

 

 

 

「んふう、うぅん・・・・センパイ、私もう・・・・」

 

 ゼノヴィアが唇を離して一輝を見つめる。

 

「ああ、一緒にイこう」

 

 一輝はキスに夢中になり止まっていたピストン運動を再開する。

 

「ああ、ああ、いい! センパイ気持ちいい! もっと、んん、もっと突き上げてっ!!」

 

 ゼノヴィアも一輝に合わせるように腰を動かす。息の合った二人の動きは快感を何倍にも高め、最後の時を迎えようとしていた。

 

「くっ、ゼノヴィアいくぞ!?」

 

「うん、うん、来てくれセンパイ! 私の子宮をセンパイの子種で真っ白に染めてくれ!!」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ブビューーーー!!

 

「はおおぉぉぉんんっっ!!❤」

 

 激しい絶頂にゼノヴィアの身体が震える。要望通り子宮を白一色に染める程大量の射精を受けて、ゼノヴィアは失神した。

 

 

 

「ふうぅぅんんっっ!!」

 

 二人がイクと同時に、イリナもまた絶頂に達した。

 

(・・・・もう、明日からどんな顔して二人に会えばいいのよ・・・・)    

 

 そう心で呟くイリナの顔は、色欲に堕ちたかのように淫らに染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 イリナが転校して来て一週間が経った。

 持ち前の明るさや親しみ易さで今ではすっかりクラスの人気者だ。

 今もクラスの女子に囲まれて談笑している。一緒にいるアーシアも楽しそうだ。そんなアーシアを見てほっこりしているイッセー()に松田と元浜が声をかけて来た。

 

「何だ? 朝っぱらから誰を視姦してんだよ、イッセー」

 

「やはりイリナちゃんか? 明るくて可愛いし、おっぱいもデカい。二年の四天王が三人も揃ってるんだから、このクラスは実にいいクラスだな!」

   

 坊主頭の松田と眼鏡の元浜。中学の頃からのダチで俺以上の変態共だ。

 

「うっせーよ松田。それと元浜、四天王って何だよ?」

 

「うちのクラスのアーシアちゃん、イリナちゃん、ゼノヴィアちゃんとB組の木場祐美ちゃん。可愛い娘揃いの二年生の中でも頂点に立つ四人を称えて俺が付けた称号だ」

 

「自作じゃねーか! 知る訳ねえだろ!」

 

 とまあ、バカでスケベでしょーもない奴らだが、三人で(つる)んでこんなバカ話ばかりしている。

 

「それよりビッグニュースがあるんだよ。聞きたいか?」

 

「お前が言いたいだけだろ。勿体ぶらないで早く言え」

 

 元浜が呆れたように言うと、図星なのか嬉しそう松田が話す。

 

「実はな、このクラスにまたまた転校生が来るんだってよ!」

 

 転校生だって? これでもう四人目だぞ?

 

「ほう? 松田がビッグニュースと言うからには女子、それも相当可愛い娘と見た」

 

 元浜の言う通りだ。可愛い娘は大歓迎だぜ! どんな娘なのかと盛り上がってると、先生が入って来て皆席に着く。それを確認すると先生が口を開いた。

 

「えー、突然ですが転校生を紹介します。──入って」

 

 イリナが来たばかりなのにまた転校生か、とザワめく教室に一人の少女が入って来た。

 ストレートの長い黒髪に神秘的な紫の瞳、整った顔立ちをした文句なしの美少女だ。教室のあちこちから「キレー」「可愛い」といった歓声が上がる。元浜に至っては「なんと!四天王から五虎将になったか!」とか言って騒いでいた。

 アーシアの視線を感じるがそれ所じゃない。俺は彼女を知っている。彼女は、彼女は───

 

 

「────── ゆう、ま、ちゃん」

 

 

 俺の呟きが聞こえたのか、彼女は初めて会った日のように優しく微笑んだ。

 

「本日よりお世話になります、天野夕麻(あまのゆうま)です。皆さんよろしくお願いします!」

 

 

 そう、新たな転校生として現れたのは、俺の初めての彼女であり、俺を騙して殺し、更にはアーシアや一輝先輩まで殺して部長に消滅()された筈の堕天使、レイナーレこと天野夕麻だった。 

 

 

 

 ───この日、俺は自分の血の気が引く音を初めて聞いた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り本作ではレイナーレが復活しました。
彼女が何で生きてるのかは次回に持ち越します。


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第27話 奪われたアーシア☆(アーシア、レイナーレ)



感想並びに誤字報告ありがとうございます。

第27話はちょっとシリアスな展開ですが、ご覧下さい。




 

 

「どーいう事なのこれは!!?」

 

 リアス()は思いっ切り机を叩いてアザゼルを睨む。アザゼルは困ったように頭を掻くけど誤魔化されないわよ! この事態、納得のいく説明をして貰わなきゃ気が済まないわ!!

 

「あ~、要するにイリナと同じだ」

 

「私!?」

 

 いきなり名前を出されたイリナさんが驚く。けどそれだけじゃ何の事かさっぱり分からないわ。

 

「だから、要はミカエルの奴がイリナを派遣したから、堕天使側(俺ら)も駐在員としてこいつを派遣したって訳だ。俺はこれでも総督だからな。色々やる事があって常駐する訳にもいかねえんだ」

 

 成る程、アザゼルはあれでも総督だから理由は分からないでもないわ。でもね、

 

「だからってこの人選はないでしょう!? この女が私達に何をしたか、貴方だって知らない筈ないでしょう!!?」

 

 私は怒りの収まらぬまま、アザゼルの後ろで俯いている天野夕麻──レイナーレを睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

 リアスが怒りを爆発させている。

 今日、イッセーのクラスに転校して来た堕天使レイナーレ。彼女はイッセーやアーシアと因縁浅からぬ関係らしい。

 

「何を他人事みたいに言ってますの? 一輝(貴方)だって当事者ですのに」

 

 朱乃が呆れたように呟く。確かに俺はレイナーレに殺されて悪魔に転生したから当事者と云えるんだが、何せいきなり目の前に現れ、殺されたもんだから実感が湧かない。後から話を聞いて「そうだったのか」と思う位だ。

 

「俺よりイッセーやアーシアの方が心配だよ。大丈夫なのか?」

 

 レイナーレとの再会に二人、特にイッセーが動揺している。イッセーは真っ青な顔で座り込み、彼女を見ようともしないし、アーシアもまた心配そうな視線をイッセーに向けていた。

 

「そう言わんでくれ。確かにこいつは勝手な事を仕出かして、お前らに多大な迷惑をかけた。本来なら罪人として処分されなくちゃいけねえのも分かってる。でもな、俺達堕天使は三大勢力中最も数が少なく、簡単に増やす事が出来ねえ。例え罪人とは言え、数少ない部下を簡単に処分する訳にはいかねえんだ。こいつも今は深く反省して、罪を償いたいと言ってる。だからせめて償うチャンスを与えてやっちゃくれねーか?」

 

 アザゼルの弁明にリアスは渋い顔だ。他の皆も同様で、誰もが不機嫌そうにレイナーレを睨んでいる。

 確かにアザゼルの言い分は堕天使側の事情に過ぎない。だが和平が成立し、これから協力態勢に移行しようという時に総督自身の訴えを無視する訳にはいかないだろう。仕方なしに俺は二人の会話に介入した。

 

「アザゼル先生、レイナーレはリアスが消滅させたって聞いたけど、どうして生きてるんですか?」

 

 俺が質問すると、アザゼルは助かったとばかりに食い付いた。

 

「お? おお! こいつらは『身代わり人形(スケープゴート)』というマジックアイテムを用意してたんだ。こいつは自分の血を垂らした人形が、死んだ時50%の確率で身代わりになってくれるという使い捨てのかなり珍しいアイテムなんだよ。レイナーレ達は偶然このアイテムを手に入れて使用したんだが、運良く助かったのはレイナーレだけだった」

 

 成る程、こいつは仲間を全員を失って、唯一人生き残ったのか・・・・

 俺は俯いているレイナーレを見つめる。 

 

「レイナーレ、顔を上げろ」

 

「・・・・はい」

 

 レイナーレは顔を上げて真っ直ぐに俺を見つめる。彼女の瞳には緊張と怖れ、そして覚悟が見えた。

 

「お前良く俺達の前に顔を出せたな。自分のした事をもう忘れたのか?」

 

「・・・・いいえ、忘れてません。イッセー君に、アーシアに、そして貴方にした事、全て覚えてます」

 

「ならば問答無用で殺されるとは思わなかったのか?」

 

「・・・・・はい、そう言われるのは覚悟していました。ですがどうか命だけはお許し下さい! それ以外ならどれだけ傷付けられようと構いません。身体を捧げろというならば、喜んで股を開きます。ですからどうか、どうか命だけは・・・・!!」

 

「「「「!!?」」」」

 

 俺の質問に答え、レイナーレがその場で土下座した。その様子に皆も驚いている。

 

「呆れたな・・・・命乞いとはどこまでも生き汚い。そんなに死ぬのが怖いか?」

 

 俺はわざと不機嫌そうに呟く。するとレイナーレは土下座したまま答えた。

 

「・・・・いえ、死ぬのは怖くありません。ですが私は今死ぬ訳にはいかないんです! カラワーナ、ドーナシーク、ミッテルト・・・・私は自分の愚かさのせいで、大切な仲間を失くしてしまった・・・・だから私は簡単には死ねない! 死んだ仲間達の分まで私は生きなくちゃいけないんです!!」

 

 レイナーレが叫ぶ。彼女に感じた覚悟、それは亡き仲間達の為、どんな屈辱に塗れようと必ず生き抜くという決意の表れだったか。

 あるいは仲間に対する贖罪もあるのかもしれない。話に聞いた限りじゃかなり傲慢な奴だと聞いてたんだが・・・・仲間を全て失い、プライドを粉々にされた挙げ句死にかけたんだ。多少性格が変わっても不思議じゃないか。

 俺はリアスに視線を向け、アイコンタクトを交わす。俺の「この場は任せて欲しい」との視線にリアスは不承不承ながらも頷いた。

 

「顔を上げろレイナーレ。お前の覚悟は分かった。──さてイッセー、アーシア、お前達はどうしたい?」

 

 レイナーレに関しては二人の方が先約だろう。俺は判断を二人に委ねた。

 

「俺は・・・・・・」

 

 そう口にするもイッセーは後が続かず、再び黙り込んでしまう。そんなイッセーを見つめて、今度はアーシアが口を開く。

 

「私は・・・・構わないと思います。確かに私は人間としての生をレイナーレ様に奪われました。ですがそのお陰で、と言っていいのでしょうか・・・・私はここにいる皆さんと出会えました。それにどのような思惑はあれ、教会を逐われ、行き場を失くした私に手を差し伸べてくれたのはレイナーレ様だけでしたから・・・・」

 

「アーシア・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 アーシアの思いにイッセーは言葉を継げず、レイナーレもまた、その思いを噛み締めるように瞳を閉じた。

 

「・・・・分かった。アザゼル先生、取り敢えずレイナーレの身柄はうちで預かります。それ以降は彼女の行動次第、という事でいいですね?」

 

「ああ、構わねえよ。お前に任せる。いいな、レイナーレ?」

 

「はい。ありがとうございます・・・・」

 

 そう言ってレイナーレは再び頭を下げた。

 

 

 こうして堕天使レイナーレは駒王町への駐在を暫定的に認められた。だが彼女に対するわだかまりは解消されず、溝は未だ深い。彼女が俺達に認められるかどうかは今後の彼女次第だが、果たしてどうなるか・・・・

 

 

 

 

 

 

「さて、話は変わるがお前達の次のゲームが決まった。お前達の次の相手は──ディオドラ・アスタロトだ」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 アザゼル()の言葉にリアス達の間に緊張が走る。よりにもよってコイツとは・・・・これも因縁って言うのかね。

 

「これはこの間行われた若手悪魔の試合を録画、編集した物だ。勿論お前らとシトリーの試合も入ってる。これから戦う相手だ。全員良く観ておけよ」

 

 俺はプレーヤーにディスクをセットする。暫くすると部室の巨大モニターに映像が映った。

 最初に映ったのは大王バアル家の次期当主候補サイラオーグと魔王アスモデウスを輩出したグラシャボラス家の次期当主候補ゼファードルの試合(ゲーム)だ。

 その内容は皆を戦慄させるに十分だった。

 

「おいおいマジか・・・・」

 

「“兇児”と呼ばれ、忌み嫌われたゼファードルがまるで相手にならないなんて」

 

「圧倒的です」

 

「全く、とんでもない(パワー)だな」

 

 試合を観た一輝が、祐美が、白音が、ゼノヴィアが口々に感想を漏らす。試合は圧倒的な“力”でサイラオーグがゼファードルを粉砕した。

 

「ありゃりゃ・・・・可哀想だけどあのヤンキー潰れたにゃあ」

 

 黒歌の言う通り、ゼファードルはこれで潰れた。サイラオーグに恐怖を刻み込まれ、もう戦いの場へ立つ事は出来ないだろう。

 サイラオーグは若手悪魔(ルーキーズ)六名で最も前評判の高い男だ(因みにリアスは三番目)。だとしてもまさかこれ程とは・・・・今すぐデビューしてもランキング上位に食い込むかもしれんな。

 

「お、場面が変わった」

 

 一輝の言う通り、次の試合は大公アガレス家の次期当主候補シーグヴァイラと魔王ベルゼブブを輩出したアスタロト家の次期当主候補ディオドラの試合だが、

 

「ディオドラの対戦相手は大公家のシーグヴァイラ・アガレス。前評判では圧倒的にシーグヴァイラの方が上だった(・・・)

 

「だったって・・・・じゃあこの試合は──」

 

 俺の解説を不審に思ったのか、イッセーが口を挟む。

 

「そうだ。勝ったのはディオドラ・アスタロトだ」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 皆が驚愕を浮かべる。だろうな。実際観ていた俺だって信じられねえんだから。

 

「百聞は一見にしかずというからな──始まるぞ」

 

 俺の声に皆が画面に集中したその時、

 

 パアァァ───!

 

 魔方陣が床に走る。この紋様は───

 

「アスタロト───」

 

 朱乃が吐き捨てるように呟く。

 

「ご機嫌よう。アーシアに会いに来ました」

 

 魔方陣から現れたのはちょうど話題に上がっていた男、ディオドラ・アスタロトだった。

 

 

 

 

 

 

「ディオドラさん・・・・」

 

「やあアーシア。君の美しさには到底敵わないが、僕の気持ちだ。どうか受け取っておくれ」

 

 ディオドラは赤い薔薇の花束(百本位ありそう)をアーシアに渡す。ちくしょう、イケメンだからってキザな真似しやがって・・・・イッセー()があんな真似したってギャグにしかならねえじゃねえか!

 

「ディオドラさん・・・・お気持ちは嬉しいんですけど、こういった贈り物はもう・・・・」

 

 困ったようにアーシアが言う。そうだアーシア! んな物は迷惑だってはっきり言ってやれ!

 

「アーシア・・・・そうか、分かったよ・・・・ならば僕は僕の想いを君に伝える為に物ではなく態度で示そう──何度でも言うよアーシア、君を愛している。どうか僕の熱い想いを受け取って欲しい」

 

 ディオドラはアーシアの両手を握ったと思いきや、そのままアーシアを抱きしめやがった!! っの野郎、ふざけやがって!!

 

「お前いい加減にしやがれ!! アーシアが嫌がってるだろうが!!」

 

 俺は激情のままにディオドラを突き飛ばそうとしたが、ディオドラはアーシアを抱きしめたままスルリとかわしやがった。

 

「何だい君は? 無粋な真似はやめてくれないか?」

 

「ふざけんな! アーシアを離せ!!」

 

 俺の怒りに呼応して、『赤龍帝の籠手』が具現化する。それを見てディオドラが鼻を鳴らす。

 

「ふん──そうか。君が今代の赤龍帝か・・・・噂は聞いてるよ。何でも『史上最弱の赤龍帝』らしいね」

 

「何だと───!?」

 

「歴代の赤龍帝は覚醒してすぐに『禁手』に至ったというのに君は未だに至れず、この前のシトリーとのゲームでも無様を晒したそうじゃないか」 

 

「うっ!?」

 

「おまけに学園での評判もすこぶる悪いとか。覗きやセクハラの常習犯で友人と一緒に“変態三人組”とか呼ばれてるんだって? そんな君にアーシアとの事をとやかく言われる筋合いはないね」

 

「ぐうぅ~~、いや、ある! アーシアは俺ん家に住んでるんだ。云わば俺達は家族だ!」

 

「ああ、そうらしいね。でも君はアーシアの“兄”だと公言してるそうじゃないか。妹の恋愛に口を挟むと嫌われるよ、オ・ニ・イ・サ・ン」

 

「それは!・・・・その・・・・・・」

 

 ちくしょう、言い返してやりたいけど事実だけに言い返せねえ・・・・!

 

「いい加減になさいディオドラ! いきなりやって来て私の下僕を侮辱するのはやめてちょうだい!」

 

 悔しくて唇を噛む俺を尻目に、部長が口を出した。

 

「非礼は詫びようリアス。だけど君はこのままでアーシアが幸せになれると思うのかい?」

 

 部長はディオドラの言葉に訝しげに眉根を寄せる。

 

「・・・・どういう意味よ?」

 

「彼女はこれまで聖女として教会で暮らして来た。そんな彼女が今のような世俗で暮らして本当に幸せになれると思ってるのかい?」

 

「それは・・・・・・」

 

「アーシアは傷付いた僕を癒したせいで教会を逐われた。分かるかい? 僕は彼女に対して責任があるんだ。僕は彼女を聖女であった頃に戻してあげたい。完全には無理でも天界との交流が始まった今なら近い状態には戻せるかもしれない。リアス、それに赤龍帝クン、君達はそう考えた事はないのかい? だとしたらそれはアーシアを手元に置きたいが為の君達の我が儘に過ぎないよ」

 

「「!!?」」

 

 痛い所を突かれた。それは以前から思っていた事──アーシアは俺達といるより聖女であった頃の方が幸せだったんじゃないかって。

 でも俺はアーシアに側にいて欲しい。だって俺は彼女を───

 

 

 

『───死んでくれないかな?』

 

 

 その時、俺の脳裏に冷たい女の声が甦る。

 

「!!?」

 

 心臓を針で刺されたような痛みに制服の胸元をギュッと握り締める。俺はこの声を知っている。何だ? どうしてアイツが浮かんで来る!? 俺が自分の異変に戸惑っていたその時、

 

「離して下さい・・・・」 

 

 静かだけれど、強い意志の籠ったアーシアの言葉にディオドラは両手を解いた。

 

「ディオドラさんのお気持ちは嬉しく思います。でも私の幸せを貴方が勝手に決めないで下さい。

・・・・確かに聖女と呼ばれていた頃は教会の求めに応じて癒しを行い、主に祈りを捧げるだけの何不自由ない日々を過ごしていました。ですが周りの人は誰もが私を聖女と呼び、私自身を見てくれる人はいませんでした。でもここにいる皆は聖女ではなく私自身を、アーシアという一人の女の子として見てくれます。私にとってそれが何より嬉しくて、幸せな事なんです」

 

「アーシア・・・・」

 

 アーシアの想いが俺達に伝わって来る。俺の悩みが杞憂だと知って、思わず涙が滲んで来た。

 

「・・・・分かったでしょう。アーシアの幸せはここにあるわ。貴方の考えは的外れだって。さ、分かったのなら帰ってちょうだい。私達は今、重要な会議中なの」

 

 部長の台詞にディオドラはチラリとモニターを見遣る。

 

「成る程、僕への対策中でしたか・・・・ではこうしませんか? 次のゲームでアーシアを賭けましょう。僕が勝ったらトレードに応じて貰います。負けたら彼女を諦めると誓いましょう。──アーシア、君への愛を証明する為に僕は必ず勝利するよ」

 

 ディオドラは勝手に話を進めてアーシアの手を取ると、そのまま手の甲に唇を寄せる──ってさせるかよ!!

 

「ふざけんな! 誰がお前なんかに負けるかよ!!」

 

 唇が触れる寸前、俺はディオドラの肩を突き飛ばした。軽くよろけたディオドラはニヤリと笑う。

 

「これで賭けは成立だ。ありがとうオ・ニ・イ・サ・ン」

 

 あ・・・・・・慌てて周りを見ると部長が額に手を当て、ため息を吐いている。しまった! 俺の言葉で賭けが成立しちまった。ちくしょう、やっちまった。激しい後悔に唇を噛む俺に、ディオドラがポツリと呟いた。

 

「少なくとも彼女に気持ちを伝えようとしない君に、意見する資格はないんだよ。お分かりかいオ・ニ・イ・サ・ン」

 

「!!?」

 

 ディオドラの言葉が心を抉る。俺だって・・・・俺だってアーシアの事を───! でも・・・・!

 

 

 

『───死んでくれないかな?』

 

 

 またしても冷たい女の声が甦り、その度に胸に鋭い痛みが走る。何故だ? どうして今更あの場面が甦って来るんだ!?

 俺はチラリと声の主──レイナーレを見遣るが、彼女は俺の視線には気付かず、心配そうにアーシアを見つめていた。

 

 

「ではこれでお暇しよう。おっと、その前にアーシア」

 

「はい?」

 

「辛い時や悲しい時には、心の中で僕を呼ぶといい。すぐ助けに行くから」

 

 そう言ってディオドラはしつこくアーシアの手を握る。

 

「はあ・・・・ですがそんな時はきっと来ませんよ?」

 

「それならそれでいいさ。ではリアス、ゲームを楽しみにしているよ」

 

 再び魔方陣が輝き、ディオドラは帰って行った。

 

 

 ゴチンッ!!

 

 

 途端に頭に鈍い痛みが走る。

 

「っっってぇ~~~! 何するんスか一輝先輩!?」

 

 拳骨を落とした一輝先輩に堪らず抗議する。

 

「このアホタレ! あいつの言い出した賭けなんぞ無視すれば良かったのに、簡単に言質を取られやがって・・・・」

 

「うっ、スイマセン・・・・」

 

 怒られるのは当然だ。俺の軽はずみな行動で賭けに乗る羽目に陥ってしまった。 

 

「こうなったらイッセー、お前がディオドラを倒せ! あいつにアーシアを渡すんじゃないぞ!?」

 

「ウス!!」

 

 気合いが入った。そうだ、先輩はゲームに参加出来ないんだ。先輩の分まで今度こそ俺がやるんだ!!

 

「さて、改めて気合いも入ったようだし続けるぞ」

 

 アザゼル先生の声に皆がモニターに集中した。

 

 

 

 

 序盤の眷属同士の戦いはアガレスが押していた。それにしてもディオドラの奴、眷属は可愛い娘ばかりじゃねえか! あのハーレム野郎・・・・絶対にアーシアは渡さん!

 だがアガレスの優勢はここまでだった。中盤、ディオドラ自身が出て来ると戦況は一変した。ディオドラは圧倒的な魔力でアガレスの眷属を次々と撃破し、最後にはメガネの姉ちゃん──シーグヴァイラをも倒してしまった。

 

「何だよあれは・・・・・・」

 

「どういう事? ディオドラがあんなに強いなんて聞いてないわよ!?」

 

「確かに・・・・あれだけ強ければ前評判はもっと高い筈ですもの」

 

「夏の間に特訓でパワーアップしたとか? でも彼、修行とかするタイプには見えなかったし・・・・」

 

 俺が、部長が、朱乃さんが、イリナがディオドラの予想外の強さに驚愕する。

 

「まあ、以前の奴がどうだったかはこの際置いといて、肝心なのはどうやって倒すかだ」

 

 一輝先輩の言う通りなんだが・・・・部長以上の魔力でアガレスを蹂躙したディオドラを、俺はどうやって倒せばいいんだ!?

 

 

 

 

 

 

 ディオドラの強さに圧倒され、誰も声を上げられないみてえだな。まぁ無理もない。実際に観ていたアザゼル()だって言葉を失ったからな。

 

「これは・・・・取り敢えず皆は解散していいわ。今夜中に対策を立てて明日改めて話すから。朱乃と一輝、アザゼルは残ってちょうだい」

 

 リアスが指示を飛ばす。指示に従い、三年生以外は部室を出て行く。そんな中、一輝が俺の隣に並んだ。

 

「アザゼル先生・・・・先生はディオドラの急激なパワーアップをどう見ますか?」

 

 部室を出て行く後輩達を眺めながら俺に訊ねる。

 

「・・・・不自然だな。あいつが隠れて特訓なんざする奴には見えねえし、何か裏があるとしか思えんな」

 

「同感です。実はその裏に心当たりが・・・・」

 

「何だと? おい、詳しく話せ」

 

 俺は一輝に話の続きを促す。

 

「ディオドラの急激なパワーアップ・・・・あれと似た現象に見覚えがあります。覚えてますか? カテレア・レヴィアタンを」

 

 そう言われて俺は旧魔王派に属していた褐色の女悪魔を思い出す。そこでピンと来た。

 

「おい一輝、お前まさか───」

 

「はい。あの時カテレアは何かを飲み込んで急激にパワーアップしました。あれと同じ方法を使ってるなら・・・・ディオドラも『禍の団(カオス・ブリゲート)』と係わってる可能性があります」

 

 一輝の予想に俺は思わず息を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、中々寝付けずイッセー()がベッドの上で考え事をしていると、扉をノックする音がした。

 

「はい?」

 

 こんな時間に誰だろうと思い返事をすると、ネグリジェを着たアーシアが入って来た。 

   

「どうしたアーシア?」

 

 入って来たはいいが、アーシアはそこから一歩も動かない。暫く待っているとアーシアは意を決したように頷いて、いきなりネグリジェを脱いでショーツ一枚になった。

 

「アーシア!!?」

 

 突然の事態に頭が沸騰する。アーシアは手ブラで胸を隠しながらゆっくりと俺に近付いて来る。

 

「イッセーさん、私を抱いて下さい」

 

 アーシアはそう言うと、手ブラを外した。

 

(アーシアのおっぱい・・・・いつ見ても綺麗だな)

 

 大きさでは部長には全く及ばないが、慎ましく膨らんだおっぱいは可憐で、堪らず俺の股間が大きくなる。・・・・って抱く? アーシアを?

 

「えっ、と・・・・抱いて寝ればいいのかな?」

 

 誤魔化すよう俺は訊ねるが、そんなお約束など今夜のアーシアには通用しなかった。

 

「違います!・・・・わ、私とセックスして欲しいんでしゅ!・・・・はうぅ、噛んじゃいました・・・・」

 

 噛みながらもアーシアはハッキリと言った。

・・・・ってセックスぅ!!?いきなりどうしたんだアーシアは!?

 目を見ると本気だ。アーシアとセックスなんて・・・・したいに決まってる! もしディオドラとのゲームに負けたらアーシアが()られてしまう! そんなのイヤだ! アーシアのおっぱいもお尻も太股も、皆俺のモンだ! 

 

「アーシア!!」

 

「イッセーさん・・・・!」

 

 俺が両手を肩に置くと、アーシアはゆっくり目を閉じた。アーシアとのキス・・・・今までは頬っぺた止まりだったけど今回は! そう意気込んで唇を近付けたその時───!

 

 

 

『───死んでくれないかな?』

 

 

『少なくとも彼女に気持ちを伝えようとしない君に、意見する資格はないんだよ。お分かりかいオ・ニ・イ・サ・ン』

 

 

「!!?」

 

 レイナーレとディオドラ、二人の声が頭に響き、俺は動きを止めた。

 

 

「イッセーさん・・・・?」

 

 いつまで待ってもキスしようとしない俺にアーシアが声をかける。俺はそっとアーシアから手を離した。

 

「・・・・ごめんアーシア」

 

 俺はアーシアを抱けない。

 アーシアとの仲を深めようとすると、いつからかある場面が頭に浮かぶようになった。

 

 ───夕陽を背にする黒髪の少女。

    公園に響き渡る少女の哄笑。

    そして、紡がれたあの台詞。

 

 今まで無意識に避けて来た。でももう認めよう、それはレイナーレに殺された場面、それが頭に浮かんでは胸に鋭い痛みが走って、俺の動きを止める。

 

「イッセーさん、どうして・・・・?」

 

「ハハ・・・・ごめんアーシア・・・・勃たないんだ・・・・」

 

 大きく盛り上がっていた筈の股間はいつしかすっかり萎れていた。これじゃ出来ねえよ・・・・

 

「あ・・・・・・だ、大丈夫ですイッセーさん。私が大きくしますから・・・・」

 

 そう言うとアーシアは俺の短パンをズリ下ろし、俺の逸物を露出する。

 

「アーシア!?何を!?」

 

「大丈夫です! 勉強しましたから・・・・」

 

 そう言ってアーシアは俺の逸物を摘まむと前後に動かし始めた。

 あのアーシアが俺のチンコに触れて大きくしようとしてる。無茶苦茶興奮する状況なのに、俺のモノはピクリとも反応しない!

 

「駄目ですか・・・・それなら───ん、ちゅ、ちゅ、んふ・・・・ペロ、ちゅぷ」

 

「ア、アーシア、そんな・・・・くぅ・・・・!」

 

 擦っても大きくならないチンコをアーシアは口に含んだ。信じられない! アーシアが俺のチンコを舐めてる! 顔を真っ赤にして股間に吸い付き、一生懸命チンコを大きくしようと頑張ってくれてる! でも駄目だ。やっぱりウンともスンとも言わない・・・・やがて、

 

「───ぷはっ! ハア、ハア、ごめんなさいイッセーさん。顎が疲れちゃって・・・・」

 

 限界が来て、アーシアが口を離した。

 

「もういいよアーシア。ごめん、今日は帰ってくれないか・・・・?」

 

 俺は俯いたまま、アーシアを見ずに言った。

 

「イッセーさん・・・・」

 

 アーシアは暫く俺を見つめていたようだが、やがて立ち上がり、床に落ちたネグリジェを拾って出て行った。

 

「情けねえ・・・・・・!!」

 

 勇気を振り絞ったアーシアに俺は応えられなかった。何がハーレム王だ! こんな情けないハーレム王がいるもんか!!

 

 自分の情けなさに、思わず涙が零れた。

 

 

 

 

 

 

 イッセーさんの部屋を出るとアーシア()は扉に背中を預け、その場に座り込んでしまいました。

 今夜私はイッセーさんに処女を捧げるつもりでした。ですが結果は失敗、イッセーさんを深く傷付けてしまいました。

 折角祐美さんやゼノヴィアさんにエッチのやり方を教えて貰ったのに(尤もゼノヴィアさんのは特殊過ぎて参考になりませんでしたが)残念です・・・・

 

「こんな筈じゃなかったのにな・・・・・」

 

 私はイッセーさんと結ばれて、確固たる絆が欲しかった。

 今、私達の側にはレイナーレ様がいる。騙されていたとは言え、イッセーさんが本気で好きだった方です。改心したレイナーレ様をまた好きになってしまったら・・・・そう思うと不安で堪りませんでした。

 ですから今夜こそはと迫ってみたのですが、駄目でした。

 

「やっぱりおっぱいの小さい私じゃ駄目なのかな・・・・?」

 

 イッセーさんの好みは部長さんのようなおっぱいもお尻も大きな女性です(お部屋にあるエッチな本に出て来るのはそういう人ばかりでした)。私では抱く気にならないのかな?

 ・・・・いけない、涙が滲んで来ました。いつまでもここにいる訳にはいきません。私はノロノロと自分の部屋に戻りました。

 

 

 

 

 

 

 ディオドラの来訪から三日過ぎた。

 リアスが立てたディオドラ対策は一対一では戦わず、複数で囲んで一気に殲滅するというものだった。およそ対策と云えるものではないが、言い変えればこれ位しか出来ないという事だ。皆もゲームまでは各自トレーニングに励むという事で頑張っている。

 原作知識からディオドラが『禍の団』の一員である事は確実だろう。あのパワーアップは間違いなく“オーフィスの蛇”によるものだ。アザゼルに釘を刺しておいたから何らかの対策は立ててくれるだろうと思う。

 

 各々ゲームに向けてトレーニングに余念がない。そんな中でゲームに出られない一輝()は、この機会に新しい能力の実験をしようとしていた。

 その能力は『次元移動』。この世界は“次元の狭間”と呼ばれる大河に浮かぶ島のようなものらしく、他にもいくつもの(世界)があるらしい。この能力はその大河を渡り別の島へと移動する能力だ。

 冥界の書物でこの事を知った俺はガイバーも普段は別次元にある事から、もしかしたらガイバーなら次元移動が可能なのではと思い、今回実験に踏み切った。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

 リアスが心配そうに言う。

 

「大丈夫、無理はしないよ。ディオドラとのゲームまでには帰って来るさ」

 

 俺はリアスと軽くキスを交わすと彼女から離れる。

 

「ガイバーーーーーー!!」

 

 ガイバーに殖装した俺が思念を集中させると、次元の彼方から強殖装甲と似た材質の“蛹”状の物体が出現する。巨人殖装(ギガンティック)になる為に必要なこの物体を俺は便宜上『サナギ』と呼んでいる。

 

「それじゃあ、行って来る」

 

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

 

 リアスに見送られ、俺の身体は『サナギ』に包まれると、そのまま次元の狭間に消えた。

 

 

 

 

 

 

 放課後。イッセーは一輝のマンションのトレーニングルームを借りて筋トレに励んでいた。

 

「───97、98、99、100!」

 

 決めた回数のダンベル運動を終え、床にダンベルを下ろす。荒い呼吸のままタオルで汗を拭うイッセーにドリンクが差し出された。

 

「どうぞ、イッセー君」

 

「ありがとう───! 夕麻ちゃん・・・・・・」

 

 イッセーは受け取ってからドリンクを渡したのが夕麻(レイナーレ)だと気付いた。そのまま顔を背けてドリンクを飲むイッセー。二人の間には気不味い空気が流れていた。

 

「やっぱり私を許せない?」

 

 メイド服を着た夕麻は悲しそうに呟く。

 取り敢えず駒王町に居る事を許された夕麻ことレイナーレだったが、アザゼルは住む所まで用意してなかった。

 やむを得ず一輝が自分のマンションの一室を提供し、代わりにメイドとして働くよう命じた。以来、夕麻はメイドとして働く事で少しでも認めて貰おうと懸命に働いていた。

 

「・・・・分かんねーよ」

 

 実際イッセーは夕麻をどうしたいのか自分でも分からなかった。

 イッセーにとって夕麻は初めての彼女だった。本気で好きになり、本気で結婚まで考え、彼女を幸せにするんだと張り切っていた。

 だが手酷い裏切りを受け、イッセーの心は深く傷付いた。その傷は未だ癒えず、消滅した筈の彼女が再び現れた事によってまた血を流し始めていた。

 

「お前なんかもう、好きでも何でもねーよ。それでもこう、何て言うか・・・・ああ、上手く説明出来ねえ!」

 

 苛立ち頭を掻き回すイッセーに夕麻は申し訳なさそうな視線を向け、何かを決意したように立ち上がった。

 

(イッセー君の心は深く傷付いてる。傷付けたのは私なんだから私が癒さなくっちゃ──)

 

 おもむろにメイド服を脱ぎ始める夕麻にイッセーの目が釘付けになる。

 

「ゆ、夕麻ちゃん? 何で脱いで・・・・・・」

 

「転校して来た日に私が言った事を覚えてる? 貴方が望むなら私に何をしてもいいのよ?」 

 

 メイド服の前を肌け、黒いブラに包まれた豊満な胸が眼前に晒される。そのままブラを外し、夕麻は生乳をイッセーに晒した。

 夕麻のおっぱいはゼノヴィア以上リアス以下の大きさで、お椀型の綺麗な形をしていた。双丘の頂は鮮やかなピンクに染まり、イッセーの目を惹き付けて止まなかった。  

 

(スゲエ・・・・これが夕麻ちゃんのおっぱい・・・・)

 

 付き合っている時何度も夢想した。何度も頭の中で揉みしだき、しゃぶり尽くした憧れのおっぱいにイッセーはゴクリと唾を飲んだ。

 

「私が貴方に出来る償いはこれだけ・・・・だからいいのよ。イッセー君の好きにして」

 

 イッセーは震える手でおっぱいに触れようとする。だがそんなイッセーの脳裏に、

 

 

 

『───死んでくれないかな?』

 

 

 夕日の中、嘲笑(わら)う夕麻の姿が浮かんだ。

 

「─────!!!」

 

 突然の吐き気にイッセーは口を押さえる。

 

「イッセー君!?」

 

 イッセーの異変に寄り添おうとする夕麻をイッセーは片手で制する。

 

「だ、大丈夫、大丈夫だ・・・・」

 

 憔悴するイッセーを目の当たりにして、夕麻は自分の付けた傷の深さに愕然とする。そして、

 

「!!!」

 

「ごめんなさいイッセー君・・・・私はどれ程貴方を傷付けてしまったのかしら・・・・怖がらないで。私はもう貴方を裏切らない・・・貴方を傷付けたりしないから・・・・・」

 

 夕麻はイッセーの頭を抱き寄せ、そのまま自分のおっぱいに沈めた。

 

「・・・・夕麻ちゃん」

 

 夕麻の柔らかいおっぱいに顔を沈め、イッセーの心は次第に落ち着きを取り戻して行く。それと同時にイッセーの股間が大きく盛り上がった。

 

(ああ、夕麻ちゃんのおっぱい、最高だぁ・・・・・・)

 

 そんなイッセーの様子に夕麻は艶然とした笑みを浮かべる。

 

「フフ♪ 元気になったわねイッセー君。だったら───」

 

「な!? ちょっ、夕麻ちゃん!?」

 

 夕麻の指がズボンのジッパーを下ろすと、大きくなったイッセーの逸物が顔を出した。

 

「フフ♪ 素敵よイッセー君。折角だからこのまま一回射精()しちゃう?」

 

「───え?」

 

 イッセーの逸物に夕麻の手が伸びて───

 

「え? イッセーさん・・・・・・」  

 

 その時、トレーニングルームにアーシアの声が響いた。

 

「イッセーさん・・・・レイナーレ様・・・・・・」

 

「え? アーシア?」

 

「え?───ち、違うのよアーシア!!」

 

 今の状況を一早く理解した夕麻が慌ててかけた声は、引き止める所か逆の効果をアーシアにもたらした。すなわち、二人の前からアーシアは逃走した。

 

「どうしたんだアーシア!?」

 

「バカ! こんな所を見て、誤解されたに決まってるでしょう!───追って! 速く!!」

 

「───お、おう!!」

 

 ようやく今の状況に気付いたイッセーが慌ててアーシアを追う。だがトロそうに見えて意外にもアーシアの足は速く、中々追い付けない。

 

(どうしてイッセーさん! 私の時は勃たなかったのに、レイナーレ様相手ならあんなに大きくなるの!? それは確かにレイナーレ様の方が美人だしおっぱいも大きいけど、だからって、だからってあんまりです──!!)

 

 アーシアは涙を滲ませ、マンションの外へと駆け出した。

 今のアーシアは自分の時は勃たなかったイッセーがレイナーレ相手に大きくそそり勃った事にショックを受けていた。

 それはまるでイッセーが自分よりレイナーレを選んだ証のように思えて、アーシアの心は深く傷付き、冷静な判断が出来なかった。その時、

 

「───あっ!?」

 

 足を縺れさせてアーシアが転んだ。身体を起こすと打ち付けた身体や擦りむいた膝が痛い。でもそれよりずっと心の方が痛かった。

 

(そうか・・・・・・結局私はイッセーさんにとって“妹”

でしかなかったんだ。もうやだ、私なんて消えてしまえたらいいのに───!)

 

 そんな時、すぐ側に人の気配を感じたアーシアは、涙で滲む瞳をそちらに向けた。

 

「ディオドラさん・・・・?」

 

 そこには優し気な微笑みを浮かべたディオドラがいた。

 

「迎えに来たよ、アーシア」

 

「────あ」 

 

 ディオドラの瞳が妖しく光り、アーシアの意識は深い闇の底へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 フフフ、思いの外上手く行った。アーシアを奪う機会があればと使い魔に見張らせていた甲斐があったよ。

 今ならディオドラ()の催眠術でもアーシアを眠らせられる程、彼女の心は傷付き弱っている。まさかこんなチャンスが転がり込んで来るとは・・・・

 リアス、君も運が無いね。悪いがアーシアは僕が貰って行くよ、ククク・・・・

 

 

 

 

 

「アーシア、どこだ!?」

 

 ちくしょう、アーシアを見失っちまった。意外な俊足振りを見せたアーシアにイッセー()は完全にちぎられてしまった。

 あんな所を見られてアーシアを誤解させちまった。早く誤解を解かないと───!

 

《相棒、すぐ近くに魔力の反応があったぞ》

 

 焦る俺にドライグが教えてくれた。

 

「マジかよ!? どっちだ!?」

 

《その角を右だ。急げ!》

 

 ドライグに従い右に曲がる。そこには魔方陣の上に立ち、こちらに背を向ける金髪の男──ディオドラがいた。

 

「ディオドラァァァァ!!!」

 

「───フッ」

 

 ディオドラは俺を見て嘲笑を浮かべる。

 あの野郎、意識がないのをいい事に、アーシアをお姫様抱っこなんかしやがって!!

 俺の怒りに呼応し、左腕に【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】が具現化する。

 俺はアーシアを取り戻そうと、必死に手を伸ばした。

 

「アーシアァァァッッ!!!」

 

 だが一瞬遅く、二人の姿は魔方陣に消えて行った。

 

 

 

 

 

 ドガッ!!

 

 届かなかった拳を力一杯地面に叩き付ける。

 

 

「うおおおおーーーーーっ!!!」

 

 

 俺の叫びは虚空に吸い込まれ、空しく消えていった。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

レイナーレってあれで退場するのは勿体ないな、と思っていました。
彼女がもし原作一巻後も生き残ってたら、和平成立後にこうなってたかも、というのを妄想してイリナの対になるような堕天使側のエージェントとして今回の復活となりました。
性格が原作とは違うと思いますが、仲間を失い死にかけた挙げ句、憧れの上司からお叱りを受け、絶賛猛省中なので多少変わっても仕方がないと思って下さい。
彼女は現在メイド隊の末席に加わってますが、彼女の今後についてはアンケートを設けますので、皆さんのご意見を聞かせて下さい。

次回はいよいよ一輝の眷属が登場します。
タグにあるように他作品のヒロインです。
誰が出て来るかはお楽しみに。


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第28話 グレモリーVSアスタロト



第27話がかなり不評だったので、一部修正しました。
最新話を読む前にもう一度読み返す事をお勧めします。

それでは第28話をご覧下さい。


 

 

「大変です部長!!」

 

 明日の計画(プラン)を練っているリアス()の元に、慌てた様子でイッセーとレイナーレが飛び込んで来た。

 何事かと思ったら、アーシアがディオドラに連れ去られたという。ゲーム前日に対戦相手の眷属を拐うなんてとんでもないルール違反だ。何があったのかイッセーとレイナーレから詳しい話を聞いた私は、朱乃と祐美を連れ、冥界のアスタロト邸へ跳ぼうとした。だけど、

 

「部長、俺も連れて行って下さい!」

 

 そうイッセーが頼み込んで来た。アーシアを目の前で拐われた責任を感じているんだろうけど、今のイッセーがディオドラを前にしたら即座に殴りかかりそうね。

 結局イッセーの熱意に負け、祐美と交代で同行を許してしまった。一抹の不安を抱えつつ、私達は冥界へと跳んだ。

 

 

 

 

 

「ようこそリアス・グレモリー様。我が主がお待ちです。どうぞこちらへ」

 

 魔方陣でアスタロト邸の玄関ホールに出ると、そこには一人の女が待っていた。彼女は確かディオドラの女王(クイーン)だったわね。彼女の案内で私達はディオドラの待つ部屋へと通された。

 

「やあリアス。突然の訪問はお互い様だし、非礼を責めはしまい。それで? 何の用かな?」

 

 理由なんて分かってる癖に白々しい。私が苛立ちを抑えつつディオドラの対面に座ると、朱乃とイッセーが私の後ろに控える。ディオドラの女王も同じようにディオドラの背後に控えた。

 

「言わなくても分かるでしょう!? ゲーム前日に一体どういうつもりなのディオドラ! アーシアを返しなさい!!」

 

 私は単刀直入に用件を切り出す。だが、

 

「心外だねリアス。それじゃあ僕が無理矢理アーシアを奪ったみたいじゃないか。勘違いしないでくれ、彼女は自分の意志で僕の所へ来たんだ」

 

「「「───なっ!?」」」

 

「僕がちょうど転移した所にアーシアがやって来て、『もうここにはいたくない。一緒に連れて行って』って頼まれたんだ。だから僕は彼女の頼みを聞いてこの邸に連れて来たんだよ」

 

 アーシアが自分からディオドラの元へ行くなんて・・・・そんな話信じられない! そんなの捏造に決まってるわ!

 

「馬鹿な事を言わないで! アーシアがそんな事言う筈ないわ!」

 

 私はディオドラの言い分を真っ向から否定する。でもディオドラは人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 

「何故そう言い切れるんだい? 眷属と言えど彼女の全てを知ってる訳じゃあるまい」

 

「確かに知ってる訳じゃないわ。私はあの娘を信じているだけよ」

 

「信じてるねえ・・・・都合のいい言葉だけど生憎証拠にはならないよ」

 

 確かにその通りだ。アーシアが同行を望んだというディオドラとそれを否定する私達。互いの意見はどこまで行っても平行線だ。この場を収めるにはアーシア本人の証言がいる。

 

「アーシアは? 無事なんでしょうね?」

 

「勿論だよ。ただ今の彼女は精神的に深く傷付いてる。僕に『一緒に連れて行って』と頼むとそのまま気を失って、未だに目覚める様子はない。今は別室で休ませているが・・・・君らは一体アーシアに何をしたんだい?」

 

「それは・・・・・・!?」

 

 ディオドラは意味ありげな視線を私達に向けて口角を上げる。こいつ、本当に嫌味ったらしいわね!

 

「とにかく彼女は傷付いてる。その原因であろう君達に会わせる訳にはいかないよ」

 

「ぐうう・・・・」

 

 悔しいけど言い返せない。

 

「君も少し冷静になるべきだね。とにかくアーシアは僕が預かる。明日のゲームには連れて行くから話ならそこでするといい」

 

「それじゃあアーシアがゲームに出られないじゃない!」

 

 ゲームの出場登録は試合開始の二十四時間前に行われる。すなわち今夜零時にアーシアが私達と一緒にいないと彼女の出場が認められないのだ。

 

「リアス・・・・今の状態のアーシアを試合に出す気なのかい? 流石に無理だと思うよ?」

 

「うっ!?」

 

 いけない・・・・アーシアの状態を考えられないなんて確かに冷静さを欠いてるわね。今の状態では欠場も止むを得ないか・・・・ 

 

「分かったわディオドラ。明日のゲームまでアーシアは預けるわ。但し! 指一本でも触れたら許さないわよ!!」

 

「おお怖い。分かったよ、ゲームが終わったら彼女は僕の花嫁になるんだ。それまで我慢しよう」

 

「お前! さっきからふざけた事ばかり言いやがって、いい加減にしろよ!!」 

 

 アーシアを花嫁にするという台詞にとうとうイッセーの怒りが爆発した。まぁ、今まで良く持ったというべきね。

 

「リアス・・・・つくづく君は眷属の教育がなってないね。『(キング)』同士の会話に割り込むなんて、礼儀知らずも甚だしい。・・・・全く、そんなんだから肝心な時に勃たないんだよ、オ・ニ・イ・サ・ン」

 

「!───お前、知って・・・・!?」

 

 何だろう? 私には良く聞こえなかったんだけど、ディオドラの呟きにイッセーが顔面蒼白になっている。 

  

「大体何故君が被害者ヅラしてるんだい? 今回アーシアが君らの元を出て行ったのは全て君のせいだろう!? アーシアを傷付け、彼女が出て行く原因となった君に偉そうに文句を言う権利なんてないよ。全く、どれだけ厚顔無恥なんだい!?」

 

「お、俺は・・・・・・」

 

 逆にディオドラから糾弾されたイッセーは何も言い返せない。そんなイッセーを一瞥すると、ディオドラは心底くだらないとばかりに鼻を鳴らした。

 

「フン、言い返す事も出来ないか。・・・・リアス、こうなったら全ては明日のゲームで決めよう。君が勝ったらアーシアを返そう。だが僕が勝ったらアーシアは僕が貰う」

 

 アーシアが目覚めないなら私達の意見は平行線のままだ。元々賭けは成立しているし、ゲームで全てを決めるのもいいかも知れないわね・・・・

 

「・・・・・・色々と言いたい事はあるけどまぁいいわ。要は明日のゲームに勝てばいいって事ね。行くわよ、朱乃、イッセー」

 

 私はディオドラと暫し睨み合うと、消沈するイッセーを連れて部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 女王にリアス達を見送らせ、ディオドラ()は邸内の一室を訪れていた。

 部屋の中央には大きな天蓋付きのベッドが置かれ、そこには一人の美しい少女──アーシアが眠っていた。

 

「アーシア、リアス達は帰ったよ。彼女は君が僕に連れて行って欲しいと頼んだのを信じなかったよ・・・・

まあ、確かに嘘なんだけどね」

 

 とは言えアーシアがそう思ってもおかしくない状況だ。それはリアスだって認めざるを得ない。

 

「だから明日のゲームで全ての決着を付けるという僕の案にあっさり乗ったよ。・・・・ククク、バカな奴らだ。誰がまともなゲームなんてやるかよ」

 

 今更真面目にゲームをするなんてバカらしい。現政府が倒れれば何の意味もないんだから。

 

 駒王学園の制服のままアーシアは眠っている。睡眠姦は趣味じゃないから今は手を出さないよ。

 やっぱり女を犯すのは好きな男の前でなくちゃ。犯される女の悲痛な叫びも自分の女を犯される男の怨嗟の声も、僕にとっては最高のスパイスだ。

 

「その時になったら、君はどんな声を聞かせてくれるんだろうね。きっと堪らなく甘美だろう。今から楽しみだよ、アーシア。ククク・・・・」

 

 彼女の頬を撫でながら、ついつい笑いが込み上げて来る。

 初めて観た時からずっと狙っていたんだ。途中おかしな横槍が入り、手に入れるまで思わぬ時間がかかってしまったが、もう誰にも渡さない。

 アーシア、君は僕のものだ。もう逃がさないよ、フフフ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 間もなくディオドラとのレーティングゲームが始まろうとしています。

 ゲームの内容はディオドラが守る拠点をリアスが攻略するという拠点攻略戦。ディオドラが拠点各所に配置した眷属を突破し、最深部にいるディオドラを倒せばリアスの勝利、途中でリアスが倒されればディオドラの勝利となる。

 朱乃()は皆と共に戦場(バトルフィールド)へ転送されるのを待っていますが、正直チームの雰囲気は最悪です。今この場にいるのは七人、本来の人数より二人足りない。新能力の実験に出掛けた一輝はゲームまでには戻ると言っていたのに未だ帰って来ず、そしてアーシアちゃんもまた───

 一輝もアーシアちゃんもチームを支える精神的柱、その二人を欠いて皆どこか落ち着きを失くしているようです。特にイッセー君。ディオドラからアーシアちゃんを傷付けたと糾弾されてから、彼は深い自責の念に囚われ、落ち込んだままです。こんな時一輝がいてくれたら、と思ってしまいます。

 

(全く、どこに行ってしまったのかしら・・・・)

 

 この大変な時にいないなんて、と八つ当たり気味に思ってしまう。

 アーシアちゃんが飛び出した理由はレイナーレから聞きました。正直何て事をと思わなくもないが、彼女だけが悪いとは言えません。強いて言えばタイミングが悪かったとしか・・・・全く、神の悪戯としか思えませんわね。あぁ、神はもういないんでしたっけ。

 そんな取り留めない事を考えていると、開始三分前になりました。

 

「部長、そろそろ時間です。皆にお言葉を」

 

 私が促すとリアスは頷いて席を立つ。そして皆を眺めつつ口を開きました。

 

「皆、聞いてちょうだい。一輝は未だ帰らず、アーシアも欠いて私達の状況は最悪と言っていいわ。でも一輝は必ず帰って来るし、アーシアも必ず取り戻す」

 

 リアスの言葉にイッセー君がピクリと反応します。

 

「アーシアは今、ディオドラの元にいるわ。あの娘を取り戻すにはこの試合に勝つしかない! いい皆、必ずディオドラを倒してアーシアを取り戻すわよ!!」

 

「「「「はいっ!!」」」」

 

 少しは気合が入ったのか、皆の返事が頼もしい。

 

「イッセー、アーシアは必ず取り戻すわ。でもあの娘を繋ぎ止めるのは貴方の役目よ」

 

「部長・・・・・・」

 

 リアスは塞ぎ込むイッセー君に声をかける。

 アーシアちゃんがいなくなって初めて気付いた事がある。まさか人並み外れたスケベで、夢はハーレム王だと公言しているイッセー君が、女に対して恐怖心を持ってるだなんて・・・・

 

「普段の貴方を見ていて全く気付かなかったのは私の落ち度よ」

 

 それに気付いたのが、イッセー君にその恐怖心(トラウマ)を植え付けたレイナーレ本人だったというのは皮肉な話です。

 より詳しく言うと、今のイッセー君は女に裏切られる恐怖心から女と深く関わる事が出来ないという、かなり厄介な状態でした。

 イッセー君の恐怖を私は理解出来るような気がします。もしもあの時、一輝に拒絶されていたら、私もきっと同じようになっていたでしょう。

 

「でもねイッセー。貴方には責任があるわ。アーシアを行かせてしまった責任じゃなく、あの娘の想いに答える責任が」

 

「責任・・・・・・」

  

 だから分かります。イッセー君が本当に立ち直るには、彼を愛する女からの愛をきちんと受け入れるしかないと。そしてそれが出来るのはアーシアちゃんしかいません。もしここでアーシアちゃんを失えば、イッセー君の恐怖心を払拭する事は更に難しくなるでしょう。

 

「もし、アーシアともう二度と会えないとしたら・・・・貴方はどうする?」

 

「そんな・・・・俺嫌です!!」

 

「そうね、私も嫌よ。だからねイッセー、貴方の想いをちゃんと口に出してアーシアに伝えてあげなさい。心の中で想っているだけじゃ想いは伝わらないわ。貴方の言葉で、アーシアを本当の意味で取り戻すのよ!」

 

「部長・・・・分かりました! 俺・・・・俺、やってみせます!!」

 

 リアスの激励でイッセー君の瞳に炎が宿る。良かった。これで何とかなりそう。

 

「よし! 行くわよ、私の可愛い眷属(アナタ)達! 必ずアーシアを取り戻して、私に勝利を!!」

 

「「「「はいっ!!!」」」」

 

 気合の入った声と共に私達は戦場(バトルフィールド)に転送された。   

 

 

 

 

 

 

「いよいよだな・・・・」

 

 今回のゲームの戦場(バトルフィールド)はギリシャのパルテノン神殿を模したものだ。

 アザゼル()はサーゼクスと共にグレモリー側の貴賓室で中継を観ていた。ここにいるのは俺達以外にグレモリー夫妻とミリキャス、グレイフィア、その他にイリナとレイナーレもいた。

 

 リアス側は七人。元々出場出来ない一輝以外にアーシアの姿がない。

 アーシアの件は昨夜聞いた。アーシアの不在はチームの継戦能力を著しく低下させる。果たしてあのディオドラ相手にその状態で戦い抜けるだろうか。

 

「所でディオドラの方はどうだった?」

 

 俺はサーゼクスに頼んだ調査の結果を訊ねる。

 

「ああ、まだ調査中だからはっきりとした証拠はないが、怪しい奴らと接触していたのは本当らしい。やはりディオドラのパワーアップは“オーフィスの蛇”による可能性が大だな」

 

「【無限の龍神(ウロボロスドラゴン)】オーフィスか・・・・何であいつが『禍の団(テロリスト)』なんぞに手を貸してるのかね・・・・」

 

「アレの考えなんて分からんよ。“無限”にして

“夢幻”。全てを超越した奴を理解出来る者などいないさ」

 

「そう言えばあいつは姿も性別も自由に変えられるんだったな。昔見た時は白髪の老人(ジジイ)だったが、今はどんな姿をしてるんだか・・・・」

 

 サーゼクスと意見を交わしていたその時、

 

「案外幼女の姿をしてるかもしれませんよ」

 

 いきなり割り込んで来る声がした。

 

「一輝!!?」

 

「すいません、ただ今戻りました」

 

 そこには申し訳なさそうに苦笑を浮かべる一輝がいた。良かった、無事戻ったか。

 

「ったく、遅えよ一輝。リアスの奴怒ってたぞ」

 

 俺は内心の安堵を表さず、皮肉げに言った。

 

「いやぁ、何せ初めて使う能力だから加減が分からなくて、それで遅れちゃって・・・・」

 

「まあ無事に戻って良かった。幸いまだ始まっていないしね。・・・・所で彼女は誰だい?」

 

 そう、一輝は一人じゃなかった。黄色いフード付きのコートを被った小柄な少女。だが発する雰囲気は少女のそれじゃなく、まるで歴戦の王者のような風格を纏っていた。何だこいつは? 神話や歴史上の英雄って言われても納得出来るぞ!?

 

「紹介します。俺の『女王(クイーン)』、アルトリアです」

 

 一輝がどこか誇らしく自らの眷属を紹介する。すると彼女がフードを下ろし、顔を顕にした。

 

「お初にお目にかかります。縁あって一輝の女王となったアルトリアです」

 

 その途端、そこにいる全員の目が彼女に釘付けになった。

 金糸を編み込んだような金色の髪と澄んだ湖水のような翠の瞳をした美しい少女だった。ただ美しいだけじゃなく、可憐な容貌は凛々しく引き締まり、澄んだ翠の瞳は強い意志を秘め、人を惹き付けて止まないカリスマ的な魅力を湛えていた。

 

「おいおい一輝、お前どこでこんなの引っ張って来た?」

 

 彼女──アルトリアの所作は武人のそれだ。全く隙がねえ。下手すりゃ俺だって危ないかもしれん。これ程の強者なら俺が知らない筈がねえんだが・・・・

 

「次元を渡った先で出会ったんですよ。いや、苦労しました」

 

「ム、何です一輝。それでは私が面倒な女のようではありませんか」

 

「ハハハ、すまんアルトリア」

 

 おいおい、次元を渡った先ってつまりは別次元、分かりやすく言えば異世界から連れて来たってのか!? 成る程、それなら俺が知らないのも納得だが、一輝の奴自分のした事が所謂異世界召喚のようなモンだって分かってるのかね?

 俺がそう指摘しようとした時、

 

「待った。試合が始まるぞ」

 

 サーゼクスの声に俺達の目はスクリーンに引き付けられた。 

 

 

 

 

 

 

『ハハハハ! やぁ、よく来たねリアスとその眷属達!』

 

 神殿前まで来たイッセー()達にディオドラの声が響く。周りを見渡しても奴の姿は見えない。

 

『無駄だよ赤龍帝。僕は神殿の中心部から君達の様子を窺ってる。アーシアと一緒にね』

 

 ズキンと俺の胸に痛みが走る。

 

「アーシアは無事なんでしょうね?」

 

 部長が静かな声で訊ねる。あ、ヤバい。あれはメチャクチャ怒りを堪えてる! もう爆発寸前だ!

 

『勿論。アーシアは丁重に預かっているよ。何たって数時間後には彼女は僕の花嫁になるんだからね、フフフ』

 

 こいつ、もう俺達に勝ったつもりか? ふざけやがって!?

 

「言いたい事はそれだけ? だったらもう始めましょう? 貴方の御託はいい加減聞き飽きたわ」

 

 普段の優しい声とはかけ離れた冷たい声で部長が言う。その迫力にディオドラは気圧され、一瞬声を失った。

 

『っ!?・・・・フン、いいだろう。では一回戦は彼女らが相手だ』

 

 ディオドラの声と共に十人の少女が姿を現した。

 

『僕の戦車(ルーク)二名と兵士(ポーン)八名だ。ああ、因みに兵士達は女王(クイーン)に【昇格(プロモーション)】済みだ。いきなり女王八名が相手だけど君の眷属は強力な事で有名なんだから構わないよね、リアス?』

 

 ディオドラの挑発じみた言動を意に反さず、部長が答えた。

 

「構わないわ。ではこちらからは兵士(ポーン)一名と騎士(ナイト)二名、それと女王(クイーン)を出しましょう」

 

 敵は十名、てっきり七人全員で掛かると思ってたのに四人だけ!? 俺もメンバーに入ってるし、大丈夫かよ!?

 

『・・・・いいだろう、一分後に試合開始だ』

 

「出場する四人は集まって。作戦を説明するわ」

 

 部長が俺達を集めて手早く作戦を説明する。よし、やってやるぜ!

 

 

 

 

 

 

 一回戦が始まった。ディオドラの戦車二名と兵士八名がゼノヴィア()達に迫る。

 リアス部長から託された私の役目は戦車二名の足止め。だが別に倒してしまっても構わんのだろう?

 私はデュランダルを召喚し、戦車二名の迎撃に走り出した。

 

 私達にとってアーシアはかけがいのない存在だ。

 一度は魔女と、異端者と蔑んだ私を許し、温かな日だまりのような優しさで包んでくれた彼女。転生したばかりの頃、教会暮らしで普通の生活に馴染めなかった私に、「私もそうでしたから」と笑って手を貸してくれた。そして私は彼女が『聖女』と呼ばれていたのは『神器』の力があるからではなく、彼女自身の慈愛の心から生じる優しさ故なのだとようやく気付いた。

 そんなアーシアを私達から奪おうとするディオドラ・アスタロト! 私は絶対に許さない!!

 

「聖剣デュランダルよ! 私の想いに応え、その力を解放しろ!!」

 

 私の想いに応え、デュランダルがかつてない程激しい光を放つ。絶大な聖なるオーラが大気を震わせ、戦車二名を弾き飛ばした。

 

「くっ、なんて強大なオーラなの!?」

 

「彼女はデュランダルを使いこなせなかったんじゃなかったの!?」

 

 戦車達は聖なるオーラに吹き飛ばされながらも立ち上がった。だが足元がふらついてる。チャンスだ!

 

「確かに今の私にはデュランダルを完全に制御する事は出来ない。だから今はデュランダルの特性である切れ味と破壊力をひたすら増大する事だけを追求し、ただ突き進むのみ!!」

 

 正直これは技とは言えない。単なる力技だが、私の全身全霊を込めた一撃だ!!

 

「デュランダル・バースト!!」

 

 上段から振り下ろしたデュランダルが絶大なオーラを放ち、戦車達に襲いかかる。

 

「「きゃああああーーーーー!!?」」

 

 聖なるオーラに飲み込まれ、戦車達の姿が消える。後には私を中心に直径30m位のクレーターが出来ていた。

 

『ディオドラ・アスタロト様の「戦車」、二名リタイヤ』

 

 私の勝利を告げるアナウンスが響く。

 

「ゲーム内の出来事だから、多分死んではいないと思うが・・・・さて、向こうはどうなったかな?」

 

 そう思った私の背後で雷鳴が轟いた。

 

 

 

 

 ゼノヴィアが戦車二名を抑えに走る。あっちは任せよう、こっちの八人を抑えるのは祐美()の役目だ。

 

「それじゃあ朱乃さん、イッセー君、手筈通りに」

 

「了解ですわ」

 

「本当に大丈夫か祐美? 相手は八人もいるんだぞ?」

 

「大丈夫よ。任せて」

 

 心配するイッセー君をよそに私は迫り来る兵士達へ歩みを進める。

 

「悪いけどアーシアさんを奪われて怒っているのは私も一緒なのよ・・・・ソード・バース───

 

 私は一振りの魔剣を作り出し、天に掲げ、指揮棒のように振り降ろした。

 

「ミーティア!!」

 

 その途端に私の背後の空間から八本の魔剣が射出され、兵士達に飛んで行く。

 

「くっ、これは!?」

 

「怯むな! 冷静に対処しなさい!」

 

 確かに一本位なら対処出来るでしょう。でももっと増えても対処出来るかしら?

 私の背後からは第二陣、第三陣と次々に魔剣が射出され、兵士達に襲いかかる。

 

「きゃっ!」

 

「ちょ、バカ、どいてよ!? きゃああ!!」

 

 中には連携が上手くないのか、避けた先でぶつかって魔剣に貫かれる者もいる。バカな人達。こちらの戦法を見もしないで全員女王に【昇格】なんてするから・・・・

 確かに女王は(パワー)速さ(スピード)、魔力の全てを兼ね備えた最強の駒だ。だけど力では戦車に、速さでは騎士に、魔力では僧侶に敵わないという欠点も抱えている。

 この場合、例えば何人かは戦車や騎士に【昇格】していれば、襲い来る魔剣を戦車が防ぎ、その間に騎士が私を襲撃して【魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)】を止める事も出来ただろうに。

 

 

『ディオドラ・アスタロト様の「戦車」、二名リタイヤ』

 

 

 魔剣を第五陣まで射出した時、アナウンスが流れた。ゼノヴィアが戦車を撃破したか・・・・ならそろそろかな?

 そんな風に思うと同時に、私の背後で強大な魔力が膨れ上がった。

 

 

 

 

 戦況は作戦通りに進んでいた。

 ゼノヴィアが戦車を、祐美が兵士を抑える間にイッセー()は【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】に力を溜める事に専念する。

 

 

『ディオドラ・アスタロト様の「戦車」、二名リタイヤ』

 

 

 やがてゼノヴィアが敵戦車を撃破したとアナウンスが流れた時、【赤龍帝の籠手】の宝玉が光を放った。来た!

 

「朱乃さん!!」

 

「ええ!」

 

 俺は朱乃さんの肩に手を置いて叫ぶ。

 

「行くぜ! ブーステッド・ギア・ギフト!!

 

『transfer!!』

 

 【赤龍帝の籠手】第二の能力『譲渡』。圧倒的なエネルギーが俺から朱乃さんに流れ込む。

 

「っ!?───これなら!!」

 

 朱乃さんから赤と黄金の二色のオーラが螺旋を描いて燃え上がる!

 

「喰らいなさい!!」

 

 朱乃さんが超特大の雷を放つ。

 

「「「「きゃああああーーーーー!!!」」」」

 

 祐美の【魔剣流星群】で釘付けされた兵士達に雷が降り注ぎ、兵士達の姿が消えた。 

 

 

『ディオドラ・アスタロト様の「兵士」、八名リタイヤ』

 

 

「フン、『雷光』を撃たなかっただけありがたいと思いなさい!」

 

「ハハハ・・・・」

 

 やっぱりウチのお姉様達はスゲエぜ! 朱乃さんは勿論、全部部長の作戦通りだ! 俺は開始前の作戦会議を思い出していた。

 

 

 

<><><><><><>

 

 

 

『いい? ゼノヴィアが戦車二名を、祐美が兵士八名を抑えている間にイッセーは力を溜めなさい。力が溜まったら朱乃に『譲渡』して、一気に撃破するのよ』

 

『でも部長、八人相手なんていくら祐美でも難しいんじゃ』

 

『以前の祐美なら無理かもしれないけど、今の祐美には【魔剣流星群】があるわ。あれを上手く使えば一分位時間は稼げる筈よ。どう、祐美?』

 

『はい、やってみせます』

 

『でも部長、一分じゃあ力が溜まらないんじゃ・・・・』

 

『大丈夫よイッセー。貴方は強くなったわ。今の貴方なら一分位で十名全員を撃破出来る位の力が溜まる筈よ』

 

『部長・・・・』

 

『イッセー、そして皆も。私を、そして今まで強くなる為に頑張って来た自分自身を信じなさい。大丈夫、きっと上手く行くわ』

 

  

 

<><><><><><>

 

 

 

 部長の作戦がバッチリ嵌まった! 一回戦は俺達の完全勝利だぜ!!

 

『・・・・・・まさか十人もいて一人も倒せないとはね・・・・一回戦は君の勝ちだ、素直に認めよう。神殿へ入りたまえ。二回戦はそこで行う』  

 

 ディオドラの悔しげな声が響く。だが部長は全く意に反さず淡々と答えた。

 

「それはどうも。行くわよ皆!」

 

「「「「はいっ!!!!!」」」」

 

 俺達は意気揚々と神殿の中へ入って行った。

 

 

 

 

 

 ガシャアーーーンッ!!

 

 ディオドラは怒りのあまりグラスを床に叩き付けた。

 

「くそっ! 十人もいて一人も倒せないなんて役立たず共め!・・・・・・まあいい。神殿内にはいくつもトラップが仕掛けてある。二回戦の開始までに何人かは減らせるだろう。くそ、それにしても腹の立つ・・・・次だ。次こそはリアス達を潰してやる!!」

 

 ディオドラの顔は怒りで醜く歪んでいた。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り一輝の女王はアルトリア(青セイバー)となりました。
一輝の眷属は連載当初から色々考えていましたが、その頃から女王は彼女にしようと決めていました。
本エピソードでは彼女だけですが、徐々に眷属を増やして行こうと思います。  


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第29話 絶望の宴



お久し振りです。

原作6巻に相当する本エピソードですが、鬱展開が多く評判が悪かった為、終了まで一気に投稿する事にしました。
最後までお付き合い下さい。

そう言っておきながら、鬱展開全開(笑)の第29話をご覧下さい。




 

 

「成る程、これがレーティングゲームですか。興味深いですね」

 

 アルトリアが目を輝かせる。

 

「気に入ったか? お前さんも眷属(なかま)が揃ったらその内やるようになるだろうさ」

 

「一輝! 私もやってみたいです! 早く眷属を揃えましょう!!」

 

「ああ、はいはい」

 

 アザゼルに焚き付けられたアルトリア君が一輝君の腕を引っ張っている。サーゼクス()はその光景に苦笑を漏らした。

 

「しかしあの戦力差で圧勝するとは、リアスの奴も随分『(キング)』として成長したな」

  

「ですね。戦力の見極めが出来るようになって来ましたから。日頃ソーナと研究している成果でしょうね」

 

 アザゼルの誉め言葉に一輝君が嬉しそうに首肯する。私もリーアたんの成長に鼻が高い。

 

「でもこっからが肝心だぞ。神殿内はディオドラのテリトリーだ。いくつもトラップが仕掛けられてるだろうし、油断しなけりゃいいんだか・・・・」

 

 アザゼルが心配そうに呟く。だがそんなアザゼルを尻目に一輝君は笑って言い切った。

 

「大丈夫です。うちにはアイツがいますから」

 

 

 

 

 

 

「あ、リアスちん、そこ踏んだら駄目にゃ」

 

「えっ? っと危ない!」

 

「ストップにゃイッセーちん、不用意に壁に触れちゃ駄目にゃ。どこにトラップのスイッチがあるか分からないんにゃから」

 

「うお!? すまねえ!」

 

 白音()達は今、神殿内を進んでます。神殿内にはいくつものトラップが仕掛けられ、非常に危険な筈なんですが・・・・途中から先頭に立った姉様がトラップを次々と発見し、私達は順調に進んでいました。

 仙術は生命の流れを操る術。その達人である黒歌姉様は、その場に残留した気から人がどう行動したか読み取る事が出来るのだそうです。そしてそれを応用し、仕掛けられたトラップを次々と発見して行きました。私にはとても真似出来ない、姉様の卓越した技量があればこそです。

 何度目かのトラップを潜り抜け、到達した広い空間には三人の人影が私達を待っていました。

 

『・・・・よもやあれだけ仕掛けたトラップに一度も引っ掛かる事なくここまで来るとは・・・・君は物凄い強運の持ち主のようだね、リアス』

 

 ディオドラはまるで部長が運だけだとでも言うような口調で挑発する。けど、

 

「そうね。では二回戦を始めましょうか。うちは戦車と僧侶の二人を出すわ」

 

 部長はディオドラの挑発を無視してさっさと話を進める。

 

「白音、そして黒歌、頼むわね」

 

「はいっ!!」

「オッケーにゃん」

 

 部長に指名されて私は返事をする。姉様も好戦的な笑みを浮かべて一歩前に出た。

 

「今回作戦は敢えて立てないわ。私からの指示はただひとつ、蹂躙なさい!!」

 

 うん、シンプルかつ分かりやすい。私達を残し、皆は後ろへ下がる。

 

『───くっ、随分舐めた事を言ってくれるね。いいだろう、二回戦開始だ。やれ、お前達!!』

 

 試合開始の合図と共にディオドラの僧侶(ビショップ)二名と女王(クイーン)が襲いかかる。

 

「白音~、女王は任せたにゃん♪」

 

「はいっ!!」

 

 黒歌姉様の指示に従い私は女王へと走り出す。姉様は素早く妖術を発動、黒い稲妻が後方でサポート態勢に入ろうとした僧侶達を直撃する。

 

「「きゃあああーーーーっ!!」」

 

 姉様の妖術『黒雷(こくらい)』。姉様の妖術は相手に状態異常(バッドステータス)を引き起こす。敵に先制の一撃を与え、尚且つ短時間身体が麻痺して動けなくする姉様得意の術だ。

 先のアガレス戦で二人の僧侶は味方をサポートする補助魔法に長けていた。敵のサポートを断つ姉様のナイス判断だ。味方からのサポートがなくなり、女王に動揺が見える。悪いけどその隙は見逃さない。

 

「フッ!」

 

「ちぃっ!? 鬱陶しい!!」

 

 『(キング)』のディオドラがウイザードタイプだからか、女王は槍を武器に近接戦闘を得意とするタイプだった。

 動揺から一瞬で立ち直った女王は槍のリーチを生かし、懐に入らせないように操り出す。この人かなり強い。でも部長に、姉様に任されたんだ。この人は絶対に私が倒す! 

 

 

 

 

 白音に女王を任せ、黒歌()は今の内に『黒雷』を受けて動けない僧侶達に迫る。

 私の妖術を受けたは彼女らは今、身体が麻痺して満足に動けない。

 

「悪いけど、さっさと決めさせて貰うにゃ!」

 

「───くっ!?」

 

「そ、そんなのズルい!?」

 

 すれ違い様、私の爪撃が二人を斬り裂いた。

 

 

『ディオドラ・アスタロト様の「僧侶」二名、リタイヤ』

 

 

 まともに戦ったらもう少し苦戦するであろう二人の僧侶には見せ場のないまま退場して貰った。

 

「こっちは終わったにゃん。さて、白音は・・・・?」

 

 私は女王と対峙する白音を眺める。

 女王はリーチ差を生かし、懐に入らせまいと槍を操るが、白音もまた猫又の敏捷性を生かし、付かず離れずと絶妙の距離を保っていた。 

 

「ちっ、チョコマカと鬱陶しいチビめ!!」

 

 女王の苛立ちが手に取るように分かる。対する白音は冷静に女王の隙を窺っていた。そして遂にその時が来た。中々攻撃が当たらない事に業を煮やした女王が繰り出した大振りの一撃、その一撃を待っていた白音は槍を回避して懐深く入り込んだ。

 

「───ふっ!」

 

 カァン、と乾いた音が響く。白音の“気”が通った証拠だ。

 一撃を入れられ、女王は更にいきり立つ。主従揃って煽り耐性の低い奴らねぇ。でもこれでアイツも終わりだ。

 

「うっ!?」

 

 突然、女王が膝からがガクッと崩れた。

 

「気を纏った拳を打ち込みました。貴女はもう戦えません。降参して下さい」

 

「くっ舐めるな! あんな軽い拳を入れられた位でこの私が───」

 

 女王は尚も立ち上がろうとする。大した精神力だけど無駄よ。

 

「戦える状態じゃないでしょうに・・・・立ち向かって来るなら容赦はしませんよ?」

 

「ほざくなあーーーーっ!!」

 

 女王が槍を構えて突進する。白音は迎え撃つように白いオーラを纏った拳を地面に叩き突けた。

 

衝波(しょうは)!!」

 

 私が教えた気を用いた仙術の闘法『気闘法(きとうほう)』。戦車の白音には相性がいいようで、普段の一輝との訓練と相俟って白音は日々強くなっている。シトリー戦ではまだまだ威力が不充分だったこの技も、今では必殺技と呼べるまでに昇華していた。

 

「バカな・・・・」

 

 気を纏った衝撃波を受けて女王が吹き飛び、そのまま消えて行った。

 

 

『ディオドラ・アスタロト様の「女王」、リタイヤ』

 

 

 白音が女王を倒して、二回戦が終了した。

 

 

 

 

 

 

『・・・・ったく、どいつもこいつも役立たずめ! 何でリアスの眷属如き一人も倒せないんだよ!?』

 

 口汚く自分の眷属を罵るディオドラの声が響く。

 

「あらあら。エセ紳士の化けの皮が剥がれて来ましたわね」

 

 イッセー()の隣にいる朱乃さんがドS全開の笑顔で嘲笑(わら)ってる。

 

「ディオドラ・・・・仮にも貴方の為に戦った眷属に吐いていい言葉じゃないわね・・・・恥を知りなさい!」

 

 部長がディオドラを諌める。だが、

 

『うるさーーーい!! お前如きが僕に偉そうな口をきくなーーーーっ!!』

 

 逆上して喚くディオドラ。あれが奴の本性かよ。冗談じゃねえ、あんな逆ギレ野郎にアーシアを渡せるもんか!!

 

『いいだろう! こうなったら僕が直々に貴様らに地獄を見せてやる! さっさと来い!!』

 

 奥へと続く大扉が重い音を立てて開く。この奥に野郎と、アーシアがいるのか・・・・

 

「行くわよ」

 

 部長の声に頷き、俺達は奥へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

「うぅん・・・・ここは・・・・・・?」

 

 長い間眠っていたようで頭がボーッとします。アーシア()は意識をはっきりさせようと頭を振りました。

 

「え? 何でこんな格好・・・・?」

 

 眠ってる間に着替えさせられたのか、私は純白のウエディングドレスを着ていました。

 

「私は確か・・・・・・」

 

 何故こんな格好をしてるのか分からず、眠る前の事を思い出そうとしました。

 イッセーさんとレイナーレ様の情事を目撃した私は、気が動転してマンションを飛び出し、そこでディオドラさんに会って、それから───

 

「駄目、そこから思い出せません・・・・」

 

 ディオドラさんに会ってから何があったのでしょう? そんな風に頭を悩ませていると、

 

「おや、目が覚めたんだね、アーシア」

 

 暗がりからディオドラさんが声をかけて来ました。

 

「あの、私は一体・・・・それにこの格好は・・・・?」

 

 私はあれから何があったのか訊ねます。

 

「起きてたのならちょうどいい。アーシア、こっちに来るんだ」

 

「え!? あ、あの・・・・!」

 

 ですがディオドラさんは私の質問には答えず、無理矢理腕を引っ張ります。

 

「ディオドラさん!? ちょっと待っ──引っ張らないで、痛いです・・・・」

 

 乱暴に引っ張られて腕が痛いです。ですがいくら抗議してもディオドラさんは聞いてくれません。流石に限界です。

 

「ディオドラさん!」

 

「うるさいな! 黙って着いて来いって言ってんだよ! 少しは大人しくしてろよお前は!!」

 

「!!?」

 

 突然怒鳴られ、びっくりして声が出ませんでした。一体どうしたんでしょう? 私の知ってるディオドラさんは常に優しげな笑みを絶さない、貴公子然とした人でした。

 ですが今のディオドラさんからはそういった雰囲気はまるで感じられず、言葉の端々から苛立ちが見て取れます。

 何というか癇癪を起こした子供のような様子に私は言葉が出ませんでした。

 

 私が連れて来られたのは石造りの広い空間でした。まるで神殿のようなその空間には豪華な椅子──玉座が置かれていました。

 

「きゃっ! 待ってディオドラさん・・・・イヤァ!!」

 

「いいから、大人しくしろ!!」

 

 私の抵抗など物ともせず、ディオドラさんはその玉座から伸びている鎖付の枷で私の手足を拘束しました。鎖の長さは1m程しかなく、玉座から離れる事が出来ません。

 

「ディオドラさん! これは何のつもりですか!?」

 

「ククク、まだ分かんないの? 相変わらずマヌケな女だね、君は。そんなだからあっさり騙されるんだよ」

 

「ディオドラさん・・・・」

 

 信じたくありませんが、どうやらこちらがこの人の本性のようです。私はあまりの変わりように言葉を失いました。

 そんな私の様子に満足したのか、ディオドラさん、いえディオドラは機嫌良く話し始めました。

 

「ククク、うん、それでいい。もうすぐリアス達が来る。お前はグレモリー眷属が全滅するのをその目で見届けるんだ。その後でたっぷりと可愛がってやるよ。ククク・・・・」

 

「───ひっ!?」

 

 私の顎をクイッと持ち上げて、頬にゆっくりとディオドラの舌が這う。そのおぞましさに短い悲鳴が漏れます。その時、重苦しい音を立てて扉が開いて行きました。

 

 

  

 

 

 

「霧が出て来たわね・・・・」

 

 部長の言う通り、二回戦が終わった辺りから、神殿内に霧が立ち込め始めた。ディオドラの罠かと思って警戒しながら進むと、やがてイッセー()達の前にやがて巨大な扉が現れた。どうやらここが神殿の最深部らしい。ここにディオドラが、そしてアーシアがいるのか・・・・

 

「見ろ! 扉が開いて行くぞ!」

 

 扉の前に立つと、重苦しい音を立てながら扉が開いて行く。

 

「行くわよ」

 

 部長の声に頷き、俺達は扉を潜った。

 

 扉の奥には広大な空間が広がっていた。

 部屋の最奥に鎮座する玉座にはディオドラが座り、その足元には鎖で繋がれたアーシアが、何故かウエディングドレス姿で倒れていた。

 

「アーシアッ!?」

 

「イッセーさん、皆さん・・・・・・」

 

 アーシアの悲しそうな顔に俺の怒りが爆発する。

 

「ディオドラ、貴様ァーーーーっ!!」

 

「うるさいな。叫ばなくても聞こえるよ赤龍帝」

 

 ディオドラが煩わしそうに嘆息する。  

 

「・・・・それにしても誰一人欠ける事なく、ここに辿り着くとは・・・・本当に君の眷属は優秀だね、リアス」

 

「当たり前でしょ!」

 

 さも当然とばかりに部長が胸を張る。ブルンと揺れるおっぱいが素晴らしい。

 

「フン、お陰で僕の眷属は全滅だ。特に戦車と兵士が酷い。激しい雷と聖なるオーラに焼かれて再起不能だよ、全く」

 

 ハハハ・・・・朱乃さんとゼノヴィアが知らん顔してるよ。とは言え俺達が許せないのはディオドラ自身であって、あの娘らは完全にとばっちりだよなぁ・・・・悪い事した。

 

「恨み言なんて聞く気ないわ、ディオドラ。大人しくアーシアを返すかこの場で死ぬか、好きな方を選びなさい」 

 

 そんなの知らんとばかりに部長が選択を迫る。

 

「ふぅん、そんな事を言うんだ・・・・」

 

 そう言うとディオドラは懐からペンのような物を取り出し、

 

「きゃああああーーーーっっ!!?」

 

 スイッチを押した途端、アーシアが苦しみ出した。

 

「アーシア!? やめなさいディオドラ!」

 

「やめなさい? 言葉遣いには気を付けた方がいいよ、リアス。『やめて下さいディオドラ様』だろう?」

 

「ぐぅっ・・・・・・や、やめて下さい、ディオドラ様・・・・!」

 

 部長が悔しそうに言葉を搾り出す。それに満足したのか、ディオドラが再びスイッチを押すと、アーシアの悲鳴が止んだ。

 

「そう、それでいい。僕のスイッチひとつでアーシアに電流が流れる。今のは最弱だったけど、最強にしたらアーシアは一瞬で黒焦げだよ?」

 

 何てこった! 完全にアーシアを人質に取られちまった。でもこれってゲーム的にはどうなんだ?

 

「ディオドラ・・・・どういうつもり? 人質を取るなんて明確な違反行為、完全な反則負けよ? それが分からない貴方じゃないでしょう?」

 

 だよな。でもディオドラの反則負けの筈なのに、どうして試合が中止にならないんだ?

 するとディオドラがニヤニヤしながら、俺の疑問に答えた。

 

「ククク、馬鹿だなぁリアス。君はまだゲームが続いてると思ってたのかい?」

 

「どういう意味?」

 

「今回のゲームはとっくに破綻してるって事さ」

 

「「「「!!?」」」」

 

 ゲームが破綻? どういう事だ?

 

「二回戦が終わってから霧が発生しただろう? あれは『神器(セイクリッド・ギア)』【絶霧(ディメンション・ロスト)】による結界だ。あの霧の結界は生半可な力の持ち主じゃあ突破も破壊も難しい。今頃はフィールド全体を霧が覆っているから、君らは完全に閉じ込められたって事さ」

 

 『神器』の結界だって!? 何だってそんなモンが!?

 

「つまり君が大好きなレーティングゲームはもう終わりって訳さ。そもそもあんなお遊びの何がいいのやら。僕にはさっぱりだね」

  

「なっ!? 何を言ってるの!? レーティングゲームは私達の地位と名誉を賭けた崇高な──「ああ、そんなのどうでもいいから」──なっ!?」

 

「大体レーティングゲームなんて現政府が大衆の娯楽になるよう、地位や名誉をエサに貴族にやらせてるものじゃないか。僕は見世物になる気なんてないよ」

 

「・・・・貴方何を言って───」

 

「それにもうすぐ現政府は終わるよ。そうすればレーティングゲームなんて何の価値もなくなるさ」

 

「!? 貴方まさか───」

 

「フフフ・・・・そうさ、もうすぐ世界は変わる。世界は『禍の団(カオス・ブリゲート)』の手によって生まれ変わるんだ!」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 皆が驚愕に声を失う。ディオドラが『禍の団』だって!?

 

「貴方いつから・・・・?」

 

「一年程前にスカウトされたんだ。彼らの仲間になった方が僕の好きな事を好きなだけ出来そうだからね」

 

「アンタって奴はぁーーーー!! よくもそれで貴族を名乗れるわね!? 恥を知りなさい!!」

 

 怒りのあまり部長が叫ぶが、ディオドラはそんな部長を眺めて嘲笑を浮かべてる。

 

「おや? そんなにおかしな事かな?“欲望に忠実たれ”──それこそ悪魔の本性だよ。僕はそれに従っただけさ。さて、アーシアが僕の手にある以上、君らは僕には逆らえない。でもそんな一方的なのはつまらないから君らにもチャンスをやろう。──来たまえ赤龍帝クン。僕が直々に叩き潰してあげるよ」

 

 この場にいる全員の視線が俺に集中する。今更こいつがまともに戦う筈がねえ。一体どういうつもりだ? そんな風に考えていると、俺の考えてる事が分かったのか、ディオドラが続ける。

 

「な~に、僕は君を叩き潰してアーシアの未練を断ち切りたいだけさ。他意はないよ。一対一で決着を付けよう」 

 

 正直こいつの言葉なんて信じるに値しないが、時間稼ぎにはちょうどいい。

 時間を稼ぐ事が出来れば先生が何とかしてくれるかも知れない。あるいは一輝先輩が帰って来ていれば、必ず助けに来てくれる筈だ。

 

「そーかい。それじゃあ───!」

 

『Welsh Dragon Half Plate Armor!!』

 

 【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の宝玉が光を放ち右腕と胸、肩、腰、そして膝と身体の要所を守るように部分的に鎧が装着される。

 戦闘準備完了。俺はかかって来いとばかりにディオドラに向かって人指し指をクイッと折り曲げた。

 

「ふぅん、それじゃあ行くよ!」

 

 ディオドラの魔力を纏った拳が直撃する。だが、

 

「なっ!?」

 

「効かねーな。もっと気合入れろよ」

 

 はっきり言ってディオドラのパンチはヘナチョコだ。白音ちゃんのパンチと比べたら、こんなの屁でもねえ! 

 

「ちっ、これならどうだ!」

 

 距離を取ったディオドラは魔力弾を放つ。でも、

 

「そんなモン、効くかよ!!」

 

『Boost!』

 

 俺の拳が迫る魔力弾を撃ち落とした。何だこれは? 朱乃さん魔力弾と比べたらバレーボールが当たった程度の衝撃しか感じねえぞ?

 以前映像で観た圧倒的な魔力が全く感じられねえ。コイツ、この期に及んで俺を舐めてんのか?

 

「・・・・ふざけやがって」

 

 俺は怒りに拳をきつく握り締める。ならいい。人を舐めてた事をたっぷり後悔させてやるぜ!

 

「こいつ、喰らえ!」

 

 一発じゃ足りないと思ったか、ディオドラは魔力を散弾状に撒き散らす。だが俺は自分に当たる魔力弾のみを防ぎ、かわし、撃ち落として冷静に対処する。

 こんなのより祐美の【魔剣流星群】の方がよっぽど怖え。

 

「バカな!?」

 

 驚愕するディオドラに向かって俺はダッシュする。

 

「は、速い!?」

 

 速い? バカ言うな。ゼノヴィアの方がもっと速えよ!

 

「パンチの撃ち方を教えてやるぜ、ディオドラァーーーーッ!!」

 

『Boost!』

 

 一輝先輩に教わった通り、踏み込みと体重移動を意識し、身体の中心線目掛けて一直線に拳を突き出した。

 

「げふぁあああっっ!!」

 

 俺の一撃を受けてディオドラが吹っ飛ぶ。そのままぶつかった柱をへし折り、壁に衝突してようやく止まった。

 今まで皆として来た訓練が自分の力になっているのを俺は実感していた。

 ディオドラは崩れた瓦礫の下敷きになり、気を失ったみたいだ。こいつの仕出かした事を一発でチャラにする気はないが、取り敢えずスッキリした。後はアーシアだ。俺はアーシアに向かって歩みを進めた。

 

「イッセーさん・・・・・・」

 

「・・・・ごめんなアーシア。お前を守るなんて言いながら、俺はお前を傷付け、泣かせてばかりで・・・・でも俺は・・・・俺はアーシアが好きなんだ! それだけは信じてくれ!!」 

 

 突然の告白にアーシアが驚く。でもその表情はすぐに翳りを帯びる。

 

「そんなの信じられません・・・・」  

 

「アーシア・・・・!」

 

「だって・・・・だってレイナーレ様には勃つのに、私には勃たなかったじゃないですか・・・・!」

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

 えー、現在眷属(みんな)の居たたまれない視線が俺に注がれている。き、気不味い・・・・

 

「どういう事イッセー! 私はレイナーレに慰められてる所をアーシアに観られて、二人の仲を勘違いされて出て行ったって聞いたわ!? アーシアの言った事は本当なの!?」

 

「その・・・・本当です」

 

 部長の詰問に正直にの答えると部長が絶句し、頭を抱えた。何だ? 部長の反応の意味が良く分からん。何がどうしたんだ?

 

「ナニが勃たないって・・・・そんな事あるのか?」

 

「さあ? 先輩は勃たない時なんてないから・・・・」

 

「一輝はいつもギンギンだにゃん!」

 

「・・・・絶倫です」

 

「皆、男の子は繊細なんですわよ。もう少し言葉をオブラートに包んで・・・・」

 

 皆が何やらヒソヒソと話してる。頭を抱えていた部長がようやく復活すると、困ったような目で俺を見つめる。

 

「貴方って子は・・・・本当に重症なのね。あのねイッセー、貴方はアーシアが出て行った理由がレイナーレとの仲を勘違いしたからだと思ってるようだけど、それだけじゃないわ。アーシアは貴方がレイナーレを選んだと思ってショックを受けて出て行ったのよ」

 

「は!? な、何でそうなるんスかぁ!?」

 

「だって自分の時は勃たなくて、他の女相手に勃ったらそう思っても仕方がないもの。アーシアからしたらさぞショックだったでしょうね」

 

 そんな!? とにかく誤解を解かなくちゃ! でもどうすればいい? どうすればアーシアの心に届くんだろう・・・・?

 

 

『だからねイッセー、貴方の想いをちゃんと口に出してアーシアに伝えてあげなさい。心の中で想ってるだけじゃ想いは伝わらないわ。貴方の言葉で、アーシアを本当の意味で取り戻すのよ!』

 

 

 その時、試合前に部長から掛けられた言葉が不意に思い浮かんだ。そうだ、恥も外聞もねえ。俺は俺の想いを正直にアーシアにぶつけよう。それで嫌われたり呆れられたりしてもしょうがない。だってそれが兵藤一誠()なんだから・・・・!!

 

「聞いてくれ、アーシア!・・・・・・俺、俺本当は・・・・女が怖いんだ・・・・!!」

 

「・・・・・・・・はい?」

 

 俺のいきなりのカミングアウトにアーシアが呆然としている。

 

「・・・・嘘です。だってイッセーさんのお部屋はエッチな本やビデオで一杯じゃないですか。それに普段から女子更衣室を覗いたりしてるし、そんなの信じられません・・・・」

 

 うぐっ!?・・・・分かってはいたがアーシアに言われると効くなぁ・・・・でも怯んじゃいられない。

 

「確かに俺は女が好きだ。女のおっぱいやお尻や太股が大好きだ!・・・・でも、でも俺の心の奥底には女に対する恐怖が根付いていたんだ・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「俺にそのトラウマを植え付けたのはレイナーレだって言えばアーシアにもピンと来るんじゃないか?」

 

「・・・・・・あ」

 

 俺のトラウマの根源がアーシアにも分かったらしい。そんなアーシアに俺は自嘲の笑みを浮かべる。

 

「俺もつい最近まで気付かなかった。いや、気付かない振りをしていたんだ。ハーレム王になりたいなんて言いながら、いざ女に触れられると身体が硬直するんだ。アーシアに抱き付かれた時だって、硬直して手が出せなかったのを妹扱いして誤魔化してただけなんだ。女が好きだけど女に裏切られるのが、拒絶されるのが怖くて手が出せない臆病者。それが俺、兵藤一誠の本当の姿なんだ」

 

「でもイッセーさん、私は──「分かってる! アーシアはアイツとは違う。俺を裏切ったりしない、いい娘だって分かってる! でも駄目なんだ! 触れようとすると“あの場面”が浮かんで来て身体が硬直して思考が止まっちまうんだ! あの時だって本当はアーシアに応えたかった! でもいざ事に及ぼうとすると、やっぱり“あの場面”が浮かんで───萎えちまったんだ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・本当の俺はこんなに情けない奴なんだよ、アーシア。・・・・でも、それでも俺はアーシアに側にいて欲しい。アーシアの想いに、アーシアの勇気に応えてやれなかった奴が何を言ってるんだと思うだろが、それが俺の本当の気持ちなんだ。俺の側にいてくれ、アーシア! 俺は、俺は初めて会った時から君が好きなんだ───!!」

 

 アーシアの青い瞳からは、いつしか涙が零れていた。

 

 

 

 

 

 イッセーさんの気持ちが真っ直ぐアーシア()に伝わって来ました。

 ああ、そうだったんだ・・・・言われてみればイッセーさんと触れ合った時、どこか躊躇いを感じていましたが、あれは怯えていたんですね・・・・

 私はイッセーさんを見ているようで、見ていなかったのかも知れません。

 私にとってイッセーさんは困った時はいつでも助けてくれて、どんなピンチでも決して諦めたりしないヒーローのような存在でした。その想いは初めて会ったあの日から変わらず、私の胸に在り続けていました。でも本当のイッセーさんはヒーローなんかではなく、傷付きやすいごく普通の男の子だったんですね・・・・

 私は本当のイッセーさんを見ようともせず、自分の想いを暴走させて関係を迫った挙げ句、貴方を余計に傷付けてしまった。ああ、私はなんて愚かなんでしょう。イッセーさんは自分の素直な気持ちを、心を私に晒してくれました。今度は私の番です!

 イッセーさんの言葉に、イッセーさんの心に私は応えたい! ああ、主よ! どうか私に勇気を与えて下さい!

 

 私とイッセーさんは暫し黙って見つめ合う。私は深呼吸をひとつして口を開きました。

 

「イッセーさんは本心を包み隠さずに話してくれました。だから私も本心を話します」

 

「うん・・・・」

 

「イッセーさんがレイナーレ様を選んだと思ってとても辛かったです」

 

「うん・・・・」

 

「抱いて欲しいと勇気を出したのに、応えて貰えなくて悲しかったです」

 

「うん・・・・」

 

「イッセーさんに女として見て貰えず、妹扱いされるのは苦しかったです」

 

「うん・・・・」

 

「・・・・でも私も謝らなくちゃいけません。イッセーさんの本当の姿を見ようともせず、私は自分の気持ちを押し付けていました。ごめんなさい」

 

「アーシア、それは違う! 俺が・・・・!?」

 

 私はイッセーさんの唇に人指し指を押し付け、言葉を封じました。

 

「私達はお互いを見ているようで見ていなかった。だからここからもう一度やり直しましょう。貴方がヒーローじゃなかったように、本当の私も聖女なんかじゃありません。貴方に抱かれたい、貴方に愛されたいと願っている、エッチな事にも興味があるごく普通の女の子なんです・・・・・・イッセーさん、どうか信じて下さい。私は貴方を裏切りません。貴方を拒絶もしません。貴方の心の傷が癒えるまで、いいえ、ずっと貴方の側にいます。だって私は、初めて会った時から貴方が大好きだから───!!」

 

「───アーシア!!」

 

 拘束され、自由に動けない私をイッセーさんが強く抱きしめる。ちょっと汗臭いけど、暖かくて力強い感触が私を包んでくれます。私もイッセーさんの背中に手を回してキュッと抱きしめました。

 

「ごめんな、アーシア」

 

「はい、私もごめんなさい。・・・・これからはきちんと話し合いましょう。そして少しずつでいいから治していきましょう。大丈夫、私がずっと側にいますから」

 

「うん・・・・うん! ありがとうアーシア」

 

 私達は見つめ合い、自然と唇が近付き、触れようとしたその時───

 

 

「きゃああああーーーーっっ!!」

 

「アーシア!?」

 

 突然激しい電流が私に流れる。そのまま崩れ落ちる私をイッセーさんがしっかり抱き止めました。

 

「ディオドラ、テメエまだ───!」

 

 イッセーさんの視線の先には瓦礫の下敷きになった筈のディオドラが立ち上がっていました。

 ディオドラは服に付いた埃を払うと、忌々しげに私達を睨み付けます。

 

「全く、黙って聞いてれば愛だの恋だのくだらない。あまりにくだらないから、つい手が出てしまったじゃないか」

 

 ディオドラの身体からはさっきまでと違う強大な魔力が迸っています。これは──!?

 

「ディオドラ、まだやる気なの!?」

 

「うるさいんだよリアス。くだらない三文芝居を見せられてこっちはうんざりしてるんだ」

 

「貴方って人は! いいわ、全員で袋叩きにしてやるから覚悟なさい!!」

 

 部長さんの声に皆が戦闘態勢を取る。その時、ディオドラがパチンと指を鳴らすと、辺りにいくつもの魔方陣が光り、中から大勢の悪魔が現れました。

 ───何て数でしょう。数百、いいえ、もしかすると千人に近いかも知れません。

 

「なっ───!?」

 

「こ、これは・・・・!?」

 

 突然現れた悪魔の集団に皆も驚いています。

 

「ククク・・・・リアス、彼らの顔に見覚えはないかい?」

 

 ディオドラに促され彼らの顔を見た部長さんは暫し考えた後で「あ・・・・」と声を上げた。

 

「あ、貴方達は確か・・・・」

 

「ククク、光栄ですねリアス姫。我々を覚えていてくれたとは」

 

 思い出しました。あの人達は先日のパーティで一輝さんの昇格に異を唱えた貴族達です。

 

「貴女が悪いのですよ、リアス姫。あんな転生悪魔風情を婚約者に選ぶとは・・・・貴族の風上にもおけないこの売女が!!」

 

「そうだ! 我々古くから在る貴族を蔑ろにして、あんな奴を選ぶとは何事だ!!」

 

「現政府の方針は間違っている!!」

 

「そうだ! 現政府におもねる奴等に粛清を!」

 

「「「「「粛清を!!!」」」」」

 

 狂気に歪んだ表情で貴族達が叫ぶ。現政府に不満を持っている人がこんなにいたなんて・・・・

 

「どうだい? 現政府の転生悪魔を優遇する政策に不満を持つ者は君が知らないだけで大勢いるんだ。ちょっと誘いをかけただけでこれだけの数が集まってくれたよ」

 

「くっ・・・・・・!」

 

 悔しそうな部長さんの姿に胸が痛みます。現政府の方針を定めたのは部長さんのお兄様であるサーゼクス様です。きっとお兄さんを否定された気がしているのでしょう。

 

「ぐはぁっ!!」

 

 その時、一瞬の隙を突いて私とイッセーさんの間にディオドラが現れ、イッセーさんを吹き飛ばしました。隙を突かれたイッセーさんは無防備な状態で攻撃を受け、皆の近くまで転がって行きます。

 

「待たせたね諸君! では宴を始めよう!」

 

 ディオドラが高らかに宣言しました。宴・・・・? 何だか嫌な予感がします。

 

「諸君の相手は実力者と噂のリアス率いるグレモリー眷属、ご覧の通り美少女揃いだ」

 

 悪魔達の歓声が響く。

 

「倒した相手は諸君の好きにしたまえ。犯そうが殺そうが諸君の自由だ!」

 

 悪魔達の歓声が最高潮に達する。ディオドラは満足そうに嗤っている。

 

「では───好きにしたまえ」

 

 ディオドラの一言で悪魔達が皆に襲いかかった。

 

「リアス姫! 貴族の義務だ! 我々が純血の悪魔を孕ませてやる!!」

 

「朱乃だ! 初めて見た時からそのデカい胸と尻を揉みくちゃにしたかったんだ!!」

 

「キヒヒ、祐美ぃ~! たあっぷり犯してやるぜ!!」

 

「ゼノヴィア! クールなその(ツラ)を泣きっ(ツラ)に変えてやるぜ!!」

 

「はぐれ悪魔の黒歌だ! たっぷりと罰を与えてやるぞ!!」

 

「ハア、ハア、白音ちゃん、おじさんはね・・・・」

 

(((((き、気色悪っ!!!)))))

 

 欲望を剥き出しにした悪魔達が皆に迫る。

 

「皆! 円陣を組んで! 互いに背中を守り合うのよ!!」

 

「「「「はいっ!!!」」」」

 

 部長さんの指示で皆は円陣を組む。悪魔達も皆の強さを知ってるのか、囲んだはいいが攻めあぐねていた。

 

 そんな時、ディオドラの声が響いた。

 

「リアス~? 分かってるよね? アーシアの命は僕が握ってるって 」

 

「「「「!!?」」」」

 

 そんな!? それじゃ私のせいで皆が・・・・!

 

「やめて! やめさせて下さい!!」

 

 懇願する私をディオドラは酷薄な表情で見下ろしている。そしてディオドラは私のウエディングドレスの胸元に手を入れ、一気に引き裂いた。

 

 ビリビリーーーッ!!

 

「きゃあああああっっ!!」

 

 手足を拘束されている私は隠す事も出来ず、ディオドラに裸身を晒してしまう。羞恥のあまり顔が熱くなる。

 

「「「「アーシア!!?」」」」

 

「ククク、この時をずうっと待っていたよ。赤龍帝やリアスの前で犯して、完全に僕のモノにしてやるよ!」

 

 ディオドラの手が私の胸を掴む。おぞましさのあまり鳥肌が立った。

 

「イヤあっ! やめて! イッセーさん、イッセーさぁん!」

 

「やめろディオドラ!!」

 

「ダメよイッセー! 円陣を崩さないで!!」

 

「でも部長! このままじゃアーシアが!?」

 

 誰もが混乱していた。イッセーさんも、部長さんも、そして私も。ディオドラの指が肌を這い回る感触に涙が滲んで来る。ああ、このまま私はこの卑劣な男に奪われてしまうのか、そう思うと心が絶望に満たされて行く。

 でもこの男は私を更なる絶望に叩き落とした。

 

「ククク、当初の計画から随分と時間が掛かったが、ようやく僕のモノに出来るよ」

 

「当初の、計画・・・・?」

 

 その言葉に嫌なモノを感じて思わず聞き返す。するとディオドラはニヤァっとイヤらしく嗤った。

 

「聞きたいかい? いいよ、聞かせてあげよう。・・・・僕は聖女って奴が好きでね、眷属は皆教会のシスターやエクソシスト、所謂敬虔な神の信者って呼ばれてた娘達なんだ。つまりは君の先輩だね。そんな彼女らを時には罠に掛け、時には言葉巧みに誘惑して堕とし、手籠めにするのが僕の趣味なんだ」 

 

「それじゃあ、まさか───」

 

「そう、君と同じさ。あの日僕はわざと怪我をして君の前に現れた。お優しい君は無条件に僕の怪我を治してくれたけど、おかしいと思わなかったのかい? 悪魔にとって教会は敵地だ。いくら弱っていたと言ってもそんな光の気配が溢れる場所に近付く訳ないだろう?」

 

「あ・・・・・・」

 

 そうだ。ちょっと考えれば分かるのに、どうして気付かなかったんだろう。

 

「悪魔の僕を癒してしまった君は僕の書いたシナリオ通りに“背信者”“魔女”と蔑まれ教会を逐われた。当初の計画では傷心の君の前に僕が現れ、そのままモノにする手筈だったんだけど、堕天使(カラス)の横槍が入って君は日本、事もあろうにリアスの領地である駒王町へ行ってしまった。そこで君は一度死にリアスの眷属に転生した。全く余計な回り道をしてしまったよ。でも苦労をした分、手に入れた感動は一入(ひとしお)だね。しかも寝取りまで味わえるとは、全く君は最高だよ、アーシア!」

 

「そんな・・・・・・!?」

 

 もう駄目です。泣いたらディオドラを悦ばせるだけだと分かっているのに、悔しくて悲しくて涙が溢れて止まりませんでした。

 

「ククク、───さあ、宴はまだまだこれからだ! 皆、楽しんでくれ!」

 

 

 

 

 

 

 絶望の宴は続く───

 

 

 

 




白音の気が通った音は某上条さんの幻想殺しが発動した音を想像して下さい。

ディオドラVSイッセー。
この時ディオドラはイッセーを舐めきっているので、オーフィスの蛇を使ってません。
舐めプをするから痛い目に合う、ディオドラの小物感が表現出来てるといいんですが・・・・

イッセーとアーシア。
イッセーのトラウマ克服は原作では10巻になってからですが、本作ではここで告白と同時に克服して貰う事にしました。

本日は連続して投稿しています。
続けて第30話もご覧下さい。


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第30話 イッセー、怒りの一撃! 



連続投稿の2話目です。
まだ読んでない方は先に第29話をご覧下さい。


 

 

 物語は少し前に遡る───

 

 

 

 二回戦が終わり、残る敵はディオドラ本人と騎士二名のみ。グレモリー側の被害は0だ。戦力比は圧倒的にグレモリーが有利だが、まだまだ油断は出来ない。アスタロト眷属は(キング)であるディオドラがエースのチームだ。奴を倒さない限り安心出来ない。

 

「一輝? 何だか機嫌が悪そうですね。何かありましたか?」

 

 アルトリアが一輝()の顔色を窺い、形の良い眉を潜める。

 

「ん? ああ・・・・アーシアが心配でな。辛い目に合ってないといいんだが・・・・」

 

 アーシアがディオドラに連れ去られたというのは先程聞いた。何故その時側にいなかったのかと自分を責めたが、サーゼクス様に「自分がいればどうにか出来たと思うのは傲慢だ」と諭された。

 確かにその通りだ。上級悪魔に昇格し、アルトリアという眷属を得て俺は少し調子に乗っていたのかもしれない。サーゼクス様の言葉は俺を戒めてくれた。こんな時は流石は魔王だと素直に尊敬出来るんだがなぁ・・・・

 

「気を落とさないで、一輝。その彼女はゲームに勝てば戻って来るのでしょう? 仮に戻って来なかった時は私も救出に協力しますから」

 

 アルトリアの言葉が素直に嬉しい。

 

「ありがとうアルトリア。万が一の時は力を貸してくれ」

 

「はい。私は貴方の剣──いいえ、女王(クイーン)です。我が力はいつでも貴方の為に───」

 

 彼女の高潔さはサーヴァントであった時から変わらないな、と嬉しく思う。その時、

 

「何だ? 戦場(バトルフィールド)に霧が出て来たぞ?」

 

 アザゼルの声に俺はスクリーンを注視する。

 アザゼルの言う通り、戦場に霧が発生していた。その霧は見る見る内に広がって行き、やがて戦場全体を覆い隠す程に成長した。

 

「サーゼクス様、たった今通信が。中との連絡が一切通じないそうです」

 

「「「!!?」」」

 

 グレイフィアさんの報告に皆に緊張が走る。その時俺はこの部屋に迫る不穏な気配を察知した。チラリとアルトリアに視線を向けると、彼女は小さく頷いた。そして、次の瞬間───

 

「サーゼクス、覚悟!!」

 

「滅びよ、偽りの魔王!!」

 

 床に魔方陣が光ると、何人もの悪魔が飛び出して来た。

 

 俺はサーゼクス様に襲いかかる三人を【(つむじ)】で迎撃すると、機先を制されてまごついている二人を【虎砲(こほう)】で次々と沈める。

 アザゼルに向かった三人はアルトリアがあっさりと斬り倒し、残る二人は後れ馳せながら襲撃に気付いたレイナーレが光の剣で斬り臥せた。

 グレモリー夫妻に向かった三人はイリナの光を浴びて消滅した。その間にグレイフィアさんが転移を封じる結界を張った。その間約十秒。

 

「ご無事ですか、サーゼクス様?」

 

「ご苦労、一輝君。襲撃者十三名を十秒か・・・・大したものだね」

 

「こいつらお前の事を偽りの魔王って言ってたな。という事は・・・・」

 

「『禍の団(カオス・ブリゲート)』・・・・それも旧魔王派だな・・・・」 

 

「やはりディオドラは黒か。だったらサーゼクス様、始末しても構いませんね?」

 

 どうせディオドラは利用されてるだけで、『禍の団』に関する大した情報は持っていまい。いい加減我慢の限界だ。俺は拳を握り締め、自分が介入する事を宣言した。

 

「止むを得まい。だがあの霧は・・・・」

 

「恐らく【絶霧(ディメンション・ロスト)】。結界系最強の神器(セイクリッド・ギア)だ。結界内に入るのも難しいが、出るのは更に難しい。外から破壊する事はまず不可能だろう」

 

「そんな!? それじゃああの結界を破る方法はないんですか!?」

 

 イリナの叫びにアザゼルは自分の見解を述べる。 

 

「いや、恐らくあの霧の中に結界の発生装置がある筈だ。それを壊せば・・・・」

 

「ならどのみち中に入らないと。──行くぞ、アルトリア」

 

「はい一輝」

 

 打てば響くようなアルトリアの声が頼もしい。そこへ、

 

一兄(かずにい)私も!」

 

「一輝様、私も連れて行って下さい!」

 

 イリナとレイナーレが同行を求めて来た。

 

「危険だぞ? それでもいいのか?」

 

「「はいっ!!」」

 

 覚悟は出来てるようだな。まぁ四人ならかなり狭いがギリギリ入れるか。

 

「いいだろう。行くぞ」

 

 俺の了承を得て喜色を浮かべる二人。

 

「だが一輝、お前どうやって中に入る気だ?」

 

 そう訊ねるアザゼルに俺は自分の考えを述べる。

 

「ガイバーの次元移動ならあの結界を抜けられると思うんですが・・・・どうでしょう?」

 

「そうか! 一旦次元の狭間へ移動する次元移動なら結界へのアクセス方法が違うから、結界を抜けられるかも知れねえ!」

 

 空間転移も次元移動も目的地に瞬時に移動する方法だが、アクセスの仕方が異なる。

 空間転移は魔力で空間を歪めて移動する方法だが、あくまで次元内(この世界)の移動であり、(結界)があれば通れなくなってしまう。

 だが次元移動は一旦この次元の外(次元の狭間)に移動し、再びこの世界(次元内)に転移する次元間移動だ。

 この手の結界は術式がより複雑になり、制御が難しくなる為、次元内にしか効果が及ばないものが多く、次元間移動に対しては効果がない、もしくは薄い事がある。

 この霧の結界を張った奴がどこまで想定してるか分からないが、ガイバーなら結界を突破出来る可能性が高い。

 アザゼルの見解を聞いた俺はガイバーに殖装すると、思念を集中させて『サナギ』を喚んだ。

 

「こいつは・・・・!?」

 

 『サナギ』を初めて見たアザゼルが驚く中、俺はアルトリア達に声をかけた。

 

「皆乗れ!」

 

 『サナギ』に乗り込んだ俺の声にアルトリアが真っ先に反応し、俺の右側に乗り込む。続いてレイナーレが左側、イリナが正面に抱き付くように乗り込んだ。やっぱり四人も乗るとかなり狭い。だが何とか行けそうだ。

 

「待ってろよ、皆───!!」

 

 俺が思念を送ると『サナギ』は宙に浮かび上がり、次元の狭間へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 (リアス)達は最悪の状況に追い込まれていた。欲望剥き出しで襲って来る悪魔達の攻撃を朱乃と黒歌の防御障壁で防ぎながら、状況を打開しようと私は思考を巡らせていた。

 正直全力を出せれば、今の私達なら相手が千人いようと戦える自信はある。でもアーシアを人質に取られていてはその全力が出せない。

 このままではアーシアはディオドラに犯され、私達も大勢の悪魔の慰み者にされる未来が待っている。それを防ぐにはアーシアを見捨てて、全力で戦えばいい。

 アーシア一人の犠牲で他の皆が助かるのだから王としては当然の選択だ。そんなの分かってる! それでも私はその選択を、アーシアを見捨てる事が出来なかった。

 

「ハハハ、アーシアを見捨てれば簡単なのに

“情愛深い”グレモリーにそれは出来ないか。愚かとしか言い様がないね!」

 

 非情な選択が出来ない私をディオドラが嘲笑(わら)う。悔しいけどその通りだ。最善と分かっていても、私にはその選択をする事がどうしても出来なかった。

 

「ごめんなさい皆・・・・本当に私って(キング)失格だわ」

 

 崩れ落ちそうになる私の心に、

 

「諦めちゃ駄目です!!」

 

「!!?」

 

 閃光のように祐美の叫びが響いた。

 

「部長! 皆も諦めちゃ駄目!! 確かに状況は最悪だけど、必ず先輩が助けに来るわ! だから絶対に諦めないで!!」

 

「祐美・・・・でも一輝は帰って来てるかも分からないのよ?」

 

「それでも! 先輩なら必ず来てくれます! 部長! 貴女がそれを信じなくてどうするんですか!?」

 

「!!」

 

「そうだよな・・・・部長、一輝先輩は必ず来てくれますよ。ライザーと戦った時もヴァーリと戦った時も出待ちしてるんじゃないかってタイミングであの人は来てくれましたから」

 

「私の時も先輩は来てくれました。ね、姉様」

 

「そうね。一輝なら自分の女のピンチに駆け付けない訳ないにゃん」

 

「そうだ! センパイは必ず来る! 諦めてたまるか!!」

 

「皆・・・・・」

 

 祐美に続いてイッセーの、白音の、黒歌の、ゼノヴィアの声が私を奮い立たせる。そうだ! 私が一輝を、愛する人を信じなくてどうするんだ!

 

「あらあら、祐美ちゃんにすっかりお株を取られちゃいましたね。・・・・リアス、信じましょう。私達の愛するあの人を」

 

「朱乃・・・・そうね。ごめんなさい皆。私達は決して諦めない。いいわね!!」

 

「「「「「はいっ(にゃ)!!!」」」」」

 

 皆の目に光が戻る。とは言え状況は悪くなる一方だ。何とかしなくちゃ!

 

「プ、ハハハハ! ガイバーを当てにしてるなら無駄だよ。【絶霧】は結界系最強の『神器』だ。その結界を抜けてここへ来る何て不可能だよ。いい加減諦めるんだね」

 

 ディオドラが喚くが、もう私達には届かない。私はディオドラを睨み付けて言い放った。

 

「貴方には分からないでしょうね、私達の絆が。共に歩んだ日々が一輝が必ず来るって信じさせてくれるのよ。断言するわ。ディオドラ、貴方はもう終わりよ」

 

 私がそう断言するとディオドラは一瞬鼻白んで、次の瞬間、激昂した。

 

「ふざけやがって!! あんな転生悪魔風情に何が出来る! 僕はアスタロトの血を引く由緒正しい貴族だぞ!? その僕が負けるもんか!! ええい! お前らいつまでかかってる!? どけ!!」

 

 ディオドラは巨大な魔力弾を作ると私達目掛けて撃ち放った。

 

「ぐっ!? く、ううぅ・・・・」

 

「!? ダメ!破られるにゃん!!」

 

 ピシッと亀裂が入るような音がすると同時に防御障壁が破られた。

 

「「「「きゃああああーーーーっ!!?」」」」

 

 魔力弾が着弾した衝撃に私達は吹き飛ばされる。

 

「く、うう・・・・皆は・・・・?」

 

 身体のあちこちが痛むけど、そうは言ってられない。早く態勢を整えないと! とその時、誰かに腕を掴まれた。

 

「ククク、待たせたなリアス姫! さあ、我らの、純血の悪魔の子を孕ませてやるぞ!!」

 

 しまった!? 一人に捕まると、たちまち群がる悪魔達にあっという間に四肢を拘束されてしまった! 周りを見ると皆も似たような状態だった。

 

「やめなさい貴方達! それでも貴族なの!?」

 

「何を言ってる? 弱者を力で蹂躙する。これこそ貴族だろうが!!」

 

 腐ってる! こんな奴らがいるから貴族が誤解されてるのに! こんな奴らからの解放をお兄様は目指しているというのに!

 

 私にのし掛かる男が無理矢理ブラウスを引き千切る。ボタンが弾け飛び、黒いブラに包まれた胸が露出してしまった。

 

「ヒヒヒ、随分色っぽい下着を着けてるんだなぁ、リアス姫。それじゃあ───」 

 

 欲望に塗れた男の手が私の胸に伸びる。くっ、こんな奴に触られるなんて───!

 

(そんなのイヤ! 一輝、助けて───!!)

 

 

 ピシィッ!

 

 

 その時、何かがひび割れるような音がした。

 

 

 ピシッ! ピシピシピシッ!

 

 

 そのひび割れ音は更に続き、

 

 

 ガッシャアアァァンンッ!!

 

 

 空間が割れて何かが飛び込んで来た。

 

 

「な、何事だぁ!?」

 

 誰もが状況を忘れて突然飛び込んで来た物体を見上げていた。その中で私は涙が滲むのを抑えられなかった。

 

「一輝・・・・!!」

 

 その物体──『サナギ』から三人の人影が飛び出した。一人は白い翼を拡げた天使イリナさん。もう一人は黒い翼を拡げた堕天使レイナーレ。そして最後の一人は青い戦闘用ドレスに鎧を纏った金髪の騎士だった。

 イリナさんとレイナーレは私達に群がる悪魔を光の剣で次々と斬り裂いて行く。もう一人の騎士は真っ直ぐディオドラに向かっていた。

 

「ち、来るな!!」

 

 ディオドラが放った魔力弾が騎士に直撃する。「何故避けないの!?」と思っていたら、次の瞬間、騎士は平然とした様子で爆風の中から飛び出した。

 

「なっ───!?」

 

 騎士は驚くディオドラに接近すると、無手であるにも関わらず、剣を振るようにその手を振り下ろした。

 

「ギャアアアーーーーーッ!!」

 

 ディオドラの、スイッチを持った左手首が宙に舞った。良く見ると彼女の手の周辺の空気が歪んでいるのが分かる。

 

(あれは・・・・見えないけど剣を持っているの!?)

 

「動くな。動けば斬る」

 

 騎士はディオドラに見えない剣を突きつける。

 ディオドラは左手首を押さえながら、怨みがましい目で騎士を睨んでいる。でも次の瞬間、まるで蛇に睨まれた蛙のように、その身体が硬直した。

 周りを見ると、私達を襲っていた悪魔達も、同じような状況に陥っている。

 私は一輝が何かしたのかと思い上空を見やると、サナギが紅く染まり、見る見る内に姿を変え、全長3m位の巨人と化した。

 

「ガイバー・・・・?」

 

 誰が洩らしたか分からないが、その姿は確かにガイバーに良く似ている。かつて一度だけ見たガイバーの『禁手(バランス・ブレイカー)』、その名は───

 

「───ガイバー・ギガンティック!!」

 

 待ち望んだ一輝の登場に、私は歓声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 間一髪間に合ったか。ガイバー・ギガンティックと化した一輝()はイリナとレイナーレに救出される皆を見て、安堵の溜め息を吐いた。

 だが衣服を破かれ、素肌や下着を露出している彼女らを見て、周りで這いつくばる悪魔共に殺意が込み上げて来る。コイツらが何をしようとしたのか一目瞭然だ。怒りのあまりコイツらに向けている殺気が更に濃くなり、口から泡を吹いたり、小便を漏らして気絶する者が続出していた。

 

「皆、遅くなってすまない」

 

 俺が声をかけると皆の表情に安堵が浮かぶ。

 

「先輩、その姿は・・・・?」

 

 悪魔共に痛め付けられたのか、傷だらけのイッセーが訊ねる。

 

「ああ、リアス以外には初めてだったな。この姿は俺の『禁手(バランス・ブレイカー)』、【巨人殖装(ギガンティック)】だ」 

 

「先輩の『禁手』・・・・スゲえ!」

 

 イッセーが羨望の眼差しを向ける中、リアスが口を開く。

 

「助かったわ一輝。所であの騎士は何者なの?」

 

「ああ。後で紹介するが、俺の『女王(クイーン)』、アルトリアだ」 

 

 そう言うと皆驚いていた。

 

「貴方の女王・・・・そう、眷属が出来たのね」

 

「ああ。それと・・・・」

 

 俺は先のゲームからディオドラが『禍の団』と繋がってる可能性を疑い、アザゼルに調査を依頼していた事、黒だと分かったので、ディオドラを始末する許可を貰ってる事、このフィールドが神器【絶霧】の結界に覆われ、内部にある結界発生装置を壊さないと脱出出来ない事等を説明した。

 

「そう・・・・分かったわ。形勢逆転ね、ディオドラ!

貴方にもう勝ち目はないわ。大人しく降参しなさい!

・・・・貴方達もよ」

 

 リアスは周りで這いつくばる悪魔共を睥睨しながら言う。

 

「リアス・・・・これで勝ったと思うな!」

 

 そう叫ぶと同時にディオドラの姿が消えた。

 

「ムッ!?」

 

 次の瞬間、30m程離れた所にディオドラが現れた。ディオドラは隠し持っていた『フェニックスの涙』で左手首の治療をする。

 アルトリアが「斬りますか?」と視線で問いかけるが、俺は首を横に振ってその場に(とど)めた。

 アイツは直接ブチのめさないと気が済まない。だが、俺が足を踏み出そうとしたその時、俺を制するようにイッセーが腕を伸ばした。

 

「一輝先輩、アイツは俺にやらせて下さい」

 

 俺達の視線が交錯する。見た所イッセーの身体はボロボロだ。だがその瞳の闘志は全く衰えておらず、寧ろ激しい怒りで燃え上がっていた。

 今までのイッセーは【赤龍帝の籠手】という『神器』を宿していたが為、戦いに巻き込まれていたに過ぎなかった。でも今のイッセーは違った。瞳の奥底にあった微かな怯えが払拭され、愛する者を守るという固い意志を持つ戦士の目をしていた。

 暫く会わない内に何があったのだろう。俺は弟のように思っていた後輩の成長に内心笑みが浮かんだ。

 

「ディオドラは“オーフィスの蛇”によりパワーアップしている。今のお前にやれるのか?」

 

 俺が訊ねると、イッセーはディオドラに視線を向けながら一歩前に出る。

 

「はい。必ず奴をブチのめします!」

 

「良く言った。行け、イッセー!」

 

 俺はイッセーの背中を軽く叩く。

 

「ウス!!」

 

 イッセーは気合の籠った返事をして、ディオドラへと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ、バカめ! 手加減した状態の僕を殴り飛ばした位で勝てるとでも思ってるのかい? 見るがいい、これが僕の本当の力だ!!」

 

 ディオドラから強大なオーラが立ち昇る。凄まじい魔力だ。さっきとはまるで比べ物にならない。でも何故だろう、イッセー()はちっとも怖いとは思えなかった。

 何だか不思議な気分だ。怒りが突き抜けすぎたのか、妙に頭がスッキリして、感覚が研ぎ澄まされてる。

 

「それがどうしたってんだ。現政府を裏切り、眷属(仲間)を傷付け、何よりアーシアを泣かせたお前を俺が許すとでも思ってんのか? フザケんな! お前は絶対に許さねえ! お前がどれだけパワーアップしようと必ず俺の拳でブチのめしてやる!!」

 

 俺の怒りに呼応して赤いオーラが燃え上がる。そのオーラはディオドラのオーラを遥かに凌駕していた。

 

《おお・・・・おお!! やったぞ相棒、お前は遂に殻を破った!!》

 

 突然ドライグが歓喜の叫びを上げた。

 

《どうしたんだドライグ? 殻って何の事だよ?》

 

《お前が後一歩まで来ながら未だ禁手に至らなかったのは、お前のココロが殻に閉じ籠ってたからだ。でもお前は自分のココロの弱さを晒してアーシアの愛を受け入れた。それによってお前は殻を破り、遂に至ったんだ!》

 

《至った・・・・ってまさか!?》

 

《そうだ! お前は遂に完全な禁手に至った! 今こそ叫べ、相棒! その胸の想いのままに───!!》

 

「おおおおッ!───禁手化(バランス・ブレイク)!!

 

 凄まじいオーラの中、俺は叫ぶ。全身余す所なく鎧に覆われ、身体中に力が漲って来る。スゲえ、これが完全な『禁手(バランス・ブレイカー)』か!?

 

「『禁手(バランス・ブレイカー)』、【赤龍帝の鎧(ブーステッドギア・スケイルメイル)】装着完了! かかって来い、ディオドラーーーー!!」

 

 俺のオーラに気圧されながら、ディオドラが叫ぶ。

 

「くっ、禁手に至ったからと言って何だと言うんだ!? これでも喰らえ!!」

 

 ディオドラの魔力弾が俺に迫る。だが俺は避ける必要を感じなかった。

 

 ズドォンッ!!

 

 着弾したが全く効かねえ。歩みを止めない俺にディオドラは顔を引きつらせ、魔力弾を連発する。

 

 ガガガガガッッ!!

 

 全弾命中するが、雨粒が当たった程度にしか感じねえ。とんでもない防御力だ。

 

「くっ、来るなぁーーーーー!!」

 

 焦ったディオドラは超特大の魔力弾を放った。お前、この距離で着弾したら自分も巻き込まれるぞ。最早そんな事も理解出来ないのか。

 

「フンッ!!」

 

 俺はハエを散らすように魔力弾を打ち払う。

 

「「「「「ギャアアアアーーーーッ!!!」」」」」

 

 あ、払った魔力弾が一輝先輩の殺気にあてられて動けなかった奴らのド真ん中に着弾しちまった。まあいいか。

 

「さて、覚悟はいいか?」 

 

「う、うわあーーーーッッ!!」

 

 ディオドラは防御障壁を発動する。だが、

 

「そんな薄っぺらい障壁で俺を止められると思うなぁーーーーッッ!!」

 

 パリンッという音を立て、あっさりと障壁が砕け散る。拳はそのままディオドラの顔面に突き刺さった。

 

「ゲハアッッ!!」

 

 そのまま吹っ飛ぶディオドラ。一発で頬が腫れて鼻血が出ていやがる。

 

「うぐ・・・・くそっ! 僕は現魔王ベルゼブブを輩出したアスタロトの直系だぞ!? 貴様のような下踐な転生悪魔如きに───!!」

 

 怒りのままに魔力弾を連発するディオドラだが、狙いが定まってねえな。

 俺はディオドラの攻撃をスルリとかわすと、そのまま近付いてボディに一発、くの字に折れ曲がった顔面を全力でブン殴った。

 

「フギャアーーーーッッ!!」

 

 血反吐を吐きながらディオドラが吹っ飛ぶ。俺は一歩一歩、わざと足音を立てながらディオドラへと近付く。

 

「どうした? もう終わりかよ?」

 

「く、来るなぁーーーーッッ!!」

 

 今度は防御障壁を幾重にも展開するが、まだ分かってねえな!

 

「それがどうしたーーーーッッ!!」

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!!』

 

 パリパリパリィンッと軽快な音を立てて、障壁があっさりと砕け散る。倍加した俺の拳は障壁を張る為に突き出していたディオドラの両手に命中し、そのまま粉砕した。

 グシャリと肉の潰れる音がして、ディオドラが吹っ飛んだ。

 

「ウギャアアアアアッッ!! ぼ、僕の手がぁ~~~~ッッ!!?」

 

 ディオドラの両手は指が折れ曲がり、完全に潰れている。もう使い物にならないだろう。

 俺は血塗れで「痛い痛い!」と泣き喚いているディオドラの前に立つ。

 

「ヒイッ! や、やめろ! 僕は純血の上級悪魔(貴族)、魔王ベルゼブブの血族だぞ? 僕を殺したら魔王が黙ってないぞ!?」

 

 コイツ何を言ってるんだ? 自分の行いを棚に上げてフザケた事を抜かしやがって・・・・!

 俺は怒りのあまりディオドラの膝を踏み砕いた。

 

「ヒギャアアアアーーーーッ!!」

 

「・・・・その魔王を裏切っておいて何を虫のいい事を言ってやがる? お前を始末する許可は出てるんだ。最後位貴族らしく潔くしやがれ」

 

 ディオドラはガタガタと震え、涙を流しながらイヤイヤと首を振る。臭うと思ったら小便まで漏らしてやがる。

 

《見苦しいな。相棒、とっとと終わらせてやれ》

 

「ああ」

 

 そうだ。とっとと終わらせて皆で帰ろう。俺が拳を振り上げたその時、 

 

「うわあああーーーーッッ!! 助けろ! 僕がお前らにどれだけ便宜を図ったと思ってるんだ! そういう契約だろ! 早く僕を助けろよ!!」

 

 いきなり喚き出したディオドラに(とど)めを刺そうとした手が止まる。

 

「!!?」

 

 その時、どこから放たれたのか魔力弾が俺に向かって飛んで来た。

 

 

 

 

 

 




ベタな展開ですいません(笑)。

はい、リアス達のピンチに主人公登場というベタな展開になりました。
この展開を読んでた方、白けさせてしまってすいません。

本作のイッセーはここで禁手に至りました。
原作では乳首を突いて至りましたが、ドライグさんが哀れだったので、アーシアへの愛で至るというベタな展開になりました。

本日は連続投稿しています。
続けて第31話もご覧下さい。


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第31話 グレモリー眷属の逆襲



連続投稿3話目です。
まだ読んでない方は先に第29、30話をご覧下さい。

本話には残酷な表現があります。
ご注意下さい。



 

 

 その時、どこからか放たれた魔力弾がイッセー()に向かって飛んで来た。

 

「チイッ!」

 

 咄嗟にガードしたが、ディオドラより遥かに強力な魔力弾を受け、俺の身体が吹き飛ばされる。ダメージは少ないがディオドラから離されちまった。

 

「来たか!?・・・・ったく、遅いんだよ!!」

 

「フン! 契約故に仕方なく来てやったというのに、全く見苦しい・・・・所詮は偽りの魔王の血族、真の魔王たる我々とはやはり格が違うな」

 

 喜色を上げたディオドラだが、突如現れた男の嘲りを帯びた声に顔を歪める。声の方を見ると、そこには貴族風の衣装を着た、長い黒髪の悪魔がいた。

 

「・・・・何者なの?」

 

「フン、偽りの魔王サーゼクスの妹か・・・・我が名はクルゼレイ・アスモデウス。正統なる魔王の後継者だ」

 

「旧魔王派・・・・!」

 

 ディオドラの援軍って訳か。厄介だがやるしかない。そう思ってると、クルゼレイの背後から二人の男が姿を現す。驚いた事に二人共知ってる顔だった。

 

「ヤッホー、おひさ~♪」

 

「フリード・セルゼン・・・・!」

 

 ゼノヴィアが怒りの籠った視線を向ける。

 フリード・セルゼン。元教会のエクソシストで俺達とは腐れ縁の敵だ。『聖剣事件』の折、祐美に深手を負わされ消息不明となっていたのだが、生きてやがったのか。そしてもう一人───

 

「───バルパー・ガリレイ!!」

 

 祐美が珍しく激情を顕にしている。

 無理もない。バルパー・ガリレイは元教会の大司教で、『聖剣計画』を主導した人物だ。祐美にとっては仇敵であり『聖剣事件』の後、教会に捕らわれ処分されるのを待つ身だった筈なのに、どうしてここにいるんだ!?

 

「お? 生きてたのかって顔してる? 実はあの後アザゼルからリストラされちまってさぁ~。やっぱ堕天使はしょっぱくてダメだね~。でも捨てる神ありゃ拾う神あり・・・・あ、神いないんだっけ。どうでもいいや。結局『禍の団』に拾われてねえ~、恥ずかしながら、こうして戻って来た訳でアリマス☆」

 

「フム、ディオドラには脱獄に手を貸して貰った恩があるでな。助けてやるわい」

 

 バルパーは懐から宝玉を取り出し、頭上に翳す。宝玉が光を発すると、周りにいた悪魔達が急に苦しみ出した。

 

「うぐ、ううぅ・・・・」

 

「な、何だこれは・・・・!?」

 

「あ、熱い・・・・うがあああっ!!」

 

 何だこれは!? 連中の身体が変化していく。人狼(ワーウルフ)人虎(ワータイガー)蜥蜴人(リザードマン)などといった魔獣に姿を変えていった。  

  

「・・・・何をしたの、バルパー!?」

 

 祐美の声にバルパーはニヤリと嗤った。

 

「ククク、『禍の団』には【魔獣創造(アナイアレイション・メイカー)】という上位神器の持ち主がいての。その神器を研究して“魔獣の種”という物を作り出したのじゃよ。それを今回襲撃に参加した者全員に植え付けておいた。じゃからワシの合図ひとつでほれ、この通りじゃ」

 

 く、相変わらず鬼畜な野郎だ。まあ、元々獣みたいな連中だったし、可哀想とは思うまい。 

 

「そして・・・・ワシらもこの通りじゃ!!」

 

 バルパーとフリードもまた姿を変えていく。

 バルパーは身体が二倍以上に巨大化し、異様に長い腕と蛇のような鱗を全身に生やした蛙頭の化け物に姿を変える。

 フリードはバルパーよりも更に巨大化し、蝙蝠のような翼を背に生やし、左右会わせて四本の巨腕に剣を持った竜頭の化け物に姿を変えた。

 

「ヒヒヒッ! どうだいイッセーどん? 俺っちこーんなに醜い化け物に変わっちまったYo☆ でもスゲ~パワーアップしたから、今ならイッセーどんも軽~くブッチしちゃうZe☆」

 

 最早フリードの面影など一欠片もない異形の化け物に成り果てている。戦いを挑むというならいいだろう。お前との因縁にも決着(ケリ)を着けてやるぜ! だがそんな俺の前に三人の人影が立つ。

 

「イッセー、コイツは私達にやらせてくれ」

 

「味方殺しの背信者、ミカエル様の『御使い(ブレイブ・セイント)』として許す訳にはいかないわ」

 

「私も・・・・フリードとは決着を付けたいの」

 

 ゼノヴィアとイリナ、そしてレイナーレ。元教会の戦士であるゼノヴィアとイリナ、そして元上司であるレイナーレにとってフリードは決して許せない存在なのだろう。

 

「分かった。コイツは任せるぞ」

 

 俺はフリードを三人に任せ、後ろに来ていたもう一人に声をかける。

 

「バルパーは任せていいな、祐美」

 

「ええ。イッセー君はアーシアさんの元へ行ってあげて」

 

 アーシアの元には今、一輝先輩の女王であるアルトリアさんが付いている。俺は祐美とハイタッチを交わして、アーシアの元へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 魔獣と化した悪魔達の群れが一輝()達に襲いかかる。リアス達を襲おうとした奴らだ。自業自得だし一切容赦する気はない。

 迫る魔獣の群れを重力制御で()し潰して動きを止め、リアス、朱乃、黒歌の三人が其々滅びの魔力、雷光、呪殺弾を放ち仕止める。白音は討ち漏らした魔獣がいたら止めを刺していく。

 魔獣は力やスピードこそ増すが、知能は低下するのか単純に襲って来るだけだった。連係を密にしていた俺達からすれば脅威にはならず、魔獣退治は最早作業と化していた。

 そんな作業を十回も繰り返せば段々数も少なくなる。ようやく余裕の出来た俺は仲間達の様子を窺った。

 

 

 

 

 

 

 祐美()はゆっくりとバルパーへ歩みを進める。

 

「まさか脱獄して来るとは・・・・教会にも困った物ね」

 

 バルパーを逃がしたのも問題だが、その事を隠していたのはもっと問題だ。後でミカエル様に報告しておこう。そうすれば腐った教会上層部も少しは風通しが良くなるだろう。

 

「フム、貴様の能力は全て解析済みじゃ。更に魔獣の力を得たワシに死角はないぞ。貴様はたっぷりと痛め付けた後、再び実験材料として使(つこ)うてやるわ!」

 

「・・・・こうなると脱獄して来て良かったと言うべきかしら? 私自身の手でお前を始末出来るものね」

 

私は剣を作り出し、射出する。バルパーは余程防御力に自信があるのか避けようとしない。 

 

「バカめ! 貴様の能力は解析済みじゃと言っ、ギャアアアアーーーーッッ!!?」

 

 ミーティアが命中し、バルパーが苦しみ出す。私は次々と剣を射出して行く。

 

「グギャアアアッッ! バ、バカな!? 貴様の魔剣などワシに効く筈が───」

 

「魔剣ならそうでしょうね。でもお生憎様、私が今射出したのは“聖剣”よ」

 

「!!?」

 

 『聖剣事件』で私の魂は仲間達の魂と融合した。その結果、私は仲間達の聖剣因子を受け継ぎ、聖剣を使えるようになった。

 これには思わぬ副作用があった。【魔剣創造(ソード・バース)】と対を成す【聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)】という神器を後天的に会得し、聖剣を作り出せるようになったのだ。

 聖剣は悪魔だけでなく魔獣・魔物にも特効がある。

“魔獣の種”とやらで変化したバルパーにもこの力は効果があるようだ。

 

「ガハッ! バカなぁ・・・・後天的に二つ目の神器を得るなどあり得ん!?」

 

「普通ならそうでしょうね。でも私の魂にはお前に殺された皆の想いが宿ってる。その想いが不可能を可能にして私に力を与えてくれるのよ!」

 

「グギャアアアアーーーーッッ!!」

 

 私は聖剣の射出を繰り返す。バルパーの身体には無数の聖剣が突き刺さっていた。

 

「バカな・・・・不良品の実験体風情がワシの予想を越える強さを得るなんて・・・・」

 

「なまじっか防御力に自信があるからって、不用意にミーティアを受けたのがお前の敗因よ。私の能力は解析したって言ったわね? だったらお前に撃ち込んだ聖剣が、全て属性付与済みだと言ったら?」

 

「!? 貴様まさか───!!」

 

 そう、撃ち込んだ聖剣には全て雷属性が付与してある。シトリー戦の時のように周りを取り囲むのではなく、直接身体に撃ち込んだのだ。その威力は【雷の魔剣の檻(ソード・バース・サンダージェイル)】の比じゃない。 

 

「ま、待て───」

 

「地獄で死神と戯れなさい、バルパー・ガリレイ」

 

 私は頭上に掲げた指をパチンと鳴らす。その途端、バルパーに突き刺さった聖剣が青白く発光して───

 

 

 バリバリバリーーーーーッッ!!

 

 

 凄まじい轟音と稲光の中、バルパーの身体が炭化していく。悲鳴さえ掻き消す轟音の中、バルパー・ガリレイは骨すら残さず消滅した。

 

「今度こそ終わったよ、皆・・・・・・」

 

 私は左拳を胸に置いて、祈りを捧げるように瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「ヒャハハハーーーーッ!! 俺っちの相手はお前らかよ!? コカビエルの野郎にあっさり(ひね)られる程度の奴らが俺っちの相手になるのかにゃ~?

そ・れ・に・超無能な元上司もいるじゃん! 何で生きてんの?」

 

「フリード・・・・!!」

 

「・・・・相変わらず下品な男だな」

 

「私達が以前のままじゃないって教えてやるわ!」

 

 ゼノヴィアがデュランダルを、イリナ()とレイナーレは光の剣を構える。

 

「ねえねえ一人? カラワーナは? ドーナシークは? ミッテルトは? もしかして全員身代わりにして、一人だけ生き残ったの? うわぁ~、ないわ~」

 

「くっ、おのれ!!」

 

「落ち着けレイナーレ! 奴の挑発に乗るな!」

 

 フリードの挑発にゼノヴィアの制止を振り切ってレイナーレが走り出す。いけない! 冷静さを失った今の彼女では!

 

「フリード、貴様ァ!!」

 

「ヒャハ! 図星を指されて怒っちゃった? ゴメンねぇ~、俺ちゃん正直者だからウソ吐けないんだぁ~☆」

 

 レイナーレが光の剣をフリードの腕に振り下ろす。でも、

 

「くう、か、硬い!?」

 

 鱗に覆われた腕はかなり硬いようで、レイナーレの光の剣を簡単に弾き返しす。

 

「ヒャハハ、仲間を全員失ったお前なんぞそんなモンだろうよ!!」

 

 反対側の手に持った二本の剣がレイナーレに迫る。でも、

 

「させるか!!」

 

「レイナーレ、一旦退いて!」

 

 私とゼノヴィアが間一髪剣を止めた。

 

「は、はい!!」

 

 今度はレイナーレも言う事を聞いて後退する。私達もそれに合わせて後退した。

 

「ごめんなさいイリナさん、ゼノヴィアさん。私・・・・」

 

 レイナーレが悔しそうに唇を噛む。死んだ仲間を揶揄われて腹が立つのは良く分かる。でも、

 

「腹が立つのは分かるが冷静になれ。死んだ仲間達の分まで生きるんだろう?」

 

「そうよ。それに仲間なら私達がいるわ!」

 

 私とゼノヴィアの言葉にレイナーレは驚いたように顔を上げる。

 

「!・・・・・・ゼノヴィアさん、イリナさん・・・・私を仲間と呼んでくれるの?」

 

「勿論よ! だって危険を顧みず、皆を助ける為に一緒に来てくれたじゃない!」

 

「さっきは危ない所を助けて貰ったからな。他の皆は分からないが、私はもうお前を仲間だと認めてるぞ」

 

「!!・・・・・・ありがとう、二人共・・・・」

 

 レイナーレの瞳に涙が滲む。彼女がイッセー君達にした事を思えば、皆が彼女を良く思えないのも分かる。でも赦されない罪などない。神の愛は全ての人に等しく与えられるのだから・・・・

 

「プヒャヒャヒャッ!! おいおい、天使と悪魔と堕天使が仲良く友情ゴッコかよ!? ヤメテくれよ~、俺ちゃん感動して笑っちゃうZe! ヒャハハハッッ!!」

 

 黙ってこめかみに青筋を立て、拳を震わせるレイナーレに思わず声をかける。

 

「お、落ち着いて、レイナーレ」

 

「分かってます! 全く、味方の時からムカつく奴だったけど、敵にしたら余計にムカつくわね!」

 

「ああ、うん・・・・分かる気がするわ」

 

 癇癪を起こすレイナーレに思わず苦笑が漏れる。同じように苦笑しながらゼノヴィアがレイナーレに訊ねる。

 

「レイナーレ、どうやらお前の光の剣は通じないようだ。他に何が出来る?」

 

 “光の剣”とは光を物質化する天使や堕天使の標準武器であるが、その出力に大きな差がある。アザゼル先生ら幹部クラスになるとそれほどでもないが、階級が下になるにつれその差は顕著になる。

 私の階級が下級中位の大天使(アークエンジェル)、レイナーレの元の階級が下級上位の権天使(アルケー)でありながら私の方が光力が強いのは、種族の差だけじゃなく、ミカエル様の加護を受けた御使いであるのも理由だろう。

 

「ええと、剣が駄目なら地属性の魔術が得意です」

 

「地属性か・・・・よし、攻撃は私達がやる。レイナーレは魔術でのサポートを頼む」

 

「分かりました」

 

「よし、行くぞイリナ!」

 

「ええ!」

 

 私達はフリードへと走り出した。あの巨体だ。スピードで翻弄してやる、と思った矢先、フリードはその巨体に身合わぬスピードで突進して来た。迅い! けど対応出来ない程じゃない!

 

「ヒャッハーーーーー!!」

 

 フリードは四本の手に持った剣を振り下ろす。

 

「チイッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 石造りの床を砕き、衝撃波が私達を襲う。私は翼を拡げると宙に飛んで回避した。

 

「ヒャハハ! デカいから動きが遅いとでも思った? 残ね~ん! 俺っちディオドラの騎士を二人共喰ってるから、あ、性的にじゃねーよ。そのまんまの意味だから。っちゅー訳でスピードが超上がってるんだわ!」

 

「・・・・・・は?」

 

 そのまんまの意味って、悪魔を捕食してその力を自分のものにしてるっていうの!? なんて酷い・・・・!

 

「ディオドラ! 貴様自分の眷属を売り渡したというのか!?」

 

 ゼノヴィアの詰問に、イッセー君に膝を砕かれ立ち上がれないディオドラが顔を引きつらせて答える。

 

「しょーがないだろ!? フリードが余りに無礼だからって騎士達(あいつら)が詰め寄ったら、あっさり斬られちゃったんだ!だったらせめてフリードの力になってくれなきゃ勿体ないじゃないか!」

 

「・・・・勿体ないだと!?」

 

「フリード・・・・畜生に堕ちたわね」

 

「なんて惨い・・・・せめて安らかに」

 

 私は名も知らない騎士達に祈りを捧げる。

 フリードは勿論、ディオドラの行いは外道の所業。ミカエル様の御使いとして許す訳にはいかない!

 今、私の胸に邪悪に対する正義の怒りが熱く燃え上がる───!

 

 

 

 

 

 

「ミカエル様、御使い(ブレイブ・セイント)(エース)、紫藤イリナが乞い願います。汝の加護を我にお与え下さい───!」

 

 イリナが祈りの言葉──聖句を唱えると、彼女の身体に変化が起きた。

 全身が炎のオーラに包まれ、髪と瞳の色が紅蓮に変わる。翼にも炎が宿り、ツインテールが解け、長い炎髪が宙に靡く。凄まじい聖の波動に私の肌までチリチリする。

 

「綺麗・・・・・・」

 

「・・・イリナ、その姿は・・・・?」

 

 驚くゼノヴィア()達にイリナは誇らしげに答える。

 

「これがミカエル様の(エース)である私の戦闘形態(コンバットフォーム)よ!」 

 

 ミカエル様達四大熾天使(セラフ)は其々が四大元素を司っている。ガブリエル様が水、ラファエル様が風、ウリエル様が地というようにミカエル様は火を司る。

 イリナ達御使い(ブレイブ・セイント)は戦闘時、お仕えする熾天使から力を分け与えて貰えるらしく、この姿こそミカエル様の加護を得た御使いの証なのだそうだ。

 

「背信者フリード・セルゼン! ミカエル様の名において、お前を断罪します!!」

 

「しゃらくせぇーーーーッッ!!」

 

 そう宣言するイリナにフリードが剣を振り下ろす。イリナは避けようともせず、下段から光の剣を振り上げた。

 

 ジュウッッ!! 

 

 肉が焼けるような音を発して、イリナの剣がフリードの二本の左腕を肘の辺りから灼き斬った。

 

「グギャアアアアッッ!! バカな!? 俺の腕がそんな細い剣で───!?」

 

「戦闘形態の私の剣は“炎光(えんこう)の剣”。只の光の剣とは浄化能力が段違いなのよ」

 

 ミカエル様の炎は邪悪なものを焼き尽くす浄化の炎。悪魔や魔獣、魔物に対しては聖剣以上の浄化能力がある。今のフリードに効果は抜群だ。

 フリードは今、イリナに気を取られている。チャンスだ!

 

「チイイッ! 転生天使如きが調子に乗りやがってーーーー!!」

 

 フリードは残る二本の右腕の剣を振るおうとするが、

 

「させるか!!」 

 

「何イ!? チッ、目がぁっ!?」

 

 レイナーレが地属性魔術『目隠し砂(ブラインドサンド)』でフリードの目を潰す。今だ!

 

「グギャアアアアーーーーッッ!!」

 

 その隙に接近した私がデュランダルを一閃、右腕を二本共斬り落とした。両腕を失い倒れるフリードにディオドラが喚き立てる。

 

「何やってんだフリード!!僕の騎士を喰って強くなった筈だろう!? ならさっさと立ち上がって僕を守れよ!!」

 

 その声にフリードがディオドラの方を向く。その時私は竜頭に変化して表情の分からない筈のフリードが嗤ったのをはっきりと感じた。 

 

「いい養分(モン)見~~っけ☆」

 

「───へ?」

 

 突然フリードの舌が伸びてディオドラに巻き付いたと思うと、あっという間にフリードの口に収まった。そして───

 

「ちょっと待、お前まさか───!?」

 

「いただきま~す☆」

 

 

 バリッ、ボリッ、ボリッ、ボリッ、ムグムグムグ・・・・・・・・ゴクン!

 

 

 この世のものとは思えない絶叫が響く中、フリードがかつてディオドラだったモノ(・・・・・)を噛み砕く音が聞こえる。

 目の前で繰り広げられる悪夢のような光景に私達は言葉を失っていた。

 フリードの口元は血に塗れ、あまりの惨状に吐き気が込み上げて来る。

 ディオドラは自らの眷属をフリードに喰わせた。因果応報とは言え、あまりにも惨い最後だ。

 

「お? キタキタキタ~~~~!!」

 

 ディオドラを捕食したフリードの身体が再生していく。失った両腕が生え、聖なる波動に焼かれた傷が消えていった。それだけじゃない。フリードの身体から凄まじいオーラが吹き上がる。ディオドラの魔力まで物にしたというのか!?

 

(捕食する事でその能力を得、尚且つあんな猛スピードで再生するとは・・・・バルパー・ガリレイめ、なんて化け物を造ったんだ!)

 

「ゼノヴィア、レイナーレ、あれにこれ以上力を付けさせる訳にはいかないわ」  

 

「ええ、分かってます」

 

「ああ、奴はここで葬るぞ!!」

 

 私はデュランダルを手に走り出す。

 

「ケヒャヒャヒャヒャッ!! イっちまいな!」  

 

 フリードは魔力弾を放ち、私達を近付けまいとする。レイナーレが『石の壁(ストーンウォール)』で防いでくれる間に弾幕を掻い潜り近付こうとするが数が多い。徐々『石の壁』が破壊され、被弾が増える。

 イリナの方を見ると浄化の炎で相殺してはいるが、弾幕の激しさにやはり進めないようだ。

 その時、私達の視線が一瞬だけ交差する。その瞬間、私は切り札を切る決意をした。

 

「聖剣デュランダルよ! その力を解放せよ! ───デュランダル・バーストッ!!」

 

 極大まで高まった聖なる波動が無数の魔力弾を吹き飛ばした。その一瞬の隙を突いてイリナが接近し、炎光の剣を叩き付ける。だが、

 

「甘えーーーッッ!!」

 

 それを読んでいたのか、フリードは魔力障壁を多重に展開し、イリナの攻撃を防いだ。

 確かにフリードは性格こそ最悪だが天才的な戦闘センスの持ち主だ。これ位はするだろう。読めなかったのはイリナの、御使いの力だった。

  

「ミカエル様、───我に力を!!

 

 イリナが聖句を唱えると、炎光の剣の炎が障壁全体に燃え広がる。

 

「何いっ!?」

 

 炎に焼かれた障壁はイリナの斬撃に易々と砕け散った。

 

「やっべ!?」

 

 障壁を砕かれ、退こうとしたフリードの足元に無数の石の槍が出現し、フリードを貫いた。レイナーレの地属性魔術『石の槍(ストーンランス)』だ。

 

「逃がさないわよ、フリード!!」

 

「ッテメエ、この死に損ないがぁーーーー!!」

 

 フリードが悪態が吐くがもう遅い。

 

「フリード・セルゼン! ミカエル様の名の元に汚れた魂を浄化します!!」

 

 竜頭と化したフリードの眉間にイリナが炎光の剣を突き立てた。

 

 「───浄火!!」

 

 フリードの体内に浄化の炎が吹き荒れる。その間に私も近付き、フリードの心臓にデュランダルを突き立てた。

 

「喰らえーーーーッ!!」

 

「ギャアアアアーーーーー!!!」

 

 浄化の炎と聖なる波動。二つの強力な力に焼かれながら、断末魔の絶叫を上げて、フリードは消滅した。

 

 イリナがコンビを組んでいた時のように片手を上げる。私もそれに応えようと片手を上げつつ、キョトンとしているレイナーレに声をかけた。

 

「ほら、レイナーレ、お前も」

 

「早く早く!」

 

「え? わ、私も・・・・?」

 

 戸惑っているレイナーレの片手をイリナが強引に上げさせて、私達三人はハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 

「アーシア!!」

 

「イッセーさん、私・・・・・・」

 

 アーシアが大粒の涙を溢れさせる。引き裂かれたウエディングドレスが痛々しい。イッセー()はマスク部分を収納して素顔を晒してアーシアを抱きしめた。

 

「もう大丈夫。俺が側にいるから・・・・」

 

「イッセーさん・・・・」

 

 アーシアがおずおずと俺の腰に手を回した。鎖に繋がれたままの手首を見やる。こんなモン引きちぎってやる! そう思って力を入れたが、

 

「! 外れねえ!?」

 

 何だこの鎖は!? 赤龍帝の力でも外せないなんて!? こうなったら───!

 

「お待ちなさい」

 

 力を倍加して鎖を壊そうとした俺をアルトリアさんが止める。

 

「この鎖におかしな魔力が流れています。下手に手を出せば彼女を傷付けてしまうかもしれません」

 

 そんな!?・・・・くそ、どうすりゃいいんだ。

 

「その女が正解だぞ。赤龍帝」

 

 俺達の前にクルゼレイ・アスモデウスが舞い降りた。

 

「どういう意味だよ?」

 

 俺が訊ねるとクルゼレイはニヤリとイヤらしく嗤う。

 

「その鎖が繋がっている玉座、それは地下の結界発生装置と繋がっている」

 

 あれの地下に結界の発生装置が!? でも何でそんな事を教えるんだ?

 

「そう、それを壊せばこの結界は消える。だがその娘は死ぬ事になるぞ」

 

「! どういう事だよ!?」

 

「装置を壊せば結界を発生させていた膨大なエネルギーが逆流する。その娘なぞ一瞬で黒焦げだろうよ」

 

「な!?───だったら鎖を切れば・・・・」

 

「鎖を切る、枷を壊すといった行為をすれば装置ごとこの神殿が爆破される。その娘を助けたいなら枷の鍵を開ければいい」

 

「鍵はどこだ!?」

 

「さて、ディオドラが持っていたが・・・・」

 

 そう言われて俺は咄嗟にディオドラを見やる。だが、

 

 

 

 バリッ、ボリッ、ボリッ、ボリッ、ムグムグムグ・・・・・・・・ゴクン!

 

 

 

 ・・・・嘘だろ!? ディオドラの奴、フリードに喰われちまった! あれじゃあ鍵なんてもう・・・・

 

「クク、クハハハハーーーッ!! まさか援軍に呼んだ奴に喰われるとは・・・・偽りの魔王の血族に相応しい最後だな!」

 

 フリードに喰われたディオドラをクルゼレイが嗤う。この野郎、結局何しに来やがったんだ!?

 

「貴方はその喰われた男を助けに来たのでしょう? 対象が死んだ今、争う必要もないのでは?」

 

 アルトリアさんが訊ねるとクルゼレイは小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

 

「フン、真の魔王たる俺に意見するとは差しでがましいぞ、女!・・・・だがディオドラのような下劣な成り上がりを連れて行く必要が失くなって、俺は今機嫌がいい。いいだろう、特別に答えてやる。確かに貴様の言う通りだが、それではあまりにもつまらん。であるから偽りの魔王の妹、リアス・グレモリーを連れ去る事にした」

 

 ! 部長を連れ去るだと!?

 

「あれをズタボロになるまで犯し、死体を送ってやればサーゼクスめ、魔王になった事をさぞかし後悔するであろう」 

 

 心底名案だというように、自慢気にクルゼレイは話す。・・・・コイツら旧魔王派って連中はやっぱりイカレてやがる。こんな酷い事を嬉々として話す奴らを誰が支持するってんだ。

 コイツをぶっ飛ばす為、立ち上がろうとしたその時、俺の肩に手を置いて、アルトリアさんが前に出た。

 

「リアス・グレモリーは我が王の主。彼女を害そうというなら捨て置く訳にはいきません」

 

「フン、どこの馬の骨とも分からぬ奴が吠えよるわ。よかろう、真の魔王の力、見せてやるわ!」

 

 クルゼレイの身体から強大なオーラが吹き上がる。ディオドラ何かより遥かに強大な魔力がクルゼレイの右手に集中する。

 

「クハハハッ! 喰ら───」

 

 ザンッッ!!

 

 台詞の途中でクルゼレイの右手が宙に舞った。

 

「は? え?・・・・・・ッッギャアアアアーーーーッッ!! お、俺の腕があああッッ!!」

 

 大量の血を噴き出し、クルゼレイが絶叫する。クルゼレイの側には見えない剣を構えるアルトリアさんがいた。

 状況を見れば攻撃される前にアルトリアさんがクルゼレイの腕を斬り飛ばしたのだろうが、

 

(速え・・・・全然見えなかった・・・・)

 

 眷属一のスピードを誇る祐美すら凌駕する神速の斬撃。禁手に至り、強くなった気でいたけどまだまだだ。上には上がいる。

 

「うぐ・・・・貴様ぁ───!」

 

「地獄でディオドラが待っています。下劣な者同士仲良くやりなさい」

 

「ま、待───!!」

 

 ザンッッ!!

 

 今度はクルゼレイの首が宙に舞った。

 旧魔王派のクルゼレイ・アスモデウスはこうして呆気ない最後を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 魔獣退治がようやく片付いた。

 見るとバルパーは祐美が、フリードはゼノヴィアとイリナとレイナーレが、クルゼレイはアルトリアが片付けたようだ。

 後はアーシアを救出して脱出するだけなんだが、イッセー達の様子がおかしい。一輝()達はアーシアの元へと集結した。

 

「どうしたのイッセー?」

 

「部長、それが・・・・」

 

 イッセーの話によると、アーシアを鎖で繋いでいる玉座の地下に結界発生装置があり、これを破壊するとエネルギーの逆流でアーシアが死ぬ。かと言って鎖を切れば装置ごと神殿が爆発し、全員が死ぬ事になる。助かる唯一の方法はディオドラの持つ鍵で枷を開ける事だったのだが、ディオドラは既にフリードに喰われ、鍵も失われた。

 

「そんな・・・・どうすればいいの!?」

 

 リアスの叫びに誰も答えられなかった。

 この状況に於いて、王として正しい行動はひとつ。だがその判断をリアスは下せないだろう。その時、

 

「・・・・皆さん。私を置いて、この神殿から離れて下さい」

 

 アーシアが決意を込めた眼差しで俺達を見つめていた。

 

「何を言ってるの、アーシア!?」

 

 リアスが堪らず口を開く。

 

「いいんです。部長さんだってそうするのが最善だって分かってるんでしょう? 私一人の命で皆が助かるのなら、私は喜んで犠牲になります」

 

 アーシアの覚悟に俺達は言葉を失う。

 

「そんな!・・・・俺は嫌だ! 折角アーシアと想いが通じたって言うのに、こんなの認められるか! アーシアが残るってんなら俺も残る!!」

 

 血を吐くように言葉を搾り出すイッセーに、アーシアは儚げに微笑んで、そっと手を伸ばす。

 

「駄目ですよイッセーさん。貴方の、赤龍帝の力は部長さんにとって必ず必要になります。グレモリー眷属は貴方を失う訳には行かないんです。だから残っては駄目」

 

「そんなのアーシアだって同じじゃないか!!───んむ!?」

 

 反論するイッセーの口をアーシアはキスで塞ぐ。暫くしてアーシアがゆっくりと唇を離した。

 

「ずっと側にいるって約束したばかりなのに、破ってしまってごめんなさい。でも許して。皆を助けるにはこれしか方法がないの」

 

「───アーシア!!」

 

 イッセーがアーシアを抱きしめた。皆も悲痛な表情で二人を見つめている。いつしか俺も拳を握り締めていた。

 

「一輝先輩! 何か手はないんですか!? 俺に出来る事なら何でもします!だから、だから───!」

 

 イッセーの血を吐くような言葉に俺の心が揺れる。一応策はある。だがひとつでもタイミングがズレたら全員が死ぬ事になる危険な策だ。そんな危険な賭けに皆を付き合わせる訳にはいかない。

 そう思って俺が黙っていると、左手に温もりを感じた。

 

「一輝、何か策があるのね? 教えてちょうだい」

 

 温もりの主、リアスが訊ねる。

 

「リアス・・・・だがこの策は危険だ。失敗すれば全員が死ぬ事になるんだぞ?」

 

 そう言った俺の右手に違う温もりが重なる。

 

「いいじゃありませんか。貴方と死ねるなら私は本望ですわ」

 

「朱乃・・・・・・」

 

 温もりの主、朱乃が微笑みを浮かべる。

 

「私は先輩を信じてます。どんな低い確率だって必ず成功させるって」

 

「そうだな。一輝センパイならきっと全員助けられるさ!」

 

「祐美、ゼノヴィア・・・・・・」

 

「全くこのチームは・・・・でも嫌だと思えなくなってるって事は私も染まって来たのかにゃん?」

 

「(クスッ) いい事だと思いますよ、姉様」

 

「黒歌、白音・・・・・・」

 

「そうね! こうなったら一蓮托生よ! 頑張って、一兄(かずにい)!」

 

「私の命は既に預けたつもりです。どうか一輝様の心のままに・・・・」

 

「イリナ、レイナーレ・・・・」

 

 皆の想いが伝わって来る。俺は・・・・

 

一輝(マスター)、私は貴方の剣。貴方の望みを叶える為私の力はあります。ですからどうか躊躇わないで」 

 

「アルトリア・・・・・・」

 

 ここまで言われては後には退けない。俺は覚悟を決めた。

 

「分かった。皆の力を貸してくれ」

 

「「「「「はいっ!!!」」」」」

 

 皆の返事を頼もしく思いながら、俺は抱き合う二人に声をかけた。

 

「待ってろアーシア、必ず助ける。イッセー、言ったからにはお前にも働いて貰うぞ。覚悟しろよ?」

 

「「・・・・・・はいっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 一輝発案によるアーシア救出&脱出作戦が始まろうとしている。

 一輝の作戦は三段階に分かれていた。

 第一段階はアルトリアによる結界発生装置の破壊並びにイッセーによるアーシア救出。これはちょっとでもタイミングがズレたらアウトだ。作戦を担当する二人と指示を出す一輝に全てが委ねられる。

 第二段階は防御障壁の展開。担当するのは私と朱乃、黒歌のウイザードタイプの三人。爆発の衝撃から皆を守り、脱出するまで維持しなくちゃいけないので、結構大変だ。

 第三段階は神殿からの脱出。これは一輝が担当する。爆発の勢いを利用し、重力制御を用いて脱出を試みるのだ。  

 不安がないと言えば嘘になるが、既に賽は投げられた。後は仲間達を信じて全力を尽くすしかない。

 

「どうだイッセー。行けそうか?」

 

「イメージは出来ました。絶対に成功させます!」

 

 イッセーはアーシアの身体に触れて待機する。アーシアの救出はイッセーの手にかかっている。緊張しながらもしっかり集中しているようだ。

 

「アルトリア、宝具の使用を許可する。結界発生装置を破壊しろ」

 

「良いのですか?」

 

「どの道皆には教えるつもりだったからな。少し予定が早まるだけさ」

 

「分かりました」

 

 一輝との会話を終えたアルトリアが見えない剣を構える。すると剣の周りの大気が渦を巻き、凄まじい風が吹き荒れる。

 あまりの風の強さに私は思わず目を閉じる。やがて風が止み、目を開けると、そこには黄金の輝きがあった。

 

「黄金の、聖剣・・・・・・」 

 

 アルトリアが手にする目映い光輝を発する黄金の剣。その輝き、そのオーラ、紛う事なき聖剣だ。でも今まで見て来た聖剣とは格が違う。ゼノヴィアのデュランダルすら霞む圧倒的な“格”がその聖剣にはあった。

 

(何なのあの聖剣・・・・・ゼノヴィアのデュランダルだって高位の聖剣なのに、それ以上って・・・・そんなのひとつしか知らないわよ!?)

 

 そう、それは史上最も有名な聖剣。数ある聖剣の頂点に立ち、聖剣の代名詞と云われるもの。そしてその聖剣の持ち主の名も“伝説の王”として伝わっている。

 

 アルトリアが黄金の聖剣を頭上に掲げ目を閉じる。すると周囲から金色の粒子が聖剣に集まって来た。

 

「光が・・・・・・」

 

 集まった光が聖剣を更に強く、眩しく輝かせる。

 

 

「・・・・輝けるかの剣こそは、過去、現在、未来に通じる、戦場に散っていく全ての(つわもの)達の、今際の際に抱く、悲しくも尊き夢───」

 

 

 祐美の声が流れる。彼女が口ずさむのはとある聖剣の持ち主である王を讃える詩。私も読んだ事がある有名なものだ。

 『聖剣計画』の被験者である祐美も聞いた事があるのだろう。では何故今その詩を吟うのか。私と同じく、彼女もまたアルトリアの正体を察したのだろう。その声には畏敬の念が混ざっていた。

 

 

「その意志を誇りと掲げ、その信義を貫けと正し、今、常勝の王は高らかに、手に取る奇跡の真名を謳う。其は───」

 

 

 アルトリアの聖剣は集った光を吸収し、極限にまで光輝く。

 準備が出来たのかアルトリアは目を開き、左足を一歩踏み出し、そして───

 

 

約束された、(エクス、)勝利の剣(カリバー)ーーーーッ!!」

 

 

 上段から振り下ろされた剣から圧倒的な光が放たれ、玉座ごとその地下にある結界発生装置を破壊する。

 

「やれ、イッセー!」

 

「アーシアごめん! 洋服崩壊(ドレスブレイク)!!』

 

 それと同時にイッセーがアーシアに『洋服崩壊』をかける。

 技の効果で元々引き裂かれていたアーシアのウエディングドレスがバラバラに弾け飛んだ──手足を拘束していた枷と共に。

 

 イッセーが裸のアーシアを抱えて私達の元に駆け込む。良かった、アーシアは無事だ! ここから先は私達の番。私は朱乃、黒歌と共に三人で直径三m位の球形の防御障壁を三重に展開する。障壁を展開すると同時に爆発が起きた。

 

(くっ、思ったより爆発の威力が強い───!?)

 

 爆発に飲まれ吹き飛ばされる中、予想以上の威力にこのままじゃ障壁が維持出来なくなる、と焦りを感じたその時、

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!!』

 

ブーステッド・ギア・ギフト!!

 

『Transfer!!』

 

 イッセーが私達に力を譲渡する。凄まじい(ドラゴン)の力が流れ込み、障壁の強度が増した。これなら───!

 

「行くぞ皆! 重力制御(グラビティコントロール)、出力最大!!

 

 作戦の最終段階、爆発の勢いを利用して、一輝(ガイバー)の重力制御で一気に地上まで脱出する!

 

 

 

 

 

 

 ドガアアァァァンッッ!!!

 

 後方で凄まじい爆発が起こり、キノコ雲が立ち昇る。

 イッセー()達は球形の障壁に包まれ、宙に浮かびながらその光景を見ていた。

 

「降ろすぞ」

 

 一輝先輩の重力制御でゆっくりと地上に近付いて行く。地上に降りると同時に部長達が障壁を解除した。

 

「助かった・・・・・・?」

 

 イリナのその声で皆の表情にようやく安堵が戻った。

 神殿の外は霧の結界が消え、遠くまで一望出来る。これなら先生達がすぐ救援に来てくれるだろう。

 ホッとした俺は抱きしめていたアーシアに声をかける。

 

「助かったぞ、アーシア。あっ・・・・・・」

 

「あ、あんまり見ちゃイヤです・・・・」

 

 そうだった! 俺の『洋服崩壊』を受けてアーシアは今、全裸(すっぽんぽん)だった!

 

 好きな娘の裸が目の前にあるのだ。イヤだと言われても目が吸い寄せられる! 小振りだが形のいい胸、細い腰、プリップリのお尻をお宝映像として脳内に保管していく。

 うわぁ~、この娘俺の事が好きなんだよな!? だ、だったら少し位触ってもいいよな、な!!

 

「いい加減にしなさい!」

 

 突然部長に頭を叩かれた。何故に!?

 

「イッセー、貴方今性犯罪者のような顔をしてるわよ? 少しは落ち着きなさい!」

 

 な!? まさかそんな!? でも朱乃さんがそっと差し出した手鏡に映ったのは鼻血と涎を垂らし、目をギラギラと充血させた性犯罪者の顔だった。こ、これは言い訳出来ん! この隙にアーシアはアルトリアさんに黄色いフード付きのコートを着せて貰っていた。

 

「お前は・・・・何で折角上がった評価を自分で下げるんだよ!」

 

 殖装を解いた一輝先輩にも怒られた。うぅ、俺って・・・・

 

「・・・・だがまあ、『禁手』にも至った事だし、アーシアも取り戻せた。良くやったな、イッセー」

 

 先輩が鎧の胸を軽く叩いた。あれ? もしかして今、先輩に褒められた!? 滅多にない出来事に喜びが溢れて来る!

 

「はいっ!!」

 

 俺は喜びのままに声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 イッセーさんが一輝さんに褒められて喜んでいます。

 一輝さんはイッセーさんにとって憧れであり目標、その人から褒められて嬉しくない訳ありません。そんな時、イッセーさんの鎧が解除され、そのままフラッとよろけました。まさか怪我を!?

 

「イッセーさん!?」

 

 慌てて近寄った私に、イッセーさんは大丈夫だと頷いて見せます。

 

「大丈夫。『禁手』って凄く疲れるんだ。それでフラついただけだよ」

 

 どうやら疲労でよろけただけみたいです。良かった。

 安堵する私をイッセーさんはそっと抱きしめて来ました。

 

「い、イッセーさん!?」

 

 突然の事に動揺する私にイッセーさんがそっと語りかけます。

 

「帰ろうアーシア。父さんと母さんが待ってる、俺達の(うち)に・・・・一緒に帰ろう」

 

 不意に涙が滲んで来ます。お父様とお母様。両親を知らない私を本当の娘のように可愛がって下さる大切な人達。もう会えないかと覚悟もしました。早く会いたいです・・・・

 

「ええ、ええ! 帰りましょうイッセーさん。お父様とお母様が待ってるあの、私達のおうちに───」

 

 

 

 そう言った私の視界が、突然赤く染まった。

 

 

 

 

 

 

 




フリードとバルパーが再登場。
でもやられ役なのであっさり退場しました。

イリナの戦闘形態は「灼眼のシャナ」をモデルにしています。御使いってもっと強くてもいいのではと思ってこうしました。

レイナーレは地魔術使いとなりました。
レイヴェルが火と風、ソーナが水、朱乃が雷なので、残った地でという単純な理由です。

ディオドラの最後は原作よりも悲惨になりました。合掌。

アルトリアのエクスカリバー。
「フェイトゼロ」のアニメでも屈指の名シーンを再現したくて書きました。

本日は連続投稿しています。
続けて第32話をご覧下さい。


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第32話 奇跡の光



連続投稿の最後になります。
まだ読んでない方は第29、30、31話を先にご覧下さい。


 

 

 突然アーシア()の視界が赤く染まった。

 

 私を庇うように広げていた腕が力なく落ちる。

 

 違う。庇うようにじゃない。実際庇われ、守って貰ったんだ。

 

 彼女の流した血が私の視界を赤に染める。

 

 いつも自信に満ち溢れ、美しかった彼女。そんな彼女は自分に自信が持てない私にとって、密かな憧れだった。

 

 生きていてくれて、再会出来て嬉しかった。

 

 でも再会した彼女はかつての彼女と違って自信を失っていた。まるで初めて会った頃の私のように───

 

 色々誤解もした。少しも恨んでないと言えば嘘になる。けど私達は再会した。これから新しい関係を築けたら、そう思っていたというのに───

 

 何故貴女の身体が冷たくなって行くのを、私は感じてるの───!?

 

 

「大丈、夫・・・・? 無事、よね、アーシ、ア・・・・・・?」

 

 

「ッッ、イヤああああーーーーーっ!? レイナーレ様ぁーーーーーっっ!!!」

 

 

 自分が出したとは思えない絶叫が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 一体何が起きたのかゼノヴィア()には理解出来なかった。

 イッセーとアーシアが無事を喜び合う姿をぼんやりと眺めていたら、突然レイナーレが二人に覆い被さった。と思ったら上空から放たれた光がレイナーレの身体を貫いたのだ。

 光を受けたレイナーレの傷は酷いものだった。左脇から腰までがごっそりと抉られ、大量の血が流れ出ていた。

 あれは致命傷だ。辛うじて生きてはいるが時間の問題だろう。折角打ち解けて来た所だったというのに・・・・

 とは言え敵がまだいるなら戦わねばならない。アーシアの絶叫が響く中、私達は空から降りて来る男を睨み付けた。

 

「フム、赤龍帝と治癒の聖女を一緒に消すチャンスだったというのに、カラスに邪魔されるとは・・・・いやはや運のいい奴らだ」

 

 軽鎧を身に着け、マントを羽織った悪魔の男が言った。何だ、この底冷えのするような冷たいオーラは!?

 

「誰なの?」

 

「お初に御目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ」

 

 リアス部長が訊ねると、男──シャルバが名乗りを上げる。先程のクルゼレイ・アスモデウスと慇懃無礼な態度がそっくりだ。旧魔王派にはこんな奴ばっかりか!?

 

「お前が今回の首謀者なのね?」

 

「いかにも。・・・・ディオドラやクルゼレイの姿が見えんな。もしかしてやられたのか?」

 

「そうよ。二人共死んだわ」

 

「やれやれ。所詮は偽りの魔王の血族、私が力を貸してやったというのにこのザマとはな・・・・クルゼレイまでやられるとは、奴も魔王の器ではなかったようだな」

 

「・・・・仲間が死んだっていうのに随分冷淡ね?」

 

「フ、旧魔王派と言ってもカテレアやクルゼレイは個人の感情を優先してばかりで、所詮魔王の器ではなかった。力こそあれ人間の血が混ざっているヴァーリにも資格はない。結局私だけなのだよ。真に魔王と呼ばれるに相応しい者は! 四大魔王? 何故魔王が四人もいる? 魔王とは真に優れた悪魔、そう、私だけでいいのだ!!」

 

 シャルバの身体から凄まじいオーラが立ち昇る。途轍もなく強大で冷たいオーラに、身体が凍てつくような錯覚を覚える。大口を叩くだけあって、恐るべき力だ。だが、

 

「くだらんご託は終わったか?」

 

 明らかに怒っている、殺気混じりの一輝センパイの声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 イッセーとアーシアを庇って重傷を負ったレイナーレ。いや、重傷どころじゃない。これはもう致命傷だ。今もアーシアが治療をしているが、おそらく無駄だろう。

 一輝()は馬鹿だ! アーシアが狙われる(原作)のを知っていた筈なのに、気を抜いて危うく原作通りになる所だった。

 それを救ってくれたのは、原作ではこの場にいない筈のレイナーレ。でも代わりに彼女が致命傷を負ってしまった。

 気を抜かず、警戒していれば防げた筈なのに、悔しさと同時に自分に対する怒りが込み上げて来る!

 

「くだらんご託は終わったか?」

 

 気付いたら声を上げていた。くだらないお喋りを続けるアイツが鬱陶しくて仕方ない!

 

「すまんレイナーレ・・・・見ていてくれ。アイツは必ずブッ潰すから」

 

「・・・・・・」

 

 レイナーレはもう返事も出来ない。でも微かに口角が上がった気がした。

 

「アーシア、後は頼む」

 

「はいっ!!」

 

 必死に治療を続けるアーシアにレイナーレを任せ、俺は宙に浮かぶシャルバを睨み付けた。

 

「何か言ったかね?」

 

 ご高説を邪魔されたシャルバが不快そうに睨む。

 

「お前の主張なんてどーでもいい。そんなに不満ならサーゼクス様なりセラフォルー様に直接喧嘩を売ればいいだろ?」

 

「それではつまらん。私は魔王を騙った奴らに絶望を与えたいのだよ。その為に奴らの妹を殺す。さすれば──「嘘だな」──何っ?」

 

「お前本当はサーゼクス様やセラフォルー様には敵わないって分かってるんだろ? だから直接挑もうとせず、妹のリアスにちょっかいを出してるんだよな? 全く、真の魔王が聞いて呆れるぜ」

 

 俺が言い切ると案の定、シャルバはキレた。

 

「貴様! この私を愚弄するか!?」

 

 だがキレてるのはこっちも一緒だ!

 

「そのくだらん企みで俺の仲間を傷付けた貴様を絶対に許さん!──ガイバーーーーー!!

 

 俺は殖装すると続けて思念波を送る。背後に『サナギ』が出現すると同時に俺は叫ぶ。

 

「ガイバーーーー【巨人殖装(ギガンティック)】!!」

 

 『サナギ』が展開し、ガイバー()の身体を覆って行く。俺の姿が巨きく力強い姿に。紅の巨人、【ガイバー・ギガンティック】に変わる。

 

「真の魔王に楯突いた事を後悔するがいい!!」

 

「やってみろ!!」

 

 俺とシャルバは空中で激突した。

 

 

 

 

 

 

「どうして!? どうして治ってくれないの!?」

 

 【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】を持ってしても一向に塞がらない傷にアーシアさんが焦っている。そんなアーシアさんの手をレイナーレが掴んだ。

 

「レイナーレ様!?」

 

「・・・・・・・・」

 

 レイナーレはアーシアさんの手を掴むと、もういいとばかりに微かに首を振る。アーシアさんは愕然とした表情を浮かべると、力なく肩を落とした。

 イッセー君が慰めるようにアーシアさんの肩に手を置いた。

 イリナ()はレイナーレを見つめる。彼女とはようやく仲間になれたばかりなのに、残念でならない。そんな時、ふと気付いた。

 

「アーシアさん、レイナーレが何か言ってるわ」

 

 私の声にアーシアさんは顔を上げ、レイナーレの口元に耳を寄せる。

 

「・・・・アー、シア・・・・ッセー君と、幸せ、に・・・・・・」 

 

 微かに聞こえたアーシアさんの幸せを願う声。それを聞いた途端、アーシアさんは涙を溢れさせ、絶叫した。

 

「主よ! 力を貸して下さい! 彼女を救う力を、どうか私に! お願いします、どうか、どうか・・・・・・!」 

 

 だがアーシアさんの叫びに応えてくれる()はもういない。

 その時、打ちひしがれるアーシアさんの肩を祐美さんが掴んだ。

 

「アーシアさん、神はもういない。いくら祈ったって応えてくれないわ」

 

「おい祐美!」

 

 追い討ちをかけるような祐美さんにイッセー君が非難の声を上げる。だが、それに構わず祐美さんは言葉を続ける。

 

「だから今、彼女を救えるのは貴女しかいないの!『神器(セイクリッド・ギア)』を強くするのは貴女の想いよ。だからアーシア、貴女の想いの全てを『神器(セイクリッド・ギア)』に込めなさい! そうすればきっと応えてくれる。だから諦めないで!」

 

「私の想いの、全てを・・・・・・」

 

 祐美さんの激励にアーシアさんは暫し両手を見つめると、再び顔を上げた。そしてもう一度『神器(セイクリッド・ギア)』を発動する。涙はもう止まっていた。 

 

「絶対に助ける! だからお願い、私の想いに応えて、【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】───!!」

 

 

 

 

 

 

 

 私はこの日、奇跡とは神が起こすのではなく、人が起こすものだと初めて知った。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】のエメラルドグリーンの光が爆発的に広がった。

 

「「アーシア!!?」」

 

 その勢いにイッセー君と祐美さんがアーシアさんから手を離す。エメラルドグリーンの光はアーシアさんを中心に半径10m位で止まった。外側から見れば私達はエメラルドグリーンの光の柱の中にいるように見えただろう。

 この現象を起こしたのは間違いなくアーシアさんだ。私は中心にいるアーシアさんの姿を見て驚きを浮かべた。

 

「アーシアさん・・・・その姿は・・・・?」

 

 そう、黄色いコートを羽織っていたアーシアさんの姿が変わっていた。

 ノースリーブにミニスカート丈の白い鎧、額には(ドラゴン)を模した金のティアラ、白い盾を手にしたアーシアさん。その背中には白い天使の翼、頭上には天使の輪が輝き、瞳と髪の色がエメラルドグリーンに変わっていた。

 

「て、天使化した!?」

 

「いいえ、違うわ・・・・これはアーシアの『禁手(バランス・ブレイカー)』よ」

 

 驚く私を祐美さんが否定する。これがアーシアさんの禁手! 私はその効果に驚愕した。

 

「・・・・傷が、治っていく───!」

 

「傷だけじゃないわ。魔力も回復していく・・・・」

 

「身体に力が入る・・・・体力まで回復してるのか!?」

 

 リアスさんやイッセー君が驚きの声を上げる。どうやらこのエメラルドグリーンの光の中では傷が治り、失われていた魔力や体力までもが回復するらしい。しかも、

 

「見て! レイナーレが!?」

 

 致命傷を負っていたレイナーレの肉体が時間を巻き戻すように再生されていく! レイナーレの肉体は見る見る内に再生され、紙のように白くなっていた顔色に血色が戻る。虫の息だった呼吸が穏やかになり、やがてレイナーレはうっすらと目を開いた。

 今までのアーシアさんでは欠損部位の再生は出来なかったのに、桁違いの回復能力だ。

 

「・・・・・・アーシア? 私は・・・・?」

 

「良かった、レイナーレ様・・・・!」

 

 アーシアさんはレイナーレに慈愛に溢れた微笑みを向けた。レイナーレが気付いたからか、周りを覆っていたエメラルドグリーンの光が消え、それと同時にアーシアさんの禁手が解除された。

 

「これは・・・・貴女が治してくれたの?」

 

 レイナーレは身体のあちこちに触れて、致命傷だった傷が全快している事に驚いていた。

 その時、力を使い果たしたのか、アーシアさんが微笑みを浮かべたままレイナーレの胸に倒れた。

 

「「「「アーシア!!?」」」」

 

 慌てて皆が駆け寄り、黒歌さんが容態を診る。

 

「黒歌、アーシアは!?」

 

「・・・・大丈夫、気の流れは正常にゃ。力を使い果たして眠ってるだけにゃん。あれだけの力をいきなり行使したんだから無理もないにゃあ・・・・」

 

 そう聞いて私達は安堵の表情を浮かべる。良かった、アーシアさんもレイナーレも無事だ。

 

「完全回復能力・・・・それがアーシアの禁手(バランス・ブレイカー)

 

「凄まじい力ですわ。これからはアーシアちゃんのガードに一層気を付けないといけませんわね」

 

 リアスさん達の言う通りだ。これ程の力、どの勢力も欲しがるだろう。私の立場上ミカエル様に報告しなきゃいけないんだけど、どうしよう・・・・でも今は皆の無事を喜ぼう。

 後は一兄の勝利を待つのみ。私は轟音が轟く空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 突然エメラルドグリーンの光が消えた。

 皆の様子はセンサーで窺っていたので、皆無事なのは分かっている。一輝()は改めてシャルバに向き合った。

 

「くそっ! 何なんだ貴様は!?」

 

 さっきからあらゆる攻撃を仕掛けているシャルバだったが、ガイバー・ギガンティックのバリアーに阻まれ、俺には一切届かない。

 こいつにはただ勝つだけじゃ済まない。徹底的に恐怖を叩き込んでやる。

 

「もう終わりか?」

 

「馬鹿な!? 事前にガイバーの能力は調査していた。

“オーフィスの蛇”で前魔王クラスにまで引き上げられた私の力なら確実に倒せる筈なのに、調査していたガイバーのスペックを超越してるではないか!?」

 

 それは当然だ。今までガイバー・ギガンティックを見せたのはサーゼクス様と手合わせした時だけなんだから、こいつらが知る筈がない。

 

「リサーチ不足だったな。今度はこっちの番だ」

 

 俺はシャルバに向かって突撃する。

 

「フン、舐めるな!!」

 

 シャルバは何重もの防御障壁を張るが、その程度で止められると思うな!

 ガイバー・ギガンティックの出力(パワー)を全開にした【グラビティ・ナックル】がシャルバの防御障壁を障子紙を破るように容易く粉砕する。

 

「───グギャアアアアッ!?」

 

 【グラビティ・ナックル】をまともに喰らい、シャルバはもの凄い速度で地表に落下した。

 巨大なクレーターの中心で呻いているから、まだ生きてはいるようだ。咄嗟にガードしたとは言え、骨の砕ける感触がした。片腕、もしくは両腕が砕けているだろう。

 

「バカな・・・・この私の障壁をいとも容易く・・・・」 

 

 シャルバは信じられないように呟くが、俺からすれば当然だ。

 

「結局お前もカテレアと同じだ。“オーフィスの蛇”

でいくら魔力を引き上げたとしても、使いこなせなければ何の意味もない」

 

 プライドの高いこいつの事だ。力を使いこなす為の訓練などした事はないだろう。

 

「大方“オーフィスの蛇”を得て、強くなったと錯覚してこんな暴挙に及んだんだろうが、借り物の力なんて所詮こんな物だ。俺にも敵わないお前がサーゼクス様や他の魔王様に勝てるとでも思ってたのか? おめでたい奴だな、お前は」

 

「──ッ!? ギ、ギザマ゛~~! この私を愚弄するかーーーーッ!!」

 

 激昂したシャルバは折れた腕で構わず魔力弾を放とうとする。全く、往生際の悪い!

 

 ザンッ!!

 

「!? ウギャアアアアーーーーーッ!!」 

 

 魔力弾が放たれる前に【高周波ソード】でシャルバの両腕を斬り飛ばした。俺はそのままシャルバを踏み付けて動きを封じる。

 

「カテレアやクルゼレイが待ってるぞ。俺達を敵に回した事を後悔しながら地獄へ落ちろ」

 

「ヒ、ヒイィーーーーッ!?」

 

 シャルバの顔が恐怖に歪む。俺はトドメを刺そうとシャルバの眼前に左手を翳した。

 左手にパワーが集まり、【重圧砲(プレッシャーカノン)】を発射しようとしたその時───

 

『Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!!』  

 

 集まっていたパワーが掻き消された。こんな真似が出来る奴は一人しかいない。

 

「悪いわね、そいつはまだ死なせる訳にはいかないのよ」

 

 全く悪びれずに八枚の光翼を広げた女が空から降りて来た。

 

「復活したのか、ヴァーリ・・・・!」

 

 背後に二人の仲間を引き連れた白龍皇ヴァーリ・ルシファーは、端整な顔に楽しげな微笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「ヴァーリ! その化け物を倒せ!! いや、俺を連れて逃げろ! 早く、早くぅ!!」

 

「オメエは大人しくしてろぃ」

 

 シャルバが見苦しく喚いたが、美猴が如意棒で突いて気絶(静かに)させた。

 

「・・・・何のつもりだヴァーリ?」

 

「言ったでしょ? シャルバはまだ(・・)死なせる訳にはいかないって。こいつはこれでも旧魔王派のトップなのよ。貴方に殺されたって知らせたら、報復だ何だと騒ぎ出す連中もいるのよ。そーいうのって面倒くさいでしょ?」

 

 確かに面倒くさいな。直接俺達を狙うのならともかく、全く無関係な駒王学園の生徒とかに手を出されたら始末に負えない。

 

「そーいう連中に今のシャルバを見せれば嫌でも分かるでしょ? 旧魔王派は終わりだって」

 

「成る程な。殺して敵討ちの対象とするよりも、生かして俺達に敵対した者の末路を知らしめようって訳か」

 

 突然背後からアザゼルの声がした。どうやら救援に来てくれたようだ。

 

「アザゼル先生」

 

「よっ、お疲れさん一輝。それと、久し振りだな、ヴァーリ。・・・・いいだろう。シャルバの身柄はお前に預ける」

 

「いいんですか、先生?」

 

 俺は訝しげに訊ねる。

 

「悪いな一輝。この場は俺に預けてくれ。・・・・ヴァーリ、お前の本当の狙いは旧魔王派を潰して()を引っ張り出す事か?」

 

「・・・・・・」

 

 アザゼルにそう言われ、ヴァーリの表情が消えた。奴ってまさか・・・・!?

 

「一輝先輩! アザゼル先生!」

 

 その時、イッセーの声がしたので振り返ると、皆が駆け寄って来た。

 

 

 

 

 

 

 轟音が止んだ。一輝先輩とシャルバの戦いに決着が着いたようだ。先輩が負けるなんて1mmも思わないが、それでも心配だ。部長が走り出したのを見て、イッセー()達も後に続いた。

 意識を失っているアーシアを背負い走っていると、

 

《気を付けろ相棒、白いのが来ている》

 

 突然ドライグに警告された。ヴァーリが来ている。もう一波乱あるかもと気を引き締め、俺はスピードを上げた。

 

 

 

 

 現場には一輝先輩とヴァーリの他に気を失っているシャルバ、ヴァーリの仲間らしき中華風の鎧の男──確か美猴だったか──と、スーツを着た金髪眼鏡の美男子、それとアザゼル先生がいた。

 

「一輝先輩! アザゼル先生!」

 

 俺が声をかけると先輩達が振り返った。その時、ヴァーリと目が合った。

 

「ヴァーリ・・・・!」

 

「やあ、イッセー君。・・・・・・ふぅん、禁手に至ったのか・・・・また強くなったみたいだね。ライバルとして嬉しいよ」

 

 ヴァーリはそう言うが、こいつもまた強くなってやがる。

 禁手に至ったとは言え、俺はまだヴァーリに及んでない。見てろよ、必ず追い付いてやる!

 

「・・・・何でお前がここにいるんだよ?」

 

 そういった複雑な思いを隠して訊ねる。

 

「シャルバの回収と、そろそろかな? 見てなさいイッセー君」

 

 ヴァーリが視線を空に向ける。すると、

 

 

 バチッ! バチバチッ!!

 

 

 放電するような音を立て、空間に穴が開き、巨大なナニかが姿を現した。

 

「あれは───!?」

 

 それを見て誰もが唖然としていた。現れたのは真紅の(ドラゴン)。とてつもなくデカい! 100mを優に超えてやがる。そんなバカデカいドラゴンが悠々と空を泳いでいた。

 

 『新なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド。

 『黙示録』に記された『真龍』と称される偉大なドラゴンで、ヴァーリはいつかアレと戦い、勝利する事で『真なる白龍神皇』になるのが目標なのだそうだ。

 

「グレートレッド、久しい」

 

 突然俺のすぐ側に黒髪黒ワンピの幼女が現れた。

 誰かと思って目を丸くすると、ヴァーリが苦笑しつつ答えた。

 

「『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス。『禍の団(カオス・ブリゲート)』の現トップよ」

 

 ───! こ、この娘が敵の親玉!? 何しに来たんだ? まさか俺達と戦いに来たんじゃないよな!?

 

「我は、いつか必ず静寂を手にする」

 

 そう言ってオーフィスはグレートレッドに指鉄砲を撃つ真似をした。

 そのままグレートレッドが小さくなって行くのを見送っていると、不意にオーフィスから視線を感じた。

 

「・・・・・・・・」

 

 こ、怖っ! ナニこの娘、さっきからジーッと俺を見てるよ! ムッチャ怖え!!

 

「我は帰る」

 

「待て、オーフィス!!」

 

 やがてオーフィスはアザゼル先生の制止を無視して、来た時と同じく唐突に姿を消した。一体何だったんだ・・・・?

 

「私達もそろそろ行くわ」

 

 気付けば美猴が空間に裂け目を入れてシャルバを放り込んでいた。

 

「イッセー君、私を倒したい?」

 

 裂け目を潜る寸前でヴァーリが訊ねて来た。

 

「勿論だ。けど俺が超えたいのはお前だけじゃない。すぐ側に目標としてる人がいるんだよ」

 

「私も同感。私にも君以外に倒したい者がいるわ。私達は赤と白の宿命の対決よりもお互い優先する目標がある。そう考えると私達はおかしな赤龍帝と白龍皇なのでしょうね。でも───」

 

「ああ───いつか必ず決着を付けよう」

 

 俺はヴァーリに向かって拳を突き出した。それを見たヴァーリが楽しそうに微笑んだ。

 

「その時を楽しみにしてるわ。強くなりなさい、イッセー君」

 

 そう言い残してヴァーリは裂け目に身を投じた。

 

「木場祐美君、ゼノヴィア君。私はアーサー・ペンドラゴン。かのアーサー王の末裔で、聖王剣コールブランドの所有者です」

 

 スーツ姿の金髪眼鏡──アーサーがそう言うと、祐美やゼノヴィアだけでなく、部長を始めとした皆が顔色を変え、一斉にアルトリアさんを見た。

 

「ほう・・・・・・」 

 

 何故だろう、アルトリアさんは迫力のある笑顔を浮かべていた。

 

「同じ聖剣の使い手として戦える日を楽しみにしていますよ。では」

 

 アーサーはさわやかな笑顔を残して、空間の裂け目へと姿を消した。

 何故だろう、居たたまれない空気が俺達の間に流れていた。

 

「ま、まあ取り敢えず片は付いたわ。色々と報告しなきゃいけない事もあるし、帰るわよ、皆」

 

 部長が空気を換えるようにパンパンと手を叩く。そうだ、(うち)に帰ろう。

 

「今度こそ帰ろう、アーシア。俺達の家へ」

 

 俺は背負われたまま眠っているアーシアに話しかける。眠ったままのアーシアが微笑んだような気がした。

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、自室ではない豪華なベッドに寝かされていました。この部屋はグレモリー邸でアーシア()が使っていた部屋・・・・?

 

「私・・・・どうしたんでしたっけ・・・・?」

 

 確かレイナーレ様を治そうとして、それで・・・・

 

「あら、目が覚めたのですね、アーシアさん」

 

「グレイフィアさん・・・・」

 

 良く思い出せないでいると、扉が開いてグレイフィアさんが入って来ました。

 

「身体の具合はどうです? 何か違和感は?」

 

「はい。少し怠い気はしますけど、それ以外は問題ないです」

 

「そうですか。良かった」

 

「あの・・・・イッセーさんや他の皆さんは・・・・?」

 

 

 グレイフィアさんは私がどうして眠りに就き、その間何があったのか教えてくれました。

 レイナーレ様を助けたいという私の想いが禁手を発動させ、その力でレイナーレ様と皆の傷まで癒したそうです。

 【龍聖女が捧ぐ慈愛の光(トワイライト・セイント・アフェクション)】。そうアザゼル先生が名付けました。

 その後私は力を使い果たし、五日間も眠っていたそうです。

 その後一輝さんがシャルバ・ベルゼブブを倒したり、白龍皇が現れたり、グレートレッドという大きなドラゴンや『禍の団』のトップであるオーフィスまで現れたりと色々あったのですが、取り敢えず皆無事に帰還しました。

 皆は学園があるからと後ろ髪を引かれつつ駒王町へ戻り、放課後には様子を見に来てくれるそうです。

 私達と同じく魔王様方やシトリー眷属も襲撃されたそうですが、返り討ちにしたらしく皆無事だそうです。襲撃に参加した悪魔達はほとんど討ち取られ、それ以外は降伏、あるいは逃亡したとの事。旧魔王派のトップであるシャルバ・ベルゼブブは一輝さんにより重傷を負わされ、これまで通りには動けなくなり、求心力を失った旧魔王派はほぼ瓦解したようです。

 アスタロト家は『禍の団』に関与してなかったそうですが、時期当主候補であったディオドラの裏切りにより、一切の信用を失いました。現当主は解任され、位も公爵から子爵へと落とされ、少なくとも向こう百年は政治権力に関わるのを許されないとの事。

 アスタロト家出身である魔王アジュカ・ベルゼブブ様にも責任を追及する声が上がったそうですが、他の魔王様三人の擁護とアジュカ様の技術を惜しむ声もあり、退位などにならずに済んだそうです。

 驚いた事にアルトリアさんの正体はかのアーサー王その人でした。一輝さんが異世界から連れて来たからこの世界のアーサー王と関連性は分かりませんが、あの聖剣(エクスカリバー)の威力は本物です。一輝さんはどうやってアルトリアさんを眷属にしたのでしょう?

 

 

「ふわぁ~、色んな事があったんですね・・・・」

 

 グレイフィアさんの話を聞き終えた私は、淹れてくれた紅茶で喉を潤しました。

 

「それでアーシアさん、この後はどうしますか?」

 

「どう、とは?」

 

「具合が悪いようでしたらお勧めしませんが、大丈夫なようでしたら・・・・」

 

「あっ!? 体育祭───!!」

 

 そうです! あれから五日も経っているという事は、今日は駒王学園の体育祭の日です! 今何時でしょうか!?

 

「落ち着いてアーシアさん。まだ十一時前です。今から行けば出番には間に合いますよ」

 

 グレイフィアさんはそう言って、着替えを渡してくれました。それは駒王学園の体操着。きちんと「2-Aあーしあ」と名札も付いてます。 

 

「それで? どうしますか?」

 

「───行きます!!」

 

 

 

 

 

 

 午前中最後の競技、「男女混合二人三脚」が始まった。今は三年生が競技中、イッセー()達二年生の出番ももうすぐだ。

 グラウンドから歓声と怒号が上がる。何事かと思ったら部長と一輝先輩、そして朱乃さんの三人がスタートラインに並んでいた。

 何故二人三脚に三人で出場してるのかと言うと、二人三脚で一輝先輩と組もうとした部長と朱乃さん。激しい戦い(ジャンケン)の末、勝利を掴んだのは朱乃さんだった。だがそこで部長がごねた。強権を発動させ、自分達だけ三人四脚で出場する事を認めさせたのだった。ソーナ会長の苦労が偲ばれる。

 空砲が鳴り、部長達がスタートした。速え、息ぴったりだ。部長と朱乃さん、二人の爆乳がブルンブルンと揺れる度に腰砕けになる男が増えていく。学園の二大お姉様にぴったり挟まれた一輝先輩には、皆の恨みの隠った視線と罵声(声援)が浴びせられる。そんなものはどこ吹く風、とばかりに三人は一着でゴールした。

 ああ、部長と朱乃さんのおっぱいサンドイッチ、何て羨ましい~! 一度でいいから俺も味わってみたい!!ってな事を妄想していた時、

 

「イッセーさん!!」

 

 ずっと聞きたかった声が俺の耳に飛び込んで来た。

 

「アーシア! こっちだ!!」

 

 手を振り、こっちへ走って来るアーシアに俺もまた手を振って応えた。

 

「ハア、ハア、お待たせしましたイッセーさん」

 

「大丈夫なのか、アーシア?」

 

「はい。この競技だけは絶対一緒に走りたいですから」 

 

 アーシアは晴れやかな笑顔を見せる。恥ずかしいから見惚れてしまったのは内緒だ。俺はしゃがんで二人の足首をヒモでしっかりと結んだ。

 立ち上がりアーシアと見つめ合う。それだけで心が満たされる気がした。そして、いよいよ俺達の番が回って来た。

 

 空砲が鳴ると共に、一斉にスタートする。

 俺達の息はぴったり。絶好のスタートを切った。

 

「行っけえーーー! イッセー、アーシア!!」

「二人共頑張ってえーーー!!」

「二人共必ずトップを取りなさい!!」

「負けたら承知しねえぞ!!」

「行けえーーー! ブッちぎれーーー!!」

 

 皆の声援が聞こえる。嬉しくて、つい顔が緩んでしまう。それに───

 

「アーシア、あれ」

 

「え?・・・・あっ♪」

 

 ゴール付近にカメラを構える父さんと声援を送っている母さんがいる。

 

「イッセー、アーシアちゃん、もう少しよ! 頑張ってーーー!!」

 

 高校生にもなって恥ずかしい気もするけど、素直に嬉しい。ありがとう父さん、母さん。息子と娘の晴れ姿、目に焼き付けてくれ!

 

「アーシア、もうどこへも行くな。俺達はずうっと一緒だ!」

 

「───はいっ! ずうっっと一緒です!!」

 

 アーシアは涙を滲ませながら、最高の笑顔を見せてくれた。

 

 

 

 俺達は二人一緒にゴールテープを切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

連続投稿はこれで終わりです。お付き合いいただきありがとうございました。

本作ではアーシアがここで禁手に至ります。
モデルは「防振り」のメイプルの「身捧ぐ慈愛」ver。
アーシアは元々金髪なので、変化を付けたくてエメラルドグリーンになりました。
名前もそれに合わせて少し変えてあります。

原作6巻のエピソードはこれで終了。
振り返ってみればほとんどエロがない事態に。
その反動もありますが、次回からエロ満載の閑話を数回に渡ってお送りします。
皆さんがお待ちのグレイフィア回もありますので、お楽しみに。



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閑話4 上書き☆☆(全員)



遅くなりました。
今回から予告通り閑話をお送りします。
今回の閑話は第32話のアーシアが眠っている間の五日間に起きた出来事を描いています。
今回は事件の起きた日の夜の出来事をお送りします。
ご覧下さい。


 

 

 『ディオドラの乱』。

 今回起きたディオドラ・アスタロトの裏切りに伴う一連の事件は、公式にそう呼ばれる事になった。

 こうしてディオドラは冥界の歴史に名を残す事になった。非常に不名誉な形で、本人は決して喜ばないだろうが。

 

 今回の件を報告する為、一輝()はリアスと朱乃、アルトリアと共に魔王領にある魔王府に来ていた。

 室内にはサーゼクス様とアザゼル先生、その他にモニターで繋がったセラ姉さんとアジュカ様、ミカエル様の前で俺達は自分の見た限りの状況を報告した。

 

「そうか・・・・・・大変な目に合わせてしまったな。ご苦労だった。下がってゆっくり休んでくれ」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

 報告を終えた俺達は部屋を出て、グレモリー邸への魔方陣を開いた。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ・・・・結局またあいつらに面倒を押し付けちまったな」

 

 アザゼル()はガリガリと頭を掻いてため息を吐いた。

 

『サーゼクスちゃん、大丈夫?』

 

「大丈夫? 私に何か問題があるように見えるかい? 大丈夫、私は正常だよ、フフフ・・・・」

 

 いや、ちっとも正常に見えねーよ。濃密な紅いオーラが洩れて、バチバチと火花を散らしてるじゃねーか! 隣にいて怖いわ! 

 

「落ち着けよサーゼクス。そりゃあ大事な妹が強姦されかけたんだ。怒るのも無理はないが、ちったあ冷静になれよ。幸い、つっていいのか分からんがリアス達に手を出そうとした連中は全員魔獣化した挙げ句、リアス達が自ら始末したんだ。結果オーライだろ?」

 

「・・・・・・結果オーライ? 何を言ってるんだアザゼル! あいつら血筋しか自慢出来ない貴族の子弟(バカボン)共の癖にリーアたんに手を出そうとしたんだぞ!? 地獄に赴いて魂ごと完全に消滅させねば気が済まんわ!!」

 

「お、おう・・・・」

 

 ヤベえ!? こいつのシスコン具合を甘く見てた! 今のこいつなら本気でやりかねねえぞ!?

 

『・・・・・・待って、サーゼクスちゃん』

 

 その時、セラフォルーがサーゼクスに“待った”をかけた。おお、普段はおちゃらけていても流石は外交を担当する魔王だ。冥府の王ハーデスと問題を起こすのはマズイと分かってやがる! 頼むぞセラフォルー、サーゼクスを止めてくれ!

 

『行くなら私も行くわ!!』

 

 だが俺の期待はあっさりと裏切られた。

 うぉいっ!? 何言ってんだお前は!?

 

『私にとってもリアスちゃんは妹も同然。それに、もしソーナちゃんがそんな目に合ったらと思うと・・・・私にはサーゼクスちゃんの気持ちが痛い程分かるわ!!』

 

「分かってくれるか、セラフォルー!!」

 

『勿論よサーゼクスちゃん。だって私達、シスコン仲間(お友達)でしょ!?』

 

「ああ! では行こうシスコン仲間()よ!!」

 

 

『「行くなーーーーーっ!!」』

 

 

 ゴチンッ!!

 

 

 暴走していたサーゼクスとセラフォルーの後頭部に「100t」と書かれたデカいハンマーがめり込み、二人は沈黙した。

 

「失礼。うちのバカがお騒がせしました」

 

『うちのアホ姉に構わず会議を続けて下さい』

 

 二人を物理的に黙らせたグレイフィアとソーナが深々と頭を下げる。もしかしたら冥界最強なのはこいつらかもしれんな・・・・

 

 

『・・・・サーゼクスとセラフォルーがこうなったのもディオドラのせいだな・・・・全く、馬鹿な事をしてくれたものだ』

 

 アジュカが嘆息しながら洩らす。こいつも今回被害を被った一人だ。

 実家の不始末を非難され、色々と面倒だったらしい。それでも退位なんて事にならなかったのは、そんな話が出たらこいつは嬉々として退位しちまうからだろう。典型的な技術屋で、魔王の地位なんか欠片も興味のない奴だからな。

    

『一応襲撃に加担したのはどこの貴族(バカ)かは調査を進めている。分かり次第大掃除が始まるだろう』

 

「風通しが良くなって結構じゃねえか。古臭い貴族主義は今の世の中には向かねえよ」

 

『そうですね。今までサーゼクス達が手をこまねいていたのは大義名分がなかったからです。今回は禍の団(テロリスト)への加担という明確な罪状があるのですから、何も問題ないでしょう』

 

 俺の意見にミカエルが同調する。あいつも古い貴族共には和平案を散々潰されて来たから、色々と含む物もあるんだろうな。

 

「それにしても・・・・リアスの眷属つーか一輝の眷属はとんでもねえな」

 

 俺は空気を換えようと別の話を振った。

 

『報告は聞きました。イッセー君とアーシアが禁手に至ったと。それに一輝君自身も禁手を見せたそうですね』

 

「ああ。其々とんでもない力だぜ」

 

 イッセーの【赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)】はこれまで不完全な形で発現させていたが、完全版はそれまでと違い出力(パワー)が安定している。『倍加』や『譲渡』といった力を瞬時に引き出せるのは反則級だ。

 更に輪をかけて反則級なのがアーシアの【龍聖女が捧ぐ慈愛の光(トワイライト・セイント・アフェクション)】だ。致命傷クラスの傷を癒し、それまで出来なかった欠損部位の再生や魔力や体力をも回復させる完全回復能力。まだ検証が必要だが、今回発現した能力だけでどの勢力も欲しがるだろう。

 そして一輝の【巨人殖装(ギガンティック)】。単純な出力(パワー)ならイッセー以上。高度な重力制御と次元間移動すら可能とするまさしく規格外な存在だ。それらが一輝の武術と合わさった時、魔王級までパワーアップしたシャルバ・ベルゼブブさえ一蹴された。

 三人が三人共、とんでもない能力だ。

 

『実に興味深い。三人共是非研究させて欲しい所だが・・・・』

 

「それをやったらサーゼクスと喧嘩になるぞ。俺だって観察に(とど)めてるんだ。データは送ってやるから我慢しやがれ」

 

 三人はリアスの眷属、すなわちサーゼクスの保護下にある。アジュカも迂闊に手は出せまい。まあ、それは俺も同じなんだか・・・・

 

『私としてはそれ以上に気になる事があります。一輝君の女王(クイーン)のアルトリアさん、彼女の正体があのアーサー王だとは・・・・』

 

 ああ、それもあったか・・・・

 一輝の女王であるアルトリアが結界発生装置を破壊する時、黄金に光輝く聖剣を使った。そう報告を受けた俺達はアルトリアに問い質すと、

 

『はい、私の名はアルトリア・ペンドラゴン。かつて選定の剣を抜いて、ブリテンの王位に就いていた者です』

 

 とあっさり認めた。アルトリアってのはアーサーの女性名だし、まさかと思ったんだが・・・・一輝の奴、どうやってあんな大物を眷属にしたんだ?

 

『天界で保管しているエクスカリバーは、欠片から錬金術で造り上げたレプリカに過ぎません。彼女が持つ本物とは比べ物にならない』

 

 七本あったエクスカリバーは『聖剣事件』で四本がひとつになり、ゼノヴィアが使っていた一本と正教会で保管していた一本と共に天界で保管されている。残る一本は行方不明のままだ。

 

「いずれにしてもデビュー前の新人の戦力としては過剰ではある。だが冥界の民は彼らの戦う姿に希望を見出だしている。禍の団が今後彼らを狙って来ると予想される状況下で、我々はどうするべきだろう・・・・」

 

『考えましょう。私達があの子達の為に出来る事を・・・・』

 

 いきなりサーゼクスとセラフォルーが復活して真面目に言いやがった。

 だがまあ一理ある。俺もこれまで以上にあいつらのコーチに精を出すとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 リアス()達がグレモリー邸へ戻ったのは日付が変わる少し前だった。

 

「あ、お帰りなさい」

 

 アーシアの様子を見に部屋へ行くと、何故か白音が出迎えてくれた。

 

「貴女達・・・・心配なのは分かるけど、身体を休めなくちゃ駄目でしょう?」

 

 思わず苦笑が零れる。アーシアの部屋には眷属の皆とイリナさん、レイナーレが集まっていた。

 

「明日は完全休養日にするわ。学園にも連絡しておくから皆ゆっくり休みなさい」

 

 私がパンパンと手を叩き解散を促すと、皆は渋々と重い腰を上げた。

 

「部長、俺だけでも付いてちゃ駄目ですか? アーシアが目を覚ました時、側にいてやりたいんです」

 

 それでも尚、イッセーが食い下がる。どうしようかと悩んでいると、一輝が私の肩を叩いた。

 

「いいじゃないかリアス。今夜位イッセーの好きにさせてやろう」

 

「一輝・・・・分かったわ。イッセー、好きになさい」

 

「ありがとうございます!」

 

 私達はイッセーを残し、部屋を出た。

 

 

 

 

「待って、レイナーレ」

 

 私の声に皆が足を止める。

 

「何でしょう、リアス様・・・・?」

 

 レイナーレが振り返り小首を傾げる。彼女の姿は天野夕麻に戻っている。本来の妖艶さが隠れ、清楚さが表に現れていた。

 私は彼女の前に立ち、深く頭を下げた。

 

「貴女にお礼を言うのが遅くなったわ。──ありがとう。アーシアを守ってくれて」

 

 目を大きく見開いてレイナーレが絶句している。でも、

 

「や、やめて下さいリアス様! 私なんかに頭を下げるなんて・・・・!」

 

「いいえ。貴女はアーシアを命懸けで守ってくれたわ。もしあの娘を失っていたらと思うと・・・・これ位は当然の事よ」

 

「確かにリアスの言う通りだ。本当にありがとう、レイナーレ」

 

 更に一輝にまで頭を下げられ、レイナーレはひたすら恐縮していた。

 

「一輝様まで・・・・! やめて下さい。あの時は咄嗟に身体が動いただけで・・・・」

 

「咄嗟に身体が動いたって事は、それだけアーシアを気にかけていたっていう証拠じゃないかしら?」

 

「でもそれは・・・・私がアーシアに罪悪感を抱いていたからで・・・・」

 

「例え罪悪感からの行動だったとしても、あの時君はアーシアを守ってくれた。それは俺にも、他の誰にも出来なかった事だ。だから・・・・本当に感謝してる」

 

 そう言って一輝は再び礼をする。 

 

「わ、分かった、分かりましたから、お二人共頭を上げて下さい!!」

 

 慌てるレイナーレに言われ、私達は頭を上げた。

 

「レイナーレ。今回の活躍に免じて私は貴女の罪を許します。最も被害に遭った三人──アーシア、イッセー、そして一輝が許してるんだもの、過去は水に流すわ」

 

「えっ!?」

 

 私の宣言にレイナーレが目を丸くする。

 

「もし君が望むなら、アザゼル先生に頼んで駒王町での任務から外して貰う事も可能だ」

 

「ええっ!!?」 

 

「一応君の身柄は俺預りとなっているから、自由になるも良し、望む立場に就くも良しだ。そう言えばアザゼル先生に仕えるのが夢だったんだろう? 望むなら推薦するが、どうする?」 

 

 レイナーレは暫く驚いていたけど、やがて考えをまとめるように目を閉じた。そして、

 

「リアス様、一輝様・・・・・・私には過ぎたるお言葉をありがとうございます・・・・願わくば今まで通りここに居させて欲しいと思います」

 

 意外な答えに私は一輝と顔を見合わせる。

 

「今まで通りって・・・・いいの?」

 

「はい。普段は天野夕麻として学園に通い、放課後はメイドとして働き、有事の際には戦士として皆さんと共に戦いたいと思います」

 

「そう・・・・・・分かったわ、貴女の望みを受け入れましょう。レイナーレ、いえ夕麻。貴女はオカルト研究部に入部してこれからも私達と共に行動なさい」

 

「はい、リアス様」

 

「今後、私の事は部長と呼びなさい」

 

「はい、部長」

 

「よろしい。聞いたわね皆? 夕麻は今日からオカ研の一員として扱うわ。いいわね!?」

 

「「「「「はい、部長!!」」」」」

 

 こうして堕天使レイナーレこと天野夕麻は、正式に私達の仲間となった。

 

 

 

 

 

 

 部屋に通された一輝は、風呂に入ろうと浴室へ向かった。

 脱衣場で服を脱いで浴室に入る。客室に備え付けられたものにしてはかなり広い。一輝が洗い場で頭を洗っていると、カラカラと扉が開く音がして、背中に大きくて柔らかいものが押し付けられた。

 一輝はこの感触を知っていた。これは───

 

「黒歌!?」

 

「ウフフ、正解にゃん♪」

 

 振り返ると、全裸の黒歌が俺の腹に手を回し、後ろから抱き着いていた。

 

「正解した一輝にはご褒美にゃあ~」

 

 黒歌はその大きな胸を押し付けながら、上下に動き始める。絶妙な柔らかさを誇るおっぱいが背中を擦り、その感触に背筋が震える。また、柔らかさの中にある固い感触が一輝を昂らせる。

 

「ンフフ。一輝のおっきくなってきたにゃあ♪」

 

 腹に回っていた黒歌の手が、ムクムクと屹立する一輝の肉棒へ伸びる。だが黒歌の手が触れる前に、肉棒は温かな感触に包まれた。

 

「あんむ・・・・レロ、ちゅぷ、んん・・・・ちゅぷ、先輩のおっきくなって来ました」

 

 いつの間にか一輝の股間には白音が陣取り、屹立する肉棒を小さな口に含んでいた。

 

「あー!? 白音ズルいにゃあ!」

 

 先を越された黒歌が非難するも白音は取り合わず、夢中で舌を這わせていた。

 

「ンン・・・・ちゅぷ、レロレロ・・・・先に抜け駆けしたのは姉様の方です。レロ、姉様は無駄に大きな胸で・・・・ちゅぷ、先輩のオチンチンをおっきくすればいいんです・・・・モゴモゴ」

 

「う、おぉ・・・・黒歌、白音・・・・・・」

 

 背中と股間に走る快感に一輝は思わず声を上げた。

 

「気持ちいい一輝? じゃあもっと気持ち良くしてあげるにゃあ」

 

 黒歌は胸を擦らせるスピードを上げ、指で一輝の乳首をクリクリと弄る。そして一輝の首筋に舌を這わせる。

 

「んん! 先輩のおっきくなりすぎて、私の口に入りきりません。ンフぅ、スンスン・・・・ああ、この臭い、堪らないです・・・・ヂュプ」 

 

 肉棒の臭いを嗅いで、白音はうっとりと頬を緩ませる。

 

(ああ・・・・先輩の股間、洗ってないから凄い臭いがします・・・・こんな濃いのを嗅いだら、んん、濡れて来ちゃう・・・・!)

 

 猫又である白音の鋭い嗅覚は、一輝の股間から漂う汗や小便の残り香、そして先走りの臭いを余す所なく感じ取り、股間から大量の淫蜜を溢れさせていた。

 

「んん、先輩♪ 先輩の精液飲みたいです・・・・ちゅぱ、んふぅ・・・・早く出して・・・・レロレロ」

 

 完全に勃起した一輝の肉棒は、白音の小さな口では亀頭までしか入らない。だから白音は舌と唇を目一杯使って亀頭を責め立てる。

 

「く、う、あぁ、白音・・・・で、出る!」

 

 一輝が宣言すると同時に、黒歌が後ろから唇に吸い付いた。そして、

 

 ブビュルルル! ビュル、ブビューーーー!!

 

「ンムぅ!? ブフゥ!・・・・ンン・・・・ゴク、ゴク・・・・・・ンン・・・・!」 

 

 大量に雪崩れ込む白濁液を、白音は噎せながらも喉を鳴らして飲み込む。 

 

「ン・・・・ゴクン。んぁあ・・・・先輩の濃くて、美味しかったです・・・・ケプッ」

 

 口の端から白濁した雫を零しながら、白音が小さくゲップをした。

 キスで一輝の声を飲み込んだ黒歌は、口の端から垂らした唾液を啜ると妖艶に微笑んだ。

 

「気持ち良かった、一輝?・・・・なら今度はここを気持ち良くして欲しいにゃん❤」

 

 黒歌は一輝の手を自分の股間へと導く。そこはまだ触れてもいないのに、グッショリと濡れていた。

 

「先輩、私も・・・・・」

 

 白音も反対側の手を自らの股間へと導く。そこは黒歌に負けない位、ビショビショに濡れていた。

 

「黒歌、白音・・・・・・」

 

 一輝は二人に順番にキスすると、浴槽の縁に手を掛けさせ、お尻を自分に向けさせる。

 

「あ❤ 一輝ぃ・・・・」

 

「んん、んにゃあ・・・・」

 

 一輝は後ろから指で二人の股間を弄る。黒歌の量感たっぷりのお尻が大きく波打ち、白音の小降りだがプリッとしたお尻が一輝を楽しませる。

 一輝は白音の膣口に指を二本挿入()れ、手首を捻るように出し入れする。

 

「ああ! んん。んにゃあ! せ、先輩の指がぁ・・・・んん!」

 

 白音の尻尾がピンと伸びる。膣口からは淫蜜が溢れ、クチュクチュとイヤらしい音を立てる。

 

「あぁん、白音ばっかりズルいにゃあ! お願い一輝、私にも・・・・」

 

「ん? (こっち)でいいのか?」

 

 一輝は悪戯っぽく笑うと、黒歌の割れ目をそっと撫でる。

 

「んん! (そっち)じゃないにゃあ! ち、チンポ・・・・一輝のおチンポを挿入()れて!!」

 

 黒歌は色っぽくお尻を振って懇願する。一輝は満足そうに頷くと、淫蜜溢れる膣口にいきり勃った肉棒を突っ込んだ。

 

「んああっ! あぁ・・・・これにゃあ・・・・これが欲しかったのにゃあ❤」

 

 待ち望んだ感触に黒歌は全身を震わせる。

 

「あ、あぁ、いい、いい! 一輝の硬いのが奥まで・・・・ンン、き、気持ちいいにゃあ・・・・!」

 

 悦びの声に気を良くした一輝は、スピードを上げて黒歌の膣奥を掘削する。黒歌の膣内は熱く泥濘み、一輝の肉棒を奥へ奥へと誘う。

 

「んにゃあ! 凄い、気持ちいい! もっと・・・・もっと突いて! 一輝のオチンポでイかせてぇ!」

 

 黒歌の願い通り、一輝は強く、速く腰を動かす。更に白音の淫蜜で濡れた右手の親指をそのまま白音のお尻の穴に突っ込んだ。

 

「おひいっ!?」

 

 衝撃に白音の尻尾がピンッと立つ。

 

「せ、先輩・・・・そこ違う・・・・・・そこダメェ!!」

 

 初めて尻穴に指を入れられ、白音は戸惑う。でもそれは始めだけで、入れられる時は苦しいが、抜かれる時には奇妙な快感を確かに感じるようになっていた。

 

(ア、ア、ア❤ 何これ・・・・? 苦しいのと気持ちいいのが交互に来て・・・・あぁ、変になっちゃうぅ!!)

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛❤ イク! イッちゃうぅーーーーッ!!」

 

「うにゃあーーーー!! ダメェ! 私もイッちゃいますーーーーッ!!」

 

「くああ! 黒歌、白音、で、射精()るぞ!!」

 

 ブビュルルル!ビュル!ブビューーーー!!

 

「「うにゃああぁぁぁんんっっ!!❤」」

 

 三人は同時に絶頂し(イッ)た。

 

 

 

 

「ああ、おお、んん・・・・い、イク、またイクぅ!」

 

「おひい、おああ! 私も・・・・私もイッちゃいますーーーーッ!」

 

 重なり合う猫又姉妹。一輝は下の黒歌に挿入しながら上の白音のちっぱいに指を、首筋に舌を這わせていた。そして、

 

「く、イクぞ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

「「ふにゃああぁぁぁんんっっ!!❤」」

 

 発射寸前、一輝は肉棒を抜いて、二人の身体に撒き散らした。

 噴出した白濁は二人に腹や胸、顔にまで降り注ぎ、二人を絶頂へと導いた。

 

「ハア、ハア、ん、姉様ぁ・・・・・・」

 

「ハア、ハア、んん、白音・・・・・・」

 

 猫又姉妹はお互いの顔にかかった白濁を舐め取り、そのまま唇を重ねた。

 黒歌の膣からは今まで出した精液が栓を抜かれたかのように溢れ、白音は快楽のあまり小便を漏らしていた。

 半ば意識を失っている二人を尻目に、一輝は扉の方を見やる。気配を消してそっと近付き───

 

 ガラッ!!

 

「「!!?」」

 

「二人共覗きとはいい趣味だな?」

 

「あはは・・・・・・」

 

「や、やあ一輝センパイ。お盛んだな!」

 

 勢い良く開けた扉の向こうには、顔を真っ赤にした祐美とゼノヴィアがいた。

 二人は顔を上気させたまま、眼前にそそり勃つ一輝の肉棒に目を奪われていた。

 

「二人で綺麗にしろ」

 

 一輝の命令が出ると、二人は肉棒にむしゃぶりついた。

 

「ん・・・・レェロ、エロ、エロ・・・・ちゅぷ、じゅぷ・・・・ん、美味し」

 

「んむン、ンン・・・・ちゅぷ、レロレロ、チュウチュウ・・・・ちゅぱ、ん、先輩、綺麗になりました」

 

 付着した汚れを舐め取り、綺麗になった肉棒を祐美とゼノヴィアはうっとりと眺める。

 一輝はその場で横になり、命じた。

 

「おいで、ゼノヴィア」

 

 そう言われるとゼノヴィアは嬉々として一輝の腰に股がり、祐美は少し残念そうにしながら二人の様子を窺う。

 

「んんん!・・・・あぁ、入って来たぁ・・・・・・❤」

 

 ゼノヴィアは騎乗位の態勢で一輝の肉棒を自らの胎内に導く。途端に広がる得も言われぬ感覚に、ゼノヴィアは背筋を震わせた。

 

「あぁぁ・・・・・いい! センパイの硬いのが奥に当たって・・・・気持ちいい!!」

 

 ゼノヴィアは素直に快楽を口にすると、一輝の腹に手を置いて、腰を振り始める。

 

「手伝ってあげるわ、ゼノヴィア」

 

 祐美はゼノヴィアの背後に回ると、その豊満な胸を激しく揉み始める。

 

「あ、コラ祐美!? あ、んんん!」

 

 祐美は縦横無尽に揉みし抱き、固く屹立した乳首に指を這わせる。

 

「ンフフ、ゼノヴィアったらこんなに乳首を固くして・・・・ペロ、可愛いわよ♪」

 

「ンン・・・・だ、だって私は乳首弱いのに・・・・んん、祐美がいっぱいクリクリするからぁ! はあぁん!?」

 

 祐美におっぱいを蹂躙され、首筋を舐められるゼノヴィアは官能に声を上げる。その様を下から見ていた一輝は、固くなり皮から芽を出した秘芯をキュッと摘まみ上げた。

 

「おほおぉぉんっ!!・・・・・・せ、センパイ? いきなり何を・・・・?」

 

 突然の刺激にゼノヴィアは激しく身体を震わせたまま一輝に訊ねる。

 

「腰の動きが疎かになってるぞ。一人で気持ち良くなってないで腰を動かせ」

 

 一輝はそう言って肉芽をピンと弾く。

 

「おひぃっ! わ、分かった! 今動かすからぁ!」

 

 感じすぎるのでクリ責めが苦手なゼノヴィアはまた弄られないように必死に腰を動かす。

 

「はあ、ああ、あん、あん・・・・き、気持ちいい・・・・センパイのが子宮に当たって・・・・ふぅん! 気持ちいいっ!!」 

 

 乳首と膣内を同時に責められ、ゼノヴィアの快感が高まっていく。その時、一輝がゼノヴィアのクリトリスをキュウッと摘まんだ。

 

「!? おひいぃぃぃんっ!! い、イ、ク~~~~~!!」 

 

 電流を流されたように全身を震わせて、ゼノヴィアが絶頂する(イク)

 

 プシャアアァァァーーーーーッ!!

 

 噴き上げた潮が一輝の顔にまで降りかかる。ゼノヴィアは蕩けた顔をしながら、脱力した身体を祐美に預け、意識を失った。

 

「あら? ゼノヴィアったら失神しちゃった・・・・それじゃ」

 

 祐美はゼノヴィアの腋に手を入れると、上に引っ張り、ゼノヴィアから肉棒を抜いた。そのままゼノヴィアを床に横たえると今度は自分が一輝の肉棒に跨がった。

 

「選手交代です。先輩、私の膣内(なか)で一杯気持ち良くなって下さいね♪」

 

 そう言って自らの胎内に一輝の肉棒を導いた。

 ゼノヴィアとの行為を見せ付けられ、お預けを食らっていた祐美の秘穴は熱い淫蜜に溢れ、容易く一輝の巨根を膣奥まで迎え入れた。

 

「あぁぁんっ❤ 先輩のおっきなおチンポが奥まで・・・・あぁ、コレよ・・・・コレが欲しかったの・・・・先輩、動いて・・・・私も動くから、先輩も一緒に・・・・・・」

 

 恍惚とした微笑みを浮かべながら、祐美が唇を重ねて懇願する。一輝は願いに応じ、ゆっくりと腰を動かし始めた。

 

「あ、あ、あぁ、いいです、気持ちいい!・・・・先輩のが膣内で擦れて、ふぅん、奥に当たって・・・・あぁ、気持ちいいのぉ!!」

 

 一輝の動きに合わせて祐美もまた腰を動かす。祐美は戦闘でも人に合わせるのが巧いがセックスでも同じようで、一輝が突くのに合わせて腰を深く打ち付け、より深く、より強く快楽を味わっていた。

 当然一輝も自分に合わせて動く祐美の膣内は堪らなく気持ち良かった。

 動きに合わせて弾む双丘、舞い踊る亜麻色の髪と飛び散る汗の芳香が視覚的嗅覚的にも一輝を一層昂らせる。一輝はゼノヴィアの時に高まった性感と相俟って、限界を迎えようとしていた。

 

「くう、祐美、もう───」

 

「あ、はい♪ 射精()して! 祐美の膣内(なか)に先輩の精液、いっぱい射精()してーーーーッ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

「はあぁぁぁんんっっ!!❤」

 

 胎内に熱いマグマが弾けるのを感じ、祐美は恍惚の叫びを上げる。

 そのまま一輝の身体に覆い被さると、祐美はそっと唇を重ねた。

 

「んん──ちゅ、先輩、好き・・・大好きです・・・・ちゅう」

 

「ああ、俺も大好きだよ、祐美・・・・」

 

 二人は事後のピロートークを楽しむと、二回戦へ突入した。

 

 

 

 

 

 

 祐美と、そして復活したゼノヴィアとの情事を終えると、一輝は二人を脱衣室に残し、部屋へと戻る。ベッドにはバスローブ姿のリアスと浴衣姿の朱乃が座っていた。

 

「一輝・・・・・・」

 

 一輝は二人の間に座ると、二人の肩を抱き寄せた。

 

「皆まで言うな。もう大丈夫、俺はここにいるから」

 

「「───一輝!!」」

 

 一輝がそう言うと、二人はしがみ付くように一輝に抱き付いた。

 その肩が微かに震えている。黒歌と白音が風呂に乱入して来た時から皆が来るのは予想出来た。

 今日リアス達は集団レイプされかけた。ギリギリで救出出来たとは言え、大勢の男の欲望剥き出しの視線に曝され、衣服を破かれ、柔肌を晒し、何人かは大事な所を触られもしたのだ。いくら気丈とは言え全員十代の少女。そんな目に合って恐怖を感じぬ訳がない。

 風呂に入ったら皆のケアをしないと、と思っていた一輝だったが、先に女達の方が一輝を訪れて来たのだ。彼女達の心情の深刻さが窺える。

 ともあれ今の一輝に出来る事は、彼女達を受け止め、嫌な記憶を上書きするしかなかった。

 

「一輝、んちゅ・・・・・・んん」

 

「あぁ、一輝・・・・ふんむ、むちゅ・・・・ちゅ」

 

 一輝は二人と交互に唇を重ね、強張った精神(ココロ)身体(カラダ)を解き(ほぐ)していった。

 

「あぁ、一輝・・・・・・」

 

「んん、もっと・・・・もっと触って」

 

 唇を重ねながら身体をまさぐると、二人は気持ち良さそうに声を上げた。その声に反応して、一輝の肉棒がムクムクと勃ち始める。  

 

「あ♪ もう、一輝ったら・・・・」

 

「ウフフ、もっと大きくして差し上げますわ♪」

 

 二人はバスローブと浴衣を脱ぎ捨てると、肉棒にむしゃぶり付いた。

 

「んむ、じゅぷ、むふん・・・・ジュルジュル、んああ・・・・もう、一輝ったら・・・・凄く濃い精液の味がするわよ・・・・ちゅぷ、一体何回射精()したの?」

 

 亀頭を頬張りながらリアスが訊ねる。

 

「ええと・・・・九回だな」

 

 白音の口内に一回、黒歌の膣内に二回、二人の身体に一回、祐美の膣内に三回とゼノヴィアの口内と膣内に一回ずつ、既に九回もの射精を一輝は行っていた。 

 

「そんなに・・・・はんむ、モゴモゴ・・・・ジュル、んはぁ・・・・ウフフ、玉袋の裏まで味が染みてます・・・・沢山頑張ってくれたのね・・・・レロ、エェロ・・・・」

 

 睾丸を口に含み、玉袋の裏まで労るように舌を這わせ、朱乃がうっとりと呟く。

 

「ああ、でもまだまだヤれるぞ。二人共たっぷりイカせてやるからな」

 

 一輝はそう宣言しつつ、二人の股間に指を這わせる。二人の股間は期待に濡れて、一輝の指を奥へと誘う。

 

「んはぁ! うん、シて一輝。嫌な事を忘れる位、いっぱいシて!!」

 

「はぁん❤ お願い、貴方の熱い精液で私の胎内(なか)を満たしてーーーー!!」

 

 リアスと朱乃が叫びながら懇願する。

 

「ああ、イクぞ、まずは一回目だ!!」

 

 ブビュルル、ビュル、ブビューーーー!!

 

「ふむうぅぅぅんんっ!!❤」

 

 白い濁流がリアスの口内を満たしていく。待ち望んだ射精にリアスは砂漠をさ迷う旅人が水を欲するかのような勢いで口内の濁流を飲み干した。

 

「んん~~~~、ゴクンッ! ンフ、十回目だというのにまだまだ濃厚ね❤」

 

「あぁん、リアスばっかりズルいわ! んむ、ズズズズ・・・・ジュルジュル、んん・・・・コクン、んはぁ、美味し❤」

 

 リアスが肉棒から口を離すと同時に朱乃が亀頭に吸い付き、ストローで最後の一滴まで飲料を啜るかの如き勢いで精液の残滓を吸い取った。

 

「二人共、まだまだこれからだぞ」

 

 一輝は立ち上がり、未だ威容を失わない怒張を二人に突きつける。

 

「「はい❤」」

 

 二人は目にハートマークを浮かべながら、うっとりと熱い息を吐いた。

 

 

 

 

 

「あひぃ! んはぁ! そんなに奥まで突かれたら・・・・んん、い、イク・・・・またイっちゃう!!」

 

「いいぞ、イケーーーー!!」

 

「ア、ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~!!」

 

 一輝の熱い精液を胎内に注がれ、リアスは激しく絶頂し(イッ)た。 

 

「・・・・アア、ううぅ・・・・・・」

 

 何度目か忘れる程の絶頂に、半ば意識を朦朧とさせるリアスから肉棒を引き抜くと、すかさず朱乃が吸い付きお掃除を始める。

 

「んむ、ちゅぷ、チュウチュウ・・・・レロレロ、ンフ・・・・コクン、ぷは❤」

 

 肉棒に付着した汚れを舐め取られ、一輝の肉棒は威容を取り戻す。

 

「ンフフ♪ 綺麗になりましたわ。それじゃ───」

 

 朱乃は一輝に向かって大きく股を拡げる。朱乃の股間からはさっき出した白濁が乾かぬまま零れ、早く補充して欲しいと一輝を誘っていた。

 

「来て、一輝。貴方のおっきなおチンポで朱乃のオマンコをいっぱいにして。熱い精液をオマンコの奥にビュルビュル射精して、朱乃を孕ませて!❤」

 

 一輝は願いに応えるように、朱乃の股間に肉槍を突き立てる。充分に泥濘んだ膣内は何の抵抗もなく、一輝を最奥へと導き入れた。 

 

「ア゛❤ ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~!!❤」

 

 肉襞の一本一本を擦り、膣壁を()し拡げつつ、最奥の扉をノックする肉槍の衝撃。朱乃は狂おしい程の快楽に身悶える。

 一輝もまたキツく締め付ける朱乃の感触に腰の動きを早くして、力強く最奥を突き立てた。

 

「ああ、いい! 一輝のおチンポ、朱乃の子宮にゴリゴリ当たって・・・・あァん! 気持ちいいよおーーーーっ!!」

 

 子宮への刺激に朱乃の膣壁が収縮する。朱乃の膣は絶妙な加減で一輝の肉槍を締め付け、極上の快楽を与える。

 

「ぐおお、い、イクぞ朱乃!」

 

「あああ、()して!一輝のザーメン、朱乃のオマンコにいっぱい()してぇ! いっぱい射精して朱乃を孕ませて!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

 限界に達した一輝はそのまま朱乃の最奥で爆発する。白い濁流が子宮に雪崩れ込み、膣内射精(ナカダシ)の快楽に朱乃の身体がガクガクと震える。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! イッッ、グぅ~~~~~!!❤」 

 

 朱乃のおっぱいに顔を埋め、一輝は肉感たっぷりの肢体に崩れ落ちる。荒い息を吐く一輝を朱乃はそっと抱いて、優しく頭を撫で始める。

 

「ハァ、ハァ・・・・・・ねぇ一輝、私お願いがありますの」

 

「ん~?」

 

 頭を撫でられる心地良さに一輝は生返事を返す。

 

「私前回はソーナを倒したし、今回だって女王に昇格した兵士を八人も倒しました。頑張ったと思いません?」

 

「そうだな~」

 

 一輝は内心、ソーナは黒歌が控えていたので全力を出せなかったし、兵士八人はイッセーと祐美の協力があっての成果だと思ったが、黙って生返事を繰り返した。

 

「でしょう? でね、前回のゲームで活躍した祐美ちゃんと黒歌さんはご褒美を貰いましたし・・・・私にもご褒美を貰えませんか?」

 

(ご褒美といっても優先的に抱いた位なんだが・・・・まぁいいか)

 

「いいぞ~。何が欲しい?」

 

「その・・・・デ、デートして下さい・・・・」

 

「・・・・デート?」

 

 意外な朱乃のお願いに一輝は思わず顔を上げる。

 

「その・・・・私達ちゃんとしたデートってした事ないでしょう? だからその、してみたいんですけど・・・・ダメ?」

 

 言われてみれば朱乃はおろか、リアスともデートと呼べる行為はした事がないと一輝は気付いた。

 

(そう言えば悪魔に転生してから大きな事件に巻き込まれてばかりで、食材の買い出し位しか二人で出掛ける事はなかったな・・・・)

 

 自分の有り方が恋人としても、ハーレムの主としても失格であると気付いて、一輝は軽く落ち込んだ。

 

「すまん朱乃・・・・言われるまで気付かなかった。俺の怠慢だ、本当にすまない」

 

 一輝は素直に頭を下げた。

 

「(クスッ) 仕方がありません。一輝は悪魔に転生してから激戦続きでしたもの。でも、たまには私達を構って下さい。身体だけの関係じゃあ寂しくなってしまうもの・・・・」

 

「朱乃の言う通りだ。ありがとう、良く言ってくれた。・・・・と言う訳で朱乃、落ち着いたら俺とデートしてくれ」

 

「───はい♪ 喜んで!」

 

 朱乃は頬を染めて、嬉しそうに返事をする。その表情は初デートに胸を膨らませる初々しい少女そのものだった。

 

「朱乃だけズルい! 一輝、私ともデートしましょ?」

 

 背中に柔らかなものを押し付け、復活したリアスが自己主張する。更に───

 

「デートか・・・・楽しみだなぁ♪」

「デート・・・・何をすればいいか分からんが、受けて立とう!」

「私は先輩と食べ歩きがしたいです」

「私は美味しいお酒を一緒に飲みたいにゃあ♪」

 

 風呂で汚れを落とした祐美、ゼノヴィア、白音、黒歌が現れた。当然話を聞いていて、自分達もデートする気満々だ。

 

「あぁ、勿論だ。でも今は・・・・」

 

 一輝は苦笑しながらリアスと朱乃を抱き寄せる。

 

「ええ、今は私達をいっぱい愛して───」

 

 そう言ってリアスは一輝に唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 ───それから、

 

 

 

 ベッドの縁に手を置いて並んだ六つのお尻。一輝は順番に肉棒を突き入れた。

 

「あぁ、はぁん! あぁ、イク、イっちゃうぅーーーっ!!❤」

 

 祐美の膣内に射精した一輝は精液の滴る肉棒を抜くと、隣のゼノヴィアに突き入れた。

 

「んあぁ! き、来たぁ~~~!!❤」

 

 激しく膣奥を抉る肉棒の感触にゼノヴィアは嬌声を上げる。パンパンと腰を打ち付ける音が響き、ゼノヴィアはあっという間に絶頂を迎えた。

 

「うぅ、ふぅ・・・・うぅぅぅんっ!!❤」

 

 ビクビクと震える膣内に射精して、引き抜いた肉棒を隣の朱乃に突き入れた。

 

「ンンんんんっっ!!❤ あぁ、奥まで来たぁ~~~~!!」

 

 膣壁を拡げながらゆっくりと突き進む肉棒の感触に、朱乃は快感に身体を震わせる。

 

「あぁ、ふぅん・・・・ンン、いい・・・・一輝のおチンポが擦れて・・・・あぁん、気持ちいいーーーー!!❤」

 

 肉付きのいいお尻を波打たせ、朱乃が嬌声を上げる。身体中に走る快感に逆らわず、朱乃は絶頂し(イッ)た。

 

「あぁん! イ、イク! もうイク! あぁん、イッちゃうーーーーっっ!!❤」

 

 胎内に熱い精液を注がれ、絶頂する朱乃から肉棒を抜くと、一輝は隣のリアスに突き入れた。

 

「んおお!? は、入って来たぁ~~~~!!❤」

 

 リアスの満足そうな声を聞きながら、一輝は腰を動かす。リアスの膣内は絶妙な加減で肉棒を締め付け、得も言われぬ快楽を一輝に味合わせ、相変わらずの名器振りを発揮する。

 リアスもまた、自分の気持ちいい所を擦り付ける一輝の肉棒に激しくその身を震わせていた。

 

「あぁ、はぁん! あぁぁ・・・・もうダメェ! 来て一輝!私の膣内(なか)に一輝の熱い精液、いっぱい注いでぇーーーーっっ!!」

 

 リアスの絶叫と共に一輝は射精した。熱い濁流を子宮に浴びて、リアスは全身を震わせつつ、意識を失った。

 ベッドに崩れ落ちるリアスから肉棒を抜くと、一輝は隣の白音の股間に狙いを定めた。

 

「あ、先輩・・・・・・!」

 

 身体が未成熟な為、未だ純潔を保つ白音は、いよいよその時かと期待と不安に小さな肢体を震わせた。だが、

 

「まだだよ、白音・・・・でも今日は少し違う事をするから、そのまま股を閉じてろよ」

 

「え、先輩?・・・・あ、これって・・・・」

 

 一輝は白音の太股と股間の間に出来た、僅かな逆三角形の隙間に肉棒を押し込むと、股間から溢れる愛蜜を潤滑液にして、一輝は腰を動かし始めた。

 

「は、あ❤ んん・・・・んにゃあ・・・・あぁ、先輩の硬いのが擦れて・・・・はぁ! き、気持ちいい・・・・」

 

 白音の反応を見て、一輝は角度を付けて動きを早める。

 

「擦れる? どこに?」

 

「あ❤ はぁん! く、クリトリス・・・・クリトリスに先輩のおチンポが擦れて・・・・ふにゃぁん! 感じちゃいますぅっ!!」

 

 普段の無表情はどこへやら、白音は快楽に顔を蕩けさせる。その表情は幼い容姿に反して、色気に溢れていた。

 

「あ、ダメです、もう、もう・・・・・・ふうぅぅぅんっっ!!❤」

 

 猫耳と猫尻尾をピーンと立てて、白音は潮を噴いた。それと同時に一輝も射精し、白音の腹から胸を白濁液で汚す。

 一輝は愛蜜に濡れた股間から肉棒を引き抜き、隣の黒歌を見やる。

 

「やっと私の番? 早くぅ一輝。私のオマンコ、一輝のぶっといおチンポで栓して欲しいにゃあ❤」

 

 黒歌はグショ濡れの淫口を指でくぱぁと拡げ、一輝に挿入を懇願する。そこは本当に栓が必要な位、大量の淫蜜に溢れていた。

 

「うにゃあぁぁぁんっっ!!❤ あぁ、これ・・・・これが欲しかったにゃあ・・・・!」

 

 肉棒で栓すると、再び大量の淫蜜が溢れる。熱く泥濘んだ膣内は蜜壷と呼ぶに相応しい心地良さで一輝を歓迎した。

 

「あぁ、はぁん、あ、スゴい、奥まで当たって・・・・ぁぁん一輝ぃ! もっと、もっとぉーーーー!!」

 

 黒歌の背中が美しいアーチを描く。長い黒髪が踊り、芳香が広がる。汗に塗れた爆乳を掴み、一輝は黒歌の最奥で爆発した。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! い、イッッグぅ~~~~~!!❤」

 

 熱い精液を子宮に浴びて、黒歌は白い闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 ───その少し前から室内を覗く八つの視線があった。

 

 

 

 

「ひゃあぁぁぁ・・・・す、スゴいものを見ちゃった・・・」

 

 イリナは扉の隙間から部屋で繰り広げられる情事を覗いて、耳まで真っ赤になっていた。

 

 今日グレモリー眷属はレイプされかけた。戦闘中は平気そうにしていたが、落ち着いた今、恐怖や不安に怯えているかもしれないと思ったイリナは皆の部屋を訪れた。

 でも誰も部屋には居らず、一輝の部屋を訪れた時、予想もしていなかった光景に出くわした。

 

(一兄、リアスさんやゼノヴィアだけじゃなく、アーシアさん以外の皆と関係しているなんて・・・・)

 

 ゼノヴィアとの情事を見た時もショックだったが、今回は桁が違った。リアス達をベッドに並べ、後ろから次々と激しく突き入れる光景にイリナは目が離せなかった。

 

(皆あんなに気持ち良さそうにして・・・あぁ、ヤダ・・・・また濡れて来ちゃう・・・・)

 

 イリナの手が股間にそっと触れる。そこはショートパンツの上からでも分かる位に湿っていた。

 

「ンン、ヤダ・・・・私またこんなに・・・・んん、ああぁ・・・・」

 

 一輝達の情事を覗きながら、イリナは自らの股間に指を這わせる。その時、

 

「イリナさん?・・・・何をしてるの?」

 

「!!?・・・・・・ゆ、夕麻・・・・」

 

 他人の部屋を覗いて股間を弄っているイリナの姿は、客観的に見て、痴女にしか思えないだろう。夕麻に声をかけられ、真っ赤だったイリナの顔は真っ青に染まった。

 

「えっと、あの、その・・・・」

 

「どうしたの? ここって確か一輝様の・・・・・・あらあら♪」

 

 わたわたと慌てるイリナを尻目に夕麻は室内を覗き見て、面白そうに笑みを浮かべた。

 

「あらあら一輝様って・・・・・・うわぁ、スゴッ!?・・・・あれだけのモノは私の経験から見ても滅多にいないわね・・・・ゴクリ・・・・ヤダ、何だか変な気分になって来ちゃった・・・・」

 

 最初は面白がっていた夕麻だったが、途中から室内の雰囲気に当てられたのか、頬が上気し、脚をもじもじとさせ始めた。

 夕麻ことレイナーレは大戦末期に生まれ、大戦終結後に堕天したので、八百年近い時を生きて来た。その間に彼女が関係を持った人数は数十人(男女問わず)。その中でも一輝に匹敵する巨根と精力の持ち主はいなかった。

 

(私もいずれはお相手する事になるのかしら・・・・)

 

 期待と不安に胸を弾ませながら、夕麻はイリナと共に覗きを続けた。

 

 

 

 

 

 

「ウフフ♪ 相変わらず素敵よ、一輝さん」

 

 使い魔から送られて来る映像にヴェネラナは微笑みを浮かべた。

 教育の甲斐あって、一輝の技術(テク)は見違えるように向上し、短時間で何度も女をイカせられるまでになった。でもまだだ。ヴェネラナの望むレベルには達していない。

 

「そろそろ二回目の“性教育”が必要かしらねぇ・・・・ウフフ♪」

 

 ヴェネラナは一輝達の情事を見つめながら、楽しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 ヴェネラナと同じく放った使い魔と視界を同調させていたグレイフィアは、ほぅっと妙に色っぽい溜め息を吐いた。

 一輝との一夜だけの情事を交わしてから早一ヶ月、グレイフィアは火照った身体を持て余していた。

 

「ハア・・・・・・あれからもう一ヶ月か・・・・私はどうしたらいいのかしら、一輝さん・・・・」

 

 グレイフィアは熱い吐息を吐くと、繰り返し行われる一輝達の情事に濡れた視線を向けた。 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

次回はヴェネラナ回の予定です。
お楽しみに。


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閑話5 二度目の初めて☆☆(アルトリア)


遅くなりました。
今回は予定を変更して、アルトリア編をお送りします。
口調が彼女らしくないかも知れませんが、ご了承下さい。
それではご覧下さい。



 

 

 ───死屍累々。

 

 昼の鐘が鳴り、流石にもう起こすべきかと一輝さんの部屋の扉を開けたグレイフィア()の目に飛び込んで来た光景は、そう呼ぶに相応しいものだった。

 ベッドはおろか、ソファーや床にまで昨夜の残滓が散らばり、女達は汗や精液で汚れた身体のまま、力尽きて眠っている。

 極めつけはこの濃密な精臭。室内に充満した精液や愛液、汗や潮、果ては小便などが混ざり合った臭いは嗅いでるだけでクラクラして来る。私も変な気分になりそうだ。

 あれだけ激しく睦み合ったからか、少女達はどの娘も満足そうな顔して眠っている。その穏やかな表情からは、レイプされかけたという不安や恐怖は見当たらない。一輝さんに抱かれた事で上手く心の均衡が保てたみたいだ。

 心配していたが、これなら大丈夫そう。でも、

 

「流石にこれはヤリ過ぎじゃないかしら・・・・」

 

 私は部屋の惨状に目を覆いたくなった。ベッドはぐちゃぐちゃだし、ソファーや絨毯にもあちこち染みが出来ている。この分じゃ浴室やトイレはどうなってる事やら。

 部屋中に染み付いた濃密な精臭は、一日や二日じゃ消えないだろうし、今夜の一輝さんの部屋を用意しなくちゃ・・・・いえ、一輝さんの事だから今夜もヤるだろうし、いっそこのままでもいいかしら? とにかく、

 

「───いい加減起きなさい!!」

 

 私は窓を開け放ち、皆を起こそうと声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 グレイフィアさんに起こされた一輝()達は、大浴場で汚れを落とした後、食堂でアルトリアやイリナ、夕麻と合流し、昼食を共にする。

 

「「・・・・・・・・」」

 

 イリナと夕麻はリアス達を見て呆然としていた。リアス達は肌をツヤツヤさせ、仕草のひとつひとつが妙に色っぽい。そんな皆を二人は顔を赤らめ、何だか落ち着かない雰囲気でチラ見している。因みにアルトリアは幸せそうに昼食を平らげていた。

 

「イッセーとアーシアは?」

 

「アーシアはまだ眠っています。イッセー君はずっと付いていて・・・・交代するって言っても聞かないんです」

 

 昼食を摂り終え、リアスが訊ねると、咄嗟に夕麻が答える。何だか女社長と秘書みたいだな。

 

「そう、困った子ね・・・・どの道明日には駒王町に帰らなくちゃいけないんだから、好きにさせてあげましょう」

 

「はい」

 

「私はもう少し休ませて貰うわ・・・・皆も夕食まで好きにしなさい」  

 

 リアスが欠伸を掻きつつ食堂を出る。朱乃達も寝足りないのか後に続いた。食堂に残ったのは俺の他にはアルトリアとイリナ、夕麻の四人だけだった。

 

「ごちそうさまでした」

 

 幸せそうに食事を終えたアルトリア。満足気に揺れるアホ毛を眺めながら、俺は苦笑を洩らす。

 

「美味かったか?」

 

「はい。グレモリー邸(ここ)の料理人は一流ですね。夕食が楽しみです」

 

 今昼食を食ったばかりなのにもう夕食の話か、と思って苦笑すると、アルトリアが席を立ち、俺の側にやって来る。

 

「一輝、話があります。私の部屋に来て下さい」

 

「・・・・分かった。行こう」

 

 俺は席を立ってアルトリアと共に食堂を出た。

 

 

 

 

 

 

「それでどうし───!?」

 

 アルトリアの部屋の扉を閉め、問いかけた瞬間、アルトリアが俺の胸に飛び込んで来た。

 

「どうしたアルトリア?」

 

 華奢なアルトリアの身体をそっと抱きしめ、俺は訊ねる。

 

「・・・・昨日宝具を使いましたから、魔力供給をお願いします」

 

 アルトリアは耳まで真っ赤にして囁く。

 彼女はもうサーヴァントではなく、生身の人間(悪魔)で、魔力供給なんて必要ない。だからこれは彼女なりの精一杯の誘いだ。現に彼女は今、真っ赤になって震えている。

 誇り高い騎士王の精一杯の誘いに、俺の胸に彼女への愛しさが沸き上がる。

 

「いいよ。それじゃあ、ベッドへ行こうか?」

 

 俺がそう言うと、アルトリアはピクリと肩を震わせ、コクンと小さく頷いた。

 

 

 

 

 

 

「あ・・・・・・」

 

 ベッドの上にアルトリアの身体を投げ出す。青いリボンタイを外し、ブラウスのボタンを外すと、なだらかな双丘が姿を現した。十代前半で成長が止まった彼女の胸はサイズこそ慎ましいが、色といい形といい理想的な美しさを誇っていた。

 更に一輝はアルトリアのスカートとストッキングを一気に剥ぎ取る。白いショーツに包まれた下半身が露になり、一輝は思わず息を飲んだ。長く戦場に身を置きながら、その裸身には傷ひとつ無く、戦女神の美しさと少女の愛らしさが同居した奇跡のような肢体に一輝は目を奪われていた。

 

「一輝・・・・・・?」

 

 アルトリアは花の(かんばせ)を羞恥に赤く染め、翠の瞳を期待と不安に揺らしながらそっと囁く。そんなアルトリアに見惚れていた一輝は誤魔化すように咳払いする。

 

「ゴホン・・・・すまんアルトリア。ったく、初めてって訳じゃないのにな・・・・」

 

「・・・・初めてです。この身体で、女として抱かれるのは・・・・」

 

 アルトリアが拗ねたようにプイと視線を反らす。

 そんなアルトリアの態度に、一輝は自分の間違いを悟った。確かに一輝はアルトリアを何回も抱いている。だがそれは剣士(セイバー)のサーヴァントとしてであり、生身の、アルトリア本人を抱くのはこれが初めてであった。 

 

「ごめん・・・・確かにアルトリアの言う通りだ。これからアルトリアの初めてを貰う・・・・いいか?」

 

 アルトリアに覆い被さり、頬に手を当て、視線を自分に向け直す。二人の視線が重なり、暫くした後、アルトリアは小さく「はい・・・・」と声を洩らした。

 

「ん───ちゅ・・・・あぁ、一輝・・・・・・」

 

 重ねるだけの優しいキスを何度も唇に落とし、緊張が解れて来たのを見計らい、今度は深く唇を重ねる。

 

「ふむん───ちゅ、ちゅぷ・・・・んふ、ふあぁ・・・・一輝、はむちゅ、むふん・・・・」

 

 アルトリアは顔を蕩けさせ、鼻を鳴らして一輝の唇を受け入れる。

 一輝はそのままアルトリアの口内へ舌を差し込む。最初はおずおずと受け入れたアルトリアだったが、いつしか自分から舌を絡める行為に夢中になっていた。

 

「んん、あぁ・・・・ちゅぷ、ん・・・・ハア、ハア・・・・」

 

 一輝が唇を離すと、二人の間には銀色の橋が架かる。橋は途中でプツンと切れると、重力に従い、アルトリアの口内へと落ちた。

 たっぷりと時間を使ったせいか、アルトリアの顔はキスだけですっかり蕩けていた。

 

「ひゃん!? か、一輝、そこは・・・・んふ、弱いから・・・・んあぁ、ダメぇ!!」

 

 一輝は次にアルトリアの耳へと舌を這わせる。耳はサーヴァントの時に見付けたアルトリアの弱点のひとつ。形の良い耳に舌を這わせ、耳たぶを甘噛みし、耳の穴に舌を差し込む。この時一輝はアルトリアの片耳に指を突っ込み栓をする。耳を塞がれた事によって、アルトリアの頭の中に舌が這い回るピチャピチャという水音が響き、アルトリアの背筋がゾクゾクと震える。

 

「んひぃ!? あぁ、それダメ! 頭に響いて・・・・あぁん、おかしくなるぅ!?」

 

 アルトリアの身体がビクンと跳ねる。軽く絶頂に達したアルトリアは息を荒げ、虚ろな視線を虚空に向けていた。

 一輝は次にアルトリアの慎ましい膨らみに手を伸ばした。一輝の掌にすっぽりと収まる膨らみは、絶妙な柔らかさと弾力を伝え、一輝を楽しませる。

 

「んん、はぁん・・・・あぁ、一輝・・・・そこは・・・・うぅん、はぁ、あぁん!」

 

 サーヴァント時代に覚えた快感が身体に甦り、アルトリアは快感に打ち震える。その時、尖った尖端を一輝が口に含んだ。更なる快感にアルトリアの身体に珠の汗が滲む。どこか甘さを帯びた乳首に汗の塩味(えんみ)が加わり、一輝は夢中で指と舌を動かす。

 

「んあ!? あぁん! ダメです一輝、ち、乳首をそんなにしゃぶらないで・・・・うぅん、そこ弱いからぁ!」

 

 ビクンとアルトリアの身体が跳ねた。熱に浮かされたように息を荒げるアルトリアの、頬にかかるほつれ毛を直すと、一輝はいよいよショーツに包まれた股間に手を伸ばす。

 

「あぁ!?・・・・そこは・・・・・・!」

 

 アルトリアの股間は下着の上からでも分かる位、グッショリと濡れていた。下着の上から割れ目を沿って指を這わせると、溢れる愛蜜に下着が透け、淫唇がクッキリと姿を現す。

 その淫靡な光景に、一輝は堪らずむしゃ振り付いた。

 

「!───ああぁっ!?」

 

 アルトリアが歓喜とも絶望とも取れる叫びを上げた。仄かな酸味と塩味が口に広がる。一輝は興奮のあまり下着をずらし、直接源泉に口を付けて溢れる蜜を吸った。

 

「んあぁぁぁんっ!? ダメ一輝・・・・そこはぁ!?」

 

 新たな快感にアルトリアが嬌声を上げる。身体に甦る甘い快楽にアルトリアの腰がビクンと跳ね、

 

 

 プシャアァァーーーッ!!

 

 

 一輝の顔面に潮を撒き散らした。

 

「ハア、ハア・・・・あぁ、うぅん・・・・」

 

 アルトリアの股間からは尚も断続的に潮が噴き出す。熱く泥濘んだアルトリアの淫唇はパックリと口を開き、一輝の到来を今か今かと待ち受けていた。

 一輝はアルトリアのお尻を浮かして下着を抜き取る。グッショリと濡れた下着は重く、アルトリアの興奮を物語っていた。

 

「・・・・挿れるぞ、アルトリア」

 

「・・・・はい。来て下さい、一輝」

 

 アルトリアは脚を大きく開き、祈るように目を閉じる。心臓は早鐘を打ち、緊張に身体が強ばる。一輝はそんなアルトリアを見て、緊張を解そうと再び唇を重ねた。 

 

「んふぅ!? うぅん・・・・ちゅ、ちゅぷ・・・・あぁ、一輝・・・・ウフフ、もう・・・・ちゅぷ」

 

 唇は勿論、額に、頬に、目蓋に、鼻に、そして首筋に、一輝の唇が落ちる。アルトリアの顔にはくすぐったさと心地良さがない交ぜになり、いつしか笑みが浮かんでいた。

 アルトリアがリラックスしたのを見計らい、一輝は腰の位置を調整して、アルトリアの秘口に狙いを定める。そして───

 

「うぐぅ!?・・・・・・う、ううぅ・・・・ああぁぁぁんっ!!」

 

 一気に肉棒を突き挿れた。

 

 ブチブチと音を立てて肉棒が侵入して来る。サーヴァントの時にも感じたが、処女膜を破られた衝撃は凄まじく、自然と腰が跳ね上がり、背筋がアーチを描く。

 熱い鉄の棒を突き挿れらたかのような衝撃に、アルトリアは苦悶の声を上げ、一輝にしがみ付いた。アルトリアの爪が背中に食い込み、血が滲むが、一輝はアルトリアが落ち着くまでそっと抱きしめ、優しく頭を撫でて待った。

 やがてアルトリアの呼吸が落ち着き、背中に食い込んでいた指から力が抜ける。

 

「大丈夫か、アルトリア?」

 

「はい・・・・・・すみません一輝、痛かったでしょう?」

 

 心配そうにアルトリアが訊ねる。だが一輝は苦笑を浮かべて首を横に振った。

 

「構わないよ。かの騎士王の初めてを貰ったんだ。この位何でもないさ」

 

「(クスッ)もう、貴方は・・・・・・でも、二度目とは言え、やっぱり痛いものですね・・・・思えばサーヴァントの時、貴方に抱かれるのは魔力供給の手段でしかありませんでした。ですが今は違います」

 

 そう言って柔らかく微笑むアルトリアに愛しさが沸き上がる。自然に顔が近付き、自然に唇が重なる。ただ触れただけのキスだったが、二人の胸は幸福感で満たされていた。

 

「・・・・動いて、一輝。私が貴方の女だって証を、この身体に刻み込んで」

 

「行くぞ、アルトリア」

 

 そう言って一輝はゆっくりと腰を動かし始める。

 

「いぅ! う、うぅ・・・・んん、んあぁ・・・・」

 

 膣壁を削り、奥へ奥へと突き進む肉棒の感触に、アルトリアは苦悶の声を上げる。

 

(あの時はただ痛いだけだったけど、不思議ね・・・・今はこの痛みでさえ私は幸せに感じてる・・・・)

 

 かつて感じた痛みを再び感じながら、アルトリアは感慨にひたる。

 

(あの聖杯戦争を戦い抜く中、聖杯の真実を知り、私の望みは叶わないと知った。そんな絶望の中、再び立ち上がれたのは一輝(アナタ)がいたから。だから私は新たなる生を享受し、貴方と共に生きようと決めたのだから───) 

 

「ん! ふぅん! うん! あん! あぁ、一輝、一輝ぃ!」

 

「ああ、アルトリアの膣内(なか)、キュウッと締まって凄く気持ちいいぞ!」

 

「んん! そんな事言わないで!・・・・は、恥ずかしい・・・・・・」

 

 まるで自分が一輝を欲していると指摘された気がして、恥ずかしさのあまり、アルトリアの一輝にしがみ付く力が増す。

 より深く、より固く結び付くように交わる二人。限界を迎えたのはほぼ同時だった。

 

「くぅっ! 射精()すぞ、アルトリア!!」

 

「───はい、はい! このまま、私の膣内(なか)で・・・・射精()して、一輝!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

「アアアアアアーーーーーッッ!!!」 

 

 胎内に雪崩れ込む濁流の熱さに、アルトリアが絶叫を上げる。息を荒げ、一輝にしがみ付くアルトリアは恍惚とした表情を浮かべていた。

 一輝が貪るように唇を重ねると、アルトリアもそれに応えるように舌を絡める。

 

「ん・・・・ふぅん、ちゅぷ・・・・んん、あぁ・・・・ちゅぷ、ちゅ・・・・」

 

 二人は唇を離して見つめ合うと、互いの存在を確かめ合うように抱擁を交わした。

 

「一輝・・・・」

 

「アルトリア・・・・」

 

 一輝の体温と心臓の鼓動が心地良く、アルトリアは一輝の胸に頬をすり寄せる。そんな仕草が愛おしくて、一輝はアルトリアの金色の髪を優しく撫でる。

 後戯を楽しみながら、一輝の肉棒は未だアルトリアの膣内で脈動していた。

 

「アルトリア・・・・またいいか?」

 

「はい・・・・私ももっとして欲しいです」

 

 二人は微笑みを交わし合うと、触れるだけのキスを交わして二回戦へ突入した。

 

 

 

 

 それから───

 

 

 パンパンと肉の打ち合う音が響く。

 

「うぅ、ああぁ・・・・当たる・・・・私の気持ちいい所に、一輝のが当たって・・・・あぁ、いい!」

 

 後背位(バック)でアルトリアの膣内を貪る。小振りなお尻が揺れる様を楽しみながら、一輝は深く、強く突き入れる。

 

「あおぉ、おぉん、スゴい・・・・こんな気持ち良くて・・・・あぁ、おかしくなるぅ・・・・!」

 

 サーヴァントの時、仮初めの肉体を開発されたアルトリア。生身の肉体では初めての性交であっても、受けた快楽の記憶は残っていた。今、ようやく肉体の感覚と記憶の中の快楽が適合したのか、その肉体は快楽を享受し、目覚めようとしていた。

 

「行くぞアルトリア、どこに射精()して欲しい!?」

 

 一輝が腰を打ち付ける早さが増す。

 

「あ、あ、あ、ああぁ! な、膣内(なか)・・・・膣内に射精して下さい!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーー!!

 

「あおぉぉ・・・・・・あぁ、熱い塊が私の膣内(なか)で広がって・・・・・・」

 

 膣内に精液を浴びて、その衝撃にアルトリアの身体は崩れ落ちた。

 

 

 

 

「あぁ、いい・・・・一輝・・・・ぁん」

 

「ん? 気持ちいいか、アルトリア?」

 

 対面座位で絡み合う二人。アルトリアは見つめ合い、深く繋がれるこの態勢が気に入ったようで、夢中になって腰を振っていた。

 

「あぁん、はい、はいぃ、奥にコンコンって当たって・・・・気持ちいいです!」

 

 すっかり熟れたのか、激しく絡み合う内にアルトリアの子宮が下りて来た。一輝の肉棒が当たる度、恍惚とした表情を浮かべるアルトリアに気を良くして、一輝は動きを早めた。

 

「あぁん! イク、またイク・・・・ああぁ、イッちゃうぅ~~~~~!!」

 

 ブビュルルル!ブビュ!ビュルーーーー!!

 

「ハア、ハア、ん・・・・ちゅ、一輝ぃ・・・・」

 

 子宮に大量の精液を浴びて、アルトリアは一輝にしがみ付き、深く唇を貪った。

 

 

 

 

「あぉ、おぉん!・・・・あぁ、もうダメです一輝! そんな所弄られたら私、またイッてしまうぅっ!!」

 

 背面座位でアルトリアの膣内を突き上げながら、一輝は彼女の乳首を弄っていた。小振りながらアルトリアの感度はいいようで、乳首への刺激に甘い吐息を吐く。

 

「んん、いいぃ! 乳首をクリクリされたら・・・・あぁ、気持ち良くなるうぅ・・・・!」

 

「まだまだこれからだぞ、アルトリア」

 

 そう言って一輝はアルトリアの肩や首筋にキスの雨を降らせる。甘い刺激にアルトリアは嬌声を上げた。

 

「あぁ、お願い一輝。キスならこっちに・・・・」

 

 アルトリアは首を捻って唇へのキスを求める。一輝は求めに応じ、唇を重ね、舌を絡める。

 

「はむちゅ、ちゅぷ・・・・んん、ちゅぱ・・・・あぁ、一輝ぃ・・・・ふむちゅ、むふん・・・・」

 

 うっとりとした表情で一輝の舌を享受するアルトリア。そんな彼女を見て、一輝は乳首を弄っていた右手を股間へと伸ばし、屹立した淫芯をキュッと摘まみ上げた。

 

「! むふぅん! む、うむうぅんっ!!」

 

 ビクンとアルトリアの身体が跳ね、派手な水音と共にアルトリアは潮を噴いた。

 

「むふぁ・・・・んん、何ですか今の、スゴかったぁ・・・・」

 

 蕩けた表情でアルトリアが呟く。だが一輝の責めはこれで終わりではなかった。休止していた腰の動きを再開して、膣奥目掛けて激しく突き上げる。

 

「ふうぅん!?」

 

 更に左手で乳首、右手でクリトリスを摘まみ、耳たぶを甘噛みし、耳の穴に舌を突っ込んだ。

 

「おひいぃぃっ!? こ、こんなの知らない! 身体中全部気持ち良くて・・・・・・あぁ、おかしくなるぅっ!!」

 

 乳首と膣内とクリトリスと耳の穴、自分の気持ちいい所を四ヶ所同時に責められたアルトリアは、これまでで最大級の絶頂に達した。

 

 プシャアアァァァ───

 

 激しい噴出音と共にアルトリアの達した証がベッドに降り注ぐ。激しい絶頂に意識を手放しかけたアルトリアだったが、更なる衝撃に薄れかけた意識が覚醒した。

 

「おああぁぁっ!!? 待って・・・・待って一輝! イッてる・・・・私イッてるからぁ・・・・あぁん! もう動かないでぇーーーー!!」

 

 絶頂を迎え、まだ下りて来てない所に更なる衝撃を受け、アルトリアは呆気なく絶頂に達した。

 

「んおおぉぉんんっっ!! お願い待って一輝! 私さっきからずっとイッてて・・・・」

 

「分かってる! だが俺はまだなんだ。最後まで付き合って貰うぞ!!」

 

「そんなぁ!?───はあぁぁぁんっ!!」

 

 アルトリアの懇願を無視して一輝が腰を振ると、アルトリアはまた絶頂に達した。というよりさっきからずっとイッてる──所謂イキッ放しに陥ったようで、こうなってはアルトリアには何も出来ない。今はただ、一輝から与えられる地獄のような快楽の中、一輝が射精して果てるのを待つしかなかった。

 

「ああぁ・・・・こんなの・・・・おかしくなって・・・・おあぁぁっ! こんなのダメぇ・・・・貴方の剣じゃいられなくなるぅーーーーっっ!!」

 

 その一言を聞いて、一輝の動きが更に早さを増す。

 

「はっきり言っておくぞ、アルトリア! 確かにお前の戦力は魅力的だ。でも俺が欲したのは“剣”としてのお前じゃない。“女”としてのお前なんだ! それを忘れるな!!」

 

「~~~~~!!」

 

 激しい快楽に打ち震えながら、アルトリアは自分が思い違いをしていた事に気付いた。

 一輝がアルトリアを眷属──女王(クイーン)としたのは、自分を戦力として欲したからだと思っていた。でも一輝は戦力としてではなく、女として欲しいのだと言ってくれた。

 

(ど、どうしよう。嬉しい・・・・!)

 

 その時アルトリアが感じたのは溢れんばかりの歓喜だった。

 

 自分は最も信頼していた騎士と王妃が通じ合っているのを見逃し、その結果起きた内乱で、国を滅ぼしてしまった。

 「王は人の心が分からない」──その騎士は言った。その通りだ。どうすれば良かったのか私には分からない。そんな私を必要としてくれる者など現れないと思っていた。

 でもいた。一輝は私の力ではなく、女としての私自身を求めてくれた。その事が歓喜となり、愉悦となり身体中を駆け巡る。その悦びにアルトリアの肉体はサーヴァントであった時の感覚とシンクロし、完全に目を醒ました。 

 

「ああああっ! もっと・・・・もっと突いて! もっと触ってぇ! この身も心も貴方のものだと、永遠に忘れぬように、私の魂に刻み込んでーーーー!!」

 

 覚醒したアルトリアの肉体は、大量の愛蜜を溢れさせ、一輝を最奥へと誘う。激しい動きのあまり、青いリボンが解けると、結っていた髪も解け、セミロングの金髪が宙を舞う。

 少女の甘い汗が飛び散り、膣内が収縮して、一輝の肉棒をきつく締め付けた。

 

「───ぐ、うあぁっ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

 半ば暴発するかのように、一輝はアルトリアの胎内で爆ぜた。それと同時に一輝はアルトリアの乳首と陰核を摘まみ上げ、後ろから唇を重ねた。

 

「むふうううぅぅぅ~~~~~っ!!❤」

 

 アルトリアの上げた絶叫が一輝の口内で響く。瞳の奥で白い光がチカチカと瞬き、唇を離したアルトリアはそのまま一輝に寄りかかった。

 

「ハア、ハア、か、一輝・・・・・・・」

 

 半ば意識を失いつつも、アルトリアは一輝に話しかける。一輝はアルトリアの肢体を軽く抱きしめる事で続きを促す。

 

「────貴方を愛している」

 

 そう囁いてアルトリアは意識を手放した。

 

「・・・・・・ああ、俺も愛してるよ」

 

 いきなりの愛の告白に驚いたものの、一輝はアルトリアの肢体を強く抱きしめ、彼女の首筋に顔を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ン────?」

 

 不思議な心地良さを感じて、アルトリア()はうっすらと目を開けた。

 

「ん? 起きたかアルトリア」

 

 どれ位意識を失っていたのだろう。気付けば私は一輝に腕枕され、彼に寄り沿って眠っていた。

 

「・・・・私はどれ位眠っていましたか?」

 

「然程でもないぞ・・・・精々十分から二十分って所だな」 

 

 一輝が私の髪を優しく撫でながら答える。心地良さの正体はこれだったらしい。気持ちが良くってつい目が細くなる。

 

「身体は大丈夫か?」

 

「ええ。・・・・ねえ一輝、もう少しだけ続けてくれませんか・・・・?」

 

「はいはい。陛下のお望みのままに」

 

「うむ。苦しゅうない」

 

 次の瞬間、私達は顔を見合わせて吹き出してしまった。

 

 

 

 

「なあ、アルトリア。学園に通ってみないか?」

 

「はい・・・・?」

 

 私が学園に? いきなりの提案に目が丸くなる。

 

「俺達は明日駒王町へ戻る。昼間は黒歌以外の全員が学園に通ってるから、アルトリアもどうかと思ってな」

 

「・・・・・・」

 

 学園・・・・正直興味はあります。聖杯戦争の時も士郎や凜が通う学園に行った事はありますが、すぐ戦闘に突入してしまった。それ所でないのは分かっているが、残念に思ったのも事実だ。

 

「俺としてもアルトリアには平和な日常を味わって欲しいと思ってるんだ。どうかな?」

 

 一輝の心遣いが素直に嬉しかった。

 

「分かりました。私も興味はありますから、学園に通わせて下さい、一輝」

 

「分かった。手配しておく」

 

 こうして私は駒王学園に通う事になった。初めての学園生活に胸を踊らせていると、私はふと、一輝に相談したい事があったのを思い出し、身体を起こした。

 

「どうしたアルトリア?」

 

「ええ・・・・・・実は一輝に相談したかった事が・・・・ありました。これです」

 

 訝しげな一輝の声を背に、私は脱ぎ捨てたスカートのポケットを探り、目当ての物を一輝に差し出す。

 

「これは・・・・・・?」

 

 一輝は私が差し出した七枚のカード──剣士(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)騎乗兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)狂戦士(バーサーカー)──を手にして困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

アルトリア編、いかがでしたか?
ご意見ご感想を聞かせて貰えたら幸いです。

本作のアルトリアはサーヴァントではなく生身の肉体です。
どうしてこうなったか考えてはいますが、どう発表するかアンケートを設けますので、意見を聞かせて下さい。

最後に出て来たクラスカード。
読者からいただいた感想を素にした、アルトリアの新能力です。
感想を下さったオカムーさん、ありがとうございました。効果の程は本編で書きたいと思います。

次回こそはヴェネラナ回です。


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閑話6 ヴェネラナの性教育・アナル編☆☆(ヴェネラナ)



今回は予告通りヴェネラナ編の二回目をお送りします。
ご覧下さい。


 

 

 アルトリアが差し出した七枚のカード。それは聖杯戦争のサーヴァント、七つのクラスが其々描かれていた。

 

「・・・・これをどこで?」

 

「分かりません。気付いたらポケットに入っていて・・・・」

 

 アルトリアにも出処が不明なのか・・・・でも一輝()はこれと同じ物を前世で見た事がある。「Fate」シリーズのスピンオフ作品「プリズマイリヤ」に出て来た“クラスカード”というカードに記された英霊の力を自らの身体に召還する、というアイテムだ。

 それを何故アルトリアが持ってるのか分からないが、悪い気は感じないし、上手く使えば彼女の新しい力になるだろう。

 

「・・・・実際使ってみないと何とも云えんな。取り敢えず近い内に試してみよう。それまでこのカードは使うなよ」

 

「はい」

 

 アルトリアにカードを返して再びベッドに横になる。カードを受け取ったアルトリアもそれに倣った。

 

「流石に疲れた。少し寝かせてくれ」

 

 アルトリア金色の髪を撫でながら俺は囁く。

 

「はい。・・・・お休みなさい一輝」

 

 アルトリアが心地良さそうに目を閉じる。暫くすると小さな寝息が聞こえて来た。俺はそれを聞きながら、微睡みの中に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 夕食の一時間前に目を覚ました俺とアルトリアは、二人で風呂に入り、情交の跡を洗い流してから食堂へ向かった。

 食堂へ行くと昼間のリアス達と同様、肌をツヤツヤさせたアルトリアに皆の注目が集まった。リアス達はジト目を俺に向け、イリナと夕麻は顔を赤くして、俺とアルトリアをチラ見している。

 当のアルトリアと言えば、最初は恥ずかしそうにしていたが、夕食が配膳されるとそれに夢中になり、幸せそうに平らげていた。

 

 

 夕食を終えると談話室に移動し、明日以降のミーティングを行う。ミーティングにはイッセーも姿を見せた。少し疲れているようだが大丈夫か?

 アーシアに外傷はない。未だ目覚めないのは初めての禁手で大量の魔力を一気に消費し、一時的に魔力が尽きたせいらしい。魔力が回復すれば自然に目覚めるだろうというのがグレモリー家の医師の所見だった。

 

「アーシアは心配だけど、いつまでも駒王町を留守にする訳にいかないわ。アーシアが目覚める目覚めないに関わらず、明日の朝には駒王町に帰るから、皆必ず登校する事。いいわねイッセー」

 

「そんな!? 部長!!」

 

 リアスに念を押され、当然のようにイッセーが抗議する。だが、

 

「イッセー、貴方はまずご両親に説明が必要でしょう? アーシアは・・・・そうね、文化祭の準備でうちに泊まっている事にするから、その様に説明して。ご両親に心配かけないようにするのが一番よ。分かるわね?」

 

「・・・・・・はい」

 

 イッセーもご両親に心配をかけたくないのだろう。リアスの説得に渋々ながら応じた。

 

「私からは以上よ。明日は早朝から移動する事になるから、早めに寝る事。い・い・わ・ね、一輝」

 

「ああ、分かった」

 

 今度は俺が念押しされた。流石に今日は疲れた。俺も今夜は大人しく寝るとしよう。 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、チャンス到来ね・・・・今夜が楽しみだわ。ウフフ♪」

      

 そんな一輝を虎視眈々と狙う瞳が妖しく光っていた。

 

 

 

 

 その夜、一輝は珍しく一人で眠っていた。

 

「うぅん・・・・・・・・んん?」

 

 夜中に股間の辺りに妙な感覚がして、一輝の意識が浮上する。

 

「んん、ちゅ、ちゅぷ・・・・うぅん、ちゅ、ちゅぷ、ちゅぷ・・・・ふんむ、うぅん・・・・」

 

 官能的な水音と腰、というか肉棒に走る快感に一輝はある程度事態を察した。

 

(やれやれ・・・・あれだけヤったのに夜這いして来るとは・・・・誰だ?)

 

 うっすらと開いた一輝の目に飛び込んできたのは巨大な尻だった。

 

(・・・・・・・・えー、と)

 

 一輝の思考が停止した。精緻で大人っぽいデザインの赤いショーツに包まれた量感たっぷりなそのお尻は、一輝を誘うかのように揺れている。ショーツの中心部は既に濡れてるのか、色が濃くなっていた。

 

(この尻・・・・見た事があるな・・・・朱乃? 黒歌? 違うな・・・・誰だっけ・・・・? まあいいや。味わってみれば分かるだろう)

 

 まだ完全に覚醒してない中で、一輝はそう断定すると、ショーツの中心部にむしゃぶり付く。

 

「あぁぁんっ! んん・・・・か、一輝さん!?」

 

 一輝は夢中で唇と舌を動かす。湿り気を帯びた股間は甘い臭いを発し、男の欲望を揺さぶる。リアス達とは違う、長い年月をかけてたっぷりと熟成させたかのような濃厚で芳醇な臭いに一輝はこの尻が誰のものかを思い出した。 

 

「───ヴェネラナ様?」

 

「ウフフ、正かーい! ご褒美に飲んであげるから、そのまま射精()しちゃって♪」

 

 ヴェネラナは悪戯が見付かった子供のように笑うと、さっきまでの味わうものとは違い、射精させる為の激しく、ねちっこいしゃぶり方に変化させた。

 

「ン──フフ・・・・ちゅぷ、ちゅぷ・・・・んん、レロレロ・・・・ああぁ❤ 一輝さんのおチンポ、相変わらず素敵だわ・・・・むふん、ふむ、ちゅぷ、んん・・・・・・一輝さん、早く射精()してぇ・・・・一輝さんの精子、いっぱい飲ませてぇ・・・・ぢゅぷぷぷ・・・・」

 

 リアスらとは一線を画す舌遣いに、一輝は一気に頂点へと達した。

 

 ブビュルルル!ビュルル!ブビューーーー!!

 

「──んんんんン! ン❤・・・・・・ゴク、ゴクン・・・・ジュル! んぁぁ・・・・とっても濃厚・・・美味し❤」

 

 大量に放出する白濁液をヴェネラナは当然のように一滴も残さず飲み干した。

 射精の快感に息を荒げながら、眼前でショーツの染みが広がっていくイヤらしい光景に、一輝は唾を飲み込んだ。

 

「ヴェネラナ様・・・・いきなり何を・・・・?」

 

「ンフ❤ だってぇ・・・・一輝さんったら昨夜からあんなに激しいセックスを見せ付けるんだもの。お陰で身体が疼いて仕方がないの・・・・だ・か・ら、責任取って❤」

 

 亜麻色の髪を掻き上げながら、ヴェネラナが妖しく笑う。リアス達にはない大人の女の色気に一輝は息を飲んだ。

 ヴェネラナは一輝の腹に腰を下ろして半回転、一輝を正面から見下ろす。ヴェネラナが身に着けてるのはショーツとお揃いの色っぽいデザインの赤いブラのみ。相変わらず豊満な胸と抱き心地の良さそうな肢体。だが一輝はヴェネラナの身体に以前と違う所を見付けた。

 

(あれ? ヴェネラナ様前よりお腹が引き締まってる? それに腋毛がない・・・・)

 

 以前は弛んでいたお腹が引き締まり、あれだけ生い茂っていた腋毛が綺麗に剃られていた。一輝の視線に気付いたヴェネラナが苦笑して囁く。

 

「あれからね、ダイエットを始めたの・・・・やっぱり抱かれるなら綺麗な私を抱いて欲しいし、だから腋毛も剃ったんだけど・・・・気に入らなかった?」

 

 恥ずかしそうに告白するヴェネラナに、一輝の胸が高鳴る。

 これまでムダ毛があろうがお腹が弛もうが気にしなかったヴェネラナが、一輝に再び抱かれる為にムダ毛を処理し、ダイエットをして綺麗になろうとしていたとは・・・・

 

「キャッ! か、一輝さん!?」

 

 一輝は堪らずヴェネラナを抱きしめていた。

 

「嬉しいですヴェネラナ様。ヴェネラナ様がそこまでして俺を求めてくれるなんて・・・・」

 

 一輝はヴェネラナの深い胸の谷間に鼻先を突っ込み、その柔らかさと甘い臭いを堪能する。

 

「あぁん! もう一輝さんたら・・・・あぁ、そんなにグリグリしちゃ、ダメよぅ♪」

 

 珍しく甘えるような一輝の仕草にヴェネラナの胸が高鳴る。  

 

「ヴェネラナ様。もう挿れたい」

 

「・・・・いいわ。私のここを、一輝さんの硬くて大きいおチンポでいっぱいにしてぇ❤」

 

 ヴェネラナは自らショーツをずらし、濡れた女陰を露出する。ぱっくりと開いた下の唇は「挿れて挿れて」と涎を垂らして、一輝の到来を待ち望んでいた。

 ヴェネラナは一輝を見つめながら、位置を調節してゆっくりと腰を下ろす。ズブズブと音を立てて一輝の剛直はヴェネラナの膣内(なか)に根元まで収まった。

 

「んああぁぁぁんんっっ!!❤・・・・・・あぁ、コレよ・・・・このおチンポがずうっと欲しかったのぉっ!」

 

 あの夏の夜から約一ヶ月、待ち望んでいた一輝の肉棒の感触に、ヴェネラナは歓喜の叫びを上げた。

 

 

 一輝と交わったあの夜から、ヴェネラナの身体に変化が訪れていた。

 永年押し込めていた性欲は一輝との情事で完全に目を覚まし、日常のふとした瞬間にも身体が火照るようになった。

 それを静める為オナニーの回数が増え、今ではほぼ毎日、時には一日に何度もする事さえあったが、それでもヴェネラナの性欲は完全には治まらなかった。かと言って夫では満足出来ないのも分かっていたヴェネラナは、一輝と同程度の張型を用意するも、結局生身の熱さが無くて満足出来なかった。その時になってヴェネラナは自分がもう、一輝の生チンポでなくては満足出来ない事を自覚した。

 そんな時、リアス達が襲撃に合い、傷付いた心と身体を癒す為に逗留する事になった。そしてその日の夜、リアス達は一輝に存分に抱かれ、レイプされかけた心の傷を癒された。翌日の昼には一輝は己が女王(クイーン)であるアルトリアを抱いて絆を深めた。ヴェネラナは使い魔の目を通じてその全てを視ていた。その時彼女の胸に沸き上がったのは嫉妬と羨望だった。

 

(ああ、ズルいわ皆・・・・私も一輝さんのおチンポでメチャクチャにされたい・・・・!)

 

 我慢の限界に達したヴェネラナは、再び一輝に抱かれる為、一輝が一人になる今夜、行動を起こした。

 

 

 自身の最奥の更に奥まで届く長さ、膣壁を圧し広げ、気持ちいい所を圧迫する太さ、何度ヤっても衰えない硬さ、肉棒から伝わる熱さなどそのどれかが一輝以上のモノは今までにもあった。でもその全てを兼ね備えたモノはヴェネラナの永い経験からしても一輝が初めてだった。

 

「ああぁ、コレいい! 一輝さんのおチンポ、私の気持ちいい所に擦れて・・・・んんぁ、奥に当たって・・・・はぁぁん、気持ちいいーーーー!!」

 

 久し振りに感じる痺れるような快感に、ヴェネラナは亜麻色の髪を振り乱し、激しく腰を動かした。

 極上の膣肉の柔らかさと絶妙な締め付けに一輝は一気に限界へと駆け上がる。

 

「うぅっ、ヴェネラナ様、もう───!」

 

「いいわ! 射精()して一輝さん! 一輝さんの熱い精液、私の膣内(なか)にいっぱい射精()してぇーーーー!!」

 

 ブビュルル!ブビュ!ブビューーーー!!

 

「あっ、ああっ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~っっ!!❤」

 

 胎内に拡がる精液の熱さに、ヴェネラナは恍惚の表情を浮かべる。待ち望んだ快感にヴェネラナは満足そうに深い息を吐く。

 

「あぁ・・・・・・ウフフ♪ スゴかったわ・・・・でも一輝さんはまだ満足してないみたいね・・・・・・どうする?」

 

 射精したというのに未だ硬さと大きさを損なわない肉棒の感触に、ヴェネラナはうっとりとした表情で訊ねる。気怠げに髪を掻き上げるヴェネラナの色気に息を飲んで、一輝は再び腰を動かした。

 

 

 

 

 

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーー!!

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!・・・・・・・・んぁぁ、また、いっぱい出て・・・・」

 

 ヴェネラナは後背位の態勢で、本日三度目の膣内射精を享受した。ヴェネラナの膣内はもう満杯で、入り切らなかった精液が溢れ、シーツの上には白い池が出来ていた。

 だが一輝の肉棒は未だ雄々しく屹立し、ヴェネラナの肉体を求めていた。

 

「ハア、ハア・・・・んもう、一輝さんったら、まだ満足してないのね。だったら───こっちでしてみる?」

 

 ヴェネラナは肉棒を突っ込まれたまま、自ら尻たぶを左右に開き、赤褐色の尻穴を一輝の眼前に晒す。その途端に独特のすえた臭いが鼻を刺した。

 処理し切れなかったのか、ヴェネラナの尻穴の周りには亜麻色の恥毛が残っていて、その様が一輝の興奮を煽る。

 

「一輝さんってお尻の穴に指や舌を突っ込んだりするでしょう? だから興味あるんじゃないかなって・・・・ウフフ、その顔は正解みたいね」

 

 興味の有無を問われれば、当然興味はある。ヴェネラナの提案は一輝にとって渡りに船であり、ヴェネラナもまた、自分が一輝の初めての相手となれる事に昏い悦びを覚えていた。

 

「本当は事前に浣腸して綺麗にしたり、尻穴を拡張したりしなきゃ駄目なんだけど、今日は準備して来たから、もう挿れても平気よ」

 

 一輝はヴェネラナの胎内から肉棒を抜くと、付着した精液と愛液を潤滑液代わりにお尻の割れ目に塗りたくる。一輝はヒクヒクと収縮する尻穴に亀頭を添えると、ゆっくり挿入した。

 

「ふぐうぅっ!? ううう・・・・んん、んあぁっ!!」

 

 膣よりも狭い尻穴を一輝の肉棒が掘削する。ヴェネラナの尻穴は拡張済みとは言え肉棒をきつく締め付けながら、奥へと迎え入れた。

 

「ふぅぅん!・・・・・・は、入ったぁ・・・・!あぁ、これダメ・・・・こんな太いの、んん、キツい・・・・」

 

 拡張済みと言ってもやはりキツいのか、ヴェネラナは苦悶の声を上げる。

 本来の用途と違う使われ方をしている尻穴は、抗議するかのように一輝の肉棒をキツく締め付ける。

 一輝は肉棒を挿入した状態でヴェネラナの様子を窺う。呼吸が落ち着いたのを見計らって、今度は肉棒をゆっくりと引き抜いた。

 

「んんん!? んひいぃあああぁぁぁっっ!!❤」

 

 一輝が肉棒を引き抜いた途端、ヴェネラナは絶叫を上げた。一輝の肉棒が引き抜かれる感触は、ヴェネラナに排便する時の快感を想起させた。

 排泄行為は人が一番最初に覚える快楽だと言われている。アナルセックスで肉棒を引き抜かれる感覚は、太い便を排泄するのと似た快感をヴェネラナに与えていた。そして、

 

「んんん!? ま、また入って来るうぅっ!!」

 

 再び挿入されるとヴェネラナは苦悶の声を上げ、

 

「はぁぁん! チンポを抜かれるの気持ちいいのぉーーーーっ!!❤」 

 

 引き抜かれると、その快感に嬌声を上げた。

 挿入の苦しみと引き抜かれる快感が交互にヴェネラナを襲う。次第に速くなる腰の動きに、ヴェネラナは苦しいのか気持ちいいのか分からなくなっていく。やがて境界が曖昧になるにつれ、ヴェネラナの感覚は苦しみさえも快感に変えていった。

 

「あひぃ! んおぉ! お尻ぃ、ケツ穴が気持ちいいのぉっ!❤ あぁぁん、一輝さんのおチンポで、ヴェネラナのケツ穴、マンコにされちゃったのぉーーーーっ!!❤」

 

 快楽に支配されたヴェネラナは、その美貌を汗と涙と鼻水に塗れさせて絶叫する。狂ったようなその様に、普段の貴婦人然とした美しさは見る影もなかった。

 一方、一輝も初めてのアナルセックスに異様な興奮を覚えていた。

 膣穴とは違う尻穴の感触や肛門括約筋の締め付けに最初は戸惑いを覚えたが、ヴェネラナが感じているのを見て、これでいいんだと安心して腰を動かした。

 ヴェネラナの様子を見て挿れる時は一気に、引き抜く時はゆっくりとスピードを変えたり、その量感たっぷりの尻肉を撫で回したりして初めての尻穴の感触を一輝は楽しんだ。やがて高まる尻穴の締め付けに、最後の時を迎えようとしていた。

 

「ぐうっ、ヴェネラナ様、そろそろ───」

 

「んあああっ! だ、射精()してぇ! 一輝さんの精液で、ヴェネラナのケツマンコいっぱいにしてぇーーーーっっ!!」

 

 ブポッ、ブポッと下品な音を立てて尻穴が肉棒を飲み込んでいく。その光景を目に焼き付けながら、一輝はこの日最後の精を放った。

 

 ブビュルルル!ビュルル!ブビューーーーッッ!!

 

「おほほぉぉぉーーーーんんっっ!!❤」

 

 爆発するような射精に、ヴェネラナの尻穴がキュウっと収縮する。雪崩れ込む白い濁流の熱さにヴェネラナは恍惚の表情を浮かべ、そのままベッドに崩れ落ちた。

 一輝は欲望の全てを尻穴に吐き出すと、ゆっくりと肉棒を抜いた。そして、

 

 ブブゥッ~、ブブッ、ブフゥッ!

 

「んん───あぁ・・・・・・❤」

 

 下品な音を立てて、ヴェネラナの尻穴から白濁液が噴出するのを呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「んんん~、満足! ウフ、とっても素敵だったわ、一輝さん❤」 

 

「はあ・・・・・・」

 

 前にも後ろにも注いで貰ってヴェネラナ()はすっかり満足したけど、反対に一輝さんは何だか沈んだ模様。あれだけ私とシておいて満足してないとは思えないから、大方夫やリアスに申し訳ないとか思ってるんでしょうね。まぁバレても平気なんだけど、一応釘を刺しておきましょうか。 

 

「一輝さん? 罪悪感に負けてリアスに話したりしちゃ駄目よ。今夜の事は二人だけのヒ・ミ・ツ❤ 分かった?」

 

 私が念を押すと、一輝さんは素直に頷いた。よしよし、いい子ね。

 私は微笑みを浮かべると、ベッドの下に散らばった衣服を着ける。そして横になっている一輝さんの頬を撫でて、唇を軽く重ねた。

 

「それじゃあまた(・・)ね、一輝さん❤」

 

「は?・・・・・・え!?」

 

 一輝さんの驚く顔に思わず笑みが深くなる。リアスには悪いけど、折角見付けた理想のチンポだもの。たまに相手をして貰う位いいわよね♪

 私は呆然としている一輝さんを尻目に、次はいつにしようかと考えながら、軽い足取りで部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ヴェネラナの性教育を受けて一輝はアナルセックスを覚えました。
次回からは他のヒロイン達にも魔の手が伸びるでしょう。
因みにですが、ヴェネラナはヒロイン枠には入りません。あくまでセフレ枠になりますので悪しからず。

次回は皆さんお待ちかねのグレイフィア編です。お楽しみに。



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閑話7 グレイフィアの決意☆☆(グレイフィア)



遅くなりましたが、閑話7をお送りします。
予告通り、皆大好きグレイフィア編の二回目です。
ご覧下さい。


 

 

 それはあの夏の夜から暫く後の事───

 

 

 

 室内灯の明かりに照らされて、一組の男女が絡み合う。腰を打ち付ける音が響く中、男の苦し気な呼気が洩れた。

 

「く、うあぁ、で、出る!」

 

 ビュク! ビュクッ!!

 

「ん・・・・・・」

 

 男─サーゼクスの汗が女─グレイフィア()の豊かな胸に零れ落ちる。

 

「ハア、ハア、良かったよ、グレイフィア」

 

 荒い息を吐きながら、サーゼクスは熱の籠った瞳で私を抱きしめる。

 

「ええ、私も・・・・」

 

 私はサーゼクスの背中に手を回しながら、彼に見られぬよう空虚な瞳を天井に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 深夜、眠れずに身体を起こした私は、隣で眠るサーゼクスを見つめ、溜め息を吐いた。

 

「ハア・・・・どうして? 不感症は治ったと思ったのに・・・・一輝さんとの時はあんなに感じたのに・・・・私の身体、どうしちゃったの?」

 

 久し振りにサーゼクス()から誘われ、私は床を共にした。不感症が治ってから初めての行為に私は胸を弾ませていたけど、結果は前と同じ。触られたり挿入されたり感触はするのに、性的な快感は皆無で、膣内射精されても生暖かい感覚がお腹に広がるだけで、気持ちいいなんてとても思えなかった。

 今までは不感症の私が悪いのだと思っていたけど、もしかしてサーゼクスにも問題があったのかも・・・・

 

「そういえば一輝さんはもっと、こう・・・・」

 

 私はふと一輝さんとの一夜を思い出す。

 

(あの時の一輝さんは優しく身体に触れて、私の気持ちを高めて・・・・フフ、そう言えば私のおっぱいは最高だって褒めてくれたっけ。それから私の膣内を丹念に探って、私の感じる所を見付けて、初めての絶頂に導いてくれたのよね・・・・それからあの硬くて大きなおチンポで沢山気持ち良くして貰って、セックスの快楽を私に教えてくれた・・・・ん❤)

 

 不意にクチュっという湿った音が私の耳に届く。いつしか私の指は陰部を這い回り、イヤらしい水音を立てていた。

 

「ああ、はあ・・・・んん、どうして? どうして私のアソコ、こんなに濡れてるの・・・・?」

 

 サーゼクスとしていた時は申し訳程度にしか濡れなかったのに・・・・一輝さんとの情事を思い出しただけでこんなに濡れるなんて・・・・

 私は我慢が出来なくなって虚空に手を伸ばし、亜空間収納からある物を取り出した。それはあの夜処分しなかった、一輝さんの精液がたっぷり入った使用済みのゴムだった。

 たっぷりと重い水風船のようなそれの結んだ口を(ほど)くと、途端に鼻を突く濃密な精臭が飛び込んで来る。

 

「んん!?───あぁ、凄い臭い・・・・臭くて鼻が曲がりそう・・・・・・でも・・・・スンスン、あぁ、どうして・・・・? この臭いを嗅いでると身体が熱くなって・・・・」

 

 私はゴムを傾け、胸の谷間からお腹へと中身を垂らす。ドロリとした白い粘液が身体にかかり、温もりと臭い、粘り気のある感触に私の背筋がゾクゾクと震えた。

 

「んあぁ、違う・・・・・・量も熱さも臭いも全然違う・・・・! あぁ、コレいい・・・・コレ、もっと欲しい・・・・!」

 

 私は身体に精液を塗りたくると、亜空間収納からもうひとつゴムを取り出し、口を解くのももどかしく、そのまま握り潰した。

 パチンという軽い破裂音がして、まるで射精されたかのようにまだ熱い精液が下腹部に広がる。私はそのまま精液を膣口に塗りたくった。

 それだけで私の膣はキュウっと収縮し、中から熱い淫蜜が溢れ出す。

 

「ああ! ウソ!? これだけなのに・・・・これだけなのに私・・・・い、イッちゃうぅ~~~~!!?❤」

 

 サーゼクス()とのセックスではイケなかったのに、一輝さんの精液を浴びただけで私は簡単にイッてしまった。

 

(嗚呼・・・・私、どうしたらいいんだろう・・・・)

 

 今の行為で自分が何を欲しているのか、私は自覚してしまった。

 でもそれは一夜の夢だから許された事。決して求めてはいけない背徳の感情であり、大切な人達を裏切る行為でもあった。

 

「・・・・こんな事なら、不感症のままで良かった・・・・・・」 

 

 求めてはいけないなら、セックスの快楽なんて知らない方が良かった。

 私は身体にかかった精液の残滓を掬うと、名残を惜しむかのように口元へ運んだ。

 

 

 

 

 

 

 それから私は、己の欲望を内に隠したまま日々を過ごしていた。

 変わらずサーゼクスの補佐をして、グレモリー家のメイドとして働き、ミリキャスを教育する毎日を過ごす中、サーゼクスに仕事を頼まれた一輝さんと顔を合わせる事もあった。一輝さんは一夜だけの関係と割り切っているのか、私と接しても平然としていたが、私は無表情を取り繕うのに必死だった。  

 

 そんなある日、後に『ディオドラの乱』と呼ばれる事件が起こった。

 リアス達グレモリー眷属も戦いに巻き込まれたけど、新戦力であるイリナさんやレイナーレ、一輝さんの女王(クイーン)アルトリアさんらの活躍もあり、全員無事に帰還した。 

 そしてその日の夜、一輝さんの部屋に忍び込む彼女達を見た私は使い魔を放ち、視てしまった。

 

 

 ──紅髪を振り乱し、膣内射精(なかだし)を懇願するリアスを。

 

 ──私より1カップ大きな胸でパイズリして、精液を浴びてうっとりする朱乃さんを。

 

 ──普段の清楚さが嘘のように、一輝さんの上で狂ったように腰を振る祐美さんを。

 

 ──普段のクールさの欠片もなく、嬌声を上げるゼノヴィアさんを。

 

 ──小さな口一杯に肉棒を頬張り、出された精液を美味しそうに飲み干す白音さんを。

 

 ──膣内射精(なかだし)されて、この世のものとは思えない絶叫を上げる黒歌さんを。 

 

 

 どの娘も無我夢中で一輝さんと交わり、膣内や胸、口内や顔、身体中に一輝さんの精液を浴びて恍惚としている。彼女らの表情は快楽に染まり、女に生まれた悦びに溢れていた。

 

 そんなものを見せ付けられた私は───

 

「ふう、ふむぅ、うぅ、ふぅん!」

 

 長いスカートを捲りあげ、その端を噛み締め声が漏れないようにした私は、夢中で股間に指を這わせる。

 

(あぁ、いいなぁ・・・・リアス達は何度も挿れて貰えて・・・・私も・・・・私も挿れて貰えたら・・・・)

 

 クチュクチュと濡れた音が誰もいない廊下に響く。壁に凭れながら私は人差し指と中指を膣内に挿入した。

 

「ふぅん、むぅ・・・・むふん、ううぅ!」

 

 指を膣内に挿れてグチュグチュと音を立てるように掻き回すと、その快感に腰がガクンと落ちかけた。

 

(き、気持ちいい・・・・でもコレじゃない・・・・もっと硬くて大きな・・・・あぁ、この指が一輝さんのチンポだったらもっと・・・・!)

 

 使い魔の視界ではリアス達が一輝さんにお尻を向けて一列に並び、順番に後ろから挿入されていた。

 膣内に射精され、次々と崩れ落ちる彼女達の表情は快楽に蕩け、とても幸せそうに見えた。

 

(あぁ・・・・私も・・・・私も一輝さんの女になったら、あんな風にして貰えるのかしら・・・・?)

 

「──ふうぅぅぅんんっっ!!❤」

 

 最後の黒歌さんが膣内射精されるのと同時に、私も絶頂する。立っていられなくなり、私の身体は股を開いたまま、ズルズルと廊下に滑り落ちた。

 

「ハア、ハア、んん・・・・・・私、どうしたらいいの・・・・?」

 

 オナニーの後の虚しさを感じながら、私は指に付いた愛液を舐めて、誰にともなく問いかけていた。

 

 

 

 

 

 

 翌朝(といっても昼過ぎだが)起きて来たリアス達は肌をツヤツヤさせ、美しさと色っぽさが一層増していた。

 更にはその日の夕飯時にはアルトリアさんが、翌朝にはあろう事かヴェネラナ(奥様)までが同じように美しくなっていた。

 流石に看過出来ず、リアス達を見送った後、私は奥様を問い詰めた。

 

「どういうおつもりです、奥様!?」

 

「どうって何が?」

 

 肌をツヤツヤさせ、昨日よりも美しくなった奥様は動じた様子も見せず、訊き返した。

 

「奥様・・・・昨夜奥様はどこにいらっしゃいましたか?」

 

 私が訊ねると奥様は艶然とした笑みを浮かべ、

 

「分かってるでしょ? 一輝さんの部屋よ。あぁ、勿論セックスしたわよ」

 

 さも当然とばかりに言い切った。

  

「奥様・・・・何を考えているのですか!? 一輝さんはリアスの婚約者、貴女の義理の息子となるんですよ!? そんな人と寝るなんて、グレモリー家の醜聞(スキャンダル)になります!」

 

「あら、そうかしら?」

 

 感情的になる私と反対に奥様は到って冷静だ。何故だろうと訝しく思っていると、奥様は余裕の表情で説明を始めた。

 

「貴女も知ってるんじゃないかしら。古い貴族の制度に“臨時教育制度”というのがあるのを」

 

「それは───」

 

 確かに聞いた事がある。但しこの場合、教育は教育でも性教育の事だ。

 貴族にとって最も重要なのは子孫を残す事。でありながら悪魔の出生率は低い。その低さを補う為、経験豊富な貴族の婦人が結婚適齢期の男子に対して教育──要するにセックスの相手をして、子作りに興味を持たせようという、大戦後の人口が激減した時に設けられた制度の筈だ。

 けど、現在では形骸化した制度で、実際に行使している貴族なんてほとんどいない。

 

「その通りよ。でもそんな形骸化した制度でも、私が一輝さんと寝る口実には充分だわ」

 

「───!!」

 

 まさかそんな抜け道があったとは・・・・形骸化した古臭い制度を上手く利用し、自分の望みを叶える奥様の手腕は流石と言わざるを得ない。  

 呆気に取られる私に、奥様は楽し気な視線を向けた。

 

「それにこの制度・・・・相手を務めるのは私だけ(・・)とは限らないわ。そうでしょう、グレイフィア」

 

「!!?」

 

 ドクンと心臓が跳ねた。奥様はまさか・・・・私にまで一輝さんと寝る口実を与えようというの!?

 艶然とした笑みを浮かべて、奥様が私の耳元で囁く。

 

「グレイフィア、貴女がどんな状態か私には手に取るように分かるわ。だって昨日までの私と同じだもの。性的に抑圧されて来た私達のような女にとって、一輝さんとのセックスは麻薬と同じよ。一度嵌まったらもう抜け出せないわ」

 

 奥様、いえお義母(かあ)様の言葉が私の心に染み渡る。

 お義母様はパートナーが淡白であった為性欲を持て余し、私は不感症故にセックスの良さが分からなかった。そんな私達の前に一輝さんのような男性が現れたのは幸か不幸かどちらなのでしょう。

 いずれにしても私は選択を迫られていた。義母(はは)の誘いを蹴って夫への想いを貫くか、義母の誘いに乗って肉欲に溺れるか───

 

 

 

 

 

 ───答えはもう決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の午後、学園が終わるとすぐにリアス達がやって来た。

 アーシアさんが未だ眠ったままだと知ると落胆していたが、それならば仕方がないと割り切って、其々の時間を過ごしていた。

 アーシアさんを見舞う者、修行に励む者、のんびりと過ごす者などがいる中、一輝さんはリアスと共に報告書をまとめていた。

 何らかの事件が起きて眷属が巻き込まれた時、(キング)が事件の詳細を報告書にまとめて魔王に提出しなければならない。リアスは勿論一輝さんも今では新興の貴族、新人の(キング)として報告書を提出する義務があるのだ。

 二人の傍らには女王(クイーン)として朱乃さんとアルトリアさんが手伝っているが、リアス達はともかく、一輝さん達は不慣れな書類仕事に悪戦苦闘している。

 私は一輝さん達の手伝いとして図書室に同行していた。

 

「リアス、これで最後です」

 

「ありがとう朱乃・・・・うん。よし、終わったわ。グレイフィア、お兄様に提出してちょうだい」

 

 当然のようにリアス達が先に作業を終えた。私は書類を受け取り、リアス達を労う。

 

「了解しました。お疲れ様です、お嬢様」

 

「一輝は・・・・まだかかりそうね?」

 

 一輝さんとアルトリアさんは資料を開きながら頭を抱えていた。

 

「一輝・・・・私はもう駄目です」

 

「泣き言言うな、アルトリア。そもそもお前王様だったんだから書類仕事位経験あるだろ?」

 

「うう、私の執事でもあったベディヴィエール卿が有能だったから、私は決済するだけで良かったんです・・・・」

 

「お前なぁ・・・・・・」

 

 そんな二人のやり取りを呆れつつ見ていたリアスが、溜め息をひとつ吐いた。 

 

「仕方がないわね。貸してみなさい一輝、手伝ってあげるわ」

 

 リアスの助けに一輝さんとアルトリアさんが喜色を上げる。でも私が待ったをかけた。

 

「お待ち下さいお嬢様。一輝さんはもう眷属を持った一人の王なのです。今後の事を考えて、手出しは控えて下さい」 

 

「そう───それもそうね」

 

「一輝さん達は私にお任せ下さい。厳しく指導して、報告書位書けるように仕込んでみせます」

 

 喜色を上げていた一輝さんとアルトリアさんの表情が、一瞬で絶望に染まった。

 

「そうね・・・・一輝、アルトリア、これも試練よ。頑張ってちょうだい!」

 

「私達は他にもしなくちゃいけない事があるので、お先に失礼しますね」

 

 リアスと朱乃さんが同情するように声をかけ、図書室を出て行き、後には私達三人だけが残った。

 

「さて、作業を再開しましょう。大丈夫、私が指導すれば報告書なんてすぐに終わります。多少厳しいかも知れませんが、お二人共頑張って下さい」

 

「「・・・・よ、よろしくお願いします・・・・」」

 

 

 

 

 

「はい、お疲れ様でした」

 

「「お、終わったぁ・・・・」」

 

 私の指導の賜物でしょうか、一時間程で報告書は完成しました。疲れたのか、一輝さんとアルトリアさんは机に突っ伏しています。

 

「一輝・・・・今後眷属には書類仕事が得意な者を入れるべきだと進言します」

 

「・・・・同感だ」

 

 そんな二人の様子に苦笑が洩れる。

 

「では私は資料を片付けて来ますね」

 

 私が資料として使った本を片付けに行こうとすると、

 

「あ、手伝います。アルトリアはもう少し休んでていいぞ」

 

「すいません。お言葉に甘えさせて貰います・・・・」

 

 アルトリアさんはまだ突っ伏したまま。騎士王の意外な弱点見たり、という所でしょうか。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

 一輝さんが本の山を軽々と持ち上げました。

 

 

 

 

 それから私達は本の片付けをしました。一輝さんが運んで私が本棚まで案内して片付ける、というのを繰り返し、残り三冊になった時でした。

 

「グレイフィアさんにはお世話になったから、何かお礼をしたいんですが、何がいいですか?」

 

 突然そんな事を訊ねて来ました。

 

「お礼・・・・ですか?」

 

「はい。俺に出来る範囲でしたら何でもいいんですが、何かありませんか?」

 

 何でも、と言われて心臓がドクンと跳ねた。思わず唾を飲み込み訊き返した。

 

「何でも・・・・いいの?」

 

「はい。俺に出来る事なら」

 

「大丈夫よ、貴方にしか出来ない事だから」

 

 私の瞳が妖しく光った。

 

 

 

 

 

 

「ちょっ───グレイフィアさん!?」

 

「駄目よ。大人しくしていて」

 

 持っていた本が落ちてそれなりに重い音が響く。一輝を本棚に凭れさせたグレイフィアはその場にしゃがみ込み、ズボンのジッパーを下ろすと、まだ柔らかい一輝の逸物がポロリと零れ落ちた。

 

「あら? ウフフ、可愛い・・・・コレがあんなに凶悪になるなんて、信じられないわね・・・・」

 

 グレイフィアは逸物を宝物のように優しく撫で、鼻を鳴らして臭い嗅ぐ。グレイフィアの繊手に撫でられ、一輝の逸物は屹立し始める。

 

「グレイフィアさん!? いきなりどうしたんです!?」

 

「・・・・いきなりじゃありません。私はずっと一輝さんとこうしたかったんです」 

 

 戸惑う一輝を尻目にグレイフィアは逸物を扱き始める。その刺激に一輝の逸物は肉棒と呼べるまでにそそり勃ち、その威容にグレイフィアは色っぽい溜め息を漏らした。

 

「はあ❤・・・・素敵よ一輝さん。それじゃあ───あむ」  

 

「うぅ、ああぁ、グ、グレイフィアさん!」

   

 グレイフィアは肉棒を咥えると指と舌、唇を巧みに使い、肉棒を舐め、しゃぶり、吸い、扱く。

 

「ふむぅ、ふん、ちゅ、んん・・・・ジュル、ングムグ・・・・んん・・・・レロレロ・・・・んふぅ、んむぅ、んん・・・・チュウチュウ・・・・ズズズ、ムグムグ・・・・チュポン!・・・・んあぁ・・・・ウフフ、すっかり大きくなって・・・・先っぽからお汁が零れてるわ。気持ちいい? 一輝さん」

 

 一輝の肉棒はフル勃起し、先端からは先走りが零れていた。グレイフィアの唾液でコーティングされた肉棒は一輝が感じているのを示すかのように、ビクビクと震えていた。

 

「くあぁ・・・・き、気持ちいいです・・・・」

 

「ウフフ、嬉しい♪・・・・一輝さん、私の口でもっと気持ち良くなって」 

 

 一輝を気持ち良くしている事に気を良くしたグレイフィアは、更に激しく肉棒を責めたてた。

 肉棹に舌を這わせ、亀頭を唇で扱き、先走りを啜り、袋に手を這わせ、睾丸を転がす。グレイフィアの激しい責めに、一輝は限界に達しようとしていた。

 

「うあぁ!? グレイフィアさん、もう出る───」

 

 一輝の声にグレイフィアはスピードを上げる事で答える。

 

「ぶふぅ!むふぅ!ふぅん!うむぅ!」

 

 本能を直撃するような淫らな水音が響く中、一輝はグレイフィアの銀髪を掴み、激しく腰を打ち突ける。そして、

 

 ブビュルルル!ブビュル!ビュルーーーー!!

 

 グレイフィアの口内で弾けた。

 

「ブブゥ!?ブブ、ンフぅ・・・・・・んん・・・・ゴクン、ゴクン・・・・んあぁ、スゴい濃い・・・・ウフ、いっぱい出してくれたのね。気持ち良かった?」

 

「は、はい・・・・・・」

 

 精液で汚れた口元をハンカチで拭うグレイフィアを見ながら、一輝は尻餅をつくようにその場に崩れ落ちた。そんな一輝の前にグレイフィアは立ち、スカートを捲り上げる。

 

「見て一輝さん。私のアソコ、こんなになっちゃって・・・・だからお願い・・・・一輝さんの肉棒、ううん、おチンポで栓をして欲しいんです・・・・」

 

 グレイフィアの股間を見つめ、一輝は息を飲んだ。精緻なデザインの高級そうな下着は淫蜜に濡れて、銀色の恥毛と女性器の輪郭が透けて見える。女、いや雌の発情した臭いが鼻に飛び込み、頭がクラクラする。

 今すぐ突っ込みたい衝動を堪えて、一輝はグレイフィアに話しかけた。 

 

「・・・・駄目ですよ。グレイフィアさんにはサーゼクス様というご主人がいるじゃないですか。こういう事をするならそっちを誘うのがスジでしょう?」

 

 一輝の当然の指摘にグレイフィアは顔を曇らせる。

 

「・・・・駄目だったの」

 

「は?」

 

「あの後不感症が治ったと思ってサーゼクスと寝たけど、ちっとも感じなかったの・・・・けど、貴方と寝た時の事を思い出すだけでアソコは濡れるし、自分でするとちゃんと気持ち良くなって・・・・でも指だけじゃ物足りなくて・・・・・・私の身体はおかしくなってしまった。一輝さん、貴方じゃないと感じない身体になってしまったの! だからお願い、私とセックスして!!」

 

 グレイフィアの告白に一輝の心臓がドクンと跳ねた。

 あの夜ヴェネラナから頼まれたのは、性的な欲求不満を抱えているグレイフィアを抱いて、その心を満たして欲しいという事だった。

 だからあの夜、グレイフィアを不感症を知って、その解消に全力を注いだ。それはグレイフィアの力になりたいという純粋な思いもあったし、グレイフィアという極上の女を抱いてみたいという下心もあった。

 一夜のいい思い出と割り切り、それ以降顔を合わせても意識しないよう努めていたというのに、彼女はずっと自分を意識していたという。それは素直に嬉しいと思うが、グレイフィアは人妻、それも魔王のだ。それなのに彼女の求めに応じて再び抱いてしまったら、サーゼクスやミリキャス、何よりリアスに対する裏切りにならないだろうか?

 

(・・・・俺は、どうすればいいんだ・・・・・・?)

 

 と、頭を悩ませる一輝の唇にグレイフィアの唇が重なった。

 

「ン───ちゅぷ・・・・一輝さん、難しく考えないでひとつだけ答えて・・・・私が欲しくない?」

 

 そう訊かれて一輝は自分に問いかける。

 

(違う・・・・どうすればいいかじゃない。俺がどうしたいかだ! 俺は・・・・彼女をどうしたい? 彼女とどうなりたい?・・・・・・俺は、俺は彼女が、グレイフィアが欲しい! 身も心も征服して俺の女にしたい! そうだ、あの夜を忘れられなかったのは俺も同じだ!) 

 

 一輝の脳裏にグレイフィアという冥界でも一、二を争う美女と過ごした官能の一夜が甦る。

 意を決した一輝は、今度は自分からグレイフィアに唇を重ねた。

 

「んん!?・・・・・・ん、ちゅ、あぁ、一輝さん・・・・」

 

「───ちゅぷ、グレイフィアさん・・・・いや、グレイフィア。俺は貴女が欲しい。貴女を俺の女にします」

 

 一輝がはっきりと宣言する。グレイフィアは一瞬驚いた顔をすると、幸せそうな笑顔を浮かべた。

 

「───はい。私を貴方の女にして下さい」

 

 

 

 

 

 

「グレイフィア、後ろを向いて」

 

「はい。・・・・こうですか?」

 

 グレイフィアは言われた通り一輝に背を向けると、本棚に両手をかけてお尻を突き出す。

 一輝がグレイフィアのスカートを捲り上げると、途端に濃密な雌の臭いが辺りに漂う。グレイフィアの秘裂からは今も滾々と新しい淫蜜が湧き出ていた。

 

「こんなに濡らして・・・・そんなに欲しかったのか?」

 

 下着の上からすっかり浮き出た秘裂に指を這わせ、一輝が訊ねる。

 

「ああ❤ はい、欲しかったの・・・・だからグレイフィアのグチョグチョに濡れたイヤらしいオマンコに、一輝さんの逞しいおチンポで栓をして下さい!」

 

 下着の上から膣口に指を挿れて、再び一輝が訊ねる。

 

「今挿れたら、これ以降貴女を俺の女として扱うぞ? 本当にいいのか?」

 

 一輝はグレイフィアに最後通牒を突き付ける。でも、グレイフィアは揺れなかった。

 

「あぁ・・・・はい、私の身体、もう貴方でしか感じないから・・・・私はもう一輝さん、ううん、一輝の女です。だからお願い、一輝専用に変えられたグレイフィアのオマンコ、一輝のおチンポでいっぱいにして!」

 

 一輝は指を抜いて、付着した淫蜜をペロリと舐めると、グレイフィアの下着をずらして、いきり勃った肉棒を一気に突っ込んだ。

 

「! ふ、う゛、ううぅぅんんっっ!!❤」

 

 灼けた鉄の棒を挿れられたような衝撃に、グレイフィアは一気に絶頂に達し、嬌声を上げる。だが寸前で一輝の手が口を覆い、声が漏れるのを辛うじて防いだ。

 

「フゥーッ、フゥーッ」 

 

 暫く荒い息を吐いていたグレイフィアが落ち着いたのを見計らい、一輝は耳元で囁いた。

 

「駄目だよグレイフィア。ここにはアルトリアもいるんだから声を出さないように、いいね?」

 

 言われてグレイフィアはハッとした。一輝に挿れて貰う事ばかりに傾注して、アルトリアの存在をすっかり忘れていたとは、我ながら恥ずかしい。グレイフィアは羞恥に頬を染めると、コクコクと頷いた。

 グレイフィアが頷いたので、一輝は改めて動き出す。ゆっくりと亀頭が抜ける寸前まで引き抜いて、一気に奥まで突き挿れる。それを繰り返し、グレイフィアの膣内(なか)を肉棒に馴染ませる。

 

「ふう、ううん、むぅ、ふぅん!」

 

(嗚呼・・・・コレよ・・・・・・熱い肉の塊で身体の中心を貫かれるこの感触! たった一夜で私を虜にしたこの快楽! あぁ、やっぱり・・・・私はコレをずっと求めていたんだわ!)

 

 グレイフィアは必死に口元を押さえながら、歓喜に身体を震わせる。

 一輝が後ろからメイド服のボタンを外すと、グレイフィアの豊胸が零れ落ちる。一輝はブラを捲り上げて、そのおっぱいを揉み始める。

 

「うぅん! あん、んん・・・・ダメよ一輝、膣内(なか)を突くだけじゃなく、おっぱいまで弄られたら・・・・き、気持ち良くて声が出ちゃう!」

 

 だが一輝はグレイフィアの懇願を無視しておっぱいを揉んだり、勃起した乳首を指で弾いたりして弄びながら、腰を打ち付けるスピードを上げた。

 

「アン❤ あぁ、そんなに奥まで突いたら・・・・あぁん、ダメェ・・・・!」

 

 待ち望んだ肉棒の感触にグレイフィアの肉体は歓喜に包まれ、速くも限界を迎えようとしていた。

 それは一輝も同じで、二人は息の合った動きで腰と尻を打ち合い、頂点へ駆け上がっていた。その時、

 

「一輝? どこにいるんです?」

 

「「─────!!」」

 

 突然、アルトリアの声がした。

 

 グレイフィアは咄嗟に息も漏らすまいと、右手で口を押さえた。

 

「アルトリア? どうしたんだ?」

 

 一輝はこれ以上アルトリアを近付けまいと、内心の焦りながら少し上擦った声を上げる。

 

「? いえ、片付けに随分時間がかかるなと思って。私も手伝いましょうか?」

 

「! いや、大丈夫だ! 置場所が分からない本があって少し手間取っただけだよ。──く、も、もう終わるから心配はいらない!」

 

 一輝が言い繕う間にもグレイフィアの膣は動きが止まった事に抗議するように締め付けを増す。

 

「そうですか。所でさっきからグレイフィア殿の声が聴こえませんが・・・・?」

 

「は、はい?───私ならここにいますが・・・くぅん!・・・・な、何かご用ですか?」 

 

 グレイフィアも今の状況を知られまいと、必死に堪えて誤魔化そうとする。

 

「ああ、いえ・・・・資料を用意したのがグレイフィア殿だったので、置場所が分からなくなるなんてあるのかと思いまして」

 

「それは失礼しました。ふぐぅ!・・・・私もすぐ行きますから、アルトリアさんは先にお戻りを・・・・」 

 

「そうだな! もうすぐ夕食だし・・・・あ、アルトリアは先に戻ってろよ!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーーッッ!!

 

 堪え切れず、一輝は締め付けを増すグレイフィアの膣内で爆発した。そして、

 

「!!?───は、はい!私達も・・・イク・・・・すぐにイクからぁっ!!❤」

 

 一輝の射精を胎内に浴びて、グレイフィアも絶頂し(イッ)た。

 

「むぅ、それはいけない。一輝、グレイフィア殿、私は先に戻っています。お二人共お急ぎを」

 

 アルトリアはそう言うと、軽い足取りで図書室から出て行った。

 

「ふう、危なかったぁ・・・・」

 

 一輝は肉棒を抜くと、その場に座り込んだ。アルトリアにバレなかったと冷や汗を拭ったその時、突然その場に押し倒された。

 

「どうしたんだグレイフィア!?」  

 

 相手は言うまでもなくグレイフィアだった。グレイフィアは情欲に濡れた瞳で一輝を見つめ、ポツリと呟いた。

 

「───もっと」

 

「は?」

 

「お願い一輝、もっとして。もっと私のオマンコに一輝の熱い精液、いっぱい注ぎ込んで!」

 

 グレイフィアはそう叫ぶと、射精()されたばかりの精液が滴る淫穴に肉棒を沿えて、そのまましゃがみ込んだ。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~!!❤ ああ、いいの、コレいい、もっと欲し・・・・ンアぁ!!❤」

 

「くう、グレイフィア、もう時間が!」

 

 夕食の時間が近い。遅れたら誰かが呼びに来るかも知れない。であるのに、

 

「・・・・・・一輝は私より夕食の方が大事?」

 

 上から拗ねたように睨むグレイフィアの愛らしさに貫かれ、一輝は考える事を放棄した。そして、返事とばかりに腰を強く突き上げた。

 

「あぁん❤ いいわ! もっと、もっと来てぇーーーーッッ!!❤」

 

 

 

 

 

 

 結局グレイフィア()は図書室で二回、移動した自室で三回膣内射精(なかだし)して貰って、ようやく満足して眠りに就いた。

 我ながら性欲の強さに呆れてしまうけど、久し振りの本当のセックスに私は夢中になってしまった。

 朝目覚めて隣に一輝さんがいないのは寂しいけど、今は仕方がない。私は未だサーゼクスの妻であり、この関係を公には出来ないのだから。

 

 

 

 

 

 翌日、奥様に呼び出された。

 

「奥様、昨日はありがとうございました」

 

「いいのよ。(クスッ)貴女も随分とすっきりしたみたいね」

 

「・・・・恐縮です」

 

 私は顔が熱くなるのを感じていた。一輝さんの精をたっぷり胎内に受けた私は、自分では分からないけど随分と綺麗になったみたい。朝メイド達から指摘されてちょっと恥ずかしかったわ。

 奥様には図書室の後始末と一輝さんが夕食に来なかった事の口裏合わせとして、私と一緒に緊急の仕事を頼んだ事にして貰った。恥ずかしい限りですが奥様はこうなる事を予想していたみたいで、笑って許してくれた。

 

「それで? 決めたの?」

 

「はい。私は───」

 

 奥様にそう言われ、私は自らの決意を口にした。

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通りグレイフィアが堕ちました。
これ以降、グレイフィアはヒロイン扱いとなり、本編でもエッチ解禁となります。
ヴェネラナというグレモリー家の最高権力者が味方ですから、一輝とグレイフィアも心強いでしょう。
彼女の決意とは何か、いずれ分かると思います。

次回から原作7巻のエピソードに入ります。


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第33話 出会いは雷鳴と共に☆☆(朱乃) 



仕事が忙しくて、大変遅くなりましたが、第33話を投稿します。
今回から原作第7巻のエピソードに入ります。
ご覧下さい。


 

 

 放課後のオカ研部室でリアスとアーシアがおしゃべりに花を咲かせている。

 

「そう言えば二年生はもうすぐ修学旅行ね。準備は進めてる?」

 

「はい! 今日班決めがあって皆同じ班になりました。今度のお休みに皆でお買い物に行って来ます♪」

 

 駒王学園の二年生は毎年この時期、修学旅行に出掛ける。目的地は定番の京都・奈良三泊四日。その後には学園祭が控えていて、学園生は忙しい日々を過ごす事になる。

 去年一輝()達も行ったが、今の時期、京都は紅葉が始まり、周りが紅く染まってとても綺麗だ。当時は接点がなかったから、意外にも和風の物が好きではしゃいでるリアスや大変そうにお()りしてる朱乃を遠くから眺めてるだけだった。仮にもう一年早く眷属になっていたら、修学旅行をもっと楽しく過ごせたかもな。

 

 アーシアも人生初の修学旅行が楽しみなのか、リアスの話を聞いて目を輝かせている。

 体育祭の日に復活したアーシアはすっかり元気だ。怖れていた後遺症などもなく、以前より明るくなったように感じる。 

 

 駒王学園の二学期は九月の体育祭、十月の修学旅行、十一月の学園祭と行事が目白押しだ。俺達は今日、学園祭の出し物を決める打ち合わせをしようと部室に集まっていたのだが、祐美が掃除当番で遅れるらしく、全員揃うまで俺達は思い思いに寛いでいた。

 

 同じクラスであるゼノヴィア、イリナ、夕麻(呼び方は普段は夕麻、戦闘時はレイナーレで統一する事に決まった)は、先の戦闘で協力し合ったからか、悪魔、天使、堕天使の垣根を越えて仲良く話をしている。三大勢力の和平の象徴のような三人の姿に、思わず笑みが浮かんだ。

 そう言えば最近二年生の女子はお互い名前を呼び捨てするようになった。より仲が深まったようで大変結構な事だ(但しアーシアだけは性格上の問題で呼び捨てが出来ず、相変わらず“さん”付けだが)。

 

 オカ研にはまた部員が増えた。言うまでもなく俺の女王(クイーン)、アルトリアだ。

 体育祭の直後、3年A組に転校したアルトリアは、その美貌と凛とした雰囲気の割に、以外と抜けてる所がクラスメイトの保護欲を誘うらしく、たちまち人気者になった。因みにアルトリアは常に俺と行動を共にしている為、クラスメイトからは「またか・・・」と白い目で見られている。

 アルトリアは白音と一緒にテーブルにお菓子を広げて「これは美味い」「こっちはイマイチ」と食べ比べをしていた。

 

 俺はと言えば黒猫になった黒歌を膝に乗せて、朱乃といよいよ明日に迫ったデートの話をしていた。

 朱乃は自分の理想のデートコースをいくつも挙げて、珍しく浮かれていた。どんどんハードルが上がっているようで焦るが、出来るだけ楽しませてあげたい。頑張ろう。

 

 そんな風に朱乃と話していると、一人アーシアを見つめてニヤケているイッセーが目に入った。

 イッセーは『ディオドラの乱』の後、晴れてアーシアと恋人同士になった。御両親にも報告済みで、お父さんは感涙に咽び泣き、お母さんは赤飯を炊いて祝ってくれたそうだ。

 紆余曲折の末、ようやく結ばれたから仕方がないとは思うが、話を聞いてると朝はアーシアに頬にキスして貰って起きたとか、昼はアーシアの手作り弁当をあ~んして貰ったとか、夜は同じベッドで抱き合って眠ったなどと散々惚気て、正直無茶苦茶鬱陶しい。

 イリナから聞いたが、クラスでもあの調子らしく、男子生徒のヘイトを集めているらしい。暫くすれば落ち着くと思ったんだが、体育祭からかれこれ一週間になるというのに一向に変わらない。そろそろ何とかしなきゃいかんかな・・・・?

 

「すいません、遅くなりました」

 

 そんな事を考えていると、オカ研最後の一人、祐美が入って来た。

 

「揃ったわね。それじゃあ学園祭の出し物を決めましょうか」

 

 祐美が入室したのを確認して、リアスが部活を開始しようとしたその時、リアスのスマホからメールの着信音が鳴った。

 皆の間に緊張感が走る中、リアスがメールを確認し、嘆息した。

 

「出動よ、皆!」

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 俺達は学生から戦士の顔になって部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 町外れにある廃工場にイッセー()達グレモリー眷属+α、総勢十二名が集まっていた。

 薄暗い廃工場の中からは多数の気配。不良の溜まり場なら可愛いもんだが、それらは俺達に対する敵意と殺気に満ちていた。

 

「───グレモリー眷属・・・・早いな、もう嗅ぎ付けたのか」 

 

 暗がりから黒いコートの男が現れた。この男は人間だが、背後の暗がりから感じる気配は人のものじゃない。魔獣や魔物といった異形の存在、それがザワザワと蠢いている。多いな。軽く百はいるだろう。

 

「『禍の団(カオス・ブリゲート)』──英雄派ね? ここ駒王の地はこの私、リアス・グレモリーの領地よ。分かってるわよね?」

 

「無論だ。我らの目的は貴様達悪魔の手からこの町を解放する事だからな!」

 

 部長に答えるかのように男が戦闘態勢に入る。それと同時に背後で蠢く異形の者が俺達に襲いかかった───!

 

 

 

 

 

 

「全く・・・・今月に入って何件目だ?」

 

 最後の異形をデュランダルで斬り捨て、ゼノヴィアが呆れたように呟いた。

 

「かれこれもう六件目よ。いい加減にして欲しいわね、全く・・・・」

 

 夕麻が辺りを見回し、溜め息混じりに答える。

 ここの所、『禍の団』の英雄派を名乗る者達による各勢力の重要拠点襲撃が多発している。イリナ()達の住む駒王町も規模の差はあれど、既に何度も襲撃を受けていた。英雄派の構成員が怪人で異形の者が戦闘員だと考えれば分かり易いかな。 

 

「部長、捕らえました」

 

 暗がりに隠れて攻撃して来た英雄派の構成員を捕らえて、祐美と白音ちゃんが戻って来た。気絶した構成員は白音ちゃんに引き摺られていた。

 

「ご苦労様、祐美、白音。・・・・一人逃がしたのは残念だけど、良しとしましょう。朱乃、魔方陣を開いてちょうだい」

 

「はい部長」

 

 今回捕らえた三人を冥界に送る為、リアスさんの命令で朱乃さんが魔方陣を開く。

 英雄派の構成員の多くは人間で、捕らえた構成員はこうやって冥界に送り、取り調べてるんだけど英雄派の本拠地は依然として掴めていない。どうやら英雄派の構成員は襲撃に失敗、もしくは捕まった時点で記憶消去プログラムのようなものが働くらしく、これまでの記憶を失っていた。 

 彼らは英雄派に属していた事も『神器(セイクリッド・ギア)』の使い方も忘れ、普通の人間のよう振る舞っている。貴重な神器保持者(セイクリッド・ギアホルダー)を使い捨てるようなこの行為に英雄派の意図が読めず、首脳部も頭を悩ませていた。

 

「先輩、逃がした男なんですけど・・・・」

 

「どうかしたのか?」

 

「考え過ぎかもしれないけど、あの異様な魔力の増大が妙に気になって・・・・」

 

 祐美と一兄(かずにい)の会話が私の耳に届く。逃がした男は私達の攻撃に追い込まれた時、急激に魔力を増大させたが、突然影に吸い込まれるように姿を消した。あれは逃げたというより、

 

「──喚び戻されたって感じだったな」

 

 一兄も私と同意見みたい。

 

「その男は失いたくない、幹部のようなものだったのでしょうか?」

 

「いやぁ、そいつ他の奴らとそんなに実力差があるようには見えなかったぜ?」

 

「そうよね・・・・なら何故あの男だけ喚び戻したんでしょうか? やはりあの異様な魔力の増大と関係が?」

 

「・・・・禁手化(バランス・ブレイク)?」

 

 白音ちゃんの一言に会話をしていたアルトリアさん、イッセー君、祐美が驚愕する。

 

「・・・・成る程、あり得るかもな。英雄派が強制的に禁手(バランス・ブレイカー)に至る者を生み出そうとしてるならば、俺達にちょっかいを出すのも納得がいく」 

 

 英雄派の目的は強制的に禁手を生み出す事!?・・・・確かに禁手に至るのに最も手っ取り早いのは強敵と戦う事だと言われている。ここには若手ながらいくつもの事件を戦い抜いたグレモリー眷属がいる。

 紅髪の滅殺姫(リアス)雷光の巫女(朱乃)聖魔剣士(祐美)聖剣デュランダル使い(ゼノヴィア)仙術使いの猫又姉妹(黒歌と白音)回復の聖女(アーシア)赤龍帝(イッセー)ガイバー(一輝)といずれも諍々たるメンバーだ。

 彼らと戦うとしたら敵も命賭けだ。禁手に至ろうとするなら適当な相手だろう。でも、だからって効率が悪すぎる。下手すれば戦力が減る一方だというのに、一体英雄派は何を考えてるんだろう? 意図が読めなくて不気味だわ。

 

「イリナ、帰るぞ」

 

 私が考え事をしていると一兄の声がした。見ると皆撤収を始めていた。

 

「あ、うん、一兄!」

 

 私は一抹の不安を感じつつ、皆の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 翌日の土曜、一輝()は駅前広場に来ていた。

 同じマンションに住んでるんだから一緒に出掛ければいいと思っていたら、朱乃から「折角のデートだから待ち合わせがしたい」と言われ、今日十時にここで待ち合わせる事になった。

 十時を少し過ぎた頃、フリル付きのワンピースを着た可愛らしい少女が息を弾ませ、俺の元に駆けて来た。

 

「ハア、ハア、ごめんなさい一輝・・・・遅れてしまいました」

 

 目の前にいるのが誰なのか、不覚にも一瞬分からなかった。それ程に普段の印象から今の彼女は掛け離れていた。

 

「一輝?」

 

「え?・・・・あぁ、うん・・・・大丈夫だ、朱乃」

 

 そう、目の前の可愛らしい少女は誰あろう待ち人たる朱乃だった。彼女はいつものポニーテールを解いて髪を下ろしている。

 

(驚いた・・・・こんなにも印象が違うものなのか・・・・)

 

 一緒に住んでるんだから朱乃の私服は何度も見てる。普段の朱乃は落ち着いた雰囲気の服装が多く、年齢より大人びた印象がするんだが、今の朱乃は年相応の十代の少女らしく、とても可愛らしい。それが決して似合わない訳じゃなく、今の彼女にはとても良く似合っていた。

 見馴れた彼女がまるで初めて会った少女のようで、でもどこか懐かしいような気がして、不思議な感覚の中、俺は朱乃をジッと見つめていた。

 

「・・・そんなに見つめられたら恥ずかしいわ。

・・・・この格好、似合わないかな?」

 

「! いや、とても良く似合ってる! 普段の朱乃は綺麗って感じだけど、今日は凄く可愛らしくって・・・・正直見惚れてた」

 

 不安そうな朱乃に気付き、慌てて言葉をかけると、朱乃は安心したように微笑んだ。

 

「本当? 良かった♪」 

 

 朱乃は喜びを露にして、俺の左腕に抱き着く。そんな彼女を見て、俺の口から無意識に言葉が零れた。

 

「・・・・何か、今日は朱乃って言うより、“あーちゃん”って感じだな」

 

 何気なく零れた言葉に朱乃が驚いたように顔を上げる。そして心から嬉しそうに、幸せそうに微笑んだ。

 

「えへ♪ そっか、何だか嬉しい!──行こ、“かずくん”!」

 

 朱乃は愛らしい笑顔を浮かべて俺の腕を引っ張る。俺も釣られたように破顔して後に続いた。  

 

「ああ、行こう、あーちゃん!」

 

 俺達は一時(ひととき)幼馴染みに戻って、並んで歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 デートが始まってから二時間が経過していた。俺達は駅前の巨大デパート(シトリー戦の舞台だった所だ)内にあるイタリアンレストランで昼食を摂っていた。 

 あれからデパートに入った俺達は色んな店を回った。ブティックでは朱乃に服を選んで欲しいと言われた。ただ人前で下着まで選ばせるのは、店員や女性客の視線が痛いので、勘弁して欲しかった(まぁ、結局選んだが)。

 他にも本屋で雑誌や新刊を見たり、雑貨屋で小物やアクセサリーなんかを冷やかして回った。

 朱乃は終始ご機嫌で、楽しそうに笑顔を振り撒いている。そんな彼女を見てるだけで俺も楽しくなって来る。世の恋人同士がデートを繰り返す気持ちが分かるような気がした。

 

 デザートを食べ終えた俺達は朱乃が観たいという映画を観に映画館に来ていた。

 映画は離婚寸前の夫婦が子供達の危機を切っ掛けに家族の絆を取り戻すという所謂ファミリー物で、ベタな展開ではあったが、最後には新しい家族が生まれるというハッピーエンドで幕を閉じて中々面白かった。面白かったんだが、

 

「うぅ・・・・いい映画だったね」

 

「そうだな」

 

「グス、家族皆で暮らせるようになって良かった・・・・」

 

「そうだな」

 

 と、朱乃が異様に感情移入していたのだ。

 

(そうか・・・・朱乃も家族に縁がないからな・・・・)

 

 考えてみれば朱乃は母親と死別し、唯一の肉親である父親とは疎遠らしいから、家族の愛情に餓えてるのかもしれない。彼女の父親は堕天使バラキエル。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部で、「神の雷」と称される武闘派らしい。

 俺はあれ(・・)を知ってるから、彼に対する印象は決して悪くない。二人の仲を取り持てたらと思うが、どうすればいいのか・・・・

 

「かずくん? どうかした?」

 

 朱乃に声をかけられ、意識が戻って来る。

 

「あぁ、すまん。いや、あの赤ちゃん可愛かったなって・・・・」

 

「え? 赤ちゃんって・・・・!?」

 

 あれ? 映画の話と思って適当に答えたんだが、何故か朱乃が真っ赤になってる。

 何故だろうと周りを見渡したら、俺達はいつの間にか人の少ない通りに来ており、目の前には白亜の城を模した建物があった。

 

(えっ、と、これは・・・・)

 

 それは紛う事なくラブホテルだった。

 という事は、俺はラブホテルの前で恋人に赤ちゃんの話を振ってしまった訳で・・・・という事は、朱乃は俺が赤ちゃんが欲しいと曲解しているのでは・・・・?

 

「かずくん・・・・入ろ?」

 

 俺の袖をキュッと握り、頬を赤らめる朱乃は無茶苦茶にしたい位可愛かった。

 

 その可愛さに俺は抗おうとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

「んう、むう・・・・ちゅぷ、んぁぁ・・・・うぅん、かずくぅん・・・・ちゅぷ」

 

 部屋の扉を閉めた途端、二人は激しく唇を重ねた。舌を絡め、唾液を交換し、唇を重ねたまま互いの衣服を脱がし合う。

 やがて下着姿になると二人は唇を重ねながら、互いの性器を弄り合う。朱乃は一輝のトランクスを下げ、雄々しく屹立した肉棒を右手で擦り、左手で睾丸をジャグリングするかのように転がす。一輝はショーツの上から濡れてくっきりと形の浮き出た割れ目に右手を這わせ、左手でボリュームたっぷりの尻を揉んでいた。

 

「く、あぁ・・・・朱乃そこ、くぅ、いい!」

 

「ふんむ、ちゅぷ・・・・あ、そこいい! んん・・・・あぁ一輝ぃ、もう我慢出来ない・・・・ちゅぷ、お願い・・・・直接触って!」

 

 ショーツの上から触られるのがもどかしいのか、朱乃が懇願する。一輝はその願いを叶えるように朱乃をベッドに押し倒すと、ショーツを抜いて股間に舌を這わせた。

 

「んふぅ!? んん・・・んあぁ! アン❤そこ・・・・一輝の舌が・・・・んんん! あ、そこは駄目! まだ洗ってないから・・・汚ない・・・・ん、あぁぁ、は、挿ってくるぅ!」

 

 ピチャピチャと湿った音を立て、一輝の舌が朱乃の陰唇を割って膣口を這い回る。入口は大量の愛液で溢れ、欲情した雌の臭いや小便の臭いも相俟って、一輝を興奮させる。

 一輝は朱乃を辱しめようと、わざと鼻を鳴らし、愛液を音を立てて啜り、舌を尖らせて膣口を責め立てた。

 

「はおぉぉん! あ、ヤ、そこは・・・・あぁ! 朱乃のお股の臭い嗅がないで・・・・あぁん! 啜っちゃ駄目❤ んんん、音立てちゃヤぁん!!」

 

 朱乃は羞恥に顔を赤く染めながら、一輝のクンニで火照った身体を捩らせる。

 一輝は朱乃をうつ伏せにして後ろからクンニを続ける。パックリと口を開いた陰唇からお尻の割れ目に沿って尻穴に到達した舌をそのまま突入させた。

 

「!? んほおっ!?・・・・・・ぐ、ふうぅ・・・・ぞ、ぞご(ぢが)うぅ・・・・お尻の穴は・・・・うひぃぃんっ!」

 

 尻穴への思いもよらぬ刺激に朱乃は軽く達し、ビクンと大きな尻が跳ねた。朱乃の肌から珠の汗が滲み、甘い芳香が漂う。

 普段は朱乃だけを相手にする訳にはいかないが、今日は二人きりだ。一輝は朱乃一人に集中し、丁寧に身体の準備を進めていく。

 汗の滲む背中に舌を這わせ、大きく柔らかな尻たぶを揉み、くびれた腰に指を沿わせる。途中舌にぶつかったブラのホックを舌と唇で器用に外すと、100cmをオーバーする眷属中最大のおっぱいが零れ落ちる。まるでその柔らかさを誇示するかのように朱乃の双丘、いや山脈はブルブルと揺れていた。  

 

(相変わらず(すげ)えなぁ・・・・)

 

 何度見ても変わらぬその迫力に一輝は目を奪われる。そして欲望の赴くまま両手でおっぱいを鷲掴みした。

 

「ああ! んん、くふ、あぁん! あぁ一輝

・・・・そんなに強く揉まれたら、んん、痛いわ・・・・」

 

 息を荒げながら、朱乃が上半身を上げて肘立ちになる。一輝は朱乃が自ら胸を揉み易い態勢になったのをいい事に、更に強く激しくおっぱいを責め立てる。

 おっぱいを揉みほぐし、付け根から尖端まで搾乳するかのように扱き、乳輪に指を這わせ、指先で乳首を転がす。朱乃の艶やかな黒髪から漂う甘い香りを吸って、一輝の肉棒は益々硬くそそり勃ち、朱乃の入口をノックする。

 

「あん、あぁん!・・・・そんなに強くおっぱい揉まれて、オマンコの入口ツンツンされたら・・・・うぅん、あ、またイク・・・・んん! またイッちゃうぅっっ!!」

 

 度重なる刺激に耐え切れず、朱乃は再び達した。身体がビクビクと震え、支えていた肘が落ちる。

 

(あ・・・・・・良かった。背中を向けてて・・・・)

 

 朱乃は一輝に自分のアヘ顔を見られなかった事に安堵した。

 

 

 

「んぁぁ、一輝ぃ・・・・・・ちゅぷ、ちゅ・・・・ンフん❤」

 

 一輝は朱乃を仰向けにすると、再び唇を重ねた。朱乃も一輝の唇を迎え入れ、二人は激しく濃厚に唇を重ね、舌を絡め合う。

 一輝は唇を重ねながらも両手を忙しなく動かす。左手でおっぱいを揉み、右手を陰唇に這わせ、熱く泥濘んだ膣口に指を挿れて、中から刺激する。

 

「んフん・・・・ちゅぷ、ん、あぁ・・・・一輝、んん!・・・・ちゅぷ、ん・・・気持ちいい・・・・♪」

 

 気持ちいい所を優しく愛撫されて朱乃は熱い吐息を吐く。すっかり一輝に開発された身体は更なる刺激を欲して乳首は硬く勃起し、股間は熱い蜜を垂れ流した。

 そんな朱乃の状態に気付かない一輝ではない。朱乃のもどかしさを察知すると、乳首と陰核を一気に摘まみ上げた。

 

「!? おひぃぃぃんんっっ❤」

 

 突然の激しい刺激に朱乃は奇声を発し、絶頂する。腰がビクンと跳ね上がり、股間が間欠泉のように連続して潮を噴いた。

 

「あお、おあぁ・・・・・・」

 

 意識が朦朧としている朱乃の膝裏に両手を入れた一輝は、軽く持ち上げ、腰の位置の調整する。

 

「朱乃、挿れるぞ?」

 

「うぅん、ひゃい・・・・・・ふ、ぐぅ!・・・・ぅぅうあああんっっ!!❤」

 

 朱乃の返事と同時に一輝の剛直が朱乃の胎内に挿入される。

 

「んひ、い、ぃいい! あぁん、一輝のオチンポが奥まで届いてるぅ! んん、ああ、気持ちいいよぉーーーーっっ!!❤」

 

 一輝の剛直を歓迎するかのように、朱乃の膣内は激しく蠕動し、更に大量の蜜を分泌する。

 一輝の女の中でも朱乃は特に濡れ易く、大量の熱い蜜と適度な締め付けは、朱乃の膣内を極上の蜜壷へと変えていた。

 

「ぐ、うおぉ、いいぞ、朱乃!」

 

 一突き毎に白濁した飛沫が弾け、ジュボジュボと淫らな水音が響く。

 一輝は激しく腰を突きながら、朱乃と向き合って手を繋ぎ、腋から下乳、深い谷間へと舌を這わせ、朱乃のおっぱいの下から上へ円を描くように舐め回すと、乳首を口に含み、コロコロと舌で転がした。

 

「あぁん❤ そこ、そこもっと! 朱乃の乳首、もっとコロコロしてえ! んはあ❤ おっぱいもオマンコも気持ち良くて・・・・あぁ、くるぅ! おっきいのがきちゃうぅっ!!」

 

「くぅ、朱乃、膣内(なか)射精()すぞ! 膣内に射精して孕ませるぞ!?」

 

「んん! だ、射精()してぇ! 朱乃の膣内に一輝のオチンポ汁いっぱい射精してぇ!!」

 

 朱乃の膣内が搾り取るように肉棒をきつく締め付ける。一輝はラストスパートだと言わんばかりにより速く、より強く突き挿れた。そして、

 

射精()すぞ朱乃───!」

 

「きてえ!射精()してえ! 私の膣内(なか)に、一輝の精液いっぱい射精して、朱乃を孕ませてえーーーーっっ!!」 

 

 ブビュルルル! ブビュル! ブビューーーー!!

 

「あああああっっ!!・・・・・・んん、あ、出てるぅ・・・・一輝の赤ちゃんの素がいっぱい、いっぱいに・・・・❤」

 

 いくら妊娠の確率が低い悪魔とは言え、妊娠してしまいそうな位大量の精液を膣内に射精され、朱乃は恍惚としながらもうっすらと笑みを浮かべた。

 

(あ・・・・(あった)かぁい❤ 一輝の赤ちゃん出来るかな? 出来るといいなぁ・・・・)

 

 そんな風に思いながら、朱乃はそっと下腹部を撫でる。そんな時、ズンッと重い衝撃が下腹部に響いた。

 

「おほうっ!・・・・・・一輝、何を・・・・ふあぁぁんっ❤」

 

「いや、一回位で俺が収まる訳ないだろ? それに妊娠させるなら、何回も膣内射精(なかだし)しなくちゃ、な!」

 

「うひいぃぃんっ!? んああ、し、子宮にチンポが響くぅ・・・・!!」

 

 言うまでもくなく、衝撃は一輝の突き入れによるものだった。一輝は朱乃を孕ませようと、一突き毎に気合を入れて、奥へ奥へと力強く腰を突き入れる。

 

「おひぃ!? おほぅ! ず、ズゴぃぃい゛! オマンコの奥・・・・子宮の入口までチンポがズンズンって・・・・あぁん、おかしくなっちゃうぅっっ!!❤」

 

 正常位からまんぐり返しの態勢になって、一輝はガンガンと突き下ろす。愛液と精液が混じり合う湿った音と、股間のぶつかる肉の打ち合う音と、朱乃の濡れた嬌声の三重奏が一輝の本能を揺さぶり、益々激しく責めたてる。

 朱乃はただ、一輝から与えられる快楽を享受し、女の悦びに身体を震わせる。その表情は一八歳の少女とは思えない程淫らで、匂い立つような女の色気に満ちていた。

 

「あお、おぉん! あぁ、イクぅ! 私また

・・・・あぁん、またイっちゃうううっっ!!」

 

「おおお、俺の子を孕め、朱乃っ!!」

 

「孕む! 孕むわ! だから一輝の赤ちゃんの素、朱乃の子宮に全部注ぎ込んでぇーーーーっ!!」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ブビューーーーッッ!!

 

「あおおぉぉぉんんっっ!!❤」

 

 朱乃の膣内に再び大量の精液が注ぎ込まれる。朱乃の下腹部は注がれた精液を呑み干そうとイヤらしく蠢き、それでも入り切らずに溢れた精液で白く汚れていた。

 

「あへえ・・・・えあ・・・・・・んああ、いっぱい注がれちゃった❤ ありがとう一輝♪」

 

 流石に疲れたのか、崩れ落ちる一輝の汗ばんだ身体を朱乃は抱き締め、頬を擦り寄せる。

 

「ん・・・・あ、ああ・・・・」

 

 だが、ご機嫌な様子の朱乃に比べ、一輝は何故だか浮かない顔をしていた。

 

「どうしたの、一輝?」

 

 そんな一輝の頭を胸に抱いて、朱乃は訝しげに訊ねる。

 

「ああ・・・・いや、その・・・・テンションに任せて結構恥ずかしい事を口走ってしまったなと・・・・」

 

 そんな一輝に朱乃は一瞬ポカンとすると、可笑しそうに笑い出した。

 

「(クスクス) やだ、一輝ったら!・・・・・・そうねえ、確かに「膣内に射精して孕ませる」とか、「俺の子を孕め」とか冷静になったら結構恥ずかしい事言ってたわね?」

 

「うぅ・・・・」

 

「でも私だって相当恥ずかしい事を口走ったと思うし、ベッドの中での事だもの。そんなに気にする事ないわよ、もう♪」

 

 何の事はない。要するに一輝は恥ずかしがっていたのだ。それに気付いた朱乃は滅多に見せない一輝の態度に胸をときめかせた。

 

(俺の子を孕め、か・・・・・・一輝もご両親と死別して、お祖父(じい)様しか血の繋がった肉親はいないのよね。そのお祖父様とも独り立ちしてから何年も会ってないというし・・・・きっと肉親の愛情に飢えてるんだわ)

 

 滅多に見せない自分の弱みを晒す一輝に、朱乃の中の母性愛が目覚め、嬉しそうに、愛おしそうに一輝を抱き締めた。

 

「大丈夫よ、一輝。貴方には私が、ううん、私達がいるわ。いつか必ず、貴方の子供を生むわ。約束よ──ちゅ❤」

 

「朱乃───うん、これからもよろしくな」

 

「───うん♪」

 

 そう言って朱乃は笑った。その笑顔は今までの朱乃にはない母性に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 二時間後、身体中の汚れをシャワーで洗い流し(ついでに朱乃とバスルームでもう一回戦した)、身仕度を整えると、一輝()達はホテルを出る。

 俺達は肩を寄せ合い、腕を組んで歩く。ホテルに入る前よりも、より親密な空気が俺達の間には流れていた。その時、

 

「ほい? 誰かと思えばガイバーの小僧と・・・・このおっぱいの大きい娘っ子はリアス嬢ちゃんの女王(クイーン)の・・・・ほっほっほ、こんな時間からしっぽりご休憩とは、やるのうお主?」

 

「な!?・・・・・・あ、貴方達まだ高校生でしょう!? こ、こんな所に入っちゃ・・・・い、いけないのよ!?」

 

 こんな所にいる筈のない二人組と遭遇した。

 

「オーディン様とロスヴァイセ!? 何故こんな所に?」

 

 見覚えのある二人はシトリー戦の後で知り合った北欧神話の大神オーディン様とその護衛、戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセだった。

 今日はお忍びなのか、オーディン様は随分とラフな格好をしており、ロスヴァイセはヴァルキリーの鎧を脱いで、彼女の生真面目な性格が窺えるパンツスーツを着ていた。

 

「あの・・・・オーディン様がいらっしゃるなんて、聞いてないんですが・・・・?」

 

 いきなりの事態にフリーズしていた朱乃がようやく再起動して訊ねる。因みに勿論俺も聞いてない。

 

「なぁに、近々会合があってのう、予定より早く着きすぎたんで、ついでに観光でもと思うてのう」

 

「え!? 何ですかそれ!? 私会合は明日だって聞いてたんですけど!? 観光出来るのは今日だけっていうから仕方なく外出を認めたんですけど!?」

 

 ロスヴァイセが噛み付くがオーディン様は知らんぷりだ。ロスヴァイセ、また騙されて・・・・憐れな。

 

「おお! ここにいらしたのか、オーディン様───!!?」

 

 その時、オーディン様を呼ぶ男性の声がした。反射的にそちらを向くと、ガタイのいい三十代半ば位の短い黒髪の男性がいた。何故か酷く驚いた表情をしていたが、俺と目が合った途端、敵意を剥き出しにした。

 

「貴様ぁ・・・・私の娘に何をしたぁーーーーっっ!!

 

 男性の激昂に呼応するかのように、辺りに雷鳴が轟き、男性の全身から雷を纏った黄金のオーラが沸き上がった。

 

(あぁ、また原作を忘れてた・・・・)

 

 朱乃とのデートに浮かれて、俺はまた原作を忘れていた。自分の迂闊さが恨めしい。

 その時、朱乃が俺から離れ、男性の前に立つと、

 

 ───パァンッ!!

 

 その頬を張った。

 

 あれだけ荒れ狂っていたオーラがその一発で掻き消え、雷鳴が止んだ。

 

「あ、朱乃・・・・・・?」

 

「何が娘よ! 私は貴方が父親だなんて認めないわ!!」

 

 男性に代わって激昂する朱乃を、男性はただ呆然と見つめていた。

 

 

 

 ───堕天使幹部・バラキエル。

 

 聖書に名前が載る朱乃の父親との出会いは、雷鳴轟く最悪な出会いとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

次回はもう少し早く投稿したいと思います。


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第34話 父として、恋人として

   

大変遅くなりましたが、第34話をお送りします。
今回は原作にはなかったVSバラキエル戦をお送りします。
朱乃の父として、恋人として譲れない想いを持つ二人の対決がどうなるのか、ご覧下さい。



 

 

 うちのマンションの最上階にあるVIPルームにはグレモリー眷属+αとアザゼル、オーディン様とロスヴァイセ、そしてバラキエル(朱乃のお父)さんが集まっていた。

 

「どうぞ」

 

「ほっほっほ、いただくぞい」

 

 メイドのシエスタが淹れた緑茶を、オーディン様がズズズと音を発てて啜る。隣のロスヴァイセが「はしたない」と嗜めるが、オーディン様は知らんぷりだ。

 オーディン様達と遭遇した一輝()と朱乃は、これ以上デートを続ける訳にもいかず、一行をうちのマンションまで連れて来た。そして皆を呼び出して、今の状況となっていた。

 

「しかしよぉ爺さん。来日するとは聞いてたが、早過ぎねぇか? 今回の来日の主目的は【日本神話】との会談だろ? ミカエルとサーゼクスの仲介で、俺が会談に同席する事になってた筈だが・・・・ひょっとして何かあったのか?」

 

 アザゼルが俺達に説明するようにオーディン様に訊ねると、オーディン様は渋い顔で説明する。

 

「まあのう・・・・実は我が国の恥を晒すようじゃが、儂のやり方に異を唱える奴がおっての。其奴が問題を起こさん内に【日本神話】と早めに話を付けときたかったんじゃよ」

 

 二人以上人が集まれば派閥が出来るというが、どうやら神も同じらしい。 

 

「何だよ? ヴァン神族にでも狙われてんのか?」

 

「ヴァン神族はどうでもいいんじゃが・・・・と、それよりアザゼル坊───」

 

 揶揄うようなアザゼルには答えず、オーディン様は『禍の団(カオス・ブリゲート)』の件に話を変えた。確かに『禍の団』の動向には注意すべきだが、俺には何かを誤魔化してるように感じた。

 

 

 

 

 

 

 ───苛々する。

 

 

「───まぁ折角来たんだ。爺さん、行きたい所があったら案内してやるぜ?」

 

「わしゃおっぱいパブに行きたいのぅ!」

 

 

 ───能天気に騒ぐオーディン様とアザゼルが苛立ちを助長する。

 

 

「ククク、好きだなこのジジイ! よお~し、最近堕天使(ウチ)の娘らがこの町にVIP用の店を開いたんだよ。本来要予約なんだが、今日は特別だ! 主神殿を招待しちゃうぜ!!」

 

「ヒョホホホ! さっすが総督殿じゃ! わしゃおっぱいが大きい娘がええのう!!」

 

 

 ───でも一番苛立たせるのが、咎めるように朱乃()を見つめている“あの男”だ!

 

 

「おっしゃ、行くぜクソジジイ! フルコースでもてなしてやるぜ!!」

 

 オーディン様を連れて出掛けようとしているアザゼルは、

 

 

「───待ちなさい!!」

 

 

 私の怒りの籠った声に足を止めた。

 

 室内がシーンと静まる中、私はソファーから立ち上がり、アザゼルを睨み付けた。

 

「何故“あの男”がここにいるのか、聞いてないのだけど?」

 

 私は堕天使バラキエルを指差し、アザゼルに詰問する。さて、何と答えるのか・・・・

 

「ああ・・・・言い忘れたが、爺さんが日本にいる間はここにいる全員で護衛する事になっている。バラキエルは最近忙しくて、ここに常駐していられない俺の代わりに呼んだ。何かあったらこいつの指示に従えばいい」

 

「護衛の件を言い忘れるだなんて、相変わらず無責任ですね。ですが必要ありません。堕天使側のエージェントには夕麻さんがいます。これ以上は不要です」

 

 私がきっぱりと言い切ると、視界の隅で夕麻さんが困った顔をしていた。悪いけど今は無視しよう。

 

「朱乃・・・・これは堕天使の長として俺が決めた事だ。サーゼクスの許可も得ている。言っちゃ悪いが、リアスの女王とは言え、一下級悪魔の意見なんざ求めてねーんだよ」

 

「!!」

 

 アザゼルの思惑は分かってる。この男は私達の溝を埋めようと余計な気を回してるのだ。そのあからさまな態度が私を余計に苛立たせる。

 

「・・・・そうですか。それは失礼しました、総督様!」

 

「朱乃!!」

 

 私はアザゼルを睨み付けると、背中に掛かるあの男の声を無視して、足早にVIPルームを出て行った。

 

 

 

 

 

 朱乃さんが物凄い剣幕でVIPルームを飛び出すと、バラキエルさんも朱乃さんの名を呼びながら部屋を出る。そしてまた、部長と顔を合わせた一輝先輩が頷くと、後を追うようにVIPルームを出て行った。

 

「なんだぁ? 朱乃さんもバラキエルさんも、一輝先輩まで、一体どうしたんだ?」

 

 あんな朱乃さん、初めて見た。イッセー()は呆然としながら二人が出て行った方を眺めていた。

 

「そうか。イッセー、お前はまだ知らなかったんだな・・・・あの二人、バラキエルと朱乃は父娘なんだよ」

 

 アザゼル先生の声に俺は驚愕の視線を向けた。皆が驚く中、部長と祐美、そして白音ちゃんは驚いてなかった。

 部長は大きな溜め息をひとつ吐いて、 

 

「───哀しい話よ。それでも聞く?」

 

 部長の問い掛けに俺達は一斉に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 朱乃とバラキエルさんの後を追ってVIPルームを出た一輝()は、エレベーターホールで言い争う二人を見つけた。

 

「離してよ!」

 

「落ち着け朱乃、私はただお前と話し合いをしたいのだ」

 

 朱乃の後ろ手を引いて、バラキエルさんが話し掛ける。だが、

 

「・・・・気安く名前を呼ばないで」

 

 朱乃は怒りの籠った視線をバラキエルさんに向ける。その表情はどこまでも固く、冷たい。それでも足を止めた事で話が出来ると思ったのか、バラキエルさんは朱乃から手を離し、スーツの襟を正した。

 

「・・・・あの男、“ガイバー”と逢い引きしていたのは、どういう事だ?」

 

 ・・・・俺の事かよ。まあ、娘が男とホテルから出て来たら、父親としては気になって当然か。

 

「そんなの私の勝手じゃない!? 貴方にとやかく言われる筋合いはないわ!」

 

「朱乃・・・・だがあ奴はお前の主であるリアス殿の婚約者ではないか!? お前まさか妾にでもなるつもりか!?」

 

「それがどうかした? 正妻はリアスで決まりだけど、一輝はもう貴族家の当主よ。妻を何人も持つのは認められてるし、例え何番目であっても彼に愛されるなら私は幸せよ」

 

「いかん! 大切な一人娘をそんな女誑しにやる訳にはいかん!!」

 

「・・・・何で貴方にそんな事言われなくちゃいけないのよ!? 私は彼を、一輝を愛してるの! さっきだってホテルでたっぷり愛し合って来たんだから!!」

 

「───なっ!?」

 

 朱乃のカミングアウトにバラキエルさんが絶句する。参ったな、これじゃあ出るに出られん。

 

「おのれ・・・・・・嫁入り前の娘に手を出すとは・・・・絶対に許さん!!

 

 うわあ~、バラキエルさん、怒りのあまり放電してるよ。近付きたくね~。

 

「朱乃! お前もお前だ! 嫁入り前に貞操を失くすなんて、母さんも草葉の陰で泣いてるぞ!!」

 

「勝手に母さまの意志を捏造しないで! 母さまも一輝が相手なら許してくれるわ!!」

 

 激昂するバラキエルさんに朱乃も一歩も退かない。その時朱乃の視線が、出るに出られず困っている俺の視線とバッチリ合った。

 

「一輝!!」

 

「ぬう!? 盗み聞きとは破廉恥な・・・・恥を知れ!!」

 

 歓喜と嫌悪、両極端の感情が俺に向けられる。

 

「あ~バラキエルさん? 盗み聞きは誤解ですよ。こんな人通りのある所で言い争ってたら、嫌でも聞こえますって。内密な話をするなら遮音結界を張るか、どこかの部屋でして下さい」

 

「むう・・・・おのれ、生意気な・・・・」

 

 俺の正論にバラキエルさんは悔しそうに歯噛みする。その隙に朱乃は俺の背後に身を隠した。

 

「まだきちんと挨拶してませんでしたね。──始めまして、『神の子を見張る者(グリゴリ)』幹部バラキエル殿。私はリアス・グレモリーが兵士(ポーン)にして不破家当主、不破一輝と申します。以後お見知りおきを」

 

 俺は貴族として正式に一礼する。そして、

 

「お嬢さん──朱乃とは将来を誓い合った仲です。よろしくお願いします、お義父(とう)さん」

 

 今度は朱乃()の交際相手として挨拶した。すると、

 

「ッッ誰がお義父さんだ!? 貴様のようなナンパ野郎に大事な娘を渡せるかぁっ!!」

 

 雷のような大喝が俺を揺さぶり、轟音で耳がジンジンする。でも、こっちも退けない!

 

「渡す渡さないじゃなく、朱乃はもう俺の女です。例え貴方が朱乃の父親だろうと、大事な時一緒にいなかった貴方にとやかく言われる筋合いはない!!」

 

 俺はわざとバラキエルさんの古傷を抉る言葉を放って挑発する。

 

「──ッッ貴様ァ!!!」

 

 挑発に乗ったバラキエルさんの拳が眼前に迫る。雷光を纏った拳はまともに喰らえば消滅必至だ。ちょっと煽り過ぎたかと焦ったが、その拳は俺に届く寸前で、何者かの手に止められた。

 

「おいおい、いくらガキに痛い所突かれたからって、お前らしくねぇぞ。ちったあ落ち着けよ、バラキエル」

 

「アザゼル・・・・・・」

 

 そう、激昂するバラキエルさんの拳を止めたのはアザゼルだった。あの雷光を纏った拳をいとも容易く止めるとは、流石だな。  

 

「・・・・と言ってもこのままじゃお互い治まらんだろ。着いて来い、思う存分戦わせてやるよ」

 

 アザゼルは俺達の間を通り、エレベーターのボタンを押す。

 

「・・・・よかろう。あれだけでかい口を叩いたのだ。よもや逃げまいな?」

 

「上等だ。アンタの根性叩き直してやるよ」

 

 怒りの形相で睨み付けるバラキエルさんを、俺も怒りを込めた視線で睨み返す。

 

「「叩き潰す!!」」

 

 こうして俺はバラキエルさんと戦う事となった。

 

 

 

 

 

 

「どうしてこんな事に・・・・」

 

 朱乃()はマンションの地下4Fにある特別訓練場で頭を抱えていた。

 新設されたばかりの特別訓練場は、禁手に至った一輝やイッセー君、祐美ちゃんが全力で戦っても壊れないよう、レーティングゲームの技術を用いて造られた特別な訓練場だ。

 異空間に造られてるから果てがない程広大で、サーゼクス様やアザゼルが自ら何重もの結界を張ったので、有り得ない位頑丈だ。『ディオドラの乱』での戦功により特別に下賜された物で、若手でこれを持ってるのは私達グレモリー眷属とバアル眷属のみだ。

 お陰で全力で力が振るえると一輝やイッセー君は大喜びで、暇さえあればここで訓練をしている。

 今、この場にいるのは四人。私と一輝、アザゼルとあの男──バラキエルのみだ。

 一輝とバラキエルは私とアザゼルがいる所から、かなり離れた場所で向かい合っている。

 

 一輝の強さは分かってる。でもバラキエルだって堕天使随一の武闘派だ。数々の強敵を退けて来た一輝が負けるとは思わないけど、無傷で勝てる相手じゃない。

 

「もう、一輝はどうして挑発なんてしたのかしら・・・・?」

 

「分からねえか朱乃。一輝の奴はお前ら父娘の為に戦おうとしてるんだぜ」

 

 私が洩らした言葉にアザゼルが言葉を重ねる。私の為、というのは分かるけど私達父娘の為とは・・・・

 

「・・・・どういう事です?」

 

「さぁ~てな。・・・・始まるぞ」

 

 私が訊ねてもアザゼルにはぐらかされる。そうしている内に二人が激突した。

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、小僧!!」

 

 全身に雷光を纏ったバラキエルが一輝に迫る。迅い! アイツはただでさえ速いが、雷光を纏った時は雷に匹敵するスピードで移動しやがる。アザゼル()の目でさえ辛うじて追える位だ。

 

「──チィッ!?」

 

 だが一輝の奴も流石だ。バラキエルの攻撃を辛うじて回避してやがる。だが、

 

「どうした? それが貴様の全力か!?」

 

 バラキエルのスピードが更に上がった。

 瞬間移動と見紛うばかりのスピードに流石の一輝も反応仕切れず、遂に攻撃をまともに喰らってしまった。

 

「──ガァッ!?」

 

 『浮身』で飛んでるから打撃のダメージは少ないようだが、バラキエルの纏っているのは雷()。悪魔である一輝には猛毒だ。今の一撃も両腕でガードはしたが、雷光のダメージで焼け爛れていやがる。一輝の奴、どうして殖装しねえんだ? ガイバーにならずに勝てる程バラキエルは甘くねえぞ!?

 

「・・・・所詮この程度か。やはり貴様に朱乃は渡せんな!!」

 

 瞬時に一輝の背後に回ったバラキエルが雷光の拳を振り下ろす!

 

「一輝!!」

 

 朱乃が絶叫する中、俺は一輝の口角が上がったのをはっきり見た。そして───

 

「ガイバーーーーー!!」

 

「──ぐぅ、おああっ!!?」

 

 ガイバーに殖装する時発生するバリアーがバラキエルを吹き飛ばした。野郎! これを狙ってやがったのか!?

 

「ぐう・・・・おのれ、小癪な・・・・」

 

 バラキエルの着ていたスーツが一瞬でズタボロになり、身体のあちこちから血が流れる。バラキエルの奴油断したな。互いのダメージは五分って所か。さぁて、こっからが本番だ。どうなる、この勝負?

 

 

 

 

 

 

 雷光の拳を受けた両腕がズキズキと痛む。畜生、随分好き勝手にやってくれたな。だが殖装時に発生するバリアーに吹き飛ばされ、バラキエルさんもそれなりにダメージを受けたようだ。

 

「・・・・さて、大人しくしてるのもここまでだ。これからは全力でやらせて貰うぞ、バラキエル! アンタには言ってやりたい事が山程あるんだ!!」

 

「・・・・フン、偶々功績を上げただけで調子に乗ってる青二才が! 話がしたければ俺を倒してみろ!!」

 

 バラキエルの身体から雷を纏った黄金のオーラが立ち昇る。スゲエな、流石堕天使随一の武闘派だけある。だが!

 

「! ほう、青二才の癖に中々やるではないか。ならば手加減無用! 行くぞ、ガイバー!!」

 

「来い、バラキエル!!」

 

 バラキエルと同等の紅のオーラを漲らせ、俺はバラキエルと激突した。

 

 

 

 

 

 

 激しい雷光を纏った拳と灼熱の闘気を纏った拳が空中で激突する。激しい轟音を上げ、並みの悪魔や堕天使なら一発で消滅するような拳打が二人の間で交錯する。

 

「凄い・・・・・・」

 

 朱乃が二人の闘いを見て呆然としている。無理もねえ。朱乃は確かに強いが、精々上級悪魔の中位レベルだ。バラキエルや一輝はそれより上、最上級レベルにいる。文字通り次元が違うって奴だ。

 この映像はVIPルームに生中継している。解説はオーディンのジジイがやってくれるだろう。あいつらはこの闘いを見てどう思うのか。自分には無理だと諦めるか、それともいつかは自分もと奮い立つだろうか。あいつらを指導する立場にあるアザゼル()としては、後者だと信じたい。

 いずれにしても、自分達とは違う一段上の闘いをあいつらだって経験してもいい頃だ。この先の戦いを生き残る為に。と、そんな事を考えていると、状況が変わった。

 

「グフッ!? クッ、おのれ!!」

 

 巧い! 雷の速さで動くバラキエルの動きを読んで、かわした所にガイバー(一輝)の拳がボディにまともに入った。ありゃあ効いたな。流石のバラキエルも接近戦は分が悪いと認めたのか、距離を取って雷光を放った。だがバラキエル、そいつは悪手だぜ?

 案の定ガイバーが伸ばした両掌から発生した黒い渦が、雷光を吸収し、跡形もなく消滅させてしまった。

 ガイバーには重力制御能力より発生した【ブラックホール】がある。俺の光すら吸収するんだ、バラキエルの雷光も意味を成さないだろう。バラキエルの奴、珍しく呆然としてやがるぜ。

 接近戦では後手に回り、遠距離戦では得意の雷光を封じられ、バラキエルは劣勢に追い込まれた。さて、ここからどうする気だ、一輝?

 

 

 

 

 

 

 

「グヌゥ・・・・よもやこれ程とは・・・・」

 

 朱乃()を誑かす軟派野郎など一蹴してやると意気込んでいたが、軟派野郎──不破一輝は予想以上に強かった。

 朱乃の主であるリアス・グレモリー嬢の眷属でありながら、その強さ故に特例で上級悪魔に昇格し、婚約者にまで成り上がった男。あまつさえ眷属の少女達をも手籠めにして、その魔の手は朱乃にまで及んでいる──そうアザゼルから聞いた時、自分の娘がそんな奴の誘いに乗る訳がないと信じていた。

 

 だから今日見た光景は衝撃的だった。

 腕を組んでオーディン様と話をしているカップル。二人の背後には洋式の城を模したラブホテルがあり、二人の間には事後特有の甘い雰囲気が漂っていた。

 よくある光景と言えるのだろうが、女が自分の娘とあれば話は別だ。娘を弄んだコイツをバラキエル()は絶対に許さん!

 

「貴様の強さは分かった・・・・だが俺は朱乃の父親として、貴様との交際なぞ認める訳にはいかん!!」 

 

 俺は再び黄金のオーラを漲らせ、戦闘態勢を取る。だが奴は俺をジッと見つめたまま動かない。何だ? 静かな、動かない奴から異様な気配がする。

 

「・・・・朱乃の父親? アンタ、今自分を朱乃の父親と言ったのか?」

 

 何だ? この俺が気圧されるだと!? その時、俺の視界から奴の姿が消え──

 

「グハァッ!?」

 

「アンタが父親だと!? アンタが朱乃の父親として、何をして来たって言うんだ!?」

 

 奴の拳が俺のボディに突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 「朱乃の父親として」──その言葉を聞いた途端、一輝()の怒りが爆発した。

 がら空きのボディに【虎砲】を放ち、バラキエルを地上に撃ち落とす。まともに入ったというのに、大して効いてなさそうなのはサーゼクス様やコカビエルと同じく膨大な魔力が自然と防御フィールドを形成しているからだろう。だがそんなもの関係ない!

 

「アンタが父親だって言うなら、あの時何故朱乃から離れた!?」

 

「ヌウッ!?」

 

 ローキックに態勢を崩しつつ言葉を被せると、バラキエルの顔が苦痛に歪む。

 

「あの時、確かに朱乃はアンタを拒絶したんだろう・・・・だが朱乃は当時八歳、母親を殺されたばかりで混乱していただろうに、アンタはそんな八歳の娘の言う事を真に受けて、朱乃から離れた・・・・いいや、逃げたんだ!!」

 

「ち、違う! 俺はただ・・・・!」

 

「何が違う!? 現にアンタは今日まで朱乃の前に姿を現さなかったじゃないか!?」

 

 言い訳染みた事を言おうとするバラキエルを、腕のガードの上からを蹴り上げる。

 

「アンタと離れた朱乃がどんな生活をしていたか知ってるのか? 姫島家に追われながら、朱璃さんから教わった術を使い、悪霊祓いの真似事をして食い繋いでたんだぞ? リアスと出会うまでそんな暮らしをしてたって言うのに、その間アンタは何をしていた!?」

 

「それは──! 影から見守っていたのだ・・・・だから決して見捨てた訳では──」

 

「そんなのストーカーと変わらねーじゃねーか! 何故朱乃の前に姿を見せて、抱き締めてやらなかった!?」

 

 俺の回し蹴りが頭部に入ってバラキエルの身体が吹っ飛ぶ。俺の言葉で精神的に揺さぶられたのか、防御フィールドが弱まってるように感じる。 

 

「朱乃はずっとアンタを求めていたのに! たった一度拒絶されただけでビビりやがって! そんな奴に父親ヅラする資格があるか!!」

 

「ガハァッ!!」

 

 防御フィールドを突破した【グラビティ・キック】が炸裂し、バラキエルの身体を吹き飛ばす。流石に効いたのか、バラキエルは立ち上がる事も出来ない。これで終わりか?

 

 

 

 

 

 

「あれは俺のせいなんだよ・・・・」

 

 アザゼルがポツリと呟いた。

 

「え?」

 

「あの日バラキエル(あいつ)を呼び出したのは俺だ。どうしても、あいつじゃないと頼めない仕事があってな、仕方がなかった・・・・」

 

「アザゼル、貴方・・・・」

 

 朱乃()の声を遮り、アザゼルは言葉を続ける。その姿はまるで懺悔をしているかのようだった。

 

「たった一日、たった一日あいつに仕事を頼んだばっかりに俺は朱乃(お前)の家族をバラバラにしちまった! そんな俺が何をって思うだろうが、どうかバラキエル(あいつ)と話をしちゃくれねーか? あいつは十年前のあの日から一歩も前に進めてねえんだ。あいつのあんな姿、ダチとしてこれ以上見ていられねえ! 頼む朱乃!!」

 

 アザゼルのこんな必死な姿、初めて見た。私はどうすればいいんだろう?

 母様は死んだ。誰を、どんなに責めたってもう還らない。そう、父様──バラキエルのせいじゃない。あの人を責めたって何も変わらないのは分かってる。なのにどうして? どうして素直になれないの!?

 私が思い悩む中、身体中傷を負いながら、バラキエル()が立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 あの小僧に散々言われてしまった。

 だが奴の言う通りだ。バラキエル()は朱璃を喪い、朱乃からも拒絶され、怖ろしくなって逃げた。

 あの時俺が本当にしなければならなかったのは、いくら拒絶されようとも朱乃の手を離さず、あの娘を抱き締め、共に悲しむ事だったのに。

 朱乃は頭が良く、優しい娘だ。共に居ればいつかは分かってくれただろう。そんな父親として当たり前の事が俺には出来なかった。ダメ親父、父親失格と言われても返す言葉もない。だが、

 

「──それでも、それでも俺は娘を、朱乃を守る! 例えどんなに恨まれようと、どんなに拒絶されようと絶対にだ!!」

 

 俺は改めて誓いを立てた。だが、奴はまたも俺を否定する。

 

「──悪いがアンタはもうお役御免だ。朱乃はもう俺の女、あいつを守るのはもう俺の役目だ。あいつの告白を受けた時、あいつを傷付ける全てのものから俺が守ると誓った。だからアンタは──もう荷物を下ろしていいんだ」

 

 フ、コイツめ・・・・俺の誓いを荷物などとは・・・・どこまでも生意気な奴め。だがまだだ!

 

「フン、そこまで言うなら貴様が朱乃を守れるかどうか、見せて貰うぞ!!」

 

「上等だ!!」  

 

 俺は最後の力を振り絞り、雷速で奴の回りを飛び回る。奴は動かず俺の出方を窺っていた。このスピードで撹乱すれば、初めて見せるこの技に反応出来まい、行くぞ!!

 

「チイッ!?」

 

 雷速で動きながら雷光を放つ。四方八方から放たれる雷光は奴の【ブラックホール】でも吸収仕切れまい。そこで俺はとどめの一撃を、上空高く飛び上がり、雷光を纏ったかかと落とし【雷神の鉄槌(トールハンマー)】と呼ばれる必殺技を放った! だが、

 

「これにも反応するのか!?」

 

 ガイバーは【雷神の鉄槌】に気付いていたかのように、ハイキックで迎撃した。

 凄まじい衝撃波が疾り、身体が宙を舞う。態勢を整えようとした時、ガイバーが宙にあった腕を掴んだ。

 

「オオオオオーーーーッ!!」

 

 全ては一瞬だった。

 ガイバーは俺の腕を掴むと、逆関節を極めて、そのまま一本背負いで投げる。そして頭が地面に落とされる寸前、ローキックで頭を刈り上げた!

 

「不破圓明流【雷】」

 

 遠ざかる意識の中、不破一輝の声が聞こえた。フフ、この俺を【雷】を冠する技で倒すとは・・・・どこまでも生意気な奴だ・・・・

 

 

 

 

 

 

 バラキエルさんを倒した一輝()は、朱乃の元へと歩いて行く。朱乃の前に立つと、俺は殖装を解いて朱乃と見つめ合った。

 

「一輝・・・・」

 

「今度はお前の番だ、朱乃。お前だって本当はもう分かってるんだろ?」

 

「・・・・・・」

 

「いつまでも意地を張ってると、本当にもう会えなくなるかもしれないぞ。いいのかそれで?」

 

「!!?」

 

「今まで会いに来なかった文句や十年分の恨み事をぶつけるだけでもいいんだ。話をして来い、朱乃。俺はずっと待ってるから」

 

 俺は朱乃の手を握り、送り出すように肩をポンと叩く。

 下を向いていた朱乃は顔を上げて、バラキエルさんの元へと走り出した。その後ろ姿を見送っていると、アザゼルが声をかけて来た。

 

「ご苦労だったな、一輝。バラキエルはどうだった?」

 

「強かったですよ。勝てたのは初対戦でこっちの思惑に巧く嵌まってくれたからです。次闘えばどうなるか分かりませんよ」

 

 特に最後のかかと落とし、ガイバーのヘッドセンサーで位置を捕捉出来ていなければ、勝敗は逆になっていただろう。

 

「そうか・・・・一輝、ありがとう」

 

 珍しく真摯に頭を下げるアザゼル。この人も結果的に親友の家庭を壊してしまった事をずっと思い悩んでいたんだろう。

 

「礼を言うのはまだ早いですよ。結局は朱乃次第なんですから・・・・」

 

 俺はそう言いつつも、多分大丈夫だろうと思いながらその場に座り込み、会話を交わしているだろう父娘の方を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

「生きてる?」

 

 バラキエル()は女の声に起こされ、うっすらと両目を開けた。

 そこには俺の顔を覗き込む朱璃(亡き妻)そっくりの我が愛娘、朱乃の顔があった。有ろう事か心配そうな顔をしている。こんな状況ながら、何故か嬉しく思ってしまう。

 

「どう? 私の恋人は強かったでしょう?」

 

「ああ・・・・完敗だ。全く、好き放題言いおって、とことん生意気な奴だ・・・・だが全部奴の言う通りだ。

朱乃、俺はこの十年、ずっと逃げていた。朱璃を亡くし、お前に拒絶され、俺は愛する者を失う痛みを思い出してしまった。お前とこの十年会わなかったのは、再び拒絶されたら耐えられないと思ったからだ。そんな奴が父親ヅラするなと殴られたよ・・・・全く情けない・・・・」

 

「本当・・・・貴方の言う通りね。娘に拒絶されるのが怖くて、十年も放っておいた癖に父親ヅラして、娘の恋人と喧嘩して、挙げ句完敗するなんてホント父親失格よね」

 

「完敗!? ぐぅぅ・・・・! そこまではっきり言う事はないではないか・・・・?」

 

「(クスクス) 事実ですもの、諦めて下さいな」

 

 朱乃が楽しそうに笑っている。そうか、お前は今笑っていられるのか・・・・ 

 

 ふと騒がしいのに気付いて顔をそちらに向けると、不破一輝の周りにグレモリー眷属を始めとした仲間達が集まっていた。

 悪魔に天使に堕天使、三大勢力の者が共に笑い、共に寄り添う。かつて夢に見た光景がここでは実現されていた。不破一輝はその中心でリアス嬢に小言を言われながら、治癒の聖女の治療を受け苦笑している。

 

「私は大丈夫よ父様(とうさま)。今の私は一人じゃない。私には一輝と、仲間達がいるから──」

 

 だから心配しないで──そう言って私の元から朱乃は離れて行く。

 

 そうか・・・・少し、いや大分悔しいが、朱乃を守る役目はお前に譲るとしよう。少なくとも、あの娘が笑っていられる間は・・・・

 俺はゆっくりと瞼を閉じる。瞼の裏に浮かんだ朱璃が笑っているような気がした───

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

原作のイッセーは未遂でしたが、一輝は完全に事後でしたから、先に姫島父娘の問題を片付ける事にしました。

思わぬバトル回になった今回ですが、次回も展開的にバトル回になりそうで・・・・エロは箸休め的な短いものになりそうです。ご了承下さい。


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第35話 悪神襲来



暫く身体を壊していた為、遅れてしまいました。
皆さんも健康には注意して下さいね。

それでは第35話をご覧下さい。


 

 

 一輝()とバラキエルさんが闘った日から一夜明けた翌朝。

 

「お、おはよう朱乃・・・・」

 

「おはよう、ございます・・・・」

 

 食堂で顔を合わせた姫島父娘のぎこちない挨拶に、周りの皆は苦笑を漏らしていた。

 昨夜の対決の後、少しだけ話をした二人は、お互いほんの少し歩み寄って、こんな感じに収まっていた。

 元は仲の良い父娘だったというから、いずれは元に戻れたら、と願わんばかりだ。皆も同じように思っているのか、不器用な父娘のやり取りにホッコリした空気が食堂を包んでいた。だが、

 

「行くぞ皆の衆! おっぱいが儂を待っておるのじゃああああっっ!!」

 

 

 ・・・・・・台無しだった。

 

 

 

 

 

 

 

 オーディンの爺さんが来日して数日。イッセー()達の疲労はピークに達していた。

 オーディンの爺さんは観光と称して日本各地を回っていた。昼間は観光名所を回り、各地のご当地グルメに舌鼓を打ち、夜は先生お薦めのエッチなお店に行き、綺麗なお姉さん達の歓待を受け、ご機嫌の様子だ。

 昼間はいいんだ。俺達も行った事のない観光名所を回れるし、美味いモンも食える。ああ、大間のマグロは美味かったなあ・・・・。

 だが問題は夜だ。爺さんが行くキャバクラやガールズバーは当然未成年は入れない(例え成人していても学生は不可だそうだ)。爺さんや先生が楽しんでる間、俺達は入口付近の待合室でずっと待たされる事になり、精神的にも肉体的にも皆疲れ果てていた。

 部長は見るからにイライラしてるし、他の皆も連日の疲労からか精細を欠いている。爺さんのお付きのロスヴァイセさんすらウンザリしていて、俺達のモチベーションは下降どころか墜落していた。 

 ちくしょう、今頃爺さんや先生は綺麗なお姉さんとあんな事やこんな事してるんだろうなあ・・・・おっぱいパブってどんな事してくれるんだろう? ああ、一回でいいから俺も連れてってくれたら・・・・・俺は拳を握り締め、込み上げる怒りを堪えていた。

 

 

 

 

 

 

 八本足の巨大な軍馬──スレイプニルが牽く馬車が夜空を駆ける。リアス()達はその馬車に乗り駒王町への帰路に着いていた。観光バス並みに大きな馬車の周りにはゼノヴィアと夕麻、イリナさんとバラキエル殿が翼を広げ、周囲を警戒しながら飛んでいる。

 

「ホッホッホ。日本のヤマトナデシコはいいのぉ、ゲイシャガール最高じゃあ~!」

 

 と、京都で本場の芸者遊びを楽しんだオーディン様は終始ご機嫌だ。

 

「オーディン様! 【日本神話】との会談まで日がないんですよ!? いい加減夜遊びはやめて下さい!!」

 

 ロスヴァイセも流石に限界なのか、額に青筋を立てつつ諫言する。けど、

 

「ハア・・・・お主は相変わらず固いのお。そんな事じゃからお主は戦乙女(ヴァルキリー)の癖に今まで一人も彼氏が出来ず、『失敗ヴァルキリー』とか『万年黄昏(ラグナロク)』なぞという不名誉な呼び名を付けられるんじゃぞ?」

 

「んな!? そ、そんなの関係ないじゃないですか!?」

 

 あっさり言い負かされていた。  

 

 ロスヴァイセは戦乙女(ヴァルキリー)。【北欧神話】において彼女は戦場で勇者を選別し、死後その魂をヴァルハラに導くという役割を担っている。

 ヴァルハラに導かれた勇者は終末戦争(ラグナロク)における戦士(エインヘリアル)となるが、その間に戦乙女(ヴァルキリー)戦士(エインヘリアル)の間に愛情が生まれ、恋人、または夫婦になる者が多いらしい。よって戦乙女は寿退職する者が多く、【北欧神話】では人気の職業なのだそうだ。

 だがロスヴァイセは戦乙女でありながら、今まで一人も恋人が出来た事がなく、色々と不名誉な呼び名で呼ばれているらしい。

 

「だって、だって仕方がないじゃないですか!? 昔とは違って人間の戦場には効率を重視して重火器を使う“兵士”しかいないし、極稀に勇者と呼べる人がいてもヴァルハラへ送る間に何故か敬遠されちゃうんですもの! 私は彼の為に一生懸命世話を焼いて、精一杯尽くしてるのに、なんで? どうして私には恋人が出来ないのよ~~~~!!?」

 

 ああ、とうとう泣き出しちゃったわ。見かねた朱乃や祐美が慰めてるし・・・・全く、面倒臭い娘ね。

 

「のう赤龍帝にガイバーよ。お主らのどっちかロスヴァイセ(こやつ)を引き取ってくれんか? お主らなら勇者の資格は充分じゃし、問題なかろう。こやつは確かに真面目一辺倒で頭が固く、面白味のない娘じゃが、魔法の才に長け、見ての通り美人じゃ。おまけにプロポーションも抜群でおっぱいもケツもデカい。しかも今なら処女じゃぞ。どうじゃ? 掘り出しモンじゃと思わんか?」

 

「ちょっ───! 何でオーディン様が私が処女だって知ってるんですか!?」

 

「たわけ。彼氏いない歴=年齢のお主が経験済みな訳なかろうが」

 

 オーディン様は呆れたように嘆息した。事実らしくロスヴァイセは「ぐぬう・・・・」と顔を真っ赤にして、悔しそうに唸っている。

 

「で? どうじゃ?」

 

 オーディン様に訊ねられ、イッセーと一輝は顔を見合せる。あ、ロスヴァイセがちょっと期待したような目をしてるわ。でも、

 

「俺は・・・・正直アーシアと恋人同士になったばかりなんで、もう暫く二人でイチャイチャしたいかなって・・・・あ、でもロスヴァイセさんが待ってくれるっていうんなら大歓迎っスよ」

 

「イッセーさん・・・・!」

 

 あらあら、アーシアったら感激してイッセーと見つめ合ってるわ。全く、初々しいったらないわね。

 

「俺はリアスが許可を出して、彼女も望むなら構いませんよ。ただ俺には既に恋人が七人いますから、それでも良ければ、ですが」

 

 それを聞いたロスヴァイセが「七人!?」と絶句している。今現在の候補だけでももう三、四人は増えそうだし、眷属が揃ったら益々・・・・最終的には二十人以上になりそうなのよねえ。二十人か・・・・参ったな、私管理しきれるかしら?

 

「・・・・だそうじゃが、どうするロスヴァイセ?」

 

「私は・・・・・・」

 

 ロスヴァイセは真剣な顔で悩んでるけど、強引に二択を迫られている事に気付いてないのかしら? 別に二人から選ぶ必要はないというのに、やっぱり残念な娘ねえ・・・・・

 とその時、馬車が急停車して、突然の衝撃が私達を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 急停車した馬車の窓を開け状況を確認すると、馬車の進路上に黒い戦闘服を着て、マントを纏った男が浮かんでいた。  

 二十代後半位の昏い瞳をした、アザゼル()には劣るがなかなかのイケメン。俺はこの男を知っている。ジジイ・・・・予定より早く来日したのはこいつに狙われてるせいか!?ったく、厄介な奴を呼び込みやがって・・・・!

 

「ンフフフフ・・・・・・初めまして諸君、我が名はロキ。【北欧神話】の悪神ロキだ!」

 

 マントをバッと広げ、高らかに名乗りを上げた男──ロキの登場にリアス達の表情に緊張が走る。変わらないのは良く分かってないイッセーだけだ。

 

「久し振りだな、神ロキ。何故アンタがこんな所にいる?」

 

 ろくな理由じゃねえと思うが、代表して俺が訊ねる。

 

「いやなに、ウチの主神殿が我らの意向を無視して、他の神話勢力に接触してるのが気に入らなくってね

・・・・潰しに来たのだよ」 

 

 ふざけやがって! やっとの思いで切り開いた和平への道をこいつなんぞに潰されてたまるか!!

 

「堂々と言ってくれるじゃねえか、ロキ」

 

 俺は怒りを込めてロキを睨む。だがロキはそんな俺を見て楽しそうに笑う。

 

「クフフフフ、堕天使の総督よ、私が用があるのは主神殿だけだ。貴殿やそこの悪魔達が大人しく退くなら今日の所(・・・・)は何もすまい。どうするかね?」

 

今日の所(・・・・)は、か・・・・後で何かする気満々じゃねえか」

 

「それは仕方あるまい。君ら【聖書勢力】は他の神話勢力から恨まれているからねえ」

 

「俺達が恨まれてる? どういう事だよ!?」

 

 イッセーがロキに噛み付く。ロキはイッセーを一瞥して嘲笑った。

 

「仕方あるまい。そもそも世界各地の神話領域に踏み入り、聖書を広げ、勢力を拡大して来たのは君らだ。自らの領域を土足で踏み荒らされ、勢力を削がれた神話勢力が恨んでないとでも?」

 

 神の力は信者の数に比例する。だから神は信者に布教活動をさせ、勢力を広げようとするのだ。

 そして世界中の人口の三割以上の信者を持ち、最も勢力を拡大したのは俺達『聖書勢力』なのだ。・・・・確かに恨まれてないとは口が裂けても言えねえわな。

 

「それを俺に言われてもな・・・・その辺はミカエルか死んだ神に言ってくれ」

 

 その辺の問題はミカエルに丸投げしようとしたが、

 

「そんな言い逃れは通じんよ。今まで『聖書の神』の死を隠し、世界中を欺き、好き勝手やって来た君らが和平を結び【聖書勢力】という一つの勢力になった途端、他の神話勢力と手を結ぼうとは・・・・些か虫が良すぎると思わんかね?」

 

 ちっ、痛い所を突いて来やがる。

 

「私に言わせれば、貴殿らは親の死を隠し、財産を食い潰した挙げ句、生活出来なくなった途端、今まで無視していた親戚に「仲良くしましょう」と頼って来るアホな子供にしか思えん。そんな連中まともに相手にするのもアホらしい!」

 

「・・・・・・(ギリッ)」

 

 俺は悔しさに歯を食い縛る。こいつの言う事は正論だ。俺達三大勢力は其々の勢力を維持する為に『聖書の神』の死を隠蔽した。そうでもしなければ俺達は他の神話勢力に吸収されるか、問答無用で滅ぼされるかのどちらかだっただろう。

 だがそれはこちらの都合であって、他の神話勢力からすれば、ロキのように考える者の方が断然の多い。寧ろオーディンの爺さんのように好意的な方が珍しい。

 

「・・・・確かにお主の言う事にも一理あるわい。『聖書の神』の死を隠し、世界中を欺いていたこ奴らの罪は重い」 

 

 いつの間にかオーディンの爺さんが魔方陣に乗って、馬車の外に出ていた。

 

「爺さん・・・・」

 

「じゃがの、子の罪を赦すのもまた親の務めじゃ。儂は一人の()として、こ奴らの愚かさを赦そう」 

 

 意外にも爺さんはそう言ってロキと対峙する。

 

「・・・・過去は水に流し、【聖書勢力】を受け入れると?」 

 

「左様。お主とて和平を結んでからこ奴らが技術や知識を交換し、急速に発展している事に気付いとる筈じゃ。その動きこそ儂が望んでいたもの。『聖書の神』の死から千年もの間、儂らは停滞していた。本当なら我が【北欧神話】から現れて欲しかったんじゃが、時代は既にここにいる若者達を中心に動き始めた。この流れを止めてはいかん。じゃからこそ儂は反対を押し切って、未来の為、他の神話勢力と和議を結ぼうとしているのじゃ」

 

 一万年以上の寿命を持つ俺達にとって、千年というのは決して長い時間じゃない。だがその間、他の神話勢力を欺いて来たのは事実だ。糾弾されても当然だというのに、オーディンの爺さんは未来の為に敢えて俺達と手を結ぼうとしている。──自分の勢力の反対に合いながら。

 爺さんの思いを知って、三大勢力の長の一人として頭が下がる思いだ。リアス達も神妙な顔をしている。特にロスヴァイセなんかは感涙に咽び泣いていた。

 

「それにのう、こ奴らといるのはお主といるよりずっと楽しいし、仲良うすると、おっぱいの大きい姉ちゃんがいる店でサービスして貰えるのじゃ!!」

 

 

 ・・・・・・・・台無しだった。

 

 

 

 

 

 

 

「成る程、それが主神殿の本心か・・・・何と愚かな・・・・最早聞くに耐えん。よかろう、全員仲良く葬ってやるわ!!」

 

 ロキの身体からドス黒いオーラが立ち上る。デカい! 今まで戦ったシャルバやクルゼレイが霞む位、とんでもないデカさだ! 流石は神っていう訳か・・・・イッセー()は緊張に唾を呑み込む。  

 

「ひとつ訊くぞ! ロキ、お前は『禍の団(カオス・ブリゲート)』と繋がっているのか!?」

 

 先生が指を突き付けて訊ねると、ロキは不愉快そうに顔を歪める。

 

「愚かなテロリスト風情と一緒にするな! 不敬だぞ、堕天使の総督!!」

 

 ロキが先生に向かって右手を翳すと、魔方陣が浮かび上がる。その時、

 

 

 ズガァァァンッ!!

 

 

 聖なる波動がロキを襲った。何事かと目を向けると、そこにはデュランダルを振り切った態勢のゼノヴィアがいて、

 

「先手必勝と思ったんだが・・・・」

 

 平然とそう言った。いや、ロケットスタート所かフライングじゃねーか!

 

「・・・・どうやら効いてないようだな。流石は北欧の神か」

 

 ゼノヴィアの言葉に視線を戻せば、そこにはロキが何事もなかったかのように宙に浮いていた。

 

「愚かな・・・・仮にも我は神だぞ。聖剣など通じる訳なかろう」

 

 どういう事だ?

 

「神ってのは要するに聖なる存在の究極だ。その神に聖なる波動を撃っても効く訳ねえ」

 

 俺の疑問に先生が答えてくれた。ってちょっと待て! それってゼノヴィアは勿論、祐美やイリナの攻撃も通じないって事か!?

 思わず二人の方を見ると、二人も先生の説明を理解したのか、悔しそうに唇を噛んでいる。

 

「無駄だ! 我は神だぞ? たかが天使や悪魔の攻撃ではな!!」

 

 ロキが左手を突き出すと、そこに得体の知れない凄まじいプレッシャーが集まり出す。あれはヤベえ! 俺の本能が危険だと訴える。あれを放たれたら───マズい!!

 

「ガイバーーーーー!!」

 

 その時、ガイバーに殖装した一輝先輩が俺達の前に飛び出し、ブラックホールを展開した。

 

「イッセー!!」

 

「! はい!!」

 

 一輝先輩の声に俺は『禁手(バランス・ブレイカー)』のカウントをスタートした。

 

「小賢しい───!!」

 

 ロキが左手に集まった力を解放する。凄まじいプレッシャーが波動となって俺達に迫る。これが神の力! 何て威力だ。今までの敵とは比べ物にならねえ!! 

 

「ぐうぅ────っ!!」

 

 一輝先輩のブラックホールがロキの放つ波動を吸い込む。だがあまりの強大さに先輩の両腕がギシギシと軋んでいる。

 

(早く、早くしてくれ───!!)

 

 今の俺が禁手になるまで三十秒。俺はカウントが減るの逸る気持ちを押さえて待ち続ける。

 

『Welsh Dragon Balance Braker!!』

 

 俺の祈りが届いたのか、宝玉が光を放ち、全身が鎧に包まれる。

 

「部長! プロモーションします!!」

 

「ええ!!」

 

 部長の承認を得て、俺は素早く『女王(クイーン)』に昇格(プロモーション)、力が増大するのを感じる!

 

『JET!』

 

 俺は背中のブーストを全開にして、一直線にロキへと向かって行った。

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!

Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!!』

 

「そうか、そう言えば赤龍帝がいたのだったな。──中々いい感じに力が増大してるではないか!」

 

「喰らえええーーーー!!!」

 

 俺は超特大のドラゴンショットを放った。強大な力の波動がぶつかり合う。

 

「だが神を相手にするにはまだ早い!!」

 

 更にロキの力が増す。ちくしょう───!

 

「負けるかあーーーー!!!」

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!

Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!!』

 

 俺も負けじと力を増大させ、渾身のドラゴンショットを撃ち込んだ。

 

「うわあーーーーっ!!」

 

 凄まじい二つの力が激突し、弾け飛んだ。爆風に吹き飛ばされた俺を先生が受け止めてくれた。

 

「先生!?」

 

「良くやった、イッセー。しかし一輝とお前、二人の力を合わせてようやくとは・・・・とんでもねえな」

 

 そうだ、先輩がブラックホールで力を吸収し続けててくれたから俺のドラゴンショットが通じたんだ。先輩は!?

 

「一輝先輩!?」

 

 俺は一輝先輩を見て愕然とした。先輩の両腕は変な方向に折れ曲がり、ズタボロになっていた。

 

「ぐうぅ・・・・すまんアーシア、頼む」

 

「はい!!」

 

 アーシアが『神器』を発動させ、先輩の傷を癒す。あれだけの傷だ。治すのにどれ程の時間がかかるか・・・・

 

「なっ───!?」

 

 ゼノヴィアの声に視線を向けると、爆風の晴れた先には平然とした様子のロキが宙に浮いていた。そんな・・・・俺の全力の一撃が全く通じてないのか!?

 

「いや、良く見ろイッセー。ロキの身体から赤い煙りが立ち上ってる。少しはダメージが通ってる証拠だ」

 

 少しは、か・・・・あの傷を付けるだけで一輝先輩は重傷だし、俺も疲労が激しい。このままじゃダメだ。俺達は確実に負ける───!

 

「クフフフ、我に傷を付けるとは大したものだ。特別手を抜いたつもりはないのだがな」

 

 そう言ってロキは俺達を見渡した。

 

「ふむ、今の攻撃で一人も死んでないとは・・・・成る程、これが噂のガイバーか。ククク、面白い。ではこいつとどう戦うか、観せて貰おうか!!」

 

「! お主まさか───やめい、ロキ!!」

 

 オーディンの爺さんが血相を変えて叫ぶ。何だ?何が起こるっていうんだ!?

 

「来たれ! 愛する我が息子よ!!」

 

 マントを広げ、ロキが高らかに叫ぶ。その叫びに応じて空間が歪み、巨大なナニかが姿を現す。

 

 最初に現れたのは足、次いで頭、そして全身とそれは姿を現した。

 全高は十m位、全長ならその倍以上はありそうな巨大な狼。白い体毛が月明かりに照らされキラキラと輝いている。

 

(!っ何だこいつは!? 何だか分からないが、凄まじくヤベえって事だけは分かる!)

 

 全高十mの巨大な白狼は俺達を見据えたまま、微動だにしない。だが俺達もまた、この畏ろしくも美しい獣から目が離せず、一歩も動く事が出来なかった。

 

「マズい・・・! ロキの野郎、よりによって何てモンを喚びやがったんだ。全員下がれーーーっ!! あの白狼には絶対攻撃を仕掛けるなよ!!」

 

 先生の指示に金縛りが解けたのか、皆はゆっくりと後退する。

 

「先生、あれは一体・・・・?」

 

神喰狼(フェンリル)だ」

 

「フェンリル?」

 

「「「「!!?」」」」

 

 先生の答えを聞いた皆が騒然とする。何だ?

 

「【北欧神話】に出て来る最凶最悪の魔物だ。奴の牙には神さえも確実に殺す力がある。お前の鎧だって砕けるだろう。気を付けろよ」

 

 神さえも確実(・・)に殺すだって!? そんな化け物とどう戦えばいいんだよ!?

 

「その通り! だが気を付けても無駄だ。こいつの牙は勿論、爪にも神を殺せる力がある。今まで喰わせた事はないが・・・・まあ、北欧の者以外の味を覚えさせるのもいい経験であろう。さて・・・・」

 

 ロキはフェンリルを撫でながら俺達を見渡す。そして、

 

「まずは敵の継戦能力を奪うのが常道かな?」

 

 その視線をアーシアで止めた。こいつまさか───!?

 

「殺れ、フェンリル」

 

 

 ウオオオオォォォォォーーーーーンンッッ!!

 

 

 フェンリルが遠吠えする。月夜に吠えるその姿は畏ろしくも美しく、俺達の全身を震え上がらせた。

 

 次の瞬間、白い巨体が視界から消える。俺は半ば無意識に背中のブーストを吹かせた。

 

『JET!』

 

 気が付けば奴の頭が目の前にあった。

 

「俺の女に、触るんじゃねえーーーーーっっ!!」

 

 ドゴンッ!!

 

 爆発するような音を立てて、フェンリルの首が吹っ飛んだ。

 

「無事か、アーシア!?」

 

「は、はい!!」

 

 アーシアを守れてホッとする俺に、皆の驚く顔が集中する。

 

「イッセー、貴方・・・・」

 

「凄い・・・・」

 

 だが、部長やイリナの声がする中───

 

「ゲフッ!!・・・・・・あれ?」

 

 突然血を吐いて、俺はその場に沈み込んだ。

 

「「「「イッセー(さん)(くん)!!?」」」」

 

 俺の身体を一輝先輩が肩を入れて支える。痛え・・・・いつの間にやられたんだ?

 

「一輝様、アーシア、こっちへ!」

 

 夕麻の声に導かれ、俺は馬車の屋根に寝かせられる。鎧はいつの間にか解除されていた。

 

「!? 酷い・・・・!」

 

 俺の腹部には大きな穴が空き、そこからドクドクと血が溢れていた。ちくしょう・・・・あの時、フェンリルの爪が当たったのか・・・・ヤベえ、血を流し過ぎて意識が・・・・・・

 そう思った途端、俺の意識は闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーさん!?」

 

 意識を失ったイッセーに、アーシアがすがり付く。

 

「大丈夫、意識を失っているだけだ。アーシア、治療を急げ!」

 

 アーシアは一輝()を見つめて顔を歪める。イッセーの治療をするという事は、俺の治療を中断する事を意味する。心優しいアーシアはその決断を出来ないでいる。

 

「俺の事はいい。今はイッセーが優先だ。急げ!」

 

「はい!!」

 

 俺の怒声にアーシアは俺の治療を中断し、イッセーの治療に取りかかった。よし、イッセーはこれでいい。

 

「夕麻、二人の護衛を頼む」

 

「お任せ下さい」

 

 俺は二人を夕麻に任せると、戦況を確認する。

 フェンリル相手なら聖なる波動も効くからだろう、祐美とゼノヴィア、戦闘形態になったイリナの三人が接近戦を繰り広げている。

 遠間からリアス、朱乃、黒歌の三人が其々滅びの魔力、雷光、呪殺弾を放っている。白音はリアス達の護衛だろう、三人の側に控えている。連携も取れているし、今の所は大丈夫か。

 ロキにはアザゼルとバラキエルさんが戦いを挑んでいるが、あの二人の攻撃すらロキの防御障壁を突破出来ずにいる。北欧の魔法、魔術は聖書勢力(うち)よりも進んでいるというがここまでとは・・・・

 ならばと同じ術式のロスヴァイセが、全属性の攻撃魔法を一斉発射したが、ロキの防御障壁を破る事は出来なかった。

 お返しとばかりに放つ魔法に三人が苦悶の表情を浮かべる。加勢するならこっちか!

 だが俺の両腕はまだ再生が終わってない。接近戦は難しい。ならば───!

 

(───開け、スマッシャー!)

 

 俺が念じると、ガイバーの胸部装甲がひとりでに開いていく。そこには既に太陽のような光が充満して───

 

「喰らえ、ロキ! 胸部粒子砲(メガ・スマッシャー)!!」 

 

 ガイバー必殺の胸部粒子砲(メガ・スマッシャー)がロキに向かって真っ直ぐ伸びて行く。

 

「ヌオオッ!? こ、この力はーーー!?」

 

 ロキは咄嗟に防御障壁を張る。だが、

 

 パリイィィィンッ!!

 

 ガラスが割れるような音がして、ロキの姿が光の奔流に消えて行く。

 

「やったか!?」

 

 アザゼルがそう叫ぶが、先生、それはフラグだぞ。案の定、光の奔流が止んだ後には、さっきより多くの赤い煙りを立ち上らせてはいるが、まだまだ戦えそうなロキの姿があった。

 

「抜かった・・・・赤龍帝だけではなく、ガイバーの力がこれ程とは・・・・かなり消耗させられてしまったな」

 

 チャンスだ! 一気に畳み掛けようと、巨人殖装を喚ぼうとしたその時、

 

『Half Dimension!!』

 

 突然強大な魔力がフェンリルを襲った。周辺の空間が歪み、白い巨体が圧し潰されていく。流石のフェンリルもこれなら、そう思った次の瞬間、

 

 パキィィィンッッ!!

 

 フェンリルの牙が空間を噛み砕いた。フェンリルは巨体を震わせると、己を攻撃した者を睨み付け、「グルルル・・・」と威嚇するように喉を鳴らした。

 

「流石はフェンリル。あれ位の攻撃じゃ倒せないか・・・・」

 

 そこには金色の雲の上にあぐらをかいた美猴を従えた、純白の鎧に八枚の光の翼を拡げた銀髪の麗人──ヴァーリ・ルシファーの姿があった。

 

 

 

    

 

 

 フェンリルに苦戦するリアス()達の前に、白龍皇ヴァーリ・ルシファーが突然現れ、強力な攻撃を放った。だがフェンリルはその攻撃すら喰い破り、彼女を睨み付けている。

 

「ほう、ここで白龍皇まで現れるとは」

 

「初めまして、悪神ロキ殿。私は白龍皇ヴァーリ、貴方を葬りに来たわ」

 

 ヴァーリの宣戦布告に、ロキがフェンリルを宥めながら口角を吊り上げる。

 

「二天龍にガイバーか・・・・ふむ、面白いものが観れた事だし、今日の所は一旦引くとしよう」

 

 ロキがマントを翻すと、ロキとフェンリルの周囲の空間が歪んでいく。

 

「だが【日本神話】との会合の日、私は再び現れる! オーディンよ、その時こそ貴方の最後だ!!」

 

 そう言い残して、ロキとフェンリルは姿を消した。

 正直退いてくれて助かったわ。あのまま戦っていても決め手に欠けた私達では、悔しいけどフェンリルを倒せなかったでしょうしね。

 

「アザゼル、そしてリアス・グレモリー。私から提案がある───」

 

 お互いの無事を喜ぶ間もなく、白龍皇ヴァーリがそう切り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 うっすらと目を開くと、イッセー()を見つめるアーシアが見える。アーシアは俺が目を覚ましたのに気付くと、安心したように口元を綻ばせた。

 

「良かった・・・・お加減はいかがですか、イッセーさん」

 

「アーシア、俺・・・・」

 

 そうだ、俺はフェンリルにやられて気を失っちまったんだ!

 

「戦闘は? 皆は無事なのか!?」

 

「大丈夫、戦闘は終わりました。皆も無事です。今は白龍皇さんとお話をしていて・・・・」

 

「白龍皇!? ヴァーリが来てるのか!?」

 

 こうしちゃいられないと俺は身体を起こす。うん、痛みはない。どうやら馬車の中に寝かされてたみたいだ。外に出ると馬車は地上に降りていて、皆が集まって話をしていた。そこには白銀の髪の美女──ヴァーリの姿も見える。

 

「貴方達にも分かったでしょう? 貴方達だけではロキとフェンリルには敵わないと」

 

 ヴァーリの言葉に皆は悔しそうに顔を歪める。ヴァーリはそんな皆を見渡し、言葉を続ける。

 

「でもそれは私も同じ。今の(・・)私ではロキとフェンリルを同時に相手にする事は出来ないわ。でも───二天龍とガイバーが手を組めば話は別よ」

 

 そう言ってヴァーリは一輝先輩と、続けて俺に視線を向けた。

 

「イッセー、もういいの?」

 

「はい、もう大丈夫です。でも───」

 

 心配そうに訊ねる部長に俺は頭を下げた。そして俺はヴァーリと目を合わせる。 

 

「どういうつもりだ、ヴァーリ?」

 

「今回に限って、私は貴方達と一緒に戦ってもいいと言ってるの。──つまり共同戦線って訳よ、イッセー君」

 

 そう言ってヴァーリは悪戯っぽくウインクをした。

 

 

 

  




読んでいただきありがとうございました。

なんか、時間がかかった割には原作とあまり変わらない展開になってしまいました。
次話はもう少し変えて、エロも入れられれば、と思っています。

本作のロキのモデルはトム・ヒドルストン演じる「アベンジャーズ」のロキです。

原作ではフェンリルは灰色となっていましたが、地味だと思って白狼に変えてしまいました。




この場を借りて、一輝の眷属についてアンケートを設けたいと思います。
一輝の眷属は半数以上決まっていますが、どのコンビが眷属にいたらいいか、参考までに皆さんの意見を聞かせて下さい。



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第36話 転生天使に微笑みを☆☆(祐美、ゼノヴィア、イリナ)



大変遅くなりました。
一度書き上げたのですが、原作とあまり変わらないので書き直していたら、こんなに遅くなってしまいました。

という訳で遅れた上に長くなった第36話をご覧下さい。



 

 

 悪神ロキの襲来した翌日、早朝から一輝(うち)のマンションに天使、悪魔、堕天使、そして神が集まっていた。

 グレモリー眷属+α12名、シトリー眷属8名、神の子を見張る者(グリゴリ)幹部2名、北欧神話勢力2名、そしてヴァーリチーム3名の合計27名の錚々たるメンバーが大会議室に集い、顔を合わせていた。

 会議室の前方、スクリーンを背にした席にアザゼルとバラキエルさん、オーディン様とロスヴァイセが座り、その他の者が向かい合う形で席に着く。

 

 ゴホンと軽く咳払いをして、進行役のアザゼルが口を開いた。

 

「さてと、まずはヴァーリ、一体どういうつもりだ?」

 

「別に。私はただ強い奴と戦いたいだけよ」

 

 

 アザゼルの詰問にヴァーリが涼しい顔で答える。

 

「俺達が拒否したらどうする?」

 

「別に構わないわよ。その時は勝手にやるだけだから」

 

 それは困る。こちらの作戦が進行中にいきなり乱入されて、作戦が破綻したら堪ったもんじゃない。なら最初から味方として作戦に加えた方が遥かにマシだ。

 見ればアザゼルやリアス、ソーナらも同じ結論に達したらしく、仕方がなさそうな顔をしている。

 

「ちっ、仕方ねえ。分かったよ、共同戦線を張ろうじゃねえか。その代わりこっちの作戦には従って貰うぞ?」

 

 アザゼルがヴァーリチームを睨みながら言うと、

 

「分かったわ。二人共いいわね?」

 

 ヴァーリが了承し、他の二人に訊ねると、美猴はヒラヒラと手を振り、アーサーはコクリと頷いた。

 

「まあいい・・・・よし! 作戦の説明をするぞ!!」

 

 ヴァーリチームを不審に思いつつ、アザゼルが作戦の説明を始める。

 

 今回の作戦はここにいる27名、いやアザゼルとオーディン様は【日本神話】との会合に出席するので25名で対応する事になる。

 冥界に援軍を打診したが、多発する『禍の団(カオス・ブリゲート)』のテロに掛かりきりで援軍に送れる戦力がないらしい。

 北欧神話も同様で、北欧は今オーディン様が率いる『開国派』、ロキを含む『鎖国派』どちらでもない『中立派』の三派に別れており、ロキやフェンリルに対する戦力が『開国派』にはいないという。原作にあった雷神トールの『ミョルニル』を借りるという話も、トールが『中立派』である為断られたそうだ。因みにレプリカも存在してないらしい。

 

 作戦の第一段階として、会場に現れたロキとフェンリルをシトリー眷属全員の力で転移させる。転移先は人里離れた上に何重にも結界を張った荒野。ここなら遠慮なく力を開放出来る。

 第二段階でロキとフェンリルを迎え撃つ訳だが、戦力の振り分けは俺とイッセー、ヴァーリの三人がロキを、その他の皆がフェンリルを迎え撃つ事になった。『神滅具(ロンギヌス)』である【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の持ち主であるイッセーと【白龍皇の翼(ディバイン・ディバイディング)】の持ち主であるヴァーリ、そして昨夜の戦いでロキに傷を負わせた俺がロキを受け持つのは当然として、問題はフェンリルの方だ。美猴とアーサー。実力は申し分ないと思うが果たしてこいつらと連携が取れる、いや、そもそもリアス達と連携取る気があるのだろうか?

 疑惑は尽きないが会合は明日の夜、対策を練るにも時間が圧倒的に足りない。この状況でロキとフェンリル、強大な力を持つ悪神とその神すら殺せる魔獣を俺達は倒せるのだろうか。

 

 

 

 

 共同戦線を張る事が決まってから、決戦までの間、ヴァーリチームの三人、ヴァーリ、美猴、アーサーがうちのマンションに滞在する事になった。それはいいんだが、問題は連中が色々と騒ぎを起こす事だ。

 ヴァーリはトレーニングルームや図書室、シアターを一通り使用し、飽きるとイッセーを揶揄って遊んでいるし、美猴は何も考えてないような能天気な性格で、あちこち首を突っ込んでは余計なトラブルを巻き起こす。

 だが一番問題だったのは、常識人でブレーキ役だと思っていたアーサーだった。

 

 

 

 

 

 

 祐美()とゼノヴィア、イリナの三人は地下4Fの特別訓練場で剣を交えていた。

 最近私達はアルトリアさんから剣の指導を受けている。私達三人は騎士タイプ、ならば『騎士王』と呼ばれていた伝説のアーサー王から直接指導を受ける機会を逃す手はない。

 アルトリアさんが遅れているので、ウォーミングアップがてら軽く剣を交えていると、

 

「ほう・・・・これは興味深い」

 

 やって来たのはヴァーリチームの剣士、アーサーだった。

 

「何かご用? 訓練中は関係者以外立入禁止なのだけど?」

 

 私が剣呑とした態度で訊ねると、アーサーは涼しい顔で、

 

「共闘中なんですから、固い事言わないで欲しいですね。・・・ふむ、丁度いい。貴女達の腕を確かめさせて貰うとしましょうか」

 

 そう言ってアーサーは虚空から一振りの剣を取り出した。この剣を私達は知っている。

 

聖剣(エクスカリバー)・・・・!?」

 

「そう、支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)。遥か昔から行方不明になっていた最後の聖剣(エクスカリバー)です」

 

 アーサーが聖剣を構える。

 

「さあ、剣を構えなさい。貴女達の力を私に見せて下さい」

 

「くっ!?」

 

 アーサーの剣気に圧されて私が聖魔剣を、ゼノヴィアがデュランダルを、イリナが光の剣を構える。次の瞬間、私の眼前に銀光が迫って───! 

 

 

 

 

 

 

「訓練場か? アルトリア」

 

 訓練場へ行こうと廊下を歩いていると、前方にアルトリアがいたので声をかける。

 

「一輝。はい、祐美達の指導をする約束をしているんです」

 

 最近うちの騎士娘達はアルトリアに剣の指導を受けてるという。

 

「弟子達の方はどうだい?」

 

「クスッ、弟子だなんて・・・・そうですね、三人共素質はありますよ。ただ、祐美は速さ(スピード)技術(テクニック)は申し分ないんですが、(パワー)が足りません。ゼノヴィアはその逆。イリナは一番バランスがいいんですが戦闘形態(コンバットフォーム)にならなければ決定力が不足しています。長い目で見れば欠点を補うよう指導するべきですが、戦いはすぐにも起こります。ならば長所を伸ばすようにするべきか悩み所ですね」

 

 熱心に話をするアルトリアに自然と笑みが洩れる。

 

「むっ、何ですか一輝。私何かおかしな事を言いましたか?」

 

 笑われたと思ったのか、少しだけ口を尖らせ、むくれたようにアルトリアが言う。 

 

「スマン。いや、楽しそうだなあ、と思ってな」

 

 俺がそう言うと、俺の意図を察したのかアルトリアは照れ臭そうに苦笑を洩らした。

 

「ああ・・・・そうですね。確かに私は今楽しいと感じています。以前の私からは考えられないでしょうね」

 

「それでいいんだよ。俺がアルトリアを眷属にしたのは、そういう気持ちを味わって欲しかったからなんだ。だからもっと楽しんでくれ」

 

「一輝・・・・・・はい」

 

 そう言ってアルトリアは花が咲くような笑顔を見せてくれた。

 暫くその笑顔に見惚れていると、特別訓練場に到着した。そして自動ドアを潜った先に───惨劇が広がっていた。 

 

 

 

 白いスーツの男──アーサーが剣を振るう度に祐美が、ゼノヴィアが、イリナが傷付き倒れていく。

 

「どうしました? 貴女達の力はこの程度じゃないでしょう?」

 

 挑発するようなアーサーの言葉にゼノヴィアが怒りを爆発させる。

 

「言ったな! ならば喰らえ、デュランダル・バースト!!」

 

 強大な聖なる波動がアーサーに迫る。だがアーサーは迎え撃つように剣を一閃した。

 

「フッ───!!」

 

 アーサーの放った剣圧がデュランダルの波動を斬り裂く。

 

「バカな・・・・!?」

 

 渾身の一撃を斬り裂かれ、ゼノヴィアが愕然とする。

 

「パワーは大したものですが、それ以外見所はありませんね。三十点という所ですか」

 

「ゲハッ!!」

 

 背後に回ったアーサーに斬られ、ゼノヴィアが血を吐き倒れる。

 

「おっと」

 

 アーサーの元に剣が飛来したが、アーサーは軽やかにステップを踏んで回避する。

 

魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)でしたか? 発想は見事ですが如何せん数が足りませんね」

 

「ちいっ───!?」

 

 魔剣流星群(ソード・バース・ミーティア)をかわされ祐美が舌打ちする。確かに今の祐美が一度に創り出せる魔剣の数は十二本。以前より増えてはいるが、それ位なら回避出来なくもない。最近は祐美が魔剣を射ち出すのを知られているから、回避や防御される事もあり、決定打になり難くなっている。

 

 魔剣流星群を射出しながら、聖魔剣を手に祐美がアーサーに迫る。だがアーサーは流星群をかわしたり、打ち落としたりと冷静に対処する。

 

「そして、何より貴女には単純に(パワー)が不足している。今のままではこれから現れる敵には通じませんよ。四十五点」

  

「カハッ!?」

 

 二人が交差した後で、祐美が血を吐いて倒れた。剣を振り、血糊を落とすアーサーの背後に強力な熱波が沸き上がる。

 

「よくも二人を───!」

 

 怒りの雄叫び上げて戦闘形態(コンバットフォーム)になったイリナが炎光の剣を手に突撃する。

 二合、三合と剣を交わすとアーサーが感心したように呟く。

 

「ほう。これが御使い(ブレイブ・セイント)の戦闘形態ですか。成る程、大したものです。ですが」

 

「!!?」

 

 鍔迫り合いしながら、アーサーは虚空からもう一本剣を取り出す。

 

「残念ながら、貴女はまだまだこの力を使いこなせていない。五十点」

  

 アーサーがもう一本の剣を振り下ろす。イリナは炎光の剣で受け止めるが、それも一瞬、炎光の剣は砕かれ、そのままイリナを斬り裂いた。

 

「そんな・・・・・」

 

 イリナの戦闘形態が解除され、その場に倒れた。

 

 時間にして僅か一分強。たったそれだけの時間でアーサーは祐美達三人を打ち負かしてしまった。

 

「一輝、急いでアーシアを呼んで下さい」

 

「! アルトリア!?」

 

 あまりの出来事に放心していた俺にアルトリアの声が届く。気付いた時には、アルトリアは既にバトルフィールドに足を踏み入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 アルトリア()はフィールドの土を踏みしめ、アーサーに近づいて行く。

 

「おや? 貴女は確か不破一輝君の女王(クイーン)、アルトリアさんでしたね。今度は貴女が相手をしてくれるのですか?」

 

「外道め。望むならいくらでも斬り伏せてやる」

 

 私は胸の怒りを吐き捨てるように言った。

 

「外道とは酷いですね」

 

 アーサーは苦笑しつつ眼鏡をクイっと上げる。

 

「共闘が決まっていながら味方を傷付ける奴など外道で十分。この傷では彼女達は明日戦場に立てないかもしれない。わざわざ戦力を減らしてどうする気だ?」

 

 身体の傷はアーシアが治してくれるだろうが、ここまで徹底的に打ち負かされたのでは、寧ろ心の傷の方が深刻かもしれない。

 

「この程度で折れるようなら戦力にならないでしょう。必要ありませんし、何でしたら私が彼女達の分まで働きますよ?」

 

 アーサーの台詞に私の怒りが爆発した。黄金のオーラが立ち昇り、その中で私の衣裳が青い戦闘用ドレスに変わり、甲冑が装着される。

 

「貴様が彼女らの価値を勝手に決めるな! その傲慢、我が剣で撃ち砕いてくれる!!」

 

 私は【風王結界(インビジブル・エア)】を手にアーサーに襲いかかった。

 

「ぬうっ!?・・・・ククク、出来るとは思っていましたがこれほどとは・・・・愉しくなって来ましたね」

 

 私の不可視の剣を受けて驚きつつも、アーサーは嬉しそうに嗤う。

 

「勝手にほざいてろ、戦闘狂!!」

 

 横凪ぎの一撃を受けて吹き飛ばされるも、アーサーは倒れる事なく態勢を立て直す。私は距離を詰め、再び剣を振り下ろす。だが、

 

(!? この男───!)

 

 アーサーは私の繰り出す見えない斬撃に惑わされず、今度は弾き飛ばされる事なく対応する。十合、二十合と剣を交わすが、中々隙が見出だせない。

 

(この男、口だけじゃない。人間でありながらこれ程の剣技を修めるのは、並大抵の修練では出来なかった筈だ。だからこそ惜しい。何故精神(こころ)がこうも歪んでしまったのか!?) 

 

 激しい打ち合いの果て、私達は打ち合いの反動を利用し、一旦距離を置いた。

 

「・・・・その剣は?」

 

 私とこうまで打ち合えるのだ。並の聖剣ではあるまい。

 

「【聖王剣コールブランド】。我が家に代々伝わる家宝で、聖剣としては最上級に位置する物です」

 

「成る程。道理で折れずに私と撃ち合える訳だ。・・・・惜しいな。最上級の聖剣とそれに相応しい腕を持ちながら、何故貴様は戦いに魅入られている?」

 

 私は残念に思い訊ねる。

 

「さあて・・・・? 私は祖先のアーサー王を越える『最強の聖剣使い』になりたい、そう思って剣を振り続けて来ました・・・・戦いに魅入られようが、修羅に堕ちようがそれさえ果たせればどうなろうと構いませんよ」

 

 アーサーは自嘲するように微笑む。

 

「そうか・・・・ならばもう訊くまい。だが我が教え子達を傷付けた貴様を私は許す訳にはいかない───風よ!

 

 風王結界から風が発生する。

 

「これは・・・・!?」

 

 風は益々勢いを増し、激しい風が私達の間に渦を巻く。

 

「アーサー王を越えると言ったな。ならば越えてみせろ!!」

 

 私は高く飛び上がり、アーサーに必殺の一撃を放つ!

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!!」 

 

 【風王鉄槌(ストライク・エア)】の衝撃で辺りに土煙が舞い上がる。手応えはあった。【風王鉄槌】を喰らえば、普通の人間なら跡形も残さず消滅している筈だが・・・・やはりな。土煙の晴れた先にはコールブランドを杖代わりにし、片膝を着いて息を荒げるアーサーの姿があった。

 

「──ハァ、ハァ・・・・危なかった・・・久々に死ぬかと思いましたよ」

 

 大したものだ。スーツはボロボロで眼鏡も罅割れ、額から血を流してはいるが【風王鉄槌】を喰らって五体満足でいるとは。

 その時、アーサーの目が驚いたように見開かれ、私の右手を凝視する。そして感嘆するように呟いた。

 

「・・・・・・黄金の、聖剣」

 

 そうか、風王結界はエクスカリバーを隠す風の鞘。風王鉄槌で風を解放したからエクスカリバーが剥き出しになっているのか。その時、

 

「そこまでだ、アルトリア!!」

 

 一輝の静止の声がフィールドに響いた。声の方を見ると、一輝の他にリアス部長とイッセー、アーシア、それにアザゼル先生とヴァーリまでいた。

 ここまでかと嘆息し、私は武装を解いて元の姿に戻る。

 

「待って下さい! 貴女はまさか───」

 

 私はアーサーを一瞥すると、何も言わずに一輝の元へ歩みを進めた。

 

 

 

 

    

 

 アーサーが祐美達に重傷を負わせた件は、当然の如くグレモリー眷属(みんな)が憤った。

 アザゼルが「決戦前だから堪えてくれ!」と必死に頼むから堪えたが、それがなければグレモリー眷属対ヴァーリチームの決戦が起きる所だった。

 三人はアーシアの治療を受けて身体の傷は治ったが、アーサーに手も足も出なかったという心の傷はそうもいかず、精彩を欠いている。紳士的な物腰に騙されたが、こいつもヴァーリの仲間、似た者同士(戦闘狂)という事か。  

 そのアーサーはアーシアの治療を断ると、謹慎すると嘯いて部屋に籠っている。あのアルトリアが「人類としては間違いなく最強格」と評する程だ。アーサーの実力が計れたのは良かったが、決戦前に問題起こすんじゃねーよ!   

 

 ともあれ一輝()は祐美、ゼノヴィア、イリナの三人の様子を見に来ていた。リアスに頼まれたのもあるが、俺自身深く落ち込んでいた三人が心配だったのもある。祐美の部屋の扉をノックするが返事がない。ゼノヴィア、イリナも同様だった。

 

(もう寝ちゃったのか・・・・?)

 

 出来れば今日中に話をして、少しでも立ち直ってくれたら、と思っていたのだが仕方がないか。俺は踵を返して自分の部屋に戻った。だが、

 

「祐美、ゼノヴィア・・・・来ていたのか」

 

 俺の部屋の前にはパジャマ姿の祐美と、Tシャツ短パン姿のゼノヴィアが暗い顔をして立っていた。

 

 

 

 

 二人を部屋に招き入れるとベッドに座らせ、俺は椅子に座って向かい合う。さて、どうするか・・・・そう考えていると祐美が先に口を開いた。

 

「すみません先輩・・・・」

 

「何がだ?」

 

「私達はあの男に敗北してしまった・・・・!」

 

 ゼノヴィアが拳を握り締めて呟く。

 

「別に敗北するのは悪い事じゃないだろう? 寧ろこの敗北を糧に強くなればいい」

 

 そう、敗北するのは決して悪い事じゃない。悪いのは敗北したまま立ち止まってしまう事だと俺は思う。

 

「先輩ならそう言うと思ってました。でも・・・・」

 

「こう言っては何だが、私は強くなったと思っていた。・・・・だが、あの男には全く通じなかったんだ!」

 

 祐美は自嘲の笑みを浮かべ、ゼノヴィアが悔しげに膝を叩く。

 彼女達は今自信を失っている。今まで必死に訓練に励み、ようやく掴んだ力がアーサーにはまるで通じなかった。このままでいいのかと迷い、落ち込むのも無理はない。さて、どうするか・・・・

 

 俺は席を立つと祐美とゼノヴィアの間に座り、二人を抱き寄せた。

 

「「せ、先輩?」」

 

 驚き、声を上げる二人を無視して、俺は言葉を続ける。

 

「俺にはこんな時どんな言葉を掛けたらいいか分からない。だが、もし迷いがあるなら明日の戦いには行かない方がいい」

 

「えっ!?」

 

「・・・・先輩、それは敗北した私達では足手まといだから、ですか?」

 

 祐美が不安そうに訊ねる。いかん、不安にさせちまったか。俺は二人を安心させたくて、頭を軽く撫でる。  

 

「違うよ。今の自分の力を信じられず、迷いを抱えた状態で戦場に出ればお前達が死ぬ事になる。いや、それならまだしも仲間を死なせる事にでもなったら、お前達は今度こそ潰れるだろう」

 

「「!!?」」

 

 ゼノヴィアは愕然と目を見開き、祐美はショックを受け俯いた。

 

「これからどうするか。それはお前達が自分で答えを出さなきゃならない。でも俺はお前達がどんな答えを出そうと受け入れるよ」

 

 そう、仮にこのまま立ち直れず、戦いから離れたいと言ってもだ。

 これから俺達が戦う相手は本物の神とその神すら殺す魔獣。これを潜り抜けても次はもっと強い敵が現れるだろう。

 ここが祐美の、ゼノヴィアの分岐点になるかもしれない。俺は二人がどんな結論に達したとしても支えようと固く心に誓った。

 

 

「「先輩・・・・・・」」

 

 二人が俺に凭れ掛かる。俺は二人を労るように二の腕を擦る。

 

「分かった。センパイの言う通り、自分で考えて答えを出すよ。でも・・・・」

 

「今は、少しだけ勇気を下さい。先輩・・・・」

 

 ゼノヴィアと祐美の唇が近づく。俺は二人と交互に唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

「ん──ちゅ、センパイ・・・・」

 

「先輩、私も──ちゅ、ちゅぷ、んん・・・・」

 

 ゼノヴィアと祐美の唇が交互に一輝の唇に降り注ぐ。二人に応えるように、一輝の手が二人のお尻を撫でる。

 

「ああ、センパイ・・・・んちゅ」

 

「んああ、もっと触って、先輩・・・・むちゅ、ちゅう・・・・」

 

 二人は甘い声を洩らし、催促するように更に強く唇を押し付ける。やがて祐美の手が一輝の股間に回り、くすぐるように撫でる。

 

「うふ、先輩のおっきくなって来ました♪」

 

「気持ちいいのかセンパイ? ならもっと気持ち良くなってくれ。むちゅ、ちゅう・・・ジュルル」

 

 ズボンのチャックを下ろした祐美は、すっかり大きくなった肉棒を握って擦り出す。ゼノヴィアは一輝の胸板を撫でつつ、より深く唇を重ねると、舌を絡めて唾液を流し込んだ。 

 

「あ、先輩! んん、やぁん・・・・!」

 

「ンフ!・・・・ジュル、んああ、そこいい!」

 

 一輝はお尻を撫でていた手を下着の中に突っ込み、直接陰部を弄る。二人のそこは期待に熱い蜜を溢れさせ、クチュクチュと淫らな水音を立てる。

 

「はあ、あん、先ぱぁい! もう欲しい・・・・」

 

「んん、んああ、もう我慢出来ない。挿れてくれ、センパイ・・・・」

 

 すっかり出来上がった二人は、甘い吐息を吐きつつ懇願する。一輝は二人の唇に軽くキスをして立ち上がった。

 

「祐美、ゼノヴィア、服を脱いで尻をこっちに向けろ」

 

 

 

 

 

 スパアァァンッ!!

 

 肉と肉がぶつかる打擲音が室内に響く。肉付きのいいお尻が波打ち、珠の汗が飛び散る。 

 

「あぁん! 先輩のが奥まで届いて、くふぅん、いい!」

 

 十回突いた一輝は、祐美の膣内から肉棒を抜く。栓が抜けたように先程膣内射精(なかだし)した精液がドロリと溢れる。

 

「あおぉ! センパイのがまた・・・・挿入(はい)って来たぁ!!❤」

 

 ゼノヴィアもまた、膣内に突入した肉棒を歓喜して迎え入れる。そしてまた十回突くと一輝は肉棒を抜き、再度祐美の膣内に突入した。

 一輝は何度も何度も突いては抜き、抜いては突くを繰り返し、祐美やゼノヴィアも自ら腰を動かし、貪欲に快楽を求める。やがて三人の動きはシンクロし、最後の時を迎えようとしていた。

 

「くっ、出るぞ、ゼノヴィア!!」

 

 ブビュルルル!ブビュ!ビュルル!

 

「ほああぁぁん!!❤・・・・んああ、先輩の熱いのがいっぱい・・・・・・」

 

 本日三度目の精を膣内に浴び、全身を震わせてゼノヴィアは絶頂し(イッ)た。

 一輝は尻穴に力を入れて射精を中断すると、肉棒を抜いて祐美の膣内に突き入れた。そして、

 

 ビュルルル!ブビュ!ビュルーーーー!!

 

 祐美の最奥で残りを一気に射精した。

 

「んああぁぁぁんっ!!・・・・ぁあ、分かる

・・・・私の子宮が先輩の精液をゴクゴク飲んでる❤」

 

 子宮に精液を浴びせられ、祐美もまた絶頂し(イッ)た。

 一輝は祐美の首筋に顔を埋め、暫し息を調える。息を吸うと祐美の汗と性臭が混ざった匂いがする。男の本能を掻き立てるような甘く芳しい匂いに、一輝の肉棒は五度も放った後だというのに一向に小さくなる気配がない。

 一輝が肉棒を抜くと、祐美の膣内(なか)から大量の精液が溢れ出し、白濁の池を作る。祐美は微かに身動(みじろ)ぎすると、やがてスウスウと寝息を立て始めた。見れば隣のゼノヴィアも既に夢の世界へと旅立っていた。

 

(折角眠ったのにこれ以上するのは酷だな。さて、どうするか・・・・)

 

 今日は色々あったのだから休ませてやろうと思う反面、未だいきり立った自身をどうするか、一輝は考える。

 

(いい機会だから、彼女(・・)もここで堕としてしまうか)

 

 そう決断すると、扉に向かって声を掛ける。

 

「覗いているのは分かってる。入って来い」

 

 扉の外でガタンと物音がした。暫くすると観念したように扉が開き、顔を真っ赤にしたイリナがモジモジしながら入って来た。

 

 

 

 

 

 

一兄(かずにい)・・・・!」

 

 イリナ()が部屋に入ると、一兄は一糸纏わぬ姿でいた。

 筋骨隆々という程ゴツくもなく、所謂細マッチョと云える均整の取れた肉体、何より天を衝くようにそそり勃つ男性器に目を奪われ、顔が益々熱くなる。覗いていたのがバレた事と相俟って、私の頭はパニックを起こして言葉が出ない。そんな私を一兄はいきなり抱きしめた。

 

「か、一兄!?」

 

「覗きの罰だ。大人しくしてろ」

 

 一兄の手が腰と背中に回り、寝間着でノーブラの胸が押し潰され形を変える。それに、

 

(な、なんか硬いのがお腹に当たってるんだけど、こ、これってやっぱり───!?)

 

 寝間着の上から押し当てられる一兄の男性器の感触に、私は愕然とした。

 

(えええーーー!? こ、これが男の人の・・・・え? じゃあこんなのが私の膣内(なか)に入るの? え!? 無理無理無理無理! 裂けちゃうわよこんなの!?)

 

 そんな事を考えていると、一兄の手が私の身体を撫で始め、私の身体が一々反応する。

 

「あ、や、一兄!?」

 

 背中や撫でていた手はいつの間にか脇腹に回り、腰のくびれを確めるようにそっとくすぐり、腰を撫でていた手はいつの間にかお尻に回り、形を確めるように尻肉を撫で回す。

 三人の情事を覗いていて火照った身体は、私の意志に関係なく愛撫を受け入れ、股間から熱い蜜を溢れさせる。

 

「はあ、あん、だ、ダメよ一兄・・・・これ以上されたら、私・・・・ふぅん、堕ちちゃう!」

 

「堕ちたらダメなのか?」

 

「ダメだよ! ふぅん・・・・私はミカエル様のAなんだから。その私が、あぁん、堕天したら・・・・ミカエル様のご、ご迷惑になるわ。だから・・・・んああ、お願い、やめて・・・・」

 

 私は一兄に懇願する。でも一兄の手は止まってくれず、寝間着の中に入って直接身体を撫でる。脇から入った手は胸に回り、腰から入った手はお尻から股間に回り、私の女性器を弄り回す。

 

(ああ、これダメ! 刺激が強すぎてもう・・・・このままイッたら私、本当に堕ちちゃう───!)

 

 焦る私の耳元で一兄が甘く囁く。

 

「大丈夫。今までだって覗きながらオナニーしてイッてたんだろ? なら今回も同じさ」

 

「そ、それは───!」

 

 まさに悪魔の囁き。そうかもしれないけど、それは自分で弄ってたからで、男の人にイカされるのは初めてなのだ。私の身体は未知への恐怖に震える。決して快楽に震えているのではないと思いたい。でも、

 

「ふう、う、んんん! あぁ、もう・・・もうダメェーーーー!!」

 

 身体に電流が走った。今まで感じた事のない刺激に全身の毛穴が開き、汗が滲む。

 

「んはぁ、ぁあん・・・・もう・・・・ダメって言ったのに・・・・」

 

 堕天しなかった事にホッとして、私は一兄に凭れ掛かる。一兄は労るように頭を撫で、軽く唇を落とした。

 

「これでイッた位では堕天しないと分かったな。これは仮説なんだが、転生天使は純粋な天使に比べて堕天し難いんじゃないか?」

 

「それは・・・・」

 

 一兄の言う事も一理ある。何せ転生天使は『駒王協定』による冥界との交流で誕生したばかり。純粋な天使と何が違うか検証は必要だし、私の人間だった部分が堕天に歯止めを掛けてる可能性は確かにある。

 

「要するに、純潔さえ失わなければ堕天しないんじゃないかと思うんだ。・・・・所でイリナって処女か?」

 

「当たり前でしょ! 一兄以外の人となんてする訳ない───って、あ!」

 

 自分の吐いた言葉の意味に気付いて、カーっと顔が熱くなる。こ、これって告白してるようなものでは!? チラリと一兄を見ると一兄は苦笑を浮かべていた。

 

「全く・・・・迂闊な所は昔から変わらないな。でもイリナのそんな可愛い所が、俺はずっと好きだったよ」

 

「一兄・・・・・・」

 

 一兄は苦笑を浮かべながらも、はっきり好きだと言って私を抱きしめてくれた。私の胸に温かいものが広がり、私は喜びのあまり一兄に抱き着いた。

 

「イリナ、俺にはリアスを始め恋人が八人もいる。それでもいいか?」  

 

「うん。私皆とは仲良く出来ると思うんだ。だから私も一兄のお嫁さんにして下さい」

 

「イリナの気持ち、確かに受け取った。好きだよイリナ」

 

「私も大好きだよ、一兄!」

 

 私達は視線を交わし、そっと唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 浴室にクチュクチュと湿った音が響く。

 

「あん、ダメよ一兄・・・・んん!」

 

「でもイリナのここはもっと触ってって言ってるぞ」

 

「んんん! だって・・・・」

 

 恥ずかしいと思いながらも、イリナの割れ目からは愛液が止めどなく溢れている。一輝に背後から股間を弄られ、イリナは甘い喘ぎ声を上げた。

 

「イリナのおっぱいは大きくて綺麗な形をしてるな。まさに天使のおっぱいだな」

 

 右手で股間を、左手でおっぱいを揉みながら一輝はイリナの項に舌を這わせる。ツインテールを解いて髪を下ろしたイリナは、普段の快活なイメージが抑えられ、大人っぽい色気を漂わせる。

 一輝が今まで観た中で一番美乳なのはグレイフィアと祐美だが、それらに決して劣らない理想的な曲線をイリナのおっぱいは描いていた。

 

「ああ、あん、おっぱいそんなに揉まれたら

・・・・あぁん、乳首クリクリしないでえ!・・・・はぁん、あん、お股に指を挿れたら・・・・やぁん、お毛毛引っ張っちゃダメェ!」

 

 一輝は屹立した乳首を指で摘まみ、膣口に指を一本挿れてゆっくり出し挿れする。その際愛液に濡れた恥毛を引っ張って悪戯する。更に一輝は皮に包まれた陰核を愛液で濡れた指で弾いた。

 

「はおぉぉん! そこダメ一兄! そこは感じ過ぎちゃうから!・・・・ぁあ! あぁん! ダメ、もうダメ、ダ、メェ~~~~~!!」

 

 左手で乳首を引っ張られ、膣口に挿れた指を二本に増やされ、皮を捲り露出した陰核を摘ままれたイリナは嬌声を上げて絶頂し(イッ)た。

 

(うん。やはりイッただけなら堕天しそうにないな。となれば次は───)

 

 自分の目の前で四つん這いになり、荒い息を吐くイリナ。涎を垂らし小さく口を開く膣口も、愛液に濡れて肌に貼り付く恥毛も、薄紅色のお尻の穴も丸見えだ。

 普段の快活な雰囲気からは想像も出来ない淫靡な光景に一輝に息を飲み、次のターゲットに手を伸ばした。

 

「んひいっ!?・・・・か、一兄? そこ違う・・・・うひぃん! おあぁ・・・・そこお尻の穴ぁ・・・・」

 

 愛液で濡れた指を一本、一輝はまる見えの尻穴に挿入する。イリナの尻穴は思った程抵抗もなく、ズブズブと音を立てて一輝の指を呑み込んでいく。イリナは予想もしていなかった場所を責められ、悲鳴を上げた。

 

「嘘・・・・ウソぉ、やめて一兄! そこお尻の穴だよ・・・・うぐぅ、き、汚ないよ・・・・?」

 

 尻穴を責められながら、イリナはやめるよう一輝に懇願する。だが一輝はイリナの懇願を無視してゆっくりと指を出し挿れする。暫くするとイリナに変化が訪れた。

 

(えっ!? 何これ? 最初は、ううん、今も苦しいんだけどそれだけじゃなくて・・・・・・何で? どうして私気持ち良くなってるの!?)

 

 イリナは自分の身体の反応が信じられなかった。一輝は出し挿れするだけじゃなく捻りも加えてイリナの様子を観察する。

 

(思ったより早く感じるようになったが、やっぱり固いな。緊張してるのもあるし、まずは身体を解すとしようか)

 

 一輝はイリナの尻穴から指を抜くと、いきり勃つ肉棒を割れ目に添えて前後に擦り付けた。

 

「うあぁん、んん・・・・一兄のスゴい、おっきい・・・・あぁん、そこ気持ちいいーーー!!」

 

 いきなり違う所を責められ戸惑うも、巨根が入口を擦る感覚にイリナは嬌声を上げる。やはり尻穴より膣口を弄られる方が気持ちいいのか、イリナはもっと気持ち良くなりたいと股を閉じ、割れ目と陰核を擦る肉棒の感触に身体を震わせた。

 

「あぁん、はぁん、んん・・・・これいい・・・・お股が気持ちいいよぉ!!」 

 

 素股が気に入ったのか、イリナは快感を享受し、甘い喘ぎ声を上げる。一輝は背後からイリナの美巨乳を揉み、イカせようと乳首を摘まみ上げた。

 

「いひぃん! そ、それダメェ~~~~!!」

 

 プシャアアア!!

 

 イリナが潮を噴いて絶頂した。それと同時に、

 

 ブビュルル!ブビュ!ビュルーーー!!

 

 一輝もまた絶頂し、イリナの腹からおっぱいが白く染まった。

 

 

 イリナは絶頂に身体を弛緩させ、力が入らなくなっていた。そして、それこそが一輝の狙いだった。

 

 

 目の前でへの字になって崩れ落ちるイリナ。その高く上がったままの尻を両手で固定すると、一輝はイリナの尻穴目掛け肉棒を挿入した。

 

「あぎぃぃっ!・・・・・・かひゅ、おおぉ・・・・何これぇ? お尻の穴が拡がって・・・・は、おおぉ・・・・」

 

 イリナは教会の戦士として戦って来た。任務の中で斬られたり刺されたりした事は何度もあったが、今の衝撃は今まで感じたどれよりも、深くイリナの身体を揺さぶった。

 指とは長さも太さも硬さも違う。串刺しにされたような衝撃に、イリナは呼吸さえままならず、ただ身体を震わせていた。

 

「落ち着けイリナ。ゆっくりと呼吸するんだ」

 

 耳元で一輝に囁かれ、イリナは反射的に呼吸を再開した。

 

「ハヒュウー、ハヒュウー、ンハァ・・・・あぁぁ、うぅん」

 

「大丈夫か、イリナ?」

 

「一兄・・・・あの、もしかして一兄のが・・・」

 

「ああ、俺のチンポがイリナのアナルに入ってるぞ」

 

 一輝の言う通り、イリナの尻穴は限界まで拡がり、一輝の肉棒をギチギチと締め付けていた。

 

「変だよ一兄。お尻の穴にお、オチンチンを挿れるなんて・・・・そんな所、汚ないよ・・・・?」

 

「イリナの身体に汚ない所なんてないよ。それにお前が知らないだけで、アナルセックスといって、尻穴でするセックスもあるんだ。決しておかしい事じゃないんだよ」

 

「そう、なの・・・・?」

 

 一輝はイリナのお尻を撫でながら言い切った。確かに一輝の言う通りではあるが、アナルセックスはどちらかと言えば変態的(アブノーマル)に分類される行為で、今の状態は決して正常とは言えない。だが教会育ちで性知識に疎いイリナは、一輝の言う事を信じてしまった。

 

「最初は痛いとか苦しいとか思うかもしれないが、後から気持ち良くなるから我慢してくれ。それじゃあ、動くぞ?」

 

 そう宣言すると、一輝はイリナの腰に手を当て、ゆっくりと抜き始めた。

 

「お、おぉ? おおぉぉぉ~~~~!?」

 

 ズルズルと音を立てて肉棒が引き抜かれる感触に、イリナの背筋にゾクゾクと快感が駆け上る。

 抜ける寸前まで引き抜くと、今度はゆっくりと挿入する。

 

「ひぐぅ!? うぐ、んぎぃ・・・ふう、んほおぉぉぉ・・・・・・!!」

 

 ズブズブと音を立てて肉棒が挿入される感触に、イリナは苦しさのあまり苦悶の声を洩らす。

 

(何これ・・・・? 抜く時は気持ちいいのに、挿れる時はこんなに苦しいなんて・・・・あぁ、また・・・・)

 

 挿れる時の尻穴を圧し拡げられる苦しさと、抜く時の異物が抜けていく爽快感を交互に感じ、イリナは何も考えられず、ただ呻き声を上げる。

 

(あぁそうか。便秘が治った時の感覚と似てるんだ・・・・)

 

 出し挿れを繰り返される内に、イリナは肉棒を抜かれる感覚が便秘で何日も出ず、固くなった便がようやく排泄された時の解放感と似ている事に気が付いた。

 その途端、イリナにとってアナルセックスは忌避するものではなく、気持ちのいい行為なのだと再認識された。そしてイリナの肉体に変化が訪れる。

 

(何だ? 滑りが段々と良くなって来た・・・?)

 

 腸液が分泌された事でより抜き挿しし易くなり、スピードが上がる。イリナの苦しそうな呻き声が、気持ち良さそうな喘ぎ声に変わっていく。

 今や一輝は普通にセックスするのと変わらぬ速さでイリナの尻穴を責め立て、いつの間にかイリナも快楽を求めるように、自分で腰を動かしていた。

 

「はぁ、あぁ・・・・どうしよう一兄。私お尻で気持ち良くなってる・・・・あぁん、これじゃあ変態になっちゃうよぉ!!」

 

 イリナのお尻が波打ち、初めての快楽に甘い嬌声が上がる。

 

「大丈夫だイリナ。変態でも俺はイリナが好きだぞ。いや、寧ろ変態の方がいいかもな!」

 

「もう、一兄の変態!!❤」

 

 あんなに苦しそうだったのに、今や軽口を叩く余裕さえ窺える。イリナの変化に驚きつつ、感じてるならいいかと割り切り、一輝はイリナのおっぱいを掴んでラストスパートに入った。

 

「はおぉ! おぉん! お尻もおっぱいも気持ちいいよぉ! あぁん、もうダメ! 来るぅ、何か来ちゃうぅぅっ!!」

 

 イリナの頭上にいつの間にか天使の輪が現れ、ピカピカと明滅を繰り返す。イリナは気付いてないようだが一輝は堕天の兆候を感じ、一瞬躊躇する。だが、

 

「ここまで来てやめられるか! 出すぞ、イリナ!!」

 

「あぁぁん! イ、クぅ~~~~!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ビュルーーーー!!  

 

「んほぉぉ!・・・・・・お尻の奥、熱いのがいっぱいに・・・・」

 

 ショオオォォォォ───

 

 尻穴の奥に拡がる精液の熱さにイリナは全身を震わせ、オシッコを漏らしながら絶頂し(イッ)た。

 

(おお、これが本当の聖水か・・・・)

 

 疲労にアホな事を思いながら、一輝はバスマットを叩く黄金の聖水(オシッコ)を眺める。

 フッと天使の輪の明滅が止まり、光を取り戻して消えた。

 汗に塗れ、涙や涎に濡れながら、イリナの表情は快楽に満たされ、不思議と幸せそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「もう、一兄って強引だよね!」

 

「そいつは悪かった。でも気持ち良かっただろ?」

 

「もう・・・・・・バカ❤」

 

 さっきまでの快楽を思い出し、イリナは顔を赤くして背後の一輝()に寄り掛かる。

 堕天しなかった事に安堵し、身体の汚れを洗い流した二人は、湯に浸かり疲れを癒していた。イリナは背後の俺に寄り掛かり、俺はイリナのお腹に手を回して身体を支える。

 

「───フフ、クスクス・・・・」

 

 不意に笑い出したイリナに俺は訝しげな視線を向ける。

 

「どうした、急に?」

 

「ううん。・・・・あのね、さっきまでアーサーに負けて落ち込んでた筈なのに、何だかどうでも良くなっちゃったなあって」

 

「どうでもいいって?」

 

「うん。このままでいいのか、とか、これからどうしたらいいのか、とか悩んでたのに、一兄と、大好きな人と結ばれたらどうでも良くなっちゃった。ああ、勿論投げやりになってるんじゃないよ。どんなに悩んだり迷ったりしても、私はこの道を進むしかないって分かったの。だから進むよ私は。例え辛く苦しい道だとしても、一兄と一緒に」

 

 イリナは俺の手に自分の手を重ね、俺を見つめる。

 何とまあ・・・・イリナは祐美やゼノヴィアが悩んでいる間に一人で答えを出した。彼女の強さや純粋さを感じ、俺は感服していた。

 

「強いなぁ、イリナは」

 

 俺は抱きしめる力を強くする。

 

「惚れた?」

 

「ああ、惚れ直した」

 

 揶揄うようなイリナに真顔で言い返すと、イリナは顔を真っ赤にして俯く。その様は反則的に可愛かった。

 

「一緒に征こう、イリナ」

 

「うん一兄。貴方とならどこまでも」

 

 俺達は見つめ合い、約束を交わすように唇を重ねた。

 

 

 

 この夜、妹のように思っていた幼馴染みの少女は、かけがいのない恋人となった。

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通り、今回はロキ襲来の翌日の様子をお送りしました。

アーサー対アルトリア。
この世界のアーサー王の子孫と異世界のアーサー王。
二人の対決が書きたくて、こうなりました。

イリナは原作通りならクリスマスまで結ばれないので、ここで結ばれる事にしました。
転生天使が純潔を失わなければ堕天しない、というのはオリジナルの設定です。
本番は例のヤリ部屋が出来てからのお楽しみ、という事で。

次回はロキとの決戦。だが・・・・
という感じでお送りしたいと思います。
今回程待たせないよう頑張ります。



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第37話 共同戦線の果てに


アンケートの協力、ありがとうございます。
アンケートの結果、なのはとSAOが僅差となりましたので、五人共眷属とする事になりました。
どのような登場をするかお楽しみに。

それでは第37話をご覧下さい。



 

 

 間もなく【北欧神話】と【日本神話】の会合が行われる。

 会合に参加するオーディン様とアザゼルは、会場である都内の高級料亭で【日本神話】の代表が現れるのを待っている。

 当初と予定を変更して会場の警備と警護をソーナ達シトリー眷属が担当し、一輝()達グレモリー眷属+αとロスヴァイセ、バラキエルさん、そしてヴァーリチームの総勢十八名(・・・)でロキとフェンリルを迎え撃つ事になり、俺達は会場の周囲で待機していた。

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

 とは言え両チームの雰囲気は険悪そのもの。その原因はヴァーリチームのアーサーなのは周知の事実だが、ヴァーリチームは四名(・・)共悪びれる様子もなく、その事がリアスを余計にイラつかせ、共闘どころか対立するムードが漂っていた。

 この雰囲気に俺は溜め息を吐きつつ、気になる事を片付けようとヴァーリに声をかけた。

 

「ヴァーリ、彼女は本当に大丈夫なのか?」

 

 俺の視線の先には今日の夕方になって合流したヴァーリチームの四人目、ロールのかかった長い金髪の、長身爆乳の美女が映っていた。

 

「心配ないわ。彼女仕事には誠実だから。ね、オリアナ?」

 

 ヴァーリが声をかけると、彼女──オリアナは俺を見てフッと微笑んだ。

 

 オリアナ・セーレ。

 『禍の団(カオス・ブリゲート)』・旧魔王派に属していた、その名が示す通り72柱の名門セーレ家の血を引く悪魔だ。旧魔王派壊滅後、ヴァーリにスカウトされてチームに加わったらしい。

 セーレ家の特性は転移。軍勢や物資を一瞬で目的地に輸送出来るそうだ。ヴァーリが彼女を推薦して、シトリー眷属に代わって彼女が戦場(バトルフィールド)への転移を担当する事になっていた。

 

「ええ。全員転移させればいいんでしょう? なら問題ないわ。それよりヴァーリ、本当に私、戦闘に参加しなくていいの?」

 

「ええ。貴女は貴女の仕事をしてくれれば充分よ」

 

「オッケー。ならお姉さんに任せなさーい♪」

 

 オリアナは微笑んで手を振るが、その笑顔に油断のならない気配を感じる。やはりただの綺麗なお姉さんじゃないようだ。

 ・・・・それにしても凄い格好だな。彼女はグレーの作業服を着ているんだが、胸のボタンひとつだけ留めていて、深い胸の谷間もセクシーなお臍も丸見えで、黒歌に優るとも劣らない色気を発している。さっきからイッセーが鼻の下を伸ばしてアーシアに尻をつねられているが、夢中で気付いてないみたいだ。

 

 ヴァーリが太鼓判を押すなら大丈夫だろう。後は、

 

「イリナ」

 

 俺は後ろから彼女の肩を叩く。

 

「一兄? どうしたの?」

 

 イリナはいつもの明るい笑顔を向ける。俺は耳元に口を近づけ訊ねる。

 

「いや、身体は大丈夫かと思って。どうだ?」

 

 するとイリナはカーッと顔を真っ赤にして俯き、恥ずかしそうに俺の袖を摘まむ。

 

「もう、戦闘前に思い出させないでよ・・・・一兄のエッチ」

 

 そう言って恥ずかしがる姿が無茶苦茶可愛い。だがまあ、身体は大丈夫みたいだな。

 

「悪かったな。・・・・イリナ、祐美とゼノヴィアに注意していてくれ」

 

「一兄・・・・分かったわ。任せておいて」

 

 イリナは力強く頷く。俺はイリナの背中を軽く叩いてその場を離れた。

 

 俺が次に訪れたのはリアスの所だった。

 

「いつまでむくれてるんだリアス。いい加減落ち着け」

 

「だって一輝・・・・」

 

 リアスは口を尖らせる。

 

「だってじゃない。(キング)のお前がそんな態度じゃあ共闘なんて上手くいく訳ないだろ?」

 

「・・・・先に手を出したのはあっちだもん」

 

 そう言って頬を膨らませ視線を逸らす。全く、そんな顔も可愛いんだが、そんな事言ってる場合じゃない。

 

「王のお前がいつまでもその調子で、眷属が同調したらどうする? フェンリルはグレモリー眷属だけじゃ対処出来ない相手だ。ましてや俺やイッセーもロキに掛かりきりでいないんだぞ。お前は眷属を死なせる気か?」

 

「そ、それは・・・・!」

 

 リアスは情愛深いグレモリー家の直系。故に眷属が傷つく事を極端に嫌う。それは主としては素晴らしいが、王としては時に欠点となる。王とは時に眷属を犠牲にする覚悟も必要になる。アザゼルからも散々言われているが、非情になりきれないのがリアスの最大の弱点だ。

 厳しいかもしれないが命賭けの戦いの前だ。皆が生還する為なら、俺は鬼にでもなろう。

 

「・・・・ごめんなさい、一輝の言う通りだわ。私ったらこんなに時に・・・・情けないわ」

 

 でもリアスは分かってくれたようで、反省するように頬に手を当て、溜め息を吐く。

 

「分かってくれたのならいい。俺は誰一人欠ける事なく皆と再会したい。リアスだってそうだろ?」

 

「勿論よ! 私の眷属、いいえ、この戦いに参加した者全員生還させてみせるわ!!」

 

 うん。いつものリアスに戻ったな。これなら大丈夫だろう。

 

「よし、その意気だ。・・・・じゃあ俺は配置に着くよ」

 

「分かったわ。一輝、貴方も気を付けて」

 

 俺はリアスと軽く唇を交わして踵を返した。

 

「イッセー、ヴァーリ、行くぞ」

 

 二人に声をかけて俺は歩き出した。

 

 

 

 

「ブエックションッ!!」

 

「あら風邪、イッセー君?」

 

「随分夜冷えて来たからなぁ」

 

 くしゃみをするイッセーにヴァーリと俺がツッコむ。

 

「いや、違うって。これはきっと・・・・そう、アーシアが俺を想ってる証拠ッスよ!」

 

「そうよねえ~、何とかは風邪を引かないって言うものね?」

 

「んだとコラア!?」

 

「・・・・ハア」

 

 俺達三人は会場近くの高層ビルの屋上にいた。対ロキ用の戦力としてここで待機しているのだ。

 それはいいんだが、さっきからヴァーリがイッセーを揶揄って遊んでいる。熱くなり易いイッセーはヴァーリのいい玩具らしく、うちに滞在中も暇を見ては同じような事を二人は繰り返していた。

 

「ちっ! まあいいさ、今の内に好きなだけ揶揄ってろ」

 

「あら、いいの?」

 

 ヴァーリが意外そうに首を傾げる。

 

「ああ、今は(・・)お前の方が上だからな。だけど近い内に必ず立場を逆転してやる」

 

「・・・・・・」

 

 ヴァーリが揶揄うようなニヤニヤ笑いをやめ、目を細めてイッセーを見つめる。イッセーもまたヴァーリから目を逸らさず、真剣な表情でヴァーリを見つめ返していた。

 

「俺は必ずお前を超えるぜ、ヴァーリ」

 

「!!」

 

 イッセーが力強く宣言する。

 始めはキョトンとしていたヴァーリだったが、言われた意味を理解すると、今まで見た事のない位嬉しそうに笑った。

 

「ええ、貴方が私の所まで上がって来るのを楽しみにしているわ。・・・・初めて会った時は何の才能もない『史上最弱の赤龍帝』に失望してたけど、キミは今までの赤龍帝とは違う成長をしている。ドライグと対話しながら力を使いこなそうとしている赤龍帝なんてキミが初めてじゃないかしら?」 

 

「そうなのか、ドライグ?」

 

『そうだな。歴代の赤龍帝は最初から強い奴ばかりだった。皆思いのままに力を振るい、その力に溺れ、戦いの中若い命を散らして逝った。──だがお前は違う。お前は最初泣ける位弱かった。だからこそ強くなる為に色々と考え、俺と対話し、力に溺れる事なく成長している。そんな赤龍帝はお前が初めてだ』

 

 ドライグがどこか嬉しそうに語る。

 

「それにキミには不破一輝がいた。すぐ側に目標とするべき自分より強い相手がいる。だからこそキミは曲がらずに真っ直ぐ成長出来た。私からすれば羨ましい限りよ」

 

 いきなり俺を持ち上げるヴァーリ。

 

「まあ俺は先輩みたいに強くなりたいと思って訓練を続けて来たからな。でも、正直縮まらない差を目の当たりにし続けるのって結構キツいんだぜ」

 

『だがその度にお主は諦めず立ち上がって来たのだろう? そういう奴が実戦で相手をするには一番厄介なのだ』

 

 弱音を溢したイッセーをフォローしたのは、あろう事かアルビオンだった。

 

『珍しいじゃないか、白いの』

 

『ふん、私とて兵藤一誠の成長は認めているという事だ』

 

 茶化すようなドライグの声にアルビオンが答える。

 

「そういう事。だから待ってるわ、イッセー君。キミと本気で戦える日を」

 

 ヴァーリとイッセーの視線が交錯する。

 

「ああ、待ってろ」

 

 イッセーが拳を突き出すと、ヴァーリは同じように拳を突き出し、コツンと軽く拳を打ち合わせた。

 何だかんだ言ってこの二人、いいライバル関係を築いているようだな。

 

「ホッホッホ、ええのう、これぞ青春じゃのう~!」

 

 惚けた声に振り向くと、ここにいる筈の(いてはいけ)ないオーディン様がいた。

 

 

 

 

 

 

 おいおい、どうして爺さんがこんな所に? 今頃は会合の準備をしている頃だろ?

 

「何でいるんです、オーディン様?」

 

「いやなに、若者と触れ合いたくての。ついつい抜け出してしもうたわい」

 

 爺さんの発言に一輝先輩は呆れたように空を仰ぐ。これ匙達が今頃捜し回ってるんじゃ・・・・

 

「しかし、今代の二天龍は珍しいのう。今までの二天龍はみーんなただの暴れん坊でな。好き勝手暴れ回り、周りの山や島を吹っ飛ばす程の激闘をした挙げ句・・・・勝手に死におった」

 

 溜め息混じりに爺さんは言う。

 

「片やとんでもないスケベ、片や戦闘狂のテロリスト、危険極まりない二天龍じゃが、出会って即殺し合いにならんとは、本にお主らは変わっておるわい」

 

 スケベで悪かったな! でもイッセー()らって本当に変わってたんだな。先輩方の話を聞くと俺の相手がヴァーリで良かったとすら思える。もしヴァーリが歴代の白龍皇みたいに見敵即滅殺って奴だったら、今頃俺の命はなかっただろう。

 

「フ、戦闘狂大いに結構。歴代の白龍皇なんて関係ない。私は私の()りたいように()るわ」

 

 ヴァーリが不敵な笑みを浮かべながら言い切った。ちくしょう、美人だからキマってやがる。

 

 爺さんはそんな俺達を見て目を細める。

 

「やはり若いもんはいいのう。儂は今まで自分の叡智があれば、どんな事態も解決出来ると思っておった。じゃがそれは年寄りの傲慢じゃった。真に大事なのはお主らのような若いもんの可能性じゃ。最近その事が分かって来てのう、己が如何に愚かじゃったか・・・・そのツケをお主らに払わせてるとは、情けないわい」

 

 爺さんは悲哀に暮れた目をして俯く。何でそんな目をしてるかなあ? 偉い人の考えは良く分からん。俺は一輝先輩やヴァーリと顔を合わせ、

 

「良く分かんねえけど、一歩一歩前に進めばいいんじゃねえの?」 

 

「そうだな。それにまだ終わってないんだから、悲嘆に暮れるのは早いと思います」

 

「嘆く暇があるならさっさと行動なさい。全く、これだから年寄りは・・・・」

 

 俺達は三者三様に答えを返す。爺さんは暫くポカーンとすると、突然「ホーッホッホ」と大爆笑した。何だ? とうとうイカれたか?と事を思っていると、

 

「・・・・若さはいい。いつも年寄りを刺激してくれる。ああ、そうじゃな。お主らの言う通りじゃ」

 

 うんうんと何度も頷く爺さん。その目にはさっきまでの悲哀はなく、どこか満たされたような光があった。その時、

 

「「「「!!?」」」」

 

 突然強大なプレッシャーが俺達を襲う。この気配、間違いない!

 

「時間通り。来たわね」

 

 ヴァーリが不敵に嗤う。俺の視線の先では空間が歪み、強大な敵が現れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 空間が歪み、中からロキとフェンリルが姿を現し、リアス()達を一瞥する。

 

「何だ、先日とほとんど変わらないではないか。たったこれだけで私とフェンリルを止めようとは・・・・舐められたものだな」

 

 私達を眺めながらロキが嘆息する。

 

「神ロキ、退いては貰えぬか」

 

 本作戦の指揮官であるバラキエル殿が代表して訊ねる。

 

「やれやれ、その辺の意志確認は先日終わらせたと思ってたがね。──今宵私はオーディンを殺す。邪魔をするなら貴様らもだ」

 

「「「「!!!」」」」

 

 凄まじい殺気が私達に向かって放たれる。何て殺気! 正直逃げ出したいけど、王である私が逃げる訳にはいかない。足に力を入れて何とか堪える。 

 

「そうか・・・・残念だ。──オリアナ殿」

 

「了かーい。お姉さんに任せなさいっと」

 

 ロキを中心にセーレ家の紋章の魔方陣が疾る。大きい! たった一人でこれだけの魔方陣を展開するなんて、やるわね彼女。

 眩い光に包まれたと思ったら、次の瞬間、私達は荒野に立っていた。うん、これだけ広ければ一輝達も存分に力を振るえるわね。でも転移に抵抗しないだなんて、ロキは何を考えてるのかしら?

 

「意外だな。転移に抵抗しないとは」

 

 バラキエル殿も同じ考えを抱いたみたい。

 

「なに、貴様らを始末してからゆっくりオーディンを・・・・何だ、いるではないか」

 

 ロキの台詞に私はギョッとして振り向く。視線の先には一輝、イッセー、ヴァーリの側で誤魔化すように頭を掻くオーディン様がいた。

 

「な!? 何でいるんですオーディン様!!」

 

 ロスヴァイセが絶叫した。

 

「いやあ~、転移に巻き込まれちった。メンゴ」

 

((((メンゴじゃねーよ、このジジイ!!))))

 

 今皆の心がひとつになった気がするわ。でも、

 

「どうなってるの、オリアナ!?」

 

「ええ~、知らないわよ。お姉さんは魔方陣内にいる全員を転移させただけだもの」

 

 私が訊ねるとオリアナは不服そうに答える。

 

「ククク、アーハッハッハ! 主神殿、どうやら私に殺される気になったようだな。では望み通りに殺してやろう。フェンリル!!」

 

 ロキの号令にフェンリルが咆哮する。

 

アオオォォォーーーーンッ!!

 

 その咆哮に心臓が掴まれたような恐怖が生じ、身体が動かなくなる。不味い! このままじゃあ──

 

 動けなくなった私達を放置してフェンリルが駆ける。だが、その前にフェンリルの咆哮に屈しなかった戦士達が立ち塞がった。

 

『Welsh Dragon Balance Braker!!』

 

『Vanishing Dragon Balance Braker!!』

 

「ガイバーーーーー【巨人殖装(ギガンティック)】!!」

 

 赤い光の中イッセーが、白い光の中ヴァーリが、紅い光の中で一輝の姿が変わる。光が収まると赤い全身鎧を纏ったイッセーと白い全身鎧を纏ったヴァーリ、ガイバー・ギガンティックに殖装した一輝の姿があった。

 

「イッセー、ヴァーリ、お前達はロキを!」

 

「「了解!!」」

 

 一輝はバリヤーを展開してフェンリルに突っ込む。電車が衝突したような凄まじい音を立てて、ガイバー・ギガンティックとフェンリルが激突し、

 

「ウオオオオーーーーッ!!」

 

 ガイバー・ギガンティックがフェンリルを跳ね飛ばした。

 

「うわあ~」

 

 思わず声が洩れる。ガイバー・ギガンティックは三m弱、でありながら全長二十m以上のフェンリルを跳ね飛ばすなんて・・・・我が恋人ながら一輝の規格外振りには呆れてしまう。でもこれでフェンリルをオーディン様から引き離せた。

 

「今だ! 全員攻撃開始!!」

 

 バラキエル殿の号令に、私達はフェンリルに攻撃を開始した。

 後衛の私、朱乃、黒歌、バラキエル殿、ロスヴァイセが得意の魔術を放つと、前衛の祐美、白音、ゼノヴィア、イリナさん、アルトリア、美猴、アーサーが一斉に襲いかかる。夕麻はアーシアの護衛として最後列に控えていた。さあ、やるわよ皆!

 

 

 

 

 

 

 

 イッセー()とヴァーリが赤と白の矢となって飛翔する。

 

「これは素晴らしい! このロキを倒す為に二天龍が手を組むか! 面白い。赤と白の競演、特等席で観せて貰おう!!」

 

 ロキは嬉々として右手を翳すと北欧式の魔方陣が現れ、そこから幾筋もの光がレーザーのように俺達を襲う。

 回避しても追尾して来るレーザーを、ヴァーリは板野サーカス張りの空中機動で回避しまくる。スゲエ! 俺にはとても真似出来ねえ。

 おっと、感心してばかりもいられねえ。俺はといえば、鎧の防御力を倍加して当たるも構わず、最大加速で突撃する。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「行っけえーーーーッ!!」

 

 渾身の右ストレートがロキに迫る。ロキが左手で防御魔方陣を展開するが構うもんか!

 

 パリィィィンッ!!

 

 鏡が割れたような音と共に防御魔方陣が消失した。今だ!

 

「喰らえロキ、【白龍皇の咆哮(ホワイト・レイ)】───!!」

 

 前方に突き出したヴァーリの両掌から絶大な魔力が迸る。まるで龍の(あぎと)のように組んだ掌から白い光がロキに向かって放たれた。

 

「─────!!」

 

 ヴァーリの放った光はロキを呑み込み、凄まじい轟音と衝撃、そして高熱を発生させた。

 危ねえ~、もう少しで巻き込まれる所だったぜ。しかし、

 

「なんつー威力だよ・・・・」

 

 俺は周囲の惨状を眺めて思わず呟く。光の消えた跡には直径三十m位の大穴が開き、底が見えない位深く抉られている。高熱で穴の周囲は熔解し、陽炎が揺れていた。

 

『あれが龍王(ドラゴン)息吹(ブレス)だ、相棒。実際目にするするのは百年振り位だが、今のブレスはオリジナルに匹敵する威力だったぞ』

 

 え? それってアルビオン本人のブレスと同等の威力をヴァーリが放ったって事かよ!? 何て奴だ!

 

「なあドライグ。俺にも撃てるか?」

 

 胸に沸き上がる羨望と憧憬を隠し、ドライグに訊ねる。

 

『さぁて。龍王(ドラゴン)息吹(ブレス)ってのは所謂必殺技だ。歴代の赤龍帝でもアレと同等の威力を放てたのは精々二人位だ。そう考えると無理だろうが、お前は普通じゃないから案外やるかも知れんな』

 

 ドライグが面白そうに言う。普通じゃなくて悪かったな! でもまあ可能性はあるんだ。だったら頑張ってみるか。

 

『・・・・チッ、腐っても神だな』

 

 ドライグの忌々しげな呟きに前を見ると、赤い煙りを立ち上らせてながら、愉しそうな笑みを浮かべたロキが穴の底から浮上して来た。

 

『大したダメージは無さそうだな。流石は神、という所か』

 

「いいんじゃない? これで終わってたら興醒めよ」

 

 感心するアルビオンにヴァーリが益々戦意を昂らせる。ったく戦闘狂め。

 

「ククク、これが白龍皇の息吹(ブレス)か。素晴らしい、()でなければ死んでたかもしれんな」

 

 一方ロキも目を爛々と輝かせ、心底愉しそうに嗤う。こいつも戦闘狂かよ!? 俺が呆れたように嘆息すると、

 

「ギャウンッ!!」

 

 フェンリルの鳴き声が聞こえて来た。

 

 

 

 

 

 

 ───話は少し前に遡る。

 

 

「くっ、この!!」

 

「チッ、何て硬さだ!?」

 

 動きの素早いフェンリルは中々捕捉出来ず、出来たとしても硬い体毛が攻撃を通さない。

 

「くっ、何て厄介な・・・・」

 

「やはりまずは動きを止めないと、どうにもなりませんわね」 

 

 朱乃の呟きに苛立ちながらも私は頷く。

 

「黒歌、準備は!?」

 

「いつでもOKにゃん」

 

「よし、祐美!!」

 

「はい! (はし)れ!【 雷の魔剣の檻(ソードバース・サンダージェイル)】!!」

 

 私の合図で祐美がフェンリルの周りに散りばめていた魔剣から雷が疾り、フェンリルを囲む檻と化す。今のフェンリルには上しか退路はない。でもそこにはすでに、

 

「ここから先は通しません!」

 

 ロスヴァイセが結界を張り、退路を断つ。今だ!

 

「黒歌!!」

 

戒めの黒き光を──黒縄(こくじょう)】!!」

 

 黒歌の妖術【黒縄】が発動。大地から幾条もの黒い光が伸びて、フェンリルの身体に巻き付き、動きを封じる。フェンリルは黒縄を引きちぎろうとするけど、そこに忍び寄る白い影が───! 

 

「───覇ッ!!」

 

 カァン、と乾いた音が響き渡る。白音の“気”が通った証しだ。この一撃の為に白音はずっと気を練る事に集中し、戦闘に参加しなかったのだ。

  

「ギャウンッ!!」

 

 鳴き声を上げてフェンリルが倒れる。やった! これでフェンリルはもう動けない。後は集中攻撃で仕止めるだけだ。

 私が号令を掛けようとしたその時、

 

「おやおや、どうした息子よ! そのような連中に倒されるとは情けない。」

 

 やたらと芝居掛かった口調でロキが嘆く。でも口元には笑みが浮かび、まだまだ余裕を感じさせる。

 

「多少スペックは落ちるが仕方がない。出でよ、我が孫達!」

 

 マントを翻し、両手を広げるロキ。するとロキの左右の空間が歪み、プレッシャーを放ちながら二頭の獣が現れた。

 大きさはフェンリルの半分以下、けれども放つプレッシャーはフェンリルにひけを取らない白銀の魔獣。

 

「「ウオォォォォーーーーーンッ!!」」

 

 フェンリルそっくりの魔獣が高らかに咆哮する。

 

「紹介しよう。スコル、そしてハティだ。親程のパワーは無いが諸君の相手には充分だろう。───やれ!!」

 

 ロキの号令で二頭の子フェンリル──スコルとハティが私達に襲いかかる───!

 

 

 

 

 

 

 

 フェンリルの子供──スコルとハティがイッセー()の仲間達に襲いかかる。

 部長や朱乃さん、ロスヴァイセさんら後衛組が魔術を放つが、二頭は怯む事なく突き進む。マズい、あのままじゃ部長達が! とその時、

 

「イッセー!!」

 

 一輝先輩の声に前を向くと、ロキの放ったドデカい魔力弾がすぐそこに迫っていた。

 

「うおおっ!?」

 

 間一髪回避したが、かすった部分の鎧が欠けている。危ねえ~、もう少し遅かったら直撃してたぜ。

 

「集中しろイッセー! フェンリル(あっち)はリアス達に任せるしかない!」

 

「そうよイッセー君。私達がすべきは一刻も早くロキを倒す事よ!」

 

「お、おう!!」

 

 先輩とヴァーリの言う通りだ。こっちにだって余裕はないんだ。俺は力を倍加してドラゴンショットを放った。

 激しい撃ち合いは俺達に分があった。先輩が【ブラックホール】を展開してロキの魔術を防いでくれるので、俺とヴァーリは攻撃に集中出来る。ロキも次第に防戦一方になって来た。今がチャンスだ!

 

「ここで決めるわ!」

 

 ヴァーリも同じ考えに至ったのか、隙を突いて飛び出す。俺はドラゴンショットを撃ち援護する。その時、

 

「貰ったぞ、ロキ!!」

 

 一瞬でロキの背後に回ったヴァーリはそのまま手刀を振り下ろ───

 

 バクンッ!!

 

 ───す前に横から突然現れたフェンリルに食い付かれた。

 

「ガハッ!?」

 

 バキバキと不吉な音を立てて、ヴァーリの鎧が砕かれる。マスクの下からは鮮血が飛び散り、白い鎧とフェンリルを赤く染めた。

 何でフェンリルが!? 仲間達を見ると、黒歌が血を流し倒れていて、すぐ側に爪を赤く染めた子フェンリルがいた。あいつ、親を解放する為に術者の黒歌を狙ったのか!?

 

「ンフフフ、まずは白龍皇と黒猫が退場か。さぁて、次は誰が退場するかな?」

 

 不敵にロキが笑う。それを合図にスコルとハティが動き出す。

 

「この野郎! ヴァーリを離しやがれぃ!!」

 

 美猴が如意棒で、アーサーが聖王剣でフェンリルに襲いかかる。

 

「ぐう! うああっ!!」

 

 だがフェンリルはヴァーリを咥えたまま口を突き出し、二人の前でゆっくりと力を加える。

 

「ぐっ、こいつ・・・・!」

 

「これは参りましたね・・・・」

 

 こいつ、何てズル賢いんだ。あれじゃあ美猴達も手出しが出来ねえ! どうする?どうすればいいんだ!?

 

「イッセー君・・・・」

 

 歯噛みする俺にヴァーリの声が届く。ヴァーリは息が苦しいのか、マスクを収納して素顔を曝している。ヴァーリの奴、顔が真っ青だ。大丈夫なのか!?

 

「油断した・・・・けど醜態を曝した責任は取るわ・・・・この親フェンリルは私が責任を持って葬る・・・!!」

 

 ヴァーリの声に力が籠る。こいつ、そんな状態で何をする気だ!? 

 

「ククク、クハハハーーーッ!! いくら白龍皇とて、そんな状態で何が出来る!? 出来るというなら見せて貰おうか!!」

 

 嘲笑するロキにヴァーリが凄絶な笑みを向ける。

 

「神ごときが天龍を、このヴァーリ・ルシファーを舐めるな!!

 

 ヴァーリの咆哮に呼応するように鎧の宝玉が光を発し、ヴァーリの全身が白銀の光に包まれる。

 

「我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし、二天龍なり──」

 

 ヴァーリの唇から呪文が零れる。

 

「無限を妬み、夢幻を想う──」

 

 それに呼応し、凄まじい魔力がヴァーリの身体から溢れ出す。何だこれ? あまりの凄まじさに寒気がする。まさかこれが──!?

 

「我、白き龍の覇道を極め、汝を無垢の極限へと誘おう───!」

 

 これが『神器(セイクリッド・ギア)』に封印された力を強制的に引き出すという禁じ手───!?

 

『Juggernaut Drive!!!』

 

 視界が白い光で埋め尽くされる。圧倒的な力をヴァーリから感じる。それこそロキやフェンリルに匹敵する程の力だ。これがヴァーリの【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】か!

 先生から聞いた事がある。ドラゴン系の神器の暴走状態、それが【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】だと。発動すれば一時的に神をも上回る力を得るが、発動中は理性を失くした暴走状態となり、その結果命を落としたり、寿命が著しく減るなどのデメリットがあるので使うな、と俺は厳命されている。

 ヴァーリは寿命の代わりに膨大な魔力を払う事で暴走しないそうだが、あの怪我で本当に大丈夫なのか?

 

「ぐうぅ!? ううぅぅぅ・・・・」

 

『ヴァーリ!? いかん、魔力を抑えろ!! このままでは───』

 

 突然アルビオンの切羽詰まった声が響く。

 

「うぅぅ・・・うああああーーーーッ!!

 

 ヴァーリの絶叫がフィールド中に轟く。その凄まじい衝撃に身体が吹き飛ばされる。

 

「「「「きゃああああーーーーッ!!」」」」

 

 仲間達の悲鳴が聞こえるが、眩い白光で何も見えねえ!? ちきしょう、ヴァーリの奴どうしたんだ!?

 

『・・・・相棒、良く見ておけ。ヴァーリ・ルシファーは暴走状態に陥った』

 

 何だって!?

 

『いくら奴が歴代最強と云われても、あの傷での【覇龍】は無謀だったようだな。気を付けろ相棒。奴は敵味方関係なく暴れ回るぞ』

 

 白光が次第に空の一点に集束していく。

 

「あ、あれがヴァーリなのか・・・・」

 

 そこには鎧の各部がより鋭角的に変化し、より禍々しさを増したヴァーリの姿があった。 

 

 

 

 

 

 

「ガアアァァァーーーーッッ!!」

 

 まるで怪獣のような雄叫びを上げて、ヴァーリが一輝()達に突っ込んで来る。

 

「皆、散れーーーーッ!!」

 

 バラキエルさんが叫ぶが既に遅く、祐美が、ゼノヴィアが、イリナがヴァーリの攻撃で傷付き倒れていく。

 更にスコルとハティを跳ね飛ばし、ロキやフェンリルにも攻撃を加える。

 

「ギャンッ!!」

 

「ぬおお!? ハハハ、まさか白龍皇の暴走状態が観れるとは・・・・だがこれはちと計算外だな」

 

 あのロキすら焦っている。これじゃあ戦力どころか脅威が増えただけだ。

 

「焦るでない不破一輝。お主はこういう時の為に授かった物があるじゃろ?」

 

「オーディン様・・・・! そうか!!」

 

 いつの間に側に来ていたのか、オーディン様に言われ、俺には暴走を止める手段があった事を思い出した。預かってからずっと使わなかったので、すっかり忘れていた。アホか俺は!

 

「儂も手を貸そう。今は白龍皇の暴走を止めるのが先決じゃ」

 

「はい!!」

 

 俺はヴァーリに向かって飛翔しながら、俺は聖句を唱える。

 

「其は聖なる刃、万物を断ち斬る龍殺しの(つるぎ)───来たれ【聖剣アスカロン】!!

 

 虚空が歪み、そこから一本の大剣が姿を現す。かつてミカエル様から預かった龍殺しの聖剣、アスカロンだ。

 

「ずっと使わなくて悪かったな。ようやくお前の出番だ。力を貸してくれ、アスカロン!」

 

 アスカロンは一度抗議をするようにブルッと震えるたが、その後は大人しくなった。どうやら許してくれたらしい。

 

「よし、行くぞ!!」

 

 アスカロンを鞘から抜き放つ。眩い銀光が周囲を照らすと、龍殺しのオーラを察したのか、ヴァーリが動きを止めた。

 

 大剣のアスカロンはガイバー・ギガンティックには丁度いいサイズだ。俺はアスカロンを手に突撃する。

 

「ガアアアアッッ!!」 

 

「ウオオオオッッ!!」

 

 空中でヴァーリと激突する。ヴァーリは手刀を振り下ろすが、アスカロンの刃はヴァーリの手刀を斬り裂き、鮮血が宙に舞った。

 

「ギャウッ!?」

 

 アスカロンを脅威と見たのか、ヴァーリが距離を取ろうと飛翔する。

 

「逃がすか!!」

 

 俺もヴァーリを追うが、空中機動は奴の方が上だ。徐々に距離が離される。ある程度離されてヴァーリがこちらを向いた時、俺は戦慄した。ヴァーリの掌に絶大な魔力が集まり、俺を狙っていたのだ。

 

(マズい! ブレスが来る!!)

 

 理性のある状態であれだけ威力があったのだ。暴走状態の今なら果たして───!?

 

「ガアアアアッッ!!」

 

 ヴァーリがブレスを撃った。ブラックホールは間に合わない。ならば───!!

 

「断ち斬れ、アスカロン!!」

 

 俺はバリヤーを全開にすると、アスカロンを翳し、迫り来るブレスに突っ込んだ。

 

「!!?」

 

 ブレスを断ち斬りながら俺はヴァーリに突進する。手応えあった! 見るとアスカロンがヴァーリの右肩に突き刺さっていた。

 

「ギャアアァァーーーッ!!」

 

「今です、オーディン様!!」

 

 今がチャンスとオーディン様に合図する。

 

「任せい! 戒めの鎖よ在れ、【グレイプニル】!!」 

 

 【北欧神話】でフェンリルを捕らえたという魔法の鎖グレイプニル。それがヴァーリに巻き付き地上へと引きずり下ろす。

 

「ガアアッ!?」

 

 地上に落下したヴァーリは、もうもうと舞い散る土煙の中で苦悶の叫びを洩らす。

 

「いい加減大人しくしろ!!」

 

 地上に倒れたヴァーリに向かって、俺はアスカロンを突き刺した。

 

「ギャアアアアーーーーッッ!!」

 

 断末魔の絶叫を上げてヴァーリの動きが止まる。すると鎧が元に戻って行き、禁手が解除された。ぐったりしているが息はある。

 

「無事なの一輝!?」

 

 無事だったリアス、イッセー、ロスヴァイセ、アルトリアが駆け寄って来る。他の皆はヴァーリの暴走に巻き込まれ、アーシアの治療を受けていた。

 

「何とかな」

 

「ふむ、どうやら元に戻ったようじゃの。暫くすれば意識も戻るじゃろ」

 

 オーディン様の言葉にリアスはホッと胸を撫で下ろす。俺はヴァーリからアスカロンを抜いて鞘に納めると、持っていた『フェニックスの涙』をヴァーリに振りかけた。

 

 俺はこの時一瞬気を抜いてしまった。まだ戦いは終わってない、まだ敵は残っているというのに、戦場で気を抜いてしまったのだ。その結果、

 

 

「油断したな主神殿。やれ、フェンリル!!」

 

 

 ロキの命令を受け、倒れていた筈のフェンリルがオーディン様に喰い付いた。

 

「グワアァァァッッ!!」

 

 オーディン様の鮮血が飛び散り、

 

「オーディン様?・・・・・・い、嫌ぁーーーーッ!!」

 

 ロスヴァイセの絶叫が戦場に木霊した。 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ヴァーリチームの新顔オリアナ。
モデルは「とある」のオリアナ・トムソンです。
黒歌の代わりに加入した悪魔で、転移魔法のスペシャリストという設定です。
 
ヴァーリのブレスはかめはめ波、覇龍はスーパーサイヤ人化を想像して下さい。

ご覧の通り原作とは違う展開となりました。
次回からは数回に渡ってオリジナル回の北欧編をお送りします。



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第38話 北欧へ


遅くなりましたが、第39話を投稿します。

今回からオリジナルの北欧編のお送りします。
今回はその導入部なのでいつもより短めです。

それではご覧下さい。


 

 

「オーディン様?・・・・・・い、嫌ぁーーーーッ!」

 

 ロスヴァイセの絶叫が戦場に木霊した。

 

「離せこのワン公!!」

 

 激情に駆られ、一輝()はフェンリルの横面をぶん殴った。

 

「ギャウンッ!!」

 

 衝撃にフェンリルがオーディン様を吐き出す。

 

「爺さん!? おい、しっかりしてくれ!!」

 

 オーディン様を受け止めたイッセーが声をかけるが、オーディンは顔を土気色にしてぐったりしている。イッセーは持っていた『フェニックスの涙』を振りかける。だが血が止まり、傷口は塞がっているのに顔色は土気色のまま、オーディン様は苦しそうに呻いている。

 

「何だこれ!? どうして治らないんだ!?」

 

 『フェニックスの涙』でも回復しないなんて・・・・どういう事だ!?

 

「ンフフフフ・・・・無駄だよ。フェンリルが“神殺しの獣”と呼ばれる由縁は、その爪や牙に神殺しの“呪”が宿っているからだ。今のオーディンは神殺しの“呪”に侵されている。最早手遅れだよ」

 

 神殺しの“呪”だって? そんなものが・・・・

 

「目的は果たせた。私は失礼するとしよう」

 

 ロキが慇懃無礼に一礼する。その時、

 

「ギャウンッ!!」

 

 フェンリルの叫び声がしたのでそちらを見ると、アーサーの聖王剣がフェンリルを貫き、美猴の呪符がフェンリルを拘束していた。

 

「・・・・言ったでしょう。こいつは私が葬るって」

 

 ヴァーリがゆっくりと立ち上がる。

 

「世話になったわね、不破一輝・・・・悪いけど私達はこれでお暇するわ。後はよろしく───オリアナ!」

 

 ヴァーリの合図でオリアナが転移魔方陣を発動させる。眩い光の中、フェンリルと共にヴァーリチームは姿を消した。

 

「・・・・おのれ白龍皇、よくも我が息子を!・・・・ええい仕方がない! 行くぞスコル、ハティ!!」

 

 ロキが踵を返すとスコルとハティがその後に続く。

 

「待ちなさい、ロキ!!」

 

 リアスの静止にロキは顔だけこちらに向け、嘲笑を浮かべた。

 

「命拾いしたな、魔王の妹よ。用事が済んで私は今気分がいい。よって貴様らの命は取らずにいてやる。精々感謝するのだな」

 

 嘲笑を上げつつ、ロキが歪んだ空間に姿を消す。スコルとハティも後に続き、この場には俺達グレモリー眷属+αだけが残された。

 

「ぐうぅ・・・・チックショーーーーッ!!

 

 イッセーの絶叫が虚しく木霊する。

 

 完全なる敗北に打ちのめされ、俺は静かに殖装を解いた。

 

 

 

 

 

 

「そうか・・・・・・畜生、何てこった・・・・」

 

 オーディンの爺さんを捜し回り、まさかと思ってこのバトルフィールドに来たアザゼル()は、そこで変わり果てた姿になったオーディンの爺さんを見付けた。

 リアスから何があったか説明を受け、俺は思わず天を仰いだ。

 

「すまんアザゼル。俺が付いていながら・・・・」

 

 治療を終えたバラキエルが沈痛な表情で呟く。

 

「お前のせいじゃねえよ。子供とは言えフェンリルが二頭も現れ、挙げ句ヴァーリが覇龍の制御に失敗して暴走するなんて、誰が想像出来るよ」

 

 俺は労るようにバラキエルの肩を叩く。

 

「とは言え、これからどうするか・・・・」

 

 フェンリルの神殺しの秘密が爪や牙に宿る“呪”にあるとは俺も初めて知った。俺達と北欧では魔術体系が違うから“呪”の解除の仕方が分からねえ。

 恐らくミカエルやサーゼクスに相談しても無駄だろう。となれば【北欧神話】の神に訊ねるしかないんだが・・・・

 ひとまず爺さんをこのままにする訳にも行かない。俺は亜空間からとある装置を取り出した。一見ペットボトルのような円筒型の装置のボタンを押して爺さんに翳すと、光が照射され爺さんの姿が消える。

 

「アザゼル総督!? オーディン様に何を!?」

 

 慌てるロスヴァイセに説明する。

 

「落ち着け。これは俺が開発した緊急移送用の医療カプセルだ」

 

 元は戦場で倒れた者を大量に移送出来るように開発した物だ。ボタンを押して負傷者に向けると、縮小光線が照射され、カプセル内に収容される。カプセル内は通常の空間より時間の流れが遅くなるよう設定され、病院や医療所の受け入れ体勢が整うまで負傷者を保護出来るという優れ物だ。“呪”の進行を遅らせたい俺達に今出来る最善の手だ。

 そう説明を終えた時、ロスヴァイセが腕に巻いた通信機が甲高い音を鳴らす。ロスヴァイセがスイッチを押すと、空中にスクリーンが投影され、そこに黒髪の美女が映し出された。

 

「! ブリュンヒルデ姉様・・・・」

 

 こいつがブリュンヒルデ・・・・最強のヴァルキリーと呼ばれる『九姉妹』の長女か。今代(・・)とは初めて会うが、いい女じゃねえか。こんな状況だというのに、思わず見惚れちまう。

 

『単刀直入に聞くぞ、ロスヴァイセ。オーディン様が死んだというのは本当か?』

 

「!!」

 

 まだどこにも連絡してないのに、どうして知ってるんだ?  

 

『どうした? 早く答えろ』

 

 ブリュンヒルデの催促に、ロスヴァイセが重い口を開く。

 

「・・・・まだ死んではいません。ですがフェンリルの牙を受けて重体です。姉様、一体どうすれば・・・・!」

 

 ロスヴァイセの縋るような視線に、ブリュンヒルデは呆れたように嘆息する。 

 

『全く、護衛の癖に情けない・・・・・・つまりはフェンリルの“呪”でオーディン様は死にかけてると。そっちで解除出来る当ては?』

 

 ブリュンヒルデの問い掛けにロスヴァイセが俺を見やる。俺が説明するしかないか・・・・

 

「あー、残念だが北欧(そっち)とは魔術体系が違うから、どんな“呪”が使われてるのかさっぱり分からん」

 

『誰だお前は?』

 

 通信に割り込んだ俺にブリュンヒルデは訝しい視線を向ける。

 

「『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督のアザゼルだ」

 

 俺が自己紹介すると、ブリュンヒルデは侮蔑するように鼻を鳴らす。

 

『貴様が堕天使(カラス)の親玉か・・・・フン、お前には今回の不始末をどうするか問い質したい所だが、生憎時間がない。いいか、オーディン様は今、ご自分の強大な神力で“呪”に抵抗しているが長くは持たないだろう。恐らく持って一日。治す当てはあるから、出来るだけ速くオーディン様を連れて来い。・・・っと言いたい所だが、現状ではそれも難しくなった』

 

「何だ? 何かあったのか?」

 

 希望があると思わせといて、そりゃあないぜ。

 

『つい先程ロキがオーディン様の死を発表し、それと同時に北欧全土に結界を張った。今北欧は出る事も入る事も出来ん完全な鎖国状態に陥っている』

 

 何だってえ!?

 

「結界の解除は?」

 

『難しいな。あれでもロキは上級神、そのロキが自らが張った結界だ。破れるのはオーディン様かトール位だろう』

 

「トールに協力は求められないのか?」

 

『あれは「中立派」でロキとは義兄弟だからな。余程の事がない限り協力は得られんだろう』

 

 何てこった。これじゃあもうオーディンの爺さんは・・・・悲嘆に暮れた俺に一輝が声をかけて来た。

 

「アザゼル先生・・・・俺の、ガイバーの次元移動なら結界を抜けて中に入れませんか?」

 

「! ディオドラの時に使った手か! 確かにあれなら・・・・・・行けるかも知れねえ!!」 

 

 頭の中でざっと計算したが、これが最も成功確率が高い。また一輝に重い役目を担わせちまうが、あいつにしか果たせない役目だ。

 

「・・・・行ってくれるか、一輝?」

 

 心の中の葛藤を振り払い、一輝に訊ねる。

 

「はい」

 

 一輝は短く、でも力強く答えた。

 

 

 

 

 希望の見えた俺はブリュンヒルデに一輝が行く事を説明して通信を切った。それからサーゼクスとミカエルに連絡して状況を報告、一輝を特使として北欧に派遣する許可を得た。

 後は誰が同行するかなんだが、『サナギ』に乗れるのは一輝を含め四人。道案内のロスヴァイセは決まりとして、

 

「一輝一人を行かせる訳にはいかない、私が行くわ!」      

 

「先輩ばかり危険な目に合わせる訳には行かねえ、俺が行きます!」

 

「私は一輝の女王(クイーン)です。(キング)が行くなら私も行きます」

 

「アザゼル、この責任は俺にある。俺に行かせてくれ!」

 

 リアス、イッセー、アルトリア、バラキエルが一斉に名乗りを上げる。

 

「・・・・まずアルトリアは決定だな」

 

「当然です!」

 

 アルトリアが薄い胸を張る。立場的にも戦力的にも申し分ない。ある意味当然の人選だ。これで後一人───

 

 まずリアスは駄目だ。魔力がかなり消耗してるし、こいつを派遣して万が一の事があったらグレモリー眷属が瓦解するし、何よりサーゼクスが怖え。

 イッセーは戦力的に問題ないが、こいつはリアス以上に消耗してる。行かせたとしても満足に戦えんだろうし、赤龍帝が攻めて来たと勘違いされかねん。

 バラキエルは論外だ。アーシアに治療されてようやく起き上がれるようになったばかりだし、今だって責任感だけで立ってやがる。話にならねえよ。

 

(こうなったら俺が行くか──?)

 

 そう考えた時、地面に魔方陣が光った。おいおい、この紋章は───

 

「ヤッホー、皆元気?」

 

「「せ、セラフォルー様!?」」

 

 そう、魔方陣から現れたのは四大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタンだった。

 

 

 

 

 

 

 

「久し振りだねカズくん。もう、冥界にはちょくちょく来てる癖にちっとも顔を見せてくれないんだから・・・・お姉ちゃんプンプンだよ!」

 

「・・・・お久し振りです、セラ姉さん。それは悪かったですが、何故姉さんがここに?」

 

 突然現れたセラ姉さん──魔王セラフォルー・レヴィアタンは姿を見せるなり、いきなり俺に抱き着いた。突然の魔王の登場に一輝()は勿論、皆も困惑していた。

 

「ん? 勿論カズくんに同行する為だよ?」

 

「「「えええええっ!!?」」」

 

 いきなりの同行宣言に俺を含め皆が驚く。

 

「待てよセラフォルー。魔王のお前が行ってどうする? 下手したら魔王が攻めて来たと勘違いされかねんぞ?」

 

「逆だよアザゼルちゃん。この事態だからこそ私が行かなきゃいけないのよ」 

 

 さっきまでの笑顔を潜め、セラ姉さんはアザゼルに言う。

 

「理由はどうあれ、オーディンお爺ちゃんを守り切れなかったのは聖書勢力(こちら)の不手際よ。その責任を取れるのはカズくんじゃない。もっと上の者じゃなきゃ。だから外交を担当する長として私が行かなくちゃ駄目なの。・・・・仮にお爺ちゃんが亡くなっても、北欧とのパイプを閉ざさない為に」

 

 セラ姉さんの言葉の重さに、誰も言葉を発せなかった。セラ姉さんは今回の責任は外交の長である自分にあると明言し、俺達の責任を肩代わりしようというのか。

 

「でもセラフォルー様!!」

 

「駄目だよリアスちゃん。貴女達の失敗は現場レベルの問題。私はもっと高い、外交レベルでの話をしに行くのよ」

 

 発言しようとしたリアスが押し黙る。そう言われてしまったら、俺には何も出来ない。

 

「もう、そんな顔しないの。大丈夫よカズくん。私はそういうの慣れてるから」

 

 悔しさに顔を歪める俺の頬を撫でながら、セラ姉さんが微笑む。この先どんな罵詈雑言を浴びせられ、どんな無理難題を押し付けられるかも知れないのに、笑顔でいられるセラ姉さんの強さに、尊敬の念が浮かんで来る。普段はいくらおちゃらけていても、やっぱりこの女性(ヒト)は魔王なんだと俺は実感していた。

 

「という訳で私が行くわ。いいわね、アザゼルちゃん」

 

「・・・・ああ、分かった。すまねえセラフォルー」

 

 アザゼルが辛そうに呟く。でもこれでメンバーも決まった。俺は皆から少し離れた所で殖装すると、意識を集中させ『サナギ』を喚んだ。俺のコールに応えて背後に『サナギ』が出現する。

 

「行こう、皆!」

 

 俺が『サナギ』に乗り込むと、右側にアルトリアが、左側にカプセルを手にしたロスヴァイセが、そして正面にセラ姉さんが抱き着くように乗り込んだ。

 

「一輝! 爺さんを救うのが第一だが、出来るだけ早く結界を解除しろ! そうすりゃあ援軍を送れる!!」

 

「了解です!」

 

「先輩!!」

 

「気を付けて一輝! あまり無理しないで!!」

 

「リアス、行って来る! イッセー、皆を頼むぞ!!」

 

 アザゼルの、イッセーの、リアスの声に応え『サナギ』のハッチを閉じた。

 

「北欧へ!!」

 

 俺の声に応え、『サナギ』が飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 アジトに帰ってから疲労でずっと眠っていたヴァーリ()は、目を覚ますとソファーの上で身体を起こした。

 

「おや、お目覚めですか、ヴァーリ?」

 

 身体に掛かっていた毛布を畳む私に、アーサーが声をかける。

 

「ええ・・・・面倒かけたわねアーサー。それで? そっちは順調?」

 

「この支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の力で何とかなりそうですよ。ただ、能力には制限が付きますから、フェンリルはいくらか弱体化してしまいますが・・・・」

 

「当てが外れたわね・・・・でもまあ、多少弱体化した位であのフェンリルがチームに加わるというなら安いものよ」

 

「やれやれ、物好きですねぇ」

 

 そう、それが私が共同戦線を申し出た理由。とある事件の最中、偶然行方不明だった聖剣(エクスカリバー)の最後の一本『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』を手に入れた。これを使えば強力な魔獣を支配下に置ける。

 全てはフェンリルを手に入れる為。支配を受け入れやすいようフェンリルにダメージを与え、抵抗力を弱めたまでは良かったけど、支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の力でもフェンリルを完全に支配する事は出来ず、いくつか制限を付けた結果、弱体化してしまったのは残念だわ。

 

「お? 目が覚めたかヴァーリ。ちょうどいい、さっき曹操から連絡があったぜぃ」

 

 美猴が部屋に入って来て、報告する。

 

「美猴・・・・あいつ何だって?」

 

「んー? 要約すると『こっちは勝手にやるから邪魔すんなよ』ってトコかねぃ」

 

「それはこっちの台詞よ。邪魔するなら容赦しないわ」

 

 私達と曹操率いる英雄派は同じ禍の団(カオス・ブリゲート)に属してはいるが、仲間という訳じゃない。寧ろ目的によっては敵対する事もある位だ。

 

「しっかし今回はスッキリしねえなあ・・・・まあ、目的は果たせたからいいけどよぃ」

 

「返す言葉もないわね・・・・私ももっと強くならなくちゃ。今回のような醜態を晒さない為に」

 

 美猴に言われて私は自嘲の笑みを浮かべる。その時、

 

「ふう~、いいお湯だったわ」

 

 突然オリアナが、湯上がりらしくバスタオルを身体に巻いただけの姿で入室して来た。

 

「ブッ!? オリアナ!? お前何てカッコしてやがんでぃ!?」

 

「えー? 別にいいじゃない。お風呂上がりなんだから」

 

「だからってバスタオル一枚でうろつくんじゃねーよぃ!!」

 

 オリアナから風呂上がりのいい匂いが漂って来て、怒っているのか、照れてるのか美猴の顔が赤く染まっている。

 

「もう、うるさいわね~。・・・・はは~ん、さてはお姉さんの裸に欲情しちゃったな? このエロ猿くんめ~」

 

「なっ!? 違わぃ!!」

 

 全く、美猴はオリアナのいい玩具(オモチャ)ね。でもこれ以上やると爆発するかも。

 

「あ~はいはい、美猴もオリアナもそこまで。オリアナ、風邪引くから着替えてらっしゃい」

 

「はーい、じゃあねー♪」

 

 私が間に入ると、オリアナはあっさり退いて部屋を出て行った。

 

「・・・・ちくしょう、あんの歩く18禁め」

 

 美猴が揶揄われた悔しさに地団駄を踏む。

 

「彼女にはもう少し慎みを持って欲しいですね」

 

 アーサーも不快気に鼻を鳴らす。どうやらオリアナはアーサーの好みではないみたい。

 

「まあまあ、あれで実力は確かなんだから。それより、あの後オーディンはどうなったの?」

 

「ああ、オーディンはフェンリルの牙で重傷、そのオーディンを救う為にガイバーが北欧へ向かったらしいぜぃ」

 

「・・・・・・そう、北欧へ」

 

 重傷を負って繰り出した『覇龍』と、不破一輝に与えられた“龍殺し”のダメージで私の身体は悲鳴を上げ、暫く戦闘出来そうにない。でも───

 

(必ず借りは返すわ。待ってなさい───!)

 

 

 

 次の戦場は、北欧───

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ブリュンヒルデのモデルは「IS」の千冬です。
ブリュンヒルデ繋がりっ事で(笑)。

セラフォルーが参戦しました。
これを機にソーナに先んじてヒロイン化する予定です。

北欧編は4〜5回位の予定です。
最後までお付き合い下さい。

次回はブリュンヒルデ以外の九姉妹が登場します。


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第39話 ヴァルキリー九姉妹 



第39話を投稿します。

今回はロスヴァイセの姉妹達が登場します。
其々他作品のヒロインをモデルにしているので、誰が出るかは観てのお楽しみに。

それではご覧下さい。


 

 

 ピシッ!

 

 

 空に亀裂が入る。

 

 

 ピシピシピシッ!!

 

 

 亀裂は段々大きくなり、そして───

 

 

 ガシャアアァァァンンッ!!

 

 

 空間が割れて、『サナギ』が飛び出した。

 

 

 

 

  

 

「ここが北欧か・・・・」

 

 一輝()は空中を落下しながら、眼下に聳える巨大な樹──世界樹(ユグドラシル)の威容に感嘆して溜め息を吐いた。 

 次元移動は上手く行った。ロキの結界を抜け、俺達は北欧へ到着していた。

 

 【北欧神話】は世界樹(ユグドラシル)支えられた三層九つの世界で構成されている。

 上層は神々の住む世界アースガルド、中層は人間や亜人の住む世界ミズガルズ、そして下層は死者の世界ニブルヘイム。

 俺は思念波を送り、『サナギ』をアースガルドに着地させた。

 

 

 『サナギ』から降り、殖装を解くと、固まった身体を解すように肩を回す。

 

「それでロスヴァイセ、どこに行けばいいのです?」

 

「まずはブリュンヒルデ姉様に会いに行きます。私達ヴァルキリーの本拠地、ヴァルハラの『神の舘』へ行きましょう」

 

 ロスヴァイセがアルトリアの質問に答える。

 

 ロスヴァイセ達ヴァルキリーは、戦場で死した勇者の魂を導くという役目を持つが、普段はオーディン様の親衛隊として、ヴァルハラの『神の舘』に居を構えているという。

 

「飛んで行けば速いんだけど・・・・」

 

 セラ姉さんがチラリとロスヴァイセに視線を向けると、俺は「ああ・・・・」と納得した。俺とセラ姉さん、アルトリアの三人は悪魔だから空を飛べるが、ヴァルキリーのロスヴァイセは空を飛べない。こうなったら・・・・

 

「俺が抱えて行くか?」

 

「「それはダメ」」

 

 俺の提案はアルトリアとセラ姉さんに揃って却下された。何故だ。

 

「あの、私なら大丈夫ですよ」

 

 申し訳なさそうにロスヴァイセは言うと、

 

 

  ピイイィィィーーーーッ!!

 

 

 と指笛を吹いた。甲高い音が空に吸い込まれ、暫くすると物凄いスピードで何かがこちらに向かって翔んで来た。  

 

 

 ヒヒイィィィンッ!!

 

 

 高くいななきながら現れたのは、一対の翼を持った純白の駿馬だった。それは───

 

天馬(ペガサス)・・・・!」 

 

 そう、神話にある翼を持つ天馬──ペガサスだった。

 

「スカーレット、良く来ましたね。紹介します皆さん。私の愛馬、スカーレットです。」

 

 ロスヴァイセが天馬を撫でながら紹介する。スカーレットは純白の毛色にライトブラウンの鬣をした牝馬で、名前の由来なのか、深紅(スカーレット)の瞳が特徴的な天馬だった。

 ヴァルキリーは天馬に乗って戦場を翔る天馬騎兵(ペガサスライダー)。其々に愛馬となる天馬がいるのだそうだ。ともあれ、これで問題クリアだ。

 

「じゃあ出発しよう。ロスヴァイセ、案内を頼む」

 

 俺達はヴァルハラ目指して出発した。

 

 

 

 

 俺達は一路、ヴァルハラを目指して北欧の空を行く。

 アルトリアも悪魔に転生して一ヶ月、最近飛ぶ事にも慣れ、スピードも出せるようになって来たのか、遅れずに付いて来ている。

 

「皆さん、このまま行けば後十分程でヴァルハラに到着出来そうです」

 

 ロスヴァイセに言われ、もうすぐかと気が緩みかけたその時、俺達の行く手を阻むように空間の歪みがいくつも現れる。これは!?

 

「一輝!?」

 

「ああ、分かってる。皆気を付けろ!」

 

 俺とアルトリアはウイザードタイプのセラ姉さんとロスヴァイセを守るように、二人の前に出る。やがて空間の歪みから現れたのは、

 

「そんな・・・・ファーヴニルにフレースヴェルグがこんなに・・・・それにニーズヘッグまで」

 

 飛竜ファーヴニル、大鷲フレースヴェルグ、そして一際巨大な邪龍ニーズヘッグ。他にもキラービーやジャイアントバット、ガーゴイルなどもいて、ざっと百以上の魔物が俺達の前方に現れた。これは・・・・ちょっと、いや、かなりキツいな。

 

「セラ姉さん、悪いけど・・・・」

 

「分かってるわ。私も戦うから背中は任せて」

 

 魔王であるセラ姉さんを戦わせるのは心苦しいが、この状況では止むを得ない。

 

「セラ姉さんとロスヴァイセは援護を頼む。行くぞアルトリア」

 

「承知!」 

 

 俺とアルトリアが魔物の群れに斬り込もうとしたその時、

 

 ズガアァァァンッ!!

 

 突然魔物の群れの後方で爆発が起こった。

 

「何だ!?」

 

 出鼻を挫かれ、思わず声が洩れる。突然の爆発の後、五つの流星が包囲網に穴を空けるように魔物の群れに襲いかかった。

 

「あれって、天馬騎兵(ペガサスライダー)? じゃあ──」

 

「はい! 私の姉妹達です!!」

 

 セラ姉さんの声に、珍しく喜色を露にするロスヴァイセ。そのロスヴァイセにいきなり影が差した。見ると頭上には襲って来た奴より一際大きな赤い鱗の飛竜(ファーヴニル)がいた。

 

「ゲルヒルデ姉様!!」

 

 いつの間に接近したのかと一瞬緊張したが、ロスヴァイセが歓声を聞いて味方と知り、ホッと胸を撫で下ろす。その声に応えるように飛竜が高度を落とすと、その背中には一人の美女が乗っていた。

 

飛竜騎兵(ドラゴンライダー)・・・・」

 

 アルトリアが感嘆の声を洩らす。髪も瞳も、纏う鎧も手にした槍も赤いその飛竜騎兵(ドラゴンライダー)は、俺達を見渡してから口を開く。

 

「良く戻った、ロスヴァイセ。詳しい話を聞きたい所だが、今はこの魔物共を殲滅するのが先決。聖書勢力の方々もよろしいか?」

 

「勿論だ。協力感謝する」

 

 俺がそう答えると、その赤い竜騎士はフッと微笑んだ。

 

「結構。ロスヴァイセ、ヘルムヴィーゲをよこす。存分に働いて貰うぞ」

 

「ヴィーゲを!? 分かりました!」

 

 そう言うとゲルヒルデと呼ばれた飛竜騎兵は、手にした槍を構え、魔物の群れに突撃する。それと入れ替わりに一騎の天馬騎兵がこちらへやって来た。

 

「ヴィーゲ!!」

 

「ヴァイセ、お帰り~!」

 

 やって来たのは黒髪ショートの、戦場に似つかわしくない朗らかな笑顔をした可愛らしい少女だった。馬上でロスヴァイセと手を繋いで、再会を喜び合っている。 

 

「紹介します。私の姉の一人──」

 

「ヘルムヴィーゲでーす! よろしく!」

 

 紹介されて驚いた。彼女──ヘルムヴィーゲはどう見てもロスヴァイセより年上には見えない。

 

「姉!? 妹じゃなくて?」

 

「ああ・・・・ええと、その辺の事情は後程。今は──」

 

「ああ、そうだな。行くぞアルトリア!」

 

「はいっ!!」

 

 気持ちを切り替えて、俺とアルトリアは魔物の群れに飛び込んだ。

 

 

 

 

「ガイバーーーーー!!」

 

 迫り来る魔物をガイバーに殖装して弾き飛ばす。即座に重力制御を発動して、襲って来る大鷲を【重圧砲(プレッシャーカノン)】で撃ち落とした。

 数が多い。【胸部粒子砲(メガ・スマッシャー)】で一掃出来れば楽なんだが、こうも乱戦になると味方を巻き込んでしまうから使えない。面倒だが一匹ずつ落として行くしかないか。

 

「さて、他の連中は・・・・?」

 

 俺は迫る飛竜を【重圧砲(プレッシャーカノン)】で撃ち落としながら周りの様子を眺める。

 

 

 ロスヴァイセは固定砲台と化して、迫る魔物を次々と撃ち落としていく。本来こんな乱戦で足を止めて魔術を撃つなんて出来ないものだが、それを可能にする存在が彼女の側にはいた。

 

「よい、しょっと!」

 

 襲い来る魔物を真正面から受け止め、ビクともしない最硬の盾──ヘルムヴィーゲだ。 

 彼女の何倍も大きな魔物の突撃を大盾で受け止め、その隙にロスヴァイセが魔術で撃ち落とす。攻防を完全に分けたフォーメーションは、二人がこの戦い方に慣れている事を物語っていた。

 セラ姉さんも二人の安定した戦法に安心したのか、得意の氷の魔術で寄って来る魔物を次々と凍らせていった。

 

 戦場に澄んだ歌声が響く。 

 薄紅色の長い髪を靡かせ、槍を振るって戦う戦乙女(ヴァルキリー)。彼女の歌声を聴くと戦意が高揚し、不思議と力が湧いて来た。

 

 物凄い速さで戦場を天馬が翔る。

 片刃の直刀──あれは刀か?を振るう長い金髪の戦乙女(ヴァルキリー)が、風を纏った天馬を操っている。彼女が通った後には、全身を斬り裂かれた魔物が次々と落下していく。 

 

 紫色の長い髪の戦乙女(ヴァルキリー)は天馬から飛び降りると、義経の八艘飛びよろしく魔物に次々と飛び移り、屠っていく。

 正に一撃必殺。手にした剣を一閃するだけで、次々と魔物が落下していく。何という剣の腕前だろう、俺が見て来た中でもトップクラスの剣士だ。

 

 魔物が物凄い勢いで吹っ飛んでいく。

 長い黒髪の戦乙女(ヴァルキリー)が手を翳しただけで魔物が次々と吹っ飛んでいく。何かの魔術のようだが、俺にはまるで念動力のように見えた。

 

 飛竜騎兵(ドラゴンライダー)のゲルヒルデは飛竜の吐く火炎弾で道を開き、手にした槍で次々と魔物を屠っていく。どうやら最初に起きた爆発はあの飛竜がやったようだ。

 

 アルトリアは不馴れな空中戦でも存分に力を発揮していた。風王結界(インビジブル・エア)を振るう度、魔物が次々と落下していく。

 

 

 襲って来た百以上の魔物も粗方片付いた。残るは邪龍ニーズヘッグ。漆黒の鱗に覆われたフェンリル並みの巨体が俺達に襲いかかる。

 鋭い爪や長大な尻尾を振り回し、アルトリアや金髪、紫髪の戦乙女(ヴァルキリー)を中々に近付けさせない。ゲルヒルデの飛竜の火炎弾やロスヴァイセの魔術、黒髪の戦乙女(ヴァルキリー)の念動力?では硬い鱗を傷付ける事も出来ない。

 龍っていうのは敵に回すと本当に厄介だ。俺達が攻めあぐねていると、ニーズヘッグが鎌首をもたげた。

 

「! 散れ! 毒の息吹(ブレス)が来るぞ!!」

 

 ゲルヒルデの声に全員が一斉に散ると、一瞬後にニーズヘッグの 息吹(ブレス)が撒き散らされた。俺達が回避したせいで、まともに 息吹(ブレス)を受けた大鷲の体表が毒で爛れ、あっという間に白骨化して落下して行く。何て強力な毒だ。撒き散らされた毒素を僅かに吸っただけで、戦乙女(ヴァルキリー)達が苦しそうに顔を青褪めさせる。

 俺は強殖装甲が毒素を遮断してくれるのか、何ともない。どうやら戦えそうなのは俺だけみたいだ。ならば───!

 

「行くぞ! 重力制御出力全開!!」

 

 俺はガイバーの重力制御能力を全開にした【グラビティ・キック】を放つ。ニーズヘッグも俺を迎撃しようと巨大な尻尾を振り回した。空中で俺とニーズヘッグが激突する。

 

「グアオォォン!!」

 

 勝ったのは俺だった。尻尾を蹴り飛ばし、態勢を崩した隙を突いて、俺はニーズヘッグの背中に取り付いた。ニーズヘッグは爪や尻尾を振り回すが、その巨体故ここに取り付いてしまえば届くまい!

 

「其は聖なる刃、万物を断ち斬る龍殺しの(つるぎ)───来たれ【聖剣アスカロン】!!

 

 聖句を唱え、アスカロンを喚ぶと所構わず滅多刺しにする。龍殺しの魔力のせいか、あの硬かったニーズヘッグの鱗にも簡単に剣が突き刺さる。

 

「はああーーーーっ!!」

 

 気合を込めてアスカロンを一閃、首の付け根を斬り裂くと大量の血飛沫が宙に舞った。

 

「ギュアアァァァンッッ!!」

 

 かなり効いたのか、ニーズヘッグが悲鳴を上げ、俺を振り落とそうと巨体を捩る。

 

(今だ───!)

 

 暴れるニーズヘッグから放り出された俺は、空中で態勢を整えると、胸部装甲を引き剥がして胸に宿る太陽を解放した。

 

「喰らえ! 胸部粒子砲(メガ・スマッシャー)ーーーーッ!!」

 

 光の奔流がニーズヘッグを呑み込んでいく。光が消えた後、ニーズヘッグの巨体は消滅していた。

 

 

 

 

 

 

 

「凄い・・・・」

 

 (ロスヴァイセ)は目の前の光景に、思わず呟いていた。

 邪龍ニーズヘッグは私達『九姉妹』総出でようやく討伐出来るという怪物。それをたった一人で倒してしまうなんて・・・・何故でしょう、さっきから心臓が早鐘を打ち、一輝さんから目が離せません。

 オーディン様の言う通り、彼は“勇者の資格”を持つ男性(ヒト)。彼ならば私の勇者(エインヘリアル)になってくれるかも・・・・

 

 

『俺はリアスが許可を出して、彼女も望むなら構いませんよ。ただ俺には既に恋人が七人いますから、それでも良ければ、ですが』

 

 

 不意に彼の台詞が脳裏に甦った。彼にはリアスさんという許嫁がいる上に、恋人が七人もいる。でも彼程の勇者がこの先現れるだろうか? そんな風に私が躊躇していると、

 

「お見事です、一輝!」

 

「凄いよカズ君! お姉ちゃんチューしてあげる!」

 

 アルトリアさんとセラフォルー様が殖装を解いた一輝さんに抱き着く。更に、

 

「凄いね、彼・・・・」

 

「ああ、まさかニーズヘッグを単独で討伐するとはな・・・・」

 

「本当に驚いたわ・・・・やるわね、貴方」

 

「凄いねキミ! ねえ、ボクの勇者(エインヘリアル)にならない?」

 

「あ、ズルいライテ!」

 

「そうよ! 契約のチャンスは平等でなくっちゃ!」

 

「いや、契約って何のだ?」

 

 オルトリンデが、ゲルヒルデ姉様が、ヴァルトラウテ姉様が、シュヴェルトライテが、ヘルムヴィーゲが、ジークルーネが一輝さんの武勇を誉め称える。特にライテ以降は契約しようと目論んでる!? ちょっとそれは───! 

 

「ダメぇーーーーッ!! 一輝さんは私の勇者(エインヘリアル)なんです!!」

 

 気付けば私は皆の目の前で、一輝さんに抱き着いていた。

 

 

 

 

 

「ダメぇーーーーッ!! 一輝さんは私の勇者(エインヘリアル)なんです!!」

 

「「「「「・・・・・・・・き、きゃああああーーーーーッッ!!!❤」」」」」

 

 ニーズヘッグを倒したと思ったら、いきなり戦乙女(ヴァルキリー)達に囲まれ、何故かロスヴァイセに抱き着かれた。更にヴァルキリー達から黄色い悲鳴を上げられて、一輝()は何が何だか分からなかった。

 

「聞いた? 今の!?」

 

「ええ、しかと聞いたわ。あのロスヴァイセがねえ~」

 

「めでたい?」

 

「ええ、めでたい事だ。あの『失敗ヴァルキリー』とか『万年黄昏(ラグナロク)』などと呼ばれたロスヴァイセがついに。うぅ・・・・」

 

「ああ、ゲルヒルデ姉さん、泣かないで・・・・」 

 

「おめでとうヴァイセ! お幸せに~!」

 

 などとヴァルキリー達が姦しく騒ぎ立てる。 

 

「ち・・・・・・・・」

 

 話を聞こうにも肝心のロスヴァイセが顔を真っ赤にして固まっているので、どうするも出来ない。

 

「ち、違うんですーーーーーッッ!!!

 

 何が違うというのか、ロスヴァイセはスカーレットに飛び乗ると、猛スピードでこの場から飛び去って行った。

 

「えー、と・・・・?」

 

「まぁ、あの娘はほっときましょ。頭が冷えたら戻って来るわ。それより・・・・ようこそ北欧へ。ここからは私達が案内するわ」

 

 薄紅色の髪のヴァルキリーが微笑んだ。

 

 

 

 

 それから俺達は彼女──ヴァルトラウテからヴァルハラへ向かいつつ、説明を受けた。

 彼女達は『九姉妹』。神話の時代からその名を継承して来た所謂ヴァルキリーの将なのだそうだ。『九姉妹』の名前には其々意味があり、空席が出来ると、その名前に相応しい者がヴァルキリーの中から選ばれ、襲名する事で新たな『九姉妹』になるという。その為年下なのに姉となる事もあるそうだ。

 長女ブリュンヒルデを頂点として、次女ゲルヒルデ、三女オルトリンデ、四女ヴァルトラウテ、五女シュヴェルトライテ、六女ヘルムヴィーゲ、七女ジークルーネ、八女グリムゲルデ、九女ロスヴァイセの九人で構成されている。

 次女ゲルヒルデは赤髪赤瞳の槍使いで、ヴァルキリー唯一の飛竜騎兵(ドラゴンライダー)。三女オルトリンデは金髪金瞳の刀使い。四女ヴァルトラウテは薄紅色の髪をした、歌で味方を鼓舞する歌姫。五女シュヴェルトライテは紫色の髪の剣士。六女ヘルムヴィーゲは黒髪ショートで、鉄壁の防御力を誇る最硬のヴァルキリー。七女ジークルーネは長い黒髪の念動力者(本人は魔法だと言い張っている)。そして九女ロスヴァイセは全属性の魔法を使える魔法使い。尚、長女ブリュンヒルデはヴァルハラで俺達の到着を待ち、八女グリムゲルデは別任務に就いているそうだ。  

 さっきの契約云々というのは、彼女達ヴァルキリーの役目のひとつに戦場で見付けた勇者と契約して、その勇者の死後、魂をヴァルハラに招いて『神の戦士(エインヘリアル)』とするというものがある。契約を結んだヴァルキリーとエインヘリアルはそのまま恋人、又は夫婦になる事が多いらしく、つまりロスヴァイセは姉妹の前で俺と恋人宣言をしたようなものなのだそうだ。成程、道理で顔を真っ赤にして逃げ出す訳だ。 

 彼女達ヴァルキリーはオーディン様の親衛隊である故『開国派』に属してはいるが、俺達聖書勢力の事を決して良くは思っていないという。特にこれから会う九姉妹の長女ブリュンヒルデは俺達──特に堕天使を嫌っているらしい。協力を取り付けなきゃならないというのに前途多難だ。

 

「ブリュンヒルデ姉さんは堅物よ。口説くのは大変だろうけど頑張りなさい───さぁ着いたわ」

 

 ヴァルトラウテがそう締めくくり、俺達はヴァルハラの『神の舘』へ到着した。

 

 

 

 『神の館』と呼ばれるオーディン様の居城に到着すると、城門の前に座り込んで頭を抱えているヴァルキリーいた。言うまでもない、ロスヴァイセだ。

 

「あっ、ヴァイセいた〜!」

 

「シーッ! 駄目よヴィーゲ。見ないであげなさい」

 

「トラウテ姉さん、その方が酷いと思うわ」

 

 無邪気にヘルムヴィーゲが声をかけようとするが、ヴァルトラウテの静止とジークルーネのツッコミにロスヴァイセがビクビクと肩を震わせる。ロスヴァイセはもう耳まで真っ赤だ。

 

「ハイハイ、面白いのは分かるがそこまでだ。ヴァイセ、お前が迂闊なのはいつもの事なんだから、いつまでも落ち込んでるんじゃない!」

 

 パンパンと手を叩いてゲルヒルデが言うが、それじゃあ逆効果だ。

 

「一番酷いのはゲルヒルデ姉さん」

 

「あはは、だね〜」

 

 オルトリンデとシュヴェルトライテも苦笑を浮かべている。こういうやり取りを見ていると、ロスヴァイセが姉妹のイジられ役だというのが良く分かる。ともあれこれじゃあいつまで経っても話が進まないな。 

 

「ロスヴァイセ」

 

 俺がロスヴァイセの前に跪き、目線を合わせ話しかけると、彼女の肩がビクンと震え、おずおずと顔を上げた。

 

「君と俺の関係については一先ず置いておこう。今はオーディン様を救うのが先決だ。そうだろう?」

 

「一輝さん・・・・」

 

「焦る事はないさ。だから良く考えて答えを出してくれ。俺はちゃんと待ってるから」

 

「一輝さん・・・・はい。分かりました、ありがとうございます・・・・」 

 

 ロスヴァイセはそう言って深々と頭を下げた。よし、これでロスヴァイセは大丈夫だろう。

 

「では行こうか。ブリュンヒルデ姉上が待っている」

 

 ゲルヒルデに促され、俺達はようやく『神の館』に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 長い廊下を進んでいると、あちこちから視線を感じる。チラリと視線の方を見ると、こちらを見つめるヴァルキリー達がいた。興味有りげな視線や訝しそうな視線、種類は様々だが、どれもあまり良い感情は感じられない。ヴァルトラウテの言う通り、俺達聖書勢力は良く思われていないようだ。

 

(まぁ、自分達の主神が俺達のせいで瀕死の状態にあるんだから、無理もないか・・・・)

 

 やがて俺達はとある部屋の前に到着した。ゲルヒルデが扉をノックすると「はい」と女の声がして扉が開かれる。扉を開けたのは、秘書らしい眼鏡を掛けた温和そうなヴァルキリーだった。彼女に案内され中に通されると、そこはグレモリー邸の談話室位の広さの執務室だった。

 テーブルを挟んだ四人掛けのソファーが一対と秘書用らしき執務机、その奥には更に大きな執務机が置かれ、そこにはこの部屋の主である黒髪の美女が座っていた。

 

「来たか・・・・」

 

 先程通信越しに見た通り、いや、それ以上の美女だ。

  

「ようこそ、というべきかな? 聖書勢力の方々。私が『九姉妹』の長女、ブリュンヒルデだ」

 

 最強のヴァルキリーと云われる彼女の美貌と迫力に、俺は人知れず息を飲んだ。

 

 

 

 

 四人掛けのソファーに俺、セラ姉さん、アルトリア、ロスヴァイセが座り、対面にはブリュンヒルデ、ゲルヒルデ、ヴァルトラウテ、ジークルーネが座り、オルトリンデ、シュヴェルトライテ、ヘルムヴィーゲが後ろに控える。

 始めにゲルヒルデが魔物の群れに遭遇し、殲滅した事を報告した。その際、俺がニーズヘッグを単独で討伐したと聞くと、ブリュンヒルデは興味深そうな目で俺を見ていた。

 その流れで俺達が自己紹介すると、四大魔王の一人であるセラ姉さんがいる事に流石に驚いていた。

 

「まずは我々の不手際でオーディン様に重傷を負わせてしまった事を、その場にいた者の一人として謝罪します」

 

 俺がそう言って頭を下げると、ブリュンヒルデが俺に視線を向ける。

 

「いや、よくぞあのロキの結界を切り抜けて来られた。それでオーディン様はどこに?」

 

 俺がロスヴァイセに合図すると、ロスヴァイセは虚空からオーディン様が納まった医療カプセルを取り出し、説明した。

 

「成程、その中にいる限り安全なのか」

 

「ええ。でも我々に出来るのはこれが精一杯です。ブリュンヒルデ、貴女にはオーディン様を治す当てがあると聞きましたが、それは・・・・?」

 

 俺が訊ねると、ブリュンヒルデは眉根を寄せて天を仰いだ。

 

「うむ・・・・それなんだがマズい事になった」

 

 ブリュンヒルデの言葉に俺達は顔を見合わせる。

 

「ブリュンヒルデ姉様、一体何が・・・?」

 

 ロスヴァイセが恐る恐る訊ねると、ブリュンヒルデは苦虫を噛み潰したような顔で何があったか話し始めた。

 

「ヴァルキリーの一人にエイルという者がいる。彼女は薬草に精通し、死者すら甦らせるという北欧きっての名医で、彼女ならフェンリルの“呪”を解く方法も知っている筈。だが・・・・」

 

「だが何です?」

 

「・・・・エイルは『中立派』に属する神、トールに連れ去られた」

 

「「「「!!?」」」」

 

 

 北欧最強の軍神、雷神トール。

 

 突然の大神物(ビッグネーム)の登場に、新たな問題(トラブル)を感じ、俺は思わず天を仰いだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回は九姉妹の紹介回となりました。
誰がモデルか分かったでしょうか?
この場を借りて、解説したいと思います。


・次女ゲルヒルデ(槍の意味)
モデルは「ファイヤーエムブレム」のミネルバ。
天馬に乗った槍使いと聞いて最初に想像したのがペガサス三姉妹でした。誰を出すか迷った挙げ句、いっそミネルバでいいんじゃと思い、こうなりました。

・三女オルトリンデ(刃の意味)
モデルは「ダンまち」のアイズ。
彼女は眷属候補の一人だったので、こういう形で出て貰いました。

・四女ヴァルトラウテ(勇気の意味)
モデルは「シンフォギア」のマリア。
勇気づける→歌→シンフォギアと連想して、最もヴァルキリーの雰囲気に近いマリアがモデルになりました。

・五女シュヴェルトライテ(剣の意味)
モデルは「SAO」のユウキ。
名前が剣の意味を持つので最強の剣士を想像したら、ユウキになりました。

・六女ヘルムヴィーゲ(兜の意味)
モデルは「防振り」のメイプル。
兜→防御力→メイプルと連想して、こうなりました。

・七女ジークルーネ(勝利の意味)
モデルは「極黒のブリュンヒルデ」の寧子。
彼女も眷属候補の一人だったので、こういう形で出て貰いました。

いかがだったでしょう?
未登場の八女グリムゲルデは登場してから解説します。


次回はガイバーVSトールをお送りする予定です。











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第40話 激突! ガイバーVS雷神トール 



久し振りなのでこっそり投稿します。




 

 

 戦乙女(ヴァルキリー)の一人にして北欧きっての名医、エイル。

 彼女ならフェンリルの神殺しの“呪”を解き、オーディン様を救えるという。

 だが彼女は今、北欧最強の軍神、雷神トールに連れ去られ、彼の属する『中立派』に囚われている。そこで───

 

一輝()達にエイルを救出する手助けをしろと?」

 

「そうだ。何も全てそちらでやれという訳じゃない。中立派には既にエイル救出の為『九姉妹』の一人、グリムゲルデが潜入している。君らはグリムゲルデがエイルを救出する間、中立派、取り分けトールの目を引いてくれればいい」

 

 成程、お膳立ては整っていると。だが・・・・俺はチラリとセラ姉さんに視線を向けると、それに気付いたセラ姉さんが頷く。

 

「ブリュンヒルデ殿、お話は分かりました。オーディン様を救う為なら私達は協力を惜しみません。ですが一つだけ約束して欲しいのです」

 

 セラ姉さんがそう切り出すと、ブリュンヒルデは訝しげな視線を向ける

 

「何をだね、魔王レヴィアタン殿?」

 

「・・・・例えオーディン様が亡くなられても、我々との和平の道を閉ざさずにいると」

 

 セラ姉さんの発言に、ブリュンヒルデは不快そうに形の良い眉をひそめる。

 

「ほう・・・・失礼だがご自分の立場を分かっておいでか? このような状況になったのは、一体誰の責任か!?」

 

「そうね、確かに私の責任だわ。でも貴女に何の責任もないと言えるのかしら?」

 

 一喝するブリュンヒルデにセラ姉さんは冷静に切り返す。そんな姉さんの態度にブリュンヒルデは訝しげな表情をする。

 

「どういう意味だ?」

 

「主神の護衛となれば、本来なら護衛団が付く筈なのに、貴女が寄越したのはロスヴァイセ唯一人。例え彼女に全幅の信頼を置いていたとしても、これは異常よ。寧ろ陰謀を疑うレベルだわ」

 

「・・・・何が言いたい?」

 

 ブリュンヒルデは炎のような苛烈な眼差しでセラ姉さんを睨む。それに対しセラ姉さんは氷のような冷たい眼差しを返した。

 

「貴女達ヴァルキリーは一応『開国派』なのよね? でも貴女自身は私達聖書勢力を嫌ってるらしいし、ひょっとしてロキと同じ『鎖国派』なんじゃないかしら?・・・・・そうすると本当は『鎖国派』の貴女がオーディン様を害する為、わざと一人しか護衛を付けなかった何て事・・・・・!?」

 

 轟ッ!!

 

 突然燃え上がった炎が俺達を襲う。だが、

 

 キィィンッ!!

 

 突然の冷気が襲い来る炎を凍りつかせ、パキィンと音を立てて砕けた。砕けた氷が塵となって俺達の間に舞い散る。

 

「「・・・・・・・・」」

 

 炎を出したブリュンヒルデとそれを凍りつかせたセラ姉さんの間で半分炭化し、半分凍りついたテーブルが崩れ落ちる。立ち上がり睨み付けるブリュンヒルデの炎のような視線をセラ姉さんは動じる事無く、氷のような視線で見つめ返す。息が詰まるような緊張感の中、先に折れたのはブリュンヒルデだった。

 ブリュンヒルデはどっかとソファーに座り込み、盛大に息を吐き出すと、苛立たしげにガシガシと頭を搔いた。

 

「・・・・二つ訂正がある。私は確かに聖書勢力(お前ら)を嫌っているが、それは私個人の考えであって公私の区別位付く。私は『開国派』だ」

 

「あら、それは失礼。もうひとつは?」

 

「今回のオーディン様の行動は極秘で、大っぴらに護衛団を付ける訳にはいかなかった。何より人員が不足していてな、ロスヴァイセを付けるので精一杯だった」

 

「人員不足? 北欧にだって優秀な人材はいるでしょう?」

 

 セラ姉さんが訊ねると、ブリュンヒルデは自嘲の笑みを浮かべた。

 

「今北欧が三つに割れてるのは知ってるな? その中で最も数が少なく勢力(ちから)が弱いのが『開国派』だ。何せほとんどオーディン様お一人で保ってるようなものだからな」

 

 何てこった。薄々感じてはいたが、そこまでオーディン様頼りだったとは・・・・

 

「成程・・・・でも『中立派』を取り込めれば勢力図は逆転するんじゃない?」

 

「確かに・・・・『中立派』などと言っても大半は日和見してる連中だ。『開国派(こちら)』に分があると理解(わか)ればこちらに付くだろう」

 

「問題はこちらに付かせる方法よね・・・・・説得が通じると思う?」

 

「無理だな。第一時間が無い」

 

「そうよね。となると・・・・・」

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

 俺を始め周りの皆はセラ姉さんとブリュンヒルデ、二人の会話に付いて行けなかった。

 いきなり殺し合うような魔力の応酬をしたと思ったら、今は熱く議論を交わしている。アルトリアやロスヴァイセは勿論、他の『九姉妹』も呆然としている。ヘルムヴィーゲに至ってはウトウトと船を漕いでる位だ。

 

「・・・・・・となると有効なのは」

 

「ああ、力を示せばいい。『開国派(こちら)』に付けば勝てる、そう思わせればこっちのものだ」

 

「となると鍵は・・・・・」

 

 セラ姉さんが俺に視線を向ける。何だ?

 

「お願いね、カズくん」

 

「いや何が?」

 

 物凄く嫌な予感がして聞き返す。すると、

 

「 要はお前に『中立派』に殴り込んで貰おうって話だ」

 

 ブリュンヒルデはあっさりと言った。

 

「「「ええぇぇぇーーーーッ!!?」」」

 

 皆が驚愕する中、俺は思わず天を仰いだ。

 

「セラ姉さん、分かるように説明してくれないか?」

 

「んーとね、要は『中立派』を味方に付けるには私達『聖書勢力』の力を見せ付ける必要があるの」

 

「ならば一輝だけじゃなく、魔王であるセラフォルー殿も一緒に・・・・」

 

「私じゃ駄目なのよ、アルトリアちゃん。私は仮にも聖書勢力のトップの一人。その私が戦ったって認めてくれないわ」

 

 成程、確かに魔王であるセラ姉さんは強くて当たり前だと思われるだろう。となれば俺がやるしか無いのか。

 

「昔から我が北欧には武を尊ぶ気風がある。お前が相応しい武勇を示せれば、『中立派』も聖書勢力(お前ら)と手を組む事に同意するかもしれん。だから精々派手に暴れてやれ。そうすれば例え失敗しても、潜入しているグリムゲルデがエイルを救出するだろう」

 

 セラ姉さんとブリュンヒルデ、この場の最高権力者二人の決定には逆らえず、俺は『中立派』に殴り込む事になった。

 

 

 

 

 

 

 『中立派』の居城ヴィーンゴールヴ。

 私──九姉妹の八女グリムゲルデはブリュンヒルデ姉さんの密命を帯びて、ここに潜入していた。

 ヴィーンゴールヴはヴァルハラに匹敵する位荘厳な宮殿で、巨大な闘技場(コロッセオ)が併設されているのが特徴だ。『中立派』に占拠されたこの宮殿で、私は連れ去られたエイルを救出する機会を窺っていた。 

 

(エイルの居場所は掴んだっていうのに、アイツ(・・・)がいる限りエイルを連れて逃げるのは難しいわね・・・・・さて、どうしよう?)

 

 私とてヴァルキリーの頂点たる『九姉妹』の一人。武芸に自信はあるが、相手があの雷神トールとなれば話は別だ。【北欧神話】最強の名を欲しいままにするあの神を一対一で倒せるのは、グングニルを手にしたオーディン様か、完全武装状態のブリュンヒルデ姉さん位だろう。とにかく私の手には負えない。

 

(これはもう九姉妹全員の出動を要請するべきかしら・・・・・)

 

 私が真剣に頭を悩ませていたその時、

 

 ドゴォォンンッッ!!!

 

 突然凄まじい破壊音とそれに伴う衝撃が宮殿中を揺るがした。

 

「ちょ───何なのよ一体!?」

 

 私が慌てて近場の窓から顔を出すと、あろう事が巨大な城門が破壊されていた。

 

「・・・・・・・・は?」

 

 ちょっと待って。あの城門ってオリハルコン製の上にオーディン様の魔法で封じられてるから、外からは絶対に開けられない。ましてや破壊する事なんて不可能な筈なのに・・・・一体何が・・・・・?

 とその時、もうもうと立ち込める土煙の奥から三つの人影が現れた。人影のひとつが剣を掲げると凄まじい風が巻き起こり、土煙を吹き飛ばす。現れたのは黒髪の男と金髪と銀髪の女。銀髪の女は知ってる顔だった。

 

「ロスヴァイセ!?」

 

 オーディン様の護衛として任務に就いている筈の妹。中立派の居城に堂々と真正面から乗り込んで来るなんて、何やってるのよあの娘は!?

 警備の神闘士(ゴッドウォーリア)が取り囲む中、黒髪の男が一歩前に出て大声を上げた。

 

「俺は聖書勢力の上級悪魔、不破一輝! 中立派の首魁、雷神トールにお目通り願う!!」

 

 この男が噂の不破一輝(ガイバー)!? って聖書勢力の彼が何でこんな所に!?

 

「たかが悪魔風情がフザケた事を! 皆の者! この愚か者共を叩き出せ!!」

 

 隊長らしき神闘士の号令に、周りの神闘士が一斉に襲いかかる。ロスヴァイセをその場に残し、不破一輝と金髪の女騎士が迎撃に向かい、激突した。

 

「へぇ♪ やるじゃない」

 

 不破一輝と女騎士は襲い来る神闘士の群れをバッタバッタと叩き伏せる。

 神闘士(ゴッドウォーリア)神闘衣(ゴッドローブ)という鎧を身に付けたアースガルドの戦士。その戦闘力は聖書勢力の中級、いや隊長格ともなれば上級悪魔にも匹敵する。だというのに二人はさして苦戦する様子も無く、次々と神闘士達を戦闘不能に追い込んでいく。

 

(大したものね・・・・神闘士が手も足も出ない。しかも一人も殺してないなんて・・・・)

 

 余程の実力差が無ければこうはいかない。でも、これはチャンスだわ。

 彼らの襲撃は恐らくブリュンヒルデ姉さんの手によるもの。ならば今の内にエイルの救出に向かえという事に違い無い。そう判断した私がエイルが囚われている場所へ向かおうとしたその時、

 

「テメエら何だこの情けないザマはーーーーッッ!!」 

 

 雷のような大喝に私は思わず足を止めた。

 

「出て来たわね・・・・」

 

 宮殿の奥から金色の蓬髪に髭面をした、上半身裸の偉丈夫が三人の男と共に姿を現した。

 

 雷神トール。

 

 北欧神話最強と呼ばれる軍神は侵入者を見やると、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「現れましたね」

 

 アルトリアの声に一輝()は静かに頷く。

 成程、北欧神話最強と呼ばれるだけある。トールの全身からはロキ以上の凄まじいオーラが抑え切れずに溢れていた。 

 

「トールは元より、後ろの三人もかなりの手練れだな。あれが“ウォリアーズ・スリー”か」

 

 ブリュンヒルデから聞かされていたトールの三人の側近“ウォリアーズ・スリー”。

 

 赤毛の巨漢──大いなるヴォルスタッグ。

 

 金髪の優男──鮮烈なるファンドラル。

 

 黒髪総髪の男──強面のホーガン。

 

 数々の戦場をトールと共に渡り歩いて来た歴戦の勇士達だ。どいつも雰囲気がある。

 

「トール、あれは聖書勢力で噂の“ガイバー”だ」

 

「ほう、あれがか」

 

 ホーガンがトールに囁くと、トールは愉快そうに口角を上げた。

 

「ハッ! ガイバーだが何だか知らねえが、たかが悪魔風情が好き勝手暴れてくれたじゃねえか!!」 

 

 ヴォルスタッグがドスドスと足音を鳴らして近付き、巨大な両刃の斧を振り下ろした。

 ドゴンッ!と凄まじい音を立てて、巨大なクレーターが穿たれる。だが俺は素早く懐に潜り込み、ヴォルスタッグの一撃を躱して渾身の一撃を放った。だが、

 

「何だぁ? 蚊でも刺したか?」

 

 まるで効いてないようで、ヴォルスタッグは平然と拳の当たった所をボリボリと搔く。

 

「そんな・・・・・・!」

 

 予想以上のヴォルスタッグの耐久力にロスヴァイセは驚愕した。

 ヴォルスタッグは再び両刃の斧を、

 

「貴様のヤワな拳なぞこの俺に効く訳が───」

 

 振り下ろそうとしたその時、

 

 

 ───ドクンッッ!!

 

 

 全身がバラバラになるような衝撃が疾り、ヴォルスタッグが斧を取り落とす。

 

「グフォッ!? バ、バカな・・・・・・」

 

 ヴォルスタッグは血を吐き、その巨体は地響を上げて倒れたまま動かなくなった。

 

「不破圓明流奥義【無空波】」

 

 誰もが声を失う中、俺の声だけがその場に響いた。

 

 

 

「ヴォルスタッグ!? おのれ───!」

 

「待てファンドラル!!」

 

 怒りのままに襲い掛かろうとしたファンドラルをホーガンが静止する。

 

「何故止めるホーガン!?」

 

「落ち着け。ヴォルスタッグを一撃で倒した奴だ。怒りのまま襲い掛かれば奴の二の舞だぞ」 

 

 ホーガンの言葉にファンドラルは悔しそうにしながらも剣を下ろす。意外と冷静だな。頭に血が昇ったまま襲って来たら簡単に返り討ち出来たのに、残念だ。

 

「成程、どうやら噂通りのようだな、ガイバー。それで? 何をしに来た?」

 

 トールは口元に笑みを浮かべながら、真っ直ぐに俺を見つめる。

 

「アンタ達中立派に開国派(こちら)に付いて貰いたい。その交渉に来た」

 

 俺も真っ直ぐにトールを見つめ返しつつ、単刀直入に用件を伝えると、途端にファンドラルが激怒した。

 

「フザケるな! こんな真似をしておいて手を結べる訳無いだろうが!!」

 

「ブリュンヒルデから北欧は武を尊ぶと聞いた。ならどれだけ言葉を並べるより、こうした方が手っ取り早い。そう思ったんだが・・・・どうかな、トール?」

 

 俺が挑発するように言うと、トールは愉快そうに笑った。

 

「フハハハーーーーッ!! 成程、その通りだ! 良かろう、お前の、いや聖書勢力の力を見せて貰おう! さて・・・・」

 

「トール、俺にやらせてくれ!ヴォルスタッグの仇を討ってやる!!」

 

「いや、ヴォルスタッグ死んでないぞ」

 

 剣を抜いて名乗りを上げたファンドラルに、ホーガンがツッコミを入れる。だが、

 

「悪いが却下だ。どうせならトール、俺はアンタと直接()りたい」

 

 俺の挑戦にトールは笑って答えた。

 

「フハハハーーーーッ!! 面白い! いいだろう、俺自ら相手になってやろう!!」

 

 次の瞬間、トールから稲妻を纏った強大なオーラが噴出した。戦る気のようで何よりだ。だが、

 

「そりゃあないぜトール! 今更剣を収めるなんて俺は出来ねえよ!!」

 

 ファンドラルが不満を爆発させる。すっかり戦る気だったトールも困り顔だ。その時、

 

「では貴方の相手は私がしましょう」

 

 アルトリアが俺の隣に立った。ファンドラルは訝しげな顔で口を開こうとしたが、

 

「そりゃあいい。ファンドラル、もしアンタが彼女に勝てたら俺が相手してやるよ」

 

「その言葉、忘れるな───!」

 

 ファンドラルが怒りの籠もった目で俺達を睨む。

 

「決まったな! では場所を移すぞ、着いて来い!」

 

 俺達はトールの後に続いて宮殿内に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 戦いの場を闘技場(コロッセオ)に移し、ロスヴァイセ()は一輝さんと共にファンドラルと相対するアルトリアさんを見つめています。

 

「やっちまえ、ファンドラル!!」

 

「生意気な聖書勢力をブチのめしてやれ!!」

 

「二度と北欧に逆らえなくしてやれ!!」

 

 観客席は中立派で埋め尽くされ、野次や罵倒混じりの喚声が鳴り響いている。100%アウェイの状況であるにも関わらず、闘技場に立つアルトリアさんは平然としている。

 今いる貴賓席には私達の他にトールとホーガンが杯を傾けながら闘技場に立つ二人を興味深げに見つめていた。

 

「あの女かなり出来るな・・・・何者だ、ガイバー?」

 

「アルトリアは俺の女王(クイーン)だよ。悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は知ってるか?」

 

「あぁ、あの他種族を無理矢理悪魔に転生させるって言うアレか・・・・アレ、評判悪いぞ」

 

 顰め顔するトールに、一輝さんは苦い顔をする。

 

「らしいな。昔は強引な勧誘や、それこそ誘拐して無理矢理眷属にするなんて話もあったそうだし・・・・でも今の冥界からはそういう悪しき貴族は排斥されつつある。アンタからすれば虫のいい話だろうが、過去(むかし)より現在(いま)冥界(俺達)を見て判断してくれないか?」

 

「フム・・・・」

 

「ククク、いいんじゃねえか、トール。そいつの言う通り、大切なのは過去(むかし)より現在(いま)だろ?」

 

 一輝さんの切実な言葉にトールは考え込み、ホーガンは意外にも賛同する様子を見せた。

 

「フン、そうだな。見せて貰おうか、聖書勢力(お前ら)現在(いま)ってヤツをな・・・・」

 

 闘技場には審判を務めるヘイムダルが入場し、試合開始の笛を鳴らす。

 

 闘いが始まった。

 

 

 

 

 

 

「女だからって俺は手を抜かんぞ?」

 

「当然です。戦場に男も女もありませんから」

 

「上等だ!!」

 

 長剣を構え襲いかかるファンドラルをアルトリアは風王結界で迎え撃つ。十合、二十合と鋭い剣撃が飛び交い、火花が飛び散る。

 

「中々やりますね!」

 

「チッ! この!!」

  

 アルトリアの風王結界(不可視の剣)に苦戦しながらも、ファンドラルは凄まじい連続攻撃を繰り出し対抗する。

 

(成程、見事な剣技だ。“鮮烈”とは良く言ったものです。だが!)

 

(チッ! 見えない剣なんて小細工を弄するから対した事ないと思ったが、この女、隙が無い上になんて剛剣を使いやがる! こうなったら・・・・)

 

 ファンドラルはアルトリアと剣を交わしながら冷静さを取り戻していた。

 ファンドラルは多彩な剣技と鮮やかな連続攻撃を得意とするテクニックタイプ。一方のアルトリアは強力な一撃で相手を撃ち倒すパワータイプ。だがその本質はどちらも同じ剛の剣。今は均衡しているが、ほんの僅かな事で天秤は一気に傾くだろう。

 ならばとファンドラルは決意し、剣を打ち合わせた反動で大きく飛び退いた。

 

「おい、貴様剣士として恥ずかしくないのか!?」

 

「何・・・・? 貴殿は何を言っている?」 

 

「剣は剣士にとって我が身も同然。それを隠して闘うとは卑怯であろう! 貴様に剣士の誇りがあるなら正々堂々剣を曝して闘ったらどうだ!?」

 

 ファンドラルとて北欧有数の剣士。戦場で相手がどんな武器を使おうが文句は言えないのは解っている。だが二人の実力は均衡している。このままでは埒が明かないと策を廻らせ、心理戦を仕掛けたのだ。

 これでアルトリアが動揺して冷静さを欠けば儲け物位に仕掛けた策だったが、果たして効果はあった。

 

「ほう・・・・・良かろう。剣が見えれば文句は無いのだな?」

 

 アルトリアは冷笑を浮かべつつ、虚空から一枚のカードを取り出した。そのカードに描かれているのは剣士(セイバー)。アルトリアはカードを正面に翳し───

 

夢幻召喚(インストール)!!」

 

 鍵語(キーワード)を唱えるとカードが白い光を発し、アルトリアの全身を包み込んだ。

 

「な、何だ!?」

 

 白い光の中から現れたのは可憐な姫騎士。

 金色の髪は大きな黒いリボンでポニーテールに結われ、白を基調としたドレスは腋や背中が大胆に露出し、膝丈のスカートの下からはガーターベルトに吊られた白いストッキングが顔を覗かせていた。

 身体の要所を白銀の鎧が覆い、変身が完了した。

 

「美しい・・・・・・」

 

 思わずファンドラルが零したように、少女特有の色気と清純さを合わせ持った可憐な姫騎士がそこに在った。

 

「これなら文句は無いでしょう、鮮烈なるファンドラル」

 

 アルトリアは腰に佩いた黄金の剣を抜いて、ファンドラルに切っ先を向けた。

 

「貴様は・・・・・・一体何者だ?」

 

「私はアルトリア・ペンドラゴン。ガイバー不破一輝の“女王(クイーン)”だ!!」

 

 アルトリアは黄金の剣を構え、襲いかかる。

 

「───チイッ!?」

 

 ファンドラルは黄金の軌跡を描いて迫る剣を躱しながら、忌々しげに舌打ちする。

 さっきまでのアルトリアが「剛の剣」を振るっていたのに対し、今のアルトリアが振るうのは、まるで舞を舞うかのような華麗な「柔の剣」。まるで別人を相手にしているかのような感覚にファンドラルは戸惑い、防戦一方に陥っていた。

 

(クッ、可憐な容姿に相応しい剣だが、それだけに厄介だぜ。これならさっきまでの見えない剣の方がまだマシだったな。だがパワーならさっきまでの方があった。こうなったら───!)

 

 ファンドラルは防御を固め、一瞬の隙を突くカウンター狙いに戦法を変えた。だがこれは悪手だった。ファンドラルの持ち味は多彩な連続攻撃。それが足を止め、防御に走っては自ら持ち味を捨てた事になる。更に、

 

(くっ、いかん! 速さも鋭さもどんどん増しやがる! このままでは───!?)

 

 ファンドラルが対処出来ない程にアルトリアのスピードが上がっていく。刻々と鋭さを増すアルトリアの剣にピンチに陥ったその時、攻撃に夢中になったのか、アルトリアのガードが下がったのがファンドラルの目にはっきりと映った。

 

「そこだ───!!」

 

 アルトリアがようやく見せた隙に、ファンドラルは起死回生の突きを放つ。だがアルトリアはそれが来るのを読んでいたかのように、紙一重で突きを躱す。

 アルトリアの金色の髪が数本、風に舞った。

 

(しまった、誘われた───!?)

 

 ファンドラルはアルトリアがわざと作った隙に誘われ、手を出してしまった事に気付いた。

 並の剣士なら気付かない、ほんの僅かな隙に気付いたのはファンドラルの実力の高さを物語るが、アルトリアはそれさえ織り込んだ罠を仕掛け、ファンドラルを陥れた。

 これはアルトリアがファンドラルを完全に上回った証、アルトリアの黄金の剣の切っ先はファンドラルを完全に捉えていた。

 

「思った以上に鋭い突きでした。見事です、鮮烈なるファンドラル。ですがこれで終わりです───!」

 

 そしてアルトリアは高らかに、手にした聖剣の銘を叫ぶ───

 

勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!」

 

 黄金の剣、いや聖剣から放たれた光がファンドラルを貫いた。

 

「すまん、トール・・・・・」

 

 長剣を取り落とし、ファンドラルが倒れた。

 

「ふう、実戦で使ったのは初めてだったけど、案外いけそうですね」

 

 元の姿に戻ったアルトリアは、手にした剣士(セイバー)のカードを見つめて微笑んだ。

 

 

 『クラスカード』と呼ばれるこのカードは、アルトリアが悪魔に転生した際に持っていた正体不明のカードであった。

 剣士(セイバー)弓兵(アーチャー)槍兵(ランサー)騎乗兵(ライダー)魔術師(キャスター)暗殺者(アサシン)、そして狂戦士(バーサーカー)。聖杯戦争の七騎のサーヴァントが描かれたこのカードの正体を確かめる為、一輝立ち会いの元、アルトリアは自身のクラスであった剣士(セイバー)のカードを使うと、あの姫騎士の姿に変身したのだ。

 その後、他のカードも使ってみて(諸々のトラブルもあったが)リアスやアザゼルも交えて検証した結果、クラスカードで変身した姿は、数多の平行世界(パラレルワールド)に存在するアルトリアの姿と能力を自身を媒体に召喚したものではないかと結論づけられた。

 

 

 アルトリア、もといアーサー王の伝説は多岐に渡る。

 一番有名なのは聖剣エクスカリバーを携えた騎士の王というものだが、中には剣ではなく、弓や槍を携え戦ったというものや、魔術師マーリンから手解きを受けた魔術師であったという逸話まである。七つのクラス全てを扱う素養は十分にあった。  

 実戦で試したのは初めてだったが、思いの外上手くいった事にアルトリアは安堵の微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「只今の勝負、聖書勢力の勝利ーーーーッ!!」 

 

 ヘイムダルの判定が下り、観客の中には失意の溜息を吐く者や敗れたファンドラルへ罵声を飛ばす者もいたが、大半は二人の健闘を讃える者で、中には勝利したアルトリアを讃える者もいた。

 

(アルトリアさんの勝利で聖書勢力を見直す者も出て来たわ。もし一輝さんがこの怪物を本当に倒せたなら、全てが上手くいくかも知れない)

 

「ハハハ、中々面白い戦いだったな。さて、次は俺達の番だ。準備はいいか?」

 

「いつでも」

 

 楽しげに笑うトールに一輝さんも笑って応える。

 

(一輝さん・・・・これから戦うっていうのに笑ってる・・・・・) 

 

 一輝さんの肩には開国派、ひいては北欧の命運が掛かっている。

 だというのにそんなプレッシャーを感じる風も無く、戦いを前に一輝さんは不敵な笑みを浮かべていた。そんな彼を見てるだけで不思議とロスヴァイセ()の心臓は早鐘を打ち、目が離せなくなる。

 

「先に行くぜ」

 

 そう言うとトールは飛び上がり、闘技場に降り立つ。途端に歓声が上がった。

 

「じゃあ行って来る」

 

「あ、一輝さん!」

 

 これからトールと戦う一輝さんに何か言わなくちゃ──そう思ったのに咄嗟に言葉が出ず、気付けば私は一輝さんの唇に自分の唇を押し当てていた。

 

「んむ!?」 

 

「───た、戦いに赴く勇者に捧げる戦乙女(ヴァルキリー)の祝福の口づけです! 九姉妹の一人たる私のですから効果は保証しますよ!」

 

 顔を真っ赤にして、私は早口で捲し立てる。

 

(何してるのよ私はもう!・・・・・うぅ、恥ずかしくって一輝さんの顔がまともに見れない・・・・・)

 

 暫くすると、顔を真っ赤にして俯く私にクスクスと笑う声が届く。そっと顔を上げると、一輝さんが楽しそうに笑っていた。

 

「そうか・・・・うん、力が湧いて来た。ありがとう、勝って来るよ、ロスヴァイセ」

 

「は、はいっ!!」

 

 闘技場に飛び降りる一輝さんを私は熱い視線で見送った。

 

「ククク、あのロスヴァイセがねぇ・・・・・」

 

 その声に私はこの場にホーガンがいた事を思い出し、一部始終観られていた事に気付いて、全身が真っ赤になった。

 

 

 

 

 

 

 闘技場に降り立った一輝は、こちらに歩いて来るアルトリアとハイタッチを交わした。

 

「征って来る」

 

「ご武運を」

 

 短く言葉を交わし、一輝は5m程間隔を空けてトールと対峙した。

 

(スゲえな・・・・・これが北欧最強か・・・・)

 

 2mを越える長身に筋骨隆々の体躯、歴戦の戦士の風格と溢れる強烈な神気がトールを身長以上に巨大に見せる。

 肌にビリビリと突き刺さるその迫力に、流石の一輝も畏怖を感じざるを得なかった。

 

(思えば相手を怖いと感じたのはあの時(・・・)以来だな・・・・あの時(・・・)から俺はどれ位強くなったんだろう・・・? サーゼクス(あの人)にどれ位近付けたのか、アンタで試させて貰うぞ──雷神トール!!)

 

 覚悟を決めた一輝から炎のように紅のオーラが迸る。そのオーラの強大さに観客席から感嘆の声が洩れる。

 

「ほう・・・・・いいな、お前。いいぜ、お前の力を見せてみろ!!」

 

「おう! いくぞ、雷神トール!!」

 

 二人のオーラが渦を巻き、堪らずヘイムダルが開始の笛を鳴らした。

 

「「オオオオオーーーーーッ!!」」

 

 二人の拳が真正面から激突する。その衝撃に何重にも張られている筈の結界がビリビリと揺れて、観客が騒然となる。

 

「・・・・何て奴らだ、この結界はオーディンの爺様が張ったっていうのに・・・・」

 

 闘技場の結界はオーディン自らが張ったもので、頑丈さは折紙付き。その結界を揺るがす二人の力にホーガンが感嘆する。

 

(でもこれはほんの小手調べ・・・・だって一輝さんはまだガイバーになってないし、トールもまだ伝家の宝刀(・・・・)を抜いてないのだから・・・・・)

 

 ロスヴァイセは戦いの激化を予想し、一人固唾を飲む。ロスヴァイセの予想通り、戦いが本格化するのはこれからだった。

 

 

 

 

 ドォン、ドォンとまるでトラックが正面衝突したかのような轟音と衝撃が闘技場に轟く。

 

「ハハハ! 本当にやるじゃねえか! ならこれはどうだ? 10万ボルト【放電(ヴァーリー)】!!」

 

 トールが掌から雷を放つ。

 

(マズい───!)

 

 一輝は身体強化の倍率を上げて、大きく回避した。

 トールのような雷使いの厄介さは、バラキエルとの一戦で嫌と言う程理解している。

 雷の威力やそのスピードは勿論、一番厄介なのは感電によって動きが止まってしまう事だ。戦場で動きを止める事は死を意味する。一輝はトールの雷に当たらぬよう、回避に専念した。

 

「どうしたどうした! 避けるだけでは俺は倒せんぞ!」

 

(野郎、舐めやがって───!)

 

 一輝は頭上から雷を降らせるトールを忌々しげに見上げた直後、顔色を変えた。

 天を衝くように翳したトールの指先に雷雲が集い、どんどん広がっているのだ。やがて闘技場を覆う程に雷雲が広がるとトールはニヤリと笑った。

 

「受けてみろガイバー、このトールの必殺の一撃を! 【万雷(マララガン)】!!」

 

 トールが指を振り下ろし、幾条もの雷が闘技場全体に降り注いだ。

 逃げ場無く降り注ぐ雷の中、一輝はもう一人の自分を喚ぶ。

 

「ガイバーーーーーーッ!!」

 

 殖装時に発生するバリヤーが【万雷】を防ぐもそれは一瞬、すぐさま新たな雷が迫る。だが殖装したガイバー(一輝)にはその一瞬で充分だった。

 

「舐めるな、トール!!」

 

 一輝は両掌を頭上に向け、腰の重力制御装置を発動させる。両掌に生成された【ブラックホール】が降り注ぐ雷を吸い込んで行く。

 

「何だと!?」

 

 驚愕するトールに向かって一輝は飛び上がり、上昇する勢いのままトールに激突、拳を突き上げた。

 

「グフッ!!」

 

「不破圓明流【富嶽】」

 

 一輝の一撃にトールの身体が揺らぐ。この隙を逃すものかと追撃に移った一輝はトールの頭を掴んで地表に落下、衝突と同時に膝でトールの頭を潰した。

 

「不破圓明流【巌颪】」

 

 トールを中心に蜘蛛の巣状に地面にヒビが入り、その直後陥没した。

 大勢の観客が見つめる中、もうもうと立ちこめる土煙の中から現れたのは紅の鬼神──ガイバーだった。

 

「嘘だろ? あのトール様が負けた!?」

 

「そんな馬鹿な!?」

 

 途端に観客席から悲鳴が上がった。だが次の瞬間、額から血を流したトールが土煙の中から飛び出し、一輝に拳を振り下ろす。  

 

「一輝さん、危ない───!!」

 

 ロスヴァイセの声が届くよりも速く、ヘッドセンサーでトールを察知していた一輝は、振り下ろされたトールの右腕に飛び付くと、関節を極めると同時にトールの顔面を蹴り付けた。

 

 不破圓明流【飛燕十字蔓】

 

 そのままトールの右腕を折ろうとする一輝。だが、トールの右腕はビクとも動かなかった。

 

「何いっ!?」

 

「・・・・・さっき俺に舐めるなと言ったな? その言葉そっくり返すぞガイバー! このトールを舐めるな───!!」

 

 トールは一輝ごと右腕を持ち上げると、そのまま力一杯地面に叩き付けた。

 

「ガハッ!!」

 

「喰らえい! 100万ボルト【放電】!!」

 

 更にトールはさっきよりも出力を上げた【放電】を放つ。

 

「ガアアアアーーーーッッ!!」

 

 トールの雷を浴びた一輝は苦悶の声を上げ、無様に転がって逃げる。だがトールのダメージも深く、追撃出来ずにその場に片膝を付いた。

 

「グウぅ!? ・・・・・クッ! 右腕が上がらん・・・・・クソ! 思った以上にダメージを喰らったようだな・・・・・だが!!」

 

「しまった・・・・・雷撃をまともに喰らっちまった・・・・・くそ! 動け! このままじゃやられるぞ!!」

 

「「ヌオオオオーーーーーッッ!!」」

 

 トールと一輝はダメージを負った身体に鞭打ち、ほぼ同時に立ち上がった。

 

「ククク、まさかここまでやるとは・・・・・噂通り、いや、それ以上だったな、ガイバー」

 

「アンタもな、トール。北欧最強は伊達じゃないな・・・・」

 

「フッ、お前を舐めていた事を詫びよう。お前は確かに強い。だがだからこそ俺には勝てない。何故ならその強さ故にこのトールを本気にさせたからだーーーーッ!!」

 

 

 バリバリバリーーーーッッ!!!

 

 

 トールの全身から激しい雷光が生じ、雷鳴が轟く。

 雷光の中、トールの姿が変わっていく。上半身裸で簡素なズボンしか履いてなかったトールの全身は鈍色の鎧に包まれ、背中には真紅のマントが翻る。そしてトールが徐ろに左手を掲げるとどこからともなく黄金のハンマーが飛来し、その手に収まった。

 全長5、60cm位の黄金のハンマー、それを見た一輝に戦慄が走る。あれこそはミョルニル。雷神トールの代名詞にして、あまりの有名さに様々な媒体でその名を轟かせる神の武器(ゴッドアーム)だ。

 鎧を纏い、ミョルニルを手にしたこの姿こそ雷神トールの真の姿。その姿は正に軍神と呼ぶに相応しい武威に溢れていた。

 

「待たせたなガイバー、この雷神トールの本気を見せてやろう!」

 

 トールからこれまで以上の凄まじいオーラが立ち昇る。だが、そんなトールを見た一輝の胸に沸き上がったのは恐怖では無く歓喜、そして闘志だった。

 

(・・・・凄えな、これが北欧最強の本気か・・・・やっぱりトール(こいつ)と闘うなら、全力、いや死力を尽くさねばならないって事か───!!)

 

 一輝の身体から紅のオーラが灼熱のマグマのように沸き上がる。それはトールの纏う雷光に引けを取らない強大さだった。

 

「詫びる必要は無いぞトール。何故なら本気じゃなかったのは俺も同じだからだ。今こそ見せてやろう、この俺の、ガイバーの本気を! ガイバーーーーー、巨人殖装(ギガンティック)!!」

 

 一輝の思念波に応えて背後に『サナギ』が出現し、身体を覆っていく。一瞬の後、ガイバーは紅の巨人【ガイバー・ギガンティック】に変わっていた。

 ガイバーの変化にトールは一瞬呆けた顔をしたが、次の瞬間、心底嬉しそうに大笑した。

 

「フフ、フハハハハーーーーッ!! このトールを相手に力を隠していたとは生意気な! 面白い、このトールの必殺の一撃、見事受けられるか見せて貰うぞ、ガイバー!!」

 

 トールはミョルニルを天に掲げるとミョルニルに雷が落ちてバリバリと放電する。息を飲む一輝に対して白熱したミョルニルを構え、トールは大きく飛び上がる。

 

「受けて見ろ! これが打ち砕く雷神の鉄槌(トールハンマー)だ!!」

 

「!!?」

 

 雷神トールの代名詞たる必殺技がガイバー・ギガンティックに向かって今、放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

私事でゴタゴタしている内に年末になってしまい、すっかりご無沙汰していました。
ようやく時間が取れるようになって来たので、少しずつですが執筆を再開したいと思いますので、よろしくお願いします。

次回はトール戦の決着とロスヴァイセ攻略をお送りします。


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第41話 戦乙女の契約☆☆(アルトリア、ロスヴァイセ)



第41話を投稿します。

今回はトール戦の決着とロスヴァイセとの初エッチをお送りします。
それではご覧下さい。



 

 

 ズガアァァァンンッッ!!

 

 

 隕石が落下したような衝撃と轟音が轟き、闘技場全体を揺るがす。結界が明滅し、観客が悲鳴を上げた。

 

「何という威力・・・・・」

 

「俺も見たのは久し振りだが、相変わらず凄え威力だな」

 

「それよりも一輝さんは!?」

 

 【打ち砕く雷神の鉄槌(トールハンマー)】の威力を目の当たりにしたアルトリアやその威力を知っているホーガンすら驚愕する中、ロスヴァイセはただ一輝の身を案じていた。

 

「大丈夫ですロスヴァイセ。ほら───」

 

 アルトリアの指差す方に目を凝らすと、立ち込める爆煙が晴れて行く。そこには直径50m位の巨大なクレーターが出来ていて、その中心にはトールが険しい表情である方向を見つめていた。

 そしてその方向にはバリアーで身を守るガイバー・ギガンティックの姿があった。

 

 

 

 

 

 

「危なかった・・・・・バリアーを張るのがあと少し遅かったら消し炭になる所だった」

 

 バリアーを消して、一輝はホッと息を吐いた。

 

「まさかトールハンマーを防ぐとはな・・・・・つくづく大した奴よ。ならば!」

 

 トールがミョルニルを構えて駆け出すと、一輝もまた高周波ソードを構え、迎撃態勢を取る。

 

 ミョルニルと高周波ソードが正面から激突する。だが、

 

 パキイィィィンッ!!

 

 甲高い音を発てて高周波ソードが折れ、刃が宙に舞った。

 

「ちいっ!!」

 

「フハハハーーーーッ! そんな細い刃でミョルニルを受け止められるか!!」

 

 トールは一輝目掛けてミョルニルを振り下ろす。トールハンマー程では無いが、雷を纏い十分な威力を持つ一撃を躱して、一輝は右ハイキックを放つ。左腕でガードしたトールだったが、ほぼ同時に繰り出された左からハイキックを喰らって吹き飛んだ。

 

「不破圓明流【双龍脚】」

 

 頭を振りつつ立ち上がるトールに一輝は追撃の左ハイキックを放つ。トールはミョルニルでガードしながら双龍脚を警戒し右腕で頭部をガードする。だが一輝の放った左ハイキックは途中で変化し、がら空きになった鳩尾に突き刺さった。

 

「ゲハッ!?」

 

「不破圓明流【紫電】」

 

 身体がくの字に折れ曲がり、倒れそうな所をトールは必死に耐える。

 

(この距離ならトールハンマーは撃てまい! 一気に決めてやる!!)

 

 がら空きの頭部に攻撃を加えようとしたその時、トールの身体から雷が発生した。

 一輝は至近距離で雷を浴びるのを嫌い、大きく後ろに飛ぶ。

 

「チッ! 接近戦でアドバンテージを奪われっぱなしとは情けねえ! 武術って奴は厄介なモンだな。だがなガイバー、お前接近戦で優位に立てばトールハンマーを打たれないとか思ってねぇか?」

 

「なに?」

 

 一輝の反応にトールはニヤリと笑い、ミョルニルの柄を回して引くと、中から40cm程の鎖が現れた。

 トールは柄を持ち、フレイルのように振り回すと、ミョルニルが再び雷を帯び始める。

 

「生憎だがトールハンマーはニ種類ある。ひとつはさっき見せた直接攻撃型。もうひとつはこの───遠距離攻撃型だ!!」

 

 ミョルニルが発する雷は更に激しくなり、眩いばかりに輝き出す。そして、

 

「喰らえ!飛翔する雷神の鉄槌(トールハンマー)】!!

 

 トールがミョルニルをハンマー投げよろしく投擲した。

 

「!!!」

 

 雷を纏い、高速で飛来するミョルニルを一輝は間一髪回避する。だが安心する間も無く、背後から高速で接近する飛翔体をヘッドセンサーが感知した。

 

(チッ! 間に合え───!!)

 

 咄嗟に張ったバリアーに飛翔する雷神の鉄槌(トールハンマー)が衝突する。だが、

 

「───ぐうぅっ!?」

 

 一瞬の均衡の後、ガイバーのバリアーが砕け散った。ミョルニルは左肩の装甲を掠めてトールの元へ戻る。

 

「良く躱した。だが次の一撃に耐えられるか!!」

 

 トールはミョルニルを手にするとそのまま遠心力を利用して自ら回転、再び投擲した。

 一輝は再びバリアーを張るが、さっきと同様バリアーは砕かれ、一輝に痛撃を与える。

 

(回避しても追って来る。バリアーは砕かれる。なら出来る事は───迎撃するしか無い!!)

 

 瞬時に判断した一輝は胸部装甲を自ら引き剝がす。それはトールがミョルニルを投擲するのとほぼ同時だった。

 

「ギガ・スマッシャーーーーーッ!!」

 

 ガイバー・ギガンティック必殺のギガ・スマッシャーがトールハンマーと激突した。強大なエネルギー同士の衝突は周囲を白い光で覆い尽くし、次いで凄まじい轟音と衝撃が二人を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 パリイィィィィンンッ!!!

 

「「「「キャアアアアーーーーッ!!」」」」

 

 トールハンマーとギガ・スマッシャーの激突は強固な闘技場の結界を破壊し、観客の多くは混乱に陥った。

 そんな状況でも闘技場に熱い視線を注ぐ少数の者達もいた。

 

「そんな・・・・・オーディン様の結界が」

 

「とんでもねえ威力の応酬だったからな。流石に限界だったんだろう」

 

「それよりも一輝は・・・・・・居た!!」

 

 アルトリアの声にロスヴァイセとホーガンも闘技場を見やる。もうもうと立ち込める土煙の先にはうつ伏せに倒れた一輝とトールの姿があった。

 

「トール!!」

 

「「一輝(さん)!!」」

 

 仲間の声に反応したのか、一輝とトールの指がピクリと動く。

 

「グ、うぅ・・・・・クソ、相撃ちか・・・・・」

 

「ぬうっ、まさかトールハンマーを迎撃するとはな・・・・・・」

 

 二人はほぼ同時に立ち上がった。両者共ダメージが深いのか足元がおぼつかない。

 トールは辺りを見渡しミョルニルを探す。ミョルニルは二人の中間辺りに黒焦げで落ちていて、手を伸ばしても反応が無しない。

 

(完全にイカれたか、それとも眠ってるだけなのか・・・・どの道この試合ではもう使えまい)

 

 ミョルニルが使えないという事はトールハンマーも撃てないという事。それを苦々しく思いながらも、トールは自分をここまで追い込んだ漢がいるという事実に笑みを浮かべる。 

 

「・・・・・なぁガイバー、お前をけしかけたのはブリュンヒルデだろ? お前の力を示して俺をその気にさせろって」

 

「・・・・・まぁ概ねその通りだな」

 

(実際はブリュンヒルデとセラ姉さんなんだけどな)

 

 一輝は内心呟いた。

 

「フン、やっぱりな。あの女狐め・・・・・いいぜ、その話乗ってやる」

 

「本当か!?」

 

「あぁ・・・・・元々俺が中立派を起ち上げたのは義兄弟(ロキ)オーディン(オヤジ)との板挟みでどっちにも付けなかったからだしな。中立派のほとんどは俺の名前に寄って来た奴ばかりだし、俺がいいと言えば従うさ」

 

 一輝はこれでセラフォルーにいい報告が出来ると安堵すると同時に、これで終わりかと少し残念に思う。

 

「だがな・・・・・やっぱり男として決着(ケリ)は着けときたいと思わねえか?」

 

 一瞬キョトンとした一輝だったが、すぐさまトールの言葉の意味を理解すると、喜びに笑いが込み上げるのを抑え切れなかった。

 

「ククク、だよなぁ。やっぱり決着は着けないとな!」

 

 一輝は拳を固く握り締める。

 

「ああ。と言ってもお互い残る力は僅かだろう。どうだ? 次の一撃に全てを懸けるっていうのは」

 

「乗った!!」

 

 トールはボロボロの鎧を脱ぎ捨て、左手に残った全ての力を集める。一輝もまたトールに応えるように殖装を解き、右手に残った闘気を集中させた。  

 トールの左拳が稲妻を纏いスパークし、一輝の右拳に纏う紅いオーラが炎の如く燃え上がった。

 二人の漢は同時に駆け出し、

 

「ライトニングボルト!!」

 

「バーンナックル!!」

 

 同時に最後の一撃を放った。

 

 

 

 激突の後、立っていたのは───

 

 

「ちくしょう・・・・・・利き腕だったら俺が勝ったのにな・・・・・・」

 

「かもな・・・・・・だが今回は俺の勝ちだ!!」

 

 ゆっくりと倒れるトールを見ずに、一輝は拳を高く掲げた。

 

 

 

 

 

 

 

  

「ここは・・・・・・?」 

 

 見知らぬ天井に一輝()は声を洩らした。

 

「あら、目が覚めました?」

 

 声のした方を見ると、見知らぬ女性─金色の髪に紫の瞳をした優しい顔立ちの美女だ─がいた。

 彼女は俺の額に手を当てたり、目に光を当てたりと俺の容態を診ている。

 

「どちら様で?」

 

「申し遅れました。私戦乙女(ヴァルキリー)の一員でエイルと申します。お見知り置きを」

 

「貴女がエイル・・・・・・」

 

 囚われていた筈の彼女が何故自由になり、俺の容態を診てるんだろう。俺の疑問に答えたのは彼女では無かった。

 

「あら、起きたのね不破一輝。どうエイル、彼の容態は?」

 

 新たに入室して来た金髪碧眼の美少女が俺を眺めながらエイルに尋ねる。

 

「もう大丈夫よ。あのトールと闘ったっていうのにこの程度の傷で済んでるんだから、とても頑丈なのね」

 

「まぁ、それが取り柄なんで」

 

 転生特典のひとつ「頑健な肉体」は地味に効果を上げてるな。それより気になる事が・・・・・

 

「それより教えてくれないか? あの後どうなった?」

 

「そうね。まず自己紹介から──私は九姉妹の八女、グリムゲルデよ。ブリュンヒルデ姉さんの密命でエイルを救出する為にここ、ヴィーンゴールヴに潜入していたの。そこに貴方が乗り込んで来てトールの目を引いてくれたから、この通りエイルを救出出来たわ」

 

「ありがとう一輝さん」

 

 金髪碧眼の美少女、グリムゲルデが状況を説明し、エイルが俺に頭を下げた。

 

「いや、無事で良かった。ではオーディン様は?」

 

「それも大丈夫。オーディン様はさっきここに運び込まれて処置が終わった所よ」 

 

「それじゃあ───」

 

「ええ。フェンリルの“呪”は解呪しました。治療も終えたのでもう心配ありません。後は目を醒ますのを待つばかりです」

 

 エイルの笑顔を見て、俺は深く息を吐いた。良かった、本当に良かった。

 

「そうか・・・・・・ありがとうエイル」

 

「お礼を言うのはこちらの方です。貴方のお陰で私も、ひいてはオーディン様も助かったのですから」

 

 俺とエイルは顔を見合わせ微笑んだ。

 

「さて、もう夜も遅いわ。詳しい話は明日にしましょう。貴方もゆっくり休んで」

 

「そうですね。傷は治っているとは言え、貴方には休息が必要です。何か欲しい物はありますか?」

 

 そう尋ねられたその時、

 

 ドクンッ!!

 

 突然身体中がカアッと熱くなる。特にある一部分が燃えるように熱い。これはマズい! いつものアレだ!!

 

「・・・・すまないが何か食べ物を。それと俺の仲間を、アルトリアを呼んでくれないか」

 

 俺は冷静さを装い、グリムゲルデに頼む。

 

「分かったわ。手配するから少し待ってて」

 

 そう言ってグリムゲルデとエイルは退室した。 

 

 

 

 

 

 

 グリムゲルデから一輝さんが目を覚ましたと聞いたロスヴァイセ()は喜び勇んで一輝さんの部屋へ向かった。

 

 トールとの死闘に勝利した一輝さんは拳を突き上げたまま、気を失っていた。

 あの闘いがもたらしたものはあまりに大きい。北欧最強のトールを倒したという事で、一輝さんは北欧で一目置かれる存在となった。あの闘いを観ていた中立派は勿論、不審な目を向けていた戦乙女(ヴァルキリー)達からもだ。

 中立派のほとんどが開国派に属するのを了承したので戦力比も逆転、更にグリムゲルデがエイルを救出したので、すぐさま治療が行われ、オーディン様の命も救われた。

 後の問題はロキの張った結界が解けず、外との連絡が取れない事だが、これはトールが目を覚ませば何とかなるそうで、今は彼が目覚めるのを待つばかりだ。

 

 万事上手くいったのは一輝さんのお陰。一輝さんが目覚めたと聞いた私は彼にお礼と、お願いがあって彼の元へと急いだ。

 部屋ヘ向かう途中、廊下に鏡があったので身だしなみを確かめる。今の私はオーディン様の護衛時に着ていたスーツ姿。一部の隙も無い筈なのに、鏡に映った顔は真っ赤に染まっていた。

 

(うぅ・・・・・どうしても意識しちゃうなぁ)

 

 一輝さんにお願いしたいのは私との契約。私達戦乙女(ヴァルキリー)は勇者と認めた者と契約して、死後その魂を神の戦士(エインヘリヤル)として神の館(ヴァルハラ)ヘ招くという役割がある。

 そのせいか戦乙女(ヴァルキリー)神の戦士(エインヘリヤル)は恋人や夫婦になる事が多く、戦乙女と契約を結ぶという事は交際もしくは結婚を申し込むに等しい行為とされている。これで意識するなという方が無理な話だ。

 一輝さんは近年稀に見る優良物件。このまま放置すれば他の戦乙女との間で取り合いになるだろう。

 

(そんな事させない! 今度こそ契約して不名誉な二つ名から脱却してみせるわ! ファイトよ、私!!)

 

 自分に喝を入れて、私は一輝さんの部屋の前に立つ。深呼吸して扉をノックしようとした時、部屋の中から微かな声が聞こえて来て、思わず聞き耳を立てた。すると───

 

「あん、あン、んん、あぁ一輝ぃ・・・・・」

 

「あぁ、いいぞ。アルトリアの中、熱くうねって・・・・くぅ、また出る」

 

 聞こえて来たのは切羽詰まったような男女の声。

 

(こ、これってまさか───!!?)

 

 思わず扉を押すと、鍵を掛け忘れたのか扉が音もなく開く。そこで見たのは───

 

「んあぁ、来て一輝! 私の中に熱いのいっぱい───」

 

「んおぉ! 出るぞ、アルトリア!!」

 

 ブビュルル! ブビュ! ブビューーーーッ!!

 

「ふうぅぅぅぅんんッッ!!♥」

 

 何故か先程の騎士姫の格好で一輝さんと愛し合うアルトリアさんの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 グリムゲルデとエイルが退室してから十分程でアルトリアが食事を持ってやって来た。

 食事を早々に平らげた一輝()はアルトリアをベッドに押し倒し唇を奪うと、服も脱がさぬまま彼女の腟内に挿入した。最初は驚いていた彼女だったが、俺の状態を覚ったのかそのまま受け入れてくれた。

 抜かず三発、アルトリアの腟内に射精してからようやく人心地が着いた。

 

「ハァ、ハァ、ありがとうアルトリア」

 

「ハァ、ハァ、んん、構いません。いつもの血の昂りでしょう? 私は貴方の女王(クイーン)なんですから、いくらでも貴方の欲望を注いで下さい」

 

 そう言ってアルトリアは俺の頬を撫でる。彼女の真摯な愛情が嬉しい。今はその言葉に甘えるとしよう。

 

「ありがとう。じゃあ早速・・・・・」

 

「ええっ!?」

 

 ちょっとしたお願い耳打ちすると、アルトリアは驚きのあまり声を上げた。

 

「ほれ、挿れるぞ」

 

「え? ちょっと待って! 本当に──んあぁッ!!♥」

 

 俺のお願いに動揺するアルトリアに構わず、バックから一気に挿入する。

 

「はん、あん、うぅん、あぁん! 奥まで一気に届いてるぅ・・・・・・!!」

 

 突く度にアルトリアの華奢な身体がガクガクと揺れる。

 

「ほら、アルトリア」

 

「んん! ホ、ホントにするのですか?」

 

 俺の催促にアルトリアは困り顔をしながら尋ねる。俺が無言で乳首を摘むと、ビクンと反応しながら虚空に手を伸ばし、一枚のカードを取り出した。

 

「い、夢幻召喚(インストール)!!」

 

 白い光に包まれ、アルトリアの姿が膝丈の白いドレスに、髪型もポニーテールに変わり、闘技場で見た可憐な姫騎士へと変身した。

 

「これでいいのです、かぁアアん!!♥」

 

 変身が完了した途端、俺はアルトリアの腟奥深く貫いた。

 

「うんうん、良く似合ってる。可愛いぞアルトリア! 一度この格好のお前とシタかったんだ!」

 

「べ、別に、んん! いつもと服装が違うだけでしょう・・・・?」

 

「普段とは違った服装(コスチューム)に萌える・・・・・それが男のロマンって奴なんだ!!」

 

「んん、アん、そ、そういうものなのですか!? あぁん!」

 

 普段とは違う姫騎士状態のアルトリアに興奮し、俺はより強く、より深く腰を突き挿れる。俺の内側(なか)から湧き上がる熱い衝動が身体を突き動かし、姫騎士状態のアルトリアを責め立てる。

 アルトリアはさっきから身体をビクつかせ、何度も軽く絶頂し(イッ)ている。俺はもっと感じさせようと衣装の脇から手を入れて直に胸を揉み、顕になったうなじに舌を這わせ、唇を奪った。

 

「ん、可愛いよアルトリア。いつも可愛いけど、今日のアルトリアは滅茶苦茶可愛い」

 

 俺のストレートな言葉にアルトリアを耳まで真っ赤に染めながら、俺のキスに応える。

 

「んん、ちゅぱ♥ あ、あんまり可愛いって言わないで・・・・・あぁ、ん、は、恥ずかしい・・・・・」

 

 アルトリアが恥ずかしがる様は破壊力抜群だった。俺は箍が外れたように夢中で腰を動かした。

 

「あぁん!おぉん! クルの一輝!! さっきからずっとイッてるのに、またスゴいのキちゃうぅッ!!♥」

 

 限界を訴えるアルトリア。俺は彼女の細い腰に手を置き、ラストスパートに入った。

 

「くうぅ、イクぞアルトリア!!」

 

「あん!あン!あん!あぁン!! キテぇ一輝!! いっぱい、全部、私の腟内(なか)に───ンア゙ア゙アァァァんんッッ!!♥」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーーッッ!!

 

 アルトリアが電撃を浴びたようにビクン、ビクンと震えると、力尽きてそのまま枕に顔を埋めた。

 アルトリアの白い衣装(コスチューム)は汗に塗れうっすらと透けている。あまりのエロさに息を飲んだ俺は、アルトリアの了解も得ぬまま再び動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 ロスヴァイセ()は目の前で繰り広げられる光景にパニックに陥っていた。

 

(何これ・・・・・これが本物のセックス!? 私が思い描いていたものと全然違うじゃない!!)

 

 私も戦乙女(ヴァルキリー)として迎えた勇者(エインヘリヤル)を喜ばせる知識は学んでいる。でも目の前で繰り広げられてるのはそんな知識なんて吹っ飛ぶ位荒々しく、かつ生々しいものだった。

 私が覗いてる間に一輝さんはアルトリアさんに五度も性を放ち、今尚アルトリアさんを責め立てている。

 

(男って一度射精したら賢者になるって聞いてたのに獣になってるじゃない!? どうなってるのよ!?)

 

 あわよくば一輝さんと契約を交わし、そのまま結ばれる(処女を捧げる)事も想定していたけどこれは無理! 正直今の一輝さんが怖い。こんな状態で契約なんて出来る訳ない!

 

「うわぁ~、スゴいねカズくん。アルトリアちゃんグチョグチョだよ」 

 

「ええ・・・・・あのアルトリアさんがあんなになるなんて・・・・・」

 

 今のアルトリアさんにはあの凛々しくも可憐な面影は微塵も無い。

 

「だねぇ。・・・・・・でもあれは仕方がないのかも」

 

「仕方がない・・・・・・ってセラフォルー様!?」

 

 いつの間に現れたのか、私の隣にはセラフォルー様がいた。

 

「驚きました。私に気付かれぬよう近付くとは流石ですね」

 

「いやロスヴァイセちゃん覗くのに夢中で隙だらけだったよ?」

 

「・・・・・・コホン。で、仕方がないとはどういう意味です?」

 

「(誤魔化したな)まぁいいや。えっとね、千年もの間不敗を誇って来た不破圓明流には修羅の血が流れてるって云われてて、カズくんは以前、戦闘中にその血が覚醒して強大な戦闘力を手に入れたんだけど、その反面、激しい戦闘の後は血が昂って、女を抱かないと静まらなくなっちゃったの」

 

「そんな事が・・・・・・」

 

「うん。普段はここまで酷くならないんだけど、やっぱりトールは強敵だったんだね・・・・・いつもはリアスちゃん達がいるからある程度分散出来るんだけど、アルトリアちゃん一人じゃもう限界だよねぇ・・・・・」

 

 セラフォルー様は意味あり気に私を見つめる。

 

「・・・・・・・・・」

 

 セラフォルー様が何を求めてるのか分かる。でも今の一輝さんを見てると踏ん切りが付かない。

 私が悩んでいると、セラフォルー様は呆れたよう溜息をひとつ吐き、扉を一気に開け放った。

 

「セ、セラフォルー様!?」

 

「ほーら! 女は度胸よ!!」

 

 驚く私の手を取って、セラフォルー様は室内に踏み入った。

 

 

 

 

 

 

 室内に踏み入ると、噎せ返るような濃い性臭が鼻を突く。本能を刺激する匂いに気圧されながらセラフォルー()はロスヴァイセちゃんの手を引いてベッドに近付く。

 

「アルトリア!アルトリア!アルトリ、アァァァーーーッ!!」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーーッッ!!

 

「ア"、ア"、ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーッッ!!♥」

 

 種付けプレスでアルトリアちゃんに腟内射精(なかだし)するカズくん。彼女の股間からは入り切らなかった精液が溢れ、彼女の白い衣装(コスチューム)を別の白で染める。

 

 アルトリアちゃんの瞳は濁り、呂律も回らず完全にトンデいる。だというのにカズくんは尚も腰を動かそうとする。

 

(いけない、これ以上は───!!)

 

 私は咄嗟にカズくんの顔を両手で挟んで唇を重ねる。

 

「ンム!?・・・・・・ヂュプ、チュプ、ん、レロレロ」

 

 私はカズくんの口腔深く舌を突き入れ、彼の舌を絡め取り、唾液を啜る。始めは驚いていたカズくんも相手が私と解ると動きを合わせ、より深く唇を重ね、舌を絡めて来る。

 たっぷり五分位舌と唇を絡め合い、ようやく私達は唇を離す。私達の間に出来た銀色の橋がプツンと切れて、私の服の胸元に染みを作った。

 

「セラ姉さん、どうして・・・・・?」

 

「フゥ・・・・・落ち着いた、カズくん? あのね、アルトリアちゃんはもう限界、これ以上シタら壊れちゃうよ」

 

「あっ・・・・・・・・・」

 

 少し頭が冷えたのか、カズくんはアルトリアちゃんの惨状に気付き、言葉を失くす。そんな彼を私はギュッと抱きしめた。

 

「分かってくれたらいいの。それでね、まだ足りないならこの娘が相手をしてくれるって♪」

 

 私は驚いてこっちを見るロスヴァイセちゃんのお尻を叩いた。

 

「ひゃんッ!!」

 

 可愛い悲鳴を上げて跳び上がると、ロスヴァイセちゃんは私より一歩前、カズくんの真正面に出てしまう。

 まだ心の準備が出来て無いのか、恨みがましい視線を向ける彼女に、私は「グッドラック」と意味を込めて親指を立てた。

 

 

 

 

 

 

 セラフォルー様に文字通りお尻を叩かれたロスヴァイセ()は一輝さんの前に立つ。もう後には引けない。私は深呼吸をひとつして、

 

「一輝さん、私と契約して下さい!!」

 

 緊張のあまりストレートに切り出してしまった。

 

「・・・・・それって昨日言ってた“戦乙女の契約"の事だよな。俺は悪魔だが本当にいいのか?」

 

 でも一輝さんはそこに触れずに尋ね返す。

 

「はい。トールとの闘いを見て、私の勇者(エインヘリヤル)は貴方しかいないと確信しました」

 

 一輝さんは立ち上がり、頭の天辺からつま先まで私をじっくり眺めると、私の身体を引き寄せた。

 

「・・・・・契約したら、俺はすぐに君を抱くぞ。それでもいいのか?」

 

 一輝さんは私の目を見て、最後とばかりに尋ねる。私は祈るように手を組み、瞳を閉じた。

 暫くすると熱く柔らかな感触を唇に感じた。一輝さんとの初めてのキスは舌も絡めなければ唾液も交換しない優しいものだったが、その熱さと蕩けるような甘さはいつまでも記憶に残った。

 

「いいだろう。契約しようロスヴァイセ。それでどうすればいい?」

 

 唇を離して一輝さんが契約の仕方を尋ねる。 

 

「このまま抱いて下さい・・・・・貴方の精を胎内に受ける事で契約は成立しますから・・・・・」

 

 そう答えてから今度は私から唇を重ねた。

 

 

 

 

 

「んむ・・・・・チュ、んふ、んん・・・・・チュプ、あぁ、んん・・・・・」

 

 ベッドの脇で一輝とロスヴァイセが強く深く唇を重ねる。一輝は積極的に舌を挿れ、口内を蹂躙し、唾液を送り込む。ロスヴァイセもまた、懸命に一輝の動きに応えるように舌を絡め、唾液を飲み込んだ。

 

(んあぁ、これが一輝さんのキス・・・・・スゴい、気持ち良くって頭蕩けちゃいそう・・・・・)

 

 初めてのキスにのぼせるロスヴァイセの服に一輝の手が伸びる。上着を脱がせ、ネクタイを解き、ブラウスのボタンを外し、ファスナーを下ろし、スカートを床に落とす。

 その間も二人の唇は離れず、室内を淫らな水音と熱い吐息が満たしていく。

 

「あぁん、あン、ンン! か、一輝さんそこは・・・・・」

 

 ブラウスの前をはだけ、ブラの上からたわわに実った双丘を揉まれ、ロスヴァイセは堪らず声を洩らす。

 ロスヴァイセのおっぱいはリアスに匹敵する爆乳で、ブラの上からでも極上の柔らかさと揉み心地が一輝の手に伝わって来る。

 

「んあ、アン! 一輝さんダメ! 胸・・・・・おっぱいはダメなの私・・・・・んあぁん、やめてぇ・・・・」

 

 感じる素振りを見せながらも、おっぱいを責められるのを嫌がるロスヴァイセに一輝は訝しげな視線を向ける。

 

(不感症、って訳じゃなさそうだけど、この嫌がりよう・・・・・何かコンプレックスでもあるのか?)

 

 ロスヴァイセが何を嫌がってるのか分からないまま、一輝は隙を見てブラジャーのホックを外し、一気に抜き取った。

 

「──────!!!」

 

「これは・・・・・!?」

 

 ブルンとロスヴァイセの爆乳が溢れ落ちる。色、ハリ、大きさ、形、どれも申し分無い極上の双乳。されどその頂は通常とは異なり、乳首が陥没していた。

 

「うぅ、だからダメって言ったのにぃ・・・・・」 

 

 恥ずかしげに呟くロスヴァイセをよそに初めて見る陥没乳首に一輝は興味深げな視線を巡らせ、そっと指を這わせる。

 

「ひうっ! か、一輝さん何を・・・・・」 

 

「ん? ロスヴァイセの乳首は恥ずかしがり屋みたいだからね・・・・こうすれば顔を出すかなぁと」 

 

 一輝は乳房を揉みつつ乳輪を指先で引っ掻くように刺激する。

 

「んひぃっ! ひんっ! んん! やぁん何コレぇ!?」

 

「くすぐったい?」

 

「くすぐったいのもあるけど、それだけじゃなくて・・・・・ビリビリって痺れるような、それでいて・・・んん!」

 

「感じる?」

 

 ロスヴァイセは恥ずかしそうに目を逸らしつつ、コクンと小さく頷いた。

 

「あふん! あン!一輝さんダメぇ! そんなの、あぁン! ダメぇっ!!」

 

 ロスヴァイセが感じてると知ると、一輝はベッドに押し倒し、埋まったままの乳首にしゃぶり付いた。

 大きめな乳輪を唇で刺激し、乳首を掘り起こすように舌を這わせ、搾乳するように乳房を捏ね回す。

 

「はヒィッ!ひぅん! ウソ・・・・ヤダ、おっぱい感じちゃう・・・・・ウヒぃぃンッ!!」

 

 乳輪ごと甘噛みされ、ロスヴァイセの身体がビクンと跳ねる。

 荒い息を吐くロスヴァイセを尻目に一輝は、濡れて薄っすらと透けた下着の上から恥丘に指を這わせる。

 

「あひぃん! あぁん! 一輝さんそこはダメぇ!!」

 

「ここもダメって、ロスヴァイセはダメな所ばっかりだな」

 

 一輝は揶揄うように形がくっきり浮かんだ割れ目に指を這わす。

 

「んん! そこ・・・・だっていっぱい濡れてて・・・・・あン! き、汚いから・・・・・」

 

 一輝はロスヴァイセの下着をずらし股間を露出させる。剥き出しになったそこからは愛蜜が溢れ、銀色の密林が濡れた肌に貼り付き、芳醇な匂いを醸し出していて、滅茶苦茶エロい。

 

「あんまり手入れしてないみたいだな、ロスヴァイセ。ほら、お尻の方まで繋がってるぞ」

 

「!!!?」

 

 銀色の恥毛を引っ張られ、ロスヴァイセの顔が羞恥に赤く染まる。更に、

 

「スンスン、匂いもスゴいな。濃いメスの匂いがプンプンするぞ、ロスヴァイセ」

 

 お手入れを怠った事を指摘され、匂いを嗅がれたロスヴァイセは女としてダメ出しされたような気がして、羞恥や恥辱で青い瞳に涙を滲ませる。

 

「ひうぅ!? アン、やぁん一輝さん、そんなトコ舐めちゃ・・・・・ふぁんん! あぁん、ダメぇ~~~!!」

 

 そんな泣き出す寸前のロスヴァイセの股間に一輝がむしゃぶり付き、指や舌が這い回る。

 突然の刺激にロスヴァイセの涙は引っ込み、強烈な快感に身体を悶えさせる。

 

(ヤダ、一輝さんの舌が入って来て・・・・あン、クリトリスをクリクリされたら・・・・・ンン! き、気持ちいい!!)

 

 舌を出し挿れし、愛液を啜り、尻穴を指で刺激され、クリトリスを弄ぶ。自慰(オナニー)では感じた事の無い快感に曝され、ロスヴァイセは一気に頂点へと昇っていく。

 

「アン、やん、あぁん、アン。そんなにされたら、ハァん! か、感じちゃう・・・・・」

 

「いいぞロスヴァイセ。そのまま、感じるままに声を上げろ。恥ずかしがらなくていい。お前の素顔を曝け出せ!!」

 

 腟内を弄り回していた一輝の指がGスポットを引っ掻き、クリトリスを甘噛みする。今までで最大の快感が全身に走り、ロスヴァイセは絶頂した。

 

「ヒ、い、いひいぃぃぃんん!!」

 

 ビクンとロスヴァイセの腰が跳ね上がり、噴き出した潮がベッドと一輝を濡らす。

 初めての絶頂にロスヴァイセは顔を真っ赤に染め、恍惚としていた。

 

 一輝がそそり勃った肉棒をロスヴァイセの眼前に翳す。

 

(これが一輝さんの・・・・・スゴい、こんなに大きいなんて・・・・・こんなの私の腟内(なか)に入るのかしら?)

 

 その威容にロスヴァイセはゴクリと喉を鳴らす。

 一輝は何も言わず肉棒を振った。ブルンと揺れた肉棒の先から粘液が糸を引いてロスヴァイセの唇に落ちた。透明な糸が繋がり、それに導かれるように伸ばしたロスヴァイセの舌が一輝の肉棒に触れた。

 

(ン・・・・これがオチンポの味・・・・・苦くてしょっぱくて、今まで味わった事の無い変な味・・・・でも不思議、決して嫌じゃない)

 

 亀頭にペロペロと舌が這い回り、溢れる先走りを啜り喉を鳴らす。すっかり蕩けたのを見計らい、一輝はロスヴァイセの股間に移動し、濡れて役に立たなくなった下着を脱がせる。

 

「挿れるぞ」

 

 コクンと頷くのを確認して一輝は狙いを定め、ロスヴァイセを貫いた。

 

「んん! あ、ンン! ンアぁぁぁーーーーッッ!!」

 

 ズブズブと音を発て、肉棒がロスヴァイセの腟内へと埋まっていく。ロスヴァイセの腟内(なか)は入口は狭いが奥に進むにつれ熱く柔らかな腟肉が優しく包み込み、肉襞が肉棒を扱き立てる。

 やがてコツンと壁に当たる感触がして、一輝はロスヴァイセの最奥に辿り着いた。

 

「全部入ったぞロスヴァイセ。あぁ、ロスヴァイセの腟内(なか)、物凄く気持ちいいぞ」

 

「ハア、ハア、ほ、本当・・・? 嬉しい・・・・・私もね、思ったより痛くなくて・・・・き、気持ちいい、ンム!」

 

 恥ずかしそうにはにかむロスヴァイセにキスをして、一輝はゆっくりと動き出す。

 

「ハァ、あん、あん、やぁん! なんでぇ? 私初めてなのに・・・・・なんで? どうしてこんな、あぁん! 気持ちいいの!?」

 

「気持ちいいならいいじゃないか。きっと体の相性がいいんだよ、俺達。ほら!」

 

「あぁん、いい! 一輝さんの大っきいチンポ、奥まで届いて・・・・・あふん! オマンコおかしくなるぅ・・・・・!!」 

 

 一輝はいきなり淫語を連発するロスヴァイセに驚きながらも腰の動きを速め、唇を重ね、舌を絡め、おっぱいを捏ね回す。やがてロスヴァイセの変化に気付いた一輝はほくそ笑んだ。

 

「ロスヴァイセ、気付いてるか?」

 

「ふぇ? なに?」

 

 自分の身体の変化に気付かないロスヴァイセ。そんな彼女の大きく勃ち上がった乳首(・・・・・・・・・・・)を一輝は摘み上げた。

 

「ひぃぃんっ!!・・・・・え? ウソ!? 今までいくら弄っても勃たなかったのに・・・・・」

 

 陥没していたのが信じられない位、大きく勃ち上がった乳首を一輝は指で摘んで扱き上げる。

 

「刺激が足りなかったんじゃないか? ほら、現にロスヴァイセの乳首は───」

 

「あひぃん! ひぃん! やぁん、そんなにクリクリされたら、あぁん、感じる! 感じちゃう!!」

 

「ほら! こんなに敏感じゃないか!!」

 

 今まで隠れていた乳首は初めての刺激に反応し、初めての快楽にロスヴァイセは激しく身を悶えさせる。

 

 右の乳首を頬張り、左の乳首を指で扱いて刺激しながら一輝は腰の動きに緩急を付け、ロスヴァイセの腟内(なか)を圧し拡げていく。

 初めてに刺激に何度も軽くイキながら、ロスヴァイセは嬌声を上げた。

 何度も重なった小さな波は大きな波を呼び、やがて大津波(ビッグウェーブ)と化し、ロスヴァイセに襲いかかる。

 

「もうダメぇ! 来ちゃう! 一番大っきいのがクルのぉ!!」

 

「いいぞ、イケ! 感じるまま、そのままイケぇ!!」

 

 最奥を穿たれ、ロスヴァイセの腟肉が収縮し、一輝の肉棒をキツく締め付ける。

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーーッッ!!

 

「ア"、ア"、ア"ア"ア"ア"ア"ーーーーッッ!!♥」

 

 腟内に射精されてロスヴァイセは絶頂し(イッ)た。

 

 腟内に熱い精液が流れ込む。その感覚にロスヴァイセは快感だけじゃない何か(・・)を、自分と一輝の魂が深く結び付いたのを感じ取っていた。

 

(そっか・・・・これが戦乙女の契約・・・・解るわ、私と一輝さんの魂が結び付いたのが・・・・・フフ、恥ずかしいけど、嬉しい♥)

 

 ロスヴァイセは愛おしそうに自分のお腹を撫で、頬を弛ませた。 

 

「どうやら契約出来たみたいだな?」

 

 同じ感覚を感じたのか、一輝が尋ねる。

 

「はい。契約は成立しました。私の勇者(エインヘリアル)・・・・・」

 

 ロスヴァイセは感極まって一輝に抱き付いた。そんなロスヴァイセの背中を撫でながら一輝は優しく微笑み、繋がったままの肉棒を軽く動かした。

 

「アン!♥ ちょっ、あの、一輝さん?」

 

 おずおずと様子を窺うロスヴァイセに一輝は笑顔を向けた。

 

「どうした? これからが本番だぞ」

 

「え? あの、ちょっと待っ───」

 

「俺と契約したからにはたっぷり付き合って貰うぞ、ロスヴァイセ」

 

「はうぅん! そ、そんなぁ! あん、お願い、少し休ませ・・・・あぁぁんッ!!♥」

 

 一輝とロスヴァイセはそのまま二回戦に突入した。

 

 

 

 

 

 

 一時間後。

 

「はひぃ、ひぃん、あん、あぁん!♥ ダメ、これダメ! おっぱいも、オマンコも、うぅん、お尻の穴まで・・・・・あふん! こんなにされたらおかしくなっちゃうぅッッ!!♥」

 

 既に数え切れない位絶頂したロスヴァイセは、後背位で一輝に責められていた。

 これまで五度に渡る射精を腟内に受け、一度も肉棒を抜かれてないお腹は妊婦のように膨らみ、重そうに揺れている。

 

「あうぅ、アン♥ も、もうダメ、許してぇ・・・・・お願い、少し休ませ・・・・あぁぁんッ!!♥」

 

 疲弊してされるがままのロスヴァイセを一輝は容赦なく、尚も激しく突き挿れる。

 

「ほれ、早く終わって欲しいならお前も腰を振って俺をイカせてみろ!」

 

「うひぃ、ひん! ん・・・・こ、こう・・・・・?」

 

 一輝はロスヴァイセのお尻を軽く叩いて催促すると、ロスヴァイセはゆっくり腰を振り始めた。

 

「うん、あん、あん、はぁん・・・・んん、これでいい?」

 

 正直物足りなかったが、銀色の長い髪を振り乱し、腰を振る度に珠の汗が飛び散り、爆乳がブルンブルンと弾む光景は一輝の目を楽しませる。

 

「あぁ、もうダメ・・・・お願い一輝さん、このままイッて。私の心も身体も、一輝さんで真っ白に染めて!!」

 

 ロスヴァイセの懇願に一輝は脚を持ち上げて肉棒を中心に半回転、正常位でガンガンと激しく突き挿れる。

 

「あぁ、ダメ、イク、またイクの・・・・んん、ダメ、あ、アァ! イッッッ、ぅ~~~~~ッッ!!♥」

 

 ブビュルルル!ブビュル!ブビューーーーッッ!!  

 

 ロスヴァイセが絶頂すると共に、一輝はロスヴァイセの腟内(なか)に射精した。

 射精が終わり肉棒を抜くと、入り切らなかった精液が下品な音を発て、噴火するように腟内から噴き出した。ずっと入っていたからか、破瓜の血が精液と混ざってピンクのラインを描いている。

 更に肉棒に残った精液がボタボタと垂れて、ロスヴァイセの顔や身体を白く染めた。

 

(もうダメ、限界・・・・・これが毎晩続いたら、私耐えられないかも・・・・・やっぱりリアスさん達と協力が、必要・・・・・)

 

 身体中を白く染めたロスヴァイセは、そのまま力尽きたように眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

 アルトリアに続きロスヴァイセをK.Oした一輝()は、サイドテーブルに置いた水差しからグラスに水を注ぎ、一気に煽った。

 

「ふぅ・・・・・」

 

 渇いた喉に冷たい水が沁み込むのが心地いい。人心地着いた俺は未だに自己主張を続ける自分のモノを眺め、呆れたように溜息を吐いた。

 

「我ながら呆れるな・・・・・あれだけ射精()したのに、まだ小さくならないとは」

 

「どれどれ? うわぁ~、ホントだ。全然小っちゃくならないね。まだ満足してないの?」

 

「まぁ、せいぜい七割ってトコ・・・・・ってセラ姉さん!!?」

 

 いつの間にか現れたセラ姉さんに背後を取られ、俺はベッドから飛び上がった。

 

 

 

 

 

  ───夜はまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

今回出て来た新キャラのモデルを紹介したいと思います。

雷神トールとウォリアーズ・スリーのモデルは「マイティ・ソー」から。トールの技は「ワンピース」の神・エネルのものを使わせて貰ってます。

九姉妹の八女グリムゲルデのモデルは「魔法科高校の劣等生」のリーナです。
仮面というイメージから採用しました。因みに彼女も眷属候補の一人でした。

戦乙女の一人、エイルのモデルは「リリカルなのは」シリーズのシャマルです。
北欧一の名医というイメージから採用しました。

アルトリアのセイバーフォームはセイバー・リリィです。
初めてイラストを見た時から一目惚れしてたので、今回のエッチは完全に筆者の趣味によるものです。

ご覧の通りロスヴァイセが一輝のハーレムに加わりました。
次回はいよいよ魔王様と・・・
ご期待下さい。





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第42話 魔王陥落☆☆(セラフォルー・アルトリア・ロスヴァイセ)



第42話を投稿します。

今回はタイトル通りセラフォルーが陥落するまでをお送りします。
ご覧下さい。


 

 

「ヤッホ、カズくん♪ ・・・・・元気だねぇ、とっても☆」

 

 セラ姉さんは大きいままの俺のモノを見つめ、ニンマリと笑う。

 

「あんまり見んで下さい。それより何でそんな格好してるんです!?」

 

 何故かセラ姉さんはセクシーなランジェリー姿でベッドにペタンと座っていた。

 

「ん? ランジェリー姿(こんな格好)で男の子のベッドに来たら目的なんてひとつじゃない? 勿論エッチしに来たんだよ」

 

 セラ姉さんはあっけらかんと言い放った。

 

「えー、と・・・・・」

 

「だってカズくんまだ満足してないのに、アルトリアちゃんもロスヴァイセちゃんもダウンしちゃったんだもん。これはもうお姉ちゃんの出番よね☆」

 

 俺は混乱して二の句が継げない。

 

「それともカズくん、お姉ちゃんとエッチするの・・・・・イヤ?」

 

 上目遣いで言うのは反則だと思いつつ、俺は懸命に視線を逸らし、言い訳する。

 

「で、でも姉さんは魔王で・・・・」

 

「ふーん、魔王はダメなんだ・・・・魔王の奥さんとはエッチしてるのに・・・・・」

 

「なっ!!?・・・・・なんで、知って・・・・・」

 

 驚きのあまり言葉を失う。そんな俺を見てセラ姉さんは吹き出した。

 

「アハハッ! もう、ダメだよカズくん。こんな簡単に引っ掛かっちゃ」

 

 そう聞いて俺は愕然とする。しまった!

 

「やられた・・・・・」

 

「この前グレイフィアちゃんとお茶する機会があってね、何だか随分明るく、綺麗になったなぁって思ってたの」

 

「明るい? ほとんど表情を変えないグレイフィアさんが?」 

 

「付き合い長いからねぇ・・・・ちょっとした変化でも分かるんだぁ。でね、その時カズくんが話題に挙がったら、あのグレイフィアちゃんが話に乗って来て、スゴく盛り上がって・・・・・あぁ、これは二人の間に何かあったんじゃないかなぁって思って・・・・で、ちょーっと探ってみたの。ゴメンね☆」

 

 やっちまった・・・・・まんまと引っ掛かるとは、自分の迂闊さが恨めしい。

 

「あー、姉さん? この事は・・・・・」

 

「勿論他言なんてしないよ。でも一応スキャンダルだから、どうしてそうなったのか教えて欲しいな」

 

 こうなっては仕方がない。俺はグレイフィアとのいきさつを話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「ふーん、成程ねぇ・・・・・」

 

 カズくんが何故グレイフィアちゃんと関係するに至ったを聞いて、セラフォルー()は暫し考えに耽る。

 

 数少ない魔王級の力を持つ女悪魔同士、グレイフィアちゃんとは長い付き合いだから、彼女が不感症故にセックスに興味が持てない事も知っていた。

 そんな彼女の不感症を治し、セックスに嵌まる原因となったのがまさか弟のように可愛がっているカズくんだとは・・・・・アルトリアちゃんやロスヴァイセちゃんも夢中になってるし、こうなると俄然興味が沸いて来たわ。

 

「ならやっぱり魔王()とエッチ出来ないってのは無くない?」

 

「それは・・・・まぁ、そうかも・・・・・」

 

「うん・・・・・ってありゃ?」

 

 しまった。脅かし過ぎたのか、カズくんのオチンチンが戦闘態勢を解除し(小さくなっ)ていた。

 

「もう、仕方ないなぁ・・・・・ねぇカズくん。今からお姉ちゃんがオナニーするから見てて。・・・・・・じゃあ、するね♥」

 

 私はベッドの端に座り直すと、胸を突き出し、下着の上からおっぱいを揉む。

 思惑通りガン見してるカズくんのオチンチンが、見る見る内に大きさを取り戻していく。

 私が股を開いて下着の上からオマンコを弄ると、更に熱い視線が注がれてるのを感じる。いつしかカズくんは私のオナニーを観ながら、自分のオチンチンを扱き始めた。 

 

「アハ♥ 男の子のナマの視線・・・・・初めて感じる・・・・・はぁ♥ スゴい、ギラギラしてたまんない。ね、もっと近くで・・・・・みて」

 

 室内に荒い吐息と湿った水音が響く。

 興奮したカズくんは自分のオチンチンを扱きながら私の股間の前に座り、股間を凝視する。彼の熱い視線が私の心身に火を点ける。

 

「アハ♥特等席。やん、カズくん近すぎぃ♥ 息当たっちゃう」

 

 私が股布をずらしオマンコを見せると、カズくんはくっ付かんばかりに顔を近付ける。鼻息が当たってくすぐったい。

 私のオマンコの匂いを嗅いで、一生懸命オチンチンを扱くカズくんが可愛くって堪らない。

 

「う、セラ姉さん俺もうイキそう」

 

 カズくんが限界を訴える。いいよ、お姉ちゃんももう限界だから。

 

「うん、いいよ、一緒にいこ♥ イッて。お姉ちゃんにいっぱいかけて♥」

 

 ビュルルル!ビュルル!ブビューーーーッッ!!

 

 白濁したシャワーが私の身体中に降り注ぐ。スゴい、あんなに射精()した後なのに、こんなに濃いのがいっぱい・・・・・・しかも、

 

「ねぇ、まだ硬いよ? どうする?」

 

 私がオチンチンの先をツンツンして、挑発するようにペロリと舐めると、カズくんはゾクリと身体を震わせ、再びオチンチンを扱き始める。

 今度はさっきと反対、カズくんが私にオナニーを見せ付けてる。

 

 シュッ、シュッという摩擦音と共に、濃厚な男、ううん(オス)の匂いが漂って来る。

 堪らなくなった私は先っぽから垂れて来る精液をペロペロと舐める。ずっと忘れていたザーメンの匂いと味に堪らなくなり、私は夢中でオチンチンを舐め、自分でオマンコを弄る。

 

「あ♥ スゴい。先っぽ膨らんで来た♥ 出るの? いいよ、出して。かけて。飲む、絶対飲むから♥ ビュってして♥ ビュー、ビューって、いっぱい♥」

 

 ビュルルル!ビュルル!ブビューーーーッッ!!

 

 私のお願いに応えてカズくんはお口に全部出してくれた。でも多すぎだよ! あまりの量に飲み切れず、顔や髪にもいっぱいかかっちゃった。

 顔や髪にかけられた精液を手で拭い、集めたザーメンを口に運び処理していく。カズくんのオチンチンは完全復活、ううん、寧ろもっと硬く、大きくなった気がする。

 こんなの見せ付けられたらもう我慢出来ない。私は濡れた瞳でカズくんを見上げる。

 

「ねぇ、私もう我慢出来ない。カズくんのが欲しいよ」

 

 私のお願いにカズくんはキスで答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 ベッドの端に腰掛けたセラフォルーに啄むようなキスを何度も繰り返しながら、一輝は片手で器用にブラのホックを外すとスルリと抜き取る。

 セラフォルーのおっぱいは大きさではリアスや朱乃より数カップ落ちるが、まあるく乳首がツンと上を向いた形といい雪のように白い肌とそれと対を成すサーモンピンクの色艶といい、美事(みごと)な美乳をしていた。

 一輝は見惚れて溜息を吐くとその美乳に顔を埋め、柔らかさを堪能し、サーモンピンクの乳首を口に含んだ。

  

「アン♥ ん・・・・・いいよ、カズくん・・・・・もっと触って、乳首クリクリして、あん♥ 気持ちいい、これ好き・・・・♥」

 

 呼吸に合わせて揺れ動く双丘にむしゃぶり付く一輝の頭をセラフォルーは愛おしそうに撫でる。

 

「んん、やぁん。そこはダメ・・・・・・アン、くすぐったいよう」

 

 一輝の頭は胸からお腹、股間へと徐々に下がり、下着の上から割れ目を指でなぞる。

 

「あぁん!?」

 

 興奮してるのか割れ目に沿って下着が濡れている。セラフォルーは羞恥に顔を染め、股間を手で隠そうとしたが、一輝の方が一瞬速くその手を掴み、下着をズリ下げた。 

 

「・・・・・うん、綺麗だよ、姉さん」

 

「やぁん! もう、カズくんのエッチ♥」

 

 黒い繁みは綺麗に手入れされ、うっすら口を開いたクレバスからは甘い蜜が溢れてキラキラと光っている。

 その美しさに息を飲んだ一輝は濡れたクレパスに指を挿れ、セラフォルーの感じる所を探そうと繊細かつ大胆に動き回る。

 

「姉さんが感じるのは奥の方? それとも手前かな? 教えて?」

 

「ふぅん! んん、あぁんソコは!! ひぅ、んんん! ソコ駄目! 感じちゃうからぁ!!」

 

 入口付近にザラついた箇所を発見した一輝はそこを重点的に責めると、セラフォルーの身体はビクンと跳ね上がり、あっさり絶頂した。

 

(嘘・・・・・こんな簡単にイッちゃうなんて・・・・・私こんなに感じやすかったっけ? それともカズくんが上手いのかな?)

 

 Gスポットを責められ、あっさりイッてしまった事にセラフォルーは驚いていた。

 

「準備OKみたいだね、姉さん。挿れていい?」

 

 セラフォルーの眼前で愛液がたっぷり付いた手を広げて一輝は尋ねる。指の間で糸を引く粘液にセラフォルーは顔を赤く染めながら、コクンと頷いた。

 

「うん、きて・・・・・お姉ちゃんの腟内(なか)にカズくんの硬くて大っきいオチンポ挿れて、グチャグチャに掻き回して」

 

 セラフォルーは招くように大きく腕と股を広げる。一輝は逆らわず、そのまま肉棒を腟口に挿入した。

 

「ふ、う、んんん! あ、硬くて、熱いのが私の腟内(なか)に・・・・・ふぅん、入ってくるぅ・・・・・!!」

 

 セラフォルーは久し振りの男の感触に身体を震わせる。

 

(あれ? セックスってこんなに気持ち良かったっけ? 久し振りだからかな? それとも・・・・・)

 

 一輝の肉棒はセラフォルーの腟内がたっぷり濡れていた事もあって順調に突き進み、最奥へ到達する。

 

「んん・・・・奥まで届いて・・・・アン♥ コツンコツンって当たってるよぉ・・・・!!」 

 

 セラフォルーは久し振りの快感に嬌声を上げ、一輝にしがみ付き、更なる快感を得ようと一輝に合わせて腰を振り始める。

 

「く、あぁ・・・・姉さんの腟内(なか)、入口は狭くてキュッと締め付けるのに、奥への方は柔らかく包まれるようで・・・・とにかくスゲえ気持ちいい!!」

 

「は、恥ずかしいから解説しないで!!」

 

 自分のオマンコの使い心地を詳しく説明され、流石のセラフォルーも恥ずかしいのか、顔を手で隠す。

 

(もう、カズくんったら!・・・・でも良かった。カズくん私のオマンコ気持ちいいって・・・・フフ♪ 何だか嬉しい♥)

 

 一輝が自分の身体を気に入ったと知り、恥ずかしさより喜びが勝ったセラフォルーは優しい微笑みを浮かべ、一輝の頬を愛おしそうに撫でる。 

 

「嬉しい♥ いいよ。お姉ちゃんの腟内(なか)でいっぱい気持ち良くなって。お姉ちゃんの腟内(なか)にビュー、ビューって精液いっぱい射精()して♥」

 

 セラフォルーの言葉に一輝はスピードを上げ、腟内を突きまくる。腰をガンガン振るだけじゃなく、浅い所を数回突いて奥、奥を突きまくったと思えば進入角度を調整してGスポットを突くといった変化を付けて突きまくった。

 

「あん♥ あン♥ やん♥ アァん♥ スゴい♥ これスゴい♥ カズくんのオチンポ、お姉ちゃんの気持ちいいトコ全部当たってるよぉっ!!」

 

 セラフォルーのひんやりした肌が熱を帯び、珠の汗が滲んで来る。絶頂が近いと感じた一輝はラストスパートに入り、腰を強く深く突き挿れた。

 

「はぁん、あん、あん、あぁん!♥ もうダメ、イク、イクの、もう、もう イックぅーーーーーッッ!!♥」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

 絶頂したセラフォルーの腟内(なか)に熱い精液が雪崩れ込む。

 

(アハ♥ これスゴ・・・・一発でお腹いっぱいになっちゃうよぉ・・・・♥)

 

 断続的に注がれ続ける射精が終わり、一輝とセラフォルーは全身を弛緩させて重なり合う。一輝が熱い息を吐いその時、

 

「いけない! どいてカズくん!!」

 

 突然セラフォルーが必死の行相で一輝を退かそうとする。

 

「どうしたのセラ姉さん?」

 

「後で説明するから! だから早く! 早く退いてぇっ!!」

 

 訳が分からないがとにかく従おうと一輝が身体を起こしたその時、

 

「あ、ダメ! ダメ! あぁ・・・・い、イヤぁーーーーーッッ!!」 

 

 セラフォルーの切羽詰まった声が途中で絶叫に変わる。そして、

 

 シャアアァァァァァ───

 

 股間から噴き出した黄金のシャワーが一輝の腹に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

(あぁ、やっちゃった・・・・・・)

 

 カズくんにおしっこをひっかけてしまったセラフォルー()は絶望に青褪めながら、古い古い記憶を思い出していた。

 

 

 

 今でこそこんな(・・・)だが、昔の──魔王になる前の私──セラフォルー・シトリーは大層やさぐれていた。

 

 聖書の神と四大魔王が天使や悪魔、堕天使の軍勢を率い戦った『大戦期』と呼ばれる戦争が日常だった時代で、私は力──強さこそ全てと信じ、敵を──時には味方さえ手に掛ける実に悪魔らしい悪魔だった。

 そんな私だからセックスを覚えるのも早かった。若い頃は何人もの男を咥え込み、享楽に耽る日々を送る事もあった。

 

 そんな日々の中、私はとある男性悪魔と恋をした。

 彼は貴族の次男坊で、生真面目で世話焼きという委員長気質の男だった。

 不良娘の私が自分とは正反対の彼と共に戦う内にいつの間にか惹かれていく、というまるで不出来な少女マンガみたいな恋の末、彼と想いを通わせ身体を重ねた時、私は今までのセックスでは感じた事のない多幸感に包まれた。好きな人に抱かれるのがこんなに幸せで、こんなに気持ちがいいのだと初めて知った。

 だからだろうか、私は普段はしない粗相をしてしまった。しかもその時の体位が騎上位だったから、絶頂すると同時に彼の顔までおしっこが飛んでしまった。

 

 その結果、彼は私を押し退け浴室へ飛び込んだ。「汚えっ!?」と叫びながら。

 

 浴室から出た彼は私に一声もかけず、嫌悪感に満ちた軽蔑の眼差しを残して部屋を出て行った。

 その冷たい態度から彼との恋が終わったと知り、私はその夜、ひとり枕を濡らした。

 

 それから私は遊びでセックスする事をやめた。嫌な事を忘れるように更に戦いに没頭し、気付けばかの「銀髪の殲滅姫(プリンセス・オブ・ディバウア)」と並ぶ若手最強の女悪魔「シトリーの蒼氷姫(アイスブルー・プリンセス)」と呼ばれ、冥界軍の将のひとりとなっていた

 

 そして神と魔の最終決戦が起こる。

 二天龍の乱入というトラブルもあり、結果神も四大魔王も消滅、三大勢力は互いに大きな傷痕を残して戦争は終結した。

 

 

 この戦いで彼が死んだと後に知った。

 

 涙はもう流れなかった。

 

 

 戦争が終わっても冥界に平和は訪れなかった。

 四大魔王と半数近い上級悪魔を失った冥界には新たな魔王(リーダー)が必要だった。新たな魔王に選ばれたのは先代魔王の血族ではなく、戦争で功績を挙げ実力を認められた若手から選出された。だがそれを先代魔王の血族が認める筈もなく、内乱が勃発した。

 新たな魔王としてレヴィアタンの名を継いだ私も先頭に立って戦い、先代魔王の血族──旧魔王派を冥界の奥地に追放し、内乱は終結した。

 

 それから私は荒れ果てた冥界を立て直す為やさぐれた態度を改め、殊更明るく、陽気に振る舞うようになった。最初は苦痛だったけど何百年も経てば仮面も素顔になった。

 けれど私はあれから恋人はおろか愛人も作らず、セックスから遠ざかっていた。

 

 魔王になってからは忙しくて暇が無い──ううん、サーゼクスちゃんは家庭を築いてるのだからそんなのは言い訳だろう。私が魔王になってから恋人も作らず、結婚もしなかったのは相応しい相手がいなかったのもあるが、偏に過去の出来事がトラウマになっていたからだ。

 もし恋人が出来て結ばれた時、また粗相をして嫌われたら──そう考えたら怖くなって何も出来なくなった。だというのに、

 

(もうダメ・・・・またやっちゃった・・・・・絶対カズくんに嫌われる・・・・!!)

 

 あの嫌悪感に満ちた軽蔑の眼差しでカズくんに見られたら・・・・・と思ったその時、

 

 ズンッ!!

 

「おほぅっ!!?」

 

 いきなり奥を突かれて変な声を上げてしまった。

 

「か、カズくん!? いきなり何おおぅっ!!」

 

(何でぇ? さっきよりオチンポバキバキになって・・・・・お腹の奥を抉られて・・・・・ヤダ、スゴい! こんなのおかしくなるぅ!!)

 

 カズくんは私の手を取るとそのまま寝転んで騎上位になり、下からガンガン突き上げる。

 

「はん、あん、あふぅ、はおぉん♥ ダメ、こんなに激しくされたらまた出ちゃう・・・・・」

 

「いいよ。声でも潮でもおしっこでも・・・・・全部俺の前に曝け出せ、姉さん!」

 

 カズくんの言葉に背筋がゾクゾクと震え、オマンコが締まる。そして、

 

「アアアアアーーーーッッ!! い、イクぅッ、全部出ちゃうよぉーーーーーッッ!!♥」 

 

 ブビュルル! ブビュ! ビュルーーーーッッ!!

 

 腟内に精液を浴びた私は絶頂と同時に潮とおしっこを飛び散らせ、カズくんの顔からお腹にかけて満遍なく汚していく。

 

「アハ、アハハハ・・・・・・・」

 

 ショックに呆然とする私は、絶頂の快感以上に大切なものを汚す事に昏い愉悦を感じ、嗤った。

 

 

 

 

 

 

 ヤッベ!! イッておしっこを漏らしたセラ姉さんの羞恥と恥辱に歪んだ顔があまりにエロ可愛くて、勝手に二回戦に突入してしまった。

 二度目も潮とおしっこを盛大に漏らした姉さんはやっぱりエロ可愛い。でもその目に大粒の涙が溢れて来て、一輝()は慌てて身体を起こす。

 

「ゴメン姉さん! そんなに嫌だった?」

 

「グスン、嫌? 何が?」

 

「いや、だから勝手に二度目も腟内射精(なかだし)しちゃったから」

 

「(フルフル)別に嫌じゃないよ。でも、ゴメンね」

 

 ? 何だか会話が噛み合わない。謝るのは俺の方だと思ったんだが・・・・・

 

「どうしたのセラ姉さん? 何で姉さんが謝るのさ」

 

「だって・・・・・私カズくんにおしっこひっかけちゃった・・・・・こんなのまた(・・)嫌われちゃう・・・・・!!」

 

 またとはどういう事なんだろう? とにかく姉さんを宥めようと俺はセラ姉さんを抱きしめ、背中をポンポンと叩く。暫くすると落ち着いて来たのか、セラ姉さんは訥々とその涙の理由(わけ)を話してくれた。

 

 

 

 話を聞いて俺は呆れを通り越し、怒りを覚えた。

 好きな娘がおもらしした位で、それを引っかけられた位で軽蔑して帰っただと!? それも「汚えっ!」って捨て台詞付きで!? アホかそいつは!!

 セラ姉さんだぞ!? 悪魔の中でもトップクラスの美貌と実力を兼ね備え、アイドル以上の人気を誇るあの魔王セラフォルー・レヴィアタンだぞ!? 彼女のおしっこなんてご褒美だろうが!!!(← あくまで一輝個人の見解です)

 

 でもようやく分かった。計らずも俺とのセックスが姉さんのトラウマを呼び起こしてしまったのか。

 まいったな。俺は全く気にしてないんだが姉さんのトラウマは深そうだし、どうするべきか・・・・・いや、どうせ口下手なんだ。ならば心のままに、当たってみるか!

 俺は姉さんの頭を出来るだけ優しく撫でながら話しかける。

 

「辛い話をしてくれてありがとう・・・・・・でもそいつに感謝しないといけないかな?」

 

「えっ!?」

 

 セラ姉さんが愕然とする。

 

「だってそいつが姉さんの事受け入れてたら、今頃姉さんの旦那さんになってて、俺が姉さんとこうして結ばれる事は無かったかもしれないしね」

 

「そっか・・・・・・そうかもね」

 

 俺が笑って話すと姉さんも微かに笑う。良かった、笑ってくれた。

 

「姉さん、俺はおしっこをひっかけられても気にしないよ。いや、寧ろご褒美だね」

 

 だが俺がそう言うと顔を引き攣らせる。何だ?

 

「そうなんだ・・・・・・あの、カズくんってそっちの趣味が? もしかして変態さんなの?」

 

 恐る恐る尋ねる姉さんに俺は失敗した事を覚った。こうなったら勢いで乗り切るしかない!

 

「そうだよ。男なんて皆すべからく変態なんだ。だからね、姉さん・・・・・・俺は姉さんがおもらししようとおしっこをひっかけようと、絶対に嫌ったりしないって断言出来る!」

 

 俺はきっぱりと言い放った。

 

 

 

 

 

 

 いきなりカズくんに自分は変態だとカミングアウトされたセラフォルー()は、ショックのあまり呆然としてしまった。しかもだから自分は絶対に私を嫌いにはならないって・・・・・・何て暴論だろう。でも不思議、さっきまでの陰鬱とした気分が洗い流され、笑いが込み上げて来る。

 

(全くこの子は・・・・・・慰めるにしてももうちょっと何かあるでしょうに)

 

 不器用な、でも優しいこの子が愛おしくって堪らない。

 

「ふぅ~ん。カズくんはお姉ちゃんの事、絶対嫌いにならないんだ?」

 

 いたずらっぽく私が尋ねると、カズくんは私をまっすぐ見つめて私の頭に手を伸ばす。

 

「そうだよ。だって───」

 

 カズくんが私のリボンを解くとツインテールに結んでいた髪が滝のように背中に流れ落ちる。カズくんは宝物を扱うように私の髪を一房手に取って、

 

「初めて姉さんのこの姿を見た時からずっと、貴女に恋してたんだから・・・・・・」

 

 その髪にそっとキスをした。

 

 ドクンッ!!

 

 その瞬間、心臓が激しく高鳴った。

 

(え? ウソ? ヤダ、顔が熱い!? ううん、顔だけじゃなく全身が熱い! え? ちょっと待って!? なんでこんなに胸が苦しいの? まるでキュって締め付けられるみたい・・・・・・・あぁもう! さっきからドクンドクンうるさい! 静まれ私の心臓!!)

 

 あぁ、この感覚を私は知ってる。

 この自分の全てを受け入れられたかのような安心感。この自分の全てを許されたかのような多幸感。今なら何でも出来そうな全能感。

 自分にはもう縁が無いと諦めていたこの感覚を私は思い出し、今はっきりと理解してしまった。

 

 私、セラフォルー・レヴィアタンは不破一輝に恋をしてしまったのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 不意にセラフォルーが一輝に抱き着く。驚いたものの一輝は一輝もセラフォルーの背中に両腕を回し、しっかりと抱きしめた。

 どの位経っただろうか。セラフォルーがクスクスと笑い出した。

 

「どうしたの、セラ姉さん?」

 

「クスクス、ううん、我ながらチョロイなぁって。だってね、あんなよくある告白で自分でも信じられない位胸が高鳴って、こんなに幸せな気分にされちゃったなんて・・・・・・こんなの一昔前の少女マンガのヒロインみたいだよ」

 

「よくある告白で悪かったな。でも俺は自分の心に正直に言ったまでだよ」

 

「・・・・・・そーゆうトコだぞ、もう♥」

 

 見つめ合った二人の顔が近付き、自然に唇が重なった。

 

 

 

「ん♥ ・・・・チュ、チュプ、うふん、んん・・・・・あ、ンフ♥ チュプ、チュ、あふん、んあ・・・・・・チュ、んん、好き♥」

 

 セラフォルーの舌が生き物のように蠢き、一輝の唇を這い、舌と絡まり、歯列をなぞり、唾液を流し込む。その度にジュルジュルと湿った水音が発つ。

 ゴクンと音を発てて唾液を飲み込むと一輝も負けじと舌を絡め、セラフォルーの美乳を揉みながら、繋がったままの腰を軽く揺する。

 

「あん!♥ ヂュパ、んもう、いきなり動かしちゃズルいわ。私がシテあげるから、ね♥」

 

 そう言ってウインクするとセラフォルーは一輝の肩に手を置いて自分も動き始めた。

 始めはゆっくりと前後に、そして左右に。段々慣れて来たのかセラフォルーは腰を回転させ、腟口をキュッと締めて一輝の肉棒を扱きあげる。

 

「はぁ、んん♥ どうカズくん、気持ちいい?」

 

「くぅ、あぁ・・・・・・姉さんの腟内(なか)、キュッと閉まってスゲェ気持ちいい。姉さ、ング!?」

 

 セラフォルーが一輝の口をキスで塞ぎ、舌を入れて来た。チュプチュプとイヤらしく水音を発しながら舌を絡め、唾液を交換しながらセラフォルーは嬉しそうに笑った。

 暫く情熱的なキスを交わしたセラフォルーは満足したように唇を離した。

 

「うふふ、嬉しい♥ 私も気持ちいいよ。カズくんのデカチンポ、熱くって、硬くってお姉ちゃんの奥まで届いちゃう♥ ね、いっぱい動いて♥ お姉ちゃんのオマンコでいっぱい気持ち良くなって、ザーメンビュー、ビューっていっぱい射精して♥」 

 

 セラフォルーが艶然と笑う。

 

 これまでにない艶っぽさを魅せるセラフォルーに一輝は思わず唾を飲み込む。そして意を決すると、セラフォルーのお尻を肉棒が抜ける寸前まで持ち上げ、そのまま手を離した。

 

「ひぐぅッッ!!!」

 

 重力に従い落下したセラフォルーの腟内(なか)に一輝の肉棒が深く深く突き刺さる。その一撃は子宮にまで届き、セラフォルーを一気に昇天させた。

 

「────っ!!? ~~~~~~~~~ッッ!!!♥」

 

 声にならない絶叫を上げてセラフォルーの身体がビクン、ビクンと痙攣して一輝に凭れかかる。股間に熱いものが広がる感覚はまた漏らしたのだろう。

 

「セラ姉さん、大丈夫?」

 

 意識が朦朧としてるのか、目を開けてるのに声をかけてもセラフォルーの反応はない。であるのにセラフォルーの腟は小刻みに震え、一輝を絶妙に締め付ける。

 我慢出来なくなった一輝はセラフォルーをベッドに寝かせてまんぐり返しの態勢になると、ピストンを再開した。

 

「あひぃ♥ あぉぉん♥ ちょっ───待ってカズくん! 今はちょっと待って! あぁん!!♥」

 

「待たない」

 

 セラフォルーの懇願を無視し、一輝はガンガンと腰を打ち突ける。

 

「ひぐん! はおぉ! む、ムリぃ!♥ ずっとイッてるからぁ、これ以上されたら頭おかしくなるぅッ!!♥」 

 

 快感のピークに晒され続けたセラフォルーは全身を汗で濡らし、突かれる度に艶めかしい喘ぎ声を上げる。

 

「んむ、チュ、んんあ、好き♥ ヂュプ、チュプ、んん・・・・好きぃっ!♥ カズくんもっと、チュ、あん、もっとして♥ お姉ちゃんのオマンコ、カズくんのあっついザーメンで満たして♥ 大好きなカズくんのザーメンで妊娠させてぇ!♥ 産むから・・・・お姉ちゃんカズくんの赤ちゃん産むからぁっ!!♥」

 

「あぁ、俺も好きだよ姉さん! 望み通り腟内射精(ナカダシ)して、孕ませてやる!!」

 

 セラフォルーの爛れた声に一輝はラストスパートに入った。一突き毎に身体の奥底深く穿たれた肉棒は腟奥の更に奥、子宮にまで到達し、最後の時を迎える。そして、 

 

「おおぉッ! 射精()るぞ!!」

 

「ア"! ア"! ア"ア"ア"ア"ーーーーーッッ!!!♥」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

「イッた・・・・スゴいイッた・・・・・・もうダメ・・・・・また出る・・・・また、あ、あぁぁぁぁ・・・・・・♥」

 

 シャアアァァァァァ────

 

 セラフォルーは絶頂と共に再びおしっこを漏らした。

 もうセラフォルーの顔には苦しみも悔恨も無い。あるのは自らの性癖を受け入れて貰えた歓びと、愛する者を汚す歪んだ悦びがあった。

 

 

 

 

 

 

「あうぅ~」

 

 情事を終え、セラ姉さんは赤面した顔を一輝()の胸に埋めながら呻く。

 

「どうしたの、セラ姉さん?」

 

「はうぅ~、私ったら散々醜態を晒しちゃって・・・・・・うぅ、恥ずかしい。穴があったら入りたいよぅ・・・・」

 

 羞恥に身悶えるセラ姉さんが可愛くて、俺は彼女を抱きしめ、額にキスをする。

 

「俺は嬉しかったよ。姉さんが感情を剥き出しにして、俺を求めてくれて」

 

「カズくん・・・・・」

 

「俺の赤ちゃん、産んでくれるんだろ?」

 

 俺が囁くとセラ姉さんは美しい笑みを浮かべた。

 

「うん。産んであげる。ううん、違う。私がカズくんの赤ちゃんを産みたいの。貴方が私を愛してくれたっていう証に・・・・・・」 

 

 俺達の顔が自然に近付く。そして唇が重なる寸前、身体が後ろへ引っぱられた。

 

「そうは行きません。一輝の子を産むのは私が先です」

 

「そうです! それに今日は私の日の筈なのに、何でセラフォルー様がエッチしてるんですか!!」 

 

 背後を見ると、いつの間に復活したのかアルトリアとロスヴァイセがいた。

 一瞬呆気に取られてたセラ姉さんは、状況を把握すると二人を挑発するようにニンマリと微笑む。

 

「え~、だってアルトリアちゃんもロスヴァイセちゃんもカズくんが満足する前にK.Oされちゃうんだもん。そうなるとやっぱお姉ちゃんの出番でしょ?」

 

「わ、私はちょっと休んでいただけです! 一輝のお相手をするのは眷属である私の役目。魔王とはいえ出しゃばらないで貰いたい!」

 

「私だってちょっと余韻に浸ってただけです! 今宵は私と一輝さんが契約を交わし結ばれた夜。それなのに目を醒ましたらアルトリアさんとベッドの隅に押しやられ、その間一輝さんを独り占めされるなんて、あんまりです!」

 

「ハア!? アルトリアちゃん、貴女がいくら伝説の騎士王でも今の貴女は一介の下級悪魔、魔王たる私に逆らうとはいい度胸ね。それにロスヴァイセちゃん? 貴女にはちゃんとチャンスをあげたじゃない。それなのに早々とダウンしたのは貴女でしょう? 私に文句を言うのは筋違いよ!」

 

「ぐっ、だ、だってしょうがないじゃない! 私初めてだったんだから!!」

 

「ふん、一輝が初めてだったのは私も同じです。それよりセラフォルー様、終わったのならさっさと退いて下さい。そこは私の場所です」

 

「えー、ヤダ。まだまだカズくんとシタいもん」

 

「もん、じゃありません。とにかく目醒めたからには一輝のお相手をするのは女王(クイーン)たる私の役目・・・・・それに一輝は私を可愛いって・・・・獣みたいに迫って来るんですから・・・・・」

 

 アルトリアがポッと頬を染める。

 

「待って下さい! それを言うなら私は一輝さんの契約者です! ・・・・・それに一輝さんは私と相性がいいって・・・・・初めてなのに何回も腟内(なか)射精()して・・・・・」

 

 ロスヴァイセがもじもじと腰をくねらせる。

 

「私だってカズくんはいっぱい気持ち良くなってくれたもん。それに私の全てを受け入れて、身体だけじゃなく心まで抱きしめて、愛してくれたわ・・・・・あの感覚は一生忘れない」

 

 セラ姉さんがうっとりと笑う。 

 

 三人が俺を挟んで言い争う。

 俺はこんなの望んじゃいない。理想に過ぎないが、俺の女達には皆仲良くして欲しい。それには俺がハーレムの主たる度量を示さなくはならない。俺の考えを浸透させ、彼女達を平等に愛し、満足させなければ!! 

 

 決意した俺はすっくと立ち上がり、己が股間を三人に晒した。

 

「か、一輝・・・・・まだこんなに・・・・!?」

 

「スゴい・・・・・あんなに射精()したのに、こんなに逞しくそそり勃って・・・・・」

 

「こんなの魅せられちゃ、また子宮がギュンギュンしちゃうよぅ・・・・♥」

 

 三人はそそり勃った肉棒を注視して、固唾を飲む。

 

「どうした? 俺はまだ満足したなんて一言も言ってないぞ?」

 

 眼前に突き出された肉棒に圧倒されながら、それでも三人は負けまいと指や舌を伸ばす。

 

「ええ。貴方の女王として、必ず満足させてみせます!」

   

「契約者を満足させられないのは戦乙女(ヴァルキリー)の名折れ、私だって負けません!」

 

「アルトリアちゃんもロスヴァイセちゃんも張り切ってるなぁ・・・・お姉ちゃんはそこまで気負わないよ。ただ一緒に、いっぱい気持ち良くなろーね☆」

 

 アルトリアが亀頭を咥えると、ロスヴァイセが負けじと竿に舌を這わせ、セラ姉さんは後ろから睾丸を弄びながら尻穴を舐める。

 

「んん・・・・一輝のチンポ、いつもより味が濃い・・・・・ジュル、ズズ・・・・んあん、色んな味がします・・・・」

 

「レロレロ、ジュル・・・・・んん、これが男の、一輝さんのオチンチン・・・・・臭くて、変な味がして美味しくないのに・・・・・あふん、何でぇ? 舐めるの止まらない・・・・・」

 

「ンフフ♪ カズくんのタマタマすんごく重い。まだまだいっぱい詰まってそう・・・・・レェロ、レロ、フフ♪ アナルがキュッて締まるね。オチンポとアナル同時に舐められて気持ちいいんだ? いいよ、もっと気持ち良くなって♥」

 

 三人の責めが段々と激しくなる。

 俺は昇り来る快感に逆らわず、そのまま放出した。

 

 ブビュルル! ブビュル! ビューーーーッッ!!

 

「「「ンアぁぁあッッ!!♥」」」

 

 放出された精液はアルトリアやロスヴァイセの白い肌を更に白く染めていく。

 

「むう~、アナルに舌噛まれた~!」

 

 尻穴に舌を挿れていたセラ姉さんは、イッた時尻穴が締まり、舌を挟まれたらしい。

 姉さんのコミカルな態度に思わず吹き出してしまう。

 

「プ、クク・・・・・そいつは悪かった」

 

 俺はセラ姉さんの方を向くと、そのままディープキスをする。挟んだ舌を労るように舌を這わし、消毒するように唾液を注ぐ。一分程して唇を離すと、姉さんの顔は快楽に蕩けていた。

 

「一輝・・・・・」

「一輝さん・・・・・」

 

 俺を呼ぶ声に振り向くと、アルトリアとロスヴァイセが四つん這いになってこちらにお尻向けていた。

 

 アルトリア小振りだが剥きたてのタマゴのようなプリケツとロスヴァイセの肉感的でムッチリとしたデカケツが俺の目を引き寄せる。

 二人の腟口からは大量の蜜が溢れ、「挿れて」「挿れて」と懇願するように口を開けている。

 

「今行くよ」

 

 そう言って俺がセラ姉さんをロスヴァイセの隣に寝かせると、姉さんは二人と同じ四つん這いになり、こちらに尻を向ける。

 姉さんの美尻も加わると実に壮観。どれも甲乙つけ難く、どれから挿れようか悩み所だが、まず俺は

 

「ふあぁぁぁんんッ!!♥」

 

 アルトリアに突き挿れた。

 

「あぁ・・・・ 一輝がまた私の腟内(なか)に・・・・・ンン、はあぁん♥」

 

 突き挿れる度に腟壁がキュッと締まり、肉襞が肉棒を擦り付ける。幾度も身体を重ねたが、相変わらずの名器っぷりに気を抜くとすぐイッてしまいそうだ。

 

「うん、あぁん、スゴい、私もう・・・・んん!・・・・うあぁぁんッ!!♥」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

 アルトリアの絶頂と同時に射精した俺は、全部出し切ると隣のロスヴァイセに挿入した。

 

「はあぁぁん♥ ・・・・ンン、いきなりこんな奥まで・・・・・んあん! こんなの、すぐ。イッちゃうっ!!」

 

 突き挿れる度に肉感的なデカケツが波打ち、肉棒を腟奥へと引きずり込む。ほんの数時間前に処女を失ったばかりだというのにこの貪欲さ。戦乙女とは皆こうなのか。はたまたロスヴァイセ自身がエロいのか。

 

「うぁん、あぁん! 当たるぅ! 奥に、コンコンってノックしてるの! あぁん、ダメ! もうイク! もう、もう───あぁぁんッ!!♥」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

 ロスヴァイセの絶頂と同時に射精した俺は、全部出し切ると隣のセラ姉さんに挿入した。

 

「んんん!♥ アハ、カズくんが入って来たぁ♥」

 

 セラ姉さんの腟内は時にキツく、時に優しく包み込み、得も言われぬ快楽の海へ俺を叩き込む。姉さんがこれ程の性技を身に付けている事に嫉妬を感じるが、過去の事だと割り切って目一杯腰を打ち付ける。

 

「いいよカズくん! カズくんのオチンポ、お姉ちゃんの気持ちいい所に全部当たるよぉ!!───あぁん、イックぅ~~~~ッ!!♥」

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

 セラ姉さんの絶頂と同時に射精すると、俺は間髪入れず再びアルトリアに挿入した。

 

 

 

 こうして三人に何度も腟内射精を繰り返す内にアルトリアが、ロスヴァイセが力尽き、俺は最後に残ったセラ姉さんに近付いた。

 

 うつ伏せで倒れ、荒い息を吐く姉さんの股間は溢れた精液とおしっこでグショグショに濡れている。 

 

「・・・・・・・・(ニヤリ)」

 

 俺は邪悪に笑うと美尻の中心で口を開けている尻穴に指を突っ込んだ。

 

「んほおおうっ!!?」

 

 途端に姉さんが下品な悲鳴を上げる。

 

「おおう、ほおん! か、カズくん駄目・・・・・そこ、ちがう・・・・・お尻の穴だよ・・・・・?」

 

「姉さんこっちの経験は?」

 

 俺は挿れる指を二本にして尋ねる。

 

「うひいぃぃぃんッッ!!・・・・・んん、す、少しだけ・・・・・おもちゃを・・・・ローターを押し当てた事がある位で」

 

 その言葉に俺は一瞬動きを止める。

 

「え? じゃあこっちはまだ未経験!?」

 

 俺が尋ねると姉さんは恥ずかしそうに小さく頷いた。その途端に俺の肉棒がギンギンにそそり勃った。

 

(おっといかん。初めてならきちんと解さないとな)

 

 俺は姉さんのお尻を高く上げさせると、股間を観察する。

 手入れが行き届いた股間は尻穴にすら無駄毛の一本も生えておらず、綺麗に整えられている。お陰で赤褐色の尻穴が丸見えだ。

 ホカホカと湯気を発てる尻穴に顔を近付けると饐えた匂いが鼻を突く。姉さん程の美女のからこんな臭い匂いがする事に笑みを浮かべながら、物欲しそうにヒクヒクと蠢く尻穴に俺は尖らせた舌を挿入した。

 

「いひぃぃんッッ!!・・・・・おご、オォぉ・・・・・か、カズくん? 何してるの・・・・・?」

 

「ヂュルルルッ!・・・・・ん? 姉さんのアナルに舌挿れてる。流石の姉さんもここは臭いんだな。凄い匂いだぞ」

 

「ンンンッ!! オホッ!? ホォんッ!!♥ だって・・・・・しょうがないじゃない! いっぱい腟内射精(ナカダシ)されて、いっぱいおしっこ漏らしちゃったんだからぁっ!!」

 

「貶してるんじゃないよ、褒めてるんだ。臭くてエロくて、ジュルジュル、うん、最高だね」

 

「いやぁぁンッッ! カズくんの変態───おほほぉぉぉうっ!!?♥」

 

 変態呼ばわりされてムカついた俺は、姉さんのクリトリスをキュッと抓んだ。悲鳴と同時に潮が飛び散る。これだけ解せば充分だろう。

 

「挿れるよ。いいよね姉さん」

 

 俺は舌を抜くと素早く態勢を整え、尻穴に肉棒をあてがう。

 

「うぅ・・・・・でもちょっと怖いよ・・・・・」

 

 初めてのアナルセックスに躊躇する姉さん。そりゃあ元々排泄器官(出す所)に挿れるなんて怖いよな。

 俺は背後から姉さんに覆い被さると、頬を寄せて呟く。

 

「ゴメン・・・・・怖いだろうけど、俺は姉さんのお尻に挿れたい。俺だってひとつ位姉さんの初めてが欲しいよ」

 

「カズくんそれって・・・・・」

 

 そう、これは単なる俺の嫉妬だ。姉さんの身体は想像以上に気持ち良かった。でもそれは姉さんがそれだけ経験して来たという事。そう思うと顔も知らない、今生きてるかすら分からない昔の男への嫉妬が抑えられない。

 そんな時、姉さんがアナル未経験と知ったらお尻の処女が欲しいと思っても仕方ないじゃないか。

 

「クスッ、もう、仕方ないなぁ・・・・・いいよ。カズくんにお尻の処女をあげる。その代わり・・・・・」

 

「その代わり?」

 

「・・・・・・・・優しくしてね♥」

 

 姉さんは優しく笑って唇を突き出す。

 

「善処します」

 

 俺はその唇に唇を重ねた。

 

 

 

 

「ひぎぃっ! あぐ、ぎい・・・・・あおぉぉんんッッ!!」

 

 メリメリと音を発てて腸壁を削りながら、肉棒が突き進む。あれだけ解したのに凄い締め付けだ。

 

「姉さんの尻穴凄く締まるぞ! 最高のアナルだ!」

 

 俺がゆっくり挿入してゆっくり引き抜くのを繰り返していると、アナルの締め付けがキツいだけじゃない絶妙なものに変化していく。

 それと同時に姉さんの発する声が苦しそうなものから段々艶を帯びたものに変わっていった。 

 

「あほぉっ! おぉんっ!♥ これスゴ・・・・・こんなの知らない・・・・・・こんなの・・・・・こんなのぉッ!!♥」

 

 姉さんの身体がビクンと震える。絶頂すると同時に腸壁が肉棒をキツく締め付けた。

 

 ブビュルルル! ブビュル! ビュルーーーーッッ!!

 

「んあぁぁぁんんっ!!♥ ・・・・・・オ、ほっ♥ ウソ・・・・お姉ちゃん、お尻でイッちゃった・・・・・・」

 

「ああ、最高のケツマンコだったよ」

 

 俺は汗に濡れた背中に唇を這わす。

 

「あふ、あぁん・・・・・お姉ちゃんのお尻、ケツマンコにされちゃった・・・・・うぇへへ・・・・・お尻で妊娠しちゃうよぉ・・・・・・♥」

 

 姉さんは呂律の回らない口調で呟くと、やがてスウスウと気持ち良さそうに寝息に発て始めた。

 

 尻穴から肉棒を抜くとブリブリと下品な音を発て、大量の精液が溢れてくる。

 開き切った尻穴から精液が排泄されたのを見届け、俺は白み始めた空を眺めた。

 

「流石に疲れた・・・・・・・」

  

 俺は溜息を吐くと満足気に眠る三人を抱き寄せ、そのまま泥のように眠りに就いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

ご覧の通りセラフォルーが陥落しました。
セラフォルーは姉キャラとして、一輝を甘やかす存在でいて欲しいと思います。
いずれは姉キャラ同士、グレイフィアも含めた3Pとかソーナとの姉妹丼など書けたらなぁと思ってます。

次回は決戦です。
 


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