小鬼奮闘記 (群衆者)
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旗印

かつて一世を風靡したMMORPGの最終日。名残惜しむ者や散財する者、久々にログイン思い出話に花咲かせながら談笑する者。プレイヤー達が多く集まるとある街の中にある露店街をお目当てのアイテムがないかと物色しているプレイヤーがいた。

 

「なかなか見つからないな~。さっき見たやつももう種族設定されてたし。でもまぁ諦めないで探すとしますか。折角運営が人間種限定だったのこの街を最後は仲良くってことで亜人、異形種も入れるようにしてくれたんだし」

 

最終日である今日にわざわざ探すアイテムは長い歴史を持つカードゲームとのコラボアイテム『旗印』という遺跡級アイテムである。

効果は基本種族を1つ設定した旗印を装備したプレイヤーの勢力でありなおかつ同じ種族である者はその数の分だけステータスが強くなるというものだ。そこだけ聞けば壊れアイテムと呼べる性能だがもちろん制限があり

「一度設定した種族変更は不可能」「100レベル時のステータスまでしか上昇しない」「その種族値での上昇となる」「職業ステータスは上昇しない」「同じ種族1つでの上昇値は次のレベルに上がった際の設定した種族値でのステータスの50%」である。

このゲームは職業レベルと種族レベルが存在しており各レベルの上限は5,10,15とあるが基本種族は5となりそれ以降は他の職業か種族の上位互換のレベルを取得する事によりレベルアップ時のステータス上昇率が変わるシステムとなっている。

 

するとどうなるかというと初期の段階でとっている基本種族でしか設定できない旗印によりステータス補正を100レベル分まで受けたものと比べて普通に100レベルまで育て複数の職業、上位の種族レベルを獲得したものとは大分劣っているということである。

 

「職業ステータスは上昇しない」とあるがこれは例えると錬金術のレベルをとるとステータスにアイテム合成成功率、新規アイテム錬成開発などの特殊項目が出現するがこれらを旗印はバフできない。あくまで上がるのは基本ステータスであるHP、MP、物理攻撃、物理防御、素早さ魔法攻撃、魔法防御、のみであり各スキルなども恩恵は受けないのである。

 

 

 

要するに微妙アイテムである

 

 

しかし、装備するとプレイヤーの後にオンオフできるリーダー的な後光エフェクトとカリスマという魅力値上昇スキルを取得できるオマケ付きではあった

 

 

 

その微妙アイテムである旗印をなぜ男が持っていなかったかというと取得条件がそのアイテムがあった遺跡が同じ基本種族の100レベル軍団36人でないと入れなかったためである。男の種族は亜人種でありなおかつその中でも人気が無かったためダンジョン攻略不可能であり、攻略していたパーティーから譲り受けようとしてもアイテム説明文を読んだパーティーがオマケ能力見たさに装備するため種族を既に設定してしまい未設定の旗印は遺跡級の癖に取得難易度は神話級であった。

 



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回想1

あれから暫く探し回ったが見付からずこれからどうしようかと悩んでいたところに伝言(メッセージ)が届いてきた。

 

『ぶんぶん丸さん、前言ってたお目当てのアイテム見つけましたよ!』

送ってきてくれたのはフレンドで師匠でもあるアインズウールゴウンのギルドマスターであるモモンガさんだ。

『ホントですか!わざわざありがとう御座います。いや~今街の露店通りにいるんですけどここにもなくって諦めようかと思ってた所でしたので嬉しいです!』

『ではそちらに今から向かいますので待ってて下さいね』

『了解です、正門前にて待ってます。』

 

伝言(メッセージ)を切りウキウキしながら待ち合わせ場所まで行きこれからの最終日の段取りを考えていると豪華なローブを被った骸骨姿のモモンガさんが自分に気付き手を降りながら向かってきた。

 

「お待たせしました、要望のアイテムはこれで間違いなかったですよね?」

モモンガさんからアイテム交換のアイコンが出てきたので確認する

「はい!これで合ってます!ではこちらも交換のアイテム渡しますので確認してください」

「はい、確認しました。でもホントにいいんですか、世界級(ワールド)遺跡級(レリック)のアイテム交換なんて?」

「いいんですよ、無用の長物でしたし旗印の方が自分には価値がありますから。これで最後の華を咲かせられます。」

「あれホントにやるんですか!?」

「もちろん!モモンガさんが用意していた花火と一緒にドーンと御披露目しますので楽しみにしててくださいね。」

「おおぅ…、ではそれまで私は拠点にてギルドメンバーを待ってますので最後の時にまた会いましょう。」

 

そう言いながら冷や汗のアイコンのあとに笑顔アイコンを出したモモンガさんが指輪(リング・アインズ・ウール・ゴウン)を使い転移していった。

モモンガさんが転移するとそれじゃ自分は時間まで最後の思い出巡りでもしてますかとぶんぶん丸はユグドラシルの名所を巡り始めた。

 

(いや~色々あったなぁ、良いことも悪いことも今ではいい思い出だ)

 

 

ぶんぶん丸こと山田勇気がユグドラシルを始めたきっかけは自分のなりたいものになれるというアバターの自由度からであった。勇気はゴブリンの王(キング)になりたかった。そもそもゴブリンの王(キング)とは何なのかというと『旗印』のコラボ元であるカードゲームMagic:The Gathering(マジック ザ ギャザリング)(略してMTG)に収録されているカードの1つである。

 

MTGとの出会いは勇気が幼い頃に祖父の家に遊びに行った際に倉庫の箱からたまたま見つけたものであった。祖父の親が若い頃に集めていたものらしく祖父も曾祖父と少しだけやったことがあったと言っていた。勇気も祖父に遊び方を簡単に習い一緒に遊んだのは楽しかったのを覚えている。その中でゴブリンデッキが気に入り、特にゴブリンの王(キング)のイラストが大変愛くるしくもありカッコよく見えたのだ。

王冠を載せ邪悪でありながらも愛嬌を感じる笑顔、身長は高くなく、腹は出て足は短い。それにローブを羽織った姿は少年であった勇気になぜかヒットした。

その後MTGをやろうと調べてみたが残念ながら半世紀ほど前に電子販売が終了しており紙媒体に至っては1世紀も前に終了したいたので勇気の思いは不完全燃焼となった。

 

そんな気持ちも忘れ社会に揉まれている日常の昼休み、職場にあるTVでユグドラシルのCMが目に入った。

『今度のコラボはかつて全世界で楽しまれていたレトロゲームだ!ユグドラシルに迷い混んだプレインズウォーカーと協力して世界の未知を解き明かそう!!』

その後にMTGコラボ実施予定日が映りCMが終わった。それを一緒に見ていた部下がため息混じりに呟いた

 

「ユグドラシルも必死だねぇ。まあ、もうサービス開始して8~9年くらいたってるんだっけ?流石に他のゲームに人気は持っていかれるよなぁ。このコラボだって元ネタやったことあるやつなんて殆どいないだろうに。こんなのとしかコラボ出来ないってことはもう終わりが見えてきてるわ。」

 

それを聞いていた他の部下も相槌をしたり今ではこれが面白いんだよと別の話をしていたが自分にはまったく耳に入らず携帯端末でユグドラシルというゲームを調べていた。ただ一人、影の薄いほぼ話したことのない同僚のみが俯いていたのはその時は気にならなかった。

 

仕事が終わるとその足でゲーム機を買い、期待と不安の中で人生初のDMMORPGの世界へと飛び込んだ。

 

そこからコラボが始まる迄に上手くならねばと悪戦苦闘の日々を過ごし日夜ユグドラシルの事を考え行動していた。夢の中にまでユグドラシルが出てくるほどである。

しかし、このゲームは初心者に優しくはなく自分の理想であるビルドは組めていなかった。どうしたものかと職場の昼休みに頭を捻っているとユグドラシルのフィールド曲が聴こえてきた。

(あ~、幻聴まで聞こえてくるのはヤバイな。もうすぐ昼休み終わるし切り替えよう)

 

頭を振ってみたが音は鳴り止まず出所を探すと同僚の机の携帯端末からで丁度食事のゴミを捨てにいっており鳴り続けていたようだ。同僚が音に気付くと急いで手に取り取引先に謝りながら二言三言話すと通話を切りそのまま何とも言えない顔でこちらをチラ見してきた。

 

(これはもしかするのでは?)

 

伺うように話を切り出した。

「え~と、鈴木さんであってました?私同僚の山田なんですけど」

「はい、鈴木で合ってますよ。すいません昼休み中なのにうるさくしちゃって」

「いえいえ、取引先が自分勝手なのは分かってますからお構い無く。ってその話ではなくてですね」

「あ、はい。ではなくてというと?」

(頼むぞやっててくれ)

「もしかして鈴木さんってユグドラシルやってます?その着信音フィールド曲ですよね?」

鈴木さんは気まずそうに

「あ~~、はい。やってますよ。それがなにか?」

(ビンゴ!)

「それが最近私もやり始めたんですがなかなかビルド育成や攻略が上手くいかなくて悩んでいましてアドバイスしてもらえないかと思いまして」

すると警戒心をといたのかさっきまでの態度とは打って変わり

「そうなんですか、山田さんの種族は?どんなビルド構成をしたいと考えているんですか?攻略ということは欲しいアイテムに目星がついているんですか?私自身は異形種のロマンビルドですがフレンドにガチビルドもいますしある程度でしたら答えられると思いますよ」

(さっきまでと雰囲気変わりすぎだろ、何時もの鈴木さんは何処へ行ったんだよ。めっちゃハキハキ喋ってくるし自信に満ち溢れてる)

「あ、はい。種族はゴブリンでビルド構成は掴みきれてないところが多くておおまかにしか云えないんですがガチビルドではないと思います。欲しいアイテムはまだ特にないんですけどCMでやっていた次のコラボのアイテムや装備を中心にしていきたいと考えてます。」

「……なるほど、ゴブリンのロマンビルドですか。亜人種は正直畑違いですのでなんともいえませんが職業レベルのほうであればアドバイスはできると思いますよ。」

(亜人種はダメだったが光明は見えてきたぞ)

「それにしても次のコラボを中心とは、あれ私もよく知らないやつなんですよね。知ってそうな人はあまり来なくなってしまいましたし…。あれの元ネタご存知なんですか?」

「自分自身もストーリーは知らないんですけど元ネタで遊んだことはあってその中のカードの1つになりたいんですよ。だから元ネタであるコラボアイテム中心で揃えたいんですよね。」

 

「了解しました。私も金策目的でイベントには触れようと思ってましたので山田さんがいらないアイテムを譲って下さるのであればお手伝いしますよ」

 

(この人は神か)

 

「ありがとうございます、では個人用端末のアドレス教えてもらってもいいですか?色々聞きたいことありますので」

 

「構いませんよ、後で送っておきますね。」

 

ふと時刻を確認すると昼休みの終わり時間になっていた。

「了解です。昼休みも終わりましたので夜にでも連絡して大丈夫ですか?」

 

「はい、大丈夫です。では後程。」

鈴木さんは何事も無かったかのように仕事に戻っていった。

 

(いや~、過疎ゲーになりつつあるのに職場にまだやってる人がいるなんてついてるな。鈴木さんだから大したことないだろうけどアドバイス位は貰えるだろうし充分充分。)

そう考えながら仕事に戻る自分にはまだ鈴木さんのある意味本当の姿を知る由はなく。今考えると不敬極まりない思いであった。

 

 



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回想2(チャット)

山田:アドレス登録させて頂きました。早速ですが今日ログインします?するのであれば自分のステータスとビルドを見てもらってアドバイスして欲しいのですがお時間大丈夫ですか?

 

鈴木:はい、大丈夫ですよ。じゃあ他と間違えないようにキャラクター名と外観教えて貰えますか?

 

山田:はーい。キャラクター名はぶんぶん丸で外観はずんぐりむっくりしてるカッコ可愛いゴブリンです!

 

鈴木:ぶんぶん丸はまだ解りますがずんぐりむっくりしてるカッコ可愛いゴブリンとはいったい……?

 

山田:マスコットみたいな体型してて悪そうな笑顔なんだけど愛嬌のある顔つきってことです!

 

鈴木:すいませんがさっぱりです…。

 

山田:そうですか……。じゃあ鈴木のキャラクター名と外観をお願いします。こちらからも探しますので。

鈴木:キャラクター名はモモンガで外観は顔が良く特にアゴが凄くカッコいいスケルトンです!

 

山田:モモンガはまだ解りますがアゴが凄くカッコいいスケルトンとはいったい………?

 

鈴木:年季のはいった頭蓋骨でアゴがドギャーンとしてます。ついでに眼光は赤いです!

 

山田:すいませんがワケわかんないです…。

 

鈴木:そうですか………。まあ、名前と種族はわかりますしなんとかなるでしょう。ぶんぶん丸の名前の由来とかあるんですか?

 

山田:ゴブリンって棍棒とか振り回してるイメージありません?それにぶんぶん丸って強そうですし。

 

鈴木:確かにそんなイメージありますね。けっこうストレートに名付けたんですね。

 

山田:はい、結構気に入ってるんですよ。鈴木さんはなぜモモンガにしたんですか?

 

鈴木:私は最初に登録してるときに丁度TVでモモンガが木から木へ飛び移っているシーンを観てその様がカッコよく見えてこれでいいかって感じで名付けましたね。

 

山田:結構軽い気持ちでつけたんですね。

 

鈴木:最初はこんなに長くやるとおもっていませんでしたから。正直ちょっと失敗したかなって

 

山田:じゃあもし改名出来るとしたらどんな名前にしたいですか?

 

鈴木:そうですね、モモンガを全部無くすのも名残惜しいのでちょっと捻って『ダークウィザードマスター・ガンモ 』とかよさそうです。

 

山田:カッコいい名前ですね!忘れてましたが待ち合わせは最初の街の正門前でお願いします。

 

鈴木:了解です。ゲーム内での用事が終わってから向かいますので今から二時間後に会いましょう。

 

山田:はーい。では後程!

 

帰路中にやり取りが終わり端末から目を離すと自宅の前まで来ていた。自宅に戻り体の汚れを取り、食事をして、ナノマシンのメンテナンスが終わり準備を整えると今迄とは気持ちが違う事に気付いた。昨日までと違いソロではないとこんなにも気持ちが変わるものなのかと感じながら勇気は高揚しながらユグドラシルを起動した。

 

 



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回想3

ぶんぶん丸はモモンガとの約束までの時間を街から少し離れた林でデータクリスタルによる金策目的のザコ狩りに勤しんでいた。腰簑一枚着けたゴブリンが棍棒をもちモンスターを狩っている姿は端からみると同士討ちにしか見えない。

「おっ、もうすぐ時間じゃないか。急がないと遅刻だ。」

 

現れたモンスターを倒して出てきたドロップ品を回収し

街に戻ろうとしたところで後方からナイフがぶんぶん丸を襲い背中に刺さる。

「痛っ!まだモンスターがいたのか?!」

 

振り返りナイフの出所を観察したが隠密スキルを発動しているのか何も発見できない。HPを確認すると予想以上に減っており最初の街のエリアのモンスターではありえないダメージであった為ぶんぶん丸はプレイヤーが自分をモンスターと勘違いして攻撃してきたと思い声を出した。

「こんな格好ですが自分はプレイヤーです。攻撃を止めてください!」

 

しかし、ナイフによる攻撃は続く。ナイフの飛んで来た方向に急いで向かい棍棒を振るが空振りばかりでその度に背中にナイフ増えていく。ぶんぶん丸のステータスは物理攻撃力に多く降っておりそれ以外は総じて低い。なおかつ看破スキルや魔法スキルは0であり相手の場所は一向に掴めない。怒りと焦りばかりが募る。それを知っているのか相手は楽しんでいるかのように背中のみを狙いじわじわと体力を減らしてくる。

(これがPKってやつなのか?)

必死に足掻いたが振り下ろした棍棒は地面を叩くか木に当たり派手な音のみが響く。体力がほぼ無くなり諦めと悲しみによりぶんぶん丸は大の字に倒れて叫んだ。

「なんでこんな事をするんだ!?自分なんか倒してもドロップアイテムなんか大したことないぞ、最後くらい姿を表したらどうだ腰抜け!」

 

こちらの諦めを悟ったのかかHPを確認したのか安い挑発に乗ってくれたのかは定かではないが男が一人現れ嘲笑を浮かべながら喋り始めた。

「いや~、最初は仲間割れかなと思って戦闘見てたんだけどドロップアイテム回収してるのみてプレイヤーだと気付いてさ。ステータス覗き見みたら初心者丸出しのビルドでこれはPK(殺る)しかないなって思ったわけよ。」

「こんなことしても意味ないじゃないか!」

「いやいや初心者狩りと異形種狩りは古くから続くこのゲームの習わしみたいなもんよ?まあ、異業種狩りの方はめんどくさい奴らが出てきて廃れて来ちゃったんだけどね。だから今度は亜人種に矛先を向けてる訳だよ。」

「くそったれ過ぎる伝統の解説どうも。」

「大体昔から勇者は人間だしモンスター倒すのは普通なのになんでわざわざ亜人種とか異形種選ぶんだろうね?倒してくれっていってるようなものじゃん。まあ、今回ので勉強になったでしょ?次からは俺みたいな勇者に倒されないようにコソコソ楽しんでね。」

 

襲撃者はバイバイと笑いながら最後の一撃を決めるナイフを投げた。ぶんぶん丸は諦めていたので眼を閉じて最後の瞬間を受け入れた。

 



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回想4

ぶんぶん丸がいつまでも死亡時の通知音が鳴らず恐る恐る目蓋を開くと体に緑色のエフェクトが出ており頭の横にナイフが落ちていた。

 

「時間になっても来ないから捜しに出てみてよかったです。助けに来るのが遅くなって申し訳無い。」

 

ぶんぶん丸さんですよね?と豪華なローブを羽織りお腹と眼光が赤黒く灯った骸骨がこちらを覗き込んでいた。

 

「……モモンガさん?」

「はい。こんな形ですが初めまして。確かに愛嬌は感じる姿をしてますね。直ぐ終わりますのでゆっくりしててください。」

 

これをどうぞとポーションをぶんぶん丸に渡すとモモンガは襲撃者に対峙した。

「いつまでたってもお前の様な屑はゴキブリみたいに湧いてくるんだな。ゴキブリらしく踏み潰してやるから覚悟するがいい!!」

 

襲撃者は怯えながらも気勢を張り答える

「なんでお前がこんな所にいるんだよ!」

「確かに普段なら来ない場所ではあるがそんな事は関係ないだろう?そういえば先程お前は自らを勇者と名乗ったな。喜べ!ここに魔王がいるぞ。勇者らしく私を倒して英雄になってみたらどうだ?」

 

雄大に手を大きく広げモモンガは語りかける。襲撃者はその言葉を聞くと右手をアイテムボックスに伸ばし何かのアイテムを取り使用しようと忙しそうに何度も手を振り回してる。

「さっきから脱出しようとしてるが貴様がぶんぶん丸さんに冥土の土産を聞かせている段階でこの空間には各阻害魔法を唱えておいたので逃げることは不可能だぞ」

 

その言葉を聞いて襲撃者はアイテム使用を諦めモモンガさんから背を向け走り出した。

「てめぇに勝てるわけがないだろ!お前は魔法詠唱者だから敏捷は低いだろうしこのままサヨナラさせてもらうぜ!」

 

そのまま数メートル進んだ所で襲撃者がいきなり爆発した。そのまま続けて無数の巨大な肋骨が虎鋏のように襲い襲撃者にダメージ与えた後に拘束する。

「なんでこんなところに罠が?!」

「はぁ………装備と戦い方をみたらある程度のステータス位予想がつくのだから罠位張っておくに決まってるだろう。こんなことも考え付かないとは弱いものいじめしかしてこなかったんだな貴様は」

「うるせぇ!モンスターは大人しく倒されてればいいんだよ!」

「もういい、時間をかけて拘束を解かれても困るし決着をつけよう。《魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)現断(リアリティ・スラッシュ)》」

 

大きな3本の斬擊が襲撃者にぶつかりHPが0になったのかそのまま綺麗なエフェクトとドロップアイテムを残して消えていった。この一連の出来事を眺めていて私にはモモンガさんが魔王と自分自身を例えていたがそんなものではなく光輝く正義の勇者(ヒーロー)に見えた。



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回想5

落ち込んでいるであろう尻餅をついて呆けているぶんぶん丸を気遣うようにモモンガが手を差し出しながら口を開く。

「災難でしたね、ああいう輩は大分減ってきたんですけど」

あたふたとその手を掴み起き上がったぶんぶん丸が興奮しながら身振り手振りを加え表情アイコンの驚きを連打しながらぶんぶん丸はモモンガを誉めだす

襲撃者(そんな)ことよりモモンガさん凄いじゃないですか!カッコよすぎです!魔法がバババーンってなったり相手の手を読みきってたり、頭良すぎてビックリしましたよ!」

モモンガは謙遜しながらも少し嬉しそうに答えた。

「ちょ、ちょっと落ち着いて。あれぐらいの相手であれば普通ですって。」

「いやいや、そんなことないでしょ~。プレイヤーの中でも上位にいるんじゃないですか~?」

「それは無いですよ。浪漫ビルドの私はどう頑張っても中の上辺りで精一杯ですから。それにぶんぶん丸さんもユグドラシルに慣れれば出来るようになりますから。」

(ホントかよ)

ぶんぶん丸はイヤイヤと手を横に振りながら喋るモモンガを疑いの目線で見つめた。それで興奮が多少落ち着いたのかモモンガに頭を下げながら告げた。

「盛り上がってしまい言い忘れていましたがモモンガさん。助けて下さってありがとう御座いました!!」感謝の気持ちを伝えると

 

 

 

ー誰かが困っていたら助けるのは当たり前ですからー

 

 

 

 

ある人の受け売りなんですけどねとモモンガは照れ臭そうに、しかし気持ちを込めたのが解る調子で返した。

(外見は魔王だけどこの人は正義の味方だわ)

ぶんぶん丸のモモンガに対する評価はうなぎ登りで上昇し続けている。

 

その後当初の予定通りぶんぶん丸はモモンガに自分がどの様な戦闘スタイルでいきたいかの要望を伝え、理想のビルド構成を相談した後に現在のステータスとビルドが余りにも無駄が多いため最初から組み直した方がいいとアドバイスを受け落ち込んでしまう。

「結局今日は死ぬ日だったんですね…」

「まあまあ、一撃で楽に殺してあげますから。それにレベル落としてからは私がイベントに間に合うようにパワーレベリング付き合いますのでソロでやってた頃よりは快適ですよ。」

「はい……。ちなみに何レベル程まで落とします?」

「そうですね、今のぶんぶん丸さんが42レベルで必要無い種族と職業を削ぎ落とすとなると12レベルまでは下げたいのです。一回で5レベル下がるから丁度6回ほどですね。」

「6回もですか………、ドロップアイテムの回収お願いしますね。なんて俺は無駄な時間を過ごしてきたんだ………。」

「落ち込まないでよくあることですから。それじゃあ1回目行きますよー。」

モモンガさんが笑顔アイコンを浮かべながら呪文を唱える

心臓掌握(グラスプ・ハート)

モモンガさんとの初日は色んな意味でモモンガさんにハートを掴まされ続ける印象的なものとなった。



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回想6

モモンガとぶんぶん丸の初邂逅から時間が経ち二人の間柄に変化が起こる。ユグドラシルだけでなく会社でも話す仲となり、ユグドラシルを二人で行動しているときにぶんぶん丸はモモンガの事を師匠と呼ぶようになった。初めの内はモモンガが嫌がり止めて貰える様にお願いしていたがぶんぶん丸が茶化しているわけではなく本気で尊敬し師事しているとモモンガに力説したためモモンガが泣く泣く折れることとなり、最終的に他のプレイヤーがいない時であればと許可を出した。

 

パワーレベリングの最中や職場での空き時間等のイベントまでの期間にぶんぶん丸はモモンガに色々なことを聞いていた。戦闘のコツ、ユグドラシルの細かいシステムや歴史、装備、アイテム、魔法、スキルの種類、そしてモモンガについて等だ。モモンガ自身もぶんぶん丸に気を許したせいか教えたがりな所が顔を表し、饒舌なり過ぎ話が止まらないこともあった。

 

特にモモンガが嬉しそうにぶんぶん丸に語るのはモモンガがギルドマスターとして所属しているアインズウールゴウンが話題になっている時である。ぶんぶん丸としても師匠であるモモンガが楽しそうに、又程よく自慢ともとれる話をしている様子は悪いものでは無く、ぶんぶん丸もその話題を多く振っていた。しかしギルドメンバーのIN率が減っている話題だけはモモンガが落ち込みながら、納得はしているんですけどね。と悲しみアイコンを出すのが居たたまれなく、ギルドメンバーに対しての話題は避けるように心掛けた。故にぶんぶん丸はモモンガのギルド拠点であるナザリック地下大墳墓について聞く機会が多くなり、未だ訪れていないのにも関わらずユグドラシルにおいて何故か一番詳しい施設となってしまった。

 

ちなみにモモンガは初期の方にギルド加入条件をぶんぶん丸に伝え、申し訳無いですがぶんぶん丸さんは入れない上にギルドメンバーの承諾が無いと見学も難しいと謝りながら教えていた。しかしぶんぶん丸はエンジョイ勢のゲーム初心者でありアインズウールゴウンというユグドラシル内でも上位に入るギルドに加入すると足を引っ張ってしまうと考えていた為、特に気にする様子もなかった。

 

職場でもぶんぶん丸こと山田勇気がモモンガである鈴木悟に話しかける事が増え職場での鈴木悟の印象が変わり始めた。今迄は常に疲れた顔をしており話し掛けても愛想笑いで言葉少なく答えていたのだが、山田と話ている時は普段とは全く違う表情を浮かべ会話を楽しんでいる様子が見て取れた。職場内の社員が理由を山田に聞いてみたところ、鈴木さんは人見知りだが見た目とは違い、凄く熱いハートを持っていて正義感が強く、その癖案外お茶目なところもある少年の様な心を持ったいい人だと教えてくれた。社員が思い返してみると確かに鈴木さんは仕事はそつなくこなしている上、職場や上司以外の悪口を言わないし同僚達や部下に無理難題を押し付けている事はしていなかった。それを理解し周りに伝えると鈴木さんに好印象を持つ者が増えていき鈴木悟の人間関係が良くなっていった。

 

そんな二人が少しずつ仲を縮めながら日々を重ねぶんぶん丸のレベルが100になった頃にぶんぶん丸の本命であるMTGとのコラボイベントが開始された。



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回想7(チャット)

山田:いよいよ明日実装されますね!今から楽しみで眠れません!

 

鈴木:やる気満タンな所申し訳無いですがとりあえず最初の方は情報を集めて行きたい施設を絞りましょうか。

 

山田:ううぅ……。事前情報は大事だと師匠はよく言ってますから我慢します。

 

鈴木:はい、私達の様な浪漫ビルドはガチ勢と違い何個もクリアは難しいですしある程度の当たりは付けておかないと期間内には巡れませんからね。予告PVを観た感じだと今回はダンジョンではなく何個かの都市が出現してそれが舞台になるみたいですね。

 

山田:イベントで装備とか諸々揃えたいですからね~。ゴブリンに合うのが有ればいいけど。

 

鈴木:ゴブリンはユグドラシルでは不人気ですからね~。ですが、だからこそ期待は持てますよ!

 

山田:その心は?

 

鈴木:クソ運営はそういった不人気職や種族にスポットを当てて隠しスキルや装備条件キツくして実際に装備してからじゃないと効果が確認できない鎧とか作りたがる傾向があるんですよ。

 

山田:それだと発見されないで終わるパターンとかありません?

 

鈴木:勿論そういった流れになるのが多いです。それでも運営的にはOKらしいです。世界に未知を増やしたってことで怒られないみたい。

 

山田:なかなか尖っているのが運営しているんですね。

 

鈴木:無茶苦茶ですよ。まあ、私もその恩恵は受けているので強くは言えないんですけどね。

 

山田:師匠の職業(クラス)のエクリプス?でしたっけ?

 

鈴木:合ってますよ。エクリプスも取得条件が難易度高過ぎますし。実際に取れたのはほぼ偶然でエクリプスの説明文に取得条件書いてありましたけどこんなの解るか!ってなりましたし。

 

山田:でも攻略サイトにエクリプスの取得条件載ってませんでしたっけ?

 

鈴木:ああ、あれ嘘ですよ。元ギルドメンバーが私から聞いてから書いたやつですから。他の隠し系もありますがほぼ嘘ですよ

 

山田:ユグドラシル性格悪い人多すぎだろ……。

 

鈴木:ゲーム内アイテムはRMT(リアルマネートレード)できませんけど情報は売れますからね。自然とそうなりますよ。

 

山田:なるほど、思わぬところでで課金ゲー要素増やしてるんですね。

 

鈴木:課金といえばイベント限定ガチャも発売されるらしいので回してみたら如何です?

 

山田:そうですね、景気付けにやってみます。

 

鈴木:ふっふっふっ。山田さんもガチャ沼地獄に堕ちるがいい…………。

 

山田:師匠みたいにボーナス注ぎ込む程は回しませんよー。多分ですけど……。

 

鈴木:冗談はここまでにしてとりあえず明日はネットでの確認と二人で各現地前までいって挑戦したプレイヤーから情報料の金貨払って話聞いていきましょう。

 

山田:情報料がゲーム内通貨でも大丈夫なんですか?

 

鈴木:最初に挑戦する人達は浅い情報しか手に入れてこないのでそういった情報は出回りやすいので現金では売れないんですよ。ですからゲーム内通貨の金貨で提供してくれますよ。

 

山田:そうなんですね、了解です。それではお疲れ様でしたーおやすみなさい。

 

鈴木:お疲れ様でした、おやすみなさい。

 

 

 

 



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回想7

イベントが実施されてから数日が過ぎ、初期情報が出回り始めた頃の会社での昼休み。休憩所でのテーブルに向かい合わせで座っている山田勇気と鈴木悟は互いに集めた情報による意見交換を開始し山田が鈴木に聞きた。

「結局出現してきたのは何ヵ所でしたっけ?」

 

「全部で4箇所でしたが二人で行けそうなのは1箇所だけでしたね。予告PVで散々煽ってきた癖に肩透かしもいいとこです。ですが結構難しいらしくて未だに最後までクエストクリアしたって情報は出てきてないです」

 

「そうなんですか、自分の方でもMTG自体の方から手掛かり掴め無いかと思って調べたんですけどMTGってスタートは紙媒体のカードで遊ぶTCG(トレーディングガードゲーム)なんです。そしてそのカードを元にバックボーンに物語があったらしく、今回はその話を題材にしてイベントを作成したみたいですね。どのストーリーかは調べたいんですけど昔と違って政府(うえ)からの規制が入っててもう読めないのも多いので難しいと思います」

 

「なるほど、こちらは出現した街に関する聞き込みからなんですがクエストを与える相手のNPCが複数いるようで受けるNPCによって報酬も違ってくるらしいです。しかもクエストを受けることのできるNPCはなにやら条件があるらしくプレイヤーが全てのNPCから選ぶことは無理との話でした。なおかつ、一度NPCを決めてクエストを開始すると再挑戦は受け付けなくなるみたいです。」

 

「うへぇ…。やり直しがきかないのは辛い所ですね。」

 

「まあ、運営者が鬼畜なのはいつものことですから。」

 

「どのNPCを選ぶかも重要ですね。俺等を受け入れてくれそうなやついました?」

 

「うっすらとでしたがゴブリンっぽいNPCがいたとの情報は入ってます」

 

「ゴブリンのNPCがいるんですね!じゃあそいつにしましょうよ!?」

 

「有力候補にはしときましょうか。クエストするかは実際に話を聞いてみてからということで。」

 

「了解です。そういえば限定ガチャ回してみましたよ!」

 

「おっ、内容はどうでした?」

 

「最初にガチャとは別に1人につき1つ限定のマナプールって名前の指輪渡されました。説明文を読んだらその指輪を装備して起動するとカウントダウンタイマーが起動して一定時間毎に装備者に相応しい色のマナと呼ばれる数字がストックされていきます。そのマナを消費すると今回のイベントで出てくる巻物(スクロール)やアイテム、スキル等が発動できるみたいです。そしてタイマーが0になると指輪は停止して再始動までにクールタイムが必要となる。とのことです。」

 

「面白いですね!」

 

「はい。MPを使わずに魔法が撃てる様なので私には楽しそうです。」

 

「マジックキャスターの私にもマナさえあればスキルがリキャストタイム無しで連発できるのは使えそうなので気になりますね。とりあえず私もガチャ1回せば貰える用なのでその指輪は手にいれてみます。その後は実験にガチャで出てきた巻物(スクロール)でも試し撃ちしてから考えます」

 

「そろそろ昼休みも終わりますね。じゃあまた夜に会いましょうか。」

 

「そうですね、一緒に実験しましょう。」

二人は重い腰をあげ互いに頑張りましょうと声掛をし仕事に戻っていった。

 



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回想8

淀んだ空気が漂い太陽も空も録に見えない現実世界での朝早く、二人は休日を合わせユグドラシルのイベント場所にいた。

「待ちに待った攻略日!頑張りましょうね師匠!」

「はい、楽しんでいきましょうか。あれから結局二人共ガチャに結構課金してまあまあレアリティ高いアイテムとかも手に入りましたしイベントクエストクリア目指していきましょう!」

パーティーを組み歩きながら話す二人。ぶんぶん丸が顔を見上げながら

「しかし凄いとこに街出来ましたね」

モモンガもつられて見上げる

「ホントですね」

 

見つめる先は直径10メートル、高さは100メートルはあろう巨大な石柱が円周状に並ぶその上に建てられている都市であった。その都市から一本垂れる様に螺旋階段が地上まで繋がっており、千段は由に越えている道を二人はえっちらおっちら進んでいる。

「飛んで行けたら速いのに」

「運営が入り口まで飛行禁止エリアに設定したみたいで魔法発動しませんでしたから諦めて下さい」

「まあ、現実(リアル)と違って疲れないから失うのは少しの時間だけだし構わないんだけどさー。ここからの景色も綺麗だし。話変わっちゃうけどここと似たようなギルド拠点ありません?」

「天空城ですよね、それ私も思ってました。あっちは魔法で浮いてますけど」

「ここは人力で浮かべてる感ありますね」

現実(リアル)でも建設可能なんですかねこれ?」

「いやー流石に無理でしょう」

「そういえば………」

「そんな……」

「だって…」

「いや…」

「…」

「」

 

他愛も無い暇潰しの雑談を交わしながら足を動かしていると螺旋階段が終わりをつげ地上に到達した二人を出迎えたのはおとぎ話に出てくるような街並み。

正面には巨大な門が構えその両脇から都市全体を囲うように外壁が並んでいる。門からの一直線状に延びる大通りの先の中心にはこの都市で一番の大きさを誇るであろう城が建ち、それを中心にして多種多様な建築物、人種が城下を埋め尽くしている。雲は都市より低い位置にあるため澄みきった青空と太陽の光が都市を輝かせていた。

「とりあえず中に入りましょうか」

その景観に感動して棒立ちしていたぶんぶん丸にイベントに慣れているモモンガが声をかける。

「えっ、あっ、はい」

二人が門をくぐるとポップウィンドウが浮かぶ。

 

『高層都市パリアノへようこそ。』

 

『この美しい街並みとは裏腹にパリアノでは謀殺や詭弁が日常となっており、ここでは政治的派閥や無慈悲な結社がパリアノの覇権を巡り争っています。貴方はいずれかの勢力にいる統率者に加わりパリアノの覇権である統治者を目指すこととなります。そこでは殺人、暴力、詐欺が不定行為とみなされていないことに気づくでしょう。なぜならパリアノでは隣人を疑うことが常識であり、また執政者にとってそれはありふれた日常作業のひとつなのですから』

 

 

項垂れながらぶんぶん丸が呟く

「さっきの感動を返してほしい」

モモンガは頭を整理しながら

「これはぷにっとさん好きそうなイベントだったか、俺なは荷が重そう」

互いに感想を述べると続けて新しいウィンドウが開く

 

 

『イベント:「コンスピラシー:王位争奪」を開始しますか?』

『「はい」 「いいえ」』

 

『ーー注意ーー』

『このイベントを開始するとプレイヤーに制限と調整がかかります。それはイベントを中止又は失敗、もしくはイベントクエストをクリアする迄継続されます。 』

 

 

 

これから始まる困難が予想できるであろう物語の主題と注意書きが手招きしている。興奮と戸惑い、少しの冒険心がおそるおそる二人の指を動かし高層都市パリアノは彼らを迎え入れた。

「おおー!テンション上がってきたー!」

「制限と調整を受けたみたいですけど実感がないな、ステータスを見ても判らないし。」

不安なモモンガがを尻目に先ずは城下の住人に話を聞いてこの街の環境と勢力とやらの情報を集めましょう。とぶんぶん丸はモモンガの手を取り大通りの商店へ駆け出していく。

 



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回想9

大通りに並ぶ施設の中で比較的大きな2階建ての乳白色に塗られた住宅の玄関先にΨ形の上に○を重ねた刺繍が施された旗が掲げられている。扉を守る様に金属鎧を纏った兵士が常駐しており、街の様子と平和を乱す者がいないか目を光らすのが彼の職務だ。しかし普段とは違って観察している暇はなく周りの人だかりからそれぞれ飛んでくる質問に何度も繰り返したのであろう、若干苛立ちが混じった声で大きく答える。

「パリアノを統治し導いてきた我等の王ブレイゴ様はかつての盟友セルヴァラの凶刃によって倒れた!!しかし!カストーディの御手により肉体の消滅は免れなかったが魂を残すことには成功した!したがってブレイゴ様は引き続きパリアノに存在し王位として君臨し続ける!!セルヴァラは護衛隊長のアドリアナ様が捕らえ地下牢にて勾留しており動機については不明である!これ以上は話せることはないぞさあ、散った!散った!!」

 

民衆はそれでもなにか他に隠していることがあるのではと離れようとはしない。それどころか兵士に飛んでくる言葉の矢が増えていく始末だ。人だかりから都市の事や有名な人物、今回の事件に対する住民の当てずっぽうな陰謀論等を聞き集めていたモモンガとぶんぶん丸の二人は兵士の言葉を聞き終わると目立たぬようにそこから離れる。

「早速事件が起きてますね」

「ちょっと休憩したいので宿屋でもとりましょうか」

ユグドラシルではこういった都市の攻略をしていく場合リスタート地点を宿屋等の安全領域(セーフティエリア)に置くのが一般的である。そうしなければ都市でゲームを中断して再びゲームを起動した場合リスタート地点が都市の前の決まったフィールド上に出現する。それが厄介でこれを利用した悪質なプレイヤーによる置き罠&超位魔法の出待ちコンボによるPKが起こる可能性があるからだ。

宿屋を見つけ部屋を取りリスポーン地点の設定が終わりモモンガがぶんぶん丸に向かい

「主要キャラクターだと思われるのを中心に整理しましょう、現在の統治者は王であるブレイゴで間違いなさそうですね」

「肉体を失っても魂のみで活動出来るってことは人間から幽霊に種族変更でもしたんですかね?」

「人間種から異形種にクラスチェンジですか?そんなことが可能なカストーディという集団も気になります。何らかのアイテムで行ったとしたらちょっと見てみたいですね」

モモンガが冗談混じりに逆もできるなら私も人間になれるかもしれませんしとおどける。

「そしてブレイゴを襲ったセルヴァラはブレイゴの盟友とも呼ばれていたのに何故ブレイゴを殺したのか?」

「¨かつての盟友¨って兵士が言ってましたしなにか確執でもあったのかもしれませんね」

「護衛隊長のアドリアナはどうでしょうかね?」

「う~ん、今の所怪しいところは聴かなかったんですよね。王に忠誠を誓う職務に忠実な優しい騎士って民衆の評価も高いです。ですから今回のイベントタイトルに書いてある王位争奪からは遠いと思うんですよ」

「王位を守ってるキャラですしね。男性だったらさぞ女にモテたでしょうねぇ」

住民も似たようなこと喋ってましたよとぶんぶん丸は返したあと今回の事件との関係はわかりませんがと前置きをして

「人相の悪い男に¨お前の親方がなんかしたのかもな¨って笑いながら言われました。親方?と聞き返したら¨あんたゴブリンだからてっきりグレンゾ親方の小飼かと思ったよ¨と」

「グレンゾ親方とはどんなキャラクターなんです?」

「王宮にある地下牢の管理人で多くのゴブリンを束ねていて犯罪者にも精通しているゴブリンと教えてくれました」

モモンガは嬉しそうに

「見つけましたね!それ前情報で出てたゴブリンのNPCだと思いますよ!」

「自分もそう思います。でも地下牢の管理人って微妙なキャラクターですけどね」

とりあえずグレンゾを探しだして話をしてみよう!と目標をたてた二人は宿屋を発ち太陽が落ち始めオレンジ色の光が差し込んでいる街に戻っていった。

 



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回想10

日が傾き大きく照らしていた自然なオレンジ色から僅かに点在している街灯による人工的な白色の光に変わる。都市は一転し賑わっていた大通りからすら人が消え静けさが包み犯罪者が動き出す昼間とは違った顔を見せる高層都市パリアノ。

 

「手掛かりが無いですね」モモンガが住宅街の人がいない路地で愚痴る。「地下牢なら地下道に行けばいいかと思って入り口は見付けたんですけど鍵かかってましたしね」ぶんぶん丸が同意する。「入り口の鍵を道具破壊(ブレイクアイテム)で壊して中には入れたんですけど。それから道具破壊(ブレイクアイテム)が使えなくってしまい、道中にまた鍵付の門があって引き返してしまいましたからね」

これが最初の注意書きにあった制限のことだったんでしょうかとモモンガが推測をたてる。「一度使ったスキルや魔法は再使用不可って縛りですか?」厳しいなぁと頭を掻きながらぶんぶん丸も愚痴る。

「戦闘になったら相手の強さに合わせた魔法を選ばないとと最後の方はじり貧になりそう」

「師匠は沢山魔法ありますしそんな心配要らないんじゃないですか?自分の方がスキルたいして持ってませんからヤバいです」

「魔法自体は多く覚えているんですけど役に立たないやつが大半を占めてますし、ましてや戦闘魔法の強敵用ともなると30位しかないんですよね」色々集めるのが楽しくてこうなっちゃいましたと説明してくれ収集癖のある師匠らしいなとぶんぶん丸は納得した。

 

二人は明かりが少ない薄暗い道を彷迷い歩いていると多種多様な外観の住宅があるパリアノにおいて一際異彩を放っているであろう建物から大きな破壊音が響く。多少遠かったが他に破壊音を邪魔するものはなくそれは二人の耳にも届いた。ぶんぶん丸が発信源である方角を指差し「彼方からでしたね。行ってみましょう」モモンガが頷くのを確認し走り出そうとした時「ギギギ」と近くあった下水道の蓋が開く音が耳に入る。

そこから這い出てきたのは大柄で骨格はそれに逆らう様に背は大きく曲りそのためか杖を片手に携えている薄汚れたゴブリンであった。腹部からは傷を負っているのか衣服に血が滲んでおり体格か傷のせいか動きはとても遅い。

二人はどちらに行こうか少し迷ったが這い出てきたのがゴブリンだと解ると目的のNPCかもしれないと考えそちらに向かいぶんぶん丸が声を掛けた。

 

「あの~すいません。あなたの名前を教えてもらえませんか?」「ああ?お前こそ何者だ。パリアノのゴブリンで俺を知らないやつはいないはずだぞ?」さては余所者だな?質問を質問で返されてしまったが話を進めるためにぶんぶん丸は答える。

「自分は別の場所から来たぶんぶん丸といいます。後ろにいるのは仲間のモモンガさんです」興味無さげに聞き流すと「そうかい、俺はグレンゾ」とぶっきらぼうに告げた。グレンゾは焦っているのか衣服から血が滴る重たい体で杖をつき少しでも早く立ち去ろうとヨタヨタと歩き出す。「ちょっと待ってください話を聞きたいんですけど」ぶんぶん丸は食い下がると「今は忙しいんだ今度にしてくれ」と取り合う意思がないのか吐き捨てるように断る。どうしようかと悩ませていると辺りからカタカタと歯車を噛み合わせている機械音が聞こえてきた。「ーもう嗅ぎ付けたか……」グレンゾがぼそりと呟くと「あれらを片付けてくれたら話でもなんでもしてやるよ」二人があれら?と首を傾げると三人に歯車で構成されている犬の体格をした機械人形三体が襲いかかってきた。

 

「ぶんぶん丸さん前衛お願いします!取り敢えず小手調べに弱めのスキルで攻撃してみてください!」

 

いち早くモモンガが指示を飛ばし戦闘体勢に入る。「りょ~かいです!」ぶんぶん丸が機械人形に向かい物理攻撃と命中率に3%補正がかかるスキル〈気合い〉を使用し棍棒を振り下ろした。避けようとしたが動作が間に合わず攻撃が当たると機械人形のHPが大きく削れたのが生命の精髄(ライフエッセンス)を使わずとも頭が潰れ動きにぎこちなさが出てきた為感じ取れた。「こいつらあんまり強くないですよ!」ぶんぶん丸がモモンガに伝える「丁度いいですしこいつらでも指輪(マナプール)試してみましょう」モモンガとぶんぶん丸が指輪を起動した。指輪からカウントダウンタイマーがスタートしマナが1つ溜まる。モモンガはそれを使いガチャで引き当てたコモン巻物(スクロール)に黒マナを1つ使用しぶんぶん丸が攻撃を与えた機械人形にむけて唱える。〈見栄え損ない〉

唱えられた巻物(スクロール)から黒いモヤの塊が機械人形に纏わりつき体を蝕んでいく。そのまま全身までもやが行き渡ると機械人形は力尽き消滅した。

「おお~、師匠っぽい効果でしたね~」ぶんぶん丸が残りの2体を相手にしながら感想を述べる。「使った巻物(スクロール)は消滅しませんが戦闘が終わるまでは基本再使用出来ないそうです」モモンガが使用した巻物(スクロール)から出てきたテキストを読み伝えた。ぶんぶん丸も負けじと赤マナ2つをつかいアンコモン巻物(スクロール)を唱えた〈紅蓮地獄〉

戦闘エリア辺り一体に炎が沸き立ち機械人形たちを燃やす。そのみとまま舞い踊る炎に焼かれた2体は消えていった。追跡者を殲滅し追手がこないことを確認すると「お前達やるじゃねぇか。ついでに1つ頼まれちゃくれねぇか?俺をアジトまで運んでくれよ。アジトでなら思う存分お前達とお茶をしてやれるからな」グレンゾが黄色い歯を覗かせながらにこやかに二人を誘う。二人は誘いに乗りグレンゾを護衛しながらアジトまで向かうのであった。



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回想11

グレンゾを引き連れ都市の一角まで歩いていくと街並みが変わっていったのがわかる。中心部にある都市の設計家による遊び心ある芸術的な建築物とは違い、良く言えば馴染みやすくレトロな、悪くいうと野暮ったく少々オンボロな家々が並ぶ。多くの家には時間が遅いのにも関わらず家に灯りが着いていた。「ここだ」グレンゾが腰にぶら下げている鍵束から1つを取り出し扉の鍵を解き開き二人を招き入れる。

 

「ようこそ我が家兼アジトへ」

 

居間に案内され「ちょっと待っててくれ」と彼は奥へ入っていった。二人は木造のがたつく椅子に腰掛け部屋を見回す。物は多く整頓もされていない為ごちゃごちゃとしており、お世辞にも綺麗とは呼べない部屋である。グレンゾが傷の治療が終わり部屋に戻ってくるとテーブルの反対側に座る。背が曲がっているため楽なのか太い両腕をテーブルの上に置きこちらに体勢を傾けながら話を切り出した。「俺に聞きたい事とははなんだ?」

ぶんぶん丸がゲームに慣れているモモンガに会話をお願いする。「今回起きたブレイゴ王の事件についてとあなたが機械の犬に襲われた事について説明してほしい」

グレンゾは質問を処理しているのか少し時間をかけた後「ブレイゴ王の方については俺は関与していない。王には地下牢の管理人という職を与えられていて俺はそれに満足している。王を襲ったのはセルヴァラで間違いない地下牢にて話をしたからな。なにより俺には彼を襲う理由など無い。」そこまで話すとグレンゾは一拍おいて「機械人形の方について話すには条件がある」

「条件とは?」

「お前等は腕が立つようだし俺がこれからやることに力を貸して欲しいんだよ」

「やることというと?」

「それも決めてからでないと話せないな。俺が今行っている事に関係してくる。大きな事になるのは確実だとだけは告げておこう」グレンゾがそこまで話すとどうするんだ?と二人の返事を待つ体勢に入った。モモンガが横を向き隣に座っているぶんぶん丸に小さく相談する。

「ここでの返事でルート決まりそうですけどどうします?」

「自分としては第一目標であったゴブリンルートに入れそうなんでこのままいきたいですね」

「王座に興味無さそうな所がイベントタイトルと剥離していて少々疑問ではあるんですよね」

「これからのストーリー進行で変わってくるんじゃないですかね?良くあるじゃないですか最初は興味ないのにいつの間にか惹かれていくみたいなやつ」なんていうんでしたっけ?ツンデレ?ぶんぶん丸がおどけた調子で語ると

「フレンドがしてる恋愛ゲームみたいな言い方しますね、例えが違っている様な気がしますけど」モモンガは冷や汗アイコンを出し、苦笑いをしているような声色で返してから「まあ、いいでしょう私も賛成します。ではブレイゴの勢力に入るということでいいですか?」

ぶんぶん丸は待ってましたと云わんばかりに「はい!お願いします!」と即答する。

 

了承を得たモモンガはグレンゾに向き直り助力することを告げる。笑顔アイコンを出したグレンゾは「そうか!ならば今回の相棒を加えてから残りの質問にも答えよう」そういい指を大きく鳴らした。すると先程グレンゾが入っていった奥の方から歯車で構成されている機械式の車椅子に乗ったゴブリンが表れ「御二人さんご機嫌よう。私はダレッティという工匠だ」どうぞ宜しく。と挨拶してきた。




誤字脱字報告及び感想と評価感謝します。
感想の返事に関しては私自身口が軽く、うっかりネタバレを書いてしまいそうなのであまりできないと思います。
しかし大変励みになりますのでそれでも良いと思われる奇特な方は書いて下さると嬉しいです。


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オリ主と王位争奪について※ネタバレを含む

嫌な方はバウンスして下さい。


山田勇気について

下層民だがその中では恵まれており両親は仲良く暮らしている。そのお陰か性格は楽観的で明るく人見知りしない。しかしセンスが少々変で人と趣味が合わないのが悩みであったが鈴木悟とは合う様で安心している。

仕事に関しては要領は普通でバリバリこなす訳ではないが持ち前の性格と人当たりの良さでカバーしている。

趣味はスポーツだが下手の横好きでそれを自覚しており観戦の方が気に入っている。

 

ぶんぶん丸について

目指す外装は基本セット第5版のゴブリンの王。ただ体色と体型は同じだが装備は違い王冠と杖ではなく兜と棍棒を、ローブはモモンガのお下がりを貰い着用している。課金は程々で指輪は右3左2の計5本

ステータスはモモンガに理想の戦闘スタイルである後方でふんぞり返りながらゴブリンを率いて指示を飛ばしたいと話したところ、それはぶんぶん丸さんのプレイヤースキルでは難しくイベントまでには時間が足りないと言われた。ならば多少は戦力になれる様にと急造で前衛ビルドに仕立てている。イベントが終わったらまたレベルを下げて理想ビルドで育て直そうと画策している。

ゲーム初心者であり運動神経もそこまで良く無い為モモンガに色々教えて貰いながら日々努力している。

 

王位争奪について

これが書きたかったから始めた。十中八九最終話は転移後までいかず俺達の戦いはこれからだエンドになるだろう。一回位は旗印を使った戦闘を書きたいが………。

ルールとしてはユグドラシルプレイヤーがそのままMTG世界に入ると無双しかしなさそうなので制限を加えている。

MTGプレイヤーにはハイランダーとコンスピラシードラフトとその他諸々を混ぜて、ユグドラシルの魔法、スキル、アイテムをMTG基準に置き換えてどうにかユグドラシルプレイヤーをMTGの枠内に押し込もうとする作者の足掻きを楽しんで欲しい。

 

ぶんぶん丸のステータス(イベント開始時)

役職:王候補生

住居:特になし

属性:中立 カルマ値-50

種族レベル

ゴブリンーーーーーーー15

ゴブリン兵士ーーーーー10

ゴブリン班長ーーーーー 5

ゴブリン戦長ーーーーー1

など

職業レベル

ウォーリアーーーーーー5

ファイターーーーーーー5

コマンダーーーーーーー5

など

計100

 

能力値(最大は100)

HPーーーーー80

MPーーーーー15

物理攻撃ーーー80

物理防御ーーー50

素早さーーーー70

魔法攻撃ーーー10

魔法防御ーーー35

総合耐性ーーー45

特殊ーーーーー70

 

能力値備考:装備でHPと物理防御、指輪で魔法防御と耐性をあげて前衛になろうとしている。物理が高いのはゴブリンのボーナス。特殊が高い理由は目指す戦闘スタイルがアウラと似ている為

 



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回想12

機械仕掛けの車椅子に乗ったゴブリンという珍しいキャラクターに目を奪われながらも二人は挨拶を返す。ダレッティは注目されているのに気付くと疑問を解消させようと語り始めた。「昔ちょっとした実験中に足をやってしまってね。それから作った歯車式車椅子(これ)は私の自信作なんだよ。」 左手で車椅子をコンコンと叩きながら自慢気に教えてきた。しかし車椅子と呼ぶには少々語弊があり、タイヤではなく蜘蛛のように機械の足が伸びており連動しながら彼の体を器用に運ぶ。車椅子というより1つの生物の上に騎乗している様に感じられる。それが彼の動かない足の代わりをはたしていた。

「役者も集まったし話の続きをしようじゃないか」グレンゾがダレッティに集まっていた視線の矛先を変えるように促す。「先程の機械人形(いぬ)の事だったがあれはダレッティの弟子が俺に放った物だ」

「元弟子だ。今は違う」ダレッティが即座に訂正を求める。

「すまんすまん、元弟子のムッツィオだな」手をひらひらと降りながら答える。

「何故ダレッティの元弟子であるムッツィオがあなたに機械人形(いぬ)を?」

「そりゃあ俺があいつを退場させよう(殺そう)としたからだ。厳密には俺が仔猫ちゃんにお願いしたんだかな」

「どうしてそんなことを?」モモンガは食い気味に聞き返す。

「ムッツィオの理想の舞台(パリアノ)に俺達の出番(居場所)は用意されてないからな。あいつは機械仕掛けの世界でムッツィオの様なアカデミー出身の優秀な設計家の命令を遂行する魔法を使える優秀な市民と機械の兵士がいれば満足なんだ。タチの悪いことにそれを叶えられる力が出来始めている。そりゃあお別れを告げに行きたくもなるだろう?」そんな結末ゴブリン(俺達)にはとてもじゃないが耐えられないとグレンゾは笑いアイコンを浮かべヒッヒッヒと下卑た笑い声を出す。話を一通り聞いていたぶんぶん丸が首を傾げて「グレンゾがムッツィオを襲った理由は納得しましたがダレッティはどうしてグレンゾに力を貸しているんですか?」

 

「私はここのアカデミー出身でね。その時にムッツィオとは出会ったんだよ。そこで主席工匠を目指していたのだが私がゴブリンなのが気に入らなかったのか色々嫌がらせにあっていたんだ。それだけなら構わなかったんだが学校にいること事態が可笑しいと異議を唱えてきてそれは酷いものだった。それから先程話した実験の失敗が想わぬ幸運を私に授けてくれてね、それからアカデミーには訪れることはなくなったんだが…」

怒りアイコンを浮かべたダレッティは「今度は奴等がアカデミーだけでは飽きたらずパリアノからゴブリンを排除しようとしている話をグレンゾから聞いたんた。そこで私は復讐を決意した。私を迫害してきたアカデミーの奴等に鉄槌を振り下ろし今迄の諸行に対しての懺悔をさせてやろうと……」

 

怒りを思い出したダレッティを宥めながらグレンゾが話を纏める。

「そういうわけで利害が一致したから俺は小僧と手を組んだってことだ。質問の答えとこれからの行動について納得して頂けたかな?」

 

モモンガとぶんぶん丸は目を合わせ「とりあえずアカデミーの奴等に痛い目をみてもらう流れができましたね」

「そしてムッツィオを倒すのが当面の目標なんでしょう」「了解です。選民思想なんてクソっ食らえですから楽しくできそうです」「ですね」二人は笑顔アイコンを出しクックック…と意地の悪そうな声でハモる。

 

モモンガが代表して「了解した。これから宜しく頼む」そう答えるとグレンゾが仲間になったんだし装備を整えろよと二人にチュートリアルクリアの報酬アイテムを渡した。

 




書き留め切れたので暫くお待ち下さい


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