好きなキャラになったが成りきれているだろうか?(仮題)【凍結】 (家無しじゃない無銘だ)
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転生した次は、平行世界? 咬み殺す!

懲りずに新作投稿です。ネタが浮かんで暇つぶしに書いています。嫌いな人は戻ることを薦めます。
それでもいいなら本編へどうぞ。


誰だい? 僕の前で群れるのは。咬み殺すよ。

…おっと、すまない。肉体に引っ張られた。

僕の名前は、雲雀恭弥。そう最強の風紀委員長様だ。

俗に言う転生者なんだ僕は。信じられないだろう? 僕もさ。

 

死んだと思ったら、変な空間にいて困惑していたらじいさんがいたんだ。

そのじいさんが特典に好きなキャラに転生させてやる。さらに能力を付けてやるから逝ってこい。って床?に穴が開いて落ちていったんだよね。僕が。

意識をなくして起きると赤ん坊になっていたんだ。…あの時の屈辱は絶対に忘れない。またあのジジイに会ったら絶対に咬み殺す。

 

おっと、脱線したね。そうやって過ごしていたんだけど両親が僕の名前を読んで、僕が雲雀恭弥になったことが解ったんだ。

そこから雲雀さんになったからには本家より弱くなる訳にはいかないよね?

弱い雲雀さんなんてファンとして認められないし。だから鍛えなきゃ(使命感)

その後、両親等に心配されながらも鍛えた。

こんな僕を見放さなかった両親には有り難かったね。…でも、ちょっと親バカな所はたまに傷だけどね(苦笑

 

 

5歳の誕生日に沢山のプレゼントが届いた。まあ毎回なんだけど。これを見るとやっぱりいいところの生まれなんだと思うよね。

恥じないように両親に頼んで家庭教師雇おうと思ったよ。また脱線したね。

プレゼントを確認していたんだけど、あったんだよアレが。………リング1つと箱兵器2箱が。

 

固まったけど、手紙が合ったからそれを読むとあのクソジジイかららしい。リング等は特典で、しかも僕は全属性の炎を灯せるらしい。リングは全属性の炎を灯せて、出したい炎をイメージすれば灯せること。箱兵器は1つが属性に応じて沢田綱吉の守護者の武器が、もう1つは属性に応じて、これも沢田綱吉の守護者のアニマルが使用できること。僕以外は使えないこと。

等が書かれていた。

 

試しにリングを付けてみようとしたら少し大きかったんだけど、リングが光ったら指のサイズにあったんだよね。…突っ込んだら負けかな?

炎は灯ったけど弱かったのでこれから炎も鍛え上げようと思った。武器も出してみて手にすると頭に使い方が流れてきた。情報の量が多くて頭が痛かった。

 

ここまでが回想になるのかな?今僕は風紀委員長として街に君臨しているよ。風紀財団も創ったね。

でも、僕がいるところは並盛じゃなかったんだよね。原作の為に強くなったんだけど、まあ、仕方ないって割り切った。

それでも僕が“雲雀恭弥”であるから最強でなければいけないけど、それに文句はないよ。実際、僕が君臨してから他の街より犯罪件数が減ったんだ。街が平和になるって嬉しいね。

 

基本恐がられるけど挨拶はくれるよ。本家の方よりは、群れることは許しているしね。度が過ぎれば咬み殺すけど。

因みに僕は今、聖フランチェスカ学園という所に入学して風紀委員長をしているよ。制服が白だから風紀委員のみ旧学ランで部下はリーゼントにしたよ。やっぱりこの格好じゃないとね。

…校則は学園長を脅hゴホンッ丁寧に説明したら納得してくれたよ。

今は夜の見回りだ。博物館を目指しているよ。何か面白いことが起こりそうだったからね。こういう勘はよく当たるんだ。

 

 

 

 

月明かりが照らす道。そこを駆ける1つの影。

だが、前にいるものに気付き、足を止める。

 

「 やぁ、僕の街で盗みをするなんてね。…咬み殺す。」

雲雀が道に佇み、殺気を出しながら視線を鋭くする。

 

「 …貴様ごときに関係ないことだ。そこをどけ!殺すぞ。」

雲雀と対峙している青年も殺気を出す。

二人の鋭い視線がぶつかる。辺りにまるで空気が重くなった様に感じる程、プレッシャーが掛かる。

 

「 ワオ、言うね。それに君は強そうだ。咬み殺しがいがありそうだね。」

 

そう獰猛に嗤う雲雀はトンファーを構える。

 

「 チッ、イレギュラーが。面倒な。」

 

そうボソリと呟きながら青年は脚を少し開き、構える。

 

 

風が吹く。一瞬で二人は距離を縮める。金属音が鳴り響く。

青年は蹴りを繰り出す。それは当たれば骨を砕く程重く、鋭い。

しかし、雲雀はトンファーを巧みに使い、青年の蹴りを受け止め、カウンターを喰らわす。

 

「 グッ、貴様!」

「 どうしたんだい?さっきまでの威勢は?所詮草食動物か。」

「 舐めるなぁ!」

 

青年は、吼え、蹴りは威烈さをます。当たり処が悪ければ死をもたらす程の技だ。

 

だが、雲雀には効かない。的確に避け、防ぎ、打撃を叩き込む。それに青年は思わず防いでしまった。

青年が持っていたものが砕け散る。

 

「 なにっ!? しまった!」

「 余所見をして平気かい? 」

「 なっ、ガハッ!」

 

砕け散ったものに気を取られ、青年は雲雀から意識を逸らしてしまった。

その隙を逃す雲雀ではない。トンファーで強烈な一撃を青年に喰らわせ、ふきとばす。

そして、砕け散ったものに視線を落とす。

 

「 …これは、最近見付かった銅鏡かい?何故こんなものを?」

 

何故銅鏡を盗んだのか、青年の方に視線を戻そうとした瞬間、砕けた銅鏡が光を放ち始めた。

 

「 …何?」

 

嫌な予感がしてその場から離れようとするが、引き込まれるように抜け出せない。

 

「 どうなっているんだい? 仕方がない。」

 

雲雀はリングに炎を灯そうとするが

 

「 無駄だ! すでに外史の扉は開かれた。貴様は呑み込まれる!」

「 外史? 君、何を言っているんだい?」

「 イレギュラー、いや雲雀恭弥! 歴史の真実を知り、生き絶えるがいい!」

 

青年のその言葉が言い終わると光がさらに輝き、雲雀の意識は逆に引き込まれるように遠ざかっていく。

 

 

 

何かを感じとり、雲雀は意識を起こす。

 

「 …いったい、何が。………ここは、何処かな。」

 

辺りに視線を向ければ、先程の場所と違っていた。

 

( 意識を失った後、運ばれたのか?いや、そんな面倒なことはしないはず。…だとすると、転移? 僕は転生したからそんな事はあり得ないとは思わないけど。

駄目だね、情報が少な過ぎる。…まあ、彼らに聞けばいいか。)

 

 

雲雀は冷静に現状を分析していたが近づいてきた気配の方向を見る。

 

「 よう、にいちゃん。珍しいもん着てんな?着ぐるみ置いてくれりゃ見逃してやるよ。」

「 そうだそうだ!」

「 …んだんだ。」

 

と昔の人が着たような服をしたリーダー格のチョビヒゲのおっさんとチビとデブの3人組がいた。それよりも

 

「 …今、僕に対して見逃すって言ったかい? 群れるしか能がない草食動物風情が?」

「 何、言ってやがる! やれ、デブ!」

「 わかったんだな。…傷付けたくないんだな。動かないでほしんだな。」

「 …咬み殺す!」

 

雲雀の気に障ってしまった。…憐れ。

 

デブの腕を避け、袖に仕込んでいたトンファーを出し、デブの腹を殴る。そして関節等の肉が薄そうな箇所を狙い打撃を叩き込む。デブと言われた男が怯む。そこへ強烈な一撃を顔面に喰らわせ吹き飛ばした。

 

デブが殴り飛ばされた事に驚いている残り二人に接近し、チビを蹴り飛ばす。腹に食い込んだのか吹き飛ばされた後、地面に這いつくばっている。

二人を瞬殺され、呆然としているチョビヒゲのおっさんは地面に叩きつけ、足で胸元を踏みつける。

 

「 がはっ!」

「 ねぇ、聞きたいことがあるんだけど。」

「 何を言うか! ぐぁあ!?」

「 質問に答えてくれる? 」

「 ヒッ!」

 

雲雀の見下ろす、凍てつく鋭い視線を視てしまったおっさんは恐怖に飲まれ、口を開けない。

 

「 チッ、これだから草食動物は。 …そこで観ている人達、出てきなよ。」

 

雲雀は顎先をかする様に蹴り上げ、おっさんを気絶させると、戦っていた所を観ていた者達がいるであろう場所を睨む。

 

 

「 おやおや、気付いてらっしゃったか。助太刀しようと思ったが貴殿が中々の遣り手で見学させてもらった。」

 

出てきたのは、ニヤリと好戦的に笑う空色の髪をし、槍を持った美女だった。しかし額には汗が浮かんでいる。

 

「 …ふん、それよりも聞きt「 星ちゃ~ん、待ってくださ~い。」…。」

 

雲雀の声を遮る様に間延びした声が聞こえる。着物を着た金髪の美少女?(美幼女?)がゆっくり駆けて来る。…頭に何か乗っているが気にしてはいけない。

それに付き添うようにメガネの美少女が来た。

 

「 …ねぇ、質問に答えてくれる?」

少し苛立ちの籠った声をだす。

 

「 これは失礼した。それで聞きたいことは?」

代表として空色の髪の美女が聞いてくる。

 

「 ここ、どこだい? いつの間にかこの場所にいたんだ。教えてくれるかい?」

「 ここですか~? 確かにお兄さんの服はこの国では不思議ですね~。ここは~「 星、風、あちらを。 」むぅ~、凛ちゃ~ん。」

 

金髪少女の間延びした言葉を遮って 凛 と呼ばれたメガネの少女が指を指す。そちらを見ると【曹】と書かれた旗を掲げた騎兵と歩兵が大量の砂埃を上げながらこちらに向かっていた。

 

「 おやおや、官軍がいらっしゃったようだ。御仁よ、すまんがあちらに聞いてくれ。我らは今、あちらと関わるのは面倒なのでな。」

「 (官軍? やはり此処は昔の中国か?)…いいよ行って。悪かったね、引き留めて。」

「 いやいや、こちらも良いものが観れたしな。気にすることではない。それでは御免。」

「 ではでは~。」

「 失礼します。」

 

と3人組は去って行った。

 

 

 

暫くして、別の3人組が先頭に軍を引き連れてやって来た。

 

「 華琳様! 前方に男が!あやつですか⁉」

「 いいえ違うわ。報告によると、もっと年配の男の3人組の様ね。」

「 そいつらと関係者でしょうか?」

「 こちらに気付いても逃げないけどわからないわ。」

「 では、直接聴いてみますか?」

「 そうね。何か知っているといいのだけど。」

 

新たな3人組の少女が雲雀に近付く。

 

「 おい、貴様! ここに来る途中、3人組に出会わなかったか!」

「 いきなり失礼だね?君。( ………人が多いな。咬み殺したくなる…)」

「 なんだとッ!」

「 落ち着きなさい春蘭。部下が失礼したわね。」

「 ハァ、気にしなくていいよ。で、一応聞いてあげる。人相は?」

「 秋蘭?」

「 ハッ、体格が大柄な者と小柄な者、髭を生やした中年の男です。」

「 だそうよ。見覚えあるかしら?」

「 ああ、それならさっき咬み殺したからそこら辺に転がっていると思うけど。…いなくなっているね。…チッ、気を取られすぎたかな。」

 

いつの間にか逃げ出していたようだ。

 

「 (咬み殺した?)まあいいわ。見たのよね? 秋蘭、この辺りを捜索するように隊の者達に伝令してちょうだい。」

「 かしこまりました。」

「 華琳様!この者はいかがなさいますか?」

「 そうね、そこのあなた。」

「 …フワァ~、なんだい?」

「 貴様! 華琳様に対してその態度はなんだ!」

 

欠伸をして返事を返す雲雀に黒髪の長い美女が剣を向ける。

 

「 ワオ、僕に刃を向けるのかい? ………なら、」

 

咬み殺すよ とその言葉と共に圧倒的な殺気を雲雀は出す。

逃げられたり、人が多かったりとストレスが溜まっていた為に少し多く出してしまったようだ。

しかし3人の少女はその殺気に冷や汗を掻き、膝を屈しそうになる。引き連れていた隊の者の一部は気絶した者も出ている。

そして本能で理解する。自分達が敵わない相手だと。

 

「 …ごめんなさい。部下が度々失礼したわ。申し訳ないのだけど、私達に着いてきてもらえないかしら?」

「 …僕も聴きたいことがあるからいいよ。けど、相手との力量を考えるべきだと部下に言っておくべきだよ。」

「 肝に命じておくわ。」

「 華琳様⁉」

「 黙りなさい、春蘭。今のは貴女が悪いわ。」

 

雲雀は殺気を解き、華琳と呼ばれる金髪の紫色の髪留めをした少女の言うことに従う。

 

 

 

そして少女達に先導され、とある街にやって来た雲雀。

 

「 …面倒だけど、そろそろ名前を教えてくれないかい? 君達をなんて呼べば良いのかわからないからね。僕は雲雀。雲雀恭弥だ。君達は?」

 

雲雀が今更ながら自己紹介をする。

 

「 姓が雲に名が雀、字が恭弥? 珍しいわね?」

「 ん?違うよ。姓が雲雀に、名が恭弥だ。字なんてないよ。」

「 ますます珍しいわね。字がないなんて。」

「 そうかい?まあ、僕はこの国の者じゃないからね。」

「 そうなの? 確かに衣服は見たことのないものをしているようだけど。」

「 それより、そろそろ君達の名前を教えてもらえるかい。」

 

 

「 そうだったわね。私は姓が曹に名が操、字が孟徳よ。よろしく。」

金髪の少女が名乗り、

 

「私は、姓が夏候、名が惇、字が元譲だ。…さっきは失礼した。」

それに続くように名乗る黒髪の少女。渋々ながらも謝罪する。

 

「姓が夏候、名が淵、字が妙才。姉者がすまなかった。許してやってくれ。」

水色の髪の片目を隠した少女が最後に名乗る。黒髪の少女と姉妹のようだ。

 

しかし少女達の名乗りに雲雀は表情は平静を保っているが、内心驚いていた。

 

( は? 曹操?それに夏候惇に夏候淵? 確か三國志の英傑で男性だったはずだけど、目の前にいるのは女性だ。嘘を言っている様子はない…。

どういうことかな?どこぞの騎士王みたいに何処かの社長が描いたのか? いやいや落ち着け。ここは中国のはずなのに相手は日本語で話している。つまり平行世界か何処かの世界か? 歴史は今どれくらいだ? それと1つ確認しておくか)

 

「 …孟徳殿、尋ねたいことがある。」

「 畏まってどうしたの?」

「 先程名乗ったもの以外に呼び合っていたがそれはなんだい?」

「 真名のこと?」

「 真名?」

「 知らないの?」

「 ああ、知らない。どういったものか説明してもらってもいいかい?」

「 ええ、構わないわ。」

 

と、真名について説明してもらった。

 

「 …そんなもの、見知らずの者の前で呼ばないでもらいたいな。わからないだろ。」

雲雀は頭に手を手をやり、思わず本音を洩らす。

「 そう感じるのは、あなたが違う国の者だからよ。」

「 そういうものかな?(それにしても真名、か。これで平行世界が確定したね。それにただ過去に来ただけならまだしも、平行世界となると…帰還は絶望的、だね。)

「 ちょっと、顔色が悪いわよ?」

 

と曹操が心配そうな顔で見てくる。

 

「 いや、少しね。…悪いけど聞いて貰いたいことがある。聞いてもらえるかい?」

「 …いいわ。聞いてあげるわ。」

「 ありがとう。」

 

雲雀は、3人に自分の身に起きたことを話す。

 

 

次回に続く…

 

 

 

 

説明

雲雀恭弥(中身別人)

今作品の主人公。某家庭教師のヒットマンに出てくる最強の風紀委員長に憑依転生した。前世の自分のことは曖昧にしか覚えていないが知識等は覚えている。

雲雀になった為に強くなろうと特訓した。本家より性格が柔らかいが、それでも厳しい。

若干肉体に精神が引っ張られる(戦闘狂な所など)。

他のボンゴレ守護者の武器を使えるので特訓した。どれも一流以上の腕前。しかし、本人曰く、まだまだ、だそうだ。

死ぬ気の炎で応用できるものは前世の知識を生かし、再現したりしている。

 




やっぱり書くのむずかしいけど楽しい。
雲雀さんみたいに書けたかな?
雲雀さんって恋愛しそうにないからヒロインどうしよ?

誤字など気になることがあれば、報告お願いします。
読んで下さりありがとうございました。


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新たな出会い? 咬み殺す! +番外編

評価、感想、お気に入り登録、そして読んでくださりありがとうございます!
まさか経った2日でUAが1000を超えるとは思いませんでした。リアルでは、素でマヌケ面をさらしてしまいました(*/□\*)
なので、頑張って2話目を書き上げました。
無理だと思う人はカムバアアァァァァック!!!!してください。
この作品でもいい人は本編へどうぞ。


3人に自分の身に起きたことを話した雲雀。その話を聞いて、3人の少女達は

「 俄に信じられないわね…」

「 そうですね、華琳様。しかし、纏っている衣服はこの国にはないものですし…」

「 ………。」

「 春蘭?どうしたの?」

「 姉者?」

「 華琳様~、秋蘭~。つまりどういうことなのだ?」

『 はぁ~。』

 

曹操と夏候淵は理解できたようだが、夏候惇はわからなかったらしい。それに二人は頭を抑え、ため息を吐く。どうやら苦労しているらしい。

 

「 …元譲。」

「 む、なんだ? …えぇ~と。」

「 雲雀でいいよ。そちらからすると恭弥は、名と真名に該当するらしいからね。」

『 なっ!? 』

 

3人は、なにやら驚愕する。

 

「 ? どうかしたのかい?」

「 …貴方、初めて会ったばかりの私達に真名を預けたと言うの?」

「 ああ、君達の認識ではそうなるのか。別に気にしなくてもいいよ。」

「そういう訳にはいかないわ。なら、私達も真名を預けるわ。」

「 華琳様⁉」

「 黙りなさい、春蘭。」

「 悪いけど、真名とやらは貰う気はないよ。」

「 何⁉ 貴様ぁ!華琳様の真名が受け取れないとでも言うのか!」

「 …君はいったいどっちなんだい? それにさっきのことをもう忘れたのかい?」

 

こちらを怒鳴る夏候惇を雲雀は睨む。すると先程のことを思い出したのか押し黙る。

 

「 姉者が度々すまないな、雲雀、でいいか? しかし、何故真名を受け取らないか理由を聞いてもいいか?」

「 君、中々苦労しているみたいだね。雲雀で構わないよ。そうだね。理由はまず、価値観の違いだね。」

「 価値観?」

「 そう。僕たちの国では、真名がない。それに名前を呼ぶだけで、不愉快になったとしても罪に問われることはないよ。あったとしても怒ったり、無視するだけだね。」

「 …そう、なのか。」

「 それに君達は知らなかっただけだろう? なのに、僕が言ったから自分達も言うなんて理不尽でしょ?

それと、行く宛てもないから当分お世話になりそうだけど、構わないかい?」

 

 

「 わかったわ。それと貴方、これからは“天の御使い”と名乗りなさい。未来から来たとか言うより信じられやすいでしょうから。」

「 天の御使い? なんだい?それ。」

「 もしや彼がですか、 華琳様?」

「 ええ、たぶんそうよ秋蘭。 それで雲雀、天の御使いとはね、菅輅という占い師が予言で争いをおさめるために流星とともに現れるだろうとした者の名称よ。」

「 …胡散臭げだね。(天の御使い、か。ある意味あっているかもね。死ぬ気の炎のことを知っているのか?その菅輅という占い師は。)」

「 そうね。でも、貴方が現れたのだから嘘と言えないわね。」

「 そうだね。まあ、これからよろしく。孟徳。」

「 ええ、こちらこそよ。私の覇道の為に力を貸しなさい。雲雀。」

 

二人は握手する。

こうして、未来の覇王とその隣に立つ雲の守護者の物語が始まる。

 

 

 

~1ヵ月後~

 

曹操達3人組と雲雀、騎兵と歩兵が賊が出た為、討伐に来ていたのだが、

「 ねぇ、秋蘭。」

「 …はい、華琳様。」

「 雲雀は、どうしたのかしら?」

「 …群れるの嫌いだから、僕は勝手にやらしてもらうよ。 とのことです。」

「 まったく、あの男は…。」

 

華琳は青筋をたてる。主君の機嫌を下げながら、一行は進んでいき、その途中一人の少女に出会う。

 

 

一方その頃。

その少女達から離れて単独行動している雲雀はと言うと、

「 …咬み殺しがない草食動物だね。」

………賊を狩っていた。

 

「 …ん?」

雲雀は、何か聞こえたのか移動を始める。

暫く歩くと小さな村があり、その前に賊が100人を超える数が押し寄せている。

しかし、一人の少女が自身よりも大きい得物で凪ぎ払い、食い止めていた。

だが、疲れが出ているのかだんだんと押され始めている。

 

「 …はあ、はあ」

「 おい、ガキが疲れ始めたぞ! このまま押せ!」

「 っ!(このままじゃ、村が…!)」

「 グアッ!」

 

『 え? 』

 

突然、賊の後方から一人、ものすごい勢いで飛んできて、少女と賊達が阿然とする。賊の一番後ろを見ると、

 

「 …随分と詰まらないことしているね。そんな事をしていると、僕みたいなのが来るよ?」

 

獰猛に嗤って、トンファーを両手に持ち、歩いてくる雲雀の姿があった。

その迫力に賊達は呑まれそうになるが、大声を出し複数人で襲いかかる。しかし、相手が悪かった。

 

「 無駄だよ。」

一瞬で蹴散らす。学ランをはためかせ、トンファーを構え、向けられるその鋭い眼光に賊は震え上がる。

 

「 …咬み殺す!」

 

その一言から圧倒的だった。トンファーを巧みに操り、一人一撃で地面に沈めていく。

その圧倒的な武を一人の少女だけが観戦していた。

数分で百人近くの賊との決着がついた。

 

「 所詮、群れるだけの草食動物か。」

雲雀は詰まらなそうに呟き、トンファーに付いた返り血を払う。

 

「 あ、あの…」

先程奮闘していた少女が話しかけてくる。

 

「 ん? どうしたんだい?」

「 助けてくださり、ありがとうございました!」

ガバッと少女が雲雀に頭をさげる。

 

「 あの程度、気にしなくてもいいよ。それにしても一人でよく頑張ったね。」

「 あっ ///」

 

雲雀は少し微笑み、少女の頭をやさしく撫でる。少女は、顔を赤く染め、下を見るがそれを黙って受け入れる。

 

少しして、まだ少し顔が赤く染まっている少女がお礼をしたいと村に雲雀を案内する。

そして、村の人たちからもお礼を言われて歓迎される、珍しくたじたじの雲雀の姿があった。

 

 

しばらくすると

「 え⁉ 何、この人の山⁉」

 

外から声が響く。

その声に真っ先に反応し、外に向かったのは先程の少女、典韋だった。声の主に泣きながら怒鳴り、先程の状況を説明する。

声の主の少女は、顔色を青くする。自分がいない間、村が危機に陥りそうになったことに気付いたからだ。

その少女に着いてきたのが、孟徳達3人組と少数の兵だった。3人組は、表情に余裕がなくなる。すると

 

「 ん? 孟徳達か。どうしたんだい?」

雲雀がいつも通りに出てくる。

 

「 雲雀⁉ どうしてここにいる?」

春蘭が代表として聴く。

 

「 適当に賊を狩っていたら出会したんだよ。」

「 …そうなの。今回は助かったわ、ありがとう。」

孟徳はお礼を言う。

 

しばらく話し合い。この村を曹操の守護下に置くことになった。そして、孟徳は許緒と典韋を軍に勧誘し街に戻っていく。

…帰りは、雲雀も一緒に行動だ。雲雀はものすごく嫌そうな顔をしているが。

 

 

夕食の時、仲康こと真名が“季衣”と元譲が大食いで周りをドン引きさせた。

雲雀は静かな食事が好きなのだが。孟徳に同じ天幕で食べるように言われたので渋々、端で食べている。

その隣に典韋こと真名が“流琉”が座って話しかけている。

因みに、季衣と流琉とは真名を交換した。村を救ってくれたからだそうだ。

いつの間にかいる(雲雀にとっては面識がない。そもそも興味がない)猫耳フードの少女が顔色を悪くしている。

孟徳は呆れながら、妙才は姉を心配そうにしながら食事をしていた。

 

 

 

翌朝、雲雀は何となく孟徳の天幕まで向かった。

朝食は、季衣等の大食いによって量が不足し食べられなくなってしまった。…因みに、件の二人は反省していた。

 

天幕まで着くと、空気がピリッと緊張が走っているのに気づいた。中に入ると、怒気を静かに高めている孟徳と頭を下げて顔色が悪い猫耳フードがいた。

 

「 どうしたんだい、孟徳。」

「 あら、雲雀? 今お灸を据えている所だから少し待っていてくれるかしら?」

「 ん? ああ、糧食の量が少なかったのは、そこの娘が関係しているのかい?」

「 ええ、そうね。でも、その事で怒っている訳ではないのよ?」

「 ふ~ん。まあいいけど。後、これ。」

 

と雲雀は懐にいれていた物を孟徳に投げ渡す。

 

「 これは?」

「 果物を干したモノだよ。この前、作ったんだ。これを軽く摘まんで少しは腹が満たされると思うよ。」

 

渡したのは、ビンに入ったドライフルーツ擬きだった。

雲雀が暇つぶしの一環として作ったモノだ。

この雲雀、実は料理ができる。何気に本家よりスペックが高いかもしれない。

 

雲雀は言い終わると、じゃあ と天幕を出ていった。

その後ろ姿に孟徳が微笑んでいたことを雲雀は知らない。

そのあと、季衣から自分も~とねだられる事も雲雀は知らない。

 

 

 

~さらに数ヵ月後~

あの賊狩りの後、猫耳フードこと荀文若が曹操軍の筆頭軍師になった。ことある毎に雲雀を睨んだり、理不尽に罵倒したり突っ掛かるが雲雀本人は何処吹く風。全く相手にしない。それがムカつき、さらにヒートアップするが…との悪循環。周りは呆れていたりする。

 

 

とある日、街を視察することになった雲雀達。雲雀は一人で行動していた。

道を歩くと色々な者達が声を掛ける。

実は、雲雀は時折街をぶらりと徘徊することがある。

 

始めは天の御使いや最近入ってすぐに曹操軍の上位に位置する立場になったと知られていたため、畏まられていたが普通に会話し、困ったことがあれば手を貸してくれる。不届き者には制裁をする姿を見せる。

こんなことが続けば心を開いてくるのは時間の問題だった。その為、意外にも街の人達に慕われていたりするが本人は気付いていない。

彼は守護者なのだ。加護下の者は守るのが当たり前と無意識に思っている彼はその事に気付くのは何時になるやら。

 

 

集合時間が近付いてきたため、集合場所に向かう途中、孟徳達を見つけた。

妙才と元譲がなにやら老婆に怒りを向けている。孟徳は、それを咎めている。

 

「 どうしたんだい?孟徳。そこの二人は怒っているみたいだけど。」

「 あら、雲雀。ちょっとね。私の占いの結果が気に入らないみたいなの。別に私はそれすら覇業で越えてみせると言うのに。」

「 ふ~ん。何を言われたか知らないけど、それほど慕われていると思えば?」

「 ええ、わかっているわ。今夜は二人とも呼ぼうかしら?」

「 ………程々にしなよ。」

 

孟徳の発言に呆れながら注意する。

 

「 …そこの御方。」

「 なんだい? 占い師のお婆さん。生憎だけど僕は占いとか気にしない質でね。」

「 老婆の戯れ言と思って聴いてもらって構わんよ。

そこの者は、御主がおれば道を踏み外す事はないだろう。大切にするのじゃぞ?「 なっ⁉ ///」

そして大局を大きく変えれば、待っているのは身の滅びのみ。しかと見極めよ、天空の力を宿す守護者よ。」

 

老婆の発言に途中孟徳は驚きの声をだす。…頬は赤く染めている。

しかし、後半の言葉に雲雀は目を細める。

 

「 …へぇ。僕の死ぬ気の炎(ちから)について知っているのかい?」

「 なぁに、占いの結果じゃよ。」

3人は何の話だかわからないがそれを無視し、雲雀は問うが占いの結果と答えられる。

 

「 ワオ、答えをはぐらかされるね。まあ、忠告は感謝するよ。」

とお礼をいい、駄賃をだす。そして、その場から離れていく。それに慌てて3人も続く。

 

余談

「 所で3人とも、何で籠を持っているんだい?」

「 私は部屋の籠の1つが穴があいてしまってね。」

「 ふふっ。秋蘭のことだから気になってしまったのね。私は面白い娘に会ってね。その娘が売っていたのを買ったのよ。」

「 私は華琳様達のお土産を沢山容れるためにな!」

「 ふ~ん。」

あの後、こんな会話があった。

 

 

 

 

 

番外編(未来での出来事その1)

頭痛と世話

 

ある日、華琳と恭弥以外、仕事などで城からいないときの御話。

 

華琳は、普段なら執務をしている時間だが、今は部屋で布団に横になっていた。

「 うぅ、…あたまが、…いた、い。」

 

頭痛持ちの華琳はたまにこのようなことがある。

このような時は、秋蘭等が世話をしているが今回は全員見事に外せない仕事などが重なってしまった。

その為、泣く泣くある者に世話を任せた。

そう、雲雀だ。

雲雀は、水の入った桶に布を浸し、絞ったものを華琳の額に乗っける。その行動を朝から何度も繰り返している。

 

「 うぅ…」

華琳は痛みに唸る。

 

雲雀は、無言で華琳の頭を優しく撫でる。その際、大空の炎を灯す。そのお蔭か少し表情が落ち着く。

大空の炎は【調和】。その特性を活かし、頭痛の痛みを調和する。だが、完全には痛みを打ち消せていない。

 

「 チッ、精度が甘いか…」

雲雀は小さく舌打ちをし、自身に苛立つ。

 

雲雀は確かに全属性の炎を使える。そう、“使える”だけなのだ。勿論、雲雀は努力した。しかし、相性というものがある。さらに大空の炎は特に扱いが難しい。特性を活かすとなるといくら雲雀でも簡単にはいかない。

実際に全属性を特性も含めて使える雲雀が異常なのだ。

だが、雲雀は納得しない。

 

今はその話をおいておこう。

雲雀はこの様に華琳が痛みに唸ると大空の炎を使う。しかし、【調和】をメインに使うと長くは使えない。身体にどの様な影響を与えるか解らないからだ。

故に雲雀は世話をする。少しでもこの少女から苦しみがなくなるように。

 

 

華琳side

私は頭痛を持っている。その為、痛みが酷いときは横に一日中なっている。こういう時は秋蘭達が面倒をみてくれる。本当にいい娘達だわ。

何時もなら痛みで寝れないのだけど、今回はいつもより痛みがくるのが短い。そのお蔭で眠ることができた。

 

起き上がると、額から何か落ちた。何だろうと思い、手にすると私の体温でぬるまったであろう布だった。

周りを見渡すと壁に背を預け、座りながら眠っている恭弥の姿があった。すると、

 

「 …ん。華琳、起きたのか。痛みは?」

「 ええ、だいぶ良くなったわ。ずっと看ていてくれたのね。ありがとう。」

「 別に。気にしなくてもいいよ。それより、何か食べられそうかい?」

「 もう。お礼くらい素直に受け取りなさい。

そうね、軽いものでお願いするわ。」

「 わかった。少し待ってなよ。」

 

そう言って、恭弥は部屋を出た。食事を作りに行ったのだろう。

 

私が起きたのを感じて、目を開ける恭弥。すぐに私の状態を聴く。世話をしてくれたお礼をすると気にするなと言ってくる。

彼はいつもそうだ。私達のために色々としてくれる。それがどれだけ嬉しいのか彼は気付いているだろうか。

きっと気付いていないわね。普段は鋭い癖にこういったことに関すると察しが悪くなる。

けど、そんな彼を私は、私達は………。

 

「 ふふ、私は欲しいと思ったものは必ず手にいれるわ。だから、待っていなさい、恭弥。貴方の心も私が手にするのだから。」

そう、一人になった部屋で決意する。

 

side out

 

 

 

次回に続く…

 

 

 

 

説明

雲雀恭弥(中身別人)

料理が得意だったりする。鍛練以外にも手を出したら、様々な事に才があることが発覚。料理もその1つ。しかし、作るより食べる方が好き。…なのだが、転移してから和食が恋しくなったのか自分で作ることにした。その時、材料があることに驚いた。

その料理が見つかり、華琳を筆頭に料理上手なメンバーと共に料理をする羽目に。………どうしてこうなった。

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。
因みに雲雀はまだ死ぬ気の炎は教えていません。

ヒロインは、一応魏のメンバーにしようと思いますが、アンケートにご協力してください。締切は1週間です。どうかお願いします。

気になることなどあったら報告お願いします。


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窮地? 咬み殺す!

評価、お気に入り登録、アンケートのご協力(まだしている)、読者の皆様、ありがとうございます。
あれからUAが2000オーバーで驚きました。アンケートで戦闘を要望が多かったので頑張りました(上手く出来たとは言っていない)

このような作品は無理と言う方はカムバックをお薦めします。この作品で宜しければ本編へ。眠い中頑張ったので、酷ければスミマセン。
では、どうぞ…


あれから暫く経ち、賊を討伐に出る回数が増えてきた頃、賊の方にも変化が起きていた。

 

「 賊が身に黄色の物を身に付けている?」

「 はっ、その様な報告があがっております。」

孟徳に部下から報告がくる。

 

それにより、曹操軍の上部に召集がかかる。

 

「 ――、これが最近の報告よ。これについて何かあるかしら?」

孟徳が尋ねるが周りは考える。

 

「 …黄巾の乱か。」

雲雀は知識にあることを呟く。

 

「 雲雀?何か知っているの?」

「 詳しくは知らないけど、そんな出来事があったくらいと首謀者の名前しかわからないよ。あまり興味もなかったしね。」

「 何⁉ 首謀者を知っているのか⁉」

「 落ち着きなさい、春蘭。それで雲雀。それも天の知識なのかしら?」

「 まあね。でも、この世界でも同じかは解らないけどね。」

 

雲雀が未来から来たと知っているのは、曹操軍の上部の人間のみ。混乱を招かないように未来の知識を天の知識と言い換えている。誰が聴いているかわからないからだ。

雲雀はその知識を孟徳に教え、できる案を文若を中心にまとめ、行っていく。その甲斐があり、より街が発展していった。

 

「 そうね。でも知っておけば後に役に立つわ。」

「 …首謀者の名は張角。それに後、二人だね。確か張兄弟って言われていたかな? それ以外はわからないよ。」

「 それだけ判れば十分よ。その者を中心に情報を集めましょう。秋蘭?」

「 はっ、そのように部隊に伝えておきます。」

「 ええ。桂花?」

「 はい、華琳様。その情報を基に策を練ります。」

「 よろしくね。春蘭?」

「 はっ、華琳様! 必ずその者の首級を討ち取ってみせます!」

「 期待しているわよ? 雲雀?」

「 なんだい?」

「 貴方も協力しなさいよ?」

「 咬み殺しがいがあればね。」

 

雲雀の発言に孟徳は苦笑する。

黄巾党の話は一旦終わるが、別の事でそのまま、会議は続いていった。

 

 

 

現在、曹操軍は進軍していた。

普段なら、孟徳を中心に妙才と元譲などの武官が側にいるが、現在は妙才と季衣、流琉がいない。

その3名は、それぞれ部隊を会わせて1500人程度を率いて賊の討伐に向かていた。

しかし、妙才からの伝令で敵は倍の数で押し寄せている為に近くの街で防衛すると報告が来たのだ。

その為に現在、動かせる部隊を孟徳が率いて応援に向かっている。だが、人数が増えればその分足が遅くなる。

 

「 進行速度をあげる!着いて行けないものは後から追ってきなさい!」

孟徳は声を張り上げ、指示をだす。

 

「 華琳様! 私だけでも先に行かせてください!」

「 …駄目よ春蘭。」

「 華琳様!」

「 落ち着きなさい春蘭! 今貴女が出たら、策に支障が出るわ。悔しいのは貴女だけじゃないのよ!」

「 …すみません、華琳様。すまん桂花。」

「 …ふん。」

 

一人飛び出そうとする元譲を咎める孟徳と文若。それぞれ、苦虫を噛み潰したような顔をしている。

そこへ、

 

「 伝令!妙才様からです!」

「 何かしら。」

妙才からの伝令がくる。それに焦りを抑え、孟徳が尋ねる。

悲痛そうな表情の伝令役が伝令の内容をこの場の者に伝える。その内容に孟徳達は絶句する。

 

「 そこまで、兵力に差が………?」

「 防柵ももう僅かで突破されると…妙才様が。」

 

皆が焦る中、雲雀は自分の今の感情に悩んでいた。

( …なんだい? この苛立ちは。)

 

今の現状に苛立ちを感じていた。雲雀は転生してから強くなること等、自分を高めること以外に関心を持たなかった。そんな自分が妙才達を失うかもしれないと知らされ、苛立っていることに驚く。

 

( …僕が数ヵ月しか過ごしていない彼女達を失う事に苛立っている? 何故?)

故に悩んでいた。しかし、目の前を見て考えをやめる。

 

( …孟徳が泣いている?)

実際には泣いていないが、雲雀には何かに耐えているように見えた。その姿を見て雲雀は迷いを捨てる。

 

( …僕は雲雀恭弥だ。雲の守護者だ。)

雲雀は決心する。己が死ぬ気の炎(ちから)を奮うことを。無意識だが、自分が寄り添っても良いと認めている大空(華琳)の心を守る為に。

 

「 孟徳。」

「 …何、雲雀?」

「 前に僕が占い師に言われたことを覚えているかい?」

「 貴様っ、こんな時に何を言っている!」

「 あんた、何を言ってんの⁉ これだから男は!」

「 貴女達、少し黙りなさい。」

 

孟徳が元譲等を黙らす。

 

「 …覚えているわ。それが今の状況に何か関係するの?」

苛立ちを籠めながら答える孟徳。

「 僕のその力を使えばこの状況を打開できる。」

周りは息を呑む。

「 命令しなよ。いや、君の気持ちを教えてくれ。孟徳。僕は拒まない。さあ」

 

言ってくれ。と、その言葉を孟徳に投げかける。

 

「 …おねがい。あの娘達を、私の大切な娘達を守って‼」

「 ああ、確かに聴いたよ。君の願い。この雲の守護者が必ず叶えよう。」

雲雀は不敵に嗤い、背を向け歩きだす。しかし、足を止めて、顔を孟徳達に向ける。

 

「 ああ、そうだ孟徳。」

「 …何かしら。」

「 守るのは構わないけど、別に歯向かう者は咬み殺してもいいのだろう?」

 

雲雀は獰猛に嗤う。孟徳は呆気に取られるが笑みを浮かべる。

 

「 …ふふっ。ええ、やってしまいなさい!雲雀!」

 

雲雀は腰に巻いているベルトに付けた箱を手に持つ。

そしてリングに炎を灯し

 

「 …開匣。 」

辺りに炎が迸る。

 

 

妙才(秋蘭)side

今、私は兵達に指示をだし、黄巾党の街への浸入を阻止している。季衣や流琉がいくら奮闘してくれても数が多すぎて、こちらの兵は疲弊仕切っている。

 

楽進こと真名が凪、季典こと真名が真桜、于禁こと紗和の3人娘が率いる義勇軍が参加してくれたが、それでも兵力差は埋まらない。

伝令を送ったが間に合うか。

 

「 報告します!第4門の防柵が突破されそうです!」

 

その報告に内心舌打ちをする。しかし切り替えて指示をだす。

 

「 …私が行こう。凪、ついてこい。季衣達にはその場で防衛に専念するように。真桜達は住人の避難を急がせ。それでは、いくぞ!」

『 はい!(なの~!)』

 

前線に赴き、兵達を指示しながら戦う。始めは弓を使っていたが矢が尽きてしまったので、賊が持っていた剣を奪い、それで戦っている。

しかし、指示を考えたりしながらなので、思考と肉体にズレがうまれてしまった。さらに賊が持っていた剣なので、当然手入れなどされていない。

賊を切り殺したが、その肉体に剣が引っ掛かってしまった。

 

「 しまっ⁉」

敵が好機と思い、剣を振り落ろすところがゆっくりと見えた。

 

( ああ、すみません華琳様。すまん姉者。…二人を頼む雲雀。)

走馬灯がよぎる。まさか二人以外に、ましてや男が出てくるとは。

 

雲雀恭弥。数ヵ月前に現れた天の御使いの男。

始めは、危険な男と警戒したが、接していく内に不器用だが優しいヤツなのだと知った。

一人が好きで、周りに無関心かと思えばしっかり見ている。

厳しいと思えば小さなことでも気にしてくれる。

愚痴をもらしても何も言わず、最後まで聴いてくれた。

今まで見てきた男達と違った、不思議なやつだった。

そんな男と接していく内にいつしか引かれていった。

 

( ああ、もっと一緒にいたかった…)

 

振り落ろされる剣に目を瞑り、死の覚悟を決める。

しかし、衝撃が来ず、聴こえたのは自分の身を裂く音ではなく金属音だった。

目を開くとそこには、好いた男(雲雀)の背があった。

 

side out

 

 

 

雲雀はあの後、開匣し、Ⅹグローブを取りだした。そして最大出力で街に向かった。正面の空気抵抗は【調和】で打ち消していたが完全には無理で痛みが襲ってくる。しかし、雲雀はその嫌みを無視し飛び続けた。

街に着き、戦場を見ると妙才が斬られそうになっている場だった。一瞬でその場に向かい、間一髪で受け止めた。

 

「 …雲雀?どうしてここに…」

妙才が驚く。まだこの場に来れないであろう男が目の前にいることを。

 

「 なっ⁉ いつの間に⁉ 」

驚く賊を雲雀は蹴り飛ばす。そして、妙才に近付いて無言で膝と背に手を回し、抱き抱える。所詮お姫様抱っこだ。

 

「 え? なっ、えっ、ちょっ⁉///」

あまりに突然で妙才は赤面に成り、珍しく慌てる。しかし雲雀は無視し、足に大空の炎を噴出して安全な場所まで飛んで退く。周りが飛んでいることに驚き唖然とする。

 

「 兄さま!」

その声を見ると季衣と流琉、見知らぬ娘が二人いた。そこまで行き、妙才を降ろす。

 

「 どうして、ここに⁉」

その質問に応えず、雲雀は箱を取り出す。それに周りが首を傾げる。そこに傷痕がある銀髪の少女が走ってくる。

 

「 開匣、天空ライオン(レオネ・ディ・チェリー)。」

「 ガウ!」

小さな猫の様な生き物が出てくる。しかし、炎を纏って。それに周りが驚く。

 

「 ナッツ、みんなをよろしく。」

「 ガウ 」コクリ

ナッツと呼ばれた小さな猫の様な生き物は、妙才に飛びかかる。

 

「 なっ⁉ あつ…くない? むしろ暖かい。」

妙才は突然のことに驚きナッツを抱き止めるが炎を思いだし声を出そうとするが、その優しい暖かさに驚く。

 

雲雀は背を向け、戦場に向かおうとする。

 

「 なっ⁉ そこのあんさん!一人でどうするつもりやねん!」

「 そうなの!みんなで戦ったほうがいいなの!」

「 そうだよ、兄ちゃん!」

「 そうです!兄さま!」

周りが止めようとする。しかし

 

「 大丈夫。少し待っていなよ。」

雲雀は微笑んでいた。

 

それに周りが固まる。雲雀は再び、大空の炎を噴出し大通りに向かう。

 

大通りに降り立つと、大勢の黄巾党が集結していた。

そこに向かって歩んでいく。

「 相手は一人だ!直ぐに殺して残った兵も皆殺しだ!」

賊を指揮しているであろう者が声を張り上げる。それに周りの賊が続いて大声をだす。しかし、

 

「 曹操軍が天の御使いにして、大空を守る雲の守護者。…ここを通りたくば、この僕を殺してみなよ。」

 

雲雀の静かに、しかしはっきりとその言葉が響く。それと同時に空気が重く感じるほどの圧力がかかる。

それに黄巾党は呑み込まれる。一部はたったそれだけで気絶してしまう。

それほどの威を雲雀は出していた。

 

「 う、狼狽えるな!たかが一人だ!殺せええええ!!!!」『 うおおおお!!!!』

大群が押し寄せてくる。

 

「 咬み殺す!」

 

雲雀は飛び出す。一対数千の闘いがここに火蓋が切られた。

 

 

 

賊は震え上がった。たった一人に。

人数は圧倒的。勝ち目なんてあるはずがない。

しかし、現実では、こちらが一方的に蹂躙されている。

…これは悪夢だと誰かが言った。

 

 

雲雀はトンファーを手にして、敵陣に突っ込む。一番前にいるものを殴り飛ばし、後方を巻き込む。トンファーに仕込んでいた鎖を雲の炎の特性【増殖】により、リーチが延び、より遠くの敵を巻き込み捕縛する。筋力を【増殖】させ、恐るべき怪力でそれを回し解き放つ。それに周りが巻き込まれ、被害が増える。

 

凪ぎ払い、蹴散らし、賊はものの数分で数百名減った。しかし、まだまだ数が多い。流石に面倒なのか

 

「 開匣、おいで雲ハリネズミ(ポルコスピーノ・ヌーヴォラ)。」

刺々しい小さな生き物が出てくる。

 

「 よろしくね、ロール。」

ロールと呼ばれた生き物が丸まり、その数を増やしていき浮かぶ。

 

賊がそれを見上げると、すごい勢いで落ちてくる。それに巻き込まれ、賊がどんどん数を減らしていく。その球体は、数を減らしていくことはない。逆に増えていく。

 

その間にも雲雀は賊を狩る。トンファーや蹴り等で的確に一撃で仕留めていく。さらに相手を吹き飛ばし、周りを巻き込むことにより被害を増やす。

怖じ気付き、逃げ出そうとしても球体が落ちてくる。故に雲雀を倒そうとする。だが、

 

「 その程度かい? ほら、掛かってきなよ。」

獰猛に嗤い、人を殴り飛ばし、蹴り飛ばす雲雀に及び腰になる。

 

しかし、そんなことを許す雲雀ではない。

「 来ないのかい? なら、こちらから行くよ。」

 

襲ってこないならこちらからだと突撃する。もう千人近くを叩きのめしているというのに動きに変化がない。

 

トンファーで剣を、槍を、斧を、相手の武器をいなし、時には受け止めカウンターを喰らわす。雲雀は埃や返り血で汚れているが無傷だ。

振り向き際の勢いを利用して回し蹴りを繰り出す。骨が砕ける鈍い音が感じる。しかし、雲雀は止まらない。

 

例え、農民だったとしても、賊に堕ちたものに容赦をするつもりはない。怨まれても構わない。それすら背負ってみせよう。

何故ならば、覇道を歩むあの少女はその道を歩むのだから。彼女にだけ罪などを背負らせるつもりはない。

けして、孤独になどさせわしない。この地にいる限り共にあると決めたのだから。それにその彼女の大切なモノに手を出したのだ。只で済ます訳がない。

 

故に雲雀は止まらない。己の誓いの為に。

数時間か体感ではわからないが一人で数千人近くの賊を葬り、ほぼ壊滅状態に追い込んでいた。次の獲物を狩ろうとした時、戦場に銅鑼が鳴り響く。

孟徳達が到着したのだ。

 

雲雀は、近くにいた賊を狩り尽くし街へ戻った。援軍が賊の残りを排除しにかかる。もう大丈夫だと思ったのだろう。

街に着くと孟徳達の姿が見えた。向こうもこちらに気付いたのか、こちらに駆けてくる。

 

「 …雲雀!」

「 …やあ、孟徳。」

「 貴方、無茶し過ぎよ!」

心配する孟徳に思わず笑ってしまう。

 

「 何を笑っているのよ!」

「 いや、別に。それより孟徳。」

「 何?雲雀。」

「 約束通り。守ったよ。」

孟徳は息を呑む。

 

「 ええ、ありがとう。雲雀。」

「 どういたしまして。………でも、今回は疲れたよ。先に、休ませて、もらうよ…」

「 雲雀⁉」

「 …スゥ…スゥ……」

 

雲雀は孟徳に倒れこむ。この世界に来て、久しぶりに死ぬ気の炎を使いすぎたのだ。

ナッツやロール、Ⅹグローブが雲雀の死ぬ気の炎がきれたため、箱兵器に戻る。

倒れた雲雀に慌てる孟徳達。だが雲雀が眠っているだけだと解り、安生の息を吐く。

 

 

孟徳は雲雀を抱え直し、自分の膝に頭を乗せる。そして頭を優しく撫でる。

「 本当にありがとう、雲雀。」

孟徳は微笑む。それを周りが暖かい目で見守る。

 

この戦いが後に、曹操の雲の守護者による大蹂躙劇と歴史に語られるとはまだ、誰も知らない。

 

その後、賊の拠点が見つかった。雲雀を残し、負傷者と数十名を街に派遣させた。誰も文句を言わない。

逆に早く決着をつけようと誰もが燃え上がっていた。

そこから、数の差を物ともせず、曹操軍が圧倒し勝利した。その後、城に旗立などあったが割合しよう。

 

街に戻ると雲雀はまだ眠っていた。

仕方がないので、雲雀は孟徳と同じ馬に乗せられた。

その孟徳が嬉しそうにしていたのを知っているのは、昔からの付き合いがある従姉妹と複雑そうに見ている猫耳軍師だけだった。

 

 

次回に続く…

 

 

 

説明

雲雀恭弥(中身別人)

強くなること等に思考が向いているため、若干鈍感に。女性に興味がない訳ではないが、優先度がかなり低い。

今回、自分の気持ちに疑問を持つ。…自覚するのはいつになるやら。

 




口調が難しい。戦闘シーンも大変。恋愛描写もどうすんのって感じです。
誰か文才ください!いくらですか?
まあ、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
気になることがありましたら、ご指摘していただくと助かります。
アンケートは6月12日までに締切にさせていただきます。ご協力お願いします。


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遭遇? 咬み殺す! +番外編

どうも、お久しぶりです。アンケートのご協力ありがとうございました。活動報告にて、ヒロインアンケートを実施しておりますので、そちらもご協力お願いします。

新たにお気に入り登録してくださった方、評価してくださった方、読んでくださった方、ありがとうございます。まさかUAが5000を越えるとは思いませんでした。
思い付いたネタの話なので楽しんで頂けたら幸いです。

遅くなりましたが本編へ(この作品は無理だと思う方はカムバックをしてください。)どうぞ。


あの蹂躙劇から暫くたった。

 

雲雀は孟徳こと“華琳”からあの戦いで協力し、曹操軍に加わった3人娘を部下に持つこと。部隊を率いるように言われた。…雲雀はとても嫌そうにしていたが。

 

因みに孟徳、元譲、妙才と真名を交換した。

理由は、妙才の命を助けたことだ。…元譲こと春蘭は号泣しながら感謝して軽く雲雀に引かれていたが。

 

 

部下を持ち、部隊を率いるようになった雲雀はまず、部隊と対話した。そして互いに何が得意で何が苦手なのか教え合い、仲を深めさせた。

 

調練を始め、まず、基礎体力を着けさせるため。ランニング、筋トレをさせた。不満げな者は、雲雀が直接噛みkゲフン指導していた。

 

馴れてきたら連携の仕方等を教えていた。

こちらの世界に来る前に雲雀が風紀財団でもしていたことだ。

スパルタだが、それ故に部隊の者は物凄い勢いで成長をしていく。…その代わりに、雲雀を崇拝するレベルで慕うことになる。(風紀財団レベル)

 

 

文謙こと真名が凪は、氣を扱えると言うので自分の限界を確かめさせた。これは雲雀も死ぬ気の炎でやったことだ。扱う力は違うが己の限界を知ることで配分を考えることができる。

他にも体術が得意と言うので雲雀が組手をし、動きなど指導したことによりかなり慕われている。…犬の尻尾があればぶんぶん振っているであろうほどに。

 

曼成こと真名が真桜は、物作りが得意と言うので現代の物で作れそうな物を教え、試行錯誤しながら試作品を出しては、改良していた。…流石に爆発落ちには雲雀は呆れたりしている。しかも野生的勘で全て回避していた。技術力の高さは素直に認めている。雲雀は内心モスカを作れないか考えたりしている。頼むつもりはないが。

 

文則こと真名が紗和は、周りの服装等気にかけていた。なので、雲雀が現代の服装の知識等を教えてみたら興味深く聴いていた。

サポートが得意な様で補佐をよくさせ学ばしていた為、自分がいない時には調練等任せたりしている。

( メガネや語尾については雲雀は何も聞かなかった。)

 

 

 

 

現在は夜。調練場に1つの影があった。雲雀だ。

雲雀は、目を瞑りイメージする。仮想敵は、スクアーロだ。目を開き、構える。

 

イメージのスクアーロは声をあげながら距離を縮め、剣を振り抜く。狙いは首だ。

それをしゃがんで避け、腹に一撃を入れようとするが、蹴りが先に出されていた。

 

雲雀はそれを受け止め、その勢いを利用して距離を取る。雲雀はすぐさま体勢を低くし、スクアーロに突っ込む。それを読んでいたように剣が振り落とされる。

 

その剣をトンファーで受け流す。さらにその勢いを利用して回し蹴りを側頭部に繰り出す。その際、剣はトンファーで押さえつける。蹴りは腕で止められるが確実に骨を折った。

 

しかし、お返しとばかりに蹴り飛ばされる。雲雀は転がりながらも起き上がる。

そして互いに見詰め合い、構える。

お互い飛び出し、交差する。

…倒れたのはスクアーロだった。

 

イメージを解き、息を吐く。そして、1つの気配が自分を見ていることに気付く。

そちらを見ると華琳がいた。

 

「 …華琳か。こんな夜にどうしたんだい?」

「 …貴方、いつもあんなことしているの?」

「 …別に。ここ最近からかな。最近は部隊に合わせて調練しているからね。」

「 …ごめんなさいね。」

「 謝る事じゃないよ。それに元々こうするつもりだったからね。(久しぶりにと言っても死ぬ気の炎の使いすぎで倒れてしまったしね。速く感覚を取り戻さないと。)

だから、その顔をやめてくれないかい?」

申し訳なさそうに俯く孟徳に近付き、優しく頭を撫でる雲雀。

 

「 それで? どうして此処に?」

「 少し眠れなくて歩いていたのよ。そうしたら、音が聴こえたのよ。気になって見にきたら貴方がいたのよ。」

「 …騒がしくて悪かったね。」

「 離れていたからそこまで気にしなかったわ。」

「 そう言って貰えて助かるよ。」

二人は縁側に座り、話していた。

 

「 でも、どうしてこんな時間に? 貴方程なら春蘭達と模擬戦で充分じゃないかしら?」

「 確かにね。そこらの賊に遅れを取ることはないだろう。でもね。この間の戦いでまだまだだと実感したんだ。」

「 …何で、貴方はそこまでしてくれるの?」

孟徳が真剣な表情で雲雀を見詰める。しかしそれは、王としてではなく、一人の少女としての問いに感じられた。

 

「 …さあね。僕にもわからないよ。でも、君なら僕の力を貸してもいいと思った。只、それだけだよ。」

そう雲雀は孟徳の目を見詰めながら言った。

 

 

華琳side

「 …さあね。僕にもわからないよ。でも、君なら僕の力を貸してもいいと思った。只、それだけだよ。」

恭弥は私の目を見て言ってくれた。

始めてだった。何も打算もなく力を貸してくれると言ってくれた男は、彼一人だった。

 

今まで見てきた男達は、打算的で、欲望を隠しきれていない、下劣な目で見てきた。失望しかなかった。故に私はそんな男よりも美しく、私を慕ってくれる彼女達を愛でた。

そんな時に現れたのは彼だった。

 

春蘭をも寄せ付けない武を持っていた彼。始めは唯の利害の一致。けど、彼と過ごして行く内に少しずつ惹かれていった。

彼は自由気ままで、扱いは大変だけど優しかった。些細な変化に気付いてくれて何も言わず、傍に寄り添ってくれた。そんな浮雲のような彼の優しさが嬉しかった。

 

秋蘭達を喪いそうになった時、もしそうなったら私は壊れてしまったでしょうね。春蘭も同じ。憎しみにとらわれて、賊を根絶やしにしていたでしょう。兵も顧みず。

でも、彼が救ってくれた。死ぬ気の炎と言う力を使って。

 

彼が橙色の炎をだした時、熱さより暖かさを感じた。その炎は彼の優しさなのだと思った。

飛び去って行く姿を見送り、街に急いで追いかけた。

たどり着いた時は殆ど終わっていたけれど。

秋蘭達の無事な姿を見て安心した。けど彼の姿が見えなかった。その時、秋蘭達を喪うと思った時と同じよう、それ以上に不安を感じた。

血塗れで彼が戻ってきたとき、血の気が引いた。

慌て駆け寄り、彼に声を掛けると、彼は私の願いを守ったことを微笑んで伝えてきた。

自分のことを気にしなさいと思ったけど、それ以上に嬉しかった。

 

私に倒れ掛かった時は慌てたわね。疲労で眠っただけだったので安心したけど。

彼の寝顔を見て愛おしいと思った。

その時、私の気持ちを自覚した。彼が好きなんだと。

我ながら単純だと思う。けれど、好きなものは好きなのだ。この気持ちに偽りはない。

 

 

これから私のように彼に惹かれていく者は増えるでしょう。けど、引く気はしないわ。誰であろうと、ね?

 

…けど、今はこの瞬間を楽しみましょうか。

 

 

side out

 

 

 

突然、華琳は雲雀の肩に頭を預けた。

「 ん? どうしたんだい?」

「 少し、このままでいいかしら?」

「 …別に、構わないよ。」

「 ありがとう。」

そうお礼を言い、華琳は目を閉じた。月明かりが二人を照らし、穏やかな空間ができた。

 

 

暫くすると、華琳から寝息が聴こえてきたが雲雀は動かず、月を眺めていた。

 

「 ………。」

そして何も言わず、肩で眠る華琳を横目で見る。

普段は覇気のある英傑だが、このように無防備の姿を見るとやはり年相応の少女にしか見えない。

 

「 フッ、仕方がないね。…君は、君達は、護ってみせるよ。雲の守護者の誇りに懸けてね。」

眠っている華琳を優しい目で見る。そして、改めて彼女等を護ると己を見下ろす月に誓う。その眼には、覚悟の炎が揺らいだように見えた。

 

 

暫くして、雲雀は眠っている華琳を起こさぬようそっと抱き抱え(お姫様抱っこ)、華琳の寝室まで運んだ。誰にも会うことがなく、寝室に辿り着き、寝具に寝かせる。

「 …おやすみ、華琳。」

小さな声を掛け、部屋を出た。

 

 

 

あの夜から数日後、黄巾の乱の主犯格と思われる張角の情報が集まった。どうやら旅芸人で歌を披露し大変人気を集めていたようだ。

それを利用し黄巾の乱を起こした者が手配書に書かれている大柄の男だ。本当の張角等は城に監禁されているようだ。

 

現在は黄巾党の本拠地に向かい進軍している。

その途中で黄巾党の別部隊と義勇軍らしき者達が戦っている場に居合わせた。

 

「 いかがなさいますか、華琳様。」

「 そうね。ここで見て見ぬふりをしてしまうと後々、面倒になりそうね。」

「 そうですね。なら、後ろから挟撃はいかがでしょうか。義勇軍が押している模様ですし。」

「 それでいいわ。義勇軍の実力も観れることですしね。」

そう言い、孟徳は目を細める。まるで獲物を狙う獣のようだ。

 

 

「 ねぇ、華琳。」

「 駄目よ。」

「 …まだ何も言ってないよ。」

「 どうせ咬み殺しに行ってもいいか、でしょう?」

「 ワオ、よくわかったね? で、駄目かい?」

「 当たり前でしょう? 義勇軍の実力を測る為なのよ? それに貴方が行ったら春蘭も行くでしょう?」

「 華琳様っ⁉」

「 ああ、納得したよ。」

「 何故納得する、恭弥!」

「 仕方がないから我慢するよ。」

「 無視するな!」

目の前で争っているのに天幕の中はにぎやかである。

 

……お前らの緊張感は何処に行った。

 

 

黄巾党の賊が次々に倒されていく。義勇軍の練度はそこそこあるようだ。しかし、その中でも逸脱しているのが二人。

一人は自分の背丈よりも大きい得物を振り回し、黄巾党を凪ぎ払う幼い少女。

 

もう一人は、黒髪の美女。兵を指揮しながら偃月刀を振るい、黄巾党を切り裂き凪ぎ払う。その武は、まるで舞のようだ。元譲と同等かそれ以上かもしれない。思わぬ拾い物に孟徳は唇を舐める。…どうやら黒髪の女性に狙いをつけたようだ。

そんな孟徳を呆れた目で雲雀は見る。それに気付いたのか孟徳は誤魔化すように咳払いをする。

 

どうやら戦闘が終わったようだ。

 

孟徳は義勇軍(黒髪の美女)に会うために使者を送った。

返答は、省略するが面会は良いがこちらに来てほしいとの事。それに孟徳と雲雀以外がキレた。何様のつもりだと。

 

しかし孟徳は黒髪の女性にすぐに会いたい為、気にせず義勇軍の陣営に向かう準備をし向かった。連れには、夏候姉妹と雲雀だ。…その雲雀は不機嫌そうな顔をしている(群れている為)。因みに雲雀がキレなかった理由は興味がなかったというだけだ。そんな雲雀を孟徳はお願いをして無理に引っ張って来た。

 

義勇軍の兵は孟徳の雰囲気や服装などで、かなりの身分の者だと解り、歩みを止められずわたわたしていた。(さらに雲雀の不機嫌な雰囲気にあてられて怯えていたりする)

 

義勇軍の陣営で上の者が居るであろう天幕に辿り着いた孟徳一行。孟徳は気にすることなく入っていった。

 

「 何者だ貴様!」

「 あら、先程使者を送った筈よ?」

「 えっ!? てことは曹操さん!? さっき使者の人が来たばかりなのに!?」

戦場でいた黒髪の美女が警戒した怒鳴り声を孟徳は軽く返す。それに孟徳の事を知りピンク色の髪の少女が驚きの声を出す。

天幕には、他に帽子を被った幼女が二人いて、あわわ、はわわとしていた。

因みに夏候姉妹は、孟徳に危害を加えられないように何時でも動けるようにしている。

 

………何だこのカオスは。と雲雀は表情を変えず内心で思っていた。

 

 

互いに落ち着き、改めて自己紹介をおこなった。

小さい少女達は、諸葛亮(孔明)と鳳統、ピンク色の髪の少女は義勇軍の立ち上げた者で劉備、黒髪の美女は関羽とそれぞれ名乗った。

 

しかし、この場にいる皆はチラチラと一人を見ている。その人物は………雲雀だ。

 

何故なら………寝ていたからだ。そう、寝ていた。こちらに来るのも興味がなかったし、来たのも華琳のお願いで仕方なく来ただけの雲雀だ。故に雲雀は腕を組み、寝ていた。

 

その態度に関羽は許せないのか、怒鳴り散らす。しかし、雲雀は起きない。それに余計に苛立ち、怒気を強め雲雀に近付く。後少しで胸ぐらを掴めそうになり、元の位置に後ろへ跳躍した。その額には汗が滲んでいる。その様子を心配した劉備は声を掛けようとしたが一人の声に遮られた。

 

「 …僕の眠りを妨げるのは、君かい?」

雲雀が起きたのだ。先程の苛立ちをさらに強めて。この場の者は表情が青くなる。帽子を被った少女二人は泣きそうだ。

 

「 …噛み殺す。」

「 恭弥!」

苛立つ雲雀に慌てて華琳は声を掛ける。緊張感がその場を満たす。

 

「 …なんだい? 孟徳。」

「 …今回は寝ていた貴方が悪いわ。だから落ち着きなさい。」

「 ………。」

無言で見詰め合う。暫くして雲雀がタメ息を吐いた。

 

「 …確かに居眠りした僕が悪いね。止めてくれてありがとう、華琳。そっちの、…悪かったね。」

雲雀は劉備らに向き合い謝罪する。

 

「 えっ、あっ、はい。」

「 ………。」

劉備が慌てて返事を返す。関羽は何も言わないが怒気を納めた。

 

「 この場にいたら空気を悪くしてしまうから僕は戻るよ。」

雲雀はそう言って天幕を出る。華琳達は何か言いたげだったが何も言えなかった。

 

 

雲雀は後に戻って来た華琳達に軽く小言を言われ、それぞれ1つだけお願いを聞くことになったのは余談だったりする。

 

 

 

番外編 (未来での出来事その2)

お願い

 

春蘭の場合

 

鍛練場に雲雀と春蘭が相対していた。

春蘭が雲雀にお願いした事は死ぬ気の炎を使用した模擬戦だった。普段も春蘭は模擬戦を頼んでいるが毎回付き合ってもらっている訳ではない。

雲雀の気分次第で受けてもらっているのだ。

その模擬戦でも死ぬ気の炎を使用していないもので、春蘭は気になっていたのだ。

 

「 その死ぬ気の炎を使っても今回は勝たせて貰うぞ!恭弥!」

「 …それ、何回目だい?」

「 う、うるさい!」

そう、これまでの戦績は雲雀の無敗で終わっている。模擬戦をする度に言うので指摘すると、春蘭は顔を赤く染めて恥ずかしそうに怒鳴る。…自覚していたようだ。

 

「 それより、今回はトンファーではないのか?」

春蘭は雲雀が手にしていた武器はいつものトンファーではない。日本刀【時雨金時】だった。

 

「 偶にはね。」

「 ふん、武器が違って負けても言い訳は無しだぞ!」

「 僕がそんなこと言うわけないだろ? それに負けないよ。」

「 いくぞ!」

そう言って武将春蘭は接近して刀を振り落とす。それを【雨の炎】を刀身に纏わせ、真っ正面で防ぐ雲雀。そして弾く。後ろに跳躍した春蘭は雲雀の次の行動に驚く。

 

-時雨蒼燕流 三の型 遣らずの雨-

雲雀が青い炎を纏わせた日本刀を蹴り飛ばしてきたからだ。それに驚いたが慌てて弾く。しかし雲雀の接近を許してしまう。無防備な腹に蹴りをくらい、後ろに飛ばされる。その間に雲雀は時雨金時を回収する。

 

体勢を立て直した春蘭が再度雲雀に突撃する。互いの武器がぶつかり合い金属音と共に火花が散る。

何度か剣撃をぶつかり合い、春蘭が違和感に気付く。

( …身体の動きが遅い?)

 

そう、始めに比べると春蘭の動きが遅くなっているのだ。それに気付きどういう事なのか考えようとする前に雲雀が答えた。

 

「 そろそろ身体の動きが遅いって気付いたかい?」

「 恭弥、どういうことだ!」

「 今まで、【雨の炎】を纏った刀とぶつけ合ったんだ。そうなっても仕方がないよ。」

「 …雨の炎? あの青い炎のことか?」

「 そうだよ。【雨の炎】の特性は【鎮静】。君の動きが遅いのはこの特性が原因だよ。」

「 くっ…」

「 そろそろ、終わらそうか。」

 

そう、雲雀が言った途端雰囲気が変わる。それに気付き春蘭は警戒を高める。

雲雀は春蘭に突撃する。そして、

 

-時雨蒼燕流 五の型 五月雨-

一度目の斬撃を防ごうと遅い体に鞭を打つがタイミングをズラされる。それに驚くが峰打ちをくらい、春蘭は気絶する。それを抱き止める雲雀。

 

勝者、雲雀恭弥。

 

こうしてお願いの模擬戦は雲雀の勝利に終わった。

 

 

 

 

説明

雲雀恭弥(中身別人)

偉人が女体化しているのに慣れてしまった。

華琳等のお願いなら本当に嫌なモノ以外、渋々聞く。

兵が何故か自分を崇拝するのか気付いていない。

無自覚に男前の行動する(これが原因)。

興味がない事にとことん興味を示さない。

模擬戦は今のところ無敗。

 

 

 

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
何か華琳様がチョロくなってしまった。文才がほしいです。

投稿が遅くなった理由ですが、リアルで忙しく、体調を若干崩してしまい、書く気力が無くなってしまったからです。
しかし、久しぶりに作品の評価を見て、楽しみに待ってくださった方がいることを知り、他の作品と平行に急いで書き上げました。

これからも遅くなってしまうと思いますが、よろしくお願いします。


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