Afton's Worst Ultimate custom night (Rat man)
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prologue(プロローグ)

"君はここから逃れられない"


"君はここに呼ばれた。この雑音、悪臭、欺きと不幸が渦巻くお宝も出口もない迷宮(ラビリンス)に"

 

 

・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

「・・ぅう・・」

 

ココハドコダ

 

「っつ・・あぁ・・うぐっ」

 

カラダガオモイ

 

「・・まえが・・ぼや・・けて・・いっ・・たい、なにが・・」

 

ワカラナイ

 

「・・・、(深呼吸)」

 

アレ?

 

「おれ・・は、・・俺は?あれ・・俺何してるんだろ?」

 

・・・いまだに頭痛がして状況が呑み込めないが、深呼吸でとりあえず落ち着くことができた。さっきまで視界がぼやけてきたが、まるで霧が晴れてきたように視界が開けてきた。

・・・がしかし、見えてきた光景に思わず絶句した。

 

「・・え?は?・・はあぁぁぁぁぁぁぁ!??」

 

今自分がいる所は自身と同じ高さに合わせたに閉じ込められているではないか。

唯でさえ何が起きているのか理解できていない上に今の状況に付いていけるはずもなく

唯々頭が混乱するばかりだ。

 

「どうなってんだ一体!?いったい何が起こって?・・クソぅ・・分からねえ・・・。」

 

だが、頭を悩ませてばかりでは何時まで経ってもこの状況において進展することはない。

もう一度深呼吸し落ち着こう。

 

「・・・(深呼吸)、ふぅ・・よし」

 

取り敢えず、自身が今いる場所を改めて確認することにしよう。

辺りを見渡すと乱雑に置かれた書類や紙コップ、扇風機などの機材が置かれている机が1つ、

部屋の左右には通路に繋がる大きな出入口に正面上と右下に通気ダクトがある。

また、机にはいくつかのスイッチが設置されており、おそらくどこかの機材を起動する

ものだと思われる。

 

「・・・タッチパネルらしきものが・・・あれ監視カメラか?」

 

机に置かれている機材の1つに黒統一で染まっている物体があった。しかし、この檻から

少し離れているため詳しく確認することができない。後は埃がかぶっているデジタル時計と

いくつかの人形が置かれているだけだ。

分かったことといえば、自分が檻に閉じ込められているのとどこかの一室であることぐらいだ。

 

「今調べられるのはこれくらいかな。だが、今はこの檻を何とかしないと」

 

何かこの状況に打開できるものが周辺にあるのではないかと一通り探してみたが、やはり

そんな都合のいいものなどあるはずがない。散策した疲れから少し休むかと思ったその時、

またしても信じられないことが起きた。

 

「よっこらしょ・・おぉ!?」

 

檻の壁に寄りかかろうとその身柄を預けようとしたが、もたれ掛かることなく体がバランスを崩し

床に激突した。くるはずのない痛みと驚きで思わず顔を上げると今まで自身の行動を阻害していた

檻がなんと消えたではないか!!音もなくまるで水が蒸発して空気に溶け込むように、すぅ・・・

と消えてしまった。

 

「???もうわけわかんねぇよ・・・」

 

もはやここが現実か夢の中かすらも区別ができる状況ではなかった。

「気持ち悪く薄気味悪い」

脳内のほとんどはこの考えに支配されていた。

だが、あるものを見つけたとたんその考えは直ぐに一蹴された。

 

「ん?カセットテープ?あんなのあったか?」

 

いくら気味悪いとはいえ丁度檻が消えてくれたことにより机に近づくことができるのだ。状況が

進展したことにはある意味良かったかもしれない。ともかく、これで調べる範囲が広がった。

早速机におぼつく足取りで近づいていきそのカセットテープを調べた。

 

「やっぱりなかったよなこんなの・・・檻が消えてから現れたのか?」

 

そのカセットテープはこれといった特色はなく、市販で売られているものと一緒だ。ラベルも

剥がれており何の録音かもわからない。第一、録音されているのかどうかも怪しい。

一応再生機はあるが、果たして動くかどうかもわからない。

 

「・・いや、ここで迷っても何も進まないし一応かけてみよう」

 

そう、試すしかないのだ。最悪、壊れていた場合でもその時はこの部屋から出て他を

調べればよいのだ。震える手でそれを掴み、再生機に入れて再生ボタンを押す。

・・・・・"ガチャ"

 

「うぉ!!う・・動いた・・。」

 

まさか動くとは思わず少し動揺したがまた一歩進展した。暫くはひどい雑音が響いていたが

突然男性の声が聞こえてきた。

 

「ザーーーーーー・・・"・・やぁ、目は覚めたかい?"」

 

「な!?こ・・こいつ俺に言ってんのか。俺をさらった犯人か?」

 

声がやけに低い。その男は相当歳をとっているのか?いや、そんなことはどうでもいい。

こいつが俺をここに監禁した犯人であることは間違いない!ふざけやがって!!

 

「"多分君はこの録音を聞いて相当怒り狂っているはずだよね。まぁ・・当然だね。

  でも、この状況を作ったのは紛れもない、君自身だよ。覚えていないかい?

  うん・・思い出すのにもう少し時間がかかるみたいだね。私もちょうど目が覚めたところだ。

  地底よりも遥かに深いこの地にね。・・・さて、そろそろこの状況について少し話そうか"」

 

「はぁ?俺が作った?どういう事だ!?・・いや、もう少しこいつの話を聞こう。」

 

「"そろそろ落ち着いたかな?じゃあ・・先ずはこの言葉を聞いてもらおうか。

  それで大体思い出すはずだよ"」

 

「一体何を・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"Freddy,Bonnie,Chica,Foxy"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。今まで眠りかけていた記憶が一気に呼び起こされたのは。

 

「あっあ・・・ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?!!?!」

 

まるで頭の中に大量の水がなだれ込むかのように数々の記憶がよみがえる・・・

児童誘拐殺人、かつてのパートナーに濡れ布を着せ殺害、死んだはずの餓鬼どもが

人形に乗り移り俺を襲ってきたこと、バラバラにしてもなお執念に俺を追い詰め

Springrockで殺されたこと・・・

 

「そ・・そうだ!俺の体はどうなって・・・!?」

 

おかしい、確か俺の体は腐ってあの着ぐるみの状態で動き続けたはず・・・

なのに、"普通の人間の体"に戻っている!?

 

「"大体思い出したよね。じゃあ簡潔に言おう。

  君は私の用意した罠に見事ひっかかってくれたんだ。君の息子と娘が

  いることを知った君は、なんも疑わずに店舗にきて取り戻そうとしたんだろ?

  また下らない悪知恵の道具として利用するために。

  君の唯一の誤算は、君の息子が私に協力を求めて君自身を裏切ったことさ。

  まんまと君を店舗の奥深くに閉じ込めるのに成功し息子含めて全て焼き払ったのさ。

  ほかの子供たちは無事に成仏してくれたよ。喜ばしいことさ。でも君は

  今までしてきたことに対する大きな代価を支払う必要がある。

  そこでこの場所さ。ここは、君を裁くための大きな処刑台さ。

  君にとって懐かしい機械人形たちが君を裁く審判官だ。でも唯一の友達でもあるんだよ。

  だって君は私が作ってきた機械人形に言いしれない執着心と愛着を持っていたじゃないか。

  夜中に機械人形を勝手に起動して我が子のように可愛がり自身にとっての

  「幸せの日々」と豪語したぐらいだからさ。皮肉にも一緒になれたんだよ。

  これが君の今の現状さ"」

 

・・・言葉を失った。つまり、俺はもうここから逃げられない。奴らに弄り殺される日々を

送り続けなければならないのか。力が抜けて前のめりに倒れこんだ。そして、あらん限りの

力を振り絞りかつてのパートナーに向けて憎しみの声を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Heeeeeeeeeeeeeeeennnnnnnnnnnnrrrrrrrrrrrrrry!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"よく覚えてくれたね、Afton"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッとした。今の声はあのカセットテープから流れていない・・・倒れた体を起こして

前を見上げると、そこにはかつてのパートナーが最初に設計し作成した"金色の熊人形"が

静かに佇んていた。

 

 

 

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね。わたしにとっての悪魔であり、かつての旧友でもある君に」

 

 

 

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今回が初めての小説なので表現があいまいだったり、誤字・脱字があるかもしれませんが

生暖かい目で作品を見てくれれば幸いです。

この物語はfnafの内容をある程度知っておかないと読みづらい作品となっております。

ですので、一度内容を知ってから見てくださるとより一層楽しめます。

 

 

 

 

 

 

 



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Flow of umpire(審判の流れ)

"俺は必ず戻ってくる"


・・・いる、奴がそこにいる・・。

俺はそいつを睨み上げた。

 

「・・・Henry・・・(歯軋り音)」

 

「やぁ、本当に相変わらずだね。君はいつもと変わらない」

 

非常に腹立たしい。あの頃の・・・あの店に閉じ込められ火に炙られる時に奴の顔が

浮かんできた。まるで勝ち誇ったのようなあの忌々しい顔を・・・今すぐそのふざけた

顔をマッシュポテトのようにぐちゃぐちゃにしてやりたいぐらいに俺の中にある感情が

そう訴えている。・・・しかし、今の状態では俺は無力だ。着ぐるみにいたときは

想像もつかない力と知力を手に好き放題暴れられたが、今じゃこのざまだ・・・。

どうすることもできない状況に俺は歯痒さを感じるだけだ。

 

「まぁ・・・君の考えている事は大体想像できるよ。でも君の考えている幾つかのものは

 誤解を生じているようだから、訂正をする必要があるみたいだね。」

 

誤解?何のことだ。

 

「君はさっき、機械人形に裁かれると聞いたとき『俺は唯奴らに弄り殺されるのか』

 っと思ったよね。そもそも君は裁かれるという意味を大きく履き違えている。」

 

「はぁ?」

 

何言っているのかわからず思わず間抜け声が出てしまった。

 

「こんな考え方は君みたいな殺人者と何ら変わらない。唯ムカついたから殺す。

 お互いにやり返しあうのは憎しみが生まれるだけ。茶番もいいところだ。

 復讐に囚われるだけで何も浮かばれない。そうじゃない。問題なのは君が

 如何に自身が犯した罪に向き合えるかどうかだ

 私の言う裁きとは、君が犯してきた罪そのものを君に下すことだ。

 自身ではなく、相手の立場やその時の状況を君自身に味わってもらい、

 子供たちが味わった恐怖や孤独、された時の怒り、悲壮感、無力感を嫌でも

 痛感してもらう。そうすれば、いずれ罪悪感が芽生えてくるからな。

 そして、先のない無間地獄を歩む運命を受け入れろ。裁きとは唯苦痛を

 与えるのではなく、犯した罪を受け入れて更生に向けるための流れに過ぎない。

 今までの自身と決別して後悔を背負いながらもその運命を歩む過程を作るだけ。」

 

「・・・」

 

「要は君が唯殺されるのを待つだけではなく、あの時子供たちができなかったことを

 君がその肩代わりをして出来ることを学ぶということだ。つまり、"カスタムナイト"

と言えば分かりやすいかな?。」

 

「!?」

 

「さぁ、ここからが本題だ。審判の流れについてのな。」

 

(心臓が跳ね上がる音)

 

「経験はあるだろ?所謂警備ごっこさ。今までの機械人形たちが君を襲う、そして君は

 襲われないように回避をする。これだけさ。たとえ死んでも君はここに戻ってくるし

 無事切り抜けても何も変わらない。シンプルだろ?」

 

「・・・!あんときの再現をやれってか!?ちょっと待て、今までって言ったら

 どのくらいの数になるんだ・・・」

 

「うーん、そうだね。これを見たほうが早いか。」

 

そう告げると突如、天井から何かが降ろされる音を聞き身構えると、棒状の先端に

付けられたモニターパネルがこちらの顔までに突き付けられた。そこには彼の

言う通りに機械人形たちが映し出されたがよく見ると・・・

 

「・・・は?はぁ!?」

 

なんと総勢50体のアニマトロニクスがいるではないか!!

 

「ふざけんなよ!!数の暴力にも程があるだろ!!これをさばいていけってか!?」

 

「制限時間は6時間。午前12時から6時までだ。あそこにあるデジタル時計が君の

 生存を確認する代物さ。そして回避方法は基本教えないよ」

 

あの野郎・・・人の話を無視しやが・・・え?今聞き捨てならない言葉を聞いたんだが。

 

「先に言っておくよ。これはあくまで君の審判だ。先に回避方法なんて知ったら

 君に対する裁きが何の意味もなさなくなる。あの時の子供たちも君から逃れようと

 ノーヒントでいろいろ対抗策を考えていたじゃないか。結局は意味なかったけどね。

 その考える状況を君にも感じさせるのも一つの裁きさ。それと、いきなり

 50体を同時に相手にさせるなんていう狂気じみた事はやらせないよ。」

 

あ、一応人の話は聞いてくれたのか・・・いやいや、いきなりやらせないという事は

いずれやらされるっていう事になるじゃねーか!

 

「それと、機材について少し話そうか。机にある幾つかのスイッチがあるだろ?それは

 各機能が付いている機材を作動してくれるものだ。ただし、同時には起動できない

 ようにしている。名称ぐらいは教えよう。左端から"発電機"、"消音機"、"ヒーター"、

 "強力エアコン"、"グローバルミュージックボックス"、"作動停止"だ。それと

 扇風機は自由にスイッチを切り替えることにした。後は左右の進路と正面上、右ダクトの

 ドアを開閉するスイッチがある。うまく使えよ。」

 

・・・いろんな機材が増えた事しかわからねぇ。

 

「さて、一通りの説明もしたし、・・・そろそろ始めようか?

 

・・・!遂に来た・・・。俺にとって最悪なカスタムナイトを迎える羽目になるその日が・・・。

 




次回からカスタムナイトが始まります。お楽しみに!


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Bears Attack 1(クマの襲撃その1)

"懐かしいメロディーが聞こえるだろ?"


PM 11:43

 

デジタル時計が俺の生存を確認するものとなり、俺の終焉を告げるものとなる・・・

刻々と時間が進む。これから始まる惨劇の夜に向けてのカウントダウンが静かに響く。

奴は、ここにはもういない。本当に簡潔な説明だけで事を済ましてから消えていった。

無論、人形についての情報なんか皆無だ。どのくらいの数で誰がどのレベルで襲撃

しに行くかも分からない。ならば、猶予ある僅かな時間の中で一つでも多くのヒントを

見つけるしかない。・・・そうやって口に出すのはのは簡単だが、実際には何一つの

ことも分からない。機材の活用方法もそうだし、カメラは始まるまで起動できない。

せめて部屋の確認ぐらいさせても良いだろう・・・と愚痴っても此処の部屋で声が

虚しく反響するだけだ。他に動いているものは乾いた音で鳴り響く扇風機のみ・・・

 

PM 11:56

 

暫く待っているとある変化が起きた。

俺から見て右の廊下から僅かだが、足音らしきものが聴こえてくる。よく聴いてみると

こちらに近づいているようだ。・・・いや、近づいている!?

 

「おい!まだ始まってすらもいないだろうが!!嘘だろ・・・」

 

しかし足音は止まらずこちらに近づいてくる。どうすれば良いのか戸惑う俺は、苦肉の策

として机に置いてあったFreddyMaskを手に取り頭にかぶることにした。これはToyシリーズ

の奴らを騙すときに使用する代物だ。奴らは顔認証システムが上手く作動しなくて明細な

確認ができないのだ。この時、マスクを被れば俺を仲間だと勘違いし回避することができる。

この戦法で他の奴らを騙せるかどうかは知らないが、ほかにいい方法が無いのでこれに

かけるしかない。もう足音も間近に聞こえたとき、その姿を現した。

 

「・・・奴は、確か・・RockstarFreddyか?」

 

足音の正体は息子が店の経営をしていた時に設置されていた熊の機械人形であった。

全体的には綺麗な状態で整っており、紫色のシルクハットと蝶ネクタイを着飾った

割とお洒落な印象を受けた。・・・そいつが一瞬こっちに振り向いてきた。

 

「!?」

 

が、気にも留めずそのまま右の部屋隅に佇んだ。"ガコン!!"と音を立てたあとは

首を前のめりに倒しそのまま動かなくなった。

 

「・・・は?こいつ何しに来たんだ?」

 

結局そいつの謎行動を見るだけに終わった。真意も分からずに・・・

 

腑に落ちないでいると

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

いきなりアラームが鳴りな出した。つまり、"ゲームスタート"である。

 

AM 12:00

 

早速電源の入ったカメラを見ることにした。起動された画面に映し出されたのは

8つの部屋であり、左右4つに区切られている各部屋を素早く確認する。CAM1と2は

廊下、CAM3と4は小さな小部屋、CAM5と6はカーテン仕様のステージ、CAM7と8は

パソコンが置かれている小部屋と人形売り場のようだ・・・。それと幾つかタップ

出来る場所が映し出されている。

 

「ん?この"換気口内センサー"と"ダクトセンサー"は一体なんだ?」

 

急いでタッチしてみると、直ぐに画面表示の切り替わり別の侵入経路が映し出された。

 

「うわ・・ここも奴らが侵入するための経路になってんのかよ。しんどいことだ・・」

 

しかし、今のところ異常なものは見つからず元の部屋の監視に切り替えた。こちらも

同様に機械人形は特に映っていない。何も映らない以上電力を無駄にするだけなので

一旦カメラの電源を切ることにした。・・と、この時電力を確認すると・・・

 

「は!?もう電力10%切ってんのかよ!やけに早くねーか?」

 

映し出された電力は残り90%になっており、時間を確認すると開始からまだ10分しか

経っていないことがわかる。この異常なほど電力の減りが早い理由は直ぐに検討が付いた。

 

「・・!扇風機か!?」

 

思えばさっきから作動し続けているこの機材が消費を早めているのではないか?

こいつは部屋の室温を低く保つ役割を持つがこのままつけっぱなしにすると、電力が

持たないリスクが高まってしまう。なので急いで切ることにした。

 

"カチ"

 

停止する音とともに直ぐに動かなくなった。これで、電力を少しでも抑えればよいのだが・・。

そして部屋に何らかの変化がないか確認した。・・・一応異常は見られないのでまたカメラを

起動することにした。部屋の様子を一通り確認するといきなり

 

"ふぉっふぉっふぉぉぉ・・・"

 

と、右の出入口からくぐもった笑い声が聞こえた。はっと顔を上げそちらの方に見ると・・・

そこには暗闇の出入口から目玉だけを覗かせている機械人形が立っていた。足音もなく・・・

 

「っつ!!」

 

俺は反射的に右の出入口を閉めるドアボタンを押した。直ぐにドアが閉まり侵入口を防ぐことに

成功した。すると、"ゴン!"と何かを叩き付けるような響きの良い音を聞いた。まるで獲物を仕留め

損ねて悔しがるような・・・兎に角危なかった。そしてここで新たな問題に気付いたのだ。それは

"カメラに映らない奴もいる"という事だ。さっきの奴もカメラで容姿を確認できなかったので

音を頼りに存在を感知しなければなりないのだ。

 

「クソぅ、当たり前だがやることが多すぎる・・・。」

 

だが、手を止めてはならない。他の部屋も確認する必要があるのだ。すると、CAM1に一体の

機械人形が映っていた。

 

「・・!こいつは・・」

 

左の廊下から現れたのは、かつて俺が殺した内の一人の餓鬼を押し込めた思い入れのある人形、

"Freddy"だ。どうやら奴は左の廊下から現れるらしい。だが、ここからまだ距離があるので

今すぐ襲撃されることはないだろう。そいつを確認し、他の部屋を確認に戻ることにした。

 

「そういや、ほかの侵入経路をまた確認する必要があるな」

 

取り敢えず、換気口内センサーを確認する。・・・まだ誰も現れていない。次にダクトセンサーを

確認する。・・・何か反応した!・・・三角の形をしたそれは、点滅しながらもこちらに近づいて

くる様子だ。不味い状況だ!何かこいつを遠ざけるものはないか!?そいつがいる場所にタップ

してみると、何か丸い形をしたものがそいつを覆うような状態で出現した。するとどうだろう。

そいつの動きが鈍くなっている。・・・よくわからないがこれでいいらしい。

 

「・・・暑っつ!!」

 

一通り作業しているうちに室内温度が上がっていることに気づいた。ずっと扇風機を停止したまま

にするのもよろしくないようだ。直ぐに起動させ室内温度を下げる。それと、Freddyの確認も

しなければならないので監視モードに切り替えた。・・・すぐそこじゃねーか!!

 

「やべぇ!!」

 

急いで左ドアボタンを押し侵入口を防いだ。・・少し遅れて音が鳴った。どうやらギリギリセーフ

だったようだ。確かあいつとの距離は結構離れていたよな・・・こんなにも進行が早いとは・・・

あと少しで遅れたら・・・想像もしたくねぇ・・・。

 

「ふぅ。」

 

室内温度も下がり改めて部屋を見渡すと、扇風機の上に小さい熊の人形が乗っているようだ。

 

「?なんだこいつ。」

 

体が白色に染まっており、口元の周りは紫色に色づけられているいるそいつはこちらをじっと

見つめている。・・・特に何もしてくる様子はない。てか、いつ侵入してきたんだ?ただ邪魔な

だけな存在なので放っておくことにし、再びカメラで部屋の確認をしていると突然

 

"ププププーーーーーーン"

 

と、甲高いエアーホーンが耳元に響き渡りカメラが強制的に取り下げられ代わりにさっき無視した

そいつが、俺の顔を覆いかぶさるように視界の邪魔をしてきたのだ。

 

「うわ!ちょ・・邪魔だ!」

 

何とかそいつを払いのけようと手を出したが既に消えて去ってしまったようだ・・・。

 

「何なんだホントに?あぁ・・くそ、耳が・・」

 

あの音がまだ耳の中に鳴り響いて頭が痛くなったが、手を止めるわけにもいかず、カメラを

立ち上げた。・・・"それがいけなかった・・・"

 

「・・うぉあ!?」

 

今度は手にしていたカメラを何者かに取り上げられてその場で"バキャ"っと破壊されて

しまった・・・。

 

「・・・は?」

 

今起きた状況に飲み込めず呆然と顔を上げると・・・

そこには、体がボロボロに朽ち果てており至る所に牙をむき出しにしてこちらを睨みつける

"Nightmare Fredbear"が静かに佇んでいた。

 

「・・・え?は?はぇ?い・・いつかr(」

 

戸惑う俺を無視するかのように、そいつは俺の胸倉を勢いよく掴んできた。隙も与えずに。

掴まれた俺は抵抗する暇もなくあっという間にそいつの手中に陥った。顔を近づけさせ

呆然している俺にこう告げた。

 

「・・・お前は僅かなことさえ気を配らずに注意を怠った。その慢性がお前自身の首を

 絞める羽目になったな。お前の悪い癖の一つだ。さっき無視した時、あの甲高い音と

 俺の笑い声が丁度重なってたんだよ。あの時、カメラを見る前に部屋の確認をしていれば

 こんなことにはならずに済んでいたのにな。まぁ、そんなことはどうでもいい。」

 

・・・俺の顔は今まさに青ざめているに違いない。侮った結果がこれだ・・・。

そして、これから起きる事も考えるまでもなかった。もうどうすることも出来ない。

 

「・・・ふん、諦め早いのはいいことだ。さぁ、"覚 悟 は い い か ?"」

 

制裁の時間だ。それは一瞬の出来事であった。

 

持ち手と逆の手を突き出し、俺の体は簡単に貫通した。言いしれない激痛と不快感が襲い

悲鳴を上げる暇すらもなかった。内臓が破裂し呼吸も荒くなりまともに息も吸えない状態

になって視界が赤く染まった。部屋は俺の返り血や一部むき出しになった内臓で辺り一面に

ぶちまけられ、酷い匂いが漂うようになった。背骨も折れ、まともに態勢が取れなくなり

体がぶら下げられる姿はまさに"マリオネット"であった。貫通させた腕を抜き出し俺を

そこらへんに投げ捨てていき、意識が遠のく前に俺の耳元でこう囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"誰が友達かわかっているさ、ただ君がそこに含まれていないだけだ。"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




死因:慢性による奇襲


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Bears Attack 2(熊の襲撃その2)

"あなたは死なない・・・だけど、ここに戻ってくる。"


・・・・・・

 

"こいつ見ろよ、まるで赤ん坊みてーだろ。"

 

"ああ、全くだな!!ほんと面白れぇよな。"

 

"さーて、ブルブル震えているベイビーちゃんにサプライズさ!!"

 

"今日は待ちに待ったお前の誕生日だぜ。喜べよ。"

 

"おいおい、主役が泣いちゃどうすんだよ。"

 

"せっかくお前の大好きなお友達が待ってるってによ。"

 

"シャイなのかい?なら俺たちが一緒に連れてってやるよ!!"

 

-イヤだ-

 

"よーしみんな、こいつをしっかり持てよー"

 

"パーティ会場まで連れて行くからさ、いい加減泣き止めろよなぁ。"

 

-ヤメテ…-

 

"こいつ、近づくにつれて暴れだしたぜ。ジタバタしてる所がまじで赤ん坊そっくりだな。"

 

"さーて、お友達がお前を待ってるぜ。再開のハグといこうじゃないか!!"

 

-イヤだイヤだイヤだ!!!-

 

目の前に佇んでいる熊の機械人形の前まで来ると、少年達は抱えてる子供を人形の大きな口に

無理やり差し込んだ。

 

"ぎゃははははwwwwww本当に滑稽だ。"

 

"機械如きになーにビビってんだよwww。弱虫な奴だwww。"

 

"こういうやつをいじるのって、楽しいもんだなwww。"

 

"しかし、改めてみるとこの光景まるでk("!!!!!!!!鈍い咀嚼音!!!!!!!!!")

 

・・・静寂が一室を包んだ。先程まで面白可笑しく笑い転げてた少年達も、今起こった情景に顔を

こわばらせて震えている。あれ程もがいてた子供もピタリと止まっている。・・いや、止まって

当然だろう。彼の頭は大きな口に潰され"ぽたぽた" と赤い鮮血が流れており、潰された頭部からは

見えてはいけな脳の一部がはみ出て異臭が部屋全体を漂わせているのだから・・・。

先程少年が言いかけた事を、この情景が映し出していた。

 

まるで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"熊が子供を食べているように見えるよなぁ"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・っつ!!!」

 

勢いよく体を起こした。体中冷や汗が湧きあがり目覚めの悪い形で目を覚ました状態は、まさに

最悪な気分であった。

 

「・・・あの夢は?・・・」

 

先程あの熊人形に殺された俺はしばらく、深い眠りについてたが突然あの夢が頭の中によぎり、

今に目覚めたばかりだ。荒い呼吸を一旦整え改めて身の周りを確認した。ぐちゃぐちゃに

された体も嘘のように戻り、辺り一面に飛び散った血や内臓もクリーニングされたかのように

清潔な状態に保っていた。時間も12前に戻されている・・・。変わっていない所といえば、

"Rockstar Freddy"が静かに佇んている所だろう。勿論やり直しだ、また先の見えない恐怖の

夜を過ごさないといけないのだから。もうため息をつくしかない・・・。

 

「あの白い熊のせいで・・・」

 

奴さえ出現しなければ俺は落ち着いて対処することができたのに。だが、死んでしまった以上は

この状況下において嘆いても仕方がない。・・いや、死んでるのに生きてるっていう事自体十分

可笑しなことだが・・・。だが、収穫もあった。奴らの対処法だ。

 

「つまり、死にながらも記憶自体は覚えているからそれを参考にしろってことか・・・

 いかれてんな、このシステム。」

 

ともかく、部屋のある程度の状況と機材(扇風機だけだが・・)の使い方は少し把握できた。それと

音で感知するタイプの機械人形がいる。これだけでも大きな収穫だ。そう考えているう内に時間が

迫ってきた。あまり考える余裕はないそうだ。

 

「さっさと準備するか・・・。」

 

指定の椅子に座りカメラを携えておき、アラームが鳴るその時まで待つ・・・

 

"ジリリリリリリリリリリリリ"

 

AM 12:00

 

始まった!!直ぐにカメラを起動した。部屋の構造は頭の中に入っているのでスムーズに監視を

行うことができる。まず廊下側だ。・・・異常なし。小部屋に切り替えて様子を見た。

・・・こちらも異常なし。カーテンのステージも動きはなくパソコンが設置されている部屋も

誰かいる様子もない。次に通気口内センサーに切り替える。・・・いる!!。頭部だけが映って

おり、その容姿はボロボロで"混ざり合った"ような印象を持った機械人形がかなりの速さでこちら

に進行している。

 

「この姿は・・・"Molten Freddy"か・・・?にしても早いな・・。こいつはどこに・・・

 正面の通気ダクトからか!!」

 

カメラから目を離し正面ダクトを見る。・・間違いない。侵入口はここからか。なら近づいた

ときにドアを閉めればいい。

 

「おっと、扇風機の電源を切らないと。」

 

急いで停止スイッチを切り、またカメラを見る前に部屋の確認をする。・・・異常はないみたい

だな。カメラを立ち上げ廊下を見る。・・・"Freddy"がいるな。だが距離は遠い・・・そのまま

無視し、部屋を切り替える。その時、微かな物音が鳴った。

 

「!!」

 

再びカメラから目を離すと、そこには物音・・・というより小さい唸り声をあげているボロボロの

熊人形が床に座っていた。

 

「あれは・・・、"Nightmare Freddy"の子分ども!!確か奴らは・・・!!」

 

思い出したかのように机の中から"フラッシュライト"を取り出しそいつに向けて光を放った。

すると、しかめた顔をしてそいつは退散した。・・・やはり光が苦手なんだよな。覆いつくす闇を

照らしてくれる道具だからさ。

 

「そろそろ、扇風機をつけないとな。」

 

室内温度が徐々に上がり始めてきたので電源を入れ稼働を再開した。それと"Freddy"の監視もだ。

カメラで確認すると・・・そいつはかなり近い距離まで詰め寄ってきた。

 

「おおっと、」

 

すぐさまドアを閉め侵入口を防ぐと、少し時間が遅れて音が鳴った。・・・退出した証拠だ。

ドアを開き部屋の確認をする。・・・異常なし。カメラを立ち上げ今度はダクトホースを確認

する。・・・三角の形をしたものが表示されている。直ぐその模様にタッチをし丸い形をした

ものが覆っていくと動きが鈍くなっている。こいつの対処はこれでいいみたいだ。また部屋の

監視に戻ろうとした時に

 

"!!!!!!ふひゃはははははははWWWWWWWWWWW!!!!!!"

 

「っつう!!うるっさ!!」

 

正面ダクトから高笑いが部屋に響いたので咄嗟にダクトドアを閉めることにした。・・・音が

聞こえた。どうやら"Molten Freddy"が近づいていたようだ。

 

「やば、また扇風機を停止させないと・・・」

 

電力削減のためにすぐさまスイッチを切る。時間を確認すると、あれからまだ30分しか経って

いないようだ。当たり前だが、気が遠くなる・・・。しかし電力を見るとまだ5%ぐらいしか

減っていないようだ。

 

「おお、やっぱり扇風機が電力を大幅に奪っていたんだな。節約して正解だな。」

 

だが、まだまだ気を抜くことはできない。夜は果てしなく長いからだ・・・・




"お前に光を見る資格はない"


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Bears Attack 3(熊の襲撃その3)

"私はリメイクされた。お前ではなく、お前が殺していけないものによって。"


AM 12:43

 

手が休まることはない。部屋の入念なチェックをした後はカメラを急いで立ち上げる。小部屋を

確認し、パソコンの部屋を確認すると・・・

 

「ん?」

 

部屋に一体の機械人形がパソコンを凝視している様子が映し出されている。・・・いや、パソコン

にも変化が現れている。今まで起動していなかったものが、急に鮮やかな鮮明を映し出している

画面に切り替わっていた。そこには、ピザ屋の部屋をモチーフにした部屋が映し出されており、

そこにいる"Toy Freddy"が椅子に座りながら指をキーボードに添えている。一体何しているのか

見当もつかないが、念のために何か出来ないか画面をタップしてみると、パソコンの画面が切り

替わり一体の機械・・?が映し出された。・・・よく見ると小さい緑のボタン?が映し出されて

いる。・・・考えてる暇はない!!試しにそのボタンをタップしてみると、ドアが閉まる音が

聞こえた・・・この部屋ではない、パソコン部屋から聞こえたようだ。

 

「???」

 

仕組みは分からないが一応これでいいのだろうか?ともかく、これ以上カメラを見るのは危険

なので閉じることにした。部屋の状況は・・・特に変化はないようだ。扇風機を起動させ、部屋の

室温を下げる。時間は・・・もう一時を過ぎていたようだ。

 

「何か息が苦しいような・・・」

 

先程から呼吸が少し荒くなっていることに気づいた俺は、換気の状態が悪いのかと思い空気を

入れ替える装置がないか探すことにした。しかし、部屋に設置されている機材では換気が出来ない

みたいだ。

 

「なら、カメラか?」

 

ここで扇風機の電源を切りもう一度部屋を要チェックした後にカメラを起動すると・・・

 

「お、換気システムエラーが出ている。」

 

どうやら、カメラに部屋の空気を換気するボタンが付いていたようだ。それを押すと、速攻で

空気の入れ替えがされたので息が荒くなるのは暫くなくなった。

 

ついでにほかの部屋を見なければならないので一通り見ていると、今度は左の部屋から高笑い

が聞こえてきたようだ。カメラを閉じて左の出入口を見ると、また"目玉だけ"を覗かせている

機械人形が立っていた。無論速攻で閉めるとドアをたたく音が"二回"聞こえてきた。

 

「あ?二回??・・・"Freddy"も来ていたってことか?あっぶな・・・」

 

二体同時に追い出すことができたのでこれは運が良いと言える・・・だろうか?結果オーライだ。

 

AM 1:52

 

"!!!!!!!!!!サアァァプラァァァァーーーーーーイズ♪♪!!!!!!!!!"

 

「があぁ!!相変わらずうるせぇなぁ!(苛立ち)。」

 

こいつの音量何とかならねぇのか・・・まぁ、直ぐに感知できて対処が楽だからいいんだが。

それともうすぐ二時か・・・取り敢えず"Molten Freddy"は完封できるので他の対処を上手く

やらなきゃならない。廊下組の機械人形はどうやら"Nightmare Fredbear"と"Nightmare"らしく

さっきのように高笑いをするときに笑い声をよく聞かなくてはならないので音が重なったときは

カメラを立ち上げる前に左右の出入口をよく見なければならない。"Freddy"は左の廊下から

少しずつやってくるので監視カメラを定期的に見なければならない。"Toy Freddy"とダクトホース

の奴は対処法がイマイチわからないが、未だに襲われていないのでこのままで良いらしい。

あの白い熊が現れたときはぶん殴るように追い払ったら泣きそうな顔をして消えていったよ。

ざまぁみろ!!"Nightmare Freddy"はカメラを立ち上げる時に微かに唸り声が聞こえてくるので

ライトで追い払えばいい。取り敢えずこの流れで対処すれば問題ないだろう。

 

「後は扇風機のスイッチを切り替えるタイミングを掴まないとな・・・これがきついんだよ。」

 

こいつの対処には少し頭を悩ませている。電力削減の為になるべく起動する機会を少なくしたいが

室温が上がると空気の入れ替えを頻繁にしなければならず、その都度必要のないカメラの立ち

上がりが電力消費を助長しているのだ。この問題の解決は少し時間がかかるだろう・・・

 

AM 2:26

 

此処であることに気づいた。

 

「そういや、さっきから""の機械人形しか出現していないよな・・・」

 

不自然なくらい他の種類の機械人形が出現していないので不思議に思ったのだ。一体何で

だろうな?まぁ、そんなことはどうでもいい。今はこの夜を乗り切ることに集中しよう。カメラを

立ち上げ廊下を確認する。"Freddy"が少し遠くに離れたので切り替えて、右の小部屋を確認する。

・・・さっきから映っていないな。壊れているのか・・・映らないんじゃどうにもできないので

他に切り替える。左の小部屋には何もいない。また廊下の様子を見ると"Freddy"が少し近づいて

きた。身構える必要があるな。カメラから目を離すとまた扇風機に白い熊が座っていた。今度は

首ひっつかんで投げ飛ばした。離れたところから半泣きみたいな声が聞こえてきたが全く罪悪感が

湧かない。電力を確認すると、残り60%になっており、ぎり節約できているかどうかである。

このまま電力が持てばいいんだが・・・カメラを立ち上げ廊下を確認すると"Freddy"が近くまで

接近してきた。ドアを閉めるためにカメラから目を離すと、

 

"ふぉっふぉっふぉぉ("!!!!!!!うひゃははあああはははWWWWWW!!!!!!")"

 

・・・左右と正面の侵入口から高笑いが良く聞こえる。

 

「・・・耳が痛てぇ・・・」

 

AM 3:09

 

部屋の監視をしていると突然

 

"5コインをください!"

 

と、声が聞こえてきた。目を離してみると先程から佇んていた"Rockstar Freddy"がいきなり起動

してコインを要求された。

 

「は?コイン?そんなのあったか?」

 

取り敢えずカメラを確認すると、コインを支払う項目が出てきたようだ。そこをタップしてみると

支払うような音と

 

"コインをくれてありがとう!"

 

と声が聞こえてまた動かなくなった・・・こいつの対処はこれでいいのか?ってか、起動しては

金を要求するって唯のカツアゲじゃねーか・・・それに俺、何時コインなんか集めたんだ?

・・・もう何度目かわからないがカメラを立ち上げ、部屋の監視を再開した。

 

AM 5:45

 

「おぉ・・・もうこんな時間か・・・」

 

気づけばクリアまでのタイムリミットが迫ってきたのだ。だが、ここで浮かれるわけにはいかず

より一層警戒して行動を再開した。部屋の隅々までチェックし機械人形の行動を把握して、

カメラを閉じると"Nightmare Freddy"の子分が数を増やしているのでライトですぐに消した。

それといつの間にか部屋に"Phantom Freddy"が出現してたので同時にライトで消してきた。

因みにこいつらの出現頻度が多い所為なのかライトの消費も多くなり、電力がみるみる減っていた

ので残り僅か10%になってしまった。

 

「電力殺しだろこいつら、何とかならねーかなぁ・・・」

 

最早限界を迎えそうになっていた俺は集中力がいつ切れるのか怖くなり、徹底的に監視をするのを

やめて少しでも余裕を持つために深呼吸を繰り返していた。声が聞こえる・・・直ぐドアを

閉める。音が鳴る・・・離れたようだ。

 

「早くチャイム鳴ってくれぇ・・・」

 

最終的には神に祈るかのようになっていた。もう限界だ・・・その時だ!

 

"キーンコーンカーンコーン、カーンコーンキーンコーン"

 

・・・聞き間違いじゃないだろうな・・鳴った・・鳴った!!これでクリアか!!

デジタル時計を見るとそこには朝の時間帯、"6:00"と表記されていた。

 

やったぁ・・いよっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

勝った。初めてこの夜を乗り越えた。たとえ終わりのないこの先が待ち受けていても俺は、この

夜を乗り切ったんだから。嬉しくないはずがない!!・・・ひとまず休憩をしよう。今までの

疲れが溜まっているので少し仮眠をとることにしよう・・・




Bears Attack CLEAR


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A slight rest(僅かな安息)

"人はどんな過酷な環境でも適応できる能力を持っている。そこが地獄でも・・・"


・・・・・"トントン"。

 

「・・・あ?」

 

どれくらい時間が経過したのだろうか?地獄のような初日の夜を"制裁"を受けながらも初めて

乗り切り、安堵からの疲れで心地よく眠りについていたのに、いきなり俺の肩を叩いて安眠を妨害

してきたのだ。この時尋常じゃない程の疲れが溜まっており、唯一の心身回復の役割を果たして

くれる睡眠を邪魔されたわけなので明らかな苛立ちを覚えた。

 

「ちっ、いったい誰・・・うおぁ!!」

 

文句の一つ言おうと顔を上げると、俺の顔を覗き込むかのように"Rockstar Freddy"が目の前に

佇んていた。かなり近い距離で。

 

「おま!?、まだそこにいたのかよ・・・もう終わっただろ?とっとと帰れよ・・」

 

驚きはしたがそれよりも苛立ちが勝っているので、唯々鬱陶しくなり撤退をするよう要求したが

それを無視するかのように喋りだした。

 

"おめでとう!君はこの夜を見事に乗り切っったね。だから君にささやかなプレゼントをしよう。"

 

「は?プレゼント??」

 

こいつの意図が読めない・・・そう思っていると奴の左手に持っているものを俺が座っている

机の上に差し置いた。

 

「・・・電池?」

 

置かれたものは人の片手ぐらいの大きさがある乾電池のようだ。・・いや、でか過ぎねぇか?

どちらかというと、何かの機材に使うバッテリーのように見えるが・・・。

 

"じゃあ、僕はこれで・・・"

 

そう告げると奴は機械音を立てながらゆっくりとした歩調でこの部屋から撤退した。結局奴は

何がしたいのだろうか・・・わざわざ敵であるこの俺に贈り物をするとは。てっきり、

プレゼントと称した"制裁"が来るのではないかと身構えていたがそんなことは杞憂に終わった。

 

「一体どうなってんだ・・・全く。まぁ、奴は退散してくれたしこれでゆっくりねm

 

おっと、まだ休むのは早いよ我が旧友よ

 

・・・今までこれほどの殺意が湧いたのは久しぶりな気がする。そんなに俺の睡眠を邪魔

したいのかこいつらは。

 

苛立っているのは十分承知しているが少しだけさ。時間を取らせるのは。

 

・・・さっさと要件を話せく〇野郎・・・。

 

まぁ、そんな怒らずに。さてまずは、"Bears Attack"のクリアおめでとう。まさか二回目で

 クリアできるとは、これは正直想定外だよ。私が思ってる以上に君の適応力が早いみたいだ。

 まぁ、あいさつはこれくらいにして本題に入ろう。追加説明だ。

 

さっきの内容について色々言いたいことはあるが、今はそんなの気にしないようにする。

で、何の追加情報だ?

 

うむ、呑み込みが早いことには感謝するよ。説明は"コイン"についてだ。これはカメラを映して

 いるときにほかの部屋に切り替えたりすると、切り替える前のそこに映し出されているコインを

 自動的に回収してくれたりドアで機械人形たちを撃退すると勝手に溜まる仕組みになっている

 んだ。使い道はカメラに追加項目が表示されるから自分で確認してね。それともう一つ。君が

 この夜を乗り切る度に"アイテム"を貰えるようにしている。さっきのバッテリーがその例さ。

 有効活用するんだよ。・・・それともう一つ。

 

「・・何だ。」

 

仮眠が終わったら、君にとっての"友人達"と少し話してみてはどうだろうか?

 

・・・え?

 

"何言ってんだこいつ"・・ていう顔をしているね。でも君はこの暗い檻の住人として過ごして

 いくんだよ?流石に誰とも話さないとは精神的に参るんじゃない?

 

「いや・・何で俺を殺しに行くような奴と話さなければならないんだ・・・」

 

言ったはずだよね。彼らは君にとっても"審判官"であり、"唯一の友達"であるんだよ。案外

 気さくに話しかけられると思うよ。この安全時間、彼らにとっても退屈な時間帯なんだ。だから

 暇つぶしだと思ってお喋りしてみてはどうだろうか?無論、この時間帯では絶対に襲撃される

 ことはない。さて、そろそろ私は退出するよ。

 

そういうと、奴はこの部屋から消えだした。・・・まずは寝るか。

 

・・・・・・・・・

 

PM 9:28

 

次に目を覚ました時には午前九時を過ぎていた。取り敢えず眠気や疲労は少し取れており、頭の中

をリフレッシュすることが出来たようだ。これにより、考える余裕が身についてきた。

 

「さて、頭もすっきりしたし・・・次の夜について対策を練らないと・・・。」

 

流石に何も考えずに次の夜に挑むのは無謀が過ぎるのでな。・・だが、出現を確認しているのは

今のところ"熊の人形"だけだからなぁ。うーん・・・そういや他の機材はまだ使った試しが

ないよな。一応確認してみるか。

 

「取り敢えず、"発電機"について調べてみるか。」

 

確かこいつの設置場所は・・・左のカーテンステージだったはず・・・。この部屋から廊下側の

通路に出るのは何気に初めてなので少し緊張した。廊下側の通路に入っていくと、辺り一面に

様々な種類の装飾品が散りばめられている事が確認できる。ややごちゃごちゃしているが。

暫く廊下を進んでいると見覚えのあるカーテンステージが見えてきた。

 

「お、あったあった」

 

そこには大きなステージのほかに黒い機械が設置されている以外何もないところだった。割と

シンプルな作りになってるんだな。

 

「まぁ、さっさと確認するか・・・」

 

といってもここで長居する気はないので早く調べに取り掛かることにした。ずいぶん古い作りと

なっており、本当に動くかどうか怪しいがこの機械についての資料が上に置かれているので

取って確認することにしてみた。・・・どうやらこの機械は電力を補充するのではなく、消費を

最小限に抑えるタイプらしい。

 

「という事は、大幅な電力の消費を抑えられるってことなのか。こいつは便利だ!」

 

それなら、例え扇風機を一緒につけても消費を抑えれるってことか。こいつはいい情報を得る

事が出来た。調べて正解だ。早速警備室の部屋に戻る為に体を向けようとした時、

 

"シャーーーー!"

 

カーテンを開いた音がし、そこから"Bonnie"がこちらの顔を向けるように見てきた。様子から

見ると相当不機嫌そうな感じがするが・・・

 

「・・君か?さっきから一人ぶつぶつ言ってるやつは。あのさぁ、勝手に喋るのは別にいいん

 だけどもう少し声の音量下げられない?僕ねぇ、神経質な所があるからそういうのに一々

 イラつくからさ。頼むよ。」

 

それだけ告げると勝手にカーテンを閉じていった。・・・普通に文句言われたんだけど。

 

「てか、こんなラフな感じで話しかけてくるのか・・・最早騒音を注意する隣人と変わら

 ねーじゃねーかよ・・・。」

 

・・・うん、部屋に戻るか。後は次の夜が来るまで対策を練ることに時間を費やしている最中だ。




"安らぎは一時だ"


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Pay Attention 1(注意喚起その1)

"あなたが見失っても、彼は決して見逃さない"


"チッ・・、チッ・・、チッ・・、チッ・・、"

 

「・・・」

 

時間が過ぎるのは早い。あっという間に夜を迎え、これからまた"恐怖の夜"が始まろうとしている

のだ。手が震えてくる・・・。この時間が来るまで策を考え、自分なりのスムーズな作業が出来る

よう頭の中でシミュレーションを何度もする。無論、一回で成功出来るとは思えない。奴は、俺が

考えそうなことなど予め想定しているのだ。発電機のことについても何の対策もしないことはまず

有り得ない。それが出来てしまえば一晩中ドアを閉めっぱなしにしても安全に朝を迎えるからだ。

 

"チッ・・、チッ・・、チッ・・、チッ・・、"

 

「・・・」

 

なので、効率的に動く必要があるのだ。カメラのチェック、扇風機の切り替えるタイミング、機材

や今朝渡された"アイテム"の有効活用、そして"未知の機械人形"の情報収集だ。これが最も重要と

なる。新たに出現するなら、今までのやり方では簡単に支障を起こすからパターンも常に変え

なければいけない。そこを怠れば直ぐ死に直結する。

 

"チッ・・、チッ・・、チッ・・、チッ・・、"

 

「・・・」

 

時間が俺を焦らせる。冷静に考えても何が起こるかわからないこの状況。一度恐怖に陥れば簡単に

策が崩れる。頭の中では分かりきっているのに、実際には上手く行動に移せないのだ。そこを奴ら

が上手く狙ってくる。死に怯えるものと怯えないものではこんなに考えが違ってくるのだ。俺も

あの着ぐるみにいたときは、"襲撃者"の立場にいたので強気でいられたが立場が逆転し、隠れる

立場となってしまった。俺を守る者はいない・・・なら、"俺自身が身を守るしかないのだ。"

・・・そして時が来た。

 

"ジりリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

先ずは昨日と同じようにカメラを立ち上げ素早く部屋の確認をする。・・・右の小部屋に変化が

起きている。"Musix Box"という文字とその下にゲージ棒が映し出されていた。

そのゲージ棒が僅かだが減り続けている。心当たりは一体しかいねぇ・・・

 

「"Puppet"だな。どうせ切れたら終わりという猶予の概念も知らねぇ奴だ。」

 

ゲージ棒をタップするとネジを巻き直すような音と共にゲージが増えた。それを確認し他の部屋

を確認する。・・・今度は右のカーテンステージに一体の機械人形が佇んている。

 

「あいつは・・・"Funtime Foxy"か。」

 

姉妹店で見かけた狐の機械人形だ。白とピンクのカラーで構成されており、えらくメタリックな

作りをしている。83年代の技術で作れるような代物ではない。・・こんなどうでもいいことを

考えるんじゃない。今はこいつの対処法を知らなければ。・・・よく見るとステージのそばに

小さな看板が佇んでおり、そこに"Show Time at PM 2:00"と書かれているのを発見した。

 

「・・・この時間帯に見ればいいってことか?」

 

取り敢えずここを後回しにし別の部屋をチェックした。・・・他には変化がないようだ。ここで

カメラをいったん閉じ、初めて使う"発電機"を扇風機と併用して起動した。

 

"!!ヴォォォォォォォォン!!"

 

「うわ、結構な騒音量を出すんだな・・・」

 

起動と同時に部屋全体に音が反響した。それほどまでに五月蠅いものなのだ。まぁ、この音に

慣れるしかないか。こいつが電力を大幅に抑えられるならば・・・

 

またカメラを起動しさっきの右の小部屋を確認する。・・・さっきよりゲージ棒が減っている。

直ぐに巻き戻す。満タンになってから他の部屋に切り替える。・・・変化なし。通気口内

センサーに切り替える。・・・ここも異常なし。ダクトホースの様子は・・・何も反応しない。

特になければ直ぐにカメラを下して部屋の確認だ。左右を確認・・・右下に何かいる。

 

「・・・"BB"か?」

 

こちらを覗き様子を見ている"BB"が右下のダクトに出現しているのだ。しかし、一向に入る様子

はない。こちらがカメラを見る時に入ってくる形式なのか?だが念のために直ぐドアを閉める。

・・・音が鳴った。撤退したようだ。電力を確認すると・・・

 

「おお!扇風機付けっぱなしでも全然電力減っていねぇ!」

 

あれから20分経過しているが僅か3~4%しか減っていない。やっぱり発電機の力は偉大な物だ。

暫くは扇風機を切る必要はないだろう。一通り部屋の確認をした後はカメラを素早く起動

する。だが、部屋の画面ではなく赤い人?が釣り・・?をする画面がいきなり表示された。

 

"Catch the Fish"

 

という文字が映し出されており他の画面に切り替えられなかった。

 

「は?ちょ・・なにこれ?」

 

この現象に戸惑い、ペースが乱されてしまった俺は思わず動きが止まってしまったのだ。

すると、何かゲーム音みたいな音が鳴り"Error"と表示された。・・・タップしても

反応がない。故障させられた!?この状況は不味い!!

 

「おいおい、これ直るのか!?直らなかったらやばいぞ・・・。」

 

焦った俺はやみくもに画面をタップしているといつものような部屋が映し出された。

・・・どうやら一時的なものらしい。心臓に悪りーよこれ・・・。対応が遅れて

しまったので急いで右の小部屋に切り替えそれの確認をする。・・・半分まで減ってる

じゃん!直ぐ巻き戻しほかの部屋を確認する・・・

 

AM 1:13

 

"!!!!シャーーーーン!!!!"

 

「うわ!」

 

部屋の確認をしているといきなり部屋全体にシンバルの音が鳴り響いてきた。音の

発生源は俺の真後ろから聞こえるので振り返ると、

 

「っつ!!おまえいつからそこにいた!?」

 

何とそこには巨大なシンバルを手に持ちテンポよく鳴らし続ける機械人形が立っていたのだ。

しかし、俺の質疑に答えられるわけもなくただ鳴らすだけだった。

 

「こいつは・・・どうすればいいんだ?」

 

はっきり言って対処法が浮かばないのでそのまま放置するしかないのだ。・・・なんか腹冷えて

きたな。扇風機を付けっぱなしにするのは流石に寒いのでいったん電源を切ることにした。

そのままの流れでカメラを起動し減っているゲージを巻き戻していると今度は笑い声が聞こえて

きた。

 

"アハハハハハ!アハハハハハ!アハハハハハ!アハハハハハ!"

 

カメラから目を離すと、・・・俺が座っている机の下に紫色を纏った"BB"に似ている機械人形が

座っていた。こいつもいつ侵入してきたんだ?と、疑問に思うが笑うだけで特に何かするわけでは

ないと思いもう一度カメラを起動して部屋の監視を再開した。ネジを巻き戻して時間をチェック

すると、

 

「もう一時半なのか・・・そういやあいつのショーの時間も後30分に開催されるんだっけ?」

 

忘れずに覚えておかないと・・・電力も余裕があるしそんなに焦る必要はない。カメラを下して

部屋の確認をする。・・・なんかさっきからシンバルの音のテンポが速くなってないか?しかも

笑い声を発しているときから。てか、この紫の奴は未だにこの部屋から退出してくれないし

五月蠅いのでこのままでは音の感知が難しくなるから、止む無く"発電機"の電源を消した。

またカメラを立ち上げ最早作業と化しているネジの巻き上げをし、他の部屋を確認する。特に

異常はない。他の侵入口も特に何か映ってるわけではなくこのままカメラを起動するのは電力の

無駄なのでいったん閉じることにした。

 

「ん?そういやいつの間にか静かになっているな。」

 

あれ程音が部屋中に響いていたのに今では静寂がこの部屋を包んでいる状態だ。笑ってた"BB"に

似ている奴は既に消えており、シンバルを鳴らしていた奴も今では動いてる様子もなかった。

 

「どういう事だ?・・・まぁ、勝手に静かになってくれてありがたいけどな。」

 

ともかく、気にせず扇風機の電源を付けてカメラを起動しようとした時、

 

"ハイ!チーーーーズ!!!!!!"

 

「!!??!??」

 

いきなり視界がカメラで取ったときに発生するフラッシュに覆われ、歪んで見えてきた。

目も回っていき頭も揺さぶられる様な感覚に陥ったので凄い気持ち悪くなってきた。

 

「ぐあぁ・・・。」

 

何が起こったのかわからずに唯酔いが醒めるまで待つしかなかったのだ。その間、動き

が止まってしまうので襲われるリスクが高まるが、とても手を付けられる状況では

なかったのだ。・・・漸くして視界が安定し酔いが取れたので取り敢えず時間を確認

することにした。・・・時計が"二時"と表示されていた。

 

「あ、やべぇ!!ショーの時間じゃねーか!!」

 

急いでカメラを起動させカーテンステージを映すと・・・そこは既にもぬけの殻で

あり、奴の姿が確認できなかった。そして右の廊下から勢いよく走る音を聞いたとき、

直感的にやばい!と、そう感じた。

 

「不味い!!今すぐドアを閉めねーと・・・。」

 

急いで右側の進路を防ぐドアボタンを押し、直ぐにドアを下させようとしたが・・・

"間に合わなかった"

 

そいつは直前に閉じようとするドアに自身の手を滑り込ませ強引にこじ開けて侵入

してきたのだ。よほどの怪力がない限りできない芸当をいとも簡単にやり遂げてしまったのだ。

 

そして侵入を許してしまった・・・

 

「嘘だろ・・・」

 

唖然するしかなかった。

 

「HA-----HA,HA,HA!!君ぃ。よくも私の素晴らしいショーを無視してくれたなぁ!!おかげで

 私はたいそうご立腹だよ!!こうなれば最後、私は一度決めたことを何が何でもやり通す

 必要が出てしまうのだ。わざわざ面倒なことを作っていおいて私の手を煩わせないでくれる

 かなぁ。そんなにショーを見る余裕がなければ"今ここで"開催してあげよう!!無論演目は

 "JAMPSCARE"!!君の殺戮ショーだ!!もちろん主役は君だよ、この惨劇をモチーフにした!

 さあ、時間だ。一緒に踊ろうじゃないか!!君が息絶えるまで!!!」

 

そう告げると俺を椅子から引きずり下ろし地面に思いっきり叩き付けた。奴から発せられる力に

体が追い付けていけず悲鳴を上げた。もう一度奴が俺の体を掴みあらん限りの力で振り回して

今度は壁に叩き付けてきた。・・・体から鈍い音が響いて俺は悲痛のうめき声を上げた。軽く

骨にヒビが入ったようだ。そっからまた俺の体を掴み、壁に何度も俺の体をぶつけていく。

体が砕けるような勢いで・・・いや、文字通り体の骨や内臓が衝撃に耐えられなくなり骨折や

内臓破裂で体がボロボロの状態となってしまったのだ。体中痣だらけとなり内出血であり得ない

程体が膨れ上がり、異常なほどの痙攣を起こし痺れてまともに動くことも出来ずにいた。

顔も悲惨な状態で歯は勿論のこと、鼻や耳の骨も折れ、顔の骨格も変形しており、視界が歪む

ほど酷い状態に陥った。もう意識が無くなる直前だった。これで終わりかと思いきや、奴は

これに満足がいかず、俺をうつ伏せの状態で倒し、そこから折れた両腕を掴み背中を踏んづけて

思いっきり引っ張り出してきたのだ。尋常じゃない痛みに俺は最早悲鳴すら上げられずに

涙だけを流すばかりだ。完全に動けなくなったのを見て奴は漸く殺戮ショーを終わらせた。

意識が無くなるその時に大声で俺に向けて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ショーの時間は決してずれてはいけない!!一分前でも一分後でも!!"

 

 

 

 

 

 

 

 




死因:連携による奇襲


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Pay Attention 2(注意喚起その2)

"偽りこそが真実であり、それに囚われる人は多いのだ。"


人は失敗を学びそこから新たな活路を見出す。だが、新たな見出しは新たな壁が付きまとう。この

考えが覆ることはまずないに等しい。そしてこの考えは彼の行動によくあてはまる。そう、彼は

"死"という失敗を身をもって痛感し、次はそれを回避するためまた策を練り直さなければならない

のだ。しかし、完璧な策などないしそれを完璧に実行することもほぼ不可能だ。失敗はいつでも

成功につながる道に"潜んでいる"存在なのだ・・・

 

AM 12:34

 

「・・・予想はしてたが、ショーの時間はランダム形式か。」

 

二度目の挑戦。そして三度目が訪れないように注意深く行動する必要がある。カメラを起動し

右のカーテンステージの看板を確認すると、時間帯が"1:00"と表示されていた。後三十分も

ない。ここで問題なのは"カメラを見るタイミング"だ。

 

「この部屋に固定すると"Puppet"や他の機械人形の監視が疎かになる。オルゴールも巻けない。

 かといって他の部屋に切り替えたらまたあの時に不意を突かれてカメラを見るタイミングを

 失う・・・。素早く行動することが第一の目標だが慣れるには時間がかかる。はぁ・・」

 

兎に角余裕がない。全てを監視するのは事実上不可能だ。時間を確認し右の小部屋に切り替えて

オルゴールを巻く。その間は少しだけだが部屋の様子を見る事が可能なので異常がないか確認

する。・・・"BB"がこちらを覗いている。直ぐドアを閉める。・・・音が鳴り撤退を確認して

目線をカメラに戻す。通気口内センサーとダクトホースを急いでチェックし変化がなければ

部屋の監視モードに戻る。・・・特に変化がないのでまたオルゴールを巻きカメラを下して

発電機と扇風機を起動させる。室内温度を下げながら部屋の様子と時間の確認をしてまたカメラを

立ち上げる。

 

「そろそろショーの時間だな・・・。」

 

時刻がもうすぐ一時を指すのでステージの部屋を映し出す。

 

AM 1:00

 

カメラの画面が一瞬荒れたが、直ぐに元の画面に戻った。・・・今度は"AM 3:00"と看板に表示

されていた。

 

「一度で撤退するわけないか・・めんどくせぇ性質を持ってるもんだ。」

 

毒づいても仕方がないので右の小部屋に切り替えオルゴールを巻く。巻き終わったらカメラを

閉じて部屋の確認をする。・・・またシンバルの音が響いてきた。そろそろ部屋の換気も

しなければなりないので何も潜んでいないことを確認しカメラを立ち上げようとすると・・・

 

"♪♪♪みんなで一緒に遊ぼう♪♪♪"

 

という内容の広告が大音量のBGMと共にカメラの画面を覆いつくした。

 

「ああもぅ!五月蠅ーし邪魔なんだよ!!」

 

画面の中央に"Skip"という項目があるのでタップすると直ぐに広告が消え部屋が映し出された

ので、またオルゴールを巻き直す。そして空気の換気をしてカメラを下すと・・・

 

「!!」

 

いる。部屋の真正面に見覚えのある機械人形が。体中ワイヤーや配線でむき出しになって床に

鎮座している"金色の熊の人形"が・・・

 

「う・・・」

 

一瞬そいつからの気迫に押され、動きが止まってしまった。"その一瞬が命取りとなった"

 

・・・本当に一瞬だった。そいつの頭が消えて気づいたときは・・・"(!!!鈍い咀嚼音!!!)"

 

何が起こったのか分からずいきなり俺の体は崩れ落ちた。起き上がろうとしても体が動かない。

"ピクピク"と体が痙攣を起こすだけだった。そういや視界もいつの間にか赤く染まり、目玉も

動かせない・・・あれ?何でだ?・・・"頭が異常に軽く感じるのは・・・?"

 

・・・もう彼の意識はない。当然だ。彼の頭は"Golden Freddy"によって噛み砕かれたのだから。

脳は一度破損すると基本もう助からない。体のすべての組織がそこに繋がっているので動かす信号

が送れないのなら体自体も機能しなくなる。まぁ、唯一利点があるのなら死ぬことさえ気づかない

ので苦しみが一切ないのだ。無論彼は二度目の失敗を被ったんだがな。

 

 

・・・三度目の挑戦も彼はまた失敗を犯した。

 

AM 2:34

 

「さっきからシンバルの音が鳴りやまねぇ・・・」

 

部屋は発電機と扇風機の音、そして音の発生源が分からない"録音された音声"が永遠と流れ続けて

おり、部屋は耳に全く優しくない環境になってしまっている。そこにシンバルの音が重なり最早

騒音の大合唱と捉えられても可笑しくなかった。

 

「何かシンバルの音、テンポが速くなってねーか?」

 

先程とは明らかにリズムの間隔が狭まってきたので何か良からぬことが起こると予想できるが

肝心の対処法が分からないのだ・・・そこに固執するわけにもいかずオルゴールを巻こうとカメラ

を立ち上げようとした時に、"ガン!!"と勢いよく背中に物がぶつかってきたのだ。背中に痛みが

走り、ついに八つ当たりかよ・・・と思ってると今度は体を鷲掴みにされ誰かに持ち上げられた。

 

「!?おい、いったい誰が・・・」

 

後ろを振り返ると・・・真後ろにいた機械人形が顔を震わせて怒鳴りつけてきた。

 

おい!!君か!?さっきから五月蠅くしているのは!!私は五月蠅いの大っっっ嫌いなんだ

 よ!!私シンバルで君に注意を呼び掛けたのによくも無視してくれたよね!!音を止める気

 がないのなら、私自身が君を黙らせよう!!

 

そう告げると奴は俺の首を絞め上げ始めた。

 

「ぐぅ・・・うぐ・・・」

 

とたんに息が苦しくなり俺は一刻も早く気道を確保し何とか息を吸えるよう、ジタバタと暴れたが

相手は機械人形。力量の差は明らかに奴が上だ。抵抗もむなしく次第に呼吸が出来なくなって、

俺の体は段々動きが鈍くなってきたのだ。そこに畳みかけるように奴は思いっきり俺の首を絞め

上げたのだ。"(!!!ゴキン!!!)"

 

・・どうやら力み過ぎて首の骨が折れてしまったようだ。だらんと体はぶら下がり俺は息絶えた。

 

 

・・・・・・四度目の挑戦だ。

 

AM 3:45

 

今までの失敗が次の結果を良くしようとする材料となり増えれば増えるほど有利に働く事がある。

まず、音量を抑えるためにむやみやたらに発電機などの機材を使わない。"Funtime Foxy"は

定期的に時間帯をチェックする。"Pupprt"は一々その画面に切り替えなくてもオルゴールを巻ける

"グローバルミュージックボックス"を使えば少しずつだが自動的に溜まるので、巻ける余裕がない

場合に起動する。こちらも相当電力を消費するからだ。タイミングを合わせてその都度上手く

対処をしていった所で今の時間帯までこれた。電力はこの時点で40%になっており、朝まで何とか

持つかどうか・・・空気の入れ替えも終えたところでカメラを下すと、また真正面にさっきの

奴が鎮座していた。しかし、この時はもう対処法を頭に叩き込んでいるので不意を突かれる耐性は

とっくに身についていた。

 

「!!(サッ)」

 

急いで"FreddyMask"を頭にかぶり様子をうかがう。・・・直ぐに消えたようだ。急いで外して

部屋の様子をカメラでチェックする。・・・ショーの時間帯は"PM 7:00"と看板に記載されており

恐らくもう見る必要はないのだろうと判断した俺は"グローバルミュージックボックス"を停止し

"Puppet"がいる部屋に切り替えた。ここで、異常なほどのスピードでゲージ棒が減っているのを

確認した。

 

「おおっと!急に減りが早くなってきたな。時間帯によって減りのスピードが上がるのか?」

 

発見が早いおかげで何とかオルゴールを切らすことなく巻き戻すことが出来た。この間に部屋

の左右を確認すると、右ダクトに"BB"が出現していたので即座にドアを閉めた。・・・追い出す

ことに成功したのでカメラの電源を切り、発電機などの機材を一気に起動した。カメラを見ない

間はこうやって、室内温度を下げながら電力を抑えるようにしている。ある程度下がったら直ぐ

電源を切り音を消失させる。こうすることで効率的に電力を節約し、尚且つ音に反応する機械

人形の行動を抑えて対処できるからだ。

 

「さて、そろそろカメラを立ち上げるか。」

 

直ぐに立ち上げだいぶ減ってきたゲージを巻き直し、他の部屋に切り替えて様子を確認した。

・・・良し、特に異常はないな。なら、さっきの小部屋にカメラを合わせいったん閉じる。

右下のダクトには何もいない。左右や正面ダクトも特に変化はない。この工程は意外と上手く

いったようで、気づけばもう五時を迎えていた。

 

「後は変なミスをしなければ無事に朝を迎えられる・・・。」

 

最後まで気を緩めることせず常に警戒モードで取り組んでいく。最後の部屋の換気も済ませ

オルゴールも満タンになるまで巻いていき、部屋の隅々までチェックしカメラを閉じる。

丁度右下に"BB"に似た奴が出現していたので即座にドアを閉じた。・・・退散する音を聞き

逃さずに確認し発電機と扇風機の電源を入れる。・・・温度を下げてもう一度電源を切る。

 

「よしよし。これでもう大丈夫だ。もう一回カメラを起動してゲージ巻くか・・」

 

そう呟いてカメラに手を取り電源を起動し小部屋の確認をすると・・・ん?ゲージ棒が

無くな・・て・いる!?

 

「え?は?はあぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

何かの見間違いか!?・・・いいや、見間違いなんかじゃない。本当にゲージが無くなっている

じゃねぇか!!焦りに焦った俺は狂ったかのようにゲージ棒を連打でタップをするが、当然

巻かれる様子がない。ちょっと待って。ここまで来て!?さっきまで満タンに巻いたはずなのに

どうして!?

 

「嘘だろ・・・」

 

・・・そして俺は決して耳にしてはいけない曲が耳元で流れるのを感じ取った。奴が来る・・・

 

~♪♪♪ ♬♩♩♩♪  ♬♬♪ ♬ ♬♬♪ ♪♪ ♬♩♪♪ ~

 

流れている曲がまるでこれから俺を処刑する為の前奏に聞こえてきたのだ。

 

「嫌だ・・ここまで来てか・・・やだ・・やめてくれぇ・・」

 

視界が暗転してきた・・・これも奴の仕業なのか。奴は一度で出来たらもう後戻りなどしない

のだ。例えドアを閉じても簡単にすり抜けていく。実質なんも対策などないのだ。

 

もう諦めかけてたその時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"キーンコーンカーンコーンカーンコーンキンコーン"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・鳴った。今、鳴ったよ・・な。・・・視界が明るくなってきた。て・・・ことは・・・

 

「・・・音楽が鳴りやんでいる。・・こった。生き残ったぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

絶望の淵から希望の光が照らしだされる・・・彼の今の心境はこうだろうね。




"私は別にあなたのことなど嫌いじゃないわ。でも、私の邪魔をしないでもらえないかな。


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Save Them(彼らを救え)

"僕らは可愛い着ぐるみの中に隠された"


・・・・・

 

「・・あれ?此処は何処だ?」

 

二日目の夜をギリギリながらも乗り越え、安堵していたその直後に急に意識が途切れたのだ。

さっきまでいた部屋の背景がガラリと変わりどこか薄暗い部屋に差し替えられた。しかし、

どこからか楽しそうな声と音楽が聞こえてくる。いきなりの状況変化にまた俺は戸惑ったが

少し離れた場所から漏れた光が差しかかっているのを見つけそこを目指すよう歩き出す。

・・・若干厚みがあるドアを押してみると錆びれたような音と共にゆっくり開いて、閉ざしていた

この先の光景を鮮明に映し出した。

 

「!!!」

 

そこには俺にとって縁がある懐かしい場所の光景が映し出されていた。部屋の中には数こそ

少ないが子供が数人、楽しそうな表情を浮かべ玩具や風船を片手に握りしめており目線の先

にあるショーを満喫しているようだった。ステージの上に立ち、マイクを握りしめ快活に

歌う一体の機械人形がこのショーの主役だ。そう、"SpringBonnie"だ。

 

「な!?」

 

驚きを隠せない。俺が生前の頃にいた店舗"Freddy Faz Bear Pizza"の部屋の中を当時その

ままに再現されているのだから。そのまま立ち尽くしていると歌い終わったのか、主役の

機械人形が立っているステージに幕が降ろされた。っと同時に時計のベルが鳴りだした。

子供たちは少し不満そうな顔を浮かべていたがベルを聞きつけるとまた笑顔に戻り部屋の中央

に設置されているテーブルに早足で駆け付けた。そこにもう一体の機械人形が奥の部屋から

現れ両手に焼き立てのピザや盆に乗ってるケーキを持ちテーブルにゆっくり近づいてきた。

どうやら昼食の時間のようだ。テーブルに美味しそうなご馳走を並べ終わったら置いてある

手洗い用の消毒液とタオルを持ち、手を洗うように促して手を洗わせてタオルで拭く。

その間にピザやケーキを切り分ける作業をし、全員が洗い終わるときには準備が整っていた。

席に座り手を合わせて黙祷をし終わったら一斉に食べ始めた。美味しそうに食べるその様子は

他人から見たら幸せに満ち溢れた光景に見えただろう。・・・此処でノイズがかかり、また

場面が変わった。次に映し出されたのは店の路地裏にあるごみ出しの場所で蹲る女の子が

悲しそうな表情で下を向いていた。・・・さっきの場面とは打って変わって悲壮に満ち溢れた

様子が映し出された。・・・そこに一台の車が止まる音を聞いた。

 

「この場面・・・」

 

よく覚えている。忘れられない記憶だ。止まった車から一人の男が降りてきてゆっくりとした

足取りで少女に近づく。足音に気づいて少女が顔を上げると、表情が悲壮から恐怖に変わり

顔を引きつらせていた。無理もない。その男が右手に持っている"銀色に輝くナイフ"を目視

したからだ。だが、体が震えて立ち上がることも出来ず逃げ出すことも出来ない少女は、今

にも泣き出しそうな状態でかすれた声で助けを呼ぶしか方法が無かった。無論声にもならない

ので誰も気づかない。男はどんどん近づいていき恐怖のあまり遂に泣き出したのだ。そして

体を掴まれ勢いよく持ち上げると泣き喚いてる少女を黙らせるかのように、ナイフを胸元に

突き出した。・・・突き刺す音と共に血が飛び散らかり悲痛な声を聴いた。暫く悲鳴は響き

渡ったがやがて声が止んで少女の体は動かなくなった。男は興味を失ったのかその場で投げ捨て

車を止めていた方向へ歩き出した。車のエンジン音と共にこの場所を去ってから静寂が訪れた。

・・・雨が降り出し、動かなくなった少女の体を雨粒が打ち付けていき更に冷え込んでいった。

この場面を最後に又もや光景が切り替えられ、今度は機械の部品庫が映し出された。

 

そこには5人の子供の死体が床に横たわっていて、部屋中血まみれで血液や体液でひどい悪臭が

広がっていた。俺もこの匂いに顔をしかめて鼻を抑えつけた。暫くはこの場面に変化が訪れる

事はなかったが、突然一体の機械人形が体を浮かしながらこの部屋に現れてきた。その機械

人形の腕に5人分の人形のガワを携えており、それを一人ずつ頭にかぶせていく。被せるごとに

機械人形の動きが遅くなっていくのは謎だが最後の一人に被せ終わるとその途端、機械人形が

蒸発し変わりに"Golden Freddyの頭部だけ"が咆哮に似た叫び声と共に俺に向かってきた!!

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

"がばり"と勢いよく俺の体は起こされた。今起きたことに頭が混乱し、呼吸が乱れてきたので

息を整えるのに少し時間が掛かった。・・漸くして気分が落ち着いてきたので一度辺りを見渡す

と、そこはいつもの部屋に戻っていた。どうやら唯の夢のようだ。

 

「それにしちゃぁ生々しい夢だったな・・・。俺の過去についても取り上げられてたし。」

 

あの時の光景をここまで再現されていたものだから自然にこの言葉が口から出てきた。

 

「あら?夢じゃなくて事実のことじゃないの?」

 

・・・まるで俺の発言に異を唱えるよな声が俺の背後から聞こえてきた。咄嗟に振り替えると

そこには首を傾げる素振りで宙を浮いていた"Puppet"がいつの間にか現れていた。本日何度目か

分からない驚きを上げているとそいつは俺にそっけなく話しかけてきた。

 

「大丈夫よ。もうとっくに朝になっているし今の時間帯では私はあなたを襲えない。少し悔しい

 けどね。部屋に侵入する直前にチャイムが鳴ったもんだから釈然としていられなかったのよ。

 だから、違ったやり方であなたを驚かせてたのよ。ふふ‥どうだった?いい夢見れた?」

 

この言葉を聞いて頭の中に眠っていたある感情が一気に吹きあがったが、それとは違う考えが

その感情を抑えつけていた。怒りよりも疑問が頭の中に覆いかぶさっていたのだ。その疑問を

そいつにぶつけてみた。

 

「・・・なぁ、あの夢さぁ、どうしてあんなにも再現度が高いんだ?お前が見たものを全て

 当時の状況に刷り込ませたんだろうが、あそこまで完璧に写せるものなのか?」

 

「・・・ん?てっきりあなたからの罵倒の嵐が繰り広げられると思っていたけど予想と違う

 ことを聞いてきたわね。」

 

「いや、さっきの襲撃シーンで俺の怒りは有頂天に達してんだけど・・・」

 

「ふーん。意外と我慢強いのねあなた。でも残念だけどその質問には答えられないわ。」

 

「は?」

 

「あら、聞かれた質問に必ず答えが来ると思ったの?そんなことについて一々私が応答すると

 思う?それくらい自分で考えなさい。別に大した意味なんてないのだから。」

 

「・・・」

 

「そんなことより次の夜についての策を練ったほうがあなたにとっていいんじゃない?

 そっちのほうがとっても有意義なものとなるわ。」

 

「何かはぐらかされた感じがするんだが・・・」

 

「本当に大した意味なんてないわよ。そんなのきいてどうするの?それがこの状況をどう有利に

 働くの?一々つまらないことに考えを持たないほうがいいわよ。脳が疲れるだけ。」

 

「・・・お前の言っている事、すんごい癪に障るが一理あるな・・・。」

 

確かにこの疑問を解消したところで状況など何一つ変わらないのだ。この地獄から抜け出せる

わけでもないし。よくよく考えるとこんな小さいことに神経を使わしている俺が馬鹿に見えてきた

のでこの疑問についてはもう忘れるほうが得策だ。

 

「さてと、そろそろ私は元の部屋に帰るね。何にも喋ることなく過ごしていくのって、とっても

 退屈で辛いのよね。だから時々この時間帯にあなたのお部屋にお邪魔するわ。」

 

「・・・いや、ほんと邪魔だからもう来ないでくれ。」

 

「・・・」

 

何も告げることなく奴は姿を消していった。・・・絶対俺の意見無視しただろ。

 

「さて、また策について見直さなくちゃな・・・」

 

そうして次の夜に向けての対策を貴重なこの時間帯を使って練り込むこととなった。




"気づいたら私は泣き続けるだけの存在となった"


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Ladies Night 1(女子達の夜その1)

"死んでも死に飽きない。そうでしょう?"


"ジリリリリリリリリリ!!!"

 

地獄に落ちてからはや三日が経つ。そこまで経てばある程度の機材の操作や機械人形の対処に

慣れてくるものだ。初日に持っていた恐怖心も、今となっては・・・完全になくなった訳では

ないが耐性も割とついたほうだ。ここまでに来るまで四度も殺されているので逆に死に対する

恐怖心がなくなってしまったっというのも一つの要因だが。今の俺はもう当たって砕けろ精神で

行動しているようなものだった。未知の機械人形に遭遇した場合は大抵この考えでな。上手く

防げりゃそれでよし、分からず失敗すれば死んだときにそいつの襲撃要因が大体分かるので

それで覚えるの良し。・・・まぁ、出来るだけ死なずに対処できるようにはしたいんだが。

 

AM 12:00

 

ともかく、始まったこの夜に手を休ませる余裕はないのだ。直ぐにカメラを起動させ、いつもの

通り部屋の監視から始まる。まずは廊下から順に監視し、異常がなければ通気口内センサーの

確認を行う。・・・そこに新たな機械人形が映し出された。それも"2体"もだ。

 

「・・・Toyシリーズの奴らか。」

 

片方は明らかに顔の一部が欠損しており、顎が外れてそこから配線がむき出しになっている

"Withrd Chica"。もう一体は一見顔が整っているように見えるが、片目がない状態で明らかにもう

一つの顔が可笑しな格好でついてる"Mangle"である。こいつらはある致命的な欠陥が発見され

"Fazbear Enterment社"が泣く泣く回収したもので廃棄処分、又は新たな機械人形を作成するため

の予備パーツとして部品庫に保管されていたものだ。・・・その頃から殺した奴らが機械人形に

宿ってるなんて誰が思うんだよ・・・っと思いたくなってくるがそれどころではないので、奴ら

の対処法について考える。

 

「・・・ここに表示されている"ベントネア"ってやつがこいつらをこの部屋に侵入させない

 システムなのか?」

 

どうやら出口の手前三つの通路にどれか一つだけ進路を防ぐものらしい。そいつに引っかかれば

また所定に位置に戻る仕組みのようだ。

 

「だが一つだけだからなぁ・・・これこいつらの進行具合によって合わせなきゃいけないって

 ことだろ。ならカメラで一々様子を見ないとだめか・・・」

 

それは正直に困ることだ。他の奴らを監視しなければいけないのに、しかもいつも以上に長い

時間で見なくちゃいけないので見ている間は正に無防備状態となる。そこは発電機でなんとか

電力を抑えてドアを閉じれば良いだろうと思うだろうが、騒音レベルによって襲撃する奴が

いるし音がかなりこの部屋に響くので音の感知が難しくなるのだ。

 

「仕方がないから適当な所を閉めて他を見るか。隙があれば後で見ればいいし」

 

適当な所にタップすると一か所が赤い線に切り替わりそこを閉じたことを確認したら、ダクト

ホースの様子を確認する。・・・今のところ何も表示されていなみたいだ。もう一度部屋の

監視をする。・・・他の機械人形は映っていなかったのでいったんカメラを閉じ、発電機と扇風機

を作動させて室内温度を下げる。・・・一通り下がったら停止させ、カメラを立ち上げる前に

部屋に異常がないか確認してもう一度カメラを起動させる。っとその時、廊下を監視していたら

いきなりカメラが映らなくなった。

 

「な!?」

 

それと同時に右の廊下側から聞き覚えのあるメロディーが流れだしこちらに接近してきたので

反射的に右ドアを閉じた。・・・音が鳴り響いた。

 

「誰かが接近してきたのか・・・てか、カメラに映らないで接近するのって厄介すぎだろ。」

 

しかし、あの曲を流しているのが誰なのかは直ぐに判別した。"Ballola"だ。奴は姉妹店の

機械人形で、バレリーナをモチーフとした姿としてステージに立っていたことを思い出す。

 

「まーた音で感知するタイプが現れたか・・・」

 

しかし音が聴こえやすい分、感知も早くできるのでそれほど対処が難しいというわけではない。

此処で時間を確認する。

 

AM 1:01

 

「一時間経過か・・・先は長いな。当たり前だが。」

 

さっきは部屋の監視を妨害されてしまったので急いで様子を確認する。・・・特にいない。

通気口内センサーに切り替える。・・・"Mangle"が左の通気口から侵入してきたようだ。

直ぐ左の侵入口に"ベントネア"を張る。"Witred Chica"は右の奥の通気口に進んでいるようだ。

こちらは侵入するまでの距離が長いので取り敢えず放っておいても良いか。今度はダクト

ホースに切り替える。・・・何もいない。此処でまたカメラを閉じて部屋の様子を隈なく

する。・・・突然部屋の照明器具が点滅しだした。異常を確認すると左の視界から嘴と目玉を

外した状態で"Toy Chica"がこちらに接近してきた。・・・何故か震えながら。

 

「おおっと、急いで"FreddyMask"被らねーと」

 

机に置いてあるそれを素早く手に取り頭に被せる。・・・仲間だと勘違いしたのか、部屋から

去っていった。

 

「直接部屋に侵入するタイプもいんのか・・・あの白い熊もそうだったよな。」

 

まぁ、あの"Golden Freddy"よりかは割と猶予があるので少し遅れても大丈夫だろう。・・・

少し息苦しくなってきたので部屋の換気をする必要があるなと感じ、部屋の室温を下げた後に

再びカメラを立ち上げて部屋の換気ボタンを押して換気をした。ついでに部屋の監視もする。

・・・ん?"Puppet"がいた部屋から物音がする。いつの間にか出現したのか?さっきまでは

静かだった部屋が何かをぶつける音で騒がしくなっていたのだ。

 

「しかし、何のために物音なんか立ててるんだ?姿も映っていないからどんな状況かも分から

 ねーし、対策しようにも誰が誰なんか・・・」

 

一体こいつはどんな対処をすればよいのか・・・そいつに頭を悩ませる間にも時間は刻々と

進んでゆく。それは朝を迎える為のものか、はたまたここにいる警備員の寿命を知らせる

カウントダウンとなるか・・・




"私が最初だった!!私はすべてを見てきた!!"


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Ladies Night 2(女子達の夜その2)

"スクーピングルームに行きたいの?"


AM 1:31

 

この時間帯から機械人形が増えてくるだろうと予想していたが思ったよりも進行が早く感じるのは

気のせいだろうか?扇風機で室内温度を一先ず下げていき、その間にここの部屋に侵入する人形達

を出来るだけ早く対処をする。左から接近する"Toy Chica"はマスクを被れば良いのでこいつは楽

だが他が難しい。通気口内センサーに映る"Mangle"と"Withrd Chica"は進行する方向を予め予測

してベントネアを閉める必要があるが二体の侵入経路がバラバラで予測による締め出しが不可能

だと思い、カメラを立ち上げる前に正面ダクトを閉める作戦に変更した。幾らベントネアを掻い

潜っても、ドアが締め出されていれば侵入は不可能だから。それに"BB"のようなダクトに待機する

タイプは、"俺がカメラを見ない限り侵入はしてこない"とはっきりわかったのでその性質を利用

すれば一々カメラで様子を確認する必要がない。・・・唯、カメラを見る間にドアを締め出すこと

による電力の消費が半端じゃないので、発電機を稼働させる必要がある。その時に"Ballola"の接近

する音と被る可能性も出てくるので音による感知がより難しくなるだろう・・・。

 

「さて、そろそろカメラを起動させるか。」

 

換気の時間も来たことだし扇風機を止めた後に、発電機を作動させ正面ダクトを閉じてカメラを

立ち上げた。電量消費を抑えるため急いで部屋の様子を見る。・・・右の廊下に新しい機械人形

が立っている。その見た目は"Chica"に似た容姿だったが両手にマラカスと口紅をつける奴は

見たことがなかった。

 

「ん?こんな派手な容姿をした"Chica"なんか見たことがないぞ・・・新種か?」

 

奴はこの廊下からある程度離れた距離に映っており、少しずつだが接近する様子が窺える。やばく

なったらドアを閉めるかと思い、他の部屋に切り替える。・・・今のところ映っていないな。

ダクトホースに切り替える。・・・三角の形をしたものが表示されていた・・・が、今度は前とは

違う色を纏っていた。

 

「あれ、以前は茶色だったのに緑に変わってる。別の奴か?」

 

不審に思ったものの恐らく対処は一緒だと思うので表示されている奴の上にタップし、丸い形を

したものを出現させ覆うようにする。それが終わったら部屋の様子に切り替える。・・・廊下に

いる奴はまだこちらに近づいていないのでカメラを下す。電力を確認すると残り85%と表示

されていた。少し消費が早くなったが、大幅に減るというわけではなさそうだ。っとここで正面

ダクトを開くことを忘れかけていたので直ぐ開ける。こういう作業もなるべく早くしないとな。

部屋の様子を確認、換気はさっきしておいたので息苦しさは軽減されていた。・・・右の進路

からメロディーが流れだしたので急いでドアを閉める。・・・音が鳴るのを確認しドアを開ける。

扇風機を作動させ温度を下げていると照明器具が点滅してきたのでマスクを被る。・・・良し!

やっぱ鳥頭なのか簡単に騙されて直ぐに退散してくれる。下げ終わったら扇風機を切り、また

正面ダクトを閉じてからカメラを起動する。この時も発電機を作動させるのを忘れずに。

・・・廊下にいる奴は先程よりも少し近づいてきたようで警戒心を煽ってくる。しかし、まだ

距離は遠いほうなので焦らず他の部屋に切り替える。・・・相変わらず右の小部屋から物音が

聞こえているがこいつの対処法が全く思いつかないので放っておくしかない。両ステージを確認

してカメラを人形売り場に切り替える。・・・特に変化はないのでさっきの廊下に切り替える。

・・・まだ大丈夫だな。意外と侵入速度は遅いみたいだな。様子を見終わったらカメラを閉じて

正面ダクトを開けようとしたら、

 

「うおぁ!!何時から!?」

 

・・・目の前の机と対象に"ボロボロの容姿になったBaby"がそこに鎮座していた。音もなく・・

 

「嘘だろ・・失敗か!?」

 

侵入された以上"制裁"が下されると思い身構えた。・・・が、襲撃する動きが見られなかった。

いや、そもそも動いているのか?・・・その様子ではどうやら失敗したわけではないようだ。

なら何故此処にいるのか?

 

「???。何かする必要があるのか?襲撃の予兆も見えないし。うーん・・」

 

また頭を悩ませる奴が来てしまったが襲われない以上、これ以上考えるのは時間の無駄なので

放置していた正面ダクトを開けて、扇風機を作動させた。耳を澄ませて何かの音が聞こえないか

確認する。・・・何も聞こえないな。時間を見ると、

 

AM 2:21

 

と表示されていた。まだまだ油断できないな・・・。扇風機を停止させ正面ダクトを閉じ、カメラ

を起動させる。・・・今度はだいぶ近づいてきたようで差が縮まってきた。そろそろドアを閉める

準備を心がけておき他の部屋を監視する。・・・さっきより物音が小さくなっているのは気のせい

だろうか?まぁ、気にせずカーテンステージを確認した。・・・又こいつかよ。右のステージに

かつて俺をなぶり殺した一体の機械人形、"Funtime Foxy"が映し出されていた。

 

「こいつか・・・いい思い出のない奴が又来ちまったよ。」

 

愚痴りたくなったがそれどころではないので近くに設置されている看板を確認する。

"Show Time At AM 4:00"と表示されている。この時間帯に確認しなきゃいけないな。確認した

後は廊下の監視に戻る。・・・まだ動きはない。それを確認しカメラを下して扇風機を作動させ

温度を下げる。・・・目の前にいる奴の動きはない。このまま動いてくれなければいいのだが。

 

「おっと、またメロディーが流れてきたか。」

 

左の進路から再び接近してきたのでドアを閉める。・・・退散したことを確認して正面ドアを

開ける。若干こいつの操作に慣れてないから忘れがちになるんだよな。もう一度部屋に変化が

ないかを確認し発電機を作動させる。電力はこの段階で60%になっていた。・・・少し電力を

無駄遣いしているなと思い節電を心掛ける。ここで扇風機を停止させ正面ダクトを閉じてから

カメラを立ち上げる。・・・廊下側の変化はなし。次に右小部屋を確認する。・・・今度は

完全に物音が消えたようだ。

 

「ん?何か"Cheange Music"のテロップが表示されたな。物音が消えた時に現れるのかこれ?

 取り敢えず押してみるか。」

 

試しにそのテロップを押すと、急に音楽が聞こえだしたのと同時に物音が聞こえてきた。

・・・どういう仕組み?これ、音が鳴りやんだら音楽を変えろというのか?・・・あまり

実感は湧かないがこれで此処にいる機械人形を対処しているという認識でいいのかな。

詳しく確認はできないので他の部屋を確認しておく。・・・"ゴン!!!"

 

「お!?正面から音が聞こえたな。どちらかが侵入口まで来たのか。」

 

どうやらこの作戦は上手く通用したようだ。カメラを見ている間にこうしておけば襲われる

心配がないとさっきの音で証明されたようなものだから。気を取り直して廊下にいる奴の

監視に戻ると、

 

「うわ!もうこの部屋まで目と鼻の先じゃねーか。急いで閉めねーと」

 

そう自分に告げるとカメラを素早く下して右のドアを閉めた。これで奴が入ってくることは

ないので音が鳴るまで待つだけだ。ついでに閉めっぱなしになっている正面ダクトのドアを

開けて扇風機を起動させる。・・・また照明器具が点滅してきたのでマスクを被る。この時

少し余裕があるので震えながら接近する奴の顔を見てみると、顔の表情に疑問を覚えた。

 

「・・・"Toy Chica"の顔・・・何か不自然なくらい笑顔になっていたな。」

 

奴が直ぐに立ち去ったのを確認してマスクを取り外す。・・・さっきの顔を思い出すと何か

不穏な空気を感じ取った。奴に表情筋の概念があるかは分からないが確かにあの顔は口元を

吊り上げて"ニヤリ"と笑っていた感じがした。まるで相手を出し抜くような・・・いやいや、

気のせいだ。多分そうだ。・・・そういえばさっきから退散するときの音が鳴らねーな。

右のドアを閉めてから多少時間が経過しているのでもうなっててもおかしくないはずだが。

と、その時、

 

"!!!ドンドンドン!!!"

 

俺の声で合図したかのように勢いよくドアが叩かれ始めた。

 

「やっとか。・・・いや、音でかくなってね?てか、退散するの長くね?」

 

ひとしきりにドアを叩き続けていたので疑問に思ってしまったのだ。この時、時間帯を確認すると

 

AM 3:45

 

と表示されていた。

 

「やべーな。この調子で退散するのに時間が掛かるなら奴のショーを見れなくなっちまう。」

 

流石に音が鳴り続けている間にカメラを見るのは危険だと思い、この音が鳴りやむまで待機し

ようと考えると、

 

"・・・・・・・・・・"

 

「お?音が鳴りやんだか。退散したみたいだな。全くあk)"!!!!ドゴオォォォォォン!!!!"

 

・・・・・状況が呑み込めなかった。諦め悪いと言いかけてた瞬間にものすごい音と目の前を

横切る物体を確認して唖然とした。・・・右ドアが吹っ飛ぶ光景を見て。

 

「・・ぜぇ・・ぜぇ・・全く・・手こずらせやがって・・・」

 

右の進路から怒気のこもった声と共に入ってきたのは先程廊下側に映っていた新種の"Chica"と

そいつに労うみたいな声で話しかけていた"Toy Chica"であった。

 

「はいお疲れ様~!にしてもよくこんな馬鹿げた事やり遂げたわねぇ。びっくりしちゃった。」

 

「あんたがやれって言ったからやったんでしょうが!!自分でもびっくりだわ!あそこまで

 ドアが吹っ飛ぶなんて。」

 

「それについてはごめんね~。でもあなたはドア関係なく強引に入れちゃうんでしょ。締め出して

 も兎に角ガンガン壊すから。」

 

・・・は?   ド ア 関 係 な く ?

 

「HA-i!警備員さん。どう?この状況下での今の心境は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・訳が分からねーよ。




"私の嘴は何処?・・それはね、貴方の・・・"


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Ladies Night 3(女子達の夜その3)

"貴方が此処へ落ちる時を待っていたわ。"


「しかし、まさかドアで防げない奴まで現れるなんてなぁ・・・もう何でもありかよ・・。」

 

そう独り言を言いながら俺は今、二度目の挑戦に向けての作戦を練っていた。今まで出会ってきた

機械人形に情報もなしに挑み、戸惑いながらも既存の考えや突発的な発想で何とかうまく奴らを

対処してきたんだ。・・・無論、対処に失敗して死んだこともある。唯それは、そいつらの独自の

システムに理解していなかっただけで普通に考えれば気づけとなるヒントが隠されているのだ。

"Funtime Foxy"はショー時間に合わせて見る。シンバルを持っていた機械人形は音による感知。

こういう風に皆そのシステムに従順しているから直ぐに気付き、その対処法も大体見当がつく。

・・・"普通であるならば。"

今回の奴は今までの常識に囚われない方法で侵入してきたのだ。本来ドアという侵入を防ぐための

物のシステムを簡単にぶち壊しやがったんだ。これまで常識とされていた考えが呆気なく覆される

出来事を目の当たりにしてある考えが浮上してきたのは言うまでもない。

 

"今まで考えてた自分にとっての常識はこの場所じゃ通用しない"

 

そう思い知らされたのは数時間前のことだ・・・。

 

・・・・・・・

 

「おい!?ドア関係なくってどういう・・・いや!そもそもこんなの反則だろうが!!」

 

非常識な光景を傍観した俺は気付けば新種の"Chica"に羽交い絞めにされ暴れる俺を机に無理やり

突っ伏され身動きが取れない状態となった。ドアごと破壊する自体、本来はあってはならないと

勝手に思っていたので思わず反論の声が出てしまった。

 

「こんな馬鹿げた事するやつ普通にいねーだろ!!!」

 

「あたしがいるだろ!!」

 

俺を抑えていた奴がそう答える。・・・そういう問題じゃねぇ。そしてさっきからにやけ顔を

浮かべてる"Toy Chica"が悠々とした態度でこちらに近づいていき、まるで諭すかのように話を

向けてきた。

 

「あらあら、いくら自分の思い通りにならないからって暴れるのは良くないわよ。いい加減

 諦めたら?私の目に映っているあなたの姿は、まさに"諦めの悪い醜い生物"よ。」

 

「っぐゥ・・。だ・・第一思い通りも何もこんなの予想できるかよ!!」

 

「別にドアを破壊してはいけないなんて誰も言ってないわ。あなたのパートナーはそう言った

 かしら?そんなのあなたが勝手に思い込んでる事でしょ?ここはあなたの世界じゃないの。

 彼の世界なのよ。彼がどうしよが彼の勝手。つまり彼女のやったことは決して反則でも不正

 でもない、正規の方法でこの部屋に侵入したってこと。あなたが対処を間違えただけ。」

 

「対処!?侵入口ぶち壊すような奴にどう防げっていうんだ!?何か!?出ないことを祈れと

 でもいうのか!?」

 

「そんなことないわよ。絶対防げないものなんて彼は用意しない。それじゃあこの審判そのもの

 が成り立たなくなるわ。弄り殺すだけならこんな回りくどい事はわざわざしない。」

 

「じゃあ・・・」

 

「あなたは全ての対処法についてまだ理解できてないだけ。"Nightmare Fredbear"が言ったこと

 覚えてる?」

 

「・・・・・」

 

"お前は僅かなことさえ気を配らずに油断した"

 

「部屋全体を見渡した?そこにあるものすべてを観察した?何か出来ること全て考え尽くしたの?

 それが出来ないんじゃこの先思いやられるわよ。理解しているようでまるで理解していない。

 これが今のあなたの現状よ。」

 

「・・・畜生」

 

何も言い返せなかった。どうやら浅はかなのは俺の方だった。そうだ、ここはまともな奴なんか

いやしない。ルール?普通の考え?そんなもんあるわけがない。寧ろ今までドアが破壊されない

のが奇跡なくらいだ。普通は一回閉じるくらいじゃ奴らが帰るはずがない、執拗に電力が切れる

まで待つだけ。それでジ・エンドさ。考え方を変えれば俺は舐められたんだ。その気

になれば一捻りなのに敢えて見逃す。・・・こんな事考えたこともなかった。

 

「潔く敗北を認めなさい。なーに、失敗は誰にでもあるのよ。その時はきちんと対策を取れば

 同じ失敗はしないから。出直して来なさい、何時でもあなたの挑戦は受けるからね。」

 

・・・苦笑いするしかなかった。

 

「さーて、こんな無駄話はもうおしまい!そろそろ、"お仕置きの時間"に移らないとねぇ」

 

・・・!またこの時間が来てしまった。これで五度目だ・・。

 

「だけど、今回は一味違うやり方であなたを懲らしめるわよ。」

 

・・・一味違う?どういう事だ?

 

「今回はあなたが選択するのよ。所謂"プラン"っていう形式に。」

 

「・・は?俺が選ぶ?何のために?殺るなら一思いにやれよ・・。」

 

「それだと面白くないのよぉ。唯弄り殺すだけじゃ。違った形式であなたを絶望の淵に叩き落し

 たいのよ。それで選択させて、あなたが選んだ"制裁"で実行してどんな顔をするのかよーく

 見たいのよ わ た し は ♪」

 

寒気がした・・。こいつは他とは違う狂気を携えている。あらゆる苦しみを用意し俺に選択という

行為を強要させる事で死の淵から逃げられないと再認識を図らせる。そして、実行したときにどの

ような反応をするのか観察し"遊び"という名の殺戮に愉悦をもたらす・・・改めてこいつの異常な

考えに言いしれない恐怖と不快感を感じ取るには時間が掛からなかった。

 

「じゃあ今から選択肢を言うからその中から一つ選んでね。・・・あなたは

 最初に体のどの部位から食べられたい?

 

・・・うん、これで分かった。こいつ最高にいかれてやがる

 

「うーん、やっぱり最初は無難に頭かしら?だとしたら前頭葉か後頭部に絞らないとねぇ。喉も

 悪くないわね。あの噛み千切る音が癖になりそうだし♪でもこれが最初だから耳から逝く?

 これから何回か経験するだろうし今のうちに痛みに慣れないといけないし、それとも指にしよう

 かなぁ?一本一本ゆっくりと噛み砕くのもいいし足から思いっきりかぶりついても問題ない

 だろうから・・・ねぇ?どれにする?」

 

「・・・・・み・・」

 

「ん?聞こえないわね~」

 

「・・耳から・・・頼む・・」

 

「OK~♪了解しました~」

 

それでも選ぶしかなかった。ともかく、もう何も考えないようにしよう。この時間帯が過ぎて

いくことを待つしかなかった・・・。奴は机に突っ伏されてる俺の頭を掴み、右の方向に傾け

させ右耳を露わにすると大きな嘴を外し、隠された歯をこれ見よがしに見せつけて俺の耳を

ゆっくり包むかのように口を閉ざした。最初は撫でるかのように擦っていたが少しずつ重みを

掛けていき深く耳の根元までいくと、その大口で思いっきり噛みついた。

 

(!!!!!!!咀嚼音!!!!!!!)

 

途端に激痛が走りだした。耳の根元は骨が皮膚と繋がっている状態なので響きの悪い音と共に

俺の悲鳴が重なった。しかし、骨というのはとても頑丈なつくりをしているのでそう簡単に

引き千切れないのだ。その位置へ執拗に骨の部分に重みをかけさせ痛みの増長をさせる。・・・

少し経った後右耳が千切れる音がしたが音は半分しか聞こえなくなってしまった。残る左耳も

右耳と同様にやられ、気づいたときには殆ど音が拾えない状態となってしまったのだ。耳を

千切り終えて次に着眼したのは両手の指だった。痛みによる痙攣で震えた指をお構いなしに

かぶりつく。・・・鮮明な血が吹きあふれ飛び出してきた肉や骨を夢中でしゃぶりつくす。もう

とても直視出来ない・・・てか、痛みで瞼も開けられない。匂いだけが鼻に飛び込み腐敗臭と血の

匂いで気分が悪くなり、口から酸っぱい匂いのする液体が吐き出される。阿鼻叫喚だよ・・・

やがて痛みは指から喉元に切り替わって伝わってきた。・・・どうやら喉元を噛み千切られた

らしい。聴覚を失い激痛によって瞼も開けられない状態で唯俺は魚のように口元を"パクパク"と

動かすしかなかった。・・・漸くして意識が薄れてきた。この地獄のような痛みから解放されるの

だから、身をゆだねるように眠りについた・・・

 

・・・・・・

 

「・・もう思いだしたくもねぇ・・・。」

 

あの激痛を味わい未だにその感触が伝わるぐらい壮絶な制裁を喰らったのだ。もうこれ以上の失敗

をなくすために僅かな時間帯を駆使してあらゆる対処の可能性を考えている。使えそうなものが

ないか手あたり次第手に取りそれが機械人形の侵入を防ぐヒントを持っているのかを見定める。

・・・とは言っても大抵紙屑か紙コップがこの部屋に散乱しているぐらいなのでとても使えそうに

見えなく、他にあるとすれば・・・

 

「・・この派手な色をした"黄色い注意喚起の看板"だけだからなぁ。」

 

これが機械人形の侵入を防ぐ代物にはとても見えなかった。だが、あるとすればこれしかない。

タイムリミットまでもう残り数十秒まできたので急いで準備に取り掛かる。カメラを片手に持ち、

機材を起動できる態勢に整えて運命の時が来るまで待機する。・・そしてアラームが鳴りだした。

 

"ジリリリリリリリリリ!!!"




"君があと何回バラバラに出来るか試してみよう"


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Ladies Night 4(女子達の夜その4)

"新鮮な肉の匂いがするなぁ!悪くないがな。


AM 12:00

 

開始直後、扇風機を一旦停止させて発電機を稼働し、正面ダクトドアを閉じた後にカメラを立ち

上げる。先ずは廊下側から。・・・何もいない。次に小部屋の確認をする。・・・右の小部屋

から物音が響いているので音が聞こえなくなった時にまたみよう。両サイドのカーテンステージを

確認。・・・誰もいない。奥の部屋にも誰かいる気配がないのでダクトホースに切り替える。

・・・此処も特に変化はない。もう一度部屋の監視モードに戻しカメラを下す。部屋のどこか

違和感がないかよく観察する。・・・!部屋の照明光が点滅しだした。侵入すんの早いだろ!!

急いで"FreddyMask"を頭に装着し少し動きを止める。"Toy Chica"が左から接近してきたから。

・・・去ってくのを確認した後はマスクを外して机に置く。そろそろ室温も上昇してきたので

扇風機を作動させる。因みに正面ダクトドアはカメラを下した後に直ぐ開けておいた。やはり

電力がもったいないのでな。・・・ある程度下がり終わったらそれを停止させて、先程の工程と

同じようにドアを閉めてカメラを立ち上げる。・・・左廊下に先程ドアをぶち壊した奴が現れた

ので警戒心が一層強まった。

 

「・・・ドアがダメならそれに代わる代用品で防ぐしかないよなぁ。だが変わりなんて・・」

 

一つあるとすれば部屋の右端に設置されてる"黄色い看板"だ。体勢を崩す人の絵柄が描かれており

"床が滑りやすくなっている"と注意喚起が表記されている。・・・こんなので防げるのならまるで

ギャグ漫画みたいな展開だ。馬鹿馬鹿しくて笑えない。しかし他のものが見つからなかったので

最早これを使用するしかないのだ。

 

「流石に看板自体は自動で動いてくれないから俺が直接動かすしかないんだよなぁ・・・」

 

今はカメラで部屋の監視をしているので行動が取れないが。両サイドの廊下を確認してから

他の部屋に切り替える。右小部屋は物音は相変わらず聞こえて騒がしい様子であり、カーテン

ステージに機械人形が映る様子もない。見ている間に空調エラーが表示されたので換気ボタンを

押して空気の入れ替えをする。・・・ダクトホースにも変化が起きないのでカメラを下して

扇風機を作動させ、部屋に籠った室温を下げるようにする。異常がないか細心の注意を払い観察し

今度は右端に設置されている看板を左端に移動させるため、駆け足で取りに行く。この間は扉も

閉じていない状態なので無防備に等しい状況である。だから素早く作業する必要があるのだ。

 

「こいつを・・・良し。意外と軽いなこれ。・・じゃなくて持って行かねーと。」

 

どうでもいいことに口を出していたので自身を一喝し左端にそれを持っていき設置する。

 

「それにしても本当に大丈夫なんだろうな?これで防げないならもうお手上げ状態だぞ・・。」

 

もしそうなら冗談抜きで出ないことを神に祈るしかない。まぁ、此処に神も仏もいないだろうが。

設置し終えたら机の椅子に座り再びカメラを起動する。・・・廊下にいる奴がもう近づいてる。

頼むから防げるようにしろよ・・・。部屋を切り替え右の小部屋を確認すると音が鳴りやんでた。

 

「静かになったな。音楽変えてあげねーと。」

 

別の音楽に切り替えるとまた物音が響いてきた。物音ってよりはいろんなものをぶつけあって発生

する音に近いんだが。音楽を変えた後はさっきと同じ工程を繰り返してカメラを下す前に廊下に

画面を切り替える。

 

「・・もう目の前じゃねーか!」

 

この部屋の出入口に待ち構えてたので緊張が高まり、息を押し殺すかのように押し黙る。・・・

その様子を観察するとカメラ画面にノイズが掛かり一瞬だけ映らなくなった。

 

「どうだ!?」

 

・・・画面が正常に映ったときには奴の姿が忽然と消えていた。何の変哲もない看板が機械人形の

侵入を見事に防いだのだ。

 

「まじかよこいつ、こんな看板ごときで入ってこれないとは・・。」

 

重圧なドアを壊す奴がこんな形であっさり引いていくのを見てひどいギャップの差になんとも

言えない雰囲気となってしまった。ともかく、これで奴の対処がはっきりわかったのでそこは良し

としよう。大きな情報を得ることに成功したので。そろそろ電力の消費がやばいのですぐさま

カメラを下す。ここまで分かれば、新たな機械人形が出現しない限り同じ工程を繰り返すだけ。

・・・その後も特に大きなアクシデントが起きたわけではなく、"Funtime Foxy"とボロボロの

容姿で床に鎮座している"Baby"が割り込んできたぐらい。そこからまた新たな変化が起こるのは

この夜が始まって3時間経過した頃だ。

 

AM 3:21

 

「気づいたらもうこんなにコインが溜まっているなぁ。」

 

カーテンステージに立つ彼のショーを見終わり二時間後にまた開催されるのを看板で確認しカメラ

を下すときにふと、画面端に表示されているコインの枚数を確認すると累計20枚を超えていた。

部屋の画面を切り替える時そこに表示されているコインを自動的に回収してくれたり、"Ballola"

や通気口内の二体によるドアでの侵入阻止でコインが溜まる貯蓄システムのおかげもあり、今では

こんなにも溜まってしまったのだ。しかし、コインの使い道にも疑問を抱いている。

 

「うーん、イマイチわからないんだよなぁ。何かに使うってのは分かるが・・」

 

例え貯蓄されてもそのまま消費もしなければ持っていても意味のない代物になってしまう。っと

ここである一つの考えが浮かんできた。

 

「そういや右奥の人形売り場の部屋で買えたりしないかな。売り場だけに何か売ってるだろ。」

 

一通りの確認も終わり、今は特に脅威もないのでこの間に出来る事をしようと思った。早速カメラ

画面を人形売り場に切り替えると、・・・予想は当たったようだ。さっきまでは何も表示されて

いない画面に新たな項目が追加されたようだ。そこには以下のものが表示されていた。

 

"Buy The DEATH COIN = 10COIN"

"Buy The Babydoll = 5COIN"

"Buy The Toy Foxydoll = 5COIN"

 

「・・・別個体のコインと二体の人形?人形ならわかるが何故にコイン?」

 

そこには他の人形と違い大きな文字"D"と書かれた人の手のひらサイズの物が異質な雰囲気を

漂わせている。これも機械人形の対処に役立つものか判別できないが手持ちのコインで一応

全ての物は買えるので購入ボタンを押す。・・・支払いの音と購入表示が消えたかと思えば

さっき買ったコインは画面の左端に表示され、残りの二体の"Baby"と恐らく"Mangle"の本来

の姿をモチーフにした人形を購入したら画面上に"彼女たちは"ご機嫌だ"と表示された。

 

「???。えっと、これでいいのか?んで、このコインの使い道は・・・。」

 

名前の書いてある通り"死のコイン"という物騒な響きを持つ物で、もしかしたら・・・

 

「これで機械人形の行動を抑えることが出来るのか?」

 

だとしたら相当使える代物だ。面倒な奴の対処を少しでも軽減できるのならそれでいい。

なら使わない手段はない。早速試せるような奴をカメラで探し出す。

 

「"Funtime Foxy"なんてどうだろう。あいつのショーに一々付き合うのも面倒だし。」

 

仮にこの発言を本人が聞いていたら"殺戮"という名のショーが問答無用で決行されるだろう。

まぁ、そんなことは置いといて実際に行動に移す・・・と、思ったが流石にカメラを見る

時間帯が長すぎるので一旦カメラを閉じることにした。

 

「・・・ん?こいつ顔動かしてたっけ?」

 

部屋に変化がないか観察しようと思ったら目の前にいる奴の顔が僅かに上がっている・・・。

嫌な予感がする。

 

「今度はこいつについての対処を考えないとなぁ。」

 

先程まで動きの予兆が見れない状態なので放置していたが、・・この態勢が仮に襲撃の合図

だとしたら放置するわけにもいかない。しかし、その対処法を見つけるのにさほど時間は

掛からなかった。

 

「あれ、机に見たことのないものが・・・。」

 

机の左端に小さい機械がぽつんと設置されていた。こんなものは見かけた覚えがない。よく

見るとオレンジ色で装飾されている窪みはボタンのようで雷マークが描かれていることから

推測すると・・・

 

「多分これ、電気ショックを与える機械じゃねーか?姉妹店舗で見かけた代物も同じだし。

 丁度ケーブルもこいつの胴体に繋がってるしなぁ。」

 

てことはこいつに電気ショックを与えろ、とでも言いたいんじゃないか?試しにボタンを

押すと、

 

"!!!!!!!バチィィィンンンンン!!!!!!!"

 

・・・相当強い威力で電気が流れ、照明器具の光が一瞬消えたかと思うぐらいの強さだった。

改めて奴の顔をみると・・・元の状態に戻っていた。

 

「奴の対処はこれでいいかな。」

 

室温はとっくに下げ終わり発電機を再び稼働させ正面ダクトをドアで閉じるとカメラを立ち

上げた。さっきやり損ねた事があるのでカーテンステージにカメラを切り替える。すると

左端に表示されているコインがモノクロからカラーに変更され、使えるようになったようだ。

迷うことなく使用すると"!!ゴン!!"という音を発したと同時に奴がカーテンに引っ込む

様子が映った。

 

「引っ込んだぞ・・・。あれ?看板の文字が変更されている?」

 

そこには時間が映っていなく代わりに"IN THE STEAG"という文字が表記されていた。

 

「・・・これ、もう見なくていいってことか?」

 

思ったことと違う結果になったがこれで対処したという認識がされたようなので廊下の監視

に戻る。

 

「!?」

 

・・・右の廊下にいろんな意味で俺にとっての懐かしい機械人形がそこに立ち尽くしていた。

人型をモチーフに、赤色で染まったポニーテールの髪を特徴とし片手にマイクを握りしめ、

緑色の目玉でこちらを覗いてる"Baby"が・・・

 

「・・・お前・・・何故?ここに?」

 

そう口に告げようとしたら、

 

"♪キーンコーンカーンコーン。カーンコーンキーンコーン♪"

 

「!!。・・・もう朝か・・・・」

気付いたら朝になっていた。いつもならこの辺りで喜びを堪能していたがこの時は何故か

その気が起こらなかった。さっきの機械人形を見て哀愁が広がっていたから?あの時の

事故を思い出したから?決してあってはならない物を見たから?それとも・・・

 

「・・・、Elizabeth・・・」

 

俺の娘を奪った張本人だからか?




"良くないことが起きたみたいね。"


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The story of a certain pirate(とある海賊船長のお話)

"俺は昔のように走ることは出来ないが、パーツをバラバラにして部屋に投げ込む芸当を身に付けてきたぞ!"


・・・・・・

 

あの時の出来事を忘れてはいけない。それは決して醒めることのない悪夢だから。そして未だに

その光景の詳細を覚えている。目を閉じて数秒経てば、惨状の光景が頭の中に一瞬にして広がって

不快感が押し寄せるぐらいなもんだ。・・・俺がまだ自我を持っていない頃の出来事だ。

 

当時の俺は地元のピザ屋でマスコットというような役職?を持っていたようだ。同業者は俺を含め

4体。熊の"Freddy"、兎の"Bonnie"、ヒヨコの"Chica"、彼らはバンド結成しておりそれぞれの

役割を担って音楽を奏でる。子供たちを喜ばせるための今時でいうエンターテイメントさ。だが

俺はそこに含まれていなかった。何故だか分からないが、その当時の俺の外見が子供たちにあまり

良い印象を持っていないらしく受けが良くなかった事で自然とはぶられたそうだ。その代わりと

して、メインステージの左端に小さなカーテンステージに設置され少しの歌とつまらない物語を

語る存在となった訳だ。出演も僅かで後はずーっとカーテンの中、窮屈で退屈な日常さ。まぁ、

普通ならこんな生活耐えられないよな。だけど俺は機械人形、人間のように感情なんか持ち合わせ

ていないんで何とも思わなかった。当たり前だが。・・・ある日を境に日常が崩れ去る日が

訪れたんだよ。その日は客が極端に少なくて退屈な一日を過ごしていたんだ。あのバンドメンバー

も仕事が殆どないもんだから演奏する時に聞こえるメロディーさえ俺の耳に入ってこない。

だが、いつもと違うのはカーテンが開かれた状態のままなんだ。仕事が終われば即カーテンを閉め

て一日の終わりを告げるはずなのに。・・・この時は何故か飛び出したいと衝動に駆られていた

んだよ。可笑しいだろ、プログラミングされた通りに動く事しかできない唯の機械人形が・・。

しかし、店内には誰もいないし自分がまだ見ぬ世界へ足を踏み入れたいという強い思い込みが

起爆剤となったのか、気づけば飛び出していたのさ。びっくりするぐらい速い速度で駆け出して

縦横無尽に駆けずり回るという、はたから見れば壊れたのか狂ったかのように映っていたかもな。

っでだ、急に立ち止まったんだよ。意図せずに。・・・店内の、丁度俺の居場所であるカーテン

ステージの端に一人の男を見てな。そいつ、笑ってんだよ。薄気味の悪い顔でほくそ

笑む感じで俺のことをじろじろみてな、そいつが奥の部屋に移動すると自然と体も動いたんだ。

まるで誘導されるかのように男の足取りを追って、着いたときにはもう姿が見えなかったんだよ。

ドアは開いていたんだが、その部屋からただならぬ雰囲気を感じて俺の頭に警鐘が鳴らされて

とても気軽に入れる気分じゃなかったんだ。それでも俺とは意図しない行動で中に入っちまった

のさ。・・・危険な所に安易に入ると後悔するって、思い知らされたよ。なにせ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五人の子供が体ごとバラバラにされた光景が広がっていたからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ここで俺の意識は吹っ飛んだぜ。次に目を覚ましたと思ったら、異常なほどの憎しみと

憎悪を持ち合わせてある一人の人間を追い詰める事しか考えていない殺人マシーンに変わっち

まったからさ。もう俺の意思とは関係なく、他の誰かに操られている気分だったよ。この後の

出来事も詳細に覚えていなくて断片的だが覚えていることは

 

・斧でバラバラにされた後焼かれた

・変な兎の奴に纏わりついていた

・仮面の被った奴が現れてじろじろ見られた

 

ぐらい。そしていつの間にかこの場所にたどり着いたんだ。あの懐かしいカーテンステージ

が設置されていてな。ところで気になることがあるだろ?・・・俺が何故

 

 

 

意思を持たないはずなのにこの出来事を知っているか?

 

 

 

答えは簡単さ。俺を含む機械人形を作成した張本人が直接説明してくれたからさ。事細かく。

 

「・・・で、結局何しに来たお前?いきなり部屋に割り込んできたかと思えば訳の分からない

 話を急にしてさ。何が言いたいんだ?」

 

「あ?俺がお前を裁くことに至るまでの経緯を話したんじゃねーか。その脳みそはお飾りか?」

 

「いや、質問に対しての答えになってねーよ・・・第一、そんなもん頼んでもねぇし。」

 

時刻は午後12時を過ぎており、今まで出会ってきた機械人形についての対処法を紙に書いて

情報を整理しているところに突如奴が現れ、頼みもしない話をいつの間にか俺の指定席である

椅子にふんぞり返りながらべらべらと喋りだして今に至るんだが。

 

「それで、話はもう終わったか?ならさっさと元の場所に戻れよ。こっちは暇じゃねーんだ。」

 

正直に言って、こいつらと関わり合うのはうんざりしているんだ。幾ら暇だからってわざわざ

敵である俺のところに来て馴れ馴れしく話しかけられるんだ。ストレスがたまる一方さ。

 

「ああそうかい。今だから俺にそんなこと言えるんだな。・・覚えていろよ・・」

 

そう吐き捨てると漸くこの部屋から退散してくれたようだ。静かになった部屋でさっきの作業に

手を付ける。前夜から得られた新たな情報、"DEATH COIN"の使い道だ。先程までは行動の制限

をしてくれるものだと思っていたがどうやら、一夜につき選択対象の機械人形を出現させない

ものらしい。こんなに便利なものに気づかないとは・・・

 

「だが、これで新たにやることが増えたな。」

 

それを購入するためのコイン集めだ。なので、いかに効率よく集められるかについて考えだし

今夜を迎えるまで作業に没頭することになった。




"出る杭は打たれる"


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Creepy Crawlies 1(恐怖感その1)

"例え僕の顔が失っても君の這いずり回る様子は認識できるよ。"


恐怖。それは得体のしれない存在を認知・予測が不可能な事から湧きあがる人間の感情の一種で

あり、身の危険を感じると過剰なほどの防衛反応が窺える抽象的な概念である。それは唐突に

現れ人間は勿論の事、生命を与えられた全ての生き物に警告する。一度その考えに捉えられたら

冷静な判断はおろか、自身が正常かどうかの区別も付けなくなってしまい粘着物のように中々

頭の中から離れられない厄介な存在だと思うのではないだろうか?しかし逆はどうだろう?

仮にその存在を一度でも明らかにすれば素早く認知・ある程度の予測が出来、更にはそれ自身

にとって危害のないものだと判明出来れば一瞬にして恐怖が無くなってしまう。・・・本当に

その存在が危険でないだとしたらの話だが。もしかして、敢えて恐怖を打ち消して友好に近づく

存在もいるかもしれない。だとしたら、そこが最も怖いところだ。さっきの感情が消え去った

後に隠していた牙をこっそりと・・・そうやって恐怖というものはひっそりと現れてくる。

気付かない形でな。

 

「さてと、そろそろ準備しねーと。」

 

無論、この男も例外ではない。数々の機械人形に蹂躙されながらも対処さえ知っていれば何も

怖くない・・・なんて甘い考え方をしている。彼らが規定な行動をすればまた話は別だが、

今まで見てきたものが突然変化しても彼はそれでも自身の持つ考えを保っていられるのか・・。

 

"!!!ジリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

「さて、今夜までに考えた通りの作戦で実行するか。」

 

俺はより効率な作業を捗るため自身に無駄な動きを減らす事を目標にしてきた。大抵の死亡原因

を作ったのは対処法が分からない時に手を止めてしまい他の作業を疎かにしてたんだ。だから、

必要な作業だけをして考える余裕がある状況を作るプランを以下の通りに実行する。

 

・まず、開始直後に発電機を稼働して扇風機を停止させる→最初だけ正面ダクトドアを閉めずに

そのままカメラを立ち上げ映っている全ての部屋を確認する→そこに何か映っているなら随時

対処する。この時、未知の機械人形が出現した場合は一先ず放置。直ぐに襲う習性を持つのなら

最悪死んだ際にそいつの襲撃要因の情報を収集する。対処が出来ればそれでいい。→確認が

終わればダクトホースを確認し異常があれば丸い形をしたやつ・・・後から分かったがその名称

が"オーディオ・ルアー"というものでどうやら音による誘導でこの部屋に近づけさせないように

するものらしい。なのでタップし張る→カメラシステムに戻し作業の必要な機械人形がいる

部屋に固定する→カメラを閉じる前に部屋の換気システムを作動させ空気の入れ替えをする→

カメラを閉じたら扇風機を作動させ室温を下げるのと同時に部屋の様子を確認。対処が必要な

機械人形がいたらマスクを被るかドアを閉める→ここで漸くコイン集めだ。

 

「まずはカメラでの部屋確認・・・右の小部屋に"Puppet"がいるな。ゲージ棒が減りだした

 ってことは。」

 

直ぐにオルゴールのネジを巻き直す。終わったら他の部屋を確認する。・・・特にいない。

次にダクトホースを確認・・・前夜より明らかに数が増えだしていた。

 

「げぇ!5体もいるのか・・これ上手く一つに纏められないかな。」

 

前回出現した茶色や緑色をした三角形がいるのはもちろん、追加で紫・オレンジ・ピンク色の

ものが出現していた。勿論彼らの場所はバラバラに表示されており一か所に纏めるには少し

時間が掛かるだろう。なので3つの三角形が集まっている場所に設置することにした。それが

終わったなら元のカメラシステムに戻しもう一度オルゴールを巻き戻す。ここで丁度空調

エラーが出てきたので換気ボタンを押す。空気が換気されたらカメラを下し・・・

 

「目の前に"Withrd Bonnie"が立てんじゃねーか!!」

 

いつ侵入してきたか分からないが素早くマスクを被り様子を見る。・・・直ぐに退散してくれた

ようだ。

 

「今のよく対処できたな。少しでも遅れれば・・・やばかったな。」

 

いきなり侵入してきたことに驚きは隠せないが、そいつの習性がToyシリーズと同じで助かった

よ。そう口に出しながらも扇風機を作動させ室温を下げる。未だに発電機は付けっぱなしだが

背後からシンバルの音が鳴らないってことは、奴がまだ出現していない証拠なのでそのままに

する。と、今度は正面ダクトドアから何か軋むような音を耳で捉えたので直ぐ閉める。

・・・"!!ゴン!!"。音が鳴った・・・誰かいたのか?軋むような音は今まで聞いたことが

ないので新たに機械人形が出現したようだ。一通り対処が終わる頃には室温も下がってきたので

扇風機を停止させ辺りを確認する。・・・変化はないのでこの次から正面ダクトドアを閉めてから

カメラを立ち上げ、コイン集めを開始した。ゲージ棒が半分に減っていたので巻き戻してから

他の部屋を切り替えしながらコインを取る。・・・切り替える時にノイズ音が大きく聞こえた

のでカメラを閉じると、また奴が目の前に立っていたのでマスクを被る。・・・今度は少し時間

が掛かったが退散してくれたようだ。確認したら再びコイン集めに戻る。・・・コインが10枚

溜まったので人形売り場に売っている"DEAHTCOIN"を購入して使えそうな奴を探す。・・・

今回は"Puppet"に使えそうなのでそいつに使用したら、減っていたゲージ棒がリカバリーされて

減ることはなかった。撃退に成功したようだ。ついでに他の部屋を確認する。・・・特に

いない。なのでカメラを下し閉めっぱなしだった正面ドアを開け扇風機を稼働させる。部屋の

様子を確認する最中に監視カメラの画面に広告が大音量の音楽と共に映し出されたので急いで

消す。

 

「相変わらずうるせえ広告だな・・最早スパム広告だろ。悪意しか感じねぇ。」

 

作業を邪魔するだけの存在と認識した後に改めて部屋の様子を見る。・・・右下に紫色の"BB"

がダクト前に待機していたのでドアを閉める。・・・音が鳴り退散したことを確認したら再び

扇風機を停止させ先程の工程を繰り返す。・・・二時間が経過した。

 

AM 2:09

 

「ちょっとやばいな、一同の場所がバラバラで上手くまとめられねぇ。」

 

今はカメラのシステムをダクトホースに切り替えており、5体の機械人形を統制しようとしてる

んだがこの"オーディオ・ルアー"が完全に制御できているわけではない。タップしてその場に

留まらせようとしても早い段階で抜け出してしまう奴がいるので後追いしなければならず、その

隙に散ってしまうのだ。更に長い間で見続けるんもんだから電力消費を若干早めたり、見ている

間を狙って"Withrd Bonnie"が頻繁に侵入してくるから作業を止む無く中断するのでその分、

ダクトホース組の侵入速度を速めてしまうのだ。一応片方の経路にロックを掛けて入られない

ようにシステムが組み込まれているが、両側の出口付近に機械人形が押しかけてくるのなら完全

アウト。ここは若干運要素が絡んでくるところだ。

 

「神頼みなんかしたくないんだがな。」

 

取り敢えず作業は終わらせたのでカメラを下す・・・部屋に"BB"に似た奴が又出てきたんだが。

そいつはピンク色で装飾されており、体をカタカタ動かしながらにやついた顔で俺の顔を見て

いる。

 

「また勝手に侵入してきやがって・・見たことない奴だが襲ってくる様子はないな。」

 

他二体の"BB"と同様妨害系に属する奴なのか。・・・一定時間たった後には奴は地面の下に

引っ込んでいった。

 

「???何も変化がないじゃん。何しに来たんだあいつ?」

 

といった瞬間だ。

 

 

"!!!!!!!ギュイイイイーーーーーーン!!!!!!!"

----------A NEW CHALLNGER APPEARED------------

 

 

いきなりどでかい音が部屋全体に鳴り響いたあとにカメラの画面に文字が表示され、その内容に

絶句した。

 

「は?新たな挑戦者・・・さっきの奴が呼んでるってことか!?冗談じゃねーぞ!!」

 

どんな妨害が来るのか想像していたらまさか追加で機械人形を呼び出す特性だと知り完全に焦り

だしてしまった。急いでカメラを起動し追加された機械人形を探し出す。・・・左のカーテン

ステージに昼間俺のところへ勝手に邪魔してきた野郎がカメラ越しに不適な笑みを浮かべていた。

 

「・・・"Foxy"。野郎、あの時の言葉に根に持っていたのか。タイミング最悪過ぎだろ・・。」

 

ここでまさかの盗塁王に出くわすとは、俺が練った作戦がまた狂いだしてしまった。唯でさえ

ダクト組を監視しなければならないのにこいつの面倒も見なければならないとは。

 

・・・恐怖の夜はまだ続く・・・




"あまり僕を怒らせないでくれるかな?"


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Creepy Crawlies 2(恐怖感その2)

"皆は獣のように動き回るけど私は違うわ"


AM 2:38

 

「取り合えず、"Foxy"は後回しだ!今はダクトホース組を何とかしねーと。」

 

突然の乱入者で困惑を浮かべていたがペースを遅らせるわけにもいかずカメラシステムをダクト

ホースに切り替えて彼らの牽制に取り掛かった。今のところ左端に3体、右端に2体の機械人形が

出口に向かって進行している状態だ。左側の出口にはロックを掛けているので実質2体の対処を

すればいい。タップして音を発生させた後はカメラシステムに戻し、左端のカーテンステージに

カメラを固定しておく。奴がカメラ越しにこちらの様子を窺っておりいつ侵入するのか方針を

固めている最中のようだ。

 

「こいつだけは走らせないように・・・」

 

監視した後はカメラを下して部屋の様子を・・・見るまでもなかった。机越しに鎮座している

"Scrap Baby"と正面ダクトに二つの目玉を覗かせている機械人形が一目で確認が取れたからだ。

正面にいる奴は兎も角、正面ダクトにいる奴はハッキリと姿が確認できないのでまた新たな

機械人形が出現したようだ。

 

「怒涛に攻めてくるなぁ・・まだ二時だぜ。前夜よりもかなりの数が増えているし。」

 

ここまで来ると対処に追い付かなくなり、最悪取り逃しで襲撃・・・リスクが一気に高まって

しまったようだ。

 

「いや、落ち着け。焦ればそれこそ奴らの思うつぼだ・・」

 

俺を焦らせミスを誘発しようとするのが奴らの思惑だ。冷静になれ・・・よし、まずは目の前

の奴らから順に対処しよう。

 

「正面の奴はドアを閉めて・・・音が鳴ったな。」

 

退散するのを確認した後にドアを開け"Scrap Baby"の顔を確認する。彼女の顔が僅かに動いたら

襲撃の合図なので見逃さないようにする。・・・特に変化はない。と、ここで机に見慣れない物

を確認した。

 

「うん?此処に"Foxy"の人形なんてあったか?・・・いや、奴が現れてから出現したって感じ

 か。なら、わざわざ設置したってことは何か意味があるのか?」

 

机の上に先程までなかった等身大のFoxy人形がいつの間にか設置されていた。見た目は彼の容姿

そっくりに作られている。・・仮にこれが彼の襲撃にサインを合図してくれるものなら重要な

情報源だ。これも見逃さないように逐一チェックする必要がある。

 

「さて、そろそろカメラを起動するか。」

 

カメラを起動するまでの工程は同じやり方で実行し、それからカメラを立ち上げた。・・・奴の

動きに変化はない。他の部屋に切り替えて入念にチェックする。・・・人形売り場から左の部屋

に切り替えた瞬間だ。画面右上から半分を占める状態でほぼ黒焦げの姿を纏った"Mangie"が唐突

に映し出された。

 

「!?」

 

こればかりは不意を突かれてしまい少しの間、対処について考える事ができなかった。すると

俺の意思とは反対に強制的にカメラを下されて左端から尋常じゃないほどのノイズ音が聞こえて

きたので、確認すると・・・

 

「おいおい、奴が音の発生源なのか。てか、いつ侵入してきたんだ!?」

 

その侵入速度はカメラを下されてから計ると僅か2秒程である。まず走ってこれる早さじゃない。

・・・幽霊なら話は別だが。そういやこいつ、幻覚の一種だったな。なら瞬間移動しても可笑し

くない。しかし、こいつの最も厄介な所がある。大音量による他の機械人形の誘導と聴覚妨害

である。ここまで五月蠅いと音による感知が更に難しくなり尚且つ、機械人形たちの侵入速度を

速めてしまうのだ。挙句には強制的にカメラを下されてしまい作業を中断されられてしまった。

 

「厄介すぎんだろ・・・ていってる傍から!!」

 

正面ダクトと右下ダクトに目玉だけを覗かせている奴と紫色の"BB"が出現したのでドアを閉めて

追い出す。さっき追い払ったばっかだろう・・・

 

「今度は"Foxy"とダクト組を監視しねーと!」

 

先程監視を無理やり中断されてしまい、今どのくらいの進行速度で進んでいるのか分からなく

なってしまったので急いでカメラを立ち上げる。正面ダクトを閉じるのを忘れずに。・・・

"Foxy"は今のところ動きはない、なのでダクトホースに切り替えて様子を見ると右の出口付近に

3体の機械人形が近づいてきたので直ぐに右の出口にロックを掛ける。幸い他の2体は両出口から

遠い位置にいるので襲撃される心配はない。そちらに音を発生させて動きを鈍らせたらまた

カメラシステムに戻しカーテンにいる奴の牽制を行う。・・・ここで漸く音が鳴りやんだようで

部屋は発電機の音だけ聞こえる状態になった。

 

「やっと去っていったか。一旦カメラを閉じていかないと。」

 

発電機を付けっぱなしにしている状態でも電力の消費を確認しなければならないので作業を中断

する。確認すると残りの電力"60%"と表示されていた。・・・まだ少し余裕はありそうだな。

確認している最中でも奴らは畳みかけるようにやって来る。

 

"!!!!!!ウヒャハハハハハハハハWWWWWWWW!!!!!!"

 

"Molten Freddy"の笑い声を聞き取ったので素早くドアを閉める。・・・音が二回鳴り響いた。

偶然にも誰かと重なっていて同時に追い出すことに成功した。ドアを開けて部屋の換気を行って

いるとシンバルの音が背後から聞こえ始めてきた。

 

「さっきの大音量で召喚しちまった感じかな。もう発電機を稼働し続けるのは無理だ。」

 

ここで発電機を停止させて奴の怒りを鎮めておく。その間に部屋の確認をしているといきなり

照明器具の光が激しく点滅し、右ダクトから物凄い音が響いてきたので只ならぬ気配を察知し

右ダクトのドアを閉める。・・・ぶつかった音が聞こえてその後静かになったから撃退に成功

したようだ。・・・今のよく反応できたな。ほぼ反射的に押したもんだから。右ダクトドアを

開けて再度部屋の様子を確認する。・・・正面に居座っている彼女の顔が僅かに上がっている

のを見逃さずに即コントロールショックを与える。・・・顔が戻っているのを確認して扇風機

を停止し、正面ドアを閉じてからカメラを起動する。

 

「!!"Foxy"のやつ、若干体を出してやがる。」

 

奴の動きに変化が訪れていた。カーテンから体が一部はみ出し片手を突き出す姿勢でその様子

が映し出されていた。あまり悠長にしていられないな・・・カメラで牽制しこれ以上奴を出さ

せないようにする。それが終わったらまたダクトホースに切り替えて機械人形たちの動きを

チェックする。・・・全員両出口から距離が離れていたので脅威はないと見なし、オーディオ

ルアーを張り直す。もう一度カメラシステムに切り替えて奴の監視を行う。ここで時間を確認

するため少しだけカメラから目を離した。

 

AM4:57

 

「もう五時まできたか。そういやこの夜だけ一度も襲われずにここまでこれたな。」

 

今までは早い段階で襲撃されたが、今回は突然の不意打ちやアクシデントが起こったのにも

かかわらずに冷静に対処できたので一度もミスを起こさずに上手くこれたのかもしれない。

このまま順調にいけば朝まで持ち越せる!という思いが頭の中に広がりそうになったがその

思考に囚われたらまた油断する羽目になるので切り替えて目線をカメラに戻す。・・・

さっき少しだけ目を離したはずだが、奴はカーテンステージから完全に降り立った状態で

鎮座していた。

 

「これ、もういつ走って来るのか分からねーから常にチェックしねーと。」

 

猶予も多分残されていないと思うので確認が取れた後にカメラを閉じて部屋の確認を素早く

行う。・・・軋む音が正面ダクトから聞こえたので直ぐ閉める。・・・ぶつかるおとが聞こえ

たのでドアを開け、シンバルの音が聞こえていない内に発電機と扇風機を作動させる。それと

いつの間にか"Scrap Baby"が忽然と消えていたので彼女による襲撃はないことを認識し、室温

を下げたら両方の機材を停止させて急いでカメラを立ち上げる。・・・奴の姿がない。・・

見当たらない!?

 

「ちょっと待て、此処に映っていないとすれば・・・」

 

最悪な場合を考慮し即左のドアを閉じる。・・・音が聞こえない。仮に前夜の"Rockstar Chica"

のようにドアを破壊する習性を持っているならば看板を設置する必要がある。

 

「なら急いで持って行かねーと!!」

 

はじき出すように椅子から飛び出し看板を抱えて左端に設置する。と、ここで違和感を覚える

ことになる。・・・奴の走る音が聞こえないのだ。

 

「あれ?何か不自然なくらい静かだぞ。ドアを叩く音が聞こえないどころか走る音も・・・」

 

奴がステージに戻るのはあり得ないとしても念のためにカメラで廊下を確認してみる。・・・

当然ながらいない。いや、気配すらも感じないしステージも確認しても同じだった。疑問を抱き

ながらもこれ以上どうすることも出来ないので仕方がなくカメラを閉じることにした。

 

・・・ここで彼の考えがいかに甘かったのかお分かりだろう。カーテンから飛び出した"Foxy"が

必ずしも走って来るとは限らない。先程彼が考えていたのは音の発生源による存在の認識である。

ならば走る音を聞きつければドアで侵入を防ぐか看板で追い出す形にしようというのが彼の考えで

あるが、音が聞こえてこないので困惑したであろう。その時点で気付くべきだった・・・音が

聞こえない?いや違う、聞こえなくて当然だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はすでに侵入しているのだから。新たな芸当を身に付けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!」

 

いた。先程抱いていた疑問があっさりと解消することが出来た。部屋の至る所に彼の部品が

散りばめられており態勢を既に整えていたのだ。自身が考えた予想を遥かにこえて奴は斬新

な方法でこの部屋に入ってきたのだ。俺がカメラを見るその一瞬の隙を狙って自分の体を

分解し、空いている通路に目掛けて放り込む、機械だからこそ出来る芸当に内心驚きと恐怖

が浮かび上がった。奴の顔は机の上に乗っかって、こちらを睨みいつでも襲撃が出来るように

虎視眈々と狙っているのだ。恐らくカメラを立ち上げた瞬間に・・・タイミングも悪く空気

の流れが悪くなり、換気しなければいけないがこの状況じゃ・・・俺が出来ることは唯一つ。

待つしかない。他の作業が出来ない以上、最早無防備状態に陥っておりダクト組が襲撃する

可能性が高くなってもこらえるしかない。時間はなるべく確認しない。心理的負担を減らす

ためだ。息も荒くなり空気の確保も難しい状態でも機械人形たちの侵入は止まらない。正面

ダクトから床を軋むような音が聞こえてくるのでドアを閉める。・・・立ち去ったことを確認

してドアを開ける。眩暈がして視界が狭まってきた。多分酸欠による呼吸困難だ。意識も

徐々に奪われ絶体絶命の危機に瀕している。瞼が閉じようとするので無理やりこじ開けて

ぎりぎりの状態で保っているがもう限界だ・・・奴が不適に笑みを浮かべてこちらの様子を

窺っている。遂に俺は眠るように意識を手放した・・・

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"♪キーンコーンカーンコーン。カーンコーンキーンコーン♪"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・?

 

何故朝のチャイムが聞こえる?俺は奴に・・・殺られていない!?さっきまで苦しかったのに

息が自然とできる・・・。うっすらと目を開けると"Foxy"が悔しそうにこちらを睨んでおり

こう言い放った。

 

「・・・っち、てめーの勝ちだよ。悪運の強い奴め。」




"からなずしも成功するとは限らない"


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Supplementary explanation materials 1(補足説明資料一枚目)

"対機械人形侵入防止についての資料"


「生きた心地がしなかったよホントに・・・」

 

先程の攻防戦でギリギリ粘り、この夜を乗り越すことが出来たが本当に間一髪の出来事だった。

あの時、少しでも時間が遅れれば今頃は奴の手で葬られるところだったよ。余程悔しかったのか

苦悶の表情を浮かべてこちらを睨んでたよ。歯もガチガチ鳴らしてたし苛立つ様子が一目見て

分かったさ。まぁ、直ぐこの部屋を去っていったけどな。取り敢えず今のうちに仮眠をとって

改めて機械人形たちの情報を見直していくか。追加項目もあるし・・・。

 

・・・・・・・・・・・・

 

「ふぁ~あ・・・ふぅ、(深呼吸)・・仮眠はこれくらいでいいかな。」

 

睡眠をとることで疲弊しきった心身の状態を回復してくれる。寝る時間があるだけでも有難い

もんだ。

 

「さて、紙に前夜であった奴らの情報を書き込んでいくか。今までの奴らも含めて。」

 

手に入れた情報を頭の中にとどめるのは愚行に等しい。人間の記憶力というのは個人差による

が大抵はひどく曖昧なものだ。一度手に入れた情報は幾晩経てば忘れてしまい記憶が朧気に

なる。そうなると全ての情報が有耶無耶になり間違った対処法が頭の中に上書きされるリスクが

高まってしまうからだ。なので紙に書く。紙というのは自身が故意に消さない限り書いたもの

が永久に消える事のない便利な代物であり、人間の記憶力よりもよほど頼りになる。書くことで

冷静に情報を分析でき、新たな対処法を考え出せたり欠点を詳細に見つけ出す事が出来る。

俺は毎日この作業をして、次の夜に向けての対策案を練っているのだ。

 

「前夜はカメラを見続けなければならない機械人形が出現したから、電力の消費と発電機を起動

 するタイミング、監視する時間帯を考えないと・・・」

 

こうやって、作戦を改善できるのも一つの利点だ。気づけなかったことも、いとも簡単に見つけ

出すことが可能だ。幸い紙なんざ腐るほどある。床に散らばっている書類の裏側や机の中に紙の

束が纏められていてなくなる心配はない。書くものも、もちろん用意されている。鉛筆立てに

複数の色のボールペン、鉛筆、なくなった場合のインクや鉛筆削り、これのおかげでリスクを

回避するための下準備が整えられるわけだ。本当にこいつらには感謝している。・・・まぁ、実際

に情報を整理したとしてもそれを有効活用できるかどうかは俺の腕次第。アクシデントなんて

幾らでも起こりうる。100%上手くいく保証もないし必ず無事に乗り越えることもない。ミスを

繰り返してひどい目にも合わされた。だから欠点を補う必要もあるが、如何にスムーズに対処が

出来るか予行練習もしなけばならない。機材は起動できなくともタイミングを計ることはできる。

カメラの上げ下げをして素早く部屋の確認をしたり、起動するタイミングの時間帯をデジタル時計

で確認したりなど・・・。兎も角体にスムーズな行動を叩きこんでいき、出来ることは全てやる。

あの地獄の夜を乗り切ることだけを考えて限られた時間で・・・

 

 

・・・此処からは彼が今まで纏めてきた情報を資料として拝見することにする。機械人形たちの

性質や備考についての情報だ。これをもとに彼は行動に移しているがまだ完全な状態ではないので

抜けている所も多々あるが、了承してくれればそれでいい。以下、機械人形たちについての情報。

 

 

 

Freddy    種類:熊  出現場所:CAM1(左廊下)

備考:左廊下に姿確認。進行速度は主に四段階。ドアの目の前まで来たらドアを閉める。室内温度

が上昇している間は進行速度が劇的に早くなる。定期的な換気が必要。

 

 

Foxy     種類:狐  出現場所:CAM5(海賊の入り江)

備考:左カーテンステージに姿確認。監視カメラで牽制の必要あり。進行速度は三段階。ステージ

から離れたら戻ることはない。耐久戦で持ち込むか死を覚悟するかの究極な二択が迫られる。

 

 

Toy Freddy  種類:熊   出現場所:CAM8(パソコン部屋)

備考:左上の小部屋で姿確認。どうやらゲームをしている最中で彼の手伝いをしなければならず、

画面上の掃除機みたいなやつに捕まったら強制的にあの世逝き。猶予はない。・・・こいつ、

何しにここに来たんだ?

 

 

Toy Chica   種類:ヒヨコ 出現場所:警備員室

備考:部屋の照明器具が点滅しだしたら左から彼女が接近する合図。直ぐFreddyMaskを被る。

こいつが一番怖い

 

 

Mangle    種類:狐  出現場所:通気口内センサー

備考:正面ダクトを目指して三つの侵入口から入り込んでくるのでベントネアを仕掛けるか

正面ダクトドアを閉める。目指す方向はバラバラ。

 

 

BB      種類:人型 出現場所:警備員室の右ダクト

備考:カメラを覗いている間に侵入する。デバフ効果は一定時間のフラッシュライト禁止。

姿を確認したらドアを閉じる。

 

 

Withrd Chica 種類:ヒヨコ 出現場所:通気口内センサー

備考:Mangleと同様三つの侵入口から入り込んでくるのでベントネアを仕掛けるか正面ダクト

ドアを閉める。目指す方向は右に偏っている。

 

 

Withrd Bonnie 種類:兎  出現場所:警備員室正面

備考:カメラを覗いている間に侵入してくるのでノイズ音を聞いたらFreddyMaskを被る。

 

 

Golden Freddy 種類:熊  出現場所:警備員室正面

備考:カメラを下げた時に出現を確認。猶予は僅かなので直ぐにFreddyMaskを被る。

 

 

Puppet    種類:人型 出現場所:CAM4(キッチン)

備考:右小部屋に出現を確認。正確にはカメラが故障して映らないがゲージ棒で存在を把握。

オルゴールを巻いてゲージを切らさないようにする。切らしたら死。間に合わない場合は

グローバルミュージックボックスを起動する。尚、DEAHTCOINで追い払える。

 

 

Phantom Mangle 種類:狐  出現場所:カメラ画面上

備考:幻覚の一種。時々奴の姿が大きく映し出すのでカメラシステムを切り替える。デバフ

効果は強制的にカメラを下げさせ大音量のノイズを発する。音につられて機械人形達の

動きが早くなる。

 

 

 

Phantom Freddy 種類:熊  出現場所:警備員室正面

備考:幻覚の一種。時々部屋に彼の容姿が浮かび上がるのでフラッシュライトで焚きつける。

デバフ効果は確認が取れず不明。

 

 

Nightmare Freddy 種類:熊 出現場所:警備員室

備考:カメラを覗いている間に彼の子分を部屋に潜り込ませる。複数体が居続けると恐らく

襲撃に移行するので、フラッシュライトを焚きつけて部屋から追い出す。数は不明。

 

 

Nightmare Fredbear 種類:熊 出現場所:警備員室左出入口

備考:カメラを見ている間左の出入口からくぐもった笑い声が聞こえたらカメラを下げて

左ドアを閉める。目玉しか姿を確認できず。

 

 

Nightmare   種類:熊  出現場所:警備員室右出口

備考:カメラを見ている間右の出入口からくぐもった笑い声が聞こえたらカメラを下げて

右ドアを閉める。目玉しか姿を確認できず。

 

 

Circus Baby  種類:人型  出現場所:CAM2(右廊下)

備考:右廊下に姿確認。出現条件は不明。ただし、人形売り場で彼女の人形が買えるように

なるので買ったほうがいい。・・・おそらく襲撃組だ。

 

 

Ballora    種類:人型  出現場所:両廊下

備考:姿は確認できず。彼女が接近する間はカメラが故障する。左右どちらかからメロディー

が流れだすので聞こえた方向にドアを閉める。シャイなのか?

 

 

Funtime Foxy  種類:狐   出現場所:CAM6(右カーテンステージ)

備考:右カーテンステージで姿確認。彼のショーの開催時刻が看板に書き記されているので

確認し、その時間帯に合わせて彼のショーを見る。遅れたら俺の殺戮ショーが始まる。尚、

DEAHTCOINで追い払うことが出来るので逆死刑宣告が可能。

 

 

Rockstar Freddy 種類:熊  出現場所:警備員室右端

備考:不定期に起動してはコインをせびるカツアゲ野郎。だが払わなかったら代金と引き換え

に俺の命が持ってかれるのでしぶしぶ払う。・・・何とかちょろまかす方法を探している。

 

 

Rockstar Chica 種類:ヒヨコ 出現場所:両廊下

備考:両廊下に姿を確認。進行速度はやや緩やか。だがドアで防げない性質を持ち合わせるの

で看板を進行方向に向けて置く。あだ名は「怪力ヒヨコ」

 

 

Molten Freddy  種類:熊   出現場所:通気口内センサー

備考:侵入速度はやや早く、侵入する前に高笑いをしてくるので直ぐにドアを閉める。何処

からあんな高笑いが発せるのか分からん・・・後五月蠅い。

 

 

Scrap Baby   種類:人型  出現場所:警備員室正面

備考:カメラを覗いている間に音も発さず侵入する。顔を僅かに上げたら襲撃する合図なので

同封されているコントロールショックで電流を流し撃退する。・・・てか何で持ってきたんだ?

 

 

名称不明の機械人形については後日名前が判別できれば新たに書き直す。・・・ここで筆跡が

終わっている。・・・紹介はまた今度にしよう。




"二枚目の資料はまだ未完成だ。"


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Nightmares Attack 1(悪夢の訪れその1)

"お前に光を見る資格はない"


この地獄に落ちてから俺は、外の光をもう拝むことのない日々を過ごしている。五日目の夜を

迎える準備に勤しんでいると感覚がおかしくなって不思議とこの環境に慣れてしまう。奴らの

事を考えるしか時間を割く暇はなく外に出たいなんて思わなくなってしまう。この場所から

逃れる方法なんざないが。

 

"チッ・・、チッ・・、チッ・・、チッ・・"

 

時間が過ぎていく。唯それだけ。同じ光景を見続けると頭がおかしくなっていく。気が狂う。

 

PM 11:58

 

それでも時間は止まってくれない。また俺はこの狂気の夜を乗り越えなければならず・・・

同じことを繰り返さなければならない。

 

「・・・」

 

例え道が閉ざされようと逃げ場を失おうともしても、俺は・・・

 

"!!!ジリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

やることは一緒。今までの夜で積み重ねてきた経験から体が自然に動く。予め決められた

通りのように。先ずはコイン集めまでの作業だ。カメラを起動し素早く部屋の監視をする。

・・・人形売り場で二体の人形購入が可能になっている。"Bonnie"と"Mangle"だ。必要

金額は・・・一体20Faz-COIN。・・・20枚!?

 

「おいおい、合わせて40枚集められなければいけないって、金額跳ね上がりすぎだろ!」

 

開始早々の鬼門に出くわし戸惑ったものの、集めなければ俺の命は保証できないので、渋々

集めるようにする。それ以外は異常がないので通気口内センサーに切り替える。・・・

"Molten Freddy"が尋常じゃない速さで侵入口まで迫っているのを確認しダクトホースに

切り替える。・・・何も映っていない。システムを部屋を映すカメラに切り替えて一旦

閉じる。ノイズ音が鳴ったからだ。目の前に"Withrd Bonnie"が立っているのでマスクを

被る。・・・少し経って奴は消えた。部屋周辺に"Nightmare Freddy"の子分共が居座って

いるので机の引き出しからフラッシュライトを取り出し、奴ら目掛けて光を放つ。・・・

嫌がって逃げたようだ。発電機を停止して扇風機を作動させる。

 

"!!!!!サーーーープラァァァァァァァァァイズ!!!!!"

 

正面ダクトドアから聞こえのいい声を聞きつけドアを閉める。・・・音が鳴り退散を確認

して扇風機を停止させる。そろそろ空気に入れ替えが必要なのでダクトドアを閉めてカメラ

を立ち上げる。・・・左の小部屋に見慣れないクマの機械人形が鎮座している。また新種

か、と思いそいつの様子を観察する。・・・が左右からくぐもった笑い声が耳に届いたので

カメラを下して左右の扉を閉める。・・・両方からぶつかる音を聞き洩らさずに確認する。

 

「中々コインが集まらねー("WWWWW!!!!!ウヒャハハハハハハ!!!WWWWWW

 

最後まで言わせろよ・・・正面ダクトドアを閉じてこの部屋に侵入されるのを防ぐ。退散

の音を聞いたら再び開けてカメラを起動しコイン集めに戻る。・・・少し経った後騒ぐ声

を聞いてカメラを閉じると、さっきより若干数を増やしてるちび共がこの部屋に侵入して

きたのでライトを当て続ける。・・・中々立ち去ってくれない奴が一匹いるのでライトを

強くして光を当てる。・・・漸く去ってくれたので複数の機材を起動させて机の右端に

いる、いかつい容姿になった"BB"を確認する。・・・動きはないので今は放置。あと少しで

コインが20枚溜まるのでもうひと踏ん張り集める。・・・コインが溜まったと同時に背後

からシンバルの音を聞きつけたので機材を停止するために人形売り場にカメラを固定し

カメラを下す。・・・目の前に"Golden Freddy"が鎮座する姿を確認しマスクを被る。・・・

すぐ消えたのでマスクを外し機材を停止させす。・・・シンバルの音が響かなくなったので

暫くは機材を起動させずに様子を見る事にした。そしていつの間にか"Nightmare BB"が

立ち上がって襲撃する構えをとっているのでライトを照らす。・・・体勢を崩し机に突っ伏

た状態で元に戻った。こいつの対処はかなり容易だ。時間を確認すると、一時と表示され

ていたので人形を買うためカメラを立ち上げ急いで購入する。・・・支払った後に廊下を

確認すると、右廊下に"Nightmare Bonnie"がそこに立っているのを確認する。この部屋まで

の距離はだいぶ近くもう襲撃されてもおかしくないが、その様子が見られないとなると対処

に成功したようだ。人形を買う事で襲撃を防げるって・・・取り敢えず厄介な奴を一体封じ

たので一安心だ。・・・だが、刺客は見えないところに潜んでいるのをこの時は気付けな

かった。今度は"Mangle"の人形を買うためにコイン集めをしている最中にノイズ音が聞こえ

たもんだからまたか・・・と思って直ぐカメラを閉じてマスクを被ったんだ。

 

「ん?」

 

"Withrd Bonnie"の姿と重なるかのように白黒の霧が浮かび上がってきて疑問に思ったが

幻覚か何かだと思って気にせずにいると、いきなりマスクを外されて俺の体が宙に浮いた

んだよ。

 

「!!?」

 

驚いたよ・・・そりゃもう、目の前に"Puppet"の容姿に似ている奴が俺の目の前に立ちつく

していたんだから。当然何が起こったのか把握できなかったのさ。そいつは顔をカクカク

動かして俺の顔を覗き込んで薄ら笑いを浮かべていたんだ。その直後だ。部屋の至る所から

奴と同じような手が無数に生えてきて・・・気づいたら俺の体が悲鳴を上げたのさ。四肢を

掴まれてバラバラの方向に引っ張り出すもんだから鈍い音と共に徐々に痛み始めて苦痛の

顔を浮かべたんだ。引っ張りすぎてその内血があちこちに出血しだしてやがて皮膚が裂けて

きた。中から肉が見えてきたときにようやく気付いたんだよ。

 

体をバラバラに引き裂かれることに

 

でももう遅い。何かが切れた音を聞いて俺は狂ったように悲鳴を上げた。右腕が千切れたの

を視界に捉えて。腕の断面図が良く見えるように千切ったものを奴が持ってきて俺に、これ

みよがしに見せつけてきたんだ。気持ち悪くて吐き出したんだがまだ止まらなく、今度は両足

が千切れるのを見てもがく気力を失ったよ。大量出血で体が上手く動かなくなって魚のように

ビクビクと痙攣を起こすようになり、意識がもう途切れるかどうかの瀬戸際に立たされたんだ。

この時痛みは感じなくなった。最後に左腕を千切れたのを見ても何も感じなくなって不快感だけ

を抱いて暗闇の中に落ちていったよ。・・・奴の声を最後に聴いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"これは覚めることのない悪夢だ。悪夢は始まったばかりだ。"




"死が唯一の償いだ"


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Nightmares Attack 2(悪夢の訪れその2)

"何度も死を味わえ。何度も・・・何度も・・・何度も・・・"


またもや厄介な敵が現れてしまった。今度の機械?人形は霧状に浮かび上がって実体化する

タイプであり、予測不可能な上に猶予も対処も分からない状態に陥っている。さっきは幻覚

の一種だと思っていたのも束の間、いきなり目の前に現れて秒も掛からず制裁を喰らった。

 

「一体どうなってんだよ・・・。」

 

困惑するほかなかった。悩みの種が増えるのはいつもの通りだがこうまでトリッキーなやり方

で攻められたらほぼお手上げ状態。しかし、考えさせる余裕も許してくれないのがこの場所の

特有でもう一度悪夢のような夜を迎えなければならなく、時間はもう午前十二時前である。

なのでさっさと準備しなければならない。

 

「奴の対処が分からない以上ダメもとでも手あたり次第、策を打たないと・・・。」

 

兎に角当たって砕けろ精神で続行するしかない。・・ほぼ自殺行為だが。無論根拠もない策で

上手くいくはずもなく文字通り悪夢のような夜を過ごす羽目になる。

 

AM 12:45

 

「畜生が、コインが集まらねぇ。」

 

膨大な数のコインを集めなければならずに今勤しんでいるがカメラの画面上に中々コインが

現れずおまけに見ている隙に"Witred Bonnie"と"Nightmare Freddy"の子分、両サイド廊下

にいる奴らが侵入・襲撃の構えをしてくるので効率的に集められないのだ。前夜と比べて急

に侵入速度も上がりだしよりハードルな作業となってしまう。漸く10枚集めたころにノイズ

音が鳴りだしたのでカメラを下してマスクを被る。・・・"Witred Bonnie"が退散をしたのを

確認してマスクを外した時、あの時と同じように白黒の霧状のものが現れ始めた。

 

「くそぅ!まだ対処も分からねーのに!」

 

だが、ここで何とかしないと痛いレベルを超えた恐ろしい審判を喰らう羽目になるので取り

合えず机に置いてあるフラッシュライトを手に取りそいつに向けて照らし出した。・・が、

何の効果もなくみるみる実体化していき、遂には俺が所有しているライトを弾き飛ばして

体を持ち上げられた。また失敗かよ!!・・・そして先程と同じような制裁を喰らうことに

なった。

 

・・・・・・・

 

AM 12:51

 

「駄目だ。全く集められねぇ・・・。」

 

作業の速度が著しく低下し、ペースを掴めずにもうすぐ一時を迎える段階でのコインの枚数

はたったの5枚。絶望的すぎて絶句するレベルだ。唯でさえ侵入してくる奴らの対処で精一杯

なのにコインを集める余裕がない。てかさせてくれない。今"Molten Freddy"の笑い声が聞こ

えたので急いでカメラを下して正面ダクトドアを閉める。・・・立ち去ったのでドアを開けて

時間を確認すると、午前一時を過ぎており、電力の残量は残り70%を切っていた。カメラを

長時間起動させていたのと部屋に侵入する機械人形を追い出すため頻繁にドア開閉したことが

原因で消費を早めてしまったのだ。発電機を起動させたいが騒音による機械人形の襲撃を招い

てしまうので苦しい状態だ。

 

「やべぇ・・・コインも碌に集まっていないしそろそろ人形を買わねーと俺の命が・・・。」

 

カメラを立ち上げて右廊下に切り替えると、そこに"Nightmare Bonnie"が立っている様子を

映し出されたが一瞬砂嵐状態になり再び元の画面に戻ると・・・そこに奴の姿が映ってい

なかった。

 

「あ・・・」

 

この時点で危機を察知し無駄だと思うけど、苦肉の策として右ドアを閉めようとボタンに手を伸ば

そうとしたが手遅れだった。・・・先に奴がこの部屋に侵入していたので今更締め出しても何の

意味もない事となる。"ズカズカ"と鈍い機械音を立てながら一直線に俺の方向へ歩き出し目の前

まで来た時には両手を伸ばして俺の顔を鷲掴みにする。そして少しずつ力を掛けて俺の頭を横に

向かせる。その時、首にも負担がかかり徐々に痛みだした時にはもう曲がれないところまで来て

いるのにもかかわらず、奴の両手は離そうともせず寧ろこれ以上に傾けるようにする。ここまで

くればもうこいつがやろうとしている事にも気付く。・・・まぁ、気付いたときには俺の頭は鈍い

音と共に有り得ない方向に曲がりだしたんだがな。

 

・・・・・・・

 

AM 1:14

 

三度目の挑戦だ。今回は運がいいのか、カメラを見ている間にも頻繁に侵入されることもなく直ぐ

に20枚のコインを集めることが出来たので"Bonnie"の人形を買うことに成功した。今度はもう一体

の人形を買うためにコイン集めをしている最中だ。左の小部屋に黒い熊の機械人形が静かに座り

こんでいたが特に動きが見られないので他の部屋をチェックする。・・・この時に部屋の両出入口

からくぐもった笑い声が聞こえたので一旦カメラを下して・・・見覚えのあるやつが右端に出現

していた。

 

「こいつ他の機械人形を呼び起こす野郎じゃねーか!よりにもよって此処で出るくるのかよ!!」

 

また厄介な奴が現れて頭を抱えることになる。・・両サイドの奴らの対処は忘れずににして。少し

時間がたった後に物凄い音とカメラに新たの挑戦者が出現したという文字を確認して奴は消えて

いった。その直後異常を感知した。俺の視界に上下から鋭い歯がゆっくりと降りてきて飲み込もう

としている。

 

「こんな光景見た事ねーぞ!え?ちょっと待て。これどうすればいいんだ!?」

 

また新たな機械人形が出現したため、全く対処について分からずじまいで戸惑っているうちに

もう視界が鋭い歯で覆った時には完全に手遅れとなった。

 

"!!!!!!!!!!(噛み千切る音)!!!!!!!!!!!"

 

音が発したのを聞いた瞬間いきなり体が倒れこみ動けなくなった。何が起こったのか分からず状況

が呑み込めないでいるとある違和感が芽生えてきた。異常なほど体が軽いのだ。いや、軽いなんて

ものじゃない。何も感じなくなっているのだ。幸い目線だけは僅かだが動かすことが出来るので

辺りを見渡してみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胴体だけが床に転がっいて物凄い勢いで血液が噴出しているのを確認した。

 

 

"・・・・・"。唖然としていると背景が動き出し俺の視界全体にオッドアイが特徴で口周りが

赤い鮮血で汚れている"Nightmare Chica"が映りだした。・・・こいつが犯人だったようだ。

どうやら頭と体を分断されて痛みの神経が途切れてしまったみたいなので通りで何も感じなくなって

しまうはずだ。だが、過ぎた事なのでもう手遅れだが。・・・そのまま眠るように意識を失うのにそう

時間は掛からなかった。・・・悪夢から目覚めるのはまだ先のようである。




"さぁ、私と一緒に燃えましょう。この目覚めることのない悪夢の中で。"


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Nightmares Attack 3(悪夢の訪れその3)

"私はリメイクされた。お前ではなく、決して殺していけなかった人によって"


あれから何度も挑戦していき出来る事だけの策を全て打ち出してこの夜を乗り越えようと最善を

尽くした。けど、そう簡単に上手くいくはずもなく奴らに弄ばれるだけで終わっちまった。例えば

カメラを見ながら"Nightmare Freddy"の子分の対処としてライトを持続的に当てようとした瞬間

"Nightmare BB"にライトを握っていた方の持ち手を噛み千切られて、そのまま頭を噛み砕かれて

終了。あいつは動いていない状態でライトを当てると襲撃に移っちまうみたいで不運にも、子分の

一匹がそいつと重なっちまったんだ。電力を節約しようと殆ど扇風機を稼働させないで蒸し暑い中

コイン集めしながら部屋に侵入してくる機械人形を対処していると、両廊下に"CHica"に似た見た

ことのない機械人形が出現してそのまま部屋に侵入してきて全身を焼かれたよ。どうやら室内温度

を上げすぎるとさっきの奴が現れるようになるみたい。え?ドアは閉めても平気ですり抜けてきた

から無駄に終わったけど。後は"Puppet"に似た奴。奴の対処法なんざいまだ分からずじまいで騒音

で五月蠅くさせても、室内温度を上げてもほぼ効果なし。唯実体化するのを助長させているだけ

なのさ。でだ、15回目の挑戦で漸く気付いたことがある。

 

AM 12:45

 

「・・・これさ、時間内にコインを集めるのって不可能じゃね?」

 

今まで馬鹿正直に集めようと試行錯誤していたがそれが死亡原因を作っている一つの要因だと

思い、一旦カメラを閉じて目の前に鎮座していた"Golden Freddy"を躱すためにマスクを被り

ながら少し考えてみた。仮にすべてのコインを集めなければならないのなら"Baby doll"と

DEATHCOINの購入を含めて計70枚も集める必要がある。・・事実上戦略が破綻していると言って

も過言ではない。冷静に考えてみれば現実的ではない事に俺はそれをやり遂げようとしている。

此処で思考を一時中断してマスクを外し"Nightmare Freddy"の子分をライトで追い払うと部屋の

換気のためにカメラを立ち上げた。換気ボタンを押して右廊下に切り替えたらそのまま閉じて

部屋の室内温度を下げるために扇風機を稼働させる。そしてさっきの考えを続けることにする。

 

「仮に、従来の方法で集めることが不可能だとしたら・・・何か抜け道があるに違いない。」

 

自然とこの考えになるのは当然だ。そもそも何故あそこまで必死に集める必要を感じた?答えは

襲撃されないように人形を買おうとして焦っていたからだ。そりゃ当たり前だ。買わなければ死、

それが待っているので危機を感じながらも必死にならなければならない。その考えが既に間違って

いたのだ。そもそも対処は一つとは限らないじゃないか?"Puppet"のようにオルゴールを巻く暇

がなければグローバルミュージックボックスを起動させて難を逃れるようにこいつらにも別の方法

で対処すればわざわざコインを集めなくともいいという事になる。

 

「問題なのはコイン以外で対処できる方法についてだ。ドアで防げないことは分かりきっている

 からおそらく牽制の必要があるんだよな。"Foxy"と大体同じような感じでカメラを見続けるか

 あるいは、カメラを奴らが出現する場所に固定して以降動かさないか・・・。」

 

もしこの考えで奴らを防げるのならコインを集めずに楽できる分、他の部屋を監視するために切り

替えることが不可能というハイリスクハイリターンな構図が出来上がる。だがこれまでの中で一番

の最善策を思いついたので、確証がなくとも裏付ける根拠ならある。今の時刻を確認すると・・・

 

AM1:32

 

と表示されており今頃は廊下にいる奴らが襲いに来てもおかしくないのに、一向に姿が見えないの

だ。念のため確認しにカメラを起動すると・・・"Nightmare Bonnie"は廊下に立ち尽くしてまま

で動く様子がない。これは先程の考えがあっている証拠だと証明されたものだ。

 

「まさかこんな裏技があるとは・・・そりゃコインを集めなくてもいいわけだ。」

 

結果的には上手くいく形となったので人形組はこれで対処完了だ。丁度正面ダクトからあの高笑い

が聞こえてきたのでカメラを下して正面ダクトドアを閉じる。・・・音が鳴ったのでドアを開けて

扇風機を停止させ、次の対処に取り掛かった。今度は"Puppet"に似た奴の対処法についてだ。道具

で防ぐことは不可能と判断するのに時間はさほどかからない。なら道具以外で対処できる方法を

見つけ出す他ないのだ。

 

「今までの動きを思い出せ。多分俺の動きによって奴は襲撃に移行するから・・・。」

 

恐らく、俺の動作に合わせて奴は実体化し猶予もなく襲ってくるの傾向がある。なら動作自体を

変えなければならない。

 

「あの時、マスクを被っても防げない・・・・ん?」

 

ここで引っかかることがあった。俺はある共通の動きを取っていたからだ。それは・・・

 

「幻影が現れる方向を凝視していた・・・・・・もしかしてそれか!?」

 

そういえばそいつから目を離さずにずっと見ているうちに徐々に実体化し襲撃に移行していた。

てことは、"Phantom"系列の奴と同じように凝視せずに他の方向に視線をずらせば・・・そう

思った矢先に白黒の霧状が俺の視界をとらえてきた。さっきの考えが正しいなら、これ以上見る

のは危険なので試しに真横の出入口に目線を向けてみた。仮に失敗すれば・・・そんなことを考え

て身震いしたが、どうやら杞憂に終わったようだ。

 

「・・・襲ってこない、上手くいったか?」

 

恐る恐る目線を正面に戻すと、そこに霧状のものは映っていなかったので対処に成功したようだ。

ここまで苦戦させられた奴らを対処できたのは大きな進歩だ。それとカメラを右廊下に固定した

ことでもう一つ気付いたことがある。他の部屋に切り替えることが出来ない事で見る必要がなく

なってカメラを一々起動する必要が無くなってしまったことだ。

 

「てことは、部屋の換気以外に起動しなければ他の機械人形たちが入ってくることもない!」

 

部屋に侵入してきた機械人形達は俺がカメラを覗いている隙を狙って襲撃を仕掛けるのだがその

工程が無くなることで侵入することが出来なくなるってことだ。無論カメラで牽制しなければ

いけない奴らが出れば話は別だが、今のところそういった奴らは現れていなかったので最早無力化

したのも同義だ。この二つの考えで決行した作戦は奴らの動きを大幅に抑えることに成功した。

部屋の換気をするだけにカメラを起動して奴らが部屋に入る隙を与えず、途中何度かの幻影が出現

しても視線を逸らすだけで回避に成功し、電力は騒音対策のため殆ど起動できずに僅かしか残され

ていなかったがその時はもう六時を迎える目前だったので気にせずに落ち着いていられた。

 

"♪キーン、コーン、カーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン♪"

 

あれ程苦戦したのに仕組みを知るだけであっさりと夜を乗り越えられるのは少し拍子抜けだけど

結果的には無事に・・無事じゃないけど、余裕でクリアできたので知ることだけでこれ程の差が

出ることを痛感した。やはり知力は凄まじい力になるとこの経験を通じて改めて認識した。

兎も角、あの悪夢の夜から抜け出せたのでやっとひと眠りができる・・・・・安堵からそのまま

眠りについたのはそう遅くなかった。




"無知は大罪だ"


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Mini games(小さなお遊び)

"ついてきて"


・・・・・・・

 

俺の耳元にひどいノイズ音が響いてきたのと同時に意識が目覚めた。不意打ちを喰らう感じで

起こされたので最悪な目覚めとなったが重い瞼を無理やり開かせると、見覚えのある場所に迷い

込んでしまったようだ。

 

「これ、また夢のパターンか。二日ぶりだな・・・。」

 

いい加減この現象には慣れてきたものだが相変わらず俺に夢を見させる意図が読めないので結局

目的が分からない。まぁ、そんなこと思っても無駄だと思うので一応辺りを見渡してみる。此処

があのピザ店舗の室内であることは一目で見極めたが築年数がだいぶ長いのか、壁や床などの

構築物に(ヒビ)が広がって今に建物が崩壊するのではないのかという悲惨な状態であった。

周りを見ても酷い光景が広がってる。埃が床一面に覆いかぶさっており蜘蛛の巣も至る所に張り

巡らせているので碌に部屋の掃除をしていないのは一目瞭然で、古い道具や機材がそこらへんに

転がっていることもあり迂闊に進むと怪我をするリスクも出てくる。一通り確認してこの店舗が

何時のものか壁に貼っている新聞の記事で直ぐ判断できた。1993年のピザ屋だ。この頃は児童達

が店内で行方不明になりその後、機械人形からひどい異臭が漂ってきたことから事件性に発展

した児童誘拐殺人事件で一時騒がれたんだっけ?

 

「この光景から察するに・・・潰れた後の店か。通りで汚いもんだ。」

 

空気の入れ替えも殆どしていないもんだから環境は最悪、息を吸い込むだけでも埃が舞い込む

状態であり吸っただけでも気分が悪くなる。位置的にはこの場所から正面に広場が見えており、

そこから一本道で廊下として続いていることから片側のエントラスホールだと理解した。このまま

じっとするのも気分がよろしくないから向かって正面の広場を目指して歩き出す。途中、ネズミの

大群に出会ったときに驚いた拍子で尻もちをついてしまうアクシデントが起きたこと以外特に変化

が見られなかったのでズカズカと進んでいく。・・・狭く息苦しい廊下を抜けるとかつては賑やか

に栄えていた大きな広場にでた。長方形のテーブルが規則的に並んでおり紙帽子とお皿が均等に

並べられている。端には風船を膨らませる機材と遊具が無造作に設置されている。そして広場の

正面ステージには、あの機械人形たちが静かに佇んていた。

 

「・・・"Freddy"、"Bonnie"、"Chica"、"Foxy"。」

 

エンターテイメント用の彼らもあの事件をきっかけに出番が無くなり唯の置物として放置される

運命を強いられたのだ。ほんの数年間くだらない歌と偽りの物語を餓鬼共に吹き込ませるためだけ

に作られた存在。最初は俺にとってそれが余りにも不憫でならないと思い、感情が欠如した彼らの

ために一人で盛り上げたもんだ。誰もいない夜中に忍び込み、彼らを起動し一方的に話しかけて

少しでも寂しい思いを取り払おうとした。少しのジョークも混ぜてな。無論彼らは機械なので俺の

言っている意味なんて分からないだろうし勝手に話すこともない。傍から見れば俺は頭が狂ってる

奇人だと捉えられるだろうが俺にとっては真剣そのものだからそんなこと気にしなかった。彼らと

いるだけで生き生きした気分になれたんだ。正直に言えば俺も独りぼっちな人生を送ってきたもん

で人と関わることなど殆どなかった。第一、穢れた心を持つやつらと戯れる気なんざ起きない。

だからこそ汚れたものがなく、純粋な心を持つ彼らに憧れを持って接してきた。

 

「・・・あの日は本当に楽しむことが出来たなぁ。」

 

その点でいえば大嫌いなパートナーが持つ技術力だけには素直に関心が持て、尊敬できたのさ。

これは偽りのない本当の気持ちなんだ。・・・そう、奴らが俺を襲うまではな

 

「ん?」

 

異変を感じたのはこの会場に留まって約数分が経過した時だ。正面から見て左端からの景色が歪み

始めたのだ。それと同時に最初にこの空間で目覚めた時に聞いたあのノイズ音が部屋中鳴り響いて

おり、歪みだした空間からそれは現れた。そいつの特徴として容姿は"Freddy"そっくりだが全身

真っ黒の影で覆われており右手にマイク、左手に一つの風船を掲げて彼らが立っているステージに

近づきだした。呆然とその様子を眺めているとそいつが"Freddy"の耳元で何かを囁き始めた。

此処からでは距離が開いているので何を喋っているのか判断が出来ない。近づこうとしたが何故か

金縛りに遭い、体が動いてくれないのだ。囁きだして数秒、"Freddy"が動き出した。体はとっく

の昔に錆びついているはずなのに自然とした動きで若干驚きを隠せない。ステージから降りると奴

は手招きをしながらこちらに来るようにジェスチャーをしている。誘われた熊の機械人形は怪しむ

こともなくあっさりと奴の後を追うことになった。この間も俺の体は動いてくれなく一連のやり

取りを見るしかなかった。・・二体が去った後暫くは静かな空間に息苦しさを感じたが突然、悲鳴

に近い叫び声が部屋越しに響き渡った。それと同時にこの部屋に勢い込んで入ってくる一人の男を

確認した。見るまでもない、若い頃の俺だ。錯乱状態に陥りまともな態勢を取れずに何度も床に

倒れる。飛び出してきた方向に目を向けると、奥から熊の機械人形が現れて不規則な音程で曲を

鳴らしながら不敵な笑みを浮かべていた。それを合図に他の機械人形も動き出し、同じように俺を

追い詰めるように回り込む。あぁ、もちろん若い頃の俺の方であり、今の俺は幻影扱いにされて奴

らからには存在を認識されていない。だが、ここでやられるほど俺は甘くない。人は命の危機まで

追い込まれると信じられないほどの力と行動力を発揮する。修理部屋に追い詰められた俺はある事

を思い出し部屋の奥に急いで駆け込んだ。万が一地震が起きた場合、ドアを破壊できるように設置

されたアレックスの斧を取り出し奴らの方向に向き合った。彼らは俺の行動に不信を持ったよう

だが気にせず襲撃の態勢に切り替える。・・・最初に動いたのは"Foxy"だ。鋭いフックを俺の顔

に突き出そうとするのを確認し持っていた斧で対抗する。

 

"!!!ガキン!!!"

 

金属同士を勢いよく叩き込んだ音が響き渡り僅かな閃光が走る。まさか防がれると予想しなかった

阿保面出してる奴に目掛けて斧を勢いよく振り下ろす。

 

"!!!!!(部品が破損する音)!!!!!"

 

あっさりと奴の首を切り落とすことに成功したもんだから他の機械人形達は度肝を抜いて動きが

一瞬止まった。この絶好のチャンスを逃すはずもなく駆け出してもう一体の機械人形"Chica"に

向けて思いっきり斧を振り回す。・・・今度は胴体を真っ二つに切り裂き修理部屋を脱した。体勢

を整えるためだ。早くも二体がやられ残された"Bonnie"と"Freddy"は完全にペースを取られて

混乱状態に合っている。出口付近までたどり着いた俺は出入り口のドアに打ち付けられている板を

剥がす作業を始めるが、そうはさせまいとしてさっきの二体が襲い掛かってきた。しかし焦りから

なのか、奴らの動きは大胆となりかえって襲撃の予測が容易に分かり、簡単に躱すことが出来る。

そして"Bonnie"目掛けて不意を突くように斧を突き出す。・・・頭に刺さり体勢を崩したところで

顔面に向けて力いっぱいに振り回す。破損した部品が飛び散り顔を崩壊させる頃には奴が動く様子

はなかった。遂に一人になった熊の機械人形は迂闊に行動できないのか、一旦静止した。臨戦態勢

に切り替えじっと俺の姿を見る。俺も只ならぬ気迫を感じ取り、動きを止める。・・・お互いミス

が許されない場面であり極限状態に達している。

 

"・・・・・・・・・"

 

「・・・・・・・・」

 

押し黙る二体の存在。・・・先に動いたのは機械人形の方だ。右腕に力を込めて振り下ろす。直ぐ

に察知し避ける俺、動いた隙に斧を突き出す。が、流石は大将、機械とは思えない俊敏な速さで

斧の柄を掴み取り事なきを得る。奇襲に失敗し動揺した一瞬を狙い俺の胸倉を掴み取る。近づけ

させ頭を噛み砕く気だろう。奴は勝ち誇ったかのように不敵な笑いをする。・・・それこそ俺の

狙いだ。奴は大きなミスを犯した。何しろ武器は一つとは限らないだろう?先程の部屋にもう一つ

持ってきた+ドライバーを奴の目玉に突き出してやった。主に目つぶしのために用意した物が

ここで真価を発揮するとは思えなかったが兎も角、苦しみだした時に僅かに左手が緩みだしたので

斧を奪え返し首目掛けて振り下ろした。・・・鈍い音を発した後に勢いよく倒れこみもう動くこと

はなかった。・・・と、ここで意識が急に途切る。

 

・・・・・・・・・・

 

「・・・・あ?」

 

再び瞼を開けるとそこはいつもの部屋のが映し出されていた。どうやら此処に戻ってきたようだ。

時間を確認すると午前9時を過ぎていた。

 

「あのタイミングで意識が切れるとは・・・」

 

中途半端に終わってしまった夢に少し疑問を抱いたが終わってしまった事に一々気にする必要は

ないと判断してもう一度仮眠をとることにした。腑に落ちないといえば結局影の存在については

分からずじまいとなってしまったが。




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Springtrapped(罠にかかった者たち)

"やぁ!勝つこともあれば負けることもあるさ。"


"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

六日目の夜を迎える。今回は前回の夜で得た知識を参考にして作業をする事にする。というのも

これまでの動きを思い出して見ると、頻繁にカメラを立ち上げ過ぎたので電力の大幅な消費と

襲撃のリスクを高めてしまったのでこれを反省し、以下のように動く事にした。

 

・先ず、開始直後に発電機を作動させ扇風機を停止。最初だけドアを閉じずにカメラを立ち上げ

 下から順に部屋を見る。この時、最初から機械人形達が出現しているかで今後の対処法が変わ

 るので注意深く観察する。例えば左のカーテンステージに"Foxy"が出現したら牽制のために常

 にカメラで見る必要があり、右のカーテンステージに"Funtime Foxy"が出現していたら時間帯

 に合わせてカメラを立ち上げる必要がある。複数被った場合には対処の優先度をつけてその都度

 入れ替わりで見るか、他の方法で牽制するかだ。また、最初からいない場合には高確率で出現

 しないケースがあるのでその分リスクを下げることが出来る。なので確認を怠らない。

 

・それが終わったらダクトホースに切り替えて何も映らないとしてもオーディオ・ルアーを起動

 させる。この場合は最初から設置できれば、一々反応が出るまで確認しなくても勝手に引っか

 ってくれるので時間を短縮でき余計な電力の消費を抑えてくれるのだ。

 

・それも終わったらカメラシステムに戻し、必要に応じて起動させるか牽制の必要がある機械人形

 が居なければ部屋の換気以外カメラを立ち上げずにそのまま部屋組の奴らを対処するだけ。

 

無駄な動きを省いた作戦でこの夜を乗り切るつもりだ。そして時計が鳴りだしたのを確認し作業に

移ることにした。迅速な対応もこの作戦に必要不可欠なのだから。

 

早速部屋のチェックをする。・・・今回は左の小部屋に黒色の熊の機械人形だけが映っていた。

なので奴の対処だけを考えればいい。人形売り場も確認したが人形を購入する表示がされていない

ので人形組も恐らく出てこない。確認したらダクトホースに切り替えてオーディオ・ルアーを設置

し、カメラシステムに戻してここでカメラを下す。室内を確認すると右ダクトに紫色の"BB"が

こちらを覗きこんでいるのでドアを閉じる。・・・立ち去る音を聞きドアを開ける。正面を見ると

"Phantom Freddy"が実体化し始めているのでフラッシュライトを照らす。・・スッと消えた

のでライトを消し扇風機を稼働させる。騒音ゲージを貯めないように発電機を一旦停止させて室温

を下げ終わるまでは放置する。待っている間に正面ダクトから目玉だけを覗かせている機械人形が

現れたのでそのままドアを閉じ、音が鳴り響くのを確認したらドアを開けて室温がいい感じに下が

ったら扇風機を停止させて発電機を稼働させる。今のところ厄介な奴はあの黒い熊ぐらいだろう。

・・・訂正、正面の視界に黒白の霧状が現れ始めたので目線を左にずらす。少し経過した後に目線

を戻すと幻影は消えており、代わりにさっきの熊の幽霊が浮かびあがっている。

 

「お前さっき追い払ったばっかりだろ・・・。」

 

光を奴に当てて退散させる。そろそろ換気の時間がやってきたので正面ドアを閉めてからカメラを

立ち上げる。

 

「おおっと!」

 

立ち上げた瞬間に画面上に"Phantom BB"の顔が映りだしたので換気ボタンを押した後は直ぐ

他の部屋に切り替える。にしても自己主張が凄すぎだろ、どんだけ見てもらいたいんだよ。ついで

に左の小部屋を確認すると、佇んでいた黒色の熊の機械人形が若干体勢を崩してきたので頭の中に

警鐘が鳴り響いた。

 

「ちょっと危険だな。こいつの対処については確認が取れてねーから探さねーと。」

 

何しろ前夜でも一目確認しただけでこいつの情報がない状態だ。取り敢えず"DEATHCOIN"で追い

払えるか試すためにコイン集めに切り替える。特に大きな障害もなく難なく集められたので人形

売り場に切り替えコインを購入し、奴がいる部屋に切り替えてコインを使用してみる。・・・

音を発した後に跡形もなく消え去っていた。こいつにも使えることを確認しカメラを下す。・・・

熊の幽霊が実体化目前まで来ていたので急いでライトを照らす。

 

「危な!少しでも遅れていたら・・・」

 

消え去った後正面ダクトを確認すると、目玉を覗かせている奴が現れていたのでドアを閉じる。

・・・少し音が大きく鳴ってから静かになった。ドアを開けて蒸し暑くなってきた室内を扇風機

で室温を下げていき、ある程度まで下げ終わったら停止させる。息苦しさを感じたのでまた部屋

の換気をするためにカメラを立ち上げ換気ボタンを押す。空気を緩和したので負担を取り除く事

に成功したらこれ以上立ち上げる必要はないのでカメラを下す。・・・これを繰り返している内

に三時間が経過した。

 

AM 3:11

 

部屋の換気が終わりカメラの電源を切って部屋組の奴らを対処していると左の通路側から一匹の

鳥が鳴き声を発しながら飛ぶのを確認する。

 

「ん?見かけない奴だな。」

 

何を思ったのか、俺はそいつに触れてみる。そんな早い速度で飛んでいなかったもんだから。

・・・触れた瞬間にいつの間にか忍び込んだのか、"Rockstar Foxy"が飛び出してきたんだが。

 

「やぁ!俺の鳥を触った奴は誰だ?」

 

「うおぁ!!お前何時から居た!?」

 

流石にこの場合の想定はしていなかったので驚かざる得ない。襲撃か妨害か、こいつがどの配置に

就いているか分からいので身がまえていると、俺の想像をはるかに超える行動を起こしたのだ。

 

「あぁ、あんたか。俺の鳥を見つけてくれたのは。見つけたお礼に何か手伝ってやるよ。」

 

「・・・は?」

 

今なんつったこいつ?手助け?信じがたい言葉を聞いたんだが・・・どういう事だ!?

 

「え?いや・・、お前俺を裁くためにここに来たんじゃないの?」

 

「あ?まぁ、そうなっているみたいだがお前は運がいい。今は機嫌がいいからな。それに俺の鳥を

 見つけてくれたことには素直に感謝しているからな。さぁ、御託はいいからさっさと選べ。」

 

そう告げると彼が手にしている看板に四つの選択肢が掲げられていた。

 

・電力を1%増やす

・室温を60F°(華氏温度)まで下げる

・20秒間室内の音を消音にする

・10枚のFaz-COINを追加する

 

・・・どれも微妙なものばかりだ。うん、まぁ手助けって言ったってこんなもんだろうと自分に

言い聞かせて取り敢えず電力を足してもらうように頼んでみた。

 

「電力だな?了解。」

 

取引が終わったのか奴は俺の視界から消えていきそれっきり現れなくなった。あの話が本当なのか

確認するため残りの電力を確認してみると、確かに1%だけ電力が追加されていた。

 

「まさか俺を手助けしてくれる奴が現れるとはなぁ。こんなこと予想だにしなかったよ。」

 

この地獄な環境で唯一手助けしてくれる存在、一瞬あいつが天使に見えて・・・いやそれはない。

さっき奴の態度は機嫌がいいからあの行動をしただけで仮に機嫌が悪いときに鳥を触ったら・・・

不吉な考えを払拭し引き続き機械人形の対処に移った。とは言っても、今回の夜は襲撃組の奴らが

殆どいないのを確認したのでライトを照らすかダクトドアを閉めるて、室内の換気をするために

カメラを立ち上げる事しかやることがなかった。途中アクシデントが起こったのは凄まじい音と

照明器具が勢いよく点滅したので焦ったが難なく対処したり、部屋の隅にゴミで組み合わせた変な

奴らが視界を妨害してきたぐらい。霧状の幻影も視線をずらすだけで対処できたしな。・・・

熊の亡霊と重なったときには流石に危機を感じたが。兎も角楽に対処しているうちに朝のチャイム

が鳴りだしたんだよ、気付いたときに。

 

"♪キーンコーンカーンコーン、カーンコーンキーンコーン♪"

 

「今回やけに楽勝に行けたな。数自体少なかったのもそうだが、厄介な機械人形が出現しなかった

 のが大きいな。まぁ、でないだけありがてーよ。」

 

大きく息を吸い込み深呼吸をする。この数日の間は部屋から全く出ていないもんだから体の動きが

訛っており、健康維持の為にも少し仮眠をとってから探索がてら散歩することを決意する。出来る

だけ奴らと会わずにな。




"ねぇ、ねぇ、こっち見てよ。ハロー?話したいことがあるんだ。"


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Mini games 2(小さなお遊びその2)

"私のこと忘れてしまったの?"


・・・・・・・

 

寂しい。そう思うようになったのはこの体を手にしてから。誰もいない場所で独りぼっちにされて

苦しい思いをしてきた。どうして?私は唯、仲間が欲しいだけなのに。唯、皆を救いたかっただけ

なのに。唯、・・・・・パパに会いたいだけなのに。

 

・・・・・・・

 

「さて、仮眠をとったことだし体を動かしに行くか。」

 

時間は午前8時になったばかりで、まだ朝方で体は眠っているかのように動きが鈍くなっている。

しかし、ずっと寝ているわけにもいかずより多くの睡眠をとろうと命令する考えを拒否してこの

部屋を出た。先ずは向かって右側の方面から一周してウォーキング形式で回ることにする。歩幅を

均等に合わせてゆっくりと歩く。俺の足音だけが響き他の音は何も聞こえない。

 

「そういや、右小部屋の部屋は未だに見ていないよな。」

 

カメラ越しではエラーが発生し中の様子を認識できなかったのでついでに立ち寄ってみることに

した。目的地に着くと扉はついて無くそのまま中に入れるようになっていて、早速入ってみると

中は厨房のような構造をしており床に調理器具が散乱している。一目見て此処はキッチンだと

理解できたがそこに異質を放つ物が設置されている。大きなプレゼントボックスだ。本来キッチン

に置いておくには不自然な物であり、この背景と全くあっていないので違和感しか出てこない。

一通り観察した後はあの箱以外特に気になるものはないので部屋を出ることにし、散歩を再開する

事にする。真っ直ぐに進みカーテンステージを通り抜けると人形売り場についたようだ。文字通り

数多くの人形が並んでおり部屋を埋め尽くすかのような程の数がある。

 

「ん?Baby dollだけないぞ。」

 

棚に設置されている人形を見て初めて気づく。確かカメラでは他の人形達と同様に映っていたはず

なのに彼女がいたとされる所だけは、ぽっかりと隙間が空いているのだ。不思議に思い辺りを散策

してみたが何処にも見当たらない。首を傾げてその部屋を後にし、引き続き散歩を再開する。

・・・一通り部屋を確認したらあっという間にスタート地点に到着した。他の部屋では特に気にな

る物がなかったので早めの到着となったようだ。ある程度歩いたことで少しではあるが体をほぐす

事が出来たので、気分は悪くない所だ。今度は左から歩いて行こうかと考えた時、ある事に気づい

たので一旦散歩は保留となる。

 

「あれ?カメラ用の端末が勝手に起動している。電源ついてなかったよな?」

 

今までは夜を迎えるまで起動するはずのない物がいきなり電源を入れていたのでこの現象に若干

戸惑う。背景はブルーバックになっていたが端末を持ち上げた瞬間クラシックな音楽が流れだし、

背景も変化が起こった。映し出されたのは平原をモチーフにしたステージらしきもの、ドット絵

で表示されている子供と明らかに雰囲気が違う"Baby"。まるで2D横スクロールアクションを

意識したゲームのようにデザインされている。

 

「何だこれ?」

 

意図が分からず混乱しているとそこに映っている"Baby"が勝手に動き出した。彼女が進んで

いくのに合わせてステージも動き出す。道中にある3種類のカップケーキを取っていき、それを

子供に渡すと嬉しそうな顔を浮かべて喜んでいる。どうやらこのゲームはすべてのカップケーキ

を均等に分け与える必要があるコンセプトになっているようだ。暫くはその光景を眺めて暇を

潰していたが彼女が全てのカップケーキを子供に分け終えたのかステージの一番端にある場所に

一つだけのアイスクリームがぽつんと置かれていた。それを取り、今度は来た方向から逆に戻る

ように進みだす。此処で変化が起きた。さっきまでいたはずの子供が全員いなくなり陽気な音楽

も不穏を募らせるような暗い音楽に差し替えられていた。胸騒ぎがする。進むスピードも遅くなり

最初の場所の付近に近づくときにはもう音楽は鳴りやんでいた。そしてスタート地点に戻ると

彼女は左端のところまで歩き出し立ち止まる。そこにアイスクリームを掲げて誰かを待っている

ようだ。少し時間がたつと画面左端から女の子が現れた。金髪の髪で緑の目をしておりピンク色の

服を身に付けて嬉しそうに彼女に近づいていく。

 

「この光景、何処かで・・・」

 

そう口にした瞬間

 

"!!!!!!ギィィエァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!"

 

端末から悲鳴に近い金切り声が部屋中に轟き、画面では二人の姿以外すべて真っ黒に染まって

"Baby"が女の子を中に引きずり込む形で画面はフェードアウトした。・・・もう電源は切られて

おり再びつくことはなかった。それと同時に正面から誰かの気配を感じる。端末から目線を外し

正面を見ると・・・いる。彼女が立っている。その目は俺に向けられており、悪意を感じさせない

純粋な瞳で俺の姿を捉えていた。・・・彼女が静かな声で話しかけてきた。

 

「・・・ねぇ、私を覚えている?」

 

覚えている?当たり前だろ、忘れるはずがない。その懐かしい声を聞いて覚えていない程、俺は

落ちぶれちゃいない。父親として。

 

「・・・あぁ、忘れるはずがないだろ。"Elizabeth"。」

 

・・・・・・・

 

暫くは些細なことを彼女と話した。再会を喜んでいいのか分からない。彼女も他の奴らと同じ俺を

裁くための存在だ。しかし、不思議と嫌な感じはしなかった。彼女も俺に対して嫌悪の姿を見せず

に楽しそうに話をする。此処に落ちてから色んな機械人形と出会い、それまで一人で味わってきた

孤独感を紛らわせることが出来た事。特に"Puppet"とは意気投合して仲良くなっているそうだ。

・・・同じ娘繋がりとして。俺も久しぶりに心の奥底から楽しめる時間を過ごすことが出来た。

話し込んでいるうちに時間はあっという間に経過しそろそろ夕方になる頃だ。彼女は悲壮な顔を

浮かべて俺に別れを告げる。

 

「・・・行かなくちゃ。」

 

「・・・あぁ、そうだな。」

 

沈黙が流れ、遂にはこの部屋から立ち去って行った。楽しい時間は早く過ぎていく。そして、俺に

とって苦痛な時間は長く、永遠に終わることがない夜がくる。さっきのミニゲームについては

敢えて触れなかった。またあいつの仕業だろうが、そこを触れても・・・いや、今はそれを考える

事ではない。次の夜に向けて準備に取り掛かった。




"私はプレゼントをもらいに来ただけ。あなたに与える為ではないのよ。"


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Old Friends(昔馴染み)

"独りぼっちの君の為に友人を呼んでおいたよ。見覚えあるだろ?"


今夜の夜を迎える準備をしている最中に少しアクシデントが起こった。いつものように作戦を練り

直して頭の中でイメージトレーニングを繰り返し、動作も体に叩き込み効率的に動かせるよう練習

した時。最初の違和感に気づいたのは僅かな音が聞こえ始めたのだ。

 

「変だな?音を出すような装置は起動していないはずだが。」

 

念のために機材を確認しても電源がそもそも入っていないので音を出すことは不可能である。通路

側からもこれといった物音も聞こえないので、原因が分からないまま作業を続けるしかなかった。

だが、音は鳴り響いたまま止む様子もなく次第に大きくなるとそれが、何度も聞いたことのある

ノイズ音であることが判明する。不規則なリズムで途切れ途切れに流れるもんだからより一層気味

悪さを引き立てる。そのせいで作業に集中出来なくなり中断せざる負えなかった。

 

「がぁぁ!五月蠅いなぁ、また誰かが俺にいたずらしているのか?迷惑の極みだろ。」

 

もうここまで来たら怒りを通り越して呆れさを感じるようになる。しょっちゅう変なことをされて

ストレスがたまる一方でこの現象に対しての耐性が付くようになり、よほどの不意打ちがない限り

これくらいのことで驚かなくなってしまった。しかし、音が鳴りやむ様子もないのでいい加減鬱陶

しくなり、誰かは分からないがいたずらをしている奴に声を荒げた。

 

「おい、いい加減にしろ!!そんなしょぼいやり方で俺の作業を邪魔するならもっと堂々と脅かし

 てこい!鳴りやまねーならこっちにも考えがあるぞ!」

 

そう口にし机の引き出しからコルクを取り出して耳に挟む。初日の散策で確認した物で何故こいつ

が入っているのか不明だが、強力な耳栓代わりになるので仮眠をとるときにいつもこれを使用して

いる。最初に比べると音はだいぶ小さくなり、作業できる環境になったので夜の十二時になるまで

中断した作業の続きをする。・・・うん、しようとした瞬間だ。

 

"--------"

 

「あ?」

 

一瞬俺の視界に何か映りこんだような気がしたが気にせずいると

 

"---------I---e"

 

「またか?ん?」

 

今度は防いだはずの耳から言葉が聞こえだしてくるので不自然に思い、首を傾げていると

 

"It's me"

 

「は?」

 

次の瞬間、室内に設置されている複数のテレビが勝手に起動し4体の機械人形の首だけが映し出さ

れ同時に激しい頭痛に襲われた。

 

「うぐ!?がぁ、あ・ああ・・、何だ・・これ・・・!?」

 

あまりの痛さに頭を抱えると先程聞いた言葉が壊れたテープのように頭の中で何度も言ってくる。

追い打ちだと思えるほどだ。さらに俺の視界が黒く染まり血眼になった奴らの顔が断片的に切り替

えながら映し出してくる。恐らく幻覚と幻聴だろうけど耳を塞ごうが目を閉じようが無駄に終わり

頭から離れてくれないので流石に危機感を覚える。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅ・・!!!」

 

先程俺が発した言葉にカチンと来たか根に持ったのか、仕返しといわんばかりにやってくる。激痛

にもだえ苦しんでいるといつの間にか立って歩いていたのか何かにつまずき体が転倒した。

 

「うぉ!?」

 

仰向けになっていたので背中を強打しそこからも痛みが生じる。しかし、転んだおかげなのか先程

の現象は収まっており頭痛からも解放されていた。が、余計なことをしたばかりに変に刺激して怒

らせたのは本当に間違いだったことを思い知らされることになる。

 

「一体何につまずいたんだ?」

 

足元を確認するとケーブル状の配線がむき出しに出ており足を引っかけた拍子に支えるための力を

代償に運悪く千切れてしまったようだ。ちょっと待て。これ・・・何処に繋がってんだ?恐る恐る

確認すると、発電機の電源を切り替えるためのボタンに繋がっていたものだった。

 

「・・・嘘だろ・・・」

 

正に踏んだり蹴ったりだ。この言葉が丁度この場面に当てはまる。まぁ後悔してもしきれないが。

 

・・・・・・・・

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

「・・・」

 

最悪だ。碌に作業の練習も出来ず、奴らにいたずらとは思えない脅かしをされた挙句に自分のせい

であるが発電機もぶっ壊す形となってしまった。そのせいで電力補助が出来ずに節約意識で行動

するしかなく、停電覚悟でこの夜を乗り切らなければならない羽目になった。もう後悔しても遅い

がやるしかない。動きは基本前夜と同じで端末を起動してから各部屋の様子をチェックする。今回

は左のカーテンステージに"Foxy"が出現、右小部屋に物音とゲージ棒が減りだしているので部屋

に"Puppet"ともう一体の身元不明の機械人形の合わせて二体がおり、人形売り場を確認すると、

"Baby doll"が買えるようになっている。更にはパソコン部屋に"Toy Freddy"が居座っている

のを確認。・・・これいっぺんに牽制できなくね?コインで追い払おうとしたら計30枚のコインが

必要になる。とても集める余裕はないので取り敢えずオルゴールを巻いてから部屋を切り替えて、

パソコンに映っている掃除機みたいなやつを追い払うために、そいつがいる方向にある緑のボタン

を押して対処した後で左のカーテンステージにカメラを固定する。終わったらダクトホースに切り

替えてオーディオ・ルアーを設置、またカメラシステムに戻して端末を下す。室内があっという間

に蒸し暑くなってきたので今回は扇風機を使わわず強力エアコンで対応することにした。電源を

入れると室内が一気に涼しくなりものの数秒で室温を下げることのできる代物なので数分付ける

必要のある扇風機より電力を抑えれるのでこれを採用した。下がり切ったら直ぐ停止させ端末を

起動し、牽制の必要がある機械人形を順に対処する。コインは僅かな隙に集めていき少しずつ貯め

ていくよう心掛ける。ステージにいる狐をカメラで監視し、急いで部屋を切り替えオルゴールを

巻き戻す。

 

「今回はやけに減るのが早いな。時間帯も把握しておかないと。」

 

混乱しないよう落ち着いて素早く対応する。これを忘れてはいけないよう心に留めておく。丁度

キッチンから物音が途切れた事、部屋の換気エラーが表示されてるのを確認し同時に対処を行う。

音楽を変えてた後に換気ボタンを押し、もう一度オルゴールを巻き戻したらコイン回収に努め、

如何にか10枚かき集めることに成功する。人形売り場に部屋を切り替えDEATHCOINを購入し

たら左のカーテンステージに切り替えて"Foxy"に使用する。使った瞬間奥に引っ込んだので撃退

を確認したらパソコン部屋に切り替え掃除機の奴が別の場所に移るのを確認し緑ボタンを押して

侵入を防ぐ。そして右廊下にカメラを合わせて"Baby"の牽制に取り掛かる。ここでノイズ音が

発生したので端末を下して部屋の左右を確認すると、左に"Toy Chica"、右に新たな機械人形

"Toy Bonnie"が接近しているのでマスクを頭に被りやり過ごす。二人とも直ぐに部屋を退散

してくれたのでこれ以上マスクを被る必要はなく外しておくことにした。改めて室内を確認すると

右ダクトに"BB"が出現していたのでドアを閉める。・・・立ち去る音を確認しドアを開ける。

そしてカメラを廊下から切り替えることは出来ないのでグローバルミュージックボックスを起動

し"Puppet"を牽制する。これは大体20秒間おきに起動しなければならないので電力が持つかは

分からないからタイミングが重要になっていく。無駄には出来ない。此処までの工程で掛かった

時間は約一時間。残りの電力は端末を見ている間に左と正面のドアを閉めていたこともあり、約

70%を切っていた。

 

「やべぇ・・・、これ朝まで持つか?」

 

万が一、六時まで電力が持たなければ・・・最悪の光景が目に浮かぶ。だからこそしくじる事は

許されない。ここで重要になるのは強力エアコンとグローバルミュージックボックスを如何に

タイミングよく無駄なく使い、電力を抑えれるかだ。これが勝敗を分けるカギとなる。電力を

切らさず朝まで持ち込めば俺の勝ち、切れれば奴らの勝ち。兎に角節約、これの考えを重視して

行動することにする。

 

AM 1:34~3:25

 

この間は部屋の両サイドから二体の機械人形が頻繁に現れてきた。油断さえしなければ大丈夫

なんだが部屋の換気やグローバルミュージックボックスを起動する際にミスを誘発させようと

被せて現れてくるのでたちが悪い。ギリギリ居座って部屋の換気が出来ないときは本当に危機

を感じ取ったよ。まぁ、杞憂に終わったんだが。タイミングを合わせて機材を起動したり停止

したりで忙しくて若干時間を忘れかける事もあったよ。個人的には必要最低限に電力を抑えて

いるつもりなんだがそれでも残りは40%を切りそうなんだ。

 

「本当に苦しくなってきたな。今度は少し賭けてみるか。」

 

汗を拭くためのものがなかったので止む無く腕で拭きとり、息を整える。このままでは保つか

どうか分からないので室温が100F°以上の時に強力エアコンを、20秒から15秒以内に短縮し

グローバルミュージックボックスを起動するようにする。

 

・・・・・・

 

AM 4:15~5:35

 

「はぁ、はぁ、やべぇ、気分が悪くなる。」

 

限界まで切り詰めて行動し、換気も視界が暗くなるまで粘ってから端末を起動するようにして

いたんだが室内温度も上がり部屋の空気状態も最悪で体調を崩してしまった。息も荒くなり

汗が異様に流れて服もビショビショ。おまけに室温が上がることで"Freddy"が劇的に活発化

してドアを閉じるときにも電力が奪われるから、こいつのせいで三分の一の電力を無駄にした。

室温が指定した基準値を超えていたので強力エアコンを起動して70F°になるまで放置する。

その間にも両サイドからウサギとヒヨコの機械人形が近づいていくのでマスクを被るが湿気が

籠っているのもあり、更に気分が悪くなる。立ち去った後には息切れを起こしまともに息が

出来なくなる。此処で意識を手放したら奴らに・・・・

 

「・・・負けてたまるかよ。はぁ、はぁ・・・」

 

そう誓うも僅か5%しか電力が残されていないので状況は絶望的だろう。一旦強力エアコンを

停止させグローバルミュージックボックスを付ける。

 

「こうなったら我慢比べだ。もうエアコンは付けないほうがいいだろう。さて問題なのは

 グローバルミュージックボックスだ。今は10秒単位で切り替えているんだが・・・」

 

それもいつ切れるか分からない。俺の身を守るための電力を無慈悲に奪っていく。そろそろ

こいつも停止させないとあと数分で停電した時に持ちこたえられない。今回の奴らは殆ど

気分で襲撃のタイミングを決めてくる。だから最低でも3分・・・いや5分前までに電力を

持ち越させないと勝機はない。もう制裁を受けるのはこりごりだ。逃れるため、逃げ延びる

ため真剣に対抗している。だから・・・

 

「・・・最後の賭けがきた。"All OFF"を起動だ。」

 

一つのボタンに手を差し伸べ思いっきり押す。こいつは文字通りすべての機材をいっぺんに

停止させる効果を持つ。一見無駄に思えるこの機能、俺も最初は使う道はないと思っていた

が実はこいつの真価は"端末以外の電源を全て断ち切り極力の電力消費を抑えてくれる"もの

である。つまり、この場面において最も最高の使い道だ。前に考えたことがある。俺が

カメラを覗いている間は奴らは襲撃を整えてくるが見ていない間は襲撃できない。これにさっきの

機能を組み合わせると、おおざっぱに言えば大幅な時間稼ぎが出来るという事だ。無論、

"Puppet"はそんなことお構いなしにやって来る可能性もあるが、あいつも曲を流しながら

この部屋に侵入してくる。つまりそれなりの猶予はある。それにかけて限界まで耐える事に

した。これが吉と出るか凶と出るか・・・!!

 

"グオオオォォォォォン・・・・・・・"

 

遂に電力が切れて停電した。時間を確認すると朝まで3分を切っていた。いけるか!?

・・・左通路から足音が聞こえる。奴が近づいてくる・・・

 

"(!!!!!~闘牛士の曲~♪!!!!!)

 

「・・・・・」

 

目玉だけ覗かせている。あの時と同じように不敵な笑みを浮かべている。息を殺して様子を

見る。・・・・・!!視界が真っ暗に。

 

「(・・・・頼む!!!)」

 

祈れ。ただそれだけが俺が唯一出来る事。時間が遅く感じるような感覚に陥る。一秒一秒

長く感じとりもどかしさを感じる。俺の耳に入るのは朝のチャイムか、奴の声か・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"♪キーン、コーン、カーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン♪"。

 

「・・・勝った。俺の勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

彼の耳に響いたのは希望の朝の音であった。




"おめでとう。じゃあもう一度遊ぼうか。"


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Revenge Mentality(復讐者の心情)

"君は私にとっての大切な物すべてを奪い去った。君が作った歪なものは返そう。だが、
君が壊したものは責任を取って君自身に直してもらう。身を捧げても。"


Aftonが朝の六時を迎えたその同時刻に別の部屋で彼の様子を監視している一人の男が席を

立った。彼の仕事が終わったからだ。複数の監視モニターの電源を切り、それまで動いていた機械

人形達を停止させる。

 

"今夜は彼の勝ちだ。自らアクシデントを起こしながらも捨て身の勢いでこの夜を乗り超えた

もんだから素直に称賛に値する。この地獄の環境でよくここまで成長したものだ。"

 

一人で呟き、また次の夜に向けての準備をしなければならないが一先ず休憩として、傍に設置して

あるソファーに腰を下ろす。終焉を告げる事のないこの場所で唯々彼を裁くために存在している男

は、この運命に不服を立てず受け入れた。自ら望んだことに拒否権はない、男の目標は既に達成

された。あの出来事をきっかけに男の頭の中には復讐の二文字しか思い浮かばず、罪を犯した彼を

自らの手で闇に葬り去ることを決意し、幾度の取り返しのつかない失敗と彼の残虐な行為に煮え湯

を飲まされながらも最終的にはこの地に追いやることに成功する。犠牲になった子供達も恐怖の

ない場所で安寧を得ることが出来、男の娘を含めて無事旅立つことが出来た。そう、目的は果たさ

れた。だが、この男にはある考えがいまだに消えていない。

 

"どうしてだろうな?私が望んだことは全て叶えきったはずなのに、未だに怒りが収まらない。彼

を幾らでも裁けるはずなのに、私は彼の虐殺を楽しんでいるのか?苦しみを味わっている罪人を

見てあざ笑っているのか?・・・おいおい、それじゃああの男と同じだ。いや、彼を殺している

時点で私も同類か。復讐は果たされたのにこの負の連鎖から逃れられないのは・・・私は彼を

許さない限り、眠りにつくことは出来ないのか?・・・はは、覚悟はしたはずなんだが自分を

納得させるのは難しいな。"

 

半ば自虐を込めた独り言をしていると悲壮感が漂ってくる。そう、男は一人なのだ。彼と機械人形

達を除くと。最愛の娘はここにいない、居てはいけない場所だからいなくて当然だ。共感する相手

もいない、彼を労ってくれる人もいない、それでも男がこの道を望んていた事だから進むしかない

のだ。彼が選んだのだから、例えこの地で身が朽ち果てようが関係ない。寂しい思いを無理やり

取り払うと少し仮眠を取る為にソファーで横になる。それを終えたら彼の手によって破損した配線

の修理をしなければならない。結局、悲しみに打ち明ける暇などないのだ。

 

"全く、老いぼれを肉体労働に使わせるんじゃないよ。会ったら少し皮肉も込めて注意しよう。

まぁ、彼が納得せずに反感を買う事は想定できるが。"

 

・・・・・・・

 

「しかし弱ったな、こいつを放置するのはよろしくない。」

 

千切れたケーブルを見て内心俺は焦っている。さっきまではギリギリ持ちこたえることに成功した

んだがそう上手くいくもんじゃない。あの時も電気が復旧した時、ドアップで"Freddy"の顔が

映ったもんだから少し腰抜かしたよ、・・・変な声上げて。このままの状態で夜が来てしまったら

また運を頼らなければならないので本当に笑えない。ギャンブルは一回でこりごりだ。

 

「一応修理に使うための修理箱を探してみたが、当然置いていないよな。」

 

辺りを見回ってみたが何も置いていない。まぁ当たり前さ、その箱にはさまざまな道具が用意され

ているから言うなれば武器になるものが多々あるという事だ。レンチやバールなんて打撃系の武器

に筆頭するもんだし。それを考慮して奴は設置をしていない。

 

「ったくよぉ、壊れやすい配線だな。あいつも品質管理をしっかりしてくれればこんなことに・・

 第一、あの時の脅かしがなければこんな目に遭ってねーのに。」

 

「"でも、彼らを挑発したのは君だろう?"」

 

「うぉ!!おま、何時から!?」

 

一人で愚痴っていると背後から聞き覚えのある声を聞き背後を振り返ると、そこに金色の熊人形が

片手に工具箱を掲げて俺の呟いた言葉に反論をしてきた。

 

「"さっきだよ。君が一人で愚痴をこぼしていたもんだから中々入りづらかったんだけどね。"」

 

「嘘つけ!絶対俺の愚痴こぼしている間にもこっそり入ってきたんだろ。てか、挑発って、先に

 奴らから喧嘩吹っ掛けてきたんだぞ。俺の作業を邪魔して、そいつのせいだろうが!」

 

 

「"なら無視すればいい。言っただろ?夜が始まるまで君を襲えない。だから気にせず作業に取り

 掛かればいいものを。"」

 

「無視した結果がこの有様だ!奴らをコントロールしているのはお前だろ。ならお前に非がある

 じゃねーか。」

 

「"そういう問題じゃない。それよりも君が故障をしたから修理費を請求したいくらいだよ。"」

 

「・・・何処まで鬼畜だよお前。言っておくが金なんざ持っていないし、なんならFaz-COINで

 立て替えてやろうか?」

 

「"残念だがそのコインは貨幣として認めていないからお断りだ。"」

 

・・・相変わらずムカつく野郎だ。

 

「"まぁ、こちらにも全く非がないというわけではないから今回は特別に修理をしてあげよう。"」

 

「けっ、初めっからそうしろよ。なるべく急いでな。」

 

「"君も注文が多いことだ。次からは直せる保証はしない。少し危険な作業になるから暫くはこの

 部屋から出てくれないか?"」

 

「・・・ああ。」

 

確かに俺が此処にいても意味がない。奴の作業だけは遅延させたくない。次の夜までに直してもら

わないといけないのでな。

 

コツ、コツ、コツ・・・・

 

足音が離れるのと同時に一人で黙々と修理の作業を始める。彼と会話するのは三日ぐらいに一度

だろう。誰もいないこの場所で唯一の話し相手が殺人鬼とは笑えないものだ。だが、不思議と男

と彼には複数の共通点がある。人のつながりが少なく、生きがいと呼べるものに中々会えず自分

の信念だけに忠実で行動する。そういう意味ではある意味パートナーとして呼べるだろう。

いつか、お互いを許せるときがくればこの場所もなくなるかもしれないが、まだ先は遠いに違い

ない。そもそも、ここから出られることなんかあるはずがなく、夜を迎える時間だけが過ぎていく

・・・無情にも。




"死に救助はない"


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Chaos1(混沌その1)

"みんな集まって。彼のためにパーティを開こうじゃないか。"


PM 11:35

 

「よし、発電機の配線が元に戻っているな。これで博打じみた行動に出なくてすむ。」

 

取り敢えず修理が終わったという連絡が来たので戻って確かめると、きちんと動くようになって

いる。今夜から再び発電機が使えるので一安心。一応待っている間に今夜の夜まで対抗策を練り

直してイメージトレーニングを繰り返していたので、今回は邪魔されることなくスムーズに行う

事が出来た。唯、奴がこの部屋を立ち去るとき俺に妙な忠告?をしてきた。

 

「"そういえば君のお友達が寂しがっていたよ。君と何日も話していないから、彼らは寂しさを

 埋めるためにより活発に行動をして君に会いに行くそうだ。少し賑やかになるから君も万全に

 整えてから相手にするといい。"」

 

「・・・おい、あいつらと友達になった覚えねーし話す機会なんざないが。それに賑やかなのは

 いつでもそうだろうが。なに意味わからねーこと口走ってんだお前は。」

 

「"おや、君に忠告を伝えたのに意味が分からないとは。今君が言った言葉、余程の自身があって

  言えるんだね。"」

 

「けっ、当たり前だろう。俺はいつでも万全を整えているんだがな。」

 

「"そう、ならいい。そこまで言えるものなら彼らの宴に上手く付き合う事だね。恐怖は何時でも

  君のそばに潜んでいるからせいぜい飲まれないように。"」

 

そう告げると奴はこの部屋を立ち去って行った。・・・は、何だよ。恐怖に飲まれるな?もう

飲まれっぱなしで慣れちまったんだよ。さて、時間もあんまり残されていないし、作戦の仕上げと

いきますか。

 

・・・・・・・・

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

始まった直後、いつもの通りの作業に移る。機材を起動し端末を立ち上げカメラで部屋の様子を

確認する。・・・"Foxy"、"Puppet"、"Toy Freddy"の三体の人形組は前夜とほぼ同じ配置で

出現しているので昨日と同じ方法で対処することにする。人形売り場は三体の人形がそれぞれ

買えるようになっており、価格は各5枚で購入できるから頑張れば何とか買える状態だ。先ずは

部屋にいる奴らを牽制しその後ダクトホースに切り替え、オーディオ・ルアーを設置する。

それが完了したら大急ぎでコイン集めに取り掛かりしたいところだが、ノイズ音が響いてきた

ので一先ず端末から目線を離しマスクを被る。"Withred Bonnie"の姿を確認・・・

 

「いやちょっと待て・・。何かいろいろ入ってきてんだが!」

 

マスクを被っているので視界は狭まっているが部屋に侵入してきた機械人形達の数が半端じゃない

のを確認した。扇風機に乗っている白い熊人形、白黒の幻影、"Nightmare BB"、紫色の"BB"

"Rockstar Freddy"、"Phantom Freddy"、出入口に"Nightmare Freddy"、"Nightmare"、

正面ダクトから目玉だけを覗かせている機械人形、正面に鎮座している"Scrap Baby"。

 

「開始序盤で増えすぎだろ!こんないっぺんに対処できるか!!」

 

ボロボロのウサギが立ち去った後にマスクを外して改めて見ると、考えられないような数で攻め

込むもんだから思わず言葉が出てしまった。各自の対処は分かるが十数体を相手にした経験がない

ので早くも手が止まってしまう。

 

「いや、焦るな・・数が増えたって対処は同じ。おちt(!!!!強力なエアーホン音!!!!)

 せめて最後まで喋らせて!!」

 

しかし、そんなことお構いなしに白い熊が音を発しながら視界を覆ってくる。考える暇さえ与えず

にくるって・・・いやぼんやりするな!!次だ次。幻影を見ないように視界をずらして実体化する

熊の幽霊にライトの光を照らす。消えたら両出入口と正面ダクトに右ダクトドアを閉じて全て追い

払う。"Nightmare BB"と"Scrap Baby"、"Rockstar Freddy"はまだ立ち上がっていないので

全力でスルー。そして室温が急上昇していたので強力エアコンを起動して下げる。っと、今度は

端末から大音量の音と共に広告が流れだして、急いで消したが同時に発生源の分からない電話の音

が響き渡りシンバルの音が聞こえだす。・・・耳が痛い。電話の音は放っておき騒音を出している

発電機を停止すると右からメロディーが流れているのを確認し大急ぎで右ドアを閉める。・・・

"Ballora"が急接近していたようだ。

 

「やべぇ・・・休む暇がない。てか、グローバルミュージックボックスを付けねーと!」

 

もう少しで忘れそうになっていたので慌てて作動させる。・・・ギリギリ間に合った。シンバルの

音も遠ざかっているしそろそろコイン集めをしなければならないので端末を起動して集め・・・

照明器具の光が点滅したのでマスクを被る。ウサギとヒヨコの機械人形が同時に迫ってきたので

中断せざる負えなかった。

 

「いつになったらコイン集めをさせてくれるんだ・・・。」

 

二人とも直ぐ立ち去ってくれたのでマスクを外し、漸くコイン集めが出来ると端末を起動する。

今までの遅れを取り戻すためハイスピードでカメラに映っているコインを集めていき、何とか

10枚集めることに成功する。だがDEATHCOINを購入するため人形売り場に切り替えた瞬間

画面を覆うように広告が流れだして購入に失敗し、おまけに広告と被さったのか"Phantom BB"

の存在に気づけずに幻覚の形で盛大に妨害された。端末は強制的に取り下げられて正面に鎮座して

いる"Golden Freddy"を視認し、直ぐにマスクを被る。・・・ギリセーフのようだ。でもマスク

を取り外すとまた十数体の機械人形に囲まれとてもコインを買える状況じゃなかったので振り出し

に戻る形となった。シンバルの音は聞こえなかったので発電機を稼働し各自の対処に取り掛かる。

襲撃の態勢を取っている"Nightmare BB"と呻き声を上げている"Nightmare Freddy"の子分に

向けてライトを照らし、扇風機に乗っかっている白い熊をぶん殴る形で追い払い、僅かに顔を上げ

ている"Scrap Baby"にコントロールショックを流す。右の出入口に目玉が覗いてるのと正面から

"Molten Freddy"の笑い声を聞きドアを閉める。換気の警告が出ているが端末を立ち上げる余裕

がない。"Toy Bonnie"が接近してきたからだ。マスクを被る瞬間白黒の幻影が浮かび上がって

きたので再び目線を外す。兎が立ち去ったのを確認し、そろそろ部屋の換気を入れないと不味い

ことになるので急いで端末を立ち上げる。換気ボタンを押して先程買えそこなったDEAHTCOIN

を購入し左のカーテンステージに切り替えたら、狐ではなく兎の"Bonnie"が映っており叫び声

を上げて画面が映らなくなってしまった。

 

「ちょ、何時から居たあいつ!?てか画面が反応してくれねぇ!」

 

コインを使って追い払おうとしたがものの見事に失敗しまた耳元でノイズ音が聞こえ始めたから

端末を下げなけばならない。"Withred Bonnie"と"Toy Chica"が視界に入ってきたのでマスクを

被る。・・・さっきからマスクを被ったり部屋組の機械人形しか対処が出来ていないことに気づき

カメラの中にいる奴らの対処が追い付いていないことに危機感を覚えだす。・・・いやもう既に

手遅れになっていたことに気づいた。

 

「・・・あ、そういや忙しすぎてグローバルミュージックボックスを付けるの忘れて・・・おい、

 まさか・・・」

 

決してあってはなりないミスだと思っていたものを、他の連中に気を取られて完全に忘れてしまう

・・・これ程の最悪なケースが他にあるだろうか。

 

"♪ ♩♬ ♪♬ ♪ ♩♬♩♬♪ ♩♬ ♩♬"

 

・・・音楽が鳴りだし先程換気したばかりなのに急速に部屋の空気が悪化する。これ完全に失敗

したな。

 

「うん。もう終わりだ終わり。まだ一時間も経過していないし。完全詰み。」

 

最終的には半ば諦めるしか選択がなかったのでやけになり端末を放り出した。そして視界が真っ黒

に染まりだした途端、音楽が鳴り止んだと同時に首を絞めつけられる感覚がした。

 

「ぐっ!ううぅ・・・!?」

 

息が出来なくもだえ苦しんでいる所に急に視界が開けてそこに俺の首を絞め上げている"Puppet"

の姿が映し出され、何が起こったのかわからずにいると奴がこちらの様子に気づいたようで話しか

けてくる。

 

「やぁ、また会ったわね。今度は逃げられなくてよかったわ。こうしてあなたを逃がさないように

 ちゃーんと捕まえているんですもの。他の子たちに気を取られて私の存在を無視したのはあまり

 よろしくなかったわね。でもこれはあなたが悪いのよ?あなたの力不足でこのような結果を残し

 てしまったんだから。さぁ眠りなさい罪人さん。でも安心して、苦しいのはほんの一時ですぐ

 此処に戻って来るわ。そしてまた挑戦しなさい。この夜を乗り越えるまでずっと、ズーっとこの

 環境の中で同じ苦しみを味わいなさい。ふふ♪じゃあまたね。」

 

そう告げると奴の手が俺の首の根を勢いよく締め付けていき一気に俺の意識が薄れだす。体を

ばたつかせる力も失い、消え失せる意識の中で奴のにやりとした笑みだけが俺の脳裏を刻む。

・・・そして意識を失った。

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"私はあなたの事が嫌いじゃないけど、邪魔はしないでくれるかな。あまり残酷なことはしたく

 ないからね。・・・ううん、もう話しかけても無駄みたいね。聞こえちゃいないし。"




"まだまだ宴は終わらないよ"


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Chaos2(混沌その2)

"油断禁物。これを忘れないだけでも生存確率は格段に跳ね上がる。"


「・・・今夜の機械人形達、数が半端じゃなねぇ。牽制出来る暇もなかったよ。」

 

先程の夜で自分の認識が甘かった事に反省する。万全どころか、対応に追われるだけで完全に奴ら

のペースで付き合わせられ思い通りの動きが出来なかった。最早過労死レベルでの量でほぼ全ての

機械人形を対処しなければいけないと痛感させられる。・・・過労死ってか、とっくに殺されて

いるんだがな。

 

「これじゃあ、俺が今まで考えた作戦も根本から見直さないと。動きもそうだ。より円滑に作業が

 出来ないと一時すら乗り越えられない。・・・はぁ、やること一気に増えたな。」

 

といっても時間を確認すると午前十二時前でとても考える時間を確保できない状況だ。直ぐに恐怖

の夜が俺を迎えてくるので猶予も与えてくれない。いや、全く考えが思いつかないわけじゃないが

俺が考えている事は、またギャンブルじみた行動をしなければならない。

 

「でもこれで行くしかねーな。・・・俺、これから何回奴らに身をささげることになるんだろ。」

 

連続死は避けて通れない道であり、もう覚悟を決めるしかない。そして再び惨劇の夜を過ごす事に

なる。

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

アラームが鳴りだした瞬間に迅速に扇風機を停止させ端末を起動し、今回は先にダクトホースから

牽制に取り掛かることにした。オーディオ・ルアーを設置し動きを鈍らせる。次にカメラシステム

に戻しパソコン部屋にいる"Toy Freddy"がやっているミニゲームを手伝い、緑のボタンを押した

後は人形売り場にカメラを固定し何時でもDEATHCOINを買える状態に用意する。それが終わっ

たら直ぐ端末の電源を切り同時にマスクに手を伸ばし頭に被せる。これは部屋に侵入してくる奴ら

の姿を一々確認する手間を省く作戦だ。・・・一瞬"Golden Freddy"の姿が映りこんでいたみた

いで危機を回避することが出来たみたいだ。

 

「おっと、部屋に侵入する奴らが殆どいないじゃないか。やっぱり部屋の監視を行っている間の

 時間を短縮すると、侵入の隙を与えないことは今まで通りだな。」

 

室内の様子を確認しても"Phantom Freddy"と白黒の幻影以外誰もいないのでこの隙に室内温度

を強力エアコンで下げる。数秒立ったら停止させグローバルミュージックボックスを起動させる。

熊の幽霊に向けてライトの光を照らし退散させたら少々危険なやり方でのコイン集めに移行する。

それは、頻繁に端末を立ち上げて白い熊と右ダクトにいる奴らをわざとこの部屋に侵入させる事

である。コインの貯蓄ステムを利用して奴らを誘発させて撃退し、コインを取得する方法だ。

無論この作戦には高いリスクがあり、集めている道中他の機械人形の侵入や広告等による妨害、

他の作業に手が付けられなくなる等が挙げられる。コインを集めるのを阻害するためだが、これ

が仮に上手くいけば劇的に早い段階でコインを集め終えることが出来、牽制に面倒な機械人形を

早めに撃退できる。それさえ終わってしまったら後は部屋の換気以外に端末を見ずに済むから

対処がすごく楽になるのでまさにハイリスクハイリターンというやつだ。・・・まぁ、一度も

試したこともない事もありその作業は難航することになっちまうが。

 

「先ずは立ち上げて・・直ぐ下す!」

 

マスクを被る瞬間白黒の幻影が見えだしたので目線を外し呻き声を上げている複数体の熊人形

に向けてライトを照らす。同時に左通路からメロディーの曲が耳に入ったので左のドアを閉め

て退散させる。マスクを外して右ダクトを確認すると思い通り"BB"が待機していたので即ドア

を閉めて追い出す。この時発電機を作動させ電力を少しでも抑え込みもう一度端末を起動する

・・・が、画面上にCatch the Fishという文字が現れミニゲームが発生した。

 

「っち、急いでんだこっちは。」

 

タイミングを合わせて魚を釣り上げると元の画面に戻り再び下す。今度は白い熊が扇風機に

張り付いていたので追い払い、見るのも面倒だから右ダクトを即閉める。・・・音が鳴りだし

たので誰かが待機していたようだ。そろそろグローバルミュージックボックスを起動しなけ

ればならないので作動させその隙に左右から接近するウサギとヒヨコの姿を確認しマスクを

被る。・・・中々直ぐに端末を立ち上げさせてくれないので焦りが生じる。

 

「猶予はあまりねーんだからさっさと出てってくれ。」

 

退散したのを確認し、急いでマスクを取り外す。正面方向から軋む音を聞きつけ正面ドアを

閉ざす。音が鳴るのを確認しドアを開けると換気の警告が出ていたので端末を起動する。

 

"ガッッ!!"

 

・・・瞬間に何か棒状の物が俺が手にしていた端末を突き刺して破損させられた。

 

「!!?」

 

一瞬理解が出来ないでいると端末を持ち上げられ突き刺した奴の姿が現れる。オレンジ色の

体を纏い紫色のシルクハットを被っている象をモチーフにした機械人形だ。奴が手にして

いる棒状のものは黒のステッキだと理解し、恐らくそれで壊されたと推測できる。奴は手を

振りながら軽快そうに話しかけてきた。

 

「やぁやぁこんばんは。君の作戦とやらは悪くはないんだが、僕の進行速度を速めている

 だけだよ。それに僕は音に騙されるほど甘くないよ。直ぐ抜け出して君の所へやってきた

 からね。さて、ここで君にお別れの挨拶を告げなければいけないんだが流石に早すぎる

 から少し君にアドバイスをしてあげよう。」

 

「・・・は?」

 

「もし、コインを早めに集めたければ他の作業と併合して同時進行に進めればいいと思う。

 さっきの君の行動じゃとてもじゃないが間に合わないよ。こうして僕が来てしまったから

 ね。一つ一つじゃなくてセットで対処したほうがより効率的に動けるよ。」

 

「・・・何で敵の俺にわざわざ教えるんだ。」

 

「僕はこの狂気的な宴を楽しみたいんだ。だから君があっさりとやられてしまうと正直退屈

 で仕方がないんだ。だからまた挑戦してね。今度はそう簡単にやられないように。よーし

 話も終わったことだし、そろそろ始めようか。」

 

「!!」

 

言い終えると奴は俺の腕を摑み取り、指を片っ端から有り得ない方向に捻じ曲げる。

 

「!!!・・・がぁ・・。」

 

激痛のあまり悲痛の声さえ出せない状態だ。聞いてはいけない音が鳴り響きより痛みの実感

が湧いてくる。それが終わるともう片方の腕を掴み、同じように指を折る。あまりの痛みに

体をばたつかせて腕を振りほどこうと抵抗する。しかし力の差がありすぎて空振りに終わり

あっという間に全ての指が折り曲げられた。指が紫色に腫れあがり感触が分からなくなる程

に。それを終えた奴が次に移した行動は俺を壁に抑えつけて手を・・・俺の目に手にかけ、

少しずつ力を入れだす。

 

「おい・・ちょ(!!!目玉が潰れる音!!)ぎゃああああああああ!!!」

 

部屋中に俺の悲鳴が轟き視界が赤黒く染まり尽くす。奴は文字通り目潰しを行ったのだ。

苦悶の声を上げている俺を見て奴は楽しそうに言う。

 

「君の悲鳴で奏でる音楽は最高だよ♪さぁもっと僕に悲鳴を聞かせてね。」

 

ジタバタする俺を抑え込み今度は強引に口を開けさせ、舌を掴み取る。それに力を込めて

思いっきり引っ張り出す。

「・・うぅ・・ぐ(!!!舌が千切れる音!!!)!”%’%”%&???!%””#」

 

もう言葉も発せない。視界が潰されて何が起こったのかも分からない。言葉に表せない程の

痛みが来ている事だけが唯一分かり、これ以上の痛みに耐えられずに意識が強制的に閉ざさ

れ眠りについた。

 

・・・・・・・・

 

二度目の挑戦。

 

AM 12:34

 

「まとめて対処しろと言われても、そんな簡単に対処できるかよ・・」

 

今はミュージックボックスを停止させ、発電機を稼働し電力を抑え込みながらコイン集めに

集中していること所だ。端末の上げ下げを繰り返し侵入組の奴らを誘い込む。出来る事なら

五~六回目の端末を下すときには十枚集めきりたいのだが中々集められない。単純にやる事

が増えたからだ。広告と電話の音、全方向からの笑い声、シンバルの音が響き渡るこの室内

で室温と電力を管理しながらミュージックボックスをタイミング良く起動し室内に入り浸れ

てる機械人形を全て追い払う。・・・文字通り地獄の作業だ。もう手が回らないくらい作業

が終わらない。そうして、もたつきながらも何とか十枚集めることに成功したので端末を

起動して死のコインを購入、左の海賊入り江に切り替えて今度はちゃんと"Foxy"がいる事

を確認しコインを使用、そして右の廊下にカメラを固定し・・"Phantom BB"が画面上に

現れ、運がない事に集中力が切れてしまった俺は咄嗟の対処が出来ずに奴の妨害を喰らう

羽目となる。

 

「うおぁ!?」

 

不意を喰らって端末を落としてしまった拍子に何処かに当ててしまったのか、ドアの開閉音が

聞こえる。その一瞬を狙って一体の機械人形が侵入し・・・天井に張り付いてきた。五月蠅い

ノイズ音を発しながら。そこで俺は頭を抱えることになる。幾らミスとはいえ、何とか牽制の

必要がある狐を撃退し大きな脅威を排除した所までは上手くいったのに、その心のゆるみが

命取りに繋がってしまうという愚行な行為をしたからだ。俺は天井に張り付いているそいつに

対して自然と舌打ちをする。

 

「・・・"Mangle"。」

 

こちらが発した言葉に反応したか、或いは奴が気分で動いたか分からないが俺に向けて話かけ

てきた。男女の声が混ざり合ったような独特な声で。

 

「HELLO~うっかり屋さぁん♪あなたも大変ねぇ~。でもこうして対面するのは初めてね。」

 

少し馬鹿にしたような口調で喋りだした。・・・否定は出来ないが。取り敢えず奴が喋って

いる間にも他の機械人形達を相手にしなければならないので聞き流すような形で作業を再開

する。え?何で奴に入られたのにこんなにも落ち着いていられるかって?そりゃあこいつの

特性を知っているからさ。なんせこいつは

 

極度の気分屋さんだから早い段階では襲わない、からでしょう~」

 

「・・・お前エスパーでも所得してきたのかよ。この地獄に落ちて。」

 

「顔に書いてるわよ。それに私に入られた時にも平然と作業を続けているからあなたの考え

 がまる分かりよ。でーも、のんびりしている暇はないわぁ。皆がこぞってやって来るから

 ねぇ~。だから頑張って頂戴、暫くは此処でぶら下がりながら見ているから精々私を飽き

 させないでね♪」

 

「高みの見物かよ。(まぁ、今襲られるよりかはましk

 

「もし飽きちゃったらわたしぃ~、貴方をブ・ン・カ・イの玩具として遊ぶからねぇ❤

 

"!!!!ギラり!!!!(鋭い歯を見せつける)"

 

・・・やっぱこいつ俺の考え読み取ってるだろ。マスク越しからでもわかる。その時丁度右

から接近していた"Toy Bonnie"の顔を覗いたら若干顔強張ってたんだもん。あいつ逃げる

ように早足で立ち去って行ったよ。同種からも恐れられるって・・・襲われないように

祈っておこう、奴を退屈させないように。




"・・・あ?何震えてんだお前"

"僕・・暫くあの部屋に入れそうにないよ(震"

"・・・は!?(焦"


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Chaos3(混沌その3)

"これが最後の宴となるだろう・・・。"


AM 1:09

 

「やっと一時まで持ち込めたぞ。・・はぁ、朝まで集中力と気力が保てればいいんだが。」

 

 今夜の場合は今まで出てきたアニマトロニクス達の言わば総決算、ほぼ全ての奴らを同時対処

しながら如何に電力を保てるかが勝負のカギとなる。そのために膨大な作業をこなす迅速な行動

力と逐一の時間帯把握力、俊敏に反応する反射神経が問われることになりそれを支えるための

精神力を果たして朝まで持ちこたえられるか、これが重要となる。先程は一瞬途切れてしまった

事によりMangleに侵入されてしまうが、奴の場合はまだ猶予はある。まぁ、危機的状況に陥って

いることに変わりなく奴のノイズ音でシンバルの音が鳴りやむ気配がないし、退屈しだしたら最終

的に俺を襲撃しに行くのだから。

 

「兎に角、これ以上の失敗は許されない。」

 

 取り敢えずDEAHTCOINFoxyを撃退しただけでも十分な脅威を払ったんだ。後やるべきこと

は部屋に侵入する他の機械人形達を上手く対処して部屋の換気以外に端末を不用意に起動せずに

室内温度とオルゴールを管理するだけ。それさえミスしなければこっちのもんだ。

 部屋の換気は少し前にやったから暫くは空気の入れ替えをしなくても大丈夫。室温を確認すると

70F°前後に表示されているから90F°になるまでは強力エアコンを作動させずにその分、電力の

消費が多いグローバルミュージックボックスに回すことにする。と言っても20秒が限界だが。それ

に時間感覚が狂えば無駄な電力の消費をしてしまうからデジタル時計の秒数を常に見なければいけ

なく、目にも負担がかかる。辛いがこの夜を乗り超えるためにはこの方法が一番安定する。

 

「おっと、あらゆる方向から笑い声やら音やらなっているな。」

 

 そろそろ集団で攻めに来る頃だから部屋の状態を確認し終えたら撃退の準備に切り替える。正面

ダクトから軋む音を聞き取りドアを閉め、左右の出入口からからくぐもった笑い声と右の通路から

メロディーが流れるのを聞き逃さずに即ドアを閉じる。追い出したらさっさとドアを開いて徐々に

浮かび上がるPhantom Freddyにライトを浴びせておく。消し終えた丁度に白黒の幻影が浮かび

上がってきたのを見てすぐさま目線をずらしておき、今度は正面ダクトから喧しい程の笑い声が

部屋中に響き渡ったので即閉じる。っとここでRockstar Freddyが再起動しコインを要求して

きたので溜まった分のコインを払い、端末が勝手に起動し広告が流れだすのと左からToy Chica

攻めてくるのを確認したら焦らずマスクを被りながら広告を消していく。立ち去ったのを見てから

マスクを外し、室温が規定以上の数値を出していたのでオルゴールを停止させ強力エアコンを起動

させる。・・・わずか数秒で室温が元の基準値まで戻ったから再びオルゴールに切り替える。

 一通り侵入組の機械人形達を撃退できたので次の換気マークが出るまで一息つくことにするが、

警戒は怠らないように態勢を整えておく。シンバルの音も劇的に速く鳴り響くわけではなく一定の

速度を保っているので今は大丈夫だろうとそのまま放置しておく。

 

「ふぅ、やっとひと段落着いた。落ち着いて対処が出来ているし不意打ちだけさえ気を付ければ

 大丈夫か。この調子で上手くやり過ごしていくか。」

 

 態勢を整えるためにも一旦深呼吸をし冷静さを保つようにする。この間にも奴らは攻め込んで

来るから五感を研ぎ澄ませて注意深く観察し待機する。

 

AM 2:28

 

 大音量で流れだす広告を消すと、画面上に換気エラーが表示されたので頃合いだと思い端末を

起動し、換気ボタンを押す。その時に右廊下からRockstar Chicaが近づいてくる様子を確認した

ので急いで端末の電源を切り看板を・・・

 

Nightmare Freddyのチビ共が張り付いていやがる。邪魔だ!」

 

 そいつらが引っ付いてると運び出すことが出来ないのでライトを照らして全て追い払い、看板を

右出入口付近に設置する。・・・どうやら入ってこないみたいなので間に合ったようだ。

 

「あっぶね、少しでも邪魔が入ると作業に支障が出ちまうだろうが・・」

 

 彼女の対処も済ませ終わったら発電機をオルゴールに切り替えり室温も上昇したことだから強力

エアコンを作動させ、その間やるべきことを済ませなければならない。扇風機に乗っかている白い

熊人形をはじき出し、立ち上がっているNightmare BBを光を当てて座らせる。なるべく

白黒の幻影を見ないように立ち回り、正面ダクトに目玉だけを覗かせている機械人形を追い出す為

ドアを閉じる。ここら辺でエアコンを停止させ残りの電力を確認すると68%と表示されていた。

 

「二時で三分の一まで減らされたか・・・ちょっと厳しいな、最悪な場合も考慮しないと。」

 

 危機感を募らせより電力を節約する方向で行動しなければならない。一番懸念しなければならな

いのはドアの使用率だ。果敢に攻め込んでくるもんだから頻繁に使ってしまい大幅な電力を消費

してしまうので、今度からは次の換気が来るまで急接近する以外の奴はそのまま放置することに

した。・・・右ダクトから物凄い音が聞こえきたので急いでドアを閉じる。・・・

 

「おぉっと!!音を被せて侵入しようとしても無駄だぜ、俺をなめるんじゃねぇ!!」

 

僅かだがメロディーの曲が響き渡っていたので左のドアを締め出し撃退に成功する。それを天井

から眺めている奴はわざとらしく拍手してきた。

 

「へぇ~凄いね。今の気付けちゃったんだ。何回も死んだだけあってもうパターン覚えちゃった

 のね。中々やるじゃない。」

 

 ・・全く嬉しくない応援を受けて作業に集中する。といっても最早同じ作業の繰り返しで朝まで

この行動を続けるだけなので。・・・電力が減るのと共に時間が過ぎていき、奴らの猛攻撃を

乗り越えるために抗う。途中新たに見かけるRockstar Bonnieは部屋に入りだした途端ギターを

探せと無茶な要求を突き付けたり(その時は右廊下に映りこんでいたので事なきを得たが)、部屋組

の連中を追い払おうとすると白黒の幻影が邪魔をして中々対処できなかったり、音が重なり合って

接近音が聞こえないまま危うくやられそうになったり・・・まさにお祭りのように騒ぎ出す奴らを

鎮めるには幾度の犠牲を払いながらも経験として受け継がれ次の対抗策を取得し、漸く朝を迎える

時間帯まで持ちこたえる事に成功した。

 

「・・・」

 

 もうこの時にもなると集中力が限界を達しそうになり、ミスをしない事だけを考えひたすら耐え

なければならない。此処で失敗したら今までの努力が・・・今にも発狂しそうになるのを堪えて

残りの電力を確認すると、僅か5%になっていた。あれから天井にぶら下がってる奴は俺を襲撃に

移行する動向が見られずにそのままじっとしている。マスク越しからでもその様子が窺える。

 どうやら今回は、奴の機嫌を損なわずに済んだみたいだ。なら後は唯々朝になることを願うこと

だけ。これ以上オルゴールは付けられないので発電機に回している。少しでも停電を遅延させない

と、この狂った宴を終わらせることが出来ない。

 

「・・・頼む・・何とか保ってくれ・・」

 

 正直、精神的にも限界を達していて正気を保つことが難しくなってしまうと他の事を気にしない

で行動してしまう。両出入口からくぐもる笑い声が聞こえたのでドアを閉じたんだが、それが最後

の防衛となったか、電力が無くなってしまった。

 

「!!!」

 

 前夜と同じように停電を起こし部屋の中が暗闇に包まれる。・・・遠くから足音が聞こえてくる

のを耳で確認し、一気に恐怖が舞い込む。

 

「・・・ここまで来て、ここまで・・来て・・嫌だぞ、もうやり直したくない・・」

 

 頭を抱えて机に突っ伏す。しかし足音が鳴りやむ気配がなく遂にはこの部屋まで侵入してきた。

頭の中で侵入者に対し俺の所に来るなと拒絶を訴えたがそれも無駄に終わる。

 

「・・!?」

 

 突っ伏している俺を無理やり机から引きはがしてその姿を捉える。・・・Nightmareだ。

真っ黒闇から現れるそいつは赤色の目玉をぎらつかせて俺を睨みつける。

 

逃げられると思ったか?残念だな、お前はまた悪夢の夜を過ごさなければならない。そしてこの

 宴から永遠に逃れられずに精神が崩壊するまで共に過ごそうじゃないか・・・。

 

「・・あぁ、嘘だろ・・」

 

 今度こそ駄目だ。奴に猶予なんざない、文字通り悪夢を見ているような感覚だ。そして奴の腕が

動きだし、俺の体を突き刺すように狙いを定めて・・・勢いよく振り下ろしてきた。

 

(はは・・もうおしまいだ。)

 

もう楽になろう。完全に諦めてなるべく痛みについて考えないように意識を手放した。

 

・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?何時まで経っても痛みが襲ってこない。違和感が湧きあがり恐る恐る目を開けると

Nightmareが俺の体を持ちあげた状態のまま別の方向を見て誰かと話をしているみたいだ。不満

そうな様子を浮かべている奴に対して何か言っているもう一人の存在。一体何が起きているのか

分からないがただ事じゃないのは容易に想像がつく。よく目を凝らしてもう一人の存在を確認して

みると・・・

 

「!?」

 

 うっすらであるがそいつの容姿を見た途端驚きを隠せなかった。俺が散々見てきたやつで嫌味や

皮肉ばかりを語るそいつを・・・金色の体で構成されこの暗闇の中でも紫色と識別が出来る派手な

蝶ネクタイにシルクハット。そいつの姿は、熊そのものをモチーフにした機械人形である。気の

せいなのか、いつもより声がはっきりと聞こえる感じだ。・・・奴が口を開く。

 

「残念だね君。そう君だよ悪夢の住人さん。彼を裁ける絶好のチャンスなのにあと一歩でその機会

 を逃してしまったようだね。無駄口を叩いていたから彼に逃げられたじゃないか。」

 

何?そんなはずないだろ。朝のチャイムはまだ

 

「あぁすまない、すっかり言い忘れてたよ。私の手違いで朝のチャイムを鳴らす機械が故障して

 いるのに気づかず進めてしまったんだよ。本当にすまない。」

 

何だと貴様!!それは重大な過失じゃないか。ならこいつは・・・

 

「申し訳ない、君に勘違いをさせてしまって。でもこのルールに従うなら彼は・・、時間を見れば

 明らかさ。」

 

 焦った奴がデジタル時計を摑み取り確認すると、より一層険しい顔をして再び俺に睨み返した。

そして、唸り声をあげて俺を乱暴に放り出した。

 

・・・っち、俺も無駄口を叩くんじゃなかった。

 

 最終的には奴の姿が消え去り辺りは静寂に包まれた。・・・床に転がっているデジタル時計を

確認してみると、いつもの朝の時間である六時と表記されていた。

 

「って、ことは・・・俺は・・・」

 

「あぁ、おめでとう。チャレンジ項目Chaosをクリアしたのさ。」

 

「・・・・・やった。うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 最後の最後でまさかの大逆転劇。あの時奴が一言も発さずに制裁を実行していたら今の俺は

此処にいなかった。奴も慢心をしていた証拠だ。暗闇の中から希望の朝の光が差し込んでくる。

狂った宴会も幕を閉じることになる。もう歓喜しか浮かび上がらなく正に有頂天の状態で喜び

を味わっていた。・・・しかし、あいつの一言でその感情は一瞬にして砕け散る羽目になる。

 

「そうだね。本当におめでとう。これでウォーミングアップ終了だ。」

 

「・・・は?」

 

 俺は気付いていなかった、いや馬鹿そのものだった。これがほんの準備体操だと教えられること

に。そして宴は終わったんじゃない、これが幕開けのほんの余興に過ぎなかったのを。




"最後?笑わせるなよ君、これからが始まりなんだよ。"Afton"


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New ordeal(新たな試練)

"不可能に近い挑戦ほど、自身の限界を超えてくれるものだ。"


AM 6:13

 

 暗い一室の室内に沈黙が流れる。先程感じていた喜びは何処へやら、奴の言葉を聞いた途端吹っ

飛んでいった。そう、俺にとって決して聞いてはいけない言葉を・・・

 

「これがウォーミングアップ!?冗談だろ・・・あれ程苦戦させられたこの夜が?」

 

「おや?私にとってまだ簡単なほうだがな。そもそも今まで君が乗り越えてきた夜は、究極な夜を

 迎えるまでの言わばチュートリアルみたいなものだ。」

 

「究極な夜?・・・なんだそれ!?いや、それよりも簡単って・・・」

 

「文字通りだよ。君が今まで相手してきた彼らはまだ全力を出していない。あくまでも君に彼らの

 動きを把握するための学習の一環さ。そこから色んなことを学べただろう?」

 

「気性が荒く、状況変化において襲撃パターンを変える熊たちの夜Bears Attack。僅かな気配り

 が出来るかどうかで生存確率が容易に変動するPay Attention。例え可愛い容姿をした女の子

 でも隙を見せれば凶悪な顔が浮かび上がるLadies Night。忘れてはならない、何時でも君を

 絶望の淵に追いやる恐怖の存在をCreepy Crawlies。この地獄から悪魔の使いとして訪問する

 Nightmares Attack。罠にかかった者たちの益なき報復Springtrapped。君が起こした惨劇

 の被害者が勢揃い、懐かしい思い出に浸りなOld Friends。そして・・・この狂った環境を更に

 歪な空間で取り囲み様々なお友達が君を葬るために入り浸れる状況を作る、正に混沌!Chaos

 これらをこの八日間を通じて経験した君にそれ以上私が教える必要が無くなった。」

 

「じゃあ、この夜を作り出したのは」

 

「あぁ、私が独自に組み込ませて作成したものだ。そして今夜からその役目は君に移る事に

 なる。」

 

「・・・どういう意味だ?」

 

 そう俺が告げると奴は指をパチンと鳴らす。その時天井の方から物音が響き渡り見覚えのある

ものを目にする。ギョッと驚いてる俺を気にせずに奴は告げた。

 

「そう、これからは君自身がこの夜を作り上げるんだよ。モニターの中に映っている五十体の機械

 人形を君の好みで選べることが出来る。チュートリアルをクリアしたささやかなご褒美だ。やり

 方は自分が挑戦したい機械人形をAIレベルと共に選択しスタートボタンを押す。そしてクリア

 した暁に登場した機械人形のAIレベルによってポイントが加算される。ポイントが増えればその

 分、自身がより優位に立てるような環境を私が用意しよう。そのうえで君に目指してもらいたい

 目標を私が提示しよう。」

 

「・・・何だ?」

 

「勿論、このモニターに映っている全ての機械人形を極限の状態に作り上げ、その夜を乗り越える

 ことさ。君にとっての最悪な究極の改造夜、50/20モードをね。」

 

「・・・俺にその実力があるとでも?ただの自殺会じゃねーか!!」

 

「人の話を聞きなさい。いきなりやれとは言ってないだろ。でもいずれは避けて通れない道であり

 最終的に君がたどり着かなければいけない場所だ。この夜を乗り越えることが今まで君が数え

 切れない程作ってきた罪を償う唯一の機会さ。」

 

「・・・過ぎたことを。第一、仮にその夜をクリアした所で此処から抜け出せるわけでもねーだろ

 それに限っては決して起こりえないんだよ。何で意味ない事に無駄な命ささげてまでやらないと

 いけないんだ。」

 

「・・・もし、」

 

「あ?」

 

「その機会が訪れたら?君はどうする。」

 

「は?何の冗談だてめぇ。初日に言っただろ、この場所から逃れられないとお前自身が!!自分の

 言ったことさえ忘れたのかこの老害野郎。」

 

「確かにそう告げたな。君のような罪人は此処から逃げ出す事自体許されない。今もなお私自身の

 中に君に対しての怒りだけが湧きあがる。だがふと思うんだ、どんなに卑劣な行為をしても罪を

 犯した輩を、唯一方的に痛めつけて愉悦に浸る復讐者を思い浮かべると、虚しくなってくる。心

 が荒んでいき余計に惨めな思いをするだけさ、失ったものを取り返すこともなくもう罪人と同じ

 ような言動をとるようになる。言ったよな、お互いを殺しあうのは時間と労力の無駄。そんな物

 は審判じゃない、茶番だ。私は君がもだえ苦しめる姿を見たいためにこの場所を作ったのでは

 ない、過ちを再認識させ罪を償わせるためにこの場所を作った。復讐もそう、唯君を地獄の淵に

 突き落とすだけでは子供たちを救えなかった。君の息子がわざわざ私に協力を仰いだのは君の手

 によって失われた子供たちを救う為だ。事情を知った上で何の利益もなくリスクだけが付く纏う

 この危険な仕事を快く引き受けてくれた。私一人では絶対成功できなかった。親の罪を代わりに

 受けてきたんだよ、バラバラにされようが燃やされようが食われようがそんなの関係なく・・・

 そして思うんだよ。これだけ罪と向き合える息子に対して君は・・・どんな気持ちで生きてきた

 んだ?罪から逃れ続ける運命に囚われてそのままでいいのかい?せっかくの償えるチャンスを私

 は用意したのさ。君が罪を認めて懸命に彼らと向き合えない限り、私もゆっくり眠れないんだ。

 君と同じ運命を私はたどっている。だからもう一つの考えが浮かび上がったんだよ。」

 

「・・・」

 

「私も何時か、君を許せる立場になれるようにしたい。だから提示した目標をクリアできるように

 私は静かにお前を見守るとしよう。・・・出来る事ならば。」

 

「・・・言いたいことはそれだけか?ならさっさと消え失せろ。今更苦しくなってきたか?だと

 したらいい気味だ。俺は奴らと向き合う気はねぇし向こうもその気だろ。分かり合える日なんか

 来るはずがねぇ。」

 

「・・・君ならそういうと思ったよ。」

 

「はっ、まぁいいだろ。一応の説明はしてくれたし要は俺が好きなようにやればいいだろ?」

 

「そうだな。でも注意しなければならいことがある。」

 

「何だ?」

 

「一度設定した機械人形をその日にクリアした時には別の者たちを選択して夜を乗り超えない限り

 同じ選択は出来ないから同じ機械人形を連続で選択することが出来ないから気を付けたまえ。」

 

「それだけか?ちぇ、せっかく楽できると思ったのに。」

 

「相変わらずだね。君のそういうずる賢い性格は。」

 

 時間がたつにつれてあの重苦しい雰囲気は取り除かれ、いつものように二人が皮肉を言い合う。

やはり彼らは性格が違えと似ている所があり、息が合うように感じ取れる。そういった点では

パートナーと言えるにふさわしいものだ。・・・この先の惨劇が幕を開けようとも彼らは変わらず

にこの地獄な環境を過ごしていくだろう。




"・・・けっ。"

"どうしたんだ?彼らの話を立ち聞きして。"

"なんでもねーよ。さっさと持ち場に戻るぞ、Bonnie。

"・・・ねぇ。"

"あ?"

"彼らの話、まさか真に受けたんじゃないだろうね?"

"・・・知るかよ。"

・・・あながち彼らも・・・


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Supplementary explanation materials 2(補足説明資料二枚目)

"対機械人形対処法の説明書-追記"


"この資料は前回の一枚目で紹介しきれなかった追加者や名所不明の機械人形について書き記した

ものだ。なお、これは彼が書いたものではなく設計者が書き残したものを抜粋したものなので所々

文字がかすれて読めない部分があるがご了承を。" 以下参照↓

 

Bonnie    種類:兎   出現場所:左カーテンステージ(海賊の入り江)

備考:COM5のカーテンステージに出現。そこにFoxyと狭い空間で過ごしているのが原因か彼の

苛立ちは決して収まらず、その怒りの矛先は姿を映す監視カメラに向いている。万が一彼を見て

しまった時はすべての監視カメラを破損し大きな遅延を生じさせる。何故か襲撃組から妨害組に

シフトチェンジされているのは謎。最近の悩みは朝早く起きれなくなって余計に苛立ちが収まら

ない事。・・・と彼が同居人に告げていたという目撃情報が入ってる。

 

Chica      種類:ヒヨコ 出現場所:キッチン

備考:COM4のキッチンに出現。しかしキッチンの監視カメラは故障が絶えない状態なので止む無く

監視モードを停止させている事から彼女の容姿は映されない。唯、彼女がいろんな調理器具を鳴ら

してリズムに乗っているので物音から存在を感知できる。因みに飽きが早い性質を持ち合わせて

いるので物音が消えた時には直ぐに別の音楽を聞かせてあげないと死。・・・いや、単純に自身が

音楽を切り替えれば万事解決にならないか?

 

Toy Bonnie  種類:兎  出現場所:警備員室内

備考:警備員室内右側に出現。端末を覗いている間にノイズ音が発したら接近の合図。

FreddyMaskを被って襲撃を回避する事が可能。なお、彼の顔を見つめると若干の退出時間を

縮める事が出来る。

 

JJ        種類:人型 出現場所:右ダクト/警備員室内机の下

備考:端末を覗いてる間右ダクトに出現。音は発さずとも姿は確認が出来るのでドアで撃退可能。

なお、侵入された場合は机の下に潜り込み全てのドアボタンを一時的に無力化する効力を持つ。

おまけに笑い声を発しながらというウザさも付いて。容姿はBBとそっくり。

 

Springtrap  種類:兎  出現場所:通気口内センサー

備考:かつてAftonが入っていたとされる兎の機械人形は通気口内センサーに出現を確認。特徴

として音を発さずにベントネアにも引っかからない状態で警備員室に侵入を心掛けてくるので

正面ダクトから目玉を覗いたら即刻ドアを閉める。彼はAftonの一種の概念だと推測できる。

 

Jack-O-Chica 種類:ヒヨコ 出現場所:左右の廊下

備考:全身燃え盛る炎で纏う奇天烈な姿をした彼女は、室温が100F°超えるとCAM1CAM2の左右

の廊下に徐々に姿を現して最終的には警備員室に襲撃に来る。防ぐには室温を80F°以下に下げて

両扉を閉じる必要がある。なお、基準値を超えた場合ドアを閉じてもすり抜けてくるので無難に

室温を下げたほうが良い。対処次第で彼女は簡単に防ぐことが可能。

 

Nightmarionne種類:??? 出現場所:警備員室内

備考:文字通りの最恐最悪な存在。室内の至る所に幻影として現れ目線をそのまま彼に合わせると

実体化し襲撃に移行する。FredeyMaskを被っても進行を止められず他の機械人形を対処する時に

も姿を重ねて行動を制限する厄介な特性を持ち合わせてる。更に運が悪いときは開始数秒で悪夢を

見せつけられる初見殺しも兼ね備えている。対処法として彼を見ないように目線を外すか端末の

監視モニターを見るぐらいだ。

 

Old Man Consequences 種類:??? 出現場所:画面モニター

備考:名前の意味は"老人の行き着くところ"。存在自体謎だらけであり何の目的で此処にやってきた

のかも不明。この地獄の設立者である彼でさえその存在を把握していない。分かるとすれば画面の

モニター画面にcatch a fishという文字が現れ、魚を釣るというミニゲームが始まるだけ。失敗

すると一定時間端末が起動しないデバフ効果を与える。上手く釣れれば問題ない。

 

Ennard   種類:内骨格 出現場所:正面ダクト

備考:通気口内組で唯一モニターに映らない機械人形。進行速度も不明で居場所を特定するのは

不可能。存在を感知するには襲撃目前で床が軋むような音を発するのでよく耳を凝らして聞く

必要がある。聞こえたら即ドアを閉める。

 

Trash and the Gang  種類:???  出現場所:警備員室/モニター画面

備考:ハッキリ言ってゴミみたいな容姿をしている彼らも立派なアニマトロニクスと位置づけられ

いる。しかも本人公認で。彼らは不定期に警備員室又はモニター画面に出現し視覚を妨害するのが

メインとなる。籠と頭にバケツを載せているゴミは防ぐことは出来ないが風船のゴミだけは端末の

電源を切ればよい。・・・もう一度言おう。彼らは立派なアニマトロニクスである(洗脳

 

Helpy   種類:熊   出現場所:警備員室

備考:ぬいぐるみの容姿をした彼は時々扇風機に乗っかている事があり、直ぐに追い払えないと

大音量のエアーホーンを鳴らしてきて視界を覆いつくし、端末を覗いているのであれば強制的に

取り下げられる。なお、端末を下げることで出現のトリガーとなるGolden Freddyとの確殺

コンボが綺麗に決まるので可愛い見た目に反してかなりエグイ事をしてくる。

 

Happy Frog 種類:蛙   出現場所:ダクトホース

備考:チーム「平凡なメロディー」の紅一点。彼女はダクトホース経由で警備員室に忍び込んで

くるのでオーディオ・ルアーを設置し遠ざける必要がある。なおヒーターによる撃退は不可。本人

曰く「主役のFreddyの座を奪い取る!!」と奮起しているみたいだ。

 

Mr.Hippo  種類:カバ  出現場所:ダクトホース

備考:チーム「平凡なメロディー」の語り役。彼は上記の彼女と同様に対処すればよい。なお、

ヒーターによる撃退は可能。・・・と此処までは普通の機械人形と同じだが彼の真の恐ろしさは

Aftonを殺害した後に友人の日常についての話を何時間と語り尽くす事。死体を前に語り掛ける

その様子は最早ナチュラルサイコパスと言ってもよい。

 

Pigpatch 種類:豚    出現場所:ダクトホース

備考:チーム「平凡なメロディー」の一体。対処は上記の彼らと同じようにする。ヒーターでの

撃退は可能。やたらとことわざを使用してくるので日本に対しての尊敬があるのかないのか。

 

Nedd Bear 種類:熊   出現場所:ダクトホース

備考:チーム「平凡なメロディー」の一体。対処は上記の彼らと同じようにする。・・・が彼の

場合は約半分しか騙されないのでヒーターでの撃退をお勧めする。見た目に反してかなりの切れ者

である。

 

Orville Elephant 種類:象 出現場所:ダクトホース

備考:チーム「平凡なメロディー」の一体。対処は上記の彼らと同じようにする。・・・が彼の

場合は殆ど騙されずに侵入してくるのでヒーターでの撃退をお勧めする。本人曰く「あまり外

に出たくない」という。

 

Rockstar Bonnie  種類:兎 出現場所:警備員室内

備考:お気に入りのギターをなくした時に出現する機械人形。端末でギターがある部屋を探し出し

見つけたら彼に教えればよい。なお、見つからない場合は彼の賜物を受け取る羽目になる。

 

Music Man 種類:???  出現場所:警備員室内

備考:開始直後から出現しており、騒音レベルで襲撃に移行する変わった特徴の持ち主だ。

シンバルの音が鳴り響いたら騒音発生のものすべてを切る必要がある。彼の容姿は何をモチーフ

にしたのか全くの謎。

 

El Chip  種類:ビーバー 出現場所:画面モニター

備考:不定期に画面モニターから広告を流す嫌がらせの領域を超える彼。直ぐにスキップボタンを

押さないと騒音で他の機械人形が集まってしまう。そんなに自身の店を宣伝したければ投資家に

直談判すればいいだろ・・・

 

Funtime Chica 種類:ヒヨコ 出現場所:警備員室内

備考:不定期に姿を現す彼女はフラッシュを焚くことで視界を大きく揺らし視覚妨害に努めるの

だが、唯出番が欲しいだけの女の子。・・・何しに来たの?

 

William Afton(Springtrap) 種類:兎 出現場所:右ダクト

備考:Aftonのもう一つの姿。兎のスプリングロックスーツを身に纏い、右ダクトから物凄い音量

と共に素早い速度で襲撃に来る。姿は侵入されない限り確認が取れないので自殺行為に見るのは

よそう。ドアを閉めればいいのだが見分けてからドアを閉じるではもう遅い。唯、年なのか一度

っきりでしかやってこないので対処に慣れれば簡単に追い払うことも出来る。

 

Lefty  種類:熊   出現場所:左小部屋

備考:CAM3の小部屋に姿を確認。彼の場合は静寂を求めて静かに佇んでいるが騒音と室温で眠りを

妨げられたら怒り狂って襲撃に来る。怒りを鎮めるにはなるべく騒音を立てずに適度な室温を保ち

続けなければならない。それが無理ならグローバルミュージックボックスを起動する。・・・部屋

から飛び出したら意味がないんだが。因みに彼の内骨格にはある秘密があるようだが・・・(此処

からはページが破り取られている)

 

Phone Guy 種類:恐らく人間 出現場所:警備員室内

備考:不定期にイタ電を掛けてくるみたいだが何処から変えているのか不明。ミュートをしなけれ

ば小一時間彼の雑談で騒音ゲージが溜まり、騒音に敏感な機械人形達が襲撃に移行されかねない。

だが、本当に何処から鳴り響いているのか判別は不可能に近い。

 

 ・・・以上だ。因みに隠しキャラクターたちは全ての隠しキャラが出現したら改めて記載する。

それでは、またな。




"これで一通り理解できたかな?"


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reconnaissance(偵察)

彼を知り己を知れば百戦殆ふからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に必ず殆ふし。-孫子


PM 23:10

 

「さて・・・っと、今夜は誰を相手にしようか。」

 

 時刻は午後十一時を過ぎていつもの夜が迫ってくるのに対し、この男は以前よりも落ち着きを

払っている。初日からすっかり怯えていたあの頃とは打って変わってさ。では何故かって?それは

単純だ。自身で戦いたい相手を自分好みで選べるからだ。以前はどんな機械人形がやって来るのか

予測も出来ずに常に緊張感を漂わせながら対処するしかなかった。素性の分からない存在達に神経

を使わせて自身の身を守る手段を見つけなければならない日々を送ってきた彼にとって、これほど

嬉しいことはないのだ。

 

「そうだな、今回からは奴らの動きを細部までに知りたいし、先ずは偵察からだな。」

 

 ハッキリ言って今までの機械人形達はまだ本気を出していない状態であり、もしかしたらまだ俺

が知らない襲撃方法を隠し持っているかもしれないからそのための確認を、数日間費やすことに

決定した。

 

「てことで、最初はコンビ組からかな。ついでに複数体の同時処理は早めに練れておかねーと。」

 

 取り敢えず選んだのは左カーテンステージに出現するBonnieFoxyの二体。以前の夜で奴らが

いつの間にか入れ替わり、兎に一杯食わされたので何時のタイミングで入れ替わるか知る必要が

ある。なので最初のカスタムナイトはこいつらに設定した。

 

「AIレベルは・・・対処知っているしわざわざ低いレベルで挑む必要もねーだろ。」

 

 ということでレベルMAXの20に設定する。ポイントは1レベルにつき10単位でつくみたいで

最高は200まで跳ね上がる。つまり、今夜の夜を乗り越えれば今回の場合は合計400ポイントを

取得できる。

 

「よし、これで行くか。」

 

準備も整えたことだしモニター画面の右端にあるスタートボタンを押す。・・・僅かな時間が流れ

た後に午前十二時を迎えるアラームが響き渡る。

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

 鳴りだした後は電力消費を抑えるために扇風機を停止させ発電機を稼働する。騒音に反応する奴

らは今夜出ない設定にしてあるので心置きなく稼働できるのだ。早速部屋の様子を見ようと端末に

手を差し伸べるが先に確認しなければならないことに気づき手を止める。机に置いてあるFoxy

人形を見る為だ。

 

「恐らくこの人形が入れ替わりの知らせ役を持っているはずだ。今は狐の人形になっているが俺

が見ている間に・・・。」

 

 一度確認し今度こそ端末を立ち上げて廊下から左のカーテンステージに部屋を切り替える。そこ

に狐の機械人形がこちらを覗きこむ姿を確認し、数分間監視をした後は監視を中断し端末を下す。

すると案の定、狐から兎に人形が入れ替わっていた。この状態でさっきの部屋を監視しようと起動

した途端

 

!!!!!!キィィエェェェアアァァァァァァァ!!!!!!

 

 咆哮に近い絶叫を上げてすぐ画面モニターが砂嵐に切り替わる。何処を変えても同じ状態になる

ので別の部屋に変えて少し待ってみると画面が元に戻った。修正にかかる時間は大体2分くらいで

まぁまぁな遅延を発生させるのを確認する。此処でもう一度端末を下し人形を確認すると兎から狐

に早変わりしているので立ち上げてさっきのステージをチェックすると、元通りに狐が佇んてる。

 

「なるほど・・・仕組みは分かった。でも一々こいつらを見るのは無理そうだな。人形組と時間が

 被っちまうと監視も出来なるからなぁ。」

 

 ここで早速課題が現れた。仮に人形組を牽制したらFoxyを見る機会が無くなり奴の進行速度

を上げちまう羽目になる。そうなったら最速の時間でこの部屋に侵入されかねない。だが人形も

買わない状態で狐の牽制をするのは危険だ。どうすれば・・・

 

AM :3:29

 

 三時間が経過し、たった二体の機械人形を牽制しているときに、ふと疑問が浮き上がる。

 

「・・・ん?待てよ、確かFoxyの場合は常に見なければならなくてBonnieはその逆。てことは

 兎の人形に切り替わっている間は狐の進行速度ってどうなるんだ?・・・止まるのか?」

 

 もし仮に、この考えが正しいのなら兎の人形になっている間はわざわざ見なくてもいいという事

になる。寧ろ兎の人形に切り替わっても進行速度が進むのなら対抗策は死のコインで除去する以外

無いに等しい。

 

「なら、兎の人形に切り替えさせれば見る手間が省けるじゃん。これはいいアイディアだぞ。」

 

 掴んだ情報は兎に角試す。少しでも有利に立つために、早速行動を起こす。今は監視してる状態

なので右廊下にカメラを固定し一旦端末を下して人形を確認する。・・・まだ狐の状態なので換気

ついでに端末を立ち上げて換気ボタンを押し即端末の電源を切る。・・今度は兎の人形に変わった

のでそのまま次の換気知らせが来るまで放置することにした。電力を確認すると現在の時点で80%

も残っている状態に少し驚いた。・・・そりゃ頻繁にドア閉めたりオルゴールを起動する機会も

殆どないから有り余るわけだ。こうしてまた暇な時間が過ぎていく。

 

AM 4:35

 

 換気の警告が表示されたので頃合いかと思い、端末を起動し換気ボタンを押した後は一旦下げ

て人形が狐になっていることをチェックし再び立ち上げてカーテンステージにカメラを合わせて

みると・・・

 

「・・・思った通り!奴の進行速度を抑えられている。」

 

 姿こそカーテンから若干はみ出ている状態であるが一時間も経過しているなら今頃襲いに来て

もおかしくない。それがないという事は、さっきの考えが正しいと証明されたのと同じだ。検証

の結果でこの作戦が使えることを把握したので少し優位に立てると感じた。

 

「後は切り替わる時間だな。こいつさえ把握すれば・・・」

 

 タイミングは抑えられた。だが切り替わる時間は分かっていないので先程と同様の手段で今度

は端末を立ち上げる猶予時間を図ることにする。また暇な時間を潰さなければいけないが・・

 

AM 5:47

 

 室内の空気を換気する時間がやってきたので端末を立ち上げ同様の作業をし、即下げるように

する。狐になっていることを確認し時間を計る。

 

「取り敢えず15秒にするか。」

 

 秒単位で測るときはデジタル時計の秒数を見る必要がある。自分で数えるよりも正確性がある

からだ。1秒のずれも許さないように数える。

 

「1・・2・・3・・4・・5・・」

 

 時間を計り、規定の時間が来た瞬間に端末を立ち上げて急いで下げる。そして人形を確認すると

・・・

 

「・・・よし、変わっている。これならもう少し時間を縮めることも出来るな。」

 

 どうやら秒単位で奴らは切り替わるみたいだからこの時間を覚えていくようにしよう。そして

気付いたときにはあっという間に朝を迎えるチャイムが鳴りだした。

 

"♪キーン、コーン、カーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン♪"

 

「ふぅ、これでまた新たな対処法を見つけ出すことが出来たな。この調子で他の奴らも同じように

 探ってみるようにするか。」

 

 無事朝を乗り越えたことにより計400ポイントを入手した。・・・これ溜まるごとに何かもらえ

ればいいんだが。




"どんな敵でも必ず綻びを持っている。だが、それを過信するのも注意が必要だ。"


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reconnaissance 2(偵察その2)

"好機の機会を逃すな"


 偵察二日目の夜。彼は前夜で狐と兎の行動をほぼ把握した後に追加情報として紙に書き込んだら

前夜と別の機械人形の新たな動きを確かめる為に出現設定を行っている。

 

「今度は・・・Puppetにするか。オルゴールの猶予時間を計りたいしな。」

 

奴の猶予時間は今まで20秒の単位で計ってきたが、まだあやふやな所が窺えるのでじっくりと観察

しなければならない。オルゴールによる電力の消費量も考慮するとなるべく無駄な消費を避けたい

のも一つの理由だ。

 

「レベルは・・・まぁ20でセットするか。いずれ最大レベルで戦わなければいけねーしな。」

 

 設定を終えたらスタートボタンを押して夜を開始する。アラームが鳴りだした直後に発電機を

稼働させて端末の電源を入れ、カメラをキッチン部屋に固定しオルゴールのゲージ棒の減りを確認

するためデジタル時計の秒数で計る。

 

「流石レベル20に設定すると減りが早くなるな。」

 

開始から驚異的なスピードでみるみる減りだすのを確認し、もう無くなる直前まで来たので発電機

からグローバルミュージックボックスに切り替えオルゴールを回している間に消費時間を確認する

と、僅か17秒しか保たないと判断する。それからゲージ棒が完全回復するまでにかかる時間を計る

と20秒で四分の三回復することが分かった。

 

「結構シビアだな。扇風機を抑えてこの工程で行くと、一回当たりの起動率で電力が3~4%も削

 られるって事だ。これを発電機と扇風機を入れ替えながら稼働した状態で朝の時間までの換算

 すると・・・おいおい、電力の約半分も占めちまうじゃねーか!通りで足りなくなるわけだ。」

 

 この状態のまま作業をすれば朝まで持たないことは一目瞭然。なので切り替える時間を決める事

に結論を出す。最初だけは開始17秒後に起動し、20秒経過したら発電機に切り替えて10秒経過し

たらまた20秒間オルゴールを・・・これを繰り返す事にした。

 

「さて、今夜はもうやることないしダラダラとやっていくか。」

 

 電力がもったいないのでグローバルミュージックボックスを停止し、発電機と扇風機をセットで

稼働させてその日の夜は自分がオルゴールを巻くだけで朝を迎えた。

 

・・・・・・・・

 

 偵察三日目の夜。その日は直接姿を視認できなかった機械人形をピックアップすることにした。

選考はChica、仮面を被せた内骨格、それと何故か俺が入ったとされる両立型アニマトロニクスの

兎と別の兎の機械人形が画面にリストアップされていたのでそいつらの姿も確認できなかったのも

あり、ついでに入れることにした。

 

「この二体がかつての俺なのに、何で襲撃組に加わっているんだよ。これこそ自分の敵ってか?

 やかましいわ。・・・何独り言に対して突っ込んでんだ俺?」

 

 変な空気が流れるのを感じ少し気恥しくなったのでさっさと始めることにする。アラームが鳴り

だしたらお馴染みの作業で始めていく。端末を起動し各部屋をチェックして先ずはChicaの居場所

から探し出す。・・・直ぐ見つかった。キッチンから物音が聞こえだしたので恐らく物音をだして

いたのは彼女で間違いないだろう、姿は映っていないがな。次に通気口内センサーシステムに切り

替えると一体の機械人形が映っていた。スプリングロックスーツじゃない方の兎の機械人形だ。

進行速度も早い状態でこちらに接近し、侵入口の目の前まで来たのを確認して端末を下げると正面

ダクトに見覚えのある二つの目玉だけ覗かせている状態で待機していた。

 

「あんときの目玉はこいつのだったか・・。」

 

 直ぐにドアを閉じて奴を退散させる。再び立ち上げて確認するとあのボロボロ兎が所定の位置

まで戻っていた。こいつの対処はこれで間違いないだろうと思っていると今度は床が軋むような音

が正面から聞こえてきた。・・・が、音を鳴らした主犯の姿がセンサーに映っていない。だけど音

を鳴らした以上、何かがいる事だけは分かっているので即ドアを閉じる。・・・音が鳴りだした

ので退散していったみたいだ。

 

「・・・もしかして、センサーに映らないタイプの奴かこれ。おいおい、カメラに引き続いてまた

 姿を映さない面倒な奴が現れたのかよ。・・・待て、今のがあの内骨格の奴か?だとしたらあの

 巨体でよく音も鳴らさずに此処まで来たもんだな。兎も一緒だが。」

 

 兎も角音を鳴らした主犯が分かったのでこれで良しとしよう。後はスプリングロックスーツの兎

だけ確認が取れない状況だ。それとキッチンから物音が消えそうになっているから音楽を変えなけ

ればいけないので端末を起動し、彼女の動向を窺うことにした。

 ・・・しばらく時間が経つと急に物凄い音と共に右ダクトから誰か接近する気配を読み取り、

ほぼ無意識の状態で右ダクトドアを閉めた。・・・今のよく対応できたな。

 

「ちょっと待て、さっきの奴・・・あの兎か!?何処からあんなスピードが出せるんだよ・・。」

 

 まさかのあいつが新たな盗塁だと断定して見た目とのギャップに悩まされるというどうでもいい

思いをして朝を迎えた。一応存在は明らかにしたからまぁ、これでいい。




"おい、何でかつての俺自身が敵になってんだよ。"

"ん?あぁ、Springtrapの事かい?確かに君が入っていたねぇ。・・え?理由?・・・
何だか面白そうだったし概念という形で蘇らせてあげたよ。

"余計なことするなぁぁぁぁ!!"(怒


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Cupcake Challenge(カップケーキの挑戦状)

"限界を超えるための一歩目"


「ふぅー・・・・そろそろ、挑戦していくか。」

 

 あれから俺は、機械人形の行動や襲撃の予測・出現頻度の割合に最短の対処方法をすべて把握

する為暫くは偵察の期間に当てていたが、一か月を経過して遂に完全掌握に成功した。幾度の研究

を重ねてより効率が良く安全な対処法を導き出し、作業のスピードを上げる練習も惜しまずに万全

の準備を整えることが出来た。後は、・・・修羅の道を進むだけだ。

 

「とは言っても、いきなり極限モードに挑むのは余りに無謀だ。そんなことする奴は唯の命知らず

 な大馬鹿野郎。・・・まぁ、此処には俺一人しかいねーけどな。先ずは肩慣らしといこーか。」

 

 この場所に落ちてから独り言も多くなっているがそんなことはどうでもいい。気持ちを切り替え

て、俺はある決断をする。いずれにしても避けて通れない道。全ての機械人形が俺を全力で殺しに

来る日が巡ってきたのだ。この日が来るまでに俺は万全な準備を整えてきたんだ。あの頃の俺なら

考えたくなかっただろう。拒むことが出来ない悪夢の夜、だが今の俺はもう何も怖くない状態だ。

 いずれ進むなら怯えるのではなく、堂々として奴らを相手にすりゃいい。画面モニターの左端に

Allレベルを設定する場所がある。All 1、All 5、All 10、All 20とそれぞれ振り分けられている

が、俺が挑戦するのはAll 5だ。これでもまだ優しい難易度でいい練習台になると思い挑戦する事

にした。レベルを設定したら今度は今まで溜め込んでたアイテムを今夜使用することに決意する。

 

「さて、セットしておくか。」

 

 持ち込むアイテムは四つ。発電機の残量を2%追加補充が出来るバッテリー、室内温度を50F°

から低い状態でスタートする使い捨て冷凍機フレジット、開始直後から自動的に三枚追加される

コイン、機械人形を追加で呼び出してくる奴を封印するための玩具DeeDeeリペルだ。それらを

各場所に設置し終えたらいよいよ幕開け。

 

「・・・手が震えてやがる。これが武者震いってやつか?ハハ・・・ならさっさと始めようか。」

 

 一息深呼吸をして心を落ち着かせ、覚悟を決めた俺はスタートボタンを迷うことなく押す。

・・・少しの時間が過ぎた後に勢いよく開始アラームが鳴りだした。

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

 地獄の片道、その一歩目を踏み出した。

 

AM 12:00

 

 開始直後から手を休む暇はない。幾ら極限モードよりも優しいからと言って決して簡単という

わけではなく、一瞬のミスが全てを終わらす起爆剤となるので慎重かつ迅速に作業を開始する。

先ずは端末を立ち上げてダクトホースにシステムを切り替えてオーディオ・ルアーを左端の真ん中

に設置してカメラシステムに戻す。この時ポイントとして、ダクトホースからこの部屋までの侵入

経路は左右の二パターンであり、片方は出入り口を閉じているのだがもう片方は開きっぱなしに

なるので侵入を防ぐことは出来ないが、その時は必ず左経由で通らなくてはいけないからその進路

方向に誘導装置を設置することで大幅な遅延を発生させれるから、此処に置くことを念頭に置いて

おくのが重要なんだ。カメラシステムに戻したらコイン集めに切り替える。

 本来は侵入組を誘発させるため端末を上げ下げして撃退からコインを集めるやり方がいいんだが

これはあくまで時間がない時の場合。レベルが低い今は侵入速度もまちまちで必ずしも奴らが来る

保証がないので、わざわざそうするなら画面上に散らばっているコインを回収したほうが早い。

おまけにアイテムでコインを余分に増やしているからより集める時間を短縮しているんだ。この

時間を無駄にするわけにはいかず急いで残りの枚数を集めることにする。・・・僅か10秒で早くも

回収し終えたので人形売り場に切り替えてDEATHCOINを購入、使う相手は決まって一択。右の

海賊入り江にカメラを合わせてFuntime Foxyに使用だ。実はこいつと人形組の出現時間が被って

同時対処が不可能だと分かったのでこいつを処理してから右廊下にカメラを朝まで固定する必要が

ある。Foxyは換気のタイミングでBonnieと入れ替わるまで端末を上げ下げすればいいだけだし。

 それを終えたら端末の電源を切ってから降ろして発電機からオルゴールに切り替え、室内温度も

まだ基準値を超えていないから今のところは放置でいい。そして次の換気警告が出るまでそのまま

待機する。今回はレベルが低いからか、誰も部屋に侵入していない。作業が思ったよりも早く片付

いたので暇な時間が出来てしまう。

 

「だが、これほど早く対処することが出来たから良しとするか。」

 

 少し態勢を整えてから奴らが来るまで静かに待つ。・・・五分が経過した時に早速襲撃を仕掛け

る輩が現れた。右の通路からメロディーが流れだし正面ダクトには目玉だけを覗かせる機械人形、

照明器具が点滅した直後に左からToy Chicaが接近する。直ぐにマスクを被りながら侵入口のドア

を閉めて退散させる。鳴らしているオルゴールを発電機に切り替えて扇風機を作動しマスクを上げ

る。正面に僅かな白黒の幻影が見えだしたので目線をそらし、ついでに浮かび上がってくる熊の

幽霊に向けてライトを照らして実体化を防ぐ。そろそろ換気の時間が来たので左・正面・右下の

ドアを閉めて端末を起動し換気ボタンを押した瞬間に即下げてドアを全て開ける。侵入されない為

の一応の予備対策としてだ。今度は正面から高笑い声が聞こえたので即座にドアを閉じる。次に

扇風機を停止させるついでに上に乗っかているHelpyを追い払って立ち上がって襲撃のタイミング

を窺うNightmare BBにライトを照らし座らせる。忘れずにオルゴールを再起動し、いつの間に

起きだしたのか、Rockstar Freddyがコインを要求し始めたので余ったコインを全て奴にあげて

おく。こいつで最後なのか、他の奴らが襲撃しに来ないのを確認しひと段落の対処は終了した。

 

「ここまでは順調だな。さて、残りの電力は・・・」

 

 時刻は午前一時を迎える段階で85%と表示されていた。これなら朝まで電力が尽きることはない

と思い次の換気時間が来るまで待機する。この間にも集中を切らさないように何度も深呼吸を

しておく。こうすることで頭がすっきりし作業に集中出来るからだ。

 

AM 1:47

 

「廊下にRockstar Chicaが出たな。急いで看板を立てないと。」

 

 三回目の換気をしようと端末を立ち上げたら、右廊下で突っ立ってるNightmare Mangle

前に彼女が姿を現したので端末を下した時に床に鎮座しているGolden Freddyの奇襲をマスクで

回避しながら看板を掲げて右の出入口端に立てかけて置く。設置し終えた途端、端末から大音量の

音楽で広告が流れだしたから走ってスキップボタンを押して広告を消す。室温もだいぶ上がって

きたので強力エアコンを作動し、その間に左右の通路から目玉だけを出している二体の機械人形を

ドアで追い払う。

 室温が下がったらエアコンを止めて少しだけ発電機を付けてからオルゴールに切り替える。暫く

は部屋に侵入してくる輩を順に対処していれば大丈夫だ。机にある人形も兎に変わっているので

心配要素はほぼないなと思う。

 

AM 3:19

 

 残りの電力が半分を切った頃から奴らの侵入速度が速くなってくる。左右から玩具の兎とヒヨコ

が頻繁に出入りして作業を妨害してくるのは当たり前で、部屋の至る所から物音や笑い声が鳴り

止まないもんだから背後に佇んでいるMusic Manがずっとシンバルを鳴らし続けているので不安

になってくる。幸いテンポは速くない方だからまだ猶予はある。しかし換気のため全てのドアを

閉じてから端末を立ち上げると同時にドアを叩く音が複数の場所から聞こえてくるので電力がその

分削られてしまいかなりの痛手となっている。それでも焦っては駄目だと思い込み冷静に対処する

ことを徹底する。

 

「また息苦しくなったから換気しておかねーとな。」

 

 室温が上昇するとこの密閉された空間は直ぐに熱気がこもりやすくなり、徐々に酸素の消費が

早くなってしまうので端末を立ち上げる頻度が多くなってしまう。そのせいで机の人形が頻繁に

変わってしまい、中々兎の人形に戻らない中でRockstar Bonnieに侵入されたしまった。こいつ

の対処はなくしたギターをカメラで探さなければいけないが人形組の牽制で動かせないという確殺

コンボを仕掛けているので一度は焦ったが、運がいいことに右廊下にギターが置かれていたので事

なきを得た。本当に危なかった・・・

 

AM 5:45

 

「もう少しでクリア・・・けど、また持久戦に持ち込まねーと。」

 

 汗だくになりながら機械人形達の襲撃を回避していく時、既にFoxyに侵入されてしまった。

頭はまだないが他のパーツが投げ込まれているので牽制に失敗したのだ。あの時中々入れ替わら

なかったのが原因で。電力も残り10%を切っており正にぎりぎりの戦いとなってくる。先程の換気

で最後とし、後は電力を切らさないように発電機とオルゴールを切り替えて何とか保っている状態

だ。息も荒くなり少し視界がぼやけてきたので本当に命の危機を感じ取る。

 Phantom Freddyをライトで撃退してライトを机に置く。こいつも電力を削る一因と

なっているのでなるべく使わないように温存しておく。

 

「頼む・・・何とか保て、俺・・・」

 

 体に異常がきたしているのは分かるが此処で倒れたら全てが水の泡と化す。だから持ちこたえる

必要がある。時間がゆっくりと感じても俺は決して焦らず最後までこの苦しみから耐えていく。

・・・・・そして、時は来た。

 

"♪キーン、コーン、カーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン♪"

 

「・・・・よ・・し。よぉぉぉぉし!!!」

 

クリアだ。見事に朝を乗り切った。これが片道地獄の一歩目を踏み歩いた瞬間だ。




"痛みを全て飲み込め"


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Fazbear Fever 1(ファズベアーフィーバーその1)

"限界を超えるための挑戦、二歩目"


「すげぇ・・・たった一夜で2500ポイント獲得だ。」

 

 前夜の夜を乗り越え無事朝を迎えられた俺は、モニター画面に表示されている獲得ポイントを

確認して感心している。レベルが低いとはいえ、なんせ五十体の機械人形を相手にしていたから

肉体的にも精神的にも疲弊が隠せない。その代償を払って手に入れたポイントは、俺が苦労して

夜を乗り越えた証にもなるので嬉しさを感じられずにはいかないのだ。

 それに規定されたポイント数を超えたのか、モニター画面に新たな項目が追加されていた。部屋

の取り換えという内容で2000ポイントを獲得した報酬として、別の部屋を用意したと表記されて

いる。

 

「・・報酬が新たな部屋?この部屋よりも過ごしやすい環境を用意したと解釈すればいいのか?」

 

 何だか想像が出来なく、ピンと頭に来るものがないので一度保留に留めておく事にした。それ

よりも全ての機械人形をAll Level 5の設定で制覇したから次への挑戦を受けなくてはいけない。

All Level 10だ。難易度でいえば普通よりも難しいぐらい・・かな?まぁ、難易度が上がるだけ

でやることは同じだ。前夜と同じように作業をすればいい。

 

「注意すべきなのは奴らの進行速度と猶予時間が早まるぐらいかな。」

 

 そこだけさえ注意すれば大丈夫だと思い、俺は次の夜が来るまでの時間を作業の練習に当てて

一日を過ごした。

 

・・・・・・・

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

 開始のアラームが鳴り響く中、何の前触れもなく一瞬だけ意識が途切れ、辺りが真っ暗闇に

染まる。

 

 

「!?・・・・・・・・な!?」

 

 しかし本当に一瞬だけで直ぐ意識を取り戻し、瞼をを強引に開けて視界を確保した途端驚愕な

光景を目にする。今まで自分が過ごしてきた室内がガラリと変わっているのだ。装飾は勿論の事

見たことのないオブジェクトや幾つもの管、酸素ボンベ?らしきものが無造作に設置されており

照明も若干暗い感じで調整されている。明らかに雰囲気が変わっていて不気味さを醸し出すには

十分な環境である。それを意識が途切れる一瞬で全て手配したと考えると、とても信じられない

事である。

 

「一体どうやって・・・いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない。急いで作業に戻らねーと

 間に合わねぇ!!」

 

 今の出来事に呆気を取られてもう審判の夜が開始しているのをすっかり忘れた俺は、大急ぎで

持ち場に戻り作業を開始する。扇風機を停止させ、発電機を稼働させると開始も間もない時点で

白黒の幻影が浮かびあがるのを確認した。いくら何でも早すぎるから少し驚いてしまう。しかも

前夜と比べて実体化がやや早くなっているので直ぐに視線を端末の画面に移した。

 ダクトホースの中にいる連中をオーディオ・ルアーで侵入速度を遅らせ、カメラシステムに戻

してからコイン集めを開始する。今度はあまり画面を覗けないので部屋の侵入組を誘発させる為

に端末を覗く動作を繰り返す。すると直ぐに右ダクトからBBが、扇風機の上にHelpyが頻繁に

出現したのでその都度対処してコインを貯めていく。何度か白黒の幻影がちらちらと視界に映り

こんだので白い熊人形を触れることが出来ずに視界と聴覚を妨害される。また、Nightmare BB

も端末を覗き込む度に立ち上がってくるので一々ライトで照らさなければいけなく、作業が著しく

低下する。この間に奴らの進行速度が速まってくるのでたまったもんじゃない。

 何とか十枚コインをかき集めたので急いで端末を起動し人形売り場にカメラを切り替えて死の

コインを購入する。っとここで広告が邪魔に入り作業が一時中断される。スキップボタンを押し

て元の画面に戻すと今度は左右の通路から笑い声とメロディーが聞こえてきたので進行方向に

合わせてドアを閉じる。・・・追い出したのを確認しオルゴールを作動させてから全てのドアを

閉じて端末を起動し、右のカーテンステージにカメラを合わせて死のコインを使用する。引っ込ん

だら右廊下に切り替えてそのまま端末の電源を切る。

 

「ってまだ人形が狐のままだ。もう一度立ち上げねーと」

 

 机にある人形が兎に変わっていないので仕方がなくもう一度立ち上げることにした。丁度換気

警告も出ているので、今のうちに済ませたほうがいいと思い起動したら換気ボタンを押してその

まま端末を下す。今度はちゃんと兎に切り替わっているので一通り面倒な作業はこれで終わった。

時刻を確認するともうすぐ一時になるところだ。此処までは順調に行ける。そう、此処までは。

 

「部屋が蒸し暑くなったからそろそろエアコン付けておくか。」

 

 オルゴールを一時停止し強力エアコンを作動させる。一気に涼しい風がこの狭い空間を包み込み

気分が少し楽になる。適度な室温まで下がったら再びオルゴールに切り替えて次の襲撃が来るまで

待機する。・・・言ったそばからToy BonnieToy Chicaが左右に接近したのでマスクを頭に

装着し襲撃を回避する。立ち去ったらマスクを外し、唸り声を上げている凶悪なクマの子分たちを

ライトで退散させる。

 

「ふぅ・・やっと静かn(♪プルルルルルルルルルルルルル♪)言った途端これだよ・・・」

 

 一通りの対処を終えたと思ったら静寂を邪魔するかのように無機質なコール音が流れだした。

本当に何処から鳴っているのか今までは不明のまま放置していたが、偵察期間の時期に漸く発生源

を特定したのでミュートするためある場所へ向かう。誰もいないことを確認し椅子から立ち上がり

部屋の真正面に置かれているテレビの裏側を確認する。

 

「・・・思った通り。ホント良く見つけたもんだ。」

 

 そこには全身真っ黒に染め上げた如何にも古い代物である固定電話があった。こいつを探すのに

どんくらいの時間が掛かったと思うんだよと悪態付き、ミュート(消失音)に切り替える。すると先

程まで喧しく鳴り響いていたコール音が鳴りやんだ。これで騒音ゲージを貯めずにすむ。

 消し終えたら元の指定席に戻り引き続き対処の作業に移る。発電機を作動させ電力を維持し、

なるべく消費を抑える事に徹底する。・・・ニ十分経過した頃に何度目かの換気時間がやってきた

ので、換気の間に襲撃されないよう全てのドアを閉じてから端末を立ち上げる。・・・この時、

何故か嫌な感じが急に湧き出てきて鳥肌が立ったんだが気にせずに換気ボタンを押した。その瞬間

右廊下に繋がるドアから激しく叩く音が聞こえてきた。・・・尋常じゃない音で。

 

「!!。Rockstar Chicaか?いや、彼女の進行方向にちゃんと看板を設置したはずだ。だったら

 一体だr(!!!!!!ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!!)・・・・・・なんか既視感が」

 

 うん、薄々気付いていたが機械人形の牽制に失敗したんだと思う。吹っ飛ぶまではいかずとも

鉄製のドアに大きな風穴が開いていた。ものの見事に。そして破壊した張本人が入ってきたんだが

 

「・・・ふぁ!?」

 

 意外な奴に俺は少し間抜けな声が上がった。そいつは確か、ボーカルメインでの担当であるはず

なんだが右手にはマイクの代わりにゲームに使用すると思われるコントローラーを握っており、

頭にはヘッドホンを装着していたのでさっきまでゲームをしていたと思われるがそいつの顔を見る

と、明らかに怒り沸騰で顔が震えていた。・・・そいつを見て何が原因で怒らせたのか直ぐに見当

がついた。

 

「・・・お前、ゲームで負けたのか?」

 

 俺がそう告げるとそいつは震えていた体を止めてこちらにゆっくりと顔を向けた。・・・眼球が

飛び出るんじゃないかと思うほどむき出しにして精一杯にらみつけくるので恐らく図星だろう。

そいつ・・・・・Toy Freddyが震えた声で何かを喋りかけていた。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・え?」

 

「・・・・・・え・・せ・・・」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前のせいだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 怒りの沸点が達したのか奴がブちぎれてコントローラーをぶん投げてきたので咄嗟に躱すと

不自然な動きで距離を詰めていき俺を床に叩き伏した。思いっきり叩き付けたもんだから体中

に痛みの振動が伝わっていく。

 

「ぐ!!うぅぅ・・・」

 

 制裁を受けるのは久しぶりなもんだから強烈な痛みが走りだす。それにしてもたかがゲーム

如きでここまで切れる奴もそういないんじゃと馬鹿の事を考えていると気が収まらないのか、

ひたすら俺に殴る、殴る、殴るを繰り返す。顔面負傷になるのは本当に早いもんで顔が腫れた

のか、或いは顔の骨格に罅が入ったのか分からないが尋常じゃない痛みが襲い掛かる。

 ・・・・・ひとしきり殴り倒した後いつの間に用意したのか、奴の顔そっくりのガワを俺の

頭に無理やり装着した。

 

!!!!!!!!!!!!!!

 

 当然だがそのガワは、ワイヤーやら骨組みやらで色んな部品が押し込まれているのでそんな

もんに詰められたら最後、顔の至る所から部品が突き刺していき顔面は勿論の事頭部から下顎

まで貫通し言いようのない激痛と不快感に襲われ・・・・・・意識が遮断された。




"彼らの祭りにはまだまだついてきていないみたいだね"


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Fazbear Fever 2(ファズベアーフィーバーその2)

"こっちがゲームオーバーになったらお前もゲームオーバーにしてやる!!"


「たった5レベル上がっただけなのに一気に難しくなってんだけど・・」

 

 二度目の挑戦、今はコインを集めている最中だが奴らは俺の行動を阻害するように前夜より頻繁

に邪魔してくる。侵入組は勿論、広告などによるモニター画面の妨害や端末を覗き込んだ隙を狙い

襲撃の準備に取り掛かるScrap BabyNightmare BBNightmare Freddyの三人組、更には

音の感知で対処しないといけないNightmareNightmare FredBearMolten Freddy

EnnardBalloraは、音の重複によって感知がより難しくなっているのでしっかり目を光らせて

姿をチェックしないといけないから作業が更に遅れてしまうのだ。しかしもたついてると余計な隙

を与えてしまい、定められた時間内に対処しないと問答無用で襲撃してくるFuntime Foxyや猶予

時間が極端に短いToy Freddyとダクトホース組に瞬殺される羽目となる。

 だからマスクを被りながら聞こえた方向に合わせてドアを閉じ、ライトによる牽制が必要な奴ら

に向けて光を照らしていって音の発生源であるもの全てを断ち切り、尚且つ時間に合わせて発電機

とオルゴールを切り替えて室内温度を基準値を守るようにその都度エアコンを作動させるという鬼

のような作業を繰り返さなければいけないのだ。また、奴らは簡単にミスを誘発させるように同時

に現れ作業量を増やしていく。そうすると他の作業に手を付けられずに・・・例えばオルゴールを

付けようとすると左右の廊下からメロディーが流れだすのと同時に電話のコール音が鳴り響くので

ドアを閉じてからコール音を消す作業に追われ結局付け遅れる、なんてことはざらだ。

 こうされると焦って対処に追い付けずにやられてしまう。同時対処って本当にきついもんだ。今

漸くコインを集め終わりDEAHTCOINを購入しようと端末を起動して覗き込んだ瞬間画面モニター

に風船らしきのがドアップで現れ何故か買えない状態になってしまい、その隙を狙ったのか耳元で

ノイズ音が聞こえてきたので購入を中断せざる負えなかった。マスクを被ってWithered Bonnie

をこの部屋から退出させたらもう一度立ち上げ死のコインを購入してFuntime Foxyを排除する。

 

「どうにか面倒ごとを終わらせることが出来たな・・・」

 

 一通りの作業が終わり換気ボタンを押してから端末の電源を切った。閉じる時Rockstar Chica

が映り込む姿を確認したので白黒の幻影に目を合わせないよう看板を持ち上げて右の出入口付近に

設置して、発電機を稼働させている間に部屋にいる奴らを対処していく。Phantom Freddy

起き上がっているNightmare BBにライトを照らしHelpyを部屋から追い出して顔を若干上げて

いるScrap Babyに電気ショックを与え襲撃をキャンセルさせる。右ダクトから覗いてるJJをドア

で侵入口を遮り退散させる。此処でオルゴールに切り替えて次の換気警告が出るまでそのまま待機

しておく。作業をこなしている内に直ぐ息が上がり汗だくになるも早くなる。こういう所で体力も

持っていかれるので正直きついもんだ。

 

「はぁ・・はぁ・・ほんと勘弁してくれ・・・」

 

 タオルで汗を拭ったら机に置かれている人形をチェックする。

 

「・・・よし、ちゃんと兎になっているな。」

 

 チェックしたら残りの電力と今時間がどれくらい過ぎているのかも確認する。・・・電力は残り

75%と標示されており時刻は午前一時半といったところだ。取り敢えず安定している、って言うに

は厳しい状態だが電力がいい感じに保っているのでこれでもましな方だと思う。兎に角、変なミス

をしないよう心掛けておき、後は・・・奴らの侵入速度と猶予時間によってこの夜を越せるかどう

かが勝敗の道を決定付けるのでやはり実力だけではなく圧倒的な豪運も必要になってくるから余計

に荷が重くなってくる。

 

「結局は運任せになっちまうんだよなぁ・・・」

 

 例えどんな過酷な環境になろうとも奴らは容赦なく襲ってくる。嘆いたって意味がないのだ。

・・・そろそろ換気の時間だしこれ以上他の事を考えるのをよしておこうと決めて引き続き対処の

作業に戻る。

 

・・・・・・・

 

AM 3:45

 

 時刻がもう四時になろうとしている時にある異変を感じ取る。部屋に侵入する機械人形達を対処

するのに忙しかったがそれが終わって一息ついてるときにふと耳を澄ませていると違和感の正体に

気付いた。

 

「そういやキッチンの方から物音が消えたよな。確か・・・Chicaだっけ?さっきまであれほど

 聞こえてきたのに一気に静かに・・・え?物音が消えたって事は・・・・・!!」

 

 そのときになって漸く危機感を覚えるようになる。物音が消失している、つまり彼女は音楽に

飽きてしまい、その部屋から抜け出して俺がいる警備員室に直行するつもりだ。冗談抜きで危険

な状況に陥てしまった。だが、一応救済措置がないわけではない。

 

「いや待て、確かに彼女はもうあの部屋から抜け出している可能性が大きい。だったら何とか

 こちらに来ないよう牽制するしかないから・・・グローバルミュージックボックスを作動させ

 よう」

 

 たとえ飽きてもこのミュージックボックスは何故だか知らないが彼女が飽きていないという判定

を作ることが出来る。しかし、完全に騙されるわけではないので安全という保証はない。が、これ

で最悪乗り越すしかないと思い発電機の作動を後回しにして先に換気をするため端末を起動した。

・・・だけど運がなかったのか猶予時間が切れてしまったのか分からないが彼女に部屋の侵入を許

してしまった。しかも足音も出さずに完全ステルス状態で入ってきて画面を覗いてた俺に向かって

叫び声をあげ持っていた端末を取り上げると地面に叩きつけて完全に破損させられた。

 

「!!!」

 

 彼女の出現に驚愕している俺を両手で鷲掴みにし、机に突っ伏させたら大きな嘴を開けて頭部に

噛り付く。最初は物同士に挟まれている感覚で徐々に痛みが伝わり、体をばたつかせて抵抗する俺

を見る否や思いっきり齧り付く。

 

!!!!!ぎゃぁぁァァァァァァぁ??あkそ:pwh!!!!!

 

 一気に激痛・・・いや激痛なんてもんじゃない。言葉で言い表せないほどの痛みに絶叫をあげる

俺は体の力が抜けていくのを感じながらも想像を絶する程の苦しみに味わってのたうち回る。けど

彼女の腕から逃れることは出来ず最終的には頭部からの出血と頭蓋骨破損によるショック死という

結末を迎えた。数分間の地獄の苦しみと共に・・・・・

 

・・・・・・・

 

 それからというもの、この夜では徹底的に奴らに扱かれることになった。コイン回収に間に合わ

ず二度目のFuntime Foxyによる殺戮ショー、時間的に間に合わなかったのかオルゴールが切れて

Puppetに首を絞め上げられる、ライトによる誤爆でNightmare BBに頭を齧り付かれ、騒音を

断ち切ることが出来ずにMusic Manに首をへし折られる。一番ひどかったのはToy Freddyの猶予

が短すぎてコインを回収する前に何度も八つ当たりを受ける事になった。・・・幾ら何でもゲーム

下手すぎんだろ。

 ・・・そして何度目なのか分からなくなった挑戦で漸く五時まで上り詰める事に成功する。今回

の挑戦では比較的猶予が長かったのか切れやすい熊が襲ってくることもなくFoxyも侵入してない

状態で残り僅かな電力を保ってきた。

 

「・・・・・いい加減クリアさせて・・・」

 

 もう喋る気力もなくなり体も完全に力が抜けて呆然と座り込む。一々マスクを手に取る事さえ

面倒くさいので換気以外はずっと被りっぱなしにし、手にはライトを常に携帯している。後一分

でこの夜を乗り越えることが出来る、もはやここでミスは出来ない。浮かび上がる白黒の幻影を

無視して笑い声が聞こえたので正面ダクトにドアを閉じる。・・・これが最後の作業であるかの

ように朝のチャイムが鳴りだした。

 

"♪キーン、コーン、カーン、コーン、カーン、コーン、キーン、コーン♪

 

「・・・や、やったぁ・・(体が倒れる音)」

 

 もう喜ぶ気力さえなく朝を迎えた瞬間に体が眠りにつくよう促す。そして意識に身をゆだねる

ように眠りについた。




"片道地獄を進んでいけ。ほら、着実にゴールに近づいているだろ?"


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Welcome to Crazy Party!!! and Repeated Nightmare・・・

"歓迎するよ。繰り返される悪夢と比にならない狂気を兼ね備えた極悪非道の宴会へ・・・"


・・・・・・

 

 何度目だ?

 

(!!!!!!!サァァァプラァァァァィィィズ♪!!!!!!)

 

 正面ダクトドアを閉じてMoltem Freddyを追い出す。広告と電話のコール音が他の侵入者達の

存在を掻き消していき、俺に更なる混乱を与える。気付いたときは奴らの手中・・今回はBallora

が俺を裁く審判官だ。どうやら廊下から流れだすメロディーに気づけなかったのが敗因のようだ。

優雅な動きで部屋に侵入し体を拘束された俺に彼女は問いかける。

 

「貴方はこの奇妙な空間を自ら作り上げて何を為したいの?」

 

 ・・・分からない。そう告げる他なかった。聞いて興味を無くしたのか、"そぅ"と告げると俺の

顔に手を当て、ゆっっっっくりと皮膚を剥がし始める。彼女の手が俺の鮮血で染まり尽くす頃には

もう絶命しているだろうと激痛に苦しみながら考える。

 

 これで何度目の挑戦だ?

 

 開始直後、運が悪かったのか或いは図った行為なのか、俺の視界に白黒の幻影が異常な程の速さ

で実体化して目線を逸らす時間を与えずに奴の腕が俺の体を突き刺した。過去最速の殺しといって

も過言ではなく一度も作業する事さえ許されずに絶命した。

 

 もう数えていないんだ。

 

 部屋の換気をする暇さえ与えずに奴らはこの部屋に押し寄せてくる。止むことのない機械人形達

の襲撃を対処しきれずに戸惑う内、Withered Bonnieにマスクを取り外された。猶予時間が過ぎ

てしまったようだ。例え顔が大きく破損していても、その赤い瞳が俺の姿を逃がさないように捉え

だし、体の四肢を一部ずつ千切り取る。

 

「たとえ僕の顔が無くなっても、君が這いずり回る姿は見えてるよ。

 

 芋虫のような体にされた俺が大量の血を流して痙攣している姿を見て奴はそう言った。全くその

通りでなんとも思わなくなった。

 

 なぁ、誰か教えてくれ・・・俺は・・・

 

 それに奴らの襲撃が激化しただけでなく、追い打ちをかけるかのように新たな刺客も送り込んで

くる。開始十五秒前後でDeeDeeの亜種のような奴が不気味な動きをしたかと思えばモニター画面

に次々と挑戦者が出現したという文字が表示され目を疑った。これでは余計に作業が増すだけなの

で実質五十体+αと戦う事になる。所謂隠しキャラという奴らは俺にとってまだ未知の領域という

存在であり対処法も全く分からない。いや、何体かは会ったことあるが結局対処のすべも理解して

いない状態だ。部屋を真っ暗にして大幅な視界の妨害をしてくるShadow Bonnie、何処に出現

しているのかも不明で気付いたら大口で体の至る所を噛み砕いて殺られるPlushtrap、鋭い歯で

俺の首を噛み千切るまでゆっくりと口を閉ざしていくNightmare Chica。今のところはこの三体

の存在を確認しているが多分まだ出てくると思うと憂鬱になってくる。ついさっきも、こいつらに

殺された所だ。

 

 俺は・・・もう分からなくなっちまったよ。

 

 コインを集めきる前に大抵やられていく。死んではやり直し死んではやり直し・・・・・まるで

再生テープが壊れて直されることもなく何度も同じ内容を流すように、同じ作業をしてもそれが良

い方向で進んだ覚えがない。大体開始から三十分で殺されるのは当たり前で長くても一時まで・・

この夜を数えきれないほど挑戦していく内に、死に対する恐怖も感じなくなり平常心もぶっ壊れて

何も考えれなくなった。何でだろうな?こんな終わりを告げる事のない夜をクリアするために飽き

なく挑戦する俺って・・・本当に何の為にやけになって戦ってるんだろうな。開始ニ十分後で部屋

に侵入するFoxyに対してそう告げると視界が暗転してきた。・・・あぁ、換気の時間に気づかな

かったな。忙しすぎてそれすらも忘れてしまうのはあまりに致命的な事だ。

 

「知るかよ。お前がやってることだろ。」

 

 再び視界が戻ってきたときには体を組み合わせて立ちはだかっている狐がいる。フックを俺に向

けてそう吐き捨て、振りかざした後は・・・もう覚えていないや。

 

 一種のノイローゼになりかけてる感じだ。思考がぐちゃぐちゃになり、俺がやってきてる事さえ

その意味も見いだせない。最早俺の意思とは関係なく体が動いてるのかと思う事もある。そんな訳

ないのは分かりきっているんだが・・・それでも改めて自身に問い掛ける。どうして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの狂った究極な夜をクリアしようと奮起しているのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

挑戦設定:機械人形のAI Level All 20/50+α

チャレンジ項目:「Golden Freddy」




"さまよい続けろ、意味も考えずにな。"(By Henry

・・・割と短い文章になってしまった。(By作者


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Whirlpool(業の渦)

罪がお前の進むべき道を防いでる。それを取り払えば先に進めるだろう。


「駄目だ駄目だ。こんな考えじゃ何時まで経っても進まない。」

 

 先程まで狂ったように究極の夜を挑み続けたが、成すすべもなくやられるだけで無駄な命と時間

を浪費する事にいい加減気付いた俺は、一時的に挑戦を止めることにする。頭の中に浮かび上がる

ネガティブな思考を取り払うために深呼吸を繰り返して平常心を取り戻そうと試みるが、死に過ぎ

たもんだから命に対しての軽視と軽い鬱にかかってる状態でとても心が落ち着くはずがなかった。

目を閉じるたびに俺が血祭りにあげられる光景が浮かび上がり、その都度部屋の周りから誰のもの

でもない野太い笑い声が響き渡って、机の上に人か動物なのか判別できない程歪んでいる顔が俺を

睨みつけてくる。殺戮のフルコースに幻覚と幻聴を付け加えてくるから余計に最悪な気分になって

きた。

 

「・・・不味い、本当にこの考えを無くしていかないと何時か俺という自我までぶっ壊される。」

 

 流石にそうなるのは御免だと思い強引に思考を停止させて、今はもう何も考えちゃいけないと俺

自身に呼び掛けておき、一度机に突っ伏して気分が少しでも良くなるまで体を動かさないよう仮眠

をとる。幸いなことに睡眠の時間は任意で確保できるから好きな時に眠れる。狂いそうになる俺を

正気に繋ぎ止めてくれる唯一の手段を使わずにはいられなかった。

 

・・・・・・・・・・

 

「・・・ふぅ、さっきよりかはましになったな。」

 

 ずいぶん長いこと寝ていなかったから気分はだいぶ良くなり、思考も少しだけだが出来るように

なる。体を伸ばして改めて深呼吸を繰り返し、眠りから覚めるようにする。そして意識がハッキリ

した所でこれからの行動について考える事にする。

 

「先ずはやっぱり隠しキャラ達を何とかしていかねーと。あいつらを攻略しない限り、先に進む事

 は不可能だ。」

 

 数も対処法も把握していない状態で今までは挑んできた。それすら間違ってるのにも気づかない

俺も馬鹿そのものだがな。だが逆にそいつらさえ何とかすれば、今まで通りにコイン集めやら対処

の作業に戻ることが出来る。言ってしまえば奴らの厚い洗礼を受けるだけだから、従来の対処次第

で朝を乗り越えることも可能。・・・そうと決まれば早速行動開始だ。

 

 "第一関門は隠しキャラ達の襲撃を完封する事"

 

 挑戦設定を先程と同じように設定し、究極の夜を開始させる。・・・開始のアラームが鳴り響く

のを聞いて素早く作業に取り掛かる。DeeDeeの亜種は大体十五秒前後で現れるのでそれまで同じ

ようにダクト組をオーディオ・ルアーで誘導させ、Toy Freddyのミニゲームに一度だけ付き合い

人形売り場にカメラを固定する。続いて端末を覗く動作を繰り返し侵入組の機械人形達を誘発させ

コインをかき集める。三枚ぐらい集まったタイミングで奴が不規則な動きをしながら出現してきた

ので一度コイン集めを中止し、隠しキャラたちを召喚させる。・・・一体目はShadow Bonnie

部屋に出現、こいつは唯部屋を真っ暗にするだけなのでよく目を凝らしながら襲撃を窺う機械人形

達を確認すれば事故は減る。対処しているその間にも次の刺客が送りこまれてくる。・・・二体目

は恐らくPlushtrapだろう。この部屋にいないってことは画面モニターの何処かに出現

しているだろう。なので奴を探し出す必要がある。

 しかし、こいつを探し出すにはあまりにも困難を極めた。監視カメラで覗いてる間は劇的に侵入

速度が上がって頻繁に機械人形達が訪れてくるし、Phantom BBPhantom Mangleによって

画面モニターを見る暇を与えないから見つけ出す前に何度も死を味わう羽目となった。部屋を一回

切り替えるたびにノイズ音が発生し、広告等の視覚妨害、時間が切れてPuppetFuntime Foxy

に手を掛けられるなんて事はざらさ。だがこっちも死に物狂いで挑み続けて、多分五~六十回目の

挑戦の時だろう。漸く居場所を判明することが出来たのさ。

 あいつは右の海賊入り江に出現していた。・・・カメラでギリギリ捉えられる右端に椅子の上で

佇んでいるのをしっかり目視したから間違いない。まぁ、その後Toy Freddyに侵入されたので僅

かしか見れなかったよ。けど、対処法も何となく把握できる。どうせ数秒見つめるんだろ?これで

二体目の隠しキャラも攻略したのと当然だ。そして次は三体目のNightmare Chicaなんだがこれ

は割と早く対処法を見いだせた。室内温度を下げる時丁度奴が現れたタイミングで作動させたら急

に上下から押し寄せてくる鋭い牙を引っ込めたから、冷温に弱いと直ぐ気付くことが出来た。

 ・・・まぁ、マグレだがな。けど一応これで三体分の動きと対処を把握できたから、活路が見い

出せた気がした。

 

「やっっっと進める・・・」

 

 以降は新たな作業を付け加えて挑戦してみる事にする。・・・効果が効いたのか以前よりも長い

時間まで伸ばすことに成功した。三十分までしか持たなかった究極の夜も何と初である二時の時間

帯まで持ってこられたのだ。此処まで来てようやく進歩の兆しが見え始め、若干だがクリアできる

という可能性が浮上してきたので気力を少しずつ取り戻してきた。手詰まった作業も飽きなくやり

続けるうちに、だんだん慣れてきたのか機械人形達の同時対処は勿論の事、円滑にコインを集める

のも楽になってくる。そして一時を過ぎる段階で案の定、新たな隠しキャラが追加されてきた。

 警備員室内に出現し右から左へ横切るピンク色の兎Bonnet。鼻をタッチし引っ込めないと襲撃

されるという斬新な対処法に一度翻弄されたが二度目ですぐ慣れた。・・・白黒の幻影とそいつの

行動範囲が被るのは本当にやめてほしいが。五体目は一定時間の間限定で俺の顔に引っ付いてくる

バレリーナのミニ版MinireenasPlushtrapに次ぐ厄介な敵でほとんどの視界を奪っていくから

襲撃の予兆の確認が必要なFoxyNightmare BBNightmarionneScrap babyとの相性は

最悪な意味で抜群だ。おかげで事故による襲撃が死因の大半を埋める羽目になる。けど、僅かだけ

なんだが隙間は空いているので慎重に作業を進めればなんてことはない、大体一時間ぐらいで勝手

に去ってくれる。そして六体目が画面モニターに姿を現してビープ音で聴覚を妨害する顔だけ狐、

Lolbit。ハッキリ言って害悪な塊そのものであり、騒音ゲージもトップクラスで急いで対処しない

と色んな意味で大変なことになる。先ず機械人形達の進行速度を激化させ音による感知も出来ずに

接近音など聞けないというリスクが跳ね上がり、更には騒音ゲージで襲撃する奴らを煽りだして意

のままに襲わせようと仕向けてくる。そうならないように対処をするんだが、その方法も超特殊。

LOL」という単語をモニター画面に沿ってなぞらなければいけない。・・・しかもこいつが消え

るまで何度も行うんだ。

 一見簡単そうな作業に聞こえるが面倒な事この上ない。だから大急ぎで文字をなぞる必要がある

・・・なんか想像したらシュールな光景が容易に浮かんでくるんだが。え?どうやって分かったか

って?・・・画面に表示されていたよ。兎も角、こいつを最後にもう追加される事はなかったから

実質六体の隠しキャラの存在を確認した。一通りの対処は覚えたので後は、完全に掌握できるまで

ひたすら挑戦の繰り返しだ。・・・取り敢えず三時まで持ってこれるように。

 

・・・・・・・・・・

 

「・・・よ・・漸く、でき・・・た。」

 

 あれからどのくらいの時間が経過したのだろうか?いや、究極の夜を乗り越えない限り時間自体

は進まないようになっている。死亡回数も恐らく四桁を上り詰めてきた所だろう。相変わらず精神

が可笑しくなって今にも自尊心が壊れそうになっているんだが、前よりかは何故か楽観視になって

憂鬱までには至っていない。それでも十分重傷だが、何か・・・憑き物が取れた感覚がする。

 それに先程の夜で何とか三時まで生き残ることに成功したので取り敢えず全隠しキャラの完封と

いう当初の目的は完遂した。次の鬼門となるコイン集めも同じ作業をひたすら繰り返したので迅速

にかき集める事も可能となったから、これもクリアの範疇に入る・・かな?後は死のコインを使用

する間に猶予時間が極端に短い奴らがやってこないよう祈りながら、電力を維持させオルゴールと

室温の管理を把握し奴らの侵入を全て防ぎきれば・・・

 

「・・・やっと、クリアの道筋が見えてきたぞ・・。」

 

 今までは絶望の渦中をさまよい続けて唯がむしゃらに道を歩んでいたが、結局の所は機械人形達

に弄り殺されるだけに終わり通過点もいかずに心が折れかけていた。実際今も正気を保ってられる

かと聞かれたら首を縦に振れないだろう。しかし、幾度の犠牲と血の滲む様な挑戦をしていく内に

僅かずつであるが、この地獄の夜を乗り越えれるように着実にゴールへ近づいているのが身にひし

ひしと伝わってくる。なので俺はいつの間にか、この苦行に対して強気で挑めるようになってきた

・・・そう感じたんだ。

 

「散々煮え湯を飲まされてきたが、今度は奴らが辛酸を味わう番だ。・・・もう、何も怖くねぇ」

 

 俺はこの究極の夜を何が何でもクリアして、奴らに一泡吹かせてやると決意する。意味?価値?

そんなものはねぇ。第一、こんなことをやってもあいつが俺をこの地獄から解放してくれるとは思

ってない。そう、意味のない事に奮起している俺を見て奴は嗤ってんだろう。・・まるで俺が行っ

てきた殺人そのものに意味がないように、この場所もそういった一種の暗示をして存在していると

思ったこともある。・・・だが、一度決めたものを途中で放り出すつもりはない。

 

「たとえ俺と俺の罪を裁いても、奴らに無意味だという事を思い知らせてやろうじゃねぇか!!」

 

 気付けば俺は口角を上げて薄ら笑いを浮かべていた。罪人を裁いても決して心変わりしない事実

を奴らに突き付けてやる。奴らだってうんざりしてるんだろう?潰しても潰してもゴキブリのよう

に湧きあがる俺を見てさ。何なら審判自体を放棄させるまで徹底的にやってやるよ。奴らもまた、

俺を永遠に裁き続けるという呪われた運命から抜け出せないように、俺もこの地獄から永遠に抜け

出せないという運命を背負って今回も挑戦しつづける。そう、どちらかが身も心も完全に壊れてい

くまでに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ふぅ~ん。彼はどうやら僕らと限界まで戦い続ける気だよ。Foxy

 

「・・・っけ、好きにすればいいじゃねぇか。」

 

「まぁ、退屈しのぎになるから僕は悪くないけどね。あいつがウザい事には変わりないけど。」

 

「・・・お前がちゃんと働いたところなんか見た事ねe(殴打 何すんだよてめぇ!!」

 

「カメラを故障させてからいつも君を送り届けるのは一体誰だろうね。」

 

「・・・何かすまん。」

 

「分かればいい。後あんまり大きな声で叫ばないで、五月蠅いから。」

 

「・・・それは我慢してくれよ。こういう声帯なんだからよぉ。」




"先に朽ち果てるのはどちらだろうな?"


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Fourth wall(第四の壁)

究極の夜を挑んでいる彼を、その様子を覗く存在のお話


"・・・・・・"

 

 此処は、地獄へ落ちた彼が知る機会のない場所。背景全体が赤黒く塗りたくられて周りにドット

絵で表示された木々が生い茂り、その中心にある池の縁に腰を下ろしている一人の老人がいる以外

何もないところだ。その老人の容姿が兎に角奇妙なもので、体色を真っ赤に催したワニ?に似ても

似つかない姿をしている。様子としては両手に釣り竿を手にし、白く濁った水の中に釣り糸を放り

込んでいる事から恐らく魚釣りをしていると思われる。"ポチャん・・・"という水音と、そこから

波紋が広がり静かな魚釣りが始まる。老人はそこから身動ぎせずに魚が掛かる瞬間を待つ。

 ・・・っと、そこにこの世界では見かけない一体の熊の姿をした人物が現れる。

 

"・・・・・!"

 

 老人も驚いたことだろう。自身の世界に異質なものが紛れ込ん来るなんて想像できただろうか?

しかし、不意を喰らっても老人はその異質なものを一目見て直ぐに警戒心を解いた。見覚えがある

のだろう、熊の姿をした存在に一声かける。

 

"・・・君か。まぁ、取り敢えずこちらに来なさい。疲れてるのだろう?"

 

 熊の姿をした存在は老人の呼びかけに反応し、ゆったりとした歩行で歩きだし池の縁にある丸太

に腰を掛ける。やはり疲れてたのだろう、息が少し荒くなっている。・・・少し時間が経過して一

息ついた熊に質問を投げかける。

 

"君は何処から此処へ入ってきたんだい?"

 

"・・・・・・・"

 

 応答なし。・・いや、困惑しているようにも見える。覚えがないのか?っと老人は考える。なら

尚更不思議だ。この場所はとある条件を満たさない限り決して立ち入り出来ない、それ以前にこの

場所さえも知るすべがないというのに隣に座りこんでる異質な存在は此処へ入ることが出来た。他

にも聞いてみる事に専念する。

 

"先程の質問に答えられないという事は覚えがないからか?"

 

"・・・・・コク(首を縦に振る"

 

"ならどういう経緯で此処にやってきたのかも分からない?"

 

"・・・・・(首を横に振る"

 

"おや?入った方法は思い出せないが目的は携えてるってことなのか?"

 

"・・・・・コク(首を縦に振る"

 

"ほぅ、興味深い。では何の目的で此処に来た?

 

"・・・・・お父さん"

 

"・・・あぁ、そういう事か。なるほど、・・・話の本筋はつかめたよ。

 

"・・・・・・・"

 

"はぁ(溜息、父親を捜すためにわざわざこちらにやってきたのか。なら無駄な労力になったな。

残念ながら君の父親は此処にいない。・・・寧ろあの男を素直に父親と呼べる君に驚きを隠せ

ないよ。

 

"・・・・・・・"

 

"以前君に言ったはずだ。君はもう眠りなさい。あの男のことなど忘れなさいってあれ程言った

にも拘らずまだ未練を残しているのか?すべては終わったはずだぞ。あの男は今なお審判官に

裁かれ続けている。罪を重ね続けてきた救いようのない男は、君自身までも君の大切な物全て

を奪い去った。大切な家族、仲良くした兄弟、安寧の寝床、そして・・・自由を。"

 

"・・・・・・・"

 

"それを全て自身の欲望の為だけに道具として利用した挙句に君を・・・もう気付け。あの男は

君の父親ではない

 

"・・・・・・・"

 

"それに君が体験したものは全てあの悪魔が用意した偽りの物語だ。君が感じていた父親の愛も

そのうちの部類に入る。"

 

"・・・・・・・(顔を俯く"

 

"分かってくれたかな。言っておくが君を傷つける為に厳しく言ったわけではない。それで君が

傷ついてしまったなら私は素直に謝罪する。だが、嘘は言ってない。残酷な物語は全て真実な

のだ。・・・君は報われない形で最期を迎えた。余りにも悲しい結末で・・それが私にとって

は不憫に思うのだ。いつまで経っても偽りの優しい父親に囚われてさまよい続ける君を見て。

・・・だから悪夢の事は早く忘れて本当の父親に会いなさい。"

 

"・・・・・・・(顔を上げる"

 

"さぁ、この世界から抜け出す方法を教えてあげよう。目の前に広がる池があるだろう?そこの

中心点の奥深くまで潜りなさい。大丈夫、これは現実にある池じゃないから息が苦しくなる訳

でも窒息するわけでもない。ちょっと不快感が残るだけで暫く潜っていけば慣れるものさ。"

 

"・・・・・・・コク(首を縦に振る"

 

"いい子だ。それじゃあ短い間だがこれで本当のお別れだ。もう此処へは来るんじゃないぞ。"

 

"・・・・・・・コク(首を縦に振る"

 

 老人の最後の言葉を告げたと同時に熊の姿をした存在は少し早歩きで池に向かい、足から水

に浸かりそのまま沈んでいった。・・・結局、この世界への出入り方法は分からない形で少し

頭を悩ませたが気にしないことにした。どうせ来ることのない訪問者にあれこれ考える必要が

ないからだ。

 

"・・・さて、魚釣りの再開とするか。"

 

 そう独り言を告げると置きっぱなしにした釣り竿を再び手に持ち、魚が来るまで丸太椅子に

腰を掛けてゆっくりと待つことにした。

 

"・・・・・・グォン!!(釣り竿が引っ張られる"

 

"おおっと、早速掛かってきたみたいだ。えらく早い気がするが・・・"

 

 暫くは釣り竿を引っ張る魚と対抗していたが、先に魚に限界が来たのかあっさりと引き上げ

る事に成功する。その魚の容姿を見た老人は・・・

 

"・・・これは、これで奇妙な形をしたもんだ。しかし見覚えがあるな、まるで・・・・・"

 

 この世界に訪れる人はいない。・・先程の異例は除いて今日も老人は魚を釣る日々を送る。




"さて、彼の釣った魚はどんな姿をしていたのかな?"


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Beyond impossible(不可能を超えろ)

"さぁ、おいでよ。終結の時を迎えよう。"


(!!!ドスゥ!!!)

 

「ぐぅ!!・・・がはぁ・・・(ドサ・・)」

 

 またやられた。注意を怠った代償としてNightmare Fredbearの腕が俺の腹を突き刺したので

そう実感する。大きく目を見開き時間がゆっくりと流れるような感覚で床に倒れる。咳き込む度に

あふれ出る血を飲み込むので余計に苦しくなり数分間の間、悶え苦しみながら絶命した。

 此処までやられると、もう何も感じなくなってくる。あぁ、また失敗したなという思いでまた次

に挑戦する。クリアするまで同じことをひたすら繰り返すだけだから、変化が起きないこともあり

気付けば無口で作業に取り掛かっている。

 

「・・・・・・」

 

 大抵やられる時間帯は十二時半から一時の間。多くは猶予時間が極端に短い機械人形達によって

襲われている。コイン集め自体は慣れたんだが集めている段階で襲撃スピードが大幅に上がるもん

だからDEATHCOINを購入する段階までたどり着けないのが難点。そう、これさえ完遂できれば後

はうんざりする程やってきた対処や作業を朝まで繰り返せばいい。

 

「・・・よし、もう一発気合を入れておくか。」

 

 数えきれない程のリトライを究極の夜に費やし続けて動きは完全把握しているので、これで最後

と言わんばかりにスタートボタンを力強く押す。少し時間が経った後に何度も聞いた開始アラーム

を耳にし、作業を始める事にする。・・・これが本当の最後の戦いとして。

 

"ジリリリリリリリリリリリリ!!!"

 

AM 12:00

 

 開始直後、扇風機を停止し発電機を稼働させて一度席から立ち上がり、左に設置されている看板

を右の出入口に設置しておいて再び席に座わり端末を起動する。ダクトシステムに切り替えて左端

にオーディオ・ルアーを設置、カメラシステムに戻しToy Freddyのいる部屋に切り替えゲームを

一度だけ手伝って人形売り場にいつでも買えるようセットし端末から目を離す。このタイミングで

オルゴールに切り替えコイン集めを開始する。左右から接近するToy BonnieToy Chicaをガワ

でやり過ごしていき、覗いてる間侵入してきたNightmare Freddyの子分をPhantom Freddy

と共に追い払って他の襲撃者がいないことを確認し端末を覗く行為を繰り替えす。

 丁度DeeDeeもやってきたから同時対処できるよう構えて置く。侵入組を誘発させて出口前まで

来たらドアで締め出しコインを貯蓄する。六度目の端末を下した時にShadow Bonnieが出現した

ので暗闇に紛れ込む機械人形達の存在をいち早く察知し焦らず同時対処しておく。三度目の広告を

切った時にコインの数が十枚に達したので急いで立ち上げ死のコインを購入、右の海賊の入り江に

カメラを合わせた瞬間ノイズ音が発したので一時中断しマスクを被る。正面にWithered Bonnie

Golden Freddyの存在を確認しガワを被ったまま発電機と扇風機を稼働させ、襲撃の準備を整

えてるNightmare BBにライトを浴びせて中断させる。二体がこの部屋から消えたことを確認し

たらマスクを外して扇風機を停止、今度は強力エアコンを作動させNightmare Chicaを追い払い

またオルゴールを作動させもう一度端末を起動し、死のコインをFuntime Foxyに使用しながら

椅子にもたれ掛かってるPlushtrapを数秒見つめておく。

 この時が一番緊張する。こうして見ている間に他の機械人形達が侵入してくるんじゃないかと嫌

な思いが巡っているからだ。しかし、今回は運が良かったのか誰もくる様子がなく無事に兎の人形

を追い払う事に成功したので直ぐに右廊下にカメラを固定してそのまま端末から目線を話す。

 丁度影兎も消えた事だし換気もコイン集めをしている最中に既に済ませてあるので、後は卓上に

設置されている人形を確認する。・・・兎に切り替わっていたのでFoxyの牽制はしなくてもいい

みたいだ。

 

(!!!!!ダダダダダダダダダダ!!!!!)

 

 っと気を一瞬緩めたのを見計らっていたかのように猛スピードで右ダクトから機械人形が接近し

て来る。音を聞き大急ぎでドアを閉じる。・・・ぶつかった音が鳴り響き事なきを得た。こうした

一瞬の隙も狙ってくるので本当に油断ができない。ドアを開けたら再び発電機と扇風機を作動させ

室内環境を安定にした状態で整えておく。

 

"ふふ♪ははは♪"

 

 整えている間にも奴らは襲いにやって来る。部屋を横切ろうとするBonnetの鼻を押そうとする

がそれを阻害しようと白黒の幻影が姿を重ねて目線を合わせようとする。だが、奴の弱点を知って

いる俺は慌てずに部屋の左端を見つめる。その時ピンク兎がそこを通過してきたので即鼻を押す。

すると兎は下に引っ込んでいき白黒の幻影も消えていた。これで一通りの対処が終わったので次の

換気が来るまでオルゴールを挟みながら、部屋に侵入してくる機械人形達を撃退する方針で作業を

進めていく。

 

AM 1:35

 

 Molten Freddyの笑い声と床が軋むような音が正面ダクトから交互に鳴り響くのを確認しドア

を閉じ、電話のコール音と左廊下からBalloraが発するメロディーをいち早く聞きつけ左ドアを閉

めてから真正面に置かれてる机の裏側に回り込み、電話音をミュートに設定し騒音を絶たせる。

 Music Manは・・・まだ稼働していない。なるべく奴を起こさないよう逐一騒音を切らなけれ

ばいけないので慎重に立ち回る。黒い熊Leftyも同様な対処を施さなければ一発アウト。奴は騒音

だけでなく室内温度によっても進行速度が激化してしまうので処理が面倒だ。なので室温を70F°

まで下げつつ電力もなるべく抑えていかなければいけない。扇風機の稼働による電力消費も馬鹿

にならないからだ。・・・騒音を絶ち切った後の次の処理は、視界妨害に遭いながら襲撃の準備に

取り掛かる機械人形達の牽制をしなければならない。視界が狭まるのは正直辛いもんで、よく観察

しないとライトの付け忘れ等で事故が起きてしまう。特に机の上に置かれてる狐と兎の人形が入れ

替わってるか分かりづらいもんだから、しょっちゅう早い段階でFoxyに侵入される・・・なんて

事がよく起こるので食い入るように何度も確認する。

 端末にも広告と釣りのミニゲームが頻繁に発生し一々切るのが面倒なので広告は兎も角、ゲーム

が発生した時は端末を起動する必要がある以外は基本放置する。・・・おっと、そろそろ換気時間

が来たようなので端末を立ち上げる。素早く換気ボタンを押した後は瞬時に下して同時にマスクも

被る。・・・Golden Freddyは神出鬼没なだけあって、何時でも正面に待ち構えてる。この夜で

一番出現回数が多いこともあり、皆勤賞でももらえるんじゃね?と下らない思いをしながら看板を

持ち運び、Rockstar Chicaがいる方向に設置し直す。・・・白黒の幻影を直視しないように。

 

AM 2:01

 

 漸くMinireenasがいなくなったので視界が良好になり、事故等による襲撃は避けられるだろう

と思って引き続き対処の作業に取り掛かる。ビープ音を鳴らし続けるLolbitをいち早く対処し騒音

を下げたら発電機を少し長めに作動させる。二時の段階で残りの電力が69%と表示されていたので

此処からは電力の節約を意識するよう行動を切り替える。侵入待機組の機械人形達は出入口一歩前

で行動を止めるので換気のタイミングを見計らってドアを閉じる事にした。焦ることはない、厄介

な性質を持つ隠しキャラ達は全て排除した。オルゴールと室温の管理はほぼ完ぺきに出来ている。

ダクト組の動きもなく、八つ当たり熊もやってきていない。最も危険で面倒な奴も追い出したので

作業は比較的楽だ。なので今意識することは、如何に電力を時間ギリギリまで保てるかどうかだ。

 そこに、この究極の夜を乗り越えられるかが全て掛かってる。失敗は許されない、改めて再認識

して部屋に侵入してくる奴らを対処する。

 

AM 3:56

 

 もうすぐ四時になる。手が震えてきた。此処までこれたのは初めてで緊張してくる。奴らも焦っ

ているのか、露骨に襲撃回数を増やしていく。流石に頻繁に来られると奴らを追い出す為のドアを

閉じる機会が多くなるので、その分の電力が削られるから困る。残り40%、・・・微妙だ。

 こうなってきたらオルゴールを作動させる時間も短縮しなければいけない。それにもう一つ困る

ことがある。Foxy人形からBonnie人形に入れ替わってくれない事が増えてきた。換気を済ませた

後に十秒数えてから端末を覗き込んでいるがこれが中々大変。覗こうとしても他の奴らに阻害され

て見る機会を失い、覗き込んだ後でもまだ入れ替わっていない場合があるので余計な作業が増えて

しまう。今のところは侵入されていないがいずれは・・・

 

"♪プルルルルルルルルルル♪"

 

 ・・・どんだけイタ電してくんだよ。これ以上作業を増やさないでくれ・・・。

 

AM 4:29

 

 時間が進むにつれて奴らの動きがますます激しくなり更に本気を出してくる。同時侵入は当たり

前、尚且つ騒音と被せて侵入を試みる輩も増えだした。左右から接近してくる兎とアヒルをマスク

で対処している間にNightmare FredbearNightmareが両側出入口に、正面ダクトから目玉

だけを覗かせるSpringtrapが出現している。ここはしっかり姿を目視し、それぞれのドアを閉め

て追い出す。緑鳥が室内を飛び回っているがそれを無視して扇風機に乗っかているHelpyを手で払

いのけて退散させたらオルゴールを少し遅らせて起動させる。

 ・・・さて、俺はそろそろ覚悟を決めなければならない。目線を前に合わせてそいつを見据える

ように態勢をとる。

 

「・・・よぉ、どうやら残りの時間はお前との一騎打ちだな。」

 

「・・・・・(ギロリ!!)」

 

 俺にとって恐るべき事態が起きた。・・・遂に侵入されてしまった。Foxyに。奴の猶予時間は

四時の段階で切れてしまい、恐怖の盗塁が始まったのだ。俺が端末を覗き込んだ瞬間を狙い次々と

自身の体パーツを投げ込む。仮に現時点で全てのパーツが揃ってしまったら次の換気時間の時端末

を起動した時点で終いだ。そうなったら今までの苦労が水の泡。だが幸いなことにパーツは完全に

揃っていない。投げ込まれたのは頭部と下半身、それと右腕だ。まだ左腕、胴体は投げ込まれてい

ないので現時点で襲われる心配はない。

 問題なのは最後となる換気をし終えた後の残り時間。多分その時は電力は尽きるだろう、と残り

29%と表示されている電力を見てそう懸念する。奴も最後の時間を迎えた時に襲撃の準備を整える

はずだ。恐らく最後の換気をした時には全てのパーツを揃えて襲撃の準備を整えるだろう。だから

最終的には持久戦として持ち越さなければいけない。なのでこれ以上は端末を見ないようにして、

出来るだけ電力を抑えながら侵入してくる他の機械人形達を対処する。

 

AM 5:53

 

 ・・・最後だ。最後の時間だ。もしかするとこれで終われるかもしれない。この狂いに狂った宴

から今夜限り終わって永遠に受けなくて済むかもしれない。どれだけ・・・どれだけ待ち望んだ事

なのか・・・。うんざりする程の制裁を喰らい、自身が壊れそうになるまで追い詰められた奴らを

今夜限りで・・・。しかし、奴らにとっては俺を狩れる最後のチャンスを逃したくないはずだ。

 残り七分を切った。電力は残り8%。僅かにある電力を出来るだけ奪い去ろうと躍起になる筈。

そして今なおオルゴールとドアの開閉によって電力が・・・いわば俺の命綱となるものをジワリと

無くしていく。此処まできて電力を切らすわけにはいかない。せめて、残り三十秒まで持ちこたえ

ないといけない。奴らの猛攻撃を躱し、オルゴールと発電機をこまめに切り替えて限界まで登り詰

めていく。・・残り三分。残り電力5%。あともう少し・・・息が苦しくなり、眩暈の症状が現れ

てくる。換気をしていない状態なので酸欠に陥ってると思う。・・・耐えろ。兎に角耐えろ。この

苦しみなんか奴らの制裁と比べればかゆいもんだ。体を震わせ意識が飛ばないようにする。

 ・・のこり一分。残り電力3%。喘息まで俺に襲い掛かってくる。ひどい息切れと汗をかきすぎ

て気分が悪くなる。正直この体調で奴らを相手にするのは辛い。手を休ませる機会も与えずに頻繁

にやって来る。余程俺がこの夜をクリアするのを嫌がっているみたいだ。・・・上等だ!!

 ・・・残り三十秒。残り電力・・・1%。・・・最後の審判が訪れる。

 

"!!!!!!グオォォォォオオオン・・・・!!!!!!"

 

 遂に電力が切れた。この瞬間、俺は・・・全力で祈りだした。もう神でも悪魔でもいい。唯一つ

の願いを浮かべる。この夜をクリアすることだ。・・・部品を組み立てる音がする。狐が襲撃準備

を整えている。目を光らせて不適の笑みを浮かべる狐・・・。

 

 "どちらが早い?"

 

 部品を組み立てて虎視眈々と狙う狐か?

 

 "どちらが勝つ?"

 

 不屈の精神で挑み続けた殺人鬼か?

 

 ・・・さぁ、決断の時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・部品を組み立て終わったFoxyAftonに飛び掛かる、その瞬間に全ての空間が真っ黒に

染まり上がった。果たしてこの究極の夜を制したのは・・・




"最後の審判を下した。"


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If・・・

「・・・・・・どうなってんだ?」

 

 俺は困惑している。果てしなく挑み続けた究極の夜をクリア一歩前の所でFoxyに襲われかけた

時、意識が突然無くなった。次に意識を取り戻した時は辺り一面真っ黒い空間の中にいる事に気づ

き、何処を見渡しても黒一色の世界が広がっていた。これだけでは果たして勝ったのか負けたのか

が分からない。仮にあの時点で襲われてゲームオーバになったら再び元の部屋に戻されているはず

なんだが、何時まで経っても戻る気配がない。ではクリアしたのかと言えばそこは何とも言えない

のだ。朝のチャイムが鳴る音も聞いていないし、何かしらの変化も起きていない。

 だからこの展開に正直ついていけない、というのが俺が出した結論だ。試しに歩き回ってみるが

本当に何もない。黒、黒、黒、ただそれだけが映る。機械人形も警備員室もない。

 

「もしかして、永遠にこの世界をさまよい続けなければいけないのか?」

 

 そう恐ろしい発想が浮かび上がる。・・・いや、いやいや、考えるな!第一此処に飛ばしてきた

理由があるはずだ。じゃなきゃあのタイミングで意識が刈り取られる意図が読めない。それをした

という事は必ず何かしらの意味があってやった行為だと結論付ける。・・・だが幾ら待っても背景

に変化が訪れなくなると本当に心配になってくる。不安が煽られ心が落ち着かなくなると、冷静に

保つことが難しくなり漠然とした恐怖が襲い掛かってくる。

 

「なぁ、本当に誰もいないのか?・・・おぃ、冗談じゃないぞ。」

 

 本気で危機感を覚えてきた・・・その時、何の前触れもなく音楽が鳴りだした。

 

「!!?」

 

 僅かだが、確かに音楽が流れるのをハッキリと聞き辺りを見渡す。・・・何処からその音が聞こ

えるか耳をよく澄まして場所を特定する。

 

「・・・俺の立ち位置からみて、多分北東部か?」

 

 真っ暗なため方角なんか分かりっこないが、少なくとも俺が正面に立ってるという事実はあるの

で、自身を見立てて方角を割り出す。そして割り出した方向に向かってひたすら進む。漸く変化が

起きたんだ。この何もない場所にとどまり続けたら気が完全に狂っちまう。・・・進んで走って、

途中歩いてを繰り返し音が鳴る方向へ目指していくと段々音楽が聞こえるようになってきた。暗い

音程で奏でるメロディーに聞こえなくもない。シックの音楽?多分そのイメージが強い。そして音

を聞きつけだいぶ聞こえるようになってくると今度は光が薄っすらと見え始めた。

 

「おお、光だ!」

 

 この暗い世界を灯す唯一の希望。それにすがるように休むことなく走り続ける。・・・どれくら

い走り出したのか、息切れを起こして地べたに張り付く。一旦休憩しないと走る体力が持ちそうに

ないのである程度光が見える範囲で腰を下ろす。乱れた呼吸を整え、汗を拭い取ってもう一走りと

顔を上げた瞬間、先程までなかったあるものが突然現れたので驚いた。

 

「うおぁ!?」

 

 それが出現したのを引き金に音楽がより一層強く奏でりだす。聞き続けると不気味な音程で気分

をかき乱される・・・そんな気持ちだ。いきなり現れたそれは、俺にとって見覚えのあるものだ。

忘れるはずがない出来事が蘇る。俺にとって最高で・・・最悪な思い出。目の前にあるもの、それ

はかつてのパートナーが設計した最初の機械人形。それも唯の機械人形じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スプリングロック型のGolden Freddyだ。

 

 

 

 それが体全体をガタガタと震えている。心なしか、俺を見据えているようにも見える。その動き

にも覚えがある。・・・スプリングロックが外れた時、至る所から部品が圧縮して中に入ってる人

を押し潰す動作だ。実際俺もこの痛みを味わっている。想像もしたくない・・・。そいつが俺に何

かを訴えているみたいだが、その意思が読めない。暫くはその光景を眺めるだけだったが、時間が

経過するにつれて少しずつ俺から遠ざかっていく。それと同時に俺の意識も徐々に無くなっていく

ので不可思議に思いながらもこれでこの世界から抜け出せるのかと思い、再び眠りにつく。

 

・・・・・・・・・・・

 

「っつ!!」

 

 今度は眩しい光が勢いよく視界を照らしていく。こんなことあったか!?と不自然に思い何とか

瞼を開かせると見えてきた光景に絶句した。

 

「はぁ!!?」

 

 先程の場所とは打って変わって辺り一面緑の自然に囲まれた世界に驚きを禁じ得なかったからで

ある。綺麗な野原が広がり木々や草原が生い茂り、様々な種類の生物が存在している。鳥の囀りが

耳に響き心が落ち着いてくる。今まで地の底に住み着いてた俺にとって決して見る事のない幻想。

一体何が起きているのか完全に混乱していると俺の近くに何かの物を見つけた。よく目を凝らして

観察すると・・・

 

「あれは・・・墓石か?」

 

 この世界に似つかない存在。複数の墓が建てられているのを確認し、もっと近くで見ようと体を

動かす。・・・足が動かない。

 

「ん?」

 

 動かない原因を突き止めようと覆っていた草木を退けて足元を確認すると、

 

「・・・・え?・・・???・・・何で足に木の根が絡まってんだ?」

 

 どうやら毛深い木の根によって俺の両足を固定していたようだ。・・・何故か分からないが。

 

「というかこれ、何処から生えてんだ?周りに大きな木は見えないはず・・・いや第一地上から木

 の根なんか生えるか?」

 

 またもや意図が読めない状況に陥り頭が混乱する。・・・仕方がなく遠めであるが複数置かれて

いる墓石を詳細に確認してみる事にする。墓石の数は手前に五つ、奥にある丘で二つ、計七つのお

墓がある。そこに人の名前?らしき文字が刻み込まれているのと、各墓石に色とりどりな風船が縛

りつけられてるのが分かる。名前は・・・

 

Gabriel

Susie

Fritz

Jeremy

 

 ・・・その四人の名前は分かったが他は分からん。

 

「しかし、何故こんなところに墓が?」

 

 何か意味があるのか?と思うと墓石に縛られていた風船の糸が自然と解けてそのまま風に乗って

風船が空高く舞い上がった。

 

「・・・・・」

 

 結局この場所がどういう所か何故俺が此処に来たのか、その意図が読めないまま再び意識が無く

なってきた。・・・次にはいつもの通りの警備員室内で目覚めた。

 

「・・・夢か。・・・ってか究極の夜はどうなった!?」

 

 信じられない体験をしてすっかり忘れていた最も重要な事。あの夜を無事に越せたのか失敗した

のかまだ確認が取れていない。はじき出すよう体が動き出していく。先ずは時刻を確認する。

 

「・・・あれ?時刻が映ってない。また故障か?」

 

 時間が表示されていないのをみて困惑した。またかと思い、その時計を放り出すと次に端末を探

しだす。あそこにスコアが表示されているはずなので・・・ない?

 

「見当たらないぞ?何処行ったんだ?」

 

 部屋を隈なく探してみるが何処にもない。ってかよく見たらいろんな機材も消えていたので更に

混乱した。

 

「はぁ!?おい、発電機の配線もエアコンもオルゴールもないぞ。どうなってんだ??」

 

 ついでに机の上に散乱していたドア開閉用の幾つかのスイッチも人形も消えていた。此処まで物

が紛失すると流石に異常だと思い始める。

 

「奴らが勝手に持っていた?いや、それは有り得ない。持ってった所で何の意味もない。」

 

 そうすると・・・原因を考えているとある違和感に気づく。これだけ騒いでも誰も来ないのだ。

機械人形はおろか、Henryさえやってこない。部屋に異常なことがあればすぐ駆けつけてくる筈な

んだが。眉をひそめていると、ふとある考えがよぎる。

 

「・・・ちょっと部屋を見てくるか。」

 

 何を思ったのか俺は片っ端から他の部屋の覗くことに思い至ったのだ。夜が始まるアラームも鳴

らないので仕方がなく確かめる事にしたのだ。警備員室を出て右廊下から奴らを探しだす。・・・

不気味な程静まり返ってる。まるで初めから誰もいないような感に。廊下には誰もいなく途中道に

あるキッチンを覗いてみる。・・・食器等が散乱するだけでChicaがいない。その横に置かれてる

プレゼント箱を恐る恐る開けてみると・・・

 

「!?」

 

 Puppetがいない。箱の中は空っぽで奴がいた痕跡さえ見つけられなかった。もしかしてと思い

勢いよく切り返し廊下を突き抜けたところにある海賊に入り江のカーテンを捲る。Funtime Foxy

もいない。忽然と消えていたので俺は唖然した。一体何が起きているのか?あの夢といいこの状況

といい・・・それからあちこち部屋を調べて他の機械人形達を探してみたが誰いないという結論に

至った。何を躍起に探しているのか分からないがとにかく必死に探していた。でも結局いない。

 この出来事自体俺は戸惑いを隠せない。何故こうなったのか?・・・もしかして、

 

「・・・クリア、したからか?俺が究極の夜を乗り越えたから?」

 

 今までは奴らの制裁を喰らい続けてもこんな状態に陥ったことなど一度もない。しかし、現状は

誰もいなく、唯俺一人のみ此処にいる。

 

「一度クリアしたら、これ以上の制裁は無意味として消えてった・・・。」

 

 そう考えざる負えない。だとしたらこの状況に説明がつく。・・・何かが湧きあがる。それは、

今まで一度も経験していないある感情。徐々に浮かび上がると口角が吊り上がり自然とある言葉

を発するようになる。

 

「・・・やった、やったんだ。・・・クリアしたんだ!!」

 

 至福。それ一点のみが湧きあがる。これまで感じた事のない喜びを盛大に味わう事が出来た。

気付けば大声を上げて勝利宣言をしていた。

 

いよっしゃあああああああ!!やり遂げたぞぉぉぉぉぉぉ!!あのふざけた夜を俺は乗り超

 えてやったんだぁぁぁぁぁぁ!!どうだぁぁぁ!!ざまぁみろ!!

 

 成し遂げた。不可能と言われたものを打ち破ったんだ。嬉しいはずがない。それにもう奴らの

制裁に怯える必要もない。奴らは去ったんだ、この地を。生みの親と一緒に消え去ったんだ。

 数えきれない程の犠牲と屈辱を味わってきたあの日を最後に、漸く別れを告げることが出来た

んだ。これからは自由、自由なんだ。どうしようが俺の勝手なんだ。

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・少し叫び過ぎたか・・・少し休もう。」

 

 そろそろ疲れてきたし今日は枕を高くして眠れると思い、床に大の字の態勢で寝転がって眠り

についた。初めての普通の夜を過ごしたのは何時ぶりだろう・・・

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 どれくらいの月日が過ぎたのだろうか?時間もないんじゃ日にちも数えられない。同じ光景が

永遠に続く今日この頃、俺は腐るほどの時間を所有している。でも使い道がない、費やすものが

ないからだ。同じ部屋をぐるぐる回るだけで一日が終わる。・・・誰もいないこの世界に俺一人

が置き去りにされた。奴らが去った後は暫く喜びの思い出で生活していたが、次第に退屈の思い

が強くなり孤独がより一層感じるようになってくる。俺の娘もいない、かつての宿敵もいない。

 ・・・何でだろうな?苦しみから解放されたはずなのに、こんな悲しい思いをしなければいけ

ない?あいつからは皮肉も労いの一言もなかった。せめて俺に一言話せばいいのにな。最近では

唯ボーっと突っ立ってるのが俺の日課となっている。

 

「・・・はぁ、孤独ってこんなにもつらいとはなぁ。」

 

 かつての喧騒が恋しくなってくる。機械人形達との命がけの戦い、皮肉を並べるかつての相棒

娘との会話・・・思いがよぎってくるが、余計に寂しくなるだけだった。結局俺は何の為に究極

の夜に挑んて来たのか。結果的には奴らの呪縛を開放してやっただけ。俺は何も救いようがない

状態で今日までに至ってる。

 

「・・・これこそがあいつの目的だったのか?俺がクリアすれば、もう何の未練も残さずに皆を

 この地から自分含めて引き上げることが出来る。だとしたら、とんだ策士だな。」

 

 もうため息しか出ない。やはり俺と似ている所がある。他人を自分にとって都合のいい道具と

して利用する点がな。俺もそうしてきた。自分の欲望を満たすために色んな奴らを利用して人生

を狂わせてきた。奴らの苦しみこそが俺を幸せにする糧として。

 

「・・・ひょっとすると、これが俺が受ける最後の審判かもしれねぇなぁ。」

 

 誰にも看取られず、誰にも気づかれず、終わることのない孤独に苦しみ続ける運命。罪を背負

い、償える機会を失ってさまよい続ける・・・。これが俺にとってのだな。一人

勝手に納得してこの考えを終わらせる。

 

「・・・まぁ、仕方がねぇ。過ぎたことに一々引きずるのも嫌だしな。さーって、今日も日課の

 散歩を済ましておくか。体は動かしていかねーとマジで頭まで腐っちまう。」

 

 座ってた椅子から腰を上げてからいつものような一日が始まる。・・・終焉を告げる事のない

世界は今日も回りだす。一人静かに・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

THE END




"・・・結末なんてこんなものさ、Afton。"

二人の宿命の戦いは終わりを告げた。だが、その後の報われない物語は永遠に受け継がれるだろう・・・


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