一般人が行うグランドオーダー (名無しのガキンチョ)
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出会い 実験 出会い

あらすじにも書いてる通り、これが初投稿です。いままで見る専でしたが何事も挑戦するべきと言われたので、やってみました。

連載小説として投稿しましたが、続くかどうかは未定です。




この世界には魔術と呼ばれるものが存在する。魔術とはいわゆる魔法や神話にあるような神秘的な事象を人の手で再現することだ。魔法と聞くとどんな願いでも叶うとイメージしがちだが、実際にはそこまで万能なものではない。魔術は有から有を作り出すことはできるが、無から有を作り出すことはできない。あくまで再現しかできないのだ。 また、魔術や魔法の行使には対価として「魔力」を消費する。この「魔力」は人によって保有する量に違いがあり、当然自分の魔力量を超える魔術は行使できない。正直いって魔術って意外と現実的なものなんだなと

 

とりあえず、なぜこんな解説をしたのかまず説明しないと。

俺はどこにでもいる普通の男子だった。今年から大学生になったばかりの18才。本来なら、大学生活を送りつつ就職活動をして、社会にでて定年まで頑張る、みたいな感じで人生設計を考えていたのだが...

 

「やあやあ、元気してる?」

 

俺の目の前にいる女性「南雲 日向(なぐも ひなた)」に出会ってから普通の生活は送れなくなってしまった。

 

今から3日ほど前、いつもの道を通ってバイトから帰っていたんだ。明日はどんな授業があるのか、夕飯は何食べよう、なんてことを考えつつ足を進めていたら、何やら周りに黒服を従えた女性が誰かと電話をしていたんだ。今時黒服の従えてる人なんてほとんど見たことなかったから観察していたら電話している女性がこっちに気づいた様子で見つめてきた。そうしたら何か驚いたような顔をしたと思ったら周りの黒服の人と一緒にこちらに歩いてきて、程なくして俺は囲まれたてしまった。

どうかしました?と周りの黒服さんに少し怖がりつつ話してみると

 

「この男性で間違いないですか?」

 

「ええ、間違いない。」

 

「しかし、この者が本当に?」

 

なんて会話をしていた。頭に?を浮かべながら黙ってると女性が話しかけてきた。

 

「少しだけ私たちに付き合って欲しいんだけど、大丈夫?」

 

本当は帰りたかったのだが、周りの黒服さんの威圧じみた雰囲気で俺は頷くことしか出来なかった。この時はすぐ家に帰れるだろうと考えていたのだが...

 

そのあと、何故か目隠しをされながら車に乗らされ、気がついたら何処か研究所のような場所に連れてこられた。

 

「少しの間、ここで生活しても貰うよ」

 

と言われた。少しだけって話だったはずなんだけどなぁと思いつつ、何故自分がここに連れてこられたか聞いてみると

 

「少し君に協力して貰いたくてね。もしかしたら少しじゃないかもだけど」

 

「とりあえず1週間はかからないだろうけど、ここで検査をしてもらうよ。別に危ないことはしないから安心してね。」

 

 

という感じで説明を受け、何やら身体中にセンサーのような物付けられたりしながらここでの生活が始まったわけだが...

 

「ここにきてからもう4日になるわけだけど、ここでの生活は慣れた?」

 

まだ1週間も経ってないんですけどね?とりあえずそれなりにはですけど、と当たり障りない返答をしとく。

また今日も検査みたいのをするのかな?

 

「今日は検査じゃなくてね、ある実験をしようかなと」

 

実験?もしや拘束されて薬でも打たれるのか?

 

「とりあえず、投薬とかの実験じゃないから安心していいよ。」

 

若干呆れられた顔で言われてしまった。そんなにわかりやすい顔してたのか、俺?

それなら、どんな実験をするんだろうか。

 

「聖杯戦争については軽く説明したよね?」

 

「聖杯戦争」  どんな願いでもかなえてくれる金色の杯『聖杯』、その聖杯の所有権をめぐる争いの総称。

確かこんな感じたはず。

 

「その聖杯戦争では、あらゆる時代の英雄、『サーヴァント』を使い魔として召喚するんだけど...」

 

「君には、その召喚をやってみてほしいの!」

 

...つまり私に聖杯戦争をしろとおっしゃいますわけで?

 

「違う違う!別に聖杯戦争をする気はないよ。」

 

目的は別にあると。だとしても急すぎるのでは?召喚って一種の儀式みたいなもので簡単に一般人ができるものなんだろうか。

 

「心配しなくても召喚自体は誰でもできるのよ。問題は魔術に適性があるかどうかなの。その点も既に解決済みだから大丈夫。」

 

なるほど。今までの検査はその魔術の適正があるかどうか調べてたのか。でも化学の力で魔術の適正は調べられることなんだろうか。

 

「とにかく、詳しいは後にするから、まずは付いてきて。」

 

そう言って案内されたのは、周りが薄暗くすこし青みかかった部屋だった。中央には何やら手のひらサイズの地球儀のような物がプカプカ浮いている。

入室した俺達に気が付き、いかにも貴族で意識高い系の銀髪の女性が近づいてきた。

 

「お久しぶりね、南雲博士。」

 

「マリーじゃない!貴女がこっちに来るなんて一言も言ってなかったよね?」

 

「私だって本当はカルデアにいる予定だったのよ。それが、カルデア以外でサーヴァントの召喚に成功するかもしれないから見てきてくれるかってレフに言われて仕方なくこっちに来たのよ。」

 

うーん、どうにもめんどくさそうな人だなぁ。正直苦手な苦手な人かも。

とか考えていたら、マリーと呼ばれた人がこちらに顔を向けてきた

 

「それで、こんなバカみたいな奴が本当に成功させれるのかしら。聞けばただの一般人らしいじゃない。」

 

おっしゃるとおりで。何で一般人自分がここにいるのかさっぱりわからないんだけど。

あとこの人他人を見下し過ぎでは?

 

「まあやってみないことにはわからないよ。けど、けど私の考えがただしければ...」

 

「それじゃあ、あそこに行って合図があったらこの紙に書かれていることを声に出して詠みながら、手を伸ばしてね」

 

と言われて、何やら長い文章が書いてある一枚の紙を渡された。本当に自分に召喚なんてできるのだろうか。とりあえず言われた通り中央の所まで歩いていく。

地球儀のような球体の近くに来ると、何やら球体の中に刀の鍔のようなものが入っているのが見えた。

これを使って召喚をする感じみたいだ。

少し待機していると、アナウンスがはいった。

 

「貴方には微塵も期待していません。精々恥をかくがいいわ。」

 

「マリーの言ってることはあんまり気にしないでね。それじゃあ始めてちょうだい。」

 

ほんと辛辣すぎませんか?マリーさん。

えぇっと、これを声に出して読めめばいいんだっけか。大分長いけどはたして噛まず喋れるのか...?

 

―――素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 

―――降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 

「ねえ南雲博士。これって...?」

 

「うん、これなら多分成功するよ。そして召喚されるサーヴァントは多分...!」

 

何か手に赤い模様が出てきたり魔法陣が足元にできたりしてるけど、このまま続けていいんだよな?

 

――閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

 

―――――――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

―――誓いを此処に。

我は常世総ての善となる者、

我は常世総ての悪を敷く者

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!――――――

 

読み終えると同時に目の前が光輝いた。突然のことで、尻餅をついてしまった。情けない。

少しすると、光が収まり、自分の目の前に一人、同年代くらいの少女が手を差し出してくれた。

少女の風貌は、桃色の着物を身に着けており、銀かブロンドっぽい髪色をしている。

片手には刀を一本、背中にも太刀のようなものを背負っていた。

 

「大丈夫ですか?サーヴァントセイバー。召喚に応じ参上しちゃいました!」

 

一見すると、過去に生きた英雄というよりかは、どこにでもいる普通の人という印象があった。

ていういかこれ、ちゃっかり召喚成功しちゃってませんか?

 

「ちょっと、何であんな一般人がカルデアスなしで、しかもセイバーを召喚しちゃってるわけ!?」

 

「やった!私の計算は間違ってなかったみたい!」

 

後ろの方では喜んだり怒ったり、自分よりも興奮してる人たちが役2名いる。召喚された英雄―――セイバーと呼ばれる少女―――もあっちの方たちの様子を見てほほ笑んでいた。

 

「とにもかくにも、これからよろしくお願いしますね、マスター!」

 

 

 




こんな感じで続くかもしれないです。
もしこれを見て興味を持ってくださいましたら、お気に入りや評価して気長に待っていてくださると光栄です。
そうしていたただけると作者が喜びます。そして次書くときのモチベーションが爆上がりします。


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説明 戦闘 把握

今回、結構な文字数になってしまいました。読みにくかったらすみません。


「全く、何でアンタみたいな魔術と縁がない一般人が...」

 

あれから少しして色々あーだこーだ言われつつ南雲さんの研究室のような場所に移動してきた。マリーさんも一緒に付いてきていて、さっきからこちらとセイバーを交互に見つつ頭を抱え続けている。

 

「いや~、まさかここにきて成功するとは思わなかったよ!今まで何人か実験してるけど、全部ハズレでさ。もう諦めてたところだったんだよ!」

 

まだ興奮しているようで、いつもよりハイテンションで体を揺さぶってくる南雲さんをなだめつつ、俺はセイバーの方に目を向ける。「おぉー?」とか「わぁー!」なんて呟きながら周りの機械や飾り物を鑑賞していた。本当に見れば見るほど英雄とは思えないんだけど、そういうものなのか?

そういえば、サーヴァントを召喚させた理由って結局何だったのだろうか。聖杯戦争は関係ないって言ってたけど...

 

「そうだね。無事サーヴァントも召喚できたことだし、これまでのことを順番に説明していくよ。」

 

 

 

 

 

簡単にまとめると

・まず国連が承認している国際機関「人理継続保障機関フィニス・カルデア」通称「カルデア」と呼ばれる施設が存在する。何でも人類の未来を見ることができるとかできないとか。なにそれ凄い。

 

・そのカルデアで、「2016年を最後に人類は絶滅する」という予言じみた研究結果が証明された。

 

・カルデアにある「近未来観測レンズ・シバ」と呼ばれるシステムが、過去のとある場所での異常を感知し、ここが絶滅の原因と考えた。

 

・そこで優秀な魔術師を集め、異常を感知した過去に行き、それを正すことで人理を継続させようとした。

 

・そして今自分がいる所では独自の召喚システムを研究していて、こちらの方からマスターとサーヴァントをカルデアに送り、サポートしようと考えていた。

 

という感じかな。てか未来を見るだとか過去に行くだとか驚くことがいっぱいだけど、一番は人類滅亡するって話だ。マジで言ってるんすか?

 

「そうよ。カルデアの研究結果では、あらゆる可能性を考えて検証したものの、結局2016年以降の歴史を発見することができなかったそうよ。」

 

開いた口が塞がらないって今みたいな状況を指すんだろう。ただ、創作の世界でしか聞いたことのない人類滅亡という単語。それが今自分の生きている世界で起きようとしてることに実感が湧かない。

 

「そういうことだから、貴方にはまだまだ協力してもらうわ。具体的には、まずカルデアに来ること」

 

そういえばカルデアをサポートするべくここで実験してたんだっけか。ちなみに断ったりすると?

 

「どんな手を使ってでも連れていく、とだけ言っておくわ。」

 

まあ拒否権はないですよね。もちろんここまで来たんだし断る理由もないんだけど。

 

「悔しいけど、実際にサーヴァントを召喚して見せてるのだから連れていかない理由がないわ。光栄に思いなさい!貴方は何も努力することなくカルデアに行くことができるのだから!」

 

本当に上から目線の人だなぁと心の中で思いつつ、いつ頃行くのか尋ねた。

 

「そうだねぇ、多分手続とか色々込みで大体1週間後くらいかな?それまではここにまだ居てもらうよっと...」

 

「話はまとまったわね。なら私はレフに連絡しくるわ。」

 

と言って少し急ぎ気味で部屋マリーさんは部屋を後にした。南雲さんも自分の机に向かって作業を始めてしまった。とりあえず今話すことはもうないって感じかな?

 

「あ、お話終わりました?」

 

こちらの視線に気づきニコニコとこ駆け寄ってくるセイバー。会話に参加してなかったけど何してたんだろうか。

とりあえず何もすることがないため、セイバーを連れて自室に戻ることにした。心なしか、いつもよ歩く速度が遅い感じがした。

 

 

 

 

 

「ここがマスターのお部屋ですか!...面白そうなのは何も置いてなさそうですね」

 

部屋に入るなりセイバーが一言。そりゃここに来てまだ数日だし、検査やら説明やらで忙しかったからね。

ちょっと残念そうな顔をしているセイバー。何も考えずベットにダイブする。何だか今までにないぐらい疲れた。もう動きたくないぐらいだ。

 

「...何だか大変なことに巻き込まれましたね?マスター。」

 

うつ伏せになっている俺の横で腰を掛けつてセイバーが静かに口を開く。

あれ?もしかしてさっきの会話聞いてた?

 

「同じ部屋に居たんですもの、聞こえないわけないじゃないですか。」

「聖杯戦争に参加する気満々で気合入れてきたのに、いざ召喚されてみると人類の危機とかなんとか。要は世界を救えって言ってるようなもですよね?人に頼むにしたって規模が大き過ぎません?」

 

確かに。いきなり世界救ってと言われても、何言ってるんだって感じになるだろうね。俺も今実際なってるし。

 

「とういうか聖杯戦争関係なら、別に真名隠さなくてもいいんじゃないですか?そうですよね!」

 

と自問自答し、勢いよく立ち上がるセイバー。とりあえず自分も体を起こしてセイバーに体を向ける。

 

「えー、改めまして...サーヴァント・セイバー。真名は沖田総司。召喚されたからには、最後までついていきますよ、マスター!」

 

...沖田総司?沖田総司ってあの新撰組の?

 

「そうですよ!気軽に沖田さんって呼んでくれてもいいんですよ?」

 

おおぅ...沖田総司といえば、幕末の京都で活躍していた新撰組の1番隊長で周りからは天才剣士、恐れられてた人だったはずだ。でも沖田総司って確か男だったんじゃ?

 

「そのことですか。女だと色々文句言われたりしますので、当時は男装をしてたんですよ。」

 

男装って...いや、えぇ?

色々言いたいこととかあるけど置いておく。なんにせよ天才剣士と謳われた剣士が味方なのは心強い。

でも沖田総司といえば、確か病気だって有名じゃなかったっけ。

 

「そうなんですよ。実際今の私は病弱で、たまに喀血してしまいますよ!」

 

いやそれ元気に言うことじゃないでしょうに...

うーん、ちょっと不安になってきたかも。

 

「む、なんですかその顔。さては沖田さんの実力疑ってますね?」

 

そんなことはないよ?ただ大事な時に倒れると色々危ないなと思ったわけで。

 

「大丈夫ですよ!その時は倒れる前に敵を倒しますから!」

 

ホントニダイジョウブ?  ダイジョウブデスヨ!

 

なんて会話をしつつこの日は色々考えて疲れてたため、すぐ寝てしまった。

 

 

次の日、南雲さんからシュミレーションルームがあるから、今のうちにそこで戦闘に慣れておいた方がいいんじゃない?と言われた。そういえば、これから先自分はもしかしたら戦闘することになるかもしれないのか。でも魔術なんて何もできないんだけど...?

 

「おっと?もしや沖田さんの実力をお見せするいい機会なのでは?」

 

こちらの天才剣士様は戦闘と聞いて既に殺る気Maxみたいですね。実際に沖田さんの腕前はどれほどのものなのか自分も興味があったため、言われた通りシュミレーションルームに向かった。

 

セッティングは部屋に居た人にやってもらって、とりあえず自分はモニターの前で沖田さんの戦闘風景を見守ることにした。だってまだ怖いですし。

 

「イエーイ!マスターしっかり見てますかー?」

 

中にいる沖田さんはいつもの明るい感じで待機していた。シュミレーションとはいえ、緊張感がなさすぎでは?

まあそこが沖田さんのいいところなんだろうけどね。

 

――それじゃあ始めますね――

開始のアナウンスと同時に沖田さんがいた無機質な部屋が、辺り一面草原しかない綺麗な場所に変貌した。

シュミレーションていうよりかは、VR世界に入り込んだ感じかな。まるでどこかのゲームのようだ。

 

「すごいですね、これ。風の感じや草の匂いが本物そっくりです!」

 

これには沖田さんも驚いたようで、子供のようにはじゃいでる。

少しすると沖田さんの周りに何かが出現した。見た目は羽織に袴、頭には笠をかぶっていて、さながら一般的にイメージする侍のような格好の人が5人。刀もしっかり構えている。

 

 

「ふむ...場所は普段と違いますが、得物が刀でしたら、こちらも気合が入るというもの」

 

沖田さんの纏っている空気が変わった。敵を認識した瞬間、今まであった明るい感じはなくなり、どこか冷たい雰囲気を纏い刀を構えた。

静寂が周りを支配する。一分、二分、それ以上か。どちらも動かずにいる。間合いをとってるのだろう。

見ているこちらも緊張してきた。

 

痺れを切らしたのか、相手の一人が刀を振り上げ、沖田さんに斬りかかった。

1歩。沖田さんが踏み込む。一瞬だった。気が付くと、相手は腹を斬られていた。何が起きたのか自分と隣でモニタリングしている職員は理解できなかった。刹那という言葉が相応しいかもしれない。それぐらいの早さだった。

一人が倒れたのが合図となり、残りの4人も沖田さんに突っ込んでいった。一人、二人、三人と、流れるように斬っていった。しかも相手に刀を振らせまいと言うかのように自分から踏み込んで。最後の一人は、刀を左に受け流した後、居合切りの様な構えから斬り伏せた。誰が見ても圧勝だった。

 

 

 

「ふぅ...マスター、見てました?沖田さん大勝利ですよ!」

 

フィールドから沖田さんが嬉々として戻ってきた。心なしか、肌がきれいになってるような気がするがきのせいだろう。

というか幕末の人達ってこんな感じで動いてるの?ほとんど目で追えなかったんだけど。

 

「いえ、これは半分くらいはサーヴァントになった影響ですね。生前はもう少し遅かったですよ?」

 

少しってことはこれに近い動きを生前やってたと?幕末って怖い。

とにもかくにも、これなら戦力として問題ないどころかお釣りが出るほどじゃないか?流石は天才剣士様だ。

 

「おだて過ぎですよマスター!」

 

と満更でもなさそうに笑っていた彼女だったが、少しすると表情が暗くなったように見えた。

 

「そうだ!マスター、私何かおいしいものを食べたいです!」

 

ただ暗い表情は一瞬だけで、すぐに何事もなかったのようにいつもの明るい感じに戻った。まあ言わないってことは大したことじゃなかったんだろう。

というかサーヴァントってお腹空くの?もう実際に生きてないんだし、いらないと思うんだけど...

 

「サーヴァントだって、人並みに空きますし、食べますよー?ほらほら、早く行きましょう!」

 

グイグイとで沖田さんに押されながらシュミレーションルームを後にする。

 

 

 

 

 

食堂に向かう途中、沖田さんの背中にある大きい太刀が目に留まった。

 

「んー?マスターもこれが気になります?」

 

もってことは、沖田さんも何か気になることが?

 

「はい、そうなんですよ。生前、ここまで大きな刀は扱ってなかったはずなんですけど、何故か今回の召喚ではもってきてまして。私にも何が何だかさっぱりでして。」

 

沖田さん本人にもわからないもの?もしかして召喚されるときに何かバグでもあったのかな?というか前にも召喚されたことがあるんだね。

 

「召喚されたのはこれで2回目なんですよ。でも前の話は長くなるのでまた今度で。それより、ここが食堂ですね?」

 

目をキラキラ輝かせながら入口にあるメニュー表に突撃していく沖田さん。こういうところだけ見てると本当に俺達と変わらないんだなと感じる。

今日はカツ丼でも食べようかな。隣の沖田さん見てみると、なかなか決まらないようで、犬のようにう~と唸りながらメニューを睨んでいる。

長くなりそうだから先に席取っとくよ、決まったらあそこのおばあちゃんに注文してね、と言い先に注文しに行く。

 

入口からすぐ目に着く正面の席に座り、先にカツ丼をいただく。ここの料理ってどんなものですぐにでてくるんだよね。しかもできたてで。どんな原理で出てくるのか非常に興味があるんだけど。

 

「あ、いたいた。マスター発見です!」

 

割とくだらない事を考えていると、沖田さんが遅れてやってきた。手に持ってるのはおでんだった。...おでん?

 

「はい、おでんですよ。何か?」

 

いや、冬だったらまだしも、今は春になったばっかりだし、珍しいなぁって。

 

「何故かおでんを見た瞬間無性に食べたくなってしまいまして。何でですかね?まあいいや、いただきまーす!」

 

熱いのは意外と平気なのか、湯気がもくもくと出てるちくわぶを一気に頬張る沖田さん。可愛い

そういえば、沖田さんって剣術の指南ってやったことあるのだろうか。

 

「はむはむ。剣の指南ですか?やったことはありますよ。もしかして...習いたいんですか?!」

 

突然沖田さんが声を張り上げた。正直びっくりした。

 

「そういうことはもっと早く言ってくださいよ!ならさっそく明日から稽古ですね」

 

そういうと、沖田さんは立ち上がった。というかもうおでん食べ切ったのか。先に食ってた俺より早いじゃん。

というかもうやる前提で話進んでいません事?

 

「どうしたんですかー?早く行きましょうよー?」

 

かなりご機嫌になってる様子。ここでやらないと言って水を差すわけにいかず、しかたなくカツ丼を頬張り、沖田さんに追いつく。

それからカルデアに行くまでの数日間...

 

「もっと早く動いてください!」「刀は腕だけじゃなく体全体を使って振る!」「このくらいで疲れてるんですか?根性が足りませんよ、マスター!」

こんな感じで一日中ずっと剣を振るうための特訓をしてました。沖田さん、実はものすごい熱血キャラでスパルタでした。

連日筋肉痛で死ぬかと思ったけど、お陰様でシュミレーションの敵程度なら何とか倒せるレベルまで刀を扱えるようになりました。流石天才剣士様です。

ただ、沖田さんからは今後剣術は教わらないようにしようと誓った今日この頃です。

 

 

 

 

 

 




ちゃんと投稿できているかどうか不安です。
さっそくお気に入り登録してくださった方、
感想を書いてくれた方、ありがとうございます!
こんなにも早くしてくださるとは...( ゚Д゚)
皆様の期待に答えられる作品を作れるよう努力していきますので
何卒暖かく見守っててくれると嬉しいです。


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医師 天才 後輩

色々やっていたら予定より少し遅れてしまいました。
まだ話の流れ的に本編の序章前の話です。遅くてすみません。
次でやっと序章に入る感じなので、温かく見守ってくさい。


どうも皆さん。俺です。今俺はまた目隠しをして飛行機の様なものに揺られながらカルデア目指してます。

何でも完全秘匿―――要は誰にも見つからないようにするためにカルデアまでの移動経路を外部に漏らさないための方法だそうで。透視できる魔術とかあったら意味ないのでは?まあここでは魔術は使えないっていうオチなんだろうけど。

 

もう気づいてるかもしれないけど、今自分の横には沖田さんがいない。

何故かと言うと、今沖田さんは「霊体化」と呼ばれる、いわゆる透明になっている状態で近くにいる。

 

――移動するときに他の魔術師に色々言われるから、カルデアに着くまでは霊体化して姿を見せない方がいいよ。――

 

なんて南雲さんから助言されたからだ。まあ自分の前にサーヴァントがいたら誰だってビビるよね。

俺の場合は誰が誰かわからないで、普通に会話してそうだけど。

てか関係ないんだけど筋肉痛がやばい。腕とか太ももが座っててもピクピクするぐらいにはやばい。

流石は沖田さん。物凄いスパルタでした。

 

『む、今私のこと呼びました?』 気のせいだよ。

 

沖田さんに自分の考えがバレないように軽く会話をする。それにしても大分長い時間乗ってるけどまだ着かないのかな?

さっきから聞こえるのは周りの魔術師の呼吸音やプロペラの音ばかり。視界は真っ暗で、少し眠くなってきた。

 

『眠いのでしたら、寝ちゃっても大丈夫ですよ?着いたら起こしますので。』

 

よほど眠そうにしていたのか沖田さんから寝てもいいと言われてしまった。本当気づかいができるいい人だなぁ、

なんて感情を抱きつつお言葉に甘えることにする。正直もう限界です。

それじゃあ後で起こしてね、と伝え沖田さんの返事を聞く前に俺は夢の世界に飛び立った。

 

 

 

 

 

『マスター、着いたみたいですよ。起きてくださーい!マスター?』

 

沖田さんに呼ばれ目を覚ます。随分と深く眠っていた様だ。まだ眠い...あれ?なんか寒くない?寝る前は結構暖かったはずだけど。

 

『そろそろ案内の人が...ほら、来たみたいですよ。』

 

多分カルデアの職員であろう人に呼ばれ、目隠しを外された。どうやらここは格納庫みたいだけど、まるで野球ドームのような広さだった。もしかしたらそれ以上かも。

そのまま職員に案内されて格納庫を歩き続けると何やら人一人は入れるぐらいのゲート?の様なものがあった。

此処に入ればいいようだ。中に入ると青いセンサーで体をスキャンされた。

 

―――塩基配列 ヒトゲノムと確認

―――霊器属性 善性・中立と確認

 

―――ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。

―――ここは人類継続保障機関 カルデア。

 

おぉ、まるで映画のワンシーンみたいでちょっとドキドキする。

何やら手をかざしてくださいとか指示が出され、それに従っていく。

 

―――指紋認証 声紋認証 遺伝子認証 クリア。

―――魔術回路の測定......完了しました。

―――登録名と一致します。貴方を霊長類の一員であることを認めます。

―――はじめまして。貴方は本日 14人目の来館者です。

―――どうぞ、善き時間をお過ごし下さい。

 

何事もなく、とんとん拍子で手続きが完了し、ゲートが開かれた。

模擬戦闘?そんなものもはなかった。

 

「おっと。もしかして君が最後の来客者かな?」

 

ゲートを出てすぐに声をかけられた。人当りの良さそうだけど、どこか幸が薄そうな男性だった。。

こちらをじっくり観察し、一人で頷いていた。

 

『何か影が薄そうな人ですね?』

 

沖田さんも似たようなものを感じたようだ。なんでだろう?。

 

「キミが南雲博士が紹介してくれた人だね。ボクはロマニ・アーキマン。医療部門の責任者のような者さ。みんなからはDr.ロマンって呼ばれてるよ。君も気軽に呼んでくれ。」

 

ならドクターで。自分のことはもう知ってるみたいだし、自己紹介しなくても大丈夫かな?

とりあえず握手いておく。

 

「いや~よかったよ!君が怖い人じゃなくて。これならいい関係を気づけそうだ!」

 

まるで始めて友達が出来た子供みたいにはしゃぐドクター。もしかして友達いなかった感じですかい?

 

「いや?友達くらいいたさ!それより君に会いたがっている人がいるんだ。」

 

気を取り直してと言わんばかりに、少しだけ気合が入った声で言われた。いわゆるお仕事モードみたいな感じですかね。

沖田さんには念のため、まだ霊体化を解かないでもらう。

 

 

 

「さあ、ここだよ。多分この部屋に居るはずだ。もしかすると検査したいやら実験したいって言ってくるかもしれないが、あまり気にしないでくれよ。」

 

実験て、まるでモルモットみたいにですね...

少しげんなりしながらも中に入ってみる。中には、何やら見慣れない格好の女性と緑のシルクハットにコートを着こなしている男性が話してた。

 

「やあダヴィンチちゃん。例の子連れてきたよ!レフ教授も一緒だったんだね。」

 

女性の方はダヴィンチちゃん、男性の方はレフ教授らしい。レフってもしかしてマリーさんが言ってた人かな?

 

「おおロマニ、よく連れてきてくれたね。ふむふむ、その子が例の...」

 

「お邪魔してるよ、ロマ二。その子が所長が言っていた子だね?僕はレフ・ライノール。しがない技師さ。」

 

所長?えっもしかしてマリーさんてかなり偉い人だったの?ならあの態度もある程度納得...できないや。

 

「ふむ、何だか不思議な感じだな。こうしてあってみると本当にただの一般人みたいだね。マリーが起こってたよ?何で魔術と縁がない奴がーって。よほど悔しかったんだろうね。」

 

確かに魔術師としてのプライドみたいのは感じられたけど、そこまで言いますかね?まあサーヴァントを召喚する行為は魔術師の一つの目標らしいから嫉妬してるのかも?

 

「今後何かとマリーは何かといちゃもんつけてくると思うけど、あまり気にしないでもらいたい。

あの子も一応思うところがあるみたいだし。」

 

何だか孫を気にするおじいちゃんに見えてきた。こういう人って独特な雰囲気が出てて結構好きだったりする。

自分もこんな感じのおじいちゃんになりたいな...

 

「それじゃあ、私はやることがあるからこれで。お邪魔したね、ロマニ。」

 

そういってレフ教授は出ていった。魔術師でもあんな風にやさしくしてくれる人がいるんだなぁ。

そういえばダヴィンチちゃんと呼ばれた人はどこに...?

あたりを見わたしていると、部屋の奥にある扉からダヴィンチちゃんと沖田さんが出てきた。

あれ沖田さんいつの間に?

 

「いや~ほんとうにサーヴァントを召喚しちゃったみたいだねぇその子。俄然興味湧いてきたよ!」

 

「あ、マスター。すみません勝手にいなくなっちゃって。」

できれば一言ぐらい言ってほしかったかも。まあ沖田さんなら別に問題ないかもだけど。

なにやら興奮状態のダヴィンチちゃんさんにロックオンされ、背筋がゾクゾクするのを感じつつ自己紹介をする。

 

「これはこれはご丁寧に。なら私もしっかりと答えなければいけないね。」

 

「私はレオナルド・ダヴィンチ。誰もが認める天才中の天才さ!気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ。」

 

声高らかに、そして自信満々に宣言した。

レオナルド・ダヴィンチ。確かイタリアの芸術家で。音楽や建築、解剖学、土木学など、多岐にわたる分野で功績を残した天才で、知らない人は少ないだろう。でも本来男性のはずでは?

 

「何でも、カレは自分から女性になったらしいんだよね。ボクがいうのもあれだけど、凄い変人だよね」

 

「私は芸術家だよ?美を追求する者として、理想の美である女性になるのは当然さ。」

 

まったくついていけない。どうやったら女性なるって考えに...?

改めて見てみると、なんだかモナ・リザに似てるような気がする。

多分モナ・リザをイメージしたんだろう。

 

「しかし、本当に凡人だね。どこにでもいる、普通の人。だけど魔術使として運命に選ばれてしまった。

まあこれから色々とあるだろうけど、気ままに頑張ってくれたまえ。」

 

これは励まされてるのか憐れんでいるのか。まあどちらにせよ歴史に名を残している天才話せるとは思わなかった。流石カルデアだ。

 

「そういえば、そちらの和服を着た女性は?キミのサーヴァントだろうけど...」

 

まだ沖田さんのことはドクターには紹介してなかったね。ダヴィンチちゃんはもう知ってるみたいだけど。流石は天才といわれるだけあってすぐに理解してるようだ。単純に同じサーヴァントだからってのもありそうだけども。

 

「そういえばまだ自己紹介してませんでしたね。サーヴァント・セイバー。真名を沖田総司と言います。」

 

「沖田総司と言えば、あの『マコト』って呼ばれる字を背中に着けた新選組の一人だろう?!しかも一番隊の隊長で剣の腕が凄まじいって聞いてるよ!」

 

なにやらすごい興奮しているドクター。沖田さんは褒めら慣れていないのか少し顔を赤くしながらドクターの質問に応えている。

 

「悪く思わないでやってくれよ。ロマンはかっこいいことに目がなくてね、少ししたら収まるから。」

 

まあドクターの気持ちはわかる。侍とか刀ってかっこいいもんね。俺も生で刀見れて興奮してたし、男なら大抵はそうなるんじゃないかな。

 

「このまま実験とか検査をしたいところだけど、まずはこれから君が生活する部屋に行ってもらうよ。詳しい話は多分ロマニか所長あたりにしてもらうと思うよ。とりあえず今日の所は休みたまえ。」

 

さらっと怖い事言ってませんでした、ダヴィンチちゃん?

 

「単純に英霊と契約している魔術師を調べてみたいだけだよ。契約してるマスターを見れるのは貴重だしサンプルが欲しいのさ。」

 

なるほど。確かにマスターって本来は聖杯戦争以外じゃ見かけることはなさそうだし納得した。

それでも実験に使われるのはごめんだなぁ...

 

「大丈夫、そんなに危ない事はしないさ。...そろそろいいだろ、ロマニ?この子を部屋に連れてってくれよ。私は研究で忙しくなるからさ。」

 

半分呆れつつ、ドクターを宥めるダビンチちゃん。少し物足りなさそうな顔をしながらドクターはこちらを見てきた。

 

「はーい。それじゃあまた案内役として同行するよ。それじゃあね、ダヴィンチちゃん。」

 

「それじゃあまた後で。あと沖田君ちょっとだけ貸してもらうよ?」

 

「え?え?あの、私もマスターと一緒に「いいからいいから」ぐえっ」

 

何故かダヴィンチちゃんにロックオンされてしまった沖田さん。まるで潰れたカエルの様な声を挙げて部屋に引き込まれていった。

とりあえずドクターに連れられ部屋を後にする。多分すぐに会えるだろうし、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

「さあ、ここが元ボクのサボり場で、今からキミの部屋になる場所だよ。」

案内されたのは、自分の名前が横に小さく書かれた扉の前だった。まるで楽屋見たいだ。

部屋に入ってみると、少し硬そうなベットに観葉植物、モニター、ピンクの髪の女の子にリスの様な犬の様な動物が目に入った。....あれ?

 

「何でマシュがここにいるんだい?特にここにくる意味はないと思うけど?」

 

「あ、ドクター。実はフォウさんがこの部屋に入ったとおもったら居座り始めてしまって...」

 

なにやら知り合い様子。それよりリスっぽい何かがこちらをじっと見つめてくるのがきになる。

 

「.........」        .......

 

 

「えっと、フォウさん?あちらのお方に何か...」

 

 

「....フォウ!」

 

突然ピョン!と女の子から離れると、自分の足元まで来たと思ったら、一気に肩まで登ってきた。

 

「えっと、フォウさんがいきなりすみません。」

 

少女が申し訳なさそうに謝罪してくれた。別にいいんだけど、正直びっくりした。

 

「もしかしこいつが噂の怪生物?おお~、初めて見たよ。」

 

先ほどからフォウとよばれる生き物が、肩やら頭を何度も行き来していて、凄くくすぐったいです。

 

「初めてです。フォウさんが自分から他人に寄っていくなんて。そちらの方が今日こちらに来ることになっていた方でしょうか?」

「初めまして。私はマシュ・キリエライトです。そちらの頭の上にいるのはフォウさんです。」

 

第一印象としては、ピンクの髪に丸縁の眼鏡が特徴的の少し暗いイメージがする礼儀正しい子、って感じだろうか。もちろん美少女で可愛い

 

「フォウ!キュー、フォーウ!」

 

そして自分の方が偉いんだ、とでも言うかのようにぺしぺしと前足でたたいてくるフォウさん。

もしかして同類として認識されている?

 

「えっと...その...もし良かったらですが、先輩とお呼びしても...?」

 

不意にマシュが小さい声で言ってきた。先輩なんて中学以来呼ばれたことがなかっため、凄く懐かしい気分だ。

こんな可愛い子に呼ばれるならむしろ大歓迎だ。

 

「ありがとうございます。では、これからは先輩とお呼びしますね。」

 

よほどうれしかったのか、小さく微笑みながら先輩と噛みしめる様に呟いてる。

 

「では私はこれで失礼します。行きましょう、フォウさん。」

 

「フォウ!」

 

ピョンと器用に自分の頭からマシュの頭に飛び移っていったフォウさん。中々身体能力は高めな様子。

マシュが出ていくと、部屋の隅でひざを抱えている落ち込んでいるドクターが目に映った。

 

「どうせ僕は影が薄いですよーだ...」

 

会話に入れてもらえなかくて寂しかったのか、拗ねてしまっている。

ごめんね。ドクター、普通に忘れてた。

 

「そこは慰めてくれるんじゃないのかい?!意外とサバサバしてるんだね...」

 

意外と立ち直りが早かった。もしかして慣れてるのかな?だとすると、めちゃくちゃ不運というか...

 

「でもありがとうね。マシュの友達になってくれて。実はあの子友達と呼べる人がいなくてさ。これからが心配だったんだけど、キミのおかげで少しは楽になったよ。」

 

自分なんかでいいなら全然かまわないんですけど。むしろ自分から友達になりに行きますよ。

 

「なんだか、こんな感じの普通の人と会話したの久しぶりな気がするなぁ。今日はお疲れ様。ここの職員は一癖も二癖もある人ばっかりだから、明日から頑張ってね。」

 

軽く笑いながらそう言うと、ドクターも部屋を後にした。

 

 

 

とりあえずベットに横になる。今日は色々疲れた。とにかく驚くことが多かった。

ここに来て、自分も普通な人ではなくなるということを今改めて実感する。思えばあの人にあってからまだそこまで時間は経っていなはずなんだけど、何か月も前に感じるほど濃密な出来事を体験した。

不意に手の甲にある赤い紋章が目に映る。これは令呪と呼ばれるもので、マスターの証みたいなものらしい。成り行きでマスターになってしまったけど、これから先自分はマスターとしてしっかりやっていけるのか少しばかり不安ではある。けど、何となくやっていける気はする。今までも何とか出来てきたし、できなくても自分なりにやっていくしかない。

だから、今後の為にも今は寝ようと思う。ここに来るときも結構寝た気はするが、頭に情報を詰め込んだせいで、凄く眠い。沖田さんはまだ帰ってきてないけど、多分大丈夫だろうと考えながら、意識を手放した。

 

 

 

 




遂にFGOの2部・4章が来ましたね。すごく楽しませてもらってます。
ちなみに記念でガチャを10連したところ、すり抜けでブラダマンテが来ました。
うれしいんですけどお前じゃない


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友達 爆発 転送

私生活が色々忙しくなっていまい、予定よりも遅くなってしまいました。
今回でやっと序章の最初に入りました。
ラストまではなんとか書ききるつもりではいます。


カルデアに来てから具体的に1週間程経った。あの後マリーさんこと所長から、

 

『非常に不本意ですけど、これから貴方にはAチームのサポートをしてもらいます。サポートと言っても、基本的には現地に一緒に赴いてもらうだけです。非常時以外は何もしないこと。いいわね?』

 

という説明を受けた。とりあえずはAチームの人たちに会いに行ったんだけど、皆個性が強い人ばかりだった。

 

「カドック・ゼムルプス」

特に目立った能力がなく他の人に比べ平凡が目立つマスター。レイシフト(簡単に過去に行くこと)の適性が他のメンバーより高いことがわかっている。意外とゲーム好きで周りの人に気を配れる優しい人だ。召喚予定サーヴァントはキャスター。低い魔力量を考えてのことらしい。

 

「オフェリア・ファムルソローネ」

降霊科の秀才で右目に魔眼と呼ばれるものを持っている極めて珍しいマスター。チームAのある人のことを様付けで呼ぶほど慕っている。ちなみに性格はしっかりもので、知り合ってからは何かと注意されている。召喚予定のサーヴァントはセイバー。何でも契約するサーヴァントには拘りがあるそうな。

 

「芥ヒナコ」

メンバーの中で、唯一感じが入っているマスター。ちなみに出身は日本ではないらしい。植物学(コミナ)と呼ばれる魔術学出身だそうだ。いつも周りの人と距離を離していて、一人で読書をしているとこをよく見る。ジャンルは昔の中国が舞台の本が多い。あと本人は否定してたけど、恋愛系もよく見るみたいだ。本来はカルデア技術者だったが、才能を見抜かれてマスターになったそうな。召喚予定のサーヴァントはライダー。本人の強い希望らしい。

 

「スカンジナビア・ぺペロンチーノ」

どう見ても偽名を使っている感じの人。国籍が不明らしい。話してみた感じ、とても気さくでいつもジョークを言っていて、とても面白い人だ。見た目的にはヨーロッパ系の人だが、なぜか日本文化、特に仏教に関して詳しかった。

召喚予定サーヴァントはアーチャー。特に拘りはないそうだった。

 

「ベリル・ガット」

ぺぺさんと同じくジョークが好きな近所のお兄さんみたいな人だ。自分やカドックをまるで弟のように接してくるが、たまに沖田さんと同じような冷たい雰囲気を纏うことがある。この人に関しては、本人を含め誰も素性や目的を教えてくれない。

 

「デイビット・ゼム・ヴォイド」

あのダヴィンチちゃんが天才と認めるほどの人物。魔術協会で伝承科(ブリシサン)と呼ばれる、この世ならざる遺物を扱う異端宇問を専攻していたことがあるが、追放されたそうだ。よく自分が何かで悩んでいるとスッとそれを解くヒントをくれたり、暇な時はよく会話に付き合ってくれる。周りの人は危ないと言っているが、自分はそうは思わない。召喚サーヴァントはバーサーカー。

 

「キリシュタリア・ヴォーダイム」

天体科の首席にして、チームAのリーダー。家柄も魔術回路も千年単位の歴史をもつ名門中の名門ヴォーダイム家の当主様だ。そしてマリー所長よりもロードの後継者らしいと噂されたマリスビリー前所長の一番弟子。対面し手見た感じ、まるで王者の風格と言うような、今まで味わったことのないもので苦手だ。ただ、あちらは自分に興味があるのか会う度に茶会をしないか誘ってくる。

召喚予定サーヴァントはランサー。魔術師としての総合力が一番らしく、期待されているそうだ。

 

 

 

 

ほとんどダヴィンチちゃんが説明してくれたものだが、Aチームについてはこんな感じだろう。皆個性的だけど楽しい人たちだった。もう少ししたらAチームの人達と一緒に過去に行くこととなる。不思議と緊張はしない。今まで通りなるようになるだろうと考えている。沖田さんもいることだし。

 

「マスター!、疲れましたー!」

 

噂をすれば、沖田さん部屋に帰ってきた。いつも通りお茶とお菓子を用意し始める。そういえばここ数日ダヴィンチちゃんの部屋に行ってるみたいだけど、何してるんだろうか。

 

「ずずず...あむ。...いえ、実は体と言いますか霊基のほうを調べてもらっていたんです。」

 

お菓子を頬張りながら沖田さんが言う。どこか調子が悪いのだろうか?一緒にいるけどそんな感じはしなかったのだが。

 

「この黒い刀のこともありましまして、ダヴィンチさんを頼ってみたんです。そうしたら、私の霊基には他の霊基が混ざっている状態、言うならば「複合サーヴァント」とでも言うような感じになってたみたいです。」

 

複数の霊基が混ざり合っている状態ということは、2重人格の様に何かの拍子に入れ替わるみたいなことがあるのかな?

 

「もしかしたらなるかもしれませんね。どの英霊の霊基なのか、原因は何かも結局わからずじまいでした。」

 

でも今のところそれで困ってるわけではないんでしょ?

 

「そうですね。むしろ前よりも体が軽いし、沖田さんずっと絶好調って感じです!今のところ喀血もありませんですし、もしかして沖田さん完全体になってしまったんですかね?」

 

それは単純に無理してないからでは?まあ多少は気になるものの、問題ないならそれでよし。

 

『えーと、聞こえてるかな?おーい!』

 

突然、ベットの近くにあるモニターから声が聞こえた。ドクターから通信が入ったみたいだ。聞こえてますよー。

 

『所長がカルデアのスタッフを呼び集めてるよ。気づいてた?」

 

あれ、そんなの聞いてなかった気がする。。少し、いやかなりめんどくさい。ただマリー所長

が関係してるなら行くしかない。だって後が怖いし。

 

「何か忙しくなりそうですね。もう少しマスターとゆっくりできると思ったのですが...」

 

まあまあ、終わったらまたゆっくりすればいいじゃん。沖田さんもついてくるの?

 

「むぅ...まあやることがないですし、ついていきますよ。」

 

『話はまとまったかな?なら、第一集会室に来てくれ。くれぐれも遅刻しないようにね!』

 

とのこと。あまり気乗りはしないため、少し足取りが重い。ところで、第一集会室ってどこ?

 

 

 

 

 

「いや~、カドックさんでしたか?道を知ってる人に会えてよかったです。」

 

ほんとにね。もうカルデアのスタッフみんな集まり終えてるみたいで、館内に人の姿は見られなかった。どうしようかと悩んでいたところ、少し急いでいたカドックに出会って一緒に連れてってもらうことにした。

 

「まったく...僕がここを通らなかったらどうするつもりだったんだ?確実に所長から雷が落ちるところだったぞ?」

 

いやほんと、感謝しているよ。でもカドック結構急いでいたね?まさかゲームしてたりしてた?

 

「別にしてないぞ。全く...お前と一緒にするな。色々俺もやることがあるんだよ。...よし、間に合ったな」

 

時間ギリギリで部屋に入ると、さっそく所長が大きい声をだした。

 

「ちょっと!今入ってきた三人、意識が低過ぎるのではなくて?もっと早くに来ること!」

 

「...お前のせいで俺も怒られたじゃないか。まったく...」

 

いやいや、今回は別に自分のせいではないんじゃ?

 

「冗談だよ、また後で。」

 

軽い冗談を交わし、カドックと別れる。しばらくすると、所長が演説を始めた。

 

明日、さらに魔術師を呼んで異常を検知した過去へと赴きそれを正す作戦「グランド・オーダー」を発令するとのこと。

いよいよ始まるみたいだ。どんな感じになるのか、全く予想がつかないがまあ何とかなるだろう。思えばここまで来るまでにあまり時間は経っていなはずだが、とても長く感じる。色々なことが起こりすぎたからだろうか?

思いを馳せるのもほどほどに、ここに集まったのは、明日発令される作戦「グランド・オーダー」に向けた事前会議のようなものらしく各チームの目的や注意点について確認するらしい。流石に今回は真面目に聞かないとダメそうだ。集中、集中...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――――――――――。―――――――――――....』

 

これは...夢?誰かが話している。

 

『―――――なりま―――――――――――!』

 

『あきら―――、――――――』

 

「―――――――――――日だ。――――――様にでも―――――――――――』

 

 

耳を澄ますが、所々ノイズの様なものが聞こえて上手く聞き取れない。

 

 

『どうか、どうか―――――――、―――――――――――....!』

 

『―――――――――――をお救い―――――――――――...』

 

 

誰かが泣いている。雰囲気からして女性だ。

 

『―――ター――――?マス―――――――。マ――ター?』

 

 

誰かが自分を呼んでいる?

 

 

 

 

 

 

「起きてくださいよ、マスター!」

 

目を開けると、目の前には沖田さんの顔が近くにあって少し驚いた。まさか自分寝てた?

 

「ええ、それはもうぐっすりと。所長さん、呆れかえって怒る気にもなれなかったみたいですよ?」

 

そんなぐっすりだったのか。今日は流石に寝ないと思ってたんだけどな。無念。それにしても何か夢を見ていたような?なんだかぼんやりして思い出せない。

 

「ほらほら、退屈な話が終わったことですし、部屋に戻ってお茶会の続きでもしましょうよ!」

 

やけに気分がいい沖田さんに背中を押され、部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

数日後、起きるとすでに廊下には見慣れない人が多くいた。もう魔術師が集まり始めているみたいだ。

沖田さんは一足先に行ってしまったのだろうか、姿が見えない。

覚えてる限りでは、全員集まったら所長から今回の作戦説明があるはずだ。ひとまずは指定された部屋に行くことにする。不思議と緊張はしていなく、気分的には普段と近い状態だ。

 

 

少し歩くと、マシュと白いカルデアの制服を着た女の子が話していた。

見た目は自分と同じくらいの年で、髪は珍しい赤とも橙色ともとれるような色をしてる。日本人っぽい空気が感じられるけども...

 

「あ、先輩。こんにちは。今から中央管制室にいかれるのですか?」

 

こちらに気づいたマシュが近づいてくる。女の子もこちらに気づいたようで、互いに会釈する。

 

「こちらの方は藤丸 立香(ふじまる りつか)さんです。」

 

「えと、初めまして先輩さん?藤丸立香です。もしかしなくても、日本出身で?」

 

おお、やっぱり日本人だった。こちらも自己紹介をし、一緒に隣を歩く。

マシュによると、なんでも廊下で寝ていたところをフォウさんに見つけられたとのこと。もしかして立香って床でしか寝られないタイプ?

 

「実はそうなんだ。畳とか硬い床じゃないと、ちょっと...」

 

「ジャパニーズカーペットですね。噂には聞いていました。なるほど...なるほど。」

 

「いや、実際はカルデアに入るときにシミュレート?したんだけど、そのあとから記憶がなくて...気が付いたらって感じで。」

 

どうやら立香は気さくな感じみたいだ。一緒に居て楽しい人が増えてくれて正直うれしい。話を聞く限り、どうやら自分と同じく魔術に縁のない一般人だそうで。

 

「今回、数合わせの名目で一般枠があるみたいで。立香さんはその一人だと思われます。」

 

なるほど。しかし数合わせで呼ばれるのはなんだかなぁ...あんまりいい感じはしない。

 

「んぅ...ふわぁ...眠い。」

 

なにやら特大の欠伸をした立香さん。まだ寝足りないのかな

 

「もしかすると、先ほど言われてたシミュレートの後遺症か何かではないでしょうか?すぐにでも医務室にお連れしたいのですが...」

 

そろそろ時間的に余裕が無いため連れていくことができないのだろう。あの人、遅刻したら相当怒るからなぁ...

 

「心配してくれてありがとう。まあ何とか寝ないで頑張ってみるよ。」

 

「何かあったらすぐに知らせてください。できるだけなんとかします。それに先輩もついているので安心して下さい。...ここが中央管制室です。」

 

中に入ると、既に始まっているようで、とても静かだった。皆の視線が刺さってとても痛いです。

 

「時間通りとはいきませんでしたが、全員揃ったようですね。」

「特務機関カルデアにようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです。」

 

場の空気が少し張り詰めた感じになった。いよいよ始まる。

 

「貴方たちは各国から選抜、あるいは発見された稀有な―――――――――――」

 

挨拶をしてる最中、なにやらこちらを見るな否や、かなりの大声で注意してきた。

 

「ちょっと!そこで居眠りをしているのは誰ですか!」

突然、いま自分がいるところあたりを指さしてきたマリー所長。いや、今回は寝るに寝れない状況だから自分ではないはず。だとすると...

 

「え、えっと...起きてください、立香さん」

 

やはり立香だった。先ほどから妙に静かだと思ってたけども...

マシュが賢明に起こそうとするものの一向に起きる気配がしない。

所長が鬼の形相でこちらに駆け寄ってくる。一応これまでの経緯を説明して落ち着かせようとするが...

 

「関係ないわ!どんな理由があれど、このような大事な場面で居眠りなんて魔術師としての意識が足りなさすぎです!」

 

と怒鳴り散らして、気持ちよく寝ている立香の頬に平手打ちのフルスイング。パチーン!とかなりの音が響き、立香は倒れた。いや今ので起きないの貴方?

 

「この方はファーストミッションから外れてもらいます。マシュ!貴方が部屋まで連れて行ってください。あと貴方もよ!お知り合いの様ですし、責任をもって一緒に行動すること。作戦の詳細は後で連絡しますから。」

 

 

 

 

 

なんてことがあり、仲良く追い出されてしまった。

 

「ぅ~ん...」

 

どうやら眠り姫がお目覚めになった様だ。

 

「大丈夫ですか立香さん?」

 

「...もしかして寝ちゃった?」

 

そりゃぐっすりと。しかも平手打ちされても起きないって凄いのやら鈍感やら。

 

「そこは先輩も似たようなものですよ。立香さんはファーストミッションを外されてしまいましたし、ひとまずは割り当てられた部屋に行きましょう。」

 

さらっと言われたことに驚きつつも一緒について行く。他の人から見ると自分っていつも立香みたいな感じなのだろうか?

途中で急に現れたフォウさんの体当たりを避けつつ、何事もなく立香が割り当てられた部屋に着いた。

 

「ここまでありがとうね、二人とも。何か迷惑かけちゃったね?」

 

「なんの。立香さんの頼みでしたら、昼食をおごる程度なら承りますとも。」    

「キュー...キュ!」

 

何やら今日であったばかりのはずの二人が凄く仲良くなってる。少し負けた気分だ。そしてフォウさんは何を考えたか立香の方の上に乗り始めた。

もしや、これから一緒に行動する感じなのか?

 

「それでは私はこれで。先輩も一度自室に戻られてはいかかでしょうか。もしかすると、何か連絡が来ているかもしれないですし。」

 

それもそうだね。流石はマシュ。他人の気遣いがうますぎる。ここで二人と別れる。立香が部屋に入った瞬間、中にドクターの姿が見えた気がするが、多分気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰りなさい、マスター。」

 

自室に戻ると、先に沖田さんが戻ってきていた。今までどこに行ってたんだろうか。

 

「ダヴィンチちゃんの所でこれからのことに関して軽く説明をうけてまして。私たちはどんな感じで動くとかですね。」

 

なるほど、沖田さんは沖田さんでやる事やってたのか。連絡は来てないし見たいだし、来るまでは待機かなぁ。

 

「なら、お茶でも用意しますね?マスターは座っててください。」

 

 

 

 

お茶を啜りながら沖田さんと談笑していると、突然部屋の明かりが消えた。なんだなんだと驚いていると、すぐに明かりが着いた。耳を劈く(つんざく)ほどの警報とともに

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。』

 

『中央区画の障壁は役90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから避難してください。』

『繰り返します。――――――――――』

 

...今中央管制室って聞こえた。あそこにはチームAのみんながまだいるはず...沖田さん!

 

「わかってます。急ぎましょう!」

 

こちらの意図をくみ取ってくれて、とても心強い。脳裏に浮かぶもしもの光景を振り払いつつ、中央管制室まで向かう。

 

 

 

 

 

 

走る。走る。走る。悲鳴や怒鳴り声を無視してひたすら走る。

息を切らして全力で走る。他に何も考えない。早く行かなければ。

 

管制室の扉は爆発にでもあったのか、粉々になっていた。

中に入ると、あたり一面炎の海が広がっており、とても人がいそうにいない。

 

「...何人か中にいるみたいですよ!この気配は...!こっちです!」

 

沖田さんには何か感じとれるみたいだ。今はそれを信じてついて行く。すると瓦礫の下敷きになっているマシュと、マシュを助けようとしている立香がいた。

 

「あ...先輩も来て...しまったんですね...」

 

「...君もバカだね?こんなところに来るなんてね。」

 

マシュは安堵と悲壮が混ざったような、立香は呆れた顔をしていた。

バカなのはお互い様ってことで。二人でなら瓦礫ぐらい何とか出来るはずだ。

 

「急いでください!もうあまり時間は...」

 

 

『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。』

 

『シバによる近未来観測データを書き換えます。

近未来百年までの地球において人類の痕跡は()()できません。』

 

「...え?」

 

『人類の生存は ()() できません。

人類の未来は ()() できません。」

 

「カルデアスが....真っ赤に、なっちゃいました....いえ、そんな、コト、より――――――――」

 

『中央隔壁 閉鎖します。

館内洗浄まで あと 180秒です』

 

.....どうやら間に合わなかったみたいだ。

 

「...隔壁、しまっちゃい、ました。...もう外には...」

 

「そうだね。...まあなんとかなるよ。きっと。」

 

立香はマシュに慰めるようにして話しかけている。沖田さん、何か策は?

 

「...隔壁ぐらいなら私の力で何とか突破できると思いますが、火災が広がってしまう恐れがあります。」

 

有効な策はない...何かほかに手は...

焦りだけが自分を支配する。どうしようもできない事実に体が固まってしまう。

 

『コフィン内のマスターのバイタル、基準値に 達していません。』

 

『レイシフト 定員に 達していません。

該当マスターを検索中....発見しました。』

 

適応番号48 藤丸立香 を マスターとして 再認定 します。』

 

マスター...再認定?もしかして、この状況でレイシフトをさせる感じ?

 

『アンサモンプログラム スタート。

霊子変換を開始 します。』

 

これってかなりやばいやつでは?でも確かレイシフトって過去にタイムスリップするような感じらしいし、もしかしたら助かるかも?

 

「.......あの、せん..ぱい、りつか..さん。」

 

かなり弱弱しいこえでマシュが自分と立香を呼んだ。

 

「手を...手を、握って...もらっても...いいですか...?」

 

立香と互いに顔を見合い、二人で一緒にマシュと手をつなぐ。こうなれば一か八かだ。

 

『レイシフト開始まで あと3、2、1』

 

『全行程 完了(クリア)

ファーストオーダー 実証を 開始 します。」

 

そのアナウンス聞いた直後、自分は気を失った。

気が付くと自分は空を見上げるようにして倒れており、すぐそばで沖田さんが自分を呼んでいた

 

 

 




ちなみに沖田さんのステータスはこんな感じになってます。

原作
筋力:C 耐久:E 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:D 宝具:C

本作 
筋力:C+ 耐久:D 敏捷:A++ 魔力:E 幸運:D 宝具:C

とりあえず、何か少し強くなってる程度ってことにしておいてください。

今後は週一以上の投稿を目指していくので、よろしくお願いします。


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炎上 接触 記憶

周一という目標を立てたばかりなのに遅刻してしまい申し訳ございません。
今回は戦闘メインで書いたつもりですが、いかんせん初めてなもんですから、読みにくかったらすみません。


「大丈夫ですか?!マスター?!」

 

必死に呼びかける。自分と違いマスターは現代を生きるただの人。しかも今は緊急事態で生身のままレイシフトしてしまった。失敗すれば体が粒子になるとかならないとか。それが頭にあったため、必要以上にマスターの身を案じてしまう。

 

――あれ...空が見える?――

 

こちらの心配なんて知らずに、いつもと同じようにのほほんとした感じで起き上がったマスター。

 

「大丈夫ですか?どこか体で痛むところはありますか?!」

 

意外と自分は心配性なのだろうか、つい強めで聞いてしまった。そんな私を見てマスターは苦笑いしながら大丈夫と答えてくれた。肩の力が少し抜ける。

 

――ここって、確か過去の冬木市だっけ?。――

 

少し落ち着いたところで周りを改めて見回す。壊れた建物の瓦礫や炎が至るところに燃え広がっており、現代のどこかの街というのがかろうじてわかる程度まで崩壊していた。こうしてみると、自分たちが暮らしていたころとは生活様式が変わっていて、時代の流れを実感する。

 

「マスター、ひとまず移動しましょう。ここにいるだけでは始まりません。もしかしたらマシュさんや立香さんたちに会えるかもですし。」

 

マスターも同じことを考えていたのか、何も言わずに頷くと静かに歩き出した。前から思ってたんですけど、マスターって他の人と比べて一言少ないのでは?

 

 

 

――どこ行っても壊れてた建物ばっかり。まるで世紀末みたいだ――

 

ほんの少しだけうれしそうに呟くマスター。一言少ないだけでなく緊張感が足りてないのでは?まあそこがマスターの魅力でもあるため、あまり強く注意することができないのですが。

 

「まったく、ここはもう戦場なんですよ?もう少し真剣になってくださいよ。」

 

ごめんごめん、と軽く謝罪された。やはり強く注意するべきでは?なんて考えながら足を進める。瓦礫、瓦礫、炎、瓦礫。行けども行けども形を成していたものの残骸ばかりが目に映る。人の気配はまったくしない。

 

 

―――――――――――――――!!!

 

突然遠くのほうから、雄たけびのような咆哮のようなものが聞こえた。かなり離れているはずなのに、まるで近くにいるかのように感じるほど大きな声だった。

 

 

「...どうします、マスター?」

 

――とりあえず行ってみよう。もしかすると二人が襲われているかもしれないし――

 

まるで助けに行くのが当たり前のようにさらっと言うマスター。自分の身が心配じゃないんですかね?まあここで変なことを言うようでしたら、たとえマスターでも斬ってたところですが。

ただ、嫌な予感しかしないからか足取りが少し重く感じる。

 

 

――――!――――――――――――!!

 

声がする方に行ってみると、そこには人の姿をした影の様な()()が暴れていた。

 

「これは...サーヴァント?」

 

微かに感じられるのは、サーヴァントに似た気配。ただ、見た目や行動からはとてもサーヴァントとは思えない。

 

―とりあえず、襲われてはいないみたいだね。よかった―

 

ひとまず安堵するマスター。ただ、あの影を放置しておくと、後々面倒なことになりそうだ。どうするかの意をこめてマスターに顔を向ける。

 

―沖田さん、行けるかい?―

 

マスターが恐る恐る聞いてくる。行けるというのは相手を考えてのことか。それとも自分の体ことを思ってなのか。後者だったら個人的にうれしいのだが。まあどちらにせよ...

 

「多分いけると思いますよ。見た感じ、あいつの動きには単調なものが多いですし。」

 

実際、どこを目指して歩いているというわけでもなく、ただ目に映る何かを破壊しているだけのように見える。何となくだが、元になったサーヴァントは獣の様な咆哮や手に持ってる得物を使った破壊力からして、おそらくバーサーカーだろうと推測する。そうなると、真正面からやりあうと分が悪い。背後から狙えるなら、そちらの方が効率がいいだろう。

 

「それじゃ行ってきます。マスターはどこかに隠れていてください。巻き込まれると危ないですので。」

 

マスターに忠告しつつ、気配を消しながら影の所に向かう。ただ、影に近づくほどに、嫌な感じが強くなっている気がする。しかし、これは杞憂だと自分に言い聞かせ、影のほうに向かっていく。

 

 

 

少しばかり後をつけると、動きが止まり、背中ががら空きになった。こちらには気づいてないはず。この好機を逃すわけにはいかない。

 

「すぅ...はぁ...よし」

 

息を整える。争いから離れて少し時間が経ったものの、体はしっかりと覚えている。いつものように自分だけの世界を作り出す。

 

「(一歩音を超え....)」

 

今からするのは、生前自分にしか出来なかった剣術。他の誰にも真似することが出来なかった自分だけの奥義とも呼べるもの。

 

「(二歩無間....)」

 

静かに、大きく踏み込む。狙うべき箇所、その一点だけを見つめる。

 

「(三歩絶刀....!)」

 

あの土方さんがしっかりと、文句を言わずに賞賛してくれた他人とは何かが違う剣。その剣の技巧の全てをこの一撃に込めることで初めて成功する自分だけの剣。

 

――――――――――――?!

 

一閃。確かな手ごたえがあった。影は糸が切れた人形のように抵抗なく倒れる。起きる気配がないことから、しっかりと心の蔵は貫けているようだ。

 

「(まだまだ腕は鈍ってないようで安心しました)」

 

三段突き。それが病弱な沖田総司が誇れる、唯一無二のもの。成功したことに安堵しマスターの元に帰ろうとする。その瞬間、全身に悪寒が走り、影の方を向く。影はすでにそこにはおらず、自分の目の前で巨大な剣を振るおうとしていた。

 

「なっ?!」

 

咄嗟に剣を構えることで直撃は避けたものの、とてつもない力で横に飛ばされてしまった。腕が多少痺れているものの、致命傷はない。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――!!!

 

影が雄たけびをあげる。どうやら、完全に回復しているようだった。確かに手ごたえはあった。倒れるのも確認したはずだ。

 

――――――――!!

 

影が突撃してくる。考えている時間はないようだ。すぐさま刀を構える。

一回、二回、三回。受け止めはしたものの、力の差がありすぎて吹き飛ばされる。やはり正面からはやりあえない。

 

「このっ...!」

 

影の猛攻を受け止めるのではなく、避けることに専念する。振り下ろされた剣を避け、その剣の上を走りすれ違いざまに斬る。

 

―――――――――――――?!

 

手ごたえはある。だが効いている感じはしない。

 

「なら、何度でも斬るのみ...!」

 

相手の動きに呼吸を合わせ死角に潜り込む歩法、縮地。自分が得意とするものの一つを駆使し、腕、足、脇腹と次々と斬っていく。しかし...

 

――――――――――――――――――――――――――――――!!

 

相手の動きは鈍らないどころか、こちらに少しづつ追いついてきている様に感じる。刀が所々弾かれ始める

 

「(こいつ...私の動きに...?」

 

最初は闇雲に暴れているばかりだったが、斬られる度に少しづつ動きに意識が感じられるようになり多少斬られても確実にこちらを捉えるような動きに代わっていった。

この流れはまずい。多分この影はサーヴァントとしては破格の才能を持っている英霊だ。言葉を発せられない程の狂化に侵されても僅かに理性が残っていることからも、かなりの手練れだとわかる。

このままでは確実に自分を捉えられる。バーサーカーとしての破壊力に狂化に侵されも僅かにでも残る異常なまでの理性。加えて自分の耐久力の無さも含めて、追いつかれるのは時間の問題だろう。

 

「これは、出し惜しみしてる場合じゃないですね...!」

 

マスターの負担が増えることに申し訳ないと思いつつ、集中する。

 

『誓いの羽織』

 

これは自身の宝具であり、戦闘服とも呼べる浅葱色の羽織を装備する対人宝具だ。体の負担を減らすため、そして真名を隠すために普段は使っていないもの。これを発動することにより、今まで抑えてた力を完全に使うことが出来る。当然体に掛かる負担も大きくなる。呪いともいえるスキル「病弱」の発動確立も高くなるため、普段は絶対に使わないが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。

 

「倒れる前に、斬る!」

 

体が軽くなる。先ほどよりも早く踏み込む。影は反応できていない。押し切られる前に、押し切る!

 

――――――――――――――――――――?!

 

影が驚いたような声を挙げる。やっと今の速度に慣れてきた矢先さらに早くなるのだから無理もない。

 

「速く、鋭く!」

 

体の節々が少し痛む。元々疲労していることもあり、限界を迎えるのが今までより早いだろうと考え、さらに速度を上げる。より早く切る。それだけを考える。

 

――――――――――....!

 

腕、太もも、脇腹、腕、腕、脇腹、太もも。何度も何度も斬る。ひたすら斬る。

流石のバーサーカーの肉体と言えども、何度も斬られれば当然動けなくなる。何回斬ったかわからないぐらい斬り続け、やっと膝をつかせることが出来た。ここで決める。

 

「一歩音を超え、二歩無間、三歩絶刀!」

 

もはや叫びに近い声でいつもの言葉を声に出して紡ぐ。これで終わってくれと強く願う。

 

一閃。鋭く、深く突き刺す。当然体制が崩れた状態では影は身動きが取れず、心の蔵を貫かれる。一言も発さずに倒れる。

 

「...........」

 

静寂が周りを支配する。今度こそ終わった様だ。気が抜けて腰が抜けてしまう。久しぶりの戦闘といこともあってか、余計に疲れた。

 

「何とか倒れる前にやれましたか....」

 

マスターがこちらに駆け寄ってくる。珍しく焦りを顔に出していて、新鮮だった。

 

―大丈夫か沖田さん?!―

 

「ええ、そりゃ見ればわかりますよね?沖田さん大勝利ですよ。」

 

元気はでないものの、いつもと同じ感じでマスターに報告する。すると安心したのか、いつものおちゃらけた感じにもどった。やはり私のマスターはこうでなくては。

 

―それじゃ、二人を探そうか。ゆっくり休みながらね―

 

気の抜けた空気を纏いながらマスターが歩いていく。戦場に要らないものだが、どこか心地よくて、つい気を緩めてしまう。だからだろう、影が立ち上がっているのに気づくのが遅れてしまった。

 

「マスター!逃げてください!!」

 

マスターに向けて叫ぶものの、既に手遅れだった。マスターも気づいたみたいだったが、避けきれず影の攻撃でかなり吹き飛ばされてしまった。攻撃される瞬間魔術で体を守っているのは見えたが、バーサーカーの力の前ではあまり意味ないだろう。

 

「まだ立ち上がるか...!」

 

マスターが心配だが、今はこの影をどうにかしなくてはならない。刀を握る。先ほどの様にはいかないものの、素早く踏み込み斬っていく。

だが、やはり連戦の為か、斬り合い始めて程なくして

 

「かは?!けほっ...こふっ...」

 

遂に体が限界を迎えてしまった。体が急に重くなり上手く動かせなくなる。スキル「病弱」が発動してしまった。病弱とは言うものの、効果としては耐久と敏捷が最大までマイナスになってしまうもので、戦闘中に発動してしまうと、格好の得物になってしまう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

ゆっくりとこちらに歩いてくる。もう自分が抵抗できないことを悟ったのだろう。一歩ずつ、ゆっくりと向かってくる。その足取りは何回斬られたはずなのに、とてもしっかりとしている。

ここで終わってしまうのだろうか?また、自分は最後まで戦い抜くことが出来ないのだろうか?無力自分を深く呪う。せめてもう少しだけ自分の体が強ければ、こんなことにはならなかっただろうと考える。

 

『私が力を貸してやろうか?』

 

突然、頭の中に声が響いてきた。それも自分よく似た声だ。まさか幻聴が聞こえるぐらい参ってしまったのだろうか。でも、この際幻聴でも何でもいい。あいつを倒し、マスターを助けれるなら。

 

「(ええ、力を貸してください。あいつを倒し、マスターの所に行きたいんです。)」

 

『わかった。なら、体を借りるぞ、私』

 

体を借りるってどういう、と質問する前に、意識が朦朧とし、すぐに意識を失った。覚えているのは、自分じゃない()()が背中にあった大太刀を構え、私の代わりに影と戦おうとしていたことだけだ。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――!

 

....誰かが話している。

 

――――――――――――――――――――。

 

....どこか懐かしい感じがする。

 

――――――――――――――!――――――――――――!

 

....―――――――――――――。――――――――――――――――!

 

....あぁ、これは幼い頃の記憶だ。

 

――――――――――――――――――――!

 

....そういうことだったんですね。貴女は――――――

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私はマスターに支えられながら歩いていた。何か夢を見ていたはずだが、はっきりと思い出せない。ただ、とても懐かしい感じがする。そして、何か大事なものを思い出した気がする。はっきりと言えないが、とても大事なもの。約束の様なものをしていたはずだ。

 

―沖田さん?大丈夫?―

 

どこか気が抜けるようで、それでいて何故か安心できる声で自分の名が呼ばれた。まだ、その大事なものを思い出せはしないが、そのうち思い出せるだろうという謎の自信があった。

ひとまず、今は頼りなさそうなマスターに体を預けることにした。




この前自分が投稿した前話を見てみると盛大に誤字ってましたね。今はしっかり修正したので大丈夫です(多分...)

そういえばぐだぐだ新イベ発表されましたね。凄く楽しみです。


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合流 情報 目的

今回は短めです。私生活がまだ落ち着かず、あまり時間がないのが現状です。
次は長く書けるように努力します。


激闘を終え、疲労やらスキルの影響やらで倒れてしまった沖田さんを背負い、当てもなく歩き続ける。それにしても、さっきのは驚きの連続だった。沖田さんが影のサーヴァント?をワンパンしたこと、何度もよみがえる影。さらには、急に沖田さんが黒くなったり、その黒くなった沖田さんがなにやら影相手に無双してたり。やっぱりセイバーとなると、何でもありな感じなのかな?

 

ふと、影と対面したときのことを思い出した。体中どこまでも黒く、まるで吸い込まれるような黒。そして影から発せられた重圧。多分あれが殺気というものだろう。運よく教わった魔法を使うことで吹き飛ばされるだけで済んだが、改めて考えると死ぬかもしれなかった事実。アドレナリンがなくなった今、言葉にできない何かが自分を包み、体が震える。

 

「....マスター、どうかしたんですか?」

 

背負っていた沖田さんが声をかけてきた。別に何でもないよ、と自分に言い聞かせるように答えた。それよりも沖田さんは大丈夫なの?

 

「ええ、おかげさまで。もう大丈夫ですよ。」

 

沖田さんには悪いが、そろそろ背負うのもきつくなってきたところだから正直助かった。沖田さんを近くに下ろし、自分も座る。座った瞬間、物凄い脱力感が襲ってきた。物凄く疲れた。

 

「...すみません、マスター。自分が不甲斐ないばかりに。」

 

沖田さんが申し訳なさそうに謝ってくる。もしかして自分が攻撃されたから?でも沖田さんだって必死だったし、別に気にしてないんだけどなぁ。

 

「ですが、やはりサーヴァントとして格好がつかないというか...」

 

いいからいいから。ずっと暗めの沖田さんじゃこっちも暗くなるから、いつもみたいに元気で明るい沖田さんになってもらわないと。ほらほら、笑って笑って。

励まし?の言葉を口にしつつ、沖田さんのほっぺをつつく。

 

「ちょっと、何してるんですかマスター!」

 

怒られてしまった。反省反省。でも沖田さんが元気じゃないと、こっちも元気じゃなくなるのは本当だからね。

 

「全く...わかりました!もう気にしませんよ。いつもの沖田さんに戻りますよ!」

 

今まであった暗い雰囲気はどこかへ行き、いつもの沖田さんの笑顔が返ってきた。やっぱり楽しくいないと、損した気分になるよね。

 

「しかし、これからどうしましょうね?行く当てもないですし。」

 

そういえば、絶賛迷子中だったこと思いだす。どうしたものかと頭を抱える。相変わらず周りは焼け野原。人が悪にいる気配も無し。骸骨やモンスターはそこら中にいるけど、意思疎通は不可能。うーん....困った。

 

「...?マスター、誰かがこっちに来ます。念のため隠れていてください。」

 

ふと、沖田さんが何かに気づいた様子でこちらに注意してきた。やはりサーヴァントとしてなのか、はたまた沖田さん自身の感覚が優れているのか。どちらにせよ自分では全く感知出来ないため、凄く助かる。沖田さんは何があってもいいように、少し離れた場所で息をひそめていた。

 

―――――――――――――――――――。

 

声が聞こえる。まだそれほど近くにはいないみたいだが、こちらに向かってきているようだ。どんどん聞こえる声が鮮明になっていく。

 

「本当にここで合ってるんでしょうね、ロマニ?」

 

『ええ、反応ではここのはずなんですが...マシュ、立香ちゃん、何か見えない?』

 

もしかして、所長にロマンの声?それに聞き覚えのある名前もでてきたし、間違いない。はぐれたみんなだ。運よく鉢合わせになったみたいだ。助かった。ひとまず、こちらから声をかけて合流し、もってる情報を交換することにした。

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~なるほどねぇ。オタクらがあのバーサーカーを仕留めたのか。意外とやるもんだ。」

 

立香達に同行していた男性、キャスターが驚きの声を上げる。なにやら相当な怪物だったみたいで、キャスターでも手に負えるモノじゃなかったらしい。そんな相手によく生き残れたと思わずにいられない。

 

「それにしても、キミも災難だったね?」

 

後ろから立香が声をかけてきた。それはお互い様じゃないか?聞けばサーヴァント2基のマスターになったらしいじゃない。

 

「あはは...まあ大変だけど、多分何とかなるんじゃないかな?」

 

何だか軽くない?自分も人のこと言えないと思うけどさ。何か緊張感が足りてないというか...

 

「私のことは置いといて、いつまで隠れているのさ、マシュ?」

 

「えぇと...その、いざ対面すると些か恥ずかしいと言いますか...ひゃぁ!?」

 

立香の後ろにいたマシュが、押されて自分の前に飛び出してきた。見た目は普段と違い、腕や足の肌が所々露出している服装だ。何故か腹も露出している。特徴的なのは、二本の手で支えている大きな盾だ。なんでも疑似サーヴァントになってしまったらしく、得物が盾だそうだ。盾をつかう英霊って誰かいたっけ?

 

「あの、そんなにじろじろ見ないでください。先輩....」

 

顔を赤くし、ぷるぷると小さく震えており、とても愛らしい。凄く...可愛いです。

 

「ちょっと、いつまでおしゃべりをしているのよ!」

 

和気藹々と会話をしていると、なにやら怒った口調で所長さんに叫ばれてしまった。マリーさんも仲間に入りたいんですか?

 

「何言ってるのよ!望ましいとか、私も楽しく話したいだとか、別に思っていません!」

 

なんというか、本当にわかりやすい人だなぁ、所長さん。まあここで話してても何も変わらないし、これから目指すところはどこか、ロマンに聞いてみた。

 

『そうだね。これから目指すところは大聖杯と呼ばれるモノだ。何でも、キャスターさんが言うには、そこに特異点の原因があるらしいんだ。』

 

大聖杯?聞いたことがない単語がでてきたな。

 

「大聖杯いうのは、まあ早い話、この冬木市の心臓だ。黒幕はそこに潜んでいるだろうな。」

 

ほうほう、いかにもラスボスがいそうな場所ですな。そういえばここでは聖杯戦争が行われていたはずだ。残りのサーヴァントって、キャスターの他には誰が残っているんだろうか。

 

「残っているのは俺含め、あと3基だ。大聖杯の所のセイバー、そいつの配下であるアーチャーだ。そういやそこのお嬢ちゃんもサーヴァントだろう?クラスは何だ?アサシン?」

 

「いえ、こう見えて私はセイバーですよ?キャスター。まあ、アサシンでもいい線は行くと思いますけど。」

 

今まで周りの監視をしていた沖田さんが戻ってきて、キャスターの質問に答えた。それを聞いたキャスターが、驚いたようなうれしそうな声を上げた。

 

「なに、お嬢ちゃんセイバーだったのかよ!そらあのバーサーカーとやり合えるはずだ。」

 

やはり、聖杯戦争においてセイバーのクラスは一目置かれているようだ。大聖杯にいるセイバーも、キャスターを除く他のサーヴァントに勝ったらしいし、本当に勝てるのかどうか心配だ。

 

「...........」

 

これからまた出発するところで、ふと離れた場所で一人でいるマシュを見かけた。震えているみたいだ。

 

「...ぁ、先輩...」

 

そっとマシュの頭を撫でる。自分たちと違い、ただの人間からサーヴァントになってしまい、直接戦うことになってしまったマシュ。相当怖いだろうけど、それでも自分たちのために戦ってくれている。そんなマシュに自分ができることは、こうやって励ますことだけじゃないかと考える。ごめんな、俺たちの代わりに戦わせて。

 

「...心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫です。先輩やマスターの為でしたら、私は何度でも戦います。」

 

少し見ない間に、マシュはすごく成長したみたいだ。今まではなかった、自分の意思が彼女の言葉から強く感じられる。彼女はこれからも成長を続けるだろう。そんな彼女の手を取り、みんなの元へ歩いていく。彼女の成長に期待を込めながら。

 

 

 

 




ぐだぐだイベント来ましたね。皆さんはもうやりました?
自分はアヴェノッブ2人と水着ノッブ1人お迎えが出来ました(´ω`*)
4周年に水着も控えていて、怒涛のイベントラッシュになりそうで、今から戦々恐々としております...(( ;゚Д゚))


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接触 弓兵 戦闘

滑り込みセーフ!(アウト)
皆様、大変お久しぶりでございます。
色々事情が重なってしまい、思うように執筆が進みませんでした。すみません


あれからキャスターの案内で途方もなく歩き続けていたところ、大きな洞窟の様な場所の入口に着いた。

 

「着いたぜ、この奥に大聖杯がある。」

 

見たところ、普通の洞窟に見えるが、どことなく魔力?のようなものを感じ取ることが出来る。

 

「ここら辺はちぃとばかり入り組んでいるんで、はぐれないようにな。」

 

「天然の洞窟...でしょうか?これも元から冬木の街にあったものなんでしょうか?」

 

マシュが疑問の声を上げた。確かに、自分はここら辺に住んではいなかったが、ここまで大きな洞窟があるなんて話は聞いたことがなかった。

 

「でしょうね。これは半分天然、半分人工よ。長い月日をかけて、魔術師が拡げた地下工房です。」

 

なるほど、魔術師の拠点に使われていたのか。多分魔術で知られないように隠していたんだろう。やっぱりマリーさんは魔術に関しては一流みたいだ。

 

「それよりキャスターのサーヴァント。大事なことを確認していなかったのだけど、セイバーのサーヴァントの真名は知っているの?何度か戦っているような口ぶりだったけど。」

 

「ああ、知ってるとも。ヤツの宝具を食らえば誰だって真名.....その正体に突き当たるからな。他のサーヴァントが倒されたのも、ヤツの宝具があまりに強力だったからだ。」

 

誰でも知ってる宝具か。そもそもどんなものが宝具になってるか見当もつかないから、予想のしようがない気がするけども。

 

「強力な宝具....ですか。それはどういう?」

 

「私も気になる。セイバーっていうぐらいだから、剣に関わるモノだと思うんだけど。」

 

マシュや立香が質問すると、キャスターが静かに口を開いた。

 

「王を選定する岩の剣の二振り目。お前さんたちの時代において、もっとも有名な聖剣。」

 

選定する岩の剣と言ったら、もしかしなくてもあの剣だろう。中世の時代の騎士物語に出てくる最強の剣。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)。騎士の王と誉れ高い、アーサー王の持つ剣だ。」

 

「誰ッ?!」

 

声のする方を向くと、いつの間にか影に包まれたサーヴァントがいた。おそらくセイバーの最後の配下であるアーチャーだろう。

 

「アーチャーのサーヴァント...!」

 

「おう、言ってるそばから信奉者の登場だ。相変わらず聖剣使いを守ってんのか、テメェは。」

 

どうやら、この二人も少なからず因縁がありそうだ。互いが好敵手のような存在なんだろうと感じた。

 

「...ふん。信奉者になった覚えはないがね。つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ。」

 

「ようは門番じゃねぇか。何からセイバーを守ってるかは知らねぇが、ここらで決着をつけようや。永遠に終わらないゲームなんざ退屈だろう?良きにつけ悪しきにつけ、駒を先に進ませないとな?」

 

「その口ぶりでは事のあらましは理解済みか。大局を知りながらも自らの欲望に熱中する...魔術師になってもその性根は変わらんと見える。文字通り、この剣で叩き直してやろう。」

 

アーチャーが二振りの剣を構えた。どうやらすぐにでも戦いを始めるみたいだ。沖田さんに目で合図を送り、気づかれないように後ろに回ってもらう。

 

「ハッ、弓兵が何を言いやがる。ってオイ、何ぼんやりしてんだお嬢ちゃん。」

 

唐突にキャスターがマシュに声をかける。

 

「相手はアーチャーだ。こっちにはピンクのセイバーはいるが、それでもアンタの盾がなきゃ、俺はまともに詠唱出来ねぇんだが。」

 

「あ...は、はい!すみません、何故か気が抜けていました。」

 

顔を横に何回か振り、気を引き締めるマシュ。それにつられて自分と立香も体に緊張が走る。

 

「問題ありません、行けます。ガードならお任せください!」

 

「一人で三人相手は流石に分が悪いか...三人?...なるほど」

 

突然アーチャーが高く飛び上がった。恐らく沖田さんがいないことに気づいたのだろう。

 

「おっと、そっちばっか気にしてていいのかい?!」

 

「そんな攻撃に当たるとでも?」

 

キャスターが放った光弾を、手に持ってる剣で切り裂きながら、こちらに近づいてくるアーチャー。そこに今まで隠れていた沖田さんが、後ろから奇襲を仕掛けた。しかし...

 

「...完璧な奇襲なはずでしたが、まさか防がれるとは。」

 

「いや、こちらがもう少し気づくのに遅かったら、首を取られてたよ。」

 

何食わぬ顔で沖田さんの突きを受け止めていた。そして、こちらからは目視できない程の速度で打ち合い始めた。いや、アンタアーチャーのくせに、何で近接戦闘できるのさ。

 

「あなた本当に弓兵ですか?私も本気ではないものの、ここまでやれるとは思いませんでした。」

 

「何、弓も剣も多少心得ているだけさ。ハァ!」

 

 

多少とは言っているものの、セイバーと打ち合える時点で相当の技量を持っていることがわかる。しかもキャスターの攻撃を避けつつの攻防だったことから、一筋縄にはいかないだろう。

 

「このままではこちらが不利か。ならば...!」

 

持久戦では不利だと悟ったアーチャーが、いつの間にか得物を弓に変えて、こちらに向かって攻撃してきた。

 

「こっちに撃ってきた!?」

 

「させません...!」

 

マシュが持っている盾で、アーチャーの射撃から守ってくれてた。ただ攻撃が激しく、マシュ一人では防ぎれないため、自衛できない立香をかばいながら、こちらに向かってくる矢を出来るだけ防いでいく。

 

「大丈夫ですか?!マスター、先輩!」

 

「うん、こっちは大丈夫だよ!」

 

「いいねぇ、なら、こっちはどんどん攻めるとしようか。そらぁ!」

 

アーチャーに狙撃させまいと、細かく早い光弾を放っていくキャスター。徐々にではあるが、捌ききれずに掠り始めてきた。すかさず沖田さんが間合いを詰めに行った。

 

「隙あり!」

 

「厄介だな、死角から攻めてくるというのは!」

 

先ほどとは違い、防戦一方のアーチャー。やはり複数人を相手にしているため、こちらよりも疲弊している。

 

「もう出し惜しみするわけにはいかないな。投影開始(トレース・オン)。」

 

何やら聞きなれない事を口にしながら距離を取ったアーチャー。手には弓と、巨大なドリルのような矢を持っており、これで決めると言わんばかりに魔力を溜め始めた。

 

「おっと、こいつはやばい。お嬢ちゃん!宝具の準備だ!」

 

「りょ、了解です!沖田さんもこちらに!」

 

どうやらマシュの宝具でアーチャーの攻撃を無力化するみたいだ。多分、手に持っている盾を使った防御型の宝具だろうと予測する。

 

沖田さんにいつでも動けるように指示をしておいて、アーチャーの攻撃に備える。....来る!

 

「宝具...展開します!」

 

「貫け、カラドボルグ!」

 

赤い衝撃波を纏いながら、一直線にこちらに向かってくる。マシュが展開した大きな盾に接触すると、魔力が吹き荒れる。

 

「ちぃ、奴さん前より確実に強くなってやがる...!踏ん張れよ、お嬢ちゃん」

 

「頑張って、マシュ...!」

 

アーチャーの攻撃を、マシュの宝具とキャスターの援護でなんとか防げてはいるものの、若干押され気味だ。こっちから手を打たないと追撃でやられるかもしれない。沖田さんに目を向けて、何か手はないかと聞く。

 

「...少しだけ時間をください。少しだけでいいです。」

 

この状況を打破できる何かがある様子の沖田さん。沖田さんを信じて、マシュの所に向かう。自分の魔力も使えばそれなりに時間は稼げるだろう。

 

「くぅ...!」

 

確実に盾の強度は上がっているはずだが、それでもやはり押され気味。そろそろマシュがやばい。

 

「おい、まだかセイバー?!こっちはそう長く持たないぞ!」

 

「...よし。マスター、離れててください。」

 

準備が終わった沖田さんが声をかけてきた。手にはあの黒い大太刀を持っており、その大太刀の刀身が赤く発光していた。

 

「すぅ..はぁ...―――――――――!」

 

いつもの平正眼の構えをとり、剣を前に突き出した。同時に自分の体から大量の魔力がなくなるのを感じた。その大量の魔力が、剣先からまるでビームの様に放出された。大量の魔力は矢を飲み込みながら、アーチャーに向かっていった。

 

「何!?」

 

次弾を打とうとしていたところに不意を突かれ、咄嗟に盾のようなものを出して防御したのが見えた。

 

「あまり長く持ちません...!キャスター!」

 

「ああ、わかってるさ。俺も全力で行かせてもらうぜ!」

 

沖田さんに言われ、キャスターが詠唱を始める。

 

「...焼き尽くせ...木々の巨人―――焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!」

 

詠唱が終わると、キャスターの下に展開された魔法陣から炎を纏った巨人が現れた。その巨人がアーチャーに向かって倒れこむようにして攻撃した。周りが振動し砂煙が舞う。

 

「...ふぅ。慣れない事はするものではありませんね。」

 

その場に倒れこむようにして座り込む沖田さん。立香がそばに駆け寄って具合はどうか聞いていた。その光景を後にしながら、キャスターとマシュと一緒にアーチャーの元に向かう。アーチャーはすでに体が透けていて、時期に消滅する寸前だった。

 

「ぐ...どうやらここまでみたいだな...」

 

「ああ、今回はテメェの負けだ。未練なく消えろ消えろ。聖剣攻略は俺らでやってやるよ。」

 

「フッ、相変わらずだな。...今のセイバーは強敵だ。油断した時点ですぐにやられるだろう。」

 

キャスターと短いやり取りを終えると、こちらに顔を向けて助言をしてくれたアーチャー。最初にあった時から感じてはいたが、根は優しい人なのではないか。

 

「何、先輩からのお節介さ。...しかし、花の魔術師も考えたな。その宝具にそんな使い方があったとは...」

 

そう言い残し、姿を消したアーチャー。その宝具って、マシュの持っている盾のことをなのだろうか?

 

「あの、キャスターさん。」

 

後ろにいたマシュがおずおずとキャスターに声をかけた。

 

「信頼していただけるのは嬉しいのですが、私に防げるのでしょうか...その、音に聞こえたアーサー王の聖剣が。私には過ぎた役割のようで、指が震えています。」

 

どうやら、さっきの戦闘で自分に自信が持てなくなってしまったのだろう。自分としては完璧ではないにしろ、アーチャーの全力の攻撃を防ぎ切ったから誇ってもいいと思うが、なかなかそうはいかないみたいだ。

 

「そこは根性(ガッツ)で乗り切るしかねえわな。だがまあ、オレの見立てじゃあ相性は抜群にいい。その盾が壊される事はない。負けるとしたら、盾を支えてるお嬢ちゃんがヘマをした場合だろう。お嬢ちゃんが手を離せば、その後ろにいるマスターたちは一瞬で蒸発する。」

「いいか、聖剣に勝つなんて考えなくてもいい。アンタは、アンタのマスターを守る事だけ考えろ。得意だろう、そういうの?まあなんだ、セイバーを仕留めるのはオレやこっちのセイバーにまかせて、やりたい事をやれって話さ。」

 

キャスターがマシュに激励をしてくれた。それにしても、壊れない盾なら、使い方を熟知すれば無敵の壁になるんじゃ?そう考えると、マシュって凄い英霊に力を貸してもらったのではないか。

 

「ありがとうございます。そのアドバイスはとてもためになります。」

 

どうやらマシュも何か思うことがあったみたいで、少しだけ自信が付いたような顔をしていた。

 

「もう敵はいないわよね...?大丈夫よね?」

 

「大丈夫ですって。心配性なんですから、所長さんは。」

 

後ろから立香と、いつの間にか隠れていたマリーさんがやってきた。沖田さんも一緒みたいだ。

 

『とりあえず、周辺に適性反応はないみたい。お疲れ様、みんな。』

 

ロマンも戻ってきて、ひとまず危機は乗り越えたらしい。そのことに安堵する。

 

 



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休息 準備 休息

お久しぶりです。早めの夏休みを堪能してました(白目)
最近やっと落ち着いて執筆の時間が出来ました。
これからまた週一と甲できればと考えていますので読んでくださっている皆様には温かく見守っていてほしいです。


「そろそろ大聖杯だ。ここが最後の休息になるが、やり残しはないか?」

 

アーチャーとの闘いを繰り広げてから、少し歩いたところでキャスターがこちらに声をかけてきた。ここまで来たらもうやり残しとかは特にないはずだ。こちらは準備万端だ。

 

「私の方も特にないよ。このまま奥に進んでも大丈夫。」

 

立香のほうも大丈夫みたいだ。心なしか少し顔がやつれているような気がする。倒れないかちょっと心配だ。

 

「おぉ、こりゃ頼もしい限りだ。ここ一番で(ハラ)を決めるヤツは嫌いじゃない。まだまだ新米だが、お前たちは航海者に一番必要なものが備わっている。」

「運命を掴む天運と、それを前にした時の決断力だ。その向こう見ずさを忘れるなよ?そういうやつにこそ、星の加護ってやつが与えられる。」

 

何だか褒められてるのか呆れられてるのか、よくわからない感じの激励をキャスターからされた。自分はともかく立香は間違いなく()()を持っている。それが何なのかは自分じゃわからない。運を味方にする力なのか、前に進む勇気なのか。とにかく自分にはないものを持っていることだけは何となく感じる。

 

「なに言ってるんだか。進むにしろ戻るにしろ、そのまえに休息が必要に決まっているでしょう。」

 

後ろからマリーさんが、呆れた感じを隠さずに口を開いた。

 

「ドクター、バイタルチェックはやっているの?コイツはともかく立香の顔色、通常より良くないわよ。」

 

『え?!あ...うん、これはちょっとまずいね。急なサーヴァント契約だったからなぁ...。使われていなかった魔術回路(しんけい)がフル稼働して、脳に負担をかけているんだ。』

 

コイツはって...ある意味では信頼されてると言えるのだろうか?だとしても言い方が少しキツイなぁ...。

それにしても、マリーさんが周りをしっかり見ていることに驚いた。自分のことしか考えていないと思ってただけに、意外だった。もしや有能な人なのでは?単にドクターが他のことに集中して気づくのが遅れただけかもしれないが。

 

『マシュ、キャンプの用意を。温かくて蜂蜜がたっぷり入ったお茶の出番だ。』

 

「了解しましたドクター。ティータイムには私も賛成です。」

 

「お、決戦前の腹ごしらえかい?んじゃ俺はイノシシでも狩ってくるか。」

 

いや、この辺にイノシシはいないのでは?今の状況的にも。

 

「いないに決まっているでしょう、イノシシなんて。そもそも肉はやめて。どうせなら果物にしてよね。」

 

「...それより、こんなところでティータイムって大丈夫なのかな?」

 

こっちには英雄様2人にマシュがいるんだし、大抵は何とかなるはずだ。

 

「それもそうだね。それじゃちゃちゃっと準備しちゃおっか。」

 

各々がティータイムを準備し始めたところで、皆には悪いが自分は少しだけ席を外すことにした。特に理由はないが何となく、一人になりたかった。何かあったらすぐに戻ってこれるように、近くの岩場に座り込んだ。座った瞬間体の力が抜け、手足が重くなった。知らないうちに、自分も張り詰めていたみたいだった。

ふと、あの時の戦いでの事を思い出した。初めて敵と出会った。初めて殺気というのを向けられた。初めて殺されると感じた。ゲームで散々やってきた命のやり取り、いつもは敵を倒すことだけを考えていた。しかし、実際にやるとなると、まず体が恐怖で思うように動かない。思考も、沖田さんに任せておけばいい、なんて甘い考えだった。

正直、ここまでキツイと思っていなかったため、精神的なダメージが余計にデカい。自分らしくない。

 

「こんなところにいたのかい、セイバーのマスターさん?」

 

「何だか凄く暗いですね。らしくないですよマスター。」

 

いつの間にか目の前に、沖田さんとキャスターが来ていた。沖田さんが何かを持っていた。...ドライフルーツ?

 

「ええ、マリーさんが懐に隠し持ってたみたいで、紅茶と一緒に召し上がってました。これはおすそわけですって。」

 

あのマリーさんが気遣ってくれるなんて、明日は槍でも降るのだろうか。今まで知り合ってから一回もなかったのでは?多分。ちなみに渡されたドライフルーツはオレンジっぽいものだった。物凄く美味しいです。

 

「何か飲みたくなったらこっちに来てくださいね。まあ紅茶しかないですけどね。」

 

そういと沖田さんは戻っていった。というか本当にティータイムしてるのか...。

 

「こんなとこで何考えてたんだ?まあ大方、戦場に出てみて怖気づいたんだろう?」

 

少しキツイ言い方だが、多分そうなんだろう。実際自分は実際の戦いを怖いと思っている。男なのに情けない。

 

「なぁに、それが普通さ。つか一般人が急に戦えって言われて出来たら、俺らの立場がなくなるって。どれ、人生の先輩としてアドバイスの一つでもしてみようか。」

 

「戦おうなんて考えなくていいさ。あいつもそうだが、お前らは最近まで一般人だったんだ。戦う力がなくて当然だ。だから、ただ生き延びることだけ考えればいいさ。そうすれば何とかなる。なんてったって、お前らは運がいいからな!」

 

「何、要する戦いは俺らに任せておけってことさ。お前はお前のやりたいことをしてればいいのさ。」

 

キャスターから、こんな激励をもらうとは思っていなかった。てっきり男なんだからシャキッとしろ、ぐらいしか言われないと。意外だ。

 

「ほら、あっちに混ざって英気を養いに行ってこい。次は文字通り死闘になりそうだからな。」

 

背中をグイグイ押されてその場から立たされた。そのままキャスターは歩いてしまった。恐らく周りを見張ってくれるのだろう。まあここでうだうだ考えていても仕方ないだろう。まずは今をどうするか。ひとまずみんなの所に合流して紅茶をいただきに行こう。いつの間にか手足にあった重みは感じられなかった。

 

 

 

 

 

 

「...満足です。所長がドライフルーツを隠し持っているなんて、改めてその周到さに舌を巻きました。」

 

「たまたま所持していただけよ。頭痛には柑橘系がよく聞くのよ。それよりも――――」

 

紅茶を飲み終えたマシュが一言呟いた。てか頭痛には柑橘が効くのか。自分も頭痛には苦しめられているから覚えておこう。そんなことを考えながら紅茶を飲んでいると、マリーさんが自分と立香を見つめてきていた。お代わりでも欲しいのだろうか。

 

「.....お代わりですか、所長?」

 

「一杯で十分よ。それと、私は紅茶よりコーヒー派だと覚えておきなさい!い、いえ、そうじゃなくて...そういうコトじゃなくて...ああもう!」

 

立香も同じことを考えていたみたいだったが、どうやら違うみたいだった。そういえば、よくカルデアでコーヒー飲んでた事を思い出した。そして何やら一人で騒いでいらっしゃるマリーさん。普段見られない光景だから見ていてとても面白い。あと少し可愛い。

 

「こ、ここまでの働きは及第点です。カルデア所長として、貴方たちの功績を認めます。」

 

まさかこの状況で褒められるなんて思いもしなかった。立香もキョトンとした顔をしていた。何だかさっきから驚いてばかりな気がする。

 

「ふん、何よその顔は。どうせまぐれだろうけど、今は貴方たちしかいないのよ。その調子で上手くやれば褒めてあげてもいいってことよ。三流でも一人前の仕事ができるんだってわかったし。」

 

『なんと、二人を一人前と認めてくれるなんて、何か甘いものでも食べました?』

 

「ロマニ。無駄口を叩く余裕あるなら補給物資の一つでも送りなさい。二人して頑張っているのに、装備不足で失敗するなんて可哀相じゃない。」

 

『おや、可哀想とはお優しい。これはもしや、所長にもようやく心の雪解けが?』

 

「所長...」

 

「素直に心配って言えばいいじゃないですか。」

 

皆して社長の気遣いに驚いたりイジったりしている。ここまで優しいマリーさんは見たことないから、相当珍しい事なんだろう。本当に、今回はマリーさんの意外なところをよく見れる。

 

「バ...!あ、哀れでみじめって意味よ!そんなこともわからないの?!」

 

『いやあ、いつ見てもいいですね、少年少女の交流というものは。少女というには所長はちょっとアレですが。』

 

「そうでしょうか?所長は確かに年上ですが、趣味嗜好は大変近しいものを感じます。親愛を覚えます。」

 

「なに言ってるのアンタ?!アンタたちなんて私の道具だって言ってるでしょう。

 

「――――――(うんうん)」

 

「ほら見なさい、こんな黒っぽくて怪物っぽいのさえ同意してるじゃない!」

 

「ぇ...あひぃいいい?!マシュ、セイバー!早く排除して!食べられる、食べられる!」

 

「大丈夫ですよ。確かに面妖な見た目ですが、敵意はありませんし。殺気も感じられませんでした」

 

沖田さんがそう言うんだったら間違いはずだ。...もしかして気づいてた?

 

「ええ、気配はありましたし。まあ実害がないようなので手は出しませんでしたけど。」

 

「大丈夫なの?本当に大丈夫なのね?!とにかくマシュ、早くどこかにやってちょうだい!」

 

「わ、わかりました。マシュ・キリエライト。オーダーを実行します。」

 

そういうとマシュは手加減しながら攻撃をして、獣?のような何かを追い払った。多分紅茶やドライフルーツの匂いに釣られたのだろう。いやあ、それにしてもいいものが見れてよかった。

 

「私は良くないわよ!...もう周りにはなにも居ないわよね、ドクター!」

 

『大丈夫ですよ、周りに生体反応はもうありませんから。安心していいですよ。』

 

マリーさんはまだ後ろでぷるぷる震えている。よほど怖がったのだろう。プライドも何もかも全て捨てて、マシュに抱きついている。

 

「オイ、騒がしいが何かしたのか?」

 

『実は...』

 

騒ぎを聞きつけて帰ってきたキャスターに説明し始めたドクター。これは後で色々言われそうだなぁ。事の顛末を話し終えると、キャスターは盛大に笑いだした。

 

「こりゃ傑作だ!アンタにも可愛いところあるなんてな、ハハハ!」

 

「ちょっと、いつまで笑ってるのよ!本当に怖かったんだから...」

 

レアなマリーさんを見ることはできたが、ここまで弄られ続けていているのを見ていると、少しだけ同情してしまう。ご愁傷様です。




久しぶり過ぎて上手く表現出来てるか不安です。
そういえば、アプリの次の夏イベ、北斎さん配布ですってね。
凄くたのしみです


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