猫な彼女と傭兵と (ノア(マウントベアーの熊の方))
しおりを挟む

第1話

唐突に書きたくなった物語です。
ごゆっくり見ていってください。


それは、ある雪の降る夜のことだった。

傭兵として生計を立てている俺、中野 拓也(ナカノ タクヤ)は、今日も人を殺した。

傭兵なのだから当たり前だろうと言われればそれまでだが、この世界に蔓延るバケモノどもを殺した時以外、終わってから相手の事を考えてしまうクセがあるのだ。

アイツには家族がいたのだろうか、そんな風に。

 

その事で今日もヤケになり、酒を飲んで自宅へと戻っていっていた。

そして、元は住宅地であろう廃墟を通っていると、箱に入って捨てられていた子猫がいたのだ。

俺と同じく、独りで。

 

俺には家族なんてものは無い。

それに俺には仲間なんてものもなかった。

どこか親近感を覚えた俺は、気がつけばその猫を拾って帰っていた。

 

猫を家に置き、近くの売店で猫缶を買って帰る。

ペットが大丈夫な自宅で助かった、そう思いながら子猫に猫缶をやり、身体を洗ってやる。

すると、見間違えるように綺麗になった。

白い毛色なので、その事を頼りにネットで調べる。

調べたところ、"ターキッシュアンゴラ"という種類らしい。

改めて顔を見てみると、どうやら右眼が青、左眼が橙色のオッドアイのようだった。

 

「もしかして…オッドアイのせいで捨てられたのか?」

 

そう問うと、その子猫は悲しそうに「なー」と鳴いた。

 

「そうか…こんなに可愛いのにな…」

 

そう言いながら、子猫を撫でてやる。

すると、手に甘えるように擦り寄ってきた。

 

「そうだ、名前をつけてやらねぇとな…」

 

そう言いながら、必死に考える。

名付けなんて滅多にしないので、こういう事は苦手なのだ。

唸りながら考え続けていると、10分以上経っていた。

未だに何も思いつかない。

仕方ないので、部屋の中でなにかいい案になるものは無いか探す。

しかし、必要最低限なものしかない上に、部屋のベッドや家具、一部の食器に至るまでオリーブドラブで統一されているので、可愛らしい名前になりそうなものは何一つなかった。

困り果てていると、唐突にひとつの案が浮かんだ。

 

「"ミーシャ"…なんてどうだ?」

 

そう膝の上に座っている子猫に問うと、今度は嬉しそうに「なー」と鳴いた。

どうやら、気に入ってくれたらしい。

とりあえず、明日は今の契約が切れて休みになっていたので、一通りの必要なものを買いに行くことにした。

 

次の日になり、起き上がろうとすると、隣で丸まって寝ているミーシャに気づく。

起こさないように撫でてやり、ベッドから降りて顔を洗って飯にした。

食べているとミーシャも起きてきたので、猫缶を開けて食べさせてやる。

食べさせてやってから、歯を磨いて着替え、近く―――と言ってもかなりの距離はあるのだが―――に自家用ハンヴィーに乗り向かう。

 

廃墟街を抜け、人の住む街へと出て、ペットショップへ向かう。

そこで大量の猫缶や爪とぎの道具、おもちゃなどを買い、ハンヴィーに詰め込む。

家に着き扉を開くと、玄関で座って待ってくれているミーシャがいた。

ただいまと言って、撫でてやり、部屋へと戻る。

 

戻ってから色々と買ってきたものを整理していると、夜になっていた。

猫缶を開け、ご飯をやり、自分も軽く作って食べる。

心做しか、すごく嬉しくなった。

そう言えば、性別はどっちなのだろうと思い、チラリと見てみても、ついていないことに気づく。

どうやら女の子のようだ。

ならば服とかで可愛くしてやった方がいいのか…?と思いつつ、ご飯を食べ終え、明日の準備をする。

明日は新しい契約先での顔合わせがあるのだ。

忙しなく動き、服の用意と銃の手入れをする。

その間にも、ミーシャは俺に甘えてきた。

撫でてやりながら、銃の手入れをしていると、いつの間にか膝の上で眠っていた。

銃を組みたて終わり、申し訳ないが起こしてベッドの上に乗せる。

そして風呂に入ってから、ミーシャと一緒に眠りについた。

 

 

そして、翌日からの日々は、見間違えるように変わって行った。

いつもは億劫だった帰路も、なんだか楽しく変わって行ったのである。

帰ってから思う存分可愛がってやり、ご飯をやる。

そんな生活をし始めてから、気がつけば1ヶ月が過ぎていた。

新しい契約先でもなんとかやれて、今日まで生き残れている。

それもきっと、ミーシャのおかけだ。

今日は久々に飲み会があり、呑んでから帰宅した。

まさか飲み会に未成年が2人誘われているとは思っていなかったが、なんとか未成年飲酒は避けることができて何よりだった。

ドアを開けて元気よくただいまと言って玄関へ入るが、そこにミーシャの姿はなかった。

寝ているのだろうと自分に言い聞かせながら部屋へとはいると、そこにはベッドの上で気持ちよさそうに寝ているミーシャの姿があった。

まさかの事態になっていなかったので胸をなでおろし、風呂へと入る。

やはり飲みすぎたのか、頭が痛くなってきた。

もしかしたら今晩の記憶は無くなってそうだ、そうなんとか思考を巡らせ、ベッドへと潜り込む。

直ぐに眠りに落ち、次の日になっていた。

 

日光が差し込み、眩しく感じて目が覚める。

目を擦りながら身体を持ち上げ、周りを見回す。

すると、隣で何かが動いたことに気づく。

ミーシャが起きたのかと思い、その方向を見てみると、見覚えのない1人の19くらいの見た目をした銀髪のロングヘアの少女が、一糸まとわぬ姿で横たわっていた。

見覚えなどあるはずがない。

第一、俺は昨日は酒を飲んで帰ってきてからさほど時間もかけずに寝たはずだ。

一体いつ入ってきてこうなったのだろう。

何も覚えていないし、覚えているはずもない…はずだ。

まさか本当に酒に吞まれて記憶が無いだけなのだろうか、そう思っていると、その少女は目を覚ました。

目を覚ましたその少女は、右眼が青、左目が橙色のオッドアイだった。

どこか見覚えのある少女を見つめていると、少女は首を傾げてこちらを見てきた。

非常に可愛らし…いや、なんでもない。

どうしたもんかと考えていると、少女は猫のように擦り寄ってきた。

その少女が服を着ていないので非常にまずい。

色々と。

とりあえずコミュニケーションを取らねばなるまいと、会話をすることにした。

 

「君…誰?一体どこから?」

 

そう質問すると、その少女は、

 

「私の事忘れたんですか!?あんなに優しくしてくれてたのに!?」

 

と言ってきた。

全く記憶にない。

それどころか俺は女性耐性がなく、会話もなかなかできないのだ。

とりあえずあんなに優しくってなんだ。

俺が何をしたんだ。

服着てないしそういう事なのか…?

そう軽くテンパっていると、あることに気づく。

 

「…あれ?君、その耳と尻尾はどうしたの?」

 

そう、人間にはないはずのネコミミのような耳と猫のような尻尾があったのである。

まさか俺にはそんな趣味があったのだろうか。

確かに獣耳っ娘は好きだが人にやらせてまでする男だったのだろうか。

そう考えていると、

 

「?何か変ですか?」

 

と首を傾げて少女は聞いてきた。

いや、変ではないのだ。

普通に似合っているのだ。

そう思っているが、なかなか言い出せずにいると、ミーシャが居ないことにようやく気づく。

 

「…あれ?ミーシャ?どこ行った?」

 

そういって辺りを見回すが、どこにもいない。

窓も閉まっているし、扉も閉まっている。

どこからも出ることはできないだろう。

焦りながら探していると、さっきからいる少女なら何か知ってるのではないかと思いつく。

 

「なあ、俺の家にいた猫しらないか?」

 

そう聞くと、少女は驚いたような表情をして、

 

「え?私以外にも誰かが…!?ご主人最低です…!」

 

そう言って、少女は目を潤ませ始めた。

 

「ちょ!待って!泣かないで!」

 

そう言って、なんとか泣かないように引き止める。

なんとか落ち着いたところで、さっきから疑問に思っている事を聞こうと決心する。

 

「君…名前は?」

 

「わ、私の名前忘れたんですか…!?ミーシャですよぉ!」

 

「…えっ」

 

思わず、そういう声が出てしまう。

 

「み、ミーシャって…俺の飼い猫なんだけど…」

 

「だーかーらー!そのミーシャですぅ!」

 

思わず、俺はそこまでのシチュが好きな人間だったのか、そう考えてしまう。

しかし、どこを探してもミーシャがいなく、いるのはミーシャに似た少女だけという現実があるので、頭がこんがらがってきた。

 

「なんでだ…?まさか本当にミーシャが人間に…?」

 

「え?人間って…?」

 

そう言って、その少女は自分の身体を見始めた。

 

「うわぁ!?本当だ!?ご主人と同じ身体だぁ!?」

 

そう驚いたと思えば、今度は嬉しそうに俺の近くへと来た。

 

「ご主人と同じ…えへへ…」

 

そう言いながら、甘えるかのように擦り寄ってくる。

可愛いが、服を着ていないのでとてつもなくヤバい絵面だ。

とりあえず、服をなんとかするしかないだろう。

そう思い、急いでタンスから着れそうな服を探し始める。

とりあえず、男向けなので少し大きいが、緑色の無地のパーカーを取り出した。

急いでそれを着せると、やはりぶかぶかだったが、色々と隠れる事にはなったのでよしとした。

 

「うう…ちくちくします…」

 

「我慢してくれ…」

 

そう言いつつ、これからどうしたもんかと考えを巡らせる。

誰かこういう事態になっても笑わずに信じてくれそうで、なおかつ女性の服について知識のある人に頼るしかない、そう思い、ケータイをいじって誰かいい人がいないか探す。

しかし、今まで人付き合いが無さすぎるのもあって、なかなかいい人を見つけることはできなかった。

 

半ば諦めつつSNSのグループなどで知り合いを探していると、昨日の飲み会で出会った未成年の2人がいることに気づいた。

確かこの2人はペアを組んでいるはずだし、その片方は女子だったはずだ。

とりあえずダメ元で男の方にメールを飛ばし、救援を頼んだ。

 

しばらくすると、返事が届いた。

どうやら助けてくれるらしい。

家の位置を教え、来てもらうことにして待っていると、インターホンが鳴った。

急いで出ると、そこには例の2人がいた。

入ってくれと一言だけ伝え、部屋に入ってきてもらう。

やはりというかなんというか、ミーシャの姿を見て2人とも固まっていた。

 

「…本当だったんですね」

 

そう男の方が困惑気味に言ってくる。

 

「…ああ、今朝起きたらこんな事になっていた…えーと、ごめん、君ら、名前なんだっけ」

 

「八雲です、んでこいつは二宮です」

 

「二宮です、よろしくお願いするっす」

 

そう2人が自己紹介してくる。

 

「ああ、思い出した…よろしく、2人とも、で、この子がその言ったミーシャで…」

 

そう言って振り向くと、丸まって寝ているミーシャの姿があった。

 

「…猫ですね」

 

「ああ、未だに信じられないんだがな…」

 

「そりゃぁそうっすよ…」

 

そりゃあみんなそうなるか、そう考えつつ、この状況をどうしようかと考える。

そもそもがどこまで人間でどこまでが猫のままなのかすらわからないのだ。

食べてはいけない食べ物とかは猫のままとかの可能性すらある。

寿命とかもどうなのか心配だ。

しかし、食べさせて知ろうにもダメなままだと死んでしまうかもしれない。

でも流石に人の姿になって猫缶はいかがなものかと思う。

そしてまずは服をなんとかしなければいけない。

そこで、2人に頼んで服を選んでもらうことにした。

ミーシャに留守番を頼み、服屋へ向かう。

俺も八雲も女性の服なんてわからないので、二宮に似合いそうな服を選んでもらうことにした。

特に下着などは男子である我々には全くわからない領域だ。

合いそうなサイズを選び、買い物カゴに入れて購入して帰宅した。

家に帰ると、いつものように玄関で待っていたミーシャに抱きつかれ、コケそうになる。

頭を撫でてやり、買ってきた服へと着替えてもらう。

もちろん男の俺ら2人は後ろを向いて見ないようにしている。

しばらくして、着替え終わったと言われたので前を向くと、マルーン色をしたチェックのスカートにベージュの少し大きめのパーカーを着て、少し落ち着かないような動きをしている、ミーシャの姿があった。

 

「ど、どうですか、ご主人?」

 

そうミーシャが恐る恐る聞いてくる。

 

「…ああ、可愛いよ」

 

そう言うと、ミーシャが飛ぶように抱きついてきた。

落ち着くように頭を撫でてやりながら、2人にお礼を言う。

 

「いえ、お礼を言われるほどでは…特に俺は何もしてませんし」

 

「どちらかと言えば今回はあたしでしたもんね」

 

「アスカうるさいぞ」

 

そんなやり取りを見ていると、いい相棒同士なのだなと思う。

それと同時に、ひとつの疑問が浮かんだ。

 

「そう言えば2人って恋人関係だったり?」

 

そう聞いてみると、お互いに否定し始めた。

八雲の方は普通に焦っているようだったが、二宮の方は少し顔が赤かった。

もしかしたら、この発言よりも前から二宮は八雲に気があるのかもしれないな、そう思いつつ、今度は食事に関するひとつの疑問を聞く。

 

そう、ミーシャの食べても大丈夫なものだ。

いずれも食べてはいけないものは下手をすると死んでしまうかもしれないので、この件はなんとかしなければならない。

苦渋の決断として、少量のチョコをやってみることにした。

やってはいけないと知っているので心が痛むが、人間の姿となってまで猫缶というのも気が引ける。

それに人の姿になったなら同じものを食べた方が楽しいではないか。

そう思い食べさせてしばらく待ってみても、どうやら大丈夫なようだ。

…まあ少量なので本当に大丈夫かはわからないのだが。

 

しかし、ならばと思い、冷蔵庫から食材を出し、4人分の昼食を作る。

2人にも食べていけと言って、ミーシャと3人で待っていてもらう。

誰かのために料理を作るのはいつぶりだろう、そう考えながら、4人分のチャーハンを作り、器へ盛り付ける。

やはりミーシャはスプーンなどを使うのが慣れないようで、少しこぼしていたが、どうやら美味しく食べてくれているらしい。

…これで後々食べちゃいけないのは食べちゃダメでしたとならなければいいのだが。

2人も美味しいと言ってくれたので、内心安心する。

食べ終わり、食器を片付けて休んでいると、ミーシャと二宮が寝始めてしまった。

 

「すみません、うちの相方が」

 

「いいんだよ、食った後は眠くなるのはわかるさ…で、八雲、二宮のことどう思ってんだ?」

 

そう少しニヤニヤしながら、意地悪な質問をぶつけてみる。

すると、すぐにどういう意味で言ったか理解した八雲が、耳を真っ赤にしてテンパり始めた。

 

「ど、どどどうって…いい後輩ですよ」

 

そう言って逃げようとするので、更に意地悪な質問をぶつけてみる。

 

「そうじゃなくてだな、女としてだよ」

 

そう言うと、顔を赤くして八雲は黙ってしまった。

 

「ふ、普通に可愛いとは思いますよ…でも、俺なんかよりアスカには似合ってる人がいるはずです…そういう中野先輩はどうなんですか?」

 

「俺?俺か…」

 

そういきなり返され、言葉に詰まってしまう。

 

「俺はなぁ…そもそもモテねぇし、女性耐性ねぇし、コミュ障だしな…」

 

「…でも、優しいじゃないですか、ミーシャちゃんもきっと、中野先輩に恩返ししたくて人の姿になったんじゃないですか?」

 

そう言われ、照れくさくなり、言葉が出なくなってしまう。

今まで、誰かに"優しい"と言われたことが記憶にないし、ミーシャにはむしろこちらからお礼を言いたいレベルだ。

…それに、心のどこかでは今のミーシャを好きになっているのだろう。

ちゃんとしたヒトとは言えないかもしれないが、今はどう見ても人の姿をした人間だ。

そこに猫の耳や尻尾が生えただけ、そう思っている。

もしかしたら、人付き合いが苦手な俺に神様が送ってくれたのかもしれない。

それに、今は異形のモノと成り果てたヒトや生物がいる時代だ。

その原因物質か何かが変に作用した結果なのかもしれない。

 

「…そうかな、俺こそミーシャに恩返ししたいんだけどな」

 

「もういっそのことミーシャちゃんと付き合えばどうです?」

 

そう八雲がいきなり爆弾発言をした。

その発想は実はあったがまさかお前もか、そう思いながら寝ているミーシャを見る。

…確かに、俺の好きなタイプだ。

……確かに、猫だった頃から"お前みたいな彼女が欲しいよ"と何度か言ってしまってはいるのだが。

そんな事を考えていると、ミーシャが寝返りをうった。

とりあえず押し入れから寝冷えしないように掛け布団を出し、寝ている2人にかけてやる。

すると、ミーシャが寝ながら

 

「ご主人…大好きです…」

 

と言ってきて、ドキッとしてしまう。

やはり、そういう事も真剣に考えた方がいいのだろうかと考えてしまうが、恋愛感情ではない好きだと自分を言い聞かせる。

それを見て八雲がニヤニヤとこちらを見てくるが、視線でお前も人の事言えないぞと送る。

 

そこから、夕方になるまで八雲と傭兵らしく銃のことを話したり、現在護衛している仕事場の研究所の事などを話していた。

その後、2人が起き、八雲と二宮は帰って行ったので、また朝のように人となったミーシャと二人きりになった。

 

「…ご主人」

 

そう唐突に呼ばれ、咄嗟に振り向く。

 

「どうした?」

 

とだけ返し、返事を待っているとミーシャの顔が赤いことに気づいた。

 

「あのね、ご主人…私、ずっと、ご主人の彼女になれたらなって、ずっと思ってたんだ」

 

そう言われ、言葉が出なくなる。

 

「ほら、よくご主人が言ってくれたでしょ?私みたいな彼女が欲しいなって…私も、そういう気持ちだった、そして、やっと人になれてそれが叶えれるようになった」

 

そう言いながら、ミーシャは俯いた。

 

「でもね、私、元は猫だし…ご主人は人間だから、私じゃやっぱりダメだよなって思ったの、八雲さんと二宮さんみたいに、ヒトとヒトじゃないと、ご主人にも迷惑かなって」

 

「ミーシャ…」

 

「ごめんなさい、変な事言ってしまって、忘れてね」

 

そう、ミーシャは悲しそうにしながら、無理に微笑んできた。

 

「…ミーシャ、ひとつ言いたいことがある」

 

「…何?ご主人」

 

「恋愛に、種族は関係あるのか?…俺はないと思ってる、AIを積んだアンドロイド相手だろうがなんだろうが、恋愛感情をお互いが抱いているなら、それは立派な恋愛なんじゃないか?」

 

「…でも、私はなんで人間になったのかわからない猫なんだよ?また元に戻るかもしれないし…」

 

「こういう時の人化ってな、大抵は戻らないってのが多い…と思うぞ?あくまでもカンだけどな」

 

「…そう…なの?」

 

「…多分な、あとなんだ…その…」

 

そう言い、急に照れくさくなって言葉に詰まってしまう。

後一歩のところまで言葉は出てきているのだ。

しかし、その後一歩が出てこない。

 

「その…あのだな……ミーシャ、俺もお前が好きだ」

 

やっと言えた、そう思ってホッとしていると、ミーシャの目から涙が出ていることに気づく。

 

「あれ、なんでだろ…嬉しいのに、涙が止まらないよぉ…」

 

そう言って、ミーシャは泣き始めてしまった。

そして、しばらく泣いてから、

 

「私で、本当にいいの?」

 

と言ってきた。

その瞬間、俺はミーシャへと抱きついていた。

すると、ミーシャはさっきよりも泣き始め、しばらく泣き止むことは無かった。

数分ほど経ってやっと泣きやみ、お互いの顔を見つめ合う。

そして、どちらからでもなく、ほぼ同時にそのままキスへと移り変わっていった。

しばらくキスをして、お互いに素に戻り、互いに赤面し、笑い合う。

お互いに照れくさくなったので、気を紛らわすために晩御飯を作ることにした。

 

晩御飯を作り終え、食べていると、前から思っていたあるひとつの疑問を思い出した。

 

「そう言えば猫って警戒心強いはずなのに直ぐにミーシャは俺に慣れてたよな」

 

「人間は好きでしたからねぇ…それにご主人いい人ってすぐわかりましたし」

 

「いい人、ねぇ…」

 

既に仕事とはいえ、何人もの人を殺している俺は果たしていい人なのだろうか。

そう考えてしまう。

それどころか、飼い猫にガチ恋をしてる時点でかなり一般的にはヤバいやつなのではないだろうか。

いや、本当に猫が好きな人なら恋くらいはするか、そう思いながら食べていると、気がつくと食べ終わっている皿をつついていたことに気づく。

ここまで深く考え続けているのはいつぶりだろうと思いながら、食器を片付け、テレビをつけた。

テレビを見ているとミーシャが横に擦り寄ってきて、もたれかかってきた。

そのまま一緒にテレビを見ていると、ミーシャが起き上がってこちらを見つめてきた。

 

「…どうした?」

 

「そう言えば…ご主人って、傭兵なんですよね?」

 

「ああ、そうだな、PMCにも入ってないから普通の雇われ兵士だな」

 

「って事は、いつか死んじゃうかもなんですよね…?」

 

そう言って、ミーシャは目を潤ませ始めた。

恐らく、ちょうどテレビのニュースでやっていた傭兵を含む兵士が大量に亡くなったのを見てそう思ったのだろう。

 

「…否定はできないな、でも、守るべきものができてるんだ、そうそう死ぬ気は無いし、そろそろどこかのPMCでも入って警備メインにでもなるよ」

 

「本当…ですか?」

 

「ああ、今の研究所警備が終わったらいいPMCでも探すさ」

 

そう言って、ミーシャの頭を撫でてやる。

今思えば、猫の割に犬系なところがあるやつだなと思ってしまう。

そもそも、犬は飼ったことがあっても、猫は初めてなので感覚が同じになってそれはそれでいいのだが。

 

「?どうしました?」

 

「なんでもないよ、さ、お風呂入って寝ようか」

 

「お風呂…!?水いやです!」

 

「いや、流石に人になったんだから入らないと…」

 

「うう…わかりました……」

 

そう言って、ミーシャはしょぼーんとしてしまった。

しかし猫の頃なら毎日入らなくてもいいが、人になったなら入らないと不味いだろう。

…いや待てよ?

猫の頃なら洗ってやっていたが人になったならどうすればいいんだ?

どこからどうみても人間の女の子なんだから一緒に入るのは不味くないのか?

そう考えながらお風呂を沸かしていると、ミーシャも同じ考えだったらしく、

 

「ご主人、私はどうお風呂に入ればいいんですか?」

 

と聞いてきた。

 

「どう…なぁ…流石にその姿なら一緒にはヤバいと思うんだ…」

 

そう、どこから見ても人間な上、美しい形をした胸なども合わさり、ボンキュッボンの体ががそのまま具現化されたような姿なのだ。

むしろ朝の段階で理性が持っていたのは困惑があったからなのではないだろうか。

キスまでしてしまう関係になってる今なら理性が崩壊するかもしれない。

そもそも俺との子供ができてしまうのだろうか…って今の問題はそこじゃない。

まずはお風呂をどうするかだ。

普通に考えれば人間として入ったことがないのだから一緒に入って教えてやるのがいいだろう。

でも控えめに言っていい体つきの女の子と入ると理性が死にそうだ。

しかも可愛いと来た。

理性が大丈夫でも本能でアソコがガッチリしちゃわないだろうか。

タオルで隠しきれるかも不安だ。

そんな考えを巡らせていると、無情にもお風呂が沸いた。

仕方ないので、もう諦めて一緒に入ることにする。

晩御飯に酒を入れなくて良かったかもしれない。

とりあえず脱衣場へ行き、服を脱ぐ。

ミーシャはまだ服に慣れていないようで、まさか脱がしてくれと来た時は焦った。

いや本当に焦った。

 

それからは必死にミーシャの身体を見ないようにお風呂に入っていたのだが、家の風呂だ、そこまで広い訳でもない。

当たり前のように身体が密着してしまうのだ。

それだけならまだ平常心を保つのは仕事柄慣れているので何とかなったが、ミーシャが覆いかぶさるように甘えてきたのだ。

人になった事で水が大丈夫になったのは嬉しいことだが、人になったことで色々とヤバくなっている。

しかし、そのおかげて一つ、あることに気づいた。

 

「…あれ?ミーシャ、お前人間の耳もあんの?」

 

そう言いながら、ミーシャの髪をかき分けて見てみると、やはりそこには人間の耳もあった。

ケモノ耳と人間の耳もあるタイプのケモノっ子のようだ。

これは人によって有り無しが分かれそうだなと思ったが、可愛いのでまあいいかと思う。

 

「…聞こえ方どうなってるんだ?」

 

「一応両方同じくらいには聞こえてますね〜、うるさくはないので大丈夫です!」

 

聴力がただでさえいい猫なのだから耳が4つもあればうるさいのかと思ったがそうでもないと聞き、安心する。

そしてこれなら帽子かなにかでケモノ耳を隠せば何とかなりそうだとも思い、その面でも安心できた。

…しかし、一つ問題がある。

タオルで隠しているとはいえ、アソコが立派になってきてしまっているのだ。

必死に鎮めようとしているが、どうにも鎮まる気配がない。

当たられたりしたらバレてしまうだろう。

そんなことを考えていると、こちらに背中を向けてもたれかかってきた。

 

「…あれ?なんか背中に硬いのが当たってるんですけど…」

 

「き、気の所為だよ」

 

「そ、そうですか…?」

 

「あ、ああ、体とか洗って出ようか」

 

「ご主人、洗って貰えますか?」

 

「…前は自分で出来るんだから自分でやってくれよ」

 

「なんでかよくわからないですけどわかりました!」

 

流石にこの姿で正面も洗うのは無理があるので、理解してくれて助かったと思いつつ、背中を洗い、髪の毛も洗ってやる。

…しっかりと前はぎこちなくとも自分で洗ってくれたので助かった。

俺も体を洗い、湯船へと戻る。

そのまましばらく浸かり、上がってからミーシャ用に布団を敷くことにした。

本人は俺と一緒に寝たいと駄々をこねていたが、前までとは違って狭いからとなんとか納得してもらった。

…明日になれば横にいる気しかしないが。

にしてもなんだ、パジャマ姿も可愛らしいではないか。

ピンクに肉球のマークが入ったパジャマだが、実によく似合っている。

思わず見とれてしまいながら、頭を撫でてやってから1度キスを交わし、眠りについた。




いかがでしたか?
よろしければコメント、評価のほどをよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話

第2話です。
今回もごゆっくり見ていってください。
書きだめはここまでなのでこの先不定期更新に切り替わりそうです…
書きたさはあるんで出来るだけ早く書こうと思います…


あの日から、数週間たった日の事だった。

俺は今までやっていた研究所の警備の仕事の契約期間が終わり、フリーになっていた。

そしてミーシャとの約束通り、比較的安全に仕事ができるように、良さそうなPMC(民間軍事会社)を探しに来ていた。

なかなか良さそうなのは見当たらないが、いくつか良さげなPMCを見つけ、書類を請求した。

 

それから数日後に5つほどのPMCから書類が届き、読み始める。

ちなみにミーシャはと言うとだいぶ人間の姿に慣れたのか、昼食を作ってくれている。

本当にいい子だ。

流石は我が嫁…と言いたいところだが、まだ指輪を購入できていないため書類上は夫婦になれていても見た目的にはまだなれていないのだ。

まあ、そんな事関係なく既に夫婦生活をしているのだが。

…つまり言っていいじゃん。

そんなくだらないことを考えながら書類を読み、候補から更に候補を絞っていく。

 

「ご主人、そろそろご飯にしましょうよ」

 

そう言ってミーシャが皿にそこそこの量を入れたチャーハンを持ってやってきた。

 

「ああ、そうだな」

 

そう言い、書類を一旦置いてご飯を食べることにした。

見た目は普通のチャーハンだが、やはり愛情でも篭っているのかとてつもなく美味しく感じた。

その事をミーシャに伝えると、とても嬉しそうにしてくれたので言った甲斐があったというものだ。

食べ終わり、ごちそうさまと言って皿を片付けて再度書類を見ていると、ミーシャがもたれかかって来て一緒に見ることになった。

どれも良さげなPMCだが、どれも家から遠いか任務内容に危険なものが多く混ざっているなどして省いていくと、2つのPMCだけが残った。

片方は家から車で行けば近く、なおかつ良い雰囲気そうなPMC、もう片方も車で行けば近いが雰囲気が自分と合わなさそうなPMCだった。

雰囲気が良さそうなここにしようと思い、改めてPMCの名前を見る。

そこには、『Dual Wings Bearer』と書いていた。

直訳すると『双翼の担い手』と言ったところか。

とりあえずコミュ障なりに頑張って電話をかけ、面接の予定を入れてもらった。

面接は明日行うらしい。

今から緊張してしまうが、ミーシャに「大丈夫ですよ」と励ましてもらい、少し元気が出てきた。

いや、元気と言うよりは勇気か。

どちらにせよ助かったことには変わらないのでありがとうと言って頭を撫でてやった。

人間の姿になっても撫でられることは未だに好きらしい。

俺がなでるのが好きという事もあって、よくミーシャの頭を撫でてやるのだ。

 

「さて、晩飯まで何しようか」

 

「そろそろお花が咲く季節じゃないですか?どこかに見に行ってみません?」

 

そう言われてカレンダーを見ると、今が3月頃ということに気づく。

確かに花が咲く季節だ。

そう言えば近くに花が咲いているところがあった気がし、ケータイを使って調べる。

やはり車で10分程度のところに花畑があるらしく、ミーシャと一緒に行くことにした。

ミーシャは自分で頑張って選んでいた服に耳を隠す帽子を被り、俺はミーシャが人になってから服装も素朴なものだけではなく色々と買っていたので、それで自分なりにオシャレに着込み、ミーシャと一緒に花畑に行くのには似つかないハンヴィーに乗り、今の世の中少なくなってしまった花畑へと向かった。

花畑近くへと停め、花畑へと向かうと、そこは春に咲く花々がたくさん咲き誇っていた。

そして、ミーシャがすぐ近くの花へと駆け寄り、匂いを嗅いでいた。

 

「綺麗ですね、ご主人」

 

「ああ、そうだな」

 

そんな会話をしながら、思っていたよりも広い花畑を回る。

そして売店まであったので、そこでアイスを買って二人で食べながら更に回っていた。

そして、今までなら、楽しくなかったであろう花畑も、ミーシャと一緒ならとてつもなく楽しく、時間が過ぎ去るのも早く感じていた。

このまま平和に、今まで通りの生活が出来るといいな、そう思いながら回り、途中から手を繋ぎ、幸せな時間を過ごした。

 

気がつけば太陽が傾き、夕方となっていたのでハンヴィーに乗り、自宅へと帰る。

帰ってから一緒に晩御飯を作り、2人して笑い合いながら食べる。

それからもはや恒例となってしまった一緒の入浴を済まし、ダブルベッドへと新しくしたベッドで眠りについた。

 

次の日になり、朝ごはんを軽く作って食べて面接の準備をする。

服装は任務中の服装で、愛銃を一丁持ってくることと言われているので、いつも通りの服装に着替え、愛銃のSCAR-Lをケースに入れ、念の為5.56×45mm弾を一箱カバンへと突っ込む。

そして一言ミーシャに「行ってくるよ」とだけ伝えると、「頑張ってくださいね」と言って送り出してもらえた。

そこからハンヴィーに乗り、40分ほど走らせて目標のPMCへと向かう。

到着すると、思っていたよりも小さい、普通の小さなビルのような建物だった。

愛銃を忘れずに持ち、履歴書とカバンを持ち中へとはいる。

中に入ると受け付けがいて、その人に面接のことを伝えて履歴書を渡す。

すると部屋を教えられたので向かい、その前の待機場所の椅子に腰掛けた。

俺以外にも数名座っており、誰もが当たり前だが緊張しているようだった。

一人づつ呼ばれ始め、中に入っていき、5分程度の面接を終えて出てくる。

誰もが緊張でなのか恐ろしい面接官なのか、出てくるなり一気に力が抜けていた。

気がつけば俺の番になり、名前を呼ばれたので入っていく。

そこには、ガタイのごつい黒人男性と、細身だがしっかりと鍛えられたアジア系の男性が座っていた。

どうぞと言われたので椅子へと座り、面接が始まった。

 

「まずここに志望した理由を教えてくれへんか?」

 

そう黒人男性に言われたので、少しビビりながら、

 

「守りたい人ができたので、自分の身の安全を確保した職が欲しかったからです」

 

と素直に答えた。

 

「ほう、守りたい人か、嫁か?」

 

「ええ、まあ…」

 

「夜戦経験はあるんか?」

 

そう言われ、俺ともう1人の補助の男性と同時に吹き出す。

 

「ちょ、社長!なんて事面接で聞いてるんですか!」

 

「ええやんか別に、で、ヤった事は?」

 

「な、ないですよ!童貞です!」

 

「おもんないなぁ…どんなプレイしたんか聞きたかったんやけど」

 

いや何を聞こうとしてるんだこの人は。

そもそも面接ってこんな感じだっただろうか。

いや、もしかしたら緊張を解してくれてるのかもしれない。

きっとそうだ。

むしろそうじゃなかったらなんだこのスケベ。

そんなことを考えていると、やはりというかなんと言うか補助の男性も呆れていた。

 

「まあ緊張を解すためのジョークや、あと君、採用ね」

 

「…えっ?」

 

そう俺が戸惑っていると、

 

「了解です、採用ですね…ってこのアホ社長ォ!いつもながら早いんですよ決めるの!」

 

と補助の男性もノリツッコミをかましていた。

なんなのこの人たち。

芸人?芸人なの?

 

「理由だけ1つ言っとくわ、このPMCに入るには、誰か守りたい人がいることが条件としてある。第一、このPMCにはそういう奴しかおらんはずや。君のことも連絡を受けてから調べさせてもろたで…あの子と末永く仲良くしいや」

 

「…はい」

 

…いや、この人たちは単にいい人たちなのだろう。

……いつの間にか身の回り調査されてる事には驚きを隠せないが。

ミーシャの正体とかバレてないだろうか。

 

「はぁ…何いい話で締めようとしてるんですか…じゃあこの紙に書かれた場所にこれから向かってください、この建物内なので迷ったら誰かに聞くなりしてくださいね」

 

そう言って、1枚の紙を渡された。

紙にはでっかく関係者以外観閲禁止と書いていたので、とりあえずカバンへとしまう。

そして「失礼しました」と一言だけ言って部屋から出た。

そして少し離れてから紙を見ると、どうやらこの建物の地下に行けばいいらしい。

エレベーターに乗り、地下へと向かうと、そこには大きな射撃場と数人の俺と同じような格好の人がいた。

着くと紙を見せるようにアジア系の男性に言われ、紙を見せる。

すると名前を確認されたので名前を言うと、持っていた紙にチェックをつけていた。

そして銃を出すように言われたので出し、銃の名前―――もちろん正式名称だ―――を言う。

そして紙へと記入し、ワンマガジン分の弾薬が支給された。

それをマガジンに入れて待機していてくれと言われたので壁際に向かいマガジンに弾を込め始める。

弾を込め終え、銃本体のチェックも行っていると、招集がかかった。

 

「えー、今回皆さんの実弾射撃を見させてもらう明石 響也(アカシ キョウヤ)です!いつも通り、自由に20m先の的に射撃して貰います、一人一人見ていきますので名前を呼ばれたら来てくださいね」

 

そう言い、まず最初の人を呼び、定位置に立たせ、射撃をさせていく。

銃はP90のようだ。

フルオートとセミオートでそれぞれ射撃させ、どうやら当たった場所と姿勢を見ているようだ。

中には単発式のライフルや、ショットガン―――この人は近くにマトを移してもらっていた―――もいた。

それを数人繰り返し、どうやら俺が最後のようだった。

最後とかハードル上がるなぁと思いつつ、名前を呼ばれたのでマガジンと銃を手に向かう。

そしてマガジンをセットして自由に撃ってくださいと言われたので、とりあえずいつも通り立射、しゃがみ撃ち、伏せ撃ちの3つをフルオートとセミオートで弾の管理をしつつ行い、それぞれ撃ち終わった。

 

弾を撃ち終えて立ち上がると、謎の拍手が起こっていた。

なんでだろうと思っていると、先程明石と名乗った男性に、

 

「上手いですね、即戦力ものですよ」

 

と褒められたので照れてしまう。

確かにフルオートを管理して均等に弾を射撃したり人型のマトの頭や胸を中心に撃ってはいたが、そこまでの事だろうか。

まあ練習していた甲斐はあったと言うことだろう。

…もしかすると、他の人はそこまでダメだったのだろうか。

見ずに集中力を高めていたが他の人のも見ておけばよかったと少し思いながら、その場は解散となったので帰路に着いた。

 

夕方になり家に着くと、半ばタックルのようにミーシャが抱きついてきたので、慌てて受け止める。

受け止めて頭を撫でてやりながら家の中に入ると、早速今日の事を聞いてきた。

大雑把に今日のことを説明すると、自分の事のように喜んでくれたので、こちらまで嬉しくなってしまった。

それからはミーシャが作ってくれていた料理を食べ、一緒にお風呂に入った。

…そう、そこまでは今まで通りで良かったのだ。

 

「ご主人…私もう我慢できないです…」

 

夜になり寝ようとすると、そう言ってミーシャが押し倒してきた。

どういうことなのだこれは。

 

「ちょっと待て、跨りながら服を脱ぐな」

 

そう言って必要に止めると、ミーシャが色っぽい目付きで上から退いてこちらを見てきた。

…まさかとは思うが

 

「発情期…か?」

 

確かに3月は発情期のシーズンに含まれるらしいが、まさかヒトになってからも起こるとは予想していなかった。

しかし、どう見ても今のミーシャは発情しているメスの動物そのものだった。

 

「ご主人…もうあそこがウズウズしちゃって落ち着かないのぉ…」

 

「落ち着けなくともひとまず落ち着こう、流石にそれはまずい、早すぎるし急すぎる」

 

「何言ってるんですかぁ…もう2ヶ月は経ってますよぉ…?そ、れ、に、ご主人も私がこの姿になった時、欲情したんじゃないんですかぁ…?」

 

「言い方!言い方アウト!落ち着いて、頼むから!」

 

「えぇー?ゴムは買いましたよぉ…?」

 

「そういう問題じゃない!さっきまで普通だったのになんで急に!?」

 

そう言うと、ミーシャはとぼけたような顔をして、

 

「ご主人が帰ってきてからずっと我慢してましたし…ね?もういいでしょ?」

 

と言ってきた。

確かにこんなに可愛い子と行為をするのは男としては本望な所もあるだろう。

しかしこれは酒に酔った結果のようなものでは無いのだろうか。

流石にそれはどうなのだろうか。

 

「大丈夫ですよ…これは私の本心ですし、この機会に表に出そうと出してるだけですから…」

 

り せ い こ わ れ る 。

いやもう壊れちゃっていいんじゃないかな…

いやいや、でもムードってものがだな…

だから待ってさらに服脱がないで

本当に理性壊れちゃうから…

 

そんなことを思っていると、ミーシャが下着のまま1つの箱を持ってきた。

0.01mmとか書いてるしどう見てもゴムです本当にありがとうございました理性壊れちゃいます。

 

 

 

 

 

………ヤってしまいました。

お互いに初めてだったが無事に卒業してしまいましたはい。

今はミーシャが裸の状態で隣で寝ている。

まさかミーシャが落ち着くのに箱の中身の大半を使うとは思っていなかった。

…しかし、今のミーシャはとても嬉しそうに眠っている。

これで良かったのだろう。

…良くないと困る。

そんなことを考えながら、俺も意識を夢の世界へと手放した。




いかがでしたか?
良ければコメント、評価をお願いします。

…デフォルトでログインユーザーのみから受け取るって辛くないですか?(変え忘れてた人←)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話

ねこかのではお久しぶりです、ノアです。
久々にこの世界を書けてやっぱり楽しかったです…
では今回もごゆっくり、見ていってください。


「ごっしゅじーん!ご飯ですよー!」

 

「了解、すぐ行く」

 

俺があのPMCに入ってから、早くも4ヶ月がたった。

あのジメジメとした梅雨の時期もそろそろ終わろうとしている。

そんな7月の初め頃、俺の元に職場から一通の手紙が届いた。

内容は『知り合い、家族巻き込み型合宿をするので参加予定の方は予定を空けておいてください』というものだった。

 

「うーん、ミーシャは行きたいか?あの合宿」

 

「行きたいですけど…私猫ですし」

 

「だよなぁ…」

 

これはもう社長にでも打ち明けてなんとかするしかないか、そういう考えも浮かばせつつ、ミーシャの作ってくれた料理を頬張る。

最初の頃に比べて、元が猫だとは思えないほど料理の腕が上がっており、いつの間にか俺の料理の腕を抜かされてしまっていた。

特に魚料理が得意なようで、捌くのが難しい魚まで調理できるようになっていた。

…まあ今の時代海にもバケモノがいるので魚は高いのだが。

 

「今回の料理はどうですか?ご主人?」

 

「うん、美味しいよ、本当に上手くなったよな」

 

「えへへ…ありがとうございます」

 

そう言いながら、本人は気づいてないだろうが、尻尾を振ってるのを見る限り、本当に嬉しいのだろう。

人間と違って猫耳や尻尾もあるので、無意識のうちに感情がよくミーシャは出てしまっているのだ。

それを言うと顔を真っ赤にして恥ずかしがりながらぽかぽかと殴られるまでがオチなのだが、可愛いので良しとする。

…決してドMなどではない。

 

「そうだ、もしミーシャが猫じゃなかったら合宿行ってみたいか?」

 

「そうですねぇ…確かにご主人の職場の人とか気になりますし、行ってみたさはありますね」

 

「…そうか、ならうちの社長にその事を相談してみようと思うんだが、いいかな?」

 

「その事…って、私が猫ってことですか?」

 

「ああ、多分既にバレてる気がするんだけどな…」

 

そう言うと、ミーシャは少し不安そうな顔をしてから、

 

「ご主人が大丈夫って思うなら、私はご主人に任せます」

 

と、笑顔で言ってくれた。

 

「…わかった、何かがあれば絶対に俺が守ってやるからな」

 

「はい!信頼してます、ご主人!」

 

そうミーシャがはちきれんばかりの笑顔で言ってくれたので嬉しくなり、気がついたらミーシャの体を抱きしめていた。

ミーシャも最初は驚いていたが、後に抱きしめ返してくれたので、しばらく抱きしめあっていた。

 

「…さて、食器片付けるか」

 

「…そうですね、片付けましょうか」

 

そう抱きしめた後、お互いに恥ずかしくなり、お互いに微笑み合ってから、食器を片付けた。

それからは、2人してテレビのコメディ番組をみて笑ったり、ニュース番組を見て天気予報などを見たりしていた。

…その間ずっと足の間にいられたのでなかなか動けず体が痛くなったがまあ言わないでおこう。

 

その後はなんの疑問も持たなくなっていしまっていた2人での入浴を済ませ、パジャマを着て布団に寝っ転がり、寝落ちるまで色々とどうでもいいような話をしていた。

 

次の日になり、目覚ましの音で目を覚まし、いつも通り遅刻ギリギリになるにもかかわらずスヌーズを入れて、二度寝をしてしまっていた。

二度寝をしてしばらく経つと、唐突に何者かに上に馬乗りにされ、その衝撃で目が覚めた。

 

「ごーしゅーじーん!あさでーすよー!」

 

そう言う声が聞こえ、慌てて体を起こし、そのままの勢いでミーシャを押し倒す形になってしまった。

 

「ご主人…朝から大胆ですね…♪」

 

そう頬を赤く染めながら、どこか嬉しそうにミーシャが言ったので、今自分がしてしまっている行動がわかり、急激に顔が熱くなってくる。

 

「す、すまん、勢い余ってだな…」

 

「いいんですよ、わかってますから…その代わり、今晩お願いしますね♪」

 

「…大胆になったのはミーシャなんじゃないのか?」

 

「さあ?なんのことでしょう?」

 

そんなやり取りを終え、机の方を向いてみると、その上には美味しそうな朝食が並んでいた。

 

「わざわざありがとうな、早かったろう?」

 

「えへへ…ご主人が喜んでくれると思ったんで、頑張れました♪」

 

「ありがとう、さて、食べようか」

 

そういい、机の近くに座り、2人そろって"いただきます"と言い、食べ始める。

食べてから時計を見て、急いで準備をする。

そしてその後に軽くキスを交わし、"いってきます"と言って職場へと向かった。

 

職場に着くと、俺の入社面接の時にいたアジア系の男―――名前は入社後に聞いたが、山本 来夢(ヤマモト ライム)と言うらしい―――がちょうど同じ時間に出社してきていた。

 

「あ、中野さん、おはようございます」

 

そう山本さんに言われたので、こちらも"おはようございます"と返す。

ついでにもしかしたらこの人に聞けば社長に会って話ができるかもしれないと思い、社長に会いたいことを伝える。

すると、

 

「別に誰を通さないと会えないとかないんで、いつでも好きな時に行ってやってください」

 

と、言われた。

 

「えっ?で、でも社長…なんですよね?」

 

「まあ…一応。でもこの会社で社長を社長と思ってる人いないんじゃないですかね?あと敬語やめてください、中野さんの方が歳上なんですから」

 

「えっ?でも俺はまだ20で…」

 

「ああ、今の立場は成立当初からの古参だからですよ、会ったことがあるであろう人なら…俺と明石も同じ19です、あとの幹部職はそれより上ですけど」

 

「へぇ…でもそれって、荷が重く感じたり…」

 

そう半分心配になりつつ尋ねてみる。

すると、軽く微笑みながら、

 

「大丈夫ですよ、幹部職って言ってもお互いに持ってる部隊指揮ですから、それに…」

 

そこで山本さんは軽く上を仰ぎみつつ、そこで言い淀んだ。

 

「…それに?」

 

「この会社はお互いに助け合える会社です、それぞれの役職だけじゃなく、その他も見てくれる人がたくさんいる…つまりそういうことです」

 

そう少し照れくさそうに、山本さんは言った。

 

「あとこれから呼ぶ時はライムとでも呼んでください、みんなからもそう呼ばれてるんで」

 

「…わかった、これからもよろしく、ライム」

 

「こちらこそよろしくお願いします、中野さん」

 

「俺の事もタクヤとでも呼んでくれればいいよ、その方が呼ばれ慣れてる」

 

そう言うと、ライムは笑顔で"わかりました"と言った。

その後はそれぞれの部隊への部屋へと向かい、俺は部隊メンバーとの連携訓練をして、その日の業務を終えた。

荷物をまとめ、愛銃のSCAR-Lを手入れしていると、同じ部隊の茶色のショートカットの髪型の、小さな女の子に声をかけられた。

 

「それ、FNハースタル社のSCARっすよね!私もFNハースタル社のP90使ってるんすよ!同じメーカーですね!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

そう俺が気圧され気味に言うと、そのまま話はそこで終わってしまい、なんとも言えない空気になった。

そのまましばらくの間、俺は手入れを終え、ふと一息ついた。

そして、流石に帰ったろうとふと周りを見てみると、部屋に配置されているソファに座っているさっきの女の子と目が合った。

 

「あ、終わったっすか?お疲れ様っす」

 

そう女の子は言い、立ち上がってこちらへと向かってきた。

 

「あ、うん…」

 

「さっきは集中してたのに話しかけちゃって申し訳ないっす…私、そういう空気読めないとこあって…」

 

そう女の子は申し訳なさそうに謝罪してきた。

…そうじゃない、集中してた訳では無いのだ。

ただ会話をどう続ければ良いのかがわからなかっだのだ。

特に女子相手だとテンパり、余計に会話が続かなくなってしまう癖がこちらにはあるのだ。

 

「いや、いいよ、たいして集中してた訳でもないし…」

 

「そうっすか?ありがとうございます、あ、私、高砂 クルミ(タカスナ クルミ)って言います、よろしくお願いするっす…あ、クルミって呼んで欲しいっす」

 

そう言い、唐突にクルミと名乗った女の子はお辞儀をしてきた。

 

「あ、ああ…よろしく、俺は中野 拓也だ、適当に呼んでくれ」

 

「了解です、タクさん!」

 

そういい、こちらに満面の笑みを向けてくる。

…少なくとも、悪い子ではないようだ。

これは、コミュ障を治すいい機会…なのかもしれない。

そう思い、勇気を振り絞って会話を続けることにした。

 

「…そういえば、なんで急に話しかけてきたんだ?」

 

そう言い、返事を待っていると、クルミといった少女は少し照れながら、

 

「いやぁ、入社前の射撃試験の時からずっと話しかけようと思ってて…私、実は話しかけるのとか苦手なんすよ…」

 

と言ってきた。

なるほど、この子も勇気を出して話しかけてきたという訳か。

そう思うと、唐突に親近感が湧いてきた。

 

「そうなのか…俺も、会話とか話しかけたりとか苦手でな…」

 

「そうなんすか!同じっすね!いやー、良かったっす、なんとかお互いに会話できて…」

 

そう言い、クルミは胸に手を置き、ほっと安心したような動きをしていた。

…にしても、いつぶりだろう。

ミーシャ以外の女の子とこうしてまともな会話ができているのは。

幼かった頃ならまだ簡単に会話できていたが、いつの間にか男女問わずコミュニケーションが苦手になってからというもの、人付き合いも減っていったのだ。

 

…そういえばよくミーシャが人になった時、八雲達と会話できたな俺。

それほどにテンパっていたのだろうか。

そんなことを考えていると、唐突に"マッチョ・マン"が流れてきた。

…完全終業時間の音楽だ。

曲選が謎すぎるが、恐らく社長が決めたのだろう。

 

………ん?社長?

 

「あっ!やっべ、社長に会いに行くんだった!」

 

そう思い出し、座っていた椅子も吹き飛ばしつつ椅子から立ち上がる。

クルミは何が起こったのか把握出来ていないのか固まってしまっていた。

俺はクルミに"すまん、また明日な"と一言伝えると、急いで荷物をまとめて部屋を飛び出した。

 

「社長ォー!いらっしゃいますかぁ!」

 

そう社長室のドアを突き破るかの勢いで、社長室のドアをノックする。

すると中から返事があったので、そのテンションのまま入ってしまった。

 

「どうした自分、何があった」

 

そう社長にサングラス越しにもわかるほど目を丸くされ、はっと思い急いで落ち着く。

 

「…すみません、伝えたいことがありまして」

 

「自分の嫁の事か?」

 

そう社長が椅子に座りつつ聞いてきた。

なんでわかってるんだこの人は。

 

「…はい、実はミーシャは―――」

 

「元は猫、なんやろ?俺もにわかに信じられんが…まあそういう事もこの世界ならあるやろな」

 

「……なんでそれを?」

 

「この前スーパーで君らがイチャイチャしながら買い物してるの見た時に尻尾がチラッと」

 

「でもそれだと元は猫って事の根拠にならないんじゃ…」

 

「ワイの妄想力なめんな、アパッチが女になった妄想で1年は余裕で過ごせた男やぞ、ちなみにコブラバージョンやと4年な」

 

「あっ、はい…」

 

なんだ、ただの変態か。

…いやでも元は猫と当てられていたので馬鹿にはできない…のだろう。

 

「で、それがどうしたんや?」

 

「今度の合宿、ミーシャは行きたいらしいのですが、変な人にバレたらと思うと…」

 

「なんや、そんな事かいな、安心しい、その辺は大丈夫や」

 

「…その根拠はどこから?」

 

「合宿予定地へはヘリで向かう、それに俺らのPMCしか入れないように常時監視しとるからな…多いんや、このPMCには他人にバレたくない秘密を持ったやつが」

 

そう言うと、椅子から立ち上がり、近くの厳重に保管された金庫から、1つの書類を取り出した。

 

「本人から許可は貰っとる、ほれ」

 

そう言うと、その書類を俺へと渡してきた。

 

「これって…」

 

読んでみると、そこには、ライムの写真と詳細が書かれた、履歴書のようだった。

 

「ライムの履歴書や、今のアイツからは想像もできん経歴やろ?」

 

そう言われ、上から順に読んでいくと、そこには"孤児院卒"だの"元殺し屋"だの、今のライムからは想像もできないような経歴が書かれていた。

 

「アイツが初めて殺したのはガールフレンドのためだそうだ、そこから殺しに抵抗がなくなり、殺し屋になったらしい」

 

それを聞き、俺は言葉が出なくなっていた。

あの優しい今の姿からはそんな事を感じさせないのは、並ならぬ苦労もあっただろう。

そのことを思うと、さらに何も言えなくなっていた。

 

「…ちなみに、面接の時にワイ言ったよな?"このPMCには誰か守りたいヤツがいる"ということが第一の入社条件や、って」

 

「…はい」

 

「ライムの場合は、こんなに人間として腐っちまっても、それでも愛し続けてくれるガールフレンドを守るために金が必要になった、だがもう道は間違えたくない、そういう理由があった。…この世の中にはそういう奴もおる、だからワイはそういうヤツらのためにこのPMCを作った」

 

その言葉に、俺は何も言えなくなっていた。

むしろ、そんなPMCに俺なんかがいてもいいのか、そう考えてしまうほどに、この人は他のPMCメンバーの事を理解し、そして信頼しているのだと、俺は感じることが出来た。

 

「…ちなみに、第一にそういうのがある事となってるが、なくてもぶっちゃけええんや、その場合は俺がしっかりとまともなヤツやと判断して入れることになっとる、やからそんなに気負わんでええんや」

 

「…わかりました、頑張らせていただきます」

 

「やから頑張らんでええんや、あくまでも自然体で、このPMCのメンバーは家族も同然なんやからな…さ、はよ帰ったれや、待っとる人がおるんやろ?」

 

そう言われ、家で待つミーシャの事が頭に過った。

きっと家で心配している事だろう。

 

「はい、では失礼します」

 

そう言い、社長室から出ると、一目散に車へと走っていき、出せる限りの速度で家へと帰って行った。

 

家へ帰ると、やはり待ってくれていたらしく、玄関で仁王立ちしながら頬をふくらませて怒っている、ミーシャの姿があった。

 

「ご主人!遅れるなら連絡くださいよ!」

 

「悪い、待たせちまったな」

 

そう言い、荷物を置き、ミーシャを抱きしめる。

すると、ミーシャからもハグが帰ってきたので、しばらくそのまま幸福感に浸っていた。

 

「さ、ご飯できてますよ、ご主人」

 

「ありがとう、ミーシャ」

 

そう言い、ハグをやめ、リビングへと行き、荷物を置いて一緒に"いただきます"と言ってから食べ始めた。

…その晩は、朝に言われた通りミーシャに襲われ、濃厚な夜を過ごしたのは言うまでもない。

 

 

 

その日から数週間後、俺達は合宿予定地へのヘリに乗るため、朝早く、日の登り始めた頃に車に乗り、PMCの所有するヘリ基地へと向かっていた。

駐車場に車を停め、指定された建物へと向かう。

すると社長を含め、幹部陣と見られる人数名が、既に建物の中で待機していた。

 

その他にはまだ誰も来ていないので、ある意味狙い通りということになった。

というのも、ミーシャがしっかりとミヤ社長や、その他の幹部陣にしっかりと猫と伝えておきたいらしいのだ。

 

「なんやタクヤ、早いな、夜戦明けか?」

 

「ちーがーいーまーすー!…ミーシャが皆さんに挨拶したいらしいんで早めに来ました」

 

「そうか、おいライム!キョウヤ!ちょっとこっちきいや!」

 

そう社長が言うと、少し離れたところで談笑していた2人が、駆け足で近づいてきた。

 

「はいはい?なんでしょう?」

 

「コイツが嫁さん自慢…もとい嫁さんが挨拶したいから早めに来たんやと、今回のメイン幹部お前らやからな、自慢食らうんお前らだけでええやろ」

 

「ははーん…なるほどリア充死すべし慈悲はない、特にライム」

 

「なんでだよキョウヤ、目の前に婚約してるリア充いんのになんで俺なんだよ」

 

「そりゃあ…かなりの頻度で彼女さんとの楽しい話されたらなぁ…全くうらやまけしからん」

 

そう言って、また2人は談笑を再開してしまった。

結構2人は仲が良いようだ。

 

「おいアホンダラ、勝手にまた会話再開してどないすんねんアホ」

 

「「口悪っ」」

 

「悪ないわアホ、平常運転じゃ」

 

そう言って、今度は3人で会話を始めてしまった。

…ミーシャと2人そろって忘れられてる気がしてきた。

そんな事を思っていると、どうやら思い出してくれたらしく、社長が軽く"すまん、忘れてた"と言ってこちらを向いてきた。

…やっぱり忘れてたんかい。

そう思っていると、いざ明かすとなると心配になってきたのか、ミーシャが服の袖を掴んできた。

 

「大丈夫、この人たちは信頼できるよ」

 

そう言って、目線を合わせつつ頭を撫でて安心させてやる。

これで心配が取り除かれるか心配だったが、どうやら心配は取り除かれたようで、にこやかな笑みを見せてくれた。

そして、帽子を外し、耳としっぽを見えるようにしてから、

 

「…えーと、ターキッシュアンゴラ?の中野 ミーシャっていいます、見た目の通り、元は猫でした、皆さんよろしくお願いします!」

 

と言って、挨拶をしていた。

我ながらよく出来た妻だと思う。

そんな事を考えていたら、挨拶をされた3人はミーシャを見て固まっていた。

恐らく混乱しているのだろう。

 

「いやぁ…予想はついてたけどホンマやったんやな」

 

「こんなことあるんですねぇ…」

 

「本当に…ってか可愛すぎかよ」

 

そう三者三様の反応が帰ってきた。

約1名、キョウヤ辺りは俺と同じヤバいやつの雰囲気がしたが。

まあ確かに可愛いから仕方ないか。

…もしかしたら俺は親バカならぬ嫁バカか?

まあ可愛いのは本当の事だし是非もないよネ!

 

…頭がおかしくなってきたかもしれない。

そんな事を考えていると、急にキョウヤが、

 

「なんかあったらすぐに言ってください!協力しますんで!」

 

と言ってきた。

すぐにライムに"カッコつけたがり乙"と言われて反論できてなかったので本当にカッコつけたかっただけなのだろう。

…そういやキョウヤはいつの間にかキョウヤで呼んでるな俺。

まあいいか、脳内で呼ぶくらいなら誰も悪く言わないだろう。

そう思っていると、

 

「あ、俺もライムと同じでキョウヤとでも呼んでください」

 

と言ってきた。

…思ってることバレてた?

そう思ってしまうが、そんな事はないだろう。

 

「あ、ああ、わかった、それじゃあこの事はできるだけ内密にお願いします」

 

「了解です、キョウヤ、勢い余って他人にバラすなよ?」

 

「バラさねぇよ、隠せと言われたらしっかりと隠させてもらうさ」

 

そう2人がやり取りをしているのを聞く限り、この2人なら大丈夫だろう。

そう思い、安心していると、

 

「おはようございまーっす!あっ!タクさん!」

 

と聞こえ、声の方向を見ると、そこにはクルミの姿があった。

慌ててミーシャの方向をチラリと見ると、安心しきっていたからか、帽子を被って隠すのが少し遅くなって、隠しきれていなかった。

 

「ほほう…最近テレビで見た獣っ子っすか」

 

そうクルミが言いながらミーシャへと近づいてくるのを、慌てて前に入りミーシャの近くに行かないように止める。

…ってん?最近テレビで見た?

 

「クルミ、今テレビで見たって言った?」

 

「言いましたよー?最近になって発見された異常現象で、『1度ヒトになるとその動物だった頃の面影を残しつつヒトとして生活する』って感じらしいっす」

 

「へー…ってえっ、割とみんな知ってる感じ…?」

 

「ワイは知ってたで?言わんかったけど」

 

「俺も知ってました、言いませんでしたけど」

 

「俺も知ってて『獣耳っ娘実現キター!?』って1人で興奮した覚えあります」

 

「…マジか」

 

どうやら、俺だけが知らなかったらしい。

いや、ミーシャも驚いているので2人だけか。

割とメジャーになりつつある現象、ってことは…

 

「ミーシャの事を必死に隠し続けなくても大丈夫な世の中が来た…?」

 

「ってことはご主人、私もご主人と一緒に色々な所に…!」

 

「ああ、そういうことになるな!」

 

そう言い、2人で周りの視線も気にせずに抱き合った。

…1人ほど妬ましい目で見てきている気がするが気の所為だろう。

それにしても、このおかげでさらにミーシャと一緒に色々な所に行けると思うと、途端にとても嬉しく思ってきた。

 

「あのー、興奮してるとこ悪いっすけど、まだかなり低確率らしくって、しばらく普及するまで珍しいものを見る目で見られると思いますよ?」

 

「それでも色々な所に堂々と行けるようになるんだ、それほど嬉しいことは無いさ、なあミーシャ?」

 

「はい!今までは近場とかにしか行けなかったので…」

 

「…まあ、そうっすね、タクさんが嬉しいならそれで私はいいっす」

 

そう言い、クルミは少し悲しそうにはにかんできた。

理由は俺にはわからなかったが、聞くのもはばかられ、その場では理由はわからなかった。

ミーシャはそれを見て何かを察したのか、なにか申し訳なさそうにしていた。

やはり、元は動物ということで人の心境を察するのが得意なのだろう。

 

そう思っていると、0800を過ぎた辺りから、たくさんの人々が建物へと集まってきた。

いよいよ合宿が始まるようだ。

 

そこからは社長自らが運転するUH-1Hや、UH-60Mなど、PMCに所属しているヘリを総動員し、編隊を組んで、海に浮かぶ無人島へと、つかの間の空の旅を満喫した。

それぞれの寝室となる部屋へと案内され、荷物を置いてリラックスする。

しばらくすると招集がかかったので指定された広間へと向かうと、メガホンを持ったキョウヤが壇上へと上がり、大人数を前にして立っていた。

 

「静かにしてくださーい!これから皆さんにやってもらう事を発表しまーす!」

 

そう言い、周りが静かになったのを確認したあとに、キョウヤは、

 

「皆さん静かになりましたね―――では皆さんにやってもらうことを発表します」

 

そう言い、キョウヤはいつものラフな表情から、唐突に真剣な表情を浮かべ、

 

「―――では皆さんには、"殺し合い"をしてもらいます」

 

と言った。

 

「…は?」

 

そう反応したのもつかの間、俺達は何者らかにより気絶させられたのか、人影を見た瞬間、唐突に意識を失った。




いかがでしたでしょうか?
今までのクオリティから下がってなかったら幸いです。
自分で書いててなんですが、ミーシャ可愛くないですかね?(親バカ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話

大変遅くなりました、第4話です。
本当は8000文字近くにしようと思ったのですが、書いていてこう締めよう!と思って締めてから文字数を確認すると6000台でした。()

では今回もどうぞごゆっくり、見ていってください!


「いてて…クソッタレ、何がどうなった…?」

 

そう言いながら倒れている体を起こして周りを見渡した。

どうやら、古ぼけた廃墟のようなところにいるらしく、辺りから埃っぽい匂いと、隙間から吹き込んでくる風を感じ取ることが出来た。

まだそれだけなら少しすれば落ち着き、状況を整理できていただろう。

しかし、今はそれどころではない。

どれほど周りを見渡しても、ミーシャの姿が見当たらないのだ。

俺は急いで少し痛む身体にムチを打って立ち上がり、廃墟の一室から出て他の部屋へと探しに行く事にした。

 

「ミーシャ!どこだ、ミーシャ!」

 

そう叫びながら探索していると、ある一室から物音がしたことに気づいた。

その事に気づいてすぐにその部屋に飛び込むようにドアを開けると、そこにはミーシャとクルミが二人揃って倒れていた。

見つけれたことに安心したのもつかの間、倒れたまま動かない2人が心配になり、慌てて駆け寄る。

幸いなことに呼吸も正常だし、しっかりと脈もあるので気絶しているだけのようだ。

 

とりあえず2人が起きるまで近くで警戒しつつその部屋の中を色々と物色することにした。

部屋の中を探していると、朽ちかけた木製のデスクの中から、一丁のM1911と、『.45ACP』と書かれた小さな箱が出てきた。

箱を開けてみると、中にはざっと数えて50発程度の.45ACP弾が入っており、どうやらダミーカートなどでもなく、本物のようだった。

一方M1911の方はと言うと、マガジンに7発の弾薬が入っており、こちらも本物のようだった。

…一体なぜこんな廃屋に実銃と弾薬があるのだろう。

そんなことを考え出した時、後ろからふわぁぁ…と抜けた声がすることに気づき、後ろを振り向く。

すると、先程まで気絶していた2人が目を擦りながら起き上がっているところだった。

 

「おはよう2人とも、何か変わったことは無いかい?」

 

「変わったこと…この今いる空間ですかね…」

 

「そうっすね、ここどこっすか……?」

 

そう会話を始めようとした時、唐突に片耳からザーという雑音が聞こえ始め、反射的にその耳を触ってみると、小型の無線機のようなものがついていることに気づいた。

しばらくその雑音に耐えていると、唐突に覚えのある声が聞こえ始めた。

 

『あーあー、マイクテストマイクテスト』

 

そうハッキリとキョウヤの声が聞こえ、俺達が気絶する前に言っていた事を思い出す。

記憶が正しければ…『殺し合いをしてもらう』、そう言っていたはずだ。

咄嗟に身構え、周囲の警戒を始める。

クルミもその事を思い出したようで、近くに落ちていたいい感じの木の棒を持ち、警戒していた。

しばらく警戒していると、唐突にまた声が聞こえ出した。

 

『えー、殺し合いをしてもらうというのはブラックジョークなので警戒を解除してください、特に新入りの皆さん』

 

そう無線から聞こえてきたが、どこまでが本当なのかが分からず、そのまま警戒を続ける。

すると唐突にポケットが震え、何かと思いポケットに手を突っ込むと、そこにはスマホに似た端末が入っていた。

電源ボタンらしきボタンを押してみると、端末が起動し、よくスマホなどで見るロック解除画面が現れ、そのままロックを解除する。

するとメイン画面が開き、その中に赤く①と書かれたアイコンがついたアプリがあったので開いていみる。

開いていみてみた限り、どうやらSNSアプリのようだ。

そこの1番上にある項目を押してみると、『このグループに入りますか?』と出てきたので、はいのボタンを押す。

すると見覚えのある名前の人や他の部隊の人など、見覚えのある先輩方が楽しそうに『今回のジョークブラックすぎねぇ?www』などと言って楽しそうに会話を繰り広げていた。

それを見てしばらく固まっていると、また無線が入り、

 

『チームのリーダーには端末を支給していますので確認してください、では今回のイベントルールを発表しまーす!』

 

と楽しそうなキョウヤの声が聞こえてきた。

それを聞きさらに固まっていると、そのまま話が進み始めた。

 

『今回のイベントはモンスターハント!実際に皆さんが"リアルで"そのうち戦うことになるであろうモンスターたちを倒してポイントを競います!相手はもちろん私たちイベント運営チームのキョウヤとライム、そしてミヤ社長です!俺たちを倒すために皆さん協力してモンスターハントをしてください!』

 

「…は?」

 

今"リアルで"と言った気がするが気のせいだろうか。

どうみたって今この空間がどう考えてもリアルだし、第一ミーシャが戦えるわけがない。

一体どうしろと言うのだろう。

変に戦って無残に殺されるのだけは誰であろうと勘弁だ。

そう思っていると、

 

『では何が何だかわからない新入りの皆さんにお教えします!まずは手頃な花瓶を固いものに落としてみてください!』

 

そう言われ、辺りを見回してみると、確かに花瓶があった。

それを言われるがままに硬そうな地面へと落としてみる。

すると、当たり前のように砕けた後に、無数のポリゴン片へとなって消えていった。

その事に3人揃って困惑していると、また無線が入る。

 

『はい、落としてもらってわかる通り、この世界は仮想現実、VRの世界となっています!つまり死んでもその初期リスポーン地点に戻されるだけとなります!…あ、ちなみに参加者は3人1組30チーム+俺達、装備は後ほど空中投下されます、それまでリスポーン地点に隠された武器を使ってサバイバルしてください!では120ポイント目指して…ゲームスタートォ!』

 

そこまで言うと、無線は切られ、あとは静かに警戒を続けていた俺達だけが残った。

要点をまとめると、俺達参加者90人で、3人のチーム相手より先に120ポイント稼げばいいということだ。

ならすぐにでも終わりそうだ。

流石に90人相手に3人が勝てるわけがないだろう。

問題はミーシャだ。

ミーシャは戦闘経験もなければ、銃も撃ったことがない。

それにこの90人の中にはミーシャのように一般の人もいるはずだ。

それを護りながら戦うとなると、思っていたより時間がかかるのかもしれない。

それにキョウヤは『サバイバル』と言った。

つまりは食料や水を確保しなければならないということだ。

つまり火も起こさなければいけない。

一体どこから始めればいいんだ…?

とりあえずみんなで話し合うとするか、そう思い、ひとまず警戒を解いて銃を下ろす。

するとそれを見たクルミも警戒を解き、いい感じの木の棒を下ろした。

 

「ふぅ…とりあえず本当に殺し合う事にならなくて良かったっす」

 

「だな…にしてもクルミ、伝説の剣を抜くとはな…」

 

「ここから、勇者クルミさんの冒険が始まるのであった…」

 

「いや始まりませんよ!?なにミーシャちゃんも乗ってるんすか!」

 

「武器はちゃんと装備しないと、意味がありませんよ…」

 

「クルミは10のダメージを受けた」

 

「なんでっすか!もしかしてこれ刃の部分持ってる扱いなんすか!?そんなことよりこの後どうするか話しましょうよ!」

 

「…そうだな、すまない」

 

確かに、今はふざけるよりもこの後のことを考えなければならない。

まずは他に武器がないかを探すのが先決なのだろうか…いや、その前に外を確認するのが先なのだろうか?

 

「とりあえず…クルミとミーシャはこの廃屋の中の探索を、俺は少し外の様子を見てくる」

 

「了解です!」

 

「了解っす!」

 

そう打ち合わせのようなことをしてから、俺は廃屋の外へと出てみることにした。

ドアノブは壊れており、押すだけでドアが開き、簡単に外に出ることができた。

外から見るに平屋の一戸建てで、周囲には森が広がり、少し行けば近くに川があった。

川の水を少しすくって飲んでみたが、体に変化はないし飲めるだろう。

まあ煮沸するに越したことはない…のだが、まずは火をどうにかしなければ。

そう思い、木の枝を拾い集め、廃屋の前に落ち葉と一緒に集めて固めて置いておく事にした。

あとは摩擦熱で火を起こすことができれば完璧だ。

…いや、食料がないから完璧ではないか。

とりあえずは廃屋探索組と合流して戦果報告だ。

 

そう思い、廃屋のドアを開けて入ろうとすると、遠くからヘリの音が聞こえ始めた。

しばらく待っていると、俺達のいる廃屋の真上を通り掛かった時に、巨大な箱が投下され、パラシュートを使ってゆっくりと降りてきた。

降りてきた物資を確認しようとヒモを解き、中を見ると、中にはSCARとP90、MP5に各種弾薬、数日分のレーションと水、サバイバルナイフが三本あった。

 

とりあえず廃屋探索組を呼び、外へと来てもらい、3人で武器と食料、水にナイフを配り、室内へと戻る。

そこで一休みしつつ、室内探索の戦果を聞くことにした。

 

「えーっとっすね、釣竿が三本に西洋刀、あとマッチョ・マンのCDとCDプレイヤーっすね…あ、あと鍋があったっす」

 

「唐突なマッチョマンは笑うしかねぇや…俺はこの周辺を探索してみたがここが森の中ってのと近くに川があることくらいしかわからなかった、すまない」

 

「川があるってわかっただけでも大収穫ですよご主人!」

 

「そうっすよ!川があるなら釣りもできますし、飲み水も確保できるっすよ!」

 

「だといいんだが…」

 

そんな会話をした後に、軽く銃のチェックをすることにした。

おそらく大丈夫だが、こいつがしっかり動かないと狩りなんてできない。

なら点検しておく方がいいと思ったのだ。

もちろんミーシャ用に支給されたのであろうMP5も可能な限り手入れして、一応使えると確認しておいた。

あとはちまちまモンスターを狩ったりして無事にこのゲームを終わらせるだけだ。

問題はどんなモンスターが出るか…だが、リアルでもたまにいるクレイジー・ボアと呼ばれる巨大イノシシや、せいぜい出たとしてもプラチナムベアと呼ばれる硬い金属質な爪や牙をもつ銀色の巨大熊だろう。

そうでないと非戦闘員1人を含む3人で勝てる気がしない。

…にしても、これが本当に殺し合いをさせてくるのでなくて本当によかったと思う。

もし、たとえ仮想空間であっても人を殺めなければならない事になったら、昔の俺に逆戻りしてしまう気がするのだ。

ミーシャと暮らしている今、昔のような俺をミーシャに見せたくない。

そりゃあミーシャが家に来た時はその時の俺を見ていただろうが、それも既に約6ヶ月前のことだ、忘れてくれてると願いたい。

とまあ、そんな事を考えながら、次に何をすべきか考える方に考えを切り替える。

食料に水は揃った…という事は…

 

「さて…次は火だな…どうしたもんか」

 

「火、いるっすかね?食料も水もありますし」

 

「それもそうか、なら情報収集でもするか…」

 

そう言いながら、支給された端末を適当にいじり始める。

やはり討伐ポイントの集計結果や、出てきたモンスターなどの情報が見れるようになっていた。

やはり先程言ったような比較的低級なモンスターが多いらしいが、キマイラと言った上級モンスターの目撃情報まであった。

そんなものまでいるとなると、確実に射撃経験がない人では狩りは難しいだろう。

あった所で上位モンスターなぞ3人で狩るものではない。

そう思っていたのだが…

 

「…嘘だろ?社長チームだけで上級モンスターを狩ってやがる」

 

「マジっすか!?一体どうやって!?」

 

「わからん、多分だが支給された装備が強かったのかもしれん…普段何装備してやがんだ」

 

「え?なんなんですかご主人?上級モンスターって?」

 

「この世界には下級、中級、上級モンスターってのがいてな、ほら、たまにテレビでグールの大量出現だのなんだの言ってるだろう?あれのもっとやべーやつだ」

 

「ひぇぇ…怖いです…」

 

そう言って、ミーシャは両手を頭に置き、しっぽを足の間の方に引っ込めてしまった。

実にかわい…いやなんでもない。

そんな怖がるミーシャの姿を見て、俺は気がつけばミーシャを抱きしめ、頭を撫でていた。

はっと気がつき、やめて当たりを見回した頃には、ミーシャは顔を真っ赤にし、クルミまで耳を真っ赤に染めていた。

 

「…悪い、つい可愛すぎて」

 

「…もう、そうやってすぐに可愛いなんて言わないでください、嬉しいですけど」

 

「ま、まあ確かに今のは可愛かったし仕方ないと思うっす…でもできるだけ人目につかないところでお願いしたいっす…」

 

「…わかった」

 

そうクルミに軽く怒られ、俺は確かに人のいる所ではしない方がいいと思い、少し反省する。

…少し俺はデリカシーが足りないのかもしれない。

そんな事を思っていると、近くで獣の遠吠えが聞こえ、咄嗟に銃を手に取る。

クルミも同じ考えだったようで、こちらにアイコンタクトをしてきて、1つ小さく頷いた。

…この仮想空間に来てからの初戦闘になるだろう。

そして、遠吠えの声からして恐らくブラッディウルフだ。

ヤツらは群れて行動して攻撃してくるが、落ち着いて対処すれば楽に狩れると言う理由で低級ランクになる。

 

「…ミーシャ、何があってもここを動くなよ」

 

「わ、わかりました」

 

「タクさん、行くっすよ、ヤツらならこんな対策のない廃屋の窓なら突き破って来るっす」

 

「ああ、全力で行くぞ」

 

そう言い、俺とクルミは銃をしっかりと構え、ドアを開けて周囲を見回した。

すると、やはり匂いでバレていたのかなんなのか、既に囲まれていた。

ざっと見、15かそのへんだろう。

 

「背中は預けたぞ、クルミ」

 

「了解っす!派手に行くっすよ!」

 

そうクルミは言うと、廃屋を背にした状態から向かって左側の敵に向かって突撃を始めた。

そしてその小柄な身体を活かしたすばやさで、敵の攻撃をすんでのところで避けて、近距離で返り血を浴びながら射撃を繰り返していた。

それを見届け、大丈夫と悟ってから、俺はSCAR-Lをしっかりと構え、つけられているドットサイトでしっかりと照準をつけ、トリガーを引き、半分ほどそのまま連射しているかのような速度で次々にブラッディウルフの急所を狙っていく。

すると各個での攻撃は不利だと悟ったのか、1つの塊になり、一斉に攻撃をしてきた。

 

「クソッタレが!数を減らせても回避は確定じゃねぇかよ!」

 

「あははっ!そうっすね!でもその方が"生きてる"って感じがして楽しいっすよ!」

 

「…ははっ、違ぇねぇ!」

 

そう言うと、クルミはハッとしたような顔をした後、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて一度こちらへと集まってきた。

そしてこちらへと背中を向けて、

 

「背中は預けましたよ、タクさん!」

 

と言ってきた。

 

「ああ、任せろ!」

 

そう言うと、後ろへと振り向き、笑顔を見せてから、まだ地味に残っているブラッディウルフの群れへと突っ込んでいった。

一気にクルミへと飛びかかっていくヤツらを、クルミは回避しつつ射撃していた。

しかし、そんな簡単に回避しきれる訳もなく、体制が崩れたクルミに向かい、1匹のブラッディウルフが飛びかかった時―――

 

「そこだっ!」

 

俺はそのブラッディウルフへ向かい射撃をして、少し軌道をずらし、クルミにぶつからないようにする。

それを何度か繰り返し、もう少しで倒しきれるという時だった。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

という声が廃屋から聞こえたと思い、そちらの方向を見てみると、ドアの開いた廃屋が目に飛び込んできた。

そう、コイツらはドア程度なら簡単に開く知能があるのだ。

だからこそ廃屋から付かず離れずの距離で戦闘をしていたのだが、いつの間にか別働隊が侵入してしまっていたらしい。

一心不乱に廃屋へと駆け込み、ミーシャを探す。

するとそこには―――

 

 

―――ミーシャに向かって飛びかかる、ブラッディウルフの姿があった。




いかがでしたでしょうか?
果たしてミーシャはどうなってしまうのか!
一応構想は練れてるのでまたしばらくしてメイン作品が一定に行くか書けなくなってきたら書き上げたいと思います!(はよ書け)

ではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話

大変長らくお待たせしました、ねこかのの5話となります!
今回、プロットの書き方を少し変えてみております。
書きやすくなっていいゾ^〜これ

…え?なぜ本連載してる方も投稿が遅いのか、ですって?
ポケモンが悪いんです、ポケモンが。(責任転嫁)
はい、すみません、本連載の方もできるだけ早めにしますね…

では今回も、ごゆっくり見ていってください。


「ミーシャァァァ!!」

 

そう叫びながら必死に手を伸ばし、庇おうとする。

しかし、やはり圧倒的に距離が、そして届くまでの時間が足りなかった。

 

ブラッディウルフの太い四肢がミーシャへとのしかかろうとし、俺は思わず目を閉じつつ、けれどもその足は止めずに助けに行こうとすると、唐突にミーシャの方からズダダダダッと銃を連射する音が聞こえ、ハッとその目を開いた。

すると、そこには返り血をかぶりながらも肩で息をしつつ、片手にMP5を持ったミーシャの姿が、そこにはあった。

 

「ミーシャっ!…よかった…本当によかった…」

 

そうミーシャ抱きつきながら、ミーシャの頭を撫でてやる。

対するミーシャはと言うと、やはり怖かったようで、震えて泣きながら俺の体を抱き締め返してきた。

 

「タクさん!ミーシャちゃんは!?」

 

そう外からクルミが飛ぶように帰って来て、俺たちの姿を見る。

一瞬返り血もあってか殺られてしまったのかと思ったようだが、俺の体からヒョコリとミーシャが顔を出したのを見て、ホッと一息ついていた。

 

「ミーシャ…よかった、よくあそこで銃を使えたな」

 

「はい…気づいたら体が勝手に…私のせいでオオカミさんが…」

 

「そんな事は別にいいんだ、コイツはミーシャを殺しにかかってた、コイツの自業自得さ」

 

そう言って、俺は手でミーシャの顔についた返り血を拭き取ってやっていた。

 

「さて、と、クルミ、外のヤツらは?」

 

そう立ち上がりながら尋ねると、クルミは満面の笑みにサムズアップしながら、

 

「あのくらい、余裕っすよ!ちゃちゃっと片付けてきたっす!」

 

と、言ってきた。

 

「そうか、流石クルミだ」

 

そう言ってクルミの頭にポンと手を置き、わしゃわしゃと頭を撫でてやりった後、俺はミーシャの横に横たわって息絶えているブラッディウルフを担いで、外へと出た。

 

 

「さて…コイツらを血抜きしてから解体して…あ、そうだ火がねぇや…」

 

そう言いながらポリポリと頭をかいていると、ポケットに入れていた端末に、一通のメールが届いた。

何かと思ってみてみると、送り主の所には『運営』と書いており、題名も『インフォメーション』とだけの簡素なものだった。

気になって内容を見てみると、『戦闘経験のない方はシステムアシストにより、戦闘が可能になっております。』と書かれていた。

つまり、あの時咄嗟にミーシャが射撃できたのは、システムアシストとやらのおかげ、ということになるのだろう。

つまり、先程、花瓶で思い知らされたが本当にここはゲームの中だということだ。

 

「まあ、ミーシャに戦闘させる訳にはいかないけどな」

 

そんなことを言いつつ、なにか火種になりそうなものが無いか探す。

危険だが銃弾の発射薬を使って火を起こそうかとも考えたが、そもそも弾頭を外せないので諦めることにした。

そう色々と考えていると、廃屋のドアを開けてこちらを覗き見てくる、2人の存在に気づいた。

 

「…2人ともなにやってるんだ?」

 

そう聞くと、2人は廃屋から訝しむような表情を浮かべながら出てきた。

 

「タクさんこそなにやってるんすか?さっきからブラッディウルフの死体の山をジロジロ見て…」

 

「そうですよ、さっきから端末見てなんか納得したかの表情を浮かべたと思ったらオオカミさんの死体を見てうーんだのいや無理かーだの言ってんですよ?」

 

「…それは不審者感あるな」

 

「でしょ?で、どうしたんすか?」

 

そう言われ、今まで考えていたことを話してみる。

最初は俺のやりたい事がすぐに分かってくれていた表情だったが、すぐに2人とも熟考し始めた。

 

「あー…うーん…火っすか…起こせないこともないっすけど…」

 

「私はお肉の調理法くらいしか思いつかないです…ああ、でも塩もコショウもないんですよね…」

 

「だろ…?なにか使えるものがあればいいんだが…」

 

そう言い、3人揃って再度熟考を始める。

気がつくと、もう少しで夕方になりそうになってきていた。

もし火を起こすなら日のあるうちがいいだろう。

それにこんな場所、夜に出歩くのは流石に危険極まりない。

本当に困った。

 

そう焦りつつ考えていると、クルミが何かを思いついたらしく廃屋の中へと戻り、何かを探し始めた。

俺とミーシャは突然の事に目を合わせてから首をかしげあい、クルミが出てくるのを待った。

そしてしばらくすると、クルミが1枚の透明度の高いビニール袋を持って、こちらに笑顔を浮かべて走ってきた。

 

「タクさん!これ使いましょうよ!」

 

「ビニール袋ぉ?そんなもの使えるわけが……いや、待てよ?そうか、そう言うことか!でかした!」

 

そう言い、クルミからビニール袋を預かり、急いで川へと走り、その袋の中に水を汲む。

そしてこぼさぬよう急いで戻り、用意して無駄になるところだった火種の元へと光を集め始めた。

しばらく当て続けると、次第にもくもくと煙がたち始め、それに風を送り、その煙の元を強くしていく。

そしていつの間にかクルミが用意してくれていた別の火種の元に移し、そのまま風を送り続けていると、小さな火がついた。

その火を絶やさぬように燃えるものをくべ、風を送り続けてを繰り返していると、いい感じのたき火ができた。

 

「よし!これで暖かいものが食べられるぞぉ!」

 

「やったっすね!これでレーションも温めれるっす!」

 

「ああ、冷たいレーションは正直辛いからな…」

 

そんな事を言いながら、石などを使い上に物をおけるようにし、事前に見つけていた鍋を洗い、使えるようにしておいた。

その後は俺がブラッディウルフを捌いて、クルミが手頃な木の棒を洗ってナイフで研いで串にし、たき火に当てて肉をただ焼いただけというシンプルな料理を作り、晩御飯に取っておいた。

 

そんな事をしてしばらくすると、日も次第に暮れてきた事により、改めて火をおこせたことで起こる安心感に包まれていた。

火をおこしてからはその火が絶えないように枝や枯葉などを集めてそれをくべ、各々火にあたって温まっていた。

その後しばらくすると、クルミのお腹がぐぅーと鳴り、みんなして事前に作っておいたブラッディウルフの肉の串焼きを再度たき火に当てて温め、皆でかじりついて食べていた。

 

「ふう…レーションを支給されてるけど、しばらくこの肉で足りそうだな、まだまだあるぞこの肉」

 

「そうっすねぇ、全部で何匹でしたっけ?」

 

「15匹だ、食えるとこは基本もも肉の部分だから1匹につき2つ食えるとこがあるから1人につき10個食えるぞ」

 

「しかも大きいですよねこのお肉…1つか2つで私はおなかいっぱいです…」

 

そう言うミーシャに同感しつつ、俺は串に刺さった肉を頬張っていた。

ふと他のチームのことが気になり端末を見てみると、火がつけられずにつけ方を聞くチームや、今日仕留めたモンスターの食レポなど、様々な話題で盛り上がっていた。

その中でも社長チームの"上級モンスター狩り"の話題は凄く、どんな武器を使っているのかと興味津々な人や、どうやって仕留めたのか考察している人、そもそもその話はデマだと聞いて疑わない人など、その話題は多岐に渡っていた。

確かに、武器や戦法は気になるし、その前に嘘だと信じたい気もわかる。

しかし、俺はその話題よりも、どのチームの誰も1度も死んでいないと言うこのPMCの練度の高さに驚かされていた。

間違いなくPMCに属していない一般の人、はたまたミーシャみたいに銃を撃ったことがない人もいるはずだが、低級から上級モンスターまで、様々なモンスターが蔓延るこのエリアで誰も死んでいないのは凄いことだろう。

 

そんな事を考えていると、ミーシャがうつらうつらと船を漕ぎ始めていた。

恐らく、お腹がいっぱいになって眠たくなったのだろう。

しばらくすると、横に座っていた俺にもたれ掛かるように眠り始め、しっぽも俺の腕に巻き付かせてきた。

 

「よかったっすね、タクさん、しっぽ巻き付かせてくるのって確か親愛の証っすよ」

 

「…そうか、嬉しいもんだな」

 

「うちの犬も、よく擦り寄ってきて眠るんすよ、いいっすよね、誰かに好かれるって」

 

「そうだな、本当に、嬉しいもんだ」

 

そう言い、寝ているミーシャの頭を撫でてやる。

…その俺たちの姿を見るクルミの顔は、どこか羨ましそうだった。

その事に気づいた俺は、クルミを手招きして隣に座らせ、その頭を撫でてやった。

最初は本当にこれでいいのか不安だったが、何も言わず嬉しそうに撫でられてきていたので、これで合っていたのだろう。

そう2人の頭を撫でていると、いつの間にかクルミも俺にもたれかかって眠ってしまっていた。

困ったなぁと思いつつ、ずっとこの平和な一時が続けばいいのにと思いふけっていた。

それからしばらくすると、2人の温もりでか、だんだん俺まで眠たくなってきて、必死に寝ないように努力する。

こんな遮るものもない、何が出るかわからない場所で、誰も見張りのないのは実にまずいと思ったからだ。

そうしばらく頑張っていると、クルミが目を覚まし、その安心感でか、すぐに俺の意識は夢の中へと飛び込んでいった。

 

 

どのくらい経ったか、空が色づき始めた頃、唐突にハッと夢の世界から意識が目覚め、思わず辺りを見回す。

すると、愛銃のP90を持ってふふっと微笑む、クルミと目が合った。

 

「…悪い、見張りずっと任せちまってて」

 

「いいんすよ、先に寝ちゃったのは私ですし」

 

そんな会話を交わしてから、ふと寄りかかって寝てきているミーシャへと目を向ける。

少し朝なのもあって冷えるが、そんな事を感じないほどに暖かく、幸せそうにまだ眠っていた。

困ったな…そう思いつつ、俺はミーシャの頭を撫でてやっていた。

 

「さて…どうしたもんか」

 

「どうします?私たちで狩りに行くもいいっすけど…それだとミーシャちゃんが1人になっちゃいますしねぇ」

 

「だな…とりあえずクルミはもう一度寝とけ、見張り変わるから」

 

「わかったっす…ふわぁぁ…」

 

そうクルミは大きなあくびをしたかと思うと、そのまま隣に座り、俺にもたれかかって眠ってしまった。

 

「…動けねぇ」

 

そうぽつりと呟き、俺はそのまま起きて見張りを続けていた。

 

 

~~~

~~

 

「ふわぁぁ…見張り交代お願いするっす…」

 

「了解、ゆっくり休め」

 

あのゲーム参加から既に内部時間で5日が経った。

リアルでの経過時間はわからないが、もしかしたら同じ時間が経っているのかも知れないな、そう思いながらもはや恒例となった2人にもたれかかられながらの見張りを続けていた。

あの日から襲撃してきたのを撃破する事だけをしており、その撃破回数は初日含めて2回となっていた。

その時襲撃してきたモンスターは初日と違い、クレイジー・ボアと言う大型イノシシ1匹だけだったので、初日の戦闘よりは楽に処理することが出来た。

ちなみに、ここまでのゲーム成績は五分五分で、社長チームに食らいつくかのように社員チームがポイントを稼ぎ続け、お互いもう少しで目標のポイントにたどり着くポイントにまで上り詰めていた。

なお、弾薬は要請すればヘリから投下してくれる親切なシステムとなっているため、なかなか無くなることはないだろう。

 

そんな事を考えつつ、動ける範囲で色々していると、唐突にミーシャの猫耳が動いた。

そのあとすぐに飛び起きたので何事かと思っていると、ミーシャがじっとある方向を見つめ続け始めた。

 

「…どうした?」

 

「いえ…なにか足音がした気がして…」

 

「その音は今もするのか?」

 

「はい…近づいてきてます…」

 

そう言うと、ミーシャは猫耳を後ろに向け、俺の方へと近寄ってきて怯え始めた。

急いでクルミを起こし、銃をコッキングして警戒し始める。

すると、しばらくしてガサガサッという音が俺たちの耳にも聞こえ始め、明らかに何かが近づいてきていることがわかった。

その音の方向に銃を構え、徐々に廃屋の方へと距離を詰め、ミーシャを廃屋の中に隠れさせる。

それと同時に、草むらから銀色の毛をした、巨大な獣―――中級モンスターの、プラチナムベアが現れた。

プラチナムベアは、俺たちを見るなり2足で立ち上がり、威嚇するかのように雄叫びを上げた後、俺たちに向かって突進し始めた。

それを急いでかわそうとするが、恐怖でなのか、全く体が動かなかった。

 

俺たちにその巨躯が直撃しようとした時、横からの衝撃と共に俺の体が吹き飛ばされ、プラチナムベアの突進コースから逸らされた。

かわせたことの安心感と同時に、俺にタックルして吹き飛ばしてかわさせてきたクルミへと目を向ける。

すると、クルミは諦めるかのように銃を下ろし、プラチナムベアを見つめていた。

咄嗟に叫ぶが突進の勢いは収まるどころか加速し、クルミに直撃しようとしていたその時、クルミが地を蹴って跳躍し、プラチナムベアを踏みつけて空中で一回転しつつ、その背中へとP90から放たれる5.7×28mm弾を撃ち込んでいた。

そのまま着陸したと同時に今度は後ろから銃弾を撃ち込み、プラチナムベアはよろけて体制を崩し、突進の勢いと相まって木へとぶつかっていた。

その事に呆気にとられながらも思考を切り替え、俺はクルミの方に合流しつつ、起き上がってくるプラチナムベアに向かって銃弾を撃ち込み続けていた。

 

「クルミ!大丈夫か!?」

 

「大丈夫っす!いやぁ…成功してよかったっす…タクさんは大丈夫っすか?」

 

「ああ、おかげでな…にしても、よく咄嗟にあんなことができたもんだ」

 

「たまたまっすよ、たまたま…流石にもう一回やれって言われてもできないっす」

 

そう言いながらマガジンを変えるクルミを視界の端に捉えながら、俺もマガジンを変え、未だに立ち上がり咆哮をしているプラチナムベアへと銃を構える。

静かに息を吐きながら照準を定め、クルミと同時に発砲し、弾幕を貼る。

流石に撃ち込みまくったからか、分厚い皮膚から手応えを感じる出血をし始め、よろりとその巨体が揺れた。

 

「リロード!」

 

「こっちもリロードっす!」

 

そう2人してほぼ同時にリロードし、すぐに間髪入れずに撃ち込み続ける。

すると、次第にプラチナムベアの四肢から力が抜け、その巨体がついに地に伏せた。

 

まだマガジンに数発残っている状態で新しいマガジンとチェンジし、ゆっくりと銃を構えながらその巨体へと歩み寄る。

そして至近距離から脳天を撃ち抜くと、プラチナムベアの巨体がビクンと震え、そして、動かなくなった。

 

「やった…!やったぞ!」

 

「やったっすねタクさん!」

 

そう2人でハイタッチを交わし、落としているマガジンを拾い集めて仕事着の防弾チョッキのマガジンポーチに仕舞い、ミーシャの待つ廃屋へと笑い合いながら戻った。

 

~~~

~~

 

あの後、今後の食料候補として狩ったプラチナムベアを捌いていると、突然ポケットに入れていた端末が鳴り、見てみるとメールが届いていた。

内容はと言うと、『もう少しで目標ポイントに到達するので、全チームは3つのうちいずれか1つのポイントに向かえ』というものだった。

本音を言うとプラチナムベアの味が気になっていたので、渋々解体作業を中断し、廃屋の中でゆっくりしていた2人にそのことを告げ、あるだけの食料や水、弾薬などをかき集めてから、指定されたポイントを地図で確認してみることにした。

すると、ここから数十分ほど歩いた場所に指定されたポイントがあったので、必要な分の食料と水、弾薬を持ち、そのポイントへと向かった。

 

途中途中休憩を挟みながら、俺たちは地図を頼りに森の中を進み、しばらくすると開けた遺跡のような場所へと到着した。

しばらくその中を進むと、すり鉢状の広い闘技場のような所に、他のチームがちらほらと座り、談笑していた。

俺達もそれに倣って座り、歩いた疲れを癒していると、唐突に全チームリーダーの持つ端末に『3分後に大規模戦闘を開始します。各チームは準備を始めてください。』と、メールが入った。

 

言われるがままに銃を取り、コッキングして準備する。

そして全メンバーの最後方でミーシャを守るように闘技場のフィールドに立ち、スタンバイしていた。

 

「何が出てくるかは知らないが…遮蔽物は割と多いな、ここ」

 

「そうっすね、至る所に柱とか壁みたいなのがあるっす」

 

「アーチみたいになってる所もありますね…なんなんでしょうここ?」

 

そんな会話をしていると、一斉に全チームリーダーの端末が鳴り響き、闘技場にある出入口のような所の檻が開いた。

一瞬ざわっとしたかと思うと、各チームメンバーの一部は一目散に逃げ出し、そこそこいた人数が一気に減り、やっと俺たちにもその理由となる生物がくっきりと見ることができた。

俺たちは、その姿を見るなり、何も声が出せなくなっていた。

それも仕方ない、そこにいたのは上級モンスターとして名の知られている、"ケルベロス"という3つ首の巨大な獰猛さを隠しきれない犬の姿だったのだ。

恐怖のあまり動かなくなった体にムチを打ち、銃につけたスリングを肩にかけ、2人の手を引いて一心不乱に逃走を始める。

このPMCの腕利きなのであろう人達が攻撃してくれていたので、ひとまず距離を開けることができた。

だがしかし、それでもあの巨体ではすぐに追いつかれる距離なのは火を見るよりも明らかだった。

こうして距離を開け続けている間にも、後ろからは悲鳴と共に銃声や何かが崩れる音が聞こえ、逃げた人々へと攻撃の矛先が向くのは時間の問題にも思えた。

ここまでくれば2人を逃がせる方法はただ一つ、この3人のうちの俺が囮となることだけだろう。

そう思い、逃げる足を止め、後ろを向いて2人の顔を見た。

 

「タクさん、どうしたっすか?早く逃げないと確実に私らじゃ殺られちゃうっすよ!」

 

「…クルミ、ミーシャを頼む、端末もお前に渡しておくから、それで地図を見てなんとか逃げ延びてくれ」

 

「そんな!それって、ご主人と離れ離れになるってことじゃ…!そんなの嫌です!」

 

「安心しろ、今いるのはゲームの世界らしい、最初のあの廃屋にでもいてくれたら俺が死んでも会えるさ…じゃ、クルミ、あとは任せたぞ!」

 

そう言い、2人の頭に手をポンと置いてから、肩にかけている愛銃のSCARを構え、来た道を走って戻り始める。

後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてくるが、それも振り切り、気がつけばケルベロスの巨体が見える距離まで近づいていた。

数人の人が苦戦しつつも攻撃を加えているのを確認しつつ、射程距離に近づいて射撃を開始した。

周囲にある石柱などに身を隠しつつ攻撃を加え続けていると、突然、近くの森の中から巨大なワイヤー付きの鉤爪が2つ飛翔し、近くにあったアーチ状の石柱に絡みついたと思うと、今度はそれに引っ張られるかのように、2人の人影が飛び出し、そのアーチの上に飛び乗ってきた。

 

「みなさーん、大丈夫ですかー?」

 

「どう考えても大丈夫じゃねぇだろ…相手は数十人で本来戦う上級だぞ?」

 

「それもそうか、じゃあライム、社長の到着まで時間稼ぐぞ!」

 

「わーったよ、キョウヤ、足引っ張るなよ!」

 

そう聞き覚えのある声と名前が聞こえたかと思うと、その声の主たちは鉤爪のついた銃とは違う片手に持った銃で射撃を開始した。

 

「社長チームのライムとキョウヤだ!」

 

「なんだあの持ってる銃口から鉤爪生えましたみたいな銃!?お前なんか知ってるか!?」

 

「小隊長の腰のホルスターにいつもつけてる銃だ…あんなんだったのか」

 

そう2人が現れたことで多少の余裕が生まれたのか、どこからかそういう話し声が聞こえてきた。

いつの間にか俺もどこか安心し始め、自然と肩の力が抜け、いい力加減になっていた。

 

そして周りの戦闘要員も射撃を開始し、ケルベロスを翻弄し始めた時、唐突に森の中からキュィィィィンというモーター音が聞こえてきたと思うと、その音はブォォォォォンという音へと変わり、ケルベロスに向かって大量の弾丸が撃ち込まれ始めた。

 

「Hello,Muscle!今日も筋肉鍛えとるか!」

 

そう言いながら黒い筋肉の塊こと社長が、ミニガンをブッ放しながら森の中から出てきた。

現れて開口一番そのセリフという事にツッコミを入れたくなったが、終業時間の曲をマッチョ・マンにしたり初期リスポーン地点にマッチョ・マンのCDを仕込んだりするほどの筋肉オタク?なので仕方ないだろう。

そんなことを考えている間にも、毎分3000発という数の暴力がケルベロスを襲い続け、さらにそこにライムとキョウヤによる弱点狙撃が加わるという、もはやケルベロスに同情せざるを得ない攻撃が絶え間なく続いていた。

その場にいたほぼ全員が上級モンスターであるケルベロスが最早反撃できないという状況に呆気にとられていると、気がつけばケルベロスが地に伏し、物言わぬ骸となっていた。

 

「射撃やめ!筋肉の勝利や!」

 

「筋肉の勝利ってなんですかね…」

 

「やめとけキョウヤ、ツッコむだけ無駄だ」

 

そう3人が言い、銃を下ろしたと思うと、突如上空に『WINNER "社長チーム"』と書かれた文字が現れ、次の瞬間、俺達の視界は闇に包まれ、その意識を手放していた。




いかがでしたか?
今回、本文が8404文字なんですけど、プロットなしで1万文字超えた1話ってなんなんでしょうね…
今回かなり書いたと思ったんですけど…

とまあまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話

ねこかのの読者の皆様、大変お待たせ致しました…最新話です。
短い上に内容も薄くなってしまってますが、ネタが…ネタが思いつかないんです…(言い訳)
正直合宿編でゲーム世界へってのも無茶苦茶だなと思い始めてるんで多分7話からはこの合宿も過去のものとなってるかも知れません()

という訳で(?)最新話、ゆっくり見ていってください!


あのゲームの世界から帰ってきて1日後、俺たちはごく普通の日常の素晴らしさを感じながら、この合宿の後半を楽しんでいた。

後半は前半のサバイバルがなんだったのかと思うほどに普通の合宿…と言うよりもはや旅行で、最初に着いた建物とは別の、極東地域の温泉街でよく見るような温泉つきの旅館に泊まっている辺り、この会社が一体何者のかと思ってしまう。

もちろんこの合宿もお金がかかっている訳でもなく、このお金の出どころはどこなのだろうと思わざるを得ない。

まあ、ミーシャと結婚して初めての旅行となるので、そんなことは特に気にならず、2人とも舞い上がりっぱなしで、この合宿を満喫していた。

ちなみに、クルミとはゲーム終了後、少し会話した程度で、あまり会ってはいない。

理由はわからないが、少し避けられている気がするのだ。

 

「ご主人?どうしたんですか?」

 

そう窓際で物思いにふけっていると、ミーシャにそう心配された。

 

「いや、なんでもない」

 

「そうですか?ならいいんですけど…」

 

そう微笑みながらしっぽをゆっくり振っているミーシャの頭を撫でてやりながら、俺は居間へと戻り、和室の畳の上に腰掛け、テレビを見ることにした。

 

適当にチャンネルを回して見ていると、やがて、昼食の時間がやってきた。

 

「さて…そろそろ昼食だな、今日は何が出るのやら」

 

「ですねぇ、初めて食べるのが多くて楽しいです♪」

 

そんな会話をしつつ、俺たちは軽く準備を整え、食堂へと向かった。

食堂へ着くと、それぞれの席に案内され、その場で待つように言われ、そのまま待機していた。

しばらくすると、いかにも料理人と言った服装の人が、目の前に料理を持ってきてくれた。

見てみる限り、欧州地域の料理のようだ。

 

「うわぁぁ…豪華ですね……」

 

「だな…一体どこから食材費が出てるんだか……」

 

そんな会話をしつつ、俺たちは出された料理を見て、2人同時に「いただきます!」と言って、食べ始めた。

味もとても良く、こんな世界でどうやってこんな高そうな食材を集めれているのだろうと思うほどだった。

やがて2人とも昼食を終え、余韻に浸りながらも食堂を出て、自室へと戻ろうとしていた。

その時、突然後ろから聞き覚えのある声で呼ばれたと思い振り向いてみると、そこには、こちらに走ってくる、クルミの姿があった。

 

「タクさん!ミーシャちゃん!探したっすよ!」

 

「クルミ!?一体どうした?そんなに慌てて?」

 

「いやぁ…その…これを渡そうと思って」

 

そうクルミは言うと、ポケットから、2つの木でできた手作りの猫の姿のキーホルダーを渡してきた。

 

「…これは?」

 

「今回お世話になったお礼っす、一応チーム組んでた3人でお揃いにしてみたんすけど……」

 

そう言って、クルミはポケットからもうひとつ、同じキーホルダーを見せてきた。

 

「あはは…迷惑だったっすかね……?」

 

「いや、嬉しいよ、ありがとう」

 

そう言ってキーホルダーを受け取り、ミーシャへと2つのうちのひとつを渡し、早速キーホルダーを家の鍵につけてみることにした。

 

「これでよし…と、ってかこれ、手作りか?」

 

「えへへ…はい、手先だけは器用なんすよ、私」

 

「凄いな…俺には出来そうにないよ」

 

そう言っていると、クルミが年頃の女の子のように照れだしたので、気がついた時にはもう、クルミの頭を撫でてしまっていた。

その事にはっと気づき、手をどけて謝ると、クルミは小動物のようになりながら、

 

「なでなで…もう終わりっすか?」

 

と、少し悲しそうに、こちらを見てきた。

本来ならば大半の人がああ、ぶりっ子か…となりそうな場面だったが、この時の俺はそうも思わず、ただ尊みを感じ、顔を抑えながら、クルミの頭を撫でてやっていた。

どうやら俺はチョロいらしい。

そんなことをしていると、横からミーシャも撫でて欲しそうに擦り寄ってきたので、2人の少女の頭を尊みを感じながら撫でるヤバい成人男性になってしまっていた。

しばらくして、2人とも満足したのか離れていき、とてもいい笑顔で会話をし始めた。

 

「…こんな廊下じゃなんだし、部屋で話したらどうだ?」

 

「それもそうっすね、じゃあタクさんとこの部屋にお邪魔するっす」

 

そう言ってミーシャとクルミは楽しそうに会話しつつ、俺たちの部屋に来た。

最初は2人だけで会話していたが、やがて俺も巻き込まれ、3人で会話をすることになった。

最初は楽しそうに話していたが、やがて各々の過去の話になると、次第にクルミの表情が曇っていった。

 

「そんな顔をしてどうした?過去になにかあったのか?」

 

「まあ…特に何があった、って訳じゃないっすけど……いい思い出がなくて」

 

「……そうか、なら無理に話さなくていい、傭兵やってりゃ言いたくない事の一つや二つぐらいはあるさ」

 

「ありがとうございます…タクさん、でも、それについて悪いのは私なんすよ、だからこんな傭兵なんて職についてる訳で…」

 

「…そうか、何があったかは聞かないが、もし何かあったら頼ってくれよ、少なくともこの部屋にいる俺とミーシャは味方だからな」

 

「わかったっす、何かあったら頼らせてもらうっす」

 

そこで会話が途切れ、なんとも言えない空気が辺りを漂っていた。

しばらく沈黙が続き、その空気に耐えかねたのか、ミーシャが、

 

「そうだ!よければ何かゲームしませんか?」

 

と、提案してきた。

 

「俺はいいぞ、ちょうど暇だしな」

 

「私もやるっす!」

 

そう2人でその提案に乗り、俺たちはミーシャが持って来ていたトランプで遊ぶことになった。

しばらくトランプで遊んでいると、もう少しで晩御飯という時間になっていた。

そこで一旦トランプを切り上げ、俺たちは3人で食堂へと向かっていた。

食堂に近づくにつれ、いい匂いが漂い、俺たちの空腹感がピークへと達していた。

食堂に着くと、3人一緒の席に案内され、職員に「ご自由にどうぞ」と言われ、俺たちは席を立ち、料理の置かれたエリアへと向かった。

料理の置かれたエリアに着くなり、ミーシャが目を輝かせて、

 

「ご主人!こ、これ、好きなだけ取って食べていいんですか!?」

 

と、興奮気味に言ってきた。

 

「ああ、バイキングだからな、食べられる分好きに取って自分で食べるんだ」

 

「まあ珍しいっすよね、バイキング形式なんてホテルかそういう店でしか食べれないですし」

 

「確かにな、ミーシャにとって初めてのバイキングか、そう言えば」

 

そう言って目を輝かせながら料理を取っていく妻…ミーシャを見て、微笑ましくなりながら、俺も料理を取っていく事にした。

それにしても、海鮮料理から肉料理、野菜に至るまで色々な料理があり、ここまでの材料をどうやって集めたのかが本当に気になる。

恐らくは牛肉に似た肉質のモンスターとかその辺の肉とかも使っているのだろうが、それにしても多い方だ。

一体このPMCはどこへ向かっているのだろう。

そんな事を思いながら料理を取り終え、席へ戻ると、ミーシャとクルミがとても幸せそうに、料理を頬張っていた。

 

「ああ…こんな美味しい料理が食べ放題なんて幸せです……」

 

「本当に美味しいっすよね!……まあ原材料わかんないっすけど」

 

「正確には知りたくないまであるよな、原材料」

 

そんな会話をしつつ料理を食べて幸せを感じ、そこに酒も入って気持ちよくなりつつ、俺たちはデザートを食べ、ゆっくりしていた。

 

「ふう…食った食った!久々にこんなに食べた気がするな」

 

「そうですねぇ…お肉にお魚…美味しかったです……♪」

 

「本当に美味しかったっすね、また食べたいっす…」

 

そう会話した後、俺たちは各々の部屋に戻り、俺とミーシャは部屋に備えつけられた露天風呂に入っていた。

もはや2人で入ることに違和感を感じれなくなっている自分がいるのだが、この際気にしたら負けだと思う。

そんな事を思いながら、俺たちは月を見上げながら湯船につかり、身を寄せあっていた。

 

「はぁ…明日で終わりですね、この合宿も」

 

「だな…長いようで短かったな」

 

「ですね、楽しかったです」

 

そんな会話をしながら、俺たちはお互いの顔を見合わせ、軽く微笑みあった。

そして軽くキスを交し、俺たちは最後までこの合宿を堪能していた。




はい。(はいじゃないが)
いかがでしょうか?
設定としては、普通のリアルに流通してる食材とかは魚=肉<野菜ぐらいで取りにくくなってます。
モンスターみたいな生き物が住んでますし、そいつらの肉(魚肉)などが代わりに多く流通してる、って感じですね。
今回の話はそれでも1つのPMCが無人島+宿泊施設を管理してる上に参加者全員分の食事を用意できてるのがやべー、なんでや?って感じの話だと思っていただければわかりやすいと思います()
よければモンスターを自作してコメントにでも投下してもらえれば某ジャンプの美食家マンガみたいに取り入れたらなと思ってます!

ではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話

大変長らくお待たせしました、第7話です!
もう話のネタが無いからネタに走ったり、もうプロットなんていい!妄想をたれ流せ!のスタイルで書き上げました……w
アンケートにもう少しラブコメの波動を、という意見がありましたので、可能な限り波動を放てた…のではないかな?と思ってます(個人的な意見ですが)

では今回も、ごゆっくり見ていってください!


ある日、私は1人、ご主人の仕事が終わるまで、家でゆっくり、テレビを見ていた。

最初はニュースや天気予報を見ていたが、そのうち飽きてしまい、他になにか面白いものがないかと、チャンネルを変えていた。

そうしているとやがて、料理番組が始まり、暇なので見ることにした。

どうやらビール好きな自称一般男性が声真似をしながらビールに合う料理を作って優勝?をするそうだ。

 

確かご主人もビールは好きだし、もしかしたらちょうどいいかもしれない、そう思った私は書けるものを取ってきて、未だに少し慣れない文字でメモを取ることにした。

 

『色んな方法があると思うけど、普通のフライパンと普通の火力でパラパラに仕上げたかったら卵かけご飯状態のものを潜 影 蛇 手 するのがオススメヨ……』

 

「ほうほう……そして調味料は人それぞれで適量……と……よし!今日の晩御飯はこれにしよっと!」

 

そう言って、私は炊飯器でご飯を炊き始めると、調味料と食材が揃っているかどうか、鼻歌を歌いながら冷蔵庫を漁っていた。

しかし、番組であったような分厚いチャーシューや、ニンニクなどがなかったので、がっくりしながらも、その場にあったハムやニンニクチューブなどで代用することにした。

 

やがてお米も炊きあがり、時間も夜になったので、そろそろ帰ってくると思い、具材と調味料を仕込み始め、ご主人の帰りを待っていた。

仕込み終わり居間でゆっくりしていると、家の電話が鳴った。

 

「もしもし?」

 

『もしもし、ミーシャか?俺だ、タクヤだ』

 

そう受話器越しにご主人の声が聞こえ、嬉しくなりながら、

 

「どうしました?今日のご飯は期待してくださいね!美味しいもの食べさせてあげます!」

 

と言うと、ご主人が申し訳なさそうに、

 

『あー……すまん、今日帰るの遅くなりそうだ、訓練後の片付けが思ったより時間かかってな…まだ空薬莢の片付けも終わってないんだ、多分…帰る頃には夜中になってると思うから、先に食べて置いておいてくれ』

 

「うぅ……わかりました、先に食べてますね……」

 

『ごめんな、早めに帰れるように努力するよ…おっと、呼ばれたから戻る、じゃあな』

 

そう言って電話が切られ、ツー、ツーと言う音だけが聞こえてきた。

 

「寂しいけど……ご主人も忙しいもんね、しょうがない……しょうがない………」

 

そう自分に言い聞かせながら、私は準備していた食材たちを使って、チャーハンを作り始めた。

こういう時に限っていい感じに作れ、嬉しいながらも少し複雑な気持ちになりながら、ご主人の分をラップし、冷蔵庫へと保管し、私は私の分を食べる事にした。

 

「ん、美味しい…ご主人喜んでくれるかなぁ……」

 

そう言いながら食べ続け、やがて食べ終わると、明日の天気予報などをぼーっと見て、帰ってくるのを待っていた。

しかし、23時を過ぎても帰って来ず、仕方ないので1人でお風呂に入ることにした。

お風呂のリモコンを押してお風呂を沸かし、お風呂が湧くと、脱衣場で服を脱いで1人寂しくお風呂に入った。

 

「ネコの姿だった頃に比べて、お風呂好きになってるなぁ私……ふわぁぁぁ……眠たくなってきちゃった」

 

そう寂しさを紛らわすために独り言を言いながら、体と髪の毛を洗って、また湯船でゆっくりとしていた。

やがて湯船に浸かったまま、湯船で寝てしまい、それに気づいてバッと飛び起きた時には、私はベッドの上で眠っていた。

しばらくあれ?なんで?と困惑していると、隣でベッドにもたれかかりながら私の作ったチャーハンを美味しそうに食べてくれている、ご主人と目が合った。

 

「…悪い、起こしちまったか」

 

「…いえ、お風呂で寝てたことを思い出して飛び起きちゃっただけです」

 

「なるほどな、帰ってきたらどこにも居ないからビックリしたぞ」

 

そう言ってわしゃわしゃとご主人は私の頭を撫でてきてくれた。

それが嬉しくて思わずご主人に擦り寄っていくと、ご主人も食器を置いて、それに応えてくれた。

 

「えへへ…やっぱり、撫でられるの大好きです……」

 

「そうか、そう言われると撫でがいがあるってもんだ」

 

そう言うご主人の隣に行き、ご主人にもたれかかっていると、ご主人は私の作ったチャーハンを平らげてくれていた。

どうだったのか聞こうにもなぜか言い出せずにいると、ご主人が笑顔を見せて、

 

「美味しかったぞ、流石ミーシャだ」

 

と言って、また私の頭を撫でてくれた。

 

それが嬉しくて、私はご主人に抱きつき、すりすりと甘えていると、ご主人も私の事を抱き返してくれた。

やがて、また思い出したように眠気が私を襲い、私はご主人と抱き合いながら、そのまま眠りについた。

 

 

次の日、私はいつの間にか朝になっていたことに驚き、慌てて飛び起きる。

すると、コーヒーを片手に朝食を食べながら苦笑いを向けてきている、ご主人と目が合った。

 

「おはようミーシャ、よく眠れたか?」

 

「おはようございます……はい、お陰様で」

 

そう言葉を交わし、なんだか気恥ずかしくなり、沈黙が包む。

そして私が飛び起きた理由を思い出し、慌ててご主人の出勤の準備を始めようとした時、ご主人に腕を掴まれ、頭の上に疑問符を浮かべながら、ご主人の方向へと目を向けた。

 

「ミーシャ、落ち着いてくれ、今日は休みだ」

 

そう言われ、カレンダーを見てみると、確かにそこには、赤いペンで休み!と書かれていた。

それを見て恥ずかしくなっていると、ご主人が微笑んで、

 

「今日は少し遠出しようか、クルミがこの夏の時期にいい所を紹介してくれてさ」

 

と、言ってきてくれた。

 

「本当ですか!行きたいです!」

 

「了解、じゃあご飯食べたら行こうか」

 

そうご主人は言うと、私の分のパンを焼き、私に渡してくれた。

それをありがたく受けとり、食べていると、ご主人はスマホを使い、地図を見て道を調べてくれていた。

 

やがて私も食べ終わり、出かける準備を終えてご主人の車へと乗り込み、私たちは出発した。

 

~~~

~~

 

『目的地周辺です、音声案内を終了します』

 

そうナビが言い、俺は近くの駐車場へと車を停め、今日向かう目的地へと歩き出した。

ミーシャが嬉しそうに俺の腕に抱きつき、擦り寄りながら隣を歩いているのを見るに、今日誘って出かけたのは成功だと言えるだろう。

昨日すぐに帰ってやれなかったので、帰る前に社長に頼んで有給を取らせてもらって正解だった。

ちょうどミーシャも寝たままだったので、こっそり休みとカレンダーに書いたが、バレていないようで一安心だ。

 

そんなことはさておき、俺たちは駐車場からしばらく歩き、ある所へとたどり着いた。

ある所というのは、俺たちの住む場所から2時間ほど行ったところにある、広々とした砂浜だ。

しかもかなり綺麗な割には、人もいなく、完璧に貸切状態となっていた。

 

「わぁ……!これってもしかして、海ですか?!」

 

「ああ、クルミに教えてもらったんだ、綺麗だしあまり人がいないからいいんじゃないか、って」

 

「へぇ……でも確かに、ここいいですね!」

 

そうミーシャが言ってくれたので、俺も嬉しくなりながら、ミーシャと砂浜を歩いていた。

波打ち際で波から逃げたりして遊んだり、ミーシャに水切りを教えたりしてしばらく遊んでいた。

それから遊び疲れた俺たちは、砂浜に座り、互いに身を寄せあって海を眺めていた。

やがて夕日が海へと沈み始め、ただ波の音が聞こえてくる、欲に言う『いいムード』らしきものへと変わってきた。

そこで、何か一つでもいい言葉をかけれないかと考えていると、ミーシャに、

 

「ご主人、今日って本当はお仕事だったんですよね?」

 

と、言われた。

 

「……バレちまったか、まあ一応有給は取ってるから大丈夫だ、安心してくれ」

 

「そこはご主人の事だから大丈夫だろうな、って思ってましたけど、もしかして、昨日、すぐに帰ってこれなかったから…とかですか?」

 

やはり他人の気持ちを察するのが得意なんだな、そう思い、バレたことに少し恥ずかしくなりつつ、

 

「…そうだよ、寂しい思いをさせたから今日くらいは、って思ってな」

 

そう言うと、ミーシャは嬉しそうにふふっと笑い、俺の顔を見つめてきた。

 

「どうした?俺の顔に何か…」

 

そこまで言った時、唐突にミーシャが、その柔らかいくちびるで、俺の口を塞いできた。

そこからお互いに抱きしめ合い、ディープなキスへと発展した。

 

「…えへへ、ご主人、大好きです」

 

「俺もだよ、ミーシャ」

 

そう言い、俺たちは照れ合いながらも、腕を組み合って車へと戻り、自宅へと戻った。




某一般男性を潜 影 蛇 手したわね……
あのシリーズ見てるとお腹がすきすぎて炊飯器になったわ……… 
まあこれはナザールボンジュウ(トルコのお守り)なんですけどね〜www

………はい。(はいじゃないが)
とまあ、こんなテンションで序盤は書いてました。
草を生やしてくれてたら幸いです()

ではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話

この小説ではお久しぶりです。
大変長らくお待たせしました…
なかなかネタが思いつかずで……
やっと思いついたので書けました。
最近いいネタが思いつかない上に思いついても投稿してない小説の方だったりで……

とまあそういうのは置いておいて、今回もごゆっくり、見ていってください。


ある日の休日、俺とミーシャの2人で、少し出かけていた。

そしてその出先で楽しみ、帰路についているときだった。

 

「……あ。ミーシャ、ちょっとガンショップ寄っていいか?この近くに行きつけの店があるんだ」

 

「いいですよ、どうしたんですか?」

 

「いや、すぐに必要…って訳じゃないんだが、買いだめしてあった銃のメンテナンス用のガンクリーナーがもうすぐで無くなりそうでな、ちょうど近いし買いに行きたいんだ」

 

「了解です、ご主人に任せますよ」

 

「助かる」

 

そう言い、俺は帰路から少し外れ、行きつけのガンショップへと行くことにした。

少し街の外れへ行くと、半ば荒野のような所にある『My Dear Son of a Bit○h(親愛なるクソッタレ野郎)』という名の店へと到着する。

駐車場に車を停め、ミーシャにすぐ戻ると伝えて車で待ってもらい、俺は店内へと入っていった。

この店はガンショップ兼射撃場でもあるので、わざわざ店の方へと来ると銃声が激しいのだ。

 

店内に入り、慣れた動きで欲しいものを見つけて手に取り、カウンターへと向かう。

すると、そこにはいつも通りのしかめっ面をした、店主のオッサンが立っていた。

商品を手渡して精算をしていると、いつも通りオッサンとの雑談が始まった。

 

「タク、最近どうだ?傭兵家業は上手くいってんのか?」

 

「お陰様で、今は手に職をつけてPMCで働いてるよ」

 

「ほう?あの独りでおっかねぇ顔してただ黙々と雇われをしてたお前が?一体何があった?」

 

「色々とな、オッサンの方はどうだ?」

 

「相も変わらず傭兵共に仕事を紹介したり射撃場を使うクソッタレのガンマニア共や客を相手に商売してるよ、あの頃から変わらずな」

 

「そりゃあ良かった、未だにお客のことをクソッタレって言えてるだけ衰えちゃいねぇな」

 

「お前の方こそ、こんなちっちゃかったお前がまだ立派に傭兵やってるとはな、すぐに死ぬと思ってたよ」

 

そんな会話をしていると、店のドアが開き、見覚えのある茶色い髪のショートカットの少女が入ってきた。

 

「あ!タクさん!どもっす!」

 

「お?なんだクルミか、お前もここ使ってたんだな」

 

「はいっす、傭兵やる前からお世話になってるっす」

 

そんな会話をしていると、店主のオッサンが物珍しいものを見るような顔をして、

 

「お前…女と喋れるようになったんだな」

 

と、言ってきた。

 

「コイツとはPMCに入った時の同期でね、正直コイツとあと1人2人くらいしかまともに会話出来る女なんていねぇよ」

 

「そうか…にしてもなんだ、お前ら同期だったのか」

 

「はいっす、タクさんは本当にいい人っすよ!」

 

「まあタクは根は良い奴だからな……クソド陰キャの一人狼(笑)だが」

 

「一言余計だオッサン」

 

その会話でクルミが笑い、場が和みつつある時、クルミがこんな質問をしてきた。

 

「タクさんとおやっさんって、何年くらいの知り合いなんすか?かなりの知り合いそうですけど」

 

「そうだなぁ…少なくともタクがまだガキンチョの頃から知ってるな、あの時は死んだ魚見てぇな目をしてるガキだと思ったもんだ」

 

「あの時は両親も死んじまって荒れてたんだよ、仕方ねぇだろ」

 

「前会った時まであの調子だったと思うが?いつまで荒れてやがんだお前はよ…まあ話を戻すが、その時に銃の撃ち方を教えてくれって言われてな、教えてやってたら今度は俺を傭兵にしてくれなんて言い出しやがったんだ、こんなちっせぇガキがだぞ」

 

そうオッサンは言うと、タバコを1本取りだして火をつけて吸い始め、一息ついてからまた話し出した。

 

「んで仕方ねぇから傭兵学校に放り込んでやった、どうせ泣きわめいてすぐに辞めるだろうと思っていたが…結果はわかるだろ?割と高ぇ成績を収めて傭兵資格を取得して帰ってきやがった」

 

「へぇ…タクさんもおやっさんに傭兵学校に推薦してもらったんすね、初めて知りましたよ」

 

「ああそうか、嬢ちゃんも俺が推薦したんだっけか」

 

「そうですよ!あの頃の私は割と黒歴史ですけど……」

 

「そういやそうだったな、傭兵学校でシゴかれて丸くはなったが…あの頃はただの頭のネジがイカれたバカみてぇだったな」

 

「ほう?それは気になるな、どんなだったんだ?」

 

そう、やめてー!言わないでー!と悲痛な叫びを上げるクルミを無視してオッサンに尋ねると、オッサンは愉悦に浸るような表情を浮かべながら、

 

「あの時の嬢ちゃんはな…殺すことや危険なことを楽しむ命知らずのソシオパス…いやサイコパスか?何にせよ頭のネジがイカれてやがったんだよ、俺の店に来た理由もアレだ、射撃場で合法的な生きた的を撃たせろって言いに来てな、流石に断ったら今度は生き物を殺せる仕事を紹介しろと来た」

 

「へぇ…随分とブッ飛んでるな」

 

「だろう?まあその時はまだ傭兵資格を持ってなかったから、そんなに殺しの仕事がしてぇなら傭兵になったらどうだって言って傭兵学校を教えてやったんだ、こん時はタクの件もあったから推薦枠みてぇなちょっとした優遇枠をくれるってなってな、流石に笑いが止まらなかった」

 

「へぇ…そんなにその学校に信頼されるようなことしてたのか?」

 

「なんもしちゃいねぇよ、ただ俺はお前や嬢ちゃんの時みてぇにうちの店で銃の取り扱いスキル認定ライセンスを発行したバカ共の中の傭兵になりたいロクデナシどもにその学校を教えただけだ。ただそいつらが優秀な成績をなんでか知らねぇが収めてきやかっただけさ」

 

「へぇ…それで私入学してから割といい対応受けてたんすね…タクさんのお陰だったとは驚きっす…」

 

「俺はなんもしてねぇよ、ただそのスキル認定ライセンスを発行したオッサンの見る目があっただけだろ」

 

そんな会話をしていると、オッサンがまた物珍しいものを見るような顔をして、

 

「お前…女と喋れるようになるだけじゃなくて性格もまん丸になりやがったか?一体前に来た時から何があった?あれからまだ半年ちょっとしか経ってねぇと思うが」

 

「何って言われてもな…大したことは起きてねぇよ」

 

「本当かぁ?……ってん?おいお前、左手につけてるそれって……」

 

そう俺の左手を見てオッサンは言うと、ニヤリと笑ってから、

 

「なるほど、女か……そりゃあ喋れるようにもなるし丸くなるわな」

 

「うっせぇ、俺は何も変わっちゃいねぇよ」

 

「自覚してねぇだけだよバカ、それはそうと、今度紹介してくれよ、お前の嫁さん」

 

「……はいはい、また今度な、じゃ、俺はここで、これ以上待たせちゃ悪いからな」

 

そう行って商品を受け取って店を出て車に戻ると、ミーシャがほっぺたを丸く膨らませて怒っていた。

その日は帰りにアイスを買って帰るという事で許して貰えたが、怒ったミーシャも実にかわい……いや、なんでもない。

 

それに、オッサンは丸くなったと言ってきたが、本当に俺は丸くなったのだろうか。

そもそも尖っていた自覚もない俺には到底理解できそうにないが、長年付き合いのあるオッサンがああ言ったならそうなのだろう。

 

まあどうだっていい。

丸くなってようがなってなかろうが、俺には俺を好きでいてくれる人がいるのだ。

その人に優しく接してやれるならば、それでいい。

このまま何事もなく過ごしていこう、そう思いながら、俺たちは家に帰り、その日を楽しく終えた。




いかがでしょうか?
最後の方、どう見てもフラグがたってる気がしてなりませんね()
まあとりあえずは考えてるネタはあるので後はこれをどう書いていくか…ワンチャンボツになる可能性があるのが怖いですね…
それに過去の話も書いた方がいい…のかもしれなくなってきましたしね…

とまあ後書きはこの程度にして、また次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話

お久しぶりです。
ネタはあった、でもどうそのネタのシーンにするか悩んでました(言い訳)

アンケートで入れて頂いた票をの結果、できるだけハチャメチャ感とラブコメ感を出そうと努力してます。
非リアなのでほぼほぼ妄想ですが!()

では今回も、ごゆっくり見ていってください!


「ご主人、私に射撃を教えてください」

 

そう、とある日の晩御飯中に、ミーシャが真面目な顔で言ってきた。

俺はすぐに断ったが、ミーシャはそれでも折れることなく、俺に頼み続けてきた。

 

いきなりどうして?

そう思ったが、俺には一つだけ心当たりがあった。

 

 

遡ること数日前。

俺とミーシャは、家でのんびりと、テレビを見ながら晩御飯を食べていた。

 

そこまではいつも通りの日常と変わらなかったのだが、バラエティ番組を見ていると急にテレビがニュース番組に切り替わり、速報が入った。

 

『第23地区にてテロが発生、テロリストは第25地区へと逃走を図った模様です。対象地区の方は十分に警戒してください。続報が入り次第お伝えします』

 

と、ニュースキャスターの女性が言った。

第25地区は俺の家がある場所だ。

ふとミーシャを見てみると、それを聞いたミーシャの顔から、恐怖でなのか血の気が引いてきていた。

俺はそんなミーシャを見て、そっと抱きしめて安心させてやり、両手を握って微笑みかけた。

 

「大丈夫、なんかあったら俺が護ってやるから、ミーシャは安心しててくれ」

 

そう言うと、ミーシャは泣きそうになりながらも、ひとつ頷いた。

それを確認した俺は、玄関のドアの鍵が閉まっていることを確認してから、ケースから愛銃を取り出し、弾が装填されたいくつかのマガジンを手に、ミーシャを護る体制を整えた。

 

それからしばらく後にテロリストが全員射殺されたとニュースが入り、その日は何事もなく終えることができた。

 

 

もしかしたら、ミーシャはその日のことを思い出し、決心がついたのかもしれない。

しかし、銃を持つという事は簡単に殺しができるということだ。

流石にミーシャに誰かを殺させるようなことをさせたくない。

しかし、何度断わっても言ってくるという事は、相当な覚悟があるということだろう。

今も真剣な顔で俺の返事を待っているあたり、断っても意味無さそうだ。

 

「……わかった、でも理由だけ教えてくれるか?」

 

そう言うと、ミーシャは、

 

「…もし、ご主人に何かあった時に、私が護れるようになりたいんです。私は猫だった頃とは違って、今は鋭い爪も牙もありません。だからこそ、射撃とかができるようになって、ご主人を護れる力が欲しいんです」

 

と、真剣な顔で言ってきた。

 

「…わかった、なら明日ハンドガンを買いに行こう、ちょうど休みだし都合がいい。それにハンドガンなら免許も要らないしな」

 

そう言うと、ミーシャの顔に笑顔が戻り、

 

「ありがとうございます、ご主人♪大好きです!」

 

と、言ってきてくれた。

俺はそれに笑顔で返し、ミーシャの頭を撫でてやった。

 

 

次の日。

俺たちは車に乗り、『My Dear Son of a Bi○ch』へと向かった。

駐車場に車を停め、店内に入ると、いつものように店主のオッサンが、カウンターでタバコを吸いながら新聞を読んでいた。

 

「ようオッサン、また来てやったぞ」

 

「ん?ああタクか今日はどうし……」

 

オッサンはそこまで言うと、ミーシャを見て固まった。

一応帽子でネコミミは隠しているので、ネコミミについて驚いているわけではない…はずなのだが。

 

「こりゃ驚いた、この嬢ちゃんがお前の女か…どうやって捕まえた?」

 

「まあちょっと…な、ところでオッサン、9mm口径のハンドガン、なんかいいのねぇか?」

 

「9mmか…コイツなんてどうだ?」

 

そう言ってオッサンが後ろのガンラックから、1つの銃をカウンターに置いた。

形は大きくストックもある。

そして黒くて固くて長くてぶっとい棒状のアレが下面についている。

そう、これはまさしく……

 

「ビゾンじゃねーか!SMGだろこれ!」

 

「手で握って持つから実質ハンドガンだ」

 

「それ何にでも当てはまるじゃねぇか!他にはねぇのかよ!」

 

「仕方ねぇなぁ…じゃあコイツでどうだ」

 

そうオッサンは言いながら、今度はしっかりとしたハンドガンの見た目をした銃を出してきた。

だが今度はヘリカルマガジンが上部についている。

どう見てもハンドガンではない。

 

「これキャリコじゃねぇか!ヘリカルマガジン大好きか!」

 

「大容量でいいじゃねえか!弾幕はパワーだぞ!?」

 

「もっと…もっとマトモなのはねぇのか?!」

 

「うるっせぇな!じゃあコイツでどうだ!」

 

そうジジイは言うと、1つのプラモデルの箱のようなものを出してきた。

表にはハンドガンの絵が描いてある。

 

「おい、俺は実銃を買いに来てんだ、プラモデルじゃねぇ」

 

「何言ってんだ、コイツも実銃だ」

 

「使用弾薬は?」

 

「13mmロケット弾だ」

 

「ジャイロジェットピストルとか自衛に向いてるどころか産廃じゃねぇか!普通のを出せ普通のを!」

 

「仕方ねぇだろ!?こんな場所まで自衛火器買いに来るもの好きなんていねぇんだ!来るのは精々免許持った傭兵かガンマニアなんだよ!」

 

「ああ…なるほどね………なら他に自衛火器を売ってるとこはねぇのか?」

 

そう尋ねると、オッサンははぁ…と1つため息をついてから、

 

「俺の姪が第27地区で自衛火器を売ってる店で働いてる、そっちに行ってくれ」

 

そう言い、その店の位置を書いた紙を渡してきた。

 

「へぇ…アンタに働ける年齢の姪なんていたんだな」

 

「そりゃいるさ、歳も歳だしな」

 

「それもそうか……さて、じゃあこの店行ってくるよ」

 

「おう、面倒なのに巻き込まれんなよ」

 

そうオッサンが言ってきたのに手を上げて答え、俺たちは店を出た。

 

「さて…ミーシャ、一回帰っていいか?」

 

「え?なんでですか?このまま行っちゃいましょうよ!」

 

「あー…そうしたいのは山々なんだが…第27地区はちょっとアレでな」

 

「アレ…と言うと?」

 

「何が出てくるかわかんねぇんだ、あそこ。森が近いから化け物が出てくる時もあるし、その森を根城にしてるテロリストや山賊がいたりしてな、あそこに行くなら自衛火器が必須なんだ」

 

そう俺が言うと、なんとも言えないと言った苦笑いをミーシャは浮かべていた。

そりゃそうだろう。

自分たちが住んでる所は廃墟が多いゴーストタウンだし、この辺にはまともな場所がないのかと思うに決まってるし、俺だってそう思う。

だがまあ、まだ文明的な生活と技術の発展はあるにしても、昔に比べて人口も減ったし、終末世界に近づいてきているのだ。

核戦争が起きてすぐとかじゃないだけマシだろう。

 

まあそんな事はいい。

ミーシャにもう一度帰っていいかと聞くと承諾してくれたので、俺たちは1度家に帰り、自衛火器を装備する事にした。

 

家に着き、いつもの仕事道具からホルスターごと、愛銃のHK45を外して装備する。

そしてマガジンを銃に差し込むと、今度こそ目的地へと向かって行くことにした。

 

 

目的地に着き、駐車場に車を停めると、そこはショッピングモールのような雰囲気の場所で、いくつかの店が身を寄せあっている場所だった。

地図を見て、貰った紙に書いてある通りの店名の場所へと向かうと、そこには、紙に書かれた通りの、『キャッツ&メインズ』という、ミリタリーショップがあった。

 

入ってみると、中は普通のミリタリーショップと同じだが、日用品なども取り揃えられており、なかなかに使い勝手が良さそうな雰囲気だ。

カウンターでは、店主であろうネコミミヘアの女の子が、テレビを見て笑っている。

見た目はとても若いが、こんな所で店を構えているとは立派なものと言えるだろう。

女の子は俺たちに気づくと、

 

「…ん?ああ、お客さんか、いらっしゃい、ゆっくり見ていってネ」

 

そうどこか鼻にかかったような声で、女の子は八重歯を見せてにっこりと微笑んできた。

それに軽く笑顔で返し、俺たちは最初の目的通り、ハンドガンが置いてあるところを見始めた。

 

「へえぇ…色々あるんですね、銃って」

 

「ああ、使う弾の種類もたくさんある…まあ初めて撃つ上にミーシャは女の子だから9mmがいい…と思うんだが」

 

「へぇ……それだとどんな感じなんですか?」

 

「威力はあまりないがその分反動も少ない、護身の為ならちょうどいい弾だ…まあ、ボディーアーマーを着られてたら防がれるんだけどな」

 

そんなことを言いつつ、撃針の抜かれた無稼働のテスト品を手に取る。

そして構えてみて、グリップ感を確認してから、ミーシャへとグリップを向けた。

 

「ほら、持ってみな」

 

そう言って手渡すと、ミーシャはぎこちない動きで、それを受け取って、さっき俺が持っていたように真似して構えてみていた。

 

「よく見てろ、こうやって持つんだ」

 

そう言って、俺は別のテスト品を手に取り、握り方を見せると、ミーシャはそれを見様見真似で真似してきた。

それを見て微笑ましくなりながら、俺の持ってたテスト品を戻し、ミーシャに合いそうな銃を探していた。

 

結局、スプリングフィールドアーモリーのXD-Sにすることにし、8発入る延長マガジンを追加で買うことにして、9mmパラベラム弾を数箱分持って、レジへと向かった。

会計をしていると、店員の女の子が唐突に、

 

「そうだオニーサン、ボクのおじちゃんの知り合いなんだっテ?」

 

「へ?ああ、そういやあのオッサンの姪っ子だっけか、アンタ」

 

「そそ、『アホみてぇなやつとその嫁が行くと思うから良くしてやってくれ』って、オニーサンたちが来る前に連絡があってネ」

 

「へぇ…それでよく俺らってわかったな」

 

「片方は白髪で尻尾が生えてるって言ってたからね、間違いようがないヨ」

 

「「え?」」

 

そう言い、ミーシャと2人でミーシャの尻尾を見てみると、そこには、隠れてすらいないミーシャの尻尾が、ゆらゆらと揺れていた。

 

「え、あ、あっ……」

 

「………見なかったことにしてくれ」

 

そう赤面するミーシャを隠しながら俺が言うと、店主の女の子は、

 

「にししっ、わかってるヨ。最近存在が公表されたとはいえまだ珍しい人種だからネ、厄介事に巻き込まれるのはボクもゴメンさ」

 

と言い、テレビの方へと向いてテレビを見始めた。

じゃあ俺たちもそろそろ帰るか、そう思って店から出ようとすると、店主の女の子に呼び止められた。

 

「ああそうだ、オニーサン、護身に持ってる銃の種類は?」

 

「え?HK45だが…どうかしたか?」

 

「いや、それじゃあ.45ACPか…ってネ、ちょっと気になっただけサ」

 

「…そうか、じゃあまた」

 

そう言って店から出て、さて帰るかもう少しこのショッピングモールを見て回るかと悩み始めた時だった。

唐突に銃声が鳴り響き、咄嗟にミーシャを押さえ込みながら身をかがめる。

そして音がした方向を壁にして、俺はホルスターからHK45を抜き、ホルスターに照門を引っかけてコッキングし、構える。

そしてクイックピークで音のした方向を覗き見ると、アサルトライフルを乱射している、バラクラバを被った人間が数人いた。

可能ならばここから気付かれずに逃げた方がいいのだが、不幸なことに出入口はテロリストの方向へと行かねばなく、身体を晒すことは避けれなくなっていた。

唐突に警報音が鳴り響いたので腕時計を見ると、時刻は14:23分、このアラートでこの地区を統括しているPMCなどの武装組織がくるとしても10分はかかるだろう。

 

もう一度クイックピークして見ると、テロリストは5人ほどで、それぞれがAK-47と思わしき銃を持っていた。

銃撃して倒してもいいが、人数が多い上に相手はアサルトライフル、そしてステルスキルでこっそり数を減らそうにも発砲音がするので不可能だ。

今も大音量の警報音が鳴り響いているので、この音に隠れてサイレンサーで誤魔化せば何とかなるかもしれないが、少なくとも50m以上は離れ、そもそもサイレンサーを常備している訳もない。

今ある弾も今装填しているマガジン分だけだ。

 

とりあえずこっちに来ていないことを願いつつ、3度目のクイックピークで様子を見る。

すると、徐々にこちらへと歩いてきているのが確認できた。

 

どうする。

どうすればいい。

 

これがミーシャにも出会わず、俺一人だけのあの頃だったなら、迷わずに応戦していただろう。

だが今はミーシャがいる。

俺が死ぬ事で悲しませたくはないし、危険な目に合わせたくもない。

 

早く判断しないとここまで奴らがやってくる。

銃撃して足止めしようにも、弾数もなく、俺一人だけでは足止めにもならないだろう。

ならば1人づつこっそりと殺す必要がある。

だがさっきも言ったように弾もサイレンサーも…

 

そう悩んでいると、先程まで恐怖に怯えているだけだったミーシャが、俺の服を引っ張ってきた。

 

「?どうしたミーシャ?」

 

「あそこ、さっきのお店の人がなにかやってます!」

 

そう言われ、さっきの店を見てみると、口元で人差し指を指して静かにするようにとジェスチャーしてから、地面の上を、いくつかのマガジンと1つのサイレンサーをこちらへと転がしてきた。

そして俺の方を指さしてから、手を銃のようにして、撃つようなモーションをして来た。

つまりは、俺に、『これをやるから撃て』と言いたいのだろう。

 

未だに警報音が鳴り響く中、俺は決心し、渡されたサイレンサーを銃に取り付ける事にした。

渡されたサイレンサーも使用弾薬、マガジンも俺の持っている銃に使えるものだ。

何故わかったのか?と思ったが、退店時に俺の銃を聞いてきたのはそういう事だったのだろう。

射撃を開始する前にしっかりと装備を確認し、再度クイックピークをする。

位置は把握した。

後は狙いを定めて撃つだけだ。

 

俺は壁から敵に向かいリーンの動きで身体を出し、1人目掛けてダブルタップをし、防具の無い頭へと銃弾を放つ。

そしてすぐに引っ込み、クイックピークで確認。

こちらの存在に気づかないマヌケに向かい、再度リーンしてダブルタップ。

これで2人は殺った。

再度確認しようとするが、流石にバレたらしく、俺のいる壁に向かって弾の嵐が飛んできた。

 

「クソが、気づかなかったらすぐに仲間の元に行けたのによ」

 

そう悪態をつくが、弾の嵐は止まらず、ずっとコンクリートの壁を抉り続けていた。

やがて統率が取れていないのか、リロードタイムが奴らに訪れ、その隙を狙ってリーン、そしてダブルタップでもう1人をあの世に送る。

即座に顔を引っ込めたが、少し奴らのリロードが早かったらしく、顔を弾が掠めていき、頬から血が流れてきているのがわかった。

 

そしてまた弾の嵐が訪れ、大音量の警報音の中に銃声が鳴り響く。

しかも今度は接近してきている足音が微かに聞こえるというオマケ付きだ。

流石に2人に近づかれたら対応のしようがない。

万事休すかと思っていると、「コンタクト!」と威勢のいい声が聞こえたと思うと、AKではない銃声が聞こえ、それと同時に弾の嵐は収まった。

 

クイックピークで確認してみると、完全装備の男が数人、警戒しながらこちらへと向かってきていた。

恐らくこの地区を管轄している組織だろう。

やがて男たちは俺たちの近くまで来ると、倒れているテロリストの死亡確認を行い、俺たちの隠れる壁までやって来た。

 

「2名発見!それ以外には敵影なし!」

 

「オールクリア!周囲に敵影なし!」

 

そう男たちは言いながら、銃を持つ俺に向かって銃を向け、

 

「銃を地面に置いてくれ、民間人なのは分かってる」

 

と言ってきた。

逆らっても何もいいことは無いのは目に見えて明らかなので言われるがまま銃を地面に起き、両手を上げる。

それを見た男たちは、俺の銃を拾い上げ、マガジン、そしてチャンバー内の弾を抜くと、

 

「よく時間を稼いでくれた、感謝する。だが…いささか弾を持ち運びすぎだな、マガジンが多すぎる」

 

「俺が持ってたのは銃に入れてたマガジンだけだ、サイレンサーとほかのマガジンはそこの店の店主が渡してきた」

 

「…なるほどな、店主と一緒に掴んだ勝利って訳だ」

 

そう男は俺に銃を渡しながら言うと、

 

「後始末はこっちの仕事だ、アンタらは帰りな」

 

と言って去っていった。

 

その後俺は結局使わなかったマガジンを手に店へと戻ると、ニヤニヤ顔の店主がそこにはいた。

 

「オニーサン、大活躍だったネ」

 

「お陰様でな、サイレンサーのおかげで2人は簡単に殺せたし、予備のマガジンがあるから気軽に撃てた」

 

「そうかそうか、じゃあお礼をしてもらわないとネ…?」

 

そう店主の女の子はニヤニヤしながら言うと、2つの猫をかたどった、ネックレスとドッグタグのセットを見せてきた。

 

「お2人さんにお似合いだと思うんだけど…ネ?」

 

「はぁ…わかった、さっきのサイレンサーと一緒に買うよ、助かったのは事実だ」

 

「毎度あり♪」

 

そう店主はいい笑顔で言うと、2枚の紙を出してきた。

 

「ほら、ドッグタグもついてるだロ?だからそれに刻印する文字を決めて欲しいんダ」

 

「ああ、なるほどな…」

 

そう言い、俺は無難にドッグタグに個人の情報を刻印してもらうようにその紙に書く。

そして、最後に『T&M 4EAE』と刻印して貰うように書いた。

 

「…この最後の文字、何かの略かナ?」

 

「さあな、なんだっていいだろ」

 

そう言い、俺はそれをはぐらかす。

言うのは流石に恥ずかしいし、バカみたいだ。

店主は何となくわかっているようだが、それ以上言わず、書かれた通りの刻印をして、俺たちにそれを渡してくれた。

 

「はい、完成したヨ」

 

「ありがとう、じゃあまた来るよ」

 

「はいはい、『OTP』なお2人サン、またね」

 

そう言われ、俺は吹き出しそうになったが堪え、手を振り返すだけに留めた。

ミーシャはなんの事かわかっていないようだが、今回はこれでいいだろう。

 

俺たちは今回何も起こってないかのように車へと戻り、エンジンをかける。

すると、さっきまで考えていたミーシャが、

 

「ご主人、『OTP』って、なんですか?」

 

と、聞いてきた。

 

「……『お似合いな2人』とかそういう意味の英文の略字だ、言わせんな恥ずかしい」

 

そう俺が言うと、ミーシャも理解したようで、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

そんなミーシャの頭を片手で撫でつつ、俺たちは家へと帰って行った。




今年中に出せてよがっだ!

まさかの7000文字超えてて笑いました。
多分今年の小説投稿はこれで収めだと思います。
では良きお年を!
また次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話

この作品ではお久しぶりです……
やっと完成しました、長らくお待たせしてしまい申し訳ないです……
アンケートを取ったくせしてあまり甘々してないですが、
今回もごゆっくり、見ていってください。


とある日。

俺たちは外に雪の降る中、一緒に雪かきをしつつ、ラジオを流していた。

 

『獣人種と名がついた新人種ですが、続けられてきた研究により、彼らが遺跡などに描かれていた半人半獣の存在の末裔、もしくは絵のモチーフになった存在であるとの発表がなされました。彼らが今まで見つからなかった理由は諸説ありますが、特異なDNAを持つ動物から変化する説と、野生の本能から我々人間の前に現れなかっただけで既に自然の一部となっていたとする説が―――』

 

そんなラジオのニュースを聴きながら、俺は雪かきから雪遊びに変化してしまっているミーシャの方を見る。

楽しそうに雪にダイブするミーシャを見て和みつつ、俺はひとつの疑問が浮かんだ。

 

「なあミーシャ、お前、猫だった時って寒いの弱くなかったか?」

 

そう尋ねてみると、ミーシャはゆっくりと起き上がり、服に着いていた雪を払う。

そしてこちらへと駆け寄ってくると手袋を外し、俺の顔へと当ててきた。

 

「えへへ、こうしたら好きな人の暖かさを感じれるって気づいたんです、あの頃と違って服も着てますし、元から私って雪で遊ぶこと自体は好きだったんですよ?」

 

と、ミーシャは嬉しそうに笑う。

その後すぐにへくちっ、と寒さからかクシャミをした辺り、昔よりは強くはなったが、やはり寒さに弱い人並みには寒いのだろう。

 

「……1度帰って暖まろうか」

 

そう俺はミーシャの頭に積もった雪を払いながら言う。

そして俺の持っていたカイロをミーシャのほっぺに当ててやると、わぷっと変な声を出して驚きながら、それを嬉しそうに受け取った。

 

「えへへ、ありがとうございます♪暖かいです♪」

 

そうミーシャは本当に嬉しそうに耳としっぽを動かすと、しっぽと腕ををこちらに巻き付けてきた。

そのまま俺たちは家に帰ると、俺はミーシャの為にお風呂のお湯を張る。

この頃何故か雪が多くなってきてからずっと続く、1種の習慣だ。

 

俺たちが出会い、今の関係になってから、"獣人族"と名のついた人種は、続々と発見されてきた。

さっきのニュースはDNAだのなんだの言っていたが、個人的には発見した"人間"と、獣人族になった"動物"同士の関係が関連しているのではないだろうか、そう思っている。

………もちろん、一般的になってきたからと言って、人種差別をするマヌケや、動物虐待や人間虐待ならぬ、『獣人虐待』などと言った問題や、無いに等しい法律の整備などは約立たずの名だけ政治家どものせいで進んでおらず、獣人族から多数のレイプ被害報告や虐待報告、人殺しの標的になってしまっている現実がある。

 

まあミーシャが獣人族などと呼ばれる種族であったとしても、護る事には変わりないのだが。

手を出したヤツは皆絶望させてからブチ○してやる。

 

「ミーシャ、風呂が沸いたぞ」

 

「はーい♪……あ、そうだ!ご主人も一緒に入りましょうよ!」

 

「いや、流石にそろそろそれは……」

 

そこまで言った時、俺の携帯に電話が入った。

出る前に先にミーシャに入っていてもらうことにし、誰からかとみてみれば、社長…テリー・ミヤからだった。

 

「もしもし?」

 

『おう、イチャついてるとこすまんな、明日の仕事のことで電話させてもらった』

 

「イチャついてませんよ……わざわざ仕事の事で電話ですか?」

 

『ああ、ちょっと事情が特殊でな……一般的に、というか表向きにはいつも通りの"害獣駆除"や』

 

「ターゲットは?」

 

『名前忘れたけどなんや言うオオカミ』

 

「………ブラッディウルフ?」

 

『そうそうそれそれ。普段ならナワバリを拡大するために活動範囲を広げていく生体やのにも関わらずナワバリも広げないわ何かを護ってるみたいで凶暴化しとるらしい、それの調査や』

 

「調査……討伐でなく?」

 

『使用弾薬は全て非致死性、相手が迷惑かけてきてないなら威嚇程度に留めて共存するのが1番ええ、面倒事は少ない方がもっとええ。そんなんなんでほなまた』

 

そう言い、電話が切れる。

 

「ごしゅじーん?どうしたんですか?」

 

そう風呂上がりのミーシャが尋ねてくる。

 

「仕事の電話、なんかめんどくさい任務なんだってさ」

 

そう言い、俺はミーシャの髪を乾かし始めた。

 

次の日。

俺はとある森の中にいた。

生い茂る草木と獣道。

そんな中を、俺はクルミとのペアで突き進んでいた。

 

「くっそ、こういう時のために銃身が短いのにしとくんだった」

 

「いくらSCAR-Lと言えどもライフルっすからね、その点P90はいいっすよ、取り回し良し、貫通性よしで」

 

「………弾代は?」

 

「…………ノーコメントっす」

 

そんな会話をしながら、俺たちは獣道を進む。

そんな中、そこそこ進んだ時、ピリッとする、嫌な気配を感じて立ち止まる。

クルミも感じたようで、軽く銃を構え、周囲を見回していた。

 

「ウォォォォォォン!!」

 

そう唐突に、聞き覚えのある遠吠えが聞こえ、さらに耳を研ぎ澄ます。

………それをした時には、既に周囲から、獣の足音が聞こえていた。

そんな中、どうにかして突破する方法を考えていると、俺たちの正面から、2頭のブラッディウルフが、殺気を放ちながら、歩いて来ているのがわかった。

 

それを理解したクルミが撃とうとするのを、俺は敢えて手で制止した。

………どうも、あのオオカミには、俺と共通するものがあるように感じる。

 

そう思った俺は、銃をスリングで肩からかけると、しゃがんで姿勢を低くしてブラッディウルフと目を合わせるようにじっと見つめた。

………やっぱりだ。

 

「クルミ、銃を下ろせ」

 

「ええっ!?でも……!」

 

「大丈夫、なんとかなる」

 

そう言い、俺はブラッディウルフの方へと歩み寄る。

そして姿勢を低くすると、

 

「お前たちも何かを護ってるんだな?………良ければ、そこへ案内して欲しい。理由と詳細が分かれば、ここに近寄らないように周りに伝えるよ」

 

そう、伝わるかは神頼みだったがそう言うと、2頭のオオカミは顔を見合せ、短く遠吠えをすると、こちらをチラりと見てから、『着いて来い』と言った様子で、獣道を奥へと進み始めた。

俺たちはそれについて行くと、とある洞窟へとたどり着いた。

 

中を見てみると、横たわる何かの横に、先程のオオカミが座っているのがわかった。

近づいて見てみると、それは褐色の肌をし、その2頭と同じグレーの毛色、そして獣の耳としっぽの生えた、少女の姿が、そこにはあった。

 

少女は鼻をひくひくと動かすと、ガバッと起き上がり、こちらをまじまじと見つめ始めた。

 

「う………?」

 

そう少女は不思議そうに、首を傾げる。

その姿を見たクルミが、

 

「か……可愛い………!」

 

と、悶絶し始めたのを横目に見つつ、この2頭のオオカミは、こちらに何とかして欲しそうに、こちらをじっと見つめてきていた。

それを見た俺は、スマホを取り出して、とある電話番号にかける。

 

『もしもーし!ご主人、どうしました?』

 

そう電話の主……ミーシャは言う。

 

「ちょっと頼りたいことがあって…多分、ミーシャならなんとかなると思う」

 

そう俺は言い、ビデオ通話を開始し、少女へとスマホの画面をインカメにして向けた。

 

『一体なにを……ってあれ?この子は……?』

 

「……多分、ブラッディウルフの獣人の子。横に両親がいるだろう?」

 

そう言うと、2頭のオオカミはモニターに向けて、軽く頷きのような会釈のような動きをした。

 

『あ、これはどうもご丁寧に……この子は一体どうしてこの姿に?』

 

「うぅ……わう」

 

『なるほど、寝て起きたらこうなってた、と』

 

「う。わう」

 

『こうなったからには移動も出来ないからここにいるのはいいものの、流石に食料もない……と』

 

「わふ」

 

『なるほど……困りましたね』

 

「……すげぇ、話が通じてる」

 

そう発想して見たのはいいものの本当に理想通りになっている現実に、俺は軽く困惑する。

いや、ミーシャも獣人だしいけるかなとは思ったよ?

でも種族絶対違うから無理だと思ってたよ…

 

そう思いながらも、ミーシャとオオカミの両親との会話は続いていた。

やがて、片方のオオカミがもう片方のオオカミに目配せをして洞窟から出て行ったと思うと、外から遠吠えが聞こえてきた。

 

「……どうなったんだ?」

 

『えっとですね、この子…ロキちゃんって言うらしいんですけど、この子をうちで預かることになりました』

 

「へー……え?」

 

『で、それにご両親もしばらく着いてくると』

 

「待って?」

 

『どうしました?』

 

「え?預かるの?この子を?」

 

『はい、この姿になってしまったからには人間社会で生きるのがこの子のためだ、って考えてるそうで』

 

「なるほど……?」

 

『それにご主人との日常を伝えたら、"いい感じに血にまみれててヨシ!"って』

 

「何その基準、こわい」

 

そんな会話をしていると、いつの間にか少女……ロキと遊んでいるクルミが、

 

「あ、なんならご両親はうちで預かりましょうか?タクさんどこ住みです?」

 

と、聞いてきた。

 

「第25地区の外れ」

 

「お、一緒っすね、私の住んでるとこ、2人住みが1件だけみたいなんで、その人に隠れてならなんとかなりますよ、朝早くから仕事みたいですし」

 

「俺のとこも一人暮らしで時折犬の声するくらいだからな、金さえ何とかなれば……」

 

「………もしかして、タクさん家って1階っすか?」

 

「ん?おお、よくわかったな」

 

「もしかして愛車がハンヴィーで、同じところに住んでる人の愛車って赤い大型二輪だったり?」

 

「おお、正解」

 

「……それうちじゃないっすか!」

 

「え?」

 

「私!そこの2階に住んでます!」

 

「ええっ!?」

 

そう騒いでいる中、オオカミ夫婦に何やってんだとジト目で見られていたのは、ロキが喋れるようになってから聞いた話だ。




いかがでしたか?
短めになってしまってますが楽しめていただけたなら幸いです……

ではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話

この作品ではお久しぶりです……まさか1年も放置することになるとは………
いや1年以上か……

なんかネタ浮かんだんで書き始めたら1話できてました。
それではごゆっくり、見ていってください!


 

ゴーン……ゴーン…………そう鐘の音がする。

それと同時にオオカミの遠吠えもする。

 

「夕方か………」

 

「夕方か…じゃないんすよ、まさかタクさんも家賃滞納してるとは………」

 

「仕方ないだろ……集金に来ねぇんだから………それにお前もだろ?」

 

「だって!集金に来ないんですもん!」

 

「ウチも同じ。金はあるぞ、5.7mm使いのお前と違って」

 

「私も家賃分はしっかり避けてます!………たまに食費からは削ってますけど」

 

「弾代は給料と一緒に支給って言われても月イチだしな………っと、ここか」

 

そんな会話をクルミとしつつ、俺たちは1件の家………家?の、一軒家の廃墟に来ていた。

ここにどうやら大家が住んでる……らしい。

 

事の発端は数日前。

ロキとその両親が家族に加わり、ただでさえ狭かった家がさらに狭くなった。

んで空き部屋しかないこのマンションの空き部屋を一部屋、俺とクルミで金を出し合い、両親ウルフだけでも別部屋にと借りることになったのだ。

 

それを家の管理業者の方に聞くと管理業者は数日前に野生の暴動者による流れ迫撃砲が当たり倒産、なんとか大家の家だけは聞き出せたので許可と契約をしに来たのだ。

 

だが………

 

「タクさん!ドア鍵空いてますよ!ごめんくださーい!」

 

「ちょ、勢いよく入ると危ないだろ!廃墟だぞ!」

 

「またまたぁ、人が住んでるんですよ?そんな見た目だけに決まって……」

 

バキッ

 

そういう音とともにクルミは玄関へ一歩踏み込むと腹から下が床下へボッシュート。

下半身の感覚はある様なのでたまに聞くアダルティな落とし穴ではなさそうだ。

 

「言わんこっちゃない」

 

そう言いながら、俺はクルミを引っ張り出す。

そしてその辺にあった棒で床を押しながら進んでいると、ソレは見つかった。

 

「………………なあクルミ?今の法律ってどうなってたっけ?」

 

「へ?警察と消防、救急はマトモに動かないんで統治してるPMCに一報を……なんかあったんすk…………ええ…………………」

 

「………白骨死体見つけた時って、どうすんの?昔は警察だけど」

 

「と、とりあえずPMCに……?」

 

そう言われ、その統治地区のPMCにかかる電話番号へ電話をかける。

ミーシャ連れてきてなくて本当に良かった。

うん。マジで。

 

『はいこちらPMC、事件ですか?救急ですか?』

 

「死体です」

 

『どんな?』

 

「白骨。」

 

『白骨。』

 

そう困惑しながらオウム返しに返される。

 

『えーと……どの辺に?』

 

「第13地区のA区画です」

 

『あー……ちょっと前まで良くかかってきてたんだよね、そこから』

 

「ええ………なんでですか?」

 

『家賃取りに来ないから家凸したら死んでたんですけど権利どうなりすか?って』

 

「………どうなるんですか?」

 

『住んでるならそのまま貰っちゃってください、マンションとかなら鍵あれば他の部屋もどうぞ……的な?』

 

「…………あっはい」

 

そこで電話が終わり、俺はため息をつく。

 

「……どうでした?」

 

そうクルミに問いかけられる。

少し……いや、かなり困惑しながら。

 

「………鍵探そっか」

 

「鍵?」

 

「うん、他の部屋の」

 

そこまで言うと、先程までの電話のやり取りを察したのか、クルミは少し嬉しそうに、

 

「部屋が増えますね!」

 

と、言ってきた。

うーん切り替えが早い、満点。

 

そこから2人で手分けして鍵を探すと程なく見つかり、俺たちは家へと戻った。

 

 

「ご主人!おかえりなさい!」

 

そうミーシャに飛びかかられたのを受け止め、俺はこれまでの事を伝えた。

 

「………つまり、このマンションが?」

 

「俺らとクルミのもの。帰る時に2階はクルミ、1階はうちってことになった」

 

「えっと……今夜はお赤飯って事で合ってますか???」

 

「ちょっと……いやかなり違うかな?まずは部屋の点検しなきゃだからな、場合によっちゃ修理だ」

 

「つまりよくテレビで見る開拓……ですか!?」

 

そう目を輝かせるミーシャに少し戸惑いつつ、俺たちは他の部屋を見て回ることになった。

 

まず隣。

埃っぽいが普通の空き部屋。

端っこの部屋。

屋根が抜けて2階と繋がってる。

 

「あれ?タクさん!ミーシャちゃーん!」

 

そうその部屋を見ていると、穴の上からクルミが覗き込んで来た。

 

「おーう、2階はどうだ?」

 

「この部屋以外大丈夫そうっす!タクさんは?」

 

「大体一緒。うちの隣の部屋をロキと両親ウルフに割り当ててきたくらいかな、違うところは」

 

「なるほど………そうだタクさん」

 

「ん?」

 

「もううち壁貫通させて、ひとつの家っぽくしようと思うんすけど……ここに階段繋げて良いっすか?」

 

「良いけど……金は?」

 

「家賃代が浮くんで2階はなんとか!」

 

そうニッコニコで返され、苦笑いを浮べる。

どんだけ貯まってたんだ家賃代。

………いや、うちもか。

 

「………なあミーシャ、うちも繋げて広くするか?」

 

「いいですね!……あっ………将来のために子供部屋も、欲しいですね?」

 

そうミーシャに耳うちされ、胸がドキッと跳ねる。

そしてふふふーっと笑っているミーシャの方を向き、

 

「……そうだな」

 

と言い、頭を撫でてやった。

 

「……いつもながらお熱いっすね、私もいるんすよー?」

 

「悪ぃ悪ぃ、ああそうだクルミ、うちも1階リフォームして繋げるわ」

 

「じゃあここが私の家とタクさんの家を繋ぐ階段っすね!この部屋は割り勘で!」

 

「……へ?繋げるの?」

 

「あっ………ダメっすか?」

 

そう勢い余ってさっきの言葉を言ってしまっていたのか、顔を真っ赤にして申し訳無さそうに聞いてくる。

どうしたもんかとふとミーシャの方を見てみると、笑顔で頷かれた。

 

「………わかったよ、ただし!うちに入るところは鍵付きの扉にするからな!」

 

「いつ盛ってるかわからないっすからね、にひひっ、壁も分厚くするのを忘れずに~♪」

 

「うるせぇ!」

 

そんな会話をしながら、うちのリフォーム計画はスタートしたのだった。




いやはや、ネタも出ず、ラブコメとは……?となったり、これは妄想の垂れ流しになるのでは…?誰得……?となりましたが、結局のところ小説自体が妄想の垂れ流しだなと思い、ハチャメチャな微ラブコメみたいな感じになりました()
多分こんな感じでこの作品は行く……かな?と思います!
ラブコメの波動をもっと出せるようには精進します()

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。