どうやら五つ子は我慢できなかったみたいです。 (えぬに)
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五つ子の長女がこんなに積極的でえっちぃわけがない!

風太郎と一花がエッチする話


「は?キス?」

「そ、キス。」

 

 学校が終わって放課後、勉強会のため姉妹のアパートに来ていた。のだが、一花以外の姉妹はまだ帰ってきておらず、二人きりの状況で隣に座っている一花が突然「キスしたい」と告げてくる。

 

「ほら、私って女優目指してるから、やっぱり将来的には俳優さんとすることもあると思うんだよ。だから…ね?」

「ねっ、てなんだ。」

「先にフータロー君で練習しておこうかなって。」

「俺のファーストキスで練習しようとしないでくれ。」

「安心して?私もだから。」

「安心できる要素が無いな。」

「お願い!この通り!」

「…ちなみになんで俺?」

「だって、フータロー君以上に親しい男の人なんていないし。」

「断る。」

「え、なんで?!私とただでキス出来るんだよ!?したいって思わないの?!」

「そういう問題じゃねぇ!俺はあくまでお前らの家庭教師で、お前らの父親から一線を引くようにって釘を刺されてんだよ。それに、そういったことは好きなやつとやれ。」

「私は好きだよ、フータロー君のこと。」

「ああそうかよ。…え?今なんて?」

「だから、私はフータロー君のことが好きなんだってば。」

 

 一瞬、何を言っているのか理解が追いつかなかった。こいつが?俺を?いやいやあり得ない。いくらなんでも釣り合わない。二乃にしても三玖にしても、そして今回の一花にしても、そもそも俺なんかのどこに好きになる要素があるのか甚だ疑問だった。

 これ以上、厄介ごとは増やしたくなかったので、こいつが俺をからかっているだけという僅かばかりの希望にかける。

 

「冗談はよせ…」

「流石の私でも冗談でこんなこと言わないよ。あ、返事はまだいらないからね。どうせフータロー君のことだから恋愛なんて〜とか言うんでしょ?」

 

 一花とは長い付き合いになる。この感じ、笑って軽く言っているように見えるが一花は冗談なんかではなく、本気で言っていることもなんとなくわかってしまう。

「…はぁ。仮にそうだとしても俺だけはやめとけって…お前ならもっと上を狙えるさ。」

「何さキスくらい、ケチ。私はフータロー君がいいのに…修学旅行の最後でほっぺにしてあげたんだから、お礼に1回や2回してもいいと思わないの?」

 

 一花に言われて思い出したが、やはりあの時の頰にキスをしてきたのはそういう意味だったのか。

 …そして、今になっても「全部嘘」発言はどういう意味かまだはっきりとしていなかったが、今ここではっきりした。

 三玖に変装した一花が「一花、フータローのこと好きだよ」と言っていたことからも一花が俺に好意を寄せてくれているのは想像に難くない。そのことも含めての"全部嘘"だとしたら、じゃあ好きでもない奴の頰にキスなどするだろうかと言われると疑問が残る。一花が俺に今告白してきた時点でその線はないだろう。

 不本意だが少し安心してしまう。

…安心?俺はなんで安心した?

 

「全く思わんな。不意打ちだったし、ほっぺ程度なら口よりかマシだ。」

「じゃあほっぺならいいんだ。」

「違う。やめろ。」

「本当にケチ…」

「なんとでも言え。とにかくしないものはしない。」

 

 

 二乃や三玖にも好意を寄せられているのに、一花とキスをするなんて不謹慎にもほどがある。

 それに、俺は何よりこいつらとは今の関係のままで居たいと切に願っている。そんなことをしたら明日からどんな顔して会えばいいのかわからない。

一花は不満そうに言う。

 

「むぅ、…わかったよ。」

「物分かりが良くて助かる。」

「なら、他の誰かとする。」

「……は?他の誰かって?」

「学校にいるクラスメイトにでも頼んでみよっかな。自分で言うのもあれだけど私って案外人気あるんだよ?頼み込めば何人かしてくれるんじゃない?」

 

 とんでもないことを言い出した。そこまでしてキスがしたいか。

 確かに一花は人気だ。それも物凄く。学校ではすべての男子の憧れと言ってもいい程に。

 頼み込めば数人だと?それどころか何百とやってくれる人はいるだろう。

 だが、だからこそそんな愚行を許すわけにはいかない。こいつは男の性を絶対に分かっていない。

 

「そんなのダメに決まってんだろ。」

「フータロー君が決めることじゃないよね。」

「そうだがそんなこと俺がさせない。」

「つまり私はフータロー君の物だからキスは俺以外にするなってこと?嬉しいなぁ。」

「一言もそんなこと言ってないんだが。」

「してくれないなら他の人とするから。」

「待て待て待て、誰とでもなんて良くないだろ。」

「さっきは好きなやつとしろとか言ってたくせに。それがダメならフータロー君がしてよぉ。」

 

 ダメだ、無限ループが始まってしまった。どうにかしてこの長女の暴走を止めないと、こいつからの誘惑にいつまで耐えられるか分かったもんじゃない。

 俺だって一応健全な男子高生だ。完璧な絶食主義(ストイック)というわけではないし、そういう欲は自制心で抑えているだけで、いつ暴走するか分からない。

 さらにだ、そういう対象として見ていなかった以前の時期ならまだしも、流石に今となっては嫌でも一人の女の子として意識してしまう。

 

「…ダメだ。」

「どうしても?」

「…ああ。」

「…分かった。じゃあ今から学校行って他の人に頼んでくる。」

 

 そう言って一花は立ち上がり、俺に背を向け、玄関まで向かおうとする。

 

「は?お、おい!この後の勉強会は?それに、そんなこと俺が許さないって…」

 

 俺は向かおうとしていた一花の手を掴んで引っ張る。だが、これは非常に悪手だったと言わざるを得なかった。一花は抵抗する素振りすら見せず、引っ張られる力になされるがまま俺の方に倒れ込んでくる。

 

「隙ありだよ。」

「えっ…!ん?!」

 

 その勢いのまま一花は俺に口付けをする。

 実際はそこまでのものではなく、軽く触れ合う程度のものでしか無かった。だが、俺から思考能力を奪うには十分すぎる破壊力だった。

 

(嘘だろ…!柔らか…)

 

 ちょっと触れただけでこれだ。それ以上はどんなものなのだろう、想像もつかない。

 以前、温泉旅行の帰り際に五つ子の誰かに一回だけされたが、真意がわからずうやむやになってしまった。それに対して、今回のそれは明確に好意を伝えられた後だったため、流石の俺でもくるものがあった。

 だが、ここはぐっと堪え、残った理性を振り絞って俺はすかさず一花の肩を掴んで引き離す。

 

「っ、一花、お、お前なぁ…」

 

 思考能力を奪われた俺はその後の言葉が見つからなかった。だが、これで一花も満足したはずだ。

 これ以上は流石にもう無いだろうと油断していたが、この程度で一花の暴走が止まるわけがなかった。

 

「……?」

 

「?どうした一花。」

 

「ごめんねフータロー君、もう一回。」

 

「え?んぐっ!?」

 どうやら一花は先程の軽いキスでは良さが分からなかったらしい。一花は両手を俺の頰に添え、動けなくしたところを狙ってキスしてくる。さっきのとは違って、しっかりと唇同士が密着する。

 

「ん…ちゅっ」

(?!舌が…!)

 

 閉じていた俺の唇を強引にこじ開け、一花の舌が口内に侵入してくる。

一瞬、直接頭の中を舐められているかのような錯覚におちいり、息ができなくなる。だが、そんなことはお構い無しに一花の舌は暴れることをやめない。

 

「んっ…ちゅ…ちゅるっ……」

「!?!?!」

 

 キスは段々と激しさを増し、ついには一花が淫靡な声を漏らすほど激しくなる。

 女の子特有のいい匂い、柔らかい唇、送られてくる甘い唾液、聞こえてくるリップ音、美少女の顔。5感をフルに使って感じる膨大な量の快感で脳がショートし、全身に電流が駆け巡ったかと思うと体から力が抜けてしまい、体には謎の浮遊感が残る。

 

「んっ…ぷはっ…」

 

 たかがキスでこうなってしまうなんて我ながら情けなさすぎて涙が出てきそうになる。

 キスで放心状態になって俯いている俺の顔を覗き込んで一花は言う。

 

「どう?気持ちよかったでしょ。」

「…」

「私は好きな人とキスできてすっごい気持ちよかったよ?」

「……」

「フータロー君顔真っ赤。」

「…お前もな。」

 

 納得できない。何故ここまで手慣れているのか、余裕があるのか。普通、こういった行為は男の方がリードするものではないのだろうか。まあ、そもそもそういった行為自体をしたことがないからどっちにしろ無理だが。

 この子はどんな神経をしているんだろうと疑問に思ってしまう。

 

「お前、初めてって嘘だろ…」

「嬉しいこと言ってくれるね。初めてだよ?」

 

 これで初めてなんだから女優は恐ろしい。日頃から相当な量のイメージトレーニングでもしているのだろうか。そんな暇があるなら英単語の一つでも覚えて欲しいが。

 

「…と、とにかく、これで満足しただろ…。」

「えっ?何言ってるのフータロー君。ここからが本番でしょ。」

「は…?」

 

「えいっ!」

 

「!」

 

 一花はいきなり俺に抱きついてくる。

 俺の胸板に一花の胸が押し付けられる柔らかい感覚、優しい温もり、抱きしめられる安心感に胸が締め付けられ、頭がおかしくなりそうになる。

 

「今度は、フータロー君からして…?」

 

 そう言って一花は、上目遣いでおねだりをした後、目を閉じてキスをしやすいよう、少し上を向く。

 早くと言わんばかりに少し顔を突き出し、準備完了の合図を出す。

 

「〜〜〜〜〜っ!、一花!」

「ん。」

 

 一花の軽い返事にまた胸を締め付けられる感覚が襲う。

 耐えようと頑張ったが不可能だった。余りにも魅力的すぎる。ただでさえ誰もが羨む美貌と体型を兼ね揃えているのに、こうも甘えてこられてはどんな理性も一発でぶっ壊れてしまう。

 右手を一花の頭に添え、左手を腰に回してギュッと抱きしめ、俺は人が変わったかのように夢中で一花の唇を貪る。

 クチャ、チュプッ、チュパ、と淫らな音を立てながら、俺と一花は舌を絡め合う。先程の一花からの一方的なキスとは違い今度はお互いがお互いを求め合うキスは舌が溶けて交わりそうなほど濃厚なものだった。

 

「ん…ちゅ…はっ、あっ…」

 

(ああ…キスが…キスがこんなにも気持ちのいいものだったなんて…ちくしょう…。)

 

 内心で悪態をつくも、それとは正反対に行為は続く。

「んっ…ちゅ…はっ…」

「…」

 

 ここで俺はつい魔が差してしまい、一花の胸を触ってしまう。

 

「ひゃっ!?」

 

 軽く触れるか触れないかの境目だったため、くすぐったかったのか一花は口を離して思わず声をあげる。

 

「あ!す、すまん!」

 

 本当にそんなつもりはなかった。強いて言えば腕が勝手に動いていた。まぁ、つまりは俺の意思なわけで…。

 ここで一瞬現実に引き戻される。これで止まれるか?と思ったが、一花の誘惑は止まることを知らない。

 

「…触りたいの?」

「いや、本当にすまなかった!」

「謝らないで?その…フータロー君なら、触ってもいいよ…?ううん、むしろ触られたい…」

「…いやいやいや…ダメだろ…」

 

 

 急にしおらしくなった一花の姿がとにかく可愛いことや、一花から触れてもいいという許可が出た事実を処理しきれず戸惑っている俺の手を、一花が掴んでそっと自分の胸に誘導する。

 

「!?」

 

『やわらかい』

たった5文字それだけが頭の中を埋め尽くす。

 

「もう一回しよ…?」

「え…?むぐっ!?」

「ん…ちゅっ、」

 

 衝撃的な柔らかさに驚いた隙を突かれ、再び暴力的なまでの一花による蹂躙が始まる。余裕がない俺と余裕がある一花、イニシアチブはどちらにあるかは火を見るより明らかな上、キスで上手く呼吸ができず更に力が抜けてしまう。

 

「…んっ…ちゅっ…、ぷはっ」

 

ようやく解放され、俺は必死で肺に空気を送り込む。

 

「ハァ、ハァ…」

「…フータロー君のここ、キツそうだね…?」

 

そう言って一花は俺のスラックスに手をかける。

 

「は?待て待て待て!」

 

 キスの余韻からまだ戻りきっていないところを狙われ、抵抗虚しく俺の制服は一花によって下ろされる。狭い空間から解放されたことを喜ぶかのように俺の肉棒はそそり立つ。

 

「わっ、おっきい…」

「ちょ、流石にこれはまずだろ!今すぐやめ…!」

 

 言い終わる前に一花は俺のものを優しく握り、手を上下に動かす。

 これで俺は完全に攻略されてしまった。一花の手は同じ人間の物とは思えないほど柔らかく、半ば強制的に送られてくる刺激に最後の抵抗する気力を全て持っていかれてしまった。

 

「まあまあ、フータロー君は深く考えずに気持ちよくなっちゃえばいいんだって。」

「ぐっ…!」

 

 一花はそのまま手の上下運動を繰り返しながら顔を近づけて耳元でこう囁いてくる。

 

「…どう?気持ちいい?」

「…っ!!」

「聞くまでも無かったみたいだね」

 一花は俺の苦悶している表情を見てそう言う。

 

「ほらほら、出しちゃえ。」

 

 なんとか頑張って耐えていたが、言葉責めにより射精感が一気に押し寄せてくる。

 

「ぐっ…!や、やば…!」

 

 だが、一花は俺がイってしまう前に手を止める。

「え…?」

 

「なーんて、そんな簡単にはイかせてあげないよ?」

 

 先程までは一花の暴走を止めようと頑張ってはいた。だが、体は正直というか、ここまでやっておいて寸止めでお預けとは生殺しも良いところだ。

 

「ふふっ、フータロー君、そんなに欲しそうな顔しちゃって…可愛いなぁ…。」

「…っ。」

 

 顔が熱くなるのを感じる。あれだけ口では嫌々言っていたのにも関わらず、いざやめるとなるとこんなにも欲しくなってしまう。もう羞恥心でどうにかなりそうだ。

 

「でも、安心してフータロー君?後でちゃんと私の中で出させてあげるから…。」

「!!」

 

 そう言って一花は、俺の目の前でスカートのホックを外す。

 

「なんで脱ぐんだよ!」

「え?制服着たままシたかった?」

「なにがだ!服を着ろ!」

「分かってるくせに。したくないの?」

「ぐっ…」

「ほらほら、素直になりなよ〜。」

「……っ」

「それとも脱がせたいのかな?ん?」

 

 俺の中の天使と悪魔がただ今大乱闘中…。天使は言う。今ならまだ引き返せる位置だ。ここで仮に最後までやってしまったらもう戻れなくなってしまう。責任の取れない学生の身分でそれはまずいんじゃないか?と。

 だが、悪魔は言う。誘ってきたのはあっちだ、お前は悪くない。したいだろ?限界だろ?未知の快感を知りたくないか?と。

 

 そんな感じの自問自答を繰り返していたが…一花の行為により一気に均衡が崩れる。

 

「…んっ、はっ…んぁ…」

 

 一花の喘ぎ声で俺は自分の世界から一気に現実に引き戻される。

 

「…は?お前何してんの?」

「えっ?んっ…なにっ…て…我慢できなかったから、オナ」

「聞いた俺が悪かったから言わなくていい!」

 

 ここまでするか。一花はあろうことか俺の目の前で自慰行為を始めたのだ。多分だが、俺をその気にさせるためにだ。一回聴こえてしてしまった一花の喘ぎ声は俺の脳内で何度も反響する。

 見てはいけない、冷静になれ、たかが自慰行為だ。

 そんなことを必死に考えるが、淫乱過ぎるその光景に目は釘付けになってしまう。

 

「さっきのキスと…フータロー君にしてもらう想像しただけで…こんなに濡れちゃった…。」

 

 そう言って一花は愛液で濡れた手を見せつけてくる。

 俺の中の悪魔が勝ってしまった。ここまでされて耐えられるやつは人間じゃない。

 俺は自分の頭の中が、ただ犯したいという欲望でいっぱいになっていくのを感じる。

 

「一花、ほんとにいいんだな…?」

「うん…いいよ。でも、初めてだから…優しくね…?」

 

 だが、ここで俺は一花の中に入れたい衝動をぐっとこらえる。先程まで俺は弄ばれたんだ、少しぐらい仕返ししてやらないと気が済まない。

 

「さっきは俺のことを好き放題やったから、俺にも好き勝手していい権利は少しぐらいならあるよな…?」

「え…?きゃっ」

 

 俺は一花を押し倒し、俗に言う床ドンの体勢になる。

 一花は驚いて目を閉じているが、俺はしっかりと一花の顔を見つめる。一花が目を開けたタイミングで手を頰に添え、お互いに見つめ合う。

 

「え?え?」

「一花…お前、ほんとに綺麗な顔してるのな…」

 

 ボン!と大きな音をたてそうな勢いで一花の顔は赤く染まる。だが、あくまでも余裕がある様に見せたいのか、いつものお姉さんフェイスの笑みで聞いてくる。

 

「へ、へぇ…フータロー君にもお世辞が言えたんだね。」

「いや、よくよく見るとほんとに可愛いなって思って。」

 

 素直にそう思ってしまった。透き通るような肌、パッチリとした目、長い睫毛、柔らかい唇…見れば見るほどその深みにはまっていく。

 

「…」

「?どうした?」

「そ、そんなに見ないで…」

「あれだけキスしてきたくせに顔見られるのはダメなのかよ…」

「だ…だって、フータロー君から褒められるなんて…恥ずかしいよ…。それに、フータロー君もよくよく見たらカッコいいし、直視出来ない…」

「お、おう…」

 

 思わぬ反撃をくらってしまった。容姿を褒められるのは悪い気はしない。

 そんなことより、どうやら一花は自分から行動を起こすのはいいが、相手から来られたり予想外の出来事には弱いらしい。主導権を勝ち取るチャンスが訪れた瞬間である。それを逃す手は無いので、早速行動に出る。

 

「…さっきは俺を手で気持ちよくしてくれたからな、そのお礼だ。」

「え…?ひゃっ!」

 

 一花の秘部をゆっくりと撫で回す。流石にここから先は勝手がわからないため、まずは様子見をする。

 

「…フータロー君て…経験者だったりするの…?」

「いや、初めてだが…なんで?」

「…自分でするよりも…その、すごく…いい…」

「…」

 

そのまま入り口を指の腹で擦ると、そこから愛液が溢れでて来るのがわかる。

 

「んっ…フータロー君っ…」

「…」

 

 滑りが良くなってきた頃合いにつぷっと音を立てながら中指を彼女の中に入れる。そのまま指を軽く曲げ、出し入れしてやると手で抑え込んだ口から喘ぎ声が部屋を満たす。一花を気持ち良くするためにやっているのに入れている指ですらとても気持ちいい。

 

「一花…」

「ふぇ…?」

 

 俺は手をどかして今日何度目になるか分からないキスをする。あれだけしたのに、全く飽きがくる気配がないのだから不思議だ。

 一花と舌を絡めながら、目だけを動かして一花の秘部を見る。どこをどのようにすれば気持ちよくなるかを模索する。

 

(ここか…?それともここか…?)

 

「…んっ!」

 

(…今少しビクってなったな。)

 

 弄ばれていた俺は何処へやら。ランナーズハイとでも言うのか、先程から妙に頭が冴え渡っている。慣れたというか、もうしてもいいと割り切ったからからか…。どちらにせよ、ここからは俺の独壇場だ。

 だが、初めてだからよく知らない。だからこそ、ゆっくり丁寧に一花の弱点を念入りに探す。

 

「…ぷはっ。フータロー君…もっと上の方…」

「…わかった。」

 

 早く達したくて耐えきれなかったのか、一花はキスを中断して自ら弱点を教えてくる。

 

「あっ、そこ…もっと強く…んっ!」

 

 弱点を的確に突いてやると、面白いくらい反応が返ってくる。指を締め付ける力は強くなり、手で抑えた口から漏れ出る声はより淫らになっていく。

 しばらくして、俺は指を動かすのをやめる。

 

「えっ…?」

「仕返し。」

 

 いく寸前だったかは分からない。だが、少なくとも一花にとっては良いところで終わってしまったらしい。

 

「…フータロー君の意地悪…。」

「お前も同じことしてきただろ。」

 

 一花は頰を膨らませ、涙目で俺を恨めしそうに見てくるが、そんな顔をされたところで申し訳なく思うどころかむしろ加虐心を更に掻き立てられるだけだ。

 流石にここら辺が我慢の限界だったため俺は一花に聞く。

 

「なぁ…一花、その…いいか?」

 

 すでに俺の思考は、この後のことだとか、やってしまったら取り返しがつかないだとかの事は全く頭になく、ただひたすら一花と一つになることしか考えてなかった。もしダメだと言われてもやってしまうつもりでいた、それぐらい我慢の限界だった。

 

「…」

 

 借りてきた猫のように大人しくなった一花はコクッと小さく頷く。流石の一花も緊張しているのだろうか。

 

「いくぞ…一花。」

「来て…フータロー君…。」

 

 一花の秘部に俺のものを入れようと試みる。

だが、やはりというべきか、経験がないせいでなかなか上手く挿れられない。

 

(先っぽ擦るだけでこんなに気持ち良いのかよ…)

「あ…入り口擦られるの…気持ちいい…」

「言葉にしないでくれ…」

 

 しばらくの間、お互いの性器をこすり合せる。

 入り口から出てくる蜜で滑りが良くなっているため、これだけでも射精してしまいそうになるがそこは堪える。こんなところで無駄撃ちなんかしてたまるか。一回でも多く一花の中で果てたい。

 そして、ようやく亀頭が入り始める。

 そこからは本当にゆっくりと挿れていった。今すぐにでも出し入れをしたかったが、それで一花に必要以上の痛みを与えてしまうことを恐れた。

少し進んでは一花の様子を確認し、また進むを繰り返す。

 そして、とうとう最奥部に達したとき、すでに限界が来てしまった。

俺は慌てて引き抜き、一花のお腹に思いっきり射精してしまう。

 

「…すまん、我慢できなかった。」

「…ぺろっ。」

 

 一花は自分の体にかかった精子を指ですくって舐めとる。

 

「変な味…」

「そんなの舐めるなよ…」

「でもフータロー君のだから、全然嫌じゃないよ?」

「…お前はまたそうやって…!!」

 一花の飲精は自分の全てを受け入れてくれる感じがして酷く興奮してしまい、俺は再び彼女の中に挿入する。リミッターが外れてしまったというか、一花を気遣うことも忘れて夢中で腰を振る。

 それに対して一花も脚で俺の腰をギュッと掴んで離さない。

 

「フータロー君…好き…」

「…っ」

「大好き…!」

「〜〜〜っ!」

 

 向けられる好意が余りにも心地良く、更に興奮してしまいついストロークを早めてしまう。

 しばらくの間、パチュンパチュンという水音と喘ぎ声が部屋中に響く。

 

「一花…!一旦抜くぞ…!」

 

 流石に中に出すのはやばいと思い、抜こうとしたが一花の脚がそれを許さなかった。

 

「駄目!まだ抜かないで…」

「ぐっ…!」

 

 抜くどころか、一花は俺の脇の下から腕を通し、背中をギュッときつく抱きしめ、更には脚で俺の腰をがっちりと固定してきた。

 我慢できるはずもなく、そのまま一花の一番深いところに精を吐き出す。

 中出しはやばいのに、外に出すよりも気持ち良すぎて射精が止まらない。何も考えられなくなる。ただ快感だけが身体中を満たす。

 ようやく全てを出し切ったところで一花を見る。

 

「…あははっ、やっちゃったね…。」

「…」

 

 とりあえず抜こうと腰を動かそうとするが、一花は一向に抱きしめるのをやめない。

 

「…おい。」

「私、まだいけてないから…もう一回しよ…?」

「!」

「もう一回中に出しちゃったし…何回出しても同じだよね…?」

「〜〜〜っ!後悔するなよ…!」

「あっ…!」

 

 既に一回中に出しているため、精液が潤滑油のようになり一花の中は更に気持ちよくなっていた。

 出し入れするたびに溢れ出てくる分を補おうとするかのように膣はうねって絞り出そうとする。

 

「あっ…そこいい…もっとついて…!」

「こうか…?」

「うん…!」

「っ、馬鹿…締め付けすぎだ…!」

「ご、ごめん…、気持ち良すぎて…!」

 

 中に出してもいい、そのことがお互い興奮してしまい快楽を貪ることに躊躇がなくなってしまう。

 一方は弱点を攻められ、もう一方は強く締め付けられることによりどちらも既に果てそうだった。

 なるべく長く味わっていたいが、そう長くは持たない。

 

「そろそろいきそっ…!」

「ぐっ…!俺も…射精()すぞ、一花…!」

「うん…沢山出して…?」

「〜〜〜〜っ!」

 容赦なく、さっきとは比べものにならないほどの勢いで彼女の中に種を送り込む。それも奥の、更に深いところに。中に出す気持ち良さで息が出来ない。

 同時に果ててしまったからか、俺が射精すると一花も負けじと締め付けてくる。そのせいで本当に最後の一滴まで搾り取られてしまったかのような錯覚に陥る。

 二人とも息をして無かったことに気付き、種付けが無事に終わると俺は一花のとなりに半ば倒れ込むように寝そべった後、必死で脳に酸素を送り込む。

 そのまましばらく無言の時間が続き、息を整え終わった一花がそっと俺の腕に抱きついてくる。

 

「なんだよ。」

「気持ちよかったね?」

「…」

「ん?」

「…気持ちよく無かったらあんな風にならないだろう…」

「素直じゃないねぇ。」

「ほっとけ…」

 

 一花は頭を俺の胸に乗せて頬ずりをしてくる。

…もう、ただでさえ今の俺の心臓は悲鳴をあげてるんだから、これ以上負担をかけて欲しくないんだが…。

 それでも可愛いものは可愛い。俺は一花の頭をぎこちなく撫でてやる。

 

「…幸せ。」

「…そうかよ。」

 

 中に出してしまったとか、告白の返事はどうしようなどの問題は数時間後の俺に任せよう。たまにはこんな時間があっても…

 

「って、こんなことしてる場合じゃねぇ!」

「ええっ?!」

「あいつらが帰ってくる前に諸々証拠隠滅しないとまずいぞ!」

「え?あ!」

 

 どうやら一花は姉妹の存在などすっかり忘れてしまっていたらしい。

 

「とりあえず、俺はここを綺麗にしておくからお前は風呂沸かして入ってこい!」

 

 そう言って俺は慌てて服を着て、窓を開けて換気しながらティッシュで諸々の汚れを拭いていく。

 

「…ねぇ、フータロー君。」

「なんだ、早く入ってこいよ。」

「一緒に入らない…?」

 

 

カポーン。

 

 汗や何やらを全て洗い流し、現在は風呂に入っている。

 一花から二人でお風呂に入りたいとの要望により、一花が俺の胸板に寄りかかる形で風呂に浸かっていた。

 

「…なんで一緒に入らないといけないんだ?」

「何だかんだ言って一緒に入ってくれるフータロー君、私は好きだよ?」

「………話題をすり替えるなよ。」

「あ、今照れたでしょ?」

「うるせえ照れてねぇ。で、なんでだ。」

「別にいいじゃん一緒に入ったって。減るものでもないし、私も眼福だし?」

「それ普通は男のセリフじゃないか?」

「もー、こんな美少女と一緒にお風呂入れるんだから文句言わないの!」

「へいへい…」

 

 そう言って一花は頭をこてんっと俺の肩に乗せてくる。

 二人で入るのは必要以上に体が密着する上に、角度的に一花のたわわな果実がよく見えるわけで…俺の海綿体が再び膨張を始めてしまい、更には一花に当たってしまう。

 

「…フータロー君のエッチ。」

「先にキスしてきたお前はもっとエッチだな。」

「確かに最初は私だけど、あれだけ私の中に出しておいてまだ勃つフータロー君もなかなかだよ?」

「いやほんとにすまん…」

「ふふっ。いいよ、許してあげる。」

 

 もうすぐ他の姉妹たちが帰ってくるというのに、風呂から出たくないという気持ちが勝ってしまう。人肌の温もりがこんなに良いものだとは正直予想外だった。

 

「…なぁ、一花。」

「ん?」

「その…勢いでやってしまったが、告白の返事は待ってくれないか。」

「…二乃や三玖の告白もあるから迷ってるってこと?」

「なんで知ってるんだよ。というか三玖は告白してないぞ。」

「でも、三玖がフータロー君のこと好きだって気付いてるでしょ?」

「まぁ、そうだが…。その、そういうことだから返事は待ってくれ…。」

「うーん、ここまでやってもフータロー君を即ゲット出来ないなんて…ちょっと凹むなぁ。」

「いや、ほんとにすまん…」

「謝らないで?私はフータロー君とこうしているだけで幸せだから、最悪二股かけてもらっても良いかなって…」

「…いやいや駄目だろ。」

「今一瞬それも良いなとか思ったでしょ。」

「思ってない。」

 

 人の心をあっさり読まないで欲しい。

 正直に言おう。思った。誰かを選ばなければいけないというのはわかる。たが、俺が選ばなかった相手が振られた後、どうなるか想像もつかないから選ぶという行為がもの凄く怖い。

 所詮は学生恋愛だ、失恋も青春の一ページ、いつかは俺なんかよりもずっと良い相手に巡り会えるさ、なんて楽観的思考でもすればいいのだろうか。

 ここで、一花の背中が俺の体から離れ、代わりに正面を向いて胸を押し当ててくる。

 

「それは冗談として…さて、フータロー君。」

「なんだ。」

 

 非常に目に毒だ。上目遣いで、しかも胸は俺の体に押し付けているせいでむにゅっと変形している。

 誘ってるのか?とも思ったが、一花の真面目な雰囲気に黙って話を聞くことを決める。

 

「振った相手がかわいそう、なんて思っちゃ駄目だからね?」

「…」

「…少し、お話聞いてくれる?」

「…ああ。」

「…私は、修学旅行で取り返しのつかないことをしちゃたよね。でもね、あの後三玖は許してくれたんだ。本当に優しい子だよね。」

「…」

「こんなに優しい子を陥れようとしたんだって、後になって自分がやったことをすごく後悔した。今となっては、フータロー君が変装した私を見抜いてくれたことには感謝してるよ。あの時は本当にごめんね?」

「…まぁ、俺もそのあとの態度はやりすぎたって反省してる。そのことを蒸し返すのはもう無しにしようぜ。」

「うん、そうだね。…最終日の最後にフータロー君は許してくれたけど、私は私を許せなくて、フータロー君と結ばれるのは諦めようって思ったの。幸せになるべきなのは私じゃない、二乃や三玖だって、そんな感じで諦めようとしたんだ。」

「…」

「でも、あの二人は私がこんな形で想いを終わらせるなんて望んで無くて、なにより私自身もやっぱり諦めきれなかったんだ。私はどうしてもフータロー君が好き。せっかくもらったチャンスだから、今までは全部変化球だったんだけど、これからは私なりの直球で勝負することにしたんだ。」

「…その渾身のストレートは俺の頭にデッドボールを食らわしているんだが…。」

「ちゃんと制球力鍛えないとだね?」

「是非そうしてくれ…」

「…たとえ私が選ばれて、あの二人が泣くことになっても、逆にあの二人のどっちかが選ばれて、私が泣くことになっても、私たちはそうなるかもしれないことを覚悟の上だから…だから、フータロー君は振った子がかわいそうなんて思わないで、しっかり答えを出してね?」

「…ああ。」

「うん、よろしい。あ、今日のことは別に気にしなくていいからね?私が誘っちゃったわけだし。」

「…気にするな、なんて無理に決まってんだろ。というか、俺が止めなかったらお前どうする気だったんだ?」

「もちろん無理矢理するつもりだったよ?」

「もちろんてなんだ!危険球すぎる!」

「あはは…」

 

…こいつらは傷つく覚悟でやっている。なのに俺だけ傷付きたくない、なんて虫のいい話はないってことか…。

 俺は完全に巻き込まれているだけなんだが…。だが、

 

「ありがとな、一花。」

 

 そう言って俺は一花の頭を撫でる。それに対して、一花は気持ちよさそうに目を細めながら

 

「どーいたしましてっ。ところでフータロー君。」

「ん?」

 

 浴槽からザパァと音を立てて立ち上がり、俺に向かってお尻を突き出してこう言い放つ。

 

「もう一回しない…?」

「〜〜本当にお前だけは…!」

 

 俺はすぐさま立ち上がり、再び行為に及ぼうとするが…

 

 

 

バタン!ドタドタ!ギィ…バタン!

 

 

「「…」」

 

 誰かが慌てて脱衣所を出たあと、走って玄関のドアを開けて出て行く音がした。

 つまり、誰かに今の状況を聞かれていたことを意味していて。その誰かとはあいつらの誰か以外ありえないわけで…。

 

「…あっはは、困ったね…。」

「…」

「もういっそのこと私と付き合ってることにすればいいんじゃない?」

「勘弁してくれ…。」

 

 これからどうしようか頭をフル回転させながら俺と一花は急いで体を拭いて服を着るのであった。

 

…どうか夢でありますよーうに。

 



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五つ子の長女がこんなに積極的でえっちぃわけがない!2回目

一花と風太郎がもう一回エッチする話。


「…はぁ…んっ…んんっ……あっ…フー…タロー…くん…」

 

(あっ…イきそ…)

 

「はぁ、はぁ…ふぅ…。」

 

(指なんかじゃ物足りない…。欲しいよ…フータロー君…)

 

 

 チュンチュンと小鳥がさえずり、カーテンの隙間からは陽の光が差し込む。普通の人ならいい朝だ、と元気よく起きるのだろう。だが、少なくとも今日に限っては憂鬱としか言いようがない。

 

「…また一睡もできなかった。」

 

 一花と肉体関係を持ってしまってから数日が経つ。ちなみにあの後、帰ってきた他の姉妹と一緒に勉強会をしてその日は終了した。

姉妹のうちの誰かに俺と一花の風呂でのやりとりを聞かれたはずだが、誰からも追及はされなかった。そのことを他に言うつもりもなく、聞かなかったことにしてくれるということなのだろうか。それなら問題無いんだが…いや、そもそも肉体関係は大問題だが…

 そしてさらにここでもう一つ問題が。

 

眠れない。

 

 原因は一花との行為を思い出してしまうことだ。以前の俺はそういったことにあまり興味がなかった。年頃で知識もあるのに自慰行為はほとんどやらないほどに。だが、知ってしまった。最高の快楽を。

 らいはと親父が寝静まったタイミングでこっそりトイレで一人やったりもしたが、いくらやっても最高の味を知ってしまった体が、頭が満足しない。

 そんなこんなでここ数日、ムラムラでほとんど寝れずにいた。

 

「…準備して学校行くか…。」

 

 らいはが用意してくれた朝食を食べ、俺は今にも死にそうな体に鞭打って家を出た。

 この後、更なる試練が待ち受けているとも知らずに…

 

 ポケットに手を突っ込みながらいつもの通学路を歩いていると、コーヒーを片手に伊達眼鏡をかけた大女優様が居た。

 修学旅行が終わってからの、朝の通学路で一花と会うのはこれが初めてとなる。

 前までは会うたびに偶然だねーとか言っていたが、今思えば偶然があんなに続くとは思えない。

 やっぱり俺が好きだからってことだよな…?

…考えないようにしておこう。でなければまたムラムラが再発してしまう…。

 

「あ、フータロー君、おっは〜…」

「…元気無いな。」

「それが最近寝れなくてね…。フータロー君こそ目の下の隈が酷いけど?」

「…お前と同じだ。」

「フータロー君も?コーヒー飲む?少しはスッキリするかも。」

「…じゃあ少しだけ。」

 

 俺は一花から飲みかけのコーヒーを受け取る。

一口飲むと口一杯に苦味が広がる。普段ならこんな苦い物は飲まないが眠気覚ましには丁度いいか。と思ったが、カフェインがそんなすぐ効くはずもない。

 

「あ、間接キスだね。」

「白々しいな…。今更そんな程度気にしねーよ。」

「それって、私とあんなことしたから今更こんなんじゃ興」

「言わなくていい。」

 

 一花はにやにやしながら俺を見てくる。

それに対して俺はそんな顔で見るなとの意味も込めて「ご馳走さん」と強引に一花にコーヒーを返す。

 

「フータロー君が飲んだ後のコーヒーは美味しいなぁ。」

「そんなんで味が変わってたまるか。」

「好きな人との間接キスは嬉しいし、そんなのでも味が変わってしまうのだよフータロー君。」

「…さいですか。」

 

 そんな下らないやりとりをしながら俺と一花は並んで歩く。

 

「フータロー君はなんで寝れてないの?」

「…遅くまで勉強。」

「あはは、フータロー君らしいよ。真面目だね。私はね」

「言わなくていい。」

「フータロー君とのエッチを」

「言わなくていい。」

「思い出しちゃってオナ」

「言わなくていい!難聴かお前は!」

 

 一花の自慰は実際に見てしまっているため、思い出してしまわないよう一花の言葉を遮る。

 朝からなんてこと言い出すんだこの長女は。今の俺にそんな会話が出来るほどの体力はない。

 

「あれ?私が言う前から分かってるような反応だね?ひょっとしてフータロー君も勉強じゃなくて私と同じ理由で眠れてなかったりするのかな?」

「………………」

 

 一花はそんな感じで俺を煽る。こいつの態度から察するに初めから分かっていたようだ。否定出来ないが肯定はしたくない。とりあえず無言でいると、

 

「ねぇフータロー君。」

「なんだ。」

「選ぶ相手は決めた?」

「…まったく。」

「そっか。でも、女の子を待たせるのはあまり感心しないかな?」

 

 一花は俺に助言してくれた、「私たちは覚悟の上だから、しっかり考えて答えを出して」と。

 それが最善なのだろう。今まで恋愛なんて全くと言って良いほど無縁だった俺でも流石にわかる。だが…

 俺は、知らず知らずの内に一花にこう話していた。

 

「どうしても選ばないとダメなのか…?」

「え、フータロー君3股かけるつもり?」

「違う…誰とも付き合わない、という選択肢は無いのかって話だ。」

「…」

 

 はっ、と気付いた時にはもう遅かった。言い終えて初めて俺は自分が心の内を話していたことを知る。

 実際、今は誰とも付き合うつもりはなかった。

そう、"今は"。いずれ答えを出さないといけなくなることは分かってはいるが、それで誰かが泣くぐらいなら俺が全員振るという選択の方がいいんじゃないかと思い始めている自分がいる。最善とは言い難い選択だが。

 …情けない。あれだけ一花が俺に諭してくれたっていうのに、当の俺はこんなザマ。そんな俺がこいつらの誰かと付き合える、なんてのも本来ならおこがましい話だ。俺は好意を寄せられるべき人間ではない。

 

「…すまん、寝不足で頭がどうにかなっちまったみたいだ、今のは忘れてくれ。」

「…ううん、別に気にしてないよ。こっちこそ急かしちゃってごめんね?」

「…」

「…フータロー君。」

「なんだ。」

「今から一限サボってどこか行かない…?」

「…いや駄目だろ。」

 

 まずいな、一瞬でもいいなと思ってしまった俺の頭はどうやら正常な機能を失ったらしい。これでサボって二人きりになってみろ、どうなるかなんて簡単に想像がつく。

 

「一限は体育だよ?」

「それなら…って駄目に決まってんだろ。」

 

 なんか同じやりとり前にやったな。よくよく考えるとあの時も…その…そういうことだよな。

…改めて自分の鈍さを再認識する。

 ここで、隣にいた一花がいきなり俺の目の前まで来て足を止める。

 

「…なんだよ。」

「…えいっ。」

「うおっ!?」

 

 突然視界がぐらついたと思ったら、何やら口に柔らかいものが当たる。

 一花は俺の胸ぐらを引っ張り、俺の顔の位置を強制的に自分の顔の高さと同じ位置にしてから口付けをしてきたのだ。

 

「ん、ちゅっ…」

「?!?!」

 

 何が起きたのか、理解できなかった。理解しようとしたが、一花がそれを許さなかった。

 

「ちゅ…ぷはっ。」

「」

「これでサボる気になったでしょ?」

「」

「ほら、行くよ?」

 

 一花はわけがわからずフリーズしている俺の手をグイッと引っ張って歩き出す。

 

「え?あ、ちょ、おい!」

「出発進行〜。」

 

 寝不足で体力のない俺は抵抗する気もおきず、もうこのままでいいかなんて思ってしまう。思考を放棄した俺はされるがまま一花に連れていかれてしまった。

 

…一花には一生かかっても勝てる気がしない。

 

 

「というわけでラブホに来ました〜。」

「何がというわけでだ!他にも選択肢はあっただろ!」

 

 されるがまま連れてこられた場所はラブホテル、略してラブホだ。

 自動清算式というのだろうか、初めて入ったのでよく知らないが、そういう形式のところだったので年齢確認無しに入れてしまった。

 それはさておき、行く場所なんて他にもいくらでもあるのになぜこんなところに来てしまったのだろうか。ラブホでやることなんて限られていて、大抵は性行為をするために来る。一応休憩するために使われることもあるらしいが…今回は後者であることを願う。

 

「まぁまぁ、これも考えが無いわけじゃないんだよ。」

「嫌な予感しかしないが一応聞こうか。」

「二人とも睡眠不足なら寝ればいいわけだよ。でもお互い欲求不満で眠れない。ならやることは一つ!やってスッキリして寝る!簡単でしょ?」

 

 蓋を開けてみれば理由は両方だった。後者はまだしも、前者は認めるわけにはいかない。

 

「あのなぁ…俺が容認するとでも?前回それで痛い目にあっただろ。いい加減学習しろ。」

 

 当たり前だが一回やってしまうと二回目以降はハードルが下がる。だからこそもうこれ以上ハマってしまわないように自制するしかないというのに、一花はこうして誘惑してくる。本当に厄介極まりない。

 

「そう言わずに、エッチはともかく寝るだけならいいでしょ?」

 

 そう言って一花はベッドにダイブする。

 

「おぉーっ!ベッドは久しぶりで気持ちいいなぁ〜。ほら、フータロー君もおいでよ。」

 

 一花は自分の隣に空いているスペースを軽く叩いてこっちに来るように促してくる。

 たしかに魅力的だ。ここ数日全く寝れてない俺にとってベッドは天国に見える。それに、一回だけ三玖のベッドで寝たことがあるからこいつの気持ち良さはすでに知っている。

 夜はあれこれ考えたり悶々としてしまって寝れないが、睡魔がピークに達している今なら寝れるだろう。ここまで来てしまったんだし、寝るぐらいならいいか。

…いや良くねえよ。絶対その流れでヤッてしまうだろ。だが、ベッドの魔力には勝てなかった。

 自分の流されやすさを内心恨みながら俺は一花の横に寝そべる。

 

「…これは…いいな。」

「うん、本当にベッドっていいよね…」

 

 しばらく無言でベッドの心地よさを堪能する。このまま夢の世界に旅立ってしまおうか、なんて思っていたら一花から話しかけられる。

 

「ねぇ、フータロー君。」

「…なんだ。」

「そっち寄っていい?」

「…」

 

 ベッドが心地よくて一花の申し出を断る気が起きない。無言は肯定と受け取ったのか一花は俺の返答を待たずして体を寄せ、さらには腕に抱きついてくる。

 一花の胸の感触が伝わって来てしまい、俺のブツが少し反応するが理性で抑え込む。

 

「えへへ…あったかいなあ…。」

「…たくっ。」

 

 本当は心を鬼にして一花を振りほどかないといけない。たが、甘い雰囲気と人肌の温もりが俺を掴んで離そうとしない上に、一花の幸せそうな笑顔を見ると抵抗する気もなくなってしまう。せいぜい歯を食いしばって照れ隠しするのがやっとだ。

 そして、鈍い俺でもわかる。この感じは最後までやってしまう雰囲気だと。こんなに甘い雰囲気でやらない方がおかしいとさえ思ってしまう。だが俺はそこで耐えられる、鋼のメンタルを持つ男だ。もし誘われてもきっぱり断ろう。そう決意したところで早速魔の手が襲いかかる。

 

「フータロー君…しよ?」

「…駄目だ。」

「じゃあキスだけでも。」

「…それも駄目だ。」

「一回だけだから、ね?お願い…」

 

 一花は自分の胸を強調するように押し当ながら、唇をちょっと前に突き出して俺にお願いしてくる。

 …本当に狡いと思う。こんな頼まれ方されたら絶対に断れない。普段は長女でお姉さん気質の一花だが、甘えさせるとこうも攻撃力が高いのか。女優を甘く見ない方がいいな…

 

「…っ、一回だけだぞ…。」

 

 なかなか引き下がらない一花を前に折れてしまう。

 正直、内心では自分のチョロさに辟易している。何が鋼のメンタルだ、口では嫌々言っていても少し求められるだけで内心では凄く嬉しいし、キス一回をお願いされれば本番行為よりハードルが低い分すぐ甘くなってしまう。

 お互いに顔を少し紅潮させながら、ゆっくりと顔を近づける。そして、とうとう唇同士が触れ合う。

 最初は軽く、お互いの唇の柔らかさを楽しむ。そして徐々に激しくしていき、さらには舌を絡ませる。先程までコーヒーを飲んでいたため少しだけ苦いが、唾液の甘さもあって不思議な味がする。

 

「んっ…ちゅ…はぁ…」

 

 ひとしきり唾液交換が終わり、俺と一花の唇が離れる。唾液の糸をひきながら恍惚とした表情の一花はとても色っぽくて、彼女のそんな表情が何故だかたまらなく愛おしく感じる。

 

「…お前、本当にキス好きだよな。」

「フータロー君は嫌い?」

「…嫌いだったらこんなにしねーよ…。」

「…もう一回しよ?」

「…」

 

 これ以上は本当に止まらなくなってしまう、だけどもう一回したい、そんな感じで葛藤に陥っている間に一花の顔がまた近づいてくる。

 すぐそこに唇がある。ちょっと顔を動かせばキスできてしまう、そんな距離。だが、一花はそれ以上動こうとしない。どうやら焦らしているようだ。

 もう我慢の限界だった。俺は一花を抱き寄せて再びキスをする。さっきとは違い、今度は最初から全力でお互いの唇を貪り合う。

 

「ちゅっ…ちゅる…んちゅ…んっ…はぁ…」

 

 もっと相手を感じたい、もっと…もっと…!そんな想いが通じ合い、お互いに強く抱きしめ合いながらもキスは一向に止まらない。相手に自分の一部を享受してほしいのか甘い唾液はとめどなく流れ込んでくる。

 歯茎や頰の内側を舌でなぞり、それが終われば今度は舌を唇で愛撫する。

 時間にして5分ぐらいだろうか、ようやく二人の唇同士が離れる。

「ちゅっ…ぷはっ。…結局一回だけじゃなかったね。」

「誰のせいだと思ってるんだ…」

「あ、ひどい。2回目はフータロー君からしてきたくせに、私のせいにするなんて。」

「いやそうだけど、お前それを狙ってただろ…」

「……むぅ。」

「…そんな顔膨らませて怒るなよ…俺が悪かったから許してくれ。」

 

 これも複雑な乙女心というやつなのだろう。正直、何故こんな程度のことで怒ってしまうのか理解できない。そんなんだからデリカシーが無いとか言われるんだろうが…。

 

「…じゃあ、撫で撫でしてくれたら許してあげる。」

 

 そう言って一花は抱きしめる力を更に強め、俺の胸板に顔を埋める。

 

「はぁ…ほらよ。」

「んっ…」

 

 俺は言われた通りに一花の頭を撫でてやると、一花はとても気持ち良さそうに目を細める。撫でられて喜ぶなんて犬みたいだなぁ、なんて思いながらも一花の髪はとてもさらさらしていて触り心地が良く、ずっと撫でていても飽きそうにない程だった。更には髪特有の良い匂いが俺の鼻腔をくすぐり、妙に興奮してしまう。

 

「エッチなこともしたはずなのに、なんでハグだけでこんなにドキドキしちゃうのかな…。」

「…さぁな。」

 

 穏やかな時間が流れる。今この空間には一花と俺の二人っきり、その二人がこうして抱き合っている、それだけで何故か癒されてしまう。心臓はいつもより鼓動を早めているのに、それすら心地いい。もうこのまま永遠と一花のことを全身で感じていたいとさえ思う。

 だが、それと同時に、どうしようもないくらいの黒い欲望が後から湧き上がって来るのがわかった。一花を犯したい。俺色に染め上げたい。全部俺のものにしたい。

 そんなどこから湧き出たか分からない欲望を必死に抑えていると一花は言う。

 

「ねぇ、フータロー君。」

「…なんだ。」

「したいなら、してもいいんだよ?」

「…」

「フータロー君なら、私も嬉しいから…しよ?」

「……」

 

 いつも狙ってやっているのか、一花はいつも欲しい時に欲しい言葉を言ってくる。理性ではダメだと分かっていても、体が全力で一花を欲していた。

 

「……あのなぁ、俺たち付き合ってるわけでもないのに、そんなポンポンやっていいものでもないだろ…。」

「キスはするのに?」

 

 …ぐうの音も出ない。キスして抱きしめあって、それなのにその先をやらなければセーフ、なんて都合が良すぎないかと自分でも思ってしまう。

 だが、だからと言ってそれ以上はやらない方が良いに決まってる。

 

「うぐっ…それは謝る。だとしても、これ以上は流石に駄目だろ…」

「もう一線超えてるんだから、今更同じじゃないかな?」

「だからってこれ以上やって良い理由にはならん。」

「むぅ、私はして欲しいのに…フータロー君はしたくないの?」

「…したくない。」

「ほんとに?フータロー君のここはこんなにおっきくなってるよ?」

「…」

「…私は、フータロー君から正式な返事を貰えるまでは体だけの関係でも良いと思ってるよ…フータロー君はどう?」

「どうって…」

「私はもう我慢できないから…したい…。」

 

 脳を溶かすような一花の優しい囁き。

 これは本当に駄目なやつだ。それは分かっている。だが、一花の誘惑で溢れ出てくる性欲を前に俺の理性はあまりにも無力だった。どうしても一花と交わりたい思いが勝ってしまう。

 

「〜〜〜っ!だぁ、くそ!言っておくが、制御できる自信ないからな…!」

「ふふっ、やる気になったんだ、嬉しいなぁ。いいよ、フータロー君の好きにして…?」

「…っ」

 

 そう言われて俺は一花の服を一枚一枚脱がせていく。ただ脱がせるだけなのに、禁忌を犯しているような背徳感がより一層俺を興奮させる。

 そして、ついに下着姿になった一花を見て俺は思わず見惚れてしまった。

 

「…お前っていつ見てもほんとに綺麗だよな…。」

「恥ずかしいからやめてよ…」

「別に恥ずかしがることないんじゃないか?これだけ綺麗なら。」

「〜〜っ!そうじゃなくてっ!…もう、なんでフータロー君ってそういう事さらっと言うかな…」

 

 いつも達観していて、俺を振り回してくる一花の恥じらう姿はとても新鮮で、俺のブツはより一層硬くなる。

 俺はすぐに一花のショーツを脱がせる。脱がせたショーツは愛液の糸を引いているほどに一花はもう濡れていた。そんな卑猥な光景を見ていよいよ我慢できなくなったところで一花から追い討ちをかけられる。

 

「さっきのキスで、もうこんなに濡れちゃったから…もう挿れても平気だよ…?」

 

「っ、一花!」

「あっ!」

 

 俺とのキスでこんなに濡らしてくれたのかと思うと、嬉しいやら興奮するやらでもう頭の中が錯乱してしまう。だが、一花の中に挿れたいというだだ一つだけははっきりしていた。

 ラブホ内にはゴムがあることも忘れ、自分のそそり立った一物を生で一花の中に挿れる。前回は押し拡げる感じだったが、今回は一花の入り口が俺のものを飲み込むかのようにすんなりと入っていく。さらに、前回よりも愛液の量が多いおかげで滑りがよく、ありえないほどの快感に襲われる。

 

「あっ…んっ…すごっ…!」

「くっ…お前の中、凄い事になってるな…挿れただけなのに…。」

「だって…ずっとフータロー君のが欲しくて切なかったんだもん…。入れただけで軽くイっちゃった…。」

「〜〜〜!何回俺をその気にさせれば気がすむんだよ…!」

 

 一花の一言で完全に吹っ切れてしまい、本格的に腰が止まらなくなってしまう。鳴り止まない水音、ピストン運動で揺れる一花の果実、恍惚とした表情。その全てが俺を余計に狂わせる。

 

「フータロー君っ…キス…して…?」

「…っ」

 

 一花は涙目になりながら懇願する。その姿は俺の最後の良心を消し去るには十分すぎた。知性のかけらもない、酷く本能的なその行為は拍車をかけて荒々しくなる。快楽を求め、ひたすら唇を貪りながら一花に腰を打ちつける。

 なるべく長く味わっていたかったため、射精感がある程度高まったところで少し腰を止める。

 

「悪い、少し休むぞ…。」

「…フータロー君、舌出して。」

「…?こうか?」

「…はむっ。」

「?!」

「ちゅ〜っ。」

「?!?!」

 

 言われた通りに舌を伸ばしたらそのまま一花に吸われ、その後は挟まれたり転がされたり、今までにない新しい感覚に目が回りそうになる。

 

「…んっ、ご馳走さま。」

「…食い物じゃねんだぞ。」

「美味しかったよ?」

「…」

「ほら、腰止まってるよ?」

「………少し激しくするぞ…!」

「え?あ、〜〜〜っ!」

 

 中断していた出し入れを再開する。やられっぱなしは癪なので、前回の性行為で知った一花の弱点を徹底的に攻める。ダメ、止まってと懇願されるがそこは容赦なく無視する。

 

「きちゃう…きちゃうからぁ…止まってよぉ…!」

「制御出来ないって言っただろ?」

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 ピストンを早めると、一花は声にならない声をあげてイってしまった。その際に一花の膣が急に俺のものをきつく締め付けてきたせいで陰茎を抜くタイミングを完全に見失い、中に思いっきり射精してしまう。

 ああ、この感じだ。頭の中が真っ白になるほどの快感がずっと欲しかった。数日分の欲求不満を全て射精に変換して一花の中を白く染め上げる。やばいと分かっていても、快楽に抗えない。それに対して一花の膣内も搾り取るようにうねり、尿道の中の最後の一滴まで搾り取られてしまう。

 長い長い射精が終わると俺は挿入したまま一花の上に覆いかぶさり、2人して荒ぶった呼吸を整える。その過程で俺は徐々に理性を取り戻していく。

 

「…フータロー君って案外怖いもの知らずだよね。」

「いや、ほんとにすまん…。」

「できちゃったらどうするつもりなの?」

「…その時は」

「その時は?」

「勿論…責任を取るしかないだろ…。」

「…」

「おい、なぜ今の話をした後で腰を動かす。」

「もう一回しない?」

「理由を聞こうか。」

「だって責任とってくれるんだよね?ならもっと中に出してもらった方がいいかなって。」

「捨て身すぎる…」

「あはは……ところでフータロー君。」

 

 一花はぎゅっと俺を抱きしめながら耳元で囁いてくる。

 

「したくなったらいつでも言ってね。お姉さんが相手してあげるから…」

「…一体俺をどこまで誘惑すれば気がすむんだお前は…」

「フータロー君が私を選んでくれるまでかな?」

「これ以上やったら俺は人として終わってると思うんだが…」

「2回も中に出してるのに?」

「それは言わないでくれ…不可抗力だ…。」

「抵抗しなくて大丈夫だよ、むしろ嬉しいから。」

「何も大丈夫じゃない…」

 

 今に始まったことではないが、どうしてそこまでして俺と恋人同士になりたいのか理解に苦しむ。一花レベルならもっと上の方を目指すべきだと思うのだが…少なくとも俺なんかには勿体なさすぎる。

 なんてことを考えながらこのまま少し寝てしまおうとしたが、流石にこれ以上は時間が許さなかった。俺と一花は急いで体を綺麗にし、急いでホテルを後にした。

 

 

 

「フータロー君、さっきは辛そうだったけど、少しは元気でた?」

「…なに、もしかしてお前が俺をあそこに連れてった理由って、俺がさっき落ち込んでるような態度とってたから元気付けようとしたのか?」

 

 ここまで鈍いと救いようがない。まさか気を使わせてしまっていたことに気づかないなんて。本当に情けない。だが、もうちょっと別の励まし方は無かったのだろうか…。まぁ、これはこれで…

いや良くねえよ。

 

「エッチなことしてあげれば少しは元気出るかなって思って。」

「俺を何だと思ってやがる。」

「中に出しちゃう人?」

「洒落にならないくらい俺の良心が痛むからやめてくれ…。」

「…あと、世界一大好きな人、かな…?」

「…っ」

 

そう言って一花は俺と腕をがっちりと組む。

 

「…おい。」

「学校までならいいでしょ?」

「…ったく。」

「あははっ、なんかカップルみたいで良いね。」

「…もう好きにしてくれ。」

 

 

 寝不足のせいか、または別の理由か、一花に腕を組まれながら見上げた空はいつもよりひどく眩しく映った。その眩しさで思わず目を閉じ、俺は一筋の涙を流す。

 

何やってんだろ、俺…。



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淫らな四葉ちゃんは自制ができない。

四葉と風太郎がエッチするお話。


 鬱陶しいぐらいに天気が良い。

 

 俺はこんなにも頭を悩ませていて、対照的に空は何一つ憂いが無さそうで、それが何故か気にくわない。

 澄み渡った青い空を睨みつけてはみるも、当然ながら一向に心が晴れることはなかった。

 

「………眠い…」

 

 イニシャルがラのホテルから場所が変わって今は学校の屋上。人がいないのをいいことに、寝そべりながら思っいきりあくびをする。

 ちなみにあの後、遅刻した一花と俺は他の姉妹に問い詰められた。当然だ、二人仲良く一緒に遅刻したのだからな。何かあったのかと心配する声と、抜け駆けしてないかの心配をする声(主にニ乃と三玖)と二つが上がったが、そのどちらも嘘を並べまくってなんとか誤魔化した。

 それから授業を受け、昼休み。なのだが、お金が無いのでただ今断食中…。何故お金がないのかというと、今朝のホテル代を払ったからだ。料金を払うとき一花に「お姉さんが奢ってあげる」と言われたが、それだとただのヒモ野郎になってしまうので全力でやめさせ、料金はきっちり等分した。そんな経緯で思わぬ出費をしてしまい、節約のために焼き肉抜き定食ですら食べていなかった。ただでさえ普段からあまり食べていないのに、これでは飢え死にしてしまうかもしれないという警告なのか、先程から腹の虫が暴れまくっている。要は死ぬ程腹が減っていた。

 その上、先程の一花との行為で相当体力を消耗したせいか今は抗い難い睡魔が襲いかかっていたので、やることも食べるものもなかった俺は屋上に来て少し昼寝をしようと寝そべっていた。

 だが、寝る前にまた物思いに耽ってしまう。内容はもちろんあいつらの告白のことだ。

 あいつらのことを大切に思うなら早々に白黒つけないといけないのだが、大切だからこそあいつらとのことはすぐに答えがでるものではないのも事実で。特に一花との関係はこのままズルズル引きずって良いものではない。

 

「…くそっ、なんでこんな悩まなきゃならないんだ…。」

 

 しかしながら、今ここで焦っても仕方がない。少しの間ぐらいはこのモヤモヤを忘れてしまおう。そう思い、俺は瞼を閉じて眠りに落ちた。

 

 

 

ガチャっ!ギィィ…バタン!

 

「…?」

 

 昼休みももう半分ぐらいだろうか、俺は屋上の扉が開閉する音で半分ほど意識が覚醒してしまう。

 

(せっかく人が気持ちよく寝てたのに、安眠を妨害しやがって…)

 

 内心悪態をつくが、それ以上気にしても仕方がないので、とりあえずもう一眠りしようとするが、

 

「…あれ?上杉さん…?」

 

…なんでこうもタイミングが悪いのか。この声、呼び方、見なくても分かった。四葉だ。

 こんな時でなかったら、まぁ渋々構ってやるのだが…今は猛烈に眠たいし力も出ないので、四葉のことを無視して俺は再び夢の世界に旅立とうとする。

が、

 

「……寝てる?」

「………」

「上杉さーん、寝てるんですか〜?起きないとイタズラしちゃいますよ〜?」

 

 本当にいたずらしてきたら許さないが、四葉のことだ、そこまで本気で言ってるわけではないのだろう。寝ている人間にいたずらするような奴じゃない……………はず。

 四葉に構うのも起きるのも非常に面倒なので狸寝入りを決め込むことにする。

 

「……」

「…本当に寝てるようですね。」

 

 帰ってくれるか?と思ったが、四葉の足音は遠ざかるどころかむしろ近づいて来ていて、それはつまり俺の方に来ているということを示していた。

 しばらく足音が続き、そして止む。次に、少し上履きが擦れる音と、ペタンッと柔らかい音がする。

 四葉が寝てる俺の隣まで来て座ったことが、目を閉じていても分かった。こいつは本当にいたずらするつもりで来たのだろうか、できることならやめて欲しい。いっそやられる前に阻止しようか。

 …やめておこう、こっちから仕掛けても色々面倒になるだけだ。眠いし、力は出ないしで、正直動きたくなかった。

 

「…………」

 (……?)

 

 何もしてこない。いや、何もしないで欲しいんだが、俺の側まで来るということは何か目的があるわけで…何もしないというのも不自然な話だ。俺の隣に座ること自体が目的、なんてことはあるわけがないだろうし。

 そう思っていた矢先に四葉が

 

「…少し、お邪魔しますね。」

 

 と言う。次の瞬間、俺の胸に何かが置かれる感触がした。なんだ?と疑問に思い、薄目を開いて見ると、そこには四葉が俺の胸に顔を埋めている姿があった。

 

(?!、どういうつもりだ?!)

 

 狸寝入りを決めこんだ手前、今更「起きてた」なんて言うのも気まずい。だが、だからといって四葉をこのまま放置しておけば俺が変な気を起こしてしまいそうだ。そのせいで一花とやってしまったという前例もある。そうなる前に何とかしなければならないのだが、何とかするといっても具体的にはどうしたらいいかわからない。もう普通に起きてたことを話すか?

 …ここまで滅茶苦茶早い速度で自問自答を繰り返す。が、一向にこの状況を切り抜ける良い策が浮かばないでいた。

 そして、どうやら時間切れになってしまったらしい。この状況をなんとかする前に、四葉はさらに俺に密着してきた。徐々に俺と四葉が触れ合う面積が増え、制服越しに伝わってくる心地よい人肌の温もりに溶かされそうになる。

 ついに、四葉は全身を使って俺に抱きついてきた。身長差があるので、四葉の顔が俺の胸の位置にあっても二つの体は隙間なく密着する。

 引き締まった体は非力な俺でも軽いと感じてしまうが、その柔らかい重みは何とも言えない心地よさがある。そして、五つ子の共通点である程よく平均以上に育った二つの柔らかな膨らみが、四葉の体重を使って押し付けられる感触と、ほんのりと甘い特有の良い香りは俺の忍耐力を削り取っていく。

 もはや四葉のことしか感じることができない。目を閉じてる分、他の感覚が鋭敏になっているから尚更感じてしまう。

 俺はどこで選択肢を間違えたのか答え合わせを始める。あそこで素直に起きてることを言えば良かったのか、そもそも屋上に来なければ、あるいはもっと前の一花の誘惑に耐えていれば。

 そんなことを考えても仕方ないのだが、悩殺された俺はまともに思考できるはずもなく、少しでもブツが反応しないように別のことを考えてそのままじっと耐えてやり過ごすしかなかった。

 だが、そんな俺の唯一残された行動でさえ嘲笑うかのように四葉は抱きつくのをやめない。

 

「…ここまでやっても起きないんですね。」

「…………っ」

 

 これが四葉の言うイタズラなのだろうか。ここまでされてしまっては変な気を起こす前に起きている趣旨を伝える方が賢明な気がする。そもそもいたずらした四葉が悪い気もするが、ここは心の広い俺が「無視して悪かった」と素直に謝ればことは丸く収まるだろうか。

  耐久しようと頑張ってはみたがどうやら時間切れくさい。はっきり言って気まずいが、やむを得ない。俺は四葉に謝ろうと上半身を起こして口を開ける。

 

「…おい四葉、俺は起きてるぞ。寝たふりをしたのは謝るからそろそろ離してくれないか。」

「………」

「おい。」

「……………」

「おい。…こいつ、もしかして寝た?」

「…ぐがーーーっスピーーー。」

「…お前起きてるだろ。」

「バレましたか。」

「当たり前だ…。」

 

 というか騙す気がないだろ。いくら嘘が超絶下手な四葉でもグガーはないだろ、流石に。とんだ茶番をやらされたものだが、まあいい。とりあえず退いてもらおう。

 

「そろそろ退いてくれ。」

「…もう少しこのままがいいです。」

 

そう言って四葉は俺の背中に腕を回す。

 

「おい…なんでこんなことする。」

「なんででしょうね?」

「質問してるのは俺なんだが…。」

「当ててみて下さい。見事正解すればもっとハグしてあげますよ。」

「そこはどいてくれよ。」

 

 なぜ俺はこんな茶番に付き合わされているのだろうか。力ずくで………無理か。俺の筋力の無さを忘れていた。まぁ、たとえ俺に筋力があったとしても力ずくではやらないだろう。そこまで拒絶するのは流石に気の毒だ。

 正解ならそのまま、ということは間違えれば解放してくれるのだろうか。ぱっと思いつく限りありえなさそうな理由は…

 

「…お前俺のこと好きなの?」

「……ぶー、外れです。」

 

 とりあえずありえなさそうな理由を答えてみたが、無事に間違えたようだ。当然だな、こいつが俺を好きになるわけがない。一度、四葉と俺が付き合ってるという噂が流れたこともあるが、その時に俺が言った「あり得ないだろ」という言葉に対してこいつも肯定していた。たかが抱擁だ、これはきっと…あれだ、最近流行のスキンシップか何かだ。勘違いするな、俺。

 

「外れたので罰としてこのままですね。」

「いやどっちにしろ解放されないのかよ。」

「…そんなに私とくっつくのは嫌ですか?」

「……いや、別に。」

 

 なぜ肝心なところで本当のことを言ってしまうのか。嘘でもいいから嫌というべきだった。

 

「…なら、いいですよね。」

「もうすぐ昼休み終わるんだが。」

「知りません。」

「知ってくれ…。」

「せめて昼休みが終わるまではこのままで。」

「人が来たらどうする。」

「鍵をかけたので安心してください。」

「用意周到だなおい。」

 

 俺の言葉を最後に、しばらく沈黙が続く。

…なんだこの甘酸っぱい空気は。

 何かに気をそらしてないと四葉のいろいろ柔らかいところを意識してしまいそうになるので、俺は会話を続けることで気を紛らわそうと試みる。が…

 

「…それで、一体どういうつもりなんだ。四葉」

「…もう一度解答権をあげます。当ててみて下さい。」

「当ててみろって言われてもな。」

「…じゃあ、少しヒントをあげますね。」

「ヒント?」

 

四葉の顔が近づく。

 

「はむっ。」

「……」

「……ちゅっ。」

 

 

「………………………………………!?!?!?!」

 

 

 理解するまでにタイムラグが生じる。

 口を開けた次の瞬間、四葉は俺の顔に手を添え、顔を近づけて唇をはむっと食み始めた。

 今回の正しい選択はどうやら口を開けずにそのままやり過ごす方だったようだ。それならばまだ舌が入るようなことにはならないし、まだマシな方だっただろう。一度侵入してしまえば本人の意思以外で外に出すことはもう不可能だ。

 戸惑っている俺をよそに、四葉は夢中になって接吻を堪能する。

 

「んっ…ちゅ…ちゅる…はぁ…」

 

 状況をやっと把握したと同時にキスは中断され、四葉の顔は離れていく。

 

「んっ…ぷはっ…。」

「ぁ………っ!ぉ………っ!」

 

 四葉は涙目で俺を見つめる。それに対して俺は四葉の行動に驚きすぎて言葉を発しようとするも喉から上に出てこず、魚のように口をパクパクさせてしまうだけだった。一花とあれだけやったのだからそろそろ俺もいい加減慣れてもいいのはずなのに。

 最近の女子高生は付き合ってもいない男に対してキスをするのが流行しているのだろうか。普通は恋人同士になってからやるものだという俺の中での常識と順序が逆転している。それとも俺がおかしいのか。

 加えて、どうやら姉妹というのはキスが上手いという点も似るようだ。キスの技術がもはや初めてのそれではない。俺の知っている普段の四葉は天真爛漫なおかつ精神的にも少し幼さが残る奴だったはずで、今みたいにこんな性的魅力があるような奴では断じてない。まるで、いつもの四葉に魔性が付与されたような、流石に言い過ぎかもしれないがそんな感じさえする。

 いや、そんなことはひとまず置いておこう。脳の情報処理が終わり、落ち着きを取り戻した俺はようやく言葉を発せるようになる。

 

「私の気持ち、理解してくれましたか…?」

「気持ちって……お、お前…俺のこと好きじゃないって………」

「そうですよ、上杉さんのことは好きなんかじゃありません。」

「じゃあなんで…」

「なんででしょうね。見事正解したらもう一回キスしてあげますよ。」

「またそれかよ…」

 

 腕で拘束されてない今なら四葉のことをどかそうと思えばどかすことはできる。だが、なぜかは分からないが四葉を前に動けなくなってしまっていた。何か超常的な力で金縛りにあったかのように体が言うことを聞いてくれない。

 

「分かりましたか?」

「…分からん。まるで分からん。」

「…そうですか、なら罰ゲームですね。」

「は?んぐっ、」

「ちゅっ…んっ。…キスってこんなに良いものなんですね…。」

「…っ」

 

 今度のキスは唇が触れ合うだけだった。

 こんな中途半端なキスじゃ歯痒いだけで、もっとしっかりとしたやつをやりたいと思ってしまう。せっかく取り戻した僅かばかりの冷静さも一瞬で消え去り、そして消え去った冷静さの穴を埋めるかのように頭は情欲で満たされていく。

 

「……っ、好きじゃないなら何でこんなことするんだ。」

「少しでも上杉さんに意識して欲しいなって。」

「矛盾してないか…?」

「してません。好きじゃないからと言って意識して欲しくないわけじゃありませんよ。」

「…じゃあ意識してやるから解放してくれないか。」

「嫌です。」

「そろそろどいてくれないと色々困ったことになるんだが。」

「……」

「頼む…」

「…分かりました。ですが上杉さん、その前に一つ聞いても良いですか。」

「…なんだ。」

 

「…上杉さんは、一花と…男女の秘め事をしたんですよね…?」

「!」

 

 いきなりの発言に少し驚くも、いずれ言われるだろうと覚悟をしていたことなので、そこまで取り乱すことはなかった。

 

「…あの時脱衣所にいたのはお前だったのか。」

「はい。会話を盗み聞きしてしまったことは謝ります。ですが、これだけは知りたいです。上杉さんは誰と付き合うのか、もう決めたんですか?」

「…いや、まだだ。それ以前に、あいつらの誰かと付き合うかどうかさえ怪しい…。」

「そうですか…。」

「なんでそんなこと聞く。」

「それは…私も、上杉さんの彼女になりたいからに決まってるじゃないですか。」

「……………えっ?」

 

 俺の彼女になりたい??

 どーゆーことだ…。好きじゃないのに付き合いたい、矛盾してないか。頭の中が疑問符で埋め尽くされる。

 

「…嫌ですか?ただでさえ3人に告白されて困っているのに、私にまで告白されて。」

「………別に嫌ってことは無い。だが、非常に困る。」

「あはは、ですよね…。それを承知の上で言ってるんです、許してください。」

「また随分とたちの悪い…。」

「…上杉さんと一花のせいですからね?私が告白しようと思ったのは。」

「…………」

「あのやりとりを聞いている時、どうしようもなく辛かったです。だから、途中で一花と上杉さんがまた事に及ぼうとした時、つい逃げ出してしまいました。」

「…………」

「本当は、辛い気持ちを押し殺して、上杉さんと付き合える誰かを素直に祝福するべきなんだと思います。でも、あの時こう思ってしまったんです。なぜ、あそこに居るのは私じゃないんだろう、なぜ私は告白すらしてないのに諦めているのだろう、って。…やっぱり、この想いは消せませんでした…。」

「……」

 

 まさか、四葉からも告白されるとは思ってもみなかった。いつの日だったか、四葉は俺の恋を応援するとか言っていたが、もしかしてその時からか、あるいはもっと前から隠していたのかもしれない…いずれにせよ、自分より姉妹を優先してしまうようなやつだ、押し留めていたことは確かなのだろう。

 正直なところ、四葉に告白されること自体は滅茶苦茶嬉しい。嬉しくないわけがない。だが、これで泣かせてしまう人数がもう一人増えたと思うと、胃に穴が開きそうになる。

 

 

「なので上杉さん。」

「…なんだ。」

「私にも、一花にしたように…わたしにも同じことをしてくれませんか…?」

 

 その一言がどんなに危険か、もうここ最近で痛いほど知った。現にドス黒い何かが俺の中から湧き上がってきていた。だが、惚れた弱みに付け込んで肉体関係になるなんてことはしたくなかった。

 

「…お前の気持ちは分かったが、それに関しては容認出来ないな。」

「なんでですか?」

「なんでって…どう考えても不純だろ。」

「一花とは良くて、私とは嫌と。」

「そうじゃなくてだな…それについては反省してる。それに、やらかしたから尚更これ以上は駄目なんだよ。」

「どうしても駄目ですか?私だって、上杉さんとそういうことしたいって思うんですよ…?」

「…っ、だとしてもだ。」

「むぅっ」

「そんな顔しても無駄だ。」

「………ここまで言ったのに駄目ですか。…なら仕方ないですね。」

 

 

 四葉は顔を膨らませて不満げにしながら、ベストを脱いでワイシャツのボタンを外し始める。

 ……………は?なんで外してる?

 

「お、おい!何してんだ!」

 

 四葉はそんな俺の問いかけを無視し、ボタンを外し続ける。

 やめさせないといけないのに、頭でわかっていても体が中々動かない。もう少し意思通りに動いてくれないのか、この体は。

 

「…どうですか?」

「いやどうですかって…」

「す、スタイルには少し自信があります…」

「…っ」

 

 先程まで俺に押し付けていた大きな双丘がワイシャツの開いた所から見えており、ブラもずらしたため薄いピンク色の突起も含めて全部が見えてしまっている。その行為を恥じらっているのか、それとも早く愛してほしくて発情しているのか、どちらとも取れるような顔をしていて、その表情と淫靡な果実にどうしても目が吸い寄せられてしまう。心臓はドクドクとうるさいぐらい脈打ち、全身の血液の温度が上昇するのを感じた。

 こんなところで胸を露出するなんて正気か。そう四葉に言うべきなのだろうが、性行為をしたいと思っている俺もすでに正気というものはどこか置き去りにしてしまったらしい。

 

「ちょっとは、その気になりましたか……?」

 

 顔を真っ赤にして、少し上目遣いで聞いてくる四葉に少しくらっとしてしまう。

 四葉は更に追い討ちをかけるようにスカートを少しめくり、ショーツに手をかけてゆっくりと下におろす。脚を少し曲げ、ショーツを脱ぐ。そして、顔の前でそれを軽く広げて見せてくる。

 

「おい…ほんとによせ…。」

「私は…上杉さんといつ秘め事をしても良いように、あの日から大人な下着を着るようにしてたんですよ…?」

「!!」

 

 徐々に視界が狭まっていき、ついには四葉以外何も見えなくなる。ドロドロで黒い何かが内側から溢れてきてしまい、踠いても、足掻いても、理性が沈んでいくような、そんな感じで俺の視線は四葉の胸部と下着に釘付けになる。

 

「これ以上は本当によせって…」

「本当に嫌なら拒んでください、上杉さん…。でも、もし嫌じゃなければ……私を抱いてくれませんか…?」

 

 余程恥ずかしいのだろう、顔が真っ赤に染まっているが、それでも耐えて懇願してくる姿は俺の心臓を掴み取ってしまう。

 

「〜〜〜〜〜っ!嫌じゃないから厄介なんだよ……!」

「あっ…!」

 

 寝不足と空腹で正常な判断ができなかったのだろう。直後、本能に支配されてしまい、自分でも何をしようとしているのか分からなかった。

 気づいたら、四葉を抱き寄せ、膝立ちで口付けをしている自分が居た。

 

「んっ…ちゅる…ちゅっ…ちゅぱっ……はぁっ…」

 

 舌を舌で愛撫し、四葉を蹂躙する。もっと強く吸うために、四葉の後頭部を手で寄せ、細い腰をもう一方の腕で抱き寄せる。

 満たしても満たしてもまだ足りない、征服欲が後からとめどなく溢れてくる。お前は俺のものだと、そう示そうとさらに抱きしめる力を強め、それに応えるように四葉も俺を強く抱きしめ返す。

 その後はただひたすら、お互いに甘い蜜を与え合え、求め合う。背筋がゾクゾクしてしまうその快感をずっと味わいたくて、一体何分もの間キスをしたのだろうか。

 酸素が切れてしまったので、お互いの口が離れる。その際に、一筋の唾液の橋が、つぅっと走って途切れてなくなる。

 濃厚なキスをして欲が満たされるどころか、もっと欲しくなってしまうが、

 

「あっ…」

「!」

 

 いきなり四葉が力なく地面にへたりこむ。どうやら先程のキスで腰が抜けてしまったようだ。

 

「だ……大丈夫…か……」

「は、はい……少し、力が抜けただけで……大丈夫…です…。」

 

 お互いにまだ息が整ってない状態で話そうとしたからか、うまく言葉を言えない。

 

「はぁ…はぁ…はっ…」

 

 頭が酷くボーッとする。キスだけでこんなになるとは。今朝も一回ことに及んだはずだが、どうやら俺の性欲は全く満たされていなかったらしい。

 俺も座り込み、必死で脳の回復を図っていると、先に回復したらしい四葉が俺のスラックスに手をかけ始める。既にスイッチが入ってしまっていたため、抵抗する気なんてなく、むしろこれからするであろう行為に期待までしてしまう。

 四葉はカチャカチャとベルトを外し、ファスナーを開ける。痛いほどに勃起していた俺のものが狭い空間からようやく解放されると、四葉は舐めるでもなく、いきなりそれを咥え始めた。

 

「んっ…じゅぽっ…」

「〜〜〜〜っ!!」

 

 声を出さないように必死に歯をくいしばるぐらいしか対抗手段がなかった。

 ねっとりとして暖かい感覚が俺のものを包み込む。

 四葉は顔を動かして陰茎を愛撫しながら、我慢できなかったのか自分の手で秘部を弄りはじめた。じゅぽじゅぽという音と、四葉の秘部から聞こえてくるクチャクチュという水音が合わさって聞こえてくる。

 四葉の口だと俺のものは少し大きいのか、少し苦しそうにしながらも一生懸命になって気持ち良くしようとする。四葉が俺のを舐めながら自慰をする光景は破壊力があり、そのせいで射精まで秒読みだった。

 

「そろそろ出るから…口を離してくれ…!」

 

 だが、聞こえたはずなのに、止めるどころか四葉の口淫は更に激しさを増す。

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

 我慢できるはずもなく、俺は四葉の口の中に精液を注いでしまった。射精中も四葉はずっと口淫を続け、射精が終わっても四葉はまだ吸い続け、尿道の中に残ってしまった精液までも絞り出す。

 その過程がどれだけ気持ち良かっただろう、下手したら刺激的という面では本番行為を超えているかもしれない。

 

「んっ…もぐっ…ごくっ。」

「!!」

 

 見てみると、四葉は一生懸命になって精液を咀嚼して飲み込もうとしていた。

 

「んっ…けほっ、けほっ…」

「おい、大丈夫か?」

 

 どうやら飲み込むのは失敗してしまったらしい。

 余韻に浸りたかったがそうも言っていられなかった。俺は慌ててポケットティッシュを2枚ほど取り出し、四葉の背中をさすりながらそれを渡す。ティッシュを受け取った四葉は口内の精液をそれに出す。

 残った微量の精液が口元から伝っているその様で、射精した事で少し落ち着いていたブツがまた興奮しだす。

 

「…案外飲みきれないものですね…すみません。」

「いや、謝ることじゃないだろ…。」

「んー…やっぱり少し勿体無いです…。でも、飲み切れない程出したってことはそれだけ気持ちよかったってことですよね?」

「……まぁ。」

「なら、良かったです。」

「……っ。」

 

 そう言って四葉は嬉しそうに微笑む。その笑顔はとても愛くるしくて、胸が締め付けられてしまう。

 先程からただでさえ四葉のことを自分のものにしたくて堪らないのに、こんな笑顔であんな台詞を言われてしまっては、たがが外れてしまうというもの。四葉を心配することで取り戻したはずの少ない理性ですら、俺に間違えを犯させようと必死だった。

 

「お前がこんなエロい奴だとは思わなかったぞ…。いきなり咥え始めるし。」

「上杉さんが望むならもっとエッチな子になっても良いんですよ。」

「……」

「少しは私を抱く気になりましたか?」

「……本当にタチが悪いなお前は。」

 

 こんな事までされてしまったら、もう最後まで抱く他ない。

 俺は片腕で四葉のことを抱きしめ、もう片方の手を秘部にあてがう。

 

「う、上杉さん?!」

「してもいいんだよな?」

「そ、そうですけど、い、いきなり来るとは思ってなくて…」

「安心しろ、準備はちゃんとする。」

「準備って…」

「しなくていいのか?」

「……お願いします。」

 

 秘部の入り口を触ると、そこは既に大洪水だった。ここまで濡れているなら準備も無しに挿れても大丈夫な気もするが、念には念を入れることにした。

 愛液で濡らした中指を使って豆をゆっくりと撫でる。焦らすように、弱く、ゆっくりと。

 

「あっ…ん…うえっ…すぎ、さんっ……ンンッ…。」

「これぐらいがいいのか。」

「は…い、きもちぃ…で…す。」

 

 今にも消え入りそうな声で言う。

 抱きしめるだけでは物足りなかったので、四葉の腰に回していた腕を一周させ、そのまま双丘の片方に手をかける。それはずっしりと重く、それでいて指が埋もれそうなほど柔らかく、少しでも乱暴にすれば壊れてしまうような、そんな繊細さがあった。勝手が分からなかったため、とりあえずフェザータッチで優しく攻め立てる。それと同時に、四葉の秘部に2本目の指を挿入し、少し膣壁を押し上げる。指を動かさなくても、曲げているだけで体の痙攣によって自然と擦れてしまう。秘部と胸部の2点からくる快感に、四葉の声も甘さを増していく。

 

「あっ…んっ…」

「…お前、さっき自分で慰めてたよな。普段も一人でしてたりするのか?」

「あっ…そんなこと…んっ…なんで聞くんですかぁ……。」

「いや、お前でもそんなこと知ってるんだって思うと…な。」

「な…じゃないですよ…あっ…」

 

 そこからしばらくの沈黙が訪れる。俺は四葉を気持ち良くするために指を動かし続け、四葉は送られてくる快楽をその小柄な体で一身に受け止め続けた。

 

「あっ…ダメです…きちゃいますっ…上杉さん…っ!

あっ、〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 しばらく行為を続けていると、突然、四葉は俺を痛いぐらいに抱きしめてきた。体を震わせながら、秘部は俺の指を飲み込もうとするように脈打ち締め付ける。どうやら無事に絶頂を迎えられたようだ。絶頂が過ぎると彼女はくたっと脱力して俺に体を預けてくる。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 四葉の顔の位置的に、荒い息遣いが俺の耳元を撫でる。その呼吸音はそれだけ四葉を淫れさせた証拠であり、謎の高揚感と愛おしさを感じてしまう。

 

「………四葉、休んでるとこ悪いが、そろそろこっちも限界だ…。」

「ふぇ…?」

 

 俺は四葉の脇の下から腕を通し、抱きかかえるように持ち上げ、壁に寄りかからせる。

 

「掴まれ。」

 

 四葉の腕を俺の首に回させ、片脚を手で持ち上げてから俺のブツを秘部に軽く当てる。挿れようと思ったが、四葉の体が少し震えて強張っていることに気づいた。

 

「…怖いか?」

「…少し怖いです。ですが、言い出したのは私なので、好きにして良いですよ…?」

 

 心なしか声も少し震えている。流石の俺でも、怖がっているのに無理矢理ねじ込むような真似だけはしたくなかったので、とりあえず緊張を和らげるために、四葉の頭を撫でながら軽くキスをする。そのおかげか、四葉の少し強張っていた表情が恍惚とした表情に変わる。

 

「もう平気か…?」

「平気です…」

「…痛かったら言えよ、すぐ止める。」

「…!はい。」

 

 我ながら最低な手法だと思う。俺が欲望を抑えられないせいで我慢の強要をしているのに、四葉を気遣うことで優しさとすり替えてしまっている。四葉も合意の上なのだが、本来ならここは俺が率先して止まるべきなのだろう。だが、四葉から誘ってきたこともあり、もう止まれなかった。何より止まるつもりもなかった。

 そそり立ったものを少しずつ挿入していく。痛いからか、それとも快感からなのか分からないが、我慢しきれずに漏れ出る四葉の喘ぎは俺をさらに狂わせにかかってくる。しかし、そこは最後の良心がかろうじて挿入する力を必死に抑えていた。

 

「痛くないか、四葉。」

「はい…不思議なことに全く痛くないんですよね、処女なのに…。激しい運動で擦り切れてしまったのかもしれません…。」

「……なら一気に行くぞ。」

「いいですよ、来てください…!」

 

 俺は腰に力を入れ、残り半分ほどだったそれを一気に入れる。棒全体が暖かいものに包まれる感覚はなんとも形容し難い気持ち良さで、思わず声を上げてしまういそうになる。そして、それは四葉も同じだったらしい。

 

「あっ…!奥まで…っ入ってます…!」

「わざわざ言わなくていいから……」

「……上杉さんと一つになれて…とっても幸せです。」

「だからやめろ。」

「大好きです、上杉さん。」

「さっきと言ってることが違うぞお前…」

「好きじゃなくて、大好きなんです…」

「どーゆー理屈だよ…!」

「好き、なんかじゃ足りないってことですよ…。」

「……お前少し黙れ。」

「あっ……!」

 

 俺はさっきまでこんな小学生レベルのひっかけであんなに戸惑っていたのか、と内心呆れる。もっと言えばその台詞は少しくさすぎる。が、今のこの状況では十分俺に突き刺さってくるわけで…。

 これ以上好き勝手言わせていると主導権を奪われてしまいそうなので、少し腰を動かして四葉を黙らせる。

 

「ず、ずるいです…!」

「うるせえ。」

「んっ…!」

 

 キスで口を塞いで強引に黙らせる。それに対して四葉も対抗するように舌を甘噛みしてくる。

 隙あらば言葉責めをしてくるのは本当にやめて欲しい。ただでさえいっぱいいっぱいなのに、これ以上余裕を奪われると何をしでかすか自分でも分かったもんじゃない。

 実際、今すぐにでも四葉のことをめちゃくちゃにしてしまいたかったが、そこは気遣って少しずつ馴染ませるように腰を動かす。ゆっくりと、本当にゆっくりとだが、二人の呼吸が同調していく。

 

「あっ…上杉さん…は…気持ちいい…ですか…?」

「……まぁ。」

「よか…った、私も…いい…です。」

「……っ」

「んっ…上杉さんの…好きに…自由に動いて良いですよ…?」

「……少し激しくなるが、いいのか?」

「はい…上杉さんが気持ちよくなってくれれば…私も嬉しいので。」

「…っ!」

 

 四葉も大分慣れた頃合いで少しピストンを早めてやると、中は絞るようびくつき、絡みついてくる。徐々に出し入れする速度が上がり、それに比例して四葉の声も甘さが増していく。

 

「んっ…これ、凄い…ですね、全身で…上杉さんを感じられます…」

 

 正面から挿入しているので、必然的に密着度が高くなる。ほぼゼロ距離で喘ぎを聞かされ、なおかつ四葉は胸を露出しているため、胸板に二つの豊かな果実が押し付けられる感覚が先程よりも凄まじいせいでより一層興奮してしまう。

 

「…しっかり掴まってろ。」

「…?わっ…!」

 

 快楽量がある一定に達し、射精感が押し寄せてくる。ここで俺は四葉の地面についている方の脚を持ち上げ、宙に浮かせる。四葉は少し怖がったものの、壁があったこともあり直ぐに慣れたようだ。

 さっきの体勢のまま出しても良かったのだが、四葉のもっと深くに出したかったので、最奥に挿さるような体勢をとった。

 

「あっ、あっ、深っ……!〜〜〜〜〜っ!」

「ぐっ!」

 

 この選択は正しかったようで、先ほどよりも深いところに達したことで根元まで余すことなく締め付けられる。奥に当たる感覚で射精感がより高まる。

 

「風太郎君……大好き…!」

「〜〜〜〜〜っ!!」

 

 ゾクゾクっと背筋に何かが走る。

 既に限界近くまで来ており、更には四葉の言葉を耳元で聞かされてしまっては我慢できるはずもなく、四葉の奥に容赦なく精液を送り込む。避妊してないことなど一切忘れ、射精している間も何度か腰を打ち付けて一滴残さず四葉に受け取ってもらおうと必死になる。

 ようやく長かった射精が終わり、俺は脚をそっとおろすと、四葉は力尽きたのか俺にもたれかかる。正直こちらも相当体力を消耗していて、これ以上は立つことすら出来なかったので、四葉を抱きかかえたまま地面に寝っころがる。

 頭は酸欠でぼーっとしているが、四葉の無垢な体を自分色に染め上げた事に対する、普段じゃ絶対に得られない類の満足感で心が満たされていた。

 

「はぁ、はぁ、…なぁ、四葉…。」

「はぁ、はぁ、はぁ、…な、なんですか…。」

「先に謝っとく…すまん。」

「えっ…?」

 

 心は満たされても、ブツはまだ硬いままで。四葉の上に覆い被さり、精液でぐちょぐちょになったあそこに再び挿入する。

 

「だ、駄目…!まだっ…んっ…イッてるからぁ…!」

「知るか…。誘ってきたのはそっちだろ…!」

「そうだけどぉ…!んんっ…!」

 

 駄目、とは言っていても、膣内は出て行って欲しくないのかきゅうっと締め付けている。

 体位が違うとまた違った快感が襲ってくる。四葉をぎゅっと抱きしめながら、パンッパンッと小気味良い音とともに腰を打ち付ける。目線が合うと、お互いにキスをしたい意思を読み取ったのか、顔を近づけて再び唇を重ねる。

 

 

「ん…ちゅるっ…ちゅっ…ぷはっ…あっ…またきちゃう…!」

「…リボン取るぞ。」

 

 衝動的にリボンをとる。何故かは分からないが、うさ耳リボンがない四葉を見たくなってしまった。あまりその姿は見たことがなかったため、新鮮な感じがする。

 いつもと雰囲気が違い、さらには性に淫れたその姿を自分だけが独占していると思うと、急に愛おしさが増してしまい、ついつい頭を撫でてしまう。

 

「ふぁぁ…。」

「おまっ…耳元でそんな声出すなよ…。」

 

 四葉の甘すぎる声に脳みそが溶かされそうになってしまった。

 

「だ、だってぇ…」

 

 よほど頭を撫でられるのが良かったのか、四葉はもっとと言わんばかりに俺を強く抱きしめる。

 相変わらずの密着度で、最初から二つの体は一つだけだったかのような錯覚に陥ってしまう。

 それからは無言で四葉の体を貪った。途中で、駄目、きちゃう、という言葉が聞こえてきたが、止まることはなかった。そして、波のように押し寄せてくる射精感に耐えきれず、既に2回も、いや、今朝の分も含めると3回目にも拘らず、全く衰えない勢いで射精する。再び四葉の無垢な体に精液を刻みつけるように注ぎ、四葉はそれを一滴も溢さずに受け止める。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、……もうこれ以上は…」

「はぁ、はぁ、…」

 

 行為中は興奮していてあまり感じなかったが、蓄積した疲労感がどっと押し寄せてくる。それに耐えかねた俺は、四葉を抱きかかえたまま体をごろんっと半回転させ、四葉が上に来るように寝そべる。

 

「……すまん、このまま寝かせてくれ。」

「え、で、でも、まだ入ったままですよ…?」

「すまん、もう…力が出ない…。」

 

 了承したのか、四葉は俺の手の上にそっと手を重ねる。

 四葉を心地よい抱き枕の代わりにして、そのまま俺は寝てしまった。

 

 

 

 しばらく寝て、そのあと色々な液体やら汗やらを拭き、乱れた衣服を整え、現在は2人して壁にもたれかかって黄昏ていた。

 昼休みどころか午後の授業も全て終わっていて、気づいたら放課後になっていたという。時間の流れが尋常じゃなく速い。

 俺はともかく、ただでさえ成績の悪いこいつが授業をサボるなんて致命傷である。

 

「あーあ、午後の授業が…。」

「過ぎたことを悔やんでも仕方ないですよ。」

「誰のせいだと思ってやがる。俺はまだしも、お前はただでさえ赤点すれすれだってのに…」

「なら、遅れを取り戻すために二人っきりの勉強会をしてもいいんですよ?寧ろやりましょう!」

「何する気だお前。」

「その時になってからのお楽しみです。」

「………それはひとまず置いておこう……そろそろ離れてくれないか…」

 

 先程から四葉が俺の腕に抱きついてきて離れない。それどころか頬ずりまでする始末である。

 

「ししし、いいじゃないですか、イチャイチャしましょうよ。」

「……ったく。」

 

 四葉のいつもの無邪気な笑顔で毒気を抜かれてしまう。最近、こいつらの笑顔にめっぽう弱くなっている気がする。どうしたものか。

 

「…なぁ、四葉。」

「なんですか?」

「さっき俺のこと下の名前で呼んでたよな。」

「…………気に触りましたか?」

「いや、そんなんじゃなくてだな…なんか、懐かしいというかなんというか…」

「………」

「どっかで聞いたことあるような。」

「……上杉さんって本当に鈍ちんですね。」

「は?なぜそうなる。」

「そ、そんなことより上杉さんって、エッチも凄いんですね。ますます惚れ直しました。」

「嬉しくねぇ。というかお前は初めてだから比べようがないだろ。」

「とっても気持ち良かったので、またしたいです。」

「二度とすることは無いと思ってくれ。」

「…ちょっと誘惑しただけであんなに求めてきたのにですか?」

「うぐっ…」

 

 あんなもの見せつけられて耐えられるやつなんてはたしてこの世にいるのか?…もうこんな言い訳してる時点で誘惑に耐えることは不可能と言ってるようなものなのだが…。未来の俺が成長していることを願うばかりだ。

 

「頼むから二度と誘惑なんてしないでくれ。」

「それは無理な相談ですね。私はもう我慢しないと決めたので。」

「そこは我慢してくれ。」

「なかなか酷いこと言いますね。大変なんですよ?大好きって気持ちを抑えつけるのって。」

「はぁ…、だとしてもだ、自分を安売りするような真似だけはしてほしくないんだよ。」

「……」

「なんか言ってくれ、こっちまで恥ずかしくなるだろ。」

「上杉さんが私の心配をしてくれていると思うとちょっと嬉しくて…」

「やっぱり言わなくていい。」

 

 

 そろそろ頭が冷えてきた頃合いで、俺は五つ子の中の4人に告白されてしまったという驚愕の事実を思い出す。…多分、もう二度と来ないんじゃないかってぐらいのモテ期だ。ははっ、いっそコンプリート目指すか。……死ね俺。

 

「なんで俺なんかを好きになっちまうんだか…お前らどうかしてる。」

「…上杉さんって本当に自己評価低いですよね。」

「いや、これで高いなんてことは無いだろ。」

「そうですか?勉強出来ますし、高身長、髪を整えさえすればそこそこ顔もいいですし、何より私たちの世話を焼いてくれますし。」

「……」

「たしかに、たまに人としてどうかと思うほどデリカシーが無かったりとか、私たちの気持ちに全く気づかないほど鈍感だったりとか、運動能力が高校最弱級だったりと欠点なんていくつもありますけど。」

「泣いていい?」

「でも、上杉さんは、人の気持ちに寄り添えたり、人のために行動できたりする、そんな優しい人です。他にも欠点を上回るほどの長所が、上杉さんにはあるんですよ。もっと自信持ってください。」

「……そうか。」

「何より、私達が好きになったほどですから、ね?」

 

 そう言って四葉は俺に笑いかけてくる。

 俺なんかがこいつらの誰かと付き合うなんて、釣り合わないにもほどがある、いっそ全員振った方がいいんじゃないのか、と思うぐらいには自己評価は低かった。だが、四葉の言葉で少し救われた気がする。思っていたよりも、俺という人間は、少しはマシだったらしい。

 

「…ありがとな四葉。少し気が楽になった気がする。」

「ししし、お役に立てて何よりです。お礼に撫で撫でしてくれてもいいんですよ?」

「…へいへい。」

「えへへ…なんだか安心します。」

「…そろそろ帰るか。あいつらが心配するぞ。」

「そうですね。」

「……帰るから、そろそろ離してくれない?」

「…このまま帰りましょう!」

「え、ちょっ!」

 

 力で四葉に勝てるわけもなく、走る四葉にずるずると引きずられ、俺は強制的に四葉と腕を組んだまま下校することになった。

 

 それが原因か不明だが、四葉と俺が付き合っているという噂がクラスにいる女子の間で再燃してしまったことはまた別のお話。

 

 

 



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なんでここに二乃が!?

二乃と風太郎がエッチするお話。


"真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ"

 

 とある有名なフランスの作家が言った言葉を思い出す。昔の俺ならばこの言葉の意味がさっぱり分からなかっただろう。なぜなら家族以外はどうでもいいと考えるほどに他人に無関心だったからだ。

 でも今なら少しは理解できる。高校生活の後半にして、俺は友人という関係を得ることができた。多分それは、冒頭に述べた真の贅沢に違いない。

 ここで疑問なのたが、なぜ人間関係とは贅沢なのか?その答えは、簡単な話、人は孤独には勝てないよう設計されている。だからこそ、こんなにも人と触れ合うことに快楽を覚え、求めてしまうのだろうか。

 だが、ここ最近の出来事を考えるとその設計は非常に邪魔でしかない。その快楽に狂わされ、求めてしまうせで理性を働かせるべきところで機能せず、本能を発揮すべきでないところで暴走させてしまった。

 それは今回も例外じゃなかった。

 

 

 

 

「大丈夫?お兄ちゃん。」

「あ、ああ、大丈夫だ、そこまで心配しなくていい。」

 

 一花と四葉との一件の後、俺は何故かは分からないが、あれだけ一睡もできなかった状況が今日は少しだけ眠れるようになっていた。初めは性行為という衝撃的なものに対して慣れてなかったのであろう、思い出して悶々としてしまうことは仕方がない。だが、三回経験すると流石に夜も眠れなくなるほど、なんてことにはならなくなるらしい。(理由があれだが…そこは目を瞑る。)

 とはいえ、眠りが浅いことには変わらない。睡眠不足というのは蓄積していくもので、例えば七時間の睡眠が必要な人が一日六時間しか寝てないとしよう、これを二週間続けると二日間徹夜した状態とほぼ同じらしい。例に挙げた一時間の差ならまだしも、俺は何時間も不足しているわけで…。ここでガタが来てしまったのか学校に行こうと立ち上がった瞬間、ふらっとして思わず膝をついてしまった。

 慣れない運動、蓄積していく睡眠不足、壊滅的な食事量。体が悲鳴を上げてもなんら不思議ではない。

 

「おいおい風太郎、お前貧血気味なのか?」

「そうかもしれない…まぁ、少し立ちくらみがしただけだ、何も問題はない。」

「俺の牛乳飲むか?」

「嫌がらせか?」

 

 親父がいつも飲む消費期限切れの牛乳のせいで腹痛のまま模試を受ける羽目になったあの日から、飲料物を飲むときには必ず日付を確認するようになったほどにはトラウマになっていた。

 何故親父は平気で、俺は駄目なのか。成績にしろ、身体つきにしろ、胃袋の毒耐性にしろ……本当に親子か疑ってしまう程に正反対だ。

 

「とにかく、そんな大したことじゃないから。俺の貧弱さはよく知ってるだろ。」

「四葉ちゃんに力負けしたほどだもんな。」

「何故知ってる。」

 

 今に始まったことではないが何故か親父には隠し事がすぐにバレる。

……待てよ、俺がこっそり買って読んでるあの本もバレたりしないだろうな。もし仮にバレてみろ、

 

『ガハハハ、風太郎もようやく色恋に興味を持ち始めたか!いやぁ、一安心一安心!』

『お兄ちゃん、相手は誰!?中野さんの誰かだよね?!』

 

………あまりにも地獄、想像するだけで吐き気がしてくる。しかもだ、他にも俺は爆弾を抱えてるわけで…。これ以上は精神衛生上良くないので、ここで俺は思考を停止する。

 

「ちっ、朝の勉強時間を5分無駄にしたぜ…そろそろ学校に行ってくる。」

 

 夏休みまでそれほど日はないが、だからと言って休んでいる場合ではない。今年からは俺も受験生、一日の遅れは未来永劫取り戻せない、そんな意識でやっていかなければならない時期。なにより、こんなことで休んでたら家庭教師としてあいつらに示しがつかない。

 そう思い、俺は学校に向かおうともう一度立ち上がったが…

 

「……あら?」

 

 またふらっとしてしまい、今度は尻餅をついてしまう。いくら線が細いといっても大柄な男はそれなりに重量があるらしく、ボロい部屋が衝撃によって揺れる。

 

「わっ!お、お兄ちゃん本当に大丈夫?!」

 

 俺が倒れてしまったことに驚きながらも、らいははよほど心配だったのか慌てて俺に駆け寄ってくる。

 

「……風太郎、お前今日は休め。」

「はぁ?いや、だから大丈夫だってーー」

「休め。」

「!」

 

 親父は少し声のトーンを低くして、真面目な顔で言う。普段はあまり見せないその厳格な雰囲気に思わず閉口してしまう。

 

「はぁ…あのなぁ、そんな状態なのに無理しても仕方ないだろ、大人しく寝てろ。」

「そうだよお兄ちゃん、今日ぐらいは休も?」

 

 実際、歩くことすら辛く感じるぐらいにはガタが来ていたのは事実な上に、親父にここまで言われては学校を休む他ない。それに、家でも勉強自体は出来るので、ここは大人しく従うことにした。

 

「…あーはいはい、分かったよ休めばいいんだろ。」

 

 だが、俺のそんな考えさえ見破っていたかのように親父は無慈悲に言い放つ。

 

「あと今日一日勉強禁止な。もし破ったら一週間禁止に延長する。」

「えっ」

「つってもお前破りそうだよな…。そうだな、お前の勉強道具は俺の職場に持ってくことにするか。じゃ、俺は先に家出るからな。らいは、学校遅刻しないようにな。風太郎、看病してやれなくてすまん、だが寝ろ。」

「はーい。」

「お、おい、親父!頼むから一冊ぐらいは置いて行ってくれ!」

「あーー聞こえなーーい。」

「子供か!」

 

 このまま親父を逃してしまったら無駄な一日を過ごしてしまう。俺は最後の力を振り絞って親父を捕まえるべく飛びかかる。が、抵抗虚しくヒョイッと躱され、そのままダッシュで俺のリュックを担いで仕事へと行ってしまった。進めている途中の教材や参考書、問題集は全てリュックの中にしまっていたため、現在家の中にはまだ覚え切っていない物なんて一切ない。残された道は脳内参考書で勉強するぐらいか。無理だけど。

 

「お父さんいってらっしゃーい。というわけで、お兄ちゃんは今日はお休みということで。あ、お布団敷いてあげるね。」

「くそ…親父の奴め…。俺と食べてる量はそんなに変わらないのに、何故あんなに筋肉があってなおかつ俊敏に動けるんだ…。」

 

 片手で俺を軽々と持ち上げるその筋肉、何故俺にはその片鱗すら無いのか、甚だ疑問だ。

 

「そんなの今に始まったことじゃないでしょ?ほら、病人は大人しく寝る!」

「…はぁ。分かったよ。悪いな、手間かけさせちまって。」

「これぐらいはね。いつも風邪ひいたときはお兄ちゃんが看病してくれてるし。お互い様だよ。」

 

 親父が仕事でいつも居ないので、らいはが体調を崩したときは必然的に俺が面倒を見る。いつもは家事やらなんやらで苦労かけてるから、風邪をひいた時ぐらいはって事で兄貴らしくいつもは看病していたが、まさかここでお礼のお礼をされるとは思わなかった。

 

「あ、お昼ご飯はどうする?今から何か作り置きしてあげよっか?」

「いや別に食欲ないから作らなくて良いぞ何も問題はないははははは。」

「なんでそんな早口なの?」

 

 俺の不徳のなす所、それなのに甘えるわけにはいかない。ただでさえ借金を返済しきれてないのに、食費で家計を圧迫するなんてことになれば罪悪感で死にそうになってしまう。たかが数百円、されど数百円。

 きっと、親父やらいはは俺が大事だからという理由でそんなことは気にしないのだろうが、そんな優しい家族だからこそこれ以上迷惑はかけたくなかった。それに、俺は空腹とはお友達なので、我慢できないほどでもない。今日はたまたま疲れが溜まっているだけだ。

 

「別に何も出来ないってほど重症じゃないから、昼は自分でどうにかする。それより早く学校に行ってこい、遅刻するぞ。」

「そう?何かあったら電話してね。あとしっかり寝るんだよ?じゃ、行ってきまーす。」

「おう、車に気をつけろよ。」

 

 平日に行ってらっしゃい、なんて言ったのはいつぶりだろうか。言い慣れない言葉に少しむずっとする、なんてことを考えながら俺は大人しく布団へと潜り込む。

 布団の中で学校に連絡して休む趣旨を伝えた後、俺は目を閉じる。家には暇を潰せる様な物なんて一切ないので、とりあえず寝る他ない。よほど疲れが溜まっているのか、意外にもすんなりと意識が薄れていき、俺は夢の世界に旅立った。

 

 

 ピンポーン

「………………んあっ?」

 

 インターホンの音で目がさめる。平日の午前中、誰も居ないような時間帯に訪れるなんて一体どこのどいつだろう。基本的に家に訪問してくるのは借金取りぐらいなのだが、別の人間であることを祈る。

 まぁ、無視すればそんなこと関係ないのだが。体調も優れないし、面倒臭いし、眠いし…。言い訳三種の神器を発動させ、無視を決め込むことにする。

が…

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

「………」

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

 

「………っ」

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンp

 

「うるせんだよこの野郎!!こっちは病人だぞ!?」

 

 余りにもうるさ過ぎたため、無視出来なかった。人が寝てる時にピンポンラッシュしてくるのは何処のどいつだ、文句言ってやる。

 寝て回復したのか、だるさはまだ完璧には抜けてないものの壁伝いなら歩けるぐらいまでにはなっていたので、俺はそう意気込んで玄関まで行く。

ガチャリとドアを開ける。

 

「こっちは寝てるんですよ静かにしてもらえませ……ん……か……」

 

 予想外の人物がそこには居た。特筆すべきは左右の髪飾り、綺麗に揃えられた前髪、そう、彼女である。

 

「あら、案外元気そうじゃない。」

「………なんでお前がここに居るんだよ。二乃。」

「学校のHRであんたが休みだって聞いたから、家に行って看病してあげようと思って。」

「お前に家の場所教えたことあったか?」

「林間学校の時迎えに来てあげたじゃない。」

「なるほどあの時か…」

 

 つまりこいつは学校の授業をサボってまで俺の看病をしに来てると。なるほど許さん。

 

「今すぐ学校戻ーー」

 

 俺がそう言った次の瞬間、暴走機関車二乃が俺の胸めがけて飛び込み、そのまま抱きついてくる。

 

「てい。」

「ゴフッ!」

「♪」

「………いてーなおい、いきなり抱きつくな、離せ。あと学校に戻れ。」

「お断りよ。」

「それはどっちに対してだ。」

「どっちも。」

「どっちもじゃねえ、せめて学校には戻れ。留年したいのかお前は?」

「学校に戻ったらフー君に抱きつけないじゃない。」

「優先順位がおかしいぞ。」

「細かいことはいいじゃない。」

「細かくねぇ。」

「こっちはフー君が心配で来たのよ?」

「…………」

 

 心配してきた。その言葉を言われて嬉しくない者などいるのか。いつもながら、二乃は俺を困らせるのには最適な制球具合の直球を投げ込んでくる。

 

「…はぁ……、その気持ちは有難いが、本来成績を上げる役目の俺が理由でお前の成績下げるわけにはいかないだろ。」

「その点に関してはフー君の家庭教師の腕前に任せるわ。頼りにしてるわよ?」

 

 そしてその心配が原因で巡り巡って俺の元へと厄介ごとがやってくるんだから嫌なんだよ。ただでさえ四葉の遅れをこれから取り戻さないといけない時に、こいつまで遅れてしまっては非常に骨が折れる。

 こいつの頑固さを嫌という程知っているため、これ以上説得を続けても無駄だという結論に至り、説得を早々に諦める。というかいい加減離れろ。でないと色々と大変なことになってしまう。

 

「そういえば、もうお昼は食べた?」

「……いや。」

「そう、良かった。」

 

 そう言って二乃は、くる途中でわざわざ買ってきたであろう、色々な食材が入ったスーパーのレジ袋を目の前に掲げてくる。どうやら料理を振舞ってくれるようだ。

 ここまで尽くしてくれるのに、追い返すのは流石に申し訳ないので、ここは素直に好意を受け取った方が良いのだろう。二度目のため息をつきながら俺は言う。

 

「はぁ…、入れ。」

「お邪魔しまーす♪」

 

 何故看病する側が嬉しそうにしているのだろうか。まぁ、理由は明白だが…、自惚れても良いことなどないので、その理由だけは搔き消しておく。

 消したはずなのだが、玄関から部屋に戻る際に、少しだけ微笑んでしまっていたことにこの時の俺は気づいていなかった。

 

 

「へぇ、ここがフー君の部屋ねぇ。」

「俺だけの部屋じゃないけどな。想像以上にボロくてガッカリしたか?」

「そんなことないわよ。私たちのアパートも似たようなものだし。」

 

 確かに似たようなものだ。だが、こいつらの場合、あの広さで5人も住んでいるのだから、俺の家よりも一人当たりの領域が狭い。そう考えると、今更ながら少し気の毒に感じてしまう。まぁ、本人達から言わせれば住めば都、そんな苦労も楽しさのうちだったりして。

 

「もうそろそろお昼だから、私はお昼ご飯作るわね。台所借りるわよ。」

「何か手伝うことあるか。」

「体調が悪いんだからフー君は寝てて頂戴。」

「なんか、すまんな…」

「私が好きでやってるんだからいいのよ。あと、そういう時は謝るんじゃなくてお礼を言ってほしいわね。」

「…ありがとな、二乃。」

「どういたしまして♪できあがったら起こすわね。」

「ああ。」

 

 柔らかい笑みを浮かべながら、そう言って二乃は台所へと向かって行った。

 よくよく考えてみたら、馬鹿舌な自分でも不味いと思ってしまうぐらいのアップルパイを作る腕前の俺が出る幕はない。雑用もだが、多分二乃の方が手際が良いだろう。体調も悪いしで、足を引っ張るのは明確。なので、お言葉に甘えて俺は大人しく寝ることにする。と言っても目が覚めてしまったので、瞑想に近い感じだが。

 

 

「モグモグ」

「……どう?」

「ングッ…うん、すげー美味い。」

「そう、良かった。」

 

 ただ今昼飯中…。馬鹿舌なので食レポみたいに解説などは出来ないが、比べるのは申し訳ない気もするが少なくとも三玖のおはぎ似のコロッケよりかは美味しい。当たり前だが。

 家にわざわざ来てこんな美味い飯を作ってくれるなんて、よくよく考えたら俺は相当な幸せ者で。一口一口を感謝しながら味わって食べよう。

 そう思いながら食事を進めていると、対面に座っていた二乃が突然俺の隣にやって来た。

 

「はい、フー君、あーん。」

「そこまでしなくていいから…」

「私がしたいのよ。いいでしょ、これぐらい。」

「……こっぱずかしいんだよ」

「裸を見せ合った仲じゃない、今更あーんぐらいで恥ずかしがらないでよ。」

「………………」

 

 お互いに裸を見せ合ってしまった仲でも恥ずかしいものは恥ずかしい。

 まぁ…でも、二乃が来てくれなかったら俺は飯にありつけなかったのも事実で…二乃がやりたいと言っているのだし、それぐらいの要望を叶えてやってもバチは当たらないんじゃないか。

 そう考えをまとめたところで意を決してあーんを敢行する。

 

「……パクっ。モグモグ、」

「わぁ…本当に食べてくれた…ちょっと感動…。」

「ングッ、俺は動物かよ。」

「それに近いかもしれないわね。動物園の餌やりイベントみたいな。はい、あーん。」

「まだやんのかよ…。パクっ。」

「ふふっ。」

 

 なんだろう、スゲー恥ずかしいのに、こいつの楽しそうな笑顔を見ると悪い気がしない。

 

「ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。」

 

 そうこうしているうちに昼食が終り、食後のお茶を飲んでホッと一息つく。

 

「……なぁ、心配して来てくれたのはすごく感謝してる。だが、午後の授業だけでも戻る気は無いのか。」

「無いわね。」

「ですよねぇ…。」

「せっかくフー君とお家デート出来るのに学校なんて行ってる場合じゃないわ。」

「デートだったのかよ。」

 

 初耳だな、看病しに来たんじゃないのかよ。

 隣に居た二乃はそう言って俺の肩に頭を乗せてくる。

 

「これぐらいはいいわよね…?」

「…………」

「…と見せかけて、えいっ!」

「うおっ!?」

 

 少し寄りかかるぐらいならいいかと油断したが、それを狙っていたと言わんばかりに二乃は機敏な動きで正面から抱きついてくる。

 今に始まった事ではないが、先程から理性がガリガリと削り取られている……気がする。

 

「好きよ。」

「今日はやけに積極的だな…」

「当たり前じゃない、こんな機会滅多に無いもの。活かさない手は無いわ。」

「やめろって言ったらやめてくれるか。」

「無理ね。」

「だろうな。一応言っておくけど体調不良だからお手柔らかに頼む。」

「そうね、死なない程度に色々やるわね。」

「それもうアウトだな。」

 

 さっきから二乃の二つの凶器が当たっていて心臓に悪い。とりあえず引き剝がさないと色々とまずい。

 

「そろそろ新しい刺激がないと、マンネリ化しちゃうじゃない?」

「何がマンネリ化だよ…」

「だって、私が好きってアピールしても全然なびかないじゃない。」

「……別に意識してないってわけでもないぞ。」

「あら、それで付き合えないってことはまだまだ足りないってことね。」

「ポジティブか?」

「大好きよ、フー君。」

「頼む、もうお腹いっぱいだ…。」

 

 そう言って二乃は俺を抱きしめる力を更に強める。一体これはどんな罰ゲームなのだろうか…抱きしめられながら愛の言葉を言われるなんて、俺は乙女じゃないんだぞ。

 そして更に問題なのが今の体勢、俺が長座して、その上に二乃が乗っている。絵面的にもアウトだが、俺のブツが反応してしまったらそれこそ死だ。

 だが、あれだけのことを経験してきたんだ、今更抱擁ごときで反応してたまるか。そう思い、意識しないよう心を無にしようと試みる。

 

「あら、お腹いっぱいになってこっちも元気になっちゃったみたいね。」

「…………………」

 

 結論から言うと無理だった。考えないようにと意識するほどここ数日のことがフラッシュバックしてくる。

 しかもだ、俺のモノの存在に気づいた二乃が調子にのって腰を動かし始めた。

 

「おい、俺の上でそんな変な動きするな。」

「少しはその気になったかしら。」

「どの気だよ。」

「もちろんそういうことに決まってるじゃない。言わせないでよ、恥ずかしいわ。」

「恥ずかしいならとっととどけ。」

「……ねぇフー君。」

「………」

「私たち二人っきりよ」

「だからどうした」

「ちょっとぐらいイケない事したって平気だとは思わない?」

「後の事を考えやがれ。」

「何よ、私とするのは嫌わけ?」

「そうじゃないけど、俺たち付き合ってもないんだぞ。」

「意気地なし、キスするわよ。」

「やめろ。」

 

 どんどん顔が近くなる。もうキスまであと数センチといったところか。

 本当に唇がくっつきそうになったため、俺は首を少しだけ後ろに逸らす。

 

「避けないでよ。」

「そういうわけにいくか。」

「分かってないようだから言うわね。今日ここに来た理由は、確かにフー君が心配だったていうのもあるけど、一番はあんたに分からせるためよ。」

「…………何をだよ。」

「私がどれだけフー君を好きかってことよ」

「もう十分知ってる。」

「体で分からせないと。」

「動物か俺は。」

「……そんなに私とするのは…嫌…?」

 

 いつも思うのだがその質問は本当に狡い。嫌じゃないから拒めない、そのこと自体が問題だと言うのに、あっさり許されてしまうせいで理性が働かない。

 

「なによ、四葉とはしたくせに。」

「…………は?」

 

 今とんでもない発言が聞こえてきた気がする。

 

「エッチしたのよね。」

「まて、な、何の話だ。全く心当たりが無いな。」

「もう少し動揺を隠しなさいよ…」

 

 唐突すぎて少し動揺を隠せず、軽く噛んでしまう。直接見ていたならまだしも、誰にも見られていないはずなのに。二乃がそのことを知る要素はどこにも無い………はず。

 

「じゃあ聞くけど、昨日は昼休みからずっと居なかったけど、四葉と何をしていたのかしら?」

「えっとだな…ふ、二人でサボってました。」

「どこで?なんで?」

「お、屋上で、寝不足だったから昼寝をしようと…。」

 

一応、嘘はついていない。重要な部分は隠しているが嘘ではない。

 

「ふーん。四葉も寝てたわけね?」

「あ、ああ、授業に戻れって言ったのにあいつ聞かなくてな…。」

「……ところでフー君。昨日、四葉を問い詰めて分かったこと聞きたかったりする?」

「遠慮しておく。」

「そう、なら話すわね。」

 

 四葉が上手く嘘をつけないやつだという時点でもう死刑宣告されているようなものだ。それに、四葉の発言と俺の発言、多分だが食い違いが発生しているのだろう。二乃はそこをついてくると予想できる。

 

「フー君と一緒にいたの?って聞いたらなんて答えたと思う?」

「……」

「正解は"い、いい、一緒には、い、居なかった…かな?"よ。」

「…それって忠実に再現してたりするのか?」

「そうよ。」

 

 妙に四葉のモノマネが上手い。さすが五つ子。二乃の一言で、四葉がどれだけ動揺してたか一目瞭然だ。

つまりは四葉が嘘をついていることも明白で…。

 

「……それだけで決めつけるのは早計じゃないか。」

「そうかしら。まず、寝てただけなのに、なんでわざわざ隠す必要があるのかしらね。それに、後ろめたいにしても、あそこまで動揺する内容じゃない気がするけど。」

「………」

「授業をサボった点も怪しいわ。いくら眠くても、あんたならそんなこと許すはずないのに、なんで四葉と二人揃って午後の授業をまるまる休んだりしたのかしらね。まぁ、よっぽどのことがあったに違いないってことはすぐに分かるわよ。」

「………」

「あと、妙に顔が赤かったのよね、あの子。まぁ、決定的な証拠にはならないでしょうけど。で、何か弁明はある?」

「え、冤罪だ…。」

「素直に認めたら?ちなみに、四葉の尋問、さらに続きがあってね」

 

 ドSかこいつは。後から後からネタをぶちこみやがって。俺のことを追い詰めて楽しんでるんじゃないだろうな。

 既に死に体だったが、完璧に絶命させるべく二乃のトドメの一撃が俺を襲う。

 

「"エッチしたのね"ってカマをかけたら、顔を真っ赤にして沈黙しちゃったわ。」

「なんでそのかまをかけようと思ったんだよ…」

「女の勘ってやつ?」

「妹をいじめてやるなよ……。」

「顔を真っ赤にして恥ずかしがるあの子、姉妹の私でもちょっと可愛いって思ったわね。」

 

流石女王。

 

「で、しちゃったんでしょ?」

「………………」

 

 ここまで言われると閉口する他なかった。否定しない時点でもう認めているも同然だが、それでも諦めの悪い俺は黙り続ける。

 

「ねぇ、フー君は私の気持ちを知ってるはずなのに、私の妹に手を出したなんて、酷いと思わない?」

「……猛省します。」

「謝罪の一つもないのかしら。」

「本当に申し訳ない……。」

「口だけの謝罪は要らないわ。行動で示して頂戴。」

「……何すれば良いんだよ。」

「それを考えるのがあんたの仕事でしょ。」

「そうは言っても何をすれば良いのかさっぱり分からん…二乃にだけ成績を上げるための特製プリントでも作れば良いのか。」

「嬉しいようで嬉しくないわねそれ…。」

「じゃあどうしろってんだ。」

「だから、私ともエッチしなさいよ。」

「………」

「あの子とは付き合ってるの?」

「それは違う。」

「そう、なら私にもまだチャンスはあるわね。」

「………」

 

 そう来たか…。だが、どうしてもそれは出来ない。これ以上心労を増やしたくない。

 と思っていたのだが、こいつが今どれくらい勇気を振り絞っているかが分かってしまった。

 口では押せ押せでも、体が若干震えていて、抱きしめる力が強かったのは、緊張のため。迫ることで嫌われるリスクを恐れてか、はたまた俺に拒絶されるのが怖いのか、上手くいったとしてその後の本番行為という未知の体験に対する不安か。いずれにせよ、こいつは必死なのだ、好きになって欲しくて、その為ならどんな危険や恐怖にも打ち勝ってやろうと。

 それを知って、それでも非情になって突き放してやるほど、俺は出来た人間ではなかった。

 

「……分かった。」

「…!、んん?!」

 

 出来た人間ではなかったから、二乃の唇を奪ってしまった。

 5秒ぐらいだろうか、あんまり長くやるのもどうかと思うので、ひとまず離れるが、二乃はまだ離れたくないのか少し切なそうな表情を浮かべる。

 

「…キス…した…のね。」

「…これで満足か?」

「うん…嬉しい……!」

 

 よほどキス出来たのが嬉しかったのか、二乃は幸せそうに笑う。

 こいつの心底嬉しそうな笑顔に少しくるものがあって、キスして良かったなんて思ってしまう自分はもう取り返しのつかないところまで来てしまっていた。

 

「もっと…しよ…?」

 

 二乃を片腕で抱きしめ、目元から少しだけ伝っている涙を、親指で軽く拭いながら再び唇を重ねる。ゆっくり、ゆっくりと舌を入れてやると、一花や四葉とは対照的に拙い舌技で応えてくる。キスの技術はこの際気にしない。一生懸命応えようとするその姿勢になんだか可愛らしさを感じてしまう。

 

「ちゅ……ん……はぁ…」

 

 一通りの唾液交換が終わったので唇を離すと、二乃は少し半開きの口をそのままに浅い呼吸を繰り返していて、その恍惚とした顔が妙に色っぽい。何か見てはいけないものを見てしまっている気がするも、背徳感で目を逸らすどころかむしろ吸い寄せられてしまい、お互い見つめあってしまう。

 

「ねぇ…」

「………」

「もう……しましょ…?」

「……?」

「エッチ…しない…?」

「……っ」

 

 とろんと蕩けた顔でそう言ってくる二乃があまりにも愛おしくて、三度目のキスをする。さきほどよりも少し強引にするが、二乃はそれに対して嫌がるでもなく、寧ろなされるがままに快楽を享受する。少し息が苦しくなって離れるが、蹂躙して欲しくて堪らないのか間髪いれず唇を塞いでくる。

 

「ちゅ…ちゅるっ…んっ…はっ……」

 

 キスに集中させながらも、その隙にスカートのホックを外す。

 夢中で俺の口を吸っていた二乃は、キスが終わってからようやく自分が脱がされたことに気づいたらしく、顔を真っ赤にする。

 そんな二乃の心情は無視して二乃のショーツを見る。見たらなんと、前に穴が開いている、相当布の面積が少ないやつで。

 

「お前…なんてもの身につけてやがる。本当に初めからそのつもりだったのかよ。」

「そ、そうよ…さっきから言ってるじゃない…。」

「………俺が今日休みじゃなかったら、学校でやろうとしたってことか…?」

「………」

 

 無言は肯定。今日が体調不良だったのは不幸中の幸いか。学校でやってしまったら最悪ばれて退学まである。

 

「にしてもよくこんなの着ける気になったよな…」

「そんなジロジロ見ないでよ…!というか、もう入れても大丈夫なの…?」

「……まだ準備してないだろ。」

「準備って…?」

「……前戯。」

 

 ショーツを脱がさないまま、その穴から俺は指を入れる。緊張のためかまだまだ濡れ具合が足りないので、これでは上手く挿入は出来ないだろう。

 

「んっ…!待って…!」

「じっとしてろ。」

 

 このまま指でやっても傷つける恐れがあったので口でやることにする。二乃を俺の脚の上から下ろし、側にあった布団に寝かせ、ショーツを脱がして脚を掴んで少し広げる。

 

「ねぇ、これすっごい恥ずかしいんだけど…」

「裸を見せ合った仲だろ。」

「そうだけど、そうじゃなくて…!今から何するのよ…。」

「口で愛撫。」

「なっ…?!」

「ごちゃごちゃ言うな。リードしてやるから黙って力抜け。」

「…!」

 

 顔を真っ赤にして反抗的な態度を取ってくるが、そんな目で見られても嗜虐心が掻き立てられるだけだから不思議だ。

 根が性悪なのか、もっと困らせてやろうと指ではなく顔を二乃の秘部に近づける。

 

「ひゃっ!?」

 

 想像以上に生々しい匂いがするし、舐めてみると味もお世辞にも良いとは言えない。が、普段から漂うあの女の子特有の良い香りからは全く想像できないその匂いに、そのギャップに一層興奮してしまうため不思議と嫌ではない。

 慣れない感覚に驚いたのか二乃は体をびくっと震わせ、手で俺の頭をグイッと押してくる。

 

「おい。」

「で、でもぉ…」

「でもじゃねぇ。ちゃんと気持ちよくしてやるから。」

「〜〜〜〜〜っ。」

「………………」

「…………………ん。」

 

 しばらくの悶絶の後、悩み始めたと思ったら二乃は顔を真っ赤にしながら何か言いたそうにしているが、溜飲を下げてそっぽを向き、力を抜いて股を開く。照れてしおらしくしている二乃に少し胸がキュンとしてしまうが、俺はすぐさま二乃の脚をお腹あたりで折りたたむように持ち、再び割れ目に顔を埋める。

 

「ん……」

 

 舌なら指と違って傷つけてしまう心配はあまり無いので、そこは容赦なく豆の部分を舌で刺激し、指で膣を押し上げる。

 

「あっ…ダメ…ほんとに…おかしくなっちゃう…」

 

 制服の裾を少し噛んで声を我慢しようとするも完全に抑えることは出来ず、二乃の気持ち良さそうな甘い喘ぎがしばらく響き渡る。同じ場所を一定に刺激を与え続けると、奥から愛液がとめどなく溢れてくる。それを余すことなく舐めとっていき、そして刺激がある一定に達した時、二乃は絶頂を迎えた。

 

「あっ、ん、〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 びくっと体が痙攣し始め、少しの間小刻みにふるえ続けたと思ったら、くたっと脱力して浅い呼吸を繰り返す。

 

「……イったか?」

「……いちいち聞かないでよ。」

 

 どうやらお気に召したようだ。

 

「なんでこんなに上手いのよ…。」

「お前がただ感じやすいだけだろ。」

「…なによ、私は初めてなんだから仕方ないじゃない。」

「それなのに俺を誘惑しようなんていい度胸だな。」

「タラシ。」

「否定出来ないから言わないでくれ…。」

 

 四人に告白されてるから、あながち間違いじゃないことがなんとも悲しい。

 

「ねぇ…ここまでやったんだから…ちゃんと最後までしてよね…?」

「……………」

 

 そう言って二乃は腕を伸ばして、「来て?」と俺を迎えるようとする。発情気味に顔を赤らめ、俺に懇願してくる様を見て我慢でるわけがなかった。今からこの愛くるしく、魅力的な子と一つになれるのだと思うと居ても立っても居られない。

 

「…汚れると大変だから上も脱がすぞ。」

 

 ブレザーを脱がせ、一つずつワイシャツのボタンを外していく。二乃の下着姿は扇情的で、俺が持つ程度の理性を狂わせるには十分すぎた。

 

「わっ、凄いおっきい…。」

 

 取り出した俺のブツを見てそんな感想を漏らす。他のを見たことは無いが、身長のでかい俺は比例してそこも平均より大きいのだろうか。確かめようは無いが。

 それでも他の姉妹が受け入れることができたのだから、殆ど同じ体をしていることを考えると大丈夫だろう。そう思い、亀頭の先端を二乃の秘部にあてがう。

 

「挿れるぞ…」

「うん…来て…」

 

 痛くないかの確認を時折しながらゆっくりと挿入していく。

 

「んっ……!」

 

 そして、とうとう俺のものが二乃の膣内で全て包まれる。先程からキスをしたり二乃の性器を舐めたりで興奮が極限にまで達してしまっていたせいか、膣内は俺の物を更に飲み込もうとうねり、それだけで射精してしまいそうになる。そのせいで、出してしまわないよう耐えるためにひたすら無言になってしまう。

 馴染ませるために数秒間そのままでいたが、これ以上、二乃を気遣う余裕がなくなってしまい、確認もとらずに腰を振る。

 

「あ、あ、あ、…すごっ…!」

 

 ただひたすら二乃の体を貪った。時折キスをしたり、胸部を吸ったりもしながら、きゅっと締め付けてくる膣壁を押し広げる。その感覚が余りに気持ちよすぎて、二人っきりの世界が広がっているかのような錯覚に陥るほど、頭の中が二乃の事で満たされる。有り余る快楽を全て享受しようと、今の状況では邪魔になるだけの思考を一切停止して、五感を通じて流れ込んでくる快感を空っぽになった頭に詰め込んでいく。相変わらずそこに言葉はなく、甘い喘ぎと荒い息遣いだけでお互いに意思疎通が取れてしまう。

 そんな時間も終わりが来てしまうが、最後の瞬間が最も興奮してしまうことを既に知っていたので、早く絶頂を迎えようと二乃に愛を注ぐ。

 

「フー君…キス…して…?」

「………っ」

 

 もうこれで何回目なのだろう、二乃の姿を愛らしいと思ってしまうのは。完全に快楽の虜となった顔でキスをおねだりされてしまっては、応えないわけにはいかない。だが、二乃の方は俺からのキスに応える余裕もなさそうなので、そこは遠慮なしにこちらから舌を入れ、吸ったり、なぞったり、甘噛みしたり、好きに暴れまわる。

 先に限界が来てしまった二乃は声にならない声をあげて俺にぎゅっとしがみついてくる。その瞬間、膣内が俺のモノを、精子が欲しいのかきつく締め上げてくる。それに対して我慢できるわけもなく、容赦なく二乃の中に精を吐き出す。まだ恋を知ったばかりの少女に、自分の物であることを分からせるかのように、深く、深く刻みつける。

 事が終わって乱れた呼吸を整えようと二人して抱きしめあい、性器同士がまだ繋がったままにも拘らずそのままでいる。しばらくしてようやく頭が冷えてきて、息も正常なものになったところで二乃が言う。

 

「……まだ硬いままね。」

 

 二乃の言う通り、俺のブツはまだ硬く勃起したままだった。まともな食事にありつけたからか、朝からずっと寝ていたから体力が回復したからか、多分どっちもだろうが、そのおかげで性欲が止まることを知らずにいた。

 ただ、これ以上やると二乃の負担になりそうなので、満足できなかった分は後は自分で処理するなり落ち着くまで心頭を滅却すればいい。

 

「……すまん、今抜く。」

 

 自分のモノを二乃から引き抜くと、白い液体が二乃の秘部から垂れてくる。その様子を見て再びムラッとするがそこは我慢する。これ以上やってしまったら歯止めが効かなくなりそうだ。

 

「…エッチって…凄いのね。」

「……」

「身も心もフー君の物になっちゃった…。」

「そういうのは本当にやめてくれ…」

「もう一回…しない…?」

「これ以上は流石にやばいだろ…。」

「あら残念。また今度ね。」

「本気でやめてくれ」

 

心なしか俺も期待しちゃってるから。と言いかけるがこれは無理矢理喉の下に押し留める。

 

「………シャワー借りてもいい?」

「ああ…」

「……一緒に浴びる?」

「いや、いい。先に二乃が浴びてこい。」

「言い方が悪かったわ、一緒に浴びたいんだけど。」

「……………」

 

 

「痒いところは無い?」

「あ、ああ、大丈夫だ。」

 

 浴室。汗をかいてしまったのでシャワーを浴びようと一緒に入ったが、今は二乃が背中を洗ってくれている。

 

「こんなサービスまでしなくてよかったんだがな。」

「私がしたいんだから良いのよ。」

「疲れないか?」

「全然。好きな人にやってあげることは苦じゃ無いもの。」

「そういうもんか。」

「そういうものよ。」

 

 なんて会話をしながら、少し鼻歌交じりでご機嫌そうな二乃の奉仕を大人しく受ける。柔らかい力加減で非常に心地よく、それだけで二乃の優しさが伝わってきて少しむず痒い。

 

「フー君もやっぱり男の子なのね。」

「普段男らしくなくて悪かったな。」

「普段も十分カッコいいわよ?」

「そりゃどーも。」

「…やばっ、フー君の裸見てたらちょっと興奮してきちゃった。」

「女としてどうなんだ…?」

「冗談よ。ほら、洗い終わったわよ。交代しましょ。」

「お、おう…」

 

 二乃と俺の配置を交換して、今度は俺が二乃の体を洗う。のだが…

 どこもかしこも、淫靡すぎて目のやり場がない。肌は陶器のように白くて綺麗だし、出てるところは出ていて、くびれ方も美しいしで…。

 

「………力加減はこれぐらいでいいか?」

「うん、ちょうどいいわ。」

 

 なるべくそういったのを意識しないように腕をそっと持ち上げて、泡立てたボディタオルで優しく洗う。腕なんか、非力な俺でもちょっと力を入れれば折れてしまうんじゃないかと危惧するぐらい華奢で、普段は少し気が強いけどやっぱり女の子なんだなと改めて感じる。

 …いやいや感じちゃ駄目だろ。これ以上は我慢できなくなる。

 だけど、腕、背中と洗っているうちに、考えたくもないのに先ほどの行為が思い出され、心臓の鼓動が早くなっていく。息をすることも忘れ、ついつい二乃の裸を食い入るように見てしまう。

 そして、ついに箍が外れてしまった。

 

「〜〜〜っ!二乃…!」

「きゃっ!え、どうしたの?!」

 

 後ろから思いっきり抱きしめてしまった。温かくて、柔らかくて、興奮して、安心して…色々な感情が混ざり合う。

 もう我慢できなかった。一回して少し収まりかけていた欲が暴発してしまった。

 二乃を後ろから抱きしめ、手で全身という全身を弄る。

 

「あ、ん…!手つきが…いやらし…てば…!」

「すまん、ちょっと我慢できん。」

「んんっ…!」

 

 しばらくの間、二乃の体の感触を楽しむ。このままブツを挿入して滅茶苦茶にしてしまいたかったが、それは流石に躊躇う。

 二乃の背中にそそり立ったそれを押さえつけて、腰を動かす。本番行為には見劣りするがこれでも十分気持ちいい。これで一回達してしまえば多分収まるはずだ。

 

「少しだけ我慢してくれ…すぐ終わる。」

「え?え?、ちょ、フー君ストップ!」

「……すまん、痛かったか?」

「そうじゃなくて…その…私のここ使っても良いのよ…?」

「…!」

「そ、それに…私も…その…フー君と…したい…。」

「〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 今にも消え入りそうな声量で恥ずかしそうに言う二乃の破壊力が凄まじくて、その後はもうただひたすら二乃のことを愛し続けた。

 浴室の壁に二乃の体を押し付け、後ろからブツを挿入して出し入れをする。一回射精が終わったら今度は対面、次は足を上げて、次は浴槽の中で座位…その過程で口づけを何度行ったか数えるのも億劫なほどで。

 ようやくお互いが満足したときには、二乃の秘部は白濁液に塗れていて、そこまで来てようやく俺がやっていたことを自覚した。

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

 あの後、もう一度シャワーを浴びて後片付けをした後、二乃が「せっかくのお家デートだし、ハグしたい」と言い出したので、しばらく俺が後ろから抱きしめてあげていた。だが、行為で疲れ切ってしまったのか、二乃は俺の懐の中ですぐに眠りについてしまった。寝やすいように、俺は背中を壁に預け、少し体を斜めにして二乃の頭を胸に乗せ、後ろからそっと抱きしめてやる。

 一回だけ二乃の寝顔を見たことがあるが、今回も無防備な寝顔。気の強そうな表情でガツガツしているいつもとは違うその姿を見ていると自然と笑みがこぼれる。

 

「…………」

 

 だが、そんな穏やかな気持ちも一瞬で無くなり、すぐ真顔に戻る。こうやって二乃が寝てる姿を見ると嫌でも意識させられる。関係を持ってしまったことを。

 関係自体が嫌なわけではない。こんな俺と関係を持たせてしまったことが嫌で、申し訳なくて、誰も悲しませたくなくて…。

 これで三人目で、しかもその三人以外にも一人告白されている。つまり四人目もあり得ることを示唆している。自惚れだとか言っている場合ではない。この関係が更に複雑化する前に早急に手をうたないとまずい。もう既に戻れないところまで来てしまったが、傷はなるべく浅いに越したことはないのだ。

 そして一番の問題が、誰を選んで、誰を振るかということ。それさえ出来れば全部とは言わなくともほとんどは解決できる。

 そのはずなのだが、なんでこうも不快な何かが消えてくれないのだろう。俺がそうして出した答えの先には、黒くて気持ちの悪いものがある気がしてならない。だからなのだろうか、その道以外の、ありもしない希望を諦めたくないのは。

 

「俺は…どうしたらいい……。」

 

 一人で呟いてみるも、二乃は夢の中なのでこの問いかけは空に浮かんで霧散する。

 そうやって思い悩んでいると、突然俺の手が温もりに包まれる。

 

「!」

「…フー君…すき…」

 

 見ると、俺の手の上に二乃の手が乗っていた。寝返りをうった際に偶然にか、はたまた夢の中でも俺の手のある場所が分かっているのか…。

 手放すのも名残惜しいので二乃の手をそっと握る。

 

「……あぁ、そうか…」

 

 駄目だ、気づいてはいけなかった。だが、たった今気づいてしまった。違う、本当は薄々分かっていた。ただ気づいていない振りをしていただけだ。こうして二乃の手を握って、抱きしめて思ってしまった。

 

俺は、この姉妹全員が好きなんだと。

 

 それは多分だが、三玖と五月の二人に関しても例外ではない。ますます俺の踏ん切りがつかなくなってしまっている。

 結論を出すことを躊躇しているのは、実際は振ってしまうことで相手が傷つくのが怖からじゃない。いや、確かにそれもあるが、一番の理由はこれだったんだ。誰かを選びたいわけでも、全員振りたいわけでもない、

 

手放したくなかったんだ。

それと同時に、全部が欲しかったんだ。

 

 俺は、なんて傲慢で下劣な奴なのだろう。かつて四葉に言った、全てを得ようとするなんておこがましいと。どの口が言っている、結局はお前も同じ気持ちだったんじゃないか。

 

 

ポタッ

 

「……?」

 

 上から何かの液体が落ちてきた。なんだ、水漏れか?と一瞬思ったが、それは違うとすぐに分かった。

 その水の発生源は、俺からだった。

 

「……ははっ、どうすればいいんだよ…。」

 

 今まで一花と四葉の優しさで霧がかかっていた現実が、選ばなければならないという現実がはっきりと姿を表して、今ここで突然俺に襲いかかる。なぜこのタイミングで、と運命を恨んでみるも、完全に俺の怠慢としか言いようがなかった。

 落涙するとはこんなにも涙が溢れて気持ちが悪いものなのか。この感覚、久しく忘れていた。涙を止めようとしても体は言うことを聞かず、止めどなく溢れる。再び二乃を見てみるも、涙のせいでせっかくの二乃の綺麗な顔も滲んで見えてしまう。

 こんなにも、泣いてしまうほどのことだったのか。

それほどまでに俺はこの姉妹を好きになっていたのか。

 だが、そうは言っても選択肢は限られている。先程から述べているように、気づいたところで道はただ一つ、たった一人を選ぶしかない。

 

「選ぶしか…無いのか…?でも、誰を…。」

 

 謎のプレッシャーによって、二乃の手を握っている手がじっとりと汗ばんでくる。正体不明の罪悪感が胸の中で大きくなっていく。その圧迫感で今にも吐きそうだ。

 

 

 

俺は…………

 

 

 

「俺は__________」

 

 

 

 

 

 

 



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番外編
もう一回だけ!


学園祭で風太郎君が誰も選ばなかった場合√一花
メインの方とは全く関係ないのでご注意を


 デコピンしてやろうか非常に迷う。彼女の成績の為を思うのならそうするのが一番だ。でも彼女は女優だ。顔も一つの商売道具なだけに、おでこに何かするというのは少し気がひけた。

 

‪「…………スー…スー…」‬‬

 

‪ いつものように一花のマンツーマン指導。借金までして勉強を教えてやっているのに、この女優ときたら静かな寝息を立てて寝ていらっしゃる。

 

‪「……………おい、起きろ」

「スー……スー………」

 

 呼びかけても起きる気配が微塵もない。

 ……もう我慢の限界だ。叩き起こそう。暴力を振るうのは良く無い?『暴力から希望は生まれない、絶望が一時的に紛れるだけだ』なんてどっかの偉い教育者が言っていた?

 

知るか。

 

全部が全部そうとも言い切れないだろう。時として、それは使えばお互いのためになる場合だって存在する。今なんてまさにそうだろう。

 

‪パチン‬

 

‪「痛っ!?」‬

‪「おはよう」‬

 

‪ 力を込めた後に解放、勢いがついた中指は軽快な音をたてて一花のおでこに直撃する。‬

 

‪「うぅ…フータロー君に暴力ふるわれたぁ……キズモノにされちゃったぁ……」‬

‪「変な言い方はやめろ。それとデコピンなだけマシと思え。」‬

‪「え、マシって……フータロー君、私に何する気なの……?」‬

‪「何もしねぇよ。……次ふざけたこと抜かしたら宿題倍にするからな」‬

‪「そ、それだけは許して……」‬

‪「ならしっかりやれ」‬

‪「は〜い」‬

 

‪ 一花は思わず気の抜けてしまいそうな返事をする。こんな調子では本当に卒業は危うい、そこんとこをこいつは分かっているのかといつも不安になる。もう少しやる気を出してくれれば俺の心労も幾分マシになるのだろうが、残念ながら無いものねだりに終わる。

 

‪「はぁ……。おまえ、理解力はそこそこあるのに集中力が無いよな……」‬

「お仕事で疲れてるからモチベーション上がんないよ……」

「卒業がかかってんだぞ。もっとやる気出せ」

「あーあ、ある日突然頭が良くなったりしないかな〜」

「もうダメ人間思考のそれだな」

 

 俺が発破を掛けても、はたして効果があるかなんて、考えるまでもなく殆ど意味を成さない。そもそも、それでやる気が出るぐらいなら初めから出しているという話だ。

 

「………ご褒美があったらもっと頑張れるんだけどなぁ」

「我儘な奴だな……こっちは借金までしてるってのに……」

「別に勉強辞めたって良いんだよ?」

「それで脅すのは卑怯ってもんだ」

「あはは、冗談だよ。でも、ご褒美あった方が少なくともデコピンよりはやる気が出ると思わない?」

「後で日の出祭で貰った景品のお菓子やるからやる気出せ」

「五月ちゃんじゃないんだからさ」

「地味に酷いなお前……。何なら良いんだよ」

「物じゃなくて、して欲しいというか……」

「……? 何をして欲しいんだ?」

 

 やる気を出して貰えるならこの際何でもいい、内容によってはやらんこともないぞと内心で思いひとまず聞いてみる。

 

「そこはフータロー君が考えようよ」

「お前が言えば済む話だろ」

「まあまあ、そう言わずに、当ててみてよ」

「………デコピン」

「罰ゲームじゃなくてさ……」

「………頭を撫でる」

「もう一声」

「………肩揉み」

「ああ、遠のいちゃった」

「マジかよ。………分からん、お手上げだ」

 

 頭を撫でるに関してはかつて一花からの教えで、肩もみに関しては実際に俺がされた事なのだが、これ以外で何かはもう思いつかない。

 

「じゃあヒント、私とフータロー君はやったことがあります」

「……………」

「ヒント2、愛情表現で良く使われます」

「……………」

「ヒント3、口」

「もうほとんど答え言ってるなそれ」

「言ってみてよ」

「言わん」

 

 何ともハードルの高いご褒美なことで。そんな要求をするなんて、俺の聞き間違えでないなら一花の頭がおかしくなったぐらいしか理由は思いつかない。

 

「………お前、よっぽど疲れてんだな。気づいてやれなくてすまなかった。ほら、休んで良いぞ」

「ちょ、違うから!疲れてるとかじゃなくて!」

「なんだよ」

「……その…この前、………したでしょ?」

「……っ、お、おう……」

 

 予想しなかった一花の言葉に思わず口に手を当てながら顔をそらしてしまう。具体名詞は聞こえなかったが、何をしたかなんて言わずもがな。

 あの時のことはよく覚えている。といってもまだ数日しか経っていないので当たり前なのだが。それでも突然の一花の接吻はそれを差し引いても衝撃的すぎたので、この先一生忘れるはずが無いとさえ思うほどだ。

 

「それからね……たまに思うんだ。またしたいなって」

「なんで」

「なんでだろうね」

「それを聞いているんだが………」

「自分でもよく分かんないや。でも、そうだなー……よくよく考えてみたら、気持ちよかったからかな?」

「ブっ!」

 

 オブラートなんてクソ食らえとでも言わんばかりのど直球に思わず吹いてしまう。ここでの気持ちいいは卑猥な意味にしか聞こえないのがなんとも。

 ちらっと彼女の方を見ると、一花は少し微笑みながら俺を見てくるが、あの時のことを思い出しているからなのか心なしか顔が紅潮している。その表情につられて俺の顔も若干熱を帯びるのを感じてしまう。

 

「お前なぁ……」

「あ、そういえば、フータロー君の方こそどうだったの?まだ返答を聞いてなかったけど。私とのキス、嬉しかった?」

「…………」

 

 と、そんなことをニヤニヤしながら質問してくる。

 正直なところ、突然の出来事でパニックになっていたので、キスの感触なんてものは殆ど感じ取ることができなかった。いや、思い出せるには思い出せるのだが、「何か触れたな」程度しか感じなかったので、一花みたいに「気持ちよかった」などの感想は無いに等しい。

 それなのに嬉しいかどうかなんて分かるはずもない。「何?」と聞かれても、この感情に名前をつけることは俺にとって難題だった。嫌ではないことは確かなのだが……羞恥、驚嘆、背徳感、優越感、……国語辞典に載っているような単語を思い浮かべてみるも、そのどれもが当てはめるには単純すぎる気がするのも確かで。

 で、そんな様子だから結局こう答えるしかない。

 

「……別に、なんも」

「え〜、何それ。私とキスしたのに何もないの?」

「無いったら無い。というか無理矢理やってきたくせに感想も何もあるか」

 

 全く思うところがないわけではないのだが、その事実を言うのは少し躊躇われたので、咄嗟に嘘をついてしまう。

 

「むぅ……じゃあ、もう一回してみる?」

「するわけないだろ……」

「おでこでもいいよ?さっきフータロー君にデコピンされたところが痛むからさ」

「そんなんで治ってたまるか。というか早く勉強に戻れ。時間が無くなっちまう」

「…………女の子同士でもさ、少し気持ちいいって感じちゃうけど、フータロー君とした時はその比じゃなかったな」

「だぁーっ!もう静かにしてろ!小っ恥ずかしくて聞いてられるか!」

 

 無理矢理中断して一花を勉強に戻らせようとするが、彼女もなかなかしつこいもので。くすくす笑って俺の反応を完全に楽しんでやがるから非常に腹が立つ。

 

「……なんかやる気出ないな〜」

「おい」

「キスしてくれないとこのまま寝ちゃう気がするな〜」

「おい」

「逆に、キスしてくれたら宿題も二倍の量を出来るぐらいやる気出すのにな〜」

「………」

「お願い!一回だけだから!」

 

 二倍の量なんて口で言うのは易しくしても、実際に達成するのは至難だ。なぜなら、授業を受けていない一花に課している課題は割と多めにしてある。仕事をしながらそれだけの量をこなすなんて到底出来るとは思えない。

 だからこそ、これはチャンスなのかもしれない。

 

「……仕方ねぇ。分かった、それならこうしよう。もし二倍の量の宿題をこなせたならお前の頼みを聞いてやる。その代わり達成出来なかった二度とわがまま言わないで勉強に集中するって誓え」

「言ったね?その言葉、忘れないでね?」

「ああ」

 

 達成出来なかったとしても、一花がそれでやる気になってくれるだけこっちは儲けもの。はっきり言ってしまえば、一花が達成出来るとは到底思えなかったので、ローリスクハイリターンの賭けであることは確かだ。

 

 

 

 しかしながら、あくまで低いだけで0ではないということをこの時の俺は考えていなかった。

 その怠慢が災いして、次の家庭教師の日から沼にはまっていく引き金を引いてしまったことをこの時の俺はまだ知らない。

 

 

 

 

「嘘……だろ……?!」

「嘘じゃないよ」

 

 俺の目にはきっちりと最後の問題まで終わらせてあるノートが映っていて、そしてノートの後ろには得意げな顔で俺を見る一花がいた。

 それにしてもおかしい。絶対におかしい。いくら二年生の学年末テストで、姉妹の中で一番の成績をとってしまうほどのこいつでも、あの量を終わらせる程の容量と根気は流石の一花にも無かったはず。なのにだ、今目の前にあるのは、しっかりと全問自分なりに頑張って解いてある宿題のノート。ズルをしてないか内容をチェックするが、正答率も真面目にやった事を示唆する数字だ。つまりこの勝負は俺の負けということになり、その対価に俺は………。

 

「なんで終わらせることが出来たんだ……?!」

「久しぶりに本気だしてやったから疲れちゃったよ」

「なんでそれを日頃からやらないんだよ……」

「ふふん、いざという時の為にやる気をとっておいているのだよ」

「得意げに言うんじゃねーよ」

「まぁまぁ、宿題もちゃんと終わらせたし、フータロー君としては嬉しいでしょ?あと約束、守ってね?」

「……どうしてもしないと駄目か?」

「当たり前でしょ」

「……それ以外で代用するというのは」

「それでもいいよ。寧ろ私としてはその方が良いんだけど」

「やっぱりやめとく」

 

 何とは言わないが、何でもするなんて言ったらキス以上のとんでもないことを要求されそうな気がしたので急いで却下する。流石にこればっかりは自意識過剰君なんかではないはずだ。

 

「ぐっ………!」

「……そんなに私とするのは嫌なの?」

「そうじゃなくてだな」

「ならそんなに悩まないでよ」

「いや、でもな………キスなんてそんな軽々しくやっていいものなのか…?」

「キスフレンドなんてのもあるぐらいだし普通じゃないかな」

 

 キスフレンドなんて初めて耳にする単語だが、意味はある程度類推できた。キスだけの関係、ということでほぼ間違いないのだろう。

 

「……お前はそんな関係良いのかよ。」

「昨日言ったじゃん。フータロー君とのキスは気持ちよかったからもう一回したいって」

「…………」

「それに、約束は約束だよ。あ、勿論ちゃんと口にしてね」

 

 そう言って一花は自分の唇を人差し指でトントンと軽く叩く。

 

「…………」

 

 こっちから提案しておいて、今更無しにするなんて都合が良すぎると自分でも思う。それに、こいつの能力を甘くみていた俺が全面的に悪いわけで。

 本来ならそんな理不尽を無理矢理まかり通すの方が倫理的には正しいのだろうが、俺自身もさっき言ったようにする事自体は嫌ではない。むしろ若干の好奇心まである。どちらかの正しさを捨てなければいけないなら、どうせなら俺にも利のある方を選んだ方がいいに決まってる。

 

「…………はぁ、分かったよ。やればいいんだろ。」

「ふふっ、やった」

「……じっとしてろよ」

 

 約束は約束。腹をくくるしかない。それに、どうせ何回か経験してるんだし、今更一回くらいどうということはないだろう。

 と舐めてかかってはいけなかった。自分からしに行くキスというのは初めての経験なので、これがまた難しかった。手はどこに置けばいいのだろう、どれくらいの力を込めればいいのだろうなど、頭の中であれこれ考えながら、最終的に一花の肩を持つことで落ち着く。

 触れてみて改めて感じる、女の子特有の柔らかな体躯。いつもより近いおかげで整った顔は細部までよく見えて、そのせいで少し胸が五月蝿くなってくる。

 

「……い、いくぞ」

「…………うん」

 

 目を閉じて、少し顔を斜め上に向けた一花は軽く返事をする。それを見て、俺は一回唾を飲み込み、ゆっくりと顔を一花に近づける。

 ぴとっと少し触れ合いう。その感触だけで背中がゾクッとするが、更に踏み込もうと徐々に力を込めて触れ合う面積を広げていく。

 

「んっ………」

 

 変な言い方になるが、こうして腰を落ち着けてキスをしてみると次から次へと感想が湧いて出てくる。

 真っ先に思い浮かぶのは、単純に柔らかい感触。触覚に思考がいくので、徐々に他の情報が頭に入ってこなくなる。緊張と心臓が五月蝿いせいで呼吸も殆どしていない。ただ一花の唇の感覚と何かの感情だけが純粋にそこにあって、何というか、それだけに集中すると形容しがたい気持ち良さがあった。なるほど、これは一花がもう一度したくなるわけだと納得してしまう。

 今まで知らなかったことが次々と脳にぶち込まれていく感覚は感動すら覚えてしまうほどだ。正確には初めてではなくて、他の姉妹ともしたのだが……まぁ、突然のことで余裕が無かったから実質初めて感じることだろう。

 あんまり長くやるのもどうかと思うので、とりあえずひと通り終わったであろうタイミングで唇を離す。

 

「あっ……」

 

 一花が少し名残惜しそうな声を出すも、これ以上は俺が耐えられそうにないので我慢してもらうほかない。

 

「フータロー君、緊張しすぎ」

「うっせ、お前と違ってこっちは慣れてねんだよ」

「あはは。まぁ、徐々に慣れていこうよ」

「もう二度とすることは無いと思え」

「ちぇ〜、残念」

「ともかく……これで満足か?」

「……うん、満足」

 

 その日、瑞々しくて綺麗な唇の感触と、花が咲いたような彼女の笑顔を思い出しては悶々としてしまい、なかなか眠れない夜を過ごすことになる。

 

 事故のようなものとは言え、不純にも一花以外の姉妹ともしたことがあるのでキスは初めてじゃない。名前の響きは少しお洒落なのだろうが、その実ただの粘膜接触で、それだけのことなのに、なぜあの感覚と一花の顔が頭から離れてくれないのか。勉強をする時、分からないことがあるとイライラしてしまうのと同じで、なんで、なんでを子供のように繰り返しても分かることは無かった。

 

 

 

 

 

 キスなんてやってみれば大したことではないのに、以前の俺は少し神聖視していたのかもしれない。

 だが、未知なるものに対して畏怖の念にも似た感情を抱くのは、人として当然の反応と言っていいだろう。それに対して躊躇なく知ろうとする人間は勇気があるのか好奇心が強いのか……少なくとも俺はそのどちらでもないから自ら進んで知ろうとはしなかった。

 

「ねぇ、今日もお願いできないかな……?」

「おまえなぁ……」

「もう何回かしてるんだし、今更一回ぐらい増えても大差ないでしょ?」

「……そう言ってもう何回目だよ」

 

 それでも偶然にも一回知ってしまうと、案外出来てしまうものだと分かったりする。おそらく一花は、女の子相手とはいえドラマの撮影でその経験があったからこそ俺の襟首を掴んで接吻なんて真似ができたのだろう。

 そしてそれと同様に、こんな俺でも一回や二回経験してしまえば、未知では無くなった快感に対してハードルが下がるのは当たり前で。

 日の出祭期間の公園でのあれは、もしかしたらただの偶然かも知れない。彼女だって魔がさす時ぐらいあるだろう。一回しただけではまだ確信が持てない。でも、二度目があった。それも、俺から彼女にするという形で。その事実を生んでしまったあの時が、歯止めが効かなくなった決定的な時なのだろう。

 

「!」

「……これでいいか?」

 

 そして今日も、彼女の要求を拒む事なく応えてしまう。二度としないと豪語してたくせにこの樣だ。

 

「……うん、これでお仕事の疲れも吹き飛ぶよ♪」

「なら今日の勉強ぐらいはやる気出せよ」

「え〜、それはどうしよっなか〜」

「……二度としねぇ」

「ねぇ、嘘!嘘だから!」

「はぁ……頼むぜ、ほんとに」

「でもさ、ちゃんと勉強も頑張れるように、もう一回して欲しいな」

「さっきのは何だったんだよ……」

「あれはお仕事お疲れ様の分だから。ね!お願い!あともう一回だけ!」

「…………」

 

 顔の前で両手を合わせてお願いしてくる一花。

そこまでしてキスなんてしたいものなのか。少し不思議に思うが、それでも一花にキスを求められるのは……言ってはなんだが、悪い気はしない。

 

「………あと一回だけな」

 

 今更興味がない振りをしても手遅れというか、意味がないというか……。枯れたふりをするのも面倒だと感じるぐらい完璧に毒されてしまった俺は再び一花に口づけをする。

 

「ん………」

 

 一花の背中を抱き寄せ、唇をいつものように当ててやる。いつも通りにしてやれば満足するしてすぐ終わると、そう思っていたのに。

 

ペロッ

 

「……!!」

 

 突然、唇に何かぬめっとしたものが当たる。その感覚に驚いて俺は思わず一花の唇から離れてしまった。

 

「あ……もう、今いいところだったのに」

「おま、今舌を………!」

「フータロー君はやってみたくないの?」

「……何をだよ」

「舌、入れてみようよ」

「……!」

 

 そう言って一花は軽く舌なめずりをする。

 やっぱり人間というのは未知のものに対して恐怖を感じる。現に、唇に少し舌が触れただけでこんな反応をしているし。一花からは普段では感じないような何か淫靡な雰囲気を醸し出していて、これ以上はまずいと脳が警笛を鳴らしていた。

 

「怖いの?」

 

 と、人様の思考を読み取ったかのような彼女のセリフ。

 

「……別に」

「ならやろうよ」

「わざわざやる必要もないだろ…」

「でもやってみたいと思わない?」

「……………」

 

 興味が無いわけではない。寧ろやってみたい気持ちがある。

 続きがしたい。初めてキスをした時のような、今まで知らなかった快感を知った時の、新鮮な感覚をもう一度味わってみたい。

 不思議とそんな思いが次々と湧いて出てきてしまう俺は本当にどうしてしまったのだろうか。

 

「一回だけやってみようよ」

 

そこに一花の駄目押しの一言が加われば。

 

「そればっかだな…。分かったよ、一回だけな」

 

 一花の頼みという名分で俺自身の欲望を隠しながらの承諾。それを聞き、にししと笑って「やった」と一花。なんだか少し情けなくなってくるけどそこには触れないでおく。

 

「いくよ?」

「お、おう……」

 

少しの間お互いに見つめあい、その後タイミングを合わせて顔を近づけていく。

 

「ん……」

 

 ここまではいつもと変わらない、何回もやってきた触れるだけのやつだ。

 しばらくして、一花の唇が少し開かれたので、それに合わせて俺も少し口を開いてみる。間もなく一花の舌が少し侵入するが、そこは拒まずに受け入れる。

 最初は少しの異物感があったが、それもすぐに慣れてしまった。いや、寧ろこれは……。

 味覚を感じ取る器官でお互いのそれを味わう奇天烈な行為は不思議と気持ちが良かった。

 ホムンクルスだか脳の中の小人だかで、脳の感覚情報は手と口に比重が置かれてるとかなんとかあった気がする。だから頭の中がこのおかしくも甘美な感覚で埋め尽くされるわけで、人はキスなんて物をするのだろう。

 なんて、別の事を無理にでも考えてなければすぐにでも余裕が無くなりそうで少し怖い。

 ここで少し息が苦しくなったのか一花が口から離れていく。もう少しで感想というか、不思議なその感覚の仕組みを体系的にまとめることができそうだったが、これからという時に離れてしまったせいでまとまりかけてたそれが霧散してしまう。

 

「………あはは、これ凄いね」

「……っ」

 

 短い時間なのにこうも息が上がってしまうほどに呼吸を忘れるということは、彼女もそれなりに緊張しているようだ。

 一花の荒い呼吸音が鮮明に聞こえてきて、見たら顔は先程よりも色っぽさが濃くなっていて。言ってはなんだがもう発情しきっているような表情だった。

 

「もっと…しよ?」

 

 あの感覚をもっと味わいたい。そう考えていたのはどうやら俺だけじゃなかったらしい。それが分かればこちらから拒む理由なんて無いので、俺と一花は再び唾液交換に興じる。

 

「ちゅ…ちゅる………」

 

 今更ながら、今までやってきたキスというものがいかに幼稚でしょぼいものだったか思い知らされた。

 お互いの唾液が溜まって奏でられる水音でより一層興奮するし、舌触りは少しざらついているのに全く不快にならず、寧ろ一体感があって非常に心地いい。お互いがお互いの唇を隙間なく塞いだ後に舌を挿入すれば、息苦しいくてクラクラするが、それがまた何故か快感へと昇華される。

 初めてのディープキスで上手くいったのは日頃の軽いキスで少し慣れていたのもあるが、一花のリードが大きかった。そのせいで、必然的に主導権は彼女の方にあるし、俺は一花にされるがまま舌で遊ばれるのみ。息継ぎで少しの間離れても間髪入れずにまたぴっちりと密着され、それに対して抵抗出来るはずもなく、ただただ大人しく送られてくる液体と快楽を一心に受け止めるほかなかった。

 

「ぷはっ……フータロー君の…美味しい♪」

「………っ。味なんてないだろ……」

「無味の美味しさってやつ?」

「なんだよそれ」

「もっと欲しい……」

「あざといな」

「いいでしょ、これぐらいの方が」

「……………」

「んっ…………」

 

 無味なはずなのに、脳が勝手に作り出している感覚なのか妙に甘ったるく感じるのは事実。たかが消化液なんて頭で分かっていてもだ。

 そんな調子でキスを続けて何分……何十分……とうとう1時間以上過ぎた辺りでようやく二人の世界から現実に戻ってくる。

 しまった、これは余りにも時間を使いすぎてしまった。

 

「はぁ、はぁ……」

「フーっ、フーっ……」

 

 慌てて口を離し、息を整えるためにしばし無言の時間が続くが、一花の荒い息遣いがやけに色っぽく感じてしまう。が、そんな思いを必死に振り切って一花に話しかけようとするも、一花に先を越されてしまった。

 

「もう終わり?」

 

 正直なところ、こっちとしてもまだ終わらせたくはなかったが、俺がここにいる理由をこいつは忘れてはいないだろうか。

 

「……これ以上はもう勉強時間が無くなっちまう」

「……今日ぐらいはサボっても」

「駄目に決まってんだろ。というかどうするんだ、このままだと計画通りに終わらなくなっちまうぞ」

 

 女優業で忙しい一花の為に、少ない勉強時間でも効率的に出来るよう計画を練ってあるのだが、少ない勉強時間だからこそ一時間の重みというのは大きい。しかし、時間が時間だ。今日はもう取り戻せそうにも無い…と思いきや、ひとつだけ解決策が思い浮かぶ。

 

「……仕方ねぇ。今日は泊まり込みで勉強会だな」

「えぇ?!」

「なんか文句あんのかよ」

「今日はもう勘弁してしてよ〜。こんな遅い時間だよ?」

「誰のせいだと思ってやがる。お前がキ……をあんなに長く続けるからいけないんだろうが」

「フータロー君も抵抗しなかったじゃん」

「やかましい。とにかくしてやったんだからやる気出せよ。約束はきっちり守ってもらう」

「ひゃ〜………。あれ、フータロー君泊まり込みで私に何する気なの?」

「勉強させるだけだからな?」

「約束は守ってもらう……これは……」

「お前わざと言ってるだろ」

 

 でも、一花の言っていることも一理ある。いや、変な意味の方じゃなくて、女の子一人の部屋に男がいきなり泊まると言いだすなど、正直言って自分でもどうかと思う。通報されてもおかしくはない。

 しかしだ、このままだと本当に成績が下がるのは必至なので、この際背に腹は変えられない。卒業できなければ意味がないのだ。

 

 この時はその行動が最善だと思っていたのだが……

 

 

 

 

 

 スパルタ勉強会もようやく終了し、俺は風呂などの諸々を済ませてホテル備え付けのパジャマに着替えて脱衣所から出る。

 

「残り湯は楽しめた?」

「なんで残り湯かは触れないでおくが風呂は気持ちよかったぞ」

「そっか、楽しんでもらえて何よりだよ」

「楽しんではないからな?……とりあえず俺はもう寝る。ソファー借りるぞ。」

「え、それは悪いよ。泊まる事になったのは私のせいなんだし」

「だからって俺がベッド使う訳にもいかんだろ」

「ダブルベッドだし二人で使っても大丈夫でしょ」

「そこじゃねーよ……」

 

 別に危惧しているのはそこではなくて、一緒に寝ること自体が問題だと言っているのだが。

 そもそもなんで一緒に寝たがるのだろう。

 

「キスした仲なんだから大丈夫だって」

「何が大丈夫なんだ何が」

「つべこべ言わずに、ほら、一緒に寝よ?」

 

 そう言って一花はベットに座り、その隣を手でポンポンと叩いて隣に来るように促す。

 ベッドの大きさ自体は二人が寝ても普通に余裕がある。スパルタ勉強会で教える側の俺もそこそこ疲れているし、ソファーは小さくて足がはみ出そうなので俺としても心地のいいベッドで寝たいのはやまやまなのだが……

 

「……そういえば、お前って寝てる時に脱ぐ癖あったよな…」

「……フータロー君になら私は見られても平気だよ?」

 

 一瞬動揺しかけるもポーカーフェイスを保つ。以前はこういった揶揄いは冷めたように受け流せていたのに、どうしてしまったのだろうか。

 

「………ソファーで寝る」

「行かせないよ」

 

 行こうとしたところを腕をぐいっと掴まれて笑顔で阻止される。

 

「既に何回か私の裸見たことあるんだから大丈夫でしょ」

「わざわざ危険を冒す必要もないだろ」

「あれ、もしかして、耐えられる自信がないの?フータロー君はオオカミさんなんだ」

「なんだよオオカミって。勝手に人をケダモノ扱いするな」

「違うの?」

「当たり前だ」

「なら良いじゃん。せっかくの機会だし」

「良くねぇ。お前の裸なんて見たくもないだけだ勘違いすんな」

「キスはするのに裸は駄目なんだ」

「それはお前の頼みだからな」

「満更でもなかったくせに」

「話題をすり替えるな、とにかく俺はソファーで寝る」

「………………」

「………………いい加減離せ」

「………どうしても嫌?」

「おい待て、泣き落としは卑怯だぞ。やめろ、うるうるさせた目で俺を見るな」

「……前まで妹達と同じ部屋で寝てたからかな、ふとした時に一人だと寂しいって感じちゃうんだよね…そのせいでよく眠れないんだ」

「子供か……」

「子供でもいいからさ、だから、今日ぐらいは、お願いしたいかなって……」

「………っ」

「一回だけ………だめ?」

「〜〜〜〜っ、だぁーもう降参だ!分かったから泣くのをやめろ!」

「わーいフータロー君やっさしい♪」

「この野郎、やっぱり演技だったのかよ」

「何のことかな?」

「女優風情が……」

 

 涙は女の武器とはよく言ったものだ。演技かそうでないかなんて見分けがつかない以上、冷たく見放すなんて選択肢は流石の俺でも選べるわけがない。去年の林間学校でも俺の不用意な言葉でこいつのことを泣かせてしまった前科があったからか、なんだかんだで一花に押し切られてしまうところ、俺もまだまだ徹しきれてないというか。

 俺は大人しく彼女の隣で寝ることになってしまった。

 

「……掛け布団も一緒かよ」

「あったかいなぁ、お姉さん嬉しいよ」

「お姉さんというより妹だけどな」

「わーいお兄ちゃーん」

「犯罪臭凄いからやめてくれ……」

 

こいつ、とうとう開き直りやがった。

 

「………まぁいい、さっさと寝るぞ」

「………明日お仕事無いし夜更かししてもーー」

「駄目に決まってんだろ。それより明日仕事ないなら朝早く起きて勉強な」

「え、嘘でしょそれ」

「子供は寝る時間だぞ。おやすみ」

「ちょっと!」

 

 ごろんと体を1/4回転させ、一花の反対側を向く。後ろでギャーギャー喚いているお子様女優を無視し、俺は心地よい眠気に身を任せる。ベッドの気持ち良さも相まって、すぐに意識を手放せそうだ。

 

 

 

 

 日頃から頻繁に寝落ちしてしまう俺でも、ベッドに入った瞬間すぐに眠れるわけでもないので、しばらく目を閉じてその時を待っていた。

 

「ねぇ、フータロー君…」

「……ん?なんだ?」

「少し、お話しない?」

「……少しだけな」

 

 そこに一花が俺に話しかける。寝ているふりをしても良かったのだが、ベッドの心地よさと同調して今ならなんでも許せるぐらい優しい気分になっていたので、そこは応じてやる。いや、それ以前にいつも一花の頼みを聞いてやってるわけだしあまり関係ない気もするが………。

 いつか厳しくしてやろうと密かに誓ったところで俺は体を半回転させて一花の方に向き合う。

 

「いつも勉強見てくれてありがとね。これでもフータロー君には感謝してるんだ」

「急にどうした、気持ち悪いぞ……」

「ちょ、そこは素直に受け取ってよ!」

「はいはい。で、本当にどうしたんだよ」

「深い意味はないよ。ただ、フータロー君にはいつも迷惑かけちゃってるから、こんな時ぐらいはお礼の一つも言っておいた方が良いのかなって」

「………もしかしてそれ言うためにわざわざ一緒に寝ようって言ってきたのか?」

「あ、バレちゃった?」

「バレちゃったって……というか、それ言うだけならわざわざこんなことしなくていいだろ」

「………まぁ、それだけじゃないんだけどね」

「ん? すまん、聞こえなかった」

「ううん、何でもない。とにかくありがとって言っただけ」

「……別に。俺が好きでやってるんだし気にすんな。それに、お前に無茶なお願いしちまったのはこっちなんだから、それぐらいやるのは当然だろ」

「それもそうだね。フータロー君が言い出さなきゃ私はお仕事に専念出来てたのにね」

「おい、そこは否定するところだろ」

「それ自分で言っちゃう…?まぁでも、フータロー君が一緒に卒業したいって言ってくれた時は、凄く嬉しかったよ」

 

 ………照れ臭いことをまぁ、よく平然と言えるものだ。お陰で体がムズムズしてしまう。

 でも、彼女が退学届を出した時、そこにわざわざこっちから首をつっこんで、走ってバイト増やして借金までして、それらの過程は決して楽なものではなかったけど、その一言でほんの少しだが報われた気がした。

 まぁ、本当に報われる時は彼女が無事に試験をパス出来た時なのだが。それを考えると、これからが本当に大変だ。

 

「……フータロー君て私の事、好きなの?」

「これまた唐突だな……」

「だって、普通ここまでやる人居ないよ。借金してまで卒業させようだなんて……フータロー君が私の事を好きって勘違いしても仕方ないぐらいだよ」

「そりゃ普通じゃないって自分でも思うけどさ……前にも言っただろ、俺はお前らが好きだって」

「でも、その好きって要は良き友人としてって事だよね」

「まぁ……それ以外無いだろ……」

「……本当に?」

「ほんとも本当だ」

 

 そこで会話が途切れ、しばしの間沈黙が続く。その間に一花の質問の意図を汲み取ろうと頑張ってみるが、辿り着いた答えはあるにはあるが、確証が持てない。なんせ、俺は自意識過剰君だから「卒業したいのは妹達とじゃないけどね」なんていう言葉を聞いた時、「それって俺もか?」と続けそうになって結果違ったという出来事もあったほどで。

 あれこれ考えている最中に、何やらゴソゴソと何かが動いている音が聞こえてきた。この部屋には俺と一花の二人だけだということを考えると必然的に彼女が動いているのは分かるが、一体何を考えてそうしているのかわからない。

 

「………近くね?」

「………」

 

 ただでさえ同じベッドで寝るという異常事態なのにわざわざ近づいてくるなんてどうにかしてしまったのではないだろうか。そのことに対して一応言及してみるものの、彼女はそのことに触れず話を続ける。

 

「……ねぇ、フータロー君。一緒に卒業したいって言ってくれたの、私は本当にうれしかったんだよ?」

 

 ……ただ感謝の気持ちを述べている、それだけなのに何故か嫌な汗を少しかいてしまう。何か大切な事が変わってしまうようなそんな予感さえする。言いしれようもない圧力に抗えず、俺はただ黙って一花の言葉を聞くことしかできなかった。

 

「それこそ、君が妹達より私を大切に思ってくれてるのかな、なんて期待しちゃったり」

 

「……期待しちゃうよ。だって、あんなに迷惑ばっかりかけてきたのに、それでも借金までして勉強を教えてくれるんだよ?」

 

「私はそう思っていても……フータロー君は私のこと、ただの友達としか見てないの……?」

 

 分からない、本当に分からない。こいつの行動は分からないことが多すぎる。誰が一番好きか俺に聞くときも、自分だけは選択肢から外すし。それは俺のことを何とも思ってないからかと思いきや、そのくせすぐにキスしたがるし………。なんで少し辛そうにしているのか、なんで俺に近づいてきているのか、考えるべきことが多すぎて脳みその回転は完全に間に合っていない。

 それでも足りない頭を必死に動かして、重い口を開いてこう言う。

 

「……俺にとって、お前ら五人全員が好きで、大切なのは確かだ。でも、そこに差があるかって言われたら………多分、無い……」

「……キスまでしたのに、フータロー君は私の事、本当に友達としか思ってないんだ」

「キスフレンドもキスを除けば友達の範疇だろ」

「それでも普通は少しは意識しちゃうものなのに……なんか悔しいよ。私に魅力がないみたいで」

「………」

 

 つまりは、こいつは好き嫌いじゃなくて女のプライドが許さないから、こういう事をしているのか。なんだそれは。

 

「別に、俺なんかにどう思われようが気にすんなよ」

「それが出来ればこんなこと言ってないよ」

「いや……こればっかりはキスする相手が悪かったというしか……」

「つまり私は他の人とキスすれば良かったってこと?」

「そうは言ってないだろ。……まぁでも、他の奴なら、そういうのはあるんじゃねーの、多分……」

「………じゃあ、仮に私が他の人として、フータロー君はそれでいいの?」

「………………」

 

 話が飛躍し過ぎている気もするが、答えないわけにはいかないのだろう。でもすぐには答えられなかった。

 

「フータロー君はさ…」

「………?」

「私とキスしても……本当に嬉しくなかったの…?」

「………」

 

 そういった異性としての意識が完全にゼロというわけではない。現に、今なんて二人で寝てるこの状況に脳みそは思考力を失いかけてるし。今に限らず、キスするときだって、少なからず一花の言う「意識」はしている。

 その問いに対して素直に答えるべきなのだろうか。ここでの俺の言う答えは、つまりはこいつとの今後の関係を決定づけるものであるに違いない。それだけは直感で分かった。

 それを踏まえて取るべき行動……黙るか、嘘をつくか……それとも本音を話すか。どれが正解なんて分からなかった。

 

「…………この前はなんとも思ってないって言ったな。でもあれは嘘だ」

「え……」

「…………多分だが、嬉しかった。純粋ではないけど、それだけは確かだ。なんでかは分からないけど、当時はそう感じたんだと今にして思う。」

「…………っ」

「さっきお前、他の奴としてもいいのかって聞いたな。そんなの嫌に決まってんだろ。お前がドラマの撮影でしたって聞いた時、知らない奴と一花が………なんて想像するだけで何故か嫌な気分にもなった。多分それは嫉妬ってやつなんだと思う。………だけど、それならお前のことを好きなのかって聞かれたら……それはよく分からない」

 

 何を話しているんだ俺は。嘘をつく選択もあったはずなのに、気がついたら本音が出てしまっていて、ついでに言えば、なんで俺が一花のことを好きかどうかなんて余計なことも喋ってしまっているのだろうか。

 どれもこれもベッドと一花が作り出したおかしな雰囲気のせいだ。

 

「……本当にキモいな、俺。」

「……本当だね。本当にキモいね。ただの友達なのに、なんで嫉妬なんてするかな。」

 

 聞かれたから素直に答えてやったのに、痛いところを容赦なく。でも、事実なので反論なんてこれっぽっちも出来ないのだが。

 辛辣な言葉とは裏腹に、一花の顔は何故か少し笑っていて。その表情のまま俺にこう言う。

 

「私が他の男の人とキスするの、そんなに嫌なんだ」

「………まぁ」

 

 ああ言ってしまった手前、今更否定しても男のツンデレなんて余計に気持ち悪くなってしまうだけだったので、渋々返事をする。

 一花の言葉に対して肯定してしまったが最後、また何かきついこと言われるかな、そう思っていたのに。

 

「……キモいのは私も同じなんだけどね」

 

 でも、返ってきた台詞は全く予想してなかったものだった。

 

「……私もフータロー君以外の人に何かされるのは嫌だよ」

「……それ、どーいう意味だよ?」

「分かりやすく言うと、フータロー君にだけなら、何されても嬉しいよってこと。キスでも、それ以上のことだって」

「………友達なのにか」

「友達なのにね。そのくせ、異性として見て欲しいなんて我儘言っちゃう私も大概キモいよね……」

 

 本人は分かりやすく言ったつもりなのだろうが、肝心の俺は意味を理解できていなかった。

 ………そろそろ状況を整理した方がよさそうだ。今日も家庭教師していて、キスして、それからベッドに入って、何されても嬉しいって告げられて………というか、「何されても」とはどういう意味だ。「それ以上」とはなんだ。広辞苑には何て書いてある。

 

 あべこべな思考をしていると、突然一花の手が俺の頰に触れ、そのせいで自分の世界から一瞬で現実に引き戻されてしまう。

 

 状況が整理出来ないまま彼女の顔が近くなる。

 勘が告げている。日頃のキスでフラストレーションが限界近い今、ここでしてしまったらもう後戻りは不可能だと。

 それが分かっていても、金縛りにあったかのように体は動いてくれない。

 

「ん……」

 

 とうとう彼女の唇が触れてしまう。何回もしてきた、触れる程度の稚拙なキスのはずなのに。ちくしょう、なんでだ、このキスだけは、多分一生忘れないと言っても良いほど気持ちよかった。

 

「……っ」

 

 性的な事に殆ど興味がなかったはずが、一花と何回もキスを交わす内に、どうやら潜在的にあった俺の中の獣が目を覚ましてしまっていたらしい。そして、今のキスで完全に箍が外れてしまった。

 ドス黒い何かが奥底から湧き上がってくる。

 

「………私ね、フータロー君のことがーー」

「一花!」

 

 今まで抑えていたものが溢れ出てしまった。一花のことを強烈に欲しいと思ってしまった。

 彼女が何か大切なことを言う前に俺は

 

「! ……いいよ、フータロー君になら……」

 

気がついたら、彼女をその腕で抱きしめていた。

 

 

 

 

「あっ……んんっ…」

 

 そこから何をしたのかはっきりと覚えていない。記憶が曖昧なことから本能だけで動いたのだろう。彼女の体を抱き締めながら、ただひたすらキスをしていた。確証は持てないが、多分そうしていたと思う。

 そこまでぼんやりと思い出したところで、はっと我にかえると、俺の手はやたらと熱のこもった何かに触れていた。やっとのことで状況を全て飲み込んで、彼女の秘部に触れているのだと分かって、分かった上で、俺は酷く理性的に一花の蜜壺をほぐしていった。

 

「フ……タロー……くんっ……」

 

 彼女の秘部から発せられる卑猥な水音と、我慢したような甘い声で俺の名前を呼ぶ彼女の表情は余りにも毒だった。切なそうな表情が「口元が寂しい」と訴えかけているような気がして、たまらず彼女の唇を塞いでやる。

 

「ちゅ…ちゅる…んっ……ちゅ…」

 

 一花の切なさを埋める為に彼女の口の中を自分の唾液と舌で満たしてやると、与えられたものを一花は素直に享受していく。それでも手を休める事はなく、彼女から先程教えてもらった弱点を押し上げ、刺激を一定にして丁寧に丁寧に攻めていく。

 

「結構濡れてるな………」

「うん……勉強…っしてる時から…んっ…ずっと期待してた……」

 

 どうやら勉強会の前の舌を入れる濃厚なキスでスイッチは入ってしまっていたらしい。勉強会の間、やけに一花がもじもじしていたのはそういう事だったのかと今になって納得した。

 

「…………本当に凄いな…」

 

 我慢していた分、一花のそこは一言で言うと大洪水だった。彼女の秘部から手を離し、目の前に手を持ってくると、そこには大量の愛液が重力に引っ張られて糸を引きながら手に付いていた。

 

「そ、そんなのわざわざ見ないでよ…!」

 

 自分の分泌液を見て恥ずかしくなったのか、一花は顔を真っ赤にして抗議する。

 

「もっと恥ずかしい部分を見られているのに今更だろ」

「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいよ……。それに私だけ見せるなんて不公平だからフータロー君も脱いで……?」

 

 膨張しているところが今にも弾けてしまいそうだったので、一花に言われるがままに俺も服を脱ぐ。ブツは痛いほどにそそり立っていて、服が邪魔なせいで解放しきれていなかった硬さが、たった今狭い空間から解き放たれたことでより一層血流が増してしまう。

 

「そ、そんなのが入っちゃうんだ……」

「……いきなり入れるのか…?」

「……それは流石に怖いかな」

 

 一回でも経験していればスムーズに行くのだろうが、あいにく童貞と処女の組み合わせなのがなんとも。でも、そういった知識が皆無な俺よりも、一花の方がメディアに多く触れている分の利があったようだ。

 

「じゃあ、とりあえず失礼して……」

「?!」

 

 そう言って一花は俺に跨る。

 次の瞬間、俺のものが暖かくねっとりとしたものに包まれる。

 視界には一花のお尻しか見えておらず、何が起きたか分からなかった為、突如として現れた快楽信号を処理できずに脳は戸惑うばかりだ。だが、彼女の体が一定のリズムで動く様子とじゅぽじゅぽと聞こえてくる淫靡な音で、一花が俺のものを口で愛撫するために動いているのだとようやく理解できた。

 

「んっ…じゅる…っ」

「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」

 

 歯を食いしばって必死に声を出さないようにする。

 この快感を全て処理しきるには俺の頭ではどうやら容量不足だったらしく、すでに何も考えられなくなっていた。

 だが、こっちもやられっぱなしでは無い。一花の攻撃の手を少しでも緩めさせるため、本能的に目の前にある一花の秘部に手を伸ばす。

 

「っ、この…!」

「んっ!?」

 

 一瞬、一花の体がビクッとするが、口淫をやめる気配は全くない。もっと攻めてやろうと思い、ずらしていただけのショーツを脱がしてやると、篭っていたいた熱やら匂いが鼻腔をくすぐる。

 もうここまで来たらこっちも自由にやらせてもらわないと、そんな思いで彼女の割れ目を少し広げてみる。部屋の明かりは弱いオレンジライトしかないせいで細部まではよく見えないが、それでも初めて間近で見るそれに、自分のブツを挿入する時の事を考えると酷く興奮してしまう。

 

「ひゃあ!?」

 

 衝動的に彼女の蜜壺に口を近づける。

 突然の事に驚いてしまったのか、一花は咥えていたものを口から離してしまう。

 

「そ、そんなところ…あっ…舐めないでぇ……!」

「先にやってきたのはお前だろ。仕返しだ」

「〜〜〜〜〜っ!もうどうなっても知らないから………!」

 

 その言葉は行為が恥ずかしいのか行為自体が好きじゃないのか。前者なら今更恥ずかしがられてももう手遅れだと思う。キスにしろ、口淫にしろ……散々恥ずかしいことを自分からしておいて。その上、俺のものを咥えるときにわざわざお尻を俺の顔に向けるあたり、一花は痴女か何かであると俺の中でもう結論付いてしまっていた。

 そんなわけでたとえ後者であっても知るかと、構わず彼女の花弁を舌で愛撫してみると、一花の体から面白いほど反応が返ってくる。

 それに対抗するように一花も俺の物を舐めてくる。おおよそ十八年生きてきて初めて知る劇物のような快楽に、すぐに射精感が押し寄せてきてしまっていた。

 

「おい、出るから口を離してくれ…!」

「じゅるっ、ちゅ、ぢゅぽっ」

 

 一花の吸い付きでどうやら全く聞き入れてくれないことだけはわかった。さっきの「どうなっても知らない」との発言を思い出して、早々にこれを阻止するのを諦めることにした。

 一方が気持ちよくしようとすればそれに応えるようにもう一方も気持ちよくしてくる。無限と高まっていく快感を前に我慢できるはずも無いので、これ以上の口淫をやめさせようと一花の秘部に指を挿入して押し上げてやる。だが、口淫を止めさせるにはむしろ逆効果で、一花は余裕がなくなったのか舐め方が早く雑になってしまうも、その雑さがむしろ快感となって襲いかかってくる。

 

「ヤバッ…………!」

 

 俺の声が聞こえてないのか、それとも無視しているのか一花は構わず咥え続ける。

 既に限界が来てしまい、射精する勢いが強すぎて腰を引いてしまうほどに、容赦なく精液を彼女の口に注ぎ込んでしまった。

 

「んっ、むぐっ、ちゅっ……」

 

 それでも彼女は執拗に吸ってくる。出した後にこれをやられてしまっては堪らない。情けない声を少しでも抑える為に思いっきり歯を食いしばるも、それでも喉が震えてしまう。

 

「ん……ごくっ…」

「おい……」

「ご馳走さま……♪」

「腹壊しても知らねーぞ……」

「こんなに美味しいのに壊すわけないよ」

「美味しいわけねーだろ、味覚細胞死んだか?」

「でもちょっと興奮しない?」

 

 主導権を奪った一花はさっきとはうって変わって余裕の表情。チロっと舌舐めずりをする彼女は流石というべきか、かつて彼女の演技力に助けられた事を思い出す。あの不味いアップルパイをあれだけ美味しそうに食べられるほどだ、俺の出したものを微塵もまずいと感じさせないその表情を見て、耐えられるはずもなかった。

 

「さっきよりガチガチに硬いから、興奮したみたいだね」

「……この淫乱女優が」

 

 今度はこっちの番とばかりに彼女の上に覆いかぶさり、一花の秘部に再び指を挿入する。

 精液がまだ口の中に残っているとか、そんなのは御構い無しに彼女の口にキスをする。これ以上好き勝手されてはたまらないので、何も言えないように言葉攻めを封殺しておき、その上で今度はこちらが好き勝手するという算段。が、これを看破されてしまう。口付けに関しては流石というべきか、一花の方が経験した回数が多いからか、彼女の舌技で逆襲されてしまった。

 

「ふふっ、フータロー君もまだまだだね」

「………バカのくせにこういうのは覚えが早いんだよな」

「敗者に口無しだよ」

 

 挑発には成功したけれど、そのせいでまた口を塞がれては蹂躙されてしまう。一花は俺の首に腕を回し、絶対に離れられないようにしてから、どっちが上かを教え込むように、じっくり、ねっとりと舌を絡ませて、歯茎をなぞり、そして角度を変えてはそれの繰り返し。息が苦しくて頭がクラクラする。

 

「ぷはっ……。どう?」

「……………っ」

「フータロー君ばっかりはずるいから、そろそろ私も気持ちよくして欲しいかな」

「…………………………………足開け」

 

 再び俺が一花の上に覆いかぶさり、そして一花の秘部に自分の切っ先を当てがう。そこで重大な忘れ物に気がつく。

 

「……ここ、何か無いのか」

「……? 何かって…?」

「いや、避妊具とか…」

「……別にしなくて良いんじゃない?」

「何も良くないだろ」

「でも今から買いに行くの?」

「………必要なら行くしかないだろ」

「中に出さなければ平気だよ。多分……」

「多分て……駄目だろ、それは……」

「フータロー君が中途半端に弄るからもう我慢できない……」

「そこは耐えてくれよ……」

「……フータロー君は我慢出来るの?」

「……無理だな」

 

 意見が合ってしまったらもうやる事をやるしか無い。

 愛液と唾液でぐちゃぐちゃになったそこに、一度出したとは思えないほど硬くなった陰茎を当てがう。腰に力を込めて、ゆっくりと挿入していく。彼女の中を押し広げていく感覚は俺を更に狂わせにかかってくるが、そこは辛うじて良心が力を制御する。

 

「あっ…入ってくる…!」

「……痛くないか。」

「うん、大丈夫……。初めては痛いって聞くけど……意外と……痛くないんだね……これ……」

「…………」

 

 女の子の初めては痛いなんてよく聞くが、そこは個人差があるのだろうか。俺自身こういったことは初めてだし何より性別も違うから確かめようがないが。

 痛くないに越したことはないのだが、それでも念のためゆっくりと挿れていく。

 

「フータロー君も初めてだよね……?フータロー君の……初めて貰えて……嬉しい」

「それ普通男の台詞じゃないか……?」

「じゃあ、フータロー君に初めてあげられて嬉しい……」

「……そりゃ良かったな」

「照れてる」

「うるせぇ」

「フータロー君は……私の初めて貰えて……嬉しい……?」

 

 その質問は死んでも答えたく無いので、無視して一花の中に挿入することだけに集中する。

 効果音で表せば"つぷんっ"といった具合に最後、彼女の中に俺の全てが飲み込まれる。

 

「んっ…これで…全部入ったの……?」

「あ、ああ…キツく…ないか?」

「……フータロー君がそんな気遣いするなんて意外だね」

「俺をなんだと思ってやがる」

「いきなり抱きしめてきて襲っちゃうオオカミさん?」

「いや、ほんと……すまん」

「冗談だって。でも、フータロー君のことだから"俺には良く分からん"とか言って乱暴にするイメージあったからさ」

「流石の俺でもそこまではしねーよ……。それより大丈夫なのか?」

「ちょっとだけ………キツイかも……。」

「……………一旦抜くか?」

「フータロー君の大きさに……ひろがってる感じするから……多分平気……」

 

 その発言はつまり、彼女のそれが俺の色に染まっている事を示唆していて、なんてそんなとこまで想像してしまう。

 

「…………っ、 一花……!」

「あっ……………!」

 

 そこまで言われて我慢できるはずもなく、腰が半自動的に動いてしまった。一花の膣壁を擦る快感は凄まじく、一度動いてしまえばもう止まることは出来なかった。

 

「すまん………!」

「いいよ……好きに…動いて……!」

 

 一花はそう言うが、ここで好きに動いてしまえば後悔することになるかもしれない。一花を思うがままにめちゃくちゃにしてやりたい衝動を必死に抑えつけて、一度につき何秒もかけてゆっくりと動く。

 

「これぐらいで……大丈夫か?」

「あっ……きもち、い………」

 

 普段はあれだけ俺をからかってくるくせに意外とドジで、それでも手玉を取ってしまう彼女が、今こうして余裕を失くして乱れている。そうしてやったのは自分だという事実が、より一層興奮を掻き立て、その勢いのまま徐々にピストンの速度が上がっていってしまう。パンパンと肌を打ち付け合う乾いた音と、荒い息遣いに時折漏れる甘い喘ぎが部屋を隅々まで満たす。

 

「一花…、声……エロすぎるから……もう少し抑えてくれ……」

「あっ……むり……だよ…こんな…されたら…」

「我慢してくれ……」

「なら……フータロー君こそ……あっ……速度……抑えてよ……んっ…」

「それこそ無理だ……」

「………なら、塞げばいいよ…」

「………?」

「キス……して……?」

 

 それなら幾分声はマシになるのだろうか。断る理由もなく、そのまま彼女の口を塞いでやる。口に性器に、一体となる感覚が気持ちよ過ぎていっそこのままずっと一つになっていたいとさえ思う。

 でもそんな時間も長くは続かない。快感が蓄積していけば、結局はお互いに我慢の限界が来てしまい、二人とも絶頂に達してしまう。彼女の膣内が俺を飲み込もうと必死にうねり、それに耐えられる筈もなく、出してしまう寸前に慌てて彼女の中から陰茎を引っ張り出す。    

 何処に射精するか考える余裕がなかったのは言うまでもない。その結果、一花の花弁に白濁液をかけてしまった。

 

「………………中に出されちゃったみたい…」

「中に出してねーから安心しろ………」

 

 日頃から運動不足なのに、急に運動したせいで疲労感が一気に押し寄せてきてしまい、それだけ言って、一花の隣に仰向けに倒れこむようにして寝そべる。

 

「少し休ませてくれ……」

「………………」

 

 もうこのまま寝てしまっても良いかな、なんて最低なことを考えていると、一花が突然俺の上に跨ってきた。

 

「……………おい、何してんだよ」

「え?フータロー君はお疲れみたいだし、私が動いてあげようと思って」

「………頼むから休ませてくれよ」

「あと一回だけだから、ね?」

 

 俺がもう動けないことをいいことに、俺の気力とは正反対にまだ固いままのブツを、一花は自分の割れ目に当てがい、そのまま体重を利用して飲み込んでしまった。

 

「おまっ……!」

「あっ、やっぱりこれ……すご……!」

 

 体重がかかってる分さっきよりも深く入っているわけで、一花はそれがお気に召したようだ。

 

「フータロー君……これ、気持ちいい……?」

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 答えたく無い。というか声を抑えるのに必死で答えられなかった。それぐらい彼女の腰使いは巧みすぎた。初めての性行為だが、それでも一花の動き方はあまり見ることは無いだろうということだけは分かった。

 

「こんなのどこで知ったんだよ……!」

「内緒………あっ……!」

 

 ずっしりと重量感のある果実を揺らしながら、必死に快楽と戦う一花の表情はあまりにも扇情的すぎた。そのせいで、一花にされるがままされていようと思っていた体も、今では嘘みたいに彼女の奥を突き上げたいという衝動に駆られていた。

 

「ほんと好き勝手しやがって……!」

 

 上半身を持ち上げて、一花の体を抱き寄せて強引に座位の体勢をとる。そてしそのまま欲望の赴くままに腰を動かし、一花の膣内に包まれる快楽を貪る。

 

「そ、それはフータロー君も同じでしょ……!」

「最初に咥えて来ただろ……」

「それより前に、んっ……フータローくん……襲って……あっ……来たよね……!」

「さらにその前にキスしてきたのはどっちだよ……!」

 

 みっともない責任の押し付けあいだが、精神的優位を得るためにはこうでもしないとやっていけない。言ってしまえば開き直りだが、この際なんでも良い。最低と言われればそれまでだが。

 好き勝手に一花の体を味わっている俺に対して、一花も座位になったことで必然的に彼女の豊満な果実が俺の顔の近くになるわけで、それを見て何もせずに居られるわけがなく、ピンク色の先端に堪らず吸い付いてしまう。

 

「やっぱり……大きい方が好きなの……?」

「なんでそんな事聞くんだよ……」

「いや、だって……そんな必死に吸い付くのが……可愛くて……」

「恥ずかしいから言うな……」

「やっぱり好きなんだ」

「………よくわからん」

「見るのは私のが………初めてだから……?」

「………………」

 

 もうこれ以上会話を続けても羞恥心が煽られるだけなので、腰の動きに意識を集中させ、もう話さないという意志を込めて一花の奥を突く。

 それからはもうただひたすらお互いに体を味わい尽くした。腕で力強く抱き寄せて、全身で相手の温もりを感じられることに少し幸せを感じて、時折口が寂しくなればまたキスで埋めて………。

 一つに溶け合う気持ちいい時間が無限に続けば良いのになんて思っても、いずれ終わりは来てしまうわけで。

 

「あっ、あっ、フータロー……くん……!きちゃう……!」

「俺も……出そう………そろそろ……脚を離してくれ……!」

「だめ……っ!中に、出してもいい………いいから……抜かないで……!」

「おい……!」

 

 引抜こうにも、彼女は脚で俺の腰をぎゅっと掴んで離さず、腰の動きを止めても、一花が自分で動いてしまう始末。

 しかもトチ狂ってしまったのか、一花は俺の首に腕を巻いてキスをしてくる。

 ここまでされて思考がとっ散らかってしまい、さっきから陰部は一花の中に射精する準備を進めているのに、快楽で脳が溶かされてしまったのか抵抗できない。もう中に出してしまえばなんて危険な思考さえしてしまっていて、快楽に身を任せる選択を受け入れた体はもう手遅れという他なかった。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

 絶頂に達した一花の膣内は一滴も残さぬよううねり続け、それに応えるように俺のものは何回も脈打って精を与え続けた。

 全て出し終えても、その体勢で挿入したまま二人で抱き合い、ひたすらに濃厚なキスを交わす。

 彼女が満足出来たタイミングでようやく陰茎を引き抜くと、一花の中を塞いでいたものが無くなったせいで、蜜壺から精液が伝ってベッドのシーツに染みを作った。それを見て一花は力なく笑って言う。

 

「…………あはは、やっちゃった……ごめんね」

「………お前が謝る事じゃないだろ……」

 

 それだけ言って、二人してベッドに倒れこむように寝そべる。

 

「すまん……寝る」

「私も……」

 

 床に落ちた羽毛布団を引っ張り上げ、一花と俺の体にそれを掛ける。

 流石にもう一ミリも動けそうにない。体力無しの俺がここまで持ったことの方が奇跡というもの。そのせいで暴力的なまでの睡魔が襲いかかっていてた。

 これからどうしようとか、面倒なことは全て起きた後の俺に任せてしまおう。

 

「おやすみ、フータロー君」

 

 突然、一花に頬をキスされてしまう。一瞬それにときめいてしまうが、もう意識を保つので精一杯だった俺は気絶するようにそれを手放しながら、せめて挨拶だけでも返そうと言う。

 

「ああ、おやすみ……い……ち………」

 

 その夜はなんだかとてもいい夢を見たような気がする。

 

 

 一花は仕事が休みだと言っていたが、俺の場合、通常通り学校があった。が、朝起きてみると既に十時過ぎ。寝坊も寝坊、大寝坊だ。

 本来なら慌てて準備して学校へ向かうのだろうが、どうにもそんな気分にはなれなかった。自棄とか、そんなのではなくて、なんだか少し心が晴れているからこそまだここにいたかったというか。

 隣でまだ寝ている一花を見て起こそうかと思ったが、気持ちよさそうに寝ている顔を見るとそれは躊躇われた。勉強は今度やらせればいいか。数時間前まであんなことをしていたんだし。

 それでも、起こしてしまう危険性があるにも拘らず、一花の綺麗な寝顔についつい見惚れてしまい、彼女に触れてみたくて髪をそっと触ってみたりする。

 

「…………はぁ、やっぱそういうことだよなぁ…」

 

 他の姉妹とも違う、一花とキスをした時だけに感じていたもの。彼女とそれをする時、いつも感じていた正体不明の何かが分からなくて、そんな自分に苛立って。

 結局、修学旅行が終わってからずっと考え続けていた問題の答えは酷く単純なものだった。それなのに、こんな状況になるまで自分の気持ちにすら気付かないとは、相変わらず鈍すぎて救いようがない。

 一花が寝ている今なら、呟いてみてもいいだろうか。そう思い。

 

「俺は、一花の事がーーー」

 

 

それでも、もう一つの思いがそれを阻んだ。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




なんで一花の話が多いかというと推しだからです


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