王のヒーローアカデミア (ピーシャラ)
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プロローグ
プロローグ①


もしも項羽が退場部屋へ行かずヒロアカの世界に転生した感じです。どっちの作品もいいなーと思い付きで書きました。処女作なので、駄文でも許してくださいm(_ _)m

12/1再編済み


 ここは何処だ…暗い何も見えない………確か、俺はダルモンの才能で死んだはずだ。…まさか失敗した?

 いや、そんなはずはない。あの時、確実にダルモンの才能は執行された。

 俺が、死んだことは間違いない。

 …そうか、ここはあの世か…誰もいないな……まぁ、仲間を手にかけた俺には、お似合いか。

 

 そういや、ダルモンはどうしているんだ。ダルモンには天国行ってあいつらと一緒になれたらいいな…。

 ……西耶、お前の自慢の弟は大丈夫だ。東耶なら世界を平和に導くことができそうだ。

 …だから、いつものように見守っていてくれや。

 

 さて、これからどうしようか。

 と、言っても身動きが取りづらいし何も見えん。真っ暗だ。

 

 まぁ、気長に待ちますか……。

 …ん?なんだか、体が締め付けられる。苦しい……!

 なんだ……進んでいる気がする…締め付けがさらに、きつくなってきた…どうなっていやがるんだ。明るくなってきた…眩しい!

 

 

「オギャー!!オギャー!!オギャー!!」

 

 

 

 

 

 

………………は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜4年後〜

 

 よぉ、みんな。俺だ。世界最強だ。

 いや〜あれから、色んなことがあった。

 まさか、赤ん坊からやり直すことになるとはな…羞恥心やら、なんやらで死んじまうかと思ったぜ。

 この歳で、自分のう○こを笑いながら処理されるのは恥ずかしくて死にそうになった。

 

 そう言えば、この"世界"の話をしていなかったな。

 驚いたよ。初めて親と散歩に出た時、周りの光景に唖然とした。

 街を歩く奴らにツノが生えいたり、翼が生えていたり、はたまたそれは人間と言えるのか?と言えるような奴もいた。

 間抜けにも、まさか、こいつら全員、廻り者かと警戒しちまったがどうやら違うらしい。

 

 どうやら、この世界には"個性"と言う人口の約8割が持っている才能とは違う特殊能力があるらしい。

 個性の発現は3〜4歳らしいが俺にはまだない。

 

 因みに、両親の個性は…母親は触れたものを操る個性。父親が黒い霧を少量出す個性だ。

 個性は両親のどちらかを継ぐか、どちらとも継いで混ざるケースがあるらしい。世界最強もちょっと楽しみだ。

 

 さて…そんな、世界最強は絶賛、幼稚園に通っている。

 そして、今、とあるうるさい"奴"に絡まr「お〜いなにぼーっとしてるんだよ」

 

 こいつだ。幼稚園生に似つかわしくないトゲトゲの毬栗金髪頭を持つ爆豪勝己。

 こいつは、俺が幼稚園で本を読んでいた時に、「なにスカしてんだてめー」とまるでチンピラのように喧嘩を売られ、俺がコテンパンにしたらその翌日から、何かと絡んでくるようになった。

 

「なんでむしすんだよー。やんのかー?このスカしやろー!」

 

「いやすまん、勝己。考え事してた」

 

「ふーんそうか。なぁ、テレビみようぜ!」

 

「おう、いいぜ」

 

 テレビの置いてある部屋まで勝己と行くと、そこにはもう一人、ソファの上に座っている。見慣れた緑色の、もじゃもじゃとした頭と頰にそばかすがある、目をキラキラ輝かせながらテレビを見ている緑谷出久だ。

 そんな出久はテレビに食い入ってこちらに気づいていない。

 

「じゃまだデク!テレビがみえないだろう!」

 

「あ、かっちゃん。こうちゃんもみてみて。おーるまいとだよ!」

 

 勝己が目を釣り上がらせ、出久に退くように怒鳴る。

 出久は慣れてしまったと言わんばかりにスルーし、俺たちにテレビを見るように促す。

 

 勝己と出久は、家が近所らしく、昔から親同士の付き合いが多く、そのまま歳が近い事から幼馴染の関係になった。

 しかし、勝己は才能に溢れ、喧嘩ぱっやい活気盛んなガキ大将気質の奴だ。出久は、勝己と対照的に大人しく、気弱で泣き虫のいじめられっ子気質で、花に笑いかけながら話しかけるようなお人好しだ。

 

 まるで、真反対の出久を、勝己は何もできないどんくさいデクと蔑称をつけてしまった。しかし出久は案外気が太いのか、そんなことを気にも止めていない風に勝己とは普通に接している。

 

 出久の口から"おーるまいと"と言う単語が出た瞬間。 

 勝己の目も同じようにキラキラと輝き始め、出久の隣に座る。

 俺はそのまま勝己の横に座った。

 

「なに!みせろ、デク!!」

 

「わわ、おさないでよ。かっちゃん」

 

「そうだぞ勝己。あんまり押すな、俺も見えん」

 

 俺たち3人は、押し合うようにテレビを見ていた。

 あぁ、そう言えば、まだ話していないことがあったな。

 

 この世界には、個性という生まれながらの"才能"がある。

 そんな強力な力を幼少の頃から保持していれば力に溺れ犯罪に手を染める人間が必然的に生まれた……それが(ヴィラン)だ。

 個性が世界に広まって間もない頃はかなり荒れていたらしい。

 

 それもそうだ。廻り者のように異形の力を持った人間が街中で恐喝、強盗、暴行、殺人、ありとあらゆる犯罪行為を起こすんだ。

 そりぁパニックにもなる。

 

 おっと話がそれたなそんな敵にも対抗し始める人間が現れ始めたそれが…………。

 

「うお〜!やっぱり、かっけえよなぁ!ヒーローは!!」

 

「うん!あんなにいたヴィランをあっというまにやっつけて、ひとじちをたすけちゃった。すごいなー!ぼくも、オールマイトみたいなこせいがでたらあんなふうになれるかな〜」

 

「へんっ!どんくさいデクにはむりだな!」

 

「ひっひどいよ〜。かっちゃん〜」

 

「はいはい、勝己。そんなこと言うな。出久だってできるぞ、多分!」

 

「たぶんをきょうちょうしないでよ。こうちゃん〜!」

 

 目を輝かせながら、テレビに食い込まんばかりにニュースで流れるオールマイトというヒーローの活躍を見つめる二人に、ただ単純に、思いついた質問を投げかけてみる。

 

「……なぁ、お前らヒーローになりたいのか?」

 

「「あったりまえだよ!!」」

 

 二人して息ぴったりに即答してきた。

 実は、仲良いだろお前ら。

 

「どんなピンチも、さいごにはぜったいかつのは…」

「どんなに、こまっているひとでもたすちゃうのは…」

 

「「すげぇ(すごく)かっけえ(かっこいい)から!!」」

 

 二人の言葉が重なった。

 そんな二人を見て、俺は、心の底から感心していた。

 

 ……こいつらには、もうすでに自分の据えるべき"未来"が見えてやがる。

 

「……フ、フフあーっはっはっはははは!!」

 

 突然、笑い始めた俺に今度は二人が驚いた顔していたが、すぐに勝己が恥ずかしくなったのか、顔を赤くしながら怒鳴ってきた。

 

「なに、わらってんだ!こううテメェ!!」

 

「いやーすまん、すまん。思ったより、いい答えが出てきたからな驚いたんだよ」

 

「おまえ、ひとのことわらったんだから、おまえもいえ!!」

 

「そうだよ!」

 

 顔を赤くしながらこちらに怒鳴り込んで、聞いてくる勝己と、少しぷんぷんと怒りながらこちらを見てくる出久を見て俺は考えた。

 

 …ぶっちゃけ俺は、ヒーローになる気は無かった。

 俺は一時の感情で西耶を殺してしまい。俺の大切な仲間を死に導いた。

 そんな俺じゃ、ヒーローは務まらないだろう。なれないであろう。そう決めつけていた。

 しかし…目の前で堂々と胸を張り、真っ直ぐな目をして声高に叫んだ二人を見て。

 諦めて、消えかけた火が燻った。

 

 …………西耶。もう一度、目指してみてもいいか?

 俺たちじゃ為せなかった夢を…"世界平和"を。

 今度は、こいつらと目指してもいいか? 

 

 そんな、身勝手な問いを、ここには居ない西耶に向けて呟いた。

 すると、俺の後ろから、後ろで手を組んで、いつものような穏やかな笑みを浮かべている西耶がいた。きっと、幻覚に過ぎない西耶の姿を見て俺は泣きそうになった顔を下げた。

 

 …そうか…ありがとう………。

 

「…俺が目指しているのは、みんなが手を取り合って…笑っていられる平和な世界を作ることだ。だけど、この夢を叶えるには色んな奴らが協力してくれなきゃいけない。…だからお前らにお願いがあるんだよ。俺と一緒にヒーローになってくれないか…?」

 

 俺の話を聞いていた二人は、突然、夢を語り出した俺を見て呆然としていた。

 すぐに勝己は、俺をバカにする顔で見てきたが、俺の真剣な顔を見ると、すぐに真顔になり顔をうつむかせた。

 出久も、顔をうつむかせて。何かを考えるようなことをしていた。

 

 しばらくの間。誰も声を出さないから、俺がダメかと諦めかけていると、二人とも同じタイミングで、何か決めたような笑みを浮かべながら顔を上げた。

 

「「いいぜ(よ)!!!」

 

 …目尻が熱くなるのを感じる。なんだよ、こんなにも涙脆くなったのか、俺は?

 こいつらには驚かされてばっかりだなぁ。ちくしょう。

 

「おいおい、なにないてんだよ。きもちわるいな」

 

「だいじょうぶ!?どうしたの?きゅうになきだして!」

 

「うっせぇ!泣いてねぇよ。嬉し涙だこれは!」

 

「こうちゃんてこんななきむしだっけ?」

 

「お前に言われたかねぇよ、出久!」

 

「ふん!おまえらが、なにめざそうと、かってだが!リーダーはおれだからな!!」

 

「ええ〜。かっちゃんがリーダーなの〜?」

 

「なんだもんくあんのか!デク!!」

 

「いや、お前じゃダメだろ勝己。みんな怖がっちまう」

 

 勝己が、いつものようにガキ大将を始め、それに出久が口出しすると勝己はいつもの調子で怒鳴り始めたが、俺と出久は慣れていた。

 

「んだと!!スカしやろー!やんのかー!」

 

「ダメだよ、かっちゃん。せかいへいわだよ!」

 

「…いいか勝己。リーダーってのは他人の気持ちを理解して気遣うことができる奴のことを言うんだ。この中だと…出久かな?」

 

「なんで!デクなんだ、ゴラ!!」

 

「そうだよ!こうちゃん!なんで、ぼくなのさ」

 

 俺の意見に二人して否定してくる。

 

「えー。だって、勝己は暴言と暴力ばっかりだしな〜。それに俺はリーダーって柄じゃないし。それにな出久。お前は優しい奴だ。人の心が理解できる、そんな人間がリーダーには相応しいんだよ!」

 

「ええーー!」

 

「おれは、はんたい、だ!!」

 

 またしても二人して俺の意見に反対しくる。うーんどうしたものか…

 

「じゃあ!お前ら二人でリーダーだ!」

 

「なんでだよ!!」

 

「勝己は、どんな敵でも絶対勝つヒーローに。出久は、どんなに困っている人でも助けるヒーローに。二人合わせたら最強だな!俺ほどじゃあ無いけどな!」

「ふざけんな!おれだけでもできるわ!」

 

「うーん。ぼくはむりかな…」

 

「そこは、じしんもてよデク!」

 

 何故か、自信満々に啖呵をきったはずの勝己が自信のない出久を怒鳴りながらフォローする。

 

「あーでもな。いきなり世界平和とか言っても何したらいいか分かんねぇな」

 

「わかんねーのかよ!」

 

「じゃあ、さいしょはこのまちから、はじめようよ」

 

 出久がソファの上に立ち上がり両手を手一杯広げ俺たちに提案する。

 

「おれを、むしすんじゃねー!」

 

「なんだよ勝己。お前なんか案あるのか?」

 

「ありまくるわ!いいか!まず、まちでごみひろいをするんだ!それでひろったごみは、ごみすてーしょんってところへもってけばかいけつする。あと、こまっているやつは、おれたちがてだすけすること、けんかとかも、おれたちでかいけつする」

 

「意外とまともだな」

 

「んだと!」

 

「で、でもかっちゃんヴィランはどうするの?」

 

「ヴィランもおれたちでやっつけるんだよ!」

 

 出久の疑問と不安を混ぜたような弱々しい声が俺たちの間に響き渡る。勝己がファインディングポーズを取りながら意気揚々と息巻いているが出久はとても不安そうな顔をしている。

 

「いや、勝己それは危ない。俺たちはまだ子供だ。ヴィランは"まだ"ヒーローに任せよう」

 

「…ちっ!しかたねーな」

 

「そうだな…ついでに体鍛えるか」

 

「え!トレーニング!やったあ!ヒーローみたいだ!!」

 

「いいな、それ!おれもやるぞ!」

 

 さっきまで、不安そうな顔をしていた出久とヴィラン退治が出来ないと知り、不貞くれる勝己だったが。

 トレーニングというなんだがヒーローっぽい響きを聞いた瞬間。喜色満面な笑みを浮かべ、喜びを全身で表すかのように手を上げていた。

 

「あと、あれだな。拠点が欲しいな」

 

「ひみつきちなら、おれしってるぜ!」

 

「本当か勝己!」

 

「おお!きんじょのやまにほらあなみたいのがあるぜ!」

 

「あーあそこね、たしかにあそこなら、だいじょうぶそうだね!」

 

「そんなにすごいのか?」

 

「うん!じゃあ、こんどいってみようよ!」

 

「おう!」

 

「おれもつれてけ!」

 

「うん!みんなで行こう!」

 

 世界平和のために、何をするか一通り決めた俺たちは、テレビに映っている髪の毛がVの形をしている筋肉モリモリがまた事件を解決した速報を見ていた。二人は、また目を輝かせながらオールマイトを讃え始める。

 さっきも事件解決したよな。どんだけ迅速なんだよ。

 

 しかし、テレビに夢中になっていた二人に、幼稚園では神にも等しい声がかかってきた。

 

「おやつよー!!」

 

バッ!!

「「おやつ!!」」

 

 おおう。二人同時に振り向いた。ほんと仲良いなお前ら。

 そんなことを考えていた俺を置いて二人はもう先生の所へ走っていた。

 いやー。本当、お菓子の力ってすげーよな。普段、大人しい出久が勝己を押し退けてお菓子をもらっていやがる。あーダメだ二人が喧嘩し始めた…やべ先生怒ってね。

 

 あの先生怒ると怖いんだy

 

「こら二人ともいい加減にしなさい!おやつ抜きにするわよ!!」

 

 先生の名前は、鬼顔よし子。名前を見れば分かると思うが、個性は鬼顔。怒るとまるで般若のような顔をするので俺も最初の頃。勝己をボコボコにしてその場を去ろうと後ろをを振り向いた時に鬼顔先生がすぐ後ろに立っていて、背後から紫色のオーラが見えそうなほどすごい顔をしていた。あの時は本当冷や汗が止まらなかった。

 

 世界最強なのに、あの時は流石にびびっちまった。

 あいつらに笑われちまうな。

 特にノイマンは多分「どうした世界最強(笑)」と言ってバカにしてきそうだ…。やばい、本当に聞こえてきそうだ。

 そうこうしてら内に、二人が先生に菓子を取り上げられていた。

 出久は大泣きしていたいたが、勝己は涙目になりながらも必死に堪えるように自分の服の袖を俯きながら引っ張っていた。なんだ、お前ら可愛いな。

 

「項羽くんもこっち来なさい。お菓子なくなるよ〜」

 

 俺も呼ばれてしまった。参った。身体は子供でも、精神はバリバリ大人なんだよ。それで子供用のお菓子もらうのはまだ抵抗あるんだよな。察してくよ先生ェ。

 そんなことを考えても通じるはずがなく。鬼顔先生からお菓子を貰うと、隣から羨ましそうな視線を感じる。

 あーそんな顔すんな、後で分けてやるから。

 

 その後。先生がいなくなった後に、二人にお菓子を分けてあげると出久は花が咲き誇った笑みで嬉しそうに「ありがとう!」と言って受け取った。なに、コイツすげぇ可愛い。

 勝己は嬉しさ3割と俺からもらう屈辱で悔しいという顔7割しながらいらない言ったが。視線が明らかにお菓子に向いているから、痩せ我慢だと簡単に分かった。俺が貢物だと言って差しだすと、嬉々として受け取った。ちょろい奴だ。

 

 

 

 




もしかしたら、色んなキャラが、キャラ崩壊するかもしれません。
許してください。


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プロローグ②

初めての投稿で緊張しています意見・感想等ありましたら遠慮なく言って下さい

あとなんか主のせいで項羽が子供ぽく、なってしまった。
…ま、いっか。

項羽「いい訳ないだろう」ガシッ

主「すいませんでしたああああああ!!」


12/2再編済み


 あれから数日経ち、俺と出久と勝己の三人は例のほら穴に、やってきたんだが…………どういう偶然だ、これは。

 

 そこは山に入って、しばらく歩き。

 普通は気にも止めないような茂みの中をくぐり抜け。また歩いてゆくと辿り着く場所にある。

 開けているのに街からは死角となっていて、目立つようなことをしても見えないようになっている。横を見てみれば長方形のように広く所々に椅子ぐらいの岩や、よじ登れるぐらいの木がある。

 山の方を見てみれば6メートルはありそうな岩の壁があり、その下中央には勝己が言っていた、ほら穴があった。覗いてみると、まだまだ続いていそうな薄暗い道があった。

 

  …すごいな、ここまで似ることがあるのか。

 まるで、俺や西耶が訓練したり、たむろしていた俺の隠れ家そっくりじゃあねぇか。ほら穴の上にある重眼の掘り絵や、ピカソが書いた落書きこそないが…それ以外は、あの場所そっくりだ。

 

 周りを見渡せば、西耶と殴り合ったこと、ノイマンにからかわれたこと、ピカソとアインシュタインが絵を描きあって笑い合いながら西耶を誘っている光景が思い浮かんだ。

 

 …ほら穴の入り口を見てみれば、左肩の無い俺と、普通、心臓がある位置に腕一本分ぐらいの幅で、風穴を開けた西耶がいた。

 譫言のように謝罪の言葉を紡ぐ西耶の肩を掴みながら、俺は西耶を励ましていたところだった。

 

『すいません…傷つけて…傷つけさせて……すいません。』

 

 …だから甘いんだよ。おまえは…。あぁ、ちくしょう。

 馬鹿なことやっちまった…。頭冷やして話し合えばよかったんだ…。

 まずい。今、ここで俺と西耶がいなくなったら、罪人格と偉人格が殺し合いを始めちまう…。そんなのは俺たちは望んでいることじゃないよな……。

 

『項羽……さん…』

 

なんだよ…西耶。

 

『弟に…ごめんと……何も兄らしいこと…できなくて……ごめんな…さいと…つたえくだ…さい……』

 

 西耶が口から赤黒い血と涙をこぼしながら切実に頼み込んでくる。

 

 馬鹿やろう…。俺は、お前みたいに優しく無いんだ。伝えたきゃ、自分の口で言えよ…。

 

『そう…ですね……。ちゃんと……目を合わせて…向き合って……それで……。』

 

 あぁ…。許してくれるさ……。あとはそこから…挽回してけばいいさ…………。

 なぁ…西耶………。

 

 俺は花弁となって散っていく西耶の肩を掴んでいた手を見る。あの時の感触を思い出すとなんだか、とてもむず痒くなった…。

 俺は感触をかき消すように強く手を握った…。

 

「なに、ぼーっとつったてんだ?おまえ」

 

「はやく、こっちきてよ。こうちゃん!」

 

 後ろを振り向くと、なにやら自慢したげな笑みを浮かべて腕を組んでいる勝己と、こちらも、ちょっと自慢したげな出久がいた。

 もう一度、入り口を見たら俺と西耶の姿はなく、代わりに体全体が黒く、顔の大部分を占める程大きな重眼の目を付けている、男か女かもわからないような人型の何かが後ろで手を組んでいた。

 慌てて後ろを振り向くが、二人にはアレが見えていないようでキョトンとした顔をして俺を待っていた。

 

 そいつは何か、見定めるような目で俺を見ていた。

 

 俺は、こいつとは長く一緒にいたかもしれないし。

 案外、短い時間だったのかも知らない。

 

 でも、これだけは言わなければいけないと思った。

 

 

「(大丈夫だ、心配ない…。俺はもう、間違っても歩み寄ってみせる……今度はもう、失わない)」

 

 

 絶対に、俺がそう言い付けると、黒い人型の何かは、微笑むような目を浮かべて黒い霧となり、霧散してゆくと。俺の中へ入ってきた。

 黒い霧が全て俺の中へ入ると、胸の奥から何か暖かいものを感じた。

 あぁ、そうか。そういうことか。

 俺は振り向きながら後ろにいるあいつらに返事をして、二人の元へ歩いて行く。

 こいつのことをどう説明するか…。

 

「おせぇ、なにしてたんだ。おまえ」

 

「すまん、ちょっとな…」

 

「ふん、まっいいか。そうだな。まず、さいしょに」

 

「ああ、待ってくれ勝己。ちょっといいか?」

 

「どうしたの、こうちゃん?」

 

「実はな…お前らに紹介したいものがあるんだ。紹介するぜ。これが俺の個性《万象儀》だ」

 

 そう言って手を挙げた腕からは顔を覗かすように微量の万象儀が流れていた。

 

 

「えーーーーーーー!!!!!」

 

「なにーーーーーー!!!!!」

 

 二人共、驚いている。そりゃそうか、この歳で個性が発現するのは結構、珍しいからな。

 

「どっ!どどどういこと!こうちゃん!!こせい!!こせいができたっていったいま!!くろいもや!ということは、おとうさんみたいに、くろいきりをだすこせい!!すごいや!とてもヒーローにむいてるこせいだよ!いや、まてよこうちやんのおかあさんのこせいはさわったものをあやつるこせいだ!もしりょうほうのこせいがあったらどんなふうになるんだ!?ブツブツブツブツ………」

 

「だっーーー!もう、うるせーぞデク!!おいスカしやろー。どういうことだ!いままでかくしていたのか!せつめいしろ、このやろー」

 

 うおお。二人共すごい勢いで来るな。勝己はいつも通りだけど、出久なんかやべー具合にブツブツ言っていて怖いんだけど!

 

「隠していたつもりは無いんだ。今日の朝起きたら出てきな(嘘)。ちょうどいいから今、教えようと思ったんだよ」

 

「……っち!分かったよ!!」

 

 個性の事を隠されていたと思い込んでいた勝己は少し不服そうにしていたが納得してくれたらしい。

 すまん勝己。朝出たのは嘘なんだ。

 

「ブツブツブツブツ…っは!それでこうちゃんどういうこせいなの?」

 

「それは俺にもまだわからん。だから、これから試す」

 

 これは本当だ。

 子供に戻って、つい先ほど手に入れた万象儀が前世と同じように扱えるのかは分からない。予想でしかないが多分、前世ほど扱えないと思う。

 さっき腕から出した時、出そうとした4分の1程も出なかった。

 この調子だと、支配できる範囲も、どのくらい操れるかも、大方、予想できる。

 まぁその辺りは熟練度を高めれば強くなるだろう。

 

 それに今は、久しぶりに戻ったこいつで暴れたい気分だ。

 

「きょうはだめだかんな」

 

 …………………え?

 

「だってきょうは、ひみつきちになるここをたんけんしにきたんだから、とうぜんだろう!そんなじかんはないんだよ!」

 

 なんだと…?突然のカミングアウトだ…。

 出久は知っているのか?

 

「……そうなのか出久?」

 

「…うん、ぼくもいまおもいだしたよ。というか、こうちゃん、しらなかったの?」

 

「………知らなかった」

 

 俺は今日、ほら穴に行くとしか言われてない。

 あれもしかして、俺の知らないところで色々進んでいる?その場合、世界最強すげぇショックなんだけど…。

 

「デク!テメェまさかこううにいわなかったのか!?いっとけといっただろうが!!」

 

 勝己にそう言われた出久は一瞬ハッと思い出したかのような顔した後。

 大慌てで謝罪してきた。それを見た勝己は怒髪天を貫く勢いで正論と罵声の混じった説教から、普段の出久の愚痴を言い始め。

 ぐぅの音もでない正論を並べ始めた。出久が涙目になったところで俺が仲裁に入ったことで勝己は少しは収まったが、3歳とは思えないほどの正論と愚痴を捲し立てられた出久は泣き出してしまった。

 

 泣き止むまで俺が慰め、勝己にはやり過ぎだと注意したが、正しい事を言ったのに注意されたことにムカついたのか。

 普段の俺のことまで愚痴と説教を始め、勝己のぐぅの音も出ない正論に負けた俺は正座しながら3歳児のありがたい言葉を夕方まで聞かされる羽目になった。

 空がオレンジ色になるのを見た勝己は、息を切らしながら最後に「わかったか!バカ!」で説教を終わらせ、いつのまにか泣き止んでいた出久に痺れた足を支えられ、慰められながら俺たちは家路へ帰った。

 当然、出久に支えられながら帰ってきた俺に母さんはびっくりし、事情を説明された母さんはお腹を抱えて爆笑していた。

 

 そして、笑いながら出久にありがとうと言い。

 夜は危ないということで出久宅まで出久を送りその時に出久宅にいた出久母と偶然お茶していた勝己母に事情を説明し三人で笑いあってたらしい。

 それがきっかけで、人見知りだった母さんに友達が出来たのはいい事なのだが。

 その後からは勝己の家に行くと毎回と言っていいほど勝己母が笑いながら、いらっしゃいと言って、文句を垂れると笑いながらごめんねと言った後。お菓子をくれるのだが、違うそういう事じゃない、と思うのだがまた会っても言ってくるのだろうなと思いながら勝己の部屋に向かう。そんな姿を見て、勝己はいつも馬鹿にしてくるのでゲームでコテンパンにし叫び、悔しがらせている。

 そんな様子を見て笑うのは大人気ないだろうか。

=====

 

 

 勝己に説教された、その次の日。

 また俺たちは、ほら穴の前で集まっていた。

 

「いいか、きのうはバカどものせっきょうのせいでなにもできなかったけど、きょうはちゃんとしらべて、このあとのことについてきめていくぞ」

 

「「はい、すみませんでした」」

 

 俺と出久は昨日のことを思い出して勝己に謝っていた。

 

「わかればいいんだよ。じゃあいくぞ!」

 

 そう言って勝己は、ほら穴の奥へと家から持ってきた懐中電灯を携えて進んでいく。

 それに続くように俺が歩き出す。出久は俺の背中にくっつきたがら付いてきたが、怖いのか足が震えている。

 

 だいぶ進んでくると、日の光が入らなくなり、頼りになるのは先頭の勝己が持っているライトだけになった。

 道幅も狭くなり、ふと上を見上げてみたら蝙蝠と思わしき無数の赤い目玉が俺たちを見つめていた。

 俺の後ろ歩く出久は完全に怖がっており俺の両肩をがっしり掴み涙目で俺の背中しか見ておらず。先頭を歩く勝己は怖がっないように進んで行くが少し顔を強張らせており、心なしかびびっているように見えた。

 

 二人とも上で佇んでいる蝙蝠には気付いていないのだろう。黙っておこう。

 教えたら、きっとこいつは、パニックになるだろう。

 だが、しかし。どんなに虚勢張っていていても怖い物は怖いか。勝己よ。

 

「勝己、お前怖がってんのか」ニヤニヤ

 

 馬鹿にしたような口調で俺が言う。

 

「ば、バカにすんじゃねーよ!こんくらいらくしょうだわ!」

 

 強気に答えたその声は震えており、こちらに振り返った顔は完全に引きつっている。

 

「強がんな、仕方ねーから代わってやるよ」

 

 そう言って俺は、勝己の持っていた懐中電灯と奪い取り、前へ出た。

 何か言う前に懐中電灯を取られてしまった勝己は、悔しそうな顔をしながらも何も言わずに俺の後ろに付いてきた。

 怖かったのか。ニヤニヤ。

 

 俺の肩を掴んでいた出久は、俺が前に行った事により今度は勝己の肩を掴み始め。それを鬱陶しく思った勝己は、その手を振り払う。しかし、出久はそれでも諦めずに涙目で勝己の腕を掴むのだが、また振り払われ、それでも諦めずに自分の肩を勢い良く掴んでくる出久にキレたのか二人は言い争いを始めた。

それから掴み合いになった。

 狭い通路なので大きな動きはできず、勝己は出久の頰を片手でつまみ、出久は勝己の肩を必死に掴みながら歩いて行きその状態でまた二人は言い争いを始め、ヒートアップしていく会話をBGMにしながら、俺は目の前に広がる暗い通路を進んでいく。




〜4歳児に論破される大人の図〜

勝己「大々お前はいつもいつも人の話を聞かないよな〜この前だって顔を書けって言われたのに外の風景書いていたよな〜」

項羽「………(ちくしょう!思い当たることばっかり言いやがるノイマンかこいつは!)

ノイマン「どうした世界最強(笑)」

項羽「クソがあああああぁぁぁっっ!!!!」(かっちゃん風)


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プロローグ③

早く…早くオールマイトに会うところや試験を書きたい…
書きたいぞオオオオオォッッ!!

爆豪「うるせぇ」ボカン!

主「ラッディシュ!!」ドカーン!!


12/5再編済み


「おーいお前ら着いたぞ、いい加減やめたらどうだ?」

 

 俺の言葉で、お互いの顔をつかみ合ったり、鼻の穴に指を入れていたりと割とマジっぽい喧嘩をしていた二人。だが、その顔は、まだだ。と言わんばかりの顔で此方を睨んだが、俺より先の光景を見て息を呑んでいた。

 いや、お前ら気づいてなかったのかよ。

 

 そこには、さっきいた広場よりも広い、倍以上の天井の高い異様な空間に出た。

 それよりも不思議なのが、この空間自体が明るいことだ。壁に近づけば直ぐに分かったが壁に付着している苔が発光しているので、多分そのおかげだろうご都合主義)。

 

 …やっぱりな。ほら穴がそっくりだったから、もしかしたら中身も同じかもしれないと思っていたが…ここまで同じだと、逆に怖くなってきたな…。

 

「ねぇ…。こうちゃん、なに……ここ」

 

「さぁーな」

 

 あまりの大きさに出久か呆けながら俺に聞いてくるが、俺は適当に返す。俺だって知らないのだ。前世も此処を偶然、見つけて隠れ家にしただけなのだから。

 勝己は大分、間抜けな顔をしたまま空間の中央に歩いて行く。出久もそれに倣っていた。俺は二人と離れ壁に近づき、万象儀を腕に纏いながら壁を叩き強度を確認する。

 

 …ふむ、弱くなった万象儀で叩いてもこれなら大丈夫そうだな。でも念のために補強しておくか。

 二人の方に振り向くと、二人して中央で大の字になって寝ている。

 …さっきまで喧嘩してなかったか?あいつら…。

 

 二人の側まで歩いてゆくと呆けたままの様子の勝己が声を掛けてくる。

 

「………おい、こうう」

 

「なんだ?」

 

「ここいいな、きにいった」

 

 そんな事を呟く勝己を微笑ましく思った。

 

「そうだな、出久はどうだ?」

 

「ぼくもきにいった。…すごいねここ」

 

 どうやら出久も満足らしい。此処を拠点にすると言うと二人とも頷き勝己が続けた。

 

「おまえら、ここにはしんらいできるやつしかつれてくるなよ」

 

「うん」

 

「おう」

 

 出久はなんでと言うと思ったのだが二人共、ちゃんと分かっているらしい。

 信頼できない奴を連れてくると組織の和に亀裂が生じる。

 亀裂が大きくなると、いつしか崩壊するなんてこともあるからな……偉人の杜の様に。

 あの時の戦いで、偉人格を信じすぎたんだ。だから、スパイであるカエサルの存在を直前まで気付けなかった。

 いや、もしかしたらノイマンは気付いていたかもな…。

「さて…お前ら起きてくれ、これからのことを決めよう」

 

 俺の声に、二人がむくりと起き上がり、座りながら此方に体を向けてくる。俺も胡座をかいて、二人の前に座る。

 

「まず、手短な目標を決めよう…確かこの街を平和な街にするだったか?」

 

「うん」

「おう」

 

「その為にはどうする?」

 

 俺が質問してみれば、出久が綺麗に手を挙げたので、ビシッと指をさした。

 

「このまえもいったけどゴミをひろおうよ」

 

「ああ、あれか!だが拾ったゴミはどうする?」

 

「それは………」

 

 

 

「…じつは、おれんちのババァにこのはなししたら…ババァのともだちがきょうりょくしてくれるらしい」

 

「ナイスだ勝己!これでゴミはいいな…じゃあ、次は困っている人を助けるだ」

 

「そこはいまのぼくたちができることをやろうよ。どうしてもだめだったらならまわりのひとたちにてつだってもらおう」

 

「いいぞ出久それで行こう。じゃあ最後、体を鍛えるこれは俺に任してくれないか、実際この中で一番喧嘩が強いのは俺だ」

 

「いいよ」

 

 出久はすぐに返してくれたが、前にボコボコにのされた勝己はどうだ…。

 

「……………わかった」

 

 勝己は何か決めた様な顔をし続けた。

 

「あのとき…いまのおれじゃあ、おまえにはかてない…。だから、おまえからまなんで……おまえをたおす」

 

 あの時とはきっと出会った時の喧嘩だろう……。頼もしいことを言ってくれるな、このガキんちょは。

 

「こうちゃん、かっちゃん、ぼくからもひとついわせて……。ぼくはこのなかでいちばん、よわい。……だけどいつか、ふたりにかってみせるよ。いつかぜったい……!」

 

 なんだよこいつら…本当に3歳か?

 もうヒーローの心が出来始めてやがる。

 本物だな…やっぱり本物だった。

 

 ……あの時見た”未来”は必ず為されるような気がした。

 …いや、まだだ。それ以上だ…それ以上のこいつらを見たくなった。

 

「ははは、言われたな……おいお前ら……俺は負けないよ絶対にな」

 

「「かつ……ぜったい!」」

 

 静かに、それでいて熱を感じさせる俺の意地を、二人は決意を胸に秘めながら返事をしてくれた。

 

 俺はにんまり笑って、二人の背後に素早く回り込んで、強く二人の背を叩いた。背中を叩かれた二人は衝撃で前のめりになったけどすぐに振り返ってきた。因みに出久は涙目だった。

 

「いってーなー!なにすんだよ!」

 

「いたいよ、こうちゃん!」

 

 俺は文句を言う二人の肩を組んで再び笑った。

 

「よろしくな!!お前ら!!!」

 

 二人は顔を見あわせた後。あの時の様に笑い。

 

「「おう!!!」」

 

 いい返事だよ全く。……………そうだいい事思い付いた。

 

「なぁ、チーム名決めようぜ」

 

「ばくごーヒーロー事務所!!」

 

「ないな」

 

「やだ」

 

「なんでだよ!!」

 

 即答というか条件反射に近い感じで答えた勝己に、俺と出久に呆気なく却下を食らう。勝己は怒り出し、俺と出久も何か出せと怒鳴ってくる。先に手を挙げたのは出久だった。

 

「じゃあピースサインっていうのはどう…かな……」

 

 最後の方はとてつもなく小声だったが、俺たちにはちゃんと聞こえた。

 

「「……いいなそれ!!」」

 

「平和の証を英語にしたのか…洒落てる!」

 

「デクのくせに、カッコいいなまえつけやがって!!」

 

 俺たち二人に大絶賛された出久はとても照れ臭そうな笑顔でありがとうと言った。

 

 その後は、何をいつやるか決めた後。

 他愛のない話をして元来た道を歩いて家時に帰った。その時に出久が蝙蝠を見つけてしまったことで、パニックになった出久に驚いた蝙蝠が、飛び回り始め。更にパニックになった。

 泣き叫びながら走って逃げる出久と、声こそ出さないが涙目になって走り出す勝己たちを、俺は笑いながら追いかけた。

 ほら穴を出た後にヘトヘトになった二人に、蝙蝠のことを知っていたとバラすと、二人とも面白いぐらいに泣きながら抗議し始め、怒られる羽目になった。

 

 しかし、二人の反応があまりに面白かったので、帰った後に爆豪宅でお茶していた母さん達に今日のことを話すと、とても笑っていた。

 ピースサインのことを話すと、なんと既に母さんは爆豪母経由で知っていたのだった。

 了承はしてくれたが、やる時は三人の親全員に了承を得ることと、母さんらの決めた約束を守ることを条件に俺たちは行動を許された。

 

 明日からピースサインとしての仕事が始まることを、改めて再認識した二人は夜になっても、なかなか眠れなかったらしい。

 

 

 

〜1年後〜

 

 俺たちは4歳になり周りの同級生達にも次々と個性が発現し始めた。

 そして今日、ついに勝己にも個性が発現した。

 

 昼ごろ、おやつを食べた終えた俺たちは、他のやつらと鬼ごっこしていたのだが、勝己が他のやつにタッチしようとしたその瞬間。

 勝己の掌が“爆ぜた”。文字通り勝己の手のひらから爆発が起きたのだ。

 幸い、怪我人は出なかったけど、こんなことが起こったので鬼ごっこ中止となり勝己は病院へ行って検査をするために帰っていった。

 

 嬉しそうに燥ぐ勝己を見送った俺と出久は、勝己の個性の考察を始めていた。

 

「かっちゃんの手のひらがばくはつしたから、きっとお父さんの個性だと思うんだよね」

 

「ああ、でも勝己のお父さんは手を擦らなきゃ爆発しない。でも勝己は何もせずに爆発した」

 

「と言うことは自分で考えて、ばくはつさせるか、勝手にばくはつすかの二つだね」

 

「今わかるのはこのくらいか…結果は明日勝己から聞こう」

 

「うん……そうだね」

 

 返事をした出久の表情は明らかに沈んでいて、どこか影をおとしていた。

 

「……出久…お前、なんか焦ってないか」

 

「へっ……いやそんなわけないじゃん、あせる理由なんて…「本当か?」っ…!………うん…本当は焦っている。これで同級生に個性がないのは僕だけだから……どうしよう…。僕に個性がなかったらって、いつもそんな事ばかり考えちゃう」

 

 出久の両親の個性は、物を引きつける個性。火を吹く個性。どちらとも、今の出久には発現の兆しすらなかった。

 出久は今にも泣きそうになっている。確かに俺たちの中で個性が発現していないのは、出久だけだ。みんなは持ってるのに自分だけ持っていないと言うのは、5歳近くの子供には堪らないものだろう。

 

 

 個性が無ければヒーローになれない、これが世間一般の共通認識だ。出久も例に漏れず、こう思ってしまっている。

 出久はオールマイトのようなカッコいいヒーローに憧れた。ピースサインとして一番、頑張ってきたのも出久だ。

 それを個性がないからと、今までの行いが無為に帰ってしまうと考えたら、怖くて仕方のないことなのだろう。

 

 …だけど、俺はそうは思わなかった。

 

「……なぁ出久。ヒーローになるために個性ってそんなに必要か?」

 

「へっ?……ひつようだと思う…」

 

 俺の言葉に泣きべそをかきそうになった出久はぱっと顔を上げる。

 

「なんでだ?」

 

「それは……ヒーローは皆んな持っているから…」

 

 自分でそう答えたのに、勝手に絶望したような顔を浮かべる出久に俺は断言した。

 

「そうだな……確かにヒーローは皆んな個性を持っている…だか個性が無くたってヒーローにはなれる!

 

「……本当に?」

 

「ああ!そうだな……例えば、頭が良くなる個性を持ったヒーローがいるとする」

 

「…うん」

 

「だけど頭が良くなるだけだ。角は出ないし、翼は生えない、オールマイトみたいに力が強くなる訳じゃない。ただの人間だ…だが…それがどうした!角がないなら角を作ればいい!飛べないのなら、飛ぶことのできるサポートアイテムを作ればいい……!個性が無いのなら個性の代わりになる物を自分で作っちまえばいいじゃねぇーか!!」

 

 なんだか悩んでいる顔をしている出久にカマかけてみて正解だった。

「そうか……………そうだね!こうちゃんの言う通りだ!」

 

「そうだ!というかお前まだ個性が無いとは決まってないよな?何無いこと前提で話してんだよ。情けねぇこと言ってると、今日のメニュー倍にするか?」

 

「えっ〜!かんべんしてよー!!」

 

「あ、弱音吐いたから追加な」

 

「あーっ!ごめん!こうちゃん許して!」

 

「ちっ、仕方ねぇな」

 

「あっ!ありがとう〜〜!」

 

 俺は冗談で言ったつもりだったが、出久は本気で受け取ったのか泣きながら謝ってきた、そんなにきついか?俺の考えたメニュー…。

 

 その後はしれっとメニューを追加した俺に出久は泣きながら抗議するが、これ以上、言えばさらに追加すると脅した。

 その後、泣き叫びながら筋トレを始める出久を見て、周りからは項羽は鬼畜という噂が立った。

 出久以外の同級生達からさけられらようになった。

 勝己からは何してんだお前、みたいな目で見られた。

 解せない。

 

 

=====

 

 

 ある日、俺と勝己は、いつものほら穴の中に出久に呼び出された。

 しかし、呼び出した本人である出久が予定の時間になっても現れず、勝己は怒り始めた。

 俺も流石に心配になって事故にあったのではないかと思い始めた。

 

 そして、とうとう勝己がもう待てないとズカズカ歩き始めたところで出久が現れた。

 

「おい!デク俺を待たせるのはどういことだ!なめてんのか!!」

 

 憤慨する勝己に出久は、顔をうつむかせたまま何も言わない。

 

「ッ!!無視すんな!」

 

 出久に無視され怒った勝己は出久の肩を掴み無理やり顔を上げさせる。

 

 …顔の上げた出久の顔を見て俺と勝己は絶句した。

 何時間も泣いたのであろう赤く腫れ上がった瞼と、今にも泣き出しそうな赤く充血し潤んだ目、口は泣き叫ぶのを我慢するかのように固く閉ざされプルプルと震えていた。

 出久は泣き虫だからこういうのは何回か目にしていた。しかし、今回のはいつも以上に酷かった。

 あまりの変わりように、俺たちが言葉を詰まらせていると、先に出久が震えた声でポツリポツリと話し出した。

 

 ……昨日、母親と病院へ行き検査したこと。

 

 ……その時、医師から足の小指の関節が二個あることを言われたこと。

 

 ……“無個性”と診断されたこと。

 

 ……その日、一晩中泣き続けたこと。

 

 一通り話してくれた出久は黙って聞いていた俺と勝己に、今にも泣き出しそうに、縋るような声で聞いてきた。

 

「僕は……なれる…かな……?どんなに困っている人でも……笑顔で助けちゃう……超かっこいいヒーローに……なれるかな?」

 

「なれる」

 

 断言したのは勝己だった。

 予想外なことに目を見開いて出久と驚いていたが、勝己はらしく無いくらいに優しく、そして、いつものように尊大な口調で続けた。

 

「いいかデク、実は俺はお前のことをすげぇやつと思っている」

 

 今までバカにされ続けられた奴からすごいやつと言われ出久はびっくりして、狼狽えるように胸を抑えた。

 

「お前、いつも休日は商店街に居るだろう。実は一回だけ、お前をつけた事があるんだ。そしたら、お前は困っている人や怪我している人を見つけたら誰よりも早く助けに行ってたよな。例え、それが老人やゴロツキでも、笑いかけながら声を掛に行くお前を見て、俺は何だが負けた気がした。その日はくやしくて走って逃げたんだ。なんだか体がムカムカして俺を殴りそうになった。その日から俺は体を強くしようとしてきたんだ。

 お前が、どんなに困っている人を助けるヒーローになるなら、俺はどんな敵でも倒してやるヒーローになるって決めたんだ!」

 

 恥ずかしいのか、すごい顔を赤らめながら勝己は自分の思っていたことを話し出し、そんな勝己を見た出久は今にも泣き叫びそうに胸を押さえつけて我慢していた。

 

「この俺を負けた気にさせたお前が個性が無いからヒーローになれないだぁ…ふざけんじゃねぇよ!!

……個性が無いからバカにしてくる奴は俺と項羽でボコボコにしてやる!だから、いいかデク。誰が、オールマイトだろうと、なんと言おうとも…!お前は………ヒーローになれる!!」

 

 そう力強く断言した勝己の言葉で出久はとうとう泣きだしてしまった…。胸を抑えて蹲りながら泣き叫ぶ出久の背中は、どこか喜んでるようにも見えた。

 

 泣いている出久を勝己は鳴き止むまで静かに見守っていた。俺は、そんな勝己の頭をよく言ったとガシガシと撫でてやった。すぐに爆破してきたけど。

 やがて落ち着いてきたのか、嗚咽を漏らしながらも此方に顔を見せる出久の顔は表情だけでも感謝していると分かったが、俺からもいう事がある。

 

「出久。勝己の言う通りだ。お前はヒーローになれるよ、それも最高のな。俺が保証してやるんだ間違いない。前にも言ったが…個性が無くてもお前が諦めない限り、俺はお前を強くしてやる。何回でも言うけど、出久、お前は…ヒーローになれる!!」

 

 俺が言い終わるとまた出久が泣き出してしまった。

 

 




プロローグは次回で終わりです。
ヒロインをそろそろ出したいと思いますがどう出していこうか考えています。お楽しみに!


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プロローグ④

やっと書き終えた〜結構長くなったけど詰め込みすぎました。
いや〜昨日の9時から朝までぶっちで書いたから変な文章なっている所もありますがあんまり気にせず読んでください。

緑谷「それではプロローグ④お楽しみください!!」

主「普通だね」

緑谷「悪い?」

主「殴られて始まるよりかはマシ」


12/6 再編済み


〜〜9年後〜〜

 

 

 よぉ、お前ら。世界最強だ。

 さて…なんやかんやあって、とうとう俺たちも中学生になったわけだが…今日みたいな休日の日はいつも通り拠点に入り浸っている。

 

 ん?あの後どうなったのか、だって?

 あ〜確か。あの後は、いつまでも泣き止まない出久を待っていた勝己が

 

 「いつまで泣いとんじゃ!お前は!!やっぱり!デクはデクだな!!」

 

 と、いつものようにキレ始めたことにより、先程までの熱い感動ムーブから一転。

 いつもの様に、デク呼ばわりされショックを受けた出久をそのまま置いて帰ろうとした勝己を泣いたせいで不細工な面になっていた出久が追いかけ、その後ろを俺は笑って先を歩く二人についてって。いつものように家路に帰ったことを覚えている。

 

 確か…。

 その日から出久と勝己はさらに仲良くなり親友と呼べる間柄になった。

 吹っ切れた出久は『しょうらいのためのヒーローぶんせき』なるものを書き始めた。

 この前、新しいのを覗いてみたが、どこのヒーローかも分からないような奴が書かれていたので、多分、全国のヒーローを分析しているのだろう。

 

 さらに自作でサポートアイテムを作り始め、今では、電流の流れる刑事棒を作り出すレベルになり、それを見た勝己は普通に引いていた。

 そりゃそうだ。小学生でスタンガン作り出す奴なんて俺も嫌だわ。

 

 勝己も出久がヒーロー分析を書き始めた同時期に、俺に手合わせを何十回、何百回も挑んで来るようになり。

 戦っている時の勝己の癖や、効率のいい鍛え方。あと、ほんのちょっぴり武術を教えたら自分の個性に合わせた型に改善し、個性なしの俺といい勝負をするまでになった。

 戦いの中で新しい事をバンバンやって来るのでとても闘ってて楽しい。

 

 そして最近の決まり文句は

 

 「個性使えや!!クソヤロー!!死ね !!!」

 

 だ。

 最近、勝己の口調が年齢を重ねるごとに悪くなってきたことを本人に伝えてみれば「お前が舐めプするからだ、死ね」と中指を突き立てられた。

 ふっ…、俺は仲間に愛されているな。

 まぁ、根は優しいのでヴィランに落ちぶれることは心配はしていない。

 

 出久にも、色々教え込んでみるとサポートアイテムと組み合わせた戦術を身につけ、勝己や俺と戦うたび改善して繰り返した結果。

 今じゃあ、個性ありの勝己に2割ぐらいの勝率を納めるようになった。

 褒めてみると

 

 「こうちゃんに褒められると嫌味にしか聞こえない…」

 

 と怒った顔で言われた。

 やはり、愛されてるな、俺。

 

 二人してなんだよ、この扱いは。最近は勝己と共同でなんか作り始めている。時たま、すごい悪い顔になる。気にしないでおこう。

 

 だが…周りと二人を比べてみると、二人は天才だということが、よく分かる。

 

 勝己は持ち前の反射神経で攻撃を回避し、戦いの中で思いついた戦術を繰り出してくる。しかも、その思いついた技は必ずと言って良いほど成功し、自分のものにしている。まぁ、殆ど実験相手は出久なんだけど。

 ……西耶のダチと同タイプなのだろう。戦闘に関してはセンスの塊みたいなもんだ。もしこのまま強くなれば、素であの暴威の塊みたいな男以上になれるかもな。

 

 一方、出久は、あらかじめ考えていた技や戦法を試し、失敗したら改善してまた試してくる。それでもダメなら別の方法をとり着実に強くなっていく学習して発展していくタイプだ。

 この方法を繰り返してきたお陰で、経験による戦い方を身につけかなり強くなっている。

 

 今の二人なら単体でもそこら辺ヒーローには勝てるだろうと俺は確信を持っている。

 

 そんなことを考えながら、俺は眼前に迫ってくる拳をすんでのとこで、顔だけズラすだけで避ける。

 伸びてきた腕と胸倉を掴み取り、出久を地面に投げつけた。

 

 叩きつけられた出久は悔しそうな顔をしながら、一瞬で起き上がると、俺を見上げる。

 すると、俺の後ろの存在に気づいたようで、すぐに回避行動を取り始めた。

 そんなことを俺が許すはずもなく、出久を掴み上げると、両手を体の後ろで抵抗できないように組み、頭上から響いてくる方向に盾にするように構えると、黒のタンクトップを着た勝己が、出久諸共、俺を爆破させようとしてくる。

 

 それを見た出久は攻撃をやめるように慌てて叫ぶが、勝己は止めるそぶり全くを見せずに、突進してくる。

 出久は仕方なしと言った感じで、残った足で俺の腹に蹴りを入れようともがくが、普通に足でガードしてやった。

 

 眼前まで迫ってきた勝己は掌を此方に向け、爆破しようと火花を散らすが、その手を右に向け、的外れの方向に爆破。横に空中移動し、今度は左手を上空に向けると同時に爆破し、未だ出久を持ち上げている俺の横に稲妻を描くような形で、急接近した。両手を向けて俺だけを爆破させようとする。

 

 とっさの判断にしては上出来だ……しかし、まだ甘い。

 俺は、出久を地面に叩きつけ上に飛び上がった。下を見てみれば、叩きつけられ悶えていた出久が勝己が爆破をモロに喰らって、転がっていく様が見えた。

 

 ドンマイ出久。

 しかし、勝己は気にせずに一瞬で、上に跳んでいる俺目掛けて爆破してくるが……遅い。

 俺は体をよじらせなんなく回避する。

 そのまま着地すると再度、爆破をしようと手を向けてくる勝己よりも早く、サッカーボールを蹴るように勝己の顔を蹴り抜いた。

 

 蹴られた勝己は吹っ飛び、一度は起きあがろうと手をついたが、そのまま気絶して倒れてしまった。

 出久の方を見てみると出久も爆破により気絶してしまっている。

 戦った後がはっきりわかる地面は抉れ、焦げ跡が付いていた。

 

 気絶した二人を木陰まで運び、万象儀で二人の状態を確認した。

 頭を蹴られた勝己も内出血はしておらず、鼻血や所々に痣がある程度、出久は最後の爆発で服が所々焦げて結構大きめの穴が開いていたことや俺に殴られたところと叩きつけられた所に痣や打撲が所々にあったので二人には怪我した部分を万象儀で覆い治癒をした。

 万象儀を解除し二人の容態を確認すれば傷や痣は完治していた。

 出久の服も万象儀で覆い分解し、再構築した。少し小さくなったが問題ないだろう。

 

 ……ん?二人の成長ぶりは分かったからお前はどうなのかって?

 そうだな…今の俺は全盛期の〜2分の1程度か?自分でも覚えてねえーな。

 予想だがこのままいけば俺は前世の俺を越えることが出来るだろうだろう。その証に出来ることは増えたしなざっとまとめるとこんな感じだ。

 

・万象儀で体を覆うことでの身体強化・治癒(他人にも可)

・覆った物質の分子レベルで強化・分解・構築・温度変化

・空間を支配することでのワープ

・相手の脳を支配することでテレパス(相手との通信も可)

・簡単な洗脳

・相手の記憶を見ることや、自分の記憶を見せれる

・相手との視覚共有や万象儀をつけた相手の位置が分かるようになった。

・他etc…

 

 昔ダルモンの言った通り本当になんでも出来る個性になったな。

 なんでこんなに出来るようになったのかと言えば、単に熟練度を上げたからだ。

 

 前世では才能の衝動を抑えるために精神統一をしていたが今世で個性になったお陰なのか衝動は一切無くなり精神統一したら万象儀が極数量増え、熟練度が上がる事がわかった………いやもしかしたら“目標”が出来たからか?

 

 技が増えたのは、ほとんど前世が前世で使っていた技の応用だ。

 

 なんか出来ると思ったから勝己あたりを洗脳し、オカマになれと洗脳したところ出久にオネェ言葉を使い始め、出久に抱きついていた。少ししたら洗脳が解けたのか我に返った途端、出久に顔面パンチし、言葉にはならない怒号を叫びながら、俺に最大火力の火力の爆破をぶっ放してきた。後ろは森なのでやばいと思った俺は個性を使い爆破を防いだがまだ勝己が吠えながら撃って来ようとするので洗脳と同じ要領で眠らした。

 

 流石に悪いと思ったので、飯を二人に奢るとバカみたいに食い、財布が空になり俺がうなだれていると勝己は満足したように帰ってった。

 今度からこいつらに飯奢るのはやめようと思った。

 

「さっきからずっとどこに話しかけてんの?こうちゃん」

 

「おお、起きたか出久、なんで俺の心の中が読めるんだよ。…まさか個性が発現したのk「いや普通に声に出てたから…」

 

 いつの間にか目が覚めていた出久にまさかと思い、個性の発現有無を聞いてみたが単に俺の口から漏れ出ていただけらしい。

 

「……ちなみにどこまで出てた?」

 

「さぁ…なんか自分のできる事喋っていたよ」

 

「そこまで喋っていたのか…こえーな俺」

 

「自分で言わないでよ」

 

「ああそうだ服、穴が開いていたから直しておいたぞ。それでちょっと小さくなったけど大丈夫か?」

 

「え?…本当だ。大丈夫だよありがとう」

 

「はいよ。どういたしまして」

 

「あ、そうださっき喋っていた個性でできる事教えてよ、ノートに書きたい」

 

「おいおい、とうとう俺のノートまで書くのか?」

 

「いやもう何冊もあるし、かっちゃんのもあるから」

 

 マジか。出久の分析ノートって一人のヒーロー大体2〜4ページなのに俺と勝己用のノート丸々一冊もあるのか…それも数冊。どんだけ書いてんだよ。

 

「マジか……あとでそのノート見せろよ見てみたい」

 

「うん、いいよ。なんなら今から家来る?」

 

「おお、いいぜ勝己はどうする?」

 

 先程からずっと狸寝入りをこいている勝己に声をかけてみると、むくりと起き上がった勝己は苦虫を噛んだみたいな顔をしていた。

 

「あ、かっちゃん起きてたんだ。どうかっちゃんも来る?」

 

「………ケッ!おいデク、俺にもそれ見せろや」

 

「よしそれじゃあ僕ん家行こうか。こうちゃん万象儀お願いできる?」

 

「いやパトロールがてら街を回りながらいくぞ」

 

「了解、かっちゃんもいいよね」

 

「……………」

 

 のっそりと立ち上がった勝己は無言で歩いて行く。歩いて行く方向は山から下りるための道を進んでいる。

 それを見た俺と出久は意図を察し急いで帰る準備をすると個性を使いほら穴前の広場を整地し、随分、先にいた勝己を殴るために走った。

 

「無言で歩いて行くな片してから行けよ」

 

「いってーな!お前だけでもすぐ終わるだろが!」

 

「はいはいかっちゃん。どうどう」

 

「うるせっーぞデク!あとテメッ、簡単にやられんな!!せめて一撃ぐらい入れろや!」

 

「な!トドメ刺したのかっちゃんじゃん!そういうかっちゃんだって一撃も入れてないじゃないか!」

 

「うるせー!!俺はお前より長く残っていたんだから俺の勝ちだ!!」

 

 親指を自分の指にたて何故か誇っている勝己を見て此方も何故か悔しがっている様子の出久を見ていや何の勝負だよと思った。

 

「ガキかお前ら」

 

「「うっさい!!!!」」

 

 二人が息ピッタリで俺に怒鳴り返し勝己が俺に中指を立ててくる。

 

「次は絶対、個性使わしてやるからな!覚悟しとけ!!」

 

「僕も次は入れてやる!!」

 

「そこは、個性だろーが!レベル下げんな!!デク!」

 

「はっ!今のお前達がこの世界最強に一撃入れるなんざまず無理な話だよ!」

 

「ざけんな!あと、くねくねすんな気色悪りぃ!」

 

 そんないつも通りの会話をしていると商店街についた。

 休日の昼間なので商店街は子連れの親子や、買い物に来たであろう主婦や、遊びに来た若者やら、活気に満ち溢れた声で客を呼び込んでいる昔ながらの店の声たちで大いに賑わっていた。

 

「あら三人ともパトロール?いつもありがとうね〜」

 

「あ、お兄ちゃん達だ!こんにちはー!」

 

「おぉ。もう迷子なんるなよー」

 

「うん!」

 

「お!お前らパトロールか?コロッケやるよ!」

 

 この前、迷子になっていた子供やら顔馴染みらに手を振る。肉屋の前を通り過ぎようとしたら快活男児で昔から有名なおっちゃんに声をかけられた。

 

「いつも言ってるが俺たち見返りが欲しくてこれやってんじゃねぇんだぜおっちゃん」

 

「いいんだよ!お前らのお陰でこの街もだいぶ平和になったんだ。こんくらいじゃ割安な方だよヒーロー!それにちゃっかり貰ってんじゃねぇか!!」

 

「貰えるもんは貰っとけって言われてるからな。…やりたくてやってんだよ別にいいだろ?」

 

「それじゃあ、俺もやりたくてやってんだからいいよな!」

 

「なんですかそれ」 

 

「わーはっはっはー!」

 

 快活に笑うおっちゃんからコロッケを貰い、別れの挨拶を告げた俺たちはコロッケを食べながらパトロールを続ける。勝己もう食い終わってる。はやこいつ…。

 

 ああ、そういえばピースサインとしての活動を言ってなかったな、

 そうだな…確か名前を決めたその次の日からゴミ拾いを始めたんだったかな。その時、勝己の母さんから流石に3歳の子供三人だけでゴミ拾いは危ないと言われてことで、それぞれの母親の誰かと一緒にゴミ拾いや家族でゴミ拾いとかしてたな。

 そんなことを続けているからいつの間にか近所からは『小さなヒーロー』と呼ばれ始めてて出久と勝己は喜んでいたな。

 

 でも、そんなことをやり続け何年か過ぎた頃に周りから見る俺たちの目が変わる事があった。

 確か小学中学年ぐらいの頃、いつも通りパトロールをしていると俺たちの前から引ったくり犯が走ってきたので個性を使わずに捕まえたんだ。この後に来た母さんからものすげぇ泣きながら怒られた。恥ずかしかったけど、すげぇ嬉しかったのを今でも覚えている。

 

 前世は輪廻の枝の能力により、廻り者になる前の記憶は消えていたから自分や家族のことも忘れてしまっていた。だから今では忘れしまった家族の愛情というのを感じてとても嬉しかった。まず前世の俺に家族がいたのかは知らないが。

 うん……嬉しかったよ。

 

 …話が逸れたな。引ったくりを捕まえてから周りの俺たちを見る目が確実に変わった。俺たちを褒める者、俺たちを非難する者。

 実際に無個性である出久をバカにしてくる奴らがいた。

 喧嘩の強い勝己と俺が睨みを利かせていたが出久自身が気にしていなかったので、そういう輩は徐々に消えていった。

 

 喧嘩を買い続け、高学年になると近所の悪ガキ中学生や高校生は俺らに頭を下げてくるようになった。

 まぁ、カツアゲしている奴らをしばいていたからな。

 たまに弱そうな出久に目を付けて人質にしようなんて考えた奴らがいたが、そいつらは全員、出久お手製のスタンガンの餌食になり。年下に負けた悔しさからか更生していった者が続出した。

 

 中には一番強い俺を倒して名を上げようとした奴らもいた。

 来る奴ら、全員フルボッコにし、くる奴くる奴全員倒していたらいつのまにかこの街全体の不良を締めており俺に喧嘩売ってくる奴は誰もいなくなった。偶に県外から遠出してでも俺に喧嘩ふっかけてくる奴がいるので心底、面倒くさい。

 

 ああ、あとここまでくると地元のヒーローや警察とも流れで仲良くなり、この辺の権力者とも弱みを握る形で仲良くなった。俺らが本物のヴィラン捕まえても何も言われなくなったけど、それはそれで良いのだろうか?

 

 ここまで来ると俺たちの色んな名前が出来始めた。

 俺たちの名前がピースサインと知る奴は親ぐらいしか覚えて無かった。言わなかったこっちも悪いが、流石に不良達が付けた黒魔神ってのはどうだ?

 勝己なんか死ね死ね言ってるから爆殺マンだ……まぁこれは仕方ないか…。

 唯一まともなのが笑顔が可愛いと評判の出久だが戦い方はエグいので不良達からは裏腹と呼ばれている。ネーミングセンスねーな、哀れ出久。

 

まぁこんなところか…。

 

 ……ん?裏路地でなんか見えた。あれは昔、しばいた事のある不良達だな。誰か囲んでいる…懲りん連中だな。俺は出久達にちょっと出ると言い、返事を待たずに、裏路地へ向かい馬鹿どもにに声を掛ける。

「おい、てめーらそこで何してる…」

 

「あ?っち!誰だよ殺すぞ早くd!!……こ、項羽さん!!」

 

 俺の声に反応し振り返った不良達は俺の顔を見た瞬間、時が止まったかのように固まった。辛うじてリーダー格の男が声を出せていた。馬鹿どもが取り囲んでいたのはどうやら女の人らしく、声に反応して顔を上げたがよく見えない。

 

「ほぉ…誰が誰を殺すって?冗談よせよ」

 

「おーい、こうちゃん突然どうしたのさ」

 

 後ろから俺の後を追ってきた出久と勝己が来た。やってきた二人を見た不良達は更に驚き、怯えたような顔をし始めた。

 

「こ、これは皆さんお揃いでパ、パトロールですか?」

 

「……お前も懲りないやつだよなー。早くどっか行け、次してるとこみたら警察に突き出すからな?」

 

「すすす、すみませんでしたぁー!!」

 

 明らかに動揺を隠せないリーダー格の男が雑魚キャラのような台詞を吐き残しながら逃げる。その姿を見た残りの不良も我先にと後を追いかけながら逃げって行った。

 まぁ小物の中の小物だから悪いことと言ってもナンパぐらいしかないから別にいいんだけど。

 

「おいあんた、大丈夫…か……」

 

 その顔を見た瞬間、今度は俺は固まった。だって、その顔はかつて俺と最後を共にした……。

 

「こ、項羽…?」

 

 共にした…。

 

「ダ、ダルモン…か?」

 

「項羽!!!」

 

 マリー=アンヌ・シャルロット・コルデー・ダルモン。

 前世と変わらない姿をしたそいつが俺の名前を叫びながら抱き着いてくる。

 

「ほ、本当にダルモンか!?」

 

「うん!…そうだよ…わたしだよ…!」

 

 マジでダルモンだ。しかし何故だ…まさかダルモンも転生を…?

 姿や身長はあまり変わったないように見える。当たり前だが服は今どき風のお洒落な服に変わっている。

 

 ……視線を感じる。…ハッ、やべっ二人共なんか呆然としてるし、デケー声出しすぎたから通行人が大通りから覗いている。

 ここにいても余計な混乱が起きそうだからここは一旦退散したほうがいいか?

 

「おいお前ら!一旦飛ぶぞ!」

 

 急いで万象儀を展開し三人を取り込み万象儀で……どこに行こう?……俺んちだー!!

 

 万象儀が晴れるとそこには俺の部屋の風景が広がっていた。急いで自分の頬に傷をつけるとこれからどうしようか思案する。

 さて、ここからどうする。

 落ち着け俺、冷静になれ世界最強だろ。

 

「項羽!項羽!項羽!」

 

「へ?ええと…女の人がこうちゃんに抱きついてそのあと……あれここ、こうちゃんの…ちょっと!かっちゃん起きて!」

 

「……………(未だ放心状態)」

 

 あ。うん、落ち着いたわ。

 

〜〜落ち着き中〜〜

 

 色々あった末に四人とも落ち着きを取り戻し始め今は俺とダルモンが二人とお互い対面するように座っている。

 

「えーっと、こいつの名前は…」

 

「マリー・ダルモン…」

 

「み、緑谷出久です」

 

「……爆豪勝己」

 

 …………おいなんだこの微妙な空気。まずい。ダルモンのことどうやって説明しよう……俺コイツのこと知らなかったしなんて言えば…。

 

「えっと、私は……項羽の幼馴染で…小さい頃イギリスに引っ越して…今日、日本に帰って来たの…」

 

「へ〜そうなんだ…そうなのこうちゃん?」

 

「お、おう小さい頃は結構仲良かったよな俺たち」

 

「うん…」

 

 ダルモンが俺の雰囲気を察したのか何とか俺との関係をそれっぽく嘘をついてくれた。だが何だが勝己から睨まれ続けているので多分こいつにはバレてるんだと思うんだけど。

 

「おい、項羽お前嘘ついてないか?」

 

 やっぱりバレた。よくもまぁこんな少ない会話の中で俺が嘘ついてるってわかるんだよこいつは……。

 

「嘘がバレたまずいって顔してるな〜項羽」

 

 本当すごいなコイツ……はぁ。もうどうせならここで全部見せちまうか?いずれにせよいつかコイツらには全部見せちまうつもりだったしダルモンもいるから説明もしやすい。

 でもやっぱあれだ今なら西耶の気持ちがわかる気がする。初めて胃が痛いという感覚だ。

 

「はぁ、お前相手に隠し事は無理か……すまんお前らのこと騙して」

 

「どういうことか説明してもらおうか?」

 

「そうだな…話すより見たほうがいいだろう」

 

「見たほうがいい?どういう事?こうち」

 

「黙ってろデク…」

 

「……うん」

 

「ありがとう勝己、出久今から見せるのは全部俺が経験したこと…

前の人生だ結構長いが、しっかり見てくれ」

 

「「…………」」

 

「行くぞ…」

 

 二人からの返事はなくても了承ととった俺は腕に万象儀を纏い二つに分け二人の腹を貫いた。瞬間二人は放心した顔になり俺が今まで歩んできた人生を二人に見した。

 

…………輪廻の枝で自らの首を切り、輪廻返りした事。

 

…………全世界を旅し、様々な廻り者と出会った事。

 

…………ダルモンと出会い、西耶と出会い、仲間達と出会った事。

 

…………西耶と偉人の杜を作った事。

 

…………一時の感情で西耶を殺してしまい後悔した事。

 

…………偉人の杜を嗾しかけ戦いを起こした事。

 

…………ダルモンと最後を迎えた事。

 

…………転生し二人に出会って今までの事。

 

  全て包み隠さず見した所で腕を抜き、未だ放心状態の二人の肩を掴み起こした。

 

「…以上、これが俺が前世と今世に体験した事全てだ。

………隠していた事は謝る。罵詈雑言だろうがなんだって受けよう」

 

「「……………」」

 

 二人はしばらくの間、何も言わなかったが勝己が口を開いた。

 

「項羽、一つ聞きたい、なんで今まで黙っていた」

 

「言ったらお前らが幻滅すると、言わばずるして手に入れた力だからな。そして俺は廻り者になる事で人生を捨てた弱い人間だから」

 

 そして俺が仲間を手にかけたヴィランだから。俺がそう答えると勝己が黙りこくり始め今度は出久が聞いてきた。

 

「こうちゃん、僕もいい?こうちゃんは僕たちの事、信頼してる?」

 

「してるに決まっているだろう、そうでなかったらあの時、お前らに夢を話さなかったよ」

 

「そうか…じゃあこうちゃん」

 

「「君(お前)はバカだ」」

 

「………は?」

 

 二人に何言われても覚悟しておこうと考えていた身だが一拍間を開けた二人がとても呆れたような顔をしながら二人して同じ事を言ってきた。

呆然とする俺に二人は続きざまに語りかけてくる。

 

「いいかお前がどう言った理由で首を切ったのはどうでもいいが、

この事をもっと早く言うべきだったな、そんな事で俺たちがお前を見放すかよ」

 

「そうだよ、それにこうちゃんが居なかったらこんなに強くなれなかった。もしかしたらヒーローになる事を諦めていたかもしれないんだよ。だから大切な仲間だと思っているし尊敬もしている」

 

「デクの言う通りだ、確かに隠されていた事はムカつくが見してくれたんだから今はどうでもいい、とりあえずだ項羽…」

 

「「俺たちは仲間だ」」

 

 二人が微笑みながら俺にそう伝えてくれる。

 ………俺はバカだったなこんなに信用してくれる仲間が居たのに。自分の保身のために今まで話さなかったなんてな。

 

「……ごめんなお前ら…そうだなこんな俺でも許してくれるのならこれからも仲間でいてくれるか?」

 

「許すも何も少しムカついただけだ怒ることじゃねぇ」

 

「そうだね…あんな葛藤見せられたら怒るものも怒らないよ」

 

 本当にコイツらはお人好しだな。

 

「……ねぇ三人とも……お願いがあるんだけど……私も…仲間になっていいかな?……こんな項羽見るの初めてで…羨ましくなっちゃった」

 

「大丈夫だよ、あれを見せられたら信用するしかないよ…ね、かっちゃん?」

 

「俺も問題はないが…暗殺女、今度はお前のことを聞かせろ…こっちに来てからどんな人生を歩んで来たのかあの会話見た感じお前、前世では周りに恵まれなかったらしいからな…」

 

「……!いいよ…話してあげる」

 

  今度はダルモンが話す番となりみんな耳を傾けた。ぶっちゃけ俺も気になっていた。話によると今世ではちゃんとした両親に恵まれ、友達にも恵まれたらしい。よかった。

 

 昨日父親の仕事の都合で日本に家族で引っ越したらしい。今日は初めての日本だから近所を散歩していた所、あの不良達に囲まれ俺たちと出会ったらしい、このことを偶然と言うべきか運命と言うかわからないが運命だと俺は信じた。

 

「私からもいい…?」

 

「二人はヒーローになりたいの?…」

 

「うん」 「おお」

 

「…どういうヒーロー」

 

 ダルモンが珍しく他人に質問している。どうやらこの十数年で他人には対する免疫がかなり強くなったらしい。

 二人は顔を見合わすと笑顔で答えた。

 

「どんな敵でも最後には必ず倒すカッケェヒーローに……」

「どんなに困っている人でも笑顔で助けるヒーローに……」

 

「「なりてぇ(なりたい)」」

 

 二人の返事がまた揃った本当仲良いなコイツら。

 

「ふふ…そっか……項羽は?」

 

 こんな笑い方するダルモンは久々に見たなそれほどこいつらの事、

気に入ったか。そして今度は俺に振ってきた。

 

「俺か?俺は……」

 

 俺は三人を見た。三人共俺の答えに興味津々なのかソワソワしながら答えを待っている。

 

「出会った奴らを失わないヒーローになりたい……お前らとこれから出会う仲間達、すれ違う街を歩く人達だろうと、もう失わないそんな

ヒーローになる事がオレの目標だ」

 

 俺がそう言うとダルモンがとても嬉しそうな顔をし抱きついてきた。嬉しそうな顔した理由は分からないが俺は十数年ぶりなコイツの頭を撫でた。そういえばもう一つあった」

 

「ああ、もう一つ大事な目標もあった。ダルモン……俺たちの最終目標はあの時為し得なかった世界平和だ。今はその二歩目。オールマイト以上の平和の象徴になることだ!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 

 




ああ、そうだ今まで項羽の名字なかったから作りました。
調べて見たところ項籍と言うのがあったのでそこから取り
黒籍 項羽(くろぜき こうう)にしました。安直すぎたかな?

あと項羽はダルモン差し置いて他のヒロインとイチャイチャする絵が浮かばなかったので転生させました。

次回から○ドロまで行きます。
後々、番外編とか書いていこうと思います。


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入学までの…
出会う!①


主「書く事ないので始まります」

鬼顔先生「真面目にしなさい…」ゴゴゴゴゴゴ!!

主「今回ニッチなヒーローがお説教を受けるぞ!それではどうぞ!」

鬼顔先生「ネタバレじゃない♡」ガシッ!

主「すみませんでした!!命だけは!命だけは助けてくだs」

項羽「はじまりまーす」


 季節は過ぎ……春。前三年生の卒業式と入学式を終えた俺たちは三年生となり今現在俺と出久は、春の暖かみを感じながら花弁。舞う街を見ながら平和で平凡な会話をしほのぼのと登校していたのだが…(勝己は先に行ってしまいました)。

 

「くるんじゃねええええ!!」

 

 少なくとも平和になったこの街にもやっぱり敵はどこにでも現れるようで、今朝もまた駅のホーム近い線路の上で大きな敵とヒーローがドンパチ戦っていた……あー線路壊されてる…。

何があったか人混みの近くにいたおっちゃんに聞いてみる。

 

「あのー、何したんだ?あの敵」

 

「ん?あー引ったくりして追い詰められて暴れているんだと…てっ!うお!!黒籍に緑谷じゃねーか!!」

 

 そんな大きい声出すなよ…あぁほら周りの見物人が反応したじゃねーか。

 

 俺たちに気づいた見物人達は挨拶やこの前助けてもらった感謝の言葉を述べてくる。それに出久はいつもの人懐っい笑顔で返していた。

 出久の笑顔を見た見物人の女性達は赤面しながら顔をうつむかせた。

 その姿を見た出久はぽかん、と言う顔をしていたがこいつも隅に置けないな。

 

 まぁそんなことは、どうでもよく俺は見物人達に離れるよう忠告し線路の近くによる。前に出た俺を見物人達は期待するような目で見始めるがカメラを向けないあたりこの街の人間達は分かっているな。

 俺が再度下がるように言うと出久も他のヒーローと共に後ろに下がるように言えば見物人達は残念と言った風に下がっていった。

 見たいのは分かるがこっちはお前らが怪我しそうで怖いんだよ…。

 そう思いながら駅の屋根に万象儀を足に纏い跳び乗ると屋根には木人の様なヒーローが敵と戦闘を繰り返していた。

 

「おい、シンリンカムイ手伝うぞ」

 

「!項羽か…助かるがここは俺に任してくれ、いつもお前達に助けられてばかりだからな…たまにはヒーローっぽくさせてくれ」

 

「そうか」

 

「何俺を無視してくれてんだぶっ殺すぞ!!」

 

 敵がその大きな腕で俺たちを殴りかかってくるがそんな事を許すヒーローはここにはいねぇよ」

 

「必勝!ウルシ鎖牢!!」

 

「キャリオンカノン!!」

 

 カムイの腕が木の幹のようになり敵の視界を塞ぐように分かれながら敵を捕獲せんと伸びるが…敵よりも巨大な影が敵を蹴飛ばしながら俺たちの前を横切っていった…一瞬の事に何が起こったか把握できていないカムイは呆然とした顔をしていた。

 

「本日デビューと相成りました!Mt.レディと申します!以後お見シリおきを!」

 

 そう自己紹介したMt.レディというヒーローをローアングルからカメラを向けるメガネの集団がこちらには聞き取れない声で何かブツクサ言っていた。

 

 その間、淡々と敵を拘束していく警察とその横で普通サイズになったMt.レディが見物人に手を振る姿を見てカムイが俺の決め所……と手をつきながら落ち込んでいた。まぁそんな事は気にせず。壊れている線路を修復し、駅員に声をかけて未だ落ち込んでいるカムイを叩き起こし地面まで下ろすと俺は未だ見物人に手を振るMt.レディの方に向かって歩いて行った。

 

 上から降りてきた俺を見てMt.レディは一瞬、驚いたがすぐに笑顔になり、何を勘違いしたのか握手するように手を出しきたが、警察官達は俺の姿を見て。ああ、いつものか…と言う顔になり声をかけた後。敵を連れて足早にそこから離れて行った。

 俺は出された手を無視して俺はMt.レディのおでこにデコピンを食らわす。突然の衝撃に驚いたMt.レディはデコピンで赤くなった額を抑えながら俺を見て文句を言いだした。

 

「痛った!突然何すんのよ!貴方ファンじゃないの?!」

 

「誰がファンだ、お前ルーキーかもしれねぇがヒーローならもっと周りに注意して戦え、敵蹴った時線路が壊れてんだよ。それに蹴った先は人通りのある道路だ…幸いこの騒ぎで人は居なかったがもし居たらお前踏み潰していたからな、それに……」

 

 さっきまで住民たちに手を振っていたのに今は突然名前も知らない奴に説教し始められたことでMt.レディは困惑していた。

 

「ちょちょちょっと待ってよなんでガキのあんたに説教されなきゃいけない訳!意味分かんないんだけど!!」

 

「おい!でっかいねーちゃん!なんでお前項羽にキレてんだ!」

 

「そーよ!黒籍君はね!あんたより前からこの街でヒーローやっているのよ!」

 

「はぁあああ!!?このガキが…私より前からヒーロー!?嘘?!」

 

「まぁ正式には違うがな」

 

 見物人達に俺がヒーローだと言われ信じられないと声を上げるMt.レディの元にデステゴロが駆け寄ってきた。

 

「おいMt.レディみんなが言っていることは本当だ。項羽達は俺がこの街に来る前からこの街でヒーローやっている。非公認だがな」

 

「え"ーーーー!!」

 

「そういことだ。続きだが……」

 

「ちょ助けてください!!先輩!」

 

「諦めろ。俺やカムイ、ここら辺のヒーローは全員、項羽達に説教されている。洗礼みたいなものだ。それに俺が先輩ならこいつは大先輩だ、ありがたーく怒られろ」

 

「嫌ーーーーーー!」

 

「おい聞いてんのか?大体、それにあの時は無駄に線路壊して被害増やすよりもカムイの技で捕まえた方が……」

 

 やってきたデステゴロに助けを求めたMt.レディだったかこの街の衝撃の事実を知り愕然としていたが、説教を始めた俺に抗えずそのまま説教を受ける羽目になり、出久が「こうちゃん遅刻しちゃう!」と言ったところで、そんな時間かと思いこう締める事にした。

 

「…だが実績を出すことはいい事だ実績が出れば名が上がる、名が上がれば住民からの信頼が生まれる、信頼できる名があれば人は少なからず安堵する。オールマイトみたいにな…お前が見返りより平和を求めるヒーロになりたいならなら住民と接し、自分がいる事を住民に知らせろ。長い時間が必要になるかもしれないが現に俺たちは街のみんなから信頼されているだが俺たちが居ない間はこの街の平和はお前ら、本物のヒーローに任せたぞ……頑張りな」

 

 俺がそう言うと説教されて半泣きになったMt.レディから小さな声で頑張ってみると言ったのを確認し出久からも励まされるとMt.レディはその場を立ち去って行った。

 

「大丈夫かな…Mt.レディ結構凹んでいたけど…」

 

「巨大化という個性でヒーローになろうと思ってんだ…ガキに説教されて凹む程やわな精神はしてないだろう。それに本人が、頑張ると言ったんだ見ててやろうぜ」

 

「そうだね……ってこうちゃん!のんびり話している場合じゃないよもうすぐ朝礼始まるよ急がなきゃ!!あと2分!!」

 

「はっ?!まじか急ぐぞ!!ダッシュで行けば間に合う!!」

 

「ちょっ!待ってよ!こうちゃん!!」

 

 締まらない終わり方をし、走り去っていく俺たちを見た街の人たちはまたかという風に笑いながら律儀にも大荷物抱えたおばあちゃんを助ける俺たち二人を見送ってくれた。

 

 

=====

 

 焦った。おばあちゃん助けてたらもう時間が30秒しかなくて急いで万象儀で飛びなんとか間に合ったが現在、出久は表彰台の前でガチガチになりながら校長の前に立ち賞状を受け取っていた。内容はピースサインとしての功績を認められ出久が代表として受け取っているのである。

 

 これは中学に入った途端、表彰され始めたのだ。あいつは毎回取りに行くと言うのにいつもガチガチで受け取っていやがる。そして出久が校長から賞状を受け取り全校生徒の前に振り返り、みんなに見せれば大きな拍手と歓声が起こった。

 

 普通ならば、ここまでの賞賛は送られないんだろうがここにいる全校生徒は校内や校外で出久に助けられた奴が大半であり普段素行の悪い生徒も出久を祝い散らしている助けられたことがない奴も日頃の出久の態度を見てここまでの賞賛を送っている。

 こう言った集会では静かにしていないとダメなのだがこの時間だけは教師陣は出久が座るまで出久に拍手を送っている。担任なんざ誇らしいのか泣きながら拍手しているぐらいだ。

 

 集会が終わると全校生徒が教室に戻り、授業が始まるのだが三年生はその前に別の話が待っていた。

 

「さて…まずピースサインの諸君!受賞おめでとう…みんな、拍手!」

 

 担任がそう言った瞬間、集会の時のような拍手と喝采が俺たちを包んだ………うん、お前らありがとう、もういいよ。

 

「はいそこまで、後で存分に祝ってあげなさい…次いくぞーあーお前らも三年ということで本格的に将来を考える時期だ!!今から進路希望のプリント配るが、皆!!……大体ヒーロー志望だよね」

 

 担任の言葉に皆、当然と言った風に個性を発動しながら答える

 発動していないのは俺と出久と勝己だけだ。(ダルモンは別クラス)

 

「うんうん、皆いい個性だ!でも校内での個性使用は禁止だからほらみんな、しまえ〜しまえ〜」

 

「「「「「「はーーーーい」」」」」」

 

「はい、みんないい子で先生助かる……ああそうだ、緑谷、爆豪、黒籍、進路のことで話したいことがあるから放課後、職員室に来てくれはい!以上日直ー!」

 

 ………担任の話が終わり日直があいさつした直後、俺、出久、勝己のそれぞれ3グループに分かれ俺たちに話しかけ始める。

 

「やっぱすげーぜ!お前ら!!」

「だよな!なあなあ項羽お前ら高校どこいくんだー?教えてくれ!」

 

「あー落ち着けお前ら、俺は雄英行くが他二人は言えねーな、個人情報だ。お口チャック」

 

 俺は手で口をチャックする仕草をした。しかし俺は火に油を注いだようでクラスメイトは“雄英”という言葉を聞き更に騒ぎだした。

 

「ゆーえい!!まじかお前、今年偏差値79の雄英!?」

「倍率も毎回やべーんだろ!!行けんのか!?」

 

「おい、お前ら声でけーよモラルって、しってr「こうしちゃいられねぇーおい!お前ら、項羽を胴上げすんぞーーー!!!」

 

「「「「「「オオーーーーー!!!」」」」」」

 

 ………もういいやこいつらが満足するまでやらしてやろう…。

 

「いくぞー!せーのっ!!ん?まて項羽重テェー!!」

 

「馬鹿野郎!そんなんで、諦めんな意地でもあげるぞ!!せーのっ」

 

「「「「「よいしょッー!!!」」」」」

 

 みんなの力が合わさり俺の体が宙に浮いた………ほんの5センチ…

 しかもこいつら俺をキャッチする力が無かったのか思いきっり床に落としやがった…

 

「…………おい、お前ら……満足か………?」

 

「「「「「ハイ、マンゾクシマシタ………」」」」」

 

「なら席に戻って静かにしてろ……」

 

「「「「「ハイ、スミマセンデシタ………」」」」」

 

 仰向けで怒気を孕んだ声で俺が言うとこいつらは満足したようだ。

 いやー良かった、良かった……。

 一部始終を見ていたクラスメイト達は胴上げしていたクラスメイトに同情されていた。俺ではなく?…このことを昼休み三人に話すと、同情はしてくれたが三人にはお前が怒った声怖いと言われた。

 

 そんな感じで放課後になり、俺たちは職員室へと来ていた、遅くなるかもしれないので、ダルモンには友だちと帰ってもらった。

 職員室に入り担任のところまで行くと、担任は笑顔で来たかと言い、俺たちに椅子を出してくれた。

 

「さて話というのはさっきも言ったが進路のことだ、そしてお前ら三人は全員雄英志望だな」

 

「はい」 「おん」 「………はいっす」

 

「それで提案なんだが…推薦を受ける気はないか?」

 

 予想はしていたがやはりそうか、俺はこいつらより頭が悪いので、辞退することを担任言おうとしたら……。

 

「「「結構だ(いいです)(やんねぇ…)」」」

 

 また、こいつらとハモったわ…何回目だこれで……。

 

「ほぉ、それはまだなんで?推薦の方が多分お前らは受かる確率高いぞ。なのになんで?」

 

「ふっ愚問だな先生そんなの単純ですよ……俺の頭が悪いからだ…!」

 

スパッーン!!!

 

 勝己が俺の頭を思いっきり引っ叩きやがった……!!痛えー。

 

「やっぱり!お前はバカだ!バカ!!バカ項羽!!」

 

「うん、知ってたこうちゃん結構知的に見えるけど頭ん中脳筋なのは知っていた……知っていたけど…うんバカだ」

 

「っー!てめーら人のことバカバカ言ってんじゃねぇーぞ!」

 

「うるせぇ!こっちにはちゃんとした理由があるんだよ!」

 

「じゃあ言ってみろよ!!」

 

「はっ!ンなの入試の方が面白ーそうだからだよ文句あんのか!!」

 

「…………てめーも脳筋じゃねぇーか!!バカ豪!!」

 

「んだとぉ!!」

 

「出久もなんか言ってやれ!!…………出久?」

 

「実は…僕も入試の方が面白いかと………」

 

「「…………」」

 

「………ごめん…」

 

「……取り敢えずお前ら三人共入試で良いな?」

 

「「「おねがいします……」」」

 

「はい、じゃあ話は終わりだ帰って良いぞ静かにな」

 

「「「はい……ありがとうございました(…………あざす)」」」

 

 担任に注意されたあとなんとも言えない空気のまま俺たちは職員室を出た……。

 

「………おい俺、シャー芯欲しいから付いて来い」

 

「すまん勝己委員会ある…」

 

「僕も生徒会の仕事が……」

 

「…………死ね……」

 

 なんとか場の空気を変えようとした勝己だったが俺と出久には委員会があり行けなかった俺たちは同じ空気のままお互いに別れを告げそれぞれのするべき所へ行くために歩き出した……。

 

 

=====

 

 

 はぁ…はぁ…聞いてねぇーぞなんであんなヤローがこの街にいやがんだ!不味いこのままじゃ追いつかれる!下水道に逃げなければ…。

 

 

=====

 

 ……生徒会の仕事をやっていた僕だが同じ仕事をしていた同級生に元気がないと言われ、無理矢理帰らされた。最後に同じ生徒会に入っている同級生が「いつもお前には世話になっているから、ここは俺に任せてくれよヒーロー!」

 

 物凄く眩しいくらいの笑顔で親指を立てた姿を見た僕は断れず、罪悪感を感じながら彼に任して帰ってしまった。

 彼の笑顔が思い浮かび再び罪悪感に襲われた……言えない…言えるはずがない自分の元気がない理由があんな下らない事なんて言えない……そんな軽く自己嫌悪に入っている僕は後ろから近づいてくる悪意に気付かなかった…。

 

「Lサイズの…隠れミノ…」ドロッ

 

!?敵!!?

 

 薄暗いトンネルのマンホールから出てきたヘドロの様な敵は瞬く間に僕の体にまとわりつき口の中へ侵入してきた…不味い息が…力入んない…いつも持ち歩いているスタンガンはバックの中…でもこいつが絡み付いてうまく取り出せない…。

 

「大丈ー夫…体を乗っ取るだけさ苦しいのは約45秒…すぐに楽になれる……」

 

 不味い。振り払おうとしても掴めない……。

 

「掴めるわけねーだろ!流動体なんだから!!………ん?その髪の毛…お前もしかして折寺中の緑谷か!……ハハッこりゃあ良いお前の体使って他二人も殺してやるよ……どうだ!最高だろう!!」

 

 ……何言ったんだこいつ…やめろ……かっちゃん達は何もしてないだろぶざけるな……あの二人が…お前なんかに…あの二人がやられるわけ無いだろ……!!

 

「…っんぐ!おおおおおおおおっっ!!!」

 

「あ?………何にしてんだよ…出れるわけねぇだろ流動体って言っただろうが……ちっ!あいつが来る前に早く乗っ取ろう…」

 

 …逆らえ…時間を稼ぐんだ……誰かが来るまで耐えろ!緑谷出久!!

 

「よく耐えたな!少年!!…もう大丈夫だ私が来た!!」

 

 見えなかったが敵が出てきたマンホールが勢いよく吹き飛ぶ音がして後ろから自分があの二人と同じくらいに憧れた人の声がしたと思った瞬間。

自分のすぐ真横に暴風と衝撃波が通り抜け僕の体を覆っていたヘドロは一瞬にして吹き飛んでゆき。僕は解放された安心感と僕を助けてくれた人の姿を見て心底安心し。薄れ行く意識を手放した。

 




HAHAHAHA…後書きに…!わたしg

主「お前の出番は今度じゃい!!」


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出会う!②

主「もしかしたら部活で投稿スペース落ちるかもしれませんがご了承下さい」ドヤ

担任「何故ドヤッた」

主「それではどうぞ!」

担任「おい無視すんな」


「……イ!…ヘイ!ヘ!よかったー!!!」

 

「トぁああああ!!?」

 

「ん!元気そうでなりよりだ!!いやぁ悪かった!!敵退治に巻き込んでしまった!いつもはこんなミスしないのだが、オフだったのと慣れない土地で浮かれちゃったかな!?」

 

「しかし君のおかげで無事詰めれたありがとう!!!」

 

 あまり聞き慣れない……いや少し違うなどこかで何回も聞いたことのある声だ。ペチペチと頬を優しく叩かれている感触に起こされ突然起きた風圧によって張り詰められた緊張が解けたせいで気絶していた僕は目を覚ますと。

 

 オールマイトがいた………?

 

 

 オールマイトがいたぁぁぁぁぁ!!!!!

 

 

 オ、オールマイト!!!本物…本物だ!生だとやっぱり画風が全然違う!!

 そ、そうだサイン……。

 

「してあるーーー!!!わあああ〜!あっありがどうございます!!

家宝に!家の宝に!!飾ります!!!」

 

「じゃあ私はこいつを警察に届けるので!それじゃっ液晶越しにまた会おう!」

 

「へっいや、待ってください」

 

「ごめんね、プロは常に敵か時間の勝負なんだ!」

 

 待って!!あなたに聞きたいことが………!! 

 

「それでは今後とも……応援よろしくーーー!!!………ってコラコラーー!!」

 

 いつの間にか僕は気がつけば振り落とされないように無我夢中でオールマイトの足を掴んでいており文字通り空を飛んでいた。

 

「放しなさい!熱狂がすぎるぞ!!」

 

「オールマイト!今放したら…僕死にます!!」

 

「確かに!!」

 

 そんな姿をみたオールマイトは怒りと焦りが混ざったかのように僕に離れるように言うが下を見ただけでも直感であ、これ死ぬなという高度までジャンプしているんだその事を伝えると納得してくれたようでビルの屋上に降り立ってくれたがまたすぐに去ろうとしている。

 

「待って!あの「NO!!待たない」……個性が無くてもヒーローになれますか?…個性の無い人間でも…貴方みたいになれますか?」

 

「個性が…」ドクンッ!

「(ああ、いかんホーリーシットだどちくしょう…)」

 

 初めて生のオールマイトに出会ったことによりテンションがハイになっていて気が動転している所為なのか焦っている様子のオールマイトにお構いなしに話し始めた僕は徐々に変化していく彼の姿に気づいていなかった。

 

「僕には生まれつき個性がないんです。……でも頑張って…個性が無くても戦える方法見つけて努力してきました…でも今日…襲われてこんなんで本当に僕はヒーローになれるか不安になって…だから貴方の意見を聞きたいんです。

僕はどんなに困っている人でも恐れ知らずの笑顔で助けられる…貴方みたいな最高のヒーローに僕も…ぉおおおあああー!!?」

 

 俯きながらジトロモドロ喋っていた僕はそろりそろりと僕から逃げようとしているオールマイトに起こっている変化に気づいていてしまった。

 

「えっーーーー?!!萎んでる!!?わっーー偽物!?ていうか!逃げようとしているーー?!」

 

 びくりと肩を震わせた、骸骨のようなガリガリな体をした人物は、仕方がないと言った顔で振り向いた…。

 

「私はオールマイトさ、小n」ガフッ

 

「わーーーーー!!」

 

 言いかけた所で自分のことをオールマイトと言った彼の口から血が出てきた!本当は介抱してあげるべきなんだろうけど、オールマイト(仮)は何ともない風に口元についた血をぬぐった。

 

「ほら、プールでずっと腹筋を力み続けている人いるだろう?

あれさ」

 

「うっそだーーーーー!?」

 

 ユニークな例えで行ってくるオールマイト(仮)はそう言ってくるがなかなか信じられないが、もし信じるとしたらつまり彼が個性を使っていない時のオールマイということなのか?あぁでも先程オールマイトの着ていた服が今からの着ている服とそのままそっくり同じだ!それによく聞けば声も姿は違えどオールマイトと同じ声をしていた。

 

 僕に激しく否定されてしまったオールマイトは諦めた顔になりフェンス近くに座り込んだ。

 

「……恐れ知らずの笑顔…か」

 

「見られたついでだ…間違ってもネットには書き込むな?」

 

 そう言ってオールマイトは自身の着ているシャツをめくるとそこには痛々しいとしか言いようがない程酷い古傷のようなものが刻まれていた。

 

「5年前敵の襲撃で負った傷だ。」

 

「な………?!」

 

「呼吸器官半壊胃袋全摘、度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね、私のヒーローとしての活動限界は今や1日約3時間ほどなのさ」

 

「これは世間に公表されていない……公表しないでくれと私が頼んだ、人々を笑顔で救い出す“平和の象徴”は決して悪に屈してはいけないんだ」

 

「私が笑うのはヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺く為さ、プロはいつだって命懸けだよ“個性”がなくても成り立つとはとてもじゃないがあ…口にはできないね」

 

「……………!」

 

 なんて事だ…!まさかオールマイトが1日3時間しか戦えなくて…しかも僕が憧れていた。あの笑顔は己を欺く為…!それに個性がなかったらヒーローにはなれない……?!あぁ。あまりの事にうまく考えている事が整理できない。

 

 僕の心の中で支えてきてくれた三人の顔と今までやってきた行いが音を立ててヒビが入っていくのをはっきり感じた。

 

「人を助ける事に憧れるなら、警察や医者という手もある。敵受け取り係なんて揶揄されているが…あれも立派な人助けさ!」

 

「………夢を見るのは悪い事じゃない」

「だが相応に現実を見なくてはな、少年」

 

 明らかに動転している僕を励まそうと別の道はあると示してくるオールマイト……………でも…!

 

「待ってください!!オールマイト!」

 

「……?何かな」

 

 扉から出ようとドアノブに手をかけたしたオールマイトを呼び止めた。

 

「…昔、僕よりも何百倍と強くて尊敬している奴がこう言ってくれました!個性はなくてもヒーローはできる!って」

 

「それは…」

 

「昔!僕よりもすごくて何でも出来るような奴がお前はヒーローになれるって言ってくれました!だから僕は…」

 

『……確かにヒーローは皆んな個性を持っているが…個性が無くたって人は……』

 

『……いいかデク、誰が、オールマイトだろがなんと言おうと……!

お前は……』

 

『『ヒーローになれる!!』』

 

「ヒーローになってみせます…!あなたが自分を欺く為に笑うのなら僕は誰かを安心させる為に…笑って助けられるヒーローになってみます!」

 

「っ!…………そうか…」

 

 そう言ったオールマイトは扉を閉め行ってしまった。

 

 

=====

 

 少年に酷なことを言ってしまったが、半端に夢を追わして死んでしまうのであればこの選択は間違っていないと思ったが……。『……ヒーローになってみます!』か、ただの中学生かと思ったが思っていたよりガッツな返答が帰ってきたな……もしかしたらな…とりあえず今はこいつを……………?

 

 スカッスカッとポケットの中に入れていた敵の入ったペットボトルを掴もうとしても何もないただの空虚を掠めていく手に違和感と頬をなぞる冷や汗に私はどんどん不安になり始める。

 

 ドカンッ!!!!

 

「まさか……!」

 

 

=====

 

 

〜〜数分前〜〜

 

「………はぁ…」

 

 ちっ!妙にムカついてくる…それもこれも全部デクと項羽のせいだ!あいつらがバカみたいなこと言わなきゃこんな気まずい気分じゃねーのによ!はぁーダメだ…ジュース。

 

「お、勝己じゃん何したんだー」

 

「ん?おお、お前らか、んだよ?」

 

 自販機で金額ピッタリに買ってやったお気に入りの炭酸ジュースを手に持ちながら首だけ後ろを向かせ前を歩きながらそう言うと後ろから声をかけてきた指長と田中は俺についてきた。

 

「いや別にいたから声掛けただけ。そういやいつもの二人はどうした?一緒じゃねーの?」

 

「いつも俺たちが一緒だと思うなよ気色わりーな…」

 

「…ん?どうした元気なくね?なんかあった?」

 

「あ"?………あーまたバカ供(自分も)がまたバカなこと言いだした」

 

「へーなんて?」

 

『ふっ愚問だな先生そんなの単純ですよ……俺の頭が悪いからだ!』

 

『実は…僕も入試の方が面白いかと……』

 

 ………ボンッ!!

 いきなり掌に乗せていた缶ジュースを俺はは爆破し消し炭にした。

 

「うおっ!何だよいきなり!」

 

「うるせぇ!!あいつら(自分も)がバカなこと言ったの(自分も)思い出したんだよ!!おい!お前らこの話は終わりだ!二度とすんな!」

 

 爆破した手を振り爆破で出てきた煙を振り払いながら俺は振り向いた。

 

「おい何!そんなびびってんだぶっ殺すぞ!!」

 

 後ろを振り向くと二人が異様に驚いている?……いや違ぇ顔だこりゃ!

 

「「おい!勝己うしろ!!」

 

 こいつらが叫ぶより早く振り向き後方を爆破させたが時すでに遅く水のような物体が俺の横を過ぎたと思ったら次の瞬間俺の体は逃げる事は叶わずヘドロらしきドロドロの液体に取り込まれていた。

 

「おい!てめぇーら逃げろ!ヒーロー呼んでこい!!」

 

「でも勝己!おめーはどうすんだよ!」

 

「いいから!早く行け!!」

 

 未だ取り込まれ続けている俺がそう叫ぶと二人が少し辛そうな顔したがすぐさま走り出し周りの商店街にいる奴らに敵がいることを知らせながら避難誘導と通報をはじめるのが見えた。

 

「ちっ!なんで逃すんだよせっかく殺してやろーと思ったのによ!」

 

「ざっけんな!死ね!!クソ雑魚敵!!」

 

「はっ!いつまでそんな口叩けていられるか見物だな!いいか!あとお前の体はせいぜいあと1分で俺の支配下になるんだから観念してさっさと取り込ませろ!」

 

「そんな雑魚みたいなセリフ吐いてんだからお前は雑魚敵なんだよ!」

 

「っ!うるせぇな黙れ!」

 

 そう言ってクソ敵は俺の鼻と口にヘドロを流し込むみてぇに詰めてきた…やべぇ息が…。

 

「やっぱし折寺中の爆豪でもこうなっちまうと可愛いもんだな…ああそうだ、さっきも緑谷を乗っ取ってやろうと思ったんだがよ…あいつ必死に抵抗してきやがるから、あいつに捕まっちまったよ。まぁ…緑谷のおかげで俺は逃げれたんだけどなぁ」

 

 んだと?デクが逃がしただぁ?あの野郎またなんかやったのか!あとでぶっ殺してやる!!

 

「おい聞いてんのかよ?」

 

 こいつをぶっ殺した後でなぁ!!!

 

「ふん!お"お"おオオオオっっっ!!!」

 

「あ?なんだよ、まだ抵抗すんのかよ言っとくが俺にはお前の爆破は効かねぇぞ」

 

 …確かに普通に暴れるのは効いてねぇな。仕方がねぇ…悪いな商店街の奴らあと直してやるし、店番でもなんでもしてやるから……暴れんぞ。

 

BOOOOOM!!

 

「おい!暴れんなって!!なんのつもりだ!」

 

「ほがほがんがー!(こうすりゃヒーローが来んだろーが!)」

 

「あ!なんて!?」

 

「おい!こっちか!?」

 

「な、もう来やがったか!」

 

 今度は俺が激しく抵抗を始めると敵は思った以上の力に焦り始めてがその影響で文房具屋の看板が壊れちまったすまん後で直す。抵抗を続けていたらあいつらが通報したのか数名のヒーローが飛んで来てすぐさま近隣の避難誘導や商店街被害を抑えていた。

 

「おい!爆豪!大丈夫か!?」

 

「ほがほんが!へふでおろ!ほんがほふひふりでふふっんでんんよ!!(なめんな!デステゴロ!こんな奴ひとりでぶっ殺してやんよ!!)」

 

「何言ってんのかわからんが大丈夫そうだな!だが悪い、俺たちの中にそいつを対処できる奴がいねぇ!誰かが来るまで耐えていてくれ!今度、焼肉奢ってやるからそれで勘弁してくれ!いけるか!?」

 

「ほふりまえだ!(当たり前だ!)」

 

「何くちゃくちゃくしゃっべてんだよ!殺すぞ!」

 

「ほへるかよっ!(させるかよっ!)」

 

 一通り住民を離れさせたデステゴロのヤローにクソヘドロが俺の手を使って爆破を食らわせようとするが無理やり狙いを変える。

 

 稼げ…時間を稼いであいつが来るまで耐え…。

 

 

 

「な!バカ待て!緑谷!」

 

 デク!!?

 

 

 

=====

 

 

 

「なんであんな事言ってしまったんだよ僕のバカ…オールマイトだぞプロのトップが言っている事だ、間違いじゃない客観的に見ても無個性がヒーローやるなんてほとんどの人が無理だと言うのに……でも…

憧れちゃったからな……」

 

 僕は帰り道をトボトボ歩きながら先程オールマイトに言ったことを少し後悔していた…。

 オールマイトが言ってくれたのは客観的に見て何も間違っちゃいないしそれに僕を危険から遠ざけるためだ。それなのに僕はオールマイトに自分勝手で酷いことを言ってしまったかな…。メッセで謝罪でもしとかなきゃ…。

 

BOOOOOM!!

 

「ん?かっちゃん……?」

 

 今のはかっちゃんの爆破音だ間違いない…ということは個性を使わなければいけない程の敵と戦っているのか!?助けに行かないと!

 僕は爆発音がする方へ全速力で走り出し人が集まっている場所へ着き後ろから状況を確認し驚愕した。

 

「な!なんであいつが!」

 

 どういうことだ…!あいつは確かオールマイトが捕まえたはず。まさか落とした!だとしたら…。

 

「…僕のせい……」

 

 

「なぁあの敵さっきオールマイトが追いかけていた奴じゃね?」

 

「オールマイト!?うそ!来てんの!?」

 

「じゃあオールマイトは何してんだ!!?」

 

「…………!」

 

 周りの人達の声が僕にグサグサと刺さってくる。

 僕のせいだ…彼は動けない!あいつは掴めない!有利な個性の…こうちゃんがいれば…。そう思い僕はケータイでこうちゃんの電話番号を押した。

 …でも押した瞬間顔を上げるとかっちゃんが苦しそうな顔でこちらに助けを求めている様な顔で僕と目があった。

 

 気付いたら僕の体はケータイを放り投げ、何の考えもないのに捕まっているかっちゃんの方へと走っていた。

 

「な!バカ待て!緑谷!!」

 

 デステゴロさんが止まる様に叫ぶが僕の足は止まらない。やばいヘドロがこっち向いた!どうしよう!何も考えがない!こういう時は……!シンリンカムイ!!

 

「せい!!」

 

 僕は学校にいつも持っていく教科書や体操服、武器が入っているバックをヘドロの目めがけて投げた。狙い通り目辺りにあたりヘドロが怯んだ隙にかっちゃんの口元にあったヘドロを払いのけた。

 

「かっちゃん!!!」

 

「馬鹿野郎!なんで出てきた!?」

 

「ごめん足が勝手に…考えもない!でも君が…助けて欲しい顔してたから…!!」

 

「……また…お前はそれかよ!少しは考えてから助けに来いや!!

それにこのクソヘドロ逃したのお前だってなー!何してんだテメー!」

 

「う!そのことは本当ごめん…でもオールマイトがいたからつい…」

 

「な、オールマイトおったんか!サインは!ずりぃぞデク!」

 

「ふっふっふ、かっちゃんも惜しいなぁ僕たち待ったらもしかしたら貰えたかもしれないのにさ(笑)」

 

「その笑い方止めろや!クソデク!ぶっ殺すぞ!!」

 

「何しゃっべてんだよ!舐めてんのか俺を!後もう少しなんだから邪魔すんな!!」

 

 ヘドロを掻き分けながら僕とかっちゃんは、その場の雰囲気が違う

なんでもないようないつもの会話をしていたが怯みが収まったヘドロが僕に向けて爆破を繰り出してきたが…その前に見慣れた黒い靄が僕たちとヘドロの腕の間に現れた。

 

「出久、勝己、何お前ら二人で帰ってんだよ世界最強は置いてきぼりか?」

 

「「こうちゃん!!(やっと来たか!!)」

 

「こいつ、潰して早く帰んぞ」

 

「くそ!項羽まで来やがったか!こうなったらう逃げるんだよーん!」

 

 ヘドロがなんとも、独特なセリフを吐き勝己を手放し逃げようとしたが奴が逃げる先には誰もが安心する。奴にとっては絶望の塊でしかない平和の象徴がいた。

 

「情けない……!君を諭しておいて…己が実践しないなんて!!!」

 

「やっべ!」

 

 ヘドロがまた別の方向に逃げようとするが、時すでに遅くオールマイトは拳を天高く構え、こうちゃんは僕たちの腕を掴み吹き飛ばされないようにした。

 

「プロはいつだって命懸け!!!!!!」

 

「DETROIT… SMASH!!!」

 

 街に豪風が吹き上がりしばらくした後に雨が降りだした。右手一本だけで天候が変わった事により見物人達から歓声がひびいた。

 

「…凄えな俺でもできるかわかんねぇな…おい見てみろよお前ら……おい?ははっ二人とも気絶してやら〜」

 

 




ダルモン「なんか二話に掛けて私の出番がない気がする…」

主「次回絡ませるんで許してください…」



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出会う!③

主「は〜今日で休みも終わりか〜〜」

二日後…主「部活疲れたー寝る!」

さらに三日後… 主「休みだー!ゲームだー!いええええええ!!!」

そして今日…主「やべ!投稿忘れてた!!」



12/22再編済み


 あの後、目が覚めた僕たちは警察からの事情聴取を受けている間、こうちゃんは商店街を直し、オールマイトは記者から取材を受け、僕たち三人は道路が夕焼けになる頃帰り道を歩いていたが三人の間に流れる空気は正直言ってあまりよろしくはなかった。

 

「……さて出久、今回もお前のヒーロー精神で勝己を助けに行ったわけだが助けに行ったが勇気のある行動であり悪いことではないが無策で突っ込んでいくのは勇気じゃない只の蛮勇だ。何回も言っているだろう。幸いお前は怪我をしなかったからいいが最悪お前は勝己の爆破で死んでいたかもしれねぇ。お前は仲間に仲間を殺させる気か?」

 

「っ!!」

 

 最後の言葉はこうちゃんにも思う所があったのだろう悲しそうな顔をした。

 

「うん…ごめんこうちゃん…」

 

「謝るなら勝己にしろ、あとはまぁ言わなくてもお前ならわかるだろ」

 

「二度と考えなしで突っ込んで来んな」

 

「うん…二度としないよ……」

 

 そう言って中指立てながら忠告してくるかっちゃんに申し訳なく思っていると少し三人の間に沈黙が流れ始めるがそんな空気を感じ取ったのか筋肉のおっさんが気まずそうにおずおずと曲がり角から出てきた。

 

「HAHAHA……お取り込み中だったかな…」

 

「「「オールマイト!!」」」

 

 自分の名前を驚きながら言われたの(しかもハモリ)で言われたので大丈夫と思ったのかオールマイトが物凄く顔が明るくなった。

 

「私が来た!!」

 

「オールマイト!?何故ここに…さっきまで取材陣に…」

 

「HAHAHAHA!抜けるくらいワケないさ!何故なら私はオールマイゲボォ!!!」

 

「わっーーー!!」

 

「「な!?」」

 

「萎んだ!!?」

 

 限界が来たのかオールマイトが突然吐血しながら個性を解いたため真の姿であるトゥルーフォームが露わになってしまいそれを初めて見た二人は心底驚いた顔になってかっちゃんに至っては正直な疑問が出ていた。

 

 まずいまずいどうしよう!二人にオールマイトの秘密を言っていない!いや言える秘密じゃ無いけれども、見られてしまったー!

 どうして出てきたんですかオールマイト!!

 僕がどうすると言う動揺した目でオールマイトを見ると。

 

「やべっ時間考えてなかった」

 

 オールマイトッーーー!!!!

 

「あ!?時間だぁ?テメェまさか敵か!?」

 

「NOーー!!ストップだ少年!私はオール「嘘つけ!!」っうぐ」

 

 つい先程敵に襲われたこともあった為かいつもより警戒心が高いため既に戦闘態勢のかっちゃんにどうしようかと物怖じするオールマイトをずっーと見ていたこうちゃんがかっちゃんを制止する様に腕を出す。

 

「落ち着け勝己、この骸骨はオールマイトだ」

 

「がいこつ!!」

 

オールマイトがこうちゃんの言葉にショックを受けまた吐血した。気にしていたのか…。

 でもそんなオールマイトを無視して二人は続けるがかっちゃんは納得していない様子だ。

 

「はっ!!?何言ってんだ!?この骸骨がオールマイトなわけねーだろ!!」

 

「俺の人を見る目が信用ならねぇのか?今見て気づいたよ。こいつから出ているのはお前らの大好きなオールマイトの気配と酷似している。それに……なんか知ってるよな?出久」

 

 じろり、そんな擬音がつきそうな程に僕を見るこうちゃんに思わずびくりと驚いてしまった。もう隠さそうにもないな。

 

「……はぁ…すいませんオールマイト、もう全部言っていいですか?」

 

「なんかバレてるみたいだから言っていいよ……」

 

「………なんか国家機密の予感してきたから場所移そうぜ…ついでにダルモンも呼ぶぞ」

 

「うんお願い」

 

「はぁ…意味わからんが早くしろ」

 

「ちょっとダルモンってだr「いくぞー」ちょっと!?」

 

 オールマイトの有無を言わせずにこうちゃんが万象儀を展開し僕たち四人全員を覆った。しばらくしたら視界が晴れ目の前には何時ものほら穴の前へと来ていた。突然、違う場所にでたことによりオールマイトは驚いていたが、こうちゃんの個性だと説明するとすぐに納得した。

 暫くすると僕たち三人の他にこうちゃんが連れてきた腕に抱きついているマリーちゃんも来た。

 

「やっほマリーちゃん。ごめんね突然」

 

「やっほ…出久、勝己も…」

 

「…………よぉ」

 

「うん…それで項羽何するの…?」

 

「それは今からこの二人が話す」

 

「………骸骨」

 

「…また骸骨か…はじめましてマリー…?合ってる?「…合ってるよ」

マリー少女!私はオールマイトさ!!突然だがこれからみんなに私の身の上話を始めようと思うがいいかな?」

 

 マリーちゃんに一通りの説明をした後にオールマイトは僕に話した自分の今の状態と僕と会話した内容を話し。こうちゃんがオールマイトに疑問をぶつけた。

 

「……なるほど今のあんたの状態は分かったが…なんで俺たちのところへ来た?」

 

「そう!本題はそれさ!そこの緑の少年!実はね、礼と訂正そして提案をしに来たんだ!!」

 

「へ?ぼく?」

 

 ただただ率直に間抜けな反応をしながら自分に指を指す僕に同意するかの如く重ねて指をさすオールマイト。

 

「そう君だよ!君の身の上を聞いていなかったら私はただの偽筋になるところだった!!ありがとう!!」

 

「偽筋……いえ、そもそもさっきの事件は僕が悪いんです。仕事の邪魔して“無個性”なのに生意気なこと言って……」

 

「そうさ!!あの場の誰でも無い。無個性の君だったからこそ!私は動かされた!!」

 

 気がつくと僕はあの頃と同じように胸を抑えていた。

 

「多くのトップヒーローは学生時から逸話を残している。そして彼らの多くが話をこう結ぶ!!『考えるより先に体が動いていた』と」

 

 僕は震えながらあの時に二人に励まされた情景と母の言葉を思い出していた。

 

『ごめんねぇ出久…ごめんね……!』

 

「君も、そうだったんだろう!?」

 

「…………はい…」

 

 僕は俯きながら静めようと抑えている胸の早鐘を涙と共にこらえていた。

 

 違うんだ母さん…あの時僕が言って欲しかったのは最初に僕の親友が言ってくれたんだ。でも今度は…

 

『おまえは………ヒーローになれる!!』

 

「一度言われていても何度でも言おう!君は…ヒーローになれる」

 

 そして今度は最も憧れたヒーローに言ってもらえた…。

 無個性の人生で二回も言ってもらえた…それも尊敬している親友達と最も憧れたヒーローに…こんな事が…こんな嬉しいことがあっていいのか?これ以上の……。

 

「そして君には私の“力”を受け取るに値する」

 

「「「「へ?((は?))(え?)」」」」

 

 いきなりの展開に思わず僕たちは四人とも素っ頓狂な声を上げる。

 

「HAHAHAHAなんて顔をしてるんだ!?提案だよ!!本番はここからさ!つまりだな…私の“力”を君が受け取ってみないかという話さ!!」

 

 チカラヲ……?何を言ってるんだオールマイト…。

 吐血しながら僕に勢いよく指を向けてくるオールマイトに僕は疑問に思いそんな僕たちの言葉を代弁してくれるかのようにこうちゃんが質問してくれた。

 

「まてまて!さっきまで感動の雰囲気だったろ。どう言うことだ受け取るって!」

 

 こうちゃんの言葉に僕たち三人はうんうんと頷く。

 

「私の個性の話だ少年少女」

 

「「「「?(!)」」」」

 

 オールマイトの言葉の意味が分からず僕たち三人は首を傾げているのに何か思いついた顔のこうちゃんはオールマイトの言葉をワクワクしながら待っていた。

 

「写真週刊誌には幾度も怪力だのブーストだの書かれインタービューでは常に爆笑ジョークで茶を濁してきた」

 

「いや、微笑だよな」

 

 手厳しいなかっちゃん……。

 

「SHUTUP!平和の象徴オールマイトはナチュラルボーンヒーローでなければならないからね」

 

「そして私の個性は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」

 

「「引き継がれてきたもの!!?」」

 

「………ほう」

 

 僕とかっちゃんは驚き混乱しているがこうちゃんは落ち着いているけど明らかに興味ありげに呟いている。マリーちゃんはいつも通り無表情で何考えているか分かんない。

 

「そう次は君の番ということさ」

 

「ちょ…!ちょっと待ってください!オールマイトの個性は確かに世界七不思議の一つとして喧々囂々と議論されてきましたけどネットじゃ見ない日はないくらいにありましたけど、個性を引き継ぐって言うのは意味が分からないというか…それにそんな話ブツブツブツブツ」

 

「うるせぇぞデク!!まだ話の途中だ!遮んな!!」

 

「…帰ってきて出久」

 

「はっ!ごめんなさいオールマイト夢中になって…」

 

「ありがとう二人共、君はとりあえず否定から入るな!!ナンセンス!!」

 

「ナ……!」

 

「事実だろ」

 

 僕がオールマイトの個性についてブツブツ夢中になっているとかっちゃんに怒鳴られてしまいオールマイトに指摘され少しショックを受けるがそんなことを無視してオールマイトは続ける。

 

「私は隠し事は多いが嘘はつかん!」

 

「私の個性は個性を譲渡し、そして力を培い次へと託す個性!冠された名は『ワン・フォー・オール』」

 

「ワン・フォー…オール」

 

「もともと後継は探していたのだがあの時、無個性で只のヒーロー好きの君はあの場の誰よりもヒーローだった!」

 

「まぁしかし君次第だけどさ!どうする?」

 

 ……あるか…ないだろ憧れの人にここまで言ってもらえたんだ。僕たちに大事な秘密まで話して…あるわけない!断る理由なんて!!

 

「こうちゃん!!かっちゃん!!…僕は君達に負けてばかりだ。だから僕は…勝ちに行くよ!!」

 

 だからこれはっ!君たちには絶対に言わなきゃいけない事なんだ。

 

「クソデクが……負けるかよテメェがどんな個性を持とうが俺は負けねぇ!二度とな!!」

 

 手に火花を散らしながら吠えるように宣言するかっちゃんを見て体が少しぶるっとした。

 

「同感だが残念ながらお前らは俺には勝てねぇよ。世界最強だからな」

 

 手を招きながら挑発してくるこうちゃんは大胆不敵に笑っていた。

 

「うん勝つよ!……お願いしますオールマイト!」

 

「青春だな、そうくると思ったぜ」

 

 これが僕の二回目のオリジンだ。




なんかよくある『俺たちの冒険はまだ始まったばかりだ!』みたいな終わり方になりましたが文才のない主にはこれで限界です…許して♡

項羽「きめぇ」



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出会う④

遅れてしまった言い訳するとまぁ夏をエンジョイしてたらいく先々で不運が起こり毎日の疲れに風邪になったりといろんなことがありました。



12/30再編済み


〜〜二日後〜〜

 

 あのあと何やかんやあって、その後オールマイト曰く「私がこの個性継ぐ前より立派な体だなどうなってんだ10代!」とすぐに出久がワン・フォー・オールを受け継ぐことになりオールマイトが髪の毛抜いて食えと言ったり出久がオールマイトの助言通りにけつの穴引き締めて初めての個性使ったら腕が粉砕骨折したりといろんなハプニングがあり唯一わかったことはオールマイトが教えるのがド素人ということだけだった。

 そして五年前に負った傷とやらは一応万象儀で直してみたが内臓と傷跡が完全に治ったたが個性は以前より長く扱えるようになっただけだった。

 

 

 

BOOOOM!!!!

 

「おいおいどうしたデク!ビビってんじゃーねぞ!!」

 

「待って待って!慣れてないんだってまだ!」

 

「知るか!ぶっ潰す!!」

 

 ……あぁそうだ今、個性を慣らすために出久と勝己が手合わせしてるんだが、やっぱり始めて個性が出た人間に技見せろって言われても無理な話で出久もそれに当てはまり現在勝己から逃げるだけで個性全然使えていない状態だ。

 

「ちょっといいかな黒籍少年」

 

「ん?どうした新メンバー」

 

 ついでに今日いるのはいつものほら穴の前で俺と腕にくっついてるダルモンとその隣には新メンバーであるガリガリフォームのオールマイトが座っている。

 

「新?いやさ、あの二人っていつもああなの?」

 

「と言うと?」

 

「いや…」

 

 オールマイトが一拍おいて、少し慣れてきたのか勝己に向けて拳を打ったが軽々避けられたついでに腹に爆破を受け悶えている出久を見た。

 

 わぁかっちゃん容赦ない。

 

 

「少々、過激過ぎないかと思ってな…止めなくていいのかい?」

 

「大丈夫だ。というかいつもより生易しい方」

 

「そうなのか?…なんだか私は思い出したくない古い過去が見える気がするんだが……」ガクガクガク

 

 オールマイトの足が小刻みに笑い出し始めた。そんなに思い出したくない記憶なのか……あとで見よ。

 

「ところで君はしないのかい?」

 

 いきなり元の状態に戻ったオールマイトがそう聞いてきた。

 君はしないのかい?か…そうだな……じゃあ今日はちょっとこの男に頼み事してみるか。

 

「そうだないつもなら俺が二人を相手に手合わせするんだが今日は出久がまだ個性に慣れていないからな…よっこら世界最強っと」

 

「二人を?一対一ではなく?」

 

「そうしないと相手にならないんだよ…そう言うことでオールマイト。一つ頼んでくれるか?」

 

 俺が立ち上がってオールマイトと向かい合わせになる形で立った。

 ダルモンは俺の言いたい事が分かったのか少し心配そうな顔をしている。

 

「頼みたい事?」

 

「あぁ俺と手合わせしてくれ平和の象徴」

 

 

=====

 

 

「はぁ…はぁ…おい逃げんじゃねーよデク…!手合わせの意味ねーじゃねーか…」

 

「はぁ…かっちゃん慈悲がないんだよ慈悲がまだ慣れてないのにいきなり戦えるわけないだろ…」

 

「アホか!慣れるためにやってんだろうがクソが大体なんで部分的に発動させようとすんだよ全体にー」

 

「はい勝己そこまでー。後は自分で気づかせてやんな、それにこれからタイトルマッチだ」

 

 僕の体力が切れたことにより一度手合わせが終わりかっちゃんに文句を言われているとほら穴の前で見ていた三人がこっちに近づきこうちゃんがまた意味のわからないことを言い始めた。

 

「は?タイトルマッチ?誰と」

 

「平和の象徴」

 

「「はぁ!?」」

 

 またこうちゃんがまた意味わかんない事言い出し僕とかっちゃんの声が重なる。

 

「ちょっ!こうちゃんそれ本気で言ってんの!あのっ…!あれだよ!オールマイトだよ!!」

 

「落ち着いて出久、項羽は本気だよ」

 

「マリーちゃん!でっでもオールマイトは!」

 

「私も大丈夫だよ緑谷少年。それにタイトルマッチとは言っても5分間の手合わせだけさ決して無理はしないよ」

 

「そう言うことだ分かったなら離れてろ。あと五分経ったら教えてくれ」

 

「おい!ちょっと待て俺はまだ何もー」

 

「ほら行くよ二人とも」

 

「はっ!?ちょっ!離せやマリー!!」

 

「そうだよ何で二人が!」

 

 かっちゃんがまだ言いたそうにしているがマリーちゃんが僕とかっちゃんの手首を掴んでほら穴の前まで頑張って引っ張ていこうとするが僕とかっちゃんがまだ納得いかないと抵抗するので一歩も前に進まない。

 しばらく引っ張っていたけどとうとう疲れちゃったのか手首を離し息をきらして額に汗を浮かべていた。

 

「……そんなにぐちぐち言っているけど…見たくないの?項羽が個性使って戦うところ…」

 

「おら早くしろデク!」

 

「かっちゃん!?」

 

 マリーちゃんが仕方がないと言わんばかりの顔で言えばかっちゃんはすでにほら穴までズケズケと歩いておりその掌返しの早さに僕は驚いてしまった。

 

「………チョロ豪」

 

「なんか言ったかマリー!」

 

「……ナンデモナイヨー」

 

「カタコトじゃねーか!クソが!!」

 

「女の子に暴言はダメだよ、かっちゃん」

 

「いつまでくっちゃべってんだ!戦いだって言ってんだろーが!」

 

 僕たちがグダグダしやっべっているとこうちゃんが若干キレた感じて怒鳴ってきたので僕たちは黙って観戦することにしよう。

 

 

 

=====

 

 

 

「…はぁすまねぇオールマイト長くなった」

 

「HAHAいやいいんだよ、仲がいいのはいい事だよ!」

 

 そう言うとオールマイトの体は一瞬で大きく膨れ上がりさっきまでの骸骨のような体とは真逆に自分達とは画風が違う筋骨隆々なマッチョメンへと変身した。

 

「さぁ……いつでもかかって来なさいよ!有精卵!」

 

「……やっぱいいねぇ」

 

 拳を握り戦う構えをとりながら口はいつも通り笑っているのにその影の深い目から見える淡く光る瞳は俺の体を確かに捉えていた。

 

 そんな姿に少し身震いを起こしながらも軽く手を広げ万象儀を広げていく、万象儀を俺の体全身に覆わせる。

 

(相手は生きとし生きる伝説“平和の象徴”果たして今の俺との差はどのくらいって聞かれたらはっきり言って不確定要素が多すぎる。けど舐めてかかったら確実にやられるのは確かだ…)

 

(……初めて彼を見たとき直感が反応してしまった。まだ15の子供がトップランカーのプロヒーロー達より強いと確信してしまった…私も本気で向かわなければもしかすると……)

 

 準備を終えた俺とオールマイトはお互い出方を伺いながら構える。

 

 

 

 

(先に仕掛けてヤラぁ)

 

 

 

 

…………ッドン!!!!!

 

 

 

 俺は足に力を込め足元を踏み割れん程の勢いで踏み込みひとっ飛びでオールマイトとの距離を詰めた。このまま鳩尾殴ろうとしたのにこの男は既に反応しておりお互いの拳を合わせ振りかざしたまま固まった。

 

「やっぱ反応いいなオールマイト」

 

「少年……この若さでどうやってここまで強くなったんだ」

 

「……秘密だな」

 

 たとえオールマイトでも出会ってまだ日の浅いのに俺の過去やあいつらの事を話す気にはなれない。

 そのまま左腕を振り被せばオールマイトもそれに合わせて左腕を振り被せてくるそして今度はもっと早く拳を振ればオールマイトもそれに合わせ激しい乱打戦になりラッシュ比べが始まる。

 何百発打ったか分からない程の速さ比べは俺がオールマイトの左手首を掴み腹のど真ん中を蹴ろうとしたが捕まっていない右腕で防がれたが腕を無理やり蹴り飛ばす形で後方に吹き飛ばすことで終わってしまった。

 

「ラッシュ比べは終わりかな!」

 

 そう言いながらも顔の前で腕をクロスさせ俺の元に詰め寄り技を繰り出そうとしている。

 

CAROLINA(カロライナ)……」

 

 まじか……!

 

SMASH(スマッシュ)ッ!!」

 

 俺の頭を狙ってきたクロスチョップを俺は両腕を重ねるように防ぐが万象儀を纏っていて腕が痺れたぞ。どんだけ強いんだ!

 

「まだまだ!!」

 

 そのままオールマイトは痩せたという体重255kgという体で俺の胴体に腕を回しタックルしてきた。

 一瞬胃の中にある物が喉元まで出そうになる感覚に陥るがなんとか堪え万象儀で俺の体を分解し粒子状にして拘束を解く。

 

「消えた!?」

 

「上だよ…」

 

 俺の姿が消え明らかに動揺しながら辺りを見回してるオールマイトの頭上に体を戻した俺は右足を大きく振り上げかかと落としをオールマイトの脳天に食らわせるがオールマイトはかかと落としを食らった体勢で俺の右足を掴み体を一回転させながらまるでフリフビーを投げるかのように放り投げる。

 

 すぐさま万象儀で空気を固め壁を作り威力を殺しながら着地する。ついた瞬間に走りだそとするが首元に走った痛みに思わず首に触る。触った手を見てみれば血が付いていた。しかし俺は一回も首を切られるような攻撃は食らっていない。

 

(こんなことできる奴は……)

 

 

==============

 

 

 時間は少し戻り…………。

 

…………ッドン!!!!!

 

 そんな耳鳴りの続くような音が鳴り響いたと思ったら二人の姿が一瞬にして消えさり辺り一面に衝撃波と暴風が発生し近くにある木々は今にも折れそうなほどになびき小粒の石は衝撃波により吹き飛び僕とかっちゃんはマリーちゃんを背中で庇いながら吹き飛ばされないように地面に伏せ耐えるしか無かった。

 その間にも自分たちの目の前では拳を交わせる衝撃音とそれに続く暴風が轟いていた。

 

「…ッ!マリー、ちゃん大丈夫!?」

 

「…二人のお陰でなんとかでも、こんなに激しいのは…初めて見 る…!」

 

「俺らもだわ!クソが!あいつら俺らがいる事忘れてないだろうな!この調子で行ったらこの辺り山、全部吹き飛ぶぞ!!」

 

「確かにそうなんだけど!……やばいんだけど!止めようにもあのそこに行けない!風が強すぎる!」

 

「何か!二人の注意を引くものを!」

 

「出久…あと何分……?」

 

「あともう1分もないどれだけラッシュしているんだあの二人!」

 

「…だったら時間的にも止めないと」

 

「そうだけど……」

 

「どうやんだよ!!」

 

 あと残り40秒もないけど二人を止める方法がわかんない。どうすれば……どうすればあの二人を止められる!?

 

「……こうやって…」

 

「へ?」

 

「あ?」

 

 突然マリーちゃんが二人を止められる方法を知っているような口ぶりで自分の首に爪を立てそれを一気に首を激しく掻きはじめた。

 

「なっ!?なにやってんだマリー!!」

 

「血ッ!血出てるよ!!」

 

 当然強く掻けば血は出るし痛いものだがマリーちゃんは一向に止める気配はなく僕とかっちゃんが急いで腕を掴み取り押さえた。

 

「なにやってんだテメーわよ!デク!早よ止血!包帯!」

 

「わかってるよ!!」

 

 血を流しすぎたせいかマリーちゃんの顔が徐々に白くなり息遣いが荒くなってきた。急いで自分のバックから救命道具一式を取り出すがマリーちゃんの隣に現れた人物に気をとられ。同時に安堵した。

 

「……すまないダルモン傷つけて」

 

「ハァ… ハァ…大丈夫だよ…楽しかった?」

 

「……あぁ」

 

 そう言ってこうちゃんはマリーちゃんの首に手を添え少して治療を始めた少しすると手を離しマリーちゃんの頰に傷をつけて抱きしめた。

 

「………すまん」

 

「………大丈夫…大丈夫だよ」

 

 マリーちゃんの体を抱きしめながら謝罪の言葉を口にするこうちゃんをマリーちゃんは子供の過ちを許す母親のように抱きしめ返した。

 

 

 傷が塞がったことで気の抜けた僕とかっちゃんは突然のラブシーンで気が抜けてしまい二人して地面にへたり込んだ。

 そこに未だにムキムキのオールマイトが顔を赤らめながら近づいてきた。

 

「ねぇ、あの二人ってそういうことなの?」

 

「知るかいつもの状態見てんだろ?あんなんだよクソがッ!」

 

「はは…しばらく放っておきましょうか…」

 

「10代っていいな……」

 

 驚かされたことで若干キレ気味のかっちゃんから思わずいつもの悪口が飛び出す。二人共体は10代でも中身は最低でも多分30は軽く超えてるんじゃあ…

 

「…なんか言った出久?」

 

「ッいえ何も!」

 

 いつのまにかいつも通りにこうちゃんの腕に抱きついてそばに立っていたマリーちゃんに思わず反射的に答えてしまった。

 

「ふ、二人共もう大丈夫なの?」

 

「あぁ心配かけた」

 

「……ごめん」

 

「大丈夫だよ…僕はね」

 

 そう言って体育座りのような形でマリーちゃんを睨みつけている

かっちゃんに目を向けた。

 

「……おいマリーやるなとは言わない咎めもしねぇ…ただ……やるんならそう言えや(信頼しろ)……」

 

 久々に見るすごく真剣な表情で嘆くかっちゃんの顔は酷く悲しそうに見えた。

 

「………二人とも本当にごめん…」

 

「分かりゃいいんだ分かりゃ」

 

 仲間思いだなぁかっちゃんも。

 

「…かっちゃんが泣きそうな顔なってる」

 

「泣くわけねぇだろぶっ殺すぞデク!」

 

「ぶはっ!確かに今一瞬涙目なってたよな(笑)!」

 

「死ねぇ!!!」BOOOM!!

 

「危ね!おまっなんも言えなくて武力行使かこの野郎!」

 

「黙って死に晒せ!!!」BOOOOOM!!!!

 

「…………フフ」

 

 かっちゃんをいじっていたらまたいつも通りの追いかけっこが始まって僕ららしい騒がしい空気が戻った。

 

「というかお前どうやって個性制御すんの?」

 

 未だ激怒しながら迫るかっちゃんに追いかけられながら隣で一緒に逃げているこうちゃんが聞いてきた。

 

「うーーーん。ぶっちゃけ二人の戦い見てたんだけど早くてあんまり見えなかったし自分たちのことで結構いっぱいいっぱいだったからなー」

 

「じゃあもうオールマイトに聞くか。オールマイトッ!!」

 

「……ん?なんだい!」

 

 いつのまにかトゥルーフォームに戻っていたオールマイトは近場にあった岩に腰掛けながらコーラを飲んでいた。というかこの状態で聞くの?

 

「個性制御するためにどんな訓練したー!?」

 

「えーーーっと!」

 

 そこまで言いかけたオールマイトの顔が急に青ざめ始め心なしか全身が震えているように見えてきた。

 

「ひ、…ひたすらゲロ吐いた……」

 

 持っていたコーラを震えだけでこぼしながら答えたオールマイトに何を思い出したんだと恐怖する僕とは逆に何か良からぬことを考えてそうな悪い笑みをを隣にいるこうちゃんは浮かべた。

 

「ひたすらゲロ吐けってさ。行ってこい!」

 

 そう言いながらまるで僕を囮にするかのように足蹴りしたこうちゃんの顔をきっっと僕は忘れないだろう…。そう思いながら後ろから響いてくる怒号と爆破音にどうしよかと思案しながら僕のヒーローになるための新たな一歩が始まった。

 

 

 




やっぱりあれですね戦闘描写難しいですね。
あと今回初めてルビとか使ってみました。


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雄英の入り口

なんかペンが進んだ!




12/30再編済み


 ====入試当日====

 

「「門でっけーーー!!」」

 

「騒ぐな雑魚モブに見えんぞ」

 

 現在俺たちは例年倍率300を超える国内最難関雄英高校ヒーロー科の入試試験に足を踏み込んでいた。

 ダルモンは同じく雄英の経営科の試験を既に受けており「いつか三人の事務所の手伝いできたらいいな」と言っていた若干泣きそうになっていたのは秘密だ!

 

 そんでもって今出久と一緒に門の大きさに驚いて写真を撮っていたらかっちゃんさんから非常に聞き捨てならないことを言われた。

 

「誰が雑魚だ世界最強だぞ俺は!」

 

「モブって言ってんだろバカ籍」

 

「元をつけろ元を」

 

「はいはい元B判定(笑)」

 

「せせら笑うなボンバーマンっ!」

 

「誰がボンバーマンだ!」

 

「合ってるだろ」

 

「ボンバーってのは爆撃機って意味だよッバカ!」

 

「みみっち!!」

 

「はいそこ二人うるさい帰らせるぞ」

 

 勝己と火花散らしていたら横から全身黒い服の小汚い男が現れなんか強制的に終わらされた。

 

「誰だこの小汚いないおっさん」

 

「本当に追い出すぞ…試験官ださっさと並べ連れはもう行ったぞ」

 

「連れ?出久ならそこに…」

 

 いや待ていつもの緑のモサモサがいない。

 辺りを見回すと近くの方で出久が茶髪の女の子にペコペコしている姿が見えた。

 

「おい勝己あれ見ろよ!出久が女子とイチャイチャしてやがんぞ!許せん!」

 

「は?…いやあれは違うだろ、あとお前それ絶対人のこと言えねぇ…」

 

「お〜い出久何したんだー」

 

「無視すんなッ!!」

 

「あ、こうちゃん。ちょっと今転びそうになってこの方に助けてもらったんだ」

 

「ブッーーこの方て大袈裟やよ」

 

「いやいや助けてもらわなかったら多分僕顔面からダイブしていたと思うから本当にありがとうございます」

 

「ええよ、転んじゃったら縁起悪いもんね。お互い頑張ろうね。じゃっー」

 

 手を挙げながら笑顔でそう言いながら去っていく彼女を見送った俺たちは手を挙げながら見送った。

 

「……いい子だな」

 

「ねー。それに彼女の個性多分すごいよ僕の体に手が触れただけで自然に宙に浮いちゃったし、きっと触れたものを操る個性か、重力を操る個性かな、だとしたらすごい個性だぞ触れられただけで相手をほとんど無効化させることができるぞ。それに浮かせられるならそれを解除させることもできるはずだそれだったら相手を落として倒すことも…いや部分的に浮かせられることも出来るのかな…あ、でも他の個性という事も考えられるし………」ブツブツブツブツブツ………。

 

「ああやっぱまた始まった」

 

「クソナード」

 

「早く起こすぞ」

 

 また出久の口元に手を添えながら超小声で相手の個性を考察(ブツブツ講座)が始まりそれを叩き起こした俺たちは筆記試験の会場である入口へと足を進める。

 

=====

 

「よっしゃーー!合格したぞーーー!!(フラグ)」

 

「速攻で旗立てんな殺すぞ」

 

「パーテェーしようぜー!(ふr×5万)」

 

「なんか急にすげー増えた気がすんぞ」

 

「こうちゃんそれ“不”がついて返ってくるよ」

 

 俺のウザ絡みにツッコミを入れてくれる勝己の陰からひょっこり顔を出した出久が俺の立てたフラグについて注意する。

 

「HAHAHA舐めるな出久、お前らとダルモンに教えてもらい全問解答できッ!見直しも完璧な世界最強に“不”がつくことはない!(フラグ)」

 

「なんでこいつこんなハイテンションなんだよ。きめぇ」

 

「知らないよ」

 

「勝己よ!今の俺はそんなこと言われても傷つかん!」

 

「どうでもいいけど早く行こ」

 

 何でこんなハイッ!なんだ?俺にも分からん!!

 筆記試験も終わりいつものヤロー三人衆で騒ぎ過ぎたせいかか周りに睨まれながら俺たちは講堂に入っていくと中には既に大勢の受験者で賑わっていた。

 

 適当な席に座るとタイミングを見計らったかのように照明が落ち前にある壇上がライトアップされステージからとんでもなくトサカ?オールバック?ごめん分かんない。とりあえずインコみたいな金髪の男が出てきた。

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ

 

ようこそー!!!

 

「「「「「!!!??」」」」」

 

((((((のった!!?))))))

 

 壇上にいる男のフリにテンション任せでめちゃくちゃ大声でノればノっているのは講堂の中でただ俺一人だけだった。

 

「ワオ!!受験番号5843くん!超元気な返事サンキューだぜ!」

 

「それでは!実技試験の内容を受験生に負けないようにサクッとプレゼンしてくぜ!YEAHHHHHHH!!!!

 

YEAHHHHHHH!!!!

 

「おい」トントン

 

 金髪インコに続いて絶叫していると隣に座っていた勝己が俺の肩を指で怖いくらいに優しく叩いてきた。

 

「ん?どしt」

 

少し黙れ

 

……はいシュン

 

「わーボイスヒーロー『プレゼントマイク』だすごいなー感激だ雄英の講師は皆プロヒーローなんだー」ブツブツ。

 

「てめェもだ」

 

……はい

 

 どうやらあまりにうるさいせいか勝己が顔に影を宿し血管が浮き出ているキレ顔で静かにいわれ俺と出久含め周りの連中も萎てしまった。今日はなんか勝己の威圧感が割り増しになっている気がする。ついでに言うと壇上にいる男は雄英の教師でプロヒーロー『プレゼントマイク』と言うらしい。

 

「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習場へ向かってくれよな!」

 

「お前ら会場どこ?」

 

「ぼくB」

 

「Aだよクソ」

 

「あーD」

 

「連番なのにみんな会場違うね」

 

同校(ダチ)同士で協力させねぇってことだろ」

 

「………てめェら潰せねぇじゃねーか」

 

 自身の受験シートを見ながら恐ろしい事を呟く勝己さん。なに?もし同じだったら妨害してくるつもりかコイツ。まぁ大丈夫だろうが。

 

「……かっちゃん怖い」

 

「まずお前俺に勝てんのか?」

 

「勝てる勝てねぇじゃねー勝つんだよ!バーカ」

 

「よし!がんばれ!」

 

「殺すッ!」

 

「ぼく挟んで喧嘩しないでよ」

 

「演習場には“仮想敵”を()()・多数に配置してありそれぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!!」

 

「各々なりの個性で仮想敵を()()()()にしポイントを稼ぐのがリスナーの目的だ!!」

 

「もちろん他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!」

 

「「………」」チラ

 

「やらねぇよ!俺をなんだと思ったんだ!!」

 

勝己(暴君)

 

「振り仮名に隠された意味を言ってみろ……」ビキビキ

 

 三人の中で最もやりそうだった要注意人物の顔をチラ見してみると出久も同じ考えだったのか二人してチラ見していたことがバレてしまいキレる勝己な思ったこと言ったら額に血管浮き上がり目が物凄い角度までつり上がるほどキレたけど声を荒げながったのは場所を考えているからなのかそれほど切れているのかは分からないけど怖ぇ。

 

「……ご質問よろしいでしょうか!?」

 

「プリントには()()の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!」

 

「我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

 

 急に前にいた堅物そうなメガネがプリント片手に勢いよく立ち上がりプレゼントマイクに向かって話し始めた。

 

「………ついでにそこの三人!!」

 

 ………ゑ?

 

「先程からギャーギャーと気が散る。物見遊山のつもりなら即刻!この場から消えたまえ!」ッギロ!

 

 緊張してカリカリしてんのか?勝己が飯食えなくてイライラしている時に他の奴らに茶化されてガチトーンのやめろぐらいの睨みなんだが…。

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「気に障ったのならすまん。許してくれ」

 

「…………ッチ。悪かったな」

 

「オーケーオーケー受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0pそいつは言わば()()()()!スーパーマリオブラザーズのドッスンみたいなもんさ!各会場に一体()()()と大暴れしているギミックよ!」

 

 プレゼントマイクが説明したところで講堂の所々でこの試験の概要ついて考察している奴が増えざわざわと声が聞こえるようになった。

 

「俺からは以上だ最期にリスナーへ我が校の“校訓”をプレゼントしよう」

 

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」

 

Plus Ultra!!(プルスウルトラ)それでは皆良い受難を!!!」

 

 プレゼントマイクがそう締めくくり講堂にいた全員の顔が引き締まっていた。出久は頰に一筋の汗を流しながらも口を綻ばせ目は輝いていた勝己は凶悪な笑みを浮かべこれから始まる試験に二人とも緊張しながらも楽しみそうな顔しながら受験生たちを誘導している係委員に従いながら歩いて行く。その前に一応聞いておくか……。

 

「なぁお前らこの試験まだなんかあるよな?」

 

「あたりめぇだろここは雄英だ、ただ単にロボぶっ壊してはい合格なんて生優しい事なんざあるわけねェ」

 

「やっぱりなんか隠しP的な物あるのかな?」

 

「おっ!やっぱ二人とも気付いてたか」

 

「どちらにせよだ。俺らならいつも通り行けば大丈夫だろ」

 

「二人とも頑張ろうね」

 

「落ちたりしたらぶっ殺してやる!」

 

「あぁ、じゃまた後で……」

 

 俺たちは誘導に従って別れ始めそれぞれの会場にむかって歩き始める。

 

 

 

 




項羽のテンションが高いのは作者の気分のせいです!
ごめんなさい!


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主人公は俺だ!!

長い間お待たせしました!
長くは語らん!しかし字数が8000を超えた!




12/30再編済み


===模擬市街地演習場D===

 

 

 

 会場に行くためのバスに乗りこれからライバルとなる受験生達とバスに揺られること約10分。

 

 とある髪の毛のツンツンした薄い金髪の少年は一部の街ほどの大きさにもなる演習場の門の前に立っていた。

 

(実技試験の内容はロボぶっ壊してポイントを稼ぐゲームのような試験だがただがむしゃらにポイントを稼ぐだけすなら誰にだってできる。

大方、俺らには知らされてない配置された偽の要救助者を救出するかピンチもしくは怪我をした受験者供を助ければ何かしらのポイントは入ると思うが無かったのらな無かったでロボ殺しまくりゃ言い話だ…)

 

 何時もの黒のタンクトップと動きやすそうな黒のスポーツズボンを身につけながらいつも通りのアップをし終わり体を温め片手で火花を散らしながらスタートの合図を待っていた。

 

 そんな彼の元にこれまた金髪の軽薄そうな印象を与える笑みを浮かべながら少年が近づいていた。

 

「おっとすまn…」

 

 誰から見てもわかりやすいほどに後ろからすれ違いざまにぶつかろうとしていた金髪の少年は確かに前を向いていたはずの彼にヒョイと身を躱され決して思ってはいないであろう言葉を途切れさせ失敗したと顔しかめながら彼をみた。

 

 金髪の少年を見る彼の顔は少なからず自分に害意を向けてくる少年に警戒の眼差しを向けていた。そんな目を向けられても少年は人を小馬鹿にし挑発させるような笑みを辞めずに話しかける。

 

「あれれ〜〜誰かと思ったらさっきメガネ君に注意されていた三人の中の一人じゃないか、あれー?帰ってなかったの?」

 

 ………なんだクソか(暇人か)

 

 地元では街で悪さをするチンピラや敵や、自分を倒し名を上げようとしていた連中を片っ端からぶちのめしていたらいつのまにか自分に向かってくる人間が居なくなったことにより暇していた彼は、今自分に害意を向けてくる少年にほんの少しだけ期待をしていたが試験前にも関わらず自分を煽ってくる少年を無視することに決めた。

 

「無視しないで欲しいな……それとも聞ける耳が無いのかな??」

 

 うっぜぇぇぇぇ。

 

「……んだお前さっきから…構って欲しいんか?」

 

「あはははははそんな訳ないじゃ無いか。…君、折寺の爆豪君でしょ?」

 

 突然、彼の個人情報を喋り始めた少年にドン引きしたが早く終わらせたい彼は話を進めることにした。

 そして少年が無駄に喋りすぎるせいで周りの受験生達が興味を持ち始め視線が増え周りでザワザワと騒がしくなってくる。中には五月蝿いのか睨み出す人までいる始末だが彼は自分はうるさくしてないので関係ないと無視を決め込んでいた。

 

「だったら何だ?」

 

「いやー君達のことは聞いてるよ。街にいるチンピラ全員のしたんだってね。有名だよ。…あー怖い怖いその拳が僕たちに向かって襲ってくるか怖くてたまらないよ!…それに緑谷出久だっけ?彼、偽善者だよね。困っている人みんな助けてさ周りにいい人ぶってるけ……」

 

 少年が不自然なところまで言いかけたところで目の前にいる彼の雰囲気がガラリと変わった。先程は、試験直前だというのにとても落ち着いており、これから習慣である走り込みに行きそうな雰囲気をしていたが今は……。

 

はいスタート〜〜

BOOOOM!!

 

「「「「「!!?」」」」」

 

 突然、まるでこれが普通の会話だと言わんばかりの気の抜けた合図に先程までの緊張が一瞬にして抜けた受験者達は何が起こったか分からず声が聞こえた方向を向き呆けたがそんな事は合図とともに自身らの近くでなった爆発音と声の主であるプレゼントマイクによって覚まされた。

 

「どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねーんだよ!既に三人!走り出してんぞ!続けッ続けッ!!賽は投げてんぞー!!?」

 

 突然の合図に呆けていた一瞬殴られ起こされた様な顔になるが驚き、焦り、緊張で険しい表情で受験生達は演習場内になだれ込んで行く…が自分達が倒すはずの仮想敵が一体も見当たらなかった。

 いや強いて言うのなら道路に残っている爆発したかのように焦げ目がつき飛散した仮想敵の残骸だけが地面に横たわっていた。

 獲物をなくした受験生達はさらなる焦りを感じながら戦場を走り去って行ったが。

 

(あれもしかして僕、喧嘩を売る相手………間違えたかな……)

 

 一人残った金髪の少年は今さっき自分のした事を後悔しながら自然と出てくる冷汗ををかき消すように走り出したが脳裏には自分を食い殺さんばかりに殺気を放つ彼の表情がはりついていた。

 

 

 

==============

 

 

 

 

 試験開始から既に残り6分を切ったころでもこの男は疲れというものは知らないと言わんばかりに爆発音を轟かせながら次の獲物を求めて戦場をかけていた。

 すると曲がり角から四足歩行型の仮想敵を先頭とした三体の仮想敵が出てきた。

 

(3P×2、2P×1!こいつら全部ぶっ殺せば合計75P!)

 

目標(ターゲット)捕捉……ブっ殺してヤんよ!!』

 

「口の悪いロボだなクソがッ!」

 

 気付いてないが特大ブーメランだ。

 

 俺を捕捉した2Pが一直線に走り寄ってくる。爆破の勢いで2Pの下に仰向けの体制で潜り込みながら両手首を合わせて……。

 

「死ッねッッ!!!!」BOOOOOM!!

 

 爆破させる!!

 

 2P敵の体全体が大きく吹き飛びただの鉄屑になったことを見届けると3P2機に体を向ける。

 

『アニキの仇イィィィィッッ!!!』

『灰になれェ!ハッシャーーッッ!!!』

 

 

 3P×2が肩に装備してあるミサイルをぶっ放してくる。弾数はそれほど多く無いから軽々避けるが俺の横を通過しちょっとしたら方向転換し再び俺目掛けて飛んでくる。

 

(追尾式…!だったら……)

 

 3P共の元へ走り出し俺の後ろにミサイルを追尾させる。近づいてくる俺を捕捉した3Pは再びミサイルを発射するが軽々避けられ元々追尾していたミサイルに被弾するが全てには当たらず一発だけ残り俺を追い続ける。

 全弾撃ち尽くしたのか一体の3Pが殴りかかってくる、手を下に向け爆破し宙に浮くことで避けそのまま空中移動し3Pそのまま殴りかかって来た3Pの上に乗り追って来たミサイルを………。

 

「返すぞノロマ…がッ!!」

 

 蹴り返す。

 まぁ、かかと落としに似た何かだ。

 ミサイルは蹴られた勢いで下にいる自分を発射した3P敵に突き刺さり爆発する前に上に飛び爆発を避ける。着弾したミサイルは結構な威力で爆発し3Pを鉄屑とはいかない程でも粉々にした。

 

『キョーーダイッ!』

 

「へぇ!!お前ら兄弟だったんかよ!」

(…溜まった……!!)

 

『死ねエェェェェェェェッッッッ!!!!』

 

 最後の3P敵が殴りかかってくるが俺はそれを宙で薙ぎ払うかのように片手を振ると大量の汗が舞い3P敵に覆い被さる様にかかっていく。

 

(あの“バカ共”と考えた技……集中力と大量の汗が必要だったからあんまし使ったことねぇから今使ってやらぁ……)

 

 仮想敵にかかった汗が赤オレンジ色に光り始めそれに気づいた仮想敵は汗を拭い取ろうとするが簡単には取れずロボらしくもなく、これから起こる“何か”に焦っていた。

 

 そして

 

 

 

 

 

「弾け死ね」

 

 

 

 

任意式手榴爆弾(リムペットグレネード)

 

 

 

 

 

 無情の一言ともに臨界点に達したと言わんばかりに急激に赤く光り始めた汗は大爆発を起こした爆豪と幼馴染二人で考え出した汗の付いた箇所を任意的に爆発させる技は仮想敵を文字通り木っ端微塵に明らかなオーバーキルを見せつけた。

 

 ………がこの男は、現在自身が数えただけでも数十体の仮想敵をスクラップにしたのに彼の内心は全然穏やかじゃなかった。

 

 

「ふっーーー!ふっーーー……!あんのクソ金髪頭ッ!あいつのことコケにしやがった!!偽善者だ!!?あいつらが今まで何してきたか知らねぇヤローがわかったような口、開いてんじゃねよ!!!!クソがあぁぁっ!!あとで、ぎったぎったの滅多めっためたに………細切れになるまですり潰してやる………!!!」

 

 

 鼻息を荒くし大噴火するかの如く爆発的に湧き上がる怒りは先程仕留め損なった名も知らぬ金髪の少年に向けられており、後ほどフルボッコにしてやる宣言を吐きながらどこぞのガキ大将のようなセリフを言う彼だが無意識に仲間の事を褒めているのだがそれを指摘しても彼は声を荒げ怒鳴り散らしながら決して認めはしないのだろう。

 

 

 しかし今は試験中であり少年を傷つけることのできない彼の感情は全て仮想敵へ向けられおり彼の近くにいる仮想敵はプログラムされている(ヴィラン)ぽいセリフを言う暇もなくそれ以上の暴言と爆破によって虚しくもポイントとなって散って行った。

 

 

 次々に仮想敵を鉄屑しながら走っていると数十メートル先にビルの壁に追い詰められ片腕を押さえているオレンジ色の髪をしたサイドテールの少女とそれを囲むように数体の仮想敵が群がっていた。

 

 その光景の意味をコンマもかからない時間で理解すれば爆破の威力で超加速する。

 今まさに追い詰めた敵にトドメさそうと言わんばかりに緑の塗装で塗り上げられている腕を掲げていた仮想敵と今から確実に来るのであろう痛みに耐えようと目をつぶっていた少女との間に割るように入れば振り挙げられている仮想敵の腕に左手を添え爆破し腕を吹き飛ばす。そのまま右手で片腕を失った仮想敵の顔面を爆破すると仮想敵は体を仰け反らせながら倒れていった。

 

 突然間に入って来た人間に驚いた挙動をする仮想敵達を爆破を食らわし一瞬にしてスクラップに変えると未だ呆然としている少女の前に降り立った。

 

=====

 

 驚いた……やられていた子を助けたら自分がやられて…あの子を逃がすことは出来たけど自分はそのまま囲まれて仮想的が手を挙げて思わず目をつぶった所まで覚えているけど…そこから何が起きたかわからないくらい早かった……。

 

「…おい、いつまでそうしてんだ。死にてぇのか?」

 

「……ハッ!ありがとう助けてくれて……危ないところだったよ」

 

「そーかよさっさとどっか行けや!」

 

「……それが体力もうほとんど無くて足も捻っているんだ。はっきり言って結構やばい状況なんだけど運んでくれない?」

 

こいつ口が悪いな……どこぞのヤンキーか?

結構図々しい頼み方になってしまったが動けないことは本当だ今までロボ壊しながら走って来て、庇った時足を捻ってしまい…壁に手をつきながら片足で立っている今がやっとのことだ。

 

「知るか!!そんなもん無視して歩けや!!」

 

「………は!?この怪我見てわかんないの?!」

 

「てめーは、ヒーローになってもんな事ほざいて足手まといになるきか!!」

 

「ッ!!」

 

「今は試験だからそんな悠長な事言ってられんだよ!けどなッ!これがマジならこんなもんクソみたいなテロと同じなんだよ。クソが!!」

 

「足を捻った!?体力の限界!?…そんな弱音吐いてる暇があるんなら逃げろ!戦ってる味方の邪魔ならねぇように!死ぬ気で足動かして逃げるんだよ…」

 

 一見、暴論の様にも聞こえる言葉は私がまだ動けると判断しての事だろうそれに私は確かになと案外簡単に納得してしまった。それに最後の言葉には、言ったこいつにも思うところあったのか何かを悔いる様な表情をしていた。

 

「分かったんならさっさと行けや!」

 

「………そうだなごめん!ありがとうな」

 

 そう言って痛みを堪えながら壁伝いにヨロヨロと歩く私を少しの間見守っていたが少ししたら後ろから爆発音を響かせながら遠ざかって行く音がした。

 ………だけどしばらくしたらまた爆発音が近づいてきたかと後ろを振り向いてみたら先程、私に説教かましたあいつが三白眼のつり上がった目をしながらこちらに突っ込んできた。

 

 何事かと焦ったがそのまま通り過ぎ私の目の前でおんぶの姿勢でこちらを睨みながら「チンタラと遅いんだよ!!乗れ!!」と目付きをつり上がせて怒鳴りつけて来た。思わず、怒っているのか心配しているのか分からない態度の裏から見える優しさのギャップに笑ってしまい。あいつが更に怒り始めるので急いで宥め、有り難く乗せてもらう事にした。

 

 

「ぷはははっ!あんた優しいんだなありがとう!私の名前は拳藤一佳!よろしくな!」

 

「笑うんじゃねぇ落とすぞ、あとお前に教える名前なんかねぇんだよサイドテール女!」

 

「なっ!サイドテール女!?名前教えたんだからちゃんと呼んでくれよ!」

 

「はっ!あんなクソ雑魚ロボに負けるお前なんざサイドテール女で十分だろうが!」

 

「お前なぁ……じゃお前のことボンバーマンで呼んでやる。名前言うまでな!」

 

「は!?ふざけんな!なんでボンバーだ…。もっと別のやつにしろ!」

 

「なんでそんなボンバー嫌ってんのお前?」

 

 その後暫くボンバー呼びにしながら話してたらキレながら名前を教えてくれた。

 

 

=====

 

 

「残り2分を切るぞ!!」

 

 

「ちっ!あと二分か」

 

「ごめんな私のせいで……」

 

「謝んなサイド!あとで返しゃいいんだよ!」

 

「せめて、テールを付けろよ…あと体の特徴的なところで呼ぶのやめろよな、名前教えたんだから」

 

「知るか!どう呼ぼうが俺の……!!」

 

「ん?どうし…………ッ!!?」

ズッゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 突如、地震の様な揺れが会場に起こり始め会場にいる受験生たちは何事かと揺れの中心となる方向を見れば地中から立てば一つのビル二つ以上の大きさをした仮想敵が現れ彼らを見下ろしていた。

 

 

「キャッーーーー!!」

「なんだあれ!!」

「早く逃げろ!勝てるわけねぇ!!」

「勝っても何にもならねぇよ!」

「死にたくねぇッ!!」

「いいから逃げろ!!」

 

 

 二人の周りからそんな声が木霊しながら遠ざかって行く。

 圧倒的、そうとしか言いようがない程巨大な仮想敵……0pロボはその巨体に似合う大きな腕を地面に叩きつければアスフャルトが大きく砕け散り砂埃が大きく舞う。

 

「はっ!あれが0pか、クソデケェな」

 

「なに、感傷に浸ってんだ!逃げよう!」

 

「おいサイド歩けるか?!」

 

けんけん立ち(片足立ち)ならな!あと名前!」

 

「なら今すぐ這ってでも向こう行け!」

 

 そう言って彼は入り口のゲートの方を親指で向け逃げるように指示する。

 

「お前は?……なにすんだよ!」

 

「あのクソデカロボ、ぶっ壊しに行く」

 

「は!?何言ってんのさ!逃げようよ一緒に!」

「うっせぇ!」

 

 

「ヒーローが逃げたらしまいだろ!」

 

 

 彼のことを知らない他人がこれを聞いたのなら、自殺志願者、勇気を吐き違える大馬鹿野郎などと一蹴し嘲笑うことだろう。

 しかし彼のことを知る者は一つ返事で了承し笑顔で「行ってこい」とその背中を見送るのだろう。そしてついさっき自らを助けられその実力を目の前で見た彼女にも彼を信じるという思いが出来上がっていた。

 

「ッ!!…………じゃあ私も残る。私もヒーローになりたいんだ!いいだろ!」

 

「……そうかよ。だったら手っ取り早くあれをシメるぞ。お前の大拳、俺くらいだったらどこまで飛ばせんだ!」

 

「お前ぐらいなら2階ぐらいまでなら余裕で飛ばせる!」

 

「おしっ!手伝えサイド!なるべく高く飛ばせ!高くだ!」

 

「け・ん・ど・う・いっ・か!!」

 

 そう意気込む拳藤はギリギリとくる足の痛みを無視しながら腰を落とし巨大化した両手を組み0pロボを背にしながら構える。

 

「来い!!」

 

「俺が飛んだらなるべく遠く行け!」

 

「あぁ!」

 

 駆け出した彼はそのままの勢いでジャンプし彼女の両手に飛び乗る。

 

「ふっん、ぐっっ!!」

 

 乗った瞬間に彼女の踏ん張る声が聞こえればタイミングよく両手が振るわれ彼は一気に上空に飛びそのまま爆破を起こし更に上へと飛んで行った。

 

「頑張れよ私のヒーロー……」

 

 それを見送った彼女は静かなつぶやいたが周りの騒ぐ声と瓦礫の崩れる音でかき消えてゆき、言いつけ通り自分も遠ざかるために未だに痛む足を引きずりながら歩いて行く。

 

=====

 

(もっとだ…もっと上へ……!!)

 

 俺はサイドの力を借り、爆破を繰り返しながら空を駆け上がっていくもう会場にあるビル供の高さはゆうに超えた。……があのクソデカロボを殺すにはまだもう少し高さが足りねぇ。

 

 

 

 

 

…………ここだ!!

 

 約クソデカロボ3個分、場所はクソロボの真上、落下が始まらない内に体制を変え両手を交差させ構える。外から見る奴らからすれば俺は頭から地面に落ちてる様に見えるだろうなとくだらない事考えてたらそのままの体制で自由落下が始まる。

 

 だがただの落下じゃねぇ、()()()()()()()()()()()()()()()だ通常の倍以上スピードで回転しながら落ちて行き加速を続ける頭から血の気が引いていく嫌な感覚に陥る………あぁ気分わりー。

 

 クソロボが爆破音に気付いてこっちに顔向けるが今更何をしようと“こいつ”食らえばただのゴミになるだけだ。

 

「消え……失せ…ろ!」

 

 

 

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

 

 

 

 光に遅れてやってくる耳をつんざくの様な轟音と衝撃波は逃げていた受験生全員を振り返らせば真上からの攻撃で逃げ場をなくした衝撃は余す事なく0pロボに与えられ爆破の起きた地面は焼き焦げ何メートルかは地面が陥没し、圧倒的巨体を誇っていた0p敵は?ほんの僅かのキャタピラの破片を残し地面に大穴を開け消え失せていった。

 そして周りからは歓声と驚きの声が大きく響いていた。

しかしそんな歓喜の中受験生の一人が叫んだ。

 

「おい!なんか降ってくるぞ!!」

 

「人か!あれ!」

「あの高さから落ちたら死ぬぞ!」

「間に合わないってば!」

 

 爆豪勝己の放った榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)は0p敵に見合った火力で撃たれておりその威力の反動により今の個性の威力は爆竹にも満たない程の小さな爆破しか出来ないほどに減衰していた。

 

 当然、爆竹程度の威力で人間の体が浮くはずもなく彼はなんとか五点着地の体勢になるが0p敵に爆破をくらわせ落下を始めたとなると少なくともビル1個分(約10階以上)から落ちる羽目になり彼は現在、骨の一本や二本で済めば良いか…ともう無傷で帰れることを諦めていた。

 そんでもって下の光景を見た瞬間めちゃくちゃ驚いたりもした。

 

「お〜〜〜い、爆豪〜受け止めてやっから安心しとけよー!」

 

(…まじかあの女ッ!!)

 

 自身のちょうど着地地点で拳藤一佳が個性を発動させながら両手を組みながら取ってやるから任せろ的な顔しているのでほぼ投げやりな気分になりつつある彼は有り余る全ての力を使い無理やり地面に背を向ける体勢になり衝撃に耐える様に体を丸めた。そして……。

 

「……ん"ん"っ!!」

 

 本日2度目の踏ん張りの効いた声を発しながらなんとか彼を受け止める。

 

「〜〜〜〜っっ!!よっしゃぁ!取れた!」

 

「〜〜っ、お前足の怪我どうなってんだよ!」

 

「気合と根性でどうにでもなるよ」

 

「脳筋かよ!さっさと下ろせや!」

 

「ええーーでもお前怪我してんだろ?もう少しくらい…」

 

「足怪我してんだろうがお前わよ!しばくぞ!!」

 

「あっーはいはい!下ろすから暴れんなよっ!」

 

 なかなか女子に抱っこされるのはプライドの高い男子からしたらなにかと屈辱的なものだ。渋々暴れる彼をゆっくり地面に下ろすと、試験終了の合図が会場に響きまだやる気だった彼は唾を吐き捨てる様に悪態を吐くとズカズカと門まで歩いていくが何を思い立ったか来た道を戻り、足を痛めて座っていた拳藤に近づいた。

 

 去って行った彼が戻って来たので何事かと驚いた彼女は自身の前にヤンキー座りでしゃがんでいる彼を疑問の目で見た。

 

「…………………」

 

「……な、なに?」

 

 さっきまで目を吊り上げながら自分に怒鳴り散らしていたのに今は近くでしゃがみ自分の足を少し眉間にシワを寄せた。しかめっ面で見ながらなにも喋らない彼を見て彼女は少し困惑していた。

 

「………………足、大丈夫かよ」

 

  長い沈黙の末やっと発した言葉に彼が自分の事を心配している事が分かりちょっと納得する拳藤

 

「え?足……あぁ大丈夫だよ心配すんなって」

 

「……………」

 

「いやそんな黙り込むなってお前のせいじゃないから」

 

「……うっせぇ…ありがとうな()()

 

「………おっ!やっと名前言ったなお前」

 

「あぁ!だからどうしたどうって事ねぇだろが!」

 

「いや名前呼びしたの今が初めてだろ!」

 

「うっせえ!!」

 

 この後リカバリーガールが来て治療が終わった後も名前をもう一回言わせようと彼女は奮闘するが彼は断固として言おうとせず項羽達と合流するまで口論は続いたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪勝己

敵ポイント86P

救助ポイント78P

 

合計164ポイント!

 

 

拳藤一佳

敵ポイント18P

救助ポイント56P

 

合計74ポイント!

 

 

 

 




かっちゃん主人公回!

いろいろ詰め込みすぎて字数がとんでもないことになってしまった。
女子で誰か出してみたいと思い拳動さん出してみました!
そんでもってね!オリジナル技考えてみたけど、おバカな作者が書いたからそれぽっいあて字をはめてしまった!
ダサいかな…

意見とか感想待ってます!




疲れた!!!!


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いいや、かっちゃん!主人公は僕だ!

特に何にもないけど時たま過去の話所々書き直しています。
以上

12/1 書き直しました。ご容赦ください。


〜時は遡り数十分前〜

 

 暴言を吐きまくる爆発頭のやばい奴と自分を世界最強の王だと自称するヤバい奴の二人のヤバい奴達の幼馴染の中で唯一まともな人物である。

 緑谷出久はすでに会場についていたが何故か地面の上に正座しており周りを囲む様に遠巻きな見られており本人も冷や汗をかいていおり目の前で不思議な腕の動きをしながら自らを責め立てる眼鏡をかけた人物を申し訳なさそうに見ていた。

 

 

「なんなのだそのふざけた服装は!君は本当にここに(雄英高校に)受験しにきたのか!もし君がふざけてこの受験に来たのなら栄えある歴史と伝統を持つこの学校と教師の方々への侮辱だ!帰りたまえ!!」

 

 怒られていた(小並感)。

 

「だいたいなんだ!その…T−シャツにハムスターと書いてある服は一体どこにそんな物が売っていると言うのだ!」

 

 若干困惑げに彼の着ている服をどこに売っているのかと聞く少年に周りにいた受験生達はそこじゃないだろ……と心の中でツッコミを入れていた。

 

 今の彼の服装は下に深緑に黒のラインが入ったズボンをはき、上は同じく深緑のジャージを羽織っておりここまでは問題ないのだが着ている薄緑色のシャツに少し汚く細い字でハムスターと書いてある服だった。

 

 会場に来て準備運動をしようと眼鏡をかけた少年の近くで上のジャージを脱いでいたらすぐそばで準備体操をしていた少年にいきなり肩を掴まれ怒鳴られ叱られてしまっていた。

 

 責任感の強い彼は、最初は立ちながら謝っていたがメガネの少年が言うことにだんだんと責任を感じ始め、しまいには正座してしまった次第である。

 

 片やシャツにハムスターと書いてある服を着て正座している男と不可思議な腕の動きをしながらその男に説教をする男……傍から見たらちょっとしたカオスである。

 周囲にいる受験生達は少なくとも一人ライバルが減った?ことによりラッキーと考えていたがあの中に入り説教をやめさせる。という考え毛頭なく巻き込まれたくない、くだらないと考えており遠巻きにその様子を見ていたが、やはり()()()は一定数いるものだ。

 

「ちょ、ちょっやめなよ試験前だよ!喧嘩している場合じゃないって!」

 

「む!?」

 

(さっきのいい人……)

 

 声のした方向に向かってグルっ!と擬音がつきそうなほど勢いよく首を向けた少年の先には可愛らしい両の赤いほっぺたと前髪がの両端が長く少し丸みを帯びた茶髪のショートボブが特徴的な元気系のかわいい女の子が二人の間に入ってきた。

 

「何があったかよう分からんけど!今はこんなくだらんことして場合じゃないって!」

 

「くだっ!?」

 

 つい先程までこの現場のことを"喧嘩"と称していたのに彼女もくだらないと思っていたためはっきりと本音が出てしまい、わりとまじめに説教していた眼鏡の少年も驚いていた。

 

「くだらないとはなんだ!ぼっ、俺はふざけた服装で受験しにきたこの男が許せないんだ!」

 

「確かに変な服やけど、別に決められた服でやれなんて一言も言われてないし何より試験前に喧嘩したなんてバレたら落ちるかもしれんよ!それでもいいん!」

 

「……た、確かに」

 

 彼女のぐぅの音も出ない正論に一発で納得してしまった少年はつい先程まで説教をしていた彼に自分の非を認め綺麗に頭を下げながらで謝罪をし始めた。

 

「すまない!君は何も悪いことをしていないのにいきなり責め立ててしまい更には正座までさせてしまって……本当に申し訳ない!」

 

「いや、あの大丈夫だから気にしないで!僕だって今日この服着る予定なかったたんだけどシャツと間違えちゃってそれに正座だって自分からやったし……だからこれは僕が悪いんだごめん!」

 

「いいや!ルールを知らずに君を怒鳴りつけてしまった僕が悪いんだ本当に申し訳ない」

 

「大丈夫だって…あ、あなたもありがとうございます!お世話になりました!」

 

「ブハッ!お世話になりましたって別に出所した犯人じゃないんやから…そういや君また会ったね?大丈夫やって大したことじゃないって」

 

「いや!あの時君が止めてくれなかったら僕はきっと試験が始まるまで怒り続けていただろう、本当にすまないありがとう!」

 

「いいって!もう済んだことなんだしこれからはお互い頑張ろう!おっーーー!…なんちゃって」

 

「え、おっおーーー!」

 

「む?こうか?おーーー!!」

 

 彼女を筆頭に三人が右手を上げながら気合を入れるメガネの少年はまじめ故なのか周りの目も顧みずとても大きな声で叫んでいた。

 

「じゃあ、受かったらまた会おうぜ!」

 

 最後にカッコよく親指を立ててその場を立ち去って行った……その場に野郎二人を残して……。

 

「あ…名前書き忘れちゃったな……」

 

「ややっ!本当だなしかし彼女はもう会ってしまったぞ」

 

「うーん…じゃあ僕たちだけ挨拶する?今更なんだけどね」

 

「ああいいとも!私立聡明中学校の飯田天哉(いいだてんや)だ。先程は本当に申し訳ない」

 

「大丈夫だって…折寺中学校の緑谷出久(みどりやいずく)です。よろしくね飯田くん」

 

「よろしく頼む緑谷君、本当にすまなかった」

 

「まだ言うの?そこまで言うんだったら脱ぐよ僕?」

 

「いやそれは君の体に悪い!2月を舐めちゃダメだ!」

 

「ん、そのことなら大丈夫だよ僕他の人よりそこそこ丈夫だから」

 

そう言って彼はおもむろに人の目も気にせずハムスターTシャツ(略してハムT)を脱ぎ始めた。

 

=====

 

 正直言って驚いた…今は2月だ正直この時期をぼ…俺は冬と言っていいのか春と言っていいのかわからないだが、多少日が差してきて温かなってきたがそれでもまだ少し寒いのに目の前にいる緑谷君はシャツを脱いで上裸になってしまった。これだけでも驚くことなのだがそれだけじゃなかった。

 

 自分で言うのもなんだが僕の体は他の同年代に比べて体つきは良い方だと自負している。しかしそんな肉体の話ではなかった。体の全身のあちらこちらに大小様々な傷のような跡があるのだ今までどんなことをしてくればそんな傷がつくんだと思うほどに夥しい量の傷跡がついていた。

 

こちらを見ながら不思議そうな顔をしながらこちらに声をかけてきている緑谷君を見ながら思わず体のことを聞こうとしたらプレゼントマイク先生の開始の合図に出遅れてしまった。

 

 最後に見た彼はこちらに口を開いて何か言っていたがわからなかったそれより早く緑谷君が目で追えないほど早く走って行ってしまったのだがきっと頑張ろうねと言ったのだろうか……そんなことを呑気に考えていたら他の受験生より少し出遅れてしまった。

 

 しまった……!焦燥が一瞬頭をよぎったが少し微笑みながら走り去ってゆく彼の姿を見て負けられないと自分の足に力を入れ力強く地面を踏みしめ加速しながら会場を走ってゆく。

 

 

 

=====

 

「26っと!」

 

 

 出会い頭に会った仮想敵を倒し、現在のポイント数を数える。もし仮に救出ポイントみたいな特別なポイントがなくて、もしも落ちちゃったりなんかしたら、かっちゃんからぶん殴られること間違いなからこれがギリギリかなってところを稼いでいる。

 けど雄英ならあるんだと思うんだと思うけどはっきり言って不安だ。

 

 さっきまでは声や物音のする方向に向かってひたすら走って、助けて、倒して、走って、助けてまた走って、助けたと思ったら曲がり角から出てきた仮想敵に気づかなかったら腹からレーザー出してきた人に助けられてその人に「上裸なんて美しくないね☆」って言われたり途中で飯田くんに出会って一緒に仮想敵倒したりしているけど。幸い自分が見ただけでは大きな負傷者がいなくて安心したりしていたけれど…これは流石にやり過ぎなんじゃないかと思っているよ……。

 

 

 道路の真ん中で大きな手でビルを掴みながらこちらに顔を覗かしていた超大型仮想敵は自分たちを標的として捕捉したのか巨大な手を握り拳を作り出しそのまま地面をぶん殴った。それにより局地的地震が発生し拳が当たった地面は抉り出され勢いよく舞った砂埃が自分たちの顔を殴りつけたたったこれだけの動作でみんなの恐怖と不安を煽るのは簡単であった。

 

『災害を彷彿させる圧倒的脅威…これを見た時の人間の行動は正直さ…』

 

 確か前にオールマイトがこんな事を言っていた様な気がする。いつだったかは忘れちゃった。

 さっきまでお互い競い合いながらポイントの奪い合いをしていたみんなが我先にと叫びながら逃げ出していく。

 今も仮想敵はこちらに移動し続けているここに留まり続ければ僕だって危ないだろう。

 

 でも留まり続ければいけない理由がある

 困っている人がいるから。

 

『転んだら縁起悪いもんね』

 

「痛っ!」

 

 …………転んだら縁起悪いもんね。

 

 

ワン・フォー・オール『フルカウル』常時35%

 

 

血を体全体に送り込むように個性を発動させれば身体能力が飛躍的に上がり体全体から緑色のスパークが僕の体を一瞬覆い体の底から力が漲るのを感じる。今思えば前より断然使いやすくなった。

 そんな事を思いながら瓦礫に足を挟まれているいい人を丁寧に助け出し一気に安全な場所まで走り抜く。

 

「大丈夫?」

 

「へ?嘘さっきまであたし……」

 

「話は後でちょっと行ってくるね」

 

 さっきまで身動きが取れなかったのに突然視界が変わったことにより驚いたいい人を突然現れた僕を見て驚いている飯田くんにお願いねと頭を下げて預ける。

 そのまま仮想敵の前まで走りながら助走をつけ一気に飛び上がり仮想敵の頭部まで接近し拳を構える。 

 

 

許容限界突破(オーバーフロー)フルカウル60%…SMASH!!

 

 

 顔面を殴られた仮想敵は大きな体を所々爆発させながら後ろに倒れていった。僕の殴った腕は自分の出せる限界上限を超えた事により膨大な力により負荷を負い変色してしまったが慣れてしまったのか最初の頃よりはまだ良い方かとしみじみ思いながらワン・フォー・オールを使い難なく着地するとそれが合図だったかのようにプレゼントマイクから試験終了の合図が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

緑谷出久

敵ポイント 26P

救助ポイント 135P

 

合計161P

 

 

飯田天哉

敵ポイント 52P

救助ポイント 9P

 

合計61P

 

 

麗日お茶子

敵ポイント 28P

救助ポイント20P

 

合計48P

 

=====

 

「お。おかえり出久…………そんでそいつら誰だ?」

 

「はは…ただいまこうちゃん、こちら…」

 

「私立聡明中学校、飯田天哉(いいだてんや)だ!君は緑谷君のご友人かな?」

 

麗日お茶子(うららかおちゃこ)です!よろしくね!」

 

「うん元気がいいのは分かったわ」

 

「はは…」

 

 実技試験が終わって今、校門前で勝己と出久を待っていたんだが出久が変なの連れてきた。とりあえず自己紹介しとくか。

 

「あーー折寺中の黒籍項羽(くろせきこうう)だ。項羽でいい」

 

「よろしく頼む項羽君!」

 

「よろしくね!」

 

 自己紹介も済んだところで出久にどうして一緒にいるか聞いてみたら何故か二人が出久と出会った時のことと聞いてない試験中の事について鼻息たてながら説明してきた。

 

 二人によって話される説明を顔を赤くしながら顔を隠している出久を笑って見ながら聞いていたところで勝己が帰って来た。こちらも変なの連れて来ている。

 

「もう言わねーって言ってんだろうが!いい加減しやがれ!いつまでついてくんだよ!!」

 

「いいじゃんか減るもんじゃないだからよ!」

 

「いや何してんだ勝己……」

 

「お帰りかっちゃん…」

 

 何故か怒鳴り合いながら歩いて来た二人に声をかける。

 

「んだお前らか…誰だそいつら」

 

「かっちゃんも同じこと言わないでよ」

 

 その後何故か変なの三人が意気投合しあい一緒に帰っていく事になりその後ろで俺たちは今回の反省やらなんやら茶化しながら夕焼けが映える坂道を帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.項羽さんの試験描写はどうしたんですか?

項羽「え?俺の試験?ふっ……無双しすぎて作者が俺様の活躍を描ききれなかったからに決まってるだろう」

作者「いよっしゃこいつ痛い目に合わせたろ」カキカキ

項羽「ゑ?」


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( ˙-˙ )やってしまった男の顔

評価バーが……評価バーが……。


他の女の色に染まったーー!!
(本音)いいぞもっとやれ。


ありがとうこざいやすっ!!!


 

 雄英高校某所内。巨大な校舎の中にある一つある大会議室にて…。

 日々それぞれ個性的なコスチュームを身に纏い授業を行うヒーロー科教師陣が大きな円を作りながら空中に映し出される実技試験の結果とその録画を眺めていた。

 

 

「さて、今年もたくさん凄い子が揃ってきて嬉しい事だね」

 

「今年はめちゃくちゃ豊作じゃない?」

 

「あぁ平均のポイントも例年よりかなり高い」

 

「何より頭抜けてる人間が三人もいるから嬉しいものだ」

 

「三人とも総ポイント100超え…こんなこと僕が知りうる限りはこんな事は初めてですね……」

 

「俺こいつら好きだわ!何つたって不意打ちのスタート合図に三人とも!同時に反応したんだがらな!!YEAHHHH!!」

 

「うるさいぞマイク…まぁ確かに例年、周りは反応できないのがほとんだ。その点に関してはこの三人は優秀と言えるな……」

 

「お!イレイザーもこいつらのことお気に入りか!わかるぜなr「黙っとけマイク」シヴァーーー!!」

 

 突然、興奮しだしたのか自慢するかのように三人の始まりについて話しだしたプレゼントマイクを無性髭を生やした全身真っ黒な服を着、白いマフラーの様な物を巻いた気怠げそうな男がそれを制し、三人のことを褒めると一瞬、意外そうな顔をしたプレゼントマイクがそれに同調しようとしたがヒーロー名イレイザーヘッド(本名、相澤消太)に一瞬で黙らされた。

 

 映し出されていた映像が切り替わり爆豪が仮想敵を蹴散らしている画面と拳動を助けるシーンとさまざまな場面が映し出されると相澤が持っていた資料を読み始める。

 

「爆豪勝己…個性『爆破』掌からニトロのような汗をだし爆発させる…派手であり強力な個性だ…そして試験中ほとんどノンストップで動きながら近寄って攻撃してくる1、2P仮想敵達を蹴散らし遠距離からミサイルを放ってくる3P敵には自ら爆破の勢いで加速し近づき破壊する。

見る限りではありあまる体力で相対する敵を圧倒的火力で制圧する超持久型ですね」

 

「タフネスだな……」

 

「それに加え爆破の勢いで飛ぶこともでき、自らの汗を仮想敵に付着させ着火することで破壊するなど…極めて汎用性の高い個性と言えるでしょう」

 

「この子すごいわね下手したらプロ以上の実力持ってるわよ」

 

「純粋な戦闘力だけ見たら今年の三年で勝てるかどうか……」

 

「確かにそうですけどそれだけじゃないですね。ただ仮想敵を倒しているだけの様に見えますが、よく見ると危険な状態に陥っている受験生を通り過ぎ様に助け怪我をしているようなら的確な応急処置を。ひどい様ならゲートまで連れて行くなど、まだ中学生の身なのにここまでできるのはすごいですよ」

 

 宇宙服の様なコスチュームを着た男が空中に映し出されている爆豪を見ながら口早に言葉を並べ彼を褒めていく。

 

「つまり彼は戦闘だけではなく救助にも長けていると言うことか…」

 

「万能マンと言った方がいいでしょうか」

 

「しかし救助という点においては緑谷出久の方が優れていると言った方がいいんじゃないでしょうか?」

 

「お!あの坊主か、わかるぜ!あいつもいい動きしてたからなーーーー!!」

 

「うるさいぞマイク」

 

 画面が切り替わり今度は髪が緑色で何故か上裸の受験生が映し出されていく。この映像を初めて見たらしい教員たちは長ズボン一枚でリュックを担ぎ会場をとんでもないスピードで疾走して行く。緑谷に少し動揺していた。

 

「……彼ハ何故上裸ナンダ?」

 

「どうやら試験開始前に一悶着あったらしく、たぶん露出狂の類ではないはずですよ」

 

「俺はその一悶着の内容について知りたいぜ!」

 

「まぁとりあえずその事は置いといて話に戻りましましょう合理的じゃない」

 

 一部の教員は置いといていいのか…と思っていたが話が勝手に進んでいくので今はとりあえず置いておこうと考えたが頭の隅にある悶々としたものが残りながら話を聞く羽目になっていた。

 

「緑谷出久、個性『超パワー』…資料には身体能力を向上させることのできる個性と書かれていますが少し引っかかることがあります」

 

「どういうこと……?」

 

「こいつは試験終盤…0p敵を軽々粉砕する力を持っていながら敵pが少なすぎるんです。個性のデメリットかと考えていましたが試験中普通に個性を使いながら仮想敵を破壊していたことからデメリットではないと判断していました。しかしこいつは仮想敵を探しに行かず優先的に怪我をしたもしくは緊急事態の受験生を助けに行っています」

 

「………つまり相澤くんはこの受験生は元々この試験の構造に気付いていた、言いたいのかい?」

 

「はいそうでなかったら救助することを想定していたかの様な彼の所持していた医療用具の種類は説明がつきません」

 

「包帯から始まってついには電気ショック器具まで…どんなことを想定しているやら」

 

「それだけじゃないさね。わたしが行った時には殆どの子の治療が終わっていたんだけど、処置がほぼ完璧なのよどの子もね」

 

 わたしが出る幕なかったわ……そう言いながらリカバリーガールは自分の席の背もたれに体重をかけながらため息をついた。

 

「映像を見る限り個性を使いながら会場を走り回って通りすがりに仮想敵に出会ったなら撃墜し主に怪我をした受験生に手を差し伸べ安全な場所まで運んだらまた会場を走り回る…これを繰り返してますね」

 

「しかも他の受験生と協力しながら仮想敵を倒しているな」

 

「ヒーロートシテ重要ナ避難活動ヤ救助活動、ソシテ即興デチームヲ作リ上ゲル協調力…プロ二必要ナ基礎能力ガ備ワッテイル。コノ子モ爆豪クンモ」

 

「……確か、緑谷くんと爆豪くんは同じ中学校だったよねもしかしたら二人のどちらかがこの試験の内容に気付いていたのでは」

 

「二人だけじゃねぇよ」

 

「黒籍項羽か……」

 

「この子はね〜〜あまり触れたく無かったと言うか…」

 

 何故か歯切れの悪い教員たちをみて相澤は黒籍の資料に目をやったやった瞬間にため息をつきながらちょっと後悔したが気を無理やり取り直して読み上げるしかなかった。

 

「黒籍項羽…個性『万象儀』…はぁ……資料には万物を操ると書いてありますが試験映像を見る限りでは実際の能力は不明…規格外としか言いようがありません」

 

 画面が切り替わり今度は項羽が高笑いしながら仮想敵を追いかけ回しながら次々に破壊していってる様子が映し出される。

 

「敵ポイント160P、救助ポイント130P、と数字が今挙げた二人より圧倒的に多いな……」

 

「この子の個性万物を操るよね?筋力強化とかじゃないわよね?何もない素手で仮想敵破壊しているんだけど…」

 

「パワーローダー先生…ロボに自我とかそう言うのつけましたか?心なしか仮想ロボが涙流しながら逃げているように見えるんですけど…」

 

「くけけけけ……本物のヴィラン再現しようと色々プログラムしてみたが泣くなんてモーションつけた覚えはねーな」 

 

「しかも仮想敵には目的を捕捉したら見つけた瞬間襲い掛かるように設定したのにみんな逃げてやがる」

 

 おかしな光景だぜと言いつけた雄英の技術担当であるパワーローダーは笑いながら言っていたが実際は打ち込まれたプログラムを忠実に実行するはずのロボ達が一目散に逃げて行く映像を見てどうなっているんだと頭を悩ましていたがそんな彼を尻目に会議は続いてゆく。

 

「しかし問題はこの場面です」

 

 空中に映し出されていた全ての画面が切り替わる。そこに映っているのは少し離れた所から突如出現した0P仮想敵に背中を向けまるで濁流の逃げまどう受験生達の中にただ一人仮想敵に体を向けながらポケットに手を突っ込み悠然と立っている項羽を撮っている映像が流れ始めた。

 

 やがて全ての受験生がこの場から離れるとビル群を破壊しながらただ一点、項羽を目指して進撃してくる仮想敵に項羽は掌を見せるように片腕を前に突き出した……瞬間、映し出されていた画面が全て電源が落ちたかのように真っ暗になった。

 

 しかしこのことをリアルタイムで見ていたプロヒーロー達は少しも動じず静かに映像の続きを待った。

 しばらくするとカメラから黒い霧が離れるように霧散していけばそこには未だ片腕を突き出し悠然と立っていた。変わっている点とすればさっきまであれほど存在感のあった仮想敵が姿()()()()()()()()()

 映像の続きを見てみれば項羽が突き出していた手をしまい先程まで仮想敵がいた場所から背を向けスタスタと歩き始めたが何を思い至ったのか振り返りまた片腕を突き出すと再び画面が真っ暗になり暫くするとまた元通りに映像を流し始めるが今度は壊れていたはずのビル群が何事もなかったかのように()()()()()()()()()()()ビル群だけではない。

 

 そう言いたげに相澤は映っている映像をそれぞれ会場全体に配置されていたカメラの映像に切り替えると何処か不思議な点が多く見受けられた。

 

 何もないのだ。厳密に言えば受験生に壊されたロボの残骸、戦闘によって破損し瓦礫や残骸などで荒れていたはずの市街地がキレイさっぱりチリひとつない状態になっているのだ。

 

 再び映像を戻すとポケットに手を突っ込み鼻歌を歌いながら立ち去っていく項羽と立ち尽くしたまま唖然としている受験生達とプレゼントマイクによる試験終了の合図を最後に映像は終了した。

 

「付け加えますがこの後彼は負傷した受験生達をあの黒い霧で治療し始めています尚治療を受けた受験生達の怪我は完全に完治しています」

 

 会議室に先程までの賑やかさはなくなり沈黙が会議室に流れ始めた。

 

 

「ヒュ〜〜〜まるでトリック映像だな」

 

「確かにそうだなそこに存在していた筈の仮想敵が突然姿を消したどういう事だ?」

 

「デマ映像とも考えにくいわよね」

 

「あぁこの後俺が確認しに行ったが確かに0P敵が作動した痕跡があった…ハッキングでもデマでもねぇーよ。クケケ…」

 

「ナラ……一体何ガ起コッタンダロウ…?」

 

 

 

 

「…………こいつの個性は一体何なんだ…」

 

 

 

 

 

 最後の言葉はいったい誰が言ったのだろうかまた会議室に長い沈黙が流れ始める。いい大人が全員ある一人の個性の正体も分からず皆考え込んでしまっている。

 

「それは十中八九彼の個性なのさ」

 

 沈黙を破ったのは周りより一際小さい椅子に座っているかくしてクマなのかイヌなのか果たしてその正体は謎に包まれている設定の雄英高校校長であり動物に個性『ハイスペック』が発現した珍しいネズミである根津校長だ。

 そんな校長が席の上にあざとく立ち上がり手を上げている様子よりも相澤は彼の言った言葉が引っ掛かっていた。

 

「こいつの個性は万物を操る…まさか……!」

 

 言いかけたところで相澤は何か閃いた顔しそれを皮切りに他の教員たちも頭の中でバラバラのパズルが全て綺麗にハマったかのようにスッキリしたような顔をし始めざわつき始める。

 

「うん。みんな気づき始めたみたいだね。そう彼の個性は万物の分子や原子を丸ごと操っているんだと思うのさ」

 

「もしもこの仮説が正しいのなら仮想敵が全て居なくなった理由も負傷した受験生が完治した理由も簡単に説明がつく筈さ」

 

「なるほど僕のブラックホールの様に粒子レベルで分解して仮想敵を消したと言う事ですか」

 

「それなら納得できるな」

 

「しかも市街地が元通りなったってことは彼は分解だけじゃ無く粒子のそのものを操って再構築したってわけね」

 

「末恐ろしい個性だ」

 

「まぁ実際のところはどんな個性なのか本人に聞いてみないと分からないわけどね」

 

 ここで会議室が今度は先程とは違いなにか異様な空気に包まれ始めた。相澤が資料に目をやり呆れたものも言えんと言わんばかりに2度長いため息を吐くと仕方ないと資料を手に取った。

 

「はぁ……その事なんですが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼、筆記試験落ちてます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====

 

「という訳で黒籍少年!君はヒーロー科試験、落第だってよ!」

 

 

 

………どういう訳だよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 




作者「ねぇどんな気持ち?落ちてどんな気持ち??」

項羽「( ˙-˙ )」

作者「し…死んでる……」


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歯車

作者「やめろ…こないでくれ………こっちに来るなあああぁぁッ!!」

項羽「貴様は絶対にゆ"るざんッ!!!」

項羽「オンドリャウラギッタンデスカッ!!」

項羽「ヤロォ!ゼッタイにぶっ殺してや"るッ!!!」

項羽「ア"ア"ア"ア"あああああああぁぁぁッッッ!!!!!」


すいませんただ単に言わせたかっただけでございやす(`・∀・´)


どういう訳だよっ!!

 

 

 

何故こうなったかは数分前に遡る………。

 

=====

 

 ようお前ら久しぶりの世界最強だ。(定期)

 あの後。あの場で知り合った変なの三人とは受かったらよろしくという事でメアド交換はした。その日はそのまま何もなくそれぞれの家へと帰宅したけど。

 

 そして試験から丸一週間。不安であたふたしていた出久をいつも通り勝己が怒鳴るように叱咤する光景が一日に二回ぐらいは見れたり。先に結果が返って来たダルモンが合格しておりお祭り状態になったりといろんな事があったがそれ以外には特に変な事件はなく平穏に過ごしていた。

 

 そして今夜。自室でトレーニングしていればタバコを咥えたまま寝起きであろう眠たそうな細い目と無精髭を生やした親父から丸い何かが入った封筒を渡され見てみれば雄英高校と書かれていた。

 父さんは「お前なら大丈夫だろ」と半ば適当に言い残して部屋を出て行った。おい一人で見ろってか。

 汗だくの体をタオルで拭いとり適当に地べたに胡座をかいて乱雑に封筒を破くと中からそれらしき書類とどう使うかも分からないような機械が出てきた。機械を適当にいじっていると突然オールマイトが逆さまの状態定番の挨拶を叫びながら空中に映し出されたので向きを直して床に置いた。

 

『やぁやぁ黒籍少年!今年から雄英に教師として務めることになってね。元気かな!?まぁ君のことだろうから早く教えろと言って来そうなので早速結果の方を発表しちゃうぞ!!』

 

 わかってんな。

 

『まずは実技試験。敵ポイント160ポイント!これだけでも十分首席合格なのだがそこは雄英!君達三人は気付いていたかも知れないが実はもう一つ!隠しポイントがあったのさ!その名も救助活動(レスキュー)ポイント!

しかも審査制!我々雄英が見ていたもう一つのヒーローとしての基礎能力!!黒籍項羽130ポイント!文句なしの実技試験合格さ……!

 

実技試験はね!』

 

 いつもどおーりの彫りの深い笑顔だがその発言には含みしか隠されていないような気がして俺はだんだん嫌な予感がしてきた。

 

(ところで黒籍少年。勉強しっかりしたかな??』

 

 マジだ(終わった)

 

『そう!薄々感づいているかも知れないが……………例え戦闘能力が完璧でもそこはヒーロー!頭もなくちゃあいかん!……という訳で黒籍少年!筆記試験不合格により今年のヒーロー科試験!

 

 

不合格だってよ!』

 

 という訳で冒頭に戻る。

 

 

=====

 

『まぁ詳しく話している暇は今の私にはないから端的に説明するが特に理数系が致命的だったな!他の国語や英語は高得点だったのにこれじゃ台無しだ!え、またマキで仕方ないな…

 

 俺が落ち着いてる間になんかオールマイトが言っているが全然きいていなかったが何やら裏で急かされているらしく気を取り直す様にわざとらしい咳払いをしたところだけは聞こえた。

 んだよまだなんかあんのか。

 

『だがしかーし!我々雄英としては君のような将来有望な人材を手放すのは非常ーーにおしい!というのが会議での結論でね。という事で君に一つ提案があるんだがこれを受け入れるのかは君の自由だよ!』

 

 提案だ?

 

『それはねヒーロー科として入学することは出来ないけれど普通科に編入という形で入学しそして一年に一回開催される"雄英体育祭"でのリザルトに伴いヒーロー科編入への検討が行われるんだ。優勝する事が出来れば確実に編入することが決定されると思うんだがまぁ多分君なら決まってると思うけどね!』

 

 雄英体育祭……たしか出久と勝己が毎年録画なりなんなりして見ている祭りのことだったか…。そこで優勝する事ができれば確実と言っていいほどにヒーロー科に入ることが出来るか……。

 やるか。元々俺の進路はここ(雄英)のヒーロー科か普通科だ。今更他の学校に行くあても無いから受け入れも何も選択肢はこのまま浪人してヒーローもどきの活動を続けるか入学するしかないって事か。

 

『詳しいことは付属されている書類に書いてあるからそれを見てくれよな!それじゃあ黒籍少年!たぶんそこそこ先になるが…来いよここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 俺が入学する事を前提に手を差し伸べたオールマイトの姿を最後に映像は終了した。ついでにベランダでタバコ吸っていた親父に報告すると指差されながら大爆笑された。俺が勉強していないことはお見通しだったらしくある程度は予想していたらしい。おいいつまで笑ってんだ殴るぞ。

 

 隣で頭のでっかいタンコブから煙出して柵にもたれかかっている親父を横目に母さんにも報告しようとベランダを出ようとしたらポケットに入れておいた電話が鳴り確認してみたら勝己だった。やばい、いま一番説明するのがめんどくさい男から掛かって来た。

 

 流石に出ないわけにはいかんので意を決してコールボタンを押すと少しして勝己の声が聞こえてくるのを確認すると俺は空に照らされた綺麗な三日月を後にベランダから出て行った。

 

 父親は知らん。

 

 

 

=====

 

 

 

「テメェは何落ちてやがんだ死ねカス。あれ程勉強しておけと言っておいたのになんで落ちてんだよクソ世界最強様がヨォ。おかげで俺はお前のお情けみたいな感じの首席合格だよありがたくもねぇ!」

 

 翌日、俺が受かっていないという事実を知った勝己さんは俺と顔を合わすたびに中指を立ててくるようになり今日一日中ほとんど口を合わせくれなくなりだ。放課後担任から合格おめでとうと祝われた後今日はいつもの洞穴の中にオールマイト含め全員集合し勝己さんからお小言と嫌味を言われている。出久も俺が筆記で落ちた事に半ば投げやりになっており勝己の説教を邪魔してしないように今は設置されている作業台で道具を製作しておりその横でダルマンもオールマイトも巻き添いを食らいたくないのかその様子を眺めており此方には目もくれない。

 

「○○○○が○○○○○○○してピッーーーーピピッーーーーーーーーピーーーーーーーズギューン!ババババッキューン!!」

 

 あぁ、とうとう怒りが臨界点超えたのか目を釣り上がらせながらR-15じゃ表記出来ないぐらいに酷いこと言い始めたぞこいつ。しかしここで作業を一通り終えたらしい出久が片手に銃の様なものを持ちながら二人を引き連れてこちらにやって来てくれた。

 

「はいはいかっちゃん。そのくらいにしといたら?流石にそれ以上はマリーちゃんの前じゃ話せないし」

 

「そうよ…それに項羽だって体育祭?に優勝したらどうせ勝己とおんなじ所に行くんだから…時間の問題でしょ?」

 

 そう言って俺に抱きついて頭を撫でててと言わんばかりに擦り寄ってきたダルモンの頭をポンポンと撫でると満足した表情になりいつも通り俺の右腕に抱きついた。可愛らしいなおい。

 

「すまない爆豪少年。なるべく知り合いだからという事で君たちの評価に口出ししないようにしてきたんだけど。不合格は不合格という事でこうなってしまったんだ」

 

「〜〜〜ッ!だァしかねぇな!おい項羽!もし優勝出来ないなんて事がありゃ俺がお前の首直々に切ってやるから覚えとけ!!」

 

 他の三人にしかも憧れている人に諌められた勝己はまだ言いたい事があると言わんばかりに悶えるが最終的には俺の首をはねる宣言をした。言っておくがこの話お前が負ける前提の話だからな。

 

「何はともあれ飯田くん達も合格したって言ってたしこうちゃん以外の全員、おめでとって事でいいんじゃない?」

 

 あぁそうだったあの場で連絡先を交換した三人組も無事合格していた電話の向こう側で泣いていたっけな。

 

「そうだなで。出久それなんだ?」

 

 俺は話を切り替えて先程から出久が手にぶら下げている明らかにそれっぽい仰々しいものを指差す。

 

「あ。これ?これはね前々からかっちゃんに協力してもらってつくってたまぁ簡単に言ったら着弾したら瞬時に凝固する弾とかっちゃん特製の手汗が入ったカプセルの二種類の銃もどき。初めっから説明するとね。最初に言った凝固する弾丸は当たっただけじゃそれ単体ではそれ程殺傷能力は皆無いんだけど。もしも関節や他の部位に当たった場合その場所は一瞬に接着剤より強く固まって並大抵の力じゃまったく動かせないくらいにガチガチに固まるんだ。液体とかに触れた場合は酸とかで溶かされない限りさっき言ったみたいに固まるんだ。あ、勿論溶かすための専用の薬品もあるからね。それでかっちゃんの協力の下、着弾した時コアの中にあるカプセルに詰め込んだ汗に衝撃を与える事によって爆発するまぁ至って簡単な仕組みなんだけど重要なのはカプセルじゃなくてそれと同じに入れられた電磁波を前もって目標につけておいたポインターを追跡する事ができるんだよ。すごくいでしょっ!!………あれ?」

 

 まるでふふんと自慢するかの様に目を閉じ意気揚々と人差し指を上に向けてベラベラベラベラと長ったるい説明をしていた彼は気付いた時には周りには誰もいない広い洞穴の伽藍堂にただ一人取り残されていた。

 一人の状況を理解するために少しの間フリーズをおこした彼は直感的に置いてかれたと思うと「やっぱり僕はダメだっんだ………」と一人静かに涙を流し帰り自宅を始めた。今はこんなに背中に哀愁漂わせている彼だがこれから仲間達と晴れやかな(決して事件がないとは言ってない)高校生ライフが待っているのだ。がんばれ。

 

 この後慌てて出てきたみんなに慰められたとか。

 

 

 

 

 

 

=====

 

 そして春………

 暖かな春風吹くとある家のとある玄関にて。しゃがんで靴紐を結ぶ少年の後ろに無精髭を生やした中年の男性が立っており少年を見送ろうとしていた。

 

「時間は?」

 

「まだ間に合う」

 

「忘れもんねぇな?」

 

「ねぇよじゃあ行ってくる。もういいか?あいつらが待ってんだよ」

 

 矢ばりに質問してくる男にだんだん鬱陶しくなってきた少年は靴紐を結ぶとつま先で地面をトントンと蹴り靴内の空間を調節しながらドアノブに手をかける。

 

「おお行ってこい」

 

「おう。じゃあな」

 

「……おい項羽」

 

「んだよまだ何か……」

 

「またな」

 

「……………行ってくる」

 

 出て行こうとした自分を引き止めた男にうんざりとした様子で振り向き返事をしようとすると間髪入れずたった一言短い言葉。この言葉にどんな意味が込められているかは分からないがなんとなく分かった少年は前を向きながら端的な一言を言い残し扉を開けた。その先はいつもと変わらない風景だったがいつもより綺麗で輝いて見えた。鼻から息を吸い込んだ少年は男に背を向け歩き始める。

 

 

 

 見えない何かが音を立てて動き始めた。

 

 




 入学まで編これにて了!

 THE・洞穴の秘密基地!

全体!:広いぞ!とても広い!どれくらいって言うと……ヤバイぐらいに広いんだぜ!!

くつろぎ!:数年前から海浜公園で拾ってきたその他もろもろなんやかやあって修理したりしたソファ、カーペット、ベット、冷蔵庫、4Kのテレビ………とりあえず普通に生活できるぞ!!

作業台!!:此方も海浜公園から拾ってきた工具でいっぱいだ!とりあえず自作のスタンガンやら銃ぐらいを作るぐらいお茶の子さいさいぐらいの技術力はある!

余り!:余ったスペースは物置やら仕切りを作って部屋とかにしている基本自由!


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あ、どうもはじめましt

とある部屋の雑談会



「いやー突然部屋の中にあったテレビがつき始めたと思ったらなんだか項羽は面白い事になってるね」

「そうだなダヴィンチ。いやしかし世界最強ともあろうお方がおしめ如きで泣きそうになっているところを見ると…面白いシーンだね」

「あぁ我が王よ何という………」

「お前も笑ってんじゃん」

「しかし項羽はいい仲間に巡り合えたようだな!」

「………………」コク

「いい加減喋らないかポルポド…。まぁ確かにまだまだ未熟で幼いが強い信念を持っている子供達だね……」

「しっかしおかしな世界だ廻り者みたいな奴がいっぱいいやがる。悪だな!」

「意味わかんないよ」

「ちょっリモコン貸して!今の顔もう一回見たい!めっちゃ面白かった!」

「ちょちょ…ダメですよ姉様!リアルタイムで見ましょうよ」

「はいそこライト姉妹喧嘩しないでこのカエサルと一発しっぽりと……」

「「やらないし汚らわしい」」

「はぅっ!」

「もっと殴って転がしとけおい船坂。手伝ってやれ」

「え?」







以上。本当に雑なとある部屋の一幕一旦終了。
あけましておめでとうございます。
それでは年始一発目の本編どうぞ。




 合否発表から時は流れ俺たちは卒業を迎えた。クラスメイト達も各々の進路先を合格したらしくすげぇ喜んでいた。そんでもって今は堅苦しい学生服ではなく雄英の世間一般で言うお洒落なブレザーに身を包みあいつらと待ち合わせをしている駅まで歩いている最中だがちょうど今長年見知ったツラを見つけた。

 

 

「よっお前ら」

 

「ん…おはよ項羽……」

 

「おはようこうちゃん」

 

 いつぞやの事件が起きた駅の入り口付近で立ち話をしていたいつも通りでっけぇバック背負っている出久とダルモンに声をかける。此方も学生服ではなく真新しいブレザーを着ていた。うん。この前も見たが二人とも似合ってる。

 

「ん?勝己はまだかよ」

 

「かっちゃんなら『誰が落ちた奴なんかと一緒に行かなわきゃなんねーだよ!』ってさっき電話で先に行くって言ってたよ」

 

「…あいからわずだね」

 

「やっぱ出久の声真似はうまいな」

 

「ありがと」

 

 そんな平凡な会話を電車に乗りながらも続けて受験の時と同じ道を歩く登校するルートを今度みんなで散策しようなんて言う約束もし気付いたらパンフレットと共に付属されていた地図を見てデケェデケェ言いながらそれぞれの教室を探し歩いていた。

 

「そういや飯田も麗日もお前らとおんなじクラスだよな?」

 

「うん!でも拳藤さんだけB組になっちゃてさ、すごく落ち込んでたよ」

 

「あちゃー…まぁ知り合った奴全員が同じクラスなんてこともそうそうねぇしな」

 

「……後で慰めてあげよ…」

 

 あぁそうだあの後ダルモンも俺たち経由で女子二人とも仲良くなったけな初めて会った時二人のコミュ力が異常に高くてダルモンがすげぇあたふたしてたのを覚えている。まぁそのおかげで普段引っ込み思案のダルモンが二人と仲良くなったから万事全然OKなんだけども。

 そうこうしているうちにドデカイ扉にドデカク1のAと書かれた教室にたどり着く

 

「あ。僕ここだ!二人は?」

 

「俺らは……ここをもうちょい行ったところだなあんま遠くねぇよ」

 

「分かった。じゃあ終わったら校門でかっちゃんと待ってるから!」

 

「またね……」

 

 放課後に落ち合う話をした後出久が教室の中に入っていくのを見送ると俺たちも再び歩き始め自分たちの教室を探し始める。……と思ったらダルモンが俺の腕に抱きついてきた。

 

「どうした?いきなり…」

 

「……今日はまだ項羽に抱きついてなかったな〜って」

 

「人前でこんなに触れ合うのは俺はあんまり好きじゃないぜ」

 

「大丈夫…今は誰もいないから……」

 

「はぁ……甘えん坊が…」

 

 まぁ別に可愛いらしいから良いんだけれども…そんなうつつを抜かしながら頭を撫でていると目の前から出てきた出久に負けないぐらいのモジャモジャした紫色の髪をした隈の目立つ同学年ぐらいのやつに見られてしまった。見られた事に恥ずかしさを感じたダルマンは急いで俺の腕を離すと思いの外恥ずかしかったのか赤面しながらこっちだからと急ぎ足で自分の教室へ向かってしまった。残されたのは呆けた顔をしている男と俺だけだった。

 

「あー…すまん見苦しいとこ見せたな」

 

「お、おう大丈夫だ…」

 

 そう普段見なかった光景に驚いたのかシドロモドロ話す様子にこいつウブか?と思った。

 

「見たとこお前も一年生か?俺もだよ黒籍項羽だよろしく」

 

「ん、おう心操人使(しんそうひとし)…普通科だよろしく」

 

 差し伸べた手に自己紹介をしながら握手に応じてくれる心操の目は何故だが一種の諦めの様な目をしていた。そこまで呆れられることしたか俺?

 

「お。お前も普通科か俺C組。」

 

「そうか…ならよろしく頼む」

 

「おう!」

 

 心操も同じ組らしく一緒になって教室を探し始めその間お互いのことを話し合っていた。

 

「さっきの人はお前の彼女か?」

 

「そんなとこだな〜」

 

「はぐらかしたな…」

 

「ははっそれで…そうだな、お前の個性はどんなのだ?」

 

「………人のことを教えてもらうにはまず自分の事を話せよ」

 

 個性の話を振った途端薄くだが心操の表情が何かに怯える様な顔をなり始めた。ここからは注意深く話を進めなきゃ行けないかもしれん。

 

「…そいつもそうだな……俺の個性は『万象儀』この世のありとあらゆる万物を司る個性だ」

 

「は?」

 

「率直な感想をありがとう。まぁ簡単に言ったら何でもできる個性だ。なんだってな」

 

 

 俺がそう付け足すと心操から発せられる雰囲気が先程とは違う。怒りや羨望が混じった歪なものになり始め先程まで怯えを含んでいた筈の目は明らかに敵対する目つきになっていた。

 

「そんな個性を持っているヤローがなんで普通科に居るんだよっ…」

 

 叫ぶのを我慢する様に静かに激情を露わにしながら俺を見る心操。俺はそれを静かに見返した。コイツはきっと出久と同じように個性で苦しんで来たんだろうがはたまた別の何かなのか今は分からんが…今分かるのはコイツが何か企んでいる事だ。俺はそれに乗らなければいけなない。

 

「おおそれがな……」

 

 ここまで言いかけたところで言葉が途切れてしまった。ただ途切れただけじゃねぇ。頭の中にモヤが掛かったみたいに体が上手く動かせないくせに思考だけはハッキリしている。変な感覚だ。

 

「ハッ!何でも出来る個性でもこうなっちまえば肩なしだなザマァねえよ……」

 

 吐き捨てながら肩にバックをかけ直しながら歩き始める心操はこのまま俺に付いて来いと命令してくる。その言葉に応えるかのように俺の体はゆっくりと動き始め心操の後をついて行く。

 

 でも何故だろう前を歩く心操の横顔が勢いでやってしまった。やべぇみたいな顔になっている。考え無しかよ。

 

「はぁ…お前この位で俺を操れると思ってんのか馬鹿者め」

 

「っ!!?お前ぇ!なんで動ける!?」

 

 俺が普通に喋り始めたことにより前を歩いていた心操はありえないと言わんばかりに明らかに狼狽する。だがそんな騒がないでくれねぇか。一応ここ廊下だからな。

 

「お前バカっ…。そんな騒ぐな他の奴らに見られるぞ」

 

「……答えろ…どうして動ける……!」

 

 俺の言葉にじりじりと警戒しているのか離れていく心操は声を鎮めて問いただす。時間にしては僅か数秒だが心操と俺のお互いの間に沈黙が流れ始める。ここまで慌てながら聞いてくるんだ。きっとコイツの個性は頭の中におかしなモヤがある内は何も出来ない状態になってしまうんだろう。その間はさっきの俺みたいに心操の言いなりになるんだろか。

 

「知らん。動けるから動いただけだ!」

 

「………はぁっ?!」

 

 意気揚々としながら披露するように両手を広げながら答える俺に心操は目を開きながら先程よりも素っ頓狂な声を上げる。まぁ嘘なんだけれども。万象儀で頭ん中にあったモヤみたいなやつを無理やり剥ぎ取ったら元に戻っただけだ。

 

「しらねぇよたまたまお前の個性が俺には通じなかった。ただそんだけだろ?」

 

「…………化物かよお前………」

 

 諦め観念したかのように微笑ながら俺を化け物呼ばわりする心操に笑いそうになった。そうかそうか化物か…。まぁ世界最強だからなあながち間違っちゃあねーな。

 

「安心しろ別に俺を攻撃したからって特になんかしようかなんて考えちゃねーよ!これから級友になるんだからな仲良くやろうぜ心操!」

 

 そう言って心操の背中をバンバン叩くと奴は痛かったのか叩かれた背中を摩りながらこちらを訳わかんねと言わんばかりにこちらを見る。案外顔に出るなお前。

 

「頭おかしいのかよお前…。普通初対面の人間にいきなり洗脳した人間と仲良くしようだって…バカなのか?」

 

「順応が早いこった……洗脳って言うのかお前の個性。俺もお前とあんまり変わらんが同じことなら出来るぜ。ほら。」

(右手を上げろ)

 

「…なっ?!」

 

 頭の中で念じた瞬間心操の右手がバッ…と勢いよく挙がる。自身の手が意思と関係なく動いたことにより面白い反応を示す心操。

 

(そのままリズムにノッて踊れ)

 

 そのままおふざけでそう念じると心操の体が小刻みに動き始め最終的にベッドスピンまで行った。すげぇ。途中から俺も廊下の真ん中だというのに自分の意思とは関係なしに踊る自分に驚き1割。羞恥心9割な顔をしている心操と共に踊り始める。

 踊り終えると息切れを起こして尻餅をついている心操とは対照的にいい汗をかいて少しスッキリした俺達だったが直後になった始業のチャイムでどれだけ道草食っていたことを知り初日から二人して猛烈ダッシュして初日から目を付けられるのは免れた。

 

 

 

=====

 

「ほぉ。つまりお前もヒーロー科の編入を目指してると」

 

「…あぁそうだなんか文句あるかよ」

 

 なんとか教室に着き若干キレた心操に殴られた後。今は入学式のために整列してるんだが連番の俺達は静かにしなきゃいけないにも関わらず小声でお喋りしている。

 

「いんや文句も何も俺もお前と同じこと考えている身だからな否定しようがない」

 

「…そういやなんでお前は落ちたんだよ。なんでも出来る個性なんだろうなんでだ?」

 

「ん?あぁ単純だよ筆記で落ちた」

 

「………………お前には毎回驚かされるよ」

 

「褒めんなよ」

 

 「こんな奴に操られていたのか……」そう小さく隣で小さくボヤきながら結構本気そうに項垂れる心操と俺に教師陣から注意が飛ぶがすぐに切り替えた心操が真顔で返しまた俺に話しかけてくる。やっぱコイツ肝が据わってんな。

 

「……そういやA組の姿が見えねぇな」

 

 そう呟きながら本来A組が座る筈である誰も座ってない伽藍…とした空間を見る。

 

「確かにそうだなあとさっきから外で聞き慣れた爆発音がするのは俺だけか?」

 

「普通爆発音ってのは聞き慣れないよ俺は…」

 

「ちょっと見て来るわ」

 

 横でさらに項垂れている心操を無視して教師達にバレないように傷をつけ、目のみに万象儀を展開させ外に繋ぐと何やらグラウンドで人だがりが出来ているのが見えた。その中には体操着を着た見知った顔も何人かおりそれがA組だということがすぐ分かった。そして人だがりから出久が何やらボールの様なものを手に持ち出て来ると。近くにある円の中に入るとそれを勢いよく投げるとボールはボールは空の彼方に消えてしまった。

 

「A組がなんか楽しい事してるな………」

 

「…?何してんだよ?」

 

 此方には目を向けず壇上で話すお偉いさんの方を見て如何にも話を聞いてますよ感を出しながら此方に話しかけて来る心操。

 

「なんだろうな今俺の知人が遠投みたいな事してるな」

 

 しかも個性使って。そう付け加えると神妙な顔をしながら黙り始めた心操を横目で見てみるとさっきみたいな羨望や怒りの他に今度は焦りが見え始める。

 

「心操はなんでヒーローになりたいんだ?」

 

「は……?」

 

 突拍子も無く唐突に意味のわからない質問をされさっきみたいに素っ頓狂な声を上げながらこっちを見るが残念ながら真面目にお話を聞いているのでミエマセーン。心操も俺に習ったのか前に向き直り口を開いた。

 

「……こんな個性でも憧れちまったたんだ別にいいだろ」

 

 ズボンを握りしめ吐き捨てるように呟く心操は溢れ出した間欠泉のように自分が秘めていた思いを打ち明け始めた。

 

「お前らみたいな良個性を持って。望んだ場所に簡単に行けるような恵まれた奴らに俺の何が分かるんだよ」

 

「どうせお前の言う知り合いだっていい個性なんだろ。だからヒーロー科にいるんだ…」

 

 俯きながら嘆くように話す心操の頭を勝手だが覗かしてもらうことにしコイツの頭の中に集中しスッ…と目を閉じた。

 

 

『洗脳〜?!へっ〜すごいな悪い事し放題だいじゃん!』

『私ら操ったりしないでよ』

『ごめん心操君はちょっと……近づきたくないかな…』

『怖いよね〜〜〜』

『敵向きの個性だよな。心操って』

『裏でやばい事してるらしいぜ』

『将来の敵、有望株だよな』

『なんでいるんだろ?』

 

 

 きっとコイツが関わり合ってきた人間達の姿と頭ん中に流れてくるよくもまぁ吐く事の出来る心ない言葉達。やっぱり世じゃあ俺たちみたいな個性なんざ関係ねぇみたいな考えしている奴がやはり極端に少ない。コイツの周りにはそういう人間がいなかったんだろう。

 ……それでも俺の()()が個性に恵まれていると言うのは知らなくても聞き捨てならないな。

 

「………そいつは違うな心操。俺の知人は個性に関しては、はっきり言って恵まれていなかった」

 

「………あ?」

 

「あいつはな約一年前まで()()()だったんだ」

 

「は………?」

 

「体がある程度成長しないと発現しない個性でよ。それまでずっと周りからは無個性呼ばわりにされて馬鹿にされていたな」

 

「…………………」

 

「お前と同じだよただ憧れた。たったそんだけで十数年間己を磨き続けた愚直な男だ」

 

「もしあいつが憧れるだけの愚者なら向こうには居ない…………精神論になっちまうが人は心だけでどうにでもなるって事だ」

 

 話し終え。何を考えているか分からないが俯きながら黙り始めた心操にどうしようかと暫く思案していたがたった今いい事を思いついた。

 

「そうだな………なら心操俺のところで修行してみるか?」

 

「……は?」

 

 俺の提案に驚きまた素っ頓狂な声をしながら顔を上げた心操の顔は何をしたら良いか分かんない辛そうなあの頃の出久みたいな顔になっていた。

 

「今から体育祭まで一ヶ月二ヶ月ちょい…その間にお前をヒーロー科と遜色無いくらいに強くしてやる」

 

「………何でそこまで俺を気にかける?」

 

「簡単だ俺の()の為にお前みたいな奴が必要だからさ。誰かを傷つける事なく誰かを救えるお前の力が」

 

「何?」

 

 心操が今日一番の疑問だと言わんばかりに頭を傾けたと同時に長々と続いていた入学式が終わり伝統なのか知らんが拍手喝采が鳴り響き渡る中心操の疑問は後回しとなった。何故かって?おっかない狂犬らしき人間が俺たちの後ろいるからだ。

 

「ハッ…おい…貴様ら…式中に喋るとはなにごドオォア"ア"ア"ア"バゥバゥ!!!」

 

「なっ!」グッ!

 

「………………」チーン

 

 この後本気で怒ったハウンドドックに心操共々みっちり…しばかれ結局初日から目をつけられた俺たちだった。

 

 

 




そういえば年末前にヒロアカの映画と仮面ライダー見てきたんですけど。どっちもクソ面白かったです。ネタバレしたらダメだからめっちゃ簡単に言ったら仮面ライダーはめっちゃ熱くなって心ん中でずっとカッケェカッケェ連呼していた気ガスる。
ヒロアカは何でだろうニヤニヤが止まらなかった。そのぐらいに面白かった。最後の方なんざマジか!って思った。
個人の語彙力ない感想だけど最高すぎた。是非見てくだせぇ。


あ、あと修正終わりました。自分なりに満足いったんでお騒がせしました。これからもよろしくお願いです。


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勝負に賭けは付き物だよね?

どうも最近生活リズムを崩し気味で調子の悪い作者です。
たぶん次回ぐらいから前話みたいに雑談会を開いてみようかと思います。今回はなし。


 こうちゃん達と別れ人ひとり三人分ぐらいありそうなドアに1ーAと書いてあるドアを見てバリアフリーだな〜と呑気な事を考えながらもこのドアの先にこれから学校生活を共にする級友達に胸を膨らましながらドアをあけた。

 

「爆豪君!机に足をかけるんじゃない!製作者の方々や先輩方に失礼だぞ!!」

 

「うっせぇ!メガネ!前々から思ってたがテメェはうちのババァか?!」

 

「やっぱり君は口が悪いな!」

 

 中学からの悪い癖で机に足を乗せるかっちゃんに飯田くんがいつも通りの独特の身振り手振りをしながら怒っていた。

 そんな光景をこれから同級生になるみんながすごい見てるから何でだろうとても他人の振りをしたい気分になったけど此方に気付いた飯田くんがズンズンと近づいて来るのでそれは多分無理だろう。

 威圧感がすごいよ。

 

「おはよう!緑谷君。遅かったじゃないか!」

 

「おはよう飯田くん。制服似合ってるけど朝っぱらから何してるの」

 

「む?そうだ。君からも言ってやってくれないか一向に足を下ろそうとしないんだよ彼!」

 

 此方を見てヘラヘラと意地の悪い笑みをしているかっちゃんを指差しながらプンプンと怒る飯田くんを見て少し笑いそうになってしまった。

 

「そうだね。そう言う時はね…かっちゃんは基本自分の利益になるような事や不利益になる事を吹き込めば大抵は素直に言うこと聞いてくれるよ」

 

「なんと!例えばどんな風にやるんだい?」

 

 手を使って囁くとまるでそんな手があったかと驚嘆した飯田くんは今度は具体的にはどうするんだろうと僕に手を差し伸べながら具体例を聞いてくる。

 

「そうだね……おーいかっちゃーん」

 

「あぁっ?!んだデク!」

 

「多分もう直ぐ先生来るから足下ろした方がいいよっ!」

 

「……………………ッチ」

 

 僕が遠くでそう叫ぶと無言で足を下ろし始めた。舌打ちしたけど…。ちゃんと席に座り始めるかっちゃんを見た飯田くんはヤンキーに悩んでいた新任の教師ばりにおぉと感嘆していた。

 

「流石緑谷君!ツボを心得ているな」

 

「そりゃあまぁ…長い付き合いだしね」

 

 いつもだけどかっちゃんの単純さに何と言えないため息が出そうになるけどその前に僕の直ぐ背後にあったドアから見知ったボブカットの少女の顔が覗いた。

 

「お。デクくん飯田くん久しぶり〜。二人とも制服似合っとるね」

 

「ありがとう麗日君!君も似合ってぞ!!」

 

「うん!か、可愛いよ麗日さん似合ってるけど………名前…」

 

「へっ?かわっ?!ん"んっ〜〜……。名前嫌やった?…なら止めるけど…」

 

「いやっ別にいいだけど初めてだな〜って」

 

「爆豪くんがデクって言ってたしそれに……デクって頑張れって感じでなんか好きなんだ私!」

 

デクです!

 

 ガッツポーズをしながら何時もよりも照れるように頬を少しだけ染めて笑顔で言ってくれる麗日さんに感化されたのか多分僕も赤くなってるんだろう。即答してしまった。

 

「変わり身が早いぞ緑谷君!!」

 

「いや〜でもあんまり悪い気はしないって言うか…何というか」

 

「…………仲良しごっこしたいのなら他所に行け」

 

((((((………なんかいる!!))))))

 

 僕たちの会話が終わるのを待っていたかのようにそこに居たのは黄色い寝袋に頭だけ出しているホームレスみたいにくたびれた人が廊下に倒れていた。 

 教室場のみんなが驚く中モゾモゾと寝袋から出てくるくたびれた人に思わず警戒してしまう。

 

「……失礼ですがあなたは…」

 

「警戒するな合理性に欠く。担任の相澤消太だよろしくね」

 

((((((担任!?!?))))))

 

 まさかの担任だった相澤と名乗る先生。けどヒーローにこんなくたびれた人見たことが……。

 

「早速だがこれに着替えてグラウンドに出ろ。時間は有限。早くしな」

 

 先程まで自分が包まっていた寝袋から体操服を取り出す相澤先生はそれだけ言うと寝袋を持ってツカツカと教室から出て行ってしまった。残された僕たちはなんだなんだと言いながらなんとか体操服に着替え教えられてもいないグラウンドへと向かった。

 

 

 ついでだけどさっきまでの僕たちのやりとりを見て後から知ったんだけど他のみんなは「入り口で何やってんだこいつら」皆口を揃えるように思っていたらしい。

 

 

 

=====

 

 

 

 

『個性把握テスト〜っ!!?』

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 他の端役共が声を揃えて叫ぶと一番メールの中で入学式を楽しみにしていた丸顔が相澤センコーに問い始めやがった。

 

「ヒーローになるのにそんな悠長な時間は要らん。雄英は自由が校風の売り文句。教師側もそれもまた然りだ肝に命じておけ」

 

 それだけ言うと丸顔は黙り周りの奴らも黙り始め今度はセンコーが話を続ける。

 

「今から諸君らには個性有りの身体能力テスト。ボール投げ、立ち幅、50メートル走、持久走、握力、反復横飛び、上体起こし、長座体前屈…この8種目を行なって貰う。…おい入試一般首席の爆豪」

 

「あ"ぁっ!!?」

 

 首席とか言う単語を出すんじゃねぇー!あいつの顔がチラつくんじゃっ!!

 

 突然叫び出した俺に他の奴らに周りの奴等は騒ついていやがるが何となく俺の心情を察したデクが他の奴らに弁明してやがるがセンコーはそんな事気にも止めず俺にボールとしてはおかしなボールをほん投げてきた。

 

「叫び出したことは知らんが中学の頃ソフトボール投げ何mだ?」

 

「ひゃくさ「135mです」何勝手に答えとんじゃあデク!!あと0.5忘れんじゃねー!!」

 

「………どうでも良いから、早よこれ持って投げろ。円から出なかったら何しても良いから」

 

「……………ッチ」

 

 隣にいるサムズアップしながら煽るように笑顔で送り出すデクを青筋立てながら後でぶん殴ると心に誓い。取り敢えず投げられたボールを握り潰さんばかりに持ちながら大人しく円の中に入るが…ぶっちゃけ俺の怒りはまだ収まってねぇーぞ!

 

 

 

((((((どうでも良いって言ったけど135mって普通おかしくない??)))))

※クラス総意の意見でした※

 

 

 

 

 適当に体をほぐした後。今出来る最大火力の準備をし構える。ついでにデクへの殺気も混ぜておく。

 

「死ぃん…ね"えぇ!!!!!」

 

 球威に爆風と怒りを乗せながら投げ一直線に飛んでいったボールは何処まで飛んで行ったか分からなくなる程まで行ったらセンコーの持っていたケータイに音が鳴ると俺たちに俺を見せるように向けた。簡素なケータイには9682mと書かれていた。

 

「9682って…マジか!!」

「個性思いっきり使えるのか()()()()っ!」

「流石ヒーロー科っ!!」

 

 遠くに居る端役共から歓喜の声が上がるがその瞬間俺の目の前にいるさっきまでくたびれたセンコーからおどろしい。イヤーな気配がしてきやがった。

 

()()()()か……お前らそんな腹づもりで三年間過ごすつもりか?」

 

「!?」

 

「そうだな…よしこうしよう。トータルの成績が最下位の者は見込み無し…と判断して除籍処分としよう」

 

 そうはたから聞いたら恐ろしい事を口にしたセンコーとは裏腹に俺たち二人は周りにバレないように少しだけ口角を上げていた。

 

「上等だ………おいデク勝負だ!俺が勝ったらお前のメニューを三…いや五倍だ」

 

「良いよ。でもかっちゃんも負けたら五倍ね!後、お互いの好物を奢る…すき焼きでいいよ!」

 

「なら俺は激辛ステーキだな…」

 

 笑みを浮かべ条件を述べながらデクに詰め寄ると此方も好戦的な笑みを浮かべて体をほぐし始めるデクに俺も体を本格的に動かし始めると周りの奴等は俺たちを異常のような物を見る目で見てくるがお構いなしに俺たちは動き続ける。

 

「お、おいお前ら!話聞いてたのか除籍になるかもしんねぇだぞ!」

 

「それがどうしたぁ!たかが除籍になるぐらい死ぬよりマシだろ!」

 

「はぁ!?」

 

 不意に頭ヤンキーみたいな尖った髪型の赤髪が話しかけて来たが鼻で笑って言い返してやる。

 

「そうだな…死ぬよりマシだ。こんな理不尽(ピンチ)より理不尽な自然災害、敵ども…日本は理不尽にまみれている。だがそんな理不尽を覆すのがヒーローの役目だ。そのための理不尽(ピンチ)を雄英は三年間全力で苦難をお前達に与える。だからお前らは全力で乗り越えてこいPlus Ultra(プルスウルトラ)だ全力で来い」

 

「………だぁっ!男らしいじゃねーか覚悟決めるしかねぇっー!!」

 

 センコーの言葉に一瞬たじろいた赤髪だったが今度は歪な音を立てながら両拳同士を打ちつけ覚悟を決めていた。他の端役共も数人かは覚悟を決め意気込み始めている様子だ。

 

「なぁあんた!名前はっ!?」

 

「あん?」

 

「俺の名前は切島鋭児郎(きりしまえいじろう)よろしくなっ!男らしいぜっ!あんた!」

 

「知るか。早よどっか行「はいはいそうやって喧嘩売らないの」

 

 追い払おうとしたらデクに抑えられてしまった。何しやがる死ね。

 

「何喧嘩売ろうとしてんのさただ挨拶しているだけなのに…ごめんね。かっちゃ…この子は爆豪勝己。僕はその幼馴染の緑谷出久。よろしくね切島くん」

 

「緑谷に爆豪か!よろしくな!」

 

 俺を無視して握手をし俺を無視したまんま話を続けるこいつらにだんだんムカっ腹が立ってきた。

 

「おいお前ら!俺を無視してんじゃねぇーーー!!!」

 

「おい爆豪さっきからお前うるさいぞ」

 

 

 

 

=====

 

 

 

 

 

第一種目50メートル走

 

 お腹のベルトからレーザー?出しながら飛んでいた子の記録が終わり今度は僕とかっちゃんの番だけど他とは違いお互いの影響を受けない為に離れた状態で構えていた。

 

『イチニツイテ…ヨーイ…ドンっ!』

 

 記録機から発せられる声に従い前もって発動させておいたOFA(ワン・フォー・オール)でレール内を疾走するけどそれはかっちゃんも同じで爆破の力を利用する事で僕と同じぐらいに速く動きほぼ同時にゴールテープを切った。

 

 

「「どっちだ!?」」

 

 

 

『ミドリヤ 1.05秒』

『バクゴウ 1.07秒』

 

 

「いっやったぁーーーー!!!」

「ダァッくそボケがァァーーーーーーーーー!!!!!」

 

 お互いゴールした瞬間に振り返り記録機の声を聞いた瞬間喜ぶ僕と悔しそうに叫びながら隣でボムボムしているかっちゃん。

 

「おいデク!次勝つから早く来い!」

 

「次も僕が勝つよ!!」

 

「死ねっ!!」

 

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 

「「「「いやっ!速すぎだろ!!」」」」

 

「くっ……!足には自信があったんだが……」

 

「侮れません…本気でやらねば……」

 

「やっぱり二人ともすごいね〜」

 

 

 

第二種目握力測定

 

 みんな顔見知りのいない中適当に班を作りながら測定するこの種目で当然のように僕たち二人は麗日さんと飯田くんで組んでいた。

 

「よっしゃ!目ぇかっぽじってよく見とけテメェら!!」

 

「はいはい見てるから早く」

 

 目をほじるとかと言うちょっと意味のわからない言葉を叫んだ後に握力計を青筋立てながらも普通に握るかっちゃん。

 

「お。これは普通なんやねぇなんか安心しt「BOOOOM!!!」……………」

 

 普通に測っていたことに安堵した麗日さんを裏切るように爆発した時の圧で更に力を込めるとそのまま音を立てて握力計が壊れてしまった。そのままみんなの様子を伺っていた相澤先生が近づいて来た。

 

「……爆豪あんまり壊すな。計測不能にしておけ」

 

「分かった……」

 

 そのまま新しい計測機を僕に手渡すと相澤先生はまたみんなの様子を観察し始めた。

 

「じゃあ次は僕ね…」

 

 そう言って全身にOFAを巡らせると握っている右手だけ最大許容量の

50%の力で思いっきり握ると握力計は破片と火花を飛ばしながらバキンッと音を立てて壊れてしまった。すると足早に相澤先生が新しい握力計を持ってきてくれた。すいませんお騒がせして。

 

「………………お前もだ。計測不能」

 

「…はい。すいません」

 

「この勝負は引き分けだな」

 

「ッチ!!」

 

「やっぱ二人ともすごいね〜」

 

 

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

「………………」手をいっぱいにして540kgだった人

「………………」万力機を使った人

 

「あの二人ヤベェな〜」

 

 

 

第三種目立ち幅跳び

 

「こちとらずっーと飛べるんじゃい!!」

 

「……緑谷。あいついつまで飛ぶことができる?」

 

「体力と邪魔が無い限り半永久的に飛び続けると思うんですけど……」

 

「………そうか」

 

 

 

 爆豪勝己 記録∞

 

 

 

「緑谷君。かなり跳んでいたじゃないか!どうだったんだい?」

 

「ありがと。でもずっと飛び続ける事はできないからね…300ちょいだったよ……」

 

「オラッ!!!俺の勝ちだぁっ!!」

 

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

「「「…………∞ってなんだ?!」」」

 

「なんだろう驚くのが無駄なような気がしてきたぜ…」

 

 

 

第四種目反復横跳び

 

 

 常時35%の力で周りから見たらうすーく残像が出るくらいの速さで跳びまくり記録157回だった。かっちゃんは爆破の勢いで跳び続けて152回だった。

 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"ア"ア"ア"ァァァァッッッ!!!!!」

 

 

 

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

 

「オイラの唯一の希望がア"ア"ア"ァァッ!!」

 

「「「……ドンマイ」」」

 

 

 

第五種目ボール投げ

 

 

「っセイ!」

 

「………∞」

 

 円の中に入りボールを両手で包んだ後。ゆる〜くキャッチボールをするような形で投げたのにボールは重力知らずなのか永続的に飛び続け遂には見えなくなってしまった。

 

「すげぇ!あいつら以外で∞が出たぞ!!」

 

「なんかよく分からんけどすげぇ嬉しい!」

 

「すごいよ麗日さん!」

 

「えへへ〜」

 

「おいてめっ!丸顔!何俺より飛ばしてんだよっ!」

 

「なに?文句あるん爆豪くん?」

 

「あるわっ!!」

 

「おい次。緑谷だ早よ」

 

「あ、はい」

 

「頑張れデクくん!」

 

 かっちゃんと言い争いをしている傍らサムズアップをして応援してくれる麗日さんに此方もサムズアップで返し投げ渡されたボールを持って円の中に入っていく。途中誰かに見られている気がしたけど多分周りにいるみんなだと思った。

 

 僕の今出来る許容量最大常時50%の力で体全体に緑色の紫電を纏うと体中から骨の軋む音が聞こえるが無視しておくと思いっきりボールを投げると暴風を吹かせながらかっちゃんと同じような弾速で結構飛んで行ったけど勝てるかな……。

 

 そんなネガティブな事を考えていると相澤先生が持っているケータイに音が鳴り僕の記録が表示される。

 

「9604m……」

 

「あぁ!おしい!」

 

 僕の替わりに悔しがっている麗日さんとその横で小さくガッツポーズをしているかっちゃんをチラッと横目で見てすぐに視線を戻し二投目に意識を向ける。

 

 

 やっぱりかっちゃんは凄い。個性を貰ってもリスクを背負わないと勝てないなんて。やっぱり凄い奴だ。

 

 

 もう一度個性を体中に張り巡らせ全身の力を使いながらボールを振りかぶる。ボールが掌から離れる感触を感じ。指だけボールに触れている感覚がわかれば少しだけ無理をする。入試の時と同じように60%の力を人差し指だけの一点に込めてボールを思いっきり押し投げた。

 最小限の負傷で強い威力を……。

 

 飛んで行ったボールはさっきよりもグングンと伸びて行き見え無くなるが60%の力で押した負荷は指を痛々しい紫色に腫れさせていた。多分折れてるだろうな……。

 暫くすると相澤先生の持っているケータイから再び音が鳴った。

 

「……10205m」

 

「やったぁ!デクくんが勝った!!」

 

「おい…何喜んでんだ丸顔……!」

 

「ヒッ怖っ!爆豪くん!」

 

「それにな…まだ俺の出番は終わってねぇんだよ!」

 

 そう唸りながらボールを手にして僕の方…正確に円の中に近づいて来るけど少しだけかっちゃんは苛立っているように見えた。

 

「……またテメェは無茶しやがって…早よ戻れや……!」

 

「うん……ごめんありがと頑張ってね」

 

「どれか一つにしろ」

 

「ハハ…」

 

 睨んでくるかっちゃんを背にしはにかみながらポケットの中からいつも常備しているテーピングで折れた指を固定しながらみんなの所に戻っていると前から来ていた麗日さんと飯田くんに驚かれてしまった。

 

「ちょっ指デクくんまた!」

 

「怪我してるじゃないか!」

 

「わわっ大丈夫だよありがとう…それに今はそれよりも今はかっちゃんだ」

 

 指を固定しながらぐいぐい来ら二人に心配ないと伝えると腕をブンブン回しているかっちゃんに視線を戻す。

 

(かっちゃんの事だ。最初みたいな普通のことをするんじゃなくて何か…絶対僕の記録を超す何かを……)

 

 そんな事を考えていると最初の時みたいに全身の筋肉を使いながらボールを振りかぶるとさっきみたいにボールを爆風に乗せて…………普通に投げた。

 そう思った。

 でも投げ終えたかっちゃんの唇の動きを見て違うと確信した。

 

 

「発破」

 

 

 そうかっちゃんが呟くと同時にボールの飛んでいった遠くの空の方からから何かが爆ぜ。空気を震わす音が響いた。暫くして測定の結果が鳴った。

 

「…13560m」

 

 周りのみんなが驚き騒々しくなる中。悠然と戻ってくるかっちゃんを見ながら僕は一人呟いていた。

 

「はぁ……また負けちゃったか…」

 

 

 

=====

 

「んじゃま時間も惜しいからパッパッと結果発表だ」

 

 ボール投げの後もテストは続いたけど痛みで殆どの競技でかっちゃんに負けてしまい。今は相澤先生がみんなの前で気怠そうに結果を発表している最中だ。嫌だな〜ご飯奢るの。

 

[1位]爆豪勝己

[2位]緑谷出久

[3位]八百万百

[4位]轟焦凍

[5位]飯田天哉

[6位]常闇踏影

[7位]障子目蔵

[8位]尾白猿夫

[9位]切島鋭児郎

[10位]芦戸三奈

[11位]麗日お茶子

[12位]口田

[13位]砂藤力道

[14位]蛙吹梅雨

[15位]青山優雅

[16位]瀬呂範太

[17位]上鳴電気

[18位]耳郎響香

[19位]葉隠透

[20位]峰田実

 

 

「オイラ終わったァッ………!!!」

 

「ドンマイ………」

「峰田……お前の事は忘れない」

「辛いな……胸が苦しい…」

「だったら変わってくれよ………!」

 

 背の小さい髪の毛がぶどうのような人が他のクラスメイト達に怨念がましくすがっていくがみんな目を逸らし峰田くんは自分の行く末を想像してしまったのか頭を抱えながら泣き叫んでいるなか相澤先生が口を開いた。

 

「因みに除籍はウソな」

 

「…………へぇ?」

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

『はーーーーーーー!!!!??』

 

 情けない声を出しながら相澤先生の方を振り返る峰田くんや僕たちを嘲笑うかのようにサラッと事実を述べた先生にみんなで叫んでしまった。

 

「これにて本日は終わりだ教室に置いてあるカリキュラム等に目を通して今日は帰っても構わない。それと緑谷、リカバリーガール(ばあさん)とこ行って指直してこい明日からもっと過酷な試練が待ってる」

 

 みんながまだ驚いて唖然としているがそんなことは気にしないと僕に保健室利用許可の紙を渡した先生は僕たちを残してスタスタと帰っていった。

 

 峰田くんは泣きながら喜びみんなから胴上げを受けていた。流れで僕も混ざってみんなと祝福し仲良くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足ですが前話書いた前書きでの雑談会は東耶等の原作で死んでいないキャラは登場しません。
死んだら出す予定です。


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戦闘訓練①

とある部屋の雑談会


「しかしなんで項羽とダルモンだけが向こうの世界に行ったのか疑問だな…」

 いつも通りと言うか才能上の都合でとっても取れない帽子の鉤十字のシンボルを揺らしながら上等のドイツビールをくいっと飲み杯を空にした少しだけ酔った様子のヒトラーは自分と同じように酔った様子のかつて共に生きた仲間達と己の信念のために敵対した者たちにボヤいていた。

「ホホホ…この予言書にも項羽様が此のような場所に行くなどと言う予言は出なかった。そもそも死後のことなどそもそもこの本には書かれておらん。この場所のこともの…予言だけじゃ分からんもんじゃ」

 ペストマスクを付け片手に自らの才能である予言書を開きながらノストラダムスがマスクで隠れて見えないが感慨ふけるような声で話すとそれぞれ各自の叡智をもちあわせる才能者たちは自分たちの気の合う仲間たちとああだ、こうだと論議を始め、もともと騒がしかったこの部屋は更に活気さを増し煩くなってしまった。

「自分は宗教や予言といった類のことは深く知らないでありますが我々なら心当たりのあることがあるのではないでしょうか?」

「輪廻返り……」

「いや!その可能性は低いと考えるね!何故ならこの古王は長きにわたって花弁を研究したのだからな!あははははははッ!」

「貴様もう酔ってるではないか軟弱者め!ふはははッ」

「何故あいつは縛られた状態で酔えるんだよ…おい船坂」

「知らないであります」

「お主はどう考えるダーウィン?」

「進化論のワシに聞くな」

「せめて宗教系の廻り者がいれば……」

「ノイマンなら分かるんじゃない?姉さん」

「む!妹が私より別の人を頼ってるよどうして!」

「ごろにゃ〜〜」

「…………一気に騒がしくなってしまった」

「………………」コクコク

「まぁまぁ。いいじゃないですかこんなに騒がしくても」

「……そう言えば君はまだ何も言っていないねダヴィンチ」

「まぁ答えを知ってますからね」

「…ほぉ興味深いね多才の具現者である君の考え教えてもらおうか?」

「……残念ですけどお教え出来ません。…それにみんなで考える方が楽しいじゃありませんか」

「………はぁ。どうしてうちのリーダーたちは愉快な人間が多いんだ」




とある部屋の雑な雑談会
最初は馬鹿なミソで考えてみましたが力尽きました。



「そういや。なんであん時爆豪キレてたんだ?」

 

「あ"?」

 

 翌日。午前は雄英でも極々普通の授業をし、昼飯時。切島くんの提案でいつも通り光己さん特製の愛情弁当を持ったかっちゃんと麗日さん、飯田くん、僕を連れて多くの人でごった返す食堂にみんなで来ていた。何ともない平穏な話をしていたら光己さん特製愛情卵焼きを頬張ろうしていたかっちゃんに切島くんが話の読めない質問をしてきた。分かった。愛情、愛情言いすぎたよごめんて。だから拳で頬をぐりぐりするのをやめて。カツ丼食べれないから。

 

「爆豪くんがキレるっていつの話切島くん?この人いつだってキレとるよ?」

 

「誰が常時キレてんだ…!ハっ倒すぞ丸顔……!!!」

 

「麗日さんだいぶかっちゃんの扱いに慣れてきたね……」

 

「ダメだぞ爆豪君!女の子に暴言を言っては!」

 

「うっせーぞメガネ!そんで!?いつの話だクソ髪!」

 

 かっちゃんに指差してそう言う麗日さんに少し驚嘆する僕とかっちゃんに身振り手振りを加えながら憤慨する飯田くんと…様々な反応に少し困惑気味な反応をする切島くんにかっちゃんがキレながらも話を進める。流石。

 

「切島な……ほら相澤先生がお前に中学の頃の記録を聞いた時だよ。ほら急に叫び出した時…」

 

「あぁ、あの時か…」

 

「……………ッチ」

 

 質問の意味を理解して納得した僕の隣であの時のことを思い出したのか小さく舌打ちをし紙コップに注がれた水を啜るかっちゃん。え?何、説明僕に任せんの?

 

「あの時はね…そうだなー…記録を聞く前に相澤先生がかっちゃんを呼ぶときに言ったこと覚えてる?」

 

「あ?えーっと…確か………入試首席合格の爆豪だっけか?」

 

「うん。その時かっちゃんは首席って言うフレーズにキレたんだよ」

 

「…?どう言うことなん。デクくん」

 

 他のみんなは食べ終わり三人とも仕方なしと話し始めた僕に耳を傾けてくる。かっちゃんは腕組んで寝始めました。

 

「実はね…。実技試験の時かっちゃんより上の一位の奴がいたんだけどね。僕とかっちゃんの幼馴染なんだけど…でもそいつ筆記試験で落ちちゃってさ。しかも僕たちよりも全然強いからね…それでその幼馴染のおこぼれみたいな一位を貰ったって思ってるかっちゃんは未だにその事引き摺ってるからその事だと思うよ」

 

「……つまり爆豪は負けていじけてるってことか?」

 

「そう言う事だね」

 

「おい誰がいじけてるだぁ…!それに俺は負けてねぇ!脳みそは俺の方が上だ!!」

 

 寝ていた筈のかっちゃんが目を瞑ったまま怒鳴ってきたけど無視しておく。すると驚いたような顔をしている麗日さんが僕に聞いてきた。

 

「………チョット待って。もしかして幼馴染って黒籍くんの事?」

 

「あ、うんそうだよ」

 

「えーーー!じゃあ黒籍くんてもしかしたらヒーロー科受かっとったん!?」

 

「そうだねー。僕とかっちゃんに100ポイントぐらい差つけていたからね」

 

「はっ?!お前らに100ポイントも差ぁ付けたのか!どんなのだよその…黒籍って奴は!」

 

「おいデク…よけぇなこと言ってんじゃねーよ!」

 

 今度はちゃんと起きて物申すかっちゃんは話は終わりだと言わんばかりに弁当を纏めて立ち上がり「先に行くっ!」とズケズケ歩いて行った。置いてきぼりかな?

 

「………時間も時間だし僕たちも行こう。授業に遅れてしまっては先生に申し訳ないからな」

 

「そうだね。それに今日は…」

 

 

 

=====

 

「はじめてのヒーロー基礎学の時間だ!少年少女たち!!」

 

『オールマイトォ!』

 

「早速だが今日は戦闘訓練!入学前君たちの要望に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)に着替えてグラウンドβに集合!!」

 

『オールマイトォ!!』

 

「…………え?」

 

「………展開早ぇんだよっ!!クソがぁ!!!」

 

 

 

=====

 

 教室での謎の早い展開にかっちゃんが叫んだことはカットしておき今は貰ったコスチュームが要望通りになっているか確認中である。かっちゃんも自分の考えた通りの物が来たのか子供が見たら確実に一発で泣き叫ぶ、満足そうな凶悪な笑みを浮かべていた。

 

 と言いつつ僕もベンチの上に置かれているコスチュームたちを見ながらニヤニヤしている。

 僕のコスチュームは母さんが入学祝いとして買ってきてくれた濃緑色を基調とした黒い線が入ったジャンプスーツとオールマイトに似せた二つの触角のあるフードと満面の笑みを模したマスク、軽くて強度の高い金属が入ったシューズと自分で作った馴染み深いアイテムたちとコンパクト化された医療用具を入れておける赤いポーチだ。

 

「うおっ!緑谷それピストル!?」

 

「わっ切島くん。…って裸!?」

 

 後ろからの声に振り向いてみるとそこには既に着替え終わり?コスチュームなのに何故か上裸の切島くんが立っていた。

 

「おう。俺の個性だったら硬化したときに簡単に服は破れちまうからな!これが俺のコスチュームだ。多少寒いけどその辺は根性でなんとかしてやるぜ!」

 

 硬化させた拳同士を打ち付け合いながらそう意気込む切島くん。確かに彼の個性なら自分自身が最大の盾であり矛でもあるから無駄に装備する必要が無いのか…。

 

「なる程…理に適ってる!カッコいいよ!」

 

「サンキュー!って言うかお前それ銃に…スタンガン?!カッケェ!」

 

 ベンチに置いてある塗装のされてないゴツゴツした銃やスタンガンやメリケンサック等。普通の人なら持っていなさそうな危険な物を指差しながら目を輝かせている切島くん。やっぱり男の子なら惹かれるよね!

 

「うん自作だからちょっと見栄え悪いけど一番これが手に馴染んでるし丁度いいんだ」

 

「「「「自作!!?」」」」

 

「うおっ!?」

 

 さっきまでかっちゃんよろしく嬉しそうにコスチュームに着替えていた他のみんなは僕がこのアイテムたちを作ったということを聞いていたのかほとんどの人達が食いついてきた。

 

「まじか緑谷!?すっげぇ!」

「これを緑谷君が……」

「才能マンかよ!」

「己で作り出した代物で魔を討ち払う代物か…素晴らしい……」

「触ってもいいか!?」

 

 この後ワラワラとアイテムの周りに群がり触り始めるみんなを止めることができなかった僕たちは「こら!少年たち自分のコスチュームに見惚れるのはいいが時間をかけ過ぎだ!みんな待ちくたびれてるぞ!」迎えに来たオールマイトに怒られてしまった。

 

 

 

=====

 

「おっ、デクくんかっこいいね他に足ついとるよ!いいねー」

 

「うおお…麗日さんそれは…!」

 

 オールマイトに注意された後更衣室に残っていたみんなと急いで着替えみんなと仲良く全力ダッシュで先に行ったかっちゃんや他のみんなが待っている場所へ走ると全身パツパツスーツの麗日さんがいた。

 

「要望アバウト過ぎてね、パツパツスーツんなってしもうた…」

 

「ヒーロー科最高」

 

「ええ…」

 

 恥ずかしそうにはにかみながら頭をかく麗日さんを見てフリーズしていた僕のところに全力で走って息を切らしていたはずの峰田くんが一通りみんなのコスチュームを見てきたのかとても満足そうで間抜けな顔をして親指を立てていた。

 

「さて!ちょっと遅くなってしまったが戦闘訓練のお時間だ!今後はちゃんとメリハリをつけて動くようにな!!」

 

「はい!誠にすみませんでした!!!」

 

「真面目やね飯田くん」

 

「ごめんなさい僕のせいなんです…」

 

 遅れてきた僕たち男子を代表するかのようにオールマイトや他のみんな達に謝り始める飯田くんを見て何だかすごい罪悪感に苛まれてくる。ごめんなさい……。

 

「いいってことさ!そんでもって今回は屋内での対人戦闘訓練!!これから君たちには2対2の屋内戦をしてもらう!」

 

「勝敗のシステムはどうなりますか?」

 

 やけにテンションの高いオールマイトが今回の実習内容を発表すると前の方にいたとんでもないコスチュームをした人がオールマイトに質問する。

 

「ぶっ飛ばしてもいいんスかァ」

 

 その横で顔を俯かせて明らかに危ない感じを出すかっちゃんもとんでもない。おめでとう君がヴィラン役だ。

 

「また除籍みたいなこと有るんですか…」

 

 初日のように除籍になるのではと不安そうな顔をする麗日さん。

 

「分かれかたはどのようにすれば良いでしょうか!」

 

 どこまでも真面目で独特のジェスチャーで動く飯田くん。

 

「このマントヤバくない?」

 

 見ただけで分かる我の強い青山くん。

 

「んんん〜〜〜聖徳太子ィィ!!!」

 

 一気に質問されて悶えるオールマイト……。

………………カオスだ。

 

 

「いいかい?よく聞くんだ少年少女。これは授業ではまだ習っていない筈だと思うが…敵退治は屋外で多く見られるが実際には屋内での凶悪敵出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会では真に賢しい敵は私たちの見えない内側…屋内(やみ)に潜む!と言う訳で、今回の状況設定は敵がアジトに核兵器を隠しておりそれをヒーロー側が制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収すること!敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえることだ!」

 

「ケロッ、オールマイト先生。基礎訓練も無しにやるのかしら?」

 

「その基礎を知るための実践さ!因みにコンビ及び対戦相手はくじ引きだ!そして結果が…これっ!!」

 

 

Aチーム:麗日&緑谷

 

Bチーム:轟&障子

 

Cチーム:八百万&峰田

 

Dチーム:爆豪&飯田

 

Eチーム:芦戸&青山

 

Fチーム:砂藤&口田

 

Gチーム:耳郎&上鳴

 

Hチーム:蛙吹&常闇

 

Iチーム:葉隠&尾白

 

Jチーム:切島&瀬呂

 

 

「うおおおすごいね!縁あるねデクくん!」

 

「うん、ホント………」

 

 

第一戦

 

AチームvsDチーム

 

 

 

「デクぅ………!!」

 

「縁がある………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーロー基礎実習

戦闘訓練

開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




花弁の11読んだらもう2度と出出てこないだろうと思っていた項羽が出てきて泣きそうになった。


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戦闘訓練②今思ったけどなんとも平凡なサブタイ。

現実逃避して書きました。
テストベンキョウシタクナイ。


 麗日さんの個性で二階からビルに潜入し核の捜索を開始する僕と麗日さんはおそらく恐らく来るであろう敵襲に警戒しながら進んでいた。

 落ち着け緑谷出久、まずは情報整理だ。

 

 

 

 ーーーまずこの訓練のルール。ヒーロー側は核の確保、敵を捕獲認証テープで全員捕まえることが勝利条件。敵側はヒーロー側を捕まえるもしくは制限時間まで核を守ること。

 

 

 ーーーヒーロー側は核の居場所が分からないプラス敵側の個性が不明な状態でのスタート。

 

 

 ーーー個性はまだいい。幸いなことに三人の個性は把握している。問題は核の確保と確実に僕を狙って来るであろうかっちゃんの対処だ。

 

 

 ーーー核の防衛には飯田くんがつく筈だ。かっちゃんは麗日さんより核を取る可能性が、危険度が高い僕を逃す事は確実にない。絶対ない。僕が抑えられてる間。機動力の高い飯田くんが核を持って逃げられたらまだ速さに欠ける麗日さんに勝機は恐らくない。

 

 

 ーーーなら機動力に勝るものを。

 

 

 ーーー訓練が始まる前に作戦の概要と共に麗日さんに渡したアイテムは上手くいけば飯田くんに勝てる代物だ。仮に飯田くんに麗日さんが触ることで無重力状態に出来たなら主導権は握ることができる。理想的なのは無重力にした状態でアイテムを使うことが出来れば飯田くんを完全に無力化することが出来る。

 

 

 ここまでの熟考に1秒の半分。普通の人間ならばまず真似する事ができないことを緑谷は長年、自分よりも圧倒的に強さの格が違う相手と戦って来た己の身を守るために思考を早く、並列的に、動かすための訓練を戦いの中で養ってきた。

 

 

 ーーーかっちゃんの個性は性質上、隠密行動にとことん向いてないけどそんな事はかっちゃんも承知の筈だ。と言うかその事で相談もされたし克服するための練習もしこたま見てきた。

 

 

 ーーーあぁ。本当に強いな。

 

 相手の強さに歯噛みしながらも周囲を警戒しもしかしたら次の曲がり角で来るかもしれない奇襲に構えていた。が…

 

BOOOM!!!

 

 突如曲がり角の手前、二人が通ろうとした壁が爆散した。動物の勘なのかなんとか麗日を庇い避けることのできた緑谷だがフードの切れ端が少しだけ焼けてしまい。ギリギリだったのが目に見えて分かる。

 

「やっぱり来ると思ったよ。かっちゃん」

 

「やっぱ避けやがったかクソが…」

 

 勿論壁を爆発させたのは爆豪である穴の開いた壁から現れると今度は互いにお互いの行動を予想していたのか睨みを利かせあいながら悪態を呟きお互いに相手の次の行動を伺っていた。

 

「………おい丸顔早くいけや。上でメガネが待ちくたびれてんだ」

 

「「!?」」

 

 口火を切ったのは黙っていた爆豪だ。明らかな待ち伏せ発言に動揺し同時に警戒する緑谷と麗日。それはそうだ。自分たちが考えていたことを相手から提案されるんだ。そりゃ警戒しないのはかなりのアホか間抜けだけである。

 

「……行って麗日さん」

 

「っでもデクくん!」

 

「行って!」

 

「ッ……無理せんといてよ!」

 

 緑谷は理解し半ば諦めていた。

 いつかは緑谷と爆豪が、麗日と飯田が対峙する構図になってしまうんだそれが少し早まっただけ。

 

 別の道を探しながら走り去ってゆく麗日を背にし緑谷は懐から馴染み深いスタンガンを取り出し戦闘態勢をとる。

 

「来ると思ってたよ。かっちゃん…!」

 

「…そう思ってんなら早く動けバッーカ!」

 

 叫びながら突貫し隙のない動きで自分を爆破せんと腕を伸ばす爆豪に緑谷はスイッチを入れっぱなしのスタンガンを爆豪に投げ捨てる。

 突如迫ってくるスタンガンに一瞬驚いた爆豪は籠手でそれを振り落とすが目の前にはすでにスタンガンを回避するためにできた隙を突こうと右足を自分の鳩尾に叩き込もうとする緑谷が迫っていた。

 

 急いで振り落とした逆の手にある籠手を盾がわりにして防ぐがはじき飛ばされ壁際まで飛ばされてしまう。そのまま一直線に加速した緑谷が距離を詰め連続して殴りかかるが既に体勢を立て直した爆豪に全て見切られ避けられると振り抜かれた腕を掴まれそのまま投げ飛ばされてしまう。

 ひらり、綺麗に体勢を整えた緑谷は素早く個性を全身に巡らせ今度は壁を蹴りながら進路方向を悟らさないようにジグザグに走りながら爆豪の眼前近くまで迫るとそのままの勢いで殴ろうとするが上体を仰け反った爆豪に簡単に避けられるとすれ違いざまに爆破され壁にぶつかり地べたに転がる。

 

「ガハッ!」

 

「なに寝てんだ!」

 

 容赦なく追撃してくる爆豪を超スピードで避けるがそんなもん知らんと言わんばかりについてくる爆豪に緑谷は冷や汗をかいていた。

 

「核がある部屋にはなにがある!かっちゃん!」

 

「教えるわけねぇだろがー!!」

 

「だよね!」

 

 激しく戦いながらおしゃべりをするなんていう器用なことをしているが緑谷だが結構余裕がなかった。単純な力比べと技術だけなら緑谷の方が上ではあるがそれ以上に爆豪の並外れたというか、人外クラスの反射神経と動体視力、圧倒的に戦いの運び方が上手いのだ。

 

「その代わりテメェらが勝つ方法を教えてやんよ!」

 

「え!?」

 

 目をぎらつかせ凶悪な笑みを浮かべながら両手を広げると狭い通路の壁に手を突っ込み爆破をうまく使いながらガガガガッという音を出しながら壁を削り迫ってくる強敵に急いで先ほどまでの戦闘で既に壊れかけの壁を蹴りなんとか通路の端っこ、このフロアの四隅の上にへばりつく。

 

「それはよ……!」

 

 壁から手を抜き今度は外と隔てる壁以外の、このフロア全体の壁を爆破し笑いながら壊し始める幼馴染がだんだん怖くなってきた緑谷がえぇ…っと恐怖通り越して困惑してきたところで最後の壁を壊し終えた爆豪が振り向き高々と宣言した。

 

「俺に勝つことだ!!」

 

「……………えぇ…」

 

 

声に出た。

 

 

 

『デクくん!』

 

「!麗日さんどうしたの!?」

 

 一瞬の間。幼馴染の奇行にフリーズした緑谷だったがすぐさま復帰し支給されていたインカムから聞こえてくる麗日に答える。

 

『飯田くん見つけたし見つかった!核が見当たらん!あと飯田くんの演技がくさい!』

 

え"?!

 

 インカムの向こうでなんだか飯田の悲しそうな声が聞こえたが今は無視しておく。

 

「他の所は?」

 

『全部見たけど無かった。でも飯田くんの後ろに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()多分それ!」

 

 二人の会話が聞こえたのか緑谷を叩きのめすために近づいていた爆豪の片耳がピクリ、と動いた。その一瞬の動きを見逃さなかった緑谷は迫ってくる爆豪から逃げ聞こえないように麗日から何回か話を聞いたあと指示を出すと通信を切った。

 

「おい…丸顔になに吹き込みやがった。デク!!」

 

「…教えるわけねぇーだろがー!!(爆豪ボイス)」

 

「……ぶっ殺"す!!!!!」

 

 安い挑発で眉間に大量のしわをよせ目を極限まで釣り上げながら吠え、激怒し、迫ってくる猛獣を緑谷は拳サイズに砕かれた壁の破片を猛獣に投擲する。しかしそんなものは猛獣は意にも介さずギリギリ、最小の動きで避け緑谷に迫り爆破を繰り出す。

 

 現在この男の頭には目の前にいるバカをどうやって最短でぶちのめしてどんな報復をすることしか頭にない。が結果的にそれが勝ちにつながるのだが結果オーライになるのだろうか?

 

 そんな考えをある程度理解している緑谷は作戦通りと淡々と思い次に自分がすべきことを行動に移す。砕かれた破片を拾い、ぶん投げ、拾い、ぶん投げ、拾い、ぶん投げてはたまに視界を塞ぐぐらいのものを拾いぶん投げる。そうやってこの工程を繰り返し自分を爆破せんと迫り吠える爆豪と距離をとり時には隙をついて自ら近づき確保テープを巻きに行く。

 

 殆どの攻撃は避ける、弾くか爆破して防がれていくが緑谷はそれでいいと心の中でニンマリ笑っていた。

 緑谷の作戦は時間を稼ぐこと。いつもは冷静に物事を判断して動く爆豪も今は怒りでいつも通りの思考ができないことを知ってるがための挑発も、石つぶてを投げて距離をとるのも麗日が核を確保するための時間稼ぎだ。

 しかしそうして時間を稼いでるうちに冷静になり始め業を煮やした爆豪が仕掛けてきた。

 

「いつまでやんだボケェ!!!」

 

 足元にあった破片を掴むと今度は自分から緑谷に破片を投げ出した。普段あまり見かけない行動から驚いた緑谷だったがすぐに飛んでくる破片を撃ち落とすために自分も破片を投げ返す。

 

 しまったと思った時には遅かった。

 

 爆豪が投げたのは破片に自分の汗を付着させたものだ。空中でぶつかり合った破片同士は衝撃で爆発し周りに煙幕を撒き散らした。自分の視界が狭くなるのを忌避した緑谷はすぐさまバックステップで下がり煙が視界を曇らせることはなかったが壁に背がついてしまった。移動しようと動いた時には目の前に両の掌同士をかざした爆豪が無言で迫っていた。

 

 二度目の失策、ゼロ距離で爆豪の手から発せられた光が一瞬で視界を埋め尽くし何もできないまま緑谷は倒れ伏してしまい簡単に確保テープを巻かれてしまった。手慣れた動きでテープを巻き終わった爆豪はのびている緑谷の腹を一発蹴れば同時にインカムから麗日の声が聞こえてきた。

 

『デクくん。まずいよ!飯田くん捕まえられたけど核が!』

 

「なにがまずいんだぁ…丸顔?」

 

『ヒッ…まさかバクゴーくん……?』

 

 切迫詰まったような声で話す麗日に先程とは打って変わって驚くほど静かで地から湧き上がるような低い声で話始める爆豪は相手からしたら恐怖としか言いようがないだろう。

 

「メガネのヤローをどうやって捕まえたかしらねぇけどヨォ。デクのヤローなら俺の足元でのびてんぞ」

 

 そう言って再度緑谷の横腹を蹴る爆豪。うぐっと反応した緑谷を見て意識の有無を確認するとインカム越しにいる麗日の反応に耳を傾ける。

 

『マジで…………』

 

「まぁ、とりあえずだ。……今そっちにいってやっから待ってろ」

 

『ヒィッ!』

 

 この一言だけで麗日が絶望するのは難しくはなかった。怯えた声で叫んだ麗日はこの後なんとか奮闘するが虚しくも程なくしてオールマイトの敵チームの勝利宣言がビル内に響いた。

 

 

=====

 

「まぁ、あんな激戦してたけどベストは緑谷少年と飯田少年なんだけどね!」

 

「本当ですか!?」

 

「んでだぁ!?」

 

「落ち着いて、かっちゃん」

 

 次に目を覚ました時はかっちゃんにおんぶされた状態だった。今何かしらのアクションを起こしたらかっちゃんにぶん殴られそうな気がしたのでみんなと合流したら、ちょうど目が覚めたよ〜の振りをしようと考えていたのに秒でバレて普通にぶん殴られた後。

 モニタールームに戻るとこちらも激戦だったのだろうか、それともかっちゃんにこっぴどくやられたのか、ボロボロの麗日さんと飯田くんも加わり今はみんなの前で講評を受けている最中だ。

 

「何故だろうな〜…?分かる人!!」

 

「ハイ、オールマイト先生」

 

 先生らしいことをしたいのか勢いよく手を上げながら観戦していたみんなに問い始めるオールマイト。それにすぐに反応したとんでもないコスチュームを着た人が話始めるけど正直目のやり場に困る…。

 峰田くん…隣でガン見したら流石にバレるよ…。短い付き合いだけど君にはマリーちゃんを紹介できない……。親指立てないで!

 

「まず爆豪さんは中盤でフロア全体の壁の大幅破壊。これにより緑谷さんの攻撃手段を増やしたことによる失策。麗日さんも同様に気の緩みですね。敵役を言葉で自首するよう促したのは素晴らしいですが自首してきた敵をスタンガンで気絶させるのは如何なものかと。相手の対処をしつつ勝つ手を講じていた緑谷さん。飯田さんも同様の理由からです。ヒーローチームの敗因としては…敵チームの方が一枚上手としか言いようがありません」

 

「まぁ…飯田少年もかたすぎる節があったが…まぁ正解だよ…くぅ」

 

 いかにも秀才の解答をするすごい人。悔しそうにこんなことを言っているけど本当は、思ったより言われた……と思っているのか地味に焦っているオールマイトは次に僕たちに目を向けた。

 

「じゃ、じゃあそれぞれのチームの作戦はどうだったのか聞いてみようか!はい、爆豪少年!!」

 

「あ?………俺がデクの相手、メガネには丸顔の相手を、どっちもぶっ殺すか時間切れを狙っていた。メガネが負けた時ように核は一階に設置してフェイクとしてメガネには偽の核を守るようにさせたら見事にバカどもが引っかかった」

 

「核一階にあったん!?」

 

 聞かされたカミングアウトに模範のように驚く麗日さん。なる程、麗日さんの言っていたそれっぽい奴って言うのは偽の核か…。

 やり方がこうちゃんに似てきてると思ったけど言ったらもう一回殴られそうな気がしたので黙っておく。

 

「ふむふむ。なら緑谷少年たちは!」

 

「僕たちも向こうとほぼおんなじで…かっちゃんを僕が足止めしている間に麗日さんが核を確保するという作戦でした」

 

「ふむなるほど!うん、両チームともいい作戦だね!他のみんなもこれを参考にして挑んでくれよな!じゃあ次行ってみよう!」

 

 

 

 

 

=====

 

 あの後も順調に授業は進み放課後になるとクラスのみんなで反省会をしようという話になったけど何人かは帰ってしまった。

 最初の方は自己紹介とおしゃべりをしていたけど今はヒーロー科らしく個人の反省点や自分たちの個性を説明などをしている入り口のドアが叩かれた。

 

「……出久……勝己いる………?」

 

 開いたドアから警戒しながら半分だけ顔を出して教室の中を覗き込んでいるマリーちゃんが立っていた。僕とかっちゃんの姿を確認するとススス…とこっちに近づいてきた。

 

「あぁマリーちゃんもう終わったの?こうちゃんは?」

 

「おせぇぞマリー」

 

「…項羽は今日もまたなんかあるみたい……先に帰れって」

 

「あ?またかあのバカは!入学式んときも言ってなかったか!?」

 

「…ハウンドドック先生に怒られてたらしい……」

 

「何したのこうちゃんは…」

 

「知るか、帰っぞ」

 

「おー…」

 

「ちょっど待でェェェェイ!!!」

 

 そのままバックをもって三人で帰ろうとドアの前まで来たのに後ろからちょっと今は聞きたくない叫び声が聞こえてきた。

 

「緑谷ァ!爆豪ォ!誰だその天使のような美少女は!!女か!なんでおしえてくんねぇーだよっ!!!」

 

 峰田くんが目から汗を流しながら恨めしそうに此方を…というかバッチリ、マリーちゃんをガン見して叫んだらビクッと震えたマリーちゃんは一瞬で僕たちの後ろに隠れてしまった。うん。まぁこれは怖い…。

 

 他のみんなも普段見慣れないマリーちゃんに興味深々だ。

 特に今、食いついて来なかったけど上鳴くん。

 女子陣はすぐさま怯えた様子のマリーちゃんに同情し、峰田くんを罵りながらマリーちゃんを慰めていた。

 

 なんだかめんどくさい状況になったなーと心の中で呟いていると残っていた男子たちが僕とかっちゃんの周りにわらわらと集まってきた。

 

「お、おい。あの人誰だよ?緑谷」

 

「…マリー・ダルモン。中学からの友達だよ」

 

「今、挨拶しに行ったらどうなる?」

 

「…多分怖がられる」

 

「どうでもいいから早く帰んぞ」

 

「そうだね。ごめん今日は帰るよ。ありがとうね」

 

「おう、また明日!」

 

 空気を読んでくれたのか笑顔で手を振ってくれる切島くんを筆頭にまた、と声をかけてくるみんなに感謝しながら挨拶し既に女子と打ち解けているマリーちゃんを女子陣から回収すると血涙を流しながらゾンビのように這ってくる峰田くんから逃げるように教室を去った後。

 後ろから一緒に帰ると追いかけて麗日さんを加えて四人で仲良く帰ったけどこうちゃんは一体何してんだろう?。あとでメールで聞いてみるか。

 

 

 

 




気のせいかな爆豪がネタキャラと化しているような気がする。


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心操人使:オリジン

 とある部屋の雑談会。どうぞ



「失礼!カエサルはいずこか!!」

「あっ!十兵衛!もしかして、このカエサルに会いに来てくれたのか!嬉しいな。よしっ一発しっぽり……!」

「意味合いは違うが間違ってないな。一発殴らせろ」

「グフっ…もう殴ってる」ドサッ

「俺はお前の傷で死んだんだ。このくらいいいだろ。まぁその面なら問題ないだろ」

「十兵衛いらっしゃーい」

「久しいであります。十兵衛殿」

「あぁ。息災か?」

「ふふ。この場所でなんか事件とかあるのかい?あぁ。五虎将が一人、アドルフ=ヒトラーだ。よろしく」

「む、柳生十兵衛だよろしく頼む。さっきから気になっていたがあのテレビはなんだ?」

「あぁ。あれはね、我らがバカ王がなんの縁か再び生を授かってな、別の世界の映像を映しているんだよ」

「ほう。それは興味深い」

「超面白いんだよ。十兵衛も見てみなよー」

「わかったわかった。しかしここは狭いな」

「それは僕も思っていたよ」

「ダヴィンチ…」

「いっそのこと増築してみる?」

「は?」

「せっかく偉人、罪人、隔てなく集まってるんだ部屋の増築ぐらいわけないよ」

「しかし、どうやって。この部屋には材料なんてものは……」

「材料なら俺が作ってやる」

「お。頼もしいね。ガウディ」

「本編で出てきてねぇ奴がシャッシャッてんじゃねーぞ!悪め!!」

「うっせぇぞ。そこの酔っ払いども、改造してやろうか?」

「まぁまぁ。みんなも協力してくれないかな?」

『オオーーー!!!』

「力仕事なら肉食目の力ですぐじゃわい」

「オデモ…ヤル」

「あいにゃく猫は力仕事には向いていにゃいからにゃ!やめておくにゃ!」

「スティンガーもう出来上がってるぞ」

「放っておけ」

「姉様!私たちもやりましょう!」

「いいわね!いいとこ見せてやるわ!!」



ガヤガヤガヤガヤ…。



「…ねぇヒトラー」

「如何した?ダヴィンチ」

「項羽が願ったのはこういうのだったのかな?」

「…………きっとそうさ」

「こんなにも簡単なことだったんだ…」

「僕たちはな…あいつの世界はそう簡単にはいきそうもなさそうだよ」

「ううん。項羽なら大丈夫だよ。だって彼は」

「僕より優しいからね」






 ーーー時間は遡って。

 

 

 

 

「やっと終わった…」

 

「入学2日目で、なんでそんな死にそうな顔なってんだよ」

 

 やべぇ。最後の時間に数学はやばい。頭が溶けそうになる。なんで西耶はこんなもん嬉々として出来るんだよ。

 

 疲れでそのまま机にもたれかかったまま声のした方に目を向ければ肩にバックをかけた心操がいた。

 

「…お前に聞きたいことがある」

 

「…あん?」

 

 お前、俺を見下しながら話すんじゃねー。

 あ、俺が起き上がればいいだけか。

 

「入学式んときに、俺みたいな力を持った奴が必要、とか言っていたがどういう意味だ」

 

「………場所変えて話そうぜ」

 

 辺りを見回せば入学2日目でまだクラスのコミュニティの輪が出来ていない教室ではそそくさと一人で帰る奴や、名前も知らないクラスメイトに頑張って話しかける元気そうな奴。初の当番で日誌を書いている日直。隣になった縁で仲良くなった俺や心操みたいに喋りながら帰る女子達など。まぁ騒がしくなっていた。

 意外にも残る奴が多くここで話をするのはうるさすぎるし何より盛り上がらない。いやコイツ(心操)そもそもあの話して盛り上がるか?

 

 途中でダルモンとすれ違い出久たちと先に帰るよう伝えれば心操の姿を確認するや否や昨日のことを思い出した羞恥心のせいなのか走り去って行った。

 心操、小突くな。

 

 流石雄英と言うべきか人気のなさそうなところはなく転移も出来ず、結局普通に校門をでて近くにあった小さな公園で話をすることになった。

 

「それでお前は何を聞きたいんだ?」

 

 ジャラジャラと鎖を掴んだ瞬間、割と大きな音を出すバリアフリーに特化した大きめなブランコに腰をかけると、目の前に立っていた心操も立っているがめんどくさくなったのか怠慢な動きで俺の隣にあるもう一つのブランコに座ると少しだけ黙ったが相変わらず隈の多い目をしながらポツポツと話し始めた。

 

「……項羽はヒーローになりたいのか?」

 

「おう、俺の夢のためにな……」

 

「そうか…」

 

「なら…なんで、お前は俺がヒーローになりたいって分かったんだよ」

 

 そこで、何故か昔どこかで聞いた声がまるでカセットテープが再生されるように頭の中に流れ出した。

 

『心操、ヒーローになりたいらしいぜ』

『は!?あんな個性で?無理っしょ!』

 

 うるせぇよ。そんなこと自分でも分かってるんだ。

 

「自分でわかんねーのか?お前すげー羨ましそうな顔してたぜ」

 

 

 

 金属の軋む、少し嫌な音がする。

 

 

 

「…なんで、俺の力が必要なんだよ」

 

『心操君の個性。洗脳らしいよ…』

『嫌だ…怖い……!』

 

 うるさい。俺だって心底こえーよ…。

 

「お前の力が誰も傷つけずに誰かの役に立つことが出来るから」

 

 

 

 砂利の上に置いてある足と地面が擦れる音がする。

 

 

 

「……なんで、お前はおれを強くしようとするんだ?ヴィランになるかもしんねーのに…」 

 

『あぁいう奴が将来ヴィランになんのかー』

『なるべくして、なる!ってやつか?ギャハハハハハ』

 

 やめろ…。俺もいつかそうなってしまうって思ってんだ……。

 

「それはお前の思い込みだ。お前は何があったってヴィランにはならねーよ。憧れたんだろ?」

 

 

 

 心操の声がだんだん震える。

 

 

 

「………なんで、お前はここまで俺を気にかけてくる?」

 

『やはり先生もあの心操君に手を焼いていますか…』

『はい…はっきり言って個性が恐ろしくて、とても話が……』

 

 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。

 

「簡単。お前がヒーローになることを望んでいるから」

 

 

 

 

 鎖を握りしめる音を最後に、音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「……なら…お前の夢っていったい何だよ…」

 

 

「よくぞ聞いてくれたっ!!!」

 

 

 力のない、今にも消え入りそうなか細い声に反応した俺は、そう叫びブランコから勢いよく飛び上がるとブランコはジャランジャランと軽快な音を立てた。

 

 叫び出した俺に俯いていた心操が驚き顔を上げる。上げた顔は今にも泣きそうになっていて唇が震えていた。俺は天を仰ぐように両手を広げて心操に笑いかける。

 

「俺の夢は世界平和!どんな人間、性別、人種、人格、個性だろうが手を取り合って笑える世界を作る!!絵空事!これが俺の夢だ!!」

 

 客観的に見れば園児のような恥ずかしい、夢見がちな、ただのバカの考えをなんの恥ずかしげもなく叫ぶ項羽を心操は目を離せずにいた。

 

「だがしかし今んところ頭数がたりねぇ!ゆくゆくは、もっと増やすつもりでいるが、お前次第だ!」

 

 こっちに手を差し伸ばし太陽のように笑う項羽を見て、さっきまで頭の中で叩くように木霊していた耳障りな音が一つ、一つ、潰れて、小さく消えていくような気がした。

 

「ヒーローになれ!お前なら成れるぜ、憧れに!!」

 

 心操は目から溢れ出しそうになった涙を見られないように急いで拭う。隈に重ねて少し赤みがかった目で前を見ると目の前で大胆不敵にニヤついているバカに…ムカつくが、ある決意を誓う。

 

「………………バカみたいな夢だな……」

 

「最っ高だろっ!!」

 

 心操的には精一杯絞り出した中傷のなのに、褒め言葉としてとった項羽に笑顔で叫び返されてると自分も釣られて笑ってしまうと手を差し出す。

 

「…黒籍、俺は今すぐ世界中の人間と仲良くしろなんて言われても無理だ。……だから俺は、俺の周りにいる奴らから声をかけていこうと思う。例え、(いや)がられようが、否定されようが、しつこく寄り添っていく。それがお前の夢につながるのなら…………よろしく頼む」

 

 

 お前が誰かの為にその身を使うなら、俺は自分を救ってくれたバカ(ヒーロー)の為にこの身を使おう。

 

 

 どこか憑物が落ちたように照れ臭そうな笑顔をしながら手を差し伸べる新たな仲間を見て、まるで自分のことのように顔を綻ばせる項羽は素早く心操の後ろに回ると思っ切り背中を叩いた。

 

 突然の痛みに悶える心操を置いてカバンを持って帰ろうとするバカをどうにかして一発ぶん殴ろうと奮起するが素人の拳なんか世界最強に当たるはずもなく笑われながら避けられ更にムカつくのだが、周りから見れば今の心操は心から楽しそうに見えた。

 

 

 

 

「あ、そういやお前に会わせたい奴がいんだよ」

 

 

 

=====

 

「………………はじめまして……」

 

「どうも…………」

 

 いったい何を話せばいいんだ……。

 

 翌日、自分の発言を心底恥ずかしいと振り返り、一晩中布団の中で悶え黒歴史として封印した夜が明け、今は()()の紹介したいという目の前でこじんまりとどこか恥ずかしそうに顔を赤く染めて座る、曰く同級生女の子と何故か挨拶する。

 ふと、その女子の隣で口を手で覆い、笑いを堪えているバカに目を向けるとだんだん殺意が湧いてきた。

 

「何笑ってんだ……??項羽?」

 

「…いや〜お前らの反応が面白くて」

 

「…………殴る…」

 

「冗談だ」

 

 女の子が無表情で項羽に拳を向けるとあいつはケラケラと笑った後女の子と肩を組み始める。

 

「紹介遅れた!ダルモン、こいつは普通科の心操人使。新しい俺たちの仲間だ!」

 

「商業科のマリー・ダルモンです…。よろしく」

 

「あー…えっと、心操人使です。よろしく…」

 

 バカから紹介された女の子はダルモンというらしいが割とマジで何を話していいか分かんなくなってきた。しかし今は昼飯時の食堂。とりあえず置いてある食事の話題でも……。

 

「カレー好きなのか?」

 

「!?………うん…元々、向こうでもあんまり食べなかったし日本に来てから…友達の影響で……」

 

「来てから?…ってことは外国人なのか?」

 

「イギリス人…」

 

「!…へぇ、俺さ前から気になってんだんだけど、エッフェル塔、あれどこから登んの?」

 

「あれ普通にエレベーターあるよ……」

 

「まじか、ずっと歩いて登んのかと思ってたのに…」

 

「あれ何百メートルもあるのに…変なの……?」

 

「あとさ……………」

 

 心操から唐突に始まった捻りもない会話はその後も結構長引き、お互い楽しそうに話す様子をその横で話を嬉しそうにニコニコと見ていた項羽は内心ガッツポーズをしていたが現在彼の周りには話す人がおらず今始まった猫かわいい談義に割り込むのは気が引け、一人寂しく注文していた焼き魚の定食を突っついていた。それもなんだか悲しくなってきたので二人に一言いれ特に尿意はないがトイレに行くことにした。

 

「あとよマリー、一つ聞きたいんだけどさ…」

 

「………ん?」

 

「お前と項羽って付き合ってんの?」

 

「ッ!?………!!」

 

 猫かわいい談義が白熱し、喉が乾き始めたダルモンはコップに注がれた水を飲んでいると、項羽がトイレに行ったことを横目で確認した心操からとんでもない質問をされ咽せてしまい出そうになるが女の子パワーでなんとか堪る。

 

「な、なんでそんなこと聞くの…?」

 

「ん?あぁ、だってさっきもそうだが入学式の時もお前らと初めて会った時、距離が近かったからな、異様に」

 

「うっ………」

 

 未だにあの時のことを思い出すと恥ずかしい。出久たちの前なら多少、慣れておりあっちも慣れてからいいが初対面の人の前では恥ずかしいためなるべく普通にしているのだが、あの時は気を緩ました自分を殴りたいとダルモンは心底思った。

 

「項羽に聞いてもはぐらかされてな。まぁ、言いたくないなら俺の心の中にそっ…としまっておくよ」

 

「……初対面の割にグイグイ来るよね…」

 

「俺の方針だからな」

 

 で、どうなの?…とまるで恋バナに興味深々の女子のような聞き方をする心操にダルモンは内心、とても焦っていた。すごく。

 

 結論から言えば実は、この二人付き合ってないのである。

 

 前世では自暴自棄になったところを項羽に論され、添い遂げる人を探す旅(命名:項羽)をするため項羽と一緒に行動していたのだが、いつの間にか自分の心は項羽に傾いており、なんの後悔も惜しみもなく才能を彼の幕引きのために使い、最後の最後でキスまで発展したが今世で項羽に会った時。

 「今度こそお前にふさわしい相手探そうぜ!」…と言われてしまいフリーズしたのは記憶に新しい。

 

 あの時、素直に好きだと言えれば良かったものの…彼女はここぞという時にとんでもなくヘタレであったため頷くことしか出来なかった。

 

 …さて、ここで問題だがある。付き合ってもいないのに、腕に抱きつく、なんなら体に抱きつく、頭を撫でてもらう…等、どこぞのエロぶどうが聞けば顔中の穴という穴から血を流し、最早恨みに近いほどの羨望をするだろう行為を付き合ってもないのに!するのだ。

 

 極々、世間一般の感性を持つ人間が聞いたならばならば多少なりと引く事案である。果たしてこのことを今日、初めて言葉を交わした心操に言っていいのか…。ここは話したくないと一蹴するのが定石であるが…厄介なことにダルモンの乙女とも言える部分がこう叫んだ。

 

 項羽の彼女です……。勿論嘘である。しかし一度は言ってみたい。今世で興味という感覚が湧き、友人たちの間で回し読みした少女漫画のようなことをしてみたいと願ったことは少なくはなかった。

 様々な欲望と理性が渦巻いたあと、とうとう結論にたどり着き、意を決して心操に向き直る。

 

「…………私は…項羽と……」

 

 頬をリンゴのように赤くし机の下でスカートを握りながら一言一言、焦らすように話すダルモンを見て、心操は心の底からワクワクし、次の言葉を待っていた。

 

「付き合って………」

ウウーーーーーーーー!!

 

「「ッ!!?」」

 

 言いかけた途端、突如食堂いや学校中から、けたましいサイレンが鳴り響いた。突然の出来事は一瞬にして二人の間で流れていた空気を霧散させ替わりに別の緊張感を持たせる。

 

 無機質な機械の放送ではセキュリティ3が突破され生徒は避難せよ他の指示が入ると食堂にいた生徒たちはすぐに席を立ち我先にと出口の方へ向かい出す。しかし食堂の入り口が広いわけでもなく、一気に大勢の人間が雪崩れ込むようにはいってくればパニックになるのには時間がかからなかった。

 

「おいおい…これじゃ、けが人出るぞ……!」

 

「………だよね…」

 

 行ったら危険だと判断した二人は席から動かないようにし、最後尾周辺にいる人だかりを落ち着かせようと頑張るが、ほとんどの人がパニック状態に陥ってしまい、いかんせん言うことを聞いてくれない。

 

「仕方ない、洗脳で…!」

 

「そこまで考えが浮かんでんなら合格点だ」

 

「…項羽」

 

 最終手段で心操が個性を使い強制的に落ち着かせようと近くにいる人だかりに声をかけようとするが後ろから転移してきたのだろう項羽に止められてしまった。

 

「この騒動の元はマスコミ共だ。今、先生たちが対処しに行ってる。が、この状況に回す人手がないらしいので…心操お前の出番だ」

 

「…だから今やろうとしてたんじゃねーか!」

 

「一人一人、ちまちまやる気か?どーせなら一気に全員パァーっとやろう」

 

「全員て…無理だ。俺の個性は複数一気にやるのは無理なんだよ!」

 

「そのための俺だ。俺ならおまえの力を限界以上まで引き伸ばすことができる。いいからやってみろ」

 

「な…だけど、どう声をかければコイツら反応するんだよ!」

 

「知らん。頼れる人間の真似でもしとけ」

 

「ふぁいとー」

 

「………あぁ!クソッ!!」

 

 結構な無理難題に少しキレそうになった心操だが起こってもどうしようもないと悟り、毒つきながらも未だにパニック状態の群衆に向かう。

 

(頼れる人間の真似ね………この大群が一番安心できる奴つったら……何人か釣れればいいか…)

 

 一周回って落ち着いた心操は声を張り上げるために息を思いっきり吸い込み肺がパンパンになるまで膨れ上がらせた感触ともう一つ。喉あたりに何かが入ってくる感触を感じながら声を張りあがらせる。

 

「もう大丈夫…!!私が来たァ!!!」

 

「!!?オールマッ……!」

「オールッ…………!?」

「!?オールマイトおぉ……?」

 

 完璧ではないが象徴に寄せた声に反応し後ろから順々に応答した生徒たちは、たちまち洗脳にかかり動きを止まらせた。しかし、止まらすことが出来たのは全体の半数ぐらいしか洗脳出来ず。残りは単純に声に驚きこちらを振り向いただけの人間が多かった。

 

「チッ!おい項羽こっからどうする半分ぐらしか出来てねぇよ!」

 

「いや、上出来だ。あとはあいつがなんとかしてくれる」

 

 半分しか洗脳出来なかったことに舌打ちした心操は悪態をつき項羽に次をどうするか画策を問いただすが項羽は以前、落ち着いた様子で群衆の方を指差す。

 するとそこから脹脛から車で使われるマフラーを生やした生徒が飛び上がり回転しながら入り口に向かっている姿が見えた。突然の光景に心操が面食らっていると、入り口頭上の壁にぶつかるとまるで非常口のイラストのように止まった。しかも《EXIT》の文字を足場にしているため余計それを彷彿させる。

 この後、叫び出した非常口生徒の呼びかけによりなんとか事態は収束し、正気と落ち着きを取り戻した生徒たちは各々の教室に戻っていった。

 

 

 

 

=====

 

 食堂の一件後も通常通りに授業はされ、もしかしたら無くなるかもと淡い期待を抱いていた項羽の思いは簡単な壊され泣く泣く授業を受けていた。学校が終わりダルモンと合流した二人は他二名を置いて帰ることになり夕焼けが照らす道を歩いていた。

 

 

「はぁ…散々な目にあった」

 

「仕方ねぇだろ。マスコミは暇なんだ」

 

「…仕方ない………」

 

 気のせいか、いつもより髪がぼさぼさになり猫背気味になっている心操はため息をつきながら今日あったことを疲れを滲ませながらぼやいた。

 

「ちげぇよ…お前の無茶振りのこと言ってんだよ。俺は」

 

「そいつは悪りぃな。でもお前の力があったから、飯田…非常口が動くことが出来たし、誰も怪我しなかった。それはいいことだろ」

 

「それは…確かに」

 

「言った通りだろ、お前の個性は誰も傷つけない。俺には無理だ。世界最強にも出来ないことをするんだから、お前のその"才能"はすげぇんだよ。覚えとけ」

 

「…………それ、皮肉か?」

 

「褒めてんだよ」

 

「…そうかよ………」

 

 ここまで話すと三人の間に沈黙が流れ出す。

 

「そう言えば……」

 

 突然、ダルモンが何か思い出したかのように声を上げると項羽の方に首を向ける。

 

「…二人には心操のこと紹介しないの?」

 

「あぁ…そのことか。あいつらには体育祭後に言う」

 

「…………そう…」

 

「んな、悲しそうな顔すんなよ。いつか紹介すんだからよ」

 

「?……二人って誰だ?」

 

「………私たちの他に…仲間があと二人いるの…」

 

「へ〜…なんで後に言うんだよ。今でもいいだろ」

 

 そこまで言うと、二人の真ん中を歩いていた項羽が突然歩みを止め黙り始めた。何も喋らない項羽をみて不審に思った二人は頭に?マークを浮かべながら項羽を見ていた。それと、どことな〜く嫌な予感を感じて。

 

「おい。どうした?」

 

「…項羽?」

 

「………だろ」

 

「「??」」

 

「サプライズってなんかいいだろ」クワッ!

 

「「…………はい?」」

 

 見 事 的 中 し た 。

 

「あん?いつだってサプライズはいいもんだろうがー!?」

 

「時と場合によるな」

 

「…よるね」

 

 あぁ…またかと呆れる二人はそのまま前に向き直り食堂での続きであった猫かわいい談義を再び蒸し返しながら話し始める。すぐ後ろでは項羽が何か言っているが二人してスルーする始末だ。

 暫くすると黙って二人の後ろをついて行くがその後ろ姿は体躯に見合わずなんとも哀愁漂う悲しい姿だったと記しておこう。

 



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いいかー救助訓練と書いて"しゅうらい"テストに出るぞー覚えとけー


とある部屋の雑談会。


「む?何でしょう…急に体が浮き始めましたよ!?」

「ん。どうしたんだい?初期の頃、宮本武蔵を追い詰めるぐらい強かったのにここに来てほとんど空気と化していたフィッシュ君?」

「ムキーッ!やめなさいッ!!私これでも気にしてるんですよ!!」

「フハハハッおいおい。喚いてるうちに結構上がってきたな。おい大丈夫か、船坂よ!」

「…気持ち悪いであります……」

「飲み過ぎだな…」

「チョコ食べると良いらしいわよ〜」

「あはははっ。ふよふよ浮いてて面白いー」

「おいいッ!そんなこと言ってうちに私、飛んで行ってしまいますよ!!」

「プハーッ。…心配ないさフィッシュ」

「何がッ!?」

「輪廻は巡る。きっと君にも次の役目があるってことさ。頑張って〜」

「軽いぞ!ダヴィンチ!!」

「うだうだ言うな!お前も悪なら次も悪らしく堂々としてろ!この悪めッ!!」

「うるさいぞ酔っ払い!!だぁーもう!みんなが見えなくなってきた!」

「諦めろー。まぁ…廻り者に恥じない働きを期待しているよー」

「何で私がッーーー!!!!」






 マスコミ騒動の翌日。僕たちは現在バスに揺られている最中だ。あの後、最初は僕が委員長をやる流れになっていたけれど、食堂の一件で飯田くんの方が適任だと判断され委員長の座は飯田くんになった。そんな彼は今、僕の前で少し落ち込んでいるけど大丈夫そうだから少し置いておく。

 

 今日は救助訓練。特例で相澤先生、オールマイト、あともう一人の先生の三人の特例で授業することになった。

 

 理由は…まぁ多分昨日のマスコミ騒動の件の余波だと思う。というか、それぐらいしかないけど…。

 

 この前の実習で焼けたオールマイトの髪を模した耳付きのフードは今回置いてきた。まぁ今日は使うことないからいいと思うけど。このことをかっちゃんに話したら口を一文字にしてどれだけ話しかけても喋らなくなった。

 

「私なんでも思ったこと言っちゃうの緑谷ちゃん」

 

「?どうしたの蛙吹さん」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 なんてことを考えていると隣に座っていた蛙吹…梅雨ちゃんが声をかけてきた。

 

「梅雨ちゃん?」

 

「ありがとう…それでね。あなたの個性、オールマイトに似てるわ」

 

「ッ!!そそ、そんなことないよー!ただ単に力が強くなるだけだよ!ねっ!?かっちゃん!!」

 

「黙れ、デク慌てすぎだろ。シめんぞ」

 

 梅雨ちゃんの的を吹き飛ばすぐらい、ピンポイントな質問に狼狽し腕を組んで寝ていたかっちゃんに助けを求めるがいつもより機嫌の悪そうな声で一蹴された。何故、機嫌が悪い理由に思い当たると後ろの方から麗日さんが顔を出していた。

 

「なんか、いつもより機嫌悪そうやね。バクゴーくん」

 

「…最近、こうちゃんと会ってないっていうか、避けられ気味だからね」

 

「あいつが、こういうことする時は必ずなんかしょうもねぇこと企んでんだよ……!」

 

「爆豪。眉間、眉間、シワやべぇぞ!」

 

「…前もそうだけだよ。ほんと、何者なんだよこうちゃんて奴は?」

 

「ただのバカだ!!」

 

 ウガーー!と叫ぶ、なんの答えも言っていないかっちゃんを宥めながら切島くんの聞いてきた質問を頭の中で反芻する。

 

「落ち着いて…まぁ、あながち間違ってないけど。…切島くんの質問にシンプルで簡潔に答えるなら…そうだね。僕とかっちゃんが二人がかりで挑んでも勝てない相手って言えばいいかな?」

 

「「「「「はぁ!!?」」」」」

 

 緑谷の発言にバスの中にどよめきが走り一気にうるさくなる。

 

 緑谷は何故そんな驚く?と小首を傾げているが、戦闘訓練で二人の対決を観戦していた麗日と飯田以外のクラスメイトたちは二人の戦いが自分たちの強さより桁が違うことを知っているため、その二人に勝つことのできる"こうちゃん"という存在はどれほど強いんだ!とバスの中にいる全員が心の中で叫んだ。

 

 普段、他人に興味を持たないクールボーイ轟でさえ二人の戦いは自分にとっては甚だ手厳しいものだったと記憶している。あの日から同年代にしてあそこまでの強さを手に入れた二人を密かに敵視しているが、今はなんでこんな奴らが自分より強いと思っていたことが少し疑問になっている。

 

「おい、お前らいい加減にしとけ。もう着くぞ」

 

『はい!!』

 

 緑谷への質問攻めで一気に騒がしくなった車内でも不機嫌そうに眉をひそめ、そろそろ着くから黙れと静かに言った先生の声はしっかり聞き取り、返事をした瞬間、目的地に着くまで誰も話さなかったのは教育の賜物だろう。

 

 

 

=====

 

 

 

「皆さん。ようこそいらっしゃいました!U(ウソの)S(災害)J(事故ルーム)へ!!」

 

 バスが着いたのはドームほどの大きさのある建物だった。中に入ってみると、見回しただけで分かるのは土砂崩れに飲み込まれたかのように崩壊した建物と、現在進行形で燃え続けている建物らしき影等、どれも災害を模してあるかの様な場所が沢山あった。

 

 もう一人のヒーロー。僕たちを出迎えてくれたのは宇宙服を模したかの様なコスチュームを着た『スペースヒーロー13号』だ。

 

「わっーー!13号や!」

 

「USJ……なんでだろう既視感を感じる……」

 

「…気のせいだろ、放っとけボケ」

 

 横にいるかっちゃんから辛辣なコメントを受けるがそんなこと知らない13号先生は話を始める。増え続ける小言にみんなは軽くげんなりした様子だ。

 

「知っての通り、僕の個性は"ブラックホール"あらゆるものを吸込みチリにする個性です。この個性で数多の災害救助に貢献してきました。…しかし人を簡単に殺せる個性です」

 

『!』

 

「皆さんにも"そういう"個性を持つ方がいるでしょう。この超人社会、個性の使用を厳しく規制することで一見成り立っている様に見えますが一歩間違えれば容易に人を殺せる"行き過ぎた"個性を個々が持っていることを忘れずに。相澤先生のテストで自分の持つ能力を理解したはずです。オールマイトの授業でそれを人に向ける危うさを知ったはずです。この授業ではその力を傷つけるためではなく、誰かを助けるために、どう使うことを学んでください。ご清聴ありがとうございました!」

 

『ハイっ!!』

 

 13号先生が礼をすると力強くみんなが頷き所々から歓声が聞こえる。飯田くんなんか感極まって泣いてしまう始末だ。確かにカッコいいと思う。

 

 でもそれ以上に。悍しいほどの嫌な気配と寒気が僕と、かっちゃんの背中を駆け巡った。嫌な気配がした方に振り向きみんなの前に出ると同時に相澤先生が叫んだ。

 

「全員、一塊になって動くな!!」

 

『……?』

 

「おい……デク…」

 

「………うん…」

 

 みんなが先生の言葉にぽかんとする中、一緒に前に出てきたかっちゃんは事の重大さを僕と同じで理解していた。僕たちが目を向けている方…。広場の噴水前から現れた、こうちゃんの万象儀とは違う黒いモヤからゾロゾロと現れる人影たちを眼下にホルスターから出した銃のリロードをすると同時に相澤先生がもう一度叫んだ。

 

「…(ヴィラン)だ」

(ヴィラン)だ!!」

 

 

 

 

=====

 

 

 

「13号にイレイザーヘッドですか……先日()()()カリキュラムではオールマイトがいるはずですが……いないようですね」

 

「…こんなに大軍引き連れてきたのに…どこにいるんだよ、平和の象徴は………子供を殺せば来るのかな?

 

 目に見えてヤバそうなのは体の至る所に手を付けた痩せ細った男とその横にいる脳が剥き出しになっている大男、それに…黒いモヤモヤ。

 

「敵んッ!?バカだろ!!ヒーローのいる学校に乗り込んでくるなんてアホすぎるだろッ!!」

 

「先生、侵入用センサーは!」

 

「もちろんありますが…!」

 

「なら、それを止めたヤツがあん中にいるって事だよなァ……!!」

 

 突然現れた敵に焦りを滲ませながら八百万さんが先生に確認を取るとそれを聞いたかっちゃんが横で今にも飛び出しそうな獰猛な顔で見解を出した。それの続きを轟くんが話し出す。

 

「…校舎と離れた隔離空間。そこにクラス単位の少数人数がいると知っての時間…バカだがアホじゃねぇ。これは、目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 その言葉にみんなが息を呑む。それは、つまり僕たちは今助けのない状態で孤立しているという意味だから。モヤから現れた敵たちはゾロゾロとゆっくり、まるで逃げ場のない僕たちを追い詰めるかのように近づいてくる。

 

「13号。生徒たちを頼む!学校にも連絡してみろセンサーまで頭ん中入れてる奴らだ繋がらないと思うがな。上鳴、お前も個性で通信試してみろ」

 

「ッス!」

 

 ゴーグルをかけて今すぐにでも敵たちに突っ込める戦闘態勢の先生は前に出ようとしている僕とかっちゃんの肩に手を乗せる。

 

「お前ら…前に出るなよ」

 

「…あんただけで、あの数いかんのか?」

 

「プロを舐めるな。お前らは13号に従って避難開始だ。行け!」

 

「…行こう、かっちゃん」

 

「チッ!怪我すんじゃーねーぞ!」

 

 既に出口に向かって走り出しているみんなを追うよう走り出すと先生は階段を一気に飛び降りていった。ちょっとしたら下で何かを殴る音と叫び声が聞こえてきた時には僕たちはみんなの後ろに追いついていた。

 

「させませんよ」

 

『ッ!』

 

 出口の前…。僕たちの行手を阻むようにヤバい三人のうちの一人、黒いモヤが現れた。何ものない場所から現れたのを見るに、万象儀の転移のようなシステム。コイツが出入り口か…。

 

「初めまして…我々は『敵連合』僭越ながら、この度ヒーローの巣窟。雄英高校に入らせてもらったのは…平和の象徴。オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして…」

 

 低い声。いかにも紳士らしく、礼儀正しい口調で話される内容はオールマイトを殺す。要約するとこんなことを言った。

 

「本来ならば、ここにオールマイトがいらっしゃる筈。ですが、何か変更があった様子でしょうか?…まぁ、それとは関係なく私の役目は…」

 

 そこまで言いかけた所で一人の影がみんなから飛び出した。急いで呼び止めたが間に合わず切島くんは黒モヤに攻撃をしていた。

 

 これじゃ、ブラックホールを発動しようとしていた先生の間合いに入ってしまい先生が攻撃できない。

 

「危ない。危ない。いくら生徒といえど優秀な金の卵……」

 

「ッ!下がれッ!クソ髪!!」

 

「私の仕事は、貴方達を散らして…嬲り殺す!!」

 

 前にいた切島くんの腕を掴むために前に飛び出していた僕とかっちゃんの目の前には僕たちを取り囲むために広がった黒いモヤに覆われ、後ろにいた他のみんなも包み込むように半球状に広がった。そこかしこでみんなの叫び声が聞こえ飯田くんの叫ぶ声を最後に僕の視界は真っ暗になった。

 

 

=====

 

 

 次に視界が戻った時には水の中に飛び込もうとしている最中だった。察するにさっきの黒モヤの個性は万象儀のような転移する個性なんだろう。ほぼ、条件反射で個性(ワン・フォー・オール)を体に巡らせるとドボンッという音を立てながら水の中に飛び込んだ。水の中を見回したら凄い勢いでなんかの魚のように大きく口を開けた敵が迫っていた。

 

「お前に恨みはないけど、サイナラッ!!」

 

 そう言ってギザギザの歯を僕に向けて噛みつかんと迫る敵を水と水の間を泳ぐような感覚で避けると敵さんも個性の特性なのか手についたヒレで綺麗にターンすると再びこっちに迫ってくる。

 

 もう一回、避けるか殴ろうと眼前から迫る敵に構えると目の端にもう一つ、ついさっき話をしていた少女の姿が敵よりも早くこっちに来ていた。

 

 梅雨ちゃんは泳いだ勢いをそのまま生かし敵の頭に蹴りを叩き込むと素早く舌を伸ばして僕の体を巻きつけると今度は敵の鼻っ柱に足を添え、足を押し蹴った。あ、鼻血出した。その力で梅雨ちゃんは加速しここから離れると水面を漂っていた小型船のデッキの上に降ろしてくれた。

 

 ちょっとすると今度は峰田くんが雑というか叩きつけらるような感じで降ってきた。きっとまたいらない事をしてしまったのだろうか…。船上に上がってきていた梅雨ちゃんに手を貸しながらそう考えていた。

 

「あら、ありがとう緑谷ちゃん」

 

「ううん、こっちの方こそありがとう。でも、結構今ヤバい状況になっちゃったね…」

 

「そうね…。ヤツらオールマイトを殺すなんて無茶なこと言っていたけれど、何を根拠にそう言っているのかしら?」

 

 梅雨ちゃんの言葉に黒モヤから出てきた人間とは思えない異質な雰囲気を放っていた敵の姿が頭をよぎる。

 

「たぶん…。黒いモヤから出てきた脳みそ剥き出しの奴が居たんだけどたぶんソイツが切り札なんだと思う。何というか…その…異質だった」

 

「何言ってんだ緑谷!そんな奴ら、オールマイトが来れば、けちょんけちょんだぜ!」

 

 いつの間にか復活していた峰田くんがパンチする真似をしているけど多分、そんなに簡単なことじゃない。そんな僕の思いを代弁してくれるかのように梅雨ちゃんが話し始めた。

 

「峰田ちゃん。緑谷ちゃんの言う通りヤツらオールマイトを殺す算段が出来ているからこんな無茶してるんじゃないのかしら?そこまで出来る連中に私たち嬲り殺すって言われたのよ。オールマイトが来るまで持ち堪えられたとしても私たち無事に済むのかしら…」

 

「………!!みみ緑谷ァ!!!」

 

「…梅雨ちゃん言う通りだよ。…峰田くん。今は、ここを戦って生き残ることが先決なんだ」

 

 とても冷静にこれからのことを分析する梅雨ちゃんの言葉に愕然とした峰田くんは僕の足を掴んできたけど、お生憎、これは梅雨ちゃんの方が正しい。そのことを伝えると更に愕然として頭を押さえて叫び始めた。

 

 それに追い討ちをかけるかのように船の周りを囲むようにさっき鼻血を出していた敵を始め多くの敵が水面から顔を出し、更に叫び始める峰田くんを何とか落ち着かせ、作戦を練り始める。

 

 



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思ったことをすぐ口にするのはやめておけ…

はぁいジョージ…

どうも、お久しぶりぶりぶり大根です。

やらなきゃいけないことに専念するために書くのを一旦、やめていました。
 
それが最近終わったので久しぶりに筆を取ってます。『リンカーネーションに花束』のほうが難産すぎるので此方に逃げて来ました。
意思弱いです、どうも。

申し訳程度ではありますが思い付いた『リンカーネーションに花束』の小ネタ集を書いてみましたので見てね。


「死"ぃんねえェ!!!」

 

 無謀に、挑発的に、それでいてシンプルに。

 今は口の悪い幼馴染のお陰で汚い言葉を半強制的にインプットした甲斐があった。今だけは何も知らない敵達に、僕が無策に突っ込んでくる馬鹿な子供と見られるような演技ができる。

 

 それと同時に全身にOFA(ワン・フォー・オール)を巡らせ水面を殴り倒すように腕を振りかぶる。そうすると強い衝撃が空気を経由して水面まで届き、水飛沫をあげながら大きなドーム型の凹みを水面に作り出した。

 …水の特性。もしも、水滴を水の上に一粒落としたのならば水滴のおちた場所を中心に水が広がり波紋が出来上がる。そして広がった水は再び中心に収束し、戻っていく…それの応用で水面の一点に強い衝撃を与えれば…。

 

「オイラだってやってやるさー!!」

 

 蛙吹さんに抱えられた峰田くんが泣き叫びながら果敢に頭からもぎ取ってボールを敵たちの周りに向かって投げる。粘着性のあるもぎもぎは次々と敵達にくっついてゆき、敵達は正体の分からないもぎもぎに動揺しながら水流に流されていく。

 

 もう一度言おう。水面に強い衝撃を与えれば広がり、衝撃に応じた力で中心に戻ろうと、収束する。

 

 僕が蛙吹さんの舌で回収されている頃には、一つの球のように纏め上げられた敵達が強い波に当てられ宙を舞っているところだった。

 

「…取り敢えずは第一関門突破かな」

 

 

 

 

 

 

===============

 

 

「死"ぃんねえェ!!!」

 

 俺が硬化した拳で敵を殴り倒した直後。

 獣の咆哮にも似た叫び声に振り向いてみれば、爆豪が個性を使うまでもなく手榴弾を模した籠手で容赦なく殴り倒していた。

 爆豪、スゲェ…。俺が数人倒す間に、残りの敵達を全部、一人で片付けやがった。

 けど、まだいるかもしれないと辺りを見回すが、もう既に俺と爆豪以外に立っている人間はいなかった。

 

「っし!雑魚どもはコレで全部か!?」

 

「え、おお!早くみんなのこと助けに行くか!俺があんなことして先生が後手に回わらなかったら、こんなことにはならなかったんだ!漢として責任取らねぇと!」

 

「…贖罪なら後にしろ!俺はあの黒モヤをシバキ殺しに行く」

 

「な…!戦闘苦手な奴らだって居るんだぞ!助けに行かねぇのか!?」

 

「逆だ!お人好しバカもいるんだ!!デクならもう一人で、その辺走り回ってるかもしれねぇ。それに…」

 

 そう言い、区切った爆豪は何を思ったか分からないが掌を何もない中空とその先にある天井を爆破をした。突然の行為に、なんだと思えば、カメレオンの頭をした、所々に焦げ跡がついている敵が叩き落とされたハエのように、ぼとりと落ちて来た。

 

「俺たちに充てられたのが、こんな個性持て余した三下なら自分らでどうにか出来るだろ」

 

「すっげぇ…!どうやって気づいたんだよ?」

 

「…気配と勘。んなことよりとっと行くぞ!もしかしたらアイツも来るかもしれねぇからな」

 

「アイツ…?あっもしかして!こうちゃんとか言う奴か!?」

 

「うっせぇ!来るんなら早く来い、置いてくぞ!!」

 

「お、ちょい!待てよ、爆豪!俺も行くぜ!!」

 

 

 

 

===============

 

 

「せんせー。お腹痛いのでトイレ行ってきます」

 

「え、お、おう」

 

 先生の許可を得る前に、俺は足早に教室を出ていた。

 久しぶりに感じる嫌な感触だった。腹の奥からくるような胸の奥から響くような胸焼けにも似たもどかしい感触。

 同時に、出久と勝己の顔がチラチラと頭ん中に浮かび上がってくるたんびに、嫌な感触は増していった。

 体の何処かが『早くしないと間に合わないぞ』と囁いて脚を急かす。

 いつの間にか、走り出していても焦燥感は消えようとはしなかった。

 

 

 …いつの日か、こんな状態になったのは一度しかない。

 

 

 駆け上がるのさえ煩わしい階段をひとっ跳びで上り、二人のいるA組の教室へと走る。

 道中、廊下側の窓から生徒や先生からの痛い視線を感じるが、無視して教室を目指す。壁から突き出た1ーAの看板がやけに遠く感じた。やっと教室に着き、ドアに力を込めて扉を引く。

 だが、開かれた戸の先には誰も居なかった。嫌な感触が増長していき、冷や汗のように万象儀がジワジワと体から滲み出てくる。

 

 …嫌だ、ダメだ!

 

 暗い思いを振り払うように、壁に貼ってあるヒーロー科の日程表を確認すれば、今の時間はヒーロー基礎学の時間らしい。前に出久から聞いた話によればそれは学校内の演習場で行う、俺たちが日頃、行ってる訓練に近いもの。

 ならばと同じく掲載されている学校の地図を壁から剥ぎ取り、教壇の上に広げヒーロー科が使いそうな演習場を探す。

 が、予想以上にその場所が多すぎた。

 

 クソったれと思いながらも出久自作の無線を手に取り、出久にかける。

 …しかし繋がらない。

 ならば勝己は…繋がらない。

 

 ……これで確定した。アイツらはいま何かしら事件に巻き込まれている可能性が非常に高い。出久と勝己にはいつでも無線機を持たせている筈だが唯の授業で反応しないとなれば、ただならぬことが起きてることは間違いない。

 

「しらみ潰しに探すしかねぇのか…!?」

 

 せめてA組がどこにいるか分かる教員が居れば…。

 

「………いるじゃねぇか!!」

 

 急いで電話帳からお目当ての人物の名前をタップする。たった数コールの間隔でも急いでいる今だと長く感じる。早く出ろと目的の人物を急かしていれば少し時間の空いた後にやっと電話が繋がった。

 

『…黒籍少年?今、授業中じゃあ…』

 

「オールマイトっ!!出久達は…A組が今、どの演習場にいるか分かるか!?」

 

『へ?緑谷少年たちならUSJにいるけど、それが……まさか!?」

 

「そのまさかだ!出久と勝己に電話と無線にも掛けたがどっちとも反応がないんだ!!ついでに麗日と飯田にも掛けてみたが応答がねぇ!アンタも早く来い!嫌な予感がする!!じゃあな!!」

 

『え!あ、ちょっとぉ!?』

 

 オールマイトの慌てる声を最後に電話を切ると、急いで地図から何処ぞのアミューズメントパークと同じ名前を探せば、校舎からかなり離れた位置にそれを見つけた。

 ジワジワと広がっていた万象儀を体の中に戻し、今度は目の前にゲートを作り出すように一気に広げた。

 

「待ってろよお前ら…今、行く!」

 

 呟きながら万象儀の中に足を踏み入れれば、暗闇が体を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

 

 

 自分の頬に爪で切り傷をつけると、俺は辺りを見回した。

 意気込んだまではよかった。

 しかし、結局のところアイツらがUSJ内のどこにいるかわからないままだ。どうせ、出久が無線で通信なり電波なりバンバン飛ばしていることだろうからそこの発信源を辿れば済む話なんだが…。如何せん、電波が乱れているせいか繋がらないもんだからどうしようもねぇ。

 

 とりあえず辺りを一望出来るところに出たいと思うと、ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっている山岳らしき頂上にでた。どうやら、このエリアは出口から一番端にあるらしい。

 中央をみれば噴水のすぐそばで出久達の担任が、覚えのある柄つきをしたチンピラ達と戦闘を繰り広げていた。見たところ周りに生徒らしき影もないことから、アレは訓練などではないことが容易に分かる。

 

 …嫌な予感とは、これのことだったのだろうか。学校に有象無象のチンピラが入ってきたところで俺のセンサーが反応するはず無いのだが…。

 もう一度、中央辺りを観察すると噴水のちょうどすぐ前に佇んでいる脳みそを剥き出しにした男と体の至る所に手をつけた男を見つけた。

 

 俺はいつも勘で犯人を探す。出久と勝己には適当だと思われてしまうが、一度としてその勘が外れたことはない。当たるたびに二人が若干引いたような顔で俺を見るから少し落ち込むが…そんな勘があそこにいる二人が主犯と見做した。

 

 そうと決まればあの二人をさっさと張り倒そうと飛び出そうと構えた瞬間、何やら下で声のようなものが聞こえた。

 

 覗いてみれば、崖下にチンピラらしき連中が蹲っておりその中心では、ヒーロースーツらしきものを身に纏った学生らしき女子が二名。

 

 どちらも焦るような表情をしながら両手を上げ、目の前にいる骸骨のような仮面の男を睨みつけていた。

 男の手には非常にマヌケな面をした金髪の二人と同じぐらいの年齢の男を見せつけるように掲げており、その首には電気のほとばしる手が突きつけられていた。

 

 女子二人とマヌケ面はこの前、入学式の最中に覗き見した時に見たことがある。三人とも出久と勝己のクラスメイトだったはずだ。

 この状況を察するに周りで蹲っている連中を倒せて一息付いたところで残っていた骸骨仮面の男にマヌケ面を人質に取られたって感じだな。

 

 そして状況は芳しくないらしい。男が何か言った瞬間、二人の顔から余裕が完全に消えたように感じた。

 

 …さて、ここで無視して行きたいところだが、それじゃあの俺たちの掲げた思想に反してしまう。もしここで俺が見捨てたとなってしまえば二人を裏切ることになるし、なにより下にいる奴らの命も危ないだろう。

 

 そんなことを考えているうちに、周りで蹲っていたチンピラ達が起き上がり始め、骸骨仮面の男がジリジリと二人に近づいていく。このままいけばロクでもない事になるのは目に見えている。

 俺は上着を脱いで飛び降りた。

 

 廻り者が才能を行使するとき、多大な体力と精神力を消費する。そこに例外はない。

 そのせいで使用後には倦怠感がつきまとうわけだが、俺の場合は100ある内の10を使っても、さほど倦怠感は現れない。これは使う量によって違うものだと考えている。

 しかし、決して疲れないと言うわけじゃない。

 

 よって、俺は万象儀を使わずに連中を叩きのめした。

 

 時間にして1分もたっていない。

 しかし、最近、多勢を相手にしてなかったせいか少し無駄が多かった。骸骨仮面以外の奴らを倒すのはもう少しスムーズに出来た筈だ。

 最後にマヌケ面を助ける時だって骸骨仮面の腕に拾ったナイフを突き刺すのも、もう少し早く…鍛錬不足だな。

 

 腕を貫かれても、未だ暴れようとしている骸骨仮面の鼻頭に拳をめり込ませ、気絶したのを確認すると、首の横からするりと薙刀が伸びて俺の首に添えられる。

 

 

「ちょっヤオモモ!」

 

「刃物を向けた状態ですいません。…しかし貴方が敵である可能性もあるのでこの状態から失礼します。…貴方、何者ですの?この学校の制服を着てられるようですが、どうしてこの場にいるのですか?」

 

 俺の首元に刃を向けて、いつでも殺れると圧をかけてくるヤオモモと呼ばれた声に、俺は少し感心していた。俺が、敵か味方かも分からない状況で適切な判断を出久と勝己以外が下せるものかと純粋に感じた。流石は雄英だ、倍率300は伊達じゃないってことか。

 

「…俺は普通科の黒籍項羽ってもんだ。証拠という証拠もないがとりあえず信用して欲しい。ここには来たのは友人に電話してみても留守電すらつかねぇ状態だから心配になって駆けつけたまでだ。そしたら、お前らが襲われてったわけだ」

 

「……その友人とは?」

 

「お前、A組だろ?なら緑谷出久と爆豪勝己の二人がいる筈だ。アイツら、いま何処にいる?」

 

「お二人の…?もしかして、貴方、緑谷さんに渾名で呼ばれてます?」

 

「おう、出久は俺のこと、こうちゃんって呼んでるな。え、なに?もしかして、俺のカッコいい話でも聞かされてる?」

 

「そういうわけではありませんが…しかし、そう言うことなら信用できますわね」

 

 俺の言葉を信じたのか、首元に突き立てられてた刃が、どかされる。振り返って、三人の姿をよく認識してなかった俺は思わず叫んでしまった。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あぁっ!!ちじょだっーーー!!!」

 

「痴女っ!??」

 

「フンッ!」

 

 

 その後、すぐに耳郎という女子に殴られた。

 

 

 




ミジンコみたいな更新速度で頑張ります。


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シリアス調…かな?

 

 とある部屋の雑談会。


「おじゃましまぁーす!!!」

「うおっなんかいっぱい来た!!」

「浮草の奴ら!?」

「はいはーい。お邪魔しますね〜。あ、手土産ありますので〜」

「ゲール?いや、なんか違う…?え、子供いっぱい来た!可愛い!」

「あら?重瞳のはここに居ないのかしら?」

「あ、彼ならあそこに映ってるよ。ゲール」

「カエサル……相変わらず禿げてますねぇ」

「んはぁ!極上の美人に罵倒されるのもなかなかいいものだな!どうだ、このカエサルとしっぽり「…あらあら、まさか彼はまだ懲りずに救済を試みているのですか……愚か、ですが…彼らしいと言えば彼らしいですね〜」

「…貴方は一体、誰でありますか?自分の知っているゲールと同じ容姿に口調…しかし、どうにもどこか沿わないであります」

「それは追々、話しましょう。不死の方。どうやら今からいいところになりそうですよ?」

「む!見ろお前ら!項羽が映ってるぞ!!」

「うっさいぞ!ゲッツ!!」

「本当に重瞳のだ…」

「あわわわわ……」

「なんか、一気に賑やかになったねー」

「増築した甲斐があったってもんだニャ!!」

「お前、なんもしてなかっただろ!」

「しかし、デカイの増えたから、いかんせん狭く感じるなあ」

「もう少し、広げますかぁ」

「悪だな!!!」



「ふふ…」




「デクっ!!」

 

 強い衝撃が防御した腕ごと僕を吹き飛ばし、ドームの外壁に僕はめり込んだ。

 重傷を負った相澤先生を連れて逃げていた梅雨ちゃんと峰田くんを脳みそ敵から、庇ったまでは良かったけど、かっちゃんを心配させちゃった。

 こりゃ後で怒鳴られるな。

 

 かっちゃんが脳みそ敵に、並の敵なら一発で倒れるぐらいの爆撃を浴びせ続けているが、脳みそ敵に応えた様子はない。

 

 痛みすら感じてないのか、守る素振りすら見せずに何も思っていないロボットのような表情でかっちゃんに迫り攻撃をしている。スピード、パワー共にオールマイト級にあるせいで、あれじゃまるで、昔、見た殺人マシンみたいになってる。

 身体中に手がついている敵が自慢するように笑う。

 

「無駄だ。脳無に打撃技は通用しない。ショック吸収と超再生の個性を持つ、最高のサンドバック人間だ。そうだな…肉をじっくり抉るとかがオススメだぞ。ピースサイン」

 

「なんで、その名前を…!」

 

「別にいいだろ。裏の世界じゃ…お前ら、そこそこ有名なんだぜ。ヒーロー」

 

 敵に名前を知られてるなんて僕達も有名になったもんだ。

 肉を抉るか…。

 弾の種類を、かっちゃん由来のエキスが入った弾に変え、脳無の懐でドンパチと激しい闘いを繰り広げているかっちゃんに声をかける。

 

 死ぬぞ、と。

 

「はぁ!?ちょっ待てデクゥ!!」

 

 拳銃から乾いた音が鳴る。それと同時にかっちゃんが脳無のそばから全力で離れていくのを見て、脳無の腕に着弾したことを確認した。

 僕は手元に握っていた、とあるスイッチを押す。

 普段、かっちゃんが鳴らしているのとは少し違う。重たい爆発音が脳無に右腕を吹き飛ばした。

 

 うーん…思ったより爆発の威力が弱いな。肩も吹き飛ばしたかったんだけど…まぁ、前腕に当たってたから場所が悪かったのかな。

 

 そうこうしてる内に、かっちゃんに殴られた。

 痛い。

 

「痛い、じゃねぇ!バカクソデクゥ!!俺も危うく消し飛ぶところだったわ!!」

 

「大丈夫だって!前の実験よりちゃんと威力落としたんだから!」

 

「その前の実験でクソでかい大岩、消し飛ばした大バカは何処のどいつだ!!あ"ぁ!!?」

 

「仕方ないじゃないか!実験に犠牲は付き物なんだよ!!」

 

「その犠牲ん中に俺も入れるつもりかテメェはヨ!!」

 

「な、なぁ。もしかして緑谷って結構ヤバい奴……?」

 

「知らねぇ、俺に聞くな」

 

 なんだか少し離れたところで切島くんと轟くんが少し青ざめた顔して、引いてるような気がするんだけど。違うんだよ二人とも…ちょっと、目合ったぐらいで後ずさらないで!

 

「冗談だろ…。あの、もじゃもじゃ…躊躇いなく脳無の腕を吹き飛ばしやがったぞ。ホントにヒーロー志望か?」

 

「むしろ敵に向いてそうな思考回路してそうですね…」

 

 敵側からもドン引きされてるような気がする。というか仲間だと思われてそうな気がする…。

 

 そうこうしてる内に、かっちゃんが瞬く間に黒霧を取り押さえて、轟くんが脳無を凍らせて動きを封じてくれた。僕も身体中、手だらけの敵の上からスマッシュを打った時の衝撃波だけで気絶させようと拳を放つ。

 

 手だらけ敵は、見えない巨大な何かに潰されたかのように地面に打ち付けられた。

 狙い通りに、気絶してくれたことに僕はホッと息をつく。先の相澤先生との戦いで、触れた瞬間に先生の肘を崩していたから触れられないように風圧で倒そうとしたけど、まだ、力の調整が上手くできていないから、正直、肉塊にしてしまわないか心配だったんだよね。

 

「死柄木弔!」

 

「動くな、クソもや!!」

 

「轟くん。氷結で束縛してくれないかな?あ、念のために指の腹にテーピングを貼っておこう」

 

「…あ、あぁ。わかった」

 

「緑谷…顔に似合わず、えげちねぇな…!」

 

 触れた瞬間に崩されるんだ。見たところ手で触れることで個性を使用してるらしかったから、手と崩させる対象物の間に膜を貼っておけば崩されることはない筈だ。もしかしたら、そんな事関係なしに崩すかもしれないけど、念を入れて損はないからな。

 死柄木と呼ばれた敵の指の腹、一つずつにポーチから取り出したテーピングでぐるぐる巻きにし、仕上げに手、全体もぐるぐる巻きにして轟くんに受け渡す。

 こうちゃんも来ると思っていたのに、この様子じゃ来ても全部、終わった後なんだろうなと頭以外、氷に覆われた死柄木を見てそう思った。

 

「よし、あとはこの出入り口だけだね」

 

「ワープしやがるからな…強めに眠らせるか」

 

「今日、麻酔持ってきてないからなぁ。頭部も実体無いみたいだし…やっぱり、鳩尾殴るしかないよね?」

 

「おい、デク。お前がやれ」

 

「イヤだよ!出力ミスったらこの人、肉塊になっちゃうじゃんか!」

 

「練習も兼ねてだ!早よやれ!!」

 

「待て待て、ヒーローがしていい会話じゃない」

 

 僕が黒霧に馬乗りになったところで、後ろから死柄木が起きた気配がした。でも、拘束してあるからと、たかを括って黒霧にトドメを刺そうと拳を構えた時。

 後ろから、ぽつりと小さく声が聞こえた。

 

「脳無」

 

 次の瞬間には、僕の頭の横に、破壊した筈の脳無の右拳が迫っており、紙一重で防御することは出来たが、踏ん張りがきかず僕は火災ドームの塀をぶち当たって荒く息をしていた。

 

「ハァ、ハァ…ありがとう。かっちゃん」

 

「チッ!結構、強めに撃ったのによ!!」

 

 直撃の寸前。かっちゃんが爆破で脳無のパンチをずらしてくれていたが、それでも腕に受けたダメージは無視できないほどだった。

 

 死柄木が再度、脳無の名前を言う。今度は死柄木を拘束していた氷を一振りで砕き、彼を救い出していた。手の拘束も簡単に取られてしまっている。黒霧も抜け出し、状況は振り出しに戻ってしまった。

 死柄木が癇癪を起こした子供のように叫ぶ。

 

「あぁクソ!ガキ相手にこんな目にあうなんて…敵連合……聞いて悲しくなる!不愉快だ…!!脳無!そいつら全員殺せ!!」

 

 脳無がとてつもないスピードで地面を駆け、命令を遂行するために再び、感情の籠ってないビー玉のような目をしながら僕らを殺そうと大きな拳を握る。

 狙いは一番前に出ていた切島くんだった。切島くんは脳無のスピードに反応できていないのか呆けた顔で棒立ちになっている。

 

 殴られて分かったけど、あの力で殴られて彼が無事でいられるとは、僕は考えられなかった。かっちゃんも同じ考えだったのか、僕と同じように切島くんへと手を伸ばす。一拍、遅れて轟くんも氷で防ごうと動く。しかし、僕らが手を伸ばすよりも早く動く脳無の拳には追いつけず。

 間に合わない…。そう思ったところで切島くんと脳無の間に、ちらりと黒霧のモヤよりも濃い。黒色の影が見えた気がした。

 

「万象儀…黒砲

 

 脳無が何かに押し出されたかのように、何回転もしながら吹き飛ぶ様を見て、きっと僕は、彼の登場に目を輝かせたと思う。

 脳無の方に掌を向けていた彼は安心したのか軽く息を吐くと、向けていた手をぷらぷらさせながら意気揚々と口を開いた。

 

「探したぞ、お前ら。勝手にピンチになりやがって…項羽さんちょっと、肝が冷えたぞ…待たせたな!出久、勝己!世界最強の登場だ!!」

 

 

 決め台詞が台無しになるほどの、紅葉形に腫れた頬を此方に見せながら。

 

 

 

===============

 

 

「おっせぇんだよ!!項羽!!お前はいつも……はぁ!?お前…その、顔…!!」

 

「こうちゃんの顔が腫れてる…!?いったい誰がこうちゃんにビンタを…あの、攻撃らしい攻撃を一度も受けたことのないこうちゃんが…えぇ!?」

 

 勝己が俺に文句を言おうとしたのが吠えながらズカズカと指差して寄って、俺の顔を見た途端。稀に見ない、呆けた面を晒したかと思えば、心底驚いたのか空いた口が塞がらないようでいた。

 出久も同じなのか、手形に真っ赤に染まった頬を見て、困惑というか恐ろしいものを見たかのように狼狽している。

 どっちにしたって最近、こんなリアクションを見せてくれなかったので、なんだか嬉しくなった。

 

「…もしかしてじゃなくて、アンタがこうちゃん、て呼ばれてる人…ですか?」

 

 何故に敬語?

 助けてもらったにせよ改まりすぎだろ。あ、初対面だから普通か。

 

「おう!普通科の黒籍項羽だ。よろしく頼むぜ、切島」

 

「へ?なんで、名前を…」

 

「二人から聞いてるからなー。横にいるやつも分かるぞ。轟…だったか?」

 

「あぁ、轟焦凍だ。よろしく頼む」

 

 仲間の二人が困惑に陥ってるところを放置して二人と握手を交わす。轟が不思議そうな顔して自身の頬を刺しながら疑問を口にした。

 

「その顔はどうしたんだ?」

 

「あぁ、ここに来るまでにちょっとしたハプニングがあってな。俺が悪いんだけど…そのせいで耳たぶがイヤホンジャックになってる耳郎って女子に見舞われた」

 

「耳たぶの女子ってことは耳郎か!アンタ、いったい何したんだよ…」

 

「いやな、その耳郎と八百万と、あと上鳴ってやつが、!」

 

「うおっ!」

 

 そうだった。まだ、敵はいたんだった。

 思わず、和やかに話していたところで体の至る所に手首を取り付けた敵が中々、素早い動きで俺の背後に迫って手を伸ばしていた。

 

「お前が黒籍項羽か!!」

 

 伸びてくる手を掴み捻りあげると、苦悶な声をだしたながら今度は逆側の手を伸ばしてくる。しかし、意識が偏ってるせいか足を引っ掛けてやると簡単に倒れたので、素早く手を後ろに組ませ、組み伏した。

 

「学校に乗り込んでくる輩が俺の名前を知ってるとは光栄だな」

 

「黙れ…社会のゴミめ。殺す殺してやる…!!」

 

 手だらけ男が血の走る、殺意のこもった目で俺を睨む。強く憎む憎悪の目。俺は何人もこんな目をしたやつにあって来たが、こいつの目は今まで会った。どの誰よりも危険だと感じた。これは、絶対に逃がしてはダメだと、また、直感が叫んだ。

 俺がそれに対して口を開こうとした瞬間。ドームの入り口であるゲートが派手な音を立てながら吹き飛んである人物が現れた。

 

「もう、大丈夫!私が来た!!」

 

 ネクタイを緩めながら力強くそう言い放つオールマイト。所々から歓喜の声が聞こえてくる。来るのが遅いんだよ、まったく。

 

「オールマイト…!」

 

 手だらけ男の殺意が更に強くなる。

 なるほど、狙いはオールマイトか。

 …いや、真っ先に名前を呼んで攻撃して来たから…もしかしたら、俺のことも標的に入っているのかもしれないな。

 

「…万事休すってやつか、敵さん?」

 

「うるさい!お前も、オールマイトも、この世界の癌だ!!おい、黒霧!あれ持ってこい!!脳無!!」

 

 指示が出たことにより脳無と呼ばれた脳みそ剥き出しの大男が動き始めるが、様子がおかしい。

 俺の下にいる手だらけ男を助けるのでなく、オールマイトの相手どるのでもなく、何処か別の場所に走り出している。

 

 その先を見てみると、遠くの方でそろり、そろりと入り口に向かって行ってる耳郎たちの元に向かっていた。

 

 それに気付いたオールマイトも脳無を止めようと飛び出すが、飛び出した先には黒霧がおり、オールマイトを包めるぐらいの黒いモヤが発生していた。

 

「何だっ!?」

 

「あなたには一度遠くへ飛んでもらいます!!」

 

 オールマイトを包み込んだ黒いモヤが晴れるとオールマイトの姿は跡形もなく消え、入り口から対角線上のところにオールマイトの気配を感じた。なるほどワープか。

 

「オールマイトっ!!」

 

「(今のうちに…!)」

 

「させるかよっ!」

 

 いつの間に復活していた勝己が、再び黒いモヤを使って何処かにワープしようとしていた黒霧に爆破を行うがすでに本体は向こう側に行ったのか勝己の攻撃は空振りに終わった。

 出久も脳無に追いつこうと走るがポテンシャルだけならオールマイト級の脳無は、まだまだ未熟な出久には…速かった。

 

「止まれ…止まれよ!!この野郎!!!」

 

 出久の叫びと共に身体に迸っていた緑色の紫電がより一層勢いを増すと出久のスピードが飛躍的に上がる。

 あの感じだと、60%以上を出してんな…。

 あの野郎、相変わらず無理しやがる。

 

「出久!これ持ってけ!!」

 

 爪先から頭の先まで出久の身体に真っ黒な重瞳が纏われる。その姿はまるで鎧のようだった。

 

「(これは…力がどんどん溢れてくる。なんでも出来るような全能感を感じる。

 …いや違う。…守られている……こうちゃんに)」

 

 脳無の前に飛び出した出久は脳無と取っ組み合い、乱打戦を始める。

 

ふんっ!オオオオオオォ!!ハァッ!!!

 

 数十発打った所だろうか。

 出久が脳無の太い腕を両手で掴み、身体全身を使いながら脳無をジャイアントスイングする。

 流石の脳無も、強い遠心力の力には動けないのか、されるがままのようだった。

 そのまま力任せに上空に投げ捨てると、出久も飛び出し、右腕に力が集中していくのを感じた。どうやら空中で勝負を決めるらしい。

 

「(今までコイツは死柄木の命令を聞いてから動いていた。命令を受けるまでは、まるで人形のように突っ立ってただけで何もしてこなかった。つまり、脳無は命令がないと動かない!なら、声の聞こえない所まで吹き飛ばしてやる!!)」

 

 万象儀を通じて、出久の考えが流れ込んでくる。

 だが、万象儀を纏っているとは言え、出久一人の力だけでショック吸収をもつ脳無を吹き飛ばすことは出来るのか?

 しかし、俺の考えは出久とは逆の方向から飛び出て来た奴によって杞憂だったと理解した。

 

「よくやった少年!!私も一緒にやるぞ!!」

 

「オールマイト!!はいっ!!!」

 

「「 DETROIT…SMASH(デトロイト スマッシュ)!!!!」」

 

 二人の拳が脳無に深々と突き刺さり、砲弾のような速度で一直線に吹き飛んで行く。その勢いはドームの屋根を突き破っても尚、衰えることはなかった。

 

 はは、スゲェ。ショック吸収がなかったことになっちまった…乾いた笑いしか出てこんわ。

 

「油断したな化け物!」

 

「してねぇよ」

 

 隙をついて手だらけ男が手首を捻り、拘束していた俺の腕に自身の五指を触れさせようとしてくる。勿論、それに気付いていた俺は自分の腕を分解する。手だらけ男の攻撃は虚しくも虚空をきった。

 手だらけ男が忌々しげに舌打ちをする。

 

「チート共がぁ…!!」

 

「そうだなー。つくづく俺もそう思う」

 

「また、凍らせておくか?」

 

「いや、良い。少しコイツと話がしたいからな」

 

「…敵の言葉なんざ聞かないほうがいいと思うぞ」

 

「…そうかもな。でも、俺の夢なんだ。その為にもコイツとは話がしたい」

 

「…?」

 

 冷たい瞳をしている轟と何のこっちゃと小首を傾げる切島から、憎たらしい、忌々しいと俺を睨みつける手だらけ男に向き直る。

 

「なぁ、なんでオールマイトを殺したいんだ?」

 

「…決まってるだろ。ムカつくからさ!救えなかった人間なんていなかったかのようにヘラヘラ笑っているんだぜ!腹が立って仕方がない!!」

 

「…イカれてんなぁ。聞かない方がいいぜ」

 

「…お前こそどうなんだ。まだ『廻り者』の共存なんか目指してるのか?」

 

「ッ!?なんでお前がその名を…!!!」

 

 手だらけ男の唐突な発言に、俺は動揺を隠せなかった。そんな俺を見て、気分を良くしたのか小馬鹿にするように話を続けた。

 

「ハハッ!やっぱりそうか!花弁はないけど、お前も、やっぱりそっち側なんだなぁ化け物…いや、世界最強?」

 

「テメェ!!!」

 

 何故、コイツが廻り者のことについて知っている?

 花弁についても知っている。と言うことは廻り者についてある程度の知識を誰かに教えられたってことだ…。

 まさか…俺ら以外にもいるのか、廻り者が…それも敵に、俺の前世のことも知っている奴が。

 

 そんな思考に耽っていると背後からとてつもない悪寒を感じ、手だらけ男の拘束すら放棄し、慌てて横に飛び退いた。

 

 満月のように変質した頭は血管が浮き出ていて、口は顔の半分ぐらいまで、はっきりと裂けていた。体格は脳無とほぼ同格…いや、それよりも大きく、筋肉が隆起しているのがはっきりと確認できる。左腕には黒いベルトが幾十にも巻かれ、まるで黒い腕のようだった。

 これだけでも、完全にヤバいと思わせるようなルックスだが、俺が何より注目し、目を疑ったのは、そいつの首から()()()()()が流れていることだった。

 

 飛びのいたら先で、俺は思わず固まってしまう。

 首から流れる赤い花弁は、前世から才能を引き出した者の証。それは、俺がこの世界に生まれ落ちてから探して来た存在。久方ぶりに見る同胞…それが今、敵として目の前にいる。

 

 そいつは、俺が先ほどまでいた位置に噛み付いた後のような姿勢でいた。

 後ろにいた轟と切島も、たった今、気づいたようで、轟が後退しながら氷結を放つがベルトの巻かれた腕の一振りの余波だけで粉々に砕かれている。

 自由の身となった手だらけ男が愉悦の混ざった笑顔で俺を嘲るように口を開く。

 

「俺が何のために喋らなくてもいいことを長々と話したと思うんだクズ共め!!…紹介しておいてやるよ。『エンドレス』の改造制作過程における失敗作、アルバート=ハミルトン=フィッシュの廻り者の脳無!!せいぜい仲良くしてくれよ?黒籍項羽…」

 

 …エンドレス?改造?失敗作?

 耳障りな声をしている男の声を聞いて、俺は久しぶりに頭の中が真っ白になった。

 

 

「…………は?」

 

 

 




黒砲(こくほう)
 …空気を圧縮して放つ技☆
  指向性を持たせられるよ☆
  最悪、相手の体に穴が開くよ☆
  良い子のみんなは気をつけて嫌いな奴にぶちかまそう☆
  キラッ!ミ☆


 ミッナイ先生が死んだのはキツすぎるんじゃあ…(単行本勢)


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なんだかんだ進展はしない

アレク様のスタイルが良すぎて鼻血が出そう。


 

 蛇に睨まれた蛙という諺がある。

 

 蛇に見込まれた蛙とも言う。

 恐ろしいものに睨まれ、身がすくんで動けなくなってしまった状態を蛇と蛙に例えた諺だ。

 …しかし、実際アレは先に動いた蛇を避け隙をついたところでカエルが逃げる最も生存確率の高い、生きるための戦略なのだ。

 

 しかし、ことこの状況おいては彼らは間違いなく前者だった。

 

 人間ではない。得体の知れない、とてつもなく強大な何かが自分たちを見下ろしている。

 それの近くにいた四人の少年が最初に感じたのはそれだった。生物に元来備わっている生存本能、それが泣き叫ぶように警鐘をけたましく鳴らしていた。

 逃げろ、見るな、動け、蹲れ、攻撃しろ…頭の中で脳が支離滅裂な命令が交差する。

 が、遺伝子に刻まれた直感が脳を抑えこんで叫んだ。

 

 目を離すな。

 

 少年たちはそれと同様にあることを思い浮かべていた。

 もし自分が、彼から目を離した時、動いた時に。彼の手によって、間違いなく自分が凄惨たる死を迎えるであろう、はっきりとした"死のイメージ"。

 …その光景に恐怖で身がすくむ。冷や汗が滝のように流れ、汗が伝う手が震える。金縛りにでもあったかのように体を自由に動かすことが出来なかった。

 

「(クッソ、がっ慣れねぇな、この感覚!!)」

 

「(初めて見た時は…大号泣して、暫くこうちゃんから逃げてたっけな)」

 

「(親父でもこんな圧…感じた事ねぇぞ……!!どうなってんだ!?)」

 

「(息が…苦しいっ、体……動かねぇ…!!)」

 

 反応は様々だった。

 戦慄する者、混乱しパニック状態に陥る者。

 十年以上の付き合いである二人の仲間でさえも、訓練の一環で味わった仮初の威圧じゃない、久方ぶりに見ることとなる本気の怒気。ある種の懐古すら感じてしまう。笑みをこぼして抵抗することすら諦めてしまいそうになる程の圧倒的存在感。

 

 

 平和の象徴と謳われた男でさえも、あまりの威圧感に警戒心を最大にまで引き上げ、苦い表情で歯噛みをしながら困惑する。

 

「(…ついこの間まで中学生だった少年が、出していい圧じゃないぞ!…黒籍少年っ君は一体、何者なんだい!!?)」 

 

 冷や汗がたらりと頬を伝う。

 かの巨悪と対峙した時に感じた絶対的支配者の圧力を、目の前にいる中学を卒業して間もない少年から同じような威圧感を感じるのだ。

 その事を理解した平和の象徴の動きは早かった。目にも止まらぬ速さで重瞳の少年の背後に周り、行動を制止するように肩を全身で抑え込んだ。

 

 まだ彼は何もしていない。

 何もしていない。まだ何もしてはいないが、気迫だけで相手を殺してしまうほどの殺意を放つ少年を、絶対に止めなくてはならないと平和の象徴としての心と教師としての心が体を動かした。

 重瞳の少年の一挙一足に注意しながら平和の象徴は声を張る。

 

「黒籍少年!動いちゃダメだ!!彼らを殺す気か!?」

 

「……勝己、出久」

 

 重瞳の少年は自身を拘束する平和の象徴の声を無視し、いつものような戯けた声ではない、静かな声で彼の最も信頼の置く仲間の名前を呼ぶ。

 名前が呼ばれたことで緊張の解けたのか、名前の呼ばれた二人はおもいっきり息を吸い込んだ。急に空気を肺に取り込んだせいで咳き込みながらも出来なかった呼吸を堪能しながら本気で(いか)る仲間に顔を向ける。

 

「そいつら連れて逃げろ…本気でやる」

 

 青褪めた顔で此方を見やる紅白のツートンカラーの髪の少年と鋭く逆立った赤髪の少年を一瞥した重瞳の少年が怒りを滲ませた声で指を鳴らす。

 その怒りに呼応するかのように彼の背後から禍々しいと思ってしまう黒き波が地を引きずるような音と共に溢れ出ていた。

 

 それを見た三白眼の少年は小さく舌打ちをすると、真剣な眼差しで項羽を睨みつける。

 

「…分かってるだろうけど項羽…お前、殺すなよ?」

 

 それはまさしく、忠告だった。

 今から敵に向かう仲間に対して、心配など微塵もない。逆に、敵に配慮するような声色で重瞳の少年を睨みつける。しかし、三白眼の少年は浮かない表情をしていた。仲間の勝利を疑ってはいない。なのに少年からは口惜しさのようなものが伺えた。

 

 続いて、そのやりとりを見たそばかすの少年が困ったように笑いながら声を掛ける。

 

「もう少し闘気を抑えてよ。このままじゃ皆んな息できないから。……それに、辛かったらいつでも頼ってね…仲間だろ?」

 

「…悪りぃ」

 

 そばかすの少年が三白眼の少年と同じような顔つきでそう言う。周りはそれに不思議そうな顔をしていたが、それを見た重瞳の少年は一瞬、驚いた顔をしたかと思うと詫びるように苦笑した。

 

 二人の言葉を聞いて少し落ち着いたのか、重瞳の少年の発していた重たい威圧感が少し軽くなった。他の二人も呼吸ができるようになったのか荒い息をしながら地面に膝をつき、肺に空気を取り込んでいた。

 その姿を確認したそばかすの少年は、落ち着くように二人に告げると二人を両脇に抱え込んだ。

 そばかすの少年の体に緑色の紫電が迸ったかと思えば、次の瞬間には、二人の人間を抱えているとは思えない速さで出入り口のゲートに向けて走っていった。

 

 三白眼の少年は見てるぞと、再度、重瞳の少年を睨みつける。三白眼の少年は後ろ髪を引かれるような感覚を感じたが、そばかすの少年を追いかける為に両腕から爆発と爆音を響かせながらその場から去っていった。

 

 それを静かに見送った重瞳の少年は、二人の言葉を思い出し、思わず小さく笑みを浮かべた。

 

「はは、アイツら本当に心配症だなぁまったく…」

 

「黒籍少年ダメだ、別に君が戦う必要はない!敵の相手なら私がっ」

 

「オールマイト、離してくれ。すまねぇな…これだけは譲れないんだ」

 

「何を……!?」

 

 オールマイトは前々から項羽のことを不思議な少年だと思っていた。

 初めて彼と手合わせした時、その齢にして私を凌駕するほどの戦闘能力を既に携えているのものかと感嘆した。

 彼と長きを共にしている二人の仲間も、その歳では考えにも至らないであろうレベルの武術を体得していた。

 前に、緑谷少年にそれとなく聞いたことがあるが、彼は幼少の頃から闘うことに関しては殆どを黒籍少年から教わったと聞いた。

 

 それを聞いて、思わず教育者という面でも私は劣っていると悲観してしまった。

 

 しかし、そうなると自然と不思議に思った。

 黒籍少年は何時から武術を経験していたことになるのだと。

 

 彼と組み手をしてみた時には歴戦の強者のような雰囲気を纏い、子供とは思えないギラついた眼を向けられた。

 個性の影響…?彼の万象儀のおかげ武術を会得したと考えるのなら、ワンチャンあり得ると思った。

 まさか、前世の記憶があるのではと、荒唐無稽なことまで考えたが昔ではあり得なかった超常が日常と化した今なら、あながちあり得なくもないと少し悩んだ。

 

 不思議だと思ったことは、もう一つある。

 

 ある日、話をしている黒籍少年を遠くから眺めていた時があった。

 

 いつも通りの何ともない彼らの平凡な会話。

 しかし、会話の途切れであろう…黒籍少年が不意に私に短く目を向けた。そのふとした本人でも無意識なのだろう、そんな瞬間だった。

 

 何処か達観し、期待してないような、悲しさを帯びた表情が私に向いていた。

 

 

 その時は背中を撫でられたかのように身が竦んだ。

 得体が知れない。

 彼が何を持って世界の平和を望んでるのすらかも分からない。

 知ってることのほうが少ないだろう。

 分からない。

 

 けれども、相手を喰い殺さんとばかりに殺気に近い怒気を放つ少年を見過ごせるわけがない。

 

 将来、この国の大黒柱に足りえる人物がここで罪を犯してしまうとなると、輝ける未来が霞んでしまう。そう考えて、無理矢理作った不自然な笑みをしてでも彼をここから遠ざけようと声を張った。

 

 しかし、項羽はその声に何も反応せず静かにオールマイトの目を見やった。オールマイトはそれを見て、出そうとした声を噤んだ。

 あの日と同じように、達観した目つきの奥に確かな決意を感じさせる瞳と共に、今までの怒りとはとても似つかわない、様々な感情が入り混じったような表情で項羽は穏やかに微笑んでいた。

 

「どんな時でも笑顔、だろオールマイト?表情硬いぜ」

 

 私はあの日と同じように申し訳ない気持ちで一杯になって、思わず手を離してしまった。

 

「」

 

 一番近くにいても聞き取れないような声で彼が何かを言うと彼の背後から出ていた黒い波が彼を覆い隠した。

 

 光すら飲み込む黒い影を纏い、爪先から頭の天辺まで黒く染まった顔から表情はまるで窺うことはできない。

 ただただ、真っ赤な丸い双眸が、目の前で固まる愚者を見据えていた。

 

「(…先生?)」

 

 その姿を見た死柄木は困惑した。

 何故だかわからない。

 目の前にいる化け物に、自らが先生と呼んでいる畏怖すべき魔王の姿がはっきりと重なって見えていた。

 

 そのことを直感的に理解した死柄木は、迷うこと無く真っ先に逃走を図った。

 死柄木は足止めをエンドレス脳無に命令し、我先にとワープゲートの中に入っていく。

 

「待て」

 

 地を這うような低い声が死柄木らを追いかける。エンドレス脳無がそれを阻もうと攻撃をしかける。

 が、何事もなかったかのように潜り抜けられ、すれ違いざまに額を掴まれ、頭を後頭部から地面に叩きつけられ、埋もれさせられる始末。

 

 難なくワープゲートの前まで辿り着く項羽は死柄木達が消えたワープゲートに一切の躊躇いもなく腕を突っ込んだ。数回、探るように腕をかき回したかと思えば、次の瞬間には、中から死柄木弔の首根っこを掴んで簡単に引き摺り出していた。

 

「何いぃ!?」

 

 一度は逃げられたと息をついてたのにも関わらず、引き摺り出されたことにぽかんと呆けた顔をしていた死柄木だが直ぐに状況を理解するとすぐさま殺意を漲らせ首を掴んでいる腕へ個性である崩壊を発動させようと五指を項羽に向かって伸ばす。

 

 貧相な体に似合わない鋭敏な動きは、項羽の腕を捉えた。

 項羽の腕がチリになって崩れていく。そしてその崩壊は、腕を伝い体にまで伝播し、亀裂を入れ、その体を崩していった。

 

 その惨状を見た者たちの悲鳴が広場に響く。

 しかし、彼と最も親しい仲間の二人は同級生たちの悲鳴を聞いても振り返ることなく走り続け、同様に同じような事を考えていた。

 

 

 そのくらいじゃ、ソイツは死なない。

 

 

 腕を伝って、急速に崩れていく化け物の体を見て死柄木は嗤う。

 だが…ある事に気が付き、その嗤みはピタリと止まった。

 

「(どうして…首を掴んでる手は崩れない…?)」

 

 灰塵に帰していく体に対し、死柄木の首根っこを掴んでる手は絶対に離さない意志を感じるほどに力強く自分の首を掴んでいた。

 本来ならば触れた時点で既に崩れ去ってる筈の代物が、未だに首を力強く握って離そうとしない。

 死柄木は自身の首を掴んでいる手首を注意深く意識を向けた。

 

 ピクリ、

 

 首根っこを掴んでいる手が微かにその力を強めたことに気が付いた死柄木は、怒りの表情を剥き出しにし、今までに出したことのない速さで項羽へと手を伸ばした。

 しかしそれは、項羽の目にはあまりに鈍く、あまりに殺意に欠けたものだった。

 伸びてきた手を項羽は躊躇いなく握り潰す。

 

「ア"ア"ッ!!!」

 

 想像することすら憚れるような激痛が死柄木に走る。自分の前腕を何の躊躇もなくへし折った張本人が、自分を人間をだと思っていないような、酷く冷めた目で見下ろす姿が死柄木はとても恐ろしく見えた。

 崩れていた筈の項羽の体も、塵と化していた体の破片が崩れた部分に纏わりつき始める。よく見ると戻っていく体の破片らの断面には黒い重瞳が嘲笑うかのように蠢いていた。

 まるでビデオの逆再生のように何事もなかったかのような振る舞いをして項羽の体が元に戻っていく。その光景を見て死柄木は激しく歯を食いしばり声を荒げずとも激情を露わにしていた。

 

「チートが…!!」

 

「お前には聞きたいことがあるからこのまま生かしておく。次に似たような真似をしたら両手を切断するから覚悟しろ。……あとは…」

 

 

「僕の教え子に随分と酷いことしてくれるじゃないか。黒籍項羽…」

 

 

 それは突然、現れた。

 死柄木を無視して淡々と話す項羽の背後。誰もいなかったはずの背後から吐き気のするほどの邪悪な気配が君臨した。

 低く、相手の恐怖を掻き立てるような悍ましい男の声。

 突如として現れた存在に、相手の邪悪さを感じ取った項羽は振り返るよりも早く裏拳を繰り出した。瞬きもしない間に亜音速の速さで振られた拳がその顔に当たったと思われた。

 しかし、拳の当たるほんの直前に謎の力が項羽を大きく吹き飛ばした。

 項羽から死柄木を回収するように死柄木の腕を掴んだ男が小さく笑みをこぼす。

 

「…本来ならば僕が出るべき幕ではなかった。でも死柄木弔が捕まるとなると話は変わってくる…この子は返して貰うよ」

 

 項羽が吹き飛んだ地面は抉られ、進むにつれ、その幅は広く、深く削られていた。工業地帯で付けるようなマスクのせいで声がくぐもっていても分かる、ニタニタとした笑い声をさせながら男は地面に掌を翳し、ワープゲートを展開させる。

 

「オール・フォー・ワンッ!!何故、貴様がいる!!?」

 

 素早くワープゲートに死柄木を投げ込んだ男が、今度は自分が入ろうと飛び込んだと同時に、男が現れてから目の色を変わったオールマイトが切羽詰まった様子で男に殴りかかった。しかし、男の顔に拳が当たった瞬間、はね返されたようにオールマイトの腕が弾かれ、オールマイトの腕から血が流れる。

 

「避けるなよ?オールマイト…!!」

 

 そうオールマイトに聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた男の前腕が膨張し、オールマイトに掌を翳す。何か来ることを予測したオールマイトは横に避けようとするが、すんでのところで気が付く。

 男が掌を翳した直線上の先にはオールマイトの他に、出入り口前に避難していた生徒たちがいる事に気が付く。

 オールマイトは一瞬、苦い表情をするがすぐに切り替えると、避けるのを止め、力強く拳を握り、全力で振りかぶった。

 

 オールマイトの拳と男の腕から飛び出た衝撃が地面を抉り取り、周囲に暴風を撒き散らしながらぶつかり合う。

 自然によって引き起こされる災害を彷彿させられるような圧倒的な風力が並み居る木々を打ち倒し、瓦礫と砂塵を舞わせながらその猛威を振るう。周囲に退避していた者たちは衝撃に耐えるために蹲ることしか出来なかった。

 

「…やはり衰えたなオールマイト。昔の君なら僕を奥まで吹き飛ばすことなんて造作もなかっただろうに…!打ち消しで精一杯とは…!」

 

「黙れ!今度は何を企てている!?さっきの(死柄木)を利用して何をがしたいんだ!!」

 

「ハハハハハ!そんなの、僕がする事だぜ!君になら分かるだろう?…でも、今日はお開きにしようか。丁度、怖い化け物も来たことだしね」

 

 嬉しそうにそう言って男は再びオールマイトに向けて掌を翳し、先程と同じように衝撃波を飛ばした。

 威力の上がった衝撃波は200kgを軽々と超える体重のオールマイトを弾丸のような速さで吹き飛ばし、屋根を突き破っても尚、止まる様子は見せなかった。

 

 オールマイトが屋根を突き破った直後、ワープゲートに男の肩が出るか出ないかの辺りで、一瞬にして男の前に出ていた項羽が両腕を突き出していた。

 

 万象儀を纏わせた指をめいっぱい広げ、相手の体を抉り取ろうという明確な殺意を乗せた掌を、相手へ伸ばす。

 

 一度、触れてしまえば相手の体を抉り消し。触れた箇所から万象儀で侵食し、支配することで、確実に殺傷することの出来る能力を持った掌が、あとコンマ数秒も経たない内に男に届こうとしていた。

 

 しかし、男は悠然とした雰囲気のままニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて動こうとしない。

 男の様子を不審に思った項羽は攻撃をやめようと考え……手を伸ばす速度を速めた。たとえ罠だったとしてもこの男は今、この場で殺しおかなければならない。殺さなければいずれ最悪をもたらすと考えた項羽は手を伸ばす。

 

 あと30cm。

 あと10cm。

 残り薄皮一枚ともいかないところで、

 

 

 肘から先が消えた。

 

 

 そのことに全身に這いずるように悪寒が走り、項羽は思わず飛び退いた。慌てて手に目をやると肘から先がきちんとあったことに内心ほっとする。

 腕がなくなると思うほどの明確なイメージ。久方ぶりに全力で回避した項羽は内心、冷や汗をかいていた。

 男の方に顔を向けてみると項羽がさっきまで立っていた場所に、まん丸な顔をしたエンドレス脳無が、かぶりついた後のような姿勢をとっていた。もし身を退かなかったら…恐ろしい光景が項羽の頭によぎる。

 

 項羽はそれを忘れようと頭を振り敵の観察に入る。

 

(直前まで気付けなかったとなると、瞬間移動か気配を消す類の能力…。いや違う…なんか見たことあるぞコイツ…。フィッシュ…?そうか思い出した!コイツ、東耶が初めて出会した廻り者じゃねぇか!確か才能は…)

 

「『食人累加』、人間を食べれば食べるほど身体能力が上昇する才能…本当はこれは試作品でそんなに無駄にしたくはないんだけどねぇ…まぁ、これに合う個性を僕は与えたつもりだ…だから存分に楽しんでくれ西楚の覇王よ、また会おう」

 

 そう言い残して男はワープゲートの中に沈んでいった。

 フィッシュはぎょろり、と目を動かすと脳無と同じように無機質な眼差しを項羽に向け、大きく裂かれている口を開き、三日月のように弧を描いた獰猛な笑みを浮かべた。

 

「おイ、しそう…!!」

 

 

 

 

 

 




TikTokで内通者のネタバレをくらってしまって記憶を消したい。

あとヴェノム2が見たい。


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慈しみは無情にて

ほんとに『花束を』が進まない。\(^o^)/

※今回、胸糞、不快な表現があります。
 気を付けてください。カシコ



 今世で久方ぶりに見つけた、同胞の姿は変わり果てていた。

 

 死柄木とあの男の発言から、あの脳無のように改造を受けたんだろう。目の前に立つフィッシュの姿が…ノスから受けた報告とは大分、違って見えた。

 

 俺からすれば、会ったこともない廻り者でも仲間だ。他人じゃない。

 どいつもこいつも弱虫で、自らに絶望して、才能を求めて首を切った愚か者たちだ。

 

 

 

 才能ってのは救済だったはずだ。

 

 

 

 弱い自分を変えたくて

 弱者が力を求めて

 虐げられるのを避けるために首を切った。

 

 たとえそれが結果として、俗世から離れ、自我を失い、仲間内で争い、さらに行き場をなくすことになったとしても…俺たちは救いを求めたはずなんだ。

 

 

 それがどうして…どうしてフィッシュは脳無に改造された?強制的なのか、任意的に施して貰ったのか真意は分からないが、あんな趣味の悪い玩具と同じように扱われるのは…俺としては、あまり快くは思えない。侮辱にすら思えた。

 

「ア、脂身のスクなそうで、筋肉ガ、たっップリと詰まッてイテ、それでいテ、柔らかそうでっ!…オイシソウ!オイシソウな、若いカラダ!!」

 

 フィッシュは今から俺を食えると考えているのか、待ちきれないと言わんばかりに小刻みに頭を震わし、想像した味と匂いに嬉しそうに目を歪ませて涎を垂らしていた。

 …近所にいたなあんな犬。餌持っててやったら喜びで狂ったように乱舞してたやつ。

 

 そう思ったら、大口を惜しみなく開いて何でも噛み切れそうな頑強な歯を見せながら発狂したように猛然と迫ってくるフィッシュも可愛く…かわいく……見えねぇな。ダメだ、うん。

 

 というか既に衝動に呑み込まれているな。

 …仕方がねぇ……誰かを襲う前に楽に逝かしてやるか…。

 

 真正面から迫ってくるフィッシュを迎え撃とうと体勢を構え直す。

 

 変わり果てた同胞にせめて楽に死ねるようにと気持ちを整え、繰り出す拳に意識を集中させる。今から葬るフィッシュの顔を最後に目に焼き付けようとヤツの顔を見据える。

 

 そこでやっと、俺は気付いた。

 

 フィッシュの口元に赤黒い液体が付いていることに。よく見るとつい先程、付着したかのように照りついている。しかも異様な鉄臭い匂い。間違いなく血だった。

 

 黒霧がワープゲートで連れ来た時にはこんな血痕は付いていなかった。つまり、俺がコイツを地面に叩きつけた後の、あの男に吹き飛ばされた後、目を離していた隙に何かをタベテ…付いた血ってことになる。

 誰かが襲われていた気配は全くしなかった。むしろ俺たちの周りには誰もいなかったと思う。

 

 …けれどもし、先程のように気配を消して動いていたとしたのなら、コイツは何をしていた?

 

 思わず俺は、迫り来るフィッシュを無視して辺りを見回す。

 

 すると、ここより少し離れたところに、殺人が起こったような血溜まりと、その真ん中に何かがあるのを見つけた。

 

 それは、噛みちぎられたような切断面をした赤いブーツを履いた一本の脚と、一本の槍のような鋭さをした棒、無線機のような形をしたソレと、見覚えのあるイヤホンのジャックのような物が、血の水溜りに乱雑に転がっていた。

 

 

 

『項羽……』

 嘘だ。

 

 

 

 答えを出す前に感情が否定した。

 

 

 

『しっかり前を向いて』

 違う。

 

 

 

 だってそうだ。アイツらには先に出口に向かっていろって言った。

 

 

 

『みんなと仲良くね』

 嘘だ嘘だ嘘だ。

 

 

 

 アイツらはもう出口にいる奴らと合流して助けを待っているんはずなんだ。

 

 

 

『元気で、楽しく、笑顔で』

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

 

 

 

 助け出したマヌケ面が頭に浮かんだ。

 

 

 

『幸せに』

 やめろ…

 

 

 

 

 痴女と呼ばれ愕然と落ち込む表情が脳裏によぎった。

 

 

 

『あなたの信じる道を』

 俺はまた繰り返して

 

 

 

 

 叩かれた痛みが、気丈な少女の姿と共にジンジンと頰に甦る。

 

 

 

 

 

 

『…行きなさい。項羽』

 母さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィッシュが肩に凶歯を突き立てる。深く突き刺さった歯は俺の肉を破り骨を断とうとしていた。夥しい量の血が流れる。

 

 しかし、痛みは全くなかった。

 

 そんなことよりも胸の奥に重くのしかかる、冷たい鉛が俺を押し潰そうとしていた。どこまでも責め立てるような無数の針が肌を切り裂き、全身を刺して、俺を許そうとしない。

 

 一度は世界を壊した。

 同胞を殺した。

 仲間を死へと導き。

 無二の友を手にかけた。

 

 

 ……何が世界平和、何が世界最強だ。

 

 

 

 

 結局、お前は…暴力の塊、そのものじゃないか。

 

 

 

 

 ……フィッシュ。お前は悪くない。

 悪いのはお前から目を離した俺だ。

 お前を死柄木たちより先に見つけられなかった俺の責任だ。

 

 

 だから、お前の罪は俺が背負う。

 

 

 だから、安らかに逝け。

 

 

「黒死無争…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒。

 

 暗闇なんて表現では決して務まらない、只々、黒で塗りつぶされた世界の中にフィッシュは飲み込まれた。

 今まで有った極彩色で彩られた世界は消え去り、一筋の光でさえも知覚出来ない世界にフィッシュ目玉を潰されたのかと見当違いな考えをし、傷ついた目玉を復元しようと意識を向ける。

 しかし、眼に痛みはなく、自身の周りが一瞬にして闇に覆われたのだと直感した。

 

 天と地、前と後ろ、左右…永遠に続くんじゃないかと錯覚してしまうほどの暗闇にフィッシュの平衡感覚は麻痺し始め、本当に自分が真っ直ぐと立ち、前を向いているのかすらも分からなくなる。

 

 そして、困惑しきったフィッシュの前に白い煙のような物が渦巻き状に集まり始め、やがては一人の暗い表情を俯かせた男を形成した。

 

 その男は今さっきフィッシュが齧り付いた若い男だった。

 そう認識したフィッシュは間髪入れずに男の頭を殴り消し飛ばした。

 しかし、男の表情は暗いまま。フィッシュの拳は確かに男の顔面を捉えて消し飛ばしたが、男の顔は煙のように変質し、四散したが、すぐに元に戻った。

 

 

 殴ったはずなのに、空を切った拳の感触にフィッシュは苛立ちを憶えた。

 

 

 肉を殴りたい。

 骨を砕きたい。

 泣き叫ぶ声が聞きたい。

 

 

 エンドレス脳無…フィッシュの素体となった男はエンドレス脳無となり廻り者になる以前から連続強姦殺人事件の犯罪者であった。

 

 夜道を一人で歩く若い女性を背後から近寄り、撲殺し、家に連れ帰ると冷えた死体を犯した。その後、行為に飽きたフィッシュは被害者の体を分解。それにも満足すると肉片を風呂場に放置し、このような犯行を数回に及び繰り返した。

 

 勿論のこと、すぐさま近隣の住人が警察に通報しあえなく御用となる。裁判が起こり、日本中の誰もがこの男の死刑を望んだ。しかし、男は軽い罪で処罰されるだけで終わり、あっさりと自由な身となった。

 理由としてはフィッシュは精神疾患を患っており、フィッシュ自体もこの犯行を悔いていることから情状酌量の余地があると判断され、死刑は免れ檻の中で十数年過ごすだけで釈放された。

 

 そして釈放された後に、オール・フォー・ワンに目をかけられ脳無の素体とされ輪廻の枝にて花弁を散らすこととなる。

 

 オール・フォー・ワンとの会話の中でフィッシュはこんな言葉を残している。

 

『初めは女、気絶させて家に持ち帰ろうと思って殴った。それで女の頭をよぉ…殴ったら、力余ってゴッって鈍い音がしたんだ。今まで聞いてきた音の中で一番とんでもなく気持ちのいい、いい音でよぉ。もう一回って思ってるうちに殺しちまってて…女の頭から赤い血が出て、顔がどんどん真っ青になっていくのが面白くてよぉ、どうしてか、すげぇ興奮したんだ。そのまま持ち帰って、犯って…さっきの音、聞きてぇなって思ってバラしたんだよぉ。そしたら肉が千切れる感触とか、ハンマーで骨を砕いたらなぁ、すげぇ気持ちよくて思わずイッちまったんだ。その感触が忘れられなくて何回もやってたら……まぁこの先は知ってるだろう?なぁ、あんたの言う通りにすれば俺はまたあの気持ちよさを味わえるんだろ?だったら喜んで協力するぜ』

 

 

「それがお前の全てか?」

 

 

 不意に暗い表情をした自分の餌となる男が口を開いた。

 思えばこの男を殴れていない。ついさっきやっと噛み付けたと言うのによく味わえて無かった。

 それになんだ、その反抗的な目は。

 お前たちは俺に殴られて、潰されて、食われて、俺を愉しませるのが役目だろう。さっきのヤツらみたいにさっさと悲鳴をあげて俺に食われてればいいんだ。

 

 フィッシュが再び拳を振り上げる。

 しかし、それは届くことはなかった。振り上げた腕はまるで鋭利な刃物にバッサリと斬られたかのように切れて力なく下に落ちた。フィッシュの体に激痛が走り、強い快感が迸るとフィッシュは絶頂し、汚らしい歓喜の声を上げた。

 

「あぁ、そうか…。お前の才能は痛みを快感に変えるんだったな。まぁ、どうでもいいか」

 

 体のとある部分だけが拡張される。体を内側から引き裂かれるような痛みはフィッシュを再び絶頂させその体を身悶えさせた。次に体の一部が縮小を始め体に穴が開く。体の至る部分が高速で移動を始め、摩擦で生じた熱がフィッシュを焼く。膨大な熱に晒されているのにも関わらず寒気がフィッシュを襲う。拡張され、縮小され、引き延ばされ、高速で無理やり体の一部だけを動かされる。分子レベルで行われるその行為にフィッシュの快感は次第に薄まり始め、言葉にはならないほどの激痛となってフィッシュを襲い始めた。

 声ならない絶叫と共にフィッシュは涙を流して赦しを乞うた。

 

 それに対し少年は俯かせていた顔を上げ、顔を強張らせて泣くのを我慢しようする子供のような表情をしながら沈痛な声で諭すように話しかけた。

 

「フィッシュ…お前は超えてはならない一線を超えてしまった。廻り者として、お前は同胞だと思っている。……だか、お前のやってしまったことはどうにも看過できることじゃない。決して赦されることではない。俺はお前を排除するが、お前の罪は俺が背負う。……フィッシュ。…俺を恨め、俺を憎め、決して俺を赦すな。すまない…。俺にはお前を殺すことしか出来ないんだ」

 

 

 

 黒の絶対空間が解かれる。

 

 真っ黒な半球が展開されてから、すぐあとからに駆けつけた雄英の教師陣も半球の中から響く絶叫と何かが灼熱に晒される音と何かが砕かれ、すり潰される音に急いで半球へと手を伸ばした。

 慌てて少年の仲間である生徒二人が静止するように叫んだ。

 それでも尚、教師陣は尋常ではない音が鳴り響く半球の中へと手を入れようとする。その行為は半球の正体を知っている生徒二人からすれば間違いなく愚行であった。

 

 そして、様子見として分身能力を持つエクトプラズムが半球に触れた。そして、引き摺り込まれるように呑み込まれて消滅した。

 

 このことに雄英の校長こと頭のいいネズミが速攻で乗り込みを中止、静観を余儀なくされた。

 

 

 そんな絶対空間が解かれた。

 重瞳の黒い霧が晴れた先、その中心には普通科の問題児である少年が特徴的なナイフを呆然と見つめて立ち尽くしていた。その姿には覇気がなく、すぐにも消えてしまいそうな儚い雰囲気を纏っていた。

 

 その姿に彼の仲間の二人が飛び出そうと身を乗り出した。しかし、こんなことがあった以上危険と判断した教師陣が二人を取り押さえると、呆然と立ち尽くす件の生徒をプロヒーローでもある教師陣が瞬く間に取り囲んだ。

 

 教師が来てもなんの反応も示さない少年を教師たちは仕方がないと恭しく拘束をすると他の生徒たちの目に入らぬよう連行していった。その間でも二人の仲間は抑えられながらも少年に声を掛けるが、少年はなんの反応も示さず一人、静かに涙を流した。

 

 




USJ編、終わりです。

推しは耳郎ちゃんと上鳴くんのCPです。


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意味のない覚悟



〜とある部屋の雑談会〜


「そう言えば、項羽さんの方はともかく、僕のいた世界って僕が死んだ後どうなったんですか?」

「ん…あぁ、えっーとな。とりあえずお前の弟は廻り者になった」

「え」

「ついでに廻り者同士で戦争になった」

「え」

「因みにここにいるほとんどは殺し殺された仲だな!!」

「ゑ」

「猫に頭を撃ち抜かれたぜ〜」
「同じく!」「俺も!!」「私も!!」
「「ワタシらは羽にやられたー」」
「「狙撃戦カットされたけど死闘を演じた」」
「不死同士の殴り合いは楽しかった!」
「同感であります。あ、ついでに貴方の弟に看取って頂きました」
「腐らされた(大人数)」
「悪め!!!」
「そこのハゲに裏切られた」
「裏切ったら女の子に滅茶苦茶にヤられた」

「ま、取り敢えずはロクでもないことしか起きてない」

「………(絶句)」




 

 

 よぉ、お前ら久しぶり。世界最強だ…。

 …ダメだ。あんなことあった後だから世界最強って言いづらい。

 

 

 死柄木御一行を撃退したその後、学校に拘束されて監禁された。

 字面にすると酷いが嘘じゃない。

 

 恭しくも両手足をガッチガチに完全拘束。

 しかもこれ、タルタロス行きの移動牢(メイデン)の拘束器具じゃねぇか。

 

 それに加えてよく分からんゴツゴツした目隠しを付けられたらなにも見えない。耳と口にはなにもされていないのは幸いと言ったところだが、その状態でどこに行くわけでもなく監視され続けられてる。見えないが、きっと無愛想なカメラが俺を睨んでることだろう。

 

 なんだこれ……。

 本当に敵を撃退してのけたやつの扱いか?

 ……三人、守れなかったけど。

 

 その状態が体感で半日ほど。食事以外で人の気配はなく、話し相手も誰もいないもんだから、物寂しい思いをした。

 

 しかし、そのおかげで頭の中は色々と整理ができた。

 

 

 どうして今になって廻り者が現れたのは分からないが、恐らく、フィッシュに続く廻り者は必ず出てくる。

 死柄木はあの時、フィッシュのことを失敗作と評した。ならば成功した個体が居ることは間違いないだろう。

 

 それもきっと、フィッシュよりも強力な才能を手にした廻り者が。

 

 

 …それらがもし…もし、凶悪な才能に呑まれてしまっていたり、どうしようも救い難い人間だったならば、俺がやるべきことは変わらない。

 

 

 汚すべき時に手を汚すのが俺の役目だから。

 

 

 …しかし、呑気に考えてるがこの状況は結構マズイ。

 普通科の癖に授業抜け出しでヴィラン相手に大立ちまわり、そして敵一人の殺害

 

 

 どうしようもない後悔が俺を襲う。

 

 

 罪を背負うとは言ったがこれじゃ背負いすぎて俺が破綻しちまう。

 良くて停学、悪くて退学。考えしうる最悪は二度とアイツらと会えなくなること…。

 どれにしたって勝己に殴られる。出久は口聞いてくれなくなるかも…キッツイなそれ。ダルモンは…ダメだ想像するな、泣きそうになる。親父は…指差して笑いそうだ。親父に関しては想像しただけで怒りが湧いてくる。

 

 アイツら心配してんのかな…。連絡とってねぇし。とれないけど。

 

 

 そんな事を考えていると、扉の開く音がした。この部屋のだ。そこから入ってくる揃った足並みが俺を取り囲む。

 

 それまでに俺の優秀な五感が様々な情報を収集した。

 金属と布同士が擦れるような僅かな振動。それらを掻き消すように、構えるような軽い音。そして、ほんのりと微かに香る火薬の匂い。

 

 …予想されるのは武装した警官。向けられたのは銃口。

 

 そして最後に偉そうな足音を立てながら一人の…男だな。が、入ってきた。

 

「黒籍項羽。出るぞ。事情聴取を受けてもらう」

 

「人を半日もこんな姿で待たしておいて、よくそんな台詞が吐けるな」

 

「…………」

 

 

 黙りかよ、つまんねぇな。

 

 

 そうして俺を拘束していた器具ごと台車で移動させられ、しばらく経つと移動が終わった。どうやら部屋に着いたらしい。一緒についてきた警官たちが、手際良く俺を台車から椅子に移動させられると大勢の足音がこの部屋を去っていった。

 

 

 …色んな匂いが混ざったような匂いがする。

 インクと珈琲と……動物の臭い…?

 

 

「獣臭いな、なんだここ?」

 

「…そう言われるのが嫌で自分の体は念入りに洗ってるんだけど…オールマイトくん、僕って臭うかな?」

 

「いえいえ、そんな事は!いい匂いと言うか、お日様の香りと言いますか…生き物って感じの匂いがします!」

 

 

 思わず出た言葉に正面からネズミの声がした。入学式の時、長々と話していたネズミの声だ。つまりは雄英の校長。その声に哀愁が漂ってた感じがしたけど聞こえない。その横の方でオールマイトが懸命に慰めてるけどあんま上手いこと言えてないのも聞こえない。

 

 

 その後、ちょっと落ち込んだネズミの声で軽く紹介が入った。この部屋は校長室らしい。

 

 

 俺の前には、オールマイト…え、こいつトゥルーフォームじゃね?

 脈がなんか弱々しいな。

 まぁいいか、あとはA組の担任の相澤、雄英の校長ネズミ、そして塚内とか言う見知らぬ警察の人間がいるとのことだ。

 

 

 根津の紹介は四人で終わった。しかし、明らかにその四人だけじゃない。部屋の壁を沿うように多くの気配を感じ取った。

 

 

 恐らくはこの学校の教師だろう。

 気配がピリついて警戒している。

 扉の向こうにも何人か…これはきっとさっきの警察官達だな。

 

 

 四人以外の全員が臨戦態勢。何人かは緊張しているのか、脈拍が早かった。俺が暴れ出したら速攻で袋叩きにするつもりだろう。分かるだけでも向かいに…犬みたいな息遣い、ハウンドドックか…それと………コイツもなんか息遣いが荒いな…体調が悪いのか?

 

「なぁ、体調悪いやついねぇか?なんかハウンドドックの隣辺りに息遣いが荒いやつが居るぞ」

 

「はい?」

 

 その言葉に項羽以外の全員が目を向けた。

 

 そこには、少し火照った顔でなんだかちょっとヤバイ目をしながら項羽を見つめるミッドナイトの姿があった。持っていた鞭を握りしめて、軽く悶えながら興奮するその姿は、まさしく性の捕食者そのものだった。

 

 そして、全員から見られている事を知ると、顔を背けて下手な口笛を吹いて誤魔化していた。

 

 のちの聴取によると、彼女は実力の高い生徒がガッチガチ(意味深)に拘束されて自分達に取り囲まれてるこの状況に興奮していたと供述していた。

 

 どうしようもない変態であった。

 

 

「気にするな、何でもない。…だが、夜道には気を付けろよ」

 

「おい待て、何がいる?無視できねぇぞ」

 

「…というか少年、誰が居るのか分かるのかい?」

 

「見えねぇよ。けど音と匂いと気配で大体は分かる。俺の横あたりにプレゼントマイクいるだろう?なんか存在が煩い」

 

「heyhey!なんつう言い草だよ、heavy eyes boy!!」

 

「ほら、うるせぇ」

 

「…どうやら無駄に高い目隠しを装着させた意味はなかったようだな」

 

 聞くところによると、この目隠しは万象儀対策らしい。確かに見えない分精度は落ちるが、俺が無差別に万象儀を撒き散らせば、あとは感覚で誰が誰だが分かるんだからな。

 

 分かったらこれ外してくれ。なんかつける位置が悪いのか顳顬辺りがムズムズすんだ。

 

 

 え、無理?ちくしょう。

 

 

 顳顬の痒みを諦めて、元の調子に戻ったネズミが話したそうにしていたので喋らせる事にした。願わくば入学式の時のように長々と無駄な話をしないでくれると助かるんだが。

 

「さて、気を取り直して!黒籍項羽くん、どうしてここに呼ばれたのかわかるかい?」

 

「……授業を途中で抜け出してきたこと?」

 

「そうだね。生徒が教師の許可なく授業を途中退出。そして授業が終わっても帰ってこなかった。いくら雄英が自由な校風を売り文句にしているとは言え、これはいただけないね」

 

「さーせん」

 

「わかれば宜しい」

 

「…さて本題に入ろう」

 

 

 ネズミが満足げに頷くのをなんとなく感じた。ありがとう。話を短く終わらせてくれて。

 しかし、A組の担任が今のやりとりを無視して口を開いた。アンタといい、さっきの偉そうな警官といい、なんか言ってくれよ面白味のない。

 

 

「聞きたいことは四つ。まず一つ目…襲撃時、USJ内は敵により電波障害が発生して校内にはなんの知らせもなかった筈だ。だが、お前は授業を抜け出しUSJに乗り込んだわけだが、どうして気付いた?」

 

「…自分の直感ってやつをよく信じているんだ。今回もそれに従っただけだ。心配になって出久、…緑谷と爆豪に連絡してもなんの反応もなかったから、なんかあったと思って乗り込んだだけだ。あぁ、麗日と飯田にも掛けたな。与太話だと思うがこんだけだよ。単純だろう?」

 

「…そうだな。麗日と飯田の着信履歴にもお前の名前が残っていたと知らされた。ついでにここに居るオールマイトさんにも電話していただろう。…生憎、俺はそんなものに疎くてな。信じられないが、信じるしかあるまい」

 

「そりぁどうも」

 

「HAHAHAHA!黒籍少年から電話が来た時は何がなんだが分からず焦ってコーヒーを溢してしまったよ」

 

「…二つ目だが」

 

「え、無視すんの」

 

 A組の担任の華麗なるスルーっぷりに思わず素でツッこんでしまう。おい、隣みろよ。俺見えねぇけど絶対しょんぼりしてるぞあのガイコツ!

 あぁ、ほら見ろ。なんかオールマイトを励ます声が聞こえてくる。隣に居る刑事さんに慰めさめられてるじゃねぇか!

 

「お前と敵との関係性。生徒たちの証言からお前が敵たちに名前を呼ばれていたと聞いているが…お前、ヴィランと関わりがあるのか?」

 

「…ヴィランぽい顔をした幼馴染なら分かるが、あの連中とは初対面だ。敵との関わりも一切ない」

 

「なら、どうしてヤツらはお前の名前を知っていた?聞くところによればお前らは地元でヴィジランテもどきの活動をしているらしいじゃないか?そこから情報が漏れたんじゃないのか?」

 

「それに関してはなにも言えないな…。まぁ、確かに…ボランティアはしてるけどそんな危ないことまでは首を突っ込んでねぇぜ?」

 

「あはは、ボランティアか!面白い言い方をするね。警察の間じゃ有名だよ君たち。逮捕命令が出てもいいぐらいなのに何故か上が口を濁して君達を逮捕しようとしないんだよ。むしろ連れてくるなって」

 

「権力持ってるやつの弱みはいっ〜ぱい握ってるからな!」

 

「えぇ…なにその気持ちのいい笑顔…。ちょっと、おじさん怖いんだけど」

 

 俺がそう言うとオールマイトとネズミは口を引き攣らして、刑事は愉快そうに笑い声を上げた。

 A組の担任は再び呆れたように息を吐いた。

 

「………はぁ。まぁ、いい。三つ目だ。これは四つ目と関係するんだが…お前が個性の結界から出てきた直後に持っていたあのナイフは何だ?」

 

「…正直、もうお手上げ状態でね。構成物質もナゾ、どうやって作られたかもナゾ、とにかく膨大なエネルギーを持っていることだけは分かったけどそれがどうしてなのかもナゾ。今も研究職の方々が頑張ってくださっている最中さ。あのナイフを持っていた君なら何か知ってるんじゃないかとね」

 

 

 顔色を伺うような刑事の声に俺は少し考えた。

 

 

 話の内容から察するにコイツらは廻り者に関して、全くの無知だと言うことが分かる。じゃなきゃこんな質問はしない筈だ。

 

 もしもここでペラペラと喋ってしまえば考えうる最悪が起こる可能性が高い。しかし、ここで知らぬ存ぜぬを通しても、後々、これから活動するにあたって支障をきたすのは目に見えている。

 

 今はまだ廻り者による被害が少ないからこうして大人しく尋ねてくるが廻り者の手によって深刻な被害が生じれば、すぐさま廻り者狩りを開始するかもしれない。そうなれば罪のない廻り者の立場まで危うくなる。

 

 俺やアレクサンドロス、ソロモン、ラムセスのような強力な才能を持った廻り者が現れて。もし、何万何百万と大勢の死者が出るような事件となれば、間違いなく人類側は廻り者の殲滅を実行するだろう。攻撃的な廻り者から無害な廻り者まで統べ括らず…無差別に。

 

 

 それだけは勘弁願いたい。

 俺はもう同胞達が死んでいく様は見たくねぇ。

 

 

「…あぁ。俺は、その枝の正体を知っている」

 

 

 だから、

 

 

「枝…?ナイフではなく?」

 

 

 話すことを選んだ。

 

 

「いいや、枝だ。けど、話す前に。ここにいるのはヒーロー科の教職員の殆どがいると思っていいか?」

 

「…何故、それを言わなくちゃならない?」

 

 

 警戒しながら、訝しがるA組の担任の声と共に周囲の人間の雰囲気が変わった気がする。

 

 

「確認だ。これから俺が、話す、見せることは多数の人間が共有した方が俺としては得だから」

 

「…この際だから言うが、今、お前にはヴィランとの共謀した疑いがかけられている。お前の実力も加味して、こんな大掛かりな拘束だってしてる。そんなお前に、その質問を答える気は毛頭ない」

 

 拒絶するような物言いに何人かが相澤を窘める。しかし俺は構わず、話を続けた。

 

「…これから俺が見せるのは、お前らが知りたい情報と、俺が辿ってきた現世と前世の全てだ。結構長いが根気強く見て貰いたい」

 

「何を言って…!?」

 

 

 

 誰かが言い終わる前に項羽の体から万象儀が溢れ出る。

 

 万象儀の奔流は瞬く間に部屋全体に広がり、あらゆる物を飲み込んでいく。あまりの浸食の速さに臨戦態勢だったプロヒーローすら対応しきれず、なす術もなく飲み込まれたものが多かった。

 

 唯一、根津校長と塚内警部を抱えた相澤とオールマイトは天井付近に逃れることが出来た。しかし、その顔はどれも苦い面持ちだった。

 

 相澤が項羽がいるであろう場所を個性で睨みつけるが部屋に広がる黒の濁流は消えず、歯軋りする。

 オールマイトが拳を突き、拳圧で発生させた突風で万象儀を吹き飛ばすと窪みができるように吹き飛ばすも、その穴を埋めるようにすぐさま万象儀が流れ込んでいき、何事もなかったかのように元に戻る。

 

 

「オールマイトさん…あなたが黒籍項羽は安全だと言いましたがこれは許容出来ません!完全にアウトですよ!!」

 

 刻一刻と増していく万象儀に相澤が柄にでもなく吠える。

 それに対し、オールマイトは危機的状況にも関わらず、苦い顔をするわけでもなく、黙りこくったまま項羽の発言について、深く考えていた。

 

 

(『辿ってきた現世と前世の全て……』やはり彼は前世の記憶があるのか…。やはりそれならば彼の実力と行ってきたことに説明がつきやすい。…しかし、本当にそんなことがあり得るのか?自分で出した結論でも突拍子があり過ぎる。いいや待て待て。今はそんな事どうでもいい。彼はどうしてこんな事をする。逃げるため…?いいや、それならこんな追い詰めるようなことしなくても、彼なら簡単に我々を抑えて逃げれるはずだ。だとするなら……)

 

 懐から携帯電話を取り出したオールマイトはそれを軽く操作するとすぐさま懐に戻し、相澤に顔を向けた。

 

「相澤くん、聞いてくれないかい!」

 

「なん、ですかオールマイトっ。手短にお願いしますよ!」

 

「私を信じて、飛び込んでくれまいか!?」

 

「…正気ですか、あんた?」

 

「正気さ!もちろん予防線は張っておく、今、外にいる警官たちに1時間以内に私からの連絡がなければ通報してくれと連絡した。心もとないと思うがここは彼を信じる私を信じてはくれないか?」

 

「……これで大変なことになったら絶対に赦しませんから覚悟しておいてくださいよ!」

 

「OK!!じゃあ行こうか!」

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

 宙を漂うような浮遊感が体を包み込んでいた。

 此処ではない暗闇の向こうで二つ瞳が私を覗いている。

 見られているというのにそこに嫌悪感は湧かず、逆にその瞳に吸い込まれるように私は、見入っていた。覗き込む瞳には、誰かから視たような映像が延々と流れて、その中で生きているようだった。

 時折、瞳の中の彼らが視点の主の名前を呼ぶような素振りを見せるが、名の部分だけ霧がかかっているようで、薄ぼやけてしまってうまく聞こえない。

 

 その名を知っている気がしたが目覚めた時のような微睡みが体を満たして頭がよく働こうとしなかった。

 

 それでも瞳の中の人物たちは口早に誰かの名を呼んだ。

 

小僧

 

項羽

 

重瞳の

 

 

項羽様

 

項羽!

 

こうちゃん

 

 

項羽さん

 

 

「記憶旅行は閉幕だ。早く起きてくれ、先生方」

 

 

 気がつくと、私たちは先程居た校長室へと戻っていた。

 

 この部屋を満たしていた浮遊感漂う黒色と二つ瞳の世界は消え去り、極彩色の世界へと戻っていた。

 拘束されていた筈の少年は、拘束具の一切を付けておらず、最初からそうだったかのように制服に着替え、平然とそこに座していた。

 

 辺りを見渡せば万象儀に飲み込まれて移動したと思っていた家具類も全て元の位置に戻っていた。外に控えていた警察官たちもこんな騒ぎがあったのに突入してこないのを見る限りこの部屋の状況に気付いていないようだった。

 

 周りにいる教員たちも皆一様に少年に見せられた光景に頭が追いつかず、混乱しているのか、声も出せず狼狽えるばかりだ。

 

 やがて一番早く落ち着きを取り戻した根津校長が口を開いた。

 

「…今、見せたのは全て本当にあったことなのかい?」

 

「あぁ、勿論…だがこの世界のことではないだろう」

 

 

 

 …一瞬のようでとても永い夢を見ているようだった。

 

 

 

 現実味を帯びない世界を壊してしまうほどの四人の怪物の競いを

 

 同胞の為に奔走するも、夢半ば折れてしまったことも

 

 無二の友を殺めてしまった過ち

 

 苦渋の決断

 

 同胞の本懐を遂げさせるための戦いと託したものを

 

 最後の少女の成就と共に迎えた彼の終わりを

 

 

 

 彼の歩んできた生き様を見せてもらった。

 

 

 

 少年は徐に席を立つと私の前まで歩くと私の頬を指で傷つけた。

 

 

「どうだった、俺の人生は?」

 

 無機質なようで、何処か温もりを感じる二つ瞳の問いに私は少し考えてしまった。

 目の前の少年が一介の高校生から逸脱しているのは知っていた。

 

 けど今はそれ以上に目の前で静かに笑って見せる少年に、畏敬すら覚える。

 

 

「上手くいかなくて、もどかしかっただろ。俺も今思えば、もう少しやりようがあったと思う。だが、あの頃はあんな方法しか思い浮かばなかった」

 

 懐かしむように目を閉じる少年の顔はどこか悲壮的に見えた。

 

 確かに『項羽』の人生は思い通りではなかった。

 仲間のために身を粉にして働きかけても、思うようにいかず、やっと扇寺西耶というきっかけと共に廻り者の団結化を図るも、何者かの手によってその目的も阻まれ、扇寺西耶と決裂してしまう。

 瀕死の状況に陥っても親しい仲間たちには生きてほしいと願うものの、その仲間たちは自らの命を差し出し、自らを救ってくれた王を傷付けた者たちへ敵討ちを望んだ。

 結果…彼は、仲間を抱えて自死の道を選んだ。

 

 傍から見れば到底、納得のいくことの出来ない結末。

 

「……それでも、意義はあったよ。絶対に…」

 

「…俺もそう願ってるよ。あんがとなオールマイト」

 

 照れ臭そうににやりと笑うと手を軽く振って自身の椅子に戻ると「よっこら世界最強とっ」と、いつも通り独特の掛け声で腰掛けた。そして我々の方に目を向け、小さく微笑んだ。

 

「さて、俺がガキの頃から取り組んできた慈善活動も、どうして俺がこんな記憶を見せたか、分かるだろう。根津校長」

 

「うん。十中八九、ボクの後ろ盾が欲しいんだろう?」

 

「そうだ。ネズミでありながら英雄育成機関の最高峰の学校に校長として座し、個性道徳教育の権威である、世界的な『偉人』。そんなアンタなら廻り者を保護してくれるだろう?」

 

「ああ、勿論いいのさ!…けれど条件がある。君の友達、『廻り者』。その中には社会に仇なす能力を秘めた者たちもいるだろう?いや衝動と言った方がいいかな?それは本人の意志に反して否が応でも増幅していく欲望。…僕はね。それに呑まれてしまった人たちは処分しようと思っている…。それでもいいかい?」

 

「…俺は一度、その線引きに失敗している。いいよ。お前らの基準で決めて貰って構わない。…だが我儘を聞いて欲しい。どうか…選定をする時には慎重に進めて欲しい。罪人格の廻り者は大半は過激で凶暴だ。でもその中でも、望まず才能に溺れて、苦しんでいる奴もいる。だからどうか…杜撰に選ばないでくれ、俺の仲間を、大切な同胞を、色眼鏡なんかで見ないでくれ。…それだけが唯一の願いだ。頼む…」

 

 

 膝と手をつき、彼は地面に伏せて我々に背中を曝け出した。

 

 慣れていないのだろう。姿勢からは粗さが見えていたが、真摯で誠実さが表わされていた。

 

 この姿を見て、何も思わない者がこの部屋にいたのなら、私はその人を殴り飛ばしてやりたい。彼の行いを苦悩を軽いとは口が裂けても言えない。

 根津校長も私と同じことを思ったのだろうか、ニッコリと微笑む彼に語りかける。

 

「君の善行を見せられて、そんなに重たい頭を下げられては私たちは何も言えないよ。分かった、見極めはしっかりやるよ。その時は君の意見も聞かして欲しいね」

 

「…ご厚意、感謝する」

 

 そう言い、彼は再び、深々と頭を下げた。

 

 

 その後はとんとん拍子だった。

 

 少年は監視という名目で雄英に在籍し続けることに。

 事情が事情な為、廻り者の情報は彼の記憶から抽出してデータとなり輪廻の枝と共に上に報告された。彼も素性も一部改竄して提出されることとなった。もしも、過去に世界を破壊した、破壊し尽くせるほどの能力を持っていると知られるとなると彼の将来は劇的に変わってしまうから。

 

 たとえ世界を壊しうる力を持っていても彼が破壊的になる可能性は低く、彼を上に差し出すには心苦しい。

 これはその場にいた大人たちの総意だった。

 

 段々と終わりの雰囲気に近づいた頃、彼が突然、真剣な表情になった。

 

「…耳郎響香、八百万百、上鳴電気。…この三人の両親と面会することは出来ないか?」

 

 その質問に我々は首を傾げた。

 

「………?出来ないことはないが何故だ?」

 

「あの三人はフィッシュから目を離した俺のせいで死んでしまった。俺が三人の安全を確保する前に戦いに向かってアイツらを蔑ろにしたせいでフィッシュに食われてしまった。殺したのはフィッシュだが、これは俺の責任だ。ちゃんと謝らないといけねぇ…」

 

 悲痛な面持ちでそう口にする少年に私たちは怪訝な表情でお互いの顔を見渡した。

 

「それに廻り者になる前がクソ野郎だったとしても、廻り者は俺の仲間だ。…出来ないことは分かっている。けど仲間としてフィッシュの罪は俺が背負って「ちょちょちょ、ちょっと待って黒籍少年。一回待ってストップ!」

 

 今度は少年が怪訝な顔をしてこちらに顔を向ける。

 大体のことを理解した私は隣にいる塚内くんに説明してもらう為に彼の考えていることをそっと耳打ちした。

 初めは何のことか分からず困惑していた彼だったがやがて頭の中で全てが合致したのか、思わずなのだろう、吹き出してしまった。

 私は慌てて、口を抑えて面白そうに笑う塚内くんを窘める。

 なんことかさっぱり分からない周囲の空気を痛く感じた。

 

 やっと落ち着いたのか、目尻に浮かんだ涙を拭き取って真剣な調子を取り戻した塚内くんは口を開け、少し嬉しさを含んだような声色で話し始めた。

 

「いやぁ、すまない。取り乱してしまった。えぇと、耳郎響香さん、八百万百さん、そして上鳴電気くんのことだよね。いやぁホント。君は根っからの善人らしい」

 

「…なに、笑ってんだ刑事さん。笑い事じゃねぇんだよ。…三人、俺のせいで死なせたんだ。本当なら謝罪ぐらいじゃ足りない……」

 

 沈痛な面持ちの黒籍少年を見て、再び、塚内くんが肩を震わせ始めた。耳打ちで「不謹慎だけど、彼、面白すぎない」と、声を震わして私に報告してくる塚内くんの小脇を肘で突いて早く話すように促した。こうやって塚内くんに代わりに事実を伝えてもらい、自分だけ責任逃れしようとしている自分を情けなく思いながらも、こんな思い悩んでいる黒籍少年にこの事実は伝えづらいと私は自身を正当化した。

 

 またもや笑い始めた塚内くんに思うところがあったのだろう。怒気を孕んだ目で塚内くんと私を睨みつけ、彼が唸った。

 

「さっきから、何をわらっていやがる。笑い事じゃないと言っているだろう」

 

「いや、その…どこから説明したらいいものか…。もしかして君は襲撃時セントラル広場付近に出来ていた血溜まりのことを言っているのかい?」

 

「…あぁ、八百万百の足と上鳴電気の無線機、耳郎響香のイヤホンジャックを血溜まりの中にあったのを見た」

 

 項羽の言葉に、質問した塚内、察していたオールマイトは「ああ、やっぱり」と言った表情をして息を吐いた。何のことかさっぱり分かってなかった教員たちの中でも事件のあらましを知っていた者たちは合点がついたのか嬉しそうに、微笑みを浮かべた。

 

 結構重たい話をしているつもりなのに周りから生暖かい笑みを浮かべられ、項羽は怒りを通り越して、その光景に気味が悪くなってきた。

 項羽が言わんとすることを遮るように気まずそうな顔をしたオールマイトが口を開いた。

 

「えっとだな、黒籍少年。君が懸念しているようなことは起こってない。三人の親御さんには謝らなくていいし、謝罪したいなら生きているその三人に言えばいい。そもそもその血溜まりに関して三人は全く無関係なんだから」

 

 オールマイトの言葉の意味が分からず項羽はあられもなくキョトンとした顔になる。しかし徐々に言葉の意味を察し始めたのか震える声で質問し始めた。

 

「八百万の足は…?」

 

「それは脳無に喰われた女ヴィランの足だ。八百万くんの足は両脚ともしっかりくっついてるよ」

 

「耳郎のイヤホンジャック…」

 

「ただの千切れたジャック部分だね」

 

「無線機…」

 

「に見えた音楽再生機。因みに食べられたのは女ヴィランだけで今言った二つは全部その女ヴィランの所持品だよ」

 

「……………」

 

「八百万、上鳴、耳郎の三人は全くの無傷。君の指示通りに動いた三人は出口についてクラスメイトたちと保護されるまで一緒にいた。…まぁつまり、君の勘違いってことになるね!」

 

 

「」

 

 

 その後、自分の発言の恥ずかしさに悶えに悶え苦しんだ項羽の姿が見たとか見えなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最近、夏目友人帳見たんですが思ったより二次創作なくて軽くビビってる。

BLは絶対あると思ってたのに(((((殴


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番外編
番外編❶ キャラ紹介


注意いいいいいい!!!!!!!!!

今回から!番外編として……なんか色々書いていきます!!

主のはっちゃけ!!キャラ崩壊!!他作品ネタ!!!

頭空っぽにして!!読んでくださぁぁぁぁい!!

駄菓子菓子!今回はキャラ紹介っです!!


・黒籍 項羽

Birthday:1/16

Height:186cm

Weight:86kg

好きなもの:和食、本、音楽、仲間

 

全体:遠目で見れば痩せているように見えるが近くで見れば、バキバキに割れた腹筋が見え触るとめちゃくちゃ硬い、密度がえぐい筋肉の

 

顔:花弁の方も読んでいる人ならわかるがイケメソである。目の方は芦戸と同じく黒目、基本的に瞳孔は一つであるが万象儀を使えば重瞳になる。ついで言うと髪の色は薄い水色である。

 

手足:両手にあった重瞳の模様は消えたが両手足の爪はちゃんと黒くなっている。

 

主のせいにより体の特徴的なもの的なやつは少し消えたが中身は項羽なので問題ないのさ!強さは作者の項羽ならこれぐらいできるだろ!と言う妄想により平和の象徴とタイマンなら余裕で取れるぐらい強くなった流石世界最強!

廻り者の頃は物に関心がなかったというか世間そのものに関心がなかったけど転生してからは色んな物に興味を持ち始めました。今のところは音楽聴きながら読書してまったりすることが好きです。

お爺ちゃんみたい。

原作主人公達と出会い再び世界平和を目指すが本当にそうなのか真意のほどはわからない。

中身が成熟しているが原作メンバー二人と幼少の頃から一緒にいたため母性的なものまで出てきた。子を見る親的なものです。

 

 

個性:万象儀

主のせいにより最盛期よりも強化された!本編デモ紹介したが傷がなくなったことと万象儀の性能が落ちたことにより幼少の頃から鍛え直し更に強くなった。ダルモンが言った通り本格的に何でも出来るようになる。

詳しく書くとめんどくさいですが、本当に極論で言えば……

 

 

頭の悪い作者のご都合すぎる個(((殴

 

 

 

・ マリー・ダルモン

Birthday(誕生日):5/6

Height(身長):159cm

Weight(体重):死んじゃえ♡

好きなもの:項羽

 

全体:でかい!どことは言わないがでるとこは出て引っ込んでるところは引っ込んでる。でかい!

 

顔:可愛い、天使かよ…天使だったわ。顔と首元にある線は残しておいてください。まぁほとんど花弁の方と変わりません。かあいいです。

 

本作のヒロイン枠だが高校編に突入すると出番が減るような気もしますが何とか絡ませていきます。本編で生まれは日本なのか?と思いますがイギリス生まれですが親は日本人であり小、中までイギリスで過ごしていたが親の仕事の関係で日本に移住し、今世で初の日本で浮かれていたらナンパされ本編まで至ります。

 

そしてあいからわず項羽大好き(ヤンデレじゃないよ)。今の仲間たちも気に入っている。

 

個性:暗殺天使

能力自体は廻り者の頃と変わっていないが周りに知られると敵などに狙われるのを危惧したダルモンの両親が周りの人間に別の個性と偽りイギリスで平穏に暮らすことができた。顔と首元にある線は残しておくや背中から生える片翼、宙に浮かぶ輪っかをどうするか迷いましたがそのままにしておきます。なぜかというと項羽が傷つける場合その跡を隠すために必要かなと思いました。まぁ一番はは輪っかあるほうがかあいいかなと。

 

 

 

・緑谷 出久

Birthday(誕生日):7/15

Height(身長):174cm

Weight(体重):68kg

好きなもの:カツ丼

 

全身:ちっちゃい時から鍛えていたため原作よりも大きくそして筋肉質になった。

 

顔:やはりそばかすのついた目の大きい緑のフサフサ頭だ!顔のパーツは子供っぽい部分が残っており笑ったときの可愛らしさで街の何人かの女性達は心臓に鉛玉ぶち込まれ今ではファンクラブまでできているが当の本人は知らない。

 

THE手荷物:ほぼいつも常備しているでかい!黄色い!バックの中にはいろんなものが入っているんだ!サポートアイテム(自分の小遣い等で買ったもの)、救命道具(絆創膏、包帯、添え木、はたまた簡易式松葉杖に至るまで小から大まで揃っている。どこにはいってんだろう…?

 

小ちゃい頃から街のヒーロー兼癒しを担っていたため住民からの支持が半端ない全年層にかけて。特に女性から。

金髪の幼馴染が緩和化したことにより関係がギスギスする事もなく親友として良きライバルとして接している。

水色の髪の幼馴染のことはたまにアホだとは思っているがそれを差し引いても尊敬し少しでも近づきたい存在だと思っている。

チンピラやマジモンの敵が現れた時は基本的には戦闘は二人に任せ自分は逃げ遅れた人や野次馬を守るようにしている。

 

個性:OFA(ワン・フォー・オール)

歴代のOFA保持者から聖火の如く受け継がれて来た力の結晶。

世界最強に鍛えてもらったためお前本当に無個性か?と思われるほど強くなったためその力は原作とは違うほど成長した。たった5%でも訳が違い強大なを発揮する。本人は初めからこの力を自分のものと考え二人を超えたいと思っている。

 

 

・爆豪 勝己

Birthday(誕生日):4/20

Height(身長):177cm

Weight(体重):71kg

好きなもの:辛いもの全般、登山

 

全身:こちらも小さいからから鍛えていたためバキバキである。屈強

 

顔:原作と変わらず超つり目で赤目の三白眼だが……ほんの…本当にちょっとだけつり目の角度が下がっている。

髪の毛は薄い金髪まぁこの辺はあまり変わってない。

あとかっちゃんの唇ってどうなってんだろう…大きくないですか?

 

自尊心は勿論あります。かっちゃんですから、しかし幼少の頃から何度も何回も挫折を味わったことにより人を見下すようなことはあまりなくなりました。でもいつかは項羽やオールマイトすら越える最強のヒーローのヒーローになる事を諦めません。

やっぱりかっちゃんです。はい。

こちらもチンピラやたまに出てくるマジモンの敵を相手にする事があったため悪意などには敏感になっている。

 

個性:爆破

幼少の頃からばかすか使っていたため威力は大分増してる。

作者的には新技とか作ってみたいけどなかなか難しい。只今勉強中。

持ち前の才能と世界最強の指導によりこちらも増強系じゃないのにめちゃくちゃ力が強い。爆破し飛んでいる時も体幹がすごい。羨ましい

戦闘スタイルは変わらず戦闘中に相手を分析して弱点を徹底的に突いていくスタイルです。その方がかっちゃんらしい。




すいません短いです。今、本編の方の行き詰まりと作者の勝手な都合で現在難航しております。蒸発しないようには頑張ります。


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とある番外編その②

めちゃくちゃ短いよ!
はっちゃけたゾイ



〜〜あったかもしれないシーン〜〜

 

 

 

ダルモンの才能で死んだ項羽さん。

しかし気がつくと何もない真っ白い空間に立っていた〜。

 

「あれ?俺様死んだよな?」

 

「そうじゃな」

 

「だよな確かにダルモンの才能で死んだのにダルモンいねぇし退場部屋って書いてあるドアねーんだけど」

 

「どうするかの〜」

 

「ほんとマジどうなってんだよ○西さん!

俺様、結構大事な役になっていたよね?なのになんで俺だけはぶかれてるわけ?絵ばっか描いてるピカソより活躍したよな俺?

誰か〜頑張った俺を慰めてくれ〜〜ダルモンー!俺に癒しをーー!」

 

「ほっほっほ、こんな老いぼれでいいなら慰めてやるぞい。ほれワシの胸に飛び込んでらっしゃい、HEY!カモン!」

 

「あ"!?誰がじじぃのしわしわの胸になんか飛び込むか!飛び込むんだったらダルモンのぼっきゅぼん!のぼっに飛び込むh………あんた誰?」

 

「唐突にして今更かこのクソ若造が焼くぞロリコン」

 

「黙れそんな歳にもなって○oLOVEるのちょっと○なシーンで興奮している小学生並みのしじぃにそんな事言われたくねぇーなー」

 

「貴様なんでその事を知っておる!バァさんだって知らんのだぞ!」

 

「当たっとるんかい!しばくぞ!「頼むバァさんには言わんといてくれ!!」知るか!誰だよお前!」

 

「あぁ、そうだったじゃな。えーごほん、わしは神じゃ…」

 

「嘘こけ、そしてドヤるな」

 

「即答するなガキ」

 

「なにが神じゃ…だ!今までの上記見て誰が信じんだよ!」

 

「黙れ!クソガキ!ワシはそこそこ偉い神なんじゃからな!毎日毎日やってくるヨボヨボのばぁさんやじぃさんを毎回毎回!背中に後光出す感じでパァ…ってやるとすごい崇められるんじゃ!ほら貴様も崇めんか!」

 

「こんなあから様に偉そうな神崇めたくねえー。元々神なんざ信じてなかったけどこれでもっと信じられなくなったー」

 

「うるさい!こんなんでも頑張ってるじゃワシは!上司にグチグチ言われながら頑張ってるじゃ!

(´;Д;`)」

 

「知るか!分かったごめん俺様も言いすぎた謝るからごめんて、だからガチで泣くのやめてくんねーかな!はたから見たら完全に俺悪者じゃん!お願い、○ーゲンダッツあげるから!」

 

「う"っ……ぐすっ!二個じゃ……二個よこせ!」

 

「分かった!二個でもいいから早く話を進めたくれーもうそろそろ読者飽きてくるから!はやく!」

 

「そうかじゃあ話をしよう」

 

「立ち直りはや」

 

「悲しくも其方は死んでしまった…しかし本来なら廻り者の人間はここには来ない手筈になっているんじゃよ。本来ならば退場部屋に行ってみんなと仲良くワイワイガヤガヤ出来るんじゃがな。とある方からなお前を別の世界へ飛ばせと指令が来てな…その為にワシが来たってことじゃな」

 

「誰がそんな事を…」

 

「作者じゃ」

 

「………は?」

 

「だからこの作品の作者じゃ」

 

「作者って…ピーシャラっ言う適当に名前考えましたよ満載な奴のことか?」

 

「その通り、最近女子に「気持ち悪い」と言われて結構落ち込んだメンタルクソ雑魚ナメクジ奴の事じゃ」

 

「悲しいな…」

 

「まぁそう言うことで貴様には今から赤ん坊からやり直してもらうからな適当に頑張るのじゃぞ」

 

「ん?今なんて…」

 

「お主に不幸と絶望がありますように…」

 

「おい何不吉なこと言ってんだクソジジィ!

赤ん坊って言ったか!?おい!」

 

「さらばじゃ〜」

 

「おい待てや!バァさんにちくるぞ!!ああああぁ!!!!」

 

最後の言葉を口にしながら突如現れた黒い穴にすっぽり落ちてゆき項羽さんが赤ん坊に生まれ変わり頑張るのはまた別の話……




ちょっと○魂感……


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ただのパロでも許してね

息抜きに書きました。
注意点。
・キャラ崩壊注意。
・ガチのパロです。
・割と雑に書いたので元ネタを知らない人は多分わかりにくい。
・設定等は色々無視ってよし。

いや今まで偽のパロなんて書いたことないけど。

男子高校生の日常でパロりました。
見たことない人は是非見て、バカな男子高校生がバカしてて笑えます。

そんじゃ、だらっとどうぞ。


「項羽。現国の問い四。どうした?」

 

「答え合わせって意味あんの?」

 

「いや!いい加減帰れよお前ら!いつもいつも人の家に集まりやがって!他にやることないのかよ!!」

 

「でかい声出すなよ出久。テスト期間て時間余ってしょうがねーじゃん」

 

 回転する系の椅子に座っていた項羽は立ち上がると自分のバックを肩にかける。

 

「んじゃ帰るわ」

 

「………ったく」

 

 帰れと懇願していた緑谷はうるさい奴がやっと一人居なくなる…と安心すると悪態をつきながら寝そべり始める。しかし、ふすまに手をかけて帰ろうとしていた項羽の脳内に一筋の電流が走った。

 

「なぁ…勝己。ふと思ったんだけどスカートってどう思う?」

 

 爆豪は静かに読んでいた現国の教科書を閉じる。

 

「そりゃお前…ありえねぇだろ、ふつ「だから議論、始めんなって!帰れつってんだよ!!」

 

「えぇ…でもあれ、ただ腰に布巻いてるだけでしょ…」

 

「全然隠せてないよな…」

 

 緑谷の叫びも虚しく既にアホのような議論を始める手を腰回りで弧を描きスカートを現しながらするスカートの形状を嘆く項羽と顎に手を当て考察を始める爆豪。

 

「いやいや中世から存在する立派な衣服だから…」

 

 そんなアホな議論に律儀にツッコミを入れる緑谷。はっきり言ってバカたちを調子に乗せてしまった。

 

「いやぁーだとしてもよ!パンツ剥き出しでそこら歩いてるわけだよ!俺だったら耐えられん!」

 

「あんな低防御力で、ハレンチだよ!!」

 

「落ち着けよ……」

 

 よほど興奮し勢いが過ぎたのか膝に手を乗せながら、ハァハァと息を切らす二人は先ほどの言動のさらに上をゆく奇行にで始めた。

 

「なぁ、おい…妹のスカート拝借出来ないか……?」

 

「何言ってる!無理に決まってるだろうが!!」

 

「あったぞ」

 

「お前、ぶっ殺されるぞ!」

 

 顔をあげたと思ったら額に汗を浮かばせとんでもないことを口走り始める項羽。勿論、緑谷は拒否するが既に妹の部屋からスカートを持ってきた爆豪が立っていた。

 

「さらにもう一つ!」

 

 そう叫んで持っていたスカートを投げ手を叩く爆豪。合わせていた手をスカートが地面に落ちた後ゆっくりと開くと。

 

「錬成しやがった」

 

「妹のパンツじゃねーか!!!」

 

「安心しろ。等価交換だ。替わりに俺のパンツを置いてきた」

 

「お前ほんっとバカだな!!」

 

 もはや目も当てられない状況になってきた。

 

「よし、早く履け!」

 

「おい!履くのかよ!!」

 

「……ん?なぁ、これ下から履くんじゃねーの?」

 

「って言うか、俺が怒られるから頼むからやめてくれ!!」

 

 この状況ですら酷いのに、二人してスカートを頭から被り始める項羽と爆豪は何事もなかったかのように足から履き始めるがスカートの中に片足突っ込みかけた爆豪。

 

「あ、すね毛。すね毛はどうする?」

 

「どうでもいいだろ!!」

 

 こちらにも片足突っ込んだバカが。

 

「馬鹿野郎!すね毛があるのがいいんじゃねぇーか!!」

 

 どこの世界に需要があるかもわからんことを言い出し。

 

「んだと!てんめっ!?」

 

「やんのかコラァ!!?」

 

 それに反応し取っ組み合いし始め既にカオス。

 

「やめろよ、やめろ!もうどっちでもいいから早く履けよ!!」

 

 暴力沙汰になるのはまずいと思った緑谷が急いで止めに入るが。

 

「お前そんなに履きたかったのか!?この変態が!!」

 

「落ち着けぇ!!!」

 

「っこむのも、めんどくさいわっ!!」 

 

 

 

〜〜〜しばらくお待ち下さい〜〜〜

 

 

 

「じゃあ、俺はあっちで」

 

「俺はこっちで」

 

「ちょ待って!マジで履くの!?」

 

 落ち着いた後。今度は三人で履くことになり、目の前で着替えるのは恥ずかしいなどと言う戯言を抜かしたバカの提案で各自別々の部屋でスカートを履くことになった。唯一まともな緑谷も扉の向こうに消えていった二人を見て自分もため息を吐き仕方無しと唸りながら着替えることにする。二人が入ってしまい着替える部屋がないので廊下で着替える羽目になったことは秘密だ。

 元いた部屋に少しの静寂が流れると三人とも着替え終わったのを確認すると三人して恥ずかしそうに部屋に入ってくるが…。

 

 爆豪、項羽。両方ともまるで示し合わせたかのように何事もないように朝からずっーと履いているただのズボン。しかし一人だけスカートを履いた緑谷だけが二人の前に現れることになる。

 

 生足で。

 

「死ぃんねええええええ!!!!」

 

 流れるかのように椅子の足を掴み振り回し始める緑谷だったが自分のやっている羞恥心やらですぐに放り投げ、顔を抑えて膝をついた。

 

「もう、お前ら帰れ……」

 

「結構、似合ってるぞ」

 

「お前これ、普通に金稼げるじゃねーの?いやあっちの方じゃなく」

 

 泣き崩れる緑谷を後ろから覗き込んでほざくバカたちは思った。あれ案外いけんじゃね?…と。

 

「え、まじで………?」

 

「いけてる、いけてる」

 

「え…いや、そ、それはないだろ…」

 

「いやマジでいけてるって自信持てよ!」

 

 案外満更でもなさそうな声を出す緑谷をみてこれは面白いことになると踏んだ爆豪は褒め始めるが、既に面白いのか笑いを堪えている項羽。

 だが近づいてくるある"存在"に気付いていなかった。

 

「ど、どうかな…」

 

「それだーーー!!」

 

「いいぞ〜緑谷、心なしか体格も変わってきてる〜!」

 

「次のステップ行くぞー!」

 

 しかし、そんなことは露知らず、まんまとのせられてしまった、恥ずかしそうな顔してるくせに割とノリノリな緑谷は女の子の座り方をしていた。

 

 次のステップとはなんだろうか。本当はスルーするつもりで通ろうと思った"存在"だったが興味本位でその扉を開いてしまった。

 

 見たのは半裸の兄が自分のスカートを着て、今、現在自分のブラを友人に着せてもらってる姿とそれをガッツポーズをとりながら笑って見ているもう一人の友人がいた。

 

 三人は私の姿を見てとんでもない顔をして叫ぶと私を拒むように手を構えた。私は肩にかけていたバックを下ろす。

 

「どうした?続けろ」

 

「「「ご、ごめんなさい」」」

 

 

 

 この後、バカ達がどうなったのかは知らない。

 



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