わたしはどこへゆく (konoyo)
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プロローグ 先生と私

どうもはじめまして!
始めて書かせてもらいました。
作者ことkonoyoです。
よろしくお願いします。

では早速、本編(プロローグですが)をどうぞ!



2021年11月

 

 

目を開けて最初に目に入ったのは見知らぬ真っ白な天井だった。ベッドに横になっていた体を起こして辺りを見渡しても真っ白な世界。しかし、どこを見ても視界が少しぼやけているような感じがする。

 

 

んーーー?ここは夢の中なのだろうか?頬をつねってみても痛くはない。うーーーん……。ホントーに何コレ?

 

 

そんなことを考えながらしばらくしてから、プツン、と言う音が聞こえた気がして周りをキョロキョロしていると

 

 

雪菜(ゆきな)君聞こえるかい?」

 

 

という声が空から降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───あっ、思い出した。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

目を開けて最初に目に入ったのはいつもの見慣れた天井だった。横になっていた体を起こして目覚まし時計のアラームを止める。そこにはAM 04:45 の文字が映し出されて、カーテンを開けてみてもまだ外は薄暗く、街灯がついている。

 

 

そして、11月ともなれば明け方はとても寒く、今更ながら空気の冷たさを感じて、ブルリと身震いしながら、寒いなぁ……。と白い息と共に吐き出した。

 

 

そして、グレーを基調とした寝巻きから、紺色にピンク色のラインの入ったウィンドブレーカーへと着替える。その後、長く伸びた黒髪を1つに束ね、机の上にあるボストン型の黒縁メガネをかけ、しっかりとストレッチをしてから靴を履き、扉を開けて、廊下を右へ左へと曲がりながら進み、玄関から外に出た。

 

 

ゆっくりと息を整えながら、左手首につけている腕時計型携帯端末をチラっと見てAM 05:03 の文字を確認してから、ゆっくりと歩き出す。そして、徐々にペースを上げてから、ジョギングを始めた。

 

 

いつものルートを3周してから部屋に戻り、冷蔵庫からスポーツドリンクとエネルギー補給のためのゼリーを2つ取り出し、スポーツドリンクを一口飲んでからゼリーを2つとも体に入れ込んだ。

 

 

料理?そのようなものは時間の無駄です。する意味がありませんから。別にできないわけではありませんよ?本当ですよ?

 

 

ジョギングの筋肉疲労があまり残らないように、足を重点的にマッサージしていた後、別の部屋にあるシャワー室で少しベタついた体をリフレッシュ。

 

 

今日は休日なので、制服に着替えるわけでもなく、紺色のワイシャツにグレーのスキニーパンツ姿になった。あっ、やっぱ寒いからパーカーも羽織っとこ。確かこの辺に薄いピンクのが………お、あったあった。

 

 

その後、部屋に戻って長い黒髪をしっかりとドライヤーで乾かしてからブラッシングしていたとき、コンコンコンと、扉がノックされたのを聞き、

 

 

はーい、ただいまーと言いながら扉へと向かう、扉を開けると、そこには先生がいた。相変わらず肌は白く、本当に筋肉がついているのだろうか?と疑問になるくらいヒョローっとしている。って、あれ?あと数週間はアーガスの方に行ってるはずじゃなかったっけ?とか考えていると、

 

 

「おはよう、雪菜君。早くに悪いね。」と声をかけられ、

 

「あっ、おはようございます。いえいえ、私は毎日この時間には起きてますから…、先生こそいつも眠りが浅いとはいえ、こんな早くに…、もしかして、徹夜でもされてたのですか?」と返す。

 

「まぁな、少しこれに熱中しすぎてしまった」

 

 

そう言いながら、右手に持っている()()()()を私に渡す。

 

 

「──ッ!!こ、これって…!!まさか、つ、遂にですか!!」

 

「そうだ。これが、()()()()()、試作品第1号だ」

 

 

恐らく真っ白に塗装?されている。まるで、バイクのヘルメットみたいな形をしているこれが、ナーヴギア…!!先生が長年研究を続けてきた仮想現実(バーチャル・リアリティ)を生み出す装置!!あとは中身だけだとか、完成まであと少しとは言っていたけれども、

 

 

「す、凄いです!!先生!!こんなにも早く調整が終わるなんて…!!やはり、先生は天才です!!」

 

「その言葉、ありがたく受け取るよ。だが、全ての調整が終わったわけではないのだよ」

 

「あ、そうだったのですか……。それでは、その最後の調整前にわざわざこちらまでいらっしゃって……、重村教授かそれとも私に何か用があるのですか?」

 

「君の勘はやはり鋭いな。そうだ、君に用があって来たのだよ。君にはこのナーヴギアの最終調整を手伝っ てもらいたいのだ。お願いできるかね?」

 

「えっ!!わ、私なんかでいいんですか!?ほかのアーガスの方とか、それでこそ、神代先生にとかではなくて私でよろしいのでしょうか!?」

 

 

舞い上がりながらもそう尋ねたら、先生は笑いながら

 

 

「そのためにここに来たのだから、そんなに謙遜しなくていいよ。第一に、最初からこれは君に頼もうと思っていたからね。それに、神代君にも事前に手伝ってもらうよう言っておいてあるから大丈夫だ」

 

あとは…、と先生が続けて、

 

「私はこれを使って()()()()()を作ろうと思っているからね。ゲーム好きな君にはうってつけだろう?」

 

 

幼い頃から、先生が《異世界》というものに憧れているという話を神代先生から聞いたことがある。もしかしたら、その()()()()()ってものが先生の言う《異世界》なのかもしれない。そして、そのゲームは是が非でもプレイしてみたい!そんな期待を込めて私は、

 

 

「その()()()()()ってどのようなゲームなのですか!?」と尋ねると、

 

「おお、流石な食いつきようだね……。VRMMORPG───《ソードアート・オンライン》だ」

 

「───!!」

 

 

VRMMORPG……要するに、《仮想大規模オンラインロールプレイングゲーム》と言ったところだろうか……。てことはーー、、、ん?えっ!

 

 

「えっ!ええええええ!!MMORPGを仮想世界で出来るってことですか!?先生!?ホントーですか!?マジですか!?」

 

「お、落ち着きたまえ、雪菜君。まだナーヴギアですら完成している訳ではないのだから、ソードアート・オンラインはまだ先だよ。」

 

「そ、それでも先生ならば遅くとも2年以内にはそのゲームを販売することだってできますよ!」

 

「そう言ってくれるとありがたい。まあ、以前言っておいたかもしれないが、ナーヴギアはいつ発売するかは検討中だが、来年、2022年以内にはSAOの方も発売できたらと思っている。あー、SAOというのはソードアート・オンラインの略だ」

 

ここで、話が逸れたね。と苦笑いを浮かべてから、改めてと続けて、

 

「雪菜君、このナーヴギアの最終調整を手伝ってくれないかな?」

 

「ぜ、是非!!お願いします!!」

 

「それじゃあ、私の研究室で最終調整をするから、一度アーガスの方に行く。私は先に駐車場に停めてある車を玄関前まで連れてくるから、準備をしてから玄関まで来てくれ。」

 

「はい、わかりました」

 

 

私は二つ返事で身を翻し、部屋でカードキーを入れた名札ホルダーやら財布やらと身支度を済ませ……、っと、一応実験用の白衣をバサッと着ておいてっと。髪が邪魔になるかもしれないから、ヘアゴムは手首につけといて、ピンの方は白衣のポケットに挟んで玄関へと向かう。

 

 

それにしても、ナーヴギアのことも重大なことだけど、先生の作るSAOというゲームもとても、すっごく、滅茶苦茶、very気になる……。しかも、来年までに発売ってことはもう作り始めてるってことだよねー。流石、先生って感じしちゃうなぁ………、私も追いつけるかなぁ…?

 

 

そんなことを考えつつも、いつもよりも軽い足取りで廊下をあっという間に進み、玄関を出る。外には、ちょうど車を停めた先生の姿があった。私は助手席に座り、シートベルトをして、それを確認した先生はアクセルを踏み、アーガス本社へと向かった。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

アーガス本社に着くまで、私は先生に近況報告をしたり、これから行うナーヴギアの最終調整の説明をしてもらったりという形で過ごした。

 

 

ついでに言っておくと、最近の私の研究内容はAI、いわゆる人工知能と呼ばれるものである。AIにも種類があって………という話はまた別の機会にしておこう。でないと長すぎて聞いてる方が飽きちゃったり、寝ちゃったりしちゃうからね。え、私?話す分には別に大丈夫だよ?

 

 

まぁ、とにかくこの研究は私じゃ先生のようなスピードで進められないから、SAOの発売後しばらくしてからかな…、なんて遠い見通しを立てておきますかね。

 

 

言い忘れていたけど、今日の最終調整は先生が言うには、私が実際にナーヴギアを装着して、仮想世界で自身に違和感がないかとか体調が悪くなったりしないかだとかを調べて、細かい調整をするらしい。

 

 

そのとき、先生はパソコンで調整をしながら仮想世界にいる私に指示を出し、神代先生は現実世界にいる私の様子や心電図やらなんやらをを見て異常がないかチェックするそうだ。

 

 

しばらくして、アーガス本社の駐車場に車を停めて、建物の中へ向かう先生の後をついていく。平日とはいっても、まだ通勤時間よりも早いので人は少ない。

 

 

通り過ぎていく人は今ではまだ子どもの私がいることも、あー、またあの子か程度にしか思ってないだろうが、少し前までは、え?なんでこんなところに子どもが?みたいな感じで沢山の視線を浴びたりもしたっけな。

 

 

奥の方へ進んでいくと目的地に到着した。ここが先生の研究室だ。厳密に言うと他の社員や研究員も使っているので違うかもしれないが、まぁ、あまり変わらないだろう。

 

 

薄暗い部屋をさらにその先へ先生についていくと、先にいたであろう人物がこっちを見て、はぁ、と溜息をつきながら頭を抱えていた。

 

 

「まさかとは思っていたけれど、本当に連れてくるなんて……。今日は平日よ?学校だってあるだろうに……」

 

 

そう言ってまた溜息をついているこの女の人こそが今日の最終調整を手伝ってくださる神代先生だ。やっぱり、こうゆう大人の女性!みたいな人ってかっこいいよね……。憧れちゃうな〜

 

 

でも、学校については本当にすみません……。そして、今日も学校をサボって研究室にこもろうとしてたなんて言えない……。

 

 

出席日数は足りてるし、その分も勉強してるので許してください、と心の中で謝りつつ、おはようございますと挨拶をする。

 

 

その後、神代先生に最近の研究について相談したりしているとパソコンをいじっていた先生から声が聞こえた。

 

 

「それじゃあ、早速だけど最終調整を始めるからそのナーヴギアを頭に被ってくれ。そしたら、顎下(あごした)で固定アームをロックして、シールドを降ろしてくれ」

 

「わかりました」

 

 

やはり、ナーヴギアはヘルメットみたいに頭に被るのか、なんて考えながらメガネを外して言われたとおりに装着してっと

 

 

「終わったら、セットアップステージを始めようか。ナーヴギアから聞こえる音声ガイドに従ってくれ」

 

「わかりました」

 

 

とゆーことだそーですが……、あー、聞こえてきた聞こえてきた。………ん?あー、はいはい。私は女です。まだピッチピチのJCです。中2です、はい。え、何ですか神代先生?こっち睨まないでくださいよ。綺麗な顔が台無しですよ?神代先生だってまだまだ若いじゃないですか。

 

 

……っと、次もまた個人情報入れなきゃダメなのね。三崎(みさき)雪菜(ゆきな)です。生年月日は……───

 

 

と言う風に個人情報が流出してしまうのではないか、と1回は考えてしまうくらい入力した。まぁ、先生が作ったものだし、そこら辺のセキュリティーもしっかりしているのだろう。

 

 

……っと次はなになに?キャリブレーション?とやらを始めるのね。なになに、装着者の体表面感覚を再現するために、手をどれだけ動かしたら自分の体に触れるかの基準値を測ります。だそうです。

 

 

ということで、まずは頭から……と思っていたけれど、ナーヴギア被ってんだった。んー?頭はナーヴギアが測ってくれるのかな?という疑問は後で先生にぶつけるとしてっと。

 

 

首から………足先までねぇ…………まだ成長があまり来てない胸のラインとかいりますかね?いらないですよね?そこら辺はうまく盛ってくださいよ……。別に全くないってわけじゃないけど、同級生のと比べたら……って違う!今はまだ成長があまり来てないだけだから…、きっとそのはずだ。恐らく。多分。相対的に考えれば。

 

 

……ということで、心の中で愚痴りながらもキャリブレーションを終わらせ、その他諸々の設定も済ませた。

 

 

「先生、設定が終わりました」

 

「わかった。それじゃあ早速仮想世界へ完全(フル)ダイブしてみようか。仮想世界(そっち)はまだ真っ白な部屋だから雪菜君の完全(フル)ダイブが完了次第、現実世界(こっち)から指示を出すよ」

 

「わかりました」

 

「それじゃあそこのベッドの上で横になってくれたまえ」

 

 

はい、と返事をして言われたとおりにする。しばらくして、先生がパソコンをいじる音が止まった。

 

 

「準備ができたからこれからナーヴギアの最終調整を始める。雪菜君も準備はいいね?」

 

「はい、大丈夫です。お願いします」

 

「それじゃあ合言葉を口にしてくれ、《リンク・スタート》とね」

 

 

そう言われたので目を閉じて、すぅっと息を吸い込んで、私は唱えた。

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

同時に、閉じた(まぶた)の先から届いていた(かす)かな光がシャットアウトされ、暗闇の世界となる。

 

 

その後すぐに、目の前で虹色が弾ける。そして、ナーヴギアのロゴマークが表示されると、その下に視覚接続OKという文字が浮かび上がる。

 

 

次は、聴覚が、そしてその次に体表感覚が……と続いていき、やがて、全ての感覚接続OKだったのか文字がフラッシュすると、また、暗闇の中へと進んでいった。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

───ということで、話は冒頭に戻るわけですよ。

 

 

「はい、聞こえますよ先生。しかし、完全(フル)ダイブする前の記憶が少し飛んでしまったみたいで……あっ、でも今完全に思い出したので大丈夫です」

 

 

先程の先生の質問にレスポンスしてもう一度辺りを見渡す。

相変わらず真っ白な世界だが、これが仮想世界と思うとやはりすごい。

 

 

そして、視線を落として自分の体を見てみる。

さっきまで着ていた服装とは違い、これもまた、真っ白なシャツに真っ白なズボンだけである。

 

 

そんなことをしているうちに、また空から声が降ってくる。

 

 

「とりあえずダイブには成功したか……でも、記憶が少し飛んでしまうときたか……あ、気分はどうだい?悪くはないかい?」

 

「はい、体調の方は問題ありません」

 

「そうか、ではこれから───」

 

 

という風に最終調整を進めた。

簡単に最終調整の内容をまとめると

 

・ダイブした後に少し記憶に障害が残ってしまうため、早急に対策する

・運動に関することは特に異常なし

・視力に関しては(私はガチャ目なんだよ…)調整が必要

・そもそも、ダイブするのに少し時間がかかるためダイブするまでの時間を短縮できるかの調整を検討

 

といったところだろうか。

え、略しすぎ?気のせいじゃない?

 

 

ということで、最終調整が終わった後は一応、脳の検査をしてから神代先生の車で私の研究室のある東都工業大学まで送ってもらうこととなった。

 

 

帰ったら先生方にアドバイスももらったから、AI研究をしよう。

よーし、今日は捗るぞー!

 

 

なお、帰るときに登校中の学生を見た神代先生に、遅れてでも学校に行きなさい。あなたはまだ中学生なんだから。と言われたため渋々学校に行った模様……。

 

 

あー、研究したかった……。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

2022年11月4日

 

 

私がナーヴギアの最終調整のお手伝いをしていたのも、もう1年前のこと。

 

 

ナーヴギアは2021年内には完成し、今年の5月に発売された。

それからしばらくの間は、パズルや知育、環境系のソフトが発売された。

 

 

最初こそ、完全(フル)ダイブの物珍しさに駆られて盛り上がっていたものの、その後のこれらの周りからの評価は、いまいちなもので、仮想世界なのに狭苦しいだとか言われてきていた。

まぁ、そんなソフトでも私は先生から貰った白いナーヴギアでとことんやり込んでいるんですけどね……。

 

 

まぁ、それは置いといて、そんな時に現れたのが先生が中心となって開発した《ソードアート・オンライン》だ(長いからSAOと略そう)。

 

 

(ここだけの話だが、ファンタジーにはやっぱ魔法は必要でしょ!?という意見があっちこっちから来たらしいが、先生は魔法なしの世界を黙々と創っていた)

 

 

そして、アーガスはSAOを11月にサービス開始すること、そして、8月から10月までは抽選で当たった人のみであるがβテストを実施することを発表したのだ。

 

 

ちなみに、私は先生からβテストを誘われたが、これに関しては先生に甘えずにフェアに行こうと思い抽選に参加した。結果としては落ちてしまったが、後悔はしてない……。やっぱ、悔しいけど。

 

 

でも、その間に私だって先生に負けないように頑張ってはいる。AI研究も後は時間をかけていけばいい段階まで進み、春からは都内屈指の工業高校への推薦入学が決まっている。

 

 

ということで、今は先日手に入れたSAOのキャラメイクをしている。

まだ、サービス開始は明後日だが、より早く楽しむために、かれこれ3時間ほどずっと仮想世界の暗闇の中でキャラメイクをしている。

 

 

それにしても、 SAO(これ)ってホントにすごい人気だね。夜中に並ぶためにしっかりと(学校をサボって)昼寝しておいてよかったよ、ホントに。

 

 

そうして、あと2時間ほどかけてキャラメイクは終わりを迎えた。

うん、いい感じに可愛くできた。我ながら完璧だね。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

2022年11月6日

 

 

遂にこのときがキターーーーーー!!!!

 

 

そう、今日こそ SAOの正式サービス開始日!!

楽しみすぎて夜も眠れなかったよ!!

 

 

昨日は先生がすごい慌ただしく研究室を行き来していたので、お手伝いをしたけどなんだったんだろう?

やっぱり、SAOの正式サービス開始前だったからかな?

 

 

そのときに先生は、雪菜君がいればアインクラッド(SAOの舞台)の攻略も早いかもしれないな。と褒めてくれた?ので少し嬉しかった。

本当は研究の方も褒めて欲しいんだけどね。

 

 

まぁ、それは置いといて、私の部屋の準備もしないと。寒くなってきたから風邪ひかないように暖房と加湿器をつけてっと……、うん、完璧!

 

 

もうそろそろ時間だな。んー、先生に電話しようかな。今からダイブしますって。

 

 

 

 

「──────おかけになった電話番号は───」

 

 

あー、やっぱ忙しいから出られないか。まぁ、せめて留守電にメッセージ入れておくか。

 

 

留守電にメッセージを入れたあと、スマホを机の上に置いてベットに横たわる。

神代先生は修士論文がどうとか言ってたから電話はかけないよ。そこんところは、私だってちゃんとしてる。

 

 

そして、初号機である白いナーヴギアを被って、固定し、シールドを降ろす。

 

 

それじゃあ、時間にもなったし行きますかね。

あー、なんかすごい緊張してきた。心臓バックバクだね。

そして、息を整えてから私は唱えた。

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

 

 

 

こうして、私こと三崎雪菜はプレイヤーネーム《ミーナ》として浮遊城(ふゆうじょう)アインクラッドでの冒険が始まるのであった。

 

 

 

 

このときは、まだ私たちは知らなかった。

 

後に、《SAO事件》として名を残す大事件に巻き込まれるということを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、《ミーナ》ってのは私の名前のもじりだからね?変な名前とか言わないで?

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

「───あー、忙しいときにすみません。私今からSAOにダイブしますね。先生の創った世界が楽しみで仕方がありません!何時間かしたら戻りますので、そのときに感想を言わせていただきますね。あと、先生の時間が合えばまた一緒にゲームしたいです!あ、本当に忙しいときにすみません!失礼します!」

 

 

私はつい先程に入ってた留守電のメッセージを聞いてから携帯電話を研究室の机に置いて、外の駐車場へ向かう。

 

 

車に乗り込み、カーナビを履歴から設定してアクセルを踏む。

 

 

信号待ちをしているときに思い起こすのはさっきの(めい)からの留守電のメッセージ。

彼女は私の姉の娘であり、教え子でもある。

 

 

昔は叔父(おじ)さんと呼んでくれていたが、最近は先生と呼ばれることが多くなってきたな。なんてことを考えながら、青となった信号を見て再びアクセルを踏む。

 

 

2時間ほどかけてたどり着いたのは長野の山奥にある山荘。

扉を開けベッドに座り、事前に持ち込んでいた点滴を腕に刺す。腕時計を見てもうそろそろだと思い、ナーヴギアをセットする。

 

 

心残りがあるとすれば、神代君と雪菜君か。

2人には悪いことをしたなと思う心はまだ残っているようだ。

特に雪菜君は……。

 

 

そんな、少しの迷いを今一度断ち切り、そっと口にした。

 

 

「リンク・スタート」




ここまでお読みいただきありがとうございます!
ここから先の本編はプロローグよりも短めで投稿する予定(予定だよ?わからないから)です。

誤字、脱字等ありましたらご報告ください!

評価、感想の方も何卒よろしくお願いします!


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001話 美しき世界は変わり行く

まだプロローグしかないのにも関わらず、お気に入り、感想、評価等々いただけて本当に感謝感激です!

にも関わらず沖縄に行って投稿がとてつもなく遅い作者です……。

ということで、やっと(?)本編です。どうぞ!


 

“ゆk……じゃなくてミーナです。「目の前が真っ暗」になったことはありますか?ゲームの話じゃないですよ。ほら、現実で……ってここもゲームの中でしたね。”

 

 

 

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

合言葉とともに来る体の力が抜けていく感覚は1年前のあのときよりも早く、脳からの信号はすぐさまにナーヴギアへと情報が送られるようになったなぁと実感する。

これも先生が改良したのだと思うとやはりすごい。

 

 

事前に作っておいたアカウントのIDとパスワードを入力し、《Mina(ミーナ)》のセーブデータを選択する。

 

 

独特な機械音に歓迎されて私は遂に、そう、ついに《ソードアート・オンライン》の世界に足を踏み入れたのだ。

実際の私の足はベッドの上だーとかそういう理屈は置いといてね?

 

 

ということで私のいるこの場所はファンタジー系のゲームにはよくありがちな中世風の街並みに囲まれたところである。

足元を見ると石畳がズラーっと敷き詰められている。

そして、そのまま視線を上げると大きな宮殿らしき建物が見える。

 

 

ここは、このゲームのスタート地点であるアインクラッド第一層《はじまりの街》……って、うわぁこんなにたくさんの人がダイブしてきたのか。

まぁ、その中に私もいるからみんなの気持ちもすごくわかる。

 

 

だって、こんなにもこの世界は美しいのだから。

 

 

今ここにいるコアなゲーマーのほとんどは私みたいにこれからの冒険に胸を弾ませているはずだ。

また、今回の10,000人に入れなかった人も次の機会を今か今かと伺っているはずだ。

そのほかにも、普段の社会での疲れの癒しを求めてこの世界で家を買い、のんびりと過ごそうとしている人だっているはずだ。

 

 

改めて見渡すと、やはり多種多様なプレイヤーがいる。

βテスターだったのか迷うことなく裏路地の方へ駆けて行く者。

知り合いを探しているのか手を振りながら大声を上げている者。

私みたいにこの世界に圧倒されて辺りを見回す者。

 

 

そんな多種多様な私たちの共通点はみんな生き生きとしているということだろうか?

それはやはり、誰もがこの世界に魅せられているからだろう。

 

 

多くの人が渇望した仮想世界でのMMORPGが発表されたときの盛り上がり様はとてつもないものだった。

何週間もの間、トップニュースを飾っていたことなんてここ最近であっただろうか?

 

 

っと、話が大きく逸れてしまったがとにかく、この世界を創り出した先生の教え子としてここに立てていることがとても嬉しくて仕方がない。

 

 

とりあえず、ほかのプレイヤー観察もここら辺にして、辺りをぐるっと回ってみるかと思い中央広場の外へ向かう。

宮殿らしきものの壁はガラスの様に薄っすらと反射していたので、今一度《ミーナ》を見てみる。

 

 

うん、流石だね私、と思ってしまうくらいにこれ以上にいないってレベルの整った顔立ちをしている美少女がそこには映っている。

うん、やっぱ何時間もかけた甲斐があったわー。

 

 

現実の私と同じところは髪と目が黒いところくらいしかないんじゃないかな?現実ではできないけど、ここなら髪型も変えちゃえって思ってショートボブにもしちゃったしね。

 

 

改めてアバターを確認した後、中央広場から出てみると道沿いにビッシリと出店が並んでいた。まずはこの辺をぶらりとしますかねー。

おー、流石にたくさんのプレイヤーでごったがえしてますなー。

あれ?思ったよりも男女比は酷くはないね。男が6〜7割ってところかな。やっぱネカマっているのかな?

 

 

出店では武器やらアクセサリーやら飲食物、日用品など様々なものが売られているね。お店の人はNPCかー、よくできてるなー。現実世界に戻ったら先生にNPCのAIについてとかもっと詳しく教えてもらおうっと。

 

 

というか、私の所持金はいくらあるんだ?そう思って右手の人差し指と中指をまっすぐ揃えて掲げ、真下に降る。これでゲームの《メインメニュー・ウインドウ》を開くことができる。

 

 

えっとー?1,000コル?コルってのが単位なのね。これは多いのか少ないのかわからないけど、ある程度の初期装備を整えることはできるのかな?まー、良さげなのがあれば買ってみますかね。

そう思いながらぶらりとしているとき、ある出店の輝きに目を奪われた。

 

 

あっ、このアクセサリー好きかも。

そう思ったアクセサリーはシルバーに輝く金属の縁に赤いガラスを組み合わせた太陽を模したものだった。

げっ、75,000コル……。全然足りないじゃん……。というか、何かしらの武器買えよ私。

 

 

ということで、アクセサリーは後々買うとして武器屋を見て回りますかね。

にしても、どんな武器を使おうか迷っちゃうなー。んー……とりあえず短剣を試してみますかね。

 

 

ほら、AGI特化で手数で勝負みたいなのもかっこいいじゃん?あとは、ヒットアンドアウェイを繰り返す感じとかもありだと思うし。あと、対人でもおもしろそうな動きができそうだしね。うん、とりあえず短剣を試してみよう。(本当は弓があればいいんだけど、この世界にはないからしゃーないね)

 

 

あ、これくださーい!750コルですか……、ほいっと。おー、スマホ決済よりも早くて楽だね!

ありがとうございまーす!NPCのおにいさん!

 

 

よし、とりあえず短剣の練習してみますか。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

ということで、《はじまりの街・西フィールド》まで来てみました。

いやー、ここまでたどり着くのにも一苦労だね。街にはマップがあってもすごく入り組んでる+人がたくさんということで本当に疲れたよ。おかげさまで13時にダイブしたのにもう16時になってしまった。

 

 

おや?先着のプレイヤーが2人いるみたいだね。モンスターがPOPするのを邪魔しないように少し離れたところまで行きますか。

 

 

さてと、この辺で練習しますかね。

お、いたいた。青いイノシシみたいなやつ!名前は《フレンジーボア》って言ったっけな?

 

 

こっちに気づかれる前に背中からサクッといこう。サクッとね。

まだ《はじまりの街》の路地裏にいたときに剣技(ソードスキル)については説明書を読んだから大丈夫でしょ。

 

 

もし、某天使風にヤラレチャッタってなってもまた《はじまりの街》で蘇生できるから問題はないけど、時間が惜しいからサクッといきたいね。うん、サクッと。

 

 

標的であるフレンジーボアの後ろから少し離れたところで短剣基本技のソードスキルの構えをする。

……ッ!!きた!この感覚は!!そう思ったときには体が突き動かされるように動き、フレンジーボアを切り裂いていた。

 

 

おぉぉーーー!!これがソードスキルかーー!!すごい感覚だな!!いや、本当にすごい。こうやって語彙力がなくなるくらいすごいよ。いやー本当にす「ゴハッ!!」

 

 

ソードスキルの感覚に思い浸っていたときに、さっきの青イノシシを倒しそびれてたらしく後ろから反撃されたようだ。

痛みはないけどなんか変な感じがする。

衝撃はあるのに痛みはない。やっぱ、不思議だな感覚だ。

 

 

そのあとは油断することなく、そしてソードスキルの感覚に浸りながら青イノシシを狩りまくった。

 

 

うん、最ッ高ーーに楽しいね!これ!

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

もう、陽も傾いてきて空はオレンジ色となってきた。時間を見たら17:23となっている。

 

 

もうそろそろ一旦現実世界に戻って休憩しますかね。

えっとー、ログアウトはーっと…………?

 

 

ん?ない?

いや、まさか。そんなことはないよね。

ヘルプは…………ログアウトボタンを押すとログアウトできます。って言われても、ないんだけど。バグってるのかなー?

とりあえず他の人に聞いてみますかね。

 

 

ということで、さっきの2人組を探す。

 

 

あ、いたいた。ちょっと休憩してるみたいだし行ってみますかね。

 

 

「あのー、私ミーナって言うんですけど、少しいいですか?」

 

「んー?……ッ!?いいぜ、お嬢ちゃん。用ってなんだ?」

 

「おい、ちょっと待てクライン」

 

「待てって、なんだよキリトよぉ」

 

 

最初に私に反応してくれた赤みがかった長髪に額のバンダナ、そして革鎧を装備しているこの男の人は《クライン》というらしい。

 

 

そして、クラインの隣にいる黒髪で、いかにも主人公みたいなイケメンフェイス、そしてこちらも同じく革鎧を装備しているこの男の人は《キリト》というらしい。

 

 

「この状況で話を聞けるわけないだろ」

 

「いやぁでもよ、俺たちにも何もできねぇだろ?」

 

「いや、でも……」

 

「しかもよぉ、こんなかわいいお嬢ちゃんが困ってんだぜ?ここで放っておいたら、男が廃るってもんよ!」

 

「いや、アバターが女だからって中身も女とは限らないぞ?」

 

「え!?そーなのか!?」

 

 

ちょっと、私そっちのけで話しちゃってるし。そう思った私は、わざとらしく咳払いをしてから再び話しかける。

 

 

「あのー、ログアウトボタンってありますか?」

 

「───ッ!!やっぱり、ねぇよな!?オレもねぇんだよ!」

 

「はい、私もログアウトボタンがなくて……。もうそろそろ戻りたいんですけど……」

 

「でもこの状況なら、運営サイドは何はともあれ一度サーバーを停止させて、プレイヤーを全員強制ログアウトさせるのが当然の措置だ。なのに……俺たちがバグに気づいてからでさえもう15分は経っているのに、切断されるどころか、運営のアナウンスすらないのは奇妙すぎる」

 

「む、言われてみりゃ確かにな……それに、SAOの開発運営元の《アーガス》と言やぁ、ユーザー重視な姿勢で名前を売ってきたゲーム会社だろ。なのに、初日にこんなでけぇポカやっちゃ意味ねぇぜ」

 

「まったく同意する。そr「でも!アーガスはきっとすぐにどうにかします!だって先生は───」

 

 

突然、リンゴーン、リンゴーンという鐘の音が鳴り響く。鐘の音なのにどこか不安を感じる嫌な音だ。その音に驚き、私たちは飛び上がった。

 

 

「んな……っ」

「何だ!?」

「きゃっ!!え、何!?」

 

 

戸惑いの声を上げる中、私たちはお互いの体を見て再び仰天した。

私たちの体が鮮やかな青い光に包み込まれたのだ。

 

 

え、何これ!?しかも、周りの景色が段々と消えていくんだけど!?

 

 

怖くて目をつぶっているとキリトとクラインに声をかけられて瞼をそっと開ける。

そのとき私の目に入ったのは、さっきまでの夕暮れの草原ではなかった。

 

 

この景色は…………、《はじまりの街》の中央広場。

 

 

周囲を見渡すと、そこにはたくさんのプレイヤーがいる。数えることなんてできないが、恐らく、1万人近くはいる。

ということは、今ログインしているプレイヤー全員が、私たちと同様にこの広場に集められているのだろう。

 

 

これから運営から全体に不具合の説明をするのだろうか。そう思っていると周りからは、さまざまな怒号(クレーム)が聞こえる。

これは無理もない。

先生は大丈夫かなぁ?今ごろ、大変なことになってるんだろうなぁ。

 

 

そんなことを考えてるうちに「上を見ろ!!」という声が辺りを突き抜けて行った。

 

 

私たちは、反射的に顔を上げるとそこには異様な光景が広がっていた。

空一面に広がるのは赤く表示されるのは【Warning】、そして【System Announcement】の文字。

 

 

やっぱり、運営からのアナウンスか。と安堵していたのも束の間、まるで血液のように真っ赤な(しずく)がどろりと垂れ落ちた。そしてそれは、空中でまとまりフードの付いたローブをまとった巨大な人の姿に形を変えた。

 

 

しかし、フードの中には何もない。人の形をしているが中身が見えないのだ。

キリトやクラインを見ても何がなんだかわかってない様子だ。

 

 

その後、私の聞き覚えのある落ち着いた男の声が降り注いだ。

 

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

 

そう、先生の声である。何を言ってるかは分からなかったけど、声を聞いて私は安心した。

先生なら大丈夫だ。と。

そう思っていると先生からの言葉は続く。

 

 

『私の名前は茅場(かやば)晶彦(あきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

 

先生の声に安心感を覚えるが、どこかが引っかかる……。隣にいるキリトも「な………」っと喉を詰まらせているし。

ちょっと待って。

“唯一”って言ったの?なんで?先生が作ったゲームだけど、先生はGM(ゲームマスター)なんてことはしないはず。どうして、どうして先生が……。

 

 

そんな風に頭をフル回転させていると、また声が降ってくる。

そして、私はこの先の言葉を聞いて自分の耳を疑った。

 

 

 

 

ログアウトボタンがないことは不具合ではなく、本来の仕様!?

 

 

自発的にログアウトすることができない!?

 

 

外部からナーヴギアが外されるとナーヴギアによって脳が破壊される!?

 

 

HP(ヒットポイント)がゼロになっても同様に脳が破壊される!?

 

 

私たちがこのゲームから解放される条件は第百層のクリア、つまりこのゲームのクリア……。

 

 

 

 

頭の中がまとまらない。

でもわかる。

先生が言うのだからこれは本当のことなんだと。

先生はこんな嘘はつかない。

ナーヴギアも私たちの脳を破壊することは可能だ。

信号素子が高出力のマイクロウェーブを発生させれば。それに必要なバッテリも内蔵されてる。

 

 

先生が話している間、キリトやクラインは非難の声をあげている。

それもそのはずだ、普通はそうなるだろう。でも、私は───

 

 

『───諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

 

アイテムストレージを見るとそこには《手鏡》の文字。

取り出して私の顔を見てもただかわいいアバターが映るのみだ。周りを見ても皆同じような反応をしている。

 

 

───突然、キリトやクライン、周りのアバターを白い光が包んだ。

そして、そう思ったときには私も光に包まれる。

 

 

数秒後、目の前の光景は変わっていた。

 

 

キリトのいたところには、男の子か女の子なのかわからない線の細い顔立ちの少年?が。

 

 

クラインのいたところには、無精ひげが浮いている、まるで山賊?のような青年が。

 

 

「お前……誰?」

「おい……だれだよ」

「え……誰?」

 

 

それぞれが誰に対して言ったのかはわからないが、それぞれが呆然と呟いた。

 

 

え、ちょっと待って。てことは…………。

 

 

急いで《手鏡》を覗くとそこには現実世界の私の顔があった。

 

 

「はぁ………」

「うおっ……………オレじゃん……」

「え、私?」

 

 

私たちはもう一度2人の顔を見て同時に叫んだ。

 

 

「クラインとミーナか!?」

「おめぇがキリトでこっちがお嬢ちゃんか!?」

「え!?キリトとクライン!?」

 

 

私たちの手から鏡はスルッと落ちていき、パリンという音と共に消えてしまった。

周りも同じように現実の姿となっているのだろう。

あ、やっぱネカマは多かったみたいだ。

 

 

そんなことを考えていると再び先生からの言葉が───

 

 

『───この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた。……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る。そして、()はどう生きるのか楽しみにしている』

 

 

 

 

そんな……先生………先…せい……。

 

 

 

先生はこのために……このために……、こんなにも…美しい世界を創り出したのですか……?

 

 

 

そんなの、あんまりです……。

 

 

 

私は……私は………わた…し…は……、どこへいけば…いいのですか……?





ここまでお読みいただきありがとうございます!

次回投稿はいつかわかりません。でも、なるべく早くします。

誤字、脱字等ありましたらご報告ください!

評価、感想の方も何卒よろしくお願いします!


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002話 崩壊と希望の光

投稿は遅いし、全然話は進まないし、短めです。

それでは本編をどうぞ!


“ミーナです。雪崩の後に残るのはただ真っ白な雪景色のみですね。雪の下に何があったかなんてことはわからなくなってしまうものです。”

 

 

 

 

 

私にとって先生は目標だった。

 

先生のもとで研究をして、いつか私も先生みたいに……と憧れていた。

 

先生や先生の知り合いの方たちと過ごす日々はかけがえのないものだった。

 

だからこそ、この日常はいつも通りだと思っていた。

 

あぁ、私の研究もあと少しだったのになぁ……。

 

たくさんの人に相談はしたけど、なんだかんだ言ってこの研究は私にとって初めての大きな試みだ。自力で何とかしようとして、思っていたよりも多くの時間がかかっていた。

 

でも、あと少しで届きそうだったのに先生は……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を置いて更に遠くへ行ってしまうのですね。

 

 

私はどうすればいいのですか?

 

先生が渇望していた世界がこれなのですか?

 

私はなんでそれを止めることができなかったの?

 

なんで、どうして───。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

「なんで…、どうして…」

 

「「おい、大丈夫か!?」」

 

 

怒号や悲鳴が飛び交う中、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった私に優しく手を差し伸べる人がいる。

キリトとクラインだ。

 

 

「どうした!?具合が悪いのか!?」

「立てるか!?お嬢ちゃん!?」

 

 

あぁ、大丈夫だ。

私は安堵した。

ゲームの世界に閉じ込められ、デスゲームを強いられてもなお、温かい優しさで手を差し伸べてくれる人がいることに。

 

 

この絶望の中では、自分のことで精一杯だろうに……。

周りを気遣ってくれるその優しさがあればいつか、そう、いつかは元の世界に戻れる、そんな日が来てくれるのではないだろうか。

 

 

そんなことで…と思う人もいるかもしれないけど、私にはなんとなくわかる気がする。

このような優しさを持つ人がこの世界を導き、照らす希望の光となってくれるのだと。

 

 

私も希望の光に当てられて、わかった気がする。私が、先生の姪であり、先生の弟子である私がこの世界でやらなくてはいけないことが。

 

 

 

 

もう、覚悟はできた。やってやるんだ。

 

 

私が先生を止めるんだ。

 

 

「うん、もう大丈夫だよ。2人とも心配かけてごめんね」

 

「なら良かった(ぜ)」

 

「クライン、ミーナ、ちょっと来い」

 

 

2人に謝って、立ち上がるとキリトが急にどっかへ行ってしまう。私とクラインは頭に?を浮かべながら混乱に飲み込まれている人たちの間を縫って、キリトについて行く。

 

 

まだ多くの人は叫び、泣き、ぶつけようもない怒りを地面に叩きつけ、茫然としている。

まさに阿鼻叫喚な地獄絵図である。

キリトはそんな人たちを意にも介さずに進んでいく。

 

 

キリトが路地の一本に入ると、こちらに振り向いた。そして、真剣な表情で口を開いた。

 

 

「………クライン、ミーナ。俺はすぐにこの街を出て次の村に向かう。お前たちも一緒に来い」

 

「なるほどね。この街の近くのモンスターはしばらくしたら、狩り尽くされてしまうかもせれないからね」

 

「そうだ。だから、今のうちに次の村を拠点にしたほうがいい。ミーナには言ってなかったかもしれないけど俺はβテスターだったんだ。だから俺は、道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1の今でも安全に辿り着ける」

 

 

このアイデアはなかなか良いものだと思う。この街の近くだと、再湧出(リポップ)をずっと探して、やっと倒すということを繰り返し行わないとレベルも上がらないし、金やアイテムもなかなか集まらない。

そう思っていたが、ここでクラインが口を開いた。

 

 

「でも……でもよ。おりゃ、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらももうログインして、さっきの広場にいるはずだ。置いて……いけねえ」

 

「「…………」」

 

 

キリトと私は押し黙ってしまう。

キリトはさっきβテスターって言ってたけど、そんな彼でも1人を守るのが精一杯で、2人目は正直きついんじゃないかと思っていた。それでも、彼は私たち2人にこの提案をしてくれた。本当に優しい人だ。

だけど、流石にそれ以上は責任を負いきれないのだろう。だから、押し黙ってしまう。

 

 

「いや……、おめぇにこれ以上世話んなるわけにゃいかねえよな。オレだって、前のゲームじゃギルドのアタマ張ってたんだしよ。───だから、おめぇとお嬢ちゃんは気にしねぇで、次の村に行ってくれ」

 

 

クラインはこの提案にただ首を縦に降るのではなく、友人をどうにかしないと、ということを考えている。でも、彼もそれがどんなに重要なことなのかがわかっている。だから辛そうにして言葉を振り絞ったのだろう。やはり、彼も仲間を思いやる優しさがある。だから、キリトに迷惑をかけないようにしたいのだろう。

 

 

「……なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ。」

 

「……うん、そうだね。クラインとはしばらくお別れだね。……あ、そうだ!クラインとフレンド登録してないよ!しよ!」

 

「お、おう!フレンドになろうぜ!お嬢ち「ミーナでいいよ」わかった。ミーナ、何かあったらメッセージ飛ばしてくれよな」

 

「うん、わかった。それじゃあ今度こそお別れだね」

 

「ああ、そうだな」

 

 

踵を返して歩き始めたキリトに私はついて行く。直後に再びクラインが後ろから短く叫んだ。

 

 

「キリト!ミーナ!」

 

「…………」

「へ?」

 

「おい、キリトよ!おめぇ、本物は案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜオレ!!そして、ミーナ!キリトに言われてから、本物は中身が男だと思ってたけど、やっぱりカワイイお嬢ちゃんだったな!悪りぃな!!」

 

「お前もその野武士ヅラのほうが十倍似合ってるよ!」

「私は元から女の子だからね!あと、クラインもそのバンダナなかなかイカしてるよ!」

 

 

そして私は、この世界でできた初めての友人に背を向けて、もう1人の友人と共にまっすぐと、歩き始めた。

 

 

大丈夫。希望の光(クライン)とはまた会える日が来るはずだから。いや、来るから。

そして、今は希望の光(キリト)がいるから。

 

 

私は大きな期待を胸にはじまりの街の北西ゲートへと向かった。

急ごうと言って走る彼の背中を追いながら。

そして、私はどこまでも続くこの世界を走り抜けて行くのだ。

私の運命に多くの人を巻き込みながら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、私ってキリトとフレンド登録してないよね?しようよ」

 

「お、おう。そうだな」

 

 

こうして私のフレンド一覧に《Kurain》と《Kirito》の文字が追加された。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

小説を読み返してると割と忘れてるところもありますよね?
自分はキリトが最初は自身のリアルの顔を嫌ってる?(間違えてたらすみません……)ってところを完全に忘れてました。
あとは、アニメとの違いもあるので、ゆっくりと読みながら見るのも楽しいものだなぁと思いますね。
よかったら、試してみてください。

誤字、脱字等ありましたらご報告ください!

評価、感想の方も何卒よろしくお願いします!


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003話 迫る恐怖も───

更新が遅くなったのには大陸棚くらい深い訳が……、ってそんなに深くないって?そうですね、はい。

それでは、プロローグよりも長くなってしまった本編をどうぞ!


 

“ミーナです。『赤信号みんなで渡れば怖くない』とか言いますけど、良い子も悪い子も真似してはいけません。でも、やはり誰かと一緒にいるということは、それくらい大きなことだということではありますけどね。でも、やっぱり赤信号は───。”

 

 

 

 

 

ゲートを抜けて、草原の中を走るキリトを追いかけながらふと疑問に思ったことを聞いてみる。

 

 

「そういえば、私たちってどこに向かってるの?」

 

「……あー言ってなかったっけ?」

 

 

そう、私たちはレベリングをするための拠点に向かっている。でも、はじまりの街周辺はこの後、他の人に狩り尽くされ、リポップ待ちとなるためレベリングの効率は良くない。

だから、遠くへ移動してからレベリングを始めるということにはなっている。

 

 

「この先の深い森の中の小径(こみち)を抜けた先に《ホルンカ》っていう村がある。とりあえず、今はそこに向かう」

 

「わかった。じゃあ案内よろしくね」

 

「おう、任せとけ」

 

 

走りながら二人でパーティーを組む設定をして、足を止めずに会話を続ける。そして、ホルンカについて聞いたことをまとめるとこうだ。

 

・小さいけど《圏内》だから、そこにいればモンスターに襲われることはなく、また、宿屋と武器屋、道具屋があり、充分に狩りの拠点に使える。

 

・周辺の森のモンスターは、危険なスキル(麻痺毒とか装備破壊とか)を使うことはない。

 

・三層くらいまでのしばらくの間、使うことができる《アニールブレード》という片手用直剣が報酬のクエストがある。

 

 

最後の件については、彼は自分のためだけにに受けるんだけど、悪いが手伝ってくれないか?と短剣を使う私に断りを入れていたが、別にそんなことくらいなら、全然手伝うのにと笑いながら返した。

キリトが強くなるなら、更に頼もしくなるから逆に願ったり叶ったりだしね。

 

 

しばらく走ると森が見えてきた。流石に森の中では慎重になってモンスターとの戦闘を極力避けつつ、できるだけの速さは維持したまま小径を駆け抜けた。

そして、まだ夕陽がギリギリ残っているときに《ホルンカの村》に到着した。

 

 

少しの民家や商店が並ぶ村を眺めることはせず、キリトについて行く。流石に他のプレイヤーはいないようだ。他の人は全てNPCのタグがついている。

 

 

「まずは、武器屋に行って装備を整えよう」

 

「……わかった。じゃあ行こう」

 

 

まぁ、行こうと言っても場所がわからないからキリトの後を追わないといけないんだけどね。

 

 

武器屋に着いてからはキリトはストレージにある素材アイテムを全て売り払い、茶革のハーフコートを買っていた。

私には買うお金がなかったため、武器はそのまま短剣を使うことにして、他の装備は初期装備のままにした。

防御力に不安はあるけど、まぁソロというわけでもないから大丈夫だろう。

ちなみに、素材アイテムは一応取っておいた。

 

 

武器屋を出て、隣の道具屋では回復ポーションと解毒ポーションをありったけ買った。

デスゲームと化したこの世界ではヒットポイントが文字通り命である。回復ポーションなんて特に多くても困らないだろう。

 

 

店を出て、私たちは村の奥にある一軒の民家に向かった。

そこでクエストを受けるらしい。

 

 

民家に入ると、台所で鍋をかき回しているおかみさんのNPCがいた。

いつも思うけど、RPGゲームって勇者とかはよく不法侵入が許されるよね。しかも、そこで器物損壊したりもするし……。勇者ってなんぞや?といつも思っちゃうんだよね。

せめて、ドアをノックしたりできないかな?なんてことを考えているとNPCが振り向いて言った。

 

 

「こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう、食事を差し上げたいけれど、今は何もないの。出せるのは、一杯のお水くらいのもの」

 

「それでいいですよ」

「いいえ、お構いなく」

 

 

ここでキリトは、あ…と声を漏らしているがどうしてだろう?

気づくとNPCは、カップに水差しから水をつぐと、キリトの前のテーブルに置いた。

そして、おかみさんは再び鍋に向き直った。

 

 

………あーそういうことね。キリトの言わんとしたことがわかった。

気まずそうにカップを見つめているキリトに、別に私が悪いんだから気にしないでと声をかけておく。

 

 

しばらくすると隣の部屋から、こんこん、と子どもが咳き込む声がした。それを聞いて、おかみさんは哀しそうに肩を落とす。

 

 

「ねぇ、キリト?まだクエスト始まらないの?」

 

「待ってろ、あと少しで──」

 

 

キリトが言い終わるよりも前に、おかみさんの頭上に、金色のクエスチョンマークが点灯した。

これがクエスト発生の印らしい。

キリトがすかさず声をかける。

 

 

「何かお困りですか?」

 

 

彼がそう聞くと、おかみさんは振り向いて話し始めた。

 

 

「旅の剣士さん、実は私の娘が重症にかかってしまって……」

 

 

長々としたセリフを、おかみさんが身振り手振りを交えて話した。

曰く、娘の治療のための薬となる素材を取ってきてくれたら、お礼に先祖伝来の長剣をくれるとのこと。

それが、さっきキリトが言っていたアニールブレードなのだろう。

 

 

おかみさんが、ゆっくりとした口調で話してくれたため、気になってしまったのが、『先祖伝来の長剣』と言っていたことだ。

そこに私は、先祖伝来のものを絶ってでも、娘を助けたいという強い意志を感じる。

NPCなんだけどね。

 

 

やっぱり、ここがデスゲームでなければ、素直に楽しめたのに……。と思ってしまう。

 

 

視界左に表示されたクエストログのタスクが更新された。

こうして、私たちの初クエストは始まったのである。

 

 

家を出る前にキリトは、任せておいて下さい!と叫びながら威勢よく立ち上がった。

なので私が、え、それも言わなきゃいけないの?と聞いたのも無理はないと思う。

まぁ、気分的な問題らしいけどね。

 

 

とにかく、私たちはクエストをクリアするために家を出た。

直後、鐘の音が空に響き渡った。

 

 

「あぁ、これは午後七時を知らせる鐘だよ」

 

「あ、そうなんだ」

 

 

現実世界は、今頃どうなっているのだろう。

全国、いや世界的な大ニュースとなっていることは間違いない。

私の部屋に入られる人は数少ないから、まだ、誰も私のナーヴギアを外そうとすることはないだろう。

仕事熱心な両親は、まだこの時間でも仕事をしているだろうから、まだ事件のことすら知らないのかもしれない。

たとえ、知ったとしても……、いや、なんでもないや。

 

「……ごめんな、母さん。心配かけて……。ごめんな、スグ。お前が嫌ってたVRゲームで、こんなことになって……」

 

無意識に声に出してしまったのだろう。隣のキリトも、現実世界のことを心配している。

この状況だし、現実世界のことを聞くのも無粋だろうからリアルのことを聞いたりせずに、ただ前を向いて私とキリトは村の門を潜り抜けた。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

夜の森の中は、やっぱり不気味だな。

でも、現実世界よりも少しは明るい?気がする。それもゲームだから、流石に真っ暗で仲間やモンスターが見えないということをなくしているからだろう。

この森の中を一人で行くとなると、かなりの勇気がいるよ。いや、本当に。

森の中を進みながら、気を紛らわせるために話しかけてみる。

 

 

「そういえば、キリトって《スキルスロット》に何入れてるの?」

 

「……えーと、俺は《片手用直剣(ワンハンドソード)》を入れてるよ。あともう一つのスロットは、まだ空けてるけどな。そういうそっちはどうなんだ?」

 

「私は《短剣(ダガー)》だけだよ。二つ目はどうしようかなって悩んでるんだ。だってこういうのって、じっくり考えて選びたいじゃん?」

 

「まぁ、そうだよな。俺もまだ保留ってところだし……っと、いよいよお出ましだな」

 

 

話を切り上げて、影に隠れながら短剣を構える。

やや色の濃い赤のカラー・カーソルが表示されたモンスターの名前は、《リトルネペント》と言うらしい。

というか、リトルとか言うくせに私とあまり変わらない大きさなんですけど?

自走捕食植物でこのサイズは、ちょっとキツくないですかね?

 

 

まぁとにかく、敵の観察をしてみる。

リトルネペントのレベルは3。

油断したら、レベル1の私たちはやられてしまうだろう。

根のようなものを足として移動している。そして、胴体らしきところと根の間には(むち)のようにしなるツルが二本伸び、先端には葉が付いている。更に、上の方に視線を動かすと大きな口がある。

正直言って、普通に気持ち悪い。そんなモンスターだ。

そんなことを考えていると、キリトが話しかけてきた。

 

 

「いいか、今回のクエストは花つきのネペントからドロップする《リトルネペントの胚珠》を手に入れることが目的だ。でも、それはなかなかドロップしないが、普通のネペントを倒していれば出現率が上がるから、どんどん倒して行くぞ。……あっ、でも丸い実がついてるやつは気をつけてくれ。実を破壊すると、周りのネペントが集まって来るからな。流石にそうなると倒すのが厳しいから……」

 

「うん、わかった。それじゃあ、行こう!」

 

「おう!でも、最初は俺が行くからな。攻撃パターンも全て見せるようにするから」

 

「わかった。頑張ってね!」

 

 

そう言って、キリトは背中の剣を抜きながら走った。

ネペントはキリトに気づいたようで、ツルで威嚇している。

「シュウウウウ!」という声を上げながら、ネペントが右のツルで突くように攻撃した。

キリトは左に跳んで回避。そのままネペントの側面に回り込み、剣を胴体と根の間の部分に叩き込む。

ネペントのHPバーが二割ほど削れる。

 

 

ネペントは再び怒りの声を上げ、ウツボの部分を膨らませた。更に膨らみ続けて……、止まった。

瞬間、キリトは右に大きくジャンプした。

ぶしゅっ!という音と共に、薄緑色の液体が発射され、キリトの元いたところは白い蒸気を上げている。

うへぇ、やっぱこのモンスター嫌いだ。気持ち悪ぃ。

 

 

着地したキリトは、そのまま剣を振りかぶり、再度同じところに叩き込む。

悲鳴を上げながら仰け反ったネペントの口の周りに、黄色いエフェクトがくるくるとしている。おそらく、気絶(スタン)しているのだろう。

そのチャンスを彼が逃すわけもなく、剣を右に大きく引く、そして発光。ソードスキルが発動し、薄水色の光と共に地面を蹴る。そして、再び同じところへ打ち込む。

 

 

すかぁぁん!と乾いた音を響かせ、ネペントは真っ二つとなった。残っていたゲージが全て赤く染まり、一気に削られる。

直後、ネペントは小さな爆発と共にポリゴン片となって消滅した。

 

 

はっきり言ってすごい。

これがβテスターの実力か、と思い知らされた。

 

 

「やっぱすごいね、キリト」

 

「……ありがとう。それじゃあ次はミーナがやってみようか。もちろん、危なくなったら助けるから」

 

「うん、わかった。任せっきりにしちゃうのも悪いからね」

 

 

そう言って、周りを見渡すと……、あっ、いた!一匹だけだ。

見つけたことを伝えて、一緒に近寄る。

花はついてないけど、倒すことには変わりない。

 

 

キリトに合図を送ってから短剣を抜きながら走る。

ネペントもこっちに気がついた。右のツタを振りかぶって横薙ぎに払ってくる。

これは、さっき見ることができなかったパターンだけど咄嗟(とっさ)に足を止めて、後ろへ跳び退き回避する。

 

 

ネペントは威嚇を続けている。

正直近づけるかが不安だ。さっきみたいにツルを横に払われると避けにくい。でも、さっきのを見たところ、しゃがみこむなりスライディングするなりして避けられそうだ。

しかも、私の場合は短剣なため間合いが遠いと攻撃できない。だから、懐まで潜り込んで弱点を狙わないと隙も生まれない。

正直、武器セレクトミスったかも……。

 

 

でも、今はこの短剣でやつを仕留めないと。

気合いを入れ直して、もう一度ダッシュで近寄る。

ネペントは左のツルをそのまま、真っ直ぐ突き出してきた。

右に跳んで回避。そして、一気に近寄って短剣を茎の部分に突き刺す。引き抜き、次は叩き込む。

 

 

次はの攻撃に備えて一度離れる。

ゲージは三割くらい削った。

ウツボの部分が膨らみ始めた!タイミングを見計らって………今だ!思いっきり横に跳ぶ。

よし!避けた。そして、今がチャンス!

もう一度同じところに短剣を突き刺す。引き抜く。次は切り裂く。

……来た!気絶してる!

私は再び、短剣を左に引く。一瞬のタメを作って………、来た!ソードスキル!

薄水色の光が短剣を包み込む。

 

「……はぁああああああ───ッ!」

地面を蹴って、懐まで潜り込んで……、同じところに放つ!そして、さっきまでは硬かった茎からの手応えは一瞬で消え去り──。

 

 

スパァァン!という音と共にリトルネペントはポリゴン片となり、爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

………ハアァァァァ

緊張やら恐怖やらが遅れて、どっと疲れとなって襲って来た。そして、その場に座り込む。

いや、緊張はしていたし、怖かったのも確かだけど、さっきまではそれよりも興奮が上回っていたのだろうか?

 

 

 

はぁ、やっぱりゲーマーとしての(さが)としてこういうのは、デスゲームでもなのかね?

それとも、もしものことがあった時に、後ろで見てくれているということに対する安心感なのか……。

まぁ、どちらにせよ良い意味で緊張やら恐怖やらが和らいでくれるのならいっか。

 

 

「おつかれ、ミーナ」

 

「…ハァ………うん、ありがとう」

 

「それにしても、よく一人で倒せたな」

 

「いやいや、キリトだって私よりも短い時間で倒せてたじゃん」

 

「でも、俺だって一応元βテスターだぜ?リトルネペントだって何十匹も倒したことがあるし……。ミーナって下手したら他の元テスターよりも強いかもな」

 

「え、それホント!?そう言われると嬉しいなぁ」

 

「まぁ、とにかく今は花つきのネペントを見つけて倒そうぜ」

 

「うん、任せて!」

 

 

そう言って、深い森の奥へと再び走り始めた。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

十五分程が経ち、今まで合わせて十匹以上はポリゴン片へと変えてきた。しかし、肝心な花つきのネペントは出てきてない。

あー、早くでないかなー。と思っていた時に隣で軽やかなファンファーレが鳴った。

驚きながらも、音のした方を見ると金色のライトエフェクトに包まれたキリトの姿が。

 

 

「あー、もしかしてレベルアップ?おめでとう!」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

そう言ってキリトは、剣を鞘に収めて、メインメニュー・ウインドウを出す。

あー、ステ振りかな?じゃあ私は、周りを見張りますかね。

と考えてキリトの背後を警戒してると、丁度その方向から、パンパンという、乾いた音が聞こえた。

 

「「…………!!」」

 

私は短剣を構え直し、空いた手でキリトを守るように広げる。

キリトも大きく飛び退き、剣の柄に手をかけている。

 

 

静かに音のした方を見ていると、ガサゴソと音を立てながら人が現れた。見るからにプレイヤーだ。

キリトよりも少し背の高い男。年代は同じくらいの少年か。防具は革鎧と円形盾(バックラー)。武器はキリトと同じの初期装備。でも、構えてるわけではない。

 

 

あー、キリトのレベルアップに拍手したのか。

そう気づいた私は、短剣を鞘に収めてホッと安堵のため息を漏らした。

 

 

「……ご、ごめん、脅かして。最初に声を掛けるべきだった」

 

「…………いや、俺こそ……過剰反応してごめん」

 

「……………わ、私もごめんね?剣を向けちゃって」

 

 

ぱっと見、真面目そうな顔立ちの少年は、右手の指を右眼のあたりに持っていった。すぐにバツの悪そうに手を下ろしたので気づいた。

あ、この人は、現実世界では眼鏡をかけてたんだろうな、と。私も走ってた時に同じようなことあったもん。絶対そうだ。

そして、話をしているうちにわかったことは彼も、キリトと同じように《元βテスター》だということだ。

まず、ここに辿り着くことさえ難しいということ。そして、「僕も一番乗りだと思ってた」と言ったこと。

そして───、

 

 

「君たちもやってるんだろ、《森の秘薬》クエ。あれは、片手剣使いの必須クエだからね」

 

「……見た目はイマイチだけどな、あれ」

 

 

キリトが補足すると、少年は朗らかに笑い、そして、一呼吸置いてから口を開いた。

 

 

「せっかくだから、クエ、協力してやらない?」

 

「「………」」

 

 

これに関しては、私よりもキリトの方が知識量的に適任かなと思ったので、私は押し黙っていようと思ってたのに……、何を悩んでるのかね?効率良さそうだけど。

と思ってると少年が更に言葉を重ねた。

 

 

「人数が多い方が効率が良いだろ?それに、パーティーは組まなくてもいいよ。ここで先にやってたのは君たちなんだから、最初のキーアイテム二つはもちろん譲る。確率ブーストかかったまま狩りを続ければ、きっとすぐに三匹目も出るだろうから、そこまで付き合って貰えれば……」

 

「あ……ああ、そうか……じゃあ、悪いけど、それで……、ミーナも良いよな?」

 

「あ、私は別に良いよ。そっちに任せるから」

 

「よかった、じゃあ、しばらく宜しく。僕は《コペル》」

 

「……よろしく。俺は《キリト》。んで、こっちは───」

 

「《ミーナ》です。よろしくね」

 

 

何とか話はまとまり、名乗ると、コペルは軽く首を傾げた。何やらキリトについて引っかかっていたみたいだけど、キリトがどうにか誤魔化していた。

はて?βテストの時に何かあったのかね?

真相はわからないまま、私たちは三人でリトルネペントを狩り続けた。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

私たちのレベルは3まで上がり、リトルネペントのカラー・カーソルの色も、いわゆる普通の赤となった。

武器の消耗も激しくなってきたため、一度諦めて村まで帰ろうか。などと話していた時に、それは現れた。

 

 

何回も見てきた、モンスターの湧出(ポップ)が十メートル程離れたところで始まった。

正直、私も帰るつもりだった。

でも、そのネペントはいつものとは違った。

そう、真っ赤な花が咲いていたのである。

 

 

これには私たちも声を上げて喜びそうだった。

え、違う?私だけ?そんなことないでしょ?だって二人とも声上げそうだったじゃん。今は堪えて、剣を振りかざしてるけど、声上げそうだったじゃん。叫びそうだったじゃん。

 

 

まぁいっか、とりあえずさっさと倒しちゃお………って、ちょっと待て!

 

 

無意識のうちに走り始めていた足にブレーキをかけて、同時に右手で隣の二人を止めた。

抗議の視線を向けて来る二人に、ジェスチャーで《花つき》の奥を指す。

その先には危険な《実つき》がいた。

私は指示を仰いだ。

 

 

「……どうする?一旦、二匹が離れるのを待ってみる?」

 

「……いや、………でも」

 

 

キリトは何やら葛藤しているみたいだ。もしかして、《花つき》はレアすぎて、すぐに《実つき》に成長してしまう。とかあるのだろうか?

そう考えているとコペルが言った。

 

 

「──行こう。僕が《実つき》のタゲを取るから、二人で速攻で《花つき》を倒してくれ」

 

「……………解った」

「……わかったよ」

 

 

コペルが先に駆け抜ける。

近くにいた花つきが反応したが、コペルは更に奥の実つきの方へ、そして私たちは、コペルの方を向いて隙だらけの花つきの茎を狙って攻撃した。

こっちに気づき、ウツボを膨らませ始めた。

私たちは、腐蝕液(ふしょくえき)を吐き出す前にソードスキルを使い、再度、茎を攻撃。切断。

いつもと違う悲鳴を上げ、爆散。

 

 

キリトは、足元にころころとやってきた《リトルネペントの胚珠》を拾い上げ、ポーチに入れている。

その間に私は、コペルの援護に向かった。

 

 

───が、しかし、私は足を止めてしまう。

向かう先には、コペルが顔をこっちに向けながら剣と円盾(バックラー)でネペントの攻撃をうまくあしらっている。

そう、こっちに視線を向けながら。

 

 

キリトも追いついたが、彼もまた足を止めてしまう。

なぜ、私たちは足を止めてしまった?

なぜ、コペルはこっちを見ている?

なぜ、なぜ、なぜ…………、コペルの眼は私たちに何を訴えかけている?

疑念?同情?哀れみ?悲しみ?何だ?

 

 

「ごめん、キリト、ミーナ」

 

 

気づいた時には、コペルが短くそう言って、視線をモンスターに戻すと、右手の剣を大きく頭上に振りかぶった。

瞬間、発光。刀身が薄青く輝く。

ソードスキルだ。

 

「いや……だめだろ、それ……」

 

隣でキリトが呟く。

まずい。何かがまずい!

そして、気づいた時には───

 

 

パアァァン!

と、凄まじい破裂音が森の中に響き渡った。

 

 

 

 

「な……………なんで……………」

「え……………そんな……………」

 

 

鼻につく異様な臭気。そして、何かが近づいて来る音。数はわからない。しかし、音がするのは全方位。少ない……なんてことは絶対にないだろう。そして───

 

 

「……ごめん」

 

 

この一時間程を、共に戦ってきた元βテスターの声。

 

 

彼は剣を左腰の鞘に戻し、近くの(やぶ)へと向かい。アバターが見えなくなり、……………カラー・カーソルも消えた。

 

「《隠蔽(ハイディング)》スキル……………そうか……………俺たちを殺そうと………」

 

隣でそう呟いたキリトの言葉を聞きながら、私は短剣を構える。

なぜか、私は思っていたよりも冷静だ。それは、隣に誰かがいるからだろうか。となると、一人でいたら、もう潰れてしまっていたのかもしれない。

でも、ほんの少しの確率でも生きていられるのなら、まだ生きていたい。

まだ、やり残していることが多いから。

周囲を警戒している私の隣でキリトは口を開いた。

 

「……コペル。知らなかったんだな、お前。たぶん、《隠蔽》スキルを取るのは初めてなんだろ。あれは便利なスキルだけど、でも、万能じゃないんだ。視覚以外の感覚を持っているモンスターには、効果が薄いんだよ。たとえば、リトルネペントみたいに」

 

その言葉を聞いて私も覚悟はできた。

 

「キリト………」

 

「あぁ………」

 

私たちは、コペルのいる方を背に向けて走り出した。

武器の消耗が激しいため二発……、いや、できれば一発で仕留める。そうでないと武器消失(アームロスト)で死んでしまう。

 

 

モンスターが目の前までやってきた。

一発で決めるんだ。

腕を左後ろに下げる。

発光。

思いっきり地面を踏み込む。

ソードスキルによるアシストに加えて、思いっきり腕を振るう。

狙うは……、弱点の茎!ただ一点!

 

「いいいいいいやぁあああああああああ──ッ!」

 

瞬間、ポリゴンは四散する。

 

 

まだまだ、次だ!

震える身体を騙して走る。走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か後方で、モンスターの叫び声と攻撃音、そして少年が何かを叫ぶ声が聞こえた気がする。

気にしない。気にしてはならない。

全神経を前に集中しなくてはならない。

集中をきらせば、私が─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の敵を全て倒し終わった時、さっきよりも更に遠くから、カシャアァァン!と今まで聞いたことのない、どこか儚げな破裂音が聞こえた。

 

 

反射的に振り向くと、そこには七匹のネペントたちが次の標的(ターゲット)を求めてこっちに向かっていた。

 

 

それにしても、この七匹の中に《花つき》が二匹もいるなんて……、こんなに(かな)しいことはあるだろうか。

 

「………お疲れ」

「………お疲れさん」

 

隣のキリトとネトゲを《ログアウト》していった者に対する挨拶を口にして、それぞれの剣を構える。

 

 

ネペントたちも、それぞれがバラバラの攻撃モーションでこっちにやって来る。

キリトは、右側のウツボを膨らませている二匹の方へ。

それに合わせて私は、縦横無尽にツタを動かす左側のネペントたちへと刃を向けた。

そして、二人で三十秒もせずに全てを片付け、戦闘は終わった。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

コペルが消滅したであろう場所には、彼の装備が落ちていた。どれもボロボロになってしまっている。

 

 

キリトはコペルのものであった剣を、周りで一番大きな樹の根元に突き立てた。

そして私は、花つきからドロップした胚珠をその根元に置く。

 

「コペルの分も取ったからね……」

 

そう言って、私たちは踵を返して村のある方へ歩き始めた。

 

 

歩きながら考える。

コペルはこの世界の現実を認識して、プレイヤーとして行動していたのではないかと私は思う。他のプレイヤーを騙して、奪ってでも自分が生きるために、と。

 

 

そんな彼だからこそ、私たちは怒りや憎しみを覚えることなく、コペルというプレイヤーを弔ったのだろう。

 

 

それに比べて私たちは、この世界の現実を受け止めきれてない。

第一に、《はじまりの街》に残るのが普通だろう。

第二に、私たちは、リスクも伴うようなことがあると、簡単に命を天秤にかけることができるのである。さっきの《花つき》と《実つき》が近くにいたのも待てば良かったのだ。

こりゃー、私も早死にしちゃうかもね。

 

 

でも、強くなりたいという気持ちは、以前よりも増している。

そう、全ては先生を止めるために。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

あれだけ乱獲したからか、帰りはモンスターとエンカウントすることなく、私たちはホルンカの村に帰り着いた。

 

 

時刻は夜九時。あのチュートリアルから三時間経っているためか、村の広場には数名のプレイヤーがいた。

キリトとも話しはあれっきりしてないため、そして、気分もあまり良くないため、そのまま黙ってキリトの背を追いかける。

 

 

村の奥まで進み、目的の家のノッカーを鳴らしてからドアを開けると、相変わらずおかみさんがかまどで何かを煮ていた。

私たちは《リトルネペントの胚珠》を取り出して渡す。

 

 

すると、おかみさんは急に二十歳くらい若返って見えるほどに顔を輝かせて、胚珠を受け取ると、お礼の言葉を何回も言った。

 

 

その後、胚珠を鍋に入れたおかみさん改め若奥さんは、部屋の隅に置いてあった赤鞘の長剣を私たちに、再度のお礼と共に差し出した。

 

「「……ありがとう(ございます)」」

 

ひと言だけ呟き、私たちは受け取った。

 

 

「ねぇ、キリト?私は長剣は使わないから、これ君にあげるよ」

 

「……え、でも………」

 

「いーから、いーからさ、ね?」

 

「……わかった。……ありがたく使わせてもらうよ」

 

「うん、………ちょっと疲れちゃったし、少しここで休もう?」

 

「……そうだな」

 

 

そう言って、私たちはクエストを受けた時のように椅子を借りて座る。

若奥さんは、相変わらずかまどの鍋をことことしてるなぁ……。

 

 

何分かした時、若奥さんは急に立ち上がり、木製のカップに鍋の中身をおたまでそっと注いだ。

そして、そのカップを大事そうに奥の部屋へと向かった。

 

 

少し気になったので私たちは立ち上がり、奥さんの後を追った。

部屋は寝室だった。そしてそこには、七、八歳くらいの少女が横たわっていた。

少女の顔色は悪く、痩せ細っているのが月明かりだけでもわかる。

 

 

もちろん、彼女はNPCだ。名前は《Agatha》とある。アガサ、かな?

アガサを優しく起き上がらせた母親は、言った。

 

「アガサ。ほら、旅の剣士さまが、森から薬を取ってきてくださったのよ。これを飲めば、きっと良くなるわ」

 

アガサは、うん、と可愛らしい声で頷くと、薬を全て飲み干した。

正直、ああいう薬を一気に飲み干すのは、私には無理だなぁとか思いつつ見ていると、こっちを見て、にこりと笑った。

 

 

「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

「……………あ…………」

 

 

隣でそんな声を漏らしている彼にも色々とあったのだろう。私は、ちょっと外の空気を吸ってくるね、とだけ言って外に出た。

 

 

ドアを開けて、そのまますぐ横の家の壁に身を預ける。

あー、会いたいな。

もう、二年くらいかな。久し振りに会いたい。

母さんに、父さんに、そして─────

 

「………うっ……く…………っ!!」

 

 

 

 

 

 

家の奥の方から微かに「どうしたの、お兄ちゃん?」と聞くアガサの声と、静かにすすり泣く声が聞こえてくるのは気のせいではない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、決して私が泣いてるわけではないのである……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P.S.植物って気絶するんですね。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

この話は第8巻アーリー・アンド・レイトより、『はじまりの日』の物語です。確かアニメにはなってない?気がするところですが、時系列でいうとチュートリアルの次はこれですね。

※前書きを短くしている分こっちは少し長めにさせていただきます。

こっちはオリ主を軸に書いてますが、原作の方では、キリトを軸に書かれてあるので、そっちも是非読み返してみてください。

クラインと別れてからの走るシーンは、こっちではオリ主がいるので少しは緩和されてるかな?と思います。(正直、原作のあのシーンは好きだから残したかったけどね)

次の話はボス攻略会議です。やっと、ヒロインの登場ですね。

ということで、誤字、脱字等ありましたらご報告ください!

評価、感想の方も何卒よろしくお願いします!

ここから先は余談とおまけ

余談
大陸棚くらい深い訳とは、FEの新作ゲームである風花雪月をやっていたら、案の定ハマってしまったという訳です。いや、あれ面白すぎるって、しゃーない。あ、ちなみに私は金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)を最初に進めてます。風花雪月で書いて……みるのはキツいし、まだこれが全然進んでないので当分はないですね。

おまけ
ミーナ→キリト
強い仲間。βテスターってすげー
ミーナ→コペル
眼鏡の位置を直す動作をしちゃうのわかる!同士!
キリト→ミーナ
元テスターよりも強くないか……?しかも、左利き(レフティー)なのかよ……(直接的に左利きって言ってないことをおまけで補足していく)
キリト→コペル
防御はうまいな
コペル→キリト
反応速度が尋常じゃないくらい速いな。犠牲になってもらうけど、ごめん
コペル→ミーナ
観察力とか集中力がすごいな。犠(ry


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