仗助にもしも双子の姉がいたら?ネタ (蜜柑ブタ)
しおりを挟む

SS1  この世でもっとも不平等な力

これは、オリ主ものでいいのかな?


主人公は、あくまで仗助の双子のお姉さんって設定だけど……。


 青いバラの花の花言葉を知っているだろうか?

 

 自然に存在しないバラの花であったため、その昔は、『不可能』、『あり得ない』など、あまり良い意味を持たなかった。

 

 しかし、遺伝子操作により青いバラの花が生まれると、後付けとして、『神の祝福』、『奇跡』、『夢叶う』などの言葉を賜った。

 

 とある町、杜王町では、その青いバラの花が見られることが希にある。

 

 しかし、それは、決して誰かが植えて育てたわけじゃない。

 

 ふわりっと、どこからともなく、血のように赤い茎と共に落ちてきたなら、それに触ってはいけない。

 

 奇跡とは決して平等ではない。

 

 ……なにを言っているのか分からないと思うであろうが、杜王町に咲くその青いバラは、どんな青いバラの花よりも鮮やかに青く、そして鮮血のような茎を持つ。そして、どこから生えてきたのか分からない。

 

 そう……知らなかったのだ。花を咲かせていた本人でさえも。

 

 1999年、その花を咲かせていた人物が誰であるのかが分かる。

 

 花を咲かせていたのは、イギリス系アメリカ人の血を…、そして星の痣を色濃く受け継ぐ、ひとりの娘。

 

 東方の家に生まれた、その娘は、双子の弟として、仗助がいた。

 

 二人には、不思議な力が備わっていた。それは、4歳の時に後天的に手に入った望まぬ力。仗助は危うくその力に殺されかけた。だが姉である娘は死ななかった。

 

 だが間違っても、娘の方に力が無かったわけではない。それは意志の強さが少しだけ心優しい弟を上回っただけのことだった。

 

 それゆえに、弟と違って、姉である娘は自分の力に気づくことが出来なかった。教えてくれる相手がいなかったのもあるし、なにより力の性質が仗助のものとはまるで違ったためだった。

 

 スタンドと呼ばれる力。娘の意志を無視して勝手に動き、そして、“あらゆる生命から、寿命を奪い青いバラにする”力。

 

 杜王町中に、鮮血のような赤い根を張り巡らせ、本体である娘から決して生えず、周りの無機物から生えては、生命を傷つけ種を植え付け、青いバラの花を咲かせ、青いバラは1年分の寿命として収穫される。

 

 収穫された花は、触れた者に奪い取った寿命を与えて消える。それは生にしがみつく者が誰もが夢見たであろう、寿命の超過。

 

 そして…、花言葉にちなんだような、神のごとき奇跡をたった1度だけもたらす。

 

 それは、あらゆる事情から起こるであろう、死を、無かったことにすることだ。

 

 だが、ここで注意して欲しい。

 

 青いバラとして収穫される寿命の量は、わずか1年分のみであること。そのため、いかに残りの寿命が本来なら残っていても、死を無かったことにされれば、どうあがいても1年しか生きられないのだ。

 

 残りの寿命を増やす方法ただ一つ…、寿命として収穫された花をより多く手に入れるしかない。つまり他者の命を奪わなければいけないのだ。それは、果たして普通に生きるための食物連鎖となにが違うのだろうか?

 

 しかし…運命づけられた死をねじ曲げ、他者から運命の動力源とも言える寿命を奪う行為は……。

 

 

 なにも知らなかった娘は、やがて年の離れた甥により、ついに自分自身のスタンドの存在と力を知るに至る。

 

 そして、隠されてきた失われた記憶と、望まず手にしたその力である人物達の生と死をねじ曲げてしまったことも知る。

 

 

 知ってしまった娘は、絶望する。

 

 弟の力がこの世でもっとも優しい力なのに対して、自分の力は、『この世でもっとも不平等な力』だと。

 

 

 娘の名は、東方ミナミ。

 

 ジョセフ・ジョースターの隠し子にして、東方仗助の双子の姉であった。

 




青いバラといえば、I○のキャラをまず思い浮かべる方が多いと思います。(かな?)

スタンドにも色々いて、もしこんな能力があったら?っという思いつきで書いたネタです。
もし先駆者がいたらすみません。


オリジナルスタンドの設定と、キャラ設定については、次で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仗助の双子の姉の人と、スタンドの設定

スタンド名は、まだ決まってません。


なにか案がありましたら、活動報告、またはメッセージにてお願いします。


2019/07/29
設定追加。


◇名前

・東方ミナミ(ヒガシカタ ミナミ)

 

 

◇ネタでの立場

・仗助の双子の姉。つまりジョセフの娘。

・仗助同様ジョセフ似で、背が高く、イギリス系アメリカ人の血が濃いせいかナイスバディなためモテる。

・仗助と違い父ジョセフから波紋を受け継いでいるため生まれつきの波紋使い。なのだが鍛えてないためかなり弱い。

 

・第三部の頃の時期の記憶が無い。(10話目「蘇る記憶」で思い出す)

 

 

◇性格

・仗助と違ってほとんどキレない。

・落ち着いているように見せかけて、実はかなりの怖がり。

 

 

◇容姿

・仗助とは、双子なので顔立ちは良く似ている。

・仗助の双子の姉だからか、16歳にして、170センチ超すスーパーモデル並みの長身とスタイルを誇る。

・女であるが、筋肉がつきやすくて、顔立ちも日本人離れしているため迫力があり、色々誤解されるのが悩み。

・また上記の理由で、合うサイズの服や下着(主にバストが…)などが中々ないのも悩みの種となっている。ちなみに制服はオーダーメイド。

 

 

◇能力

・ジョセフから波紋を受け継いでいるので生まれつきの波紋使い。だが波紋使いが周りにいなかったため承太郎に会うまで静電気だと思ってた。

 

 

◇スタンド

 

・スタンド名は、『ブルー・ブルー・ローズ』(バービーボーイズの曲名)。

 

・相手の寿命を花にして収穫する能力。

・花1本で1年分の寿命。

・血のように真っ赤な植物の根っ子の姿をしたスタンド。吸い取った寿命が青いバラの花として咲く。

・青いバラの花言葉=「夢かなう」「不可能」「奇跡」「神の祝福」。

・ジョセフのように体から出てくるのではなく、主に本体の周りに出現する。壁、地面などから生えてくるが生体からは生えてこない。本やコップみたいに生体じゃないけど小さい物からも生えてくるため神出鬼没である。

・本体の制御ができていないため出現する範囲がかなり広い。少なくとも杜王町内全体には出現している。

・相手に絡みついたり、かすったりなどして外傷を負わされるとそこから種がつき、芽が出て花が咲く。

・収穫した花には、1年分の寿命が凝縮されており、奪った相手に戻すこともできるし、別の相手に与えて寿命を延ばすこともできる。花の本数=寿命の年数。

・ただし、自分の寿命は延ばせない。逆に自分の寿命を相手に与えることもできない。(本体が能力の範囲外なのは、仗助と似ている)

・花の収穫方法は、咲き切った花が茎ごとポロリと落ちるか、手で摘み取るか、スタンドが勝手に花を摘み取るかが基本。実体があり見えるため他の人間でも収穫できる。

・なぜか実体があり、普通の人でも見えて触れるため、収穫するのはスタンド使いでなくても可能であり、収穫するのに手で摘み取っても寿命として吸収はされない。運ぶ場合は、運ぶという意思がスタンドに伝わるためか運び手に吸収されず花の形を保つ。ただし花イコール寿命であることを知らない、または寿命を増やす気がなくても胴体部分に花弁部分が当たるとパッと弾けて小さな光になって花がその人物の寿命となる。

・花は枯れることはなく、誰かの体に入るまで消えない。

・とり過ぎれば当然、寿命は短くなり、やがて寿命は尽きる。残り寿命が1年以内だった場合、収穫された時点でどうあがいても死ぬ。

 

・まだ寿命が尽きてない相手が花(寿命)を与えられると、もとの寿命に与えられた分が換算されるのではなく、予備として体に宿る形になる。

・つまりもとの寿命が尽きると、予備の寿命によって死んだことがなかったことになる。例えば、即死する事故にあっても、なぜか無傷で生還するなどの不可思議な現象が起こる。事前に怪我や病気でもそれが完治する。ただしこの現象は一人につき一回だけである。

・花は、一本あたり1年の寿命しかないので、一本しか与えられていない状態で死亡した場合は、例え元々の寿命が数十年以上あっても残り寿命が1年となる。寿命が尽きれば必ず死ぬ(死に方は心肺停止による突然死)。寿命を増やすには、花(寿命)を欲しいだけ与えてもらうしかない。なお二度目に死亡した場合はその死は無かったことにはならない。

 

・スタンドそのものの強度は、普通の木の根っこと同じぐらい。

 

 

・エンヤの占いによると、死者を蘇らせることができるらしいが、そのためには、魂の記憶の媒体となるもの(=遺体部分でもOK)と、死者を蘇らせる…再起動させるエネルギーとして1000本の花が必要になる。本当にできるのかは、エンヤが死んだため不明である。

・3部の時に当時4歳だったミナミは、ジョナサンを蘇らせようとしたDIOに誘拐され、肉の芽を植え付けられる前に無意識でスタンドを暴走させて逃れる。

・逃走中に承太郎達に保護されるが、追手に襲われショックでスタンドを暴走させてしまい追手をスタンド能力で寿命を奪いつくして殺害する。その時に収穫された花がまき散らされ、承太郎・花京院・アヴドゥル・イギーに花が一本ずつ入り込む。

・花が入り込んだことで寿命が1年分加えられた結果、死ぬはずだった花京院・アヴドゥル・イギーは、死んだという結果がなかったことになるが、残り寿命1年(花1本分)しか生きられない状態になる。(※承太郎に入った1本は、六部で発現する)

・DIOを撃破した後、花京院達が生き返った現象を調べて、ミナミの能力によるものだと分かり、能力の詳細を知った彼らは、幼いミナミに他人から寿命を奪うなどという残酷なことはさせたくないと結論を出し、催眠術でミナミの記憶をすべて封印する。その後、ミナミは日本警察を経由して家族のもとに帰され、SPW財団の情報操作でDIOが行った犯行だったことを隠ぺいされた。

・4部にて虹村兄弟との対決後に記憶が蘇り、花京院達に花が入った時のことを思い出してしまい、花を補充した記憶がないことから彼らが1年後に死んだと知って絶望する。

・自分の能力を仗助のスタンドと比べて『この世でもっとも不平等な力』と嫌悪しふさぎ込むミナミに承太郎が花京院達が残した記録映像を渡し、花京院達がミナミのおかげで死を回避し1年間の平和な余生を過ごさせてくれたことに感謝していたことを知らされ復帰する。

 

 

・本来のスタンドの全容は、巨大な骸骨の怪物に赤い根っこが絡まった異形。その強大さ故に本体がかかる負担が無意識にスタンドを抑え込んでいたため、「恐怖」という形でスタンドが押し込められていたため、普段は根っこだけの姿で現れていた。

 

・精神を明け渡すなどの自殺行為を行わないとその真の力を一部でも出せないうえに、相当な精神力と肉体への負担がかかる。

 

・吉良吉影戦において、吉良吉影の脳内に発生していた小さな血液の塊を無機物として触媒にすることで、吉良吉影が発動したバイツァ・ダストに便乗する形で時の巻き戻しに耐えることが出来るなど、不明な点が多い。

 

 

 

 

 

 

・・・思い付いたりしたら、増えたり減ったりするかも。




2019/07/21
アンケート結果により、スタンド名は、『ブルー・ブルー・ローズ』(バービーボーイズの曲名)になりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ミナミと仗助、空条承太郎に出会う(side:ミナミ)

勢いで書いてみた。


承太郎との出会い。


2019/07/05
構成がおかしくなってきたので、ちょい書き足し。


「な~にやってのかなぁ?」

「えっ? なにって見りゃわかっだろ?」

「わかんないわよ。馬鹿弟。」

「嘘吐けよ、ほら鼻の穴開いてっし。嘘吐くといっつもそうじゃねぇか。」

「あら、そう? けど、あんた、カメ、嫌いじゃなかったっけ?」

「いやさぁ…、この際だから触れるようなろうかなって…、ハハハ…。」

「その割には震えてるじゃない。手伝ってあげようか?」

「や~めろっての。」

「フフフフ。」

 

「なにしとんじゃ!」

 

「はっ?」

「へっ?」

 見ると、いかにも不良ですな見た目の四人の高校生が来ていた。

 あれ? いつの間に? 見たところ、同じ学校の制服ね。新学期に向けて縄張り作りかしら?

 ……絡まれるのはいいけど、人の胸をジロジロ見ないで欲しいな。これでも気にしてるんだから。

「おっぺぇデケぇな…。」

「あんたらに見られるためのもんじゃないわよ。」

「あんだとコラ!」

「まあまあ! おちついてくださいっすよ!」

 私がプイッとそっぽを向くと、弟・仗助が不良と私の間に割って入った。

「ん~~~? おまえら、顔が似てっな!? 兄弟かぁ!?」

「そ、そうっすね。俺が弟です。」

「一年にしちゃタッパのでかい弟だぜ。」

「うちの高校に入ったんなら、うちらに挨拶しな!」

「ちょ…、は虫類って奴は苦手で…。っ!」

 噴水にいたカメを突きつけてきて怯える仗助。次の瞬間、不良の一人が仗助の顔を殴った。けど仗助は動じない。どこか静かなものだ。

 私達は、その背格好、故にこうしてよく絡まれます。

 仗助の髪型は理由はあるけど、私達の体格とかって、間違いなく一度も会ったことがない父親の血よね…絶対。お爺ちゃんも警官だから鍛えてる分立派ではあるけど、私達なんて鍛えてもいないのに、こんなだし。

 絡まれ慣れてるせいか、仗助はヘコヘコ謝ってる。外見不良でも、中身は純情だからね。……おそらくは。

 

「ちんたらしてっと、そのアトムみてーな頭もカリあげっぞ!!」

 

「あっ。」

 思わず声が出て、慌てて私は口を手で塞いだ。

 しかし、手遅れ。不良が。

 

「おい、先輩…。あんた…今、俺の頭のことなんつった?」

 

 おおっと、手遅れ~。そしてバイバイ、不良の皆さん。私は見てない、聞いてないと、背中を向けて耳を塞いだ。

 …頃合いかなって思って振り返ると、仗助よりずっと背が高い白い格好の男の人がいた。

 

「東方仗助…。1983年生まれ、母の名は、朋子。母親は、その時21歳。東京の大学へ通っていた。」

 

 すらすらとなぜか仗助のフルネームと、母の名と経歴の一部を言った。

「生まれた時より、この町に住んでいる…。1987年、つまり4歳の時、原因不明の発熱により、50日間生死の境をさまよった経験あり。そして、父親の名前は……、ジョセフ・ジョースター。」

「…なんで?」

 私は思わず声を漏らしていた。

 すると男の人は、私の方も見た。

「それと、双子の姉が一人。名前は、東方ミナミ。お前だな。」

「ええ…、まあ…。あの、なぜ私達のことを?」

「あの、クソジジィ。『わしは生涯、妻しか愛さない』などと聖人のような台詞吐いときながら、てめーが65歳の時浮気してできた娘と息子がここに今……。おっと、口が悪かったな。俺の名は、空条承太郎。なんつーか、血縁上は、お前達の『甥』ってやつになるのかな……。奇妙だぜ。」

「え~~、甥ですか~~。」

「はあ…。」

 私と仗助は、顔を見合わせた。

 

 空条承太郎さんの詳細の話によると、高齢になった不動産王の、私達のお父さんに当たるジョセフ・ジョースターの遺産分配時のための調査で、私達の存在が分かったのだそうだ。

 っていうか…15年もほっとかれて今更ねぇ…。

 

 でも、母さんは、愛し合って私達を産んだんだって言ってるんだ。それについては、私達は納得してる。

 

 だけど……。

 

「すみません。ジョセフ・ジョースターさんの連絡先と住所、至急教えてください。」

「なんだ?」

「ちょっと野暮用で。」

「姉ちゃーーーん!!」

 弟よ。このモヤモヤは、納得してても治まらないということもあるんだよ。だから止めるな。あんたは、優しい子だからいいけど、私はそうじゃないんだから。

「おいおい、殴るんなら、俺を殴りな。俺は高齢のジジイの代わりにお前らに殴られる覚悟できたんだぜ?」

「いえいえ、殴ったりしませんよ。80になろうかって人を。いくら父親でも。ただ…、直接ね、お話ししたいってずっと思ってたから。」

「話したいことがあるんなら、俺に話をすればいい。俺はジジイの代理だ。」

「いえ、ただ話がしたかっただけです。本当の父親と…。それだけですから。」

「……。」

 私がそう言うと、空条承太郎さんは、呆気にとられた顔をした。

 あれ? 私、変なこと言った?

 

「それにしても…。」

「?」

「お前が、あの時の…か…。」

「?」

 空条さんの呟きに私は首を傾げた。

 




これ書いてて一番苦戦したのは、承太郎の名前。
ジョウじゃ出てこない! うけたまわりって打たないと出なくって…。パソコンの機能ちゃんと使いこなせてない…。(涙)

仗助は、すっごく良い子だけど、姉のミナミは、ちょびっとだけスレてるかも?
まあ、父親のいない家庭で、しかもハーフで生まれてきたからそれなりに色々とあったということで。

なお、この時点では、ミナミは、自分にスタンドがあることを知りませんし、波紋の才能があることも知りません。


2019/07/05
どこを増やしたかというと、最後の方の承太郎の台詞ですね。
実は、コレ、ミナミが3部に関わっているフラグなんです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ミナミと仗助、空条承太郎に出会う その2(side:ミナミ)

ミナミさんは、スタンドが見えるけど、自分のスタンドのことはなにも知らない設定。


 

 うーん、なんか気まずいな…、っと思って何か言おうとしたとき、同じ学校の女子生徒達が、仗助に話しかけてきた。

 あーあ、またそんな興味なさそうな顔して…。自分で純愛派って言ってるからかな?

 自分でいうのもなんだけど、私達はモテます。モテます。私なんて月に何回も芸能界からスカウトが来ます。興味ないけど。

 っと、その時。

 

「おい、仗助。…仗助って呼ばせてもらうぜ。まだ話は終わってない。こいつらを追っ払え、くだらねー、髪の毛の話なんてあとでしな。」

 

 あっ。

 

「てめー…。俺の髪の毛が、どーしたと、こら!」

 

「あちゃー。空条さん、地雷…。」

「おい、待ちな。仗助、なにもてめーを貶して…。」

 次の瞬間、仗助の背後から拳が飛んできた。語彙がおかしいかもしれないけど、実際そうなんだ。

 アレは、あの時からずっと仗助の“後ろに立っている”。さっき見てないけど、不良達もあの拳でぶちのめされただろうけど。

 けど、空条さんに拳は当たらなかった。

 むしろ逆に空条さんから別の拳が現れて仗助に一発入れた。

「あっ!」

「やはり見えるか。」

 見えるって?

「これは、『スタンド』と呼ばれているものだ! ジョセフ・ジョースターも持っている。『スタンド』は『スタンド』を使う者にしか見えない。その能力は、お前達が4歳の時に身についたものだ。」

「えっ? 私、そんなのないですよ?」

「?」

 私が思わず言うと、空条さんが、怪訝そうに私を見た。

 その隙に立ち直った仗助が、今度こそスタンド…というものを背後から前へ出した。

 人型に近いけど、ロボットを抱負とさせる、節々にハートの装飾やパイプのようなもの。

「どららああああ~~~!!」

 拳の連撃が空条さんのスタンドに向けられた。

 咄嗟にガードしてたけど、空条さんのスタンドのガードした腕が跳ね上げられた。

「なに! このパワー…、スタープラチナの腕のガードを弾き飛ばすとは!」

「……まったくもう。ほらっ。」

「あでっ! なにすんだ、姉ちゃん!」

 がら空きの背後から背中に後頭部にチョップして、空条さんのスタンドへの攻撃を止めた。

「深呼吸。」

「うっ…!」

 ゴスッと横腹もついでに殴っておく。

「空条さんは、あの不良みたいに貶してないでしょ?」

「でも!」

「深呼吸。はい、さっきの空条さんの言葉を思い出してごらん? 本当にあなたの誇りを貶してた?」

「ぅう…。」

 まだ突っかかるか、この猪突猛進め。これさえなければ、本当に好青年なんだけどなぁ…。

「すみませんね、空条さん。うちの馬鹿弟がアホやりかけました。」

 仗助のほっぺたを抓りながら空条さんに謝罪しておいた。

「仗助君のお姉さんって…、ひゃ…百戦錬磨の喧嘩王って本当なんだ…。」

 って、女子生徒達から言われたけど、心外な…。

 とりあえず女子生徒さん達にはお引き取り願って、話の続きをすることになった。

 まず、私達に会いに来たのは、私達がジョースター家の人間であることを伝えに来たこと。

 そして…、二つ目は…。

 見せられた写真には、なにか得体の知れない物の顔が、私達が通う学校を覆うように映っていた。

 ジョセフ・ジョースターさんの念写能力で私達を映そうとしたら、なぜか映ってしまうらしい。

 他にも、怪しげな男の顔に先ほどの得体の知れない物の顔が被さっているような物も見せられた。

「ところで…、ミナミ。」

「えっ?」

「お前、スタンドが見えてるだろ? なのにスタンドがないたぁ、どういうことだ?」

「そう言われても…。私は、4歳の時から仗助の背後に立ってたアレみたいなのは、いなかったから…。」

「姉ちゃんは嘘言ってねぇっすよ。」

「そいつはおかしい。スタンド使いのスタンドを認識できるのは、スタンド使いだけだ。ただの人間じゃスタンドはどうやったって見えねぇ。物質同化型なら…、まあ話は別かも知れねぇがな。」

「そんなこと言われても…、本当ですから。」

「……まあいい、とりあえず、俺は、この写真の奴を見つけるまで、この町のホテルに泊まることにするぜ。」

「ええー。」

 なんかよく分からないが、大変なことになってるらしい。

「ミナミ。お前にはスタンドがあるはずだ。その確認はいずれする。スタンドってのは、『Stand by me』、俺やお前達の傍に常に立つもの。俺やお前達自身だ。知っておいて損は無いぜ。」

「え~…。」

 そう言い残して去って行く空条さん。

「スタンド…っての? 俺、姉ちゃんの見たことねぇよ?」

「私も。」

 私達は、顔を見合わせた。

 

 




設定の方でも書きましたが、完全に暴走状態なためミナミは、自分のスタンドを認識できてない。そして本体から離れて出現しているため、仗助も見たことがない。

DIOや、ジョセフと、ホリィと違って、本体から植物状のスタンドが生えてくるのではなく、勝手に周辺の無機物から、たまたま視界に入らないところで出現している。

暴走状態にかかわらずミナミに影響がないのは、そういうタイプのスタンドだからとしか……。
ある条件下では、制御可能。でもその代償は……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アンジェロ その1

もう面倒くさいから、全部ミナミ視点で書きます。


今回から、アンジェロ回。


「あれ? なんだろ、この人だかり…。」

「これじゃあ通れねぇな。」

 いつも通る場所に人だかり。そしてパトカー。なんか察しが付いた。

 事件だ。

「あの、何があったんですか?」

 私は、近場にいる見物人に聞いてみた。

 聞けば、強盗が人質を取って立てこもってるそうだ。

 すると立てこもり先のスーパーの出入り口から、犯人と人質が出てきた。

 うん…、あの目、完全にイッてる。刺激すれば人質の女性は助からないだろう。

 私達は、できる限り犯人と目が合わないように下がったんだけど……。

「そこの変な頭したガキィ! 車から離れろっていってんだろ! 殺すぞ、ボケッ!」

「あ! ……も、もしかして、やな予感…。」

「うん。地雷だよ。」

 同級生の男子、広瀬君が仗助の顔を見上げて青ざめてた。

「じょーすけ、人質の傷は残さないようにね。」

 私は念のためそう言っておいた。聞いてるかどうかは別にして、仗助がそんなヘマしないないはずだけど。

「えっ、えっ!? 止めないんですかぁ!?」

「まあ、みてなさい。だいじょうぶだから。たぶん。」

「たぶんって、…うわーー!!」

 広瀬君がムンクの叫びみたいになってるけど、気にしな~い。

 とかなんとか言ってる間に、犯人と人質の方に行ってる仗助。

 仗助の異常さに犯人臆してるね。まあ、そりゃそうだ。

 逆上した犯人は、ついにナイフを人質の女性に突き刺そうとした。

 その瞬間、仗助のスタンドの拳が、二人の腹を、貫いた。ボコォっとね。あ~、痛い痛い。

 スタンドの腕を引き抜き、仗助は人質の女性の人を奪い取った。腹には一切傷は無い。

 そう、これは仗助の力。4歳の時に、仗助を殺そうとしたアレだけど、大人しくなってから仗助の助けになっている不思議な力。

 で……、犯人の方だけど、あらら~、ナイフがお腹の中に。もちろんこちらも傷は無いけど、ナイフがお腹の中に埋まってる。刺さってはない。ああなっちゃったら、外科医にでも取ってもらわないとね。

 すると、犯人の目がギョロギョロとおかしく動き出した。

「?」

 そして犯人の口の中から見覚えのある顔がズルズルと出てきた。そして犯人が倒れる。

『グググ~、グ~。こんな所に! オレの他にスタンド使いがいるとは! この男に取り憑いて気分良く強盗してたってのに…、よくも邪魔してくれたな……!』

「こいつ…あの写真の…!」

 残念ながら、アレは、私と仗助にしか見えてないらしい。……スタンド使い?

 犯人の口から出てきたスタンドは、ズルズルと、這い、歩道の下の排水溝に入って行った。

『これからは、おめーを見てることにするぜ。おれはいつだって、どこからか、おめーを見てるからな……クククク!』

 ……宣戦布告って事かな?

 あ、仗助が警察官に。まあ、普通はそうだよね。

 あ~あ、現役警察官のお爺ちゃんになんて説明しよ。ま、この手のことは初めてじゃないし、げんこつ程度で許してもらえるかな?

 

 このとき、私は知らなかった。

 あの犯人にさせられた男の人の連れだった女性の人が、何者かに強姦された後、殺害されていて、発見される際に、血のように赤い茎のある青いバラが咲いていていたことを。そのバラは、見つかる前に、同じ色の赤い木の根っこによって摘み取られ、根っこと共にどこかへ消えたことを。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝。

「ふわ~ぁ。おはよ、母さん。」

「おはよ。…コラ! またそんな格好で降りてきて、年頃の娘がしちゃだめよ!」

「いいじゃん別に。」

「おはよ、お袋。…って! 姉ちゃん! また!」

「ほら、年頃の弟が戸惑ってるでしょ。早く着替えてきなさい! じゃないと朝ごはん抜き!」

「は~い。」

 なんでよ~? 下着だけの格好ってそんな悪い? だってパジャマ、キツいんだもん。

 それにしても…、なんかやな予感がする。なに良くないことが起こらないといいけど…。

 

 

『げっへっへっへっ…、たいした身体してんなぁ。』

 

 

 私は、私の着替えを見ている片桐安十郎(通称アンジェロ)の視線に全然気づいてなかった。っというのも、アクアネックレスというスタンドが家の水道管の隙間から私を見ていたから気づかなかったのだ。

 私が着替え終える頃、アクアネックレスは、水道管を通って、下の階のキッチンに。

 私が降りてきたときには、母さんがコーヒーを入れていて、仗助が何かの液体が入ったウィスキーの瓶を、私に見せてきた。

 母さんに悟られないよう、仗助が瓶を振ると、アクアネックレスが空のウィスキーの瓶の中の液体から出現して苦しんでいた。

「どしたの、これ…?」

 私達は、小声で話し合った。

「さっき、お袋の腹に入ったから捕まえた。」

 あ~、ってことは、また腹パン(貫通)したな、弟よ。

「どうする?」

「承太郎さんが来るまで、このままだな。」

「連絡はした?」

「連絡中に捕まえたから、じきに来るはずだぜ。」

「ちょっと、二人ともコーヒーが冷めるわよ。ミナミは、いつも通りミルクと砂糖いっぱい入れたのがいいのよね?」

「うん、ありがと、母さん。」

 私は、母さんに笑顔で言った。その間に仗助はポケットにアクアネックレス入りのウィスキーをしまった。

 

 

 そして……、私達は油断しました。

 

 液体のスタンドだからと、甘く見ていました。今までずっと別のスタンド使いに出会うことも無かった私達は、力を持つことがどれほどに危険で、時に恐ろしい運命と出会いを引き寄せてしまうのかを。

 

 そして……、何よりも、私達の目に映らないところで鮮血のように赤い木の根っこが家の隙間という隙間で蠢き、リビングに、ポトリッと一本の青いバラの花を落としたことも。

 

 それを、私達の祖父が拾って、運ぶ途中で胴体に触れて花が消えたという現象にあっていたことも。

 

 私達は、なにも知りませんでした。

 

 

 




ここから、双子の姉のスタンドがあったことで、身近の人物の運命が違えてくるかも……?(祖父が例の青バラを拾っていて、フラグ)

なお、ミナミのスタンドは、本当に勝手に動いています。ミナミが意図して動かしているわけでもないし、予知して行動させているわけでもない。

アンジェロに操られた人が、普通のカップルの片割れで、女性の方が明らかに死んでるのは、アニメで見た描写でした。


余談だけど、ミナミは、コーヒーは、苦くて飲めないのでいっつもミルクと砂糖多めで飲んでる。(筆者と同じ)
それと、母親の呼び方は、仗助は、お袋、ミナミは、母さんって呼んでます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アンジェロ その2

アンジェロ回、その2。


前回、例の青いバラの花を祖父が知らず知らずに身体に取り入れたため……?


 

 チュド~ン!

 って、テレビ画面で爆発音。

「あ~~~! 負けたぁ!」

「へへ~んだ。これで、アイス1個頂き。」

「ズルしたでしょ!」

 どうもゲームじゃ仗助に勝てない。良いところまで行っても、最後で逆転される。く~! 悔しい!

「してねぇよ~だ。。実力実力。…むっ?」

 仗助が思い出したように、リビングの机においてある、アクアネックレス入りの瓶を見て、持って振った。すると、アクアネックレスが瓶に張り付き苦しんでいた。

「よしよ~し、いたのね。」

 さっきまで変な色の液体になってたから確認したんだね。

「空条さん、遅いね。」

「道に迷ってんじゃねぇの?」

「けど、私達のことあれだけ知ってるんだから住所ぐらい知ってるはずじゃない?」

 すると、家の鍵が開く音がした。

 時間的に見て、お爺ちゃんだろう。夜勤だったから今帰りだ。

 あ…、仗助の後ろから忍び寄ってる。ふふふ…、イタズラ好きのお爺ちゃん。

「動くな! 仗助、きさま、学校はどうした、学校は!?」

 銃口を耳に当てられてやんの。仗助の目がなんで言わないんだよっと言ってる気がする。へへ~んだ。わざとだよ。

「ほれ、ミナミ、お前もだ!」

「ひ、人を待ってんだよ~。」

「大目に見てよ、お爺ちゃん。それより…銃なんて持って帰っていいの?」

「デヒヒヒヒーー! 焦ったな、馬鹿め! これはモデルガンだもんねー。」

 55で、15歳の孫娘と孫息子がいるお爺ちゃんのすることじゃないって…。でもそういうところが好きなんだよね。

 

『続いて、ローカルニュースです。』

 

 テレビの画面がテレビゲーム画面から普通のテレビ画面に変えられた。

 ニュースでは、目や耳の内部が破壊されている、謎の変死事件が本日未明で7人も確認されており、それが起こっているのがこの杜王町だと言っていた。

 ……7人? 多いよ。

 お爺ちゃんの顔つきが変わった。

「この話は聞いている。わしは、犯罪のにおいがするんじゃ。何者か、この町には、やばい奴が潜んどる気がしてしょうがない…。」

 お爺ちゃん……、すごい勘だよ。

 その時、外で車の音がした。

 空条さんが来たのかな?

 リビングの窓から外を見に行くと、空条さんがレンタカーで来ていた。

「お爺ちゃん、ちょっと行って……、く…る…。」

「どうした、姉ちゃん? ……!」

 

 そこには、机の上で蓋が開いて倒れているウィスキーの瓶と……、机の反対側で倒れているお爺ちゃんの手があった。

 

「お…じい…ちゃ…。」

「じじい…。」

『ヒヒヒヒ!』

 机の上でドロドロと蠢く液体があった。

 液体は、アクアネックレスの形を取り、ぼう然としている私達を見て笑った。

『おめーらが悪いんだぜぇ?』

「嘘でしょ…、お爺ちゃん…、お爺ちゃん?」

 私はもつれそうになる足で倒れて血を流しているお爺ちゃんの傍に来ていた。

『このオレから目を離した、おめーらの“せい”なんだぜ、こうなったのは!! いい気になってたんだよぉ! くっくっくっ! いい気になってる奴が絶望の淵に足をツッコむのを見るのは……、ああ~~~っ、気分が…。』

 

「うぅぅ…。」

 

『えっ?』

「!」

「お爺ちゃん?」

「? どうした、ミナミ。わしゃどうしたんじゃ? 頭でも打ったかのう?」

 さっきまで、目と耳から血を流してピクリとも動かなくなってたお爺ちゃんが、何事も無かったように傷が無くなって起き上がった。

『ど~いぅこどだあ~~~~!? おれは確かに殺したは…。』

「ドララララララ!!」

 なにが起こったのか理解できないでいるアクアネックレスを、仗助のスタンドが連続で殴った。

『ちっ! ちくしょう! 何が何だか…! まあ、いい…、次こそは…!!』

 水分状のスタンドは、殴っても無意味で、そのまま扉の隙間から逃げていった。

 窓から空条さんが入って来た。

「お、お爺ちゃん…、本当に…本当に、本当にお爺ちゃん?」

「どうしたんじゃ? わしゃ、ミナミと仗助のお爺ちゃんだぞ?」

「じじい…、これ何本に見える?」

「三本。こりゃ! 仗助! わしゃまだボケとらんわ!」

「おじいちゃーーーん!」

「じじいーーー!」

「うお!」

 気がつけば、二人がかりでお爺ちゃんに抱きついていた。

 そしたらお爺ちゃん、潰れちゃった。生きてるけど。

「それよりも、こりゃ、そこのお前! 土足で人の家にはいるんじゃないぞ! どこのもんじゃ!?」

 私と仗助をどかしたお爺ちゃんが、空条さんに言った。

 空条さんは、私を見ていた。

 私は…、泣いてて全然気づいてなかった。私の足下の絨毯から、鮮血のように真っ赤な木の根っこがユラユラと少しだけ出ていたことに。

「ミナミ。」

「…ふぇ?」

「気づいてないのか?」

「はい?」

 私がキョトンとすると、足下にあった根っこが消えていた。

「いや…何でもない。」

 そう言って空条さんは、帽子を直した。

 この後、空条さんのことでお爺ちゃんに説明会。

 空条さんについての説明後、お爺ちゃんが…。

「ところで、青いバラの花を見なかったか?」

 っと聞いてきた。

「いや、見てねぇよ?」

「私も。」

「…そうか。」

「青いバラが…どうしたんだ?」

「いや、なに。さっき倒れたときに起き上がったんじゃがのう。なんでか頭の中に、青いバラが過ぎったんじゃよ。それだけじゃわい。」

 お爺ちゃんがなにか意味深なこと言っていたのだが、私には分からなかった。

 

 




予備の寿命として青いバラの花が入った結果、アンジェロ(アクアネックレス)による、殺害が無かったことに。
けど、一本しか入ってないから……。(設定参照)

お爺ちゃんが生きている展開書くの大変だった……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

アンジェロ その3

アンジェロ編は、これで終わりかな?


原作と展開は異なります。

また強姦などの単語が出てます。

注意!


 

 お爺ちゃんが生き返った。

 

 その衝撃の事実は、私達に大きな衝撃を与えた。

 親戚の用事と、行事のため母さんとお爺ちゃんは今いない。

 アンジェロは、きっと諦めないだろう。っと空条さんは言った。

 お爺ちゃんを殺し損ねたことは、奴にとって大きな揺さぶりになっただろう、そして必ずまた狙ってくるはずだと言った。

 そして、今、私達の家に空条さんが上がってる。

 アンジェロの、アクアネックレスを警戒して、私達は水道水など液体の物は口にしていない。食べたり飲んだりは、全部密閉された物から摂ってます。

「…あの、承太郎さん。」

「なんだ?」

「なんで姉ちゃんまでこの場に残らせたんっすか?」

 そう、アンジェロ退治にのために残ってるんだけど、なぜか空条さんが私も残れと言ってきたので、母さんだけが親戚の所に行きました。

「察しの悪い奴だぜ。」

「なんでっすか?」

「お前達の祖父が蘇生されたのは、ミナミのスタンドの可能性が高い。」

「! けど…。」

「本当に知らないらしいな。ミナミには、間違いなくスタンドがあるぜ。それも青いバラと関係の深いな。」

「お爺ちゃんが言ってましたね。青いバラがどうのって。」

 すると空条さんが私を、じぃっと見てきた。なにか言いたげな…意味深な…視線。

「ともかく、“死んだ人間の蘇生”なんて見せられたら、あの場にいたスタンド使いで、しかも身内となれば仗助、お前か、ミナミ、どちらかだと向こうは考えるはずだ。仗助、お前のスタンドが近距離で、破壊した物を直す能力だということは向こうはすでに知っている。ならば…、考えられる可能性は…。」

「っ!」

「アンジェロがお前を狙っている限り、蘇生の可能性は必ず封じ込めたいはずだ。……あとこう言っちゃなんだが、ついでに強姦なんてのも考えてる可能性もある。」

「なっ!?」

 仗助が椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。

「だろうね…。」

「姉ちゃん!?」

「あれからアンジェロの犯罪歴、調べたんだけど……、私か仗助だったら…、まず間違いなく私を狙うでしょうね。犯して殺すなんて、常套手段だろうし。」

「姉ちゃん!」

「……頼りにしてるよ。」

 私は、気がつけば仗助の服の袖を摘まんでいた。

「ーー!」

 ……私だって、怖いんだから。……馬鹿弟。

「ところで、仗助。」

「なんすか?」

「その唇の傷は? この間俺がスタンドで殴った跡だろ。自分のスタンドで治さなかったのか?」

「……自分の傷は治せないっす。」

「もし、お前の体内に敵が入ったらどうする?」

「……死ぬっすね。」

 そうだった…、仗助の力は、仗助自身には使えないんだった。

 自分よりも他人…、優しい子の弟にはふさわしいスタンド。

 

 じゃあ、私のスタンドは、なに?

 

 その時、外からザーッと、小さな雨音が聞こえてきた。

 にわか雨かな?

「あっ。洗濯物。」

 私は立ち上がって、外の庭に行った。

 にわか雨は、いきなりで激しくて嫌い。でもまあ、すぐに止むからいいけど。

 私は洗濯物を取り込みながらで気がつかなかったけど、濡れた私の髪の毛からアクアネックレスが姿を現わし、私の口を狙っていた。

 けど、その時、私の服から鮮血のように赤い根っこが出現し、アクアネックレスをひっかくように動いていた。

『ギャヒッ!』

「えっ?」

 すぐ背後で聞こえた声に振り返ると、どこにもなにもいなかった。もちろん、赤い根っこもなかった。

 そして、私がぼう然としていると家の窓が突然開いて、私は、空条さんのスタンドに掴まれて家の中に引っ張り込まれた。

「あ!」

「だいじょうぶか!?」

「え、はい…。」

 すると、私の服に引っかかっていたらしい、赤い茎の青いバラの花が床に落ちた。

「そいつは…!」

「えっ?」

「承太郎さん! 姉ちゃん! マズいっすよ!」

 仗助が駆け込んできた。

 戸が開いた途端、もうもうっと湯気が部屋に入ってくる。

 湯気の形が、アクアネックレスになって、仗助の口に入ろうとした。

「仗助! 湯気が敵だよ!」

 ハッとした仗助が空の瓶をスタンドの手で割りながら湯気を殴った。

 けど、相手は湯気。水と違って捕まえられない。

「雨に乗じて、一気に片を付ける気か…。」

「もしくは、恨みがあるお爺ちゃんを絶望させるために、私達の死体を作っておきたいのかも。」

 これは、調べて分かったことだけど、アンジェロの最初の逮捕の時にお爺ちゃんが関わっていたんだ。だからアンジェロは、お爺ちゃんに恨みがある。なんて偶然なんだろう……。

 私達は湯気から逃げるために部屋を出ようとした。すると天井から雨漏り。

 アンジェロは、自分のスタンドの特性を最大限に生かす戦いができるようだ。1階がこんな状態だからきっと2階も……、しかも外は雨!

「パワーのないスタンドだと思って完全に油断した…! 水に混じる能力、これほど恐ろしく狡猾だとは、思わなかったぜ!」

 私達は、雨漏りと水蒸気の二つから逃げ回る。けれど、湯気は軽い。徐々に追い詰められた。

「仗助、お前ならこの状況、どう切り抜ける?」

「切り抜ける? ちょいと違いますね。」

 仗助のスタンドの拳が壁を破壊した。

「ぶち壊し、抜ける! さ、早くこっちへ! 壁が戻るっすよ。」

 私達は、仗助が開けた壁の穴から隣の部屋に避難した。やがて壁は元通りに直り、湯気は無くなった。

「とりあえず湯気は…。」

「仗助!」

「わっ!」

 私は咄嗟に仗助を突き飛ばした。

 なぜなら、仗助が振り返ろうとしたとき、そこには加湿器が置かれていたからだ。加湿器の蒸気がもろに私に当たった。

「姉ちゃん!」

 けど、アクアネックレスは、襲ってこなかった。けれど、湯気がうっすらとアクアネックレスの形になる。

「てめぇ!」

 仗助と空条さんが蒸気から離れる。そのため私は蒸気に閉じ込められたような形になった。

『クヒヒヒ! クカカカ! この蒸気の中に閉じ込めた、てめーの姉ちゃんを助けたいだろ? いー顔してんぜ、今。』

「ぐっ…。」

「抑えろ、仗助!」

 私を助けに来ようとする仗助を空条さんが押さえた。

『しっかしよぉ。い~い身体してんよなぁ。こうまさぐりたくなるぜぇ。』

「えっ? うひゃっ!?」

 アクアネックレスが、スルリと私の胸の隙間に入って来た。なんか胸の中モゾモゾされる! 気持ちワル!

「てめぇぇぇ!!」

『おいおい、動くとおめぇの姉ちゃんの子宮に入ってそこからぶち破ってやっていいんだぜぇ?』

「ぅうぅ…!」

 まるで全身舐め回されてるみたいだ! 気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!

 私が耐えられなくなり、制服を左右に破ったときだった。

 私の制服の下に着ていたシャツから、ブワッ!と鮮血色の木の根っこが生えてきて、アクアネックレスを私から引き剥がして絡み取っていた。

『なんじゃこりゃあああああ!?』

「…えっ?」

「こいつは!?」

「ミナミのスタンド!?」

『うげぇえええ!』

 ウネウネとタコの足みたいに蠢く根っこが血管みたいにアクアネックレスを包み込み、そこから青いバラの花が何本も咲いて、赤い茎ごと落ちた。

『はなしやが…!』

「……どうやら、てめぇ…、ソイツに捕まってっと…。」

『ハッ!?』

「水蒸気に混ざれないみたいだなぁ!』

 怒りの表情を浮かべた仗助がスタンドに瓶を持たせて、アクアネックレスを殴った。

 赤い木の根っこに捕まっていたアクアネックレスは、抵抗できずそのまま瓶の中に収まった。

「姉ちゃん、だいじょうぶか!?」

「近づくな、仗助!」

「へっ? うぉ!」

 な、なんで!?

 赤い根っこが仗助をムチ打つように動いて、仗助の顔をかすめた。

 かすめた時にできた僅かな傷口から、赤い芽が出てきて、あっという間に青いバラの花が咲いた。

「ミナミ! スタンドを止めろ!」

「で…できない…。」

 気がつけば、部屋中から赤い根っこが出現して、へたり込んでいる私と、立っている仗助と空条さんに迫った。私はなぜか足に力が入らなかった。

「やめて…、お願い、やめて!!」

 明らかに仗助と空条さんを狙う赤い根っこに、私は涙目で訴えた。

 私は、怖くて怖くて、ギュッと目をつむった。

 やがてどれくらい時間が経っただろう…、ゆっくりと目を開けると、仗助が私を抱きしめていた。

「じょうすけ…?」

「姉ちゃん。もうだいじょうぶだから。」

「さっきの根っこみたいなのは…?」

「消えた。」

 空条さんがそう言った。

「あれが…私の…?」

「恐らくな。」

 あんなモノが私の……? 弟も見境なく襲おうとしたモノが…?

「それより、コレだが…。」

 空条さんが赤い茎の青いバラの花を持って、見せてきた。

「こいつは、仗助の体から生えてきたもんだ。」

「それどういうことっすかね? 身体から花を生やす能力?」

「いや…、コイツは…。」

 すると空条さんが青いバラの花を、仗助の身体に押し当てた。すると、パッと青いバラの花が光の粒になって消えた。

「消えた!?」

「おそらくだが、それがお前達の祖父を生き返らせた仕掛けだろうぜ。」

「なんでそう思うんすか? じゃあ、ただの花じゃないってことっすか?」

「……俺は、11年前に、同じモノを見たことがある。」

「えっ?」

「お前は覚えてないんだろうがな。ミナミ。」

「…えっ?」

 なんだろう? この違和感は。

「それより、コイツはどうしますかい?」

 仗助が立ち上がってアクアネックレスを閉じ込めた瓶を見せた。

「振れ。」

「あいよ。」

 仗助が、思いっきり、瓶を振った。

 

「ぎゃああああああああああ!!」

 

 外の方で男の悲鳴が聞こえた。

 

「本体は、あそこのようだな。」

 雨降りしきる中、窓を開くと、近所に生えている木から吹っ飛んで落ちていく男が一人いた。

 あれが、アンジェロ……。

 私は思わず、まさぐられた体を抱きしめていた。仗助が心配してくるので…。

「ぶっ飛ばしてきて…! これ以上無いほど。」

「分かってる。」

 仗助は、空条さんと一緒にアンジェロの所へ向かって行った。

 二人が家を出た後、私はその場に体操座りした。

「……ねえ…、アナタは、ずっと、私の傍にいたの…?」

 私は、部屋の中を蠢く、赤い木の根っこに話しかけても、答えは返ってこなかった。

 




この後、アンジェロは、岩にされました。

なぜ、アンジェロのアクアネックレスが、ミナミのスタンドに捕まって手も足も出なかったのか……、実はパワーだけなら少しだけミナミのスタンドのが上なんです。
ミナミのスタンドの強度は、普通の植物と同じぐらい。普通の木の根っこと同じぐらい。
なお、スタンドパワーを吸い取っているわけじゃなく、設定同様に絡みついた相手の寿命をスタンド越しに吸ってただけです。
あと、吸われた側はそれが分からない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虹村兄弟 その1

虹村兄弟編。


書きたかったところだけ、急いで書いた。


 

 そういえば…っと、私は、通学路にある空き家を見上げた。

 洋風な作りだけど、窓は全部なくって、あちこちボロボロ、板も打ち付けられていていかにも廃屋だ。

 確か、3,4年前からこんなんだったっけ?」

「ん?」

 ふと窓を見ると、誰かがいた。

 灯の点ったロウソクの燭台を手にしていて、影になってて顔は見えなかった。

 思わず確認しようとジーッと見ていると。

 

「あれ、姉ちゃん。」

「あ、仗助。」

 

 仗助と広瀬君が来た。

「なにやってんだよ?」

「ん~、別になにしてるわけじゃないけど、あそこに人が…。」

「ひと~?」

「仗助君のお姉さん。この家って、空き家ですよね?」

「ミナミでいいよ。同じ東方だし。双子で同い年だから、面倒でしょ?」

「あ…、じゃあミナミさん、さっき人が見えたって…、あれ?」

「姉ちゃん?」

 

「あれ?」

 視線が……やたら高い。っていうか…、あれ? ここって空き家の二階の窓? 後ろに倒れそうになると、気がつけば誰かに後ろから抱きとめられた。顔の真横に、ロウソクの燭台が見えた。

 

「!? 姉ちゃん!」

「ミナミさん!?」

 下から仗助と広瀬君の声が聞こえた。

「えっ、えっ? なに、なに!?」

「お前が、東方ミナミか。」

「ハッ!? ムグッ!」

 振り返ろうとしたら、口を手で塞がれて、窓から部屋の中に引っ張り込まれた。

 そしてその後、後頭部に衝撃が走り、意識が遠のく。

「…お前のスタンドに用が…。」

 っという男の声を最後まで聞かず、私は気を失った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ぅ…。」

 私は痛む体を起こそうとして、気がついた。

 両手が後ろで縛られている。

 そして、誇りの匂いとカビの匂い…、そして血のにおいがした…。

「よーやくお目覚めのようだな。」

「っ! あんた、誰…?」

 

「姉ちゃん!」

 

「仗助? 仗助!」

 部屋の出入り口の所に、仗助が血を流して立っていた。広瀬君もなぜかいた。

 そして気がついた。

 私の周りに、小さなヘリコプターや、戦車、そして小さな軍人達のようなスタンドが凄まじい数いたことに。

「さてと…、手短に用件を言わせてもらうぞ。東方ミナミ。」

「?」

「お前のスタンドを使え。」

「はあ!?」

「そうしないと、大事な弟が蜂の巣になるぞ。」

 小さな軍人達のようなスタンドが一斉に銃口と、兵器の発射口を仗助に向けた。

「どうした~? 簡単なことじゃないか。ただスタンドを出すだけだ。」

「そんなこと…言われても…。」

「ん~~? まさか、自分じゃ出せないということか? なるほど、通りで…。」

 男はそう自問自答している。

 なんなの? 一体なにが…? 私のスタンドに用? どうして?

「自分の弟があれだけ傷ついても無反応なわけだ!」

 次の瞬間、小さな兵器から砲撃とミサイルが発射された。

「仗助!」

「ドララララ!!」

 あちこちから血を流している仗助が、スタンド『クレイジー・ダイヤモンド』の拳で砲撃とミサイルを防いだ。

「まさかと思うが~? 死なないと使えない代物だってわけじゃあるまい?」

「し、知らない! 私は自分のスタンドをなにも知らない! 用があるんだとしても、仗助と広瀬君を巻き込まないで!」

「チッ!」

 舌打ちされた。

「追い詰めたりないか…。それとも…。ならば…。」

 すると、広瀬君の顔の横に一匹の軍人達のようなスタンドがスルスルと降りてきてナイフで広瀬君の顔を刺した。

 悲鳴を上げる広瀬君。

 その瞬間、広瀬君の体から、大きな卵のような物が飛び出して床に転がった。

「すた…んど? これが康一のスタンドか?」

 えっ? 卵のスタンド? あれ…ヒビが…。

「もういい! 知りたいことはこれで十分! 全隊戦闘態勢!!」

「やめて! グアッ!?」

 男に腹を蹴られた。

「姉ちゃん! てめぇ!」

「ダメか…。完全に暴走状態か、それとも自力で抑えているのか…。どちらでもいい。ともかく、ミナミ、お前のスタンドは、俺が求めている理想のスタンドにもっとも近い! それを使ってもらうまで…。」

「ぅぐ…、じょう、すけ…、ひろ、せ、く…。」

 仰向けに転がされて腹の上から踏みつけられて吐き気がこみ上げる。

「形兆(けいちょう)! その足をどけろーーー!!」

「攻撃開始ぃーーーーー!!」

 男の号令と共に、激しい銃撃と兵器の砲撃が仗助と広瀬君を襲った。

 ひとつひとつは小さい。でも数が集まれば凄まじい。あまりの攻撃力にボロボロの空き家が崩れそうだ。

 どうしたらいい? どうすれば、仗助達を助けられる? 私のスタンドで? でも、どうやって?

 

 私は、自分のスタンドの存在を感じた事なんて、一度だってないのに!!

 

 攻撃音と血のにおいが濃くなる。

 もう時間が無い。

 

 ナニヲオソレル?

 

 恐れる? なにをって…、そりゃ仗助が死ぬかも知れないから…。

 

 ホントウは、チガウクセニ。

 

 違わない! なにも違わない! 私の大事な家族を、弟を大事に思ってなにが悪いの!?

 

 ホントウにオマエがオソレテイルノは……。

 

 違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!

 

 “ジブン”ジシンの、チカラ。

 

 

 青いバラの花が……、咲く。

 撒き散らされるように宙を舞う、青いバラの花。

 それが誰かの体に……。

 

 

「いやあああああああああああああああああ!!」

 

 

 私は脳裏を過ぎったその光景に悲鳴を上げていた。

 私の悲鳴に共鳴したのか、部屋のあちこち、そして落ちている瓦礫などの欠片からも、鮮血色の木の根っこが一斉に生えだした。

 私のスタンドが出現したと同時に、形兆という男は、壁に空いた穴から外の廊下へ飛び出そうとして、襲いかかってきた私のスタンドの根っこに引っかかれ数本の青いバラの花を咲かせたが、私はなにも感じていなかった。

 

 

 




ミナミのスタンド、暴走開始。
いや、常時暴走しているようなものなんですけどね…。


東方家の祖父は、ミナミのスタンドおかげで生還したけど……?


次回は、悲劇です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虹村兄弟 その2 side:仗助

ミナミの視点だけで話を書く予定が、仗助サイドも書いてた。

っというか、ミナミが前回錯乱したため、彼女の視点じゃ書けなかったんです。



虹村兄弟の、父親が……。


注意!!


 

 

 姉ちゃんの悲鳴と同時に崩壊寸前の部屋のあちこちどころか、瓦礫からもあの根っこみたいなスタンドが現れやがった。

 四方八方どころじゃねぇ! もう部屋を埋め尽くす勢いじゃねぇか! アンジェロの時の比じゃじゃねぇ!

 形兆の野郎が急に俺達を残して部屋に空いた穴から飛び出そうとして根っこに捕まりかけた。その時に傷を付けられたのか、赤い茎の青いバラの花が何本か落ちた。

「じょ、仗助君!? これは、いったいなに!?」

「姉ちゃんのスタンドだ…。」

「これもスタンドなの!? 僕ら包囲されてない!? あっ! 根っこがアイツを追いかけて…。」

 赤い根っこどもは、ウネウネしゅるしゅると動きながら形兆の野郎を追いかけるように壁の穴に広がっていった。

 あの野郎…、姉ちゃんのスタンドに用があるだのなんだの言いやがって…、いざ発動させたら逃げただぁ? これは何かある!

「康一、動けるか?」

「どどどど、どうするの?」

「根っこの肥やしにされたくなかったら逃げっぞ!」

「でもミナミさんが!」

 

「おい! こりゃどうしたんだ!」

 

「億泰! ちょうど良いところに!」

「なんだよ、この根っこみたいなの!? これが、おめぇの姉ちゃんのスタンドって奴か!? 兄貴が求めてた…スタンドなのか!?」

「億泰! ザ・ハンドで姉ちゃんをこっちに引き寄せてくれ!」

「やべぇ…。この根っこ、なにか凄まじくヤベェもんを感じるぜ! 逃げねぇと!」

「早くしろって言ってんだろ!」

「あ、ああ…!」

 嫌な予感に臆してやがる億泰をひっつかんで、ザ・ハンドを使わせて姉ちゃんを引き寄せた。

「姉ちゃん! 姉ちゃん、しっかりしろ!」

「いや…、いや、いや、いやぁぁぁぁあああ!!」

「くそ、ダメか…。」

 姉ちゃんは完全に錯乱している。

「気絶させりゃ、止められんじゃねぇのか!?」

「うわあああ! 根っこがもう目の前に!」

「くそ…! ごめん、姉ちゃん!」

 俺は、できる限り手加減して姉ちゃんを気絶させた。

 だが……根っこは消えない。

「グレート…、コイツは完全に姉ちゃんの意識から離れてやがるぜ。」

「お、おりゃぁ、何度か見たことあっけどよぉ…、コイツは完全によぉ、暴走状態って奴だ! 本体の意識じゃ操れねえほどスタンドが強えか、意識の強さが足りなくってスタンドが好き勝手してるやつだ!」

 逃げ場はもうない。このまま姉ちゃんのスタンドにやられちまうのか?

 すると、目と鼻の先まで迫っていた根っこが急に止まり、勢いを無くしていった。っというよりは、まるで俺達のために道を開いたって言った方が正しいか?

「? 行けってことか?」

「ちゃ、チャンスだよ! あ、でも…。僕を射貫いた弓と矢は?」

「康一?」

「ぼ、僕は、仗助君のおかげで生きてるけど! もしまた矢で射られた人が出たら、今度こそ死ぬかもしれないんだよ、この町で!」

「…もう手遅れだぜ、そりゃ。」

「億泰…、てめぇら…!」

「兄貴は、あるスタンドが使えるスタンド使いを探して次から次によ~、人をあの弓と矢で射ってきたんだぜぇ! そんな中にゃ死んだ奴もいた!」

「そんな…。」

「億泰。教えろ。お前らは何でスタンド使いを探してんだ? どうして形兆の野郎は、姉ちゃんのスタンドが必要だって言いやったんだ?」

「そいつは…、屋根裏部屋に行けば…。」

「やねうらべや?」

 俺は姉ちゃんを背負い、屋根裏部屋へ向かうことにした。

 部屋どころか、家中に赤い根っこが張り巡らされているみたいだ。けど、俺達のために道だけは開けてくれているらしい。

 屋根裏部屋に入ろうとした直後、形兆の野郎のバッドカンパニーの砲撃が飛んできた。

 咄嗟にクレイジー・ダイヤモンドで防げたものの、危なかったぜ…。

「仗助…!」

 形兆の野郎が部屋の壁の端に背中をつけて座り込んでいた。アイツの周りには、アイツから咲いた物なのか、青いバラの花が散乱していた。

「止めたのは、お前か!? あと少しだったのに!」

「どういうことだ?」

 すると部屋の奥の隅っこで何かが蠢いた。ジャラジャラと鎖が鳴る音がした。

 そこには、この世の物は思えない、醜い肉塊?がいやがった。鎖の音は、首に付けられたでっかい鎖の音だ。

 それから語られたのは、形兆と奥泰の二人の親父の話だった。

 あの肉塊の正体は、DIOって野郎の肉の芽で変貌してしまったアイツらの親父さんだった。

 そして、形兆の野郎は、死ねない怪物になっちまった親父を殺すスタンドを探して弓と矢で次から次に人を射ってスタンド使いを生み出していたのだという。

 

 だが…、最近になって、転機が訪れたのだと言った。

 

 死にかけの犬猫やホームレスから咲いた赤い茎の青いバラを摘み取る、赤い根っこを見つけ、それが、スタンドだと分かり、そのスタンドの持ち主が他でもない、俺の姉ちゃんだって知ったのだと言いやがった。

 形兆の野郎が言うには、杜王町中に赤い根っこは張り巡らされていて、なぜか普通の人間にも見えるし、青いバラの花を拾えるのだとか。

 そして、アンジェロの野郎に殺されたが、生き返ったうちのジジイを見て確信したのだとか。

 姉ちゃんのスタンドから咲く青いバラの花は、生命の寿命そのモノだと。

 

 

 生と死を自在に操れるスタンド。

 

 

 それが姉ちゃんのスタンドだって言いやがった。

 信じがたい…。けど、筋が通る! あの青いバラの花が寿命…、命そのモノだったんなら、ジジイが生き返ったカラクリも分かる!

 

「だが…、たったひとつ予想外だったのは…、東方ミナミの意志じゃ操れる代物じゃなかったってことだけだ…! スタンドとは、車やバイクを運転するのと同じなのだ! 能力と根性のないウスラボケは、どんなモンスターマシンに乗ってもビビってしまってみみっちぃ運転するよなぁ! ミナミと、そのスタンドはまさにそれだ!」

 

 この野郎! 知ったような口利きやがって!

 

 姉ちゃんがどれほど、“怖がっている”のかも知らねぇで! その恐怖をなにも知らないくせに!

 

「う…。」

 その時、俺が背負ってた姉ちゃんが目を覚ました。

「姉ちゃん…。」

「ぅ、ぁ……、にげ…て…。おねが…ぃ…。」

 姉ちゃんが夢にうなされてるみたいにうわごとのようなことを言いながら、泣いてる。酷く震えてる。

 なんだ…? 猛烈に嫌な予感しやがるぜ!

 虹村の親父さんが、箱をバタバタと漁っていた。まさか!っと思ってそっちを見たら、天井や床、壁からまるで狙いを取っているように根っこが現れてやがった!

「逃げ…!」

「い……ゃ…、、だ、ダメ…。いやだぁああああああああああああ!!」

 姉ちゃんが頭を両手で押さえて、のけぞった。その瞬間、虹村の親父さんを赤い根っこが押しつぶすように襲いかかり、包み込んでしまった。

「は、ハハ、ハハハハハハハハ! ついに、ついに!!」

 形兆の野郎が狂ったように泣き笑ってやがった。

「親父…。」

 ぼう然として見ていることしか出来なかった。

 やがてドブ水みたいな液体だけが残り、赤い根っこが消えたあとには、一輪の青いバラの花だけが残った……。

 俺の背中で、姉ちゃんが声を上げて泣いてた。

「お、親父はよぉ…。なんでかいっつもあそこの箱ん中、意味も無く漁っててよぉ…。」

 億泰が泣きながらブツブツと、今までのことを呟いてる。

「箱…。」

 俺は、姉ちゃんを床に降ろして、箱に近づいてから、中身をクレイジー・ダイヤモンドで復元した。

 すると、一枚の家族写真ができあがった。

「なっ…!?」

「……意味は…あったぜ。」

 俺は、写真を座り込んでいる形兆に渡してやった。

 大量の汗をかき、やがて形兆は、体を丸めて大声を上げて泣いた。億泰も泣いてた。

 

「ごめんなさい…。」

 

 康一に背中を摩られている姉ちゃんが、顔を両手で覆ったままそう謝罪する声が聞こえた。

 

 




東方家の祖父、良平さんが悲劇から生還したけど、その代わり……虹村兄弟は悲劇に見舞われる。

奇跡は、有限。不平等。

ミナミのスタンドは、そんな不平等の体現として書きたかった……。

そして、今回でついに自分のスタンドの存在と力をハッキリと知ったミナミは……。


なお、虹村兄弟の父親を殺したのは、ミナミの意志ではありません。スタンドが勝手に動きました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

虹村兄弟 その3

虹村兄弟編は、これで終わりかな。


良平さんの時に、仗助の能力では死人が生き返らせられないってことを書いてなかったので、形兆でそのことが分かるということにしました。

つまり、形兆は……、です。


 

 

「兄貴…。」

 億泰って男の子が泣いてる…。

 

 私が…、私が…二人のお父さんを……。

 

 なにも感じなかった。殺す瞬間も。なによりスタンドをほとんど感じることすらなかった。ソレが恐ろしい!

 

「うぅう…。」

 涙が止まらない。

 仗助…、私の弟の力は、誰よりも優しい力だった。

 だけど、私の力は……。

「姉ちゃん…。」

「じょうすけ…。」

「姉ちゃんのせいじゃねぇよ。」

「けど!」

 すると仗助が私を抱きしめた。

「世界中の誰もが、例え神様が…、姉ちゃんを許さないって言っても。俺は許すからさ。」

「…僕も、ミナミさんのせいじゃないって思います。」

 広瀬君もそう言った。

 

 ユルサレテ…イイの?

 

「そうだな……お前のせいじゃねぇ。望んだのは他でもない、この俺だ…!」

 形兆という男が顔を上げた。その顔は顔から出る液体でグチャグチャだ。

「親父を普通に死なせてやることが、俺自身に誓ったことだったんだよぉぉ!!」

「…弓矢を渡しな。ぶっ壊すからよ。」

「……勝手にしろ。もう…必要ない…。」

 形兆が投げやりにそう言って、弓と矢を床に放り捨てた。

 だが、床に落ちず、浮いていた。

「!?」

 この場にいた私達はその現象に驚愕した。

 バチバチと音がする。近くにあるコンセントが……。

「コイツは…!」

「弓と矢が!」

「億泰! 離れやがれ!」

「ぐげっ!」

 弓矢を拾おうとした億泰君を、形兆が突き飛ばした。

 その瞬間、電気の形をした腕が形兆の体を後ろから貫いた。

『この弓と矢は、俺がいただいていくぜ。』

 電気があっという間にスタンドの姿に変わった。

「き、きさま…。」

『虹村形兆! あんたにこの矢で貫かれてスタンドの才能を引き出された、この俺がなーー!』

「貴様ごときに…! この弓と矢を…、グぐ…。」

「兄貴ぃーーー!」

「バッドカンパ…。」

『うるせぇぜ!』

 凄まじい放電が形兆を焼いた。

「形兆!」

 クレイジー・ダイヤモンドが形兆の腕を掴み、敵スタンドから引き剥がした。

 ブスブスと焦げた体が悪臭を放つ。

『じゃあな! 弓と矢は有効利用させて貰うぜ!』

 弓と矢は、電気と同化し、そのままスタンドと共にコンセントに吸い込まれていった。

「兄貴ぃーーー!」

「今、治す!」

 全身から煙を出している形兆の体に、クレイジー・ダイヤモンドが触れて修復した。

 けれど……。

「お…おい? 治したんだよな?」

「ああ…、おい、形兆? 目ぇ覚ませよ?」

「仗助…。」

 私は、分かってしまった…。

 仗助の力は、確かにどんなモノでも直せる…でも…。

 完全に失われた命までは…。

「兄貴? 嘘だろ、なあ、嘘だって言えよぉぉおおおおおお!!」

 億泰君が、目を開けない形兆の胸ぐらを掴んで揺すった。

 二人の家族を失った億泰君の嘆きの声が、ボロボロの空き家に響き渡った……。

「…ぅく…、兄貴は…、死んで当然の男だ……。真っ当に生きれるはずがねぇ、宿命だった……。でもよぉ…! でも兄貴は最後に! 俺を庇ってくれたよなあ~~~~!? お前ら、見ただろぉ~~~!?」

「……ああ。確かに見たよ。おめーの兄貴は、おめーを庇ったよ。」

 

 

 私は…、なにも出来ませんでした。

 

 形兆と億泰君のお父さんだったモノの傍に落ちている、一輪の青いバラの花が不気味に、鮮やかに咲いていた。

 

 




形兆の残り寿命は、ミナミのスタンドに、かなり削られていました。
残り寿命がどれくらいだったのかは分かりませんが、少なくとも平均寿命以下の以下です。


次回、自分のスタンドを知ってしまい、そして虹村兄弟の父親を殺してしまったことで、ふさぎ込むミナミに、承太郎が……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蘇る記憶

今回は、オリジナル回。


前前回のことで、引きこもったミナミに、承太郎が……。


あと、これ、ボーイズラブのタグ付けた方が良いですかね?



一番書きたかったところ。というか、このネタを書き始めた動機みたいな感じ。


 私、東方ミナミには、4歳の頃の記憶がない。

 無いと言っても、一部だけだけど。たぶん。

 確か、仗助が病気で倒れた頃だったはず。なのにそんな大変な頃の記憶が無いなんておかしい。

 その話をすると、お爺ちゃんも母さんも、辛そうにする。なので、一回だけ聞いたっきり聞かなくなった。

 

 私は、あれから学校にも行かず、引きこもっていた。

 私の様子が尋常じゃないのを察してくれた母さんもお爺ちゃんもソッとしておいてくれている。

 

 近頃…、夢を見ます。

 

 金色の髪の妖艶な男の顔は、影になって見えないけれど、牢屋の中にいる小さい頃の私に向かって何か言っている気がした。

 その男の手には、頭蓋骨があった。

 話の内容はほとんど思い出せないけれど……。

 

『………を、生き返らせるため、君の力を貸して欲しい。』

 

 っと言われたような気がした。

 そして、男は私に、肉で出来た種のような物を近づけようとした。そこで夢は終わる。

 

 夢を見始めてから、起きていると頭がズキズキした。

 まるで思い出せと言わんばかりに頭の内側を叩かれてるみたいだ。

 私は、なにを忘れているんだろう?

 思い出すことがまだあるの?

 

 その時、ベットに座り込んでた私の膝の上に天井からポトッと赤い茎の青いバラの花が落ちてきた。

「ひっ!」

 私にとっては、もはや恐怖の対象でしかないソレ。

 気がつけば、部屋中に私のスタンドが張り巡らされていた。

 青いバラの花があるということは、どこからか誰からか寿命を…奪ってきたということだ。

 仗助から形兆という男が私のスタンドを分析して、そして杜王町中で、動物や人から寿命を奪っているのを目撃していたことを聞いた。

 

 私のスタンドは、生と死を自在に操れるスタンド。

 

 この世でもっとも優しいスタンドを持つ弟・仗助のスタンドとはまるで違う、“この世でもっとも不平等な力”だ。

 アンジェロに殺されたお爺ちゃんを生き返らせたのも、私のスタンドだったんだ。

 知らなかった。気づかなかった。私はなにも知らないまま……、“誰かの命を奪ってそれでお爺ちゃんを生き返らせたんだ”っと。

 命が有限なのだとしたら、命を奪われた動物や人はどうなった…? 定められた死を回避したことが奇跡なのだとしたら、私の…私が知らずにやってきたことは……。

「ぁあああ…。」

 私の記憶が蘇る。

 

 あれは、学生服だろうか? それと異国の人だろうか? 犬だろうか?

 二人と一匹に赤い茎の青いバラの花が一本ずつ入った。

 そうだ。私は、あの時逃げたんだ。金色の男から。どうやって逃げたかなんて覚えてない。きっと私のスタンドが私を逃がしたんだ。

 私は、仗助が倒れてから病院で入院している間に、誰かに誘拐されたんだ。

 そして、気がつけば、暑い暑い国に…遠い異国の地に連れてこられた。そこで金色の男に、力…きっとスタンドを使って欲しいと言われたんだ。

 4歳の私には、分からなかったけれど、あの男に従うのが怖かった。だから、逃げた。スタンドが私を逃がした。

 逃げる私を追って来る奴らがいた。

 私はただ逃げたくて、家族のところに帰りたくて必死だった。だから……スタンドがそれに応えてくれたんだ。

 追っ手は、スタンドが倒した。いや…殺した。すべての命を花にされて。

 その花がその場にいたあの二人の人と、犬に入ったのを見た覚えがある。

 

 

 エンヤが言っていた

 

 君の力は、365日分(推定1年分)の生命の命を青いバラの花に変える力だ

 

 その花は、他人に与えれば寿命を引き延ばし、そしてたった一度だけあらゆる死を無かったことに出来る

 

 そして、1000本集めれば、失われた命すらも蘇らせられると

 

 

 思い出した……。

 それが、あの金色の髪の男が言っていたことだ。

 男は、私の力で誰かを蘇らせようとしていた。

 その人の名は……。

 

 

 どうか、生き返らせてくれないだろうか?

 

 私の魂の片割れたる、ジョナサン・ジョースターを

 

 

 ……………………思い出した。

 

 

 

 

 

「オラァ!」

『ぐへぇ!』

 

 私がぼう然と泣いていると、空条さんの声と、あの時形兆を殺した電気のスタンドの声が聞こえた。

 ハッと我に帰った私が見たのは、部屋のコンセントからバチバチと出てきている電気のスタンドと、部屋の出入り口で、スター・プラチナを出して電気のスタンドを殴った空条さんだった。

『あ、あんた…、警告してやったってのによぉ! 聞いてなかったのかよ!?』

「あんな警告程度で逃げると思うか?」

「くうじょう…さ…。」

「だいじょうぶか? ミナミ。」

『俺はただ、東方ミナミと仲良くなろうってだけで、ちょいとお邪魔しただけだっつーの!』

「ミナミに? 狙いは、ミナミのスタンドだな?」

「!」

『……ま、そうですけど。なにせ自分で制御できないようなんでちょっとばかり指南してあげようかなって…。あと、もし良けりゃ、お近づきなって、彼女になって欲しいかなって…、デヒヒヒ。』

「マシな嘘を吐きな。狙いは、ミナミのスタンドが生み出す青いバラの花だろうが。」

「っ…。」

 すると、電気のスタンドは、黙った。図星だったんだ。

「生と死を操るスタンドだ。寿命を延ばせるならこれほど欲しいスタンドもあるまい。てめーみたいな腐れ野郎の考えそうなことだ。」

『それだけじゃねーだろうが! 死んだことだってなかったことにできるんだろ!? 知ってんだぜ、俺はよぉ!』

「…ダメだよ……。」

「ミナミ?」

『あっ?』

「生き返れるのは…、たった一回だけ……。」

「ミナミ…、お前…。」

『なんだと~~~?』

「…思い出したんだ……。私は…。」

「ミナミ…。」

『チッ! まあいい、ミナミちゃんよぉ! このレッド・ホット・チリ・ペッパーが、いつでも! 待っててやるからな! 俺のもんになりたかったらいつでも呼びな! これからもちょくちょく寄らせて貰うからさ!』

 電気のスタンド・レッド・ホット・チリ・ペッパーは、消えた。

 消えた後、空条さんが私の傍に来た。

「空条さん……、私、思い出しました。私は4歳の時…。」

「誘拐され。エジプトに連れて行かれた。」

 そっか…、やっぱりアレは、空条さんだったんだ……。もっと若い頃の…。

「あの時、お前のことはなにも知らなかったの事実だ。たぶんジジイは、気づいてて知らないフリをしてたんだろうがな。」

「フフ…、そりゃ不倫がバレたらヤバいもんね。」

「それだけじゃねぇだろうがな…。」

「私の記憶を封印したのは…、私にさせないためだったんでしょう?」

「……ああ。」

「あなたの仲間の人達がいた……。私を捕まえようと追ってきた追っ手を、私はスタンドで…、そして咲いた青いバラの花が、その人達に…。あの人達は……、もう…。だって、あれから花を補充した記憶が無いんですから…!」

 花に凝縮された寿命は、一本当たり1年分しかない。

 つまり、死を無かったことしたら、1本しか入ってなかったら、1年しか生きられないってことだ。

 空条さんは、黙っていた。黙っているって事はそういうことだ。

 死んじゃったんだ。

 あの人達は…、もうこの世にいない。

「ミナミ。」

「どうして…、私にこんな力があるんだろう? こんな……、“この世でもっとも不平等な力”なんて、欲しくなかった!!」

「ミナミ。コレを。」

「?」

 私が嘆いていると、空条さんがビデオテープを私に見せた。

「お前の記憶が戻った時…、渡すよう言われていた物だ。」

「……誰から?」

「お前に……、平和な余生を貰った奴らのメッセージだ。」

「!?」

「見てみな。」

 私は震える体をおして、リビングにあるビデオデッキで、ビデオテープを再生した。

 ああ…、覚えている。あの人達と、犬だ…。ビデオテープには、二人と一匹がカメラの前にいた。

 

『やあ、初めましてだね。僕は、花京院典明。』

『私は、モハメド・アヴドゥルだ。そして、こっちはイギー。』

『ワフっ。』

『これを見ているということは、ミナミちゃん。君は、すべてを思い出したということだね。』

 

 そこから綴られたのは、自分達は、DIOという吸血鬼との戦いの最中で死んだこと。そして、不思議な力で蘇ったこと。

 そして、戦いに勝利し、その後の調べで、私のスタンドの力で蘇ったんだということが分かったことだった。

 私は、その時、SPW財団というジョースター家を支援している財団に保護されていたそうだが、私にスタンドを使わせるのはあまりに酷だと判断したそうで、その代わり記憶を消して、家族の元へ返すこと決めたのだそうだ。

 たった1年…しか、生きられないことを彼らは知っていたうえで、すべてを受け入れたのだと。

 しかし、それでもよかったと笑顔でメッセージを残してくれていた。

 世界を支配しようとした絶対的な巨悪に怯えることなく、平和な余生を過ごせることの尊さ。喜び。

 

 そして、最後に……、命をくれてありがとうと、締めくくられた。

 

 そして、ビデオテープは、終わった。

「確かに…、ミナミ、お前の力は、この世でもっとも不平等って嫌悪する気持ちは分かる。俺は、神なんてもんは信じてねぇが、もし神がいるんだとしたら、そいつは、ひとつの奇跡と祝福…だったんじゃないかって、俺は思うぜ。」

 私は、ただただ泣いていた。

 悲しみなのか、嬉しさなのか、分からない。けれど、億泰君達のお父さんを殺してからの絶望に染まっていた心に染み渡るような、この温かい物なんだろう?

 間違っているとか、間違っていないとか分からないし…、私の力の意味も分からない。

 けれど、“意味”は…、あったのだろうか?

 たった1年という短い余生を、平和に過ごせたビデオテープに映っていた二人と一匹は……、ホントウに救われたのだろうか?

 もう、分からないことだけど…。

「……空条さん。ありがとうございます。」

 私は、ビデオデッキから出したビデオテープを大切に抱きしめた。

 

 




ミナミは、仗助がDIOの呪縛で死にかけていた時にDIOの手下により誘拐され、エジプトへ。
そこで、ジョナサンを生き返らせるために力を利用されかけたが、暴走状態のスタンドによって逃れた。
追っ手をスタンドで殺し(本人の意志ではない)、その時咲いた花が花京院、アヴドゥル、イギーに入り込み、二人と一匹は死を回避していた。(承太郎にも入ってる。本人は知らない)
けど、残り寿命は1年しかなかったため、1年後に死亡。ミナミに寿命を奪わせるという酷なことをさせられないとして記憶を封印させて家族のところに返していた。
そしてミナミの記憶が戻った時のため、ビデオメッセージを残していた。
後に、ミナミがジョースター家の人間であることが分かり、承太郎がビデオテープを持たされていて、ミナミの記憶が戻ったこの時に渡すに至った。

ミナミのスタンドは、ある条件を踏めば、失われた命さえ蘇らせられる。
なお、そのことを教えたのはエンヤで、エンヤが死んだのと実際に実行したことがないので真相は不明。


これ、DIO→ジョナのつもりだから、ボーイズラブのタグ……、一応付けときます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サーフィス

間田編。


っと言っても、1話完結。



ミナミが悪女っぽいです。注意!


 私が学校に行ってない間に、なんか色々とあったらしい。

 まず、小林玉美っていうスタンド使いとの戦いで、広瀬君がエコーズというスタンドを手に入れたこと。広瀬君に負けた小林は、広瀬君の舎弟みたいになったこと。

 そんなわけで、校門のところで小林がポケ~っとしてたわけで。

 私達と下校してきた広瀬君を見つけると、笑顔で手を上げて『康一どの~』って言うんだ。外見からもいかにもゴロつき系だけどさ、広瀬君にどれだけやられたんだろう?

 そして私を見ると。

「おおお! だ、ダイナマ~イツ!」

 って、びっくりされた。

「ミナミさんには、絶対手を出しちゃダメだからね?」

「へへへへ、そんなこたぁしやせんぜ! 康一どの~。もしや…、康一殿の彼女さんですかい?」

「ち、違うよ! ミナミさんは、仗助君のお姉さんで友達だよ!」

「あっ、通りで…。」

 私と仗助を見比べて顔が似てるってことに気づいたみたい。

 小林は、わざわざ来たのは、スタンド使いの情報を持ってきたからだと言った。

 

 間田敏和(はざまだとしかず)。

 この学校に通う、三年生だと言った。

 

 スタンド使いだという確証はないらしいが、不可解な事件が三月にあったらしい。

 っというのも、間田が親友との喧嘩の後、その親友が家で自分で自分の左目をシャーペンで抉ったらしい。もう、聞くだけで痛い…。

 確かに不可解だ。スタンド使いの可能性はあるかもしれない。

「姉ちゃん。悪いけど、先に帰っててくれ。」

「行くの?」

「ああ。」

「分かった。」

「じゃ、行ってくるぜ。ついてくんなよ?」

 仗助が念を押してそう言ってきた。

 私が戦闘向けのスタンド使いじゃないし、なにより私の身の安全を考えてのことだろうけど……。

 

 ごめんね…。仗助。

 

 私…、保険かけとくわ。

 

 私は、仗助と広瀬君が校舎に行くのを見送った後、校門近くでこっそりと待った。

 1時間もしなかっただろうか…、やがて間田が仗助(?)と共に校舎から出てきた。

 私は、間田が校門を通り過ぎようとしたところで。

「こんにちは。」

「えっ!?」

「久しぶりですね。」

 

 そう。私は、彼を…、間田を知っている。

 あ~らら、すっごい焦った顔して。顔真っ赤だよ?

 

「ど、どどどどど、どうしたんですか!? な、なんでこんなところに!?」

「間田さ~ん? 知り合い?」

「あ、仗助。そうなのよ。」

「知り合い!?」

「顔見て分からない? 双子なのよ、私達。」

「ふたご~!?」

「ところで、どうして仗助が、この人と?」

「いやぁ、ちょいと…。」

 仗助(?)がそう言う。

「ところで、間田さんとはどういうご関係で?」

「なにって、去年ぐらいに告白されたのよ。お友達さんと一緒にね。」

「へ~。そんなことが。」

「それで、その前には、あま~いコーヒーゼリーご馳走になっちゃった。あの時は、ありがとうございます。」

「へ!? あ、あ、ど、どうも…。」

「ところで…、今、お時間あります?」

「えっ!?」

「もしかして、ご都合悪いですか?」

「えーと…、えーと…! その、俺、今、大事な用があって…。」

「それって、“あの時のお返事”を聞けないほど大事なことですか?」

「えっ!?」

「どうなんですか?」

「っ…!」

 うふふふ。メッチャ困ってる。

「いいんじゃないっすか~。間田さん。」

 仗助(?)が背中を押す。もしかして、自立したスタンド?

「間田さん。」

 話しかけたら、ビクッてしてる。顔真っ赤かでゆでだこみたいに。面白い。

 私は、ずずいっと顔を近づけてやった。

「お時間…いいですか?」

 ささやきかけるように聞いてみた。

「ぅううううううううう! い…いいいいいいい、行きます! 行きます!!」

 かかった…。

「じゃあ、ここじゃ人の目が気になるから…、人目の無いところに行きます?」

「も、もももも、もちろんっす!!」

「でも、…その前に。」

「?」

「頭から、“根っこ”が生えてるよ…。“仗助”。」

「ーーーーえっ!?」

 仗助の贋物の額にあるネジから、赤い根っこが生えていた。

 ま、最初から分かってたんだけどね。

 双子舐めんな。そして、私のスタンド…、このときだけは、ナイス。

 一変して青ざめる間田の肩を、後ろから本物の仗助が掴んだ。あらら、目の下からメッチャ血が出てる。

 

「そうそう。人目あるけど、返事出しとくね。……ごめんなさい。お付き合いは、できません、だよ。」

 

 そう言ってる間に、ボッコボコ。あと、贋物仗助は、木の人形になった。

 

 こうして、間田の空条さんへの襲撃事件は、未遂で終わりました。

 

 

 




1話で、間田退場。
去年ということは、ミナミが中学生の時(すでに外見は中学生っぽくなかった)。
間田の性格考えたら、告白するなんてあり得ないかな?
でも友達と一緒で勇気出して告白(ミナミが年下だと知らず)。けど、ミナミは、返事を保留してた。そして、間田は、自分の学校にミナミが入学したことを知らなかった。
ミナミ自身もまさかこんなところで、間田との接点が出来るとは思わなかった。あと、ぶっちゃけ、告白の件は小林から写真を見せられるまで忘れていた。

あと、サーフィスから根っこ生えてますけど、ミナミが制御したわけではありません。勝手に生えました。


由花子編。どうしようかな? 広瀬康一の成長の時だし、割愛かな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サーフィス(パターンその2)

サーフィス編。


パターンその2。


ミナミが、間田をボコるパターンです。


 

 

 私が学校に行ってない間に、なんか色々とあったらしい。

 まず、小林玉美っていうスタンド使いとの戦いで、広瀬君がエコーズというスタンドを手に入れたこと。広瀬君に負けた小林は、広瀬君の舎弟みたいになったこと。

 そんなわけで、校門のところで小林がポケ~っとしてたわけで。

 私達と下校してきた広瀬君を見つけると、笑顔で手を上げて『康一どの~』って言うんだ。外見からもいかにもゴロつき系だけどさ、広瀬君にどれだけやられたんだろう?

 そして私を見ると。

「おおお! だ、ダイナマ~イツ!」

 って、びっくりされた。

「ミナミさんには、絶対手を出しちゃダメだからね?」

「へへへへ、そんなこたぁしやせんぜ! 康一どの~。もしや…、康一殿の彼女さんですかい?」

「ち、違うよ! ミナミさんは、仗助君のお姉さんで友達だよ!」

「あっ、通りで…。」

 私と仗助を見比べて顔が似てるってことに気づいたみたい。

 小林は、わざわざ来たのは、スタンド使いの情報を持ってきたからだと言った。

 

 間田敏和(はざまだとしかず)。

 この学校に通う、三年生だと言った。

 

 スタンド使いだという確証はないらしいが、不可解な事件が三月にあったらしい。

 っというのも、間田が親友との喧嘩の後、その親友が家で自分で自分の左目をシャーペンで抉ったらしい。もう、聞くだけで痛い…。

 確かに不可解だ。スタンド使いの可能性はあるかもしれない。

「姉ちゃん。悪いけど、先に帰っててくれ。」

「行くの?」

「ああ。」

「分かった。」

「じゃ、行ってくるぜ。ついてくんなよ?」

 仗助が念を押してそう言ってきた。

 私が戦闘向けのスタンド使いじゃないし、なにより私の身の安全を考えてのことだろうけど……。

 

 ごめんね…。仗助。

 

 私…、保険かけとくわ。

 

 私は、仗助と広瀬君が校舎に行くのを見送った後、校門近くでこっそりと待った。

 1時間もしなかっただろうか…、やがて間田が仗助(?)と共に校舎から出てきた。

 私は、間田が校門を通り過ぎようとしたところで。

「こんにちは。」

「えっ!?」

「久しぶりですね。」

 

 そう。私は、彼を…、間田を知っている。

 あ~らら、すっごい焦った顔して。顔真っ赤だよ?

 

「ど、どどどどど、どうしたんですか!? な、なんでこんなところに!?」

「間田さ~ん? 知り合い?」

「あ、仗助。そうなのよ。」

「知り合い!?」

「顔見て分からない? 双子なのよ、私達。」

「ふたご~!?」

「ところで、どうして仗助が、この人と?」

「いやぁ、ちょいと…。」

 仗助(?)がそう言う。

「ところで、間田さんとはどういうご関係で?」

「なにって、去年ぐらいに告白されたのよ。お友達さんと一緒にね。」

「へ~。そんなことが。」

「それで、その前には、あま~いコーヒーゼリーご馳走になっちゃった。あの時は、ありがとうございます。」

「へ!? あ、あ、ど、どうも…。」

「ところで…、今、お時間あります?」

「えっ!?」

「もしかして、ご都合悪いですか?」

「えーと…、えーと…! その、俺、今、大事な用があって…。」

「それって、“あの時のお返事”を聞けないほど大事なことですか?」

「えっ!?」

「どうなんですか?」

「っ…!」

 うふふふ。メッチャ困ってる。

「いいんじゃないっすか~。間田さん。」

 仗助(?)が背中を押す。もしかして、自立したスタンド?

「間田さん。」

 話しかけたら、ビクッてしてる。顔真っ赤かでゆでだこみたいに。面白い。

 私は、ずずいっと顔を近づけてやった。

「お時間…いいですか?」

 ささやきかけるように聞いてみた。

「ぅううううううううう! い…いいいいいいい、行きます! 行きます!!」

 かかった…。

「じゃあ、ここじゃ人の目が気になるから…、人目の無いところに行きます?」

「も、もももも、もちろんっす!!」

「じゃ、行きましょう。」

「はい! おい、お前は、見張りしてろよ。」

「へ~い。」

「あれ? 仗助? いつからパシリみたいになったのかな~?」

「えっ! あ、それは…。」

「なんで、あなたが焦るのかな?」

「それは…。」

「ま、いっか。行きましょう。」

 私は、間田を連れて、路地裏に来た。

「そ、それで…、お、お返事…。」

「あのね…。」

「はい!」

「……気色の悪いことしてくれるわね。」

「へっ? ぐへっ!?」

 私は、遠慮無く間田の腹に一発パンチを入れた。

 腹を押さえてアスファルトの上でもがき苦しむ間田。吐いてない。ちょっと手加減してあげた。

「まったく、よりにもよって、私の大事な弟の姿を真似るなんて…ね。」

「ま、まさか…気づいて…。」

「双子なめるな。遠目に見ても分かったわよ。」

「す、すすすすす、すみません! た、ただ、俺は、空条承太郎を…。」

「あれ~? 空条さんに? それは余計に許せないわね。」

「へっ!?」

「だって、あの人は、私達の甥っ子だよ? めっちゃ年離れてるけど。……分かるよね?」

「うあああああああああああ!! ごめんなざい~~~~~!!」

 この後のことはご想像にお任せします。

 

 

 その後。

「やっほ~、仗助。」

「姉ちゃん!? ……なにやってんの?」

「ん? ちょっと、お話ししてただけ。」

「うげぇ…。」

 私は小脇に腕で首を絞めているボロボロにした間田を引きずって、目の下とかを怪我した仗助と広瀬君のところに来た。

「うぅぐ…、地獄…天国…。」

「おい、姉ちゃん。そいつ離せ。俺がボコるからよ。」

「胸に当たってるぐらい減るものじゃないよ。」

「いいや! 俺が許さない!」

「落ち着いて! 仗助君!」

 ボロボロの間田をさらに追い打ちかけてボコろうとする仗助を、広瀬君が止めた。

「あ、そうそう。間田さん。あの時のお返事しとくね。……ごめんなさい。お付き合いは、できません、だよ。」

 

 

 

 こうして、間田の空条さんへの襲撃事件は、未遂で終わりました。

 

 あと、贋物仗助は、木の人形になった。

 

 




実は、最初に考えていたパターンは、こっちが先でした。

でも書いてて、なぜか最初のパターンに。

どっちが、面白いかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

由花子と、ミナミの文通相手

由花子編。



あと、捏造追加設定で、ミナミがとあるキャラと文通していることを匂わせています。
ぶっちゃけ、匂わせているどころか、モロですけどね。


ひーー!っとか、ぎゃー!っとか悲鳴ものの相手です。(たぶん)


あと、由花子とのやりとりは、完全にオリジナル展開。


 

 

「ところでよぉ~、姉ちゃん。」

「なに?」

「まだ…、文通してるわけ?」

「してるけど?」

 下校途中のポストに手紙を入れてると、仗助が聞いてきたので私はそう答えた。

「なんか悪い?」

「よっく続いてるよな~って思っただけ。1年ぐらい前からだっけ?」

「そうだけど。」

「いまだに相手の名前も知らないってマジ?」

「まじまじ。」

「それって、どうなわけ?」

「なに? 姉ちゃんが信用できないって?」

「性別も分からねぇ相手とやりとりしてるってのが気になるんだぜ、俺はよぉ。」

「……まったく知らないってわけじゃないんだよ。」

「っというと?」

「苗字だけは知ってる。下の名前は知らない。」

「名前は?」

「な~に? 疑いぶって? 急にどうしたの?」

「姉ちゃんに変な虫が付かねぇか心配してんだっつーの! 間田みたいな!」

「あの人は別に問題なかったでしょ? 懲りたみたいだし。」

「だ~か~ら!」

「そういう仗助だって、いい年なんだから彼女の一人ぐらい作ったら?」

「話を逸らすなって!」

「…キラ。」

「はっ?」

「相手の名前だよ。私が知ってるのは、キラって名前だけ。」

「……なあ、姉ちゃん。」

「なに?」

「……そいつ、もしかして、男?」

「男かどうかは分からないよ? 向こうだって、私の性別も年齢も知らないし。」

「本当かよ?」

「本当だよ。」

「……ならいいけど。けど、変なことがあったら、言えよ? 何かあってからじゃおせぇんだからよ!」

「ありがと。」

 私は、素直に嬉しかった。それで微笑むと、仗助は照れくさそうにしていた。

 でも…、そういえば…。

「ん~、でもちょっとこないだ変わったことがあったかな?」

「なに!? 何があったんだよ?」

「ん、別に…気にすることじゃないだろうけど……、猫拾ったでしょ?」

「ああ、里親探したっけ?」

「そうそう。その時の猫の写真を同封したらさ…、返信で……。“とても綺麗な手ですね”て返された。猫に興味なし?ってツッコミの返事出しといたけど。」

「なんだそりゃ?」

「手を褒められたのなんて初めてだから、ちょっとドキッとしちゃった。それだけなんだけどね。」

「トキめき!? ときめいちゃったの姉ちゃん!?」

「びっくりしただけだって。なに言ってんのよ、馬鹿弟。」

「あいて! デコピンは無しだって!」

「仗助が悪い。」

「姉ちゃーん!」

 あーもう、うるさい。なんか年々口うるさくなってきている気がするわ。

 

 ……まあ、確かにドキッとはしたよ?

 だって、外見で、胸と尻以外で反応貰えるなんて初めてだから……。

 イヤイヤイヤ! 別にそんな意味は無いはず! だって私、相手の性別も知らないんだもの! 向こうだって知らないはずだし!

 でも…、よく考えたら文章で性別は分かってるかも…。

 キラさんの文ってすごく几帳面だし、きっと大人の人なんだろうなってのは感じてたよ?

 もし実際に会うことになって、大人の男の人だったらどうしよう…。私が高校生の女子だって知られたら幻滅されるかな?

 そもそも会うことを考えている時点で…、私もどうかして…、あれ?

 

「あれ、広瀬君だ。」

「えっ?」

 

「お~す。どうした?」

 

「あ、億泰君。あそこに、広瀬君が…、あれ?」

「あ! おい隠れろ!」

「へ~…。」

 喫茶店の外のテーブルに座ってコーラを飲んでる広瀬君のところに、すっごく可愛くて綺麗な黒髪の女の子が来てた。

 わぁお。広瀬君って意外とモテる?

 しかも…、隠れて話を聞いてたら、なんと女子の方から告白! 広瀬君にだよ! すっごーい!

 

「でも…、康一君って、いつも東方さんって人といるわよね…。でもこの気持ちを抑えられなかったの…。」

「あ、あの…、ミナミさんは、友達のお姉さんだよ。か、彼女じゃないよ?」

「うそ! だって、スーパーモデル並みのスタイルしてるじゃない! 康一君だって、もし付き合うならやっぱり…。」

「えっと、その…だから、本当に! 友達なだけだよ!」

「ほ…ほんとう?」

「本当です!」

 

 ん~…、なんか私のことで話がこじれてる?

 私だって、広瀬君のことは大事な友達だって思ってるよ? カップルとしてお付き合いしてないよ? もしあの二人がそれでこれ以上こじれるなら、ちゃんと私が間に入って弁解しないといけないかも。

 億泰君が、メッチャ悔し泣きしてる。年頃の男子には辛いよね~。

 とかなんとか思ってたら、なんか様子が……。

 あの女の子……、なんかヤバい気が…。

 

「どっちなの!? あたしのこと! 愛しているの!? 愛していないの!? さっさと答えてよ! こんなに言ってるのに!」

 

 女の子がテーブルのコーヒーひっくり返してすごい剣幕で広瀬君に言ってる。

 その後、勢いで迫ったことを猛反省したらしい女の子は、色々言って去って行った。

 

 残された広瀬君は、ぼう然としてるし。見てた私達も私達でポカーンだよ。

 

 ……もしかして、広瀬君って、変な人を引き寄せやすい?

 

「そういや、入院した、間田が言ってたな…。スタンド使いは、スタンド使いと引かれ合うってよぉ。」

「えっ?」

「うげぇえええ! か、髪の毛がぁぁ!?」

「…仗助。フラグが立つって知ってる?」

「ああ。……当たりか?」

「たぶんね。」

 コーラに大量に髪の毛が入り込んでてパニックになっている広瀬君を見て、私と仗助は、あの女の子…、由花子っていったかな? を一応警戒しておくことにした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 翌日から、な~んか、私のスタンドをよく見かける。

 しかも…、黒い髪の毛と絡まり合って。

 ロッカー開けて、赤い根っこと黒い髪の毛が戦ってるみたいにウネウネしてたのを見た時は、思わずロッカー閉めたよ。

「はぁ~~~~。」

 うまいこと人に見えない範囲で、赤い根っこと、黒い髪の毛の攻防は起こってるみたいだけど、お弁当の中にまで侵入してたのはさすがに堪えた。

「お腹すいた…。帰りになんか食べて帰ろ。」

 そう思って、さっさと帰ろうと思ったら、由花子さんに出くわした。

 おおっと…、これは…。

「あなた…、東方ミナミさん、ね…?」

「そうだけど?」

「…康一君に近づくのやめてくれる?」

「広瀬君は、ただの友達だよ。別に彼女じゃない。」

「…とぼけた顔して、嘘を吐く…。」

「嘘じゃない。」

「いい。二度と、康一君にまとわりつかないで。じゃないと…私…。」

「あの髪の毛って、あなたの?」

「!」

「その顔は図星か…。何度も言うけど、広瀬君はただの友達なの。あなたの恋路を邪魔する気なんてこれっぽっちもない。誓っていい。」

「信じられないわ。」

「信じる信じないわ自由だけど。本当に、本当だよ。」

「ほんとうに…、しんじて…いい、の?」

 もうちょっとかな…。

「うん。信じて。本当だから。…それと、できる限り私に手を出さないようにして。」

「?」

「じゃないと…、あなたの寿命が減る。そうなったら、広瀬君と一緒に生きれる時間が少なくなっちゃうでしょ?」

「あなたも、なの?」

「うん。スタンド使いって奴らしいけど。私のは、かなりヤバいの…。生き物の寿命を奪い取る。しかも私の意志じゃ操れない。寿命を減らされるってことは、生きていられる時間が減るってこと! だから…お願い。」

「っ、ーー分かったわ。」

「…ありがと。」

 けど、違った。

「警告が聞けないなら…、私はあなたを殺す。」

「えっ? うわっ!」

 ブワッと蠢いた由花子さんの髪の毛が襲いかかってきた。

 

「ミナミさん!」

 

「広瀬く…!」

 うわー! 最悪のタイミング!

「あっ! こ、康一君…!」

「山岸さん! あなたは、スタンド使いだったのか! なんで、ミナミさんを! ミナミさんは、ただの友達だって言ったのに!」

「だ、だって…。」

「僕の友達に手を上げるなんて! 僕は、今! 君のことを軽蔑する!」

「はうっ!」

 ズガーーンっと由花子さんがショックを受けていた。

「だから言ったのに…。広瀬君とは本当にただの友達なんだよ?」

「うぅ…ぅ…。」

 床に座り込んだ由花子さんは、両手で顔を覆って、シクシクと泣いていた。

「ミナミさん、だいじょうぶですか?」

「私はいいけど…、彼女が…。」

「…放っておこう。」

「いいの?」

「いいんだ。僕の大事な友達に手を上げるような危険な人なんてイヤだよ。」

「わ~お。ハッキリ言うね~。」

 あちゃ~、大変なことになっちゃった……。

 これって、修復不可能だよね…?

 

 でも…、彼女…、由花子さん…諦めるかな?

 

 私は猛烈に嫌な予感しかしなかった。

 

 

 そして、後日、広瀬君が、誘拐されてしまった。ああ、なんてこったいだよ。

 

 




由花子のスタンドから、本体のミナミを守り続けていたミナミのスタンド。(ミナミの意識ではない)

誘拐された康一と、由花子の対決は、原作通りです。そしてエコーズがAct.2に進化します。

なぜ、キラ(現時点では匿名)と、文通しているのか…、自分でもなぜこんな展開にしたのか、よー分からん。



トニオさん回は、どうしようかな? 割愛?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天井裏の部屋の青いバラ

東方ミナミのスタンド名は。


『ブルー・ブルー・ローズ』(バービーボーイズの曲名)になりました。


……筆者が、BlueRoseで検索して見つけてきた物です。


今回は、オリジナル回。

杜王町中に根を張り巡らせていたスタンドがなにをやっていたのかが発覚。


 

 空条さん、…絶句してるよ。

 そりゃ、私だって絶句したよ。見つけたときは。

「どうします? “コレ”…。」

「……緊急ですって、いきなり連絡してきたかと思えば、コレか…。」

 私達の前には、家の天井裏の部屋に大量に敷き詰められた、赤い茎の青いバラの花。

 つまり、私のスタンド『ブルー・ブルー・ローズ』(※名付け親:仗助)が、勝手にどこからか、誰からか奪ってきた寿命がバラの花という形で大量にあったわけで…。

 どうやってこれを見つけたかというと、死んだ形兆が杜王町中にブルー・ブルー・ローズが張り巡らされていると言っていたのをふと思い出し、なにをやってるんだろうっということで調べようとしたブルー・ブルー・ローズに導かれるようにずっと長いこと誰も入ってなかった家の天井裏の部屋に入ったら、大量の赤い茎の青いバラがあったわけです。

 どこから、誰から収穫した花(寿命)!?

 で、パニックになって、つい空条さんに連絡。そして仗助も合流して今に至る。

「あれからブルー・ブルー・ローズの青いバラの花を調べたが、誰かの体に入らない限りは枯れないらしいな。つまりここにある花がどこで、いつ収穫されたのかは分からん。」

「数百本どころか…、千本単位でありそうっすよね…。姉ちゃん…、だいじょうぶ?」

「…うん。」

 仗助が心配してくれる。

 私にとっては、忌まわしい花…。生命から奪い取った寿命。こんなにたくさん…。

 杜王町に根付いて、なにをやってるのかと思ったら、無差別にこんなに…!

 あっ、めまい…。

「姉ちゃん! しっかり!」

「…仗助…、私、知らないところで誰よりも命を奪いまくってたんだ…。下手な殺人鬼より圧倒的に殺人してるよ…。」

「姉ちゃんの意志じゃないんだろ!? じゃあ、姉ちゃんのせいじゃねぇよ!」

「これだけの量を集めるとなると、十数年はかかっているだろうぜ。」

「ってことは…、私が4歳の時から…。」

「しっかりしろ、姉ちゃん!」

 これだけの花…、もしあの時、花京院さん達に渡せていたら……。

 あ、涙が…。

「……すぐにこいつを処分するのは無理だ。だが、今すぐ使うべき相手はいるはずじゃないのか?」

「えっ?」

「お前達の爺さんだ。」

「あ!」

 そうだ。お爺ちゃん、花が一本しか入ってないんだ! じゃあ来年死んじゃうよ!

 でも…。

「使って…いいのかな…?」

「元の持ち主に返そうにも、持ち主が分からんからな。それに死んでいる可能性もある。なら…、無駄にする方がよっぽどマズいっちゃ思わねぇか?」

「…っ。」

「お前が誰よりも自分のスタンドを嫌っているのは分かるぜ。だが、このまま悪党の手に渡すか?」

「! それは…もっとイヤ!」

「なら、それでいいんだぜ。」

 空条さんは、そう言った。

 私は、少し考えてから、青いバラの花の束を掴んだ。

「ねえ、仗助…。」

「な、なに?」

「日本人の平均寿命ってどれくらいだっけ? お爺ちゃん、今55歳だよね?」

「は、80以上とか、90くらい生きりゃ上等じゃねぇの? そりゃ、100までいけばもっといいかも、だけど…。」

「じゃあ、もっとか…。」

「やんの? 姉ちゃん?」

「…それ以外に使い道が今思い付かない。それとも、来年お爺ちゃんが死んでもいいの?」

「な、わけないじゃねぇか!」

「なら、決まり。」

「お、俺も手伝うから!」

「いいよ。私がやるの。」

「いいや! 俺も手伝う!」

「仗助!」

「姉ちゃんが全部背負う事なんてねぇんだ! もっと俺を頼れよ!」

「………馬鹿弟。」

 そんなこと真剣に言われると涙がまた出ちゃうでしょうが!

「俺も手伝ってやるぜ。」

「空条さん…。」

「少しぐらい負担を肩代わりさせな。これでも年上だぜ?」

「…もう。」

 

 結局、私達三人で、お爺ちゃんに青いバラの花を入れた。もちろん悟られないようにこっそりと。

 お爺ちゃんは、勘が良いからもしかしたら気づいているかも知れないけれど。有無なんて言わせない。

 これは、私の勝手だから。

 

 あと…、まだ天井裏に花は山ほどあります。

 残りの花の処分も考えとかないといけないな…。

 空条さんがSPW財団に頼んで保管して貰うか?って提案してくれたけど、ブルー・ブルー・ローズのことだから、減った分だけ、またどこからか増やす可能性があるので保留した。

 

 




ブルー・ブルー・ローズは、勝手にどこからか、誰からか寿命を奪って青いバラの花にし、家の天井裏に隠していた。
その大量にあった青いバラの花の一部を、アンジェロに1回殺されて、死んだことが無かったことになって、残り寿命1年しか無かった祖父・良平に。
果たしてそれが正しいのかどうかは、誰にも分からないけれど……。悪党の手に渡るよりは……。


次回は、トニオさん回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イタリア料理

今回は、トニオさん回。


本当は、割愛予定だったけど、感想欄でギャグパートが9割無くなるとあってので書きました。


ちょいグロ注意!


ミナミも食べてますので、影響が……。


 

 美味しい物は、大好き。まあ、それは誰もが思うことだろうけど。

 

「…はあ…。」

 

 気分が憂鬱なときは、美味しい物を食べるのが一番だ。

 私の憂鬱の原因は、前日、私のスタンド、ブルー・ブルー・ローズが赤い茎の青いバラの花を家の天井裏に大量に保管していたことが発覚して、そのうち数十本を残り寿命1年状態だったお爺ちゃんにあげたことだ。

 誰の物だったのかも分からない寿命を…、大切な家族のためにとはいえ勝手に使ってしまったこと…、それが私の気持ちを沈ませていた。

 仗助も空条さんも、責任を背負いすぎるなって言ってくれたけど……。

 

 スタンドが、自分自身の具現だと知った後じゃ、それも無理だって。

 

「おおい、元気ねぇな? どうしたよ?」

 学校帰り、億泰君が私に話しかけてくれた。

「ん…。なんでもないよ。」

「そうっすか? メッチャ暗いけどよぉ。腹でも減ってんの?」

「ん……、そうだね。美味しい物…食べたいかも。」

「奢りやしょうか?」

「えっ? それは、悪いよ…。」

「へへ、5、6年は食っていけるだけの金はあんだ。へーきだってへーき!」

「おーくーやーす~~~~?」

「うげぇ! じょーすけぇ!?」

 背後から来た仗助が億泰君の襟首をスタンドで掴んで引っ張り上げた。

「なに、俺の姉ちゃん口説いてやがんだ、あぁん!?」

「く、口説いてねぇって…! ただ、元気なさそうだからよぉ~、心配しただけじゃねぇかさぁ!」

「はっ? 姉ちゃん…。」

「…仕方ないじゃない。」

 そんな簡単に割り切れないよ。

「それより、億泰君離してあげて。」

 私がそう言うと、仗助は億泰君を離した。

「ん?」

 私は、ふと気づいた。

 看板があったのだ。

 イタリア料理屋さんの。

「あれ? こんなところに看板なんてあったっけ?」

「新しいじゃねぇか。出来たばっかなんじゃねぇの?」

「へ~、ここから、100メートル…。って、この先って霊園だよね?」

「けどよぉ! こういう通な店って美味いかも知れないぜぇ?」

 億泰君が言った。

「…気になるかも。」

「姉ちゃん…。金ねえだろ?」

「俺が奢ってやるよぉ!」

「おい、億泰!」

「別におめーの姉ちゃんに色目使ってるわけじゃねぇぜ、俺? ただよぉ、マジに元気なさそうだから元気になって欲しいだけだぜ?」

「…ありがと。」

「じゃ、決まりだな!」

「…だぁ! もう! 仕方なぇな! 俺も行くぜ!」

「仗助こそお金ないでしょ?」

「いいぜ、二人分ぐらい奢るぜ?」

「ごめんね。億泰君。」

「いいってことよ。」

 億泰君は、ニカッと明るく笑う。

 ……彼のお父さんを私が殺しちゃったのに。彼は私を一回も責めなかった。

 

 そうして、私達は、イタリア料理屋さんに向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 こじんまりした店が見つかりました。

 本当に小さな店です。

 しかも外に置かれたメニューの看板には…、本日の料理“お客様次第”と、謎の書き込みがされていた。

「さ、入ろうぜ!」

「う~ん。仗助、どう思う?」

「不味かったら文句言って帰ろうぜ。」

「おーい、入ろうぜ。」

「分かってるって。」

 っというわけで、入店。

 チリーンっと扉の鈴が鳴る。

 店の雰囲気は…、とても良い感じ。テーブルは、二つしかにけど、綺麗だし、飾りもステキだ。オシャレすぎず、遊び心を感じさせる。

「いらっしゃいませ。」

 そこへ、シェフ姿の外国人が億の扉から出てきた。

「あの、外国人さんすか?」

「見れば分かるだろ?」

「し、…シニョール。ワタシ、イタリア人です。トニオ・トラサルディーといいます。トニオと呼んでください。」

 意外にもスラスラと、ちょっと片言交じりに日本語を話すトニオさん。

「こいつはハッピーだぜ! 本場もんのイタリア料理が食えるのかよぉ~~!」

 億泰君、すっごく喜んでる。

 イタリア料理って美味しいって聞くし、これは期待大かも。

「なに食うかな? さっそくメニュー(献立表)見せてくれよ。」

「メニュー? リスタ(献立表)のことですか? ……そんなもの、ウチにはないよ…。」

「えっ?」

「料理の献立はお客様次第で決定するからです。」

 っと、トニオさんは笑顔で言う。

 でも変なの…。メニューがないだなんて。

 その理由は間もなく分かる。

「ワタシがお客を見て料理を決めるというコトです。」

「なんじゃあ、そりゃ~~~!? おめーんとこ客の食いてーもん食わせねーっつぅーのかよーーー!?」

「フゥーむ。」

 するとトニオさんが、億泰君の手を見た。

「アナタ…、昨日、下痢しましたネ?」

「えっ!?」

「アナタ、腸の壁が荒れてイマス。それに睡眠不足です。4時間ぐらいしか寝てませんデスね? 目が腫れっぽいハズでス……。そしてそちらのお嬢さん…。」

「私?」

「整髪料でゴマカしていますが…、髪がとても荒れていますネ。頭皮の調子が悪いのでショウ。」

「な、なんで…。」

 最近、髪の仕上がりが悪くて誤魔化してたのは確かだ。

 このほかに、トニオさんは、億泰君の左手を見て、水虫があることと、虫歯が2本、そして肩がこっていることを言い当てた。

 それから私の胸が最近張っててたまに痛いことと、生理痛が酷くて鎮痛剤で誤魔化していることまで言われた。

 びっくりしている私達に、トニオさんは笑顔で。

「ワタシは、両手を見れば、肉体全てが分かりまス。」

 すごい技だ! でも、あんまり言い当てられたくなかったなぁ…。

 トニオさんは、人々が快適な気分になるための料理を作るため、中国の漢方料理も習ったし、アマゾンの薬使い師にも修行し、アフリカの山野草も研究したとか。

 えっ? ってことは漢方料理?

 っと思ったら、そういうノウハウをイタリア料理に取り入れたのだそうだ。つまりトニオさんの料理はイタリア料理だけど、色んな国の料理の良いところを取っているらしい。まあ、色んな料理人が目指すことだよね。そういうことは。

 それにしても、トニオさんは、料理によってお客さんが“快適”に過ごせるようにすることに熱心らしい。

 料理で満腹感を得るだけの快感だけじゃないってこと?

「オー! ゴメンナサイ! 説明するヒマあったら、料理お出ししなければいけませんでス。えーと、こちらのお客様は…。」

「あ、俺はそんな腹減ってないんで、カプチーノひとつ。」

「オ・カピートゥ。かしこまりました。」

 そしてトニオさんは、キッチンがあるらしき、扉の向こうへ行ってしまった。

「なあ、姉ちゃん、億泰ぅ…。ヘルシー料理ってよぉ、健康を追求するあまり、薬草とか使って大抵不味いんだよな。もし、ちょっとでも不味かったら金払うこたぁねーぞ。文句垂れて出よーぜ。」

「おお…。」

「どうなんだろうね?」

「あんま期待しすぎっと…、億泰?」

「お…、おお!? なんだこりゃ!」

「どうしたの?」

「こ、コイツは、ミネラルウォーターか!? こんな美味い水、俺生まれてこのカタ…、飲んだことがねーーぜぇーーー! 飲んでみろよ! なんつーか、気品に満ちた水っつーか。例えるならアルプスのハープを弾くお姫様が飲むような味っつーか、すっげー爽やかなんだよ…! 三日間砂漠をうろついて初めて飲む水っつかよぉーーー!」

「なんかすごい食レポして…、ん!? ホントだ! 美味しい!」

「おっ! 本当だ、こりゃ美味い!」

 お冷やでこんな美味しいって思ったの初めて! 何の水だろ?

 億泰君、勢いでゴクゴク飲んじゃった。

「な、なんか、俺…あまりの美味さでで、涙が出てきたぜ~~~。」

「億泰君、いくらなんでも大げさ…、億泰君?」

 あれ? なんか変? 涙の量がどんどん…。

 あああああああ! 目がしぼんでるって!!

「待ちなサイ…。」

 そこへ料理の乗ったお皿を持ってきたトニオさん。

「ドーカ。アワテないでくだサイ。」

「き、きさま~~~! 億泰になにを飲ませたんだ!?」

「落ち着いテ。目玉がしぼむのは、一時的なものでス。」

 イヤイヤイヤ! 一時的でも、とんでもないって!

 でもトニオさんは、落ち着いた声で、言う。

 この水は、キリマンジャロの5万年の雪解け水で、眼球内を汚れと共に洗い流し、睡眠不足を解消してくれる水なのだと説明した。

「仗助! ミナミぃ!」

 すると、億泰君、すっかり泣き止んでた。

 そして眠気が吹っ飛んだと言った。まるで10時間も熟睡して目覚めたみたいにスッキリしたと。

 うん…、確かに顔色メチャクチャ良くなってるね…。どういうこと?

 呆気にとられている私と、億泰君の前に、トニオさんが料理が乗った皿を置いた。

「こちらは、モッツァレラチーズとトマトのサラダ。そしてコチラは、ゴルゴンゾーラムースとピーチのチコリ添えでス。」

「あ、美味しそう。」

「もっつぁれ…?」

「そう、モッツァレラチーズは、脂肪抜きした、柔らかくて新鮮なチーズのことでス。イタリアでは、みんな好んで食べている、代表的な前菜のひとつです。」

「ゴルゴンゾーラチーズだよね? それにピーチ(桃)? そういえば、甘いフルーツソースを肉料理に合わせるって海外じゃよくあるみたいだけど。」

「ええ。そうですネ。チーズとフルーツは、よく合せますよ。コッテリとしたスープに、甘いケーキを合せることもありまス。慣れないかもしれませんが、味わっていただければその美味しさが分かるかト。」

「じゃあ、いただきまーす。」

「いっただきま~す!」

「どうぞ、召し上がれ。」

 チコリってなんか、白菜っぽい見た目だよね。白菜のすっごく小さい奴みたい。でも全然違う野菜だってことは知ってるよ?

「あっ、美味しい! 塩っ気の強いチーズに、ピーチの甘さが良く合ってる!」

「ありがとうございます。」

「ほんとかよぉ~?」

「んん…?」

「あれ? 美味しくない? 億泰君。」

「なんつーか、味があんましないっつーか。」

「違う違う! トマトと一緒に食べるんですヨ!」

「なに~、トマトと、一緒にだぁ? まっ、外国の食い物は、しょせんな~~、大抵日本人と味覚が違うんだよな~。こ~ゆ~のはよぉ~。……うっ! うんまあああ~~い!」

 おいおい、言ってることとリアクションが違うよ?

 そして、テレビで見る料理のレポートとか実況とか顔負けの食レポ言ってるし。

 でも、まっ、美味しいのは変わりないけどね。あっ…、あっという間に無くなっちゃった…。

 それにしても、頭がかゆいなぁ…。

「あ~、姉ちゃん、もう食っちまったのかよぉ! 一口ぐらいくれてよかったのに!」

「欲しかったら自分で注文しなさい。」

「く~、ひでぇ姉だぜ! しょうがいない、俺も一皿注文しますよ。」

「かしこまりました。……しかし…、肩こりが治るのも、頭皮の調子が良くなるのも、それぞれの症状がある方だけですので…。」

「えっ?」

「えっ?」

 トニオさんが、意味深なことを言ったと思ったら、なんか頭が…! かゆいって!

「ね、姉ちゃん、ちょっと掻き毟りすぎ! 億泰も!」

「か、かゆ、かゆいって! かかかかかか、かゆい!」

 ズルリッ。っと、手になにかがバッサリと乗った。

 見るんじゃなかった…。髪の毛だよ。それも頭皮の垢ごと、ごっそりと…。

「んぎゃああああああ!?」

「うぉおおお!? 肩が、肩が、熱い!?」

「やめろ姉ちゃん、ハゲちまうぞ!」

「かゆかゆかゆ…! かゆいんだよおおおお!!」

「ねえちゃーーん!」

 私は頭を、億泰君は、肩を掻き毟った。

 やがて…。

「あれ? かゆくなくなった…。あ、髪の毛が良い感じ!」

「あ~~~! 肩こり直った~~~!」

 最近くせ毛が強くなってた髪の毛がマシになった。

「姉ちゃん…テーブルが、大惨事だぜ…。」

「えっ? うわっ!」

「さっ、髪の毛を掃きますので、ちょっとだけ失礼します。」

 笑顔のトニオさんが、ちりとりと箒を手に、ささっと床やテーブルに散乱した、私の髪の毛と頭皮の皮と、億泰君から出た垢の山を掃除した。

 っていうか…、この量って…、一回全部抜けた? それで生え替わった?

「…ど、どう思う…。仗助?」

「こ、こいつは…尋常じゃないっていうか、異常だぜ! で…、姉ちゃん、本当になんともないのかよ!?」

「うん…。むしろ、調子が良くなった。信じられないけど。」

「すっげーぜ! このレストラン! あいつは天才だぜ! トニオって料理人はよぉーーー!」

 

「では、料理を続けます。次は、パスタと、リゾットです。」

 

 異常だけど…、美味しいのは事実なんだよ~!!

「こちら、娼婦風スパゲッティ。こちらは、ブロッコリーとトマトとニンニクのリゾットでス。」

「これは…。」

「絶対うめぇやつだぜぇ!! けどよぉ…、これ、赤唐辛子、入ってんっすか?」

「はい、入っていまス。」

「なあ、ミナミぃ、交換しようぜぇ。俺、マジに辛いのだめでよぉ…。バー○ンドの甘口じゃないとダメだし、寿司のわさびもダメなんすよぉ~~。」

「イヤ。私は、コレ食べたいの。だ~め。」

「ケチー!」

「辛いのがダメなのでしたら、リゾットにたっぷりと使った黒胡椒もダメなのでは?」

「げー!」

「残念だったわね。」

 ふふんっと、一口。

 あ、美味しい! ブロッコリーの歯ごたえもあるし、リゾットの米自体もほどよく芯が残っててベチャベチャじゃないし、ニンニクと黒胡椒が利いてて、トマトが引き立つ~!

 美味しさで胸が…、胸が…? あれ?

「馬鹿姉ちゃん! ここまで来てなんで食っちまったんだよーー!!」

「ご、ごめ…。うぐっ!」

 胸が…破裂しました。ああ…、はち切れそうってよく形容される憎らしい胸が本気で弾け飛ぶのは、……グロイです…。

 私は椅子から落ちて倒れた。そこから、しばらく目を覚まさないでいたら、なんか騒がしい声が。

「……じょーすけ?」

 キッチンの方で騒がしい声が聞こえたから見に行くと、仗助がトニオさんに怒られてました。

 あと、億泰君が腸(はらわた)ぶちまけて倒れてました。

 けど、あっという間に治って、立ち上がってた。

 そして、下痢気味だった腹が治ったっと言ってます。

「これ、どういうこと?」

「あ、姉ちゃん!」

 それから話を聞くと、どうやらトニオさんは、スタンド使いだったらしい。というか、料理にスタンドが混じってて、それで今までの異常なことが起こってたんだって。

 トニオさんが語るには、自分が求める料理を探し求めるうちに自分の能力に気づいたそうで、でも自分の故郷では認めて貰えず…、そこで色んな国の料理を受け入れる日本に店を作ってお客さんに自分の理想の料理を提供して、快適にさせることを目的にしていたそうだ。

 杜王町は、特に素晴らしいと言う。近くに新鮮な野菜も採れる農家や、海の幸も素晴らしいくて気に入ってるのだそうだ。

「ところで、皆さん、そのスタンドというものを持っているのでしたら、この店にたまに入り込む、赤い根っこをなんとかする方法を知っていますか?」

「えっ!?」

「あれをどかそうとして手を傷つけられて、困っているのですよ。」

「き、傷ぅ! ってことは、青いバラが…。」

「ええ…、なぜか傷口から咲いて…、それで根っこが青いバラの花を持ち去っていくのでス。あれは、どういうことでしょうか?」

「うわああああああ!」

「しっかり、姉ちゃん!」

「トニオさん! 何本、取られたんですか!? すぐ持ってきますから、待っててください!」

「えっ?」

「実は……。」

 かくかくしかじか…で、説明。

 トニオさんは、なるほどっと納得してくれたけど、キッチンに入ってくるのはなんとかならないのかとプンプン怒ってた。寿命を取られたことについてより、衛生面の方を心配してる…。

 そして、手も洗わずキッチンに入った仗助を叱って、掃除しろと怒ってた。

 私と億泰君は、それぞれ、残りのコース料理を食べて楽しみました。仗助は、ブーブー文句言ってたけど。ま、そんなときもあるよね。

 

 とりあえず分かったこと。

 トニオさんは、天才料理人だ。

 




ミナミが食べた料理は、イタリア料理、前菜で検索して出したレシピから引用しました。
あとパスタではなく、リゾットにしたのは、イタリア料理コースで、パスタとかリゾットが出る部分だったのでそうしました。

なお、この後、トニオさんがブルー・ブルー・ローズに奪われた寿命分は青いバラを渡しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レッド・ホット・チリ・ペッパー その1

ミナミは、落ち着いているように見せかけて、怖がりさん。


今回序盤に、クロッ○タワー的な描写があります。

仗助が原作でゲームしてるの見て、ミナミがいたら、悪戯半分に嫌いなホラーやって見せてわざと怖がらせて楽しんでいる姿が思い浮かんだ。
序盤はそんな感じ。


 

 

「んぎゃああああああ!」

「おっとやべぇ、来ちまったな。」

「鋏! ハサミ来てる、来てるって! 早く逃げて逃げて!」

 

「二人とも! いい加減ゲームやめなさい!」

 

 私が仗助の横にしがみついて怖がって、ニヤニヤ笑いでゲームをプレイしてる仗助。

 なんでホラーゲームって、ゲームって分かってても怖いのぉおおお!?

 しかも今、夜だし! あーーーー!

 母さんが後ろからゲシゲシと仗助の背中蹴ってるけど、やがて手元が狂って仗助が、ゲームの敵にやられた。

「さっさとゲーム片して宿題しな。」

「~~~っ。」

「あ~、クソ、負けた。姉ちゃん、姉ちゃん? 俺がついてるからだいじょうぶだって。なんなら、今日一緒に寝るか?」

「ふざけないの!」

「ふぎゃっ!」

 冗談言ってくる仗助の鼻を摘まんでやった。ちなみに、ホラーゲームをしようぜって言ってきたのは仗助だ。私が怖がるのを面白がって、この…弟は…。

 まあ、もう10時過ぎだし、母さんが怒るのも仕方ないけど。

 私は、胸ドキドキのまま、テレビのチャンネルを変えた。その間に、仗助はゲームを片付ける。

 それからテレビを消そうとしたけど、なぜかテレビの画面は消えない。

「あれ? 電池が切れたかな?」

 その時。

 テレビ画面から、テレビのドラマの台詞じゃない、声が…聞こえた。

 

『い~い、悲鳴だったぜ。ミナミちゃ~ん。』

 

「えっ?」

「っ! 姉ちゃん離れろ!」

 

『よぉ、久しぶり。中々呼んでくれねぇから、自分から来ちまったぜ。ミナミちゃん。』

 

「レッド・ホット・チリ・ペッパー! てめぇ!」

 仗助が私を庇うように立つ。

「何しに来た?」

『“今頃”、聞くなよ。以前からちょくちょくこの家にゃ寄らせてもらってたんだぜ~?』

「なっ!」

『知ってるぜ~。天井裏の大量のあの青バラも、おめえらの爺さんにその青いバラの花を使ったことも。』

「!」

『もちろん、俺が殺してやった形兆の弟の億泰んとこも、康一のエコーズも、由花子も、間田が入院したこともな~~。え~~? それにしてもミナミちゃん、ひでぇことするんだねぇ? 誰から取ったかも分からねぇ寿命を勝手に使っちまうなんてよぉ。』

「う…。」

「姉ちゃん、聞くな! てめーみてぇな、コソコソしてる小悪党なんぞに渡すよか、遙かにマシだぜ。」

『か~~~! 言うじゃねぇか! この野郎! ま、確かに欲しいっちゃ欲しいんだけどよぉ。スタンド体だからか、知らねぇが、あの青いバラの花だけは電気化できねぇんだよなぁ。だからほっといたんだぜ。あえて…。』

「で? 何しに来たんだ? コソコソしやがって、てめー姉ちゃんのストーカーだってんなら、容赦はしないぜ?」

『おいお~い! 俺はそこいらのストーカーなんぞと一緒にすんじゃねぇよ! 俺は、ミナミちゃんの毛の先から足の先までみっちり見てるんだぜ~? いや~、風呂場の照明ってのは、絶景だぜ?』

「っ! てめーーー!!」

「仗助、落ち着いて!」

「これが落ち着いて…!」

『おっと、本題を忘れてたぜ。今日はな。腕試しにきたんだぜ。』

「?」

『フフフ…、空条承太郎のスタープラチナはとても脅威だ。承太郎の隙の無さと、時を止められる力のスター・プラチナがな。で、日にちが経って俺のスタンドも成長したか、ちょいとスタンドの腕試しがしたくってねぇ~~~。承太郎を襲う前に、東方仗助~~~、お前を比較に選んだというわけさ。』

 つまり、空条さんを倒すための練習台に、仗助を選んだってこと?

 それだけ仗助のクレイジー・ダイヤモンドが買われてるってこと?

 それって喜べば良いのか悪いのか…。

『でよぉ、ミナミちゃ~ん?』

「な、なに?」

『スタンドを制御できてないようだから、俺が直接手ほどきしてあげていいんだぜ~? そうすりゃ、この町中に勝手に根を張り巡らせている、ブルー・ブルー・ローズを止められる。』

「っ…。」

「姉ちゃんに近づくな、喋りかけるな!」

『お前もそう思わねぇか? 仗助~。不特定多数の人間が次から次にあの根っこの肥やしにされるのを見てられるのかぁ? 虹村の親父のようによぉ!』

「っ、てめ…!」

『けどよぉ。おりゃぁ、ひとつ分かったぜ?』

「えっ?」

『さっきホラーゲームやってたろ? あのビビりよう…、それでいて自分のスタンドを何より嫌悪してるってことはな~。“自分自身”を何よりも怖がって否定してるってことだぜ! 大事な大事な家族を失うよか、何より“自分”が怖くって仕方ねぇんだ!』

「うぅ…!」

『なあ、簡単なことだ。自分を肯定すりゃいいんだ、ミナミちゃ~ん。あんたが否定する限り、スタンドは自分の手綱に従わないだろうさ。これ以上…青いバラの花を…、グゲッ!』

「いい加減その口を閉じやがれ!」

『えっ…? あ、早……、こいつは…!?』

「ドラララララララ!!」

 仗助のクレイジー・ダイヤモンドがレッド・ホット・チリ・ペッパーを殴りまくる。

 グラリッとよろけるレッド・ホット・チリ・ペッパーにトドメの一撃を与えようとしたとき。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーの両手が、クレイジー・ダイヤモンドの拳を払った。合気道みたいに。

 そして、二発。クレイジー・ダイヤモンドの腹に攻撃を入れた。クレイジー・ダイヤモンドと一緒に仗助が部屋の端に吹っ飛んでいった。

「仗助!」

『いやぁ、驚きだぜ…。見くびってた。このレッド・ホット・チリ・ペッパーが成長したように、クレイジー・ダイヤモンドも成長してたとはな。なあ、ミナミちゃん。』

「来ないで!」

『いいじゃね~か、帰り際のキスぐらいさせてくれたって…、っ?』

 次の瞬間、床から生えた鮮血色の根っこがレッド・ホット・チリ・ペッパーの下顎をひっかいた。

『あ…、あああああ!!』

 僅かに傷つけられた傷口から青いバラの花が一本咲き、慌てたレッド・ホット・チリ・ペッパーの下顎から茎ごと落ちた。

 私は、レッド・ホット・チリ・ペッパーが拾うよりも早く、そのバラの花を奪い取った。

『か、返せ! 俺の寿命!』

「殺せるものなら、殺してごらん! この花がどうなるか分からないよ!?」

『!』

「1年って、短いようで長いからね…。たかが1年、されど、1年だよ? もし今年であんたが死ぬことになってるなら、明日には死ぬんじゃない?」

『こ、このアマ!!』

「返して欲しければ、自分で取りに来なさい! コソコソと電気のスタンドで現れてないで!」

『甘やかしていれば…! っ…!?』

 私は必死で気づいてなかったけど、部屋中にブルー・ブルー・ローズの根っこが出現していた。

『おい、制御できないんじゃなかったのかよ!? いつの間に!?』

「えっ?」

 言われて私は部屋の中の根っこに気づいた。

 その隙を突いて、私の手から青いバラの花を奪おうとしたレッド・ホット・チリ・ペッパーだったけど、起き上がった仗助のクレイジー・ダイヤモンドの拳が飛んできたのと、ブルー・ブルー・ローズの根っこが襲ってきたので、慌ててコンセントの中に逃げていった。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーがいなくなり、母さんが来る直後、ブルー・ブルー・ローズは消えた。

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパー。

 電気のスタンド。

 しかも遠隔操作できる上に、日々成長して、すでにクレイジー・ダイヤモンドやスタープラチナレベルまで強くなっている!

 このままじゃマズいのは分かるけど…。私には…。

 

 私は、レッド・ホット・チリ・ペッパーから奪い取った1本の青いバラの花を握りしめた。

 

 




ミナミのスタンドは、ジョセフのスタンドと同様に人型じゃないため、傷ついても本体にフィードバックされない。
また制御不能で、自我意識を持ち、杜王町に根を張り巡らせて無差別に生命から寿命を奪っている、その行動理由は謎。でも、基本的には本体を守ろうとはする。(由花子編で、ラブ・デラックスと戦ってた)



文庫本見て書いてるんですが、ここから先の話は、昨日Amazonで買ったんだけどまだ届いてないので(2019/07/14現在)、届いてから続きを書きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レッド・ホット・チリ・ペッパー その2

レッド・ホット・チリ・ペッパー編。その2。


ジョセフを守るための戦い開始。


 

 海の見える丘。この杜王町の名所のひとつかな? とにかく野原と転がっている石、地面がむき出しの道、電柱さえない場所だ。

 仗助、広瀬君、億泰君。そして、私の四人がこの場所に来ています。

 私は、先日レッド・ホット・チリ・ペッパーから奪った青いバラの花を指で弄びながら海を眺めてた。

「姉ちゃん、ソレ持ってきたのかよ。」

「焦った本体が来てくれたらなって、思って。」

 うちに来たレッド・ホット・チリ・ペッパーの焦りようからして、寿命を1年取られたのは完全に想定外だったはずだ。なら、何がなんでも取り返したいはず。

 ところで、なぜ私達が、こんな辺鄙なところに来ているのかというと…、実は空条さんがココを指定したんです。

 詳しいことは待ち合わせ場所に集合してからだそうだけど、きっと、レッド・ホット・チリ・ペッパーのことだよね?

 うん…、仗助の方もそう思ってるっぽい。

 億泰君が虫に刺されると文句言ってる。広瀬君は、こんなところに来た理由について聞いてきたので、空条さんが呼んだことを伝えた。

 たぶん、レッド・ホット・チリ・ペッパーのことだろうって。

 びっくりする広瀬君。そして億泰君に至っては、近場にあった小さな木の枝を折っていた。そしてすごい顔…。

 そうだよね…。億泰君にとっては、お兄さんを殺した仇なんだから…。じゃあ、お父さんを殺した、私は?

「……現れたのか?」

「ああ。現れた。おとといの夜に俺らの家にな。」

「なんで野郎のことを俺に黙ってたぁーーーー!!」

 億泰君が仗助に掴みかかりそうな勢いで叫んだ。

 そこへ、空条さんが来た。

「電気の通っている街中じゃあ、奴の話をするのは危険だ。俺が二人に黙ってろって言ったのだ…。」

「承太郎さん!」

「こんな野原に集めたのも話を聞かれないためだ。」

「億泰! 俺だってよぉ、チリ・ペッパーにゃ完全に頭にきてる! 奴は知らねー間に、人ん家に張り込んでやがった! 聞いたり、かっぱらったりは奴の自由! 色んな家で物や金を盗んでいると俺はみたぜぇ~~~。」

「あと、覗きもね…。」

「えっ!? まさか、ミナミさん…。」

「風呂場の照明から覗かれてたみたい…。」

「うわ、最低だ! まさか直接本人から言われたの!?」

「うん…。」

「仗助君、よく怒らなかった…。」

「頭にきたに決まってんだろぅがーーー! あの野郎、次現れたらギタギタのボコボコだぜ!」

「レッド・ホット・チリ・ペッパーの怖いところは、その気になればいつだって電気のある所なら自由自在に移動できることだよ。」

「それだけじゃねぇ! 野郎が弓と矢を持ってる以上、電気さえあればどこからでも射れるってことだ。早いとこ、本体を見つけて叩かねぇとならねぇ。で? その方法を考えるためにここに呼んだんっすよね? 承太郎さん。」

「ああ…。だが少し違う。」

 空条さんが少し訂正した。

 

 見つけ出すことは、できるそうだ。

 

 見つけ出せる人物が、今日の正午の杜王町の港に到着する予定になっていると。

 

 えっ? あと、2、30分だよ?

 

 しかしその人物は、とても年を取っていて、体力もスタンド力落ちていて、80歳になろうかという歳で…、足腰も弱って杖をついていて、2年前に胆石除去手術も受けており、白内障も患っていて、さらに歯は総入れ歯……。

 あれ? なんだろ? 引っかかるな?

 80じゃなくて、79歳ってのが。

 

 そういえば…、私と仗助のお父さんって……。

 

 その時、バチバチっと音が聞こえた。

 えっ? こんな電線ももない場所で電気の弾ける音…?

 私達が振り返ったとき、そこには億泰君のバイクが放電しているのが見えて、放電はあっという間にレッド・ホット・チリ・ペッパーに変わった。

 

『確かに…、聞いたぜ~~~!』

「なっ!?」

「エンジン? バイクのエンジンに!」

 なんて用意周到というか、用心深い奴!

『今日の正午に、港だとぉ~~~? この俺を探し出せる、スタンド使いだとぉ~~!?』

 レッド・ホット・チリ・ペッパーがバイクのエンジンをかけて、ハンドルを握る。

 まさか…、このまま…!? 行く気なの!?

 

 ジョセフ・ジョースター…!

 “私達のお父さん”を殺すために!!

 

 止める間もなく、レッド・ホット・チリ・ペッパーがバイクを発進させた。

 直後、億泰君がザ・ハンドで右手を振り下ろした。

 空間が抉れ…、そして…、一瞬にして億泰君の体がバイクの後ろに乗った。

 そこからは、億泰君とレッド・ホット・チリ・ペッパーの戦いだった。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーは、その性質上、電気がないと力が出せないし、スタンドそのものの維持もできないらしい。

 だから、必死だ。億泰君に壊されたバイクのバッテリーを守るのに! そして電源となる電柱とかは、遙か彼方(100メートル以上先)!

 私達は、億泰君を援護するため戦いの場へ急いだ。

 戦いは、億泰君が圧倒していた。空間を削る能力。確かに恐ろしい! 瞬間移動ってとんでもないね!

 けど何か嫌な予感がする…、レッド・ホット・チリ・ペッパーが挑発してる。

「億泰君! 挑発に乗っちゃダメ!」

 私は叫んだが遅かった…。

 渾身の力で振り下ろされた、ザ・ハンドの右手が地面を抉り、その下にある地下の電気ケーブルが掘り起こされてしまった。

 そして復活したレッド・ホット・チリ・ペッパーが、一気にパワーを取り戻し、億泰君のザ・ハンドの右手を……切り取った。

 その結果、スタンドのダメージのフィードバック効果により、億泰君の右手が地面に落ちた。

『てめーは、精神的に未熟なんだよー! あの兄貴を精神的に上回ってなきゃ、敵討ちなんて最初から無理なんだよ、ボケが! ギャハハハハハ!』

「それは…、どうかな?」

『あ?』

 私の言葉を耳にしたレッド・ホット・チリ・ペッパー。

「私の能力を教えてあげるよ。一つ目。生命の寿命を1年分ごとに青いバラの花に変えること。二つ目…。」

 私が指差す先を、レッド・ホット・チリ・ペッパーが見た。

『ゲッ!?』

「“無機物”があれば、どこにだって出現するってこと! 私がいる、この杜王町にいる限りね!」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーが尻尾を入れている地下電線の反対側から、鮮血色の赤い根っこである、ブルー・ブルー・ローズがニョロニョロと出ていて、レッド・ホット・チリ・ペッパーは、大いに焦っていた。

『うおおおおおおおお!?』

 いくらスピードがあっても、距離が近すぎる。忽ち根っこの先でひっかかれ、ポンポンっと何本か赤い茎の青いバラの花が咲いて落ちた。

「ミナミ、いつのまに制御を!?」

「違う…。たぶん、最初からこの野原の下に根を張り巡らせてたんだ。偶然です。……草木と虫とはいえ、“命”がここにはあふれてるから。」

 なんとなく、分かってきた気がする。

 自分のスタンドの傾向を…。

『ち…、ちくしょおおおおおおお! だ、だが老いぼれだけは、ぶっ殺す! 確か、ジョセフ・ジョースターだったか!? 見つかってたまるか!』

 トドメとばかりに襲いかかろうとした根っこを必死になって回避して、レッド・ホット・チリ・ペッパーが電線の中に逃げていった。

「今日には死んじゃうかも知れないよ~?」

 っと、地下電線に向かって言ったら、バチッ!と一瞬弾けた。あ、きっと焦ったな? フフフ。とりあえず、レッド・ホット・チリ・ペッパーから出た青いバラは全部回収。あと、右手を切られた億泰君の治療は仗助が。

 億泰君は、悔しがっていた。完敗だと…。

 そんな億泰君に、広瀬君が諭した。

 敵討ちだとか、勝つか負けるとかじゃあない、ジョセフ・ジョースターさんを守ることを考えるんだよ、それがレッド・ホット・チリ・ペッパーを倒すことに繋がる、君はソレをしなくちゃいけないよ、みんなのために、僕らの住んでいるこの町のために…っと。

 広瀬君……。

 

 一方で、仗助と空条さんは、冷静にレッド・ホット・チリ・ペッパーよりも早く港に行かないとっと言ってる。うん…、冷静なのは良いけど…。もうちょっと配慮を…ねぇ。

 

 立ち直った億泰君も入れて、私達は、港へ急いだ。

 

 




ミナミは、ブルー・ブルー・ローズを制御できていません。
ブルー・ブルー・ローズは、独自に動いています。
野原の下に根を張り巡らせていたのは、偶然です。


それにしても話を追うごとに、康一の強さと魅力が増している気がする。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レッド・ホット・チリ・ペッパー その3

レッド・ホット・チリ・ペッパー編。その3。



今回で決着。


 

 と…、到着まで20分というところで、港についた私達。

 空条さんは、電気のスタンドであるレッド・ホット・チリ・ペッパーが何が何でも海上を航行している船に乗り移ろうとするだろうとみている。

 そのために利用する物…、それは、ラジコン飛行機。

 たしかに、バイクのバッテリーに取り憑いて潜んでいられるんだから、もっと微量の電量でも可能なんだろう。きっとできる。

 仗助と億泰君がボートの準備が終わったと言った、エンジンにもレッド・ホット・チリ・ペッパーがついてないことを確認したのだけれど、空条さんが仗助と広瀬君と私に残れと言い、億泰君と自分が船に行くと言った。

 理由は、レッド・ホット・チリ・ペッパーの本体がすでに近くにいる可能性が高いからだからだった。

 遠距離でもかなり強いレッド・ホット・チリ・ペッパーが、もし本体の近くにいれば、もっと強くなると踏んでの策だった。

 それと、私が持っている、レッド・ホット・チリ・ペッパーから奪った青いバラの花(寿命)を餌にするためだと、私に小さく耳打ちしてきた。

「お前が、地下の電線に向かって『今日には死んじゃうかも知れないよ』と言ったのは、奴には相当堪えたはずだぜ。」

 ああいう手合いの悪党は、死ぬことを何よりも恐れるはずだと、空条さんは私の耳元で言った。

 そして、私と仗助、そして広瀬君は、残った。

 億泰君が、ボートで出発する間際、広瀬君にありがとうっと言っていた。

 そして私達は、ラジコン飛行機が飛ばないか周囲を警戒した。

 

「くっそぉ~! 承太郎が…、本体を探すためにお前らを残すとは…、しかも『ラジコン』を見抜かれている! クソッ!」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 いや、レッド・ホット・チリ・ペッパーの声!?

 バチバチと、コンテナの横にあった排水溝からレッド・ホット・チリ・ペッパーがラジコン飛行機を抱えて飛び出てきた。

 そしてコンテナの陰から、誰かが出てきた。ギターを持っている。

「空条承太郎。頭の切れる男だ…。やっぱあの男にだけは見つかりたくないぜ……。」

「あんたが…。」

「その通りだぜ、ミナミちゃん。」

 その物言いは、完全にレッド・ホット・チリ・ペッパーだ。

 ギタリスト? ロックンローラー? そんな派手な姿の若い男だった。

「初めまして、ミナミちゃん。音石明(おといしあきら)、19歳だ。」

「へえ…、ちょっと年上だったんだ。」

「年上は嫌いかい?」

「嫌いじゃないけど。」

「こら、姉ちゃんに馴れ馴れしくすんな!」

「ほ、本体が出てきたってことは…、つまり…、わざわざ出てきて自己紹介したのは! 僕と仗助君とミナミさんを“完全に殺せる”って確固たる自信があるから!」

 わぁお…。なるほど…。広瀬君の分析が正しくないことを祈りたいね。

 音石がギターで、イエ~~スと返事をした。

「姉ちゃん、康一…、下がってろ。もし…俺に何かあっても、すぐに逃げられるように…。」

「仗助…。」

「じょ~すけ~。お前のクレイジー・ダイヤモンドに対しては、この小指だけしか使わん! この小指で、お前の腕を吹っ飛ばすと! 予告しよう! さっきの億泰のようになぁ~。」

「今日死ぬかもしれないのに、そんな余裕こいてていいのかなぁ?」

「っ…、まっ、花はあとで回収するさ。時間がないからよ~~。さっさと決めるぜ!」

 うん。焦ってるね。空条さんの言うとおり、私の言葉は…、相当効いてたみたいだ。

「行くぜ、仗助!」

「だが、ちょいと待ってくれ。その前に、おめーが小指だけつーんなら、俺の方もルールを決めとくぜ。」

「あっ? ナマ言ってんじゃあねーぞー! おめーごときにゃルールなんて…。」

 次の瞬間、音石の左手の小指を仗助のクレイジー・ダイヤモンドが折った。

 あーあ。焦りがここにきて効いてるね。

 すんごい悲鳴上げてる。

「ルールは、いらねーかい! そいつはど~~~もよぉ~~~! 行くぜ、コラァーーー!」

「ああああ! なんてことしやがんだ、この野郎! 俺の大切な小指がぁーーー! 折れちまったぁーーー!!」

「小指ぐらいで大げさな…。本当に…、あと何時間? あと何分で死ぬかもよ? 寿命の残量なんて見えないからねぇ…。あとどれぐらい残ってるかな?」

「ぐっ! このアマ…! あとでお仕置きだ! けどその前にこの怒りをどこにぶつければぁぁぁぁ!?」

 すると音石は、ギターを構えた。

 みるみるうちに、折れてあり得ない方向に行っていた小指が元に戻り、激しい演奏を始めた。曲調は、まさに怒り。怒りを見事に表現している。うん、腕は確かなようだね。ギタリストとしては。

「表現できたぜ…。俺のハートを! 究極の怒りを! 表現できたぜ~~。」

「やってみろ! 音石ぃ!!」

 仗助がクレイジー・ダイヤモンドを放った。

 しかし外れた。いや、そもそも本体を狙ってない…。

 港のアスファルトの下の電線を通じてレッド・ホット・チリ・ペッパーが仗助の足をすごいスピードで動かし、方向を変えさせたんだ!

 港の地下電線は張り巡らされているらしく、…もしかして、場所としてはヤバい?

 もう! こんな時にこそ、私のスタンド・ブルー・ブルー・ローズでしょ! なんでいつも良いときに来ないかなぁ!?

 戦いは、わずか1分も経ち、アスファルトの下を光速レベルで移動するため、レッド・ホット・チリ・ペッパーの動きはまるで忍者の分身を錯覚させるほどだ。

 仗助がどんどん傷つけられ、劣勢になっていく。

 なんで…、どうして? 私は、目の前で傷つけられている弟さえ助けられないの!?

 

 家族を失うよりも…、“自分自身”が怖い…。

 

 おとといの夜の音石(レッド・ホット・チリ・ペッパー)の言葉が脳裏を過ぎった。

 違う! 私は…私は…!

 

 ホントウのコトダロウ?

 

 違う!

 

 ウソじゃ、ナイ

 

 違う!!

 

 オマエは、“ワタシ(私)”をオソレテイル

 

「いやあああああああああああ!!」

「ミナミさん!?」

 

「うぉおおおああああああ!?」

「うわっ!」

 私が頭を抱えて叫んだ直後、周囲一帯にブルー・ブルー・ローズが出現していた。

「し、しま…! ラジコンにまで…!? げぇ!」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーが、根っこが生えてきたラジコン飛行機を捨てた。

「ひ、ひぃ!? に、逃げ場が…! ミナミぃ! スタンドを止めろぉ!!」

「無駄だぜ! 姉ちゃんのスタンドは勝手に暴走してんだよぉ! 止められねぇんだよ!」

「お、おおおお、お前も肥やしになりそうだってのに、なんで落ち着いて…!?」

「へん…。姉ちゃんに殺されたって、恨むわきゃないだろ?」

 

「ば…馬鹿弟…。」

 

「ミナミさん?」

 私の心が落ち着くと共に、周りに出現していたブルー・ブルー・ローズが消えた。

「ハーハーハーハーハー! 死ぬかと思った!! ブベハッ!?」

 過呼吸になってる音石。クレイジー・ダイヤモンドがレッド・ホット・チリ・ペッパーを殴り、ダメージのフィードバックされた。

「み、ミナミぃ…、しょ、正直まったくなめてたぜ…。お、おれはよぉ~~~、マジにお前に彼女になって欲しいなぁ、な~んて思ってたぜ~? そんでいて、ブルー・ブルー・ローズを利用すりゃ…って。けどよぉ、本気で殺すべきは、空条承太郎でも…、仗助でもなかった…! お前だ…ミナミぃ!」

「後悔しても…、もう遅いよ?」

「自分の…、過ちは反省しなくちゃぁなーー! もう、余裕はねぇ! 必死になるよぉーーーーー!!」

 するとレッド・ホット・チリ・ペッパーが光り輝きだした。

 凄まじいなんてもんじゃない。車のハイビームのような強烈すぎる目に痛い光だ。

「町中の電力を我がレッド・ホット・チリ・ペッパーに集中させる! 今までこのパワーを使わなかったのは、これをやるとしばらくは、俺のパワーの源である、この地方一帯の電力がゼロになってしまうからだ! しかし、もう構わん! 仗助とミナミと康一! おめーらをぶっと倒したあとは、飛行機のバッテリーで飛んでいって、ジョセフを殺すだけだからなぁーーーーーーーー!!」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーの光が緩む、直後凄まじいパワーでレッド・ホット・チリ・ペッパーが仗助を襲った。

 近くにあった小さいコンテナを吹っ飛ばし、コンテナを運ぶためのフォークリフトまで仗助が吹っ飛んだ。そしてフォークリフトに叩き付けられ、フォークリフトが破壊された。

「仗助!」

「死ね、ミナミぃ!!」

「!」

「ぬっ!?」

 レッド・ホット・チリ・ペッパーが私を攻撃しようとした直後、私を包み込むようにブルー・ブルー・ローズが出現した。

 根っこの隙間から見えたが、ブルー・ブルー・ローズが出現したことで、レッド・ホット・チリ・ペッパーが攻撃を躊躇して離れた。

「ちぃ! 先に仗助だ! てめぇは、見てな、弟の最後をよぉ!!」

「あっ!!」

 私は、ブルー・ブルー・ローズに阻まれ動けなかった。まるで檻だ。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーが倒れている仗助に向かって行った。

「やめ…!」

 私は根っこの隙間から手を伸ばす。だが届くわけがない。

 根っこの隙間から見たのは…、クレイジー・ダイヤモンドの力で再生された破裂したタイヤにレッド・ホット・チリ・ペッパーが包み込まれて閉じ込められた光景だった。

 そうだった、仗助のクレイジー・ダイヤモンドは、ある程度、再生するまでの時間を変えられるんだ!

 タイヤの素材は、ゴム。つまり絶縁体。つまり、電気が来ない。電気のスタンドであるレッド・ホット・チリ・ペッパーには大敵!

 でも…、ホントウの狙いは違った。

 音石は、パニックになったフリをしただけだと言った。そしてタイヤ内部にいたレッド・ホット・チリ・ペッパーがタイヤを突き破った。

 その瞬間。

 タイヤは破裂する。つまり……。

「ここは港。吹っ飛ぶ方向は…。」

「…海。」

 空気が抜ける勢いでタイヤがレッド・ホット・チリ・ペッパーごと海に落ちる。

『ギャアアアアアアア! う、海はまずい! 海はまずいんだよ~~~!!」

「塩水は電気を通しやすいけど…。」

「そいつが大量だったら、四方八方に…散る!」

「中学校で習ったよね~。仗助。」

 私は、ブルー・ブルー・ローズの檻から抜け出しながら仗助と笑い合った。

 で、スタンドが四散しちゃった本体の音石は、というと…、立ったまま、イッちゃってました。

 

 か……勝ったのかな?

 

 それにしても、さっき暴走したせいか、体から力が……。

 意識が……。

 私を心配する仗助と、広瀬君の声が遠い…なぁ……。

 あれ? 夢を見てるのかな?

 ヨボヨボの大柄なおじいさんの横からボロボロのレッド・ホット・チリ・ペッパーが襲おうとし、ブルー・ブルー・ローズがコートから生えて根を張って守り、その隙に、億泰君が船員に扮した音石を殴り倒したのは……。

 

 

「…ナミ…、ミナミちゃん。」

 

「…?」

「姉ちゃん、起きれそうか?」

 私は、港のアスファルトの上から起き上がった。

 まず目に映ったのは仗助の顔、それから……。

「あ…。」

「だいじょうぶかのう?」

「…あなたは…。」

「ジョセフ…、ジョースターじゃ。」

「!」

 眼鏡を付けたヨボヨボの大柄のおじいさん。ジョセフ・ジョースターが、そう言った。

 

 お父さん…

 

 私は、今までずっと言いたかった言葉のひとつも言えなかった。

 




ジョセフ到着。
でも言いたかった言葉のひとつも出せなかったミナミ。
まあ、しばらくはお互いに気まずい。

ブルー・ブルー・ローズの出現できる範囲は広いので、陸続きじゃなくても無機物があれば海上でも生えてくる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

透明な赤ちゃん

透明な赤ちゃん編。


かなり難しかったです。


 

 音石明は、刑務所行きになりました。

 スタンド使いとしてやってきたことで裁かれたといよりは、部屋から押収された五億円相当の盗品が決めてで懲役3年。

 億泰君と空条さんが今度スタンドを使ったら、地の果てまで追いかけて息の根を止めると脅し、刑務所の方が安全だとビビったらしく、大人しく服役しているそうだ。

 海に落とされた影響で、レッド・ホット・チリ・ペッパーは、ボロボロ。そして精神的に追い詰められたせいで戦いの時のような強さも失われたようで、空条さんが怖いのもありきっと再起不能だろうということだ。

 音石に持って行かれた弓と矢は、部屋から見つかり、無事にSPW財団に回収されて保管されることになった。

 あと、ブルー・ブルー・ローズが音石から奪った寿命は、面会の時に返した。メッチャ感謝され、服役が終わったら、お友達から!って言われて、付き添いで来ていた仗助に睨まれてました。返事はごめんなさいってことで、お断りしました。

 

 そして…、事件が解決したあとの私達は……。

 

「も~し、もし! 聞こえてる~!?」

「……はぁ? なんか言ったかのう?」

 あーもう…、ジョセフ・ジョースターさん…、まあ、れっきとした私達のお父さんにあたる人が、メッチャクチャ老け込んでて、苦労しています。

 そりゃ、79歳だもんなぁ…。

 2年前に胆石の手術に、白内障、あと歯は総入れ歯、杖を使わないと足腰も危ない……、そして、メッチャ耳が遠くて会話も大変。

 今、私達は、ジョセフさんを連れて自宅に向かっている途中です。

 ただし! 母さんには会わせません。時々、ジョセフ・ジョースターを恋しがって泣く母のことだから、もし本人と出会ったら大変だ。なので、遠目に見るだけということで。

 あと…、うちのお爺ちゃんにも会わせられません…。だって、お爺ちゃんより年上なんだよ? とんだ雷が落ちるよ、きっと。

 とかなんとか考えてたら、仗助が、ジョセフ・ジョースターさんのことを、ジョースターさんって呼ぶって言った。

 そっか…、そうだよね。いきなり初めて会った人だし…、15年もほっとかれたし(意図せず)、今更お父さんって呼べないよね。

「じゃあ、私もジョースターさんって呼ぶ。」

「……そうか。そうじゃな……。」

 ああ~…、すごい気まずい…!

 ドラマみたいな、感動の対面と打ち解けってならないよ!

 仗助と目が合い、お互いにジョースターさんに気づかれないようため息を吐いた。

 しかし、ちょっと目を離した隙に、ジョースターさんがいなくなった。

 近くにいた人に聞くと、長距離バスに乗っていったらしい。慌てて見たら、札幌行き…って!

「あああああああああああああああ!」

「わあああああああああああああ!」

 私達は、全速力で走って追いかけた。

 うん、たぶん、中距離走のタイムは、一気に縮んだんじゃないかな? って、ぐらい走ったよ。

「じょおおおおお、だんじゃないっすねーーーっすよ! コラァ!」

「まったくーー、もう!」

 走りすぎて横腹痛い、死ぬ…かと思った。

「すまんかったのう。……?」

 ああ…、自販機…ジュースジュース…。

「仗助君…、ミナミちゃん…。何かがわしのズボンを引っ張っとるんじゃが…?」

「へ? あっ、そう…、引っ張られてどっかいかないでくださいよ?」

「じょーすけ、ジュース買おうよ。」

「さんせー。」

「じょ、仗助く~ん、ミナミちゃ~ん!」

「えっ? どうしたんで……、えっ?」

 私が見たのは、ジョースターさんが手にしていた杖が見えない何かに奪われ、軽く振り回されてから落ちたところだった。

「うそ…。」

「姉ちゃん?」

「ちょっ、今見てなかった!? なんか見えない何かがジョースターさんの杖を…。」

「はあ?」

「オーマイゴッド! 仗助くん、ミナミちゃん! スタンドが笑いおった!」

「どこどこ!?」

「姉ちゃん、どうしたんだよ?」

「だから、何かいるんだって!」

「おいおい、いくらボケに付き合ってやってるからって…。」

「だから!」

 その時、野良犬がうなり声を上げ、ナニかに襲いかかろうとした。

「ハーミット・パープル!」

 次の瞬間、ジョースターさんが手から紫色の茨を出し、見えないナニかを絡み取ってそれを持ちあげて両手で受け止めた。

 

 オギャアアアアアアアアアア!

 

「…赤ちゃん?」

「なんか泣き声が聞こえるっすね。もんのすごい近くのようだけど…。」

「違うよ、仗助。」

「えっ?」

「ここじゃよ、仗助くん…。赤ん坊じゃ! 丸裸の赤ん坊がココにおるんじゃ…。本物じゃ! 触っとる感触だと分かる『透明』なんじゃ。この赤ん坊…。」

「なっ!?」

「信じられない…。」

 私は、ジョースターさんが抱えている透明な物を手で触った。

 フニフニした柔らかい感触…、そして温かさ。これは…、まごう事なき…、赤ん坊です。

「透明な、赤ちゃんだ。」

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパーの件が終わって、安心したのもつかの間、私達の町は…、杜王町は、決して安心できる場所ではなくなっていたみたいです。

 

 

 その後、どうしたかって?

 まず、赤ん坊が何者かに透明にさせられたんじゃなく、赤ん坊自身がスタンド使いだとジョースターさんは分析した。

 丸裸のままでいさせるわけにもいかないし、まずお母さんを探さないことにはこの子の能力は解けないだろうということで、まずは赤ん坊用のグッズを買いに。

 あと、触った感じで分かったんだけど、赤ん坊は…女の子でした。

 仗助に赤ん坊をまかせ、私は、ジョースターさんと、ベビー用品を買いに店に入った。

 たくさんある用品の中からどれが良いか聞かれるので、同じ女の子でも、分かるか!っとツッコみ。で…、結局たくさん買っちゃった…。メチャクチャお金かかったけど、ジョースターさんのカード払い。

 

 で…、赤ちゃんの服やオムツ、そして帽子も被せ、靴下もはかせた。本当に透明で、顔がないから常人が見たら不気味がられるのは間違いない。

 そこでジョースターさんが、一緒に買ってきた化粧品を使い、顔をファンデーションで塗った。

 顔を塗ったことで分かったけど、かなり可愛い子だった。これなら顔立ちも分かり、母親探しの良い情報源になりそう。

 最後に目だけは塗れないので、サングラス。

 しかし…、油断してた。

 赤ちゃんの透明にする力が強まり、ファンデーションも、服も、終いにはジョースターさんの手まで透明にしてしまった。

「ジョースターさん! 手を離せ!」

「えっ? えっ!?」

「早く、その赤ん坊から手を離して! 全身透明にされちゃう!」

 ジョースターさんは、ベビーカーに赤ん坊を乗せた。

 しかし、離してもジョースターさんの手は透明なままだった。

 そうこうしていると、ベビーカーまで透明に。けど、半径30センチぐらいが。

「やばいぜこりゃ~~! 赤ん坊から半径30センチぐらい全てなんでもかんでも透明にしちゃうみたいだぜ~~~!?」

「あっ…。」

「? どうしたんじゃ?」

 私の異変にジョースターさんがいち早く気づいた。

「やばい…。ま、マズいよ…。」

「どうした、姉ちゃ…、っっ!?」

 

 ベビーカーの下に、ブルー・ブルー・ローズの根っこが…。

 ウソでしょ!?

 今にもベビーカーの下から登って、赤ん坊を狙おうとしてる!

 

「ミナミちゃん! スタンドを引っ込めるんじゃ!」

「で…できないの…。」

「姉ちゃんのスタンドは、暴走してんだ! 自分の意志じゃ操れねぇ! あっ。」

 っという間に、ブルー・ブルー・ローズの根っこがベビーカーに登ろうとして、ベビーカーを動かしてしまった。

 緩やかな坂道をベビーカーが走って行ってしまう。それを追いかけて、ブルー・ブルー・ローズの根っこが動いた。

「あ、ああ、ああああああああ!」

「マジか!? こんなヤバいときに!」

 

 なんで!? なんで赤ん坊を狙うの!

 違う! こんなの私の意志じゃない!

 

 ストレスによって、赤ん坊の力は強まり、ベビーカーを丸ごと消したどころか、周囲にあった木も、地面も透明にした。

 私達は追いかけ続けて、やがて…、ベビーカーが木にぶつかってひっくり返る音がして、赤ちゃんの泣き声が移動して…、そして、ドボーンっと水音がした。

「と、透明が…。」

「水に落ちた!?」

「じょ…、仗助くん、ミナミちゃん…。」

「ち、ちくしょう! 泡さえ見えねぇ! バシャバシャ音立てろよ!」

「仗助くん…。」

「やかましい!」

「あ…ああ…。」

 見ればブルー・ブルー・ローズが、赤ん坊を探すように水の底に現れていた。

「……ごめんなさい。」

「っ、姉ちゃん!?」

「母さんに…、よろしく言っといて。」

 私は、仗助とジョースターさんが止めるよりも早く、水に飛び込んだ。

 見ず知らずとは言え、赤ん坊を肥やしにされてたまりもんですか!

 こんなの物が…こんな物が! 私の精神の具現であるはずがない!

 

 ヒテイしても、ムダダ

 

 うるさい!

 

 ワタシ(私)を、ヒテイするコトは

 

 黙れって言ってるでしょうが!

 

 己ヲ、ヒテイスル、コト

 

「どこにいるのよおおおおおおおお!」

 私は、ブルー・ブルー・ローズの根っこを引きちぎりながら水の中を探し回った。

 手は傷ついても…、私からは、青いバラの花は咲かなかった。

 まさか…、私自身は、能力範囲外!? 自分の傷を治せない仗助と同じ!?

「ミナミちゃん。わし…。」

「来ちゃダメ!」

「これから、死ぬかもしれんから。その時は、君達のお母さんによろしく伝えといてくれ…。」

「えっ?」

「なにしろ、歳が歳じゃからのう…。」

 透明になってしまった片手に、折りたたみナイフが握られているらしかった。

 次の瞬間、ジョースターさんは、ナイフで透明になったもう片手を刺して傷つけた。大量の血が水の中に流れ出る。

「何してるの!?」

「ジョースターさん!」

「…色を、付けておるんじゃよ。水に。」

 流れ出た血が、みるみるうちに水に広がり、水を赤く染める。ブルー・ブルー・ローズとは違う色…。けれど。

 やがて、赤く染まった水の中心に透明な球体のそれを見つけた。

「いた…。仗助!」

「おう!」

 クレイジー・ダイヤモンドが、水の中から、透明な赤ん坊を抱き上げた。

「ジョースターさん…。ムチャして…。」

「格好つけたかったかったんじゃよ。お前達の前で。」

 ジョースターさんは、そう言って笑った。

 ブルー・ブルー・ローズは、その間に消えていた。

 

 その後、赤ん坊は、ジョースターさんにだけ心を開くようなり、少しでも離そうとするとそこいら中を透明にしてしまうようなってしまった。

 なので、母さんのところに行くことは保留。透明な赤ん坊のお母さん捜しのため、ジョースターもホテルに滞在することになりました。

 

 




透明な赤ちゃん、後の静編は、かなり難しかったです。

ブルー・ブルー・ローズが赤ちゃんを狙って勝手に出現。
ベビーカーがブルー・ブルー・ローズの根っこに押されてうっかり坂道を。
そして追いかけに行くブルー・ブルー・ローズ。そして水に落ちても水底から狙う。
ブルー・ブルー・ローズは、ミナミの意志では動かせないので、本当に勝手に動いています。
ミナミは、この話の時に自分が仗助と同じで、本体である自分が能力範囲外だということを知りました。


次回は、岸部露伴、かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漫画家

岸辺露伴編。


ブルー・ブルー・ローズと、それを持つミナミの興味を示した露伴は……?


2019/07/18
誤字報告で、岸辺露伴を、岸部と書いてました。修正しました。


「ミナミさん、『ピンクダークの少年』って知ってます?」

「知ってる知ってる。面白い漫画だよね。」

 広瀬君が漫画の話をしてきたので、私も漫画好きだから話は盛り上がった。

 広瀬君が言うには、この町に、その作者である岸辺露伴が住んでいるそうだ。

 それで、昨日、間田と一緒に家に直接行って、サインも貰ってきたそうだ。

 とてもいい人だったそうだ。

「ミナミさん、興味ありません?」

「興味はあるよ!」

「じゃあ行きませんか?」

「えっ? いいの?」

「原稿を書くのを邪魔しなければ、歓迎だって言ってましたよ。」

「本当? じゃ、じゃあ…お邪魔しちゃおうかな?」

 えへへ…。有名漫画家か…。

 サイン色紙買って持って行こっと!

 

 

 行クナ

 

 

「?」

「ミナミさん、どうしました?」

「ん…。なんでもない。」

 私は、広瀬君の案内で岸辺露伴の家へ向かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 岸辺露伴の家のチャイムを鳴らさず、広瀬君は、戸を開けて入った。

「勝手に入っていいの?」

「お、おかしいぞ~?」

「えっ?」

「け、今朝から僕、おかしいんだ…。体重がマイナスだったし、気がつくと露伴先生のところに…。」

「それはおかしいね。」

「み、ミナミさんを連れてこなきゃって気がして、つい…。なんでだろ? あれ?」

「広瀬君?」

 私は広瀬君に手を掴まれて家の中に引っ張られていった。

「ぼ、僕の意志じゃない! 体が勝手に!」

「もしかして、露伴先生って…。」

「ああ! そうだ、僕は…、あの時…!」

 

「やあ、君が東方ミナミか。」

 

「えっ?」

 私は、家の中の一室に連れてこられ、そこで名前を呼ばれた。

「お、思い出した~~~! ミナミさん逃げて!」

「…あなたが、岸辺露伴先生?」

「そうだが?」

「広瀬君に何をしたの?」

「少しばかり記憶を剥がして、“書き加えた”だけさ。君を連れてくるようにね。」

「私に?」

「ブルー・ブルー・ローズ。」

「っ!」

「僕は、君のスタンドにとても興味がある。この杜王町に根を張り巡らせて、無差別に命を奪っているという、生と死を操るスタンドを持つ君の人生に!」

「どうして…。」

「君のことと、スタンドのことは、康一君の記憶から知ったよ。そこでなんだが、ぜひ僕の作品のモデルになって欲しい。」

「お断りするって…言ったら?」

「断るだって? 君にそんな選択肢はない!」

「ああ! 見ちゃダメだ!」

 岸辺露伴先生が、書きかけの原稿を私に見せた。

 途端、私の体が本のようにほどけていく。

「これが…。」

「さてさて、君の人生を見せてもらおうか!」

 

 行クナと、言ッタノニ

 

「!? これは…。」

 

 見セ ナイ

 

「ええい! これは、君のスタンドの…意思か!? いいや、何が何でも見させてもらうからな!」

 

 ダメ

 

「いくら拒絶しようとも、僕の能力の前ではーーー!」

 

 ダメ ダメ ダメ ダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ

 

「なんだこれは!? すごい! すごいぞぉ! これはイイ! ここまで頑ななのを僕は見たことがない! 書き加えるのがもったいないが、僕の作品のためだ! 僕に全てをさらけ出してもらう!」

 

 死 ネ

 

「? なっ!?」

 露伴先生が手にしていたペンから、そして部屋全体からブルー・ブルー・ローズが出現していた。

 動けない私の視界は、ブルー・ブルー・ローズの鮮血色の根っこで染まるように覆われ、そして意識が遠のいた。

 

 

 

 それからどれくらい時間が経っただろう?

 なんか…騒がしいような…?

「…ん? じょーすけ…?」

「ミナミさん!」

 目を覚ましてまず見えたのは、部屋の中がメチャクチャになってたのと、ボッコボコに机などの家具を破壊しているキレてる仗助と、仗助に負けたのか血だらけで家具の瓦礫の下敷きになっている露伴先生だった。

 本みたいな状態から回復した康一君が、何があったのか説明してくれた。

 まず、私が広瀬君に家の中に引っ張り込まれるのを、仗助と億泰君が見ていて、怪しんだ二人が家に近寄ろうとしたら、ブルー・ブルー・ローズが家からブワッと生えてきて中の異変を察知。

 露伴先生は、直前で私に自分を攻撃させないよう書き込んだらしくギリギリでブルー・ブルー・ローズの攻撃を逃れてたけど、自分から傷つきに行っても青いバラの花が咲いてしまうため、ブルー・ブルー・ローズに囲まれて立ち往生していたらしい。

 だがピンチを恐れるよりも、ブルー・ブルー・ローズの性能や特徴に興味津々でスケッチとメモを取っていて、その間にブルー・ブルー・ローズの包囲網を億泰君がザ・ハンドで破りながら入って来たのだが、億泰君まで本みたいにされ行動不能に。

 それを見ていた仗助は難を逃れたものの、億泰君にもし仗助が助けに入ったら焼身自殺するよう書き込みをされてしまい、出てこざるを得なくされた。けれど目をつむった状態で。とにかく原稿を見たら本のような状態にされてしまうことが分かっているからこその行動だった。

 目をつむった状態で露伴先生を倒すために進み出たのだが、広瀬君から奪った記憶の資料で仗助が髪型のことを貶されると問答無用でキレることを知っていたため、挑発。

 結果、仗助は狙い通りキレてしまい、目を開けてしまったものの…、キレすぎてて、露伴先生のヘブンズ・ドアーが効かなかったっということだった。

「あーあ…、どんだけ貶したんだか…。」

「そういえば、ミナミさん、どうして仗助君は、そこまで髪型のことを貶されると怒るんですか?」

「それはね…。」

 ここから先は、私がざっくりと覚えている過去のこと。

 

 4歳だった私達に突然の不幸が訪れた。

 それは、仗助が突然高熱で倒れてしまったことだ。

 母さんには見えていなかったけど、人型の人じゃない手が、仗助の体を蝕んでいたのを、私は見ていた。

 私が見ていた手のことは母さんに話しても信じて貰えず、あまりに突然のことで気が動転していたんだろう。母さんは、車で雪道を病院まで走らせようとした。その時はお爺ちゃんもいなくて、私も乗ってた。

 けど、当時の杜王町は、まだ開発中で雪道に車輪を滑らせて立ち往生してしまった。

 救急車を呼ぶべきだったと後悔する母さん。私は、毛布でくるまれた仗助を抱きしめていることしか出来なかった。

 そんな時だった。

 夜の雪景色の中、場違いな青年がいたの。

 血だらけで、制服を着ていて、たぶん、学生さんだったのか?

 一番特徴は、その髪型。そう…、今の仗助と同じ、リーゼントだったの。

 その青年が、学ランの上着をタイヤに挟ませて、車を押し、立ち往生していた車を走らせる手助けをしてくれた。

 仗助は、それから50日間も病院に入院。けど…、仗助も青年のことを見ていたみたいで、意識が戻ってからは、髪型をリーゼントにするようになった。

 4歳だった私は、その時の青年の顔を覚えてない。けど、私には、その人が仗助を救ってくれたヒーローのように見えた。何のためらいもなく、勲章であるはずの学ランの制服をズタボロにしてまで助けてくれたこと。それは、仗助も同じことで、仗助にとって憧れであり、生きる見本となったんだ。

 

「だからね。その人と同じ髪型を貶すことは、憧れのその人を汚すことと同じ事。だから怒るんだよ。」

「けどよぉ、それにしたって短気すぎやしねぇの?」

 億泰君の言うことはもっともです。でもね…。

「それは…、たぶん、うちの母さんの遺伝かな?」

「おーう…。」

 

 で? 私は、なんでその人の顔を覚えてないのかって?

 だって、当時4歳だよ? しかも双子の弟がいきなり死にかけてたんだよ? 不安と怖さで涙で目がそれどころじゃなかったって。

 ざっくりと、リーゼントの学生さんだったなぁってぐらいしか、覚えてないよ。

 

 そして、この直後、まだ意識があった露伴先生が、ペンを手に、紙に私が話した話と自分が体感したことをメモとスケッチ。

 億泰君も広瀬君も、もうここまで来たら褒めるしかないと言うほどの、スーパー漫画家だ。善悪はないが。

 そこにキレてる仗助が露伴先生を見つけ、全治1ヶ月になるまでボコボコにしました。

 偉いね~、アンジェロみたいに家具と一体化させなかっただけ慈悲だよ。

 




4歳の子供の記憶なんてあやふやでしょうよ。
筆者の私だって覚えてないし。

露伴が見ようとしたミナミのこれまでの人生の記録は、ブルー・ブルー・ローズに妨害されて見えず、しかも周囲を取り囲まれる。恐らく攻撃できないよう書き込みされたため、ブルー・ブルー・ローズは、長期戦で餓死させるぐらいのつもりで露伴を取り囲んだ。攻撃はできないが、触れれば傷が付くのでそれで花を咲かせることは可能だった。

もし、露伴がブルー・ブルー・ローズが人を生き返らせられると知ったら、その奇跡を見るため、実行させるために手段は選ばなかった可能性は高い。ブルー・ブルー・ローズが、それを察して行動をしたのかは不明。

なお、ミナミは、仗助が倒れたときにはすでにスタンドを覚醒させていた。そのため仗助を殺しかけていたクレイジー・ダイヤモンドが見えていた。けど、スタンドの性質のせいか、自分がスタンドにとり殺されかけることはなかった。
また、仗助が入院中にDIOの手下に誘拐されます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奇妙な対面

オリジナル回。


仗助は、承太郎と共に、ネズミ退治に行っています。


一方で、ミナミは……?


ミナミの文通相手の口調が迷子です。


注意。

2019/07/19
感想欄にて、目の色のことを教えて貰ったので、一部書き換え。
サファイア色から、透き通るような青に変更。



 …う~ん、柄にもなく緊張してるわ。

 こういうとき、仗助がいれば…、って、さっき空条さんとどっか行ってたじゃん。

 ま、どっちにしても一人で対面するって決めてたんだから、このままで行くけど…。

 

 私は、今日…文通相手に会う予定になっています。

 

 キラさん、っていうんだけど、顔もフルネームも知りません。そして性別だって知らない。

 でも、文面で几帳面な大人の人だなってのは感じてました。

 私は、キラさんと同じで自分の正体は明かしていない。高校生の女子だって分かったら、もう文通終わり? それは、寂しいなぁ…。

 こじんまりとした、個人経営の隠れ家みたいな喫茶店を指定されて、手紙の地図通りに来て、待ってます。

 どうしよう…、ドキキドキしてる…。こんな心臓がおかしくなりそうな時って、どれくらいぶりだろう?

 その時、カランコロンっと、喫茶店の戸の鈴が音がした。

 私は、ビックーッとして背筋を伸ばして、そちらを見ていた。

 

 え、エリート風サラリーマンがそこにいました。

 歳は…、30ぐらい?

 少し頬がこけたように見えるけど、全体的に整った顔立ちとエリートな風格が印象的です。

 まさに、大人の男の人でした。

 

 喫茶店のマスターが「いらっしゃいませ」と言うと、我に返った私は、慌ててカウンターの上の甘いカフェオレに顔を向けた。

 き、キラさんじゃなかったら、失礼だよね!

 っと思ってたら。

 

「君が…、ミナミさんかい?」

 落ち着いた低音の声が私に語りかけてきた。

 うわ…、男の人の声が綺麗だって思ったの初めて!

「は…はひ…。」

 やべ…、噛んだ。

「隣、いいかね?」

「…はい。」

 キラさんが、カウンターの私の隣の席に座った。

 マスターに紅茶を注文してる。

「君は…、学生さんかい?」

「はい…。」

「手紙の文面で、なんとなく分かってたよ。ずいぶんと背伸びをしているというのが。」

 あちゃー! 見抜かれてた!

「だからといって、別に問題視すべきことじゃない。」

「…はい。」

「肩の力を抜いて。別に私は、君を責めているわけじゃないんだ。」

「うぅ…。」

「どうしたんだい?」

「き、緊張してて…。その…。」

 落ち着け! 私!

「い、一度でイイから…、キラさんに会いたかったから…、今すごく、緊張してます。」

「…そうか。」

「がっかり…しましたよね? 私が学生で、しかもこんなナリだから…。」

「いや。そんなことはない。むしろ、私も君と会いたいと思っていたからね。今このときを、とても嬉しく感じている。」

「へ…?」

「ふふ、やっとこっちを見てくれたね。」

 私が思わずキラさんの方を見ると、微かに笑われた。

「ほう…、透き通るような青い瞳だ…。扉からの距離ではただ青いとしか思わなかったが、こうして近くで見ると、より鮮やかに見える。」

「あ…どうも…。」

「? どうしたのかね?」

「……目については、あまり良い思い出が無くて…。」

「どうしたんだい? 虐められたとか?」

「…私の父は、外国人です。この通り目だけじゃなく、顔立ちも日本人離れしてたから、よくからかわれて…。どうしてみんなと違うんだろう?って小さい頃はいつも思ってました。」

「そうか…。それは悪いことを聞いてしまったね。」

「いえ、いいんです。綺麗って言ったら、キラさんの声の方がよっぽど綺麗です。」

「私の声がかい? 初めて言われたよ。」

「そうなんですか? とても綺麗だと思いますよ?」

「…そういう君の手も、目と同じぐらい綺麗だと思うがね。」

「私の手がですか? 前にも手紙で書いてましたよね。小猫より私の手?ってツッコみ書いちゃった。」

「私も衝動で書いてしまって、あとで後悔したよ。しかし後の祭りだった。…ガッカリしたかい。こんなおかしな男で。」

「いいえ。チャーミングでいいと思いますよ? 誰だってうっかりとか、好き好みは自由だと思いますし。」

「そうか…、そう、思うのかね。」

「ぁ…。」

 クスクス笑ってたら、キラさんが不意に左手に触れてきた。

「…ふむ、少し荒れてるようだね。炊事でもしたのかい?」

「はい。新しい洗剤がちょっと合わなかったみたいで。」

「それはいけない。今度、私が手に優しい洗剤を見繕ってあげよう。」

「いえ、そんな…悪いですよ。」

「いやいや、手は大事にしなければいけない。特に…君のはね。」

「?」

「おっと、すまない。冗談だよ。気にしないでくれたまえ。」

 ……なんか、不思議な人だなぁ?

「ところで…、ずいぶんと甘い匂いがしているが、ずいぶんたくさん砂糖を入れて飲むようだね?」

「あ、はい。甘くないと飲めなくて…。でもコーヒーそのものは好きなんですよ? キラさんは、ブラック?」

 それから、私は、キラさんと日常会話的な感じで話をした。

 なんか、不思議だな…。今まで文章でしかやりとりしてなかった人が、今目の前にいて、こうして会話をしている。

 緊張は、ほぐれたけど…、なんだろう? この胸の暖かさはようなものは…。ドキドキしている?

 その時、キラさんの持っているカバンから着信音。

 キラさんが携帯電話を見た。

「おっと…、すまない。急な用事ができてしまったようだ。今日は、とても楽しかった。」

「わ、私もです。」

「ここの代金は私が立替えておくよ。」

「えっ、そんな悪いですよ。」

「いいんだ。私からの気持ちだよ。」

 キラさんは、そう言って微かに微笑みを浮かべ、席を立って私の分もお会計をした。

「……そうだ。」

「はい?」

「また、会いたくなったら、手紙に書く。…また、会ってくれるかい?」

「…は…、はい!」

 私は、緊張しながらなんとか返事をした。

 そして、キラさんは、さよなら、っと言って、去って行った。

 私は、ボーッとその後ろ姿を見送った。

「はあ~~~~。」

 キラさんがいなくなり、私はヘロヘロとカウンターの机にへばった。

 キラさんは、思っていた以上に…、大人の人でした。

 ちょっと、変わってる…ような気がしなくもないが、気にはならない。

 どうしよ~、続きの手紙…なんて書こう?

 私は、耳まで真っ赤になってた。ああ、柄にもないなぁ。私、今日おかしいよ。

 どうしよ~、仗助に見られたら、絶対問い詰められちゃうよ~。

 私が一人パニックになっていると、マスターが冷たいおしぼりと、お冷やを出してくれた。

 

 やっと落ち着いて帰ったのですが、帰ったら、仗助が、なんか臭い。

 そしてなんかメッチャ落ち込んでるし、怪我までしてる。

 どうしたの?って聞いたら、2万5千円の靴と、ミスタージュンコのブランドの靴下を泥水に落として台無しにしたらしい。

 どうやら、仗助にとっては、今日は厄日だったようだ。

 




ここで、ミナミが無事だったのは、後の伏線(?)。
そして、色々な意味でピンチでもある。
気づいて~! 誰か気づいて~!っていうのを書きたかった。

なんかの話であったような気がして…。殺人鬼とお付き合いしてたとかって話。
キラさんと、ミナミの関係はそんな感じにしたかった。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブルー・ブルー・ローズ その1

タイトルは、ミナミのスタンド名だけど、ぶつ切りです。続きません。


うっかり、あの世とこの世の境目に入っちゃったミナミを、スタンドが……。


 

「あれ?」

 私は、気がつくと、同じポストの前に来ていた。

 おかしいな。さっきまでの道と違う…。

 なんだろう? この感じ…。私は、ずっとこの空気を知っていた気がする。初めてのはずなのに。

 それでいて、なんか後ろから…、息がかかる。っというか、誰かいる? 痴漢?

 ま、こういうのは今に始まったことじゃないし、振り返り様に蹴れば良いよね。

 そう思って動こうとしたら、鮮血色の根っこが私を絡み取った。そのせいで振り向けなくなった。

 

 ブルー・ブルー・ローズ!

 

『いい? そのまま絶対に振り向かないで。』

 

 女の子の声が聞こえた。

『アナタのソレがアナタを守ろうとしているわ。連れて行かれないように。だから、そのまま従って。』

「だれ?」

『いいから、絶対に振り向かずに、その根っこに従って進んで。』

「……動けないのに。そんなこと言われても…。」

 ブルー・ブルー・ローズの根っこがグイグイ、ずりずりっと私を前へと引っ張る。視界は、ほとんどない。鮮血色の根っこで覆われて目線だけを後ろへ向けることさえできない。

『だいじょうぶよ。もう少し。』

「いやその…、私が歩いてるんじゃなくて引っ張られて…。」

『いいじゃない。守ってくれる存在がいるんだから。』

 やがて、空気が変わった。そしてブルー・ブルー・ローズが、バラッと根っこを散らし、私を解放した。

 そこは、もといた場所だった。あのポストも奇妙な空気もない。

『よかった。あなたには守ってくれる力が存在していてこうして戻ってこれたわ。』

「えっ? わっ!」

『ちょっと、ビックリしないでよ。』

「ビックリするよ! 半透明な女の子がいたら!」

『それにしても驚きね…。』

「何の話?」

『あなたは、とても“あの世”に近いところにいるわ。常時ね。』

「はっ?」

『アナタをさっき守ったモノのせいかしら? アナタは、常に生と死の間にいるみたい…。こんな人間見たことないわ。』

「それは、きっと…。」

『だからこそ、気をつけて。その力の使い方を間違えないように。』

「っ…、分かってる! でも、まだ分からないんだよ! 私だって好き好んでこんな力欲しかったわけじゃないんだから! こんな…、この世でもっとも不平等な力! 欲しくなかった!」

『どういうこと?』

「……大きい声じゃ言えないけど…。」

 私は、声を潜めて私の能力、ブルー・ブルー・ローズが出来ることを話した。

 女の子の幽霊は、辛そうに、悲しそうに顔を歪めた。

「私のせいで…、肥やしになった命は、どれだけいるだろうね?」

『……そう…。』

「そこら辺の殺人鬼より、殺人をしているようなものだよ。けど、私はどうすればこの力を制御できるのか分からない。じゃあ、どうしたらいい? 死ねばいいの?」

『それは…。』

「けど、私は死ねない…。私が死ねば、今まで集められた青いバラの花がどうなるか分からない。この力に意味があるのなら、その意味を知らないまま死ぬなんてしちゃいけないんだ…。きっと…。あの世の境界から、私を引きずり戻したのも…。」

『……祝福…。』

「えっ?」

『“神の祝福”。青いバラの花言葉だったかしら…? 力を持つということは、きっと意味があるはずよ。アナタの青いバラには。』

「意味なんて…。」

『死ねないんでしょ? 何も知らないまま死ぬわけにはいかないんでしょ? だったら、生きなさいよ。そして答えを見つけるの! しゃんとしなさい!』

「……分かってるよ。言われなくても。」

 

「あれ~? 姉ちゃん、何してんの?」

 

「あっ、仗助。ここに女の子…、あれ?」

 私が仗助の方を見てから女の子の方を見たら、女の子は消えていた。

「姉ちゃん?」

「…なんでもない。」

 私は、仗助の方へ行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

side:幽霊の少女

 

 

 

『……神様の祝福…。確かに、もっとも不平等と言えるかもしれないわね。アーノルド…。』

 

 杉本鈴美(すぎもとれいみ)は、首を切られている犬と共に、あの世とこの世の境目に、不気味に咲く赤い茎を持つ鮮やかな青いバラの花を見つめた。

 

 




ブルー・ブルー・ローズの能力の都合上、常に生と死の境目の空気を嗅いでいるのを自覚していないミナミさん。

鈴美さんに出会うも、名前も聞かず、殺人鬼の話とかは聞いてない。
後に康一君経由で聞く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

悪ガキ共

重ちー編。





ブルー・ブルー・ローズに導かれて行った先でミナミは、仗助達を見つけるが……?


 

 幽霊の女の子に出会った後日。

 

 私は、ブルー・ブルー・ローズをよく見かけた。

 

「あぁ…、もう…。」

 

 何かに向けて導くように動いているのが気になる。気になってしまう。

 うまいこと他の人の目に映らないよう微妙な感じで出ているのが腹が立つ。

 そういえば、仗助は、あれから新しい靴とか靴下とか色々買いそろえてたけど…、一応言っといたよ、お金は大事にねって。

 総額は知らないけど、あの調子じゃ貯金もすっからかんになるよ。きっと。あ~いつ、必死に貯金貯めてたのに…。

 

 あの馬鹿弟だ…。今頃、銀行で頭抱えてるんじゃないかな?

 なんとなく、直感で感じてました。

 

 双子の直感?っと思いつつ、ため息を吐いてたら、足をブルー・ブルー・ローズが引っ張った。

「なによ…? どこへ連れて行こうっての?」

 ここまでしつこいのは初めてだ。

 こうなったら、言うとおりにすべき? 私の意思でやってるわけじゃないよ?

 私は仕方なく、ブルー・ブルー・ローズに従って方向転換した。

 

 ブルー・ブルー・ローズの鮮血色の根っこが、ピョコピョコと進む先に出たり入ったりして、この先だと言わんばかりに動いている。

 

「あれ? 仗助? 億泰君…?」

 

 進む先に、仗助と億泰君がいた。というか何か追いかけるように移動している。

 私が立ち止まっていると、またブルー・ブルー・ローズが足をクイクイと引っ張った。導こうとしている先は、仗助達が走って行った先だ。

「…なに?」

 私は、走らず歩いた。

 そして遠目に、仗助と億泰君に気づかれないよう追跡した。ブルー・ブルー・ローズがそう導くのだ。

 やがて、中学生らしき男の子と、小さな無数のスタンド、そしてその男の子と会話しているらしい、仗助と億泰君を見つけた。

 声をかけようかと思ったが、直感でそれを止めた。

 な~んか、やな予感がするなぁ…。

 あの中学生の男の子…、小銭が入った貯金箱を二人に見せてるよ……。ますますやな予感がする。

 まあ、いいや、ブルー・ブルー・ローズが、どこかから持ってきた双眼鏡持ってきてくれたよ。なに? 仗助達を監視しろってこと?

 私は、その後様子を伺った。

 

 形兆のような軍隊型のスタンドを使えるらしい男の子のスタンドが、やがて杜王町全土内のゴミ箱の中から、ブルースタンプ(※換金すると数十円や百円になる紙切れ)を集めさせていた。

 

 あんの、悪ガキ共…、いや仗助か…!

 明らかにあの男の子のスタンドを利用してるじゃん!

 馬鹿じゃないの? 馬鹿なの!? 阿呆なの!? 姉として恥ずかしいよ!

 んなこと考えてたら、あの男の子に集めさせたスタンプを換金してきた仗助。かなりの大金…、あの札束からするに、6万以上はあるね。

 それをあの男の子に渡してたけど、二人への分け前はわずか1万円。そりゃそうだ。二人とも不満げそうだけど。

 う~ん、あの様子じゃまだまだあの男の子こと利用する気満々そうだな。

 そろそろ姿を見せて、スペシャルなげんこつ入れてやろうか!?

 っと、思ってたら、あの男の子のスタンドがスタンプ以外に集めてきたハガキや封筒などを仗助が捨ててた。

 その中にある金券でも求めてたのか、億泰君が必死に中を探している。

 そして…、やがて宝くじの券を見つけ出していた。

 

 ん? あの様子だと……、さては、当たってたな!?

 

 あのリアクション…、間違いない!

 馬鹿なの、アホなの、大馬鹿なの!? 当たりクジを無償で無名で寄付するような善人を見習え!

 あ~~~~~、もう! うちの警察官のお爺ちゃんが知ったら、どんな雷が落ちるだろう!?

 私が頭を掻きむしっている間に、悪知恵が働く欲まみれのガキ共は、とうとう銀行に向かいやがった。私は、ブルー・ブルー・ローズに導かれずその後を追跡した。

 待てよ…? 換金するとなると手続きが複雑なはずだ。なにせ宝くじの券…、いかなる闇と不幸がもたらされるか分からない。よく大金を手に入れて身破滅させるっていう話はあるけど、あのガキ共のことだ、いかなる手段をもってしても大金を欲しがるはず…。それこそ、スタンドという常人には分からないモノを利用してでもね!

 もう少し様子を見て、これ以上のアホやったら空条さんのところに連絡したろ。そしたらげんこつどころじゃ済まないだろうね。ククク…。

 銀行前の曲がり角で待ってたら、小切手持って出てきやがったよ、悪ガキ共め。

 さてと…、あとは、全部見てたことを言って、げんこつ入れて、小切手没収してと…、って考えてたら、どうやら仲間割れ発生。

 あの男の子が欲に負けたらしく、小切手を自分だけのモノにしようとしたらしい。それに怒った億泰君が男の子を殴った。そして仗助が小切手を奪っていった。

 うん…。げんこつ数発と、顔面追加だ。

 けど、あの男の子スタンドが小切手を奪い、そして逃走劇が始まった。

 馬鹿! 馬鹿だ、大馬鹿だ!

 欲が絡むとこうも人間ってダメになるわけ!? ああもうこれだから金って奴は…。

 私は、あの男の子がスタンドの力で建物の壁を登り、そして仗助と億泰君は、スタンド同士で手を繋いで上へと本体ごと持ち上げて追いかけていた。

 さすがに私の力じゃ上までいけない。仕方ない…、上での戦いが終わるまで様子見だ。

 

 しばらくして……。

 

 紙切れが上から風に乗って飛んでいくのを見た。そしてあの男の子のスタンドがそれを集めに降りてきた。

 さらにしばらく待つと……。

 足がフラフラしてる仗助と億泰君、そして顔を殴られたらしい男の子が降りてきた。

 

「仗助、億泰君。」

「あ? 姉ちゃん? どうしてここに?」

「仗助。私ゃ恥ずかしいよ。」

「へっ?」

「こんな弟とその友達を持った、自分がねぇええええええええ!!」

「ぎゃあああああああああああああ!!」

 私は仗助を捕まえてアルゼンチンバックブーリーカーをかけてやった。

「み、ミナミさぁん!? もしかして見てた!? 俺らのこと見てたぁ!?」

「だ、誰だど?」

「こんの馬鹿弟がぁあああああああああああ!!」

「ぎえええええええええええ!!」

「億泰君! お前もだよ!!」

「ご、ごめんなさあああああああああああい!!」

「ひひひ、ひ、ひぃいいいいいいいいい!?」

「君も軽々しく利用されてんじゃないの!」

「おらも!?」

「まとめて、お仕置きだからね!!」

 

 人気の無い杜王町の一角に、二人の青年と、ひとりの少年の悲鳴が木霊しました。

 

 とりあえず、空条さんに連絡するのだけは勘弁してやった。

 

 

 

 




生身の喧嘩じゃ最強クラスの姉ちゃんこと、ミナミさんでした。

スタンドによる悪さなんて立証しようもないので、500万円は、とりあえず姉ちゃん預かりかな?
たぶん話を聞いた承太郎は、呆れるだろうけど。


そろそろ、吉良吉影かな……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺の姉ちゃんが!?(side:仗助)

オリジナル回。


間接的に、仗助達、吉良吉影と接触。


仗助のキャラが迷子。


注意!


 

「ね、ねえ…、マズいんじゃないの? やめたほうが…。」

「っるせーよ、康一ぃ!」

「静かにしろって、気づかれるぞ?」

 俺達は、今、姉ちゃんを追跡中。こっそり、コソコソと。

 いつになく髪型気にしたり、鏡と睨めっこしてるから変だとは思ってたんだぜ~?

 でよ~、気になって見てたら、洗面台使うのかって聞かれてつい頷いちまって、姉ちゃんがどいた。そん時に姉ちゃんの奴、文通の手紙を置き忘れてやがったんだ。

「で…、見ちゃったの?」

「…見た。」

「よくしばかれなかったな…。」

「見たのは内緒にしてる。バレたら、げんこつ確実…。」

「そ、それで?」

「……全部はよーく見てないけどよぉ…、会いたいって書いてあったのはしっかりっと見たぜ。」

「お、男ぉ!? おめーの姉ちゃんのミナミに!?」

「いや、まだ確定じゃねぇけど…。」

「けどさ…、鏡と睨めっこって、完全に異性の人に会いに行く感じじゃないの?」

「姉ちゃんが! 俺の姉ちゃんが!!」

「落ちつけ、仗助!」

「ご、ごめん、仗助君! まだ決まったわけじゃないよね! そうだよ、うん!」

 くっそー! もし男だったらどうすんだよ! 康一め!

 俺達は、姉ちゃんを見失わない程度の距離を保ちながら姉ちゃんを尾行した。

 やがて、見たこともないこじんまりした、家を改装して喫茶店にしましたって感じの隠れ家みたいなとこに姉ちゃんが入って行った。

「お~、こんなとこあんだな。よっぽど通じゃないと知らないってとこだぜ、こりゃ。」

「くっそー! この店の感じじゃ、入ったらカウンターしかないと見たぜ! 中の様子が見えねぇ! 康一、エコーズ、出せ!」

「ええー! なんでそんな盗聴みたいなことしなきゃいけないの!?」

「仕方ねぇだろ! 遠距離で、んなことできるスタンドっつーたらお前のしかないんだつーの!」

「ミナミさんのことが心配なのは分かるけど、もうちょっとお姉さんのこと信用してあげたら?」

「俺はなぁ、姉ちゃんに変な虫が付かねぇか心配で心配で仕方ねーだけな・の!」

「まあ、あれだけナイスバディじゃな…。」

「お~く~や~す~?」

「ばっ…! ちげぇよ! 誰が見たってそう思うじゃねぇの!? なあ!?」

「僕に話を振らないでよ!」

 俺らが店の前でギャーギャーやってると、やがて戸が開きそうになり、大慌てで建物の隙間に逃げ込んだ。

 

「…どうしたのかね?」

 

 男!? それも年上と見た!

 

「いえ…、今さっき、うちの馬鹿弟が見えたような気がして…、気のせいでした。」

 

 ば、馬鹿弟って…、姉ちゃ~ん…。俺、泣くぞ。

 

「ここのコーヒーや紅茶もいいが…、そろそろお昼だ。私がいつも行くところでよければ、ちょっとしたピクニック気分でサンドイッチでもどうだい?」

「いいですね。」

 

 なぬ~~~~!?

 

 俺は思わず飛び出しかけたが、億泰と康一に止められなんとか踏みとどまった。

 さっきの声…、姉ちゃんだ。姉ちゃんが、先に店の中にいた男と出てきた!

「マジかよ~。」

「ぐ…くく…。」

「押さえて、頑張って! 仗助君!」

「ハーハーハーハーハー…!」

 俺はなんとか気持ちを抑えて、陰から歩いて行く、二人の姿を見た。

 男の後ろ姿だけ見れば、背も170以上はあり、全体的にスマートに見える。なんていうか、大人のエリートサラリーマンって感じだ。

「お、追うか?」

「ったりめーだろ!」

「れ、冷静に…。」

 二人に抑えられながら、俺らは姉ちゃんと男の後ろ姿を追った。

 やがて町の中心地にある、サンジェルマンっていうベーカリーショップに入って行った。

 

 

 

 

 ※以下、エコーズで聞き取った二人の会話。

 

「ここのサンドイッチは、いつも昼の11時に焼き上がったパンで作るから、とてもパンが柔らかいんだ。だから人気があって、午後1時には売り切れしまうんだ。カツサンドは好きかい? ほら、ホカホカでサクサクしてる。」

「う~ん、迷う。どれも美味しそう。」

「おや? BLTサンドがまだ残ってるね。なんだったら、半分こでもするかい?」

「えっ…、それは…。」

「ふふ。冗談だよ。気持ち悪かったかい?」

「…ビックリは…しました。」

「……耳まで赤くなってるよ?」

「わっ!」

「おっと、すまない。手が滑ったよ。」

「だ、だいじょうぶです…。じゃあ、コレにします。」

「なら、私はコレにしよう。お会計は…。」

「あ! 自分の分は払いますから!」

「そうかい。」

 

 

 

 

 

 side:仗助

 

「のおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「落ち着いて、仗助君!」

「な~にが手が滑っただ!? 絶対間違いなく狙っただろうが!! ちきしょう、殴る、一発殴る!」

「落ち着けって、仗助!! こんな町中で暴れたら大迷惑だぜ!? デートの邪魔したらミナミに今度こそ殺されるぞぉ!?」

「で、でででででででで…、で~~~と~~~~?」

 あっ、目眩が…。頭に血が上りすぎちまった?

「仗助君!」

「仗助!」

 姉ちゃんが…、俺の姉ちゃんが…、とうとう男を作っちまったのかぁ…?

 それも年上って、お袋の遺伝か!? 血は争えないってことかぁ!?

 

 グレート…。俺…、どうしたらいいんだ?

 

 俺が康一と億泰に介抱されている間に、姉ちゃんは男と一緒に店からいなくなってた。

 

 結局その後、見失い、家に帰ったら姉ちゃんの奴、先に帰っててリビングでくつろいでやんの!

「姉ちゃん!」

「ん? なに?」

 しかし、俺は続きの言葉が出なかった。出せなかった。

 落ち着け、俺! 順を追って聞き出せばいいんだ!

「あ、あのさ…。」

「そういえば、あんたベーカリーショップの近くにいたわね?」

「へっ?」

「頭でも打ったの? 広瀬君と億泰君に介抱されててさ。」

「……。」

「なんで黙るの?」

「なあ、姉ちゃん…、あん時誰かといなかった?」

「……。」

「黙るなよ!」

「仗助には関係なーい。」

「いいや、関係あるぜ! 大事な双子の姉ちゃんがどこの馬とも知らない野郎に…。」

「はっはーん。さては…、ストーカーしてたでしょ?」

「あっ!」

「道理で気配があったわけだわ。気のせいじゃなかったんだ。」

「うぅう…。」

「別にやましいことはないよ。文通相手の人とちょっと会ってただけだから。」

「あれが…、キラさん?」

「うん。」

 はい! 裏が取れましたぜ! あれが、姉ちゃんの文通相手のキラさんでした!

「明らか年上だよな?」

「それが?」

「…それがって…。」

「母さんだってメッチャ年の差の恋して、私らを産んだんだよ? それとも年の差の相手は生理的に無理なわけ?」

「そんなことな…。」

「だったら、いいでしょ? 別に何か変なコトしたわけじゃないよ? あれからぽかぽか陽気の公園で、一緒にサンドイッチ食べただけだし。」

「だから! それがもう…。」

「心配してくれてるのは分かるよ。でも、本当に変な意味じゃないよ。」

「けど、耳まで赤くなるか、普通!?」

「……どーこで、何して聞いてたのかなぁ?」

「はっ!? あ、それはその…、俺が頼んで…その…康一は悪くない!」

「へ~~~~~~?」

「あ…あの、その…、手…ゴキゴキ、やめて…。こえぇ!! あ…、ぎゃあああああああああああああああああ!!」

「いつ、どこからついてきてたのか、喋るまでやめな~~い。」

 

 卍固めされ、俺は全部白状したのだった……。

 

 




仗助は、女兄弟がいたら、メッチャ心配しそう。っと思うのは私だけ?


そして、間接的に、遠目に吉良吉影と接触。
しかし、この時点では、『手』を持ち歩いてないので、物的証拠もない。

なぜ、『手』を持ち歩いてなかったのか……。

活動報告の方でも書いてますが、もしも……、吉良吉影が初めて『手』も含めて『全部』欲しいと思える相手を見つけたらという、二次創作です。


吉良のキャラが、そういう意味では違うので、受け入れられないというかたは、今後、このネタを見ないことをお勧めします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

惑う殺人鬼(side:吉良吉影)

無謀にも、吉良吉影sideを書いてしまった!






吉良のキャラがおかしいです。
















それでも良い! って方だけどうぞ。


 

 植物のような平穏な人生の生き方。それが私の生き方であったはずだ。

 

 しかし、私がかつて体験した、“私自身”を、“私自身”にする衝撃をも塗りつぶすような出会いをしてしまった。

 

 まず、澄み切った青空とも、海の青とも違う、澄んだ青い両の眼が、私の人生を決定づけた衝撃を揺さぶった。

 

 最初は、彼女の手だけでよかったはずじゃないかと自問自答する。けれど、得られる答えは、『考えが変わった』としか出せない。

 

 気まぐれで始めた文通の手紙に、ある日付与されていた野良猫の小猫と、若い瑞々しい女の手の写真。

 

 会うつもりなどこれっぽっちも無かったのだが、写真に写った手がどうしても欲しくなった。

 

 手紙の文面からするに、おそらくは一回りは年の違う若い少女だろうと予想できた。自分の正体を悟られぬよう背伸びをしているのが分かってしまう程度には懸命に書いているのだろう。彼女との文通は、それなりに楽しんでいたさ。

 

 しかし写真を送ってきたのが良くなかった。なぜなら、私自身を抑えられなくなってしまったからだ。

 

 ついつい、手を褒める文を書き、衝動でポストに入れていた。ハッと我に返って手紙を回収すべきだったが、時すでに遅かった。

 

 返ってきた返信は、私の文章をただの冗談だと受け取ったと見られる文章だった。…危なかった。

 

 しかし、本当に写真はいけない。抑えが利かなくなってしまったではないか。

 

 このままでは、寝不足になってしまう。昼も夜も彼女のことばかり考えてしまう。だから、会えないかと文を送った。

 

 そして、合意の返信を得て、待ち合わせ場所に、人の少ない隠れ家のような喫茶店を指定した。

 

 会うべきではなかったのだろう。私は、あらゆる意味で判断を間違えてしまっていたらしい。

 

 十代とは思えぬ、発育の良い体は、少々成長しすぎな感を感じさせたが、そこはさほど問題ではない。

 

 私は、あろうことか、彼女の目に、私自身を、私自身たらしめた、モナリザの手を見た時の衝撃を塗り替えそうな衝撃を受けた。

 

 あの青い目を引き立てる、白人の血の濃さが浮き出ている日本人離れした美しい顔立ちも。最初こそ、成長しすぎな感を感じさせた体も、どれもこれも欠けてはならない重要なピース(欠片)だと理解した。

 

 年齢のせいか、子供の頃のように勃起しなくてよかった…っと、心底安心した。

 

 だが、いつまでも見つめ合っていても何も始まらないし、何より彼女の『手』を手に入れられないと思考を切り替えることに成功し、ミナミさんかと聞いた。すると、噛んだのか、微妙な返事を返された。しかし、本人だということが分かればそれでいい。

 

 それにしても、自分に向けられていたあの『青』が、冷めかけているカフェオレに注がれている。それが妙に気になった。

 

 今思えば、やはり会うべきではなかっただろう。

 

 たわいもない会話の末に、こちらを見てくれたことにホッとしている自分がいたことに内心かなり焦ったものだ。顔に出ていなかったようで、ミナミは私の内心に気づいていないようであった。運が良い。

 

 私は、声を聞くべきではなかった。そもそも会話をしたのが間違っていた。

 

 そもそも、なぜ彼女の目を褒めているのだろう?っと自分の意思に反して喋り続けている自分の口が信じられなかった。

 

 すると、あろうことか、私の声が綺麗だと、ミナミは言ったのだ。

 

 そんなことを言われたのは、生まれてこの方一度も無い。思わず思考が停止しかけてしまった。

 

 このままでは、いけないと思考を切り替えることに成功した私は、店のマスターが奥に引っ込んだ隙にと、ミナミの手に触れたが……。

 

 なぜか私は、彼女の手を捥ぐ気になれなかった。

 

 僅かに荒れていたからか? 触ってみないと分からない程度だが、僅かに手の表面が荒れていた。

 

 洗剤が合わなかったのだろうと言っていたので、思考を切り替え、手に優しい洗剤を選んであげようと言っていた。

 

 ふむ…、それは間違っていなかったはずだ。どうせならば、とびきり美しい状態で手に入れたい。

 

 それにしても、甘い香りがする。それがミナミの前にあるカフェオレからだろうっと思い、それを皮切りにたわいもないつまらない日常会話をしていた。

 

 あの香りは…、砂糖をたっぷり入れたカフェオレの香りではないと気づいたのは、鞄の中の携帯電話が鳴ったときだった。

 

 香水では決して実現できないであろう、瑞々しい少女の自然な香りだ。

 

 そして急用ができてしまった私は、いまだかつてない状態の自分に焦るあまり、ミナミのカフェオレ代も含めて支払い、また、会ってくれるかと、聞いてしまった。

 

 返事は、はい…、Yesだ。

 

 店を後にした後、会社に向かいながら、私はグチャグチャな思考をまとめようとした。

 

 なぜ、殺さなかった? あれほどに欲した『手』がそこにあったというのに。そうだ、あの『青』がいけなかったのだ。ミナミという人間を構築している全てのパーツがいけないのだ!

 

 私は、脳から離れぬミナミのすべての形に、発狂しそうな気がした。

 

 仕事を終えて、自宅に帰り、シャワーを浴びて思考を正常に戻そうとした。

 

 本来の予定だったミナミの『手』を手に入れるため、一度は『手を切った』前の『彼女』を拾い上げ、私は思考した。

 

 ミナミという存在を越える手を見つけなければと。

 

 そうしなければ、私の人生は破綻する。私は、そう予感した。

 

 いや、違うっと、切り替え、私は、次こそはミナミの『手』を手に入れるためにミナミに次に会う約束をつけるため返事の手紙を書くこととした。

 

 学生である彼女を、一回りも歳の離れた私が連れて歩けば、不信を周りに振りまくようなものだ。用心しなければ。

 

 しかし、一文字一文字書けば書くほど、脳内を埋め尽くすのは、ミナミの存在そのものだった。

 

 ……私は、本当に、どうしてしまったのだ?

 

 私は、次に会うための約束を取り付けるための手紙を書き切れず、思考の海に一時沈んだ。

 




33歳、吉良吉影、モナリザの手に匹敵する衝撃に出会ってしまう。

ちなみに、この吉良の話は、初出会いの時の後ですね。

たぶん、色々とゴチャゴチャ考えて、頭のどこかで初めて『全部』が欲しくなった人物っと認識し、仗助が後付けた話に繋がるかな?

このままだと、人生が破綻する……。伏線です。一応。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二度目の死

途中から、重ちー視点。


ブルー・ブルー・ローズの青いバラの花により、重ちーは、吉良吉影の爆発から一度は逃れるが……?


 

「あ~、仗助さんのお姉ちゃんだ~。」

「あれ、重ちー君。おはよう。」

「おはよ~!」

 重ちー君は、欲さえ絡まなければ素直で良い子でした。

 ……あの時(宝くじ券の一件)は、しばいてごめんね…。

「姉ちゃ~ん。」

「あ、仗助。」

「およ、仗助さん! 億泰さんも!」

「よぉ! 重ちぃ!」

 なんだかんだあったが、三人は友達という形で収まったみたい。まあ、同じスタンド使いだしね。しかも、ぶどうが丘の中等部の生徒で後輩だったんだし。

「あ、そうだ、仗助さんのお姉ちゃん。聞きたいことがあったんだど。」

「なぁに?」

「おらのハーヴェストが見えるだど? じゃあ、お姉ちゃんもスタンド使い?」

「……一応ね。」

「?」

「おい、重ちー。あんまりそのことには触れないでくれ。」

「なんでだど?」

「い、色々とあんだよ! 色々と!」

「仗助さんのお姉ちゃんのスタンド、見てみたいど。」

「っ!」

「こぉら!」

「いだっ! なにするど!」

「人の嫌がることはするなって、親に教わらなかったか!?」

「こら、仗助。重ちー君は、悪気があるわけじゃないんだから。」

「けど!」

「あのね、重ちー君。私のスタンドは、制御ができてないの。だから君のように自由に操れない。」

「ほへ?」

「青いバラの花を…、見たことがある?」

「それ見たことあるど。触ったら消えたけど。」

「えっ?」

「?」

 つまり、今、重ちー君には、青いバラの花(寿命)が入ってるってことか…。

 私は、仗助と目を合せた。

 どうする? 言うべき? 私のスタンドの能力を? やめとく? 重ちー君、口軽いから? じゃあ、そうするか…。

 アイコンタクトの末、秘密にしておくことにした。

 せめて、重ちー君が死ぬような目に遭わないことを祈るしかないのかもしれない…。

 

 

 けれど…、その祈りは、変えようのない運命に逆らえなかった。

 

 

 仗助と億泰君ってば、この後1000円も重ちー君に借りようとして…。

 母さんが今日お弁当作れなかったし、私も朝寝坊したから作れなかったし。この守銭奴め。

 宝くじの500万円は、私が預かってるし、私が持ってたお小遣いのお金で立替えといたよ。

「あの500万円、貯金してるだど?」

「うん。あんな大金持って帰って見られたら、家族がひっくり返っちゃうよ。」

「……仗助さんは、うらやましいど。」

「どうして?」

「おら、一人っ子だから、お姉ちゃんがいてうらやましいど。」

「こんな暴力的な姉はイヤでしょ?」

「ししっ。暴力は嫌いだけど、おら達のことを本気で怒って叱ってくれただけだど?」

「まあ…ね。」

「おら、仗助さんの姉ちゃん、好きだど。」

「ふふ。ありがと。」

 無邪気に笑ってそう言ってくれた重ちー君って、可愛いね。

「し~げ~ち~~~?」

「うぉ!?」

「こら、仗助!」

「なに、姉ちゃんにちゃっかり好きとかいってやがんだ、こらぁ!」

「やめなさい! この馬鹿弟!」

「ぐぇ!」

 重ちー君の襟首の後ろを掴む仗助の横腹を殴っておいた。

 まーったく、この弟は。

 その後、重ちー君に謝っておいて、重ちー君が中等部の体育館準備室に行けば、体育教師がこっそり飲んでるお茶とコーヒーとかがあると言っていて、一緒にお昼食べないかと誘ってくれた。

 ふふふ、なんか悪いことしてる背徳的な気分になるね。それも良さそうだから一緒にお昼食べることにしました。

 

 そういえば…、なんか覚えのある視線を感じたので振り返ったら、そこには誰もいなかった。

 

「どうしたど?」

「いや…ごめん。なんでもない。」

 私は、重ちー君と別れ、仗助達と一緒にお弁当を買いに行きました。

 そして、約束通り、こっそりと中等部の体育館準備室に。

「来たよ。」

「待ってたど。コーヒー持ってきてあげるど。」

「ありがと。でも苦いのダメだから、砂糖とミルクいっぱい入れてほしいな。もしくは、お茶。」

「俺らの茶も頼むぜ。」

「なんで、お前らもいるど?」

「いいじゃねぇかよ。減るもんじゃねぇし。」

「ん?」

 見ると、重ちー君のサンジェルマンのサンドイッチが入った袋の周りに、ブルー・ブルー・ローズが!

「ああー! おらのサンドイッチに変な根っこが!」

「ダメ、重ちー君! アレに触ったら!」

 

「コラァー! 誰か準備室にいるな!」

 

「げっ! 体育教師だど! さ、サンドイッチ…。」

「諦めろ!」

 私達は、入って来た窓から逃げました。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 side:重ちー

 

 変な赤い根っこのせいで、おらのサンドイッチが…。テリヤキサンドイッチが…。

 けど、だいじょうぶだど! おらには、ハーヴェストがいるだど!

 だけど、体育館準備室にはなかったたど…。体育教師が持ってたかど?

 そしたら、なんでか知らない人がサンドイッチの袋を持っているのをハーヴェストが見つけたど。

 おらは、サンドイッチを盗んだやつを追いかけて行ったど。

 なんか、不気味な奴だど…。

 でもそれよりサンドイッチだど!

「取り上げろ! ハーヴェスト!」

 おらは、ハーヴェストにサンドイッチの袋を取り上げさせようとしたど。

 知らない人は、必死で袋を掴んでて……、袋が破れたど。

 

 女の人の…手首が出てきたど。

 

 サンドイッチじゃなかったど。

 

「なんということだ……。見てしまったか…。そして…、私と同じ能力を持っているのか。このちっこい物は!」

「み、見えるのかど…!? おらのハーヴェストが!」

 ど、どういうことだど? アイツ…、おらのハーヴェストが見える? ってことは、スタンド使いだど!?

 そ、それより、なんでおらのサンドイッチが、女の人の手首に…?

「君。一人かね……? さっきの友達二人も……。そして、あの…娘も…。」

 知らない奴が周りを見回してるど!

「君と同じような能力を持っているのかね?」

「おまえ! 動くんじゃねーど!!」

 やばいど! コイツはやばいど!

 おらは、ハーヴェストでそいつを取り囲んだど!

 得体の知れない、汚らわしい気分がするど!

 女の人の手首を拾おうとしたアイツは、そのまま立ち上がったど。動くなって言ったのにど。

「私の名は、『吉良吉影』。年齢は、33歳。自宅は、杜王町北東部の別荘地帯にあり…、結婚はしていない。」

「?」

「仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。」

「??」

「タバコは吸わない。酒はたしなむ程度。夜11時には床につき、必ず8時間は睡眠をとるようにしている。寝る前に温かいミルクを飲み、20分ほどストレッチで体をほぐしてから床につくと、ほとんど朝まで熟睡さ。赤ん坊のように疲労やストレスを残さず、朝、目を覚ませるんだ。健康診断でも、異常なしと言われたよ。私は、常に「心の平穏」を願って生きている人間と言うことを説明しているんだ。「勝ち負け」に拘ったり、頭を抱えようなトラブルとか、夜も眠れない『敵』を作らないということが、私の社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている。だが…、最近は少しばかり悩ましいことがあったが。まあそれは、君の知ることではない。」

「な、何を…話してるだど!?」

 わ、わけが分からないど!?

 コイツおかしいど!

 その時、アイツの背後に、スタンド…の影が!

 アイツのスタンドだど!

「つまり重ちーくん。君は私の睡眠を妨げる『トラブル』であり、『敵』というわけさ。誰かに…、特にあの『娘』に喋られる前に…。君を始末させてもらう。キラークイーン! ……と、私はコイツを名付けて呼んでいる。」

 か、仮面みたいに無表情な、猫みたいな頭した人型スタンドだど!

 けど、ハーヴェストをなめるなど!

 それにしても、娘って…誰のことだど? まさか…。

「ミナミ…姉ちゃん?」

「…察しの良い子は、苦手だな。」

「ミナミ姉ちゃんに知られるとマズいってどういうことだど!? おまえ、まさか…ミナミ姉ちゃんの手首を…。」

「それは、少し違うな。」

「?」

「確かに最初は、彼女の『手』が欲しかった。私だけの『彼女』として持ち歩きたいと思った。だが、私の脳がそれは違うと否定したのだよ。」

「ど、どういうことだど…?」

「私は、『彼女の全て』が欲しいと、生まれてこの方初めて思えたのだよ。どうすれば、彼女を極力傷つけずに、あの美しさを手に入れられるか考えているところさ。」

「お、おまえぇぇぇぇ!!」

「ぐっ!」

「ミナミ姉ちゃんに手を出させないど! 少しでも動いたらなんとか脈ってのを、切るど! おまえのスタンド…、どうやらパワーあっても、そんな遠くまで行けるタイプのスタンドじゃないと見たど! 射程距離、1~2メートルぐらいと見たど! 死にたくなかったら、動くんじゃないど!」

「……なるほど。個人によって色んなタイプの能力があるということか? スタンド? ん~~~、スタンドねぇ。ところで……。私のキラークイーンにもちょっとした特殊な能力があってねぇ。」

 ん? なんか、アイツのスタンドが何か持ってるど?

「ハーヴェスト! 取り上げろ!」

 ハーヴェストの一匹にソレを持ってこさせたら、ただの百円だったど。

「私のキラークイーンの特殊能力を教えてあげるよ。どーせ君はすでに、キラークイーンによって始末されてしまっているのだからね……。」

「!? ハーヴェスト!」

「キラークイーンの特殊能力…。それは、キラークイーンは、触れた物をどんな物でも爆弾に買えることが出来るということ。例え…、百円玉であろうとも、ね。」

「ひゃ、百円玉を捨てろ、ハーヴェストぉぉぉ!!」

 

 カチッ

 って音が聞こえて、百円玉が爆発したど。

 

 何が起こったど…?

 おらは…、おらは…。

 

「これで、今夜も、くつろいで、熟睡できるな。」

 

 

 おらは、青いバラの花が散る映像を見たど…。どういうことだど?

「はっ!? お、おらは…。」

「なっ!?」

 吹っ飛んだと思った、おらの体が無傷だど!

 い、意味が分からないど…、で、でも…。

「し、しししし、知らせないと…! ミナミ姉ちゃんが危ないど!」

「チッ!? どういうことだ! それが貴様の能力? いや、違うな…。」

「ハーヴェスト!」

 おらは、ハーヴェストの上に寝っ転がって、ハーヴェストを走らせたど。

「むっ! そんな方法も取れるのか!」

「高等部へ! 知らせないと! ミナミ姉ちゃんが危ないど!」

 アイツに…吉良吉影とかいう奴に、殺されちまうど!!

「早いな…。だが…。」

 あいつの声が遠くなったど。

 急がないと、急がないと!

 

「だめだめだめだめ。」

「あっ!?」

 さ、先回りされて…。

「君は死ななくてはならないんだ。目撃者は生かしてはおけないよ。」

 キラークイーンがまた百円玉を投げてきた。

「うおおおおおおおおおおおおお!?」

「爆発のタイミングは、こちらで自由でね。避けようとしても無駄さ。どうやら、君のスタンドというものは、ちっこいだけにひとつのことをしていると、他にコトには気が回せないようだね。」

「ぐおおおおおおおおお!?」

 爆発が、おらの…顔が…。

「さて、重ちー君。この町にはあと何人、君と私と同じスタンドを使える者がいるのかね?」

「し…知らない…ど…。」

「知らないってことはないだろう? いいかい? 喋らなければ…、君の両親も、始末するよ?」

「!?」

 パパとママを!?

「早く喋れよ。」

「み……みんな言ってたど…! この町にいる殺人鬼…、を探してるな…! 殺人鬼…、おまえのことだど! 『杉本鈴美』もお前を探してるとど!!」

「なに!? 杉本鈴美だと…!」

 い…いまだ…。

 おらは、力を振り絞ってハーヴェストで壁を作ったど。

 そして、高等部へ急いだど……。

「仗助なら…おらの傷を…治せるど……。」

 

 ミナミ姉ちゃんにも知らせなきゃ……。みんな殺されちまうど…。パパ…、ママ…おらが、おらが守らなくちゃ…!!

 

 おらは、やっとの思いで高等部の仗助達の教室にたどり着いたど。

 あとは…、扉を……と、びら…を…?

「!?」

 ま、窓から…アイツが…吉良吉影が…!?

 

「キラークイーンは、すでにドアノブに触っているのだよ。」

 

 カチッ

 

「じょうすけーーーーーーーーーーー!!」

 

 おらのからだが、粉々に…くだけた…ど。

 

 おらは、もう、青いバラの花を見なかったど……。

 

 




ブルー・ブルー・ローズの青いバラの花により、1回目の爆発から生還したものの、二度目の死は回避できないため、重ちー死亡。
重ちーの生存も考えたけど、物語を大きく吉良吉影の追跡の方向に変えるには、彼の死が大きなきっかけになるだろうということで……。

なお、ブルー・ブルー・ローズのことは、吉良は、まだ赤い根っこを見ただけで、それがミナミのスタンドだとは知りません。名前も知りません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

重ちーの死

重ちーの死をきっかけに、加速する運命と物語……。




前半は、ミナミ視点。


後半、吉良吉影視点。


 

 幽霊の少女の杉本鈴美さんが言った。

 

 重ちー君は、死んだと。

 

 ウソだよね…?

 重ちー君には、ブルー・ブルー・ローズの青いバラの花が入ってたんだ。仮に死ぬような目に遭っても、1回だけなら生き返れるのに…。

 まさか2回殺された?

 

『彼の魂が飛んでいくのを見たわ…。あなたの想像通り、間違いなく“2回”殺されたのよ。』

「そんなのウソだよ…。」

「姉ちゃん…。」

 崩れ落ちそうになる私を、仗助が支えてくれた。

 私達は、重ちーがいなくなったことについて、そして仗助と億泰君が目撃したハーヴェストの異常な消え方について、スタンド使いの知人を集めて幽霊の少女の杉本鈴美の所に確認しに来たんだ。

 

 朝、あんな元気な姿を見せてくれてたのに。

 私に挨拶してくれたのに。

 私のこと好きだって言ってくれたのに。

 食べ損ねたけど、一緒にお昼食べようとしたのに。

 たった、5分も経たないうちに…なにがあったの?

 

「泣くな。ミナミ。」

 空条さんに言われて、私は泣いてることに気がついた。

 ジョースターさんがハンカチを貸してくれた。

 空条さんが、仗助から、重ちー君のハーヴェストが最後に残したらしい、ボタンを受け取っていた。

 おそらく犯人の服から千切ったのだろうと見ている。

「は、話が終わったんならよぉ…。お、俺は…帰るぜ…。なんか、妙な気分だぜ…。い…イラついてよ…。」

「億泰君…。」

「億泰君…。なんか変だよ?」

「ああ、重ちーってよぉ、すっげぇ欲深で、なんかムカつく奴なんだが、なんか『ほっとけない』タイプの奴でよ…。死んだってのが信じられねーんだ。それに、今のこの気分…、『怒ったら良いのか』、『悲しんだらいいのか』…、それさえ分からねぇ、イラつきが、あんだよ……。」

「スタンド使いは、スタンド使いと、ひかれ合う…。」

 間田がそう呟いた。

「これでみんな、動き出すわけだ。」

 露伴先生がそう言った。

 

 話が終わり。私達は、それぞれの道に進んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

side:吉良吉影

 

 

 

 うん…? あれは、『ミナミ』か。その隣にいるのは…、『仗助』。

 なぜ二人が共にいる?

 ミナミが泣いているな…。ああ、そんなに目を擦ると、あの『青』が傷ついてしまう。目元の肌も涙で荒れてしまうだろう。

 さりげなく近づき、ウェットティッシュを渡してあげたいものだが……。さて、どうするか。

 

「ねえ、先週の金曜日、あたしの誕生日だったでしょ?」

 

 信号の先にあるカフェにいる二人組の女か…。

 いや、それよりもミナミを…。

 しかし、私は、ふと立ち止まってしまった。そして二人の女の聞くに堪えない会話を聞いていた。

 

「とても、あたしのこの美しい指には似合わないもの。」

 

 ほう…?

 心は醜いが、美しい手と顔をした女だ。

 この私のところに来れば清い心で付き合えるよ…。

 その間にミナミは、仗助とどこかへ行ってしまったが、まあいい。

 ひとまず…“彼女”で、我慢するとしよう。

 

 

 ミナミ…。

 君のことを全て手に入れるための方法は、もっとじっくりと考えなければね。

 『彼女』と共にゆっくりと考えるよ。

 

 




祈り空しく、2度殺されてしまった重ちーを想い泣いてしまうミナミ。

吉良吉影は、仗助がミナミの双子の弟だとは、まだ知らない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恋をした乙女

シンデレラ回。


だけど、ほとんど割愛。


由花子と康一の出番も無し。


仗助とミナミの会話のみ。


 

「最近、印象変わったよね。なんていか、綺麗になったよね、由花子さん。」

「そ~か~?」

 私が最近見かける由花子の印象というか、『綺麗』になってきたなぁって思ったので言うと、仗助は生返事。

「そういえば、こないだ由花子さん、広瀬君といっしょにいたよ。」

「なに~?」

「なんていうか、良い雰囲気だった。」

「どこで見たんだよ!」

「カフェ・ドゥ・マゴだよ。」

「あんにゃろ~、康一に変なコトしたら許さねぇって言っといたのによぉ。」

「別に変なことしてなかったよ。一緒にお茶飲んでただけだし。」

 ああいうのって、なんて言うんだっけ?

 

 ああ、そうだ、こないだのドラマでやってた。

 

 『恋は、女を美しくする』って。

 

 そうだ。確かにあの様子はまさに恋する乙女だった。由花子さん、広瀬君に惚れてたけど、より強く恋するようになったんだね。

 まあ…、あの時みたいに拉致事件とか起こさなければいいけど。広瀬君の話じゃ、反省したっぽいし、だいじょうぶかな?

 

 恋…か。

 

「……姉ちゃん? まさか、アイツのこと考えてね?」

「えっ? いや…別に…。」

「姉ちゃん、嘘吐くと鼻の穴が開くんだよ! 分かりやすすぎんだよ! 俺は反対だからな!」

「だーかーら、キラさんとは、そういう関係でも何でもないんだって。」

「うー…。」

 疑り深いんだから、この弟は…。なんでか異性が絡むと特にね。

 私の交友関係にあんまり口出しされてもね…。それで離れた友達もいたから。

 心配してくれるのは嬉しいけどね。

「恋ねぇ…、恋? そういう仗助こそ、純愛派とか言ってるけど、恋したことある?」

「話を変えるなよ。」

「単純に気になっただけ。で? どうなの?」

「さ、さあ…?」

「仗助…、嘘吐いちゃダメだよ? さ~、お姉ちゃんに全部吐きなさい。」

「イデデデデデ!」

 私は仗助のほっぺを抓りながら、考えた。

 

 私がキラさんに抱く感情ってなんだろうっと。

 

 あの人のことを思い出すと頬が熱を持つ。

 

 初めて会った時、そして二度目に会った時も、胸がドキドキした。

 

 あの人の声を聞くと……。

 

「イヒャイフャイ…。かんふぇんして…。」

「あ、ごめん。やりすぎた。」

 私は、我に返り、仗助から手を離した。

 

 

 ……分からないなぁ。

 

 もし…、三度目に会うことができれば、分かるのかな?

 

 もし、会う約束ができたなら、私、どうなるんだろう?

 

 あっ、そういえば…。

 

「返事書くの忘れてた。」

「まだ文通してんのかよ。」

「それ以外に連絡手段もないもん。帰ったら書く。」

「姉ちゃん、もっかい言うけど、俺は、反対だからな!」

「やっかましいわね。」

「イデッ!」

 しつこい仗助にげんこつ入れといた。

 

 

 私は、全然気づいてなかったけど、ブルー・ブルー・ローズが、シュルリシュルリと、教室の角から何かを伝えたそうに動いていた。

 

 そして、杜王町のムカデ屋という店の店内にある、一枚のコートのボタンにシュルリと生えた。

 

 

 




キラへの想いがなんであるか自覚していないミナミ。

ブルー・ブルー・ローズは、伝えようとしています。けど、ミナミは、まだ知らない。

殺人鬼・吉良吉影と、文通相手のキラが同一人物であることを。


次回から、吉良吉影との戦いが加速する?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブルー・ブルー・ローズ その2

ブルー・ブルー・ローズに再び導かれ……。



ミナミが、キラさんを、吉良吉影として知ります。


 

 ブルー・ブルー・ローズを、またよく見かける。

「……またぁ?」

 私が呆れながら聞いても、ブルー・ブルー・ローズに口は無いため、答えは得られない。

 仕方ない、これも何かの導きということで、私は、またブルー・ブルー・ローズの導きに従った。

 

 私は、やがて、クツのムカデ屋という店の前に来た。

 あれ? 窓が……。

 店の中で、ブルー・ブルー・ローズの根っこが、こっちだと言わんばかりに、フリフリフ振られている。

 私は、少し用心しながら店の中に入った。

 

「あれ? 誰もいない?」

 

 店に入ってみると、お店の人すらいなかった。

 

 なんだろう…? 店の中が…争ったみたいにグシャグシャだ!

 ガラス製の店内を見渡せる部分も内側から破壊されたみたいだ。

 

「ねえ…、何があったの? 私をどこへ導こうとしているの?」

 

 けれどブルー・ブルー・ローズは、答えてくれない。

 ブルー・ブルー・ローズは、店の奥の方へと移動する。

 血が…血の跡がある!

 誰の血? 店の人?

 お店は、家と一緒になっていたらしく、扉の向こうは普通にどこにでもある家庭のようだった。

 血は、ずっと続いている。途中にある証明がすべて壊れている。

 台所もメチャクチャだ。

 その奥の裏への壁が扉ごと破壊されてる。

 ブルー・ブルー・ローズがこっちだと移動した。

 私は、その奥へと移動しようとして立ち止まった。

 

 

「初めてだよ。ここまで追い詰められたのはな……。」

 

 

 この声は……。

 

「なんか、ちょっとした『敗北感』まで感じるよ…。まったく敬意を表するよ、たいしたヤツだ、君は。」

 

 キラ…さん?

 

 私は、爆発らしき破壊で破壊された壁の穴から外を見た。

 

 あの背格好は…、スーツは、キラさんだ!

 それに、空条さんが血だらけだし…、広瀬君が…。

 小さめの人型のスタンドを踏みつけているのは、猫のような頭した人型スタンドで…。

 って、ああ!

 広瀬君を殴った!

 どういうこと? どういうことなの?

 

「これから、君をなぶり殺すからな。」

 

 こ、殺す?

 キラさんが? 誰を? 広瀬君を!?

 

「君の友人が来るまで、1分とちょっと…、じゃなきゃ公衆の面前で『赤っ恥のコキッ恥』をかかされた、この気分がおさまらない。」

 

 うそ…だよね?

 キラさんが……、そんなのって…。

 

「うぐぁ!」

「おいおい…。妙な叫び声をあげるんじゃないぞ。」

 

「広瀬君!」

 

「えっ?」

 我に返った私は、飛び出していた。

 キラさんが、こちらを見た。

 ああ…、キラさんだ…。間違いないよ…。

「なぜ…君がここにいるんだい?」

 ドッと汗をかいた様子のキラさんの声が少し震えていた。

「み、ミナミさ…逃げ…、こ、いつ…は…。」

「お前は、黙っていろ!」

「ぐぇ!」

「その足をどけて!」

「ミナミさん…、悪いが今、とても…とりこんでいるんだ。後ろを向いて、この先の道の曲がり角を曲がって待っていてくれないかね?」

「…従うと…思ってる?」

 

 ヨクモ…

 

「頼むよ…。私は…、目撃者となってしまった君を始末したくないんだから!」

「あなたなの…? 空条さんと、広瀬君を……。」

 

 ヨクモ!

 

「君には、関係のないコトだ! 頼むからここを立ち去ってくれ!」

「広瀬君から足をどけろーーーー!!」

 

「吉良吉影…。それが…おまえの、本名だ。」

 

「ハッ!? 免許証…!」

 広瀬君がサイフから落ちていた免許証を見てそう言った。

「きら…よしかげ…。」

「うっ!」

「お前…、ミナミさんを殺したくない…んだろ…? これで…本名…しら…れて…、殺したくないミナミさんは、これでお前にとって始末すべき相手になってしまったぞ? ミナミさんを殺したくない、理由は、分からないけど…。」

「お…、き、貴様ぁ!!」

「お前は、馬鹿丸出しだ! 自ら弱点を、こんなちっぽけなガキにさらけ出したんだからな!」

「広瀬君!」

「ごめんね…。ミナミさん…、巻き込んじゃって…。由花子さんにも…ごめんって、言っといて…。」

「おおおおおおおおおおお!!」

 猫のような頭した人型スタンドが広瀬君に向けて拳を振り下ろそうとした。

 私が動こうとしたとき、急にガクンッと力が抜けた。

 

 こんな…時に……! なんで!?

 

 私の頭上で、ムハ~っという息づかいが聞こえた気がした。

 

「!」

 キラさん…、否、吉良吉影が私の方を見て一瞬固まった。

 その直後、スタープラチナの拳が、あの猫のような頭した人型スタンドを殴った。

 吹っ飛んでいく、吉良吉影…。

 私は、力が抜けた足でペタンッとその場に座り込んだ。

「康一君……。君は精神的には、その男に、勝っていたぞ……。」

「くうじょうさ…。」

 空条さんは、全身から血をダラダラ流しながら立ち上がっていた。

 どうして…? なんで、今動けないの、私は!!

「き、貴様…、までもぉ…。」

「やれやれ…、よくイイ時計付けているな。だが、そんなことは気にする必要ないぜ。もっと趣味が良くなるからな…、お前の、顔面が。」

 ボロボロのスタープラチナの拳が、猫のような頭した人型スタンドを殴りまくった。あまりの速度と威力に、ダメージがフィードバックされ、吉良吉影がボロボロになる。

 すごい…!

 あんな重傷なのにまったくパワーが落ちてないなんて! よっぽどの修羅場を潜ってきてなきゃできないことだよ!

 それにしても、足が…なんで、力が…!?

 

 足リナイ

 

「!?」

 

 ワタシ(私)は、マダ…

 

「うぅ…!」

 

 ソノ時ジャ、ナイ

 

「…くぅじょ…さ…、ひろせ…く…。」

 

 私は全身から力が抜けて、その場に倒れて意識を失った。

 

 

 

 

「……ちゃん! 姉ちゃん!」

「っ…、じょうすけ…?」

「だいじょうぶか!?」

「仗助…、私…、わ、たし…?」

 体に力が…入らない?

 まるで感覚が無い。

 仗助に頭を支えれた状態で、動かせる範囲で目を動かした。

「!?」

 私は目を疑った。

 私の体、服の上からブルー・ブルー・ローズの根っこが根付いていて、四肢を雁字搦めにしていた。

 あれ? でも、半透明? 実体がない?

「なに…コレ…?」

「ミナミ、動けないんだろ?」

「はい…。」

 空条さんは、すっかり完治していた。仗助が直したんだろう。広瀬君も。

「非常に…マズい状態だ。スタンドがお前の体を蝕んでいる。」

「…えっ?」

「理由は分からん。だが、この症状を俺は知っている。……スタンドによって“とり殺され”かけているぜ。」

「なんでっすか!? ブルー・ブルー・ローズは、今まで、姉ちゃんに危害を加えるコトなんてなかったじゃないっすか!」

「だから理由は分からん。ミナミ…、俺の予想だが、お前の精神状態が極めて不安定なのが原因かも知れない。元々、ほとんど勝手に動き回る暴走した状態のスタンドだったんだ。いつ牙を剥いてきてもおかしくなかった。」

「不安定…? あっ…。」

 心当たりがあるとしたら…。

 

「キラさん…。」

 

「姉ちゃん…。そ、そうか、そういうことか!!」

「? どういうことだ?」

「あの殺人鬼野郎、吉良吉影って野郎は、姉ちゃんの文通相手と同一人物だったんすよ!」

「そ…、そういやそうだ! あのどっかで格好見たことがあるとはちょっと思ったけどよぉ!」

「なんて皮肉な運命なんだ…。そんな近くにいたなんて!」

「ぅう…!」

「姉ちゃん!」

「キラさんが…、どうして…。私は…、何も知らず…。何も…!! 私が気づいていれば…!!」

「姉ちゃんのせいじゃねぇよ。」

 仗助がギュッと抱きしめてくれた。

 でも、涙が止まらない。手が動かなくて、涙を拭うことさえできないなんて…。

 

 

 私は、その後病院に搬送され、空条さんが呼んだSPW財団の医療チームが病院に入って、24時間体制で健康管理をして貰える状態にしてもらった。

 あとで、聞いたことですが…、キラさん…吉良吉影は、顔と指紋を変えて、どこかへ逃げたそうです。

 私は、寝たきりの状態で、病院の天井を見つめながら目をつむった。

 今なら…、分かる…。皮肉だね…、こんな状態になって初めて、アナタ(ブルー・ブルー・ローズ)が、広く、深く根を張っているのを感じているなんて…。

 空条さんとジョースターさんは、精神不安定の原因を取り除けば治る可能性があるとして、吉良吉影の追跡を強化することを決めたそうです。

 私の精神を不安定にさせている因子…、それが吉良吉影だと決めつけ…。

 うん…。間違ってないと思う。

 きっと、そうだ。

 仗助達の追跡を、吉良吉影は、何が何でも振り切って生きながらえたいだろう…

 仗助達は、任せておけと言ってくれたけど、…私にできることは……。

 

 

 私(ワタシ)は、一言こう言ってから、意識を闇に沈めた。

 

 

「好きに、しなさい。」

 

 

 私は、ワタシにすべてを明け渡した。

 

 




キラさんの正体を知ったことで不安定になり、ブルー・ブルー・ローズに、体を蝕まれてしまったミナミ。
症状としては、三部でのホリィに近いですが、高熱はない。体に力がまったく入らないだけ。

そして…、『好きにしなさい』と言い渡したことで……?
そして、その前に、奇妙な息づかいを頭上から感じたとき…?
ブルー・ブルー・ローズは……。


そして、自分の本名と承太郎と康一を傷つけたことをミナミに知られてしまって激しく動揺してしまった吉良吉影。しかし、それでも彼女を殺せなかった。
なお、まだ吉良吉影は、ミナミがスタンド使いだとは知らない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

吉良吉影の父親(side:仗助)+(side:???)

吉良喜廣回。


でも、ブルー・ブルー・ローズが……?


 

 

 俺は、猛烈に腹が立っている。

 

 吉良の野郎…、まさかこの町に巣くっていた殺人鬼だったなんてよぉ…。

 

 姉ちゃんは、何も知らずに文通して、知らずに会ってたってことかよ!

 

 じゃあ、もしあのままだったら、いずれ殺されていたってことじゃねぇのか!?

 

 ぎ…ギリギリだった…。危なかった…。

 

 康一が言うには、吉良は、姉ちゃんに正体を知られたことに激しく動揺してたらしい。

 承太郎さんから聞くに、康一は、吉良にとって姉ちゃんが弱点だと指摘したらしい。それでかなりヤケクソになって康一を殺そうとしたらしい。

 それって……。

「仗助。」

「えっ? あ、はい。」

 俺達は、吉良吉影の自宅に来て、吉良の足取りになる情報を得ようとしていた。

 吉良という表札のある、1階建ての広い家だった。

 なんていうか…、不気味なぐらい、小綺麗にしてある室内だな…。

 机の本棚の上には、健康とか関係の本がきちっと並んでるだけで、飾りっけがない。

 承太郎さんが、吉良の野郎の子供の頃の写真が入ったアルバムを開いてた。

 小3? 面影があるが、今のあの野郎は、名前も顔も、そして過去も全て捨てて別人の人生を歩もうとしてる…。

 

 俺の一番の心配は…、別人になりすました吉良の野郎が、姉ちゃんを諦めているとは思えねぇってことだ。

 

 康一の挑発や、姉ちゃんが来たことで冷静沈着だった野郎が、そこまで動揺して、殺したくないって実際に口にしてたってことは、相当は執着心やらがないとありえねぇ。

 姉ちゃんが、入院している間に、何もかもを解決させねぇと!

 

 吉良吉影。

 1966年1月30日。杜王町生まれ。

 身長175センチ。体重65キロ。血液型A。

 両親が歳をとってからの子供で、父親・喜廣は、吉良吉影が21の時のガンで病死。母親も後追うように老け込んで死んだ。

 両親の死に不審な点はなし。近所の証言によると、とても仲の良い家族だったらしい。

 

「仲の良い家族ねぇ……。」

「ん?」

「どうしたっすか? あっ。」

 承太郎さんが何かに気づいたので、そちらを見ると、ブルー・ブルー・ローズが!

「あんにゃろう…。姉ちゃんを苦しめているばかりか、邪魔しに来たのかよ?」

「待て。」

「どうしってすか? あっ…? えっ?」

 シュルシュルと動いていたブルー・ブルー・ローズが、バケツリレーみたいな感じで何かを運んできた。

 

 それは、ここにあってはならない物だったぜ。

 

「ゆ…、弓と矢!?」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

「はっ!?」

 どこからか、おっさんの叫び声が聞こえて、弓と矢の、矢が消えた。

「矢が消えた!?」

「何かいるぞ、気をつけろ。」

 その時、部屋の中にあった写真から、ジーッと写真が一枚出てきた。

 すると、ブルー・ブルー・ローズが畳や天井から生えてきてカメラと写真を狙った。

 カメラの写真がひとりでに、跳びはねて根っこから逃げた。

『これはぁ…、これだけは渡さん!! これは、わしの息子を守るために必要なんじゃ!』

「むすこぉ? ってことは…。」

「父親か。」

 跳びはねて床に落ちた写真には、矢を握りしめている、喜廣が映っていた。

 逃げた写真の親父をブルー・ブルー・ローズが追いかける。

『この根っこは何だ~~~~!! き、傷つけられたら、わしの魂のエネルギーが奪われるような気がする!! うわあああああああああ!!』

「ほ~? ブルー・ブルー・ローズってのは、幽霊まで殺せるのか。」

「ならちょうどいいぜぇ。おい、根っこ! 遠慮無く追いかけろよ!」

『き、貴様らのスタンドかぁ!? 止めろ!』

「残念だけど、俺らも止め方知らねぇんだわ。じゃあな。肥やしになったあとで、矢は拾ってやるよ。」

『うおおおおおおおおおおおおおお!! こんなところでぇえええええええ!!』

 写真が上から下から、右から左から、前から後ろから、根っこに取り込まれて逃げ場を失った。

「お~い、何の騒ぎ?」

「うわっ! ブルー・ブルー・ローズ!」

「取り囲まれてんのか!? 今助けるぜぇ!」

「っ! やめろ、億泰!」

 次の瞬間、億泰のザ・ハンドの右手がブルー・ブルー・ローズをごっそりと削り取った。

『い、いまだ!』

「あっ!」

 ブルー・ブルー・ローズの包囲が消えた場所の天井の隙間から、写真が逃げていった。

「馬鹿野郎、億泰! 逃げちまったじゃねぇか!」

「えっ? えっ?」

 俺が怒ってる間に、ブルー・ブルー・ローズは、消えていた。

 俺らも…ブルー・ブルー・ローズに囲まれてて、動けなかったのもあるが、完全に油断してた……。

 すると承太郎さんが、俺の肩を叩いた。

「待て。どうやらまだ終わっていないようだ。」

「はあ?」

「根っこが俺達を呼んでるらしい。」

 言われて見ると、ブルー・ブルー・ローズの根っこがこっちだと言わんばかりに、フリフリ振られていた。

 

 

『は~は~は~! さすがに野外までは…。げぇ!?』

 

 あのオヤジの声が聞こえた。

 家の塀のところで、ブルー・ブルー・ローズに襲われかけている写真があった。

 へへん! 残念だったな! ブルー・ブルー・ローズは、無機物があればどこにだって出現できんだよ!

『こ、肥やしにされてたまるかああああああああああ!!』

 写真の親父が糸を出して、ちょうど低空飛行していたカラスの首にかけやがった! そしてそのままカラスに引っ張られて飛んでいってしまった!

 ああ、あとちょっとで、擦りそうだっただったのに!

 飛んでいくカラスを追いかけることも出来ず立ち尽くす俺達だったが、ブルー・ブルー・ローズだけは、その場から消えながら、ニュニュニュ…っと陸地を伝いながら写真を追いかけていたことに、俺達は気づかなかった。

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

「! なんか聞こえなかったっすか?」

「…ああ。」

 

 な、なんか…、地の底から聞こえてくるような、不気味なうなり声のような…。

 

 けれど、俺達は知らなかった。

 さっきの謎のうなり声を、この杜王町中の人間が聞いていたことを…。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

side:???

 

 

 

 ワタシは、ワタシ…

 

 枯レル前ニ…、終ワラセ…ル

 

 オマエは、逃ゲラレヤ、シナイ

 

 逃ガシは、シナイ

 

 ××××××

 

 オマエは、逃ゲラレヤ、シナイ

 

 

「……ぅう…! ハッ!」

 

 私は、うなされた末に飛び起きた。

 これほどにうなされたのは、何年ぶりだ?

 ああ、いけない。不安とストレスのせいだ。

 早く早く、熟睡を妨げるモノをすべて排除しなければ…。

 私の平穏は、永遠に得られない。

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

「!?」

 

 私は、幻聴ではないそのうなり声を聞き、窓を開けた。

 

 遙か遠く…、そこに、巨大な骸骨に赤い根っこが根付いたような異形の幻が、天に向かって叫んでいた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 私は、再び目を覚ました。

 どうやら夢だったらしい。

 なんて、酷い夢だ……。

 いかんいかん。転た寝してしまうとは、やはり熟睡が足りていないようだ。

 おっと、いけない…。

 私は、今、筆跡に指を慣らしている最中だったのだ。

 

 川尻浩作(かわじりこうさく)として、私は新たに生きなければならないのだから。

 

 




ブルー・ブルー・ローズが、以前より活発に動く。
ミナミが引いた、引き金である『好きにしなさい』がもたらすこととは…?
そして、川尻浩作に扮した吉良吉影が見た、巨大な骸骨の怪物とは?

しばらく、ミナミは、登場できないです。
なので、ブルー・ブルー・ローズのみの登場がほとんどかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

青いバラの眠り姫(side:ジョセフ)

ミナミ視点で書かないと、まったくネタが出てこないことに今更気づく…。(汗)


承太郎、ミナミが何かのトリガーを引いたことを察する。


 

 

「お…、おぉおお…! こ、これは…!」

「…そういう、“習性”があることは知ってたが…。」

 わしの、わしの娘のベットの周りに赤い茎の青いバラの花が大量に!

「もうしわけありません! 我々がついていながらこのような状況に…。」

「いや、あんた達はよくやっているぜ。」

 承太郎が、病室に入って、青いバラの花を分け入って、眠っているミナミを見おろした。

 ミナミの体には変わらず、半透明の赤い根っこが絡みついておる。

「あれから…、意識は戻っていないのか?」

「はい。かれこれ、すでに1週間、一度も意識が戻っていません。」

「おお…、おぉおおお…。ミナミ…ミナミぃ…。」

 わしゃあ、SPW財団の医師の言葉に涙が止まらんかった。

 ホリィの時と違い、高熱に苦しめられておらんのがせめても救いなのか?

 じゃが、このまま寝たきりでは、いずれ衰弱死する!

 人間とは、眠ったまま生きられない!

 DIOの呪縛と違い、そして今のところこれ以上の害悪をもたらしていない以上、ミナミに残されておる時間はいったいどれくらいなのか…。

 いずれにしても、ミナミは、このままでは長くない!

「泣いてる場合じゃないぜ、ジジイ。」

「承太郎?」

「こっち来て見ろ。」

「? ……っ! これは…!」

「白髪が…。」

 ミナミのブルネットの髪の毛に明らかな不自然な白い色が混じっていたのじゃ。

 吸われているのか!? スタンドに!?

「…最悪、お袋以上に短いかもしれねぇな。」

「承太郎!?」

「ジジイ…、最悪の事だけはボケかけの頭の隅においておけ。」

「何を言っておるんじゃ!!」

「例え、吉良吉影を仕留めたとして…、ミナミの精神が元に戻る確証はないってことだぜ。仗助の話じゃ、それなりに異性として意識していたようだからな。」

「Oh……、ジーザス。」

 よりにもよって、殺人鬼に恋をしてしまったのか…。

 なんという皮肉な運命…。

 それは、精神が不安定にもなるに決まっとるわい…。青春真っ盛りの年頃の娘には、あまりにも酷じゃ。

 最悪の形で恋が裏切られてしまったことが原因なら…、どうすればよいのじゃ?

 どうすれば、ミナミを救える!?

 わしが目を落とすと、鮮やかな青いバラの花が目に付いた。

 わしは、それにゾッとしてつい杖で青いバラの花を弾いておった。

 青いバラの花がいくつも、病室の床を転がる。

 ミナミのスタンド、ブルー・ブルー・ローズ。わしのハーミット・パープルに似て、植物の形じゃが、その力も性質もあまりも恐ろしい、生と死を操るスタンド。

「わしゃぁ…、これほど、バラの花をおぞましいと思ったことはないわい…。」

「…同感だぜ。」

 分かっておる。この青いバラの花がミナミのスタンドが生み出した他人の寿命を凝縮した物であり、スタンドであることも。

 たった1年だけとはいえ、花京院達の命を救ってくれたことも知っておる。

 それをおぞましいと思うことは、ミナミ自身をおぞましく思うことと同意義じゃということも。

 じゃが…、それでも、この鮮やかな青いバラの花に嫌悪を感じずにいられんのじゃ。

 分かっておる! 実の娘のスタンドを否定するなんて、してはいけないのに!

 実の親として……、なんと愚かしい…。

 

「……ん…。」

 

「ミナミ?」

「ミナミ!?」

 

 ミナミがうっすらと目を開けた。

「ミナミ! ミナミちゃん! わしが分かるかの!?」

 

「………ガ、サ…。」

 

「?」

 

「ニガサナイ……。ニガサナイ……。」

「ミナミちゃん…?」

「……ミナミ…じゃねぇな?」

「!?」

「ワタシは、ワタシ…。枯レル…マデに…、必…ズ…。」

「ミナミちゃん? ミナミちゃん!」

 ミナミがまた眠ってしまった。

「ブルー・ブルー・ローズ…。ミナミを支配しているのか?」

「なっ…。」

「ミナミ…、何をした? この状態は、お前の意思か?」

 ミナミがこんな状態になることを望んだというのか!?

「…なんとなく、見えてきた気がするぜ。ミナミは、何かのトリガーを引いた。おそらくは、その理由は…、“裏切りへの報復”。」

「ほ、報復…。」

「ミナミは、ブルー・ブルー・ローズに精神力の全てを明け渡すことで、吉良吉影に対して報復をしようって腹だろう。ったく、とんだ眠り姫だぜ。転んでもただでは起きないところは、ジジイ譲りか?」

「!」

 オーノー! そんなところが似なくてもよかったわい!

 しかも、こんな命がけで!

 つまり、それほどにミナミの怒りも悲しみも巨大だと言うことじゃな…。

 うう~~~む…、支援すべきか…、止めるべきか…。しかし、やはり命を削ってまですることじゃない!

「承太郎、早く吉良吉影を見つけんとな!」

「ああ、分かってるぜ。」

 

 娘の手を血で染めさせてなるものか!

 

 




老け込んでたのと、ボケはどこへ行った?状態ですね……。

次回ぐらい、ミナミを起こそうと思います。
でも精神の状態は……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブルー・ブルー・ローズ その3

ミナミ。ちょっと、起きるが……?


後半は、吉良サイド。


 

「姉ちゃんが、起きただってぇぇぇ!?」

「静かにしろ、仗助。」

「だって!」

「……厳密に“起きている”と言えるかどうか分からんがな。」

「どういうことっすか?」

「見れば分かる。」

 

 

 ……誰カが…、病室に入ッテキタ。

 

 誰?

 

 

「姉ちゃん…?」

 

 

 ジョ ウ スケ

 

 仗助か。

 

「姉ちゃん…、おれ、俺が分かるか?」

 

 ワ、カル

 

「……分かるよ。」

 

「はあ~~~! よかった! だいじょうぶかよ? ずっと寝たきりだったじゃねぇか? 気分は?」

「仗助! 下手に近寄るな!」

「えっ? うわっ!」

 

 ダメ。仗助は、ダメ。

 

 ワカッタ

 

「今下手に近寄るものなら、たちまちブルー・ブルー・ローズが襲ってくる。おそらくだが、今のミナミは、半分以上はブルー・ブルー・ローズに乗っ取られているぜ。」

「そんな!?」

 

「だ…い、じょうぶ…。」

 

「ミナミ…か?」

「私は…、ワタシ…。否定は…、自分自身の…ヒテイ…。」

「……どっちだ? ミナミか。ブルー・ブルー・ローズか?」

「どっちも姉ちゃんであるはずっすよ! スタンドってのは、精神の分身みたいなもんなんでしょ!? なあ、姉ちゃん、そうだろ!? 姉ちゃん!?」

「即席の二重人格って言ったところか。」

「…アノ男は…。」

「あの男? 吉良吉影?」

「まだ…コノ、町に…。」

「わ、分かんのか!?」

「ミナミ、と、ブルー・ブルー・ローズ。お前達は、すでに吉良吉影が誰に扮してるのか把握しているのか?」

「そ、れは…。」

「話してくれないか。なにかヒントとなる情報でもいい。例えば、誰かと共にいるとか…。そういうことでもいい。」

「承太郎さん!」

「…オンナ…。」

「っ!?」

「女といるのか?」

「コドモ…。」

「子供というるのか? つまり、親子か?」

「!」

「オヤ……コドモ…。いる。タメラッテ…イル…。」

「ためらう? その女と子供を殺すことをか?」

「ちが…う…。殺したいだけ。」

「誰を?」

「たくさん…女の人…来てるから。」

「あっ、サマーシーズンの旅行客か!」

「殺人狂にとっては、堪えがたいことだろうな。それで、一体、誰に化けている?」

「ごめ…、も…ぅ…。うぅ…っ。」

「姉ちゃん!」

 

 ユルサナイ ダカラ ワタシが

 

 

コ ロ ス。」

 

 

「姉ちゃん!」

 

 

 私(ワタシ)は、再び、闇に意識を沈めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

side:吉良吉影

 

 

 

「……おかしいな。すでに下校は始まっているぞ。」

 私は、通勤路の途中、ぶどうが丘高校の生徒が合流する地点で思った。

 

 ミナミがいない。

 

 私が調べた限りでは、ミナミは、学校を休むことはほとんどなかったはずだ。最近までは…。

 川尻浩作の通勤路とぶどうが丘高校の通学路が一部合流することを知ったのは、偶然である。

 別人として生きることとなったが、この殺意を抑えるのが耐えがたい。だが私は耐えた。耐え抜いた。

 耐えて、川尻浩作としての生活の隙に、『彼女』を作れば良いのだと。

 

 よくよく考えてみれば、そのような状況下で、ミナミに会わなくてよかった。

 ただでさえ殺したくてたまらないというのに、自分が吉良吉影だと打ち明けてしまいたいのに、彼女に会ってしまったら川尻浩作という仮面と居所がすべて壊れてしまうだろう。

 私がこれまで生きてきた中で…、これから先もおそらくは出会うことは無いであろう、“全てが欲しいと思わせた娘”だ。

 落ち着いたら“迎え”に行くつもりだ。

 

 川尻の妻と、子供は、邪魔だが、まだ始末すべき時ではない。慎重に…慎重に事を進めなければ…。

 すべては、私の“平穏無事”な生活のために。

 

 

 ユルサナイ

 

 

「っ! またか…。」

 

 近頃、この幻聴が聞こえる。

 うっかり転た寝をして以来、ずっと聞こえる。

 あの、異様なうなり声も目覚め間近になれば聞こえる。

 頭が、どうにかなってしまいそうだ!

 やはり、仗助達…、私の心の平穏を妨げるすべてを排除しなければならないという警告か?

 奴らのことは、いつだって殺せる。

 だがそれをやらないのは、私が戦うことを嫌う性格だからだ!

 闘争とは、私が目指す平穏な人生とは相反しているからだ!

 ひとつの戦いに勝利することは簡単だ。だが、次の戦いのためにストレスが溜まる…、愚かな行為だ。だから、私はそのような愚かしいことはしない。

 だがしかし…、この幻聴は、私自身のその平穏を脅かす物を始末しろという私自身から発せられるモノなのか!?

 私は、平穏な植物のような人生を望んでいると思いながら、反対に闘争を求めているというのか!?

 

 

 チガウ

 

 

 違う…だと?

 まさか…、スタンド? スタンドによる攻撃か!?

 

 ワタシは、オマエを

 

 どこだ!?

 どこにいる!?

 お前は、何者だ!?

 

 

 コ ロ ス

 

 

 私の爪の隙間を突き破って、鮮血色の植物の根っこが生えてきた。

 

「おおおおおおおおおおお!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた!」

「ハッ!」

 

 私は、川尻しのぶに起こされて、目を覚ました。

「珍しいわね。寝坊するなんて。最近疲れが溜まっているじゃないかしら?」

「っ…。」

 時計を見れば、すでに支度を終えている時間だった。

 私としたことが…、やはり熟睡が足りていないようだ。

「あら? 爪から血が出てるわよ? 絆創膏持ってくるわ。」

「っ…!!」

 

 夢…じゃなかったのか?

 

 




果たして、吉良が見た夢は、ただの夢なのか…?

地味に地道に吉良を追い詰めるブルー・ブルー・ローズ?
派手に一撃より、こういった地味な攻撃の方が精神的に来ると思うのは私だけ?


ブルー・ブルー・ローズは、その形状ゆえか、頭はないのでそんな頭良くないかも。
そのため、一番のヒントとなる川尻浩作の名を言わなかった。というか言えなかった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

川尻早人は、青いバラと出会う(三人称)

オリジナル回。


もはやここまで来ると、原作改変?

タグ付けた方が良いですかね?



川尻早人が、ブルー・ブルー・ローズに導かれ……。


 

 

 川尻早人は、天邪鬼で、疑り深い。

 

 理由は、自分が両親から愛されて生まれたのかという疑問からだった。

 

 川尻家の夫婦は、悪く言えば冷めていた。

 

 11歳の早人から見ても、それは明らかであり、母・しのぶは、わざと家事を怠って見せたり、それに怒らない父・浩作も浩作だ。

 

 だからこそ、彼は、両親の愛を求めたのかも知れない。だからこそ知りたいと思ったのかも知れない。

 

 11歳という幼さからは想像も出来ない技術力をもってしって家の中に監視カメラを仕掛け、父と母の様子を観察すること。それがいつしか日課になっていた。

 

 そうやって二人の様子を見て、自分が愛の末に生まれたのかという疑問を解こうとしていた。

 

 しかし、ある日を境に、父・浩作の様子がおかしくなった。

 

 まず手料理をしたこと。

 

 次に、異様に爪切りをすること。

 

 ノートに何度も何度も自分の名を練習するように書いていること。

 

 それまで夫に冷たかった母がそんな父の奇行に、妙に熱っぽくなったこと。

 

 家の中に土が入った植木鉢を運んでいたこと。

 

 この間など、父は、家中に響くような大声を上げてうなされていたらしい。なぜかその日、朝起きると、右手の爪から出血していたそうだ。(おまけに寝坊。急いで出勤する姿が見られた)

 

 学校が休みだったため、早人は、両親の寝室に入った。

 

 何もなく怪我をしたなら、何か凶器になるようなものがあったはずだろうという思い立ちだった。

 

 ベットの傍の床には、血が転々とあった。父の爪から垂れたものだろう。

 

 見たところ、凶器になりそうなモノはどこにもなかった。

 

 すると、ベットにかけられている毛布の端がモゾモゾと動いた。

 

 何かがいる? っと思いつつ、母が可愛がっている野良猫かも知れないとも思いつつそこを剥いだ。

 

 そこにあったのは、鮮血色の根っこだった。

 

 シュルシュルと蠢いていて、早人は思わず悲鳴を上げかけた。

 

 鮮血色の根っこは、やがて、早人の姿を確認したように動きを止め、フッとベットの下から消えた。まるで最初から無かったように。

 

 早人は、ハッとしてベットの下を確認した。だがそこにはもう根っこは無かった。

 

 気のせいだったのかという考えが過ぎったとき、コンコンっと、部屋の窓が外から叩かれる音がした。見ると、窓の外にあの根っこがいた。そして窓を叩いていた。

 

 早人が見たのを確認したのか、根っこは、フリフリとこっちだと言わんばかりに根っこの先端を振って下へと移動した。

 

 慌てて、窓を開けると、根っこが壁を伝いながら、地面に移動していくのが見え、やがて玄関の扉前から、外の道へと移動した。そして、こっちこっちと言わんばかりにフリフリと動いていた。

 

 なにアレ…? っという疑問がまず浮かぶが、子供心による好奇心と根っこの奇妙さが早人を導き、早人は、部屋に急いで小型の録画カメラを手に、外へ飛び出した。

 

 根っこは、早人の前を、ピョコピョコと飛び出しながら、地面を移動し、やがて、杜王町で一番大きな病院についた。

 

 根っこは、地面どころか病院の床をも移動し、早人を導く。その間、不思議な力が働いているように、早人は病院の人間から声をかけられることもなかった。

 

 やがて、VIPが入院するような階層の病室の前に導かれた。

 

 根っこが伸び、病室の扉を開く。

 

 早人がこっそりと中を覗くと……。そこには、ベットの上に一人の女性がいた。

 

 赤い茎の赤いバラの花がベットの周りに囲うように敷き詰められ、ベットの上に座っているだけなのに、窓から差し込む陽光を浴びて、その姿は、女神のごとく美しく見えた。

 

 その美しさに放心していると、やがて、『君! そこで何をやっているんだ!?』っと注意する声が聞こえた。

 

 早人は慌てて逃げようとして、ちょうど来ていた、長身の人物の足にぶつかった。

 

 195センチはあろうかという長身に、白いコートをまとった迫力ある男性だった。

 

「子供?」

「すみません! すぐつまみ出しますので!」

「待て。」

 しかし、早人は長身の男性が止めた隙に逃げようとした。

 

 だが、長身の男の横を通り過ぎようとした直後、なぜか、男の前に戻されていた。

 

 その現象に、ハテナマークが大量に浮かんでいると。

 

「どうやってここに? 少しだけ話をしないか? ボウヤ。」

 

 目線を合わされ、有無を言わさない迫力に負けた早人は、思わず頷いた。

 

 美しい彼女がいる病室に通され、部屋にある椅子に座らされて、ジュースを貰った。

 

「それで? 君はなぜここに?」

 

 早人は、ジュースに目を落としながら、ボソボソと、赤い根っこが…っと普通なら信じられないような話をした。

 

 しかし、男は疑うことなくジッと聞いていた。

 

 すると。

 

「すまないが。君の家族構成を教えてはくれないか?」

 

 なぜそんなことを聞かれなくては?っと思ったが。

 

「それと、近頃、親の様子がおかしいとか、なかったか?」

 

 思わずドキッとした。

 

「そこにいる…、彼女の“守護”が、君をここへ導いたのは、必ず意味がある。頼む、教えてくれ。君の名と、親の名を。この町にこれ以上の悲劇が起こる前に。」

 

 何を言っているのか分からなかった。

 

 けれど、男は真剣に言っているのは分かった。

 

 けれど…、早人はすぐに答えられなかった。

 

 答えてしまえば、今までの日常の全てが壊れるという無意識の恐怖がそうさせたのだ。

 

 

「……おしえ…て…。」

 

 

 美しい女性が、弱々しい声で言ってきた。

 

 見ると、女性は、泣いていた。

 

 その涙を見て、早人は意を決したように、口を開いた。

 

 




これで、バイツァ・ダスト発動の条件は揃ったかな?
これ以上無いほど追い詰められないと身につけられなかった、発動しないスタンド能力なのでとことん、追い詰めたいと思います。

割愛してますが、仗助達は、吉良の親父が量産したスタンド使いをそれぞれ撃破してます。


これ、今後の展開によっては、消して書き直すかも……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激動する物語(side:吉良吉影)

オリジナル回。


前回、早人が承太郎に接触したことで……?


 

 なぜこうなった?

 

 私は、自問自答する。

 

「そっちに行ったのか!?」

「ううん、違う! 20メートル先だよ!」

 

 なぜこんなことになった!?

 

 私は、逃げる。

 

 小十分前だろうか?

 

 私は、足を引きずりながら思い出す。

 

 空条承太郎達が、川尻の家に尋ねてきていた。奴らのそばに、早人がいた。そして、私はすべてを察した。

 

 早人は、私が川尻浩作ではないことを奴らに打ち明けたのだと。

 

 よりにもよって、『彼女』を連れて帰ったところだった。

 

 その後のことは、思い出したくもない。

 

『じゃから言ったじゃろう! この町から出て行くべきだと!』

「うるさい!」

 

 私は、写真の父にそう叫んでいた。

 

 杜王町から逃げ出す? そんなことができるわけがない! 私は、この町から出ない!

 この私が追って来る者を気にして、背後に怯えたり、穏やかでも安心もできない人生をおくるのはまっぴらだということを知っているだろう!

 

 しかし、なぜだ!?

 なぜ奴らは、私が吉良吉影だという、確固たる確証を得たのだ!?

 

「理由なんざ。簡単だぜ。」

 

「!?」

 

「お前さんの、ドス黒い殺人鬼の狂気は、ココによーく映っておるわい。」

 

 曲がり角から現れた、空条承太郎と、老人が、手にしているのは、私が『彼女』を手にした瞬間の写真だった。

 

 馬鹿な…!?

 

「まあ、もっとも…、この念写ができたのは、ミナミの協力があったこそじゃったがのう。」

 

「ミナ…ミ…?」

 

 なぜ彼女の名が出る?

 

「ミナミの手を汚させる前に、すべてを終わらせる。そのつもりで来たから、覚悟しな。」

 

 なぜ…? ミナミが…? 私を?

 

「見つけたぜ! 吉良吉影ぇ!!」

 

 あ…、あの『青』は…。

 

 なぜ、仗助の目が、ミナミと同じ色をしている?

 

『逃げるんじゃ、吉影ぇぇぇぇ!!』

「ハッ!?」

 

 その時、私の足下から、無数の鮮血色の植物の根っこが生えてきた。

 

『ぐおっ!』

 

 私の父が、私を庇い、その根っこに貫かれた。

 

 写真から青いバラの花が芽を出し、咲こうとした。

 

 その時、カラーンっと落ちた、矢が、ひとりでに私を狙うように動いた。

 

『お…おおお…! 矢が…わたしの息子を…、た、頼む…、矢よ…、息子を救ってくれ!!』

 

 そして、私は、矢で頭部を貫かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、私は気がつくと、川尻家の寝室にいた。

 

 あれは…、夢だったのか?

 

 そういえば、父がいない…。

 

「あなた。おはよう。朝ごはん出来てるわよ。」

「あ、…ああ。」

 しのぶが入って来て私にそう言った。

 やはり夢か…。

 

「あら? こんなところに…、この写真、破れてるし、何も映ってないわ。」

「!」

 しのぶが拾い上げた写真は、父が乗り移っていた写真だったモノだ。

 だが無残にも真ん中から貫かれたように破れており、父は、まるでそこに最初から映っていなかったかのように消えていた。

 

「……これは…、バラの花? 造花にしてはよく出来てるわね。」

 

 さらにしのぶが床に落ちていた、赤い茎の青いバラの花を拾い上げた。

 

 あの青さは…、ミナミの目の『青』をなぜか連想させた。

 

 ぞうか? 造花だと? あんな精巧な造花があるのか? なにかヤバい予感を感じさせる。

 

「とりあえず、机に置いとくわね。」

 しのぶは、バラの花を机の上に置き、部屋から出て行った。

 

 しのぶが出て行った後、私は、青いバラの花を見つめた。

 

 鮮血のように鮮やかな茎の色は、あの夢に出てきた鮮血色の植物の根っこを連想させる。

 

 いや…違う…、同じだ…。

 

 この花は、あの根っこから咲いたものだ!

 

 落ち着け! あれは、夢だったはずだ!

 

 承太郎達に見つかり、吉良吉影として始末されそうになった夢など……、夢?

 

 もし、もし…あれがこれから実際に起きることであるなら、私はこのままでいていいのか?

 

 このまま過ごしていれば、いずれ、早人が何かしらの方法で承太郎達と接触し、私が吉良吉影だというヒントを与えに行ってしまうのではないか?

 

 早人を始末しなければならないのではないか!?

 

 いや、ダメだ! 今始末すれば、何かしら怪しまれる!

 

 何か…、何かがあるのではないか? 早人を承太郎達へと導いた何かが!? この町にあるはずだ!

 

 それを防がなければ、私は、やがて……。

 

 

 

 ユルサナイ

 

 

 

「……貴様は…誰だ?」

 

 

 

 ニガシは、シナイ

 

 

 

「質問に答えろ!!」

 

 

 

 ワタシは、……ワタシ

 

 

 

「………『女』…か?」

 

 

 

 コノ町に、イルカギリ、ワタシは、オマエを

 

 

 

 

「なるほど…、この杜王町にいるのだな?」

 

 

 

 コ ロ ス

 

 

 

「やれるものならやってみるがいい!!」

 

 

 

 その時、床から、壁から、天井から、鮮血色の植物の根っこが生えてきた。

 

 やはり、スタンドか!

 

 私は、キラークイーンに根っこを攻撃させた。

 

 根は脆く、殴れば簡単に破壊できた。

 

 だが、まったくきりが無い。無限に近いと行っていいほど次から次に生えてくる。

 

 やがて、私の頬を、根っこが引っ掻いた。その傷口から青いバラの花が咲いて落ちた。

 

 これは…、私は何か奪われたような気がした。

 

 このままでは、じり貧だ。どうする…?

 

 

「あなたー。遅いわよ。」

 

 その時、戸をしのぶが開けた。しのぶが入ってくる直後、根っこは消えた。

 

「……どうしたの?」

「…君では…ないのだろうね?」

「何を言ってるの?」

 

 しのぶではないか…。

 ならば、なぜ消えた?

 見られると困るのか?

 疑問は尽きないが、ひとまず、今日は会社を欠勤しなければならないようだ。

 

 赤い根っこと、赤い茎の青いバラの花を扱うスタンド使いを見つけなければならないからね。

 

 




バイツァ・ダストが発動したのかどうか、微妙なライン。

どこからが夢なのか現実なのか分からないが、このままでは夢の通りになると判断した吉良吉影は、現実にしないために行動を起こすことを決める。


そして、吉良の親父、死亡。
魂のエネルギーを、バラの花にされました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

生と死は、時をも超える?(三人称)

オリジナル回。


もはや、原作の欠片もない?


バイツァ・ダストの性能が、原作よりアップ?
だけれど……。


 

 バイツァ・ダスト。

 

 それは、土壇場で吉良吉影が手にした、時をも爆破して吹っ飛ばし、時間を巻き戻す力。

 

 その力は、あまりにも強大であり、発動者である吉良吉影自身も制御はできない。

 

 発動条件は、吉良吉影がこれ以上無いほど絶望して追い詰められたときだ。

 

 吉良吉影は、その力を持って、1日ほど時間を巻き戻すことに成功した。

 

 承太郎達に追い詰められる前日であると知ったのは、1日の半分を費やしてからだった。

 

 それに気づいて川尻の家に帰ったときには、すでに承太郎達が尋ねに来ていた。

 

 そして再び追い詰められた彼は、再びバイツァ・ダストを発動して逃れた。

 

 そして、今度は、1日と、半日戻った。

 

 すぐ気づけたのは幸いだったのだろうか?

 

 急いで自宅に引き返す途中、早人が、鮮血色の植物の根っこに、導かれるように移動しているのを見つけた。

 

 そうか…。そういうことか。お前が、あの根っこに導かれて、承太郎達に接触したのだな?

 

 ならば、外で始末してしまえば、承太郎達は、接触してはこないだろう。

 

 そう考え、吉良吉影は、早人を追って、カメラを回すことに夢中になっている早人を掴もうとした。

 

 しかし、掴もうとした早人の服の襟首から、あの鮮血色の根っこが生えてきて、吉良吉影の手を傷つけた。

 

 あまりに突然のことに吉良吉影が思わず声を漏らしてしまい、早人に気づかれた。

 

 すでに父・浩作に対して疑惑を持っていた早人は、走って逃げた。

 

 青いバラの花が生えて落ちた手を押さえつつ、吉良吉影は、早人を追った。

 

 やがて早人は、杜王町で一番大きな病院に逃げ込んだ。

 

 よりによって、なぜそこだ!? 確かに人間が多いが……。

 

 だが子供がひとりで駆け込んでくればいずれ怪しまれてつまみ出されるはずだと踏み、吉良吉影は、出入り口で待つことにした。

 

「おやぁ…、お見舞い客かのぅ?」

 

 そこへ、ひとりの大柄な老人が吉良吉影に話しかけてきた。

 

「あ、申し訳ない。私は、今人を待っていて…。」

「そうじゃったか…。それはすまないのぅ。」

「いえ…。」

「実はのう…、わしの娘が、この病院に入院しておるんじゃ…。」

「そうですか…。」

「娘はのう…、恋をしておったんじゃ。可哀想に…。なのに、その恋は酷い形で裏切られてしまった…。」

「はあ…。」

「お主に…のぅ…。吉良吉影。」

「ーーっ!?」

 ピラッと出された写真に、吉良吉影は戦慄した。

 

 そこには、重ちーを始末した場面がハッキリと映し出されていた。

 

「やはりか。吉良吉影。顔をどれほど変えようとも、その本性と記憶までは変えられんわい。」

「き、貴様…!」

「仗助君!」

「おおよ!」

 

「俺も入れな。」

「承太郎さん!」

 

 承太郎が、早人と共に出てきた。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 そして、再び時は巻き戻る。

 

 

 

 

 オマエは、逃ゲラレは、シナイ

 

 

 凄まじい爆風の中、吉良吉影は、その幻聴を聞いた。

 

 




バイツァ・ダストの性能がおかしいのは、ブルー・ブルー・ローズが実は関わっています。
完全にすべてを巻き戻せなかった理由もそこにあり。

原作でのバイツァ・ダストは、吉良吉影の精神状態をもっとも安定させた状態を保つため、それを妨げるモノを排除する性能がありますが、ここでは……、ブルー・ブルー・ローズの干渉で、吉良吉影にストレスとかをマッハで積み重ねるモノになっている。

さて、ブルー・ブルー・ローズは、どうやって、吉良吉影のバイツァ・ダストに便乗しているのか…。本来なら、“無機物”しか触媒にできないスタンドなのに……?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブルー・ブルー・ローズ その4(side:吉良吉影)

もう一気に終わらせる!

原作崩壊が止まらないので!



吉良吉影がちょっと、大変なことに……。


かなりのキャラ崩壊(?)です。


注意!


 いったい…、私は何度繰り返した?

 

 何度やり直している?

 

 もはや数えるのも…、ダメだ! 落ち着け! この数を数えすぎれば、やがて気が触れてしまいそうだ!

 

 だがひとつだけハッキリしたことがある。

 

 あの赤い根っこと青いバラの花。

 

 この二つは必ず、関わっている。

 

 そして必ず、仗助達に遭遇させられているのだ!

 

 あの赤が忌々しい…、あの青いバラの花がおぞましい!

 

 ならば、この二つを排除するしかない! 必ず関わっているということはそういうことだ。

 

 まずい…、まともに熟睡できた記憶がない。そのせいか正常に思考するのが難しい!

 

 だが、やらなければならない! 私の熟睡のため、私の心平穏のため、私の穏やかな人生のために!

 

 思い出せ…、何度も繰り返したじゃないか。その中で、どこへ導かれることが多かった?

 

 そうだ…、早人が病院に導かれている姿が何度もあったじゃないか。

 

 病院? そういえば…。

 

 

 『実はのう…、わしの娘が、この病院に入院しておるんじゃ…。』

 

 

 あの老人の言葉が脳を過ぎった。

 

 そういうことか…、私は鈍った頭でも察することが出来た。

 

 あの老人の娘こそが、赤い根っこと青いバラのスタンドの持ち主だ。

 

 ならば、病院に行けば、その娘を見つけられる。

 

 見つけて始末しなければ!

 

 私は、立ち止まり、建物の壁を背に座り込んでいたが、立ち上がって道を引き返し、この杜王町でもっとも大きいあの病院に向かった。

 

 周りの目へ気を配るほど、集中力も気配りもできないほどに、私の精神はすり減っていた。

 

 これほどに寝不足なのは、何年ぶりのことだ…?

 

 ああ…早く眠りたい…、赤子のようにひとつのストレスなくグッスリと眠りたい。

 

 私は、気がつけば、VIPが入院するような病棟に来ていた。

 

 そういえば…、あの老人は…。

 

「おい、そこの君、ここは関係者以外…。」

 

「……キラークイーン…。」

 

「!?」

 

 ずいぶんと高価そうなコートを身に纏っていたな…。

 

 そうか、ココに…いるのだな?

 

「おい! 何の音だ!?」

「そこにいるのは誰だ!」

 

 次から次に現れるSPらしき者達も、医師も看護婦も、皆始末した…。

 

 私は、先ほどSPが立っていた病室の扉の前に立った。

 

 そして、扉を開いた。

 

 

 ああ……、何よりも焦がれていた、『青』がそこにあった。

 

 

「君だったのか…………………、ミナミ。」

 

 ベットの端に座った状態のミナミが光の無い目で、空を見つめている。

 

 そして彼女の周りには、あの赤き茎の青いバラの花が咲いていた。

 

「そういえばそうだったな…。君は、私の正体を知った時に、スタンドらしき者を背後に出していたじゃないか。なぜ、私は君を疑わなかったのだろうな? この無間地獄のようなループを繰り返す原因を、君だと決めつけたくないという潜在意識がそうさせたのか。まあ、もうそんなことはいいんだ。私がここへ来たのは、ただひとつだよ、ミナミ。」

 

 私は、青いバラの花を蹴散らすように進みながら、ミナミに近づいた。ミナミは、まるで人形のように動かない。

 

「君を殺して、私は…地獄を終わらせるよ。」

 

 キラークイーンと重ね合わせた手で、ミナミの顎を掴んで持ち上げた。

 

「……抵抗しないのかね? 今私が触れている以上、いつでも爆破はできるぞ?」

 

 何を言ってる…? 私は…。

 

 

 『娘はのう…、恋をしておったんじゃ。可哀想に…。なのに、その恋は酷い形で裏切られてしまった…。』

 

 

「君は……、私に恋をしていたのかい?」

 

 なぜ今、あの時の老人の言葉が脳裏を過ぎる?

 

 そして、なぜ私は、そんなくだらないことを聞いている?

 

 だが、ミナミは反応しない。まるで魂が抜けているような…、そんな気がしてしまうほど反応がない。

 

「ん?」

 

 私は、ふと気づいた。

 

 ミナミのブルネットの髪の毛に、明らかに白髪がある…ことに。

 

 髪型を変えたぐらいではどうにもならないほど、大量に。

 

 ああ、せっかくの美しいブルネットがこれでは台無しだ。

 

 落ち着け…! そんなことを気にしている場合じゃない! ミナミを…、あの赤い根っこと、青いバラを消し去らなければならないのだぞ!

 

 しかし、なぜ、親指を…起爆スイッチを押せない…?

 

「ミナミ…、君に聞いているんだ。」

 

 そして、なぜ私は…、聞いている?

 

「君は…、私に恋をしていたのかい?」

 

 ツゥ~っと、ミナミの『青』から、透明なしずくが白い頬を伝った。

 

 私は、それを答えだと受け取った。

 

 ああ……、なんだ簡単なことだったんじゃないか。

 

 私が、ミナミを殺すことになぜこんなにも躊躇していたのか…。

 

 その答えはとうに私の中にあったのではないか……。

 

 

「私も、君が好きだったよ。ミナミ。」

 

 

 私は、その答えと共に起爆スイッチを押した。

 

 これで、終わる…。

 

 私の人生で最初で最後の異性への告白と共に。すべてが終わるのだ。

 

 だが……。

 

「!? っーーー!?」

 

 世界が暗転した。

 

 いや、赤い根っこの放流!?

 

 私は、病室ではない、赤い根っこに支配されたような空間に投げ出された。

 

 

 

 うぅぅぅぅううううおおおぉぉぉぉおおおぉぉ

 

 

 放流の先に、巨大なドクロが…、赤い根っこが絡まった異形のドクロが口を開けていた。

 

 私は声にならない悲鳴を上げながら、放流に逆らうことも出来ず、異形のドクロの口の中に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた~。ご飯よ。あら? いないの? あら、いたじゃない。返事ぐらいしてよ。」

 

「ひ……。」

 

「? どうしたの?」

 

「ひ…、ひひ…ひひひひひひひひひひひひひひひひ。」

 

「あなた? …ど、どうしたの? おかしいわよ?」

 

「イ~ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」

 

 

 アア マタ 繰リ返エ サレタ

 

 




ミナミとスタンドの存在に気づくが…、ブルー・ブルー・ローズによって強制バイツァ・ダスト。
そして、気が狂ってしまった吉良吉影さん……。


終わりまで、あと数話かな?

ここまで来たらもう原作に戻れません……。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ブルー・ブルー・ローズ 終

最終回じゃないよ!


『好きにしなさい』という引き金の末の、ブルー・ブルー・ローズ発動が終わっただけです。


 

「……姉ちゃーん?」

 

「ん…?」

 

「俺のこと分かるか?」

 

「分かるよ。…馬鹿弟。」

 

「! じょ、承太郎さん! ジジイ! 姉ちゃんが!」

 

 

 ああ、最悪の気分だよ。

 結局…、私は、あの人を…殺せなかった。

 

「姉ちゃん? なんで泣いてんだよ?」

「ねえ…、仗助…、私が寝ている間、何があったんだっけ? あんた、その怪我も…。」

「ああ、コイツは…。」

 

 

 なーんちゃって、ざっくりとだけど覚えてるよ。

 

 

 私は、ブルー・ブルー・ローズ越しに見ていたんだ。知ったんだよ。

 吉良吉影が狂った。

 繰り返される追い詰められる地獄に、とうとう耐えられなくなったんだ。

 うわごとのように私を殺すことを求めて病院に向かう途中で、ブルー・ブルー・ローズに導かれていく早人を見つけて、ハッと我に返ったんだ。

 けれど、一度狂った歯車をそう簡単には戻せない。

 

 自分が吉良吉影だということを口にしてしまったことは、覆せない。

 

 それを仗助に知られた。

 

 そこからは、戦いだった。

 

 戦いの過程で正気を取り戻すということはあっても、バイツァ・ダストを解除するには至らないし、バイツァ・ダストを発動させる気にもさせない。

 それは、繰り返され続けてしまった、吉良吉影にとっての無限のような地獄の体験が躊躇させたのだ。

 生命とは、あらゆる苦しみを何より記憶に長く残すのだ。それは、進化にすら影響を及ぼす。

 それは、命を守るための自衛本能。

 しかし、今の吉良吉影にとって、それが今や首を絞める枷となっている。

 どれほどに追い詰められても、起爆スイッチを押して逃げるという選択肢が取れない。

 

 アイツ(ブルー・ブルー・ローズ)が…、口を開けて待っているという恐怖がある限り…。

 

 ブルー・ブルー・ローズの本性というか…、本当の姿は、町ほど巨大な、骸骨に赤い根っこが絡みついた異形のスタンドだったんだ。

 デカすぎて、そして力が強大すぎて私一人で支えられるような代物じゃなかったんだ、初めから。

 だからこそ、私は、“恐怖”という蓋で、本当のブルー・ブルー・ローズを押さえつけていたんだ。だから、根っこと、奪い取った青いバラの花しかスタンドとして現れることが出来なかったんだ。

 まあ…、もっとも…、私が精神のほとんどを明け渡しても姿を出せないほどだから、どれだけの精神力がないと制御できるのかは分からない。

 

 そうそう、どうやって吉良吉影のバイツァ・ダストに便乗できたのか…。

 それはね…、吉良吉影の頭の中に出来てた、小さな血の塊を無機物として触媒にしたからだよ。

 固まっちゃった血は、もはや生命の一部として機能していないからそう判定されたみたい。

 その血の塊は、かなり前から吉良吉影の中にあって、言うなれば吉良吉影は、結構な時期からブルー・ブルー・ローズに寄生されてたってことだね。

 

 そう考えると…、つくづく自分のスタンドが恐ろしいわ。

 根っこと青いバラの花だけで、これだけ恐ろしいんだもん。もし町ほど巨大なスタンドとして現れてたら、怪獣みたいに暴れ回ってた?

 ホント…、自分がたかが弱い人間でよかったよ。

 

 

「姉ちゃん…、白髪増えちまったな。」

「いいよ、染めればいいんだし。」

「ジジイ、泣いてたぜ?」

「いつから、ジョースターさんのこと、ジジイ呼ばわりし始めたわけ?」

「えっと…。」

「まっ、いいけど。」

 私は、仗助が切ってくれたリンゴをシャリシャリ食べながら、病室の窓の外を見た。

 

 

 

 吉良吉影は……、救急車に轢かれて死にました。

 

 

 そして、その魂は…、振り返っちゃいけないあの世とこの世の境目の道で、鈴美さんによって振り返らされて連れて行かれたらしい。

 あのあと成仏した鈴美さんですが、ブルー・ブルー・ローズ越しにあの状況は見ていました。

 

 吉良吉影は、幽霊としての生活こそ自分が求めていた平穏なる人生だろうと開き直り、しかも私に取り憑こうと考えてたみたい。

 私が、花のように枯れて散る瞬間まで、見守ろうとしたようだけど……。

 もしそんなことになったら、きっと死んだ私の魂を捕まえて、縛り付けようとしたかも…。

 ……ブルー・ブルー・ローズ越しに色々と見たくもない、知りたくも無い一面とか見ちゃったからあり得そうだ。

 

 

 

 『私も、君が好きだったよ。ミナミ。』

 

 

 

「……ふ…、ふふふふ…。」

「姉ちゃん?」

「ねえ、仗助……。」

 私は泣いてた。

「私って…、男を見る目…ないかも。」

「……。」

 おい、黙るな。弟よ。

 

 

 

 もう、恋なんてしない!

 でも、しちゃうんだろうな~。

 これからの人生長いだろうし……。

 とりあえず、素性の知らない相手とは、もう文通はしない。今、決めた。

 

 

 

 




ミナミお目覚め。
でも、スタンドに精神力を明け渡していた影響と、スタンド、ブルー・ブルー・ローズの力に耐えきれず、白髪が……。


そして、ミナミ、自分の男を見る目の無さを嘆く。


概要(?)

スタンド:ブルー・ブルー・ローズ

本体:東方ミナミ

能力:傷つけた生命から寿命を奪い、青いバラの花に変える

その他:
本来の姿は、杜王町ほど、デカい、骸骨に赤い根っこが絡まった異形。
あまりにも強大すぎる力であるため、身を守ろうとする自衛本能からくる『恐怖心』という蓋で押さえつけられていたため、根っこと青いバラしか姿を現せなかった。
ミナミが精神の全てを明け渡しても幻想に近い形でしか姿を現せないほどなので、最大パワーで出すには、よっぽどの条件がいると思われる。


って…、感じになりました。最終的に。
書けば書くほど、設定がコロコロ変わる。


次回ぐらいで、ラストかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

咲き誇る青いバラの花は…

とりあえず、勢いで最終回。


ミナミは、父・ジョセフのことを…?


 

「おい、いい加減泣き止め、ジジイ。」

「う…うぅ、だってのう…。こんな若いのに、せっかく綺麗なブルネットにこんなに白髪が出てしもうて、ミナミが不憫で…。まだ未成年の年頃なんじゃぞ!」

「私は、気にしてないってば。」

 もう、ジョースターさんってば、ずっとこんな調子だもん。

 確かに、白髪がいっぱい出ちゃったけど、日を追うごとに少しずつ治ってきてる気はする。きっと、いずれ元の髪になると思いたい。

「わしの若い頃のような、ツヤっツヤの綺麗な髪の毛が~!」

「自惚れもたいがいにしろ。」

「ったく、ボケが治ってきたかと思えば…。」

「酷い~! 孫と息子が酷い~! ミナミちゃ~ん、慰めて~ぇん。」

「こら! どさくさに紛れて、姉ちゃんの胸に抱きつこうとするな、エロジジイ!」

「親子じゃから、エロはないわい!」

「まあ、私の胸でよければ、いつでも貸しますよ。」

「優しいの~。見習って欲しいもんじゃわい。」

「ふん。」

「ジジイ~! 姉ちゃんも甘やかすなよ!」

「少しくらい、甘やかしたくなるじゃん。……“父さん”なんだし。」

「えっ!?」

「あっ…。」

「い、今! わしのことなんて呼んだ!? もっかい! もっかい言っておくれ、ミナミちゃん!」

「あーあーあー! 知らない!」

「もっかい、もっかい!」

「もう、うるさいなぁ! 嫌いになるよ!」

「うっ…!」

 あっ…、やば…。

「す、すまんかったのう…。わしゃあ、ただ嬉しくって…。」

「ぅ……。」

 ああ、もう…、ずっと、ずっと、言いたかったんじゃない。

 私ってば、馬鹿よね。

 アメリカにこれから帰るんだから、次に会えるのはいつになるか分からないのに……。

「お、お父さん…!」

「!」

「本当…わね…、ずっと、ずっと昔から、会いたかったんだよ…、遅いんだよ、もう…!」

「っ! そうか…、そうじゃったか、すまん、すまんかった、ミナミ…!」

 ジョースターさん…、いや、お父さんが私をギュッと抱きしめてくれた。

 本当はね…、ずっとずっと小さい頃から、本当のお父さんに抱きしめてもらいたかったんだからね!

 おい、弟よ。なに涙ぐんでるんだ? 私だけ恥ずかしいじゃないの! 馬鹿!

「ほれ、オマエも。」

「うわっ! 承太郎さん!」

「おお! 仗助! お前もギューッじゃ!」

「だああああ! やめろーーー!」

「や~い、赤面してやんの。」

「姉ちゃんこそ!」

「アハハハハハ!」

 

 私は、幸せだ!

 最高の弟、最高の甥っ子(年上)、最高のお父さん!(79歳)

 

 ふと、足下を見たら、ブルー・ブルー・ローズがニョロッとちょっとだけ出ていた。

 どこから収穫してきたのか、青いバラの花を持って…。

 

 もう…、こ、怖いけど…、前よりは怖くないんだからね。たぶん…。

 

 私は、これから先の人生を、この“この世でもっとも不平等な力”と生きようと、覚悟する。

 生きていれば、いずれ分かるはずだと思いたいから。

 この力を持たされた意味を……。

 この花の意味を。

 

 私は神様なんて大嫌いだけど、何のために私に『神の祝福』なんて花を贈ったのか、その意味と答えを見つけてやるんだから。

 覚悟してろよ、神様!

 

 




とりあえず、これでこのネタは、ひとまず終わり。

なんか色々と心残りが残るモノになってしまった……。



感想、お気に入り、評価してくださり、まことにありがとうございます!
そして、結果的にボツになってしまいましたが、ミナミのスタンド名に応募してくれた方々にも感謝しています!
本当にありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。