東方波響録 ~異能力者達の学園!?~ (月と風)
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Ⅰ 学園生活 ~一年生~
エピローグ兼第一話~入学式にハプニング~


よろしくお願いいたします。
学生なので時間はあまりありませんが、頑張ってかいていきます。


桜が満開だった。

 

桜に埋もれてしまいそうな城......いや校舎を見て、僕、樹神日々響は今までの事を思い出していた。

 

 

 

思えばもう2ヶ月前。

僕はこの城のような学校に能力試験を受けるために来ていた。

 

そう。ここは特別な能力を持つ子供たちが集う学校、

アイナ特殊能力軍事高等学校だ。

 

 

 

僕は緊張しながら試験会場に入った。

 

そこでは、試験官と一対一の能力戦をし、ある一定のスコアを出せば合格できるのだ。

 

 

 

僕の試験監督は、中国風の服をきた女の人だった。

彼女は紅美鈴と名乗り、そこから能力戦が始まった。

 

 

僕の能力は音波を操る能力だ。

音波は空気を振動させて攻撃したり、相手の攻撃を四散させたりできるのだ。

 

 

 

呼吸を整え、音波を刀の形に整えていく。

そして

 

 

一呼吸おいてから、僕は音波の剣で斬りかかった。

 

 

 

結果は、僕が紅美鈴さんの鼓膜を破りかけて気絶させ、合格できた。

 

でも。横の女の子は試験官を粉々に吹き飛ばしていた。

 

本当に大丈夫なのだろうか......

 

 

 

そろそろ校門をくぐるとしよう。

 

過去の感傷ばかりに浸ってはいけないって誰かが言ってた。うん。

 

 

 

校舎の前の広場に入ると僕は息を飲んだ。

 

見渡す限りの桜。

そして空には沢山の風船や紙吹雪。

虹や雪が積もっているところもあった。

 

「これが魔法......」

 

こんな事が出来たらどんなに幸せだろうな......魔法凄い。神。

 

「って、そろそろ体育館にいかなきゃ...」

 

周りを見渡すと、一緒にきたのであろう保護者しかいない。

これは普通にヤバい。

 

入学式初日に遅刻。

あってはならないことだ。

僕は走り出した。

 

 

あれからどれくらいたったのだろうか。

僕は学校の中をさ迷っていた。

 

「マジで体育館どこだよ...」

 

校舎の中は全部見回ったのだ。理科室や訳のわからないだだっ広い部屋ならあった。

 

でも体育館は見当たらない。

こんな奴、この学校が始まって以降いたのだろうか。

 

すると、廊下の奥の方に、佇んでいる姿が見えた。

 

おぉ神よ。あなたは私のプライドのために、さ迷っている人をもう一人作ってくださった。

僕は神様の贈り物に向かって走った。

そこにいたのは、

 

「え?」

 

体が半透明の首だった。

僕の声に、ビクッとしたように振りかえる。

 

「私が見えるのですか?」

 

「はい、普通に。」

 

「...あなたはもしかして、入学式に来てない生徒さんですか?」

 

-なんで知ってんだよ。

 

「体育館がどこだかわからなくて...」

 

「体育館?何ですかそれは?」

 

「え?」

 

何で知らないの?

入学式の招待状を取り出す。

 

 

場所は校庭で行います。

 

 

「...なんでもないです。すいません。」

 

 

僕はキョトンとする半透明の首に背を向け走り出した。

ったく。入学式は普通体育館だろ!

校庭ってなんだよ校庭...

文句を言いながら僕は校庭で行われている入学式に飛び込んだ。

 

その瞬間、場が凍りついた。

 

え?なんか俺悪いことした?

 

壇上で話していた、校長らしき人もこちらを見つめている。

 

そんなに俺が好きなのか。

 

しばらくすると、何事もなかったように、校長が話を再開した。

 

え?今のなんだったの?

 

 

クラス発表もここで行われた。

僕は4クラスあるなかでのD組だった。

先生は藤原妹紅先生と言う、白い長髪に、

白っぽい服をきた、「熱血」を体現したような先生。

 

まあ、兎に角、入学式に出れて良かった。

 

え?入学式に遅れたって?

 

 

 

ちょっとなにいってるかよくわからないな。

 

 

 

さ、さあ。ここからまたは心機一転!

 

ね。

 

 

 




ということでエピローグでした。

このあとどうしようかな......

まあ、のんびりやっていきましょう。


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第二話~校長室なんて入学初日に行けるわけがない~

D組は一番奥の教室だった。

っしゃ。これで変なことしてもばれないね。

うん。

 

教室に入ると、みんながクラス中が静まった。

 

だから俺なんか悪いことしたか?

みんなが冷たい目線を向け、ひそひそと話す。

隣の女の子はあからさまに嫌そうな顔をして席を下げる。

 

なんなのこれ。これが世に言ういじめってやつ?

だとしたらあんまり怖くないな。

 

「はい。静かに!」

 

妹紅先生の声が響く。

うるさい。

 

「まず、君たちには、武器を選んでもらう。武器は、剣、弓、魔法の能力を持っている人は魔法だ。」

 

...じゃあ僕は魔法かな?

てか魔法強すぎでしょ。チートってやつかな?

 

「まずは、前に武器を色々おいておいたから、自分が一番しっくりくるものを探せ。」

 

「また、その後ペア決めをする。このアイナ王国では戦闘時、二人一組で戦う。ペアは自分たちで決めろ。個人の能力だけではなく、チームワークも大事だぞ。」

 

教室がざわつく。みんなが立ち上がって、武器を見に行ったので、僕もどんな種類があるのかを見に行くことにいた。

 

「おい、日々響。」

「はい。」

 

急に呼び止められる。

嫌な予感しかしないんだけど。

 

「お前は、校長先生がお呼びだ。」

「...はい?」

「校長先生がお前の事を呼んでるんだ。」

「はぁ...」

「いいから行ってこい!」

 

嫌な予感は見事的中。

いや何この状況。

絶対退学になるパターンじゃね?

兎に角僕は走り出した。

 

校長室の前に立つ。

これは、入学式に遅刻するより緊張するな。

 

「失礼します。」

「...あぁ、日々響君か。入って。」

 

中は、今の時代に合わない木造で、居心地がよかった。

どうしよう。とりあえず謝るとしよう。

 

「すいません。」

「え?」

「え?いや、だからあの、入学式に遅れてしまったことを...」

「あぁ、大丈夫だよ。それより君に伝えたいことがあるんだ。」

 

退学にはならなそうだな。

 

「君は、この学年で一番成績がいいんだ。」

「え?」

 

何のことをいっているのか。

横の少女は試験官を粉々に吹き飛ばしていたというのに。

 

「だから君は、ペアを決める権利があまりないんだ。」

「あれ?妹紅先生は、ペアは自分たちで決めるっていってましたけど。」

「でも強い人は、強い人同士と組ませないと、その能力が勿体無いってもんだ。」

 

理論は無茶だが、言っていることはだいたいわかる。

 

「じゃあ僕は魔法で。」

「だよね。君は音波を操れるんだもんね。」

 

なんで知ってんだ?

そういって、校長先生はタブレットを操作する。

 

「魔法だったら、君のペアは...」

 

そういって校長先生が見せた人は。

 

 

 

あの、僕の横で試験を受けていた少女だった。

 

 

 

奇遇かよ。よりによってあの少女...

あの子と組むと、命の危険があるな...

 

「ちなみに、名前はフランドール・スカーレット。種族は吸血鬼。」

 

きゅ、吸血鬼?血吸うのか?

怖いな。

 

「えっと、剣だったら誰ですか?」

「魂魄妖夢。」

 

この人は剣をやるために生まれてきてるな。

要するにガチ勢だ。しかも、周りに何か浮いてるし。

 

「銃だったら誰ですか?」

「鈴仙・優曇華院・イナバ。」

 

この人目怖い。赤いよ。

しかもうさみみつき。

 

 

 

結論。みんな可愛い。

 

後、男子弱くね?

そして僕が出した答えは...

 

 

 

「魔法で。」

 

「本当にいいんだね?」

 

「はい。」

 

 

 

男に二言はない。

カッコいい、俺。

 

「粉々にされても責任取れないからね?」

 

やっぱ怖いわ。

 

校長先生は、トランシーバーらしきものに声を吹き込んだ。了解、という返信も聞こえた。

 

そして、先生は僕を見据えた。

 

「いいかい?日々響君。今、アイナ王国が置かれている危機的状況を知ってるね?」

「はい。」

 

無論、知っている。

アイナ王国は昔から非好戦的だった。

しかし、今は、ベスマー帝国が立てた全国統一計画の最初の犠牲者として狙われているのだ。

 

「君たちがどんなに抵抗しようとも、戦争の波は必ずやってくる。そのときに胸をはって戦えるようになって欲しい。君は、この学年の期待の星なんだ。どうか、その自覚を持って、進んで行って欲しい。」

「...」

 

何も言えなかった。

僕にかかっている期待が大きすぎて押し潰されそうだ。それでも、僕を認めてくれた、校長先生に感謝しなくちゃね。

 

「なーんて、そんなに期待してないけどねー。だって入学式は遅れて来るわ、あって開口一番謝るわで期待なんてできるもんじゃないな。」

 

前言撤回。相当傷ついたわ。

 

「ごめんね。いきなり呼び出しちゃって。もう教室に帰ってよろしい。」

 

はい、と呟き、校長室を出た。期待、という言葉が頭を離れない。

 

「期待か...」

 

僕の何を期待しているんだろうか。

窓から見える中庭の大きな桜の木が、風に揺られている。桜が風にもてあそばれていた。

しばらく僕はそこに立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第二話でした。

校長室に入学式初日から行くとは、響君も大変ですね...

また、ゆっくりと書いていきましょう。



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第三話~ペアは可愛い~

桜が華やかに散っている。

私はさっきから外をずっと眺めていた。

 

1年D組はもうペアが決まり、このあと総当たり乱闘をするから、と妹紅先生が言ってから、作戦会議がペア同士で始まっていた。

 

私は横にペアがいない。ペアを選ぼうと立ち上がった時、妹紅先生に止められたのだ。

真っ先に頭をよぎったのは、

 

自分の能力だった。

私は、試験の時、試験官を粉々にしてしまった。

その、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持っていれば、まあ、私と組む人はいないだろうな。

 

でも、横の席には、笛がおいてあった。

明らかに魔力が込められている。

誰が使うのだろう、と考えてもみたが、どうにもわからなかった。

 

ガラガラ、とドアが開いて、一人の少年が入ってきた。

あ、遅刻犯。

さっきみんなに噂されていた少年だ。

入学式に遅刻をしてきて、堂々と入ってきた人。

その少年は、教室をぐるりと見渡すと、私と目を合わせ、微笑んだ。

 

正直気持ち悪い。

 

そう、その少年は、私とペアだった。

 

「僕の名前は樹神日々響。よろしくね。」

「うん...」

「何て名前で呼べばいいかな...」

 

とその少年は私を見る。

 

「フラン、でいいよ。」

「わかった。よろしくなフラン。あ、ちなみに俺のことは日々響でいいぞ。」

「ん。よろしくね日々響」

 

あれ?結構話しやすい人だったりするのかな?

 

 

 

----------------------

 

 

 

ひとまず挨拶は出来たな。

それにしても可愛いじゃないか。フラン。

そして机の上には笛がおいてあった。

 

「ん?この笛は?」

「さっき妹紅先生が置いてたよ。」

「何に使うんだ?」

「そんなの私知らないよ。」

 

なんなのだろう。この笛は。

それにしても、フランが社交的でよかった。

これで相手がコミュ障とかだったら、どう反応していいのかわからないからね。

 

 

 

 

 

 

その後僕達は、校庭の奥にあった大きな平原に来ていた。ここは、どうやら学校の私有地らしい。

 

「では今から学年全員で総当たり戦を行います。」

 

A組の担任、慧音先生が言う。

 

「アイナ王国の戦い方は個人の能力だけではありません。そのペアのチームワークが問われます。」

 

そのセリフどこかで聞いたような。

 

「皆、全ての能力や力を使い、今出来る最高の戦いをしてください。それでは、スタート!」

 

 

 

戦いが始まった。

僕らは、作戦通り近くにあった木の影に隠れる。

 

「本当にこれでいいの?」

「だって、たくさんに人と戦っても、疲れるだけだろ。なるべく体力を温存しなきゃ。」

 

見ていると、みんなまだ能力を使いこなせず、苦労していた。剣の力を拡大したものの、その剣の重さに引きずられていたり、銃をうった反動で後ろに飛ばされたり。

 

これは俺の横で試験を受けていた誰かさんが特殊だったんだな。うん。

 

 

だんだん人が減ってきた。倒れた人は、瞬間移動などで、保健室に運ばれているのだろう。

 

今、中にいたのは、あのうさみみ少女ペアと剣のガチ勢さんのペア、そして

胸かそのしたあたりに閉じた目がある少女のペア、どこぞの妖怪に似た傘を持つ少女のペア、そして僕たちだった。

 

あれ?男子は?

 

「そろそろいく?」

「んー...じゃいこっか。」

 

僕らは真ん中で乱闘しているペアに向かって飛び出した。

 

 

 

フランは反対側にまわった。

 

 

フランも頑張ってるし、僕も頑張んなきゃね。

 

手の中に音波を集める。次第に周りの音が聞こえにくくなる。

この、音を集めているときの感触が好きだ。

周りが静かになっていき、自分だけの世界になっていくような。

そしてためにためた音波は甲高いキーンキーンという音を放ち出す。

そのまま目の前にいた鈴仙さんのペアの男子の足元に叩きつけた。

 

 

 

さすがに可愛い女子には攻撃出来ないよ。

 

 

 

足元の土が震え、ひび割れ、吹き飛ぶ。

鈴仙さんのペアの男子は、気配を感じたのか振り返ったが、そのまま体を震わせ、倒れた。

音波は、相手の神経に直撃する。

特に鼓膜だ。あんな轟音を耳もとで聞いたら、きっと気絶するよな。

 

そんなことを思っていて、目の前に鈴仙さんが銃を構えたことなどわからなかった。

 

遅かった。

咄嗟に魔法陣を出そうとしたが、間に合わないとわかってしまった。

 

「日々響!」

 

声が聞こえた気もしたが、空耳かな?

目を閉じて鈴仙さんが撃ち込んでくるであろう銃弾の衝撃を待った。

 

 

 

 

...あれ?

 

いつまでたっても衝撃がこない。

恐る恐る目を開けると、

 

 

 

心配そうにフランが見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




僕がもしこの学校の生徒だったら誰にするか悩んじゃいますね。はい。


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第四話~血は人を変える~

 

 

 

 

「え?」

 

一体何が起こったのか全く理解できなかった。

 

カラン、と乾いた音が響く。

それに、体全体が何か生温いもので濡れているようだ。

ぎょっとして振り返ると、

 

「...っ」

 

無言で膝をついた鈴仙さんが目に飛び込んでくる。

腹からは出血しており、僕はその返り血を全身に浴びていた。

 

状況がようやくわかってきた。どうやら鈴仙さんに撃たれそうになった直前にフランが助けてくれたらしい。あの日々響、って言うのは空耳じゃなかったんだな。

 

鈴仙さんが光に包まれ消える。

どうやら気絶したらしい。

 

...ということは?

 

温かい音が聞こえた。

周りを見渡すと、先生たちが拍手をしている。

 

...どうやら勝ったんだな。

フランを見ると、唖然とした表情で固まっている。

 

「どうしたんだよ。死後硬直みたいに固まって。」

 

「え!?いや...なんでもない...」

 

どうやらまだ勝った実感がわいてないようだ。

 

改めてフランを見る。傷はついてないが、僕より大量の返り血を浴びていた。

先生たちが近寄って来た。

 

「まずは教室に戻ってください。」

 

ひとまず勝ててよかった。

期待、という言葉が心をよぎる。

期待はこうやって答えるのかな。

少しわかったような。

 

「フラン、戻るぞ。」

 

そういって僕らは激戦区をあとにした。

 

 

 

----------------------

 

 

 

「フラン、戻るぞ。」

 

日々響は私に声をかける。

私は今感じていたものに呆然とし、固まっていた。

 

私は木の影から飛び出すと、日々響の反対側に回った。

そこから、人の足を潰してきた。

 

物質には必ず目、というものがある。

私はその目を自分の手の中に移動させることが出来、その目を握り潰すことで、対象物を破壊するのだ。

 

人を殺すときは心臓を潰せばいいのだが、今は気絶させればいいので、足ばかりを狙っていた。

 

 

私が後ろに回ったことに気づいた人はいなかった。

だからあっという間に4人を気絶させた。

そこで私は何か違和感を感じた。

しかしそれを突き詰める暇はなかった。

爆音がしたからだ。

見るとうさみみ少女のペアの男子の足元に亀裂が入り、爆音と共に吹き飛んだのだ。

3人がその場で硬直し、倒れた。多分鼓膜が破れたのだろう。

その時、うめき声が聞こえた。

 

そこにいたのは、

 

銃を構えるうさみみ少女となんとも無様な姿で体を丸める日々響だった。

 

 

私は思わず日々響、と叫び、

うさみみ少女の足の目を潰そうとした。

 

しかし潰していたのは、腹だった。

うさみみ少女がその場で膝をつく。

 

私は日々響に駆け寄った。

どうやら傷はなさそうだった。

 

うさみみ少女をもう一度見た。

そして私は固まっていた。

自分が感じた気持ちに対して。

 

いつも私が目を潰す練習をしていた時、私がいつも感じていたのは、対象物に対しての謝意だった。

ごめんなさい。

その言葉をいつも唱えながらやっていた。

しかし、今感じた気持ちは全く違った。

それは、

 

 

 

 

 

喜びだった。

 

 

 

 

 

 

唖然とした。

全身の神経が麻痺しているようだった。

体もうまく動かない。

目の前が暗くなる。必死にそれをこらえた。

あの記憶が甦る。

槍で貫かれ、心臓が爆発し、うめく人々。

もっと血を...

「フラン」

違うよ。

日々響に迷惑をかけてはいけない。

もっと人を...

だから違う。

「フラン」

日々響に迷惑をかけたくない。

もっともっと殺したい...

ちがうちがうちがう!

「フラン!」

これ以上日々響に迷惑なんて...

 

 

「フラン!!!」

「え!?」

「大丈夫か?」

「う、うん。」

 

気がついたら教室だった。

ここまでどうやって来たのか全く覚えていない。

さっき感じた動物的な衝動も消えていた。

 

「大丈夫ならいいけど...」

「ちょっとほうっておいて。」

「あ、はい。」

 

こんなことを言うと日々響が悲しむ気がしたけど、今は一人の時間が欲しかった。

 

静まり返った教室の中で私はあの記憶のことをずっと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第四話でした。

今回はグロテスクな物語になってしまいました。

どうかお許しください。


フランちゃんは、大丈夫なのかな...



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第五話(閑話)~国際情勢は物語の中で説明すると、面白くない~

閑話です。

日々響君たちも、学校生活に慣れるための平和な時間が欲しいかな、と考え、今回はおやすみです。

ですが今のアイナ王国を取り巻く情勢などを書いてみたので、是非読んでいただければと思います。
メタ発言や等も含まれますのでご注意ください。

この後の物語が分かりやすくなる!はずです。

では、ごゆるりと。


今、アイナ王国は崖っぷちの危機にある。

 

 

 

 

 

 

 

--昔、アイナ王国の南にあるアトラ公国という国で内戦があった。

 

ことの発端は、アトラ公国のガッシュ王が農民に重税をかけ、圧政をしいたことだった。

人々の不満は頂点に達し、ある一人の青年が担ぎ上げられた。

 

その人こそが、アイナ王国の祖、アイナだった。

 

アイナは特殊な能力を持っていた。

それは、決められた範囲の気配を完全に消すことができる能力だった。

その能力を使えば相手が気づかないうちに、相手の近くまで寄って、不意討ちをすることが可能だった。

 

しかし、アイナは戦いが嫌いだった。

 

そこでアイナは、不満を持つ農民を率いて、アトラ公国の北にあった湿原地帯に逃げることにした。

 

その湿原地帯は、水捌けがとても悪く、誰も開拓していなかった。

そこに農民を率いて来たアイナは来る日も来る日も開拓を続け、農民の反乱や、アトラ公国との戦いを乗り越え、今のアトラ王国を作った--

 

これがアイナ王国の物語だが、そのアイナの気質もあってか、アイナ王国は代々戦いを嫌って生きてきた。

 

だが、現実はそう甘くない。

 

今、元々北の遊牧民だった、ヘスグルと言う民が、セイケマ王国を滅ぼしたのをきっかけに、ベスマー帝国と名前を変え、次々と国を滅ぼし、従属させている。

 

ベスマー帝国は、噂によると風を吹かせるだけで人の首を掻き切るという魔獣兵器を持っているらしい。

 

 

アイナ王国は、一番友好関係が良好なエイスラ共和国と手を結び、ベスマー帝国に対抗している。

しかし。ベスマー帝国は、エイスラ共和国に様々な報酬を見せて、アイナ王国と手を切らせようとしているのだ。

 

ここでエイスラ共和国が手を切れば、あっという間にベスマー帝国の属国になってしまう。その危機感が作らせたのが、ここ、アイナ特殊能力軍事学園だ。

アイナ王国内には、祖アイナと同じく、能力を持つ子供が稀に生まれる。

 

その子供を学校で育成し、ベスマー帝国と戦える戦力にするためなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事は、この学園の生徒でもわかっている。

 

でも、それに抵抗する術はない。

 

だから今の学園生活を十分に楽しむんだ。

 

 

 

「な、フラン!」

 

「そ、そうだね」

 

 

 

「……そろそろ本文進めないとな」

「やっと気づいたの?」

「う、うるさいな、何を書くか考えてたんだよ!」

「時間かかりすぎじゃない?速い人は一日で三話とか投稿してるんだよ」

「それは……僕が学生だから……ね」

「理由になってない」

「あーもうわかったわかった。投稿すればいいんでしよ」

「もっと読者が楽しんでもらえるようなものをね」

「う、うわぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第五話でした。

たくさんのカタカナで分かりにくかったかもしれません。

ごめんなさい。



さて、本文に戻っていきましょう!


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第六話~その、遅刻犯っていうのやめてください~

「私は十六夜咲夜と言います。みなさんの体術の訓練を指導します。よろしくお願いします。」

 

今日は体術だそうだ。僕の得意なやつかな?

 

 

学校に入って1ヶ月余り。そろそろこの環境になれてきて、フランとも普通に会話ができるようになった。

外は桜が全部散ってしまい、中庭の真ん中の大きな木は青々とした葉を繁らせている。

 

色んな事があったな...

入学してまだ1ヶ月だというのにね。

フランのあの恐ろしい行動はあの総当たり戦以来起こっていない。

本当に怖かったな、あれ。

 

だっていきなり頭抑えたと思ったら目が赤くなるんだもん。

あれは、鈴仙さんの目とはちょっと違った。

鈴仙さんの目は、うさぎの目、といった柔らかい感じだが、あの時のフランの目はなんかこう、もっと固くて、病的な目だった。

 

いやっほんとあの時はどうしようってめっちゃテンパったわ。

もうあの行動は起こらないで欲しいな。

 

なんてことを考えながら外の風景を見ていると、

 

「はい、そこの遅刻犯さん。ここの答えを言ってください。」

「え?」

 

 

 

クラスないで有名な人は、必然的にあだ名がつけられるのが宿命だ。

そして僕についたあだ名は、

遅刻犯だった。

 

「だからここを答えてくださいっていってるんです。」

「僕がなんかしましたか?」

 

しらばっくれてみる。

 

「あなた、私が話している間、ずっと外を見ていたでしょう。」

 

やっぱ無理か。

気がつくと、クラス全員が、面白そうな目でこちらを見ている。

フランに至ってはにやついてるぞ。

ったく、心配をしてあげてたって言うのに。

もう心配してあげないぞ。

 

「...わかりません。」

「ちゃんと授業を聞きなさい。遅刻犯さん。」

 

わかったけど、その遅刻犯っていうのやめて。

あの記憶は封印したから。

 

黒板を見ていると、どうやら体術の時には、姿勢を低くする、といった基本的なことだった。

なんだ。僕答えられたじゃん。

無駄に怒られちゃったよ。

 

「それでは今学習したことを実践して見ましょう。5分後に格闘室に集合です。」

 

うわ、移動かよ。めんどくさ。

サボっちゃダメかな...

 

「早く行くよ~日々響。」

 

フランは偉いな...

まあ、行くか。

 

 

格闘室は暑苦しい。

何この湿気。やる気なくさせる気まんまんかよ。

 

「では、習ったことを基本として、ペアと実践してみてください。」

「やるよー」

「はいはい」

 

音波を手に溜めて、フランのに...

 

「あれ?...って痛っ」

「動き遅いぞ~」

「いや、お前が速いんだよ。」

 

だって吸血鬼じゃん。

吸血鬼って身体能力が人間の何倍だっけ?

考えても虚しくなるだけだからやめよう。

 

結局、一回も攻撃は当たらなかった。

フランに一方的にボコされました。

 

「じゃあ先生が見ていた中で特に良かった生徒を呼びますので、前に出てきてください。」

「魂魄妖夢さん。」

「はい。」

 

出た。剣のガチ勢。

剣は確かに体術も大事だからな。

 

「フランドール・スカーレットさん。」

「え?...あっはい。」

 

フランか。確かに吸血鬼はね。

てか、フラン顔真っ赤じゃん。

何緊張してんだよ。

 

「あれ?遅刻犯違うの?」

 

誰かが言う。

 

「う、うるせーなー。体術は苦手なんだよ!」

「へえ、遅刻犯にも苦手なことあるんだ。」

「...っ今回はたまたまできなかっただけであって......」

「見苦しいぞ。」

 

...何も言えないや。

正論ぶつな。悲しくなるから。

後、遅刻犯やめい。

 

「遅刻犯さん、静粛にしてください。」

 

先生もね...やめよ。

 

そして、呼び出された二人は、壇上で体術戦をして、フランの圧勝に終わった。

だから吸血鬼はチート。

 

 

 

後みんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も言うけど、

 

遅刻犯っていうのやめようね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第六話でした。

有名人になると、あだ名は必須ですからね。





後、この学校には、寮があるって言うことをいい忘れていました。

申し訳ありません。


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第七話~スマホはやらなきゃ損~

ゴーン、ゴーンと学生を救う鐘がなる。

今日の授業が全て終わった合図だ。

 

「ちっ。この後日々響に当てようと思ったのに。」

 

妹紅先生が悔しそうに言う。

おいおい、物騒だな。

 

「はい、じゃあそれぞれの寮に戻るように」

 

みんながガタガタと立ち上がる。

そう、この学校には寮があるのだ。

 

それぞれのクラスで寮棟が別れていて、そのなかで部屋が別れている。

 

 

「はぁー終わった終わった~」

 

 

 

授業が終わってから、夕食が始まるまでのこの時間は、みんながくつろいでいる。

フランは、二段ベッドの上でごろごろしながら本を読んでいる。

 

そこ、俺の場所なんだけどな...

 

妖夢は剣研いでるし。

ガチ勢かよ。

 

僕は何をしてるかって?

もちろんスマホだよ。

文明の利器があるというのに、これを使わない手はないだろ。

 

「やべっ」

 

僕はスマホをしまう。

先生が来たからだ。

 

「ほんと日々響は耳聡いね。」

「これだけは見つかったらヤバイからな」

 

だって校則違反だもん。

 

「そろそろ夕食よ」

 

今までずっと本を読んでいた鈴仙が言う。

 

「行くよ~日々響。」

「待って今いいとこだから。」

「んじゃ置いてくね。」

「あ、待ってわかったから!」

 

ったく優しさのかけらもない。

夕食はだいたいバイキングの事が多い。

僕はいつも好きなものしか取らない。

 

でもフランは、

 

「お姉ちゃんに食えって言われてる。」

 

と嫌いなものも食べている。

偉い。

 

てか、フランのお姉ちゃんにあってみたいな。

夕食が終わり、就寝の時間だ。

 

「課題やった?」

「あれ?そんなのあったっけ?」

「やってないの?」

 

といつも鈴仙に言われて気づく。

そして、僕は寝ないで勉強するのだ。

 

 

「ということで勉強終わり!」

 

やっと終わったわ。

咲夜先生の課題難しすぎ。

 

今は夜の12時。

みんなはもう寝てしまった。

僕はこの時間まで勉強した時は、いつもここのソファーで寝ることにしている。

みんなを起こしちゃったら迷惑かけるもんね。

僕優しいな。

 

でも今日はちがった。

誰かが階段を降りてくる音がした。

そちらに目をやると、

フランがいた。

 

「なんだ、フランか。どうしたの?」

「いや、なんか目が覚めちゃって。」

 

そうか、こいつは吸血鬼か。

 

「課題終わった?」

「うん、さっき。」

「じゃあちょっと見せて。」

 

と、フランは僕が頑張って書き上げた課題を見るや否や

 

「ここ、間違ってる。」

「え?」

「ほら、ここは姿勢を低くするだけじゃなくて、目を相手の方に向けて、威圧をかけるって先生言ってたじゃん。」

「...そうだっけ?」

 

フラン様。

ありがとうございます。

うーん面倒だなぁ。また、書き直しか。

 

「んじゃ私は寝るね。頑張って。」

「ん。」

 

そう言ってまた寝室に戻っていくフラン。

優しいな。

 

ふぅ、課題は明日までだから終わらせなくちゃ。

 

 

そういえば体育祭まで後一週間もないな。

フランのお姉ちゃんに会えるかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第七話でした。

いや、ストーリーが全然進んでませんね。

次からゆっくり進めて行こうかな...


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第八話~障害物競争にはチーターがいた~

太陽が燃えているとはこのことを言うのだろう。

今にも落ちてきそう......なはずなのに、

ここは、快適だった。

 

「何でこんなに涼しいんだ?」

 

ここは校庭。僕にとって馴染み深い場所だ。

今まさに体育祭が始まろうとしている。

 

「魔法じゃないの?」

 

とフランが正論を返す。

そうか。ここ特殊能力学園だもんね。

 

風一つ吹いていない。太陽は燃えている。

なのに快適で涼しかった。これも魔法だね。

魔法いず神。

 

「それにしても暇だなぁ。」

「そう?」

 

体育祭は、体を動かしている時が楽しいのであって、他の試合に観戦しているときは全く面白くない。

 

横のフランは、魔法で土を固めてオブジェ作りに忙しい。

なにやってんだ。

 

「お知らせします。この後の障害物競争に出場するペアの方は、赤門へ集まってください。」

 

体育祭は赤、青、黄、緑に別れて戦う。

A組は緑、B組は黄、C組は青、我らがD組は赤だ。

赤団は、ここ最近優勝がないらしい。

僕の本気で優勝させてやるか。

 

「僕ら障害物競争でるじゃん!いこう!フラン!」

「えーちょっと待って。このオブジェ作ってから。」

「だからダメだって。」

 

オブジェを作ろうとするフランを引っ張り赤門までつれていった。

 

「障害物競争にでるペアのみなさん。このレースは、校庭から出て、模擬戦闘場までの道のりをペアで2周してもらいます。道には様々なトラップが仕掛けられていますのでご注意ください。」

 

やけに丁寧だな。

お前らがトラップ仕掛けたんだろうが。

そんなことを思っている間にバン、と乾いた銃声がなる。

スタートだ。

僕は咄嗟に足に筋力強化をかけ、走る。

まずは校庭を抜けるために校庭に一周する。

 

「ん?」

 

一周した前の生徒が突然ふらつき、もう一周しようとしている。

とりあえず僕も一周した。

すると、

 

「あれ?今何周目だっけ?」

 

走っている途中にわからなくなる。

 

僕は頭に音波のバリアをかけ、魔法を遮断する。

そうか、この魔法は、混乱魔法だ。

一周走りきると、もう一周しようとする選手を横目に校庭から飛び出した。

 

模擬戦闘場に入ると、ものすごい風が吹いていた。

体が押し潰されそうだ。

魔法を遮断してみる。

ダメだ、風止まないし。

草木が今にも吹き飛ばされそうだ。

 

一体どうすれば......

 

 

フランの声が聞こえた。

 

「それ、幻覚魔法でしょ。そんなのに引っ掛かるなんてバカじゃないの?流石遅刻犯だけあるね。」

 

どうやら遠隔声伝機で、フランがしゃべっているらしい。

僕は苦笑する。そうか。幻覚魔法か。

目から魔法を遮断する。

すると、風がやんだ。

 

でも遅刻犯はじゃないからね。

 

模擬戦闘場の半分に差し掛かったころ。

前には数人の人がいた。一番早いのは黄の赤と白の服を着た少女だった。

赤団いけや。

突然、体に猛烈な熱がはしった。

体が焼ける。燃えている。あの太陽より熱いんじゃないのこれ。

よく見ると周りを炎が囲んでいた。

ヤバい、絶体絶命。

 

「落ち着いて!日々響!」

 

その声を聞くと、自然と落ち着いた。

フラン様。

 

「これは、そうだな、幻覚魔法と感覚操作魔法の組み合わせ的な?」

「気づくの遅すぎ。」

 

あっ聞こえてたんですね。

慌てて魔法を遮断する。

僕は全力で走り出した。前には3人。

抜かせるかな?

音波の勢いを借りて前へ、前へ。

そして、

 

「ごめん......」

 

フランのところへ到着。一人しか抜けなかった。

一番早いのは黄色と白と黒の服を着て、箒に乗った少女。魔法少女と言ったところか。

二番手は、手に天狗が持ってそうなうちわを持った少女。天狗だよね、あれ。

 

フランは、持ち前の素早さと、運動神経を生かせば行ける!

あの、紅白少女のペアは無理そうだけど。

 

フランは、3つの課題の内、2つを突破し、一人を抜いた。後は白黒魔法使いだけだ。

しかし、

 

「あんなに僕に悪口雑言言っておいて、お前も引っ掛かるんかい。」

 

フランが引っ掛かったのは、感情操作魔法だった。

 

「おい!フラン!それ感情操作だって。遮断すれば治るわ。」

「え?そうなの?私もうダメかと......」

「いいから早く!」

 

あの白黒魔法使いも引っ掛かっていた。

だから。

 

「フラン!一位も引っ掛かってるぞ!頑張れ!」

 

あの一位もどうやら遮断できたらしい。

その瞬間、僕は目を見張った。

 

「はやっ。」

 

なんというスピード。あっという間にフランのと差が開いていく。

そして。

 

「一位は、博麗霊夢さん、霧雨魔理沙さんペアです!」

「二位は、樹神日々響さん、フランドール・スカーレットさんペアです!」

 

どっと歓声が沸き上がる。

でも。

 

「日々響、ごめんね。」

「なんでだよ。」

「だって一位取れなかった。」

「いやもともと無理だって。あの紅白さんと白黒さん速かったもん。」

 

博麗霊夢と霧雨魔理沙、だっけ?

てかなんでこんなしんみりした話してんだ?

 

「二位を取れただけてもいいじゃん。」

「えー...とるなら一位がいい。」

 

ったく負けず嫌いなんだから。

可愛いから許すけど。

 

「とりあえず席戻ろう。」

 

そう言って僕らは席にもどった。

 

 

 

 

 

 

 

人生色んな失敗あるんだから、一つ一つに一喜一憂してたら、体持たないよ。

 

次の棒倒し、頑張ろうぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで第八話でした。

いや障害物競争だけで一話使っちゃったよ。

どうしよ。



さあ、果たして体育祭の結果はどうなるのでしょうか。


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第九話~だからチートはいけないって~

障害物が終わってから次の棒倒しまで、時間がなかった。席に戻ると、みんなもう、青門に行った後だった。

 

「おいおい、休憩なしかよ……」

「もう疲れたの?」

「いや、べ、別にそんなことはないよ。早く行こう」

 

青門に着くと、

 

「遅刻犯すげーじゃん!」

「遅刻したくせにやるよな」

 

褒められてるのか? 褒めてるのに遅刻犯はやめてほしい……

 

 

一回戦目の青団を下し、迎えた二回戦目。

相手は黄団だ。

 

これ以上黄団に勝たせちゃいけないよな……

 

僕は守備だ。前も言ったように、僕は体術が得意じゃないんだよ!

フランは攻めだ。まあ、吸血鬼だもんね。

 

戦いが始まった。赤団は攻めにいった。

あれ?こっちに誰も来てなくね?

と、

 

バーン! と言う音がして、反対側の人が吹き飛んだ。

 

「い、いつの間に……」

 

誰かが呻く。

本当だよ。いつの間に来た。

 

もしかして、あれがB組で一番強い奴か?

あの、無意識を操るやつ。

 

また、衝撃音が一つ。このままでは瞬殺で終わる。

僕は駆け出した。

 

脳に音波で強化をかけて見る。

ぼんやりとだが、影が見える。

その音波を周りの人にかけ、

 

「影が見えたらそれが相手だ!ひたすら防衛して!」

「ほんとだ!何かが見える!」

「それそれ!」

 

黄団の方でも爆発音が上がっている。

このまま防げれば……

 

悲鳴が聞こえた。棒が今にも倒れそうだ。

あの無意識少女が近くで爆発させたらしい。

その間も爆発音が続く。

 

どこだ!あの無意識はどこだ!

やっと、棒の直下で爆発音を鳴らす影を見つけ、僕は、反対側から

 

【爆音】アクセント

 

と音波の塊を放った。

倒れかけていた棒が跳ね返るように戻る。

しかし。

 

「ヤバい。やり過ぎた」

 

反対側に傾き、倒れていく棒。

反対側には誰もおらず、誰かが跳躍し、棒の上の紐を取る。

 

これは負けたわ。

みんなごめんなさい。

 

大歓声が上がる。赤団の方から。

ん? 赤団?

と言うことは…勝ったのか!

どうやらフランが一歩ほど速かったらしい。

 

みんなで肩を組み合って喜んでいる。

僕は戦犯になりかけたからな……

あんまり喜べないね。

 

 

 

 

 

僕らは歓喜に酔ったまま席にもどった。

みんなはまだざわついている。

 

「フラン凄いじゃん!」

「あ、ありがと」

 

可愛い。うん。

今、会場では3年生が棒倒しをやっていた。

と言うことは。

 

「フラン、お姉ちゃんいるんじゃない?」

「あぁ、あれだ」

 

フランが指を指した先には、立派な槍を持った少女がいた。

翼格好いい。

お嬢様、という感じが漂っている。

 

「槍なんだ。異装だね。」

「あの槍は、スピア・ザ・グングニルって言うやつ」

「めちゃめちゃ格好いい名前じゃん」

「でもあいつ、個人戦だと私より弱いんだよ」

「えっ……」

 

僕の中でイメージが崩壊していく。

あれ? 妹にあいつって言われてるし……

 

そんなことを考えている内に棒倒しが終わり、最後の競技だ。

最後は5年生がやる、団対抗乱闘だ。

これが一番配点が高く、一番盛り上がる。

 

始まった。

色とりどりの閃光や銃の音が響く。

 

 

「あれ?」

 

試合は呆気なく終わった。

勝ったのは、博麗霊夢と、霧雨魔理沙ペアだった。

 

「あれ、強すぎない?」

「うん。チーターだよ。」

 

僕もあんなことしてみたいな……

 

結果は黄団がぶっちぎりの一位で、赤団は二位だった。

黄はここ五年間連続優勝らしい。

強すぎ。

 

 

 

 

チートはよくないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

来年こそ、一位かな?




と言うことで第九話でした。

体育祭に時間をかけすぎたので、最後は飛ばしました。

次はどうしようかな?


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第十話~迫り来る脅威~

体育祭が終わってから二週間、

僕等は大きな脅威と戦おうとしていた。

 

「日々響、期末試験まで後二週間だけど大丈夫なの?スマホやってて」

「ん?あぁ大丈夫さ」

 

まだ大丈夫。期末試験まで二週間ある。

それにしても、

 

「何でお前らは勉強してんだ?」

「期末試験まで後二週間しかないのよ」

「まだ二週間もあるじゃないか」

 

ったくこいつらが勉強しているせいで、僕が安心してスマホができないじゃないか。

まぁまだ期末試験は先だから。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

カリカリカリ、と書く音が響いている。

まぁ、一人だけ例外がいるが。

 

「フラン、期末試験まで後何日?」

 

日々響だ。

その質問にみんな呆れたような目で日々響を見る。

 

「明日だよ」

 

答えたのは私だけだ。

 

「え?今死刑っていった?」

「は?言ってない」

「マジで明日?」

「そうだけど」

「ちょっとまって、それはヤバい」

 

やっと気づいたのか、勉強を始める日々響。

 

「明日の教科は?」

「エイスラ語と理工学」

「うっわエイスラ語かよ。僕の嫌いなやつじゃん」

 

エイスラ語は面白いのにな。

 

それより、理工学勉強しなきゃ。

理工学は難しい。

物の仕組みとか全然わからない。

 

「なんか勝手に手が動いてる!」

「え?」

 

日々響が怯えたように言い、みんなが日々響を見つめる。

 

「うわ、スマホを掴んだ!」

 

その一言でみんなはまた勉強を始める。

なんだよ。見なきゃよかった。

 

「おぉ!来た!フィーバー!」

「うるさい」

 

何のゲームか知らないが、鈴仙の言う通りだ。

うるさい。

本当に日々響大丈夫か?

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、勉強終わった~」

「私も」

「もう寝るね」

「ん、おやすみ~」

 

そんな会話をしているなか、日々響は、

 

「目が痛い……」

「大丈夫?熱?」

 

私も熱が出たとき、目の奥が押されるように痛かったのを思い出す。

すると、鈴仙が笑いだした

 

「フランちゃん、日々響が熱だと思う?こいつ、ずっとスマホしてたのよ?」

「そっか。」

 

納得。スマホのやり過ぎかい。

にしても鈴仙毒舌だな。

 

「そんなに厳しく言わなくても……」

「勉強すれば?」

 

怖い、鈴仙怖いよ……

 

「あぁもう。頭も痛いし今日は寝る!」

 

ワイルドだなぁ……

理工学ノー勉かよ。

 

でも、私も眠くなってきたことだし。

 

「私も寝る。おやすみ~」

 

 

 

明日の試験はきっと大丈夫。

 

自信を持ってやろう。

 

 

鈴仙にガミガミ言われている日々響をおいて、私は寝室に向かう。

日々響は、筆記試験こそノー勉だけど、実技ではきっと一位をとってしまうだろう。

 

 

 

 

なんてったって学年一位の成績で入ったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うことで第十話でした。

僕がテスト前にスマホやり過ぎで目が痛くなったので、日々響君にもなっていただきました。



記念すべき第十話は、短くなってしまいました。

次は日々響君の試験との対決が見られそうですね。



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第十一話~試験返却~

あまりおもしろくない可能性があります。こ注意ください。


キーンコーンカーンコーン

 

全試験の終了を告げる鐘がなった。

 

「終わった……」

 

と言うフランに、

 

「色んな意味でな」

 

と付け足す。

本当に今回の試験はヤバかった。

スマホし過ぎた。スマホのせいだ。

 

でもこれからスマホやり放題じゃん!

最高だ。試験なんて封印しよう。

 

「一度寮に戻って指示があるまで待っていてください」

 

まだぼうっとしているフランの背中を叩き、寮に戻った。

 

「鈴仙、ここなんだった?」

 

寮に戻ると、妖夢が鈴仙に質問していた。

 

「ここは、R*×fp×ne×fl×fI×fc×L。ドレイクの方程式って言うの。」

「え?」

 

今なんか鈴仙が変な数の羅列をしていた気がしたけど……気のせいかな?

何であんな事がわかるんだろ?

天才って言うのかな、あれ。

聞いていた妖夢も呆然としてるし。

 

「一年生は全員、補助教室に集まってください」

 

校内放送が流れる。

試験が返されるのだ。

見たくもない。

 

 

 

補助教室に着くと、先生が、

 

「成績優秀者を発表します。名前を言われたら立ってください。」

 

まず成績からかよ。

 

「一位、鈴仙・優曇華院・イナバさん。得点、985点。」

 

やっぱりか。てか点数鬼畜かよ。1000点満点で985って……

 

「二位、古明地こいしさん。得点、860点。」

 

ん?古明地?

あの無意識少女か。

頭良いんだな……

あれ?鈴仙ぶっちぎり?100点以上二位と差がついてるんだけど。

 

「三位、フランドール・スカーレットさん。得点、795点。」

 

まじ?フランかよ。

って等のフランもビックリしてるし。

 

「凄いじゃんフラン」

「………うん」

「顔真っ赤で可愛いn……痛っ」

 

皮膚破壊されたんだけど。

フラン様マジ怖い。

 

「遅刻犯は?」

「筆記は苦手なの。後遅刻犯って言うのいい加減やめない?」

 

「次は実技の成績です」

「一位、フランドール・スカーレットさん。990点。」

 

えぇっ

フラン……しかも990ってなんだよ。人間離れしてる。

あっ人間じゃなかった。

 

「だから驚きすぎだって。」

「だって私実技出来た感なかったんだもん」

 

こういうのちょっとムカつくな。

 

「二位、魂魄妖夢さん。920点。」

 

さすが剣ガチ勢。

妖夢はこういうの得意だから。

僕じゃないのはちょっと不満だけど。

 

「三位、樹神日々響さん。860点」

 

やっと出たか。たぶん体術が全く出来なかったからそれの減点だな。

だって体術が初日にあるなんて聞いてなかったもん。

 

「よって総合一位は1780点で、フランドール・スカーレットさんです。」

 

フランはまだ呆然としている。

 

「私、一位なの?」

「譲ってくれてもいいんだよ」

 

そこで初めてフランは笑顔になった。

やっぱり可愛い。

 

「やめとくね」

 

言ってることは鬼だけど。

まぁ吸血鬼だから。

 

結果。僕は5位だった。上から五人は

フラン、

鈴仙、

妖夢、

古明地こいし、

そして僕だ。

 

こいしに抜かれたのは悔しいけど、頑張った方だろう。

また次頑張ろう。

 

 

 

次はスマホ中毒に気を付けなくちゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 




と言うことで第十一話でした。

ちなみに作者は、成績があまり芳しくないので、日々響君に託してみました。



ドレイクの方程式は、人類と接触しえる地球外生命体の数を導き出す方程式です。詳しい事はわかりません。


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第十二話~部活は青春の一環~

「そういえば、部活どうするの?」

「そっかぁ。そろそろ部活決めなくちゃね」

 

試験も終わり、夏休みまであと少し。

そんな中、僕等一年生は、部活選びにいそしんでいた。

 

候補は吹奏楽部か、テニス部。

我ながら変な候補だとは思うが、この二つで迷っているのだ。

吹奏楽部は適度にサボりができていいと思うのだが、音波を操る能力のおかげで、何も引いてなくても音が出てしまうというただのチーターになってしまう。また、吹奏楽部はフランが反対するだろう。

テニス部は、運動ができていいのだが、部活の顧問がとても厳しいことで有名であり、謎の迷言を撒き散らしているらしい。

そこに入ったら確実に目をつけられるだろう。

 

「と言うことで、フラン。吹奏楽部か、テニス部か、どっちがいい?」

「吹奏楽部」

 

あれ?テニス部じゃないの?

それにしても清清しい返事だこと。

こちらの迷いなんて全く気にしてないよね。

 

「て言うか日々響も吹奏楽部の方がいいんじゃないの?だって笛持ってるじゃん」

「笛?」

 

なんのことだ?

 

「あれだよ。入学初日に妹紅先生がおいてくれたやつ」

「あぁ...」

 

思い出した。

あの笛は今も部屋においたままだ。

せっかく妹紅先生がくれた物を使わないというのも気が引ける。

それにフランも吹奏楽部にしたいっていってるんだから。

 

「じゃ、吹奏楽部にしよう。」

「フランは吹奏楽部でなにやりたいの?」

「うーん...ギターかな」

 

ギターか。フランならかっこよくやれそう。

しかも可愛くね。

 

「なにぼうっとしてるの?」

「い、いや。何でもない。」

 

試験返却の時みたいに皮膚を潰されてはたまらない。

 

「さ、部活決定書出しに行くよ」

 

部活はフランと一緒にやれて楽しみだなぁ。

 

 

部屋に戻ると妖夢と鈴仙がゴロゴロしていた。

妖夢は剣研いでるけどね。やっぱりガチ勢。

 

「二人とも何の部活にしたの?」

 

フランの問に

 

「妖夢は言わなくてもわかるだろ」

 

と相槌をうつ。

 

「私は薬科部」

「は?薬科部?何すんの?」

「魔法薬を作るの」

 

ずいぶんと危ないところに入ったな。薬科部って。

危険な薬とかずっと作ってそうだ。

お試しとか言って僕に飲ませるの止めろよ。

 

「私はk...」

「剣道部な。わかってるよ」

 

と言うことで。僕はあの笛を使って見ることにしよう。

寝室に向かう。

ベッドの横に置いた荷物の中に、あった。

あの笛だ。くたびれていそうでそれでいてえげつない量の魔力が見え隠れしている笛。

 

「早く使ってみてよ」

「えぇ?あ、なんだフランか」

「え?気づいてなかったの?」

「うん全く。」

「鈍いね。」

 

う、うるさいな。

とりあえず使ってみよう。

笛を吹く。普通の音がでる。でも何か反響しているようなしていないような。

 

「なんか紙入ってるよ」

「紙?」

 

確かに、笛が入っていた入れ物に紙片が入っていた。

 

「これは...楽譜だ。」

「楽譜?ちょっと引いてみて」

 

楽譜には、躁、鬱、哀、眠、など一文字で名前がつけられていた。

じゃ、眠、から吹くか。

書いてある通り吹いてみる。

なんだ僕。結構才能あるじゃん。

 

「なんか...眠い」

「え?あ、そういうことか」

 

フランは寝てしまった。

なるほど。これは相手の脳に干渉するのか。

要するにチートだ。ダメでしょこれ。

強すぎでしょ。

吹くのをやめる。フランは目を覚ます。

 

「あれ?なんかその歌聞いてたら、眠くなって...」

「そういう能力なんだよ。 この笛が。」

「そーなの!?」

「そーなんだ」

 

この笛を部活で使ったら最強だな。

 

と。

 

「ん?」

 

笛の中に鼓動が聞こえた。トクントクン、となっている

 

「ん、どうしたの?」

「ちょっとこの笛触ってみて」

「なんで?まあいいけど」

「何か感じない?振動しているような...」

「え?なんにも感じないけど...」

 

とフランは笛を返す。僕も触ってみるが、なにも感じない。

さっきのは気のせいなのだろうか。

 

「んまあ、いいや。もう就寝だし今日は寝よう。おやすみ。」

「ん、おやすみ」

 

部活は楽しそうだけど、適度にサボりたいな...

 

 

 

 

 

 



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第十三話~夏休みの前に聞きたいこと~

これからまた部活が始まったので、この時間の投稿となります。
ご了承ください。


「それでは、解散!」

「気を付け!礼!」

「ありがとうございました!」

 

「よっしゃぁぁ!」

 

誰かが叫んでいる。

今日で夏休み前の授業は終わり。

これから、夏休みだ。

 

それにしても、早いことだ。

いろんな事があって、忙しかった。

誰かさんがおかしくなったり、誰かさんと障害物競争に出たり。

あれ?誰かさんとしかやってなくね?

 

「おーい行くよ~何呆然としてるの?」

「ん?いや何でもない。行こう」

 

フランはやっぱり可愛いね。

 

 

寮に戻る。

寮の前には下駄箱があるのだが、

 

「ん?」

 

とフランが何かを取り出す。

 

「なにそれ」

「ううん、多分ラブレターとかその辺じゃない?」

 

曖昧だな。

 

「誰から?」

「B組って書いてある」

「でもこういう人嫌い」

 

フランはラブレターをビリビリに破いた。

おい。それやっていいのかよ。

 

「だって。自分から会いに来ないんだもん」

「いや、まあそうだけど...破くのはやばくね」

「大丈夫。わからないから」

 

書いた人がこれ知ったら自殺するかもね。

 

フランは性格はおいて、容姿は申し分ないのでよくモテる。

一年生だけでなく、三年生とか、様々な人からラブレターが来るのだ。

もしかしたら、女子で一番モテている輝夜先輩よりもモテているかもしれない。

モテ期かよ。うらやましい。

 

...ちなみに、男子で一番モテているのは、二年生の水橋先輩という人だそうだ。

何でも、恋多き人なんだって。会ったことないけど。

 

「あれ?フランそれはなに?」

 

鈴仙は、本から目を上げて聞く。

 

「ラブレターっぽいやつ」

「ラブレターか...私もよく貰うんだけどね...」

「私は......」

 

言葉を探す鈴仙に、僕は笑いをこらえきれなくなった。

 

「ふふっ」

 

鈴仙がジト目でこっちを見る。

 

「それ以上言ったらあなたを銃で撃つ」

 

あぁ怖い。

鈴仙は好きな人がいる。それは、水橋先輩だ。

僕は見てしまったのだ。鈴仙がラブレターを書いているところを。

 

「どうしたの?そんなに険悪な雰囲気だして。」

 

何も知らない妖夢と、フランが聞く。

 

「何でもない。しかもこれ以上言うと、鈴仙に殺されるから言わない」

「早くここからいなくなって!」

 

鈴仙がキレる。

顔真っ赤だし。

何されるかわかんないから、寝室言って笛の練習しよ。

 

 

 

「日々響~ちょっと来て~」

 

フランの声がする。

んじゃ行くとするか。

 

僕が着くと、鈴仙が

 

「これ、フランが飲み残したから、飲んでいいって」

「え?」

 

ちょ、ちょ、ちょっと待て。

これが世に言う間接キスっていうやつ?

待って心の準備が......

そんな僕を、鈴仙と妖夢はニヤついて、フランは恥ずかしそうに見ている。

そ、そんなに飲んで欲しいのか...

じゃ、いただきます。

 

美味しい。普通の水なのにいつもよりおいしく感じる。

やっぱり間接キスは素晴らしい。

 

「......っ眠い......」

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「本当に鈍いわね。フランがそんなもの飲ませるわけないじゃない」

 

眠ってしまった日々響を見て、鈴仙が冷笑する。

怖いよ、鈴仙。

 

「それとも、私が薬科部だってことをお忘れかしら?」

 

鈴仙が飲ませたのは、睡眠薬入りの水。

日々響は、私の飲みかけだと言った鈴仙の言葉にまんまと引っ掛かった。

 

作戦を打ち明けられた時は上手くいくかわからなかったけど、やっぱり日々響は鈍かった。

けどめっちゃ緊張したな...

 

「日々響の寝顔って可愛くない?」

 

唐突に妖夢がいう。

それは認めざるを得ない。

鈍いし、性格もアレだが、もともと童顔なので、まあ普通に可愛い。

後頭いいし。

ってこれ日々響に言ったら殴られそう。

 

「これはモテるわけだね」

「私達がラブレターを没収したのは正解かな?」

 

と鈴仙。

そう。日々響は知らないが、日々響には、私と同じくらいのラブレターが届いている。

でも、先に私達がそれを読んでいるのだ。

そして、半分以上没収している。

...ってあれ?何でそんなことしてるんだっけ?

 

「何でそんなことしてるんだっけ?」

 

とたんに、妖夢と鈴仙が笑い出す。

あれ?なんか変なこと言った?

 

「そうか...この目的を言ってなかったね」

「何でこんなことしてるかっていうと、フラン。貴方を助けるためよ」

「えっ?」

 

どういうことだろう。私を助ける?

 

「まだわかんないの?フランも鈍いわね」

「貴方、日々響のこと好きなんでしょ?」

「..................」

 

唐突に言われて反応出来なかった。

私は日々響が好き?

 

「どうなのよ」

「ど、どうなのって言われても......」

「じゃあこうやって聞くね。フランは、日々響がペアじゃなくなったら、どう思う?」

「それは......」

 

きっと寂しいだろう。

日々響は、性格とかは別にして、普通に話しやすい。

だから、まあペアでいるのは楽しい。

でもこれが好きって言うことなの?

 

「で、どっちなの?日々響が好きか普通か」

「す、好きかな......」

 

顔が暑い。

ヤバい。これ、日々響に見られたら、また可愛いとかなんとか言われそう。

 

「ふふっ...ありがとねフラン」

 

と言った声は鈴仙の声でも、妖夢の声でもなかった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

どうやら、サプライズは成功したようだ。

フランも妖夢も鈴仙も唖然としている。

 

「えっ......待って全部聞いてたの?」

「うん。ありがたく聞かせて貰ったよ」

 

まだ現状が飲み込めていなさそうなフラン。

せっかくだから、説明してあげようかな。

 

「僕があんな鈴仙の言葉に引っ掛かると思う?僕は口に解除魔法をかけといた。で、眠ったふりをした」

 

そして、フランの本音が聞けたって訳だ。

本当に僕も緊張したよ。しかもめっちゃ恥ずかしかったし。

 

「日々響。お仕置きね」

「ちょっちょ待って!ねえ!待っt......」

 

僕はフランに腕を吹き飛ばされて気絶した。

そして、保健室に搬送された。

 

ったくツンデレなのはわかったから。

 

 

 

 

せめて腕を吹き飛ばすのはやめよう?

 

 



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第十四話~夏休みはお泊まり会!?~

短いです。ご了承下さい。


様々な楽器の音が聞こえる。

やっぱり音楽は楽しいね。

 

僕等は、音楽室にいた。

今は夏休みの間の練習中。

笛を音波で音を鳴らし、サボっているところだ。

 

あの告白事件以来、僕等はより距離が近くなったように感じる。

でも、あの時は、フランの機嫌を直すのが大変だった。

一時間以上の仲直りの申し込みをし、十回以上断られた上に腕を吹き飛ばされて気絶し、を繰り返した。

ようやく鈴仙のとりなしもあって許してもらえたが、相当保健室の永琳先生に怪しまれた。

 

まあ、結果的に仲良くなったならね。

雨降って地固まるっていうでしょ。

まあ、あの告白は僕も嬉しかったし。

いつか答えを出せる日が来るといいな。

 

フランは今、ギターの練習中だ。

ギターめっちゃ似合うんですけど。

結構かっこいいし。

 

ちょっといたずらしたいな......

笛を吹く。

 

「なんか眠くなって...?」

 

吹くのをやめる。

 

「ってあれ?日々響!やめてよ!今練習中なのに!」

 

ふふっ可愛いな。

 

「はい。今から全員で合わせます。本番の気持ちで演奏してください」

 

と声を張るのは、我らが部長、ルナサ先輩だ。

この吹奏楽部は、部長がルナサ先輩、副部長がメルラン先輩、マネージャーがリリカ先輩だ。

三人とも非常に演奏がうまい。

て言うか音のポルターガイストだっけ?

 

この歌は僕のソロがある。

新入部員初のソロ抜擢だそうだ。

部長のバイオリンから演奏が始まる。

そして、僕のソロ。

これがわりと緊張する。

テンポの早い曲にあわせて息を吹く。

もう少しで肺が破裂する、というところで、ソロが終わり、僕は一旦休憩。

そのあとはフランの出番だ。

フランは物凄く上手い訳でもないのだが、その練習熱心さから抜擢。リードをやっている。

格好いい。

 

 

演奏が終わり、静けさが戻る。

 

「お疲れ様。今日はこれで解散!」

 

みんなが席を立って出ていく。

 

「日々響~いくよ」

「あ、うん」

 

今は、夏休みの部活をやっていい期間。

この後、学校が全面休校する期間が来る。

そのときに戻る場所をかんがえていた。

僕は、父と母が教育方針の違いがどうとか言って離縁し、それに嫌気がさした僕は半ば飛び出すようにここに来てしまった。

今家に帰っても、疎んじられるだけだろう。

じゃああとは...

 

「ねぇフラン」

「ん?なに?」

「この後の、全面休校の時、フランの家行ってもいい?」

「えっ?」

 

これしかなかった。

他に泊めてくれる場所もあるだろうが、あまり関わりのない人と泊まるのもちょっと気が引ける。

 

「いいよ。」

「えっ?いいの?」

「うん。お姉ちゃんも日々響に会ってみたいって言ってたし。」

 

こんなに早く許可が得られるとは思ってなかった。

楽しみだ。

 

 

 




第十四話でした。
そろそろ物語が自己満足になってきていて怖いです。
気を付けます。


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第十五話~デカ過ぎるだろ~

「......広過ぎない?」

「そうかな?」

 

ここはフランの家。

名前は紅魔館、というらしい。

まず家の前に門番がいる、という時点で凄い。

しかも門番は、僕が受験したときの試験官、紅美鈴先生だった。

これではフランたちに頭が上がらない気がするが?

とフランに聞くと、学校では立場が逆、ということだ。

紅美鈴先生は丁重に挨拶してくれた。

なんか先生より上の立場になった気分だ。

 

また、さっきは驚いていてよく見えなかったが、庭も物凄く広いらしい。

それを紅美鈴先生が一人でやっているそうだ。これまた凄い。

 

中は真っ赤に染め上げられていた。

さすが吸血鬼。

また、大きい階段や、地下室に続く通路のようなもの、

窓から反対側を見ると、大きな湖があった。

 

しかも、なんか小さい生き物がたくさんいる。

フランに聞くと、これは妖精メイドというらしく、無給で働いているらしい。

見た目以上にブラックだ。

 

「ようこそ紅魔館へいらっしゃいました。」

 

そこで僕はまた驚いた。

 

「咲夜先生?」

「そうなのですが、ここではメイドとして働いておりますので、咲夜、とお呼びください。あと、妹様。お嬢様がお呼びです。」

「うん。わかった。」

 

何だここ。どんだけ金使ってんだ。

しかも咲夜先生に咲夜、なんて絶対言えない。

 

「まず、レミリアの部屋に行こう。」

「あ、はい。」

 

唐突に妹様に変化したフランがいう。

これは従わざるを得ない。

 

 

歩くこと数分。

 

「広い......広すぎるってここ。」

「そんなにないよ。」

「いや、もう。僕の家の10倍以上はあるよこれ。」

 

そんな悲鳴をあげている間に、

 

「ここだよ。」

 

とフランがドアを開ける。

 

「お姉ちゃん、入るね。」

「お邪魔します。」

 

「あぁ、フランと日々響、来たのね。いいよ入って。」

 

中に入ると、レミリア先輩がいた。

自室も広いことは驚きだが、もっと驚いたのは、机の上にあった真っ赤な飲み物とだった。

もしかしなくとも...血?

 

「あぁ、あれはトマトジュースだよ。お姉ちゃんは血を全部飲めないし、苦いの嫌いだから、甘いトマトジュースしか飲めないんだよ。」

「と、トマトジュース?」

「フラン!何変なこと教えてるの?」

「え?なんのこと?」

 

フランがとぼける。

知っちゃいけないことだったの?

 

「ま、まあそれはおいといて。ようこそ紅魔館へ。ゆっくりしてってね。」

「あぁ、はい。よろしくお願いします。」

「えっと...日々響はこの後どうする?」

「うーん...まず紅魔館を見て回ろう。」

「ん。わかった。じゃあ私が案内するね。」

「ありがとフラン。」

「咲夜~紅茶頂戴。」

「只今お持ちしました。」

 

え?今誰もいなかったけど...

しかも咲夜先生どっから出てきた?

 

「咲夜は時を操る程度の能力を持ってるんだよ。それで瞬間移動してるように見えるわけ。」

「な、なるほど...」

 

時を操る程度の能力か...強者だな。

だって時を操ったら何でもできるじゃん。

 

「じゃあ日々響行こう。」

「はい。」

 

まず僕等が行ったのは、大きな図書館だった。

とにかくデカイ。本の量が半端じゃない。

 

「ようこそ。魔法図書館へ。」

 

現れたのは、紫色のロングヘアに紫色の服を着た女性と、悪魔のような角と羽が生えた少女。

 

「この、紫色の髪の毛のおば...じゃなくて人がパチュリー・ノーレッジ。そしてもう一人小悪魔って言うの。」

 

フランが、パチュリーさんに睨まれながら言う。

 

「よろしくお願いします。夏休み終了まで、滞在させていただきます。」

「よろしくね。」

「こちらこそよろしくお願いします。」

「早速だけど何か本読んでく?」

「あ...どんな本がここにはあるんですか?」

「魔法に関する本がほとんどね。」

「なるほど...」

 

魔法か。結構興味あるな。何か借りていこうかな?

 

「ん~じゃあこの『音と魔法』ってやつ借りてもいいですか?」

「いいわ。期限は夏休み終わるまでね。」

「はい。わかりました。」

 

ということで本も借りれたし、ここは暇を潰すのにちょうどよさそうだ。

 

「次は庭に行こう。」

 

フランに連れられて庭に到着。

庭では、紅美鈴先生が、花壇に水をやっていた。

何か変な感じがする。

この庭もまたデカイ。そして、色とりどりの花が植えられている。

本当にここを一人でやっているのだろうか?

 

「心配ありませんよ。日々響さん。私も慣れてますから。」

 

慣れなんてあるのかな?

フランは、たくさんの花に見いっている。

 

「おーいフラン。そろそろ行かない?」

「ん?あ、ごめん行こう。次は...あれ?もうほぼ見尽くしたね。じゃあ最後に私の部屋と、日々響の泊まる部屋に行こう。」

 

 

「ここが私の部屋。」

「これまた広いことで。」

 

フランの部屋は、真っ赤で、ベッドや装飾が豪華だった。

凄いな。

 

本当にこの館はとにかくデカイ。

一部屋一部屋がいちいちデカイ。

 

「こんなに広かったら、掃除大変じゃね?」

「いや、咲夜が時間止めてやってくれるから。」

「あ、そうか。」

 

納得。

時間止められるのめっちゃ便利。

欲しい。

 

「ここが日々響の部屋。」

「こんなに使うの勿体ないな。」

 

どうやって使えって言うんだよ。こんなに広い部屋。

後、赤すぎて目が眩みそう。

「あれ?ここの階段はどこに繋がってるの?」

「それは......」

 

フランが口ごもる。

 

「あれ?聞いてほしくなかった?」

「うん......ちょっとね......」

「あ......ごめん......」

「大丈夫。」

 

フランにも秘密の一つや二つはあるでしょ。

大丈夫、聞かないことにするから。

 

 

 

それにしても、ここで暮らすのか......ちょっとした王子様気分だな。

 

 

 

 

 



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第十六話~紅魔館訓練 弌 レミリア先輩編~

「はあ、はあ、こんな仕事、時を止めないとやってられんよ。」

 

 

 

紅魔館に来てから早一週間。

館の中のことは全て覚えたが、まだできないのは、元先生たちを、呼び捨てにすることだ。

一生かかっても出来そうにない。

 

そして、館での生活に馴染んでくると襲ってくるものがある。それは、罪悪感だ。

ここに客人として来ているのに、こんなにのんびりしていいのだろうか。

その罪悪感にさいなまれ、僕は咲夜先生にメイドの手伝いを申し出た。

咲夜さんは快諾してくれた。のだが、

 

「確かにこの量は、時間を止めないとヤバい。」

 

そんな量だった。まず、途方もなく広い紅魔館のなかの掃除。やってみたところ、1日かけても終わらなかった。

そして、料理、レミリア先輩の紅茶の運びや、食料の買い出しなど、いくらやっても終わるのもではない。

フランなども、大丈夫っていってくれてたけど、

お手伝いしなければ、僕の精神が、罪悪感に押し潰される。

だから僕は、咲夜先生について、メイドの仕事を覚えることにした。

 

 

メイド仕事を始めて4日。段々と色々な仕事に慣れ、

作業をするスピードが早くなってきた。

咲夜先生にも誉められ、妖精メイド以上、と言われた。

果たしてそれは、喜ぶべきなのだろうか。見るところ、妖精メイドは何も仕事をしていないように見える。後ゴブリンも。ホフコブリンって言うんだっけ?

 

一週間たつと、咲夜先生よりは遅いが、大抵の家事は出来るようになった。咲夜先生も驚いていた。あれ?僕結構才能ある?

どうしても出来ないのは、料理だ。料理難しい。

いや、咲夜先生の料理が上手いのか。

あと、咲夜先生は、レミリア先輩の紅茶に時々変なものを入れる。なんなのだろうか。聞いてみると、知らなくていい、と言われた。きっと血の匂いを消すとかそういう類いの物だろう。

 

 

紅魔館の朝は早い。

お嬢様方が起きる前に、朝ごはんを作り、掃除をして、等、起きる時間は朝4:00だ。

 

「よっしゃ!今日もいつも通りメイドの仕事を......」

「日々響さん。お嬢様と妹様が7:00にお呼びです。」

「はぁ......」

 

何の用事だろうか。

 

 

「お邪魔します。」

 

レミリア先輩の部屋に入る。

 

「あ、日々響来たよ。」

「日々響。今日は私達と勝負してもらうわ。」

「はい?」

「勝負よ。貴方の全力を尽くして、私達と戦いなさい。」

「それは勝てるわけが......」

「それは貴方の実力しだいよ。」

 

それ、勝てるわけなくね?フランも強いし、何しろレミリア先輩は槍だぞ。

卑怯かよ。

まあ、頑張ってみよう。

あ、そうだ!実戦で笛を使ってみよう!

 

 

 

 

 

「日々響。準備はいいわね?」

「私達も全力だからね。」

 

フランは、いつもの戦闘体型を、レミリア先輩は槍を構えている。

 

「じゃあまず、私からいくわね。」

 

とレミリア先輩が言い、槍を繰り出す。

 

神槍【スピア・ザ・グングニル】

 

槍が超スピードで向かってくる。

避けられん!

 

音波防壁【メタルコ】

 

咄嗟に壁を出す。

しかし粉々になる。馬鹿強い。

スピードが減殺されたので身を捻って避ける。

 

「よく避けたわね。」

 

壁作って避けられなかったら元も子もないだろ。

 

音波破壊【フォルテシモ】

 

地面に音波を叩きつけ、舞い上がった砂で視界を暗くする。

間髪を入れず、

 

音速弾【アパッショナート】

 

弾幕を張る。

しかし、あっという間に避けられる。

さすが吸血鬼。運動神経良すぎ。

 

「次は私よ。」

 

天罰【スターオブダビデ】

 

魔方陣が展開され、当たり一面にレーザーが。

槍使わないんかい。奇襲にも程がある。

あの魔方陣何て言うんだっけ?六芒星とか言った気がする。

それにしても避けきれない!

僕の体に完全な隙が出来る。

 

必殺【ハートブレイク】

 

巨大な光の槍が繰り出される。

僕はそれをいなそうとした。

 

威力減殺【ペサンテ】

 

音波の力によって威力は減ったものの、流石必殺技。

避けきれなかった。

 

「......っ」

 

足をかすった。猛烈な痛みがはしる。

でも。

 

「今こそこれを!」

 

音波催眠【ドゥルチェメンテ】

 

笛に音を流し込む。催眠、つまり相手の眠気を誘うのだ。

笛から甘い音が流れる。

 

「......っ...力が入らない?」

 

レミリア先輩が膝を尽く。

でも、僕の音力も限界に近かった。

 

音速弾【アパッショナート】

 

レミリア先輩に直撃、かと思ったのだが、

 

「貴方に負けるわけにはいかないの。」

「なんで...今のが?」

 

もう力が入らない。

 

符の弍【マイハートブレイク】

 

さっきより大きな光の槍が僕を貫いた。

 

不死鳥の歌【ポンポーノ】

 

僕は意識の糸を必死に掴み、痛みに耐える。

歌が、聞こえる。不死鳥の歌が。

不死鳥の歌は、体を回復させるのだ。

 

「はい、そこまで!」

「え?」

 

フランの声で、戦いが終わった。

 

「え?日々響なんで?」

「なんでって?」

「今のお姉さまのやつ食らったら私でも気絶するのに...」

 

二人ともびっくりしている。

「回復のやつ使ったから」

「日々響回復魔法持ってたっけ?」

「一応ね。」

「でも今のはお姉さまが優勢だったから、お姉さまの勝ちかな?」

「うん...」

 

やっぱり先輩は違うな。

 

「日々響~次は私だよ~」

 

フランが言う。ちょっと休ませてよ......

 

 

 

 

 

 



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第十七話~紅魔館訓練 弍 フラン編~

「日々響~もう休んだ?」

「ちょっと待ってくれよ。」

 

なんとかフランと交渉して休みをもらったものの、フランからの呼び掛けが激しい。

どんだけ試合したいんだよ。

 

 

 

結構休めたしそろそろ行くか。

 

「よし、いいよフラン。」

「じゃあ私からね~」

 

さっきは先輩に負けたから、今度こそフランを倒す。

 

禁忌【レーヴァテイン】

 

赤いレーザーが吹き出し、襲いかかる。

僕は横に飛んで避けた。

 

禁忌【フォーオブアカインド】

 

「えっ?」

 

フランが四人に分身する。どれがどれだかわからない。

そのまま攻撃しようとする四人のフランに、一人だけ、

本物っぽいやつがいた。

なんと言うのだろう。勘かな?

とにかくそいつに狙いを定め、

 

音速弾【アパッショナート】

 

本物だった。

フランは残り3つの分身を消す。

 

「なんで.....わかったの?」

「さあな」

 

禁断【スターボウブレイク】

 

虹色の弾幕が出現し、爆発。

衝撃が酷い。

 

威力減殺【ペサンテ】

 

軽くいなす。

 

「これで......!」

 

フランが叫び、

 

禁忌【フォーオブアカインド】

禁忌【フォービドゥンフルーツ】

 

またフランが四人に別れ、しかも間を入れずに全方位で弾幕を放つ。

 

「ヤバい!」

 

音波防壁【メタルコ】

悩殺【フォルテッシッシモ】

 

真ん中が本物だと狙いをつけ、弾幕を防壁で防ぎながら突っ込む。

そして真ん中のフランに爆音を......

その瞬間、僕は激痛で気絶した。

 

 

気づくと、ベッドの上だった。

 

「ここは.....?」

 

どうやら自室らしい。

体を動かすと激痛がした。

あのフランの全方位弾幕が腹に直撃したらしい。

それにしても音波防壁弱くね?

すぐ壊れたじゃん。

フランは大丈夫なのか?

僕の悩殺は当たらなかったのか?

そんなことを考えていると、睡魔が僕を襲った。

疲れが酷い。

そのまま僕は、睡魔に身を委ねた。

 

 

目が覚めると、腹の痛みはほとんどなくなっていた。

ちょっとフランに会いに行くか。

音力は、まだたまっていない。

あの『悩殺』は、めちゃくちゃ音力を食うのだ。

体がだるいのを抑え、僕は下に降りていった。

 

時間の感覚がなかったが、今は朝の7:00らしい。

レミリア先輩が起きていた。

 

「おはようございます。」

「あれ?日々響起きたのね。おはよう。」

「フランは大丈夫ですか?」

「まだ寝てるわ。貴方の最後の攻撃が強すぎたのよ。私にもそれ撃てば勝ったかも知れないのに。」

「コストが高いんですよ。」

「んじゃ起こしてみます。」

 

そう言ってフランの元へ。

 

「フラン。フラン!朝だぞ!」

「......」

 

まだ寝るんかい。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

夢を見ていた。恐ろしい夢を。

槍に貫かれ、心臓が破裂する人々の夢。

いつかどこかで見たことがあるような......

誰が一体そんなことを......

 

「フラン!」

「わわ!どうしたの?」

「どうしたもなにもめっちゃうなされてたけど」

「あぁ......それは......」

「まあとにかくレミリア先輩も呼んでるし、行くよ。」

「う、うん。」

 

あの夢はなんだったんだろうか。

日々響の悩殺の音波が効いたのだろうか。

とにかくこれは忘れよう。

 

 

「それにしても、何でフォーオブアカインドの時に私がわかったの?」

「ずっとペアを組んでれば、そりゃわかるようになるさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十八話~強者だなこいつ~

物語のスピードがとても早いということが、スランプになっております。
脱却目指してがんばります。


キーンコーンカーンコーン

鐘が鳴る。

 

教室には、夏休みが終わって呆然とする生徒たち、

宿題が終わってないと嘆く生徒たちで溢れていた。

 

紅魔館は楽しかった。

レミリア先輩にボコボコにされたけどね。

冬休みもあそこがいいな。

 

 

 

ガラガラ...とドアが開いて、妹紅先生が入ってきた。

 

「なんだお前ら。そんな悲しい雰囲気出して。宿題終わってないとか言わないよな?」

 

ほぼ全員が肩を震わせる。僕もその内の一人だ。

スマホやり過ぎたんだよぉ!

フランは余裕そうな表情。宿題を計画的に終わらせ、のんびりしていた。優等生め。

 

「宿題を集める前に。このクラスには、転校生が来る。」

 

教室が一気に活気づいた。みんながそわそわし始める。

 

妹紅先生が外に出て、転校生を呼びに言った。

 

「転校生だって。」

「イケメンかな?」

 

ったくみんな転校生転校生はしゃぎすぎなんだから。

 

転校生が入ってくる。

みんなが息をのんだ。

 

「初めまして。今日からこの学校でみなさんと一緒に過ごさせていただきます、灰谷真祟と申します。よろしくお願いいたします。」

「灰谷君です。みんな仲良くな。」

 

教室は未だざわついていた。

灰谷は、言葉こそ暗めで陰気だが、めちゃくちゃイケメンだ。

おいマジかよ。

周りを見渡すと、うっとりした視線を送ってる奴も。

気ぃ早えな。

フランは?と見ると、

 

「冷めてんなおい。」

「だってあいつ胡散臭いじゃん。」

「え?そうか?」

「うん。なんとなく怪しい。」

 

 

「灰谷は......うん。日々響の後ろが空いてるな。」

「先生!そこは僕の荷物置き場です!空いてません!」

「じゃあそこに座れ。後日々響は職員室に来い。」

「酷い...あんまりだ...」

 

「それじゃ今日は、武器ごとに別れて実戦形式で練習を行います。」

 

いつの間にか一時間目が始まって、僕らは模擬戦闘場に移動した。

灰谷に自己紹介しようかな?

 

「僕の名前は、樹神日々響。武器は魔法。よろしく。」

「私はフランドール・スカーレット。日々響のペアだよ。よろしくね。」

「えと、呼び方はフランでいいよ。こいつは...遅刻犯で。」

「余計なこと言わないの。」

「あ...えっと僕の名前は灰谷真祟。武器は魔法だよ。よろしく。」

「君も魔法なんだ。能力は?」

「うーん......風吹を操る程度の能力って感じかな。」

 

風吹ってなんだろ。後で実戦したらわかるか。

 

「ちなみに僕は音波を操る程度の能力。こいつは、色々破壊する程度の能力だっけ?」

「ありとあらゆるものね。」

「細かいことはどうでもいいんだよ。」

 

 

「はい。では今から魔法の実戦訓練をします。トーナメント形式です。」

 

パチュリー先生が言う。

この先生は、夏休み明けに先生になった人で紅魔館の人だ。あの図書館の人だよね。

レミリア先輩とは、あだ名で呼び合う仲らしい。

 

「トーナメントはこちらで組んだので、それに基づいて、試合をしてください。」

 

試合が始まった。僕らはシード。

試合が始まるまで、少し時間がある。

 

「日々響。あの悩殺使ったらダメだよ。」

「わかってる。あれには、その人のトラウマを引き出すっていう能力があるらしいしね。」

 

「そろそろ行くよ。」

 

試合に出た僕等は、決勝まで難なく進出。

というか、フランが強すぎる。僕は後ろでサポートをしていただけなのに、全員倒してしまった。

そして決勝戦。

 

「お前かよ。」

 

相手は灰谷真祟だった。

 

「てかお前一人なの?」

「うん。ペアは......自分だから。」

 

そう言って灰谷は、

自分の分身を繰り出した。

 

「え?おいマジ?」

 

あいつ分身術使えるのかよ。強いな。

んじゃ僕は新武器を使うか。

 

試合が始まった。

 

「今回は二人でいくよ。」

 

音速弾【アパッショナート】

禁忌【レーヴァテイン】

 

二人の弾幕が混ざりあい、赤と黄色が綺麗だ。

 

風断【風の前の塵に同じ】

 

二人の声が同時に響く。

すると一陣の強い風が吹いた。

 

「え?」

 

弾幕がかき消される。

えぇ...強いよ......これ、二人で言ってるから余計強いのかな?

でも、風で消すなら......

 

蒙昧【砂塵嵐】

 

砂もないのに、砂嵐が襲う。

 

「目に砂が......」

 

灰谷はそんな砂塵嵐の中、微塵も揺るがずにたっている。

 

音防【アパガドス】

 

フランと僕の周りを音波の幕が包む。

これで一旦は大丈夫だ。

 

「あれ?砂が来ない?」

「今ガードしてるからね。」

「灰谷強くない?」

 

フランが驚くように言う。

 

「あれは......強いね。」

「でも僕等なら勝てるよ。きっと。」

 

もしかしたら勝てないかも知れない。でも、挑戦を諦めるのはまだ早い。

 

「いくよ!」

 

禁忌【フォーオブアカインド】

音波焦燥【アプレサド】

 

砂嵐の中で立つ灰谷に、フランは四人で。僕は笛の音で飛びかかる。

 

禁断【スターボウブレイク】

音波破壊【フォルテシモ】

 

少し気づくのが遅れ、焦った灰谷に直撃。

 

「痛い......」

 

フラン?

フランの脇腹から血がでている。

というか剣刺さってる?

何があった。

灰谷はすでに気絶。砂嵐も止んでいる。

ということは......灰谷が死ぬ直前にフランを刺した?

いつ剣を作ったんだ?

そんなことより早く治療しないと!

 

音波回復【不死鳥の歌】

 

「フラン!大丈夫か?」

「あれ?傷口が塞がって?」

「治療してるからね。」

 

これでなんとか応急処置終了。

後は保健室だね。

あ、僕は職員室だ。

 

「おい遅刻!新武器はずるいぞ!」

「だってこれ強いんだもん。」

「理由になってない。」

「あ、すいません。」

「先生が各自解散だって!」

「んじゃ教室戻ろうぜ!」

 

みんなが教室に戻る。

フランは保健室に運ばれたようだ。

勝てて良かった。あんなに格好いいこと言っといて負けたら死ぬしかないもんな。

 

 

あの灰谷ってやつ、やっぱりなんか怪しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十九話~やっぱり助けなきゃ~

今日も1日の授業が終わった。

 

転校生の灰谷は、とにかく強いということがわかった。

性格も陰気だが、話しやすい。

僕には及ばないけどね。やっぱり僕強いな。

ていうか風吹を操る能力って結構便利だな。

 

「なんで俺はいつも日々響に当てる前にチャイムが鳴るんだ。」

 

妹紅先生がなんか悔しがってる。

危ないな。

 

「はい。じゃあ解散!」

 

みんなが寮に戻っていく。

 

「日々響戻ろう。」

「うん。」

 

僕等も戻ろうとしたのだが、

 

「あれ?あの首は......」

「え?首......って本当に首が浮いてる!」

「すいません。」

「ん?ああ君か。遅刻さんだな。」

 

遅刻さんって......どんだけあだ名出回ってんだ。

 

「え?日々響会ったことあるの?」

「うん。最初の遅刻した日にね。」

「あぁ、だから遅刻って呼ばれてるのね。」

 

う、うるさいな。

 

「なんだかうれしいぞ。私を見える人が少なかったもんだから。」

「見える人って、見えない人がいるんですか?」

「ああ。というかほとんどの人が見えてないと思うよ。」

「あなたは何者なんですか?」

「私はフェリックス・クリスチャン・コルテス。約100年前のアイナ王国の副首相だ。コルテス卿と呼びたまえ。」

「ふ、副首相?」

「そうだ。だがアトラ公国に使者としていったとき、首を切られたのだ。だから今は幽霊となってこの学校を見守っているのだ。」

 

副首相かよ。誰も見えてないとか可哀想だな。

 

「いつも何をしているんですか?」

 

フランが聞く。

 

「いつもは学校の中を漂っている。時々授業を聞いたり、生徒を驚かせたり。」

 

前言撤回。全然可哀想じゃないわ。

なに生徒を驚かせてるって。たち悪すぎだろ。

 

「ほれ。君達ももう部活の時間だろ。」

「そうだよ日々響。今日部活あるじゃん!」

「そうだ!ヤバい!」

 

僕等は駆け出した。

 

階段をかけ降りる。もう部活は始まっているだろう。

急げ!急げ!

 

「ふざけんじゃねえよ!!!!」

 

その怒鳴り声に僕等の足は止まった。

 

「いいから早く金出せよ!!!」

 

そして鈍い音。呻き声。

 

「転校生のくせして調子のってんじゃねえよ!!」

 

僕等は顔を見合わせた。

 

「転...校生?」

「それってあいつしかいなくね?」

「ちょっと見てみよう。」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

教室に向かって忍び足で歩く。

いつもへらへらしている日々響も今回は顔を緊張させている。

 

「お前の能力は封じてるんだから。どんなに足掻こうと使えねえよ。雑魚が。」

「おとなしく俺らに従えばいいんだよ。」

 

罵声が聞こえる。

教室はどうやら弓道室らしい。

そういえば灰谷は弓道部だな。

 

窓から覗いてみる。

 

誰もいない弓道室に、四人ほどの人がいて、誰かを囲んで罵声を浴びせている。

 

「早く。金を出せばいい話だろ。」

「い、嫌だ...」

「お前に拒否権があると思ってんのかよ。」

 

ドスッと鈍い音がする。

 

「...っう」

 

誰かが呻く。

私は声も出なかった。これがいじめってやつ?

怖かった。

 

男子たちに隙間が開いて、そこからいじめられているやつの顔が見えた。

灰谷だった。

数人の男子たちに囲まれ、カツアゲされているようだ。

灰谷は確かに胡散臭いが、何かいじめられるようなことをするやつではないはず。

 

「フラン。」

「ん?ど、どうしたの?」

 

私は平静を装って聞いたつもりだったのだが、声が震えるのを押さえられなかった。

 

「これ、どうする?」

「まずは先生にいいに言った方が...」

「しっ。静かにして。こっち来て。」

 

日々響に従って隣の教室に入る。

 

「いじめてた奴らがでてくる。」

 

 

「やっぱりあいつ雑魚だよな。」

「いや。リーダーの能力が強いんすよ。」

「そうっすよ。相手の能力を使えなくする能力なんて強すぎますよ。この学校で一番強いんじゃないすか?」

 

そう言いながら虐めっ子たちは去っていった。

ドクンドクンと心臓がなっていた。

 

「それにしても相手の能力を使えなくする?そんなことが出来るのか?」

「ねえ日々響。そんなとこ考えてる場合j......」

 

私はまた、口を閉じた。

弓道室のドアが開いたからだ。

中から灰谷が出てきた。全身傷だらけだ。

 

「おい、灰谷。大丈夫か?」

 

誰かが灰谷に声を掛ける。誰だ?

 

「ねぇ日々響。あれは誰?」

「あれは、確か......森近霖之助っていった気がする......」

 

森近霖之助と呼ばれた人は、眼鏡をかけた白い髪の男子だった。一年生というか、もっと老けて見えるのは気のせいだろう。

 

「灰谷。行くよ。」

「うん。」

 

霖之助は、灰谷と共に廊下を渡っていった。

 

「音楽室行く?」

「なんか行く気にならない...」

「だよね。今日は寮に戻ろう。」

 

 

寮は誰もいなかった。

 

「ねえ日々響。私達も灰谷のこと助けた方がいいのかな?」

「いや、助けなきゃいけないと思うよ。」

「でも私怖いよ。相手は虐めっ子だよ?しかも能力持ちの。」

 

本音を口にする。

本当に怖いのだ。虐めっ子に何をされるかわからない。

もしかしたら、殺されるかも知れない。

もし殺されてしまうのならば、はじめから関わらない方がいいと...

 

「それでいいのかよ!!!」

 

日々響が怒鳴る。私は驚いて日々響を見つめた。

 

「敵に立ち向かうことを教えるのがこの学校だろ!敵はきっともっと強い!こんな小さなことから目を背けてたら敵になんて勝てないぞ!」

 

日々響の言葉が腹にストン、と落ちる。

そうだよね。敵に立ち向かうために私達はこの学校の教育を受けてるんだもんね。

 

「ごめん......日々響。」

「こっちこそ怒鳴ってごめん。僕だって怖いよ。でも、でも、本当の敵はもっと怖いから......」

 

そこで言葉が続かなくなってしまった日々響に私は声を掛ける。

 

 

 

「わかったよ。ありがとう。」

 

 



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第二十話~信頼関係は簡単に構築できない~

その夜、僕はなかなか寝つけなかった。

灰谷がいじめられている。

あいつはいじめられるような奴じゃないはず。

性格こそあんまり社交的じゃないけど、あの顔だよ?

もっも友達をもっていいはず。

 

少しうとうとしたのだが、また目が覚めてしまった。

んじゃちょっと起きて居間に行こう。

フランは安らかな顔で眠っている。吸血鬼じゃないの?

妖夢も寝ていた。しかし、

 

「あれ?鈴仙は?」

 

鈴仙の姿がなかった。

まだ起きているのだろうか?もしかして勉強してるとか?

 

居間には鈴仙が座って何かを書いていた。こちらからは見えないが、何を書いているのだろうか。

僕は見たい、という誘惑に負け、音を吸収することで気配を消して、鈴仙に近づいた。

上から書いている物を覗き込むと、

手紙を書いていた。

なんだよ。勉強してるかと思ったらラブレターかよ。

どうせまた水橋先輩が好きとかなんとかだろ......って

 

「ええっ?」

「きゃあ!!」

 

やべ。ばれた。

 

「どうしてここに?」

「い、いや、な、なんか鈴仙が書いてたから、ふ、不思議だな、と思いまして......」

「見たの?」

「い、いや何も見ていないです......」

「正直に言いなさい。」

 

鈴仙が銃を構える。

命の危険がある。

 

「正直に言いなさい。見ましたか?」

「じ、実は全て見てました。」

「じゃあ誰宛?」

「灰谷あt......」

 

問答無用で鈴仙が引き金を引く。

 

「ちょっ!危ないな!ってやめろ!」

「死になさい。」

「鈴仙!落ち着いて!ごめんってわかったから!」

 

いなすことは出来るのだが、少しでも間違えれば死ぬ。

ヤバい!

 

「鈴仙!どうしたの?」

「落ち着いて!」

 

どうやら二人も起きてきたようだ。

 

「鈴仙!!落ち着いて!」

 

二人で止めにかかる。

 

「はあ、はあ、あいつ......!!」

「わかったから!ごめんって!」

「絶対許さん!」

「日々響。何があったの?」

「いや、実は鈴仙の書いてた手紙を......」

「それ以上言ったら、この目の能力で、あなたを植物状態にするわよ?」

「ちょっとそれは危ない!もう言わない。」

「なんかだいたい察したわ。日々響。貴方が悪いのね?」

「は、はい。すいません。」

「ということで私からお仕置きね~」

 

にっこりと笑うフラン。なんでですか?

 

「痛っ!!!」

 

指が全部吹き飛ばされる。意識が途切れる。

まったくサイコパスが多いな。

 

 

 

目が覚めると、保健室のベッドの上だった。

 

「あら。起きたのね。貴方の指はしっかり治しておいたからもう大丈夫よ。」

「ありがとうございます。」

 

そう礼をいって、永琳先生と保健室に別れを告げる。

 

「おーいフラン。」

「ん?どうしたの?」

 

昨日の事などまるでなかったような振る舞いだ。

ひどい。

それより、今日は大切なことをしに行かなくちゃ。

 

「森近と灰谷に僕等も協力するって伝えなきゃ。」

「え?森近と灰谷に?」

「そう。」

「なんで?」

「僕等であいつを助けたいからだよ。」

「え、ええ......まあいいけど......」

「良し!そうと決まったらすぐ行こう!」

 

 

今日も灰谷は虐められていた。毎日なのかな...... 

 

「おい、金は持ってきただろうな?」

「い、いや持ってきてない......」

「は?調子のってんのか?」

 

ドス、とまた蹴る音。フランの顔は蒼白だ。

ちょっと能力が使えるか試してみよう。

一番行動が恐ろしい背の高い奴の耳に高い音波を送り込む。

......どうやら効いてないみたいだ。あいつの能力は本物だ。

 

「誰かいるのか?」

 

その男子が鋭い声を出す。

嘘、ばれた?

 

「ちょっ!フラン!こっち!」

 

フランを隣の教室に連れ込む。

 

「誰もいないのか......」

 

どうやらばれなかったみたいだ。

 

「あいつ、こっちが能力使うとそれがわかるみたいだ。」

「ええ?それって強くない?」

「うん。ほぼチート。」

「ねえ、このままいじめを放っておくの?先生に報告したりしないの?」

「たぶんもう報告してるだろう。きっと取り合ってくれなかったんだよ。」

 

「ほんっとあいつムカつくな。」

「死んだ方がいいっすよね。」

「調子のってるよな。」

 

虐めっ子たちが教室からでてくる。

そして。

 

「灰谷。今日もやられたのかい?」

「フラン。行くよ。」

 

そうして僕は森近の前に出ていった。

 

「きっと大丈夫......って君達は?」

「僕等は、灰谷と同じクラスだ。灰谷を助けたい。だから仲間に入れてくれないか?」

 

森近の顔に明らかな警戒の色が浮かぶ。

 

「どういう魂胆だ?」

「そのまんまだよ。僕等は灰谷を助けたい。」

「それじゃあ信じられないな。」

「ど、どうして?」

 

いきなり疑われている。どうしてだ?

 

「今、灰谷をいじめてるのも灰谷と同じクラスの奴だ。だから信じれないんだよ。」

「私達は絶対に裏切らないよ!」

 

フランが言う。その通りだ。

 

「今までも何度もその言葉を聞いた。だけどみんな裏切った。僕達を捨てていった。」

「......」

 

何も言えなかった。そんなに苦しんでいたなんて早く気づけば良かった。そしたらもう少し心の傷が浅かったかもしれない。

そんなに信じてくれないとは......

 

「信じてもらえないからやめようよ......」

 

フランが言う。そんなことするわけあるか?

 

「信じてもらえないなら、信じさせればいいじゃん。」

「わかった。今日から僕は、灰谷を虐めている奴らの仲間になった振りをして、君達に色々と伝えよう。それがもし成功したら、みんな信じてくれるな?」

 

みんな呆気にとられていた。

 

「日々響。正気なの?あいつらは危ないよ。少しでもばれたら日々響の命が......」

「そんなんにびびっててどうすんだよ。信じられてないんだろ?じゃあやるしかないじゃん。」

 

森近と灰谷は、僕等の会話を呆然と聞いていたが、

 

「わかった。それができたら信じよう。ただ、それであいつらの味方につくようなことがあったら君達を見捨てる。」

「わかってるよ。」

 

 

これからは、先生に怒られる以上のサバイバルだな。



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第二十一話~苦肉の策~

展開は考えられたのでひとまず安心したら、次は、文章が拙すぎるというスランプに......


僕は虐めっ子たちのグループに入ることにした。

怖い。めっちゃ怖い。

でも僕は灰谷たちに信じてもらうために入るのだ。

僕は灰谷と約束した。

 

「もし、僕が虐めっ子たちのグループに入ったとしたら、君を傷つけるかも知れない。その時は、黙って、僕を許してくれ。」

 

と。

 

まず僕は、灰谷が嫌い、という趣旨の手紙を書いて、虐めっ子の一人の机の中にいれておいた。

すると、放課後に体育館裏に来い、という手紙が置いてあった。

今は体育館裏に向かっている最中だ。

体育館裏は、じめじめしていて気持ち悪かった。

これは誰も来ないわな。

 

「お、来たか。」

「あ、はい。」

「樹神日々響だな?」

「はい。そうです。」

 

目の前にはごっつい男子が三人。暑苦しすぎる。

ゴリラ1、2、3って呼ぶか。

 

「まず、お前の度胸を試す。ちょっとついてこい。」

「逃げないでしっかりリーダーについてくんだぞ。」

 

どうやらゴリラ1がリーダーらしい。

まあ一番ごついしね。

 

校舎内に入るにつれ、僕は嫌な予感がしてきた。

どんどん弓道部室に近づいてないか?

 

その嫌な予感は的中した。

たどり着いたのは弓道部室。

なかには灰谷がいた。

灰谷は怯えたような目でこちらを見たあと、僕と目があった。

僕は、ごめん、と目で伝える。

 

「じゃあこの雑魚を手で押さえろ。動かないようにな。」

「はい。」

 

僕は怖いのがバレないように、声に抑揚を着けず答える。

僕は灰谷の腕を掴んだ。

一度腕にぎゅっと力をいれる。

これがせめてもの謝意。ごめん。本当にごめん。

 

拷問が始まった。

 

「おい、早くこの前の金出せよ。」

「出さねえのか?」

「出さないとどうなるか、身をもって教え込まないと駄目みたいだな。」

 

ドスッ、とゴリラ1の蹴りが炸裂。

 

「痛っ......っう」

 

灰谷が呻く。ここからはもう理由関係なしだ。

とにかく灰谷を蹴りまくって殴りまくっている。

僕は手が震えるのを押さえられなかった。

何度も心の中であやまった。ごめん、ごめん、と。

虐めっ子を体術でぼこぼこに出来ない自分を悔やんだ。

でも、僕は灰谷に信じてもらうために、この過酷な任務を遂行して見せる。

いつか灰谷が笑えるように。みんなで笑い会えるように。

 

いつしか灰谷は気絶していた。

顔は血塗れで、所々から血が出ていた。

 

「よし、もうそろそろ先生が来るしな。帰るか。」

「そうっすね。」

 

ゴリラ1の掛声に、ゴリラ2、3が追随する。

僕もそこについていった。

教室を出る直前、僕は灰谷をもう一度みた。

 

音波回復【不死鳥の歌】

 

心の中で呟き、効果を確認する。

すると、灰谷の目が開くのがみえた。

どうやらゴリラ1の能力は範囲有りみたいだな。

 

「おい、樹神。何をしている。早く行くぞ。」

「す、すいません。今行きます。」

 

また体育館裏に向かっているようだ。

 

「樹神。わかったか?俺らがやっていることが。お前はそれに耐えることができるか?」

「はい。」

「ならば良い。俺らの仲間になれ。ただし、一度でも抜けたいとか言わなくてもそういうことを行動で示していると俺らがとれば、お前は怪我ではすまなくなるからな。そこらへんはわきまえろよ。」

「わかりました。」

 

「じゃあ今日はここで解散だ。」

「はい。」

 

そう言ってみんなが散っていく。

僕も寮に戻ることにした。

 

僕は何をしているんだろう。

何のためにこんなことをしているのだろう。

灰谷を助けるため?

でもやり方が間違っている気がする。

こんな助けかたは嫌だ。

だってどちらも傷つく。

灰谷の心の傷は、もっと深くなる。

そんなの嫌だ。

 

頬をなにかが伝う。

もっといい解決方法は......

 

「日々響。」

「......!」

 

フランだった。

 

「みて......た?」

「うん。」

「大丈夫。何でもないよ。」

「日々響。頑張って。」

 

ただそれだけだった。

でも僕の心に響いた。

 

 

 

「うん。頑張るよ。」

 

 



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第二十二話~人望皆無~

僕等は寮に戻った。

 

鈴仙と妖夢は事情をしっていた。

フランが伝えた、という。

頑張って、と言う二人の言葉に不覚にも涙が出そうになった。

 

みんなが寝静まった頃。

僕は起きた。

そうだ。灰谷と森近に手紙を書こう。

僕が居間に行くと、

鈴仙がいた。

 

「また書いてるのかよ。」

「うわ!って日々響か。」

「灰谷も今危機的状況だから、書くのは控えた方が......」

「だからこそ書くのよ。灰谷を勇気づけるために。」

「鈴仙も意外と優しいんだな。」

「う、うるさい。撃つわよ?」

「わかったわかった。」

「で、日々響は何のために起きてきたの?」

「灰谷に手紙を書くため。」

「貴方も?」

「まあ、君とは論旨が全然違うけどね。」

 

そう言って僕は手紙を書き始めた。

えっと......なに書こう。

リーダーの特徴とか書いとこ。

リーダーは確か、頬に傷があったな。

そんなことを書いていった。

後、今日の謝罪も書かなくちゃ。

 

「ふぅ......終わった。」

「早くない?」

「鈴仙が遅いんじゃない?」

「そうかな......」

 

自覚ないの?

めっちゃ遅いよ。

 

「じゃあ出しに行ってくる。」

「はいはい。」

 

誰もいない廊下を歩きながら考える。

やっといじめられてる人の気持ちがわかった気がする。

あの苦しさと、支えてくれている人のありがたみが。

灰谷もいいファンを持ったな。

 

灰谷は僕と同じクラスだが、森近は違う。

まず灰谷から行こう。

 

「えーと...灰谷の教室は確かここだったはず...」

 

手紙を下駄箱にいれる。

次は森近だな。

森近の教室は遠かった。あいつ確かB組だったよな。

一番遠いやつだ。めんどくさいな。

 

森近の寮に入ると、物音がしていた。誰かが起きてるのかな?

ちょっと覗いて見よう。

森近だった。なんか書いてる...?

まあ今こそチャンスだな。手渡そう。

 

「森近。」

「ん?ああ君か。」

 

いざ手紙を手渡そうとするとめっちゃ恥ずかしい。

どうしてだ。ラブレターでもないのに。

 

「どうしたんだい?」

「いや...ちょっとこれを...」

 

手紙を森近の机の上に置いて全力で逃げ出した。

フランにラブレターを手渡せないやつの気持ちもわかった気がする。フランは酷だな。

 

寮に戻ると鈴仙もいなくなっていた。

手紙を出しに言ったか寝たかだな。

じゃあ僕も寝るか。

おやすみ。

 

 

次の日の朝。

食堂で飯を食べていると、突然ゴリラ達から呼び出しが入った。

飯ぐらいゆっくり食わせてよ。

 

「今日は放課後に屋上だ。」

「はい。」

 

流石不良、といったところだ。屋上とか初めて行くんですけど。

ゴリラと別れたあと、一緒に飯を食べていると灰谷と森近に目をあわせて見たが、何も言われなかった。

手紙を貰うっていうのもなかなか恥ずかしいんだろうな。

 

 

その日の放課後。僕は屋上にいた。

なかなか景色がいいじゃないか。

なんて言ってる場合じゃないか。

 

「来たな。」

「あ、はい。」

 

ゴリラ達の登場だ。

 

「今日は灰谷をボコしてから、色々やりにいく。心して来い。」

「はあ。」

 

心しても何もやってること自体間違ってんだけどな。

 

弓道部室に向かう。灰谷がいる。

またか。これだけはやだな。

でも。

灰谷は僕を見ると少し微笑んだ。

僕は涙が出そうになるのを必死でこらえ、灰谷を押さえつけた。

 

虐めは最近苛烈になっている。

蹴りだけでなく、道具を使ったもの、言葉で罵倒するもの。

とにかくひどい。

だが、耐えなきゃいけない。

灰谷を助けるために。

 

教室の窓から覗いたフランと目が合う。

フランは僕に微笑む。その笑顔は頑張れ、といっていた。僕もその目を見つめ返す。これが灰谷を救える、と信じて。

 

虐めは終わった。

今日も灰谷に不死鳥の歌を響かせて去る。

元気になってるといいな。

 

「マジムカつくあいつ。」

「そうっすよね。」

 

次々とゴリラが相槌を打つ。

でも。ゴリラの一人が震えているのに気がついた。

こいつは灰谷と同じクラス。

今度話しかけて見よう。

 

「次は万引きしに行くぞ。」

 

校内の色々売ってるあの店か。

初めてだな。

なんか悪い、っていう感覚がなくなっている気がする。

これも洗脳なのだろうか。

 

店の前につくと、

 

「おい。お前いってこい。」

「......」

 

そのゴリラは、あの、震えていたやつだった。

その少年が、リーダーから目を反らしている。

肩はひどく震え、なにかを言いたそうに口を開けたり閉じたりしている。

 

「どうした?怖いのか?」

「......」

 

相変わらず黙ったまま俯く少年。

 

「い...嫌だ!!!!」

 

その少年は突如叫んだ。

自分の言葉に自分で驚いているようにポカンとしていた。

 

「嫌だ、だって?何でここにいるのかわかってんだろうな?」

 

リーダーが脅す。

 

「僕は............嫌だ!!!!!」

 

そう言って少年は逃げ出した。

 

「......っあいつ......許さん。後で痛い目にあわせてやる。」

 

なるほど。こいつの近くにいる奴らは、みんな従わされてるだけなのか。

 

「リーダー。今日はやめましょう。何か失敗しそうな予感がします。」

「そうだな。今日は解散だ。」

 

リーダーが解散を告げる。

僕も寮に戻るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了お疲れ様でした。
灰谷君のエピソードも書こうかな......


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第二十三話(閑話)~遅すぎた人物紹介 弌~

閑話です。
遅すぎた人物紹介をしていきたいと思います。
多大なる原作崩壊が含まれます。ご注意ください。


・樹神日々響

アイナ特殊能力学園の一年生。入った当時は成績が一番だったが、持ち前の性格により、フランに抜かれかけている。能力を巧みに操れる。その上手さは学年一を保っている。しかし何でも使ってしまうので、問題児と化している。

 

能力:音波を操る程度の能力

音波を操ることで、相手の鼓膜を割ったり、神経に直接干渉したりすることが出来る。また、物体を破壊することや、音波で相手の攻撃を四散したりも出来る。

 

性格:言葉や態度は悪いが優しさがある。のだが、それが優しさを発揮した後の自画自賛で全て打ち消されている。とてもフレンドリー。

 

部活:吹奏楽部

笛を吹く。音波を操ってサボっていることが多い。

 

・フランドール・スカーレット

アイナ特殊能力学園の一年生で、樹神日々響のペア。日々響を陽に陰に支える吸血鬼の少女。

また、日々響に負けるまいと猛勉強した結果、日々響をも凌ぐ頭の良さを身につけ、一躍優等生に。夏休みの宿題を計画的に終わらせるというずば抜けた能力も持っている。また運動神経が並み外れており、普通の人なら目で追うことが出来ないような動きを見せる。容姿もまた並み外れており、狙う人は多い。

 

能力:ありとあらゆるものを破壊する程度の能力

物質全てに存在する最も緊張した「目」と呼ばれる部分を手の中に移動させ、握りつぶすことによって対象を破壊する。

 

性格:馬鹿な日々響のテンションを受け入れることが出来る心広き性格。ただ、日々響が煽り過ぎると能力を使用し、保健室騒ぎを起こす。

 

部活:吹奏楽部

ギター担当で、猛練習している。とても引いているのが似合う。

 

 

・灰谷真祟

アイナ特殊能力学園に夏休み明けから入った一年生。

入学早々日々響と互角に渡り合ったことや、半端ないイケメンだったことで、存在感を強める。

しかし、何があったのか先輩やクラスの人達からの虐めの対象となる。森近霖之助と仲が良く一緒にいることが多い。また狙う女子も多い。

 

能力:風吹を操る程度の能力

風による災害、例えば吹雪や砂塵嵐などを起こすことができる。 また、単に暴風を吹かせることもできる。

 

性格:世に言う陰キャというやつだが、仲間だと認めた人には尽くす性格。話してみると、なかなか話しやすかったりする。たまに桜吹雪を起こして、そのなかに佇んでいる時があり、それが滅茶苦茶もてるらしい。

 

部活:弓道部

弓を引く姿は神秘的ともてはやされている。

 

・鈴仙・優曇華院・イナバ

アイナ特殊能力学園の一年生。コスプレでもないのにウサミミをつけている。頭の良さは並ぶものがいない。フランでも勝てない。武器は銃であり、投擲力が半端ない。また、ウサミミをつけていながら容姿が美しいため、学年一モテる。貰ったラブレターの量は数知れず。

しかしながら好きな人は別にいた......はずなのだが?

 

能力:狂気を操る程度の能力

自分自身この能力を嫌っており、使うことは滅多にない。しかし、人を脅す時に、凄く効果を発揮する。

能力自体は、相手の波長を操り狂気に陥れるという能力で、日々響ににていなくもない。

 

性格:冷たく毒舌。日々響には普通に脅したり、自分が書いているラブレターを見られると平気で銃をぶっ放す。また、日々響に睡眠薬入りのお茶を盛ったりと、相当怖いので、みんなから畏怖されている。

 

部活:薬科部

薬を作る才能もあり、めきめきと頭角を表している。

 

・魂魄妖夢

アイナ特殊能力学園一年生。半人半霊で、人間と幽霊のハーフである。見た目からして剣のガチ勢と思われる剣を持ち、武器もそのまま剣。学年の剣使いでぶっちぎりの上手さを誇る。もともと無口で、相手を切るときも無言。怖い。男子にはあまりモテない脳筋女子系で、あまりモテないことがコンプレックス。そこをいじると怪我ではすまされないだろう。

 

能力:剣術を扱う程度の能力

その名の通り剣術を巧みに操る。並ぶものはいない。

最近は面白い切り方を実験中。

 

性格:真面目で無口だが、なにかが抜けている。面白い切り方を試したり、何でもとりあえず切ってみたりなど、相当危ない。が、友達に対してはとても優しく、面白い面もたくさん見せてくれるなど、友達想いな一面も。

 

部活:剣道部

一年生のくせに一番強い。もはやチート。

 

・森近霖之助 

アイナ特殊能力学園一年生。白い髪に長身。いじめられていた灰谷を助けたことをきっかけに仲良くなる。

また、相当なコレクターで、古い機械をを集めるのが好き。今は1930年位に発売された某会社の電卓にはまっている。喋り出したらとまらない。

 

能力:道具の名前と用途がわかる程度の能力

道具の用途や名前を知ることが出来るので、戦闘の時は、相手の武器がどんなものなのかを一瞬で言い当て、対策まで考え出すことができる。

性格:灰谷の虐めの件で、友達に助けを求めるものの、裏切られ、人間不振に陥っている。後は日々響の行動次第だ。

 

部活:古代史部

古代史の研究をする部活。部員不足に悩んでいるが、霖之助が入ったことで何故か活気づいた。

 

 



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第二十四話~反撃開始~

もう季節は冬。外は一面の雪景色。こんな日は、外を眺めてぼうっとしたい......のだが、僕がやっていたのは

 

「いい加減おとなしくなれよ!この雑魚が!」

 

虐めに協力することだった。

灰谷虐めはまだ終わらない。ずっとゴリラ達が虐めている。灰谷ももう傷だらけで、見ていられない。

ドスッドスッと蹴る音が響く。最近灰谷は、気絶するのが早い。そろそろ精神もヤバイのだろうか。

 

「畜生。もう気絶しちまった。帰るぞ。」

 

虐めっ子たちは憎々しげに灰谷をみて去っていく。

僕も帰り際に灰谷に不死鳥の歌を聞かせ、教室を出る。

 

「今日はまだ早いな。じゃああいつを倒すか。」

「あいつって誰すか?」

「逃げたやつだよ。」

 

逃げた少年。もとゴリラの仲間だったやつだ。

今がチャンスだな。

 

「リーダー。どこでやるんですか?」

「体育館裏だな。今日あいつを呼んである。」

「それ、来ないんじゃないですか?」

「来なかったら捕まえるまでだ。あいつのクラスと寮はわかる。」

「リーダー。その前にトイレにいってきていいですか?」

「早く戻ってこいよ。逃げたらお前も怪我じゃすまないぞ。」

「逃げるなんて、そんなことしませんよ。」

 

そう言って僕は走り出した。向かった場所は、自分の寮。今こそあいつを倒すチャンスだ。

 

勢いよく扉をあける。

 

「ちょっと聞いてくれ。」

「いきなりなによ......」

 

びっくりしている鈴仙と妖夢とは対象的に、フランはなにかがわかったような顔をしている。

 

「わかった。虐めっ子を倒すんでしょ。」

「なら話がはやい。」

 

そこで僕は軽い打ち合わせをして、また、虐めっ子の方に走って戻った。

 

「遅かったな。」

「腹を壊してしまったもんで。」

「体育館裏にあいつはいなかったから、寮にいって捕まえてきた。あいつは縛ってある。」

 

横のゴリラ達が震えている。どうしたんだ。

 

「リーダー......」

 

誰かが小声で言う。

 

「何だ?」

「いや、何でもないっす......」

「臆するなよ。あいつは俺たちを裏切った裏切り者なんだから。」

「はい......」

 

体育館裏につく。そこには、あの少年が縛られたままもがいていた。

 

「お前、自分が何をしたかわかってるな?」

「嫌、だ......」

「怪我じゃすまないって言ったよな?」

「......」

「なんか言えよ!」

 

リーダーが怒鳴り、蹴りを食らわせる。

右ストレートにまた蹴り。息をつく暇を与えていない。

 

「リーダー......」

 

誰かが怯えたように呟く。流石に恐ろしい。

目が残忍に光っていた。もう堪えられなかった。

 

「リーダー!!!」

「もうやめろよ!!裏切ってんのはお前らだろ!」

 

反撃開始。

木の影から人影が四人。

中に灰谷がいることに気がつき驚く。

僕は寮の人達にしかいってないんだけどな......

 

「っお前......騙しやがって......!」

「騙されるお前らが悪いんだろ。」

 

冷静にと頭が叫んでいる。

 

「だがお前らは勝てない。俺の能力を知っているな?」

「じゃあ能力を使わずにその能力を解除できたらどうかしら?」

「そんなこと出来るはずがないだろ!」

「私が薬科部で一番薬を作るのが上手いって言うことを知らないで言ってるのかしら?」

「秘伝 能力一時解除薬『四散型』」

「......なっ」

 

鈴仙が瓶に入った液体を投げる。その瓶は床に当たって割れ、そこから煙が立ち上った。

 

「能力が使える?」

「本当だ。」

 

フランも灰谷も驚いている。

 

「ではまず私から行きますよ。」

 

今までずっと黙っていた妖夢が静かに言う。

 

剣伎【桜花閃々】

 

妖夢がゴリラ1に向かって走りながら剣を抜く。

 

「流石に俺をなめすぎだな。そんくらいよけれるわ。」

「ではこれは?」

 

剣の軌道上から、さらに桜色の剣が閃く。

 

「うおっ」

 

ゴリラ1は避けきれずにバランスを崩す。

 

禁忌【レーヴァテイン】

 

フランの剣がゴリラ1を襲う。

ゴリラ1の肩から血が吹き出す。

 

「......っう」

 

ゴリラ1は気絶。

残りはリーダーだけだった。

もはや仲間が全て逃げ、能力も使えないリーダーは、ただ助けを乞うことしか出来なかった。

それを灰谷が見下ろす。

 

「ごめんって。わかったから。」

「何がわかったのか言ってみろよ。言えないだろ。虐められているやつの気持ちも理解できない奴は死ねよ。」

 

剣縫嵐【ソードオブファイナル】

 

剣がリーダーに向かって突き刺さる。

至るところから血が吹き出す。

 

「灰谷......?なにやってるの?」

 

リーダーはもう息がなかった。

全身血塗れで横たわるリーダー。

 

「僕は何をやって......?」

 

灰谷は呆然としている。

 

「お前はリーダーを......」

「そ、それ以上言うな!」

 

灰谷は叫ぶ。

 

辺りは返り血で真っ赤に染まっていた。



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第二十五話~黒幕は誰だ?~

「僕は......僕は......」

「灰谷!どうしたんだよ!」

「許サナイ......」

「ちょっとどうしたの?みんな固まって。」

 

鈴仙が近づいてくる。

 

「今近づかない方がいい。鈴仙。」

「何で?私達は灰谷を」

「許サナイ許サナイユルサナイ!!」

 

ヤバい。灰谷がおかしい。どうしたんだよ。

 

「灰谷......」

「コロス......」

 

灰谷はそのまま駆け出した。

 

「ちょっと!どこ行くんだよ!」

 

灰谷は体育館裏を回って消えてしまった。

 

「灰谷はどうしたの?」

「わからん。気が触れたのか。」

 

その言葉にフランはビクッと反応したが、

 

「ど、どうして?」

「さあ?誰かに呪いをかけられたのか?」

「私はそんな薬なんて盛ってないわよ。後能力も使ってないし。」

 

「誰だ?」

「え?」

 

突然草むらが動いた。

 

「出てこい!出てこないと草を全て吹き飛ばすぞ!」

 

出て来たのは元虐めっ子の仲間の少年だった。

 

「この子は?」

「虐めっ子の仲間だったやつだよ。」

 

途端にみんなの目が厳しくなる。

 

「こんなところでどうしたんだ?」

「す、すみません。先輩に言われて話を盗み聞きしていました......」

「ん?先輩?誰だそれは?リーダーなら灰谷に殺されたはずだぞ。」

 

すると少年は口ごもった。

なるほどな。その「先輩」って奴がこの虐めの黒幕か。

ならば問い詰めるだけだな。

 

「事情はあいわかった。先輩の名前を言うだけでいい。言わないと君のトラウマや封じた記憶を全て引き出すよ。」

「うぅ......」

「言うだけでいいんだ。いえば解放される。」

 

草むらが再び動いた気がした。

 

「今度は誰だ?」

「日々響。神経質すぎだよ。誰もいない。」

「コロス......」

「え?」

 

見ると、あの少年がこちらをにらんでいる。ヤバい、と咄嗟に判断、僕は手をその少年の額にあて、

 

悩殺【フォルテッシッシモ】

 

と叫んでいた。

 

「日々響!それは......」

 

フランが呆然と呟く。

その少年は音もなしに倒れた。

使ってしまった。これは使っては行けなかった。

霊力が使い果たされていく。

とりあえず保健室に運ばなければ......

足に力が入らない。見ると震えていた。

心臓の音がやけに大きく響く。視界が狭まって、地面が近づいてくるのを見たのを最後に意識が途切れた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

私達は保健室に居た。

目の前には2つのベッド。

一人は悩殺を受けた元虐めっ子らしい少年と、悩殺を撃ったことで霊力を使い果たして気絶した日々響。

永琳先生は、日々響は後少しで目覚めるが、少年の方は少し危険がある、といっていた。どうやらトラウマなどが引き出されているらしい。

私達は、ここで二人が目覚めるまで待つことにした。

 

「大丈夫ですか?この少年。」

 

妖夢が心配そうに呟く。

鈴仙は、本を取ってくる、といって先ほど出ていった。

 

「大丈夫だよ。この学園に来た人なんだから、きっと強い。」

 

普通の人なら、脳が麻痺して、植物人間状態になっていただろう。

 

そろそろ日々響は目覚めるかな......

とそのとき。

 

絶叫が上の階から上がった。私達は咄嗟に身構える。

 

「何が......起こって?」

「わからない。まずは見に行かなければ!」

 

妖夢の冷静な判断で私達は上の階を見に行くことにした。

階段をかけ上がる。嫌な予感がしていた。

もし予感が的中していたとすれば、死なないうちに......

嫌だ。私何考えているんだろう。そんなことあるはずが......

 

しかし、予感は当たっていた。上の廊下は辺り一面血でおおわれていた。真ん中にいたのは、

 

鈴仙だった。

 

「鈴仙!」

 

私は既に気絶しているらしい鈴仙に近づく。

間違いない。これは灰谷の仕業だ。

辺りを見渡す。灰谷の気配はもうなかった。

 

「フラン!何ぼうっとしているの?早く保健室に......」

「あぁ、うん。ごめん......」

 

鈴仙を運ぼうとして私は震えた。肌が冷たい。

 

「まだ、生きて...いるの?」

「わからない!とにかく保健室に運ばないと!」

 

 

 

数分後、私達は再び保健室に居た。

鈴仙は奇跡的に生きていた。どうやら薬のようなものを飲んでいたらしい。それにしても灰谷は何でそんなことを?しかも元恋人じゃん。

 

「......っ............ん?」

「あ、日々響。起きたんだね。」

「まだ体がだるいけどねって、そこの血塗れの人は誰?........................れ、鈴仙!?」

「そう。灰谷に襲われたらしいです。」

 

震えて話せなかった私の代わりに、妖夢が言葉を紡ぐ。

 

「灰谷が?何でそんなことを?」

「知らないわよ。灰谷に聞きたいわ。」

 

そういうと、日々響は考え込んでしまった。

私の中に何かが浮かんだ。

コロス、と口走った少年や灰谷が浮かぶ。

灰谷に虐めていた、虐めっ子たちが浮かぶ。

その理由は何だ?灰谷は虐められるようなことなどしていない。だとすれば......

 

「えっ?」

「ちょっ、フラン?どうしたの?」

 

私の中で、その思考が一つにまとまった。

だとしたら鈴仙は......

いや、そんなはずはない。そんなことをするはずがない。でも、それしか考えられない。

そう考えて、私はその思考をゆっくりと言葉にしていった。

 

「灰谷は、虐められるようなことを何もしていないでしょ。でも何か虐めっ子達の気にさわるようなことをしていないと虐められることはなかったはず。また、灰谷とか、日々響が悩殺したこの少年のあの狂い具合は、自発的に起こったものではない。だから、2つとも何か要因があるんだよ。で、特に虐めっ子たちが灰谷を虐めるようになった要因として考えられるものは......」

 

「嫉妬、だな。」

 

と日々響は言った後に、目を見開いた。

 

「えっ?て言うことは、お前は、あの人が犯人だって言うのか?」

「だってそれしか考えられない。嫉妬を操る能力を持つ『先輩』はただ一人。水橋先輩だよ。」

「しかも水橋先輩は、嫉妬の程度を強くすることも出来る。それで灰谷や、この少年を狂われたとしか......私には考えられない。」

 

 

保健室には静寂が重く垂れ込めていた。



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第二十六話~挫折や邪魔はつきものだろ~

「そう......だな。水橋先輩かも知れないね...」

 

僕は思考を纏める。フランが言っていることは正しい。

でも、水橋先輩はそんな人じゃないと信じたい。嫉妬に突き動かされて人を殺めるような人じゃないと信じたい。

それでも、やっぱりフランは正論で、その答えしか僕も浮かばないのだ。

 

「じゃあこれからどうするの?」

 

灰谷がおかしくなった今、その元凶である可能性が高い、水橋先輩を問い詰めないといけない。

 

「まずは水橋先輩を探そう。後、鈴仙にこの事を...」

 

そう言って僕は口をつぐんだ。そうか。灰谷も水橋先輩も鈴仙の好きな人じゃないか。

しかも鈴仙は、水橋先輩が優しい先輩だってことを、誰よりも知り、誰よりも信じている。

少しショックが大きいだろう。

 

「いや、何でもない。さ、水橋先輩を探しに行こう。」

「うん。」

 

未だ寝ている少年と鈴仙を残して僕等は出ていった。

 

――――――――――――――――――――――

 

私は白い風景をじっと眺めていた。

一面に広がる白い物は、シーツだ。

先ほどまでいた、フランと日々響の言葉が頭から離れなかった。日々響が気を使ってくれたのはありがたかったけれど、やはり心は動揺を隠せない。

 

―水橋先輩が、黒幕?

 

そんなはずはない。

だって水橋先輩は、とっても優しい。こんな異装の私でも、優しい接してくれた。だからこそ私は、水橋先輩が好きになった。そんな水橋先輩が黒幕の訳がない。

日々響とフランが間違ってる。

 

先程、灰谷に襲われた時を思い出す。灰谷も、性格こそ暗いが、とても優しい。好い人だ。

でも、あの灰谷は違った。目に光がなく、無言で襲いかかってきた。あれは、私が起こす狂気ににていた。

だからこそ、私がかけてしまったのかと思って絶叫したのだ。

ただ、薬を持っていて助かった。なかったら今頃、あのリーダーみたいになっていただろう。

 

しばらく考えていると、猛烈な眠気が襲ってきた。

もう疲れたし寝よう。

もし、フランと日々響が水橋先輩を殺そうとするなら命を張ってでも止めないとな。

 

――――――――――――――――――――――

 

寮に水橋先輩はやはりいなかった。

 

「寮じゃなかったからどこにいるんだ?」

「教室とか?」

「何で教室に―」

 

そこで僕は飛び退いた。

ビュン、と空を切る音がして、銃弾が飛んでくる。

 

「伏せて!」

 

何も言わずにフランが伏せる。

誰だ?

 

音波防壁【メタルコ】

 

と呟き、銃弾を跳ね返す。

恐らく水橋先輩の手下だろう。

 

「いくよ。」

「わかった。」

 

相手が見えた。

僕等の声が消えたため、やみくもに銃を乱射している。

僕はそいつに見覚えがあった。

あれは、一年生じゃないか?

 

僕がそれを言う前に、フランが足を破壊する。

 

「うぐっ...」

 

銃を撃っていた奴は、一瞬こっちを見た。

目が......目が怖い。

なにも見ていないような目だった。

その目がこちらを睨み、倒れていく。

水橋先輩が襲わせたのか。

本当に水橋先輩なのだろうか?

 

「ねえ、なんだったの今の?」

「わからない。でも操られていたとしか思えない。」

 

「そこにいるのは誰だ?」

「やっべ、先生だ。逃げろ。」

 

僕等は寮に向かって駆け出した。

その先に何があるのかも知らずに。




ちょっと短かったな......すみません。


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