仮面ライダーW / IとSを繋ぐ者 (あんじ)
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Jとの出会い/この街の探偵

なんか書きたいんで書きました。気まぐれです。多分月末から更新が多くなると思います。それまでは亀更新かと


身長178cmと平均以上の身長ながら大きく太っている訳でもなくて、むしろ細身を思わせるような縦に長い男がいた。白いスーツに黒のジャケットを着て、頭には目元まで深く被る白い帽子と特徴的な格好をしている。そんな彼はこじんまりとした事務所で自分専用のイスに座りタイプライターを打つ。

 

「それで、アンタの依頼聞かせてくれるか?」

 

机を挟み向こうには応接用のソファに座る美女がいた。手前には大切そうにされているアタッシュケース。だが、それとは対照的に彼女自身の服は所々焼けたり破けたりと目も当てられない姿となっていた。

 

「探偵である貴方にコレを」

 

そう言って彼女はアタッシュケースを彼のほうへ向けて開ける。すると中には左右非対称の何かと、最近依頼でよく見るヘンテコなUSB型のものだった。

 

「……コレと言われても、な。そりゃあ最近出回ってる(ヤク)と同じ形をしているが?」

「名をガイアメモリ、次世代の物で毒素は極限まで除いてあります。そしてこれがロストドライバー。このメモリを効率よく使う為の道具です」

 

話が噛み合わない中、簡単に説明を終えると彼女は見せていたアタッシュケースを閉めると、それを置いて事務所を出ていこうとする。

彼はそれを止めることなく、来る者拒まず去るもの追わずといった様子で眺めていた。だが扉に手をかけたその時、帽子のつばを人差し指で持ち上げて彼女を見据える。

 

「報酬は?」

「私の運命……それとこの街の平和」

「あぁ、確かに受け取った。俺が引き継ごう、君の運命(さだめ)もこの街の平和も」

 

扉から一迅の風が吹き抜ける。その風が止んだ時、彼女の姿はもう無かった。"ありがとう"という残響だけを遺して、1人の戦士が風となった。

 

 

▼▼▼

 

 

「それで、依頼とは?」

「はい…それがですね、最近息子の様子が少しおかしくて。どうにも悪い事をしてるんじゃないかと思いまして。何せ今までは門限までには帰ってきた子が夜に抜け出したり、帰ってこなかったり……」

「でも確か20歳、でしたよね。その年になったら大学の友達と夜遊びだってしてもおかしく無いのでは?」

「うちの子に限ってそんな事は有り得ません!ですから、どうにか調べて頂きたいんです。報酬もそれなりに用意させていただきますので!」

「え、あっ、はい。それは構わないですけど」

 

こじんまりとした事務所、その応接用ソファに対面するよう座るのはまだ幼さを残した学生服を着た中学生と、高そうな服や装飾品で身を包んだまるでザマスと言わん様な貴婦人。

提示された金額は前金で10万、報酬として20万の計30万という大きな仕事。

 

「それではお願い致します。息子の事で何かあればメールをください、基本家に居ますので」

「分かりました。息子さんの事はこの鳴海翔太郎(なるみしょうたろう)にお任せ下さい」

 

依頼の話を聞き終えて依頼主をお見送りする。事務所に戻り所長専用のイスに座り大きくため息を吐く。これまでの経験に基づくならあの女性は息子の悪事を見つけないと納得はしないだろう。どんなに彼が真っ当な理由で出ていてもそれを否定する事は目に見えている。

しかし依頼は依頼、解決する事を望んでいるのであればそれを解決するのが探偵の仕事。

まずは情報の整理を開始する。依頼主によると、息子の名前は高橋直樹(たかはしなおき)20歳、大学生。小中高と模範的な生徒でありクラス委員長を務めていた。進学校を経て名前のある大学へ進学、サークル・クラブは未所属。バイトの経歴も無しと大事に大事に育てられてきた。そんな彼が怪しい動きを見せたのは去年の夏頃から。門限の10時までに帰らず、次の日の朝に帰ってきた。それからというものの今に続くまで夜に窓から抜けて家から出たり、一夜二夜帰ってこない事がよくあると言った感じだ。母曰く、何かに取り憑かれた様に次第に目が虚ろになって行ったという。

現状考えられうるのは3通り。

 

・1つ、大学で出来た友人と夜な夜な遊びに出ている。

・2つ、何かしら負い目があり外で秘密裏に働いている。

・3つ、()()()()()()に手を染めている。

 

最悪なのは3つ目だ。上2つは親の過干渉が原因のため息子と一緒に説明すれば直ぐにでも解決へ導ける。

ただ、3つ目のガイアメモリに手を出していた場合こちらも色々と手を講じなければいけない。何せ法律で禁止されている違法の物、更生させるなんて簡単な事では済まないのな確かだ。

 

「まずは足だ。探偵は足を使ってなんぼだしな。…っと、いけね学校に遅れちまう」

 

締まらない翔太郎は時計に携帯をカバンに投げ込むと駆け足で事務所を出ていく。この事務所を兼任している家は街の中心地からは少し離れて住宅街の端っこにある。

現在時刻は8時手前、授業前に予鈴までには間に合う。周りを見ればまだまだ生徒は登校している人が少ない。そんな中でも一際目立つ人達がいた。

 

「おっはよう、ちーちゃん!」

「あぁもう鬱陶しい!」

 

目の前に美少女が2人、同じ制服の女子版を着た生徒が登校している。後ろにいた可愛いの権化が綺麗の権化に飛びつく。この飛びついた方、篠ノ之束は人格破綻で天才という厄介極まりない存在。方や人間としてはまともな感性を持った織斑千冬。ただ、無愛想に加えて武人ならではの近寄り難さという者を持つ者でもある。

朝からわざわざ平和を壊すことは無い。俺は無辜な一般市民だと言い聞かせて、そんな2人を横目に知らぬ存ぜぬで通そうと足早に過ぎようとする。しかしそうは問屋が卸さなかった。

 

「おはよう、鳴海」

「あぁ、織斑おはよう」

 

我が校はは4クラス制、その中でこの2人は常に一緒のクラス。そして俺はそんな魔のクラスに放り込まれた1人でもあった。

役柄的に人をまとめる立場に立ってしまった俺は不幸にも会話が通じてしまうじゃじゃ馬なレディ達の相手を先生から遣わされた。

お陰様で少なくとも朝すれ違うと挨拶される程度には親交が出来てしまったのだ。

 

「今日もお疲れのようだな、どこかの篠ノ之束(バカ)のお陰で」

「あ?」

 

こう皮肉でも言ってやらないとやってられんのだ2人の相手など。

 

「オイ、なんて言ったよ今」

「バカだと言ったんだ。あの国語の小テストで書いた解読不能で絶望的な文章を読んだら誰だってそう思うさ」

「うるっさい!このハーフボイルド!」

「あぁん!?テメェ、誰がハーフボイルドだぁ?オ・レ・は!ハードボイルドだ!」

「ハードボイルドは適当な理由で女に喧嘩は売らねぇよ!」

 

思わず口が滑り喧嘩腰になる。おっと、これ以上はダメだ、もっとクールに行こう。感情に流されていてはまだ半人前、そう親父(オヤジ)も言っていた。

何だかんだ言っていがみ合いながらも予鈴前には学校に着く。俺も彼女達の後ろを一歩一歩重い足取りでクラスへ向かっていく。

悲しくも相手をするという事は俺は篠ノ之束の前の席に強制移動である。夏が過ぎ、既に2年目のクラスになるが悲しいかな俺は1度も特定の席から動いたことがない。それが窓際の後ろから2番目の席という俺専用の席だ。

秋とは思えない日差しが刺す中、爽やかな風が駆け抜ける。

 

「ったく、この街の風は何もかも忘れさせてくれるほど心地良いな。空まで飛べそうだ」

「風で空が飛べるのならそのまま宇宙(うえ)にまで行けそうだね」

 

驚きで身体がまるで石像の様に固まる。まさか独り言に返事が返ってくるとは思っても見なかったし、それ以上にまさか後ろの席から声が発せられるとは思ってもみなかった。ギギギギギと効果音がなりそうな油の足りない機械のように振り返る。

基本的に篠ノ之は1人だと俺と会話はしない。というか織斑千冬と必要最低限以外で先生との会話以外はまず有り得ない。織斑が居る時でも朝のように煽りでもしない限り返事が返ってくる事は無い。

 

「珍しい事もあるもんだな。まさかお前さんと会話するなんてな」

「……」

「チッ、無視かよ」

「…………」

「おい、これじゃあまるで俺が独り言で会話する変人じゃねぇか」

「………………」

「……ハァ」

 

一体なんだったのだろうか?

 

 

▼▼▼

 

時は流れて放課後、俺は早々に街へでて歩き回っていた。いわゆる聞き込み捜査というやつだ。今朝方の依頼にあった高橋直樹の友人やよく行く店の店員などに話を聞く為に街を駆け回る。

まずは同じ大学の講義に出席する者に聞く。

 

「最近の直樹?あー確かにイライラしてる事多いかも」

「と言うと?」

「春休みの前くらいかな?今まで怒ったところなんて見たこと無かったんだけど、突然ブチ切れて。そこから時々イライラしてる事が出てきたかも」

「なるほど……ありがとうございます」

 

次はよく夕食を食べているという定食屋のおばちゃん。せっかくなので俺も夕飯を注文してみる。

 

「直樹くんね、昔からよく来てくれてたのよ。それが最近ガラの悪い子達と来るようになってね。お母さんに迷惑かけないようにって言ったんだけどね、逆ギレされちゃった」

「あー、なるほど。もしかしてその中の誰かがガイアメモリとか持ってたりしなかった?」

「いやー、見なかったね。でも最近この辺じゃ見ない格好した人が居たから、もしかしたらあるのかもしれないわね」

「ふーん、ありがとうおばさん、助かったよ。ご飯美味しかったよ!」

 

放課後、自由になってから3時間ほど街を歩いて分かった事がある。高橋直樹はここ最近ガイアメモリのバイヤーらしき人物と接触したという事、そして夜の繁華街によく出没しているという事が分かった。

そうなると早々に動くことが求められる。彼がまだ怪物(ドーパント)になっていなければ助けられる。そう思った俺は夜の街を目的地を定めずに歩く。

すると奇妙な事に電気屋から出てきた篠ノ之と織斑を見つける。篠ノ之と視線が合うと一瞬鋭くなり、そして思いっきり顔ごと逸らされた。さすがにそれには織斑も疑問に思い、篠ノ之の見た方へ振り返って俺を見つける。

 

「こんなところで鳴海に会うなんて奇遇だな」

「いや、俺もこんな場所で織斑に会うなんて思ってもみなかったさ」

「は?束さんも居るんだけど?」

「いや、俺には見えてないから知らん」

 

昼間のお返しとでも言わんばかりにガン無視を決めると、人でも射殺せるのではと思えるほどの眼光で睨んできたが我慢して無視をする。

織斑と他愛もない話をしていると何か付近が騒がしい事に気付く。

耳をすませば遠くで爆発音と、暗闇に紛れて黒煙が上がっていた。そして俺は気付いてしまう。高橋直樹の出没地点と時間が今騒ぎの中心地と合致する事に。

さすがにこの騒ぎにもなると織斑も篠ノ之も何が起きているかは理解したようだった。

 

「クソったれが!織斑、篠ノ之お前らは早く逃げろ!」

「鳴海はどうするんだ?」

「俺にはこの街を守るって使命があるんでな!警察が来るまで怪物(ドーパント)の相手をしてくるさ。だからちゃんと逃げるんだぞ!」

 

そう強く言い聞かすと俺は迷わず駆け出す。カバンの中にから折りたたみ型の携帯を出すと、それにメモリを入れる。

 

『スタッグ!』

 

そしてもう1つ取り出したメモリを次は時計に差し込む。

 

『スパイダー!』

 

折りたたみの携帯は2本の角が生えてきてクワガタのフォルムをして、ドーパントに向かって一目散に飛んでいく。

俺の腕から放たれた時計は音声と共に足を生やし、軽快にジャンプしてドーパントに向かっていく。そして暴走するように道行くもの全てを攻撃するドーパントを糸で絡めて動きを封殺する。

 

「警察が来ても交番程度の戦力じゃあどうにもならない。追加で応援が来るまで30分って所か。それまでスタッグとスパイダーで持つか?」

 

そんな悠長な思考をしていると背後でも爆発音と悲鳴が上がった。それは織斑や篠ノ之を逃がした方向で間違いない。しかし今ここを離れる訳にはも行かない。目を離した時に襲われる人がいては元も子もなくなる。

だが、何よりもピンチだったのは俺自身だった。スパイダーの拘束も解けて、スタッグのダメージを押してでもドーパントはこちらに向かってくる。

人を限りなく超えた拳が自分の顔を守る様にクロスした腕を薙ぎ払う。昆虫の持つ爪の部分で殴られた腕は引き裂かれて血が滲み出る。

 

「お前は殺す。手始めだ、(むご)くいくぞ」

「生憎と素直に殺される性分じゃあなくてな!」

 

痛む腕をは次第に感覚が消えて、鈍痛はむしろ意識を保つ為の精神刺激薬に変わる。次第に目が慣れてきたのか拳が見える程度にはなってきた。相手の拳を流して、いなして、躱していくがどうにもジリ貧になっていく。

そして数回の攻防の後、怯えて逃げ遅れた少女が目に入ってしまう。そして奇しくもそれはドーパントも同じで、攻撃が彼女の方へ向く。

その瞬間思考が一気に加速していく。思考がグルグルと脳を駆け巡るが、それは何通りの過程を経ても全て1つの結論に至っていた。

 

──このまま見過ごすのか?

 

いいや、ダメだ。俺はこの街を守る探偵。少女1人守れなくて何が守れるというのか。

 

──じゃあどうすれば助けられる?

 

足を掴む?そんなんじゃ止まらない。タックルをする?俺はコイツを押し返せるほど強くない。矛として力が足りない?ならば俺自身が盾となるしか選択肢はない。

 

決意が固まると身体は思考を置いて動き出していた。少女を包む様に庇い、ドーパントに背を向けて全てを受け止める。

そのつもりで全身に力が入っていたが、幾ら待っても痛みが来ない。おかしくそっと目を開けると目の前にはおかしな事が起きていた。黒い帽子に黒いロングコート、黒いブーツで黒いサングラスをした顔面包帯な人が立ち、その手には拳銃が握られている。振り返ればドーパントはその弾を受けて怯んでいた。

そのうちに少女を騒ぎのない方へ逃がす。すると、黒ずくめの人物は女性の声で話しかけてきた。

 

「貴方が鳴海翔太郎ね。父親(ちちおや)鳴海壮一郎(なるみそういちろう)から届け物よ」

 

そう言って彼女は俺の目の前にアタッシュケースを落とす。"開きなさい"と言われ、恐る恐る開ければ中には手紙が一通入っていた。

 

『鳴海翔太郎殿へ

済まない、これがお前の手に渡っているという事は俺はもうこの世にいないという事になる。シュラウドという女性にコレを預けてある。コレはこの街を守る事においてお前の"切り札"となるだろう。済まない、本当は正式に探偵になってから渡すつもりだったものだが早いプレゼントとなってしまった事を許してくれ。切り札と共にこの街の平和はお前に託した。

P.S.俺はこの街の風と共にいつも傍にいる』

 

親父(オヤジ)の字で書かれた一通の手紙。このクセが酷い字は親父が生前に書いたものだと断定できる。去年の春、突如俺を置いて消えてしまった親父は1ヶ月後、遺体となって見つかり死因は交通事故と診断された。どう考えても交通事故とは思えなかったが、警察はそれ以上の捜査をしてくれなかった。親父はもしかしたらそうなる事を予知していたのかもしれない。だからこそ"切り札"なんて物を誰かに託したんだと思う。

 

「アンタがシュラウドさんか?」

「えぇ、そうよ。……坊や、貴方にこの街は守れるかしら?」

「──あぁ、守ってみせるさ。これ以上この街の風を泣かせはしない」

 

アタッシュケースに収められているガイアメモリと左右非対称のガジェットを取り出す。自然とコレは腰に付ける物だと理解出来た。

どこからベルトが表れて腰を1周するように巻き付くと、ガイアメモリを起動させる。

 

JOKER(ジョーカー)!』

 

起動したガイアメモリを腰にある左右非対称のガジェットに差し込む。そして刺さったメモリーごとレバーの様に内から外に押し出す。

 

「変身……ッ!」

JOKER(ジョーカー)!』

 

光り、風が集まり、そして黒塵(こくじん)が俺を包む。黒塵はやがて固まり、まるでパワードスーツの様になっていく。その黒く光る軽鎧装(けいがいそう)は月の明かりすら跳ね返すほどキレイで、そして頼もしかった。

 

「お前はなんなんだ?」

「俺か?……あぁ、そうだな。俺は仮面ライダー、仮面ライダージョーカーさ」

 

そう、この日、この夜、この変身で俺の運命が動き出す。これが後に言う始まりの夜(ビギンズナイト)となる。だがその事は今の俺には知る由もなかった。



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Jとの出会い/繋がる答え

推理パート苦手マンなので多分ガバ理論になると思います


「オラァ!」

 

敵、ドーパントの攻撃を躱して腹部に体重を乗せたパンチを打ち込む。見るからに外殻に覆われて硬そうな頭や背中、腕部などは攻撃力も防御力も高いと思われる。しかし何も無い腹部は最も柔らかい部分に違いない。多分ガイアメモリの元となったのは甲殻類か昆虫系なのだろう。

右ストレート、左フック、ショートアッパーを使い分けて大きくないがダメージを与えていく。

何だかこのパワードスーツらしき物を纏ってから腕の傷の痛みは引いて、どんなに走っても身体は軽いし、予想以上にパンチに力が篭っている。

 

「グゥ!貴様、その力、その姿……本物の仮面ライダーなのか?」

「あ?うるせぇ、そろそろ黙りやがれ!」

 

しかし焦りは増していく。地味なダメージを与えているが中々に倒れてくれない。早くもう一箇所ドーパントが暴れていると思われる場所にも行かないといけないというのに。

決め手に欠けて焦りが見え始めたのか、倒しきれない俺を見て何か思った所があったのか。いつの間にか移動して屋根に居たシュラウドは、それを汲み取ったのかメモリの新たな使い方を教えてくれる。

 

「メモリを1度抜いて腰の右側にあるコネクタに挿しなさい!一撃必殺、つまりは奥の手よ」

 

すぐさま言われた通りに腰のガジェットからジョーカーメモリを抜いて、側面にあったコネクタにメモリをもう1度差し込む。

するとみるみるうちに足にパワーが溜まっていく事が分かる。

 

JOKER(ジョーカー)マキシマムドライブ!』

「ライダーキック!」

 

助走を付けてドロップキックの様にドーパントへ目掛けて蹴りかかる。ドーパントもボクシングのガードのポーズでキックを受け止めるが、次第に押されて後退して行く。そして全身のパワーを足裏一点に集め、力を込める。

一瞬の均衡、そしてガードは崩れてライダーキックでドーパントは倒れる。ドーパントは元の人の姿に戻ると、足元に奴の身体から排出されたガイアメモリが飛んできて、真っ二つに破損した。

目の前の怪物(ドーパント)を倒せて安堵していると、また遠くから爆発音が鳴り響く。

いつの間にか消えていたシュラウドの事を忘れて、足は爆心地へと向かっていく。

 

「急がねぇと!」

 

まだ身体は軽く、炎上している部分へと赴く。爆発音の中心地に着いて分かったが、その爆発音は飲食店のガスボンベが連鎖的に爆破していたものだった。そしてその炎の中に、異形はいた。

怪物(バケモノ)と互角にやり合う、むしろ善戦するように立ち回っているのは異形(おりむら)だ。手には黒や灰色をしたまるで鉄製のような硬さを持つ竹刀で戦っていた。そしてなんの因果か相手は手が剣になっていた。

しかしドーパントの剣が当たれば織斑と言えど致命傷となる。それはダメだ。俺の目の前で、この街で起きて良い光景では無い。

 

「っと、悪いなレディ、そいつの相手は俺だ。変わってもらうぜ」

「何者だ貴様!」

 

走って向かってきた仮面ライダー(オレ)に気付いたが、切りかかる織斑の相手をしなければならずに避けるのが遅れ、俺の拳がクリーンヒットする。立て続けに次は足を高く蹴り上げて頭に回し蹴りを入れる。先の戦闘で慣れてきたのか思うように身体が動くようになってきた。昆虫擬きと違い身体の至る所が尖り、棘や刀のようなのが出ているが、その分可動できる範囲が少ないのか決まった所にしか攻撃は飛んでこない。

俺が掻っ攫う様にドーパントと戦い始めると、織斑はコイツを追撃せずに肩で息をして竹刀を鞘にしまっていた。少なくとも負担ではあったのだろう。何処から出てきたのか篠ノ之も出てきて彼女の心配をしていた。

 

「よそ見するんじゃねぇよ!」

「おっと、んな物騒なもん振り回すなよ。危ないだろ」

 

そう軽口を叩きながら軽打を決めていく。ハイキックや脆そうな接合部を狙って的確にダメージを入れていく。織斑との戦いでかなり消耗したのか既に弱っていた。

 

「コイツで決まりだ!」

JOKER(ジョーカー)マキシマムドライブ』

「ライダーパンチ!」

 

今度はキックではなくパンチ。拳にエネルギーが溜まっていくのをヒシヒシと感じる。体重と軽いステップのエネルギー、そして拳に溜まったエネルギーを全て乗せて顔面をぶん殴る。

吹っ飛んだドーパントは人間の姿に戻り、メモリは放たれて空中で分解してしまう。ドーパントとなってしまった人間は放っておけば警察の方がメモリと共に回収してくれるだろう。

それよりも今は自分のことだ。マキシマムドライブというのは身体のエネルギーを消費するのだろう。身体はダルいし、腹が減った。それにこれは個人の感覚だが、そろそろこのパワードスーツも解けて変身前の姿に戻ってしまうだろう。

俺はそのまま携帯で織斑に場所の名前だけ送って、変身を解除してしまう。すると緊張の糸が解けたのか、蓄積したダメージが襲ったのかは分からないが意識が朦朧としてきて、ゴミの上でぶっ倒れてしまう。最後に見えた光景にはシュラウドが駆け寄ってくるのだけが見えた。

 

 

▼▼▼

 

 

目の前の光景は地獄だった。飲食店のガスボンベに火がついて燃えて爆発、そして別のボンベに引火という連鎖が起こっていた。

(おりむらちふゆ)は咄嗟に駆け出していた。クラスメイト(なるみ)には逃げろと言われたが、腕には自信があったし何より襲われている人は放っておけない。

 

「束、()()貸してもらって良いか?」

「えー、ちーちゃんアイツ(ドーパント)とやり合うの?束さん的には反対かなー」

「すまんな、私も力有る者だ。警察の助けが来るまでの間だけ頼む」

「ずるいなぁ、ちーちゃんに頼まれたら束さんは断れないゾ」

 

そう言うと束は魔法のようにどこからかカーボンナノチューブを使った日本刀と同じ硬度を持つ竹刀を取り出し、私に手渡す。

私が以前、打ち込みの練習をしていた時に「すぐに竹刀が折れて大変だ」という話をした。その際に壊れず、また私のクセ等を完全に熟知した最も使いやすい竹刀を作ってくれた。ただ、人から貰うという事に気が引けたのと、竹刀は竹刀であるから良いという私的な理由で受け取らなかった物だ。

目の前に佇む私が受け取るのを見て、構えてきた。

 

「それで俺と戦うのか?死んでも知らんぞ」

「構わん。出来るものならな」

 

言葉と共に駆け出す。踏み込みと同時に竹刀を振り下ろして全体重を込める。衝撃と風が巻き上がり、煽られた小さなロウソクのような火はかき消された。

 

「グゥッ!たかが子供の竹刀だぞ?それがこんなに重いだと!?」

「まだまだだ!」

 

相手に攻め手を譲らないようにただひたすらに距離を詰めて攻撃を仕掛ける。何せ相手はガスボンベを軽々と切り裂くような鋭さを持つ剣を手にしている。方や硬度のお陰で斬れていないだけの竹刀だ。1度でも切られればもう負けに等しい。

剣技は私の方が上、しかし怪物(ドーパント)の力は私より上。とてると最後は体力勝負。相手がどれだけ体力があるか分からない以上耐久戦は不利極まりない。ならば短期戦、すぐに決着をつけるべきだろう。

私は自分のもつ剣技全てをつぎ込んで相手の攻撃を封じて、切り返していく。見たところこの怪物は体の一部が剣になっているようで身体と剣先の接合部が存在している。その接合部は針山のように尖った剣と皮膚を繋ぐものなのか溶接が甘く脆い。大きいもので1発、小さいものでも2、3発当てれば折れてくれた。

そうやって一方的に攻撃をしていると何か誰かがこの路地の端に立っている事に気が付いた。見ればそれは全身が黒く、マントを付けた噂に聞く都市伝説の"仮面ライダー"の特徴とどこか一致していた。しかし都市伝説を信じて鵜呑みにするほど素直では無い。その為攻撃をやめずにむしろ最大威力を用意する。

 

「っと、悪いなレディ、そいつの相手は俺だ。変わってもらうぜ」

「何者だ貴様!」

 

振り下ろすタイミングを見計らって仮面ライダー(もど)きは重い一撃を決めた。お陰で少し当たるところがズレ、最大の威力は外れて堅い接合部の跡に辺りダメージを上手く与えられなかった。

どんなものでも武道をやっていると分かるが、ドーパントの様に少なからず悪意を持って拳や武器を振るう者は雰囲気で分かるようになる。街や人を襲うドーパントを「俺の獲物」と言い颯爽と現れた彼には悪意や邪心を感じられはしなかった。それを見届けると少し引いて呼吸を整える。

そのタイミングに合わせて何処かへ行っていた束も戻ってききた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……なぁ、今まで何処にいたんだ束?」

「いやー、ちーちゃんを思ってですね?ハーフボイルドを探しに行ってたと言いますか?」

「私の事を遠くで見ていた……の間違えでは無くてか?」

「ヒィ!?」

 

少しばかりイラッと来たのでわざとらしく指を鳴らしてみると青ざめてしまい、これ以上はやりにくくなってしまった。なので束から袋を奪い取り法に触れかねない竹刀を隠す。

見渡して先程の仮面ライダー擬きを目で追えば、それに気付いたのかこちらに気遣ったのか、本人では無いので分からないが立ち位置を器用に変えて戦場を裏路地へと移して行った。

ただ収まりは悪いので、しばらく束のチョークスリーパーで固めてお話をしていると不意に携帯が鳴った。束以外は一括して同じ音となっているので誰かは分からないが私宛にメールが届いていた。件名なし、内容無しで位置情報だけ添付されたもので、差出人はどこかへ行ってしまったクラスメイトの鳴海翔太郎だった。

 

「はぁ!?ちーちゃんにメール送るとか有り得ないんですけど!」

「そう騒ぐな束。彼もそう意味なしに送ってくる相手じゃない。何かあったのだろう、行ってみよう」

「………………ちーちゃんがそこまで言うなら着いて行ってあげる。でも何もしないよ」

「ふっ、構わないさ」

 

束の手を借りて立ち上がり、位置情報の元へ向かう。ここから歩いて3分の路地裏、先程仮面ライダー擬きが戦っていた場所の近くだ。

路地裏の店と店の間等を隈無く探していくとそこに彼は居た。ただ、私の知っている彼とは様子が異なっていた。

 

「束、応急処置を頼む。私は救急と警察を呼んでくる」

「うーん、嫌かなぁ」

「なら絶交だな」

「えぇ!?ラ、ラジャー!」

 

私は束にその場を預けて救急に電話をしながら大通りへと出ていき警察を連れてくるのであった。結果、救急が来るまでの間、否、私が戻ってくるまでの数分の間で止血や消毒は済み鳴海への処置は完璧なものとなっていた……のだがそこに束の姿は無かった。

 

 

▼▼▼

 

 

微睡(まどろ)みの中から藻掻くように目を覚ました。目を開ければそこは知らない天井でと見慣れない顔が映った。どうやら機器や部屋の感じから病院だという事が分かる。

 

「シュラウド、あんたここで何してるんだ?」

「……起きたのね。何って貴方に返しに来たのよ」

 

何か分からず疑問符を浮かべているとベットの足元にあったアタッシュケースをベットに付属した机の上で開封した。

中には見た事のあるガジェットと、全く知らないガジェットの合計8個収められていた。見た事のある左右非対称のベルトと黒色のガイアメモリ、見た事が無いのが左右対称のベルトと緑、赤、黄、灰、青のガイアメモリだ。

 

「貴方が友人から見つかる前に回収したベルトとメモリを含めた2つのドライバーと6つのガイアメモリよ」

「これをどうしろと?」

「これは鳴海壮一郎から貴方への贈り物。どう使うかもあなた次第よ」

 

その一言を残してシュラウドは病室から出ていった。もちろんこのアタッシュケースがここにあり、見つかるとマズいのでシュラウドが事務所の金庫へ入れて置いてくれるらしい。何故金庫を開けられるのかは不明だが。

意識もはっきりしてきてやる事の無くなった俺は依頼の現状についてまとめる事にした。

少なくともあの戦いに高橋直樹は参加していなかった。そしてドーパントとなっていた人物はいずれも最近彼と親しくしていた荒くれ者達の顔と一致している。つまり彼か、または彼と手を結ぶ者が少し真実に迫った俺に対して邪魔をしてきたと言う事だろう。多分あの爆発や戦闘で物的証拠は残らず燃えたり破壊されてしまった事は容易に想像できる。

だが謎は近づく度に同じくらい遠ざかって行ってしまった。何故ガイアメモリを手にしたのか?協力しているのなら誰が?何処にいる?

 

「足りないものが多いな」

「服とかか?それなら持ってきたが」

「あぁ、ありがとう。………ん?」

 

顔を上げると部屋の入口には紙袋に服を入れた織斑が立っていた。その後ろには篠ノ之も一緒に来ている。

 

「目が覚めたんだな。怪我を見た時は驚いたぞ」

「ちょっとミスっただけなんだがね」

「束がいなければ私も危なかったし、君も危なかったんだぞ」

「俺が?なんでさ」

「束の応急処置が適切だったお陰で感染症も無く傷跡も残らないらしい」

 

驚いて入口に壁でもあるのか入ってこない篠ノ之を見ると死ぬほど不機嫌な顔をしていた。多分織斑に何か言われて不承不承ながらやってくれたのだろう。

織斑が救急車を呼んでくれて、入院が確定したらしく事務所へ赴いて大家から鍵を借りて衣服を持ってきてくれた。これも織斑が医者から聞いた事だが腕を抉られていたのに加えて何かの衝撃で腕の骨にヒビが入っていたらしい。傷が治り、骨が一定まで繋がったら退院との事で、1週間程は確定と言われた。

 

「私はこれを置きにきただけだから帰るぞ。母では無いからな、着替えは自分でやれるだろう?」

「問題無いよ。誰かに襲われるとか、守ってもらう訳でも無い……し……」

 

思考がストップをかけてきた。守る?子供を守るのは親として当然だ。なんで高橋直樹の母は彼の帰りが遅くなったのが悪い事だという大前提で話してきた?なんでおかしくなった時に助けなかった?何故だ?

ぐるぐると思考が回り、結論を導き出てきた。これはただの推論だが、1つ、1つだけ証拠が見つかれば答えとなる。

 

「なぁ、織斑ちょっと聞いてきてもらいたい事があるんだが──」



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Jとの出会い/始まりの終わり

自分でも驚く程に驚異的な回復力で腕の骨は結合し、既にギブス無しでも動かせるくらいにはなっている。

あの事件から1週間とちょっと過ぎた頃、俺は依頼の主である高橋直樹の母・高橋雅子(まさこ)の元へ来ていた。内容はもちろん事件の解決へ少し手をかけたからである。確信を得るにはまだだが、この訪問が終わる頃には推測は事実となっているだろう。

 

「それで、探偵さん。事件の解の為に聞きたい事とは?」

「えぇ、それはですね──」

DOMINATE(ドミネイト)!』

 

唐突に音声が鳴ると彼女の額の真ん中にコネクターが浮かび上がってきた。あまりに突然の事に驚き彼女は少しばかり放心すると慌てて額を隠し始めた。

 

「こ、これは!」

「息子を守るため、ですよね。dominate(ドミネイト)、意味は支配する。となると推測ですが、能力は同じドーパントにしか効果が無いのが簡易的な命令ができる。といった所ですか?」

「……なぜ分かったのでしょうか?」

「先日、俺の使いだと言って尋ねてきた子がいませんでしか?彼女に息子の生死が分からない事を伝えるように頼みました。メモリを使うならばこのタイミングだろうと踏んでね。しかし、用心深い貴女なら俺が尋ねてくる可能性のあるこの家にこれ(ガイアメモリ)は置かない。ならば何処かに隠してあると思い、遠くから追跡させたんですよ。後は警察に周囲を捜索してもらえば良い」

 

すると扉の奥に控えていたくたびれたスーツを着た警官と若手の警官の2人組が入ってくる。既に外にも数人の警察官が待機しているのは目視出来た。

 

「高橋雅子さんですね、貴女には逮捕状が出ています。署までご同行願えますか?」

 

若手の警官が罪状を読み上げて手錠をかける。そして喚いたり反抗することも無く外に連行されて行き、数人の警察官に囲まれてパトカーに乗せられてこの場を去っていった。

それを見届けるとくたびれたスーツを着た警官がこちらに向かってきた。

 

「よお、翔太郎。今回もお手柄だったな」

(じん)さん、ありがとうございました。確証なんて無いって言ったのに着いてきてくれて」

「いやなに、お前さんの功績を考えれば外れる事はないだろうってな。何せ用心深いから九分九厘確定するまで手を出そうとしねぇじゃねぇか」

 

彼は仁野幹久(じんのみきひさ)、親父曰く元々この街の交番の巡査だったらしいがドーパント関連の事件によく遭遇したらしく昇進、今は本署の方で警部補として日々事務方をこなしている。時たまドーパント関連の事件があれば出張ってくる様な窓際部署だが、彼自身はそれが楽で良いらしい。暇があれば菓子と昆布茶を啜っている姿がよく目撃されている。

 

「それで、直樹さんの方は見つかったんですね?」

「ったく、察しが良いな。けど大丈夫なのか?」

「ドーパント関連の事件は言質だと弱い、だから物的証拠が必要となる。でも警察ではそれを出すための囮捜査は出来ない」

「中坊の癖に全く親父さんに似たもんだよ。外に警察を配備させておく。ヤバくなったら全力で逃げろ」

 

仁さんにお礼を伝えて俺は高橋邸から出た。向かうのは沿岸部にあるコンテナ群及びその倉庫。一角は古くなり使われなくなっていて、そこで目撃情報が多発している。仁さんもここには昔から悪い奴らの巣窟だったと言っていた。

俺はタクシーを拾って目的の倉庫へと真実を突き止めに前へ進んでいった。

 

 

▼▼▼

 

 

倉庫に着いたがまだ警察車両はどこにも見当たらなかった。しかしこの状況はある意味で好都合であり、躊躇うことなく倉庫の扉を開けて中へと入っていく。

中は特に何かがあるというわけでもなく、簡易テーブルとパイプ椅子や小さな冷蔵庫とベッドなど本当に最小限の家具家電があり、そこに彼はいた。

 

「何者だ?」

「探偵さ、この街の平和の為に動くな」

「チッ、厨二病のガキかよ。ここは遊び場じゃねぇんだよ、帰りな!」

「高橋直樹、君の母は捕まったよ。ガイアメモリを使って悪事をしたとしてね」

 

その言葉と共に彼の表情は激変した。今まではイラついてはいたが、それは面倒や欲求に直結する事だっただろう。しかし今現在、彼の顔は憤怒に塗りたくられた鬼の形相だった。

 

「あのババァ!クソっ、だから手出しすんじゃねぇって言ったんだよ!クソが、クソが、クソが!……まぁ良いや、どうせ最後だ。お前をついに殺す」

「そう言うアンタはイキリ大学生だな。やれるもんならやってみな、変身!」

『JOKER!』

 

お互いに人を超えて変身、変形する。彼の手にあったメモリは『POWDER(パウダー)』と鳴って手首のコネクターに吸い込まれていった。俺もそれに応じるような形でメモリを鳴らしてドライバーに差し込む。メモリは幾つか渡されたが、まだどれが使えるかがよく分かっていない。その為JOKERともう1つだけ持ってきているが、一か八かになる可能性があるので、なるべくは使いたくはない。

赤い複眼と黒い軽鎧装を纏った俺は、真っ赤で二足歩行の人型ではあるものの完全に異なる異形をしている高橋と向かい合うと、正面からの殴り合いになった。

 

「オラッ、オラッ、オラァ!」

「中々のパンチだなぁ!けどよォ、そんなに殴って大丈夫かァ?」

 

その言葉に疑問を持ったが、ダメージを与えられているのならチャンスだと思いラッシュを決める。相手はそれに微動だにせず、全てを受け切った。

そして数秒後、俺の拳は爆竹の様な小爆発を繰り返していた。それを見て奴はニヤリと顔を歪めてこちらにジリジリと近づいてきた。

 

「今度はこっちの番だ」

 

そう言って鋭く重い一撃を何度も体に打ち込んできた。さっきの爆発でダメージを負った俺はガードが間に合わず何発か腹部や胸部に当たった。そしてまた、数秒の後身体に爆発が発生する。

それに対抗すべく俺も気合いを込めて何発も打ち込むが俺の拳は当たる前に爆発で防がれる。奴は奴自身の爆発には耐性があるのかダメージを負わず、一方的にダメージを受ける状態になっていた。

お互いに殴り合いになったが、勝負はそう長く続かなかった。何度かターン制の様に交互に殴り合ったが、奴の拳は上手くベルトを狙い一撃を入れてきた。膝を付かずにはいられたし幸いベルトは壊れなかったが、しかしメモリは端へと転がり変身が解けてしまっていた。

 

「糞ガキが……これで終わりだ」

 

ドーパントは、彼は殴り合いが始まる前に殺すと言っていた。そしてガイアメモリを刺した人間は例外なく欲望や願望と思考が直結しやすくなる。つまりは簡単に人を殺せるようになってしまうという訳だ。

迫るドーパントに対して俺はゆっくりと内ポケットからもう1つのメモリを取り出した。

8つのうちJOKERを除いて簡単に力を理解できるものは多くなかった。力の大きなものを使ってもそれを操れるかどうかはまた別の話だ。となると、どんなものか簡単に想像がつき、比較的安全に使えるものに絞る必要があった。最終的には2つまで絞ったが、3つ持つのは余らせるだけだと思い、最後は直感で選んできた。

時間は限られている。だから俺は博打的だが中でも最も可能性の高いものを選んでベルトへ差し込んだ。

 

METAL(メタル)!』

 

音声と共に再び軽鎧装を身にまとっていく。姿形はほぼ変わらず、軽鎧装の色が黒から灰色に変わっただけで外見に大きな変化は感じられない。またJOKERのようなパワーを感じらなかいが、走攻守の特に守が少し高い能力だというのが直感で理解できた。

 

「姿や色が変わった所で!」

 

ドーパントはその変化を気にせず、追い込んだと言わんばかりに殴ってくる。しかし数秒後の爆発で俺がダメージを受ける事は無くなっていた。

 

「なんだと!?」

「今度こそ殴らせてもらうぞ」

 

灰色の軽鎧装はJOKERの時よりも格段に固く、硬く、堅くなっており爆発での衝撃ダメージは無効となっていた。そしてこちらの拳も重く硬いため爆発で弾かれることも無く、ダメージが入るようになっていた。

有利になった俺は少し冷静になり、背中にあるものがついている事に気が付く。それは長く背丈と同じくらいの長さを持った棒が背中についていた。

 

「コイツの名前は……メタルシャフト、なんてな。そら、行くぜ!」

 

メタルシャフトと名付けた棒はドーパントを鈍器の様に重く、剣のように速く振り抜きダメージを与えていく。そしてシャフトに付加される爆発は次の行動を加速させるようになり、一撃を当てる事に速さが上がりその分だけ威力も上がる。時間が経てば経つほど手数も威力もこちらが上回り、形勢は完全に俺が有利となっていった。

何度か高速のメタルシャフトで殴ると相手は次第に怯むようになり、行動が遅延していく。殴り合いをしていた俺なら気付かなかったが、冷静になった俺には隙が何度か見えるようになってきた。俺はその隙の連続を作り、決める為にメタルシャフトにベルトから取り出したメモリを差し込んだ。

 

『METALマキシマムドライブ』

「メタルストライク!」

 

鉄の棒の両端が鋭く伸びて、両方が穂先となった特殊な槍で突っ込んで行く。一撃を頭上から浴びせ一刀両断、そしてトドメを刺す様に反対の槍先でドーパントを貫いた。

この刃は鋭かったが、切ることに特化した日本刀のタイプではなく重さで押しつぶすように両断する青龍刀タイプだった。しかし先はかなり鋭敏に尖っていて針なんかよりも貫通力は高い。

貫かれたドーパントこと高橋直樹だったが、未だに倒れずに柱を杖代わりになんとか立っていた。

 

「まだだ、まだ終わってない!俺は()()()()()()()()()()()()()()!こんな奴にやられてたまるかぁ!」

 

そう雄叫びをあげるが、その声は虚しく倉庫に響き渡り、その叫びは断末魔の如く力尽きる。彼はその場で倒れ込むとメモリは排出されて、俺の足元へと転がってくる。

急いでメモリを外して人の姿に戻ると、タイミング良く警察車輌がやって来て何人かの警察官が開いている倉庫内に入ってきた。

 

「お疲れ様です、誰が犯人を?」

「俺が到着した時にはもう仮面ライダーが倒していました。メモリはここに」

「仮面ライダー……ですか。彼は一体何者何でしょうか?」

「分かりません。けど、少なくともドーパントを倒す限りは味方でしょう」

 

倒れて意識を失っている犯人に手錠をかけて警察は高橋直樹を連行していく。仮面ライダーは俺ですなんて事は言えないので彼らには申し訳ないが黙っているしかない。

警察が犯人を連れて引き上げる頃、騒ぎを聞きつけた野次馬が倉庫の付近を囲んでいた。俺もkeepoutが引かれ、護送車と共に移動するパトカーに乗せてもらい紛れて外に出る。いくら探偵とは言え中学生だ。そんな現場にいるのをあまりに人に見られるのは変な噂がたってよろしくない。

思えばこの事件は親子のすれ違いから始まったものだ。母は息子のメモリ使用を止めさせたくメモリを使い、息子は母がメモリを使っていたのを知り、自らも手を出して止められなくなっていた。多分だがドミネイトのメモリは息子にもコネクターが付いていたのではないかと思われる。

 

「さて、帰るか」

「ん?事件、解決したのか?」

「あぁ……お、織斑!?」

 

独り言に返事が返ってきて驚けばそこには織斑が立っていた。というかなぜ警察署の前に織斑がいるのかが分からない。

 

「なんでここに織斑が?」

「いやなに、鳴海が退院したと言うからな。事務所に行ってもいなかったからここに来ればいるかと思って来たんだ。見当違いだったが」

「なるほどな」

 

なんとも織斑らしい理由だ。彼女はクラスでもなるべく馴染める様に努力をしている。特に病気や怪我でクラスを離れている者には率先して見舞いに行っている。多分だが、彼女なりに篠ノ之束を思いクラスに少しでも馴染めるようにまずは自分からと行っているのだろう。

 

「そう言えば篠ノ之は?」

「束は途中まで一緒だったんだ。けど鳴海の所に行くと言ったら途端に帰ってしまったよ」

「めっちゃ嫌われてんなぁ」

 

その後織斑と話ながら彼女を送り、事務所まで帰ったのだが途中ずっと殺気を感じていたのは多分勘違いだろう。

振り返ればこの事件の始まりは何処か分からないが、それでもメモリ犯罪に手を出したのは悪でしかない。しかし諸悪の根源はこれを作り配布している者達だ。

だがこのメモリの出処が分からない。親父は何か掴んでいたみたいだが何かに残している訳でもない。これではいくら芽を摘んでもという話だ。

この謎が謎を呼ぶ事件はただの始まりでしかないのだが、それは今の俺には知る由もない。




適当書きですが許して下さい。次の話からはちゃんと書く予定です。


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