奇蹟再現領域 エンピレオ 死せる神の落とし子 (座右の銘は天衣無縫)
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プロローグ
1話


また、更新待ちの小説があるのに新しい小説を作ってしまった。


 

吾輩は魔術師である。

名前はアレックス・クルス。

そしてここはFate時空。

知ってる人は知っている、あちこちに死亡フラグが散りばめられたヤベー世界である。

 

さて、唐突にとある有名な小説の冒頭風の紹介をしたが、俺が言いたいのはただ一つ。

そんなヤベー世界に転生しました(白目)

 

気が付いたのは、四、五歳の頃だった。

前世の知識と赤ちゃんならではの語学学習チートを発動させた俺は、周りから神童だの天才だの言われてかなり、かーなーり調子に乗ってた時だ。

 

ある日、父親に連れてかれたのは家の地下にある謎の部屋。

そこで明かされたのは、この家が何代も続いてきた魔術師の名家である事。

そして、今から魔術師としての勉強を始める事だ。

 

うん、そこではまだ気付いてなかった。

 

だが、勉強を始めると、魔術回路だの魔術属性だの起源だの、そういうFateで聞く用語が出て来る出て来る。

 

そして極め付けの聖杯と英霊。

 

あ、Fate時空や、って思った。

 

そしてそこから、色々あったが、俺のメンタルの為と、話すと長くなるのでカット。

どこぞの古代ギリシャ人ですか、ってレベルでスパルタだった。 ケルトでも可。

 

そして俺はFate時空内の魔術師の登竜門にしてメッカ的な存在である時計塔に入った。

出来ればエルメロイ教室に入ってみたかったけど家柄的に鉱石科に。

 

ちょいちょい、原作キャラに絡んでいったりやエルメロイ教室に顔を出したりと自由に、けど、周りが煩いのでそれなりの成果は出しながら過ごしていた。

 

そんなある日、天体科のロードからお呼びの声がかかって、行ってみたら就職先探してない?とカルデアを紹介された。

 

この時点で少なくとも二回は人類が滅びの危機に瀕するFate時空の中でも屈指の難易度ルナティックのFGO時空だと判明。

因みに個人的にはEXTRA時空とFGO時空がツートップでヤベーと思ってる。

 

片や半ば出来レースのトーナメントで月の裏に至ってはサーヴァントがつかない可能性があり、もう片方は人類悪のオンパレードである。

 

そのくせ、必ずしもグランドクラスが仕事しに来れるとは限らないとか、英霊の座は仕事しろ。

なんでキアラの相手にデミヤだけ派遣して、後はデミヤとカルデアがどうにかしてくれるだろ、みたいなノリで放置してんだよ。

 

メルトが咄嗟に機転を利かして過去に飛ばなかったら終わってたんだからな!?

 

それはさておき、カルデアを紹介された俺はすぐさまその話に飛び付いた。

だってカルデアに行かなきゃ、最低二回は死ぬんだぜ?

カルデアに行って初回のレイシフト(爆破)さえ回避すれば、後は前世の知識を使って英霊達とそれなりの関係を築いていけば良い。

 

あ、英雄王とか元人類悪とか月の裏の支配者とか一部の反英霊とかはお呼びじゃないんで、帰って、どうぞ。

 

と、まあ、カルデアに就職。

適当にBチームに入るか、スタッフとして頑張れば良いやーと考えた矢先、レイシフト適性及びマスター適性が高いことが判明。

 

結果Aチームに配属。

どうやら、この世界の神に嫌われている様だ。

具体的にどの神かは知らん。

 

 

 

 

 

そんなこんなで南極入り。

Aチームとしては同着の三番乗り。

俺と同じタイミングで南極入りしたのは、カドック・ゼムルプス、オフェリア・ファムルソローネ、芥ヒナコ、ベリル・ガッド、デイビッド・ゼム・ヴォイドの時計塔の天体科以外組。

因みに一番乗りはカルデア生まれのマシュ・キリエライト、二番は天体科のキリシュタリア・ヴォーダイムだ。

流石にお膝元の天才は真っ先にスカウトしたらしい。

 

そして、誤差とも言えるくらいのタイミングでスカンジナビア・ペペロンチーノがカルデアにやってきて、Aチーム全員が揃った。

 

揃ったので全員集めて懇談会を開くことにした。

 

「そんじゃ、まずは自己紹介でもしようか。 俺は鉱石科のアレックス・クルスだ。 因みにアレックスって名前には人類の擁護者って意味があってな。 名前負けしないように頑張るわ。 あ、時計回りで宜しく。」

 

「…………カドック・ゼムルプスだ。 君達とは違って凡人なもんでな。 精々、足を引っ張らない様に頑張るさ。」

 

「スカンジナビア・ペペロンチーノよ。 あんまり詳しい事は話せないけど、ちょっとミステリアスな方が良いわよね? よろしく。」

 

「…………植物科の芥ヒナコ。 人嫌いだからよろしくするつもりは無い。」

 

「ベリル・ガッドだ。 時計塔じゃあんまりいい噂は聞いてないと思うが、気軽に接してくれ、な?」

 

「降霊科のオフェリア・ファムルソローネ。 責任をもって今回の件にあたる所存よ。」

 

「………マシュ・キリエライトです。 …………以上です。」

 

「元伝承科のデイビッド・ゼム・ヴォイドだ。 あまり余計な事は話さない。」

 

「天体科のキリシュタリア・ヴォーダイムだ。 今回、君達と一つのチームを組む事になって嬉しく思うよ。 よろしく頼む。」

 

と、一通り自己紹介し、様々な情報を交換してその日はお開きになった。

 

 

 

 

 

そして、カルデアの創設者たるマリスビリーが死去、娘のオルガマリーが所長を継ぎ、数年。

いよいよ、Bチームも全員揃い、マスター候補四十九名全員が揃った。

原作開始だ。

 

因みに物語の強制力か、はたまたレフがAチームだけは絶対に殺すべきだと判断したのか、何も出来ていない。

 

運命の時だ。

俺たちAチームは人理修復の旅にはいけない。

二年間氷漬けにされ、異星の神に利用される。

そして、人類の反逆者として、主人公に退治される。

 

「っよし。 やるか。」

 

覚悟は決めた。

主人公が何だ、ストーリーが何だ。

俺という異分子が混ざっているなら未来すら変えてやる。

 

「アラ、随分と良い顔つきしてるじゃない。 カッコいいわ!」

 

そうペペが話し掛けてくる。

 

「常日頃からそれくらい真面目でいれば良いのに。」

 

オフェリアが呆れ、

 

「まあ、こいつの事だ。 長続きしないだろ。」

 

カドックがサラリと毒を吐き、

 

「……覚悟ができたか。」

 

デイビッドが納得した様に呟き、

 

「何だよ、緊張してんのか? あんま固くなんなよ?」

 

ベリルが茶化し、

 

「覚悟、ですか。」

 

マシュが興味深そうにこちらを見て、

 

「……空回りしなければ良いけど。」

 

ヒナコがデレを隠した毒を吐き、

 

「色々言ってるが、私たち全員が覚悟を決めてここにいるんだ。 ………やり遂げよう、最後まで。」

 

リーダーのキリシュタリアがそう締めくくる。

 

それぞれが無言で目を合わせ、コフィンの中に入っていく。

 

『マスター候補四十八名のバイタルチェック開始。』

 

そう機械の音声が流れる。

 

『バイタルチェックが済み、問題が無ければレイシフトを開始します。 目的の年代、地点は2004年の日本、冬木市。 聖杯戦争が行われていた場所、年代です。 目標は不明。 レイシフト後、速やかに調査を開始し、必要に応じてサーヴァントを召喚しなさい。』

 

通信機を通して、オルガマリー所長の指示が聞こえる。

 

『バイタルチェック完了、問題無し。』

 

そして、俺たちの覚悟は踏み躙られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時間かはたまた何ヶ月か経ったか分からないが、唐突に意識が浮上した。

 

そして目の前には謎の光の塊。

周りを見渡せばキリシュタリアだけがいた。

 

そこで光の塊、『異星の神』から告げられた事を要約すると

 

・異星の神が選んだのは俺とキリシュタリア。

・原作通り異聞帯を作り、その地に降臨する予定。

・俺とキリシュタリアは性質こそ違うが、どちらも素質があったので俺とキリシュタリアでそれぞれ違う異聞帯を作り、勝った方に降臨する。

 

と、まあ、俺の存在で原作から変化したらしい。

そして、残ったAチームの六人を俺とキリシュタリアが半々で対価を払って復活させ、クリプター八人による凡人類史の漂白、異聞帯の形成と領地争いを行う事になった。

 

異星の神は俺とキリシュタリアが痛みで荒くなった息を整えている間にいつの間にか消えていた。




感想、評価、全裸待機してます。
ロストベルトや主人公のサーヴァントの真名予想でも良いので。
当たっても何もないけど。

初期マシュに関しては予想なんで気にしないで。
多分、今後初期マシュが出てくることは無いから。


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2話

早速の評価付け、感想ありがとうございます!



異界の神によるクリプター八人の復活から数週間後、各々、各異聞帯の王とは対面し、自分のサーヴァントを召喚を完了した。

そして、今は各異聞帯の問題について調査、対処している最中である。

 

因みに一番早く終わったのが、俺とオフェリア、ヒナコの三人である。

キリシュタリアは異聞帯で戦ってる最中で、ぺぺは自分の異聞帯の性質を調査中。

カドックは異聞帯での居場所を作っていて、ベリルとデイビッドは異聞帯を存続させるのに必死になっている。

 

しかし、俺はかなり良い異聞帯を引き当てたと思う。

サーヴァントに少し心配な点はあるが、今のところ問題らしい問題はそれだけだ。

 

「てな訳でこっちは異星の神サマからの空想樹待ちだ。 あと、機会があれば何騎か追加でサーヴァントを召喚するかもしれないな。 いやー、楽で有難いわ。」

 

『何騎か、という事は相当の魔力リソースがあるのね。 こちらの異聞帯は差し当たっての危険や問題は無いけど、余裕がある訳では無いから羨ましいわ。 ヒナコ、貴女は?』

 

『似たようなものよ。 こちらの異聞帯は維持には何の問題も無いけど、領地拡大には向いてない。 だから、領土争いに関して私は参加しない。 先に言っておくわ。』

 

『そうか。 分かった。 だが、空想樹は育ててくれ。 負けるとしても勝った方が手に入れるのが、枯れた土地では何の意味もなくなる。』

 

「お、キリシュタリア、終わったのか?」

 

『いや、一段落ついただけだ。 次で最後さ。 休みと報告、他の異聞帯の状況を見るために来ただけだ。 他の四人はまだか。』

 

と、一回目のクリプターの異聞帯に関する報告会だ。

どうやらキリシュタリアもスタートダッシュは失敗したが、その後は順調らしい。

 

『よお。 悪いが、この後もやる事山積みだから手短かにするぜ。 相変わらず消滅の危機の真っ最中だ、多少は良くなってるがな。 そっちは?』

 

そう言って通信を繋げてきたのはベリルだ。

 

「俺は超順調、オフェリアはまあまあ、ヒナコは領土争いに不参加表明、キリシュタリアはあとちょっとで前準備が終わるとさ。 その他はまだだ。」

 

『OK! 順調そうでなによりだ。 んじゃ、また今度、カドック、ぺぺ、デイビッドの三人の事も教えてくれや。 じゃあな!』

 

「あ、ちょい待ち。 ウチの王様からの伝言。 他の異聞帯のクリプターだろうが、危なくなったら受け入れるってさ。 分かっちゃいたけど、かなりのお人好しだ。」

 

『……出来んのか?』

 

「ウチの王様と、ライダーの宝具の合わせ技でな。 安全は保証する。」

 

『んじゃ、そん時は頼むわ! じゃ!』

 

そう言ってベリルの通信が切れた。

 

『今の話は本当なの?』

 

「嘘つく理由ないだろ。 本当の話だ。 領土争い前に和平してくれたら、異聞帯の全員移住させても良い。」

 

つっても、理論上の話で安全確認はまだなんだけどな。

まあ、ウチの王様のスペックならどうにかしてくれるだろうけど。

 

『悪い、遅れた。』

 

『私も遅刻ね、ごめんなさいね。』

 

カドックとぺぺからの通信だ。

 

『カドック、お先にどうぞ。』

 

『あぁ。 ウチの異聞帯は一段落ついたけど、辺境で反乱軍が作られてそっちの対処中だ。 それくらいだな。』

 

『私は調査が終わったけど、中々興味深い異聞帯だわ、ここ。 けど、一つだけ分からないものがあって。 私は[四角]って呼んでるけど。 後で分かってる事だけ纏めて渡すわ。』

 

『遅れた。 此方は変わりない。 お前らはどうだ?』

 

最後にデイビッドが入ってきた。

 

「二回目だけど、一言で纏めると俺は超順調、オフェリアはまあまあ、ヒナコは領土争いに不参加表明、キリシュタリアはあとちょっとで前準備が終わって、ベリルは若干好転、カドックもまあまあ、ぺぺは調査は終了したけど謎の物を発見、ってところだ。 それと後から来た奴らに伝言。 ウチの異聞帯が避難場所でーす。 連絡くれれば迎えよこしまーす。 以上。」

 

『おい、最後。』

 

「異聞帯間の移動が可能で、ウチの王様が受け入れOKだってよ。」

 

『あら、それは良いわね。』

 

「だろ? ま、それはさておき、だ。 今日集まったのはカルデアの事についてだろ?」

 

そして、一人欠けてるが本題に入る。

 

『あぁ。 シバ、ラプラス、カルデアス、フェイト、トリスメギストス。 特にレイシフトに関係する装置は全て破壊か封印処置しなければならない。』

 

「その上でサーヴァントの霊基パターンのデータを奪えたら万々歳、ってところか。」

 

『既にコヤンスカヤとあの神父が潜入してるんだろ?』

 

『ああ。 だが、霊基パターンのデータだけはどうしても見つからないらしい。』

 

カドックの質問にキリシュタリアが答える。

何故かコヤンスカヤは、キリシュタリアに報告するからな。

少しはこっちに情報流してくれ。

 

『となると、炙り出すしか無いわね。 あからさまな脅威、サーヴァントを送り込む必要が出て来るかしら。』

 

という、オフェリアの提案。

発想自体はいいと思うが、

 

「ウチの奴らは略奪とか絶対に無理。」

 

『俺の方はそんな余裕は無い。』

 

『私は暫く、[四角]に掛り切りになりそうだから無理では無いけど、あまりやりたくは無いわね。』

 

『セイバーが私の側から離れるとは思えないわ。』

 

『私ももう暫くは手が離せそうに無いな。』

 

これだ。

それぞれ、理由があってあんまり人材を使えない。

 

「ベリルも余裕無さそうだしな。 やるのはヒナコかカドックか、最悪ぺぺだな。」

 

『……なら僕がやろう。 反乱軍もオプリチニキに任せておけば抑えられるしな。』

 

『なら、任せるよカドック。 詳しい事はコヤンスカヤと話してくれ。 では、次の全体会合は空想樹が発芽し、根付く四ヶ月後だ。 勿論、それぞれ自由に連絡を取り合って貰って構わない。』

 

「ほんじゃ、二度目の死が訪れない様に頑張ろうや。」

 

『個人的に一番心配なのは貴方なのだけど。 …………絶対に死なないでよ。』

 

そう言ってオフェリアが通信を切った。

 

「言ってくれるな。 …………なんでそんな目ぇしてこっち見てんのさ。 切るぞ。」

 

俺も通信を切った。

 

「ふう。 さて、この後はまた会議か。 美人ばっかなのは嬉しいけど、二連続だと嫌になんな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜一ヶ月後 カルデア〜

 

コヤンスカヤに言われて嘗てのAチームメンバーに興味の湧いた主人公、藤丸立夏はダ・ヴィンチにAチームについて尋ねていた。

 

「Aチームの情報? どうしたんだい、急に。」

 

「あ、いやー、どんな人達だったのか気になって。」

 

「ふーん。 まあ、構わないけどね。」

 

長い間、Aチームを見てきたダ・ヴィンチと元Aチームのマシュ。

その二人からの言葉を元に、何となく自分の中でAチームのメンバーの姿を思い浮かべていく。

 

「じゃあ、これで最後の一人。 アレックス・クルス。 時計塔では鉱石科に所属。 魔術属性は火・土の二属性。 魔術特性は強化と転換。 起源は不明。 戦闘訓練での成績はAチームトップだけど、それ以外は全体で見て上の中ってところだ。 Aチーム内では下の方だね。」

 

出された写真に写ってるのは、額に白いバンダナを巻いた黒髪の青年。

美形の多いAチームの中では比較的地味な印象を受ける。

 

「アレックスさんは、普段はあまり真面目な印象を受けないのですが、勝負所では勝つ、何というか……抜け目のない?様な感じの方でした。」

 

「うーん、モリアーティみたいな感じ?」

 

「いえ、モリアーティさんの様な態とらしいふざけ方ではありませんでした。」

 

「なんだかんだで勝ち筋を探し出して勝つタイプさ。 少しばかり君と似てるかもね。」

 

「……確かに、そうですね。」

 

「違うのは意図してやってるかどうかだよ。 君は割と偶然勝ち筋を拾うタイプ。 彼は勝ち筋を自分から見つけ出すタイプだ。 要は運を削った代わりに戦略性と戦闘能力を得た君だね。」

 

「つまり僕の完全上位互換……?」

 

「だ、大丈夫です先輩! 運も実力の内です! 先輩の運はEXランクに相当する筈です!」

 

項垂れる立夏をマシュが必死にフォローする。

 

「まあ、それよりも私が評価してるのは、彼の発想だ。 魔術師というよりも魔術使いに近い発想をしている。」

 

「分かります。 土煙に閃光、目くらまし、その他小手先の技のオンパレード。 何度引っかかったか分かりません。 オフェリアさんが抗議した時は普通にやって勝った様でしたが。」

 

しみじみと、少し遠い目でアレックスとの戦闘訓練を思い出すマシュ。

 

「その頃からだったかなぁ、色々面白くなったの。」

 

「面白く?」

 

「おっと、流石にこれは言えないぜ? まあ、会ってみたら分かるけど。」

 

半ば答えを言った様なものだが、本当に分からないのか首を傾げている。

 

「と、まあ、Aチームのメンバーはこんな感じだ。 どうだい? 一癖も二癖もある集団だろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

カルデアは襲撃されていた。

かつては対応可能なサーヴァントがそこかしこを歩いていたが、調査団の訪問に合わせて、ダ・ヴィンチとシャーロック・ホームズ以外は全員退去していた。

 

カルデア唯一のマスター、藤丸立夏はマシュ、ダ・ヴィンチと共に霊基トランクを回収、格納庫に逃げ込んだ。

 

しかし、そこで新所長として訪れたゴルドルフ・ムジークの声が館内放送を通じて聞こえてきた。

そのムジークの台詞に嘗て助けられなかった旧所長、オルガマリーの事を思い出し、居ても立っても居られず、ムジークを救出。

 

しかし、隙を突かれたダ・ヴィンチが調査団の一員としてカルデアを訪問してきた言峰神父に胸を貫かれる。

だが、自分の命を犠牲にしてダ・ヴィンチは言峰を足止め、その隙に生き残った職員と藤丸立夏、マシュ、ホームズはカルデアから脱出した。

 

その後、少しばかりのハプニングはあったものの、何とか無事にカルデアからは脱出でき、南極の大地を大型特殊車両シャドウ・ボーダーで走行していた。

 

そして、それを最初に見つけたのはカルデア職員の一人、ムニエルだった。

空から降ってきた八つの隕石。

 

それと同時に通信が入る。

 

『……通達する。 我々は全人類に通達する。

この惑星はこれより、古く新しい世界に生まれ変わる。

人類の文明は正しくなかった。

我々の成長は正解ではなかった。

よって、私は決断した。

これまでの人類史ーーー汎人類史に叛逆すると。

 

今一度、世界に人ならざる神秘を満たす。

神々の時代を、この惑星に取り戻す。

その為に遠いソラから神は降臨した。

八つの種子を以て、新たな指導者を選抜した。

指導者達はこの惑星を作り替える。

最も優れた[異聞の指導者]が世界を更新する。

その競争に汎人類史の生命は参加できず、

また、観戦の席もない。

空想の根は落ちた。

創造の樹は地に満ちた。

 

これより、旧人類が行なっていた全事業は凍結される。

君達の罪科は、

この処遇を以て清算するものとする。

 

汎人類史は、2017年を以て終了した。

 

私の名はヴォーダイム。

キリシュタリア・ヴォーダイム。

八人のクリプターを代表して、

君達カルデアの生き残りにーーーいや、

今や旧人類、最後の数名になった君達に通達する。

ーーーこの惑星の歴史は、我々が引き継ごう。』

 

「……キリシュタリアさん……? 今の声は確かにキリシュタリアさんです、が……」

 

マシュがそう呟くが、さらに通信は続く。

 

『以上を以て私の勝利宣言を終了する。 が、もう一人の代表から君達に投降勧告がある。 私としては全員凍結してると思うがな。』

 

「もう一人、だと……?」

 

ムジークが呟き、そして、次の話が始まる。

 

『ご機嫌麗しゅう、カルデアの生き残りの皆様。

俺の名はアレックス・クルス。

キリシュタリアと同じく八人のクリプターの代表だ。

 

今頃、全員凍結しているのか、はたまた生き残っているのかは知らないが、

俺の予想ではしぶとく生き残ってるもんでね。

少しばかり時間を貰った。

 

さて、話というのは他でもない。

投降しろ、さもなくば死ぬぞ。

ーーーーいや、正確には消えるのか。

死ぬより恐ろしい事だ、何せ生きてた証明が出来なくなる。

 

今、何処に居るかは知らないが、既にカルデアは包囲されている。

カルデアを襲った黒尽くめの兵士にな。

今すぐ白旗を振って投降すれば、命は保障しよう。

七つの特異点を駆け、歴史を正した現代の英雄を無くすのは惜しいと言うのが俺の考えだ。

 

そして、俺以外のクリプターも少なからず賛同している。

さぁ、どうする?

我々クリプターはどちらでも良いんだ。

投降するなら武器を捨て、抵抗せずに捕まれ。

 

逃げる方法があるというなら逃げるが良い。

その時は次にクリプターの誰かと接触した時に答えを聞くとしようじゃないか。

 

いい答えを期待している。』

 

その言葉を最後に通信は切れた。

その後、シャドウ・ボーダーは黒尽くめの兵士、オプリチニキの大群から逃げる為に虚数の海に潜った。




主人公のサーヴァントヒント

クラスはライダー
異聞帯間を移動可能(ただし手伝いが必要)
異聞帯の全員を移送可能

さあ、予想してみて下さい。
因みに予想には一切のコメント返しはしませんので、そこだけはご容赦を。


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3話

感想と評価ありがとうございます!

評価ゲージに色が付き、ルーキー日間ランキングにも載りました!


シャドウ・ボーダーが虚数の海に姿を消してから三ヶ月後。

四ヶ月ぶりのクリプターの会合が行われた。

 

『空想樹の発芽から90日……

三ヶ月もの時間が経過した。

濾過異聞史現象ーーー

異聞帯の書き換えは無事成功した。

まずは第一段階の終了を祝おう。

これも諸君らの尽力によるものだ。』

 

一通りの報告を終え、早速本題に入り、キリシュタリアが切り出した。

 

『うん? そいつは大げさだ、キリシュタリア。

オレ達はまだ誰も、労われる様なコトはしちゃあいない。

一番肝心な事はぜーんぶ、異星の神さまの偉業だからな。』

 

「同感。

俺たちがやったのは異聞帯の王に空想樹を認めさせて、サーヴァントを召喚して、カウンター召喚された汎人類史のサーヴァントの一部を味方にしただけだ。

割と当たり前の事しかしてない。

おっと、キリシュタリアは別だぜ?

何せ神霊に己の強さを認めさせるなんて事をやってのけたんだからな。」

 

『……貴方達は分かっていないのね。

異聞帯の安定と[樹]の成長は同義よ。

ならば、異聞帯のサーヴァントの契約と継続。

それに全力を注ぐのは道理でしょう。

貴方達の様な、遊び気分が抜けてないマスターは特に。

しかも、アレックスはキリシュタリアと同じく、私達のリーダーでしょうが。』

 

『おっと睨むのは勘弁だぜ、オフェリア。

お前さんの場合、シャレになってないだろう。』

 

「そして訂正だ。

俺もベリルも遊んでなんかいないさ。

死からの復活なんて奇蹟は二度も起きない。

ふざけてる様に見えるのはお前らみたいな気心の知れた奴らと話せるからさ。

なぁ?」

 

『おうよ。

一度死んでんのに遊び気分でいられる程大物じゃ無い。

そんでもって、また蘇生できるとも限らないなら、

生きている内にやりたい事はやっておきたい。

殺すのも奪うのも生きていてこその喜びだ。

ーーーなぁ、アンタもそう思うだろ? デイビッド。』

 

『同感だ。 作業の様な殺傷行為は、

コフィンの中では体験できない感触だった。

オレの担当地区とおまえの担当地区は原始的だからな。

必然、その機会に恵まれる。』

 

『そうとも。 オレたちにその気が無くても向こうから殺されに来る。

遊んでなんかいられねぇよなぁ?』

 

『………そう。 貴方達の担当の異聞帯には同情するわ。』

 

 

『………………』

 

『あら、平常運行のベリルとアレックスに比べて、元気ないんじゃ無いカドック?

目の隈とか最悪よ?

寝不足? それともストレスかしらね?』

 

『……その両方だ。 僕の事は放っておいてくれ。

仕事はきっちりこなしてるんだから。』

 

『それはちょっと無理ね。 凄く無理。

放っておいて欲しいなら、せめて笑顔でいなさいな。

友人が暗い顔をしてたら、私だって暗くなる。

当たり前の事でしょ?

私は私の為にアナタの心配をしちゃうのよ。

アナタの事情とか気持ちとか関係なくね。

 

分かる? 独りでいたかったら、それに相応しい強さを身に付けないと。

ストレスが顔に出ている様じゃまだまだよ。

何か楽しい事で緩和しないと。

 

そうねぇ。 定番で悪いけどお茶はどう?

こっちの異聞帯で良いお茶の葉を見つけたの。

アナタのところにも分けてあげるわ。

皇女様もきっと喜ぶわよ?』

 

「それとも、久し振りに音楽でも聞かせてやろうか?

こっちの異聞帯はそれなりに音楽が盛んでな。

やろうと思えばロックだって作れるぜ?

 

それと、これは全員にだけど、前々から言ってた交易。

ウチのキャスターの片方が煩くてな。

そろそろ準備が整う。

詳しいことはまた後で。

 

何か欲しい物があったら言ってくれ。

開戦までは交易するらしいから。」

 

『そういや、そんな話もしたっけな。

有り難え話だ!

こっちの食文化には飽き飽きしてきた所だ!』

 

『私の方もよ。 ヨーロッパ圏の食が懐かしいわ。』

 

『この平常運行組め。

お前らは何処にいっても変わらなそうだな。』

 

『きゃー! 褒められちゃったわ!

いいわ、殺し文句にしては中々よ、カドック!』

 

『違う、呆れてるんだ。

オフェリア、やっぱり此奴ら遊び気分じゃないか?』

 

『それは……まあ。

ペペロンチーノはまだしも、後の二人に関しては否定出来ないわね。』

 

 

『…………無駄話はそこまでにして。

キリシュタリア。 要件は何?

こちらの異聞帯の報告は済ませたはず。

私の異聞帯は領地拡大に向いてない。

私は貴方たちとは争わない。

この星の覇権とやらは貴方たちで競えばいい。

そう伝えたわよね、私?』

 

『…………そんな言葉が信用できるものか。

閉じ篭っていても争いは避けられないぞ、芥。

最終的に、僕達は一つの異聞帯を選ばなければならない。

アンタが異聞帯の領地拡大を放棄しても、その内他の異聞帯に侵略される。

それでいいのか?

座して敗者になってもいいと?』

 

『……別に。

私の異聞帯が消えるなら、それもいい。

私はただ、今度こそ最後まであそこにいたいだけ。

納得の問題よ。

それが出来るなら他のクリプターに従うわ。』

 

「ならウチに来るか?

場所に意味があるのか、そこに住む人に意味があるのか。

どちらかは知らないが、そちらの異聞帯を俺の異聞帯が呑み込めば、それなりのクオリティーで再現できるはずだ。」

 

『……それも良いかもね。

けど、それは最後の手段にして。

私はまだ、ここに、この異聞帯に居たいの。』

 

「おっとそいつは失敬。

じゃあ、その時になったら連絡をくれ。」

 

『つっても、異聞帯間の勢力争いには興味ない、か。

まあ、結果が見えてるゲームだからな、このレースは。

 

オレ達は束になってもキリシュタリアとアレックスのどちらにも敵わない。

地球の王様決めレースは最後の一戦まではほぼ出来レースだ。

 

オレとデイビッドのところなんざ酷いもんだしな?

あれのどこが[あり得たかもしれない人類史]なんだよ。

 

その点、あの二人の異聞帯は文句無しだ。

下手すりゃ汎人類史より栄えてる!

ずるいよな、最初からエコ贔屓されてるときた!

やっぱり生まれつきの勝者ってのはいるもんだ。』

 

『………………』

 

「はっはっは、よっしゃベリル。

お前がウチの異聞帯に来たら、俺がやってるトレーニングやらせるからな。

覚悟しとけよ。」

 

『ベリル、私達が誰のお陰で蘇生出来たのか、忘れたのかしら?

異星の神にとって私達は蘇生するのに値しなかった。

そこを二人が直訴してくれたから今があるのよ。

これくらいの差はあって当然だわ。』

 

『……それでも、私達二人は君達にも世界の覇者になれる素質があると思っている。

油断したらひっくり返される。

それくらいの事はしてのけると思っている。

 

だからこそ、君達の蘇生を願ったのだ。

 

とは言え、負けるつもりも無い。

全力でかかってくると良い。

こちらも全力で対応しよう。

 

 

さて、遠隔通信とは言え、私が諸君らを報告後も引き止めたのは、他でも無い。

 

一時間程前、私のサーヴァントの一騎が[霊基グラフ]と[召喚武装]の出現を予言した。』

 

キリシュタリアのその報告に会議の空気が一変した。

 

『霊基グラフはカルデアのもの。

召喚サークルはマシュ・キリエライトの持つ円卓だろう。

南極で虚数空間に潜航し、姿を晦ましていた彼女らが、いよいよ浮上する、という事だ。

君の予想通りになったな、アレックス。』

 

「ですなー。

まあ、特異点を修復してきた英雄だ。

これくらいのしぶとさは予想の範囲内。

なにせ、報告書によれば人理焼却の黒幕はビーストI、魔神王ゲーティア。

第七特異点ではビーストII、ティアマトが顕現。

その後、ウチのキャスターの観測が正しければ、亜種特異点でビーストIIIの片割れが不完全とはいえ、出現。

 

結果的に三体の人類悪を倒した事になる。

ビーストⅣがあのプライミッツ・マーダーだって言ったらヤバさも分かるだろ?

何の比喩でも無く、現代の英雄なのさ。

カルデアのマスターは。」

 

『……そうね。

初めて報告書を見た時は虚偽報告だと思ったけど、仮に本当だとすれば頷ける話だわ。』

 

『と、なると強ち人選ミスって訳では無さそうね。

完全に私たちの想定の上を行ったってわけ。』

 

『あの方法と人選は最適解だった。

カルデアの護りは強固では無いが万全だ。

新スタッフとして館内から手引きしてもらわなければレイシフトで対応されていただろう。

 

制圧にはまず内側から潜入し、カルデアスを停止させる必要があった。

コヤンスカヤの計画は良く出来ていた。

唯一、我々側に問題があるとすればーーー

 

サーヴァントが余り積極的に働かなかった事だ。

とは言え、コヤンスカヤと神父は我々のサーヴァントでは無く、

カドックの送り込んだ皇女もマスターとの物理的な距離が開いた事によって魔力の補給が十分では無かった。』

 

「つまり、俺たちの失敗はある意味仕方ないもので、カルデアからすればラッキーだったのさ。」

 

『不確定要素の全てがカルデアに味方したってわけか。

偶然、ではねぇよな?』

 

『恐らくアラヤの仕業だろう。

ガイアが俺達の邪魔をする理由はない。』

 

『かーーーっ!

世界も味方してるってか!?

いよいよカルデアのマスターが本物の英雄っぽく思えてきた!』

 

『……それで、連中が何処に現れるのか判明しているのか?』

 

『そこまでは予言されてはいない。

あと数時間でこちらに出現する、という事だけだ。』

 

『なんだいそりゃ。

じゃあ各自、自分の持ち場で警戒しろってーー』

 

『出現場所はロシアだ。

異聞帯の中に浮上する。』

 

『……それは、なぜ?』

 

『? 何故も何も道理だろう。

彼らが[今の地球]で知り得る事象はカルデアを襲ったサーヴァントだけだ。

虚数空間から現実に出るための[縁]はそれしか無い。

オプリチニキは彼らにとっての座標でもある。』

 

「そうかい。

なら、カドックの所への交易品には少しオマケをつけておこうか。」

 

『……物によるな。

アレックス、早目に交易について話しておきたい。

この後、すぐに連絡を入れる。』

 

「あいよ。

キャスターもすぐに連れて来させる。」

 

そう言って部屋に控えている奴に目を向ければ、すぐに動き出してくれた。

いや、悪いね。

こんな事に使っちゃって。

 

『まあ、なんだ。

危なくなったら尻まくって逃げちまえ。

オレ達は競争相手だが憎い敵同士じゃあ無い。

異聞帯を失ったクリプターに価値はないんだ。

 

だったら何処ぞの異聞帯でひっそりと暮らす分には誰も手出ししないさ。

そうだろ?』

 

『…………そうだな。

カドック、我々クリプターの最終目標は異聞帯による人理再編。

それに比べればカルデアの始末は余分な仕事だ。

雑務と言っても差し支えない。

 

………とはいえ、脅威であることも否定できない。

実際、デイビッドが言ったように彼らには汎人類史のアラヤが味方している。

 

ーーーカドック、君の手腕に期待している。

障害を排し、一刻も早くロシアの樹を育てることだ。

それがカルデアの抹殺にも繋がるだろう。

私は全ての異聞帯に同等の可能性を見出したい。

人類史の可能性である異聞帯が矮小な歴史のまま閉じるなど許されまい。』

 

『……アンタに言われるまでもない。

僕だって負けるつもりは無いからな。

……通信はここで切る。

彼らが来るなら迎え撃つまでだ。』

 

そう言ってカドックは通信を切った。

それとほぼ同時に俺の所にカドックからの個人通信が入ってくる。

 

「おっと、カドックからの通信だ。

気の早い奴だな。

ってな訳で俺も切るぜ。

交易交渉の受け付け時間はここの異聞帯の時間で午前十時から午後の三時まで。

日曜は受け付けないから、そこと時差だけ気を付けてくれ。

じゃあな。」

 

ここで俺も通信を切った。

そして、すぐさまカドックからの通信を繋げる。

 

「ういうい、お待たせ。

キャスターがまだだから基本的な所だけ決めよう。

こっちが出せるのは食糧と木材、石材。

後は魔術的な資源もいくつか。

木材と石材と魔術的な資源は加工前のと加工後のがある。」

 

『食糧と加工されてない木材、後はピアノの部品が欲しい。』

 

『あと、良質なお茶の葉があれば貰えるかしら。

そこまで量は多くなくていいわ。』

 

『アナスタシア、悪いがそんな余裕はウチの異聞帯には…』

 

所帯染みた事言ってんな。

ウチには贅沢する余裕は無いのよ、ってか?

 

「いや、良いよ。

食糧と木材、ピアノの部品に良質なお茶っ葉ね。

そんな量がいらないならお茶っ葉はサービスにしておく。

そっちは何が出せる?」

 

『……魔獣の死骸。

肉は出せないが、甲殻や骨、毒腺に鱗なんかは魔術的な資源になるだろ?

後は特殊な火薬と氷の結晶くらいなもんだ。』

 

「そんだけあれば十分かな。

具体的な量に関してはキャスターを通して……おっ、ちょうど来たな。

交易の詳しい事に関してはキャスターに一任してある。

通信は繋げておくから、後はそっちで話し合って決めてくれ。

任せるぞ、キャスター。」

 

「はぁ〜〜い♪」

 

やけに機嫌のいいキャスターが先程まで俺が座っていた椅子に座り、交渉を始める。

俺が追加召喚したサーヴァントは三騎。

内一騎がこのサーヴァントだ。

 

その交渉を横目に部屋から出る。

ライダーにも伝えておかないとな。

 

城の窓から外を除けば、活気付いた街が見える。

実に良い世界だ。

善性に溢れている。

この世界に悪性は数える程しか存在せず、それ故に善性の汎人類史のサーヴァントが召喚されても、破壊を惜しみ、寧ろ自らが消える運命にある事を知って尚、この世界を守ろうとしてくれるサーヴァントがいる程だ。

 

さて、カルデア。

この異聞帯は戦闘能力的にはそこまで高くは無い。

だが、これ程までに良い世界を消滅させられるかな?




と言うわけで主人公のサーヴァント追加。
でも分かりやすいかな。

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4話

沢山の感想、評価ありがとうございます。

感想にあった質問に関しては後書きに答えを書かせてもらいました。
あと、サーヴァントの真名が思ったよりも当てられたので予定よりも早く出します。


数日後、ロシア異聞帯。

ライダーの宝具で物資を輸送し、異聞帯の首都、ヤガ・モスクワ付近に到着した。

 

既にカドックとアナスタシア、そしてオプリチニキが数十体、向こう側の交易品を囲んで待っていた。

 

「……おい、何でお前も付いてきてるんだ。

来ないはずだったろ。」

 

「いやー、それが良く考えたら帰りに必要でさ。

令呪切るわけにもいかないじゃん?

あ、皇女様、こちらご注文のお茶の葉です。

勿論、こっちの異聞帯では最高級。」

 

「ありがとう。

カドック、これが終わったら一息付きましょう。

資源を持って反乱軍とコンタクトを取れば、こちらに引き込めるかもしれないでしょう?

 

そうすれば、残る問題はカルデアと樹とアレだけになる。

それなら、休んだって構わないでしょう?」

 

「アナスタシア、取らぬ狸の皮算用って奴だ。

せめて反乱軍を静めない限り、そう長く休むつもりは無い。

 

それに資源の出所について、反乱軍がそう簡単に信じるとは思えないしな。

今の光景を見ていてくれているなら楽になるんだが。」

 

「………反乱軍かどうかは知りませんが、見られてはいますね、マスター。」

 

そう言って話しかけてきたのは護衛役として連れて来ているランサーだ。

 

「方角は?」

 

「彼方の街からです。」

 

「ヤガ・モスクワからか。

考えられるのは好奇心旺盛な奴等か、マカリー司祭とコヤンスカヤだな。」

 

「敵では無いのですね?

なら、無視しておきましょうか。」

 

「ああ、それで良い。

ところでこの資源は全部、辺境行きか?」

 

「…ああ。 首都はまだ余裕があるからな。

辺境にかける税も変えるか。

魔獣の死骸が食糧と交換できるなら、税の量も減らせるな。

辺境で捨てられる魔獣の死骸も首都で買い取る様な制度にすれば、辺境にも相当の余裕が出来るはずだ。」

 

「ふふっ。」

 

「……何だ急に?」

 

「だって、貴方、本当にこの国の為に働いている政治家みたいな顔をしてるのよ?

この国どころか、この世界の人じゃ無いのに。

 

初めて見たけど、私は好きよ、貴方のそういう表情。」

 

「っ………別に、これはこの国の為だけじゃ無いさ。

この異聞帯の繁栄は僕の為になる。

だったら発展の為に必死になるのは道理だろ。」

 

「本当にそうかしらね?

嘘、子供、可愛らしい、ね。」

 

「………今のは聞かなかった事にしておく、」

 

えっと、今のは[子供のような分かりやすい嘘をつくなんて可愛らしい人]ってところか?

しかも、俺がすぐに分かるくらいに簡単にしてある辺り軽い悪意を感じる。

 

「ええい、商売相手の目の前でイチャつくな。

末永く爆発してろ。

積み替え作業も終わったみたいだし、俺は帰るぞ。」

 

「……あ、ああ。

交易は一ヶ月毎だったよな?」

 

「そうだ。

それより前に会合で顔合わせるけどな。

次は北欧異聞帯か。

忙しくなるな。」

 

「北欧…オフェリアの所か。」

 

「そう。 交易と向こうの王との顔合わせを兼ねてな。

その内に北欧異聞帯とは統合するかもしれないな。

 

じゃ、カルデアの事は任せたわ。

一応、会ったら戦う前に降伏関連については聞いておいてくれ。

その前に死んでたら世話ねーけどな。」

 

そう言ってライダーの舟の中に入る。

ゲームやってた頃から思ってたけどカドアナ良いね。

目の前でイチャつかれるのはムカついたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数週間後、ロシア異聞帯は跡形も無く消え去った。

 

現時点で、これを知っているのはコヤンスカヤから報告を受けたキリシュタリアと俺だけだ。

 

『アレックス。

カドックの回収を頼みたい。

既にラスプーチンが、カドックをカルデアから奪い返した様だが、大西洋には程遠い。

 

距離的に一番近い君の異聞帯に向かっている様だ。』

 

「任せろ。

俺からも報告だ。

彷徨海に動きがある。

カルデアの奴等もそれを目指して、大西洋方面に進んでる様だ。

 

このまま行けばオフェリアの北欧異聞帯に入るだろうな。

俺がカドックを迎えに行ってる間に、警戒を呼び掛けておいてくれ。」

 

『了解した。

何か伝える事は?』

 

「[死ぬな]、それだけで良い。

切るぞ。」

 

そう言って通信を切った。

カドックには悪いが、今回のロシア異聞帯はテストケースになって貰った。

カドックは死なない事は分かっていたからな。

 

交易によって本来のロシア異聞帯よりもカドック側が有利になっていた。

反逆軍とは和平まではいかないが、勢いや士気は無くなり、辺境の村もかなり皇帝寄りになっていた。

けど、まるでその差を埋める様に、カルデアは二騎の英霊を召喚。

更に、宮本武蔵との合流も早くなっていた。

 

正直見くびっていた。

これがストーリーの修正力なのか、藤丸立夏の主人公補正なのかどうかは分からないが、一筋縄ではいかない相手だったのが、更によく分からない力を持っている可能性が出てきた。

 

一度戦ったカドックの意見が聞きたい。

本来とは違ってウチの異聞帯に迎え入れる事になったのは渡りに船だ。

 

「ライダー!

外に出るぞ。 すぐに準備を。

キャスター二人とランサーは留守番を頼む。

誰か来てもすぐに戻るって伝えてくれ。」

 

サーヴァント達の返事を聞き流しながら城の外に出て、ライダーの宝具を展開させる。

更にそこに一手間加え、虚数の海に入り、嵐の壁を越える。

 

ヤガ・モスクワの座標と北欧異聞帯の方角から、おおよその捜索範囲を決める。

そこからライダーのもう一つの宝具で、現実世界の捜索範囲付近に浮上する。

 

ライダーの宝具はそのまま出しっぱなしにして、目印兼高台として利用する。

十数分後、ラスプーチンが此方を捕捉した様で、猛スピードで走って来た。

 

そのまま飛び上がり、舟の上に乗った。

 

「ご苦労さん、ラスプーチン。

肩に担いでんのがカドック、ってめちゃくちゃ顔色悪いな。

どうした?」

 

「………ずっと、肩に担がれて……サーヴァントのスピードで走ってたら……酔いもするだろ。」

 

「……私の宝具の上で吐かないでよ?」

 

「…意地でも……吐くか。」

 

「お、おう。 暫く休んでて良いぞ。

で、ラスプーチンは何してんの。」

 

「いや、私はロシア正教に携わった身な上、この体も私自身では無いが、聖職者のものなのでな、感慨深いのだよ。

ふむ、これがかの旧約聖書に出てくるノアの箱舟、か。

 

ロシアでは遠目に見ただけだったが、やはり近くで見るとまた違うものだな。」

 

「……それ、本心で思ってないだろ。

私の舟には、あまり貴方のような人種は乗せたく無いんだ。

白銀時代の愚かな人間を思い出すからね。」

 

そういうのは俺のサーヴァントの一人。

真名をノア。

金の長髪を後ろで結った女性。

Fateだからね、TSに関しては仕方ないね。

年齢が500とか600のジジイとか誰も見たく無いでしょ?

 

「…悪い、待たせた。 もう良いぞ。」

 

「分かった。 ラスプーチン、お前はどうするんだ?」

 

「コヤンスカヤと合流する。 その後はまだ未定だ。」

 

「あっそ。

じゃあ、ライダーの機嫌がこれ以上悪くなる前に降りた降りた。」

 

「それはそれで面白そうだが………やめておこう。

叩き出させるか、自分から出るかの二択なら、まだ自分から出た方が良い。」

 

そう言うとラスプーチンは舟から飛び降りて、少し離れた所で立ち止まり、此方を振り返る。

 

「では、そちらの異聞帯が存続していればまた会うこともあるだろう。

その時を楽しみにしている。」

 

「ははっ、異聞帯が消えれば用済みで会う事も無いだろうってか?

嫌味を言うのも大概にしろよ、エセ神父。

釘を刺さなくても、異聞帯は存続させるさ。」

 

「ほう?

ならば、常々努力すると良い。」

 

それだけ言って霊体化して去って行った。

 

「戻るぞ、ライダー。」

 

再度、虚数の海に入る。

ノアの宝具[ノアの箱舟(ノアズアーク)]はそこが海であるならば航海が可能。

つまり、虚数の海も進む事が出来る。

そしてもう一つの宝具、[陸地への道標(ピジョンズ・ガイド)]によって必ず上陸が可能だ。

 

つまり、虚数の海に入る方法さえ確立すれば異聞帯間の移動も可能になる。

ある意味、異聞帯では最も有能なサーヴァントだ。

 

 

 

 

 

異聞帯に戻ってカドックを連れて城の一室に入る。

北欧異聞帯の攻略は、少なくとも一週間やそこらでは終わらない。

まだ時間の余裕はある。

 

「さて、カドック。

真面目な話をしようじゃないか。

カルデアと戦ってどう思った?

どんな些細なことでも良い、聞かせてくれ。」

 

「……そうだな。

まず、会合でベリルが言っていた[不確定要素が味方している事]、あれは確かだ。

とはいえ、完全にって訳でもない。

少し考えてみて、もしかしたら異聞帯の世界のアラヤが、奴らに与えられている汎人類史のアラヤのバックアップを阻害してるんじゃ無いかと思った。

確証は持てないけどな。

だが、その分、異聞帯の外よりかは異聞帯内での方が倒せる確率が高くなるかもしれない。

 

後は……キリエライトだな。

デミサーヴァントでは無くなったのは確かだが、その分、また別の力を手に入れたみたいだ。

スペックは資料より攻撃的な物になっている。

だが、継続戦闘能力に乏しそうな点がいくつか見られた。

 

それくらいだな。」

 

「……OK。

取り敢えずここの異聞帯にいろ。

大人しくしてろよ?」

 

「フン、どうせ僕はもう何の意味も無い敗者だ。

逆らうつもりは無いさ。」

 

「アホ抜かせ。 意味ならあるさ。

その内に皇女様を再召喚して貰う。

ここならそれが可能な道具も人材も揃ってる。

その後は………この異聞帯の為にキビキビ働いて貰うか。」

 

「…………は?」

 

俺の言葉に呆けた顔をするカドック。

中々レアな表情だ。

 

「んじゃお疲れ。

あんまり怪しまれる事しないようにな。

まあ、本当にしても許してくれるだろうけど。」

 

部屋から出て、偶然近くを歩いていた奴に、カドックの事を伝え、自室に戻る。

さて、どんな風に転ぶかね。




感想に来てた質問について。

Q.ビーストⅣってFGOで知られてたっけ?
A.作者の記憶が確かなら知られてなかった。
けど、プライミッツ・マーダーって月姫では死徒二十七祖の第一位で第九位のアルトルージュ・ブリュンスタッドのペット的な立ち位置なんですよ。
で、時計塔には元死徒のキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグがいるんですね。
なのでプライミッツ・マーダーの事は知られていると考えられる。

また、マリスビリー・アムニスフィアが召喚したソロモン。
それ経由でビーストだと判明、的な感じかな、と思ってます。


Q.EXTRAコラボの事ってBBが全部、修正したから知られてないんじゃね?
A.そうなんですか。
いや、EXTRAコラボは時期が悪くて全然プレイ出来て無かったので知りませんでした。
なので、これの投稿後にセリフ修正しておきます。



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5話

やべぇよ。
呼符単発で水着ジャンヌ来たよ。

でも、ウチのカルデアで一番必要なの回復役なのよね。
マーリンとか普通のジャンヌとか玉藻とか。


北欧異聞帯。

北欧神話の最後、[ラグナロク]によって北欧世界が完全には滅びなかった世界である。

唯一の神、スカサハ=スカディによって人だけでなく、生命体は管理され、護られている。

 

一見、八つの異聞帯の中では比較的安定している様に見えるが、スカサハ=スカディによってのみ齎されている、まさに薄氷の上に成り立っている異聞帯だ。

 

その異聞帯にカルデアが訪れた。

無論、これに対してオフェリアは対応するが、スカサハ=スカディの方針により積極的な行動を取れずにカルデアを待ち構え、一度目は捕らえる事に成功するも、城の地下に幽閉していた神霊、シトナイによってカルデアは脱走。

 

その結果、二度目の城での戦闘ではオフェリアのサーヴァントであるシグルドの天敵、ブリュンヒルデにより、シグルドが倒され、シグルドの中にいた炎の巨人王、スルトが復活してしまう。

 

更にいつの間にかスルトによってオフェリアに[悪竜の呪い]がかけられていて、正常な思考が奪われ、空想樹をスルトが取り込み、それを元に霊基再臨を果たし、かつて取り込んだフェンリルの権能を取り戻させてしまう。

 

そして、シャドウボーダーから奪ったペーパームーンを元に虚数世界へと進行し、星の全てを燃やし尽くそうとする。

 

だが、そこで汎人類史側のカウンターとして召喚されたナポレオンがスキル[皇帝特権]を使用。

オフェリアの[悪竜の呪い]を解呪する。

その後、スルトを倒すべく魔眼の接続を解除する事でスルトとの契約を強制解除した。

 

そんな北欧異聞帯の最終局面。

そこに俺はいた。

 

いや、正確には今来た。

 

「時間稼ぎご苦労、カルデアの諸君。

待たせたな、援軍だ。」

 

「アレックスさん!?」

 

『なっ、アレックス・クルス!?

何でこんなとこに!?』

 

俺が悠々と歩きながら戦場に姿を現せば、驚いてこっちを振り向いて見ている。

敵から目を離すなよ。

 

「何でって、知ってるかどうかは知らんが北欧異聞帯とは同盟組んでてな。

後、それとは関係なしにスルトを倒さなきゃ世界の終わりだ。

そりゃ、出張ってくるに決まってんだろ。

ああ、他の質問はまた後でな、世界一の探偵。

そんな事してる余裕は無い。」

 

『ふむ、つまりこの状況に限っては……』

 

「おう、味方と捉えてもらって構わないぜ。

やっほ、オフェリア。

助けに来た。」

 

って、血出てんじゃねぇか。

スルトとの契約は切れてるみたいだし、応急処置っと。

持ってきた布をオフェリアの右眼を抑えるように巻く。

特別製だから魔眼だろうが、ちゃんと治癒効果があるはずだ。

 

「ご苦労さん。 後は任せろ。」

 

「…………出来るの?」

 

「勿論。 じゃなかったら任せろなんて言わないさ。

そこで見てな。

シグルド、オフェリアを守ってやってくれ。

 

…………んで、スルトさんよ。

良かったのか?

絶好のチャンスだったろうに。」

 

「……脆弱なヒト如き、どの様な状態だろうが倒すのに好機など必要ない。」

 

「さよで。 慢心ご苦労さん。

けど、すぐに後悔する事になるぜ?

あの時に殺しておけば良かったってな。」

 

「クッ、ククク。 面白い冗談だ。

だが、それを言ったのが、アレックス・クルス、貴様で無ければな!

貴様こそ後悔するが良い!

ここに来なければ、少しは生き延びられたというのになぁ!」

 

「……図体でけぇんだから、あんま大声出すなよ。

念話だから余計にうるせぇし。

逆に何言ってんのか分からんわ。

……まあ、いいや。

聞く価値も無いだろうし。」

 

「ほざけ、ヒト風情がぁ!!」

 

「んじゃ、誰とは言わないけど頼むわ。」

 

俺がそういうと、振り下ろされようとしてスルトが振り上げていた剣が弾かれる。

よく見れば人影があり、空中を飛びながらスルトと戦っているのが分かる。

 

『あれは……ワルキューレの一体か?』

 

「いんや、全然違うね。

そもそも、ウチの異聞帯から連れて来た奴だし。」

 

まあ、ウチの異聞帯の中では随一の戦闘のスペシャリストだし、少なからずスルトの霊基が傷付いている今、完全回復するまで戦闘を長引かせるなんてミスはやんないでしょ。

短くて一分、長くて五分ってところかな。

 

だから、唯一心配すべき点は

 

「おのれェ!!

貴様ら全員塵すら残らず燃え尽きろ!」

 

『……っ! 魔力値増大!

負けるのか分かっているのか、再生に使っていた魔力すらつぎ込んでるぞ!

宝具だ!』

 

宝具を撃ってくる事だけだ。

 

「アレックス!」

 

「心配すんな。 この程度なら予測済みだ。」

 

見れば、再生してないのが分かったのか彼方も攻撃の手を休めてまで、魔力を武器に回している。

なら、一瞬でも良いからあの宝具を止めれば勝ちだ。

 

「うっし、ライダー、出番だ。」

 

霊体化していたノアが霊体化を解いて現れる。

 

「こっちも宝具だ。

一瞬で良いから時間を稼げ。

あんたらも見てないで、力を貸してくれ。」

 

「行くよ。

宝具解放。 これこそは我が奇蹟。

決して沈まず、希望を繋ぐ神の舟。

その奇蹟を今、ここに! [ノアの箱舟]!」

 

巨体な舟、ノアの箱舟が現れる。

[ノアの箱舟]の性質として決して沈まず、壊れない事がある。

とはいえ、サーヴァントになった今では霊基の大きさや、つぎ込んでいる魔力、神秘の量ではスルトの方が上なので恐らくは負けて壊されるだろう。

だが、スカサハ=スカディによる神鉄の盾の多重顕現、オルトリンデの白鳥礼装の補助、ブリュンヒルデとシグルドによる原初のルーンの防御付与。

これらが揃えば、拮抗できる筈だ。

 

「燃え尽きろ!! [太陽を超えて耀け、炎の剣]!!」

 

振り下ろされるのは神造兵装。

スルトのソレはその中でも特に威力の高い終末装置。

とはいえ、だ。

ノアは生前に世界の終わりに立ち会い、乗り越えている。

 

防御効果の付与された箱舟がスルトの剣を受け止める。

一つの世界の終わりとも言える大洪水を乗り越えた箱舟は、世界を終わらしかねないものには滅法強い。

宝具となってスペックダウンしているとはいえ、その性質は残っている。

なら、時間を稼ぐには十分だ。

 

衝撃に舟から軋むような音が出ているが、それだけだ。

 

「私の舟を軋ませるとは、良い一撃だ。

けどな、この舟を沈めるには、この三倍は持ってこいという奴だ!」

 

スルトの剣が止まる。

正直、想像以上だ。

流石は英雄、この程度なら笑って乗り越えてくるらしい。

……若干足が震えてるのは見なかった事にしておく。

 

そして、上空にいるもう一人が太陽のごとく輝きを放つ。

あれが英霊なら対悪宝具とでも言うべき一撃だ。

流石にインド異聞帯の王であるアルジュナの宝具程の出力は無いが、霊基にダメージが入ったままのスルトにとどめを刺すには十二分。

 

上空の輝きが増し、その光が収束していく。

そして、レーザーの様に放たれたその一撃が、スルトの頭から貫いた。

確実に霊基までも貫かれたスルトは崩れ落ちていく。

 

僅かにオフェリアへと手を伸ばし、だが、何も言わずに消えていった。

 

「………………さて、と。

これで味方期間は終了。

北欧異聞帯とは同盟を組んでる以上、ここからは敵同士なわけだが。」

 

「っ!」

 

「互いに消耗してるわけだし、ここはお互いに見逃すって事でどうだ?」

 

『………どうする、立夏君。

恐らく彼の言っている事は本当だ。』

 

「……分かった。」

 

「そりゃ良かった。

女王サマ。 予定よりもかなり早いが、異聞帯の消滅が決まった今、やれるのはここしか無い。

今すぐにこの異聞帯の住民を集めてくれ。」

 

「……そうであるな。

オルトリンデ、統率個体の末の子よ。

残った戦乙女を指揮して、全ての我が子をここへ。」

 

「了承しました。 今すぐに。」

 

そう言うとすぐにオルトリンデが全戦乙女と通信を始める。

 

「一体、何を……?」

 

「そっちの名探偵なら分かってるだろうから、そっちから聞いてくれ。

シグルド、オフェリアを舟の中へ。

あの中なら絶対に安全だ。」

 

『……立夏君、その舟はかの名高いノアの箱舟だ。

恐らくだが、あの舟でこの異聞帯の住民達を全て、彼の異聞帯へと運ぶつもりなのだろう。』

 

まあ、バレるよな。

聖書に描写されているままの舟だ。

とはいえ、ノアの死因は不明。

戦いの逸話も無いので弱点も無い。

神代の人間なだけあってパラメーターは高めではあるが、戦闘経験が全く無いからまともに戦えば負けないが勝てない。

 

「それじゃあ、ゲルダは」

 

『少なくともこの異聞帯と共に消える事は無くなる。

だが、』

 

「問題を先送りにしただけ、だろ?

さて、ここで問題です。

カルデアのマスターに真の自由を与えられた北欧異聞帯の人達を消す覚悟はあるのでしょうか?

殺すんじゃなく、消すんだぜ?

跡形もなく消し、生きていたと証明できるのは己の記憶のみ。

 

そしてもう一つ質問しておこう。

元は八つ、現在七つの異聞帯は少しずつ拡大している。

では、拡大する先の異聞帯はどんな風になっていると思う?

例えば、この異聞帯。

北欧はこの通りだが、その外は?

ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカまで異聞帯が広がったら、そこはどうなってる?

 

 

答え合わせは俺の異聞帯に来た時にしようか。

それまでは精々、異聞帯を滅ぼすのに奮闘するといい。」

 

そう言って俺も舟の中に入ろうとする、が、

舟の入り口に謎の見えない壁が張ってあって入れない。

 

「……ノアー?

障壁の設定間違ってなーい?

俺、入れないんだけどー。

 

……ノアさーん!?

悪い奴嫌いなのは重々承知だけど、別に今の素とかじゃ無いんで入れてくれませんかねー!?

 

…………ノアさーん!!?

何で無視すんのー!?

悪役ぶってる俺カッケー、とか思っちゃったのは謝るんで、入れてーー!!

このままじゃ格好つかないでしょー!?」

 

「……いえ、既に格好ついてないかと。」

 

マシュの突っ込みが刺さる。

だが、無視だ。

反応したら負けだ。

 

「帰ったら好きなもん買ってあげるでも何でもやるからさーー!」

 

「子供か、私は!?

ふん、私が散々伝えた事を目の前で破るなんて契約者の風上にも置けないマスターだね!

この異聞帯の全員が中に入るまでそこで反省してるといいさ!」

 

そう言うとノアは舟の中に引っ込んでしまった。

アレはダメだ。

結構ガチで怒ってる。

序でにスルトの一撃が俺が話したよりも怖かった事にもキレてる。

 

「仕方ないにゃー。

ってな訳で暫くの間、ご厄介になっていいっすか?」

 

すんごい微妙な顔で見られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽い情報提供とノアの箱舟に積んである食糧と交換でカルデアに厄介になる事数日。

漸く、全ての住民がノアの箱舟の中に入った。

 

異聞帯の縮小に関してはちょっと奥の手を使わせて貰って、その縮小速度をかなり落として時間稼ぎをした。

 

カルデアには知られても構わない情報だけ与えた。

俺が各異聞帯と交易してる事とか、カドックをウチで引き取った事とか、ノアについて軽く触れたりとか。

 

まあ、あげられない情報に対してはノーコメントで済ませたけどね。

 

一度俺を捕らえて尋問しようという話も新所長から出たが、すぐそばにノアとオフェリアのシグルド、そしてスルトを倒した奴がいるという事でその話はなかった事になった。

まあ、妥当な判断ではあるけどね。

 

個人的にカルデアを壊滅させるなら今が一番のチャンスだと思っている。

大戦闘の後でリソースは補給しているものの、枯渇寸前、さらにこの後彷徨海に行けば、拠点と安定した生産ライン、そしてかつて召喚した英霊達を戦闘時以外でも側に置いておける様になる。

さらに、コヤンスカヤの暗殺後は更に警戒度が上がるだろう。

 

だが、それはやれない。

何故なら原作知識という俺のアドバンテージが無くなるからだ。

それに他の異聞帯が潰れるならそれはそれで楽だし。

少なくとも俺以外の異聞帯の負けは確定している。

なら、次に一番カルデアを倒せる確率が上がるのは俺の異聞帯に来た時だ。

俺の異聞帯に対してのみ負けのシナリオは存在していない。

そこが狙い目だ。

 

 

 

 

 

と、言ったところで本当にシナリオ通りに進むかどうかは知らんのやけど。

まあ、途中でカルデア一行がご臨終になられたらそれはそれでラッキーだ。

 

「ほんじゃ、生きてたらまた会おう。

ウチの王さまの方針でいつでも降伏は受け入れるぜ。」

 

その言葉と同時に[ノアの箱舟(ノアズアーク)]が虚数の海に入り、序でに嵐の壁を抑えていた力を解いた。




ノアのマテリアル開示

真名 ノア
性別 女性
クラス ライダー
属性 善・秩序
ステータス
筋力C 耐久C 俊敏D 魔力D 幸運A 宝具A
クラススキル
騎乗 EX
対魔力C

スキル
啓示 A
奇蹟 B
航海 EX
嵐の航海者 B
動物会話 B
聖拳A

宝具
ノアの箱舟(ノアズアーク)EX
対海宝具
名高い箱舟。
そこが海である限り、どんな事があり、どんな海であろうとも絶対に沈む事なく、壊れる事もなく、乗船したあらゆる命が死ぬ事も無い。
入ることさえできれば、星の内海や虚数の海であろうとも渡る事ができる。
内部でのありとあらゆる暴力行為は禁止されており、また、生命活動に必要な食事や排泄が必要なくなる。
また、ノアの意思によって特定の誰かを中に入れなくする事も可能。

陸地への道標(ピジョンズ・ガイドポスト)A
対海宝具
オリーブの枝。
この枝がある限り、目的の陸地を見つけられない事はなく、上陸出来ないなどと言う事も無い。


感想、評価お待ちしてます。
お待ちしてるけど、感想は穴開きとかで書かないで。
面倒臭い上に、何となくイラっとくるから。


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6話

お待たせしました。
あと、今後の展開に関して少しアンケートをします。


 

北欧異聞帯を抜けたカルデアは遂に、人類最後の砦、彷徨海へと辿り着いた。

そこで待っていたのは彷徨海のエントランスを借り受け、カルデアを迎え入れる準備をしていたアトラス院の魔術師、シオン・エルトナム・ソカリス。

 

カルデアの到着後、エントランスを更に改装し、[ノウム・カルデア]という拠点を作り上げた。

 

そして現在はシオンの観測によってもたらされた異聞帯の情報について話し合っている。

 

「異聞帯は人類史そのものから切り捨てられた、“これ以上は意味がない”行き止まりの歴史です。

例えばロシア異聞帯。

A.D.1570年ごろから分岐し、そして打ち切られた世界。

いま地球上に存在する異聞帯は切り捨てられた時代から現代まで続いてるようなもののようですね。

 

異聞帯は古いほど強くなるのではありません。

異聞帯の強さ、危険度は汎人類史からどれほど逸脱してしまっているかで測ります。

それを[異聞深度]といい、高ければ高いほど、その異聞帯は汎人類史を否定する人理ということです。」

 

「……じゃあ、今までの異聞深度は?」

 

「もちろん、八つの異聞帯、暫定的にランク付けしていますよ。」

 

シオンがモニターに写した平面地図に載っている異聞帯のことを指しながら話す。

 

「異聞帯はヨーロッパに3。

アジアに2。

南米に1。

中東に1、そしてーー大西洋の中心。

白紙化地球に於いて唯一、『白紙化前の海』を持つ異聞帯。

あ、今のナシで。

彷徨海もあるんだった。」

 

「ええい! そんな事はどうでも良い!

大西洋ーーー大西洋だとぅ!?

大西洋の中心に異聞帯があるはずない!

有史以来、人類版図になったことはないのだからな!」

 

「あるんだから仕方ないんです。

現在、地球の大気圏外に張り巡らされた空想樹の発生源でもあり、クリプターのリーダーの一人であるキリシュタリア・ヴォーダイムの異聞帯はここだと推測できます。」

 

「なら、他の異聞帯など後回しだ!

一刻も早く大西洋に向かわんでどうする!

ヴォーダイムの根城であるなら攻略する他ない!」

 

「分かっている事がそれだけならその方針もアリですが……」

 

写し出された地図からロシア異聞帯、北欧異聞帯が消滅。

すると、中東の異聞帯がその範囲を北東に拡大させ始めた。

 

「北欧異聞帯の消滅と共に中東の異聞帯が急速な拡大を開始。

ロシア異聞帯と北欧異聞帯のあった所を飲み込んだぐらいで拡大のスピードは元に戻りました。

 

現時点で一番広い異聞帯になっていて、空想樹も大西洋の異聞帯に次いで二番目に大きくなってます。

元が中東だったので、異聞帯の王と空想樹はそこら辺にある事は分かりますけどね。」

 

「恐らくはもう一人のリーダー、アレックス・クルスの異聞帯だろうな。

これまでの二人のクリプターのサーヴァントはその異聞帯に強い繋がりを持つサーヴァントだった。

なら、アレックス・クルスのサーヴァント、ノアが関係してくる異聞帯は中東くらいなものだ。

恐らくはエルサレムやそこら辺が異聞帯の首都だろう。」

 

「それと、中国とインドの異聞帯は全く版図を広げようとしていません。

一方で、イギリスと南米は自滅する可能性が高いでしょう。

イギリスの異聞帯は深度が測れないのですが、これは異聞帯がこの星に馴染めていない事を意味しています。

そして、南米も異聞帯深度は高いのですが、こちらはあらゆる計測が[不明]となっています。

どうやら文明がほぼ死に絶えている様です。

なのでこれらの異聞帯はしばらく放置でいいでしょう。」

 

「つまり、大西洋と中東の二つを優先して攻略するって事で良いの?」

 

「ええ。

ですけど、資材もカツカツというわけでは無くても余裕はナシ。

流石にそんな状態で勝てるほど甘い相手では無いので暫くは準備に時間を追われるでしょうね。」

 

 

 

 

この会議後、コヤンスカヤによって藤丸立夏とゴルドルフに毒を盛られた事により、解毒剤を探しに中国異聞帯へと向かった。

 

 

 

 

 

少し時間を遡って

中東異聞帯 首都エルサレム

 

「……正直、意外だわ。」

 

「どうした、急に。」

 

自室で仕事をしていたら唐突にオフェリアに話しかけられた。

オフェリアにも部屋は割り振ったけど、基本俺の部屋にいる。

 

「普通にまじめに仕事していることよ。

貴方、カルデアにいた時はそこまで真面目じゃなかったでしょう。」

 

「失敬な。

努力と仕事は他人から見えない所でするもんだろ。

今はここのルールに従ってるだけ。

月曜から土曜までは勤勉に働いて日曜は休息。

そうしないと怠惰だなんだと怒られるからな。」

 

七つの大罪と言われるアレだ。

だから、真面目にやらざるを得ないし、あんまり巫山戯られないので正直、カドックとオフェリアの二人がいるのはありがたい。

 

でも、サボれない。

 

「まあ、汎人類史のサーヴァントの対応については一任されてるからな。

仕事が無いのに仕事しなきゃいけないとかいう面倒臭い事が無いからそれは良いけどな。」

 

社内ニートじゃないだけマシ、とも言える。

 

「それはそれとして、北欧から連れて来た奴等の担当だろ?

そっちは良いのか?」

 

「取り敢えずは決めたから、今は様子見よ。

一応、女王も納得しているわ。」

 

「そりゃ、結構。

一神教ってのは面倒だからな。」

 

十戒だっけ?

自分以外の神を信仰してはならない、って。

この世界では未だに現役で使われている。

 

「んで、召喚するサーヴァントは決まったのか?

まだこの異聞帯が完全に地球を覆ってないから、縁があるなら他の異聞帯のサーヴァントでも召喚できる。」

 

礼装まで出てくるガバガバなフェイト召喚システムじゃないけど、ウチにいる奴等ならそれも可能にしてくれる。

 

「分かってるわ。

けど、流石に汎人類史の英霊だったシグルドを召喚するのもどうかと思うのだけど。」

 

「律儀だなー。

じゃあ、ワルキューレ三姉妹の上二人とかどうよ。

アレなら英霊として座に登録されててもおかしくないし、縁も十分にある。」

 

「そうね。

魔力リソースが十分な分、二騎同時契約も出来るでしょうし。

彼女も喜ぶだろうし。」

 

「彼女……ああ、末っ子か。

一人だけ残って時々寂しそうにしてたからな。

女王様も色々と気にしてたみたいだしな。」

 

そう言って席を立つ。

クリプターの会議の時間だ。

恐らくは藤丸立夏の暗殺が決まって、コヤンスカヤが彷徨海に突撃。

毒を盛ろうとして失敗。

そして、中国異聞帯へと突入ってところか。

 

あそこはそもそも、ぐっちゃんが交易を完全に拒否してたからな。

多分、原作通りになる。

まあ、カルデアにぐっちゃん召喚されて情報を取られる訳にもいかないし、ぐっちゃんだけは回収するけど。

その序でに項羽も回収かな。

ってか、項羽回収しないとぐっちゃんが意地はって残りそうな気がする。

 

項羽もぐっちゃんの平穏を保証すれば、ついてきてくれそうだし。

 

ただ、その分回収するタイミングが難しくなりそうだ。

多分、ぐっちゃん、もとい虞美人は項羽の身柄を始皇帝から受け取った時点でこちらに連絡を取って中国異聞帯から出ようとするだろうけど、その時点では項羽は虞美人よりも始皇帝ないし、中国異聞帯を優先するだろう。

 

回収のタイミングは最後の項羽戦が始まる直前。

そこじゃないと、項羽は虞美人を優先順位の一番上に置かないだろう。

 

ガチでジャストタイミングじゃないとダメだ。

早めに現地入りしておくかな。

始皇帝にバレそうだけど。

 

ぐっちゃんに何処か地下に大きな空間のある場所がないか聞いてみるかな。

そこならノアの宝具で異聞帯の中に入っても始皇帝がこちらに気がつく事も無いだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てな訳で良さげな場所ない?」

 

「……そこそこの大きさの洞窟くらいしかないわよ。

遮蔽物も、箱舟が隠れられるほど大きな物は始皇帝本人のみ。

入ってきたらすぐにバレるから、私が呼ぶまでは絶対に来るな。」

 

……辛辣。

うーん、この項羽以外には基本ツンケンしてる感じ、流石ぐっちゃんですわ。

これでも、そこそこ打ち解けたとは思ってたんだが。

 

いや、逆にある程度打ち解けたから芥ヒナ子としてではなく、虞美人として話してくれてるのかね?

 

まあ、いいや。

最悪、現場の近くまで行って虚数内からキャスターの千里眼で見張ってよう、そうしよう。

虚数内からでもウチのキャスターなら魔術やら何やらを駆使して現実世界の様子を見る事が出来るからな。

ホントに追加召喚してて良かったわ。

 

その前にカドックとオフェリアの英霊召喚に立ち会っとくか。

 

 

 

 

 

 

「「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

 

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」」

 

サーヴァント召喚陣にキャスターがアレンジを加え、マスターとなる二人の縁を最大まで強める。

さらに膨大な魔力に物を言わせて、出来る限り生前と近い状態で召喚し、バックアップとなる魔力リソースとパスを繋ぐ。

 

俺が召喚した四騎、カドックの召喚した皇女、オフェリアの召喚したワルキューレ二騎で合計七騎。

 

さらに異聞帯の王と王が率いる軍勢、二百。

とはいえ、数はかつての北欧異聞帯にいたワルキューレよりも少ないし、実力もピンからキリまである。

かといって王も王でそこまで戦闘能力に特化している訳ではない。

あえて言うなら意外性だ。

 

だから七騎のサーヴァントを召喚し、汎人類史のサーヴァントと契約し、戦力を増強した。

他の異聞帯からカドックとオフェリアを連れてきたのは情もあるが、何よりマスターの頭数が欲しかったからだ。

 

ある意味では魔術師らしい理由である。

結局は自分の利になるから動いている部分があるからな。

とはいえ、情によるところもあるのはAチームならではなのかもしれない。

 

Aチームのメンバーは魔術師らしい部分と魔術師らしくない部分が混在している様に感じられる。

 

まあ、それはさておき中国異聞帯だ。

最悪、戦闘になる可能性がある以上は俺の契約している異聞帯のサーヴァントの中で唯一の純粋な前衛要員であるランサーは絶対に必要だ。

そして、虚数内から実数世界を観測するためにキャスターも連れて行く。

 

問題はその後だ。

俺の中東異聞帯に対してカルデアがシャドウボーダーのアップデートをする必要がない以上、インドより先にこちらに来る可能性がある。

 

そうなると、色々困るんだよな。

上手いこと誘導できれば良いんだけどね。



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7話

第五異聞帯開幕!
いやー、キリシュタリア、ガチすぎん?
これはもう、ウチの異聞帯もガチでいかないといけないと考え、いくつか考えてた中で一番、攻略難易度の高いルートを取ることに決めました。
あ、それとTwitter始めたので良ければフォローお願いします。
URLはhttps://mobile.twitter.com/zayu_tennimuhou

あと、この小説の評価とか感想とかもお願いします!


中国異聞帯。

真の人は己一人と定め、人としての体を捨て去った始皇帝によって世界統一がなされ、争いが無くなり、唯一の王たる始皇帝が新たな技術開発や民達に知恵が広がることを良しとしなかったが故に進歩が止まり、剪定された世界。

 

だが、世界を一人で管理しているが故にその情報収集能力と方向性を決めた時に注ぎ込める力の量は随一である。

さらに自身も機械であるが故に機械の模倣を即座にする事が出来る。

再現度に関しては何も言わない。

 

まあ、俺たちは今、そんな中国異聞帯の虚数空間に潜んでいます。

既にアンカーは仕掛けてあり、何かあればすぐに異聞帯の中に入れる様になっている。

 

既にカルデアは咸陽の都市内に入り、秦良玉を撃破。

現在はぐっちゃん、項羽ペアと戦闘中。

突入のタイミングはこの後の項羽戦が始まるタイミングだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フ、確かに朕はこの世界唯一の真人として戦って負けた。

だが、そこな会稽零式の言うようにそもそも人ならざるモノに関しては何も言ってなかったな、うん。

ならば、行け。 思えば長年の奉公だったのにボーナスも無いのはどうかと思う故な。」

 

そう言って始皇帝が再びカルデアの前に立ち塞がる。

 

「なに、朕はこの世界と共に滅びる覚悟は出来ている。

だが、それに昔の家臣を付き合わさせる訳にはいかぬだろうよ。

衛士長と韓信は好きに生き、好きに死んだ。

ならば、既に朕の元から離れた其方も好きに生き、好きに死ぬがよい。

 

うむ? ならば凍眠英雄の全員にも選択肢を与えるべきか?

まあ、どう考えても間に合わぬから仕方あるまい。

せめて最後は全員叩き起こして終わりを迎えるとしよう。」

 

「……始皇帝様。」

 

その姿に項羽は小さく始皇帝の名を呼び、虞美人は目を見開いている。

 

「……行きましょう、項羽様。」

 

「……うむ。」

 

暫く目を見開いていた虞美人がそう言って項羽がそれに答える。

そして、二人で連れ立って歩き始めた。

 

『な、何をボーっとしている!?

敵が目の前で逃げようとしているのにわざわざ見送るなど、バカな真似はせんだろうな!?』

 

「ほう? 不粋な輩もいたものだ。 ここは朕の顔を立てて見送るのが粋というものだぞ。」

 

「で、ですが、この異聞帯は空想樹を切除すればすぐに消え去ります! 外には嵐があって出れないのに何処へ行こうと、」

 

『そういう事だ! 敵とはいえ態々見殺しにする訳にもいかん! こちらは他のクリプター共の情報を聞き出す、相手は条約に則った適切な捕虜としての扱いを受ける! 悪い話では無いだろう!?』

 

「人間が作り出した条約とやらに守られるつもりは無いわよ。 それに、同じ人間でも信じるなら味方の方を信じるに決まっているでしょうが。」

 

「味方? ……まさか!?」

 

何かに立夏が気づいたその時、通信機からダヴィンチが慌てた声で話して来た。

 

『虚数空間からの出現反応! しかも、この魔力パターンは……間違いない! ノアの方舟だ!』

 

崩れた壁の横に巨大な舟が現れた、そこからアレックスが顔を出して虞美人に話しかける。

 

「へい、ぐっちゃん。 中東まで乗ってく?」

 

「ぐっちゃん言うな。 そこ位しか行き先ないでしょう。 項羽様を治せるんでしょうね。」

 

「知らん、新しい体を用意するなら元北欧の女王サマに依頼して。 ウチの人員だと変な風に治す可能性がある。 ところで、ほら、お礼の言葉とか無いの?」

 

「はぁ? 何に対してのお礼よ。」

 

「念の為に中国異聞帯の虚数空間内で待ってた事に対しての。」

 

「……私が連絡するまで来るなって言ったの忘れたの? 余計なお節介よ。」

 

「あのさぁ、その答え予想してたけど、俺だって異聞帯での立場ってモンがあるんだからな。 他の異聞帯に行くために諸々の引き継ぎとか連絡とか必要な訳。 だから急に、来てなんて言われても行ける訳じゃ無いの、タクシーじゃあるまいし。」

 

「ああ、そう。 悪かったわよ。 ほら、さっさと入れなさい。」

 

「適当だなー、ま、良いけどさ。 ノア、頼む。」

 

すると、舟から木の板が伸びて、舟と床を繋いだ。

その上を歩いて項羽と虞美人が舟へと渡った。

 

「そんじゃ、カルデアの皆様方、ご機嫌様、そしてさようなら。 ノア、虚数航海用意。」

 

「言われなくても分かってるよ、マスター。」

 

数秒後、方舟は中国異聞帯から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、カルデアは始皇帝の助けを借りながらも空想樹を伐採。

中国異聞帯を刈り取った。

藤丸の毒もきっちり解毒剤で治しましたとさ。

 

ほんで、問題は次の異聞帯だ。

どうにかしてインドに行かせないと。

インドはあんまり手を出す必要は無いかな。

あるとしても、ぺぺを迎えに行く事位だし。

 

途中のアスクレピオス戦はデイビッドが助けに入るからな。

デイビットから代わりに行ってくれって言われたら行くけど。

 

 

さて、ここの異聞帯もそろそろアップを始めるか。

汎人類史のサーヴァントからこちら側に着いたのが現状三騎。

それも足りなかった前衛が二人と物理後衛のアーチャーが一人。

問題は敵に回ったサーヴァントと中立を保っている英雄王だな。

自然召喚されたサーヴァント、もしくはカルデアが召喚したサーヴァントのどちらかに必ずその異聞帯の王、もしくはラスボスに対してメタを張れるサーヴァントがいる。

 

ウチの異聞帯の場合は絶対善と絶対悪、もしくは完全な中立が異聞帯の王の急所かね。

だとすれば召喚されるサーヴァントはかなり限られてくる。

出来ればそこから逆算して更にメタを張りたいところだけど、流石にそこまで余裕は無い。

 

と、なれば今ある手札で封殺する必要がある。

さて、どうするかね。

 

そして、英雄王に関してはキャスターだからまだ静観を決めているだけだ。

アーチャーだったら今頃『試す』とかいう理由で『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』をぶちかましてるだろう。

しかも、アーチャーの方の英雄王の持つ宝具、『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』は対界宝具。

最悪の場合、空想樹を伐採する事なく異聞帯というテクスチャを剥がしとる可能性がある。

 

出来れば早めに対処したいところだけど、何が逆鱗になるのかも分からんしな。

だが、『異星の神』の討伐には協力してくれそうだ。

神霊嫌いだしな。

 

ウチの王様は神性は持ってるけど神霊じゃ無いからセーフ。

 

 

さて、インド異聞帯が消えたらまた一気に領土を拡大する予定だ。

この事は既に伝えてあるし、準備も出来てる。

後は、カルデアがインドに行ってくれれば良いんだけど、どうだろうな。

インド異聞帯に行ったのはキリシュタリア戦に備えてシャドウボーダーを強化するため。

 

だけど、俺というイレギュラーがある以上、強化はまだ必要ないと判断していきなり俺のところに現れる可能性がある。

 

そうなると不都合だ、インド異聞帯が崩壊した場合、何が起こるのか一切分からない上に予測もつかない。

最悪の場合、全ての異聞帯を巻き込んだ何かが起こる可能性がある。

 

カルデアがインドに行くのと俺の所に来るのでは五分五分だな。

保険を掛けとくべきだろうな。

 

そして、インド異聞帯が終わった後からは俺の原作知識は使えなくなる。

何が正しくて何が間違っているのか。

誰が生き残り、誰が死ぬのか。

異星の神と名乗る存在の正体。

 

そして、『既に地球上の何処かに出現している可能性のある第五、第六、第七の獣』と『それに対してメタを張れる冠位英霊』

 

これらに関する答えは持ち合わせていない。

唯一確定しているのはカルデアが俺以外のクリプターの異聞帯を切除し、異星の神と名乗る存在を倒す事。

これだけは確実だ。

 

分かるのは最低限のゴールのみ、か。

まあ、それだけでも分かるなら御の字だ。

 

まあ、何時でも何処でもやるべき事をやり、為すべき事を為せば後は待つのみ。

果報は寝て待てってな。

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、その為にも説得しなくちゃいけない相手がいるんだが。

いい加減、結論を出して欲しいんだが熾天使達には。

 

熾天使の十人、それが通常時のこの異聞帯における最高権力を持つ存在だ。

更に上に異聞帯の王はいるものの、当の本人が普段は熾天使達に任せるというスタンスを取っている以上、熾天使十人全員を説得しなければ相当切羽詰まった状況にならない限りはこの異聞帯の戦力は余り動かないだろう。

 

さて、そんな熾天使達が迷っているのはカルデアについてだ。

カルデア自体は『悪』では無い事から迎え撃つべきかどうかで意見が割れている。

いや、ほとんどの熾天使が暫くは静観の構えを取っているのだ。

善の存在でありながら悪を為す者とかいう評価なせいでな。

 

超越者ならではの思考だ。

ただ単に立場の違いによるものだというのに、人間を信じるが故に待つ。

ある意味、地上からあらゆる幻想が消えた理由でもある。

人間が幻想を捨てていくのに、幻想は人間を理解しない、否、できない。

 

だからこそ、汎人類史では神霊は人間に置いて行かれた。

無論、ある意味では当然の結果だったのだろう。

 

と、まあそんなこと考えたって仕方が無い。

予定より少し早いけど、インド異聞帯への保険も兼ねてアレと契約するかね。



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8話

最近fgoのRTAものが増えてきたから一番最初に発想を出したのは俺なんやで、と大して意味のない主張をしてみた。
証拠は自分の活動報告の投稿日時。

あと、イベクエのメインクエストを後からプレイできるようになったのはマジでありがたい。



 

契約対象

種族 人 真名 アレックス・クルス

種族 龍 真名 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

仲介

種族 ◼︎◼︎ 真名 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

種族 ◼︎◼︎◼︎ 真名 ◼︎◼︎◼︎◼︎・◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎・◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎

 

契約期間

異聞帯間の戦争の終了、及び中東異聞帯の外敵を完全に排除し終えるまで

 

契約内容

・◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎よりアレックス・クルスへの権能の一時的譲与、この権能は契約期間終了後に◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎へと返却する

・アレックス・クルスの死後、その体、精神、魂の全ての所持権を◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎が得る

・契約期間中にアレックス・クルスが死亡した場合、◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎は契約期間の終了まで異聞帯の存続、繁栄に全力で協力する

・契約期間中に◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎が死亡した場合、アレックス・クルスは契約期間終了後にその役割を引き継ぐ

・契約期間中にーーーーーーーー

 

違反内容

以下の内容に違反した場合、違反者は即座に死亡し、契約は一方的に破棄される。

・互いに相手を間接的、直接的問わず、意図的に害し、死亡させる事を禁ずる

・◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎は契約期間中にクリプター八人全員に対して害する事を禁ずる

 

 

 

「双方、異論は?」

 

「無い。」

 

『同じく。』

 

「では、ここに我が真名を以てこの契約を締結する。

契約内容を履行せよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

起きてから考えたのはその夢がただの悪夢か、北欧異聞帯以降、その効力を失ったと思っていた魔眼の見せた未来なのか、だった。

 

そう、私の魔眼は魔術回路から強制切断した影響か、その未来視の力を失って、今はただの虹彩異色、所謂オッドアイでしかない。

 

その魔眼が最後に未来を見せたのが、今の夢の内容だとすれば?

正直、ゾッとする。

魔眼だった左目をまぶた越しに抑える。

感じたのは熱、つまり魔眼が発動していたという事だ。

 

途端に血の気が失せたのが分かる。

 

(ダメよ、そんなの、あんな未来だけは何をしてでも回避しないと!)

 

そんな事を考えながらも体は恐怖に震える。

悪夢が記憶に残るが如く、その未来は彼女、オフェリアの脳裏に残り続ける。

その未来は、アレックス・クルスが血溜まりに倒れ伏すその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手から俺へと力が流れ込んでくる。

普通の人間なら、その力に耐え切れずに風船が割れるが如く、体が弾け、精神は壊れ、魂は塗り潰されて死ぬだろうが、この異聞帯に来てから準備を進めていた俺は何とか耐え切れている。

 

体は空気中、水中、食事に使われている食料にすら含まれている神秘を使って文字通り改造し、精神は聖杯を使って壊れた側から修復させ、魂は転生したという経験があるからこそ多少は染まっても塗り潰される事はない。

 

契約により、待っているのは死後の拘束。

だが、結局のところ今世も前世の死後だ。

なら、所詮は延長線でしかない。

 

っ、転生のせいか元々少し人らしくない思考はあったが、ここまででは無かった。

早くも影響が出始めたらしい。

ただの人間でも、ただの怪物でもダメだ。

今の精神状態を維持できなければ、身体も魂もゆっくりとだが、塗り潰されていく。

 

『これで終わりだ。』

 

「……契約の履行を確認した。

双方、決して契約を違える事のない様に。」

 

そう言って仲介役はその場から消えた。

 

「さて、と。 権能の使い方を覚えて慣らさないとな。」

 

『………………』

 

「なんだよ。」

 

『いや、本当にいい拾い物をしたと思ってな。

さて、私は一眠りするとしよう。」

 

そう言ってソイツは嗤いながら目を瞑った。

出来ればコイツが動く様な事態にならなければ良いんだが、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走る、走る。

とにかく今は彼に会って問い質したい。

そもそも彼は少しでも負けの目を減らす為にメリットが無ければ前線には出てこない。

それにも関わらず、私の見た未来では周りにサーヴァントは居なかった。

倒されたという可能性もあるが、その可能性があるならキャスターを後方に置いて、前衛のサーヴァントがやられそうになった瞬間、キャスターに転移させて逃げる。

 

つまり、あの未来が起こるには彼が絶対に引けない状況だったか、自分の死すら利用する為に前線に出てきたかのどちらかしかない。

 

そして彼が居たのは浜辺、つまり地中海か死海か紅海のどれか。

どれも此処へと引けないくらい追い込まれているとしたら明らかに可笑しい場所のみ。

だったら、彼はあの時、自分の死すらも利用する為に出てきた以外に考えられない。

 

走ってきた勢いのまま、彼の部屋の扉を押し開ける。

 

「アレックス!!」

 

中で寛いでいたノアと天使が驚いている、悪いとは思うが今はそれどころじゃない。

部屋の中を見渡せば、椅子に座りながら何かを書いている。

 

「おおう、どうしたオフェリア。

ん、なに、急に俺に会いたくなったとか?

いいぞー、ほら、俺の胸に飛び込んで、ぐえっ。」

 

戯けた様子でそんな事を言いながら立ち上がって、両手を広げながら近づいてくるアレックスの襟を掴んでベッドに向かって押す。

 

アレックスはよろけながら後ろに下がっていたが、ベッドに足をぶつけてベッドの上に倒れた。

その上に乗っかって、再度襟を掴んで、彼の上半身を引き寄せる。

 

「「おおっ!」」

 

「お、オフェリアさん?

随分と激しいアプローチですね?」

 

この期に及んでそんなふざけた事を言うアレックスを睨みつけながら、話始める。

 

「正直に言って。

あなた、何か隠し事してない?」

 

「おっと、これは所謂修羅場って奴かな。」

 

「良いですね良いですよ!

私、こういうの大好物です!」

 

外野が煩いので、アレックスから視線を外さないまま指摘する。

 

「そこ、黙るかこの部屋から出てくかしなさい。」

 

「「じゃあ、黙って見てます。」」

 

黙った外野を思考から追い出しつつ、もう一度尋ねる。

 

「で、どうなの?」

 

「隠し事? そりゃ、あるよ。」

 

心臓が跳ね上がる。

震えそうになる声を抑えながら問い詰める。

 

「何を、隠してるの?」

 

「そりゃー、くだらない事から機密情報まで色々?

何を聞きたい?」

 

「この先、この異聞帯の存続において、貴方が死ぬ予定はある?」

 

そう直接尋ねた瞬間、彼の表情からふざけた様子が消えた。

 

「…………未来視の魔眼か。

俺が想定していた中では最悪の場合、俺が一度は死ぬ可能性があった。

だが、オフェリアという観測者が出来たなら、オフェリアが別の未来を見ない限りは、俺は死ぬんだろうさ。」

 

その言葉を聞いて、手から力が抜ける。

だって、そんなのまるで、彼が死ぬのは……

 

「自分のせい、か?」

 

ベッドの上に横たわっていた彼が私の背中に腕を回して、私を抱き寄せる。

 

「バカ言うな。

そもそも、そんな未来になる可能性のある作戦を作ったのは俺だ。

それにその場合、条件付きだけど生き返れる様にはしてある。」

 

「……その条件っていうのはどっち?

生き返った後に何らかの制約が付くのか、何らかの条件をクリアしなければ生き返れないのか。」

 

彼がよく好む手口だ。

嘘は付かずに、隠すか誤解させる様な言い方をする。

 

「後者だ。」

 

「……どんな条件?」

 

「それは教えられないな。

魔術を使った契約が過剰に外部に漏れればどうなるか知ってるだろ?」

 

少なくとも良い結果になった事はない。

大抵の場合はその契約を利用され、ロクな目には会わない。

ケルトのゲッシュがその典型的な例だろう。

あれは誓いであると同時に魔術的な契約でもある。

『何かをする、もしくはしない代わりに強さを得る』という自分自身との契約だ。

 

「まあ、俺の予想が外れてなければほぼ100%条件はクリアできるけどな。」

 

100%クリア出来そうな条件?

 

「……前々から思ってたけど、貴方の契約って悪魔的よね。」

 

「そんなん、勘違いしたり、知らなかった奴等が悪い。

契約する以上は自分が何か見落としていないかとか、契約に抜け穴は無いかとかは絶対に考えるべき事だ。

情報弱者は例え、戦力的に強くても負けるんだよ。」

 

悪い笑顔でそんな事を曰う。

 

「…本当に卑怯ね、貴方は。

良いわ、信じてあげる。」

 

「そうか、そりゃありがた「ただし!」」

 

そう言って彼を押し倒す。

 

「とびっきりの呪いをあげるわ。

知ってるかもしれないけど、私はあなたの事が好き。

勿論、親友としてではなく異性として。

貴方が死んだら私も死ぬわ。

だから、私の為にも絶対に生きて帰って来なさい。」

 

「…………マジか。

ここでそれ言うか。

何やったか分かってるだろうけど、ここは神代の世界だぞ?

絶対、今の言霊として呪詛化しただろ。」

 

唖然としながら、説明してくるアレックスに思わず笑みが溢れる。

 

「ええ、勿論よ。

それが私の覚悟だから。」

 

「……まいったな、コヤンスカヤに変な影響でも受けたか?」

 

「何かしら?」

 

「いえ、何でも。

まあ、キャスター呼んで呪いを外せない事もないが、流石に女々し過ぎるからやめとこ。

お前にそこまでさせた責任はしっかり取る。」

 

ここまで行って、安堵したのかふと気が付いた。

もしかして、勢いに任せてえらい事言ったりやったりしたんじゃないかしら。

 

そこまで考えて、横を見ればベッドの真横からニヨニヨと笑いながらこっちを凝視する二つの人影。

 

「「あ、お気になさらず。」」

 

「……無理に決まってるでしょう!?」

 

私はその場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オフェリアの愛が思ったよりも重かった件について。」

 

オフェリアが部屋から飛び出し、戻ってこない事を確認してから、そう呟いた。

 

「だが、お前はそれを受け止めるのだろう?」

 

「勿論。

さて、待たせて申し訳ない。」

 

「構わんとも。

面白い物を見せて貰った、今のを含め、この世界線は中々に劇的だ。

完全に滅びる事もないから安心して観れる。」

 

「なら、見物料を要求させてもらおうかな。

一人だけ贅沢にも映画でも観てるような気分らしいしな。

どうだ、少しばかり配役として出てみないか?」

 

「……よろしい、たまにしか応えられん教え子からの要求じゃからな。」

 

その返答を聞いて思わず笑みが溢れた。



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9話

オリュンポス配信されましたねー
デメテルに勝てねぇ
純粋に火力が足りない
単体宝具のライダーとかメイヴちゃんくらいしかおらへん


 

インド異聞帯

詳しくは面倒なので語らないが、あえて言うならばこの異聞帯とは真逆の方向性を持つ異聞帯だろう。

 

 

だからなのか、

ウチの異聞帯の女王が興味を持った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、まあ、確かにカルデアがちゃんとインド行ったか心配だったから絶対に確認しに行くつもりだったけどさ。

 

流石に戦力がオーバーすぎる気がする。」

 

そうこぼした言葉に対して、女王は薄く目を開き答えた。

 

「侵略しに行く訳では無いだろう。

無論、相手側から攻撃されたならばそれ相応の対応こそするが態々こちらから攻撃することはない。」

 

「知ってる。

知ってるけど余波でどれくらいの被害が出るのか心配なんだよ。

だから、最悪の場合、即座に転移で逃げられるようにキャスターを連れてきたんだからな。

 

あ、分かってると思うけどキャスターは顔は勿論、声も出さないようにしてくれよ。」

 

そう言えば既にローブを来たキャスターがコクリと頷いた。

 

「いや、別に今からやんなくても良いんだけど。

まあ、いいや、ノア行くぞ。」

 

「了解。」

 

いつも通り、ノアが宝具を展開して俺たちがそれに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、案の定、異聞帯の王同士の争いが勃発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少々、時は遡り

 

安心できることにカルデアはインドに来ていた。

俺の知識の中で唯一、ここだけが失敗した時にどうなるか分からない異聞帯だった。

 

ロシアと中国で敗れたなら、そのままクリプター同士の戦争になってただろう。

北欧で敗れたなら敗れた局面にもよるが、クリプター全員が一度手を組み、スルトを討伐しただろう。

だが、ここは?

インドで敗れた結果起こるのは、ユガの崩壊。

それによって世界に何が起こるのかは分からない。

その変化が異聞帯の中だけで済むのか、それとも地球全体を巻き込むのか。

 

後者なら気づいた時にはもう遅い、なんて事もあり得る。

そうならない為にも今回は全面的にカルデアに協力する事もやぶさかでは無い。

 

無論、カルデアがインドより前に破れていた場合もユガは続くので、そうなった場合、俺が最初に狙うのはインドにする予定だった。

 

まあ、いらん心配に終わったわけだが。

 

 

 

それはさておき、どうして争いが発生したかだが、

カルデアと神ジュナの戦闘で神ジュナが放った一撃をウチの女王が弾いたのだ。

せっかく、キャスターの魔術で完全に姿を隠していたにも関わらず、だ。

 

「ちょっ、何やってんの!?」

 

「? 何を当たり前のことを聞いている。

『汝の隣人を助けよ』と我らが主は仰られたのだ。

その通りにしただけだが。」

 

『なっ、神アルジュナに匹敵するほどの魔力反応!?

少なくともサーヴァントじゃない!!

異聞帯の王だ!』

 

姿だけで正体がバレかねないのに、神ジュナにロックオンされてる、戦闘は避けられないか。

流石に手札を晒すわけにはいかない。

 

「キャスター!

結界だ!! 王二人を隔離しろ!」

 

すぐにキャスターがその通りにして神ジュナとウチの女王を外部から見えない結界で覆った。

 

「あ、アレックス!?

どうしてここに。」

 

「……ウチの女王様がここの異聞帯に興味を持ったんだよ。

したら、勝手に飛び出すわ、姿は見られるわで散々だ。

 

おら、名探偵、ウチの女王様の真名言ってみ。」

 

『……六枚三対の翼、そして頭の上の輪。

何故か、黒と白に別れてはいたが、六枚三対の翼を持つ、という点で考えつく天使はただ一人。

後に堕天し、魔王となった天使達の長、ルシフェル。』

 

「大正解だよ、クソッタレ。」

 

バレるのは時間の問題だったが、これで余計に対策に使える時間が増える。

流石にどんな性質を持っているのかまでは分からんだろうが、キャスターの存在も相手に知られた。

 

さて、どうするべきか。

 

「……取り敢えず、そこのアスクレピオス。

アンタはどうするよ、今ならアンタを倒すのはわけないんだが。」

 

「そもそも僕は医者だ。

前線に立つこと自体が可笑しいんだ、逃げるに決まってるだろ。」

 

「だろうな、そろそろ中の方も終わる頃だ。」

 

俺がそう言った瞬間に結界が消えた。

中には血を流して地面に膝をついている神ジュナと多少の傷こそついているが、それを即座に回復させたウチの女王、ルシフェル。

 

「実に興味深い存在だ。

人が神性を取り込み過ぎるとここまで歪むのか。

神であるがゆえに人の道理は通らず、かといって神としての道理を知らず、といったところか。」

 

これでも自身の異聞帯から離れて弱体化してるってのに神ジュナ相手に完全に押してるってヤバいな。

 

「私は帰るが、貴殿はどうするつもりだ?」

 

「ヤバい感じがするから残ろうかね。

流石にアレは放っておけないって感じがビリビリするからな。」

 

「そうか、なら私は一足先に帰っているぞ。

今の貴殿なら死ぬことはなかろう。」

 

そういうと、ルシフェルは一瞬光り、姿を消した。

やっぱりEXランクの奇跡スキルは万能過ぎるな。

 

『魔力反応、完全に消失。

本当に帰って行ったのか。』

 

「っ…………あの悪はいずれ裁かねばならぬ。

だが……それ以外の事は些事。」

 

おっと、流石は悪絶対殺すマン、気付いたか、もしくはルシフェルが遊んだか。

さて、セリフ的にはこっちの事には興味は無さそうだが、新しく現れた俺たちを観察してるな。

今のルシフェルとの戦闘で俺たちへの警戒度を上げたか。

 

だが、すぐに視線を切って何処かに飛んでいった。

 

しかし、一瞬感情が表に出てたな。

自分以上の神性持ちからの攻撃を受けて神性が少し剥がれたのか?

 

「とりあえずは一安心、かな。

無事か、ぺぺ。」

 

「ええ、貴方のお陰でね。

でも、良かったのかしら?

貴方の所の異聞帯の王様の正体がバレちゃったじゃないの。」

 

「良くはない。

まぁ、本当に危なくなったら助けに入るつもりだったし、ウチの異聞帯に来ればすぐにわかる事だからな。」

 

ぺぺと会話をしていると、横からマシュが会話に入ってきた。

 

「あ、あの! アレックスさん!

どうか手を貸していただけませんか!?」

 

「……まあ、急ぎの用事もないし、ぺぺが良いって言うなら。

あ、もちろん貸し一つな。」

 

貸し一つ、という単語に通信機の向こう側が反応した。

 

『な、何を言っとる!

魔術師相手に貸しを作るという事がどういう事か分かっているのか!?』

 

「でも、出来る限り戦力が欲しいし、向こうのサーヴァントの戦力が分かるかもしれないんだから良い案だと思うけど。」

 

「余はマスターの案に賛成だ。

本当にこの魔術師が信用できるなら、だがな。」

 

おっと、思ったより考えてるじゃないか藤丸クン。

それと、サーヴァント達には流石に警戒されるか。

 

「ほっほー、随分ズバッと言ってくれるね。

まぁ、ノアは大した事ないしキャスターは真名はおろか、宝具すら使わせないつもりだけどな。

 

まぁ、貸し一つったって無茶は言わんさ。

死んでくれ、だの、諦めろ、だの言っても無視するだろ?

共通の敵が出来たら手伝ってくれってトコだ。

今、俺がやろうとしてる事をまんまやってくれってだけさ。」

 

大した事ないと言われたのが不満なのか足をゲシゲシと蹴ってくるノアをあしらいつつ、そう続ける。

 

『……ふむ、では一つだけ聞こう。

君は誰を仮想敵として設定している?』

 

「ビースト?

ほら、知っての通りウチの異聞帯って聖書関連だからさ。

黙示録の獣とか召喚出来なくもないから怖いんだよね。」

 

プロトアーサーを召喚した事があるかどうかは知らんが、黙示録の獣は普通に考えてビースト候補に入ってもおかしくない存在だ。

他にも終末の四騎士だとかバビロンの大淫婦とかも召喚する事は理論上可能ではある。

 

愛歌ちゃん様は絶対に来ないで。

プロトタイプ時空にお戻りになって。

 

まあ、本命の仮想敵は違うとも言えるし、そうだとも言える。

なんせ情報が少な過ぎるからな。

 

「で、受けるの? 受けないの?」

 

「受ける。」

 

『ちょっとぉっ!?』

 

『はーい、所長はちょっと大人しくしててねー。

君の言い分は分かった、けど、流石に魔術師相手に口約束する程、軽率な行動は無いからね。

何かしらの契約が欲しい。』

 

「いいよ、セルフギアススクロールでもやるか?」

 

聞こえてきたロリンチの声にそう返せば、通信機の向こう側が押し黙った。

 

「……ええっと、そのセルフギアススクロールって?」

 

「ああ、元々は一般人だったな。

では、説明しよう、セルフギアススクロールとは。

現代に残っている契約系の魔術の中で最高峰の物だ。

契約を果たさせるためには契約者の魂にすら影響を与える程強い結束力を持つ。

契約の破棄は両者の合意なしには不可能、つっても流石に神代クラスのキャスターならどうにか出来るとは思うが。

 

まあ、魔術に携わる者の間でこれが出てきたら本気で契約を結びたいっていう意思表示だと思えってこった。」

 

「サーヴァントのいるアナタ達にはそこまで重い契約ではないかもしれないけど、それでも絶対遵守の契約を持ち出すんだから、そんな無粋な真似はしないわよ。」

 

ねー、と聞いてくるぺぺをあしらいつつ、相手の戦力を確認する。

やっぱり原作とは違うな。

なぜか、アルジュナがいる。

型月名物自分殺しでもやんのか。

 

流石にカルナは既に退場しているか。

まあ、当たり前だな。

神ジュナの宝具『帰滅を裁定せし廻剣(マハー・プララヤ)』は英霊ならともかく、サーヴァントとなって格落ちした存在となると、超一流と呼ばれるサーヴァントだったとしても完全に防ぎ切るのはほぼ不可能な筈だ。

相性的にアキレウスの『蒼天囲し小世界(アキレウス・コスモス)』でどうにか一撃耐え切れるかどうか、って所か。

 

「まあ、そんなとこだ。

で、裏方さんの判断はどうよ。」

 

『…………セルフギアススクロールに関しては必要無いと判断した。

とはいえ、決定権は君とマスターにある。

最終的には君たちで決めてくれ。』

 

「だってさ、どうする?」

 

俺は正直どっちでも良い。

後ろに神代クラスのキャスターが控えてる以上、一方的な契約破棄も可能だからだ。

 

「いや、俺は貴方を信じるよ。」

 

うーん、この圧倒的な主人公感。

嫌いじゃないね。

 

「なら、アレックス・クルスと俺のサーヴァント、ライダーのノアとキャスターの二騎。

この異聞帯であの王を倒すまではお前ら、カルデアに全面的に協力する。

よろしく。」

 

「ああ、こちらこそよろしく。」

 

藤丸が俺の差し出した手を取り、握手を交わす。

ここまで来て漸くサーヴァント達からの警戒が薄れた。

 

「ま、ボクは楽になるならなんでもいいっすよー。

強くて頭良いなら大歓迎っス。」

 

「同感だ。

少なくとも契約の期間内は契約内容を絶対順守する様な奴だろう。

似たようなのと手を組んだことがある。」

 

不本意だったがな、と零すラクシュミー。

流石は現代の戦争経験者、何となく俺のスタンスがわかっているらしい。

 

「で、アレにはどうやって勝つつもりだ?

最低限神性を剥がさないとサーヴァントじゃ、ダメージすら与えられないだろ。」

 

「無論だ、余達もそう思ってこの世界の信仰を持たぬ者を増やすと同時に奴の神将を倒して、神性を削いでいる最中だ。」

 

念の為聞いてみたがそこも原作とは変わらない、か。

さて、どう切り出したものか。

 

「神将に関してはそのままでも良いが、信仰を持たない奴を増やすのはやめておけ。

ユガで消されるぞ。」

 

俺がそう言えばぺぺ以外がハッとした表情になった。

まさかとは思ってたけど一切考えてなかったのな。

 

「マイナスになるくらいならゼロにした方がまだマシだ。

参謀役はその事に言及してなかったのか?」

 

『……一応、考えてはいた。

だが、彼自身が信仰に関して気にも留めない可能性が少なからずあった以上、その可能性がある、というだけで彼等の士気を落とすわけにもいかないと判断し黙っていた。』

 

「ああ、アイツは気にしないだろうさ。

誰かから忠告されない限りはな。

だが、忠告する様な奴がいるだろう。」

 

「…………異星の神のサーヴァント、リンボと名乗るアルターエゴね。」

 

流石にやられた本人が真っ先に気付くか。

 

「その通り。

ホント、余計な事しかしないな。

ウチにはまだ誰一人として来てないから、そのまま来ないでくれ。」

 

三人とも方向性こそ違えど愉悦部には変わりないから。

 

「ならば、どうするというのですか、クリプターのマスター。

何も案が無い、とでも言うのですか。」

 

うーん、まあ、原作通りの方法を示せば良いけど、まだ時間遡行の方法が無いしな。

 

「無い訳じゃ無いけど、具体案は無い。

要はアイツがやっている偉業を行動で否定してやれば良い。」

 

「ユガを……?

しかし、どうやって。」

 

「それがあったら苦労しない。

流石にノアの方舟でも無理。

数秒耐えるのが限界だろうさ。

それに、一回程度じゃダメだ、これまでにやって来た全てのユガを耐えるくらいじゃないとな。」

 

そう言って話を打ち切ればジトっとした目で見られる。

仕方ないだろ、本当に現時点ではどうしようもないんだから。

アシュヴァッターマンはよ。



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本編
10話


インドをすっ飛ばしていよいよ主人公の異聞帯
インド異聞帯は犠牲になったのだ、本編を始めるための犠牲にな


 

さて、インド異聞帯の結果だが、特に何も変わらなかった。

精々、俺の発言のおかげで少し余裕が持てた位だろう。

 

俺は一切知られて無い手札を切らず、神ジュナを攻略。

空想樹の伐採に関しては完全にノータッチだ。

ぺぺだけ回収して自分の異聞帯に引っ込んだ。

 

そして、本来なら大西洋異聞帯へと行くはずだったカルデアがこちらを先に潰しに来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前

ノウム・カルデア内、会議室

 

「はい、という訳で無事に4つ目の異聞帯を攻略し、シャドウ・ボーダーも改良終了の目処が立ちました。

 

では、そろそろ敵の親玉の所に行くとしましょう。

キリシュタリア・ヴォーダイムの大西洋異聞帯とアレックス・クルスの中東異聞帯。

どちらを先に攻略するかは現場組が決めて下さい。

 

それぞれのデータはコレですね。」

 

シオンがそう言えばモニターに地球の絵が映し出される。

その中には4つの円があり、それぞれ大西洋、イギリス、南米、中東を中心としている。

 

「まず、大西洋異聞帯。

異聞帯の範囲は、この中で2番目に大きく、空想樹の枝が地球上を覆ってる面積は1番。

地球上の5割を覆っています。

 

空想樹の中心に魔力が集まり始めてますが、そのスピードはそこまで早くなく、目標の魔力量がどの程度かは知りませんが、まだ時間がかかると思われます。

 

それに対し中東異聞帯。

異聞帯の範囲はぶっちぎりの一位ですが、北欧異聞帯を切除したときの様な異聞帯の急成長は今回は見られませんでした。

とはいえ、異聞帯の成長率はまだ一位をキープし続け、空想樹の枝は地球上の3割5分程を覆っています。

 

さあ、どちらを狙います?」

 

「そんな物、クリプターのサーヴァントの割れている中東に決まってるだろう。

なるほど、旧約聖書のノア。

確かにビッグネームだが、直接戦闘能力は皆無に等しい。

 

戦闘特化型の強力なサーヴァントをぶつければ勝てる相手だろう?」

 

「まあ、妥当な判断ではあるけど、所長一つ忘れてない?

向こうにキャスターがいる。

それもシャドウ・ボーダーの機能ですら探知できない様な高度な魔術を使える様なキャスターだよ?」

 

技術顧問のダヴィンチがそう意見を出せば、少し顔を顰めたものの、強気の態度を崩さないまま反論した。

 

「それはそうだが、それを含めても今回は敵の異聞帯の王の正体が初めから割れているというアドバンテージがある。

確かに強力な相手ではあるが相性という物がある。

 

旧約聖書関連だというのなら、その旧約聖書から派生した宗教を否定した英霊を呼び出せば良い!

例えばローマ皇帝、ネロ・クラウディウスとかな。

 

既にある程度の勝ち筋は見えているのだ。

なら、対策される前に強襲をかけると言うのは間違ってはいないだろう?」

 

「大西洋と中東。

どちらにせよ、強敵な事には変わりないだろう。

だからこそ少なくとも勝算のある方に行くのは間違ってはいない。

 

とはいえ、最終的には現地で実際に行動する藤丸君、君が決めるべきだ。」

 

参謀役であるホームズがそうマスター藤丸立夏に話を振れば、振られた藤丸は少し考えた後、自分の意見を述べた。

 

「……俺はどちらかと言えば中東に行ってみたい。

あの人となら話し合えると思う。」

 

「話し合えるってトコは俺も賛成だ。

なんせ、アイツは良い意味で魔術師らしくないからな。

本人も性格的には鉱石科より現代魔術科の方が向いてるって認めるくらいだからな。」

 

藤丸の意見に生き残ったカルデアスタッフの一人であるムニエルが賛同する。

 

「はい!

私もアレックスさんには色々と良くして貰いました。

まだ、感情というものを理解出来てなかった私に気遣ってくれて、本や映画などを見せて下さったり、沢山話しかけて貰いました。

 

絶対に悪い人では無いはずなんです。

だからこそ、私もアレックスさんと話をしてみたいと思います。」

 

マシュがそう続き、それを聞いたシオンが笑顔で纏める。

 

「では、カルデアの主要人物のほぼ全員が中東と言っているので、次の異聞帯は中東で。

その後、大西洋という順番で行きましょう!

それでは、一時解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして本日、カルデアの一行は中東異聞帯へと突入した。

 

「虚数空間からの浮上完了、既にステルス機能を全開にして周囲のスキャンを開始してる。」

 

キャプテンがそう言えば、シャドウ・ボーダーの内部の雰囲気が少し緩んだ。

 

「むう、やはり虚数空間へのダイブには慣れないな。

こう、なんというか……身体と精神と魂の波長が一瞬ズレる様な、そんな感じだ。」

 

『ゴメン、ちょっと何言ってるか分かんないかな。』

 

「ダヴィンチ君はシャドウ・ボーダーの頭脳体になってるからだろう!?

え、分かる人いないの!?」

 

「まあ、でも説明の難しい不気味な感覚がするのは分かるぜ。」

 

「ほう! やはり話のわかる男だなフォンデュ君!」

 

「ムニエル!!」

 

と、2人が何時ものコントを繰り広げていると、スキャンを終えたキャプテンがその結果を伝える。

 

「スキャンが終わった。

やっぱり神秘が濃いけど、神代として考えるなら薄い方だ。

活動には支障は無いと思う。」

 

『それと、大凡の現在位置だけど、ウクライナのドニエプル川流域、ベラルーシとの国境付近だね。

空想樹は南の方面に確認できた。

多分だけどイスラエルの辺りじゃないかな。』

 

さらにダヴィンチの報告が続き、それを聞いた所長が少し咳払いをした。

 

「では、マスター藤丸立夏、そしてマシュ・キリエライト。

まずはサーヴァントを召喚し、その後現地住民と接触、現地召喚されたサーヴァントの情報、この異聞帯の情報を確保。

然るのちに、現地召喚されたサーヴァントと合流。

異聞帯の王を撃破し、空想樹を切除せよ。

 

ただし、非常時には自分の命を優先する事。

良いな!?」

 

「「はい!」」

 

「宜しい! では出発せよ!」

 

「「了解!」」

 

そう言って藤丸とマシュの2人はシャドウ・ボーダーの外へと踏み出した。

まず目に着いたのは広大な自然と巨大な河。

そして、遠くの方に見える空想樹だった。

 

それを見ていると早速通信が入った。

 

『こちらシャドウ・ボーダー、マシュー?藤丸くーん?

見えてる? 聞こえてる?』

 

「はい、大丈夫です。」

 

「何も問題無いよダヴィンチちゃん。」

 

『なら良し。

取り敢えずその川沿いを南下して行ってみて。

基本的に河のそばには結構大きな街があるものだからね。

 

それを探してみてよ。

勿論、こっちから何か見つけたらすぐに連絡するから。』

 

「分かりました。

ではまた後ほど連絡します。」

 

マシュがそう言うとシャドウ・ボーダーとの通信が切れた。

藤丸はふう、と一息付くと

 

「よし、行こうマシュ!」

 

「はい!」

 

そう気合を入れて歩き始めた。

途中、獣に遭遇したものの、特に汎人類史と姿は変わらず、ただ単に神秘を含んで強くなっていただけだった。

 

「戦闘終了しました。

今までの異聞帯と違って、生命系統は汎人類史とほぼ同じですね。

特に神話上の生物やキメラなどの人為的に作り出された魔獣もいる様子がありません。」

 

『ふむ……なるほど。

だけど、やっぱりデータが少な過ぎる。

現地住民と接触して情報を得ない事には何とも言えないな。

 

それと、ダヴィンチ君が発見したのだが、その先800mほどの地点に霊脈を確認した。

そこでサーヴァントの召喚を試してみてはどうかな。』

 

「今回は誰が来てくれるかな。」

 

「大きな戦力になってくれる方か、旧約聖書と関連のある方が来てくれたら心強いですね。」

 

自分達の声に応えてくれるサーヴァントについて思いを馳せる。

そして霊脈付近の安全を確保した上で霊基グラフあるトランクとマシュの盾を置き、召喚システムを起動させた。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

 

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

サーヴァント召喚の詠唱を行い、召喚システムを動かす。

そして光の中から現れたのは、

 

「我がクラスはセイヴァー、そして名はイエス・キリスト。

私の全ては貴方を救い、世界を救い、全ての命を救う為にある。

どうかその事をお忘れなき様、我がマスター。」

 

簡素、もしくは質素とも言い換えて良い服装を着た金髪の美丈夫。

だが、その体から光が発せられている様に感じられる程の何かを持つ男。

あらゆる物を救うエクストラクラス、セイヴァーがこの地に降り立った。

 

『『『え』』』

 

「「え」」

 

「「『『『えええぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!??』』』」」

 

驚きの絶叫を浴びながら、ではあったが。

 

 

 

 

 

そして絶叫が終わった後は嵐の様な相談タイムが始まった。

 

『ちょ、タイムタイムタイム!!

藤丸君!?

なんて人呼び出してんの!?』

 

「知りませんよ!?

サーヴァント召喚がランダムなのはダヴィンチちゃんが一番よく知ってるよね!?」

 

『ハハハハハハッ!!

良くやったマスター君!

超特A級とも言える、かのキリストを召喚出来たならば我々の勝ちはもう決まった様なものだ!』

 

「み、ミスターキリスト!

お会い出来て光栄です!

宜しければ握手して貰えませんか!?」

 

「良いですとも、無垢な少女の貴方。

お名前を聞いても?」

 

「マシュ・キリエライトです!

こちらがマスターの藤丸立夏先輩です!」

 

『…………取り敢えず一旦、全員落ち着きたまえ。

ビッグネームが呼ばれたからと言って、モニター周りに集まり過ぎだ。

見るのは順番にして探知を続けてくれ。』

 

『ホームズの言う通りだ。

魚の群れに集まるカモメの様に騒がしい。

一応、ネモ・マリーンズに見て貰ってるけどその分リソースを使ってるんだから早く戻って。』

 

「おーい、もー良いですかい?」

 

そして、ある程度騒ぎが収まった所でもう一人のサーヴァントがキリストの後ろから出て来た。

 

「あ、ごめん!

キリストの後ろにいたから気が付かなかった!」

 

「……いや、まあ、目の前の聖人サマに文字通り目が眩むのは分かるけど俺の事も気付いて欲しかったぜ。」

 

やれやれ、と肩を竦めながら首を振るのは全身に蠢く青い刺青の様な物が入れられた青年。

 

「んじゃ、気を取り直して。

史上最弱の英霊アヴェンジャー。

お呼びと聞いて即参上、ってな。」

 

『うん? アヴェンジャーと言ったが真名は何なのかね?』

 

「お、それ聞いちゃう?

名前負けするから言いたく無いんだけど、マスターは知ってるし、遅かれ早かれだから言っちゃうか。

俺の真名はアンリマユ。

何の因果か、ゾロアスターの悪神の名前を付けられた、ただの小僧ですよ。」

 

『アンリマユ!?

あ、あぁ、いや、本人ではなく古代の呪い写しの一種か。

確か悪神の名前を付けた人間を生贄にする事で『悪神が倒された』という事象を真似ようとしたとかいう。』

 

「そーそー、それそれ。

お陰で大層な名前つけられた雑魚サーヴァントになっちまってなー。

だから逆にその雑魚さをウリにしようと思ったんだけど…………俺もしかして強くなってない?」

 

アンリマユが自分の事を指差しながら質問すると、ダヴィンチから返答が返って来た。

 

『こちらが記録していたアンリマユのそれよりも霊基強度が格段に強くなってるね。

数値にして各パラメータがワンランクからツーランク上がってる。』

 

「マジで!?

遂に俺の時代が来たってか!?」

 

アンリマユが喜んでいると、マシュが手を上げた。

 

「あの、そろそろお二人に状況の説明をした方が良いのでは無いでしょうか?」

 

『む、そうだな。

では、交渉は私に任せて貰おう。

なに、今日も今日とて私の交渉術が火を吹くから大船に乗った気で待っていたまえ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、所長による説明が終わった。

無論、2人とも快く協力してくれる事を約束し、圧倒的なカリスマ性を持つキリストと見た目が少なくとも一般人には見えないアンリマユの2人は潜入に向かないと判断され、霊体化した状態で藤丸とマシュと共に川沿いを南下していく。

 

途中、何回か獣に襲われることこそあったものの、日没前に街を発見する事が出来た。

 

「見た所、街同士の交流がある程度ある様で、宿なんかもありますね。

街の様子もとても活発で、生活感に溢れています。

念の為という事で物々交換用にダヴィンチちゃんが幾つか物を渡してくれたので宿に泊まれますね。」

 

「うん、けどその前に情報収集しなくちゃ。

すみませーん、ちょっと良いですか?」

 

そう言って藤丸が歩いてた女性に声をかけた。

 

「はい、どうしました?

あら、見慣れない服装ね。」

 

「はい、私達はあちこちを旅して回ってるんです。

この街はどんな所なんですか?」

 

「とても良い所よ。

見て分かる通り、すぐそこが大きな川だから魚が豊富に取れるの。

かなり活きが良いからそれを求めてあちこちから商人達が集まってくるわ。

そのお陰で、食べ物も物も豊富にあって貴方達みたいに旅する人達も美味しい食事を求めてやって来るわ。

 

ただ、エルサレムから遠いから天使様達は中々お目には掛かれないけどね。」

 

「天使様、ですか?」

 

「ええそうよ。

貴方達も知ってるでしょ?

天使様達はエルサレムの街の上に浮かぶ、宮殿の中に住んでいて、毎日そこからあちこちを見て下さってるの。」

 

「エルサレムには行った事があるんですか?」

 

「いいえ、でも行ってみたいわよね。

ああ、空に浮かぶ空中宮殿、その真下にある中央聖堂、そこでは運が良ければ天使様から天啓を頂けると聞くけど本当かしら。

 

でも、流石に遠すぎるし今の生活を捨てる訳にもいかないわ。

貴方達はエルサレムには行った事あるの?」

 

「いや、まだなんです。

本当に遠い所から来たので。」

 

「そう、残念ね。

もし、エルサレムに行ってここに戻って来たらエルサレムの話を聞かせて下さる?」

 

「はい、勿論です。」

 

「ふふ、その時を楽しみにしてるわ。

貴方達の旅に幸のあらん事を祈るわ。」

 

「ありがとうございます。

では、失礼します。」

 

「色々教えてくれてありがとうございました。」

 

そう言って2人は女性と別れた。

 

「天使、ですか。

この異聞帯の王がルシフェルだと分かっていたから予想は出来てましたが、本当にいるんですね。」

 

「うん、それにさっきの人が言ってたエルサレムの空中宮殿。

多分そこが敵の本拠地なんだと思う。」

 

「もはや、空中宮殿という言葉だけでは驚かなくなってきましたね。」

 

「ははは、いやホントに色々経験してきたからね。」

 

藤丸が苦笑いすると、マシュも釣られて苦笑いする。

確かに今まで辿って来た旅路を振り返ると、空中宮殿如きでは驚けないほどの経験をしてきた。

特に夏とハロウィンとクリスマスな。

 

 

 

 

 

その後も情報収集を続け、ある程度時間が経った所で宿に泊まって、その部屋の中で結界を張りつつシャドウ・ボーダーと通信を繋げた。

まずは今日の情報収集で得られた情報を伝え、それを聞いていたホームズが少し考えてから答えた。

 

『なるほど、ある程度予測はしていたが、普通に天使がいる異聞帯か。

だが、それでも疑問点は幾つかある。

 

その最もたるのが旧約聖書における最高存在、唯一神の存在を誰一人として言及しなかった事だ。』

 

「そうですね。

私も我らが父の事を聞かなかったのは不思議に思います。

そして、父の存在が殆ど感じ取れないこともです。」

 

「俺としちゃあ、天使サマも神サマも相性がめちゃくちゃ悪そうでおっかないけどなー。」

 

『神の存在がかなり希薄、つまり存在はするが相当弱っているという事か?

弱っている神の代わりにルシフェルが異聞帯の王を務めていると考えるのが普通だが。』

 

『まだピースが足りないので何とも言えませんね。』

 

『ええい、分かってる何時もの『まだ語るべき時ではない』という奴だろう?

それより、明日の情報収集だが、一般人に同じ様な事を聞いても同じ様な答えが返って来るだけだろう。

だから、私に考えがある。』

 

「考えって何ですか、所長。」

 

『なに、餅は餅屋という奴だよ、君ィ。

即ち教会の神父ないしシスターに尋ねてみるのだ。

彼らも嬉々として教えてくれるだろう。』

 

心なしかドヤ顔しながらそう語る所長。

だが、提案自体は名案であった為、翌日はこの街の教会を訪れる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「教会、ね。

至極真っ当、面白みの欠片も無い発想だが的確ではある。

だからこそ予測しやすかった。

歓迎しようかカルデア、ようこそ我が異聞帯へ。」




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11話

地の文を一人称から三人称に変更しました。
個人的にはこっちの方が書きやすい。

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「教会、ね。

至極真っ当、面白みの欠片も無い発想だが的確ではある。

だからこそ予測しやすかった。

歓迎しようかカルデア、ようこそ我が異聞帯へ。」

 

そう言葉を発したのはクリプターのリーダーの一人、アレックス・クルス。

教会の奥、祭壇の前で神父の様なカソック姿をして後ろ手を組み、佇んでいる。

 

「何でこんなところにって顔してんな。

簡単な話だ、予言だよ予言。

ウチの王様は多才でな、そんな事も出来る。

つっても本人は比較的苦手にしてる事だからこの辺に浮上してくるって事だけだったけどな。」

 

『……残りの部分は君が推理した、というわけか。』

 

「その通り、アンタのソレに比べりゃ三流もいいところだったが、結果はご覧の通り。」

 

そう言いながら指を鳴らせばアレックスの背後に3つの光の柱が立ち、その中から3人の天使が出て来た。

 

白銀の甲冑を着込み、帯剣する長い赤髪の女性

ペンと手帳を持ち、鮮やかな青色の軍服の様な服の上に大きな鞄を斜め掛けにした白髪の女性

巨大な鎌を持ち、黒と緑の鎧の上にボロボロのマントを着た青髪の女性

 

そのいずれもが天使の特徴たる輪と、熾天使を表す三対六枚の真っ白な翼を持っていた。

 

「紹介しよう、今回お前らを裁定しに来た熾天使の三人、名をウリエル、ガヴリエル、サリエルだ。」

 

『……三人とも汎人類史では大天使として名の知れた天使だ。

悪を裁く神の火たるウリエル、神の言葉を伝えるガヴリエル、死を司るサリエル。

藤丸君も名前位なら聞いた事があるだろう?』

 

「うん、知ってる。

ゲームのキャラクターなんかでも良くつけられてた名前だ。」

 

藤丸が話し終えた所でウリエルが口を開いた。

 

「久しいな、カルデアの者等。

とはいえ、そちらは私の事が良く見えていなかった様だから私が一方的に知っているだけだが。」

 

その言葉を聞いて、カルデアのメンバー達は驚き、マシュが全員の言葉を代弁した。

 

「もしかして、北欧異聞帯で巨人スルトを倒したのは」

 

その質問に対してウリエルは僅かに微笑みながら答えた。

 

「如何にも。

私だ。

アレックス殿に倒さねばならぬ巨悪が居ると聞いて、私がついて行ったのだ。

確かにあれはあそこで倒しておかねば、今頃はここにもあの呪いの炎が広がっていただろうよ。」

 

「ウリエル、雑談はそこまで。

私達がここに来たのは、長の言葉を彼らに伝え、その返答を他の熾天使達と長に伝える為です。

貴女とサリエルは現場での第一判断と万が一の場合の為に送られたのでしょう?」

 

と、ガヴリエルが釘を刺す。

 

「む、そうだ。

ではカルデアの者等、ここからは心して答えよ。」

 

ガヴリエルの忠告を聞いたウリエルはその空気を一変させ、教会の中の空気が一気に重くなった。

 

「では、カルデアの者達よ。

我々、十の熾天使は普段は長ルシフェルからこの下界の政に対する助言や悪魔の誅伐などを任されております。

 

それは今回の貴方達の件も同様で、多少は長ルシフェルの意向も受けていますが、貴方達がこの異聞帯にとって排除すべき存在なのかを議論しています。

 

現時点では貴方達は『存在自体は善でありながら悪をなす者』と私達は捉えています。

今回、私達3人が貴方達の前に現れたのは貴方達の真意を知る為です。

 

では、問いましょう。

貴方達が各異聞帯を切除しているのは何故ですか?」

 

ガヴリエルがそう問えば、藤丸が一歩前に出て答えた。

 

「まず、生きたいからっていうのが一つ。

次にオルガマリー所長やドクター、他の沢山のカルデアの仲間達が命をかけて守った人類史を失いたく無いから。

 

そして、汎人類史には家族や友達がいる。

切除してきた異聞帯に住んでた人達の命を背負ってる。

だから俺たちは止まれないんだ。」

 

藤丸の言葉を手帳に書き写していたガヴリエルが目線を上げる。

 

「……成る程。

では貴方達はどんなに優れどんなに人々が幸せであろうと、そこが異聞帯なら切除するのですね。」

 

「はい。」

 

「…………やはり、アレックス様の言う通りでしたね。

『間違いなく善でありながら、異聞帯に対して間違いなく悪』でしたか。

 

では、我々はこれで失礼します。

ウリエル、サリエルを起こして下さい。」

 

え?とカルデアのメンバーが思いながらサリエルの方に目を移すと、確かに目を瞑ったままである。

 

「必要ない、今起きた。」

 

「なら最初から寝るなよ。」

 

呆れた様子でアレックスがサリエルに苦言を呈するが当の本人は全く気にした様子を見せずにいる。

 

「最初に見た時に私は必要無いと分かった。

だから寝た、それだけ。」

 

とまで言ってのけ、そのまま微妙な空気を気にせずにマイペースに帰って行った。

 

「サリエルが失礼しました。

では、私たちもこれで。」

 

「次に会う時は敵同士だ。

手加減など期待するな。

それと、そこの悪性の塊の様な奴。

精々、首を洗って待っていろ。」

 

そう言って残りの2人も帰って行った。

 

残ったのはアレックスとカルデアメンバー達。

 

「さて、俺の用件はここからだが、その前に場所を変えようか。

多分、外は3人の光を見た奴らが集まってきてるだろうしな。」

 

アレックスがそう言い終えた瞬間、床に巨大な魔術陣が現れた。

その魔法陣が光り、思わず目を瞑ると次に目を開けた時には街の外、小高い丘の上にいた。

 

「話っていうのは他でも無い。

最終勧告だ。

降参するか敵対するか、選んで」

 

アレックスがそこまで言った所で空中に手をかざす。

すると何処からともなく水が出てきて霊体化して背後に回っていたアンリマユの攻撃を受け止めた。

 

「敵対、って事で良いな?」

 

「ヒッヒッ、さっきのマスターの話聞いてたら分かんだろうがよ。

なのに聞いてきたからつい体が滑っちまったぜ。」

 

「形式上の質問だ、そこは答えとけ。

だが、敵対したなら容赦はしない。

ライダー、ランサー、サーヴァント2人を抑えとけ。

マスターとホムンクルスは俺がやる。」

 

アレックスがそう言えば実体化したノアがアンリマユを殴り飛ばし、キリストの前に軽装備の目を瞑ったランサーが現れた。

 

「それにしても召喚したサーヴァントの内の一騎がキリストだと分かった時には流石に驚いた。」

 

戦闘体制に入ったキリストとランサーの手に全く同じ槍が現れた。

 

『キリストの持つ槍と同じ……!

そのランサー、ルキウス・ロンギヌスか!』

 

「うーん、この見られただけで真名がモロバレするのがなぁ。

だが、これ以上無く相性は良い。

何せキリストの直接の死因そのものだ。」

 

「私は彼の事を知りませんけどね、マスター。」

 

「それは仕方ない。

まあ、最悪倒せなくても抑えてるだけで良いから、頼んだ。」

 

「了解、我がマスター。」

 

その返事を聞いたアレックスはカソックの中から黒鍵を取り出し手に持つ。

 

『黒鍵だと……?

マスター君、チャンスだ。

あの黒鍵を何処で手に入れたかは知らんが、アレは聖堂教会の礼装。

扱うのはかなり難しいと聞く。

付け焼き刃の技術なら必ず隙が出来るはずだ、そこを狙って奴を倒せ。』

 

黒鍵を知っている所長が反応し、元時計塔の生徒のアレックスがまともに扱えまいとそう予測し、藤丸にアドバイスを送る。

 

それに対してアレックスは笑った。

 

「さて、それはどうかな。」

 

そう言うと黒鍵を藤丸を狙って投げた。

勿論、マシュが藤丸の前に入って黒鍵をガード。

弾かれた黒鍵は宙に舞い、

 

「セット」

 

魔術陣を展開し、空中から再度射出される。

 

「くっ……先輩伏せて下さい!」

 

藤丸が言われた通りに地面に伏せ、飛んで来た黒鍵はマシュが盾を薙ぎ払ってもう一度弾いた。

 

「おっと、よそ見してて良いのか?」

 

その言葉にマシュが振り返れば、いつの間にかアレックスが氷で作られた剣を振り被っていた。

それに盾を合わせるも剣はその見た目と裏腹に簡単に砕けた。

その一瞬の間にアレックスは足を盾の下に入れ、盾を蹴り上げる。

そのまま足を振り下ろし、震脚。

両手を上げられ、バランスを崩したマシュの腹に掌底を叩き込んだ。

 

「かっ…!」

 

防御も攻撃を逸らす事も出来ず、マシュは吹き飛ばされ、それを藤丸が受け止めた。

 

『今のは八極拳か!

そしてデータに無い聖堂教会の礼装と水と氷の魔術。

実力を隠していたのか…?』

 

「教える義理は無いね。

さて、このまま押し切りたい所だが、残念。

思ったより早かったな。

ノア、ルキウス撤退だ。

増援が来た。」

 

その言葉にノアとロンギヌスはすぐにアレックスの側に戻り、アレックスの足元に魔法陣が展開される。

 

「じゃ、次に会う時は総力戦だ。

アディオス。」

 

そう言って飛んで来た剣を避け、そして消えた。

 

『反応消失、本当に帰った様だ。

そしてサーヴァント反応が三騎接近中、恐らく汎人類史のサーヴァントだとは思うが、一応準備しておいてくれ。』

 

「マシュ、行ける?」

 

「はい、先輩が礼装で回復してくれたお陰でまだ行けます。

アンリマユさんとキリストさんはどうですか?」

 

「ぶっちゃけ、ダルいけどそうも言ってられねーし、ちゃんとやりますよー。」

 

「私も大丈夫です。」

 

暫く待っていると空から牛に引かれた戦車が降りて来た。

 

「おう、漸く来たかカルデアのマスター。

……ふはは、いい顔をしてるでは無いか。」

 

「久しぶりだな藤丸、話は後だ。

すぐに乗ってくれ。」

 

「今の所敵影は無いが念の為という奴だ。」

 

「イスカンダルにエルメロイ、エミヤも!

分かった、すぐ乗る。」

 

戦車に乗っていたメンバー、特に汎人類史にしか居ないと思われるエミヤとエルメロイの姿を見た瞬間に警戒を解き、すぐにイスカンダルの戦車に乗り込んだ。

全員が乗り込むと、戦車は動き出して空を飛び始める。

 

「まずは拠点に向かう。

一応、安全地帯だ。

拠点に着くまでは敵の事は話せるが自分達の事ははあまり話せない。

そこは我慢してくれ。」

 

『では私から質問だロード・エルメロイ。

何故あの小僧は聖堂教会の礼装を使える!?

黒鍵は特に扱いの難しい物だろう!?』

 

「二世をつけて貰おうか、ゴルドルフ・ムジーク。

これはロードと一部の魔術師しか知らない事だが、クルス家は元を辿れば聖堂教会に所属していた。

 

あの家系が聖堂教会から離れた理由はたった一つ。

宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが吸血鬼となった事にある。」

 

「宝石翁?」

 

「時計塔のロードの1人だ。

吸血鬼にして第二の魔法使い。

文字通りの化け物だよ。」

 

「マスター達にはカレイドステッキの作者、と言えば一番しっくり来るだろう。」

 

エルメロイの説明にエミヤが注釈を入れる。

 

「あぁ、あのナマモノの。」

 

思い出したく無かった魔法の杖の事を思い出してゲンナリする藤丸。

 

「その宝石翁が吸血鬼になった理由はとある死徒を倒した事にある。

それを知った聖堂教会は感謝の意と警戒を込めて宝石翁を討伐するのでは無く、監視する事にし、時計塔にクルス家を送り込んだ。

 

というか、名前の意味を知ってたら魔術師でないことくらいは分かるだろうに。」

 

「えっと、確かアレックスとは『人類の擁護者』という意味があるとアレックスさん本人が言ってました。」

 

「その通りだ、マシュ嬢。

では、クルスの意味は?」

 

暫く沈黙が続いたが、ホームズが答えた。

 

『…………十字路、そして十字架ですね、ミスター。』

 

「そう。

『人類の擁護者』と『十字架』。

時計塔に来る様な魔術師が名乗る様な名前じゃ無いだろう。」

 

『いや、確かに奴が時計塔来た理由は分かったが、それを時計塔が受け入れたのは何故だ?

時計塔側に一切のメリットが無いではないか。』

 

エルメロイの説明に時計塔に長く所属していた所長が質問した。

 

「クルス家の起源だ。

彼らの起源は『契約』、もしくはそれに順ずるものだ。

そして、その起源を元にしてセルフギアススクロールすらも作成できる。

その優先権を時計塔が持ったのがメリットだ。

他にも色々あるが、一番のメリットがこれだろう。」

 

そう説明を終えたところで通信から所長が消えて、ダヴィンチが出て来た。

 

『はいはーい、今日も元気なダヴィンチちゃんだよ。

ちょっと見過ごせない事があったから出てきちゃった。』

 

「…見過ごせない事とは?」

 

そう問いたのはキリスト、何処と無く心当たりのある様な表情でだ。

 

『アレックス・クルスの使ってた水と氷の魔術。

彼は本来の魔術属性は火と土。

間違っても水と氷の魔術を実戦に持ち込む様な事は出来ない筈だった。』

 

「えーー、けど実際使ってたじゃんかよ。」

 

『そうだね、だから不審に思って詳しく調べてみた。

結論から言うと、アレは魔術じゃない、権能だ。

そしてカルデアのデータベースに一件だけヒット。

ヒットしたのはサーヴァント、アルターエゴ、メルトリリス。

データベースによればメルトリリスは三柱の女神の神格を合わせて作られた存在だ。

 

そして、その三柱の中でこの異聞帯と関係があるのはただ一柱。』

 

「リヴァイアサン、ですね?」

 

完全に確信した表情でキリストが確認し、それに対してダヴィンチが頷く。

 

『そう。

恐らく何らかの手段を用いて、リヴァイアサンから水の権能を受け取る、もしくは奪い取ったんだろう。』

 

『ま、待て待て待て!!

ただの人間が女神の権能を使うだと!?

バカも休み休み言え!

そんな事をすれば体も精神も魂もタダではすまんだろう!!

容量以上の水を瓶に詰め込む様なものだ!』

 

「けどよー、オッサン。

この世には不可能を可能にするもんなんざ幾らでもあるだろ?

例えば、そうだな………聖杯、とか?」

 

ちらり、とキリストの方を見ながら嗤って答えるアンリマユ。

 

「歴史こそ違えど聖杯の産地だぜ、ココは。

だったら自由に使える聖杯があってもおかしく無いだろ?」

 

『そうポンポンと願望機があってたまるか!』

 

その言葉にマシュと藤丸、ついでにエミヤとエルメロイが遠い目をした。

 

この時の4人の思考は完全に一致していた。

 

((((あるんだよなぁ/ですよねぇ))))

 

『まあそれは良い。

事実な事には変わりはない。

問題は対策だ。』

 

『それはこっちで出来る限りピックアップした物をシミュレートしておくよ。

多分だけど氷の剣も同じ権能を使ったんだろう。

まさか化学的性質を権能を使って魔術的に無理矢理引き起こすなんてね。』

 

そう呟きながらダヴィンチは通信からフェードアウトしていった。

 

「では、今度は別の事について話そう。

この世界の大まかな仕組みについてだ。」

 

「分かるの!?」

 

「ああ。

前置きだが、この異聞帯に召喚されたサーヴァント、そのほぼ全てが二騎同時に召喚されている。」

 

「あ、確かにキリストさんとアンリマユさんも同時召喚でした!」

 

「そう、そして召喚されたサーヴァントにはある規則性がある。

即ち、善性のサーヴァントと悪性のサーヴァントがセットになる事だ。

さらに言えば、両者の性質がある意味で真逆になっている。

 

そして、この二騎のサーヴァントは片方が倒されればもう片方のサーヴァントが弱体化し、また二騎のサーヴァントの実力に差があれば、弱い方が強い方に引っ張られて強化される事も分かっている。

 

この事から、この異聞帯の特徴として、善と悪は絶対的な物では無く、相対的だと判断した。」

 

『…………絶対の善悪では無く、相対の善悪か。

成る程。』

 

『何が成る程なのかは知らんが、聞かんぞ。

どうせ何時もの『まだ語るべき時では無い。』だろう!?』

 

『ははは、似た言葉を昨日も聞きましたね。』

 

所長のツッコミに対しホームズが笑ってごまかした。

 

「善悪が相対的なら、天使の対になる悪魔もいるって事だよね。」

 

「その通りだ。

街には天使が加護を与えてるお陰で中々近付いては来ないが、街の外で夜を迎えれば襲われる事もしばしばある。

君達も十分注意して、余力があるなら倒しておくと良い。」

 

「天使の力を削ぐ事が出来る、からですか?」

 

「その通りだ。

さて、そろそろ拠点の周辺に着く。

そこに着けば少なくとも天使達に監視される事は無い。」

 

戦車が高度を落として行き、着地したのは森の中。

そこから暫く徐速で戦車が走って行くと辿り着いたのは大きな洞窟の入り口だった。

 

「中は召喚された数騎のキャスターが作り上げた工房だ。

既に何騎かは退却してしまっているが、効力は失われていないから安心してくれ。」

 

洞窟の中に入ると藤丸から見ると真っ暗で前を歩くエルメロイがギリギリ見える程度だったが、暫く歩き進むと突然明るくなった。

その明るさに目が慣れて、見てみると多くのサーヴァント達が待っていた。

 

「わぁ……!!

こんなに沢山のサーヴァントの皆さんが……!!」

 

そこに居たのは

エドモン・ダンテス

ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ

エミヤ

エミヤ(アサシン)

ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルク・オルタ

エリザベート・バートリー

サロメ

メディア・リリィ

玉藻の前

そして、賢王ギルガメッシュ

 

「ふふはははははははは!!

待ち侘びたぞ、カルデアの!!」

 

一番最初に話しかけて来たのはギルガメッシュ。

上機嫌に笑いながら話しかけて来て藤丸の背中をバシバシ叩いている。

 

 

 

 

 

 

その後、情報交換をしていると、様々な事が分かった。

擬似サーヴァントのエルメロイとライネス、アラヤの契約者であるエミヤ、エミヤ(アサシン)、忘却補正持ちのアヴェンジャーである邪ンヌとエドモン、そして特異点とはいえ生前に会ったギルガメッシュはカルデアの事を覚えていた。

 

外でエルメロイが自分達の事を話せなかったのとイスカンダル、エミヤの口数が少なかったのは天使、または千里眼持ちの敵のサーヴァントを警戒していた為である事。

 

この洞窟が完全な安全地帯な理由の一つとしてギルガメッシュがこの異聞帯において中立な立場を取り、宝具『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』を盾にしてクリプター、アレックス・クルスと契約をした為である事。

 

契約内容としては、

・ギルガメッシュは中立の立場を取り、異聞帯の裁定を終えるまでは戦闘には参加しない。

ただし、カルデア、汎人類史以外で異聞帯を滅ぼす要因となる敵が発生した場合はその敵を倒すまではギルガメッシュ、及び汎人類史側のサーヴァントは異聞帯側と共闘する事とする。

 

・汎人類史側と異聞帯側のバランスを取るために、異聞帯側は汎人類史側の拠点内部の様子を確認するために千里眼を使用してはならない。

また、同様の理由で汎人類史側に対しギルガメッシュが物資支援する事が出来る。

 

という物であった。

 

そうして話し合っていると、ギルガメッシュの出した食材でエミヤ、メディア・リリィ、玉藻の前が作った料理が運ばれてきて、ギルガメッシュとイスカンダルの2人が中心となった結果、何故か宴会に発展した。

 

初めは強引に宴会に持ってかれた事に困惑していた藤丸とマシュだが、割とよくある事だと割り切って、宴会を楽しんだ。




今回のパワーワード

ポンポンとある聖杯
因みにこの時、藤丸とマシュは各イベント特異点、エミヤはぐだぐだ、エルメロイは毎回ある周回を思い浮かべてる

聖杯の産地
本物が生まれた地



相対的な善悪
なら、天使の反対は……?

ところで、Fate含む型月作品で固有結界って元々は悪魔の固有能力だったらしいですぞ


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