仮面ライダーW×戦姫絶唱シンフォギア 風が歌になって (クロ562)
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開幕のG/始まりの笛の音

HOUKOKUSYO
風都を襲う脅威は去り、フィリップも戻ってきた。この街にはまだガイアメモリは蔓延るが、平和は戻ってきた。これは、そんな俺たちの前に表れた、新たな事件の報告書である。


─???

 

──歌を、聞いた。

そこでは、見たことの無い少女が戦っていた。

「はぁぁあっ!」

少女は、そんな掛け声と共に、これまた見たことも無い怪物を殴っていく。

見たところ、彼女は不思議な鎧をまとってこそいたが、しかしどこにでもいそうなただの少女だった。

そんな彼女が、何故あんな怪物と戦っているのか、とても不思議に思っていた。

叫び声が聞こえて、ふと少女の後方を見やると、人々が避難のために走っていた。

彼女はそんな彼らを隠すように怪物たちに立ちはだかっている。

そうか、つまりは彼女はみんなを守る為に、必死になって、その拳を握って、立ち向かっているのか。

と、そこで何かがずぅっと聞こえていたことに、その時、今更ながらも気づいた。

それは歌だった。必死に戦う彼女の歌。拳を握りながらも、誰かと手を繋ごうと頑張る彼女の歌。

それは、これまでに聞いたどんな歌よりも優しく、生きることに溢れた歌だった──。

 

 

 

─風都、鳴海探偵事務所

 

「──郎くーん?─太郎くーん?」

声が聞こえる。

「─翔太郎くーん!起きなさーい!」

「いって!」

バチコン!と頭を何かで叩かれ目が覚めた。

顔を上げると、いつもの事務所の机が目に入り、視界の隅には書きかけの原稿が見えた。

どうやら報告書を打ち込んでいる途中で眠ってしまっていたらしい。

「何すんだよ亜樹子!」

俺は椅子に腰を落ち着けると、俺を文字通り叩き起こした女に向かって怒鳴る。

しかし怒鳴られた女、照井亜樹子─鳴海亜樹子って言った方が分かりやすいか─はその手に緑色のスリッパを構えながら、俺に詰め寄ってきた。

「翔太郎くん!お客様だよ!寝てる場合じゃないの!」

「客ぅ?依頼人のことかぁ?」

「そう。人探しだって!」

亜樹子の後ろを顔を逸らして見ると、確かに奥にある入口のところに女性が1人立っていた。

「おい亜樹子ぉ!何依頼人立たせてんだよ!すみませんね、さ、ソファに座ってください。今コーヒーでも淹れますよ」

マナーのなってない対応をしていた亜樹子を叱りつけ、依頼人の方を席につかせる。

「まーた翔太郎くんのハーフボイルドが始まったよ」なんて亜樹子の愚痴が聞こえた気がするが無視した。

 

「それで、依頼と言うのはなんだ?」

依頼人の向かいに座り、淹れたコーヒーを差し出しながら俺は本題に入った。

依頼人はしかしコーヒーには手もつけず、少し逡巡すると話を切り出した。

「実は…彼が、一週間行方不明なんです…」

話を纏めると、依頼人の名前は逢坂紀香さん。今回の探し人である高田満さんと交際をしていたらしい。

しかしその高田さんが一週間前から行方不明、連絡を取ろうとしても音沙汰のひとつもない、とのことだった。

「私…心配で…彼に何かがあったんじゃないかって…!」

逢坂さんは涙を隠すように手で顔を覆いながら、肩を震わせてそう言っていた。

「安心しな、逢坂さん。アンタの大事な人は俺が必ず見つけてやるよ」

俺は壁にかけてあった帽子を手に取り、頭に被り、逢坂さんに安心させるように宣言する。

「この街は、俺の庭だからな」

逢坂さんは安心からか涙を流しながら「ありがとうございます」と何度も言ってきた。

まだお礼を言う時でも、涙を流す時でもないぜ。

さぁ、捜索開始だ。

─そう意気込んで街に繰り出した時、俺には何故か、笛の音がどこからか聞こえた気がしたんだ。

 

これは、平和になったこの街で俺たちを襲った、それはとても奇っ怪な事件の記録だ。

 

 

─Squad of Nexus Guardians、通称S.O.N.G.本部

 

ビー!ビー!ビー!

S.O.N.G.本部内にけたたましい警告音が鳴り響く。

すぐさまオペレーターの藤尭と友里の2名が詳細を調べる。

「このアラーム反応は…間違いありません!」

藤尭が叫び、友里が画面にアラームの原因を映し出す。

その画面には『Gallarhorn』の文字が大きく表示された。

「ギャラルホルン…だとぉ!?」

S.O.N.G.司令である風鳴弦十郎はその結果に大仰に驚くと、すぐさま装者達への集合連絡をかけるのであった。

 

暫くして、急いで来たのだろう、息を切らしてS.O.N.G.の装者達─立花響、風鳴翼、雪音クリス、暁切歌、月読調、マリア・カデンツァヴナ・イヴ─が集合した。

「師匠!緊急事態ってなんですか!?」

息を切らしながらも、しかし元気に響が本題を切り出した。

それに対して弦十郎は苦い顔をして伝える。

「結論から言おう、ギャラルホルンがアラームを発した」

「ギャラルホルンが!?」

「ってことは、また別の世界と繋がってるってわけか?」

マリアが驚き、クリスが要約する。

ギャラルホルン、それはS.O.N.G.が保管している完全聖遺物であり、平行世界との行き来を可能とする力を有している。

これまでにも幾度かアラームは鳴り、その都度別の平行世界へと向かい問題の解決に当たっていた。

「そういう事だ」

「つまりは叔父様、再び我々の中から数名を選出し、平行世界へと問題の解決に当たれ、と言うことでよろしいのですね?」

翼が今回の召集の意図を纏め伝えると、弦十郎は「あぁ」と頷いた。

「また別の世界デスか!私が行きたいデース!」

「私も私も!師匠!行きたいです!」

「お前らなぁ…遠足じゃねぇんだぞ?」

我先にと手を上げる切歌と響。そしてそれを窘めるクリス。

「わかってるよクリスちゃーん」

「デース!」

「どーだか」

「ではクリスくんも一緒に行けばどうだろうか」

クリスが2人の反応に半ば呆れていると、弦十郎がそんなことを言い出した。

「はぁ!?アタシがぁ!?」

「うむ、それは良い考えだな。雪音が着いていれば立花達も安心だろう」

「そうね、こっちに出現が予測されるノイズは私たちに任せて、3人で行ってきなさい」

「クリス先輩、切ちゃんをよろしくお願いします」

クリスの反論を待つより早くその意見に賛同する翼、マリア、調の3人。

「おっ、おい!おめーら!何アタシにこのバカどものお守りを押し付けようとしてんだよ!」

「まーまーいいじゃんクリスちゃん!行こーよ!」

「デスよ!クリス先輩がいれば百人力デース!」

「おいバカ!離れろって!わぁーったよ!アタシも行けばいいんだろ!?」

「わーい!」

「デース!」

なおも不満を示すクリスの両端から響と切歌の両名が抱きつき、ついにクリスは諦めた。

「では、響くん、切歌くん、クリスくんの3名はギャラルホルンで問題解決に当たってくれ。翼、マリアくん、調くんは出現が予測されるノイズの対処に当たってくれ!」

『了解!』

弦十郎の指揮に応える6人。

「今度は一体どんな世界なんデスかね?」

「案外こことは全然違ったりしてな」

「大丈夫!」

切歌とクリスの会話に、断言するように響が告げる。

「どんな世界だろうと、私たちならへいき、へっちゃらだよ!」

 

 

─こうして、風と歌が混ざり合う事件が始まる。




響「ギャラルホルンのアラートが鳴ったから別世界へ出発だー!って何ここ!リディアンもないし月も欠けてない!それに翼さんもマリアさんもいない!?これまでともぜんっぜん違う世界みたいたけど、ここは風がなんかいいね!と言うわけで探検だー!」


次回、仮面ライダーW!
「ちっ、なんでこんな所にドーパントが!」
『これは…超高温?』
「こっちに来んな!逃げろ!」
『Balwisyall nescell gungnir tron…』
「これは…歌?」
これで決まりだ。


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撃槍・G/異世界からの来訪者

初回スペシャル!一挙2話放送!
※歌詞が利用規約にひっかかると教えてくださった方がいたので歌詞部分は削除致しました。


─風都市内

 

結論から言うと、全く手がかりが得られなかった。

「どうなってんだよ、これは…」

階段に腰を下ろしながら大きくため息をつく。

街の人達はおろか、風都イレギュラーズの皆から聞き込みをしたものの、探し人である高田満の情報は塵一つとして手に入らなかった。

正確には高田満本人の情報はいくつか手に入った。

36歳、職業は普通のサラリーマン、彼女が最近できて─これは逢坂紀香のことだろう─順風満帆だったと言うらしい。

しかし、確かに一週間前からの情報がぷっつりと消えていた。

消失していた。

「一週間前、最後に出会ったって情報も、普通に家に帰るのを見たって情報だけ…ここまで徹底して情報がないと、骨が折れそうだな…」

だからと言って諦めるわけには行かねぇ。依頼を請け負ったからには必ず完遂するのが俺の探偵としてのプライドだ。

とりあえずもうひと踏ん張り、と腰を上げた時だった。悲鳴が聞こえたのは。

「なんだ!?」

急いで声が聞こえた方に向かうと、異形の怪人が人を襲っていた。

「くそっ、なんでドーパントが!」

ドーパント。

それはこの風都に現れる凶悪な犯罪者であり、人知を超えた力を有する怪人だ。

地球の記憶を宿した「ガイアメモリ」と呼ばれる悪魔の箱を肉体に挿入することで、圧倒的なパワーを得ることが出来る。

そのドーパントはオレンジと白の色をした……なんと言うか、形容しがたい外見をしていた。

昔の特撮に出てきそうな怪人、とでも言えばいいだろうか。

一体何のメモリだ?と疑問に思うが、しかし人が襲われている為今は置いておき、懐からWドライバーを取り出し、腰につけた。

Wドライバーは、俺達がドーパントと戦うために必要なアイテムであり、そして俺と相棒を繋げるツールでもある。

「おいフィリップ、ドーパントだ」

ジャケットの内側から黒いメモリを取り出し、構えながら「もう1つのWドライバー」の向こうにいる相棒─フィリップに声をかける。

『あぁ、わかった翔太郎。変身しよう』

「おう!」

俺はそのまま手にした黒いメモリの起動ボタンを押す。

【Joker!】

ガイアウィスパーからメモリの起動音が読み上げられる。

そう、目には目を、歯には歯を、ガイアメモリにはガイアメモリを。

俺達がドーパントと戦うために必要なものは、やはり同じガイアメモリだった。

そして、向こう側でフィリップもまたガイアメモリを起動させる。

【Cyclone!】

フィリップがサイクロンのメモリをWドライバーの片方へスロットインすると、それがデータ化され、俺のドライバーへと転送される。

それを押し込み、今度は俺のジョーカーメモリをもう片方のスロットへ差し込み、思い切り開いた。

【Cyclone!Joker!】

2つのメモリがドライバーを通して起動し、俺の肉体を風と共に書き換えていく。

風が収まる頃には俺の肉体は緑と黒を半分に分けたボディの戦士、「W」 へとその姿を変えていた。

俺たちは手首をスナップさせ、ドーパントに向かっていつもの決め台詞を問いかける。

『さぁ、お前の罪を数えろ!』

ドーパントはそれで俺たちに気づいたのか、襲っていた人から手を離して俺たちの方へ向かってきた。

「フィリップ!アイツの能力とかは全くの不明だ!注意して行くぞ!」

『あぁ、そうするのが賢明だろうね』

「■■■■■!!」

フィリップと作戦を練っていると、ドーパントが腕を伸ばしてこちらを襲ってきた。

「うぉらぁ!」

それをかわして、勢いをつけてドーパントの側面に思い切りハイキックをかます。

と、その時。足に一瞬だが痛みが走った。

慌てて足を離し、見てみると僅かにだが表面が焼け焦げて……いや、炭化していた。

『これは…?超高温…いや、それにしては熱さがなかった。相手を炭化させる能力……?』

「今は考えてる場合じゃねぇ!近距離はまずい!コイツで行くぞ!」

『なるほど、ならここはこっちが良さそうだ』

俺たちは新たに赤と青のメモリを構え、起動させた。

【Heat!】

【Trigger!】

それをサイクロンメモリとジョーカーメモリと入れ替えるようにWドライバーに差し込み、再び展開させる。

【Heat!Trigger!】

すぐさま、俺たちの体に変化が現れる。緑のボディは赤く。黒のボディは青く染まった。

更に、胸には青い銃が出現した。

さっきまでの形態をサイクロンジョーカーとすると、これはヒートトリガー、遠距離向けの姿だ。

胸の銃─トリガーマグナムを手に取り、ドーパントに向けてブッパなす。

弾丸が当たったドーパントは数歩後ずさる。

「よしっ、やはり遠距離ならダメージをとおせるぜ!」

『このまま一気に畳みかけよう』

「おう!」

そのままトリガーマグナムによる銃撃を何発か繰り返す。しかし……

「お、おい、こいつ、仰け反ってこそいるけどよぉ」

『……あぁ、ダメージは受けていないように見える』

そう、ドーパントは俺たちの銃撃を受ける度に仰け反り、後ずさってはいる。しかし、動きにダメージによる疲労、ふらつきが感じられず、ダメージはまるでないように見えたのだ。

「どうすんだよ!これじゃ拉致があかねぇぞ!」

『エクストリームで行こう、敵の情報を閲覧するしか手はない!』

フィリップが提案するや否や、空より俺たちの切り札、エクストリームメモリが飛んでくる音が聞こえた。

しかし、俺たちの意識はエクストリームメモリの方向からやってきたもう1つの姿に向いてしまっていた。

女の子だった。

オレンジの髪をした少女が、こちらに走ってきていたのだ。

「お、おい!こっちに来んな!逃げろ!」

俺たちが止めてもその子は迷わずに全速力で走ってくる。

と、その時俺たちの耳にある歌が聞こえてきた。

 

『Balwisyall nescell gungnir tron…』

 

聞こえると同時、その少女の体が光り輝き、その姿を変えた。

オレンジを基調としたスーツに、腕や足に付けられた装甲。胸に赤く輝く宝石を携え、少女はその勢いでドーパントを殴り飛ばした。

「!?ノイズが一撃で倒れない!?あっ!そこの人!……あれ?人?とにかく、避難してください!」

ドーパントを殴り飛ばした後にこちらを振り向くと、なんと少女は俺たちに避難しろと言ってきた。

殴られたドーパントを見やると、そいつは俺たちの攻撃とは違って明らかにダメージを受けていた。

どういう原理かは知らないが、俺たちの攻撃が通じず、彼女の攻撃が通じるのならば、本来ならば彼女に任せる方が普通だろう。

しかし、俺たちは仮面ライダー、この街の涙を拭う2色のハンカチ。ここではいそうですかと逃げられるわけがねぇ─!

「わりぃがそうはいかねぇ。アイツは街を泣かせる悪党だ。ケリはつけないといけねぇんだよ」

「……では、一緒に戦いましょう!」

俺たちの意志を組んでくれたのか、即座に共闘を持ちかけてくる少女。

俺たちの攻撃がダメージにならない以上、それしか手はなかった。

「俺たちが足止めする!アンタはヤツを思い切りぶん殴れ!」

「了解です!たぁあっ!」

彼女が飛び出すと同時、どこからか曲が聞こえてきた。

『♪〜♪〜!!!』

と思いきや、少女が急に歌いだした。

どうやら、曲は彼女の胸の宝石から聞こえてきているようだ。一体彼女はなんなんだ?

考えるのは後だろう。俺たちは俺たちのできることをするだけだ!

『翔太郎、ヒートトリガーでは彼女に誤射してしまう可能性がある、ここはこいつでいこう』

フィリップが新たに黄色のメモリを取り出す。

【Luna!】

「OKフィリップ!」

黄色のメモリ─ルナメモリをヒートメモリと入れ替え、ドライバーを展開する。

【Luna!Trigger!】

赤かった半身が黄色く染まる。

これが神秘の力を秘めた銃の戦士、ルナトリガーだ。

少女の後ろから一気に数発の弾を撃ち込む。

その弾は少女を綺麗に避け、ドーパントへとぶち当たり、仰け反らせる。

『♪〜でぇえやぁぁあ!!!』

その隙を逃さずにラッシュを畳み掛ける少女。

そのまま数歩ほどバックステップで戻り、高く飛び上がる。そして両手を合わせ、腕についた武装を片腕に収束させ、背中のブースターを噴射させて思いきり殴りにかかる。

「フィリップ!俺たちもアレに合わせるぞ!行けるか!」

『当然だよ』

ドライバーのトリガーメモリを取り外し、トリガーマグナムにセットする。

【Trigger maximumdrive】

トリガーマグナムにエネルギーが収束されていき、タイミングを合わせて放つ。

「『トリガー、フルバースト!』」

放たれた無数の弾丸は大きく迂回し、ドーパントの後ろ側から一斉にぶつかる。

「♪〜はぁぁあ!!!いっけぇえええええ!!!!」

同時、少女の剛腕が全面からドーパントにぶち当たり、大きな爆発を起こした。

 

「ドーパントの変身者は!」

爆発直後、すぐさまドーパントの近くへ向かうが、そこには何故かドーパントもメモリもなかった。

『逃げられた…あの状態から?』

フィリップが疑問に思うのも無理はねぇ。前後からの同時攻撃、しかもメモリブレイクの為のマキシマムドライブまで使って逃げられるとは思えねえからだ。

「フィリップ、さっきのやつについて、先に調べておいてくれ」

『あぁ、翔太郎。わかった』

ドライバーを畳み、メモリを引き抜く。

すると体から装甲が剥がれるように変身が解けた。

「っとそうだ…さっきの女の子は!」

周りを見渡すと、さっきの少女も変身を解いて普通の服装に戻っていた。

「……うん、切歌ちゃん。ノイズがいたから、さっきまで戦ってて、なんとか倒せたと思うんだけど、ちょっと様子がおかしかったんだ。この世界、いつもの別の世界とはなんか違う感じがする。気をつけてね」

少女は誰かと連絡をとっているようだ。仲間だろうか。

「……あ!さっきの人は!」

と、通話が終わった直後、俺たちを探して辺りを見回している。

「さっきのは俺だ。すまねぇがお嬢ちゃん、ちょいと話を聞かせてもらってもいいかい?」

「えっ、でもさっきは赤と青の…シンフォギアとは別の聖遺物ですか?」

「はぁ?聖遺物?なんだそりゃ。そっちこそ、ガイアメモリじゃ……ねぇよな」

「がいあ……めもり?」

 

 

─こうして、俺たちは出会った。

これが、この街を、この世界を、そして二つの世界を揺るがす大事件。

それを解決すべく俺たちと共に戦った、3人の戦士。

その一人、立花響との邂逅だった。




立花響「別世界には変なノイズがいたから急いで殴ったらなーんか硬いし一緒にいた赤と青の人は赤から黄色くなるしでわっけわかんないよー!そしてがいあめもりってなんなのー!?」

次回、仮面ライダーW
「君の名前とさっきの力、教えてくれるか?」
「ノイズを知らないんですか!?」
「信じられるかそんな話を!」
「私、別の…並行世界?からやってきたんですよー!」
これで決まりだ


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Nの胎動/街に潜む雑音

サブタイトルについて。
仮面ライダーWのフォーマットは本来、アルファベットを含む前部分は2話とも固定で、後半だけが変わるという形ですが、小説という媒体であることと、少し異色を加えたいとの思いから、2話につき1つのアルファベット、しかしアルファベット以外はすべて変える。という方向性を取らせていただいています。


─鳴海探偵事務所

「まぁ座ってくれ。コーヒーでいいか?」

「はい、大丈夫です!あ、出来ればコーヒーにはミルクがたっぷり欲しいです!」

「わかった、少し待ってろ」

あれから、話を聞くために少女を事務所へと連れていき、ソファに座らせた。

「それで、君の名前と、さっきの力について、教えてくれるか?」

ミルクをたっぷりいれたコーヒーを差し出し、話を切り出す。

「はい!私の名前は立花響17歳!好きな物はごはん&ごはんです!さっきの力はシンフォギアシステムって言うんですけど、知りませんか?あ、あとあと!そっちこそあの姿って何なんですか!?赤と青だったり黄色と青だったり!」

「お、落ち着け。わかった、わかったから 」

見た目で思っていた以上に中々お転婆だったらしい。

「俺は左翔太郎、探偵だ。さっきの姿はダブル…いや、仮面ライダーって言うんだが、見たことないってことは、風都の人間じゃないのか?あと、シンフォギアってのは聞いたことねぇな」

「そうですかー。じゃあ 、さっきみたいに、ノイズにはお兄さん一人で戦っているんですか!?」

「ノイズぅ?さっきのはどう見てもドーパントだろ」

「どーぱんと?」

「知らないのか?」

「はい。そっちこそ、ノイズを知らないんですか?」

「あぁ…聞いたことも無いな」

何やら俺たちの話が食い違っているように思える。

ここはフィリップに調べてもらうか…?などと考えていると、目の前の少女─立花響は、とんでもない発言をかましてきた。

「なるほどー、ここはそーいう世界なんですね!」

「……は?別の世界?」

「はい!あ、そーだ忘れてた!私、別の…並行世界?からやってきたんですよ!」

……なんだか、頭が痛くなってきたのは、気のせいではないと思った。

 

「……つまりだ、君─君たちS.O.N.G.にはノイズという化け物がいて、それと戦っている。更に並行世界に通じるアイテムがアラームを発したので問題を解決する為にこの世界に来た、と。そういうことか?」

「その通りです!」

「よし帰れ」

「なんでですか!?」

「信じられるかそんな話を!」

「でも本当なんですって!」

「帰れ帰れ!ガキの戯言に付き合ってる暇はねぇんだよ!」

ふざけたことを言い出したガキをとっとと追い出そうとすると、奥から緑を基調とした、ダボッとした服を着て、髪を無造作にクリップで止めた少年─つまりは俺の相棒、フィリップが若干興奮気味でやってきた。

「待ってくれ翔太郎!彼女の言ってること、案外本当かもしれない」

「はぁ!?お前まで何言ってんだよフィリップ!」

「まぁ聞いてくれ。さっきまで先程のドーパントについて調べていたんだが、流石に情報が少なかったから絞りきれなくてね…そこでチラと聞こえた、さっき彼女が言っていた情報─ノイズやシンフォギアについてを検索してみたんだが…結果は0だった」

「0だと!?地球の本棚でか!?」

「あぁ」

俺の相棒、フィリップにはある特技がある。

それは地球の本棚と呼ばれるデータベースにアクセスすることで、あらゆる情報を閲覧することが出来るというものだ。

そこにはこの地球に存在しているあらゆる存在、事象、記憶、記録、果ては概念が存在している。

そんな地球の本棚に存在していない情報─それはつまり「この地球に存在さえしていないもの」という事に他ならない。

「ってことは本当なのか?こいつの言ってることが?」

「そう言うことになる」

「だからさっきから言ってるじゃないですかー!」

「いや、だってなぁ?」

こんな年端もいかない少女が並行世界だなんだと言ったって、俄には信じにくいものだ。

「そうだ!こっちの話をしたんですから、そっちの話も聞かせてください!さっきのノイズ、カルマノイズでもないのにやけに硬かったのはなんでですか?それとそれと、あの姿は!?」

「わかったわかった、今話すよ!」

この少女は、途方もなく元気が有り余っているようだ。

 

「ほほーう…ガイアメモリにドーパント…そして仮面ライダーですか!なーんか映画みたいですね!」

俺たちの世界の事情を説明すると!立花響から返ってきたのはそんなゆるい感想だった。

「しっかし、つまりは私たちの世界とは全然違うってことなんですね…。そんな世界もあるんだなぁー」

「なんだ、基本的には並行世界ってのはお前の世界に似てるのか?」

「そりゃあそうですよー!多少の違いこそあっても、ノイズがいてー、二課があってー、聖遺物があるって感じです!」

こうしてお互いの情報共有も済み、ちょっとした雑談に興じ始めようかと言う時、立花響の携帯─いや、通信機だろうか─が鳴った。

「もしもし、切歌ちゃん?……えっ!?うん!わかった、すぐ向かうね!すみません!私行かなきゃいけないので!」

通話がすむや否や事務所を駆け出そうとする立花響。

「待て、どこに行くつもりだ?」

「一緒に来た仲間達がノイズと戦っているんです!やたら硬いって言ってたのでひょっとしたらさっきのやつかも知れなくって!行かなきゃ!」

「待て、もしさっきの奴なら俺も行く。それに、この街は俺の庭だ。俺の方が詳しい」

「左さん…!」

「どの辺かはわかるか?」

「はい!なんか、おっきい風車の近くだそうです!」

「なるほど、風都タワーか。行くぞ!乗れ!」

俺は事務所を飛び出ると前に停めていたバイク、ハードボイルダーのエンジンをかける。ヘルメットを被るともう1つのヘルメットを立花響へと投げ、後ろに乗るように促す。彼女もひとつ頷くとすぐに後ろに乗った。

「飛ばすぞ!」

「はい!」

俺たちは、全速力で風都タワーへと向かった。




雪音クリス「並行世界に行ったはいいがあのバカは何かを感じてどっか行っちまうわアタシたちの前には変なノイズが出てくるわ、色々めんどくせぇことになってんな!てかアタシたちの出番はまだかよ!?ちょっせぇ!」

次回、仮面ライダーW
「おせーぞバカ!とっとと手伝え!」
『あのドーパントは彼女たちの言うノイズの性質を持ち合わせている』
「黄色と青のノイズデスか!?」
「なんですかこれー!?」
「こいつは霧彦のメモリだ」
これで決まりだ。


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Nの愛した街/友のメモリ

※今回、オリジナルのメモリ、及びオリジナルW、更にはオリジナル形態のギアが登場します。苦手な方はお気をつけください。

あと、感想でディケイドのことを知っている翔ちゃんが今さら異世界ネタで驚いてることに違和感を感じるというものがありましたので、自分で言い訳のような解説をさせていただくと、
確かに翔太郎はディケイドの件から並行世界、異世界の存在は認知しています。
しかし今回の場合は相手が年端も行かぬ少女であったこと、仮面ライダーが存在しないこと、そして歌で倒せるノイズなど言ったディケイドの時とはまるで異なる異世界の説明を響のあのテンションで説明されたので、ガキの戯言と一蹴した。
という形になっております。
あと、感想の方、とても嬉しかったです!ありがとうございます!

では、第4話をどうぞ。


─風都市内、風都タワー前

「切歌ちゃん!クリスちゃん!」

「響さん!待ってたデース!」

「おせーぞバカ!とっとと手伝え!」

風都タワー前へと来ると、そこではやはり先程戦闘したドーパント─いや、ノイズなのか?─と、これまた先程の立花響のような衣装に身を包んだ少女2人が戦っていた。

「響さん!こいつなんだかとっても硬いデス!」

「何発ぶち込んでも倒しきれやしねぇ!こいつがさっきお前がいってたヤツってことか!?」

「うん!そいつだよ!私も戦う!」

 

『Balwisyall nescell gungnir tron…』

 

立花響は胸のペンダントを構えると、さっきの時のような詠唱を唄い、その姿を変えた。

「♪〜!はぁぁあ!」

そのままの勢いでドーパントをぶん殴る。俺もダブルドライバーを腰に巻き、メモリを構える。

「フィリップ!俺達も行くぞ!」

【Joker!】

『あぁ、翔太郎』

【Cyclone!】

「『変身!』」

【Cyclone!Joker!】

再びダブルへと変身し、今度は最初からルナとトリガーのメモリへと入れ替える。

【Luna!Trigger!】

「立花ァ!俺たちが援護する!お前らは攻撃を続けろ!」

トリガーマグナムをぶっぱなしながら、立花響に声をかける。

「ええ!?なんデスかアイツ!?黄色と青のノイズデスか!?」

「くっ…新手か!?」

「切歌ちゃんクリスちゃん、違うよ!あの人は私たちの味方!」

立花響の仲間の少女─切歌とクリスと言ってたな─は一瞬異形の姿へ変わった俺に向かって敵意を向けるが、立花響はそれを一蹴して俺たちの銃撃に合わせるようにドーパントをぶん殴る。

「は、はぁ…味方デスか…」

「すっげー怪しい見た目してんだけどなぁ…ま、てめぇが言うならそうなんだろうよ!おいアンタ!アタシらの足引っ張んなよ!」

「そっちこそ間違えて俺たちの弾に当たんなよ!」

『翔太郎、大人気ないよ…』

2人とも一応は俺が味方だと理解したようだが、赤の装備に銀髪の少女がそんなことを言ってきたので、俺も言い返しておいた。フィリップがなんか言ってっけど無視だ無視。

 

「くそっ!なんだよあいつ!ホントに硬ぇな!?」

戦闘が開始してから既に10分は経過しようかという状況。ドーパントは俺たちの攻撃を意にも介してないかのようにピンピンしていた。

「一体全体、どんだけぶち込んだら倒れんだよアイツ!」

「流石にっ…疲れてきた、デス…」

「だとしても!ここで倒れるわけにはいかないんです!」

立花響達も流石に疲労の色が見えてきている。

「フィリップ、エクストリームで行けると思うか?」

『いや、あのドーパントはおそらく彼女たちの言っているノイズとやらの特色が強いように見える。理屈は不明だけどね、エクストリームでもおそらく対応しきれないだろう』

「だよなぁ!くそ、こうなりゃ一かバチかヒートトリガーのツインマキシマムで!」

『翔太郎!?軽率な行動は……!』

フィリップの静止も聞かず、ルナからヒートにメモリを変え、トリガーメモリをマグナムに込める。

そしてヒートメモリをベルト横のマキシマムスロットへと挿入しようとした時、ドーパントが腕を伸ばしてこちらへと攻撃してきた。

「何っ!?」

両手を同時に攻撃され、トリガーマグナムもヒートメモリも遠くへと弾き飛ばされてしまった。

変身維持の為、急いでサイクロンジョーカーへと変身しなおす…がそうしている間にも立花響達を振り切って俺たちへと向かってくるドーパント。下手に触れば肉体が炭化してしまうかもしれないため、こっちとしては距離をとるしかなく。結果としてトリガーメモリとヒートメモリとの距離が離れていく。

「くっ…」

距離を詰められてしまった為、攻撃を躱すことも手一杯となってしまった。実際、先程から数発ほど掠ってしまっており、その都度肉体の表面が炭化している。

「左さん!くっ……!」

少し遅れてドーパントと俺たちに追いついた立花響は弾かれたヒートメモリを取りに走り、メモリを掴んだ。

その時だった。

【Heat!】

「……へ?」

立花響が手に掴んだヒートメモリから、起動音声が聞こえた。

かと思いきや、ヒートメモリはそのまま宙を浮き始め、立花響の胸の宝石へと吸い込まれていった……って

「はぁあっ!?どうなってんだよフィリップ!」

『わからない…これは僕にもさっぱりだ!ゾクゾクするねぇ!』

「今してんじゃねぇ!」

「え、え、え、これなんですか!?ちょっとぉー!?」

ヒートメモリをとりこんだ宝石はさらに赤く輝き、その光は立花響を包み込んだ。

「立花ぁ!!!」

 

左さんがノイズに狙われて、赤と青のメモリを弾き飛ばされてしまった。

今は緑と黒で戦っているけど、あれだとノイズと肉弾戦しかできないみたいで、完全に防戦一方になっていた。

せめて落ちたメモリがあればと考えた私は近かった赤いメモリを手にしたんだけど…。

「なんですかこれぇー!」

メモリはヒート!と叫んだと思ったら私のギアのマイクユニットへと吸い込まれていき、代わりにマイクユニットがその赤さを増しながら更に光り輝いた。

その光は私を包み込み、かと思いきやいきなりギアに炎が燃えた。

「えっ!?嘘ぉ!?……って、熱く、ない?」

でも、その炎からは熱さは感じず、むしろ私に力を与えてくれるかのような暖かさを感じた。

『異世界の…少女よ』

その炎が激しく燃え盛った時、どこからか優しい男の人の声が聞こえてきたような気がした。

『私の愛したこの街を…そして仮面ライダーを…頼む』

その声が聞こえたと同時、体の炎は形を成し、光が晴れる。

「おいおい…あのバカ…なんだよありゃあ!」

「なんデスか!?あのギアは!」

「へ?って、これ何!?」

光が消え、私の姿を見直すと、ギアは大きく姿を変えていた。

腕と脚のギアは炎をそのまま固めたような形となり、スーツも真紅の色に染まっていた。

目には赤いゴーグルがつけられていて、頭部の形状も大きく変わっているみたい。

何よりも、体の奥から燃えるような力が湧いてくるのを感じた。

「これなら…はぁぁあ!!!」

私は勢いをつけてノイズへと飛びかかり─

「おらぁぁぁあ!!!」

思いきり、ノイズにアッパーをかましたのだった 。

 

「はっ!!てやっ!せい!はぁぁあ!!!」

ヒートメモリが入り込んだ立花響は、その姿を著しく変化させ、ドーパントに向かって殴り掛かり、現在完全に優勢に立っていた。

「おい、フィリップ…立花の攻撃…」

『あぁ、先程までとはまるで違う。確実にダメージを与えている』

どういうことだ…?まさか、ガイアメモリを取り込んだからか?

『その可能性は非常に高い。これは仮説だが、あのドーパントは彼女たちの言うノイズの性質を持ち合わせたドーパントなのだろう。さしずめノイズドーパント、と言ったところかな?故にダブルの力だけでもシンフォギアの力だけでも決定打を与えることが叶わなかった…しかし!』

「立花がヒートメモリの力を纏ったから、アイツにダメージが通るようになった、か…」

なるほどな。それなら話は通る。正確に言えば通じてはいたのだろうが、しかし受けたダメージとはもう片方の性質がそのダメージを軽減していたのだろう。立花響の話から断片的に得た情報で考えるなら、ノイズとやらが俺たちの攻撃をほぼ防げると仮定していい。故に俺たちの攻撃は足止め程度にしかならなかった。一方ドーパントの性能は人間の延長線みたいなものだ。故にシンフォギアでなら一定のダメージは見込めていた。さっきまでダメージがまるで通らなかったのは、おそらくノイズとドーパントの融合度が上がった、と見ていいだろう。

「はぁぁあ!!!」

と、立花響が仮称ノイズドーパントへ重い一撃を叩き込んだ時のことだった。

ノイズドーパントからメモリが排出されたのだ。

即座にノイズドーパントは腕を伸ばしてそのメモリを確保しようとする。

「フィリップ!」

『あぁ、必ずあれを掴み取るんだ!』

【Luna!Joker!】

サイクロンメモリをルナメモリへと変更し、ルナジョーカーへ。そのまま右腕を伸ばし、ノイズドーパントよりも一瞬早くメモリを掴みとる。

「これは…」

『ダブルのメモリと似ている…!だけど、T2では無さそうだ』

掴み取ったメモリにはNの文字。正式名称は……

「Noise…?」

『いや、違う。それこそがノイズだ。これは……!』

フィリップの言う通り、Noiseの文字が砂嵐のように滲み、消えていく。

そしてそこに表れた本当のメモリの名は

「ナ、ナスカ……だと!」

『何故、ナスカメモリがここに…しかもこの形状の!』

フィリップが狼狽するのも無理はねぇ。ナスカメモリは、かつてこの街を愛し、そして風となり散っていった俺たちのライバルにして俺の友、園咲霧彦の使っていたドーパントメモリだ。

それが何故このノイズドーパントから、しかも俺たちのメモリの形で出てきたのか、正直な所俺にもさっぱりわからない。

だが。

「フィリップ、こいつ使うぞ」

『翔太郎、本気かい?敵から出てきた正体不明のメモリを使うなんて…!』

「正体不明じゃねぇ。こいつは霧彦のメモリだ。はっきりわかる」

『そんなハズはない。園咲霧彦のナスカメモリは冴子姉さんが回収し、クレイドールによってメモリブレイクされたハズだ』

「ちげぇんだよフィリップ、そうじゃねぇんだ。そういう理屈じゃねぇ。心でわかんだよ…。俺を信じてくれ」

『……仕方ない。君がそうなると譲らないのは知っているからね。今回はボクがどこまでも相乗りする番さ』

「ありがとよ、相棒」

俺たちはルナメモリを抜き取り、そしてナスカメモリを構える。

【Nasca!】

「行くぜ…霧彦」

(あぁ、私たちの愛する街を、守るぞ。仮面ライダー)

「『(変身!)』」

メモリを装填し、ドライバーを展開する。

【Nasca!Joker!】

黄色のルナから、空を思わせる水色へ。

首にはオレンジのマフラーが巻き付き、身体が軽くなるのを感じた。

そして左手には、かつてのライバル、ナスカドーパントの使用した剣、ナスカブレード。

仮面ライダーW、ナスカジョーカーへと、俺たちは無事変身を遂げた。

 

「うぉらぁ!」

叩きつけるようにナスカブレードでノイズドーパントへと切りかかる。

「■□□□■□■■□!!?」

先程までとは異なり、ノイズドーパントは大きくよろめき、苦痛の悲鳴をあげた。

『攻撃が効いている?何故だい?翔太郎』

「簡単だ。立花がシンフォギアってやつを纏う際、歌ってたろ」

『あぁ、確か…Balwisyall nescell gungnir tronと…ガングニール…?まさか!』

「あぁそのまさかだ。ガングニールって響きだから混乱したが、つまりはグングニル。神代の槍のことだ」

『つまりあのノイズは、先史文明期の力に弱い、ということかい?』

「多分っな!だが!」

正直言えばこれは賭けだった。ナスカのメモリがヤツから出た理由もわからない以上、本当に攻撃が通るかまでは自信がなかった。

だが、霧彦が、背中を押してくれたような気がした。俺だけじゃねぇ。多分、立花響の背中も。

「何より、あいつの意思が残った力が届かねぇハズはねぇと思ったんだよ!」

『……やれやれ、キミはハーフボイルドだね』

「うるせぇ!…おい立花!」

「は、はい!」

俺たちのやりとりに完全においてけぼりになっていた立花響に声をかける。

「どうやらアイツにダメージ通せるのは、今は俺たちとお前だけみたいだ。呼吸を合わせていくぞ!」

「はい!」

立花響は俺の声に合わせて拳を構える。

まずは俺が一撃剣で切り込み、怯んだところを回し蹴りで吹っ飛ばす。

そこに立花響が拳を合わせて上空へとぶん殴る。

「行くぞ!」

「はい!」

掛け声に合わせ、ナスカメモリをドライバー横のスロット─マキシマムスロットへ差し込む。

【Nasca maximumdrive】

「はぁぁ……!!」

立花響も両腕を合わせ、右腕に装備を集結させる。

「『ナスカジョーカーエクストリーム!』」

俺たちはマントを羽根のように羽ばたかせ高速で宙に浮き、力を貯めたナスカブレードを横一文字に振り抜く。

「貫けぇえええ!!!!!」

その直後に全ての力を溜めた拳をノイズドーパントへと立花響がぶち込んだ。

「!!??!!■□■□■□■■□■□?!!!!??!」

俺たちと立花響が地面へ着地すると同時、ノイズドーパントは断末魔をあげながら爆散した。

「おお…ついにやったぜ!」

「響さーん!やったデス!勝ったデース!」

向こうから立花響の仲間が向かってくる。

「うん、切歌ちゃん、クリスちゃん、やったね!」

3人でハイタッチをしている立花響たちを横目に、俺たちはノイズドーパントの変身者を探す。しかし…

「どこにもいねぇな…逃げたか?」

『いや、ひょっとすると、変身者はそもそもいないのかもしれない』

「おいおい、それってどういうことだよ、フィリップ…」

『まだわからない。一度彼女たちの世界へ行ければ、あるいはなにか掴めるかもしれないが…』

あまりにも情報が不足しすぎていて、俺たちが行き詰まっていると、立花響はあっけらかんととんでもないことを言い出した。

「え!じゃあ行きますか?私たちの世界!」

「……はぁ!? 」

立花響の顔を見返すと、立花響は「?」と能天気な顔で笑っていた。




暁切歌「流石は響さん!よくわかんないノイズも無事に倒せたデース!でもあのギアはなんだったんデスかね?カッコよかったデース!」

次回、仮面ライダーW
「前見た時にはこんなもんなかったぞ…?」
「で?誰が残る?」
「ようこそ、S.O.N.G.へ。君を歓迎しよう」
「ここが並行世界…ゾクゾクするねぇ」
これで決まりだ。


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Wを超えて/向こう側の世界

前回のナスカメモリの設定、思ったよりも受け入れられたみたいで嬉しかったです。感想ありがとうございます!


─風都市内、とある公園

「ここです、ここ!」

俺とフィリップはノイズドーパントを無事倒した後、立花響によって風都の中でも人の寄らない小さな公園に連れていかれた。そこでは、巨大な空間の裂け目が開かれていた。

「おいおい、この前見た時にはこんなもんなかったぞ…?」

「彼女たちの聖遺物に反応をして空間が歪曲しているのか…?興味深い。ゾクゾクするねぇ」

「しかしよぉ、ギャラルホルンのゲートを通るには聖遺物を纏ってないといけないんだぜ?こいつら持ってないじゃねーか。どうすんだよ」

「あっ」

「デース!」

「今あって言ったか!あって言ったよな!?このバカ!考え無しか!それにお前も、少しは気づけ!このバカコンビ!」

「あっはは…どうしよっか?」

「困ったデース…」

「おいおい、どーすんだよ…」

…これは、いきなり前途多難だな。

 

─風都市内、風都タワー前

時間は少し前に遡る。

「だったら私たちの世界に来ますか?」

ノイズドーパントを倒したものの、得られた情報の少なさにやきもきする俺たちに、立花響はそんなことを言ってきた。

「行けるのか…俺たちが?」

「はい!行き来は出来ますよ!じゃないと私たちも帰れないですし!」

『確かに、彼女たちが移動できるのなら、ボクたちが移動することも不可能ではないはず…』

「たしかになぁ……っとそうだ。おい立花!メモリ返せメモリ!」

「あ!そっか!ギアに吸収されちゃってるんだ!うわー、どうやって返せばー!?」

「嘘だろおい…」

「おいバカ。とりあえずギアを解除してみたらどうだ?」

「そうデスよ!案外コロッと落ちるかもしれないデス!」

メモリの排出方法がわからずに慌てる立花響に、既にシンフォギアを解除したらしい2人がそう提案し、立花響が解除すると、なるほど確かにヒートメモリはアクセサリとは別に立花響の手に出現した。

「良かったぁー!もし中に混ざっちゃったらまーた未来に助けてもらうとこだったよー」

「お前、あの時みてーなことが起きてたって自覚してたのにそんな軽かったのかよ…」

「今の聞いたら未来さんもさすがに怒るんじゃないデスかね…」

「まーまー!はい!左さんどーぞ!」

なんだかよくわからないことを3人で喋ると、俺たちにヒートメモリを返してきた。

「おう、じゃあ本題だ。お前たちの世界に案内してもらうとすっか」

「りょーかいです!」

こうして俺たちは変身をとき、フィリップは予め場所を聞き、そこで落ち合うこととなった。

 

「うわー!どうしよう!これまでってみーんな装者だったからうっかりしてたー!」

「そんなこったろうと思ったぜ…まぁ、ここまで聞こうとしなかったアタシも悪いんだけどな」

「私も気づかなかったデース…」

「おいおい…こりゃどーすんだ?俺たちは行けねぇってことかよ?ここまで来てそりゃねぇぞ?」

「うーん…聖遺物を身にまとっていれば行けるんですけど…どーすればー!?」

立花響が頭を抱えて唸る。聖遺物か…こっちにゃそんな都合のいいもの…なんて…?

「おいフィリップ!」

「あぁ、翔太郎、。これのことだね?」

ふと思いつき、フィリップへ顔を向けるとフィリップも気がついたようで、手にナスカのメモリを持っていた。

「このナスカメモリは先程の戦いでノイズドーパントにダメージが通せたことから、先史文明期の遺産…所謂、君たちが言うところの聖遺物の条件を満たしていると見て良さそうだ」

「つまりナスカジョーカーなら入れるってことじゃねえか?」

「はっ!それだー!それですよ左さん!フィリップさん!」

「いや、立花響、それに翔太郎。行くのはボクとそこの銀髪の子だけが良いだろう」

「はぁ?どうしたんだよフィリップ、1番ちっこいやつを選ぶなんて、ロリコンにでも目覚めたか?」

「おい、どー言う意味だそこの帽子ヤロー」

「おっとすまねぇ」

「あ!そっか、紹介してなかった!えっとですね、銀髪のちっちゃくて可愛い子がクリスちゃんで、黄色い髪の可愛い子が切歌ちゃんです!」

「こらバカ!勝手に紹介とかすんじゃねぇ!……どーも、雪音クリスだ」

「暁切歌デース!よろしくデース!」

立花響が説明した銀髪と黄色い髪の少女─雪音クリスと暁切歌は、片方はやけくそ気味に、もう片方は立花響を思わせるような元気ハツラツ気味に、それぞれ自己紹介をしてくれた。

「おう、俺は左翔太郎。ハードボイルドな探偵だ。こいつはフィリップ、俺の相棒さ」

「よろしくね、立花響に暁切歌、それと、雪音クリスちゃん」

「なんでアタシだけちゃん付けなんだよ!アタシはこんなかで1番年上なんだからな!?」

「何!?」

「なんだって!?」

「そんなに意外かよ…てめぇら風穴開けてやろうか!」

「うおっと!悪かったよ!……で?フィリップ、なんだってお前と雪音だけとか言い出した?」

「理由としては至極簡単さ、さっき倒したノイズドーパントがまた現れるかもしれない。先程は変身者はいないかもと言ったが、万が一にも逃げ出した可能性も、そもそも複数体いる可能性もある。翔太郎なら情報から現場へ向かうのは容易いし、現状ノイズドーパントへ対抗できるのはナスカの力と立花響しかいない。そしてナスカはボクが並行世界へ渡るために使用する。となるとノイズドーパントと交戦できる戦力は足止めに照井竜と暁切歌、そしてダメージを与えるために立花響が必要、ということさ」

「なぁるほどな…しょうがねぇ、代わりに情報、しっかり掴んでこいよ、相棒」

「当然さ、君こそボクがいない間にこの街をよろしく、相棒」

「おう!」

そもそも、俺にはまだ人探しの依頼もある。今回の事件について、照井に話しておくついでにその辺も探っておかないとな。

「さて、じゃあ行こうか、クリスちゃん」

「だからちゃん付けすんじゃねー!しかもアタシだけなんか馴れ馴れしくねぇか!?……ったく」

怒鳴りながらも雪音クリスは胸のペンダントを構える。フィリップもまた、ダブルドライバーによく似た一人用の変身ツール、ロストドライバーを腰に構える。

『Killter Ichaival tron…』

【Nasca!】

「変身」

こうして、ギアを纏った雪音クリスと、ナスカメモリで変身できたフィリップ─仮面ライダーナスカってところか?それともあくまでもフィリップの単独変身をサイクロンと呼称して、ナスカフォームか?─は、無事、並行世界へのゲートをくぐり抜けることが出来た。

「さーて、俺たちは俺たちのやれることをやるか!事務所戻るぞ、立花、暁」

「はーい!」

「了解デース!」

……なんだか、頭の悪い返事が二つほど来て、ひょっとしてあの子が一番マシだからフィリップは選んだのか?と思ったのだった。

 

─S.O.N.G.本部、ギャラルホルン前

無事にゲートをくぐり、アタシたちの世界へと戻ることが出来た。ギアを解除しながら隣を見ると、さっきの水色ヤローもちゃんといて、こいつの仮説が正しかったことが証明された。

「クリスくん、戻ってきたのかね?む、そいつは…!?」

アタシが帰還したことでギャラルホルン前までおっさん─風鳴弦十郎─がやってきた。そしてアタシの隣の水色ヤローを見ると、警戒心を顕に戦闘態勢をとる。

まぁ、アタシでも多分そうする。こいつ見るからに怪しいしな。

と、警戒されてることをわかったのか、水色ヤローは腰元のツールを縦に直し、メモリを抜いて人型に戻った。いや、まぁ元から人型ではあったけど…ややこしいな。

と、こいつは両手を上げて

「警戒させてすまない。ボクは向こうの世界で彼女たちと協力関係にあるものだ。少なくとも敵ではないよ」

と弁明した。

「それは本当か、クリスくん」

「あぁ、こいつらのおかげで向こうに出たよくわかんねーノイズを倒せた。こいつは味方だよ」

「よくわからないノイズだと?」

「それについてはボクから話をしたい。この中でノイズや、彼女たちのシンフォギアシステムについて1番詳しい人を呼んで欲しい」

ノイズやシンフォギアシステムに詳しい……ってなるとエルフナインだろうか。こんなやつの前にエルフナインを出すのはちょっと不安じゃねーか?

おっさんもその考えが頭によぎったようで、しばし苦い顔をしたが、しかし今は情報が欲しいってのはこっちも同じと

「…わかった。それに、ここでは話すには向いていない。司令室に来てもらおう」

と、言った。

「ありがたい。しかしこれがギャラルホルン…聖遺物か。それにこの部屋だけでもボクたちの世界からすれば未知の技術で溢れている。ゾクゾクするねぇ」

「アタシからすればアンタの変身した姿や技術の方が未知の技術だよ」

 

※S.O.N.G.本部、司令室

「なるほど、地球の記憶を収めたガイアメモリにその力を人体に宿すドーパント、その毒素を極限まで抑えたダブル…確かにボクたちの世界とは大きく技術体型が乖離しているようです、ぜひ解析したいのですが…」

「先史文明期に起きたバラルの呪詛、錬金術、人を殺す為に作られたノイズに、バビロニアの宝物庫…そしてノイズに対抗する為に聖遺物の欠片より作られたシンフォギアシステム…ボクたちの世界とは歴史からして異なっていると言ってもいい、ゾクゾクするねぇ…是非検索したい」

数刻後、そこにはお互いの情報を得て、様々な仮説や考察を交えて会話を続ける研究者と探偵の姿があった。

「フィリップさん!どうかガイアメモリを1つ、貸していただけませんか?必ずお返しします!」

「構わないとも。代わりにこちらにも1つ、シンフォギアシステムを調べさせてくれないかな?」

「わかりました!クリスさん!すみませんがイチイバルを貸していただけませんか?」

……なんか気づいたらアタシのイチイバルがあの探偵に貸されることになってた。

「はぁ!?まぁ、いいけどよ…壊すんじゃねぇぞ?」

「安心したまえ、少し解析するだけさ……あとは、そうだね、少し開けた場所なんかはないかな?」

「ありますけど…なぜですか?」

「ちょっとばかり検索をしたくてね」

「検索…ですか」

「あぁ、ひょっとするとこの世界でなら、地球の本棚の内容も変わっているんじゃないか、とね 」

「地球の本棚ですか?」

「まぁ、ボクのちょっとした特技みたいなものさ。じゃあ、ちょっと場所を借りるよ」

「は、はぁ…」

「これが並行世界……ゾクゾクするねぇ…」

…この瞬間、アタシの中で、こいつの呼び方が「検索バカ」に変わったのであった。




クリス「まったく、あの検索バカはアタシのことだけちゃん付けで呼ぶわ変な姿に変わるわ、しまいにゃアタシのギアを調べたいだとちょせぇことばかり言いやがる!エルフナインも意気投合してるし。…アタシのギア、無事に返ってくるのか?」

次回、仮面ライダーW
「うわー!美味しい!すっごい美味しいですよこれ!」
「お前…良い奴じゃねぇか!」
「なんでまたノイズドーパントが出てるデス!?」
「この街は、とてもいい風が吹くんだよ」
「『なんじゃこりゃぁぁあ!!!???』」
これで決まりだ。


※私事により次回更新は少し遅れます。申し訳ございません。


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Wが吹く街/奇跡の変身

※今回はオリジナルのメモリとギアが登場します。苦手な方はお気をつけください。また、本文中に翔太郎がダブルの変身システムについて説明していますが詳しい資料を所持していない為ふわっとした妄想になります。ご注文ください。

この話を書き終わったあと、XV2話を見てちょっと精神的にまいってます。
次回は遅くなります……すみません……


─風都市内、風麺

「うわー!美味しい!すっごい美味しいですよこれ!」

「デスデース!ナルトが大きいのも最高デース!」

「はっはっは、だろ?ここのラーメンはうめえんだよ!俺の奢りだ!食え食え!」

「はい!ありがとうございます!」

「太っ腹デース!」

さて、なんで俺たちが風麺で食事をしているのかといえば、その話は少し前にまで遡る……ことはなく、単にあの後立花響と暁切歌の両名が「お腹がすいた」と言うので、この街の名物料理である風麺へと連れてきた、という次第である。

「ふぅー、美味しかったぁー!ありがとうございます左さん!」

「ごちそうさまデス!」

「…………おう」

ちなみに、立花響の奴がラーメンを三杯も食べたので、俺の財布が予想より軽くなったのは、また別の話だ。

 

─風都市内

「左さん!なんか、あちこちに風車がありますねー」

「そう言えばさっきのノイズと戦う時も、でっかい風車があったデスよね」

腹ごなし兼探し人の捜索にて街を歩いていると、立花響と暁切歌は街のあちこちにある風車が気になったようだった。

「あぁ、この街はよく風が吹くから、風力発電をメインにしてるんだ」

俺が説明するや、爽やかな風が吹き、風車を回す。

「うわぁ…!なんて言うか、いい風ですね!」

「なんだか気持ちいいデス!」

「そう、この街はとてもいい風が吹くんだよ。だから、俺はこの街では誰にも泣いて欲しくないんだ」

「それが左さんの戦う理由、ですか?」

「あぁ、この街で困っている人がいれば、俺は必ず助けてやりてぇ。だから探偵をやってるのさ」

「私もです!」

「立花もか?」

「あーいえ、私はただの趣味なんですけど、もし周りで困っている人がいたら、助けてあげたい。人助けは私の本気の趣味なんです!」

いい笑顔でそう言い切る立花響。

「おっまえ…良い奴じゃねぇか!」

感極まって立花響の背中を数回叩くと、立花響は照れくさそうに笑っていた。

なんの見返りもなく人に手を差し伸べられるこいつは、どれだけ優しいのだろう。その上でこんなに真っ直ぐなんだ。きっと、これまで伸ばしてきた手の分だけ、助けられた誰かもこいつに手を伸ばしてくれてるのだろう。

 

「そういえば、ダブルってどうなってるんデスか?正直フィリップさんと左さんがひとつになってると言われてもピンと来ないデス」

歩いていると、暁切歌がそんなことを切り出した。

「うーん、そうだな…俺も詳しい理屈まではわかってねーんだが」と胸元からジョーカーメモリを取り出しながら話す。

「このガイアメモリには地球の記憶ってやつが込められていて、俺が使っているこのドライバーには、片方の意識をメモリごともう片方に転送する機能がある。それを読み込むことでフィリップの意識と俺の意識をひとつの体─つまりはダブルだな─に統合させて変質させている…んだと思うぜ」

「なんかあやふやな言い方デス」

「詳しい理屈はフィリップにしかわかんねーさ。俺としては街を守れればいいんだからな」

「そんなもんデスか」

「おう、そんなもんさ」

そう、力の理屈なんかよりそれをどう使うかが大事なんだ。

俺は、この力をこの街のために使いたい。結局はそれが全てだ。

「……っ、左さん、切歌ちゃん!」

と、立花響が俺たちを制した。

何かと思ったが、前を見てわかった。

「■□□□■□■■■!!!」

先程きっちり倒したハズのノイズドーパントが、俺たちの行く手を遮っていた。

 

「ななな、なんでまたノイズドーパントが出てきてるデース!?響さんたちが倒したはずデス!」

暁切歌が動揺するのも無理はない。だが、俺はもしかして、と言う予感があった為、そこまで驚いてはいなかった。立花響を見やると、どうやら彼女も同じだったようだ。

「1回目の時も、2回目の時も、確かに手応えはあった」

「だけど、実際にこうして現れてるってことは、多分」

「あぁ、こいつらは複数体存在してるってことだ…」

さて、どうしたものか。ロストドライバーはフィリップに託しちまっているし、また立花響にメモリを使ってもらうしか……って!

「しまったぁ!フィリップの野郎、ヒートメモリ持ってっちまってるじゃあねぇかよ!」

「はっ!!そうでした!」

「しまったデース!?」

なんて初歩的なミスをしちまったんだ、サイクロン、ヒート、ルナのメモリはアイツが持っていっちまっている。更にいえばノイズドーパントに単体で対抗できるナスカメモリもだ。

果たして立花響は俺のメモリでも上手く適応出来るだろうか…いや、直感だが怪しい。あの時ヒートを立花響が選んだのは惹かれあったからだ。トリガーメモリを取りに行かなかった以上、ジョーカーやメタルも怪しい。

「くっ…イチバチだが、こいつが並行世界ってやつでも繋げられるか勝負ってところか…!」

ダブルドライバーを取り出し、腰にまきつける。

「おいフィリップ!聞こえるか!フィリップ!」

ドライバーを通してフィリップに呼びかけるが返事はない…くそ、絶体絶命ってヤツか…と思った時、頭の中に声が響いてきた。

『えっ、なになに!?なんで左さんの声が頭の中に!?というか腰になんか巻きついた!?』

「この声…まさか!?」

後ろを振り返り、立花響の方を見ると、なんと彼女の腰にはダブルドライバーが巻き付けられていた。

「あ、あの…なんか巻きついたんですけど…って、あ、あれ!?」

困惑する立花響を、更に困惑させるかのように彼女の胸のペンダントが光り輝き、その姿を変えていく。

やがて光が収まると、そこにあったのは

「こ、これって……」

「「ガイアメモリぃ!?」」

彼女の手には、ペンダントが変化したオレンジのメモリが握られていた。

「な、ななななにこれー!?」

【Gungnir!】

「って、私の声ー!?」

慌てた彼女はそのまま勢いでメモリを起動させてしまい、何故か彼女の声でガイアウィスパーが流れた。

しかも、ガングニールって……まさか。

「おい立花!いや響ぃ!」

「はいぃ!?」

「そのメモリを右側に差し込め!」

「え、ええ!?」

「早くしろ!」

「はい!!」

立花響は俺に怒鳴られるままにメモリをドライバーへ差し込む。しかし、ドライバーへの転送は行われない…となると!

「おい響!今から多分そっちのベルトの左側にメモリが行く!押し込んで開け!いいな!あと切歌ぁ!俺の肉体頼んだ!」

「はい!ってえぇ!?」

「デース!!?」

困惑しっぱなしの2人を無視して、ジョーカーメモリを差し込む。すると俺の意識は薄くなっていき、転送が始まったのを感じた。

 

ベルトに黒いメモリを差し込んだと同時、左さんはいきなり地面に倒れた。

「切歌ちゃん!」

「デデース!?」

地面と激突する前に、間一髪切歌ちゃんが抱えてくれたので助かったけど、つまりはさっき言ってたのはそのまんまってことで……と考えてると私のベルトに黒いメモリが現れた。

「わっ、ほんとに来たよ……えっと、こうして、こう!」

左さんがやってたように黒いメモリを押し込み、思い切り展開する。

【Gungnir!Joker!】

ベルトから─正確にはベルトに刺さったメモリから音声がなったかと思うと、下から私を包むように風が吹き荒れた。

「わっ、わわわー!!!???」

「響さーん!?」

やがてすぐに風は収まると、私の姿は大きく変わっていた。

なんて言うか、ギアを纏ってる時に近いけど、装備やスーツ、果ては髪の毛までが左が黒、右がオレンジになっていた。

と、頭の中に声が聞こえてきた。

『なんとか成功したな…』

「えっ、その声、左さん!?えっ、でも体はあっちで、気絶してるし…まさか!?」

『あぁ、そのまさかだ。俺の意識がお前の肉体に宿ってダブルになってんだ。ガングニールジョーカーってとこか』

「え、ええー!?」

ホントに左さんと一緒になってるの!?なんて言うか、凄い感じたことの無い一体感だよー!?

『安心しろ、俺は基本なにもしねぇよ。少女に戦わせるのは気が引けるが、緊急事態だ。腹括ってもらうぜ、響』

「左さん、そう言えばさっきから私たちのこと名前で…」

名前を知ってからこっち、ずっと苗字で呼んでたのに、私にベルトが巻きついた時から、名前で呼ぶようになっていた。

『さっきまでは協力者、だったが俺が守るって思ってたからな。だが、俺一人じゃどうしようもねぇ。お前たちにも戦ってもらうしかねぇ。なら、一人前の仲間として、敬意ははらうさ』

「左さん…!」

『行くぞ、響!』

「はい!」

私たちは一つ息をすると、ノイズドーパントへ向かって飛び出し

「たぁぁああ!!!!」

思い切り鉄拳をぶちかました。

「■■■□■!!??!」

ノイズドーパントは大きくよろめく。

『こいつ、さっきまでのヤツらとは違ってかなり弱いみてぇだな。一気に叩くぞ!』

「了解しました!行きます!」

右、右、左、右、左。

勢いよく連打をかましていく。

その度にノイズドーパントは大きくダメージを受けるみたいで、動きがみるみる遅くなっていった。

『よし、メモリブレイクだ。ジョーカーメモリをベルトの右側の黒いスロットに入れろ!』

「はい!」

左さんの指示に従い、メモリを黒いスロットへ入れ替える。

【Joker!maximum drive】

『技名は…決めたぜ、ジョーカーピアースだ。呼吸を合わせて行くぞ』

「えっ、あっ!はい!ジョーカーピアーズですね!」

いきなり技名を付け始めた左さんに少し戸惑うも、呼吸を合わせるための掛け声だとすぐにわかり、息を整える。

左腕のアーム部分がいつものように変形し、ドリルのように回転する。

呼吸を合わせて…

『今だ!』

「『ジョーカーピアース!』」

腕を振りかぶりながら突進し、思い切りノイズドーパントへドリルで殴り、突き抜けた。

「□□□■□……!!!」

直後、ノイズドーパントは思い切り爆発し、私たちは変身を解いた。

 

─風都市内、鳴海探偵事務所

「まさか、あんなことが起きるなんてな」

「びっくりでしたよー」

「1番びっくりだったのは多分、横から見てた私デース…」

「あはは、それもそうかもね」

ノイズドーパントを倒した俺たちは、事務所へと戻り休息をとっていた。

急場とはいえダブルに変身─しかもあんなイレギュラーな形状に、だ─したのだ。流石に休ませないと不安も出てくる。

「でも、あの後すぐにメモリからギアペンダントにもどっちゃったデスね」

「うん、あのベルトも消えちゃったし」

そう、あの後。変身を解除した直後に響のメモリはペンダントの形に戻り、腰のダブルドライバーもその姿を消した。

その後何度か装着し直したが、同じ現象は起こらなかったのだ。

「まさに奇跡のダブル、ってところか」

「その言い方かっこいいデスね!」

「お、切歌、お前もわかるか。このセンス!」

「はいデス!」

「お前は見どころあるぞ!」

「やったデス!探偵もカッコいいデスし、目指すのもありデス!」

とまぁ、考えても分からなかった俺たちは、そんな何気ない会話をしていた。

何か、大事なことを忘れている気もするのだが……。と、その時玄関から勢いよく亜樹子がやってきた。

「翔太郎くーん?女の子と仲良くするのはいいけど!人探し!少しは進んだの!?」

「ああーー!!!!やべぇ!忘れてたぁ!」

俺としたことが、なんて失態だよ…。

「なるほど、これがフィリップさんが言ってた」

「ハーフボイルド、デスね!」




響「いやー、左さんの声が頭の中から聞こえて、しかも切歌ちゃんにも聞こえてたみたいでダブルって凄いんだなーってなったよ!あとあと、風麺のラーメン、すっごい美味しかったなぁ。今度は未来と行きたいかも!」

次回、仮面ライダーW
「これが、雪音の言っていたノイズドーパントとやらか!面白い!」
「地球の記憶と先史文明期の力を混ぜることが出来れば!」
「理想的なギアシステムと、ダブルが完成するかもしれない…」
「アタシが守んなきゃいけねぇだろうが!!!」
これで決まりだ。


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Lの輝き/最後の希望

2話ショックに打ちのめされてますがなんとか更新…。だって3話でまた打ちのめされそうだし…。
ここからは私生活が少し忙しく、更新ペース少しゆっくりめになりそうです。すみません。


─S.O.N.G.本部、研究室

「これがガイアメモリ…解析すればするほど未知の部分が出てきます。流石は異世界のテクノロジー…聖遺物に似ていますが、しかし本質が異なってますね。地球の記憶、概念から物質までを、それが現象であろうとそれが存在していればその力を引きだせる異端技術。どうにかシンフォギアシステムに応用できないでしょうか…」

「なるほど。ガングニール、イチイバル、天羽々斬…実際に過去に存在した聖遺物─ボク達の世界のそれではなく、間違いなく実在していたそれを、その欠片を利用したとは聞いていたが、実に3億種類のリミッターにロック…更にはそれを利用したギアのリビルド…この小さなペンダントの中にガイアメモリ以上の技術が詰まっている…明らかなオーバーテクノロジー…ゾクゾクするねぇ」

エルフナインの研究室では、未知の技術に魅了された2人が涎を垂らしそうな─確か、垂涎だったっけか─表情で解析に勤しんでいた。

どうでもいいけどアタシのイチイバルはちゃんと返ってくるのか?あの検索バカの表情見てると不安になってくるぜ。

「さて」

と、検索バカが解析を終えて立ちあがる。

「この世界の地球の本棚で君たちの言うノイズについての検索も終了し、シンフォギアシステムも解析した。いや、し終えたとは言えないけれどもね。エルフナインちゃんもおそらくは確信しただろうけど、シンフォギアシステムとガイアメモリは非常に在り方は似通っている。そうだね?」

「はい。地球の記憶から力を引き出すガイアメモリと、過去の聖遺物の力を引き出すシンフォギアシステム。この2つは「過去の力を今に引き出す」と言う点において非常に似通っています」

「そう。まぁガイアメモリの記憶とは常に過去とは言えないが、それはシンフォギアシステムも同じだ。状況によって新たな姿を、新たな力を生み出すことが出来る」

「つまり、シンフォギアシステムにガイアメモリの力を与えることは、不可能ではないはずです!」

「そう、そしてガイアメモリにシンフォギアシステムを流用することも可能なハズだ」

クリスちゃん、これは返そう。とアタシにイチイバルを返却しながら検索バカは話を続ける。

「ただこれには当然ながら時間がかかる。ガイアメモリにしてもシンフォギアシステムにしても、ブラックボックスが多すぎる 」

「その通りです。フィリップさんの世界で響さんがガングニールとヒートメモリの適合に成功したとお聞きしましたが、それは偶発的なもの。おそらく再現は厳しいと思われます」

「あぁ。だがアレによって判明したこともある」

「そうなのですか?それは一体…」

「ガイアメモリはシンフォギア装者とも惹かれ合う、ということさ。これは以前ボク達の世界で起きたT2ガイアメモリ事件の際や、翔太郎と初めてダブルへ変身した時に実証済みだ。まず立花響とヒートメモリはおたがいが惹きあった結果として適合できたと考えていい」

「なるほど、つまり他の装者にも適合するメモリがあるかも知れないと。そういうことですね?」

「その通り。こればかりは試してみないとわからないけどね」

「では今こちらにいる装者を呼んで、フィリップさんのメモリと適合できるかの実験を…」

と、2人の話がヒートアップしていく中、突然警報が鳴り響いた。

「おい2人とも!一旦発令室に行くぞ!」

「はっ、はい!」

「仕方ない…」

エルフナインは慌てて、検索バカは残念そうに発令室に向かうのであった。

 

─S.O.N.G.本部、発令室

「おっさん!」

「来たか雪音、エルフナイン」

「待ってたわよ」

「司令、クリス先輩達も来ました」

「うむ。全員揃ったな」

アタシ達が発令室に向かうと、そこでは全員既に揃っていた。

「そんで、どうしたんだよおっさん」

アタシが尋ねると、おっさんは神妙な顔で告げた。

「あぁ、単刀直入に言うと、ノイズの反応が検知された。既に住民の避難は完了している」

「なっ!ノイズ…やはり現れたか」

「ひょっとしてカルマノイズじゃ……!」

「いや、反応としては通常のノイズに酷似している」

「酷似…ということは」

「あぁ、僅かにだが差異が生じている」

つまり、アタシたちが戦ったノイズドーパントってやつの可能性があるってことかよ…。

「これより、装者達にはただちに現場に急行してもらう」

おっさんがそう告げると、同じことを考えていたのか検索バカが待ったをかけた。

「ボクも行こう。ひょっとするとノイズドーパントが来ている可能性もあるからね」

「迷惑をかけてしまいすまない。フィリップくんにも現場へ向かってもらい、件のノイズドーパントが相手であった場合、装者と協力して撃破してもらいたい」

「了解した」

「では頼んだぞ!」

「「「了解!」」」

おっさんの号令で、アタシたちは現場へと向かった。

 

─市街地

「あれか、確かに通常のノイズとは些か異なるようだな…研ぎ澄まされた殺意とでも言うべきものを感じる」

現場へ着いたアタシたちの前に見えたのは、やはりと言うか、ノイズドーパントだった。

「ここはボクが行こう。ノイズドーパントに対抗が取れるのは現状ボクだけだ」

「てめぇ一人に戦わせっかよ。アタシたちも援護くらいするぜ」

「私も戦える」

「ええ、例え攻撃の大半が通らなくとも、点滴が穴を穿つことは可能!」

「何より、ここで一人に任せて引き下がることなど、この刀身に流るる防人の血が許さぬさ!」

「……わかった。だが十分に注意をして欲しい。アレは君たちがこれまで撃破してきたと言うノイズとは大きく袂をわかった存在だ」

「わかってるよ!でも!アタシたちが守んなきゃなんねぇだろうが!」

アタシたちはギアペンダントを構え、聖詠を唱える。

検索バカは水色のメモリを取り出し、いつの間にか腰に着けていたベルトへ装填し、変身をした。

 

『Imyuteus amenohabakiri tron…』

 

『Killter Ichaival tron…』

 

『Various shul shagana tron…』

 

『Seilien coffin airget-lamh tron…』

 

「変身!」

【Nasca!】

 

アタシたちの身体を包むように光が迸り、それが収まる時、そこには4人の装者と、1人の仮面ライダーがいた。

 

「天羽々斬、推して参る!」

「ぶち込んでやるぜ!」

「行くよ、マリア」

「ええ!調、行きましょう!」

 

「■□□□■□■■■!!!」

アタシたちは気合いを入れると、ノイズドーパントへと攻撃を仕掛けたのだった。

 

 

 

「■□□□■□■□□■■!!!」

「ぐぁぁああ!!!」

「雪音!くっ、今助け……」

「■□□□■□□□!!!」

「しまっ…うあぁあ!」

「そんな、クリス先輩たちが!」

「調!気を抜いちゃダメ……!」

「■■□■■■□□□□□!!!」

「調ぇ!うわあああーーー!!!」

「マリア!」

「くっ……ここまで、とは…想定以上の…うっ…」

─結果から言えば、アタシたちは敗北しかけている。

最初の数分は、順調だった。

検索バカが剣でノイズドーパントへ攻め込み、アタシたちがその隙を埋めるように援護する。

実際、一体は呆気なく倒せたのだ。

─そう、一体は。

アタシたちが気を抜いた時、そいつは現れた。

まず触手を伸ばし、検索バカのベルトを攻撃してきたのだ。

検索バカ自体は吹っ飛ばされただけだったが、しかしその攻撃でベルトが破損し、変身が解けた。

何が起きたのかと顔を向けると、そこには2体目の。

いや、2体目と3体目のノイズドーパントがいた。

そこからはもうてんでダメだ。アタシたちの攻撃は通らない。油断していたところを攻め込まれて動揺が拭いきれない。

あっという間にアタシたちは倒され、システムが破壊されたのか、ギアまで解除されちまっている。

残ってんのはあの後輩1人。正直にいえば勝ち目がないのだ。

「逃げろ…月読…」

「そうだ…お前なら、すぐに本部に戻れるハズ…ギャラルホルンで…あのバカたちを呼んでこい…」

「そんなこと出来ない!皆を置いていくなんて…」

「調、ここでみんな倒れる訳には行かないの…お願い…!」

「いや、私は…皆を守りたい…!」

逃げろと叫ぶアタシたちの言うことを聞けないと、顔を横に振る。全く、先輩思いの後輩を持つと、いい事ばかりじゃないって事か…?

こうなればアタシが盾になって逃がそうと体を奮い立たせようとしていると、検索バカが何かに気づいたようにブツブツと独り言を始めた。

「月読…月…そうか!」

何かに思い当たった検索バカは、懐から黄色いメモリを取り出した。

確かアレは…ルナ、だったか。

「月読調!これを!」

最後の力と言わんばかりに検索バカはそれを後輩に思い切り投げわたした。

「これは…」

「それが最後の希望というやつさ。行き当たりばったりで申し訳ないけどね… 」

「最後の希望…」

後輩がメモリを持って混乱していると、後ろからノイズドーパントが攻撃してきた。

「月読!後ろだ!逃げろ!」

「調ぇー!!!!」

「……しまった…」

「それを起動するんだ!皆を守りたければ!」

「皆を……守る……!」

【Luna!】

検索バカの叫びに、いや、後輩の願いに応えるように、黄色いメモリは起動音を鳴らし、そして持ち主の身体を光り輝かせた。

「おいおい。この現象はあのバカの時と…」

「そう、同じだ。思いつきだったが、上手くいったようだ。月読調、つまりは月をその名に宿すなら、もしかしてと思ったが…」

「はぁ!?」

まさかこの検索バカ、そんなダジャレみたいな理由で賭けに出たのかよ!

「案外バカにできないものさ、名前というのはね」

「お前なぁ…」

アタシたちが軽口を叩いていると、光は収まる。

 

そこには、眩い月の女神が、アタシたちを護るように立ち塞がっていた。

「皆は私が守る…!お願い、新しいシュルシャガナ!」




翼「くっ、剣と定めた我が刀身、こうも容易く砕かれようとは…恐るべしはノイズドーパント。しかし姿形は覚えた。この姿、本部で共有しなければ…!」

次回、仮面ライダーW
「私たちに、力があれば…」
「興味深いデータが取れた」
「この翼が巻き起こす風、止められると思うてくれるな!」
これで決まりだ。


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C舞う剣/守るべきもの

3話は気持ちよく見れたー!
切歌ちゃんめちゃくちゃ可愛かった。
そしてジオウの来週がエターナル出るとかいうサプラーイズ。
そんなわけで最新話です。

次回予告の台詞は次話構想まだの状態で書いてるので大きくズレたりします。ええ。
あと今回のタイトルがLではないのには多分意味があります。多分。

ちなみに本当は今日の8時に投稿したかったです


─市街地

「皆は私が守る…!お願い、新しいシュルシャガナ!」

私は新しいギアを纏い、皆を守る為に前に出た。

軽く全身を見ると、シュルシャガナはこれまでとは全く違う変化をしていた。

大きなシルエット自体は変わらないけれど、例えば色─ギアの色は、前に響さんが纏ったような黄金ではなく、月の光のような金色へと変化していた。

他にも顔には赤いバイザーがあることがわかる。頭部の形状は結構変化してそうだった。

後は、あちこちに三日月の意匠が追加されていた。

 

これが、ガイアメモリと適合したギア。みんなを守るための最後の希望。

私はノイズドーパントを睨むと、歌い出した。

「♪〜はぁっ!」

頭のギアについたノコギリで攻撃を仕掛ける。

大ぶりの攻撃にしたので、当然ノイズドーパントはよける。けど、それこそが狙い…!

「曲がったぁ!?というか伸びたぁ!?」

後ろでクリス先輩の声が聞こえた。

そう。曲がって伸びたのだ。

ノコギリが繋がるアーム部分を急加速で伸ばし曲げて、避けて隙が出来たノイズドーパントへ確実なダメージを与えた。

「■■□■□!!!」

「♪〜甘い!」

一体を攻撃していると、横からもう一体が攻撃を仕掛けてくる。

それを躱しながら後ろへと下がり、ヨーヨーを少し上空の方向へ放る。

すると空中のヨーヨーから三日月の形をしたエネルギーが無数に発射され、二体のノイズドーパントを切り裂いた。

 

「あれが、ガイアメモリと適合したギアの力…なんと凄まじき力だ」

「月の光のような色と合わせて、いっそ幻想的にすら感じるわね…」

「そう。ルナメモリは幻想の記憶を秘めたメモリ。それが、上手いこと月読調の戦闘スタイルとマッチしたようだ」

「なるほどな、確かにあれを見せられちゃ、名前繋がりでってのもあながちバカに出来ねぇかもな…」

 

私の連撃を受けて弱ってきたノイズドーパント二体をヨーヨーで一纏めにし、私はトドメへと移行する。

イメージするのは禁月輪。私を中心に縦へと展開させたそれを、更に幻想の力で強化させて─三日月のように変化させ、敵を切り裂く!

 

『幻想∑式・幻月輪』

 

私の幻月輪はノイズドーパント二体を綺麗に二分割─いや、四分割にして、その身を爆散させたのだった。

 

「皆さん!ご無事ですか!」

と、戦闘が終わったタイミングで、負傷した皆を回収する為の車が到着し、緒川さんが心配しながらこちらへ向かってくる。

「大丈夫です緒川さん。月読が、無事にやってくれました」

「調さんが…その姿、それがガイアメモリとの適合ですか」

「そうです」

「ともかくご無事でよかったです。本部へ戻りましょう」

私はギアを解除すると、皆で車に乗り込むのだった。

 

 

─S.O.N.G.本部、発令室。

「皆、無事で何よりだ。ギアの破損は幸いにして軽度のものだったらしい。エルフナインくんが現在修理に当たっている」

「良かったー。すぐに復帰出来そうで何よりだぜ」

「こちらのロストドライバーの損傷もすぐに復旧出来そうだ。しかしそれよりも」

本部に戻った私達は、エルフナインへと壊れたギアペンダントを渡してから発令室へ向かい、そこで叔父様からの報告を受けた。

雪音も安堵ゆえに息を吐く。

フィリップさん─苗字がないと語る故名前で呼んでいるが、これは我ながらなかなかどうして違和感を感じるな─の変身のツールも無事と判明し、私もつい安堵と疲れからの息を吐きたくなったが、その後の言葉で現状を再認識し、身を引き締まらせる。

「あぁ。仮称、ノイズドーパントと呼ばれる新型ノイズがこちらの世界にも出現したこと。そして複数体存在していること、だな。フィリップくん」

「その通りだ。撃破されたノイズドーパントの跡から、破損されたメモリを確認した。最もメモリの詳細は確認できなかったが…しかし表面の文字を読めばなんとか解読出来たよ。そしてボクとしてもこれは想定外だった」

「フィリップさん。そのメモリーには、なんと?」

「…Numerousだ」

「Nunerousだと?確か数多くといった意味の単語だったか。どのような記憶なのかわかるかね?」

「そう思って地球の本棚で調べようと思ったが、やはりガイアメモリに関してはボクたちの世界にしか存在はしないらしく、ダメだった。しかし、推測はたてれる」

「わかるのかよ…勿体分じゃねーよ。で?なんなんだよ」

雪音の問いかけに、フィリップさんは少し苦々しい表情で答えた。

「おそらく、このメモリは複製品だ。オリジナルが存在している。能力としては、分裂能力、だろうね」

「はぁ!?分裂だとぉ!?」

「本来ならばCopyのメモリあたりの能力であり、こんなメモリが使用することさえ有り得ない。おそらくはノイズに適応するために同じ頭文字のこのメモリを使用したのだろう。そして、このメモリと適合したノイズはノイズドーパントとなり、メモリの力で文字通り、数多く分裂したのだろう。これは実に厄介だ」

フィリップさんがあまりの事態に頭を掻く 。

だが仕方あるまい。つまりはオリジナルのノイズドーパントを倒さなければ延々と自体は解決しないのだ。

「ギアの修復が終わっても、まともに戦えるのは月読とフィリップさんの2人だけ…くっ、どうすれば…」

「だが、悪いことばかりでもない。興味深いデータも取れた」

落ち込んでいる私たちに、しかしフィリップさんは明るくそう告げた。

「興味深いデータだぁ? 」

「あぁ、こちらの世界だからこそだが、月読調の戦闘データをリアルタイムで解析を行えた。ギアのどこに作用したかがわかれば、そこを擬似的に解放すれば」

「…ガイアメモリなしでもノイズドーパントと戦えるギアにできる?」

「その通りだ!上手く行けば他のギアにしても解放出来るかもしれない」

フィリップさんの言葉で、私たちにはまだ、微かな希望が出てきたのだった。

 

─S.O.N.G.本部、研究室

「…ダメですね。修復は完了しましたが、調さん以外のギアは拡張が不可能でした…すみません」

しかし、エルフナインから聞かされたのは、残念な結果だった。

「そうか、何、気に病むことはない。ギアの修復が出来ただけだも良いのだ。それに月読のギアは拡張が出来たということだろう。それだけでも我々にとっては全身なのだ」

そう。最も恐ろしいのはギアの修復が出来ずに月読1人が戦うという状況であり、それを回避出来た上月読のギアが対ノイズドーパント用に拡張できただけでも僥倖と呼ぶべきなのだ。

「やはり他の皆さんのギアを拡張する為には一度適合してもらうしか無さそうです…」

「そうか…となると、しばらくは月読調一人に撃破を任せる形になりそうだ。無論、ボクたちも協力はするけどね」

「調、無茶をさせてすまないわね…」

「大丈夫。私が皆を守る」

フィリップさんとマリアの言葉に力強く答える月読。

私はそれを見て、一人歯がゆい気持ちに襲われたのであった。

 

「それからクリスちゃん」

エルフナインの元から発令室へと向かう際、フィリップさんが突然雪音に呼びかけた。

「だからちゃん付けしてんじゃねぇ!」

「申し訳ないが、これを持って一度翔太郎のところへ戻ってくれないか?」

フィリップさんはそう言うと、雪音へ水色のメモリを差し出した。

「おいおい、お前これがねぇとノイズドーパントと戦えねぇじゃねえかよ!どういうつもりだ?」

「ナスカメモリがあれば、翔太郎もこちらの世界へこれる。事務所には修理中のロストドライバーがある。あれならば変身は出来ないがメモリの起動はできるから、ゲートをくぐれるだろう。ボクたちの世界から翔太郎まで空けるのは少し不安だが、今はギアの拡張を成功させるためにもメモリの数が多く欲しい。それに、立花響も呼んで欲しい。彼女は一度ヒートメモリと適合した。ギアの拡張が可能なハズだ」

「なるほどな…しゃーねぇ!すぐ戻ってくるから待ってろ」

雪音は仕方ないと頷き、ギャラルホルンで並行世界へと渡った。

 

ビー!ビー!ビー!

 

その直後、S.O.N.G.本部に再びアラートが鳴り響いた。

 

発令室へ向かうと、叔父様が状況を説明する。

「すまない。またノイズドーパントの出現が確認された。総員、至急現場へ向かってもらいたい。連戦となってしまい申し訳ないが…」

「このタイミング…クリスちゃんが並行世界へ向かわせるのは早計だったか…?」

「いえ、遅かれ早かれ雪音には立花を迎えに行ってもらわれねばならなかったのです。それに、無辜の民を守るのは防人の役目。ただちに向かいます!」

フィリップさんと申し訳なさそうに告げる叔父様へ、私は安心せよと言わんばかりに力強く宣言をする。

「……何か、翼少しおかしくないかしら」

「…少し、焦ってる?」

「…これは少し不味いことになりそうだね。1人で突っ走る翔太郎のようだ」

この時の私は防人として守ることに必死で、後ろの会話は聞こえなかった。

 

─市街地

現場へ到着した私たちは、その光景に思わず絶句してしまった。

「これは…」

「先程の戦いでネタがバレたと考えたのかしらね…」

「……すごい量」

「これは月読調だけで制しきれるか…ボクたちのサポートが重要になりそうだ」

「ええ、任せて頂戴」

「あぁ、月読は私が守って見せよう。防人の意地に誓って…!」

「風鳴翼、気合を入れるのは構わないが、焦りは禁物だ。慎重に行くべきだよ」

「わかっています…!」

そして私たちは聖詠を唱え、フィリップさんはベルトに今度は緑のメモリを刺し、変身した。

 

「ちゃんとギアの形が変わってる…」

「エルフナインちゃんは流石だね。さぁ、行こうか」

「はい…!」

無事に拡張されたギア─確かあの後にエルフナインは暫定的にメモリギアと呼んでいたか─を纏った月読が先陣を切り、ノイズドーパントの群れへと攻め込む。

当然ノイズドーパントは月読へと集中しておそいかかるが、それを私たちが抑え、月読が攻撃しやすくする。

しばらくは快調だった。

しかし、そのような戦闘が十数分ほど続いた時のことだった。

私たちが御していない方向から、ノイズドーパントが月読へ強襲してきたのだ。

「危ない!月読!」

思わず月読を横へ押し、ノイズドーパントの攻撃を受け止める。

しかしその結果体制を崩した月読は別のノイズドーパントの攻撃を受けてしまった。

「あぁっ!」

「月読ぃ!」

月読は思い切り飛ばされ、地面に転がる。

「調ぇ!うぁっ!?」

月読が攻撃されたことでマリアも動揺してしまい、その動揺をつかれマリアもまた攻撃を受けてしまう。

「くっ…連携が…うわぁ!」

私たちの連携が崩れたことでフィリップさんもまともに攻撃を受け、3本のメモリが私の所まで弾き飛ばされ、変身も解けてしまった。

「わ、私のせいで…!ぐぅっ!」

私一人ではノイズドーパントの軍勢を抑えきれるはずもなく、膝をついてしまう。

「なにが防人か。なにが剣か!大切なものを守れずにこの体たらく。私は…私は!」

つい近くに飛ばされたメモリの1つを握りつぶさんばかりに掴みながら、私は慟哭する。

「剣が欲しい…この窮地を脱し、皆を守りきれる剣が!」

【Cyclone!】

私の願いに応えるかのように、手に握ったメモリが起動する。

「これは…そうか、彼女に適応するのメモリはサイクロンメモリだったのか!」

メモリは私のマイクユニットへ吸い込まれ、私の身体を緑の風が包み、天羽々斬に更なる力を与えてくれる。

それはまるで爽やかな風のように、私の澱んでいた気持ちを吹き飛ばしてくれた。

そうだ。私はノイズドーパントを己だけでは倒せないことばかりに目が行き、気持ちが逸っていたのか…。この力を得てからそれに気づくとはなんとも締まらないな。だが、それもまた私なのだろう。

果たして何を勘違いしていたのだろうな、私は。

真に守るべきは防人の意地でも、剣としての己でもない。

共に戦う仲間、友こそを守らねばならなかったのだ!

「うぅ…あれが…翼の…!」

「そう、彼女のメモリギアだ!」

やがて風が晴れると、私のギアは大きく様変わりをしていた。

これが私の、守る剣。

いや、これは翼だ。友を守るための、私の翼。

 

「この翼が巻き起こす風、止められると思うてくれるな!」




マリア「翼も無事にメモリギアを纏えたし、これからはノイズドーパントとの戦いも少しはマシになりそうね!私もメモリギアを纏えるようにならなくちゃ。ここはちょっと次のご飯、奮発するしかないかしら……?」

次回、仮面ライダーW
「共にゆくぞ月読!」
「コンビネーションで!」
「大丈夫、向こうにはまだ仮面ライダーはいるさ」
「俺に質問をするな」

これで決まりだ。


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C纏うLの輝き/風月ノ疾双

更新が遅れてすみません…。仕事が忙しがったのと、最新話が良すぎて…。
なんとか1週間ほどで更新出来ました。


─市街地

「この翼が巻き起こす風、止められると思うてくれるな!」

私は手に持つ剣を眼前の敵へのかざし、高らかに叫ぶ。

ふとギアを見やると、なるほど月読のように私のギアもまた大きく変化していた。

まずスーツやギアの色。

暁のものとはまた違う、明るさと爽やかさを感じる翠へと。

肩や腕には風を模した装飾が増え、顔の前には月読と同じく赤いバイザーがついており、頭部の形状は特に大きく変化しているようだ。

「いざ参る!はぁー!」

掛け声とともにノイズへと突撃する。

ノイズドーパントの数は相も変わらずに無数に存在していたが、私が剣を振るう度、私を風が包み込み他のノイズドーパントの攻撃を防いでいた。

私は高らかに歌い、更に激しく舞う。

「♪〜はぁっ!」

私を包む風は私が剣を振るう度に大きくなり、更にその勢いを増していく。

それはやがて私を守るつむじではなく、ノイズドーパントを切り裂く為の嵐となる。

その風に乗って空中へ飛び上がり、剣に宿した風を収束させ、一撃の元に敵へ斬撃と変え飛ばす。

これはそう、蒼ノ一閃ならぬ─!

 

『翠ノ一閃』

 

「♪〜ふっ!はっ!たぁぁっ!」

翠ノ一閃によって大きく空いたスペースへすかさず着地し、斬撃を浴びせていく。

「あれが翼さんのメモリギア…!」

「流石は翼ね…まるで風だ」

「サイクロンメモリは疾風の記憶を持っている。これくらいの芸当は彼女の実力ならば朝飯前というものさ」

後ろからは少し回復したらしい月読たちの会話が聞こえてくる。

フィリップさんもどうやら無事のようで何よりだ。

「はぁぁあー!!!!」

私は周りに巻き起こっている風を剣へ纏わせ、それを斬撃と共に宙へ放つ。

イメージするは「千ノ落涙」つまりはこの剣、名付けるなれば─!

 

『千ノ落嵐』

 

地面へと舞い落ちる無数の風は、嵐となりてノイズドーパント達を切り刻む。

「♪〜せやぁあ!」

すかさず着地し、更にノイズドーパントを切り裂いてゆく。

舞えば舞うほどに風は吹き荒れ、私の体を軽くしてゆく。

「翼さん、私も戦います…!」

と、ダメージから復帰した月読が後ろから援護をしてくれる。

「月読!共にでゆくぞ!」

「はい!」

私は歌を一度中断する。

そして代わりにマイクユニットから流れるは、かつての強敵を相手にした時に共に歌ったユニゾン─!

「♪〜はっ!」

「♪〜えいっ!」

ユニゾンによって私の風は止まることなく更に巻き起こり、月読の鋸と、それを支えるアームはより縦横無尽に舞い踊る。

「これがユニゾン…相乗効果による出力の上昇。実に興味がそそる!」

「この威力は、かつてのイグナイトと同等…いや、それ以上!」

そう。マリアの言う通り、今の出力は以前にイグナイトで月読としたユニゾン以上に上がっている。これがガイアメモリと適合したメモリギアの力─!

いつしかノイズドーパントの数は片手で数え切れそうな程に減っていた。

なれば、ここで片をつける!

「決めるぞ!月読!」

「はい!コンビネーションで!」

掛け声と共に、月読のヨーヨーと私の剣の形を大きく変形し、ドッキングさせる。

更に私の剣を伝って全体に風を螺旋のように纏わせ、突っ切る!

 

『風月ノ疾双』

 

私と月読の合体技は残った全てのノイズドーパントを巻き込み、撃破できたのであった。

 

─S.O.N.G.本部、発令室

「翼さん、これがメモリギアの機能を拡張した天羽々斬になります」

本部へ戻り、エルフナインへと天羽々斬を渡してから数刻後、そんな風に改修された天羽々斬を渡された。

「ありがとう。確かに受け取った」

「それに響さんにも、拡張されたガングニールです」

「ありがと!エルフナインちゃん!」

次いで立花へとガングニールを渡すエルフナイン。

そう、私たちがノイズドーパントを撃破した時、フィリップさんからの頼みで向こうへ渡ったクリスから話を聞き、立花とフィリップさんの相棒─左さんがこちらへと来ていた。

「いやー、しかし一々メモリを刺さなくてもあの状態になれるなんて、シンフォギアってやっぱり凄いね!」

「こっちとしても戦闘用のメモリを使わなくていいってのは助かるな。そんでフィリップ、お前の方はどうだ?」

「あぁ、こちらに来てからの知識と、いくつかの戦闘のおかげでボクのメモリは無事に調整が済んだ。後は君のメモリだけだ。貸したまえ」

「左さん、フィリップさんの調整とは?」

「あぁ、ギアに一度メモリの情報が読み込まれたら拡張してメモリ不要になったろ?つまりは俺達のメモリにも─つっても今んとこフィリップのだけだが─シンフォギアの情報があるんだよ。ま、この話をした時はフィリップの憶測でしかなかったがな」

「向こうの世界では情報が足りなかったからね、だからこうしてこちらの世界に来たと言うのもあった。そして事実シンフォギアシステムの拡張が可能だった為、こちらのメモリの機能の拡張もできると思い、こっそり調整を行っていたのさ。結果としてはヒート、ルナ、そして風鳴翼、君がサイクロンと適合したことで上手いことシンフォギアシステムの一部をトレースすることに成功したのさ」

フィリップさんは、ノイズドーパントとの戦いの中、そんなことまでやっていたのか…仕事量に関していえば、エルフナインをも超えるのではないか?

「まぁまだ翔太郎のメモリは適合されていないから、こちらが拡張できるかは不明だが…まぁとりあえずやってみよう」

「あぁ、早めに頼むぜ。とりあえずはトリガーからでいいか」

「ジョーカーではないのかい?まぁ構わない。任せたまえ」

左さんから青いメモリを受け取ると、フィリップさんは研究室へと向かっていった。

エルフナインも未知の技術に惹かれてか、後を着いていくようだ。

「しかし、今向こうにはノイズドーパントを撃退せしめる戦力はない。早くどちらかが戻った方が良いのではないか?」

そう。こちらに左さんと立花が来たということは、向こうには雪音と暁しかいない。2人ともメモリギアへの適合をしておらず、ノイズドーパントが出現した時に苦戦を強いられることになるだろう。

そう思って左さんへ問いかけると

「大丈夫だ。切歌の奴には多分ピッタリのメモリを預けておいたし、それに、風都の仮面ライダーは1人じゃないんだぜ?」

左さんは胸を張ってそう言ってきたので、こちらとしてはそうかと頷く他なかったのであった。

 

 

─風都市内、警察署前

「すみませんデース!」

アタシ達は別れ際にあの探偵ヤローに言われた通り、風都にある警察署の前に来ていた。

「お嬢さんたちどうしたんだい?」

後輩の元気な挨拶に警察が愛想良く要件を聞いてくる。

「えっとデスね、真っ赤なジャージの警察の人に会いたいのデス!」

と、後輩は探偵ヤローから聞いたままの特徴をそのまま伝えた。

「バカ!そんな抽象的な言い方で通じるか!」

「でもでも、翔太郎さんはそういえば分かるって言ってましたデス!」

「そんなもん信じるなよ!」

「真っ赤な服…あぁ、照井警視か。ちょっと待ってね、呼んでこよう」

「伝わるのかよ!?」

その照井警視ってヤツ、どんだけ知名度があるんだ!?

と、警察が奥の方へと行ってからしばらく待つと、本当に赤いジャケットを来た、見るからに警察には見えない男がやってきた。

「えっと、アナタがもう1人の仮面ライダーさんデスか?」

後輩の相変わらず元気な質問に対して男は冷徹に答えた。

 

「俺に質問をするな」

 

……やべぇ奴しかいねぇのかこの街は!!!




切歌「デデデデース!やっと出番かと思ったら質問拒否な真っ赤な人とか上手くやれる気がしないデース!それでも翔太郎さんの知り合いだしきっといい人のハズデース!」


次回、仮面ライダーW
「照井のやつ、うまくやってっかなぁ…」
「福井さんは偉いのデスか!?」
「照井だ」
「ホントにこいつで大丈夫なのかよ…」
「さぁ…振り切るぜ!」

これで決まりだ。


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Aの仮面ライダー/深紅の戦士

更新遅れて申し訳ございません!
夏ということで仕事も忙しく…。
最低でも一週間前後での更新は守りたいと思います!
感想を頂ければ少しは早くなる……かも。


─S.O.N.G.本部、休憩所

「さーて、照井のやつ、うまくやってるかなぁ…」

フィリップに託したトリガーメモリの改修の間、時間の空いた俺はそうボヤいた。

すると、丁度部屋に入ってきた響が、このボヤキを聞いていたらしく反応してきた。

「照井さん?あ!ひょっとしてその人が左さんの言ってたもう1人の仮面ライダーですか?」

「そうだ。仮面ライダーアクセル。風都を守る頼れる仲間さ…ただなぁ」

俺はひとつため息をつく。

「なにか不安なことでもあるんですか?」

「いや、あいつちょっとだけ人付き合いに難ありなんだよなー…一応現状は伝えてるあるけどよ…」

「でも切歌ちゃんとクリスちゃんなら大丈夫ですよ!」

「だといいんだがなぁ…」

あの2人に任せておいてなんだが、なんとなく不安になってきたのであった。

せめて、いつものフレーズはないと助かるんだがなぁ…。などと思っていた。

「あ、そういえば左さんが切歌ちゃんに預けたメモリってなんなんですか?」

思い出したように─というよりも、思いついたように、響が俺にそんなことを聞いてきた。

「ん?あぁ、アイツにはな──」

こうして休憩室で、俺と響は暇を潰すかのように話をしていた。

 

─風都市内

「なるほど、君たちが左の言っていたシンフォギアシステムの装着者か」

あんまりにも衝撃的な邂逅から数分後、アタシ達は真っ赤なジャケットの刑事と一緒に街中を歩いていた。

「そうデス!」

「ま、そーいうこった」

「先程はすまない。つい条件反射でな。俺は照井竜、超常犯罪捜査課の警視だ」

「条件反射がなんかおかしくねぇか…?」

一体なにが起きれば質問するなが条件反射で出てくるんだ?

おかげで一瞬人違いかと思っちまったよ。

まぁ探偵ヤローが事前に伝えてたみたいで、アタシ達が装者だと伝えたら理解してくれたから助かったけどな…。

いや、でもアイツが詳しくアタシ達に教えてくれてれば案外回避出来たことなんじゃねぇか…?

ま、今更の話ってやつか。

「というか警視って言ってたよな。ってことは、結構偉いのかよ…」

かなり意外だった。まぁ警察署内で私服を突き通してるし、この態度だ。案外納得いく話でもあるのかもしれない。

「ええー!福井さんって偉いのデスか!?」

ちなみに後輩は名前を間違えた挙句で驚いていた。

なんで福井になったんだ?「い」以外あってねぇだろ…。

「福井じゃない照井だ。それで、この街にはノイズドーパントという未知の敵が現れている、ということだな?」

それとなく訂正しながら刑事は話を本題へと戻す。

「そーいうこった。それに対抗出来るのはアタシ達シンフォギアの力と、アンタらガイアメモリの力を合わせた力だけってわけだ。確かエルフナインはメモリギアと呼んでたっけな…」

「なるほど。では今の俺たちでは撃退は厳しいと言うことか?」

「それなら大丈夫デース!私がちゃーんと左さんからメモリを預かってるデス!」

アタシ達の話に割り込む後輩。

そう、探偵ヤローはアタシ達の世界に行く際、後輩にメモリを1本渡していたのだ。ちなみにアタシには渡さなかった。あの青いメモリ─トリガーメモリとかもろアタシっぽいのになァとか思った。

「左のやつ、メモリをお前に託したのか?」

「はいデス!『お前には、なんか近いものを感じるぜ…』と言って託してくれたデス!」

「ふっ、左らしいな」

「デース!とてもかっこよかったデス!」

後輩は何故か誇らしげに胸を張っていた。

ちなみにアタシは「カッコつけてんのか?」と思っていた。

「キャアアア!!!」

と、そんな感じにアタシ達が話をしていると、遠くの方で悲鳴が聞こえてきた。

まさかと思って走って駆けつけると、そこにはやはりというか、ノイズドーパントがいたのであった。

「やつがノイズドーパントか。珍妙な見た目をしている」

赤い刑事はそう呟くと、どこからかバイクのハンドルを取り出した。

なんでそんなものを、と思っていると、刑事はそのままハンドルを腰へ押し当てた。

あまりの奇行に驚いていると、ハンドルからは帯が現れ、刑事の腰に巻き付き、ベルトになった。

そして胸元から赤いメモリを取りだし、起動した。

 

【Accel!】

 

「変…身っ!」

刑事はメモリをベルトへ差し込み、ハンドルを捻る。すると円上のエネルギーが全身を包み、真っ赤な姿の戦士へと変貌した。

「俺は仮面ライダーアクセル…さぁ、振り切るぜ!」

刑事─仮面ライダーアクセルはこれまたどこからか重そうな大剣を取り出し、ノイズドーパントへ向かって突っ込んでいった……って!

「だからそいつにゃ単体の攻撃が聞かねぇって言っただろ!おい!聞いてんのか!?」

「俺に質問をするなぁ!」

「条件反射ぁ!」

くそ!人の話聞いてなかったのか!?なんなんだよアイツ!

「アタシ達も行くぞ!」

「はいデス!」

 

『Killter ichaival tron…』

『Zeios igalima raizen tron…』

 

アタシ達も聖詠を唄い、ギアを纏う。

「いいか、お前はとっととメモリを使え!」

「了解デース!」

後輩は探偵ヤローから渡されたメモリを取り出し、起動…したハズだった。

「あ、あれ?あれれ?おかしいデスね…」

「何やってんだよ!早くしろ!」

「それが、何故か起動しないんデス…」

「はぁあ!?」

後輩は、困り果てた顔でこっちを見ていた。




エルフナイン「どうも最近都合のいいお助けキャラになっててセリフがほとんどありません。ボクだってなんかいい感じのことを言いたいです。え?歌ってほしい?それはちょっと…」

次回、仮面ライダーW
「なんで!なんで起動しないんデスか!」
「あいつにはトリガーメモリより相応しいメモリがあるさ」
「市民は…この街は俺が守る!」
「さぁ、振り切らせてもらうぜ!」
これで決まりだ。


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加速するA/全てを振り切る弾丸

さんざ遅れてすみません!!!!
中々に難産になってしまいました…。

そして感想の方、いつもありがとうございます!返信が思いつかないので出来てませんが、いつも楽しく読ませていただいています!


─風都市内

「メモリが反応しない…だと!?」

「デース!何回やってもだめデス!」

後輩はメモリをカチカチと押すが、しかしメモリはうんともすんとも鳴らなかった。

「なんで!なんで起動しないんデスか!」

「おい!何をしている!」

アタシ達がまごついていると、先に戦闘をしていた刑事が叫ぶ。

「っ…今メモリが使えねぇんなら、共闘で無理やり押し切るしかねぇ!行くぞ!」

「は、はいデス!」

そんなやり取りの後、アタシと後輩はノイズドーパントへと突っ込んで行った。

刑事を見やると、大振りな剣を構えているのが見える。それを見てアタシは刑事と後輩に作戦を提案した。

「おい!まずはアタシがブッパで隙を作る!そこをお前らで攻めろ!」

「了解デース!」

「いいだろう!」

アタシの提案に後輩と刑事が賛同する。

しかし、あの刑事が素直に賛同するのはちょっと意外だったかもな。俺に提案するな!くらい言ってきそうだと思ったのだが、案外マトモなやつなのかもしれない。

気を取り直して、アタシ達はノイズドーパントへと向き合い、構える。

「喰らいな!」

最初はアタシの弾丸の掃射でノイズドーパントを数歩後ずらせる。そこにタイミングを合わせて後輩と刑事が突っ込み、剣と鎌で切りかかる。

後輩がそういう連携に慣れてるってのもあるが、あの刑事も中々に行きの合わせ方が上手かった。探偵ヤロー達と共闘しているからだろうか。

しかしそんな連携攻撃も、ノイズドーパントへは致命傷とならず、反撃をしてきた。

当然2人は後ろへと飛び下がったが─しかし、これは中々に難戦となりそうだった。

 

※S.O.N.G.本部、休憩室

「ところで、左さんさっきフィリップさんに青いメモリ渡してましたよね?」

休憩室で響と話していると、響は突然そんなことを聞いてきた。

「あぁ、トリガー…銃のメモリを渡したな」

「あれってクリスちゃんに適合しそうだと私思ったんですけど、渡さなかったんですか?」

「あいつにはトリガーメモリより相応しいメモリがあるさ」

「相応しいメモリ?」

響は不思議そうな顔で聞いてくる。しかし俺にはある種の確信があったのだ。

きっとアイツなら、あのメモリこそ相応しいのだろうと。

「うーん?クリスちゃんに銃以外に相応しいメモリかー。どんなんなんだろー?」

むむむ…と首を傾げる響。

だがまぁ、アイツが戻ってきたらきっと納得するだろうぜ。

などと考えていた時、S.O.N.G.本部にアラームが鳴り響いた。

「すまない、ノイズドーパントの反応だ。装者、及び仮面ライダー諸君はただちに発令室に集合してくれ」

「っと、響、行く…ぞ?」

俺が急いで立ち上がって響の方を見ると、しかし彼女は既に走り去ったあとであった。

……早くね?

 

※風都市内

「くっ…」

「かったい!デース!」

「ちょっせぇ!」

戦闘開始から数分が経過したが、状況はと言えば、まるで好転していなかった。むしろ空転、空回りをしているような、砂を噛んでいるような噛み合わせの悪さを感じていた。

「くっそ…どうすりゃいいんだ…まるでダメージが通っちゃいねぇ!」

「これじゃこっちのスタミナ切れが先デース!」

「こうなればマキシマムで…!」

刑事はそう呟くと大振りの剣を持ち手の少し先の所で折り曲げ、そこにどこからか取り出した白いメモリを差し込む。

 

【Engine!maximum drive】

 

メモリの音声が鳴り、剣からエネルギーが迸るのを感じる。

「よしっ、お前もアレにあわせろ!援護はアタシがする!」

「了解!デース!」

後輩はアタシの呼び掛けに応じ、大きく飛び上がると鎌を構える。

「ちょっせぇ!」

それに対してカウンターを試みようとするノイズドーパントへ、銃撃をぶち込みバランスを崩す。

「はぁぁあ!!!」

そして刑事は掛け声と共に大きく剣を振り上げ、そして後輩も鎌を振り下ろす。

確かあれはジュリエット…正しくは呪りeッtぉだったか。

それとエンジンの力が合わさるあの技は名付けるなら─

 

『炎・呪りeッtぉ』

 

激しい衝撃が空気を揺らし、激しい土煙が巻き起こる。

果たして土煙が晴れた中から現れたのは─。

 

しかして、まるで無事なノイズドーパントだった。

「おいおい…確かに直撃したハズだぞ…」

「ちょっとインチキすぎるデスよ…」

アタシも後輩も、既に息を切らしている。全力どころか全力の二乗の力は使ったと言うのにも関わらずのノーダメージなのだ。悪態の一つもつきたくなるというものだ。

「くっ……まだだ、まだ終わらん!お前らは下がっていろ!」

疲労困憊にも達しようかというアタシ達の中で、しかし刑事は剣を支えに再び立ち上がる。

「おい!お前だって限界だろ!まだアタシは余裕があっから、お前と後輩が下がって体勢を立て直せ!」

アタシの言葉を聞いてもなお─いや、聞いてもないのかもしれないが─立ち上がろうとする刑事。

「なんだってそこまで意地になってんだよ! 」

「俺に…質問を…するなぁ!」

アタシのつい出てしまった質問を一蹴すると、刑事は立ち上がり、剣を構える。

しかし、すでに剣先は定まっておらず、足元もフラフラしていた。

それでも、刑事は、照井竜は、強い意志をもって立ち上がり、自らを鼓舞するように叫ぶ。

「市民は…この街は俺が守る!」

「……!」

そうか、この男は、この戦士は、この戦士も。

あの探偵達と同じく、「この街」が好きでたまらないのか。

その叫びを、慟哭を聞いて、アタシは─

 

「……、何をしている。下がれと言ったはずだぞ」

アタシは、照井竜の横に立ち並んだ。

「後輩、お前はもしもの時の切り札だ。そこで休憩してな」

「クリス先輩…」

「なぁに、今はアタシに先輩風吹かせてくれよ。アタシがやばい時は、お前に助けてもらうさ」

後輩にそう告げると、アタシはノイズドーパントへ向き直る。

「お前も下がっていろ。ヤツは俺が倒す」

「なぁに、アタシにも、アンタと同じく意地ってのがあるのさ。後輩の前で情けないカッコ、これ以上出来ねぇっていうな」

「…ふん」

照井竜はただ一つ息を吐くと、剣を構える。

その姿に先程までのブレはなく、芯が通っていた。

そう、アタシにだって意地がある。既にもう1人の後輩の前や、あのバカの前、なんなら今アタシの後ろにいる後輩の前で散々醜態を晒しちまった。

ならもう晒せねぇ。アタシにだって、先輩としての意地があんだよ!

 

と、その時だった。

照井竜のベルトから赤いメモリが独りでに抜けたのだ。

しかし、変身は解除されてなかった。

「何っ…!?」

驚く照井竜を尻目に、アタシの手に赤いメモリはすっぽりと収まった。

そうか。あの探偵ヤローは、だからアタシにトリガーのメモリを渡さなかったのか─!

アタシはメモリを構え、スイッチを押す。

 

【Accel!】

 

起動されたアクセルメモリはアタシの手を離れ、マイクユニットへと吸い込まれていく。

そして、アタシの頭上にピストン運動を繰り返すサークルが現れ、一気にアタシの体を通過するように下へと落ちる。

そして落ちきったサークルが消えるとそこには、アタシのギアの姿は大きく変わっていた。

全身の鎧はゴツくなり、足首にはタイヤのようなモノがくっついていた。

顔には青いバイザーがつき、頭部の形状も変わっているようだ。

そして何よりも、全身からとんでもないパワーが湧き上がるのを感じた。

 

なるほどな、こいつがアタシのメモリギアか。

今ならなんだって守れる気がしてくらぁ!

「さぁ、振り切らせてもらうぜ!」

アタシはノイズドーパントへ、いや、この世の全てに対してそう叫ぶと、ノイズドーパントへの距離を一気に詰めた。

これがアクセルメモリの力、加速の力。今のアタシが抜けねぇものはない!

「ちょっせぇ!」

そのままノイズドーパントへと銃を構えたまま大きくアッパーブローをしかける。攻撃があたる瞬間、銃の引き金を引くことで残弾数分の火力をぶつける。

やはりメモリギアならば有効打を与えれるようで、先程までの苦戦が嘘のようにノイズドーパントはダメージを受けた。

「それが左の言っていた力か」

今度はアタシの隣に照井竜が並ぶ。

「一気にカタをつけるぞ」

照井竜は、信号機のようなものがついたメモリを取り出しながらそうアタシに言ってきた。

「おうともさ!遅れんじゃねぇぞ!」

「そのつもりは毛頭ない。全て…振り切るぜ!」

照井竜はメモリを起動し、ベルトへ差し込む。

 

【Trial!】

 

すると照井竜の体が赤から黄色へ、そして黄色から青へと変わる。

「出し惜しみはしねぇ!全部のせをくれてやる!ちゃんと避けろよ?」

アタシは現在出せる全ての兵装を取り出し、最大火力を持って全てを高速で打ち出す。

MEGA DETH PARTYを元に、更に強化したこの技は言うなれば─!

 

『GIGA DETH PARTY』

 

「俺に質問をするなぁ!」

そして照井竜はメモリを抜き取り、宙へと投げると、アタシの弾丸の雨をすり抜けながらノイズドーパントへと近寄り、凄まじいまでの蹴りの連打を浴びせる。

蹴りの雨と弾丸の雨、2つの雨をこれでもかと喰らいきったノイズドーパントは。

「─9.8秒、それがお前の絶望までのタイムだ」

【Trial!maximum drive】

照井竜のその宣告と共に、木っ端微塵に爆発したのだった。




切歌「デデース!あたしだけなんでかずっとおいてけぼりデース!これは待遇なんちゃらを求めるデース!え?マリアもおいてけぼり?なら先にマリアデース!」

次回、仮面ライダーW
「なんだよこれは…」
「敵は強大、数は無数」
「常識で考えるならまず無理というべきだろうが…」
「無理難題をいつだって、打ち破る言葉はただ一つ!」

これで決まりだ。


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