はいよるこんとんの暇つぶし (ルルー)
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はいよるこんとんの暇つぶし

 人が死ねば星になる。

 初めにそう言ったのはいったい誰だったのだろうか。

 まあ、その言葉を知ったのはいったいどこで、いつ知ったのかなんてことは全く覚えてはいないのだけれども。

 教科書にアニメに漫画などなど、様々な選択肢が存在するし考えても仕方のないことだろう。

 

 さて、現実逃避はやめるとしよう。

 視界には満天の星空、渦巻く銀河系、じっくりと見れば我が母星である青い星がよく見える。

 体は無く、ただ宙に浮いているような感覚がある。

 息苦しさも感じない、まあ体がないのだから呼吸をする必要もないだろう。

 

 ……確かに死んだという記憶はある。

 工事現場の近くを通ったとき、危ないという声が聞こえて上を見れば、降ってきた鉄骨がまじかに迫っていた。

 どうあっても死んでいただろう、それで生きていたら運がいいってレベルじゃないとは思うが。

 

 で、私はこれからどうすればいいのだろうか、本当に星にでもなるのだろうか? それともこのまま宇宙を漂い続けて手塚治虫氏の漫画火の鳥に出てくるコスモゾーンにでもなるのだろうか? 天国やら地獄よりは楽しいかもしれない。

 

 ああ、宇宙がこんなにも美しい……ん? 何か見えたような気がががががががががなにあれなにあれなにあれなにあれなにあれあれあれあれれれれれれれくるなくるなくるなくるなっていってんだろうがよくるなあああああああああああああああああ。

 あんなのがいてたまるかいてほしくないいないいないいないいないいないってばだれかだれかぁ!? やめろ……その目で見るな……そのもえるようなみっつのめでわたしをみるな……みるなああああああああ!?

 

 

 

 

「おやおや、何やら宙を漂う魂が一つ。 これはきっと主が遣わせて下さったに違いない……なんてね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アメリカ、マサチューセッツ州の首都ボストン。

 そこで人々は今、とある存在に襲われていた。

 

「あはははあははあははは」 

「くるなくるなあああああ」

「……」

 認定特異災害ノイズ。

 人間が触れれば即座に炭素へと変換するという常識外の怪物、なのだが今このボストンに現れている存在は通常のノイズとは少し違っていた。

 通常のノイズにも様々な姿や形が存在するが、このノイズは人の姿に近かった。

 ある一点、人間でいうならば顔に当たる部分、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 さらに、このノイズにはほかのノイズとは違った特徴があった。

 それは、このノイズを見たものが何らかの精神障害や狂気に侵されていしまうといったところだ。

 一度見れば崩れ落ち。 続けて見れば震えだし。 さらに見続ければ精神が崩壊する。

 そのせいで、ノイズを見たせいで街の人間のほとんどが発狂してしまっている。

 ノイズたちはそんな発狂する人間たちを炭素へと変えていっている

 つまるところ、ボストンは壊滅の状態になっていた。

 

「……」

 

 そんな地獄絵図という言葉が似合うようになってしまったボストンに、降りてくる人物がいた。

 どこからか降りてきたのは一人の少女だ。

 腰まで伸びた黒い髪、真っ白のワンピース、そして光が無い赤い目がノイズたちを見つめている。

 首には赤いペンダントがぶら下がっていた。

 

【Nihility aion tron】

 

 少女が紡ぐ声に反応するようにペンダントが黒に輝きだす。

 黒の光が少女を包み込み、光が晴れるとそこには……『黒』がいた。

 黒いタイツのようなスーツに足と肩には重厚な外骨格、背には扇子のように広がる黒き羽があった。

 

 そして、少女は歌いだす。

 

「ふんっ」

 

 近場で狂する市民に襲い掛かろうとしていたノイズに拳を叩き込み、位相差障壁を越えて破壊する。

 

「うっ」

 

 そして狂い笑っていた市民を気絶させて近場にあった住居の中に放り込む。

 

「次」

 

 少女は手を前に出し、歌とはまた違う言霊を組み込んだ。

 

【ヴ―アの無敵の印に於いて――力を与えよ!】

 

 現れるは、杖にして剣である力。

 

「バルザイの偃月刀」

 

 少女は偃月刀を掴み、ノイズへと疾走する。

 笑う市民を襲おうとしていたノイズや、少女自身に襲い掛かるとしていたノイズを倒しながら、市民を気絶させて安全な居住区に放り込むという作業を繰り返し周り、少女は海に出た。

 そこではノイズたちが海に向けて何やら祈りのような物を捧げながら、身の毛もよだつような声を発していた。

 それはもはや人には聞き取ることなどできない声だった。

 もし聞き取ってしまえば、大変なことになってしまうだろう。

 

「……さっさと潰す」

 

 少女がそう呟きながらノイズたちに切りかかろうとすると、突如として海から巨大なノイズが現れた。

 現れた巨大なノイズの姿はまるで魚人のようだった。

 

「ダゴン……面倒」

 

 少女は同じように歌に挟み込むように言霊を組み込む。

 襲い掛かる巨大ノイズの攻撃をよけながら、先ほどとは違ったさらに長い言霊を紡ぐ。

 そして、現れるは黒と紅の自動拳銃、

 

「……これで終わり」

 

【いあ クトゥグア!】

 

 放たれる炎の弾丸が巨大ノイズと傍にいたノイズを飲み込んでいった。

 海にいるのは拳銃と剣を持った少女一人だけとなった。

 

「……」

 

 誰もいなくなった海で、少女は地平の向こうに目を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから次の日、日本のS.O.N.Gに連絡が入ることとなる。

 その内容は、アメリカのボストンが現れた新種のノイズに襲われたという内容であった。

 その知らせを聞いて、日本に住む少女たちが動き出す。

 その街に、何が起ころうとしているのかも知らずに……

 

 

 

 

「さて、白の王も黒の王もいないこの世界は、一体どんな姿を見せてくれるのかな?」

 

 

 

 どこかの宇宙(そら)で、燃える三つの瞳を持つ女が笑う。

 その笑みの意味は、きっと誰にも分らない。




ところで皆さん、ギャラルホルンってご存知ですか?(ニッコリ)


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