【突発性ハレンチ症候群】 (汎用うさぎ)
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短編
CASE1.ヘスティアの場合


第一被害者ロリ巨乳こと女神ヘスティア。同じ屋根の下で暮らすヘスティアがベル君のラッキースケベから逃れられるはずもなく…


「うぬぬぬぬぬぬ…ぬぅ゛ぅ゛ぅ゛っ〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 ヘスティアはダンジョンに出かけた可愛い眷属(ベル君)から写し取ったステイタスを見て百面相しながら唸りを上げる。

 

 冒険者なりたてのステイタスにしては明らかにおかしい。普通じゃない。ステイタスの伸びが異常に良い。いや良すぎるのだ。

 

 スキルの欄にある【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】見ればこのスキルが原因である事は誰にでも察せられる。早熟するなんてレアスキルが明るみに出れば神々の興味を惹いてしまい、ベル君の冒険に悪影響を及ぼすどころか、引き抜かれてしまうかもしれない。

 

 しかし、今のヘスティアにとって“それ”は然程重要な事ではなかった。確かに愛おしい眷属(ベル君)が奪われる事など絶対に容認できないし、そんなことは絶対にさせないというダイヤモンドよりも硬い決意はある。

 

 しかし、それほど大事な事でさえ頭からすっぽ抜けるような文言がスキル欄の憧憬一途に続いて並んでおり、そのスキル内容がヘスティアの脳内を駆け巡っていた。

 

(なっ、なぁぁっ…なっ…)

 

「なんだこのスキルはぁぁぁぁあ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

 そう、今のヘスティアとって一番の問題はもう一つ(・・・・)発現したスキルにある。それは――

 

【幸運(助平)】

・ラッキースケベを誘発する。

・異性を惹き寄せる。

・異性から嫌悪感を持たれづらい。

・肉体の接触による異性への好感補正。

・ラッキースケベの対象に催淫効果。

 

 

 

 この男からしたら羨ましくて堪らないであらう変態スキルだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボクの絶叫も虚しく、謎のハレンチスキル【幸運(助平)】がその効力を遺憾なく発揮するようになり、ベル君は無意識に僕に対してもラッキースケベを起こすようになった。

 

――そう、無意識にだ。

 

 当然、【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】も【幸運(助平)(ラッキースケベ)】の存在はベル君に伝えてはいない。

 

 どちらも色んな意味で危険なスキルだ。暇を持て余した神々のおもちゃになる事は避けなければならない。新興零細ファミリアであるボクは眷属を守る手立てが無いに等しい。

 何かがキッカケでベル君の異常性が露見し神々に狙われるような事になったらボクは必死に抵抗したところでいとも簡単に強奪されるのは目に見えている。

 故にベル君にすらこの2つのスキルは伏せてステイタスの写しを渡している。

 

 つまりベル君がこのスキルを意図的に悪用しているということは絶対にあり得ないのだ。

 

 だから、なんもかんもこのスキル(ラッキースケベ)が悪い。

 

 ベル君がわざと僕にえっちな悪戯を仕掛けた訳ではなく、どんな確率だよと絶叫するような“偶然”が重なってハレンチなハプニングを起こすのだ。

 

 以前ボクがベル君のラッキースケベの餌食になった際に聞いて分かったが、

 

「ベ・ル・くぅ〜〜ん???ワザとじゃあないよねぇぇっ!?!?」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!!ごっ、誤解です神様ァァァァァァッ!!!」

 

 などと、一悶着あった。その時ベル君は“嘘”を言っていなかった。悪気がないのは確かだった。

 しかしまぁ、ワザと起こせるようなハプニングではないので疑うのもアホらしいほどだ。

 

 純粋なベル君は悪くない!!全てこの【幸運(助平)(ラッキースケベ)】が悪いんだっっ!!このスキルのせいでベル君の意中のヴァレン何某やアドバイザーのハーフエルフ君、サポーター君などなど…にもハレンチな行為を働いたと言うじゃあないかっ!!

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!!!」

 

 そういうのは僕だけでいいじゃないかっ!僕はベル君に何されようが構わないがっ!不特定多数の女にも手を出してしまっている事実が許せないっ!!

 

ボクの!ボクのベル君なんだぞ!!

 

大体ベル君は―――(以下略)!!!

 

 

(閑話休題)

 

「ぜぇ…ぜぇ…っ」

 

 もう喉が枯れるほど愚痴をこぼしただろうか。ほんのちょっぴーりだが少し落ち着いたからベル君の起こしたラッキースケベについて語ろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれはステイタス更新で【幸運(助平)(ラッキースケベ)】が発現した翌日のことだったよ。

 

 夜が明けて鳥がちゅんちゅんと囀り始めた早朝に事件は起きたんだ。

 

「う、んぅ…」

 

 ボクは昨夜こっそりとベル君の眠るソファに潜り込み、ベル君の鼓動の音を感じながらそれはもうぐっすりと眠りについたのさ!

 そして心地よい微睡みの中、いつも早起きなベル君が目を覚まして大きな欠伸を吐いたのを感じた。

 

(う〜ん、ベル君はもう冒険に行くのかぁ…)

 

 もはや日常と化しているベル君の早朝ダンジョンアタック。早く英雄になりたいベル君にとって仕方のない事なのだろうが、少し寂しくもある。

 

 まだ朝早くてボクは眠いし、ベル君の邪魔はしたくないから引き止めはしない。でもギリギリまでベル君成分は確保したい。

 

 眠たい頭でそう考え、ベル君の胸に顔を埋めた。

 

「…へっ?か、神様…!?」

 

 そこまでは普通の朝だった。しかし、ベル君がボクの存在に気がついて焦って飛び起きようとした結果、偶然にもソファの足元に転がっていたポーションの瓶で足を滑らしその勢いにボクも引っ張られてベル君一緒にソファから転がり落ちたのだ。

 

「うわぁっっ!?」

 

「うみゅっ!?」

 

 幸運にもボクもベル君も頭を強打することはなく痛みはなかった。二人とも怪我はない、そこまでは良かった。

 

(ううっ…一体なにが起きたんだい…?)

 

 突然の転倒で微睡みから急に起こされたボクは寝ぼけながらも地面に手を付いて顔を起こそうとした。すると、ぐにゅっと手の平から固い地面とは違った感触が伝わる。

 

(ん?これは…?なんか膨らんで…硬くなってきた…?)

 

 初めての感触に手の平でぐにぐにと不思議な感触を確かめているとそれが棒状に膨らんで硬度を増していくのを感じた。

 初めは少し手に余る太巻サイズだったソレは、僕の確かめるような手の動きでムクムクと膨らみ、完全に膨張し切って手のひらに到底納まりきらない長大で厚みのある硬い棒に変状していた。

 

 と、そこでもう一つ気がついたのは自分の股にも何が食い込む形で押し付けられているという事だった。

 

 寝ぼけた頭を動かしてそちらへ視線をやって改めてボクは自分の現状を知る。

 

「――むぅ゛ぅぅぅっ!!むぐぅぅぅぅぅっ!!?」

 

 ボクはベル君の顔面に跨がる形で倒れ込んでいた。ベル君は口と鼻をボクの股間で完全に塞がれており必至に何かを訴えていた。

 

ここでボクの頭が急速に回転し始める。

 

「――ぎょええええええ!?べっ、ベル君!?ごめんよ今すぐどくか………ら…………?」

 

 手の平をそのまま棒状の何かに着いたまま腰を浮かそうとした瞬間にヘスティアに衝撃が走る。

 

(まっ、まままままままさか!?!?ボクの握っているコレは……もしかしてベル君のおちんち――)

 

 もはや鉄の棒と言っても過言ではなくなったソレはヘスティアの手の平でビクビクと震えている。

 

 寝起きに重大なハプニングが続いたため、ボクの思考回路はショートし腰を浮かせるでもなく、ベル君のベル君から手を離さず、無意識に確かめるようにニギニギと刺激を与えてしまった結果ーー

 

「むぐぅっ!?むぐむぐぅぅぅぅぅっ!!むぅっ…うっ…!?」

 

「ひぅっ…♡ベル君っ!?やっ、擦れて…♡」

 

 ベル君が一際大きく体を暴れさせ、その弾みでボクはぎゅっとベル君のベル君を握りしめてしまい、強い刺激がベル君のベル君を襲った結果、限界点を超えてしまい…

 

「むぅぅぅぅっ!?!?ぐ…っ…むぐぅっ…!!?」

 

びゅぐっ…びゅるるっ!どびゅびゅ…びゅるっ!

 

ボクの手の中で熱く硬い棒がビクンビクンと脈動してナニカを吐き出し始めた。勢い良く大量に発射されたソレは下着とズボンを貫通して滲み出るようにしてボクの手をベトベトに汚した。

 

「っ!?ふぇっ!?これって…っ!?」

 

ベルのズボンのシミから尿ではない特徴的な臭いがヘスティアの鼻腔に到達する。

 

 ボクの手の中で断続的に白濁した液体を吐き出し続けていたペニスの脈動が収まり、ベル君の荒い呼吸の音がやけに大きく聞こえた。

 

 ヘスティアが全てを察するより早く、ベルはヘスティアの体をどかして起き上がると顔を真っ赤にしてドアを蹴やぶらん勢いで飛び出して行った。

 

「――か、神様の馬鹿ァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

階段を駆け上がっていくベルの目尻には大量の涙があったとかないとか。

 

「…………へっ?あ、うぇ…えっ?」

 

一方、置いてけぼりにされたヘスティアは全て理解するまでに数分必要だったが、やがて全てを理解するとオラリオ中に響き渡る悲鳴をあげた。

 

「ぬぅうううぁぁぁぁああああぁぁッ〜〜〜〜〜!?!?!?」

 

 

 

 

 

 




「べ…ベル君の…おっきかった…」

絶叫の後、理性を取り戻したヘスティアは手に残る感触を思い出しつつ、手に付着した精液を見つめる。
ヘスティアは付着した精液を小さな舌でペロリと舐め口に含んだ。

「……にがい」

…でもベル君のだと思えば全然嫌いじゃないかも。

取り戻した理性を再び手放し、ヘスティアは乾きを潤すように小さな舌を再び精液でベタつく細い指に這わせた。


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CASE2.1アイズの場合

作者の予想が結構外れてましたね…みんなアイズ好きなんですね(正ヒロインは強い…


 未だに朝焼けの始まらない暗い空の下、既にボロボロな身体に鞭を打ちナイフを少し斜め正対に構え、両踵を少し浮かして膝のバネを溜めて次の一撃に備える。

 

「ーーいきますッ!!」

 

 僕は発声と同時に相対する女性、アイズ・ヴァレンシュタインに突貫する。武器であるサーベルは傍らに立掛けられ、彼女の手には鞘が握られている。

 それに対し、僕は刃も潰していない抜き身のナイフを人体の弱点である正中線目掛けて容赦なく振り抜いた。

 

 常人であれば大怪我で済まない攻撃だったが、鞘が直撃するスレスレを狙ってナイフを弾いていく。

 

 どれも手抜きなどない正真正銘の渾身の一撃。しかし、危なげなく急所への攻撃が防がれ、手応えは武器同士の衝突によるビリビリとした痺れしか伝わってこない。

 

(やっぱり強い…僕よりも遥か高みに位置する人なんだ…でも…っ手を伸ばさない理由にはならないっ!!)

 

 アイズさんとの特訓は今日が初日ではない。もはや攻撃が当たる気配すらしないことは驚くべきことでは無い。だからと言って攻撃を緩める理由にはならない。この貴重な時間を無駄にすることは出来ない。

 

(一瞬一瞬を大切にしないといけないんだ!!)

 

 実力差があり過ぎる攻防だが、僕は学ばなくてはならない。言葉ではなく実戦形式のこの特訓で盗まなくてはならない。

 

――のだが、その決意とは裏腹にベルの思考はジリジリとピンク色に侵されていた。

 

 1秒も無駄に出来ないアイズさんとの特訓、強くならなくてはという焦燥感は確かにある。

だが、それと同時にベルの邪な感情が芽生えているのも確かだった。その感情を膨らませている存在は――

 

「…んっ」

 

 鞘を振るいナイフを華麗にいなしていく。フワリと流麗な体捌きで攻撃と防御を熟している。

 

 そして、それなりに激しい動きなのでアイズの戦闘衣のスカートがフワフワと舞い、その中身が時折露わになる。そしてその一瞬、戦闘中にもかかわらずベルの視線がある一点に奪われてしまう。

 

「――っ!…ぐぁっ…!!?」

 

 特訓中に相手から目を離すのは自殺行為だ。その報いは鞘が肩を強打されることによってやって来る。

 

 袈裟斬りにされたような大激痛が肩を襲うも、ベルの脳内は一瞬目に映ったイメージを忘れまいと働いていた。

 

 フワリと浮かぶ紺色のスカート、そして露わになる純白の可愛らしい刺繍の入ったソレ。

 

――そうパンツだ。

 

 何故か、今日のアイズさんはスパッツを履いていなかった。おそらく履き忘れたのだろう。羞恥心はまるでなく、惜しげも無く純白の三角形が僕の視界に入ってくる。

 

(パンツ…アイズさんのパンツが…言った方がいいのだろうか…)

 

最早ナイフ捌きに精彩さが失われ、罪悪感と興奮が僕の心を蝕み続ける。

当然、そのような攻撃が通じるはずもなく――

 

「――我武者羅に攻撃しちゃダメ…」

 

 瞬間、刺突。

 

「っぁっぐぅぅぅぅっ!?!?」

 

 恐ろしい速さでアイズさんの鞘が防御の意識が薄くなっていた脇腹に突き刺さる。

 何の備えもない脇腹に深々と鞘先がめり込み、勢いも殺せずに突き飛ばされる。

 アイスピックで刺されたような突然の鋭く激しい痛みに受け身も取れないまま地面を転がされ、漸く攻撃を受けた事に気がつく。

 そして、それがいかに拙い状況であることも。

 

(――まずい…っ!!!)

 

「ダンジョンで倒れても、モンスターは待ってくれない、よ?」

 

 尋常じゃない痛みを発する脇腹を抑える暇もなく体を起こして体勢を立て直そうとするも、既に眼前に走り詰めていたアイズさんの踵が頬を捉える。

 

「オブゥッ!?!?」

 

 手加減されているとは言えLv.5の回し蹴り。脳を揺らすどころかシェイクするような一撃に僕の意識容易く刈り取られた。

 

 しかし、ブラックアウトする寸前、冒険者生活で培った動体視力が僕の視界いっぱいに広がる魅惑の三角形と、回し蹴りによって局部に際どく食い込む白い布を脳裏に深く刻み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――また、やっちゃった…」

 

 派手にぶっ飛んで仰向けに気絶した少年(ベル)を眼下に見下ろしながらしょんぼりと声を漏らす。やはり自分は不器用なのだろう。

 

 しかし、アイズの心配をよそにベルは特訓の度に目に見えて強くなっている。Lv.1だから伸び代があるとかそういうレベルではなく、恐ろしい速度で成長している。

 

 特訓の度に起き上がれなくなるまでボコボコにしているアイズにはベルの異常な急成長に驚くばかりだった。

 

(でも、今日は集中力がなかった…)

 

 普段は鬼気迫るような特訓に対する姿勢を見せていたのだが、今日は不注意と言わざる場面が多かった。

 

(最初は普通だったのに…)

 

 何故、と考えつつも気絶するベルの近くに腰を下ろし、もはや日課となりつつある膝枕を決行する。

モフモフとした癖のある白い髪の毛を撫で下ろしていると、やはり小動物を撫でているみたいで癒される。

 

(…兎。もふもふ…)

 

 モフる、ひたすらにモフる。普段だと逃げられてしまうため撫でることは出来ないので好機と言わんばかりに堪能する。

 

 すっかりアイズの愛玩動物と成り果てたベルは気を失っているため抵抗はない。

 

 ただ、時折苦しそうな表情を見せるのが気にかかった。訓練の傷が痛むか、悪夢を見ているのか。

 

 アイズにはそれが分からず、自分が攻撃が入った箇所を探して痣になってないか確認しようとして、ある一点に目が止まった。

 

「あ…」

 

 アイズの視線の先には、自身の膝枕で眠るベルの隆々と盛り上がったズボンのテントが激しく自己主張していた。

 

 戦闘一筋、ロキファミリア箱入り娘のアイズでも“ソレ”が意味する事は分かっている。男女の営みに関する知識は貞操観念を叩き込まれた時にある程度教わっているし、冒険者という職業上そういう暗い部分の話は避けては通れない道だろう。

 

 ともかく、少年の苦しげの表情の原因はおそらく窮屈そうに主張を続けるコレの存在だろう。

 

(興奮してる…の?)

 

 何故と考えた時、高所特有の強い風が体を撫でる。その時、風がスカートの中を吹き抜けるスースーとした感触でハッとする。スパッツを履いていなかった。

 そこまでくれば鈍感なアイズでもこの事態の原因は自分の失態である事に気がついた。

 

 少年が殴られて喜ぶような性癖(マゾヒスト)でない限り、(アイズ)に欲情したとしか考えようがない状況に、アイズは不思議と嫌悪感を抱かなかった。

 

 第一級冒険者として顔が売れているアイズは、好色な男神やダンジョンで気が立っている冒険者からそういう視線をよく浴びせられるが、それはただ不快な感情を抱かせるだけだった。

 

 だが、この少年からそういう対象に見られていると知って、アイズは高揚感を覚えた。

 

(私…喜んでるの…?)

 

 はしたないと頭では理解しつつも、少年の立派に盛り上がったテントを見つめ、腹の底がジワリと熱を帯びる。

 ちょっとした事では乱れない強心臓がドキドキと心音を加速させる。

 

「苦しそう、だから…」

 

 これは性的な行為ではないと言い聞かせながら、ベルトに手を掛けてチャックをゆっくりと下ろすと下着を突き破らんと隆起した逸物がビクビクと震えていた。

 先端は湿り気を帯びていてヌチャリとした粘液が浸透していて淫らな匂いが立ち込める。

 

「…すん…んっ♡」

 

 無意識の内に短く鼻を鳴らしていた。汗の匂いと混じる独特な匂いがアイズの鼻腔に広がる。

 臭いと言えば臭いのかもしれないが、経験豊富なアマゾネスであれば濃厚な雄の匂いだと評するであろうその癖のある性臭にアイズはいけないと分かっていながら何度もスンスンと鼻を鳴らしていた。

 

 駄目、こんなことはいけない。分かっている、それでもアイズは魅了されたようにベルの股間に吸い寄せられるかのように顔を近づけていく。

 鼓動が煩いくらいに動悸が激しい。アイズが性欲というものを理解していたとしたら今の自分が欲情している事も理解していただろう。

 

 だが、戦闘一筋だったアイズはこのムラムラとした感情が何なのか理解出来ない。理解不能なナニカ(性欲)に駆り立てられ、アイズはベルのパンツに手を掛ける。

 

「まだ…窮屈そう、だから…♡」

 

 悪い事だと分かっているからこそ、言い訳が口から漏れ出ていく。そうして正当化しないと理解不能なナニカ(性欲)を認めてしまうから。

 

 此処には間違いを諭す者も居なければ、淫らな行為を止める者も居ない。

 

 アイズは指先に力を入れてパンツをゆっくり下ろす。硬く膨張した逸物が引っかかっていたが下の方まで下げ切るとブルンっと突っかかっりが外れたように飛び出してベチンと重厚感のある音で腹を打つとビンっと聳り勃った。

 亀頭を濡らす粘液が反動で飛び散り、アイズの鼻や唇にヌチャリとこびり付く。

 

 しかし、アイズの意識は眼下の血管が張り巡る太い剛直に奪われて呆然としていた。

 

(――おおきい。それに、凄い匂い…♡)

 

 少年の可愛らしい容姿からは想像もつかない立派な男根が露わになり、アイズの思考は理解不能なナニカ(性欲)に犯されていた。

 

 アイズは初めて見る男根におそるおそる視線を送っていたが、いつしか目も逸らさずに観察するかのように男根を見つめていた。

 

 アイズの吐息が男根を撫でる度に、ビクリと震えて涎を垂らすように我慢汁が先端から溢れ出る。

 

 それを見て、ふと唇に付着する粘液に意識が向く。ペロリと唇に舌を這わせ、付着した粘液を口に含む。青臭い、苦味が口腔を満たす。

 

(変な味…でも…♡)

 

 一種の麻薬のような渇望がアイズを襲う。魅了されたかのように視線は少年の腹へと垂れ伝う粘液へ、そして粘液を吐き出す亀頭の先端へと向けられる。

 

――もっと、欲しい♥

 

「…れろぉ」

 

 小さな舌が少年の腹を這う。枯れた大地の草木に滴る水に水を這わせるようにアイズは舌を這わせて粘液を舐めとる。

 

(にがい…でも癖になる…ような…♡)

 

 口に含めば含むほど、中毒性が増していく。普段ならば絶対にしないような行為も麻薬のような中毒性にタカが外れていく。

 

(もっと…♡)

 

 腹に垂れた粘液を舐めつくしたアイズは未だに我慢汁を出し続ける逸物へと視線が釘付けになる。

じゅんと腹の底の熱が更に増し、アイズの吐息はより艶やかに色めかしくなっていく。

 

 アイズの吐息でビクビクと震える逸物。アイズの頭の中は自制心(理性)と色欲とがせめぎ合っていた。

 

 理性曰く「これはいけない悪いことだ。排泄の機関でもある男根を口に含むなどあってはいけない」と。

 

 色欲曰く「欲望に素直になれ、男根に舌を這わせ、口に含んで吸い出せばあの味が味わえる」と。

 

 平時であればこのような二択をする前におかしいと斬って捨てるアイズであるが、煮えたぎるようなムラムラとした性欲が判断を鈍らせるどころか欲望に傾いた。

 

「……れろ…♡」

 

 おそるおそると伸ばした舌が鈴口を這う。熱に敏感な舌先が剛直の熱さと粘液の苦味を感じ取る。

 

「…うっ…く…っ」

 

 突如として敏感な裏筋にザラザラとした舌が刺激を与えた事によってベルは身体を震わせた。

 

「――!?………まだ、寝てる…?」

 

 慌てて身構えるも少年は魘されたように顔を歪ませるだけで目覚める様子はなかった。

 

(…やっぱりこんなこといけない…。目を覚ましたこの子に軽蔑されちゃう……でも――)

 

 毎回訓練で気絶させているため、ある程度少年が目を覚ます時間は掴める。いつも通りであればあと20分程は目を覚まさないだろう。

 

――まだ、この行為を続けられる…と、思考はズルズルとイケナイ方向へと流れ落ちる。

 

(あと、10分だけ…)

 

 あと10分、あと10分は自分の欲望(性欲)を満たすために。そう考えた時にはアイズは前髪を耳にかけて押さえると大きく口を開いていきり勃つ剛直を頬張った。

 

(…熱い…♡)

 

 人の体の一部とは思えない熱を持つ剛直に驚きながらも、飴を舐めるような感覚で鈴口をなぞり我慢汁を舐め取る。

 直に口いっぱいに広がる独特な苦味にアイズは満たされるような感覚に襲われる。

 

(もっと…欲しい♡)

 

 刺激すれば湧き水のように溢れ出すその汁を求めるアイズの口淫は激しさを増し、舐めるだけでは飽き足らず、口を窄めてちゅーちゅーと蜜を吸い出すように鈴口を責め立ていた。

 

「…ぁっ…く…ぁ…」

 

 当然、そのような口淫を受けたベルは目を覚まさないものの甘い声が漏れ出し始める。

 

(…気持ちいい…の?なら…もっと、してあげたい…な♡)

 

 どうすれば気持ちよくなるかは、処女のアイズには分からない、だが時たまベルが呻き喘いで腰が浮く瞬間が気持ち良さそうだというのは分かる。

 

(ここ…イイのかな…?とっても気持ち良さそうな顔…)

 

 それは舐め方や舐める場所で様々だったが、アイズはソレを確実に吸収していった。

 この行為の名称(フェラチオ)も知らずに、アイズの口淫は熟達していき、娼婦のような舌遣いでベルの逸物を責めあげ、ベルの腰が浮きっぱなしになるほどの快楽が意識を失ったベルに襲いかかっていた。

 

「んむぅ…じゅぷ…れろ…♡」

 

「…っ…うっ…」

 

 そして、遂にベルの限界が訪れ始めたのか、一際苦しげな声を出したベルに連動するようにチンポが膨張してビクビクと震え始める。

 

(…っ!?大きく…なった?それにビクビクしてる…♡気持ちいい…の?なら…もっと…?)

 

 ソレを単純に気持ち良さそうにしているとしか思わなかったアイズは口淫を緩める事なく、寧ろより一層口淫に励んだ。

 

「あっ…くぅぅっ…!?」

 

 その結果、ベルの睾丸の堰が決壊し、ビクンッと一際大きく震え――

 

どびゅっ…どびゅるるるるっ!どびゅどぴゅどびゅッッ!!

 

「んぅぅっ!?んむぅ…!?っ…はぁっ…!?」

 

 白濁の本流がアイズの口腔に叩きつけられ、大量の精液がアイズの喉奥へと流れ込む。

 突如として起きた出来事にアイズは目を白黒させ、力強い射精を受け止めきれず口を離してしまう。

 

びゅるるるっ…!どぷぷぷっ!びゅるるっ…どびゅっ!!

 

 アイズの口から解き放たれてもなお、射精が収まることはなく、2度、3度びゅるるっと白濁した液体を勢いよく吐き出して剛直は硬さと勢いを失くしていった。

 

(…苦い…)

 

 初めての射精を前にして、頭が真っ白になったアイズが一番初めに抱いた思いは精液の味だった。

 喉奥にへばりつく青臭い精液の味が脳を犯す。甘党で苦味が嫌いなアイズにとって好ましくない味のはずだっだが、何故か嫌いになれなかった。

 

(顔にもかかってる…この白いの…精液…?この子が…?)

 

 口元や肌に付着した精液を掬い取って眼前で観察する。初めて見る精液はぷるぷるとぜりーみたいに震えている。

 アイズは逡巡した後、舌をダラリと伸ばして手指にまとわりつく粘着質な精液を口に運んだ。

 

(――やっぱり苦い…でも…もっと欲しい、もっと、舐めたくなる…不思議…)

 

 ベルの精液は苦味の他に脳がとろけるような未知の味覚が含まれており、まるで麻薬のような中毒性でアイズの精神を犯していた。

 

 アイズの視線は自身の唾液と精液で汚れたベルのデロンと横たわった逸物に釘付けになる。

 

(綺麗に…してあげなくちゃ)

 

 萎えても太巻くらいのサイズはあるベルのチンポを大きく頬張り、チュウチュウとストローを吸うように精液を尿道から吸い出す。口腔内に再び精液の味が広がり独特な苦味が舌先に伝わる。

 

(んっ…♥綺麗に、してあげる…だけ、だから…♥)

 

 舌先で味わうようにゆっくりと転がしてから嚥下する。頭がぼーっとするような感覚が心地よく感じる。アイズはベルの精液の味の虜になっていた。味わえば味わうほど、思考が蕩け、腹の奥底が熱くなる感覚が襲いかかる。

 

 とっくに綺麗になったベルの肉棒からアイズは口を離せないでいた。お掃除フェラの範疇を越えた口淫によって再び口内で硬さと大きさを取り戻し、一度射精したというのにその先端から淫汁が溢れ始めた

 

「……♥もっと…ほしい…♥」

 

 しかし、再び精液を絞り取ろうとしたアイズの視界の隅でもぞもぞと白い頭が動くのが見えた。

 

「――んん…アイズさぁん…」

 

(――っ!?不味い)

 

 先程の吸い付きで再び硬度を取り戻しつつあるベルのチンポを物欲しそうに見つめるアイズだったが、ベルの寝言と身動ぎが増えたことからそろそろ起きる事を悟る。

 アイズはLv.6の敏捷性をフルに使って自分とベルの身支度を整え始めた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 軽い鈍痛に苛まれながら目を覚ます。

眼前にはアイズさんの下乳とこちらを見つめる顔。

 

「…ん゛っ!?むぁあぁあああぁぁぁああぁ゛っ!?」

 

 状況を把握した瞬間、痛む体を無視して飛び跳ねて転がり起きる。

 

「あ、あ、アァアイズさんっ!?す、すっ、すみません!?」

 

 少し離れた位置からアイズさんに向き直り腰を直角に折り曲げ謝罪する。

 

「なんで君が謝るの…?」

 

 少し悲しげな声につられて顔をあげると少し不満げに口を尖らすアイズさんの顔が映る。

 

「あっあぁっ、いっいえ!ありがとうございました!?」

 

 膝枕は気絶する毎に行われるのだが、いつまで経っても慣れることはないだろう。毎回の如く僕は相当テンパっていた。毎回このやり取りを行って訳もわからず感謝を述べて終わるのだが、今日は少し違った。

 

「私もありがとう…」

 

「へっ…?」

 

 アイズさんは普段の無表情ではなく、少し妖艶な雰囲気の笑みと共に僕に感謝を述べた。

 僕がその意味を理解することなく、その日の修行は終わり、解散となった。

 

 

 

 その日以降、何故かは分からないがアイズさんとの修行後は妙に性欲がスッキリとなくなるようになっていた。




おかしいな、いつの間にか睡眠姦逆レイプになっていた…

そして、ベルくんの童貞は誰で卒業するべきか…どしよ…


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CASE2.2アイズの場合

まさかの日間1位で驚きと感謝の気持ちでいっぱいな作者です。
この作品について、ここが良かった、こうして欲しい、などありましたら感想で一言コメントして頂けると幸いです。評価もたくさんくれると嬉しいな…チラッ


「…いくよ」

 

「へっ?ちょっ、速っ――モルスアァッッ」

 

 朝日が徐々に昇り始め、辺りが白み始めた、つまり修行も終わりが近づきつつある。

 アイズはそろそろかと当たりをつけ、Lv.1の冒険者にはまず反応することさえ難しい速度で接近し、スキだらけの顔に回し蹴りをお見舞いし、意識を刈り取った。

 

 修行が始まった当初は手加減を間違えてベルを気絶させてしまっていたが、ここ最近のアイズは確信犯と言っても過言ではなく、時間を見計らって態とベルを深い眠り(昏睡状態)に陥らせていた。

 

 もう幾度と行われたベルとの修行、すごい速度で成長していく彼に、大きな関心と興味を抱いていたアイズだったが、最近の彼女の興味関心は移り変わりつつあった。

 

(…うん、これなら数十分は起きない…よね)

 

 修行当初よりも少し強め(アイズ基準)で蹴り飛ばされたベルは錐揉み回転しながら地面に激突し、完全に伸びていた。到底人には見せられない顔で気絶したベルの頬をツンツンと突きながら用心深く眠りの深さを確認する。

 

(…ごめんね…)

 

 心の中で少年に対して謝罪しつつ、アイズは手慣れた様子でベルトを外してズボンを摺り下げた。白いシンプルな下着は彼の逸物でこんもりと盛り上がっており、その姿形がくっきりと浮かび上がっている。

 最早見慣れつつあるソレにアイズは驚くこともなく、ほぅと感嘆の息を漏らし、ベルの最後の砦を取り去った。

 

(何度見ても…おおきい…)

 

 勃起していないためか下着から解放されたペニスは腹の上にデロンと横たわる。

 アイズは重量感のある大きなソレに驚く様子は一切なく、むしろ玩具を与えられた子供のように喜色満面で鷲掴みにした。

 まだ柔らかくぶるんぶるんとしなだれる陰茎を口元に寄せスンスンと匂いを嗅ぐと濃いオスの匂いが鼻腔に充満する。

 

(…変な匂い…♡でもこの子だと思うと…嫌じゃ、ない…)

 

 通常であれば臭い分類に入る匂いの筈だが、むしろもっと嗅いでいたいと思うような癖になる匂いだった。しかし、この匂いを嗅いでいると否が応でもカラダが謎の熱に犯され火照ってしまう。

 吐息が亀頭に触れる程の距離で匂い堪能し終えると、アイズは未だに柔らかい肉棒を両手で握りしめ、上下に扱き始める。

 

(…まずは…大きくしないと…)

 

 両手で握っても手に余る陰茎を上下に扱くと、自重でぶるんぶるんと垂れ下がっていた亀頭がムクムクと勃ちあがり、あっという間に雄の象徴が天を衝くが如くガチガチに聳え立った。

 アイズはそれをキラキラとした目で見つめ、硬くなった肉棒を玩具のように左右に振り回した。ブンブンと風を切る肉棒。

 

(…かっこいい)

 

 未だに自分の仕出かした淫行の重大性に気づいてなどいないアイズの感想は能天気なものだった。

 

 その後も、雄の威光を振りまく様を色んな角度から観察していたアイズだったが、満足するとチロリと舌を出し、裏すじの根本に這わせて亀頭に向かって撫でる上げるように舐めると――

 

「…あむぅ…」

 

 パンパンに膨れ上がった亀頭を頬張った。生暖かい口内と裏すじを沿うように蠢く舌の刺激で肉棒がビクリと震えた。

 上目遣いでベルの様子を伺えば快楽に悶えているのが見て取れた。アイズは満足げに『むふぅ』と鼻で息を吐くと、飴を舐めるように鈴口をチロチロと舐めれば面白い程にチンポがビクビクと反応する。

 性感の弱いところを着実に責めたてられ、鈴口からは粘り気のある液体が漏れ始め、アイズの舌先に絡み始める。

 

(ん…♡ネバネバしてる…好き…♡もっと…)

 

 この数日ですっかりベルの精液の虜になっているアイズは我慢汁に対して嫌な顔をするどころか、寧ろ喜悦に染まった蕩けた顔で味わっていた。

 

 早朝の市壁の天辺部は人気(ひとけ)がなく、此処にはベルとアイズの二人しかいない。

 それを感じ取っているアイズは音が出る事すら厭わず、じゅぷじゅぷと亀頭を吸い付き、射精を強請るように口を前後に揺らして肉棒に多大な快楽を与える。

 

「…うっ…くぁ…」

 

 完全に意識を失っている間にカリ首や裏すじなどといった自分の弱いところを的確に責めてくる舌の動きにベルは堪らず呻き声をあげる。

 それが射精の予兆である事をこれまでの経験で悟り、舌の責めは一切緩めず、太い幹を握っていた右手を上下に扱き始める。

 

(…だして…君の…いっぱい…頂戴…)

 

 アイズの口淫が激しさを増すほどに、ベルの腰がカクカクと浮き始め、陰茎はこれ以上にないほど膨張し、ビクビクと暴れ始める。

 

「…ぁっ…うっ…!」

 

 意識がない状態では我慢のしようもなく、あっという間に限界を迎えたベルは一際大きく震えて短く呻くと、煮えたぎるマグマのようにドロドロした精液が尿道を駆け上り、アイズの口腔に勢いよく叩きつけられる。

 

(…あっ…♡)

 

どびゅるるっ!びゅぐっ…びゅるるッッ!

 

 と、何度も射精を繰り返す肉棒から、アイズは一滴も零さんと一切口を離さずに受け止める。

 口の中がゼリーのような熱い精液で満たされ、咽返るような匂いが鼻腔を突き抜ける。

 

「んむぅ…!んっ…うむっ…♡」

 

 最後まで勢いの衰えない射精を受け止めきり、アイズは口を窄めて尿道に残る精液も吸い出すと、ゆっくりと零さないようの肉棒から口を離した。

 

(口の中…この子でいっぱい…♡)

 

 ジャガ丸くんを口いっぱいに頬張った時の幸福感に匹敵するあるいはそれ以上の幸福感がアイズの心を満たす。

 同年代の女性に比べて性欲というものが欠如していたアイズだったが、最早媚薬と言っても過言ではないベルの精液の中毒性にまんまと嵌まり、精液中毒者(ザーメンジャンキー)になっていた。

 性の意識が薄い本人にとっては食欲に近い物だと錯覚しているが、カラダは精液の影響で発情させられ、白い下着どころかスパッツまでも濡らすに至っている。

 

「…こくっ…こく…」

 

 ゼリーのような精液をゆっくりと舌で転がして味わいながら嚥下して飲み干すと、脳が痺れるような甘い快感が全身に広がりカラダを火照らせる。

 

(…おいしい…♡でも…カラダが…熱い…?)

 

 性欲などとは無縁であったアイズは今現在、カラダを蝕む熱が何なのか分からない。単純に言えばムラムラしている、発情しているのだが、その自覚もなく、性欲の発散方法も知らないアイズはひたすらに困惑する。

 

(もしかして…毒…?)

 

 全く以って見当外れの思考であるが本人は至って真面目に自分のカラダを心配し始め、不意に自分の秘所がぬちゃりと濡れており、不快な音を立てるのを感じた。

 スパッツの上から秘所を指でなぞると粘着性のある液体が指に付着した。

 

(また…濡れてる…なんで…?)

 

 ベルの精液を飲むと、汗を掻いたわけでも、おしっこを漏らしたわけでもなく、半透明なねちょねちょした液体が股間を濡していた。

 

(もう、やめたほうがいいのかな…でも……)

 

 カラダの熱、秘所を濡らす謎の液体。アイズにとって未知のことだらけで不安になる。しかし、その不安を無視してでもベルの精液が齎す多幸感を得たいと思うアイズ。

 脳内でこの現象について議論するも何も分からず、脳内アイズ達による最終決議は――

 

(…帰ったらリヴェリアに聞いてみよう…)

 

まさかの他人に丸投げだった。

 

 

 

 

 

 

――後日、この件についてアイズがファミリアの女性団員に聞いて回って物議を醸し、主神が暴れたとかなんとか…

その結果、ファミリアのママから必要最低限の性教育とアマゾネスからはカラダの熱の収め方を教わったとかなんとか…あったりしたらしい。




ベルくんの童貞奪う相手アンケートしようと思って本番行為を避ける内容に変えたらアイズがひたすらアホの娘になってしまって申し訳なさを感じる。気がする…


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CASE2.3アイズの場合

ダンまちの世界って避妊どうしてるんだろう。
歓楽街とかあるし、そういう避妊具的なのがあるのか、ピル的な薬があるのか、それともファンタジーよろしく避妊魔法的なものがあるのかな。
本作はどれが正しいんだろう…やっぱ薬なのかなぁ


 月明かりもない暗い夜空は、地平線より顔を出す朝日によって徐々に白んでいく。

 アイズは朝が迎える瞬間を城壁の上でぼんやりと眺めながら、早朝訓練の相手であるベルを待っていた。

 

 待っている間、アイズの思考は白い少年の事でいっぱいであった。

 第一級冒険者となったアイズでさえ嫉妬する成長速度で強くなっていく少年(ベル)。そして相対的に停滞期にある自分を比較してしまう。自分とあの少年では立ち位置や経験がまるで違うというのに。

 

 ミノタウロスの件と、酒に酔ったベートの誹謗中傷で傷ついた少年への贖罪がしたくて、この早朝訓練を申し出た。謝罪したいという想いは本物だ。しかし、それだけが理由かというとアイズには後ろめたい想いもあった。

 

 それは加速的に強くなっていく少年とは相対的に成長が伸び悩む自身の現状を、少年との訓練で成長の秘訣を知ることが出来れば打破出来るかもしれないという打算的な理由だった。

 

 結果として、少年の恐るべき成長速度を見て、どうして…?疑問と嫉妬は深まるばかりだったが。

 しかし、その暗い感情も、自分との訓練に必死に取り組み、毎日ボロボロになりながらもダンジョンに挑んでは飛躍的に成長していく少年を見て氷解しつつあった。

 

 死にものぐるいで強さを、理想を追い求める少年の姿勢に触発されたのだろう。少年との訓練や対話を通じて、今の自分に足りないモノが分かった気がしたから。

 

 そして、何度かの訓練を経た今現在、アイズの中に新たな理由が芽生えていた。

 

 それは――

 

(…ベルのおちんちん…)

 

 相変わらず人形のように表情の抜け落ちた顔をしているが、頭の中は少年の股ぐらに聳え立つ大きなイチモツの事で溢れかえっていた。

 

 この訓練が始まってからほぼ毎回見て触って、舐めて、口に含んでいるイチモツはもはや脳内で大きさ、感触、匂いや味に至るまで鮮明にイメージ出来るようになっていた。

 

 しかし、つい先日お母さん気質のエルフに叱られたばかりであるアイズは思い出したかのように自身を戒めた。

 

(…いけない…リヴェリアにふしだらな事は駄目だって怒られたんだった。)

 

 冒険一筋のアイズが珍しく相談に来たかと思えば、愛液や体の疼きの収め方など聞きに来るものだから、リヴェリアは顔を真っ赤にしてアイズを(説教)した。

 ベルとの訓練の事はぼかしつつも、事情を説明したアイズにリヴェリアはなんとも言えない顔で性教育をしたという。

 

『愛し合う男女が同衾すると翌朝コウノトリが2人の子供を運んでくる』

 

 などという、幼い頃に施した性教育よりも一歩踏み込んだ内容――

 

曰く、『男性器と女性器が交わり、精子と卵子が結びつくことで子供が出来る』とか

 

曰く、『(アイズ)の股を濡らしていた半透明の液体は愛液と言って、男性器を女性器受け入れるための潤滑油で体に害はない』とか

 

曰く、『そういう気分になっても恥ずべき事なので女性団員だとしても聞いて回るのは駄目』などなど…

 

 この件があってから、リヴェリアによって女性団員達にアイズに対しての性的な話題してはいけないという箝口令が敷かれ、アイズもまたそういう話題を口にするのは止めるよう言い含められた。

 

 女性団員のトップに立つリヴェリアによる箝口令のため、アイズが性的な情報を手に入れるのは不可能になったかと思われたが、リヴェリアの箝口令を破って教える者がいた。

 

 ロキファミリアのアマゾネス姉妹の大きい方、ティオネである。

 

 ティオネはリヴェリアの箝口令が敷かれたことからアイズに気になる異性が出来たのだと推測し、アイズを問い詰めた。

 誰が相手かは掴み切れなかったものの、アイズの意中の相手が愛しの団長でないと分かると、それはもうアマゾネスの貞操観念で色々とアイズに吹き込んだ。

 

 中途半端に性教育を受けたアイズはティオネの話を真剣に聞いて、性に関するより生々しい知識をスポンジの如く吸収した。

 

 曰く、『男性器と女性器の交わりをセックスといい、子供を作るだけでなく、互いに快感を共有しパートナー同士の仲を深める行為である』とか。

 

曰く、『膣内に射精されるとデキてしまうので、冒険者として現役でいたいなら膣内に射精させないこと。それかピルを飲んで避妊する』とか。

 

曰く、『セックスには準備段階として前戯があり、男性は女性の身体を愛撫して女性器を濡らし、女性は男性器を扱いたり舐めたり口に含んだりして刺激を与えて勃起させる事を言う』とか。

 

曰く、『身体の疼きは性的興奮によるもので、慰めてくれるパートナーがいなければ自身の指で慰める』とか。

 

 などなど、ティオネはリヴェリアが全力で(ぼか)していた内容を鮮明にするどころか余計な知識まで教え込んでいた。

 他にも前戯の種類や名称、セックスの体位、オナニーの仕方など、性に奔放なアマゾネス故にあっけらかんと教えてしまったのだ。

 

 ティオネによるアマゾネス式英才教育によって、自分が知らず知らずフェラチオをしていた事や少年に対して性的興奮を抱いていたことを自覚すると、アイズの脳内は真っピンクに染まり上がった。

 

 それ以降、アイズはベルの事が気になって仕方がなかった。日頃ベルの事を考えてはムラムラとして身体が疼き、風呂に入る前や夜中にオナニーするのが日課になった。

 

 しかし、いくらオナニーして快感を得ようとも、満たされない感覚的がアイズにはあった。

 オナニーで全身が痺れるような快感に包まれて絶頂に登り詰めても、どこか物足りなく感じるのである。

 

 この事をティオネに相談すると――

 

曰く、『私も同じよ。団長に抱かれる妄想で慰めているけど、物足りないし虚しくなるのよね…。オナニーの快感よりもセックスの方が断然気持ちいいって聞くし…』

 

『――それに、愛おしい方と繋がるって最高に満たされるしキモチいいと思うのよね〜。早く私も団長と…♥はぁん♥』

 

 と、自身の赤裸々な性事情と女性団員界隈の性体験などを交えた話を教えてくれた。

 

 こうした経緯を経て、アイズの性に対する欲求はリヴェリアが知らないところで、目を覆いたくなるほどに高まっていったのだ。

 

(リヴェリアは駄目だって言うけど…気になる…)

 

――セックスって、そんなに気持ちいいの?

 

 兎のような少年の姿を思い浮かべる。幼い童顔に不釣り合いなペニスが自身を貫くことを想像すると股がジュンと湿り気を帯びる。

 

 

 

 そして今日が、アイズが性的な知識を蓄えてから初めて行われるベルとの訓練の日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベル・クラネルは走っていた。

 

 今日はアイズとの訓練の日だというのに、若干の遅刻状態だったからだ。

 

 いつも城壁へと足を運べば、手持ち無沙汰に立ち尽くしている金髪の少女が見えた。高所特有の強い風が彼女金糸のような髪をたなびかせてキラキラと光っていた。その光景に息を忘れて見惚れそうになるのを頭を振って駆け寄った。

 

「――すみません!遅くなりました!!」

 

 急いできたために息が乱れているが、アイズさんの下に着くなり叫ぶようにして謝罪する。レベル1の僕が第一級冒険者のアイズさんを待たせるなんてとんでもない事だ。

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

 しかし、当の本人は何も気にしてなさそうな表情で振り返り、こちらを見ると一瞬笑ったような気がした。

 僕が少しドキリとして目を離した一瞬でいつもの無表情に戻っていたけど。

 

「…それじゃあ…特訓、しよう」

 

 時間がおしいとばかりに剣の鞘を構えるアイズさん。いくらなんでも急すぎる。いつもは軽く話をしてから特訓に入っていたのに…

 

 いまだに息が切れて呼吸も乱れており、僕がとても戦えるコンディションではないのはアイズさんから見ても明らかだろう。

 

 ちょっと待ってくださいと、口に出しかけたその瞬間――

 

『――ダンジョンは待ってはくれないよ』

 

 アイズさんのアドバイスが脳裏を過ぎる。

 

(そうか…!これは訓練なんだ!!)

 

 これは、おそらく不利な状況でも戦わないといけない、そんな場面を想定した訓練なのだとベルは考え、武器を構えた。

 

「っ…!お願いします!!!」

 

「…いくよ」

 

  鈴のような声が僕の耳に届いた次の瞬間、金色の風が僕の動体視力を振り切って掻き消えた。

 

 つまりそれは、辛うじて姿を捉えることが出来たこれまでの訓練では出した事がない速度でアイズさんは動いているということだ。

 

(はやっ…!?消え――!?いや!後ろか!?)

 

 アイズさんの姿は全く追えていなかった。

 だがしかし、この一瞬で自身の視界に居ないのであれば答えは背後しかない。

 その勘に身を任せて振り返るとアイズが身体をよじって蹴りの体勢に入っているのが視界の隅に映る。

 

(――回避…!?駄目だ!体勢が悪くて避けられないならっ…!)

 

 避けるのは不可能と悟ったベルは振り向きながらアイズにタックルするべく地面を蹴った。 

 

 蹴りを食らう前に押さえようとする。その考えまでは良かったのだが、振り向きざまで悪い体勢、スタミナ切れの体、その他様々な要因が重なった結果――

 

「うわっ…!?」

 

「…!!」

 

 ベルはその場でズッコケて上段蹴りを放つアイズの股間に顔を突っ込み、その拍子に蹴りの体勢でバランスを崩したアイズは太ももでベルの顔面をロックしたまま下敷きにして座り込んだ。

 

「むごぉっ!?!?」

 

「…っ!」

 

 一瞬のもつれ合いでベルの頭は柔らかいアイズの臀部と硬い石畳に挟まれており、俗に言う顔面騎乗位状態であった。僅か一秒にも満たない出来事である。

 

 しかし、後頭部を強打したベルはそんな美味しい状況にあることを把握する間もなく、薄れゆく意識の中でタックル瞬間に見えた最後の景色である純白のパンツを脳裏に焼き付けると、甘酸っぱい香りに包まれながら意識を失った。

 

 一方、ベルの顔面に跨がるアイズはベルが見えないなりに反応してタックルしようとした事と、その結果この体勢になったことに驚いていた。

 

 しかしそれも一瞬で、ゆっくりと腰を上げてベルの容態を確認し、気絶しているだけだと分かると視線は下に向かい、若干の盛り上がりを見せる股間に釘付けになる。

 

「…♡」

 

 アイズは蕩けた表情でズボンのベルトに手を伸ばした。




性の喜びを知ったアイズと気絶したベル。何も起こらないはすがなく…
次回、ベルくんの童貞死す!デュエル(意味深)スタンバイ!


出来る限り原作を壊さないように書いてたけど、R18の時点で原作も何もないなと思い直した作者は、絶対そうはならんやろと思いつつもエッチな方へ話の展開を持っていくのであった…


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CASE2.4アイズの場合

ひゃっはっーーー!ベルくんの童貞は消失だァーーーーッ!


 慣れた手付きでズボンのベルトを外し、ズボンをズリ下げるとベルのイチモツがブルンっと(まろ)び出る。

 

 完全に勃起してはいないが血が巡って血管の隆起した雄々しい半勃起の男性器を細く靱やかな指で優しく握りこむと、アイズは蕩けた表情で男性器を見つめた。

 

(…大きくなってる。君は、私で興奮してたの?)

 

 リヴェリアがいれば顔を真っ赤にして否定するような突飛な思考を止めるものは、このひっそりとした城壁の上にはいない。

 

 アイズの細い指と息遣いの刺激で男性器はみるみる大きくなっていき、それはアイズにとってはその突飛な思考に対する回答のように思えた。

 

(君も、私と同じで、セックスしたいの…♡?)

 

 完全に勃起して猛々しく天を衝くベルの逸物を見て、下腹部が疼き始める。吐息は甘い熱を孕み、秘裂はジュンと湿り気を帯びる。

 

 ティオネによれば雄を受け入れるための準備が整いつつあるという事だ。よく濡らさないと気持ちよくなるのは難しいとも。

 

 アイズは辺りに人の気配がないか注意深く探り、誰もいないと確認すると、純白のパンツに手をかけて降ろした。秘所を覆い隠していたパンツが秘裂とクロッチ部分に銀の糸を垂らしながら離れていく。

 

 アイズは脱いだパンツをアイマスクになるようにベルの頭に載せて視界を塞ぐと、ギンギンに勃起した逸物に秘裂を擦り付けるように座り込んだ。

 

 クチュリと濡れた秘裂がベルの逸物に触れて湿った音を立てる。火傷するように熱い逸物に自分の秘裂が直接触れ合っている。

 

(凄い…ベルのおちんちん熱い…♡これが…私の膣内(ナカ)に入っちゃうの…?)

 

 再びジュンと愛液が分泌され、膣内を潤すに飽き足らずサーモンピンクの控えめな小陰唇に至るまで潤した。

 アイズは無意識にベルの逸物の裏スジを愛液をまぶすように秘裂で擦りあげた。

 熱い肉棒が小陰唇や陰核を刺激し、ビリビリとした強い快感がアイズに襲いかかる。

 

(ダメ…♡これ、擦れるの…♡気持ち、いい…♡)

 

 アイズは本能的に腰を前後に揺らし、ニュルニュルと性器の擦れ合う快感に酔いしれた。

 俗に素股と呼ばれる行為は、独りよがりなオナニーとは違った、強い興奮と快楽をアイズに齎した。

 

「…っ♡ふっ…ぅ♡ぁ…っ♡」

 

 アイズは快楽の波に流されつつも、艶かしい喘ぎ声が漏れそうになるのを必死に口元を手で覆って押し殺そうとした。

 

(大きな声出したら…この子が起きちゃう…♡)

 

 アイズの特訓の度に手酷く昏睡させられるベルだが、回数を重ねる度に気絶時間が短くなってきていた。

 今回は後頭部を強打しているため通常より手酷く昏睡しているとは思うが、当然行為の最中に目覚める可能性はある。

 

 その危険性を理解しつつもアイズは腰の動きを止めることはなかった。

 

(もし、起きたら…私を、軽蔑する…っ♡かな…♡それとも…♡私を、見て…興奮する…の…♥?)

 

 アイズの純白のパンツが被せられたベルの表情は分からない、だが、この下手をしたら起きてしまうかもしれないという危機ですらアイズは興奮の材料となってしまっていた。

 

 もはやベルの逸物は潤滑油で濡れていない場所がないほどに濡れそぼり、アイズの秘裂もまた、ぴくぴくと拡縮する小さな膣口から愛液が湯水のように溢れ出ていた。

 

 ニチャニチャと淫らな水音を立てながら激しく腰を揺らすアイズの性感の極限まで高まり、敏感な陰核に肉棒が擦れた瞬間――

 

「ぁっ…あっ…♥ダメっ…♥♥ぃ…く…っ♥♥♥!!」

 

 口元を必死に押さえて声を押し殺しながら絶頂するアイズ。じっとりと汗ばんだ肢体をビクビクと震わせてイッたアイズの表情は発情したメスと形容するのが正しい酷く淫蕩な顔だった。

 

「――ひぅ…♥んっ…♥はぁ…♥♥」

 

 アイズは絶頂の余韻に浸りながらも、ゆっくりと腰を浮かせ、細くて白い繊細な指を太い幹のような陰茎に添えると自らの秘裂にパンパンに膨れた亀頭を導いて押し当てた。グニュリと膣の入口を押し広げる感覚にアイズは酷く昂ぶった。

 

(自分でスる時より…気持ちいい…♥ベルのおちんちん…ココに挿れたら、もっと…♥気持ちいいの、かな…♥♥)

 

 後数センチ押し込めば潤滑油の働きによってベルの逸物が膣内にニュルリと侵入し、硬く閉ざされていた膣壁を押し広げることだろう。

 

――もし、そうなったとしたらどれほど気持ちがいいのだろうか…

 

(…挿れて、みたい…♡ベルのおちんちん…♡♡膣内に欲しい…♡♡♡)

 

 自身の膣口に押し当てているベルの立派な逸物は、絶対に気持ちいいだろうという確信がアイズにはあった。

擦れ合うだけでこれほどの快感ならば、挿入したらどれほど気持ちがいいのだろう。

 

 あとは腰を少し落とすだけ、それだけで気持ちよくなれるのだ。

 

(…リヴェリア…ベル…)

 

 自分の下で意識を失っているベルにふしだらな行為をしてしまっている事やリヴェリアの言いつけを破ることなどへの罪悪感で微かに残った理性が良心を呵責するも、快楽を貪欲になってしまったアイズの我慢や躊躇は一瞬だった。

 

(――ごめん…なさい…っ♥♥)

 

 アイズはたったこの瞬間の快楽を得るためだけにリヴェリアの注意や冒険者としてのしがらみを全て忘れて、性本能の赴くままに腰を降ろした。

 

「――はぁっ♥…はぁぁぁぁ…っ♥♥♥」

 

 ズブズブと淫らな水音を立てながらゆっくりと太い亀頭がアイズの膣内へ飲み込まれていく。

 息を吐くようなか細い喘ぎ声が漏れる。誰も侵入したことのない膣を押し広げてベルの剛直の形に作り変えられていく。

 過剰なまでの愛液によってスムーズにベルの剛直はアイズの膣内を押し進み、コツンとその終点(子宮口)を押し上げた。

 

「――あ゛っ♥♥♥」

 

 まるでパズルのピースがぴったりハマるような感覚。得もしれぬ渇きを満たすような深い快楽がアイズの脳を激しく犯した。

 

あ゛あぁ〜〜〜ッ♥♥♥♥!?

 

 ベルの逸物がアイズの膣内を満たした瞬間、声にもならない嬌声を上げて絶頂した。

 背筋を仰け反らせ、ビクビクとカラダを痙攣させ、だらしなく蕩けた表情で盛大に絶頂した。

 

 これまでの人生で最大級の快感に、アイズは一瞬で虜になった。

 

(――これ、すごく…キモチイイ…ッ♥♥♥もっと…♥キモチ、イイのもっと…♥ほしぃ…っ♥♥)

 

 深い絶頂で震え、産まれたての小鹿のように力もまともに入らないカラダをプルプルと動かして引き抜くように腰を浮かせ――

 

「あっ…♥あぁっ♥」

 

 そしてフッと力を抜くとそのまま腰が落ち、ズンっと亀頭が子宮口を突き上げた。

 

「あ゛っ♥ひぃっ♥♥♥♥♥♥!?」

 

 暴力的な快楽が脳へ駆け巡る。凄まじい快感による多幸感はアイズの思考を蕩かし、性に忠実なケモノへと変貌させていく。

 

(これ…♥♥指じゃ届かないところ…グリグリって…♥♥♥)

 

 快感を得るためにアイズは何度も腰を浮かしては落とし杭を打つかのような激しい抽挿を繰り返した。

 もはや騎乗位の姿勢を保つのが困難な程にカラダは痙攣し、とうとうアイズは前方に手を着いて倒れ込んだ。

 

「あっ…♥ふぅっ…♥♥くっ…ひぃん…♥♥♥」

 

 その拍子に乱れた金糸のような髪がベルの顔にフワリと垂れ下がり、サラサラとベルの頬を擽った。

 

「――ん…うぅ…ん」

 

「っ!?」

 

 ベルの呻く声を聞いてアイズは肝を冷やした。しかしそれと同時にどうしようもなく興奮して心臓を高鳴らしてしまう自分がいた。

 

(起きたら…見られちゃう…♥ベルのおちんちんで気持ちよくなってる姿…♥♥ダメっ…♥♥なのに…♥♥♥)

 

 背筋にゾクゾクとした背徳感が走り抜ける。余計な刺激を与えると起きるかもしれないというのに、アイズの意思に反して膣はキュッと収縮してベルの剛直を締め付けてしまう。

 

「――あっ、ぐ…?…かみ、さま…?なに、して…」

 

 少し舌足らずながらも聞き取れる言語を発したことにアイズは心臓を激しく打ち鳴らした。

 

 しかし、アイズの心配をよそに、ベルは少し唸るだけで身体を起こすような気配はなかった。

 被せたパンツの隙間から見える瞼は少し歪んでいるが、しっかりと閉じられていられる。どうやら寝言を言っていたようだ。

 

 アイズはホッと息を吐きながらも少し残念そうにむぅ、と唇を尖らせた。

 しかし、気を緩めて油断したアイズを寝ぼけたベルが手を伸ばした。

 

「…また…ジャガ丸くん…ですかぁ…それに2つも…」

 

虚空を掴むような動作で伸ばされた手は、見事にアイズの両乳を捉えた。更には意識があるんじゃないかと疑う手付きで服の隙間に手を差し込むようにして生乳を揉みしだき始めた。

 

「んんっ♥♥!?なんで…っ♥♥♥」

 

 夢現なベルの両手は捏ねるような手付きでアイズの胸を愛撫して、アイズを困惑させた。意識がないはずなのに、というのも確かにあるがそれ以上に――

 

(自分で触ってるよりも…キモチイイ…っ♥♥)

 

 ティオネに自慰の仕方をレクチャーされ、胸も一緒に慰めていたアイズは、ベルの手によって与えられる快感が自分で慰めている時に比べて遥かにキモチイイ事に驚きを隠せなかった。

 それに追い打ちをかけるようにベルは眼前に差し出された両乳を揉みしだきながら、桜色の乳首に狙いを定め――

 

「…むにゃむにゃ…いただきまーす…」

 

 大きく口を開いて揺れる乳房に吸い付いた。夢現のためか、甘噛みよりもマイルドな力で乳房に歯を立てた。

 

「ーーんんぅっ…っ♥♥♥!!?」

 

 声を上げそうになるのを口に手を当てて抑える。もはやベルは半覚醒状態まで来ている。

 ここで大きな声を上げたら目を覚ましてしまうかもしれない。必死に耐えるがベルの責めは意識がないはずなのに苛烈さを増していく。

 

「ぁっあっあ…っ♥♥♥っく…ひぃぃっ♥♥♥」

 

 右手は硬くなった乳首の形を確かめるように指で摘むようにクリクリと動かし、口は甘噛みするだけに留まらずに舐めたり吸ったり、自由な左手はアイズの白桃のような臀部を撫で回していたりと、もうやりたい放題だった。

 

(またっ♥♥イッちゃう…っ♥♥♥もう…っ…ダメぇ…♥♥♥♥)

 

 アイズがベルの愛撫で絶頂一歩手前に至るのと同時に、未だに一度もイッていないベルの逸物も俵締めのようにきゅうきゅうと収縮するような締め付けを受け続けていたために限界寸前だった。

 

 絶頂寸前のアイズの腰が抜けて落ちたのが先か、それとも射精寸前のベルの腰が浮いたのが先かは分からない。

 

 ただその瞬間、両者は腰がぶつかり合い、深々とベルの剛直が膣内へ埋没しアイズの子宮口を潰すような勢いで突き上げた。

 

 

 

 

「――あ゛っ…♥♥♥♥♥」

 

「――あっ…ぐぅっ…」

 

 

 

 

どびゅっ…♡どびゅるるるるるるるっ♡♡♡どぶっ…♡びゅるるるるるっ♡♡♡

 

 

 

 

 ベルの苦しげな呻き声と共に、一際大きく剛直が脈動しマグマのようにドロドロとした白濁した粘液が膣の最奥へと大量に吐き出された。

 

〜〜〜〜〜〜〜ッッ♥♥♥♥♥♥♥

 

 ビクンビクンと剛直が脈動する度に吐き出される火傷するかのような熱と共に、アイズは声にならない喘ぎ声とも絶叫とも言えるような声と共に絶頂に達した。

 ベルの胸に倒れ込み全身を激しく震わせながら何度も何度も激しく絶頂した。

 息もまともに吸えないくらいに乱れ、思考すらままならない。

 しかし、そんな状態でも確かに解ることは、とてもセックスはとてもキモチイイ行為だということ。

 

(ぁっ…♥い…ぃ…♥♥ダメ…♥これぇ…赤ちゃん出来ちゃうのにぃ…♥キモチ、イイ…♥♥♥♥♥)

 

 容赦なく大量に射精された精液はベルの剛直によって栓がなされており、一滴も漏れ出ておらず、ドロついた精液は全て子宮へと流れ込んで卵管から卵巣に至るまで満たし尽している、そんな気がした。

 

 何もしなければ妊娠は確実だろうという射精を受けたアイズはそれでもいいと投げやりになるほどに膣内射精の快感に酔いしれていた。

 

 アイズは、ベルとのセックスに中毒とも言えるほどハマってしまった。

 通常では得ることの出来ない極上の快楽。しかも、アイズの勘はベルじゃないとこの快楽は得られないと告げている。

 ベルだから、キモチが良かった。そう思えて仕方がなかった。

 

「…あっ…♥ベルのおちんちん…♥抜けちゃう……んっ♥♥♥」

 

 暫くベルの胸に身を任せて乱れた呼吸を整えていると、精液を射精し尽くした肉棒が鉄のような硬さを失ってアイズの膣内からズルリと抜けて落ちてぶらりと垂れ下がる。

 

 ぽっかりと空いた膣口から二人の潤滑油で白く泡立った愛液とゼリー状のドロリとした精液が石畳の上へと流れ落ちる。

 

 アイズは自身の秘裂から滴る精液を指で掬い取る。少年との性交の証とも言えるソレを目の前で指で弄ぶ。

 精液と愛液がグチャグチャに混ざったドロドロの液体が指に絡みつくのを見てこの少年とセックスをしたのだという実感がアイズの心を満たした。

 

「…次は、一緒に…セックスしたいな…♥」

 

 気持ち良さそうなだらしない顔で気を失っているベルの顔を見て、アイズの口から自然とそんな言葉が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

「……アフターピル、ください」

 

「…………私の聞き間違いでしょうか?アフターピルですか?」

 

「うん、アミッドならそういう薬も詳しいってティオネが…」

 

「風評被害です。確かに取り扱ってはいますが、そういう薬に詳しいなどと言われるのは心外です」

 

「…今度ティオネに言っておく。それで、いくら…?」

 

「…本当にアフターピルをお求めですか?誰かにお遣いを頼まれたのですか?」

 

「ううん、私が使わないといけないから…」

 

「…………は?」

 

「使わないと…赤ちゃん出来ちゃーー」

 

「…みなまで言わないください。分かりました、本当に必要とあれば処方いたします。そういうデリケートな話題は声を潜めてください…!」

 

「ありがとう、アミッド。それで、いくら…?」

 

「…2000ヴァリスです。一回1錠です。服用は…その…そういった行為の後の最低でも3日以内に服用してください。早ければ早いほど避妊の効果があるので、服用するなら早めに服用する事を推奨します」

 

「分かった。今すぐ飲む、ね…?」

 

「え?…あの………………いえ、なんでもありません」

 

「…?そう。また貰いに来るかも…その時はよろしく…」

 

「………………………えっ?」

 

 アミッドの驚嘆の声を背中にアイズは去っていった。残されたアミッドは事態の把握に努め――

 

(……あ、あの剣姫が……………そっ、そういった行為を………///!?)

 

 知人のそういう部分を意識して小一時間顔を真っ赤にして仕事に従事していたとかいないとか。




意識がない状態で超絶テクで愛撫する…このベル君、結城○トさん乗り移ってますわ。

うーん、5千文字、消費カロリーが高い…。長過ぎる感が否めない。その時のテンションでダラダラと書いてるから文字数は書き終わらないと分からないんですよねぇ…読者的にはどうなんでしょうか…


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CASE3.1ティオナの場合

一夜おいて、アンケート見て貧乳が人気だったので貧乳のスケベな話の導入を書き上げました。
閲覧してくれた方々、評価や感想をくださった方々、アンケートにご投票いただいた方々に感謝…っ!圧倒的感謝…っ!です。


 廃れた教会の地下にて、ベルは暇を持て余していた。と、言うのも――

 

 

『わりぃ、ベル。明日はちょっとな…納期がヤバイんだ…』

 

『ベル様すみません、明日リリは用事がありまして…』

 

 昨日、3人で中層攻略に行った帰りの会話である。ヴェルフもリリもどうやら忙しいらしくダンジョン攻略は行けないとの事だった。

 

(二人には二人の事情があるし…仕方ないよね)

 

 特に用事などなかったベルは連日ダンジョン攻略に赴いていたのもあって、あまり一緒の時間を過ごせていなかったヘスティアと拠点(ホーム)で羽安めも兼ねてゆっくり過ごすのが良いと思った。

 

(――って思ったんだけどなぁ…)

 

『す、すまないベル君!!今日はバイトのヘルプなんだ…!』

 

 しかし肝心の神様は今日も今日とてジャガ丸くんの売り子として一生懸命頑張っており、生活感溢れる教会の地下室はベル以外誰も居らずとても静かだった。

 

(神様もバイトでいないし…暇になっちゃったな…)

 

 最初は部屋の掃除をしたり、本でも読もうとヘスティアの書棚から何冊か本を取り出して手に取ったりしてパラパラと頁を捲っていたベルだが、10分もしないうちにパタンと本を閉じると立ち上がり、軽鎧に手を伸ばした。

 

「……よしっ、ダンジョンに行こう!」

 

 一刻も早く英雄を目指す少年は休日を独りで手持ち無沙汰に過ごすよりもダンジョン攻略を選ぶのに時間はあまりかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ダンジョン上層〜

 

 薄暗い坑道のようなダンジョン上層から中層に向かう正規ルートの途中でその二人は偶然パタリと出くわした。

 

「わっ……!」

 

「あっ……!」

 

 ベルがモンスターの魔石を回収して顔を上げた瞬間、ちょうどその場を通る少女とガッツリ目が合って両者短く声を漏らした。

 

「アルゴノゥトくんじゃん!」

 

 ベルの事を『アルゴノゥト』と呼ぶ、人の背程ありそうな超硬金属製の巨剣を軽々と背負った快活な褐色の少女が嬉しそうに歩み寄った。

 以前18階層でお世話になったロキ・ファミリアの双子のアマゾネスの人。

 

「ど、どうも……!えと……」

 

「ティオナ!ティオナだよ!双子だから間違えやすいよねー!これで覚えた?」

 

 アイズさんに並ぶロキファミリアの第一級冒険者だ、アマゾネスのヒュリテ姉妹と言えばその二つ名はオラリオ中に轟いており、迷宮都市の超有名人の一人だ。

 

「はい…【大切断(アマゾン)】のティオナさんですよね」

 

「うん、そうそう!」

 

 ベルが確かめるように言ったのだが、ちゃんと覚えててくれて嬉しいと言わんばかりにニコニコとしていた。

 

「あはは…」

 

 嬉しそうなティオナを他所にベルは緊張した笑いが零れる。理由は簡単、単純に距離が近いのである。

 

(距離が…近い…。これがアマゾネスの距離感…ッ)

 

 手を伸ばせば触れてしまうような距離で話を振ってくるティオナ。血腥いダンジョンだというのに、ティオナが動く度に花のような香りがベルの鼻腔を通り抜ける。

 

「何してたのー?ダンジョン探索ー?」

 

「は、はい…!とは言っても、今日は一人なので上層に限定してますけど…」

 

 と、ベルは自身の状況を述べ、改めてティオナの方を見ると、装備も軽装で他の団員を連れていないように見えた。

 

「ティオナさんこそ、どうしたんです?単独(ソロ)…ですよね?」

 

「そだよ!ちょっと水浴びにでもいこうかなと思ってね」

 

「水浴び…?」

 

「前一緒にしたじゃん。覚えてない?」

 

「え…!?ア、迷宮の楽園(アンダーリゾート)の……!?」

 

 18階層、通称『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』と呼ばれる安全階層(セーフティーポイント)

 

 水晶と大自然に満たされた幻想的な地下世界。以前、僕達が中層で死にかけて命からがら飛び込み、ロキ・ファミリアに保護してもらったので記憶に深く刻まれている。

今の僕達が行くのはかなり厳しいであろう階層だ。

 

「うん!気持ちよかったよねー。だから今度もあそこに行こうかなって」

 

 そして、そこでの水浴びといえば思い出すのはヘルメス様に惑わされて覗きを行ってしまった罪を思い出す。

あの時は色々と混乱していて記憶は朧気だが、肌色や褐色と言った抽象的な記憶は残っている。

 

それを思い出してしまってベルは勢いよく直角に腰を曲げて頭を下げた。

 

「あっ、あの時はほんとにすみませんでしたぁぁっ!!!

 

――って、18階層で水浴び!?」

 

「うんっ!あたし、あそこ気に入っちゃってさー。水も綺麗だし、キラキラしてて明るいし」

 

「す、凄いです…。18階層までお出かけ感覚なんて…」

 

「へへーん、あたしのこと見直したー?」

 

 誇らしげに胸を張るティオナ。しかし、その胸のラインは控えめであった。

 

「み、見直すも何も…ティオナさんはもともとすごい人ですし…」

 

「もともと凄くなんてなかったよー。まぁ、色々あったけどさー」

 

 それまで笑顔だったティオナさんの顔が一瞬苦笑いをしたかのように見えた。

 きっと、ティオナさんの言う通り第一級冒険者になるまでに苦い思い出や色々な過去があるだろう。

 そこまでティオナという少女と触れ合ったことのないベルでも今の表情を見たらそんな気がした。

 

「…やっぱり僕ももっと努力しないとですね」

 

「ん。でも前に見せてもらったアルゴノゥトくんの冒険、あたしは好きだったなぁ。あの感じならもっともっと強くなるよ」

 

 にひひ、と笑うティオナさん。僕の冒険が第一級冒険者に認められていると思うと心の底から嬉しい気持ちが湧き上がる。

 

「は、はい…!がんばります!」

 

 僕はティオナさんの期待に応えられるよう、より一層努力することを誓い、大きな声で返事をした。

 

「あ、そだ!どうせなら一緒に水浴びに行かない?」

 

「いっ!?そ、それって――」

 

 蘇る覗きの記憶…健康的な小麦色の肌…目の前の少女の裸…アバババババババババッ!?

 

「ね、そこまでの道中訓練にもなるし!一緒に行こうよ!」 

 

「え゛っ!?…ぁと…その…」

 

 ベルは非常に迷った。正直に言えば今すぐ此処から逃げ出したい気持ちがある。この前のような事態になったらと考えると脳が沸騰しそうになる。

 

(ーーいや、でも…これはチャンスなのでは…!?)

 

 即座に撤退を選択しようとして、ベルの脳裏に新たな発想が過ぎる。

 

 それは、18階層までの道のりで第一級冒険者の力の一端を見れるかもしれないという考え。

 第一級冒険者のダンジョンの進み方、戦い方を間近で見学出来ると思えば、そこから得られるものも大きいかもしれない。

 さらに、中層での戦闘は現状よりも良質な経験値を得られるのも間違いなかった。

 

 それに、流石に水浴びする時は一緒に入ったりしないだろうという希望的観測もある。

 

 しかし、アマゾネスの貞操観念の緩さは並ではない。服装はほぼ下着同然だし、前回のアンダーリゾートの覗きの時も裸見られても気にしてなさそうだっだし、今だって距離感が近過ぎることから明らかだった。

 

(…くっ、神様…僕は……!)

 

 脱走か、同行か、ベルの葛藤によって激しく揺れる天秤。

 

 しかし、一刻も早く英雄になりたいベルは、次第に第一級冒険者の戦いを見て学びたいという気持ちが天秤を傾け始め――

 

……ど、同行…させてください…!

 

「やったー!やっぱ誰かと一緒の方が楽しいからね!ほら、そうと決まれば早く行こうよ、アルゴノゥトくん!」

 

 絞り出すかのような僕の返答に、ティオナさんは花のような笑顔で僕の手を引いて走り出した。

 

「ーーぐえっ…!?ちょっ…!?

 

 一見細く靱やかなティオナの腕だが、そこに秘められたる力は第一級冒険者のソレ。

 僕は途轍もない力で振り回されて18階層に続く道へと引きずられていった。

 




次回スケベ回。作者はダンまちの中ではティオナが結構好きです。

アンケートの期間は作者の気分です。


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CASE3.2ティオナの場合

ほぅ…日刊1位ですか…………………え?

リアルでうわーお。と言ってしまった作者です。
お気に入り登録、感想、評価、誤字報告、アンケート…etc
色々として頂き感謝の極みです。
モチベーション向上と、早く更新しなきゃという
使命感が芽生えました。
これからも感想や評価で作者のケツを叩いてください(ドM

前書きは以上。
前話でティオナのスケベ回と言っていたな…あれは嘘だ!
…………はい、すみません。辿り着かなかったスケベへの導入回になってしまいました。


ダンジョン18階層、そこは天井を埋め尽くす水晶がキラキラと輝き、万緑を燦々と照らしつける幻想的な楽園。面積はオラリオの半分にも及ぶととされ、時間に合わせて昼夜がある不思議な階層だ。

 

ちょうどお昼時で太陽のように水晶が最も輝いて眩しいくらいだ。

 

そんな光が降り注ぐ、人の気配どころかモンスター気配すら無い水の畔で、僕ことベル・クラネルは端的に言えば襲われていた。

モンスターではなく、下手なモンスターよりも力の強い小麦色の少女によって地面に押さえつけられていた。

 

「アルゴノゥトくん!手が邪魔だよー!」

 

「だっ、駄目ですって!!!これだけは――!!?」

 

僕は水際で軽鎧から衣服といった全てを剥ぎ取られ、ほぼ裸にされた僕の上に跨り、最終防衛線(パンツ)をズリおろそうとする褐色の少女(ティオナ)

 

「「――あっ」」

 

パンツを下ろそうとするティオナの手を掴んで押さえていたのだが、僕の必死の抵抗など物ともせずに、二人の間の抜けた声と共に最終防衛線(パンツ)はズリ下ろされ――

 

「――うわー!すっごーい!アルゴノゥトくんのおちんちん大っきー!あたしびっくりしちゃった!」

 

だぁああぁあぁぁぁぁぁあっ!?!?!?

 

ブルンッとまろびでた逸物を凝視し、ご立派に聳え立つソレを満面の笑みで称賛した。

恥部を、しかもギンギンにイキリ勃った息子を見られた僕は絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――時は遡り、ダンジョン中層。

 

牛人の怪物、ミノタウロスが雄叫びをあげながら丸太のように太く毛深い豪腕が横薙に振るった。

 

ベルは咄嗟に屈んで躱すとブォンという風切り音が頭上を掠めていく。しかし、脳震盪では済まされなさそうな一撃を避けれた事に安堵する暇などない。ベルはそのまま豪腕の持ち主であるミノタウロスの懐に入り込み、黒い短刀を強く握る。

 

攻撃を避けられた事を悟ったミノタウロスが放つ蹴りを繰り出すが、ベルはそれすらも身体を捩って躱すと――

 

「――っ!はぁぁぁぁぁ!!」

 

意気軒昂な掛け声と共にミノタウロスの下腹部にナイフが突き立てられ、ベルは傷口を抉るようにナイフを捻じりこんだ。

 

『ヴォォォオォォッ!?』

 

ミノタウロスの絶叫と傷口から噴き出す血を浴びながらもベルは攻撃の手を緩めずに、堅く断ち辛いと言われるミノタウロスの肉を黒いナイフで深々と斬りつけた。

 

ミノタウロスはその身に走る激痛に大きな体躯丸め、地に膝を着いた。

ベルの目線の高さに降りてくるミノタウロスの胸部。

 

――今なら、心臓(魔石)を狙えるッ!!

 

「これで…っ!終わりだァァァッ!!」

 

黒い短刀に体重や突進の勢いを乗せて膝を着いて低くなった胸部を貫いた。

堅い肉の装甲をブツリと貫き、ガキンッと砕けるような手応えがナイフからベルの掌に伝わる。

 

『ウヴォ…オォ゛…』

 

自らの核を砕かれたミノタウロスは小さく呻き声を上げるとその身が崩れ、その場にゴトリと砕けた魔石が落ちた。

 

ベルは戦闘後も辺りの警戒を怠らず、他にモンスターが居ないことを確認するとナイフに付着した血肉に塗れた振り払って納刀すると落ちた魔石を拾い上げてポーチに仕舞い込んだ。

 

「――すごーい!アルゴノゥトくんってLv.2になってから1ヶ月も立ってないんだよね!」

 

その戦闘に手出しをせずに見ていたティオナはベルの手を握りブンブンと腕を振ってベルの事を称賛した。

 

「はひっ!?そ、そうです!」

 

「それなのにミノタウロスを1人で倒しちゃうんだもん。英雄譚の英雄みたいにカッコよかったよ!」

 

「え!?えへへへ…そ、そうですか?」

 

「うんっ!」

 

屈託のない本心から放たれる称賛の言葉は英雄願望のあるベルの心を心底浮つかせた。

 

『――英雄みたいにカッコよかったよ…』

 

ベルの脳内でエコーしながらリピートされるティオナの言葉。

彼の主神が見たら即座に『なにデレデレしてるんだいベルくん!!!』と怒るであろうニヘラとしただらしない表情をしていた。

 

「えへへっ…戦闘は僕に任して下さい!」

 

ティオナの称賛に調子に乗ったベルは軽くポーズを決めながら、ついついそんな事を口に出してしまった。

 

「ほんとにー?それじゃああたしはアルゴノゥトくんが頑張ってるところ応援してるね!」

 

「が、頑張りましゅっ!!!!」

 

自分の背中を見つめて応援してくれる美少女が居る、それだけでダンジョンを隅々まで攻略出来るような謎の自信がベルを包み込む。

実際はかなり厳しいと思われる18階層への道のりも、女の子の声援と称賛があればイケるんじゃないか、いやイケる。

 

お前は英雄になるのだろう。女の子の前で良い格好つけられなくてどうするんだ!

 

『――行け…いや、イクのじゃベル!ワシの孫のお前なら出来る…!いや、デキるぞ!そのアマゾネスのおなごを惚れさせてニャンニャ、ゲフンゲフン…!良い所を魅せるのじゃっ!!)

 

(お、お爺ちゃん…っ!!僕、頑張るよ!!)

 

自身に発破をかけて気合を入れて走り出す。次なる獲物を、いや良い所を魅せる場所を探して!

 

 

 

 

 

 

 

 

――この時既に、当初予定していた第一級冒険者(ティオナ)の戦いを参考にするという目的をベルは思考の彼方へ忘却していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――凄い。

 

眼前で繰り広げられる少年の戦闘を目の当たりして、ティオナの心の中でそう一言呟かれた。

 

間違いなく少年はLv.2になって間もない、新米の域を出ない冒険者だ。だから、中層までの道のりは適度に守りつつ進むつもりだった。

 

しかし、少年はニヘラと破顔しながら戦闘は任せてくださいと豪語し、多少危なげな場面があるものの、中層のモンスターを上手く捌いていた。

 

ティオナは当初、危なくなったら助けるつもりだったが、その心配は無駄だと言わんばかりにベルはモンスターを倒していた。

 

Lv.2になって間もない冒険者が単独(ソロ)で中層を乗り切れるほどダンジョンは甘くない。

それが分かっているティオナは驚き、そして感心した。

 

モンスターとの間合いの取り方が巧い。刃渡り僅か30cm程度の短刀の間合いをよく理解している。

 

モンスターの攻撃もその短刀で巧く逸して良く凌いでいる。巧く攻撃を捌いて、攻防の果てにいずれ生まれる隙を必ず逃さない。

 

「せやぁぁぁっ!!!!」

 

少年の鋭い一撃がモンスターの魔石を捉え、一匹、また一匹と数多のモンスターを絶命させた。

 

中層のモンスターを次々と屠っていくベルの姿を見てティオナは確信する。

 

 

――確実に『あのミノタウロスの時』よりも強くなっている。

 

 

それは前回のロキ・ファミリアの遠征の初日、Lv.2にカテゴライズされるミノタウロスをLv.1の少年が傷だらけになりながらも見事に一人で討伐してのけた時の事だ。

 

冒険者において、レベルが一つ違うというのはステイタスの熟練度にもよるが、一般には赤子と大人くらいに実力が隔絶する事を意味する。

 

少年はその圧倒的な不条理に必死に喰らい付き、その身はボロボロに傷付き満身創痍になりながらも、Lv.1の冒険者には無謀と言っても過言ではない牛人退治を単独で成し遂げたのだ。

 

今の自分ならミノタウロスなど余裕で倒せる。でも、自分がLv.1だった時にミノタウロスに挑んで勝てるかと言われたら?

 

ミノタウロスの肉は堅く断ちづらい。Lv.1の筋力では到底武器など弾かれ、刃こぼれし武器を失うだろう。

 

丸太のような豪腕から繰り出される攻撃を一度でも喰らえばまず動けない。その隙を見逃すほどミノタウロスは甘くない。

 

攻撃を躱すにしても敏捷値が相当高くないと一瞬でミノタウロスの豪腕に捉えられるだろう。

 

つまり何が言いたいかと言うと、Lv.1の冒険者が単身でミノタウロスは討伐は普通では成し得ること出来ない偉業なのだ。

 

あの場にいたロキ・ファミリアの面々はそれがどれほど困難で偉大な事なのか理解っていた。

 

だからあの場にいた者達は奮い立ったのだ。自分より遥かに弱い存在(ベル・クラネル)の偉業を認め、冒険者として火をつけられたのだ。

 

――それはあたしも例外じゃない。

 

ちっぽけな存在が強大な怪物をボロボロになりながらも打ち倒す。

 

英雄譚で語られるような死闘に、アルゴノゥトくんの戦いに、あたしはドキドキと胸が高鳴ったのを今でも覚えている。

私はその時からアルゴノゥトくんのファンになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

――そしてその戦いから1ヶ月も経っていないこの短期間で、ミノタウロスをほぼ無傷で倒せるまでに目まぐるしい成長を遂げた少年に対して純粋に凄いという気持ちが湧き上がる。

 

あたしはアルゴノゥトくんが一匹また一匹とモンスターを倒して全滅させ、辺りに散らばった魔石を拾い上げいる姿を眺める。

 

連戦が続くアルゴノゥトくんには疲れが見え始めた。息は整わず荒れた呼吸で、額には汗が滲んでいた。

 

魔石を回収し終えたアルゴノゥトくんが、ふと額の汗を拭う動作を見て――

 

――ドクンッ…

 

あたしは何故か分からないけど心臓がドクンッと強く脈打った。

ミノタウロスの時の奮い立つような胸の高鳴りとは別物の、酷く浮ついた気持ちになる胸の高鳴りがアルゴノゥトくんを見ていると止まらなかった。

 

今日、アルゴノゥト君に出会ってからその謎の胸の高鳴りが続いていた。

 

それは決まってアルゴノゥト君の姿を見たり、触れたり、意識する度に起こり、アルゴノゥトくんの存在が胸の中で大きくなるのだ。

 

左胸に手を当てると、いつもより心臓が強く脈っているのがよく分かる。

 

――ドクンッ…

 

(なんだろう…コレ。凄く心臓が苦しい。でも、この感じ嫌じゃない…。あたし…どうしちゃったんだろ…)

 

生まれて初めての感覚に戸惑いながらも、ティオナは普段通りの様子を装いながらモンスターを倒したながら進むベルの背中を追った。

何故か先程から疼きはじめた下腹部を撫でながら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

17階層は特に何の障害もなく通り抜けた。

 

通称『嘆きの大壁』。形状が出鱈目だったこれまでの中層の広間(ルーム)とは違い、整った直方体の大広間。幅は100mほど、天井まで20mはありそうな、双璧の広間。

 

本来であれば、その大広間の主である総身7mはある巨大な人型のモンスターである、迷宮の孤王(モンスターレックス)、『ゴライアス』がいるのだが、ゴライアスは約1ヶ月前にロキファミリアによって撃退され、あと1ヶ月は復活しないだろうと言われていた。

 

その予測は正しく、ゴライアスは居らず、ベルとティオナの一行は問題なく18階層に辿り着いたのだった。

 

18階層の地面に一歩踏み出せば、薄暗いダンジョンの景色から一変、キラキラと光り輝く水晶、澄んだ風が頬を撫で、万緑の木々の自然が二人を出迎えた。

 

冒険者はこの幻想的な階層を安全階層(セーフティーポイント)または、迷宮の楽園(アンダーリゾート)と呼ぶ。

 

「ついたーーー!!ついたよアルゴノゥトくん!」

 

「ぜぇ…ひゅ…ひぃ…や、やっと着いた…ッ!」

 

二人の言葉からお察しだろうが、両者の姿は対照的で、鼻歌交じりにスキップしているティオナに対して、ベルは産まれたての子鹿のようなぷるぷるとした足取りである。

 

男を魅せたいという、ベルのイキリによって、本来パーティーで挑む中層攻略を一人で、しかも18階層までの戦闘を全て引き受けると言ってしまった男の末路。自業自得である。

大きな怪我がないだけマシである。

 

事情を知っていれば嘲笑を誘いそうな状態のベルだが、ずっと側にいたティオナはベルの様子を見て嘲笑ったりなどしなかった。

 

誰の目から見ても疲労困憊しているのが分かる項垂れたベルの顔を下から覗き込み、ティオナはニコニコと笑った。

 

「ふふっ、アルゴノゥトくん頑張ったからすごーく疲れてるでしょ〜。きっと水浴びしたらとっても気持ちいいよ!」

 

「はぁ…はぁ…えぇ…とても…気持ちいい、でしょうね…」

 

ずっと一人で戦い、常に全力で走り抜けたベルの意識は少し朦朧としていた。そして目的地に辿り着いたという気持ちの緩みもそれを増長させていた。

 

「あたしのお気に入りの秘密の場所があるんだー!そこで休憩しよ!アルゴノゥトくんこっちだよー!」

 

「へ…?そうなんですか…?」

 

それ故に、思考が疎かになっていたのだ。やっと休憩が出来るという事に意識の大半を持っていかれていたベルはティオナがアマゾネスである事を忘れていた。

 

ベルは生返事しながら彼女の手招く森の奥へとへフラフラと付いて行った。 

 

この後の水浴びがどうなるかも考えずに…

 




ベルのミノタウロス戦とか見たら誰でも惚れると思うの自分だけでしょうか?雄としては最高の有望株と思うのですがどうでしょう?
今作のティオナは明確に好きとまではいかないないけど、好感度は非常に高く、無自覚に惹かれている感じです。

そこまでの好感度はないでしょ?
→ここに幸運(助平)があるじゃろ?つまりご都合主義ということじゃ…


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CASE3.3ティオナの場合

褐色の女の子の乳首何色問題に直面した結果、ティオナはピンク、白、肌より色の濃い褐色、肌より色の薄い褐色のどれに当たるのか悩んだ結果、作者的に肌の色より濃い褐色が一番興奮したので肌の色より少し褐色の乳首になりました。(性欲に従う紳士

皆さんは褐色娘の乳首の色は何色派ですか?
私はケースバイケースですが、肌よりも少し濃い褐色です。

追記)作者が後から読み直したら書き直したくなったので、色々書き直しました。


 行く手を遮る木々を払いながら、人の手の入っていない獣道をズンズンと進んでいくティオナさんの後を付いて行く。

 特に目印になるような物は一切ないというのに、真っ直ぐと目的地を見据えて歩いて行くティオナさんにはこの辺りの土地勘がしっかりとあるのだろう。

 

(それにしても…大分歩いたな…。なのに景色が全く変わらないからどれだけ歩いたのか分からないや…)

 

 視界は360゜鬱蒼とする木々で囲まれており、逸れたら確実に道に迷うことは間違いないのでピタリと後ろに付いて歩く。

 

 そうして少し歩いていると、次第に木々の囁くような葉音の中に水のせせらぎが聞こえ始めた。

 

「――ふふっ、聞こえた?もう少しで到着だよ。すっごい綺麗だからきっと驚くよ〜」

 

 せせらぎの音の出処を探していた僕は視線を前に戻すと手を頭の後ろに組んでニコニコと笑うティオナさんと目があった。

 

「そこまで言うなんて、余程気に入ってる場所なんですね。そんな特別な場所を僕なんかに教えていいんですか?」

 

「うん!アルゴノゥトくんには特別教えてあげる!でも他の人はナイショだよ!言いふらしたりしてここが荒されたら嫌だもん」

 

 ジトーっと可愛い顔で睨みつけられる僕。

 

「そ、そんなことしませんよ!他の誰にも言いませんって約束しますから…」

 

「えへへ。それじゃあ、あたしとアルゴノゥトくんの約束だね!

 

――って、言ってる間に着いちゃった。ほら!アルゴノゥトくんこっちこっち!!」

 

 水のせせらぎが徐々に近づいているのが分かる。

小走りで先を行くティオナさんの後を追いかけ、木々を掻き分け進んだ先の光景を目にした僕は思わず息を呑んだ。

 

「――うわぁ…。すごい綺麗ですね!こんな森の奥に湖があるなんて…」

 

 此処に来るまでに溜まった疲労がスゥーっと抜けていくような感じがした。

 あくまで気持ちそう感じただけであって実際の疲労は溜まりまくって体は悲鳴をあげているが、大分気分が楽になった気がした。

 

「でしょでしょー!」

 

 其処は、木々の木漏れ陽で淡く照らされた湖畔だった。水晶のように透き通った水が心地良い風でせせらぎ、心が自然と安らいでいく。ティオナさんが自慢げにお気に入りの場所というのもとてもよく理解出来る風景だった。

 

(こんな良い場所で休憩出来るなんて…今日は色々あったけどツイて――)

 

 

 

「――よし、それじゃあ泳ごっか!」

 

 景色に見惚れている僕の斜め後ろで、ティオナさんは待ってましたと言わんばかりにそう言い放つと、何事もないかのようにパレオの結び目を解いた。シュルリと腰から解け落ちたパレオが地面に落ちる音が耳に届き、僕の思考は一旦停止した。

 

「…え?」

 

 僕の困惑する声など気にせずにティオナさんはシュルシュルと脱ぎ捨て始める。

 どうしたら良いか分からず視線をずっと前に固定している間に、ベルの聴覚は背後の衣擦れの音を捉えられなくなっていた。

 

 それが意味することは一つ。

真横に気配を感じた僕はギギギと首を横に向け――

 

「――う゛ぇっ!?あああああの!!!!ティオナさん!な、なんで服を脱いで…っ!?」

 

「なんでって…水浴びするから?アルゴノゥトくんも一緒に水浴びしようよ!」

 

 一糸纏わぬティオナさんの姿が其処にはあった。

 

 モロに見えてしまった、一切隠そうとせず堂々と僕の前に晒される健康的な小麦色肌、僅かに膨らんだ乳房、そしてその魅惑的な肌よりも少し色の濃い褐色の先端――

 

 咄嗟に自分自身の手で目を覆い隠すも、シャッターを切ったかのように褐色の裸体が脳裏から離れない。

 

「ふ、服は全部脱がなくっても…!!」

 

「え〜?濡れたら乾くまで時間かかるし、服がベチョベチョになるじゃん!全部脱いじゃったほうがいいよ!」

 

 手で覆っているから見えているわけではないが、胸を張っているのが容易に想像できる。

 いや、そんなこと想像している場合じゃない…!!舐めていた…!アマゾネスの貞操観念の緩さを…!異性の前で裸を晒しても全く気にしないなんて…!!

 

「ティオナさん!色々とマズイですから!!!服!服を着てくださいぃぃぃ!」

 

「えー?アルゴノゥトくんも脱いだ方がいいよー?乾かすの大変だからさ!」

 

 目を覆っている両手からカチャリと音を立てて手甲が外され、地面に置かれる音が聴こえた。

 

「…えっ!?ちょっ、ティ、ティオナさん!?」

 

「あたしが脱がしてあげるー」

 

「ひぃぃぃ!?ティオナさん!?」

 

 目を両手で隠しているため、まともな抵抗すら叶わずに次々と軽鎧が外されていき、ゴトゴトと音を立てて地面に積み重ねられていく。

 あっという間に軽鎧は全て剥ぎ取りられ、お次はこちらとベルトに手が伸ばされる。

 

 ティオナはカチャカチャと慣れない様子でベルトを外すとなんの躊躇もなしにスボンを降ろした。

 

「〜〜っ!?!?ちょっと待っ――」

 

咄嗟に目をギュッと堅く閉じ、目を覆っていた手を防御に回すも時既に遅し。

 

「はい、バンザーイ」

 

 声にもならない奇声をあげて暴れ始めた僕を全く気にもせずにティオナさんは僕の腕をヒョイヒョイと避けるとシャツの裾を掴み、一気に捲り上げた。

 僕は目をギュッと閉じながら暴れたため、その瞬間にバランスを崩してティオナさんの方へと体が引っ張られた。

 その拍子に首からシャツがスポンと抜け、同時にティオナさんともつれこむようにして地面に倒れ込んだ。

 

 

 

「――わっ!?」

 

「――ぐうぇっ!?!?」

 

 

 

 目を閉じているので僕はろくな受け身も地面に倒れた。お約束のように後頭部を強打したが、幸いにして柔らかい腐葉土だったために軽く目眩がする程度済んだ。

そしてずしりと僕の上に何かがのしかかっている感触がする。

 

 おそらくティオナさんが僕の上に倒れてきたのだろうとあたりをつけ、僕はうすーく目を開いて安否を確認しようとし――

 

「いててっ…だ、大丈夫ですかティオナさ………」

 

 

 視界にいっぱいに広がる小麦色の肌。そしてその中央に走る一本の割れ目。

 

 目と鼻の先程の距離に、ピッチリと閉じられた秘裂、余分なビラビラのない綺麗なサーモンピンクの小陰唇と控えめな陰核、産毛すらない綺麗な菊門がベルの視界を埋め尽くしていた。

 

 倒れた拍子に俗に言う69の形となってしまったベルの眼前にはティオナの秘裂が、ティオナの眼前にはベルの局部が鎮座していたのだ。

 

 始めはソレが何なのか理解できなかったベルだが、数巡の間をおいてソレが何なのか理解すると再びギュッと強く目を瞑った。

 

(……え゛っ…あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?

 

 ティオナのお尻と太腿は見えていた。つまり、その付け根の股の間に走る一本の筋は、ベルが生まれて初めて見る女性器であると分かってしまった。

 

「もー!急に暴れると危ないよ!」

 

 突っ伏していたティオナがぷんぷんと怒りながら勢い良く上体を起こすと、ベルの胸に秘肉と柔らかい臀部が押し付けられ、ぷにゅりとした感触が伝わる。

 

「ひぃいいいいいぃぃ!?!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ!!!」

 

 目を閉じているというのに五感は鋭さを増していき、視覚を除いた全て感覚がティオナの身体を精細に感じ取ってしまう。

 僕は駄目だと頭で分かってはいても、五感から伝わる情報は、さっき僕が見てしまったティオナさんの裸を鮮明に脳裏に映し出してしまう。

 

 更にはせっけんの良い匂いと汗の匂い、うっすらとアンモニア臭、そしてどことなく甘い香りが混じった独特な匂いが呼吸するたびにベルの鼻腔に充満した。

 

 決して嫌な匂いではなく、少し嗅いでいたくなるような、どこかドキドキとする匂いがした。

 

(…でも、この匂いって…………あ゛っ)

 

 しかし、ソレが何の匂いなのか理解すると僕は全力で身体を捩って頬が地面にめり込むくらいに顔を背けた。

 

「ごめんなさァァァァァァいっ!!!!!」

 

「だから暴れないでってばー!上手く脱がせられないでしょー!」

 

 ティオナは身体の下で暴れるベルの肩を両足で押さえ、空いた手でベルの最終防衛線(パンツ)に手をかけた。

 

(――マズイ…ッ!!!?)

 

 酷く混乱していたベルでも一瞬で事の重大さに気が付き、頭で考えるよりも先に最終防衛線(パンツ)に手を伸ばすティオナの手をガッと掴んだ。

 

 

 

 瞬間、凄まじい力でパンツがズリ下ろされそうになる。

 

 

 

 それだけは絶対に許してはいけないと、僕は全身全霊全力を持ってしてティオナさんの腕を引き上げようと死ぬ気で力を込めて抵抗する。

 

 勿論全裸にされる事への抵抗というのもあるが、それ以上に僕には絶対に“今”パンツを下ろされてはいけない理由があるのだ――

 

「アルゴノゥトくん!手が邪魔だよー!」

 

 

「ぐぅっ!?絶対!!駄目ですって!!!いまは――!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――あっ」」

 

 

 

 必死の抵抗もLv.5のティオナの怪力を前には形をなさず、僕の手の指は次々と剥がされすっぽ抜けると、二人の間の抜けた声と共に最終防衛線(パンツ)はズリ下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

――ブルンッ!べチンッ!

 

 ズリ下ろされたパンツの中からまろびでた逸物はそのままの勢いで腹に当たり重厚感の音を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――うわー!すっごーい!アルゴノゥトくんのおちんちん大っきー!あたしびっくりしちゃった!」

 

 

だぁああぁあぁぁぁぁぁあっ!?!?!?

 

 

 

ティオナは最初こそ驚愕していたが、ビンビンに聳え勃ったご立派なソレを満面の笑みで称賛した。

 

それに対して僕は、自身の恥部を、しかもギンギンにイキリ勃った息子を見られたという人生最大級の羞恥心に僕は絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 揉みくちゃになって倒れながらもベルの最終防衛線(パンツ)をズリ下ろすことに成功したティオナの目と鼻の先には、線の細いベルの体躯に見合わぬ立派な肉の棒が聳え立っていた。

 

 咄嗟に率直な感想が飛び出てしまったが、そういった経験のないティオナはベルの逸物から目が離せなくなっていた。

 

(うわぁ…アルゴノゥトくんのおちんちんおっきぃ…こんなの初めて見た…)

 

 あたしは魅入られたかのように天高く反り勃つ雄の性器を下から上へとじっくりと観察するように視線を揺らした。

 

 隆々と血管が張り巡る長く太い肉幹、パンパンに膨れ上がって大きくエラの張った肉の傘の立派な雄の生殖器。

 

 まともに男性器を見た事のないティオナだったが、目の前でビクビクと震える少年の逸物が並大抵のブツではないと直感的に感じ取っていた。

 

 一言で表すのなら雌殺しの剛槍、そんな凶悪な肉棒を前にして、あたしは心臓が大きく脈打った。

 

(……なんかドキドキする…♡)

 

 ご馳走を前にしたかのように、涎が溢れ出し、あたしは無意識にゴクリと唾を呑み込んだ。

 

 そして、忘れていた呼吸を再開させた瞬間、猛々しく勃起した逸物の濃厚な雄の匂いが鼻腔に充満した。

 

(これ…アルゴノゥトくんの匂い…♡♡)

 

 鼻腔に流れ込むソレの臭いは決して良い匂いではない。蒸れた男性器の雄々しい匂いだが、何故だかティオナは嫌悪感を全く感じず、むしろどこか惹き付けられるニオイで、もっと嗅ぎたい欲求が生まれてしまう。

 

「クンクン…っ♥…はぁっ…♥♥♥」

 

 あたしは吸い寄せられるようにその匂いの一番濃いカリ首のあたりに顔を近づけ、鼻先がカリ首に触れてしまいそうな距離で深く鼻呼吸した。

 

 いや、してしまった。

 

(このニオイ…♥変なニオイだけど…癖になるような…♥♥♥)

 

 凝縮されたかのような濃密な雄の匂いが鼻腔と肺に充満し、ティオナの優れた嗅覚はソレを敏感に感じ取り、脳を犯し尽くした。

 

 息を吹きかける度にビクビクと震える逸物の先端から半透明の白濁した汁が溢れ、一際強烈な匂いを放った。

 

「…っぁ…ひ…♥♥!?」

 

(ぇ…?なんで…カラダが…熱く…っ♥♥♥!?)

 

 何かがおかしい。自身の直感が訴えるが、亀頭の先端から溢れ出た雄の匂い(フェロモン)があたしの理性をドロドロに溶かしていく。イケないことだと知りつつもあたし(アマゾネス)はわざとそれに気がつかないふりをした。

 

(――駄目なのに…♥アルゴノゥトくんの…ニオイ、もっと…♥♥)

 

 亀頭の先端から溢れ続ける我慢汁が鼻先に付着するのを厭わずにあたしは肉棒に擦り寄り直接匂いを嗅ぎ始めた。

 

すぅぅぅぅ…♥♥ふ――っ♥♥♥ふ――っ♥♥♥♥

 

 ここまで来たら、もはや理性などカケラも残っていなかった。

 

「ティ、ティオナさん!?なにをして――」

 

 自身の逸物に異変を感じたベルが声を上げたがもう遅かった。

 

 ティオナは口を開いて小さな舌を伸ばし、肉棒を伝う半透明の汁をチロリと舐めとった。

 舌先にトロリとした我慢汁が付着し、口の中へと運ばれる。それを味わうように舌先で転がした瞬間、ティオナのカラダは瞬時に高熱を帯びた。

 

「――くひゅっ♥♥♥♥♥!?!?」

 

 我慢汁を舐めただけで、ティオナはカラダを小刻みに震わせて絶頂()った。

 

(ナニ…コレぇ…♥♥♥)

 

 舐めとった少量の我慢汁が口に含まれた瞬間、口腔から脳とカラダに幸福感と強烈な快感が駆け巡った。

 媚薬よりも危険な劇薬を飲まされたかのような異常な快感によってカラダが強制的に発情してしまう。

 

(カラダが…熱くなって…♥♥♥アソコが…疼く…ッ♥♥♥)

 

 熱に浮かされたティオナの瞳が目と鼻の先に聳え立つ肉の塔を捉えて釘付けとなる。

 我慢汁をダラダラと溢れさせる肉の巨塔。岩肌を想起させるゴツゴツとしたペニス。ソレが自身の秘所を遠慮なく穿ち蹂躙したらどれほど気持ちが良いのか、想像してしまう。

 コレならカラダの疼きを満たしてくれる。そんな確信がティオナの思考をピンク色に染め尽くす。

 

(――欲しい…♥♥アルゴノゥトくんのおちんちん…♥♥♥あたしの…膣内(ナカ)にぃ…♥♥♥)

 

 自身の秘裂に指を這わせると愛液で濡れていない箇所などないほどに濡れそぼり、ぐちゅりと水っぽい厭らしい音を立てた。

 過去に長期遠征後にムラムラして自慰をした事はあったが、我慢出来ないくらいカラダが疼いた事は一度もない。

 自分自身でもこれまでにないほどに昂り、ムラムラしている事が否が応でも自覚せざるを得ない。

 もはやカラダは完全に発情し、雌の本能に火がついたアマゾネスにもはや、我慢や自制など欠片もなかった。

 

 この雄と繋がりたいと思った瞬間、ティオナの手はイキリ勃つ雄の象徴に手を伸ばし、初めて触れる雄の性器を確かめるように触り始めた。

 

「…あはっ♥アルゴノゥトくんのおちんちん凄く固くなってるよ〜♥」

 

 軽く握った手のひらに異常な熱と、鉄の芯のような硬さ、そして血の脈動がダイレクトに伝わる。

指の回らない太さの肉棒はあたしの手の中でビクビクと激しく暴れだした。

 

(うわぁ…なんかビクビクしてる…♥両手つかんでも足りないくらい大きくて、逞しい…♥♥♥♥)

 

「あ゛っ…!?だ、駄目ですティオナさんっ!こんな…こと…はぅ…!?」

 

 自分の身体の下からアルゴノゥトくんの焦りと苦しさ、切なさの入り混じったような声が聴こえた。

 

 あたしはアルゴノゥトくんの静止の声を聞き入れずに、肉棒を握った手をゆっくりと上下に擦り始めた。あたしの手がちっちゃく見えるほど太く長い肉の幹を大きなストロークで上下にゆっくりと擦る。

 

「えへへ〜♥♥あたし知ってるよー。興奮するとこうなるんでしょ〜?」 

 

 アマゾネスにしては性に無頓着だったティオナでも、雄が性的に興奮すると勃起することは知っていた。実物を見るのはコレが初めてだが。

 

 そしてベルの勃起の原因がこの場にいる自分以外にないという事も。

 

「――ねぇねぇ、もしかして…あたしで大っきくなっちゃったの?アルゴノゥトくん、あたしの裸で興奮した?」

 

 あたしは肉棒を扱いていた焦らすように手を止めた。ティオナの手によって齎されていた快楽が途絶えた事により肉棒が快楽を求めてビクビクと震えていた。

 

「…そ、それはっ…その……」

 

 明らかに言い淀むアルゴノゥトくん。

 

 目の前の、自身の認める雄が、自分のカラダで性的に興奮したと理解すると、あたしは自分の中の雌が歓喜に打ち震え、覚醒するのを感じた。

 

――ゾクゾクッ…♥♥♥

 

 その目覚めたばかりのアマゾネスの本能が、『この雄と交われ、この雄の種を腹で受け止めろ、この雄の子を孕め』と、自身の欲望に激しく訴えかけている。

 

「――あたし、こういうのあまり興味なかったけど、アルゴノゥトくんになら見られてもいいし…むしろ…見て欲しい…かも♥」

 

 肉棒の先端から溢れ出る我慢汁で汚れた手を再び上下に扱き始める。その快楽でさらに我慢汁が溢れだし、にちゅにちゅといやらしい水音を立てながら、手が我慢汁塗れになっていく。

 

「ぁ…だ、駄目です…ティオナ、さん…ッ」

 

 手淫が再開された事で体を硬直させたアルゴノゥトくんは快楽に喘ぎながらも弱々しく抵抗しようとした。

 あたしは肉棒を扱く手は緩めずに体勢を変えてアルゴノゥトくんの身体の上に撓垂れ掛るようにしてカラダを重ねた。

 

「ねぇ、アルゴノゥトくん…あたし、いま凄く興奮してるよ……♥♥♥」

 

 ベルの身体にティオナの柔らかい肢体が絡み付き、ベルは蛇に睨まれたかのように全身を硬直させた。

 

 ティオナは必死に目を閉じて顔を反らしているベルの耳元に口を近づけ熱っぽい息を吐いた。

 

「最初は水浴びするだけのつもりだったのに、アルゴノゥトくんの闘ってる所を見てたらね…心臓がドキドキして…カラダが熱くなってきて…♡もう、我慢できないかも…♥」

 

 肉棒を扱く速度を早め、美味しそうな耳をペロリと舐める。

 ベルの身体には火照ったティオナの柔らかな肢体が絡み付き、接触している肌同士がじっとり汗ばみ始める。

もはやベルの思考はティオナの事で埋め尽くされてオーバーヒート寸前だった。

 

「――アルゴノゥトくんは、あたしみたいな貧相なアマゾネスはイヤ?」

 

「ティ、ティオナ…さん…」

 

 熱っぽい吐息に隠された切なげな声。アマゾネスの本能ではなく、少女の本心の吐露。

 

 ベルは決死の思いで目を開くと、顔を真っ赤にして潤んだ瞳でこちらを見つめるティオナと目が合う。

 

 普段のベルならば、まず確実に日和って脱兎の如く逃走するか、真剣に相手を想って『そういうことは親しくなってから〜』などと話し合うところだろう。

 

 しかし疲労の溜まった身体と精神、ティオナのカラダによる誘惑でオーバーヒートする思考。

 

――そして何よりも、自分に真剣に好意をぶつけてくるティオナにベルの心は揺れ動き、『駄目』、『やめましょう』といったティオナを拒絶する言葉が言えなくなってしまった。

 

「アルゴノゥトくん…♥」

 

 そうしてベルが口籠っている間にティオナの顔が徐々に近づいてくる。柔らかそうな唇から漏れる熱い吐息が唇に触れる。

 ベルはゆっくりと近づくティオナの唇を咄嗟に拒む事が出来ず、両者の唇の距離はゼロとなり――

 

「…ティオナさ――んむっ!?」

 

「ちゅ…んむぅ…れろ…♥♥」

 

 半開きだったベルの唇をティオナの舌が割って入り、口腔内を貪り尽くすような濃厚なキスが始まる。

 

(アルゴノゥトくんの唾液…あたしの唾液と混ざって…♥♥)

 

 歯茎を丁寧に舐めつくし、アルゴノゥトくんの舌をあたしの口の中で絡ませて、お互いの唾液を飲ませ合うようなキス。

 頭が沸騰するかのような快楽がティオナの性欲を際限なく増幅させた。

 

「…っぷはぁ♥キスってこんなに気持ちよかったんだ…♥♥あたし知らなかったなぁ♥♥♥アルゴノゥトくんはどう?気持ちよかった?」

 

「っぷは…っ!はぁ…っ…はぁ…っ!ティオナ、さん…」

 

 数十秒間繋がりっぱなしだった唇同士が離れて銀の橋を架ける。互いにまともに呼吸が出来ないような熱いキスだったが、【潜水】の発展アビリティを持つティオナは全く息切れしていなかった。

 相対的にベルは呼吸忘れるほどに貪り尽くされたために激しく呼吸を荒げていた。

 

「アルゴノゥトくん…もっとぉ…もっとキスしよう…♥」

 

「はぁっ…!はぁ…っ!ま、待ってくださ――むぅぅっ!?」

 

「ちゅる…じゅる…れろぉ…♡♡♡」

 

 呼吸が整うまで待つことなど我慢出来ないあたしは、呼吸のまったく整っていないベルの顔を両手でしっかりと挟み込むと再びベルの口腔へと舌を挿し込んで舐め回し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もはやベルの唾液は飲み尽くされ、口の中の唾液はティオナの物だけと言われても過言ではないほどの長い長いキスが終わり、ティオナはゆっくりと口を離した。

 

「…ゴホッ…!はっ…はぁ…っ!かひゅっ…!はっ…はっ…!」

 

 今度は分単位で呼吸がままらなかったベルは酸欠寸前で思考が定まらないほどに蕩かされていた。

 

 人生で一番性的に昂ぶっているあたしは、ぐったりとしているベルの下腹部で暴発寸前と言わんばかりに勃起している肉棒を視界に捉えると、本能でカラダが動いた。

 

 性行為など見たこともした事もないのに、本能で雄の存在を受け入れようと腰を浮かして我慢汁の溢れる亀頭を愛液で濡れそぼった淫裂にあてがった。

 

「アルゴノゥトくん…♥♥♥」

 

 性器同士がクチュリと水っぽい音を立てる。小さな膣口を押し広げるように亀頭に腰を押し付ける。

 

「はぁ…はぁ…っ…ティ、オナ…さん…な、にを…?」

 

「一緒に…気持ち良くなろう♥♥♥」

 

 意識朦朧としているアルゴノゥトくんの困惑する声を聞きながら、あたしは浮かしていた腰から力を抜いた。

 




ダンメモっていうダンまちのアプリがあるんですけど、今3周年記念で原作の7年前の話がイベントで語られてるのですが、めちゃくちゃ引き込まれるストーリーだから、皆もやろう(宣伝


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CASE3.4ティオナの場合

こっそり投稿。


 

 浮かせた腰をゆっくりと降ろしていく。ぴっちりと閉じた大陰唇が押し開かれ、痛々しいほどに張り詰めた亀頭が小さな膣口を押し広げる。

 じゅぶじゅぶと、粘度の高い水音を立てながらどろどろに蕩けた蜜壺にペニスが飲み込まれていく。

 未だ誰の侵入も許したことのない狭い膣口を、太く長大な男性器が押し広げていく。

 

「あっ♥はぁ…♥」

 

ベルの剛直は充分過ぎるほどに分泌された愛液によって卑猥な水音を立てて滑らかに飲み込まれていく。

 

「あっ♥あっ♥すごっ♥♥おっきぃ…♥♥」

 

挿入されていくベルの剛直が膣口を広げては膣襞に密着し擦れていく、あまりの快感にゆっくり挿入しないと気をやってしまう。そんな確信がティオナにはあった。

 

(ていうか、コレ…気持ち良すぎじゃ…♥♥♥コレ…なんか…♥♥ヘン、だよ…っ♥♥♥)

 

肉棒にまとわりつく膣肉から電撃のような快感が迸っている。しかし、肌が触れて擦れるだけでもカラダが反応してしまうことなどあり得るのだろうか。

視線をベルの顔に戻せば、酸欠に悶えながらも必死に快楽に抵抗する表情が目に入る。

 

「ぁっ…くぅ…ティオナ…さん…駄目…です…」

 

性器の挿入によって快感を得ているのはティオナだけでなく、ベルも産まれて初めて味わう極度の快楽に抵抗はしながらも快楽に蕩けた顔をしている。

 

(アルゴノゥトくんキモチよさそう…♥)

 

 もっと深く繋がりたいと、ティオナは更に腰を深く落とす。

 カリ高でエラの張った亀頭がメリメリ膣内を押し広げ、とてつもない圧迫感を下腹部に齎すが、それを苦痛と感じる間もないほどの強烈な快感がティオナを狂わせる

 

「あっ♥あぁ…っ♥くっ…ふぅぅっ♥♥♥」

 

 強烈な快感に苛まれながらもベルの肉棒を半分以上飲み込んだあたりで、コツンとベルの亀頭がティオナの最奥を捉えた。

 

「――お゛っ…♥♥♥♥」

 

 ベルの亀頭が子宮口を捉えた瞬間、甘い痺れが全身を襲った。雄の子種を強請るように浅い位置まで降りてきていた子宮口は雄に媚びるようにちゅうちゅうと吸い付いて離れない。

 しかし、まだ肉棒は全て挿入されていない。ティオナはベルの腰に近づけるように更に腰を落とした。

 

「お゛ぉっ♥…ほぉぉぉ…っ♥♥♥♥」

 

 ベルの怒張が強引に子宮口を突き上げ、その太茎が粘ついた水音とともに膣肉に埋没して姿を隠していく。

 

(アルゴノゥトくんの…♥♥♥まだ…挿入(はい)るぅ…すっご…♥♥♥♥)

 

 子宮口を押し上げられる衝撃が大きな快楽に変わってカラダが異常なほどに熱を帯びていく。取り分け肉杭を打ち付けられている子宮はナニカを期待しているかのように亀頭にちゅーちゅーと吸い付いて、逃がさぬと言わんばかりに奥へ奥へと陰茎を飲み込んでいく。

 そして遂に、ティオナの軟尻がベルの腰に密着した。

 

「あ゛っ♥♥♥アル、ゴノゥトくんの…全部ぅ挿入(はい)ったぁ…ッ♥♥♥♥」

 

 生まれて初めて味わう圧迫感。臍の裏に届いているように錯覚するほど、長大な肉茎は深く挿入されていた。

 

(お腹のナカ…アルゴノゥトくんでいっぱい…♥♥♥)

 

 自身の膣内(ナカ)でビクビク震える雄の存在にティオナは深い絶頂を覚える。雄の腰の上で小刻みにカラダを震わせて何度も絶頂した。

 絶頂によって膣肉が生物のように蠕き、陰茎を不規則に締め付けては絡みついた。

 

「くぁっ!?だ、駄目です…っ!ティオナ、さん…っ!?」

 

 腰は全く動いていないというのに膣肉の蠕きだけで射精感が込み上げるほどの快楽を受けて、ベルは切羽詰まった声でティオナの腰に手を伸ばした。

 

「――あは♥だ〜め♥♥」

 

 ベルの最後の抵抗も虚しく、ティオナは快楽で蕩けきった肢体を全力で動かして腰から腕を引き剥がすとそのまま地面に押さえつけ縫い付けた。

 身体に上手く力が入らないとしても、第一級冒険者の拘束から逃れられるはずもなく、ベルは頭部以外の一切の身動きすら出来なくなってしまう。

 

 鼻と鼻が触れそうな距離にティオナの蕩けた顔がある。汗がじっとりと肌を塗らし、可憐な黒髪がペタリとくっついて色っぽく、扇情的な表情でベルを見つめていた。

 

(――く、喰われる…っ!!?)

 

 ティオナの目はマジだった。極上獲物を目の前にした捕食者の双眸と言っても過言ではないほどにギラついていた。

 

「アルゴノゥトくん♥♥射精(イキ)そうなんでしょ?我慢しなくていいよ♥あたしの膣内(ナカ)にぃ…いっぱいちょうだい♥♥♥」

 

「ティ、ティオナさん…!?だ、駄目です…!僕、もう…!!――んむぅ!?」

 

 ここまできて未だに逃げ腰のベルの唇を塞いで黙らせる。膣外射精など絶対にあり得ない。異常なまでに熱く疼く子宮で受け止める以外の選択肢はない。

 

「んぅ…♥♥ん、ふぅ…♥♥ふーーっ♥♥♥」

 

 頭部を動かしてキスから逃れることも、口内を蹂躙するティオナの舌を押し返すことも出来ず、ベルの抵抗が弱々しいものとなっていく。

 

 それを好機と言わんばかりの妖艶な笑みを浮かべたティオナはキスを続けながらも腰を浮かせ振り下ろした。肌がぶつかり合う音が響く。

 

ドチュドチュドチュドチュドチュドチュドチュッ!!

 

 激しく腰同士がぶつかって少し痛むのをお構いなしに腰を振り続ける。ビクビクと剛直が震え、ティオナの目の前に映るベルの瞳が定まらなくなって来ている。射精は間近であるのは間違いないと確信してティオナは腰の動きを緩めずに雄の肉棒を攻め立てる

 

(――コレやばいっ♥♥♥キスしながら♥♥♥腰、止まらない♥♥♥♥♥絶頂()きすぎて頭、おかしくっなるぅぅぅぅ♥♥♥♥♥♥)

 

 しかし、優位に立っているように見えるティオナも腰を降るたびに絶頂し続けており、頭は沸騰したかのように茹で上がり、足腰はガクガクだった。

 それでも、アマゾネスの血がそうさせるのか、足腰がまともに使えずとも雄の子種を搾り取らんと腰を振り続けた。

 

(精液っ♥♥♥アルゴノゥトくんの精液っ♥♥♥♥あたしの膣内(ナカ)にっ♥♥♥♥♥!!射精()せっ♥♥♥射精()せっ♥♥♥♥♥♥)

 

 ティオナはラストスパートと言わんばかりに肉棒を激しく責め立てた。膣襞がミミズ千疋のように蠕き絡みつき、膣全体がきゅうきゅうと強烈に肉茎を締め付けて精液を強請る。

 

 

 

「――んんぅッッ!?!?!むぅっ!!?むぅぅぅぅぅぅぅっ!?!?」

 

 

 

 ティオナの全力の精液強請りに耐えられるはずもなく、遂にベルの我慢が限界を迎え、一際大きく暴れた瞬間、限界を超えて膨張したベルの肉棒はティオナの膣内の最奥で果てた。

 

 

 

 

どびゅっっっ♥♥♥♥!!!

 

 

 

 

「――お゛っ…♥♥♥♥♥♥!?」

 

 

 

待望した雄の精液が子宮口を貫通し、子宮底に叩きつけられる。白濁の濃いゼリーのような孕ませ汁が子宮を満たしていく。火傷するような熱いそれが子宮内部にびちゃびちゃと浴びせられて絶頂()った。

 

 

 

びゅーっ!どぷっ!びゅるっ!どくどくっ♥♥♥

 

 

 

「あ゛ぁ〜〜〜〜♥♥♥♥!?!?アルゴノゥトくんの精液っ♥♥♥♥あたしの膣内(ナカ)射精()てるぅぅぅっ♥♥♥♥♥!!」

 

 

 

何度も肉棒を脈動させ、その度に変わらぬ勢いと濃さで精液を吐き出し続ける。

大量の精液が何度も何度も子宮に直接流し込まれ、卵管のその先まで犯し尽くすような量の精液が子宮を満たした。

 

 

 

びゅーっ!びゅるるるるるっ!びゅぐっ!♥♥♥

 

 

 

「お゛ぉッ♥♥♥!?ほひっ♥♥♥♥あひゅっ♥♥♥んほぉぉおおおッッ♥♥♥♥♥!?!?」

 

 

 

子宮を埋め尽くしてもなお射精の勢いはとどまることをしらず、熱く、煮えたぎるような白濁の奔流が子宮に叩きつけられ続け、ぶぴゅっという下品な音を立てながら連結部からドロリとした精液が溢れ出した

 

一度で10回分以上の射精、もしくはそれ以上の射精をしたベルは浅い呼吸を繰り返しぐったりとしていた。

また、その射精を子宮で受け止めたティオナは声にならない声で人生最大の絶頂に達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 濁流とも呼べる雄の激しい吐精を受け止めたティオナはビクビクとカラダを痙攣させながらベルの胸に倒れ込んだ。

 

(――孕んだ…♥♥♥♥絶対アルゴノゥトくんの子供孕んじゃった…♥♥♥♥♥)

 

雄の種が、腹の底に吐き出される度にカラダは歓喜に打ち震える。自身が見初めた最高の雄とアマゾネスの本懐を遂げた。

確実に孕んだ。そう確信するほどの射精だった。

 

(アルゴノゥトくんの子供…♥♥♥)

 

精液で満たされた子宮を、少し膨らんだ腹の上から撫でる。心もカラダもこれまでにないほどに充足感に満ちていた。

 

ティオナはベルの胸に抱きつくように倒れ込み、ベルの顔に口を寄せた。ベルは快楽に塗れた顔で気絶しており、だらしない表情だった。

 

「おやすみ、旦那さま(アルゴノゥトくん)♥」

 

ティオナはクスリと笑って頬に口付けすると後を追うように意識を失くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜1週間後〜〜

 

「――ねぇアミッド!この検査薬なんだけどさ!これ絶対におかしいよ!」

 

「ティオナさん、お話はお伺いしますのでお静かにお願いします。」

 

「はーい…じゃなくて!この妊娠検査薬なんだけど!あたし妊娠してないって結果が出たんだけど!」

 

「……………えっ?」

 

「あんなに射精()してもらったのに、孕んでないはずが――」

 

「……んん゛っ…事情は分かりました。結果から言いますと、その検査薬は精度は非常に高く、検査結果が陰性であれば妊娠してない可能性の方が高いです。

 ティオナさん、ここ最近で怠さや体調不良はありましたか?」

 

「えー?全然!すっごい元気!」

 

「であれば妊娠の初期症状は確認されていようですので、妊娠は…その、していないかと思います」

 

「うー、アミッドぉ…それって本当?」

 

「…え、えぇ…その残念、ながら…?」

 

「む〜〜っ!こうなったら孕むまで射精()してもらうまで!じゃあね!アミッド!」

 

とんでもない爆弾発言を残して、ティオナは嵐のように去って行った。

 

「………………………え?」

 

 取り残されたアミッドはいつぞやの剣姫の時のように長時間フリーズをかまし、彼女の主神が店に現れるまで解凍されなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.2

 

《魔法》

 

【ファイアボルト】

 

・速攻魔法

 

《スキル》

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 

・早熟する。

 

懸想(おもい)が続く限り効果持続。

 

懸想(おもい)の丈により効果向上。

 

【幸運(助平)+】

 

・ラッキースケベを誘発する。

 

・異性を惹き寄せる。

 

・異性から嫌悪感を持たれない。

 

・肉体の接触による異性への好感補正(高)。

 

・ラッキースケベの対象に催淫効果(大)。

 

・的中率を下げる。自らの意思により変動。




ということでティオナ編でした。難産…。文字数多いとアレかなと思い少なめに抑えたものの今度は内容が薄いというジレンマ…
アマゾネスは下品に喘がせたい欲が出てしまった…(後悔はしていない)

この作品を待っていた方がいらっしゃるのか分かりませんが、今年もよろしくお願いいたします。(あけおめ

アンケートの結果的に次はエイナさんですかねぇ…


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CASE4.1エイナの場合

原作だと異端児編で堕ちるハーフエルフのお姉さんだけど、もっと早い段階で堕ちてもらいましょう。(ニチャア
導入なんでエロないです…
ということでエイナさん編です、ドゾー


 ダンジョンを運営管理する『ギルド』の受付嬢のハーフエルフ、エイナ・チュールはここ最近ある一件で非常に悩んでいた。

 

それは――

 

「やぁ、エイナちゃん。今日も相変わらず可憐だッ!仕事を抜け出してデートでもどうだい?仕事もそろそろ終わるのだろう?」

 

「あ、あの…確かに後は資料をまとめるだけですが…まだ職務中ですので、ご遠慮させていただきます」

 

「遠慮なんてしなくていい!私の君の仲じゃあないか!まぁ、君がそう言うのであれば仕事が終わるまでここで君の華麗な姿を見ながら待っていることにしよう!」

 

「え?あ、あの…っ」

 

 エイナが抗議の声をあげる前に、大きな声、大きな歩幅でその神は待受用の椅子にドカリと腰を降ろすと猛烈に熱い視線を職務を全うするエイナに注ぎ続けた。

 このやり取りは今日が初めてではない。ここ一週間くらい毎日ギルドに通い詰めてはエイナに愛の言葉を囁やき続けている。

 

 ここまでくると言わずもがなであると思うが、度が過ぎる求婚を繰り返し、何度も断りをいれても粘着質にエイナにまとわりついて来る名もしれぬ神が特大の悩みの種だった。

 暫く取っていなかった休暇を有意義に使おうと外に出たのが運のツキ、服を買って気分が上がっていたエイナをその目に収めた例の神が舞い上がるかのように求婚し始めたのだ。

 エイナはその優れた容姿からこういった(・・・・・)ことは珍しくない。冒険者から商人果ては神に至るまで様々な男性から言い寄られたことがあるが、エイナはその全てにやんわりとお断りをいれていた。

 エイナがあまり男女の関係に興味がなく仕事一筋というのもあるが、強いて言うなら、エイナの好みは頼りになる男らしい男性よりかは少し頼りないくらいの男性が好みだった。

 そう、毎度のようにエイナを困らせる兎のような少年みたいな―――

 

『エイナさん!』

 

 脳裏に兎の笑顔が過ぎる。好みの男性で最も当てはまるのが兎のような少年というだけであって好きという訳では……訳では…

 

(って何考えてるの私…///!仕事中なのに…)

 

 ブンブン頭を振って業務に集中する。しかし、集中しようとした矢先、例の神が不敵な笑みを浮かべてエイナの下へと歩み寄った。

 

「どうしたんだい愛しのエイナ。僕の視線に照れているのかい?恥ずかしがることはない、君の照れた顔を見しておくれ」

 

 どうやら顔を赤くして頭を振るエイナを見て愉快な勘違いをしたのだろう。神はキザな物言いでエイナに再び言い寄った。

 カウンターに身を乗り出してまでエイナの顔を覗きこもうとする神にエイナは少しばかり引いた。

 それに冒険者や他のギルド職員からの視線もあり、エイナはこの神に一刻も早くお帰り願おうと顔を上げた。

 

「あ、あの!すみません、職務がございますので…ギルドへのご用件がなければ――」

 

全てを言い切る前に神はエイナの手を強引に掴んだ。引っ込めようにも冒険者でもないエイナが男性の腕力から逃れられるはずもなく引き寄せられる。

 

「照れなくてもいいと言った!確かにギルドに用はない!いや失くなったというべきか!何故ならこれから私と君で愛の逃避行に出るからさ!さぁ、僕と夜の街に繰り出そうじゃないか!」

 

 あまりの神の横暴に周囲の人間が殺気立った。当然、その横暴を受けているエイナはその神に対して明確な嫌悪感を懐き始めたその瞬間、エイナの視界に白い兎が目に入った。

 

「あっ、ベル君!」

 

 咄嗟に掴まれていない手を振って白兎(ベル)を呼ぶと、ベルは何かを察したかのようにカウンターに走り寄った。

 そしてエイナの腕を掴んで強引に引き寄せようとしている男神の横暴を見て、ベルは男神の肩を叩いて困ったように話しかけた。

 

「あ、あのーすみません、僕エイナさんに急用があって…」

 

(ありがとうベル君…!)

 

 視線と表情で感謝を告げるとベルはそれを理解して頷いた。

 

「急になんだね君は…?私のエイナに何のようだい?」

 

 穏便に済めば良かったのだが、粘着質な神は突然割って入ってきたベルに不快感を隠さずに睨みつけた。

 

「えっ!?い、いや…そのエイナさんが困っているように見えたので…取り敢えずその、手を離しませんか?」

 

「私とエイナの仲だ。君がどうこう言うものでもないだろう!」

 

 ベルが未だにエイナの腕を掴む神の手を指差して言うが、神は益々不快だと言わんばかりに眉間に皺を寄せて語気を強めた。

 

(このままだとベル君にまで被害が…)

 

 剣呑な雰囲気まで醸し始めた神にエイナは危機感を覚える。一刻も早く事態を収めなくては、と。

 

「私とエイナの愛の語らいを邪魔しないでくれるかね!そもそも君はエイナとどういう関係なんだ!?」

 

「ぐえっ!?ちょ、ちょっと待ってください!暴力はやめましょうよ!?」

 

 しかしエイナが仲裁するよりも早く、神はベルの胸ぐらを乱暴に掴んで問いただそうとした。

 相手の怒りを買わないようにと困ったように笑っているが、僅かに苦しげに歪むベルの表情。

 

 

 

 

 それを見た瞬間、エイナの何かがプッツンとキレた。

 

 

 

 

「あの!エイナさんは僕の専属の――」

 

「――私の恋人です。この後デートに行くのでギルドに迎えに来てもらいました。ねっ、ベル君?」

 

 おそらく専属のアドバイザーと言おうとしたのだろう。ベルの言葉を遮る形で普段のエイナからは想像も出来ない甘えた声を出してベルに視線を送った。

 

「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」」

 

 衝撃のカミングアウトに、猛烈な求愛を仕掛けていた神と白兎が目を点にして仰天した。

 彼氏役が驚いたら元も子もないと思われたが、あまりのショックに厄介神はエイナの腕を離して地に伏して愕然としていた。

 

「そ、そんな…馬鹿な…!!私のエイナが…すでに他の男のモノに…なっている、だと…ッ!?」

 

 そこに追い打ちをかけるように、エイナは見せつけるようにベルの腕を掴んで引き寄せた。

 

「こういうことなので、私のことは諦めてください」

 

「がっ…はぁ…ッ!?くっ…!認めん…認めんぞッ!そんななよなよした男のどこがいい!!?」

 

 ガバッと頭を振り上げて未だに放心状態のベルを指差す諦めの悪い神。

 

「少なくとも、強引に女性に迫る貴方よりはずっと魅力的な男性です」

 

「ぐはっ!?!?」

 

 キッパリと斬って捨てたエイナの物言いに神は吐血しながらぶっ倒れた。

 しかし、数秒もしない内に幽鬼のようにムクリと起き上がると二人に向かってビシリと指を突き付けた。

 

「…諦めん…私は愛の神!その軟弱男から君の愛を!いつか!奪い取ってみせよう!!ふはははははははは――」

 

 神は人にぶつかるのを厭わずに高笑いしながらギルドを出て行った。

 

 ベルとエイナの二人が二人が大きく胸を撫でおろしたのも束の間。

 

 

 

 途端、ギルドに黄色い歓声が包まれた。

 

 

 

 

「ひゅーーーーっ!お熱いじゃねぇーかリトルルーキー!!いつの間にみんなのアイドルのハートを射止めてたんだ!?」

 

「くそっ!?エイナさんがあんなガキと!?」

 

「こりゃスクープだ!数多の求愛をちぎっては投げちぎっては投げて100人斬りとまで言われたエイナ嬢がリトルルーキーとデキてたなんてよ!」

 

「リトルルーキー!!絶対に許さん!!俺のエイナさんをよくも!!」

 

 二人の熱愛を祝福する声、ベルに対する妬みや怨嗟の声などでギルド内は一気に色めきだった。呆然とする主役の2人を差し置いてギルド内は熱狂に包まれる。

 

「へ…?」

 

「あっ、いや!これは違――」

 

 ハッと意識を取り戻したエイナが急いで訂正しようとした瞬間、隣から肩を叩かれる。

 

 視線を横に移すとピンク色の髪の同僚(ミイシャ)の姿が目に入る。

 

「エイナ!」

 

「あっ、ミイシャ!これは違うの…あの神を――」

 

 全てを言い終わる前にミイシャは手で制するとウンウンと頷いた。

 

「皆まで言わなくても分かってるよ。私とエイナの仲だもん!」

 

「ミイシャ…」

 

「あとの仕事は任せて!新人君とデート、楽しんできて!」

 

 先程の演技を全て理解していて事態の収拾を手伝ってくれるのだろうと思っていたエイナをミイシャは笑顔で裏切ってきた。憎たらしいサムズアップとともに。

 

「ミイシャ!?」

 

「いいのいいの!その代わり、今度美味しい食べ物でも奢ってよね!」

 

「ミイシャーーー!!!」

 

 そうしてこの盛大な誤解が解決することなくエイナとベルはこの場から逃げ出すようにギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕焼けで赤く照らされた通りは人混みで溢れかえり、露店には人集りが出来るほどの往来を、近いような遠いような距離でベルとエイナは歩いていた。

 

「えっと…ごめんねベル君。あんなことに巻き込んじゃって」

 

「い、いえ…その…エイナさんにはいつもお世話になっているのでコレくらい…」

 

 二人とも気まずそうに視線を彷徨わせながら歩く。あんなことになるとは思っていなかった。

 

「あの男神にはね…一週間前くらいから言い寄られてて…あそこまで強引に来たのは初めてで…その時ちょうどベル君が来てくれたから…つい助けを求めちゃったんだ」

 

「そうだったんですね…。その、助けになれて良かったです。」

 

「でも…ごめんね恋人だなんて言っちゃって…迷惑だったでしょう?」

 

「いっ、いえ!!全然そんなことは!むしろ嬉し――」

 

 ベルはそこまで口を開いて慌てて口を押さえた。後に続く言葉は抑えたものの、顔が真っ赤なのは全く隠せていない。

 

「「………///」」

 

 二人の間に気まずい沈黙が流れる。しかし、周囲の人間が見れば甘酸っぱい空間と評するのは間違いないだろう。

 

 

 

 当人たちは気まずい空気をなんとかしようと視線を四方八方に彷徨わせているとベルの視界にある人物…否、神物が映り込んだ。

 

 

 

「――アッ゜…」

 

 

 

 その正体は言わずもがな先程エイナに熱烈な求愛を行っていた男神だった。

 

「……………ジーーーーッ」

 

 その男神が体を折り曲げて、大きな植木鉢の影から強烈な視線を二人に送っている恐ろしい姿が一瞬だけベルの視界が捉えた。否、捉えてしまった。

 

「…ひっ…!?あ、あの…エイナさん…落ち着いて聞いてください。先程の男神が僕たちを尾行してるみたいです…」

 

「えっ…?本当なのベル君…」

 

 エイナはあまり不自然にならないようにキョロキョロせずに前を向いて尋ねた。

 

「…凄い形相でこっちを見てました…」

 

 エイナは大きく溜息を吐いた。なんとなくだが、尾行する男神の目的は大方予想が出来る。

 

 私とベル君が本当に恋人同士なのかを疑い、二人の様子を悉に観察して真相を見極めようという腹積もりだろう。

 

 心底諦めの悪いの男神に、善人のエイナでさえ辟易とした。

 この諦めの悪い神は、ちょっとやそっとのことでは手を引かないだろうと確信させられたからだ。

 あの神を諦めさせるには、ダンジョン攻略後で時間のあるベルが隣にいる機会を逃さない方が良いだろう。

 

(さっきあんな事になったばかりで申し訳ないけど…)

 

 エイナは申し訳そうにしながらベルに近寄り耳打ちした。フワリとベルの鼻腔を良い匂いが擽る。

 

「――ベル君、お願い、私とデートのフリをしてくれる?」

 

「…へっ?」

 

ベルの拍子抜けな返答とともに、ストーカーと化した男神を欺くためのデートが始まる。




偽デート編スタート…っ!



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CASE4.2エイナの場合

書くだけ書いて放置してたやつ。書いてて長くなったのでなんとか短く終わらせようとしたのに、結局短くならないし本番まで至らないです…。長い方がいいのか、短いほうがいいのか…その塩梅が難しいな…非常に悩む作者です。


 

エイナの機転によって、『デートのフリをして男神を諦めさせよう作戦』が始まった。

 

 エイナは恋人のように仲睦まじい姿を見せつければ、流石に男神も諦めてくれるだろうとの思い付きで作戦を実行した訳だが…

 

「あ、あはは…いい天気ですね…」

 

「えっ?あっ、そうね…こんなに星が綺麗に見えるなんて珍しいかも…」

 

 付き合いはじめのデートのようにぎこちない会話。二人して空を見上げる。確かに雲が一つもなく星が燦燦と輝いている。

 

「「…………………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((どうしよう…))

 

 

――恋人のフリって…………なに?

 

 互いにほとんど恋愛経験がないために何をしたらいいか分からず、ベルに至っては緊張のあまりカチコチになってしまっていた。

 エイナも平静を装っているものの、仕事一筋で生きてきたために恋人らしいことなど何をすれば良いか分かるはずもなく困り果てていた。

 

(頼みの綱のベル君は……)

 

 困ったようにベルに視線を向けると、同じように助けを求めるような視線を向けたベルと目があった。

 

「へっ?あっ、えと…その…え、えへへ…っ」

 

 急に視線がガッチリと合わせられたベルは頬を掻きながら非常に分かりやすく照れた。

 

 全くもって頼りない様相で照れ笑いするベルを見て、困窮していたことを忘れてエイナはクスリと笑った。

 

(デートのフリって言ってるのに…すごく緊張してる)

 

 エイナはベルより年上なのだから、大人らしくリードしてあげなきゃと心に決め、ぎこちない歩みとなったベルに手を差し出した。

 

「ベル君…手、繋ごう?」

 

「はっ、はいぃっ!」

 

 ベルは背筋をピンと伸ばし、裏返った声で返事をすると、エイナの手に恐る恐る手を伸ばした。その姿は臆病な小動物のようで可愛らしいと感じてしまう。

 

 しかし、ベルの手がエイナの手を握った瞬間、エイナの心中から小動物のイメージが払拭された。

 

(――うん…冒険者の手…だなぁ…。ゴツゴツしてて…マメだらけ…。いっぱい頑張ってるんだね…ベル君)

 

 思わず両手で握って確かめるように触ってしまう。頼りない少年の手は、困難を乗り越えて成長を続ける冒険者の手だと思い知らされたかのようだった。

 

「…あ、あの…エイナ、さん?」

 

「…あっ、ごめんね!こんなにしっかり男の人の手を触るの初めてで…」

 

「い、いえ…。えと…そ、それじゃあ行きましょうか!」

 

「うん。ベル君、エスコート…お願いね」

 

「まっ、任せてくださいっ!」

 

 再びおかしなほど背筋を伸ばしたベルがエイナの手を引いて一歩先を歩いていく。

 

(どこか頼りないけど、なんか安心するなぁ…)

 

 ロボットのように凝り固まった動きを見せるベルを見て、エイナはふふっと笑みを零した。

 繋がれた手はエイナに不思議な程の安心感を与えてくれる。

 

(本当の恋人同士って…こんな感じなのかなぁ…)

 

 繋がれた手から伝わる熱、緊張した面持ちの横顔。ベルとこうして手を繋いで歩いているのは全然嫌じゃない。むしろ――

 

(って何考えてるのエイナ!?これはデートのフリなのよ!ベル君とは恋人同士を演じているだけ…///)

 

 そう自分に言い聞かせるも、一度意識し始めるとドキドキは加速するばかりで、ベルの顔をまともに見れなくなってきた。

 

 暫く両者ともに茹で蛸のように真っ赤になりながら歩いていると、ベルが視界に入ったレストランを指差した。

 

「あっ、エ、エイナさんあの店はどうですか?あのテラスの席で…」

 

「ふぇっ!?あっ、あのテラス席ね!いいんじゃないかな…」

 

 エイナは異を唱えることなく賛同し、手を引かれるままにテラス席にエスコートされる。

 

 通りにところ狭しとテラス席が並び、様々な人種のカップルが仲睦まじく逢瀬を楽しんでいる光景を通り抜けて、空いた席を見つけるとベルは椅子を引いてエイナに着席を促した。

 

「エイナさん、どうぞ」

 

「あ、ありがとうベル君…」

 

 意外と様になっているエスコートにドキリとした。どこでこんな事を覚えたのだろう。

 犯人は女たらしの美男神(ミアハ)だったりするがそんなことエイナが知る由もない。

 

 そうしている間にウェイターがメニューを持って現れ、伝票片手に注文(オーダー)を待っていた。

 

「オーダーがお決まりのようでしたらお伺いいたしますが…」

 

 ベルは渡されたメニューを慌てて目を通して、本日のオススメと書かれたメニューに目が止まり、指を指した。

 

「え?えーと…あっ!!このLOVELOVEアベックジュースお願いします!」

 

 文字の羅列のみのメニューのためまったく委細は分からないが、おそらく恋人同士向けのメニューであろうことは字面から察しがついた。

 アベックの意味は分からないが、神々がよく使うスラングか何かだろう。

 ともかく、恋人同士を演じるのであればと、ベルは脳死で注文を出した。

 

 それを後悔するのは、現物が二人の目の前に現れてからだった。

 

「お待たせいたしました。こちら、LOVELOVEアベックジュースでございます。」

 

「「……………」」

 

 ハートの形をした大きなグラスにピンク色のジュースが並々に注いである。そこまでなら普通のジュースで済むが…問題はそこに刺さっているストローだった。

 

 一つだけ刺さっているストローは先端が2つに別れ、いかにも二人で飲んでくださいと言わんばかりの代物。それだけでなく、二人で飲めば間違いなく額と額がぶつかってしまう程、ストローの先端は短かった。

 

 恋人同士のフリをしているだけの二人にはあまりにもレベルが高過ぎた。

 二人の間に流石にコレは…という空気が流れるも――

 

 

 

 

「ジーーーーッ…」

 

 

 

 

 テラス席を熱く見つめる視線が二人を貫く。語るまでもないが、例の男神である。

 

(視線が痛い……。の、飲まなきゃ怪しまれるよね……でも――)

 

「エ、エイナさん…無理しなくていいですよ…最悪僕一人で飲みますから…」

 

「えっ!?でも…凄い見られてるし……」

 

「そ、それじゃあストローに口をつけて…飲んでるフリを…僕が一瞬で片を付けるので…」

 

「そ、そうね…」

 

 2つに枝分かれしたストローの片方に口を付けようとして両者固まる。そう、二人の度胸を試すが如く枝分かれしたストローの先端はとても短く、いざ飲もうと思っても両者ともに尻込みせざるを得なかった。

 

(うぅ…ベル君が嫌って訳じゃなくて…単純に恥ずかしいよコレ…)

 

周りはカップルだらけでそれぞれが自分達の世界に浸っているためベル達を凝視しているのは例の男神くらいしかいないが、エイナにとって恥ずかしいことには変わりなかった。

 

「あの…やっぱり難しそうなら僕一人で…」

 

 そう言ってベルは苦笑いしながらグラスを自分の手前に引き寄せようとした。エルフの習性を理解しているからの提案なのかもしれない。

 

(ベル君……。…駄目よエイナ!私がお願いして付き合ってもらってるのだから……恥ずかしいけど……!)

 

 エイナはドリンクを手元に引き寄せようとするベルの手を掴んでドリンクを円卓の中央に戻すと、ストローに口を付けた。

 

「んっ…///」

 

 テーブルに身を乗り出して先端の短いストローを咥えてベルを待つ。普段の自分なら風紀の乱れが〜〜、などと言って注意しているような行為に顔が赤くなるのを感じた。

 

 

 

 その一方、ベルはというと顔を僅かに赤らめて前髪を耳にかけてストローを咥えてベルを待っているエイナは女性免疫のないベルから見て色っぽいの度を越していた。

――女性免疫の低いベルの心臓は爆発した。

 

(ほあぁ↓あぁぁぁぁ↗ああぁぁぁぁ↑!?!?)

 

 内心で盛大に発狂しながらベルはゴクリと喉を鳴らした。心臓はダンジョンで生死の境を彷徨った時並に激しく脈打っていた。

 

(スッ、ストローを咥えてジュースを飲み干すだけ…ジュースを飲むだけなんだ…!!!)

 

 そう言い聞かせるも全く心は落ち着かない。人生で一番、男を試されてる瞬間だとベルは認識した。

 

 しかし、いつまでも躊躇っていると例の男神からの視線の疑惑の色が濃くなっていくのを感じた。

 

(くっ…!!こうなったらストローを咥えた瞬間に目を閉じて飲み干す!!それしか…ないっ!!)

 

 覚悟を決めてストローへと口を寄せる。エイナの顔に近づけば近づくほどに良い匂いが鼻腔を満たしてベルの鼓動は更に激しく脈打った。

 しかし、ベルはなんとかそれを意識の外に強引に押しやってストローを咥えると、互いの前髪が風で揺れて触れ合うほどの距離が近づいた。

 

((――か、顔ちか…っ!!))

 

 互いの瞳しか見えない、睫毛が触れるのではないかと錯覚するような近さ。

 

 あまりの近さに驚愕で目を見開いたベルだったが、思い出したかのようにギュッと目を閉じてジュースを飲み始めた。

 

「ちゅ〜〜〜〜〜〜…!」

 

 目を閉じ顔を真っ赤にしてジュースを吸うベルを目の前にするエイナもベルと同じく羞恥心に悶えていた。

 異性とここまで接近したのは初めての経験で、心臓がバクバクとなっている。

 

(ベル君の顔近い…これじゃあまるで…キス、してるみたい……)

 

 あと5cm程度近づけば互いの額がぶつかるほどの、呼吸をするのさえ躊躇う程の近さ。

 異性にこんなに顔を近づけられたら絶対に跳ね除けてしまうかもしれないのに、不思議とベル相手だとそんな気分にはならなかった。

 

 恥ずかしいことには変わりない。しかし、キスしているのと変わらないようなこの近さを許容してしまうのは、どうなんだろうか。

 

「ちゅう…」

 

 気を紛らわすために控えめにジュースを口に含んだが、味は全く分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!」

 

互いに頬を染めてジュースを飲み合う二人が織り成すガムシロップのように甘ったるい空間を見せつけられた男神は血の涙を流してそれを見つめて歯噛みした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、ショッピングに屋台の食べ歩き、果ては夜景を二人で眺めたりと恋人らしいことを一通りやってきたベルとエイナだったが、件の男神は未だにベル達の尾行をやめる気配がなかった。

 

「――うっ…ぐっ…はぁ……はぁ……ッ!わ、私は……み、認めないぃぃぃっ!」

 

 確かに恋人のフリをしている二人だが、互いに少なからず想っている節があり、初々しいゲロアマカップルのデートを見せつけられれば常人なら即効で折れるものだが、この男神は未だに尾行している。

 

 ベルとのデートはとても有意義な時間だったのは間違いないが…あの時間を持ってして諦めないとなると、もはや、何をすれば諦めてくれるのか分からない。エイナは途方に暮れていた。

 

「…ま、まだいますね…あの(ひと)…」

 

 現在、ベルとエイナはオラリオの南区の繁華街からあてもなく東の方へと歩いていた。

 

 背後から響く声にベルはチラリと未だに執念深く尾行を続ける男神に視線を一瞬向けて驚嘆した。

 物陰に潜みながらも、もはや隠す気がないのではないのかという程の声で血の涙を流しながら怨嗟を振り回す男神が目に入る。

 

 諦めの悪さは流石神といったところか、夜のオラリオの喧騒さえ静かになり始める時間になっても男神は付いてきた。

 かなり歩き回ってベルもエイナも足が疲れるほどだというのに、尾行で変なポーズを取り続けている男神に疲労の様子は見えないのだから余計にウンザリとした気持ちになる。

 

 

 

 

 

 どうしたものかと二人歩いて思案に耽けながら歩く――

 

歩く――

 

歩く――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――気が付いた頃には街並みがガラリと変わり、いかがわしい雰囲気の店の軒並みが二人を取り囲んでいた。

 

 

 

 

 妖しいピンク色の魔石灯がぼんやりと夜闇を照らして蠱惑的な笑みを浮かべる娼婦達が肢体をくねらせて雄の本能を掻き立てては手招いて、誘いに乗った冒険者に抱きつきながら店の中へと消えて行く。

 

 

 

 

――そう、そこはオラリオの南東に位置する色街。露出の高い服装の娼婦達が店の前で艶かしく客を誘惑してはカラダを客に絡ませながら店の中へと消え、男女の営みが色んな意味で盛んに行われる、性と欲望が入り乱れた場所。

 

 

 二人はビタリと立ち止まり顔を真っ赤にして口をパクパクさせて

 

「――ひ、引き返しましょうベル君!こっ、此処は君にはまだ早いと思うな!」

 

 風紀の乱れしかない色街に迷い込んでしまったと理解した瞬間、エイナはベルの手を引いてすぐさまこの場から離れようとした。

 

「はっ、はいぃっ!!!そそそそうですねっ!!」

 

 ベルもエイナの手に逆らわずに回れ右して色街から脱出しようとしたが――

 

「わぶっ!?」

 

「おっと」

 

 振り返った瞬間ふにゅんと柔らかい2つの触感がベルの頭部を包み、甘いフェロモンのような香りがベルの鼻腔に充満した。

 慌ててそこから顔を引き抜くと、艶の良い褐色の豊満な肢体を最低限に隠した露出の高い服装のアマゾネスが目の前に現れた。

 

「ん〜?なんだい少年…アタシを買いたいのかい?言っておくがアタシは安くないよ?でも…オマエから良い匂いがするねぇ…良い雄の匂いだ…。味見も悪くないかねぇ…♡」

 

「ひっ…………!?」

 

 舌なめずりをしながらベルの匂いを嗅ぐアマゾネス。ベル(獲物)の匂いを嗅げば嗅ぐほどにアマゾネスの目はギラついていくのが至近距離のため容易に見て取れた。

 

 瞬間、ベルの脳裏を過るは、貧乳アマゾネス…。ティオナによって齎された最高の快楽と甘い悪夢が頭を支配する。ベルの精神がゴリゴリと削られていく。貧血になったかのようにベルの身体がフラついた。

 

(――くっ、喰われる…!絞られるっ…!!!)

 

 その場から逃げるように後退りするに留まらずそのまま地面に崩れ落ちそうになるベル。エイナは咄嗟にベルの体を受け止めてその豊満な胸部に抱きかかえた。

 

「べ、ベル君!?」

 

 へなへなと力なくエイナに凭れかかるベル。意図せずして色街に辿り着いてしまった事、ベルの突然の変調にエイナは目を白黒させながらベルに問を投げるも、肝心のベルは悪夢に魘されるように唸るだけだ。

 

「あ〜?なんだいもう女侍らしてんのかい?可愛い顔して少年も意外とヤるじゃないか!今度はアタシを買ってくれよ?」

 

 実際は気をやってしまってエイナの体に抱きとめてもらっているだけなのだが、傍から見ると情熱的に抱き合っているように見えるらしく、アマゾネスは非常に残念そうにしながらも熱い投げキッスをベルに送りながらも夜の喧騒に消えて行った。

 

「ベル君、もう大丈夫だよ?…ベル君?」

 

「…うぅ……もぅ、射精()な……やめ……」

 

 アマゾネスが居なくなってもベルは未だに魘されては譫言を零す状態である。

 

「うぅ…もー!君って子はどうしていつも私を困らせるのかな…」

 

 体にも力が入っておらず、引きずって移動するにもかなりの労力が必要そうだった。

 冒険者ではないエイナにとって、意識のはっきりしない男性一人を移動させるのは非常に難しい。

 

 それを重々承知しているエイナは困ったように呟くが、意外にもその表情は柔らかかった。

 

(ベル君…最近、なかなか頼ってくれなかったし…)

 

 爆速でランクアップするベルが中々頼ってくれない事に若干の不満を募らせていたエイナにとって、こうして身を預けられている状況は悪くない気分だった。

 

 こうした状況を頼られているかどうかというのはさて置いて、である。ホクホク顔で胸中の白兎を抱きとめながら、どうしたものかと思考と視線を巡らせるエイナの目に、ある看板が映りこんだ。

 

 

 

――休憩 2時間 5000ヴァリス

 

 

 

 ネオンカラーが彩る怪しい雰囲気の看板に記された文字列。

 

(あの店って…い、所謂(いわゆる)連れ込み宿よね……)

 

 以下に清純なエイナでさえ、職場の同僚や冒険者からそういった話題が耳に入る事もあるし、少なからず興味はある。

 

(うぅ…あそこなら、ベル君の介抱が出来るかも…でも…)

 

 仕事が恋人と言われるほど、仕事に対して熱意を持って取り組んでいるが男女の仲に全く興味がないといえば嘘になるし、好みのタイプだってあるにはある。

 

 連れ込み宿がどういう所なのか分かるし、そこで行われる営みも知っている。経験はないが。

 

 

 自分だっていつかは深い仲に進展した男性と……行くのかもしれない。

 

 

 そう考えた瞬間、エイナの脳裏に胸中で魘されている少年(ベル)の笑顔が浮かんだ。

 

(い、いや…ベル君は、その…世話のかかる弟みたいな子で…そ、そういう関係になるとか………

――そう、私の男性のタイプは、世話を焼いてあげられる少し頼りないくらいの…男性…で……)

 

 思考を深く巡らせれば巡らせるほど、理想の男性とベルの笑顔がピントが合っていく。

 

 胸の鼓動が次第に速くなり、体温が急激に熱くなったように感じた。エイナは顔を真っ赤にしながら胸中の白兎を見下ろした。

 

「…か、介抱するだけ、だから……そう、仕方ない事なのよ…」

 

 未だに魘されている様子のベルと連れ込み宿に視線を何度も行ったり来たりをさせながら、エイナは遂に決断したかのように、ベルを抱きしめながら連れ込み宿に向かって歩き出した。

 

(うぅ……もう!ベル君の馬鹿!)

 

 エイナはベルが倒れないように支えながら連れ込み宿の扉をくぐっていった。意図せずして密着する二人の姿は傍から見たら、イチャイチャしながら連れ込み宿に入っていくカップルにしか見えなかったという。

 

「ば、馬鹿な……!!!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?」

 

 その様子をまざまざと見せつけられた男神はガクリと膝折って地に伏して慟哭した。




 エイナさんinラブホテルwithラッキースケベ野郎
何も起きないはずがなく…


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ほんへ
1話


これまでは突発的に書いてきたのですが、やはり時系列沿った方がいいんじゃね?と思い、書いてみました。その時のリビドーで書いているので話の流れがよく分からない&そもそもラッキースケベしてなくね?みたいな矛盾を抱え始めたので…
 話の流れ的に言って、ヘスティアの場合case1.1の続きからです。


「……………はぁ…」

 

 シャワーから頭部に降り注ぐ冷水と共に大きな溜息が零れ落ちる。水でぺたりと張り付いた兎のように白い前髪をかき上げる。

 

「……………………はぁぁぁぁぁ…」

 

 そして、再度大きな溜息を吐いた。

 一体どれくらいそうしていただろうか。冷水によって体の熱は奪われ凍えそうなくらいだったが、ベルの頭は全くと言っていいほど冷めなかった。

 

 過酷なダンジョンに挑んだ冒険者が生還した後に利用する共用施設のシャワールームで、ベル・クラネルはひたすら滝行のようにシャワーを浴びながら失意のドン底にいた。

 

 時刻はまだ早朝と、シャワールームを利用する冒険者の姿は少なく、ベルは無心で頭を流し続けていた。

――否、無心になりたくてひたすら頭を冷やしている、というのが正しい。

 

「…駄目だ…死にたい…。神様と合わせる顔がない…」

 

 敬愛する神様(ヘスティア)との間に起こった事件(ラッキースケベ)は思春期の少年の情緒や尊厳といったものをこれでもかというくらい粉々に粉砕した。

 

 気まずい、どころの話ではない。顔面騎乗位というラッキースケベだけならまだ良かった。それならその不敬を額がヒリヒリするまで床に擦りつけて謝り倒せば神様(ヘスティア)は許してくれるだろう。多分。

 

 問題はその後、平たく言えばベルのベル君が暴発してしまった事だ。

 

 敬愛する神様の局部に顔を密着させ、清らかな御手で触れられ、三こすり半もかくやと言わんばかりの速さで達してしまい、それはもうこれでもかというくらいに射精した。

 

 ベルとて、疾うの昔に精通を迎えた男子。自慰による発散を知らぬ訳でもないし、した事がない訳でもなかった。

 

 さらに、危険と隣り合わせのダンジョンで毎日死ぬ思いをするたびに生殖本能が目覚め、ダンジョンに挑んだ日はそういった欲求が昂ぶるもので、ベルとて例外ではなかった。

 

 しかし。ヘスティアとの二人暮らし、禁欲的な生活にならざるを得なかった。

 女性はそういった匂いに敏感だとおじいちゃんに聞かされていたベルは拠点(ホーム)で性欲処理は危険すぎると考えてしてこなかった。

 

 それ故に、大きく性長した陰囊に溜まりに溜まったドロッドロの精液が一気に解放され、下着を、ズボンを貫通してヘスティアの手をベトベトに汚すほどの大暴発に至ってしまったのだった。

 

 美しい少女(ロリ巨乳)に顔面騎乗位されながら手淫で果てる。

 

世の男性からしたら羨ましい限りかもしれないが、ベルの心は、雄としての尊厳は粉々に粉砕されたのだった。

 

『えぇ〜っ!?もう射精()ったのかいベル君!?流石に速すぎだぜ?男として恥ずかしくないのかい?』

 

『おぉ…孫よ、三こすり半で射精()ってしまうとは情けない…!…しかし顔面騎乗位とは…我が孫ながらレベルが高い…いや業が深いのぅ…』

 

 ベルの脳内で敬愛する女神と、尊敬する祖父の二人がゲスい顔で嘲笑する姿が浮かぶ。

 

 無論、ベルの被害妄想でしかない。しかし、ベルの脳内では非常に鮮明度の高い映像としてずっとループ再生されていてずぅ――っと頭から離れないのだ。

 

「……………………ダンジョン、行こう…」

 

 生気の抜けた表情で、ポツリと呟く。

 脱衣所へと向かい、念入りに洗って絞っただけでまだ濡れている下着を身に纏い、ダンジョンに挑む装いになったベルは、幽鬼のような足取りでダンジョンへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうその日のダンジョンでの記憶はほとんどない。

 

 ひたすら無心でモンスターを倒して、倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して、倒して――

 

(――体が、重いや…。ここ何階層だろう…)

 

 自分の身体の限界を自覚するとともに意識が復活する。気がつけば、ポーチは小粒の魔石と、ドロップアイテムでパンパンに膨れ上がっており、もう詰め込むことは出来ないだろう。

 疲れも限界に来ていた。頭がぼーっとしていた。全く見覚えのない地理に未到達階層に迷い込んだかもしれないと思い込む。実際は疲れすぎていて正しく現状把握出来ていないだけだったが。

 

 エイナさんに怒られるかも、などと考えながら地上を目指して踵を返す。

 

「………帰ろう」

 

――一体どこに?もう、拠点(ホーム)には帰れないだろう?

 

 今朝の暴発事件がフラッシュバックする。極度の疲労で忘れかけていた事件がベルの心を抉る。

 

(…う゛っ…でも、帰らないと…神様が心配するし…)

 

――そうかな?あんな事があったんだ。顔も見たくないんじゃない?それとも、帰った瞬間嘲笑うかもよ?

 

『あ、早漏(ベル)くん。もう帰ってきたんだ。ダンジョンから帰ってくるのも早いんだね!HAHAHAHA!』

 

(………………う……駄目だ…思考が悪い方ばかりに傾く……そもそも神様がそんなこと言うはずないだろ…っ!これは僕の妄想…!現実にそんな事を言われるはずが………ない…よね?)

 

――とまぁ、深い自己嫌悪の沼に溺れ苦しみながら、ベルは地上を目指す。その途中でモンスターがあまり現れなかったのは不幸中の幸いだろう。おそらく今の著しく集中を欠いたベルがモンスターに襲われていたらひとたまりもなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ベルとしてはあまり喜べないが、その後は何の障害もなく敬愛する女神の拠点に辿り着いてしまう。

 

 辺りはすっかり日が暮れ、ボロボロの教会は深い夜が作り出す闇と魔石の街灯のぼんやりとした灯りで照らされて物寂しい雰囲気を醸していた。

 

(うぅ…此処に帰りたくないと思う日がくるとは…でも…これ以上遅いと、神様…心配するし……いやでも…っ)

 

 英雄を目指してダンジョンに挑み、死ぬほど疲れた体で敬愛する女神の下に帰る。疲れ切った(ベル)を笑顔で迎えてくれる神様(ヘスティア)と質素ながらも幸福な食事の時間、生活。

 その幸せは今朝の1件で基礎から粉々に砕け散った。それも僕のせいで、と。ベルは酷い自己嫌悪に陥っていた。

 

 しかし、帰りたくないという気持ちとは裏腹に、ベルには敬愛する神様を心配させたくないという気持ちがあった。

 相反する想いは、それはもうごちゃまぜになっていた。1歩進んで2歩下がる。3歩進んで2歩下がる。

 

 ベルの苦悩が滲み出たかのような足取りで廃墟のような教会へとゆっくりと歩を進める。

 

 そして、あと少しで教会の入口に辿り着くといった瞬間、教会の中からひょっこりと白い人影が躍り出た。言うまでもなくヘスティアその(ひと)である。

 

 当然、教会の入口付近にまで歩を進めていたベルとヘスティアの視線はガッチリという音が聞こえるほどにかち合った。

 

「「――あ゛っ……!?」」

 

 二人揃って汚い声が口から漏れ出た。そしてお互いにぎこちない様子で慌てふためいた。

 ベルは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われ、急激に喉が酷く乾いて、声が出せなかった。

 

『やぁ、ベル君。早漏は治ったかい?英雄を目指す男が早漏なんてあり得ないよねぇ?HAHAHA☆』

 

――なんて言われたら、今すぐに情けなく咽び泣きながら逃げ去る自信があった。自己嫌悪を重ねれば重ねるほど酷くなっていく心の中のヘスティアの嘲笑。普段なら絶対有り得ないと切って捨てるほどの内容だったが、今のベルはどうにも振り払えないでいた。

 

 そうして両者は数秒間は石像のように固まっていたが、先にヘスティアの石化が解け、瑞々しい唇を開いて言葉を紡ぐ。

 

「や、やぁ…ベル君!かっ、かかかか帰りが遅かったから心配、したんだぜ…?」

 

 身を強張らせて身構えていたベルの耳には、ベルの妄想のヘスティアのように嘲笑うような様子は一切なく、ひとえにベルを心配するような声音が伝わってきた。

 

 ヘスティアはぎこちないながらもいつもと同じように笑顔でベルを迎え入れようとしてくれた。

 ベルは、その優しさに涙腺が熱くなるを感じた。

 

「…っ!…し、心配かけて…すっ、すみませんでしたぁぁぁっ!!」

 

「…いいんだベル君…僕は、君が無事に帰ってきてくれたらそれでいいんだ…」

 

 聖母のように語りかけながら、ヘスティアは涙ぐむベルの手を掴んで教会の中へと導いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祭壇の先にある小部屋に入り、薄暗い部屋の一番奥の棚の裏にある隠し階段を二人で下っていく。そして小窓から微かに漏れる光を頼りに扉を開けると、見慣れた光景が目に入る。

 一足早く部屋に入ったヘスティアがニコリと笑う姿を見て、愛しの我が家に帰ってきたという実感が湧いた。

 

おかえり(・・・・)!ベル君」

 

 そんなベルの心持ちを見抜いたのだろう、ヘスティアは改めてそう言った。

 

「はい…、ただいま戻りました!神様」

 

 ここまで来たら、二人とも最初のぎこちなさはほとんどなくなっており、今朝の出来事などなかったような団欒が繰り広げられていた。

 

――そして時間は過ぎ…

 

 まかないのじゃが丸くんを頬張り、ふたり仲良く歯を磨いて、就寝前の軽い会話をと、ヘスティアはベルが不在の間に自身が行っていた情報収集の内容をベルに切り出し始めた。

 

「そ、そのさ…(チラッ)け、今朝の事なんだけど(チラッ)、僕は…その気にして…(チラッ)ないから…(チラッ)さ…(チラッチラッ)」

 

 忘れかけていただけあってベルの動揺はひとしおだった。チラチラと視線をベルの顔ではなく股間に向けるヘスティアの様子を見て、なにかとてつもなく嫌な予感がしたのは確かだった。

 

「…あ、あの…神様?」

 

「え、えっとね…ベル君が居なくなった後にね、デメテルの所に相談に行ったんだ」

 

「………そ、相談?」

 

 【相談】とは、どうすればよいかなどについて、意見を述べ合ったり、意見を述べてもらったりして考えること、である。

 

 ヘスティアが相談するほどの今朝の出来事と言えば、暴発事件をおいて他にあるまい。つまりそれが指し示す事は――

 

「そ、そういうことに不慣れな男の子は早くても仕方がないってデメテルや他の女神達も言ってたし、早漏は改善出来――」

 

 デメテルのみならず、そういう話題が大好きな女神達に、ベルの早漏が広く伝搬して知れ渡ったという事に他ならなくて――

 

「神様のバカァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「――る…ってちょっ!?ベル君!?ベルくぅぅぅぅぅん!?!?」

 

 その日、ベルは寒い夜空の下で涙を零しながら一夜を明かしたという。

 




ちなみに、ヘスティアのフォローをぶった切る形でベルが飛び出して行ったので口にされることはなかったが、続きはこうだ。

「るから大丈夫!それに…き、君のおちっ、おちんちんは…かなり大きい部類らしいから自信を持っていいぜ☆!」

 当然、ヘスティアはベルの事をボカして相談していたつもりだったが、周りの女神達はヘスティアの羞恥心を隠せていない様子から当然眷属との間に起きた事件である瞬時に見抜いていた。そして根掘り葉掘り聞いている間に話題はブツのサイズへ。
 女神達の熱気で終始押され気味だったヘスティアが顔を真っ赤にして手で示したサイズに女神達は驚愕した。

 そしてその後、ヘスティアの唯一の眷属であるため女神達は即座にベルの存在へと辿り着いて頰を赤らめた。

(あの、可愛いらしくて幼い顔つきの少年に…ビッグ・マグナムがっ…///!?)

 その後、その噂を知る女神の界隈では、ベルの渾名がビッグボーイになってたとかなってないとか。

真相は――神のみぞ知る。


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2話

 一週間に一話は書きたいな…そんなペースの更新ですが、応援してくださる読者の皆さんのために頑張りたいと思います!
評価感想大歓迎です。評価や感想を送りまくることで作者のケツを叩きましょう。

では、2話の方ドウゾー


 暴発事件および、ベルの家出事件の後、紆余曲折を経て、互いにギクシャクしながらも和解し、表面上は前と同じ様に接する用になった2人だったが――

 

「…………」

 

「あ、あの…神様?」

 

「…なんだいベル君?」

 

「いえ…その、ご、ごめんなさい…」

 

「うん、それじゃあ手をどけて離れてくれるかい?」

 

「は、はい…」

 

「…んっ♡ふぅ…次からは気をつけるんだよ?」

 

「すみません…僕、ダンジョン…行ってきます…」

 

 ベルは顔を真っ赤にして階段を駆け上がって拠点(ホーム)を出ていった。

 

 和解した後はお互いに気をつけていた訳だが、ベルのラッキースケベはそれを嘲笑うかのように頻発した。

 

 例えば、何もない場所で唐突に転んでヘスティアの豊満な胸部に顔を挟んだり。

 

 ヘスティアが躓いて転びそうなのを見て、ベルが助けようとして胸を鷲掴みにして揉みしだいたり。

 

 ステイタス更新のために服を脱ごうとしたら上手く脱げずに前が見えない状態でヘスティアと絡み合ってベッドに倒れ込み、ヘスティアの秘所をパンツ越しに指でくぱぁと押し開いたり。

 

 逆に、ヘスティアが転けてベルのズボンを下着ごとズリおろしてベルのベル君を露出させて頬ずりしてしまう、なんて珍事もあった。

 

 お互いに注意していても、防げないラッキースケベの数々に、いつしかヘスティアには慣れが出来ていた。

 

 流石にベルの手によってパンツを脱がせられた時やたわわな胸を守る衣装の胸元を全開にさせられた時は絶叫しながらベルを張っ倒したりしたが、最近は胸を鷲掴みにされたり押し倒されたりしても動じなくなってきている。

 

――もはやラッキースケベが日常と化している。と言っても過言ではなかった。

 

 これがもし仮に、ベル以外の誰かなら発狂していただろう。ベルだから、愛する可愛い眷属だし目に入れても痛くないほどに溺愛しているから許せもするし慣れもした。

 

 さっきのだってベル君が“偶々”躓いて倒れる先にいた(ヘスティア)を押し倒して“偶々”胸を揉みしだいてしまっただけなのさ。

 

 ここ最近あまりにも繰り返しているため、傍から見たら態とやっているのではと思われても仕方がないかもしれないが、そういう点ではヘスティアはベルの事を信じていた。そもそもベルを取り巻く現状(ラッキースケベ)を知っているため、怒ろうともしない。

 

 どんなラッキースケベを起こしても怒らないヘスティアの親切な対応のおかげで、健全な青少年であるベルの精神は擂鉢で胡麻を擂り潰すかの如く削られているのだが、それをヘスティアは知らない。

 

(いや、そもそも…全部この【幸運(助平)(ラッキースケベ)】が!!この変態スキルが悪いんだ!!ベル君は!悪くないんだ!!)

 

 順調どころか異常な伸びを見せるベルのステイタス用紙を握り締める。熟練度はメキメキと伸びており、あと一ヶ月もしない内にランクアップも見えてくるだろうという恐ろしい伸び方である。

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)はまだいい…!いや!僕以外の子がベル君に良い影響を与えているのはまっっっったく面白くはないけど!!おのれヴァレン某君めぇ……っ!)

 

 憧憬一途は実に良い影響を齎している。彼の夢の一助(実際は一助どころか特急券)となるからまだ良いのだ。憧憬一途の原因(ヴァレン某)へのヘスティアの個人的な葛藤はさておきとして。

 

 問題はコイツ(幸運(助平))である。一歩歩けば女と組んず解れつ、佇めば女が引き寄せられるかのようにぶつかっては組んず解れつ。

 

 初めは正直舐めてかかっていた。お互いに注意していれば起こり得ないだろうと。しかしながら、ヘスティアの警戒を潜り抜ける形で巻き起こるラッキースケベの数々。しかも、聞けば拠点(ホーム)以外でも女性とそういうハプニングを起こしてしまっていると聞いて僕はもう気が気ではなかった。

 

(もしかしたら、痴漢でベル君が逮捕されてしまうかも…。ガネーシャの所にお世話になるなんて考えたくもないよ…)

 

 ラッキースケベの度合いを考えれば明らかに捕まってもおかしくないハプニングを素で巻き起こすベル君を想像してゾッとするとともに、他の女と組んず解れつするベルを想像して嫉妬がこみ上げる。

 

(ふぬぬぬぬ…っ!!正直、ベル君が外を出歩いて見知らぬ女の子と組んず解れつするのは非常に面白くない!!でも、英雄になりたいというベル君の夢を邪魔したくない…)

 

 と、このように最近のヘスティアはいつもベルの事を考えては心配して息を吐いたり、ぐぬぬと唸ったり、嫉妬で叫んだりと兎に角忙しい百面相をしている。

 

 これだけでヘスティアが【幸運(助平)】を問題視しているのがお分かりだろう。

 

 

 

 

 

 しかしながら、最大の問題なのはどうやっても防止出来ないラッキースケベではなかった。

 

――最大の問題は、ラッキースケベを重ねるごとにヘスティアの体を蝕む甘い毒だ。

 

(…うぅ〜〜、それにしても…カラダが熱い…♡これもあのスキルの影響なのかい…?)

 

 ラッキースケベの対象に対する催淫効果。直近でも数え切れない程のラッキースケベの対象となっているヘスティアのカラダは火照りに火照っていた。

 

 初めは『少しムラムラするな』程度だったのが、回を重ねるごとにカラダの疼きは増していくばかりだ。

 

神、それとも処女神ゆえにか、自制を保てていたヘスティアではあるが、常人であれば理性を失くして自慰に夢中になるか、相手がいれば獣のような性交を望んでしまうほどの催淫効果が現在ヘスティアのカラダを蝕んでいた。

 

「んっ…♡ふぅ…♡ベル君に触られた所が熱くなって…♡♡」

 

 豊満な胸に手を当てると動悸が激しくなっているのが伝わってくる。そして、ベルの手が触れた箇所がじんわりと熱を帯びて甘い疼き齎していた。

 

(くっ…♡そ、想像以上に極悪なスキルだ…これが、僕以外の泥棒ネコに発動でもしたら…!?ベル君が発情ネコの毒牙にぃっ…♡)

 

 天界に居た頃から外界に降りてベルに出会うまでは、処女神の異名通り、性行為どころか自慰の経験すらなかったヘスティアだが、度重なるラッキースケベの催淫効果によって、無自覚に自慰行為を行うようになっていた。

 

 そして今、べルに触れられた胸を撫で回して甘い吐息を漏らして快感を得ていた。

 指先が胸の先端の突起を服の上から掠める度に、ジンと胸の奥から下腹部に響くような快楽が駆け巡る。

 

(うぅ…♡こんなはしたないこと…♡♡ベル君には見せられないよ…♡♡)

 

 ベッドに横になり、体を丸めて恥じるように小さな体躯に見合わぬ豊満な胸を愛撫していくヘスティア。

 触れてすらいないのに既に秘所はしとどに濡れそぼり、じゅわりと下着にシミが広がっていた。

 

「…ぁ…♡ふ…っ♡♡ベル君…♡ベル、君…っ♡♡」

 

 そして自慰行為による快楽が体を支配する頃には、恥らうような愛撫は鳴りを潜め、愛おしい眷属(ベル)の名前を呼んで胸を揉みしだき、もう片方の手はびしょびしょに濡れた下着の中に手を突っ込んで、控えめな淫核を優しく愛撫して快楽を得ていた。

 

「…あっ♡もぅ…駄目♡いく…いく…っ♡いっ…くぅぅぅぅぅぅ…っ♡♡♡」

 

 絶頂の瞬間カラダを弓なりに反らせて盛大に絶頂するヘスティア。足はつま先をピンと伸ばし、ビクビクとカラダを震わせて深い絶頂に包まれる。

 

(…まだ頭が痺れてる…♡♡すごい…気持ちよかった…♡♡イヤらしいって…遠ざけてのがバカみたいだ…♡♡)

 

 絶頂による余韻からしばらく抜けられないヘスティアはぼんやりとした頭で思考する。

 

 下品だなんだと性的な話題や誘いを断り続けていたヘスティアだったが、自慰による快楽を知った後では、性的な行為に嫌悪感は薄れ、興味が湧いていた。

 

(ベル君…♡君と結ばれたら、どれだけ気持ちよくなれるんだろう…♡♡その時はきっと素晴らしいに違いない…♡♡)

 

 ベルの事を想い、ヘスティアは再び秘所に手を伸ばす。クチュリという水音を立てて甘い痺れが残るカラダが悦び震える。

 

 ヘスティアのカラダの奥底に初めて湧き上がる“性欲”は1度の自慰行為では消えることなく燻ぶっていた。

 

「…んっ…はっ…あぁっ…♡♡」

 

 深い絶頂によって地に足がつかぬようなふわふわとした思考ではその衝動に打ち勝つ事が出来ずにヘスティアは再び自慰行為を始める。愛しの眷属(ベル)を想いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 度重なる絶頂の果て、所謂賢者タイムに突入したヘスティアは改めて自分の醜態を認識すると顔を真っ赤にしてベッドで大暴れしたという。

 

 そして【幸運(助平)(ラッキースケベ)】の効力を、その恐ろしさを身を持って再確認したのだった。

 

――神でさえ対象とし、あまつさえその神にさえ催淫を及ぼすスキル。あまりにも危険過ぎる。下手すれば神の権能にも匹敵する力かもしれない。

 

(なんてスキルを刻んでしまったんだ僕は…。でも、その結果としてベル君との(肉体的な)距離は縮まったし、…そ、その…き、気持ちいいことも知れたし…♡よかった…のかな?)

 

 ヘスティアは無意識に下腹部を撫でた。自慰行為の余韻から覚めたカラダが再び熱を帯びる。

 

――性に対して無欲だった処女神が性欲を覚えた。それが【幸運(助平)(ラッキースケベ)】が引き起こすベルの淫らな性活の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、肉体的な距離は縮まったかもしれないが、心の距離は全く縮まっていない事、むしろ離れているかもしれない事にヘスティアは見て見ぬ振りをした。

 

 暴発事件からベル君がどこかよそよそしいとかそういった事実はないのだ。ないのである。

 




ヘスティアの後日談的な。
ヘスティアはベルのラッキースケベを半ば受け入れている、むしろウェルカムといった感じになりかけている。

ベルの理性は壮絶なる死闘を余儀なくされている。最近よそよそしいのはそのせい。神様をそういう対象に見ることは不敬だと必死に頭を振るといった挙動不審な行動が増えたのもそのせい。


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3話

 祝日だったので…1日中エロ小説書いてやったぜぇ…?ワイルドだろう~?(死語

はい、ということで3話目ですね。
皆さんの応援で叩かれたお陰様でケツが2つに割れました。ありがとうございます…もっと叩いて(ホシガリス
短編の4.2も投稿してますのでそちらもドウゾー


――最近、神様の様子が変だ。

 

 僕がどんな不遜な行為(ラッキースケベ)を働いても怒らないし、頰を赤らめさせてどこか艶めかしい顔で見つめてくる。

 あと、異様に距離が近い。前はあんなこと(暴発事件)がないようにってお互いに距離を取って生活していたのに、日を追うごとにそれが無くなってきてたというか、むしろ僕が距離を取るとそれを詰めてくる勢いだ。

 

 しかし、一体僕はどうしたというのだろう。ここ最近はあまりにも女性に対して破廉恥な事故を起こしまくっている。中には逮捕されてもおかしくないようなものもある。

 

 今のところ最も被害件数の多いのは神様だが、あんなことが立て続けに起こっているというのに、神様は全く気にしていなかった。神様がそれだけ僕のことを信頼しているのかもしれないけど、ヘスティアは特に何もせずともトテトテと近寄ってくるだけで非常に目に毒だった。恐るべしロリ巨乳。

 

(最近は服がはだけても隠しもしないし…///)

 

 ヘスティアの一張羅は防御力皆無と言っても過言ではなく、ラッキースケベによって、いとも容易く服としての機能を失うのだが、最近のヘスティアは顔を赤らめるだけですぐさま服の乱れを直したりせずにのぼせた様子でベルをジッと見つめてくるのだ。

 

 そんな蠱惑的な様子を魅せられては、いつベルの理性も我慢の限界を迎えてもおかしくはなかった。

 

 その上、ベルは暴発事件後、拠点(ホーム)で抜く訳にもいかず、かといって落ち着いて性欲処理を出来る場所もなく、相変わらず思春期の少年の旺盛な性欲の発散方法を持ち合わせていなかった。

 そのため、こうして敬愛する主神(ヘスティア)のあられもない姿が脳裏に浮かび上がってしまう度に下半身に血が巡り、ズボンを突き破る勢いで剛直が天を衝く。

 

(うぅ…これからダンジョンだっていうのに…)

 

 非常に情けないがズボンの膨らみを隠すよう前屈みになりながらダンジョンに向かう通りを歩く。すれ違う人々の視線を気にしながら歩いていると背後から声をかけられた。

 

「――あの……これ落としましたよ?」

 

 振り返った先には薄鈍色の髪をした人当たりの良さそうな少女が小さな魔石の欠片をこちらに差し出していた。

 

「はいぃ!?え、『魔石』?あ、あれ!?」

 

 慌ててバックパックが開いていないか手探りするが、閉じられている。僅かに欠片ほどの『魔石』が零れ落ちそうな隙間は空いていたが、本当に落としたのだろうか?

 

 少し疑問に思ったベルだったが、恐らく目の前の可愛らしい少女が落とす瞬間を見ていたのだろうと僅かな疑念を意識の外に追いやり、少女の掌の『魔石』を受け取ろうと手を伸ばした。

 

「す、すみません…ありがとうございま――」

 

 ベルが少女の掌の『魔石』を摘んだ瞬間、ツルッと魔石が滑り落ち、それを追いかけて掴もうとしたベルは少女を巻き込んで体勢を崩してしまう。

 

「――きゃっ!?」

 

(ま、まずい…!?神様以外にも……!?ってそれよりもケガは…させないように!!)

 

 意図的ではないとは言え、半ばタックルに近い形で押し倒してしまっている。少女がケガしてしまう予感がした。ベルは即座に少女の腰に手を添えて自分が下敷きになるようにクルリと回転した。

 

 ドシンと地面に落ちた衝撃が体に響いた後に、体の上に少女が倒れ込む軽い衝撃が伝わる。

 

「――いたた…すみません…大丈夫です……か°っ?!」

 

 後者は少女が華奢だったために痛みはなかったが、前者は腰から落ちたためにズキズキとした痛みが残っていた。痛みに顔を顰めながらも目を開くと眼前には薄鈍色の髪の少女の顔が目と鼻の距離にあったので変な声が出てしまう。

 

「び、びっくりしましたけど冒険者さんのおかげで大丈夫です…」

 

 どうやら転倒の際に抱きとめる形で少女を引き寄せたようで、傍から見たら情熱的に抱き合っているように見える体勢だった。

 そして、あまりにも近い距離で少女の顔が目に入ると、少女が超のつく美少女であることが否が応でも解ってしまう。しかもふわりと女性らしい良い匂いがベルの鼻腔を擽る。

 

「そっ、それは!よ、よよよよよよ良かったで――」

 

 緊張のあまり体がガチゴチに固くなりながらも少女を引き離そうとして少女の体を支えていた手に力を入れると、ふにゅんと女性らしい柔らかさが手のひらに伝わる。

 

「――あん…♡冒険者さん…そんな強く…♡」

 

「いぃ゛っ!?」

 

 ふと自分の右手に視線を向けると、そこにはふにゅりとその柔らかさを物語るかのように形を変える胸に沈み込んだ自身の右手があった。

 

「早朝とはいえ…人通りで押し倒して女性の胸を鷲掴みにするなんて…見かけによらず大胆なんですね…♡冒険者さん♡」

 

 少女は嫌がる素振りを見せずに、胸を鷲掴みにしているベルの右手に手を重ね、ベルの目を覗き込むように顔を近づけて蠱惑的な笑みを浮かべる。

 

「す、すみませんッ!い、今すぐどきますからッ!」

 

 一瞬、少女の瞳に魅力されそうになるも、なんとか理性を働かせたベル。

 女性的な柔らかさに未練を残している右手をすぐさま離し、両肩を掴んで引き離すと即座に距離を取った。

 

「やん…♡急に動くと危ないですよ〜」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「うふふっ…分かればよろしい!レディの扱いは繊細にしないとメッ、ですよ?」

 

「は、はい…」

 

 指でトンッと胸をつつく少女。先程の蠱惑的な笑みは鳴りを潜め、そこには明るい街娘の笑顔があった。

 

――と、騒動(ラッキースケベ)に一段落ついたところで、ベルの腹の虫が盛大に自分の存在を主張し始める。

 

 ぐぅ〜〜〜〜〜………

 

 あまりにも大きく、あまりにも長いお腹の音が二人の間に鳴り響く。

 

「うふふ…お腹、空いてるんですか?」

 

「………はぃ…」

 

「…ちょっと待っててくださいね」

 

 少女はパタパタと自身の働いているであろう店の奥へと走って消えていき、少し間をおいて再びパタパタと走ってベルに駆け寄ってきた。

 

「よかったらこれを……まだお店やってなくて、賄いじゃあないんですけど…」

 

 少女は手に待つバケットをベルに差し出した。美味しそうな匂いが鼻腔を満たした。業の深い腹の虫が寄越せと再び盛大な抗議をし始める。しかし、それを無視して差し出されたバケットをやんわりと押し返した。

 

「え、えぇっ!?そんな、悪いですよ!それにこれって、貴女の朝ご飯じゃあ…!?」

 

「…冒険者さん、これは利害の一致です。私はちょっと損をするけれど冒険者さんはここで腹ごしらえが出来る代わりに――今日の夜、私が働くあの酒場で晩ご飯を召し上がって頂かなければいけません」

 

 小悪魔めいた笑みでしてやったりと笑う少女の笑顔にドキリとしてしまう。

 

「うふふ ささっ、貰ってください。私の今日のお給金が高くなることは間違いなしなんですから」

 

 再びズズイっと差し出されたバケット。満面の笑みでそう言われたら受け取らない訳にはいかないじゃあないか…

 

「もう…ずるいなぁ……。それじゃあ今日の夜に伺わせてもらいますっ」

 

 バケットを受け取り、朝食と夕食の予定が決まる。今日のダンジョンは稼がないとマズイかもなぁ…。

 

「はい、お待ちしております」

 

 そんな経済事情で頭を悩ませる僕の葛藤知ってか知らずか、いい顔で笑う少女。

 そういえば、ここまで会話したというのにお互いに名前を知らないのはどうなんだろうと思い、少女に向き直る。

 

「僕…ベル・クラネルって言います。貴女の名前は?」

 

「シル・フローヴァです。ベルさん♡」

 

 去り際に見た街娘(シルさん)の笑顔は、街娘らしからぬ魅惑的な貌をしていたように見えた。

 

――多分あれは…僕の見間違いだろう。




はい、ということで…普通の街娘ことシル・フローヴァさんですね。はい、とても普通ですね…。皆もそう思うよな(フレイヤ・ファミリア団員)

中身?お前は一体何を言っているんだ?


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