機動戦士ガンダムUC 〜Another War of Pegasus〜 (希望光)
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Ep.00 〜Over plan〜

どうも、初めましての方は初めまして。ご存知の方はお久しぶりです。
希望光です。
初めてこの系列を書くので不安がいっぱいですが、どうぞお読みいただけると幸いです。
では、本編どうぞ。


 ———UC.0095。

 モビルスーツ産業に置いて、トップクラスに躍り出ている会社『アナハイム・エレクトロニクス』は、『UC計画』に基づき『サイコフレーム』と呼ばれ特殊な金属を使ったフル・サイコフレームのモビルスーツ『RX-0 ユニコーン』と同系列機『RX-0 バンシィ』を制作した。

 

 そんな『UC計画』の最中、この計画に『ビスト財団』が関わるのをよく思わない地球連邦軍参謀達は、2機の開発データを流用して、独自に『RX-0 フェネクス』を開発した。

 この時、さらに極秘裏で地球軍はもう1機の『RX-0』を開発していた。

 

 そして———UC.0096。

『ラプラスの箱』を巡った争いが勃発した傍らで、別の争いが起こった。

 それは、4機目の『RX-0』を巡り、3機目の『RX-0』捕獲作戦『不死鳥狩り』が行われる翌年、UC.0097まで続いていくこととなる———

 

 

 

 

 

 ———UC.0096。4月某日。

 地球と月の間のラグランジェポイントに留まる戦艦から、1機のモビルスーツが発艦した。

 その機体は、突き出た1本の角を頭部に持ち、全身が若干青みのかかった白色———蒼白と言った具合の機体であった。

 

「作戦配置につきました」

 

 艦内のオペレーターが、上官に向かってそう告げる。

 

「作戦開始」

 

 その合図とともに、蒼白の機体は行動を開始する。

 その機体は、右手に装備した銃を付近を浮遊する小惑星へと発砲する。

 ズキューン! と言った具合の音ともに、銃口からは赤と白のビームが発射される。

 そのビームは、一瞬にして小惑星を溶かした。

 

「ビームマグナム出力安定」

「E・パック排出機構問題なし」

「了解。作戦を継続せよ」

 

 通信を受けた機体は、左手に装備したシールドを背部にマウントし、右腕部に搭載されたサーベルホルダーからビームサーベルを抜くと、自身の正面にある、デブリの1つに斬りかかる。

 その、デブリは両断された。

 

「現武装、問題なし」

「航行出力測定へと移行」

 

 機体は、ビームサーベルをホルダーに仕舞うと、猛スピードで進み始めた。

 そしてそのまま、小惑星やデブリの合間を縫うようにして飛び回った。

 

「ジェネレーター出力、安定。目標平均値を超えました」

「パイロット、脈圧、呼吸共に正常。セカンドシークエンスに移行します」

 

 オペレーターはそう告げた。

 すると、モニターに映る機体は、その場に止まった。

 それを見た上官は、指示を出した。

 

「よし、『RX-0 ペガスス』NT-D疑似起動」

 

 その合図により、機体———ペガススは全身の装甲がスライドし、中から青白く発光する、別のフレームが露わになる。

 そして、フェイスのマスクの部分上部へと上がり、新たなマスク———俗に『ガンダムフェイス』と呼ばれる物が露わになり、突き出た角は中心から左右に割れ、ブレードアンテナへと変化した。

 

「NT-D疑似起動確認。パイロット、バイタル安定」

「ペガスス、作戦を続行せよ」

 

 指示を受けたペガススは、再び作戦宙域を飛び回った。

 

「出力値、プラスα。現時点での出力測定限界を突破」

「まさか疑似起動でこれほどとは……」

 

 上官は、ペガススの叩き出した数値を見て唖然としていた。

 試作機のテストという名目でこの艦———強襲揚陸艦『アルビオン(ネクサス)』はペガススを搭載して、このラグランジェポイントを訪れていた。

 

「わざわざ来た甲斐があったな……。よし、疑似NT-Dシステム終了。ペガスス、帰投せよ」

 

 モニターに映るペガススは、再び装甲を閉じた形態へと戻る。

 そして、アルビオンⅡ正面のカタパルトから着艦した。

 格納庫では、整備班が駆け回っていた。

 

「よし、ペガススの整備急げ!」

「推進剤の補充を優先だ!」

「E・パック予備の確認!」

 

 など言った具合で、言葉が飛び交っていた。

 そんな中、ペガススのコックピットハッチが開き、パイロットが降りてくる。

 そこへ、先程までブリッジで指揮をしていた上官がやってきた。

 

「お疲れさん。どうだ、このテスト機ってのは?」

「ナック艦長……とんでもない機体ですよ。この、AE(アナハイム・エレクトロニクス)製のスーツがなければ、Gに耐えきれずに倒れてましたね」

「そうか……。何はともあれ、トライアルを受けてくれて感謝するよ、カイト少尉」

 

 艦長ことナックは、ペガススのパイロットことカイトにそう告げた。

 

「いいですよ。自分も、ちょっとした興味本位で乗っただけですし」

「相変わらずだな」

 

 ナックはそう言って笑った。

 

「そういう艦長だって、相変わらずお人好しじゃないですか」

「どこがだよ」

 

 ナックはカイトに反論した。

 

「こうやって、わざわざ様子を見にきてくれるところですよ」

 

 カイトはそう言い残すと、通路の方へと進んでいった。

 

「フッ……お互い様だな」

 

 ナックはそう言って、格納されているペガススを見上げた———

 

 

 

 

 

 カイトは、自身の部屋に戻るとベットの上に横たわった。

 

「……地球軍は、とんでもない機体を作ってしまったのだろうな」

 

 あの機体———ペガススに乗った時のことを思い浮かべながら、呟いた。

 そこへ突如、警報が鳴り響いた。

 

「……敵襲?!」

 

 カイトは、急いで部屋を出るとパイロットスーツに着替え格納庫へと向かった。

 格納庫内では、既に何機かのジェガンDが発艦準備をしていた。

 

「おい! こっちの機体スタークに換装終わってるか?」

「やってある!」

 

 そんな声を後ろにカイトは、壁面についた通信機で、ブリッジへと連絡した。

 

『どうした』

「何事ですか」

『ネオ・ジオン残党のモビルスーツがこちらに向かってきている。お前も出てくれるか?』

「もちろんです。ただ———」

 

 カイトはそこで一度、言葉を飲み込んだ。

 

『どうした?』

「自分は、あのテスト機で出てもいいですか?」

『RX-0でか?』

 

 ナックは、カイトの言葉に戦慄した。

 

『待て待て、あれを実戦に投入する訳には———』

「確か、まだ運用試験していない武装がありましたよね?」

『あ、ああ。あることにはあるが……まさか?』

 

 カイトはニッ、と笑って言った。

 

「それの運用試験と、実戦におけるデータの採集を名目にすればできますね?」

『正気かよ……』

 

 ナックは、額を抑えた。

 そして、なにかを決めたかのように口を開いた。

 

『わかった。そいつで行け!』

『か、艦長!』

 

 その言葉を聞いたオペレーターは、慌てていた。

 

『流石に不味くないですか?!』

『最悪責任は俺が取る。それなら文句ないだろ、メリー?』

『わかりました……』

 

 メリーと呼ばれたオペレーターは、それっきり反論してこなかった。

 

『というわけだ』

「ありがとうございます」

『ただし、機体は無事に持ち帰って来いよ?』

「分かってますって」

 

 そう言ってカイトは、通信を切断した。

 それを見届けたナックはふぅ、と一息つくと指示を飛ばした。

 

「全く……メリー、整備班にRX-0をDW形態に換装するように伝えろ!」

「了解」

 

 ナックに指示されたメリーは、即座に整備班へと指示を通達した。

 そして、格納庫内では、急ピッチでペガススの換装が始められた。

 コンテナ内から取り出された武装が、シールドへと取り付けられていく。

 

「アームド・アーマDE……」

 

 カイトにそう呼ばれた武装が、2基組み上げられると、ペガススの背部ウェポンラックから伸びる、左右それぞれの稼働アームに取り付けられた。

 そして、右手にビームマグナムを、左手に連邦軍共通規格のハイパーバズーカを装備した。

 カイトは、ペガススのコックピットへと近づいた。

 

「換装終わりましたか?」

 

 近くにいた整備員に尋ねた。

 

「ああ。すぐにでも出撃できるさ」

「わかりました」

 

 そう言ってカイトは、コックピットへと乗り込んだ。

 そして、カタパルトデッキへと移動する。

 

『1番カタパルト、RX-0発進どうぞ』

「カイト・ナカジマ、ペガスス行きます!」

 

 その言葉とともに、カタパルトデッキからペガススが急速発進した。

 外は既に、戦場と化していた。

 先に出撃していた4機のジェガンは、応戦しているが押され気味であった。

 

「不味いな……」

 

 呟きながらカイトは、フットペダルを強く踏み込んだ。

 それに伴い機体も加速する。

 そして、彼は遠距離からビームマグナムによる牽制射撃を行った。

 

 無論、僚機がいない箇所へ向かって。

 カイトが狙った敵———2機のギラ・ズールは、ビームに気付き射線から外れたが、僅かに発生したプラズマが掠り機体が爆散した。

 

「……これが、ビームマグナム。掠めただけでジェネレーターをオーバーヒートさせたのか……!」

 

 カイトはその威力に驚きながらも、装填が完了したビームマグナムを再び発射した。

 しかしこの攻撃は、どの機体をも掠めることがなかった。

 

 カイトは、ビームマグナムを腰にマウントすると、加速しながらハイパーバズーカを敵機とのすれ違いざまに放ち、撃墜した。

 この際、ハイパーバズーカはギラ・ドーガの剣状になったビーム・ソード・アックスに斬りつけられた為、カイトはそれを破棄した。

 

 そして、一度離脱したペガススは、背部のアームド・アーマーDEを両腕に装備すると、再び敵めがけて突撃した。

 それをみた敵モビルスーツ———ギラ・ズールは、迎撃する為にビーム・マシンガンを放ってきた。

 

「チッ……」

 

 舌打ちをしたカイトは、両腕に装備したアームド・アーマーで防御しながらギラ・ズールに近づいていき、アームド・アーマーで殴りつけた。

 

 殴られた相手は、バランスを崩していた。

 カイトはその隙を逃さず、アームド・アーマーDEに装備されたメガキャノンの銃口を、ギラ・ズールに押し付けると、発射した。

 

 そして、すぐさまアームド・アーマーに搭載されたブースターをそのままの向きで噴射させ、敵機から離れる。

 直後、敵機は四方に爆散した。

 

「これが……アームド……アーマー」

 

 そんな彼の元へ、通信が入った。

 

『カイト、疑似NT-Dを使うぞ。相手を一気に殲滅する』

「了解」

 

 通信の直後、ペガススはその見た目を『ガンダム』へと変化させた。

 同時に、コクピットのシートは変形した。

 そして、ペガススは操縦者の意思のみで稼働する機体へと変化する。

 

「行くぞ……ペガスス!」

 

 言葉に応えるかのように、ペガススは動き始めた。

 そして、押されている僚機の元へと駆けつけ、敵モビルスーツをアームド・アーマーで撃破する。

 これを1機、また1機と繰り返していく。

 そんな中、一際目立つ若干大きな機体が現れた。

 

『アレは……サイコ・ザク……乗っているのは強化人間か?』

 

 僚機がそう言った。

 瞬間、ペガススのNT-Dが疑似起動から正規起動へと移行した。

 

「……!?」

 

 カイトの体は、シートとボルトで接続・固定された。

 そして、ペガススはパイロットの手を離れ、ニュータイプを抹殺するだけの兵器へと変貌した。

 

「艦長! ペガススの疑似NT-Dが、正規NT-Dへと移行しています!」

「何!? 制御は?」

「パイロットの手から離れていきます!」

「クッ……カイト……!」

 

 ナックは今、想定していた最悪の事態にぶつかったと思った。

 しかし、今の『ペガスス(アレ)』を止める手段はもうない。

 

「クソッ……」

 

 ナックはそう呟き、モニターを見つめることしかできなかった。

 途端、ペガススはサイコ・ザクの前へと躍り出た。

 対する敵機は、高速で上昇しペガススの攻撃から逃れた。

 ペガススは即座に追撃へと移った。

 

 2機はドッグファイトを始めた。お互い一歩も譲らない程の飛行で。

 デブリ地帯を飛び回りながらも、2機の勢いは、とどまることを知らなかった。

 ペガススは、右手に持っていたアームド・アーマーを背部にマウントすると、ビームマグナムを装備し、発射した。

 

 この攻撃で、敵機の右足を溶かすことに成功したが、その機体はそのまま飛び続けていた。

 そのまま、ペガススは追跡を続けていたが、デブリの陰から現れたギラ・ズールによって、煙幕を張られたが故に追跡が不可能となってしまった。

 そこで、ペガススのNT-Dは終了した。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 あまりの負荷に、カイトは意識が飛ぶ手前にまで追い込まれていた。

 しかし彼は、必死に意識を保ちながら、レーダーを確認し、敵機が撤退したことを認識すると、アルビオンⅡへと帰投した———

 

 

 

 

 

「まさか……あんな機体に出会えるとはね」

 

 母艦に向けて進み続けるモビルスーツ———サイコ・ザクのパイロットは呟いた。

 

「アレは恐らくだがガランシェールが受け取ろうとしていたモビルスーツと同型ので間違いない……」

 

 そう割り切った彼は、口角を釣り上げた。

 

「いいねぇ……面白いじゃないか。あの機体、必ずこの手に」

 

 そう呟くと母艦へと真っ直ぐに飛んでいくのであった———

 

 

 

 

 

 こうして、『RX-0 ペガスス』を巡る戦いは、幕が開いたのであった。




はい。今回はここまでです。
よろしければ、感想・評価・改善点などをお寄せいただけると幸いです。
では、これで


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Ep.01 〜Lost technology〜

どうもお久しぶりでございます。
最新話完成いたしました。
戦闘がありませんが、どうぞ。


 アルビオン(ネクサス)に着艦したペガススから降りたカイトは、意識が朦朧としており前進することもままならないと行った具合だった。

 

「救護班! 担架もってこい!」

 

 整備班に応答した救護班が、担架を持って格納庫へと現れる。

 そして、カイトを乗せると医務室まで連れていくのだった。

 そこへ、遅れてナックが現れる。

 

「カイトは?」

「先程ストレッチャーで医務室に」

 

 整備班長が答えた。

 

「そうか……。RX-0は?」

「これといった外傷はありません。ほぼ無傷です」

 

 RX-0を見上げたナックは、バケモノだと思うのであった———

 

 

 

 

 

 戦闘宙域を脱出したアルビオンⅡは、月面都市『アナハイム』を目指して航行していた。

 クルー達は、いつまたネオ・ジオン残党と当たるか分からないと言う緊張感に覆われており、ブリッジにはピリピリとした空気が流れていた。

 

 それはブリッジだけでは無く、カイト以外のパイロット達も同様であった。

 カイトはと言うと、意識こそ戻ったが、戦闘に参加できる状況ではなかった。

 

 同時に、カイトはこの艦の部隊のエースパイロットでもあった。

 そんなカイトがいないという状況が、パイロット達を余計にピリピリさせるのだった。

 

「クソッ……どうすんだよ」

 

 そう怒鳴り、ロッカーへ拳を叩きつけたのは、カイトの先輩に当たる『リュウ・カトウ』少佐。

 彼は、カイトがアルビオンⅡに配属された際の教育係でもあった。

 

「……落ち着きなよ、リュウ。君がそうなるのも分からなくもない。だが、そうしたところで現状は変わらないんだ」

 

 そう冷静に分析して宥めるのは、リュウの同僚である『ジョー・フラブスキー』少佐。

 

「ま、前回の戦闘で誰も落とされなかったのは、カイトとあの機体のお陰……ですかね」

 

 ジョーに同調するかのように、口を開いたのは『ロー・ヴァルス』中尉。

 

「かもな……それは分かってはいるんだが……」

「そんなに落ち込むなって。落ち込んでるのは、こっちも同じなんだからさ」

 

 そういって、ジョーは、リュウを慰めていた。

 

「そう言えば、艦長はどこへ向かうって?」

「なんでも、フォン・ブラウンに寄るらしいぞ」

「なんで?」

「アナハイムに用があるんじゃねぇのかな?」

「補給……って訳か」

 

 3人がそう話している間も、艦は月面フォン・ブラウン市を目指して進み続けていくのだった———

 

 

 

 

 

 その後、目立った戦闘なども無く、アルビオンⅡはフォン・ブラウン市へと入港した。

 そして、カイトを含むパイロット達と、ナックは同市内にあるアナハイムのMS(モビルスーツ)生産工場へと足を運んでいた。

 

「久しぶりだね。ナック」

「嗚呼。また、ここへ寄らせてもらったよ」

 

 出迎えたのはアナハイムの制服を着た、ナックと同い年ぐらいの男。

 

「で、今日はどういう要件なんだい?」

「ああ、艦のメンテナスと……極秘案件なんだが……」

「ふむ」

「艦長……そちらの方は?」

 

 ジョーに尋ねられたナックは、男を紹介した。

 

「彼は『レイン・カーレス』。私の古い友人だよ。彼等は、私の艦のパイロット達だ」

「レイン・カーレスだ。気軽にレインと呼んでくれたまえ。で、君の言う極秘案件とは?」

 

 その言葉に、ナックは神妙そうな面持ちをした。

 それをみたカイトもハッとした。

 

「まさか……」

「当たりだカイト。見てもらいたい機体があるんだ」

「機体? どんなのだい?」

「RX-0……」

 

 その言葉を聞いたレインは、眉を潜めた。

 

「そうか、取り敢えず実物を見せてくれないか?」

「ああ」

 

 そういって、全員は停泊しているアルビオンⅡへと向かう。

 そして、格納庫に収容されている、RX-0(ペガスス)を見せた。

 

「……ユニコーンか」

「矢張り知ってたか」

 

 レインは、なんとも言えない表情をしていた。

 

「この機体、何処で?」

「上層部が試験を行えって、押し付けてきたんだ。確かフル———」

「フルサイコフレーム採用式の機体だ」

「そこまでわかってるか。なら、システムについては?」

 

 ナックの問いに、レインは少しばかり考え込むような仕草をした。

 

「このRX-0は、我々アナハイムが作った。だが、その中身を知っているものはごく僅か。そして、搭載されているシステム『NT-D(ニュータイプ・デストロイヤー・システム)』も、ブラックボックス化されている……」

「ま、待て!」

 

 ナックは、レインの言葉に慄いた。

 

「それじゃあ、オリジナルの再現なんて理論上は不可能なはず……!」

「そうなるね」

「まさか……なら、連邦のお偉いさん方は、どうやってあんなもん再現したんだ……」

 

 ナックの問いに、レインは答えるのだった。

 

「NT-Dは、その名の通りニュータイプのみを抹殺することを前提にしたシステムだと聞いている」

「じゃあ……」

「恐らく、君の思う通り、『EXAM』や、『HADES』の技術を応用したものだろう」

「その『EXAM』や『HADES』というのは?」

 

 レインの言葉に、カイトが問いかけた。

 

「まず、EXAMというのが、OT(オールドタイプ)NT(ニュータイプ)ばりの性能を発揮させて、NTを抹殺することを目的としたシステムだ」

「そして、HADESはEXAMをベースとした強引に機体のリミッターを外すシステムだ」

 

 ナック、レインの順番に答えるのだった。

 

「『蒼い死神』って知ってるか? これは『ブルーデスティニー』って機体を示して呼ばれていたんだが、この機体に搭載されていたのがまさしくEXAM」

「そして『第4の騎士』こと『ペイルライダー』に搭載されたのが、派生型のHADESだったんだよ」

 

 2人はそう説明するのだった。

 

「どっちも……聞いたことがある……」

「まさかそんなシステムが……」

 

 リュウ、カイトの順に呟いた。

 

「と、これに関してはまだまだ謎が多いってことか?」

「そうだね……。残念だけど、私にもわからないな」

 

 そうか……、と言ったナックは、次の話を振るのだった。

 

「で、もう一つ。新たな機体を調達したい」

「……なるほど。付いてきてくれ」

 

 そう言われた5人は、レインに連れられて工場の立ち入り禁止エリアへと足を運んだ。

 

「ここから先のことは、内密に頼むよ」

 

 レインはそう断って、1つの扉にICカードを通す。

 そして、開かれた扉の先には———格納庫があった。

 

「……おい、あれって!」

「間違いないよ。GP-03『ステイメン』だ」

 

 ジョーの言葉に、リュウが答えた。

 

「とんでも無いものが出てきたな……」

「戦後、上層部がデータを抹消して行方知れずになってたが、極秘裏で入手した」

「動くのか?」

「勿論。近代化改修も済ませている。スラスターの推力強化はもちろん、装甲強度、エネルギー効率等全てな。だからこれは『ガンダム試作3号機ステイメン・リヴァイブ』として生まれ変わっている」

 

 ただ、と言ってレインは告げた。

 

「あの機体、元々は全天周囲モニターだったのだが、コア・ブロック式のコックピットへと変更した」

「なんでだ?」

「あの機体は、本来の装備であるアームド・ベース『オーキス』が失われてしまったことが原因だよ。オーキスがあったのなら、モビルスーツが脱出艇の扱いになったのだが、オーキスが無い以上、機体にその機能を加えるしかなかった」

 

 なるほど、とナックは頷いた。

 

「で、こいつを持ってて良いのか?」

「構わない。後、完成品ではないが、新たな武装も作成してある。それも一緒に持っていけ」

「助かる。後……」

「まだあるぞ」

 

 そういったレインは、壁際にある、スイッチを押した。

 すると、先程までステイメンのみが照らし出されていたが、ステイメンのまっ隣が明るくなる。

 

「アレは……ブルーデスティニーか?」

「1年戦争時代に大破した2号機と3号機の残骸を集め直して組み上げた、技術検証用の機体だ。EXAMも搭載されている。その機体を、さらに近代化改修し『ブルーデスティニー・セカンド』へと改造した」

「EXAMってことは……暴走の危険性は……」

「一概に、無いとは言い切れない。だが、君達なら乗りこなせると思った。だから、私はこうして差し出したのだ」

「だとさ。誰か、乗ってくれるか?」

 

 ナックの問いに答えたのは、ジョーだった。

 

「自分が乗ります」

「危険な機体……だぞ?」

「承知の上さ。なんなら、カイトが乗った機体の方が危なかっただろうに」

「決まりだな。というわけだ、レイン。こいつも使わせてもらう」

「ああ、頼むよ。それと、あと2機あるのだが、どうする?」

「見せてくれ」

 

 そう言われたレインは、再びスイッチを押した。

 すると、今度は格納庫全体が明るくなる。

 

「これだよ」

 

 そこあったのは、紛れも無いΖガンダムと、ペイルライダーだった。

 

「なんでペイルライダーが……!」

「量産目的に作られた型の機体情報を入手してね。それを逆にワンオフ機体として仕上げた。それがこの、『ペイルライダー・フラガラッハ』。先祖帰りみたいな感じだな。勿論、HADESも搭載してある」

「さっき危険って言ってた機能積んだ機体ばっかりじゃないですか……」

 

 出てきたモビルスーツに、ローは思わずそうこぼしてしまうのだった。

 それに対して、レインはこう答えた。

 

「さっきも言っただろう。君達だからこそ、たかそうと思うんだ」

「お前らを信用してくれてるってことさ。で、こっちに乗るやつ入るか?」

「自分が乗ります」

 

 そう言ったのは、リュウだった。

 

「リュウさん、なんで?」

「信頼には、答えないと、だろ?」

「そうですね」

 

 

 リュウの言葉に、カイトは頷いた。

 そして、ペイルライダーを見上げた。

 

「これが、俺の次の機体……」

「じゃあ、自分はΖガンダムに乗ります」

「なら説明が必要だな」

 

そういったレインは、機体について説明を始めた。

 

「この機体はΖ開発時の余剰パーツで組み上げた機体だ。ただ、部分的に足りないものもあったから、規格が合いそうなパーツで補ったりもしている。無論、可変機構に問題は無い」

「武装は?」

「オリジナルと大差はないが、この機体は電子戦向けのカスタムが施されている。後は、哨戒能力が高い」

「偵察向き……ということですか」

「ああ。だが、先ほど言った通り、武装はオリジナルのものとは大差ない。それに、追加武装もあるからな」

「そうですか」

「そういうことだ。Ζガンダム2号機……こいつの名前だ。宜しく頼む」

「お任せを」

 

 ローは敬礼しながら、そう返すのであった。

 

「良いのか? ステイメンじゃなくて?」

「自分は、ここへ配属される前は、リゼルになっていました。故に、可変機の方がしっくりくるのです」

「なるほど」

 

 ナックは頷くと、カイトへと告げた。

 

「なら、カイト。お前の機体はステイメンだいいな?」

「え、自分アレがあるじゃないですか……」

「バカヤロウ、またああなるぞ?」

「たしかに艦長の言うことに一理ありますけど……」

 

 まあまあと、レインがナックを宥めた。

 

「とりあえずは、暫くここに滞在することになるんだからゆっくり考えればいいさ」

「そうだったな……。艦の修復はどれくらいかかりそうだ?」

「1週間は必要だろうね」

「そうか」

「ああ。後、その滞在期間中に、RX-0を調べてもいいかい?」

「構わない」

 

 ナックは了承した。

 こうして、彼らは新たな機体(チカラ)を手に入れた。

 そして同時に、ペガススも新たな力を手に入れようとしていた———




はい、今回はここまで。
新たに出てきた機体ですが、設定がまとまり次1話の上に設定を挙げておきたいと思います。
最後に、読んでいただきありがとうございます。宜しければ感想・評価等お願いいたします。
では、これで


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