最近転生が流行っていると聞いて (白ノ宮)
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一話~三話まで
一話~三話なのは、字数制限の関係です。
意味が分からない。
最近クラスで有名になっている異世界転生×チートについてだが憧れる理由がわからない。
なぜだ?現代の比較的安全な日本から何故出たがる?
現代日本人がそんな無法地帯に放り出されて精神崩壊しないとでも?
しかもいじめられて自殺やら飛び降りやら明らかに最初から精神終わっているだろ。
大体チートを持って転生とか、あったとしても確率は闇ガチャ以下だぞ。
まぁ、結局は仮想の出来事だし楽しめる人だけ楽しめばいいさ。
自室の時計が午前2時を指す。
これ以上起きていると生活リズムが乱れるし今日はもう寝よう。
既に次の日だけど。
関係ないことだけど男の娘っていいよなぁ~。
時計が午前10時を指す。
カーペットの上で目覚める。
傍にベットがあったというのに何故カーペットで寝てしまったのだ。
おかげで身体がバキバキに痛い。
起き上がってカーテンを開け、窓を開ける。
現在の季節は春。涼しい風が部屋に入り込む。
朝の風は特別に感じる。自分にまとわりついている眠気が風によって流されていく感覚が素晴らしい。
これが俺のマイフェイバリット。
さぁPCの電源を入れて二次元男の娘特集を見よう。
PCの前に座って電源ボタンに手を伸ばす瞬間に俺の意識は飛んだ。
どうしてこうなった。
俺が現在いるところはどこだろうか。
目の前に広がるのは白い空間で自分の感覚的に浮いている。
状況に困惑していると手のひらサイズの文字が現れる。
『あなたには異世界転生をしてもらいます。
そこでクラス転移してくる高校生を倒してください。
高校生達は全員チート持ちなので、あなたにもチートを授けます。
いきなり呼び出してしまって申し訳ないということもありあなたの好きな容姿で転生させます。
因みに行動不能を目的としていますが殺してしまっても構いません。
どうするかはあなたに一任します。』
どのような人物がこの文字を表示させているか知らないがその要求に乗るつもりは無いぞ。
いきなり適応できるほど俺は単純で馬鹿ではない。
『申し遅れました。
私はこの世界の破壊神を魔神をやっております。
もしも困ったことができたのなら私の部下である魔王を頼るといいでしょう。
あと、あなたの左の手のひらに魔神の紋章を貼っとくので高校生達とは強制的に敵対するでしょう。
ですがご安心を、あなたの種族は人間に設定しておいたので紋章さえ見せなければ人間と敵対することもございません。
言っていることが支離滅裂ですが、それについてはご容赦下さると助かります。
では、異世界生活をお楽しみください』
最後の文字を読み終わった瞬間に俺の意識はまた飛んだ。
カクヨムでは毎日一話は投稿することをノルマとしております。
ですので、ハーメルンには千文字溜まり次第投稿させて頂きます。
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四話~五話※下ネタ注意
次に目が覚めた場所は森の中だった。
異世界転生・転移で最も多い開始地点だ。
服装はさっきと変わっていなかったが身長が低くなっている気がする。
パジャマのズボンのポケットに違和感を感じ、手を突っ込む。
紙だ、小さく折りたたまれた紙がある。
こんなの入れた覚えがない。
何の紙だったかを開いて確認する。
先程とはサイズが違うが筆跡が同じすごく読みやすい日本語の文字が書かれている。
『やぁ、お目覚めかな?
またまたいきなりだけど許してね。
諸事情で君に渡すはずのチートがどこかに消えてしまったんだ。
だから高校生達を倒すお願いも取り消しになった。
元の世界に返すことはできないけど、この世界で自由を謳歌してほしい。
君は男の娘が好きだったか。
ならお望み通り君の容姿をとっておきの美少女にしておいたよ。
気に入ってくれたら幸いだ。
ちゃんとムスコも付いているから確認しておいてくれたまえ。
あと左手の紋章は少しいじっておいたから敵対されることは無いし、困ったときにこれを魔王に見せれば君の力になってくれるよ。
君の腰に装備してある軽鉄の短剣はほんのささやかな私の気持ちだ。
これでレベル上げでもするといい。
次に、この世界についての解説だ。
この世界には五種類の種族が存在する。
人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族といったスタンダートな組み合わせだ。
覚えやすくていいだろう?
人間が主流で、エルフが里にこもっていて、ドワーフが職人的で、獣人が奴隷として売られていて、魔族がほかの種族の敵といった感じだ。
最近だと人間が魔族を滅ぼすために大規模な勇者召喚を行う。
そこに高校生達が巻き込まれるわけだ。だからそこで君を魔族軍の暗器として立ち回ってもらおうとした訳だけど、あいにくこのざまでね。
次はステータスについてだ。
こちらもスタンダートなレベルアップ制となっていてね。
君のステータスを例にしよう。
―――――――――――――――――――――――
気賀咲 緋照きがさき ひでり18歳 LV1 男
HP13
MP2
攻撃力4(23)
防御力2(5)
魔法攻撃力1
魔法防御力2
速力5
スキル なし
魔法 なし
現在装備
・軽鉄の短剣 攻撃力19
・緋照の部屋着 防御力3
次のレベルまで…5
―――――――――――――――――――――
といった感じだよ。
賢い日本人ならわかるね?
では改めて、素敵な異世界生活を!』
ほら、言ったろ。
チートなんてほとんどあり得ないってね。
自分の容姿を確認しようと辺りを見回す。すると都合のいいことに池を見つける。
水が透き通っていてあたりの景色を映し、光を反射している。これなら確認できそうだ。水面に顔を覗かせると、目の前には薄紫色の艶のあるポニテの美少女がいた。
残念ながら自分の語彙力では言い表せない可愛さである。水色に輝く瞳が俺の胸を刺激する。
「これが、俺だというのか…?」
つい漏れ出てしまった俺の言葉はとても透き通るような声で先程の刺激と相まって胸が高鳴る。そんな状態になったことにより俺の頬に赤みが浮き上がった。
うるんだ瞳と合わさり、とても扇情的な表情と化す。
そして俺は気づく。股間のアレが反応してしまっていることに。
自分が自分に欲情するとかいう気持ちの悪い事態が現在起こっているのだ。
一応股間のアレを確認しておく。
この結果を簡単に表すと、
『純白のヴェールを纏いし僅かなる塔』
と言うべきだろう。
前世の汚れたものとは違い、まさに純潔という言葉がふさわしいだろう。
まぁ、前世も純潔だけど。
でもこれ、いくら何でも小さくない?大きくなってもこれって…。
いや、黒くてもっさりしたものが纏わりついてないだけマシか。
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六話~七話
男の娘状態になって舞い上がったのは確かだが、そうじゃないんだ。
俺は男の娘が好きだ。けど、男の娘になるのは違くないか?
ここで文句を言ったとしても何かが変わるわけではない。
このことについては性別が変わったわけではないから生活上は問題ないだろう。
それ以前にこの世界で生き延びることができるのかという話だ。
結局魔神の解説では俺のステータスしか教えられてないわけで一般的な数値が知らされてない。
レベルアップ制という事は魔物がいるのだろう。
最初の魔物はスライムorゴブリンorコボルトという可能性が浮上してくるわけだが、俺は武術の心得なんかあるわけもない。
この鉄の短剣(?)とやらで訓練もなしに倒すことは果たして可能なのだろうか。
…まぁ、何とかなればいいな。
俺は何を思ったか唐突に腰に装備されている短剣を取り出す。
そして適当にそれっぽい構えをとり、上段・横振り・突き上げ・切り払いしてみた。
異世界系でよくある武器が体になじむ感覚は無く、動きもキレがない。
そりゃそうだ。
考えなくとも普通の高校生の癖して武器が手になじむ点からしておかしいのだ。大体普通の高校生なら、モンスターを倒すことに抵抗は生じるはずだ。
物語が円滑に進むために致し方ない事だが、実際は今の俺みたいな感じだろう。
短剣って斬るのに使うっけ?
耐久度が低いから突き刺すとかじゃなかったっけ?
専門的な知識もないから、よくわからない。
どこに街があるかもわからないけどとりあえず動こう。夜になったりでもしたら身動きなんて取れないし。
あ、そういえば人間勢力が勇者召喚を行うって言ってたっけ?
しかも高校生、同学年かは分からないが年の近い人たちが戦いのために異世界転移してくるのか。現実味がないな。
とはいえ、今の俺の状況も現実味がないけど。
他人のことを考えられるなんて、俺ってまだ余裕な感じか。いい気なものだ。
とにかく今の目標は『生き延びること』だ。
できれば魔物とかに会いたくないなぁ~なんて…無理かな?
方角もわからない森の中を歩き始めて体感20分。
一本道を発見したからそれに従って歩いていく。
すると物陰から緑色の肌の色をした小人(ゴブリン)が出てきた。
もしゴブリンでなかったとしても敵であることに間違いはないだろう。
確信できる理由なんてものは無いが。
相手は丸腰でこちらにまだ気づいていない。
腰から短剣を取り出す。
この短剣をあのゴブリンに突き刺すことを想像したら、手が震えてきた。
手は震えているが頭の中は冷静で、どう倒すかを考える余裕があった。
武術経験のない俺ができることといえば、突き飛ばし・突き刺しぐらいだろう。
突き飛ばせても、突き刺しの所で手が止まる可能性があるが出来なければ死あるのみ。
そうなれば比較的安全そうな方法をとるべきだろう。
その名も…
『対ゴブリン戦術』
である。
やり方は簡単。
1.ゴブリンを木に対して突き飛ばす。(助走をつけるとなお良い)
2.ゴブリンの腹にドスッと短剣を突き刺す。(もちろん勢いよく)
3.引き抜いて、ゴブリンの喉に短剣を差し込む。(余裕がなければめった刺し)
4.持ち方を逆手に変えて横に掻っ切る。
単純だが、うまくいくかはわからない。
でもここで第二の人生(?)を終わらせたくないし、頑張りますか。
やっぱり俺はこんな状況でも余裕があるらしい。
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八話~九話
早くなる鼓動を落ち着かせるために一息つく。
次の瞬間に俺は駆け出した。
そしてゴブリンを突き飛ばす。
転生(?)してから身長的に体重が落ちた気がするが、助走をつけた分衝撃は大きくなって思うように吹っ飛んでくれた。
都合よく木に頭をぶつけ、軽い脳震盪を起こしているゴブリンのお腹目掛けて短剣を突き刺し即時に抜く。
短剣を抜いた際に服に返り血が付いた。
ゴブリンの血は人間と同じ赤色をしており、鉄臭さが辺りに流れる。
ふわふわとした感覚から強烈な痛みによって現実に引き戻されたゴブリンだが、頭の命令に反して体が動かない。
チャンスと思った俺は短剣を逆手に持ち替えてゴブリンの首を掻っ切った。
傷は深くはないけど浅くもない。
これ以上血を浴びるのは衛生的に悪いだろうと思った俺はゴブリンの体を横に倒した。
首から血がどくどくと出ていき、ゴブリンの目から光が失われていく。
初めての人殺しをやったわけだが吐き気を催したりすることは無くて,謎の達成感だけが心の中を飛び回っていた。
そんな自分に対して恐怖を感じた。俺は、異常者だったのかと。
これが異常者でなかったとしたらいったい何なのだろうか。
この世界で常識だったとしても、俺は元々別世界の人間だ。
いくら自分の命を守るためとはいえ人型の相手を殺して、何も感じないというのは普通と言って難がある。
異世界小説の主人公なら当たり前なのだろうな。
なんか、どうでもいいかな。
「俺は『普通の高校生』じゃなかった。それだけのことじゃないか。
別に気にすることでもないし、恐れることもない。自分良ければすべてよしとしよう。」
そう自分に言い聞かせ、そのことについて考えるのを放棄した。
生気が完全になくなり、死に絶えたゴブリンの死体は光となって霧散する。
そこに残されたのは出血した分の血と緑色の石であった。
緑色の石は多分換金アイテムかなんかだろう。
にしても死体が消えたのに血は消えないのはなぜなのだろうか。
何か利用価値でもあるのだろうか。
今の自分では何も思いつかない。
とりあえず緑色の石をポケットに突っ込む。
血に濡れた短剣を見て、このままでは錆になるだけなので依然マンガで見た血振りをしてみる。
短剣を勢いよく振る。すると血は綺麗に落ちた。
地面には血の軌跡が描かれる。
綺麗になった短剣を納刀する。
近くに水場があるわけでもないので手や服に着いた血を洗えるわけもなく、ため息を吐いて歩くのを再開する。
初めてやることを成功させるのは疲れるのだ。
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十話~十一話
都合よく開けた場所に出た。
そこに広がっているのは道だ。
「これは…みーちっ!」
突然ここで発する意味の分からない言葉が口から飛び出た。
俺は別に錬金術師ではないのだがな。
さっきまで不安定な場所を歩いていたせいで道っぽい道を見ただけでテンションが爆上がりしてしまった。
しかし道とはいいものだ。
道をたどれば必ず(?)どこかにたどり着ける。
自分から見て左右どっちに向かうかが問題になってくるがここは王道から離れた右を選ぶとしよう。とくに意味は無いがね。
右を選んで歩き始めて少し経ったが、先に城下町みたいなのが見える。
右を選んで正解だったようだ。
左を選んでも当たりだったなんてこともあるかもしれない。
町に着いたら何しようか。
…本当に何をすればいいかわからないな。
まぁ、いくらわからないことを考えたってわからないままだしまずは町に着くことだけを考えようか。
―アシン城下町 関所 入り口前―
まさか関所があるとは思わなかった。
城下町だし冷静に考えてみればすぐわかることかもしれない。
逆に無い方が可笑しいだろうけど、自分的には無い方がうれしいかな。
関所にいる兵士に話すのに労力をかけるのがとても面倒だ。
ただでさえ初戦闘で疲れているというのにここで迷っているのはいささか効率が悪いと思う。
兵士は若く、爽やかそうな青年で厳つい様子はない。
これで厳つい老年の兵士だったら反射行動で引き返していたところだ。
既に兵士との距離は約10メートルほどしかないのでここで引き返したとしても不審がられて追いかけられる可能性もある。
他に人がいないのが不審だが気にする必要はない。
言葉が通じるのか、まともに会話できるのか等の疑問を持ちながら兵士の所に歩いて行った。
都合のいいことにあちらから話しかけてきた。
「この町に来た目的は何かな?」
「は…はた…はた…」
「旗?旗がどうかしたのかい?」
初対面の人と話せない癖は転生しても変わらないよね。
しかしここは、意地でも言葉をひねりださないと…。
「は…働き口を探すためにここに来ました!!」
「そっか。頑張ってね、お嬢さん。じゃ、通っていいよ」
「あ、ありがとうございます」
あれ、言葉が通じてるし案外あっさり通れたな。
今のは本当に関所だったのか?ザル警備に感じる。
ていうか、性別間違えられた。この容姿はやっぱり少女なのか。
―アシン城下町 五番区―
さてと、町に入ったのは良いものの思ってたより大きいな。
いや、大きいというより多いか。
建物の密集率、正面の大通りの道幅、そこに展開している出店の数、民の人口、活気等のスケールが都会並だ。
王都だし都会というのは間違いではないが、ここが都会だと考えるのはそれはそれで違和感がある。
あの高層ビル群を見ることがないっていうのは寂しいものだ。
都会で社畜になるはずだったのに、なぜこんなことに。
後悔とかはないが、この保証されてない世界で生きるのは正直遠慮したかったな。
おおっと、いけない。考えることがおかしな方向に向かっている。
まずは冒険者ギルドがあるかどうかの確認とこの町の地図を手に入れなければな。
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