ガールズアンドパンツァー整備士の冒険 (@Finn)
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1話
これはレギュレーションを綱渡りする整備士の物語である。
その整備士はかつてプラウダ高校に所属していた。だがある時、いかなる手段を使ったのか全くわからないが500万U.S.ドルもの戦車道予算を横領。
当時の部隊長から要請されていたIS2重戦車を魔改造したのだ。
主砲を勝手に122mm戦車砲D-25T(46.3口径)から2A37 52口径 152mmカノン砲に換装
電動式の自動装填装置が搭載されている。
エンジンをMTU MB 873ka-5014ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼルに換装
1,500馬力/2,600rpmで、もとの513馬力/2,000rpmとは比べ物にならない。
装甲はチョバムアーマーに変更
更に増加装甲として爆発反応装甲を装備
そしてM1エイブラムスからCITV(車長用独立熱線映像装置)を移植
アクティブ防護システム(Active Protection System)、アイアンフィストを搭載
受動型赤外線検知器により、飛来する脅威を探知する。脅威が差し迫っている際には、炸裂する投射迎撃体がその前方へ撃ち出される。迎撃体は脅威となるものの非常に近くで炸裂し、破壊もしくはこれを逸らして、弾頭を起爆させることなしに安定を失わせる。
つまり、砲弾を車体に当てさせない装置である。戦車道においてはチートアイテムだろう。
こうした改造を戦車道プレイヤーに気が付かれずに行ったのだ。その後、プラウダ高校は戦車道大会に出場する。
しかし試合当日のことであった。試合会場に向かう途中に気がつく。(見た目がかなり変わっていたのには皆が気がついているが大したことではないときにしなかった。)
操縦手は感じた。加速度が明らかにおかしい。
何故か車長のキューポラのそばに液晶画面がある。だが、その整備士は勝手な改造をすることで有名であり大方、テレビでもつけたのだろうと車長は気にしなかった。
試合会場に到着し、別車両に乗って来た装填手が戦車IS2に乗り込もうとしたところでようやく異常に気がつく。
そう、自動装填装置である。
戦車道にあるまじき超チートアイテム。
10秒間に3発、1分間に8発、3分間に20発という射撃能力である。砲撃の持続能力は、24時間の間に37の異なる目標に対し、300発(弾薬約18t)の砲弾を撃ち込むことができる。
しかし、装填手は考えてしまう。どうせレギュレーション違反で失格になるならばこのチートでどこまで行けるか試してみようと。
試合は始まる。
ありえない速度で進軍し、人類には不可能な砲撃速度を叩き出すIS2。だが違反の笛はならない。128発という無尽蔵の砲弾を放ち続け勝利し続け、決勝戦まで来てしまっていた。
正直、152mmカノン砲(自動装填装置付き)をもってすれば余裕の勝利が可能である。
しかし考えてしまう。そんな手段で勝って本当にいいのか。(原型をとどめていない)超チート戦車をつかった試合を続けて本当にいいのか。
当然だめである。
だがここまで来たらやりたくなるのが人。
優勝をかけた戦いが始まる。
予め試合会場については調べてある。相手チームが出撃した予測位置めがけて榴弾を撃ち込む。これにより、1両撃破する。
最大速度で横に回り込む。
時速65キロで進撃されることは黒峰森とはいえ想定などしているわけがない。
そうして、回り込んだIS2は射撃を開始する。
初撃で反撃してきたのには驚いたが複合装甲の前では無力だ。
敵はフラッグ車のみとなる。
プラウダ高校は棄権した。
ところで改造の件についてだが違反の笛がならなかったのには理由がある。
一体どこの誰が戦車道の戦車に現代戦車の装備を取り付けるだけの技術を有する生徒がいると考えるのか。
ただネジでつけるだけではない。装甲のバランス。車内に巡らせる回線、砲塔にコンパクトに収める技術も必要とされるのだ。
車体の形を大きく変えずにエンジンを換装するというのも非常に難易度が高い偉業だ。
それを為した整備士はどこからか圧力を受け飛び級で卒業、某国付属戦車研究所研究員になったのでした。
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