サムライブ! ( まきパリ)
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第1話 時をかけるサムライと少女の出会い
時は戦国時代。
燃え盛る火の中、1人の男が主を守るため刀を奮っていた。
「姫様!ここはこの忠信におまかせを!さ、姫様はお逃げに!」
「なりません。私はこの城の主。運命はこの城と共にあります。
忠信。
あなたはお逃げなさい。
あなたほどの武士はこの国にそうといません。
そして必ずどこかであなたの刀を必要としている誰かがいるはずです。」
その男は不服な表情を浮かべる。それはその男にとって姫という女性が全てだったから。彼の生きる目標だったからだ。
「私は・・・姫様と共に・・・」
「忠信!・・・私との約束忘れたのですか?」
「いえ・・・そのようなことは・・・。」
「生きなさい。これは最期の命令よ。」
最期という言葉が彼の胸に刺さる。
「・・・幼き時からあなたと過ごせたこと私はいと嬉しう思うております。」
「姫様・・・!」
男は半壊した部屋の中にたたずむ姫を残し去っていった。
「・・・またいつか輪廻の輪が私たちを引き合わせてくれましょう。その時まで・・・。」
男は城を脱出するため走っていた。・・・後悔の念とともに。
(姫様・・・姫様・・・申し訳ございませぬ!この忠信の力が及ばぬが故に・・・。)
「いたぞ!奴を討ち取れ!」
敵兵に見つかったので彼は戦おうとする。
だが・・・
『生きなさい。』
姫の最後の言葉が頭をよぎる。
(的に背をむけるなど武士の恥!しかし・・・)
「敵将が逃げたぞ!奴を追え!」
彼は逃げた。ただひたすら生きるために。
しばらく敵をかわしていたが彼はとうとう挟まれてしまった。
「くっ・・・万事休すか・・・。」
彼は覚悟を決めた。
そして敵の刀が彼を亡きものにしようとする
その時だった・・・
バンッ!
火が回り崩壊寸前のこの城が大爆発を起こして武士達を吹き飛ばした。
男は外に投げ出されそのまま川に落ちていった。
薄れゆく意識の中男は心の中で謝った。
(姫様・・・あなたとの約束・・・破ってしまうことになるでござる。)
彼女・・・高坂穂乃果は驚いた。
それもそのはず目の前に時代劇から飛び出してきたような格好の男が倒れているのだから。
どうするか迷った彼女はとりあえず家に連れて帰ることにしたが、
「んんん・・・重い・・・。」
大人の男一人をまだ高校生の彼女が動かすことなどできなかった。
「どうしよ・・・あっ!そうだ!」
彼女はスマホを取り出し電話をかける。
そして数分後・・・
「あっ!海未ちゃん!ことりちゃん!」
「穂乃果!さっきの話は本当で・・・どうやら嘘ではないようですね。」
「わっ!本当にお侍さんがいる!」
「早くなんとかしなきゃ!」
二人は悩んだ。親友がいくら助けを求めていると言っても目の前にいるのはコスプレと思われてもおかしくない怪しい男だったからだ。
「とにかく運ぶの手伝って!」
しかし二人は思った親友は本気で助けようとしているのだと。
普通は救急車でも呼べば大丈夫なのだが見たところ男に傷らしきものもなく服も特に乱れてはいなかった。
三人は協力してその男を家まで運んだのであった。
男は・・・奇妙な違和感と共に目覚めた。
目を開けるとそこには見慣れぬ景色。しかも彼が生きていた頃には見たこともなかった面妖な景色だった。
(ここは・・・噂に聞く極楽浄土というやつか? ならば拙者は・・・)
彼は何故か被っていた布団から出て辺りを観察した。
(ふむ・・・中々に趣深い場所ではないか。)
しばらくウロウロしていると部屋の扉が空き少女が入ってきた。
「あっ!起きてる!!」
「お主は一体?もしや仏様であられますか?」
まるで本当の侍のような口調の彼の言葉に少女は困惑した。
「・・・えっと。私は高坂穂乃果。でここは私の家。」
「拙者も名乗らせていただこう。拙者は絢瀬忠信。」
「忠信さんか・・・うん!よろしくね!」
「よろしくでござる。ひとつ良いか?ここは穂乃果殿の城と聞き申したが。極楽浄土ではないのか?」
「極楽浄土?ううん違うよ。ここは日本で東京。私もひとつ・・・もしかしてあなたって本物の侍?」
「『東京』・・・それに『侍』とはなんのことか分からぬが拙者は武士でござる。」
「じゃあ本物の侍ってことだね!」
「・・・ところで拙者はどうしてここにいるのだ?」
「えっ!?覚えてないの?忠信さんこの近くで倒れていたんだよ!」
「というと貴殿が拙者を助けてくれたのでござろうか?」
「えっと・・・私だけじゃなくて友達の海未ちゃんとことりちゃんも手伝ってくれたの。」
「これは・・・なんと礼を申し上げたらよいか・・・。かたじけない。」
「そんな・・・別に大丈夫だよ。」
「いやいや穂乃果殿らは我が命の恩人。是非とも海未ちゃん殿とことりちゃん殿にも礼を伝えたいのだが。」
「うん!分かった!今呼んでくるね!」うみちゃーん、ことりちゃーん
(どうやらここは拙者の知ってる世ではないとみえる。)
(しかし・・・ここに来る直前のことが思い出せぬ・・・。拙者は一体何を・・・?)
そんなことを考えていると穂乃果が海未とことりを連れて戻ってきた。
「忠信さん!こちら海未ちゃんとことりちゃんだよ!」
「・・・私は園田海未といいます。」
「南ことりです!」
「海未殿にことり殿、この度は拙者を救っていただいたことに礼を申し上げる。拙者は絢瀬忠信と申す。」
まだこの怪しい男を信用していない海未は怪訝そうな顔で彼に聞いた。
「あなたに質問です。あなたは・・・どこから来たのですか?」
「拙者は・・・誠に恥ずかしながらどこからやって来たのか覚えがないでござる。」
「これは・・・記憶喪失ですか。」
「ただ分かるのは・・・拙者はこの世の者ではないということ。
穂乃果殿によれば拙者がいるのは東京という所でござろうがいかんせん東京という言葉は初めて聞いた気がするでござる。」
「そして見たところ拙者と穂乃果殿達との身なりもだいぶ異なると見受けられる。」
「確かにそうだね。だって私そんな立派な刀見たことないもん。」
と穂乃果は忠信の腰にさしてある日本刀を指した。
「この刀・・・」
忠信は刀に触れるとどこか懐かしさを感じた。
「どうやら・・・この時代の人ではないということは本当のようですね。さて・・・どうしましょうか。」
「分かった!じゃあとりあえず穂乃果の家で一緒にいてもらうよ!」
「穂乃果!」
「いいじゃん別に!だってこのまま帰したら行くところもなくて可哀想だよ!」
「確かにそうですけど・・・」
「まぁまぁ海未ちゃん。ここは穂乃果ちゃんに任せてみようよ。この侍さんも悪い人じゃなさそうだよ。」
「ことりまで・・・」
「私たちで忠信さんが元の世界に帰れるように手伝ってあげようよ!」
「人助けだと思ってね。海未ちゃん。」
「・・・わかりました。私たちでこの人が帰れるように手助けしましょう。」
どうやら二人の説得に海未は根負けしたようだ。
「ということで今日から忠信さんは私の家で預かることになりました。」
「そんな・・・拙者、命を救っていただいただけでなくその後も世話になるのは武士として・・・」
「まぁまぁそう言わずに、忠信さんも行く宛はないんでしょ?」
「確かに穂乃果殿の言う通りでございますが・・・」
「じゃあ決まりだね!」
忠信は元いた場所に帰るためには目の前の少女の世話にならざるを得ないと割り切った。
「この忠信、穂乃果殿に忠義を尽くすでござる。」
彼は穂乃果前で跪いた。
「いやぁなんか殿様になった気分だね〜。」
「全く・・・穂乃果。忠信さんを世話するならキチンとやってくださいね。」
「分かってるよぉ。」
「うふふ。何だか楽しくなりそうだね。」
「じゃあ忠信さん!これからよろしくね!」
「穂乃果殿、海未殿、ことり殿。つまらぬ者でござるが何卒よろしく頼むでござる。」
こうしてここから時代を超えたサムライと少女達の奇妙な物語が始まった。
日本史は壊滅的に弱いのでおかしな点があったらすいません。
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