鋭角パンツァー 〜エキセントリック・ファイヴ〜 (jeux)
しおりを挟む

Prelude

 大洗女子学園戦車道部あんこうチーム。ほんの数ヶ月前まで、そんな言葉は存在すらしていなかった。

 ところが今はどうだろう。それについて様々な人に質問すると、様々な答えが返ってくる。

 曰く、

「必要以上におかしな方法で攻めてくる」「本気だと思わせておいて嘘、嘘だと思わせておいて本気」「三点倒立しながら優勝旗を足で挟んで受け取る」「ショスタコーヴィッチのような二面性」「イギリスのようにn枚舌」「唐辛子入りの紅茶」「わさび入りのチョコレート」「存在しているだけで脳に疑問を醸す」「そんなことしなくても勝てるってば」「邪道」「悪魔」「死神」

 そして人々は、彼女たちをこう呼ぶのである。

 "エキセントリック・ファイヴ"と。

 

-----

 

 エキセントリック・ファイヴのテーマ

  作詞:冷泉麻子・秋山優花里 作曲:西住みほ 編曲:五十鈴華 歌:武部沙織

 

進め 砂塵を巻き上げ 進め 泥をかき分け

どんなに辛く苦しい時でも 私たちの目指す場所

変わらないとでも思ったか

 

残念でした 変えます(変えます!)

変えちゃいますよ コンビニ感覚で

 

楽しくないと思ったら 楽しくなるようにします

辛いと思ったら 辛くないようにします

ゴールポストは 動かしてナンボ

 

だって私たち 花も恥じらう乙女だもん

ブシドーの押し付け NGよ

 

そーたごしゃっぺでええのが うるせえ 黙れ

これこそが私たち エキセントリック・ファイヴなのよ

 

-----

 

「えーこれ私が歌うの〜?」

 嫌そうに言ったのは武部沙織。

「もちのろんだ。他の4人はみんな何らかの形でこの曲に関わっている。あとは歌手のみ。自動的に沙織となる」

 答えるのは冷泉麻子である。

「えーやだー。恥ずかしいし、そもそも曲作ってたなんて聞いてないし」

「私は沙織しかいないと思うが」

「え〜?ほんとに〜?」

「曲を聞いてもらったからわかったと思うが、この曲は今時のアイドルの曲を意識して作られている。でだ、君以外のあんこうチーム4人に、今風のアイドルができると思うか?消去法だよ」

「あー、すごい納得」

 冷泉は「単純なやつだ」思いながら続けた。

「だろう?しかもだ、君にとってもメリットがある。モテるんだよ」

「・・・そう!そうだわ!モテるわ!」

 冷泉は「ちょろい」と言う感情を表に出さないことにひどく苦労しながら答える。

「そうだろう。そうだろう。そうと決まればこいつにサインしてくれ」

「サイン?何で?」

「この曲は我々の持ち場を離れて『沙織の曲』になる。そうなる以上、この曲を()()()()歌い上げてください、と言うある種の誓約書だね」

「誓約書・・・誓い!」

 どうやら武部は『誓い』と言う言葉にロマンティシズムを見出したようである。

「いいわ、サインしましょう」

「理解が早くて助かるよ」

 

 さて、懸命な読者諸君ならば気づいたことであろう。武部がまだこの曲の歌詞を知らないことを。知らないままに、あからさまに危険な内容の誓約書にサインしてしまったことを。

 

「敵を欺くにはまず味方からなんだよ」

 

 冷泉よ。その行動は本当に敵を欺くためか。




歌詞中の茨城弁はかなり怪しいです。現地民の方お暇であれば訂正をば。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ1

†初投稿†

大分みんな口調がおかしいです。こんなのも、ありかもなー的な雰囲気でお願いします。
あと、秋山さんは島田フミカネ原案の感じです。


「お邪魔します、冷泉さん」

 五十鈴華は女子寮にある冷泉麻子の部屋を訪ねている。冷泉はノートパソコンをいじっていて、その黒い画面には何やら怪しげな文字が流れていた。

「お、やあやあ華さん」

「あらお仕事中でした?」

「仕事って、そんな大層なものじゃないって前から言ってるだろう」

「戦車道のデータベースと検索システムでしたっけ?ギャラありで生徒会から委嘱されたそうで」

「・・・なんで知ってるんだ」

「あなたがどうしても教えてくれないので、会長に聞きました」

「あー、また余計なことを・・・」

 あいつは口が軽すぎる、と冷泉は愚痴をこぼす。

「で、御用は?」

「あ、いいんですか?」

「丁度煮詰まってたんだよ。いいから話せ」

 

-----

 

「なるほど、恋だな」

「待ってください。流石に早計過ぎます」

「おっ、動揺した」

 花道と戦車道で培った強靭な精神を持つ五十鈴ですら、冷泉のど真ん中ストレートの前には、狼狽えざるを得なかった。

「聞いてみれば何だ、戦車整備のお兄さん、その人が視界に入ると動悸がする、砲撃するときふとその人のその姿が脳裏を横切り失敗する、挙句その人が気になって夜も寝れない。日常生活に支障を来している。役満じゃあないか、それも典型的、ベタベタだ」

「待って、本当に待って。何かの間違いです」

「間違いか・・・まあ?他の可能性もあるにはあるさ」

「あるんじゃないですか。じゃあそっちです。決して、決して私は・・・」

「その人を異常に恐れている、というやつだ。一応その場合でもその症状にはなるだろうな。だが君は何やらとても嬉しそうに話してくれたじゃないか。ええ?」

「嬉しそうに・・・?」

 嘘だ。自分としては至極真面目な話をしていたはずなのに。無意識のうちにそんな話し方になってしまったと言うのか。五十鈴は驚愕の表情を浮かべた。

「自覚なし!鋼メンタルと謳われる五十鈴家の次代家元も、恋の前にはびっくりするほどウブだった!きゃー、こっちが恥ずかしいわー」

 そう言って冷泉は顔を隠してみせるが、隠しているのは赤面ではなく笑いである。

「からかわないで下さい!嫌です嫌ですそんな色恋沙汰程度で私の心は揺らぎません揺らぎません1オングストロームも動きません」

 

 と、そこにやってきたのは。

「何ですか、お二人が騒がしいのは珍しいですね」

 くせ毛の少女、秋山優花里だ。

「おうアキヤーマ」

「そのアクセント何なんですか毎回毎回。別にやめろとは言いませんけど」

 そう言って彼女はそれまで両手に抱えていた段ボール箱を床に置く。

「何だそれ」

「何って、嫌ですねぇ。あなたに頼まれたものですよぉ」

 秋山が段ボールを開けると、中にはびっしりと書類が入っていた。

「げっ、まさかこれ」

「戦車道関連のデータ、ありったけです」

「こんなにか」

 冷泉は秋山に他校の情報取集を頼んでいたのだ。

「他校のちょっとした偵察もしてきましたよ」

「またやったのか、そこまでしなくていいのに」

「インターネットじゃ限界があるんですよ」

「ともかくありがとう。こりゃデータ入力大変だな・・・バイト雇うか・・・」

「お金あるんですか?」

「生徒会に出させるに決まってるだろ」

 

「そういえば、華さんは?聞いたことないような声出してましたけど」

「ん?ああ、華なら」

 そう言って冷泉は部屋の隅の方を見る。秋山も視線を同じ方向に持っていく。

「興奮を奇怪な音楽で納めてるぞ」

 そこには浅い呼吸をしながら、ヘッドフォンをしてうずくまる五十鈴の姿があった。

 

-----

 

「華さん、落ち着きました?」

 心配そうにする秋山。しかし五十鈴は反応を見せず。

 対する冷泉といえば。

「呼び方はそれじゃいけないぞ、こうだ・・・イスーズ」

「はっ、何今の強烈な違和感は」

「おお、起きましたね。って言うか、その謎アクセント華さんにも・・・」

 

-----

 

「それは・・・まあ私も十中八九恋だと思いますね」

「優花里さんまで・・・」

「と言うか、なぜ冷泉さんに相談を?いるでしょうもっと」

「他の方にも相談したんです。みほさんにも、沙織さんにも」

「あれ、もしかしなくても私の信用度あんこう最低ですか。ショックですね」

 全くショックじゃなさそうに秋山は言う。

「でも二人とも何も答えてくれなかったんです・・・顔を紅くして・・・」

「それで常に超・核爆・ストレートを投げてくる冷泉さんに頼んだと」

「で、どうなんだ。私に()()した感想は?」

「はい。もう、受け入れる気持ちになってきました・・・」

 部屋には五十鈴がそれまで聞いていた音楽・・・ジェラール・グリゼー作曲『partiels』がかかっている。ヘッドフォンじゃ耳を悪くするから、と冷泉が五十鈴のスマホをコンポに繋いだのだ。

「しかし・・・よくわからない曲ですね」

「そうですか?美しいと思いません?」

「面白い音のする曲だなぁとは思うが・・・そうか、美しい、か」

「美しいですよ。安定的な倍音構造の上に展開される不安定なノイズ。とっても『この世』っぽくないかしら?」

「うーん・・・華さんは時々すごくわかんなくなります」

 五十鈴の発言を理解しかねる秋山に対し、何か納得したような表情を浮かべる冷泉。

「うん・・・華さん、実は全然鋼メンタルじゃないんだ」

「おっとぉ?」

 秋山の始まったな、とでも言いたいかのような含みを持たせた発言。

「と言うか局所的にガードが極端に薄い。その弱さたるやオゾンホールのごとし」

「オゾンホール・・・ですか」

「感性の高さは心に敏感な部分があると言う証拠だ。花道で感性を養ってきた分、心の一部分を薄くもしていたんだな。今までそこに降り注ぐのは芸術の雨だった。花道、音楽、戦車道さえも。しかしだ、今華さんのオゾンホールに突き刺さってるのは紫外線どころではない。恋と言う名のγ線バーストだ」

「麻子さん相変わらず例えが専門的すぎます。とりあえずγ線バーストって強そうですね」

 とふざけてみせる秋山。構わず冷泉は続ける。

「対処方法は2つあるぞ。1つ、自分が向きを変えてバーストがホールに直撃しないようにする。動くのは自分だけだからこっちの方が楽だな。2つ、『その人』にバーストじゃなくてシャワーを出してもらう。そのためには当然『その人』にお近づきにならなきゃいけない分つらいな。でだ、魅力的なのはどちらかと言う事だ。イスーズくん?」

「私は・・・私は・・・!シャワーが欲しいです・・・!」

「えっ、今ので分かったんですか。てか何で泣けるんですか」

「まあそう言う事だよ華さん。そう簡単な道のりじゃないことは分かっている。だから、行き詰まった時、自分がどうしていいかわからなくなった時、また尋ねるといいさ」

「う、う、うわーーーん!」

 とうとう号泣し出した五十鈴は、冷泉の胸に飛びついていく。

「・・・麻子さん、罪な女ですねぇ」




作者の恋愛経験は0です。多分みんな読んでる途中に察したんじゃないかな。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ2

秋山さんの公然の秘密。


 ひとしきり泣いた五十鈴は、冷泉の膝で寝ている。それを羨望の混じった表情で秋山は見つめる。

「・・・大変ですね乙女の恋は。私はこうはなれませんよ」

「またそれか。なんだかんだ憧れてるんじゃないか」

「まあ違うといえば嘘になりますが・・・私のは普通の乙女のソレとは質が違いますからね?」

「そうだろうな。無性愛だもんな」

「アーンド機械性愛ですよ」

 男性にも女性にも恋愛感情すら持てず、代わりに戦車には興奮する。秋山はそんな性癖の持ち主だった。

「アキヤーマも変わったよな。最初隠そうとしてたじゃないか。」

「そりゃそうですよ。せっかくできた友人なのに、変なカミングアウトで離れられたら嫌じゃないですか。結局杞憂でしたが」

「まあ隠せてなかったけどな。沙織が恋バナ恋バナって言い出すたびに、死んだ魚のような目になって」

「みほさんに『ゆかりんは好きな男のタイプとかないのー?』とか聞かれて」

「返答に窮する様子を見て早合点した沙織が秋山レズ説をばらまいて」

「そうですそうです。で、なぜかそれで私は本当にレズかもと思ってしまって」

「で、西住氏籠絡事件に繋がると。酷かったなぁあれ」

「酷かったです。ほんとバカですねぇ私。麻子さん、沙織さん、華さんがいなかったら今頃2人で堕ちてましたよ深淵に」

 自分がレズなのか確かめるため、ターゲットに選んだのが西住みほ。もっとも尊敬する人物なら行けるかも、と踏んだのだ。男性向けの本を読んでみて、その通りに実行したら、予想に反して成功してしまった。すでにその気の西住。しかし残酷なほどにそれまであった尊敬以外の感情が浮かんでこない秋山。ついに耐えきれなかった西住にアタックされてしまった秋山は、全てを白状してしまう。そこからあとはもう、阿鼻叫喚であった。

 

「その話よりはまだかわいいが、でもやばいと感じたのは私が最初に参加した演習だったな」

「私・・・相当だったそうですね」

「ああ。終始瞳孔開きっぱなしだし、なんかハァハァ言ってるし、車体から振動が伝わるたび恍惚の表情を浮かべる。お薬でもやってるのかと思ったぞ私は」

「毎度核爆発言ありがとうございます。被曝にはなれましたよもう」

「私も最初は初めての戦車で興奮してるのかなぁ程度でしたけど、それだけにしては異常すぎたと後になって思います」

「わっ、起きてたんですか華さん」

「最近大分戦車の中でも落ち着いてますけど、何か心境の変化が?」

 華がそう言うと、秋山は人差し指を立て、自信ありげな表情で。

「アレですよ。成就した恋に無用な興奮はいらないってやつです」

「おっとぉ?」

「すでにお結ばれになっていたのですね・・・」




この作品に真のレズはいないのでレズ要素はありません(しろめ)

秋山さんこれサイコでしょ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ3

時と場所、全く変わって練習試合。まだプロトタイプだからね、しょうがないね。


「Al kopf schure poset! (全車位置につけ!)」

 西住みほの令を受けて、武部が無線で叫ぶ。

「Kame, jadamour」

「Ahiru, jadamour」

「Kaba, jadamour」

「Usagi, jadamour」

 彼女らが話しているのは「大洗kopf語」である。「kopf(ドイツ語で「頭」)」は「戦車」のことである。無線盗聴された反省もあり、冷泉の提案によって無線を暗号化しようと言う話が上がり、どうせならオリジナルを作ろう、と言うことで歴女たちに頑張ってもらったのである。ドイツ語とフランス語をごちゃ混ぜにしたようなもので、名詞の性や格変化を取り払い、さらに可聴性を重視したシンプルな言語にまとまっている。ちなみに「了解」が「jadamour」であり、「ヤダモー」と読む。これは当然ある隊員の口癖であると同時に、「amour(フランス語で「愛」)」ともかかっている。これだけは冷泉の考案だったりする。みんな面白がって使っており、概ね好評であるこの言語だが、一人どうにも納得できない者がいた。

「なんで毎回自分の口癖で返答されなきゃいけないのよ・・・」

 当然のごとく、武部である。

「Saori, ne parol Japanisch. (沙織、日本語はダメよ)」

 武部は通信士という立場にありながら、この大洗kopf語の覚えが悪く、kopfを強制するために普段から日本語禁止令を受けている。それに付き合う形で、あんこうチームは全員kopfしか話さないようになっていた。

「Sa, mi kogni, Hana. (ええ、わかってるわよ華)」

 秋山も注意する。

「Se si mach ne parol, Nisizumi remplas kommuter, sia.(あんまり話せないと、西住さんに通信手代わられちゃいますよ、ほら)」

「At beg o krik al kopf folg opera A. (試合開始と同時に全車作戦Aに従うように)」

 いつの間にか無線機を武部から奪い取っていた西住は直接指示を出す。いよいよもって不機嫌になる武部。

「あーん、なによなによ、なんでそうやってみんな私をいじめるのよぉ!そうよ、どうせ私はいらない子よ。あんこうチームのお荷物よ。あとモテないのよ」

「Si schoner memor kopfisch as parol vitte. (愚痴を零す暇があったらkopfを覚えたらどうなんだ)」

「そんな構文知らないわよ麻子!」

 意味がわからなくてショックな冷泉の言葉。意味がわかっても余計に武部の心に刺さったであろう冷泉の言葉。

「So verzei. Le noi stund kopfisch ag krik? (ごめんね。試合終わったら一緒に勉強しよう?)」

 慌ててフォローをだす西住だが武部は今にも泣きそうな表情で。

「kopfを・・・やめるという・・・選択肢は・・・ないんですか・・・」

「Ne.」「Ne.」「Ne dis.」

「・・・ヤダモー・・・」

 了解、の意味なのか、そのままの意味なのか。抑揚を聞けばどちらであるかは明確であった。




ちなみに他校からは大洗kopf語は「ヤダモー語」と呼ばれています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ4

対戦相手はオリジナルです。
戦車は超絶初心者なので、かなり酷い動き&作戦をしてると思います。

以降断りのない限り、""内はkopfだと思ってください。


「"試合開始5分前です"」

 武部が西住に告げる。

「"2分前になったら行動してください、秋山さん"」

「Jadamour」

 今回の試合は最初から攻める。相手は持ち前の火力と速力によるフラッグ車一本狩りを得意とする釧路学園。なので普通はフラッグ車の周りを護衛で固め、小隊で敵戦力を狙う・・・のだが。西住は、全く違う戦法を取ろうとしていた。

 

-----

 

「おいおいなんだあれは」

 釧路学園戦車道部フラッグ車車長、根室聡子は当惑していた。

 ここは北海道のとある平原。Wind○ws XPの壁紙に使えそうなほどになにもない。会場の東西にそれぞれ少しづつ林があるので、最初はそこに戦車を待機させ、下手に戦力を見せないようにするのだが。

「近すぎる、近すぎるし、よりにもよってフラッグ車が一番前だ」

 そう、向こうは大会側で決められた待機ラインギリギリにいる。双眼鏡を使わずとも目視できるほどであった。

「あれ、なんだと思う?厚岸(あっけし)

「罠、なんだとは思いますが・・・」

 砲手の厚岸松葉は答える。

「一目でわかる罠を罠とは言わんだろう。こういう場合大抵、複数の罠が敷かれている」

 だがそれがわからない。こんなトチ狂った配置にして、敷ける罠が思いつかないのだ。試合開始2分前だというのに、当初の作戦でいいのか強い不安が残る。

「あっ、一人外に出てきましたよ!」

 厚岸の声に反応して、根室は顔を上げる。

 

-----

 

 そこには一人の少女が立っていた。癖っ毛であることがこちらからでも分かった。その少女は、徐にメガホンを取り出し喋り出した。

「えー、野球、サッカー、バスケットボール、その他あらゆるスポーツにおいては、プレイヤーの人命は保障されなければなりません。ホモ・ルーデンスという言葉がありますように、人類は遊びを通じてその文化を発展させてきましたから、文化を構成する基礎的なものにおける人命の保障は自明でありましょう。

 ここで問いを立てさせていただきます。『戦車道はスポーツであるか。』答えは否だと、私は思うのです。その本質は戦争、殺し合いに他ならないと。カーボンで守られた絶対安全な箱の中にいても分からない。常に死と隣り合わせの極限の状況になって初めて、立ち上るものがあります。私はそこに価値を求めたい。

 さて、これからあなた方にやって頂くのは戦争です。ええ、ええ、恐ろしいですね。でも我々は日本人。みんなでやれば怖くないのです。ということで、私がお手本を見せてあげましょう」

 メガホンを捨て、取り出したのは。

 

 拳銃。

 

 それを自身のこめかみに当てて。

 

「それではみなさん、good luck」

 

 一発の銃声とともに、試合開始となった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ5

生徒会とあんこうは、車両を交代しています。


 パン、という乾いた音とともに飛び散る赤黒い液体。青い大地を、染めていく。

 

 おい。待てよ。おい。え?人が。え?待てって。おい。

 

 あまりにも凄惨な光景に、根室の思考は停止してしまった。

 

 しかし無慈悲に鳴り響く試合開始の合図と、西住の絶叫。

「Al kopf, ka!!」

 

 その声に意識が呼び戻され。ほぼ反射的に根室も叫ぶ。

「全車、打てェーッ!」

 

 両軍、これだけの近距離で相対しているのである。試合開始と同時に乱戦状態になるのは間違いない。そこで初撃で落とせるように、あらかじめ前衛車両に照準を合わさせていた。しかし、当然発射から球が届くまではタイムラグがあるが、そこを忘れるほど無能な根室ではない。タイムラグ中に動かれることを想定して、照準は少し前か後ろにずらしていた。半分も当たれば僥倖である。しかも、フラッグ車には前にも後ろにも真ん中にも狙いを定めておいた。横に逃げるのは時間がかかるから、ほぼ一発で仕留められる。

 しかし、しかしである。一人の少女によって、状況は変わってしまった。彼女の凄まじい行動を見ることによって生じたほんの一瞬の指示の遅れが、大洗に隙を与えた。

 しかも、しかもである。大洗の戦車は、釧路がヤマを張っていた方向とはことごとく逆の方向に動いたのである。フラッグ車に至っては、超信地旋回をして横に逃げたではないか。

 さらに、さらにである。逃げたかと思いきや、急停車し、間髪入れず発砲したではないか!

「おい、嘘だろ」

「先輩!」

 はっ。

「総員退避ィーッ!」

 時は、すでに遅く。

「・・・前衛5両、全滅です」

 静かに響く、厚岸の声。

 釧路全体を、恐怖が、襲った。

 

-----

 

 その時、フラッグ車内には、「ロックに行きましょう」と五十鈴がかけたバルトーク作曲『弦楽四重奏曲第4番 第5楽章』が鳴り響いていた。

「"敵さん、あらかじめ照準合わせてくれて、助かりましたね"」

 と五十鈴。

「"はい、おかげで逃げる方向が明確になりました"」

 西住が答える。

「"一瞬だったね"」

 と武部が続ける。

 そう、彼女たちは敵の砲の指向から落下位置を計算し、それとは逆の方向に動いた上で、その位置からの照準までもあらかじめ計算していたのである。

「"いやしかし・・・実際やってみると・・・ちょっと、申し訳ないなって・・・"」

 そう言ったのは秋山である。

 秋山である。

「"どうでもいいが、めちゃくちゃトマトくさいな"」

「"それいう権利私にしかないんですよ"」

 冷泉の発言に噛み付いた秋山は、顔中トマトジュースまみれであった。

 

-----

 

  大 洗 市 民 新 聞 7月24日号

 

   大洗女子、自殺のパフォーマンス

 

 今日の午前10時より開催された大洗女子と釧路学園の戦車道の練習試合において、戦車道史上例を見ない、一種の欺瞞作戦が遂行され、成功した。欺瞞作戦を行ったのは大洗女子側。その内容は、「戦車道の本質は戦争である」として、我々は戦争をするのだ、という旨のスピーチを試合開始前に行い、最後に自殺に見せかけたパフォーマンスを行う、というものであった。その過激な内容によって釧路学園側は動転。一瞬の隙をついて一気に攻め込み、大洗損害なし、釧路全車中大破の圧勝となった。

 今回の試合については人の感情をうまく利用した作戦であるとする声もあるが、全体主義を助長する危険なものであったという声もあり、市民の間では意見が分かれている。

 実際にパフォーマンスを行った大洗女子の生徒Aさんは、記者の「試合前の発言はどこまで本気か」という質問に対し、こう答えた。

 「戦車道と戦争との関係はどれだけ足掻いても消えないと思っています。安全なスポーツであると割り切ってしまうのはかなり危険であるとも思っています。戦車道を行くものは一般の方々以上に、戦争の事実を忘れてはいけない。日本全体が狂気の渦に巻きこまれていったことを忘れてはいけない。今回のパフォーマンスはそう言った思いの裏返しです」




おい、初っ端からこんなチート(&狂気)でええんか。おい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ6

 今日は冷泉の体調が優れない。もう放課後だというのに、体が全く動かない。くそ、昨日戦車道システム構築をどん詰まっているのにムキになって続けたのがもろに祟っている。ああ、眠い。ああ、辛い。

「Come, heavy Sleep the image of true Death...」

 このままどこか彼方へと行ってしまいたい。いろんなものを捨てながら。

「And close up these my weary weeping eyes...」

「わっ、冷泉先輩そんな、キューポラの上に寝そべって何を。ていうかその不健康そうな歌なんですか」

 通りかかった1年生の坂口桂利奈が驚いた声を上げる。それに気づいた同じく1年生の澤梓が言う。

「ああああそれすごく危険な状態です!早く鉄分とブドウ糖を!冷泉さん常備してたはず!」

「Come and possess my tired thought-worn soul...」

 独り言のように歌い続ける冷泉。

「That living dies, till thou on me be ごふっ」

 ゼリー状の栄養剤をねじ込まれる。続けてブドウ糖の塊。

「ぐぼぁ、ごぼ、どぅお・・・ゔぉおおおお・・・」

「あ、蘇生した」

「よかったぁ・・・」

 安心した様子の1年生達。

「麻子!?」

 そこに慌てた様子で現れたのは武部である。

「あっ、梓ちゃん桂利奈ちゃんありがとうね」

「いえ、そんな」「どうも」

「おう沙織。元気してるぅ〜?」

 寝そべったまま低い声で冷泉が言う。

「麻子ったらほんともう・・・」

 武部は今にも泣きそうになりながら。

「バカ!バカバカバカ!どうせまた夜遅くまで仕事してたんでしょ!」

「仕事って、そんなんじゃないって言ってるだろ・・・」

「仕事よ!早く寝てって毎度毎度言ってるのに!みんなのためを思ってムキになって続けて!」

「違う、自分が好きでやってるんだ。私の時間は自由に使わせてくれ・・・」

「あっ、そうだ、私たちこれから1年生会議なんだった!と言うことで行ってきまーす・・・」

「え、そうなの?聞いてな・・・」

「しっ!」

 何かを察した澤が坂口を連れて退場する。

「ええ、そうでしょうね、自分の時間は自由でしょうね。でもね、使い方を間違うと・・・みんな心配するのよ・・・」

 勝手に心配しろ、私は勝手に死ぬ、とまで言う図太さまでは持ち合わせていない冷泉。

「昔は私とあばあちゃんだけだったわよ。でもね、今は、たくさんいるじゃない。あの1年生達だってそう。みんな、あなたを守ってくれてるのよ・・・」

「・・・すまない」

 その一言を搾り出すだけで精一杯であった。

「もう」

 それだけ言って、沙織は車庫を出ていった。

 

-----

 

「麻子さんまたですか。びっくりさせるんですから」

 沙織と入れ違うように秋山が入ってきた。

「おう。またやってしまったよ。それはそうとまだトマトくさいな」

「せっかく心配して来たというのに、開口一番それですか。ま、元気そうで何よりです」

 例の試合は数日前であったが、使ったトマトジュースがよほど濃かったのか、まだにおいが抜けていなかった。

「おかげさまで『サイコトマト先輩』というあだ名が1年生から付けられましたよ」

「ぶっ」

「あなた笑ってますけどね、あなたにもあだ名ついてますからね」

「まじで」

「『デーモンコア先輩』ですよ」

「それはちょっと違うな。デーモンコアは『口を閉じたら臨界』じゃないか。私は『口を開いたら臨界』だ」

「自分の発言が核反応だというところは否定しないんですね」

「でも一発芸思いついたから良しとする」

「なんですか、マイナスドライバー口に挟むんですか」

「あ、正解を言うなよー」

「しょーもないなぁ」

「で、他の誰かにはないのか、あだ名」

「いえ、私が把握してるのはこれだけです」

「我々にだけ変なあだ名がつくのは癪だな」

「なんですか」

「作ろう。あだ名を。今。あんこうチームだけでも」

「まじですか。俄然やる気が湧いてきました」

「まず沙織だ。どうする」

「彼女は・・・恋に恋してますよねぇ・・・」

「なんでできないんだろうな、彼氏」

「多分少女漫画で恋愛を勉強しようとしてるのがいけないんだと・・・」

「それだ、あだ名『花とゆめ先輩』決定」

「別に花とゆめ限定ってわけじゃないですが・・・インパクト十分なので良しですね」

「次、イスーズさん」

「何かと前衛的ですから・・・『アヴァンギャルド先輩』?」

「捻りが足りん。ハートの脆さを加味して『アヴァンギャルド・オゾンホール先輩』だ」

「一気に得体が知れなくなりましたね。あと長い」

「はい最後、西住さん」

「尊敬しています」

「だろうな。他にないのか。私はいまだにあいつを掴みきれていない」

「実を言うと、私もなんです」

「えー、あんなことやっておきながらか?」

 「あんなこと」とはもちろん西住氏籠絡事件のことである。

「彼女は凄い。奇抜な作戦で相手を翻弄する。でも確実に勝っていくんです」

「普通やらないことをやって一発で成功させていくからな。彼女こそが鋼メンタルなのかと思いきや、だし」

「わかりません」

「わからんな」

 沈黙。

「『アンチミスティック先輩』」

 秋山が呟く。

「Anti-mysticか。なるほどな」

 冷泉が納得した表情で言う。

 

 西住みほ。かつて西住流の総本山、黒森峰女学園の副隊長として活躍。夏の決勝戦で自らの親友も乗る戦車に対し、わざと撃破されて、増水した川に流されるように指示。命に関わるとしてプラウダ高校側が中止を提案するが、そこで乱れたプラウダの隊列を突き、勝利。仲間の命を利用した作戦であり、隊長には秘密裏に敢行された作戦でもあったため、邪道であるとして西住流を破門される。

 Mystic。宗教的神秘。西住みほは、それとは対極の存在であった。

 




冷泉さんが歌ってたのはジョン・ダウランド作曲『来たれ、深き眠りよ』です。
神曲なのでみんなも聴こう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ7

こんなわけわかんないストーリーのような何かにでもお気に入りをつけてくださる奇特な方々に乾杯。

今回ちょっとそど子さんの扱いがアレなので、ファンの方は特にご注意を。それ以上にみほさんファンはご注意を。

7/27 著作権違反の可能性がある部分を改変。


「みん〜なが〜んばれ〜♪私はもう無理だ〜♪」

 冷泉は、ああ、佐藤のレーズン食べたいな、などと思いながら歌を歌ってご機嫌で廊下を歩いていた。

「ねえねえマコちゃん♡」

 ところが、やってきたではないか。心の平安を容赦無くぶち壊していく存在が。

「何ですか会長。今回はどんな面倒ごとを?」

 そう、大洗女子学園生徒会長角谷杏。この人が私にこんな調子で冷泉に接するときで、面倒ごとを抱えていなかった試しがなかった。戦車道システムだってそうだ。

「あのね、みほちゃんがね、その・・・『弄びモード』になちゃったの。風紀委員長相手に」

 ああ、そど子・・・強く生きろ・・・

「わかったよ。行くよ」

 

-----

 

「じゃあさっさと人を殺して刑務所にぶち込まれなさいよ!」

 そう叫んだのは風紀委員長の園みどり子。

「違いますよ。全然違います。私は今そう言う話は全くしてないんですよ」

 相対するは西住。この様子では園の言葉は全く効いていないようである。

 昼休みの教室のど真ん中。二人の周りには取り巻きがたくさん。そして、多くの人々は、憐れみと畏怖の混じったような顔をしていた。憐れみは、園に対して。畏怖は、西住に対して。

 

 事の発端は、その日の4限目であった。「特別授業」の名目で、小学校で言うところの、「道徳」のような授業が行われたのである。そして、その授業内容の見回りに来ていたのが園であった。「なぜ人を殺してはいけないか」と言う話題。みんなが当たり障りのない答えを言っていく中、西住の発言が、園の目につけられたのだ。問題の発言がこちら。

「『人を殺してはいけない』と言う考え方は、あくまで人工的なものであると考えます。具体的には、『共同体』の概念なくしては成り立たないと考えます。従って、実は、根源的に殺人を禁止することは不可能であると思います」

 案の定園に授業後の呼び出しをくらった西住。園は開口一番こう言った。

「あなたは小学校から道徳の授業を受け直すべきです」

 そして、今に至る。

 

「いいですか、私は『人を殺していい』なんて今まで一度も言っていません。ましてや『私は人を殺す』とも。所属する共同体や文化的文脈によって意味が変わってしまう、と言いたいだけです」

「そんなことはあり得ません。殺人がいけないことなのは自然の摂理から証明できることです。人によってその解釈を変えるなんて、許されないことです」

「『自然の摂理によって証明』って。今、あなたは『自然の摂理に従うことは正しい』と言う超絶間違った前提を引っ張り出してきましたよ」

「間違っ・・・はあ?」

 人でないものを見るかのような目で言う園。

「『自然が正しい』なら、二酸化炭素を吐き出す自動車は環境にとって害悪なので直ちに使用を中止すべきです」

「それとこれとは違う話でしょ!」

「同じです。論理構造が同じです。あなたは、『人と自動車は違う』と言ったに過ぎません。ではこれならどうでしょう。生殖行為を行う意思のないLGBTその他性的マイノリティーは弾圧すべきです」

「うぐっ・・・」

 そこに現れたのは。

「れま子!?」

「やあやあ、西住さん。そこまでにしとこうよ。まだ遊び足りないなら、私が相手するからさ」

「ああ、冷泉さん。ごめんね、私が話したいのはあなたじゃなくてこの人なの。だからあなたの提案には残念ながら乗れないわ」

「いやー、私はその人をそれ以上叩いてももう何も出てこないと思うけどな。私は君ともっと面白い話ができる自信がある」

「ちょっとれま子!何よその言い草は!」

 冷泉は園を無視して続ける。

「委員長だってね、君と同じように、ある一定の信念に従って行動してきたんだよ。たとえそれがそびえ立つクソのようなものだったとしてもだ。大体、君は言論の自由を最大限認める立場だと、常々言っていたじゃないか。各々、自分の思う正しさに従って生きればいいと。その上で、自分の考えが、絶対ではないことに気づければいいのだと。そうやって、多様な考え方を追っていく中に遊びを見つけていけばいいのだと。どうだい、君のそのあまりにも優しい心をして、そいつを許させるというのは、どうしてもできないことかな?委員長のような考え方をもった人間が数人いたところで、世界は大して変わらないと思うし、確固たる考え方を獲得するまでの途中段階だと思えば、多少ムカつきも治ると思うが」

「この方は、あなたの親友なのですか?」

 ずっと黙って冷泉の言葉を聞いていた西住から発せられたのはそんな言葉。

「なっ、そんなわけないでしょ!」

 噛み付く園。

「まあ、そうかもしれないな」

「そうですか。まあ、信頼するあなたの友達をいたずらに弄んだのは確かに悪趣味でしたね。このことによってあなたとの信頼関係が崩れるのは私としても本意ではないので、ここはあなたの提案を飲んでおくことにしましょう」

「おう、悪いね、手間かけて。また時間があるときにしっかり話そうじゃないか」

「ええ、それでは、休み時間も終わってしまいますので。また今度」

「うい」

 西住は園に何の言葉もかけることなく去っていった。

 さて、自分もそろそろ行くとするか。

「だる〜いぞ♪だる〜いぞ♪うるせえはっとばすぞ〜♪」

 調子っ外れな歌を歌いながらその場を去ろうとする。

「ちょっとれま子!」

 しかしそうさせてくれないのは園である。

「何よ、黙って聞いていれば私の信念がそびえ立つクソだとか途中段階だとか、好き勝手言ってくれるのね!」

 ガミガミ言う園。

「でも・・・」

()()()()()()()()()()()

 ニヤリと微笑を浮かべて冷泉は言う。

「うっ・・・その・・・ありがとう」

 すると冷泉の口がますます横に広がって。

「えへへへへへへ」

「わっ、やめなさい!抱きつくな!こちょこちょするな!」

 そんな二人を照らす午後の太陽であった。




この世界線では西住さんと冷泉さんの通学路は別なので、西住さんがふらふらの冷泉さんを送り届けるイベントは発生しておりません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ8

「In trutina mentis dubia

fluctuant contraria

lascivus amor et pudicitia.」

 

 放課後、戦車道の練習場の小高い丘の上。五十鈴は歌っていた。

「綺麗な歌ね」

「でしょう?」

 ふとやってきた武部の言葉に答える五十鈴。

「そんな綺麗な歌も知っているのね・・・私、華ちゃんのこと今まで勘違いしてたかも」

「あらそう?まあ、ずっと変な曲戦車内でかけてましたからね・・・」

 以外にも武部の言葉にあまり反発の様子を見せない五十鈴。

「そうよ、どぎつい曲ばっかりかけるんだから。それで、どう言うこと歌ってるの?」

「ああ、これはですね・・・」

 そういって五十鈴は日本語訳を朗読し始めた。

 

「揺れ動く心の天秤の上に

互いに向かい合って置かれているのは

気楽な恋と、慎ましさ」

 

「きゃー・・・なんてお耽美な」

「そんな『耽美』なんて単語も知っているのね・・・私、沙織さんのこと今まで勘違いしていたかもしれません」

「・・・これは、一本取られたのかしら?」

「そう言う認識で大丈夫ですよ」

 こう言うところが、五十鈴の『いい性格』であった。

「いやー、でもそうかー、華ちゃんがそういう歌を歌うってことは、流石に()()()()ってことだよね?大方、麻子に被曝したってところでしょ?」

「・・・さすがですね」

 しかしながら、武部の方が一枚上手であり。

「それで、どうなのよ、どっちを選ぶの?」

「ええ、この歌には続きがあってですね・・・」

 そう言って、五十鈴は続きを歌い出す。

 

「Sed eligo quod video,

collum iugo prebeo;

ad iugum tamen suave transeo.

(でも私は目に見える方を選び

首をくびきに捧げて

甘いくびきに向かって進むのです)」

 

「というわけです」

 五十鈴の目に迷いはなかった。

「攻めるのね」

「攻めます。ただし、『気楽』には行きませんよ」

「つまり攻め攻めの攻めってことね」

「そういうことです」

「ということは、もう何か実行に移しててもおかしくないわよね?」

「ええ、そうですよ」

「おおっ、なになに〜?どんなことしちゃったの〜?」

 するとさも自信ありげな表情で五十鈴は言った。

「この歌をあの方がいる前で口ずさむように歌いました」

「・・・へ?」

「この歌を、歌いました。あの方の前で」

「・・・確認いいですか?」

「はい?」

「何語で?」

「もちろん原語で。ラテン語。じゃないと美しくないので」

「まーわーりーくーどーっ!!!それどんだけ外堀なの?あなた今江戸城攻めるのに東京湾から埋め立ててるよ!?」

「まずは彼の無意識に働きかける感じで」

「フロイトかっ!」

 よく知りもしない心理学者の名前を出してみる。

「だめ!とにかくだめ。何が攻め攻めの攻めよ!」

「それ沙織さんしか言ってないです」

「うるさーい!華さんのやり方じゃ攻略に30万()()かかるわよ!」

 スケールの大きいことを言おうとしすぎて単位が長さになっている。

「今度の日曜日、私の家に来なさい。私が恋愛の仕方を教えてあげるわ」




カール・オルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』より『In trutina』
例によって神曲なので(ry


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ9 und Appendix

「で、どうだったよ、今日の冷泉先輩特別授業は」

 大洗の学園艦の上のある喫茶店。冷泉はレアチーズケーキの先っちょを頬張りながら言う。

「・・・しゅごかったです・・・」

 1年生6人、異口同音に言うもんだから、冷泉はむせそうになった。

 

 状況を整理しよう。冷泉が募集をかけた戦車道データシステムの本番環境へのデータ入力のバイトに応募したのが1年生6人組、「うさぎさんチーム」である。生徒会を半ば脅すような形で手に入れたバイト代を冷泉は予定通り6人に渡そうとするが、6人は「お金はいらないから、数学を教えて欲しい」と依頼。6人の中には数学が得意なものがおらず、6人でわからないものを教え合う、と言う形が通用しなかったのである。冷泉は最初は渋ったが、6人の熱意に圧倒されて承諾(低血圧の時にいつも助けてもらっていることへのお返しの意味もあった)。斯くして第一回冷泉自主講座が開催され、今は「頭を使った後に甘味は必須だ」と言った冷泉に連れられて喫茶店である。お代はもちろん生徒会から手に入れたバイト代である。

 

「なんだか、魔法を見せられてるような感じだったよね!『ベクトルの内積が謎です』っていう質問からこれだけ出てくるなんて!」

 興奮気味にそう言ったのは坂口桂利奈。

「最初はなんだかすごく当たり前そうな話から入っていったけど、『逆にこれさえ満たせば全部ベクトルです』っていうアクロバットさがすごかったよね」

 と、両手に握りこぶしを作りながら言ったのは山郷あゆみ。

「私は関数もベクトルだって言うのが衝撃だったわ〜」

 と、感慨深そうに宇津木優希。

「内積の定義があれだけ簡略化できるなんてね!」

 メガネをくいくいさせながら大野あや。

「最終的に相関係数の『種明かし』までされるとは思ってませんでした・・・」

 やけに改まった表情で澤梓。

「具体的な『中身』を気にせずに、ベクトルと、その内積の抽象的な性質だけで、コーシー・シュワルツの不等式が示せちゃうっていうのには、抽象的な定義の強みを感じた・・・」

 と、モンブランの栗をもきゅもきゅさせながら言ったのは丸山紗希。

「紗希ちゃん!?」

 驚いた様子の澤。それを無視して冷泉が言う。

「ほう・・・なかなか言うじゃないか。実際、『中身』を()()()満たすべき性質だけでごにょごにょする、って言うのは、ベクトルに限らずいろんなところで使う。それの究極形が『圏論』ってやつだ。これは私もあまりよく知らないが・・・」

「なにそれ〜」

 と宇津木。

「『対象』と『射』と『合成』だけで色々やるらしい。圏論の教科書をのぞいたことがあるが、文字と矢印を組み合わせた図がいっぱい載っていたよ」

「わー、やばそー」

 と坂口。

「まあ、とにかく。君らが十分楽しんでくれたようなので、余は満足じゃ」

「はは〜」

 6人同時。

 

 こうして、半年に及ぶ『冷泉ゼミ』が始まったのである。

 

-----

 

Appendix

 

以下は、第一回冷泉自主講座にて使用されたお手製のテキストの一部である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

【挿絵表示】

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロトタイプ10

 角谷生徒会長は、西住の寮に向かっていた。会長の方から一生徒を尋ねなければならぬ理由があった。

 西住のおかげで、廃校の危機は去ろうとしている。しかしその裏には角谷による戦車道履修の強制があった。事態がひと段落した今、ようやくその事について感謝し、謝れる日が来たのだ。

 西住の部屋の前に着き、インターホンを押そうとした時、ふと気づいた。部屋の中から、ヴァイオリンとピアノの音が漏れ聞こえてくるではないか。角谷はその場に立ち止まってしまった。その音楽が、あまりに静謐で、美しいと感じたからであった。

「そんなところでどうしたんですか会長。熱中症になりますよ」

「わっ」

 西住が突然に扉を開いて言ったものであるから、角谷は驚いてしまった。

「どうしました?何かご用があるのでしょう?」

「そ、そうだった。いやごめん、私がいるってなんでなんで分かったのかな。ちょっとびっくりしちゃったよ」

「念です。そんなことはどうでも良いので、中に入りましょう。暑すぎて色々融解しますよ」

 ちょっと怖い西住の言葉にささやかな恐怖を抱きつつも、勧められるがままに角谷は西住の部屋に招き入れられた。

「おお・・・」

 西住の部屋には実に色々なものがあった。本棚を見れば『戦車道全国大会ルールブック集'90~'10』『無限軌道の原理と応用』『砲手教育論』『空気抵抗による弾道補正の理論と実際』といった戦車関連のものから、『論理哲学論考』『純粋理性批判』『精神分析入門』『構造と力』などの思想・哲学書、挙句には『六法全書』『ナヴィエ・ストークス方程式』『解析力学』『ゲーム理論入門』『基礎 超ひも理論』さらには聖書やコーランまで、ありとあらゆる分野の本が並んでいた。そして、本棚の隅っこに控えめに座っていたのが『ボコられグマのボコ』であり、そのまた隣にミニコンポがあって、音楽が流れていた。

「そうだ・・・この曲、何?」

 すると、西住はCDのケースを取り出した。

「ああ・・・これですよ」

 角谷が見ると、そこには『César Franck / Sonata Pour Piano et Violon』と書いてあった。

「私が『ひと聴き惚れ』しちゃって。五十鈴さんに貸してもらったんです」

「なるほどぉ、五十鈴ちゃんもいろんな曲を知ってるんだねぇ。『ヴァイオリンソナタ』ってやつかな?」

「そこなんですよ。よく見てください。一般的には『ヴァイオリンソナタ』で通じるんですが、原語では『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ』なんです」

「ああ、ほんとだ。でも、ヴァイオリンソナタって普通ピアノとヴァイオリンじゃないの?」

「『ピアノ』と明記してあるのが重要なんですよ。この曲ではヴァイオリンとピアノは音楽的に対等なんです。ちょうど今第四楽章が始まりますから聞いてみてください」

 第四楽章は、ピアノとヴァイオリンが同じメロディーを1小節ずれで演奏する、というものであった。

「みんなヴァイオリンばっかり聴こうとしますけど、それだけじゃ全然この曲を理解した事にならないんです。この曲のそういう部分にも惹かれたんです」

「と、言うと?」

「戦車道の試合を考えてみてくださいよ。キューポラから首出してる人だけ意識して、勝てると思いますか?」

 キューポラから首を出している人とは、もちろん車長のことであるが、当然戦車の乗員はそれだけではない。

「負けるね。確実に負ける」

「『全体を見ろ』と『全体を聴け』。とっても似てるじゃないですか」

 そこで角谷はハッとする。

「ありがとう、みほちゃんのお陰で今から私がやろうとしていたことが筋違いなことだと気づいたよ」

「と、言いますと?」

「感謝と謝罪をしようと思ってたんだ。みほちゃんに。みほちゃん『だけ』に」

「・・・ふふっ。あはははははは」

 西住は笑い出した。

「それは、確かに、ふふっ、色々おかしいですね」

「だろ」

「第一に私だけにいうべきことではない。これが会長の気づいたことですよね」

「・・・そうだけど、なに、第二があるの?」

「はい。第二に、そもそもあなたの謝るべき人なんていやしないということです」

「えっ」

 角谷はびっくりして固まってしまった。

「私は会長が強制的にでも戦車道履修させてくれた事に感謝してるんですよ。あの時の私は『拗ねて』ましたから」

 西住は続ける。

「去年の全国大会、ちょっとばかし道化を演じてみたっていう程度だったんだけど、それをお母さんもお姉さんも『流儀に反する、破門だ』とか言い出して。ちゃーんと安全対策もして、予行演習も何回もやったんですがね。私としてはとても面白くなかったんです。『何さ、みんな流儀に従うのが目的になってるじゃん』って感じてしまって。それじゃあ発展性がないじゃないですか」

「何というか、らしいな」

「それで、私がいつも言っている事に繋がるんですよ。戦車道の『道』の側面ばかり見てると、危険だよっていう。戦争が本質であることを忘れてしまっては、じきに私たちはまた同じ轍を踏んでしまいます」

「そうならないようにするためのみほちゃんなりのやり方が、『狂気の再現』だったってわけね」

「そうです、戦争の狂気を()()()()()()追体験する、というのが重要なんです。おかしいよね、と感じながらも、狂気に身を置く。そうすることでみんなは戦車道以外でも、狂気に敏感になる。狂気の兆候に気づけるようになる。秋山さんも先の練習試合の時のインタビューでも、私は何も言っていないのですが、分かっていたようでした。いわば反面教師、と言ってしまうとちょっと何様だよという感じですが。もちろんそれ以外のやり方がないのかと言われれば、多分ある、と答えちゃうと思いますけど」

「聞く限りでは、そんなに深刻な理由でもないんだね」

「そうですよ。恨みが云々とか、復讐が云々とかじゃないんです。もちろん『つまんねぇ!意趣返ししてやらぁ!』ぐらいの気持ちはありますが」

「あはは、そんな言葉がみほちゃんの口から出てくるとは思わなかったよ」

「押し付けがましくなく、戦争の事実を意識してもらう。これは私が前々からやりたかったことなんです。拗ねていた私にもう一度機会を与えてくれた会長には、感謝しています。きっと他のみんなもそうですよ」

 そういって頭を下げる西住。それを見た角谷も慌てて頭を下げて。

「わわっ、いえいえ、こちらこそ」

 その日は夜まで角谷は西住と音楽を聞いて過ごしたのであった。




セザール・フランク作曲『ヴァイオリン・ソナタ』
超 絶 神 曲
聴こう!!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Interlude I

実在の地名とそれをもじったものが出てきますが、ディスる意図は全くございません。


 以下は「大洗女子学園戦車道大会優勝記念祝賀会」にて行われた余興の台本の一部である。

 

-----

 

<舞台、明転。二人の女性(秋山、五十鈴)がある程度の間隔をあけて立っている。秋山が下手側、五十鈴が上手側。二人とも無表情で不動。そのまま10秒待機>

 

秋山「わっ」

 

<秋山のみが生気を吹き込まれたかのように表情が戻る。その場から動かずにゆっくり周囲を見回す。少し左を見て、次にゆっくりと右回り。270度回転したところで五十鈴の存在に気づく>

 

秋山「うおっ」

 

<その場から2歩ほど後ずさり。少し思案して、恐る恐る五十鈴に近づいていく>

 

<まずは顔を向かいあわせる。次に手を顔の前で振ってみる。目の前で指パッチンする。五十鈴は反応しない。再び思案する>

 

秋山「第二」

 

<徐に「ラジオ体操第二」の「腕と足を曲げ伸ばす運動」を始める。五十鈴は反応しない。途中でボディービルダー然としたポーズも入れてみるが、やはり反応なし。ここで秋山は何かを思いつく>

 

秋山「(観客に向かって)しーっ」

 

<自分がいる側とは反対側の肩を叩くという古典的な嫌がらせをしてみる。すると、五十鈴は叩かれた側でなく秋山のいる側を向く。顔は相変わらず無表情で>

 

秋山「きゃん」

 

<秋山は子犬のように飛び退く。転がる時、無駄に受け身を取る>

 

<仕掛けるつもりが逆にやられてしまった秋山は悔しそうな表情で五十鈴の前を行ったり来たりする。その行ったり来たりする動作が、滑らかに反復横跳びへと変化していく>

 

秋山「カバディカバディカバディ・・・」

 

<反復横跳びを続けながら一息分「カバディ」を連呼する。五十鈴の反応なし>

 

<横飛びから徐々にカニ歩きへと変化。カニ歩きで五十鈴の周りに円を描く。この時、秋山の顔は常に五十鈴の方を向いている>

 

秋山「月。わたし月。あなた地球」

 

<どこからか秋山は懐中電灯を取り出し、客席から見て左側から自分の顔に光を当てる>

 

秋山「これ太陽」

 

<五十鈴は無反応。悲しそうな顔で懐中電灯をしまう>

 

<カニ歩きのスピードを徐々にあげる>

 

秋山「加速」

 

<カニ歩きはついにダッシュへと変化。それまで続けていた円運動の内側へ入り込んだ後、全速力で五十鈴から離れていく>

 

秋山「スイングバイ!・・・からのー・・・停止!直ちに超信地旋回!」

 

<急停止した後、器用に足を滑らせて五十鈴の方を向く。右手をを五十鈴に向ける>

 

秋山「方位350、仰角4度。『五十鈴華絶対笑かす号』装填。打てっ!でゅーん」

 

<手は拳銃の形。五十鈴に向かって移動。人差し指が五十鈴の右頬に突き刺さる>

 

秋山「ここっ。ロシアの工業都市、ボロネジ!」

 

<無反応>

 

秋山「追撃!」

 

<今度は五十鈴の鼻の頭>

 

秋山「ここっ。カトリック総本山、()()()()市国!」

 

<無反応>

 

<渾身の一撃が通用しなかった秋山は、ついにその場に泣き崩れる>

 

秋山「うああああああん」

 

<泣き出されるとは思っていなかった五十鈴はようやくその場を動き、秋山の背中をさする>

 

秋山「うえあああ、あアあアああああ」

 

<ところが、秋山は余計に泣きじゃくる。裏声も混ざってくる>

 

秋山「あアあアあ!あアあアあ!あアあアあ!ピッ。はい秋山です」

 

<泣き声だと思われていたそれは着信音であった。秋山は携帯電話をとり出して何事もなかったかのように話し出す。五十鈴、驚愕の表情>

 

秋山「あ、どうもお世話になっております!・・・ええ、はい・・・。あっ、もう手配できたんですか、例のブツ!ええ・・・それでは明日、指定の場所で・・・はい・・・豚丼・・・豚肉抜きで・・・はい、お願いします、はい、はーい」

 

<秋山は得意げに五十鈴の方を見る。驚愕したまま固まっている五十鈴。それを見た秋山、ここぞとばかりに勝者のポーズ(ボディビルダー然)。観客に拍手を要求>

 

<不服げな五十鈴は、ジャスチャーで何かを要求。秋山、親指を上に向けて承諾>

 

<暗転。5秒待機>

 

-----

 

<明転。最初と同じ状態>

 

五十鈴「はっ」

 

<五十鈴はすぐに秋山に気づき、近づく。秋山の顔の前で手を振る、指パッチンするなどして秋山の無反応を確認。すると満足そうに、ゆっくりと歩き出す>

 

<秋山と十分距離を取ると、秋山へ向けて走り出す>

 

五十鈴「ふんっ」

 

<五十鈴は床を蹴ったかと思うと、空中できりもみ回転。そして・・・>

 

五十鈴「ビターン!(セルフ効果音)」

 

<うつ伏せで落下。受け身など一切とらない。秋山がビクッとする>

 

<五十鈴は寝そべりながらゆっくり、実にゆっくりと秋山の方を向く。ここで五十鈴の顔は観客からは見えていない>

 

<10秒ほどの沈黙>

 

秋山「ぶっ」

 

<秋山は顔を隠す。そして後ろを向く。肩が震えている>

 

<再び沈黙。五十鈴の顔はやはり観客からはわからない>

 

<秋山が再び正面を向く。その顔は目を剥き、口を最大限横に引っ張っている。何かを我慢しているかのようだ>

 

<突如五十鈴の右手が自身の頭を持ち上げる>

 

五十鈴「涅槃」

 

秋山「ぶーっ!」

 

<秋山、吹き出してその場に倒れ込む。五十鈴、立ち上がり勝利のポーズwithそれまでやっていたのであろう顔>

 

-----

 

<笑いをやめられない秋山と例の顔をやめない五十鈴の間から現れたのは西住である。眼鏡をかけ、バインダーを持っている>

 

西住「えーただいまの試合の結果を発表させていただきます。第一フェーズ、秋山オフェンス、決まり手『エア着信』。技術点54.667、芸術点123.5。総合178.167。第二フェーズ、五十鈴オフェンス、決まり手『かぶきブッダ』。技術点65.333、芸術点100.0、短時間決着ボーナス15.0、総合180.333。よってただいまの試合、五十鈴選手の勝利です」

 

<秋山、五十鈴、両者握手>

 

西住「本日の試合はこれで全て終了です。それでは来週も『全日本コンビで一人だけしか動いてなくてもコントになるんですか選手権』をお楽しみください」

 

<暗転>




某コンビを意識したが、私の力では劣化コピーにしかならな
かった
知るか


ほんとは動画化したいんだけどなぁ・・・


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。