偉大なる旅路 (お下品さむらい)
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第一話「フューの思惑? 悟空を襲う次元の穴」

 タイムパトロールとして働く、幼い身体の孫悟空とトランクス・パンの一行は、とある次元に不可解な乱れがあるとの辞令をうけて時空の流れを移動していた。

 

「そろそろ目的の座標につきますよ」

 

 移動用に使用している宇宙船の操舵をしているトランクスが、おとなしくしないふたりに声をかける。

 

「十八万二千三百八っ……十八万二千三百九っ……、お、案外早かったな」

「もうお爺ちゃん! いい加減暑苦しいからやめてよっ。あっ、こらギル! 私のスマホ食べようとしないで!」

「あははは……、!?」

 

 いつも賑やかな悟空一家の空気に苦笑をこぼしていると、モニターの赤いランプが灯をともす。

 「WARNING」の文字とともに機械音声ががなりたて、広い空間にこだました。

 

「な、なんだトランクス! 問題か!?」

「ギルルルー、パン・キケン、パン・キケン」

「時空壁に高エネルギー反応が複数確認されました! うわっと!」

 

 船が大きく揺れ、機器がショートし手に負えない。舵から手を離したトランクスがシートベルトを外そうとしている間、パンが天窓を開き外に出る。乱流にギルが飛ばされないよう胸に抱えながら、長い横髪をかきあげて前をみやると、そこにはいくつもの歪みと間欠が世界を乱していた。

 

「ね、ねえトランクス! あれってかなりヤバイんじゃない!?」

「! とんでもない重力だ……! それがいくつも連なって、まるでブラックホールのように全てを潰そうとしている……!」

「おいトランクス! 気を探ってみろ!」

 

 悟空に言われ、トランクスとパンも気を読む。大きな力の乱れによって少しばかりわかりづらいが、それでもほんの少しだけ流れてきたパワーに驚く。

 

「こ、これは……、どれだけの人数が戦っているんだ!? ああっ、また!」

「キャーーッ!!」

「パン! ギル!」

 

 戦闘の余波で大きく時空壁が波打つ。歪みがより大きくなり、そしてついに空間がひび割れ始めた。突風に弾き飛ばされるふたりを悟空がつかみとる。

 

「宇宙船の早さ、空間を歪ませる重力……まずい! これは原始的なタイムトリップの理論と同じ状況です!」

「なんだって! つまりオラたち、このままだとどうなんだ!?」

「時空に現れる落とし穴、ワーム・ホールに吸い込まれます! 出先は次元も時間も座標不明! いちど入れば戻れる保証はありません!」

「それってどんな穴なんだ!」

「七色の光をはなつ黒い真円がそれです! とても不安定なので消えたり閉じたりしていて……」

「それって今くぐったこの穴か!?」

「そうです、ちょうどこんな風に……って、えーっ!!」

 

 時既に遅し。悟空一行は大きな力に流され、ワーム・ホールに吸い込まれてしまった。

 はてさて三人に待ち受ける試練とは……!?

 

 

 

「ふふふ、計画通り成功したね……。さて、どんなキセキを見せてくれるかな?」

 

 暗い部屋の中、モニターのあかりだが怪しい影を照らしだす。暗黒魔界の科学者、フュー。こんどはどんな計画を立てているのか……。それは彼にしかわからない。

 

 

 

 

 

「クァー、クァー……」

 

 海鳥が朗らかな青空を飛び渡り、鳴き声が波音飛沫に掻き消える。波紋が広がるような揺蕩いに、パンの意識が覚醒した。

 

「う、ううん……、ここは……」

「ん? おう、起きたかパン!」

「お爺ちゃん……?」

 

 まぶしさに目をしばたかせ、かぶりをふってあたりを見回す。

 見渡す限りの大海、磯風にあおられながら、海面を滑るようにホバーするバギーの上で眠っていたようだ。

 

「これって……」

「C社自慢の水陸空兼用ウォーター・エア・バギーさ」

 

 またしても舵を握るトランクスが、淡い紫の髪をなびかせながらゆっくり走らせる。

 大きく揺れないように安全運転を心がけた結果か、パンの身体は疲れを感じなかった。

 

「……って、なんであたしたち海にいるの?」

「どうやら未発見の世界へと落ちてしまったようでね。天界とも連絡がとれていないんだ」

「ははは、ほら見ろよパン、変なやつがいっぱいだぞー!」

 

 レジャー用の車だけあって、底に空いた丸窓から下がよく見える。悟空に言われてパンも覗きこむと、象のような長い鼻先をもつ魚が泳いでいる。かと思えば水玉模様が奇妙な馬頭の巨魚が群れで泳いでいるのが見え、水面を破って顔を出す。並走する群頭に気をよくした悟空が手をふれば、これまたぶさいくな鳴き声を嘶かせる。おかしく思って三人が顔をつきあわせると、みんな笑顔を浮かべていた。

 

「なんだか楽しそうな世界ね!」

「喫緊のキケンはなさそうだ。ひとまず人と会って情報を聞き出しましょう。ちょうどこの先に大きな街があるみたいですし」

 

 三人が気を探れば、見知らぬ者であっても人がいることぐらいはわかる。中でも悟空が興奮をおさえられないようで、むくりと立ち上がった。

 

「おら、先に行ってくる!」

「あ、悟空さん! 一応言っておきますが飛んじゃダメですからね! あくまで目立たないように!」

「おう! わかってるって!」

「てちょっと! レディーの前で脱がないでってば!」

 

 やおら服を脱ぎだした悟空にパンが憤るも、既に聞いてない。小さな身体にしては大きな音をたてて潜水した悟空は、バギーよりも早いスピードで一直線に目的地へと泳いで行った。

 

「いや……、十分あれも目立つだろうなあ……」

「ふん、知らない! こんどお爺ちゃんが困ってても助けてあげないんだからっ!」

 

 怒るパンをなだめるのに苦労しそうだ、と考えながらトランクスはため息をついたのだった。

 

 

 

 

「いやー、懐かしいなー。ずっと前にもこんな風に泳いだっけか!」

 

 如意棒にくくりつけた衣服が濡れないように気をつけながら、まるでスクリューみたく音をたてて泳ぐ悟空。かつて天下一武道会に間に合いそうになかった時、修行ついでに地球半周分ほど泳いだことを思い出していた。

 

「そういやあん時はめちゃくちゃ腹すかしちまって、爺ちゃん達を慌てさせたっけ……思い出したら腹減ってきたぞ」

 

 連綿と続く海原の地平線、めし処までは遠いし、そもそもこの世界のお金がない。しばし考えて、海の中を見て快哉を叫んだ。

 

「ゴボば! ばバぱぉボププゎぐヴぉぼぼ!(そうだ! 魚を取りゃいいや!)」

 

 悟空にとってみれば天然の食い放題だろう。中でも大猿よりも大きそうなあの巨大魚。見るからに肉付きが良さそうだし、食いがいがありそうだ。よだれを垂らす悟空はそんなことを思って、水面に顔をつきだし大きく息を吸うと、また海に顔をつけて一息に大声をあげた。

 

「ワッ――――――――ッ!!!」

 

 海全体を揺らす音。爆弾でも落としたように大きな水飛沫を作り、空に虹を作る。海に縦穴があき、悟空の数千倍はあるだろう大きな『魚』が浮かび上がった。

 

「へへへ、いい手土産になんだろ。あいつら驚くぞー」

 

 如意棒に新しく『魚』をくくりつけて、先程よりも早いスピードで悟空は泳ぎだした。

 

 

 

 

 ここは水の都・ウォーターセブン。花も実もある造船の町だ。毎年ある高潮にも負けず、表では世界政府御用達、裏には海賊相手でも商売を続けるたくましくも勇ましいこの町の港は、今日も賑やかだった。

 

「おい聞いたか、ヨコヅナのやつまた海列車に撥ねられたらしいぜ!」

「かぁーっ、あいつも変わんねえな! お、お前んとこにゃ昨日海賊が来てたな。大口かい?」

「とんでもないぜ、ありゃ小粒も小粒だ。フランキー一家のがまだマシだろうさ! おかげで赤字だよ」

「ははは、町のゴミより劣るなんて。どうやってここまで来たんだろうなあ!」

 

 くだらない四方山話にうつつを抜かしつつ、タバコをくゆらして木槌をうつ。船大工達の喧騒がさざなみを打ち消すほどだ。

 口を動かせば手も動く、超一流の船大工である彼らにとっては造作も無い。港につぎつぎ現れる船首は多種多様。だがひとつ共通する点をあげれば、そのどれもがドクロの旗を掲げている。ここは裏の商売を取り扱う、荒くれの集り場。大工もまた気性が荒い頑固者ばかりががん首をそろえていた。

 

「にして今日はやけに静かじゃねえか?」

「どこかの大物でもやってきたのかね」

 

 大小様々、船が壁をつくるように並ぶ中、いつもならば海賊同士の順番争いでもありそうなものだが、今日はそれがおとなしい。

 珍しいこともあるものだ、と思っていると、突如太陽が翳った。

 

「なんだなんだ、巨人族でも来たのかよ!?」

「ばか言え太陽がかくれる程だぞ! それより見ろ、港の、いや海の方を!」

「なんだってんだいったい!」

 

 さしもの大工達の手も止まり、野次馬のように鎌首をもたげきょろきょろと様子を見る有り様だ。

 視線が集まる矢先では、いかりを卸していなかった二十、三十隻もの船が一つ残らず転覆し、波に消える姿と、それは大きく長い影が、港から造船場までの一本道に倒れこまんとする姿だった。

 

「「「「ええええええええーーーっ!!!」」」」

 

 目をひん剥き、心臓でも飛び出そうな程驚く住民達。地響きと土煙をあげて横伏すその巨影の正体は、超特大サイズの『海王類』だった。

 まさか海王類の襲撃? そう一瞬疑った者達の前に、素っ頓狂な闖入者が現れる。ぴくりともしない白眼を向いた海王類の首の下、ちょうどエラの部分から小さな子どもが姿を見せると、

 

「あり? 思ったよりでかかったかな?」

 

 そんなことを言いながら、海王類の大きな鱗がついたままの魚肉をばりぼりと噛み砕く。

 

「……お、おいボウズ、その、こいつはいったいどうしたんだ……?」

「ガリッ、ゴリッ……んぁ? おー、美味そうだったから漁ってきたんだ! おっちゃん達も食うか?」

「「「「食べるかァッ!!」」」」

「ほーかほーか。んじゃオラだけで食うかな。ボキッ、モニュ……」

 

 いきなり現れた悟空にどぎもを抜かれた大工達。置いてけぼりとなった周囲を無視して魚を頬張る姿は、まるで野性の猿そのものである。

 そんな悟空のもとに、多くの足音が近づいてくる。ひどい目にあった海賊達だ。怒り心頭に発し、目を血走らせる連中がぞろぞろと悟空をかこみ啖呵を切った。

 

「ゴルァ! テメェかうちの船を転覆させたのは!」

「間違いねえぜアニキ! このガキがやりやがったんでさ!」

「お、なんだお前らも食いたいんか?」

「誰が食うか! どうやって海王類を仕留めたかしらんが、このオレサマに手を出してただですむと思うなよ!」

 

 勇ましく胸を貼る海賊の話をききながら、リスのように頬を膨らますほど魚を頬張る悟空の様子はとてもじゃないが常人ではない。怯えや警戒、あるいは余裕だとか、そういった類いのものではない何かを、造船場にたまたま居たパウリーという大工は悟っていた。

 

「あのガキ……、どんな育ち方すりゃああなるんだ」

「ああ、パウリーさん。どうしましょう、助けますかい?」

「とんでもねえ。要らねえよ、あいつにゃ――」

 

 

「勝負にもならねえ……だと……」

 

 百人は越える船員が、矢弾を使い、剣刃を駆使して攻撃しても、悟空は避けることさえしなかった。

 鉛弾は肌にあたたった瞬間に弾かれ、剣はねじまがり刃が欠けてしまう。

 『大人と子供の戦い』。そう形容する言葉さえ矮小に思うほどの圧倒。構えることなく、悟空は海賊達の心を折ってしまった。

 

「おめえら悪いことは言わねえから、そんなもん使うのはやめろ。船はオラがあとで全部ひっぱりあげとくからよ。な?」

「は、はい……」

「すんませんした……」

 

 すごすごと引き下がる海賊を尻目に、海王類の頭部は既に骨しかなかった。

 

「あっ、そうだおっちゃん達! 聞きたいことがあんだけどよ――」

 

 悟空の全てに驚きが勝り、警戒心をどこかへ忘れてしまった大工達は、素直に質問へ答えていった。

 

 

 

 いっぽうその頃、トランクス達はというと……。

 

「ねえトランクスー、この潮風どうにかなんないの? これじゃあ髪がぼさぼさになっちゃうじゃない」

「一応バリアー機能はあるけど、技術的にこの世界でそれが認められるかわからないから使わないよ」

「えーっ、誰も見てないしいいじゃない!」

「だーめ、僕達がこの世界に大きな影響を与えないようにしなきゃ、僕達もトワやミラと変わらないだろ?」

「……ケチ」

 

 ますます拗ねるパンに頭を掻いて愛想笑いして、前方を見る。青空と海面しか見つからない海であったが、先程からその先に数人の気配を感じていた。

 

「誰かいるみたいだ。話のわかる人だといいけどな……」

 

 変わらない景色の中でかすかな可能性に目をそらしつつ、パンの不機嫌から逃げているだけだが。

 

「あ、いた」

 

 二十分ほど走っていると、やっとその影を掴む。

 現れたのは、麦わら帽子をかぶったドクロと、可愛らしいヤギの船首が目立つ、海賊船だった。

 

「あれって……」

「どう見ても海賊船よね……?」

「いや、そこもそうなんだけど……、あの穴って……」

 

 海賊船は海にぽつんとあいた不思議な穴に囚われ、落ちるかどうかの瀬戸際でゆらゆらと傾いていた。

 聞けば悲鳴と罵声が聞こえる。とくに大きな、笑い声とも歓声ともわからない明るい声に、悪い人でもないかもしれない、と楽観的な憶測を二人に覚えさせた。

 

「ていうかあの穴に残った気って……」

「うん、間違いなく悟空さんだ……」

 

 なんにせよ、悟空のはた迷惑でかけてしまったのであれば助けなければならない。レジャー用ともあって緊急用の牽引吸着ロープを船首に飛ばし、船を先回りして引っ張りあげた。

 

「大丈夫ですかー!」

「おう! 助かった! にししし」

「どこの誰だか知らねえが、恩に着るぜ」

「あたしパン! あなた達は?」

 

 ドクロマークそっくりの麦わら帽を被った少年が、太陽のような笑顔を見せてパン達に手を振る。

 ひとっ飛びで甲板にあがったパンを見て、トランクスは呆れまじりに苦笑しつつロープを回収した。

 

「オレはルフィ。海賊だ!」

「あたしはナミ。助けてくれてありがとうね。こっちの緑がゾロで、あっちの子がチョッパー」

「よろしく! トランクスーっ! 悪い人たちじゃなさそうよー! 海賊だけどー!」

「うん! すぐそっちに行くよ」

 

 バギーを海賊船と縄つけ、甲板に飛んだ。

 トランクスは改めて挨拶を交わし、さり気なく情報を探ろうと会話をふる。

 

「どうも、トランクスです。実は僕達、旅の途中で嵐にあい迷っている最中だったのですが、皆さんに会えて良かったですよ」

「へー、でもま、偉大なる航路だしよくあることよね。私達はこれからウォーターセブンっていう島に向かう途中だったんだけど、よかったら一緒に行かない?」

「助かります。連れがひとり先に行ってしまったので、合流するまではご一緒させてください」

「あたし達強いから、まあテキトーに任せといて! ね?」

「なー、それよりトランクス! あの船オレも乗せてくれよ!」

「あ、ずるいぞルフィ! オレウソップ! 海の男さ!」

 

 押しが強いのはある意味慣れている。トランクスは快諾し、麦わら一味を歓迎した。

 

 

 

「なあトランクス、このボタンなんだ?」

「ああ、それはキッチン用のでね……」

「おっ、なんだこのモニター。サーチャーか?」

「うん。魚や船とか、あとは海底のお宝とかを探査できるんだ」

「お宝! それってどれくらいの制度なのかしら!」

「ナミの目がお金になってる……、トランクス、こうなったナミは止まらないぞ」

『ドノリョウリニシマスカ』

「おわっ、キッチン用ってこれ自動で料理が出て来んのか!」

「あ、勝手に押さないでください! キケンですからっ!」

「オレ肉がいいな! にーくー!!」

『リョウカイシマシタ……チーン、パオズサウルスのテールステーキ、赤ワインソース・ノカンセイデス』

「おい今こいつどこから肉出したんだ?」

「こまけえことはいいじゃねえかゾロ。酒もあんぞ!」

「ずるいぞルフィ、オレもスイッチ押したい! お、これなんだ?」

「あっ、それはっ……!」

 

 チョッパーがスイッチを押した途端、ボンッ、と小さな爆発音が聞こえ、船が消える。

 いきなり海に投げ出されたうち、ルフィ、チョッパーのふたりは溺れていた。

 

「え!? 船は!? お宝は!!?」

「おいナミ、いまはそれどころじゃねえ。ルフィとチョッパーが溺れるぞ!」

「え、泳げないんですか?」

「ふたりは『能力者』だ! 悪魔の実のせいで泳げねえんだよ!」

 

 どうにかこうにかふたりを助け、全員を船に揚げる。パンの冷ややかな目がトランクスを刺した。

 

「トランクスぅ? 技術がなんだっけぇ?」

「めんぼくない……」

「どういうことかしら?」

 

 ナミの頭をタオルで乾かす黒髪の女性、ニコ・ロビンが尋ねる。

 隠せるところはごまかしつつ、トランクスは言い訳を重ねた。

 

「い、いや、実はこの技術はまだ非公開のものでして、ボクが作ったんですが……、その、ホイポイカプセルと言ってですね」

「カプセル……? その手に持ったカプセルがさっきの船だと言うの?」

「ええ、そうです……。ほら」

 

 かちりとスイッチを押してぽいっ、と投げたカプセルが、先程の同じ爆発で船に様変わる。

 高度技術にひそかなキケンを感じたナミとウソップが恐怖して、いっぽうルフィは他のカプセルに興味が出たようだ。

 

「なーなー他のは何が入ってるだ?」

「企業秘密です!」

「そんなこと言わずにぃー、なあなあ!」

「ダメです! ほら、こんなこと言ってる間に島が見えて来ましたよ!」

「うおおおおおーーっ、島だぁーー!!」

「飯が食いてえ!」

「まずは酒だろ」

 

 思い思いの願いを胸に、船は港へ波を切る。なぜか少ない船影の数に疑問も抱かずに……。



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第二話 「猿対猿! ふたりの真剣勝負!?」

早めに書きたいとこまで行きたいでござるな
拙者早漏でござ候
然らば投稿スピードは遅漏どころかED並


 銀海に重ねるような雲天のまにまに差し入れる陽の光が、入り組んだ町の白壁を燃やすように染めている。

 連雀の羽毛がみずみずしくあかりを反射し、飛び立つ群れの静けさたるや、地上の喧騒を引き立てるようだ。

 とりわけ大真魚をひけらかし、その骨までしゃぶりつくさんと貪る、野猿のような子供が目立つ。

 なぜか全裸で、この魚をもんどり打たせるように町の大通りに叩きつけた少年は、名を孫悟空と言った。

 海賊どもを戦いもせずに退かせ、ままに食事を止めぬ悟空を前に周囲の言葉尻はあがり、やがてはドックや町の家々から多くのひとびとが表へと顔を出した。

 

 とりなしにひとりの男が歩み出て悟空と言葉を交わし始めた。

 

「それで、聞きたいことってのはなんだ、ボウズ」

 

 男の名はパウリーといった。この町で一番大きな造船業社の幹部で、中でもいちばん信頼が厚い大丈夫である。

 

「それがよ、オラたちなんとか乱流っていうのに巻き込まれて知らねえとこに来ちまったらしくってな? お、この軟骨焼き干ししたらうまくなるぞ……バリバリ」

「乱流……? ココらへんは年に一時期高潮がくるくらいで、目立った潮流なんざなかったと思うが」

「んぁー、海じゃねえんだけどよ。なんとかっちゅう穴に入ったら、気がついたら海の上だったんだ。いやーまいったまいった!」

「海じゃないだと……? 聞かねえ話だが、まあここは『偉大なる航路』も後半だ。なにが起こっても不思議じゃねえか。それで、ボウズひとりで旅してたのか?」

「いや、パンとトランクスと一緒だ! ちょうどあいつらも着いたみたいだな」

 

 振り返る悟空につられパウリーが見やると、勲章だらけの一隻のキャラベル船が空席の港に錨を下ろすところだった。

 

 

 

 

「うわっ、なんだでっけェ魚だな」

「海王類じゃないか?」

 

 ルフィが好奇心に駆られ、横たわる中腹をつついている。ゾロが泰然と言った。

 これでも身体の半分も陸に揚がっていない。ウソップとチョッパーは甲板からそっと顔だけ覗かして震えている。

 

「この島はいつもこうなのかしら」

「いや、違うと思います……」

「なにか知ってるの?」

 

 ニコ・ロビンが無表情を崩さず独り言つと、トランクスが返した。その表情はひきつり、事実関係を訝しませるには十分だった。

 ナミとロビンの視線を浴びて、トランクスが無言でいると、パンがひとつ大きく鼻を鳴らしてから船を飛び降りる。

 

「そ、その、さっき言いましたよね。僕達より先に行ってしまった仲間がいるって」

 

 逃げ道がないトランクスは遠慮がちに言った。

 

「これがその『仲間』の仕業だって言うわけ? どんなやつよ!」

「ま、まあ、信頼できる人ですから、そんな警戒しなくてもいいですよ」

「なにやってんの! 行くわよトランクス!」

「あ、うん。では、悟空さんを迎えに行ってきます。この魚をたどった先にいますから、そこで合流しましょう」

 

 パンに急かされてトランクスも下船した。ルフィといくつか言葉を交わすと、面白そうだからとゾロを連れてトランクス達に着いて行ってしまう。ナミはウソップ、チョッパーら男手に黄金を持たせて換金所へと先に向かった。

 

 

 

「悟空さん!」

「お、来た来た! 遅かったなトランクス!」

 

 悟空とトランクスが合流した頃には、魚の見えている部分の半分までが食い潰され、太い背骨と肋骨だけが晒されていた。

 

「遅かったじゃないわよ! なあにこれはっ! というかなんで服着てないの!?」

「そう怒んなって。お前らも腹すかせてるだろうと思って残しといたんだ! 飯にしようぜ」

「飯! なあこれ食っていいのか!?」

「おういいぞ」

 

 飯の言葉に反応したルフィに一瞬眼をやって、トランクスに顔を向ける。トランクスは無言で頷首した。

 

「いただひまうっ! ハグッハグッ」

 

 ルフィは挨拶も途中に身をむしり取って口に入れる。まだ飲み込みんでもいないのに次々と手が伸び、水を入れた風船のようにぶくぶくと頬が膨らんでいく。

 

「お前な……」

 

 ゾロが呆れて情けない声をあげている間に、目の前にあったはずの魚影が消えている。悟空が肉にかじりついて、吸うような勢いで飲み込んでいるのだ。

 

「も? もむぇはぷなあ!」

「ぼべべばこ!」

 

 既に何を言っているのかわからない二人が視線を交わすと、バチリと火花が散る。それを切欠に、二人の食欲は急加速した。

 周囲をドン引かせて食事……否、戦いを繰り広げる二人。それは観るものに時を忘れさせ、ナミ達が合流する前に全てを食い尽くすまで続いた。

 

「いやー食った食った、ひさびさに腹いっぱいだぞ!」

「おでもう食えねえ……うぷっ」

「食い過ぎだバカ。この島に来た目的を忘れてんじゃねえだろうな?」

「ちょっと、さっそくこんな騒ぎになるようなことしてっ! あんまり目立っちゃダメなんだからね! 聞いてるの!? 早く服着なさーーいっ!」

 

 満腹で膨張した腹をさするルフィに呆れ、ゾロが大きくため息をつく。

 いっぽうで相変わらず全裸のまま朗らかに笑う悟空をパンがなじっている。

 トランクスの思考に『類は友を呼ぶ』という言葉が浮かんだのは言うまでもない。

 

「それで、こいつがトランクスの言う仲間なのか?」

「はい」

 

 どう見ても子供にしか見えない悟空を訝しげに見るゾロに、トランクスは大きく頷いた。

 しぶしぶ道着を着直した悟空が、今更ながら疑問に思ったのか問うた。

 

「そういやこいつら誰だ? トランクスの友達か?」

「ここにくる途中でたまたま……。ルフィさんとゾロさんです」

「オッス、オラ悟空! よろしく!」

「おう! 俺ルフィ! おめぇ小せェのにやるなあ!」

「お前こそ、ただの痩せっぽちじゃねえな?」

 

 バカな猿二人の挨拶もほどほどに、トランクスが向き直る。

 

「それより悟空さん、なにかわかりましたか?」

「いやーオラにはさっぱりだ! ここがどこなのかもわかんねえ! 相変わらずみんなの気も感じねえしよ」

「気ですか……、そういえば、『ココ』には戦闘力の高い人間が多いようですね」

「ああ、それはオラも思ってたとこだ。地球よりもかなり平均レベルが高いみてえだな」

「……あ、ああーーっ!!」

 

 天上は低いけどな、と但し書きのごとく言葉尻に添えた。

 トランクスと悟空の会話内容に及ばないゾロとルフィが不思議そうな顔をしているのをパンが気付き、とっさに興味をそらすため大きな声をあげる。

 

「ほ、ほらルフィ? ここが造船場なんじゃない!? みんな船を直しにきたのよね?」

「ん? ああ、ちょうどいいじゃねえか。ルフィひとりじゃ迷子になってただろうしな」

「お前に言われたかねえよっゾロ!」

「……今日はいつにもまして騒がしい日だな。お前ら、ガレーラカンパニーに入り用か?」

 

 成り行きを見守っていたパウリーが、葉巻きのけむりをくゆらせながら言った。

 

「彼は?」

「おう、この島のニイチャンだ! こいつに教えて貰おうと思ってっとこにお前らがきたんだ」

「俺はパウリー。この島一の造船業社・ガレーラカンパニーで働いてる。船大工ってやつだ」

「船大工!? お前、仲間になれよっ! 船直して欲しいんだ!」

「いきなり勧誘!? 自由かよ誰が海賊になるか! 仕事の依頼なら事務所を通してからにしてくれ。こちとら順番待ちで忙しいんだ」

「事務所どこだァ! 金ならあるぞ10億ベリー!」

「まだねェぞ。そんなにするとも思えねェし」

「そうだまだなかった!」

「ははは、賑やかなやつだなトランクス」

「そうですね……。悟空さんが言えた義理じゃないと思いますが……」

「ねえ、それより海の騒ぎは何!? どう見たってこの大きな魚が原因じゃないわよねっ!?」

「ん? 騒ぎ…………あっ、そうだったすっかり忘れてた! オラ沈めた船直しに行かなきゃいけないんだった! 行ってくるーっ!」

「もうっ、自由なんだからっ!! おじいちゃんのバカぁぁぁぁぁ!!」

 

 しっちゃかめっちゃか、騒ぎは続く。とりとめもない日常が壊されていく日々の中、この町にも一浪の潮騒が訪れようとしていた。

 

 

 

 一方その頃、ナミ・チョッパー・ウソップ組みは金塊を曳いて、換金所を探していた。海上の都とはよく言ったもので、途中借りたレンタルヤガラを乗り回し、迷路のような水路を巡る一行。賑わいけたたましく、多くの行商、水運業者、美術家、そして物見遊山か見物か、万客の声が小気味よく響いている。

 堂々道すがら、チョッパー、ウソップも時折船上から店の品物を晒し見てはナミにねだった。

 

「ダメよ。今はお金が最優先! 考えれ見れば空島に行く前から金欠だったのよ! どっかのバカが無駄にごはんを食べるからっ!」

「ルフィに言えよー、俺なんてお前の"天候棒"を改良するか武器や船の素材くらいしか買ってねェだろ?」

「オ、オレだって医療関係の本くらいしか……お菓子も買ってるけど……!」

「時間が惜しいの! それに先に換金した方が良い物だって買えるでしょ! わたしが居る限り無駄金は使わせない!」

「ぶーぶー」

 

 二人のブーイングも意に介さず、ナミの使役通りヤガラは駆け抜ける。

 

「ココロさんの地図じゃぜんぜんわかんないけど、話に聞く限りじゃ中心街に行けばアイスバーグって人と会えるって……」

「おっ、マドマーゼル! アイスバーグさんに用事かい?」

「えっ? ええそうなの。船を直してもらいたくって……」

「そうかいそれなら遠回りをしたねぇ。なんでもさっき島の裏から一直線に中心街まで道が拓けたって話だよ!」

「そうなの? そんな道あったかしら……」

「いや、道と言っても舗装された水路や歩道じゃないんだ。よくわからないけど、でっかい魚が打ち上がって道になってるんだとさ!」

「(あれかァ……!)おじさんありがと! 遠回りしちゃったみたい! ルフィ達の方が先に着いちゃってる、急ぐわよ!」

 

 美と水の都ウォーターセブンでは美人と見たら声をかけるのが男のならわしだ。ナミが尋ねずとも、耳ざとく悩ましげな態度を悟った老若男が案内役を買って出る。それはヤガラも変わらない。ナミを気に入ったらしいシーホースが、大きくいなないて街中を駆けまわった。

 

 

 

 

 サンジはと言えば、ロビンから番を頼まれて喜んでメリー号に居残った。どうせ数日は滞在する予定の島で、食料調達くらいならいつでも機会があるだろう。それよりも女に弱いサンジのことだ。ロビンの趣味と夢の為の購買欲を妨げる理由などなかった。

 銀波がいくつもの模様を作りは消えていく。波間に見える魚群が弾けるように逃げ出した。くゆらせたタバコの煙が潮風に運ばれ、かもめが鬱陶しげに離れて行った。

 

「ロビンちゅわん今頃目当ての本は見つかったかなァン? ナミすゎんの新しい服が楽しみだなァー!」

「なんだボロっちい船だな! おい兄ちゃんお前ひとりか?」

 

 でれでれと鼻の下を伸ばすサンジを載せたメリー号。甲板が軋み、大きく揺さぶられる。

 

「水の都だもんなァ、きっとエロエロでキワキワなんだろうなァ、でへへへ。えっ、オレの為にそんな服を……? サンジ困っちゃーう!」

「話聞いてんのかコイツ!? おらおら無視してんじゃねえよっ!」

 

 一層揺れが大きくなる中、不変の妄想にあてられ目をハートにさせるどうしようもない男の元に、ブサイクな怒轟が転がった。

 見れば筋骨隆々、重装に身を包んだ荒くれ者が数十人。船に脚かけ銃口斬鋒突きつけて、えんやこらと見得を切る。

 

「オレたちゃ泣く子も黙るフランキー一家よ! 悪いこと言わねえから、死んでくんな!」

「うわっ、そんなきわどい格好、オレが服の代わりに纏わりついてあげるよーン!」

「「「聞いてねえっ!?」」」



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第三話 「盗まれたお金」

あけましておめでとうござい


 

「なめてんのか! おいどうせ賞金もかかっちゃいねえ下っ端だ! 囲んでたたんじまえっ!」

「おうっ!」

 

 悪漢どもの安物の鋸刃や角材がサンジの痩躯に襲いかかる。凶刃がサンジに触れるその直前、メリー号が大きく弾んで宙に浮いた。

 

「うおっ、なんだ!? なにが起こった!?」

「こりゃーずいぶん高く飛んだなァ……ん? お前ら誰だ?」

 

 バランスを崩された狼藉者がたたらを踏んでもつれ込む。サンジは素朴な感想を述べ、初めてメリー号に侵入者が訪れたことに気がついた。

 

「いぃや今気づいたんかいっ!」

「おい兄弟、そんなことより、あああ、あれ見ろっ!」

 

 大飛沫が雨のように降り注ぎ虹を作る、その真下。メリー号の小さな身体がすっぽりそこだけ空くように次々海面へと飛び出してくる船影。どれも傷だらけではあるが、そこそこ大きなガレオン船など含む数十隻の大船子船の素首がずらりと鎌首をもたげた。

 

「なんだってんだ一体……! 沈没船が揚がってきやがったぞ!」

「あー、お前ら侵入者か?」

「今それどころじゃねえだろっ!」

「誰が下っ端だって!? あァン!?」

「聞こえてたのかよっ!」

 

 ――テーブルマナーキックコース!!――

 

 メリー号の小柄な身体が宙を漂う中、不安定な甲板に逆立ちしたサンジの横回転蹴りが男達を蹴散らした。一撃で気絶したのか、無抵抗のまま水に落ちて死体のようにぷかぷかと浮かんでいる。

 

「喧嘩売るのが千年早ェぜ、下っ端どもが……!」

 

 不満げな表情で見下ろすサンジが、お気に入りのタバコに火をつける。メリー号が再び着水する寸前、新たに小さな影が飛び出した。ちょうどメリー号の直下、影の中から弾丸のような勢いで出てきたそれは、メリー号の船腹にぶつかって大きい罅を作りながら停止した。

 

「なんでえ、せっかく避けたのに船が振ってきやがったぞ?」

「え? 子供?」

 

 舞空術で逆さまに浮かぶ悟空が、頭頂部を掻いて頭にクエスチョンマークをいくつもつけている。サンジに気づいた悟空は

 

「ん? 誰か乗ってるのか? オッス!」

 

 朗らかな笑みを浮かべて陽気に挨拶するのだった。

 

 

 

 

 ところ変わってナミ一行、換金を終えて造船所に足を運んだところだった。裏に表に顔がきくガレーラカンパニー、さすが気性の荒い海賊が現れるもの。何某という海賊団一味が騒いでいる。

 

「いやなあ? オレたちゃ金を払わないことにしたんだ……! たたでお仕事、ありがとうよォ!」

 

 だが、さりとて気にした素振りは見せない。日常茶飯事なのである。

 

「……お客さん、あんまり職人をからかっちゃいけねえや……!」

「ぶべらっ!?」

 

 海賊は名乗る暇もなく、大きな丸太で殴られダウンする。粗大ごみのように投げ飛ばされた船長の身体が、興味本位で近づいてきたパンの近くに転がり込んだ。……転がりこんでしまった。

 

「……へへへ、こりゃあいい!」

「ん?」

「しまった、パンちゃんが!」

 

 パンを見た船長が、その汚れた手でパンの小さい身体を抱き、銃口を突き付ける。ナミが慌て声を荒げた。

 

「おらおらァ、このガキがどうなってもいいってのか!? おとなしく船を直しやがれェ! 勿論タダでなァ!」

 

 つばを飛ばして当たり散らす男のなんと小者臭いものだろうか。トランクスはうつむくパンの様子にただただ困り顔を浮かべるだけだった。

 

「あちゃあ、パンちゃん怒ってるなあ……」

「どうしましょ、トランクス! パンちゃんが危ないわ!」

「うーん……」

 

 曖昧な空返事をするトランクスにナミやウソップが一言文句でもつけようかと肩を強ばらせると、その前にトランクスが遮った。

 

「あ、いえ。……大丈夫ですよ。だって……」

「ぐへへ、おっと手は出せねえよなァ? 鉛弾一発でどうなるか、わかってんだろ? お前たちはおとなしく言うことを聞いて……」

「…………さい」

「へ?」

 

 

 

「くさいいいいいいいい!!!!」

 

 轟。七色の風がパンを中心に巻き起こる。地面が裂け、大きな地響きが鳴り止まない。瓦礫が重力に逆らい空へと舞い上がり、文字通り粉砕する。空を流れる雲のスピードが心なしか早まった。

 

「パンちゃん怒るとすっごく怖いですから……」

「う、うおおおおおおお!?」

「嘘でしょ!?」

「なんかよくわかんねえけど、すっっっっげーーーーーー!」

 

 パンの怒りに触れた海賊の命運は決まった。

 

「このっ!!!!!!」

 

 船長の腕をがしりと掴んで抱え、思いっきりぶん回す。コマのように回転して、残影さえ垣間見るほど勢いをつけ……

 

「ロリコンっがぁぁぁあああああ!!!!!」

 

 手放した。

 

 

 

「もうサイッテー!! なんでトランクスは庇ってくれないの!」

「い、いやあ……ハハハ」

 

 堰を切ったようにトランクスを詰問し胸ぐらをつかむパン。

 

「どう見ても守る必要ないだろ?」

「あんですって!?」

 

 ルフィがつっこみ、ゾロ以外の聴衆全員がこっくりと深くうなずいた。が、パンの怒りに触れたくはない。そっと視線を逸し、下手な口笛を吹いている。

 

「お爺ちゃんもお爺ちゃんよ! 大事な孫が危うい目にあったってのに、どうして近くにいないのよ!」

「機嫌を直してよ。ほら、こういう時こそギルの出番だろ? ……って、あれ? ギルは?」

「……そうだわギル! ギルがいない! 遭難してから一度も姿を見てない!」

 

 パンにとって相棒とも言えるロボ。いつもは小うるさい存在がいないことに気が付かなかったのは、果たして異世界に来てしまったことに少しは気が動転しているからだろうか。

 

「最初から逸れていたのかも……だがギルには戦闘力のサーチ機能がついていたはずだ。どこかで壊れてるのかもしれないな……」

 

 最悪の場合は時空の狭間を漂っているのかもしれない。宇宙より広い時の海に一度投げ出されれば、いかにタイムパトロールでも見つけることは難しくなる。トランクスの憂慮に居ても立ってもいられないパンが地団駄を踏んで叫んだ。

 

「もうっ! お爺ちゃんがいなきゃ探しにも行けないじゃないの! どうしていっつも"そう"なのよーっ!」

「ねえ、さっきから言ってる"お爺ちゃん"って誰のこと?」

「お爺ちゃんはお爺ちゃんよ! 悟空お爺ちゃんに決まってるでしょ! ……って、あ」

 

 

 

 

「…………んんんん?」

「えええーーーーっ!! パンが悟空の孫ーーっ!?」

「じゃ、じゃあ待って。悟空って今何歳なの!?」

「悟空さんは確か七十……いくつだったかな?」

「七十!? すんげー爺ちゃんじゃんか!?」

「おいおい嘘つくにももっとマシな嘘をだな……」

「ンマー……んんっ」

「嘘じゃないわよ。私のパパのパパだもん。お婆ちゃんだっているのよ?」

「嫁がいるのか!? あ、いやそりゃいるよな。孫がいるんだし……医者としてどう思う、チョッパー?」

「人体の神秘だな……」

「ンマー、ここまで無視されたのは初めてだな……麦わらの一味」

 

 一味が驚天動地に阿鼻叫喚する間、ひとりの闖入者が口を挟む。

 このウォーターセブンに入る前、ナミがココロという駅長に聞いたアイスバーグその人であった。胸ポケットの子ねずみを撫でながら、わざとらしく喉を鳴らしている。

 

「オレはアイスバーグ。この町の市長をやってる」

「あなたがアイスバーグさん? ココロさんから紹介状を貰ったの! 船を直して欲しいんだけど……」

「それなら……カク、お前に査察を頼もうか。船はどこにある?」

「裏の港の岩場に……」

「了解じゃ! 行ってきます、社長!」

 

 アイスバーグに言われ、ひとりの男がかけ出した。屋根を飛び、崖を降り、空を滑るように町を巡る。まさに縦横無尽という言葉が相応しい。ガレーラカンパニーの職人は、ただの職人では担えない仕事も簡単にこなす実力が必要なのだ。

 

「ウソップ!? いつの間にあんな動きを!」

「いやオレはここにいるし!!」

「確かに、鼻が四角だったぞ。四角ウソップか」

「オレに四角も三角もねえよっ!」

「まあ、仕事の話はひとまず後回しだ。造船所内を案内しようか。金の話はどうせ最後だ」

「面白そーっ。あ、そうだナミ、金はどうなったんだ?」

「ちゃんと換金してきたわよ。三億ベリーがほら……って、あれ? ウソップ、お金の入ったかばんは?」

「おう、オレがしっかり手に……って、ねえぞっ!?」

「お前パンが怒った時めちゃくちゃ驚いてたよな……」

「はっ、そういえばあの時手放したような!」

「おバカ! さっさと探して来なさい!」

「お、おうっ!!」

 

 ナミが怒り、ウソップが慌てて一人探しに出る。戦力的に不安だとゾロが追加を申し出たが、ただ迷子になるだけと却下された。そこでトランクスが声を上げる。

 

「それじゃあ、僕が探してきましょうか」

「いいの? お願いね」

 

 と言ってもただの親切心ではない。一人きりになってこっそりとやりたいことがあったのだ。人目をはばかり舞空術は使えないとは言えさすがのトランクス、水上の迷路を高速移動で飛び跳ねて一瞬の内に一味達から見えない位置まで移動してしまった。

 

「……ここまでくれば大丈夫かな」

 

 懐から取り出したカプセルを投げ、中から飛び出したバギーのモニターをちょっとばかり操作する。海の上でバギーに一味を乗せた時、自動で承認システムが作動していたのだ。個人のステータスが一覧でき、戦闘エネルギーを各個分別し、高性能サーチャーによって居場所を特定することができる。ウソップの欄もあるが、トランクスは先に逸失したギルを探すことにした。

 

「……いた。かなり距離があるな……」

 

 型式番号DB4649T2006RSとともに明滅する点が指し示す場所。それはここより遠く、また奇怪な地形に挟まれている。トランクスが行くかどうか考えあぐねていると、エマージェンシーコールとレッドランプサインが画面を占領した。ウソップの周りを囲うように点在する危険色のエネミーサイン。

 

「こ、これは……ウソップさんが危ない!」

 

 危機を察知したトランクスの動きは早かった。あまりの速度に、バギーをカプセルに戻した時の煙が収まる頃にはトランクスの青い影も形もなく、いきなりできた真空に空気が入り込む独特な音が残る。二秒と経たず、ウソップが袋叩きにあう寸前に到着した。

 

「ウソップさん無事ですか!」

 

 分厚い鋼鉄に身を包んだ大男を愛剣でもって"一刀両断"し、目も合わさず訊ねる。

 

「トト、トランクス!! 俺は無事だっ、けど一億ベリーが!」

「遅かったか……、どこの世にもくだらない奴はいるものだな……クズどもが」

 

 下半身が前に倒れ、上半身がずるりと落ちる。無情にも斬られた仲間を見て、いきなりの惨事に様々反応を見せる。怒り、悲しみ、恐れ、呆然。だがその誰しもが、一様に身じろぎ一つできなかった。

 

「言え、お金をどこにやった。お前達もこうなりたいか?」

 

 バラけた身体を足蹴にして、光る刃を男達に差し向ける。その行いに激昂したらしく、全てを忘れがむしゃらに武器を上げ……全員砕け散った。

 

「仲間をやられて怒るくらいなら、初めから奪うことなど考えないことだな」

「お、おい、なにも殺すことないだろ……」

 

 チン、と音を立てて剣が鞘に収まる。一瞬でスプラッタな景色に生まれ変わらせたトランクスに、ウソップがおっかなびっくり話しかける。

 

「ふふっ、殺したと思うでしょう? ですが少し違う。見ててください」

 

 言って、トランクスがひとつの足を拾う。そしてそれの持ち主の胴体を立たせ肩にそっと合わせると、カプセルを投げ工具箱を取り出し、まさぐって極彩色の銃を向けて引き金を引いた。まるでおもちゃのような見た目のそれから放たれるサイケな光線が当たると、逆再生するように元通りになってしまった。

 

「ほらこの通り、元に戻るんですよ」

「どういう仕組みだよ! ていうか生き返るのか?」

「初めから死んでないですよ。この剣は悪人を懲らしめる時、下手なマネをさせないために身体をバラバラにしてしまう安全剣になってるんです」

 

 痛みはそのままですがね。そう付け加えて、剣の柄を三回回すとカプセルに戻る。これもまたホイポイカプセルのひとつであった。トランクスがタイムパトロールに入隊してから作り出した便利ツールだ。

 

「そう言われてみれば、誰も血を流してないな」

「断面を見ればわかりやすいですが、傷ひとつないですからね。ああでも、心が弱いとショック死する可能性もあるので手加減が必要ですが」

「手加減、してたのかこれで……?」

「さて、これでみんな元通りだ。ウソップさんから盗んだお金がどこに行くのか、さっさと聞き出しちゃいましょう」

「お、おう……(おれこいつ怖ぇ)」

 

 ウソップの慄きに気づきもせず、トランクスはひとりの悪漢の髪の毛を鷲掴んでその顔面を水路に入れて無理やり起こすのだった。

 




そこはおめでとうじゃないよね


ごめん、だね


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第四話 「落とされた影」

連続投稿されると思わなかったわ(他人事)


「メリー号が……直らない……?」

 

 造船場にいるルフィ達は、避けられぬ大きな問題に直面していた。船を査定しに行った船大工・カクが戻ってきてから、その結果に胸が引き裂かれ、つむじが割れるような痛みに全てが揺さぶられる。神妙な面持ちの一同に、気の強いパンが所在なく影を落とす。流れ着いた漂流物のような雲が天を塞いだ。

 

「ああ、直らん。絶対にな」

 

 角ばった鼻が上を向く。パウリーの葉巻きの先からぽろりと灰が落ちる。泰然、アイスバーグがカリファに目配せをして、カタログブックをいくつか見繕う。

 

「そんなわけねえ」

「ルフィ……」

「メリー号は今まで一緒に旅してきたんだ! ノックアップストリームだって乗り越えてきた強い船だ! 今朝だって俺達を載せてここまできたんだぞ!」

 

 息せき切って止まらない言葉が物悲しく響く。角材を運んでいた数人の大工がなにごとかと顔を見合わせ、肩をすくめて仕事に戻った。

 

「竜骨、というものを知っとるか。船の心臓であり背骨でもある、絶対に替えのきかないトコだ。そこに大穴が空いとった。つい最近できたものじゃろうな。お前らがとんでもなく荒い旅をしてきたことが一目でわかったくらいじゃな」

 

 ルフィが何かを言おうとして、その前にアイスバーグが冷静に言った。

 

「ンマー、疲労骨折みたいなものだな。蓄積していた傷みによってほんの少しの衝撃でポキリと折れる。船の寿命だ。金は、まあ一億あるんだろう? 新型から中古まで、そこそこのモンは作れるさ」

「これ、カタログです。整理がついたらまた来るといいわ」

 

 

 

「で、どうするんだルフィ」

 

 とぼとぼと帰路につく一行の足取りは、水を吸ったように重い。腕を組んで歩くゾロが冷たく聞き、ルフィが立ち止まる。

 

「…………」

「ねえ、まずはみんな集まってから考えましょう? ロビンならなにかいい案を知ってるかもだし、ウソップがいない内に決められることじゃないわよ」

「ナミさんの言う通りだよ。たらふく食べたルフィと違って俺達はなにも食べてないし、腹ごしらえがてら買い物でもしよう! 俺水わたあめが食べたいな」

 

 ナミもチョッパーも気を使ってそう声をかけるが、ルフィは一言も発さない。水の都特産の水みず肉を使ったアクアパッツァの匂いがしているのにも関わらず、微塵も反応しないのだ。敏感な鼻を抑えて遠くを見るチョッパーが心配そうに顔を見上げている。

 

「予断は許されねえんだ。いつまでも待っちゃくれねえぞ」

「いちいちうっさいわね、黙らないとお酒買ってあげないわよ」

「ゲッ……そりゃねえだろ」

 

 ナミに胸ぐらを捕まれ脅されたゾロが渋面を作った。と、ここで珍しく黙っていたもう一人が朗らかな声をあげる。

 

「ねえねえ、木材はここでたくさん買えるんでしょ? メリー号と同じやつ」

「聞かないとわかんないけど、でもたぶんあるんでしょうね。いいとこのお嬢様のために買ったやつだから、結構いい素材だから」

「じゃあさ、直せるかもよ!」

「え? ホント!?」

「トランクスが復元光線銃っていう、なんでも直せる道具を持ってるんだけど、同じ素材が必要なの! だからトランクスが戻ってきたらきっと……」

「やった……! だったら悩む必要ないじゃない! お金使わなくてすむわ!」

「やったー、ってそっちかよ!!」

 

 パンの思わぬ提案に喜ぶチョッパーとナミ。困った人を目の前に、パンの中にもはや技術を隠すつもりもない。だが、ルフィの顔はいつまでもあがらなかった。

 

 

 

 ルフィ達がメリー号に到着すると、悟空とサンジが他の海賊と一緒に騒いでいた。

 

「おっかえるぃ~~~~ナミさァーんヌ!!」

「おうっ、パンも一緒か? トランクスはいねえみたいだが」

 

 甲板から顔を出したサンジと悟空が陽気に手を振っている。来た時にはなかった多くの海賊船がずらりと並び、どんちゃん騒ぎで賑々しく歌っているようだ。

 

「早く登れよみんな、良い物が見れるぜ!」

 

 サンジの明るい声に誘われた一行が船に登ると、そこにはうず高く山盛りになった金銀財宝が光り輝いていた。

 

「お宝ーっ! ちょ、ちょっと、これどうしちゃったのー!?」

「悟空のおかげさっ!」

「お爺ちゃんなにかしたの?」

「おう、オラ沈んだ船がどれだかわかんねえから全部揚げたんだ。そしたらなんとかっちゅう大昔の海賊が運んでる途中で沈んじまった宝船だったらしくってなー! 山分けしたんだ!」

「なんてことすんのっ、お宝は全部私の物なのにっ!」

「でもこれでお金も戻ったし、本当に問題ないかも。なあゾロ?」

「いや……どうだかな。ルフィの中じゃ違うみたいだぜ」

「え? ルフィ?」

 

 

 

「ああ……、俺、決めたよ。メリー号とはここで別れる」

 

 

 

 トランクスは聞き出したフランキー一家のアジト兼遊び場に急行し、気合い砲の一発で建物を吹き飛ばしていた。瓦礫とともに人間が舞い散り、陸がえぐられ砂に変わる。だが、金は既になかった。

 

「あの男の言う通りだったようだな。二億ベリーは行方しれずか……みなさんになんと言い訳しようか」

 

 潮風に流れる青い髪をひと撫で、ジャンパー・コートが翻って流線に変わった。男達を縛り上げ監視代わりに残したウソップの元に飛ぶ。米俵のように積まれた悪漢を見つけ、鷲のように降り立った。

 

「あれ、ウソップさん?」

 

 ウソップの姿がない。待つように言ったが、なにかあったのか。一抹の不安がよぎりどうしようかと考えた時、縛られている一人が震えながら声をあげた。

 

「へ、へへ。あのザコならいねえぜ……、仲間割れかしらないが、いい気味だ……」

「仲間割れ? 貴様、なにを見た?」

「女さ。懸賞金額七千八百万ベリー……ニコ・ロビン、あの女、長鼻の小僧の腹ぁ刺して連れて行きやがった! へへへへ、ヒッ……!!」

「余計なことを喋らんことだ……」

 

 ただ冷徹な瞳を向ける。それだけで大の男が震え、うずくまった。

 

「ウソップさんにロビンさん……、なにが起こってるんだ?」

 

 空に浮かび、街中に気を巡らせる。ただでさえ小さいウソップの身に危機が訪れている以上、人混みの中に紛れられたらわからない。自分の不始末に心中怒り狂うトランクスの焦りが握られた拳に表れていた。

 

 風が強く波が襲う島だ。高い建物はみな細くなるか、風を受け流すために丸まっている。遮るものがない町並みを天から眺めウソップを探しているトランクス。ウソップの位置はわからずともロビンの気ならわかるはず、そう思ったがどうやら彼女は気配を消すのが得意らしい。ある程度の場所はわかっても断定はできずにいた。

 

「困ったな……、ん?」

 

 天上よりも高い位置に浮かぶトランクスだ。鳥でもなければまず顔を見合わせることなどない。だがその実、今トランクスは数人の影に囲まれていた。

 

「誰だ!」

「…………」

 

 影は詰問に答えない。水の都で愛好されている仮面と白い外套に身を包み、まるで陽炎のように揺れ動く。はりつめた空気がぶつかって、空間が軋んだ。

 

「ッ!」

 

 本気ではなくとも油断はなかった。一瞬の間に懐を侵し、殺意をはらんだ拳が腹にめりこんだ。

 

「……フフ、軽いな」

「ッ離れろ!」

「遅いっ!」

 

 重い金属の塊を叩きつけたような激しい音が街に響き、屋根が震える。弾き飛ばされたひとりが地面に落ちる寸前、バネでもついたかのように跳ね返った。

 

「飛べるのか?」

 

 くるりと縦に一回転してかかと落としで出迎える。今度は鉄パイプを地面にぶつけたような音がする。トランクスが意外そうに眉をぴくりと上げる。予想する硬さよりも上だった。

 

「我らの身体は鋼に変わる……!」

「それはそれは……拍手でもしたほうがいいのか?」

「軽口をッ」

 

 ――指銃!!――

 

 硬質化した鋭い刺突が繰り出され、だがトランクスは手のひらを使って軽々防ぐ。しかしこれは一手にすぎない。静かに見ていた他の影が攻勢に出た。すらりと伸びた長い足を薙げば乱風を生み空を裂く。硬化したまま大回転、勢いつけて巨腕を振る。飛ぶ指銃を散弾銃のように繰り出す。そのどれもが人ひとりを殺すに足る必死の一撃であった。

 だが。

 

「うッ……」「ぎゃぁあああ!」「何!?」

 

 全ての攻撃が躱されるだけでなく、全員同士討ちするようにバランスを崩された。

 

「どうやら自由に空を飛べるわけではなさそうだ。次は気絶させるつもりで行く」

 

 拳を握り、わかりやすく前に突き出してトランクスが挑発する。その声に、全ての影がその外套を脱ぎ捨て、不敵に笑う。

 

「……ふふふ、やはりこうなってしまったか。トランクス!!」

 

 予想外、影がトランクスの名前を呼んだ。トランクスは初めて怖れを抱く。トランクスを知っている。それはつまり、元の世界の関係者だという証明に他ならないからだ。なんとしても事情を問い質す。彼らの戦いは今始まったのだ。

 

 

 

 

 

「今は痛いかもしれないけれど、我慢してね。長鼻くん」

 

 仮面も無く、素顔を晒すロビンの表情は能面のように死んでいた。腹を刺されたウソップを抱え、隣に連れた仮面の人間とともに行く。影に消えた二人を見る者はいない。

 

(ああ、痛えよ)

 

 ウソップは気絶していなかった。気絶などできなかった。濁濁と血に汚れていく腹を抑えることもできず、いつ腹わたがまろびでるかもわからない。それでもウソップには、気を失ってしまうことなどできなかった。

 

(なんで俺を刺した? そいつは誰だ? 俺をどこに運ぼうってんだ? なあ、ロビン)

 

 ウソップの視界が闇に溶ける。隣の男が頭から麻袋をかけたのだ。麻の繊維がこすれる音でウソップはそう悟った。少しして、ヤガラやカモメの鳴き声も聞こえなくなり、ただ革靴の底が石畳を叩く音が強く響く。何時間経ったのか。あるいは数分なのかもウソップは知れない。光の閉ざされた眼に浮かぶのは、最後に顔を合わせた仲間の顔。少し呆れ気味に怒るナミ、興味なさそうにするゾロ、ケラケラと笑うルフィ、慌てるチョッパー。そして。

 

(なんでそんなに、泣きそうな顔してんだよ? ロビン)

 

 ウソップの思考はそこで途切れた。



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