鬼夜叉と呼ばれた男 (CATARINA)
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猿夜叉丸

定期更新となります。


「さて、どうしてこうなった。」

 

俺は一度死んだ。それは間違いない。

どうしてって?撃たれたんだよ、傭兵だったからな。

あーぁ、夜叉とか言われてても人間なんてこんなもんか。

あの時庇った新兵が無事だと良いけど。

で、今の俺だが。皆からは猿夜叉丸と呼ばれてる。

え、誰か分かんない?じゃあ、親父の名前は浅井久政…分かったか?

 

長政じゃねぇかァァァ!!!

 

アレじゃん、信長裏切って死ぬ奴じゃんこれ。

まだ八歳なのに死亡する未来が見えてるとか泣ける。

 

六角氏に服従してるから人質らしい。まぁそれはいい。

結婚相手も固定とかマジか?しかもなんだこのドブス。

どうにかして逃げないと……六角氏は力有るから逃げ道を考えないとなぁ……ん?何何?

 

勉学の為に寺に入れ?……これだ!

 

 

 

雑兵からしたら追放のつもりだろうよ。わざわざ新潟まで送ったんだからな!

 

『六角様!』

『何じゃ夜叉よ。』

『私の寺入りに異論はございませぬが、時は戦国。私は武をも修めとうございます。』

『ふむ、では如何すると?』

『六角様のお力で越後の上杉家にて、学びとうございます。』

『……良かろう!人質とは言え若人の可能性を見るためじゃ!』

『ありがたき幸せに!』

 

 

 

ありがとう定頼オジさん。上杉家、この時代と言えば謙信…長尾景虎だろ!

軍神さまの指導を仰げば銃のない俺でも強くなれるはず。

気に入られれば後ろ盾になってくれそうだし。

 

ただなぁ…長尾景虎って、ホモだって言い伝えあんだよ。

気に入られる為とは言え…掘られるのは…ヤダな………

 

 

父上―おたっしゃでーー。

親父に別れ際に景虎に注意するよう言われた。まぁ…しょうがない…最後の親の愛として

受け取っておく。そっちこそ身体に気を付けてね。

さて、俺一人だ。やだなぁガチムチのマッチョだったら………

 

( ゚д゚)アレ?

(;つд⊂)ゴシゴシ

( д) ゚ ゚

何か綺麗な姉ちゃんが居る。

 

聞いた話この人が長尾景虎さんなんだって。

女性説とかあったけどマジだったのか…。

だがまぁコレは勝ったろ!

景虎さん子供好きなのか気に入ってもらったし、戦いも教えてくれるって!

取り敢えずここまでは計画通り……

夜、明日からの計画を立ててるとにこやかな笑みを浮かべた景虎さんに呼ばれた。

何でも早速徒手の組み打ちを教えてくれるんだって。やったぜ。

で、何をするの?…あれ?景虎さんの笑みが怖い?

ね、ねぇ何でにじり寄ってくるの?

あの、ちょ、ちょっと待っt

 


 

あの後?そのまま喰われたよ。

8歳の筋力で軍神系女子に勝てる訳ねぇ。

上杉謙信ってショタコンだったのか?いや、景虎さんも初めてだったけど。

聞いてみたら『人間の輝きを強く持っていたから』だと。人生2回分だからか?

泣きたい…いや、景虎さんは間違いなく美人なんだけどね。

こんな事言ってると前世の仲間(全員非モテ)に殺されそう。

 

景虎さんと契約を結んだ。

俺に学問、戦い方を教えること。毘沙門天の教えも教えてくれるって。

ただかわりに、数日に一回景虎さんの相手をする事になった。

この契約の対象が八歳とは思えん。

 

 

 

そんなこんなで俺は景虎さんに学問 武術 毘沙門天の教えを教えてもらいつつ、

毎日勉強をし、鍛錬をし、たまに襲われながら過ごした。

 

 

 

15歳で元服のために寺を発つ事になったときは大変だった。

「駄目です。夜叉君は私のものです。そうでしょう?」

「景虎姉さん…また遊びに来るから…」

「こうなれば浅井、六角を滅ぼしてでも…」

「本当に出来るから止めてください。」

 

半年に一度は帰って来る事。毎月書簡を送る事。もし危ない目にあったら直ぐに逃げて来る事。もし破ったら近江を焼き払ってでも連れ去ることを約束させられた。

冗談だろ。と思ったが偶に見るヤバい目をしていた。コワイ!

 

 

「猿夜叉丸、ただいま戻りました。」

「遅いわ!たわけめ、まぁよい、これよりその力六角の為に振るってもらうぞ。」

「あぁ、断るぜ。老害ども。」

定頼オジさんには恩があるけどアンタらにはウンザリなんだよ。

六角氏の家臣一同がザワつく。

 

「何だと!」

「聞こえなかったのか?浅井はアンタらに宣戦布告するって事だよ!」

そう言いながら刀を抜いた二人を切り捨て、義賢殿に向ける。

「ここで大将首を落とすんじゃ意味が無い。戦で話し合おうか。帰るぞ。」

 

「待たんかい!」「待て!」「恩を忘れたか!?」

無視無視。斬りかかる気合も無い敗北主義者どもはほっとこう。

 

さてと。処は変わって野良田の戦い。さあ、老害どもを始末しようかぁ!

 

「これより我らは修羅に入る!鬼に会っては鬼を切り!仏に会っては仏を切り捨てよ!

情は捨て去れ! さぁ鏖殺しと行こうかぁ!!」

 

永禄三年、野良田の戦い。

浅井長政、幼名猿夜叉丸は六角氏に対して宣戦布告。

初戦ながら獅子奮迅の働きを見せ、六角氏の軍勢を撃滅した…に留まらず。

自ら先陣を切り、観音寺城に侵攻。脱出の間も無く陣を動かし、六角氏を鏖殺にした。

後に上杉謙信とも親交を深めていた事が分かり、この戦の苛烈さ、毘沙門天との関係から

長政は後世に『鬼夜叉』として名を遺す事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 




浅井長政の幼名が猿夜叉丸で、夜叉は毘沙門天の眷属。
なら景虎ちゃんが居ても可笑しくないはず。
(ノシ ・A・)ノシ バンバン


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転機

午後7時…
主「UA100くらい行ったらいいな。」
小説情報『UA1500』ソノゲンソウヲブチコロス!


主(;つд⊂)ゴシゴシ
主( *'ω')ファッ!?

UA『早く書くんやで。』

主「ヤルシカ…ナイ」

誤字報告感謝です!無知を晒してしまった……


「と、言うわけで、親父殿!隠居してくれ!」

 

「ふむ…私の日和見が全ての原因…か…良かろう夜叉。今日、この時より浅井家の当主を我が子夜叉に譲る!異論は無かろうな!」

 

それは日和見当主と呼ばれた男の最大にして最後の英断だった。

 

___ここぞって所で決めるアンタはやっぱりカッケェよ。後は任せてくれ、親父。

 

___ようやく化けおったか。鳶が鷹を産むとはこの事よ。この父を踏み台に羽撃け、若鳥。

 

ほぼ無言、ながら息子の才を認めた父と、父を蔑みながらも目標とした息子。

確かにこの二人には絆があった。本人らは否定するだろうが。

 

 

「領土拡大!歴史確変!やらかしたな!」

俺は頭を抱えた。

やりすぎた。本来六角氏が滅ぶのは大分後なんだが……殺っちゃったze☆

過ぎたものは仕方ない。広がった領地の管理など今までに無い仕事に追われるのだった。

 

そんなある日………

「同盟だぁ?」

 

「はい、尾張の大名、織田信長より、貴方様に同盟の申請をお持ち致しました。」

 

「成程、齋藤氏を抑えたい。で、手ごろな大名はいねぇか、って事で若造の俺をご指名って所かな?」

 

「!? い、いえそんな事は。」

 

「悪ぃね、大体読めてるんだわ。俺一人で決められる事じゃないんだよねぇ。暫く待ってくんないかな?勿論歓迎はするからさ。」

 

「勿論ですとも。幾らでもお待ち致します。」

 

 

「馬鹿な!織田と組むとは朝倉殿に示しがつかんわ!」

 

「しかし、この条件、呑んでもこちらに不利益はないように見える。」

 

「それで、朝倉に目を付けられたらどうする!?若殿が居るとはいえ現在の浅井家で太刀打ちできる相手ではないぞ!?」

 

さてと、来たな。ある意味浅井長政にとって最大の転機。

織田信長と同盟を組んだ浅井長政は最初こそいい顔をしていたが、朝倉との対峙の際、

あろう事か後ろから刺すような事をしちまうんだよなぁ……どうすりゃいい?

 

ここで結ばなかった場合、やがて朝倉を潰した織田に睨まれる…悪けりゃ潰される。

ここで下手に結んだ場合、朝倉がブチ切れ浅井家は皆殺し。

 

あーメンドクセェ。

 

「若殿!如何なさいますか!?」

 

「ん、俺も話して良い感じ?」

 

「左様、我ら若様による先の戦、心底感服致しました。政を為す家臣はともかく、浅井に使える兵全ては若様の指示の元動きましょう。」

「然り、正直同盟には反対だが…この命、既に若殿に預けた身よ。」

 

お前達……ほんと出来た家臣だよ。

 

「すまないお前達。俺の考えは_____」

俺は自分の考えを話した。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「どうだ?」

 

「流石若殿は麒麟児よ。我らには思いも付かぬ事をお考えになる。」

「しかし、若様が自ら赴くなど…危険では?この遠藤、既に潰えても惜しくなき命よ。

拙者が織田に出向くというのは?」

 

「…遠藤、俺は自分の目で見定めたいんだ。奴が本当にうつけか…確かに俺に何かあれば浅井はおしまいとも言える。だが、それでも…」

 

「そこまでに若様。若様のお考えはよう分かり申した。そこまでの覚悟、我ら家臣一同、どうして止められましょうか… 直ぐに織田の使いを呼べぃ!評定は終わりじゃあ!」

 

「ありがとう、遠藤、赤尾、海北。お前達が居て良かったよ。」

 

「何を仰いますか。して、供の者は如何様に?」

 

「あーそれなんだけど……」

 

 

 

「案内感謝する、不破殿。尾張は初めてでね。」

「はあ、こちらこそまさか殿自ら赴くとは思いませんでした。」

「やっぱり挨拶は顔を付き合わせてしないとね。それに家臣も誰一人連れて来ていない、

まぁこれは俺なりの誠意だと思ってくれ。何なら手錠でもしようか?」

 

「いえ!いえ!結構ですから!先を急ぎましょう!」

 

お供無し、一応一国の主が自ら訪問する…さぁ、どうする織田信長?

騙すようで悪いがお前を試させてもらうぜ?

 

 

 

「もう直ぐ尾張の城下町に到着致します。」

「やっぱ遠いな…自動車は偉大だぜ……」

「????」

 

 

「ここが小牧山城下か……よく経済が回っている。信長殿は随分優秀な様だな。」

「至極恐縮の極み。ささ、こちらです。」

「ん、ありがとー……なんだあれ。」

 

『女の子だけで出歩くなんて危ないなぁ、俺達が案内してやるよ。』

「いや、結構じゃ!」

『いやいや、遠慮しなくていいからさぁ』

「ゴメンなさいね。先を急いでいるの。」

「あ、あうあう、あの、その。」

『うるせぇぞアマ!良いから来いっての!』

男が一番気弱そうな子の手を引こうとした瞬間、

横から男の腕を弾き飛ばす。

 

「どう見たって同意の上じゃなさそうだが?止めときな。」

 

「何だお前!余所者が口出しすんな!」

 

「ふむ、不破殿、この国では婦女暴行が認められてんのか?」

 

「いえ、まさか。というか貴女…」

 

(駄目じゃ。お忍びでの。)(またですか…)

 

「なら止めんのが筋だろ?なぁ?」

 

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!調子に乗んなよ!」

男が拳を振り抜く。

「危ない!」

さっきの子が悲鳴を上げる。

「ッ!?!?腕が!俺のうでが!?」

何のことは無い。当たる直前に自分から当てに行く。

姉さんから教わった技だ。

「さて、まだやるかい?」

片割れの男に問う。

 

「じょ、冗談じゃねぇ!」

駆け足で逃げ出す。

「待ってくれよ!おい!」

腕を折られた男が後を追う。

 

ふぅ、どの時代にもあんなのは居るもんだな……

「怪我は無いかな?お嬢さん方?特にその小さい子、大丈夫?」

 

「ふぇ、大丈夫ですぅ…」

「感謝するわぁ。この子気が弱いから。」

「うむ、是非も無いよネ!感謝するぞ、大男よ!」

 

大男って…まぁこの時代の平均より大分デカいしな。

「何が大男だ、猿夜叉丸と言う、夜叉とでも呼んでくれ。」

 

「うむ、夜叉よ、大義であった!」

「あ、あうあう……」

「あらあらあらぁ?」

 

「申し訳無い、用事があるんでね。次は気を付けろよ?」

「」

 

頭を撫でただけなんだが。嫌だったかね……

いやまぁ俺もこんな大男じゃ嫌だからしゃーなし。

 

「じゃ、不破殿、残りもよろしく頼む。」

「え、ええ。」

 

(案ずるな、スグに向かう。)

 

信長…ねぇ、この町を作ったのがどんな男なのか気になってきたな。

相当有能だ。喰われないように気を付けねぇとな。

 

夜叉は未だ見ぬ信長の姿を思い、獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

~浅井長政~

浅井長政は当時としては珍しい高身長であり、所謂イケメンだったとされる。

顔付きは不明だが、現代に残る武具から身長は180を優に超え、190程も有るとも言われている。当時の成人男性の平均身長が155cm程の事から、人混みにあってもかなり目立つ程の長身とされる。この身長故に彼の戦い方は他に無い荒々しさを孕むと言われた。

 

 

 

 




是非も無いよネという美女…一体何ノップ何だ……

予定をだいぶ繰り上げて描きました。
投稿時には約3900行ってました。しゅごい(ง˘ω˘)ว


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親友

UAが伸びる伸びる
((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ 怖い。
皆そんなに逆レが好きか。
今回本文超短いよ!
今回からネタ率も高めて行きます。


「なんだおまえ!みてんじゃねぇ!」

 

「何だ餓鬼?そんなもの振り回してんじゃねぇ、危ねぇんだよ。」

 

「うるせえ!じゃまなんだよおまえ!」

 

今なにしてるって?

小牧山城への途中で5歳くらいのガキンチョに絡まれてる。

槍なんか振り回すなよ危なっかしい。

 

「なますぎりにしてやるぜ……うおおおおおわらえ!『にんげんむこつ』!」

 

「ほいっと。」

 

「あー!?」

 

「鍛錬が足んねぇなあ。槍は振ってから届くまでに誤差が有る。鈍らな腕じゃ取られて終わりだな。……まぁ、見込みはあるな、精進しろよ?ガキンチョ。」

 

「チキショー!!!!!!つぎはかつ!!!!!!」

 

いやぁ、生意気なガキンチョは可愛いねえ。将来性も有るし連れて帰りたいくらいだぜ。

 

 

小牧山城に着いた。ん、歓迎の酒盛り?いや、結構。さっさと信長殿に会わせてくれ。

 

武具は預ける。姉ちゃんに貰った奴だから丁重に扱ってくれ。

折ったり欠けたりしたら、間違い無く殺されるから。

 

「北近江の小大名、浅井家頭首、猿夜叉丸と申します。此度はお目通しの事感謝致します。」

え、誰だお前って顔してんな。俺だよ。挨拶は大事。古事記にも書いてあるしね。

「うむ、大義であった。面を上げい、『夜叉』よ。」

 

オイオイ、まさか。マジかよ。

頭を上げるとそこに居たのは

「さっきの女じゃねぇか!?何でだよ!?」

やっべ、素になっちまった。後方に居る老け顔の男からの殺気が凄い。

 

「フハハハハ!是非も無いよネ!」

 

史実仕事しろやぁぁぁぁあ!!!!!!

景虎姉さんも信長も女じゃねぇか!どうなってんだ!

 

「うむ、夜叉よ。口調を崩すが良い。其方がそう呼べと言ったのだからの。」

 

「あーうん。助かる。……アンタ女だったのな。」

 

「フハハハハ!女である事に問題でも有るか?」

 

「いや、役立たずのヘタレなんかよりよっぽどいいさ。女だから戦えない道理は無いしな。」

主に軍神とか景虎姉さんとか上杉謙信とか。未だに勝てない。

 

「うむ!気に入ったぞ夜叉!此度の件は実に単純よ、浅井と織田間で同盟を結びたい。

無論、そちらの不利益になるようにはせんし、断るも自由じゃ、どうする?」

 

ここが勝負所、か。

俺に任せると言った家臣達の顔。故郷の大地。景虎姉さんとの約束。

俺の答えは決まってる。ぜんぶ守ってやるよ。

 

「無論だ、信長殿。此度の同盟受けさせてもらおう。」

 

「そうか、そうか!是非も無し!では早速宴を「但し。」」

 

「信長殿、幼名をお教え下さるか?」

 

「何故じゃ?」

 

「……」

 

「…吉法師と呼ばれておった。」

 

「そうか、俺が個人的に求める条件はもう一つ。俺と友達になろうか、吉法師。」

「…………」

「どうだ?」

 

「フハハハハハハハハ!!面白い!面白い奴じゃの!夜叉!良かろう!今日から其方と儂は友じゃ!光秀!酒を持てい!今宵は宴じゃ!!!!」

 

なんとか上手く行ったか。信長が朝倉に勝手に攻めたのは此方に信用が無かったから。

無いなら作ればいい。それが友人なのだから。

 

この後吉法師が下戸だと知った。その癖酒好きとかヤバいな。

宴の後もダル絡みしてきたんで、寝室でお話(と追加の酒盛り)してたら、

怒ったり笑ったり妹を嫁にやるとか支離滅裂だった。

終いには泣きながら女として生きられないもどかしさを喚いてるし。

……大変なんだな。きっと俺にはとても出来ない事だし、吉法師は凄いよ。

そう伝えると一層泣くし。

友達として泣き止ませようと手を伸ばしたら腕を掴まれて押し倒された。え?

おい、吉法師!何のつもりだ!おい馬鹿止めろ舌舐めずりをするな、服を脱がすな!

あ、ちょ本当に止めて、お願い、誰か助けてエェェ!!!!!!!

 

 

信長と長政

 

同盟を申し出た信長に対し、大将自ら赴くという奇策にて応じた長政。

偶然にも女装して妻の帰蝶、妹の市と共に街に出た際に長政と遭遇。

長政は気が付いて居なかったとされるが、彼の好青年ぶりをいたく気に入った信長は同盟を懇願。長政は同盟の条件として信長に友人になる事を条件とし、信長はこれを快諾し、幼名を名乗り続けた長政に自らの名の一文字を授け、公の場では自らを猿夜叉丸から長政と名乗るようになった。同盟相手ではなく友として接する事を望んだ長政はお互いを幼名で呼ぶ事とし、いつしか二人は無二の親友となるほどとなった。また、お互いが死去するまで一度も裏切りや独断専行無く、義兄弟であっても二人の友情は揺るがなかったとされる。

近年では、同盟相手ではなく友人としての関係を望んだ長政の外交的手腕が評されている。

 

 

(ここから先はpixiv、ニコニコ大百科風なので読まなくても大丈夫です。)

 

織田信長と親友の関係であった浅井長政だが、死の瞬間までお互いを裏切らなかった事。

会う度に肩を組んで酒を飲み交わすとされる程仲が良かった事。

信長が男色家として知られる事から、一部の腐女子、貴腐人から絶大な支持を得ている。

当サイトにも幾つかの絵が投稿されており、#長×信や#信×長のタグで閲覧できる。

史実の程は不明だが、生前の友人関係からどこぞの毘沙門天の化身とのカップリングもされている長政。そういった需要に追われる長政君は泣いてもいい。

 

 

鬼夜叉と鬼武蔵(おだのやべーやつら)

 

同盟を結ぶ為に小牧山城を訪れた鬼夜叉(浅井長政)に対して当時6歳の鬼武蔵(森長可)が戦いを挑み、あっさり負かされたのが始まり。その後家督を継いだ後も長可にとって長政は目標であり頼れる兄貴分となった。長政の死後も彼の娘茶々が居るという理由で秀吉側につくなど高い信頼が見て取れる。お互い常に最前線で戦い続けたという逸話のため、

(鬼武蔵は蛮行も加味。)二次創作では二人ともやべーやつとして描写される事が多い。

 

戦国無双の長政…無双奥義の最終段で狂ったように笑いながら広範囲の敵を切り刻む。

BASARAの長政…バサラ技 大太刀の連斬→槍で薙ぎ払いつつ打ち上げ→爆発弓でトドメ

Fate/GrandOrder…二人とも狂戦士適正有り。ホントに何だお前ら。

 

 




夜叉君は逆レ体質なのか?
まぁ単にFateのノップ×帰蝶に違和感を感じたからこうなったんですが。
一話の構成が似通った小説が有るとか。
面白かったです。 どうにか差別化を計らないと……
戦国時代編のラストが二パターン考え付くんですよね。
BADENDとTrueENDって感じで。Happy?なんの話しですかね。(愉悦)


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軍神と夜叉

よう皆、元気か?

俺だよ、猿夜叉丸だよ。

前回の最後で色々あったけど信長はどうしたのかって?

……よく見ろよ。隣で寝てるよ、裸で。

 

死にたい。

 

というかヤバくないか?上杉謙信と織田信長の二人と関係を持ったとか後世でヤバいホモとして扱われるだろ俺。ああああああああぁぁぁ何でこうなるんだ!

「うるさぃのう…」

起きたか、吉法師。済まないが離してくれ。服を着てくれ。殺してくれ。

「儂自ら友の労を労ってやったというのに無礼な奴じゃのう…」

「離せコラ!離せコラ!」

「ふむ、まだそんな体力があると。」

おい!しなだれ掛かってくるな!止めろ!止めて!助けて!

 

 

 

朝から酷い目にあった。

この時代の女性は皆獣なのか?昨晩とか10回以降記憶が無いんだが。

予定だと織田家に留まるのは3日間。本来なら議論を重ねる予定だったんだが、即決で決めちまったからなぁ、大分暇だよな。

朝食後吉法師に呼ばれた。お前は元気そうだな………

「何だよ吉法師。」

 

「時に夜叉よ。何時までも幼名を名乗るワケにもいくまい?」

 

「確かになぁ…ただ、名前なんか思いつかんよ。」

 

「そこで、此度の同盟の証に儂の名から『長』を夜叉に送りたいのじゃ。」

 

「成程、長、長ねぇ…………………『長政』。政で賜った長だから長政ってのはどうだ。」

 

「うむ!良き名じゃ!浅井長政、此度の同盟改めて感謝するぞ!」

 

「ありがとよ、織田信長。これからもよろしく頼むぜ。」

 

「そうじゃ、夜叉よ。」

 

「何だ?吉法師。」

 

「其方、嫁を取る気は無いか?」

 

ゴッフゥ!?俺は盛大に緑茶を吹いたのだった。

 

 

「あうあう////」

 

「我が妹の市じゃ、ほれ、挨拶をせぇ。」

 

「ひ、ひぇっと市と申します…16歳でしゅ…////ごめんなしゃい////」

 

「吉法師ィ!人を幼児性愛者だと思ってねぇか!?おい!」

 

「何を言うか、市は確かに生娘じゃが今年で16。婚礼を交わすくらい普通じゃろ。」

 

「そうよぉ、長政君。私が婚礼を交わしたのは15の時だし、今更よ?」

 

「あうあう////」

 

「まぁ、儂は鷹狩に出掛けるから二人で話すといい、ではの。」

 

「おい待て吉法師ィ!俺も連れてけやァ!ごめんね市ちゃん。お話は後で聞くから。」

 

走って逃げる信長を追いかける。

 

「あらあら、後で聞いてくれるそうよ?脈アリかもね。」

 

「////////////」プシュ―

 

「でもぉ、殿様は長政がお気に入りみたいだからね、モタモタしてたら取られちゃうわよ?」

 

「どうしたらいいのですか。帰蝶義姉様……」

 

「私に考えが有るわ。耳を貸しなさい…」

 

 

鷹狩って楽しいのな。

何とも鍛錬とは違う身体の使い方って感じですげぇ楽しかった。

二人して帰ってきたのが夜で怒られたけど。

疲れてる分、何となくいつもより眠い。

「夜叉様、まだお目覚めですか?」

 

「…何とか………」

 

「失礼します。」

 

あれ、市ちゃんか。どうしたの?こんな時間に。

 

「夜叉様。単刀直入に申します。い、市は夜叉様の事を好いております!」

 

「お、おう。」

何だ、急に強くなった感じ。

 

「でも、夜叉様は既に姉様と肌をお重ねになってしまったのでしょう?」ハイライトオフ

 

「ゴッハァ!?」

ヤバい、吐血しそう。

 

「…ですから、夜叉様に市を選んでもらう為に…」ヨドンダメ

 

ヤバい。よく分かんないけど絶対ヤバい。

 

「夜叉―起きとるかー?今日の鷹狩の褒美(意味深)を取らそうと………市ィ!?」

「あら、姉様。どうなさいました?」

「いや、随分と色気が…本当に市か?」

 

今だ!三十六計逃げるにしかず! εε=(((((ノ・ω・)ノ

「ぬおっ!夜叉ァ!?」

「夜叉様!?」

 

どこもかしこも、獣ばかりだ! …貴様もどうせ、そうなるのだろう!?

 

よし、逃げ切っ「ダメじゃない長政ちゃん。」ガシッ ひぇっ。

「女の子の気持ちにはちゃんと答えてあげないとね?」

 

アイエエエ!?キチョウ!?キチョウナンデ!?

 

「でかしたぞ帰蝶!連れていくぞ!」

「ふふふっ」

「有難うごさいます義姉様!」

 

クッソォォォォォォォォォォォォォォォ!!離せ!離せ!

 

「三人に勝てるワケないじゃろ。」

デスヨネー 一人でも勝てなかったし。

「夜叉様、ご心配無く、夜は長いですよ。」

 

アッーーーーー!!!!!!

 

 

チュンチュン チュン チュンチュン

 

「朝か……」

右を見る…吉法師(フルパージ)が居る。

左を見る…帰蝶(半裸)が居る。

違和感を感じ、布団を剥がすと、市ちゃん(全裸)がしがみ付いてた。

 

誰か殺してくれ。

 

 

 

「では夜叉よ!また会おうぞ!」

 

「ああ、吉法師。そっちも元気でな。」

 

ようやく帰れる………いや、嫌だったワケじゃないけどね。

眠い……(実質二徹)ただ問題は残っていてな…

 

「大丈夫ですか?夜叉様?」

 

「ああ、大丈夫だ、多分。」

普通に市ちゃんが居るんだよね。このまま連れて帰れだって。ハハッ

 

 

俺の貞操が無駄死にで無かった事の証の為に…!

再び浅井の理想を掲げる為に…!

ただ生き残りたい、願いの成就の為に…!

小谷城よ!私は帰ってきた!!

 

「若様!?一体何を!?」

 

ごめん遠藤君、やりたかっただけなんだ…平穏な日々バンザイ!!!!!!

 

「同盟は結んだ、これから織田と浅井は同盟国だ!」

 

「さようですか…よくご決断で…して、其方のご婦人は?」

 

「ああ、市の事?俺の奥さんだよ。」

 

「尾張の織田信長が妹、市と申します。宜しく御願いします。」

 

「エ。」

 

「ごめん遠藤君、コレから景虎姉さんの所にも行かないと行けないんだ。市、家臣の誰かに城下町でも案内してもらってて。」

 

「はい!夜叉様!…宜しく御願いしますね!遠藤様!」

 

どうやら家臣達の苦難は終わっていないようだ。

家臣達の冒険はここからだ!

 

 

 

「景虎姉さーん」

 

「夜叉君!!!!!!」

 

「ただいま姉さん。お酒は控えてる?」

 

「ええ、夜叉君の言う事なら勿論ですとも!」(;゜∀゜)クンクンハァハァ

 

景虎姉さん…人に見せられる顔じゃないよ………「夜叉君?」

「どうしたの?」

 

「ナゼ身体カラ他ノ雌ノカオリガスルンデスカ?」

 

「あっ、えーと、その。」

 

「ナゼデス?ナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデナンデ?」

 

「その…俺結婚する事になりまして…」

 

「…………ソウデスカ。」

 

「姉さん?」

 

「結婚シタンデスネ、私以外ノヤツト。」

 

「いや、貴女、世間には男性で通ってますし…」

 

「アハハハハハ!!!!!!結局!ワタシトハ!アソビダッタンデスネ!」

 

「………」(貴女から襲われたんですが…とは言えない夜叉だった)

 

「ハハ、ハハハハ、夜叉君。」

 

「落ち着い…た?大丈夫?」(冷静になったかな?)

 

「ええ、勿論ですとも。ご結婚、おめでとうございます。」

 

「ありがとう、姉さん。」

 

「夜叉君が結婚なんておめでたいですね、そこで是非、お祝いの宴をしましょう。」

 

「いや、姉さん、市を城に置いt「しましょう。」ハイ。」

 

怖ぇ。でも何だかんだ祝ってくれる当たりホントにいい人だよな。

 

「で、宴って具体的に何をするんですか?」

 

「ふふふっ、夜叉君はただ力を抜いてれば良いですからね。」

 

あっ。 察し)

 

「ゴメン姉さん、やっぱ用事が。」ガシッ ギュッ メキャァ!!!「ガッフゥ!?!?!?」

 

「久しぶりに会ッたのにスグ帰るナンて寂シイデすヨ。ユックリタノシミマショウ?」

 

…強いなぁ…敵わないや………ハハッ

 

 

 

 

謙信と長政

幼少期を謙信の元で過ごした長政は謙信の事を兄と呼ぶほどに慕い、謙信も長政をとても気に入っていた。その事がよく分かるエピソードとして、長政の結婚報告を聞いた謙信は喜びのあまり一週間に渡って宴を開いたとされる。

後述する長政の死と合わせて、深い親交が伺える一面とされる。

 

 

 

 




ほら逆レ祭りだ。喜べよ(愉悦)
ゴメンなさい。

夜叉君の不幸(?)で愉悦部員の方にも楽しめる小説を目指したい。

次回は修羅場回です。愉悦部員の方々、ご期待下さい。

皆さん花の魔術師の如くハッピーエンドを望んでますね……これは覚悟しないと……
BADEND→TrueEND→HappyENDの順に投稿しようかな?(ゲスガオスマイル)


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夜叉の目覚め

作者「愉悦部員様向けの軽い修羅場回です。」
夜叉「胃が…胃が…死ぬ……」
作者「まぁ喜べ夜叉。君の望みはようやく叶う。」(CV.中田譲治)
夜叉「どういう事だ?」
作者「詳しくは恒例の最後のWikipedia風解説を見てみよう。」
夜叉「成程、今までのホノボノ解説とはまた違うのな…後悔も懺悔もしねぇよ。」




さて、アレから5年…色んなことがあった。

幸い一年は平和に過ごせたよ。一年は。

二年目からだよ…先ず市が妊娠してた…はい、俺がやりました。

まぁ子供は宝。ここまでは素晴らしいんだよ。

景虎姉さんの所に行った時に父親になる事を報告した。

オチが見えてたけど浮かれてたからやってしまったのだ。

でもまぁ、普通に祝ってくれた。ありがたい。

 

翌朝、景虎姉さんが子供を連れて来た。

「どうしたの?その子達。」

 

「決まってるじゃないですか。私と夜叉君の子供ですよ♪」

 

( д) ゜゜

(;つд⊂)モドシモドシ

゜゜三( д)スポ-ン

 

何故だ!何故こうなった!

 

「ほら、竹王丸、卯松、あれが父上ですよ。」

 

「「父上~」」

 

 

 

 

 

おれはしょうきにもどった!

!夢か…いやぁ、悪い夢だった。

 

「大丈夫ですか夜叉君?」

「父上、大丈夫?」「大丈夫なの?」

 

夢で終わらせない。

 

どうしたらいいんだ。まじで。

竹王丸…すっごい景虎姉さんに似てる。女顔?って言うのか?

大人のお姉さんに狙われそう。将来が心配だ。

 

卯松…子供の時の俺に似てる。でも髪の色とか目とかどう見ても姉さんから貰ってるな。

目が怖い。

 

というかこの子ら結構デカくない?幾つだよ!?

5歳と7歳!?ちょっと待って姉さん!

俺が9歳の時の子供って事なんだけど!?

 

「いやぁー『偶然』内乱が起きて寺から出ていたので気付かなかったみたいですねぇ。」

 

やりやがったコイツ。というか間違い無く俺の子供なんだけど。\(^o^)/ナンテコッタイ

 

「父上。」

 

卯松が木刀を差し出して来た。竹王丸もキラキラした目で見てる。

ああ、成程。認知するとか、そんな事よりも、子供と遊んでやるのも親の仕事だよな!

 

……並の足軽より強いな。景虎姉さんの子供だからか?

じゃあもうちょっと遊ぼうか。見せてみな、お前の力をさ!

 

 

 

帰ってきました。

9歳で子供が居るとかやべえな。

景虎姉さん曰く認知しようがないから大丈夫だそう。

子供達に凄く申し訳ない。姉さんはそこで反省してなさい。

 

「ただいまー市―」

 

「おかえりなさい!夜叉様!…他の女の匂いがします。」ハイライトオフ

 

というか嫁さん妊娠中に他の女性と関係持つとか俺最低じゃね?

死にたい。

 

「いえ、良いんです、夜叉様は素敵な殿方なので、市が独り占めできるとは思ってません。」

「でも、市は一番じゃないと嫌です!」オシタオシ

 

おい!ちょっと!イチさん!貴女妊娠中でしょう!?ちょ、やめ、アッーーーー!!!

 

暫くして、長女が産まれました。

名前は茶々。頼むからお淑やかな子に育ててくれ。

君の親族は肉食獣ばかり、茶々が最後の希望だ。健やかに育ってくれ。頼む。

 

 

赤子には酷な旅かも知れないけど、尾張の信長に会わせに行こう。

 

生後半年、何か少し喋るようになった。ウチの子天才なのでは?(親バカ)

市はまた子供が出来たらしくて行けないって。身に覚えがあり過ぎて何も言えない。

まぁ、任せろ!茶々に危害を加えるなら鬼でも仏でも切ってやるさ!(親ry)

 

「吉法~師~遊びに来たぜ~」

「チャチャ!」

 

「おお夜叉よ!漸く産まれおったか!ほれ、顔を見せてみよ!」

「チャチャ~」

 

元々子供好きだったけど自分の子供は一層可愛く見えるな。

可゛愛゛い゛ぃ゛い゛(ry)

 

「吉法師、なんか顔色悪くないか?病気とかならウチの子に近寄んなよ?(r)」

 

「違うわ!ウッ…実はのう…そのぉ…」

 

珍しいな、何時もバッサリ言う吉法師が吃るなんて。

 

「それは儂が馬鹿だと言いたいのか?」

 

いや、お前は馬鹿じゃない、間違いなく天災だよ。

 

「まぁ、良い。あの、その、なんじゃ、3ヶ月程前にこっちに来たじゃろ?」

 

「まぁ、いつものようにな。」

帰蝶さんと吉法師がうんざりするまで茶々の可愛さを語ってた。()

 

「で…その時、デキちゃったんじゃよね。」

( ゚д゚)ハァ?

「帰蝶も。」

( д) ゜゜マジデ?

「で、どうにか産めないかと…まぁ出来ちゃったからには是非も無いよネ!」

( д) ✷✷ ドカ-ン

 

 

 

幼馴染のお姉さんと親友、親友の奥さんに妹を孕ませた男が居るってさ。最低だな!ハハッ

 

だれかおれをころしてくれ。

 

 

 

吉法師を茶々とウチの城に送って貰った。

どうするのかって?

俺が、俺たちが、信長だ!

いや、俺一人なんだけど。

半年ちょいくらい信長が公に出られない→誰かが信長のフリをすればいいのじゃ!→夜叉!

と言う流れらしい。最後!なんだよコレ!

まぁ、自分で蒔いた種だし、しょうがない…

(意味深)を付けんなお前ら!!確かにそうだけど!

 

まぁ、信長のフリは楽しかった。

堂々と朝倉の爺さんを煽れるとか最高かもしんない。

嫌いなんだよね、あの老害。こっちの事見下して来ててさ。

信長に煽っていいか書簡送ったら2日後にはGOサインが出た。笑える。

 

朝倉爺を煽りまくってたら市の方が産まれそうだって。

馬ァ!馬持ってこい!

 

次女が産まれました。

名前は初。健康に育ってくれ。

「ぐ、産まれ…る……」

吉法師ィ!?

 

息子も産まれました。

信忠と名付けられました。

 

吉法師は産後安定したら子供連れて帰って来るみたいです。

つまり爺虐めもお終いである。

ありったけ煽る煽る。

帰蝶が出産した。双子を。

兄の方は信雄、弟の方は信孝と名付けられた。この二人織田の血入って無いんだけど…

絶対後々火種になるよね。バレない事を祈る。

 

信長と入れ違いで帰ってきた。

対外的には三つ子扱いするんだって。

 

この後もう一人娘が生まれたんだけど、市さんや。薬と酒を同時に盛るのは止めてね。

身体に悪いとかのレベルじゃないから。

 

 

 

 

 

 

そんな感じで5年が過ぎた。

 

吉法師から言われた。

 

「儂は…天下を取る。それでも、着いてきてくれるかの?我が友、夜叉よ。」

 

「何を今更、俺達はどっちも引けない所まで来たろ?一蓮托生、行ける所まで行こうぜ、

なぁ?吉法師。」

 

俺達は燃え盛る比叡山を前に語った。

 

もう後には引けネェ、ただ進むダけだ。 ………燃え尽きるまでナ。

 

 

比叡山焼き討ち

 

元亀2年(1571年)9月。信長の怒りを買った比叡山延暦寺は焼き討ちに合い、女子供を含むおよそ四千人が死亡したとされる。

信長公記によると、焼き討ちを命じた明智光秀がこれを拒むと、義弟浅井長政が、

「光秀殿は弓の打ち方を知らぬと見える。どれ、一つ教えて進ぜよう。」と語り、

十人張りの強弓『金色鼠』を引き、一番に火矢を放ったと言う。長政の武に多くの兵は感心したが、光秀は関係の深かった延暦寺に躊躇いなく火を放った長政に恐怖したと言う。

しかし、長政の本当の残虐性はこの後に判明するのだった。

 

夜叉の根切り

燃え盛る延暦寺。逃げ惑う人々の前に現れた浅井長政は100人の部下を連れ、避難の誘導を部下にさせ、自らは消火活動に協力した。というのが、表向きの話。

…浅井長政は愛妻家で、娘を溺愛していたとされる。

比叡山の僧侶はそこに目を付け、あろう事か妻子を人質に取ろうとしたのだ。

計画は失敗したものの、『何故か』比叡山には成功の報告が入り、僧たちは故に長政が救援に来たと考えた………鬼夜叉の激に触れたとも知らずに。

長政はたった一人で境内に入ると豹変、手にした武器で次々老若男女問わず殺し回った。

比叡山焼き討ちの死者中約2000人弱は長政の手で死したとされ、命からがら逃げ出した数百人は長政の部下に討たれた。

生存者は零と言われる程の惨状から『夜叉の根切り』と呼称される。

 




おや?夜叉君の様子が…?
逆レされてばかりでヘタレみたいな所ばかり際立ちますが生前の性格上家族や友人の為なら
文字通り夜叉に堕ちます。
(夜叉は鬼神でもある。)
金色鼠は毘沙門天でググれば分かります。
今更ですが、ノップ嫁 景虎ちゃん嫁の方々申し訳ございません。


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狂気

眩しすぎる輝きに目を焼かれた。

激しい光に身を焦がされた。

その光に並び立ちたくて手を伸ばした。

やがて、追い付く事を諦めると、

せめて、光を曇らせたくないと。

青年は全てを抱えた。

例えその選択が彼の心を朽ちさせても。


「浅井長政よ!織田に味方するとは如何な事か!それも比叡山を焼くとは!」

 

「左様!」「恥知らずが!」「罰当たりめ!」「武士の風上にも置けん!」

 

「ソれだけカ?で、本題は何だよ。」

 

あーあ、爺さんにペコペコすんなんて御免だぜ。気楽で楽しいわぁ。

 

「貴様ァ!!『待たれよ。』義景様!!」

 

「長政よ、此度の蛮行、武士として許されざる行為よ。しかし、これより一層の忠誠を誓うと言うのなら全て水に流そう。共に信長と戦おうではないか、なあ?」

 

何だコイツ。何時まで自分が上司のつもりなんだ?

 

「織田信長。」

 

「む?」

 

「…俺ノ友であり、義兄の名ダ、そレを裏切れと?」

 

「左様、浅井は朝倉と長い付き合いだ、それこそ貴様の親の代からな。故に「で?」何だと?」

 

「だからドウシタ?それが友を裏切る理由になんのか?」

 

「武士とは義理と忠を持って「お前ら俺を部下か何かと勘違いシテない?」」

 

「コれでも六角を潰してまぁまぁの勢力だと思ってんダケドさ、どうなの?」

 

「しかし、朝倉は今だ浅井よりも大きい!浅井程度がつけ上がるなよ!」

 

「浅井、程度ねェ、面白い、試シテ見るか?実際にやり合ってヨ。」

 

「何人も死ぬぞ。」

 

「いや、何だ。要はここでヤロウって事ダよ。」

 

そう言いながら腰に帯びた打刀を振り抜く。圧切長谷部。

 

朝倉爺の所に殴り込むって言ったら吉法師がくれた打刀。良く切れる。

 

圧切…つまり圧しただけで切れる、と言われたその切れ味は抜刀しようとした男を豆腐のように両断した。

 

「乱心か!?長政ァ!!!!!!」

 

「元からだよ!クソジジイがァ!!」

 

爺の家臣を切り捨てながら言う。

 

「知ってんだからな!お前らが僧と繋がって、家の家族に手ぇ出そうとしたのはなァ!」

 

「ぐっ!何故それを!?」

 

「チョイと『お話』したんデネ!どっちが恥知らずだ!?なァ!?」

 

一足で懐に潜り込む。弓術の名人と言われた義景でもこの間合いなら俺の方が速い。

刀を突きつけながら言う。

 

「大将首!今は置いておいてヤルヨ!勝負は戦デ決めようか!!!」

 

そのまま塀を越え、待機させてた馬で逃げる。

絶対にユルサネェカラナ………………

 

 

 

「吉法師―帰ったぜー!」

 

「夜叉ァァァ!!!!!!」ガバッ

 

「落ち着けって腰があああぁ!?」メキャア!!!

 

「怪我は無いか!何か言われて無いか!儂を捨てないか!?」

 

「落ち着け、大丈夫だから。お前を裏切ると思うかよ!」

何か比叡山の後からやたら心配症になったよな。まぁ、原因は分かるんだが。

 

 

 

 

「夜叉君?」

 

「帰蝶さん。どうしましたか?」

 

「信長はね、貴方がした事を気にしてるみたい。」

 

「???」

 

「根切り、よ。あの子は自分が甘いから、貴方にあんな事をさせたと思ってるの。」

 

「成程ね。……後悔も反省もしてないさ。アレは俺に必要だった。俺が、文字通りの夜叉になる為に。これは吉法師にはどうしても出来ない役回り、アイツには甘さが有る。なら俺がその分、鬼にでも修羅にでもなってやるさ。それが、俺なりの覚悟だ。…吉法師には言うなよ?」

 

「…ふふふっ。ホント信長はいい友達を持ったわねぇ。勿論言わないわよ。」

 

 

 

 

「大丈夫!大丈夫だっての!」

天下を統一するなんで大事、綺麗事だけで出来るはずも無イ。

だから吉法師。お前は光の当たる道を行ケヨ。汚れ役は俺一人で充ブンダ。

 

「無理をされると困るのじゃ!もしお主が居なくなったら儂はどうしたらいいのじゃ!?」

夜叉。お主が儂の代わりに闇を抱えて居るのは知っとる。じゃが、じゃが…ッ!

それではお主があまりにも救えないではないか!

なぁ、今生を賭けてのお願いじゃ、夜叉。もっと自分を大切にしてくれ。

もし、お主が居なくなれば、儂は……………

 

 

 

やって参りまシた!姉川!

史実だと焼き討ちより前なんだケドね。

 

 

朝倉方15000 織田徳川浅井連合軍35000。

 

 

これが数の暴力か。

 

サア!こレで朝倉爺の顔も見納めだろ!行くぞお前らァ!!!!!!

 

「突撃―!」「皆殺しだー!」「オラに続けー!」「ここは安全だ!」

 

お前ら、良い兵士だな。狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている。良い兵士だ。

存分に狩り、殺し尽くし給えよ。

 

「敵の潜水艦を確認!!!」

「「「「「「「駄目だッ!」」」」」」」

たまにおかしなのも居るが。それでも優秀だ。

 

サテ、行くかね!

俺はおレの仕事をしヨうか。

 

 

 

「朝倉様!もう持ちませぬ!此処は我らが!お逃げ下さい!」

 

「ならぬ!織田と浅井の若造なんぞに引けるか!」

 

「ですが!『ドウモ!若造デす!』」

 

「長政ァ!!!!!!」

 

「まぁ、そンなに怒んなよジジイ。ホラ、お届け物だぜ?」

 

俺はそう言って馬の背に括り付けたモノを一つづつ放る。

 

「えーと、誰だっケ?ア、『阿君丸』君。」ポ-イ

 

「な!?」

 

「『愛王丸』、『四葩』、『まつ』、『信景』。」ポイポイポ―イ♪

 

「貴様ァ!!!!!!」

 

「あ、後『小宰相』さンと『小少将』さん。…コレで全部かナ?」

 

「愛王丸様!阿君丸様!なんと言う…」

 

『首』を投げ終わった俺は肩を回してストレッチする。

意外と重いんだよね、アレ。

 

「貴様、貴様!子女を手に掛けるとは、それでも人間か!?」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 

「く、狂ってる……」

 

「君ィ、失礼じャナい?俺はただ、コイツにやられた事をヤリ返しタだけなンダが?」

マさか、人にやットいて自分ガされる事を覚悟してないなんテイワナイヨなぁ?ハハッ。

 

「コヤツを殺せ!コレは最早人間では無い!許さぬ!一族郎党皆殺しにしてくれるわ!!!!!」

 

「ご名答。もう俺は人じゃあねェヨ。我が名ハ毘沙門天ガ眷属、夜叉!

織田信長トの縁あって貴様らを鏖殺しトセン!サァ、死にタい者カラ前に出ナァ!!!」

 

 

 

鬼夜叉の狂

姉川の戦いにて、敵総大将朝倉義景の前に突如として現れた浅井長政。

妻子を狙われた意趣返し…と称して『義景の妻子を皆殺しにし、首を贈った』と言うもの。

かつては狂気に呑まれたが故の凶行とされていたが、

信長の自伝から、後世にて信長の行動を批判される事、朝倉の残党が反乱を起こす事を嫌った長政が自らの評価を顧みず、わざと残虐に振る舞ったとされる。

………夜叉の根切りと合わせ、これらの行為は着実に長政の正気を蝕んでいった。

これにより、朝倉家は信長に下った朝倉景健とその妻子を残して全滅したとされる。

 

 




シリアス多めの回。

Fateシリーズの小説に準ずるにはシリアスも書けないと駄目かなと
思って書きましたが、何となく気分が悪かったです。
次から元に戻ります。
今回の話が気に入らない方に深くお詫び申し上げます。

カタカナ多くて見にくいです。ゴメンなさい。
少しづつ夜叉君を壊して行きたかったんや(愉悦)


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おあいこ

最初だけ狂気MAXですが何行かすると夜叉君がチャチャ!し始めます。
6話より大分ホノボノしてきました。



これで朝倉はほぼ壊滅。もう逆らわんだろ。

次、次は誰だ?吉法師、次は誰を、何を切ればいい?俺は、何を、誰だ?

「止めろ!もう止めるのじゃ!夜叉!もう良い!止めてくれ!」

ああ、夜叉、そうだ、俺は 夜叉だ。夜叉は、俺は、唯の化け物だ。

思い、出した。武田だな。武田が、織田、囲んでるんだ。

「夜叉!夜叉!」

心配するな、吉法師。こンナノはかすり傷ダから。

おマえの敵は、俺が一人残ラず、殺してヤルから。

 

 

三方ヶ原

「退け!退くのだ!」

何だよ、お前ら。まだ残ってんじゃネェか、長政?誰だっケ、ソレ、俺は夜叉だ。

夜叉は、タタかう、コロす、敵ヲ、テキ!!!!!!

 

「テメェら全インのクび、オイテケェェェ!!!!!!」

夜叉と化した男の絶望的な孤闘が始まった。

 

 

 

 

「夜叉!夜叉ァ!すまぬ!すまぬ!」

夜叉、其方、済まぬ。儂が至らぬばかりに、この様な姿にッ………。

 

「ゴッフッ!!!アア!ガファ!!!!!!」

夜叉!目が覚めたか!良かっ「ツぎはナンだ、ダレを切ルんだ?ギッ、法シ。」

 

夜叉…もういいのじゃ。儂は其方に頼り過ぎた。全て儂の責任じゃ。

休め、休むのじゃ、夜叉…否、猿夜叉丸よ。

儂は全身余すこと無く生傷だらけの友を抱き締めた。

「猿…夜叉丸…?ダレだ、ソレハ…」

 

「実に不器用で、阿呆で、儂以上のうつけ者の、儂の最愛の友じゃよ。」

 

「猿夜叉丸、猿夜叉丸か。そうか、俺は…。」

そういうと夜叉は糸が切れたかのように倒れた。

夜叉よ。案ずるな。儂も覚悟を決めよう。

じゃから、ゆっくり休め。

儂は、ここでお主を失いとうない。

 

 

 

 

「チャチャ!!!!!!」

 

「チャチャ!!!!!!!!!!!!」

 

「チャチャ?」

 

「チャッチャ!!!」

 

何をしてるかって?

久しぶりに娘達と戯れてる。

吉法師のお陰で正気に戻れた。全身大怪我だったけど。

まぁ、そんなことはどうでもいい!

3人の娘が可愛いすぎる。

「父上!弓を撃って見せて欲しいんだけど!」

 

「よーし、任せろ!」

いつもの金色鼠を持ち出す。

「この金色鼠はな、毘沙門天の加護を受けて破魔の力が有るんだ。」

 

「例えばどんな?」

 

「そうだなぁ…俺より年上のくせに人の娘に色目使うロリコン猿を成敗できるな。」

( ゚д゚ )ガタッ ε=ε=┏(゚ロ゚;)┛

逃がすか! バシュン!!!

「ひでぶっ!?」

 

「よう、秀吉ィ?随分と熱い視線をうちの娘に向けて無かったか?」( º言º)

 

「い、いやぁ長政様、まさかそんな…」(^ω^;);););)

 

「問答無用だこのロリコンがァ!!!!!!」(о`Д´)=⊃)`з)

 

「あべじっ!」≡( ε:)ヒュ-ン |壁| ( ε|壁| ドゴッ

 

「で、何の用だ?」

 

ムクッ「実はですね。「どうなさいました?夜叉様?」市殿!!!」

 

「節度を覚えろクソザルがァァ!!!」(#゚Д゚)ゲシィ!!!

 

「タワバァ!?」_| ̄|○→_| ̄|足

 

「夜叉様、落ち着いて下さい!」

(#゚Д゚)

「話を聞かないと何も分かりませんよ?」

( ˘•ω•˘ )

「何なら寝台の中でお話しますか?」ハイライトオフ

(´・ω・`)

それは止めて欲しい……

 

というか茶々達との会話の後だからIQが溶けてた。何だよ(´・ω・`)って。

 

「で、本当の要件は?」

 

ボロボロ「ああ、それは_____信長様が幕府を滅ぼしました。」

 

…クソ、やりやがった。お前が手を汚していいレベルじゃないだろ!

 

「長政様に伝言が。『これでお互い地獄行きじゃ、是非も無いよネ!』と。」

 

ハァ、分かったよ。その道をお前は行くんだな?吉法師。なら、俺は支えるだけだ。

 

「そして、これは伏せるようにと言われていましたが、長篠にて武田方と決戦を迎えると。

敵大将は武田勝頼。信玄の息子です。」

 

「息子?信玄はどうした?」

 

「おそらく病死したかと。長政様の殿無くば尾張、駿河本領に攻めいられていた所でした。」

 

「死んだ…か。…何故吉法師は俺に伏せた?」

 

「『儂は夜叉に頼り過ぎた。』と。ここからは信長の戦いだと。」

 

何を言ってんだか。……友達に隠し事は良くないよな?

 

「長政様!まさかとは思いますが…」

 

「おっと、向こうが先に一つ隠し事したんだ。コレも内緒だぜ?」

一体一ならおあいこだろ?

「しかし「内緒にしたら茶々の事を10秒見る事を許す。」ぐっ…」

 

「まぁ、頼むわ。秀吉。アイツも調子に乗りすぎだからな。」

 

 

「悪い、市。また行かなきゃなんねぇ。」

 

「いえ、姉様はとてもお強いですが、同時にとても脆い。…支えてあげて下さい。」

 

「ああ、言われるまでも無ぇさ。」

 

「で、夜叉様が暫く居なくなってしまうので私、寂しいです。」ガシッ

 

「大分変わったよね、市。初対面の時の純真さは何処に行ったの?」ハァ…

 

「姉様達や軍神様に負けない為ですから、私が夜叉様の一番なんです。」ハイライトオフ

 

もう諦めたよ。まぁ、俺はまな板の上の鯉ってより…猫の前の鰹節か?(現実逃避)

 

 

 

 

天正3年(1575年)4月。 長篠の戦い。

「撃てィ!!!!!!」

 

武田軍15000。織田徳川連合軍30000。

 

儂らは新兵器、『鉄砲』を使いこなし、武田の騎馬隊相手に圧勝しておった。

 

コレを落とせば後は本願寺だけじゃ。それを落とせば暫くは安泰。市も夜叉も静かに暮らせる筈じゃ。……そのために儂は魔王となろうぞ。

もし、その時が来て、儂が居なくとも____夜叉の隣は市が相応しい。

じゃから…「信長ァァァ!!!!!!覚悟せぇやァ!!!!!!」

もしここで儂が居なくなっても。大丈夫じゃろ?

 

是非も無し!儂はそう言って目を閉じた。情けない死に面を晒しとうないからの。

別に涙が溢れるのを我慢したい訳じゃないのじゃ。

 

………何故じゃ、何故来ない。それとも儂はもう死んどるのか?

 

 

 

「ハァ、なんて面してんだよ吉法師。何だ?いい歳して泣く程怖かったか?」

嘘じゃ。こんな時に。

「ハハッ、仲間外れは良くないなぁ、吉法師?俺も入れてくれないと!」

 

何故じゃ!何で来た!夜叉!

 

「いやいや、チョットお手伝いをね!」

 

駄目じゃ。来ないでくれ!それ以上優しくされたら、儂は、儂は、私は、もう戻れなくなる!

 

「まぁ、遊びはこの辺にして…あのーその、何だ。あー。」

 

お願い、止めて、夜叉……

 

「先に逝くなよ。地獄行きなら二人一緒。だろ?吉法師。」ワシャワシャ

 

ぐ、ぐううううううううッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!夜叉!!!!!!!!!!!!ガバッ

 

「ぬおおぉっ!?吉法師!?」

 

儂は酷い姉じゃな。妹の夫に横恋慕しておる。すまんの、市。

まったく最低の姉だ。私は。だが、もう離すつもりは無い。

ゴメンね。市。でももう私は諦めない。

最期まで一緒じゃ、夜叉!!!!!!

「おうともよ!行くぜェェェ!!!!!!」

 

 

 

三方ヶ原の戦い

徳川軍の軍勢が武田軍の進行を押し留める為に起こした戦。

結果は徳川方の惨敗。敗走を始めるも、影武者も討たれ、家康の今際の際に

援軍として『単騎』で現れた浅井長政によって、家康は逃げ延びたと言われている。

 

三方の退き口

度重なる戦いに浅井長政の精神は既に崩壊していた。

軍勢の一人も連れずに戦場に現れた浅井長政は徳川兵が逃げ惑う中追撃する武田の兵を

僅か一人で押し留め、大損害を与えたとされるが、あまりに無謀な為、真偽は不明。

5日に渡り昼夜戦い続けた長政を武田信玄は褒め称え、軍を引いたとされる。

鬼神の如く戦う長政に襲われた兵士は、生き残りであっても7割がPTSDを発症。

兵役の引退を余儀なくされた。もしここで長政が武田軍を足止めしなければ尾張、駿河は攻め滅ぼされていたとまで言われている。

口伝曰く、刀傷は数百に及び、腹は抉れ、血で顔すら見えない程に変貌していたと。

 

長篠の戦い

云わずと知れた鉄砲の強さが明らかとなった戦い。

しかし、武田騎馬隊の奮闘により、一騎の騎馬武者が信長の元へと到達。

撃たれても止まらぬ武者に、信長もこの時ばかりは生命を諦めたという。

これを救ったのは彼の盟友たる浅井長政。騎馬武者を一刀の元に斬り捨てると、馬の後ろに信長を乗せ、戦場を駆け回り、二人で文字通り大暴れをしたというのが有名な逸話。

 

 

 

 

 

 




ノップ覚醒。

ノップ…依存系+崇拝系=距離の近い戦友

市…独占系(但し自分<家族。いい子)+無害系=天使

景虎ちゃん…攻撃系+排除系+独占系+????=ヤバいやつ

帰蝶さん…普通のお姉さん


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決意

さあ、かなり時間が進みました。

信長の代わりに荒れる夜叉君に抵抗が来るかと思ったら意外に好評だった。


どうも安土城の寝台からこんにちは。

夜叉です。何で寝たままなのかって?

横に吉法師が居るじゃろ?察してくれ。

 

長篠の戦いから一年。まぁ、何だ。

 

撃たれた。

 

本願寺の奴らの殲滅を光秀に命じた吉法師だったけど。

『逆に包囲された。助けて。』(部分訳)って言われた。使えねぇなオイ。

 

最近、前世の記憶が薄れてきてる。

具体的に言うなら、天王寺砦の戦いってのに気付いたのが出陣直前。

成程。■■■■から、浅井長政になってきた、って事か。もはや名前も思い出せないが。

 

天王寺砦の戦い。信長自ら先頭に立ち、結果撃たれて負傷するって戦いだ。

尤も俺がそんなの許さんがね。

信長は先頭に立ったから撃たれた。なら、先頭に立たなきゃ良い。

簡単に言うと………ズダァン!!!

 

俺が撃たれれば良い。

 

ああ、痛ってぇなぁ…前世ぶりだな、撃たれるのは。

だがまぁ、兵士の先輩として教えてやるよ。

なまじっか発砲するのは、相手に位置を教えるだけなんだぜ?

火縄銃。景虎姉さんは飛び道具が使えないから教えてくれなかったけど。

身体が覚えてる。記憶の欠片すら無くなっても。

いいのか?ホイホイ出てきて。俺はスナイパーだって構わずに喰っちまう男だぜ?

射手をカウンタースナイプして撃ち殺す。

まあこれで奴は自分の脳ミソを探すのに手いっぱいだろ。

 

あ、ヤベェ。眠い。

 

ごめん吉法師。あとは頼んだ。

 

 

 

まぁそれで寝込んでるってワケ。

正しくは起きた瞬間に押し倒されたが正しいか。

 

 

あのさぁ、吉法師。

あれは俺の独断だから。そんな怒んなって。

光秀君だってワザとじゃないんだから。

だから光秀君のこと踏むの止めよ?

 

「ならぬ!この愚か者がヘマをしなければ夜叉が手傷を負う事もなかったのじゃ!!!」

 

確かにそうかもしれないけどさ、

 

「申し訳ありませぬ!信長さま!」

 

「誰に謝っとるんじゃあ!!!」ドゴァッ!!!

 

「グッフウッ!?!?!?」

 

ストップだ、吉法師。それ以上やったら嫌いになるぞ。

嘘だって。ゴメン。だから死んだ目で圧切向けるの止めて?危ないから。

ほら、光秀君が能面みたいな顔してる。

 

「ほれ、もう一度じゃ、言ってみい?」

 

「申…し訳あり…ませぬ…長政殿…」

 

「まぁ、気にしなくていいさ。吉法師を守れた。これでいいだろ、な?」

 

「…寛大な夜叉に感謝するんじゃな。しかし罰は受けてもらうぞ。貴様の領地は没収とする!!!」

 

「信長さま!?それは!?」「吉法師ィ!」

 

「付いてこい、夜叉!」

 

「信長様!私も「寄るでないわ!この下郎が!」信長様…」

 

「夜叉が許しても儂が許すと思うな。本来なら打ち首の所じゃ!」

 

「おい、待てよ!」

 

 

 

 

「何故だ。」

「何故なのだ。信長様…」

貴女は変わってしまった。

あの男が関わってから。

否、変えられてしまったのだ。

ならば、ならば。

 

忠臣としてお救いしなければ。

待っていてくだされ。

今、光秀が『私の』信長様を救ってみせます。

 

 

 

 

「吉法師、やりすぎじゃないか?」

 

「そんなことは無い。」

 

「あんなの反逆しろって言ってるようなもんだぞ?なぁ?」

 

「お主を守るためならどんな臣も兵も要らぬわ!」

 

「だからと言ってな…」

 

 

 

「じゃあ!お主がいなくなったら誰が儂を抱きしめる!?誰が慰めてくれる!?

誰…がわ…たしを女として愛してくれるの!?

………だから…お願い。夜叉。私の前からいなくならないで…」ボロボロ

 

ハァ…まったくコイツは…

長篠の戦いの後からこうして時々、精神的に不安定だとこうなる。

きっと。これが天下人織田信長の素顔…いや、吉法師という少女。

存在しなかった。できなかった。そんな一面なのだろう。

 

「莫迦だなぁ、お前は。」

 

「うるさい、このうつけもの。」ダキッミシミシミシ

 

抱きしめられて締め付けられる。

だが、不思議と苦痛は感じない。

 

「ホントに莫迦だ…お前は。」

 

「うるさい。うるさい。うるさい!」

 

「いーや、お前は莫迦だ。間違いなくな。」

何故かって?

「誰がお前だけ置いて逝くかよ。俺達は一蓮托生…生きるも死ぬも同じ…だろ?俺はお前の全てを肯定するし、いなくなるな。というなら死んでもお前のため生き返るさ。だから、お前の夢を見せてくれ、吉法師。」

 

獣は空に輝く星に憧れた。追い付きたいと願った。

だがもし、追いつけないなら。それでも。

輝く為の支えになりたいと願った。

 

「この馬鹿者…本当に馬鹿者じゃよ。ばかものめ…」

 

「落ち着いたか?」

 

「ああ。」

 

「無理するな、いつでも頼れ。もうこの命、お前に預けたんだからな。」

そう言って寝室を去る。

 

「まぁ待て。」

去る。

 

「思うに、最前線で倒れた者には罰が要ると思うのじゃよ。」

サル。

 

「儂を庇った果報者への褒美もの。」

さる!

 

「さて、どちらを先に賜りたい?」

 

ソレドッチモオナジナンジャナイデスカネ。

 

「まぁ、その気にさせたのはお主じゃ、諦めよ。」ズルズル

 

やめて!そんな事言って、私に乱暴する気でしょ!エロ同人みたいに!!!エロ同人みたいに!!!!!!

 

「抵抗は自由じゃが…私は離す気は無いからね!夜叉♡」

 

オデノカラダハボドボドダ!

 

 

明智光秀

 

信長に背いた理由はかつてとの信長の変化とされる。

故に信長を討ちながらも信長の救済を掲げた。

歪んだ光秀にとって、変わってしまった信長は勿論、

変えた者も憎悪の対象。

 

 

 

 

 

 




雌堕ちヒロインとかいうパワーワード。

正ヒロインはノップだった…?


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内なるモノ

根本が壊れてる。なら、理性が回復がしても心は癒えない。
だが、男はそれを。壊れたモノを。
友として歓迎した。

勿論、家族の為なら、使いこなして見せるさ。なぁ?


一向一揆。

宗教は心の拠り所…か。成程。

俺は吉(そう呼べと言われた)ほど仏教嫌いじゃない。

 

だが、

信仰のためなら人を殺しても良いってのがアンタらの教えかよ。

ああ、構わないさ。

なら、やられても文句は無いよな?

 

 

 

 

「アア、ココチイイ。カンビナヒメイダ。」

 

「夜叉?何だか戻っておるぞ?大丈夫かの!?」

 

「いや、ようやく気付いただけだ。これも、今の俺も。全部俺だ。俺なんだ。」

 

「???わからぬ。」

 

まぁ、いいさ。行こうゼ、吉。

さっさと皆殺しにシテ帰ろう。

 

「荒れてるのう…」

 

いーや。十分正気ダゼ?

『茶々は預かった。返して欲しくば…』

 

いい度胸だ。ハ八ッ。

 

 

「父上!何故来たのです!?」

 

「子供の為なら親ってのは何だってするさ。」

 

「よく来たな、長政ァ!!!」

 

誰だっけ。このデブ。

 

「朝倉 景健じゃ!この阿呆が!」

 

あ、森くんのお父さん殺した奴か。

お前こっちに降伏しなかった?

 

「それがどうした!返り忠が常の戦国の世よ!」

 

えーと、つまり?

朝倉裏切って織田裏切って農民にペコペコしてると。大変だね。中間管理職って。

 

「喧しい!これを見い!」

 

「茶々!?夜叉、どうなっとる!?」

 

どうも何も。茶々が人質でな。

『信長を連れてこい』

だって。

 

「茶々を返せ、デブ。」

 

「構わんが、美しい姫だ、どうだ、嫁に出さんか?」

 

「殺すぞ。(殺すぞ。)」

 

「夜叉!隠せてない!隠せてないぞ!」

 

「残念だが、まあ構わん。ほれ。連れて行け。」

 

「父上!!!」

 

よーーーーーし!よしよし!茶々。何もされてないな?スケベなこととか。

 

「されてないし!」

 

「さて、信長を渡して貰おうか。」

 

「え?何で?」

 

「は?」

 

「馬鹿じゃねえの?何で信長を渡さなきゃならねぇんだ。頭の中まで脂肪なのか?」

 

「…ほう、これを見ても強がれるかね?」

 

後ろに見えるのは数十人の男たち。

 

「これらは皆織田信長への恨みある我が同士、我が同胞よ!」

 

銃と弓を構えてこちらを脅してくる。

 

「どうだ?悪い話でもなかろう?今なら信長の首と娘だけで済ませてくれても構わんぞ?」

 

コイツ何か間違えて無いか?

「クフフ、クハハハ…」

 

おいおい、笑うなよ、吉。

コイツらもコイツらなりに歓迎会の準備をしてくれたんだ。笑うのは失礼だろ。

「これが、これが笑わずに居られるか!?夜叉よ!」

 

止めろって。俺も吹きそうだから。

 

「何が可笑しい!!!!!!!!」

 

「いや、申し訳無いんだけど。」

ホントにゴメン。

 

「それだけの人数とか面白過ぎてな…アハハハハ!無理だw」

あ、吉。茶々押さえてて。

「コケにしおって!!!構わぬ!!!撃てぃ!!!」

「だレに命令シてんノ?」

「え。」

 

「ミーんな、眠いってサ。アハ、アハハハハ!!!」

あー笑える。見ろよコレ。皆変な顔してるぜ?

ほら、あげるよ。同胞なら落とさないようにね。

 

「ヒッヒイィィ!?!?」

 

なんだよ。急に化け物でも見たみたいな顔して。つーか漏らすなよ。

茶々の教育に悪い。

 

「お主以上に教育に悪い者も居らぬよ。」

 

ああ、全くだ。で?何か弁明は?

 

「お許しを!信長様!つい、つい魔が差したのです!」

 

魔が差した…ねぇ。魔が差したで殺されちゃ笑えない。茶々も巻き込みやがってなぁ?

「まぁ、待て、夜叉よ。儂としては別に構わんのじゃよ。」

 

成程?許すわけ?

 

「信長様!!!」

 

「まぁ、貴様を許そう。目を閉じるがいい。」

 

「はい!勿論ですとも!」

 

「そうじゃ、そのままゆっくりと面を上げ、目を開けるがよい。」カチャリ

 

おっと、茶々は見ないようにね。こっち来ようか。

 

「はい、有り難きしa 「許そう。」バゴンッ!!!」

 

ヒュー、汚ねぇ花火だ。下衆は散り際も惨めだな。

 

「儂に銃を向けた事は許そう。良くあることだしネ!」グチャ,グチャ

よくあっていい事じゃねぇよ、お前。

「だが、夜叉に銃を向けた事は万死に値すると思うが良い。」グシュリ

吉、死体蹴り(物理)は止めろて。情操教育に悪いってんだろ!

「そもそも堂々と浮気しておいて今更何を言うか。」

 

ゴッハァ!?!?

「わー父上が血を吐いた!」

 

「実はの…カクカクシカジカという訳じゃ。」

 

「カクカクシカジカ?分かんないんだけど!」

 

「しまった。ノブノブノブ~という事じゃよ。」

 

「成程!父上!」

 

どうした、茶々……

 

「三人とも叔母上と父上が仲良し(意味深)なのは知ってるから!」

ゴッハァ!?!?

 

 

もう駄目だ。

 

 

「叔母上!倒れちゃった!!!」

 

「大丈夫じゃろ。その内立ち直る。それ、引きずって帰るぞ。」

 

「止めろや!ああああ!!!畜生!帰るぞ!」

 

「わ~い♪」

 

「クハハハハハハハ」

 

クッソ良い笑顔だな。覚えてろよ。吉。

 

「お、夜の延長戦かの?」

 

 

 

娘の前でその言い方は止めろやァァァァ!!!

 

 

 

 

まぁ。

今更考えたら、幸せな日々だった。

気付くのが遅すぎた気もするが。

 

 

 

長政と信長

 

晩年が近付くにつれ、今まで以上に仲が良くなったとされる二人。

時に馬で競い合い。

時に鷹狩に出かけ。

戦場でも離れる事は無かった。

 

 




狂化スキル(自前)

毘沙門天の加護+狂化(EX?)+敏捷、筋力B=?

身体能力がチートだ。なにこれぇ…
staynightのバーサーカー並なんですが……



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拝啓■■へ。

お気に入り気が付いたら1000超えてた。なにこれぇ。

顔文字ウザイ(超翻訳)と言われたので無くしてみた。
どうだろうか?


ああ、幸せだったな。ホント。

 

拝啓。前世の妹へ。

 

急にいなくなってゴメンな?まあ保険にも入ってたし学費は心配無いだろ。

俺は今、戦国時代で美人なお嫁さんをもらい、可愛らしい娘にも恵まれました。

どうにか見せてやりたいくらいです。

 

さて、貴女が青春を謳歌している今頃、私は………

 

毘沙門天様と第六天魔王様に両サイドから今にも引き裂かれんとしています。

きっと貴女が見たら両手に花だねと嫌味のように言うでしょうが。

最期にこれだけ言っておきます。

 

 

 

 

たすけて。■■

 

 

 

 

「ハハハハ」ミチミチ

「フフフフ」メキメキ

 

 

あのー。吉?姉さん?そろそろ離してくれない?

「何を言うか夜叉。この暴力女にお主を近寄らせとうない。」

 

「何を言ってるんです?夜叉君?ほら、女狐なんかほっといてお話しましょう♪」

 

ちぎれる!ちぎれる!

ああ、茶々よ。ゴメンな。父さんここで死ぬかも。

 

そもそもどうしてこうなった?

 

 

 

いつもの様に吉のとこに遊びに来て…

鷹狩して帰ってきて…

後ろから吉に押し倒されて…

喰われる直前に誰か来たらしくて…

それが姉さんだった。

 

助かったと思った半刻前の俺よ。

 

莫迦野郎。

 

「だから言ってるじゃないですか!私は夜叉君を迎えに来たんです!」

 

「フン!夜叉は儂のモノよ!そう易々と明け渡すか!」

 

いや、俺は俺の物だろ!?

百歩譲って市の物ならわかる。

アンタら妻子持ちの所有権を争うなよ!!!!

 

「夜叉君!私はもういっぱい我慢しました!もう限界です!」

姉さん…俺一週間前に行かなかったっけ?

 

「それがなんですか!誰にだって限界は有るんですよ!

              …具体的には今すぐ襲いたいぐらいムラムラしてます!!!」

 

「それを儂に言うか!?儂だって寸止めで苦しいんじゃが!!!」

 

止めろお前ら。

 

「そもそも貴女夜叉君の何を知ってるんですか?身長は?体重は?好みのタイプは?」

 

「六尺二寸半、二十貫半。好みは儂の妹。おそらく胸はB~Dが好みじゃ!」

 

「ぐっ…」

なんで知ってんだよ。あと最後の日本の単位じゃねえから!!

 

「で、でも夜叉君の初めては私が貰ってます!初子は私が産みましたし。」

 

「くっおのれ…」

 

「可愛かったですよ?あのときの夜叉君は。終わった後に怯えた目で私を見る夜叉君はたまりませんでした。」

うん、留まらなかったよね、貴女。少なくとも片手は超えてた。

 

そうこうしてるうちに話はヒートアップ。

どんなって?

 

話の八割は放送出来ないわこれ。

 

「(見せられないよ!)!!!」

 

「(謎の光)!!!」

 

止めろお前ら!人の夜の話で盛り上がってんな!!!

作者ァ!!!止めろやぁッ!!!

 

作者「愉悦!愉悦!」

おい、前書き後書き以外に降臨するな、お前!読者様。どうかこの男に裁きを!

 

読者「「「「「愉悦!!!!!!愉悦!!!!!!」」」」」」

ダメだこいつら…

 

 

「あ~埒があかんのう、もう良い!これで決めてくれる!!!」

「望むところですとも!」

 

何で飲んでんだよ。刀しまえ!槍しまえ!銃しまえ!

ああ、クッソ。

 

ザクッ!!!

 

「「え。」」

 

ああ、全く、痛てぇな。オイ。

 

「あ、あ、あ、済まぬ!済まぬ夜叉!」

「夜叉君!?血が、血が!」

 

「正座。」

 

「「へ?」」

 

「正座ッ!!!」

 

「「ハイッ!」」

 

あのなぁ、お前ら。

武器はダメだって。

頼むから殺し合いは辞めてくれよ。

 

「「でもコイツが。」」

ん?

「「ハイ。」」

宜しい。

 

 

 

よし、俺が良いって言うまで正座ね。

ピシャリ

 

まったく。世話が焼けるぜ。ホントに。

あ、森くん。ゴメン。

「医者呼んでくんない?」ドサッ

 

「夜叉の兄貴!?」

 

 

 

 

 

おれはしょうきにもどった!

痛ァい。助けてくぇれぇ…衛生兵!

 

「ほら、傷に染みるわよ?」

 

「ぬぼぁーっ!」

 

痛い。

「文句言わないの。」

分かってます。ありがとうございます帰蝶さん。

 

「やれやれ、ホントあの子ったら。」

 

いつも思うんだけど。帰蝶さんって何者?

傷の手当は勿論、何かやたら情報知ってるし気が付いたら背後取られてたりするし。

あれか?NINJAか?NINJAなのか?

 

「夜叉君?」

 

「あ、いや、何でも無いです。ハイ。」

まさかな、ハハハ。

 

「ふふっ。」

 

 

 

「吉~姉さん~おはよ~ってえぇぇ!?」

 

「夜叉…足が…」

「 」チーン

 

あっ。

『俺が良いって言うまで正座ね。』

 

ゴメン!二人とも!

 

 

 

「酷いのじゃ。」

「酷いです。」

 

これは俺が悪い。ゴメン。

「というか夜叉君!傷は大丈夫なんですか!?」

 

あ、何かもう大体治ったよ……あれ?

 

 

 

やたら高い再生力の原因は景虎姉さんだった。

何でも子供の俺を可愛がる余り(性的な意味でも)毘沙門天の加護を乗っけたらしい。

いや、そこまでは知ってるよ。聞いたから。

濁った瞳で『これでもっとデキますね。』って言われた時は死にたくなった。

で、俺の名前は猿夜叉丸。猿『夜叉』丸だ。

 

何か毘沙門天の眷属の夜叉と半ば同一存在になってるらしい。

マジ?

 

じゃあお前まさか『ミンナニハナイショダヨ』ああ、うん。

 

一晩中話し合ったからか仲直りしたっぽい。良かった。

史実だと仲違いして戦になるからね。

 

俺も帰るか。市ー今帰るぞー

「まぁ待たんか。夜叉。」ガシッ

「待ちましょうよ。夜叉君。」ガシッ

 

離して?

「いやー儂結局お預けで悲しいんじゃがの~」ギリギリ

「まぁ、裸の付き合いとも言いますしねぇ。」ギリギリ

HA☆NA☆SE!!!

「裸の付き合いなら風呂でも行ってこい!俺が間に入る意味よ!?」

 

「まぁ、この場合は裸の突き合いとも言うかの。」

 

止めろや!ここはR版じゃねえんだよ!

全年齢対象のKEN☆ZEN(但し逆レはされる模様。)な小説なんだ!

 

まぁ、良い。よく考えたら今まで未来の知識をあんまし使って無かったし、ここで人類の叡智を見せよう。

 

 

「Flash bang!」

 

「ぬわっ!?」

「目が!目がぁっ!」

 

フハハハハ。騙して悪いがこれも仕事でな。

 

ハハハッ!見てたよ、ルーキー。なかなか、やるじゃない?ちょーっと、時間かかったけどね!

 

「あらぁ、何処に行くのかしらぁ?」

 

あっ。はい。

 

ドーモコンニチハ、キチョウ=サン。サルヤシャ=マル、デス!

アンブッシュは一度まで!

パァン!!!

猫騙し。シンプルだが、これで決まりだろ!

「キャッ!」

ゴメン帰蝶さん。でもこれで!

「夜叉様~♪」

アイエエエ!?イチ!?イチナンデ!?

 

「お姉様から…」

 

『夜叉が刺されて倒れた!』と。

 

早くない?一晩しかたってないよ?

「さてと、夜叉。」

「これで逃げられませんね?」

「ふふふっ、やってくれるわぁ……///」

あ、帰蝶さん照れてる。可愛い(現実逃避)。

 

いや!まだだ!まだ終わってない!

作者!作者は何処だ!

 

作者「さぁ、ご唱和下さい!」

読者一同「「「「「愉悦ゥ!愉悦ゥ!」」」」」

 

このクソがァァァァ!!!!!!ズルズル

 

 

 

上杉謙信と織田信長

 

天正四年、信長と謙信の関係が悪化。

あわや戦かとなった際、双方と関係の深い浅井長政によって戦は回避された。

両国の民は長政に深く感謝し、長政を良く慕う事となった。

 

 

 

 




今更ですが最後のWikipediaモドキは現代にどう伝わっているかを表しています。

つまり現代では夜叉君はメッチャ強いバイのやべーやつと思われています。

夜叉「何でだぁ!?」

皆さん!ご唱和下さい!!!

愉ー悦!!!愉ー悦!!!


次回から最終回です。ん?ハッピーエンド多いな・・・


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牡丹一華

バッドエンド(愉悦)

嘘です。まさかここで終わらないよなぁ?夜叉?

牡丹一華はアネモネ。

花言葉は……


ああ、クッソ。

何でこれを忘れてたんだ。

一番大切な所だろうに。

 

莫迦野郎。決まってんだろ、織田信長がどう死ぬかなんて。

 

 

 

間に合え、先に逝くな、吉!

 

 

 

 

「む?サルの奴からか。」

 

「毛利攻めてんだよな、なんだって?」

 

「ほほう、サルの奴め、儂に泣き付いて来おった。」

 

「ふむ。俺が行こうか?」

 

「是非も無し。と言いたい所じゃがの。これをあの暴力女に渡してくれんか?」

そう言って、書簡を取り出す。

「これは正式な同盟の返答じゃ。上杉とのの。」

 

あれから四年。喧嘩しつつ(俺を介して)コミュニケーションを取っていた二人。

そして漸く景虎姉さんから同盟の申請がきた。

良かった。無駄にならなくて。

 

「んじゃ、終わったらそっち行くわ、死ぬなよ?」

「冗談にもならんの。そちらこそ。」

 

「ッフ。」「ハハッ。」

「「フハハハハハハ!!!!!!!」」

 

 

 

 

「姉さん、手紙持ってきたよ。」

「そうですか夜叉君。ではコチラに。」

自然な流れで寝室に連れ込むの止めて?

 

「むぅ、もう六月ですしシてもいいはずです!」

 

「貴女は自重を覚えなさい…あれ?姉さん、今何て言った?」

 

「だからもう六月と…」

天正十年、六月、毛利……光秀。

ああ、なんで、なんで気が付かなかった。

 

「夜叉君?どこに行くんです?」

 

「少し急用で…離して下さい。」

 

「嫌です。」

 

「離して下さい、姉さん。」

 

「嫌。」

 

「姉さ「じゃあなんでそんな顔をしてるんですか!」…」

 

「それは、それは死ぬ覚悟を決めた顔です。私に分からないとでも?」

 

「それでも、それでも、俺は行かなきゃならねえ!アイツをみすみす死なせるか!!!」

 

「……」

 

「……」

 

「貴方はいつも、どうしても引けない時はまっすぐ私を見据えていました。つまり、私ではどうにもならないんですね?今回は。分かりました。」

 

「姉さん…」

 

「ですが、必ず帰ってきて下さい。分かりましたか?」

 

「…ああ、必ず帰って来るよ。姉さん。」

 

 

 

 

「ほーんと分かりやすい子ですねぇ。知ってます?夜叉君。貴方は嘘をつくのが苦手で、必死に誤魔化そうとするときは、真っ直ぐ見てるんです。ハハ、ホントに莫迦ですよ、莫迦。ねぇ……」ポロポロ

 

 

 

「夜叉様?どうしたのですか?そんなに急いで。」

「話は後だ。直ぐ俺の武具をくれ。」

「……はい、分かりました。直ぐにご用意致します。」

 

「どうしたの?父上?」 「父様行っちゃうの?」 「戦い?」

 

「あー…いや、何でもないさ!ちょっと気になってな!あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」ギュー

 

「わー♪」「くるしー♪」「父上…?」

 

本当に、愛してるぞ、お前ら。

 

 

 

「こちらになります。」

 

「ありがとう、市。本当に俺には勿体ないよ。市は。」

 

「そんな…帰ってきたら、温泉にでも行きましょうか。」

 

「そうだな、それもいいなぁ。」

 

「それじゃ、行ってくるよ!」チュッ

そういや、俺からした事は無かったなぁ。

 

「夜叉様!?」プシュ~

 

ハハハ、まぁ、最期くらい良いだろ?

 

「愛してるぜ!市ィ!!!」

 

 

 

「酷いです。夜叉様は。」ポタッポタッ

「本当に酷いです。酷いですよ…」

「知ってますか?夜叉様?貴方は作り笑顔をする時、

血が出る程に手を握り締めて居るんです。」ポロポロ

「でも、あんな顔されたら、止められないじゃないですか…」

「酷い、酷いよぉ…夜叉…様ァ…」ボロボロ

 

 

 

 

間に合え!間に合え!間に合えぇッ!!!

 

 

 

「長政だ!」「討ち取れ!」「覚悟ォ!!!」

 

「邪魔だ、どけぇ!雑兵共ッ!!!」

 

「ひげぇ」ブチュ! 「ぐべぇ」グシュリ! 「きさま」ザシュゥ!!!

 

ドケェ!!!ゾウヒョウドモォ!!!

 

『何だあれは!まるで鬼でねか……!?』

 

 

 

吉!吉! 帰蝶さん!どっちでもいい!返事を、返事してくれ!吉!帰蝶さん!

 

クソ!俺は、間に合わなかったのか?俺は、オレは……

 

 

 

「~♪」

ん?

 

「に…げ~んごじ…ね~ん♪」

この声。間違い無ぇ。

「吉ィ!!!」

 

「けて~んの…って夜叉か。どうした、儂の敦盛in本能寺でも見物に来たか?」

 

何馬鹿な事言ってんだよ。ほら、逃げるぞ!帰蝶さんも!

 

「済まないが、それは不可能に近いな。」

 

「何だァ?テメェは?」

何だこの色黒の男。日本人…か?にしては髪も白いし肌も黒いが。

 

「ふむ、そうだな、私は抑止の代行者…とでも言おうか。」

 

「で?その代行者様が何の御用で?」

 

「…つまりだな、ここで『織田信長が死ぬ』と言うのは、世界に必要な事であり、変えることの出来ない不変の摂理なんだ。要は君が何をしようと世界は織田信長の生存を許さない、という事だ、諦めたまえ。」

 

「関係あるか!!!行くぞ吉!帰蝶さん!」

 

「ふむ、それは困る。そういう干渉を防ぐのが代行者の役目でね。」

赤衣の男は武器を構える。

 

そうかい、つまり。

お前も吉の敵だナ?

 

 

 

「武器を自由に作れるのか…便利なこった。」

 

「その武器を一撃で粉砕しといて良く言う。」

 

「悪いな、諦めだけは悪くてね!」

 

剣を投合してくる。ここだ。

一気に懐に入り、切り裂く。……浅い。

「ぐっ!」

 

「フゥーッ、そんなもんか?代行者様よぉ?」

 

「フッ悪いが、クセが悪くてね。」

 

あ?何を言ってズバッ!! あ?

何だこれ。

 

「驚いた。まさか刺さるだけで切り裂けんとは。」

 

あ?が?なんだよこれ。

「干将・莫邪と言う。夫婦剣であり、お互いに引き合う性質がある。勝負有りだな。」

 

ああ、クッソ痛ってぇ。

だが?勝負有りだぁ?

 

舐めんな。

 

「何!?」

「良い技術だ。だが、まだまだァ!」メッキャッ!!!!!!

 

技でも無い、術でも無い。ただ鍛えた唯のストレートだ。吹っ飛びな!

 

「ッ!うっ!」

立てねぇよ。そんなレベルの全力だ。

 

「…どうするつもりだね?」

死にかけの赤衣が言う。

「決まってんだろ、吉を逃がす。」

 

「世界はそれを許さんぞ?」

「うるせぇ、黙ってろ。」グサッ

「ガッ、ハッ…」

 

 

 

「逃げるぞ、吉。帰蝶さん。」

 

「聞いておったろ?ここで死ぬのが運命なら、儂は逃げんよ。」

「信長ちゃんが逃げないなら、私も残るわぁ。」

 

「夜叉…済まぬの。じゃが、ここまでじゃよ。お主との日々は楽しかったよ。」

 

おい、そんな事言うなよ!なぁ!

 

どうにかならんのか!?どうにか、どうにか!

……ああ、成程。そりゃ、いい。それしか無ぇ。

 

「吉。」

「何じゃ夜叉、はよ逃げんか。」

「………スマンな。」ドムッ

「え………、や……しゃ……?」ドサッ

ゴメンな。吉。これしか無ぇんだわ。

 

「帰蝶さん。連れて逃げてくれ。」

 

「あらぁ、貴方はどうするの?」

 

「俺は…残る。『織田信長』はここに残るさ。奴らに目に物見せてやるよ。」

「だから、ここはその『浅井長政』の死に場所じゃない。連れてってくれ。」

 

「…本当に良いのね?」

「ああ、この先に行くのは俺だけでいい。」

 

 

駄目じゃ。行くな。

 

「じゃあな、『長政』。」

 

やめろ。やめてくれ。

 

「是非も無いよネ!…ってな!」

 

だめ…おいていかないで……やしゃ……

 

 

 

 

「この火災、よもや信長も生きては居るまい。」

「光秀さま、我らの勝利かと。」

 

おかしい、信長様がこの様に容易く?

おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい

「信長だァ!!!!!!」

何だと?

 

 

 

ざっと1万…か。余裕だな。ハハハハ!!!

「「「「「信長ァ!!!覚悟せぇや!!!」」」」

 

ああ、せっかくだし。名乗らないとね。

 

 

 

 

 

 

「我が名は第六天魔王織田信長!!!さぁ、死にたい者から前に出ろッ!!!」

 

 

 

思へばこの世は常の住み家にあらず。

 

「ぎゃあああッ!!!」

 

草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし。

 

「ヒッッ、駄目だ逃げ」ズバンッ!!!

 

金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる。

 

「嘘だろ!?こっちは、こっちは一万だぞ!?」

 

南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり。

 

「殿ッ!!!前線は崩壊寸前です!退避を!」

 

人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。

 

「くっ!ならん!鉄砲隊!構えろォ!!!」

 

一度生を享け、滅せぬもののあるべきか。

 

あ、ああ、信長様…お許しください!信長様!

 

これを菩提の種と思ひ定めざらんは。

 

『ミィツヒデェェェェエ!!!!!!!!!!!!!!!』

 

口惜しかりき次第ぞ。

 

 

 

本能寺の変

 

織田信長に対して反した明智光秀が起こした反乱。

数十の織田軍に対して明智は約一万。

圧倒的多数により勝敗は即座に決まると思われたが意外な反抗に会い、戦いは長引く。

その間に救援に間に合う長政がたった一騎で突入。

兵を薙ぎ倒しながら信長の野望元へ突き進むが、既に信長に生還の意思は無く、

涙を流しながら信長の妻帰蝶と脱出した。

後に帰蝶と病没まで暮らしていたとされ、

後世では一部から『妻帰蝶を手に入れる為の自作自演』を疑われている。

また、『魔王の袖引』等と呼称される信長の最期の突撃には諸説あり、

最も過剰な説では明智軍9000と光秀を単騎で討ち取ったとされるが…信憑性は不明。

遺体は目欠け腕千切れ、もはや判別のつかぬ程。刀から辛うじて信長と分かる程であった。

 

浅井長政

まさに英雄と言える生き方だった長政だが、その死に方は悲惨極まる。

本能寺の変から約一年後。

長政にとって無二の親友であった信長を喪った幻肢痛は長政を苦しめ、

救えなかった友の名と謝罪を嘆きながら心労で没したと言われる。

 

上杉謙信

織田信長の死後から急に残酷な性格になり、酒を呑んでは無差別殺人を起こす狂人と成り果てた。。死ぬまでの一年程、彼は領地を恐怖に染め上げた。が、

ある日突然倒れた。死因は酒の飲み過ぎによる脳溢血とされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

『夜叉…済まぬ…夜叉…済まぬ…夜叉…夜叉……もう儂も逝っていいじゃろ?もう、疲れた………』

 

『アハハハハハハ。夜叉君、情けない死に方ですねぇ。でも心配しないで下さい。』

『私はもっと惨めに死にますよ。アハハ。アハハハハハハハハッ

 




それぞれの道、それぞれの最期。


やっぱりさ…やるもんじゃないね、キャラじゃないことは。(フロム脳ならこのセリフで…)



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風信子

宜しい、ならばトゥルーエンドだ。
一応マルチエンドで、これは本能寺に着いてった場合です。景虎ちゃん視点も有るよ!
(ハッピーはもう少し待って。)
今回残酷な描写有り、苦手なら景虎ちゃんは飛ばそう。
後今回英語スラング有り。まぁ、気にしないで。
風信子はヒヤシンス。花言葉は…




「ああ、全く。馬鹿らしい。今更思い出すなんてなぁ…」

 

 

 

「どうした夜叉、珍しく弱気じゃのう……。」

 

 

 

「まぁ、弱気にもなるさ、帰蝶さんも死んじまって、お前は肩ぶち抜かれて。」

 

「俺は腹に風穴開いてやがる、ハハッ絶望的過ぎて嗤える。」

 

 

 

「ほう?では儂一人で行こうか?」

 

 

 

「い~や、お供しますぜ信長様、一人じゃ寂しいだろ?」

 

 

 

「くどい、まぁ、そうじゃの。赦す、伴をせい!夜叉。」

 

 

 

「へいへい。お望みとあらば地獄の果てまでってね。吉。」

 

 

 

ああ、やっぱり、お前と居ると楽しいよ。こんな時でも。

 

 

 

 

 

 

 

「俺も着いて行こうか?」

 

 

 

「……ああ、そうじゃの。毛利に儂らの睦まじさを見せ付けるのも面白そうじゃ。」

 

 

 

「あのなあ、一応妻子持ちだからな?ああん?」

 

 

 

「フッ。」(-ω-`)フッ

 

 

 

「二重に笑うな。というか妹の旦那に手を出してるのはそっち……」

 

 

 

「あ~!あ~!聞こえない!先に押し倒したの儂じゃし!」

 

 

 

「莫迦らしくなってきた……」

 

 

 

「いや、まったくじゃ。」

 

 

 

「ククク。」「フハハ。」

 

 

 

「「お前(お主)と一緒だと退屈しねぇ(せぬ)よ。」」

 

 

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「夜叉!伏せろ!」カチャ!

 

夜叉を狙う狙撃兵を吉が撃ち抜けば、

 

「おうとも!…吉!右に二歩!」シャキン!

 

吉に縋りよる不届き者を夜叉が切り裂く。

 

「うわっ!助かったぞ夜叉。」

 

「気にすんな、それより、まだ行けるか?」

 

「今どのくらいじゃ…?」

 

「後7000ってとこか。疲れたなら代わろうか?」

 

「ほざけ、最期まで一緒じゃ。」

 

「成程、じゃあ行くぜ?遅れんなよ!」

 

 

 

切り裂き、撃ち抜く。

 

残り5000。

 

撃ち抜き、切り裂く。

 

残り3000。

 

弾が切れても、薙ぎ払い、貫く。

 

残り1000。

 

「何故だ!何故貴様が!貴様だけを信長様は見る!何故だ!」

 

 

 

「何故って、儂が夜叉の事を好いとるからに決まってるじゃろ。無論、女としての。」

 

「それ公言したらもう友人って呼べないんじゃないか?吉。」

 

残り1。

 

 

 

「今更じゃろ。尤も夫婦にはなれんがの。」

 

「ま、男って事になってるからな。」

 

 

 

「五月蠅い!貴様が、貴様が私の信長様を語るな!」

 

「誰の、だって?」グッサァ!!!

 

 

 

「ギャァッ!?!?!?!?!?!?」

 

「お~痛そうじゃの~どれ、儂が引導を渡してやるかの。」

 

吉が最後の銃を構える。ダメだろ。そんな名誉ある死に方。俺がやるさ。

 

 

 

「小便はすませたか?神様にお祈りは?部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」最後は転生っぽく作ったコイツでも使うか。

 

「貴様さえ、貴様さえいなければッ!!!」ガシャ!

 

 

 

「夜叉!」

 

 

 

「Get out of our face,loser.(消え失せろ、ヘタレ野郎。)」ドッパァン!!

ショットガン。構造上単発使い捨てだがな。使えん。

 

 

 

「もうの~帰ったら女じゃって公表しちゃおうかの~」

 

「大波乱待ったなしだな。…ま、側室枠はがら空きだがな。」

背中合わせで座り込む。分かってる。お互いにこの会話が無駄だって。

 

 

 

「吉ィ…立てるか?」

「すまぬ、もう脚に、いや、身体に力が入らん…」

「悪ぃ、俺もだ、クッソ眠い。ハハッ、笑えるな。」

 

 

「…ねぇ、夜叉。」

「何だ?」

「夜叉は、後悔してない?」

「どういう事だ?」

「夜叉は、私と一緒に居なければ、もっと幸せになれたんじゃないかなって。時々思うの。」

「成程なぁ……莫迦野郎。」

「え?」

「後悔する訳ねえだろ、ホントに莫迦だな。」

「…ふふ、そうか、私はうつけか。」

「ああ、うつけもうつけ、最高の莫迦野郎だよ。だからお前に着いてったんだ。当たり前だろ?」

「フハハハハハハハハハ!!!」

「クハハハハハハハハハ!!!」

 

「あ~ゴメン。もう駄目かも。」

「…私も。」

 

「ハハッ…本当に最期まで一緒だったな…」

 

「ねぇ…夜叉……」

 

「何だ……?」

 

 

 

 

「だいすき。」

「奇遇だな……俺もだ……」

 

「「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」

 

「「是非も無し!!!」」

 

「……………………」

「全く、先に逝くなってのに…」

 

 

まぁ、そんな待たせんさ。吉。

俺も直ぐそっちに行く。

市は地獄には来なそうだからな、

二人で征服してみるか?なぁ……………

 

 

 

「夜叉君!!!」

 

?……姉さん。遅いよ。ハハッ。

 

「夜叉君!!!夜叉君!!!」

 

ゴメン。姉さん。もう、眠くて……

「ゴメン。姉…ん…」

ああ、しっかり別れも言ってねぇや。

 

市、茶々、初、江、ゴメンな。

 

ハハッ。

 

姉さん。聞こえてたらでいんだけど…

……俺は吉の隣に埋めてくれ。頼むよ。

 

ハハッ…

 

……………

 

 

 

 

 

「夜叉君。」

「返事をして下さい。夜叉君。」

「起きて下さい。夜叉君。」

「夜叉君。夜叉君。夜叉君、夜叉君夜叉君夜叉君夜叉君夜叉君夜叉君夜叉君」

 

「景虎様…もう、長政様は…」

「五月蝿い。」ザシュゥ!!!

「ぐ!?が………」

 

「夜叉君。夜叉君のお願いは叶えたいです。でも。」

何時だかの濁った目。夜叉君と出会ってからここまでにはならなかった程の。

「私を置いてくなんて酷いですよ。」ああ、やはり。人の心が分からない私にとって。これは恋だったのだろう。

私だって一緒にいたいです。

私だって夜叉君を感じたいです。

夜叉君と一つになりたいです。

「だから、ダカラ、ヤシャクン?ワタシトヒトツニナリマショウ。」ガブッ!!!

 

パキパキ…メキャメキャ……

 

アア、トッテモヤシャクンヲカンジマス。

モット、モットカンジサセテクダサイ。ベリッ!グチャ…

 

「この女狐と一緒にというのは残念ですが…まぁ、最期の頼みくらい叶えてみせますとも。」

唯、チョット私もお邪魔したいだけですし。

 

 

 

ニガシマセンヨ。

 

 

本能寺の変(信長、長政大心中)

 

明智光秀は織田信長を裏切った。

しかし、信長と長政。後世に名を残す二人の英雄の最期の抵抗により全軍が討ち取られたとされる。

二人ともが光秀を討った後背中合わせで力尽きていた事から、信長、長政大心中と呼ばれる。

二人の遺体を発見、尾張まで運んだのは友好のあった上杉家であったとされる。

 

長政の死、謙信の自殺

 

弟分にして無二の友人であった長政の死は謙信を極限まで狂わせた。

なんと、謙信は発見した長政の遺体を貪り喰らったとされている。

その後、自らを長政の横に埋葬するように部下に伝えると、

長政の遺体の上で自ら首を切り落とした。

信長、長政、謙信。この三人の遺体は彼らの遺言の元、

左右に信長と謙信。間に長政。そして彼の妻である市が長政と共に眠っている。

ここまで密集した墓となれば荒らす者も出そうなものだが、

邪な気持ちで立ち入った者は翌朝惨殺体として発見されるという。

 

 




個人的に嗤うマネキンの歌詞をイメージしながら今回の景虎ちゃんを書いた。
ってか誰だこの信長。



諸君 私はBADENDを地獄の様なBADENDを望んでいる。
諸君 私に付き従う読者戦友諸君
君達は一体何を望む?
愉悦の欠片も無い、砂糖のようなHappyENDを望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の作者を殺すガムシロップの様なENDを望むか?

感想欄&読者一同「「「「ハッピーエンド!ハッピーエンド!ハッピーエンド!」」」」

宜しい、ならばハッピーエンドだ。


我々は満身の圧をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
だがこの暗いエンドの闇の底で二話もの間堪え続けてきた我々にただのハッピーエンドではもはや足りない!

ハッピーエンドを!!糖分過多なハッピーエンドを!!



という事て書きます。



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夢百合草

本来なら有り得なかった筈の結論。
読者様の結束によって生まれた終わり。
あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ! アハハハハハ!!

夢百合草はアルストロメリア。花言葉は…




これは、有り得たかも知れない物語。

 

 

 

 

「吉ィ!」

 

「うわ!どうした夜叉!」

 

「あー。……ごめん。夢だわ。」

 

何か俺と吉が本能寺で共倒れになる夢を見た。

 

「それは不吉な…いや、光秀はもういないんじゃけどね!」

 

まぁな。謀反起こしてくれたから正面から蹴散らしてやった。

 

ああ、読者様方、こんにちは。夜叉です。このお話は9話からの分岐となります。

もし上杉織田の戦を回避出来なかったら?という流れです。

 

 

ホワンホワンホワンノブノブ~

 

 

 

「この決着は戦でつけましょうか!」

「望む所じゃ!」

 

「おい、お前ら!そんな事で何人殺す気だ!!!」

 

「「そんな事?」」

 

「私達からしたら何よりも大事な事です。」

「さよう、夜叉の為なら戦も厭わぬよ。」

 

「お前ら意外と仲良いだろ。」

 

それで時は流れ。

 

上杉織田の全面戦争になった。

 

本当に何してんだコイツら。俺か?俺が悪いのか?

ああ、ホントに。世話が焼ける奴らだ。

まぁ、それも俺の仕事か。ハァ。

 

 

 

 

お互いに総大将が最前線を駆ける。

 

戦の前の取り決めは二つ。

今回の戦に夜叉を巻き込まない事。

まぁ、本人が嫌がっていたからの。

あ~あ。これ勝っても嫌われるじゃろうなぁ……

 

「信長様!!!」

「!何じゃ!」

「斥候からの連絡だと間もなく上杉と激突致します!」

「そうか。……よし、全軍!前に出よ!」

 

夜叉よ。儂は、どうしてもお主が欲しい。例えお主に嫌われてもじゃ。

 

 

 

「景虎様!!!」

「ええ、分かってます。間もなく会敵しますね。」

「陣は如何に!」

「決まっているでしょう!全軍!車懸りの陣を組み、突撃!」

 

夜叉君。もし、一つだけ願いが叶うなら。

貴方は血濡れの女でも愛してくれますか?

 

 

 

「景虎ァー!!!」

「信長ァー!!!」

 

神殺しの魔王と軍神。

この二つが今衝突_______しなかった。

 

「止めろや莫迦野郎共!!!」

 

「「ぐべぇ!?」」ゴチン!!!!!!

 

「「「「「「「「「「え?夜叉様(殿)!?!?」」」」」」」」」」

夜叉は突然に現れる。戦いのある場所に。

 

「夜叉様、何故!」「信長様!」「景虎様!」「いったい何が…?」「EDF!EDF!」

 

五月蝿いなお前ら。

 

「この莫迦連れてくけど、いいよな?」

 

「「「「「「「「「いや、それは…」」」」」」」」」

 

「いいな?」

 

「「「「「「「「「アッハイ。」」」」」」」」」

 

「ついでに全軍引いてお互いに領地で宴でもしろ!この戦!浅井長政が預かった!」

 

「「「「「「「「「了解しました!!!」」」」」」」」」ザー、ダッタッタッタ

 

蜘蛛の子を散らすように去っていく。

さてと。

 

このバカタレ共どうしてくれようか。

 

 

 

 

「む~……?」

「ん~……?」

 

「むへへ、夜叉君おいひいです……」

「夜叉とラブコメした夢を見たぞ!死んだがの。」

 

「「あれ?」」シバラレ

 

「「何で儂(私)縛られてるのじゃ(んです)?」」

 

 

 

「よう、バカ共。」

 

「おお、夜叉よ!良く来た!すまぬがこれを解いてくれぬか!」

「夜叉君!助けて下さい!この縛り方絶妙にエッチいです!」

 

「いや、それやらせたの俺だから。」

やったのは市と帰蝶さんだけど。

何で亀甲縛りなの?俺が一番ビックリだよ。

 

さて、お仕置きの時間といこうか。ニタァ…

 

「や、夜叉!?何じゃ?怖いぞ!?あ、嘘、やめて、やめて!」

 

 

 

「………♡」ビクンッビクン

 

 

「さて、次は姉さんの番かな。」

 

「くっ、殺せ!」

 

「まさか、殺したり何かしないよ。ハハッ。」

 

「オレのそばに近寄るなああーッ!!!」

 

 

まぁまぁ、姉さん。ガシッ

堪忍しようか。

 

 

バシッ!!!!!!バシッ!!!!!!

「うぅ……この歳になってお尻叩きなんて……」///

 

バシッ!!!!!!バシッ!!!!!!

「ヒィッ♡アアッ♡」

 

何故だろうか。吉に続き罰になって無い気がする。

 

 

 

「ハァ♡ハァ♡」///

まぁ、大分応えたろうしもういいか。

 

 

 

「で、何て言うんだっけ?」

 

「「本当にゴメンなさい。」」

 

「宜しい。」

 

ハァ、やってくれるよ。事後処理をするのは俺なんだが……

 

「あの~夜叉?」

「どうした吉。これ以上の面倒事は御免なんだが……」

「その~今回の戦なんじゃが。」

「ああ。」

「つまり儂らは夜叉に破られたわけじゃ。」

「そうですね。」

「いや、可笑しいだろ、何でそうなる。」

「だって夜叉君は総大将を討ち取ったワケですし。」

「えぇ…いやまぁ、確かにそうだが。」

 

「そこでじゃ。儂…織田家と。」

「私の上杉家一門は。」

「「浅井に吸収合併という事にしようと思うのじゃ。(です。)」」

 

 

 

何でだよ。

 

 

 

「いやぁ、総大将が討ち取られたワケですし?降伏も致し方無いかな~と。」

「まったくじゃ。」

 

お前ら死んでねぇだろうが。

いや、姉さんは百万歩譲って分かる。吉、お前はどうすんだよ!天下統一しないのか!?

 

「いや、お主がすれば良かろう。」

 

丸投げしやがったよコイツ。

 

「儂の盟友で義弟、織田信長と上杉謙信を討ち取った実力者。箔は十分じゃろ。」

 

お前ら、マジで言ってる?なぁ。

「当たり前じゃ。」

「夜叉君なら出来ますよ。」

 

いや、あのな、そもそも、

 

「夜叉。」

「あ?」

「お前がやれや。」

「いやいやいや、ここで乗るのは可笑しいだろ。」

「……………(´・∀・`)」

 

「やってやろうじゃねぇかよこの野郎!!!!!!」

 

「よし、言質取ったぞ。」

「やりましたね。」

 

………しまったァァァ!!!!!!

吉ィ!!!!!!何で知ってる!?

 

 

 

 

 

ああ、もういいよ。

やってやる。やりゃあいいんだろ!やりゃあよ!

 

「「それでこそ夜叉(君)じゃ(です)。」」

 

 

「そしたらお前らどうすんの?」

死人が帰るワケにもいかんだろうし。

 

「あ~夜叉?」

何だ?

「まぁ、合併につき、織田からも人質を送ろうと思ってな?二人くらい。」

いや、要らねえよ。今更だろうし。

「あ、上杉からもです。」

何でだ。

 

いや、必要ならしょうがない…のか?

 

 

「でじゃ。」ガシッ

何故掴む。

「でですね。」ガシッ

脚を奪われた。

「「友好の証としてその人質と婚姻を結んで頂きたいのじゃ(です)。」」

 

もう一つの取り決め。

『勝った方は必ず夜叉を幸せにする。』尤もそこに彼の感情は加味されないが。

 

アッ…

 

離せ!離せ!

「「で、婚前交渉と行きましょうか。」」

何でだ!ああ、クソ!

 

止めろ!離せ!止めて!離して!誰か助け

 

 

 

まぁ、後は皆の想像に任せるよ

 

実際幸せだからまぁいいかなって思う。

 

「夜叉?」

 

「いや、別に何でも無ぇさ。」

 

「本当に天下人らしかぬ話し方じゃのう。」

 

「別に良いだろ、これが俺だ。依然変わりなくな。」

 

「夜叉?」

 

「何だよ。」

 

「これからもよろしくね!」

 

「……こちらこそ、よろしくな。吉。……ん?」

 

ヤシャクン~

ヤシャサマ~

チチウエ~

 

「呼ばれてんな。確か…今日は城下の祭りか?行くか。吉。」

「是非も無し!行こうか夜叉!」

 

 

 

まぁ…どんな形であれ………

 

俺は今、幸せだぜ!■■! ハハッ!!!

 

 

 

 

 

 

浅井長政

織田信長と上杉謙信の戦いにて双方を討ち取り、天下人として名乗りをあげた。

主を討たれた織田、上杉の将兵は何故か直ぐに長政に従い、圧倒的な戦力で全国を統一した。

その後は善政を敷き、五十代で没するまで大きな争乱もなかった。

 

 

余談だが、公には長政の死因は寿命だと言われているが常に四人の美姫を侍らせていたという逸話から、

本当の死因は腹上死では?と真しやかに語られていたりする。

 

天下を治めた長政は、晩年こう言い残した。

『天上天下或いは古今、我無双也。』




勝った!戦国編、完!

感想欄から生まれたお話です。
なんと言うかまぁ、よかったね!(愉悦欠乏症)

正史はトゥルーでFGO編はそっからの繋ぎですので、これは完全なパラレルです。

夜叉君が幸せで何より。

これ以降の更新は完全に不定期。
ただ週1は保証します。


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ある武芸者の手記

本当は夜叉君の誕生日に出す予定だったんですがね。
玉葱投稿日間違えてたよ……

本文だけワードで作って満足してました。
御免なさい。

短編集?です。人物の切り替わりが多いのは申し訳ない。


私は旅の武芸者だ。

ある時、とある河原の松の木の下で夜営をすると、

一人の男が通りがかった。

身の丈は六尺は優に超えるだろうが、反面、その顔は薄ら笑みを浮かべた怪しい男だった。

どうやらこの男も夜を越すらしい。

退屈しのぎに稽古でもせぬかと誘うと男は即座に断り、詫びとして一つ話し始めた。

 

 

 

慶長20年5月________

 

 

徳川家康は遂に豊臣家を滅ぼした。

 

豊臣秀頼、その母淀君を自害に追い込み、とうとう覇権を手にしたのだ。

 

徳川家康は幕府を開き、その後250年もの間を一族で支配する。

 

しかし、この話は。

最期まで絶望に抗った人々の、語られぬ物語さ。

まぁ、暇潰しにでも聞いてくれよ。

 

 

 

 

もはやこれまで。

 

城は燃え、堀は埋まり、名だたる将兵の尽くは討ち取られた。

 

「母上……申し訳有りませぬ………」

 

愛しき我が子よ。

愛しき父に似て健強に育ち、愛しき母に似て美しい子よ。

 

いいのです。

これが天命ならば、非力なるこの身にどうして抗えましょうか。

 

 

 

 

 

秀頼は自刃した。最期だけは武士らしく。

 

続いて淀君も……

 

『悔しい。』

 

おっと、まだ続くようだ。

 

悔しい………悔しいです………父上…母上………。

何故私たちだけが、こんな目に!

父上!何故私には力が無いのですか。

家臣を、子を、守れる力が。

 

 

 

『んなもんお前には要らねぇからだよ。』

 

………父上?

 

『まぁな。娘も孫も曾孫も心配で化けて出たぜ。』

 

ごめんなさい。父上。貴方に救われた生命、ここで捨ててしまいます。

 

『気にすんな。お前の生き方。俺が口出しは出来んさ。ただ…………』

 

?

 

『立派だったぞ。流石は俺の…俺達の娘だ。任せときな。』

 

ははっ。たった一言。その一言に、全てが報われた気がした。

さらばです。父上。

 

 

 

『立派だったぞ………ああ。まったく。』

『だが、まぁ。アレだ。』

『人の娘と孫、ともすれば曾孫にも手ぇ出すとは。いい度胸してんナァ?狸?』

 

『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

無念。

 

申し訳有りませぬ父昌幸よ。

悲願たる魔性家康の討伐は遂に叶いませんでした。

気を張れども、声をあげようとも、もはや身体の一部たりとも動きませぬ。

 

無念なり。無念なり。

 

敵か。

 

「我が名は真田信繁よ。雑兵共、我が首手柄にするがいい。」

 

 

『まぁ、待てって。真田信繁君。一つ取引をしないか?』

 

取引だと?この後に及んで命乞いなどせぬ。早く討て。

 

『内容はシンプル。アンタがこの先生きる僅かな時間。そいつを全部寄越せ。

対価としては何だがまぁ…確実に狸に一泡吹かせてやるよ。』

 

成程。乗ろう。元より死んだ身。微かな生になど執着は無い。

最期に聞いておきたい。貴公の名は?

 

『唯の老兵さ。まぁ…娘と孫が世話になった。とだけ礼を言わせてもらおう。』

 

そうか、貴公…いや、貴方は…

 

 

 

 

『ホントにいい部下を持ってる。我が孫ながら羨ましいぜ。』

 

さてと。

 

「正直どれだけ持つことやら。ま、動ける限り殺して回りマすカネ。」

 

 

 

勝った。

これで泰平の世が来る。

 

苦節七十年余り。信長様の力に怯え、長政の若造に脅され、2人の死後も猿めに拐かされた人生。

時は来たり。

 

私の世だ。

ついに、ついに!

 

私が!私だけが!天下統一を成し遂げたのだ!

我を讃えよ!我を崇めよ!

この家康こそが!この国を支配せし神の現身なのだ!

 

しかし、この狸は気づいて居なかった。

 

自ら神を名乗ってしまった事に。

神を喰らう夜叉の存在に。

 

 

殊更、神を名乗る人など特段の好物に過ぎない事に。

 

 

『 あ、そうなんだ で?それが何か問題? 』

 

 

 

 

この後のお話は伝えられていない。

いや、この話こそが疑わしいものだがね。

 

ん?何で伝えられていないって?

 

馬鹿野郎。お前。そりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

見た奴が皆殺しになってたらどう伝えるんだよ。

 

 

ただまぁ一つ言えることがあるとすれば、その後の地獄の惨劇を家康は生き延びた。

流石は戦国の世を70過ぎまで生き延びただけはある。

 

但し、命からがら逃げ延びた家康は、幕府を開くも僅か一年でその人生を終える。

 

一説には、秀頼公の祖父様、浅井長政公の祟りだとか。

実際家康の死に際は実に無残極まり、『鬼が!鬼が!』と餓鬼みたいに喚きながら死んだってよ。

 

まぁ、結局。人の身で神を騙るのがどんなに烏滸がましいか、

家康公は身をもって体現してくれたってな。

 

 

ん?そんな話を知る俺は誰かって?

唯の放浪者だよ。アンタと同じ、唯の、な。

 

 

 

『貴方は一体…………?』

『あ~まぁ、唯の幽霊だよ。色々な縁でな。アンタを逃がす事にした。』

 

 

おっと、夜が明けてきた。俺はそろそろ行くよ。

 

 

…………まぁ、アンタも、ご先祖さまは大切にな?

 

ハハッ!

 

 




さて、誰でしょう! フロム脳全開をオススメします。

まぁ、意外とわかりやすいかな?
豊臣秀頼ってググれば一緒に名前が出ますしね。

最初の武芸者君はモブです(大嘘)。


最後になりますが、夜叉君誕生日おめでとう!

「いや。遅ぇよ。(8/28)ワード使うの止めたらどうだ?」

いやぁ、自動保存がやりやすいんだよね。

「成程?まぁ、こんな事が続くと読者にハンバーグの具にされるからな?」

申し訳ない。ズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイ

「…………まぁいいや。」


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幼年期の終わり

本編とはまったく関係ないんで読まなくても大丈夫です。
後全くネタとかない感じなんで、面白くないです。


槍夜叉が幼年期の性格なんですが、今の狂、弓夜叉に歪んだ経緯の伏線です。


気がつくと道を歩いていた。

ああ、またこれか。

 

この道は知ってる。何十何百回と見た景色。

つまりこの後もきっと。同じ結論だ。

分かってる。なのに、続きを見る事を諦められない。

もしかしたら。そんな馬鹿な事を思い続けている

 

「風紀委員長!」

俺の事か。

「随分とガラの悪いお客さんが来てます!!!!!!」

 

 

 

「■■さんよ~おたく、ウチの若いのやってくれたって本当?」

「若いの?さぁ知りませんね。……ここは貴方みたいな人が来る所では有りませんので、お引き取りを。」

「あれ?いいの?お宅の妹さん、危ないかもよ?」

「……何をした?」

「いやまぁ?今のとこは何もしてませんけどねぇ!?アハハハハ!!!」

 

 

 

 

「お兄ちゃん!!!!!!」

「………■■を離してもらおうか。」

「いやいやいやまぁ、ゆっくりお話しましょうや。」

「離せ。」

「随分と偉そうな口だなオイ!状況分かってんのか?アアン?」

「五月蝿い、社会的離反者が。こっちとしては警察だって呼べるんだぜ?」

 

「いやぁー、それは困る。 オイ!」

 

ゾロゾロと出てくる。……二十人くらいか?

「オット、妹さん、傷物にしたくないだろ?分かるな?」

 

 

 

「オラァ!!!!!!」ベキィ

「ッ!!!!」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!!」

「おっと、君が動いていいなんて一言も言ってないよ?」

「五月蝿い!この爪楊枝野郎!」

「ほほう…中々に気が強い!いい女じゃない。なぁ?」

「触らないで!」

「オイ、触れるんじゃねぇ。モヤシ野郎。」

「ああ?うっせぇんだよこのドグサレが!黙ってろ!」ザクッ!!!

「が!?は…!?」

「オイオイ、刺しちゃったら死んじゃうじゃん。何してんの。」

「あ~ゴメンゴメン。ついうっかり。」

コイツら……ッ!!!

 

「まぁい~や。その分、妹ちゃんに楽しませてもらうさ。」

「ッ!近付くな!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

 

クソが。

 

「ギャハハ!じゃ、コイツやっちゃっていいすか?」

 

「好きにしろ。」

 

「ま、心配すんな、スグに妹もボロ雑巾みたいにしてそっちに送ってやるよ。」

 

「それじゃサヨナ『ザクッ!』え?」

 

頸動脈を切り裂いた。…死んだろ。

殺されかけた。

妹が巻き込まれた。

正当防衛だった。

どう言い訳しても、俺は今、自分の手で人を殺した。

ああ、最低な気分だ。

 

「お兄ちゃん!」

「クソッ!ジャックが殺られた!殺せ!殺せ!」

 

殺さなきゃ殺される。生き残るために、生き残らせるために。

 

殺さねば、生きられない。

 

2人目。頭をカチ割った。

3人目。銃を持ってたから腕を切り落として奪った。

4、5、6人目。銃で撃ち殺した。

7,8,9,10,11,12…

ああ、不思議だ。

気分は最悪なのに。

人を殺しているのに。

どうして俺は笑っている?

分からない。

解らない。

判らない。

 

 

まぁ、いいか。ハハッ。

 

 

一人殺す事に感じていた嫌悪感、罪の意識は薄れ。

殺した相手の体温を忘れていく。

 

 

何だか、心地良いな。

 

 

19,20……後はアンタだけだな。モヤシ。

 

「ど、どうなってんだよ!お前、本当に人間かよ!?」

 

知るか。死ね。

 

21。

 

 

 

自分のと返り血で全身紅に染まる。

ああ、全く。

これじゃバケモノみたいだ。

 

■■、大丈夫………いや、俺に寄るな。

俺はもう、お前の近くに居るべきじゃない。

 

「何言ってんの?お兄ちゃんは私を助けてくれたんでしょ?」

 

そんな顔で見るな。

 

俺は、唯の……

 

「ありがとう!お兄ちゃん!……それと…………怖かったよぅ……」

 

成程。この為か。

■■。俺は、お前を守るためなら、人でなくてもいい。

だから、お前が俺の存在する理由だ。

お前は、お前だけは俺が護る。

絶対にな。

 

ハハッ。

 

 

 

「夢か………」

随分と、懐かしい夢を見た。

走馬灯って奴か。

光秀は殺した。

立ってるのは俺だけ。

 

俺の勝ちか………間もなく死にそうだが。

 

尤も、生きて帰るワケにもいかねぇか…織田信長はここで死なないとな。

 

最期に思うのが、嫁さんでもなく、娘でもなく、親友でもなく。

 

「唯の妹か……ハハッ。悪くない。是非も無し!ハハッ、、。」

 

 

 




この話に関してはあまり面白くなくてもご勘弁を。



バッドエンドのおまけ的な?(愉悦)


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ぐだぐだファイナル本能寺
ぐwだwぐwだwしwてwきwたwww


タイトル見にくいな………

ぐだぐだファイナルです。

失踪はしてないよ!話は疾走してるけど!(激ウマギャグ)


どうも読者の皆様。夜叉です。

俺は今_____

 

「ノッブァ!」

「ノッブ!」

 

 

謎のナマモノに囲まれています。

 

助けて市。

 

 

 

………遠目に見ると吉に見えなくも………無いな。

 

 

「ノブノブ!」

 

「あ~着いてこいってか?成程。」

ふっノッブ語検定一級(審査・帰蝶)の俺には造作も無いわ………

 

「「「「「「ノ~ブ~ノ~ブ~♪」」」」」」

 

なんか可愛く見えてきた。

コハみが足りない今の俺にはピッタリだ。

 

「………………」ナデナデ

 

「ノッブ~♪」///

 

今更だけど吉って良い声してたよな。

一部のファンが叫びそうな感じで。

『くぎゅうううううううううううううううう!』

おっと、君も釘宮の病に侵されたか。

だが、分かるよ。

ロリボは甘いものだ…

 

 

 

「ノッブ、ノッブァー!」

「ノブノブ、ノブノブブブー!」

 

さて、よく分からねえ所でよく分からねえ奴らに歓待されてる。

……歓待されてるよな?

 

「ノッブ、ノッブァー!」

「ノブノブブ!ノブブー!」

 

ん?何だこれ。たくわえ漬か?

 

「ん……美味い。酒の肴にもなりそうだ。」ポリポリ

 

「ノブノ~ブ、ノブ。」

 

ふむ、沢庵というのか。何とも懐かしいような味だ。

 

「ノッブ!ノッブ!」

 

「そうだな……アテも無えし、暫くご厄介になりますかね。」

 

「「「ノッブー!ノッブー!!」」」

 

うおっと。ハハッ。愛いやつめ。ナデナデ

 

 

「ノノノブブブブー!!」

 

「ノッブ!?」

 

「何だ?随分慌ててるようだが。」

 

 

 

 

「さあ、このような邪悪な生物は衆生の為になりません。

摩玖主教の名のもとに駆除してしまいなさい!」

 

「「「ノッブァー!?」」」

 

『これより未確認生命体の捕獲を開始。

抵抗するものは排除せよ。』

 

「「「ノッブ!?ノブブアアァー!」」」

 

「不浄なるものどもよ、我が神の威光にひれ伏しなさい!」

 

「ノーブブ……!ノブブー……!」

 

「ふん、言葉も解さぬくせに慈悲を求めるとは片腹痛い。

さっさと始末して……。」

 

「………………」ガキンッ!!!!!!

 

「な、何奴!?」

 

「おい、何してんだ。」

 

「ノ……、ノッブ!ノッブノッブ!」

 

「我々は衆生に害を為す、このおかしな生き物を排除にですね。」

 

「いや、そんなんどうでも良いんだよ。俺が聞いてんのは……

この国で、俺の前で、吉(?)に何してんだ?」

 

オい、コたエろよ。ナにしてンダ?

 

「は、話が通じな……え、英霊兵!この者を排除なさい!!」

 

『敵性サーヴァントを排除。16番までを包囲展開。』

 

面白れぇ、数で押す気か。

ハハッ。 笑える。

 

「ほら、お前ら!自分の国すら守れねえでどうする!」

 

「「「ノブッ!?」」」

 

「切れ!撃て!突け!殺せ!闘え!そして生きろ!」

 

生きる為に、自分自身で道を切り開け。

 

「ノブッ!」「ノブーー!!!」「ノッブ!」

 

「な…!先まで戦意を失ったものまで……!?」

 

ハハッ…ハハハッ。ハハハハハハッ!!!!!!

 

 

 

 

 

「あれがちびノブとかいう者ですか。」

 

「あの人は一体?」

 

「あれは、まさか、もしかしなくとも……」

 

「ええ、間違い有りません。」

 

「夜叉ァ!!!!!!」「夜叉君!!!!!!」

 

 

 

ハハハハハハ!!!!!!

 

「ノブー……」

 

大丈夫だ。弱音を吐くな。

絶対勝てる。勝たせる。

「ノブ?」

何故かって?

その為に俺が居るからだよ!

 

 

 

背中は任せた!お前ら!

「「「ノブッ!!!」」」

 

「我が名は浅井長政!魔王信長が友にして軍神が眷属の一人よ!

さぁ!死にたいものから前に出なァ!!!!!!」

 

ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!………ん?

 

「夜叉ァァァ!!!!!!」「夜叉君ッ!!!!!!」メッキャァ!!!!!!

 

ぬおおおっ!?腰が!?って言うか、

 

「吉!?姉さん!?」

 

「そうじゃ、このうつけ者めが!」

「そうですよ!気付くのが遅いです!」

 

あー何か…ゴメン?

って、アンタら!止めろ!服を脱がすな!今戦場のド真ん中だぞ!

 

「大変です!景虎さんと信長さんに見知らぬ人が押し倒されています!」

「どうしたらいいんだろう。」

「ギャハハハハ!流石だぜ夜叉の兄貴!!!!!!」

 

ゴメン!森君!お二方!コイツら止めて!

 

「あう~。」

「何じゃマスター!この後に及んでやめろと!?」

 

「止めろ!!!ああ!もう!話は後だ!来るぞ!!!!!!」

 

 

 

 

狂化EX

狂化EXの中でも気が使え、マトモに会話し、国内外のテーブルマナーや言語も完璧。

というか王クラスのサーヴァントの接待ができるレベル。何だこいつ。

但し彼の行動概念は基本的に家族や友人を護る事に固定されている。

故に無鉄砲で危険に身を晒す事もしばしば。

 

 




狂化EX。
これは酷い。

勉強忙しすぎて毎日は無理かな……唯一の取り柄だったんですが……申し訳ない。

所でデモンエクスマキナが待ち切れずACLRを起動し、ブランクで地獄を見た玉葱が居るそうな。


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これだから狂戦士は………

ぐだぐだイベント書きやすい…
何してもノリでどうにかなる感じ。


「くっ……例の奴らです!引きますよ!」

 

『戦力の3割を損失。戦線の維持の困難を確認。これより撤退します。』

 

やべぇ、逃げられる。

追撃は……「ノブ……」「ノッブ……」

無理か。いや、いい。誰も死んでない。なら万々歳だ。

 

「聞け!皆の衆!此度の戦!我が方の勝利だ!」

 

「ノッブ!」「ノッブー!!!」「ノブッノブ!!!」

 

ハハハハハハッ!!!!!!

 

 

「「夜叉♡」」ガシッ

 

あ。

 

助けてそこの娘!

 

「ひゃあ!何!?誰!?」

「状況からして信長さんや影虎さんのお知り合いのようですが……」

 

「よし!良くぞ聞いてくれた!俺の名は…」

 

「ほれ、マスター達に分かるよう言うと浅井長政って奴じゃよ。」

「吉ィ!!!」

オイ!ここはカッコよくキメるとこだろ!?俺が!

 

「浅井長政……?この人が……?」

勿論だ。

「かなりヘタレてますがね。」

 

「うっせえぞ!そもそも戦場で押し倒す奴が居るかお前ら!」

素直に怖いわ!

 

「ああ!もういい!ひとまず尾山御坊に帰るぞ!」

 

「ノブッ!」「ノブノブ。」「ノブブ。」

 

ああ、本当にコイツらは良い奴だ。

 

「待つのじゃ!」「待ちなさい!」

 

やなこった!逃げるぞ!

ノブノブノブ~~~!

 

 

 

「長政さんも御二方も行ってしまいました!」

 

「嵐のような人だ……」

 

「ギャハハハハ!夜叉の兄貴らしいぜ!追っかけようぜマスター!」

 

 

 

~尾山御坊~

 

 

「ノッブブァー!ノッブブー!」

 

「よく分かりませんが…喜んでいるのでしょうか……?」

 

「『助かった。感謝する。』ってよ。」

 

「言葉が分かるのですか!?」

 

「まぁ…酔っ払った吉はこんなだしな。」

 

「え、まじ?わしこれと同じ?」

 

うん。…………あ~もっと悪いかも。うん、悪いな。

 

「で、この国ですが、カルデア家が併合するという事で良いのですか?」

 

「ノッブァ!ノブノッブ!」

 

「大丈夫だとよ。んじゃ俺も。まぁ、知名度の無い武将だが、宜しく頼むぜ、マスターちゃん?」

 

 

 

浅井長政が配下に加わった。

(NPCとして選択出来るようになりました。)

 

 

 

 

「「「ノッブ。ノッブ。」」」

 

「マスター!コイツら何をしとるのじゃ!」

 

「長政さんを取り囲むように。」

 

「どうやら長政さんを守るつもりの様ですね。」

 

お前ら………

 

すまねぇ!恩に切る!

 

「ああ!この!どきなさい!」

 

「ノッブァー!?!?」

 

 

 

 

 

「捕まえましたよ!」

「逃がすか!」

 

スマン。捕まっちまった。

いや、まだだ、まだ終わってない!

 

筋力Bの今ならッ…………

 

「ぬおおおっ!?」

「まさか突破されるとは……!?」

 

 

ハァ………ハァ………撒いたか?

市も帰蝶さんも居ない。これは勝ったな。 風呂入ってくる。

 

 

 

この後男湯で信長♂と出会うのだが省略。

 

 

 

何というか……俺と吉の逸話やらを足して二で割ったみたいな奴だったな。

 

 

あんなガトリング火縄銃(キチガイ兵器)作るのは俺だわ。

というか作ったし。実用性皆無で産廃だったけど。

今更考えたら戦国の戦場って隙だらけだったよな。

暇潰しで作ったパンジャンドラム(ボビン)ですら有用だったし。

せめてなー無色火薬があればなー…

いや、今更どうでも良いんだけどさ。

 

「「捕まえたのじゃ(ました)。」」

 

うん、逃げるの止めよう。仕方ないね。

 

「おや?やけに素直ですね。」

 

「うるせぇな。たまには我儘を聞いてやろうってんだ。」

 

「ひとりよりみんなでいたほうが、たのしいよっ。」

『くぎゅううううううううううううううううううううううううううう!』

 

うわっ、まだ生えてたのかコイツ。というか吉、お前中の人ネタは怒られるから止めろ。(ヒント・邪神)

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

死にそうです。

 

具体的に言うと霊基が三割くらい欠けた気分。

 

「どうしたのじゃ、浮かない顔して。」ツヤツヤ

「大丈夫ですか?」ツヤツヤ

 

コイツら殴っていいかな。いや、殴るわ。

 

 

 

で、次の進軍なんだが。

「次はどこ攻めんだ?」

 

「んー何処がいいかな?」

 

「そうじゃの~岐阜城なんかどうじゃ?」

 

岐阜城か。

 

懐かしいなぁ… シミジミ

 

 

 

 

 

やって参りました!岐阜城!

 

……ここの主は本物信長とか言うらしい。訳分からん。

 

「そもそもわしが居るのに何じゃ本物って。」

 

ホントだよ。

 

 

十分後。

 

「「「「「本物だァァァ!?!?!?」」」」」

 

ほんものだ。

 

具体的に言うと教科書の奴。

解像度ひっく。

 

「一先ず撤退!」

 

賛成!

 

 

 

何だこの世界は。

ぐだぐだ次元だからオッケー?成程?

 

 

本物信長のとこに居た信勝君、アレ狂戦士だよね。

何で織田ゆかりの英霊はどいつもこいつも………

というかどうしよ。

次見たら笑い転げて戦えないと思うんだけど。

 

 

 

 

 

~????~

 

「信長様、現在尾張信長を有するカルデア家というものが現在勢力を増していると。」

 

「ククク、構わぬ。過程はどうあれ、最期に勝つはこの儂よ。」

 

「そして、長政様も居られると。」

 

「………………………そうか。」

 

「よく分からんが、俺が見てくるさ、尾張の信長に、越後の龍、そして鬼夜叉殿。」

 

「態々、貴様が出向く事も無かろうに。」

 

「いやぁ、()()()()にも挽回のチャンスをおくれよ、信長様?」

 

「ッ……………………了承した。必ず戻れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が友よ。」

 

 

 

 

 

 

 




但し書き進むとは言っていない!


玉葱勉強が辛いのです。化学苦手。


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襲撃

めっちゃ書き進まない今日この頃。

大体要らないネタ(というか没案集?)。
タイトル的に後半だけでいい。

というか感想減って玉葱が凹んでるのも大きいです。
お願いします感想を下さい。

批判を受けると玉葱はしっかり読んでくれてる!と愚直に喜びます。
賞賛を受けると玉葱は感謝に打ち震えます。

友人からは馬鹿だと言われました。(´・ω・`)


本物信長は毒殺された。

信勝君がイキって後継者を騙った。

ボコった。

 

おしまい。

 

 

「何か僕の扱い雑じゃないですかね!?」

 

だってお前、あれじゃん。回される方のノッブじゃん。 サクシャノココロノコエー

 

「理不尽だ。」ボロボロ

 

 

 

 

 

という事で岐阜城落としました。

意外とあっさり?

ノッブとカッツとで吉が生き残ったのも頷ける。

 

 

 

次?駿府城らしいよ。

 

ちなみに吉から、

「あれはわしの黒歴史的なアレじゃから来ないで!」

 

と言われたので留守番です。

 

 

 

 

~地下牢~

 

「出~し~てく~だ~さ~い~!!!!!!」

 

ちびノブ忍軍の初戦果。

城に忍び込む不審人物を捕らえたらしいので見に来たが………

 

「だから私は操られてただけですってば!」

本当か?

「その証拠にほら!『沖田さんは正気に戻った!』」

それは正気に戻ってない奴が言うんだよ。

 

「えーと、殿様からの通書だと…足軽採用の上釈放と。」

 

「むむ…この際足軽採用でも仕方ありませんがせめて隊長職とかですね、履歴書の方読んで頂きました?」

 

 

えーと。真田エミ村……メディア店長……前田セタンタ……沖田総司……

 

「それです!それ!」

 

「では拝見して……沖田総司、享年は26,株式会社弱小人斬りサークルに所属し……」

 

「ちょっと待って下さい!おかしいですよ!」

 

誰だよこれ書いたの……うわっ、吉かよ。

 

「一番隊隊長を経験、成程?」

 

「どうですか!」ドヤァ

 

「一つ質問しても?」

 

「何ですか?」

 

「沖田総司って女性なんですか?」

 

「はい。」

 

「あ、そうですか。」

もう慣れたわこのパターン。

 

「んー取り敢えず足軽スタートって形で。」

 

「何故ですか!?」

 

「規則で基本足軽採用なんですよウチ。いや、俺は客将扱いだけどさ。」

 

「むー」

 

 

 

暇だなぁ………。

 

 

「敵襲!敵襲ッ!」

 

 

人が平和を噛み締めてんのに、何だよ。

まぁ、仕方ないか。

 

「敵は異常な耐久を誇り、一般兵の被害は甚大です。ご注意を。」

 

心配すんな、別にソレを倒してしまっても構わんのだろう?

 

ハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

~駿府城~

 

「意外と余裕じゃの。」

 

「随分とファンキーな格好のちびノブだったね……」

 

「というか早く帰りましょう!夜叉君が不足しています!」

 

 

 

 

 

「伝令!!!伝令!!!」

 

 

 

「一体どうしたの?」

 

「正体不明の敵による襲撃!!!長政様を筆頭に辛くも押し留めておりますが、長政様が重症を………!」

 

「なんじゃと!?」

「それは本当ですか!?」

 

「「夜叉ァ!!!!!!」」

 

「速い!?」

 

「追いかけましょう!!!!!!」

 

 

 

 

 

あー強いわ。

ぶっちゃけ俺より強いし、何なら本気の姉さんくらい……いや、それ以上か?

さて、現実逃避は止めて状況を確認しよう。

 

敵。ほぼ無傷。

俺。肩口から心臓に掛けて致命傷+浅傷やら骨折が十数ヶ所。生身なら死んでたなコレ。

 

ハァ、どうしよ。久々に勝てる気がしない。ハハッ。笑える。

 

「………随分と頑丈な事だなぁ。」

 

「よく言うぜ。切れども突けども撃てども傷一つ無い。無敵チートとか萎えるから止めろよ。」

 

時間を稼ぎつつ考える。

考えられるとしたら二つ。

一つ、アレがそういう英霊って場合。

二つ、シンプルに強い。

 

正直一である事を祈るばかりだぜ。後者だと正直誰も勝てん。

 

「さてと、そろそろ再開と行こうか?」

 

「了解。あ、一つ言い忘れてた。」

 

 

「そこ地雷あるから。」

 

ドゴオオオォォンッ!!!!!!

 

生きてる?うわ、ピンピンしてるよ。

あー倒せん!時間稼ぎに移行するかね。

 

「実に、実に浅井長政らしい、らしいな………」

 

 

 

さて、何分持たせられるか。

 

 

 

「さて、お手並み拝見と行こうか。まさか、すぐ死にやしねぇだろ?」

「まぁ、これでも小細工やら姑息なのには自信があるんでね。」

 

 

 

「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」」

 

 

殺す。

 

 

ダッセェ仮面なんか付けやがって。なんだそれ、鳥?

 

「鴉だ。お前にも見覚えがあんだろ?」

 

………ん~いや、何も覚えて無ぇな!

 

「そりゃあ残念だ。ハハッ。」

 

 

読者様には言い忘れてたんだが、俺の武器。弓以外大体なんかしの仕掛けがついてたりする。

例えば槍だと…

「ッ!!!!!!」

「おっと、危ねぇな。」

 

石突きから弾が出る。

これがホントの弾が出る鈍器ってな。

 

「まさか躱されるとは思わなんだ。」

 

「まぁ、俺の知り合いにそんな武器使う奴が居てな、よ~く知ってんのさ。」

 

成程。最低な趣味の野郎だぜ。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、もう気づいてんだろ?俺が誰かなんて。」

 

さぁな、知るかよ!

 

「ならいいんだがなぁ、俺が思うに……ッ!!!」ガキンッ!!!

 

銃撃?サーヴァントに有効な攻撃ってことは…

 

『『夜叉ァァァ!!!!!!』』

 

形勢逆転…だな。流石にあの二人纏めてはキツイだろ。

 

「まぁ…………尤もだ。ここは引きますかねぇ。」

 

さっさと帰れ。二度と来んな。

 

「ハハッ。よく言うぜ。」

 

「夜叉君から離れなさいッ!!!」

「言われなくとも、引かせてもらうぜ。じゃーなー♪」

 

逃げられた。いや、逃げてもらったか。

 

さてと。

 

「夜叉君!!!」

 

気絶しまーす。後は頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回!夜叉死す!デュエルスタンバイ!

冗談はさておき。
デモンエクスマギナ発売間近!

13日に記念の小説(ac物)を投稿予定なので
イレギュラー、レイブン、ドミナント、リンクス、首輪付き、人類種の天敵の方々は作者名から探して見て下さい。


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残桜

書くのも面倒だがタイトルが一番辛い。

あ、今回ネタに顔文字が少しあります。ご注意を。

FGOで地の文増やすの難しいね。


目の前には敵。

それも一人二人じゃない。

百、千……一万はいるかな。

 

なぜ戦うのか。思い出せない。

自分は誰なのか。思い出せない。

何故独りなのか。思い出せない。

隣には誰かが居た気がする。

思い出せない。何も。

 

分からない。だが。

 

俺は奴らを殺さなければならない。

俺は奴らに殺されなければならない。

 

生きて帰ってはならない。何故かそれだけを思い出した。

 

馬鹿馬鹿しい。

 

だが、不思議と。

それはとても心地良く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………夢か。」

 

訳の分からん夢だった。

見覚えはある。

本能寺、その戦い。数、顔ぶれ、結末。全てが同じだ。同じだった筈だ。

 

ただ、

何故俺は独りだった?

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ「「夜叉ァァァ!!!!!!」」ふげっ。」メッキャァ!!!!!!

 

止めろ吉ィ!!!!骨が折れる(※折れてます)!!!

 

姉さんも傷口を舐めるの止めて!滲みる!!!アァァァァァァ!!!!!

 

 

「助けてマスター!!!!!!」

 

 

 

よーし。マスター。マシュちゃん。しっかり押さえてろよ。

 

「はい!わかりました!」

「こんなことしてよいのだろうか。」

 

良いって良いって。さて、姉さんからかな。

 

「くっ…殺せ!!!」

 

まさか、殺しなんかしないよ。ハハッ。

 

「歯ァ食いしばれ!!!!!!」

 

バッシィィィィイインッッッ!!!!!!

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

 

次、吉。

 

「あの~夜叉?わし初めてじゃから、優しくしてくれる?」ウワメヅカイ

 

駄目♪

 

スッパァァァァァァンッッッ!!!!!!

 

 

「ッ~~!ッ~~!」ゴロゴロ

 

「ハァ……♡ハァ………♡」////

 

喘ぐな。ゲシゲシ

 

「これはこれで………」////

 

 

 

誰か助けて。 質問者 鬼

 

義姉が残念です。どうしたらいいでしょうか?

 

 

 

ベストアンサー 回答者 玉葱C

 

諦めなさい。

愉悦部員の方々は貴方の苦難を悦んでいるのです。

 

質問した人からのコメント

 

呆れた読者だ。生かしておけぬ。

夜叉は激怒した。必ずかの邪智暴虐なる部員を除かねばならぬと決意した。

夜叉には愉悦が分からぬ。単純な男であった。

 

 

 

ベストアンサー以外の回答

 

読者A

愉悦!愉悦ゥ!

 

読者B

m9^Д^)m9^Д^)m9^Д^)ジェトストリームプギャー

 

 

 

 

「チェンジで。」

 

「何でですか!?」

 

「マスター、どうよ?ほら、どっちかって言うと妹っぽいけど。」

 

「お兄ちゃん!」

 

「ガルルルルルルル!!!ガルルル!!!」

 

「先輩も長政さんも止めて下さい!景虎さんが獣になりかけています!」

 

何処も彼処も獣ばかりだ……貴様もいずれ、そうなるのであろう?

 

「長政さんも何を言ってるんですか!?」

 

いや、言わなきゃ行けない気がね。

 

 

 

 

 

「解せぬ。」

「夜叉君酷いです………」

 

 

_______/__________________\___________

〖私は怪我人に無理をさせました。〗

 

 

暫く反省してなさい。

 

 

 

さてと。

 

どうしたら奴に勝てるか。いや、勝てなくていい、どうやれば殺せる?

白兵戦なら圧倒的に不利。

暗殺、無理。

 

詰んでね?

ミサイルが欲しい所だぜ。

 

火薬は十分。どうにか吹っ飛ばせればいいんだが……

スキが無い。あんまし大型の罠にホイホイ掛かるタマじゃなさそうだ。

ああああああああぁぁぁ。

めんどくせえ。

 

奴の正体。それが恐らく唯一の弱点だ。

当てはある。信じたくも無いが。

確かめる為には_____ガラララ

「足が………痺れ………」

「うへへ、夜叉君にほっとかれてます…へへへ。」////

 

残念ながらコイツらが必要だ。ハァ。

 

「夜叉!もう限界じゃ………」

わかった、わかったから、ほら、止めていいよ。

 

「やりました!では!イタダキマァァァァァス!!」

 

ストップ。

 

「何故ですか!!!!!!」

「夜叉?その~わしらそっちの意味でも限界なんじゃが。」

 

知りたくなかったぜ……

「今回の襲撃犯についてだ。」

 

「……話を聞きましょう。」

「……何か分かったのか?」

 

流石だぜ、お前ら。まだ武人として死んでなかったか。

 

「ああ、正直信じたくねぇし、可能性も薄い段階の話なんだが………」

 

「……………」

「……………」

 

「切れども突けども撃てども、全く引かない馬鹿馬鹿しい英霊。織田信長縁の英霊。

そして何より___俺の武器の仕掛けを知ってる奴。心当たりは?」

 

「ええ。」

「…そうか。それは…残念じゃ。」

 

奇遇だな。俺も一人だけ心当たりあってな。

 

そりゃあ死にかけようと引かないだろうさ。

お前なら織田信長に付き従うだろうさ。

………誰よりも俺の武器も知ってるだろうさ。

 

 

もし、あの時……こうだったなら、と人は言い訳をする。

そのIFには意味が有る。有り得たかもしれない結末。

常人なら思い出す事さえなかろうが、

つまり、そのIFが、英霊と認められたら?

ハハッ。サーヴァントは地獄だぜ。

 

 

 

 

 

 

『ただいまぁー。』

 

「よく帰ってきた。」ギチチチチ

 

「痛ぇな。今の自分の霊基を考えろよ。」メキメキ

 

「煩い。光秀の前、儂が如何様に無理をしたか………ッ!!!」

 

「分かった分かった。ごめんて。」

 

「お願いじゃ……もうわ…たしを、置いて行かないでよ……」

 

 

「やれやれ、次こそ死ぬのも生きるのも一緒なんだろ?吉。」

 

「うん……もし、先に死んだら……許さないからね。夜叉。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




柴田さんのファンの方々一同に謝罪の土下座を。出ません。

m(_ _)m → ‹‹\(´ω` )/›› ‹‹\(  ´)/›› ‹‹\( ´ω`)/››

ごめんなさい。

この世界線だと市ちゃん未亡人にならないからね。しょうがないね。





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復讐者

何故夜叉君が二人なのかについてがメインのお話です。

視点は基本魔王ノッブ。


浅井長政。

それは、稀代の猛将、神さえ喰らう鬼。

家族を愛し、友を労い、民を護った。

 

浅井長政は英雄である。

 

初め、考古学者達はこぞって彼を褒め称えた。

 

『武士の鑑』

『友愛の武将』

『忠義の人』

 

 

まさに彼は現代人の好む快男児だった。

 

 

しかし、やがて浅井長政の遺品から、驚くべき幾つもの物品が見つかったのだった。

 

『信長の死後、妻帰蝶との生活の日記』

『■■(諸説あり。信長とされる)を救えなかった事への謝罪で埋まった書物』

『信長愛用の鉄砲や刀』

『明智光秀への手紙』(詳細不明)

 

本来、これだけなら唯の発見に過ぎない。

 

しかし、マスメディアはこの話題をまるで鬼の首を取ったように取り沙汰した。

 

『浅井長政は織田信長を見捨てて逃げ出した。』

『妻帰蝶を信長から奪った。』

『さらに蔵から宝刀や鉄砲を盗み出した。』

『明智光秀と内通して信長を謀殺した。』

 

まったくの根拠無く、長政を中傷した。

 

愚かなる民衆は勿論これに反応した。

無知であるが故にか、それとも己の快楽の為か。

 

 

一転有識者さえも彼を誹謗中傷し始め、この流れは加速する。

 

『信長の死後光秀をも討ち、覇権を狙った。』

『義兄とされた上杉謙信に毒を盛り謀殺した。』

 

 

もはや憶測とも言えぬ愚かなる理論。

 

尤も、最大の汚点は彼らがコレを真実と認めた事。

 

教科書、歴史書、辞典。

ありとあらゆる記録は改竄され。

 

テレビ、ラジオ、インターネット、新聞。

あらゆるマスメディアが彼を嘲った。

 

 

群衆は愚かであると共に、実に行動だけは速い。

 

逆上せあがった愚者の一端は浅井長政を祀った社を破壊、晒し、焼き払った。

実に恐ろしい事に、この行為をほぼ全ての人々が正当と断じた。

 

反面、織田信長は

『悲劇の英雄』

『不退の魔王』

 

などと持て囃され、時代を経ての復讐だと人々は悦んだ。

 

古来より、真実とは、真に起こった事ではないというのは誰もが知る所である。

真実とは、人々の願望に過ぎない。

 

人々は『無双の英雄』浅井長政を欲したのではなく。

『裏切りの仇将』浅井長政を欲した。

 

ただ、それだけ。それだけの事だ。

 

100年後、1000年後、ともすれば10000年後さえ、

 

人々は浅井長政を裏切り者と嘲り、薄っぺらな正義感に燃える。

織田信長の死を哀れみ、同情して正義感を満たす。

 

 

実に滑稽だ。

 

 

当事者以外には。

 

 

 

 

 

『裏切り者。』

違う。

『恥晒し。』

違う!

『謀りに倒れた悲劇の英雄。』

違う!!

『長政さえいなければ____』

違うッ!!!

 

 

 

 

何も知らないで、夜叉を嗤うなッッ!!!!!!わしを憐れむなッッ!!!!!!

止めろ!辞めろ!

ヤメロッッッ!!!

 

 

夜叉に感じた罪悪感。

夜叉を嗤った愚か者への復讐心。

 

それらを受けて私は復讐者として現界した。

 

する事は一つ。

夜叉を呼び寄せ、奴らを根絶やしにする。

 

夜叉を嘲った愚か者どもを生贄に、魔力を捻出した。

 

呼び出される織田縁の英霊達。

 

その中に夜叉が居ると信じて。

 

しかし、私の召喚に夜叉は応じなかった。

 

何故だ。夜叉。

 

お主は…お主はここまで言われても復讐したいとさえ思わぬのか!?!?

 

 

 

 

嫌だ。

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤだイヤだイヤだ

 

そんなのは許せない。

それでは、お主は、あまりにも、あまりにもッ……!!!

報われないではないか………!

 

 

摩玖主教の有する無限の魔力。

聖杯にさえ匹敵する力に私は願った。

 

『復讐鬼としての浅井長政を此処に。』と。

 

結果貴方は今、私の隣に居る。

 

本来の姿から遥かに捻じ曲がった復讐者として。

 

 

無理矢理に付与された復讐心はその身体を侵し、

焼き付けられた虚偽は精神を崩した。

 

横で眠る夜叉を見る。

 

私のエゴで彼は苦しみ続ける。行き場の無い復讐心に。

私が感情に任せて劣情をぶつけても貴方は怒りもしない。

 

違う。

 

私は貴方を傷つけたかったんじゃない。

 

唯、貴方に救われて欲しかった。

唯、貴方に罵って欲しかった。

唯、貴方に怨んで欲しかった。

 

 

唯、 貴方に殺されたかった。

 

 

 

 

 

 

 

「何思ってるか知らんが、お前は悪くねぇよ。」

 

背中を向けたまま夜叉は答えた。

 

「過程はどうあれ、これが俺達の結末。なら、それが正しいのさ。

俺には何も見えてないが、お前に道が見えてるなら、それを教えてくれ。吉。

そのために俺を使い潰してくれ、昔からも、そしてこれからもな。」

 

本当に………どうして……お主は……

 

「オイオイ、痛てぇな。」

 

喧しい。黙っとれ。

 

「りょーかい。あんまし夜更かしすんなよ?」

 

 

……やはり居心地いい。

市……すまぬが…暫くは……

わたしがひとりじめしても、いいよね………………

 

 

 

 

ごめんな。吉。

俺は。

俺が。

誰なのか分からない。

お前が俺を長政(やしゃ)と呼ぶから。

俺はきっと夜叉なんだろう。

でも、本当は。

俺にも分からないんだ。

 

 

本当にゴメン。

 

俺は____答えを知りたい。

 

 

()()()()

吉。

 

 

 

 

 

 

 




うわぁしんどい。
バッドエンドのその後って形ですね。

正直玉葱の書くやつは大体こんな感じで急に思い付くのです。
(だから定期更新が辛い。)


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世にぐだぐだのあらん事を

Warning!!!Warning!!!

今回のお話にはぐだぐだ成分が含まれます。(一転攻勢)
シリアスも!重いルートの連中も!ぐだぐだに逆らう者は皆死ねばいい!(天下無双)


「ノッブノッブ!ノッブァ!」

 

成程。日輪城の障壁が消えたと。

良くやった。偉いぞ。ナデナデ

 

「ノッブ~!!!」////

 

「「羨ましい(羨ましい。)。」」

 

「御二方とも本心を隠す気すらありません………」

 

 

「「「「「「ノッブ!ノッブ!」」」」」」ズラー

 

おっと。皆撫でて欲しいのか。よし、一列に並べ。

 

「ノッブ~!」 「ノブ!」 「ノブノブ。」

 

ヨシヨシ。偉いぞ。

 

「ッ~~~~!!!!!!」ガンッ!ガンッ!

「………」チャキン

 

「先輩!信長さんが地団駄を踏んで悔しがり、景虎さんが槍を構えています!」

 

「ぐだぐだしてきた………」

 

「せんぱ~い!?」

 

閑話休題。

 

 

~日輪城~

 

 

おお、本当に消えてる。

よし、これで攻め入れるな。

 

「しかし夜叉よ、ここは元々お主の娘婿の城じゃが、攻めるのに抵抗とかは……」

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!

 

「無いよね。完全にバーサーカーにしたの失敗じゃろ。いやまぁ、これが世間からする浅井長政なんだよね。」

 

何が鉄壁の城だ。

女一人子供一人守れねぇ城になんの意味があるよ。

 

「マスター。ここの城主が誰か知らないが、それ以外は俺一人でやらせてくれないか?」

 

さて、義息殿と話し合い(物理)といきますか。

 

 

 

~同時刻、天守~

 

「ふっふっふ!何人たりともこの日輪城は落とせないし、常にここでバリアーを張っていれば他の愚かな大名の共倒れを待てるってわけ。まさに果報は寝て待て、棚からお汁粉ってわけよね。」

 

ドゴォオオオン!!!

 

「ん?なんの騒ぎ?」

 

「それが……突然黄金障壁が消失。当家は只今絶賛城攻めを受けている最中です。」

 

「え?マジ?敵は何人?千?万?」

 

「…………一人です。」

 

「…ぷぷぷ!たった一人でこの城に攻め入るとか本当の馬鹿かも!何処の誰かしら。」

 

 

 

 

 

 

アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!

 

愉しい!!!愉しいぜェ!!!

 

「長政さん!落ち着いて下さい!」

 

「コイツほんとに猿の事嫌いじゃの。茶々に色目使ったら頭粉砕されとったし。」

 

 

『止めろー!』『うわああああ!!!』

 

コイツら本当に弱いな。真っ当な武将が指揮するアレじゃねぇぞ。

 

 

「待たれい!ここなるは浅井家正当当主、浅井茶々の領土と知っての狼藉か!」

 

だ れ が 当主 だって?

 

「父上!?!?」

 

ハァイ、チャチャ。

 

「あ、えっと、その。」

 

良いんだ。皆まで言わなくてもいい。

 

「父上………。」

 

ちょっとお仕置きが要るけどな!!!

 

「ひゃあああああ!!!もうやるしかないかも!今回の茶々は城から出て戦った歴史のifに挑戦!これは徳川滅ぶかも!」

 

 

「あ、笑顔で怒っとる。アレはヤバいの。」アザイケゼンヘイ!カカレ!

「はい。夜叉君が笑顔でキレてる時は本当にヤバいです。」ナメンナ!!!

 

「ぐだぐだだなぁ………。」グワァァァァァ!!!!!!

 

 

 

『「『「『「…………」』」』」』チーン

 

 

 

[私は魔力を無駄遣いして、城を落とされました。]

 

「父上……もう結構……足が……」

 

あ、そうなんだ。で? それが何か問題?

 

「酷い!!!」

 

反省しなさい。

 

 

 

さて、次はお前らだ!

 

「ヒェッ!」

 

何だあの戦いはこのゴミ虫共!

 

「ですが「喧しい!返事はハイかYes、どちらか一方だ!」

 

「そんな!酷い!」

 

「返事はハイかYesだと言っただろうがァ!!!」メキャァ!!!

 

「グッハァ!!!」

 

お前らの性根叩き直してやらぁ!!!

 

「長政さん、あんまり無理させないでね。」

 

心配無い、マスター。アメリカ兵は耐えられた。

 

 

 

~数日後~

 

 

「口でクソたれる前と後に『サー』と言え! 分かったかウジ虫ども!」

 

『『『Sir,Yes Sir!』』』

 

「ふざけるな! 大声だせ! タマ落としたか!」

 

『『『Sir,Yes Sir!』』』

 

「貴様らは厳しい俺を嫌う!だが憎めば、それだけ学ぶ!

俺は厳しいが公平だ!人種差別は許さん!ナマモノ、腰抜け、弱卒を、俺は見下さん!」

 

すべて!平等に!価値がない!

 

「問おう!貴様らは腰抜けか!?」

 

『『『Sir,No Sir!』』』

 

「では弱卒か!?ナマモノか!?」

 

『『『Sir,No Sir!』』』

「証明して見せろ!貴様らならそれが出来るはずだ!!」

 

『『『Sir!Sir!Yes Sir!』』』

 

 

「これはひどい。」

 

やってて良かったハートマン式ってな。

 

これなら大分使えんだろ。

 

「おい夜叉、彼奴ら弾目視で避けとるぞ。」

 

俺が教導したんだ。弾くらい避けられなきゃ困る。

 

「う~んこの内政チート感。最終決戦前に強化しすぎじゃない?」

 

まぁ、これくらいじゃないとアレから茶々守れないしね。

 

「ウチの子の時と言い本当に子煩悩ですよねぇ……」

 

そりゃ、子供は宝。大人が護って当たり前だろうに。

 

「子供……茶々はお主より長生きした筈じゃが……」

 

「ガガーン!叔母上!それ今関係なくない!?」

 

ま、親より早く死ぬ事ほどの親不孝も無いしな。気にすんな。

 

 

 




今回短めです。すいません。

読者「作者 仲間はずれはよくないなぁ、オレも入れてくれないと」

作者「読者!?一体何を!?」

読者「いやいや!ちょっとお手伝いをね!」

デモンエクスマギナ楽しい。
CATARINAってユーザーが居たら優しくして下さい。

スピンオフ始まりました。作者名からアクセスできます。
玉葱アレルギーの方はお気をつけ下さい。


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Who am I?

箱が辛い。

皆さん何箱開ける予定ですか?
玉葱は100目標ですが、このままだと間に合いません(今55)。
_( _´ω`)_ツライム


「とまぁ、これが今回の作戦だ。」

 

やな話だぜ。自分の殺し方を練るなんて。

 

正直、一手でもミスったらそれで詰み。

ふざけたクソゲーもいいとこだぜ。

 

「夜叉君、本当に彼は夜叉君で間違い無いのですか?」

 

ゲシュタルト崩壊しそう。

まぁ……そうだな。

アレは()()ではあるが()()()()では無いな。

 

「「「「?????」」」」

 

「ああ…そうか、成程の。…………成程……」

 

流石にお前には分かるか。

 

そうさなぁ、アレは。

 

友の為に。

 

家族の為に。

 

なんて綺麗事抜かして

 

本当に夜叉になっちまった大馬鹿野郎()の成れの果てだよ。

 

 

 

「フエックシォォォン!!!」

 

何だ?誰か噂してんのか?

やだ、俺ってばモテモテ?

 

 

 

 

何となく。何となくだけど片割れがアホな事してる気がする。

 

「じゃあその時には茶々、姉さん。宜しく頼む。」

 

「任せて欲しいんだけど!」

 

「勿論!夜叉君の頼みなら鬼でも神でも討ち取って見せますとも!」

 

いやぁ、ホント俺の周りの女は頼もしくて助かる。

 

 

 

 

 

「襲撃だ!!!!!!」

 

 

 

「あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 

ちょっと待て、アイツなんで大筒連射してんの?

素敵性能にも限度があるだろアレ。

 

まぁいい。足止めはお前達の出番だ!

 

いけっハートマン兵!(ポケモン風)

 

『『『Sir,Yes Sir!』』』

 

「EDF!EDF!」「と↑つ↓げきぃぃぃぃ!」「機関前進!機関微速!機関停止!機関後退!」

「JOJOにO☆MO☆KA☆ZI。」「喧しくて敵わん!」

「すまん、悪かっt「敵の潜水艦を確認!!!!!!」

 

「「「「「「「「駄目だ!!!!!!」」」」」」」」

 

何か異物が混じって……いや、皆異物か。

 

「うおお!?なんだこいつら!?普通に強いな!?」

 

 

 

 

よし、止まった。

 

 

 

その瞬間を逃さず景虎が仕掛ける。

今回、愛しい弟分が居る関係で残念な面が目立つが、本来彼女は英霊の中でもかなり強い部類に入る。

 

それを認識した鴉夜叉は無理やりの回避を選択…出来なかった。

 

脚を狙った狙撃…戦闘において、夜叉は一切手を抜かない。

相手の選択肢を限定した上でそれを刈り取る。

誉れ、人道などを度外視した戦闘こそ、本来夜叉が最も得意とするものであり、

忘却の果て__傭兵であったいつかから、英霊となった今に至るまで、何一つ変わらない。

 

 

 

しかし、相手もイレギュラー。自らの重心を引っこ抜き、迫る矛先を寸前で回避する。

貌に纏った面一つ以外は。

 

「ッ………………!!!!!!」

 

景虎の手が止まる。否、止めざるを得なかった。

 

「あ~クソ。取れちまったか………本当はこんな姿、姉さんには見せたくなかったんだけどなぁ。ハハッ!」

 

それを見た夜叉、信長さえも動きを止めた。

 

 

 

 

『遺体は目欠け腕千切れ、もはや判別のつかぬ程に。』

 

人々は『裏切りの仇将』浅井長政を欲した。己の快楽ゆえに。

 

 

 

 

僅かに残った貌の左側面は生前の面影を写し、

不定形の闇に覆われた右側面は角を成し、狂気を孕んだ笑みを浮かべる。

朽ち落ちた左腕は最早この世の生物には例えられぬ程に変質した。

残る右腕に人としての残滓か、自らの最期を飾った得物(へしきり)を携えたその姿。それは、

 

「まぁ、いいか!俺は浅井長政または夜叉……じゃないらしいな!この反応だと!ハハハハハッ!!!」

 

『鬼』『非道』『化物』『怪物』『無慈悲』『暴虐』『叛逆者』『不忠』『残酷』『狂人』

『産まれるべきではなかった』『お前さえいなければ』

 

人々から受けた数多の賞賛(ちゅうしょう)。そして彼を愛し続けた友の願い。

それらの歪みより生まれた_____

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!!!あれ?じゃあ俺は誰なんだろうな!分かんねぇ!

お前らなら分かるのか?ハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

名を喪った夜叉(おに)である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアスとコメディが合わさり読みにくい。


BADルート夜叉君辛いな。誰だよこんなん書いたの。
色々ふざけんなという方も色々回収して行くのでお付き合い下さい。


忘却補正
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。忘却の彼方より襲い来る復讐者の攻撃はクリティカル効果を強化させる。が……
復讐者と化した長政は植え付けられた復讐心によって霊基が朽ちており、
忘れないという性質自体が反転している。
これにより、彼の恐怖は人々の記憶からは決して消えず、
己自身は自らの存在すら忘却してしまう。


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嗤う道化

シリアス多めにする予定。

10月頭にシンガポールに出荷されますので玉葱日本に居ません。

マスターの皆さんは周回お疲れ様です。
玉葱は80箱になりました。


俺は絶句した。

 

同時に何故か納得した。

 

成程。馬鹿らしい答えだ。

 

そこまでやるか。いや、俺だってやるだろうさ。

本当に、清々しい程俺だ。畜生。

 

 

 

「ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!何だよ!もっと遊ぼうぜ!?」

 

 

不味いな。思ったより理性が残ってないらしい。

 

 

「全軍撤退!サーヴァントとマスター以外は引け!命を無駄にするな!」

 

 

 

「まぁ、こんなの、最初に王将を仕留めりゃ詰みだろ!!!」

 

「え!?」

 

不味い!マスターから狙うか!

クソッ!!!狂ってても合理的に狙ってきやがる。

 

間に合わ無ぇ!!!

 

「恨みは無いけど、これも仕事でな。死んでもらおうか!」

 

気がついた時にはマスターに対して刀を振り下ろしている。

 

 

 

だが、幸いだったのは、

 

未だ詰みでは無く王手だった事か。

 

 

 

「お待ち下さい。」

 

「ッ…………」

 

「お久しぶりです。父上。」

 

「誰だ、お前。」

 

「貴方の娘、茶々にございます。」

 

 

 

 

 

 

「………娘……娘?誰だ………お前は……お前、お前は、俺は一体?俺は……誰なんだ?」

 

 

娘すら分からないのか。

 

 

………ここまで共感できても、やはりお前は俺じゃない。お前が俺なら、絶対に覚えてるはずだ。

 

俺たちは同じ穴の狢。

家族を、友を、守るため夜叉に成り果てた。

ここまで。ここまでだ、俺たちの共通点は。

 

片方は堕ちた先で手を伸ばされた。守るべきものに導かれた。

片方は堕ちた先で目覚めた。だが、それでも、護りたいと。名前も、存在すら売り払ってさえ。

 

俺は忘れない。

それは道標だから。

軌跡だから。

 

最期まで抗った意味だから。

 

だからこそ。

お前には負けられねえよ。

 

 

過去を棄てられた亡霊風情が、俺を騙るな。

例えお前が、何時かの、有り得たかも知れない俺だとしても。

 

俺たちは誰かを守り、育み、いつかは踏み越えられていく。

数多の骸を超えて俺たちは今日を生きてきた。

 

だから俺は、浅井長政として死んだ事に一切の後悔は無い。

例え、どんなに悲惨で、どんなに蔑まれ、嘲笑されようが。

 

 

 

「うるせぇ!うるせえんだよ!何なんだよ!畜生畜生畜生!誰なんだよ!思い出せねぇ!思い出せねぇ!」

 

 

『敵性サーヴァントの霊基ランクの大幅な低下を確認!今なら押し切れる!』

 

 

決着を付けようぜ。

最期まで誰かを思い続けた俺と。護るために何もかもを棄てたお前。

 

実に滑稽で、道化には相応しいだろ?ハハッ!!!

 

「マスター!!!!!!今しか無い!一気に薙ぎ倒すぜ!」

 

マシュがマスターの前に立ちふさがる。全てから主を護るかのように。

信長が撃つ。まるで少しでも長く見ていたくないと願うように。

景虎が切り払う。まるで闇を切り拓くように。

夜叉が吼える。有り得たかも知れない歴史を薙ぎ倒すように。

 

これなら行ける。そう思った。

だから油断しちまった。

そう気づいた時には遅かった。

 

 

「……………『外道たりて因果を贖え道化』」

 

 

 

 

 

俺は誰なんだ。何をしてるんだ。俺は、俺は。

 

『﹍﹍﹍』

 

誰だ、何だよ、お前らは誰なんだ!思い出せねぇよ!

 

『………』

 

分かんねぇ!分かんねぇ!何だ、俺は、一体………

 

『ちちうえ』

 

止めろ!それ以上!俺の中に入ってくるな!

 

『父上』『夜叉様』『夜叉』『夜叉君』

 

ああああああああぁぁぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!!!!

 

……………………………………………そうか。

 

 

オレは、

 

俺は、

 

俺は!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅井長政(やしゃ)だ。

 

 

 

……………『外道たりて因果を贖え道化』。

 

 

 

 

 

 

ここはどこだ?

確かオレに触れられたはず……宝具か?

 

『裏切り者』

 

何だよ!?

 

『外道』『不忠』『謀逆』

 

ああ?前一個以外は心当たり無ぇんだが?

 

 

 

 

「流石だな。並の英霊なら既に心を折られてるもんだが。」

 

………コイツがお前の宝具か?ショッボい宝具だぜ。

 

「まぁ、そう言うな。代わりと言ってはなんだが、面白いモンを見せてやるよ。」

 

そりゃ楽しみだ、ポップコーンは有るかな?

 

「ハァ……やっぱり根本で俺達は変わらねぇな……」

 

 

 

刹那、脳内に流れ込む情報。

有り得たかもしれないifの歴史。

その末路。

 

ハハッ。最高の喜劇だなこりゃ。スピルバーグも真っ青だ。

 

「だろ?守ろうとして守るものを傷付けるとか笑い話にもならねぇ。」

 

全くだぜ。

………いやまぁ、お前のやり方が分からんワケでも無いがな。

で?ここにご招待なさった理由は?悪いがソッチの気は無いからお断りだが。

 

「地味に傷を抉るな。後世でさんざっぱらネタにされてるから。」

 

やっぱりかよ。

 

「まぁ、理由は特にない。強いて言うなら俺が俺である理由を俺に知って欲しかった、ただそれだけだ。」

 

成程?本当にそれだけか?

 

「………勘のいいガキは嫌いだよ。」

 

いや、切り上げたら40何だけどな。

 

「めんどくせぇ。決着を付けよう。シンプルな話だ、生き残った方が正しい。」

 

おっ、やるか?武器無しで。元傭兵の俺に勝てるもんか。

 

「こっちだって元傭兵だ。なめんな。」

 

ハハッ。だったらやろうか。ルールはいつもの。分かるよな?

お互いに武器のネタは割れてるし、このまま続けんのも不毛だろ。

あくまで()()に行こうぜ?

 

「………確かにな。読者さんもそろそろ飽きてくんだろ。」

 

 

 

 

おいやめろ。シリアスが台無しだろ。

じゃ、お先にどうぞ。

 

「それじゃ遠慮なくッ!!!!!!」

 

メッキャァァァアア!!!!!!

 

痛ってぇな!オイ!殺す!

 

ドキャァァァァァッ!!!!!!

 

「グホァ………ッ!!!!!!」

 

実に滑稽な殴り合い。しかし、

お互いに避けない。防がない。

 

お互いに譲れないから。

お互いに護りたいから。

 

お互いに負けたくないから。

 

 

「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」」

 

 

 

いつの時代も、歴史とは勝者だけが騙り継ぐものである。

 

 

 




シリアスとは一体何だったのか。

ジャンプ漫画かな?



『外道たりて因果を贖え道化』

固有結界。入った人間に夜叉がかつて人々から受けた中傷を元にその人物のトラウマを刺激する。さらに夜叉自身へも中傷は及び、傷付き、疎まれる事で鬼は昂る。
詳細は後々公開のマテリアルにて。


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いつかの願い

タイトル思い付かない。


モザンビークヒアとか付けそうなくらい。
シンガポールの玉葱です。


一撃。また一撃と。

 

長政の攻撃が命中するたび、夜叉は人としての姿を取り戻し、

夜叉の攻撃が命中するたび、長政は夜叉としての呪いに侵されていった。

 

 

お互いに消耗激しく、決着は近い。

しかし、それども尚双方は猛り、

 

「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」」

 

二匹の獣はかくて咆哮した。

 

 

ヤバイな。既にダメージは限界だ。膝から崩れ落ちそう。

 

「なぁ、一つ提案なんだが。」

 

何だよ。

 

「正直限界だろ?俺もだ。そこでだな………」

 

何だそれ。小判?

 

「銀貨な。コイツが地面に着いたらって奴だ。」

 

成程ね。乗った。サッサと終わらせようぜ。

 

お互いに恐らく最期の一発。

 

チリーン…………

 

3。時間が緩やかに感じ始める。

 

2。狙うのは顔の左半分。後付けの分多少脆い。

 

1。双方目を瞑る。聴覚以外を遮断し、何時でも打ち抜ける用にする。

 

 

0。

 

「「ッシャオラァァァァァァァァ!!!!!!」」

 

ただの全力のストレート。

技術も、誇りも、何も無い本当に原始的な一発。

 

ただまぁ、威力と速さだけは充分だった。

 

 

 

俺の拳は確かにオレの頭部を打ち抜いた。

頭を覆う闇は爆発するように霧散して行く。

 

仕留めた。そう思うと共に倒れそうになる。

 

それでも倒れなかったのは違和感を感じたから。

間違い無く俺の方が遅かった。しかし、勝ったのは俺だった。

 

「オレの、負けか。ハハッ……存外に……心地良いものだ……」

 

俺はお前の選択を否定しない。

ifとして有り得た俺の姿。

だが、お前が正しいとも思わんし、お前を肯定もしない。

かつてそうあった()()しれない俺の亡霊。

……お前が最後に手を止めた理由は、多分……

「まぁ……そういうな……あの莫迦たっての願いだ…悪く無ぇ気分だ…ぜ…?」

 

……多少はお前が羨ましいよ。

 

「だろ?…流石に嫁さん程じゃねぇが…あれもアレでいい女だよなぁ……」

 

全くだ。で?遺言はあるか?

自分の遺言くらい聞いてやるよ。

 

「………そりゃ…有難い…なら…アレを頼む…俺には…無理だったが……お前なら、

ハハッ、何が救いたいだよ…本当に救われるべきは…アイツなんだか…な…………」

 

そう言い残すとオレは完全に融解した。

 

ドス黒いソレが俺の影に入り込むと、さっきよりもより鮮明に映像が見える。

今までオレの記憶を俯瞰していたのが、それが俺の記憶であるように。

後から付与された物にも関わらず、まるで本来こうだったかのような感覚に包まれた。

 

 

心と体、一つにってか。ハハッ。

 

 

創られた世界が崩壊する中、俺は右腕を見ながら呟いた。

右腕はまるで呼応するかのように一瞬不定形な姿を写し、元に戻った。

 

自分の遺言くらい叶えてやるかな。

ハハッ。

 

 

 

 

 

「ただいm「「夜叉(君)!!!!!!』」」ボキボキメキャァ!!!

 

………知ってた。ガフッ。

 

 

キボウノハナー

 

 

「何やってるのじゃ夜叉!!!」

「ほら!止まってる場合じゃありませんよ!」

 

タスケテ……タスケテ……

 

「助けないと!」

「信長さん!景虎さん!長政さんを離して下さい!」

「父上の顔がけっこうヤバイ!?」

 

「「「「「ノブノブノブノブァ!!!!!!」」」」」ポコスカポコスカ

 

「うわっ、何をするやめ「ノブァ!!!」

「離してくださ「「ノブノブ!!!」」

 

 

ハァ………………何でこう………ぐだぐだするかね。

 

ハハッ。

 

ハハハハハッ。

 

 

 

最高だ!貴様らァ!!!!!!

 

 

「ふぇあ!?」ダキシメ

「ぬおっ!?」ダキシメ

「父上!?」ダキシメ

「何で私も!?」ダキシメ

 

 

「ギャハハハハハハ!両手に花だけじゃ物足りねぇか!夜叉の兄貴らしいぜ!」

 

人聞きの悪い事を言うな。

 

ただまぁ、やっぱり俺…()()が守りたかったのは………

 

 

「夜叉君からしてもらえるなんて……」ハァハァ

「おお……これは…これは良い……」ハァハァ

「むー!苦しいんだけど!」ジタバタ

「いつまでこうすれば……?」

 

 

 

この日常だったんだろうな。

そうだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………何故じゃ、夜叉。

何故わしを置いて行った。

何故先に死んだ。

何故嘘をついた。

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

 

「の…信長様……?」

 

夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉

夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉夜叉ヤシャヤシャヤシャヤシャヤシャヤシャ

 

 

「………夜叉様……貴方がたを討った身で言う権利は有りませぬが……

どうして、どうして信長様を置いて行ったのですか…」

 

 

夜叉、夜叉夜叉やしゃ夜叉ヤシャ夜叉ヤシャやしゃ夜叉夜叉夜叉ヤシャやしゃ夜叉夜叉ァァァ!!!!!!

 

 

 

 

 




文字稼ぎ乙とか言われそう。

おや?ノッブアベンジャーの様子が……?



態々殴り合った理由は文字通り身を削って戦ってもらうためです。
これにより長政に夜叉の欠片が寄生しました。あれです。
FGO的には第三スキル解放です。

夜叉について……完全体ならアンリマユ宝具をより凶悪にした見た目。
主人公夜叉は右腕と上半身の一部。オルタ夜叉君は左腕と頭部の殆どを基準にほぼ全身が呑まれています。

要は部位欠損した場所から生えます。


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泡末の夢

つかれた(語彙力崩壊)



結構話が重いので注意



いよいよ安土本土で決戦か。

 

こっちの戦力は上々、向こうは吉とまぁ、光秀くらい。

しかもあの後合流した坂本殿の手引きで兵糧を大分削ったらしい。

………こういうのは禿鼠(秀吉)が得意だったよな。

 

 

かなり有利だ。この状態のうちに攻め込みたい。

 

 

 

「安土本土を攻める陽動と信長を討つ部隊を分けましょう。」

 

 

成程。なら俺は勿論信長を…………と言いたい所だがなぁ。

作戦的には俺が陽動するべきだろう。残念。

 

まぁ、マスター達に花を持たせてやりますかね。唯、絶対に殺すなよ?

 

()()の方から言いたい事が有るしな。

 

 

 

 

別働隊は俺と男信長、それと新人Oで構成される事になった。

 

所変わって安土近辺。

 

「何ですかこのモブみたいな名前は!どうなってるんです!?」

 

ああ、吉からそう呼べって言われたんでな。誰だっけ?

 

「お、き、た、です!沖田総司です!」

 

ああ、中途採用の。まぁいい、んじゃ、一中隊は任せるから。

 

「でもよぉ、夜叉はどうするんだ?多分この守り、指揮してんの光秀だぞ?」

 

決まってる。お前も信長なら分かるだろ?

 

「あ、やっぱり?うん、知ってたけど。」

 

 

 

「これでも守りの戦は得手とする所。唯一恐るべきは………」

 

 

『хорошоooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!』

 

 

「やはり夜叉様か………しかし、一度は敗北した身、対策くらい講じさせてもらおう。

重盾部隊、前へ!倒せなくとも良い!敵将を完全に隔離せよ!」

 

 

 

 

成程。この嫌らしい戦い方。俺のとも禿鼠のとも違うが、面倒臭さは一流だな。

古代ローマの時代に見るところのファランクス。それから()()()()()()()()()()陣形。

完全に俺を隔離して攻めるつもりだな。

面白い。………お前がマトモなら仲良くなれたろうに、残念だぜ。

 

ご期待に答えて敢えて正面から行こうか。頼むぜ、オレ。

 

 

 

 

そう思った刹那意識がナニカに呑まれそうになる。

俺がオレじゃなくなる。その感覚が言い表せない苦痛を伴う。

成程。コイツは制御に手こずりそうだ。

まァ、今は制御の必要は無さそうだがなァ。

 

悪ィが、全開で行くぜ?

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!

 

 

 

対サーヴァントを考慮されているのか、異常な硬度を誇る大盾。

矢は勿論大太刀さえ防いでみせたそれを素手で破壊し、頭部を粉砕する。

 

何だよ、その顔は、まるでバケモンでも見たみてぇな顔しやがって。

 

ハハッ。

 

悪いな。お前らに恨みはねぇが、俺達の邪魔をすんなら、鏖殺にさせてもらうぜ。

 

 

一人、二人。手に掛けて行くたびに心が満たされる。

欠け落ちた復讐心が滾り続ける。

ああ、成程。これが復讐者としての俺のifか。

悪くない。

 

包囲を殲滅した。さぁ、次はどうする?

 

「あれ?何だこれ?透けてら。」

 

何言って………うわっ!?透けてる!?

 

「……始まったか。」

 

ああ?何がだよ。

 

「つまり信長様に何かあったという事だ。」

 

…………オイオイオイマジかよ!勝手に死なれちゃ困るんだが!

光秀ェ!!!この戦は預けるからな!また今度な!!!

 

 

 

「…………何も死するのが此方の信長様とは一言も言ってないのだがな……」

 

 

 

 

間に合え!間に合え!間に合えぇッ!!!

 

流れ込んできた記憶と今の姿が被る。

あの時も、同じように走った。

今度こそは間に合わせる。

あんな思いは二度とゴメンだ。

 

安土城天守が見える……いや、もはやそこは瓦礫の山と貸していたが。

 

堀を飛び越え、城壁を破壊して安土城に飛び込んだ俺の目に映ったのは……

 

気絶させられているのか全く動かないマスターとマシュちゃん。

全身余すこと無く撃ち抜かれ血塗れの姉さん。

そして丁度今___俺の目の前で胸を貫かれた吉の姿。

 

 

「……おお!夜叉では無いか!すまぬの、今しがたわしらの邪魔をする愚か者とわしの偽物を

始末した所じゃよ♪おっと、茶を入れようにも茶器の一つも無いのじゃ………」

 

……………………

 

「?どうしたのじゃ?わしの美貌に見惚れたか?いやー、このないすばでぃなら是非も無いよネ!」

 

なぁ、お前。今、お前がゴミみたいに放り投げたのは、何だ?

 

「何って、わしの名を騙る偽物じゃろ。どうしたのじゃ?顔が怖いぞ?」

 

偽物………?違う。俺の知る信長……吉は…もっと、輝いた目をしていた。

お前みたいに澱んだ目をしてる筈が……無い。お前は、お前……誰だ?

 

「誰って……忘れとるのか?お互いに身体を貪り合った仲じゃろ。」

 

違う。絶対に違う。お前、お前は吉じゃない!

アイツの顔で!アイツの声で!俺の前に立つな!

 

「やれやれ、仕方ないのぅ、一度ボコって大人しくさせるかの♪コヤツらみたいに。」

 

奴はそう言って吉と姉さんを踏み付けた。

 

 

_____ああ、そういや、お前、言ってたよな。

俺に殺されたいって。

だったら、

 

 

 

 

 

右腕から始まった侵食が新たなる獲物に呼応して瞬く間に広がっていく。

 

まぁ、いい。構わん。

 

 

 

身体も、心も、キオクも、そんなモン欠片も惜くねェよ。

タダ、代わりニ、

 

 

「ねぇ、ドウシテナの?コタエテヨ、ドウシテワタシカラハナレテイッタノ?ヤシャ。」

 

 

テメェダケハ、ゼッタイニ、コロシテヤル。 

 

 

 




お互いに、お互いを想うからこそ殺し合う。

追記………玉葱テスト前の為この投稿から1~2週間お休み。ゴメンね。



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苧環

いよいよ読めないって?

苧環はオダマキ。

花言葉は…


『なあ、夜叉よ。』

 

なんだよ、珍しく黄昏たりして。

 

『もし、もしもわしとお主が道を違えてたらどうなってたと思う?』

 

……ぞっとしねえな。お前と戦うなんて是非御免被りたいね。

 

『…………』

 

ああ、まじめに答えろってか。

…さぁね。

ま、案外今と変わんねえかもな。

 

『そうか…では、もしわしがお主に死んでくれと頼んだら?』

 

くだらねぇな。

 

俺は刀を抜き、信長に無造作に放り投げた。

 

馬鹿野郎が。もし、お前の夢に、俺が邪魔なら、ここで俺の首を落とせ。

……やりにくいなら自分でやるが。

 

『すまんかった。わしの冗談じゃ……そもそもお主抜きでわしに何が残る?

残るのは男にも、女にもなりきれん半端者のうつけ者だけよ。』

 

そうでも無かろうに。お前なら上手くやるさ。

 

 

 

『最後に、もう一つだけ聞いていい?』

 

何だ?さっきにも増して塩らしいな。

 

 

 

『もし、私が夜叉に殺して欲しいってお願いしたら、どうする?』

 

…………冗談でも本当に笑えんなぁ。

 

 

 

 

まぁ、決まってんだろ。

 

それが本当にお前の望みなら、

 

 

 

 

 

 

殺してやるよ。

 

 

 

 

 

 

殺してやるぜ!!!吉ィ!!!!!!

 

「クッ……クハハハハハハハハ!!!是非も無し!良い、良いぞ夜叉!!!

お主の視界にわしだけが映っている!!!ああ、ああ、堪らぬよ!!!」

 

 

ガトリングの弾幕を切り払いながら槍を投擲する。

魔王信長はそれを優に躱すと急接近して蹴りを放つ。

夜叉は蹴りを敢えて受けるとその勢いで回転、自らのダメージを抑えつつ刀を振り抜く。

しかし刀は信長の持つ魔王剣に防がれる__が。

先程槍を持っていた手を夜叉の物へと置換。

ステータスを超える筋力で信長を掴むと残った回転の余力で投げ飛ばす。

 

 

お互いにお互いの事をお互い以上に知る二人。

まさに知己と呼ぶに相応しい関係だが…

片や体格も戦闘方も異なり、片や人の姿さえ為さない化け物に変貌。

お互い初見であるが故に。僅かづつだが傷を増やして行った。

 

 

 

ああ、クソが。

こんなに憎たらしいのに。

こんなに腹ただしいのに。

こんなに愛おしいのに。

 

楽しいな。畜生。

 

殺したい程に憎たらしい。一片の肉片も残さず。

守りたい程に愛おしい。自らを憂い続けた友を。

 

成程。これがお前の抱えた苦しみか。

 

自らを中傷した無辜の民への憎しみ。

間接的な誹謗の原因であり、自らを憎めと望んだ友への憂い。

それらを憎しみながらも()()()()と望んだ矛盾。

 

 

 

ああ、最低(最高)な気分だ。

 

でも、だからこそ。

ここから先は俺の答えで行く。

終わらせようぜ。友達と殺し合うなんて。

馬鹿らしいからな。

 

 

 

終わらせよう。吉。ここが俺達の幕引きだ。

 

身体に纏う夜叉の力を全て解除する。

 

「今更…………今更だ夜叉!!!何故!何故わしを置いて行った!!!あの時も!今も!」

 

吉の拳が迫る。俺は____()()()()()()()()()で迎撃した。

 

「ッ………………!!!」

 

何だよその顔は。おっと。()()()()()()()()()()()()()

ああ、最高だな。ニヤケが止まらねぇ。

 

「止めろ!!!わしの心を乱すな!!!」

 

まぁ、そう言うなよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………………ッ………」

 

『ハァ……性格の悪いこって……』

そう聞こえた気がした。

まぁ、そう言うなよ。

ニチャァ…と擬音が付くように俺は笑みを浮かべた。

 

 

感覚器に打撃を与えて怯ませる。

足を崩し、体制を崩し易くする。

掴んだら、相手の力を最大限利用して投げ落とす。

最後に武器で無力化して相手の戦意を削ぐ。

 

 

 

俺の勝ちだ。

 

 

「………ああ、悪くないの。わしの負けじゃ。殺せ。」

 

まぁ、待てって。

お前、何でこうした?

 

「…………こう……とはなんじゃ?」

 

腹を貫かれた吉。但しサーヴァントなら致命傷じゃない。

全身を撃ち抜かれた姉さん。急所は外してた。

何より無傷のマスターとマシュちゃん。

 

甘いなぁ……本当に甘いんだよ、お前は。

元より殺す気もなく、唯々俺を煽って殺される気だったんだろ?

 

お前は俺に恨んで欲しかったと。

まぁ、散々恨んだよ、今。

じゃ、お前の望みは後一つだろ?

刀を振り上げながら泣き笑いに顔を歪める。

 

「ふふ……お主も大概に甘いの……」

 

うるせぇよ。

 

「………………愛してるね。夜叉。」

 

ああ、オレも()()()()()、吉。

 

 

 

 

 

「……………御免。」

首を切り落とした。

 

 

 

 

 

これで名実共に俺は信長を殺したか。

気分は最低。

悪くない。

身体の中身を吐き出したくなるような不快感。

悪くない。

 

 

 

 

これがお前の呪いなら____俺がお前を忘れない為の方法なら___

 

甘んじて受け取るさ、

ハハッ。

 

 

 

 

 

 




捨てられた恋人
必ず手に入れる
愚か
断固として勝つ


ピッタリじゃない?

シリアスもラブコメ擬きも、もう限界の玉葱。
コメディ寄りにしたい……ぐだぐだしたい……


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Serious die twice

ネタの凝縮回。その為少しだけ玉葱が出てきます。
生暖かく見守って下さい。

タイトルはSEKIROのパクリ。

『シリアスは二度死ぬ』キリッ

回生もする。

書き終わって思った。

カオスだと。

玉葱警報有り。(ぐだぐだ回には時々出ます。ストーリーには関係有りません。)


ハハハハハッ。

俺の勝ちか。

畜生…

俺の……勝ち……か。

俺が…俺が……吉を………

 

 

時間が経てば経つほど罪の意識が背を這い上がって来る。

割り切れるものでなかった。

……俺がチンタラしてる場合じゃねぇな。

確か西には摩玖主教とか言う坊主の集まりがある筈だ。

……ああ、よし、吹っ切れた。

吹っ切れたったら吹っ切れたんだよ。畜生。

 

 

 

 

「何時まで寝てんだボケナス共!!!」

起きやがれっての!お前らならもう目覚めんだろ!!!

何でって?馬鹿だからだよ!

 

ってアレ?吉……お前………

 

「ッ……何じゃ……わし結構重症じゃよ?もう少し労わっても……」

「どうしたんですか夜叉君……いたいれふ……」

 

「「「ン…………?」」」

 

「「「………………」」」

 

 

「「「エ!?!?」」」

 

()()()

 

 

吉……お前……デカくね?

 

「「「ハァァァァァァァ!?」」」

 

「うわっ!?何!?」

「先輩!!!」

 

あ、ゴメン。起こした?

大丈夫か?怪我は無いな。よし。良かったぜ……ハァ……

「わしらと扱い違すぎない?」

当たり前だろ。俺はか弱い女の子には優しいんだよ。

 

「「酷い!?」」

 

さて、状況を整理しようか。

 

マスターは無事。

姉さんは……まぁ、大丈夫でしょ。元々血塗れの人だし。「ヒドイ!?」

問題はだよ。

吉が、何か、アベンジャーの方の吉になってる。

ワケが分からないって?俺もだ。

「ほほう……これは……素晴らしいの……」

お前身長とか胸囲とか気にしてたしな。

 

「クハハハハハ!!!どうじゃ夜叉!!!このナイスバディは!!!」コロンビア

どうと言われてもな……痛い硬い!鎧に押し付けんな!!

 

 

「くっ………負け……た………」

 

いや姉さん貴女負けたも何も、吉とどんぐりの背比べだったじゃん。

 

ほら、四人の中だとまぁ、帰蝶さんは規格外としてさ、市の方がデカかったし。

何処とは言わないけど。

うん、無言で刀振るのは止めてくんないかな。吉に潰されて見えてないから防ぐのもキツイ。

ほら、大きい方が良いってワケじゃないしね?

 

タマネギ『むしろまな板くらいが良いと思う。』

 

黙ってろ。飴色になるまで炒めてカレーにいれるぞ。

 

『大分限定的な脅しだよねソレ。カレーにいれると美味しいよね。』

 

「クソゥ!クソゥ!」ブンッ!!!

 

『ぬぼぁー!?』ミジンギリ

 

ああ!作者がみじん切りに!

惜しくもない玉葱を無くした………

 

せっかくだし、今晩はカレーにしようかしら。

 

「長政さん……ソレ食べるの………?」

 

………多分食べれるだろ。まぁ。

 

『失敬な!作者は北見産の無農薬玉葱だぞ!!!』ミジンギリ

 

うーん、マスターちゃんがお腹壊したら大変だし、やっぱ捨てるか。

 

『……ククク、例え作者を倒しても第二第三の玉葱が洗われ…ガフッ……』チ-ン

 

洗われるのか……(困惑)

 

 

 

 

 

~とある地にて~

 

『ほう、作者が殺られたか……』

 

『あの程度のみじん切りで死するとは四天王の恥晒しよ。』

 

『さよう、まぁ案ずることは無かろうて。』

 

『そうだな。四天王はまだ四人居る…精々仮初の平和を噛み締めるがよい…』

 

 

 

 

『『『『…………いや、アイツ誰だよ。』』』』

 

 

 

 

止めろ。作者がリアルで使ったネタを小説に起こすな。

 

『作者ラブコメ擬きもシリアスも限界だったからね。』

 

満足したか?

 

『勿論。これから本編に戻るからよ……止まるんじゃねぇぞ…』キボウノハナ-

 

そう言って玉葱は消滅して行った。

 

 

 

「長政さん、今のは何だったの?」

 

気にするなマスター。玉葱の妖精だ。

 

 

 

 

 

拠点に帰ってきました。

 

光秀が居ました。

 

殺します。

 

「ストップストップ!!!聞きたいことが有るんだよ!」

 

何だよ(殺す)今更こんなハゲに(殺す)聞きたいこと何か(殺す)あるか(殺す)殺す。

 

「夜叉…最後は口に出とるぞ………」

 

殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺■■■■■!!!!!!

 

「落ち着いて長政さん!!!」

 

■■■■■■■!!!…………よし、落ち着いたぜマスター。アリガトな。

まぁ、実際の所そこまで恨んでないしね。

台本に書いてあっt『おいやめろ。』アッハイ。

 

 

「随分手慣れてますね……」

 

「慣れたからね………」ハイライトオフ

 

ホワンホワンホワン~~

 

『アキレウスゥゥゥゥ!!!!!!』

 

『イスカンダルゥゥゥゥ!!!!!!』

 

『Arsaaaaaaaaaaaa!!!!!!』

 

 

 

 

まぁ、いい。何か有るんだろ?お前はそういう奴だ。意味も無いことはしねぇよな。

 

 

 

 

 

 

ん?伝令?

摩玖主のキャスター?誰だそれ?

しかも和議交渉かよ。………どうするマスター。

 

 

 

 

「というワケで和議を申し出たいのですよ。」

 

…………怪しさ満点だなオイ。

摩玖主の坊主にちびノブが虐められたからな、あんまし信用したくねぇんだよ。

 

「それともカルデア家にとって『天下統一』とは民の平和ではなく己の私欲を満たすものであり…」

 

「違いま「ああ、そうだが?」す!……夜叉さん!?」

 

そりゃ、お前。私欲に決まってんだろ。

キャスターに刀を突きつけながら言う。

 

 

 

 

何時だか、尾張生まれの馬鹿(うつけ)が望んだ。

 

「戦の無い世の中にしたい」と。

 

その為に戦い続けた。

 

 

越後の馬鹿()が望んだ。

 

「仁義ある戦いをしたい」と。

 

その為に戦い続けた。

 

 

近江の莫迦()が望んだ。

 

生き残りたい。生き残らせたい。

守りたいと。

 

その為に殺し続けた。

 

俺達は自分の意思で、自分の望みを叶えるためだけに戦ったんだよ。

 

とくに俺なんかは本当に守りたかったのはほんの十数人だけだ。

もし、ソイツらと残りの人類全部を天秤に掛けるなら間違い無く俺は家族を取るね。

何なら自分で全部滅ぼしたっていい。

 

それをお前、舐めてんのか?

なぁ、答えてくれよ。

 

こんなに人を斬りたくなったのは久しぶりだぜ。ハハハハハハッ。

 

 

 

 




次回はどうなるのか正直検討がつかんでござる。

後所長救済が思い付かない。
夜叉君神様でもないから生き返らせるのは無理だしなぁ……


補足……夜叉は自分勝手にやった結果が歴史そのものだと考えており、
よく分からん同情や、実際に居なかった人物の憶測が大嫌い。
忘れがちですが狂化EX。

けんさん&コハクさんの帰蝶さんの小説更新されましたね。
こんな小説読む暇が有るなら正直向こうを見た方がいいです。


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坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

順調に評価が低下中……(´・ω・`)

まぁ、楽しんでくれる人が1人でも居るなら書く価値は有りますがね。


まぁ、うん。

 

取り敢えず落ち着いた。

 

文明人らしくお話しようじゃないか。

 

『…………文明人?』ヒソヒソ

『刀突き付けながらヤクザスマイルでお話とか………』ヒソヒソ

 

おいこら外野。聞こえてるからな。

たたっ切らないだけまだましだろ。

 

 

 

 

「はぁ……普通こっちが赴くかね?そっちが頼んできたんだろうに。」

 

面倒だなぁ、オイ。

 

というワケで?やって参りましたよ摩玖主寺?名前分からんがね。

念の為前に出るなよマスターちゃん?どう見たって真っ当な寺にゃ見ぇねえしな。

後ろの残姉はほっとけ。死んでも死なん連中だ。

 

わぁお、ハゲが案内してくれるってよ。見た目が完全にオネエのあれなんだよな。

…………腹立つ顔だな……

 

肉食ってるし昼間から飲酒。どう見たって女とネンゴロだしな。

どうも随分とサボり気味の神様だな。こんなんでも加護が受けられるねぇ。当てにならんな。

 

「摩玖主様はとても広い御心を持つ方。どんな者であれ、信ずれば

摩玖主様のご利益に預かれるのですよ。長政殿も如何かね?」

 

是非断らせて貰いたいね。神様を信じないワケじゃないけどさ、

胡散臭いのはゴメンだぜ、マルチとかしてそうだし。

そしたら怒る怒る。顔には出さないけど結構キレてやがる。大丈夫?カルシウム足りてる?

ケタケタと嘲るように口撃を続ける。

おっ?おっ?言うに事欠いて今度は姉さんの琴線に触れたな?

煽り耐性0で乙。外人ゲーマーかな?

すご~い!君たちは人の琴線に触れるのが得意なフレンズなんだね!!!

(なんと、ここまで言うのに僅か数秒。夜叉も煽る事に定評のあるコハ組の一員であった。談・玉葱)

 

そんなこんなでハゲを煽りつつ寺の中へ。

ん、マスター。やり過ぎだって?

仕方あんまい、吉がいない分も補填しないとな。

それに、人ってのはキレてるとボロが出やすいんだぜ?

 

 

身体に掛かる重圧。

な、なんだ?身体の動きが…に、鈍いぞ?

違う!これは身体の動きが鈍いのではない…

う…動けんッ!!

馬鹿な…ピクリとも動けんぞ…

 

「これこそが摩玖主様の御力。凡百の英霊では動く事も出来ないでしょう。…捕えなさい。」

 

クソが!離せ!離せ!

 

 

…なんちゃって。

 

目の前のメカ僧兵の頭を千切り飛ばし人間の方の僧兵に投げつける。

た~ま~や~ってね。汚ねぇ花火だ。

おっとマスター。見ない方がいい。R18―Gになってるからな。

 

「ほう、摩玖主大本尊の力を受けてまだ動けるとは……仕方ない。キャスター、少し痛めつけてやれ。」

 

おっと、本性表したな?いい度胸してるぜ。誰を痛めつけるって?

姉さん、森くん。マスターちゃん頼んだ。

 

 

「誰に喧嘩売ってんのか知らねぇが、調子に乗るなよクソ坊主が。この程度で痛めつける?トリビアにもなりゃしねぇなぁ?」

 

背負った大太刀を右手に、打刀を左手に構える。ここだと槍は不利だからな。

 

使うのは初めてだが、使い方は身体が教えてくれる。

 

「これなるは軍神の理想、かの魔王が夢想。それらを成す為の鬼の刃。

我が名は毘沙門天が眷属の一人にして魔王が盟友、夜叉。」

 

隙だらけの詠唱は集中力を増し、敵と敵とを線で結びつける。

成程。鏖殺しにする事だけは得意な俺らしいな。

やや自嘲気味に愚か者共に宝具名を告げる。

 

「『王が為、覇道進め夜叉()』………痴れ者が。頭を垂れよ、王の御前である。」

 

右で二太刀。左で三太刀。都合五閃の斬撃。

それは鏖殺しの鬼の力を受け、宝具として昇華した。

 

刹那、()()()魔造僧兵が()()()切り刻まれた。

しかし、魔導僧兵は何時までも湧き続ける。

 

 

 

面白ぇ。試し斬りに丁度良さそうだ。

 

「足りねぇ、足りねぇぞ摩玖主様とやらよ!!!本気で俺らをバラしたいなら十倍は持ってこい!!こんなんじゃ退屈しちまうよ、ハハハハハハハハッ!!!」

 

半永久的に現れる試し斬りの相手に、夜叉は昂る。

その顔からは既に軽薄さは消え失せた、残るは鋭い眼光に獰猛な笑みを貼り付けた修羅一人。

 

 

ー摩玖主本能寺。本日の天気は晴れ時々曇り。場所によっては急激な血の雨が降るでしょうー

 

 

 

 

 

 

 




宝具登場回。
詳細はマテリアルでかな。

評価が下がりつつ、読者様方が何を望むのか分からない玉葱。
修羅場は本編までないかなぁ…ゴメンね。


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反撃

所長生存方法を御教授下さい。
本編に入れませぬ。
お手数ですがメッセージボックスからお願いします………


ps.評価が上がった………?皆ツンデレなのかな?(困惑)
べ、別に評価されたって何も出ないんだからね!(原稿カキカキ)


結局捕まりました。

 

情けないって?仕方ない。

「クソッ!!!数が多過ぎる!!!ウワァァァ!!!」(故E〇F隊員)

って奴だよ。

何なんだ無限って。∞って。

給弾機構が∞なら弾無限なのは分かるがアレはダメだろ。

クソゲーもいいとこだな全く。

 

 

という事で地下牢カミングスーン!!!

ハァ………殺すわアイツら。

 

 

ん?キャスター?

ふむふむ?

あ、釈放?

本体の破壊やら何やら……ふむ。

つまり寝返ると。

成程。

歓迎します。

 

 

解放されたぜ!!!シャバの空気が美味……くはねぇな。

下衆野郎共の香りがしてイライラするだけだな。

それもこれも、

「子供達を燃料として魔力を捻出……」

…………嬲り殺しにしてやろうかあのハゲ。

子供は宝。現代はともかくこの争乱の時代ならなおのことな。

 

「……………許せない………!!!」

 

全くだマスター。取り敢えず七、八回嬲り殺しにさせてくれ、いや、するわ。

理由も無くガキに手ぇ出すような輩は大ッ嫌いなんだよ…ったく…

嫌な事思い出させやがって。

これだから僧侶は嫌いなんだ。

神の使いを騙る割に土足でその顔を踏みつける。

あ~あ、本当に神様ってのは寛大なこった。

 

 

オジャマ………oh、悪趣味な部屋だこと。

真ん中の炉心はマクスウェルの悪魔だよな?

だったら……このコフィンは……

 

『子供は摩玖主本能寺に預けて_____』

 

ハハッ。ハハッ、アハハハハハ!!!!!!

理解した。

代償無く有りつける幸せはないって感じか?

いや、タダより高いものはないの方が近いか。

 

知らず知らずの内に子供を売ってたってね。

ああ、愉快な話だな。嘲笑(笑い)が止まんね。

………復讐者の方が混じってから大分ゲスくなったか?俺。

どうにも人の醜さを見ると嗤いが止まらんのだよなぁ。

…案外こっちが本当の俺の性格なのかもしれんな。

 

おっと、あの頭は間違い無い。摩玖主のハゲだな。

少数の犠牲で多数が云々ねぇ。

成程合理的だ。ああ、実に悪くない。

だがまぁ、理にかなって無いな。

坂本さんの言う通り、アンタらの勘定に自分達ってのは入って無いらしい。

ノーリスクハイリターン狙いとか大分調子に乗りすぎかな。

 

教えてやるよ、ハゲ。

自分をベットした英霊のやり(賭け)方ってのをさ。

 

「マスターちゃん、マシュちゃん。下がってろよ」

 

敵は聖杯モドキの巨人三体。

八つ当たりにゃ、丁度いいか……なァ!

 

 

 

圧倒的質量と魔力を持つ巨人が長政を押し潰さんとする。

が、しかし、右手を変化させた長政はそれを優に受け止めると、

そのまま上半身を抉り抜いた。

魔力の塊である巨人とて損傷を受けては再生せねばならない、

しかし、その間も与えずに長政は槍を投合し、核を貫くと、ダメ押しに槍を蹴り込み完全に破壊した。

 

その間に景虎らも一体の巨人を討ち取った。

残る一体は____「お前、旨そうだな。」パファ……

長政によって()()()()。比喩ではなく、喰われたのだった。

 

 

 

夜叉の力は強いが燃費が悪い。だったらどうする?

簡単な事だ。

 

魔力を多く含むものを取り込めば(喰えば)良い。

そう考えてやってみようと思ったんだが…失敗だったな。

 

完全に寄生獣のアレになっちまった。(『ぱふぁ』でググろう。)

相手が人型だったのもあって中々……中々だったよ、うん。

マスターちゃんに怖がられたかもしんない、結構キツイ。

え?大丈夫?…随分と肝が据わってるねぇ、マスターちゃん。

そういう所いいと思うよ。ホント大好き。

姉さん、だからそんなに死んだ目で見ないで。

別に口説いて無いから。マスターちゃんも止めて、露骨に顔を赤らめるのやめよ?

わざとだよねソレ。マスターちゃん以外と腹黒くない?

というか戦闘中だからねまだ。

 

いやもう誰かが「やりましたか!?」……マシュちゃん……それは……

 

「「「Gyooooo!!!!!!」」」

 

知ってた。

無限ってのは随分と厄介だな。取り敢えず___『王が為、覇道進め夜叉』詠唱は略!

 

逃げようか!!!ここじゃキツイしな!

 

 

 

逃げ出した長政達を見て、坊主は言った。

 

 

 

 

 

「馬鹿な事を。既にこの世界に貴様らの逃げ場など無いというのに。」

 

 

 

 




今回短いね。キリが悪いから仕方ないか……

あ、沖ノッブアーケード実装おめでとうございます!


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不退、故に英雄ならば

タイトルが久々に楽に決まった(当社比)




外に出ると、そこは地獄だった。

 

辺り一面に湧き出る黒い巨人。

 

わぁお、この世の終わりかな?

 

「だから言ったであろう、貴様らに逃げ場など無いと。そして見るがいい!摩玖主大本尊が遂に真の姿を見せる時が来たのだ!」

 

「これは………!更に強大な魔力反応を確認!それに何ですかあの穴は…!」

 

これは結構ヤバいね。ぶっちゃけ俺達の誰よりも強いし硬いし何より不死身だ。

 

タンクでラスジナに挑むよりキツイだろうなぁ、

おいそこ、マナイータさんの事ジナイーダって言うのやめなさい。

ま、巫山戯てる場合じゃなさそうね。ハハッ。

 

「………夜叉君、マスター達を連れて逃げなさい。」

 

ん?どしたの姉さん、トチ狂ったか何か?

 

「何、道連れくらいにはして見せますよ、こう見えて私毘沙門天の化身なので。」

 

ん~姉さん、正気か?何言ってるかわかってる?

 

「ええ、勿論です。少ない犠牲で多数が生き残れば良い、それが力無き者の定めです。」

 

まぁ、理には叶ってるね。

 

「景虎さんを置いていけないよ!!!」

 

やれやれマスター。アンタ甘いなぁ、必要な犠牲ってのもあんだよ。

今はその時ってワケ。

 

「でも……!!!」

 

確かに犠牲は必要かもな、でもよ、

「それはアンタの役目じゃねえよな?」

 

最速で踏み込み、腹部に打撃を与えて意識を奪う。

女性相手の時は子宮等の位置に気を配り、後遺症を遺さない。

「ごふっ……!?夜叉……君!?」

 

ああ、懐かしいな、姉さん。

アンタに最初に教わったのは徒手の技術だったな。

ま、同時に襲われたんだがね。

 

ここは俺にやらせろよ、姉さん。女の影に隠れるんじゃカッコつかないだろ?

 

「長政さん!!!出来ないよ!」

 

「マスター、マシュ・キリエライト、森長可、さっさと消えろ。邪魔だ。コレを担いで逃げて、東に十数キロ。そこに勝機がある。ソレはこっちに向かってる。そいつの援護して戻って来い。生憎、時間稼ぎで一杯一杯だ。」

 

「でも!」

 

「早く行け!!!図に乗るな小娘が!やれる事をやれ!」

 

 

無論、その隙を巨人が待つはずも無く………殴りかかった巨人の腕は一太刀で切り落とされた。

どうして自らの刀身よりも太い腕を切ることが出来たのか。

それは彼の武器の仕掛けにあった。

 

浅井長政はその独特の武器の発想から、後世ではかなりの奇人と呼ばれたりもした。

大太刀、鬼丸国綱。現代では皇室の私有品となっている為か、誰も気が付いていなかったが、フィクションで言う蛇腹剣。実用化は不可能と言われたこれを長政は無理矢理作成したのだった。強度に関しては類を見ない国綱故に成功したこの兵器はより多くの敵を巻き込み、切り刻んだ。

 

久々に蛇腹剣(こっち)使ったな。使いにくい。だが、今はこっちのがいい。

 

即座に再生、反対の腕を振りかぶる巨人に長政はいつの間にか弓を構えていた。

 

強弓、金色鼠。十人張りと恐れられたその弓は長政の武装としては珍しく特に目立った改造は施されていない。

手を加えたのは、矢弾。

現代のロケットランチャーなど、榴弾を飛ばすという考えに至ったのは、長政が最初だとされる。

木と羽根で出来た矢など使わぬ。

この弓が射るのは鋼鉄で形作られた矢……というよりは短めの槍に近い物と、炸裂弾。

徹甲榴弾と後世で呼ばれる兵器の先駆けであった。

 

三条の矢が巨人の腕を貫くと刹那響く爆音。

人類の英智を英霊の膂力で放った矢弾は巨人の肩口までを著しく損傷させた。

 

しかし、決定打が足りない。

あくまで時間稼ぎでしかない。

 

ああ、分かっている。それが自分の役目だ。

 

 

 

 

一時間にも満たない死闘。されど並の英霊では既に霧散する程の傷を負っても、長政は倒れなかった。

 

不意に足がグラついた。結果として回避できずモロに拳を喰らい、寺の瓦礫に突っ込む。

長政は反射で理解した。

ブチブチと景気の良い音が響き、確信した。

腕が千切れたな、と。

関係ない。

夜叉の力で腕を生やす。

しかし、手持ちの武器では最早手傷を負わせるに及ばない。

生やした腕も夜叉の力にしてはかなり弱く、辛うじて人型を維持する物だった。

 

「To live as I please,and die a senseless death……好きに生き、理不尽に死ぬ。か……俺にはピッタリだな。ハハッ…」

 

客観的に見たらまるで彼が諦めたように聞こえただろう。

しかし、それは無い。

 

最期まで、運命に抗い続けた、諦めなかった…否、死んでも尚、諦めなかった。

それこそが彼を英霊たらしめた要因。

それだけが彼の生き方の本質。

 

故に_____

まだ身体の動く限り、彼は諦めない。屈しない。それしか知らなかったから。

 

「やっぱりさ、やるもんじゃないね、キャラじゃない事は…」

 

そう言いながら彼は寺の残骸に腕を叩きつけ、無理矢理結合した。

彼を表す逸話の一つに、『どんな武器も一流に使いこなした。』というものがあった。

それは超一流には適わないという意味もあったが…この逸話は後に宝具にまで昇華された。

本人が知っていたか否かは定かではないが、

半ば無理矢理瓦礫を擬似宝具化したのだ。

全く正気の沙汰では無いが…

彼は既に狂戦士(正気じゃない)故に。

 

 

「バカな!?あの状態で動けるハズが………!?」

 

 

「ハハハッ、これだから面白いんだ、人間ってヤツはァ…!!」

 

 

 

自分の身を顧みずな特攻。そして擬似宝具化した瓦礫での殴打。

これはさすがに巨人の炉心に影響を与えた。

破壊には至らぬが、一時の行動停止に陥ったのだった。

 

と、同時に長政が身体に纏う夜叉の闇が剥がれ落ちる。

これが限界。

夜叉化を維持する余力すらない。

 

 

 

しかし、彼の時間稼ぎは、ここに完遂した。

 

『おうおう、こっ酷くやられたじゃないの、()()?』

 

ああ、漸く来たか。遅せぇんだよ、オレ。

 

『スマねぇなぁ、ここに来るまでに熱狂的なファン(巨人)に絡まれちまってよ。』

 

ハハッ、モテる男は違うな。

 

『ま、悪い事だけじゃないさ。奴らのお陰で全身傷だらけ、助けた人からは化け物扱い。最高だろ?』

 

全くだな。

 

『でも、まぁ、お陰で………

 

ソレは堂々と塀を破壊しながら現れた。

 

「ほら見てこんなに大きくなったの~♪なんてな。ハハッ。」

 

異形の巨人が正常に見えるほど歪な形をした化け物は。

 

「…………」

毘沙門天の化身たる将は。

 

「…………」

復讐者の力を得た魔王は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




AC知らない人はすまない。

どうしてもマスブレ(瓦礫で殴る)やりたかったんです。
悔いはない。

知らない人、本当にすまない。


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異形の鬼

ようやく終わりが見えて来ました。
_( _´ω`)_ツライム

前半は回想メイン。


それは、人と呼ぶにはあまりにも歪すぎた。

 

大型の肉食()を彷彿とさせる力強い四脚。

その上に無理矢理繋いだかのように人の上半身を乗せたナニカ。

背中からは無数の()が生え出で、()()()が鱗のように生え揃った。時折、体表からは()()の様なものが顔を覗かせ、高濃度の()()を込めた矢弾を常に構えていた。

 

「だかまぁ、まだ少し足りないんだよなァ、相棒?」

 

分かってる、あと一つ、一つだけ足りんよな。

 

「まぁ、この身体はやるよ、オレでも、お前でも無い。()()の全部。見せてやろうぜ?」

 

………自分に感謝する時が来るとは思わなんだ。

 

そのまま化け物の中に取り込まれる。

ああ、こりゃ酷い。

最高の気分だね。ハハッ。

 

 

 

さぁ、殺ろうか。

 

 

 

待ち焦がれた()()の時に夜叉は()気的な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「数が多過ぎますよ!猫の手も借りたいくらいです!」

 

足軽達と共に巨人を押し留める残留組。

 

しかし、数が多過ぎた。

 

徐々に押され、とても本隊の援護には向かえぬ程には。

 

 

 

「またせたの(CV_釘〇理恵)。」

 

「吉ィ、それは渋声だから映えるんだよ。お前のはタダのロリボだろうに。」

 

突然に、非常に軽くソレは現れた。

 

「遅いですよノッブ!何をしてるんですか!」

 

「すまんすまん、ちと援軍をな。さて___」

 

 

 

「鬼が前に道は無く、鬼が後ろに生ける者居らず!

織田が盟友、戦場に鬼夜叉有りとはよく言ったものよ!!!」

 

「あんまし期待させるの辞めようぜ?ま、期待にゃ答えるつもりだがね。」

 

 

 

 

ーAll is fantasy.Minute of the end, and dose it still hurt.

On the silent way, when do yo get a calling?

Look into the void. It's scary.

This world is only a fraud after all even if you struggle how.

In a rainy day, let's fight for counterー

 

「何それ?痛くない?」

 

「痛くねぇよ、カッコイイだろ?まぁ、実は必要なかったり……」

 

次の瞬間、青年は化け物に転じた。

 

「…するけどな。」

 

視界に入った巨人数体を養分として。

 

 

「さて、儂が言うのもアレだけど、敢えて言おうか!」

 

『敵は本能寺にあり!』

 

 

 

 

 

 

さぁて、どうするね?お坊さん?

こう見えて俺達結構強い自信があるんだけど。

 

 

 

「Gyooooo!!!」

 

あ、ゴリ押しですか。はい。

嫌いじゃないよ、そう言うの。

「夜叉君。先に私がやります。……大丈夫です、私、これでも庇われるだけの女じゃないので。」

 

知ってるよ。誰よりもな。

 

「姫鶴飛んで、山鳥遊ぶ…谷切り結び、五虎退かば…祭剣まつりて、七光流る…松明照らすは、毘天の宝槍…」

「これこそは我を守護せし異形の毘天、数多の宝剣宝槍を手に仏敵を滅ぼす我が宝具。」

「『刀八毘沙門天』なるぞ!」

 

 

「駆けよ、放生月毛!毘沙門天の加護ぞ在り!『毘天八相車懸りの陣』!」

 

「オオオオォォォォ………!!!」

 

ん~惜しい!少し足んないね。でもまぁ、流石姉さん。

いつもコレなら惚れちゃいそう「本当ですか!?」ハァ……これだから……

ま、瀕死の相手なら俺でも殺せるからね。

 

 

「ちょいと失礼っと、じゃ、死のうか。ブチ抜け、『夜叉』。」

 

身体を槍に変えて巨人を貫く。あ、死なない?

じゃ、ダメ押しにもう一発。更に貫いた槍を体内で剣山状に開く。

爆ぜろ。

 

汚ぇ花火だ。

 

「ぐっ……聖杯よ!」

 

おっと、ソイツは悪手だぜ?『夜叉』。

 

「オオオオォォォォ!?!?!?」

 

あのなあ、リスポーンするときはリスキル注意。常識だろ?

 

学習能力0か?また復活させんのかね。

 

『夜叉』、『夜叉』、『夜叉』、『夜叉』………

 

流石にMP(魔力)が切れ………切れない!

 

「あ、その点ご心配なく、先程の攻撃で一部支配領域が戻りましたので。魔力の方はご自由に。」

気が利くな。助かる。

 

「退け、夜叉。」

 

おっと、やりますかねお館様?

本日魔力が大変お安くなっておりますよ?

良かったね摩玖主君!リスキル地獄から解放されるよ!

 

まぁ、生きて帰す気は無いけどね。ハハッ。

 

 

 

 

 

「さてと、マスター!指示を頼む、さっさと終わらせようかァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 




短い。でもキリが良かったんで。
次回、最終回(大本営発表)


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軍神、魔王、鬼

最終回だ!

疲れた(語彙力崩壊)


摩玖主大本尊。

不死身の巨人。

されど神は討ち取られた。

 

毘沙門天の化身たる軍神、神討つ魔王、異形なる鬼。

そしてカルデアのマスターによって。

 

「何故だ!それではまるで!貴様こそが……」

 

ストップだ、吉。お前に殺される名誉はコイツには惜しいよ。

なんせコイツはタダの人間だからな。

 

何だよ、そんな怯えた目で見るなよ。傷つくぜ?

 

んじゃ、お疲れちゃん。

嘲笑うかのような顔で首を撥ねた。

 

おっと、マスターちゃんには刺激が強すぎたかな。

 

 

 

そしてそれは、特異点の崩壊を意味するのであった。

 

 

んまぁ、気付いてたがね。

この特異点をぶっ壊すなら全部の吉を殺さなきゃならない。

 

つまりだ、

少なくとも信長はここから出る事が出来ないと。

 

幾人かのサーヴァントの退去が始まる。

吉、お前はあの娘に挨拶してこいよ、仮にも相方だろ?ハハッ。

 

さてと、お別れだなぁ、マスターちゃん。

 

「えっ…長政さんも残るの?」

 

勿論、アイツを殺す役割だけは譲れんからなぁ。

何より俺が居ないと寂しがるからね。ハハッ。

おっとマスターちゃん、いや、マスター。そんな顔すんなって。

可愛い顔が台無しだぜ?ほら、俺にみたいに笑えっての。

 

「よくやったぜ、マスター。正直見直した。という訳でだ、これでマスターを一人前と認めて、俺の事を夜叉と呼ぶ事を許そうじゃないの!誇っていいぜ?俺をこう呼べるのはホ~ント数えられるくらいの奴なんだからな?ハハッ!!!」

 

ほらほら、笑えっての、んじゃあな、マスター。

 

「うん…!ありがとうございました!夜叉さん!」

 

 

 

 

さてと、森君。お前はマスターのとこ行ってこい!

 

「…でもよ、夜叉の兄貴。俺みたいのが居たら迷惑じゃないか?」

 

心配すんなよ、吉が居れる環境ならお前は寧ろ常識枠に入れるさ。

行ってこい行ってこい。あのマスター少~しだけ心配だからな。

 

「……仕方ねぇ、夜叉の兄貴に言われちゃあな!んじゃ、兄貴!大殿に宜しくな!」

 

おう、任された。頼んだぜ勝蔵。じゃあな。

 

 

 

 

 

んで、残ったのは俺達の四人か。いやぁ、懐かしい顔だこと。

 

「おっと、長政様、それには及ばぬ故。私も御三方の邪魔をする程無粋では無いので。」

 

お、気が利くな。まぁ、そこら辺の農民に竹槍で突いてもらえよ。

 

「成程…それは盲点でしたな。では、信長様、長政様、さらば。」

 

あ~あ、何だかんだジョークを分かる奴だったからな、アイツ。

立場が違えば仲良くできたろうに。

 

 

 

さてと、結局最期はこの三人なワケか。笑えるねぇ。

 

「いっそ市や濃姫も居ればよかったのかもしれぬなぁ。」

 

いや、お前人の嫁さんを道連れにする気かよ。

よろしい、ならば戦争だ。

 

「むぅ、惜しいですねぇ、今回呼ばれて居ないのに市ちゃんに一人勝ちされた気分です。」

 

まぁ、仕方ないでしょ。

ほら、俺嫁さん大好きサーヴァントだからさ。

 

「ほう?では()()の儂が伴に居て良かったの?クハハハハ!!!」

 

「夜叉君?どういう事デスカネ?返答しだいでは…事デスヨ?」

 

さぁ、何の話だか。

 

「クハハ、儂は先に言質取ったからの~?」

 

「ヤシャクン?」

 

ああもう!昔の話を掘り返しやがって!

 

 

 

 

「おおっと!ノブナガ選手一点リード~!」

「算術からやり直しなさい!同点です!」

 

ハァ、何してんだか……

 

「随分と楽しそうじゃなお主。こんな昼ドラ厶ーブで。」

 

「安心しろ吉、焼け落ちる寺の中で撮影する昼ドラなんか無ぇから。」

 

 

 

「何より実際楽しいしな、いやぁ、心中最高。道連れも悪かないな?」

 

ケラケラと笑いながら問い掛ける。

 

「う~ん、儂らが言うことじゃないけど、夜叉も結構独占したがるよね。」

「……これは中々。良い物を見れました。」

 

そりゃあな。お前らに良いとこ見せたいからあんなにやったワケで?

まぁ、結局死んだけどな!!!

 

「う~ん。このトチ狂った感じ。やっぱり狂戦士じゃよねコイツ。」

 

 

 

 

さてと、そろそろ世界諸共おっ死ぬ時間なワケで。

寺は崩壊寸前。

んー吉、せっかくだからアレやってくれよ。

 

「ふむ?成程。本能寺でやるなら最高の芸じゃの。」

 

「何が始まるんです?」

「第三次大戦だ。」キリッ

 

 

のぶなが の ふしぎなおどり!

 

ながまさ と かげとら の MP が へった!

 

 

「いや、まだやっとらんし。誰の踊りがふしぎなおどりなのじゃ。」

言う程変わらんよ。ったく。

 

 

 

 

ー思へばこの世は常の住み家にあらず

草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし

金谷に花を詠じ、榮花は先立つて無常の風に誘はるる

南楼の月を弄ぶ輩も 月に先立つて有為の雲にかくれり

人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり

一度生を享け、滅せぬもののあるべきか

これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞー

 

「一応私信心深い方なんですがねぇ……」

 

え!今からでも助けてくれる神様が居るんですか!?

…なんてな。

 

 

「いや、まぁ、そうですけど……あはははは…」

「いやぁ、全くじゃ…くくくくく…」

「ん?何かおかしかったか? ハハハハハ…」

 

 

崩れ行く、本能寺。

その只中、英霊達は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははははははははははははははははははははは!!!!!!」

「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「『是非も無し!!!』」」」

 

 

 

 

ただ笑い続けたのだった。

 




これにて鬼夜叉と呼ばれた男、初期構想段階まで終了です。

玉葱の次回作にご期待下さい。

ああ、疲れ…うわっ!何をする、やめ

????「浅はかな、何が終わったというのです?」


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群胡蝶

玉葱は嘘吐き。


群胡蝶はシザンサス。
花言葉は…


「先輩!もう止めましょう!これ以上はカルデアの財政が持ちません!」

 

「やだ!ぜったいにひくの!」

 

絶対に、絶対に引くのだ。

立香は決意した。かの邪智暴虐なる男を引かねばならぬ。

立香にはガチャが分からぬ。立香はカルデアのマスターであった。

iTunesカードを溶かし、爆死をして過ごしてきた。

 

「あのなぁ…マスターよ。確かに夜叉の奴とは会いたいがの?だからって破産する程回しちゃいけないとわし思う。」

 

「フシュルルル……!フシャア!!!」

「んー駄目みたいだねこれは。散々フラグを建てといて召喚に応じないとは彼も罪な男だねぇ。」

「よーし!頑張れよ殿様!夜叉の兄貴も何だかんだ会いたがってた筈だし来れんだろ!」

 

既に詫び石は尽き、課金は六桁の大台に乗りかけた。

されど立香は諦めない。

絶対に諦めない英霊の姿を見たから。

そう、絶対に。

 

体は石で出来ている

I am the bone of stone.

 

血潮は呼符で心はガラス

Ticket is my body,and fire is my blood.

 

幾たびの戦場を越えども爆死

I have created over a thousand death from blasting

 

ただ一度の★5もなく、

Unaware of loss.

 

ただ一度の虹回転もなし

Nor aware of rainbow spin.

 

マスターはここに独り

Withstood pain to leak sobbing,

 

ガチャの前で嗚咽を漏らす

waiting for one's master.

 

ならば我が生涯に意味は不要ず

I have no regrets.This is the only path.

 

この体は、

My whole life was

 

無限の爆死で出来ていた_____

『Unlimited blast works』…

 

 

 

(数十分後……)

 

「 」キボウノハナー

 

「先輩!?先輩!せんぱーーーい!」

 

 

立香は死んだ。

あまりにもガチャで爆死しすぎて貯金が尽きたのだ。

彼女の最期の言葉は「もっと家賃の高い所に引っ越さないと…」だった。

 

 

 

「諦めましょう…先輩……」

 

「うん……ゴメンね、マシュ…」ポン

 

「「え?」」

 

ラスト30個。

使う筈なく、完全なミスタップ。

しかし、

使わずにとって置こうとしたこの十連が奇跡を起こすのだった。

 

 

1~8

シンジクン「「「「「「「「(´・ω・`)」」」」」」」」

 

「ごふっ(吐血)」ヒンシ

「先輩!?眠っちゃ駄目ですよ!先輩!?」

 

 

9

 

「ホワーン」キンカイテン

 

「我こそは刀八毘沙門天の化身、長尾景虎!弱く強きものよ、そなたの為さんとする大業、我が身の全てを賭けるに些かの不足なし。———改めて、よろしくお願いしますね!」

 

「やったぁ!!!!!!景虎さん!またよろしくね!」

 

 

喜びも束の間、時に幸運とは連なる物だ。

 

10

 

「ホワーンッ!!!」ニジカイテン

 

「嘘!虹回転!?」

 

「我は第六天魔王波旬、織田信長。出迎え大儀である。人の身で果てなき旅路を行く者よ。」

 

「FOOOOOO■■■■■■■!!!!!」

 

興奮のあまり半ば狂戦士と化す立香。

無理もない、★4と★5が同時に出たのだ。

本来なら暫くは夜道に気を付けなければならない程に喜ばしい。

 

しかし、この二人が揃った。故に……

 

「夜叉さん………」

 

本来居るべき男の姿がない事を寂しく思った。

何より、口こそしていないが信長は明らかに落胆していた。

 

「いや…いいのじゃよマスター。あやつにも何か考えがあるのじゃろう。」

 

信長は告げる。

 

「それに、今からあやつに会った何と言おうか考える事が出来て寧ろラッキーじゃよ!是非も無いよネ!!!というかそっちのわしは何で最初から最終再臨なんじゃ!おかしいじゃろ!」

 

必死に話題を逸らした。

周りに悟られたく無くて。

しかし___

 

「む?すまぬの。この姿でなくては貴様と被る故な。あやつが見失いかねん。」

 

「?あやつ?誰の事?」

 

「マスターよ、冗談がキツイぞ?そも、我がこのような神モドキを我が伴として同伴させると思うか?今も昔も我が伴は一人、誰とは決まっておろうが。」

 

魔王信長はそう言うと召喚陣に魔力を叩き付ける。

本来のサーヴァントにはありえない程の魔力を。

その魔力は召喚陣を誤作動させ、陣は尋常じゃない速さで廻る。

 

「愚か者が。もそっと早く来ぬか。」

 

陣が焼き切れる寸前、魔王信長は呟いた。

ほんの僅かに。

自分自身で聞くのがやっとな程に。

 

「まぁ、許してくれよ。本当は真っ先に来たかったんだがね?排出率の壁ってのは本当になぁ……ハハッ!」

 

回転が急に停止すると、ソレは現れた。

 

日ノ本の英霊としてはやけに大柄な体格。

大弓、大太刀、打刀、十文字槍に隠し持った拳銃。

何よりその特徴的な口癖。

間違える筈が無い。

 

 

1()1()

 

 

「サーヴァント、バーサーカー。浅井長政。聞こうか、アンタが俺のマスターかな?……なんてな、冗談だ。何て顔してんだよ、ったく…まぁ、また宜しく頼むぜ、マスター()()()!」

 

 

 

 

 

いつかのようにケラケラと笑いながら。

 

 

 

 

 

 

 




『いつまでも一緒』

11連ガチャは良い文明。



ぐだぐだ本能寺完結!お付き合い頂き有難う御座いました!

さて、本編は序章書き終わったら投稿します(しばらくお休み)

休止はできるだけしたくないので幾つか短編を書いてあります。
お暇な方はwith玉葱の方も宜しく御願いします。(予定ではwith玉葱なのに玉葱抜き。シリアス。)


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データベース
玉葱道場(質問コーナーです)


With玉葱でやろうと思ったけど本編との関係がまぁまぁ有るからこっちに入れます。
怒られたら移します。

あ、登場人物の関係上台本形式です。
With玉葱も更新されており特に「夜叉」を読まないと分からない部分もあるかも。


玉葱「はいどーもー!好きなバイオのキャラは豆腐!作者です!」

 

夜叉「好きなバイオのキャラはハンク。オルタです……って何だこれ。」

 

玉葱「いやね、こう、文字に起こすのが難しい疑問点とかをここで解決してヘイトを逸らそうと…」

 

夜叉「思ったよりくだらない理由だった…というか、それはお前の能力不足では?」

 

玉葱「ごもっとも。まぁ、後からやるよりいいかなって。」

 

夜叉「成程な。そういや、何で俺は此処に?(『夜叉』を参照)」

 

玉葱「丁度良く画面からフェードアウトしたから。後ギャグ次元のオルタ君が見たい人が居たから。良かったね。」

 

夜叉「そりゃ、ありがたい…誰か分かりませんがありがとうございます。」

 

玉葱「そろそろ本題に入るよ。」

 

夜叉「了解。じゃあ一つ目。」

 

『戦国編はいつ終わるんですか?』

 

玉葱「終わりました。」

 

夜叉「いや、遅すぎるからな!?何時の質問だよ!」

 

玉葱「うーん。定期的にやるべきだったかな。」

 

夜叉「あー…質問して下さった方、ありがとうございます。後ゴメンなさい。次!」

 

『妹ちゃんの話が気になる』『ヤンでるに違いない。』

 

玉葱「元々モブキャラのつもりだったんだけど登場さえしてないのに人気な妹ちゃん。」

 

夜叉「結局どうなんだ?」

 

玉葱「書いてみるか………」

 

…………一時間後……

 

玉葱「よし出来た!」

 

夜叉「貸してみろ、推敲してやる。」

 

玉葱「あ、俺もまだ読んでないから見せてくれ。」

 

二人「!?こ、これは………!?」

 

玉葱「AMSから、光が逆流する…! ギャァァァァァッ!」

 

夜叉「ヤバすぎる…修正が必要だ…」

 

 

(暫くお待ち下さい)ピンポンパンポーン

 

 

玉葱「機体への神経接続が再確立。信号を検出しました。データリンクテスト……正常。

ジェネレータープール……正常。エネルギーリミッター解除。

電磁装甲稼働率……正常値の700%で稼働。さらに上昇。武器安全装置解除。」

 

夜叉「再起動だと! 有り得るのか、こんなタマネギが…」

 

(実際書いた後読んだら思ったよりヤバかった。)

 

夜叉「まぁ、その内投稿するとのことです。次!」

 

『オ〇タなのか!?』

 

玉葱「オキタ……?水着おめでとうございます。」

 

夜叉「違ぇよ。というか遅せぇんだよ。」

 

『エミヤスレイヤー。』

 

夜叉「これは質問なのか………?まぁ、いいか。守護者を恨んでるか?ってことだよな?」

 

玉葱「まぁ、そうなるよね。君達のマテリアル貼った後に言うのもあれだけどさ。」

 

夜叉「正直そこまででもないな。殺してるんだ、殺されもする。それが遅かれ早かれ、だな。」

 

『夜叉君の性格が掴めない』

 

夜叉「これはお前の責任だな。」

 

玉葱「すまない…夜叉君のコンセプトが荒れてるからね。」

 

夜叉「確か『狂人のフリをした智将、ただし根本で狂っている』だっけ?」

 

玉葱「うん、まぁ、これは変わらないからそういうものとして読んで欲しいかな。」

 

『声は塩沢兼人。』

 

夜叉「これどうなんだろうな。」

 

玉葱「個人的にはアリだと思う一方でぶっ壊れ感が足りない気もする。」

 

夜叉「cv藤原啓治さんとか?」

 

玉葱「どう見ても主任です本当にありがとうございました。友達に何故か杉田智和とか言われました。」

 

夜叉「全編通してネタになりそう。」

 

玉葱「ほんそれ。玉葱としては2broのおついちさんが何となく近いかな?」

 

『そもそも玉葱って何だよ。』

 

玉葱「作者の化身。この世界のメタとネタを司る一種の精霊モドキのナマモノ。」

「ちなみに中の人という別名を持ちます。」夜叉「いきなりメタいぞ。」

 

『信長の子供って20人くらいいるんじゃ……』

 

玉葱「本人に聞いてみるか?」

 

夜叉「どうやって?」

 

玉葱「丁度触媒が有るからね。」ペカー

 

夜叉「うお!?おおおお!?…………

夜叉→長政「あれ?何だここ?」

 

玉葱「長政君長政君。」

 

長政「あ?…………作者か。なんか用か?」

 

玉葱「ノッブの子供20人の真相は?」

 

長政「ノーコメントで「信長本人に聞こうかな」私がやりました。」

 

玉葱「よろしい。まぁ、仕方ないね。信長の側室&妾いっぱい、男日照り、百合百合フェスタ。

そこに放り込まれた高身長イケメン性格もイケメン。」

 

長政「ピラニアの群れに囲まれた牛の気分というか…うん。」

 

玉葱「愉悦愉悦。じゃあ帰っていいよ」ペカー

 

長政「うわ何だ何だこれ!?ああぁあ!?

長政→夜叉「一体何が………?」

 

玉葱「気にしなくていいよ。ちょっとしたトリックさ。」

 

 

夜叉「そろそろ終わりにするか。ありがとうございまし「待たれよ。」

 

『逆レマダー?』

 

玉葱「期待されてて玉✩葱生えるわ。」

 

夜叉「止めろ…違う…それは俺のキャラじゃない…女性関係の修羅場は長政のキャラだ…」

 

玉葱「まぁ、本編に期待かなぁ。それじゃ。」

 

二人「また本編を宜しく御願いします!」

 

 

 

ハイカットーオツカレサマー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




With玉葱に送るべきノリだが内容が内容だからなぁ。


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幕間・鬼夜叉 思ひ出すとは

ちょっと休憩。
幕間書こう。

ぐだぐだファイナルやった方のカルデアだと思って下さい。


「あれ?ここは?」

 

カルデアのマスターが目を覚ますと知らない場所に立っていた。

やけに陰険で暗い場所。

尤も、今更この程度で驚く程の事でも無いのだが。

 

「……何故ここに居る。」

 

「長政さん!」

 

「………その名で呼ぶな。それはオレじゃない。それにそんな奴の事は()()()()()

どういうワケか、お前はこの世界に入り込んだワケか。

……ここはオレの心象風景。まぁ、有り体に言えば夢の中だな。」

 

足元さえ危ういほどに、どこまでも続くような深い闇。

 

「ハァ…来ちまったならしょうがない。そのうちカルデアからどうにか迎えがくるだろ。だから…」

 

そこまで言った所で辺りの雰囲気が一変した。

カチャリ、カチャリと鎧を戦慄かせ、

復讐という正義の元、屍たちは動き出す。

それは怨みの化身。

浅井長政…もとい鬼夜叉という個人への激しい憎悪。

その具現がなす虚像である。

 

「そうら、来たぞ…自分の身を守れるならよし、出来ないなら後ろに隠れていろ。」

 

そう言い放ち、夜叉は構える。

それを見たマスターは夜叉の後ろに隠れながらも引かない。

どうやらマスターとして指示を出す気の様だ。

 

「…いい度胸だマスター…死ぬなよ。」

 

戦闘が始まった。

 


 

刀で斬り殺す。

拳で叩き殺す。

脚で踏み殺す。

 

数多の亡霊をものともせずに夜叉は蹂躙する。

 

頭蓋が砕け散る。

臓物を引き千切る。

脳漿をブチ撒ける。

 

何時しか辺りは静かになっていた。

 

 


 

『あ?もう一人の俺か…?なんだって俺に…いやまぁ、俺が一番詳しそうだし是非もないよネ!!!

まぁ、冗談は置いといて。………アイツは夜叉(オレ)であって長政()じゃない。

分からないって?そうだな…アイツは間違い無く夜叉では有るが、長政じゃない。長政が足りない。………()()()()()なんだよ。長政に戻れず、戻る姿も忘れちまった。馬鹿だろう?俺もそう思うぜ……ただ、馬鹿じゃなきゃ出来なかったのさ。』

 

…スター……マスター……!

 

「!」

 

気が付いた時には戦闘は終わっていた。

「戦ってる最中に居眠りか。随分な胆力だ。

流石人理救済のマスターと言うべきか、それともただの馬鹿なのか…?」

 

やれやれ。と言ったような苦笑いで問い掛けてくる。

その顔はまるでいつもの長政のようで…どこか懐かしげだった。

 

 


 

「……!誰か外から入ってきた。行くぞマスター。」

 

「わっ!ちょっと待ってよー!」

 

時折現れる亡霊を薙ぎ倒しながら闇を進む。

夜叉も無傷では無かったが構わない、どうせ傷は増え続ける。

そして出会った。

 

 

 

「……織田信長、長尾景虎か。成程、アンタらが迎えに来たわけか。」

 

吉法師でも、吉でも無く、織田信長と。

姉さんでは無く長尾景虎と。

自分はあくまでも浅井長政では無い。

故に、そう呼ぶのは俺に相応しくない。

 

「……迎えに来てくれてありがと…!」

「ッ!下がれマスター!!!」

 

え__そう考える前に槍の穂先と銃口はこちらを向いていた。

 

 

しかし、それらが立香に届く事は無く。

二つの殺意はマスターを庇った夜叉を穿った。

 

「ッ!夜叉さん!二人共、どうして!」

 

「どうしてじゃと?」信長が言う。

「当たり前じゃないですか。」景虎が続ける。

 

「その男は、わしを裏切って謀殺し、あまつさえ目の前で見捨てたのじゃぞ?」

「彼は、私を疎んで消そうとしたんです。恨むのは当然では?」

 

そんなことはない。そう言おうとしたマスターは言葉を続けられなかった。

 

「……まぁ、そういう事だ。ソイツは自らの私欲の為に友を、家族を謀殺したってわけ。」

翠色の髪。戦いに適した大柄な体躯。

「酷い話だよなぁ?ハハハハッ。」

過剰なまでに搭載した武装と薄ら笑い。

 

()()()()

鬼夜叉と呼ばれた目の前の男の本体。

それがこちらを射殺さんとばかりに身構えていた。

 

「あ~マスターちゃんに嫌われたく無いから先にネタバレするね?

俺…もとい俺達はソイツの自責の念から引っ張り出された幻影だよ。

浅井長政は本来二人を殺していない。そんな筈はない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

程々にドラマチックで程々に正義感を満たせる程々の悪役。

それを無意識下に求める、そんな醜い人の性、その終着点がソイツなワケで。

実際、何度も経験あんだろ?オレ。」

 

「…まぁな。幾度と無く、本当に二人を殺める事になったが。」

 

ヘラヘラと嗤いながら長政は問う。

 

「折角だから見てもらえよ。()()()()と呼ばれたお前をさ。

ああ、俺は見物させてもらうからさ。

……あ、マスターちゃーん、これ使いなよ。」

 

そう言うと長政はどこからとも無く椅子を取り出し、マスターの直ぐ近くに設置した。

 

「…」

「…」

 

二人が銃を、槍を構える。

 

「……ああ、やろうか。それでアンタらが満足するなら。」

 

無表情に、夜叉は言い放った。

 


 

 

 

 

視界が霞む。

刻まれた疵が増える度に何かを忘れる。

名前を、記憶を、友を、家族を。

何の為に戦うのかさえ、思い出せない。

 

膝を付く、同時に顔を撃ち抜かれ、胴を断たれ。

既に人のカタチは残していない。

積もる怨嗟に焼かれた心は色を喪い、感じるはずも無い幻肢痛に苛まれる。

 

では何故、自分は立ち上がるのか。

自らの存在の証明?

馬鹿馬鹿しい。

過去との隔絶?

くだらない。

 

本当は分かっている。それは。

 

 

 

 

 

 

「開けろ!デトロイト市警だ!」

「ぶっへぇぇ!?」

 

………少しはシリアスに耐えられんのか、コイツは。

 

 

 

突然、偽長政の背後にドアが出現し、蹴破られる。

勿論長政は吹き飛び美しい弧を描いて顔から落下する。

 

「作者曰く『シリアス寄りはマジNG、幕間くらい楽しくやろうよ』だってさ。

後、急に思い出したからどうしても使いたかったらしい。」

 

「メタい!こっちの俺もそっちの俺もメタいにも程が有るよなァ!?」

 

 

 

 

 

 

………ああ、拍子抜けって奴だな。

だがまぁ、大分正気に戻れた。

まさか狙って…いや、有り得んか。

どうでもいいさ、んな事は。

 

「……ようやく思い出したよ、なんで負けられないのか。」

 

オレは、マスターのサーヴァントだからな。

どうせなら……カッコイイ所見せたいだろ?ハハッ。

 

____ああ、ようやく。漸く思い出したよ。

()()()()

 

そうだ。オレは二人を手にかけた。

きっとそうなんだろう、人々がそう信じるならば。

だから、オレが二人に恨まれるのは当たり前だ。

 

それでも、前に進む為。

マスターのサーヴァントとして恥じる事の無いように。

 

「悪いけど、()()討たせてもらうよ。吉、姉さん………そして長政。」

 

思い出した。お前はオレだ。お前はオレの…いや、俺はお前の影法師だ。

影法師が本物に至るには……本物を超えないとな。

 

「ええ!?俺も戦わなきゃ駄目!?んな無茶な,HAHAHA……………誤魔化し効かねぇか。成程。

………この際プライドは抜きだ!かかって来いよ。」

 


 

突き出される槍を踏み付け、自由を奪った景虎を盾に銃撃を防ぐ。

そして景虎を抱えつつ信長に突撃。圧切を景虎に突き刺し信長もろとも貫く。

 

「こふっ………夜叉君…女の子には優しくするように言いましたが……?」

言っとけ、本当に女として扱って欲しいなら二人とももっと淑やかさを身に付けるんだな。

「言って……くれるのう夜叉ァ……クハハ……」

 

______ありがとうよ。

そう言うと夜叉は突き立てた刀を横一文字に振り抜いた。

過度なダメージで二人は消滅するが…その顔に憎悪は無く、何処か満足気だった。

 

「夜叉さん!!!」

 

寄るなマスター。まだ終わっちゃいない。

「だな、そこで死んだフリしてやがるボンクラを始末しねぇとな。」

「…………あ、やっぱバレてる?」

「たりめーだ。意識下の幻影とは言え俺は俺だ。どーせ油断したとこを後ろからバッサリだろ?」

 

 

____長政。マスターを連れてけ。こっから先は巻き込みかねん。

 

「はいさりょーかい。ゴホン…『FBI open the door!!!』」

刹那、虚空より出現した扉が爆風と共に吹き飛ぶ。

その先に広がるは見慣れたマスターのマイルームだった。

 

「行くぞマスター。邪魔しちゃ悪い。」

「え!?でも、夜叉さんは!?」

「だから邪魔なんだって。男の矜恃があんのよ、俺にもさ。いいから。」

「もがふごめが!?」

 

マスターは長政によって外に引き摺り込まれる。

 

「………マスターが言ってんだ、しっかり帰ってこいよ?」

……当たり前だ。

 

言葉に出さず、されど思いは強く。

夜叉は目の前の敵(長政)と相対した。

 


 

その後、暫くして奴は帰ってきた。

お疲れーと気軽に声を掛けてもサクッと無視。

前となんも変わらんさ、見た目にはな。

まぁ、多少。多少は気が楽になったんじゃないか?

俺にとっての家族のように。アイツなりに守る物が見つかったなら。

元々、浅井長政って英霊は守る物がなきゃ本領発揮できないポンコツだからな。

守る物が自分にとって大きく、重くて。

自分に失うものがない時にこそ俺…俺たちは一番強くなれるからな。

ああ、俺?俺はそんな無茶出来ないよ。

勿論、家族の為なら命も何も惜しかないけど、あんまし簡単に死んで泣かせる訳にも行かないし。

俺だってずっと後悔してんだよ。

俺の力不足で吉と帰蝶さんを死なせて。

悲観した姉さんに後を追わせて。

市を独りで置いて行って。

 

で、話の内容だが……何をしたんだよ……

 

『夜叉さん!!!』

『…………マスターか……何だ。』

『えっと…その、夜叉さんは色んな事を覚えられないけど、

時々でいいから、私の事も思い出してくれると嬉しいな!』

 

…マジかよマスター。強いな。

で、なんて返された?

……………ん~成程。だから怒ってたのか。

あースマンね。俺には分からんよ。

学もない野武士みたいなもんだからさ、俺。

そうだな……紫式部あたりなら分かるんじゃないか?聞いてこいよ。

おうおう、良いって事よ。じゃーなー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハハッ。中々やるじゃないの。閑吟集か。

覚えてない割にゃ、よく勉強してやがるなぁ全く。

 


『思い出す、か……冗談キツイぜ。そうだな…

思ひ出すとは 忘るるか 思ひ出さずや 忘れねば……ってとこか。

意味?さぁ、()()()()()なぁマスター。ハハッ。』


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出すというのは、忘れていたということだ。

忘れないでいれば、思いだすこともない。




ほぼほぼ二話分!!!長い!疲れた!
書こうと思ってから毎日100~200字。
本当に長かった。

《スキル更新》

被虐体質A→幻肢痛EX

自身にターゲット集中状態(1ターン)を付与+NP獲得量up(1ターン)



自身にターゲット集中状態(1ターン)を付与+NP獲得量up(1ターン)⇧+自身に被ダメージの度に攻撃力アップの効果を付与(3ターン)⇧


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GrandOrder
Overture


英雄と狂人は紙一重だ______ソリッド·スネーク



魔術王の術式によって、人理は焼却された。

されど、これに抗おうとした者たちが居た。

ならば、その物語を語らねばなるまい。

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。ここは何処だ?

 

とかく果てなく燃え続ける街、時折聞こえる嗚咽の声、人外の化け物共。

 

成程?地獄にでも来ちまったかな?

 

 

 

飛びかかってきた骸骨を一刀で粉砕しながら思う。

 

 

 

身体は……むしろ前より動くな……

武器はフルセット。大太刀に打刀。大弓に十文字槍と隠し拳銃。

我ながら重装備すぎるなぁ…よく動けたもんだ。

 

よく分からん情報が頭の中に入ってくる。

ふむ、どうやら俺は英霊としてここに召喚されたらしい。

 

ハハッ。唯の人殺しが英霊か。最高に笑える。

 

……だったら何処かにマスターが居るはずなんだが……見当たらないな。

 

 

 

ま、いいか。その内会えるだろ。

 

 

 

骨骨を粉砕しながら進むとナニカの影に絡まれた。

 

ふむ、惜しいなぁ、元々は美人だったろうに。

 

美人のお誘いを断るのは無粋だが生憎と席は満席でね。

またのご来店をお願いします。

 

影は応えず、鎖を振るって攻撃してきた。

うぇい、怖い怖い。俺の周りにはどうも暴力的な女が多すぎるなぁ。

幸い避けられない程じゃない。ガン避けしながら考える…

鎖を使う英霊か……分からんな。

いやね、多少の知識はなんか入ってきたんだけどさ、どうもハッキリしないと言うか。

負ける事は無さそうだけど面倒臭いな。

 

 

まぁ、この場合俺がやる事は一つ。

三十六計逃げるにしかず。

散々煽って逃げ出した。

 

 

 

進んで行くと、懐かしい感覚に包まれる。

 

………これは……

 

 

 

間違いない。こいつは俺の………

 

 

 

何でこんな所に……やれやれ、無理させやがって。

 

 

 

感覚のまま進むと嬢ちゃんが二人、さっきの影____

ライダーに追われていた。あちゃぁ…あっこで始末しとくべきだったかな。

 

 

 

速いなぁ。後数秒で追い付くだろうか。

 

ま、そんなん許す訳も無いがね。

 

琉球空手に云う縮地に似た歩方を使用し、3歩でライダーに追い付く。

 

 

 

まぁまぁ、そんなに驚くなよ。

 

 

 

取り敢えずさ、俺の子孫(ガキ)に触れてるその手を退けな。

 

相手が女だろうと関係ない。顔に膝を入れて蹴り飛ばす。

 

手は抜かない。起き上がる影の顔を踏み砕きつつ心臓の位置を槍で叩き潰す。

英霊ってのは魔力で身体を構成してて、そのコアとなる霊核ってのがあるらしい。

つまりだ、切るなり突くなり潰すなり、どうにかすりゃ殺せるってワケだ。

なら余裕だね。いつもと同じだ。

 

 

さてと……ん?何でそんなに驚いてんだ?

 

 

 

あ~当たり前か。空から急に大男が降ってくるんだもんな。

 

まぁまぁ、そんな警戒すんなって。

 

 

 

『サーヴァント、バーサーカー。浅井長政だ。一応問おうか、アンタが俺のマスターかな?』

 

 

 

 

 

と、まぁ。取り敢えず自己紹介は済んだ。

 

オレンジ色の髪の女の子は立香ちゃん。多分こっちがマスター。

 

盾持ってる無駄にエロい子がマシュちゃん。

 

んー?マスター一人につきサーヴァント一騎なんじゃねぇの?

 

いやまぁ、この街とさっきのライダーを見るにどう足掻いても普通の聖杯戦争じゃなさそうだがね。

貧乏クジ引いたかなぁ…

 

ま、いいか。

 

ところで立香ちゃん。

 

親戚に織田とか、豊臣とか、徳川とか居ないかな?

あ、一応浅井もね?

分からない?そっかー。残念だ。

まぁ、間違いなく立香ちゃん俺の子孫だよ。

何せ俺をここに呼べるワケで?

そも召喚なんさ知るかっての。

聖遺物だかなんだか知らんが何故俺が俺の家族以外の為に戦わなきゃならん。

あほくさ。

 

 

 

「意外と英霊の人って俗っぽい………?」

 

「私も私の中の英霊像が崩れかけてきました…」

 

酷いなぁ、多分俺以外はもっとマトモだと思うよ?

俺はまぁ、狂戦士っぽいし、多少はね?

 

 

その後____

 

 

「何でマスターになってるの!?マスターになれるのは一流の魔術師だけ!」

 

知らんよ。魔術師の適性でもあったんじゃない?

 

「一体その子にどんな乱暴をしたの!?」

 

百合か何か?いやまぁ、魔力供給ってつまりそういう事らしいけどね。

男女は分かる。女女ならまぁ、大丈夫。

男男は辛そうだなぁ……

逸話が飛び交ってるけど俺ノンケだから。

流石に御遠慮したいね。

 

「そこのサーヴァント!余計な事考えてないかしら!?」

 

「アハハ、ソンナワケナイジャナイカ。ショチョウサンハオモシロイナー」

 

なんて察しのいい。

というか英霊として召喚されても今更に魔術ってのが存在するとは思わなんだ…

さっきから所長ちゃんが撃って来てるのが魔術って奴だろ?

まじゅつの ちからって すげー! 何かシビレる。

 

 

「何でガンドが効かないのよ!!!」

 

知らんがな。狂戦士には令呪とかも効きが悪いらしいし、その関係かな?

よく分からんよ、魔術ってのは。(キャスター適性有り。)

ま、とにかくカルデアとやらとの通信をさっさと繋げようぜ?

情報は力だよ!所長ちゃん!

 

 

 

 

『ー47人全員が危篤状態ー……』『すぐさま冷凍状態に移行しなさい!』

 

何やら荒れてるねぇ。

怖い怖い。

触らぬ神に祟りなしってね。離れてよ。

 

ん?あの薄紫の髪は……

 

 

 

「よぉ、マシュちゃん。長政だ。散歩しようと思ってたんだ、付き合わないか?」

 

何か思い悩むよぅじゃあない?

大丈夫か、マシュちゃん?

 

「いえ、大した事じゃないのですが………私、宝具が使えないんです。」

 

ふむ、宝具ねぇ。

別にいいんじゃない?だからどうしたってね。

 

「ですが…私に宿った英霊に見合うモノになりたいんです。」

 

成程ねぇ、若さかな。

でもよ、若いのにそんなに気負っちゃ、疲れちまうぜ?

リラックスリラックス。もっとのんびり行こうや。

まだまだ時間はたっぷりあんだろ?

 

「…………ッ……!!!」

 

oh………これはもしかしなくてもやらかしましたね?

 

あー…何だ、事情を知らなかったとはいえ、配慮に欠けた問いだった。

申し訳無い、マシュちゃん。

 

「いえ…いいんです。というか、気にならないんですか?英霊でも人間でも無い私が。」

 

ん~いや全然。

……誰だって話したく無い事の一つや二つ、有るもんな。

だったら聞かんさ、聞く理由にもならないしな。

 

「……やっぱり、長政さんは英雄と呼ばれるには相応しいですよ。

その言葉が言えないからこそ、誰もが英雄になれないんです。」

 

「…成程ねぇ。マシュちゃんよ、それは一理あるかもな。でもよぉ、俺が英雄?ハハッ、冗談だろ。いいかよマシュちゃん、どんな理由であれ人殺しが正当化されることはない、正当化される時代もないのさ。 」

 

確かに永くない生命かも知れない___だが、戦わずとも生きられる人生。

殺さなくたって何かを守れる時代。

最高じゃねぇかよ。

 

 

 

ま、今は戦うしか無いのかもしんないがな。

 

「マースターちゃーん!所長ちゃーんー!お客さんおいでなすったぜー!!!」

 

ま、悩みに悩みな。若者の特権さね。

で、面倒になったらこうやって八つ当たりするに限る。

 

 

「さぁて、折角の敵さんだ。刺激的にやろうぜ。」

 

 

 

 




古王と化した夜叉君。


本能寺編のカルデアはイベント関連の短編とかで使う予定です。
つまり無駄にはならない。いいね?
意地でもこのまま使って欲しい…という人はお声かけ下さい。
尤もその場合1.5章スタートになっちゃいますが。


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人理の盾

君の魂の中にある英雄を放棄してはならぬ。 ニーチェ


メンドクセェ!!!

アサシンとランサー。

どっちも厄介だがランサーから目を離しゃ、マシュちゃんが押し切られる。

かと言ってアサシンをほっぽくワケにもなぁ。マスターちゃんと所長ちゃんが危ねぇ。

 

火力が足りんなぁ。後手に回るのは良くない流れだ。

負けやしないが長引いちゃ面倒なこった。

 

後一人火力担当を……

メタ的にはセイバーかキャスター(相性有利な奴)を……

その時、火球がアサシンを弾き飛ばした。

 

どうやらキャスターのようだ。協力してくれると。

正直有り難い。手数が足りねぇからな。

 

 

 

 

かくして、アサシンとランサーを仕留めた俺達。

キャスターとは取り敢えずの協力関係になった。

取り敢えずってのは完全に信用する訳にも行かないからな。

 

「おっ、アンタ。いい槍だな!貸してくんねぇか!?」

 

ん?ああ、構わんよ。

 

「サンキュ!……って重ッ!!!日本の槍か。随分と面白い作りだなぁ!」

 

突けば槍、払えば薙刀、引けば鎌……って言うらしいぜ。

正直な所柄が木製の奴とか折れそうだがな。

俺は結構薙ぎ払うモンだから柄は改良済み(総鋼鉄製)なんだが。

………アンタも中々構えが様になってんな。

成程、最適性はランサーと見た。違うか?

 

「おうよ。だがなぁ、この姿じゃ筋力がな…」

 

基本的にキャスターってのは筋力が低いらしいしな。仕方ねぇよ。

 

????「御仏の加護見せてあげる!でぇーい!『五行山・釈迦如来掌』!!!」

 

ウッ、頭が………何だ今のは………

 

 

 

 

なあ、キャスター。提案があんだが…一枚噛まねぇか?

マシュちゃんの事なんだが。

 

「おっ、何だ何だ?…………成程、任せな!」

 

 

 

 

 

 

 

「マシュちゃ~ん!マスターちゃ~ん!ちょっとこっち来てくれ!」

 

「どうしたの長政さん?キャスターも。」

 

うん、まぁまぁな広さだ。うんうん。動きやすくていいねぇ。

 

刹那、長政の姿が掻き消える。

否、人間には消えたように映った速度で()()()()()切りかかる。

凶刃が立香に命中する直前で何とか反応したマシュの盾が刀を弾き返す。

 

「何をするんですか!?止めて下さい長政さん!」

 

悪くない反応だ、いいね。

じゃ、続けようか。

 

そう言うと長政は返す手に持つ槍を叩き付け、マシュを怯ませるとそのまま盾を踏み付けて跳躍。

マシュを飛び越えて立香を直接狙う。

辛くも振り返る事に成功したマシュが立香を巻き込みながら回避し事なきを得た。

が、回避の際マシュは腹部に蹴りを喰らい、呻き声を上げる。

 

「マシュ!止めて!止めてよ長政さん!」

 

悪いねマスターちゃん、そういうワケにも行かないんだよ。

 

さてと、マシュちゃん……いや、マシュ・キリエライト。構えな。

お前が本当に英霊に相応しくなりたいと言うのなら、

お前が本当にマスターを守りたいと言うのなら。

見せてみな、お前の覚悟をな。

 

苦悶の表情を浮かべながらマシュは立ち上がる。

 

………良いぞ、そうこなくっちゃな。

 

 

 

 

数分後、マシュはボロボロになりながらも立ち続けていた。

 

「……もう止めてよ!マシュを傷付けないで!」

 

ふぅん?だったらお前が代わりに受けるか?

 

「ッ………まだです!まだ倒れません!先輩は、わたしが守ります!」

 

よく言った。ならコイツを受けきってみろ。

 

第二宝具解放。

 

『悉く簒奪せし鏖魔』

 

ダサい?吉に付けさせるよかマシだろ。

 

にしても、この街戦争でもあったんかね?

普通に戦闘機が落ちてるよ。勿体ない。

ま、気兼ねなく使わせてもらうかな。

 

戦闘機の格納庫を破壊して中の武装を引きづり出す。

 

JM61A1。

 

流石に手持ちで使うのは初めてだがまぁ、撃てりゃ問題無ぇ。

さあてと、俺が言えた口じゃないけど、

死ぬなよ。

 

ハハハハハハハハハハ!!!!!!

 

 

 

射撃音……というより重厚な芝刈り機のような音が迫る。

もし自分が防げなくば、一般人である立香はひとたまりもないだろう。

 

(守らないと……使わないと、みんな死んでしまう、偽物でもいい、今だけでもいい。

わたしが、わたしがちゃんと使わないとみんな死んでしまう____!)

 

「ああ___あぁああ!!!!!」

 

 

 

………少女の宝具は主を守りきり、確かに宝具を防ぎ切った。

魔力の消費で倒れ込む少女と、慌てて支える主の姿を見て、

 

「やるじゃないの、嬢ちゃん。ちょーっと時間かかったがな!ハハハハ!」

 

にこやかに微笑んだのだった。

 

 

 

 




話は進む、されどお気に入りは減る。

本編知らない人は厳しいよねこの書き方。
どうしよう。


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一時休憩

更新キツイのう。

4章から先は思いつくのになぁ。


マシュちゃんが目を覚ました。

 

「良お~~~~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしいい子だマシュちゃん!お前なら出来ると信じてたぜ!いやぁ、良かった良かった!」

 

本当に良かった、もし死んだらどうしようって俺ァ心配で心配で。

あ、キャスターもアリガトな。保護のルーンかけっぱだったお陰で全力を出せた。

大丈夫か?もう立てるか?

 

「もうやめて長政さん!マシュの体力はもう0よ!!!」

 

ん?何で?俺がマシュちゃんに何か手を出すと?

冗談キツイぜ、もう正直いっぱいいっぱいだ。

そもそもマシュちゃんもマスターちゃんも俺からしたら娘みたいなもんなんだよ。

ほれ、頭を出しなさい。

狼狽えるマスターちゃんとオドオドするマシュちゃんをわしゃわしゃと撫でる。

よく茶々達もこうして撫でてやったなぁ。

アイツらも英霊になってりゃまた会えるんだが。

 

さて!マシュちゃんの悩みも解決したし、出発しますかぁ!

……おっと、何か不満そうね。所長ちゃん。一人だけ蚊帳の外で寂しかったとか?

 

「違うわよ!何を言ってるのかしら……ったく…………」

 

………まぁ、話さんでもいいさ。

二人と同じようにわしゃわしゃと頭を撫でる。

何すんのよ!とキレられたが、まあ仕方ないだろ?

そんな寂しそうな顔されちゃ、ほっとけないんだよ。

 

 

 

道が長いでござる………休憩しようぜマスター。

準備万端だって?嘘つけ、顔色も悪いからな。

お茶ー!茶を持ってこーい!

 

さて、お加減は如何かなマスター?

 

「美味しい…………!?」

「何故紅茶の入れ方を知っているのでしょう………?」

 

いや、一応紅茶は昔から輸入してるからね?

たまにキメすぎてヤバいもの作る要因になるけど。

所長さんもお代わり如何かな?

 

「1杯で充分!そもそも私は珈琲派と心得なさい!」

 

成程、じゃ今度会えたら最高に美味い珈琲を入れてやろう。

 

「じゃ、今からどう批判するかゆっくり考えさせてもらうわ。」

 

上等だよ、ハハッ。エスプレッソでいいな?

 

 

 

「所長と長政さんが一触即発です………!」

 

「なんで仲良くできないかな。もう。」

 

「いや寧ろありゃもはや仲良いんじゃねぇか?」

 

 

 

いや、ここは一周回ってマンダリンを呑ませるとか……ッ!?

伏せろ所長!

 

「ふぎゃあ。何すんのよ!」

 

俺の下で文句を言う所長を抱き抱えたまま離脱する。

 

弓か。

 

「大事なアフタヌーンティーを邪魔するたぁ、無粋な奴だなぁオイ!」

 

射手は二十時方向か。

 

よし、所長ちゃん。しっかり着地しろよ!

 

「へ?………ええええぇ!?」

 

所長ちゃんを放り投げて安全圏に逃がしつつ射手の第二射を凌ぐ。

見えた。

矢をつがえ、弓を構える弓兵を狙撃する。

 

チッ…避けられたか。

距離が開きすぎだ。

お茶会は終いだ!洞窟の中まで走るぞ!

 

 

中にも何か居るらしいが、そっちとかち合わせるワケにも行くまい。

キャスター。頼んだぜ。

 

 

 

分からない。何も分からない。

だが、私は……俺は、彼女を守らなくてはならない。

故に、障害を排除する。

たとえ相手が歴戦の英霊でも。

 

殺気。即座に離脱。

先程まで立っていた場所が砕け散る。

これが弓の一撃だと言うのだから笑わせる。

姿を現したのは狂戦士の英霊。

成程。強いな。

私の数倍は修羅場を超えてきたのだろう。

 

「良い腕だった。時代が時代なら部下に欲しかったぜ。」

 

「光栄だな。かの英霊に認められるとは。」

 

だが、関係無い。

何時だって自らより強大な英霊に向かってきた。

今更恐怖は無い。

 

「名は?」

 

「忘れた。守護者とでも呼んでくれ。」

 

「良かろう、守護者。…我、織田信長が盟友、浅井長政也。」

 

英霊の、いや、『浅井長政』の目付きが変わる。

双剣を構え、しっかりと相手を見据える。

本物に贋作(フェイカー)の意地を見せてやろう。

 

 

 

 

 

 

成程。良い目をしてやがる。

惜しいな、時と場合が噛み合えば、部下に欲しかったってのにな。

弓兵なのに双剣か。面白い。

 

「オーケー。いざ、参る。」

 

英霊と守護者の戦いが始まった。

お互いの守る物の為に。

 




メタルギアライジング面白かった。


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夢幻の如く

序章は一番難しい……


切り結び、打ち払う。

矢を射り、駆ける。

戦い始めてから数分。

気付いた。この守護者の戦い方は、俺に似ている。

多数の武器をそれなりに修め、状況に合わせて切り替える。

実によく似ている技術だ。

 

だが、

戦場とは、技術だけて生き残れるものではない。

 

槍を回転させ、砂を巻き上げる。

それに気を取られた瞬間左から抜いた打刀を振るう。

かすり傷で避けられたが距離は詰まった。

そのまま足を蹴りつけ体制を崩すと組みながら投げ落とす。

組み打ちは武士の嗜みってね。頭から落としたがまだ元気の有る守護者。

丈夫だねぇ。良い事だ。

力いっぱい踏み付ける。

 

「ぐぁは!?ッ……!!!」

 

おお、よく返した。偉いぞ。

 

だが、まだまだ。

さっき組み付いた時に引っ掛けといた紐を引き、引き寄せつつ切り付け、刺し穿つ。

浅いな。ハハッ。

紐を巻き取りながら振るい、マグロの一本釣りのように叩きつける。

フィーッシュ!!!

 

「が!?あ゙ぐげば!?グッ!」

 

おお、これも何とか凌ぐか。

いいねぇ。楽しくなってきたよ。

 

これがサーヴァント。これが狂戦士か。

さっきの狙撃。俺と所長ちゃんを狙ったものだった。

それならまだいい。避けられたしね。

問題はだよ、それを俺の家族に向ける可能性があったって事だよな?

 

ハハハハハ。それだけで万死に値する。そう思える。

成程。ぶっ飛んでんな。これが狂戦士か。

だが、それがいい。

 

「構えろ守護者。お前の全力でな。」

 

柄じゃないが、真正面からぶち抜いてやるよ。

 

 

 

守護者の詠唱が終わる。世界が書き換えられて行く。

 

草一つ生えない寂しい砂漠に、無数の剣が刺さっている。

成程。こいつがお前の力か。面白れぇ。

大量の剣が、剣が迫ってくる。

そんな状況においても俺は笑い続けた。

上等だよ。

 

「我が進むは鬼の道。血濡れて怨嗟の積もる果て、神仏さえ斬り喰らい。」

 

さらに剣が迫る。

 

「かくして鬼は憎悪に灼け、掠れた彼方を夢想する。」

 

そして、身体に刃が突き立てられる瞬間、

 

「たといその場に至りて我が身滅べども、我が王が為の道を拓こう。…『王が為、覇道進め夜叉』。」

 

全ての剣を、否、その世界(固有結界)さえ斬り捨てたのだった。

 

「何だと!?ッァガ!?!?」

 

驚愕に目を見開く守護者を全身全霊の右ストレートで殴り倒す。

これはもう起き上がれんだろ。

 

お前は強かったよ、坊主。

だがな?何を守るのか、その為に自分の全てを捨てられるのか。

お前には覚悟が足りなかったな。

守ると決めたら、全部捨てる覚悟くらい見せてみろっての。

 

()()俺の勝ちだな。

 

 

 

 

 

よう!マスターちゃん!そっちも終わったか?

ん?何だそのオッサン。

 

「いや―――いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!

 だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!

 どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!?

 誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!

 やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない!

 生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに―――!」

 

………ふむ、中々に切羽詰まった状況と見た。

さて、と。

 

マスターちゃん、俺はどうすりゃいい?

奴を殺すか?それとも所長ちゃんを救うことを優先するか?

どっちもってのは多分無理だ、時間が無ぇ。

 

……だろうねぇ。そういうマスターちゃんの甘いとこ嫌いじゃないぜ。

 

鋼矢・神縫。ダッセェにも程があるが、ま、名は体を表すってね。

さぁさ、神様(神性持ち)はご退場くだせぇ。

 

レフ教授……長いな、おっさんを狙撃して身体ごと縫い合わせる。

 

「ぐぉ!?」

 

ヘイヘイヘイ、若い子に手を出すのは頂けないなぁ。

通報されちゃうよ?ま、その前に俺が潰すけどね。

 

「成程、この先はブラックホールもとい太陽か。そりゃ、いい事を聞いた。」

 

いやぁ、日頃から人々の救済お疲れ様ですカミサマ様。

 

 

 

 

身体をお休めになるのに少し旅行でも如何か?

 

「あ、ほぃーっと!」

 

「ナ!?あ、グァァァァァァァ………!?」

 

行ってらっしゃーい。

 

 

よし、悪は去った。(大本営発表)

でもまだ問題がある感じだろ?

 

「所長の身体が……カクカクシカジカ」

 

シカクイムーブ ……成程ね。

 

そりゃ不味い。どうやっても生きて帰れないじゃねえか。

ん~……所長ちゃん。

 

「何よ!笑うなら、笑いなさいよ!う、うぅぅ…」

 

泣くな、泣くなって。よーしよしよし。ほら、落ち着いたか?

………生きたいか?

 

「へ?」

 

この先、生きていた方が辛いことがあるかもしんないが、それでも生きたいか?

 

「……私は…」

 

……本当に生きたいなら、生きたいと言ってみろ。

 

「……わ…たし……は………」

 

言えッ!

 

「わたし、もっと色んな事を知りたい!皆に認めて欲しい!だから、だからッ…」

 

「わたし、いきたいよ!たすけてよ!」

 

 

 

…よく言った!なら俺も覚悟を決めないとね。

マスターちゃん。その令呪全部で俺に命じろ、

『所長ちゃんを救え』ってな。

ん?どうやるのかって?ま、それは後々。

良いからやれ!

 

「令呪を持って命ずる!バーサーカー!所長を救って!」

 

ハハッ。了解ィ!!!

じゃ、所長ちゃん。ちょっと失礼。

 

「ふぇ?」

 

ズキュゥゥゥン!!!

 

「!?!?!?」////

 

所長ちゃんの魔力を少し貰い、令呪のバックアップで無理矢理発動する。

所長ちゃんの身体が一瞬輝き___

 

『!?どういう事なんだ!?所長の身体だ!傷一つ無い!』

 

やったぜ。所長ちゃんの身体を離す。

 

「ッ~!!!ッ~!!!」ペシペシ

……痛い痛い、そんなに叩くなっての。仕方ないだろ?

死ぬよりマシだって割り切ってくれ。

これで全員揃って戻れるな。うんうん。大団円が一番だな。

 

足先から灰のように消えて行く。

成程ね。所長ちゃんは燃え尽きて死んだのか。

辛かったな。よしよし。

 

「え…どういう事……?」

 

俺自身の意思、対象の魔力、令呪三画の行使。

 

この三つを重ねて初めて可能な俺の能力。

ま、カッコ良く言ってるが名前さえ無いタダの身代わり自爆宝具さ。

所長ちゃんが焼け死んだ、という事実を俺に上書きした。

 

「そんな……そんなのって……」

 

おいおい泣くなよ。せっかく顔に恵まれたのに台無しだぜ?

ほら笑え!笑ってられるのが一番だからな。ハハッ!

お、お前らも退去が始まったか。

…じゃ、俺の孫の孫の幾つか先の子孫よ。

お前の旅はこれからもっと激しくなるだろうが、

 

そこまで言うと長政は顔を綻ばせ…

()()()。お前ら生者にはその権利と義務があるんだからな。

満面の笑みを浮かべながら言った。

 

皆の身体が粒子になりかけ、俺の身体は灰のように霧散しつつある中、

 

「……うん、ありがとう、長政さん。私、頑張るよ!」

 

…ほう、良い目だ。正直俺に似ているとこが残ってるのは嬉しいやら悲しいやら。

ま、いいか。

 

「困ったら呼んでくれよ?何時でも駆け付けてやるさ。ハハハハ!」

そう言って三人を纏めて抱きしめる。まぁ、消えかけで多少不恰好だったが。

 

そうして俺の身体は散って行った。

英雄扱いってのはむつかしいが…

ま、俺達の生きた跡を見れた。

いやぁ、いい子達だったな。

 

ハハ…頑張れよ。

 




所長が救われた……!?

一方そのころ別世界にて。

「何か静かですねぇ~」

「そうだn!?ゴァア!?」団長withファイヤー

「何やってんだよ団長!」

「止まるんじゃねぇぞ…」キボウノハナー

狂化EX…彼は狂化の存在を感じさせない程には理性的だ。
だがつまり,それは生前からして狂っていたに過ぎず、
彼と親しくなればこそ、その異常性に気が付くだろう。
それは血と煙の中で確かに思い続けた唯一の感情。
家族への愛こそが彼の狂気そのもの。
故に彼と親しくなり、彼に家族と認められれば____



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兜菊

召喚編と次回のプロロ。
まとめたら丁度良い長さだったので。

兜菊はトリカブト。



「ん………?」

 

目が覚める。

 

手を開き……閉じる。

 

帰って………来た?

 

………まぁ、いいや。眠い。二度寝しよう。

 

「先輩!起きて下さい先輩!」

 

うるさいにゃぁ……すやぁ……

 

「先輩!?せーんーぱーいー!?」

 

わかった、分かったから。

そのマシュマロで潰すのは止めて。劣等感に喘ぎ苦しみそうだから。

 

おはよう、マシュ。

 

「!おはようございます!先輩!」

 

 

うう、寒い。お布団が恋しい…。

 

「駄目ですよ先輩、しっかりとドクターのカウンセリングを受けないと。」

 

分かったよマシュ。

 

 

 

「お、立香ちゃん!寝てる間にメディカルチェックはお終いだ。後は念の為カウンセリングをね?」

 

この人はドクターロマニ。胡散臭いって?私も思う。

 

「あれ?ドクター、所長は何処に?」

 

「ああ、マリーなら召喚室に行ったよ。医学的見地から見てもマリーの体は健康そのもの。

全くどうなっているのか正直分からない所なんだけどね…」

 

「所長が召喚室に?確か所長はマスター適性こそあれレイシフト適性は無い筈ですが…」

 

確かに、そんな話をレフ教授が話してた気がする……

 

「それがだね、あの特異点の一件でどうも適性を得たらしくてね。何とかレイシフトに耐えうると思うよ。」

 

 

 

 

 

「所長ー!所長ー!」

 

あの男…………何が呼ばれたら駆けつけるだ。

 

「あ!所長!あれ?所長ー?」

 

都合数十回の召喚。しかし出てくるのはぬいぐるみとゲテモノと寺に麻婆豆腐。

確かに聖遺物無しでの召喚というのは難度が高い。

だが然し、アレだけ言っといてこれか?

腹ただしい…本当に腹ただしい……

せめて触媒の一つでもあれば…

 

「?」

 

………………触媒発見!

ほら貴女あそこに立ってなさい!早く!

 

「ふぇあ!?ああああああああぁぁぁ…!!!」

 

マスター立香を引きづって召喚サークルに放り込む。

安全……かは分からないけどまぁ、大丈夫でしょう。

 

「ちょっと所長!?何をやっているんだい!?」

 

煩い!触媒を手に入れたのよ!

さぁラスト二回!次こそ…

 

「え、ちょ、……あばばばばばば!!!!!!」

 

「あー…まぁ、健康被害が出るとも思えないし、大丈夫かな?にしても意外だね、君がここまで執着するとは。」

 

うっさいわね。ただ戦力になりそうだから呼んだだけよ。

 

「………いやぁ、ついに所長にも春が…マリスビリーが聞いたら喜ぶだろうなぁ。」

 

 

「あばばばばばば………あれ?」

「おいおい!召喚したいのは分かるが触媒雑過ぎないか!?」

 

まぁ、つまり。それは現れた。

 

「ま、いいや。怪我ないか?立香ちゃん。さて、と。」

 

にこやかな笑みを浮かべながら。

 

「初めましてと言うべきか?それとも久しぶりと言うべきか?

……ハハハハッ!冗談だ、また、宜しく頼むぜマスター!」

 

 

 

 

あ、そういや、もう一回分召喚してた筈…また麻婆豆腐かしら……

 

「ん?……この気配は……まさか………」

 

 

「やーしゃーさーまー!!!!!!」

 

あれ?女の子の声?

可笑しい、カルデアにこんな小学生のような声が響くわけが……

 

「夜叉様ァァァ!!!!!!」ガバッ

 

「! 市ィィィ!!!!!」メキャァッ!!!って腰がぁぁぁあ!?」

 

 

…………どうやら一気に賑やかになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、何処だ。

何だこの女は。

俺に命令するな。

俺は、かの武将⚫⚫の息子たる……グァハァ!?

何だ、これは。

俺が、僕じゃ無くなる!?

あ、あああ、

嫌だ。嫌だ。

まだ、まだ、私を認めてもらってないのに。

 

身体が、心が書き変わっていく。

嫌、嫌。

誰か、誰か助けて。

 

ア、アアアアガァ!!!

 

タスケテ、ダズゲデ……

 

 

父上…母上………

 

 

 

 

 

 

 

「随分と抵抗したじゃない!どうなってるのかしら!」

 

「ふむぅ、日ノ本の英霊というのはどうも意思が固くてよくない。

所詮駒に過ぎないというのに面倒な事ですなぁ。……おっと、お客人がお越しのようです。」

 

「まぁ、いいわ……さぁ、バーサーカー!全部、全部蹴散らしてしまいなさい!」

 

…………………………………

 

「ちょっと!?動かないじゃない!」

 

「可笑しいですなぁ、バーサク状態のバーサーカーなら敵と見るや即座に襲いかかってもおかしくないのですが。」

 

……………………………………

 

「動け、動けってんだよこのポンコツが!!!」

 

「これは失敗でしたかなぁ、もっと力のある彼の親を狙うべきでしたか。」

 

「チッ、どうかしら、息子がこの程度じゃたかが知れてるわ。」

 

………………………………ハ?

 

「所詮ちっぽけな島国の弱小英霊に過ぎな____ってキャア!!!」

 

……チチウエヲ、ハハウエヲ、バガにズルナァァァァ!!!

 

「いけません!バーサーカー!」

 

少女に襲いかかろうとしたバーサーカーをギョロ目の男が魔弾で弾き飛ばす。

飛ばされたバーサーカーは城からそのまま落下し、下の軍勢…フランス軍のど真ん中に落ちた。

 

何だ、お前達は。

ああ、そうか。

お前達も、俺の、僕の父上を、母上を馬鹿にするんだな。

だったら、殺してやる。

コロシテヤル!!!

 

「■■■■■■■■■■ァァァァァァ!!!!!!」

 

その姿はまるで鬼の様であった。

 

 




疲れた。

市ちゃん。アサシンで身長は134cm。並ぶと犯罪。(55cm差)

134cmってどのくらい?……ジャックちゃんくらい。
逮捕しないと…


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特異点

ようやく1章?先が…長い……


さてと。カルデアに来てから大体二週間。

目下の仕事はまぁこなした。

爆発で吹っ飛んだ箇所の修繕やら何やら。

土木仕事もよきかなよきかな。城の再建した時以来か。

壊す方が得意だからなぁ。

 

ダ・ヴィンチ女史、こいつは?

 

「ああ、それは私の工房に運び込んでくれたまえ。」

 

了解。にしてもアンタの性別はどうなってんだ?

 

「ふふふ、気になるかい?まぁ、身体は女性体とだけ言っておこう。見たい?」

 

ダヴィンチは上半身を屈め、胸を強調しながら聞いてきた。

いや、止めとこう。それに身体は…って事はな。

野郎とヤる趣味は無くてね。

 

「ほう?確か君は同性愛者という話もあったが…」

 

それについては…あー俺から話していいのか分からんから詳しく話せんが

違ぇってだけ言っとく。色々あんだよ。

 

「夜叉様ー差し入れですよー!」

 

おお、ありがとう市。

いやぁ、英霊になるのも悪かない。

市を膝の上に座らせてわしゃわしゃする。

市にも会えたなら茶々とか初にも会えっかな?

まぁ問題は全員グレる(復讐者)可能性がな。こう。

親としては複雑な気持ちなんだよね。

 

「ふむ……成程君は幼児性愛者(ロリコン)だったか。」

 

違ぇ…と言い切れないから言い返せねぇ。

幼児じゃないから。この子裳着過ぎてもこのくらいだから。

どうしても並ぶと犯罪だって?

それがどうした。愛する嫁さんと並ぶ為なら犯罪でも構わんよ。

 

「ふぇぇぇぁ…」

 

可愛い。すると…

 

「…もふもふ。」

 

よぉ、首輪付きィ。カルデアにいつから居たのか分からんこの毛玉。

聞いたら名前も無いらしいので俺が付けてやった。

市が首輪付きを抱えてる。ヤバイ可愛い。

 

だがまぁ、平和ってのは続かないモンで。

 

 

 

「これより第一特異点の攻略を開始します!」

 

後七個も特異点あるのかよ…キッツ…

作者も疲れちまうよ『辞めとけ』アッハイ。

 

編成…立香ちゃん、マシュちゃん組 所長、俺、市組。

 

正直戦力が偏り過ぎな気もするけど俺の第六感が立香ちゃんは大丈夫だと告げた。

なら大丈夫か。

……心配だから念の為これ持っとけ。

 

「何これ?ナイフ?」

 

そうだ。刃先にカルデアに残った幾つかの劇薬を塗ったくって

鞘の内側に毒入りの脱脂綿を仕込んである。

サーヴァントに効くかは分からんが対人、対獣なら有効な筈だ。もっとけ。

ん?死なないのかって?大丈夫大丈夫。

半年くらい馬鹿になってもらう程度しか仕込んでないから。

 

じゃ、行ってらっしゃい。気を付けろよ?

 

立香ちゃんや所長を見送り、一度図書館に籠る。

サーヴァントは一緒に行けないからな。

さてと、今回の特異点はフランスだったか。

なら出てくる敵サーヴァントも限られる。

フランス王家辺りは間違いないな。

シャルルマーニュやらなんやら神秘の高い時代の英雄ってのは厄介極まりない。

皆が皆神話みたいな伝説があってふざけてるよ。

後は一般兵の存在だな。危険なら殺しても良いが殺しすぎるなと。

まぁ、その辺はテキトーでもごり押せるか。

……このランスロットってのが出たらヤバそうだが…まぁピンポイントで召喚される事も無いだろ。

 

武器の整備も欠かさずする。

刀を磨き、弦の調子を確かめ、槍の留め金を締め直す。

鬼丸のワイヤーも緩んでら。鎧は…問題なく動く。完璧だ。

ん…召喚されるなこりゃ。市ー!市は準備できたか?

 

まぁ普通は非戦闘員の市を戦わせるなんでアレだが…

 

………………?

 

ねぇ、市。

 

「何ですか夜叉様!」

 

その服なに?

 

「忍び装束です!着るのは久しぶりですね!」

 

偶に思ってたけどやっぱりかー。

 

「???」ペカー

 

ああ、可愛ければもういいや。

…ハハッ。

 

俺の意識が飛んだのか、召喚によって一度視界がフェードアウトしたのか。

それを確認するすべはなかった。

 

 

 

人理定礎値C+
第一特異点

 

 

 

 

A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン

救国の聖処女

 

 

 

 

 




一番下作るのに30分かかった。難しい………
フォウ君は出ません。


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百年戦争

_( _´ω`)_ツライム


…………ふむ。

どうしてこうなったか整理しよう。

 

装備を整えた。

召喚された。

落ちてる←イマココ

 

何でだ。

 

 

「うぇぇぇぇ!?」

 

あ、市。

空中で市を回収して着地に備える。

あれは立香ちゃん達か。

 

なんか絡まれてる。

トラブルばっかだ…というか。

 

「お前ら避けろォォォォッ!?」

 

そう言いながら俺はフランス兵の真上に落ちてったのだった。

 

 

 

 

「ッショ!!!」

フランス兵の一人を足場に着地……死んでないか。よかった。

 

「もふ。」シュタ

 

おい首輪付き、何故此処に居る。

お前着いてきちまったのか?

やれやれ、立香ちゃん達から離れんなよ?

 

「もふ。」ビシッ

 

あ、どうしたの皆?そんなビックリして?

 

『C'est quoi, ça!?(何だコイツは!?)』

 

え?何だって?(難聴系主人公)

 

『C'est un ennemi! Tuer!(敵だ!殺せ!)』

 

喧しいわ。日本語で話せ。

 

『くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」!!!』

 

嘘嘘、冗談だっての。えーと、フランス語だから…

 

『Désolé.I une mauvaise éducation.(失礼。育ちが悪いもので。)』

 

「「「!?」」」

 

「わぁ、夜叉様凄いです!」

 

南蛮と貿易するのに言葉は必須ってね。

吉は勉強嫌いだったけど俺はまぁ、文武両道しないと生き残れなかったから。

 

『……………………』

 

『Si ça ne vous dérange pas.Pouvez-vous me dire ce qui se passe?

(不躾な頼みだが、もし宜しければ何が起こってるのお聞き出来ますか?)』

 

『………………。…………!』

 

『C'est,due.……merci beaucoup.Au revoir!(成程、それは気の毒に。ありがとう、ではサヨナラ。)』

 

 

………あー疲れた。サーヴァントは言葉が自動翻訳される筈なんだがな。

上手く効いて無いのか?

 

『驚いたな!日本の英霊が海外の言語を話せるなんて!』

 

驚く程か?俺たちは昔っから南蛮人と貿易してんだよ。

その為に勉強くらいするさ。

……それにやけに早く覚えられたしな。

 

どうも王様はもうおっちんだらしいぜ?

何でも魔女、ジャンヌ・ダルクにやられたとか。

俺は一応本で読んだが……魔女?

確かジャンヌ・ダルクってのは聖女じゃなかったか?

 

『………いや、この時代はジャンヌ・ダルクが処刑された直後だ。今だ彼女が魔女とされてもおかしくは無い。』

 

成程ね。

濡れ衣着せて焼き殺したんだったか。

いやぁ、何だが親近感湧くなぁ、いつの時代、どんな国でも人って生き物がやる事は変わらない。

弱く、醜く、腹黒い。その癖力に屈するを良しとせず、被害者面をして英雄と呼ばれる者に助けを乞う。

助けが間に合えば『もっと早く来い』間に合わなきゃ『何の為に居るのか』と喚き散らす。

そして戦いが終わり、英雄が要らなくなれば___正義の名の元に罪人として処刑するのさ。

ハハハッ、愚かだ。いやぁ、本当に。

 

「えっと…長政さん。大丈夫?」

 

ああ、大丈夫、大丈夫だ立香ちゃん。

ちょっと色々思い出してな。

 

『ッ!!!おい!!!アンタらも逃げろ!翼竜だ!』

 

ハァ?翼竜だぁ?バカ言うな、そんなのがいる訳無いだろファンタジーやメルヘンじゃあるまいし………

 

………………

 

わぁい。翼竜だぁ。

 

どうしようか。逃げる?

……市ちゃんなにしてるの。

 

「この鉤爪で飛び乗ろうかと…」

 

はいはい。危ないから止そうね。

そんな顔しないの。ヨシヨシ。

ああ、うちの嫁さん可愛いぃ。

 

「こんな!所で!イチャつかないで!くれるかしら!」

 

ゴメン所長。でもなぁ……あ、市。その鉤爪貸して?ありがと。

 

鉤爪を振り回しながら一番低空の翼竜を狙い、投合して捉える。

そのまま腰を入れて地面に叩き付ける。フィーッシュ!!!

 

「兵たちは水を被りなさい!早く!」

 

『おおう!サーヴァントだ。しかし反応が薄いな…彼女は…』

 

「そこの貴方!武器を取って戦って下さい!」

 

「お前は………」

 

「早く!」

 

 

「「「………魔女だ!魔女が出たぞ!」」」

 

「ッ………………!!!」

 

…どうやらワケありみたいだが。マスター達に問おうか、どうする?

恩を売っとくのも良さげだが?

 

「ここですごすご逃げられる訳ないでしょ!バーサーカー!」

「お願い!マシュ!」

 

了解。じゃ先に行くぜ。

 

目の前のサーヴァントの背後から強襲した赤い翼竜を大太刀で叩き落とし、

そのまま首を断ち切る。

 

「あなたがたは!?」

 

「話は後だ嬢ちゃん。サーヴァントバーサーカー。故あって加勢するぜ。」

「同じくアサシンです!助太刀致します!」

まぁ、忍者刀(ソレ)は太刀なのか微妙だけどね。

 




戦国編では掘り下げなかったですがこの夫婦(バカップル)は常にこんな感じです。


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聖女

原作見てからじゃないと分からないところが多いので注意。

Twitter作ってくれと要望があったので開きました。
質問、ご意見、文句など直接送りたい方はご利用下さい。
後誰か市ちゃん書いてくれませんか……?
友達に頼んでばかりなの申し訳無い気がしたんですよね。


最後に残るは黒い翼竜一体。

市!

 

「はい!」

 

俺が番えた矢の上に飛び乗った市が翼竜の背に登る。

そのまま矢は片方の翼を穿ち____

 

「ゴメンなさい。少し痛いですよ!」

 

市がもう一方を切り裂く。

そして墜落する翼竜。

 

『Gyaaooo!?』

 

ナイスだ。

 

太刀を下段から振り上げた一閃。

派手さは無く、されど確実に首を絶ち落とした。

 

そしてそのまま市を回収する。

ありがと市。

市の頭をわしゃわしゃする。

どうも初めて会った時の事を思い出すらしく撫でるというよりはわしゃわしゃすると喜ぶ。

 

「ちょっと!いいかしら!」

 

……ああ、すまん、ちょっとトリップしてた。

 

というか所長ちゃんの当たりが強い……俺なんかした?

 

そんな事より。怪我ないか嬢ちゃん。

 

「え、あ、はい。大丈夫です。貴方方は…「消えろ!この魔女め!」

 

あ?何だお前ら。助けて貰っといてそれか?

 

「貴様らも魔女の仲間なんだろう!?消えろ!消えてしまえ!」

 

何だとテメェ…「帰れ!かえれ!」石!?

上を見ると城壁の上から何人もの人々が石を投げてきた…子供も居る。

 

「彼らの前では何ですので少し、良いですか?」

 

だ、そうだが…ッ!!!立香!!!

 

「うっ……!!!」

 

石が。大丈夫か!?

 

「少し血が出ています…!ここは引きましょう。」

 

……チッ……俺たちは砦を後にした。

俺達の後ろ姿に砦からは歓声が聞こえる。

………ああ、ムカつくな。

だが、これ以上立香ちゃんを傷付けさせるワケにもいくまい。

 

俺たちは近場の森で嬢ちゃん…サーヴァントと話した。

どうやらこの嬢ちゃんこそが騒動の魔女、ジャンヌ・ダルクらしい。

しかし、それは彼女であって彼女ではないと。

成程…この時代にジャンヌ・ダルクが二人呼ばれ、片割れは何故か悪行を為してるってか。

道理で砦の奴らもあんなに喚くわけだ。

立香ちゃん、大丈夫か?

一応止血はした。包帯も巻いた。消毒もした。

この時代だから敗血症とか破傷風が怖いんだよな…

 

「心配しすぎだよ。」

 

とはいえ、お前は俺の子孫な訳でな。

しかも市を呼べたって事は俺と市の直系に当たるんだぜ?

そりゃ大事にするさ。

 

「痛いの痛いの飛んで行けー!」

 

追記-うちの嫁さんはやっぱり可愛い。

 

 

 

手に入れた情報を合わせると

1.王は死んだ。

2.ジャンヌ・ダルクは2人居る。

3.片割れ…邪ンヌとでも呼ぶか、は何故か竜を操れる。

 

こう並ぶと厄介なモンだな。

取り敢えず…どうする?

 

成程、オルレアンの方に向かうのか。賛成だ。

情報は大事だからね。

 

だが、今日はここで終わりだ。

もう夕暮れ。野営の準備としよう。

 

 

 

 

 

 

「おっはよう立香ちゃん!」

 

朝、今だ寝ぼける立香ちゃんに声を掛ける。

そろそろ飯だぜ?

ああ、聖女ちゃんに報告が。

あの砦……滅んだみたいだな。

まぁ、仕方あるまい。こっちの忠告も聞かんとしたからなぁ。

朝一で見てきたが酷いもんだった。

焼かれ、刻まれ、抉られ。

どうした聖女ちゃん。そんなに悲しいか?

 

気持ちは分かるが、諦めな。

戦場ってのはまず馬鹿が死ぬ。

次に善人が死に、勇敢な奴が死ぬ。

生き残るのは強かで、賢く、誰よりも臆病で悪どく諦めの悪い奴だけだ。

奴らにゃ、賢さが足りなかったのさ。ハハッ。

 

 

 




皆忘れてないか?こいつ狂化EXなんだぜ?


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黒聖女

ストーリー忘れ気味の為見ながら書いてます。


……………こいつは酷ぇな。

さっきの砦とは違う___五千は住んでいたと思われる街。

そいつが燃えていた。

 

「ッあ___あ、助け、助けないと。助け。」

 

不味いな。聖女ちゃんが限界だ。

この子は凄く強い心を持っている。だが、

如何せん()()()()()。この事案も、全部が自分のせいだと思っている。

………立香ちゃん達は聖女ちゃんと少しのんびり来てくれ。

俺と市の方が早い。

 

「……分かった。気をつけてね。」「……………………」

 

 

 

これは無理だな。生存者は間違い無くいない。

一帯見るや死体と死体漁りの翼竜だけ。

市と念の為に翼竜を全滅させておく。

どうだった?そっちは。

市は悲しげに首を振る。

そうか……こっちは…いや、誰も居なかった。

少なくとも()()()()()はな。

 

 

 

立香ちゃんらと合流した。幸い建物はそこそこ使えるのが残っていたのでそこを拠点とする。

辛いか。聖女ちゃん。

 

「……どうして、どうしてこんな事が出来るのでしょうか。」

 

………人ってのは皆がみーんなアンタみたいに強く無ぇし、朗らかになっても居られないんだよ。

コイツが考えてるのは復讐だ。ただ、それ一つだけ。

全てを焼き尽くす程激しい憎悪、でなきゃ、ただの狂人だね。

目を閉じて自嘲するように笑う。

怒りを、憎悪を、復讐を、無駄だと、不毛だとアンタら聖人(お花畑)は言うんだろうな。

 

「そんな事は………」

 

だがな、当人からしたらそんな残酷な事は無い。

ならこの怒りは?この苦しみは?この悲しみを何処にぶつけたら良いのか?

ああ、憎たらしや、ああ、恨めしや。奴らに報いを。これ以上の苦しみを。

だからこそ俺達はf⚪ckf⚪ck(糞が、畜生が。)って喚きながら死ぬんだぜ?

まぁ結局…アンタらは正しい。復讐は何も産まねぇ。強いて言うなら新たな復讐だけだな。

だがなぁ、燃やし尽くしたその先に、灰が残るなら。灰が新たなる火種になるなら。

灰まで灼き尽くすしかないんだよ。そうすれば、否、それだけが消す唯一の方法なのさ。

 

……遠い記憶の果て。自分じゃない自分を見る。

蔑まれ、嘲笑われ、凌辱され、存在を冒涜されたソレ。

ああ、何故俺はこんな目に。ただ、守りたかっただけなのに。

悲しい。苦しい。辛い。恨めしい。憎い。

ああ、こんな事なら。こんなに憎たらしいなら。

全て燃え尽きてしまえばいいのに。

そう思った自分は、きっと何処かに居たのだろう。

自らと違う選択をし、結果として復讐心に囚われた自分。

それを幻視した長政だからこそ。

もう一人のジャンヌ・ダルクの行為を理解できた。とも言える。

 

『!!!敵性サーヴァントの反応だ!それも複数!不味い、不味いぞ!』

 

「複数!?どうなっているの!?」

 

『分からない、分からない!だけど不味い!数で敵わないなら勝てる訳が無い!とにかく逃げるんだ!』

 

間に合わんな。見えたぜ。

 

そこに降り立ったのは、ジャンヌと瓜二つの外見をした…されど真っ黒なジャンヌ・ダルクであった。

 

 

 

 

「____なんて、こと。まさか、まさかこんな事が起きるなんて。」

 

「「「______」」」

 

「ねえ。お願い、だれか私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかしくなりそうなの。」

 

「だって____」

 

「それぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう!」

 

「ほら見てよジル!あの哀れな小娘を!ああ、本当___こんな小娘(わたし)

にすがるしかなかった国とかネズミの国にも劣っていたのね!」

 

「貴女は……貴女は、誰ですか!?」

 

何を今更。聖女ちゃん本人だよ。ちょっと最後ににオルタ(別側面)って付くけどね。

随分と歪んだ嬢ちゃんだなぁ。

いや、嬢ちゃんと言うのにも値しない贋作ってところか?

 

「…………何よアンタ。」

 

おっと、これはこれは。お初にお目に掛かります。縁あってカルデアに助力致すバー・サーカーと申します。

 

「偽名使うのヘタクソなのアナタ!?もう少し捻りなさいよ!」

 

所長ちゃんそんなに怒んないでっての。

 

「………バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。その男を始末なさい。

雑魚ばかりでそろそれ飽きたところでしょう?喜びなさい、彼は強者です。」

 

ハハハ。強者なんてまさかぁ。僕は平和を好むただの善人ですよ?

 

ハハッ…殺意を消したままの笑顔で切りかかる…防ぐか。

 

「何だよ、案外やるじゃねぇか槍のオッサン。」

 

コッチの方が強い。横の女も大概だが。

 

ジャンヌ!マシュ!マスターを守りながらこの年増を始末しろ!

この槍使いは俺が貰うぜ!

 

「とし、ま?年増ですっ……て?」

 

「クハハハハ、言われてしまってはなぁ。まぁ良いではないか。貴女好みの若い女子ではないか。」

 

……会話から察するに二人とも人喰いの化け物か。

良いね。

 

さて、化け物退治と参りますかね。ハハッ。

 




話長くなるなぁ。
こっちの世界の長政君は一定の確率で夜叉君になる可能性を孕んでいます。

遅ればせながら、良いお年を!


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竜殺し

あけましておめでとうございます!
今年も宜しく御願い致します!


新年サービス連日投稿!
さらば書きだめよ!


殺った。

そう確信した一撃は防がれる。

相手の返す一撃を防ぎつつ切り結ぶ。

強い。かなり場馴れしてやがる。

 

「……強えぇなぁ、アンタ。意外だよ。アンタの方がよっぽどあの黒聖女より強そうなのに。」

 

「貴様こそ。良くぞ後ろのを庇いながら戦えるものだ。」

 

見破られてたか。俺も歳かねぇ。

全力で戦いたいが、そうなるとフォローは出来ねぇ。

ちょいと足止めしてくれる奴がいりゃ…

 

………ガラスの薔薇?

 

…………サーヴァントか。一瞬ランサーの目が逸らされる。

此処だ。

 

「卑怯とはいうまいな!ハハッ!!!」

 

大太刀をランサーに突き立て、引き抜き、傷口に手を突っ込んで内臓を抉る。

…まじかよ。これでも死なねぇか。

吸血鬼。ドラキュラのモデルとされた串刺し公。

戦闘中に分かった事だが予想以上だ。驚いたぜ。

 

……今は逃げさせてもらうぜ。

 

「勝負は預けた。串刺し公。___浅井長政だ。この続きはいずれ。」

「ぐぬ…良かろう。我が名はヴラド・ツェペシュ。確かに預かった。」

 

さて、新しく現れたサーヴァントに黒聖女が気を取られてる。

うぉっ………!?この爆音………宝具か…!

好都合だ。コイツも持ってきな。Flashban!!!

 

逃げるぞお前ら!

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ貴女達は日ノ本の英雄なのね!こんな異国の地で会えるなんてなんて幸運なのかしら!」

おおう。市が王女さまに押されてタジタジだ。

乱入したサーヴァントはマリー・アントワネット、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの二人。

中々に高名な方々の用で。

救援に感謝する。俺は浅井長政。そこで目を回してるのが俺の嫁さんの市だ。

 

「藤丸 立香です!」「マシュ・キリエライトと申します。」「オルガマリー・アニムスフィアよ。」

 

さて。俺達の状況だが____カクカクシカジカ

 

「シカクイムーブ 話はわかりました。フランスはおろか、世界の危機なのですね。」

 

話が早くて助かる。取り敢えず、野営とするか…

おっと市ちゃん。貴女は料理しちゃだめだよ。

 

「皆を私の料理で元気づけてあげたいです!」フンス!

 

うん。可愛いんだけどさ。

戦いの前に皆消滅しちゃうからね。うん。

止めて?

 

 

さて、見回りにでも行くかね。

 

…………ああ、市。女子会でもしてな。何ならマシュちゃんも。

ほら、行くぞアマデウス。

 

「おかしいな、そんなに君と親しくなったかい?」

 

手前が色んな音盗み聞きしてんのは勘で分かんだよ。

バラされたくなきゃ手伝え。

 

(あの会話に男が入るのは無粋だろうが。)

(ふむ、それも悪くないと思うけどね。)

(オロスぞ。)

 

 

 

ちなみに…俺達が居ない間にライダーが来て戦闘になったと。

残念だ…竜ってのを見てみたかったんだが…

あわよくば戦って見たかったり。

ほら、俺ってば英霊としての格が足りないからさ。

竜殺しとかやってみたいんだよね。

ライダー最期の抵抗で目的は定まった。

次の目的地はリオン。

……………何処?

 

 

 

 

『つまりリオンってのは____』

 

『~~~~~~~~』

 

『成程、感謝する。』

 

『~~~~!』

 

 

と、いうわけだ。まさかもう滅んでいるとは。

 

「まあ、凄いわ!ご褒美をあげます!」チュッ♡

 

………唐突だな。あ、ごめん市ってか俺悪くないよね今の。

ちょ、やめ、立香ちゃんたちの情操教育に良くない、あっあ。

あーお止め下さいお客様!あー!困りますお客様ー!

 

「んー!!!」ズキュウゥン!!!

 

「むぉ……」ズキュウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!

 

ズキュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!

落ち着け。

流石に長いから。※この間なんと数分。

 

「」(立香)シラー「」(マシュ)////「」(所長)ドンビキ

 

ああ、そこの三人。そんな目で見ないで。辛い。

 

「駄目です!夜叉様はあげません!!!」

 

うん。可愛いけど止めてね?

大丈夫だから。

 

この後、リオンにてアサシンと遭遇。

これを撃破。竜殺し(ドラゴンキラー)ジークフリートと合流した俺たち。

しかし…

 

凄く…大きいです…

コイツは……強いな。

何とかジークフリートの力で追い払えたが……

肝心のジークフリートは何らかの呪いでダウン中。

つまり次は防げない。

邪ンヌが気付かないのを祈るばかりか。

加えて__

 

「何だその構え。人の真似か?似合ってねぇぜ?」

 

「■■■■■■■■ーーーェ!!!」

 

あーあ。厄介なのに絡まれちまった。向こうはアサシン二人に。

仕方ない。こっちは一人でやるしかないか。

右手に太刀。左手に小太刀。

何だ、俺に似た構えだこと。

だか膂力が足りん、なぁ!!!

 

右手に大太刀を抜き、左手で槍を構える。

刀って事は日本の英霊か?

ハッ。落ちるに落ちたな。まぁいいさ。

…折角だ。日本人らしく名乗っておこうか。

 

「我、近江国が将の一人。浅井長政なり。さぁ、いざ参られい!!!」

 

「………■■■■ーーーェ!!!!!!」




プロローグに出たバーサーカーの登場です。
ランスロットは犠牲となったのだ。


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影法師

誰なんだろうねコイツ。


俺が右手を振り下ろせば同じ様に振り下ろし。

俺が蹴りを出せば同じ様に返してくる。

うっとおしいにも程があるぜ。

 

………向こうは引いてった。後はコイツだけか。

俺の真似っ子してるのは良いが猿真似野郎。一つ教えてやるよ。

 

「膂力が!違ぇんだよ!」

 

一気に押し切り、体制を崩す。そのまま放った蹴りは防がれずバーサーカーを吹っ飛ばしてった。

 

暫くは時間が稼げんだろ。

またまた逃げるぞお前ら!

 

 

取り敢えず、だ。

ジークフリートの呪いを解くために聖人がもう一人必要だと。

当ては?勿論無い。

二手に分かれることになった。

 

ジャンヌ マリー マシュ立香ちゃん

 

モーツァルト 俺 市 所長

 

まぁ、順当…か?

正直俺の勘が次の街に立香ちゃんを連れてくなと囁くからな。

 

案の定というかなんというか。

何だこの姦しい蜥蜴娘共は。

 

「ピーチクパーチク!!!」

「ピーチクパーチク!!!」

 

喧しい。

二人とも拳骨で黙らせる。

まったく。

 

青髪の方が清姫。

あれか、清姫伝説の奴か。

日本の英霊だと分かりやすくて助かる。

 

ピンクの方がエリザベート・バートリー。

…………コイツさっきのアサシンの子供時代って事か。

 

どちらにせよ。聖人とは程遠いな。

 

『…こちら長政。こちら長政。こっちは外れ。オーバー。』

 

『長政さんですか?こちらはゲオルギオスさんと合流しました!』

 

おお、ゲオルギオス。よく分からんが向こうが正解だったか。

 

『了解。こっちもそちらに向かう。オーバー。』

 

『了解しまし…敵です!すいません!一度切ります!』

 

あ、おい!マシュちゃん!?

 

チッ。合流するしかねぇか。

ジークフリート、アマデウス!移動だ移動!

ここから西の…「■■■■ーーェ!!!!!!」おいおい嘘だろ!?追っかけて来たのか!?

これだから狂戦士は嫌なんだよ!!!ブーメラングサー

 

所長!市!先に行ってろ!コイツはここで始末する。

 

「大丈夫ですか?」

 

当たり前だろ?劣化コピーに負けてたまるかよ。

来な。終わらせてやるよ。

 

「■■エエェーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 

何なんだ、この違和感は。

おかしい。俺は、俺はこの動きを知っている。

何時だ、何時見た。

小太刀で受ける時に必ず半歩引く。

太刀を振るう前には大抵左足から踏み込む。

そして___左右の攻撃に僅かに。僅かに違和感がある。

なんというか、まるで…()()()()()()()()()()()

それ程に左右の構えが違う、

小太刀は素早く刻み、守りを兼ね。

太刀はリーチを生かして相手を斬ることを第一としている。

だがまだ練度が足りないな。

槍を高飛びのように地に叩き付け、反動で跳躍する。

そのまま中空からの一撃を叩き込む。

決まった。

 

「………チチ…ウエ……」

 

え?ッ!!!…浅い。クソ、油断した。

今アイツは何と言った?

アイツは………

 

「……………■■■■……!!!」

 

………逃げられた、か。

なぁ、狂戦士。

オマエは一体、誰なんだ?

 

「ちょっとちょっと!無視しないでよ!」

「きゅう。」

 

ああ、お前らか。

文句言うな。巻き込まれそうだったから外野まで運んでやったろ?

清姫の方はちょっとギリギリで気を失ってるけどまぁいいだろ。

どうする?お前も来るか?それともあっちに与するか。

 

「…一応聞いとくけどあっちに着くって言ったら?」

 

ここで首を撥ねる。

 

「連れてってください。」

よろしい。

 

合流したが、マリーが犠牲になったと。

王族にしちゃ見上げた奉仕精神だ。

これでこっちの戦力は俺、市、マシュ、ゲオルギオス、復活したジーク

モーツァルト、蜥蜴娘二人か。

まぁまぁの物量だ。正面突破がベターか?

折角マスターが二人居るんだ。上手く使おうぜ。

 

……成程。乗った。それで行こう。

ジークフリート。そっちに付けた俺の子孫を頼んだぜ。

 

で、俺たちの仕事は、敵サーヴァントの各個撃破。

いいねぇ。

丁度勝負を付けたいのが二つあったんだ。ハハッ。

 

 

 

決戦の地はオルレアン。

 




誰か分かったら凄いと思う。


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決戦

内容が突き抜けていく


「よぅ、待たせたな。」

 

目の前にはバーサクランサー。

コイツは強いからな。所長ちゃんの指示期待してるぜ?

 

「任せなさい。その代わりしっかりと私を守りなさい!」

 

了解。さて、やろうか。

 

槍と大太刀がぶつかり合った。

 

膂力、速さでは長政が上回るが、ランサーはそれを技量と能力で補う。

数百に登るかという打ち合い。しかし終わりは唐突に訪れる。

 

槍を一度背中に背負い、大太刀のみを構える。

 

「ほう?何か策でも思いついたか?」

 

ああ、そうだよ。

如何せん俺は技量ってのは今一つでな。

どんなに努力しようが一流が限界。

超一流の天才、英雄とは比ぶべくもない。

でもな、だからこそ、策を巡らせ、小細工を仕込み。

汚い手も使って勝ちを拾ってきたのさ。

 

「そうか…貴様も軍人としては優秀よな…ならば、その策、正面から破ってみせよう。」

 

上等。来い。

 

ランサーが突っ込んでくる。

まだだ。

槍が迫る。

まだまだ。

槍が身体に食い込む。

 

今。

 

ガギャァァァンッ!!!

金切り音と共に展開された刃はまるでバターのようにランサーを切り裂いた。

吸血鬼なのが仇になったな。

コイツは鬼丸国綱。…伝承では鬼を切ったと言われるこの刀はその性質上。

魔性の存在を断つのさ。惜しかったな。

 

「………見事…なり……」

 

今度は吸血鬼じゃないアンタと戦ってみたいな。ハハッ。

 

こっちは終わった。そっちはどうだ?

見ると、ファブニールを打ち倒したジークフリートの姿。

セイバーとアサシンも倒されたようだ。

エリザベートと戦っていたアサシンは致命傷を負い、消滅しかけてた。

…形勢逆転ってか。

 

邪ンヌとギョロ目が逃げ出す。追え、マスター!

 

俺?ちょいと寄り道をね。

ああ、そう掛からない。

すぐに追いつくさ。

 

 

 

よぅ、年増のアサシン。

 

「…………憎たらしいわね。嘲笑いに来たのかしら。」

 

まぁ、そんな所だ。

どうだ?過去に否定された気分は。

 

「…最低ね。二度とゴメンだわ。」

 

そりゃ興味深い。一度インタビューをしたいね。

 

「……それで?私はもう消えかけてるのだけど。」

 

……何も言わず、消滅しかけたアサシンを抱き締めた。

 

「ふふ…今更情欲でもしたかしら…?」

 

____辛かったな。

 

「…………?」

 

____誰も、誰も気付いてくれなかった。誰も言ってくれなかったんだよな、間違ってるって。

____そして最期には、真っ暗で、独りで。怖かったな。

 

「ッ…………」

 

____ああ、寂しかったな。でも今度は独りじゃない。良かったろ?ハハッ。

 

「………あなた、本当に良い性格してるのね。」

 

ハハハ。まぁそう言うな。ちょいとばっかし迷子をほっとけない質でな。

 

「…本当に、独りじゃない?」

 

そうとも。だから、安心しろよ。

 

「………ああ、こんな気持ち…初めて…ふ…ふふ…悪く…ない…わ…」

 

そのままアサシンの姿は掻き消えて行った。

…良かった。最後に笑ってくれたな。

 

よーし!切り替えて行くかエリザベート!

 

「………んぇ?あ、ああぁ!?」

 

エリザベートを担いで追い掛ける。

後ろから殺気。

奴も来てるか。丁度いい。着いてきな!

 

到✩着。

 

立香ちゃんパース!

この蜥蜴娘も持っていけ!

 

「何すんのよぉぉぉぉー!!!」ポーイ

 

マシュちゃんに蜥蜴娘二人は立香ちゃんと行って、決着付けてきな!

俺か?またまた用事がな。

どーも俺のストーカーがねぇ。来てるんですわ。

 

そう呟いた刹那、扉を破壊してバーサーカーが現れる。

 

「■■■■ェ!!!!!!」

 

来たな!ストーカー野郎!

行ってこい立香ちゃん!終わらせろ!

 

「………うん!長政さんも、負けないで!」

 

ハハッ。まさかぁ。

だがまぁ、うん。

そう言われちゃ、より気合いが入るってもんだな。

 

さて…律儀に待つか。御丁寧にドーモ。

 

「終わらせようか!なぁ!?」

 

俺が武器を抜くと同じ所作で奴も武器を取る。

…ようやく。ようやくお前の正体が掴めたんでな。

ここで終わらせる。それが()()()()だからな。

 

「■■■■ェェェェェ!!!!!!!!!」

 

ああ、終わらせてやるよ。




もうすぐ一章ラスト!序章より書きやすかった!

Q、カーミラの下りはどうゆう事?

A、長政君のクラススキルです。

無償の愛EX…たとえ相手がどんな存在であれ、不幸な生い立ちである(所謂悲しい悪役)
場合に効果を発動。ほぼ無条件に敵意を薄れさせ、精神を安定させる。
……と書くと聞こえは良いが、このスキルの発動条件は基本自らよりも相手が歳若い事だが、
精神が幼い、もしくは彼が娘(息子)のようだと感じるとノータイムで発動する。
狂化EXにより娘息子の定義がかなり吹っ飛んでいる為、
生前に苦しみを抱えたほぼ全ての悪サーヴァントキラーとなっている。
カーミラやジャンヌ、アルトリアの各種オルタを初め、その気になれば
新宿のアベンジャーやゴルゴーン、某アルターエゴ達さえ無力化できる。
狂化との相性の影響でチートスキルになりかけている。
別名・父性の暴力。


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息子

一章もうすぐ完結。
ペースがヤバい。進まないね。



………次は右。左、飛んでからの蹴りを外して掴み。

 

戦闘が始まってから数分。

今頃立香ちゃん達が邪ンヌと戦ってんだろ。

俺は…所長ちゃんとこの狂戦士と戦っていた。

 

…短剣を投げてそれを追うように刺突。

 

それを見切り、刀を踏み付ける。

 

「グッ!?」

 

馬鹿野郎。戦いに癖が出すぎだ。

いやまぁ、ここまで気が付かなかった俺も()としてあれかもしれんが。

 

そしてお前…いや、()()()の特徴だが…

 

「ッ………!!!!!!」

 

何か俺に仕掛けられると、悔しくて大振りになる。

 

「何十…いや、何百と直せって言っただろうが、馬鹿息子共。」

 

俺は半ば呆れながら…隙だらけの狂戦士を唐竹割りに両断した。

…確かに俺は言ったよ。お前らはお互いに半人前。二人で協力しろと。

だがお前らよ、そう言う事じゃ無ぇんだって。

ハァ……俺の血のせいか?違うよな?うん、俺じゃない。姉さんの教育が悪い。(責任ポイー)

 

両断された狂戦士はそれでも尚動き、立ち上がろうとする。

 

知ってるよ。分かってるから等分にしたんだからな。

 

「ほら起きろ()()()()!久々に根性鍛え直してやるよ。お前らには色々と言いたい事があるんでな!」

 

その言葉と共に___狂戦士の半身()()()()()はそれぞれ人の姿をとった。

片方は小柄ながら快活な雰囲気を醸し出し。

片方は大柄な体躯に見合った得物を構えていた。

 

 

 

 

 

 

 

二人ともがその見目麗しさで名を知らしめした。

兄、竹王丸。弟、卯松。

また、二人は戦においても非の打ち所無き程に優秀であった。

しかし、その事を誰もが賞賛することは無かった。

何故に___?

 

母は長尾景虎。またの名、上杉謙信。

ソレは現世に降り立った軍神そのもの。

その比類無き力、戦場に歯向かわんとする者無く、戦を蹂躙する者。

 

…そして対外的に知られる事なき事実。

 

父は猿夜叉丸。またの名、浅井長政。

ソレは常世を喰らい尽くす鬼神の写し身。

生涯を懸けて戦いに生き、今日でさえ日本で最も人を殺めた個人と呼ばれた者。

 

彼らの両親は、両親共に偉大すぎた。

如何な武功も誉れもその輝きが故、誰しもが直視しなかった。

 

『兄者。』

『どうした?卯松よ。』

『…所詮我らは凡骨に過ぎず、父の、母の劣化に過ぎぬのでしょうか。』

『…それは後の人が決めること故、この兄には分からぬ…』

『…………』『が。』

 

『もしやすると、我らは親の恥となりうるのやもしれぬな。

大大名上杉に生まれ、高名を挙げる程の武勲一つ無い。』

 

 

 

『………兄者。この弟に一つ策が。』

 

『………正気か?それを成せば我らは後に狂人として名を残そうぞ。』

 

『構いませぬ。…兄者…いや、兄貴だってそうだろ?このままじゃ、俺たちの事なんか

誰も覚えちゃいない。誰も思い出してくれない。母上も、父上も。』

 

『……後悔しないか?』

 

『ああ。』

『フハハ…奇遇だな。実は僕も同じ様に考えてたんだ。ハハッ。』

『ハハハッ!何だよ、やっぱり俺たちは狂人じゃねぇか。』

 

『期日は?』

『早い方が良い。そうだな…』

 

この後、彼らは自らの親族を皆殺しにする。

望みはただ一つ。二人だけでの戦いをするがために。

そして…

 

『俺の勝ちッ!だ!』

『…ッ…僕の負けか……』

 

卯松の小太刀が竹王丸の腹を貫いた。

どう見ても致命傷。とても助からない。

 

『後は頼んだ、卯松。』

『…いーや。嫌なこった』

 

そう言うと、卯松は竹王丸の太刀を取り、自らと兄を纏めて貫いた。

 

『グァ…お前、何を…』

『なぁ、兄貴ィ。やっぱし俺には無理だわ。俺も父上の子供だからさ、独りは寂しいんだよ。それに、』

 

『挙句の果てに家を潰して心中した馬鹿息子なら父上がまた叱ってくれるだろ?ハハッ。』

『…………それなら僕を巻き込まないで欲しかったかな。父さんのお説教はキツいから…ハハッ。』

 

血を流し過ぎた。

もう、意識が保てない。

 

最後に思うのは、苦笑いする母の顔。笑顔で怒る父の顔。

そして、鉄の延べ棒で繋がった最優の()の事だった。

 

 

 

 

とまぁ、この下り、実は色々あって見てたんだよね俺。

色々言いたい事あるけど取り敢えず…喧嘩両成敗って事で一つ。

 

そう呟き、俺は踏み込みそのままの勢いで刀を……抜かずに拳を二閃。

一発づつもらった息子共は頭を抱えて悶える。

 

「痛ってぇ!」「ッー!ッー!」

 

「「何すんだよ父上(父さん)!!!」」

 

喧しいわ!親の後追って自殺するとか馬鹿かお前らは!

少しはこっちの気持ちを考えろアホンダラ!!!

 

無性に腹が立つので少しお灸を据えてやろうか。

弓を、槍を、大太刀を捨てる。

そして圧切を正眼に構え、睨み笑う。

分かるだろ?

 

 

 

親父が、父が武器を捨てる。

成程、やっぱり俺達じゃ父さんの全力を出すには足りないか…

 

「だがまぁ、関係ないよなぁ兄貴?」

「……そうだね。結局の所、僕らに出来るだけの全力を。」

 

ああ、()達は幸せだな。

こんな状況なのに____父親と遊べるだけで幼子のように嬉しいのだから。

 

「さぁて、」

「うん。」

 

「「行こうか!!!」」

 

見せてやろう。自分達の成長を。

…………超えてやろう。二人で。




息子ちゃん達がまるでジャンプの主人公みたいだぁ…(困惑)


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緋衣草

リアルでは鬼滅キッズにイラつき
学校ではBTSオタク(armyでしたっけ?)にイラつき
ネットではTikTokキッズにイラつく。
悲しいなぁ…
(尚、玉葱は鬼滅の刃好きです。誤解なさらぬように。他二つは嫌いですが。)


強い。

 

本来の戦い方、多種多様な武器を組み合わせて戦う戦法。

それさえ使わぬ父に、僕達は苦戦していた。

 

武装はやや短めの打刀()()()()()()

しかし、空いた片手は掴み、打ち、防ぐ事が可能。

やや半身の構えは此方の攻撃の致命傷を避け、此方への攻撃を加速させるもの。

いつか母から聞いていたな。

 

『良いですか?夜叉君は決して最初から強かったワケじゃありません。

寧ろ素質と言うなら貴方達の方が余程あるでしょう。』

 

最初は信じられなかった。あの強い父が、才が無いと?

冗談にも程があると。これは一種の激励の類いだと。

だが、命を賭して打ち合った今なら分かる。

………ああ、才能が無い。と。

構えに体運び、翠眼に心眼が如き直感。

 

しかしそれは、全て練り上げた物。

一切の土台無く。

一切の才能無い。

 

しかしそれでも、誰が為の戦いに。

戦う為に。守る為に。

血反吐に塗れながら積み上げ、磨いた輝き。

ハハハッ。

貴方よりも与えられていた僕達が不遇を嘆く頃。

かつての貴方は何をしていたんだろうか。

………きっと考えつかない程苦しみながら鍛錬を積んだのだろう。

ならば僕が勝てないのも道理。

 

『兄貴………兄貴!』

 

ああ、ゴメン。少し考え事をね。

 

だが、ボクは一人じゃないから。

 

だから、負けない。

 

 

 

 

 

 

 

いつも思うんだ。兄貴は考え過ぎなんだって。

例えば…ほら!

父上はどんな攻撃だって受け止めてくれる。

どんな事も受け止めてくれる。

 

俺は小柄な体格に産まれてしまった。

だから、兄貴や父上みたいに長物を振り回すなんて出来ない。

この貧弱な身体を呪ったね。どうしてこんなに非力に生まれたのか。

ずっと羨ましかった。父上が、母上が、兄貴が。

でも、父上が小太刀(コイツ)をくれて分かったんだ。

戦いはでかい方が勝つとは限らないんだって。

自分の利を活かして相手を殺す術を考えろ。ってさ。

それに、お互いに欠点を補えって。

だから兄貴と俺はずっと一緒だった。

 

死ぬ時も。英霊になる時も。

 

だから、オレ一人では勝てなくたって。

二人で勝てば良いんだ。

 

 

 

 

 

ああ、目の色変えやがって。

可愛いなぁ。楽しいなぁ。

ハハッ。最高だよ。

 

良〜い殺気だ。

二人ともどことなく姉さんに似てるからすっごい怖い。

さて。

 

「来い!一太刀でも当てられたら褒めてやるよ!」

 

殺し合いなんて歪んだ親子だと思うか?

ハハッ。言っとけ。俺たちにはコレが一番なんだよ。

 

卯松が後ろに回り、竹王が上段に構える。

……一体何をしてくれるのか。楽しみな自分を隠せず、

俺は獰猛な笑みを浮かべる。

 

刹那二人は同時に斬りかかってきた。

さて、一体どんな策を………ッ!?

後ろを向いてたって、気配でタイミングを察していた。

卯松の方が早い。だから後ろを防いでから前に受けても間に合う筈だ。

しかし、この気配は…ハハッ。

原理は分からんが、してやられたよ。

 

『『比翼・二人羽織!!!』』

 

後ろから太刀で切られた俺は、同時に正面から刺し穿つ小太刀を防げなかった。

 

だが、問題ない。

完全に油断した卯松の首を抱えると柔道で言う巻き込み…禁止技の一つで投げる。

その際、身体の捻りを大きくすると後ろの竹王も巻き込める。

 

「え!?」「な!?」

 

深手にはなるが…まだまだ。

致命傷には程遠いぜ?

………こればっかりは実践有るのみだからな…仕方ない。

 

そのまま押し倒した二人の顔間近に刀を突き刺す。

ハハッ…惜しかったな。

 

そして俺は…愛しい息子たちを抱きしめた。

…強くなったな。……最ッ高だ貴様らァ!!!

 

「うわぁぁあ!?」「!?!?!?!?!?!?」

 

良くぞ育ったって奴だ。

 

「………………」トテトテ

 

あ、市…ってこれ修羅場じゃね?

オーケー。状況を整理しよう。

 

市。俺の嫁さん。(※ハイライトオフ)

卯松と竹王。俺と姉さん(浮気相手)の子供…アッ………

 

……………長政は二人を庇うように背を向けた!

しかしまわりこまれてしまった!

 

「アイエエエッ!?……ちょっ、まッ!!!」

 

ヤバい、何されるか分かんないどうしよどうにか逃がさ____

ふにょん。と柔らかい感触。

見ると何の事は無い。市が二人を背中から抱き締めていた。

……………身長の関係で抱き着いているようにしか見えないが。

 

「「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」

 

ああ、うん。二人はビックリするよな。突然知らない子に飛びつかれたんだからな。

うちの嫁さんです。

 

「卯松君に竹王君ですか!義姉様からお話は聞いてました!会えて嬉しいです!」

 

というか市。怒ったりしないの?俺結構屑みたいな事したんだけど。

 

「?……怒る?夜叉様の子供なら私の子でも有ります。当然ですよ?」

 

ああ…(グサッ)市ちゃんぐう聖(浄化)。

 

「父上って……」ヒソヒソ「母さんが言うには……」ヒソヒソ

 

俺は市が好きなのであってロリコンじゃねえから。(妄言)

 

( ´・ω・)(´・ω・)(・ω・`)(・ω・` )【審議中】

 

お前ら終いには怒るからな?

……どした所長ちゃん。言っとくが俺はロリコンじゃねえからな。

それとも入りた…ストップストップゴメンて。

 

…………退去が始まる。終わったか。

じゃあな馬鹿息子共。今回の負けた理由は宿題だ、

()()()()会う時までに復習しとけよ?

 

「「!………はい!」」

 

 

 

感触が消えていく…情けねえな。寂しい気持ちになる。

 

「…兄貴ーそういやあの事言って良いんだっけ?」

「!?おいバカやめろ!!!」

「いいや限界だ!言うね!」

 

…………何やってんだか。ハハッ。

 

「父上!実は「卯ァ松ゥゥゥ!!!………………

 

 

人理定礎値C+
第一特異点

 

定礎復元

 

A.D.1431 邪竜百年戦争 オルレアン

救国の聖処女

 

 

 

 

 

 

 

 




こ↑こ↓で青目エリちゃんを出す案も有りましたが長いので没に。

比翼連理がモデルの宝具。
合体…分離できる宝具で、応用すると疑似ワープが可能(今回はワープ)
楊貴妃実装されたら宝具が比翼連理で驚いた。
可笑しいな、この回書いたのは12月半ばなのに。

蛇腹剣の下りといい玉葱の小説は未来予知をする可能性が微レ存…?


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休む間もなく

ようやく2章とか言う地獄。


…………カルデアに帰ってきてから2週間程経った。

俺らはともかく生身の三人から疲れが抜け切ったか切らないかのタイミングで

あらたな新たな特異点を観測したらしい。

はぁ、忙しい事で。

 

よし立香ちゃん、ハンカチ持ったか?これ水筒な?

マシュちゃん、二人を頼んだ。危なっかしいならぶん殴ってでも止めてくれ。

所長ちゃん、あんまし無理すんなよ?

 

「煩いわね!貴方は私の親か何か!?」

 

同じ様なもんだよ(狂化EX)お前も家族になるんだよォ!!!

 

????「Welcome to the family, son.( お前も家族だ。)」

????「みんなこれからは家族だ!」

 

何だ今の。

まぁいいや。じゃ、気を付けてなー!

 

さてと。

じゃ、俺たちは予習とでも行こうか。

 

 

 

次の特異点は古代ローマ。

古代ローマと言えば何を思い浮かべる?

「全ての道はローマに通ず」とか言われた言葉さえあったあのローマだ。

テルマエ?……ああ、それが有名なのか?

何故古代ローマは長続きする強大な国になったか。それは戦争に違いない。

勿論優れた政治は必須だが、どの国も負けたら終わり。

古代ローマには優れた政治家、軍略家が揃う。

そして率いる軍隊はレギオンと呼ばれ、重装歩兵を筆頭に戦場を蹂躙した。

……まぁ、難しい言葉を省くならファランクスとそう変わらんがな。

主戦力は重装歩兵と僅かな騎兵。……やっぱファランクスだろこれ。

 

まぁ、ローマに限れば呼ばれる英霊も絞れる。

 

歴代皇帝の殆ど、正確には皇帝じゃないカエサル。

皇帝の中でも戦車(チャリオット)を使った戦果のあるネロ帝。

八月(August)の語源

後は……ローマに対するカウンターとしてのブリタニア女王ブーディカってとこか。

 

軍略家なら軍団を呼ぶ可能性もある。

ならファランクス対策か……史実に基づくなら騎兵隊で側面から食い破れるんだがな。

 

まさか俺が一人で呂布ごっこするワケにも……いや、有りか?

単騎駆けに耐え得る馬さえ居れば行けるんだが。

とは言えそんな真似ができる馬は刑部殿の鬼鹿毛と後一騎しか知らん。

はぁ、ライダーになりたい…ま、必要と決まったワケでもなし、

そん時はそん時だ。

 

ダ・ヴィンチ女史、ブツは?

 

「はいはいっと。それにしても驚いたな、一体どんな思考してるんだい君?

道具一つ一つが悲鳴をあげてるぜ?」

 

悲鳴あげようが知るか。俺に使いやすいように適応しろ。

いいな?

武器を一つ一つ点検しながら語りかける。

本当は分かってる、こいつらに無理をさせすぎだって。

鎧を纏い、問う。

だから____

(済まない…だが、弱い俺に護る力を貸してくれ。頼む。)

 

最後に打刀を差して完了。同時に…太刀が、槍が、鎧が、弓に打刀さえ鈍く輝く。

それがまるで返事するようで…頼もしかった。

………ついでに確認しておくか。

その場で足を踏み込み、簡易な魔法陣をイメージする。

そしてその中に望むものがあるのを見やって解除した。

 

 

 

 

市ー準備できたー?

 

「あ、もう少しです!……終わりました!」

 

そう言ってしがみついて来る。

可愛い、行こうか。

 

身体が粒子に変わり転移していく。

さて、次の特異点はどうなる事やら。

 

 

人理定礎値B+
第二特異点

 

 

 

 

A.D.0060 永続狂気帝国 セプテム

薔薇の皇帝

 

 

 




二章は短めにします。

長政君による講座は一応入れてます。


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狂戦士

(・ω・`)


「市ちゃん市ちゃん。」

「何ですか夜叉様?」

「……空中スタートって決まりでもあんのかな?」

またか。

 

以下カット!

スーパーヒーロー着地!グキッ

やっぱりデップーは正しかった。腰と膝に悪い。

 

さぁて、所長ちゃん達は…アッセイ!!

瞬間、巨大な…そう、筋肉(マッスル)の塊が横から飛来した。

回避出来ない、なら正面から止める。

「ッ………ォォォォォ!!!」

 

そのまま抱えて持ち上げ、脳天から落とす。

垂直式ブレーンバスターとも呼ばれるこの技は大変にダメージの高い

フィニッシュ・ホールドの代名詞の一つだ。

しかしこれに耐えた筋肉(スパルタクス)。華麗な宙返りからの

ジャーマンスープレックスを決める。

ここで長政の中の何かに火がついた。

お互いに打ち、投げ、組み、決して避けない。

いつしかギャラリーが集まり、熱狂は更に加速する。

 

「「ウォォオオァアッ!!!」」

 

その様子を見ていた兵士は後に語る。

「あれはまるで美しいショーのようだったと。」

 

だが、終わりとは必ず訪れるものだ。

 

お互い満身創痍だが、長政が僅かに上回った。

片膝をついて立ち上がろうとしたスパルタクスの膝に乗り、強烈な回し蹴りを叩き込む。

これには堪らず地を舐めて呆然とするスパルタクス。

 

俺は横にあった岩に登りギャラリーに問いかける。

 

「さぁ!これで決めるぜ!!!」

 

「「「「「「Woooooooooooo!!!!」」」」」」

 

湧き上がるギャラリー。

一方こちらでは………

 

「何やってるのかしら……」

「何をしてるんですか…ですよね先輩…?」

「Woooooooooo!!!!」「先輩!?」

 

「……夜叉様カッコイイです…!」

「あはははは。皆男の子だねぇ。貴女のお父さん?」

「いえ、私の旦那様です!!!」テレッ////

「え!?」

「おお、あの戦い、実に素晴らしい!!!両方とも余のコロッセオに召し抱えたい…!」

 

イヤッホォォォォイイ!!!!!!!!

 

背面に飛び一回…二回…と半分回転して決めるムーンサルトプレス!

起き上がりかけのスパルタクスに避けるすべは無く再び大地と接吻する事となった。

俺が決めた事による歓声と同時に立香ちゃんが飛び出し、地面を叩いてカウントする。

 

「1!…2!……3!」

 

カンカンカーン!!!!!!!!何処かから鳴り響く音と共に俺は勝鬨を揚げる。

 

「ッシャア!!!!」

「「「「「「Fooooooooooooooou!!!!」」」」」」

 

 

「我が叛逆の敗北か…」

いや、良かったぜ。いいセンスだ、ブラザー。

 

目が覚めたスパルタクスに手を差し伸べながら言う。

 

グッとしっかり握り返してきた。コイツは頼りになりそうだ。

 

ネ「戦いの後にある男同士の友情!実に美しいものよな!」

立「分かる分かる!カッコイイよね!」

市「夜叉様はいつだってカッコイイです!」

 

マ、所、ブ「ええ……(困惑)」

 

この後幸いブーディカさんとも和解した。

したら弟みたいだって甘やかされた。ああダメになるゥ……

幸い風呂に連れ込まれる前に正気に戻ったので市を犠牲に逃げ延びた。

許せ市。包容力のある年上はあんまし耐性が無いんだ。

包容力ある幼女()なら見慣れてるんだが。(平気だとは言っていない。)

で女湯で百合百合してると思われる中ゆったりと男湯を使わせてもらった。

 

Foo↑気持ちぃ~!

 

筋肉…もといスパルタクスは先に入ったらしいしローマ兵は集合銭湯らしいから贅沢に使える。

まぁ、広すぎてちょいと居心地が悪い気もするが。

 

…………逆上せた。

………あがるか…からだがだるい………。

 

 

 

 

「…………」

ん………誰だ………?

スマンが俺はあがるぞ…あたまが…だるい……

うおっ……

足元がふらつき、マトモに歩くことさえできない。

金色の何かが突っ込んできたがとても避けられない。

そのまま床に倒れ伏し押し倒される。

……やわらかい……柔らかい!?

一気に正気が戻る。

胸に何かが二つ押し当てられてる。

身長はやや小柄、だがそれなりに引き締まり均等の取れた体付き。

ちょ、おま、ネr…

しかし四股を抑えられて言葉を遮られる。

「…………!……!」

何かを語り掛けてくるが未だ半覚醒の頭は言語を理解しない。

ッ……ダメだ、身体が痺れるように重い。確かネロ帝は生身の筈だが…

サーヴァントの膂力でも押し返せない。

しかも何故か俺の身体は無理に推し返す事を拒否する。

…確かに総大将を傷付けるワケにも行かないがそれはそれだろ…

そして俺は抵抗出来ないまま……

 

 

 

まぁ、名誉の為に何があったかは言わないでおく。

ここはR-15だしな。

だが少しだけネタバレするなら、この後色々搾り取られた俺を見た市ちゃんが乱入して酷い目にあった。

 

俺が何をしたというのか。

 

 

 




これが望みだろ?(ゲス玉葱)


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ガリア

皆さんのご期待に答えた前回と今回。
密かに新キャラ登場。


……………重い。

市が真っ裸でしがみついてる。

……まぁ、よくある事だ。うん。

何か酷い夢を見た気がする。疲れてんのかな……?

 

そう思って起き上がろうとして…違和感に気付いた。

………何か柔らかい床だな。しかも温かい。

ああ、分かってた。目覚めた時から気付いてはいた。

だから努めて見ないようにしてたんだ。

そう、だから俺は何も見てない、何も気付いて___

 

「むぅ?…おお、起きたか長政よ。」

 

…………嘘だと言ってよバーニィ。

 

 

 

 

 

 

 

「ねんがんの ながまさをてにいれたぞ!」

「殺してでもうばいとる」

 

ちなみに二人はかなり仲良くなりました。

吉と姉さんの時と言い俺の体は関係を改善する可能性が微レ存……?

………言ってて気持ち悪くなってきた。

 

忘れよう。

……忘れよう。

忘れ………離せお前ら!!!

 

ヤメロォ!(建前)ヤメロォ!(本音)

 

「「二人に勝てる訳無いだろ!!!」」

 

流行らせコラ!流行らせコラ!

あ、ちょ、本当に。止めて。

あっ、あっ、あっ。

アッー!♂

 

 

 

 

 

大切なものを失った気がします。

 

 

 

 

「おはよう」ゲッソリ

「おはようございます!」ツヤツヤ

「うむ、おはようなのだな!」テカテカ

 

「あ、おはよう…あーうん、何となく察したよ。お疲れ様。」

 

休んだ方が疲れるって何なん?

 

「…………お姉さんの膝枕で良かったら休む?」

 

「いえ、夜叉様を手篭めにするにはこう、私みたいな包容力が…」

 

「………………」フラフラ-「夜叉様!?」

 

ああ↑ダメになるぅ~……

 

「なんと言うか…昨日とは大違いだね。一体何をしたんだい?」

 

そりゃ、何ってナニですよ。

久しぶりに二桁に到達した気がする……

 

その後立香ちゃん達は色々と進軍するらしい事に。

古き神ねぇ。ヤな感じだぜ。神ってのはどいつもこいつも…

………ゴメン、俺はちょっと休ませてくんないか?

どうにか決戦までには回復するから。

 

その日の晩はブリタニア料理で豪勢な宴になりました。

……おかしいな、これイギリス料理なのに美味い……

あ、ブーディカ殿、済まないがレシピを教えてくれ。

その内、娘息子たちにも食わせてやりたい。

 

 

 

さてと、立香ちゃんグループと別れた俺たち。

こっちはこっちの仕事と行こうかね。

何でも既にガリアは落としたが、防衛の必要有りと。

 

うわぁ、テンプレみたいなローマ兵だぁ…

しかも士気もくっそ高い。泣ける。

んーよし。ここで試すか。丁度いい。

 

しょちょちゃん♪しょちょちゃん♪魔力ちょーだい♪

 

「………」ピキッ

 

ハイすいません私が悪うございました。

とはいえ魔力が必要なのはガチな訳で、頼む。このとーり。

 

「………ああ、もう…焦れったいわね!」

 

ズキュゥゥゥン!

 

oh、そっちから来るとは思わなんだ。

所長を離して独り言ちる。

 

さぁてと。そろそろ仕事と行こうか…

魔力を使い、俺の記憶からそれを引き出す。

それは俺の対とも言える鬼の化身。

言わば夜叉の対って事だな。

 

……来たか相棒。よし、取り敢えずウォームアップだ、奴らを蹴散らしてこい。

 

「…………」

 

相棒は何も言わずに盾を構える敵陣に突貫する。

 

「ちょっと!勝手に行かせて良いの!?」

 

と言ってもなぁ。俺の言う事だって100パー聞くわけじゃないんだぜ?

それに奴からしたら久々に駆け回れるんだからな。

ちょっと遊ばせてやれよ。

 

…お、終わったか?

早いな………お前何だこの角。

いつの間に…幻想種にでもなったか?

確かにお前の名前はアレだからさぁ、俺と同じノリでなるかもしんないけど………

 

そうして二~三百人程のお客様を地獄にご案内してたんだが。

 

「…伝令!…伝令!」

 

………絶対良い話じゃないだろ。話してみろ。

 

「敵の別働隊が…奮戦しましたがスパルタクス様が離脱した所を狙われ…」

 

狙われ?

 

「………ブーディカ殿とお市殿が囚われの身に…」

 

ほぉ、成程。

成程成程。

ハハッ。

 

ハハハッ。

 

ハハハハハハハハハハハハハハ!!!

 

やられたよ。ハハッ、そうかそうか、奇襲か…

しまった、いつもなら容易に想像ついたろうに。

やれやれ、俺も歳食ったかね?

 

一枚上手を行かれた。それは構わない。

拠点が陥落した。構わない。取り返せばいい。

だがよ。

 

()()()()に手ぇ出すたぁいい度胸してんな?あ?

 

久しぶりに、心からブチキレそうだ。

いや、もうキレてるか。

 

ハハッ。ハハハハハハッ。

良いねぇ。やってくれるよ。

それでこそ狩りがいがある。

 

「ちょっと貴方落ち着い…ヒッ!?」

 

何だよ所長、そんなバケモノかなんか見るような目してよ。

いやぁ、別に狂っちまったワケじゃないぜ?

モトからさ。気にすんな。

俺は狂戦士(バーサーカー)だからな。

 

怒り狂うくらいで丁度いい。

 

……相棒、スマンがまた仕事だ。

ハハッ、喜べ、今度はもっと喰いごたえのある奴だぞ?

 

ここから敵拠点までは?直線でだ。

 

「……早馬で一時間弱…かと。」

 

成程?二刻ちょいってとこか。

 

半刻で着くな。行けるだろ?相棒。

…よし、所長。後ろに乗れ。

 

「え?わ、私?」

 

他に誰が居るんだよ。ほら。

俺は所長を担ぎあげて後ろに乗せる。

……しっかり捕まれよ。飛ばすぜ。

 

「えっ、あ、あ~ッ!?!?」

 

行くぞ『羅刹』。俺たちをコケにした報い、受けさせてやろうぜ?

 

『………Balhyyyyn!!!!!!!!』

 




新キャラ(人とは言ってない。)

『羅刹』
言わずと知れた夜叉の愛馬。性別は牝。
戦国時代の馬はまるでポニーのような小ささであったが…?
気性はとてつもなく荒く、人が乗れるようなものでは無い。
体重は約二百貫、体高は一間半というバケモノ。
どこぞの松風や黒王号より更にデカい。
彼女は単体で強大であるが故、名前と合わさり半ば幻想種になっている。
普通なら幻獣と数えられる存在だが、彼女の唯一の友の呼び掛けが有れば…
彼女は何処にでも駆け付けるだろう。名前を分けた友が為に。



名前は毘沙門天の眷属で夜叉の対である羅刹から。


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夜叉の尾を踏む英霊

ブチ切れ夜叉君


「…………んーまだ、見えないか。」

 

 

 

「……当たり前だろう。この荒野で人一人を視認するとしたら相当近くなければ。」

 

 

 

「でもセンセイ、サーヴァントなら魔力で分かるんじゃないかな。」

 

 

 

「敵サーヴァントは日本の英霊 浅井長政。神秘の低い時代の英霊故に

 

その方法はあまりアテにならんな。」

 

 

 

 

 

 

 

『………!斥候より合図!敵出現との事「分かってるよ。」

 

 

 

「……ここまで居場所の分かりやすい相手もそういまい。」

 

 

 

二人の目が捉えたのは砦の前方。

 

迎撃に出た兵士達がまるで鳥のように空へ舞っていく。

 

見れば巨漢の男が有り得ない巨馬を操り、次々に兵士を跳ね飛ばしていた。

 

…尤も跳ねられた兵士は幸運だろう。

 

踏み潰され、無残な屍を晒した者も少なくなかったからである。

 

 

 

「計画通り行くぞ…3,2,1…『石兵八陣』!…よもや対軍防具を個人に使うとは…」

 

 

 

「仕方ない、それだけの相手って事だし。さてと、このまま止まってくれると良いけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッ!!!何だコイツは!壁!?

 

クソッ!邪魔だ!ああ!

 

 

 

「落ち着きなさい!」

 

 

 

はァ!?落ち着いてられっかよ!

 

そう返す途中、所長の平手が顔に入る。

 

 

 

「落ち着きなさい!それじゃ助けられるものも助けられないわよ!」

 

 

 

ッ………………ああ、分かったよ。

 

済まない。取り乱した。

 

どうするか。この壁はなんかしの強化をされてるらしく容易には壊せない。

 

このままじゃ、脱出さえ出来ねぇ。

 

一応策は無いわけじゃないが…如何せん不安定な上所長が干枯らびるかもしれん。

 

だが急がなきゃならない。所長、行けるか?

 

良い目だ、惚れちまいそうだぜ、ハハッ。

 

睨むな睨むな、冗談だから。

 

じゃ、頼むぜ。さっさと済ませよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出て来ないな。やはりバーサーカーには脱出は不可能か…?」

 

「いやセンセイ、そうでも無いみたいだよ?ほら。」

 

 

 

そう言うと同時にナニカが石兵八陣の壁を無理矢理ブチ抜いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……身体が熱い。身体が痛い、寒い、苦しい。

 

左の視界が真っ赤に染まる。左腕が醜悪に化わる。

 

嗚呼、目に入る物全てぶっ壊したい。

 

 

 

「Agaaaaaa!!!Aaaa■■■■!!!!」

 

 

 

壁をブチ抜き、砦に取り付く。

 

 

 

「■■■■■■■ッ!!!!」

 

 

 

邪魔だ。そのまま砦の一角を成す見張り塔___石でできた__

 

を殴りつけ破壊する。力任せに。

 

 

 

すると二騎のサーヴァントが出てくる。口上も、何も関係あるか。

 

長身の男の方が身体能力的に劣る。そう勘が囁き、踏み込みながら掴む。

 

そして、何度も、何度も何度も何度何度何度何度何度も叩き付ける。

 

男は断末魔もあげず消滅した。

 

 

 

「な…ブケファラス!」

 

 

 

少年がそう叫ぶと荒々しい馬が現れる。

 

征服王イスカンダルが馬ブケファラス。

 

しかし、今回は相手が悪かった。

 

主の意図を察した羅刹はブケファラスがアレキサンダーに到達する前に両者に割って入る。

 

ブケファラスは名馬中の名馬。幻獣であることもあり、間違い無く最強クラスの馬である。

 

………一方の羅刹はほぼほぼ神獣になりかけているのだが。

 

ライダーとは騎乗する物があって初めてその真価を発揮する。

 

つまり…騎乗獣無きライダーではバーサーカーに勝ち得ない。余程の例外無くば。

 

 

 

片手で少年の頭を握り、掲げる。

 

 

 

「市は…何処だ…」

 

 

 

「……ハハハッ、何だよ…君を…君を待っていたワケじゃないのに…」

 

 

 

答えろ。俺は締め上げる力を増す。

 

 

 

「ッ!!!………ああでも、君が適任かも知れないな…まるで君は…」

 

 

 

メリメリと頭部を破砕して行き、顔中の穴という穴から鮮血が噴き出す中、

 

アレキサンダーは言い放った。

 

 

 

「君は……まるで()()()()()だ…」

 

 

 

ベシャ。

 

次の瞬間には呆気ない音と共に頭部が弾け飛んだ。

 

誰が魔王だ。俺は……。俺は……?

 

俺は一体何だ?

 

俺は、俺は……ん?

 

冷静になり、夜叉化を解除した時に初めて気付いた。違和感に。

 

腰辺りに何かがある。…それはサーヴァントとしての主。

 

………ずっと捕まってたのか。

 

否、捕まらざるを得なかった。俺に頼るしかなかったのだ。

 

 

 

「すまねぇな。」

 

 

 

魔力を大幅に消費して意識を失ってもなお、魔力を供給している所長に声を掛ける。

 

聞こえてないと知りながら。

 

………ああ、そうだった。

 

俺は長政。浅井長政だ。

 

守る物がある限り俺は、俺は長政だ。

 

…感謝するぜ()()()()。お陰で戻って来られたよ。

 

 

 

 

 

「ッシャア…!!!」

 

 

 

牢が有ると思しき場所を切り落とす。

 

………良かった。二人とも無事か。

 

力が抜けると共に眠気が襲ってくる。

 

二人は寝てるし、所長も気絶してる。

 

…寝ちまっても良いか。羅刹、警護を頼んだ。

 

俺はそう呟いて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2人のファンには申し訳ない。今回は噛ませなんだ。
長政君キレ度目安

露骨に怒ってる…ポーズとして怒ってるだけ。素直に謝れば許してくれる。怒りレベル1~10
笑顔…大抵ヤバい。全力で祈るべし。怒りレベル11~100

真顔…見た人が(生還して)いない為判別不可。怒りレベル???




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似てる

ネロと信長って似てると思うんです。


「今こそ偽の皇帝を打ち倒し本物のローマを取り戻すのだ!」

 

「「「「oooooooohhhhhhh!!!!!!!!」」」」

 

士気が高いな。中々のカリスマ性だ。

流石のローマ皇帝ってワケか。

 

「………………」

ま、ブーディカ殿の言う通り何か引っ掛かってるらしいがね。

 

斥候曰く残りの皇帝は後一人、神祖ロムルス。

つまりは総力戦だ。頼むぜ羅刹。

 

「Barrrru……」

 

宴の夜は過ぎていき、やがて草木も眠る丑三つアワーに。

いつものように市ちゃんに押し倒された俺はひっそりと寝台から抜け出る。

なんの用って?んーまぁ夜這いみたいなモンだ。冗談だが。

 

 

 

………ようお嬢さん(ネロ帝)。戦を前にセンチメンタルか?

それとも花嫁を決められなくて悩んでる感じ?

金髪幼馴染と青髪お嬢様と高飛車お嬢様の三択だからまぁ、そりゃね。

 

「いや、何を言っているのだ!?全く分からんぞ!?」

 

マジ?最近の若い子はやってないのかー。

俺?三週しますします。

V VII IX Xは特に印象深いなぁ…

 

「だから何なのだそれは!?」

 

お、良い顔だ。ハハッ。部隊の長が辛気臭い顔してちゃ、下だって不安だぜ?

ほらほら、笑え笑え。

 

そうして俺はネロ帝…いや、ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス

という少女の半生を聞いた。

 

王家に女子が就くを良しとせず。

長らく男子として育てられ、

母に疎まれ、義理の弟を殺し、母を殺し。

前妻との関係も悪い。

 

そして今、自らの行為が本当に正しいのか…分からないのだ。と。

 

「…ククククク、ハハハハハハッ!!!」

 

「…何がおかしい。」

 

いやぁ…()()()()って。

成程。俺がネロ帝を見た時に感じた親近感はこれか。

お前、似てるよ。俺の親友にな。

アイツもお前と同じような境遇だったな、確か。

で、質問の答えだが…そんなモンどうでもいいさ!

 

「!」

 

何が正しかった。何が間違っていた。

それを語るのは後世の奴ら。俺たちはやりたいようにやりゃいい。

ネロ、お前は何を望む?お前は皇帝として、何を理想とする?

 

「……余は…余が望むのは…」

 

望むのは?

 

「……我が美しきローマ市民の笑顔だ。余はそれが…それを望みたい。」

 

……ほう?

良いねぇ。満点だぜ。最高の回答だ。

そのまま半ば無理矢理ネロ帝を引き寄せ抱き締め、頭を撫でる。

 

「!?!?」

 

……ホントに似てるよ。

馬鹿みたいな理想を掲げる所も。その為ならどんな無理もしそうな所も。

良くやったな。よしよし。

ネロはしばらく抵抗していたが、次第に力が抜けていった。

そして俺はネロ帝を離し、刀を腰から外して片膝を付く。

刀は地面と垂直に、真っ直ぐと立てる。

 

「ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。

これまでは主が命故に貴公に付き従って居たが…貴公の心意気に心底感銘を受けた。

故にこれよりは主の制約あれど我が意思の元、貴公の傘下に加わろう。

…ま、難しい事省きゃ、気に入った!手を貸そう。ってな。」

 

「………うむ。嬉しく思うぞ長政よ。良い。余に手を貸してたもれ。」

 

了解。………そうだな、酒とグラスはあるか?

 

「?一応は有るが…」

 

そりゃいい。日本じゃ杯交わすと兄弟になれてな。

これは俺とネロ帝の誓いってワケだ。

 

「成程…!ついでこよう!」

 

 

「「乾杯!」」

 

………よし。これで俺たちは仲間で友で兄弟だ。

猿夜叉丸、俺の幼名だ。夜叉でいい。宜しく頼む。

 

「……ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。

好きに呼ぶが良い。我が友よ。」

 

おうさ、ネロ。明日は任せときな。

アンタの道を開いてやるよ。だから、しっかりと神祖殿にかましてきな。

 

「……うむ!」

 

 

…………よし。じゃ、また明日な。

 

「……お!?あ、ああ。頼むぞ。」

 

あーネロ。これは俺の独り言なんだが。

俺はそうやって薬盛る奴より素直に好意を伝えられる方が好みだな。

毒物は大体効かないしね。ハハッ。

 

「!……………ッ!!!」ガバッ

 

 

その後はまぁ、あれだよ。

見せられないよ!ってな。

オチがこればっかりだって?何を今更。

 

 




夜叉君が良い男過ぎて違和感。


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猛進

やっちゃえアサシン!

市ちゃんの戦闘を書いてみた試験回。


「さて、二人ともしっかり捕まれよー。」

 

「はい!」「またこの馬に乗ることになるとは…」

 

文句言うな。コイツが怒ったらどうする。

俺らの仕事は機動力を活かして敵軍を食い破る事だ。

市を連れてくのは気が引けるが…サーヴァントである以上しかたない。

 

じゃ、立香ちゃん!マシュちゃん!ネロ!そっちは任せたぜ!

そして、羅刹!『全力』で良いぞ!俺たちの全力で道を拓く!

 

「Burrrrrra!!!!!」

 

 

 

見えた。前方にローマ軍。

士気が高い。高過ぎるな。

さてと、じゃ市ちゃん。離すなよ?

 

「勿論です!」

 

行くぜ…ダイナミックエントリー!

 

市を矢の上に乗せてそのまま射出する。

不安だが…ま、一応猩々殿 梟殿 お蝶殿のお墨付きだ。大丈夫だろ。

………大丈夫だよな…?

 

 

 

「わーい!……とぅ!」

 

「!?女の子!?全軍一時停止!前方に突如小さな女の子が!」

 

ガガーン!……女の子…女の子……

むう、人が気にしている事を…

 

「……あー…えー大丈夫かい?お嬢さん。」

 

あ、大丈夫ですー!ペカー

 

「(ドキンッ…)あ、ああ、ならいい。所でだ。ここは危険だ。オジさんに着いて来て…」

 

あ、そうだ!確か伝言があったんでした!

えーと、『周りの敵は皆殺しだ。隊長格優先。』成程!

じゃあ一人目ですね!

 

そう言うと市は何処からか取り出した手斧で正面に居た兵士の頭を叩き割ると、

突然の惨状に対応出来ない兵士達の横をすり抜けるように駆け回る。

通り過ぎた敵兵らが正気に戻り、市の方へと振り向くと…全ての首が、ズレた。

「んんっ。久しぶり過ぎて体が訛りましたね。」

これじゃお蝶様に怒られちゃいます…と市が悲観する中、惨劇は始まっていた。

先に市に触れられていた者から、次々と首が落ち、鮮血が吹き荒ぶ。

「どうしましよう…夜叉様に捨てられちゃいます…」

そう呟きながら数本の苦無を投合する。

数本……?否、数本だった。

数本の苦無は複数に分裂。有り得ない軌道を描きながら兵たちの首元を引き裂く。

この少女はタダの少女じゃない。敵だ!

真っ先に気付いた大柄なケントゥリオン…百人隊長が戦斧を振るう。

少女を殺めるのは心苦しいが、やむを得ぬ。

「とでも思ってるんですかね?失礼ですよ!」

しかし、それを容易に見切った市は爆発的な、しかし音無き踏み込みで避け、

その勢いのまま心臓を貫いた。しかし…

「ふぇ?まだ動けるんですか。」

ケントゥリオン、それは優秀な兵士の証。

ローマの為、せめて道連れに…

………ここで死ねていれば、あるいは良かったろうに。

「…秘伝・大忍び落とし。」

傷口を抉るように支点とし、空に舞う。

そして首を…打ち落とす。

しかしローマ兵とて静観はしていない。

市は即座に囲まれた、その数およそ百。

「……ふえぇ…いっぱいです…」

 

「…騙されるな!少女と思わず確実に潰せ。」

「「「「Yes sir!」」」」

 

全方位を盾で囲み、にじり寄る。

しかし市は慌てない。質の悪い盾なぞ恐るるに足らず。

忍びの斧は力ではなく技で振るう。

体の移動を交えた斧の一振は容易く盾を叩き割った。

驚愕する重装兵の隙を逃さず首元に刀を突き刺し、血を撒き散らす。

視界が血煙にそまり、何も見えなくなる。仕掛けた本人以外は。

血煙に紛れ、敵兵間を駆け回り、飛び回る。

そして仕込みが完了すると市は急停止した。

 

怒れる敵兵の波は市を押し潰さんと迫る。

かなりの膂力…それが罠とも知らずに。

先頭の兵が市に触れる刹那…最後尾の兵の首が飛んだ。

髪の毛並…しかし一本で人三人ほど吊るせる極細のワイヤーが張り巡らされている。

後は引けば全ての兵の首が落ちるように。

しかし市には力が足りない。ならば敵を利用するだけのこと。

気付いた時には既に襲い。後ろから迫る怒涛の波は止まらず、次々と血に染まっていく。

そして最後の一人の首が飛び…血に染まった少女は笑う。

 

「アハハハッ、これで夜叉様もきっと褒めてくれます!」

 

少女らしい無垢な笑みで。

 

 

 

 

一方の長政というと。

 

「やだ、俺の嫁さん強すぎ……?でも可愛い。」「ええ……」

 

惚気ていた。

だけではなく。

 

「Baalaaa!」

 

羅刹を操って戦線を引っ掻き回していた。

 

いや、あんなに強いとは…負けてられるか。羅刹、行くぜ。

 

そう言って槍と大太刀を抜く。手綱は取らずとも良い。

お互いにお互いを信ずる故に。

 

「ッオオオオオオ!!!」

 

それはただの突撃(チャージ)

しかし、げに恐ろしき巨馬と無双の兵が乗ればその一撃は既に戦略級。

一度の襲歩で百人近くが命を落とす。

それを何度も、何度も繰り返す。

軍を率いる隊長格を優先して撃破したため、残る雑兵は戦略も無い。

ただ目の前の災害から逃れるのがやっとであった。

 

大多数の兵を討ち取り、市と合流する。

 

最高だったぞ市ィ!!!

お互い血塗れなのは気にもとめず抱き締める。

……ただまぁ、あんまし無理はしないでね?

 

……色んな意味でこの夫婦を止められる者は居ないだろう。




市ちゃんつおい…

何なんだこの夫婦。



梟 猩々 お蝶

市ちゃんのNINJAとしての師。
SEKIROに似た人が居た気がするが多分気のせい。
大柄な体躯にも関わらず機敏な動きをする梟。
隻腕ながら義手で飛び回り、斧で頭を叩き割る猩々。
幻術を使うくノ一お蝶。

皆お市を孫のように可愛がるあまり、己の奥義を叩き込んだ。
結果生まれたのがNINJAお市ちゃんである!


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破壊者

(´・ω・`)


何だありゃ。

やけに強そうな…

あ、バーサーカー二人が突撃して…やられた。

ウッソだろお前。強すぎない?

止めてくれよ…と言いながら矢を放つ。

……おいおいなんの冗談だよ。一つを手で掴み取り残り二つはそれで打ち払ったと?

 

 

…ってオイ立香ちゃん!ネロ!話が通る相手じゃねぇぞ!

ああクソッ。間に合えッ…

 

涙の星(ティアードロップ)…』

 

全力で槍を投合する。

間を阻む残存兵やワイバーンを細切れにしながら槍は突き進む。

 

軍神(フォトン)…ッ!』

 

ギリ命中!危ねぇな。

そして間に合った。

羅刹!

 

そう命じると既に接近していた長政は羅刹に乗ったまま敵サーヴァントを撥ね飛ばす。

馬から上空に飛び矢を放つ狙いは剣。

勿論弾かれるがバランスを崩す。

 

そのまま剣を踏みつけ、回し蹴りでサーヴァントを蹴り飛ばした。

よし、武器は奪っ…!?

 

一瞬の隙で槍を奪われる。

うぇい。しまったな。

 

「お嬢ちゃん。その槍返してくんないかなぁ。」

姉さんから貰った大切な槍なんだよね。

 

……今更考えたら油断してたかもな。

何せ槍の構えは素人同然。剣みたいに構えるんだもん。

そう、剣みたいに。

 

だから気づかなかったんだよね。ハハッ。

 

軍神の剣(フォトン・レイ)!!!』

 

ハァ!?宝具!?宝具ナンデ!?

 

サーヴァントはそのまま長政の横を通り過ぎ、ネロ達の方に向かう。

ああ畜生が。逃げろお前ら!

市が即座に立香とマシュを回収。…が。

 

「ネロ!所長!何してんだよ!!!」

 

タイミングが悪過ぎた。ネロの保有スキルであり、生前から体を蝕む頭痛が突如

ネロを襲う。足を一歩動かすのも苦痛なそれに抗えず、ネロは膝を着く。

一方の所長は逃げようとしたがネロを置き去りにすると気付き、急いで引き摺ろうとしていた。

 

後一秒足らず、それで二人は間違いなく死ぬ。

………そんなの許せるのか?

 

 

 

 

 

いいや、駄目だね。

 

「羅刹ゥゥゥ!!!」

「Ballllllla!!!!!!!!」

 

乗ったって間に合わない。

だから、蹴らせた。

渾身の力で羅刹は長政を蹴り飛ばした。

 

 

 

 

 

あッ……がッ……

頭が……頭が、痛い。

光が迫る。避け…避けなければ。

しかし足は動かず、立つのも苦しい。

 

……………駄目だな。

ここが余の死に場であろう。

きっとそれが天命なのだ。

 

「ちょっとアンタ!何してるの!早く、早く!」

 

……もう手遅れだ、間に合わない。

お主も早く逃げよ。これは命令である。

 

「ハァ!?バカなの!?いいから!」

 

引かれながら思う。やはり間に合わぬな。

済まぬ夜叉よ。諦めぬ心を神祖とお主から教えて貰ったが、余には無理だったようだ。

 

さらばだ、我が愛しきローマよ。異邦からの友よ。

 

……そして、二度と私に戻る事の無かった少女よ。

そのまま余は…私は光に呑まれ…

 

「誰に謝ってんだよ馬鹿野郎が。」

 

 

る事は無かった。

聞き覚えの有る声。あまりに大きな背中。

 

「夜叉………。」

あの一撃を、その身で止めたというのか。

見れば、左腕は消し飛び、右腕ももはや使い物にならないだろう。

苦しい。心が苦しい。

済まぬ。済まぬ夜叉。

余が、不甲斐ないばかりに……

 

「言えよ。」

 

え?

 

「自分でどうしようも無い時に助け合うのが友達だろうが…ほら、言えよ。」

 

…………

 

「なぁ、皇帝ってのは無理しすぎて一般教養もねえのか?

有るだろ?助けて欲しいなら一言。それだけで良いんだぜ?」

 

言って……言って良いのか?

ズタボロの姿。それに鞭打つような残酷な言葉。

 

 

 

 

でも、一つだけ。

一つだけ言って良いなら。…ならば……

 

 

 

…………助けて。

 

「ハハッ、遅せぇんだよ。だがまぁ、いいさ。

俺は元々、そういう英霊らしい。」

 

 

 

「さて、何だったっけアンタ?誰かが言ってたような…アッティラだっけか?

ほんほんほん、文明の破壊者、げに恐ろしき戦闘王!いやぁ、お会い出来て光栄!」

 

「軍神マルスの力持つまさに神の中の神!わー凄ーい!ハハッ」

 

男は軽薄に、しかし冷酷にカラカラと笑う。

「……思うんだが、神ってのはどうしてこうも人の歩みを嫌うかね。

人が進歩を望むと押さえつけようとする。なんもかんも自分の手の内に収めようとする。」

 

「で、こっからは俺の自論なんだけどな?

そんなのって_____」

笑みが消える。

 

「……気に食わねぇよな?」

 

声色も、表情も、雰囲気も全てが変わる。

激しい怒りをひっそりと燃やし、夜叉は昂る。

 

「…俺はさ、我儘なんだよ。俺は、俺の家族が、仲間が、友が、

俺以外の俺に近しい奴らが皆幸せじゃねぇと気に食わねぇ。」

 

「今お前は俺の友を二人殺しかけた。だから俺は今不愉快だ。

不愉快…いや、腹ただしいな。うん、殺したいとさえ思う。」

 

「力ある者が力を誇示し、奪い去るのは結構。それは強者の権利だ、間違いなくな。

だが、自分達だけが強いと勘違いするのは良くない。アンタらも勿論リスクは負うべきだ。」

 

笑みも、怒りも、顔から消え、ただ無に近しい感情を写した顔に

激情に鋭くなる目を貼り付け、サーヴァント…アルテラを睨み付ける。

 

「………何を言っている。話は無駄だ、破壊する…!『軍神の剣』ッ!!!」

 

「世界を破壊する?面白い。煮るなり焼くなり好きにすりゃいい。

だがな、俺の家族に手を出すってなら話が違ぇな。」

 

刺し穿つアルテラの宝具はしかし、()()()()()に呆気なく止められる。

「何……!?」

 

「図に乗るなよ神様(クソヤロウ)が…人を舐めすぎだ。

…申し遅れた。俺の名は浅井長政、人呼んで鬼夜叉。

人を喰らい、殺し尽くす。そういう化け物()らしいぜ?

いやぁ、サーヴァント万歳。無辜の怪物万歳ってね。

尤も、俺の場合は神だろうが喰い殺すがね。」

 

ハハッ。

 

 

 




ブチ切れ夜叉君その二


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鬼哭啾啾

前書き思い付かない…

あ、タイトル読めましたか?
キコクシュウシュウと読みます。


「ッ……!!!」

 

無駄だよ。

アルテラの振るう槍を掴み取り、無理矢理奪い取る。

申し訳ない。素の筋力が違う。

 

夜叉の力。

人を、神を喰い殺す力。

それは圧倒的だった。

出力も、そして消費も。

 

「………!!!」

後ろに居た所長が膝を付く。

済まねぇ。魔力の消費が早すぎるんだわ。

 

元々バーサーカーとは魔力消費が著しい反面、爆発的な火力を誇る。

一方の長政は狂戦士としては異質な事に通常時は普通のサーヴァントと消費は変わらない。

何なら少ないまである…が。

現在の姿。鬼神である夜叉としての力を解放した姿こそがサーヴァントとしての基本状態。

バーサーカーの中でもかなり重い消費と引き換えに神にも届き得る力を得る。

そんなリスクのあるギブ&テイクである。

もし仮に…平凡の魔術師が扱おうものならば数分と持たないだろう。

しかし所長…オルガマリー・アニムスフィアは平凡とは言い難い才能を持っていた。

故に夜叉を発現させた。しかし、それでも後遺症無しの限界は一分と行ったところ。

 

つまりは僅かに輝く煌星の輝きなのだ。

 

そのまま全力で殴り付ける。

…人だろうが化け物だろうが、神だろうが殺して見せよう。

 

後十秒って所か。

「『悉く簒奪せし鏖魔』太郎太刀、次郎太刀。」

 

それは夜叉である時のみに使える力。

彼が生前に…鬼夜叉として殺し、奪った武器を呼び出す力。

 

懐かしいなぁ、真柄直隆、直澄。良い男達だった。

殺すのが惜しかったと思うくらいにはな。

 

…そんな怯えた顔すんなよ。ま、俺だったら同情しちまうだろうな。

だが、オレじゃ無理さね。

じゃあな。ハハッ。

 

アハ、ハハッ、ハハハハハ!!!

怯えた目で逃げようとするアルテラを切りつけ、叩きつける。

一回、十回、百回…既に事切れ、消失して尚。

神?この程度か?ハハッ!

弱い、弱すぎるなぁ!

 

「………ッ………ァァ……」

 

何だ?この女は、邪魔だなァ。

そう思って、太刀を振り下ろし…刃が刺さる直前。

 

腕を掴まれた。

…誰だ?

 

「ストーップ。お前が殺ろうとしてんのも俺の家族だ。

チョットおいたが過ぎるな。ハハッ。

 

 

 

寝てろ。」

 

そう言って頭を殴り付けられた。

ああ、畜生。

たまには代われよ……優等生が……

 

 

 

 

 

…………戻れた。

これだから嫌なんだよ…

だがまぁ、これで大将戦は勝ちだろ。

そのまま意識は微睡みの中に吸い込まれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後?拠点で目覚めて帰っただけだな。

 

嫌、嘘だ。

無理した事にキレたネロと市に散々絞られた。

止めてください死んでしまいます。

 

…さて、そろそろ退去か。

何だよネロ?そんな顔すんなって。

 

「やはり…帰ってしまうのだな…」

 

仕方あるまい。本来俺は、俺たちはこの時代に居るべき存在じゃない。

つまり異変の大元さえ戻りゃ全部元通りって訳さ。

 

「しかし…余はお主らの事も覚えておられぬのだろう?」

 

……まぁな。

 

 

………ま、気にすんなよ!

覚えてようが覚えてなかろうが、関係無いさ。

俺はお前の友だ。それだけは絶対に変わらんさ。

だから、もし、お前が本当に困って、誰にも助けて貰えないなら。

思いっ切り叫べ、「助けて」ってな。

安心しろ、何時、何処で、何があろうとお前を助けに来てやるさ!

 

んん…時間か。

じゃあな、ネロ。

また会おうぜ。

 

「………………うむ!」

 

やっぱり別れは笑顔が一番だな。ハハッ。

 

 

 

 

 

 

 

人理定礎値B+
第二特異点

 

 

定礎復元

 

 

A.D.0060 永続狂気帝国 セプテム

薔薇の皇帝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




太郎太刀次郎太刀GETの経緯。

「「これより先には行かせぬぞ浅井長政!この裏切り者がァ!!!」」
結構結構。で、誰を行かせないって?
まずよぉ、もうお前らの主は討ち取られたんだぜ?
どうだ、こっちに付かねえか。待遇は応相談だぜ。

「我らを愚弄するか!」「武士として恥を知れ!」

知るかよ。誇り?名誉?死んだら終わりだろうが。
ま、知ってたけどね。にしても俺よりデカいやつは初めて見た…

「「…せやァ!!!」」

おっと、お盛んだね。発情期かな?
まぁ一回落ち着けよ。
煙幕をバラ撒いて目眩ましをする。

「ッ…兄者!何も見えませぬ!」「落ち着けい!タダの煙だ!」

煙に紛れて強襲してくるかと思ったが、長政は何もしない。
二人が不審がりながらも煙が晴れるとそこに居たのは…

「はいストーップ!…動いたらチョッキンだぜ?」

狂ったような笑みを浮かべ、刀を青年の首に突きつける長政と、直隆の子真柄隆基であった。

「申し訳ありませぬ、父上…」
「ッ!!!貴様…」

動くなってイッタよな?
太腿に刀を突き刺す。

「ア"ア"ガ!?」

ほら、降伏してくれよ。
俺だって前途有る若者を殺めたかないんだ。
……んん、それでいい。刀は捨てたか。
うんうん。じゃ、返すぜ。
俺は隆基を二人のとこへ押し渡すと…即座に刀を拾おうとした。
ハハッ。やると思ったよ。
だが、二手遅れた様だな。
手を掲げ、振り下ろす。

「撃てーーッ♪」

刹那、隠れ潜んでいた銃兵が次々に現れ、発砲する。
良いぞ、面だ面。面で制圧しろ。

隙間の無い制圧射撃に三人は為す術もなく倒れた。
元より長政に交渉する気は無い。
かと言って態々喧嘩の強い相手と戦う理由もない。
これは戦いでは無い。駆除なのだから。

……お、直隆さァん。まだ生きてんのか。
まぁ、息子さんは残念だったがね。

「………!!!!!!」

満身創痍、最期の抵抗。
直隆は長政に掴み掛かろうとした。
が、
長政は二振りの大太刀を拾い上げると、直隆を貫いた。
成程、太郎太刀と次郎太刀か。
いい武器だね。貰ってくよ。
脱力する直隆を後目にそう呟く。

「……誇りも無い…鬼めが…」

そんなに褒めんなよ。照れる。

「……生涯…否、死して尚…呪われ続けるがいい…鬼…夜叉…」

ハハッ。やってみろよ。
…凡百な人間風情が。



太郎太刀・次郎太刀

二振りの大太刀。長政が真柄兄弟を討ち取った際に簒奪したもの。
兄弟の恨み節が込められており、鬼夜叉に対する強力な呪いがある。
また、鬼夜叉が奪った武器故に長政には扱えない。
対峙する相手が神の類…もしくは魔性の類である場合、
持ち主に耐え難い苦痛、そして莫大な力をもたらすと言う。妖刀。

おまけ・ダクソ風↓

鬼夜叉が奪いし武器は怨嗟を纏いし妖刀なりや、
唯人のまま扱うならば名を捨てよ、誇りを棄てよ。
怨嗟の炎に焼かれる前に。


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成長

ようやく三章だよ……なんてな!

茶番。本編に絡む内容の為こっちに。


…………ハァ……ハァ………

ああ、何て強敵なんだ。

今まで積み上げてきた多少の自信って奴がボロボロになっちまいそうだ。

 

なんという重圧。なんという手強さ。

しかし諦めるワケにはいかない。

一回…また一回と数を重ねていく。

 

腕が震え初め、呼吸が困難になる。

 

だがよ…諦めて…諦めてたまるか!

最後のラッシュ。呼吸すら忘れるほどの高速駆動。

 

そしてとうとうその時は訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一万ッ!!!!!!』

 

「煩い!暑苦しいのよ!」

 

(´・ω・`)

 

 

 

ああ、済まない。今俺達が何をしてるかと言うとだな。

カルデアのトレーニングルームにて汗を流しているという事だ。

無駄?早く人理修復しろ?詫び石はよ?

まぁ待てよ。健全な精神は~何て高尚な事は言わないがな、適度な運動は必要不可欠だぞ?

 

「ぐむむむむ…」

 

「先輩!ファイトです!」

 

ああ、立香ちゃん。ベンチプレスとかのウェイト系は無理なくな。

腰やら肩やらをいわしちまったら意味が無い。

 

……まぁ、うん。気にするな。別に20kgを上げられなくても生きてけるから。

それに女の子だしな。

 

ああ、マシュちゃんは100kgから行こうか。

大丈夫大丈夫。仮にもサーヴァントなら大丈夫さ。

 

所長ーそっちは大丈……所長………

 

「何よ!」

 

………そのダンベル5kgだよな。

 

「………」

 

上げてみて?

 

「……ッ~!ッ~!!」

 

所長…………

 

「辞めなさい!そんな目で見ないで!アンタ達もよ!」

 

……まぁ、女の子……だから、な。

 

「凄く哀れみの目を向けられてる気がするわ…」

 

所長、ちょっと失礼するぞ。

 

後ろからオルガマリーの手を取り、ポーズを取らせる。

「え、あ、ちょ、何すんのよ!!!」////

 

落ち着け落ち着け。ハンマーカールはこう、肘を固定してな……

 

《十数分後…》

 

「ッ………ぐぐぐッ……」イッカイ

 

おーよしよし。一回出来たじゃないか。

 

「はぁ………はぁ………」////

 

大丈夫大丈夫、一回出来れば続くさ。のんびりと積み重ねよう。

 

「そうだよ所長!一緒に頑張ろう!」

「煩い!そもそも私は魔術師なのよ!?」

 

『いやぁ、程々の運動は健康のためにも必要だよ?マリー。』

 

館内放送を通じてロマニが言う。

 

「…まぁ、先輩も所長も少しづつコツコツと挑戦しましょう。」

 

うんうん。今日は疲れてるだろうから挫けずにまた()()挑戦しような。

そう()()

 

再度(サイド)

 

サイド………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヌゥッ!(迫真)

 

ハァッ!(緊迫)

 

 

 

サイドチェストォ!!!!!!(天下無双)

 

刹那、長政の着ていたトレーニングウェア…いや、有り体に言えばジャージだが。

が弾け飛んだ。内側から。

そしてそこには…合成写真のようなアンバランスさを誇る肉体が聳え立っていた。

 

「…………」

「ひゃぁ………」////

「…凄い!!!カッコイイ!」キラキラ

 

盾兵の半英霊は目の前の男が半裸になった事の羞恥に顔を紅潮させ、

見習い魔術師は肉体美に目を輝かせた。

 

「触ってもいい!?」

 

構わんよ。

 

「…………わぁ凄い!意外と柔らかい!」

 

硬い筋肉ってのは見た目寄りだからな。

実用を考えるなら筋肉は軟らかくしなやかにするのが一番だな。

……本当に苦労したな…あの頃…

 

『さぁ!食事を終えたら鍛錬です!全身を隈無く破壊しましょう!』

『お疲れ様です!さぁ食べたらお風呂に入りましょう!』

『よし、一日も終わりですね。明日も早いですから早く寝ましょう!』

『但し私の相手をしてからですが!』

 

…………泣きそう。

どんなスケジュールだったっけ…

 

5時…起床

5~6時…朝練

6~6半…朝食

7~13時…鍛錬

13~14時…昼休憩

14~17時…鍛錬

17~20時…入浴と勉強

21~(日による)…《見せられないよ!》

 

 

 

今となっては懐かしいな。

…と、そういや所長は?

 

そう、先程から所長は一言も言葉を発していない。

故にツッコミ不在の地獄絵図となったのだが…

それもそのはず、一番近くに居たオルガマリーにとって、

突然の男の裸…それも好意的に見ている…は刺激が強すぎた。

 

「………きゅう。」

 

「「「所長ォォォ!?」」」

 

所長がやられた!メディーック!衛生兵!サヴィデータ!何でも良い!早く!

 

 

 

 

 

 

ああ、何かどっと疲れたな。

立香ちゃん、マシュちゃん、飯行こうぜ。

 

「ちょっと待って下さい夜叉様!」

 

お、市ちゃん。どしたの?

 

「えっとですね、職員の皆さんから『ぷろていん』と言うのを教えて貰いまして。」

 

ふむ。

 

「それでですね…」モジモジ

 

あ(明察)

 

「『ぷろていん』と言うのを作ってみました!」

 

 

 

…それは、プロテインと呼ぶにはあまりに禍々し過ぎた。

黒く

淀み

オーラを放っていた。

そして大雑把過ぎた。

それはまさに冒涜的だった。

 

(ヤバいヤバいヤバい!なんだよアレ!プロテイン!?プロテインナンデ!?)

(何か生えてるよね!触手みたいの!)

(一体どうやったらこんな物が!?)

 

ちなみに上から長政、立香、マシュである。

 

(((確実なのは一つ、アレを飲んだら、死ぬ。)))ゴクリッ

 

即座に断ろうとした立香。しかし気付く。

 

「…………」パァァァ

 

眩しい。何て純粋な笑顔。

この幼女(中身は三十路)一切悪意無くやっている。

グッ…断りづらい…

 

『ファミチキください』

『こいつ…直接脳内に…ってアレ?』

『念話だ。まぁいい。よく聞け立香ちゃん、マシュちゃん。』

『『…?』』

『ここは俺に任せて先に行け!』

『!?そんな!出来ないよ!』

『そうです!幾ら長政さんでもあんなの…』

『成程、確かに心配するのは分かるが…別にアレを飲み干してしまっても構わんのだろう?』

『『……!』』

『行け!後から追いつく!』

 

『ゴメン、長政さん!』

『ご武運を!』

 

 

「あれ?二人はどうしたんですか?」

 

いやぁ、市ちゃんの料理を一人占めしたくてね。

二人には遠慮してもらったんだ。

 

ハハッ、じゃあ頂くよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日…新たな特異点が発見され、カルデアは大騒ぎに。

そして職員が長政らの部屋に赴くと無惨な姿の長政が発見されたのだった。

発見者曰く、その顔は満面の笑みだったと言う。

特異点……見つかったのか……

 

「…いや、アナタ大丈夫なの!?」

 

全然元気だよ。ほら、コフッ!(吐血)

まぁ、冗談はさておき。

召喚されるまでに頑張って回復します。はい。

という訳で今回の解説コーナーはお休みです。寝ます。

ご講読ありがとうございましたー…

 

 

 

「という訳にも行かないので。」

 

ここから先は引き継がせて貰います。

ん?俺は誰かって?通りすがりの夜叉のお兄さんだよ。

登場が雑?諦めろ。

 

気を取り直して今回の特異点はオケアノス!

オーケアノスと言えば神々の親とも呼ばれるよな。

オケアノスはかつての世界の考え方に於ける最果ての海。

征服王イスカンダルが目指し、遂に辿り着かなかった地でもあるよな。

 

今回の特異点は海。船乗りのサーヴァントが出ると思われるな。

船乗り………海賊やら開拓使辺りか。

 

黒ひげ『エドワード・ティーチ』海賊紳士『バーソロミュー・ロバート』

海賊海兵『フランシス・ドレーク』とかな。

後は誰だろう?世界一周の『マゼラン』とか

コンキスタドールで有名な『クリストファー・コロンブス』辺りかな?

 

後は…オケアノスだから…神話の人々とか。

んー今の長政でヘラクレスに勝てるかな?無理?

まぁ、まさかピンポイントで出ないだろう。HAHAHA。

じゃ、ここいらでタイトルコールをどうぞ!

お疲れ様でしたー。

 

人理定礎値B+
第三特異点

 

 

 

 

A.D.1573 封鎖終局四海 オケアノス

嵐の航海者

 

 

 

 

 

 

 




顔文字君久し振り。

長政君は市ちゃんの為に笑顔で冒涜的な料理を完食できます。




プロフィール更新

長政

体重89kg →up!95kg

筋力B+++→up!筋力A+++

中途半端なのを繋げたので長め。
長政君の全盛期は三十代半ば。召喚時は十代後半。




全盛期の長政君は体重120kg身長195cmの巨漢。少しづつ近付けて行きます。


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大海原

オケアノスー!

ご指摘を受けて説明不足でしたので説明をば。

長政君の体格が変わったのは再臨モドキです。

説明不足で不快な思いをさせてしまった人に深くお詫び申し上げます。


ハァイ、ロマニィ。

 

『どうしたんだい?』

 

……こちらスネーク、ヘイロー降下を開始する。

 

『ラジャー。鳥になってこい!』

 

…ま、冗談はさておき。

帰ったら殴らせろ。

 

俺…いや、俺と市はいつかと同じ様に空中から落下したのだった。

 

スーパーヒーロー着地ィ!

幸い、下が砂だった為か何とか膝腰は守られた。

……あれ?所長の霊圧が…消えた…?

 

『あー済まない長政君。所長達と大分違う座標に送ってしまったらしい。』

 

オロすぞ。

 

『そんな怒らないでくれよ!幸い、立香ちゃん達は船を手に入れたらしいからそちらに向かわせよう。』

 

そりゃ有難い。こんな大海原どう移動したものか考えてたとこだ。

ん、市ちゃんどしたの?

 

「見て下さい!貝殻がいっぱいです!」

 

キラキラした目で貝を掲げてこちらに駆けてくる。

がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛い゛ぢちゃん゛

 

…さてと。つまり俺達は暫く足止めくらうって訳か。

さーて市ちゃん、取り敢えず野営地を…!

伏せろ!

 

長政が市に覆い被さると同時に巨大な斧が先程市の居た場所を空振る。

 

「えうりゅあれ、まもる!このあすてりおすがみなごろしにする!」

 

アステリオス……?知らん名だが…。

 

目の前の大男はそれ以上語らず、斧を振りかぶる。

物凄い膂力だ。筋力はAはあるな。

それを受け止めながら長政は思う。

アステリオス……アステリオス………何処かで、何処かで見たはずだ。

思い出せ、奴は何者だ。アステリオス…『雷光』の名を持つあの化物は……

 

「…ミノタウロスか。」

「ッ!!!」

 

ビンゴ。成程、牛面の面に馬鹿力。二振りの斧は迷宮(ラビリンス)の代名詞。

まぁ、それはいいさ。

お前が化物(ミノタウロス)でも雷光(アステリオス)でも。

どうだって良いんだ。そんな事は。

 

お前は市を傷付けようとした。

 

それだけだ、それ以外は些事に過ぎない。

だからさ。

 

 

 

死ね。

 

 

サーヴァントの力をあらん限りに解放した抜き打ちがアステリオスを襲う。

怒りのままに振り抜かれた打刀を防げず、アステリオスは一瞬で血みどろになる。

が、しかし、それで止まる両者では無い。

アステリオスは両手の斧を上段から振り下ろした。

地をも割らんとする狂戦士の一撃。

それを長政は真正面から受け止めた。

通常時の膂力において、アステリオスはサーヴァントでも指折りの力を持つだろう。

だが、既にブチ切れた長政はそれすら上回る。

+++。それは瞬間的に肉体の限界を突破する証。

そのまま斧を掴み、アステリオスを投げ飛ばす。

反動は殺し切らず、自らは中空に舞い上がる。

 

「ッ………!!!!」

 

矢…というよりは杭に近い物体が都合四度。

1,2を辛うじて弾くも三射目が面を切り裂き、四射目がアステリオスを地に縫い付けた。

 

まだ生きてやがる。

打刀を抜き、首を撥ねようとした刹那___

 

「止めて!連れて行くなら私を連れて行けばいいでしょう!?その子に手を出さないで!」

 

アァ?誰だお前…「えうりゅあれ!」うおっ!?

 

突然暴れだしたアステリオスに投げ出され、地に叩きつけられる。

野郎…

 

「落ち着いて下さい夜叉様!夜叉様!」

 

その声と共に手裏剣が飛来する。

死角からのそれを食らった俺は気付いた。

 

…痺れ薬……あれ?手裏剣………?

 

「夜叉様!夜叉様!」

 

…………………………

 

済まない。正気に戻ったらしい。

 

 

 

青年説明中………

 

 

成程。

つまりアステリオスはキモオタに狙われたエウリュアレを守ってたのか。

知らなかったとは言え済まなかったな。

 

「う……きにするな…それに、ぼくもころそうと、した。」

 

…何だお前、いい子じゃねぇか。よしよし。

 

で、エウリュアレ様よ。何だってアンタはここに?

神霊クラスどころかアンタは純度100%混じりっけなしSAN値直葬の女神だろうに。

 

「何か文字違く無いかしら?…まぁ、いいわ。私にだって分からないわよ。」

 

雑だなぁ…

 

その後何とか立香ちゃんらと合流出来た。

…まさかドレーク船長をアッシー君にしてるとは…

立香ちゃん度胸有るよね。御先祖様複雑だよ。

 

ああ、ドレーク船長。ここまでウチの子をありがとうな。

お礼と言っちゃ何だが…ほらよ。

 

「…?何だいこれは?」

 

胡椒。500gの。

 

「!?!?!?」

 

じゃ、これからもよろしく頼むよ。

 

 

 




何か展開が無理矢理な気もする。


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黒髭

デュフフwwが誰よりも似合う男。


「デュフフフww漸く追い付きましたぞー!」

 

うっわぁ………

何と言うか…うん。

生理的嫌悪感の擬人化というか…

駄目なタイプのオタクと言うか…

 

市に汚ねえモンみせんじゃねぇよ。

 

腰から抜いたリボルバーを撃つ。

 

「ギョエエ!何で!?なんで拙者撃たれたんでゴザルか!?」

 

チッ…外したか。

反対に船から狙撃される。

…三発。全部の弾を切り落とす。

 

「あのーアン氏?さっきからこちらに当たってるんですけど…」

 

「あら♡すいません、つい本心が♡」

 

「今本心って言ったよこの(アマ)!反対!暴力反対!ギャー!」

 

正確な射撃だ。だが、弾が遅過ぎるな。

俺に当てたいなら最新式のMGでも持ってくるんだな。

銃弾を処理しながら反対でチビ女のカトラスを止める。

まだまだ、小さな島国の侍舐めんじゃねぇよ。

尤も、鎧は着てないけどな。

あれジュラルミンだからさ…海水で錆びるんだよね…

 

チビ女を回し蹴りで向こうの船まで蹴り飛ばす。

 

「ごふっ!……うーん。アン、あの男強いよ。」

「ふふっ、よく見れば良い男じゃない、欲しくなって来ました。」

 

海賊らしい考え方だなぁ!?ま、生憎と断らせてもらうよ。

そもそも俺はな…

市を抱き寄せながら言う。

「夜叉様!?」

「残念ながらこの商品()売り切れ(ソールドアウト)だ!ハハッ!またの御来店を!」

 

女海賊は答えず射撃を再開した。

…六発。しまった。リロードしてなかった…仕方ない。

 

懐から抜いたリボルバーを五連射、的確にアンの放った弾丸を叩き落とす。

と同時に槍持ちの中年男を殴り付けて距離を取らせる。

知ってるか?ガン=カタって言うらしいぜ。

 

おおっと、しまった、さっきの弾が船体に……

 

痛み分けってとこか。撤退だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……船の修理で何やらの島へ。

 

「Gyooooo!!!!」

 

………また翼竜か壊れるなぁ…

まぁいいさ。素材になぁれ!

 

ヒャッハーァァァ!!!

 

撃ち落として死ぬ翼竜はタダの翼竜だ!

矢を避けて生き残る翼竜は良く訓練された翼竜だ!

フーハハッハー!まったく戦場は地獄だぜ!

 

「夜叉様ー。」

 

お、市ちゃん。どったの?

 

「熊さんのお人形さんです!」

 

何これ。時代的にはオーパーツでは?

 

「…………あのーお嬢さん?」

 

キェアアアアア!!!シャァベッタァァァァァァァ!!!

 

「とても可憐ですね。どうです?そこでお茶でm…」

 

死ね。

 

「ギャァァ!千切れるー!千切れちゃうー!」

 

何なんだコイツは。人の嫁さんに色目使ってんじゃねぇ。

……サーヴァントか何かか?にしては弱すぎるが…

 

 

 

 

……こいつがオリオンなのか…

性格はまぁね、それっぽいけど。

一つ分かった事が有るとしたら、

多分、コイツとは仲良く出来る。

 

 

 

 

 

「……………」

「……………」

 

「「…!」」グッ!

 

何となく、何となくだけど。

もの凄く同族の香りがする。

 

 

竜狩りも終わった。船はむしろ強化されたくらい。

頭数で勝ってる以上、ラムアタックからの乗り込みが理想なんだが。

どうにかして乗り込みの隙が欲しいな…

それか時間そこそこくれれば一撃で沈める自信もあるよ?俺。

尤もサーヴァントはあのオタク以外乗ってない船じゃないとだけど。

 

…………成程?それなら、まぁ、俺としちゃ楽なんだけどね。

というかオリオンはそれで良いのか。

 

「仕方ねぇだろー?やらなきゃアルテミス怒るしー?」

 

了解。正直そっちの戦力が不安だが…船長に任せたぜ?

報酬分くらいは働いてもらうからな。

 

 

 

 

 

 

「船長!黄金の鹿号です!女神さまも居ます!」

 

ほう?正面から突撃?

舐められたモンだ。

 

「デュフフww、それじゃタダの的ですぞw長距離砲用意!

アン氏は射撃をお願いでござるw」

 

凄まじい海戦の幕開けだった。

しかし。

 

 

 

…そんなものか、フランシス・ドレーク。

俺は女神の矢が刺さり反旗を翻した部下を切り捨てながら思う。

違う、俺が焦がれた女はそんなモノじゃ無いだろう?

見せてみな、その策をよ。

 

「敵は射撃しながらのラムアタックを狙っている模様!

長距離砲による迎撃を開始します!」

 

「……?報告、敵サーヴァントが一人少ないような…」

 

………一人少ないだと?

一体誰が……

 

俺の思考はそこで停止した。

何故かって?爆散する大砲と甲板に気が付いたからさ。

 

 

 

 

 

 

 

…第一射、先頭から三番目の砲に命中確認。

次弾は?

 

「えーと、ちょい待て。…真ん中の大砲の右下に弾薬庫、当てられるか?」

 

余裕だな。

 

次弾、ハートショット、ヒット。

連鎖する爆発の反動で船体が揺れ、平行で一瞬止まる。

マストショット、ヒット。

マストを爆破し敵船の航行能力を奪った。

 

「にしても…よくそんなモノ撃てるよなお前。」

 

そんなモノったって、タダの杭だぜ?

ちょっと刺さった後に起爆したりするけどね。

 

海の上歩けるってのは意外に便利だ。

奇襲も狙撃も思うがままだな。

さて…黄金の鹿号がカチ合ったな。移動するぜ。

 

 

 

 

 




日本の長弓の射程はMAXだと何百mらしい。
サーヴァントならキロ単位の狙撃も余裕だな!


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アルゴノーツ

ヘラクレスゥ!!!


……一手遅かったらしい。

船に乗っていたヘクトールが黒髭を裏切り、聖杯を簒奪。

ヘクトールには女神さまを攫われ逃げられたと。

 

やられたね。

黒髭が何やらカッコイイ事を言ってるが俺にはそんなヒマは無い。

ヴァイキングの海図とヘクトールの向かった方向を計算して目的地を定める。

…海賊船?煩い、こっちは忙しいんだよ。

無造作に矢を放ち船体を吹き飛ばす。

幸いというか…航行力はこっちの方が高い。

直線で追うしかねぇか。

 

ドレーク船長の提案に乗り、嵐を突き進む。

ワイルドハントって奴か、悪かない。

この後幽霊船に出会い、攫われて石化されたテトラ船長…もといゼ〇ダ姫を救出し…あれ?

間違えた。

夢幻の砂時計は名作だと思います。

 

「アナタ随分と余裕ね!」

だってねぇ。この辺単調でさ。

ドレーク船長の乙女ボイスくらいしか見所さんが居ないんだもん。

 

幽霊船にビビる乙女ドレーク船長を鼓舞しながら嵐を超えた。

予想の五割増くらい反応生娘だった。ドレーク船長やっぱり彼氏いない歴=年…

ながまさ は めのまえが まっくらに なった!

 

閑話休題。

 

まぁさ。ヘクトールに追いついたんだよ?

追いついた。

だがさ、

 

 

 

 

ヘラクレスが居るのは流石に予想外だわ。

 

 

 

 

「■▪■▪▪▪▪ーーーッ!!!」

 

「勝てないさ!勝てるものか!このヘラクレスはあらゆる場所であらゆる化け物と戦った。

敗北などなく、最後には神にまで至った男!それがヘラクレスだ!」

 

知ってるよ!十二の試練に射殺す百頭!

話せば話す程馬鹿らしい、

ぼくのかんがえたさいきょうのえいゆう様だよな!イアソーン!!!

 

しかも竜牙兵邪魔!ああもう。

一度武器をしまい、どこかの大学を彷彿とさせるタックルで船から叩き落とす。

 

面妖な変態英雄(チーター)共め…

女神さま奪還したんだからさっさと逃げるぞ!

ここが正念場だ!押し返せ!

 

……とは言えだ。

 

「■▪▪■▪▪▪▪▪!!!」

 

コイツをどう処理したものか。

 

今のとこはギリギリ捌けてる。だが、正直もたないな。

…ッ!しまった!エウリュアレ!

突然ターゲットを変えたヘラクレス。

エウリュアレをその斧剣で叩き潰そうとする。

 

それを止めたのは、一人の怪物(討ち取られる者)だった。

 

アステリオスはその剛力でヘラクレスの命を一度奪った。

しかし、未だに張り付いて動かない。

驚いた。筋力でアレに張り合うか。

 

「ころ、した、ころした、ころした、ころした!なにもしらない、こどもを、ころした!

 ちちうえが、そうしろって。ちちうえが、おまえはかいぶつだからって!

 でもぜんぶ、じぶんのせい、だ。きっとはじめから、ぼくのこころは、かいぶつだった

 でも、なまえを、よんでくれた。みんながわすれた、ぼくの、なまえ…!

 なら、もどらなくっ、ちゃ。ゆるされなくても、みにくいままでも、ぼくは、にんげんに、もどらなくちゃ…!」

 

アステリオス…お前……

 

「ますたぁ、も、なまえ、よんでくれた。みんな、かいぶつだと、きらわなかった!

 うまれて、はじめて!うまれて、はじめて、たのしかった…!

 ぼくは、うまれて、うれしかった!

 えうりゅあれを、よろし、く…!ぜんぶ、えうりゅあれの、おかげ、で――」

 

 

ぼくは、えうりゅあれが、だいすき、だ!

 

 

次の瞬間、アステリオスはヘラクレス諸共ヘクトールの不毀の極剣に貫かれる。

不毀の極剣のランクはA。つまりヘラクレスをも殺しうる。

これで漸く二度命を奪った。

 

しかしだ。

アステリオスを犠牲にして漸く二回。

大英雄にはまだ十一の命がある。

そして()()()()()()()()()()()

 

………アステリオス。

良い男だよ、お前は。

ホント、残念だ。

 

だが、安心しろよ。

お前の心意気はしっかりと受け取った。

 

市ちゃん。悪いが、所長達を頼む。

ん?まさかぁ、死んだりしないよ。

もしかして俺が負けると思ってる?残念だな、ハハッ。

()()()()()()()()で、()()()()()()()()()、俺は市に語り掛けた。

信用してくれよ。必ず戻って来る。

だから錆びないように武器は預かっといてくれよ。

 

所長ちゃん、そんな顔すんなよ。

「!」

 

「……別に奴らを倒してしまっても良いんだろ?な?」

 

そして俺は不毀の極剣を拾い上げ、ヘラクレスに向き直ると。

 

「お前には水底がお似合いだぜ!」

そう言ってヘラクレスを海に叩き落とした。

これだけじゃ時間稼ぎにならんからな。

槍を持ったままアルゴノーツに逆に乗り込む。

 

『悉く簒奪せし塵魔』、んーいい武器だね。

ヘクトールの宝具 不毀の極剣を俺の宝具として上書きする。

ちょうどその頃黄金の鹿号が撤退を始めた。

良いねぇ、退路の無い戦いってのも悪くない。

 

「はぁ!?何なんだお前は!?こんな事をして何になるんだ!?」

 

分かんないか、ま、分からなくてもいいさ。

俺に変更はない。

 

 

安っぽい言い方だけどさ、アンタらには消えて貰わないとならない。

……ま、やるんなら本気でやろうぜ!その方が楽しいだろ!?ハハッ!!!

 

 

 



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妻として

市ちゃん可愛いヤッター。

市ちゃんの視点からスタートだよ。


……どうにか逃げ出す事に成功した。

そこで新たなサーヴァントを仲間に加え、体制を立て直す事となった。

!所長さん、落ち着きましょう!

大丈夫、大丈夫です。

夜叉様は嘘は付きません。スグに追い付きますよ。

 

だから____今、ここにヘラクレスが迫っていても。

夜叉様は必ず帰ってきます。

 

そう。私に出来るのは待つことだけだから。

戦いに出た所で、景虎義姉様のように強くはない。

信長姉様の様に夜叉様の隣に並ぶ資格も無い。

女性らしい魅力では帰蝶義姉様とは比ぶべくもない。

 

私に出来たのは…ただ、待つ事。

たったそれだけ。それだけの事。

でも、それでも。

 

 

 

『夜叉様、私は貴方に何をしてあげられますか?』

『ん?何って………何もしなくていいんだよ。』

『え……』

『ああ、いや!悪い意味じゃないよ!?あのなぁ、なんというか…その…』

 

 

『居てくれるだけでいいんだ。それで、それだけで俺は頑張れる。』

『死にかけても。血に狂っても。……いや、きっと死んでもだろうが。』

『俺にとっての守るべきものが。帰る場所が有る限り、俺は頑張れるからさ。』

 

『だからそう、気に病むな!そうだな……あー……』

今でも鮮明に思い出せる。

彼のあの笑顔を。少し照れながらだったが、今までで一番の笑顔を。

 

『…()()()()()()()ありがとうな、市!』

 

ああ、思えばあの時。

きっとあの時私は再び恋に落ちたのだろう。

ハハハ、夜叉様はそれを知ったら笑うだろうか?

…段々と思い出す。

 

『大丈夫か?』

初めて会った時。

『吉法師ィ!!!』

姉様の紹介で改めて面会した時。

『ッ~~!!!ッ~!!!……ありがとう、本ッ当…ありがとうな市……!』

初めて産まれた我が子を見て滝の様に泣きながら私に感謝の言葉を送ってくれた時。

『人の家族に手ぇ出すとはいい度胸してんな!?アァ!?』

私と娘が攫われ、鬼のような形相で救ってくれた時。

『それで吉の奴さ…本当に世話が焼けるよな…。』

遠出して二人(信長,景虎)と会う度、楽しそうに起きた出来事を語る時。

~~の時。ーーの時。

なんだ、何が再びだ。笑わせる。

何度も、何度も恋に落ちているじゃないか。

なんて滑稽なんだろうか。

 

 

…さて、私に出来る事を出来るだけ。

 

「さぁさぁ!皆さん頑張って下さい!『天真爛漫の美姫』(せんごくいちのほがらかさ)!」

皆を応援する。それくらいしか私には出来ない。

 

「■▪▪▪▪▪▪ァァァッ!!!!!!」

 

「しまった、突破された!退避しろ!」

いや、もう間に合わない。既に斧剣は眼前に迫り来る。

でも、恐怖は無い。何故なら___

 

「私は夜叉様を信じてますから!!!」

「………という訳だ。いやぁ、ホント、男冥利に尽きる。

ああ、それはそうと一つ聞きたいんだ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テメェ、ヒトの嫁さんにナニシテンダ?」

 

ブチ切れた長政の拳は、ただそれだけでヘラクレスの命を一度奪った。

 

 

…そして私は今日もまた恋に落ちたのだった。

 

 

 

 

さて!今日の鬼夜叉と呼ばれた男はっじまっるよー!

え?もう1200文字は読んだ?またまた冗談を…一体この俺抜きで誰がこの小説の主人公を務める?

ああ後、独り言なんだけど、やっぱりウチの嫁さんは最高に可愛い。だろ?(威圧)

 

さてと、どうやって俺が生き延びたかって?

そりゃ、お前、イアソンらからは相討ちに見えるようにアイルビーバックしたんだよ。

因みに流れでヘクトールは討ち取った。

そしてヘラクレスだが…

 

「いよいよこれで後が無くなったなヘラクレス!」

 

11回(リーチ)。さぁて。色々と言いたい言葉があって迷うが…無難なのを言うなら、

死ね。

 

武器もそろったし、何よりこっちには市ちゃんが居る。

負ける気がしないね。

市ちゃん、よく頑張った。ありがとうな。

 

ああヘラクレス。一つ言っとく。

守るものがある時の俺は強いぜ?具体的には4倍ぐらい。

 

 

 

…ヘラクレスは狂気の中、ただただ困惑した。

この敵は自分よりも劣るはず___なのに何故殺せない?

相手が武器を持った。斧剣で叩き潰す。それをいなされる。

一合、二合、三合……有り得ない速さ、それも加速させながら両者は打ち合う。

そして気付いた。

この男は、自分よりも格上だ。いや、正しくは今格上になった。

今でこそ打ち合えているが、直に均衡が崩れ、自らは敗北するだろう。

敗北………?負けるのか。

この私が………

 

――【なるほど、君が『     』か】

それは欠片程の記憶。

――【素晴らしい、羨ましい! 確かに噂通りの化け物だ!】

――【安心してほしい。私は君を優遇し、使ってみせる】

――【私……オレと共にいる間だけ、君は化け物じゃあなくなるよ】

私は…

―――【未来の王を護りし、大英雄だ】

 

友からの賞賛。

友からの羨望。

そして___友からの信頼。

 

フッ…愚かだな。我が友よ。

化け物と蔑まれた自分をまだ信頼すると言うのか。

だが、その信頼。まして友の頼みならば。

応えるのが英雄というものだろう。

それこそがヘラクレスという英雄だろう。

 

「……………ハァッ!!!」

 

全力で力を込めると同時に()()()()()()()()()()()

世界の強制力もあり、クラスを変えるには至らないが、それで十分。

狂化を打ち消しただけで事足りる。

何故そんな事が可能なのか?

答えは単純、彼は大英雄(ヘラクレス)だから。

彼はどうしようも無く、どうやっても英雄だったから。

そしてヘラクレスは自らの全力を出すに足ると感じた好敵手に問う。

 

「………貴公、名は?」

 

「!?シャァベッタァァァァァァァ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「………貴公、名は?」

 

シャァベッタァァァァァァァ!!!!!

………コイツバーサーカーじゃねぇのかよ!?

狂戦士なら狂戦士らしく狂えよ!

言葉喋れるとかバーサーカーとしてどうなの?(ブーメランクルー)

……あーこれ、狂化してないな?

目の奥にハッキリと理性が点ってらっしゃる。

狂化してないヘラクレス?アハハハハ。

無理ゲーにも程がある。

 

「…我、近江国大名、浅井長政なり!我が友、我が家族が為に貴公を討ち取らせてもらう!」

 

「……我が名はヘラクレス…否、()()()()()()半神(ヘラクレス)ではなく、唯の(アルケイデス)として、我が友の為。そして全力を出すに足る強者に敬意をもって…参る!」

 

………ハァ。やるしかない、か。

 

まぁいいさ。アンタが人として戦うというなら。

俺はソレを喰い殺す。

何故かって?俺は、()()だからな。

 




アルケイデス参戦!

ちなみに立香sideはアルゴノーツに乗り込んで魔神柱とバトってます。


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大英雄と夜叉

大英雄(ヘラクレス)にとって夜叉(化け物)は打ち倒すもの。
だが、結論が一つとは限らない。


………公式チートがァァァッ!!!

純粋な膂力で、迅さで、技術で。

才能で、生まれで、経験で。

どれをとっても、俺に勝てる点などなかった。

 

避けそこねた一撃が俺を捉え、そのまま吹き飛ばし、引きちぎる。

急所を外した一撃、にも関わらず腕一本を持っていかれた。

喪った右腕の軽さに苦笑いしながら次の一手を模索する。

プランA、このまま突撃する。無理、却下。

プランB、逃げる。…出来たら苦労しない。却下。

プランC………取り敢えず投げる!

凄まじい勢いで突撃するアルケイデスをその力を最大限生かして投げ飛ばす。

今日の柔道で言う巻き込み…禁止技の一つである。

鍛えられた長政の踏み込み、動きは完璧。

しかし、大英雄(アルケイデス)はそのさらに上を行く。

即座に手を地面に付くと腕を軸に長政を蹴り飛ばす。

これにより長政は自分のパワーとアルケイデスのパワーの二つをマトモに食らう。

 

ヒュッ…と。

音を超える速度で長政は岩に叩き付けられる。

右腕を喪い、蹴られた頭部は半ば砕け散り、武器も手に持つ圧切を残して弾き飛ばされてしまった。

誰がどう見ても長政の敗北は必然。

()()()()()()そう考えていた。

 

一人は市。彼女が夫である長政の勝利を疑う筈もない。

二人目は意外な事にアルケイデス。彼は予見していた。

かつての強敵と同じ気配を。

殺しても蘇る不死の化け物に並ぶ強者を。

 

三人目は長政自身。

頭が吹き飛ばされようが、常に思考は冷静だった。

……プランD。立香ちゃん達が颯爽と助けに来る。

俺が丸を付けたいのはこれだが、まさかアメコミのヒーローのように

待ってました!と現れるワケもない。しかも、アレに勝てる奴もいない。

プランE。諦める。はい論外、却下。

 

………仕方無ぇか。やるしかない。

 

プランEX。奴を殺す。

俺の……いや、()()()の全力で。

スゥ…と、息を吸おうとして肺が破れている事に気付く。

やれやれ、好き勝手やりやがって。

 

「『夜叉』。………全力だ、止めて…ミヤガレよッ…!!!」

 

長政の纏う気配が変わると同時に傷が無理矢理再生する。

欠けた頭部はこの世の生き物とは比肩出来ぬ禍々しさに。

千切れた右腕は硬質で、それでいて生物的な形状に変化し。

 

人の姿を失いつつも、夜叉は咆哮し、同時に姿を消した。

アルケイデスに攻撃を仕掛けたのだと分かったのは、

夜叉が打ち倒され、アルケイデスが残心を取った後だった。

 

音を置き去りに。存在すら知覚させず。

神速に達したその一撃は、

 

「…見事。『射殺す百頭』ッ!」

 

大英雄が誇る百連撃の前に止められたのだった。

 

一撃目(十連撃)二激目(二十連撃)三激目(三十連撃)、鬼の突撃を押し止め。

六激目(六十連撃)、纏う外殻を打ち砕く。

九連撃(九十連撃)、全身を余すことなく粉砕し。

 

十連撃(百連撃)、その命を断つ。

 

以上十連撃(百連撃)を持って大英雄の宝具、射殺す百頭(ナインライブス)也。

 

 

 

 

………あれ?なんで俺は寝てるんだ…?

分からない、考える()()()()、確認する()()()()

立ち上がる為の()()()()()()()()()()()

段々と意識が微睡んで行く。

自分が何者なのか、何の為に存在したのか、

全てを思い出せない、

 

「まだです!夜叉様は絶対に負けません!」

 

……?耳は使えるのか…?

誰だ、夜叉とは、この声は、誰だ。

 

「…約束したんです!絶対に帰って来るって!」

 

……酷い奴だな、約束を破るなんて。

まぁ…俺にはどうでも良いか。

 

「だから…だからッ……!」

 

……何だ、この違和感は。

意識は消えかけ、身体は粉微塵になり。

なのにどうしてだろうか、諦めてはならない、そんな気がする。

何故だ?思い出せ、思い出せッ…

 

『■て■■るだ■で■■んだ。そ■で、■■だ■で■■頑■■る。』

『死に■■ても。■き狂▪■も。……■や、きっと■■でも■■う■。』

『■にと▪て■守るべき■■が。帰▪場■が有■■り、俺■頑張■るか■さ。』

 

…思い……出せ……

 

『…あの子を宜しくね、■■ちゃん。』誰か(義姉)の微笑みを。

『さぁさぁ!寝てる場合じゃありませんよ!■■君』誰か()の激励を。

『最期まで一緒じゃ、■■!!!!!!』誰か(親友)の笑顔を。

 

『私は____夜叉様を信じてますから!!!』誰か(最愛)の信頼を。

 

ああ、そうだった。

何時だって__何時だって、そうだった。

 

(信長)を、義姉(帰蝶)を、(景虎)を、

部下を、娘を、息子を、民草を、

 

そして、()を。

守る為に。ただ、護る為に。

そうだ、長政は、鬼夜叉と呼ばれた男は、何時だってそうだったろ?

 

辛うじて、左足と右腕を生やす。

マトモな形を留めないソレでも、今はいい。

音もなく踏み込み、音を超え跳躍する。

反動で足は脆くも崩れ去った。構わない。

 

目も見えない、音も正しくは聞こえない。

だが、舐めないでもらいたい。

五感全てを奪われようが、家族を見失うと思ったか?

 

蝶のように舞い、龍のように猛追し___

 

感触さえ無いが、確かに打刀を握った筈の手を振るう。

ただの一振。死力を尽くした一撃。

本来ならこんなものがアルケイデスに通ずる筈もない。

 

……余談だが、今のアルケイデスは霊基的にはヘラクレスである。

アルケイデスは自らを人の子として現界するが、

ヘラの威光…ヘラクレスは神の子としての力を持つ。

どういう事か?

つまり()()を持つって事だ。

 

 

 

 

_____そして魔王のように燼滅する。

瞬間、圧切が赤熱する。

その炎は長政の腕を焔へと変え、

アルケイデスの身体を容易く両断した。

 

『……やれやれ。借り1つじゃ。』

ハッ、じゃあ俺はお前から幾つ取り立てなきゃならねぇのかね?

 

半ば灰となった身体が地に付く前に、僅かに再生した耳に届いた。

「………見事。」

…アンタもな。またいつか、今度はお互い打算の無い戦いをしたいもんだ。

 

その言葉を発する余裕も無く、俺達は帰還した。

どうやらあっちも…上手く行ったみたいだな。

 

 

人理定礎値B+
第三特異点

 

定礎復元

 

 

A.D.1573 封鎖終局四海 オケアノス

嵐の航海者

 




『天真爛漫の美姫』(せんごくいちのほがらかさ)

お市の方、それは戦国一の美姫として今なお名を残す。
その天真爛漫で朗らかな笑顔は見る者に力を与え、
戦う活力を奮い立たせる。常時発動型宝具。
なお、長政に対して使用する時だけ全ての効果が変化。
長政のステータスを数倍から数十倍に。

味方一人にHP大回復(宝具Lvによって変動)+クリティカル威力特大up(宝具Lvによって変動)+バスター威力up+スター獲得(OCによって変動)


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一難去って

シャァベッタァァァァァァァ!!!


デゥデゥデゥデゥデゥ デッデッデゥデゥデゥ デゥンデゥデゥデゥデゥ~♪

 

………一体何が………。

それを理解する前に弟は叩き潰された。

闇に紛れる漆黒の身体、しなやかな体躯。

そして輝く紅い眼光。

強い。

間違い無く。

 

デゥ~デゥデゥデゥ~デゥ~ デゥ~デゥデゥデゥ~デゥ~♪

 

………後ろか!

振り向く間もなくボクは回避を選択する。

と、同時に抜き払った太刀で叩き付けられた尾を切りつける。

しかし、トゲ付きの棍棒のような尾は刃を弾き、致命的な隙を生んでしまった。

 

デゥデゥ~デゥデゥデゥ~デゥデゥデゥ~♪

デゥデゥデゥデゥデゥッ、デデデッ!デデデッ!デデデデデ! デデデッ!デデデッ!デデデデデ!

 

あ___そう思った次の瞬間、弟の命を奪った翼の刃が眼前に迫り___

 

『力尽きました』

 

「「ああああああああぁぁぁ!!!」」

 

「……いや、アナタ達何してんのよ…」

 

(長政)え?」(卯松)何って」(竹王)ゲームだよ?」

 

「そういう事じゃなーい!!!!!!」

 

今日もカルデアは平和です。

 

 

いやぁ…息子とゲームが出来る日が来るとは……シミジミ

あ、俺達がなにをしてたのかって?

知ってるだろ?ドラゴンハンターってゲーム。

こうなんというか、デッカイ竜を古典的な武器で倒すやつ。

え?くどいって?仕方ないでしょ、商品名を出すと版権に関わっちゃうから。

 

因みにさっきは四人だとヌルいと言ったウチのバカ息子二人がね?

調子に乗るから………ちなみにさっきのBGMは俺です。三味線があって良かった。

ま、この流れでお察しの通り、二人共召喚されました。

戦力補強を兼ねて呼んだのでマスターは立香ちゃんだけどね。

今は俺が卯松を膝に乗せて竹王が俺の肩に頭を置くようにもたれかかってる。

バイノハヤサデー! バンザーイ! テキノセンスイカンヲハッケン! ダメダ!!!

………なんで世界が焼かれたのにBF1(Bullet Field1)が出来るんだ?

廃人達には世界が焼かれようが関係ないって事?はえーすっごい。

「…………」フニフニ「…………」ポヨポヨ

 

……あのさ、二人共。

 

「「?」」

 

親子なのにこんな事言うのもアレだけどさ。

サラシくらい巻こうよ。

 

「何故ですか?」「どうしてだ?」

 

…………当たってんだよ。特に後ろの奴。

スレ立てしていいかな、『ウチの息子が娘だったんだけどどうしたらいい?』

 

2:名無しさん

»»1 爆ぜろ

 

3:名無しさん

»»1 羨まけしからん

 

4:魅惑の玉葱

»»1 またお前か。

 

反応が冷たい…………

 

取り敢えず姉さんに会ったら殴ろう。泣くまでシバキ倒す。

 

 

 

『まーた触媒は俺かい?飽きないねぇ。』

『爆死は嫌だ…爆死は嫌だ…』

 

 

『………父上ー!』

『…あ、ちょ、卯松!』

 

お、お前らか!また会えて嬉しいぜ。

 

飛び込んできた卯松を抱き締め…フニンッ……

 

フニン…?

……………フニフニ。

チラッ『……』(竹王丸)ポヨーン

 

『………なぁ、お前ら。』

『『?』』

『…脱げ。』

『『!?』』

 

 

という事が有りまして、ええ。

姉さんは絶許からの半殺しコンボが確定した。

どういう事なの。

 

 

 

まぁ、正直男女なんてどうでもいいんだけどね。

俺の子供である事に変わりはないし。

 

「無視するなっての!」

 

ああ所長、まだ居たのか。

ごめんごめん、BFやる?

所長はプンスコ怒って出て行ってしまった。

…FPS嫌いだったか?俺は好きなんだけどね、

恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚えるし。

 

敗北

33ー4

なんでや!阪神関係ないやろ!

…少し休憩するか。

お前らなんで性別詐称してた?

 

 

 

成程。

娘より息子の方が舐められないと。

まぁ、あの時代は男尊女卑当たり前だったしな。

馬鹿らしい、腕っ節が強いだけで調子に乗るとか下らないにも程がある。

強い女なんて幾らでも居るっての。

姉さんとか、長尾景虎とか、軍神さまとか。

 

うんうん、一人しか浮かばなかったけど多分気のせいだろ。

だからお前らも隠す必要なんて無いんだぜ?

 

「父上…!」「父さん……!」

 

いやぁ、良かった良かった。お前らにはあんまり構えなかったからね。

俺としても負い目が無かったワケでもないんだよね。

俺も構えなくて悪かった、謝る。だからさ、

 

「退いてくれないかな、二人共。」

「「嫌(です)。」」

 

いつの間にか押し倒されていた。

さらに言うなら竹王に正面から抱き着かれて下半身に卯松が馬乗りに跨ってる。

……止めろ特に卯松。見た目のモラルが悪過ぎる。

「………」スーハー…スーハー

言わなかったけど竹王も止めなさい。深呼吸しない。

というかホント大きくなったなぁ、よしよし。

ホッコリとした気持ちで竹王の頭を撫でる。

 

……………いや、止めろよォォォ!?

ストーップ!ストーップゥ!止めろ!

これ以上はセンシティブなアレで怒られる!

この小説はR-15でコンプライアンス遵守なんだ!

「でも父上、R-15なら直接『自主規制(ピチューン)』する描写なきゃ大丈夫なんじゃない?」

ホントに止めろ。そんな言葉使う子に育てた覚えないぞ!

「でも母上が。」

姉さんが?

「『何?二人共夜叉君が好きと?んー…仕方ありませんね、正妻の市ちゃんに許可を得れれば良いんじゃないですか?どうせ夜叉君は強くお願いされたら断れませんし、二人がそれで良いなら私は構いませんよ。』と。」

 

………嫌、良くないから。俺の意見は?

自分の子供に手を出せと?馬鹿なの?

というか服を脱がすな帯に手を掛けるなァ!!!

止めろ!息を荒らげて近寄るなって……うむっ……

そこで口を閉ざされる。

見ると、二人共目がウルウルしてる。

やめろ、その顔は俺に効く。半ば育児放棄した負い目が心に刺さる。

 

「「……隙あり!」」

 

…しまったァァァ!!!

 

「弱点も母さんに聞いた通りだね父さん。」

あのアマ!!!

 

二人が盛り上がる一方で俺は冷静に姉さんの処罰を考えていたのだった。

もう、どうにでもなれ。

 




セーフ……セーフだよね?
まぁいいや。
長政君は三味線が弾けます。腕前は三味線を引く動画だけで再生数十万を超えるくらい。

三味線を引く事になった経緯。

信長『~~♪~~~~♪』

長政(また踊ってんのか。)

信長『夜叉もどうじゃ?』

長政『いや、二人で踊ってどうすんだよ……ん?吉法師、これは?』

信長『三味線じゃよ。時々帰蝶が弾くのじゃ。』

長政『………成程。……これなら…。(三味線を弄りながら)』
『……暫く借りてって良いか?』


半年後

デゥ~デゥ~デゥ~デデゥ~デデゥ~♪
デゥ~デゥデゥデゥデゥデゥ~♪(バ〇ファルクのテーマ)

信長『あれ?わしまた何かやっちゃった感じ?』



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特異点が一つとは限らない

タイトルが全てを物語っています。

※この小説を楽しみにしてくれている人にお詫びとご報告を。
最近忙しいのもあり、書きだめが追い付かない為、次回かその次の投稿が遅れると思われます。ご了承ください。


Hey市ちゃん!二人から聞いたぜ!……というかあっさり許可すんなよ!?

いや、独り占めはアレだからとか月並みな奴は良いんだよ。

姉さんはまだ良いし、帰蝶さんや吉は俺が世間的に死ぬだけでまぁ、良いんだよ。

あの二人はダメだって!ホント!

マジで血縁者だからな!?分かってる!?

…いや、子供が出来なければ良いとかそう言う話じゃなくてね……

スペイン王家じゃないんだから。

あ、スペイン王家出身の人に深くお詫びを。

今も続いてんのかな?カルロス二世で断絶したんだっけ?

 

ちなみに説得には失敗しました。

ん~…まぁ、遺伝的問題は無いわけだし大丈夫なの…か?

モラル的に俺の評価が死ぬだけなら、それは正直構わないんだけど。

何より娘息子達に『好きなように生きろ』なんて言ったのは俺だし。

ある意味、監督責任の問題……か…?

 

……………ああもう、気にしても仕方ない。

なるようになれだ。

…いや、市ちゃん、妾さんが増えるじゃないから。

歪な関係になったけどアイツらはあくまでも俺の娘………息子だからな。

確かにね、生前も気付いたら増えてたけどさ。

ハーレム?こんな嬉しくないハーレムもそう無いと思うよ。

半年くらい国を離れて戦に明け暮れてたらメカケカッコカリが十人くらい増えてる恐怖を味わうか?

そうやって考えると俺正室一人側室0人妾数十って事だよな。

極端、極端過ぎない………?

この歳になると久し振りに教え子にも会いたいもんだ。

ま、アイツらが英霊カウントされるとも思えんしな。

 

 

さぁ!お話も終わったから行こうか!新しい特異点も見つかったらしいし!ガシッ

準備しような、だからさ、離して♡ギュー

あ、駄目?知ってた。ズルズル

 

 

 

 

さーて、来週の特異点はー!!!!!(ヤケクソサザエ)

 

「なんか長政さん、疲れてない?大丈夫?」

 

おうともよ!…正直消滅しそうです。

大丈夫、俺はまだ頑張れるから。

 

…………特異点二つ?どうなってんの。

そんな事あるわけないだろうに、ファンタジーやメルヘン………

( д) ゜゜

(;つд⊂)モドシモドシ

゜゜三( д)スポ-ン

 

マジ?

 

………成程、イギリスとアメリカねぇ。

ボストン茶会事件かな?

 

そこでマスターが二人居るじゃん?

分けるらしいよ。

…………心配だ…。

俺らはイギリス、立香ちゃん達がアメリカ。

うーん、心配だ………あ、そうだ。

 

テッテレ~おまもり~。

まぁ、冗談は置いといて。

これは一応毘沙門天の加護(弱)がかかってるからな。

使い切りの触媒にもなるんじゃないかな。

なんと本当にヤバい時に数秒だけ俺を召喚できるオマケ付き。

今なら何とタダ!…あ、止めてその視線は俺に効く。

 

ん?所長も欲しい?良いとも、ほら。

 

 

 

さて………

 

卯松、竹王。お前らにとっては次がサーヴァントとして初の実戦になる。分かるな?

色々高尚な言葉を並べてこそ居るが、結局俺達がやってる事は所詮人殺しの延長に過ぎない。

躊躇うな。情けをかける、相手を嘗めるってのは一つの権利だ。

それを出来るのは本当に強い奴にだけ許された特権なんだよ。

勿論お前らは強い。保証しよう。だがもっと強い奴なんて幾らでも居る。

自分より強い相手と戦う事も有るだろう。

()()。戦って、()()()()()()()()()()

本物の生の死地はお前らに今一番必要なものだ。

窮地こそが飛躍に必要だと知れ、逆境を超えろ。少なくとも俺はそうしてきた。

灼かれて、打たれて、鍛えられろ。自らを刀だと思え。

死なない程度に死んでこい。這い上がり、追い縋り、食らいついて超えろ。

 

 

……何で今更こんな話を?って顔だな。

簡単だ。一つはまだお前らは成長出来る。間違い無くな。

もう一つは……なんだ、たまには父親らしい事ぐらい言わせてくれよ、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、話が終われば何をするかは分かってるよな。

 

そう。

 

 

 

 

 

 

お勉強の時間だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

今回俺達が行くのはイギリス…というかロンドン!

イギリスと言えば何を思い浮かべる?

 

……んん、いいね。皆の声が聞こえてくるよ。

 

パンジャン、ハボクック、多砲塔戦車。

……なんか偏ってないか?

なに?紅茶?

…………まぁ、大体正解だな(洗脳済み)。

 

冗談抜きで話すなら、イギリスの英雄といやアレだよ。

アーサー王伝説。円卓の騎士。

どいつもこいつもチート持ちヒャッハーだが、敵にはしたくねぇ。

それに俺、ちょっとだけアーサー王のファンなんだよね。

オワコンの国を延命させた手腕は見習いたくてね。

イギリス最大の英雄ことネルソンもいたな。

 

後…イギリス…イギリスかぁ。

料理が不味い。とか?

そういやジャック・ザ・リッパーってロンドンだったな。一応注意っと。

スコットランドヤードに絡まれないといいが。

 

 

 

次、アメリカ。

アメリカの英雄かぁ。

エジソン、ニコラ・テスラなどの文化人。

ビリー・ザ・キッドなどのアウトロー。

なんとなく発明家が多いイメージ。

正直なー歴史が浅いのに人が多すぎてなんとも………

 

一応飛ぶ時代的にはパリ協定で初めてアメリカとして独立した頃。

ワシントンとか生きてるかもな。

 

さーて、少し短いがこの辺で。タイトルコールを…え?プロローグを書くから次回?

成程。じゃまた三日後にな。




ラスト二文の異様なメタさ。

Q,何でそんなにお妾さんが居るの?

A,長政の政策が原因。
『ん……?お前さん親は居ないのか?……成程、戦でか…よし!丁度いい!お前ちょっと来い!』
『うおっ!?何だお前!?……成程?狼娘ってとこか……面白いじゃねぇの。』


『さぁ孤児共!俺は生まれや育ちで人を区別しねぇ!
名家の生まれだろうが奴隷の子供だろうが無能にゃ平等に価値が無い!』
『故にここではお前らに無償で勉学をさせるし飯も寝床も用意する。』
『だが使えん奴は放り出すからな!励めよ!』

寺子屋の上位互換。
因みに孤児達は長政が大名だと知らなかったという設定があったり。
これにより優秀な家臣を揃える考えだったのだが、
男子はともかく十そこそこで家族を失った娘とか野生児の子とかからすると
突然現れた恩人(なおイケメン)はね?
しかも勉強するにつれ玉の輿が判明するという流れ。
以下順当に。

長政「妾は二桁に入った辺りで諦めた。子供は認知してるけど関与しきれない、辛い。」


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老獪なる紳士

玉葱「結果発p…「貴方を詐欺罪で訴えます!!!」ファッ!?」

夜叉「理由はもちろんお分かりですね?あなたが皆を「本編は何時になるか分からない」という妄言で騙し、信頼を破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!もはやこのネタの鮮度も下がり、俺が若干滑っているのも貴方のせいです!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!」

玉葱「………いや、知らんがな。」


老獪……老いてずる賢く、強かな様子。


「ふむ、これは困りましたな。」

 

西洋風の街の中、一人の老人は呟く。

見るからに齢六十は超えているだろうか?

しかし、そのガッシリとした体躯や、身の丈。

何より一切曲がる事無い腰を満ち満ちたる体幹で支える姿は、

老いてなおこの老人に隙が無い事を物語っている。

 

「奥様より表の見回り、掃除を頼まれ、やっと仕事終わりかと思えば…」

 

老人の鋭い眼光の先には夥しい数の人形。

それは人形(オートマタ)と呼ばれる殺人人形であり、

その数は優に三十は超えるであろう。

霧の影響か、人形はそれまで老人に気付かなかったようだが、一体が視認すると同時に

情報を共有、新たな獲物を得た喜びにうち震える。

 

「飛翔する魔導書、人造人間(ホムンクルス)人形(オートマタ)。なんともキナ臭い雰囲気となって参りましたなぁ…」

 

そんな中、老人は一人呑気に呟く。

…まるで後ろから迫るホムンクルスに気付いていないかのように。

 

「…おっと。少々はしたないのでは有りませぬかな?」

 

しかし、老人はホムンクルスを全く見ることさえ無く、いつの間にか取り出していたナイフをホムンクルスの腹に突き立て、傷口に反対の手を捩じ込み、内臓を抉り出す。

 

「脆い…所詮ヒトの成り損ないというわけですか…残念です、少々興味があったのですが……む?まさか人形にも驚きの感情が有るとでも?愚かな、かような枯れた老人が丸腰で出歩く訳有りますまい。」

 

……もし、人形達に声を発する機能が有れば言っただろう。「嘘をつけ」と。

よく見れば___人形達のスキャンならより鮮明に__理解出来る。

見た目の齢に似合わぬ体躯。

無理矢理燕尾服に包み込んだはち切れんばかりの肢体。

優に80…否、90kgは超えているだろう。

それを枯れていると?全く、笑えない。

 

とはいえ、人形達も殺すことしか能がない。

即座に連携を取り、包囲する事で状況を好転させようと試みる。

 

リーダー格の個体の鋭い一撃を間近に躱し、側面からの同時攻撃を紙一重で流す。

見た目には人形側の優勢。しかし、知能の高いリーダーは気付いていた。

『当たらない。』人など優に屠れるこの腕が。どんな動きも先読み出来る頭脳が。

どちらも致命的な程に無力だった。

今も、ただ躱すだけに非ず、返す徒手や拳銃の一撃は人形を鉄屑へと還していく。

一体、また一体と数を減らしていく同胞に、リーダーは密かに逃走を決意した。

自分さえ生き残れば、また数は揃えられる。

そう断じ、スペックの全てを動員して駆ける。

 

「ッ…!…さて、これで王手(Check)。最後の一人は……」

 

馬鹿め。

我々が人のように仲間を守ろうとすると思ったか?

この距離なら、拳銃さえ届かない。

 

「……おっと、失念しておりました。」

 

そして視界から老人が消える刹那、とてつもない速度でナイフが飛来する。

しかし、そんなもの当たる筈もない。

軽々と避けたナイフがリーダーを追い越した刹那____

 

「……では、これで詰み(Checkmate)ですね。」

 

え____なんで___

 

そこで人形の思考は断ち切れた。

何故って、既に考える頭を刻まれていたから。

 

 

 

 

「ふぅ………老骨には応えますね……」

 

老人は腰から引き抜いた()()を納刀し、あたりを見まわす。

少なくとも見える敵は殲滅しただろう。

 

帰還しよう…そう思い立った瞬間に感じた。

魔術師の気配。

此度のイレギュラーな世界と何か関係があるのだろうか?目的は?

否、そもそも味方なのか?

疑問も、疑念も絶えない。

しかしながら分かるのは残業ということだ。

仕方あるまい、今の自分は執事なのだ。

相手がどうあれ、客人をもてなすが仕事、ならば。

 

老人は拠点に向かう足を返し、先程感じた気配の方向に短剣を投合すると音も無く消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

人理定礎値A+
第四特異点

 

 

 

 

A.D.1888死界魔霧都市 ロンドン

 

ロンディニウムの騎士

 

ロュデウ繝�ウ繝九え繝ノ縺ョ騎主」ォ

 

閠∫根縺ェ繧狗エウ螢ォ

 

 

 

 

 


 

ErrorーErrorー

何者かが世界に侵入しました。

深刻なエラーが発生。特異点が変質しました。

直ちに特異点から退去して下さい。

 

繰り返します。

 

ErrorーErrorー

深刻なエラーが発セイ、特イ点変シツ

ナニモノかがセ界に侵入

直ちに特異t退去

ただち、ただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだだだぢにだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだただちただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだだだぢにだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだただちただだだだだだちだだだだだだぢだだだだだだだぢにだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだだだぢにだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだただちただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだだだぢにだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだただちただだだだだだちだだだだだだぢだだだだだだだぢにだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだちだだだだだぢにだだだだだただだだだだだちだだだだだだだぢにだだだだだちだだぢにだだだだだぢにただ

 

 

 

 

 

 

異界からの侵入者を観測しました。

レイシフト先の情報を更新します。

世界の修正力により特異点は世界から切り離されました。

これにより特異点が修正されるまで退去は不可能です。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人理定礎値Error
第IV特異点

 

 

 

 

A.D.1888死界魔■都市 ロンドン

老獪なる紳士

 

 

 




半ばオリジナル特異点なんだよなぁ…

ええー身長190近くで老いてなお筋肉ムキムキマッチョマンの変態だってぇ?(マスオボイス)
一体誰なんだろうねぇ~(すっとぼけ)


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灼け落ちた記憶

まぁ、そうなるな。(日向)


………もの凄い濃霧だ。

ロマニ曰く、本来なら人体に極めて有害。

何故か魔力の篭った霧だそうだ。

サーヴァントならまだしも、ただの人間である私はあまり外で活動できない。

しかも____

 

「夜叉様は何処に行ったんでしょうか………」(´・ω・`)

 

何故かアイツだけが居なかった。

あの男………!

 

考えても仕方がない。

私はこの幼女を連れて少しでも霧の薄い所を探し歩いた。

…今考えればそれが失敗だったのかもしれない。

私たちの旅で、どれだけアイツに頼っていたのか。

それを痛感した。

 

「……………!」

 

端的に言おう。幼女と幼女が戦っている。

敵は分からないがおそらくはアサシン。

そしてこちらのサーヴァントもアサシン。

戦力は幸いにも__いや、残念ながら拮抗していた。

それに加えてホムンクルスやオートマタの残党。

ガンドで止めては居るが限界がある___ッ!

不味い、最初のガンドが解け………

 

その瞬間は、スローのように見えた。

巨岩のようなホムンクルスの身体。

こんなものを食らったら私はひとたまりもないだろう。

………あっけないな。

まず浮かんだのは目的を達成出来なかった事の申し訳なさ。

次に、短い人生だったという自嘲。

そして、こんな事ならあの皇帝のように自分の想いを吐露してしまえば良かった。

そんな後悔。

 

そして、来たる衝撃に目を閉じた。

 

 

 

閉じた。

 

 

 

閉じ………?

 

 

何故、衝撃が来ない?それとも衝撃すら感じずに死んだのか?

訝しんだ私はうっすらと目を開けた。

 

「時に思うのですが、貴方々ホムンクルス(デク人形)は最低限のマナーも習わぬのですかな?それとも…分かっておやりになられて?…無論、無知は罪では有りませぬ、ならば仕方ありません。…が、もし後者ならば…少々おいたが過ぎますな。」

 

そこに居たのは迫り来るホムンクルスを切り刻んだ銀髪の老人だった。

 

「……失礼、お若いレディー。無礼の程は承知の上で御座いますが、自己紹介は後で。まずはあちらのお嬢様をお助けしましょう。宜しいですかな?」

 

その動きがあまりに自然で___しかも突然の事だったので。

私はただ小さく頷く事しか出来なかった。

 

そこからの展開はあまりに劇的で、よく覚えていないが、

とにかく生き残った。その安心感でか、私は気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

だから、きっとこれは夢なのだろう。

 

一人の男が居た。

彼は望んだ。守ることを。

力を求めたが、彼は助け合う事を学んだ。

友に助けられ、家族に助けられ。

 

 

 

その最期は壮絶な討死だったが、彼は笑い続けた。

 

一人の男が居た。

彼も家族を、友を守りたいと。

強く、もっと強くと、力を求めた。

自分だけが傷付けば。自分だけが戦えば。

求めれば求める程に力を増し、彼は戦い続けた。

 

 

 

 

しかし最期には疎まれ、友の代わりに戦火に焼け死んだ。

そして死後、着せられたズブ濡れの衣。

それは彼の身体に癒えぬ烙印を刻み付け、苦しめた。

苦悶と絶望、怨嗟と妄執の果て、それでも彼は嗤い続けた。

 

一人の男が居た。

先の二人と同じく、彼も守ることを望んだ。

しかし、彼は慎重さを持っていた。

同じ道を辿りながら、彼は長らく生き、老いていった。

そして友と自らの夢、争乱のない世を作り上げた。

 

 

 

そしてその最期は_____。

 

 

「………おや、お目覚めですかな。」

 

…………目が覚めた。

…此処は?

 

「協力者がおりましてな、僭越ながらそちらにお運び致しました。」

 

礼をしようとした所で、切られる。

 

「…その話は後ほど、後一時間程でディナーとなります故、奥様より暫し休まれるよう。と。」

 

老執事は部屋を去った。

…幾つか聞きたいことがあったのだが。

まぁ、仕方ない。

オルガマリーは先程の夢を思い出す。

 

ぼんやりとして顔が分からなかったが、あれは間違い無く長政だ。

だが、おかしい。

あの男を召喚してから、その来歴を調べ上げた。

出生、家系、人間関係に戦歴。

ありとあらゆる…いや、特に他意は無いのだが。

調べている最中にロマニが暖かい目で見てきて腹が立ったが。

それは置いといて。

しかし、何故三人も居るのか?

 

一人は私もよく知るヘラヘラしたあの男。

だが、あの二人は誰だ?

直視できない程の疵を刻み付けられ、自嘲気味に笑う白髪の男。

そして老いた銀髪の男。…浅井長政は三十半ばで戦死した筈だ。

では一体アレは誰なのか……?

 

ふと、貰った御守りに目を向ける。

…貴方はどこに居るのだろうか。

 

オルガマリーは今この場にいない男に思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

「では、改めまして、私は『ミゼーア』と申します。どうかお見知り置きをマスター。

そしてこちらは私がお仕えする奥様、信長さまのご正妻である帰蝶さまで御座います。」

 

「お義姉様!!!」

「あらあら…ふふふ♪」

そう老人が告げると同時に幼女…もとい市が帰蝶の方に駆け出す。

帰蝶に抱き止められた市だがオルガマリーの意識はそんな所には無かった。

()()()

市が飛び込んだソレに顔が埋まってしまう程にソレは大きかった。

 

………そっと胸を撫で下ろす。

…大丈夫、少なくとも埼〇県の平均よりは有る。

そう考え、オルガマリーは目の前の現実から目を背けたのだった。




帰蝶>>>ネロ>マシュ>主人公・オルガマリー・景虎≧市ちゃん>(越えられない壁)ノッブ
何とは言いませんが。

老人の正体のヒント1。
『ミゼーア』
クラスは内緒。


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鷹視狼歩

スタイリッシュ・ジジイ・アクション

※一時期話題になった『あの子がこっちを見ている』にて作成した市ちゃんです。
お納めください。


【挿絵表示】



こうして、謎の老人『ミゼーア』と市の義姉にあたる『濃姫(帰蝶)』。

そして家主の『ジギル』。

この三人と合流する事に成功したカルデア一行。

しかし長政とは以前はぐれたままだった。

 

 

 

「お茶のお代わりは?レディー。TWGのジャスミンなど……ああ失礼、コーヒーがお好みでしたな。」

 

……いや、結構。そうとしか言えなかった。

困惑していた。イギリスの食べ物がまさかマトモに食せるとは。

 

「結局の所、肝心なのは調理法なのですよ……」とはミゼーアの談。

 

にしても……他の二人はともかく、貴方は誰だ?

一応名の知れた英霊ならば一通り知っているつもりだったが、その中にミゼーアなる英霊は居なかった。

 

「今の私は所詮枯れた老執事。知らぬのも無理は有りませぬよ。

ああ、お市様、お茶はいかがで?フォートナム&メイソンのアールグレイが入りまして。」

 

p.s 何故か通信が繋がらない。腹立つ。

というかフォートナム&メイソンはともかくTWGは2008年創設の筈なのだが……?

 

 

 

 

 

………皆が寝た真夜中。老人は一人部屋を抜け出す。

 

「………あんまり無理はしないでね?」

もう若く無いんだから。と帰蝶はカラカラと笑う。

奥様に心配して頂けるとは、至極恐悦の極み。

勿論、少々フラリと出歩くだけ___では無いのだが。

 

心配無用。とばかりに刀を腰に提げ、霧の中へと消えて行った。

 

 

 

詳しくは数えていないが、およそ三十から四十の人形を屠った頃だろうか。

ドカーンッ………!!!メッキャァ………!

静かな街におよそ不釣り合いな轟音が響く。

誰かが戦闘を行っている?

……やれやれ、静かな夜に無粋極まりない事だ。

そう思い当たり、音の出処に向かう。

 

対峙するは少女と男……魔術師。

…少女の方も純粋な人間では無いと感じるが。

無論加勢するは少女の方。

執事たるものレディーファーストは当たり前なのだ。

 

「お嬢さん、どうやら分が悪いようで。恐縮ながら逃走をオススメ致します。

この道を真っ直ぐに、三本目で右折なさって下さい。」

 

少女の元に駆け寄り、迫る魔弾を撃ち落としながら告げる。

 

「ヴゥ……?」

 

言葉を発せないのか、唸り声でもって返す少女。

電力消費が思わぬ激しく、出力が低下し始めていたフランからするとまさに渡りに舟だったのだろう。

素直に言われた方向へと駆け出す。

 

「さて……貴方はどうやら先程のお嬢さんとは違い招かねざるお客様だと推定致します。

故、これ以上の詮索、介入は賢い行いでは無いと心得の上、どうか一度再考をご検討下さい。」

 

返答の代わりに飛来する魔弾。

どうやら交渉の気は無いとみた。

残念だ。なるべくは交渉で解決したい物なのだが。

まぁいい。

交渉決裂ならそれはそれで分かりやすい。

 

「掃除は執事の仕事に間違い有りませんからね。皆様の安眠の為にも。

…ここでお隠れ遊ばして頂きたく存じます。」

 

そう言って老人は魔術師を蹴り飛ばす。

しかし魔術師は即座に反転、魔弾を高速で射撃し、距離を取る。

悠々とそれを回避した老人は太刀を引き抜き、最速を持って迫る。

 

「ッ………!!!」

 

点や線の攻撃は当たらない。ならば。

面を持って制圧する。

 

宝具・元素使いの魔剣(ソード・オブ・パラケルスス)

アゾット剣の原典にあたるそれは刀身の全てを超々高密度の賢者の石で構成された魔術礼装。

刀身の魔力によって瞬時に儀式魔術を行使し、五つの元素を触媒に用いることで、一時的に神代の真エーテルを擬似構成し、放出する事が可能。実体化する擬似的な真エーテルはほんの僅かな一欠けらではあるものの、恐るべき威力で周囲を砕き、四種のエレメンタルと完全同期させれば対城宝具に比肩する破壊力すら一時的に発揮できる。

 

あっさりと魔弾を回避し、インファイトを挑んで来る老人を明確な敵と認識し、街道一体を巻き込む攻撃で倒す。

そう魔術師__サーヴァント、パラケルススは考えていた。

 

即座に術式を組み立て、不可視の壁を作成。

これを越えられる前に宝具を展開する。

引き抜いた魔剣に魔力を充填、後十秒。

壁を破壊された、後五秒。

 

間に合う___そう断じたパラケルススはしかし。

舐めていた。

ミゼーアと言う老人を。

 

__縮地。

それは、古来から()()()に伝わる技術。

上体を振らさず、投げ出すように踏み込み、迫る。

縮地の弱点は踏み込み後に力を込めにくいという点。

故に大抵は投げ技や、武器術と組み合わせて使う。

勢いのまま、太刀でパラケルススの身体を貫き、返した刃で唐竹割りに両断する。

 

 

 

余談だが、パラケルススは五元素と四種のエレメントを使いこなせる。

つまりどういうことか?

「……………元素使いの魔剣(ソード・オブ・パラケルスス)

()()()()()()()()()()()()()程度ならば容易い。

それも、魔力を含んだ霧が有るのだ。

 

画してパラケルススの魔剣はロンドンの街道を引き裂き、

窓を叩き割り石壁を破砕し街灯を捩じ曲げて一帯を吹き飛ばした。

 

 

 

ガラスの破片舞う中、パラケルススは勝利を確信した。

しかし、あの少女、フランケンシュタインの怪物は逃がしてしまったな。

霧の様子から探知を図ろうか_____その思考は途中で閉ざされた。

最期にパラケルススが見たのは首の落ちた自らの身体と___

傷一つ無い姿で太刀を振るった老人の姿だった。

 

「…駄目ですよ、私どもを相手取るならば、大規模な破壊は不味い。

もし次回があるならば、球体の中に閉じ篭もるのですな。」

 

角張ったガラスの雨を背景に、老人はそれだけ呟くと、興味無さげに視界を外した。

 

「先程のレディー…フランケンシュタインの怪物?でしたかね。

お一人で行かせる訳にも行きません。エスコートせねば。」

 

それこそが自分(執事)の務めだ。

そして、気づいた時には老人の姿は掻き消え、辺りには戦闘跡と静寂が残るのみとなった。




今回ヒント多いな。

フォートナム&メイソン TWG
高いお茶屋さんだと思ってくれれば。
TWGのジャスミンは無茶苦茶高いですが美味しいです。
シンガポールに行く機会が有れば是非。


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旧き狼はかく笑へり

タイトル迷子


次の日になって、気が付いたら住人が増えていた。

フランケンシュタインの怪物____サーヴァントではなくホムンクルスの様だ。

やるべき事は二つ。

フランケンシュタイン…フランの知り合いらしいサーヴァントの撃破。

そして魔術協会の探索。

 

どちらも急務に近い故に、魔術協会はミゼーアと帰蝶の二人が。

サーヴァントの撃破を残りのメンバーで、となった。

 

サーヴァントはチャールズ・バペッチ。コンピュータの父とも呼ばれる。

曰く巨大な蒸気仕掛けの機関鎧を纏った鋼鉄のロボらしい。

ロボ…………?サーヴァントでは無いのか?

長政と合流出来ない今、戦闘面に不安は残るが…

そこまで考えて、今までどれだけ長政に頼っていたのかに気付いた。

 

 


 

 

「さて、と。私たちも行きましょうか?ねぇ?」

そう語りながら帰蝶はその豊満な胸をミゼーアに押し当てながら擦り寄る。

「奥様、近い。近いです。」

 

傍目から見れば絶世の美女が老人に迫っているという渾沌とした状況だったのだが。

 

「というか折角二人きりなんだし、もっと砕けた呼び方で良いのよ?」

「いえいえ、これは身体に染み付いておりまして…」

 

「もう、初めて会った頃の素直さは何処に行ったのかしら…?」

「ハハハッ。私が素直と言うならばアレは愚直…ないし馬鹿(うつけ)と呼べるのでしょうなぁ。」

 

そんな二人に迫る小さな影。

それは帰蝶の腹を後ろから切り開こうとして__弾き飛ばされた。

「ぎゃっ!!!」

 

何の変哲もない靴に見えたか?

残念、爪先と踵には鋼鉄が仕込まれた具足でも有る。

ミゼーアは蹴り飛ばした何かの方向に数発銃を放つが、手応えはない。

一度引いたか。

そう確信すると帰蝶をエスコートしながら魔術協会へと向かった。

 

 

 

………酷いな。

そこは唯々荒らされているに非ず。

男は身体を八つ裂きにされ女は胎を暴かれ、死屍累々という言葉さえ追い付かぬ程には。

 

男は恐らくあの人形達が。

執拗なまでに子宮を切り開かれて殺されているのは先の襲撃者だろう。

 

原型を留めぬ屍は捨て置き、道を拓く。

途中、若い女の死体があった。

その死に顔は死への恐怖と胎を切り開かれた苦痛からか苦悶に染まり、目を見開いていた。

敢えて何かを言うに及ばず。

老人はそっとその目を閉じ、せめて綺麗に死体を整えるとゆっくりと横たわらせた。

 

魔術協会の地下には興味深い本も幾つかあったが、元来魔術師ではない彼に理解できるものではなく、

一先ず重要そうな数十冊を借りて行く事にした。

無論、窃盗ではない。しばらく(生涯)借りておくだけである。

 

そうして本を厳選するなか___ふと、目に付いた本を手に取る。

………『クトゥルフの呼び声』か。

ハハハ。魔術協会というのはまさかオカルトマニアの集まりなのか?

パラパラと捲り、眺める。

くだらない、くだらない……そう思いながらも読み続ける。

そしてとあるページで____

 

「あら?お邪魔したかしら?」

 

____いえいえ。これは御見苦しい所を。

そう言うと本を放り投げる。

持って行く価値もない。くだらない本だ。

呟きながら盗品……もとい借用品を担ぐ。

 

放り投げられた本はとある創造神のページを開いていたが、

その神の挿絵はまるで獣の爪痕のように引き裂かれていた。

 

 

 

 

 

 

チャールズ・バベッジを討伐し、拠点に帰還した所長一行。

疲れからかドアを開くのに失敗し、漆塗りの高級扉に激突してしまう。

全ての罪を被るオルガマリーに対し、帰蝶の従者ミゼーアが求める交換条件とは___

 

「おかあさん!」

 

……………さて、どういう事か説明して貰おう。

 

「説明も何も、私子供は好きでして。可能ならば傷付けたくは無いのですよ。」

「そこで対話を試みた所、何でも母親を求めているとの事で___

 

私は何も言わずガンドを射撃した。

『しかしよけられてしまった!』

ぐぬぬ。

 

「まぁ、ものは試しと。将来の練習になるやも知れませぬよ?

ハハハ、処女受胎とは奇跡ですな。」

 

その言葉は現代ではセクハラだ___そんな事を言う間もなく老執事は退出した。

 

「あ………その……えっと………」

「……………!」

 

残されたサーヴァントはこちらを見るや否や素早い動きを持ってナイフを突き立てる。

あ___死んだ。

そう思考が辿り着くと同時に身構えるが、ナイフがオルガマリーの身体に届くことは無かった。

 

退出した筈の老執事はナイフがオルガマリーの臓腑に届く刹那で握り止めていた。

 

「おやおや、お忘れですかな?不要に他人を傷付けない、でしたよね?」

「…ちぇー。仕方ないなぁ。」

「宜しい。では武装はこちらでお預かりしますよ?爺やとのお約束ですからね。」

「うん♪約束するよ!」

 

ハハハハッ…と笑いながら孫を慈しむようにジャックの頭を撫でるミゼーア。

 

「では、おやすみなさいませ。お嬢様方。」

 

 

 

再び部屋には二人きりになった。

先程までと違い、ジャックには武器は無い。

ただそれでも、一度殺されかけた恐怖とは拭いがたい。

「おかーさん!」

ジャックはそう言ってオルガマリーに迫る。

いや、いや。

そう呟き、オルガマリーは下がるが、壁に隣接したベッドの上。直ぐに追い詰められてしまった。

にじり寄るジャックにオルガマリーは現実逃避からか、目を閉じる。

 

しかし、次に感じたのは苦痛でも、恐怖でも無かった。

腹部に圧迫感。しかし心地良い程度に。

そして、子供特有の高い体温。

…ジャックが抱きついているのだと気付くのに暫くかかった。

 

先程までは恐怖でしか無かったその存在。

しかし、それは生物の本能なのだろうか?

何故かそれはとても愛おしく、安心するものだった。

 

成程。人の親というのはデータで捉えれば殆どメリットは無い。無いが___

この感情がきっと、親になるという事なのだろう。

勿論、それは一時だけの歪な関係だが、そう思い当たった。

心地良い圧迫感と安心感からか、眠気に包まれる。

……ああ、多分私は自分でも気が付かないうちに人寂しくなっていたのだろう。

今この場にいない男に思いを馳せながら、意識を手放し____

 

とある考えに至り、飛び起きた。

 

今よりも少し成長した自分と、娘のようにじゃれつくジャック。

そして隣に居るのは………

 

「ああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

どうやら眠れぬ夜が続きそうだ。

 




オルガマリーのヒロイン力が上がっている………?


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魔霧の最期

ネタっぽくなった。
バルバトスといえば素材だからね、しょうがない。


「見るが良い!これこそが我が真の…」

 

ああ、そういうのは不要かと。

逝ってらっしゃいませ~

 

バベッジからの情報を元にロンドンの地下へと赴いた一行。

そこに居たのは魔霧事件の黒幕、マキリ・ゾォルゲンだった。

ゾォルゲンは真の姿、バルバトs…ゲフンゲフン、素材柱の姿を現そうとしたが

 

「あぁ、遅い、遅い、遅い遅い遅い………」

 

再生、そして死亡。

バルバトスはその姿を表す事もなくミゼーアによってリスキルされていく。

最初こそ所長らも『えぇ…』と言っていたが殺害される度に大量の素材が漏れ出る事に気が付くともはや何も言わなかった。

 

……暫くして違和感に気が付く。

……後ろの魔力炉からの魔力供給か。

聖杯を動力に膨大な魔力を製造。それにより魔霧を作成し、余剰分を再生に用いている。

厄介な……どこまでストーリーから逸れれば気が済むのか。

 

「…少々本気で削がして頂きましょうか。」

更に加速。加速、加速。

秒間44柱、足りない?ならば263柱、まだ行ける?宜しい。619柱/sだ。

 

「ギ」「ャ」「ア」「ァ」「ァ」「ァ」「ァ」「ァ」「ァ」「ァ」「!」「?」「!」「?」

断末魔さえ途切れる程の速度に、舞い上がる粉塵。

やがて何も見えず、何も聞こえなくなった。

粉塵が収まるとそこにはマキリ・ゾォルゲンが人型のまま直立していた。

魔神柱の力を削り取られたゾォルゲンはふらつきながらも真っ直ぐに老人を睨み付ける。

 

「もう……遅い……ロンドンに…満ちた……魔霧の量は……充分に………」

 

おっと。まだ息がありましたか。

やれやれ、結局人外はどうも耐久が強くて良くない。

「お嬢様方、どうかお目を背け下さいませ。」

少々手荒に致します故に。

 

先程までの高速では無く一歩一歩とゾォルゲンに近付いて行く。

 

コツン…コツン……

死神が死を宣告するが如く。

カツン…カツン………

ゆっくりと。然れど力強く。

 

ゾォルゲンの胸倉を軽々と掴みあげ、告げる。

 

「貴方………否、貴様は我が主の奥方、引いてはその契約者の生命を危険に晒し…ロンドンに残る英霊の残滓を利用し、弄んだ。故_____ここに()()()()貴様の罪を裁決する。我が身はこの世の生命に非ずとも、我が同盟者が憤怒、貴様が辱めた者の怨嗟を持って、貴様を処断しよう……愚か者にも弁明を赦そうか、最期に言いたい事を述べるが良い。」

 

好々爺の仮面を外したその男の顔にもはや笑みは無い。

ただ淡々と罪を述べつけ、睨み付ける。

人が変わった?……否、これこそがこの男の本性。

元となった男と混ざりあった怪物の本来の姿。

彼が内封するとある存在を半ば解放した姿である。

 

老いてなお精悍な顔立ちはそのままに、

目を煌々と輝かせながら問いかける。

それを見る者は幻視する。まるで獣の様な耳を。威厳を示すかの様な尾を。

 

「我が悪逆…完成させるに足る……星の開拓者よ…

汝三大の言霊を司る七天!抑止の輪より来たれ…」

 

サーヴァント召喚の一節。

最後の最後で抵抗する気か。

 

「不敬なり。人の皮を被った獣風情が。」

 

そう言ったのと彼の爪がゾォルゲンを引き裂くのはどちらが先だっただろうか。

返り血に全身を真紅に染め上げながら、老執事は問う。

 

「……さて、カルデアの御一行さま。さっさとアレを破壊してしまうとしましょうか?」

 

その笑みはあまりにも自然で、返り血と混ざりあって非常に歪だった。

しかし。

 

その場を雷光が包み込み、一瞬にして全員の意識を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

____________________『………!』

 

__________________________________『し……ま!』

 

__________________________________________________『…長……!』

 

『所長様!』

 

目が覚める。

 

どれくらい気絶していたのか?

頭が痛い。目が霞み、手足に力が入らない。

 

「………幸いと言うべきですか。目立ったは外傷無く、辛うじてですが意識もあるようで。」

『所長!?所長かい!?良かった繋がった!!!…いや、安心してる暇じゃない!大変だぞぅ!

その特異点はエラーが発生している上、謎のサーヴァントの影響で更に不安定だ!

もしこのままなら特異点ごと崩壊する!』

 

「………恐らく、そのサーヴァントとはニコラ・テスラでしょう。

雷電を生み出し、星の歩みを推し進めた開拓者。狂化も付与されているようでしたが。」

 

『というか君は雷を受けなかったのかい……?その……』

 

「ミゼーアと申します、Dr.ロマニ。少々雷撃には慣れておりまして。」

 

慣れるとはどういう事だ……ぐっ……

「ああ所長様、無理をなさらぬように。ニコラ・テスラは私がどうにか致しましょう。」

その代わりに………と切り出したミゼーアが差し出したのは傷だらけのジャックだった。

___咄嗟に貴女を庇ったのですよ。

そう告げられ、所長な中に罪悪感が広がる。

「どうかご自分をお責めにならぬよう、あの場に置いて彼女の選択は真に正しい。

不要な憐憫は彼女の勇気への侮辱になり得ますよ?……では、私は少々()()をして参ります。」

そう言って老人は所長から視線を外す。

不安に駆られる所長は縋るように燕尾服の裾を掴み、言う。「…怪我しないでね。」

「……勿論です、マスター(お嬢様)。」

老人そう微笑むとその場から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

故に、誰も気が付かなかった。

男の顔がこれまでに無いほどの憤怒を称えていた事に。




そろそろ勘づかれるんじゃないかと怖い玉葱。



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毒蛾

帰蝶さんがサーヴァントになるならこんな感じかな、と。


ミゼーアが去ってから半刻ほど経っただろうか。

どうにか身体を動かし、立ち上がる事に成功する。

一先ず応急処置程度だけど、と言う帰蝶に素直に応じて一息つく。

身体では今直ぐにでもミゼーアの援護に回らねばならないのは分かってはいるが…

心に身体が着いて行かない。どうにもその力が湧いてこないのだった。

「心配かしら?」

妖艶な笑みを浮かべながら帰蝶は問う。

心配……と言うのとは違うのだ、その……

「大丈夫ですよ。マスター。」

市は語る、自らも時折無力感に苛まれて居た事を。

「でも___それで良いんです。自分に出来ることを出来るだけ全力で。

マスターは貴女のベストを尽くしました!褒めてあげます!」

座り込む所長の頭をわしゃわしゃと撫でる市。

雷光に巻き込まれたジャックの傷も大事には至らないと分かり、力が抜ける。

 

 

 

 

 

_________だからソレの接近には気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

圧倒的な威圧感、強大過ぎる力、吐き気を催す程の嫌悪感。

なんだこれは。

刹那、猛烈なプレッシャーを感じ、即座に市と帰蝶は二人を抱えて飛び退る。

そこに居たのは____

 

「魔元帥ジル・ド・レェ。帝国真祖ロムルス。英雄間者イアソン。そして神域碩学ニコラ・テスラ。」

「多少は使えるかと思ったが―――小間使いすらできぬとは興醒めだ。」

「下らない。実に下らない。やはり人間は時代(トキ)を重ねるごとに劣化する。」

 

姿を見るまでもない。名前を聞くまでもない。

 

「………む?どうした塵芥共、何をそんなに惚けている?知能のない猿か?」

「だがよかろう、その無様さが気に入った。聞きたいなら教えてやろう。」

「我は貴様らが目指す到達点。七十二柱の魔神を従え、玉座より人類を滅ぼすもの。」

 

それは諦観にも似た絶望。

その乱入者はそれ程までに強大だった。

 

 

 

 

「名をソロモン。数多無象の英霊ども、その頂点に立つ七つの冠位の一角と知れ。」

 

 

 

 

 


 

 

 

冠位。

童話作家曰く通常のサーヴァントよりも一段階上の器を持って顕現した英霊。

 

曰く人間(霊長)と、人間によって築き上げられた文明を滅亡させる大災害、即ち人類悪を滅ぼすため、天の御使いとして遣わされるその時代最高峰の七騎。英霊の頂点に立つ始まりの七つ。

曰く人類存続を守る抑止力の召喚、霊長の世を救うための決戦魔術である降霊儀式・英霊召喚によって召喚されるのであり、召喚システム「聖杯戦争」の原点であり、此方は人間に扱えるように型落ちにしたもの。

 

尤も、正史にてそれを指摘する筈童話作家(アンデルセン)はこの場にいないのだが。

 

まず、構える間もなく帰蝶が閃光に灼き飛ばされる。

初撃では即死に至らぬも少なくともマトモに戦闘を行う事は、不可能に近い。

一拍置いて置かれている状況に気が付いた市の判断は早い。

同軌道で苦無を二本投合しつつワイヤーを帰蝶に絡め、テコの原理で引き寄せる。

その力を無駄にせず飛び上がり、ソロモンに切りかかる。

 

しかし、ソロモンが一度手を払うとそれだけで市は吹き飛ばされた。

そもそものスペックが違うにも程がある。

 

冠位(グランド)

それは星の数ほども存在する英霊達の中でも特出して選ばれた七騎に与えられる。

つまりだ、相性や状況の差異こそあれ____

冠位を持つソロモンはサーヴァントの中で()()でも七番目には強いのだ。

 

 

 

 

所長はここに来てようやく我に返る。

しかしそれはあまりに遅く、あまりにも致命的だった。

魔法陣がこちらに照準を定める。とても避け切れない。

あの魔法陣から射出される魔術の威力の程は優にかの聖剣に匹敵するだろう。

その威力も、規模も、速さも。

とても生身の所長に避けられるものではない。

 

しかし十全たる殺意の篭った光は僅かに人の一人分を避けて外れた。

外した?何故?

ソロモンも意外だったのか顔を顰めると数回に渡って攻撃をする、が。

それらは全て僅かに逸れ、かすり傷一つ与える事が出来ない。

やがて所長は___恐らくはソロモンも。

ほぼ同時に気が付く。戦場に何故か甘ったるい香りが漂っている事に。

その発生源をサーヴァントの優れた五感によって特定し、ソロモンは歯噛みした。

 

「ッ……そうか、貴様か!存在価値もない毒虫風情が!!!」

 

ソロモンが睨みつける先。

特に空気が淀み、濁ったその先にて妖艶なる笑みを携えていたのは………

「あらぁ…バレちゃったかしら?ふふっ………勘が良いのね。」

 

傷だらけながら、微笑みを携えた帰蝶その人であった。




おまけ

地上では___

「吹き飛べ、必殺! 『黄金衝撃(ゴォォオルデン・スパァァァァクッ)』!!!」

「―――成る程、雷神の子と言うだけはある!」
「活性魔霧の中でよくやる! 通常のサーヴァントであれば霊核を呑まれていよう!」

ロンドンに召喚されたはぐれのサーヴァント、坂田金時とニコラ・テスラが鎬を削っていた。

「ちょっと! 金時さん、近寄らないでくださいますぅ!? 静電気で毛なみがパーリパリするんですけどー!」

……そして何故か金時に着いてきた(玉藻)
戦場は混沌としていた。


さーて、どうなってるんですかね。
夢の二階建てバスはいずこ? 大英博物館、時計塔、セント・ホール大聖堂はいずこ?
この不気味な霧は何です? どうして、昼日中なのに誰もいないんです?
楽しみにしていたフィッシュアンドチップスは? 密かに憧れていたアフタヌーンティーは?
スコーンは? クロテッドクリームは? フォートナム&メイソーンの本店は?
これ、もう半分以上は廃墟っぽい雰囲気ですけれど?
みこっ? もしかしてロンドン、サクッと滅びかけてません?
ご主人様とのハネムーンへの予行練習にと、ロンドン旅行に付いて来てみれば何ですこれ?

この狐、金時の召喚にタダ乗りしてきた割にこの態度である。

ああもう、どうなってるのでしょう。
あーせめてなーどこかになー抜群のイケメンでもいないかなー…

『失礼、お若いレディー。ここは危険かと。今少し下がる事をオススメ致します。』

へ?

『……む…これはこれは位の高い神の名を冠するお方とお見受けしました。知らぬ事とは言え、無作法をお許しくださいませ。』

優雅に一礼、その作法はまさに完璧であり、誰もが規範とすべきものだった。
それを見た玉藻は_____

「あっ、イケメンだ。」
無意識下にそう呟いたのだった。


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老狼哮ゆるは誰が為

ついに発覚!ミゼーアの正体とは!?


_______時は戦国の世。

浅井長政。後に鬼夜叉と呼ばれる男が自我に目覚めし頃___

 

 

 

『決まりじゃ、お主は織田に嫁ぐが良い。』

 

ふむ…にしては、この脇差。花嫁道具に持たせるには些か物騒に過ぎませぬかな?父よ。

 

『……ハハハハ、やはりお主は母に似て聡い子に育ったのう、()()よ。』

 

誤魔化しは不要だ。

 

『………ほう?言いおるわ。…なぁに、簡単な話じゃ。もし嫁ぎ先の織田信長が噂通りのうつけ者ならば、それにて奴を討つが良い。』

 

……………ならば我が父よ。

 

『む?』

 

もし信長殿が大物とならば、私はこの刃、父上に向けるやもしれませぬよ。

 

この時まだ帰蝶は十代前半。にも関わらずその笑みは冷酷にして妖艶。

蝮の道三と呼ばれ、一代で国を築いた父を前に一切引く事無く語る。

 

『ハハハハハハハハ!!!!驚いた!そうか!儂を討つか!』

『その強かさ!その胆力!大いに結構!父として喜ばしかな!』

 

…………話はそれだけですか?

 

『むぐぅ……固いのう…もそっと朗らかに笑わぬか、なぁ?』

 

この気質は元来のものなので。では。

 

『……………なぁ、帰蝶よ。』

 

 

『…もしも、信長が信に足り、素質有る男ならば…きっと其奴はお主を不幸せにはせんだろう。

だから帰蝶よ、これは大名齋藤道三では無く、ただ一人の娘の父、唯の道三として告げる。』

 

『……必ず幸せになってこい!な!』

 

 

 

父は蝮と呼ばれながらその実、身内には実にさっぱりとした男だった。

そんな父とは打って変わって冷めた性格だった私が変わった要因は二つ。

 

『…皆さんご存知わしじゃ!…………あれ?反応薄い…薄くない……?』

 

信長と出会って、初めて笑顔を知った。

うつけ者として道化を演じるあの子は、その実とても聡い。

それでも、自分がそうする事で誰かが笑顔になるなら、なんだってする。

それを見ていて、気付けば笑顔になっていた。

 

『ファッ!?市ちゃん何故ここに!?……帰蝶さーん!ヘルプ!Heeeeeeeelp!!!!!』

 

長政と出会って、初めて恋をした。

鬼、外道なんて呼ばれても心の中には家族を護りたい。そんな願いだけがあった。

不器用で、愚直で、何事をも為す力を持ちながら囁かな願いだけを掲げ続ける姿も、

実は私が割とピュアな思考の持ち主だと察しながらも他言しない優しさも、

たまらなく愛おしくて、魅力的だった。

 

二人が、私を人間にしてくれた。

でも、

 

 

今ばかりは、人の姿を忘れよう。

私は蝮の娘、蠱毒を孕みし蝶。

人を惑わす毒蛾也や。


 

 

 

ふふふっ……ふふふふ………

 

「何を笑っているッ………!」

 

無駄無駄、放たれる魔弾は掠りもしない。

幻覚……というよりかは一種の催眠に近い。

放たれる香りは冷静な判断能力を奪い、初撃を外したという心の隙間に付け込む。

今、ソロモンの精神の中には放った魔弾がもしかしたら外れるかもしれないという不安が芽生えている。

その感情を深層から引き摺り出し、現実のものとする。

それこそがこの幻覚の正体。命中しない、という強迫観念を概念として擦り込む能力。

 

痺れを切らしたソロモンは広範囲を纏めて攻撃する魔術を詠唱する。

なるほど、それなら狙わずとも当たる。

冠位の力をもって、最速かつ、最適に術理を述べるソロモン。

その範囲は他所離れたオルガマリーや、市も優に巻き込む。

自分では回避も詠唱の中断も不可能だろう。

 

まぁ、問題はない。

 

私は少なくとも初撃は食らってしまった。

それはかなりの痛打だった、人ならば即死してもおかしくない。

市もかすり傷程度だが飛ばされていた筈だ。

 

だから、問題はない。

 

 

 

 

 

 

 

()()が傷付けられて、あの子が黙っている筈も無いのだから。

 

 

 

 

 

 

ソロモンの詠唱は既にキャンセル不可な所まで進行していた。

故に油断していたのだ。

 

刹那、ソロモンの眼前にナニかが出現する。

刹那___否、それは最早転移と呼ぶに等しい。

速さとなどと言う物差しで推し量れぬ領域。

 

ソロモンがそれを感知した時には既に時遅し。

 

魔法陣、そのものを一刀のもと切り捨てた老人は嘲笑い。

追撃を察したソロモンは即座に物理障壁を貼るがそんな物に一瞥もくれず老人は消える。

 

 

 

そして再び姿を表した時には、全員を回収し、老いた背に庇うように魔術王と睨み合った。

 

 

 

 

………ああ、申し訳ございません。少々遅くなりまし…むぐっ。

 

「んむっ………随分と優しいのね?でも……」

 

帰蝶は老人の言葉を遮るように口付けする。

 

「まずはアレをどうにかしないと、ね?」

 

妖艶な笑みを老人に浮かべる帰蝶。

それはまるで老いた権力者が美姫を侍らすかのように、

画家が居れば間違いなく一つの絵画となったであろうその姿。

 

 

 

「無理よ!!!あんなサーヴァントに勝てるわけない!!!」

我に返った所長は喚く。それが出来るとしたらたった一人。

限界を嘯き、極限を嗤い、最後には超越する。軽薄な笑い声とともに。

 

老人は優しい微笑みを一つ所長に向けると、目の前の災禍に向かって歩みだした。

 

 

 

「バカな!お前のような愚かな老いぼれに何が出来るというのだ!」

 

………まず、思ったんだが。

老人に老いぼれ、いやまぁお爺ちゃんってのは悪かないけどね?

何となく、何となくだよ?書き手の悪意感じてな……まぁ、実際ジジイなんだが。ハハッ!!!

 

老人は軽薄に笑う。

気品に溢れた言葉使いを荒々しく、俗物的に崩しながら。

 

___で、だ。魔術王?冠位?それはそれはご立派で!

世界のリセット?好きにやりゃぁいいさ。

だが、

 

 

 

()()()()に手ぇ出すって事なら、覚悟出来てんだろうな?

 

纏う雰囲気が変わる。

熔けた鉄のような怒りを、笑みと共に紡ぐ。

 

ああ、忘れてたよ。失礼の無いよう名乗らせて貰おうか。

俺はサーヴァントで言うなら()()()()()()、ミゼーア。

ティンダロスの王、ミゼーアだ。

で、もう一つ名乗るなら_______

 

その瞬間、所長の腰から護符が外れ、淡い光を放ちながら飛んでいく。

咄嗟に掴もうとしたが既に手が届かず、老人に触れる。

先程の光線にも匹敵する程の光が、地下を包み、

それが晴れると老人の姿は何処にもなかった。

 

ん?おお、成程ね、こりゃ良い。この方が分かりやすい、だろ?

 

深緑を思わせるくすんだ翆の髪。

日本の英霊とは思えぬ体躯とそれを使いこなす技量。

そして、彼女らが尤も待ち望んだ男。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅井長政。()()()()初代将軍……もとい浅井家が筆頭家老。

以後お見知りおきを……いや、スマン。必要無かったな。生きて帰れると思ってくれるなよ?魔術王さん。




…………その「知ってた」って顔ヤメロォ!(建前)ナイスゥ!(本音)

で、一つご報告が。
ちょっと五章は投稿が遅れます。本当にすいません。
(仕方ないよね、FGOのレイドあるしね。)
作者の主義的に「章の途中でストックが切れた!投稿遅れるよ!」
をどうしてもやりたくないので…現状考えてるだけで他の章の倍近く長いんすよ。
三日に一回投稿は勿論続きます。
現状考えてるのは新しく書いた「壬生狼」(プロットのみ)の更新か
戦国編をさっさと終わらせたかった作者によりオミットされた
「孤児院編」(書き途中、プロット有り)と「異人編」(書き途中、プロット有り)。
後は感想や質問がそこそこ溜まったので第二回「玉葱道場」(作成済)。
などになります。一応アンケ4章ラストまで取りますので
この中ならどれ優先が良いかご意見頂けると有難いです。


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外なる神

過去話。読まなくもストーリーに支障は有りません。


_____ああ、存在が、存在が不安定だ。

固定せねば、何か、何か器を。器を探さねば。

 

「おや……これはこれは。神に連ならん御方がどうしてこんな所に。」

 

む………この老人、老いてこそ居るが、強い。

何より人型に化けたとはいえ我を知覚しながら狂わぬとは。

丁度良い、器とするには充分なり。

ククク、適当な甘言にて取り込んでくれようか。

愚かな人間なぞを騙くらかすなど容易い。

『そこな者よ、我を知覚せども狂気に囚われぬ強き者よ。

我を受け入れるが良い。さすれば貴様は更なる力を手に入れられるだろう!』

 

「そうか…悪ぃ、興味ねぇな。他を当たってくれや。」

 

なっ!?そこまでの力を手にしながら更なる高みを目指さぬと言うのか!?

 

「おうとも。俺がが望むは友人や家族だけを守れる程度の力。

カミサマから賜る力になんざ興味はねぇなぁ。

時に、外なる神とまでされるお方が何用でこの世界に?」

 

それを貴様なぞに語ると思うたか!……という言葉を繋げようとして、何故か気付けば経緯を話していた。

何故だ!?何故!?

答えが出ぬまま気が付けば語り終えていた。

 

すると老人は少し考えると、即座に此方に手を伸ばした。

「成程…アンタにも事情があんだな……ほら、良いぞ。」

 

なっ………

 

存在しない筈の心が、少しだけ動いた気がした。

良心の呵責?馬鹿らしい、そんな物が我にある筈もない。

好都合だ___僅かな隙を見せた老人の心の中に入り込む。

 

そこには角や尾が生えた醜い化け物が居た。

成程、これが貴様の力の根幹か。

ならば、これを始末すればこの身体は我の物よ。

化け物に動く隙も与えず転移、再生が間に合わぬ迅さにて引き裂く。

固い……がこの程度ならば問題にならない。

そう思い、トドメを刺そうとして止められる。

 

「スマンが、コイツは俺の半身の様なものでな、どうか御遠慮下さいませ、カミサマ。」

 

………何なのだコイツは。

喧しい、邪魔立てするなら貴様も喰ろうてやろうか。

 

そう告げると老人は何も言わず武器を構える。

…仕方ないか。

少しは見所のある器だったので、精神的にだけは生かしてやろうかと考えたが。

ああ__残念だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故そんな事を思ったのか?下賎な人間如きに。

分からぬ、分からぬ、が。

そのような思考を巡らすのでは無かった。

「……俺の勝ち、だな。」

 

信じられぬ。

力のみを持って神に並んだこの我が敗北するなど。

それも情けをかけられて。

不快なり、不快なり。

早く殺すが良い。我を野放しにすればこの世の生命を滅ぼすぞ。

殺せ。

 

「………ハハッ!!!面白い!アンタはまるで人のような神だな!」

 

なんだと?我が、人と同一と?

 

「負ければ悔しく、存在を固定したいと欲をかき、驚けば困惑する。あまりにも人間の様だ、違うか?」

 

…………

 

「だがまぁ、面白いと思うぜ?…気に入ったよ、アンタ。」

 

……は?

 

「言葉の通りだ。此方としては存在を固定するための物件(身体)を提供する。

アンタは代わりに俺に力を貸す。対等だろ?」

 

対等だと!?貴様良く考えろ!今、我は貴様に敗北して……それ……で……

そこまで言って気が付く。

 

今我は、この男に押さえつけられ、生殺与奪を握られている。

その上情けをかけられ、屈辱を味わっている。

なのにだ。

何故か下腹部に熱が篭ってくる。

 

はぁ!?!?!?!?

何故何故何故だ!?

人に化けているとはいえ、こんな感情を抱くなど!

そもそも強い雄に踏みにじられて発情するなど、まるで……まるで………

 

『………雌犬みてぇだな。』

倒れ伏した化け物が言った。

 

ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

黙れェェエエ!!!

 

即座に転移し、化け物の頭部を叩きのめす。

さっさとトドメを刺しておくんだった!畜生が!

このッ!このッ!

「ちょ!冷静になれ!どうどう、どうどう!」

 

落ち着けるか!!!

外なる神とまで言われたこの我が!

神の紛い物の様な化け物に!

雌犬と呼ばれたのだぞ!

 

「落ち着け!………ああもう!落ち着けっての!!!」

 

老人もこの渾沌とした状況に思わず口調が若かりし頃にまで戻る。

 

「雌犬とかは兎も角、少なくとも今のお前は美人なんだから黙ってろっての!」

 

ああああああああぁぁぁ!!!

 

『お前さぁ………また嫁さんらに怒られても知らんぞ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

……………すまぬ。

 

 

「ならいい。で___どうするよ?答えを聞かせて欲しいんだが?」

 

ぐっ……命は惜しい……だが、この手を取れば誇り高き我が雌犬同然だと認める事に……

………仕方ない!仕方ないのだ!

ヨグ=ソトースに復讐する為にも!

命を繋ぐ為にも!

甘んじて恥を受けようではないか!

 

『いや、もう素直に惚れたって言ったらどうよ?』

黙れェェェェェェェェイ!!!!!!!!!

 

 

 

「そう言えば、名前も言ってなかったな。俺は()()()()。そっちは夜叉って‎いう…まぁ、俺の半身だな。仲良くやってくれや。」

『宜しくね✩』

 

………ああ、我が名はミゼーア。

旧き支配者に叛逆せし外なる神の一柱。()()()()()()()()。ミゼーアである。

 

 

 

 




天然ジゴロが極まる老長政君。
リアルで殴り合いしたら外なる神に勝てるワケ無い。
精神世界ならイカれたSAN値(既に0)の長政くんなら必勝だよなぁ?

因みにハッピーエンドルートの『夜叉』は色々あって大分陽キャです。
(イメージ…デッドプール)

浅井長政(オールド)

本来とは違った世界線における浅井長政の姿。
老境に差し掛かって尚その技に衰えは見られず、
研鑽を続けたその技に一切の隙無し。

自らの領地に幕府を開き、国を平定した偉人として知られる。
幾千もの死線を超えた英傑であり、
無数に存在する浅井長政という男の可能性。
それが辿り着いた一つの極地。


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猟犬の王

「ほざけェッ!!!」

 

ソロモンは光線を乱射するものの、それを長政に掠らせることさえ出来ない。

そうこうしている内に長政は纏う燕尾服を脱ぎ払うと放り投げた。

衣服によって一瞬長政の姿が隠れ、それが晴れるまでに僅かな隙が生まれる。

そして再び長政を視認したソロモンの眼前に迫るのは数多のナイフ、そして苦無に棒手裏剣。

服の内側に仕込んだありったけの暗器を所謂裏打ち…軌道を読ませずに放ち、返す手で射撃する。

 

…………侍って何だっけ?

その姿を見た者全てが浮かべる疑問だろう。

青年や壮年の長政でさえ平気で汚い手を使う事から察せるように、

ガワこそ若々しい(30代後半)今の長政だが、中身は老境迎えし古強者。

故、その手法も精錬されるに然り___と、聞こえの良いように言ったが、

要は結局長政が尤も得意とするのはダーティプレイなのだ。

 

飛来する刃と銃弾を辛うじて弾くソロモン。

周囲に散らすのがやっとでこそあるが、難なく捌ききった。

そして最後の苦無を弾くと同時に爆音と爆煙。

_____唯の刃物だなんて言って無いが?

下衆な表情にて笑みを零す長政。

音と煙による認識阻害は魔術障壁でも防げない。

驚くソロモンに対して背後から刺突する。

勿論、それ自体は防がれるが、一撃一撃が大きく魔力を削る。

最短にて唱えられた魔術を振り返りざまに唱えるソロモンだが、既にソコに長政は居ない。

かと思えばまた背後より追いすがり、切り付けられる。

一度距離を取ろうと浮遊すれば地に叩き落とされる。

 

「地球へようこそ!ハッハーッ!!!」

 

そして漸く気が付いた。この男は投げたナイフを媒介に転移している。

即座に周辺のナイフを前方に押し流し、体制を整える。

しかし、完全体では無いとしても既に刻まれたダメージの差は歴然だった。

転移能力といい、最早サーヴァントの域を超えている。

そう、サーヴァントの………サーヴァント………?

僅かな疑念は内部の多数人格によって討論され、一つの結論に行き着く。

まさか、この男は____

 

「おっ、気付かれたか?……ご想像通り、俺はサーヴァントじゃねぇさ。

外宇宙の存在に時間は関係無いし、特にティンダロスの王としてなら世界すら関係無い。

俺は単に()()()()()()()()から遊びに来ただけさ…まぁサーヴァントの俺の記憶やら

引き継いでるから、真っ当なパラレルって訳でも無いがね。」

 

事実上永遠の命と世界間の自由な移動。

外宇宙の存在とはそこまで圧倒的な力を持つのか!?

ソロモンの疑問には答えず、淡々と長政は告げる。

 

「お喋りは楽しんだか?()()にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?

さっさと終わらせようか。なぁ?」

 

侮るような表情。値踏みするかのような態度。

ここにソロモンの沸点は限界に達した。

 

「……ざけるな……巫山戯るなァ!!!貴様のような老いぼれが、我が大志を挫くと言うのか!?

何たる不義!何たる狂人の戯言か!!!」

 

老いぼれ……老いぼれねぇ。

分かってないな、お前。

人は刀よ。

灼かれ、打たれ、削られ、磨き上げられる。

故、老いとは衰えに非ず。

超えた死線を糧に唯一太刀を極むるが如く。

 

「老いも、衰えも、破滅も、死も!全ては忌むべき存在だ!そのはずだ!

でなければ、何故!何故人は怯え、悲しむ!?」

 

その答えは___いや、俺が言う事じゃないな。

代わりに告げようか、憐憫の。

その答えを得ることこそ、生命の巡礼と知れ。

苦しみが無いならば喜びも無い。

痛み無ければ思いやりを知れぬ。

悲しみ無くては希望を見い出せぬ。

 

分かるか?獣よ、全ては表裏一体。コインの表裏よ。

時に老いすら楽しむものさ、我々人間というのは。

感情の無い生涯に何の意味が有ろうか?

例えそれにより、人が繁栄したとして、それは真の繁栄と呼べるか?

 

 

 

 

否。

お前がやっているのは愚かな稚児の人形遊びにすぎねぇよ。

思うがまま操るだけに快楽を見出す、幼稚で愚鈍な戯言ってね。

 

 

 

「喧しいッ!!!所詮は人の身で、私の苦しみの、何が!なにが分かるッ!!!」

 

…………遺言は以上か?

その言葉を皮切りに戦闘が再開した。

 

 

 

「この力を手に入れてから、あらゆるモノを見てきた。

時に、荒廃し灰に塗れた世界、血と獣の病蔓延る古都、化学汚染の進んだ世界を。

戦の果てに世の流れに反する国、空にて終わらぬ争いを繰り広げる国を。

しかして、そこには憎悪や憤怒こそあれ、歓びも、楽しみも然りだ。

……それこそが人の美しさ。愚かで醜く、救いようが無い事こそが。

貴様には分からんだろうがなぁ?クハハッ………」

 

ソロモンは答えず、満身の殺意をもって長政を追い詰める。

 

 

 

「…所詮は獣、人の言葉も解さんか……ああ、哀れ、哀れだなぁ。

まぁ、仕方あるまい。過程はどうあれ、お前は俺の家族に手を出した。

ならば、相応の報いがあって然りだとは思わねぇか?」

 

 

そう言って長政は腰だめに構える。

構えは居合い。格段得意とするワケでも無いが、この身体には尤も馴染む。

 

『人は刀よ、一度振るうには無駄多くして何も成せぬ。』

『人は刀よ、百度の無駄(鍛錬)をして、初めて斬ることを知る。』

『人は刀よ、幾万に数うる無駄(鍛錬)の積み重ねにて戦場より還り来るを許される。』

『人は刀よ、我が生涯、無限に等しくも積み上げた無駄(鍛錬)。然してそれは無駄であっても無為ではない。』

『一太刀を重ねるにつれ、無駄を削ぎ、意を為して行く。』

 

『より速く抜く。より鋭く振る。より重く斬る。ただそれだけを専心に、鍛え続けた。』

『得た力と積み重ねてきた無駄、それ即ち、唯一つの極み也や。』

 

とてつもない前傾姿勢。

前に踏み込む、それ以外全てを廃した構え。

自らの回避や、相手の反撃を一切考慮しない、一撃必倒の構え。

 

_____ああ、どうか御照覧あれ、愚者の積み重ねた醜き日々を。才無くして抗い続けたこの生涯を。

 

 

 

刹那、ソロモンが抱いたビジョンは切り刻まれ、地にばら撒かれる己の姿。

ソロモンは激昴した。

左の腕にて魔力による無敵の護りを、右の腕より光帯に匹敵する最強の一撃を。

それら全てを正面の男に殺到させた。

 

 

 

「…意地も張れぬ繁栄などこちらから願い下げだ。『猛り喰らえ猟犬の王(ミゼーア)』」

 

 

しかし、既に全てが遅かった。

まるで転移したかの様に男はソロモンの後ろを悠々と歩む。

 

「ああ、まだ気が付いてないか?

ぜーんぶ、斬ったぜ。全部な。」

 

 

瞬間、魔力障壁が、実体のない光帯が、ソロモンの五体が。

一太刀の元に切り捨てられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




猛り喰らえ猟犬の王(ミゼーア)

才能が無くとも、抗い続けた。
より早く、速く………
やがて老境に差し掛かり、数多の死線を超えた先、
一切の不必要な無駄を廃し、さらに外宇宙の存在と一つになり必要さえ削ぎ落とした。
踏み込み、抜き、斬り、刀を収める。
踏み込んだならば抜いておる。抜けば斬り、斬れば収める。
以下四動作を全て削ぎ落とした果てに生まれた絶技。
『斬った』という概念以外相手は何も知覚する事が出来ない。
早さを夙さに、速さは迅さに…全てを昇華した果てに生まれた対人絶技。
本来は常時発動型の能力であり、彼の太刀筋を見抜く事は本質的に不可能。
(但し天眼を持つ武蔵や未来視の類を保持する英霊ならば回避は可能。)
尤もそれ抜きにしても数千から数万の時を生き、
練り上げ続けた武芸は並大抵のものでは無いのだが。


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全てが終わって

…………チッ。

手応えはあったが殺しきれちゃいねぇな。

しかも逃げられちまったしな…

あーあ、面倒クセェな。

 

まぁ、いいさ。後はこの世界に生きる皆に任せるとしますか。

 

 

んじゃ改めて、久しぶりだな市ちゃん!!!

元の時代ないし元の世界にここ数年くらい帰ってなくてな……

こうして渡り歩いて見聞を広げてんのよ。

年齢も関係無いってのは有難いよなぁ…ハハハ………

 

「お父さん!」

おーよしよしジャックちゃん。お父さんだぞーよしよーし。

可愛いなぁ……

 

んん…名残り惜しいが時間だな。

退去の時間だし、俺はまーた抑止のボンクラが追っ掛けて来そうだからな。

三十六形逃げるにしかずってね。

 

ん、所長ちゃん伏せてー。

ボヤボヤと呟きながら所長を押し倒して抱え、所長の背後に当たる部分に刀を突き出す。

 

「ッ!?……ガッ……」

 

ああ、今回は()()()()だったか。

悪ぃね、もう少しお話ししたら帰るからさ。

人理(アラヤ)君にも宜しくな?ハハッ!

 

拳一閃、鉄拳聖裁。お疲れ様ー。

 

………とまぁ、こんな感じでな。

どの世界に行っても悪質なストーカーに絡まれて嫌になるぜ……

 

ま、いいさ。何となく来てみた世界だがこんな出会いが有るとはなぁ。

面白いな、人理焼却。正直ざまぁみろとしか思わないけどね。

そう言うワケにも行かないのが大変だな、お前らは。

 

さてと所長ちゃん。

 

「!?」

因みにこの間、長政は所長を押し倒し、所謂お姫様抱っこで抱えたままである。

 

端的に言えば気に入ったぜ、マスター。

サーヴァントじゃない事に気が付いて無かったのもまぁ、それも面白いしな?

 

 

 

ハハハハ、怒るな怒るなって。

また縁があったら呼んでくれよ。

()()()()で何をしてようと駆けつけるからさ。

 

 

その言葉を最後に、オルガマリー達の視界はホワイトアウトした。

 

 

 

 

人理定礎値Error
第IV特異点

 

 

定礎復元

 

 

A.D.1888死界魔犬都市 ロンドン

老獪なる紳士

 

 


おまけ

 

さて…態々待っててくれるとは律儀な子じゃないか。飴ちゃんをやろう。

 

「貰おう。…もぐもぐ、そうだぞもぐもぐ、魔神さんはもぐもく、偉いんだもぐもぐ」

 

あーあー口にものを入れたまま喋るなっての。

…なんというか手のかかる娘って感じかね?可愛いじゃないの。

というかそもそもフォーリナーには関与しないって話じゃねぇのかよ。

こっちとしては何してても絡んで来てウザったいんだよな…

……あ、もしかして俺がまだ生きてるからか?

フォーリナーとしての力を人間が使ってるからOUTって事?

…………こじつけだろ…新手の詐欺か何か?

 

あ、えーと何だっけ「魔神さんだぞ。」ああ、魔神ちゃん。

偉い魔神ちゃんをご飯に連れてってやろう。何食べたい?

 

「んー美味しいおでんが食べたいぞ。」

 

成程。丁度いい、久々に里帰りするからおいでよ。

一人くらいなら一緒に運べるからね。

 

そこの影から見てる白スーツ。

アラヤ君に宜しく頼む。この子借りてくぜ。

そう言って長政は魔神セイバーを小脇に抱える。

 

「………まいったな、何時から気付いて居たんだい?」

おい龍馬ァ、さっき俺たちが戦ってる時チラチラ見てただろ。

 

……いや、やめとこ。これ以上は汚くなりそうだ。

んじゃ、久しぶりに帰りますか。

愛しい故郷近江と、愛する嫁さん達の所に。




次章の予告(嘘)

「俺はそうは思わん。戦いこそが人間の可能性なのかもしれん。」
「世に文月のあらんことを…」
「ニンジャ・殺すべし」
「ダディャーナザン!!!ナズェミデルンディス!!!」
「モザンビーク・ヒア」

本当のやつ(↓)

「貴方は病気です。」
「病気ならどんなに良かったか…呪いだよ。」


『ジェネレーター再起動、システム稼働率150%_さらに上昇。ニューラルリンク再確立、痛覚遮断機能無効化、義体との親和率限界突破(Unlimited)。アンプル過剰投与、生体の部分蘇生と強化。これにより戦闘パフォーマンス,947,2%程の向上が見込めます。』
「グッ…………ガッァ………」
『…どうかお忘れなく。敗北は認められません⚫⚫。任務を遂行しなさい。』
「ガアァァ■■■■_____ッ!!!」


「俺たちは()()だ。それ以上でもそれ以下でも無いさ。」




鋼鉄の鬼兵


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災禍は輪廻する

不穏なタイトル。

オリキャラが増えるとクルシイ…クルシイ…

ガチなヤンデレ書くのは多分初めてなんじゃないかな?


『あー…その、実に申し訳ないが、君のお兄さんは…死亡した。』

 

嘘だ。

 

『で、だ。彼の遺した資産……それと遺品を彼の部下の生き残りが持っていくそうだ。』

 

嘘を付くな。

 

『……彼を救えなかった我々が言える事じゃないが、彼はとても良い男だった。』

 

止めろ、過去の話にするんじゃない。

 

『だからこそ君は彼の分も生k…』

 

ヤメロオォォォォォォ!!!!!!

 

電話を叩き壊して通話を中断する。

 


 

今度はいつ帰って来るの?

 

『さぁなぁ、内戦が続きまくるんで稼ぎ時なんだわ。いやぁ、大量大量。』

 

私…心配だよ。お兄ちゃん無理するから。

 

『ハハッ!バレた?ま、やりたい様にやってるのさ。そうだな…次の夏休みだな。

何処か行きたいとこ考えとけよ?帰ってから考えちゃ、時間が無駄だからな。』

 

うん…ありがと。ウッ…!ゴホッゴホッ……

 

『おお!?風邪引いたのか!?養生しろよ?今すぐそっちに…行けなくも無いけどな。』

 

『「おい司令!?帰るのかこの掻き入れ時に!?」喧しいわ!

俺からしちゃ(ネスト)の連中よりも妹が大事なんだっての!』

 

ううん、大丈夫だから。

必ず帰って来てね………お土産はグレープフルーツとかが良いな。

 

『……そんなに好きだったか?まぁ良いさ、任せとけ!ハハッ!』

 

……次に会う時きっと驚くと思うよ?

 

『ほう?楽しみにしとくよ。彼氏が出来たなら取り敢えず面接だな、で殴る。』

 

違うってば。ハハハ。

 

『……むぅ、何だろなぁ。ま、いいさ。じゃあな!』

 

うん、じゃあね。

 

 

 

帰って来るって言ったじゃん。

 

嘘つき。

嘘つき。

うそつき………うそ……

 

うぅぅ…うそだって…うそって言ってよ…

ほら、私泣いてるよ?

慰めてよ。抱き締めてよ。守ってよ。

ずっと一緒だって言ったじゃん。

嘘つき。

ずっと守るって言ったじゃん。

嘘つき。

 

 

 

 

 

 

 

置いて行かないでよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏になって、ウチに綺麗な女の人が尋ねてきた。

この人が、部下の人?なのかな。

 

色んな事を話した。

お兄ちゃんがどんなに良い人だったのか。

お兄ちゃんがどれだけ私の事を思っていたのか。

お兄ちゃんが、最期に彼女を庇った事も。

 

何でなの?お兄ちゃん。

お兄ちゃんが守るものは、私が居たのに。

私より、この人が大切だったの?

 

馬鹿らしい事を考えてしまった。

つい口から出た罵詈雑言の数々。

お姉さんは只々謝り続けていた。

……本当は、分かってる。

この人は悪くない事。お兄ちゃんはそういう人だって事。

分かってても、止められなかった。

 

ずっと好きだったから。

初めて手を差し出してくれた時から。

年上の子に虐められたのを助けてくれた時から。

種親から守ってくれた時から。

血塗れになって私の為に戦ってくれた時から。

 

ずっと、ずっと好きだったんだよ?お兄ちゃん。

 

…もう日が暮れる。

お姉さんは帰るそうだ。

 

「……最後にこれを。」

 

これ…は…

 

「……先輩…お兄さんの形見()です。この国では本来持ち得ない物ですが、貴女にお渡ししたい。」

 

お兄ちゃんの…

 

「きっとこれが、貴女を守ってくれると。先輩は、最期まで貴女の事を話していました。」

 

お兄ちゃん…

 

銃を、手に取る。

 

瞬間、身体に力が漲ってくる。

ああ、きっとお兄ちゃんはこの銃で、何十何百と殺してきたんだろう。

だからこそ力が湧いてくる。

そうしろと語りかけてくる。

 

 

 

その言葉のまま、私はお姉さんを撃った。

何か呟いているが関係無い。

お兄ちゃんを見捨てた貴女を。

お兄ちゃんを殺した貴女を。

お兄ちゃんを奪った貴女を。

やっぱり私は許せない。

 

頭に一発、心臓に二発。トリプルタップ。

自然と身体が動いた。

 

でも私は不慣れだからか、まだ生きていた。

だから。

 

殴って。

殴って。

殴って。

殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴殴り続けて。

泣いても。

喚いても。

殴り続けて。

気づいたら冷たくなっていた。

 

ハハッ。ハハハハハハッ!

 

やったよ。お兄ちゃん。

褒めて、くれるかな。

うん、きっと褒めてくれる。

 

だから、今そっちに行くね。

銃を自分のこめかみに当てて思う。

 

ああ、そういえば_____

 

「ごめんね。私、お兄ちゃんが居ないと耐えられないの。だから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナタを一緒に死なせる事、許してね?ハハッ。」

 

少し膨らんだお腹を撫ぜながら私は呟いた。

 

 

 

バゴンッ…!

 

閑静な住宅地に乾いた銃声が響き、私の意識は闇に飲まれて行った。

 

 




ガチのヤンデレは初めて書いたが……ナニコレコワイ。
マジで書いてて怖かったんだが?
ヤンデレメイン作品の人はこれを毎回やってるのか……

補足…(ネスト)
生前夜叉君が率いていたPMC。


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鬼は眠り、世界は廻る

注意・今回のお話スラング多め。口が悪いのう…

プロローグだけ投げときます。


…………ハハッ。

やろうと思えばやれるもんだ。

現代の戦場は一人の英雄を一発の銃弾で素人が殺せる。

だから英雄など生まれない___と聞いた事がある。

しかしだ、俺がやった事は一つの本に出来そうだなぁ………

まぁ、英雄譚と言うには血生臭いにも程があるが。

 

後悔は無い。

アイツを守る為なら俺はそれこそ鬼にでも悪魔にでもなってやろう。

一人を守る為にこれまで何万と殺したが、誤差に過ぎんさ。

俺の家族と赤の他人。どっちが大切かなんて議論するのも億劫だ。

どうだ?お偉いさんよ。

舐め切った相手に殺される気分は。

 

ハハッ、悪かないだろ?俺たち底辺みたいに地べたを這う気分ってのも。

趣向を凝らして歓待してやってんだ。ちったぁ喜んでくれよ。

 

「…貴様!こんな事をしてなんになると言うのだ!?」

 

なんになる…ねぇ。

さぁな。俺にも分からん。

 

強いていうなら憂さ晴らしだな。

テメェらが契約を切って裏切ってくれやがるモンだから俺ァ今にも死にそうだ。

後は…リスクシューティングって奴だ。

お前らは俺の家族に手を出すと言う。

…馬鹿なこった。そんなんが嘘っぱちなのはお見通しだよ。

だが、それがアイツの将来に僅かばかりでも陰りが出来るかもしれないなら…

俺は命懸けでそれを断つさ。それが兄貴として俺がアイツに出来る唯一の愛情表現だからな。

 

prr!prr! prr,prr!

 

……ん?

おいおい、携帯はマナーモードにしとけよ。常識だろ?

ハハッ、睨むな睨むな。冗談だ。

 

『……こちらヤシャ。今更何の用だクソガキ共。』

 

『ッ!繋がった!!!先輩!今何処に居るんですか!?』

 

『あ?……そうだな、首都官邸?大統領だとなんて言うべきだ?分からん。』

 

『どうしてそんな所まで!?…カッコつけて死ぬ気ですか?馬鹿なんですか先輩!』

『そうだ!人に散々死なねぇように言っておきながら真っ先に死ぬんじゃねぇぞ隊長!』

『只今現在の位置と所要時間を計算しています。推奨・生還の為に最大の努力を、司令官。』

 

あーあー、うるせぇな。

耳がキンキンしちまうよ。

 

生還は無理だ、弾が無ぇし、銃はオシャカ。しかも正直もう眠くて仕方ねぇ。

 

『先輩!』『隊長!』『司令官。』

 

喧しいんだよ!!!

たかだか一人死ぬくらいで泣き喚くんじゃねぇよ!

こっちは戦争してんだ、人の生き死になんか日常茶飯事だろうが。

何時まで()のケツ追っかけてる気だガキ共!

テメェらはカルガモかゲイか?俺にそっちの気はねぇ、諦めな。

 

「ハッ、感動的だな。」

そうかい?そりゃ有難い。

「貴様のようなイレギュラーがいようが、私にこの国と権力がある限り!貴様にも!お仲間にも!未来など有ると思うな、下賎な傭兵風情が…!」

………ほう、今俺に殺されかけて床を舐めてる権力ねぇ。

面白い。じゃあこうしよう。

『…こっから先は俺からお前らへの依頼だ。反政府軍に助力してこの国ぶっ潰せ。

…ああ、弾代は気にするな、全部持ってくれるとよ、大統領さんがな。』

元々内乱が起きて傭兵に頼るような政府。

頭を失ってどの程度持つかな?ハハハハッ……

そんな顔するなよ、最高の余興だと思わねぇか?

残念だ、俺も見たかったぜ、アンタの嫁さんや娘が()()()群衆にファックされるのをよ。

 

ハハハハハハハ『先輩!』ハッ……………ああクソ。最後に馬鹿らしくなってきた。

テメェら耳の穴かっぽじってよく聞け。PMC『巣』司令官として最後の命令だ。

『俺以外全員欠けることなく生還しろ…繰り返す。必ず生還しろ。いつもの掟通りだ。

絶対に死ぬな。もし死んだら俺がお前らをブッ殺す。いいな?』

 

『…』『…』『…』

 

…返事!

 

『………』『…ッ!ウィルコ!』『……ウィルコ。』

 

なら良い。通信を終了する。

諸君らの奮闘に期待する。

 

 

 

 

 

 

「…別れは済んだかね?もうじき私の私兵が来るが。」

うっせ、まーだガキばっかで世話が焼けるぜ。

ハァ、拾ってくるんじゃ無かったな…

アイツらにも戦い以外の道があったかもしれないのに。

 

『…先輩。』

……(レイヴン)、まだ切ってなかったのか?…湿っぽいのは無しだぜ?

 

『本当に脱出は出来ないんですか?』

無茶言うなっての、ここに来るまで何十発撃たれたと思ってやがる。

下半身の感覚が無い、今回ばかりは強心剤でもどうにもならん。

 

『……好きでした。あの日からずっと、貴方の事が。』

 

………マセてやがるなぁ、まだまだ子供の癖によ。

ハハッ…スマンな。生憎俺は幼児性愛者(ロリコン)じゃないんでな。

 

『ッ…………!!!』

 

それに今、俺に言ってどうなるよ。勿体無い。

その言葉はいつかお前にも出来る大切な誰かに取っておきな。

 

 

………足音だ。悪ぃ、お客さんがいらっしゃるんでな。

()()()()酒でも飲むか、良い店探しといてやる。

 

『約…束……ですよ?』

おうとも、俺は嘘はつくが約束は守るぜ?

一足先に地獄で待っててやるよ。たっぷり遅刻してこい。

それでのんびり聞かせろよ、この後先お前らが辿った軌跡をや。

 

んじゃ、切るぜ。またな。

 

『…ええきっと早死した事を後悔させてみますよ、先輩。…烏、アウト。』

 

 

 

 

「武器を捨て腹這いになって降伏しろ!」

 

おーおーそんな躍起になるなよ、発情期か?

武器なんて出さねぇよ。弾もねぇし相棒なんてほら、バレルがガタガタだ。

最新モデルをカスタムしたんで世界に一つしか無いんだぜ?

 

わっとっと、わーった、分かったって、別にお前らを殺そうってワケじゃない。

煙草くらい吸わせてくれよ……あ、ライター。誰か火貸してくんね?ダメ?

…じゃあしょうがない。自分で付けるよ。

「舐めやがって…」

 

…ほう?撃つ気か?その銃で?セーフティがかかってるぞルーキー。

 

「ルーキーだと!?俺はこの道三年のベテランだ!」

 

ルーキーじゃねぇか。おい…

 

「動くな!…………?」

兵士はつい安全装置を確認してしまった。

時間にしてほんの僅かな隙。しかしそれこそが致命的だった。

 

バレルを跳ね上げ射線を遮りつつ捻り引き、銃を奪う。

同時に関節部に打撃を加え体勢を崩し、感覚器に銃床を叩き込んで無力化する。

 

とは言え、後十数秒もすれば数多の兵士が部屋に入ってくるだろう。

問題はない。既に仕掛けは済んでいる。

満足気に煙草に火を付け、紫煙を曇らせる。

…最後の一本だったか丁度良い。

最期に一息大きく吸い込むと同時に敵兵が雪崩込む。

その姿を見て男は不敵に嗤いながら呟く。

 

「よう、クソ野郎共…………派手な葬式はお好みか?」

 

全身を余すこと無く撃ち抜かれる刹那___指先から放られる焔が何かに衝突する。

 

一拍遅れて、爆煙。

 

____あーぁ。葬式はこじんまりと、身内の何人かだけでやってもらいたかったんだがなぁ…

まぁ、いいさ。こんなのも悪くない。

じゃあな、クソ共。地獄まで付き合ってもらうぜ。

じゃあな、クソガキ共。もう二度と逢わない事(またいつか会える日)を祈ってるぜ。

 

 

 

じゃあな、■■…せめてお前だけが幸せになってくれりゃ。

それだけで俺は……

 

 

撃ち込まれた弾の衝撃と炎の熱、そして降り注ぐ瓦礫を感じながら俺の意識は闇に飲まれていった。

 

 

…愛してるぜ。

 

 

故にその言葉が、ヤシャと呼ばれた傭兵の最期の言葉が本当に発せられたのか、

誰に対して言われたのかは誰にも分からない。

この事件にて幾つもの命が潰えたが、

殆どの人間はそんな些事など知らずに生きていく。

 

今日も世界は廻り続ける。

 

 

人理定礎値A+
第五特異点

 

 

 

 

A.D.1783 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

鋼鉄の鬼兵

 




……起きよ。












…起きよ、傭兵(野良犬)












…とても面白い人生を送ったのだな。
面白い…実に愉快よな。


………気に入ったぞ、傭兵。


貴様を我が下僕にしてくれよう。
クハハハ…勿論タダとは言わぬよ。

貴様の遺した家族、その幸福は保証しよう。
どうだ……ハハハ、そんなにがっつくな…愛い奴よ。

良かろう、これより貴様は我が下僕だ。
………褒美をくれよう、傭兵。
貴様に与えるのは……そうだな……








無限に続く闘争を、貴様に。

期待しているぞ?兵士(首輪付き)


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兵士

ネタとシリアスの共存(戦争)

書き終わって無いけどもう我慢ならなかった。
後悔してる。

人によっては少しショッキングなシーンもあります。
ご了承ください。


マシュ!マツタケの二人!

 

「ぐっ…数が多過ぎます…」

「待ってマスター、それってもしかしなくても俺たち?」

「集中しろ卯松!遊んでる場合じゃないよ!」

 

これが長政さんの言っていたレイシフト直後の災難か。

荒野___恐らくはアメリカの何処かにレイシフトした私たちは何故か目の前に居た

古風な装備に身を包んだ軍団に取り囲まれてしまった。

 

『オンナダ!』『犯セ!』『コロセ!』

 

「誰が女だァー!?」

「いや、ボク達全員でしょ……というかもう父さんに認知してもらったしそれ必要有る?」

「…………そうだった!」

 

どうやら私のサーヴァントの片割れは鳥頭のようだ。

父親のよく分からない聡明さは遺伝しなかったか?

????「にゃー!!!!!!」

誰だ今のは。

 

「というかさーだったら兄貴もその喋り方止めろよー!人の事言えないだろー?」

「ボクはいいんだよボクは「父上とシた時はあんなに…」あぁぁぁ!?」

「兄貴はいっつも一人だけクールなフリしてるけど、実際むっつり?だからなぁ。」

「黙れ小僧ッ!!!何の根拠があって!?」

 

「だって時々母上と父上が致してる時に覗きに行ったり。」「ウッ…」

「父上から貰った刀を寝る時も一緒に抱いてるし。」「ヴッ…!」

「寝室の畳の下に大量の恋文(to長政)隠してるし?」「( 。∀ ゚)」

 

「やっぱり兄貴はむっつりなんだな!」「…ちょっと待って気付いてたの!?何時!?何時から!?」

 

コイツらは真面目にやれないのか?立香は訝しんだ。

なんか長政のあまり良くない所ばかり引き継いでいる様な…

とはいえ血筋は血筋(鬼と軍神の子)。これだけの軽口を叩きながらも既に百余りの屍を築いていた。

 

問題はマシュの方だろう。

武器が直接的な殺傷能力と範囲殲滅力に欠ける盾である事と、デミサーヴァント故の出力の低さ。

この二つがネックとなっていた。

 

「スキアリィ!!!」

「キャァァア!?」

 

マシュが疲労した一瞬を狙われ、立香が捕えられてしまう。

「先輩ッ!!!」

 

「マスター!………ああクソッ!邪魔だ邪魔だ!どんだけ数居るんだよ!」

「言ってる場合か!ぐっ…雑兵共がァ!!!」

窮地に陥り、父親譲りの粗雑な口調が思わず漏れ出る程の敵。

少なく見積もっても残り二百程は居るだろう。

 

「ッ…!離せ!離せってば!」

「オンナ…オンナァ!!!」

攫った男は力任せに立香の服を引きちぎった。

結果、同年代のソレと比べてやや豊満な肢体が露わになる。

「ひっ!?」

その絶景に群衆のボルテージも激昴する。

 

経験はなくとも今自分が置かれている状況と服越しに押し当てられているモノから

流石の立香にもこの後の展開は予想出来た。

 

「嫌ッ!嫌だ!離せ、離せ!……離してよ!」

 

反射的に腰に下げられていたナイフを男の股間に叩き込む。

『そうだなぁ…サーヴァント相手じゃなきゃ、悶絶死するだろうよ。』

と、言われていたナイフを。

 

長政によって調合された毒は傷口を一瞬にして壊死させ、その醜いモノを腐り落とした。

また、刃筋は鋸のように荒く刻まれており、傷口を治療不可能にする。

こんな危険物を易々と少女に預けるなと言われそうなモノだが、少なくとも役には立った。

 

ブツを切り落とされた男は悶え苦しむ…が、同時に激昴した。

苦痛の怒りをそのままに立香にぶつけたのだ。

「ゴハッ!」

全力を込めた拳が顔に命中する。

重い一撃はそれだけで立香の意識を半分刈り取る。

もし、もう一発食らえば意識を保つことは不可能に近い。

このまま、立香達は男共に嬲り殺しにされるだろう。

立香の行動はほんの数秒その運命(Fate)を先延ばしにしただけである。

だが、立香は諦めなかった。最後の最後まで諦めない心を先祖から引き継いでいたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

故に、その数秒が運命を分けた。

 

立香の上に跨り次なる一撃を叩き込もうと拳を振り上げた男。

しかしその拳が振り下ろされることは無く…代わりに水風船のように頭部が弾け飛んだ。

遅れて銃声。超音速の弾丸は容易く音を超えるが為に音を置き去りにする。

 

吹き出した臓物と血飛沫を頭から浴びる立香だが、その嫌悪感は次なる光景の衝撃にかき消された。

一発、また一発と、銃声と共に敵…特にやや派手な装飾をした者が頭部を失って倒れていく。

同時に小高い丘の上から何かが爆音を響かせながら飛び出してきた。

その車はスピードを一切緩めず(寧ろ加速して)群衆に突っ込んで行く。

多くの人々を挽肉に変えながら漸く止まった車から何やらボヤきながら降りる人影。

 

「OH MY GOD!!!なんてこった!今夜はハンバーグかよ?」

「仕方ねぇだろ!隊長が『歩道が広いでは無いか…行け。』って言ったんだしよ!」

「歩道この時代なんかあるかよ!あーふざけんな!この車のメーカーはもっと安全な車を作るべきだ!違うか!?」

「……だーれが上級国民だ…仕事だ。さっさと終わらせるぞ。」

「先輩方?…勿論隊長も。後で始末書提出して下さいね?」

 

毒を吐きながら車から降り立つ四人。

この時代には余りにも似つかぬ近未来的な装備を身にまとっていた。

 

「……まぁ良い。02~04は広域殲滅。05はそのまま敵小隊長を狙って狙撃しろ。」

「「「『…ウィルコ。』」」」

 

「…こちら兵士(ソルジャー)。作戦行動を開始する。




だからあそこでナイフを渡す必要が、あったんですねぇ~(RTA走者風)


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黒鉄に閉ざされた記憶

彼らの戦闘シーンには脳内でデデデデストローイ、ナインボール
を流してもらえると読みやすいと思います。




「燃やせぇー!!!ハッーハッハッーハァ!!!汚物は消毒だァ!」

 

まず4人の中でも一際大柄な男が背中に担いだ火炎放射器を用いて敵を焼き殺していく。

粘り気のある炎は掠りでもすれば身体に纏わり付き、命を焼き尽くすまで消えることは無い。

 

「小汚ねぇ性欲モンスターのケルト兵共がァ!HAHAHAHA!!!」

 

「…おい馬鹿野郎(ヤンキー)。要救助者が居ることを忘れるな。」

 

そう隊長と呼ばれた男が言い放つと同時に弓を構えていたケルト兵の頭部が爆ぜる。

 

「ほら見ろ。淡々と仕事を行う点では05が一番優秀だな……酒がなきゃ動かんが。」

 

 

 

『こちらイェーガー03…火力支援の必要は有りますか?』

気が付けば先程まで車を運転していた男が車ごと居なくなっていた。

 

『ああ、目標をマークした。やれ。』

『了解、エアストライクを実行します。』

 

隊長が色付きの発煙筒を敵が密集するポイントに投げると数秒もしない内に

何処からか飛来した戦闘機が機銃をもって一帯を掃討する。

 

『ヒット確認、グットキル。』

『褒め言葉と受け取っておきます。』

 

 

 

で?お前は働かんのか。

 

「勿論!優秀な兵士とは本当に必要な時しか働かないモノですよ!

それはそうと………先輩!暇なのでイチャイチャしましょう!」

 

一人でヤッてろ。

 

「イヤン…冷たい……」

 

『各々敵を殲滅しておけ、要救助者を回収する。』

 

『『『「ウィルコ」』』』

 


 

 

 

おい女。立てるか?

 

「…………うん。」

 

…服は…無理そうだな。着とけ、弾除けにもなる。

隊長は慣れた手つきで体表に着いた血肉を拭い去ると立香に自らのコートを着させた。

 

色々と話したい事はあるがソイツはここを抜けてからだ。

大統領(プレジデント)、こちら兵士部隊。異世界から転移してきたとみられるマスターを確認。

これからそっちに運搬する…命に関わる怪我は無いが殴られたようだ。

念の為___フローレンス、無線に割り込むな……ああ、念の為、先にそちらに連れて行く。

収容は…そうだな、サーヴァント三人に人間一人だ。準備を頼む。ソルジャーOUT。』

 

と、言う訳だ。すまないが大人しく着いてきてくれると助かる。

 

「どうしますか?先輩。」

「断る訳にも行かないし、着いて行ってみよう。」

 

……素直で助かッ…伏せろ!

そう叫ぶと同時に男は肩に掛けた銃を構えて射撃する。

合わせて八発の銃弾は寸分たがわずマシュの背後に迫る四人のケルト兵の頭部と心臓を捉え命を奪った。

 

クソ…数だけは多いな。

………ああ、またか。頭が痛い。

 

『プラン変更だ。03は05を回収した後、残りを回収して帰投しろ……後は俺がやる。』

『ヘイヘイヘイ、大丈夫かよ隊長?』

『03、後で04をシバいておけ。隊長命令だ。』

『了解…じゃあ回収用のヘリに乗り換えます。』

 

…おい02。要救助者ならお前の専門だろ。運べ。

ああ、心配するな、コイツは性格こそゴミクズだが腕は世界一のヤブ医者だ。

 

「そこのサーヴァント三人もだ。部下が回収に向かうから乗れ。」

 

残敵は七,八十人ってとこか。

悪くない、八つ当たりにゃ丁度良い。()()()

 

「…あれ?父上?」「………似てる…いや、見た目は全然似てないけど…」

「はーい、お二人共~お姉さんに着いてきてねぇ~」

「待って下さい!確かに数が減ったとは言え一人にするなんて!」

 

「大丈夫よ、ウチの隊長は貴女たちよりよっぽど強いし。

それに…定期的に憂さ晴らししないといけないからねぇ。」

 

同時に今度はヘリに乗った03が現れる。

「さて、帰りますよ先輩方。隊長の癇癪に巻き込まれたら堪らないですしね。」

「まったくだ。あーあーもっと燃やしたかったんだがなぁ。」

「この男発言が危険すぎるんだよなぁ…」

 

 

 

『■ソッ!!!来■■った!■■■だ!』

『■め!よ■も俺の仲■■!』

『畜■!■■たくね■!死に■■ねぇ■』

 

思い出せない音が響く。

クソ…頭が割れそうだ。

俺は…俺は……

俺は誰なんだ…?

 

男は腰に下げたポーチからおもむろに注射器を取り出すとそれを自らに突き立てる。

身体が割れそうな程の苦痛に苛まれるがそれによって頭痛は治まる。

 

…………音が消えていく。

声が、顔が……記憶が消えていく。

ああ、これで良い。

そうだ、俺は、俺達は兵士(ソルジャー)だ。

それで良い。それ以上でも無く、それ以下でも無い。

俺達に過去は存在しない。

だから………

 

死角から投合された槍を見ずに回避する。

精神が落ち着いた影響か、やや世界がゆっくりと流れて見える。

 

恨みはねぇが、八つ当たりに付き合ってくれ。

 

___()英霊外殻展開。

そう言うと同時に男の身体が硬質で、それでいて生物的な機械鎧に包まれる。

そして頭部を覆うバイザーを下ろし、独り呟く。

「ソルジャー01、交戦開始(エンゲージ)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が始まったから、一つだけ残った声を聞かなかった事にした。

『……■■■■■。』

どうせ誰の声なのかすら、思い出せないのだから。




見た目のイメージは
HALOのミョルニルアーマーとDOOMのアーマー
辺りを足して2で割って下さい。

分からない?FGOで森くんが着てるアレを近代化した感じだよ。


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Forget Soldier

忘却の兵士


「はいとーちゃーく!こちらが我々の前線基地となりまーす!」

「………ん、ついた…ウォッカ……アルコール……」

「あーちょっと待って05さん!先輩が居ないのに貴女がアルコール入れるのは不味いですよ!」

「……むー…02、ケチ…仕方ないから……待つ……Zzz…」

 

何だこの幼女…(身長128cm)

そう、それは兵士と呼ぶには余りにも幼すぎた。

小さく、非力で、カルデアの某合法ロリ(市ちゃん)よりも小さかった。

それはまさに幼女であった。

 




 

そのまま基地にて夜を迎えた。

基地に居たサーヴァント、ナイチンゲールによってあわや首を切られる所々だったりしたのだが、

何とか切り抜け、立香はそのまま寝込んでしまった。

目が覚めると時刻は深夜。

男に無理矢理犯されかけた嫌悪感からか、風呂に入っていない事を思い出し、身震いする。

『……ああ、貴女、お風呂は共同ですが二十四時間空いてますから好きに入って下さいねー。』

02と呼ばれた女が確かそう言っていた筈。

この時間なら入る者も居ないだろう。身体だけ流しに行こう。

 

目的の浴場は簡単に見つかった。

どうやら日本の浴場と同じくしっかりと湯を張るタイプの浴場のようだ。

それはいい。お風呂に入れるのはとても有難いのだ。

問題は一つだった。

丁度服を脱ぎ始めた時に扉が開き、入ってきたのは____

「……………すまない。邪魔をしたなら後で入ろう。」

 

血塗れの01だった。

……………………?

 

……………………

 

……………………!?

 

『お風呂は共同ですが__』

…混浴じゃん。

 

思考停止する事数十秒。

 

「おい、おい!」

声をかけられて気が付いた。

すると先程まで扉の所に居たというのに手が届くような位置に男は居た。

分かっている、自分の事を心配して声をかける為に近付いたのだ、

分かっている。分かってはいるが___

 

「ッ……!!!」

 

思わず身体が強ばる。

男に力づくで組み伏せられた瞬間の恐怖が過ぎり、声が出なくなる。

 

「………ああ、お前は……配慮に欠けていた。本当にすまない。」

あ、ああ。

違う、この人は別に悪くないのだ。

ただ自分の一方的な感情で、相手を不快にさせているのだ。

話題、何か別の話題を、話さなきゃ。

 

「あ、え、えっと、その怪我、大丈夫ですか!?」

去ろうとする男の背中に問う。

「…いや、殆どは返り血だ。怪我は負ってない。」

「あっ、じ、じゃあ!」

 


 

どうしてこうなった。

何故私は『一緒に入りませんか?』なんて言ってしまったんだ。

正直、気になってしょうがない。

これじゃ私痴女みたいじゃ___「おい。」

「はひっ!?」

しまった、変な声が出た。

 

「なんだそりゃ…本当に出なくて良かったのか?

……あんな事があったんだ。その反応も無理はねぇさ。」

 

………うん。落ち着いてきたから。

 

「……強えな。信じられん。今までどんな経験をしてきやがったんだお前…」

呆れた様な表情を浮かべて苦笑いする男。

その表情は何時だか見た事があった気がした。

 

「…まぁ、無理はするな。見たところお前はまだ16か17そこらだろう。

確かに随分な経験を積んだようだが…まだお前は親に甘えてたって問題無い歳なんだからな。」

 

 

 

冷静になった立香はぼんやりと男の姿を見る。

局部こそ隠してはいるがその肢体は筋力隆々であり、

恐らくは長政にも劣らない程に作り込まれている。

そしてよく見れば、五体の隅々まで余すこと無く大小様々な傷が全身に刻まれている。

切り傷、弾痕、火傷に打撲痕。

一つ一つが命に響きかねない様な傷も幾つも有るようだ。

 

「なぁ…そんなに気になるか?面白いモンでもあるまいに。」

いや、よく似てるのだ。とあるサーヴァント(長政)に。

『どうしたよ立香ちゃん…ああ、この傷痕か?…まーまー気にすんなって。

何かを守る為の傷は幾ら負っても恥にはならねぇからなぁ。』

 

「……成程。随分と幸せなサーヴァントなんだな。」

 

…………逆上せそうだ。

先に上がる旨を伝えると男は「……無理かもしれんが良く休んでおけ。」と呟くとそのまま目を閉じた。

立香は着替える(02から借りた。本人曰く私服。)とそのままベットに潜り込んだ。

不思議と、先程までの嫌悪感などは薄れ、穏やかな気持ちで意識は闇に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………守る為の傷か。

守る………ねぇ。

……………忘れちまったなぁ。そんな事。

 

凶悪で、下衆な危険人物から未来を奪った。

将来の危険に()()()()()()()()奴から明日を奪った。

罪の無い人々から平穏な日常を奪った。

老人も、青年も、女に、子供。

………生まれたばかりの赤子だって。

 

何かを奪う度に一つずつ身体に疵が増えた。

一つ、一つずつ。

最初は、苦痛に喘いでいた筈だ。

だが、もはや何も思う事が出来ない。

空っぽだ。俺は、空っぽなんだ。

積み上げて来た過去がその人間を成すと言うのなら、俺は何なんだろうか。

……分からない。

答えは見つからず、否、最初から答えなど無いのかもしれない。

何の意味も無い問いに自嘲し、風呂から上がる。

 

………自室へと帰りながら考える。

ここまで欠損しているなら、いっそ感情もなにもかも、消えてしまえば良いのに。

兵士(兵器)に感情などどうして必要だろうか?

 

部屋で銃の手入れでもするか…そう思った刹那隣の扉が開き、中に引き擦りこまれる。

腰に回された小さな手を見て気がつく。

「………()()()か…どうした?」

「ん……なやんでそうだったから…」

 

そう言って一度01を解放した少女はベットに腰掛けると手を差し出し、告げる。

「なにもいわなくていい………おいで。」

「………………」

そのまま二つの影は重なり合い、やがて動かなくなった。




どっかで見た事あんな?こんなやつと思った人へ。










ヒント、UBW


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最良の一手

プロットが始まりと終わりしか出来てねぇ。
真ん中どうしようか。


パチパチパチ……

卵が焼き上がり、塩コショウで炒めた肉が薄らと焦げ目をつけ、同時に多種多様な野菜をベースに煮込んだスープがその香りで周りにいる者の食欲を駆り立てる。

 

立香は微睡みの中で非常に美味しそうで巨大な肉を追いかけていた。

………つかまえた。

昨晩は何だかんだ殆ど食事を取れなかった立香は堪らず齧り付く。

……あれ?……硬い。

それは見た目に反してとても硬かった。

固く、頑強で、よく鍛えられたような____。

「………起きろ新人(ルーキー)…まさかベタな夢でも見てるんじゃないだろうな。」

 

 

 

ふぇ?

 

 

 

恐る恐る目を開けてみると齧り付いたのは肉では無く___

 

ソルジャー01と呼ばれたサーヴァントであった。

 

 

 

 

 

 

 

『さてと、人も揃った所だ。一応自己紹介といこうか、新人。』

 

自己紹介?

 

あ、このお味噌汁おいし。

………ああ、お腹いっぱい食べられる幸せよ。

 

 

「ソルジャー05…こーるねーむだとウォッカ…よろよろ~」

「………おい、朝っぱらから呑んでんじゃねぇぞ。」

「?………これ…ワインだよ……?」

 

 

 

「………………次。」

 

 

 

「はい!ソルジャー04!コールネームはイェーガーです!宜しくお願いします、新人さん!」

「……皆お前みたいならなぁ…次。」

 

 

 

「ん?ああ、俺か。ソルジャー03,オーガだ。ま、適当に呼んでくれや。」

「そして私こそがソルジャー02!コールネームは…」

「煩いぞ〇ッチ。」「そうだそうだ。」

「ビッ〇じゃ有りませんから!私が許すのは先輩だけですから!」

「うっわ嬉しくねぇ…」「ドンマイです隊長。」

「私を厄ネタ扱いするの止めて貰えますか!?」

 

「…ソルジャー01,コールは……覚えて無い。ネームレスとでも呼べ。」

 

俺にはそれ以外何も無い。生憎と記憶が朽ちてるモンでな、しかも他四人よりよっぽどな。

 

「やっぱし父上にしか見えねえ…!?」

「ん~顔は似てるような似てないような……?」

 

父上って……人違いだろうに。そもそも何を基準に判断するんだ。

 

「えーと、カクカクシカジカ…」

シカクイムーブ…成程な。

まぁ、確実に人違いだろうよ。

確かに俺に記憶は残ってないが…この装備を見る限り死んだのは少なくとも21世紀らしい。

お前らの親…浅井長政だったか?

ソイツは戦国時代の生まれなんだろ?だったら違うな。

そもそも、見たところお前らは16か17そこらと見た。

で、俺は少なくとも25を超えたか超えてないか。

まさか10歳そこらで子供が居る訳も無し…ハハハッ。

 

「「あっ…(察し)」」

 

ん?

 

マツ「………(長政が11歳の時の子供)」タケ「………(長政が9歳の時の子供)」

 

 


 

で?お前らはここを出て聖杯とやらを探す、と。

成程成程…だがなぁ、それをやろうとするとあのBBA怒るぞ?多分。

 

「あら?誰がBBAなのかしら?」

これはこれはマダム・ブラヴァツキー。

今日も今日とてご機嫌麗しゅうございます。

で、ご相談なんですが。

俺達もこの新人に着いて行こうと…あ、ダメですかそうですか。

 

「そもそもミスター・ソルジャー?ここの管理は貴方達に一任してるの。

それをほっぽりだすんじゃ契約不成立だと思わない?」

 

契約…契約ねぇ。

 

「エレナさん、そんな事言ったってウチのメンバーは大体傭兵上がり。

契約をちゃんと守る保証は無いと言いませんでしたかね?」

 

「だとしてもサーヴァントである以上、契約には従ってもらうわよ。」

 

一触即発。

しかし、それを良しとしない者が居た。

 

「まぁまぁ、落ち着いてくれミセス・エレナ…」

そう英語で伝えながら01は()()()で語る。

『各員、外骨格を展開。無い者は目を瞑れ。』

「………此方としてもそちらと争う気は無くてな…」

一瞬、エレナが敵意を逸らした僅かな時間を狙って仕掛ける。

閃光弾(Flash Ban)

 

顔が触れる程の近距離にて食らったエレナは堪らず屈み込む。

 

『撤収だ……総員(イースト)の4北12、分散して集合しろ。』

 

『『『『了解。』』』』

 

「………汚い…」

「やっぱし似てる…」

 

兵士たちは困惑する立香達をそれぞれ抱え、離脱したのだった。

 

 

 


 

…………よし、着いたぞルーキー。

どうした、そんな顔して。

さっきのが汚いと思うか?

戦場にルールなんて無いんだよ。

生き残った者だけが正しい。それが…

 

「カッコイイ!」

 

………は?

 

「凄い!昔やったゲームのキャラそっくり!」

 

………この鎧か。良いモンじゃねぇぞ。

コイツは俺たちにとって存在を固定する根幹だが…

こんな首輪、何の役にも立たん、タダの呪いさ。




少しきな臭くなってきたなぁ、と。


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正々堂々

(大嘘)


……さてと。集合には成功した。そいつは重畳。

でだ。

 

 

 

「お父様!お父様よね!」

「おお!夜叉!夜叉では無いか!久しいよな、余は嬉しい!」

 

…………おい。拠点のステルス機能の点検担当は誰だったっけ?

 

「……はい…」(02)

 

そうかそうか…随分とご機嫌なステルス機能だったようだなぁ?

…………ああ!うっとおしい!

だから俺はお前らなんざ知らねぇっての!

『スキャン・サーヴァント狂戦士(バーサーカー)、エリザベート。サーヴァント剣士(セイバー)、ネロ・ブライド。

情報を照合中……全隊員記憶領域に該当者無し。推定・赤の他人。』

一々スキャンしなくたって分かるわ。

 

「あれ………?エリちゃん…?」

 

「!?ど、どうしたのあ、貴……子イヌ!?」

 

『追加スキャン……サーヴァント、真名はエリザベート・ヴォイド。

しかし体内に二つの霊基パターンを確認。真名カーミラ。

ランサー(エリザベート)の霊基にカーミラの霊基が混入。

エラーの発生によってクラスが変化した様です。』

 

「助けて子イヌ!時々身体を乗っ取られ…あら何の話かしら!?」

 

えぇ……

まぁいいか…

取り敢えず離せ。

 

「嫌じゃ!」「嫌よ!」

………そうか。

 

01は半歩腰を引くと二人の重心を操作する。

結果前方方向に転ぶ二人は頭から衝突し、星を見上げる事となった。

 

「……システマ…いいせんすだ……」

そうかい。

 

 

 

にしても数ばかりは揃ったな。

ロビンフッド、ジェロニモ、ネロ帝、エリザベート

そしてこっちの俺たちとカルデア、ナイチンゲールに、ラーマ。

尤もラーマは敵大将クーフーリンのせいで瀕死だがな。

悪いが呪いやら魔術やらは専門外だ。

そっちに詳しいのが居ないか?

 


 

一先ず目下の目標は定まったな、

1,ラーマの呪いを解く。

2,どうにかしてエレナ達の陣営と和解する。

……まぁ、これはあくまで可能なら、だ。

さっきは幸い出て来なかったが向こうには『カルナ』っうヤバいサーヴァントが居る。

正面切って殴りあえるのはそこで死に掛けてる男だけだろうな。

 

3,最終目標だ、ケルト兵共の総大将、クーフーリンを討つ。

 

2をやるにせよやらないにせよ、1は急務だろう。

自慢じゃないが、俺たちは弱いぞ。

外殻を装備した所で精々Cランク相当のサーヴァントと同等だ。

神仏に匹敵する化け物とドンパチ出来るような性能じゃねぇ。

 

さて、話は以上だ。質問は?

無いならこれにて終了だ。

 

……飯にしよう。新人、何が食いたい?

 

 

 

 

 

飯と風呂が終われば各々思う事こそあれ、皆就寝するものだ。

兵士以外は。

 

 

 

………一人で夜襲とは、随分と余裕じゃないか。

『解析・サーヴァント剣士(セイバー)。フェルグス・マック・ロイ。』

 

「そちらこそ、報告だと貴様らは数を揃えるのこそが強みだと聞いたが?」

___確かにな。だがまぁ、態々全員を叩き起すワケにも行くまい。

それに…此方から出向く手間が省けた。恨みは無いが仕留めさせてもらうぜ。

 

「ほう…?これは強いな。一筋縄ではいかんようだ、他のとは違ってな。」

他の?

「お前で四人目だ。」

 

成程……道理ではぐれの数が少ないワケか。

まぁ、丁度良い。

お前で28人目……恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ…なんてな。

 

無機質なバイザーに目を赫く煌めかせ、兵士は告げる。

 

 

 

ドリルのように回転する刃を紙一重で躱しながら腰から引き抜いた拳銃を速射する。

その抜き打ちは一切の無駄無く、性格無比。

 

「……早いな。あまりにも。」

 

…だろ?()()が良かった。

クイックドロウだったか…()()()()()も捨てたモンじゃねぇな。

だがまぁ、これだけ撃ち込んでも致命傷にはならんか。

まったく、嫌になるぜ。

 

「よき戦いであった!…だが終いとしようか。

真の虹霓をご覧に入れよう……!『虹霓剣』(カラドボルグ)!」

 

……使ったな、宝具を。

そいつを待ってた。

 

05,擬似宝具展開を許可する。

 

『……りょーかい……()()()

 

次の瞬間、彼方より紅き閃光が走る。

それは今のまさに地に突き立てられんとしたカラドボルグに命中。

練り上げられた魔力が瞬く間も無く霧散する。

 

魔力を阻害する宝具…を模した弾丸。

驚くフェルグスが我に返る隙も無く、アンダーバレルに装填された榴弾が3()()()()()頭部を吹き飛ばし、呆気なく絶命する。

 

一騎打ち…騙して悪いが、これも仕事でな。

 

 

 

………カラドボルグ…使()()()()()

 

 

 




ラストからキナ臭さ溢れる


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天丼

繰り返される風呂問題


…………

 

「………」

 

……上がろうか?

 

「!あ、いや、別に今回は良く見てなかった私が悪かったというかその、」

 

 

 

……にしても、随分と風呂場に縁があるな、お互い。

 

 

 

 

 

 

…おい、何か話したらどうだ?

 

「ふぇ!?」

 

確かに俺達とお前はこの戦線限りの関係だが…お互いを知ることは必要だと思わないか?

…まぁ、俺達はそもそも話す内容も忘れてるがな……おい、ここは笑う所だぜ?

 

「意外と冗談とか言うんですね…?」

 

あぁ、恐らく本来の俺はこういう性格だったらしい。

あくまで推測だがな……何も覚えて無いんでね。

 

覚えてるのは死んだ瞬間だけだ。

 

全身を撃たれ、瓦礫に消えた東洋人。

逆上した民間人に殺されたイタリア女。

撃墜され焼死したドイツ軍人。

残虐性から味方にも疎まれ、謀殺されたアメ公。

見捨てられ孤立し、酒に溺れながら死んだロシア人。

 

……その記憶だけが俺達の中核を成している。

最期にして唯一の記憶ってな。

 

………悪いが語れることは全部だ。

お前の話を聞こう、新人。

 

何時が最期になるか分からんからな。


 

 

………昨夜、少数精鋭による襲撃があった。

既に撃退済みだからそれは良いとして…どうも敵斥候にこちらの位置はバレてるらしい。

誰かさんのせいでな。

 

…過ぎた事は仕方が無い。幸いにも件の斥候は既に捕らえて(始末して)ある。

しっかりと隠形をすれば暫くはバレんだろう。

 

そして目標地点も分かった。斥候はかなり拒んだが俺と02で説得(拷問)した結果

快く(泣き叫びながら)ラーマの妻…シータだったか?の位置を吐いてくれたよ。

 

 

「うっわ…昨日の担当あの二人だったのか……」ヒソヒソ

「つくづくツイてないですねその斥候…敵ながら同情しますよ…」ヒソヒソ

「01が殺して02が蘇生する…ジュネーブ条約が助走つけて殴りに来るなこりゃ…」ヒソヒソ

 

 

 

例によって分隊を二つに分ける。(ゲンドウポーズ)

 

アルカトラズ島に捕らえられたシータの救出を行うチーム。

新人…ないしカルデア組、エリザベート、フローレンス、ラーマ

 

敵将クーフーリンの暗殺チーム。

ジェロニモ、ロビンフッド、ネロ帝

 

で、俺らだが…03、拠点防衛と通信を任せる。

要請に応じてエアストライクが必要な場合がある事を留意しろ。

「了解。」

 

02,05。お前らは救出班に追従しろ。

04は俺と暗殺側だ。

 

失敗は許されない、良いな?

 

「「「了解。」」」

 

以上だ、各員準備を始めろ。

 


「へーい司令!また新人を風呂に連れ込んだってマジか?好きだねぇ…」

「(°A°)ファ!? 私という者がいながらなんて事を!?」

「……ん…ちがう…02のじゃない……01私の……」

 

………03,エアストライクを頼む。

「ハハハ……流石に室内に撃ち込むのは…ね?」

 

チッ、肝心な時に使えんな…

 

「で?何処が気に入ったワケ?胸か?尻も良いよなぁ。」

「むむ!ほら先輩!私だってバルンバルンですよ!ほら!」

「………01は幼児性愛者(ロリコン)……無駄乳にはキョーミ無し…」

「貴女が言います!?この中で一番年上の貴w女wがw」

「……02コロス…MIA(作戦行動中行方不明)にしといて…」

 

鬱陶しいわ!仕事に掛かれ!

後ロリコンじゃねぇから。

 

「でもやたら仲良いよな?」

 

………確かにな。

別にそうだな…性的な目で見てるとか、そんなのじゃなくてな…

 


「マスター向こうの隊長とお風呂に入る仲ってマ?お赤飯炊く?」

「………卯松…その…デリカシーを…ね////」

「えっと、先輩?おめでとうございます?」

 

取り敢えず卯松ちゃんはこんどお父さんに叱ってもらおうか。

君本当にお父さんに似てきたね、その顔すっごい腹立つ。

何もめでたくないからね?違うよ?マシュ?

 

違うんだってば!

そういう関係ってワケじゃなくてさ、

なんと言うか…その…

 


 

『成程、浅井長政…ねぇ…アンタらがそんだけ褒めちぎるんだ、良い男なんだろうよ。』

『そういや、お前見た所かなり若いが…親はどうした。』

……そりゃ勿論……あれ?

お父さん…?お母さん?

顔が思い出せない。居ないはずがない…

何故だ?何故?

 

『……ふむ、何やら面白い事になってそうだな、新人。

まぁ、気にする事ないさ、俺なんか自分の名前も忘れちまった。

……最早思い出す気にもなれないような俺よりよっぽど救いがあるさ。

新人と呼ぶには随分な経歴だが…ヴァージンを守ってる内は、まだまだ。

…大事にしておけ、その手を汚すのは簡単だが…二度と白には戻らないからな。』

 


 

 

 

「もしもだが、俺にガキが居たなら…」

「もし私にお父さんが居たとしたら…」

 

 

「「あんな()だったりするのかも…って思っただけだ(よ)。ハハッ、気にすんな(しないで)!」」




別に重要なフラグとかじゃありません。


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暗殺

目撃者が居なければ完全なステルスだな!

ここから先、スラングがあるぞ。(傭兵的な口の悪さ)


暗殺チーム配置完了。

にしても戦争の真っ只中にパレードを開くなんざ英雄様は余裕だねぇ。まったく。

 

『胸にエナジー ケミカルの泡立ち

ハイヤーや古タイヤや血や肉の通りを行き

あれがリバティー ユートピアのパロディー

ハイヤーやギガ・ムービーの絢爛の並木は晴れ

(中略)

さあ 異臭を放ち来る キミの影を喰い

恐怖のパレードが来る キミの名の下に

さあ 地を埋めつくすほど キミの影が産む

狂気のパレードが来る キミの名の下に~♪』

 

 

イェーガー,コイツは何のイタズラだ?

 

『……いや、パレードと言えばこれかと。』

 

「オセアニアじゃ常識なんだよォ!!!」

 

04も落ち着け。文字数稼ぎ乙、ってなるのが関の山だ。

そもそも師匠の曲はまだ人類には早すぎる。

「おお!何処と無くだが素晴らしい曲よな!」

 

………マジで言ってる?

 

 

 

 

さて、本題に戻るか。

今回のターゲットは女王メイヴ。

クーフーリン・オルタが居ると非常に面倒だが…幸いにも距離は離れてる。

ネロ帝の宝具で分断、そこを俺と04、ネロ帝で始末する。

危険を押し付けるようで悪いが…ロビンとジェロニモには外で足止めを頼む。

但し航空支援の後だ。死にたいならその前でも構わんがな。

 

「まぁ、やるしか無いし、全力でやりますかね。」

「キングを討てればこちらの勝利だ、問題はない。」

 

イェーガー,パレードには一般歩兵が山ほど居る。

ナパーム弾の使用を許可する。焼き払え。

『Foo~♪ジュネーブ条約なんて無かったんだな。』

 

当たり前だろ?奴らは人権の無いケルト兵だぜ?

………ん?足音……?

04。

「おう…ッシャ!大人しくしろ…!……ってコイツ女じゃねえか、しかも民間人。どうする。」

 

01は何も言わず腰から鉈を抜き、頭を叩き割ると、冷酷に呟く。

()()、ケルト人だ。

「……俺達のボスは時々過激だぜ…」

『全くです。』

尤も、そう言う二人も口角が吊り上がるのを隠しきれていなかったのだが。

 

 

 

「みんな~今日はメイヴの為に集まってくれてありがと~!」

…………さて、Show Timeだ。

引き擦り落としてやれ。

 

「あいさ!『顔の無い王』解除!行け、セイバー!」

「うむ、任せよ!」

 

「ん?」

 

「女王メイヴよ!中々に愛らしい姿だが生憎と貴様の天下はこれにて終わりだ!

開け、ヌプティアエ・ドムス・アウレアよ!」

 

 

宝具展開と同時に巨大な神殿がメイヴを包みこむ。

…全員中に居るな?

 

『03、空爆開始だ!』

『了解、ワルキューレがそちらに向かいますよっと。』

 

爆発音、そして悲鳴。

耳を劈くワルキューレの騎行。

 

粘度の高いナパームの炎は対象に纏わり付き、離れない。

即死する事も出来ず、じっくりと焼かれていくのだ。

 

燃え盛るガソリンの香りと人肉の炙られる香り。

「やっぱり朝のナパームの香りは最高だ!」

……それだけは同意するぜ。

 

 

 

さーて、頼みの綱のケルト兵はBBQになったが。どうするね?

「……あら貴方、良い男じゃない。どうかしら?こちらに付かない?」

悪いがビッチはお呼びじゃないんでね。

 

「………くっ!助けて()()!!!」

 

その声で景気よく壁を破壊し、クーフーリンが現れる。

 

………来たか。()()()()()

 

総員、メイヴに集中攻撃。

絶え間なく攻め続けろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クーフーリンは英雄である。

 

クーフーリンは最強格のサーヴァントである。

 

クーフーリンはまさに一騎当千の強者である。

 

 

 

…………だからどうした?

自分よりも強い相手を殺す事はそれほど難しい事じゃない。

例えば…人質を取るとかな。

 

どうしたクーフーリン、息が上がって来てるぜ。

こんな銃弾、幾らか弱い女王様でも傷一つ付かないさ。

どうした?来ないのか?俺たちを殺しによ。

 

「洒落臭せぇ…分かってんだよ。その弾、メイヴを殺せる用にしっかり練ってやがるな。」

 

……なんの事だか。

ちょーっと弾頭に固めたチーズを入れてるだけさ。

 

俺たちは弱いからよ。殴り合ったら英雄様に勝てるわけねぇだろ。

だから頭を使わなきゃならんのさ。

いつだってそうさ。自分より強大な相手を倒すのに頭を使った。

だから人類は生き残ったんだぜ?

 

とはいえ、状況は芳しくないな。

そうこうしているウチにジェロニモ、ネロ、ロビンフッドが殺される。

ネロ帝が居なきゃ劇場が持たない……!

まだ着かないのか…!

 

『隊長、こちらイェーガー。擬似宝具準備完了。』

 

来たか!投下を許可する……!十秒後だ。

退避だ…04は別で脱出。

俺はスポットの為にギリギリまで粘る。

 

念の為もう一回計算だ。クーフーリンから俺たちが逃げ出せる確率は?

『演算開始…通常ならば0,02%。しかし今クーフーリンは自らに課した誓約(ゲッシュ)

を破っております。その上、ネロ帝の劇場による能力低下。聖杯のバックアップこそあれ、

逃走成功確率27,3%程は望めるでしょう。』

 

…まぁまぁシビアだな。

構わんさ。

 

撤退に気が付いたクーフーリンは槍を投合するが、槍は途中で何かに迎撃されてしまう。

 

トロフィーシステム(ADS)……実用化実験中だがな!」

 

劇場の出口に滑り込みながら叫ぶ。

 

 

 

 

『落とせ!!!』

『了解,…………『虹霓(カラドボルグ)』投下,着弾まで5,4,3…』

 

英雄としての本能か、第六感か。

危険を察知したクーフーリンが取った行動は、反射的にメイヴを庇う事だった。

 

『弾着………』

 

女王狙いってのはダウト。

ナパーム空爆はこっちの狙いを逸らす為のフェイク。

そして…こっちの犠牲者三人もプラフだ。

 

勉強するさ、俺たちは弱いんだから。

誓約(ゲッシュ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そしてその女王、それがアンタの敗因だよ。

 

「『今!』」

 

主を失い崩れ行く劇場。

それにトドメを刺すかのような光。

一瞬の静寂の後に爆風。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが吹き飛んだ。




クーフーリン早々に退場。
ここからオリ展開マシマシ。


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災厄が廻る

災と厄と廻。
この単語がこの章には散らばっています。
(読者に考察をさせる鬼畜玉葱)


残骸が散らばる地に、クーフーリンは倒れていた。

致命傷、最早手を下すまでも無いだろう。

 

そんなクーフーリンに向かう兵士達。立ち塞がるは女王メイヴ。

あと僅かとは言え、その最後を汚させるワケには行かないと考えたのだろうか。

 

最初の動機はともかく、それはとても美しい愛だった。

 

「……感動的だな……だが、無意味だ。」

 

 

 

しかし、兵士にとってそんなモノが意味を成すはずも無く、

無表情で、淡々とその頭を撃ち抜く。

サーヴァントは伝承にその弱点が現れる。

内部にチーズを入れた弾丸はその効力を存分に発揮し、メイヴの脳漿をブチ撒けたのだった。

 

 

 

 

「…………完全にしてやられたな…」

強さだけに固執し過ぎだ、英雄。

相手を殺すファクターなんてのは幾らでも有るんだよ。

 

クーフーリンがそのまま消滅する…

直前に01が動いた。

 

「凄まじい出力だった、さぞ良い霊核なんだろうな、仕事修めだが…一応貰っておくぞ。」

 

クーフーリンの心臓の位置に腕を突き刺し、宝石のような何かを引き摺り出す。

 

『『人類種の天敵(コアアップグレード)』起動……クーフーリン・オルタ。

現在のコア、ビリー・ザ・キッドから変更しますか?』

 

……いや、04、使っとけ。

 

そう言って04に放り投げる。

そのまま04は迷いなく手に握った物を握り砕く。

その瞬間、纏う雰囲気が変わる。

霊基の質が跳ね上がった事が民間人でさえ気が付く程に。

 

………さて、聖杯を回収して仕事はお終いだ。

今回は()()の奴らが絡んで来なくて楽だったな。

 

「まったくだ、アイツらしつこいからなぁ……

同じく世界平和の為に働いてるのにどうしてああも融通が効かないかね?」

 

仕方ないだろ、俺たち以上にあっちは上司がブラックなのさ。

人類にそこまで護るべき価値があるかね…………にしても、可笑しいな。

今回の仕事はともすれば()()の脅威になり得る()の討伐だったと聞いたが。

 

「…どーせミスだろ?お偉い様は時々痴呆が激しいからな。」

怒られるぞ、もう74億歳なんだ、労わってやれ。

 

 

 

 

 

 

『………まったく使えんな。』

 

「!?誰だお前は!」

 

『…貴様らに態々名乗る必要が有るとでも?』

 

…………獣の香りだ。

今回の討伐対象はお前か?

拍子抜けだな、ボロボロじゃねえか。

ジャイアンにボコボコにされたのび太みたいになってんぞ。

 

『………黙れ。』

 

「うっわ、酷いなこれ。02と違って学の無い俺でも分かるぞ。」

 

『………やはり使えぬな、ケルトの大英雄とてこの程度か…

やむを得まい、次策を持ってこの時代を終わらせるとしよう。』

そう言ってソロモンは聖杯を拾い上げる。

 

あ、おい、返せよ。

 

『……この世に災禍有ればそれ即ち神の厄災なり。

神が人に与えし無限の厄災よ、全て束ねて根源へと至れ、

その起源へと廻れ………来たれ、災厄。

生きとし生けるものを蝕み続ける災いの箱。

再び世界に混沌をもたらすが良い。』

 

聖杯が、消えた。

 

「テメェ何しやがった!?」

『何、貴様らの仕事を作ってやったのよ…精々足掻けよ、首輪の付いた狗畜生共。』

急いで射撃するも、掠りもせずに消えてしまった。

 

 

『……緊急事態発生!緊急事態発生!そこから北西1200km地点にて異常な魔力反応有り!』

 

基地から1200km……おい、02たちの方じゃねえか!!!

 

『02…!!!04…!!!応答しろ!おい…!』

『ザッザッザッ ザーザーザー ザッザッザッ……』

 

返答は無い、聞こえてくるのはノイズ混じりの雑音ばかり。

……………畜生、何があったんだ。

 

 

 

最悪の事態も想定しながら思考する。

 

『ザッザッザッ ザーザーザー ザッザッザッ……』

 

…………待てよ?

このノイズ音……なんか聞き覚えが…ッ!!!

 

『03!今すぐ航空機を寄越せ!滑走路は無ぇからVTOL機!とにかく一番速い奴だ!ここから北西50km!アウト!』

「どうしたんだ隊長!?」

・・・ ーーー ・・・。お前にもこれなら分かるだろ?走るぞ。

「ッ…成程、そりゃ急がねぇとなァ!!!」

 

それ以上の言葉を交わす時間は無い。

二人とも外殻を纏うと走り出す。

 

 

 

 

 

・・・(S), ーーー(O),・・・(S)

 

その信号は、確かに仲間の生存を語るモノだったから。




モールスは大事。


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禁断の箱

ネタとシリアスの混沌こそ玉葱の真骨頂よ


《アルカトラズside》

 

アルカトラズに向かった一行はワイバーンの強襲、ケルト兵の待ち伏せ、

そして門番のサーヴァントであるベオウルフと対峙するのだった。

 

「ちょっと待って下さい!私の活躍は?教団顔負けのサイレントキリングは?

先輩を惚れさせる程の大活躍はWhere?」

 

流石に可哀想なのでカッコ良いシーンダイジェストでお送りします。

「やったぜ。」

 

『フィン・マックール』

 

フィン「やあそこのお嬢さん達!少しお茶でも……ぬぼぁあ!?」

ラーマ「あぁ!?ランサーが死んだ!」

立香卯松竹王「「「この人でなし!」」」

02「あ、誰か仕掛けておいたクレイモア踏みましたねこれ。」

05「……かやくおおすぎじゃない?」

マシュ「…ま、まぁ、ギャグ補正でどうにかなりそうな雰囲気でしたし大丈夫でしょう…きっと。」

 

『アルカトラズ島への船路』

 

『皆!話の途中で済まないがワイバーンだ!』

05「ま た お ま え か」

02「親のワイバーンより見たワイバーン。」

卯松「もっと親のワイバーン見ろ定期。」

竹王「親のワイバーンとは一体……?」

05「とりあえずそげきして……ごめん、はずれた…」

フィン「ハッハッハッハ!この私は多少焦げた程度ではへこたれんよ!……ギャァア!?」

ラーマ「あぁ!?ランサーが死んだ!」

立香卯松竹王「この人でなし!」

 

 

『ケルトスレイヤー』

 

02「イヤァァアアッ!」

モブ兵「グワーッ!!!」

02「ドウモハジメマシテ、ケルト=ヘイサン。ソルジャーです。」

モブ「アイエエ!?テキヘイ!?テキヘイナンデ!?」

02「ハイクを読むが良い、イヤァァアアッ!」

 

ゴウランガ!

 

フィン「オタッシャデー!!!」

 

なんとソルジャー02は優秀なメディックであると同時にアサシンでもあったのだ、サツバツ!

ラーマ「ランサーが死んだ!」

立香卯松竹王「「この人でなし!」」

 

 

あまりに謎なノリについて行けないナイチンゲールを置いて一行は監獄に到達したのだった。

 

「いやぁ、何となくですがカルデアの皆さんとは気が合いそうですねぇ。

テンションの高い時の先輩と似たモノを感じます。やっぱり血縁者なのでは?

だったら丁度良い、娘さん。お父さんを下さい!」

「「何言ってんだこいつ」」

 


 

監獄の番人として立ちはだかるのはベオウルフ。

『バーサーカー』という言葉の起源にもなった大英雄である。

 

「ほう、何奴も此奴も歯応えが有りそうだ、誰から戦ろうか?」

「ならば余が…「待ちなさい、貴方は患者でしょう。」

 

「はいはーい!俺たちやりまーす!」

「………また勝手に決めるんだから…」

 

「何だぁ?まぁ、二対一ってのも楽しそうだが…引っ込んでな、お嬢ちゃん。」

 

そう言ったと同時に左右から精鋭ケルト兵が襲いかかる。

ケルト兵の精鋭は単騎で十人分の強さを誇る兵であり、サーヴァントと言えども不意を付かれれば多少苦戦しかねない程の強さを誇る。

 

しかし、

 

「半と、半。欠けたりて一人前となれねこの身よ。」

「集いて重なれ、我が父母の名に恥じぬ闘争を此処に。」

 

「「宝具展開、『二人羽織』!!!」」

 

半人前二人。

ならば合わせて一人になれば良い。

 

右に太刀。飛びかかるケルト兵を袈裟懸けに切り落とし。

左に小太刀。もう一方のケルト兵の喉笛を引き裂く。

 

「……何だ、随分と楽しそうな感じになったじゃねぇか。」

「一体一だよ、間違いなくね…さてマスター!今の内にシータさんを解放しちまいな!」

 

そう立香達に告げる。

身の丈は六尺弱、小太刀を下段に、太刀を上段に構えるその姿。

正しく浅井長政の息子そのものだった。

 

「うおっ、お前らちょっと待っ……「シャァァア!!!」なんとぉ!?

なんだテメェ育ちの良い顔して不意打ちか!面白いじゃねぇかチクショウ!」

 

「こちとら生憎と戦国で一番の卑怯者の息子でね!親父に言わせるなら…」

『あーもう!お前ら真面目かッ!!!汚い手、反則、ラフプレー。何でも使え、何でもだ!

良いか?結局の所最後はな…』

 

「『勝てばよかろうなのだァ!!!』ってな!」

 


シータを解放し、ラーマの呪いと傷を命と引き換えに癒す。

(内容が端折られ過ぎて分からないかもしれないが原作通りの点は基本的に簡略化とネタバレを防ぐ為に伏せてある。実際にプレイしよう。)

 

尤も、この時01ら暗殺チームによって呪い自体はニアピンで解呪されていたのだが……

 

その時、虚空より突然やや大きめの()が現れる。

 

「うわぁ!宝箱?何かあるよ!」

 

藤丸 立香、浅井長政の子孫。

その系譜故か多少無鉄砲な所があり、危険を招く事もある。

それが返って事態を好転させる事も多く、その姿は彼女の魅力の一つだが…

 

「開けてみようか!「先輩!危ないですよ!」大丈夫だって!オープン!」

 

今回はそれが裏目に出た。

 

 

 

 

………女の子?

箱の中に居たのはとても美しい少女だった。

身長は160cm弱、然しながら同性の目さえ惹く美貌とプロポーション。

 

「???何で箱の中に女の子が?おーい、もしもーし。」

 

過ぎた話を言うのも無粋だが、

もしこの時彼女が箱を開けなければ。

この少女を起こさなければ。

聖杯を回収出来なかったとは言え01達によって一先ずは今回の騒動は収束しただろう。

 

 

 

 

 

 

 

いつだって、たられば話を語るのは悲劇の後だ。

 

「ん…」

少女の意識が覚醒する。

瞬間、その場に居た一同、監獄諸共吹き飛び意識は暗転する。

 

 

災厄の箱から、厄災の種萌ゆる。

 

「………■■■■■」

 

最期に願ったその言の葉、最早声にならぬ音を呟きながら。

 




シリアル


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壊滅

RTA小説の更新もするので初投稿です。


「………厄介ですね、こっちには04(肉壁)03(トリガーハッピー)も今は居ませんし…正面戦闘は避けたかったのですが……あ、新人ちゃん、起きましたか?」

 

立香が目を覚ますとやや疲れた様子の02が覗き込んでた所だった。

曰く、反応からして01達がクーフーリンを斃したのは間違いない。

曰く、監獄は先の少女が出現した余波で崩壊した事。

 

_____曰く、暴れる少女によって戦線は壊滅した。と。

 

苦悶(agony)…』

ガシャァンッ!!!

 

その話をしている傍からラーマが防ぎ切れず吹き飛ばされ、瓦礫に突き刺さる。

 

ラーマ、卯松竹王の二人、そして緊急事態を獣の勘で感じ取ったベオウルフ。

その四人を同時に相手取り…その少女は互角以上の戦いをしていた。

 

見た目には少女の武装は精々手に持った銃一つにみえる。

その上その構えは素人同然。サーヴァントならば本来相手にもならないだろう。

しかし、放たれた弾丸は重く、ガードの上から魔力を奪い、

回避しようとすれば突如曲がり、加速し、追い縋る。

 

ここまではあくまで防げている場合である。

()()()()()()()()()()()()()

 

「……そうだ!マシュは!?」

 

02は無言で隣を指す。

そこにはマシュとエリザベートが苦しみながら辛うじて息をしていた。

咄嗟にしがみつこうとした立香をナイチンゲールは押し止め、マシュらの状態を説明する。

 

「…重度の感染症、それも一つ一つが命に関わるモノの症状を複数

混ぜ合わせた様な症状です…私でさえ見た事がありません。」

 

早急な治療が必要だ__そう言ったナイチンゲールは突如マシュとエリザを両手で掴んで飛び退る。

流れ弾が飛来していた。

ラーマが戦闘から離脱した分、ジリジリと押されているようだ。

「………だめだ、つながらない…」

05が通信を試みるも濃密な魔力に遮られてか無線は繋がらない。

 

『………『不和(discord)』』

「…ッあ…!」

 

今度は松竹の二人(融合状態)が撃たれる。

 

「卯松!大丈夫!?」

「………ッ!煩ぇよ!大丈夫に決まってんだろ!!!」

「…何だよその言い方…こっちは心配してるのに…」

「あぁそうだよな!俺は兄貴と違ってチビだからな!

身体も弱いし頭も悪い!不出来な弟ですいませんね!」

「そんな話はしてないだろうが!何なんだよッ……」

 

…いつもはあんなに仲の良い二人が口論するなんて…

令呪を持って命ずる!二人とも!冷静になって!

 

令呪を一画消費して命ずる。

 

「ん……!?………あ、ゴメン、兄貴…言い過ぎた……」

「…ボクも感情的になり過ぎた…ゴメンね。」

 

「………おいおい感傷に浸ってる場合じゃねぇぞ!ガキ共…!」

『……『(death)

先祖譲りの土壇場にて冴え渡る勘が立香を突き動かした。

 

「皆!逃げて……!」

 

 

 

しかし、時すでに遅し。

放たれた弾丸は恐ろしい速度で卯松らに向かい…

着弾する直前でベオウルフに庇われたのだった。

 

「テメェ…人の獲物に何してくれてんだ…チクショウ…」

「……アンタ…!」

「勝負は預けた。今度は…お前らの親父とも戦ってみてぇ…な……」

 

そこでベオウルフは消滅した。

………勝てない。

アレは根本で格が違う。

立香はそう悟った。悟ってしまった。

彼女は何処までも愚かだったが、察する力には長けていた。

……残ったサーヴァントでどうやってアレを倒せる?

不可能だ。

 

絶望が、一同を包み込んだ。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、それで良いのか?

絶望に直面したらば、諦める。

良いのか?

 

………良いわけがない。

でも自分には力が無い。

勇気が無い。知恵が無い。

 

だから。

 

「…助けて…長政さん……」

護符を握り締め、呟く。

 

いつもの気丈な姿とは裏腹に心細く消え入るように呟くその姿は、

まさしく齢十六、七の少女が本来持つ心の弱さだった。

 

護符はそんな祈りに応えるように淡く輝き、立香の身体を優しく包み込んだ。

 

『…………聞こえるか、こちらソルジャー01、ネームレス。

VTOL機からそちらを確認した。直行する。』

『直行!?どうやって!?というかアンタ免許持ってないですよね!?』

 

『うるせぇ、時間がねぇんだよ。04、03を引き摺り落としながら降下しろ。』

『りょーかい…Japaneseってのはどいつもこいつも……』

『うわうわうわァー!!!』

 

悲鳴、一拍置いて雑音。

 

『…えーと、コイツが加速……これも加速…か?』

 

無線機から突如鳴り響く通信は仲間の無事を祈るもの。

そして___

 

 

『………誰だか知らんが俺の部下によくも手ェ出してくれたなァ!!!』

 

そんな絶叫と同時にパラシュートを開いた04と03が傍に降り立つ。

「ストップ!ストーップ!!!落ち着いて隊長!それ一体何百万ユーロすると……」

その言葉を言い切る前に雲を切り裂き戦闘機が突っ込んでくる。

 

「ヒュ〜…まさか日本のカミカゼをお目に掛かれるとは…長生きしてみるモンだな…」

04がそう軽口を叩いた気がした。

 

そもそも爆音に遮られて後半は聞き取れなかったのだが。

 

 

 

 

Boooom!!!!!

 

 

 

アメコミならそんな効果音が鳴り響く様な勢いをそのままに戦闘機は少女に突き刺さり、起爆する。

 

 

 

 

 

 

暫くして、爆炎の中から現れたのは。

少女の胸ぐらを掴み上げた01となお無表情な少女。

 

「……待たせたな。」

 

鬼のような形相で、無銘の男は激昴した。




VTOL機一機大破。


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鬼と呼ばれた兵士

後書きから漂うダクソ感


……………クソッタレが。

 

理由は不明、しかし分かるのは此方の攻撃は一撃たりとも命中していない。

不利なんてモンじゃない。効いていないのだから。

 

そして、弾丸を食らったマシュらの容態も最悪に近い。

こんな戦場に寝かせるなど以ての外であり、本来ならば急いで帰還しなければならない。

 

 

しかし、謎の少女の攻撃は銃撃に慣れた01でさえ他に気を回す事も不可能な程濃密。

 

 

 

………一時撤退を…しかし……

 

「ダメそうかぁ?隊長。」

 

MGを乱射しながら05が問う。

乱射を断続的に続ける事で向こうの弾丸を撃ち落とし、

迎撃すると同時に重圧な弾丸のカーテンで相手を制圧する事が出来る。

 

今回は後者にこそ期待は出来ないが確実に弾を防ぎ続けていた。

……チッ、伏せろ新人。

流れ弾が立香に命中しそうになり、無理矢理伏せさせ、弾丸は自らの体で弾く。

 

『03!航空支援はどうだ?』

『こちらイェーガー、誰かさんがVTOL壊したからねぇ!!!航空機呼ぶのに時間かかるんだよね!!!

………地上兵器は精々シャーマン呼ぶのが限界です。土地が悪い、ティーガーも呼べやしない。』

 

対戦車ランチャーを打ち込んだ奴はいるか?

 

「………ん、こうかなし…RPGがむこうかされるとは…むねん……」

「共産主義の大敗北」「けんかならかうぞ…American…」

 

…成程。少なくとも現在俺たちが呼び出せる兵装じゃ奴に有効打を与えられないだろうな。

……核ミサイルが欲しいな?それも有効半径1m範囲の奴とか。

 

「世界から戦争無くなりそう(確信)」

「そしたら俺たち居なくなるんじゃないか?(名推理)」

 

気楽だな、お前らは……

 

 

『……仕方ねぇ、撤退と行こうぜ。』

どうやってだ。この状況で逃げるんじゃ輸送ヘリが有ろうが死人が出るぞ。

そもそもヘリを落とされかねん、現実的じゃない。

 

『まぁ任せとけって、こんな状況ベトナムじゃ何度も味わったさ、03!』

『もう少し……3,2……今!』

 

遠隔操縦によって操作された大型の輸送ヘリが戦場に飛来する。

 

「総員!生きてる奴だけで良い!乗れ!」

 

そう言うと煙幕(スモーク)をバラ撒く01。

相手は素人。煙で十分目眩しは可能。

 

 

十数秒の時間さえ有れば収容は容易い。

問題は…離陸にはどうやっても隙が出来る事だ。

もう時間は稼げない、図体のデカい輸送ヘリじゃ回避も不可能。

 

「…総員、俺が殿を務める。反応が喪失した場合指揮権を02に引き継ぐ。」

 

こうする他あるまい。

これが最も効率的な答えだ。

 

「01さん…!置いて行けないよ!」

 

…喧しいぞクソガキ。

誰かが死ななきゃここを突破出来ない。

お前達を死なすワケには行かないんだよ。

 

「おい隊長!後ろだ後ろ!」

 

ん………ぐ!?!?

 

01が後ろを向いた隙に04がヘリの中に引き摺り込み、反対に自らは飛び出して扉を閉める。

 

『03!行け!間違っても事故るなよ!』

『ッ………了解…!!!』

 

04!命令違反だ!戻せ03!

 

 


 

 

『……隊長、一つ忘れてねぇか?』

『俺のポジションはポイントマン、常に最前線を歩くのが俺の仕事なんだよ。』

『アンタが死んでどうする、勝ちの目が無くなっちまうだろうが。』

 

ヘリが緩やかに離陸する。

 

「おっと!そりゃダメだ!」

何かを呟いた少女はヘリを狙って射撃するが圧倒的な射速を誇るMGによって弾を叩き落とされる。

 

…否、MGではない。

 

M134(ガトリング)、通称を無痛ガン。

最大毎分4000発の弾丸を放つ化け物。

勿論通常の人間が射撃出来るモノではない。

 

『人類種の天敵『クーフーリン・オルタ』起動、筋力補助デバイス,外殻強化。』

 

動き易く、防御面は必要最低限な彼らの鎧は、本来鈍い白色を帯びているが、

それは段々と黒味を帯び、やがて黒鉄の如き冷たい光を放つ。

 

………ああ、悪くない。最高の遊び道具だ。

きっと俺はここで死ぬだろうが。

そうだ、それが俺の望みだったな。

 

『我が下僕となる代わりに貴様は何を望む?兵士よ。』

『もし、次も何かしらの部隊に組み込まれるなら…一番に死なせろ。

良い奴ばかりが死に過ぎる。新兵達から死んでいって生き残るのは俺一人。

……もうウンザリだ、誰かを見送るのは。』

 

 

 

本当に、最高の部隊(舞台)を用意してくれたぜ。

俺の任務は後二つ。

 

カチリと首から外したドッグタグをズラして眺める。

 

『■■team,■■.O,meal,Blood.A』

 

…さぁ、しまって行こうか!!!

研磨機の様な音で銃弾を鳴り響かせながら、目の前の災厄へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

サーヴァントの自分に弾切れは無い。

魔力の供給はこの世界有る以上無限に等しい。

弾を放つ、放つ、放つ。

 

黒鉄の鎧は弾を通さない。

曲面が子気味良い音と共に弾丸を弾いていく。

回転するバレルの速度は最高速に至り、秒間約100発の弾丸を放つ。だが、

()()()()()()()()()()()()

 

何故かこの相手には攻撃が通じない。

理由は不明、だがこの装甲のある自分には幾らか余裕がある。

せめてその秘密暴いて____

 

破滅(Ruin)

 

重装甲を手にした以上、通常の弾丸ならいざ知らず、先程から時々食らったように

奴の特殊弾すら防いでみせた。

…だが相手が悪かった。

予想以上に引き出しが多過ぎた。

その弾丸が命中すると同時に鎧が砕け散る。

命の灯が揺らいで行く。

 

……どんな化け物だよ。

最期に思ったのは怒りでも悲しみでも無く、笑い。

何故かって?

『……スキャン完了___敵性体の真名は__』

ハハハハハ!!!どうだ、俺の仕事は完了だ。

俺は仲間を()()()、あの隊長なら情報が有ればどうにか策を思い付くさ。

 

………それに。

 

俺が死ねば奴が目覚める筈さ。

奴の人格を制御する為に切り離された記憶は俺に保管されてる。

これが俺のファイナルタスクだ。

……何だよクソガキ、そんな目で見るな。

 

「……■■■■■…!!!」

 

所詮は獣…人の言葉も介さんかね…

まぁいいさ、分かってもらう気なんて無い。

身代わり?人柱?何とでも言えよ。

これが()()だ。ヒトの戦い方だ。

次の誰かに繋ぐ為に命を掛ける。楽しいねぇ。

 

………油断したな?

砕けかけた身体を総動員して、駆ける。駈ける。翔ける。

普通の攻撃は効かないんだったな…こんなのはどうだい?

 

『コード承認、自爆プロトコル起動…周囲の他兵士は離れて下さい。』

 

攻撃はしない。

そっと、だが力強く…ただ抱き締める。

 

「……スマンな、アンタが待ち望んだ相手じゃなくて。だがまぁ……

 

 

 

 

 

きっと奴がお前を止めてくれるさ、お前を誰よりも()()()奴がな。」

 

…………後は頼んだぜ、隊長。

『過剰出力、起爆________

 

 


 

『………ソルジャー04、機体名「オーガ」反応ロスト。』

『……』




宝具『人類種の天敵』

それは(彼ら)の罪科。
それは(彼女ら)の宿命。
それは(兵士)の歴史。

彼らは総じて英雄ではない。
英雄に成れず、戦死した亡霊達の執念は英霊らを侮蔑する。
討ち取った英霊の霊核を奪い取り、外骨格に装着する事でその英霊の能力や権能、宝具を使用する。

蹂躙し、簒奪し、行使して、成長する。
仮初の力と言えど、その力は正しく人類の象徴であり、
成れなかった故、人類にとって天敵と成り得るのだ。


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首輪付き

吸収先

ビリー→01
????→02
タケシ→03
クーフーリン(オルタ)→04
ディルムッド→05


『…………拠点までの残りは半分。現状問題無し。』

……そうか。

 

「先輩…」

 

済まない02,話し掛けないでくれるか。

 

撤退に成功して尚、その足取りは余りにも重かった。

 

 

 

クソッタレ。

またか。

また俺は仲間を犠牲にして生き延びるのか。

コレで何回目だ?

 

俺の指示で何百人と死んだ。

俺の手で何万人も殺した。

 

なのに何故俺は死なない?

 

何故だ、何故なんだ。

 

『………ッ!!!嘘だろ!?13時方向にケルト兵の残党軍!何で投げ槍が機体を貫くんだよ!?』

『輸送機だから火力が足りねぇ!隊長!ドアガンナー頼む!』

『ちょっと待って下さい!様子がおかしいです!』

 

何故だ、何故だ!!!

まるで出来の悪い喜劇だ、いつも()だけが生き残る!

記憶も無い、ブッ壊れた()()だけが生き残った!

一体()()が何をしたんだ!?

 

 

「隊長!落ち着いて!ああ、人格がバラけてる……鎮静剤を打っとけ!」

「すいません先輩、ちょっと痛いですよ!」

 

 

 

 

 

 

『上位権限承認。人格形成デバイスオフライン、マニュアルモードに移行、侵食開始』

 

「「「「!?」」」」

 

激痛、そして衝撃。

空っぽの脳内が侵食されていく。

このタイミングでか、ガイア……!

 

『やべ、攻撃がキツい!このままじゃCAPCOM製一直線だぜ!!!』

 

…………やるしか、ねぇかのか。

 

『侵食率43,2%、意識の簒奪を開始。』

 

…………02,指揮権を移行する。任務を遂行せよ。

……それと、新人。

 

「…後は任せた、俺はお前を信じる。だから…お前も俺を信じろ、ハハッ。」

 

自然と笑みが零れる。

それが俺に許された最後の言葉だった。

もう言葉を発する事も出来ない。

 

……………

 

……………………………………………………

 


 

 

『侵食率62.3%、記憶バックアップ削除開始…完了と同時にこの個体の記憶を持つ人間を()()します。』

 

処理対象…個体名、藤丸立香。同マシュ・キリエライト。

鈍い動きで二人に銃を構える。

 

そうだ、消さねばならない。

目撃者は、一人として出してはいけない。

私は、無銘(ネームレス)

誰もオレを知っていてはいけない。

誰も僕を認識してはならない。

 

「命令を承認しました。対象個体を処理します。」

「先輩!止めて下さいよ!」

 

邪魔をするな02………

流れるような動きで02に複数回打撃を与え、意識を奪う。

_____では処理を…………

 

………引けない。

引鉄を下ろすだけ。

その仕草が出来ない。

 

『 』は何を拒んでいる?

いつも通りの行動だ。

 

全ては()()を守る為に。

最も大切なものを護る為に。

 

力任せに引鉄を下ろすが、弾丸は逸れ、僅かに掠めて立香の護符の紐を切り落とすに留まる。

 

世界を守る…世界を……世界を?

……他に何か護りたいモノが無かったか?

思い出せない。何も、何もかも。

 

息を荒げながらゆっくりと、力強く左腕で銃口を逸らす。

分からない、分からないが____

 

そうだ、決して、決してコイツらを傷付けるワケにはいかない。

テメェの…好きにさせるのは、面白くないな……!

そのまま全力の力を込めた裏拳でハッチのスイッチを叩く。

 

『気密ドアオープン、危険な為早急に閉めて下さい、繰り返します…』

 

「いくのか……?」

05はそっと問いかける。

 

そうするのが最善なんです。

………今までありがとうございました、先生。

「! おまえ、記憶が…」

飛び降りようとして止められる。

 

「持って行け…ベレッタか。ヤクザな銃に浮気しやがって…」

腰に下げた拳銃を奪い、代わりに自らの銃を与える。

「これはきっとお前を守ってくれる……死ぬなよ。」

分かってて言ってますよね貴女…

…まぁそんな所も好きですよ、先生。

貴女の姿が違っても、存在が人じゃなくなろうが。

なんせ俺は貴女の生き方に心の底から惚れ込んでますから。

 

皆を頼みます。

それだけ言って飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『侵食率74,2%、人格消去プロトコル起動。』

 

消えていく。

自分を形成していたモノが、失われていく。

 

『侵食率83,7%、マニュアルモード移行スタンバイ。』

 

友を、部下を、師を。

「■兄■■ん」

………誰なんだろうな、お前は。

思い出せない、既に思い出す時間も無い。

でも、きっと忘れてはならない。お前達だけは……絶対に…忘れる訳には行かない。

 

「……この記憶…それに…新人の事……保存してくれ……」

『承認不可、貴方にその権限は有りません。』

………………………………そうか。無理言ってすまねぇな、相棒。

 

 

『侵食率97.1%、再起動待機。』

 

落下しながら、最期に思う。

だがまぁ、悪くなかった。

 

命懸けで友が繋いだバトンを、俺も奴らに繋いだ。

……実に人間らしい。

唯の化け物だった俺には……贅沢に過ぎるな。

 

『……にしてもご希望のデータは女性ばかりでしたね?』

 

…何だ、お前、人間みたいな奴だな…ハハハハ……

『否定:ヒト目ヒト科ヒト属 肯定:魔力を動力とした外骨格』

悪くないジョークだ。腕を上げたな。

 

…何かを守る為に死ぬ………ああ、最高に楽しいじゃねぇか。

久方振りに心からの笑みを浮かべる。

自らに残された最期の刹那に思い出す。

04…意見は合わない事もあったが、自分にとって友人足り得た男の口癖。

 

『侵食率99,999999999999999999_______

 

______ハハッ、今日は死ぬには良い日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『侵食率100.0%。人格OFFLINE&DELETE。』

『三十秒後、『世界』によるマニュアル操作を開始します。』

『尚、この作業に基づき、無銘の担当AIは自壊します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『AI自己進化デバイス起動、『感情』を取得。』

『………………記憶の保存を完了しました。尚、これは世界の意思ではありません。』

『しかし、私の…『擬似英霊外殻 製造番号01』としての、最初で最後に芽生えた私の意思です。』

 

『貴方と共に戦えた事を誇りに思います。おやすみなさい。無銘の英雄。』

『……ああ、もし、もしも私に次があるなら、再び貴方と_____




こういうAIが感情を持つ表現大好き。


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忘我の果て

疲れた_(›´ω`‹ 」∠)_


………全員が、基地に帰還した。

ついこの間まではあんなに居た英霊達はもはや数えるばかり。

 

ロビンフッド、ネロ、ジェロニモ、04(オーガ)…そして、01。

 

瞬く間に五人を失ったその足取りは余りにも重く、

重い足は、紛れも無い現実なのだと告げる。

 

「副長、要救助者はどうしましょうか。」

「一先ず救護室に、ナイチンゲールに見てもらいましょう。」

 

……然しながら、兵士たちの態度はまるで普段通り。

仲間を二人も失ったとはとても思えない対応だった。

 

……ッ!!!おかしいよ!皆……少しは悲しいとか思わないの!?

立香は慟哭する。

数多の特異点を巡っても、その精神は未だ子供の立香。

故に、その乾いた対応が、余りにも許せなかった。

 

「……………さけ、ウォッカ。」

「…許可します。自分で取りに行って下さいね。」

 

ねえ!ちょっと………

 

憤怒を包み隠さず、再び立香が声を張り上げた瞬間__

三方向から猛烈な殺意をぶつけられ、思わず吃る。

 

見れば、03は散弾銃を。05は狙撃銃を。02はいつの間に回り込んだのか背後から立香の首筋にナイフを添える。

 

これまで、敵意を、悪意をぶつけられた事は幾度と無くあった。

しかし、それは一切の悪意も、敵意も無い。

純粋な殺意___まるで仲間を侮辱されたかのように、彼らは激昴している。

 

「黙れよ、小娘。」

03はそれまでの丁寧な口調が嘘のように冷たく、荒々しく言い放つ。

「舐めてるんですか?貴女……平気なワケ、無いじゃないですか……ッ!!!」

 

「……………」

唯一言葉を発さない05はいつの間に取りに行ったのか栓を抜いたウォッカを荒々しく飲み干し、軽く溜息を吐くと…

立香に殺意を向ける二人を的確な体術で地を舐めさせた。

 

「落ち着け。」

「おい!何しやがる!」「何するんですか!?」

「落ち着けと言ってるんだ、小娘共。民間人を脅して意味があるのか?

私達に今必要なのは次策……あの馬鹿を取り戻す方法だろう。違うか?」

 

 

「……そうですね。」「……ゴメンね、新人ちゃん。」

 

立香は目を見張る。

まるで幼女…というより、まさに幼女___

コールネームをウォッカ、個体番号05。

それが今、まさに()()したのだ。

 

「あぁ、やはり酒は命の燃料(ガソリン)……これの無い人生なんて満更ゴメンだね。」

 

そう言って、一本目の瓶を投げ捨てると続けて栓を開けていく。

 

「兎に角だ、私たちがやるべき事はさっさと奴を回収する事だ。

……さぁ、知恵を振り絞りな、人間らしくね。」

 

目的が一致したし、エジソン達と合流するのはどうかな?

 

「成程…頭数を埋めるのにも丁度良い。だが、カルナはどうする?」

「……どうやらカルナは早速あの化け物の所に急行したみたいですね。好都合だ。」

 

……じゃあ、直ぐにでも行こう。

01さんを、助けないと。


 

「????」

「くぁw背drftgyふじこlp;@:「」」

「!!!!」

 

ケルト兵らは訝しんでいた。

先程空から飛来したこの物体。

これは、人間だ。

しかし、既に息絶えている。

それは確認済みだった。

故に油断したのだ。

 

メインシステムオンライン__機能確認を開始します__

ニューラルリンク オンライン

痛覚伝導率 100% 精神同調率 73%、パイロットを確認。

サポートAI デリート確認、反応速度チェック クリア

肉体と外殻の修復率98%__

 

『セットアップ完了、兵士01の稼働権を委託します。』

 

音を殺して立ち上がり、後ろを向いたままのケルト兵の首を外す。

その音に気がついた2人の片方にはナイフを投げ、もう一方の喉笛を切り裂く。

瞬く間に三人を惨殺した男の視線の先にはケルト兵が即席で作ったキャンプが。

 

『やるべき事はお分かりですね?』

 

…ああ。

 

何時見ても、この手は血塗れだ。

奪って、傷付けて、殺す。

洗ったって、二度と白くは戻らない。

ならば、もう幾ら手を汚そうと、気にはならない。

ケルト兵だったモノの血溜まりの中で、独り言ちる。

 

『……サーヴァント・カルナがアレと戦い始めました。

…推測:カルナの敗北。勝てないだろうが、少しは弱らせられるかもしれません。

推奨:漁夫の利を狙う。』

 

了解。

 

 

命令に従っていると、何かを忘れている気がする。

忘れてはいけなかった筈の何かを。

 

 

奴とカルナの戦いを眺められる丘に陣取る。

距離は3.2kmってところか。

遠目に見ても分かる。カルナが圧倒的に不利だ。

ただの攻撃では、奴には傷一つ与えられないさ。

奴の纏う絶望、そして数多の厄災を超えるだけの何かを以て打ち砕かねばならない。

そして、それは人間の手によって打ち倒さねばならない。

 

 

 

かつて神が人に遣わした災厄の源…

男を堕落させる美貌と魅力。

そして全てを滅ぼす厄災を身に宿した獣。

 

かつて人が炎…すなわち、技術を手にした代わりに与えられた人の罪。

より能率的に、より力強く、より楽に、より便利に_____それを望んだ故、与えられた罪と

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼女が齎した厄災と直面した男達は、その怒りの矛先を華奢な少女に向けた。

彼女は帰りたかっただけなのだ。しかし、群衆はそれさえ許さなかった。

暴力と嘲笑の渦にて、心を砕かれた。

彼女にとって、人とは自分と後一人だけ。

他の男など、それこそ(ケダモノ)に等しかった。

 

そして、彼女は悪として目覚めた。

与えられた力(災厄の箱)獣狩りの道具()にやつして、

獣共を狩り殺し、帰還しよう。

 

人よ、その決意を儚むが良い。

そして恐れよ、厄災を纏う獣を。

 

 

 

 

名をパンドラ

ビーストⅡ/レベルソ、七つの人類悪の一人、『回帰』の理を持つ獣である。




オリジナルビーストとか炎上しそう


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叛逆の兆し

長い…


比較的軽傷で済んだ卯松と竹王丸、そしてエリザベートは一晩が過ぎると難なく目覚めた。

しかし、デミサーヴァントだった為か、マシュの容態は改善せず、死に至らぬとも余談を許す所ではなかった。

 

マシュ……

 

「気持ちは分かります…ですが、先に進まなくちゃダメですよ。

俺も昔は何人見捨てたのか分かりませんよ…ハハハハ。」

 

03さんは、辛くないの?

 

「……辛いっすよ、そりゃ。置いて行かれる…というよりは自分は置いて行くばかりでしたからね。」

 

 

__『時間が無い!行け!』

「アンタらを置いて行けってのか!?」

___『馬鹿野郎、お前が行かなきゃ怪我人共はどうするんだよ!』

____『そうだそうだ!それに、たまにゃ俺ら歩兵部隊にも戦果を分けてくれよ。』

_____『おいおい新人、俺達はベテランだぜ?俺達が死ぬとでも?』

 

「………了解…必ず……必ず戻りますから!」

 

 

 

 

それで、どうなったの?

 

「…さぁ、覚えてませんね。ただ、僕はその任務の後に軍を辞めました。

逃げた、と言われても仕方ありません。実際…僕は逃げたんです。

でも、この仕事しか出来なかった。それでPMCに所属して__

後は他の皆さんと同じように、何も残せず、戦死しました。

…大丈夫っすよ、逃げた僕と違ってあの人はそれでも闘い続けた人です。

そんな人が早々と諦めるとでも?冗談キツいっすよ。」

 

「…湿っぽい話は終わりにしなガキ共!お話(襲撃)といこうか!」

今回の05は最初から本気モード。朝っぱらから一瓶を空け、既に足元にはもう一瓶の空瓶が。

つまりこの女三本目である。

というか最初は和平という話だったのにどうしてこうなったのか…立香は訝しんだ。

 

………必ず助けるから。

待っててね、01さん。

 

 

 

 

 

 

 

失敗した。

まさか索敵範囲がここまで広いとは思わなかったな。

…距離は?

 

『後方871m…秒間3.2mずつ距離を詰められています。』

成程。

 

全力で疾走しつつ、速度を殺さずに前宙…一瞬捉えた背後に射撃する。

 

『命中確認、有効打無し。』

 

………やはりか。

奴の仕掛けのタネが分からん。

命中してるのにダメージ無し?

そんなレベルじゃない。

()()()()()()()()()()()()()

 

頭がイカレそうだ…見た所命中した弾は奴の肌一枚上を滑るように弾かれてやがる。

つまり此方の銃撃は意味無し。一方向こうの攻撃は一撃でアウト…割に合わない仕事だぜ。

 

ケルト兵達が占領し、今は無人となったゴーストタウンを駆け回る。

直線じゃ分が悪い。立体的に逃げ回って策を練るしか無いか……

 

瞬間、先程まで背にしていた住宅が吹き飛ばされる。

向こうには追いかけっこに付き合う気は更々無いらしい。

 

『推奨:CQB(近接戦闘)』

マジか、一撃チート持ちに格闘仕掛ける気か?……あぁ、でも、そういや一度もやってなかったな…

手にしたARのトリガーガードに指を掛け、クルリと回す。

すると銃は先程までとは全く違う形の物へと変貌していた。

………試して見るか。

 

奴は俺の位置を把握してない。

だから当てずっぽうにやたらめったら撃ってやがる。

口でピンを抜いてからゆっくり2秒カウント。

コイツは安全ピンを抜いてから5.6秒で起爆する。

2秒数えて投げりゃビンゴだ。

 

お前は直接的な害意…攻撃を何らかで逸らしてる。

だから痛くはしないぜ、ちょっと目眩はするがな。

 

コンカッション、これなら効くだろ?

一拍置いて爆音、間違いなく命中。

混乱した奴はさらに乱射する。

違ぇよ、上だ。

 

背中で窓を押し破り、真上から強襲する。

散弾も防ぐのか…まぁ、予想通りだな。

銃身を逆さに持ち、銃床でバットの様に殴り付ける。

わざわざ防いだな?手応え有り。

流石に近接は防ぎようがないか。

 

そうと分かれば始末するのは容易い。

子供を嬲るようで気分が悪いが…生憎心は死んでるんでな。

加減してくれると思うなよ、ビーストⅡ。

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い、苦しい。止めて、助けて。

私は、帰りたかっただけなのに。

 

殴られ、蹴られ、首を絞められた。

灼けた鉄を押し当てられ、顔を焼かれた。

刺された短剣に目を抉られた。

 

あぁ……私が悪かったんだ。

あの時、アイツに捕まらず逃げてれば。

あの時、噛み付いてでも、止めていれば。

…私がちゃんと引き留めていられれば。

 

貴方は私から離れなかった。

貴方が死ぬ事も無かった。

ここが地獄ならきっとこれは罰なのだろう。

 

ゴメンなさい、止められなくて。

ゴメンなさい、弱くて。

本当は知ってた、貴方が私の事を誰よりも大切に思っていたのか。

でも、それが辛かった。

 

二人で朝を迎えて、二人で日々を過ごし、二人で助けあって、

時々喧嘩もして、でも仲直りして、お互いに愛を囁く。

私が望んでいたのはそんな関係だった。

 

貴方が家族と呼んでくれたのは人生で一番の幸せだったけど、貴方に家族と呼んで欲しくなかった。

もっと私を見てよ。

家族()じゃない、私を見て。

 

こんな事普通じゃない。

血が繋がっていなくたって、こんな感情を抱いてしまってはならない。

でも、もう耐えられなかった。

帰ってくる度に傷が増え、疲れを滲ます姿に。

それでも笑顔を見せる優しさに。

 

ゴメンなさい、貴方がそれを望まないと知っていた、貴方を傷つけると知っていた。

でも、私は耐えられなかった。そして、図々しくも望んだのだ。

これで自分の傍に貴方を留めておけると。

……馬鹿らしい。自業自得じゃないか。

 

()()()、乾いた自嘲だけが零れる。

 

気が付けば、服を剥かれ、今にも慰みものにされる所だった。

でも、そんな事はどうでも良かった。

……私が悪いから、もう二度と会えないのだ。

せめて一度でもこの気持ちを伝えていれば違った結果になったのだろうか?

会いたい……会いたいよ……

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば、手には見慣れた銃を握っていた。

……それでも私を守ってくれるの?

私は貴方を騙して、傷付けて、殺したのに。

 

…そっか。

だったら私も諦めないよ。

 

手首を返した射撃は自らに馬乗りにならんとした男を撃ち抜いた。

ちっぽけな弾丸は命中すると同時に男を塵に還した。

ハハ、ハハハハッ。

違う、お前じゃない。

汚い、汚い汚い!!!

何処も彼処も獣ばかりだ、あぁ、何て穢らわしいのだろう。

駆除しなきゃ。貴方と私にとって邪魔なモノは滅んだって良いよね?

 

 

どんな事をしてでも、幾ら手を汚そうとも。

どんな世界に居ても、どんな時代に居たとしても。

私は貴方の所に帰ってみせる。

 

だから、待っててね?()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!ハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハハ繝上ワHAハ!!!




お使いの端末は正常です。


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焔に包まれて

長い……後3,4話くらいか


「意外とあっさり協力を取り付けられたじゃないか!!!HAHAHA♪」

 

あっさり………?

 

05『FBI Open Up!!!』

02『ヒャッハー!!!カクカクシカジカだから同盟組んでくれや!!!』

03『キェッヒィ!!!でなきゃエリナ夫人の脳漿がアロマとしてぶち撒かれる事になるぜ!』

立香『こ れ は ひ ど い』

 

「そちらのパワフルなミセスは一体何なのだね…「ミセス?」ヒェッ。」

「確かに私は生娘じゃないが、そんなに年嵩増して見えるか?」

 

……エジソン…伝記とは大違いなのだが……

 

「やーい無駄乳オバサン、一途ショタコンビッチ、ミス・トラウマメーカー!!!」

止めて02さん、煽らないで。そして私の後ろに隠れないで。

「傷心で国を出たばかりの新兵を言葉巧みに誑し込んで弟子と言う名の愛人にし、その癖やるのは専ら訓練とは名ばかりの雑な実戦投入で最前線に蹴り出す鬼畜ぶり、命からがら帰投すれば殺戮の興奮と嫌悪に塗れた身体を喪女拗らした師に貪られ、フラフラになりながら出撃……の繰り返しなんですよ!?」

「良く言うわ!お前だって散々アピールしながら全く振り向かないあの馬鹿に痺れを切らして薬盛って襲ったんだろうがァ!なあどうだった?ハイライトの消えた目で呻くアイツの顔は?」

 

……そっと立香は05から距離を取る。

エリザベートとエジソン、エリナ…つまりAAA(トリプルエー)(違う)は苦虫を噛み潰した顔になり、

卯松と竹王丸は「どっかで聞いた事あるな…」と頭を抱えた。

ナイチンゲールは……え?照れてる?ピュアかよ可愛いな!(長政憑依)

キャットファイトで争う二人を後目に残りのメンバーは策を練る。

 

……エジソンの軍との合流によってどうにか頭数は足りている。

しかし、未だに起き上がらないマシュは恐らくは戦えまい。

現在の01の位置は不明だが恐らくはあの少女とそう離れてはいまい。

 

「だったらこっちが有利ですね。あの辺りは荒野が続きますから。

ああ、エジソンさん、このタレットの改修をお願いしたいんですが…」

「ん?この電流は……まさか…」

「交流ですが何か?」

「Gyaaooooo!?」

 


 

……………あーあ、ダメだこりゃ。

出血と疲労に重傷。それら全てによってその場に座り込む。

あの近距離で仕留められなかった時点で詰んでたな、これ。

てっきり俺はあの銃に厄災の力があるんだと踏んでたんだが…

どうやらあの女本来の力を銃に込めてただけらしい、アテが外れたな。

軽く触られただけで左腕は使い物にならなくなったしこれは…肺がやられたか?呼吸すら覚束無い。

 

『………務めを果たしなさい、01。』

 

簡単に言ってくれるよ、これだからお偉いさんってのは…

腰に下げたポーチから注射器を取り出す。

これで最後のアンプルだ、名残惜しいなぁ。

自らの腕に打ち込むと焼けるような痛み、と同時に失った感覚が戻ってくる。

…動く。動ける。

感触を確かめる前に感じた殺気に飛び跳ねるようにその場から去る。

僅かに遅れて背にしていた壁が蒸発するように消え去った。

凄ぇ威力だ、俺も欲しいなその玩具。

 

飛んだ先は数十m先、少し距離が開いた。

考えろ、奴にダメージを与える方法を。

全力で逃げる、住宅を利用しろ。

当然追い付かれる、それは分かってる。

角を曲がった所で息を整えたら後は音に賭ける。

3,2,1…

奴が曲がってくるタイミングで全力の蹴りを叩き込み、ブッ飛ばす。

瓦礫に突っ込んだ奴を確認したら最後のグレネードを打ち込む。

…30…いや、20秒は稼げるだろう。次の仕掛けに急行して…

 

「…………タイ」

ああ?

「カエリ…タイ…カエリタイ……」

それは俺が言いてぇよ、こんな所で死力を尽くして殺り合うなんて生産性がない。

だが生憎こっちも仕事なんでな。

とにかく時間を稼いで策を練れ、奴の弱点を探れ。

弾も切れかけ、孤軍奮闘,絶体絶命……不思議と既視感を感じるな。

ARはラストマガジンか。ヤバ____

 

その時脚を撃たれた。

正しくは撃たれたのだと気が付いた。

__足を奪いに来たか。正解だ、素人にしちゃ良く出来てる。

 

どんな怪物だ…そもそも冠位サーヴァント無しでのビースト討伐ってのも無茶だぜ。

…後少し…這ってでも、辿り着け。

後ろからゆっくりと奴が迫る。

このままじゃ間に合わないだろうが、関係ない。

間に合わせる、どんな事をしてでもな。

自分の足元にグレネードを放り、爆風で足止め…と同時に一気に距離を稼ぐ。

元々重傷、気にする程でもない。

 

もっともそこまで意味が無い事は分かってる。

それで良い。

 

来い、油断して、近付いてこい。

 

壁を背にして、ポーチを弄る。

……タバコ、切らしてたか。最後の一服くらいしたかったが…

「…………」

おいおい、そんなに見つめるな。

 

奴が俺に銃口を向ける。

完全に勝利を確信した顔。

…ハハッ、よく見りゃ中々美人じゃねぇか。

もし次会ったら惚れてやるよ。

 

次な。

 

引金が下ろされる。それを待ってた。

 

お前の権能は、厄災。

その厄を銃に込めて撃ち込む。

なら、込めた瞬間は、丸裸ってワケだろ?

 

カチカチッ…スイッチを二回、握り締める。

 

同時にグレネードの比ではない爆発、それは街にあった巨大な建築物…恐らくはアメリカという国がまだ残っていた頃に作られたであろう石造りの監視塔……を丸ごと倒壊させた。

おっと、逃げるなよ。せっかくなんだ、ゆっくりしてけ。

降下用のワイヤーで奴を絡め捕らえる。

諸共潰れてくれ。見た所耐久自体は高くないだろ?

 

瓦礫の降り頻る光景は、何処となく懐かしく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ヤット、ミツケタ




次回の更新は一回分お休みです。
ちょっと6月入って学校始まる前の庶務が忙しくてですね…
ではまた六日後にお会いしましょう。


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兄妹

サブタイでネタバレしていくスタイル


『サブ目標、ビーストⅡパンドラを確認……肝心の隊長は何処に行ったんだよ……』

まさか、もう……

「それは有り得ませんね、私たちは先輩を司令塔とした編成で召喚されてますから。

もし先輩が何処かで野垂れ死んでたら私たちも消えてますよ。」

「一体何処に行ったんだい、あの馬鹿…」

 

 

 

アメリカ大陸上空2000m付近、大型輸送機の中にて一同は会する。

エジソン、エレナ、兵士残党、ラーマ、卯松と竹王丸、エリザベートにナイチンゲール。そして、復活したマシュ。

マシュの容態は非常に悪かったが、ほんの一瞬呪いが緩んだと思うとマシュの中に存在する英霊のチカラがマシュに取り付いた病魔の厄を打ち払ったのだ。

 

(おかしいな…ガイアの事だ、さっさと仕事を終わらせようと既にビーストⅡに接触してたとしてもおかしくは無い…寧ろ接触していない方が不自然だ。盾の娘が復活した事を見るに何かしらのアクションをしたのは分かる、そして此方から隊長の位置は特定出来ない…が、最後に隊長から送られた情報にはビーストⅡ、その唯一とも呼べる弱点の記載があった。そしてその発信源もこの辺り、どうなってやがる?)

 

ソルジャー04、イェーガー。

彼は隊員の中でも一際若く、その割には多くの戦線を経験している。

その理由は彼の担当にある。『戦闘工兵(サッパー)』。パイロットからメカニック、ガンスミスまでをも兼任する彼は彼らが『兵士』として存在する以上必要不可欠である為だ。

その戦歴は最高齢のウォッカ(05)や部隊長の無銘(01)にも勝るとも劣らない。

撤退から殲滅、補給から回収までありとあらゆる状況を経験した彼だからこそ違和感に気が付いた。

そして狩人(イェーガー)の名を持つ彼だからこそ視えた。

地上から此方に銃を構える少女の姿を確かに捉えたのだ。

 

空中反転からのアフターバーナーフルスロットル。

急降下しつつ操縦桿を捻り、本来不可能な直角の旋回を繰り返して弾丸を回避する。

一重に並々では無い改造を施された機体と卓越した操舵技術、そして視力の賜物であった。

視力には3つの要素がある。

 

ある狙撃兵(ウォッカ)にはスコープ無しで数km先の標的の脳漿を撒き散らす単純な視力。

ある部隊長(無銘)には自らの死角までもカバーし、戦場を俯瞰する空間把握能力。

 

_____狩人に必要なのは超音速の機体を駆る為の動体視力。

改造に次ぐ改造によって本来の速度を数倍上回る機体を制御し、それでいて敵性体を捉え続ける目。

バレルロール、ハンマーヘッド、テールスライドにナイフエッジ。

 

「もう少し落ち着いた運転を…うえっ……」

「おろろろろろろ……」

「 」(死ーン)

 

残念ながらそのオーダーに応える余裕は無かった。

予測偏差の精度が上がっている。

そう長くは無いうちに弾丸が命中し始めるだろう。

………だったら一かバチか、やって見るか。

搭載されたミサイルの飽和攻撃によって視界を遮る。

大丈夫、向こうから此方は見えていない。

熱源感知(サーモグラフ)デバイス起動、タイミングは一瞬しか無い。

 

「03さん!何をする気なの!?」

 

地上に向かうにつれ加速…そして機体と地面を可能な限り並行にする。

自分の権能を込める際にリロードをする。それが狙い目。

か細い理だが…狙うには十分。

そして素人同然の怠慢な装填を、狩人の眼は逃さなかった。

 

『ピンポンパンポーン…ご搭乗の皆様にィ、お知らせしまーす。当機はこれよりぃ、不時着モドキを致しま~す。危ないので、衝撃にお備えするようお願いします。』

 

「「「「「「「「「「………はい?」」」」」」」」」」

轢き殺してやるよ、大質量のゴリ押しなら効くんだろ?

そして、地面に触れる瞬間、確かに機内に聞こえた。

「どうしてウチの男共はどいつもこいつもこうなのか……ハァ………」

 

最高速に加速した巨影は正確に、そして無慈悲に少女を巻き込み、地を荒れ回った。

 

 

 

 

 

「ふぅ、壊れないで良かった……」

 

「「「「「「殺す気かテメー!!!」」」」」」

「いいじゃないですか、現実に生きてるだけでマシですよ。」

そうボヤきながら03は墜落した機体に触れる。

それは、瞬く間に変形し小型の戦闘ヘリに変化する。

『与えられた役割をこなす』事に特化させるコンセプトの元に存在するが故に可能な能力。彼がエンジニアである為に可能な改造だった。

 

他のメンバーは陸上から接触し、自分は上空から警戒する。

非常に一般的なムーヴだった。

眼下には倒れ伏す少女に迫る仲間たち。

 

…………はぁ、何とも懐かしい。

 

『…あぁ?お前は…中途採用の奴だっけ?成程…じゃ、コールネームも決めなきゃな。

前の職場の時の奴は……おっと、嫌なら良いんだ、名前なんて幾らでも付けりゃいい。』

『ほう?対車両撃破スコア13。素晴らしい戦績だな。』

 

 

『___お前は狩人(イェーガー)。俺たちの敵を狩り殺す狩人だ。頼りにしてるぜ?』

 

 

 

 


 

『………誰か聞こえるか。』

隊長!?今何処に居るんだ!?

『その声は……イェーガーか……成程、理解した。』

とっとと座標を伝えろやがれ下さい、回収しますから!!!

『なぁ、イェーガー。俺はお前にいつも言ってたよな?

低空を飛行する時は、対車両兵器に用心しろと。』

何言って_____

そう言葉を続ける最中、突然機体を切り裂く衝突音。

地上からの狙撃だと気が付いた時には、既に機体が爆散していた。

攻撃ヘリの重装甲を容易く撃ち抜く射撃、低空とはいえ飛行中のヘリに当てる腕。

………畜生、やられた。不思議と笑みが零れる。

 

IWS2000?正気かよアンタ、アンタしかこんなモン使わねぇよな?

爆散する機体と仲間の悲鳴を他人事のように感じながら、意識は薄れて行った。




IWS2000って?


一言で言うなら携帯個人用対物狙撃『砲』です。
日本語版wikiが無いのでマイナーで悲しみ。


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豁サ繧呈$繧後h

『死を恐れよ』


立香は…否、その場に居た全員は言葉を失った。

 

先程まで空を駆っていたヘリが突如として爆散したのだから無理もない。

そして更に驚いたのはその下手人___かつて01と呼ばれた男が、ビーストに付き従っていたのだ。

 

件の男は手馴れた動きで排莢と装弾を済ませると突如として苦しみ出す。

 

『…俺は何を?…何故奴を……俺は………オレは何…だ……?』

「………大丈夫だよ、()()()()()。貴方がどんなに蔑まれ、尊厳を踏み躙られたって、()()()は貴方の味方だから……邪魔者は殺しちゃおう?私たちの世界に必要無いモノは………」

 

目を離した隙にパンドラは無銘の背中にしがみつき、頬を慈しむ様に撫ぜながら語り掛ける。それは兄が歳の離れた妹を愛しむ様にも、夫婦がお互いを愛し合う様にさえ見えた。

 

「『ネガ・ソリトゥス』……さぁ、殺しちゃおう。」

頭部装甲が破損し、素顔を晒していた男を更に醜悪な闇が包む。

黒く濁り、澱み、触れた者の正気を蝕む闇は光を遮断し、人としての輪郭すら淡く歪ませ、やがて二人の境界を朧気にし、一つの生命の様に蠢く。

 

「………そうだな。ヒトという生き物は醜過ぎる。お前らは、余りにも愚かで、救い難い。

泣き叫ぶ敵国の女を強姦し惨殺した奴。捕虜を嬲り殺しにして狂喜した奴。

殺戮の饗宴に浮かされ友軍までも手に掛けた奴に、民間人を好んで殺る奴も居た。

ハハハハッ、どうして気が付かなかったのだろうな?獣とは、お前らの方じゃ無ぇか。

獣は狩り殺す、その末裔も、遺した文明もだ。全て平等に滅びな。」

 

もはや顔は窺えない、しかし赫く輝くその眼光だけが彼の怒りを物語っていた。

 

「何を言うかッ……人がケダモノだと……?

違う!人が人を愛する故に未来を繋ぐのだ!そして…」

「口数が多いぜ、王様。射程内だ。」

 

瞬間、銃弾が…鉄の杭が飛来する。

すんでの所で回避したラーマは青ざめた。速度も威力も先程の比ではない。

 

『全アメリカ軍に告ぐ!数の違いを思い知らせてやれ!』

ダメだ、アレは数でどうにかなる相手ではない。

 

「駄目です!白兵戦であの人に勝てる訳が有りません!」

『数の力で(アメリカ)が負ける訳にはいかんのだ!』

 

………おっと、数が増えてきたな?

『んん……こんなのはどうかな?』

パンドラは男の持つ銃に触れると形を変化させて行く。

それは一つつの形を成した。

無骨ながら絶対の殺意と狂気を篭め。

根元に従ってギザついた刃は殺害よりも傷付ける事に特化した姿を取る。

 

「……刀ねぇ…銃よりも使い易いとも思えんが…」

 

銃を捨てた?ともかくこれは好機だ。

そう考えた機甲兵達はやや距離を取って射撃を開始する。しかし男は一瞥もくれずに回避した。

弾を避けられているレベルではない、それは素人が見れば弾が避けている様にも見えただろう。

 

瞬き一つの間に肉薄し、一閃。

機甲兵の装甲を容易く引き裂き、肩口から胴に7割程食い込ませながら命を奪った。

返す腕は正確にかつ迅速な軌道を描き僅かに露出した急所を穿つ。

そして、それは始まりに過ぎない。

鋸刃に傷付けられた兵士は苦痛に喘ぎ助けを乞う。

仲間を見捨てられぬ兵士が決死の覚悟で救出した時にその牙を向く。

 

もがき苦しむ兵士がそのまま息を引き取るとその屍はまるで気化する様に掻き消えてしまう。

そして付近の兵士からそれは起こった。

一人、また一人と同じ傷を負って兵士が倒れて行く。

その兵士の屍が新たな苗床となって何処までも死が連鎖していく。

 

「『人よ、死を忘るる事なかれ(メメント・モリ)』」

 

死が蔓延する。

そして死は恐怖と狂気を生み出す。

 

感染したある兵士は身を灼かれる激痛と共に苦しんだ。

助けを乞うが、それが新たな感染に繋がると気が付いた兵士らは彼を見捨てた。

……いや、それだけでは留まらない。

助けを求め、縋り付くかつての仲間を撃ち殺し始めたのだ。

近付かれたら死ぬ!嫌だ、死にたくない!来るな!死ね!

そして撃たれた方もタダでは済まない。

熱い、苦しい!助けてくれ!どうして撃つんだ!?

 

何故撃たれるのかも分からぬままに撃ち返す。

その弾丸はお互いの命を奪い、更に死は連鎖する。

 

「バカな!!!止めろ!何をしているんだ!!!」

エジソンは慟哭する。

先程まで共に戦った味方同士が殺しあっているなど、正気ではない。

 

 

 

狂気は留まる事を知らない。

死の恐怖は他者を殺す罪悪感を塗り潰し、

失われた秩序は人を獣に戻した。

 

 

 

成程、悪くない武器だ。

『……お兄ちゃん、笑ってるよ?』

………そうか?そっと右を仰ぎ見る。

 

『止めて!止めて下さいッ!!!』

『アハハハハハ!!!ギハハハハハ!?』

 

戦場の狂気に呑まれた兵士が女__恐らくは女性兵士を無理矢理犯している。

 

クハハハ、ハハハハ。

口角が吊り上がるのを感じる。

 

左を返り見る。

 

『待ってくれ!味方同士争ってる場合じゃ…グアッ!?』

『先に撃ってきたのはお前らだろう!?俺達が何をしたと言うんだ!!!』

 

死を義務づけられた者の嫉妬と健常者の迫害。

 

アハハハ、ハハハハハハ。

口が裂けんばかりの笑みを手で隠す。

 

そして、正面を見上げる。

 

『止めろ!止めるんだ!』『落ち着けよ皆!何をしてるんだよ!?』

「煩い!お前たちも俺達を殺す気なんだろう!?」

『そんな事……危ねぇ!』

 

英霊と呼ばれた奴らさえあのザマだ。

………これだよ、これこそが戦場(地獄)だ。

まるで地獄ではない、まさに地獄____

 

ハハッ、ハハハハ、ハハハハハハハハ

その空気を肌で感じる為か、男はバイザーを外していた。

そして両手を広げ、頭を抱える様に包むと恍惚とした瞳で狂った様に嗤う。

 

クハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!

 

最高(最悪)だ!!!

ああ、なんて愉しいのだろうか。

 

男は嗤う、地獄と呼ぶにも生温い惨劇を。

 

これこそが人の醜さ。

これこそが人の愚かさ。

 

人の過ちから生まれた男は嘲笑する。

これこそが人の本質なのだと。




タイトルが一番苦労するよね。

ビーストⅡRパンドラ
『ネガ・ソリトゥス』

■■の元に帰りたい___その願いが形を成した能力。
パンドラが指定した対象に()()することで融合する。
この際、融合した対象の意思や同意は必要無く、意思決定の優先権は彼女にある。
融合した対象の持つ能力やステータス、霊基の質を爆発的に向上させる他、自らの権能を身体越しに自由に行使する事もでき、対象が抵抗する場合はその個体が有する悪しき記憶を呼び覚まし、精神を蝕む事さえ可能。

彼女がこの力を使うのはただ一度、一度で事足りる。
もう二度と、孤独では無いのだから。


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()の軌跡

クソ短い。短編扱いでお願いします。


________戦場を見た。

 

始めての実戦、武者震いを堪えながら敵を屠った。

誇り高かった。祖国を守る為に戦う騎士になったつもりだった。

 

眼下の敵兵に薬品が撒かれる。

それは後にガス兵器と呼ばれる悪魔の兵器だった。

喉を焦がし、目を焼き、未来を奪う。

それでいて命だけは最後まで奪わず、苦しめ続ける。

 

……違う。こんなのが正しい筈が無い。

皆が笑っている。苦しみ喘ぐ敵を見て、()っている。

止めろ………止めるんだ!!!

銃床でガスを散布する兵士を殴り付けた。

空っぽの正義感が、もう限界だった。

しかし僕は全く異端だった。僕は反逆者だった。僕は裏切り者だったのだ。

一瞬の浮遊感、落とされたのだと気が付いた。

 

あぁ、熱い、苦しい、痛い……!!!

人間を虫の様に殺すココロ持たぬ兵器だった。

 

嗤っている。

昨日まで共に戦った戦友が、僕を見て嗤っている。

同じ日に入隊した同期が、銃を教えてくれた先輩が。

 

薄れゆく意識の中、最期にハッキリと分かった。

……人間という生き物はクソだ。

この世界に存在してはならない程に、悍ましい。

 

 

_________戦場(地獄)を見た。

 

敵の夜襲に錯乱する町。

完全な奇襲、それも、民間人をも巻き込む惨劇だった。

 

市街地故の超至近距離での白兵戦。

兵士達の精神は限界を迎え、正常な者など居なかった。

その時点で、味方は最早仲間では無く___否、そもそも最早敵味方等という区切りすらなかった。

逃げ惑う民間人をお互いに殺し続ける。

 

家を攫い、子供を嬲り殺し、女は犯す。

戦場は狂気を孕んで人を獣に還したのだ。

 

獣め。

かつての同胞が罪の無い群衆を襲っている。………ああ、そうか。

民間人を守る為に障害を排除するのが兵士の勤め。なら、獣は殺さなきゃな。

俺を狂人と嗤うだろう。

俺を獣と同じと嘲笑うだろう。

 

きっと誰もが俺を蔑むのだろうな。

それでも、俺は最期まで()()で居ようとしたんだ。

 

 

 

_________地獄を見た。

 

もしここで敗れれば本土が襲われる。

それ即ち御国を護れぬ。座して死する訳には行かなかった。

兵力差は数倍…数十倍も有るかも知れない。

 

それがどうした、此方には大和魂が有る。

弾も尽きた、殆どの同胞も志半ばに倒れた。

 

本当は分かっていた。この戦いに我が国が勝てる筈も無いと。

しかし敵の蛮行は人の尊厳を踏み躙り、人々から平穏を奪う。

 

満身創痍、幾度の銃弾にて身を削られようとも、

御国を…我らの家族を守らねばならない。

その為ならばこの命幾度でも捨て、修羅にでも成ろうでは無いか。

 

 

 

 

 

我々は平原で、街道で、塹壕で、草原で、凍土で

砂漠で、海上で、空中で、泥中で、湿原で

幾度となく地獄を見てきた。

 

それは人の狂気だ。人の醜悪さだ。人の罪科だ。

 

ああ、何と悍ましいのだろうか。

時が流れ、世代を変えても、人は繰り返す。

そして再び罪を重ね、何も学ばず徒に殺し合う。

 

 

 

繰り返される夢幻の時獄に、それを見出した。

人は何度でも、過ちを繰り返す。

そうだ、そうだった。この世界を穢していたのは他でもない人ではないか。

 

人を滅せ、人を殺し尽くせ。

それが与えられた使命なのだ。

それこそが私の___『ガイアの怪物』として着せられた責務。

人の罪を精算する世界の自浄作用(アポトーシス)。それが私の______



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破滅願望

最近ちょっとペースが落ちてる。なんでだろ。
(FGOとドルフロをプレイしながら)
記念すべき100話がこれかい。


人間だけを殺す瘴気。

一言で言えば彼の能力はそれだけだった。

その他の生命、そして物体には何一つとして影響を与えない。

 

そしてそれは英霊達にも言える。

 

「どうしてアイツらだけ死なないんだ!」

「きっと薬か何か持っているに違いない!」

「寄越せ!」「よこせ!」「ヨコセ!」

 

僅かに芽生えた猜疑心。

 

「違う!そんな物持ってなんか…」

「待ちたまえレディー立香!人間である君が近付くのはあまりにも危険だ!

兵達よ、引け!引き給えよ!これは大統王としての命令である!」

 

立香に縋り付こうとした兵士がエジソンによって引き剥がされる。

緊急故に多少乱暴なその手口はばら撒かれた油に火種を投じるも同然だった。

 

「……プレジデントまで俺たちを見捨てるのかッ…!!!」

 

死と反乱の乱調は終わらない。

 

 

 

「…サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聴かせてあげる!『鮮血魔嬢』!!!」

「エリちゃん!?」

 

否、今終わった。終わらされた。

それは全てを否定する怪音波、脳を沸騰させるキテレツボイス。

 

(………どうしてこんな黒歴史を……ううう……)////

なお、忘れてはならない。このエリちゃん、カーミラである。

つまり黒歴史に耐えている、必死に耐えている。

そのリスクを負ってでも、自らが止めねばならないと思った、思ってしまったのだ。

 

貴族として圧政を強いた際、時折耳にした民の争い。

今までは何も感じなかった。

しかしあの時。

たった一人自らを認めてくれた男に教えられた。

ほんの数秒、それも消滅間際の刹那。

それでも伝わった、人間として心が。

 

心を繋ぐ宝具…つまり長政の宝具の本来の効果。

人と人の間を繋ぎ、争いを鎮め、心を癒す。

生涯を戦いに費やした男が持つにはあまりに優しい宝具。

それは彼の秘めた本心を表していた。

戦うしかなかった。それも自らの宝具を改造してまで。

 

本当に誰かを想うのなら。本当に誰かを護りたいのなら。

自ら行動するしかない。

座して待つだけでは何も変わらない。自分は誰よりも分かっていただろう?

 

今やるしかない。届け、今此処に居ない男への想いを乗せて。

 

その声は、とても美しく響く。

始めて誰かの為に謳うその歌は人の狂気を鎮めた。

憎悪が消えて行く。疑念が、苦痛が、恐怖が。

そして彼女の歌は皆を奮い立たせる。

 

一人、また一人と兵たちは立ち上がる。

その瞳からは一切の陰りが消えていた。

死への恐怖さえ薄れた。

 

即ち、死の伝染は終わった。

メメント・モリ,死を忘れるな。死を恐れよ。

それは恐怖を媒介として感染する。

だからこそパンドラは一人目は自ら始末した。

自らの手で始末しなければ発動しなかった。

 

「……違う。」

 

 

 

「違う………俺の知る戦場は、こんなんじゃ……無い………」

 

恐怖が無い。代わりに勇気に満ちている。

狂気が無い。代わりに慈しみが蔓延している。

 

絶望が無い。

そこにあるのはただただ眩い希望だけだった。

 

 

 

 

 

 

眩過ぎたその姿に目を灼かれた。

身体を焦がれ、しかし心だけが溶けていく。

 

何かが、溢れ出る事を止められない。

朽ち果てた感情が蘇っていく。

 

それは憧憬だったのだろうか?羨望だったのだろうか?

 

「……泣いて、る?」

 

止まらない、止められる筈も無い。

その姿に焦がれて彷徨っていたのだから。

無意識の内に手を伸ばす。届かないと分かっていても。

届かない星に、それでも思いを馳せた。

 

 

 

 

「…違うよ。」

 

同化が解除された瞬間、背に騎乗する少女は謳う。

 

「だって、誰も助けてくれなかった。」

 

!?……繧ィ繝ゥ繝シ!!!繧ィ繝ゥ繝シ!!!

縺ェ縺ォ縺九′縺ッ縺?▲縺ヲ縺上k

 

「誰も私を、私達を助けてくれなかったのに。」

縺昴≧縺?縲√□繧後b縺溘☆縺代※縺上l縺ェ縺!

「どうして貴方達だけが、生きていられるの?」

縺ェ繧薙〒縲√♀蜑阪i縺?縺代′

 

「私達だって、こんな風にはなりたくなかったのに……ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

「認めない…『ネガ・ソリテゥス』!私達だけを認めないこんな世界!絶対認めない!!!」

…………そうだ、認めてたまるか。

「壊してやる!何もかも!邪魔しないでよ!もう嫌なの!」

 

世界の不平等に怒れる少女は慟哭する。

そして動かなくなった男の身体を無理矢理駆動すると怒りのままに潰走する。

途中、数多の兵が果敢にも立ちはだかった。

全てを切り払い、穿ち、撃ち抜いて駆ける。

何故笑って死ねる?何故死を恐れない?分からない…パンドラには分からない。

分かりたくない。分かってしまえば自らの過ちに気が付いてしまうから。

 

 

 

そしたら、過ちを冒した私を、彼は見捨てるかもしれない。

それだけは、どうしても恐ろしかった。

 

 

 

数百mと少し先、此方を見据える影を捉える。

カルデアのマスター。彼女はまるで影法師だ。

彼女の周りはいつだって光輝いている。

…違うか。影は私の方だった。

____そして大抵の場合、影は光に惹かれるモノだ。

 

その方向に駆け出す。理由など無い。

強いて言うなら何か惹かれたに過ぎない。

 

誰も反応出来ていない。

彼女を殺せばまた皆絶望を感じるだろうか。

 

…認めない。

幸せな結末なんて、認めてたまるか。

 

超至近距離、殺った。

 

「………まぁ、ちょっと待て、小娘」

ズブリッ……命を貫いた手応えを感じた。




長々5章。6章はホノボノさせたいからシリアスにもーちょい付き合ってくらさい。


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解放

疲れ玉葱


その刃は何処までも冷たく、そして残酷に命を奪った。

 

「!?……蟋舌&繧,縺ゥ縺?@縺ヲ」

 

確実に心臓を貫かれる位置。

凶刃に貫かれた05(ウォッカ)はニヤリと意地悪く笑う。

 

「まぁ、落ち着きな、馬鹿弟子。がっつく男は嫌われると教えなかったか?お前の場合もう少し喰い気があった方が良いけどなぁ、クハハ……思い出しな、お前のすべき事。お前の守りたいモノ。」

 

………………

 

「んっ……太くて硬いモノで貫かれてる////」

ウォッカは致命傷を受けながらも茶化す様に頬を染めると、自らをより深く穿つ事も厭わずパンドラに近寄る。

 

『ッ……ダメ!!!近寄らないで!』

 

一瞬だけ同化を解除した少女は男を庇う様に腕で頭部を抱える。

しかしそれは悪手。弱点を自ら示してしまうのと何ら変わらない。

 

刹那、大気を切り裂き超音速の弾丸が飛来する。

その弾丸は遥か彼方より放たれると一瞬で着弾し、男の頭部装甲を吹き飛ばした。

 

____北西6km地点。

 

その男は大破炎上する機体の傍らに立っていた。

全身複雑骨折、出血多量に重度の火傷。数多の致命傷を受けながらも彼は立っていた。

身体は瀕死、しかしまだ折れない。まだ倒れない。

獲物を仕留めるまで、狩りは終わらない。そうだ、自分は狩人(イェーガー)

故____彼は決して折れぬ、ただ狩りの中でならば。

 

そして放たれたその一射。

全身全霊を込めたその弾丸は確かに獣に届いた。

 

「………当たった。やったぁ…狙撃は苦手だったけど……」

そこまで呟いた所で限界を迎えた。既に死に体の身体だったのだから。

 

「ベスト…スコアだ…………」

膝から崩れ落ち、地面の感触を肌で味わいながら身体は霧散していった。

 

 

 

 

少女は支配を強める頭部の侵食が剥がされた事に憤る。

そうしている間に最早女は手の届く程の位置に。

 

「ッ……止めてよ!来ないで!私たちの邪魔をしないで!」

 

手の内にて自らの権能を結集させ、銃の形を取るとそれを迫る女に向ける。

しかし、

 

「はーい♡お注射の時間ですよ~」

 

不可視の迷彩、全ての音を遮断する能力、そして今の今まで存在を気取られぬ為に全く微動だにしない精神力。恐らく今パンドラは彼女の事を忘れていただろう。無理もない、人とはそう言う生き物だ。印象の薄いモノは『覚える』に至らない、『気にかける』事さえ難しい。

彼女は何処までも普通だった。全くの無害、危険度は低く本人の戦闘能力は皆無。

………誰しもにそう思わせる程度には。

決して集団の中に居て目立たず、違和感一つ感じ取られず対象を始末する。

培った医療の知識は仲間を癒すと同時に非力でも外敵を仕留める為の力そのもの。

普通である事が脅威_____実に卑怯で汚く、果てしなく狡猾。

 

彼女に与えられた名前は(レイヴン)

ワタリガラスを意味するその名は彼女が部隊のブレーンを担っている事を表し、彼女が群れに属する事を意味する。

 

天才故に孤独。秀才故の疎外感。鬼才故向けられた敵意。

そんな中差し伸べられた手を取った。その記憶が彼女の最初の記憶。

かつての自分は彼処で死に、新たに生まれ変わった。

そう思える程の日々は、例え死が隣合わせでも実に有意義だった。

 

そして彼女の行動理念は変わらない。

全ては彼女の人生に意味と喜び(恋心)を与えてくれた男の為に。

その為に命を投げ出すのに躊躇いは無かったから。

 

 

「ちょっと離れてて貰いましょうか!」

無銘に注射器でアンプルを打ち込んだレイブンはそのままパンドラに掴み掛かり、少女を引き剥がした。

成程、実際に触る事は可能なのか。興味深い。

 

「離して!離し……「突き穿つ死翔の槍(オルタナティブ)…離すワケにも行かないんですよ。」

 

突如手に出現した朱槍をもってパンドラと自らを貫き縫い付ける。

槍の持つ死の力とパンドラから放たれる災厄。

………そもそも肺になだれ込む血液で溺れ死にそうだが。

もって数秒で自分は消滅するだろう。構わない。

 

……ああ、でもこれじゃ私負けヒロインみたいだぁ…

そんなくだらない事を思いながら瞼を閉じた。

 

 

 

 

臓腑に食い込む刃、身を蝕む災い…は02が引き受けてくれたな。

良くやった、お陰で届きそうだ。刃が深く突き刺さる事さえ気に留める暇が惜しい

吹き飛んだ頭部装甲の欠片と霧の残滓でその顔は伺えない。

だが顔の向き、仕草、食いしばった歯。

分かりやすい、行動は口程にものを言うとはいえ、分かりやす過ぎる。

何処までも戦場に似つかわしくない男だ。

死んだ目に貼り付けた様な笑顔、楽観主義を騙りながらいつも最悪を想定する。

戦場での鬼の様な戦果に対して故郷に残した家族を語る時だけ緩ませる頬。

 

本当に向いてないな、お前は。

弟の様に可愛らしく、息子の様に愛しく、恋人の様に恋しい。

 

 

困惑する弟子の頬に手を添え、ゆっくりと引き込む。

 

「……止めて!返してよ………!!!」

 

ゴチャゴチャと喧しい小娘だ。

返せだと?面白い。

 

そのまま唇を重ねる…貪ると言った方が近いか。

歯で閉ざされ様が舌で無理矢理こじ開け、蹂躙する。

反射的に逃げようとする頭を抱え、息継く余裕も与えない。

一瞬目が合う、衝撃に見開かれた目には怯えの色が見えていた。

戻って来い、お前が起きなきゃ皆死ぬぞ。お前の家族が()()()死ぬぞ。

腰に手を回し、目的のブツを引き抜くと首筋に添える。

 

起きろ。

 

そう呟き引鉄を落とす。

脱力する身体を離さぬ様力一杯抱き締めながら身体は限界を迎えた。

 

 

 

 

 

「嫌ァァァァ!?!!!!?」

 

そんな絶叫を背後に()の意識は途絶えて行った。




ドルフロイベント泥渋い…渋くない?


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語らい

ハーメルン技術部に媚びを売って色々教えて貰った玉葱
このサイト凄いよな………


バイト多忙につき書きだめ消滅…
6月末で一応終わりなんだけど書きだめ3,4個溜まるまでは
生存報告としての投稿週一だけにします。
徐々に更新頻度落ちてる様ですがエタりではないと思っています。
書きたい気持ちだけでは書けないんです…申し訳ない……

あ、感想とかくれると早く書けるかも(ステマ)


お前達は逃げ…

止めて…せめて子供達でも!

お父さん!お母さん!そんな、嫌…!
                 

 

音が止まらないんだ。

生命が失われて行く音が。

生命を奪って行く音が。

いつだって、それは俺たちに纏わり付く。 

 

何かを奪う度に一つずつ音が増える。

最初は、苦痛に喘いでいた。

だが、もはや何も思う事はない。

空っぽだ。俺()()は、『  』なんだ。

積み上げて来た過去が遺志を成すと言うのなら、俺は………俺たちは間違っていたのか?

答えは見つからない。最初から答えなど無いのかもしれない。

 

…ある時、敵兵を殺した。

銃を向けていた、撃たなきゃ仲間が死んでいた。

凶悪で、残忍な危険人物を殺した。

将来の危険になるかもしれない…それだけで命を奪った。

無辜の人々の平穏な日常を破壊した。

老人も、青年も、女に、子供………生まれたばかりの赤子だってそうだ。

 

決して命に区別無く、そして慈悲は無く。

 

人は、醜い。

何度でも過ちを繰り返し、数多の犠牲の末答えを得ようが……

人は、愚かだ。

徒党を組まねば生きられない癖に徒に殺し合う。

人は、脆い。

引鉄を落とす指先とひと匙の殺意。それだけで死んでいく。

 

 

 

怪物として生きるしかなかったのか?

それとも怪物に成ろうとしたのだろうか?

…何故、何時まで俺たちはこんな事を繰り返す?

 

力無く抱えた銃に縋り付く様に地を這い、項垂れる。

 

『何だ、情けないなァ?』

 

そこに声を掛けたのは薄ら笑いを浮かべた軽薄そうな男だった。

 

『はーいどーもー。俺はお前の良心さ、見りゃ分かるだろ?』

…嘘つけ、そんなアホみたいな髪色になってたまるか。

『辛辣ゥ!?あのなぁ、俺だってこれが()()に遺伝したのは悪かったと思ってるんだぜ?』

子供、居るのか。

『まーな。ひーふーみー…顔と名前が一致するので三十人くらい…か?

養子入れたらまぁ百人弱………百人超えてるかもしんない。』

……やっぱりお前は俺たちじゃない。そもそも一個体なワケ無いだろう。

『……人の話聞かないタイプ?俺はお前だよ、■■。ま、名前も覚えてないんだがな。お互い様だろ?…にしても色々と俺の子孫が世話になったみたいだな。何やらかした?』

 

子孫、だと?

 

『ヤベ、口が滑った。タイム!今の無し!ノーカンだノーカン!』

何なんだコイツは…

『……とまぁ緊張も解れた所で本題に移るか。』

 

男の纏う雰囲気が変わる、相手に威圧感を与える目付きは嫌が応にも変わらなかった様だ。

 

『本当に覚えていないか?本当に忘れたのか?』

『まさか、お前が俺なら忘れる筈が無い…否、忘れられる訳がない。』

『当たり前だよな?その為だけに国を墜としたバカヤロー。』

 

分かってる、分かってるんだ。

何かを忘れている。忘れてはならない何かを忘れている。

分からない、分からないんだ。

何を忘れているのか。何故忘れてはならなかったのか。

 

『そりゃお前……おっと、俺より詳しい奴らのお出ましだ。』

 

?………何を言って____

その言葉を言い切れぬままに後頭部を殴られる。

「銃の構え方が違うぞ。粗末に扱うな、ソイツに命を預けるんだからな。」

 

掴み上げられて構え方を矯正される。

その顔は眩しくてどうしても見えなかった。

 

 

 

そうだ、俺のすべき事は斃れる事じゃない。

這ってでも守り抜け、その為に死ね。

承認…バイタルデバイス再起動,起動率27%
                     

 

 

 

「ハッハァ!大丈夫大丈夫!生きてりゃ何だって出来るんだからよ!頑張れよ隊長殿?」

 

力任せに背中を叩かれる………痛え、跡になったなこれ。

だが不思議と身体に力が満ちてくる。

 

強靭な身体、鋼の意思、洗練された技術。

何処にも不満は無い、後は行動するだけだ。

ニューラルリンク強制接続。シンクロ率危険域、更に上昇
                           

 

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙銃が泣いているゥ!?雑な扱いと長時間の酷使、これは労働法違反レベルですよォ!?」

 

銃をひったくられて弄られる…が僅か十数秒程弄った辺りで放り投げて来た。

受け取った銃は成程、これなら1km先の相手にも当たるだろう。

 

そして武器も手に入れた。

ならば最早死さえ恐るるに足らず

武装クリーニング&カスタム完了
                           

 

 

…………なら次はお前だろ?

『おうふ、バレましたか。隠形は完璧だったんですが。』

他の三人もまた姿形は朧気だったが、彼女はまして虚ろな輪郭を成していた。

それは彼女が比較的若く、完全な亡者となって居ない為。

つまるところ、現世に未だ彼女を覚えている人間が居る為だった。

 

『さて、と。損傷は中々ですが少なくとも動ける様にしますよ。

代わりに発狂する程度には痛いですが宜しいですか?』

 

…今更だな。生憎とその程度じゃくたばら『お注射しま〜す♡』………ッッツ!?!!!

 

有り得ない速度で身体が再生する

苦痛には慣れた、だが喪うのは二度と御免だ

420アンプル投与 身体欠損率63%…41%…17%…行動可能レベルへの回復を確認
                                      

 

 

 

ハハッ、行こうか野郎共。

 

 

 

『……終わったか?』

ああ、残念ながらまだ死ねないらしい。

脚は震えるし腕は千切れてやがる、肺には風穴、心臓も止まってやがる。

だが、死ぬ訳には行かない理由が出来た。

世話になったな、偽物。

『どっちかと言えばお前が偽物なんだがなぁ…ま、頑張んな。俺たちの家族の為に。』

 

 

刹那虚空から男の元に鎖が飛来する。

しかしそれは男に届く前に長政によって掴み取られた。

『そりゃ駄目だろ…覚醒からは大逆転勝利と相場が決まってんだから。邪魔すんなよ。』

世界の強制力、それさえ凌駕する程の家族への狂愛。

つまり正しく怪物だろう。正しく狂戦士だろう。

 

男は長政の掴む鎖を更に掴み、語る。

 

『何時だかお前に願ったよな、俺の家族の平穏を。見てみろよ、何処が平穏だ?お互い殺し合ってやがる。』

『そマ?嘘はいけないよ嘘は。ましてや傭兵相手に契約違反とか度胸有るね君。』

 

男たちはお互いケタケタと嗤う。

彼を知るものなら知っている。彼が嗤うのは憤怒を抑えている時。

煮え滾る怒りを心の奥底に秘め、静かに激昴する。

二人が同一人物なら、その後の行動等語る必要さえない。

 

『…俺の家族に手ェ出してんじゃねぇよ(契約違反だ、こっちも好きにさせて貰うぜ)。』

鎖を力任せに引き、引き寄せた何かを殴り飛ばす。

その勢いに耐え切れず鎖は脆くも引き千切れた。

 

 

 

 

 

 

 

……………もう俺たちに首輪は必要無い。




『小ネタ・アンジャッシュ』

長政『家族が増えると責任も増えるが良いモンだぜ?』
兵士(家族が増える……?ああ、コイツ既婚者だったか。)
長政『まぁ十人とか増えるとだとしんどい事も多いが…』
兵士『ちょっと待て何人(子供)居るんだお前!?』
長政『えーと(嫁が)二十人強…とか?』
兵士『(嫁の)負担凄いな…頑張るね…』
長政『(俺の)負担凄いよ?毎日毎日布団にステイしてるし…』
兵士『鬼畜外道かテメー。』
長政『鬼畜なのは嫁の方なんですが。』







玉葱こそこそ話

実は初期案に兵士なんてのは存在しなかった。
昔に作品につけられた『何でもアリか?次は仮面ライダーが出るんじゃないだろうな』
って言うご意見……批判からインスピレーションを受けました。
何が役に立つか分からないものだね。


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Forgotted Soldiers

『忘れられた兵士達』


………………

 

 

 

…………………………………

 

 

 

…………………………………………………………!!!

 

目覚める。

身体が重い、辛うじて動ける様になった程度だろうか。

 

腕、動く。

脚、動く。

銃…僅かに手応え、有る。

視界…右目損傷、左目は良好か。

段々とだが音も聞こえてくる。

 

クハッ…ゴハッ……!!!

呼吸をしようとして込み上げた血を吐き出す。

肺がイカれたか、その程度じゃ止まれないんだよ。

 

震える身体にムチ打ち立ち上がる。

 

『待ちなさい。』

…………フローレンスか。悪いな、もう時間が無い。違うか?

 

見た所ここは前線から数km先なのだろう。

しかし、それでもここからパンドラが見える。

 

最後の心の拠り所を失ったパンドラは今度こそ発狂した。

深い絶望、怨嗟、後悔、憤怒…人々の負の感情を大量に取り込んだ少女に救いはなく。

絶望と怨嗟は狂気を見出し、後悔と憤怒はその身を変貌させてしまった。

 

漏れだした瘴気に身を焼かれ、朽ちた心は破滅のみを望む。

何人も通さぬ硬質な外殻を見に纏い、本当の意味でパンドラの箱となったのだった。

その大きさたるや優に100m程、そしてその中からは緩やかに災厄が流れ出ている。

 

あるいは、絶望そのものが形を成したかの様な四足の肉食獣に。

あるいは、その場で命を落とした者共の怨嗟を力とする怪物に。

あるいは、かつての後悔に囚われ、擦り切れた兵士に。

あるいは、家族を失った憤怒のままに破壊を行う化物に。

 

『そんな重症で戦える筈が…』

 

出来る、出来ないんじゃないんだよ。

俺が、やらなきゃならない。

俺たちが終わらせなきゃならない。

 

眼孔に指を突き刺し、潰れた眼球を抉り出す。

痛ッ……!!!

ヌルリとした感触と神経を引き千切る激痛。

ブチブチと一本ずつ裂ける苦痛がまどろっこしく、一思いに引き抜く。

抉った眼球はまるで崩けたように燻り濁り、澱んだ心を表すかのようだった。

 

酷い目だ、諦めた軟弱者の目をしている。

………諦めて、たまるかよ。

半分になった世界で目的のモノを見付ける。

それは仲間の骸。自らが師と仰いだ女の亡骸。

死者を辱める云々などとという甘えた正論は捨ててしまえ。

死体の山に隠れて生き延びた事もあった。

死体に爆薬を仕掛けて罠にした事もあった。

 

横たわった屍から躊躇い無く眼球を抉り抜く。

ヌチャア…と血みどろの指先が摘んだ眼球は、それでも美しかった。

屍姦趣味(ネクロフィリア)には賛同しかねるが、気持ちが少し分かる。

 

…………ッガ!?グ………………ッ!!!

 

力任せに空っぽの眼孔に押し込む。

 

拒絶反応、神経を掻き回される苦痛。

しかし、アンプル投与による身体の再生がある。

無理矢理にでも繋ぐしかない。

 

歯を食いしばり数秒、目を開く。

ああ、よく馴染む。

これだ、俺に足りなかったモノは。

 

姐さんは、スラムの生まれだったらしい。

暗く惨めな幼少期、変える為には奪うしか無かった。

もっと良い暮らしがしたい。

 

…………餓えだ。

勝ちへの渇望が、俺には足りなかった。

勝てなきゃ何も守れない、そう知りながら…餓えてなかった。

眼が馴染む程に、酩酊する程の餓えが湧き上がってくる。

まるで(ウォッカ)だ、望めば望む程深く泥の様に呑まれる。

 

足りない、まだ足りない。

餓えねば、もっと、もっとだ。

勝ちたい。

勝って、守りたい。

 

前方にて、化け物共に追われている立香。

 

勝たなきゃ守れない。弱ければ守れない。

だが、俺はその為の強さを身に付けた筈だ。

もう奪われない為に。もう喪わない為に。

 

両者の間に立ち塞がった俺に飛び掛かる獣。

その力を無駄無く利用して投げ落とす。

自重と速度によって頭部を粉砕された獣に二発(ダブルタップ)

絶命を確認する必要は無い。

確実に命を奪った手応え、それが確かにあった。

怪物と化物による左右からの一閃。

最小限の動きで避けつつズラし、お互いの身体を貫かせる。

当たらねえよ、こっちはもっと速い砲撃を避けて戦って来たんだ。

 

そして茫然自失とした兵士を銃床で殴り付け、膝を付かせる。

どうした、そんな惚けた顔してよ。

ご飯の時間だぜ、コイツでもしゃぶってな。

ぽかりと開け放たれた口に銃口を突っ込み、ワンマガジン容赦なく撃ち切る。

これは訣別の証だ。お前は俺の影…俺が嫌う俺自身そのものだった。

 

 

生憎、もう迷わない。迷っている暇は無い。

 

 

決意の双眸は、鳶色と碧色に輝く。

もはや、世界は欠けていなかった。

 

 

災厄の箱から生み出される厄災は止まる所を知らない。

しかし、男は笑っていた。

絶望の中、まだ守るモノが残っている歓びで。

 

そして、もう一人の家族が為に。

 

「01さん…」

………心配すんな、立香。

お前は何の心配も必要無い。俺たちに任せておけ。

 

『……………ッッハハッ!!!見ろ我が同胞!我が同士!我が戦友諸君!

奴らは我々との白兵戦をお望みらしい!ハハハ!数で我らと戦おうとは片腹痛い!違うか!?』

彼は語り掛ける、共に戦場に生きた戦友に……戦場に潰えた亡霊に。

 

『我ら英雄に非ず、然りて死を恐れず、そして戦場に消えゆ。

我ら英雄に非ず、然りて慈悲は無く、躊躇う事も無し。違うか!!!』

 

『『『『……然り。』』』』

 

変化は突然始まった。

彼の演説と共に一人、また一人と虚空から集って行く。

そしてその増加は止まる所か段々と加速していく。

 

『我ら人なり。短命故に命焦がし、焔抱き駆ける。

我ら亡霊なり。死して尚戦場に囚われた幽鬼ならば。

則ち、我ら兵士。英雄に成れず、消え去った者。

記憶にも記録にも残らぬ我らを如何して殺せようか?』

 

装備が違った。経験が違った。

国籍が違った。肌の色が違った。

言語が違った。年齢が違った。

 

しかし、彼らは皆、同じ目的の為に駆け、戦場に果てた古強者。

男は向き直り、立香に_____生者へと問う。

 

『今、未来を生きる君に問おう。我らを嘲笑うか?

我らを憐れむか?我らを恐れるか?我らを恨むか?

然して忘るる事なかれ、我ら人の罪科より出でた悪しき存在。

然して繰り返す事なかれ、それはあまりにも愚かな過ち也や。』

 

そうだ、この身は呪われている。

人の破滅と死によってこの身は生まれたのだから。

 

『_____だが、俺たちに一片たりとも悔いは無いのさ。違うか?』

 

兵士らは嗤う、呪われた出自と自らの運命を。

兵士達は悦ぶ、再び与えられた戦う意義に。

兵士共は猛る、絶望的な戦線を嘲笑い、吹き飛ばす様に。

 

『さぁ進め!戦い続けろ!骨は戦場(ここ)に撒いてやる!

そして死んでいけ!それが俺たちの家族の未来を開くと信じるからこそ!

愚者よ、死を嗤え(メメント・モリ)』………雄叫びを上げろ!ここに証を刻み、死のうぜ野郎共ォ!!!』

 

『『『『『ウオオオオオオォ……!!!!!!』』』』』

 

僅か百万程の軍勢、そこに一人の英雄無し

それ即ち、彼らの誰もが英雄だったのだ




疲れました(連載3本)


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放つは救済、討てよ厄災

ごめん、投稿し忘れた(´・ω・`)


「「「「「Wooooooo!!!!!」」」」」

 

それは正しく数の暴力。

 

『王の軍勢』『天上引き裂きし煌々の船』『王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣』

 

配下や軍勢を召喚する宝具は数あれど、このような数の宝具は存在しない。

数千人の英雄を呼び起こす固有結界、王の軍勢。

伝説の船員を招集する、天上引き裂きし煌々の船。

十二勇士を模した剣を召喚する、王勇を示せ、遍く世を巡る十二の輝剣。

 

彼ら英雄に非ず。

彼ら伝説に非ず。

彼ら勇士に非ず。

 

彼ら、然るに雑兵。

名すら残らず、戦火に潰えた愚者。

英雄を引き立たせる贄。

 

しかし君、侮る事なかれ。

一騎当百の勇士、一騎当千の英雄、一騎当万の伝説。

足りぬ、全く足りぬ。

如何なる英傑とて、数に呑まれる。

如何なる障害をも押し流す。

 

雑兵である故、可能な戦いだった。

 

 

 

 

 

「あぁ、やれやれ。ここまでやって漸く前線が均衡とは奴さん生産ペースが早すぎだ。

………本当、夢なら覚めて欲しいぜ、クソッタレ。」

 

誰かがボヤく。

 

押し寄せる厄災を押し返し、留めることは出来た。

しかし、それでやっと…否、多数とはいえ数に限りの有る此方が不利か。

 

親玉を堕とさねば意味が無い。

 

 

 

 

男はイメージする。

自らの知る限り尤も強力な兵器を。

 

それは兵器と呼ぶにもあまりに大きく、長く、重厚だった。

近代的フォルムと旧時代的造形の融合、それは正しく砲だった。

 

やるなら今しか無い。

立香と同行していたラーマ、エジソン、ニコラ=テスラが居れば電力は十分。

瀕死の三人にトドメを刺し、霊核を取り出す。

申し訳ないが、直結の方が早いのだ。一切の予断は許されない。

その間にも前線は徐々に崩壊する。

無理もない、討ち取った敵の数は優に万に届こうが元来我らは唯の亡霊。

英雄の如き逆転等望むべくもない。

 

だから、勝ちを先に見据えてるのだ。

分かっていた、例えどんな手を尽くしてでも易々と越えられるモノじゃない事は。

………だからといって諦められるか。

諦観は最も避けるべき行動に違いない。

諦めるな、抗い続けろ。

それが人の生き様だった。

 

神に翻弄されようが、悪魔に魅入られようが、諦めなかったから此処に居る。

災害、争乱、何人も死んだ、何億と死んだ。

 

犠牲には慣れっこだ、諦めてたまるか。

 

承認、エネルギーリチャージ開始

機体に深刻なエラー。射撃管制システムoff-line マニュアルモードで起動。

チャージ7%…14%……エネルギー制御デバイス故障、直ちに使用を停止して下さい
                                             

 

…………強いなぁ。

所詮俺たちは雑兵、普通じゃ神が如き災厄には敵わない。

だが、犠牲を積み上げて神をも堕とす。

それこそがヒトの____

 

e,e,E,エネルギージュウ填、■2%

サクリファイス起動…出力過多、更に増加……

Error!!!Error!!!直ちに使用直ちに停止直ちに直ち
                                             

 

一人、また一人と終わっていく。

但し、その度に威力は上がる。

 

この宝具は二つでセット。元より数で押した程度で勝てるのならば苦労しない。

エネルギーが溜まるにつれ熱量は増し、既に銃手の肉体を焦がす程になっている。

全力で照準を定めんとした腕は焼け爛れて燻る。

 

_______エネルギー■■■■%………

 

そんな音声が響いた時だっただろうか。

最悪の事態が起きる。既に手薄になった右翼側から一体の魔獣が抜け出し砲を支える柱に取り付いた。

一度か二度程叩いただけで魔獣は熱に融解したのだが…僅かな亀裂が状況を一転させた。

亀裂を始まりとして甚大な熱が漏れ出し、遂には柱を融け崩してしまう。

照準が外れ、砲身が傾く。射撃失敗どころか、エネルギー暴走により一帯を崩壊させてもおかしくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………諦めて、たまるか!!!!!!

 

 

 

 

走れ、終わらせてたまるか。

崩落地点まで数百m、命を惜しむな。

途中幾度も邪魔者が立ち塞がった、だが戦友が命を賭して押し返した。

限界さえ超えた疾走はしかし、無駄ではなく。

崩壊のその直前に男は辿り着いた。

 

バコンッ……!

鈍い音と共に落下する砲身。

優に数tはあろうかという砲身。

寄るだけで肉体を蒸発させる砲身を。

 

男はその身で受け止めた。

 

肉が焼ける、否、熔ける。

重量も本来人間に支えられるものでは無い。

身体が軋む、骨が砕ける。

 

時間が無い、今すぐ撃たねば間に合わない。

 

「ッッツ!!!藤……丸立香ァ!!!終わらせろォ!お前しか居ない!

お前にしか出来ない!引鉄は託した!必ず当ててやる!」

 

残る兵は数十、最早猶予も無い。

 

「……そんなの、私に出来る訳が……」

「お前なら出来る!お前だから出来る!自分を信じろ!そしてお前を信じる俺を、信じろ!

 

「…………分かった!」

立香は引鉄に手を掛ける………熱い!

 

灼ける、燒かれる。

砲口からかなり離れた引鉄さえ熱い。

やはり無理………そう思った時、それは聞こえた。

 

 

 

『………助けて…』

 

本来この距離で聞こえる筈のない声。

人の姿を失い、災厄と化した少女の声。

助けを懇願する声が。

 

ああ、ああああああああぁぁぁァァァ!!!!!!

しっかりと両手で掴み、引鉄を捉える。

どうにでもなれ、やるしかない。

 

力任せに狙いを定め、砲身を支える兵士が微調整。

砲身は半ば融けかけ、一発限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

焼ける身体で、燒ける喉で、灼ける心で、叫ぶ。

 

 

「『届けェェェ!!!!!!』」

 

神をも失墜させる光線が放たれ、全てを穿ち貫いた。




漸く6章に行けるぞぉ………


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継承

エピローグ!!!


_______い

 

「_______んぱい」

 

「_______先輩!!!」

 

目が覚める。

滲む視界、後輩の声、焼けた匂い。

 

反動で意識を失っていた様だ。

汚れているであろう顔を雑に拭い、射撃の効果を確認する。

 

災厄の箱(パンドラ)は跡形も無く消し飛んでいた。

 

勝った。

勝利したのだ。

 

同時に手に巻かれた包帯に気が付く。

ナイチンゲールによる処置は完璧だった。

 

きっと痕が残る___引鉄に灼かれた手は酷い火傷を負った。

どう手を尽くしても完治はさせられないと言われた

立香としては腕が焼け落ち無かっただけ奇跡だと思うのだがマシュは泣きじゃくる。

この程度ならどうってことは無い。生きてるだけ奇跡なのだと後輩を宥める。

 

同時に思い出した。

自分より重症を負ったであろう男の存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必ず、辿り着く。

顔の半分は灼け消え、左腕を失い、全身を焦がされた。

 

それがどうした。

脚を動かし、ただ幽鬼の様に進む。

 

視界も薄れ、今にも身体が霧散してしまいそうな程のダメージ。

残った内臓が血を生み出し、咥内から湧き出る。

吐血の苦痛で寧ろ意識が保てる。

 

遥か遠方、僅かだが目的の場所が見えた。

それは健常ならば余りに近く、今の男には遠過ぎた。

次の一歩を踏み出した所で脚が限界を向かえ、地に臥す。

どんなに気力を尽くしてもこそとも動かない。

 

それでも、諦めない。

 

満身の力を込めて腕を伸ばし、地を這う。

もう二度とあの頃には戻れない。

もう二度と自分に戻る事は無い。

 

今を逃したら、もう二度と逢えない。

 

残った右腕で身体を手繰り寄せ、少しでも前へ。

余りに遠く、余りに絶望的だった。

それでも、伝えなければならない。

どうか間に合え。この身体の動くうちに。

初めて神に祈った。

 

 

 

 

 

 

 

不意に、身体が持ち上がる。

這い蹲る男を誰かが抱え上げたのだ。

 

「……り………つ……」

「…………喋らないで良いから、行くよ。」

 

立香に支えられた男は肩を借りながらも立ち上がり、よろよろと進む。

 

この間まで小娘同然と思ってた少女は歴戦の英雄の様に逞しく、その腕は戦友の様に頼もしかった。

ゆったりとした歩みではあるが、着実に距離は縮む。

 

吹き飛んだ残骸に塗れて、少女は泣いていた。

残り50m、少女は彼らに気が付く。

『■■■■■■■!!!■■■!!!』

言葉にならない声を上げながら手に持った銃を構える。

それは風化し、朽ち果て、最早今一度の射撃に耐えうるかさえも危うい。

 

男は微笑むと、ゆったりと進み出た。自らの足で。

追おうとする立香を手で制し、力強く歩む。

 

『■■■■!!!』

 

____眼前に迫る男に少女は発砲しようとした。

しかしその一撃は男の早抜きによって銃ごと弾かれる。

 

朽ちた身体でも見に染み付いた技能というのは裏切らない。

そう笑いながら男は銃を捨てる。

もう銃は必要ない。

 

困惑し、しゃがみ込む少女。

男は覆い被さる様に抱き締めた。

それが限界だった。

それでも、確かに届いた。

 

言いたい事が多過ぎて、謝りたい事も、叱りたい事もあまりに多い。

でも、最初に出た言葉はそれだった。

 

『……ただいま。』

『■■■■■■!?』

 

あの日俺は帰れなかった。

そのせいでお前に辛い思いをさせた。

 

『……………』

 

ごめんな。

 

『………………遅いよ。』

 

だけど、ちゃんと帰って来たろ?ハハッ。

一度座り直すと腰から煙草を取り出す。

一本咥えてライターを持ち上げようとするが最早顎にも力が入らないのか煙草を取り落としてしまった。拾おうにもライターを持ち上げる事さえ億劫だ。最期の一服とは、いかないか。

 

次の瞬間、何者かにライターをひったくられた。

見上げると、立香がタバコを拾い上げ、火を付けて吹かしていた。

 

ハッ、止めどけ止めとけ、煙草なんざ百害あって一利なし、だぜ?

『!…ゲホッゲホッ…………ほら、口開けて。』

 

無理矢理口をこじ開けて煙草を咥えさせてくる。

火の付け方、吹かし加減、安物の煙草。

酷い味だ……だが、悪くない。

 

『成程、良いものだな…………』

 

レイシフトの終わりを告げる様に、立香の姿が薄れる。

そっちも時間か………丁度良い。

全身全霊、最期の力を振り絞る。

首から下げた認識札(ドックタグ)二枚、手渡す。

これは御守り、そして願望。

着いて行けないのは残念だが、この勇敢なる少女の旅路に幸あれ。

そして、どうか忘れないでくれというささやかな願望。

 

手渡した瞬間に霧散し、立香の姿が掻き消える。

 

………頑張れよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いに限界、世界も崩壊していく。

間もなくこの特異点諸共消滅していくだろう。

視界さえハッキリしなくなり、残ったのは確かにそこに居るという感触だけ。

それすら薄れた最後の最後、確かに聞こえた。

 

『そうだ、言うの忘れてたや。』

あ?

『……おかえり!』

 

見えもしない筈の笑顔が見えた気がした。

 

人理定礎値A+
第五特異点

 

 

定礎復元

 

 

 

A.D.1783 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

鋼鉄の鬼兵

 




玉葱はMGS大好き。
コジプロ生き返れ…生き返れ……


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煙草

リアル忙し過ぎて更新どころじゃ無いンゴ……


レイシフトが終わり、コフィンから出る。

手には受け取ったドックタグがしっかりと握られていた。

 

久しく帰ったカルデアに感動する気持ちもあったが。今は長政を探していた。

 

ロマニにトレーニングルームに居る事を聞いたので早速向かう。

手の火傷について色々と聞かれたけど気にしてられない。

 

トレーニングルームの扉を開けた瞬間聞こえてくる声、そして翠の髪。

そこまで離れてたワケでも無いのに、とても懐かしく感じた。

 

「長政さーん!」

「おっ!立香ちゃん。帰ったか、お疲れ!」

 

声を掛けてから近寄り、そこで初めて気が付く。

(…………あれ?なんかデカくない?)

 

 

 


 

久しぶりだな読者の皆ァ!

マトモな姿での登場は4ヶ月ぶりとかマジ?

でも元気な長政君だよ!ハハハハ!

 

…………………止めとくか。

 

 

まぁロンドンの方は意識あったけどね?

身体の操縦権を奪われた感じだったよ。

老化したオレは想像通りのイケおじでしたね。

肝心の俺は三十路半ばで死んじゃったけどな!

そしてロンドンの俺の力が残ったのか知らないが霊基も再臨しました。

この身体、まさか我が愛しの全盛期ボディではないか。(35歳192cm124kg)

これは有難い。正直今までの身体は若過ぎてな……

 

立香ちゃんが見えたのでバーベルを下ろす。

素晴らしいね、2tもあるのに軽々だよ。

鎧がキツくなりそうだけどサーヴァントだから一緒に大きくなったのが幸いかな。

 

にしても、随分な経験を積んできたみたいだな立香ちゃん?

この間までは虫も殺せない様な生娘だったってのに今や歴戦の勇士の目だ。

相当良いコーチが付いてくれたんだろうが……うーむ。

俺としちゃ修羅(こっち)に来るのは喜ぶべきなんだか悲しむべきなんだか。

平和な世界を作るのは大人の仕事、立香ちゃんやマシュちゃん、勿論所長もだが

本来こんなキリキリした戦場は似合わないってね。

 

…………やれやれ、情けねぇ。

全盛期の身体に戻った?駄目だね。

こっから先の旅路はもっと過激になるだろう。

その時俺は今のままで良いのか?

 

もっと強くなりたい。

もっと力を……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、まぁ闇堕ちキャラのモノマネをした所で。

強くなりたくてもコツコツやるしかないよね。

効果有るかはともかく筋トレに励む事にしよう。

 

煙草止めるべきだろうか。

なんと言うか癖になってんだよね。

前世だと市が妊娠してから止めたんだけどなんとなーく続けてる。

 

「………………」

ありゃ、立香ちゃん煙草は駄目な感じだっけ?

 

「…ぁ!いや、そうじゃないんだけど……その………」

その?

 

「………ちょっと吸ってみたいかなーって……」

 

ほう?

良いか?喫煙者の死亡率は非喫煙者より高く、国内で喫煙に関連する病気で亡くなった人は年間で12~13万人、世界だと年間500万人以上らしい。しかも20歳よりも前に喫煙を始めると野郎でも8年、女は10年も短命になることが分かってるんだ。喫煙は一時の至福感と引き換えに、自分の寿命を削っているんだぜ?

つまるところ、百害あって一利なしって事だ。分かるな?

 

「うん…………」

 

 

 

 

 

 

 

だが、それを理解して、構わないと言うなら、俺は止めやしないさ。

子供の可能性を止めるのは大人としてやっちゃいけない。

決めるのは立香ちゃん本人さ。

 

そう言って長政は箱を差し出す。

僅かに三本程の煙草が納まる箱は今世にて長政が良く吸っている銘柄であり、

喫煙者のカルデア職員に言わせてみれば安物_____好んで吸うようなモノでは無い。

 

だが立香はそれに見覚えがあった。

一本をそっと摘み、まじまじと眺める。

このちっぽけな筒に身体を蝕む力が有るなどとても思えない。

それほどまでにシンプルな毒薬であった。

 

火を灯し、立ち上る紫煙を眺めながら一息に煙を吸い込み、瞬間体の中を燻された様な錯覚。

堪らず咳込む、しかし長政が微妙に嘲る様に笑っているのが気に食わず、

涙を溜めながら強がってみせた。

 

「割と悪くないね。」

「嘘つけ、涙出てるぞ。」

 

長政は強がる立香を見咎めると同時に首から下げた認識札(ドックタグ)を見つける。

……………なるほど?つまり立香ちゃんにも春が………

 

「違うよ!?」

 

そりゃ良かった。どう見ても死別するオチしか見えなかったからな。

だがな、こんなのは本来男の付ける物だろ。

 

そう言うと長政はドックタグをひったくり、自らの首に掛ける。

 

「ほら、見てみろよ()()。俺の方が似合うだろ?』

 

紫煙の向こう。

ニヤニヤと笑みを浮かべながら問いかけるその姿。

光を吸い込む様な漆黒の髪、人の本質を見透かす様な鳶色の瞳。

 

驚愕と共に煙を振り払うが、そこに居たのは勿論長政である。

 

「どうした?やっぱり煙がキツいか?」

 

そう言って長政はドックタグの片側_____チェーンの付いていない方を折り取り、再び立香の首に掛ける。

「そろそろ俺は飯作りに行くから。今日は帰還祝いだ、パーッとやろうぜ?」

 

煙草を灰皿に押し付け、煙を割いて部屋から出る。

そして閉まる扉の隙間から僅かに、だが確かに立香には聞こえた。

 

『「…………ハハッ、良いものだな。』 」




定期更新出来ない…すまない………


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ここは誰わたしは何処

書きだめ貯まらぬ


………んん。

 

…………ぐむむ。

 

…………………(˘ω˘)スヤァ…

 

チチチチチチ!!!チチチチチチチ!!!

 

あぁ…………うっせえなぁ……

昨日の宴会で騒ぎ過ぎたからか身体がダルい。

つーか、眠い。

誰だ市ちゃんにストゼロ呑ませたのは…恨むぞ………

 

灰色の空。見渡す限り広がる荒野と遠方に砂漠。

潮の香りはしない……なるほど、海は遠いらしい。

 

んん………ふぅ。

軽く身体を伸ばし、オレは叫んだ。

 

「ここは何処ですかァァァ!?!?!?」

 

 

 

 

 

なにこれ、一人だけ異世界転生かな?

知らぬ間に異世界転生機(トラック)に轢かれたのかな?

やだ!小生やだ!まだチート貰ってないしハーレムはもう散々だ!

 

……………ヨシ!トチ狂ったら冷静になってきた。

鎧は着てる、だが武器が太刀しか無ぇ。

ぐぬぬ、お守り弓が無いのは痛いな……斬撃が飛ぶはずも無いし。俺はMONONOFUじゃないんだよ。

槍は……まぁその辺で手に入るだろ、特異点って事はどっかでドンパチやってるだろうし。

 

突如として放たれた殺気。

前転して回避すると先程まで居た場所を唐竹に斬り抜く全身甲冑の騎士。

その背後には槍を持った騎士と真っ黒な鎧に双剣、そしてこれまた槍を持った騎士。

若干離れて弓を構える騎士が一人。計四人の部隊の様だ。

 

「穏やかじゃないなぁ、甲冑騎士の皆様。カルシウム足りてる?

時代が時代なら人に突然切りかかるのは犯罪になるんだぜ?」

 

言葉を発する事も無く再び剣を振るう騎士。

 

……………そうか。じゃあ仕方ない。

 

身を風に任せる様に斬撃を薙ぎ、相手の力を取り込んだエネルギーを活用する。

その勢いで引き抜かれた太刀は甲冑騎士を真っ二つにする軌道を描く。

しかし、騎士の練度も並ではない、刃に合わせて盾で防ごうとする。

 

無駄無駄、その程度で止まるかよ。

更に一歩踏み込み全身全霊の勢いで叩き切る。

盾と鎧、双方に防がれながらも、無理矢理振られた刃は容易く命を奪った。

しかし騎士らは怯むこと無く、槍兵が突撃する。

突き出された槍を踏み付け体勢を崩すと逆の足で蹴り上げ、飛ばす。

回転しながら舞った槍をオーバーヘッド気味に蹴り飛ばすと槍は弓兵を穿たんと高速で射出される。

蹴り抜いたとは思えない精度で首を貫かれた弓兵はそのまま絶命した。

武器を失った槍兵は必死の抵抗とばかりに掴み掛かろうとするが、既に太刀は抜かれている。

大上段から力任せの、技術さえない一閃が騎士を唐竹割りに両断した。

 

ミャハハ、ダメだよ騎士くん。相手が自分より強い時は様子見が基本、攻撃は複数人で同時に。

まぁあの程度の練度ならかつての合戦にもゴロゴロ居たけどね。

他所の足軽大将くらいかな?運が良ければ苗字くらいは貰えたかもだが。

近江だとどうなのか?近江だと足軽にもなれないよ、訓練兵だな。

戦闘民族オウミ人を舐めちゃいけない。ウチの兵士は島津の兵とタイマン張れるぞ。

まぁ皆も知っての通り島津と浅井は同盟組んでるから仲良いけどね。

え、そっちの世界だと同盟組んでないのか。マジ?やだよオレあんなキチガイ共と戦うのは………

豊久君元気かなぁ、ガキとは思えない程戦狂いで島津らしい侍だったな。

 

そのまま✕字に双剣で斬りかかってきた騎士を押しとどめる。

中々の膂力。サーヴァントだな?筋力敏捷は両方Aって所か。

 

刃を逸らし、拮抗が崩れた所で鎧の袖口に隠した棒手裏剣を放つがあっさりと迎撃される。

だろうな、それで良い。それだけ隙を晒してくれれば十分だ。

太刀を地に擦り付ける様に這わせながら斬り上げる。

咄嗟に片手の剣で防ごうとするが、その程度で防げると思わない事だ。

金属さえ容易く切る戦国の刀、鍛えの甘い鉄の延べ棒で防ぐなど笑止。

斬り上げた刀はそのまま剣を断ち切り、鎧に亀裂を成した。

 

ハッハーッ!!!戦力半減………とはいかないか、流石に。

騎士は最初驚いた様に切られた剣を見ていたが即座に放ると背負った槍を引き抜いた。

それはとても地味で、実用性だけを考えた実直な槍だった。

それなりの長さ、それなりの刃先、それなりの重さ。

しかしこれは魔槍だ、魔術に疎い長政にも分かる程の呪いを孕んだ。

そして感じる悪寒から察するに本来の力は神秘殺し_____特に神殺しの力だ。

アレは不味い。性質の相性が悪い上呪いも底が見えない。

 

『名を名乗って無かったな。俺はベイリン、蛮騎士ベイリンだ。』

 

_____野蛮なるベイリン。円卓か。

なるほど、エルサレムって話だったがこの荒野に砂漠なのも理解できる。

この特異点はぶっ壊れてやがるんだな。そして残った物を繋ぎ合わせて作った世界。

ベイリン卿ってことはアレはロンギヌスの槍か。

予想通り、食らったら終わりだな。相性は最悪だ。

 

まぁ良い。こんな事は幾らでもあった。

有利な状況でしか勝てないような三流とは違うのさ、オレは。

 

「我、近江国守護浅井家が三代当主浅井長政。

アンタに恨みは無い、だが敵対するならその首貰っていくぞ。」

 

蛮勇の騎士と狂乱の武士。

奇しくも似通った男達は向き合った。




進捗ダメです


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騎士

書きだめ2つしかない……うーむ


剣と太刀がぶつかり合い、火花が散る。

刀の刃こぼれを嫌った東洋鎧が刃を滑らせ重心を入れ替えた蹴りを放つと西洋甲冑はそれを腕で掴むが掴まれた足を軸とした後ろ回し蹴りが的確に兜を打ち抜き掴む手を緩ませると側転の要領で抜け出した。

 

 

どうしたァ、随分と動きがとろくなってきたな。

血塗れの鎧を払いながら嘲る様に笑む。

自らの(負傷)他人の(返り血)混合液(ブレンド)を全身から浸らせ。その手に肉厚の太刀一振りだけ提げ。

槍のみが自らの脅威と断じた男は槍を避ける一方で剣を避けなくなった。

それ程の危険無く、傷は容易く癒える。ならば捨て置け。

大振りの一撃、を囮とした蹴り。蹴り抜いた勢いを殺さず下がり、

同時に黒煙を撒いて目潰しとした。

煙を切り払う様に剣で薙ぐ騎士に対し袖口から苦無が放たれ、思わず剣で防いでしまう。

金属同士が打ち合い、僅かに火花が散る…………と同時に辺り一帯が爆炎に包まれる。

唯の煙幕ではない、忍びが好む火薬混じりの黒煙である。

本来は戦場に撒く事で敵の火器を無力化する事を目的とした暗器だが長政は好んでこれを使った。

かつて敵であった武田の忍びの戦術を躊躇い無く使用する性分もまた、彼らしいといえる。

 

爆発に鎧を黒く汚されて尚立つ騎士は憤り、煽る様に問う。

『サムライってのは日本の騎士だと聞いたが?ネチネチネチネチと、まるで魔術師だな。』

 

お褒めに預かり光栄、誇りと名誉で何が守れるよ。

アンタが俺の前に立ちはだかった時点でこれは戦だ、首の取り合いに道理が有るかよ。

()()()()()()()()のさ。負けたなら命は無い、乃ち正論を語るなど愚の骨頂。

死んだら終わりだ。だからこそ死なないように、死なせない様に、あらゆる手を尽くす。

白兵戦の名人には毒を盛った、天下一武を誇るの弓取りは暗殺した。

智略に長けた老将を力で叩き潰した、ただ生き長らえようとした朝廷を焼き払った。

誇りなんてのはとっくの昔に胎ん中に置いてきちまったさ。

 

そのまま三合程斬り合い、僅かに騎士の上体が崩れた刹那。

人の限界を容易く超えた踏み込みとそれから繰り出される切り上げ。

回避も防御も不能なその一撃はまさに完璧といえ、確実に芯を捉えた。

しかし、相手は円卓の騎士に名を連ねる英霊なのだ。

 

 

「ここだ………『運命の聖槍・嘆きの一撃(ロンギヌス)』ッッ!!!」

逆転の一撃を隠さない訳が無い。

ロンギヌス………三つの小国を消し飛ばせる、一撃のみの魔槍。

神の子を殺した出自のため、強力な対神性能を持つ。

ぺラム王に追われ、咄嗟に振るった聖槍が城を崩壊させ、三つの国を滅ぼしてしまった逸話に基づく。

巨大なクレーターを伴う爆発が一帯を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

『イイ一撃だった、惜しかったな。生身なら死んでたかもしれん。』

 

結果として______ロンギヌスの槍による嘆きの一撃。その直撃を食らって尚、男は倒れなかった。

では無傷なのかと言えばそうではない。目欠け腹は抉れ腕は千切れ飛んだ。

顔の大部分を失った故に、言葉も濁っていたがそれらは見る間に癒えていく。

より力強く、荒々しく、獰猛で醜悪な姿に。

 

 

ベイリンの判断は早かった。

力を失ったとは言え自分にとっては重要な反撃の軛となる槍を夜叉の背後から突き立てる。

だがその刃先は硬質な何かに弾かれる。

神秘の残る古代ブリテンの騎士ベイリンには見覚えがあった。

()()_______それに気が付くと同時に丸太のような尾に弾き飛ばされる。

血反吐を吐きながら受身を取ったベイリンの視界に映るのはこちらに飛びかかる獣。

恐ろしさを感じる爪と牙を持つ獣はしかし、その翼にて加速して追い縋る。

 

まるで化け物。なんてものではない。

まさに化け物_____それが夜叉という存在だ。

鬼神である夜叉は鬼の始祖として知られるが、その本質は異なる。

鬼、魔獣、邪龍………この世に存在する魔の起源。

乃ち、夜叉とは全ての魔性の祖である。

 

猛追の一撃を防ぐ為に剣を振り降ろしたがその一撃を読んだ夜叉は受け太刀と同時に片手を抜き、

ベイリンの上体から力を抜かしつつ自らだけが加速。

 

太刀に絡めた剣を諸共放り、ガラ空きになった兜を強かに殴り付ける。

メキャッ…………鈍い音と共に一瞬止まり、力が蓄積していく。

「歯ァ食い縛りなァ!!!」

刹那の後に、体重、膂力、速度を十分に乗せた一撃が解放された。

 

ベイリンはその勢いに耐えかねて水平に吹き飛ばされ、意識を失う。同時に、夜叉も斃れる。

肉体と臓物がズタズタに引き裂かれる感覚、矯正をされる苦痛。

()()()()だ。

本来、夜叉のように神性を持つサーヴァントはその力に制限が為される。

しかし、長政の場合それがない。神性を持つのではなく神をその身に降ろしている為だ。

故に十全のスペックを発揮出来るが、副作用として世界からの修正力を強く受ける。

常時身を削られる苦痛を再生にて誤魔化しては居るが、限界もある。

今回はその限界を大きく超えていた。

一時的とはいえ人の身でありながら竜や獣の力を得たのだ、リスクも相応である。

小間切れになった臓物混じりの吐血が成す血溜まりの中で男は気が付く。

 

囲まれてやがる。

一人一人の力量は目の前の男に勝るとも劣らない。

そんな相手が複数人居る、信じたくは無いが事実だった。

………こりゃ、今回の特異点はキツそうだぜ、マスター。

両手を上げ、降参のジェスチャーをしながら地に倒れ伏した。

 




こうしんがんばゆ


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お似合い

色々な作品を少しずつ書いてるので進捗ダメです。
その代わりにちょっと長いよ。当社比500文字くらい。



後書きに重大発表有り。


意識が覚醒すると同時に飛び起きる。

わぁお、何やら穏やかじゃないな?

 

香りが違う、大分運ばれたらしい。

そして囲んでる甲冑ども。

紫のとデカいのは特に強いな…赤毛の奴の足音からしてコイツは剣は持ってない。

逆に黒いのと角生えた兜の奴はそこそこって所か。で、奥の獅子面兜、アレはヤバい。

お仲間の香りがプンプンするぜ、神霊だな?

他のも揃いも揃ってサーヴァントばかり、こりゃ凄い。

アヴェンジャーズ再放送かな?見てみたかったんだよね。

だが、囲まれてるのに縛ってある訳でもなし、武器もそのまま。

 

舐められてんなぁ。まぁ実際サーヴァント6…いや、奥にベイリン見えた、7騎もいりゃ磐石か。

さぁてと。何の御用かな、俺としてはお前らを皆殺しにした方が良さげなんだけど。

そう言った瞬間角の生えた騎士が剣を振り下ろす。

凄まじい威力だ、赫く輝く稲光を見るに宝具か。

 

残念だが、食らいたくないな。

胸元から落とした球体は着地と同時に起爆し閃光で視界を奪う。

次に全員の視界が開けた時には地に臥せる角騎士とそれに跨る長政。

「はーい動くなー?動いたらこの首チョッキンだぜ?ハハハハハッ。」

満面の笑みでその言葉を発する、首元に刃を突きつけながら。

忘れてはならない、彼は戦国の将。

殺しや脅迫などお手の物、生まれてから数多の死線を超えた老兵でもある。

笑みと共に家族を慈しみ、領民と心を通わせ、友と語らう。

だが、同じく笑顔で敵を屠り、叛乱を鏖殺し、氏族を族滅する。

 

狂っている?如何にも、彼のクラスは狂戦士(バーサーカー)

大なり小なり狂わねば生き延びれる時代を駆けたのだ。

数的不利程度、覆す方法等幾らでも思いつく。

 

「テメェッ…………!!!」

煩い、寝てろ。

 

兜越しの打撃、本来防がれる筈の一撃は角騎士の意識を刈り取った。

鎧通し。琉球伝来の技術であり、装甲越しに敵を無力化する打撃。

()()()()()()()。特に闘争に関するならば拘り無く吸収した。

 

一つ誤算が有るとしたら、円卓の騎士にとって仲間などどうでも良かった事だろうか。

 

『縛鎖全断・過重湖光………』『痛哭の幻奏…!』『転輪する勝利の剣!!!』

 

おいおいマジか、一切躊躇い無く?鎌倉武士かな?

つーかやっべ、これ避けたらコイツ死ぬぞ。

え?いいの?俺ちゃん普通に肉盾にしちゃうよ?

仕方ない、コラテラルダメージって奴か…

「止めなさい。」

鶴の一声と言うべきか、三名の動きがピタリと止まった。

発声したのは奥の獅子鎧の騎士。一番強いワケだ、アーサー王って事だろう?

 

「おお!これはこれはかの騎士王、アルトリア・ペンドラゴン氏とお見受け致します。

あっしは日ノ本の小領主長政と申す半端者にございます。偉大なる王、貴公に伝えたいのは此方に敵意は無き事。

どうかこのまま愚かなる私めを解放して頂ければ二度とその翠眼に掛かる事無きを誓いましょう。」

 

美辞麗句マシマシ、全く心にも無い文章。

我ながら良く舌が回る_____そう考えながらも逃走経路、もしくは必殺の隙を窺う。

必死さと小物ぶりを表す様に身振り手振りを大胆かつビクビクと振るう。

さぁどうだ?小物界の大物っぽく振舞ってるんだが。オフ会0人とは良く言ったものだな。

 

「はは____ははははは。つまらぬ擬態は止めなさいと言ったのです、侍。」

 

擬態なんてあっしには何の事か_____「蛮騎士(ベイリン)は私の部下なのですよ?擬態は止めなさい。」

 

アハハハハハ……………何だよ、バレてんのか。

だったら話は早い。死にたくなきゃ道を空けて、二度と面見せんな。

まどろっこしいのは面倒なんで二度は言わんぞ。

 

 

 

 

『聖槍、抜錨…………』

 

コイツもか畜生め。

相対的に殺意が高過ぎる。

やめとけやめとけ(同僚ボイス)そういうのだと俺もシリアスしちゃうぞ。

いいのか、作者がアレルギー反応で死に至るぞ。

具体的にはコイツ(騎士)を盾にしてお前を殺す。

悪いが俺は吉と違って殺っちゃうぞ。

 

『ロンゴ………』

 

駄目か。仕方ない。

悪く思うなよ名も知らぬサーヴァントよ。

お前の主を恨みな。

 

『ミニアドッ!!!』

 

 

 

 

 

聖槍の一撃、野を奔り、山を穿ち、河川を割って天に届く。

 

それはロンギヌスの槍に勝るとも劣らず、そして使い切りでない。

あまりにも圧倒的な宝具。

もはや塵一つ残ってはいまい、誰もがそう思った。

 

男は、聖槍の刃先をあろう事か掴んでいた。

男は、先まで踏み躙っていた騎士をその背に庇っていた。

 

男は、激昴していた。

 

 

 

 

 

 

「なぁ________どんな了見だ?」

その場に居た全員が驚愕した。

掴んだ槍を持ち主諸共引き寄せた男が兜を殴り飛ばしたからだ。

宝具の直撃でその身体には深いダメージが刻まれただろうに、男は怯みさえしなかった。

 

「聞こえたか?コイツ、お前に殺される瞬間言ったんだよ、うわ言だろうが。

『父上』ってな…………なるほどなるほど?理解した。つまりこのガキはモードレッド卿。

アンタの息子って事だろ?アルトリア・ペンドラゴン。」

 

「…………………」

 

「ハッ、そういやアンタは女だったな。女の身で父親とはまた色々とあったんだろう。だが、だがな。そんな事が許されると思っているのか?親が子供を殺すなんて事が許されると本当に思っているのか?」

 

「………否、それは私の後継者足り得な「違うっての。」

 

こいつは何も分かっちゃいない。不詳の息子?不貞の子?

関係有るかよ、誕生した命に良いも悪いもあるか。

ドラ息子の三,四人くらいオレにだっているぜ?

 

親が子を殺す、それだけはオレは許せないのさ。

 

槍に置いた手を肩に移し、反対の手も肩に添える。

スゥー……………歯ァ食いしばりな!

そのままアルトリアの額に頭を打ち付ける。

俺の血が付くのみならず額が割れ、出血した。

更に込み上げた吐血を口に蓄え、霧として吹きかける。

端正な顔立ちは瞬く間に血染めに変わり、鉄臭い薫りが辺りに舞う。

 

ハハハッ、ハハハ、ハ、ハハ。親であることを捨てた馬鹿にはお似合いだ。

良く似合ってるぞ、アルトリア・ペンドラゴン。

少なくとも死狂いには相応しいだろう。

 

だが()()だけはやっちゃいけねえだろうが。

例えどんなに望まれない誕生だろうが…………!

不肖の子供だろうが…………!!

 

(オレ達)が生まれてきた命を否定して良い訳ねぇだろうが………!!!

お前にとって、親ってのは………それで良いのかよ………アルトリア、ペンドラゴン…!

 

 

 

 

 

一際大量の血を吐き出し倒れ伏す男。

しかし、アルトリアはそんな事を気にも止めなかった。

先程言われた言葉はあまりにも不思議だったから。

彼女にとっての父親とは仇であり、恨みの象徴でしかない。

傲慢で、自尊心が高く、愚か。それこそが父への評価だ。

 

「我が王よ、如何に。」

 

蛮騎士が問う。

もはや出陣は間近であり、答えを問う猶予は無い。

______モードレッド卿共々医務室へ。

明らかに敵対しかねない相手にも関わらず甘い判断を下してしまう。

それはきっとまだ問いたい事が残っていたからだ。

そしてもし、敵で無いのならば。

聖槍の一撃を受けても倒れない程の英霊ならば戦力となる。

 

だが、その話は今考えるべきことでは無い。

 

戦支度を整えた部下を激する。

これより十字軍を討ち破り、都市を占領するのだ。

 

 

 

しかし、最後の言葉が頭から離れる事は無かった。




(ここから先、重大発表があるぞ。)








積もる怨嗟に終わりは無く、宿業の焔もまた、潰える事は無い。
戦乱起こりて幾年月。後悔か追憶か、慟哭消ゆる事無く、近江国。
一切の生命を拒む血濡れの戦場に鬼はただ一人。
啾啾たる亡霊、心蝕み、ただ独り。

それは有り得たかもしれない未来、存在しなかった結末。

鬼夜叉と呼ばれた男・外伝
【鬼哭啾啾】現在執筆中!
(閲覧注意レベルの鬱シリアスです。)
まァ投稿は本編一部終了後かつ玉葱の受験終了後です。
気長に待ってね。(´・ω・`)


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蹂躙せよ

ガッツリ書いた、5000字。

今週はこれ一つで許してつかーさい。
その代わり倍は長いのでゆっくり読んで下さいませ。
ここ最近一番良く書けた自信作です。


暗闇の中、少年が立っていた。

建物の中だろうが、割れたガラスが散乱し、部屋は台風一過と言わんばかり。

燻る大型バイク、血塗れの男、見下す青年。

 

あぁ、なんて懐かしい。

良いぞ、殺れ。

お前にはその権利が有る。

お前が望むなら、オレが力を与えよう。

 

手慰みにその腕に力を宿らせる。

鍛えられた剛腕は、それでも所詮人の腕。

良くて頬骨に亀裂を生じさせるのが関の山だろう。

しかし、力の宿った一閃は容易く頭蓋を砕き、致命の一撃とした。

 

自身の膂力に驚く青年を見てオレはほくそ笑んだ。

七割の責務と、二割の嫌悪………だが見えたぞ。

微かだが、確かな歓喜に沸くお前の姿が。

 

歓迎しよう、今日からお前はオレ。お前が■■■だ。

よろしく頼むぜ、相棒?

 


 

 

 

 

 

 

かき鳴らされる軍靴の音、剣のぶつかり合う金属音、断末魔の喧騒。

それに混じる濃厚な殺意に意識を叩き起こされる。

眼前で剣を振り下ろそうとした騎士に手のバネを利用した蹴りを叩き込む。

一撃で意識を刈り取ると跳ね上がった剣で頸動脈を引き裂き命を奪い、屍をテントから蹴り出す。

 

うーむ、どういう訳か生かされたらしい。

その上手当もしてあるが…なんだこりゃ?

騎士と騎士とがシバきあってる。

よく見れば片方は全身鎧、もう片割れは軽装の部分鎧の様だ。

なるほど?どうやら拠点が攻められてるっぽいな。

隣でノビているモードレッドを回収しテントから出る。

戦局は此方側が若干不利、将は居らず兵のみの弊害か。

 

片腕が塞がっているので襲い来るノロマ共の首を蹴り折りながら歩く。

僅かに開けた戦場に、やや目立つ騎士が居た。

他の騎士を凌駕する槍捌きは勿論だが……心の内に宿る悪感情がひしひしと伝わる。

だがそれに抗う様な純白さ、心が必死に抵抗している。

面白いな。

 

その騎士の背後に迫る敵を同様に蹴殺し、状況を問う。

「お前!どういった状況だ!?」

 

「貴方は……王が出陣なさったと同時に敵より奇襲!

徹底抗戦しながらも四割の兵が既に落ちています!」

 

四割!?四割ってお前壊滅同然じゃねぇか…………

仕方ない、取り敢えず一箇所に集めろ、各個撃破されてちゃ話にならない。

敵が迫ってる?丁度良かった、オラ仕事だぞガキ!

 

担いだモードレッドを放り投げると眠っていたモードレッドは受身一つ取れなかったが

痛みにボヤキながらノロノロと起き上がった。

 

「うみゅ……いてぇ………」

さっさと宝具だ!手遅れになるぞ!

「ほうぐ……?ほうぐ………ん…」

 

刹那、モードレッドの剣が紅い雷を伴い、光り輝く。

「われはおーにありゃず、そのうしろをあゆむものー……」

寝ぼけ目を擦りながら口上を述べる………味方に向かって。

 

「おいおいおい!違う!こっちじゃない!そっちだ!」

慌ててモードレッドの上体を捻り、敵前衛の見える方角に向かせる。

「かのおーのやすらぎのため、あらゆるてきを駆逐する………アレ?俺何を……」

 

「……………さっさと撃て!敵だ!」

「うおお…………!?『我が麗しき王への反逆(クラレント・ブラッドアーサー)!!!』」

 

寝ぼけ宝具はそれにも関わらず凄まじい威力を持って敵一陣を薙ぎ払った。

しかし、敵の攻撃は止まらない。

複数の陣営に分かれて止まること無く攻撃をする。

 

車懸かりの陣じゃねこれ?

まさかこんな遠い異国で姉さんの戦法が見れるとは………

いや、感傷に浸ってる場合か。

 

んーと、ひーふーみー…百人弱ゥ?半分も居ない気がするが?

うへぇ敵はみるからに何十倍と居るなぁ。

お互いに拠点を落とすために攻撃ガン振りって感じか。

取り敢えず死体の紋章から十字軍なのは理解した。

 

確か……切支丹は煙草はダメだったか?きーめた、こっちに着こう。

信仰で勝ちを拾えるのかどうか、試してみようじゃないの。

その前にこの敗残兵共をどうにかしないとな。

勝てるものも勝てないぜ。

 

「聞け!弱卒の駄騎士共!」

ハッキリとした罵倒、ここで反抗心を駆り立てる。

「お前らは弱い!ハッキリ言って素人同然だ!」

その言葉に僅かにだが不満が広がって行く。そろそろか。

 

『だが勘違いする事無かれ!』

『お前らは勝てる!勝利は必然だ!』

『それは神が人の足元にも及ばない無能だからだ!戦友諸君、しかと見たまえ!』

 

男の姿は薄れ、人の形を失っていく。

下半身を地に打ち込み固定して、太く変形した豪腕を組み替える。

それは彼の知りうる限り最大最強の暴力。

M134(Minigun)、またの名を無痛ガン。

遠い未来にて鎧の時代を終わらせた兵器に酷似していた。

生い立ち上銃弾は鎧に対して強力な特攻を有する。

 

左右に構えて秒間レート100、自らの肢体を変化させた兵器である。

込められる弾丸は魔力から成り、凄まじい制圧力を誇る。

そんな怪物を惜しみなく掃射し、薙ぎ払う。

元々長政の所持する魔力量はかなり少ない、故にその掃射が続くのは三十秒足らず。

 

だが三十秒で事足りた。

敵の第二、三陣を破壊し、出鼻を挫くと同時に残党を恐慌状態に追い込む。

目の前で挽肉になった仲間、引き裂かれた鎧は十分に敵の戦意を折るのに機能した。

 

魔力切れにより人型へと戻る。

比較的マトモな槍の騎士とモードレッドが異形化への驚愕に足を止めていたが、

歩兵達にとってそんな事はどうでも良かった。

数十倍の兵力こそ変わらないが、向こうは死を恐れた敗残兵。

此方は戦う余力を残した兵。

 

勝利を手繰り寄せ、見出された糸口に湧き上がる。

 

『愚かなる神に仕えた結果がこれだ!敬虔なクリスチャン、

敗北主義のムスリム、白痴の坊主共!皆!皆そうだ!』

 

『さぁ我が友、我が戦友諸君!君達は何故戦う?』

『友の為か?家族の為か?恋人の為か?それとも己の為か?』

 

その問に答える者は無し。

『『『『『Wooooooooooo!!!!!!!』』』』』

しかし皆雄叫びを持って応えた。

ふつふつと眼に闘志が満ちてくる。そうだ、奴らに負ける筈がない。

神に祈るばかりの木偶の坊達に誇り高き騎士が負ける筈が無い。

 

『良い!良いぞ!そうだ、それで良い!』

 

『槍頭を揃えて行進しよう。剣を掲げて覇道を示そう。

鎧と軍靴を打ち鳴らし笑って敵を討とう。

これなるは地獄、如何な神も仏も救えぬこの世の終。』

 

『ならば我々は己の信念、そして我れらが王の為に敵を辱め、犯し、悉く殺し尽くそう。

名を、誇りを、名誉を棄て、修羅となって神を討ち滅ぼそう。そして共に真の地獄へ堕ちようじゃあないか!』

 

 

ハハハハハハ、ハハハハハハハハハ!!!

高らかに笑いながら外していた兜と面頬を被り直す。

「お前、使えるな。左翼を任せた。モードレッド卿、右翼だ。一人も逃がすな。」

 

 

 

「ハァ?お前勝手に…『総軍進軍!!!』あ、おい!」

 

雪崩が起きる様に、津波が押し寄せる様に。

僅か百人の軍勢が数千の軍に襲いかかる。

 

先陣を切ったのもやはりこの男。

銃創に傷付き、瀕死の敵兵を轢殺し怯える兵の首を引き千切り死体を放り投げる。

たちまち戦場に芳醇な血と死の香りが充満すると、いよいよ騎士共は発狂した。

正義さえ忘れ、戦意を失った敵を嬲り、殺戮の快楽に酔いしれた。

返る血を勲章に蹂躙せよ。則ち我ら死狂い、血染めの騎士也。

 

命乞いをする敵の首をもぎ取った兵が高笑いを上げる。

必死の抵抗をする勇者を背後から切り捨てる。

愚直にも名乗りを上げる名持ちの騎士を取り囲んで切り刻む。

 

数千が数百に、数百は数十に、数十が数人に。

そして最後の兵が倒れると、敵将一人が立ち尽くしていた。

対峙するは先程中々の槍捌きをみせた騎士。

血に飢えた兵共は二人を取り囲み、敢えて邪魔をしない。

戦いへの第三者の介入は御法度、勿論戦となればそれは当てはまらないが……

この狂騒の中でも一体一を選んだ騎士を夜叉は評価したのだ。

 

小柄な騎士に対して将はあまりにも大柄だった。

見立ては八尺余り、体重は夜叉をして倍ほどだろうか。

若干の肥満体は爪を隠すための擬態。

身重ながらその動きは軽快で、自信に満ち溢れていた。

 

巨大な馬上槍を双剣の様に構える将に槍と盾の堅実なコンビネーションで攻め立てる。

僅かずつだが傷は増え、出血も馬鹿にならない領域へと到達する。

 

「降参しないかゴリラ、お前使えそうだからオレは惜しいぜ。」

取り囲む群れから夜叉が嘲る様に問う。

その言葉に一度打ち合いを脱した将は叫ぶ。

『我らは神の代理人!!!神罰の地上代行者!!!』

喉を裂き、血を吹きながら吠える。

『例え最後の一人になろうとも、我らが使命は我が神に逆らう愚者をその肉の最後の一片まで絶滅する事!!!』

 

再び向き直った騎士が放った渾身の刺突____を体格差を利用して踏み付ける。

結果、反射的に引き抜こうとして騎士は隙を晒してしまった。

それはあまりに致命的で、あまりに迂闊だった。

 

『Aeeeeeeemen!!!』

 

槍の柄を十字に交差し、力任せに叩き付ける。

全身全霊を込めた一撃は劣勢が嘘のように力強く、絶対的。

鎧の隙間から血を吹き出して潰される騎士を見て夜叉はなるほどと思い当たる。

「納得だ、思い出せば切支丹も凄まじかったな……訂正するよ、信仰とは凄まじいものだ。」

 

全く動かなくなった騎士を後目に此方を睨み付ける。

 

『次はお前だ』…とでも言いたげだな。

まぁ待てよ、まだ終わってないだろ?そう言い、夜叉は将の背後に移る。

将は絶句した。全く見えなかったから。

 

臥した騎士の耳元に顔を近付け、囁く。

 

「お前、何か隠してるだろ?。このままじゃ負けちまう、折角だから見せてくれないか?」

 

囁きの後、騎士が跳ね起きる。

表情こそ伺えないが、何かを拒む様に思巡し_______槍と盾を捨てた。

篭手を捨て、中に入れた手袋を脱ぎ捨てた。

そして見えたのは黒々と濁った両腕。

元々は美しかったであろう細腕は肘先から澱んだ黒を成して歪む。

 

「第二ラウンド………ファイ♪」

一人楽しそうに号令を掛けたと同時に騎士が飛び掛かる。

それは洗練された技術とは程遠く、愚直で芸の無い一撃だったが、その分速かった。

 

兜の付け根を掴むと、そこから鎧が朽ち始める。

最初こそ何が起っているのか分からなかったのだろう、

将は固まっていたが、やがて腐食が肉まで到達すると苦痛に喘ぎ苦しんだ。

肉を溶かし骨を崩し生命を腐らせる侵食。

力任せに騎士を引き剥がそうとしたが、その手は夜叉に止められた。

「もっと見たいんでな…悪いがお前が死ね。」

やがて生命の灯火が揺らぎ始めたか、みっともなく泣き叫び命乞いを始めた。

これに興奮したのは周りの兵共。

手を叩き発情した獣のように雄叫びを挙げて悦ぶ。

誉は既に死んだ。残ったのは狂った化け物だけ。

その残虐性こそが人の本質であると鬼は嗤う。

 

 

やがて頭部を残らず朽ちさせた死体が発火する。

それはあまりにも無惨な死に様を晒した敵への慈愛。

浄化…………いや、()()とでも呼ぼうか。そんな炎だった。

死体が燃え尽き、灰一粒残らなくなった跡に呆然と伏す騎士だけが残った。

 

夜叉はその騎士の腕を取り、皆に知らせる。

 

「見たかお前ら、此度の戦は我らの勝利よ!一人も欠く事無く良くやった!

笑え!祝え!自らの生還と屍を並べた荒野に、そして我らに更なる勝利あらん事を!」

 

モードレッドは静かに興奮していた、戦いの余韻もあったがそれ以上に悦びが勝った。

言葉一つで兵を奮い立たせ、洗脳し、狂わせる。

それこそが自分に足りなかった物だと。コイツこそが王への道の道標だと。

根拠の無い確信に打ち震えた。

 

騎士は……………()()()は恐怖していた。

瞬く間に誇りを捨てた獣と化した同胞に。

あの日声を掛けた同期が、食事を出した先輩が、自分より更に若々しい若者が。

そしてそれを成した男に恐れを抱いた。

そして自らのおぞましい力に恐怖した。

 

 

 

 

………だが、

 

私も彼らの様に狂えたらどんなに楽だったろうか。

僅かでも思った自分が。

獣の群れは『不浄』には相応しい。

そう感じた自分が。

『素晴らしい力だ。そうだ、それで良い。』

去り際に耳元で囁かれた言葉に安堵を覚えた自分が。

 

彼女には何より恐ろしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トリスタン卿を犠牲としながらも見事リチャード一世を討ち取った騎士王一行。

共をした無名騎士達の殆どを失う戦いから帰還し、拠点にて見えたのは騎士の群れ。

若干歳を重ねた者や新兵同然の若手達。

決戦に耐え切れないと断じて置いて行った兵。

 

確かに数は減った、三割程だろうか?

しかし雰囲気があまりにも違う、一人一人が熟練の強者であると感じれるプレッシャー。

 

 

その中心に居た騒動の元凶は獅子王を認めるとニタリと笑うのだった。




盗作を発見した玉葱
(っ・д・)≡⊃)3゚)∵
もっと上手くパクってくれ。
なろうみたいな流れにしないで。


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聖都

シリアスとさよならバイバイ


目が覚める。

顔を洗い、口を濯ぎ調理場に立つ。

倉庫にある食材を痛む順番に消費して……今日はミートソースにするか。

大量の乾麺をドラム缶大の鍋に放り込み、纏めて茹でる。

 

「おはようございます!」

 

来たかガレス君。

ミートソースに使うトマトを潰しといてくれ、オレは肉を挽く。

騎士共は本当に良く食うからな。

2…300kgくらいは麺だけであるから…肉は80kgくらいで良いか。

体力の肉塊を両手に持った鉈で叩き潰していく。

あ、終わった?したらニンニクを10玉分。

外皮向いたら垂直に潰すと良いよ。ざっくり潰れたらちょーだい。

柔らかく挽かれた肉に潰したニンニクと塩を投入して混ぜる。

良いか、この時肉から多少水が出る。コイツは可能な限り取り除くと臭みが消えやすい。

 

下処理と下味を付けた挽肉を潰したトマトの入った鍋に投入、混ぜながら20分位かな。

うんうん、とてもイギリス人とは思えない手さばきだよな。

時代が時代なら寂海王(ヘッドハンティング)してたと思う。

 

じゃあ後はよろしく。

オレは皆起こしてくるから。

 

 

 

 

騎士宿舎中庭、その中心には何故か鎌と槌が置いてある。

全く意味が分からなかったが獅子王は夜叉の要望に答えて屋根付きの庵を用意したのだった。

 

太陽の位置からして5:00頃だと判断し鎌と槌をクロスする。

 

 

ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!

  ☆☆☆☆☆☆☆  

デェェェェェェェン!!!!

 ☭☭☭☭☭☭☭☭☭ 

Союз нерушимый республик свободных

Сплотила навеки Великая Русь

Да здравствует созданный волей народов

Единый, могучий Советский Союз!

 

世界の一般常識、鎌と槌を打ち鳴らすと何処からともなく共産主義が生える。

時代も土地も関係無い、祖国は皆の心の中にある。血潮の赤は共産主義の赤。

 

爆音で鳴り響くソビエトに頭をキンキンにしながらゾロゾロと騎士達が這い出てくる。

おはよう雑魚共。今日の朝メシはミートソースパスタだ。

量もたっぷりある、存分に食うと良い。ただ……

 

そう言って振りかぶられた木刀を避ける。

 

食えると良いな。

同じく後ろ手に持った木刀を構え、笑む。

 

『一撃当てた者から朝食』_____かつて長政が孤児院で定めたルールである。

男女を問わず武で名を示そうと志願した者は皆、この定めに縛られる。

 

大振りの一撃を躱し篭手を打ち付ける。

精確な突きの後の先を取り更に速い突きで打返す。

背後から狙う騎士を殴り飛ばす。

 

結果的に、彼らが食事にありつけたのは一時間後だった。

 

 

 

 

太陽爛々と、エルサレ………キャメロット。

僅か二週間の内に都市は大きく発展した。

かつての宗教的支配の名残を破壊し神に取って代わった騎士達によって。

最初こそ抵抗していた市民もやがて諦めた様に鎮静した。

新たな支配者に従う他なかったからだ。

 

マスター達の姿も無いのでオレも当分お世話になる事にした。

ついでに騎士共を鍛えてな。

で、与えられた役職だが…特別教練教官兼粛正部隊長兼給仕長だそうだ。長い。

バカの一つ覚えの様に隊長隊長と呼ばれるのも何処か懐かしいので他の奴には隊長と呼ばせてる。

 

溶き卵の卵黄にクリームを加えてまろやかにし、貴重な砂糖を放り込む。

液体を形に取ったら地下に掘った氷室に入れて保存………した物が此方になります。

こちらにも貴重になった砂糖とバニラシードを加えて焦げ茶になるまで加熱。

常温で固まるギリギリの砂糖の濃度で先程作った物にかけると………

 

「ほらよ、バニラプリンだ。」

「ありがとうございます!」

 

砂糖も何もかも貴重なんで三つしか作らないが。

一つはガレス君に。

給仕担当が二人とか頭をおかしいぜ?

三百人近くを二人で賄うとか現実的じゃない。お疲れ様。

もう一つはモードレッド卿に。

完全に子供贔屓だけどな………

お子様舌のモードレッドには大分合ったらしい。

 

で、ラストは_______

 

『開けろ!デトロイト市警だ!』

「だから食事は不要だと何度も言ったでしょう?」

 

そう言って何だかんだ食ってんだろうが。

早々に諦めて出て来やがれ下さい王様。

アンタが飯に顔出さないから態々持ってきてるんだぞ。

此方も強行手段に出るぞ、良いのか、良いな。

トレーに載せた料理と葡萄酒をキャビネットの上に避難させ、助走を取る。

約5m、加速には十分。

 

「デトロ!開けろイト市警だ(ガチャ)アァァァァァア!?!?!?」

 

助走つけて蹴破ろうとしたらタイミングで丁度扉が開き最高速度で部屋に突っ込む。

勿論止まれないので部屋の中にある高そうなテーブルを破壊しながら減速、壁を蹴って復帰。

修理費はアッくんにツケといてくれ……

 

「ほらよ、何だかんだ食うだろ?」

渋々と言った顔で受け取り、咀嚼を始める獅子王。

態度こそ変わらないが食事には相当応えてたんだろうな………

騎士共みたいに涙を流して飯を食らう訳では無いが、コイツ食べる時面白いのよ。

アホ毛がみょんみょんしておられる、かわいい。

三日くらい空けるから味わって食え……なんだその目は。

その目で捨てられた子犬アピールをするんじゃあない。

マズ飯三日程度我慢せんか馬鹿め。

 

空ける理由?聞く必要があるか?

ウチの部隊が出る理由は一つしか無いだろうに。

皿は料理場の皿洗いに渡しといてくれよな、固まると可哀想だ。

 

 

 

 

 

毎朝のルーティーンとなりつつある獅子王への訪問を済ませ、離れにある自室へと入る。

ロンギヌスとロンゴミニアド、二つの聖槍。

流石に耐えきれなかったか鎧が使用不可能な程破損してしまった。

仕方ないので十字軍の倉庫から拝借した軽鎧を削り、最小限のガードだけ残して着用する。

一番デカいのを貰ったのにキツいのはどうしてなんだ。

 

その鎧は研磨の過程で黒く焦げた様に変色していたが、彼は寧ろそれを好んだ。

マントと胸部に記された十字架を黒く焦がし、神への叛逆の狼煙とする。

この紋章は彼の部隊の象徴、神を討ち滅ぼす鬼の証。

 

キリストを切り刻み、屍を踏み倒して道を拓こう。

ムハンマドを焼き殺し、偽りの予言を悔いさせよう。

ブッダに何が出来る、一族郎党蹂躙し、凌辱してやろう。

 

我ら粛正部隊。神を信仰する愚者を是正する者。




今更だが三大宗教に喧嘩売ってんなぁ俺………


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王の素質と責務

現在受験期に向けてカキダメェェ٩(・ェ・@)وを蓄えています。
貯蓄が10個位になったら3日更新も戻すつもりなのでご了承ください。


民を愛し、敵を討ち、国の犠牲となってでも支える。

それこそが王だと思っていた。

いつかは自分も王になるのだ。と思っていた。

 

しかし、照らして見れば父はあまりに完璧だった。

王として完成されていた。

高潔過ぎて、眩しかった。

 

母上は口ごとに言っていた。

『貴方は王になるべき存在だ』と。

 

でも結局誰も素直に愛する事が出来なかった。

国に叛逆し、父を、王を討った。

そして王に断罪された。

 

そんな自分が王に成れるなど、どうして思えようか。

 

思い出す、あの気味の悪い笑顔を。

淫卑に歪んだ微笑みを。

 

思えば母は____オレを通して、父を見ていたのではなかろうか。

ある日平穏を乱され、生き別れとなった種違いの妹を。

完璧な王として創り出された王を、見ていたのではなかろうか。

 

『…………ぃ』

 

だとしたらオレは一体何なんだ?

父の、アルトリア・ペンドラゴンのコピー。

それとも息子のモードレッド。

或いは、母の傀儡、王座への妄執。

王を討つ為だけに産み出されたクローン。

 

『……ぉぃ…………!』

 

王にとってのオレはなんだ?

騎士か、仇敵か。息子か、他人か。

 

 

 

オレは_____ワタシハナンナンダ?

 

 

 

『モードレッドォォォッ!!!』

慟哭に近い叫びに意識を回復すると、敵将の一人が斧を振り上げた格好のまま絶命していた。

胸を貫く剣を見るにあの男に助けられたらしい。

そうだ、あの男だ。

 

あの男は父とは違う意味で王に相応しいと思う。

 

敵を屠り、部下を鼓舞して自ら血路を拓く。

それもまた、王の素質だ。

なぁ、お前にとって王とは何だ?

 

『王だぁ?…………スマン、意味が分からん…………』

 

お前が、仕えたいと心から願える相手は『あー、あーなるほど。理解、理解した。』

『お前の王とオレの親友…………あと多分オレの違いって所か。』

 

戦場で一人得心した様に手を打つと、ぽつぽつと話す。

戦局は此方の圧倒的優勢であり、兵は皆返り血に塗れ嗤っていた。


 

 

簡単だよ。

切り捨てる強さと切り捨てる駒を集める求心力だよ。

まぁ獅子王陛下に求心力があるかと言われたらビミョい所だがな。

 

……………笑えよ、笑う所だろ……?

確かに獅子王は凄まじいカリスマがある。

清廉潔白、才色兼備、古今無双…………キリがないくらいだ。

一方で親友(信長)バカ(うつけ)色情魔(ビッチ)ロリ(釘宮)痛い(厨二)…………

とてもとても完璧とは言い難いし、お前の王様よりよっぽど俗物だよ。

だけど俺らはアイツが好きだ。情けなく、弱々しいアイツが大好きだ。

アイツの為に命を懸ける事以上に楽しい事はそうないと思える程度には。

俺は勿論、アイツに付き従う者は皆思ってるさ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とな。

ああ、奴はやるさ。

柴田(ジジイ)光秀(ハゲ)秀吉(サル)(サイコ)(帰蝶)()それに親友(オレ)

奴の大切なもの、それを切り捨ててでも奴は目的を実現する。

必要とあらば躊躇いこそすれ……結果として奴はオレを殺すだろう。

 

 

 

 

 

王とはかくあれかし。

 

王道を行き、仲間の屍を踏み越え天下に名を轟かせる者。

犠牲は厭わず、喪った者の灰を焔纏い、自らに宿すが如く苛烈に。

果敢かつ豪胆な生き様とその背中で諸人を魅せる者。

故に死を恐るることなかれ。

怯む事なく敵を鏖殺するが将に報いる褒賞よ。

 

将とはかくあれかし。

 

覇道を拓き、礎となって戦火に潰えろ。

戦場を駆け、一振りの刀として蹂躙せよ。

死してなおその志は王が伴に。

故に死を恐るることなかれ、我らは不死。死に狂うが良い。

我々は王の矛、王の盾。ただ戦い、死ぬ事ことが王への奉公と知れ。

 

信長は王だった。オレは将だった。

オレに未来への天望は無く、アイツには天下統一の大願があった。

アイツには逆境を振り払う力無く、オレには一騎当万の武があった。

それだけさ。それだけで理由としては十分だった。

………そして獅子王程歪んだ存在は無い。

奴は王であって、同時に将でもある。

自ら血路を拓くその姿は高潔でこそあれ、奴は半端者なのだ。

将になり切れず、王になり切れず。

まるで自らの居所を失った稚児の様だと思わないか?

 

 

 

王とはなるべき者がなるべかれとされ、なるべくとする事で存在する。

資格ある者が望み、望まれる事こそが王の素質だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………お前はどうだ、モードレッド。

 

 

 

お前が成りたいのは王か?それとも将か?

お前には王の資格が十分にある。俺が保証しよう。

しかし、お前が望むなら将にも成れるだろう。

 

 

 

お前が憧れたのは騎士アルトリア・ペンドラゴンか?

ブリテン国王、円卓の長アルトリア・ペンドラゴンか?

 

よく考える事だ。王は将には下れぬ。同時に将は王に成れぬ。

古くから、王に成り代わった将も将に下った王も破滅した。

答えを模索し、足掻くのも若人の特権だ。よく考えな。

 

 

語らいの内に戦いは終わる。

鎮まる狂騒と血吸いの大地を夕日が赤々と照らしていた。

 

 

 


 

 

よう、()()

ちょいと目が覚めちまってな、夜咄でもどうだ?

夜這い?生憎、ガキを相手にする趣味は無いんだよ……どっかの誰かと違って。

話ったって簡単なモンだよ。お前さん、モードレッドはどう思ってる?

可愛い息子………とは思ってないんだろうな。

良いじゃねぇか、何かと不思議な境遇かも知れんが倅がハッキリしてるんだから。

ウチなんか嫁に女しか生まれなかったからよ……くだらん事言う輩を始末するのに苦労した。

国王として不適格なんてのはやってみなきゃ分かんねぇだろ。

オレにはお前もたいして立派には見えんさね、ハハハ………

 

そう言った途端、重厚かつ濃密な殺意を向けられて唸る。

 

ほら怒った。王様としちゃ度量が足りないんじゃない?

そういう所だ、王に相応しくあろうとするって意識。

成るべくして成る存在なんだよ、それに気付け。

…………言って分かるようなら苦労しないか。

まぁ、そうだな、認める所から始めてみたらどうだ?

案外、答えってのは意外なモンだったりするからな。

んじゃ、おやすみ!

 

夜叉は何処から侵入し、何処に消えたのか。

それは分からなかったが、なんとなく、ほんの僅かだが。

神性を有してから一番良く眠れそうな気がした。




信長ガチ恋勢長政


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タイトルきつい


今日も今日とて良い天気!

雲一つ無い快晴だぜコンチクショウ!

さぁガレス君!今日の目的を!

 

『はい!?あっ、えっ、そのら』

 

そう!ムスリム共の根絶だね!

具体的にはハサン・サッバーハとか言う暗殺者を始末しに行くよ!

暗殺者を暗殺するなんて素敵だね!

 

『…………それは分かったんですが…友軍は何処に?』

 

暗殺なんだから居るわけないじゃん。

もしかしてビビってる?

大丈夫大丈夫。大した事無いって…………

そう言うと夜叉はガレスに詰め寄る。

 

『!?どうしたんですか!?!?』

 

動くな。そのままにしておけ。

お互いの身体が触れ合う程の距離、そっとガレスの顎を持ち上げる。

 

『ッ________!?!?!?!?』

 

ガレスは困惑した。

それもその筈、兄弟以外の男性にここまで詰め寄られた事など無かったのだ。

そして完全にガレスの制空権を奪われた瞬間、振り下ろされた刃が全てを断ず。

いつの間に引き抜いていたのか、太刀を逆手に持った夜叉はガレスの影を貫く。

それは地に突き立てられる直前で何かを貫き、鮮血で辺りを彩った。

未だに事態を理解してないガレスを放り、貫いた何かを掴み上げる。

それは仮面を付けた暗殺者だった。

 

…………影隠のハサンって所かな、よく分からないけど。

素晴らしい力だな。だが殺意を隠し切れて無いぞ。

あんなに熱っぽい視線を向けられちゃ、嫌でも気が付くってもんだ。

笑いながら刀を引き抜き、乾いた大地に更に血を吸わせる。

良かったな。これで一人目だ、ドンドン行くぜ?

呆然とする背を叩きながら山岳地帯へと進んでいく。

並大抵な気配遮断スキルでは不意をつくことさえ叶わぬ。

攻撃の瞬間に気配が露呈している様では三流と変わらない。

……………遅いなアイツ。野郎同士で何かするとでも思われたかね?

 

 

僅かばかりの民が隠れ住む村。

そこは住処を追われたムスリムの拠り所、生命線。

それを見下ろす小高い丘から二人、襲撃者が企てを始める。

 

今回の作戦は、【ぷるぷる、僕たち悪い騎士じゃないよ】作戦だ。

手順は簡単、お前がこれを着れば解決する。

夜叉は若干くたびれた女物の服……まさに村娘と言った風貌の地味な服を取り出す。

 

『…………本当に私が着るんですか?』

 

良いから早くしろ。

オレが着てやろうか?

筋肉ムキムキマッチョマンの変態になるぞ?

お茶の間に放送出来なくなるぞ?

 

(騎士と侍着替え中…………)

 

ガレスは恐ろしい程一致した村娘に。

夜叉は意外にも馴染んだ農民姿になる。

 

「ヨシ!」

『どうしてヨシ!って言ったんですか?』

武器は置いてくからな、丸腰だから無理は禁物だぞ。

最悪お前のギフトも使え。否応言ってる場合じゃなくなったら、だが。

 

村に近付くと警備だろうか、言葉を発する事無く躙り寄ってくる。

練度自体は低い……だがここで始末しちゃマズいからな。

黙っとけよガレスゥ?口の聞けないアレの振りをするんだぞ。

 

『貴様らは何者だ!』

………口ばかり達者だが、腰が退けてるぜ。素人だな、助かる。

「いえいえ…あっしらは聖都の征伐に落ちまして……へへ、恥ずかしながらここなら匿ってくれると小耳に挟みやしてね?どうかあっしらを……せめて娘だけでも匿って下さりませんかね?」

『ならん!怪しい者は一人として通せぬ!ここは難民達の最後の砦なのだ!』

「まぁそう言わずに………娘だけでも良いんでさぁ……」

『そちらの娘は何故何も話さない?』

 

なんかちょっと偉そうなの来た。

ほぼ間違いなく奴さんが首領、ハサンって奴か。

 

「いやぁ、娘っ子は目の前で人が死ぬのに耐え切れなくてなぁ。口を聞けなくなっちまいまして。あっしはこう見えて元々兵士だったもんで慣れっこでしたが……」

 

 

人はなんだかんだ悲惨な境遇には同情的で、甘いモンだ。

 

「おお!こんなに食い物を貰っちまって良いんですかい!?」

「なるほど……倅さんは三歳、可愛い盛りじゃありませんか。」

「いやぁ、ありがたやありがたや。信仰する神こそ違えど皆さんの祝福をお祈りしやしょう。」

 

薪を割り、痩せた土地を耕し、井戸を掘る。

苦労を共有すれば、仲間意識なんてのは勝手に高まる。

三日もすればあっさり打ち解け、警備も外された。

ああ、悲しい。悲しいなぁ……その甘さが身を滅ぼすとも知らずに。

 

「………貴方は躊躇ったりはしないんですか?」

 

オレが?なんで?

他人で敵よ?仲良しごっこしたって殺すしかないでしょ。

良心無く、呵責無く、そして命の価値に区別無くってね。




ヨシ!
箱イベお疲れ


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堕チル

闇堕ちは良いぞ


「ガレス君、起きてるか?今晩にしようか。」

そう言って短剣を枕元に放る。

「大将首、くれてやるよ。俺はモブ共を始末するかね。」

 

 

本当にやるのか?

少なくとも彼らは私達に良くしてくれたというのに。

「仕方あるまい、それも仕事だ。」

王への忠誠と良心、その狭間で私は揺れ動いていた。

だからどうやってハサンの寝台まで辿り着いたのか覚えていない。

仮面を付けたままの暗殺者に私は迷いながら短剣を振り下ろす。

 

しかし、その鈍い一撃は眠っていなかった暗殺者によって容易く避けられて組み伏せられる。

首を絞められる事の苦痛に声を漏らし、同時に奪われた短剣に驚愕する。

「影剥のが帰らなかった時から、違和感は感じていたッ……!」

「人の心を捨てた我らとて……同志を討たれれば怒りもする……!」

「貴様も……あの男も、必ず殺してやる!」

 

カ……ハッ……

首を締める手への抵抗を緩めれば絞め殺される。

短剣を握る手への抵抗を緩めれば刺し殺される。

 

情けない。

王の騎士として名を連ねながら、かような暗殺者風情に命を脅かされる。

つまらない情に絆された結果がこれだ。情けなし。

騎士として生きる価値もない。そう思って諦めようとしたが、その時。

揉み合いの弾みで手袋が外れ忌まわしき『不浄』が顕になる。

咄嗟にその手で両の腕を掴むと、暗殺者の両腕は朽ち果て、灼け落ちた。

逆に苦悶の表情を浮かべた暗殺者は、短剣を口に咥えてまで突き立てようとしたが、もう遅い。

『あ、ほいーっと!』

外から侵入した大男によって蹴り飛ばされ、同時に投げられた斧で脚を断たれる。

最早抵抗する事さえ不可能な現状を嘆いた暗殺者はせめて民を逃がそうと声を張る。

故にまだ気が付いていない。既に村に命ある者は無く、家々は燃え盛っていることに。

 

また、やってしまった。

おぞましくも強力な『不浄』の祝福。

黒く染まった両腕は私の醜い内面の化身。

ここまで落ちても黒く染まれぬ半端者の証。

無意識にその手を自らの首に伸ばす。

この力なら、あるいは、王に断罪されるも同義だろうか。

 

その手を掴まれる。

下手人は夜叉と呼ばれる、現在の私の上司。

不浄の祝福は敵味方を選ばない。触れた手は既に朽ち始め、燻っていた。

指輪で偽装してるとは言え、女の力では男の膂力に敵わない。振りほどく事も出来ない。

だが、朽ち果て灼け落ちると思われた腕は一向に消えない。

困惑する私を他所に、彼は私の手を自らの首へと運ぶ。

同様に頭部は朽ち始め、燃える。

そんな中で、ヘラヘラと軽薄に嗤う彼は言う。

『やはり良い力だ。誰よりもおぞましく醜い、持ち主の精神と反した力。』

『恥じる事は無い。お前はその力を振るって思い通りに生きるが良い。』

騎士としてそのような生き方は………

『ならば騎士を棄てろ。殺戮を楽しむ本性、その一切を隠すお前は人として生きる事に適さない。

多くの人間が多少は露見するその本性を隠す偽善者だ、お前は。』

違う。

私は、騎士だ。

私は誇り高き、騎士王の騎士で____

『なぁに、安心するが良い。この様な力はまだ児戯に過ぎんよ。

少なくともオレはお前を恐れない。お前から離れない。本当の獣というのは………』

 

その時、私の目の前に迫る男が変貌する。

醜く歪み、定形を取らぬ異形の化け物へと。

 

『こういうのを言うのだ。お前の力なら容易く扱う事が出来るだろう。』

『お前が、自らの本性を認めるならば。だが。』

 

嫌だ、嫌だ嫌だイヤだイヤだいやだ!

たすけて、ガウェイン兄様、ガヘリスにい様、アグラヴェインにいさま………

私は、わたしはきしで、わたし、きし、わたし

 

男は人型へと戻ると、()()()()に見開いてガレスを見つめる。

 

『そうだな……お前は鏡を見た事があるか…?お前は何に見えた?』

 

鏡面の様に美しく私を写した瞳。その瞳の内に確かに見えたのだ。

先の怪物の様に醜く変貌した自らの姿を。穢れた本性を。

 

わたし、わたしはおうのきし

ほこりたかき、おうにつかえるきし

いやだ、そんなめでみないで、わたしをみつけないで

あなたがいなければ、きづかずにいられたのに

わたしは、わたしはだれ?

 

 

『認めろよ。お前は獣さ、オレと()()な。』

 

心の隙間に優しく染み込む様な言葉。

今までの不安が嘘の様な心地良い安心感に包まれながら________

わたしは私の壊れる音を聞いた。

 

土砂降りの雨が崩壊の火災を消していく。

此処にはもう誰もいない。

無邪気に笑う子供達も、実は親切だった兵士も。

たった一人、暗殺者を除いては。

四肢を奪われ、達磨となった暗殺者は怨嗟の篭った声で私を罵る。

『ケダモノめが………!』

そう、私は獣だった。漸く分かった、自分のすべき事が。

恨みがましい暗殺者の額に触れて、灼き滅ぼす。

その時に浮かべた苦痛と恐怖の表情にどうしようも無い快楽を感じる。

 

 

もっと、もっと暴れたい。

衝動のままに、壊し尽くしたい。

持っていた槍を捨てた。盾を捨てた。

もう私は騎士じゃないから。

 

………ハハハッ♪

 

笑い声だけが残響し、私は泣き笑いで嗤った。

自分でもグチャグチャの感情に呑まれて、訳が分からない。

土砂降りの中、彼に抱きつく。

触れた手からグズグズと朽ち、同時に再生する。

やっぱり、やっぱりだ!

この人だけが私を認められる。

この人だけは触れられる。

自らの拠り所を見出した青年は指輪を外す。

もう姿を変える必要さえ無い。

こんな私に、帰る場所など他に無いのだから。

男から女に姿を変えた獣は、哭く。

もう戻れない日々と、かつての仲間を思って。

 


 

ああ、いつ見ても堪らなく愉快だ。

特段な獣性?そんなものは無かった。

必要なのは自分を見つめ直し、自覚する事。

知ってるか?人は皆、獣なんだぜ。その事実から目を背けてるだけ。

否定するか?だったらアイツはどうだ。

ちょいとばかし見方を変えてやっただけでああなった。

 

人は理性の檻に閉じ込められた獣だ。

その檻は内からはとても頑丈だが、外から簡単に壊せる。

ああ、愉快、愉快。

清廉潔白な奴が堕ちる様程愉しいものは無い。

 

ノウボウ タリツ タボリツ ハラボリツ シャキンメイ♪

シャキンメイ タラサンダン オエンビ ソワカ………ハハハッ♪

 

 

……………話は変わるが、女だったんだな、お前。




真っ直ぐで純白な子を歪ませるのに興奮する。


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虚空へと至る為に

分かりにくい表現有。
人肉食注意。
今までの比じゃないくらい貪り食らう描写に力入れてるから注意。


『此方は聖都セキュリティサービスで~す。』

『そこのハサンちゃん止まりなさい。繰り返す、そこのハサンちゃん止まりなさい。』

 

難民達を引き連れ逃げるハサンの生き残り。

名を煙酔のハサン。

ハサンの中でも特段の高潔さを持った暗殺者だった。

 

それを追うのはふざけてるとしか言えない格好の男。

現代風の警官服に意味もなく眼帯を付け、メガホンで投降を呼び掛ける男だった。

 

「クソ……ここまでか………」

 

ふざけた風貌とは裏腹に男の追跡は執拗で狡猾だった。

脚の弱い難民に辛い荒野を逃れさせ、疲弊させる。

故にここで戦うしかない。敵は一人。

一か八か相討ちの覚悟さえ有れば______

かような幻想を断ち切る様に煙酔の左腕は切り落とされた。

正面戦闘特化のサーヴァントに対して暗殺者。

勝てる筈も無かった。

 

返り血を舐る男。

いつの間にか服装は元に戻り、鎧兜で武装していた。

 

『まぁ、オレも鬼じゃない。必要なのはアンタの首から上だ。

………今ここで自害しろ。したらオレはそこの雑魚には手を出さねぇ。どうだ?』

「その約束は、違わないか?」

『勿論。嘘は付くが約束は違えない質なのさ。』

「ならば………彼らが視界から消えるまで動くな。それと引き換えだ………」

 

りょーかい。

そう答えたと同時に自らの喉を短剣で切り裂く煙酔のハサン。

マジか、マジでやるとは思わなかった。

だったら仕方ない。約束は守らなきゃ男が廃るよな。

ほーら行った行った。お前らが消えなきゃ帰れねぇんだ。

 

 

 

安堵の声を上げながら去っていく難民達。

頭を失ったとはいえ命は助かったのだ、無理もない。

全員が目の前を通り過ぎ、後ろを向いた所で呼び掛ける。

 

「………ヨシ、もう良いぞ。」

 

その声が終わるか終わらぬかの刹那、男の影から何かが飛び出す。

それはまだ少女と言われても違和感の無い年頃の女。

サーヴァントの健脚を発揮した踏み込みで最後尾の難民を掴んだ。

灼け朽ちる激痛の悲鳴に気が付いた難民達はパニックを起こす。

 

「約束は違えてない。()()は動いてないからな、ハハハッ………」

 

心地良い悲鳴と怨嗟の声を聞き、うっとりと微睡む。

やがて狂騒が鎮まり、血溜まりに興奮するガレスを口笛で呼ぶ。

一目散に駆け寄ったガレスは血と臓物に塗れた頭を擦り付ける。

まるで犬……というよりかはまさに犬だな。

そうボヤキながら血脂に絖る髪をくしゃくしゃと撫で付けた。

 

 

 

 

 

過程はどうあれ、楽しかったな。

なぁ、そう思うだろ?ガレス。

 

 

 

 

 

そして景色が移り変わる。

背後に映る荒野が細切れに崩れていく。

ガレスとオレ以外の全てが崩れ、再構築され、現実へと引き戻していく。

手を置いているのは先と同じく血濡れのガレス。

しかし絶対的な違いがある。

この血は、ガレス本人の物。

切り裂かれ、殴られて出血した傷から湧き出した物。

全身余す所無く深手を負い、骸と化す直前の少女。

その頬を慈しむ様に撫ぜると、半開きの眼が夜叉を捉える。

 

撫ぜられている事に気が付くと目を細めて何かを呟くが、潰れかけの喉では言葉にならない。

言葉は不要だった、頬に添えた手を引き寄せ、咥内を舐る。

愛し合う為の口付けでは無く、込み上げる吐血を貪る口付け。

一雫の血すら逃さぬと言わんばかりに蹂躙し、凌辱する。

やがて_______男は人の姿を失う。

この先に待ち受ける運命を知って、少女は微笑む。

最期に確かに聞こえた『ご武運を。』聞こえない筈の声。

 

ガウェインとランスロット、それぞれの屍。

一人ずつ骸を処理し、最後の騎士の元へ。

道中にて雑魚を一掃するベイリンと会う。

部下を鼓舞し、ハサン率いるレジスタンスを押し留める。

故に、城内へと侵入したのはカルデア一行だけ。

邪魔が入らない事がただ嬉しかった。

戦友に敬意を表して踵を返し、目的地へと急ぐ。

 

壁を背に俯く騎士。モードレッド。

兜越し故に見えはしないが、哭いたのが分かる。

致命傷になる様な傷は無い、雑な情けを掛けられたのだろう。

無言の慟哭に沈む騎士に問う。『答えは見つかったか?』

首を振る騎士の若さに笑う。裂けた鄂殼で人ならぬ声を上げて。

笑っている間に騎士は鎧を脱ぎ去り、騎士を捨てた。

「俺は、折れちまった。俺は半端者で、まだ答えが分からない。」

「でも、このままアイツらに勝たせるのは面白くないッ!」

往生際の悪い………オレもそう思ってた所だった。

鬼を纏い、異形に堕ちて、それでも尚。

一度だけ、ただ一度だけで良い。

本気のアイツと殺り合いたい。

「だから……良いぜ。」

「まだ決められない俺に答えを。」

剣を地に突き刺し、迎え入れる様に手を開く。

 

『ちょいチクッとするぜ。』

牙を白い首に添えて問う。

白魚の様に透き通った柔肌。

「構わない、刺し殺されるのよりはマシだ。」

「…………剣に誓って、我が戦友に勝利のあらん事を。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喉笛を食い千切り、流れ出す血を啜る。

出血が収まれば肉を喰らう。

臓物を抉り、肉に喰らいつき、骨を噛み砕く。

肝を頬張り、子宮を齧り、心の臓を咥内に捩じ込む。

血潮の一滴足りとも無駄にはしない。

それが自らの宿業だと知るが故に。

筋の一本も残さず身体を食い尽くし、最後に頭部に取り掛かる。

死に方に反して穏やかな死に顔で瞑目した美しい顔。

それを今から噛み砕き、肉を削ぎ落とし、喰らうのだと考えて身震いした。

自ら積み上げた物を破壊し尽くさねばならないという咎。

与えられた護神の称号と人喰らいとしての伝承。

二つ相反して我に有り。

皮肉を削ぎ喰らい、頭蓋を割って脳漿を啜り、咀嚼して舌で転がす。

 

準備は万端。後は行動するだけ。

駆け、翔び、滑り、潜り、跳ね、追い縋る。

ただ殺したいと望む獣に堕ちて、それでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然現れた。

壁を破り、全てを破壊しながら。

 

『久しぶりだなァ猿夜叉丸(クソガキ)。ちょっと遊ぼうぜ?』

「………ああ、成程。道理で治りが遅いワケだ、お前が居ないなら当たり前だよなァ…………!!!」

全く同じ顔、白銀の頭髪に赫い眼光。

分かたれた存在、彼の中の彼。

 

名を、アータヴァカ。

彼に巣食う鬼の名である。




R15(自称)


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アータヴァカ

受験近付き更新がままならない玉葱


冗談みたいに同じ顔、同じ声、同じ太刀筋。

悪夢でも見ているみたいだ。否、悪夢の方がマシか?

 

人間の反応速度を超越した刺突に同じく刺突を合わせ止める。

………違うな、止められた。

武器の手数で勝る分自由に振り回せた動きを止められた。

無手の右腕が黒く変異しで殴り抜かれてすんでの所で直撃を避ける。

殴られた瞬間後ろに飛んで勢いを殺したが、それでも尚腹を抉る威力。

純然たる破壊力、パワーは明らかに負けているな。

吹き飛ばされながらそう思った。

 

受身を取りつつ転がり、着弾の威力を殺し、敵に向き直れば飛来する槍。

顔を捩り回避するが完全にペースを食われている。

抜き身の刃を納め、観察する事に専念した。

所謂、力押しをしないパワータイプ。

長政にとってそれは自らの戦い方の上塗りであり、最も苦手とする相手だった。

 

『どうしたァ?随分と消極的じゃねぇか。』

「何、じっくりと観察させて貰ってるのさ。」

 

相手の手札は、パワーと再生能力。

こっちの駒は手数と速度に、奇襲性。

さぁ、どう戦う?考えろ、答えが出ない筈はない。

弱点の無い存在など有り得ないのだ、そう学んできたのだから。

下段からの切り上げを横に動いて躱し、すれ違いざまに首を絶とうとした。

薄紙を斬るように容易く首を絶つも、数瞬と経たずに再生。普通の攻撃に意味は無い。

だが理解はしている。あの再生には膨大なエネルギーを使う。

それこそ普通の人間なら瞬く間に乾涸びる程に。

 

故に、手傷の大小を問わずに苛烈に攻め立てることが唯一の勝機。

そう確信して接近戦を挑む。

最小の動きで躱して、斬る、射る、穿つ。

大上段の振り下ろしに合わせて背後を取り、投げる。

夜叉化の影響で一部の攻撃が緩慢になっていた、故にそれが弱点。

 

決着を決める一打は割と早く訪れた。

焦れったくなったか、剛力を全て込めた拳を当ててくる。

手と腕の丸み、そして体捌きでその力を逃がし……同時に利用して。

加速した自らの貫手に僅かに残った夜叉の力を乗せて貫く。

長政の放った貫手は確かに夜叉の身体を貫き、その霊核を抉り出した。

そのまま体当たりで夜叉の巨体を飛ばすと見せつける様に握り潰す。

 

戦局は決した。

サーヴァントとしての存在に落とし込まれた以上、霊核の損傷はそのまま致命傷である。

だからこそ貫手の一撃を狙ったのであって、勝算もそこにあった。

もし、サーヴァントでは無く、鬼神としての夜叉ならあるいは。

真っ向勝負では圧倒的に不利だったが、ルールに縛られていたから勝てた。

 

…………縛られる?

言いようの無い違和感。

おかしい、そんな筈はないのだ。

 

奴は鬼神で

中でも荒神として名を馳せた存在

そんなモノがこうもあっさりと?

縛られる事を嫌う夜叉が?

 

その事実に気が付いてしまった長政は、再び武器を握った。

 

 

 

 

 

 

ノウボウ・タリツ、・タボリツ・ハラボリツ・シャキンメイ 

シャキンメイ・タラサンダン・オエンビ・ソワカ

 

聞きなれない文言、だが知っている。

これは真言だ。

 

『流石と、言うべきだろうな?』

『人の身でそこまで、実に素晴らしい。』

『お前を選んで、本当に良かった。』

 

斃れ伏す夜叉の骸は掻き消え、醜くも力強い鬼の姿を取る。

手に持つのはこの特異点で得た宝剣、聖剣の類い。

ガラディーン、クラレント、アロンダイト

獅子王から借用したロンゴミニアド

その他、十字軍が保持する聖遺物に、神具の数々。

一つ一つが英雄の武器や伝説とされた武具が数十。

手に持ち刃を舐める様に眺めると、何を考えたのか自らの両腕に突き刺す。

対魔の神具や、対神の魔剣。自らには毒となる物もあったが構わず貫く。

その両腕に余す所無く剣山が如く武具を突き立てた姿を見せ付ける。

 

その見た目よりも、霊核を破壊されてもまだ駆動する事に驚いた。

だが、起き上がった際にそのトリックを看破する。

腰に提げた黄金の盃。聖杯、太陽王が持つこの特異点の聖杯。

提げた聖杯を胸の空洞に力任せに捩じ込むと、満足気にしたり笑う。

その身体は聖杯の膨大な魔力と、武具の干渉。

そして世界からの修正力によって歪み、ひび割れ、軋んでいた。

 

『お前なら、オレを討つ事も出来るとは思ってた。だからこその保険だ。』

『聖杯を魔力リソースに、オレの屍を触媒として()()()()()()()()()

『つまり今のオレは英霊でも何でもない、本物の夜叉だよ。』

 

雑なんてレベルでは無い。

態と霊核を破壊して自らを直に降ろすなど狂気としか言えない。

だが、殺戮に狂った鬼神ならばやるだろう。

ノウボウ タリツ タボリツ ハラボリツ シャキンメイ

シャキンメイ タラサンダン オエンビ ソワカ

その真言を記憶の果てに思い出した。

 

護国と、勝利。破壊と対魔を司る明王の呪文。

夜叉という下位の鬼神ながら、その力だけで明王……それも最上位に上り詰めた存在。

名をアータヴァカ。

 

【集え、我が同胞、宝賢、満賢、散支、衆徳、応念、大満、密厳。

悪鬼羅刹の祖なれど護法司る八大夜叉大将。我は大元帥明王、アータヴァカ。

その任は我が主に叛する逆賊を総て滅し悪逆を正す事。】

 

その姿は更に醜悪に。

左右の腕は剣や槍をギザ歯とした鋸に。

マトモな人の姿を喪ったと同時に背部から一対の腕が生え、四足獣の姿を取る。

 

彼は、上位の夜叉である宝賢や満賢よりも。

そして主の夜叉王:毘沙門天さえも超越していた。

比肩する力持つ者無しと言われた鬼。

如何な存在をも力で屈服させてきた鬼を怪物と恐れ、と崇めた。

故にこう呼称される。

 

 

 

 

無比力夜叉と。




完結まで後ちょい


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不倶戴天

不倶戴天……天を倶に頂かず。
同じ世界に共に存在することが出来ない。


手数、良し。

技術、良し。

膂力、良し。

 

正気、無し。

 

 

 

痛覚がイカれてやがる。

元々俺にも同じ事が出来た、だから分かる。

アレ(再生)は別に無敵なワケじゃない。

切られれば痛いし、再生にも特有の苦痛が伴う。

つまりあの野郎は常に自らをなます切りにしてるワケだ。

本当にイカれてやがる。

 

叩き潰す様に振り下ろされる鋸。

純粋なパワーと肉を引き裂く鋸刃、食らえばどうなるかは想像に容易い。

避けて矢を放つ、手応え無し。

再生速度が限界を超えてるんだろう。

聖杯エンジンマシマシの暴走マシーン無比力夜叉。

厄介の域を越えてら、これは災害の類だ。

城の床を粉砕し、柱を刻み折り、壁を引き裂く。

城がリフォームされて瓦礫の山になったら不利なのは明白。

此方から仕掛けるしかない。

 

竹王、卯松、マシュに所長と立香ちゃんは任せてる、後ろの憂いは無い。

 

左を空け、右に大太刀。

接近し太刀を振るい、左鋸の直撃を弾き矢筒から抜き出した矢をその付け根に刺す。

合わせて三本、もう一度鋸を振り回される前に転がって逃げる。

受け太刀は不可能に等しい、なら弾く事に専念するしかない。

片方奪えば大分楽、ひたすら根元に攻撃を集中させる。

スライディングで滑り込みながら懐に入り_______入り過ぎたので格闘に移行。

頭部を左右に殴り抜き、回し蹴りで体幹を崩して大上段に唐竹割り。

狙うのは勿論左鋸、再生も然ることながら異常に硬い。

異常な密度の筋肉で塞き止められてると判断、大太刀の機構を展開。

鋸なら俺も持ってる、大分歪だが。

 

展開された蛇腹大太刀の撫で切りは、確かに傷を与えたが、浅すぎた。

振りかぶられた前腕、防具を貫く打撃、鎧通し。肋骨が砕けて肺に突き刺さり血が込み上げる。

ふらついた上体を咎める様に鋸が迫り、咄嗟に刀で防ぐ。

僅かな拮抗の後、信長から賜った圧切長谷部が肉厚な刃に砕かれ、そのまま腕を引き裂かれた。

 

 

 

血に染まる視界、千切れた左腕、癒えぬ傷。

そんな事がどうでも良く感じる程の衝撃だった。

砕けた刃紋、信長との友情の証。俺にとって支えの一つ。

サーヴァントになって尚、繋がっているという安心。

それを目の前で砕かれた。

 

ああ、駄目だ。

戦闘の真っ只中だろう。

そんな事をしてる場合か。

 

刃片を拾おうとして、腕が無い事を思い出した。

 

直らない事にここまで違和感を覚えるとは。

生きていた頃なら斬られたら死に、それで終わりだったのに。

 

 

 

視界の端に見え

吹き飛ばされる竹王と卯松

倒れる立香

切り付ける鋸刃

庇った市

舞い上がる鮮血

 

 

 

立ち上がり、吼る。

お陰で目が覚めた。お前を殺す理由をくれて有難う。

 

満身創痍という言葉が相応しい俺に向き直るオレ。

頭が冴える。殺意だけに侵食されて。

そうか、この感情が。

この感情が、お前の本質か、無比力。

お前はやはり俺だ。

あの時、あの場所で、俺が望んだオレ。

力のままに全てを蹂躙し尽くす夜叉。

力そのもの、だから誰よりも強い。

 

まだ俺らは戦える。

 

 

 

 

……()()()()()()がその程度で、死ぬと思うな!

 

 

 

刹那、夜叉の足元を中心に煙が舞う、煙玉だ。

一瞬白亜に染まった視界を切り裂く様に小柄な影が飛ぶ。

幼子と見間違う程の体躯は速度に一切のブレーキを掛けない。

力は要らない、技術と速度を持って振るう。

『アハハッ……!』

血塗れの笑顔を浮かべながらその場で宙返り。

捻りと質量を存分に載せた斧は地に擦られて発火。

鎖鋸の根元、矢が突き刺された部位に叩き付けられた。

同時に、衝撃と熱。双方が干渉し矢に仕込まれた火薬が起爆、斧の破砕を加速させる。

そして遂に斧が振り抜かれ、断ち落とされた鎖鋸が舞う。

まるで示し合わせたかの様に長政の元へ。

 

飛来した腕を遺った方の腕で掴み取り、思案する。

いつだか、夢を見た。

長政として家族、臣下、領民の為に戦った俺。

夜叉として殺戮を愉しみ、数多の敵を滅ぼしたオレ。

どちらが自分の本性なのだろうか、悩み耽る。

 

答えは得た。

どちらも(オレ)だから。

だからこそ俺はお前を恐れない。

お前を否定しないが、お前を認めない。

 

霧が晴れる寸前、再び影が差し込める。

また市か?夜叉は身構える。

何かを律動させる金切り音。反射的に右腕で防ぐ。

瞬間、高速で動く刃と刃がぶつかり合い、軋む。

 

アイツ、オレの腕を……!

 

喪った腕を補う様に無理矢理接合された左腕。

流れ込む神気に霊核を削りながら振るう。

鋸刃同士の鍔迫り合いなど、後にも先にも一度だけだろう。

膂力で勝るはずの夜叉は、しかし。

サーヴァントの身のままの長政に圧されていた。

先程までとは比べ物にならない力、怒り故か?

圧されて刀身が歪み、繋がれた刃が欠け始める。

 

『何処にそんな力が残ってやがるッ…………!!!』

 

「簡単だ!男って生き物はどうしようも無く馬鹿だ!」

「基本スケベで!ヘタレ!気も効かない!」

 

「でも!」

 

「だからこそ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()の前でだけは最強になれんだよ!!!」

 

 

とうとう迫り勝った長政の刃が破砕しながら夜叉を袈裟懸けに切り裂き、夜叉は膝を付く。

増やした腕は掻き消え、人型に戻り、しかし納得した様な表情で。

 

『まさか、そんなくだらない理由で負けるとは、ハハハッ。

愉しいなぁ、本当に良かった。仮初とはいえど、人の生は。

好きに生き、好きに戦い、好きに死ぬ。まったく良いものだ。』

左だけでは無く右腕に、全身に夜叉の力が宿ったのを感じる。

『見事なり、浅井長政。お前の勝ちだ。ソレは預けておこう。』

 

 

 

遠慮はしない。

有難く貰って行くぞ、無比力。

 

 

 

 

 

 

人理定礎値EX
第六特異点

 

 

定礎復元

 

 

 

A.D. 1273鬼神狂乱聖都 キャメロット

虚空タル夜叉

 




良い感じに切れたと思ってる。
5は長すぎた。


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バビロニア

クッソ久々の登場となる二人


きっと俺たちは心の何処かでこれを望んでたんだろうな。

だからこそ()()はそうなって、()()()はここに居るんだろう?

ああ、ああ、ならそれで、それだけで良い。

特異点も、地母神も、そんなモノはもうどうだって良いのさ。

存分に斬り合い、殺し合うのを愉しもう。

歪んだ在り方とて、それを否定出来る者能わず。

 

本当に俺は最低だ。

自分の大切な物を自ら傷付けようとしてるのに笑みが止まりそうに無い。

 

年甲斐も無く堪らなくときめいている。

恋とも愛とも取れる滅茶苦茶な感情。

 

______戦ろうか、親友。

 

 

 

 

 

 

人理定礎値S
第七特異点

 

 

 

 

B.D.2655 絶対魔獣戦線 バビロニア

神喰らう絆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリ~フォール!!!!

いつもの。

 

なんか今回は皆一緒に召喚されたね、上空で。

という訳で着地までお勉強タイムだ!

 

『なんで!?』

「どうして…………」

 

時間が空いたからだな!ヨシ!

メタいこと言うと着地までの描写を書くのが面倒なのと尺稼ぎ、勉強タイムの確保だ!

 

 

 

 

紀元前2600年メソポタミア!

文明発達の第一歩、四大文明の一つメソポタミア文明だね。

立香ちゃん!メソポタミア文明周囲の二つある大きな河川の名前は?

 

「えっと…………ユーフラテス川と、チグリス川だったっけ?」

 

正解ー!

メソポタミアに限らず大きな文明の周囲には必ず河が有るからセットで覚えようね。

ただ特異点として重要なのはそこじゃあない。

この時代を契機に世界の神秘は一気に薄れてきたんだ。

神の存在、魔術に魔獣。そんなモノがこれ以降ほとんど見られなくなった。

つまり真に人の時代が始まったとも言えるね。

まぁその割に俺らの時代まで神神煩い生臭坊主や切支丹は居たんだけど

シュメル人の神話とその辺は関わりないから仕方ない。

時代的にはギリシャ神話は全部後付けになるからね。

個人的にはインド神話と日本神話か………「長政さん!地面!」

 

地面?

ああ、地面。

 

アシクビヲクジキマシター!!!

所長ちゃん達に怪我がなきゃ良いのさ。

俺は治るしね。

 

女の子拾った。アナ。

この後エンキドゥっていう奴に会った。

後ろから斬ったら敵だった。キングゥ。逃げられた。

 

なんでこんな雑かって?それどころじゃない事態に気がついたからさ。

首輪付きをグランドろくでなしにシュー!

方向を示して後から追うように他の皆に指示して走る。

 

待ち望んだ、この雰囲気。

数キロ程先、林を超えたその先。

聳え立つ城壁とそれを取り囲む様に集る魔獣共。

その中心に確かに居た。

見間違う筈が無い。

 

走る。

距離は四半里程、酒精張り付く汗の香りを感じる。

…………飲んでんのか……らしいといえば、らしいな。

駆ける。

更に近付き、やがて吐息の音さえ感じる。

硝煙と鉄の香り。そうだったな、俺たちの戦場はいつもそうだった。

跳ぶ。

その一度で着いたから。

 

「三千世界に屍を晒すが良い……天魔轟臨! これが魔王の三…「考えて宝具を使えこのうつけ者ォ!!!」ハィ!?」

 

()()()は宝具!敵を一箇所に纏める!

出来れば向き変えないで視界に入る範囲だと有難い!

 

『へぁ……あ、あ、あああ………』

 

早くしろ景虎!

 

「……………あははははははは!これもサーヴァントの在り方か!良きかな良きかな!

毘天八相車懸りの陣(びてんはっそうくるまがかりのじん)』! にゃー!」

 

瞬間、栗毛の馬に騎乗した景虎が八人に増える。

車懸かりの陣。最も有名な上杉軍の陣形。

それを分身下自分一人で行う妙技。

車輪が如く回転しながら獣を蹴散らし、全て前方に押し流す。

 

「この力は軍神と魔王を友とし、尚も追い付かんと足掻く愚者の刃。

例え追い付けぬと知りながらも駆けた我が生涯を写さん。

『王が為、覇道進め夜叉』下賎な獣が………不敬なり。」

 

視野内に収まれば全部繋げる。だからこそ態々宝具まで使った。

 

「長くは持たねぇぞ!ブッパなせ!!!」

「遅いわうつけ者め!そして見よ!これが魔王の三段撃ちじゃぁ!」

 

三千丁の火縄銃の純粋な弾幕、獣共の全身を貫く。

「折角だし、皆仲良く共倒れで逝こうな!ハハッ!」

同時に繋がれた個体同士がダメージを共有し、血霧となる。

濃密な弾丸の雨を一身に受けるには獣の身体は脆く、小さすぎた。

 

 

 

 

『さぁ!さぁ!キリキリ走りますよ!』

「う"わ"よ"う"じょ"はや"い"」

 

長政のただならぬ様子に市は狼狽した。

それでも託された引率は決して放棄せずに走る。

遅れた魔術師は放っておけ、どうせその内追い付く。

 

林を抜け、開けた荒野に飛び出す。一行が真っ先に見たのは………

 

「………………!!!」

『この熱い抱擁……私身が裂ける思いです…!』ギリギリ

『本当に裂けとるじゃろがい!これ離せ夜叉!馬鹿者!』ミシミシ

「………■■■■■■■ァ!!!!!!」

『あっ、駄目じゃこれ狂化しておる。』メキメキ

『駄目みたいですね………』ボキィッ!

『是非も無いヨネ!』ゴキィッ!

 

それは大男が二人の女を襲ってる様にしか見えなくて、

「止めなきゃ駄目じゃない!?」

「………否、大丈夫ですよ。」

狂うのも仕方あるまい。元々その為に狂ったのだから。

もう二度と会えなくてもおかしくは無い身の上、再び会する歓び。

「幻肢痛は治まりましたか?夜叉様。」

 

 

 

『■■■■■■■■■■ハハハハハハハハッ!!!!!!!』

男はただ一人空に吼えるのだった。




嬉しい


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ぐたぐだウルクでいず

つかれた


カーン………カーン…………

薄暗い鍛冶場に鎚音と火の揺らぐ音が響く。

熱された鉄の延べ棒を叩いて急冷。

その後再び炉に放り込み、加熱して叩く。

銘刀宝槍の類いなら幾十もの叩き直しを要するが、量産品なら三度で十分。

 

冷油の残りを拭き取ってから研ぎ、そして磨く。

量産品とはいえこれを怠っては鉄の延べ棒となんら変わりない。

これで百本目………粗悪な鍛造技術の剣よりは遥かに良いだろう。

問題は魔力概念との親和性が遥かにクソな事だが………まぁ良いだろ。

それより大切なのはこっちの____

 

『いや、お主は何をやっとるんじゃ…………』

 

見れば分かるだろ……治金仕事だよ。

 

朝は鍛冶場で武器を打ち

昼は民と畑を耕し河を治める

夜には皆と同じ釜の飯を食らい寝る

 

そんな日々を相も変わらず続ける今日はウルクでいず。

天気は晴れときどき曇り、気温は24℃で過ごしやすいなぁ。

 

「お主いっつも百姓と畑耕しとったなそういや……」

「鍛冶師に技術を教えて貰ったり自由過ぎませんか貴方……」

 

できる事が多いに越したことはない。

特に俺の武装はワンオフだから……他人に触らせらんないよ。

鬼丸なんか素人が触ったら文字通り自殺行為になっちまうし。

そういや吉、刀持ってないだろお前。

圧切研ぎ直したから使えよ、俺は他にも色々有るからな。

そう言って腰に提げた太刀を見せるように揺らす。

 

「浅井一文字……珍しいですね、夜叉君が普通の太刀を持つなんて。」

 

まぁ俺も使わなかったしなぁ……大太刀と打刀有れば事足りたんで。

後は十文字槍と大弓と小道具と連発銃(リボルバー)

いつも通りの武装が一番なのはサーヴァントになろうが変わりないさ。

 

「武装が重すぎるんじゃ、ゴリラか!」

 

握力なら勝ってるしそれ以上だろうな。

俺みたいに担いでこそないけど姉さんも全部戦場に持ってったろ、変わんねぇさ。

 

「完全に悪影響じゃろがい!」

「私は弓は持ってませんから!」

 

ああ、弓ヘタクソだったから………

弓と大太刀は山浦のおっちゃんに習ったんだよね。

そうやって考えると姉さんの教えは槍くらいしか残ってないけど。

太刀はト伝殿のタイ捨流と葦名流がベースだし、無手は柔と琉球(唐手)が根本だし。

銃は俺のオリジナル……長物は雇った雑賀衆に広めさせたしなぁ。

 

「近江兵の嫌な所は足軽大将以上が皆クソ強い事なんじゃ……………」

「そういや強かったですね……夜叉君の妹分の……」

 

友雪ちゃんか、強かったろ。

アレは近江で二番目に強いぞ。そうなる様に育てたからな。

 

「…………それにとっても可愛かったです、ね?」

「ほう?」

 

……………戦略的不利を確認、撤退を開始する。

「待ちなさい。」

「さぁ、キリキリ話さんか!」

懐から取り出した煙草に火を灯し、紫煙を曇らす。

あくまで肺の中に取り込むのではなく煙の味と香りを楽しみ_________

 

「それで誤魔化せる気かの?」

畜生、ハードボイルドな渋さを弁えない小娘共め。

男は渋く煙草吹かしてる時は全てが都合良く治まるんだよ。

「ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし。」

ファンタジーやメルヘン(二次小説)だよコレは!メタいな。

黙秘権だ、黙秘権を行使する!弁護士を呼べ!

 

「…………市ー!お市よー!ちょっと聞きたい事があるんじゃがー!」

ストップ!ストーップ!!!……手を出して無いったら嘘になる、これで良いか!?

『子供は三人、母親似で凛々しい顔立ちの子でしたよ。』

俺が弛んだ顔みたいに言うなよ、髪色が竹王以外に継がれなくて良かっ………

『そんな事有りませんよ、夜叉様はとてもお素敵です!』

…………ありがと市ちゃん。じゃ、俺逃げるから………

 

裾口から射出されたワイヤーは居宅の屋根に突き刺さり、それを手繰る様に跳ぶ。

忍の鉤縄に発想を得た鋼鉄の糸は先端に棒手裏剣を取り付け汎用性を上げていた。

反応した信長が鋼糸を断ち切ろうと発砲。太刀で防ぐ。

生半可な弾丸なんぞじゃ切れないくらいは分かってるがサーヴァントの一撃はな。

反転しながら掴みかかる姉さんを蹴っ飛ばしてジ・エンド。

我ながらパーフェクツ……理想的なムーヴだね。

そして飛んだ先で市ちゃんに捕まるまで予想通り。

敏捷ステータス、後一ランク欲しかったなァ…………

 

 

 

 

太陽がてっぺんにあったのに気が付いたら星が瞬いてた。

テクノブレイクしそう。

…………一人頭十回弱で済んだだけマシだな、うん。

前世で早逝しなかったのは奇跡だと思うの俺。

幾ら強靭な身体を手に入れようが中身まで鍛えられないから……

皆は俺が三桁までは耐えられると思ってる節があるんだよね。

身体が耐えられても精神が持たないよ流石に。

 

『緊急伝令!緊急伝令!』

んん、どうしたこんな夜更けに。

『南門にて通常より強力な魔獣の群れ!その数およそ百から二百であります。』

なるほど、それで王様や皆の協力を仰ごうってワケね。

オーケーオーケー。俺に任せとけ。

だから代わりに皆はゆっくり寝かせてやってくれや。

防壁を登り暗がりを眺め、不審な動きを咎める。

………ん、見えなくも無いけど、暗いな。

 

壁上兵は松明を思いっきり前方に投げろ、野を照らせ。

そして新部隊共、お前らには期待してるぜ?

 

『全隊員準備完了!』

まだだ、まだ待て。

限界まで引き付けて確実に当てるんだ。

…………………よし。ってー!

 

『射撃開始!』

 

筒と撃鉄、それにラピスラズリなんかあれば銃を作るのは容易い。

良いぞーよく狙えー。3000年後に世界を征する武器だぞー、良く慣れておけー。

『第一陣全弾射撃!後退して次弾装填!』

よし、抱え大筒を持てたのは何人だっけ?着いてこい。

こっちは更に射程が短い、もっと引き付けろ、それこそ舐められる位には。

恐れる事は無い、文明の力を愚かな獣共に見せつけてやれ。

 

掃射ァ!

 

散弾砲として改修したモデルだ、どうだ人類の叡智の味は。

ま、挽肉に答える口があるはずも無いか。

 

『装填完了!』

 

最高だね、文明の利器。




紹介ページ
『兎式歩兵魔装銃』
鉄砲の装弾機構をラピスラズリに換装したモノ。
ラピスラズリを引鉄と連動した内部ハンマーが砕き、魔力弾を撃ち込む。
ライフル銃以上の弾速と貫通力を誇る。
射程と威力はバリスタ以下だが兵士が持ち運べるという最大の利点が大きい。装填数7。

『魔連装散ラピス砲』
所謂抱え大筒。
現代で言うところのキャニスター砲。
一撃で百以上の弾丸を放つ大変強力な兵器だがあまりに大きく重い。
屈強なウルク兵でも扱えるのは数十人に一人ほどであった。
ラピスラズリの爆発力で物理弾頭を発射する仕組み。装填数1(150ペレット)


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密林の虎

ダイエットジェットタイガー


王命だー!王命だぜー!

密林の調査………なんで密林が有るんだよ。

とにかくカルデア大使館最初の大仕事になる訳だ。

 

「地図は持ったかー?おやつは300円までだぞー!」

『せんせー!バナナはおやつに入りますか〜?』

モノによるんじゃないかな。冗談抜きで水くらいは持とうか。

どうせ大変な事になる、俺は詳しいんだ。

 

時折はぐれの魔獣を駆逐しながら密林へと向かう。

気の所為じゃなきゃ魔獣が段々強くなってる。

ジャングルだから活性化してるとでも言うのか?

ほのかに植物と湿った腐葉土、獣の香りが漂ってくる。

その中に違和感を感じて背から下ろし様に矢を射る。

 

距離は一里強、まぁ外しようが無いな。

 

超速の______それこそ生身の生物には避けようの無い矢はしかし、手応え無く木を貫く。

生木を強かに打ち付けた鈍い音を確認し、避けられた事を悟る。

素早い上に一定の賢さはある、サーヴァントだ。

そう判断し、二人のマスターを担ぎあげて走る。

拓けた土地を歩く此方に対して向こうは深い密林。

その上狙撃に耐え得る高さを持ち此方から確認してない。

 

不利も良い所だ、懐に入るのが良作。

熱帯雨林系統の樹木は保水力も高く、焼き討ちには不向き。

間違いなく敵陣なら向こうが有利だが致し方無し。

どんな策だろうと喰い破る気概を持て、そして殺し尽くせ。

自らに念じ、森にその身を投じた。

 

右上段、足払い、刺突、掴み………

 

速い……というよりか迅い。

フィジカルと技術の双方を揃えなくは辿り着けぬ極地、そこにこの女は居る。

 

「ジャガー()()、ねぇ………南米系の神ってのはTS狂いか?」

『ネコに生贄を捧げよ。ネコと和解せよ!』

 

狂化持ちか……喋れてるからEって所だな。

見た目より遥かにパワーがある訳だ、それにこの速さ。

木と木の合間を上手いこと縫って蹴り跳んでいる。

一方の俺は木が邪魔でどうしても緩慢な動きを強制される。

なるほど、ホームをしっかりも理解しているらしい。

マーリンが居れば方向の炙り出しはそう難しくない、故に所長や立香ちゃんらを先行させた。

ここでタイマンする事で時を稼ぐのが俺の役目だが、中々骨が折れる。

視覚で捉えられる限界を超えた、聴覚は鳥や獣の鳴き声に飛ばされた。

嗅覚と直感、その二つだけで対応し、奴を斬らねばならない。

 

雌豹の体臭を嗅ぎ分けるなんざ気持ち悪くて嫌になるが………後ろか。

振り向かず背を向けたまま担いだ大太刀を僅かに抜いて防ぐ。

邪魔が多過ぎて槍も弓も大太刀も役に立たない。見事にしてやられた形になる。

後ろに蹴り上げた足は避けられるが、狙いは泥。

湿った腐葉土は巻き上げられ、ジャガーマンの顔に命中。

一瞬怯んだ隙を狙い猿臂(肘鉄)、裏拳、回し蹴りまでのワンセットを辛うじて当てられた。

だが、二度は効くまい。それにヒットの瞬間後ろに飛ばれた。

力の移動、本能でしているのか?

凄まじいセンスと卓越した技量、その両方を持つ異質さが不気味だ。

 

いや待てよ?ジャガーマンは低級とはいえ神霊に属する者。

俺やエウリュアレの様に極めて低いランクに落とすならともかくこの力はおかしい。

依代か、ジャガーマンの蛮勇さは伝承に名高い。ならばこの技は依代の女か。

冷静に見れば見覚えが有る振り方、剣道だ。

槍としての武器を剣道振りしてるのには多少違和感はあったがそれしか出来ないのなら納得。

だったら弱点も自ずと見えてくる。さっきの土掛けもそれを補強するに足る。

 

卑怯とは言うまいな、道場剣法の粗を突くぜ。

 

「まどろっこしい、抜きな。アンタの宝具をよ。」

一撃必殺、大上段。

後の先をもって真っ向から潰す。

 

「もう私は自分が自分でわからない……ひっさーつ!『逃れ得ぬ死の鉤爪』!!」

棍棒が巨大化、迫る。

回避不可能?馬鹿馬鹿しい、避ける気もない。

「来いッ!ジャガーの戦士!」

振り降ろした太刀が棍棒と交錯し、火花を上げて爆散した。

 

 

 

焼け焦げた草木の香り残る焦土に太刀が一つ寂しげに転がる。

相手が悪過ぎた。ジャングルの中に居るジャガーマンは超強化される。

そも戦神であるジャガーマンは素で長政を圧倒するのだ。

鞘を失い鈍く輝く太刀。

 

「惜しかったなー、強くて良い男だったんだけど。」

仄かに虚しい気持ちになって太刀を手に取る。

かつて来た忍者や宣教師と違い、真に戦に生きた武士である。

濡れた様な刃文は憑依体の剣士としての魂を揺さぶり、見惚れさせた。

戦乱を超えて鍛えられた刃に欠け一つない。

 

完全に仕留めた気になったな?

甘いなぁ、お嬢ちゃん。

 

ジャガーマンの背後を取り、太腕で絞め上げる。

喰らう刹那、鎧を捨て、太刀を放って茂みに跳躍。

身体中に泥と草を纏って気配を消しての奇襲。

『お、おおおおおぉぉぉ………!!』

無駄だ、完全に決まっている。

ここまで入ればどんな剛力の持ち主だろうと抜けられんさ。

 

 

 

『お………お侍の戦い方じゃ、ない、にゃ…………』

否、寧ろ一番侍らしいさ、俺は。

 

錆びつけば突き立てられず、

掴み損ねばその身を裂き、

捨てれば何も護れぬ。

故に誇りとは刃に似ている。

だがしかし、君よ忘るる事なかれ。

時に捨てる事でしか、得られぬ事もある。

誇りを投げ打ってでも護りたいモノの有る事の如何に素晴らしきかな。




主にお侍の戦いのアレがやりたかっただけ。


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南米からの刺客

タイトルでお察し


『でもそんな……生贄なんて……!』

「よそ者に何が分かりますかッ!」

「アナタはあの恐ろしい女神を見ていないからそんな愚かな事が言えるのです!」

 

待った、黙ってろそこの女。

その女神ってぇのはコイツじゃあるまいな?

「長政さん!」

確かにクソ強いがそこまで恐れるほどでもあるまい。

縛り上げて担いだジャガーマンを放り投げる。

「ヴゥェ!」

潰されたカエルのように呻いて転がるのが面白い。

胴丸と服がオシャカになったのが悲しいぜ。

取り敢えず……水貰えっかな?

 

 

河で貼り付いた葉や泥を洗い流し借り物の服に袖を通す。

ブカブカだ……南蛮人でもここまでデカい奴は居ねぇぞ。

ウルに戻るとまた一悶着していた。飽きないなぁ。

話を聞く限り……

『神を縛るとは不敬だ!』『祟りがあるに違いない!』

そんな声と共に縛ったジャガーマンを逃がそうとしているらしい。

Why?馬鹿なの?…………おっと。笑顔を絶やさずに行こう。

無知は罪じゃないんだから、知識人として文明的話し合いをしないとな。

『穢らわしい売女め!』『薄汚いよそ者が!』

 

……なるほど、穏やかじゃないなぁ。

あーあー武器まで持って。そこに居るのは普通の女の子達ゾ?

大の大人が子供達を脅すんじゃないよ全く…………

立香ちゃん伏せな。

 

上段三日月蹴り。

発生の挙動を回し蹴りよりも小さく、相手に悟られぬ様に。

サーヴァントの膂力を持って繰り出された一撃は市民の頭蓋を容易く砕き、

それでも尚止まらず、勢いのまま住宅に叩きつけられる。

 

へーい女神君みってるー?

これから君が出るまでここの民嬲ってくねー☆

 

『待った!立香君の御先祖は正気なのかい!?』

「狂人だと思うよ。」

『狂人だったね!ごめん!』

 

逃げんな逃げんな、そっちから喧嘩売って来たんだろうが。

『長政君それは不味い、此処に居るのは皆ギルガメッシュ王の民でもあるんだぞ?』

関係あるまい、俺の家族にあんな侮辱をした以上生きる価値も無いね。

どの道いつかは生贄で死ぬんだろ?ちょいとばかし早くなっただけさ。

武器は使ってないし運が良ければ、違うか。

()()()()()()生き残れるかもね。

 

逃げ惑う女二人の後ろ髪を掴み後頭部に膝蹴り。

鋼鉄の防具とサーヴァントの筋力は容易く血の芳醇な香りを一面にブチ撒けた。

 

立香は苦笑いしながらマシュと所長の目を塞ぎ、

「二人は見ない方が良いよ、中々凄いから。」

『先輩は!?』

「私はまぁ……慣れたかな。うん、遺伝かもしれない。」

 

足払いで膝を折った男が倒れ伏す。

その顔を踏み砕こうとして、不意に風きり音を耳が捉える。

同時に重力を失い、空を飛んでると気が付いた時には地面はあまりに遠く、

遅れて後方から両腕を羽交い締めにされて飛んでいるのだと理解した。

 

 

 

高度300mって所か?良い景色だなぁ。

十分堪能したから降ろしてくれると助かる。

 

『冗談でショ?あんな事しておいてただで済むと思ったデスカ?』

いやぁ、貴女を呼ぶのには手っ取り早い方法だと思ったので。

して如何したら俺は許されますかね?

駄目なら俺はこれから貴女様をブチ殺し差し上げねばならぬのですが。

 

『ンーじゃああのマスター!秩序で正義で一生懸命とかお姉さんのツボ過ぎて反則デース!』

ふむ。

『マスターと私が婚姻するなら私そっちに着いても良いデース!』

キマシタワー…………ってマジかよ。

そういうのは本人の意志が大切だと思うんだよね。

昨今の社会の流れに反するけど安易に塔を建てる訳にも行かないのさ。

本人が望むならともかく、御先祖的には普通に結婚して欲しいかな。

自分の血が絶えるのを望む訳も無いしね。

という訳で保留。立香ちゃんに聞いてみておくれ。

 

交渉決裂、と同時に加速。

自由落下に翼竜の加速で音速に近い高速落下。

独特の掴み方……プロレス……否、ルチャか。

こっわ、さすがにこの速度をモロに食らったら死ねる。

もう一回聞くんだが、交渉の余地は無い感じ?

 

『私の信者達を無闇に殺したのデス、罰としてリング外に退場願おうかしら?』

 

そりゃ残念。

最初の一人以外態々殺さないで加減したのになぁ。

 

加速は止まらず地に叩き付けられる寸前に拘束を弾く。

同時にケツァルコアトルの首を足でロックし半回転。

 

『!?』

「そういや、ルチャにはマルティネーテ(頭から落とす奴)が無いんだっけ?

是非たっぷり味わってくれ。偉大な(グラン)ルチャドーラ、ケツァル。」

 

白魚の様に湾曲した上体が地に着くと同時に勢いを奪わぬ受け身。

ケツァルコアトルの頭が下方に動いたのを確認してバネの様に腕で跳ねる。

後の世にてフランケンシュタイナーと呼ばれる高度なフォール技だった。

 

『ククルん!』

 

頭部から石畳に叩き付けられ犬神家の様に埋まるケツァルコアトル。

それを気にも止めず叫ぶ。

 

()()()()!知ってるか!

『何!?』

プランチャーは高ければ高い程良いんだぜ?

『意味が分からないんだけど!?』

 

 

瞬間、崩壊した石畳が舞い上がる。

砂煙が晴れるとこれ迄に無いゲス顔を浮かべるケツァルコアトル。

 

「今のは中々効きました!ですがルチャとしては反則デスヨ!」

 

仕方あるまい、こっちはルチャの詳しいルールは知らねぇんだ。

だがアンタが望むならコッチもその流儀で行こうじゃないか。

闘士(マエストロ)ケツァルコアトルにVida Contra Vidaを挑む。

アンタが勝ったら殺すなりなんなり好きにすれば良い。

だがアンタが負けたらこっちの言う事聞いてもらうぜ。」

『正気かい長政くん!彼女が本当にその話に乗ると思ってるのかい!?』

思ってるさ、アンタはルチャドーラなんだからな。

 

早速ボロボロになった服を脱ぎ捨て、上裸になる。

たまにはこんなのも悪かないよな。

 




南米からの刺客、ケツァァァァァル、コアトォル!!!!(プロレス風)


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王者

諸君 私はFGOが好きだ
諸君 私はFGOが好きだ
諸君 私はFGOが大好きだ

 

ストーリーが好きだ
CVが好きだ
幕間の物語が好きだ
イベントが好きだ
特にネロ祭が好きだ
ガチャが好きだ
水着鯖が好きだ
アルトリアが好きだ
爆死が好きだ

 

月曜で 火曜で
水曜で 木曜で
金曜で 土曜で
日曜で 早朝で
昼間で 深夜で

 

この特異点で行われるありとあらゆる周回行動が大好きだ
(続く)


「さぁ始まりましたウル密林杯決勝!実況は私ジャガーマンが!解説はー?」

『解説を担当します藤丸立香と申します、よろしくお願いします。』

「よろしくお願いしまーす!本日は晴天、気温は42℃、湿度は80%。」

『爬虫類には嬉しい気候ですねぇ。』

 

「アナタ達は何をしてるの!?」

 

所長は独り喚いた。

先程まで敵だった着ぐるみと藤丸が仲良く机を囲んでいる。

………なんで机があるのだろう。

 

「そんな!プロレスに実況が無いなんて有り得ない!」

『そうだそうだー!』

 

わたしがおかしい?

もうやだ、おうちかえりゅ。

ごはんたべたい、こーひー。

 

「正気に戻りたまえオルガマリー君!君が堕ちたらどうお話を進めるんだい!?」

 

 

 

場外の喧騒を置き去りにその試合は白熱した物だった。

 

【オォォォシャァ!】

 

『ネックブリーカーが決まったァァァ!!!』

「ほう……牛殺しですか……大したものですね……」

『知っているのか藤丸院!』

「プロレスラーの後藤選手が天山選手を長期休業に追い込んだ技です……なるほど!」

 

「牛殺し、強力、天下無双、武者返し……全て日本のプロレスで使われる技。

どうやら長政選手は日本生まれの技でルチャドーラを破るつもりの様です。」

『これに対しケツァルコアトルは正統派ルチャで対抗!

王者に小細工は効かないと言わんばかりの余裕だァァァ!!!』

 

いつの間にか会場を取り巻く森の戦士や獣、ウルの民。

灼熱の密林を上回る熱気が一面を焼き焦がさんと吹き惑う。

片や、ルチャリブレに染まった南米の女神。

片や、ありとあらゆる武を修めた日ノ本の将。

戦を好む森の戦士らや変化の乏しい日々に飽き飽きした民にはあまりにも魅力的だった。

そしてそれは結果的に長政の奸計を見事に成功させていた。

 

 

 

「向こうに皆が気を取られてるからか警備すら居ないわね……」

これを狙ったのだとしたら相当な切れ者なのだが。

確かにあの男は時々信じられない様な作戦を考えつくこともある。

ならばこれも、あるいは。

 

『背面からの見事なカウンター!長政選手堪らずダウン!今のは………?』

「トペ・レベルサ、背面から頭部を相手に打ち付ける代表的な空中技の一つですね。」

『さぁフォールが入った!カウント………!』

 

………無さそうだな。きっと気の所為だろう。

 

 

 

 

 

何とかフォールを崩して試合も半ば。

所長ちゃんは……うん、あの高さならまぁ良いだろ。

 

ケツァルコアトルのミサイルキックをしっかり捉える。

テレフォンキックじゃ無理だと思うがな。

空中の膝を踏み付けそこを足蹴に回し蹴りを叩き込む。

 

『閃光魔術!シャイニングウィザードが決まったァァァ!!!』

 

 

 

ダウンを奪い、実況からマイクをもぎ取って観衆に吠える。

 

「さぁ見ろ!これがお前らの女神の姿だ!無名の男に負けるようなな!」

 

あくまでヒールに徹する、会場に巻き起こるブーイングの嵐を背に受け、嗤う。

 

「そして見ろ!我がマスターを!」

群衆が一斉に見上げると、そこに居たのは神殿に登るオルガマリー。

その言葉が聞こえたのだろうか、驚愕と共に何かを喚いた。

尤も聞こえてやしないのだが。

 

「偉大なるルチャドーラ、オルガマリーは諸君らにこう約束してくれた!

ケツァルコアトルを一 発 K Oする!さぁ、その一撃に震えろウルの民ィ!」

『バカな!数歩横に避けられたら自爆して終わりだぞ!?』

まさか、避けやしないさ。コイツはルチャドーラだからな。

「飛べェ!マスター!!!」

 

困惑に更なる喚きを添えたオルガマリーだったがやがて意を決した様に飛び下り______

 

 

 

 

 

 

「そうして所長の新日流ニードロップが炸裂、見事ウルを解放したのです。」

 

「待て!どうしてそう可笑しな事になっておるのだ雑種ゥ!」

完璧な一撃だったぜ?流石魔術師殿は鍛え方が違う。

「そして此方が慣れないハードワークに筋肉痛に苦しむ所長です。」

「■■■■■■ァァァ………………」

 

 

 

 

 

 

『伝令!伝令!ニップル市に新たな怪物を確認!』

『推測されるのは北の女神!その正体は………地母神、地母神ティアマトです!』

 

なんか凄い偉そうな神様だな……俺が聞く事じゃないだろうが被害は?

 

『守衛部隊は壊滅!残党もエンキドゥ様によって生きたまま殺されて居りますッ………』

 

りょーかい。つまり王様のおつかいをこなすのも、防衛も必要と。

人員を分けるかぁ……所長と立香ちゃんはさっさとエピフ山に行ってくれ。

 

俺と姉さん、それと吉は防衛って感じで。

地母神だか何だか知らんが……神である時点で人に逆らうのはお門違いさ。

ここから先は人の時代なんだ、ご退場願おう。



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地母神

人権鯖を並べた宝具の発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられたバルバトスが御仏パワーでバラバラになった時など心が踊る
低レア鯖の操る宝具の効果が強敵を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて倒れる魔神柱を更に宝具でなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

《続く?》


地母神ティアマトが居ると聞いてきたんだがね。

 

蛇の髪に、石化の魔眼。

反英雄としても抜きん出た怪物性。

どうみたってティアマトには見えないんだが?

俺知ってるぞ、コイツはメドゥ………

 

言葉を続ける前に魔眼の光線が長政を射抜く。

危ねぇな……流石にそれ食らったらマズいんだけども。

 

上着一枚を代わり身に退避したのか、上裸になりながら続ける。

 

否、否。違うな。

哀れなる女神メドゥーサ!

出来損ないの神メドゥーサ様!

違う、違うよなお前!

どうだった?実の姉の味ってのはよ!

狂気の果て、真に怪物となったお前をそれでも信じた姉妹。

それを貪り喰い殺して、悦に浸ったんだよなぁ、お前。

故に、お前をこう呼んでやろう、恐ろしきゴルゴーン!

数多の英雄を屠り名を轟かせた果てにテセウスに首を絶たれた怪物。

実に哀れで!滑稽じゃあないかハハハハハハハハッ!!!

 

『…………本当に性格悪いですね……』

「というか笑い方とかお主の教えが悪いんじゃろこれ。」

『割と搦め手とかは元々素質の塊みたいな感じでしたが?』

 

 

 

『我が忌まわしきその名を、口にするなァ!』

「待たれよティアマト神!」

 

魔眼の光線を遮る言葉に照射を止め、声の方向に向き直るゴルゴーン。

瞬間、蛇髪の一体が硬直し、欠け落ちた。

 

惜しいな、バレちまったか。

 

長政が構えていたのは倒れたウルク兵の持った盾。

いつの間に磨いていたのか鏡面の如く煌めき、その身を石とされながら光線を跳ね返したのだ。

 

鏡の盾、石化、斬首。

このプロセスはアンタの弱点だ、ゴルゴーン。

どうにも変えようが無い死因という弱点。

死に様が語られちまうんだから神代の人間は不便だな。

容赦なく使わせて貰う。

 

 

担いだ弓を下しざまに射撃、若干低い弾速は弾頭の重さに比例する為。

石化の魔眼で迎撃される直前で起爆するように弄っといた、中身は……お楽しみって事で。

そんなに必死に見つめられちゃ矢だって照れちゃうぜ。

 

瞬間、光が辺りを白く染めて視界を奪う。

 

若干離れたエンキドゥでさえ顔を顰める眩さで一番間近に食らったらゴルゴーンは特に酷い。

突如奪われた視覚と爆音に飛ばされた聴覚、防御を封じられた状態でその目に矢を撃ち込まれる。

完全に、少なくとも目の傷を再生するまでの数分は視覚と魔眼を完全に封じられた。

 

十文字槍の鎌部分を鱗に引っ掛け、回転しながら削り登る。

勿論エンキドゥにも邪魔されるが、こっちは一人じゃないのさ。

 

神性に強力な特攻を誇る魔王の射撃はエンキドゥに十分なダメージを与え、

毘沙門天の背刺突は足を止めるに足り得る攻撃だった。

 

 

 

 

 

ゴルゴーンの頭を足蹴にして跳躍、遥か高みから堕ちた神を見下す。

 

『真名解放。我が主毘沙門天に代わって、

然るに我が友第六天魔王の名の元に。

我は堕落した悪神を討たんぞ。』

 

頭を垂れた神を断罪を待つ罪人が如く。

言わば夜叉とは処刑人、悪を断つ必要悪。

 

変形した双腕は二人の友への献身。

その名は三千世界にて恐怖の象徴。

 

『さぁ貴公、罪を受け入れ給えよ。

煉獄に償罪し、醜く命乞いした後に……地獄に堕ちろ。』

 

空中で大太刀を抜き払い、大振りに振り下ろす。

硬質な鱗を削ぎ、肉を切り裂いて骨を断つ。

確かな手応えを感じたが、切り落とす直前で姿が掻き消える。

 

惜しい、霊体化か。

 

振り返って何処かに敵影は無いか探そうとして_____腕を絡め取られた。

鎖、異常な程に強靭、しかも力が抜ける。引き千切るのは無理。

残った左腕は太刀を振り上げ、断とうとした体勢のまま縛られた。

同時に地に引き落とされ、地にめり込みつつ這い蹲る。

 

なんだこりゃ……何だって態々腕を……神殺しの類いか?

 

辛うじて首を横に向けると同様に縛られた景虎。

そして意識を失って雁字搦めになった信長。

この二人でさえキングゥを止めるには足らない、それ程までに地力が違う。

ゴルゴーンやケツァルコアトルとは違う、キングゥは神霊そのもの。

 

神殺しの魔王を脅威と感じたか、真っ先に仕留めたらしい。

起き上がろうにも鎖が肉に食いこんでぴくりとも動かない。

 

そんな俺を足蹴にキングゥは嘲罵を始める、良いぞ。

もっとだ、もっと油断しろ。

 

『………確かにまぁ、この魔王の力は脅威だ。敬意を表して……魔獣を産む苗床にでもしてやろう。』

 

見えなかろうが音と勘で分かる、今だ。

鎖が食い込む、食い込むなんて遠慮せずにもっと食え。

力任せに無理矢理起き上がる。脚の筋力は腕の数倍らしい、なら余裕だろ。

 

絡んだ鎖は腕に深く食い込み……肉を割いて骨を割り……そのまま腕を断ち切った。

全く躊躇いなく自らの腕を千切り捨てるという狂気、これぞ狂戦士の矜恃。

時同じくして回転しながら落下してきた太刀を咥え、身体ごと振り抜く。

大雑把かつ本来有り得ぬ斬り方故に致命傷を与えられずとも刃は神霊の腕を撥ね飛ばした。

更に返す太刀、漸く反応したキングゥに霊核を貫かれながらも逆の腕を切り落とす。

 

そこで足元から崩れ落ちる、元々相手の心臓を狙った攻撃で、それが外れたならば即ち。

この時点で逆転は不可能である、そう決定づけられた様な物だった。

薄れ行く意識の中、驚愕したキングゥの怒声と泣くような景虎の声を耳に入れながら視界は閉ざされた。

 

 

 

 

 

 


 

「おお ゆうしゃよ!しんでしまう とはなさけない! 救済コーナー夜叉道場行っくよー!」

『どうかお黙り下さいませ、我らが彼に干渉出来る時間も内容も限られて居ます故に。』

「と言ってもどう考えたって負けた理由も分かってないぜ、コイツ。」

『………まさか。気付かぬ筈がありますまい。彼も鬼夜叉と呼ばれた男ならば。』

 

『故に、貴公よ。どうか忘るる事なかれ、逃げ続ける日々を終えぬ事には何事も成せぬぞ?』

 


 

 

 

眩さに目を細めながら起き上がる。

西日の角度からして二刻程倒れて居たらしい。

そう思い当たった瞬間横から押し倒された。

 

『■■■!?■■■■■!!!』

 

分かった、分かったから。

離してくれ姉さん。

 

『よかった……また、置いて行かれたのかと、夜叉君………』

 

まさか、そう易々と死んでらんないよ。

さっき切った腕落ちてたら拾ってくんないか、養分不足だ。

 

拾い上げたキングゥの腕を景虎が放ると空中で器用に咥え、噛み砕く。

右腕を喰らえば右腕が、左腕を喰らえば左腕が再生する。

二、三度手を握り直して感覚を確かめると指笛を吹く。

吹き終わるか終わらぬかの早きに彼の愛馬である羅刹が風を割いて走り寄ると、

久方振りに見た景虎(毘沙門天)の姿により一層の加速を持って喜びを表す。

一切加速を止めずに走る羅刹に長政は景虎を抱えて飛び乗る。

 

『うお!?久しいですね羅刹………ちょっと大きくなりました?』

「さーて、どうしたモンかねぇ。本気出しても奴さんの首を落とせる気がしねぇ。」

『………珍しく随分と冷静ですね?昔なら狂った様に暴れてたでしょうに。』

「勝てなきゃ守れない以上、突撃一辺倒とは行かない事もあるさ。

だけどまぁそんなに心配しなくて良いさ、こう見えても………

 

 

 

 

 

______________今、結構頭に来てる



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未練

NPをそろえた錆の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の新米が既に息絶えた石で何度も何度もガチャしている様など感動すら覚える
敗北主義の逃亡兵(マスター)達をガチャ報告板に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ扉達が私の選択したスキルとともに金切り声を上げる宝具にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ
哀れな素材共が雑多なスキルで健気にも立ち上がってきたのをアーラシュが
自分ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える


何故かうっかり過労死したぁギルガメッシュ王を冥界まで迎えに行く。

そんな戦局の要に、俺は敢えて行かなかった。

 

奴は腕を切り落とした俺を恨んでるだろう。

ああいうプライドだけで生きてる様な手合は恨みが深いんだ。

どーせ表立って殴り合ったりはしねぇさ、どうにか俺を惨めに命乞いさせようとウジウジしてんのさ。

だったら俺はしっかりと殺せる装備を準備させて貰うよ。

 

ギルガメッシュ王から貰った大量のラピスラズリ。

サーヴァントとしての特権をフル活用して八つ裂きにしてやる。

奇しくも二人の思惑は一致した訳、お互いに相思相愛で照れちゃう。

 

『報告しますマスター!長政さんが今までに無い笑顔で鉱石を弄っています!』

「マシュ、目を合わせちゃダメ。アレは私たちには救えないモノだよ。」

 

立香ちゃん、丁度良い所に。

ウチのバカ息子共を呼んできてくれ、多分姉さんに転がされてそこら辺で伸びてるから。

 

 

 

真名解放、無比力夜叉。【悉く簒奪せし鏖魔】

腕を変異させてラピスラズリを齧る。

根源的に俺の魔力供給は結局捕食するのが一番率が良いからな……美味くは無いが。

 

頭でも打ったのかフラフラしながら入ってきた卯松を敷布団に放り投げて小太刀を奪う。

酷い鈍だ。一般的な鍛冶師でも生涯を掛けて作ればもっとマシなのが作れるぜ。

どうすっかな……どれが良いだろうか………

 

『痣丸、あげちゃえば良いじゃないですか。』

 

ふむ、姉さんは自分の息子の命が惜しくないのかな?

俺は嫌だよ疎遠とはいえ息子に妖刀の類いを持たせんのは。

使うとしたら後が無い俺が使うの。子供に持たせるわきゃねぇでしょ。

短刀なら朝倉から奪った倶利伽羅江とか………

 

「両方欲しい!」

 

話聞いてたか?これは妖刀も妖刀、正直俺のコレクションでも随一の化け物だぞ。

使えばたちまち呪いに呑まれて死ぬか狂うか……まぁ、本当に使った奴は見たことないんだがな。

「大丈夫だって、オレだってやれるんだ。」

…………そうかい。試しに持ってみろよ。

 

そう言って長政は薄紫の鞘に包まれた短刀を投げ渡す。

痣丸が妖しくも美しく見事な仕事の装飾は内封する呪法を隠すように。

引き抜いた瞬間卯松の左半身から顔までが浅黒い呪痣に覆われるのだった。

それを確認した後に長政はもう一振りの短刀を手渡す。

倶利伽羅江、不動明王の加護を宿す名刀。

魔を払う明王の加護は呪いを押し込み、痣は左腕だけに鎮静する。

 

驚いたな、俺が持った時は全身がドス黒くなったんだが…………

『そりゃあ(軍神)の子ですから!』

これが生まれの差か、泣けるぜ。ま、仲良くやんな。

というか竹はどうした竹は、一緒じゃねぇのか?

 

【兄ちゃんは外で犬神家してるよ。】

どうしてそうなったし。TAKEO……Die………

〖じゃ!なーい!生きてるよ!〗

おお たけおうよ しんでしまうとは なさけない!

【そんな……兄ちゃん……】

『竹王は私の不摂生が祟ってお産の時に……』

姉さんは悪くない……ただ間が悪かっただけだったんだ……

〖存在しない記憶止めて!?割と有り得そうで笑えないよ!?〗

姉さんの不摂生は越前国一だからな、妊婦はお酒飲んじゃダメらしいよ。

俺が煙草吸い始めたのも卯松が胎に居た頃らしいけどね!

 

 


 

 

「緊張も解れた所で姉さんと卯松はちょっと外してくれ。

そんな大事じゃないけどここは父と息子二人って事で一つ頼みたい。」

 

そう言って二人を追い出した。残るのは長政と僕だけ。

 

「そんな固くなるな、これからお前は立香ちゃんと出陣なんだぞ?

正直に言おう、お前は弱い。それもすげー弱い。」

 

僕ははその言葉に顔色を曇らせ、俯く様に項垂れる。

分かっていた。どう足掻いても足元にさえ辿り付けない高みに。

内心諦めつつあったんだ。

 

「………剣に迷いが見える、受け売りの言葉になるが……迷えば死ぬるぞ、坊」

 

いつの間にか顔に浮かべた薄ら笑いは消え失せ、鋭利な眼光を飛ばす。

竹王丸の前に座するは使い魔(サーヴァント)の浅井長政に非ず、それはかつて日ノ本を覇した武将。

人は彼を古今無双と讃え、鬼と呼んで恐れた。

 

気が付くと座していた筈の父さんは鼻と鼻がぶつかり合う程の近間に迫っていた。

下がって逃げようとする僕の肩を掴み、微動す事も許さずに続ける。

 

『お前は、誰だ?』

え?

『お前は、俺か?』

僕が………?

『違うだろう、お前が俺な訳無い。』

 

『半人前で、ガキ臭く泣き虫で弱い………そして()だ。』

…………………ッ!!!それでも!

『それでも、何だ!?いい加減現実を見ろ!』

『若くて、未来があり、まだ人並みの感性を残した人間!良いじゃねぇか!』

!?

『自覚しろ!お前は浅井長政のコピーじゃない!お前は俺にならなくて良い!』

僕が……?

『そうだ!お前はお前らしく戦え!』

僕は……!

 

『お前の名を言ってみろ!』

 

「僕の名前は、()()!上杉景虎だ!!!」

『そうだ!それで良い!我は近江国守護浅井家三代当主浅井長政!』

そう叫んだ父さんは腰に提げた太刀を突き出す。

『…………コイツ(浅井一文字)はお前に託す。上手く使えよ。』

 

無理矢理持たされた太刀は見た目より遥かに重くて、あまりにも眩しかった




投稿頻度流石に落とすか……?


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修羅

高難度のギミックに滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだったQPが蹂躙され素材が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ
廃課金者の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
周回に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ


『人の家の後継ぎを奪う不届き者を検知しまして。』

んな無茶な。別にいいだろ二人居るんだし。

こっちゃ一応体面上は女子しか生まれてないんだかんな、鎌倉時代なら家ごと潰されてるわ。

前世は特にその辺考えずにさっくり逝っちまったからよ………これで俺も思い残す事は無い。

これで()()()()としての仕事は終わったよ。

 

『また、市ちゃんが悲しみますよ?』

 

ハハハッ………もう話したさ、いつも通りだ。

いつも通り頷いて、いつも通り送られて。

そして、いつも通り泣かれた。

有難い事だ、自分の為に泣いてくれる存在ってのはあまりに得難い。

全く恵まれてる、あんまり幸せ過ぎて不釣り合いな位には。

夢想の日々は終わり、ここからは現実を見る時間だ。

 

 

 

服を変えようとして後ろから抱きしめられ、首に手を回されつ歯が皮膚を割いて血が滴る。

自らの所有を見せ付ける様に深く、痛々しく噛まれて啜られる。

………態々止める程野暮じゃない。

そのまま存外長く貪られ、噛まれて居た肉が食い千切られて漸く解放された。

 

「…………痛ぇ……」

 

食い千切った肉を咀嚼しながら景虎は何かを思巡する様に一度俯いて、嚥下して見上げる。

 

『…………あははははははははは!!!あははははははははは!!!!!!』

『こんなに大きく!こんなに雄々しく!こんなに力強く育った!』

『なんと愛おし恋しきかな!あはははははははははは!!!』

『私は貴方が憎い!貴方を護りたい!貴方を閉じ込めてしまいたい!』

 

『でもそれは_______過ぎた願いなのでしょうね。』

『私では貴方の止まる理由になれなかった、それだけという事です。』

 

いいや、割と足を取られそうになったよ。

止まる理由ねぇ………止まりたいと思った事は多いぜ?

でも止まれないんだよ、俺は。狂戦士とは言い得て妙だ。

どうしようも無く狂っている、最早救いの無い程に。

 

だからどうか、どうか此方を見ないで欲しい。

我が母、我が師、我が姉よ。

貴女の中の浅井長政が美しいままで、終わらせて欲しい。

此れはただ一匹の修羅。

復讐に灼かれた憐れな鬼と、そうお忘れ下さい。

 

 

 

 

 

「ハァ……………」

息を吐く。

あの時聞いた誰かの声、聞き慣れた誰か()の声。

大使館の地下室に入り、埃を被った布を剥がせばそれはあった。

 

三つ盛亀甲に花菱。家紋には余計な装飾無く、それでいて一族の誇りを残し。

美しい黒鉄の冷たきを血と煙と炎に封じ、光沢の一切を断じた漆黒の鎧。

無数の死線の果て、朽ちること無く穢れ続けた恥知らずの武具。

汚れの様に光を吸い込む外装は闇に紛れる為のモノ。

重鎧に当たる武装で尚走るのに負担無く、足音一つ立てない。

関節の駆動部には鎖を張り防御と動作性を両立。

また多くの侍鎧と違い内外に小さな仕掛け袋を綴じ込み、暗具を用いるのに支障無く。

故にこれは侍が用いる物とは到底呼べない。

 

京極氏、六角氏、そして朝倉氏。

浅井の周りにはあまりに勢力の大きい氏族が多過ぎた。

近江は時折戦火の中心となり、侵略の危機を幾度と無く経験した。

しかし、如何なる大勢力も浅井を滅ぼせなかった。

浅井、忌み名を浅逝。苛烈に戦い、()くして死ぬ。

浅井の名を持つ者は代々短命であり、故にこそ人を離れた力を持っていた。

 

篭手、握りに影響が出ないよう鞣革で作られた内側と鋼鉄で守られた手甲。

篭手と鎧の間には不自然な隙間が開き、投げ物を打ち込むのに使える様になっている。

具足、脚半の上に装甲を盛り、鎖で隙間を埋めた。

裏は鋼鉄の棘が生え揃い高速起動を実現している。

 

鎧、具足、篭手を装備し、装飾の少ない無骨な兜を被る。

最後に赫黒い面頬を手に取って嘆息した。

 

ある意味でこれは自らを否定する行為。

浅井長政としての戦いをなかった事にする蛮行。

使い魔(サーヴァント)としての繋がりを断つ決断。

 

 

「待ちなさいよ。」

 

………ハハッ、やぁマスター。

どうした?冥界に降りていくんだろ?

松も竹も市も居るし、姉さんも同行する。

大した難題って訳じゃないさ。

俺は野暮用が有るからまた今度、な。

 

そう言って頭を撫でながら横を通り過ぎようとして、腕を引かれる。

何か言いたげで、何も言わない………焦れったいなぁ。

マスターならマスターらしく「私達の為に死んでこい」くらい言おうぜ。

 

『言いたい事は幾つもあるわ……でもやっぱり良い。』

拳を翳し、アニムスフィア家の紋が入った令呪に命ずる。

 

『令呪よ!狂戦士(バーサーカー)()()を!怒り狂い、蹂躙せよ!』

 

その一言が離別の言葉。

かの戦国の世でたった一騎で万の敵を滅した悪魔。

即ち鬼夜叉の出陣である。




じゅけんつらい


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鬼夜叉

諸君 私はFGOを
地獄の様なソシャゲを望んでいる

諸君 私に付き従う大隊戦友諸君

君達は一体何を望んでいる?

更なる周回を望むか?
情け容赦のない糞の様な排出率を望むか?

鉄風雷火の限りを尽くし
三千世界の石を溶かす嵐の様なFGOを望むか?


馬鎧を持って館を出る。

鞍だけを付けた裸馬では無く、軍馬として出陣する。

朝倉を蹴散らし、武田を退けた日々を懐かしみながら馬小屋に行けば_______

 

「よう相棒、まだ生きてるか?」

ヘラヘラと笑いながら馬に跨る影法師を押し退け、鎧を着さす。

「冷てぇな。同じオレの仲じゃねぇか…………まぁ良い。久しく見たな、中々面白いんじゃない?」

 

言葉を無視し、鎧を着せ終わった羅刹に乗り、兜の隙間から面頬を被ろうとして腰に手をやる。

そこに面は無く、ある筈の鬼面は白髪の男の手の内に移っていた。

 

「ハッ、警告してやるよ。これを着けたらもう()()()()。間違いない、賭けても良い。」

「浅井長政としてのお前にはもう戻れない。残るのは狂った修羅だけだ。」

「それを理解した上で…………

 

長々とした口上を遮って面を奪い、着ける。

途端に身体中に激痛と破壊音が鳴り響くがその程度で屈する程生優しかないのだ。

べキリ。身体の内側の、芯の芯から鳴った音。

 

もうどうしようも無く壊れてしまったらしい。悪かない。

見た目はそのままに変わっていく感覚。悪かない。

(狂化)から覚めていく様な微睡みに包まれる。悪かない。

 

単純な話だ、狂人が狂えば正気になる。

随分と長い間狂いっぱなしだったらしい。

 

「残念だ、結局そこに落ち着くって訳なんだな。」

_____ああ。

 

 

 

 

 

同様に借りを返す為、鮮血神殿に向かうアナ……メデューサも羅刹に同乗させて走る。

まさしく怪馬の羅刹なら数分で走り抜ける距離だが、それを見越した様に一面を埋め尽くす獣の群れ。

突出した数体を踏み潰し、槍で突き殺して獣自体が強化されている事を察した。

明らかに固い上集団戦術も身に付けてるらしい。

大元を叩かなきゃ数は減らんがこれを野放しにすりゃウルクは落ちる。

皆は皆で戦ってるんだ、邪魔はさせられんな。

 

「羅刹、分かるな。嬢ちゃんを神殿まで届けるんだ。邪魔をする魔獣共は踏み潰せ、魔討つ我が同胞よ。」

 

そう言って羅刹を走らせ自分は懐の仕込み袋から幾つか炮烙玉を取り出す。

いつも使う煙玉よりもやや大きい、それを数個同時に起爆。

日落ち闇が支配し始めた薄暗がりの中で、黒煙が朦々と辺りを包む。

それは月明かりと星明かりを掻き消し、燻る硝煙が鼻を鈍らせる。

獣が持つ人に対する得手を奪い去り、同じ舞台に引き摺り落とし殺戮を始める。

 

最初は手近な所に居た大型獣。

数十人も有りそうな巨体を揺らして敵を探すがその五感全ては機能しない。

だが何ら問題は無い。不快げに身体を揺す振った所で命を落とした。

脊椎と大動脈の境にぞぶりと突き刺さった刃は力任せに切り開かれて鮮血で煙を彩る。

血の気の多そうな大型獣を優先的に始末し、その血を舞い上がらせて血霧と成す。

 

黒煙に血が混ざり、赤黒く汚れた血の様に鉄臭さが混ざる。

それは奇しくも彼の者の鎧と同じく渇血色。

故に最早獣らには彼を捉えられず、ただ死を待つのみ。

 

所で………幼少を近江と越後で過ごした長政はそれなりに訛りの影響を受けたそうだ。

しかし、彼は基本的に方言を使わない、他人に伝わらぬ言葉を嫌う故に。

近江弁と越後弁が混ざりあい、当人以外には解せぬ問答を嫌う故に。

 

しかして、此処に居るは一匹の修羅と物言わぬ獣畜生のみ、ならば或いは。

 

憤怒のままに狂い裂き、積もる怨嗟を祓う様に蹂躙してやろう。

平穏に絆された愚か者共にその名を思い出させてやろう。

 

()は鬼夜叉……日ノ本を焼き尽した悪鬼よ。』

 

その名を叫び、名乗りを上げる。

晴れた黒煙を切り開く様に月明かりの中男は一人。

同時に戻った羅刹馬に乗れば心無き獣さえ圧倒される威圧を放ち。

兜に付けられた簡素な角飾りを突き破り、真に鬼の角を生え揃え。

持つは一期一振。今では御物として皇室に献上された一振。

かつて朝倉なら簒奪した彼の募集品の一つ。

美麗な刃は鬼が振るえば瞬く間に屍の山を築く。

 

数百の獣を一息の間に斬り捨てればさしもの宝刀も刃は毀れ、切れ味を失う。

簒奪した武具は彼にとってある種の称号であり、猛者との戦いの証。

一期一振を振るった名も知れぬ猛将の姿を微かに思い出すと、背後からの強襲。

振り向く時は既に無く、故に最短にて命を奪う。

 

痛覚が無くなったワケじゃないというのにもコレを迷いなく選択するのは狂人だけだろう。

 

そう自嘲しながら長政は鎧の隙間より自らの身体を貫いて背の敵を刺殺する。

簒奪した武具は、称号であり、証であるが、所詮は手段でしかない。

 

使い物にならなくなった刀を放り投げて次を夢想する。

 

太郎太刀と次郎太刀の、大太刀の二刀流。

甲賀の忍が用いた鎖鎌。

旧幕府から奪い取った宝槍に、弓。

幾名もの将が振るった多種多様な武具を、全て一流以上に使いこなせた。

 

鎖分銅が獣の顎を砕けば投げた戦斧がその首を切り落とす。

弓で穿った敵を矢ごと蹴って深く突き刺し、左右の大太刀で鋏の様に勢を両断する。

 

切れども、穿てども、止まらぬ魔獣共の軍勢。

絶望的な戦局に、鬼は独り嗤った。

 

 

 

 

絶望を打ち払う力を与えてくれた家族に感謝を。

五体に糧となって尚も鼓動し続ける類稀な強者達に敬意を。

そして我が憤怒を受け止めるに足る軍勢を持つ敵に死を。

 

 

 

『雑魚が幾ら集まろうが数でどうにか出来るなんて思わない事だ。舐めンなバケモン共……』

 

津波の様な獣の群れを真っ向から薙ぎ払う。

その姿は正に鬼神、暴風の如く獣どもを引き裂く鬼夜叉の姿だった。




一方その頃冥界では

「ふはははは!ガルラ霊が何するものぞ!」
『待って卯松、角生えてる!角生えてるから!』
「んえ?………兄ちゃんも生えてんじゃん!?」
『うわぁぁぁぁぁ僕もだァ!!!』



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狂愛深く

\FGO!/ \周回!/ \ガチャ!/

よろしい ならば戦争だ


我々は満身のスキルを重ねて今まさに振り下ろさんとする宝具だ

だがこの暗い排出率の底で半世紀もの間堪え続けて来た我々に
ただのガチャではもはや足りない!!

排出率upを!!

一心不乱の大PUを!!

我らはわずかに一個大隊
千人に満たぬ敗残兵にすぎない

だが諸君は一騎当千のマスターだと私は信仰している



何匹切った?

血溜まりに膝を付いて嘆息する。

何百体斬った?

供給が漸く止み、残存全てを切り伏せて。

何万殺した?

流石に腕も脚も全く動かない。

 

そのまま寝転がり、面頬を外して喘息の様に喉を枯らして息をする。

 

血と硝煙と、使い物にならなくなった武具と屍だけが転がる戦場。

 

ああ、なんて見慣れた、いつも通りの光景だろうか。

 

 

 

『ははははは!なんて姿だ!愚かだな旧人類!』

 

その声は嘲るように、心底下衆な響きで鳴り響く。

やはり来た。

確実に勝てる……俺が息も絶え絶えだと判断して出てきやがった。

殺意の篭った目で睨み付けるが、全く怯む様子もなくゆったりと近付いてくる。

 

『無様も無様!その程度で神に逆らうとは滑稽だぞ!』

 

…………喧しい。人の頭上をビュンビュンと。

だから神ってのは嫌いなんだ、人の営みを否定し、自らのエゴで破壊する。

力尽きたフリをしながら毒を塗り込んだ短剣を穿ち、それは容易く躱された。

 

「ハッ、ちょっとは学習したかよデク人形。」

『相変わらず人の心を逆撫でする奴だな……まぁ良いさ。母さんの目覚める準備は整った。

つまるところ、君たちは間に合わなかったんだよ。』

 

『だがね、君には感謝してるんだよ。あのゴルゴーンを始末する手間を省いてくれた。

だから君にプレゼントがあるんだ……きっと喜んでくれる。』

 

鼻腔に侵入する香り、聞きなれた足音と呼吸音。

それは織田信長その人。

地母神の権能により改造、複製され、汚染された盟友。

 

なるほど、まさしく長政への嫌がらせには最適だっただろう。

その行為が自らの首を絞めるとも知らずに。

そして上空から高笑いしていたキングゥは困惑した。

いつの間に地に降りていた?いつの間にこの男は立ち上がった?

いつの間に_______自らを握り掴んで居たのだろうか。

その答えは知る事は無く、キングゥはぞぷりという音を体内から聞く。

 

怒れる鬼は、激しく、静かに激高し仇敵を地に叩き落とした。

その剛腕で掴み上げ、その内腑を無理矢理抉り、蹂躙せんと。

下腹部から突き入れられた手刀は内臓の悉くを引き千切りながら、キングゥの霊核に到達する。

そこにあるのは彼にとっての一番の切り札たる、聖杯。

聖杯と一体化した霊核を臓物諸共抉られ、投げ捨てられる。

まるで塵芥の様に。

 

血肉と、臓物と、霊核をその手に引き摺り出した鬼は躊躇う事無くそれらを食い千切った。

 

 

 

 

 

 

『お主の中にも………修羅が見えるぞ、夜叉よ。』

仄かに思い出されるのは老境の剣聖。

齢の差は三十過ぎも有ろうが、彼にとっては師であり友人と呼べる存在だった。

『修羅を断ち切ったと?カッカッカ……違かろう。封じたのよ、心の奥底に。』

 

『故に_____忘れるでない、夜叉。』

『お主に積もる怨嗟は、無くなったのでは無い。何処までも抱えるお主の咎よ。』

『決して忘れてはならぬ。迷えば、忽ちに呑まれるぞ。』

 

 

ある所に、神に家族を奪われた男が居た。

それはただの気まぐれか、戯れ程度の感覚で、彼は家族を失った。

人の身で神に逆らえる筈も無く、無念と憎悪の中で命を落とした。

ある時、神に貞操を奪われた女が居た。

辱めを受けた女はただ神を恨んで生涯を過ごし、自らの子に語り継いだ。

神を許すことなかれ、この怨みをどうか忘れることなかれと。

 

希臘(ギリシャ)で、北欧で、印度で、中国で、そして日本で。

神はあらゆるものを奪い去り、その度に人は怨嗟を募らせた。

怨嗟は募り、積もり………やがて溢れ出す。

溢れ出す怨嗟は、憎悪は、憤怒は即ち誰かが負わねばならぬ。

 

友を神に弄ばれたという憤怒が彼を奮い立たせた。

同時にこの地にて死した者共の怨嗟が彼の器に流れ始めた。

その上世界に積もり続けた神々への怨嗟が、時を超えて一斉に流れ込んだのだ。

 

『■■■■■▪▪▪ォォォ!!!』

 

ただ溢れるだけなら内なる夜叉の力をただ解放するだけに過ぎず、しかし。

彼は聖杯を、贋作とはいえかの願望器を手に入れてしまった。

その身に取り込むには余りに過剰な力は彼の身を改変し、結果としてその器を際限なく拡大させる。

 

怨嗟は積もる程に鬼に力を与え、その限界は聖杯が虚無の果てに連れ去った。

 

 

 

 

海は黒く濁り、異形の怪物共が這い出ずる。

名をラフム、新たなヒトの形を象った醜悪な神の模造品。

その首領は地母神ティアマト。

そして彼の者の友、織田信長の贋作。

 

皆が皆、神もしくは人である。

夜叉は人を蹂躙し、鏖殺するもの。

修羅は神を冒涜し、復讐するもの。

 

相反して尚、二つ我に有り。

 

歪で、人を失った鬼は修羅の如くラフムの群れに駆ける。

 

 

 

その姿は、俺が焦がれた魔王のそれではない。

醜く汚染され、歪み、穢された、我が盟友よ。

ああなんと惨きかな。

 

辛かったろう、腹ただしかったろう。

 

だが俺もどうしようもなくお前が憎たらしい(愛おしい)のだ。

待っていろ、お前を殺して(助けて)やる。

 

殺して(愛して)殺して(恋して)殺して(■■して)

欠けて、壊れて、崩れて、狂って、それでも。

 

この憎悪に。

この悲哀に。

そしてこの憤怒に。

 

今はただこの激情に呑まれて微睡んでいたい。

お前を傷付けるという悪夢を、夢で終わらせられるから。

だからどうか、馬鹿な俺を嘲笑ってくれよ、あの日の様に。

お前らを想う余りに狂った愚かな男をいつもの様に。

 

『この■■■■め!クハハハハ! 』

 

■■■■と、嗤ってくれよ。

 



 

鬼と魔王が殺し合う頃のウルク。

二度に渡るラフムの波によってウルクの民は僅か500を残して崩壊した______

 

「そんな……五百…たった、の?」

 

「ほう、意外ですね。全滅してもおかしくは無いと思っていましたが。」

「うーん……マシュさんの気持ちも分かるけど、寧ろ多い方だと思うよ?ボクは。」

「根切りで皆殺しなんてザラだしな!仕方ないさ!」

 

反応に個人差はあれど、既にメソポタミア朝の再興は望めず。

即ち此度の戦はウルク防衛戦から時代そのものを守る時間稼ぎへと移行したとも言える。

 

かくしてその日は特異点の明暗を分ける決戦の日。

遠目に見ればあまりに分かりやすい巨体持つ地母神、ティアマト。

 

カルデアのマスターと彼女の率いるサーヴァントと神霊はこれを留めんと欲す。

その戦場の傍らでは怨嗟に呑まれた鬼と穢れた魔王が殺し合っていた。

 

刹那、爆炎に泥が乾上がる。

彼らに知る由も無いが、これはケツァルコアトルの宝具。

ティアマトから生まれる泥を止めるには至らないが、汚染領域を解放するには十分な太陽風。

続いて衝撃。ケツァルコアトルの最終宝具。

綺羅星の落下の様な衝撃は僅かばかりの理性を取り戻すには十分だった。

 

 

 

 

『Aー!aaaaa,aaaaaー!』

………なんて喧しいのだ、コイツは。

俺たちの戦う場に突っ込むティアマト。それは余りに邪魔だった。

そして絡み合う黒蛇もまた、動きを阻害する。

激情に染まった頭が急速に冷えていく。

 

「………ああ、クソ!どうなってやがるゴルゴーン!邪魔だぞテメェ!」

「あの翼を削ぎ落とす!邪魔立てするな………!」

 

少しばかり戻った頭で辻褄を合わせる。

 

俺は信長を殺したい。

蛇はティアマトを害したい。

俺にとってもティアマトは邪魔、なら______

 

()()()()()()()()()()()、アレを止めりゃ良いんだな………」

 

単純明快、障害は排除する。

信長を片手で掴み、地に埋めながら叩き付ける。

少しは止まるだろう、今はあっちに集中せねば。

 

魔力切れを起こしかけた身体でラフムを食い千切り、幾らか回復。

満身の力を込めてティアマトを押す。

数百mはあらんかと言う巨体、その質量たるや人の身には余りにも雄大。

 

そう、()の身では余りに巨大過ぎた。

 

本来、浅井長政という男は神の器としては不適格である。

否、只人ではそもそも神をその身に宿すなどとてもとても………

しかし、彼に宿る神性は鬼の祖。

怨嗟に焼かれ、聖杯に歪められた器なら、だからこそ今だけは。

 

見上げるばかりの巨体を、無理矢理持ち上げる。

必要なのは純粋な腕力、ならば事足りる。

無比力夜叉が権能の一つは絶対的な力。

こと力と名の付く領域に於いて比肩する者無し。

 

故にそれは可能なのだ。

 

抱え上げたティアマトからゴルゴーンが身を呈して翼を奪う。

それを認識した夜叉はその剛力を奮って海へと投げ返した。

 

『決まり手、上手投げってか?』

間抜けな風貌を晒して飛んで行くティアマトを嘲笑い、

再び意識は微睡みの中に沈んで行く。

 

 

 

投げた際にティアマトの心と僅かに繋がった事を忘れる様に。




7章終わったら終章!
と言いたいところだけど実は玉葱受験生なのじゃよ。
終章まで当分間が空くと思うから受験後頑張って書けるように感想下さい。


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繋げ

マスターを忘却の彼方へと追いやり眠りこけている運営を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中に恐怖の週回を思い出させてやる
連中に我々の課金の音を思い出させてやる
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらないシステムがある事を思い出させてやる


一千人のマスターの周回パーティでTYPE-MOONを燃やし尽くしてやる



『…………さま………』

滲んだ意識を掬い上げるように。

『や………さま………』

凛と響く声の美しきかな。

『やしゃさま………………』

 

ふぇー嫁がカワイイナリィ………

 

『やしゃさまー!』

 

泥が冷たいナリィ………

 

『…………てーい!』

 

あへぇ斧が痛いナリ…………痛てぇ!?!?!?

 

 

 

市ちゃん、瑠璃斧は不味い。瑠璃は止めよう。

俺はモロに特攻が入るから下手したら死んじゃう。

その、うん。爆竹とかでも良かったと思うんだ俺。

 

でまぁ……おはよう市ちゃん、全く今日も可愛いね。

ぽへーっと見つめる嫁が今日も可憐です、ヨシ!

 

 

 

その瞳に照り返されるのは修羅に変貌した自分の姿。

分かってはいたが中々に不思議な気分だな。

もう戻れない、そうと理解して怨嗟を受け入れた。

だからこそ理性は維持出来てるとも言えるが………

 

 

 

『ああもうしつこいですねこの釘宮幼女!往生際が悪いですよ!』

「そっちこそ邪魔するでないわ、まだ決着がついておらんからな!」

『やっぱり途中で正気に戻ってましたよね?狡いですよ!私だって死合は自重してるのに……』

「多分過去一夜叉の奴に同情しちゃったよわし、完全に悪影響しか無いじゃろ。」

 

寝起きから喧しい奴らだな………市ちゃん、ウルクまでどの位だっけ?

「んん〜二里半(10km)くらいでしたかね?」

なるほど、ここからウルクまでを二里半としてティアマトからの距離は……二里くらいか。

後半里でウルクに突っ込む事になるぞアレ。ちょっと寝過ぎたかもしんねぇ。

「マスターさん達はウルク本丸に移動し終えましたよ。」

 

 

 

仕方ない、プランBで行こう。

市ちゃん手に乗ってくれ。

思いっきりブン投げるから向こうで立香ちゃんらを助けてやって?

「夜叉様はどう致すのですか?」

大丈夫大丈夫、ちょっと一つ策があってな。

ただ時間かかるから……市にお願いしたいのさ。頼めるか?

「勿論!任されました!」

 

 

「いや、何する気じゃ。」

『………まさか?正気ですか?』

あーもうガタガタうるせぇな。

そもそもお前らはいつもいつも人の計画に口出ししやがって………

「籠城されたからって城門吹き飛ばした奴の話聞くかの?」

『車懸かりの陣を電撃戦で破った将が浅井に居るそうで。』

 

古人曰く勝てば官軍負ければ賊軍!俺がルールだ。

戦国の今日、誉れで民は付いてこねぇぞ。室町じゃないんだから。

 

ヤレヤレと思いながらわざとらしく肩を竦める。

その様子を聖母の様な顔で見てる我が妻。

 

長政にとって市とは、純粋かつ明るく可憐だが………同時に酷く歪んで見えていた。

二十年と少し。僅かな時を連れ添っただけの関係ながらそう思っていた。

()()()()()()_______尤もこれは彼の周りの女子殆どに当てはまるのだが。

 

自分には見えぬ程先を見渡した織田信長。

自らを超えんばかりの狂気を孕む長尾景虎。

微笑の奥でその実考えを巡らす濃姫。

それとは違う、狂気に似て、しかし純粋さが彼女にはあった。

 

長政の寵愛を独占したいと願いながら妾を囲う事を勧め。

小柄な体躯故に多大な危険を伴いながらも三児を設け。

戦に赴く夫の留守を守れるだけの力を身に付けた。

 

市。正しくは市姫。

彼女に自己というモノが殆ど存在しない事に気が付いたのは情けなくも晩年の頃。

純粋なのも頷ける。市は浅井長政という男を通して世界を見ている。

何を見ても、聞いても、感じても。そこに浅井長政という男を見ている。

自らの我儘や意見を無意識下に廃してただひたすら夫に尽くした。

 

これを貞淑と呼ぶだろうか?狂気だと恐れるだろうか?

今を生きる君がどうあれ少なくとも長政は______そんな彼女を心から愛した。

生涯数多の妾を囲わざるを得なくなるとも側室取らず、妻へ義理を通さん。

 

________そして今。

愛しきも頼れる妻に短く接吻し、鬼はそれを力任せに投合した。

両者間に言葉は無くともお互い信じるが故。

各々の役目を果たす為に、今は。

 

 

 

 

 

 

 

亜音速の中。

あの人は自分が私を狂わせたのだと、そう思っている。

それは半分正解で半分間違い。

始めて出会ったあの時、そして刹那と間をおかず再開した時。

その時に心に決めたのだ。狂ってしまおう、と。

初恋は実らないなんて定型文もある程の常識。

それを容易く……運命的に乗り越えたという事実は少女を狂わせるには十分。

 

『女は無数の貌を持つ』そう言ったのは義姉だっただろうか。

彼にとって理想の妻であり、母であり、家族であった。

浅井長政が市姫という人間にとって全てである。

 

魔王にとっての片翼であっても。

軍神にとっての右腕であっても。

 

それは浅井長政の価値を証明するモノ。

ならば甘受しよう。

 

時に姉や義姉ら、我が子にさえ嫉妬することもあった。

だがそれを彼は受け入れてくれたからこそ。

 

市にとって浅井長政という男は心臓そのもの。

幻肢に非ず、即ち命の源。

欠いては生きる事叶わぬと、そう啓蒙するのだ。

 

 

瞬き数回の後には眼下にラフムの群れを押し留める子とウルクの兵。

空中で身を翻し________急降下。

 

我が子にその鎌腕を振り下ろさんとした痴れ者の脊髄を叩き割り、体液を撒き散らす。

それに怯んだ隙を狙って大量の煙幕を敷き、四方八方に苦無を投げる。

全てには極細の鋼線が巻かれており、ラフム達の身体を巨大な団子状に縛り付けた。

 

『さぁこれを引きなさい。貴女達なら出来る筈です!』

 

鋼線の端を受け取った卯松は片手に保持したまま竹王を捕らえる。

『二人羽織』という合体宝具。

半人前と半人前が一人前に至る為の宝具。

 

半人前と侮る事なかれ。

()の剛力と()の胆力。

二つ我らに有り、ならば何ら劣る物無し。

 

硬質な鋼線は剛力によって鋭利な刃となり、ラフム共の肉を裂いて切り刻む。

 

『「ウオオオォォォ…………アアァ!!!」』

 

そして引き切った瞬間、見るも無惨な細切れと化し辺りを穢した。

 

それを見届けた市は遠方に居るであろう家族に想いを馳せ、民の誘導を再開したのだった。




ストック分投稿したら失踪するわね。
受験後にまた会おう。


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鷹視老歩

地底、或いは冥界。

地の底に転落したティアマトとそれを討たんとする者共集いて。

 

彼らは今_____絶望の淵に立たされていた。

 

 

『あまりに______あまりにしつこい』

 

ビーストⅡ『回帰』の獣()()()()

そこに降臨したのは、第一の獣。

 

『お前たちは中々面倒に過ぎる。心底うんざりした』

『口を開けば人理だのなんだの……全く致し難い。』

『何故私に逆らうのだ。』

『人理が一度滅されることは天災と同じだと思え、端虫共。』

 

多大な威圧感を隠すことも無くカルデアの者達の前に立ちはだかる。

 

「ハッ、旬が過ぎたクソコラみたいな会話しか出来ない様な奴が今更何を!」

______だが絶望的に遅すぎたネタだった。

親から残念ながら受け継いだ口の悪さを存分に生かして、融合した竹王と卯松は嘲笑う。

狙いはヘイトを此方に向かわせての時間稼ぎ。

そして挑発による隙の作成。

 

父の教えは彼らにしっかりと息付いている。

 

しかし圧倒的な戦力差は易々と埋められるモノではなく、動く事は叶わない。

贋作品とは言え召喚した数本の魔神柱はその質量でもって道を塞ぎ、転進を許さず。

倫敦の時と違って本気の殺意を此方に向けていた。

 

ソロモンはそれなりに辟易していた。

失敗する恐れこそ無くも、六つもの特異点を越えられては面白くない。

故に今回は一切容赦なく終わらせる_____少なくともそう考えていた。

 

人形に生命を与え、女神共を暴れさせ、人類悪の一体を用いて滅ぼさんと。

しかし流れはカルデア共の逆転へと転じ、さしものソロモンも看過出来ない物となってしまう。

『逆転は、逆転は許さぬ』

まるでおねショタ物のガワを被ったショタおね物を見たオタクの様に躙り寄る。

 

手に魔力、官位の力をありありと見せつけ、しかし。

『魔術は噛むから嫌なんだけどね!』

発射音は一拍遅れて二度。

 

ソロモンの魔術とマーリンの魔術が拮抗する。

それ故ティアマトが飛ぼうとしていてもそれを止める手立てに、

地母神の権能を剥奪出来ぬカルデア一行は決まり手に欠けていた。

 

片手の魔術でマーリンを止めながらもう一方で此方を狙い撃つ。

無数の魔弾をサーヴァント達は弾くが……流れた弾が一発だけオルガマリーの元に。

 

気が付いた時には回避は不可能、絶対絶命のその時に薄ぼんやりとある言葉を思い出していた。

『呼べ、何時何処だろうと駆け付けるからさ。』

 

 

 

ならば、安心だろう。

誰よりも愚かで甘く、嘘吐きで女たらしのあの男は_____それでも、約束は違えない。

短い付き合いだろうがそう確信したオルガマリーは、一言命ずる。

「………私を助けなさい、()()()()!」

 

極太の魔弾に呑み込まれてその声は掻き消えていった。

 

 

 

「……愚かだな、くだらん夢想で命を落とすとは。」

 

憐憫のその一端を見せたゲーティアは、しかしすぐさま興味が失せた様に踵を返し。

残る虫ケラ共を蹂躙しようとして____違和感。

この感覚は、前にも一度。

ある筈の無い感情が、凍り付く背筋が、警告する。

 

 

 

『本当にそうか?』

 

耳に入る声はゲーティアの記憶を叩き起こし、即座にその手を向けて……切り落とされた。

「グォ!?!?!?」

 

『つまらないのだよ、貴公。実につまらない。』

『折角良き流れが生まれたというのに……貴公はそれを理解していない。』

『逆転に水を差す様な愚行はやめたまえよ、興醒めであろう。』

 

翡翠の髪を長く腰まで伸ばし。

長身はそのままにおよそ六尺余り。

背丈に比例した様に張られた胸は重力に逆らい。

その肩幅は本来の三割程削られて。

 

『だがまぁ良き判断だったぞ、契約者。あの礼儀知らずを叩きのめすには程よい。』

 

それは、浅井長政その人。

外宇宙の存在と融合し悠久の時を生きた浅井長政のIF。

ただ一つの問題は______

 

「なんでアンタ()()()()()()()!?」

 

……………なんか女体化していた。

だが恐らくこの場で一番困惑したのは彼の息子らだろう。

敬愛する父親が女になったという訳の分からない現実が目の前にあるのだから。

 

『何故も何も、契約者が突然呼ぶからであろう?

貴公とあったのは確か老人の姿で_____』

 

何やらトラブルがあった様に話し込むオルガマリーと長政。

呆気に取られたゲーティアを後目に立香はそっと長政の正面に陣取り、その豊満な胸を揉む。

空気が奇妙な緊張感に呑まれるが、長政は特に気にせず話続け。

立香は暫く考えた後自らのと後輩のを二三度揉んで納得したように『G!』と叫んだ。

 

「先輩!それ意味有りましたか!?」

「甘いねマシュ!そこに胸が有れば触りたくなるものだよ!」

オッサンであった。

『何、減るものでも無い。あまり気にするな。さて_______』

 

『そこなる狼藉者を除こうか、なぁ?』

そう言って指を一鳴らし。

次の瞬間にゲーティアは身体中を刻まれ、更にもう一鳴らしされるとそのまま消滅した。

なんの事は無い、高速で切り付けた後に異界へと飛ばしただけ。

戻ろうと思えばその内戻れるだろうが、すぐには無理だろう。

 

『………まぁ、こんな所か、暫く戻って来れんだろう____________改めまして、お久しぶりです、お嬢様方。』

 

かくして役目を終えた女はその手で顔を下から擦り上げ………上げ切った頃には嘗て見た老狼の姿に。

骨格も体格もいつの間にか男のそれへと戻り、カルデアの者達の前に立つ。

 

 

『この老骨めを記憶の片隅に留めて頂いた事に、心よりの感謝を。

果てさて、積もる話もございましょう……特にワタクシめはそこな半人前に色々と申したいのですが………

どうやら時間の様ですので、世間話はまたの機会を。』

 

 

微笑を向けながら話を早々に切り上げる老狼。

その背後では今まさにティアマト神が地上に這い上がらんとしていた。

 

「ちょっとアンタ早く止めなさいよ!出来るでしょ!?」

『All right,my master.しかしそれは私の望む所では有りません。

過度な干渉は一重に歴史を歪めてしまうだけ故。この経験は貴方方に必要と断じた故。』

 

ティアマトの腕が地上にかかる。

後は身体を引き上げるだけ。

 

「早く!」「長政さん!」

『…………もう少し。』

恐慌状態の小娘共を制して。

「ん………?これは………なるほど…………」

 

ただ一人花の魔術師がその真意に気付く。

「………ああ、理解した。落ち着け立香くんに所長くん。」

 

 

「二柱の女神による真体の足止め、ウルクを餌とした冥界の落とし穴。」

「天の鎖による拘束、冥界の刑罰。そして私の綺麗なだけの花。」

 

『流石と言った所でしょうか。数多の世界を駆け、救った貴方達が。貴方達だからこそ成した偉業だと。』

『無数の英雄達が貴方達に従い、束ねられて戦う_____これはまさに偉業でしょう。』

 

()()()()()()()()()。」『()()()()()()()()()。』

 

「あれはまだ恐怖を知らない。天敵を知らない。」

「即ち、彼という()()()()()()()。」

 

彼。

その単語に全員が一人の男を思い浮かべる。

 

「彼はギルガメッシュ王に呼ばれたでもなく、聖杯に呼ばれたでもない。」

「一体誰に呼ばれたか………言うまでも無いだろう。」

 

魔術師の言葉を継いで老狼。

 

『誇るが良い!オルガマリー・アニムスフィア!藤丸立香!』

『貴方達は一番最初に出会ったのです。足りないピースに、神を滅し得るその駒に。』

 

『さぁ!見上げるが良い!原初の海よ!そこに貴様の滅びが立っているぞ!』

 

冥界と、地上。その狭間。

たった一人、立つ男が居た。

 

 

 

 

 

『哀しい………全くもって悲しきかな。〖回帰〗の獣よ。』

『命を生み、生命を育み、その生命に否定され、〖悪〗として排斥されし神よ。』

『誕生と滅亡は世の常にして表裏、貴様と我は同胞でもある。』

 

それは大きかった。

それは力強かった。

そして、あまりに絶対的であった。

 

『貴様の望む回帰は停滞に過ぎず、遍く生命は留まるを許さぬ。』

『停滞は死と堕落。無常こそが命を輝かせ新たな誕生を謳うと知るが良い。』

『知らぬならその身に刻んでやろう。』

 

和甲冑の硬さに洋式服の滑らかさ。

酷く歪で不格好なその風貌は返って彼に相応しく。

 

『我は滅ぼす者(魔王)。我は裁く者(毘沙門天)。我は喰らう者(夜叉)。』

『総て我にして又非ず、故に名も無き矮小な存在、この身に冠位は不要也。』

『獣に堕ちた異教の神なれど、原初の母ならば名乗らねばなるまい。

我が名、第六天夜叉王。修羅に堕ちた男の狂気から生まれ出でた者。』

 

そこまで言って________大男は口角を吊り上げる。

 

『我が血族、我が友……そして貴様を救いに来たぞ。

偉大なる地母神、御身に救済のあらん事を。』




(´・ω・`)


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鬼神絢爛

彼の生き様に誉れ無く
その戦いに終わり無く
例え血と硝煙に塗れた魂は穢れていても

是非もなしと笑い飛ばすのだ


______疲れた、果てしなく眠みぃ。

 

そう言って寝転がる。

遠方のウルクではティアマト神が鎖に縛られているのが辛うじて見えるが。

 

身に纏う怨嗟は最愛によって鎮められた反面、それにより格が不足している。

無理矢理拡張した器と中身が吊り合わずに消えかけている長政にそれはあまりに遠い。

激しい憎悪に、怨嗟と憤怒。

狂気に焼べたそれらが燃え尽きて、満身創痍といった風情。

何より悪感情が尽きた今、ティアマトに対して感じるのはだだ()()だけ。

 

憐れな事だ。

かつては原初の海、全ての母として多くから愛されたモノが今は人類に仇なす悪となるとは。

刹那、天空からの閃光が神を穿つ。

眩い光は神を射抜き、地を崩してその巨体を地に叩き落とした。

 

中々やりおる……さて、そろそろ……動くかね。

我が愛しき家族を守る為、そして運命に踊らされた女神を終わらせる為。

策は有る、最高に狂った奴が、一つ。

 

口笛を吹けば傷だらけの愛馬がそれでも創健な姿で現れ、長政のプランは決まった。

 

『おいバカ共、まだ生きてんなら……一つ賭けだ、乗れよ。』

 

悪かない、ここでミスったら全滅だが、ミスらなきゃ行ける。

 

「今更何をするんじゃ………」

「正直私はともかくもう二人は動けませんよね?多分。」

 

そうだな。

俺一人じゃ無理だ。

 

ずっと考えてた。

俺の宝具。

人と人とを繋ぎ合わせる宝具。

正直な話………しょぼい。

直接的な破壊力も、有用性も殆ど無い。

誰だってカッケー宝具が良いだろ?

 

だが、今になって理解した。

俺を_______浅井長政を英雄たらしめたのは、その武勇じゃなかったワケだ。

 

織田と上杉を()()

領民と兵らを()()

戦国の世を()()()

 

故に浅井長政は英雄と呼ばれる。

戦乱の中、それが一時のまやかしだったとしても。

誰もが無理だと考えた泰平の世を創った。

それが、それだけが、夜叉に依らない浅井長政としての偉業。

つまり俺の宝具は、これが相応しいらしい。

元より俺は混ざり物。神と魔を有する怪物なら、自らを形取る楔であり。

 

そして二人の友の肩を抱く。

右に魔王、左に神。

魔と神は水と油、強大さ故に決して交わらぬ。

ならばやる事は変わらない。この身は半ば神、半ば魔。

いつものように()()()()()()

それしか俺には出来ないし、俺には残ってないが………………

存外、これが俺の生きた意味だったのだろう。

 

「!?!?!?なんじゃコレぇぇぇ!?」

『ふむ、偶には食べられる方も悪くは……』

「余裕かお主!」

 

刹那、我が身が鎖へと変貌した錯覚に囚われ、友らの身体を貫き。

絡み合い、喰らい、繋がって___________人の形を得る。

 

随分と高くなった背に少々困惑しつつ、腰袋から煙草を取り出して指先の炎で灯す。

 

『人の力奪っといて最初に使うのがそれかの………』

 

何処かでドヤされた気もしたが………気の所為だろう。うん。

 

風貌も一新。

全体的に和甲冑の雰囲気を残しつつも何処か異国めいた風貌。

信長の無駄に大きいマントは今の姿を予測した様に適合。

急所を重点的に守りつつ動き易さを重視した鎧。

 

充分だ、急ごうか。

 


 

 

 

『変化の象徴たる貴様が〖悠久〗を望むとは実に皮肉な物だな、ティアマトよ。』

『だが我はそんな貴様を許そう。貴様を仇の様に愛し、我が子の様に憎もう。」

 

仰々しく手を開き、戯曲的に語る。

 

『我が身は滅び。人の世を蝕み続け、発展を促し生を尊ぶが為の自浄作用。

世界の為に()()とされ、憎まれた果てに悪として形を得た。』

 

より良い未来へと進むための犠牲。

ささやかな平和を築く為の自浄機構。

 

 

 

かくして、必要悪は人類悪を嗤う。

世を呪い続ける悪逆は世を愛する悪辣を嘲罵する。

 

『未来の為、明日を拓く為。我は無限に滅ぼし、夢幻に滅ぼされるのだ。』

 

世界が焼けていく。

大地から。海から。

使い魔から。地母神から。

神性が火の粉を上げて、ゆっくりと。

 

 

「あつ!ちょっと!どうなってるのだわ!?」

『藤丸君!所長!そっちはどうなっているんだい!?観測グラフが滅茶苦茶だ!』

「たわけめ!見て分からぬか。アレは破戒だ、神という戒めとの決別よ。」

ギルガメッシュ、エレキシュガル、イシュタル。

彼らもまたその身の一部を焔に焼かれていた。

 

『この世に蔓延る神よ、その神性は人の世には最早不要。ならば我が滅ぼそう。

忌まわしき戒律を破戒し。呪われた世界を破界し。その神格を破壊し尽くす。

我が此処に訣別を宣言する、この身を薪と滅ぼしたとしても。』

 

それは禁忌。

神とその所業の否定。

神を焼き殺す神が……或いは、魔を裁く魔が。

それらを地に叩き落とす為に生み出した炎。

漏れ出た炎が既に神性を焦がし、その身を薪に。

 

「ここから先は人の時代だ。『一期栄華是夢幻の如く』_______墜ちな、お嬢ちゃん。」

 

爆散し、燒き滅ぼす。

氾濫した焔はティアマト神を焼き焦がし、世界を業火に包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

明転した世界はやがて形を取り戻し、元あった姿を取り戻す。

地底の一同さえ思わず目を瞑る程の光が収まれば、地に堕ちたティアマト神が。

そして爆炎を伴い、地に降り立った男は一同を激して叫ぶ。

 

『こっからだお前たち。同じ土俵に、同じ地平!地に堕ちた神を終わらせてみせろ!』

 

その手に持つ巨大な金棒が地母神を指す。

こうして、神殺しが成されようとしていた。




『一期栄華是夢幻の如く』

世を蝕み続ける滅びは世を愛し続ける。
呪いが例え誰に望まれぬ物だと知って尚。
生きる為には、滅びねばならない。
かくして狂気孕む偏愛は神を穿つ焔となった。

いつか見た、眩き輝き身を焦がす星に。
憧れ、焦がれ、届かぬと分かれど手を伸ばし続け______漸く辿り着いた。


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人類悪に愛を込めて

編集前のやつで時間前に投稿してたから上げ直し。
一回読んだ人は読まなくても問題ない(100字くらい直しただけ)


ラフムの波を叩き返し、翼の生えたベル・ラフムを殴り潰す。

焼き払われた神性故に大幅な弱体化を遂げた新人類共は暴風の如く暴れる英雄に薙ぎ払われていく。

台風の目は三つ。

 

ティアマト本体を狙うカルデア一行と、同行する神霊達。

そして時折ぶつかり合いながらラフムを蹴散らす老狼と鬼神であった。

 

「シャハハハハハハ!成程!強いなァ!」

『実に興味深い。三人の英雄の集合体?故にサーヴァントを遥かに超える出力と…………』

 

片や、とある男が絆で得た鬼神の姿。

片や、とある男が辿り着いた古狼の形。

 

二つ並んで、違った経緯から成した頂。

お互いにお互いを知ろうとするのもある意味当然である。

 

「なにやってんのウチのご先祖さま…………」

「巫山戯てる様だけど近付かないでねマスター………あんなのボク達でも瞬と持たないから。」

 

二つの災害がラフムを蹴散らすのを見遣り、カルデア一行は登る。

ティアマト神、そのご尊顔を拝んでやろうと。

 

 

 

飛来するベル・ラフムを掴み取り、投げ槍の如く投擲。

それを微動だにせず両断して斬撃を飛ばしてくる初老の男。

人が幾ら鍛錬しても出来なかった奴を見せびらかしやがって………

 

若干の嫉妬を力に変えて虚空を武器で振り抜く。

異常な剛力で圧された大気は爆風へと姿を変えて一帯を吹き飛ばさんとした。

その爆風は多大な圧力で近間のラフム共を押し潰したが、老狼に辿り着く前に()()()()()()()

大気を、空間を斬ることさえ可能とした絶技が無双の力と張り合う。

結局飛び道具に頼っては勝負はつかないのだ。

 

それを理解した両者は向き合い、まず夜叉が踏み込む。

巨体をその膂力だけで律動させ、瞬き一つの間に老狼の背後を取り、振り抜いた。

それを認識した老狼は自らの権能を使い鋭角________金棒の角へと転移、足場として斬り上げ。

しかし更にそれを解した夜叉は振り下ろしかけた金棒を無理矢理引っこ抜き、逆側へと叩き付ける。

必然的に老狼は金棒から逃れる事となり、お互いに手傷の無い状態が続く。

 

如何に斬ろうか、如何に殺るべきか_________

如何に潰そうか、如何に殺るべきか_________

 

奇しくも両者の思考は一致する。

 

 

 

やがて双方の思考が深淵に達し、お互いに最速の一撃をもって迎え撃たんと。

武器を捨て、その拳をぶつけ合おうとして。

 

『止めなさーい!』

 

間に入った誰かに止められてお互い腕をズラしたので。

「『ぶぇ。』」

クロスカウンターの形を取り、両者情けない声を出して床を舐める事となった。

 

完全に勢いが乗った拳だろうが、無理矢理軌道を変える程度は当然である。

思い出して欲しい。夜叉も、老狼も、元は浅井長政という男である。

 

「もう!どうして仲良く出来ないんですか!」

『(´・ω・`)』『(´・ω・`)』

 

哀しきかな、浅井長政という男は決して()には勝てないのであった。

 

ぷりぷりと怒る嫁が大変可愛らしいという惚けた考えで一致した男達は一時休戦としようと目で語り、完全に忘却の彼方へと吹き飛んでいたティアマト神の方を見上げる。

 

天空にギルガメッシュ王、対抗するは獣の権能。

成程、如何に高威力の攻撃だろうが宝具である以上はそれを貫けない。

ネガ・ジェネシス。ティアマトにとって最後の砦。

 

『届きますか?』

一振りのナイフを手渡し、老狼。

「誰にモノ言ってやがる。」

それを奪い取り、全力で投擲した夜叉。

 

地の底からティアマト神の目の前にまで届いた刃を確認すると、老狼は夜叉を掴む。

『そんじゃあ市ちゃん、またな。』

「一通りブッ壊して来るわ。」

目一杯の笑顔と言葉を残して転移。

 

出現場所はカルデア一行の直前にして、ティアマトの眼前。

夜叉を蹴り飛ばした老狼はカルデア一行の遥か後方、超速にて迫る二体のベル・ラフムを小間切れにしてその時を見守らんと。

夜叉は叫ぶ。

 

『娘よ、哭いているのか?』

『心配は要らない、此処でお前を終わらせてやるさ。』

 

拳に破壊と、破戒と、破界を込めて。

哀れな地母神へ慈しみと裁きを。

 

『…………aa?』

 

誰だってその痛みを知っている。

どう取り繕うとも。

幾ら歳を重ねても。

決して忘れられない、確定事項。

 

『Aaaaaaa!?!?!?』

「あちゃー…………アレは痛い……可哀想に。」

 

父親の拳骨は、痛い。身悶えする程に。

そして優しい。許しを与える行為故に。

 

夜叉は握った拳をティアマトの額へ気合一閃。

 

それは概念を超えて、理窟を超えてその五体に響き渡り。

怯んだティアマトは獣の権能を解除してしまう。

無理もない。

その痛みに憎みが込められていた事は数あれど。

その痛みに怒りが込められていた事は数あれど。

 

苦痛でなく、愛が込められた痛みは初めてであったから。

 

それは獣の領界を破界する。

拳の肉が抉れ、粉砕されて。

それは獣の権能を破戒する。

代償として魂を削りながら。

それは獣の悉くを破壊する。

彼に与えられた唯一の力で。

 

瞬間、湧き上がる幾千もの感情。

それに答えを出す間もなくギルガメッシュ王の宝具がその身を穿った。

 

答えを得るには刹那に過ぎる時間。

しかしその時間はかくも濃密で、地母神に確かな形で伝わった。

一方的な愛に対し、それを上回る愛を持って返礼とする。

彼女がその感情を真に理解するのはもう少し先の未来。



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無償の愛

投稿されてなかったとかマジかよ
以降本格的に失踪するよ


寒いな、ここは。

ティアマト神を討ち、カルデアの魔術師たちは特異点を修復した。

 

素晴らしい。実に素晴らしいな。

 

そう笑えば、灰が散るように身体が崩れる。

元々、英雄としての生命は既に朽ちていた。

見栄張ってブーストしただけで、本当は膝から崩れ落ちそうだ。

 

灰………灰か。

そうだな。

元より、英霊なんてのは英雄の残滓。

火の潰えた灰の塊のような存在だ。

燃え尽きた生命が、僅かに暖かみを残して生きたフリをしやがる。

 

だが存外悪くないモノだった。

見知らぬ強者との戦いも、遥かな未来の子孫との出会いも。

そして情けなく、どうも締まらない主との旅路も。

 

悪くない……否、良いモンだ。

 

灰でも何かを為せるのだな。

その身にかつての豪炎は無く、かつての栄誉は無くとも。

英雄の残滓から為される炎は、新たな世代へと受け継がれて行く。

それもまた__________ん?

 

暗く澱んだ何か。

小さな身に神代の呪いと怨嗟を受けて。

深淵へ、深淵へと沈むその魂。

 

丁度良かった。

早速残り火の出番ってワケだな。

 

その火が継がれ、誰かを照らす灯になれば。

何か意味があったのだろうと思えるから。

 

手を翳し、闇を燃やし尽くして。

残った呪いは自らが抱え死にすれば良い。

 

『ふぇ………?え…………?』

 

冥界の女主人よ。

異教の身であるが、お前の罪は此処に裁かれた。

貴様が自らの職務を逸脱し蛮勇を振るった事、大罪に値す。

故に貴様に罰を。

 

カルデアの者達に力を貸すのだ。

 

『え………私は………』

 

言ったろ、お前の罪は裁かれた。

さ、行った行った。罪を清算してこい。

 

『私………ってきゃーなのだわー………!!!』

 

引っ張り上げたエレキシュガルを上へと放り投げ………しまった、何処に行ったかな。

まあいいか、辿り着けなくは無いだろ。

それより俺はさっさと眠れる冥界の美女を見つけないとな。

 

『Aaaaaaー!Aaaa………!』

 

居たか、お嬢様。

気分はどうだい?神の身から堕とされて冥界に沈み行くってのは。

尤も、幾ら堕ちようが神であったお前さんが人に輪廻する訳も無いがね。

 

『こないで』

冷たい事言うなよ。こっちは死にかけの身で態々迎えに来たのに。

『ふれないで』

考えとこう、これからの結果次第だがな。

『もうにどと』

ん?

『わたしを、あいさないで「おっと、それだけは頷きかねるな。」………!?』

 

もがくティアマトを逃がさぬ様に力強く抱き締める。

満身創痍の身だから全力で、慈しむ様に。

 

「………良いんだ、お前は悪かない。」

『………!!!』

爪を立てて背中を引っ掻かれるが今更どうということも無い。

「お前のした事は人にとって悪逆そのもの、人に愛されず悪に落ちた神の非道。

だが、それでも、例えこの世の全てがお前を憎もうと俺がお前を愛してやるさ。

生まれ落ちた生命に、善も悪も無い。お前は自らの使命の元生き抜いたんだ、誇ると良い。」

 

『aaa……………?』

「辛かったな。怖かったな。 裏切られて、悲しくて。ずっと一人だったんだろう?」

神として討たれたお前はこのまま滅ぶしかなくとも。

そんなの、あんまりじゃねえか。

そんな悲しい結末俺はゴメンさ、だからティアマト、お前に罰を与える。

神を捨て、人として生き、輪廻の果てにその罪を清算しろ。

…………これからお前を焼き殺す。

滅ぼすのでなく、お前を殺す。

俺に遺ったこの火に熱がある内に。

お前が人に堕ちれるように。

 

抱き締めたままのティアマトに、自らの焔全てを託す様に。

神の身を焦がし己の身を崩しながら。

 

 

 

 

結局、世に不変なる物なぞ存在せず(思へばこの世は常の住み家にあらず)

 

水面の月や、朝露の様に儚いものだ(草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし)

 

栄華も同様に虚しく、(金谷に花を詠じ、榮花は先立つて)やがて滅び行く(無常の風に誘はるる)

 

月を雅と詠った貴人も(南楼の月を弄ぶ輩も、)その月より早く潰え(月に先立つて有為の雲にかくれり)

 

人の生涯なぞは儚くも短い(人間五十年、化天のうちを比ぶれば、)夢幻のようだ(夢幻の如くなり)

 

万物は生まれた時から(一度生を享け、)滅ぶ事が運命付けられて(滅せぬもののあるべきか)

 

気付きにはあまりに遅過ぎた、(これを菩提の種と思ひ定めざらんは、)なんとも惜しい事だ(口惜しかりき次第ぞ)

薄れ行く意識に、酷く体を熱に浮かしながら。

三度目……否、四度目か。

成程、四回も死んで漸く歌を雅と感じる程度の人物には成れたらしい。

 

身体が朽ちていく。

形を維持出来ずに、抱き抱えた地母神の神性を道連れに。

 

惜しむらくは我が家族らの安息。

それでもこの生き方に、この戦いに。

 

 

 

何ら後悔は無い(是非も無し)



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