BLEACH - 鏡面世界 (桂ヒナギク)
しおりを挟む

1.虚の大群

 二〇一九年某月某日。

 尸魂界(ソウル・ソサエティ)瀞霊廷(せいれいてい)真央霊術院(しんおうれいじゅついん)は死神の学校である。

 その学校を卒業し、晴れて死神として護廷十三隊の十三番隊に配属になった及川(おいかわ) 新一(しんいち)。彼は、配属初日ということで、隊を挙げての歓迎会に参加していた。

「今日だけはハメを外しても構わんぞ」

 隊長の阿散井(あばらい) ルキア……旧姓、朽木(くちき)はそう言った。

「あ……いや、俺こういうの苦手で……」

「そうだったのか。それは知らなかったとはいえ、すまぬことをした。だが折角の宴だ。楽しもうではないか」

 新一の歓迎会は、その日は夜遅くまで盛大に行われた。

 その翌朝、新一はルキアについて現世にやってきた。

 二人とも義骸(ぎがい)に入る。

「及川、お前は確か、空座町生まれだったな」

「ええ」

「親御さんに会ってきたらどうだ?」

 新一の父親は尸魂界出身の死神だった。故に、新一にも死神の力があった。

「そうですね」

 新一は歩き出す。

「じゃ、ちょっと行ってきます。隊長の方はどうするんです?」

「私は久々に旧友に会ってくる」

 ルキアと別れ、現世で暮らしていた時の家に向かう新一。

 塀に貼り付けられた標札(ひょうさつ)には、及川と彫られていた。

 インターホンを鳴らす。

 ドアが開き、父親が出てきた。

「新一? 新一なのか?」

「ただいま、父さん。真央霊術院、卒業したぞ。十三番隊に所属してる」

「そうか。こっちへは何で来たんだ?」

「手伝いだよ。ルキア隊長の」

「そうか。まあ、入れ」

 新一は家に上がる。

「父さん、母さんはどうしたの?」

「母さんか……」

 父親が暗い顔になる。

「え、まさか?」

(ホロウ)に殺された。仇は打ったが、介抱しようとしたときには手遅れでな。魂葬はしたから、今頃は尸魂界だろう」

「そう……なんだ……」

 新一は泣きそうになるが、涙をぐっと堪えた。

 その時、虚の霊圧を感じた。

「虚!?」

 新一は家を飛び出す。

「月牙天衝!」

 と、斬撃を受けた虚が、新一の上に落下してくる。

「うわ!」

 ギリギリのところで(かわ)すと、墜落した虚が消滅する。

 上空を見上げると、複数の虚と死神代行の黒崎(くろさき) 一護(いちご)が交戦中だった。

 新一は義骸を脱ぎ、巨大な斬魄刀を手に助太刀に入った。

「なんだ、あんた?」

「及川 新一、護廷十三隊十三番隊の死神だ」

「じゅ……って、ルキアの?」

「知ってるのか?」

「ルキアとは腐れ縁だからな」

「それじゃ、ルキア隊長の旧友ってのはあんたか」

「そういうことだ」

 と、ルキアが現れる。

「しかしきりがないな」

 三人の死神は虚と応戦する。

「ていうか、おめえの斬魄刀でけえな」

「一護、無駄口叩いてないで殲滅(せんめつ)に集中しろ!」

「へいへい」

 会話しながら虚と戦う二人。

 新一は身の丈ほどある斬魄刀を振り回して虚を切り裂いていく。

「何で虚がこんなに」

 辺りを見渡すと、三人は既に囲まれていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2.狙われた一護

 三人は虚の大群に囲まれた。

「ルキア隊長、何か策は!?」

「押し切るしかねえだろ」

 一護は斬月を振りかぶった。

「月牙……天衝!」

 一護のどでかい斬魄刀から斬撃が放たれる。

 一護の正面の虚たちが一瞬にして吹き飛んだ。

「「「ふ!」」」

 新一、ルキア、一護は瞬歩で虚の大群から逃げ出した。

 虚たちは追おうとするが、「待て」と、フードを被った何者かが彼らに命令して止めた。

「ん?」

 瞬歩で戦場を去り際、新一はフードの何者かの姿を視認する。

「及川、どうした?」

「いえ、なんでもないです」

 敵陣から離れた場所に移動した三人。

(やつは一体……?)

 新一は一人、フードの人物について考えていた。

「そういえばお前誰だ?」

 一護が新一に訊ねる。

「さっき言ったろ。あんたの頭は鶏か? 三歩で忘れるのかこのミカン頭!?」

「なんだとコラ!?」

 新一と一護が喧嘩をしようとしたので、「よさぬか!」と、ルキアが仲裁のため二人をぶん殴った。

「それにしても、あの大群は異常だな」

 と、ルキア。

「あ、そうだ! 隊長、俺あいつらの中にフードを被った何者かを見たんです」

「フード?」

「ええ」

 ルキアは一瞬考える。

「一護、ここを任せていいか? 私は及川と浦原のところへ行く」

「ああ」

 新一とルキアは義骸に戻りつつ、一護と別れて浦原商店の店長、浦原(うらはら) 喜助(きすけ)の元へ行き、事の顛末を話した。

「虚の大群にフードの何者か、ですか……」

「何か心当たりは?」

 浦原とルキアが話している最中、新一は黒猫の夜一にちょっかいを出している。

「やめぬか!」

 夜一が鋭利な爪を出して新一を引っ掻く。

「ぐわ! って、猫が喋った!?」

「わしは猫なんかではない」

「猫又?」

「何じゃ、それは?」

「知らないならいい」

 浦原が新一を見る。

「及川さん」

「はい?」

「ちょっとこちらへ」

 新一は浦原の元に移動する。

 浦原は機材を用いて新一の見たフードの人物を、彼の脳内にある記憶からデータに変換した。

「なるほど……」

「なにかわかるか?」

 と、ルキア。

「さーっぱりわかりません!」

 二人はずっこける。

「この件に関しましては、こちらで調査をしておきましょう」

「それじゃ、我々は尸魂界に戻って報告してこよう」

「俺も戻るんですか?」

「当然だ」

 新一は重い腰を上げ、ルキアと共に尸魂界へ。

 一方、その頃。

「あああああ!」

 一護が虚と戦っている。

 切っても切っても次々に現る虚に苦戦を強いられていた。

「クソ!」

「お前たち、もういい」

 と、そこにフードの人物が現れた。

 虚たちがフードの人物に(ひざまず)く。

「我々の元へ招待しよう、黒崎 一護」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3.ミラーカントリー

「なんなんだ、てめえ? いきなり出てきて」

「我々には君の力が必要でね。手を貸してはくれぬか?」

「虚どもを使役してるやつに協力はできねえな」

「では力ずくで協力させてやろう」

 虚たちが一斉に動き出す。

 一護は虚たちを斬るが、疲弊しているため、捕まってしまう。

「一緒に来い」

 どこかへ連れ去られる一護。

 その頃、尸魂界に戻った新一とルキア。

「それじゃ、ルキア隊長が報告に行ってる間、俺は流魂街にでも」

「どうした? 流魂街に何か用事でもあるのか?」

「母さん探すんです。父さんがこっちにいるって言ってたから。どうせ報告以外のこともやって時間かかるでしょうしね」

「そうか。じゃ、後でな」

 新一はルキアと別れ、一人流魂街へ。

「母さんどこだろう?」

 新一は自らの母親の霊圧を探る。

「うーん……」

 新一は流魂街の住人に聞いて回った。

 ここ一年以内に母親の容姿に該当する人物が魂葬されてこなかったか。

「その女性なら、戌吊で見たってやつがいるよ。とても美人だったそうな」

「戌吊だな?」

「ああ」

 新一は戌吊まで瞬歩で向かう。

 戌吊で、若い女性がゴロツキに襲われていた。

「おい、お前」

「ああ?」

 ゴロツキが振り返る。

「げ、死神!?」

 ゴロツキは逃げていった。

「あ、ありがとうございます」

 端正な顔立ちをした黒長髪のその若い女性は頭を下げる。

「気をつけなよ」

「はい」

 新一は去ろうとした。

「待って下さい」

「あ?」

 引き止められる。

「何かお礼を……」

「いや、いいって。それに俺、今、人を探してるから」

「人をお探しに?」

「ああ。渚っていうんだ」

「渚さん? そういえば半年前に虚に殺され、死神の夫に魂葬してもらったっていう方がそんな名前でしたね」

「居場所は?」

「生まれ変わるって言って、現世に降りて行きましたけど」

「え?」

「ですから、尸魂界にはいません」

「そうなのか……」

 残念がる新一。

 その時、新一の通信機から呼び出し音。

「はい」

「私だ」

「ルキア隊長!」

「用は済んだ。現世へ戻るぞ」

「わかりました」

 新一はルキアと合流すると、現世の浦原の元へ向かう。

「やつらの正体、調べておきましたよ」

「何者なんだ?」

「やつらは、ミラーカントリー……鏡の中の住人です」

「鏡……?」

「はい」

「鏡って、光を反射するガラスのことか?」

「その通りです。鏡の中にはもう一つの世界があるのです」

「狙いはなんなのだ?」

「そこまではわかりません」

 浦原は一呼吸すると、再び口を開いた。

「先ほど、黒崎さんの霊圧が消えました。恐らく、連れ去られたのかと」

「なに、一護が?」

「はい。私が気づいたときにはもう手遅れで」

「そうか……」

 ルキアの表情が暗くなった。

「浦原さん、鏡の中にはどうやって入るんだ?」

「霊体の状態で飛び込めば、入れるはずかと」

「そんな簡単なのか?」

「ええ」

「ルキア隊長、行きましょう!」

「そうだな」

「でも、どこの鏡から入ればいいんだ?」

「どの鏡からでも大丈夫だと思いますよ。なんなら、うちの鏡でも構いませんよ」

「そうか」

 新一とルキアは、浦原が用意した鏡の前に立った。

「行くぞ」

 二人は意を決して鏡に飛び込んだ。すると、ガラスをすり抜け、鏡面世界へと入り込むことに成功した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4.反転

 鏡面世界への突入に成功した新一とルキア。

 しかし、鏡面世界には人っ子一人いないのである。

「本当にこんな世界あったんだな……」

 と、新一が呟く。

「しかし誰もいないとは異様だな」

 と、ルキア。

「人間どころか、(プラス)も虚もいませんよ?」

 二人は鏡面世界を探索する。

「はあ……はあ……はあ……はあ……!」

 どこからか荒い息遣いが聞こえてくる。

 二人は音の方を振り向いた。

 すると、こちらへ走ってくる男の子が。その背後を死神が追う。

「待て!」

「いや! 来ないで!」

 新一は死神の目前に移動し、振り回される斬魄刀を自身の大刀で受け止めた。

「なにしてんだおめえ?」

「なんだお前?」

「俺は及川 新一、死神だ」

「なぜ魂魄を守る?」

「死神だからだ」

「貴様!」

 死神は新一の斬魄刀を押し返し、飛び退いた。

「ルキア隊長!」

「わかった!」

 ルキアが魂魄の男の子を保護した。

「死神が魂魄を襲うたあ聞いて呆れる」

「それが普通だろ」

(なに?)

 新一は考え込んだ。

(この世界は鏡の世界。左右反転してるなら、死神と虚の位置付けも反転してるのか?)

「そこをどけ。俺はその魂魄を斬るんだ」

(食べるんじゃなくて斬るってとこだけは一緒か)

「いいだろう。俺に勝てたらな!」

 新一は斬魄刀を振り、斬撃を飛ばした。

「ぐ……!」

 斬撃を自身の斬魄刀で受け止める死神だが、圧されて刀が吹き飛んだ。

 地面に突き刺さる斬魄刀。

「とどめ!」

 新一は無防備になった死神に最後の一撃を浴びせた。

「うわああああ!」

 悲鳴を上げて消滅する死神と、同時に失くなる斬魄刀。

 新一は魂魄に歩み寄った。

「大丈夫か? えっと……」

「重明。僕の名前は甲斐(かい) 重明(しげあき)だ」

「重明、お前はなんで死んだんだ?」

「僕、車に轢かれたんだ。助けてくれてありがとう。でも、死神なのになんで?」

「俺たち、鏡を通ってきたんだけど……」

「え、それじゃあリアルワールドの?」

「ああ。とにかく、ここにいたら危ない。魂葬するぞ」

「うん。地獄に行けるんだね?」

「地獄? いや、ソウル……」

(待て。死神の位置付けが逆ならこっちでの尸魂界は恐らく地獄)

「お……おう、地獄だ」

 新一は斬魄刀の柄の先端を重明の額にあてがう。

 重明は光につつまれ、天へ昇っていった。

「及川、なぜ地獄などと?」

「今までのでわかりませんか?」

「何がだ?」

「ですから、ここは鏡の中。死神と虚の位置付けも、尸魂界と地獄の位置付けも逆なんですよ。つまり、この世界は虚が我々死神と同じで、死神が虚なんです」

「そうか。そういうことか」

「それより、この姿だとなにかとやりにくい。誰かの肉体借りましょう」

「うむ、そうだな」

 二人は生きた人間を探すが、しかし、人っ子一人見当たらない。

「どういうことだ。これほど探して街に一人もいないなんて……」

「まさか、昼夜も反転してるってか?」

 辺りが暗くなり始めると、案の定人が起き始め、店が開き、車の往来が始まった。

「お!」

 新一は人混みの中に端正な顔立ちをした女を見つけた。

「どうした?」

「俺あの女にします」

 新一はその女の中に飛び込んだ。

「え?」

 急に意識が遠のいた女の体が倒れそうになるが、新一が体勢を整えさせた。

「貴様、何をやってるのだ?」

「ルキア隊長も何か適当な体に入って下さい」

「じゃあ私は……」

 ルキアは人混みの中に赤毛の男を見つけた。

「あいつにしよう」

 ルキアが赤毛の男に乗り移った。どことなく夫の恋次に似ていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5.エニグマ

「出て行きなさいよ!」

 突如、脳裏に女性の声が聞こえる新一。

(なんだ?)

「なんだ? じゃないわよ! これは私の体なんだからね!」

(あー、なるほど。悪いけどしばらく貸してくれ)

「ふん!」

「うわ!」

 女性の体から新一の魂魄が飛び出した。

 バフ!

 新一の体がルキアが入ってる男の体にぶつかった。

「何をしておるのだ?」

「あの子、意識があって」

 ルキアが女性を見る。

 女性は新一を見ている。

「あー! あんた死神!」

 女性が義魂丸を取り出す。

「貴様、虚か?」

 と、ルキア。

「そういうあんたも死神ね」

 女性が義魂丸を口に入れようとする。

「待て。我々に貴様と戦う意思はない」

「どうだか」

「俺たちはリアルワールドの死神だ」

「え? マジ?」

「ああ」

 新一は女性に事の発端を説明した。

「——なるほど」

だからって——と、女性は続ける。「人に乗り移るなんて最低ね」

「……………………」

 新一が言葉を失う。

「及川、最低だと」

「その最低な提案に乗ったあなたもですよね?」

 ルキアのげんこつが新一の頭に落ちる。

「なんで!?」

「で、虚を使役するフードのことなんだけど……」

 新一とルキアは女性を見る。

「もしかして、エニグマのことじゃないかしら」

「エニグマってナチスの暗号機か?」

「そうそう、その暗号……って、ちゃうわボケ!」

 女性はどこからか取り出した巨大なハンマーで新一の頭を叩く。

「ぐは!」

 怯む新一。

「説明をするわ、サイバさん」

「サイ……?」

 エニグマは、現世と鏡面世界の狭間(はざま)にある世界から来たとされる侵略者で、現世の虚どもを使役し、鏡面世界を我が物にしようとしているのである。

 だが、それには現世にあると言われる大いなる力というものが必要不可欠で、その力を利用して世界の(ことわり)を破壊しようとしているのだ。

「そのために一護がさらわれた、ということか?」

「ところで、君の名は?」

「ああ、自己紹介がまだだったわね。白崎(しろさき) 聡美(さとみ)よ」

「俺は及川 新一。こっちは隊長の——」

「阿散井 ルキアだ」

「エニグマとは一回やりあったけど、強くて強くて」

「エニグマはどこに?」

「狭間にいると思うよ」

 新一とルキアは互いに顔を見て(うなず)く。

「あなたたち、鏡を通ってきたのよね?」

「ああ」

「その方法じゃ行けないわ」

「どうやって行くんだ?」

「ないわ」

「え?」

「こちらからも、リアルワールドからも」

「致し方ない。戻って浦原に相談してみるか」

 ルキアは男の体から抜け出す。

 意識を失った男が倒れる。

「戻るぞ」

「はい」

 新一とルキアは鏡を通り抜け、浦原の元に戻った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6.一護

 新一とルキアは鏡を通ってリアルワールドに戻った。

「どうされました?」

 と、浦原。

「現世とミラーカントリーの狭間の世界に行きたいのだが」

「狭間……ですか」

「浦原でも無理か?」

「いえ、方法はあるのですが……」

「なんだ? あるなら言え」

「霊体から意識を抜いて行くという方法なのですが……」

「霊体から意識を抜く?」

「はい。生者が死ぬと霊体となるように、霊体もまた意識が抜けるんすよ」

「ではすぐにやってくれ」

「無理なんです」

「どいうことだ?」

「物質を霊子に変換するように、霊体を変換できるような装置が作れれば可能だと思います。ただ、現状、尸魂界の技術をもってしても、そのようなものは作れません」

「なん……だと? それでは一護はどうするのだ? このまま見捨てるなど、私には出来ぬぞ!」

「方法がないわけではありません」

「あるのか!?」

「霊体を仮死状態にすれば、意識が抜けるはずです。ただ、元に戻れる保証はありません」

「……………………」

「俺が行く」

「及川?」

 ルキアが新一に顔を向けた。

「浦原さん、どうすればいい?」

「少し痛いですが、よろしいですか?」

「構わない」

「そうですか。……では」

 浦原が杖から斬魄刀を抜いた。

「おいおい、まさか?」

「そのまさかです」

 グサ!

 新一の胸に刀身を突き刺す浦原。

「ぐっ!?」

 倒れる新一。

 体が倒れ、霊体から意識が抜ける。

「浦原! 貴様なんてことを!?」

 驚き戸惑うルキア。

「及川さん、そのまま鏡に飛び込んで下さい」

「おい、浦原!」

 新一は鏡に飛び込んだ。

 光のトンネルに突入し、狭間の世界に辿り着く。

 あたり一面、暗がりになっている。

 辛うじて見えるのは、外界から光が射しているからだろう。

「まるで魔界だな」

 そこへ虚が現れる。

「……!」

 新一は斬魄刀を抜いて虚を真っ二つにした。

 消滅する虚。

「ようこそ、我が世界へ!」

 と、現世で見かけた人物が現れた。

「お前がエニグマか」

「ご名答」

「世界の理を破壊してミラーカントリーを手中に収めようとしてるんだってな。そのために黒崎 一護をさらったのか?」

「ご明察。だが敵地に一人で乗り込んでくるとはのう」

「あ?」

 新一が虚に囲まれる。

「しまった!」

「捕まえろ!」

 飛びかかる虚たち。

 新一は回転斬りで虚たちを吹っ飛ばした。

「貴様! 虚など使役しないでサシで勝負しやがれ!」

「サシ、か。ならこいつでどうだ?」

 完全な虚と化した一護が姿を見せた。

「行け、一護」

「一護だと!?」

 一護が虚閃(セロ)を放ってくる。

「うわ!」

 途轍もない威力の虚閃を間一髪で躱す新一。

 だがそれはフェイントだった。

 気がつくと、一護が新一の懐に潜り込んでいた。

「ぐわ!」

 攻撃を受け、吹っ飛ばされる。

「うわああああ!」

 岩に激突する新一。

「ぐっ!」

 地面に伏す。

「くっそ! 強えじゃねえか」

 斬魄刀を杖代わりに立ち上がる新一。

 新一は斬魄刀を振りかぶった。

「あんたの技で、目覚めな!」

 新一は斬魄刀を振り下ろして斬撃を飛ばす。

月牙天衝(げつがてんしょう)!」

「う!」

 技を食らった一護が、正気を取り戻しかける。

「う、うおおおおああああおおおお!」

 咆哮する一護。

 やがて死神の姿になり、正気に戻る。

「お、俺は一体?」

「お前はあいつに虚化させられてたんだ」

「なに?」

 エニグマを見る一護。

「計画は失敗か。だが諦めぬぞ」

 エニグマはそう言って去っていった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。