【月光の神】ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (クックダッセ)
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僕と神様
僕はダンジョンに出会いを求めて、世界で一番熱い街、迷宮都市【オラリオ】に来た。怪物に襲われてる女の子を助けて、恋をしたりなどそんなことを求めてオラリオにやってきた。しかし現実はそんなに甘くない。
『ブモオオオオオオオオオオッッッ!!!』
「うあああああああああああああッッ!?」
ミノタウルスに追いかけられ、絶体絶命のピンチだ。全速力でダンジョンを駆け巡り、角を曲がり、なんとか撒こうとしているがレベル1の僕にはどうしようもない。けれどミノタウルスはもっと下の階層で現れるはずなのにどうしてこんな上層に!?
曲がり角を曲がった先は行き止まり。もう逃げる場所がなくなってしまった。ミノタウロス攻撃を避けて逃げ出す?僕が?冒険者になって半月の僕が?逃げられるわけがない。そんな絶対絶望の僕の目の前に現れたのは、これから僕の初恋になる人だった。
「ハッッ!」
「ブモォォ!?」
美しく洗礼された剣技、整った容姿、スタイルも抜群。金髪金眼の女性が絶体絶命の状況を覆し、僕の目の前に降り立った。僕はミノタウロスの臭い血潮を浴びても、変な顔はしなかった。なぜならそこに立っていたのはレベル5、第一級冒険者アイズ・ヴァレンシュタインさんな彼女についた二つ名は【剣姫】僕は生まれて初めて恋をした。
******
「神様!神様!!」
「どうしたベル?そんなにはしゃいで。あ、それとエイナから聞いたぞ、血を浴びて落とさずに、ギルドに来たと。私の唯一の眷属なんだ、私も怒られてしまう」
「あ、それはすいません神様」
「わかったならいい、なら夕ご飯にしよう今回は豪華だ。バイト先の豊壌の女主人から賄いをもらってきた。これを食べて明日も頑張ってきてくれ、ベル」
「はい!わかりました!うあわ美味しそうですね!」
「一応私が作ったものもあるんだぞ、是非味わって食べてくれ」
「はい!いただきます!............そうじゃなくて聞いてください!神様!」
僕が机を叩くと、行儀が悪いなという目で見られてしまった。神様は僕に「話を聞こう」と呟いた。
今いる場所は豊壌の女主人の3階。ここに住まわせてもらう代わりに、僕の神様がこの豊壌の女主人で働いているのだ。結構広い場所だし、部屋も2部屋ある。神様の寝室とリビングと僕の寝室でもある、現在夕ご飯を食べているところだ。ステイタス更新もここでやったりする。
僕たちのファミリアは僕と神様しかいない二人だけのファミリア。しかもそのファミリアが結成されたのがついこないだの話。そんな僕たちにお金もあるはずなくて、どうしようとなって途方に暮れていたところ、ミアさんに助けてもらった。僕と神様が豊壌の女主人の店主さんに助けてもらって、ここになんとか住まわせてもらえてる。
僕の神様、アルテミス様との出会いは僕がオラリオに向かう途中に、偶然空から光が落ちてきて、それがアルテミス様だった。神様が初めて下界に降りてきた瞬間を僕は見てしまったのだ。そして一緒にオラリオに入る時に、僕がアルテミス様の眷属になりたいと願ったのだった。
アルテミス様、神様は魚を突っつきながら僕の話を待っていた。
「ステイタス更新ですよ!いつしてくれるんですか!」
「帰ってきてからすぐは、ステイタス更新はしないと言っただろう。私もバイトの時もある、それに私がバイトがない日だとしてもご飯を用意して待っているんだ。それを食べてからステイタス更新するのが当たり前だろう」
ど正論だった。これは完全に僕が悪い。神様は僕のダンジョン帰りを待ってご飯を作ってくれているんだ。暖かいうちに食べないとダメだろうと僕は反省した。
神様はハムハムと小さい口で、ご飯を食べ進めていた。僕も早くステイタス更新をして欲しいので、モグモグと食べ進めた。
******
「さあ、お待ちかねのステイタス更新だが、なぜそんなにステイタス更新をしたいんだ」
僕の下半身に神様は乗っかり、神様の血を僕の背中に落とす。ステイタス更新を受けながら、神様は僕に問いかける。
「まあ、色々あったのでダンジョンで」
「あぁ、わかったぞミノタウルスから襲われてて、いろいろな経験をしたから、ステイタス更新をしたかったのか」
「まあ、そんなところです、アハハハ」
「ムッ、何か誤魔化してるなベル」
神様は針でチクチク、僕の背中を刺しながら、ステイタス更新は進んでいく。そして終わったのか下半身から体重がなくなり、神様は横にずれる。僕は神様が突き出したステイタス更新の紙を受け取り凝視する。
ベル・クラネル
Lv.1
力 : I 82 耐久 : I 20 器用 : 73 敏捷 : H 127 魔力 : I 0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・早熟する。
・
・
「神様!これって!!」
「ああ、そうだ。ベルの初めてのスキルだ」
「やったッ!!僕にスキルだッ!!」
僕がベットでぴょんぴょん飛び跳ねていると神様は立ち上がり、僕も飛び跳ねるのをやめた。なぜなら神様は自分のよく使っている弓を持っていたからだった。しかも矢付きで。
「ちょっと!?神様!?何をするつもりですか!?」
神様は弓を構えながら、近づいてくる。その顔は笑っているが目が笑ってない。目から光が消えていた。怖い、怖すぎる。神様は何回か怒ったことがある。だから神様は怒ったら、本当に怖い人だと、理解していたはずだった。しかし今回も神様を怒らせてしまったみたいだった。
「ベル。私が司ってるものを言ってみろ」
「は、はい!貞潔と狩猟です!」
その言葉を発した瞬間僕は理解した。このスキルが発現した理由は、アイズ・ヴァレンシュタインさんに恋したからだ。そして僕の神様は貞潔を司る神。男女の恋愛を許すはずもない。
「ご、ごめんなさいいいいいいッッッ!!!」
「許すか!!」
神様はギギギッと弓から音をさせて、矢を放った。僕は今日二度目の死を感じ取った。
******
「聞いてくれヘファイストス!私のベルが!ベルがああ!!」
「はいはい、泣かないの。これでも飲んで落ち着きなさい」
「ありがとう」
アルテミスはヘファイストスとよく飲みに行くお店で待ち合わせをして、訪れていた。アルテミスはヘファイストスからもらったお酒をチビチビ飲み始めた。初めてヘファイストスはアルテミスのことを心配していた。彼女はこの都市に来たばっかりだし、拙いところもあったが、心配はしていなかった。
天界の頃からの知り合いで、彼女は一人でなんでもこなしてしまう神だったからだ。まあ、その神が
けれど初めてアルテミスから飲みに行きたいと言い、出会った瞬間に涙目で抱きついてきたのだ。これを心配しないわけにもいかないが、内容を聞くと、ヘファイストスは呆れて声も出なかった。
「で、そのあなたの唯一の眷属、ベルが取られてどうしようって相談でいいのね?」
「う、うん。恥ずかしながらそういった相談だ」
「プッ」
「な、なぜ笑う!!」
ヘファイストスがおかしくて笑うと、アルテミスは立ち上がり顔を真っ赤にして、ヘファイストスに怒鳴った。ヘファイストスはお酒を少し飲んで、口を開いた。
「ごめんなさい、アルテミスが恋愛話を持ってくるとは思っていなかったですもの」
ヘファイストスは笑いが堪え切れてない口調でアルテミスに伝える。アルテミスはカアアッと顔を赤くして、立ち上がり手で机を叩きながら立ち上がり、ヘファイストスに猛抗議を始めた。
「ち、違う!断じて恋とかというものではない!!私の眷属のベルを盗られて、寂しいとか心が痛いとかしか思ってないぞ!!」
「それが恋じゃない」
「なんだと!?」
アルテミスの驚いた顔に、ヘファイストスは机に突っ伏して、笑い出すそれも大笑いだった。アルテミスはそのヘファイストスを見て、ムッと頬を膨らませ、そのまま座る。
「それでどうして盗られたと思ったの?」
「そ、それは秘密だ」
「え?」
アルテミスはあのスキルは
じゃあなぜベルに伝えたというと、隠し事をしたくなかったからだ。ベルは冒険者いつ命を落としてもおかしくない職業。その時にもしかしたらこのスキルの存在を知っていたら、生き残っていたかもしれないという状況が来るかもしれない。だからアルテミスはベルにはスキルを隠さなかったのだ。
「ふーん、まあいいわ。私も恋愛っていうのはよくわからないの。私ってそういうのは無縁だから。けど眷属として私の子供達は愛してるわよ。アルテミス、あなたは眷属としてベルを愛してるの?」
「ああ、それはもちろんだ。ベルは内気で優柔不断でダンジョンに出会いを求めてやってくるような不純な子だが、やるときはやる子だ。私と初めて出会った時もそうだ、ベルは私がオラリオの壁から落ちたと思い込んだみたいでな、助けに来てくれたんだ」
アルテミスは少しお酒を飲んでから、ベルについての心の内を明かす。
「その時になんでいい子だろうと思ってしまったんだ。そして一緒に暮らしていくうちにな、ドキドキが止まらなくなり...............」
「もういいわ、お腹いっぱい」
「なぜだ!ここからがいい話なんだぞ!」
「だってベルのことを話すあなた長いのだもん」
「うっ、それはごめん」
「やっぱり恋なのね」
「ち、違うぞ!私はだな!?......」
アルテミスとヘファイストスとの言い合いが続いていく、ヘファイストスがからかい、アルテミスが真剣に答える。ヘファイストスはアルテミスの言葉を聞きながら、アルテミスは変わったなと思っていた、一人の男の子せいだけでアルテミスはこんなに表情が変わる。
笑ったり、泣いたり、怒ったり。天界いる時だと想像もできなかったとヘファイストスは思う。ヘファイストスは葡萄酒を飲みながら、顔を真っ赤にして、抗議しているアルテミスを見て微笑んでいた。
けれど天界にいた頃も喜怒哀楽が激しいときはあったなとヘファイストスは思う。
「ヘファイストス!聞いているのか!?」
「えぇ、聞いてるわ」
彼女二人のトークはまだ終わらない。
アルテミス様ははベルくんと出会い、恋というものをしています。(まあ、頑なに認めませんが)アルテミス様とヘスティア様とはたどるものが同じではないと思っています、けれど最初のミノタウロスやアイズさんに恋するのは、そのままにしました。ここからどういう展開にしようとかは考えてませんが、作者の気まぐれです。次回も続けていくのでお願いします!
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僕は悔しくて
地面を粉砕して、前へ飛び出し腰に刺さっている短刀を抜く。
「はああああああッッ!!」
コボルトは僕を発見できずに、僕に奇襲されやられていく、いつも経験値を稼ぐために複数の怪物がいる場合、真正面からぶつかって倒したりしているが、三体程度ならアルテミス様から教わった弓で倒したり、今のように奇襲を仕掛けてたりする。
モンスターから
******
朝から夜まで稼いだおかげで、結構な額が入った。これで豪華な食事もできる。まあ今日のご飯はシルさんに頼まれて、豊壌の女主人食べることは決定してるんだけど、エイナさんに言われて換金して僕のホームでもある豊壌の女主人に出向いた。
「いらっしゃい........って白髪頭じゃニャいかニャ。今日はここで食べていくのかニャ?」
「はい、シルさんに是非今日の夜ご飯はここでって言われたもので」
「そうだったのニャ、シルー!白髪頭がきたニャ!」
するとバタバタ慌しく、シルさんがお客さんに料理を提供してから、こちらに歩み寄ってきた。下にある白いサロンで手を拭きながら、僕に笑みを浮かべて出迎えてくれる。
「ベルさん!来てくださったんですね!」
「はい、っていうか一応ここは僕の帰る場所でもありますから」
シルさんが久しぶりに僕に会ったみたいに接客をするから、ついつい嬉しくなったけど、一応僕のホームここの三階にあるから何回もシルさんと会話してるんだよね。
「さあ、こちらに!」
「あ、はい」
いつも僕が食べてる席に案内されて、そこに座りメニューを眺める。シルさんはミアさんに呼ばれて、「ベルさんにまだお話.......もとい接客してないのに!」と呟いて、忙しそうに厨房に戻って行った。
ここの店は美味しいものがたくさんある。けれど値段が高いからそこら辺をしっかり見ないと。ファミリアのために、お金は残しておきたいし。
店は大盛況で、僕以外の客が多くいて、一つのテーブル席を残して満席だった。隣を見ると耳がちょこんと可愛らしく尖がっていて、髪を一つにまとめ、可愛らしい顔をしたエルフが一人でご飯を食べていた。
その顔に見合わない悲しい顔をしていて、今にも泣き出してしまいそうなそんな表情だった。僕は声をかけようと、口を開こうとするが、蒼色の長髪の女性に声をかけられる。
「さぁ、注文は決まったのか?ベル」
「うわ!神様!今日は遅くまでバイトだったんですね」
「この大盛況しているところで抜けられないだろう、今日も団体客が入っている。団体客が来るまでは残業しているつもりだ、それよりも注文を聞くぞ」
「あ、はい、ならこのナポリタンをください」
「.............」
僕が目についていたナポリタンを頼むと、神様は目を細めてジッと僕のことを見てくる。なんだろう、ナポリタンはダメだった?いや、でも値段も安いし、量もあるからこれでいいと思うんだけど
「神様?」
「わ・た・し・は、この大盛況を乗り切ったら、バイト終わるつもりだ」
「は、はぁ、さっき聞きましたけど.........」
「...........はあぁ、ベルは全くほんとに。私もここで食べていくから、私の分も注文しておいてくれ」
「あ、なるほど!き、気づかなくてすみません」
「まあ、ベルはベルだからな。期待はしていない、ナポリタン二つでいいな?」
「あ、はい!お願いします!」
そう言って神様はエプロンをなびかせ、厨房に戻っていく。呆れて僕のこと見てたけどあれ僕が悪いのかな。と真剣に考えていると、隣のエルフの女の子と目があった。
僕と目があった瞬間、料理へと視線を戻した。何か物珍しそうに僕の顔を見つめていたらしく、不思議そうな、羨ましそうな顔をしていた。僕はそれが気になって声をかけていた。
「えっと、何か僕のこと見てたようですけど、何か用でしたか?」
「いえ!なんでもありません!気にしないでください」
「ご、ごめんなさい」
悩んでるようなのに、見知らぬ人の僕が声かけちゃって悪いなと思い、すぐ視線を前に戻すが、やっぱり気になる。おじいちゃんならこういう時悩んでる女の子がいるなら助けてあげなさいって言ってる。
「あ、あの!何か悩み事なら僕が聞きます!僕でお力になれるなら手伝いますから!」
「え?..........プッ、あははははははははっ!!私そんな真剣な眼差しで、お悩み聞きますなんて言われたの、初めてです!」
なぜか初対面の女の子に大笑いされた。真剣に聞いたつもりだったのに、すごく悲しいような。まあでもそのおかげで笑ってくれたなら、結果よかったのかなって思う。
「あなたのお名前は?」
「ぼ、僕ですか?僕はベル・クラネルです!」
「そうですか、私はレフィーヤ。レフィーヤ・ウィリディスです」
「えっとそれで何を悩んでたんですか?」
「はい、聞いてくれますか?私は........」
レフィーヤさんが言いかけたところで、大きな雑音が入る。店も少しは落ち着いてきたと思った矢先、豊壌の女主人入口が揺れる。そこで入ってきたのは、【ロキ・ファミリア】彼らが現れたからだった。
遠征の帰りにここの場所で打ち上げをするんだろう。団体客というのは彼らのことだった。
【ロキ・ファミリア】の主神。ロキ様が乾杯の温度をとった瞬間。店が騒がしくなる。お酒を口に放り込み、出てきた料理を豪快に口の中で運ぶ。その中には、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインもそこにはいた。実際その人を僕は見つめていた。目が離せなかった。
いけないと、僕は首を横にふり、惚けた顔を直しレフィーヤさんと向き直す。
「えっとそれで、続きを聞いてもいいですか?」
「あ、はいそうですね。私は.........」
「おい!アイズ!あの話聞かせてやれよ!」
次は一人の男の人の声と被り、聞こえて来なかった。あの人は僕でも知っている。【
******
「神アルテミス、もう上がっていいよ、悪かったね、ここまで残してしまって」
「いいや、困ったときはお互い様だ。私もここに住まわせてもらってる身だ。助けるのは当然だろう」
「そう言ってもらうとありがたいよ、ほらあんたの眷族のところに行ってあげな」
「ああ」
アルテミスはエプロンを脱ぎ、制服を脱いだ。脱衣してる場所は自分たちのホーム、アルテミスの部屋だ。服をかけ、いつもの服に着替える。そのままベルが待っていると思うので下に降り、ベルの元へ向かう。
「待たせた.......」
「雑魚には釣り合わなねぇんだよ!アイズ・ヴァレンシュタインにはな!」
声が聞こえた、すでに団体客の【ロキ・ファミリア】がいて、その周りはよく騒いでいるはずなのに、その声がよく響いた。何か大切なものを踏みにじられてる気がした。
「クッッッ!!」
「クラネルさん!?」
白い髪の男の子が出ていく。それを追うように山吹色のエルフの少女も追いかけていく。アルテミスはあれがベルということを理解した、そしてなぜ出て行ったのかも理解した。それを理解した上で、店の中にある弓を装備し、矢を貶した本人、ベート・ローガに向かって放つ。
「ッッ!?」
「流石は第一級冒険者というところか、実力はある。だが気品はかけらもないようだな」
「あ?なんだテメェ」
ベートは放たれた矢を瞬時に掴み取り、アルテミスを睨み付ける。手に力を込め、矢をへし折る。まるでなんのつもりだと言わんばかりの行為で、だがアルテミスはそんなのお構いなく、弓を構えて離さない。
「ひとつ言っておこう、今店から出て行った白い髪の男は私の眷属だ。貴様が笑っていた男でもある」
「はあ?もしかしてあのトマト野郎なのか?こいつは傑作だな。ああいう雑魚は、自分の弱さを呪って巣穴から出てこないことだな」
「ベルが雑魚であろうが、弱虫であろうが、英雄であろうが、彼は私の眷族だ、どんなことがあろうとあの子は私の子供だ。我々神々は【アルカナム】を使うことはできない、できることといえば彼らの背中を押すことだけだろう」
アルテミスの身体から光が漏れ出す。神威だ。アルテミスは譲れないものために、彼女は無意識に神威を発動した。その反応に気づき【ロキ・ファミリア】の大半は青ざめる。『やってしまった』と。
アルテミスは弓を構えるのをやめ、落ち着いたのかそのまま神威も消えていく。【ロキ・ファミリア】の面々はほっと胸を撫で下ろす。
だがアルテミスの怒りはまだ収まらない。
「きっとベルはダンジョンに赴いただろう、助けに行きたい。だが神々である私は助けにはいけない。無事に帰ってくることを願うことばかりだ。これでベルがダンジョンから戻ってこなかったら、貴様らを絶対に許さない!!」
神々はなんでも笑って受け流す。それが神の印象だろう。しかし彼らにはアルテミスがどう見える。笑って受け流すことはなく、隠すことなく怒りをあらわにしている。きっと大半は逆鱗に触れてしまったとそう感じるのだろう。だが、少数の上級冒険者は子供想いの神様だと思っていた。
愛し、可愛がり、愛おしく、ベルのことを思っていると。逆も然り、敬い、愛おしかったに違いない。そう、【ロキ・ファミリア】はアルテミスに許されないことをしてしまった。
それにいち早く気付いた、
「アイズ、リヴェリア。彼をダンジョンから連れ戻せ。早急にだ」
「わかった」
「任された」
素早くアイズとリヴェリアが店の外に出ていく。街の中を第一級冒険者が駆け抜けていく様は何かあったのだろうか?と騒がしかった街は、少し静かになる。それを見送るフィンは、アルテミスの前に跪く。
「神アルテミス、申し訳ない。うちの団員があなたの団員を傷つけてしまいました、ここに【ロキ・ファミリア】団長として謝罪します」
アルテミスは表情の一つも変えずに、息を吐いてから目を閉じて口を開く。その言葉を待つように、フィンも身動き一つ取らずに、言葉を待っていた、他の団員もそうだ。
「もしこのままベルが帰ってこなければ、私はお前たちを許すことができないだろう。ただ、憎みはしない。約束しよう」
アルテミスの言葉で団員は固まっているが、何を感じているのだろか。これこそ神と思っているのだろうか。アルテミスはベルが座っていた、席に座り、ただナポリタンを見つめていた。ベルとアルテミスが一緒に食べるはずのものだったものだ。
「無事でいてくれ、ベル」
息を吐くように小さい声だったが、この店にいる全ての人に届いていていた。アルテミスも仲良かった豊壌の女主人の店員も全員心を不安にしながら待っていた。
******
「ちくしょう!ちくしょう!」
走る走る。悔しくて、悔しくて、悔しくて!何も言い返せない自分も、こんな弱い自分も!憎い!何もしなくても、何かあるんじゃないかと期待していた自分に!スキルが発現して、調子に乗っていた自分も!
泣きながらバベルに向かう。時には人をぶつかりながら、お構いなしに先は先へ走る。強くなりたくて、もうこんな思いしなくていいように。
走り続けて息を切らしながら、ダンジョンに入っていく、目の前にいるのはゴブリンだ、短刀を抜きみっともなく、八つ当たりするように僕は、怪物を屠る。
「ああああああああああッッ!!」
もっと奥へ、もっと速く強くなるために!僕は目の前に現れる、ゴブリンを倒して倒して、奥は奥へ進む。
******
なんなんですか!あのヒューマン。心配でついてきましたけど、動きもまるで素人、ああ!そこで躱せばいいのに危なっかしい!私の魔法で援護を!そうしようと何回思ったことか、けれど援護できない。
彼の必死さ、彼の足掻きを見ていると心をがうずく。手を出すなとそう言われてる気がして、見ていろ、これが男だ!と言わんばかりに。なんでこんなに私の心をかき乱すんだろう。こんな気持ち私は知らない。
******
一体どれほど経ったのだろう。もう太陽が昇り、オラリオに降り注いでいるが、ベルは未だに帰ってこない。このまま帰ってこないと思うと心が張り裂けそうだった。朝日が上り、色々な人が活動している中。彼は未だに帰ってこない。
「ベル」
「神様」
ベルの声が聞こえた。ハッと顔を上げると傷だらけで、山吹色のエルフの少女に肩を借りながらやっとの姿で歩いてきたと思わせた。けれどこの女の子は誰だ?確かベルを追いかけていた子か
「【ロキ・ファミリア】はどうした?」
私が疑問かけると、ベルは「ロキファミリア?」と言っていたので、ロキファミリアと会っていないんだろう。あの【剣姫】は何やっているんだ。と乗り込みに行こうかと思ったところ、山吹色のエルフが呟いた。
「あの、神様。【ロキ・ファミリア】は確かにいたんです。けれど彼の必死の足掻きを見て、手を出せなかったんです、私もそうでした。だから私から【ロキ・ファミリア】に頼んで、帰ってもらったんです。彼は私が連れ戻すからって」
「そういうことだったのか」
エルフの少女がベルに危機が迫った時、何かしらの援護をしたのかもしれない。怪物を倒す魔法ではなく、支援魔法の類いをかけたのかもしれない。だがここに立っているのは、怪物に打ち勝った、紛れもない勝者。私はベルが勝者になってくれてとてもとても嬉しい。
「神様」
「なんだ?」
「僕もっと強くなりたいです」
「ああ、強くなれるさ。ベルならきっと」
そのまま、私は目から熱い何かをこぼしながら。ベルを抱きしめた。ベルは安心してそのまま眠ってしまっていた。そして疑問だったのだが、このエルフの少女はどうするのだろうか、それだけが疑問だった。
「ここまでベルを連れてきてありがとう」
「い、いえそんな、私がしたくてしたことですし!」
「それでお前はどうするんだ?これから」
私が笑いかけるとその少女は、スカートを小さい手で握り締め、意を決したように、顔を真っ赤に染めながら、彼女は想いを叫んだ。
「私をこのファミリアに入れてください!」
レフィーヤ・ウィリディス
Lv.2
力 : C 785 耐久 : D 689 器用 : C 768 敏捷 : C 796 魔力 : B 802
《魔法》
【アルクス・レイ】
・単射魔法。
・標準対象を自動追尾。
・詠唱式【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】
【バーナス・レーベル】
・身体能力向上
・対象者5人まで付与可能
・自分に付与可能
詠唱式
【我は望む 汝らが燃え尽きぬことを 約束しよう 我の魔法をもって全てを守ろう】
《スキル》
・
魔法効果超上昇
レフィーヤは【アルテミス・ファミリア】に所属します。ベルのライバルであり、いい同僚になるはずです。次回詳しく書きます。
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僕の武器
少し長めにやってるので、よろしくどうぞ!
「あの子素晴らしいわね」
葡萄酒を片手に王座にいるのは、絶世の美女。この姿を見るだけで、男であろうがましてや女であろうが、魅了される絶世の美女である。引き引き締まった体に、出るところは出て、まさに理想の女性。肩まで出ている、銀髪は美しい。
この女性は固執する男性はいなく、退屈な日常を過ごしていた。けれど退屈を凌げる白き魂を携えた男の子を見つけた。その女性の名はフレイヤ。美の女神である。
「主神はアルテミスね。少々厄介だけど、必ずあの子を私がもらうわ」
フレイヤは葡萄酒を一口のみ、全てを魅了する笑みを浮かべた。
******
「うわああああッッ!!」
悪夢でも見ていたような気がして、叫びながら僕は起きる。体は完璧に治っている。少々筋肉痛になっているが、動けない程ではない。
確か僕は豊壌の女主人から抜け出して、悔しくてダンジョンに向かって、それから自暴自棄になって確か。
「起きましたか!アルテミス様!起きましたよ!」
目の前で笑顔で迎えてくれるのは昨日話したはずの、レフィーヤさんだった。辺りを見回すとやっぱりここは僕たちのホームだった。あの後記憶が曖昧で覚えてないんだよね。確か『ウォーシャドウ』を倒したところまでは。
******
見た目は影。全身がくまなく真っ黒である。十字の形の顔をしている影である。新米殺しと言われるモンスター。
ベルは短刀を引き抜き、ウォーシャドウと対峙する。怯えを押し殺し一歩足を前に。こんな場所で立ち止まってる場合じゃないと一歩前に。
「ああああああああああッッッ!!」
突撃する。ウォーシャドウの攻撃は長い腕にある鋭利な鉤爪状の指である。その攻撃にまともに触れれば今のベルでは四肢はバラバラになるだろう。触れたら
鋭利な敵の腕をしゃがんで避け、短刀で急所を突く。一体ウォーシャドウを倒すことに成功する。だが一体、それだけなのだ今視界に映るだけでも20は超えてる。これを一人で処理するのは流石にきついと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「【バーナス・レーベル】!!」
詠唱が鳴り響いた。その瞬間ベルの体は軽くなり力が溢れてくる。まるで自分の体じゃないみたいに。ベルは詠唱の声が聞こえた方に振り向くとそこにはレフィーヤ・ウィリディスがそこにいた。ベルはモンスターに向き直し短刀を構える。
「行きなさい!ベル・クラネル!」
声が聞こえた、目の前にいるモンスターに勝てと、冒険者という名前に恥じない闘いをしろと。彼女は目に涙を溜めながら叫ぶ。彼の戦いに打ち震えながら彼女は叫ぶ。
「はい!」
地面を粉砕し、爆速する。
******
「お願いですから手を出さないでください!」
「え?」
レフィーヤはベルから目を離さずに後ろにいるアイズとリヴェリアに話しかける。アイズから疑問がこぼれ落ちる。それもそうだ、今の状況はベルが劣勢負ける可能性のほうが高いのだ。ましてや冒険者になって日が浅い駆け出し冒険者、アイズやリヴェリアは分かっていた。
「見てわからないんですか!?あのヒューマンは強くなりたくてここまできてるんです。酒場の時の話を聞いて、彼は悔しそうに唇を噛み締めてました」
レフィーヤはけれどと付け足した。
「彼はあの
アイズとリヴェリアは見る。男をかけて戦う冒険者を。命を賭して戦う冒険者の姿を。そんな冒険者はそうそういない。危なければ逃げるし、死ぬ可能性があるなら生きる可能性に下がりつく。そんな冒険者が大半だろう。そんな姿をレフィーヤは
【今の自分を超える】
すなわち強さ。強くなりたくて、誰かを守りたくて強くなる。強さを手に入れたいから。
「なんだかわかる気がするな」
アイズがベルの死闘を見ながらそう呟いた。レフィーヤもリヴェリアもその顔を見て驚いたが、リヴェリアだけはふっと笑いベルとレフィーヤに背を向ける。
「帰るぞ、アイズ。その男は彼女に任せとけ私達の出る幕ではない」
「うん、そうだね。えっと.......」
アイズが彼女の名前を呟こうとしたときに、彼女の名前がわからずに戸惑っていたところ、レフィーヤはベルから一向に目を離さずに、こう答えた。
「レフィーヤ・ウィリディスです、これから彼のファミリアに入る偉大な一員です」
「そっか、じゃあ彼のこと頼んだよ、レフィーヤさん」
「はい、任されました。アイズ・ヴァレンシュタインさん」
「こんのおおおおおおおおおッッッ!!」
アイズとリヴェリアがダンジョンから去るなか、ベルはモンスターを着々と倒し進めた。レフィーヤは彼に支援魔法が切れないように、
******
「ずいぶんと長いお休みだったみたいだな、ベル」
「神様」
昨日のことを思い出そうと、考えていると神様が部屋から現れた。神様はいつも通りの服装ではなく、ドレスに着替えていた。あの服はいつも神様が奮発して買った服。「どうだ、これでパーティーに呼ばれたときに困るまい!」とキメ顔しながら、ぼくに自慢してきた服だ。
「いい報告が二つある」
神様は指を二本立てながら、僕に近づいてくる。僕は神様の顔が近くなってくるので、自分の布団からパッと抜け出して、食卓に座る。レフィーヤさんは元々食卓に座っていた。僕が隣に座ってきたことで、顔が赤くなっていた気がするが、気のせいだと思う。それを見てアルテミス様が頬を膨らませて、若干機嫌悪くなった気がする。
アルテミス様は僕の目の前の食卓の椅子に掛ける。
「まずひとつ目だが、眷属が一人増えた」
「ええッッ!?」
衝撃的な発言で、ひっくり返る。レフィーヤさんに「大丈夫ですか?」と心配されるが、そんな場合ではない!一人僕たちのファミリアが一人増えたんだとそう言われた。僕はすぐ椅子を立て直し、嬉しくなり前なりになって話を聞く。
「そこのレフィーヤというエルフの女性だ。レフィーヤもファミリアを探していたみたいでな、こちらに入りたいと志願してきてな私も拒む理由はないし、むしろ団員が増えることはいいことだ」
僕は仲間になってくれたレフィーヤさんを凝視する。神様が「女性の団員が増えてモヤモヤする」と何か僕に聞こえない声で呟いていたみたいだった。僕は新たに増える団員、レフィーヤさんの手を握る。
「レフィーヤさん!これから、このファミリアを大きくしていきましょうね!」
「は、はい。あ、あの手が.......」
「ご、ごめんなさい!?」
慌てて僕が手を離し、火照ってる顔を伏せる。レフィーヤさんがエルフっていうことでも恥ずかしいし、女の子の手ってこんなに柔らかいんだということでも顔を赤面していた理由だった。
「おいベル何赤面してるんだ!」
「は、はい!すいません!?」
「それにレフィーヤまでなんで赤面してるんだ!」
「し、してません!してません!?アルテミス様も悔しいからって八つ当たりしないでください!」
「く、悔しいって何がだ!私は別にく、悔しくなんて、悔しくなんて!!」
レフィーヤさんと神様が大きく言い合いを始める。レフィーヤさんはギュと自分の片手剣を握りながら、強く言い返し。一方神様は、神様らしくなくって、レフィーヤさんに指を指しながら文句を言っていた。
「くっ、あはははははッ!!」
神様もレフィーヤも言い合いをやめて僕の方を見て首を傾げた。何を笑っているのかとそういう目をしていた。僕はみんなの疑問を晴らすために神様たちに向き直って、言葉を口にする。
「僕たちのファミリアも一歩前進したなって思ってすごく嬉しくて、僕と神様だけだとこんな言い合いもできないから、一人増えてこんなに変わるんだってそう思って嬉しくなっちゃったんです」
神様は納得したようで、レフィーヤさんは目を伏せ笑顔でうなずいていて、神様は笑顔で僕をしっかり見つめてくれた。その瞳は海原のように透き通っている蒼目をしていて、とても優しい目だった。
「ああ、そうだな私たち二人の時は考えられなかったことだ。けれどまたいつか一人一人増えて、前へ前へ進んでいくんだろうな、こうしてファミリアが大きくなっていく」
神様は僕の手を握り優しく微笑んでくれる、まるでその姿はまるで聖母のようで、僕の母親のようだった。
「きっとこの先も何かにぶつかって苦しいことや逃げ出したくなる時や絶望することだってあるだろう。そんな時は私を思い出してほしい」
僕の手を両手で神様は包み込んでいたが、左手を僕から離しレフィーヤを今度は包み込む。レフィーヤさんも手を握られて改めて実感したと思う。僕たちはファミリアなんだと
「私はお前たちの帰りを待っている。だから必ず帰ってきて優しい子供達」
「「はい!アルテミス様!」」
僕たちはこの日本当のファミリアというものに触れることができた気がする。きっとこの先も僕が死ぬまでこの光景を忘れることはないだろう。
「そうだ、あと一つの朗報だが」
神様は僕たちから手を離し人差し指と薬指を立てる。
「ヘファイストスから武器を作ってもらえることになった」
「「へ?」」
「えええええええええええええッッ!!」
僕が大声で騒ぐと、神様は耳に手を当て不快そうにしていて少し罪悪感があったが、そんなことは気にしてられなかった。だってヘファイストス様の武器といえば、超がつくほどの高級品で第一級冒険者が使うような武器のものを僕が手に入れるなんて......
「レフィーヤ私のファミリアに急に入ってきたから、用意できなかったすまない」
「気にしないでください、突然入ってきたんですから用意されてなくて当然です。私にも立派な武器がありますから」
レフィーヤさんはそう言って自分の左の腰に下げている剣の鞘を触る。レフィーヤさんのその剣は前から持っていて、大切なものということが改めてわかった気がする。
「ヘファイストスが武器を用意して待っている。ヘファイストスのところに行くぞベル、レフィーヤ」
「「あ、はい!」」
僕と声がさなった方を見る。レフィーヤさんも僕の方を見ていた。そうだった【アルテミス・ファミリア】には団員一人ではなくて、僕は家族が一人増えたことを改めて実感して、レフィーヤさんと目があってしまって僕もレフィーヤさんも吹き出してしまっていた。
******
「ふーんこれがアルテミスの眷属ね〜」
「あ、はい!ベル・クラネルと言います!あ、あの僕のために武器を作ってくれてありがとうございます!」
「あぁ〜それはもういいのよ、アルテミスから何度もお願いされたからね」
「ヘファイストス!あまりそのことを思い出せないでくれ!」
僕たちはヘファイストスの工房に向かい、今現在ヘファイストス様が出迎えてくれている状態だった。工房は鍛冶屋独特の鉄の匂いがして、部屋にはヘファイストス様が作ったのであろうか剣やら防具などが飾ってある。薄暗い部屋であったがここで作業する部屋ではないと感じた、鍛冶に必要な竃がなかった。
「それで肝心の武器なんだけどね」
僕が期待を膨らませ、ごくりと喉を鳴らすとヘファイストスは後ろ机に置いてある紫色の袋を持ち上げる。その袋の大きさから見て剣だろうかはたまた違う武器だったり、とそんな考察しているとヘファイストス様が僕に手渡ししてくれる。ずっしりとした重みで僕はどんな武器なんだろうと期待がもっと膨らんだ。
「見てごらんなさい」
「はい」
僕は紫の包みを床に置き、僕は正座して開封する。紫の包みを凝視しながら包みを開ける。そこに入っていたのは刃から柄まで漆黒の剣だった。よく見ると刃の方に色々な筋が入って僕は不思議に思った。
「その剣はね、あなたと共に成長する武器なの」
「僕と一緒に成長.......」
「そう、あなたが強くなればなるほど、その武器も強くなるの。まあ鍛冶師からしたら邪道だけどね」
ヘファイストス様が僕に視線を向けていたのを外し、チラッともう一人の眷族レフィーヤさんのことを見つめる。レフィーヤさんはヘファイストス様と目があって少し緊張していて、その姿を見て少し微笑んでしまった。
「ふーん、もう一人眷族できたのね、アルテミス」
「ああ、私の二人目の眷属レフィーヤ・ウィリディスだ」
「ってちょっと待って!その武器見せて!」
「え、あ、はい」
ヘファイストス様が慌てた様子でレフィーヤさんの剣を抜刀して、隅から隅まで見る。その武器は美しい銀色に輝いていて、柄の部分は金色で装飾されており貴族が使うような武器で、僕の武器よりは軽装な剣だった。
「これすごい業物ね、誰が使ったの?」
「誰っていうのは私にはわからないんですけど、これ義父のものなんです。オラリオに行くなら持って行けって代々から受け継がれているようなんですけど私がそんなものもらっていいんだろうかって思ってるんですけどね」
レフィーヤさんは苦笑いで誤魔化していたが、少し表情が悲しそうだった。ヘファイストス様はレフィーヤさんに剣を返してレフィーヤさんは、剣を鞘に収めた。
「ベル、その武器の名前なんだけどね」
「あ、はい!」
「『
「『黒幻』」
「まあ、うちの某鍛冶師が呟いた名前を改名した名前なんだけどね、最初に名前聞いた時は黒ピョンとか言ってて、驚いたけどね」
ヘファイストス様は思い出し笑いしたみたいに、クスクス笑っていた。でも流石にこの武器が黒ピョンって名前だったらすごく残念であんまり愛着持たなかったかもしれない.......
「帰ったらアルテミスの恩恵刻みなさい。そうしたらその武器はあなたと共に成長していく武器になるわ」
******
「ベル、まだダンジョンから帰ってきて、まだ恩恵を刻んでなかったな帰ったら武器と一緒に刻もうか」
「はい!お願いします!」
僕と神様とレフィーヤさんでヘファイストス様の工房を抜け、ホームに戻っていた、僕の背中には『黒幻』があり、落とさないように肩に紐でぶら下げていた。僕はホームに帰ったらレフィーヤさんに聞きたいことがあることを思い出していた。
豊壌の女主人について、皆さんははエプロンをして忙しそうにしていた、夜に向けての開店準備もあるのだろう、神様も夜からバイトに入るらしい。ホームに着いて僕はレフィーヤさんに問う。
「レフィーヤさん」
「はい?何でしょう?」
「前に豊壌の女主人で聞きそびれたことなんですけど、相談って何だったんですか?」
「ああ、そのことですか、いい神様を知らないかっていう話でした」
「それでも同じ
「そうですね、聞いてくれますか?」
レフィーヤさんが真剣な眼差しで食卓に座ると、僕と神様もレフィーヤさんの対面の食卓に座った。
「私はラキアにいたんです」
ベル・クラネル
Lv.1
力 : I 82→G 212 耐久 : I 20→H 184 器用 : 73→G 207 敏捷 : H 127→F 342 魔力 : I 0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・早熟する。
・懸想おもいが続く限り効果持続。
・懸想おもいの丈により効果向上。
原作よりも多くの敵を倒したので、経験値が多めです。そしていよいよ怪物祭ですね。
次回はレフィーヤの過去と怪物祭です
レフィーヤの過去はそんな大層なことは考えてません、次回は怪物祭がメインの話になります。
ちょっとしたことを考えているので、2話構成になる予定です。
次回もいつになるかわかりませんが、よろしくお願いします。
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私はレフィーヤ・ウィリディス
そして次はモンスターフィリアのお話と書いたんですけど、レフィーヤの過去を書いていたら筆が止まりませんでした。原作とのレフィーヤとは全く過去が違います。絶対こんな人生歩んでません。とりあえず見て貰えばわかると思います。では本編へどうぞ。
村が燃えていた。ゴゥゴゥと音を立てて燃えていた。どこを観ても赤色の景色で、綺麗な緑で囲まれていた村は形もあらず、まっかにそまっていた。匂いも木が燃える匂いだけではなく、人が燃えている匂いもした。はじめての匂いに嗚咽する。今まで隣を歩いていた友達やよく遊びに行くときに果物をくれていたおじさんが燃えていた。私は観てることしかできなかった。
レフィーヤが生を受けてから、8年がたった村の外れの場所に遊びに行った時に、炎龍が現れた。そう炎龍は別に強いモンスターではない。オラリオにいる冒険者ならばレベル3程度の冒険者ならば、一人でも倒すことができる。けれど神の恩恵は私たちにはない、大抵のモンスターなら出てきてもこの村の連携力ならば奇襲されたとしても、全て撃退することもできる。
けど炎龍は違かった。一瞬だった。連携する前に木の上で見張りが声を荒げる前に、燃やされ絶命した。絶命した人を見て叫び声さえも、叫声に変わった。連携がないエルフなど一瞬だった。燃やされ、爪で引き裂かれたものもいた。私は村はずれから帰ってくると、世界が変わっていた。全て私の視界が赤に変わった。現実を受け入れられなかった。
「は、ははははははっっ」
乾いた笑いが出た、こんな状況なのに笑っていた。なんで私は膝を落として、笑っているのだろう。なんで体は動かないのだろう。そんな笑っている自分が気持ち悪かった。喜んでいるのだろうか?感情がぐちゃぐちゃでわからなかった。そして何故か口元はしょっぱかった。
私のもとには希望ではなく絶望が現れた。炎龍だった。まだ死んでいない獲物がいるとこちらに向かってきた。死んだほうが楽なのだろうか、そんなことを心の中のどこかで思っていたからこそ、体は動かないし、心は言うこと聞いてくれない。
『ゴオオオオオオオオオオッッ!!』
「レフィーヤ!!!!」
「え?」
炎龍が飛びかかる前に、誰かが私を押した。体が跳ねて炎龍が私の体を通り抜ける。けれどグシャッと誰かの体が吹き飛ばされる音が聞こえた。そして、血だらけで宙に舞っていた同胞が落ちてくる。。誰だろうと朧げの目で見つめる。
父だった。私の一番身近にいた人だった。いつだって仕事に帰ると私の頭をゴツゴツの手で撫でてくれていた父だった。レフィーヤがもし結婚するときは、絶対私に紹介してくれと言ってくれていた父だった。孫の顔が見たいとぼやいていた父だった。
「お父さんッッッッッ!!!!」
「レフィーヤ!!走りなさい!!」
私が父の元へかけようとすると、聞き覚えのある声だった、母だった。私は「どこへ?」と尋ねると母は険しい顔で私に告げた。
「外に馬を止めてあるわ!それに乗ってラキアに向かいなさい!私の知り合いがいるの、きっと彼ならあなたを引き受けてくれるわ」
「なら、お母さんも早く。お父さんを背負って馬に乗ろうよ」
お母さんは私の顔を見て、唇をかみしめた。血が出るほど、噛み締めていた。お母さんはそのあと険しい顔をやめ、ゆっくり微笑んだ。
「レフィーヤ、前にも言ったでしょう。父さんと母さんはここで一生暮らしていくって、だから母さんはいけないよ」
「私一人で行くってこと?」
「ええ、レフィーヤはいい子でしょ?なんでも私のお願いを聞いてくれた。これが私の最後のお願い、生きて」
「いやだよ........」
「レフィーヤ......」
「いや.........」
「レフィーヤ......」
「そんなお願い」
「お母さんの最後のお願いなのよ、レフィーヤ」
「................それが最後のお願いなんだね、お母さん」
「ええ」
「うん、わかった」
「いい子ね、レフィーヤは」
私は何も持たずに駆け出した。なんでこんなお願い聞いたんだろうと今でもわからない。けれど逃げ出したかったんだと思う。きっと私は弱くて、お母さんの最後まで見てしまったらきっと私の心は立ち直れないから、私は生きる理由を与えてもらった。
ならば、ならば、私は生きなければ。
それで、ラキアに行ってそこで少し成長するの、それでオラリオに行くのもいいなぁ。冒険者になって強くなってまた村に戻ってくるの。それでこれだけ強くなったよって、村のみんなに自慢してチヤホヤしてもらうの。それでいい人がいたら、お父さん真っ先に紹介して、お母さんは「あらあら」とか言いながら、まじまじ見るんだと思う。
そんな想像をしながら、村の外へ向かっていく、後ろをふと振り向くと、夜空に炎龍が何か手足のようなものを口からはみ出しながら、去っていくのが見えた。
「あれは確か、お母さんのブレスレットだっけ?」
大きくなったらくれると、私に言ってくれてたものだった。それも炎龍にとられてしまった。私は無表情のまま、村の外に止めてあった馬に乗る。4回目くらいの騎乗だが、難なく走ることができた。少し走ったあと、喉が渇いたので私は泉に止めて、喉を潤そうと泉に近づく。
水面に移ったのは、目が腐った女の子のエルフだった。
「気持ち悪い」
私はそう言って足元に落ちていた、石ころをそのエルフが映る水面に投げ捨てる。そのエルフは消えることなく、ただ水面が波紋を立てるだけだった。しばらくするともとに戻った汚いエルフの完成。
「ねえ、そこにいるエルフさん。なんであなたは逃げてきたの?お母さんとお父さんと村の人を置いて逃げてきたの?..........ねえ?............ねえ?.............答えてよ!!!」
そのまま、崩れ落ちた、声を荒げながら泣いた。
******
「そうか、彼女が生きろと言われたからここにきたのか」
コクリとレフィーヤはうなずく。お母さんの知り合いとはエルフの男性だった。彼は一人暮らしをしていて、鍛治職人だった。ラキアの中心部に位置する彼の家は、外観も立派の家で、すごい家なんだろうとレフィーヤは感づいていた。そして、お母さんに言われた通りにラキアの人に彼の名前を言って、ふらふら彷徨いながらラキアについてから、2時間ほどで彼に出会った。
「そうか、大変だったな。私がこれから面倒を見ることになるがそれでもいいか?」
「はい、こんな私ですけど、よろしくお願いします」
彼はレフィーヤを最初はかわいそうだと思った。けれどレフィーヤの話を聞いて、彼は生きてほしいと思った。彼女は1日で家族と故郷を失った。そして母親に生きてほしいと願われたから、その願いを果たそうと動いている。こんな小さな子なのによく絶望せずに、ここまで来れたとむしろ称賛している。
「私はね、レフィーヤ。君に生きる目的を持ってほしい」
「私は、お母さんに生きてと言われたから私は生きるんです」
「違うよ、それは君の意思ではない。答えを与えてもらった事に過ぎない、ただの過程なんだよ」
「過程、ですか?」
「ああ、君のお母さんは君に生きる目的をくれる過程に過ぎない。だからこれから探していくんだ。ゆっくりでいい。足掻いて、苦しんで、悩め。きっと君の心のどこかに、まだ生きる理由が眠っている。そうでなくては、体は、心は動かない」
彼はレフィーヤの手を握った。まるでレフィーヤの心に熱を灯すように。レフィーヤは目に少しだけ光が生まれた。まだ私には私が残っていると、肯定してくれた人がいたからだ。まだレフィーヤは生きていると教えくれたからだ。
「冒険者になるでもいい、私の鍛治師としての技術を受け継ぐでもいい、どこかの王子様と結婚するでもなんでもいい。見つけるんだ、いや探せレフィーヤ。その答えは君の心の中にある」
そして彼はゆっくり彼女を抱きしめる。腐った目をして、絶望に悶え苦しんでいる彼女を。
「今は泣いてもいい、だって君は女の子なんだから」
彼は耳元で囁いた。そしてレフィーヤもギュッと彼の大きい背中に手を回して、力を込めた。
「私、私逃げちゃったんです!!お母さんとお父さんと村の人を置いて!私だけ助かった、なんで私だけなの?なんで......なんで!!」
彼はうんうんと相槌をしながら、泣きじゃくる彼女を壊れないように抱きしめる。
そして泣き止んだレフィーヤを抱きしめるのをやめて、彼は顔をゆっくりと見る。そしてにっこり笑い、洗面台にある手鏡を持って、彼女に見せる。写っていたのは、少しだけ目に光を宿した女の子だった。もう完全に腐ってはいなかった。
*******
レフィーヤはラキアを納めている主神に恩恵を刻んでもらい、剣の稽古始めた。彼が鍛治師であることもあるが、彼は昔オラリオで冒険者をしていた。けれど自分には剣の才能がないからと、やめてしまったのだと言う。そしてレフィーヤには才能があった。それを見て彼は君ならいい剣士になれると言われて、レフィーヤは訓練を始めた。
剣を振っていくうちに何か掴める気がしたから、彼女は剣を振り続けた。もちろん故郷で習っていた魔法も忘れずに。そして4年目でレフィーヤは念願のランクアップを果たした。さらに3年がたったある日、レフィーヤは義父にあることを伝えた。
「お義父さん、お話があるんです」
レフィーヤは朝ごはんの準備をしている、彼に話しかけた。レフィーヤは食卓に座り、真剣な眼差しで彼に話しかける。
「うん?なんだい?可愛いレフィーヤのためならなんでもしちゃうぞ!何がほしいんだい?お菓子かい?それとも玩具かい?なんでも買ってあげちゃうぞ!」
「お義父さん、私を好きなのはわかりましたから!!ちょっと落ち着いてください!!」
レフィーヤは顔を赤く染めながら、叫んだ。彼は振り返って、レフィーヤの真剣な顔を見て、彼はゆっくり食卓に座った。
「それで?話ってなんだい?」
「はい、お義父さんは私の生きる理由を見つけてほしいと言ってくれました」
「うん、確かに言ったね」
「はい、それで決めました。私はオラリオに行きます」
彼はちっとも驚かなかった。初めて彼女の生きる目的を知ったのに、まるで知っていたかのように、彼はうんとうなずいた。
「それがレフィーヤの答えかい?」
「はい、私は冒険者になります。お義父さんと剣の訓練をしました。それを生かして冒険者になってきます」
彼はクスッと笑い、レフィーヤの目を見た。彼は笑顔だった。
「それがオラリオに行く理由かい?」
レフィーヤはふるふると首を横に振る。目を瞑り深呼吸してから言葉を紡ぐ。
「あの炎龍はわたしの亡き故郷で移住していると聞きました。あのモンスターを一人で倒すことがわたしの生きる理由です」
「そうか、君の生きる理由を聞けて満足だよ」
彼は立ち上がり、奥の工房へ入っていく。そしてとても大きな古い木箱を持ってきた。それを下に置き、ちょいちょいとレフィーヤを手招きする。レフィーヤも従うように、食卓から離れて彼の真正面に座る。
「これは?」
「わたしの家に代々伝わる、代物だよ」
古い木箱を開けると、白銀の剣が出てくる。古い木箱から、そんなものが出てくると思っていなかったレフィーヤは驚いた顔をする。金色の装飾をされた剣の柄に、窓から差し込む太陽にキラキラ白く反射する宝石のような、白銀の刃。
「これを持って行きなさい」
「え!?これはだって代々お義父さんから伝わるものだって、大事なものなんですよね?」
「ああわたしの命よりも大事なものだ、毎日これだけは風邪になっても、腕が骨折しようとも毎日手入れはしていたさ」
「だったらなおさら!?」
「けどねレフィーヤ君は一つ勘違いしてる」
レフィーヤはその言葉の意味がわからなかったので彼の顔を見る。彼は優しい笑みでレフィーヤにこう言った。
「命よりも大事なものがもう一つ増えたんだよ?」
「おと、う、さん」
レフィーヤは涙を目にためていた、声も上ずり、うまく言葉を出せなかった。けれど彼には伝わっている、レフィーヤの気持ちが。
「レフィーヤ、行ってきなさい。そして炎龍を倒したあと、私に聞かせてくれ、次君が何をやりたいのかを」
彼の目が光ってるようにレフィーヤには見えた。けれどこれは自分が流している大粒の涙のせいかもしれないと思っていた。レフィーヤはその差し出された剣を受け取り、彼に深々と頭を下げる。
*******
「忘れ物してないかい?」
「うん!大丈夫です!このレフィーヤ・ウィリディスに限って忘れ物なんてありませんから!」
「うんうん、レフィーヤはそうでなくっちゃ!」
「..........お義父さん今までありがとうございました」
「違うよ、そんな言葉は許さないよ」
「え?」
「またね、レフィーヤ」
「ッ!!!........またね!お義父さん!!」
「あっ、ちょっと待った、レフィーヤ」
「え?なんですか?忘れ物でもありました?」
「うん、ほらこれ」
彼が持ってきたのは7年前の手鏡だった。それして手鏡に映し出されていたのは、レフィーヤだった。そして7年前見た顔は酷く淀んでいて、今にも死にそうな顔をしていた。けれどそこにいたのは、綺麗で山吹色の髪を一つに束ね、決意に満ちた綺麗な目をしていたエルフだった。
「いい顔になった」
そしてレフィーヤはオラリオに向けて一歩歩き出した。もうあの頃絶望していたレフィーヤはいない。昔のように理由を与えられて生きていたレフィーヤではない。これが彼女。正真正銘のレフィーヤ・ウィリディスが誕生した。
これが彼女の過去です。少し重いでしょうか?家族は殺され、復讐者とならなかったのは彼女の根っこにある優しさだと思います。けれどモンスターによる恨みは絶対にどこかにあると思っています。だからこそ敵討ちという選択肢が出ました。そしてベルと出会います。彼女はベルという少年に出会って何か変わるでしょうか、きっと変わると断言していいですね。
そして今作のレフィーヤは原作とのレフィーヤとは性格が違います。根っこはおなんじですが、臆病な性格はなく、ぐいぐい強気で行ける女の子です。そんな彼女は僕は見てみたいと思い、こんなお話にしてみました。
そして次回はちゃんとモンスター・フィリアに行きます。前半後半にわかるでしょう。多分更新日は未定です。お待ちいただいたら幸いです。ではまた会いましょう。
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僕の初めての
モンスターフィリアを長くするわけにはいかないので前編後半で締めさせていただきます。ベルとアルテミスとレフィーヤのイチャイチャは外伝として出します。いつかはわかりませんが。
とりあえず前編です!どうぞ!
レフィーヤさんの過去を聞いた。僕は泣いていた。きっとレフィーヤさんは悩んで、足掻いて、そして決断した。僕なんかよりもずっと大人でなによりも残酷な世界をこの目で、いや体でわかっていると思う。
「レフィーヤさん.........」
「すいません、なんか辛気臭い話しちゃって......」
レフィーヤさんが宝石のように光っていた瞳を指でぬぐい、元気に振る舞う。多分レフィーヤさんは炎龍を倒すまで、いやこの過去をずっと忘れることはできない。けれど........
「レフィーヤさん!」
「はい?なんでしょう?」
「僕はレフィーヤさんが炎龍を倒すところをこの目で見てみたいです」
レフィーヤさんは驚いた顔で僕を見つめる。僕はこの言葉だけを伝えればよかったのに、僕の口は止まらなかった。
「だから.........僕と一緒に強くなりませんか?............って何言ってるんだ僕!当たり前のことですよね!?ごめんなさい!変なこと言って!」
レフィーヤさんは僕の慌てる姿を見て、一呼吸おいて笑い出した。僕はその姿を見て呆気に取られて慌てるのをやめていた。
「ンンッ!...........そんなこと言ってくれる人がいて嬉しいです。ラキアにもそんな人いなかったので」
「そ、そうなんですか」
ラキアという国では結構大きいとさっきレフィーヤさんの話で察したが、そのくらい大きい国ならば強くなろうとする人がいるのでは?と疑問に思ってしまった。
「だからあなたみたいな人と出会えてよかったです」
眩しいくらいの笑顔で呟いた。目が腐っていたと言っていたレフィーヤさんがいたらしいが、そのレフィーヤさんがどこに行ったのか教えて欲しいくらいだ。レフィーヤさんの目標は炎龍を倒すこと、倒したあとはどうするんだろうか、ラキアに帰ってしまうのかな。なんて僕は考えてしまう。
レフィーヤさんは「それと」と付け加え、口を開く。
「同じファミリアなんですから、レフィーヤでいいですよ、私もこれからベルって呼びますから敬語もいらないですからね」
レフィーヤさんに笑顔でそう言われた、ギュッと自分のズボンを握って、僕は勇気を持って言葉を口にする。
「わかったよ、レフィーヤ」
「はい、よろしくおねがいします。ベル」
******
ダンジョン探索もある程度進んできた。レフィーヤがいることで少し手こずるモンスターも軽々倒せるようになってきたし、何よりレフィーヤの戦い方は見ていて勉強になることがわかった。
「剣の振り方はこういう動きの方がいいです。ああ、違いますベル!こうですもっと脇を閉めて、そうそうそんな感じです」
僕が『黒幻』を抜いてウォーシャドウと戦っている時、レフィーヤは後ろから指導をしてくれていた。
レフィーヤは魔法も使えるのに主に戦っているのは、魔法ではなく剣術。僕はそれを見ていてすごいと思っていた。レフィーヤは魔法が二つある。よく使ってくれる、援護魔法。そしてもう一つが。
「『アルクス・レイ』!」
眩い光と共にウォーシャドウを焼き消した。彼女の唯一有してる攻撃魔法がこの魔法だった。モンスターが多少いる時や僕が前線を張ってくれてる時に使ってくれる魔法。並行詠唱は今練習中らしい。
「ふう、そろそろ切り上げてアルテミス様のところに戻りましょうか。お腹も空きましたし」
「うん、そうしようか」
地上では日も落ち始めているので、僕たちはダンジョン7階層をから地上へ向かう。地上へと抜け出す道はいつもこの時間は人は混んでいて、多くの人がダンジョン探索をやめ地上へと帰還する。
そして僕とレフィーヤが見たのは檻に入れられたモンスターだった。それも何体もモンスターの入った檻達があり、それがガタガタと動いていた。レフィーヤは「ヒッ!?」と声に出して驚き、僕は少しギョッとしてしまった。
「レフィーヤあれ何かわかる?」
「し、知りませんよ。ベルの方が長くオラリオにいるんですから私が聞く
「うっ、それを言われると....」
僕とレフィーヤは檻に入ったモンスターを気味がりながら地上へと帰還する。僕は帰ったら神様に何が起きるのか聞いてみることにした。
******
神様はシフト終わったので、お風呂に入り、その間僕たちはホームで夕飯を済ませていた。それで僕はシフト終わる寸前に僕は神様に先ほど見たものを聞いていた。
「あれは、
「「
神様は頭をタオルで髪が痛まないように優しく拭いていた。神様は寝巻きに着替えていて、いつもの神様の服やバイトの服よりも肌の露出が増えていて、やっぱり何度見ても慣れない。しかもお風呂入ったばっかりだから少し色っぽく......って!神様に何考えてるんだ僕は!?
「【ガネーシャ・ファミリア】主催のお祭りだ。モンスターを調教する姿を見せる催しだ」
「モンスターを調教......なるほど。そのためにモンスター檻の中に入れて地上まで運んでたんですね?」
レフィーヤが顎に手をやり少し考えた後、レフィーヤはポンと手を打って納得のいった顔をしていた。
「私も下界に降りたばかりの身でな、あまり詳しくは知らない。けれど屋台とかを出したりするそうだぞ」
「屋台ですか!僕オラリオに来てからお祭りって初めてなので楽しみです!」
「もういく気満々なんですかベルは......まあ私も楽しみにしてないと言ったら嘘になります」
レフィーヤはそのあとモジモジしだし頬を赤く染めていた。僕に言いたそうな顔で視線を下にして、恥ずかしそうにしていた。そんな姿を見ると僕も恥ずかしくなるからやめて!?
「ベルが誘ってくれるなら、ベルと一緒に回るのもやぶさかではないというかなんというか........」
こ、これは正式なお誘いなのだろうか!エルフの女の子と二人きりで回るなんてこれはお祖父ちゃんがいう『でーと』というやつなんだろうか。いけ、ベル・クラネル!勇気を持つんだ!
「え、えっと.......なら僕と一緒に回ってくれませんか?」
多分僕の顔は真っ赤になってることだろう。その顔を隠すために、僕は下を向いて返事を待つ。こんな誘い方でいいんだろうか......
「しょ、しょうがないですね。断る理由もないですし!」
レフィーヤは軽く唇をとんがらせながら、僕の誘いに乗ってくれた。すると神様は僕たちが座っている食卓に座り僕と神様は向かい合うように座った。しかもドカリと効果音付きで。
「あー私もその日は暇でなー、うむ、暇だな。バイトも休みだし暇で死んでしまうかもしれない。どうするかな。暇だしな!」
チラッチラッと僕の方を気にしながら大きな声で独り言をしていた。多分独り言だよね?僕にほうたまに見てるのは僕に話しかけてるわけじゃないよね?
「えーっと、なら神様も一緒に行きますか?」
「なら?ならだと」
「うわ、めんどくさ、この人」
僕と問いに不満があったそうで、神様は僕にちゃんと誘えと言ってるようで、最後にレフィーヤの本音が神様に届いた。神様の隣にいるレフィーヤの頬を、横に大きくつねっていた。
「レフィーヤが言うな!大体いつ名前で呼ぶようになったんだ!」
「おふあびふあひりあなんふぇふからほうふぇんふぁふぇふは」
(同じファミリアなんですから、当然じゃないですか)
レフィーヤは神様に手をあげるわけにはいかないので、神様の手を掴んでこれ以上引っ張れないように抵抗していた。なんとかこの場を収めようと僕は神様に手を出して、正式に誘いを出すことにした。
「神様、僕と一緒にお祭り回ってくれませんか?」
神様はレフィーヤの頬を引っ張るのをやめ、その間にレフィーヤが逃げ出し、赤くなった頬をさすっていた。神様はクスッと笑ったあと僕の手を取ってくれた。
「ああ、一緒に回ろう」
神様は太陽のような笑顔で僕に微笑みかけてくれた。そのとき僕はドキッとしてしまった。やっぱり神様はやっぱり魅力的な人だ。怒ると怖いけど、こんなに可愛らしい笑顔ができるんだ。
「だがな、ベル」
僕の手を離し、ダンッと食卓を叩き食器が跳ねた。ピキリと空気が変わる。
「まず主神である私を誘うのが当然ではないのか?なぜ二人だけで回ろうとしていた」
「ヒッ!?ごめんなさいぃ!?」
目も顔も笑顔ではなかった。単純に怒っていた。た、確かに僕が悪いけどそんなに怒ることですか!?
そのあとすぐに落ち込んだ表情で唇をとんがらされた。
「私が勝手に除外されているのは、寂しいぞベル」
「か、神様」
そういえばまだ住んで1ヶ月も経ってないけど、少しは神様のことをわかった気がする。いつもカッコいい神様の反面、女の子の反面もある神様だった。神様は甘いものも好きだし、可愛いものも好きだったりする。今もこうやって拗ねたりしているのだから。
「ごめんなさい神様。決して誘いたくないから言わなかったわけじゃないんです。神様いつも忙しそうだから、何か予定がまだ詰まってるのかなって思ってしまって、それで少し誘いずらかったんです」
「それでも強引に誘ってくれたらすごく嬉しいと私は思う........特にベルにならな」
「か、神様......」
「ベル.........」
「ちょっと!二人だけの世界に入らないでください!!私も
レフィーヤが食卓を先ほどの神様みたいに叩く。僕は無意識のうちに神様と見つめ合っていたみたいで神様の顔が近かったので慌てて退く。神様も「すまない!」なんて慌てて後ろは引いて行ってしまった。少し僕と神様は気まずい雰囲気になり、この空間に沈黙が訪れ、無理やり僕が会話を繋げてなんとか気まずさから脱出した。
******
都市が騒いでいた。比喩ではない。実際に
そしてベルはこの祭りの温度に圧倒されていた。ベルは山奥の田舎で住んでいたためこんなに人が集まってるため圧倒され、アルテミスはむしろ圧倒というか興奮の方が近い、天界に降りてきた愛する下界の最初の祭り、アルテミスは現在「あれはなんだ!!この料理はなんだ!!」と騒ぎ立てながら出店を見ている。レフィーヤはというとラキアの祭りを何度も経験してきたので、それほど驚いてはいなかった。きっと故郷で暮らしていれば、ベルのように圧倒されたに違いないが。
「ベル!!レフィーヤ!!早く回ろう!せっかく私が休みをもらったのにお店の前で立ちすくんでいたらもったいない!早く行こう!」
「うわわわわっっ!?か、神様引っ張らないでくださいぃ!?」
「あ、待ってください二人とも!!」
興奮気味のアルテミスに手を引かれて、慌てるベルと置いてかれるレフィーヤを豊穣の女主人から眺めている人物がいた。手を腰におき、苦笑いしながら見つめている。ミアと羨ましそうに指を加えるシルとなんの表情もしないリューが見つめていた。
「あの神は働いている時はすごい威厳が高いんだけど、こういう祭り行事には弱いのかね、この先もオラリオには祭り行事あるから働いてもらわないと困るんだが」
「ミア母さん。あれはきっと興奮してるんですよ、ベルさんと一緒にいるから多分とっても興奮してるんです。私も同じ立場ならはしゃいじゃいますよ」
「ならばシルも休みをとっていけばよかったではないですか。クラネルさんなら歓迎してくれるでしょう」
「バカ言ってんじゃないよ!これ以上あんたらが減ったらだれが料理を届けるっていうんだい!あの神のかわりにお前たちには倍働いてもらうよ!いいね!!」
それだけ言うとミアは厨房の中へと戻って行った。シルさんは「はあっ」とため息をつき皿洗いに戻る。リューもシルと一緒に皿洗いの手伝いをしに行く。そして猫二人は「横暴ニャ!?絶対あのポンコツ神帰ってきたら、
と笑っているとそのあとすぐミアが現れて、タンコブをつけて接客することになる。
******
「神様、食べ過ぎじゃないですか?」
「祭りなんだ、別にいいだろう。それに神は不変の存在だどれだけ食べても太ることはない。構わないだろう?」
「ほんと、神様って羨ましいです.......」
ベルたちは屋台でたくさん食べ物を買ったので、(主にアルテミス)人がいない場所で座りながらご飯を食べていた。
ベルが食べ過ぎのアルテミスを少し心配そうに注意し、アルテミスはイカ焼きとかクレープとかジャガ丸くんなどなどを食べ、レフィーヤはアルテミスからもらったクレープをハマっと頬張りぼやいた。
次の瞬間アルテミスは短剣を構える。その方向はダイダロス通りにつながる細路地。ベルとレフィーヤはギョッとし細路地を見つめる。しかし何もいなく暗がりの路地が続いてるだけだった。
「ベル、レフィーヤ。この先にモンスターがいるぞ」
「「ッ!?」」
アルテミスは短剣を収めると、ベルとレフィーヤの顔を見る。ベルとレフィーヤはアルテミスの口から思いもよらない言葉が出てきてギョッとしている。
「ほ、本当にモンスターだったんですか?」
レフィーヤが恐る恐る尋ねると、アルテミスはコクンとうなずきベルとレフィーヤはゾッとする。この先にはダイダロス通りといわれる民家が広がっている。けれどダイダロス通りは広大な上に道が入り組みすぎている。まるでダンジョンを彷彿とさせるような場所であった。
「この先は民家がある。
アルテミスは今見たものの考察を落としていく、アルテミスの言うとうり
「ベル、レフィーヤ。お前たちは戦える者たちだ。ならばお前たちは市民を守ることができる。ならばお前たちはどうする?」
「「当然やります!」」
「それでこそ私の眷属だ」
ベルとレフィーヤの強い意志を聞いて、アルテミスはにっこりと笑い細路地に向き合う。アルテミスが先頭で先は進んでいく。
******
「随分と進みましたね」
「モンスターと合わないってすごく不思議じゃないですか?」
ベルたちは先へと進み、ダイダロス通りにもう入っていた。アルテミスが先頭で歩きその後ろを護衛としてベル、レフィーヤが守っている。いまだモンスターの気配はない。
だが広場にでるとそれはいた。
『アァァーーーーーーーーーーー!!」
「..............」
「モンスターが共食い!?」
「ウッ..........!」
緑の木のようにレンガでできている地面を突き破り、下から上まで
「ベル!レフィーヤ!来るぞ!!」
「神様!?」
「アルテミス様!?」
新たな獲物を発見した食人花は左右から出ている触手を繰り出す。アルテミスはその行動をベル達に知らせると短剣を抜いて構えた。全知全能の神だが下界では
「こんのおおおおおおおおおおおッッ!!」
「「ベル!!」」
ベルは黒幻を構え、アルテミスを狙う触手を横からステイタスを込めて全力で斬りつける。だが硬すぎた故に、傷さえも負わせることも出来なかった。なんとかアルテミスにぶつけないように触手の攻撃を横に晒すことができたが、反動がデカい。手が痺れ後ろへ戻される。
だがベルはそのままおかまないなしに、食人花に突っ込んでいく。
「【我は望む 汝らが燃え尽きぬことを 約束しよう 我の魔法をもって全てを守ろう】」
『!!』
レフィーヤはこのままだとまずいと思い、詠唱する。ベルを狙っていた触手がレフィーヤに反応をしめした。まるで魔法に釣られるように。
「レフィーヤ!!魔法を解け!!」
「!?」
レフィーヤは言われるがまま、魔法を解く。すると触手は反応を示していたレフィーヤよりも接近してくるベルに触手を戻す。ベルはなんとか後ろに後退して、なんとか難を逃れる。
「あいつは魔法に反応を示す!!
「そ、そんな!?こんなモンスター相手私たちじゃどうすることも!..........ッッ!!弱音を吐くなレフィーヤ・ウィリディス!!ベルは諦めてないんです!私も!」
レフィーヤは自分の頬を叩いて気合を入れたあと、レフィーヤはベルについていくように、前へかけていく。だが戦力は歴然。Lv.1のベル、Lv.2のレフィーヤ。しかもベルに至っては神に恩恵をもらったばっかりの半人前。レフィーヤでさえも、モンスターとの経験不足。そのため懐に入ることすら許されない。触手の攻撃も見切ることも出来ない。ベルは攻撃がかすっただけで吹っ飛び、足に力を入れないと立つことさえも出来ない。勝てない、このままでは蹂躙される。
アルテミスは焦った。いざとなれば
だからこそ今アルテミスは決断を迫られている。アルテミスが
さあ、今こそ決断を、さあ!決断を!
ーーーーー私は.........私は!!ーーーーーー
「どりあああああああッッ!!」
「「「!?」」」
瞬間食人花が吹き飛んだ。横から咆哮に似た声と共に横にしなる。その正体が【ロキ・ファミリア】所属。【
「かっったああああああッ!?何これ!?」
ティオナは瞳に涙を浮かべて、手をぶらぶらさせていた。アルテミスたちは呆然として、言葉を失っていた。
「ティオナ!先に突っ込むんじゃないわよ!!」
「.........でも無事でよかった」
そのあと家を超えて、天高く着地したのは【
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僕と神様の秘策
「君たち大丈夫?」
ティオナ・ヒリュテさんが僕に手を伸ばす。僕の体はすごくガタガタで、身体中は傷だらけなのだが、僕の体だけではなく、レフィーヤの体は僕よりは流石にひどくないが、生々しい傷が現れていた。
「あ、すみません。あ、ありがとうございます」
「いいよ!でも君すごいね!」
「へ?」
僕はこんなにボロボロになっている僕をすごいと言ってくれるのはなぜなのだろうと思考を巡らせていると、ティオナさんが僕の顔を見てにっこりと笑った。
「だって君冒険者になってまだ全然時間経ってないでしょ?あんなモンスター私見たことないけど、あれ相当強いと思うよ」
ティオナさんは僕の肩をポンポンと叩いて、ティオナさんは僕の前に立ちモンスターと接敵した。
「だから、生き残ってるのがすごく、すごいってこと!」
ティオナさんはアイズさんとティオネさんの元へ駆けて行き、モンスターを屠りに行った。僕は少し顔を赤くしながら、動けずにいると神様とレフィーヤが僕のことを介抱するように、近寄ってきてくれた。ティオナさんが駆けに行ったあと、食人花は魔石だけ残し屠られた。
「まあ、こんなもんかしらね」
「うん、みんな無事でよかった....」
ティオネさんがゆっくり落下しながらやれやれと呟いた。アイズさんは剣を一振りしてから鞘に収める。そして僕たちの方を見ながらゆっくりと近づいてくる。
「あの、私君に謝りたいことがあって」
アイズさんは僕たちの方に近寄ってきて、レフィーヤでも神様の方でもなく、僕の方へと目を向けた。
「私あの時ひどい.......「アイズ!!」......え?」
「うげぇ!嘘でしょ!?」
アイズさんを叫んで呼んだのはティオネ・ヒリュテさんだった。ティオナさんもティオネさんの叫んだ理由がわかったようで、ティオナさんは驚いていた。
僕もアイズさんも神様もレフィーヤも釣られるようにティオネさん達が見てる方を見ると先ほどの食人花が10匹ほど存在していた。
「あんたら!神を連れて逃げなさい!この数は流石にあんたらを守りながら戦えない!死ぬわよ!」
ティオネさんの叫び声を聞いたあと僕は自分の弱さに痛感した。もし僕もあの人たちのように強ければきっと一緒に戦うことができたはずだ。けれど言われた。またあの時のように弱いと。
決してティオネさんはそんなつもりは一切ないのは知っているけど........けど、やっぱり悔しい!!
レフィーヤも下唇を噛み、悔しそうにモンスターを見つめていた。やっぱりレフィーヤも同じ気持ちなんだ。けど神様を死なせるわけにはいかない何がなんでも守り抜くと、神様と
僕はボロボロの体の足に力を込めて立ち上がる。神様の手を引き、逃げるように戦場から駆け出す。ギルドに行けばエイナさんがいる!ダイダロス通りに凶悪なモンスターがいると言えば対応してくれるはずだ!
僕は広場から離れて、通路に抜け出せるところで見たことない緑色の壁が広がっていた。まるで僕たちを逃さないように。
「レフィーヤ!!他の通路は!?」
「ダメです!ベル!アルテミス様!上を見てください!」
「「ッッ!?」
広がっていたのは
僕とレフィーヤは弱い冒険者。やることもなく、むしろこの空間にいれば邪魔をすることは歴然だった。【ロキ・ファミリア】の方達は多分僕たちを送り出したあと気づいたと思う。けれど余裕がないの現れではないのだろうかと僕は思った。今も食人花の猛攻になす術なく、受け流すだけ。きっと僕たちがいるから攻めきれない。
「ロキの子供達!時間を稼げるか!」
僕が考えあぐねていた時に神様は声を荒げた。【ロキ・ファミリア】の面々も答える余裕がないのか、答えはなかった。それを察したのか神様は一呼吸おいた。
「5分だ、5分稼げばどうにかできるかもしれない。だから私たちを守ってくれ」
「「「了解」」」
【ロキ・ファミリア】の方達は神様の言うことを信じて、僕たちの方へと絶対に攻撃をこさせないように攻撃を受け始める。
「ベル、今ここでステイタス更新する」
神様の言ってることが理解できなかった。
******
「ベル、お前ならやれる。あのモンスターは今いる冒険者の中ではベルしか倒せない」
言われるがままに、ベルとアルテミスはしゃがみ、ベルのステイタス更新をしていた。
アルテミスはベルにしか倒せないとそう断言した。アルテミスはステイタス更新する時、確信していたのだ。ある魔法が発言することを。その理由はただ直感したから。強いて言うならある魔法はアルテミスの半身でもあるからだ。
「で、でも僕はまだ弱くて!あの【ロキ・ファミリア】の皆さんでもでも攻めあぐねてるのに僕なんかじゃ!」
ベルはそのアルテミス発言を否定した。ただの冒険者のなりたての子どもがどうにかできる相手ではない。ベルのスキルを活用して、短期間で強くなったとしても、半年ほど経ってから通用する相手だ。
今現状では、アルテミスの発言のおかげかベルの方角には一撃の攻撃も来ていなかった。理由としては、アイズが魔法をたまに使いながら、ベルのステイタス更新を邪魔させないようにし、ティオネやティオナはベルに飛んでくる攻撃を防いだりしていた。
「これを見ろ、ベル」
「これは!?」
ベルが受け取ったステイタスの紙におどろきを隠せなかった。
ベル・クラネル
Lv.1
力 : F 347→E 417 耐久 : G 284→F 352 器用 : F 315→F 396 敏捷 : E 473→D 532 魔力 : I 0
《魔法》
【ガウス・オリオン】
・破邪の一撃。
・誓いによって威力上昇。
・誓いによって消費魔力上昇。
詠唱式
【悠久の空 恵みの大地 大いなる森 純潔の月 いかなる権能をも弾く聖なる領域 聖なる貞潔 あらゆる権能をも貫く至高の矢 至高の鏃 我が名はオリオン 天上の射手 月は弓 星は弦 誓いは矢 来たれ破邪の一撃】
《スキル》
【
・早熟する。
・懸想おもいが続く限り効果持続。
・懸想おもいの丈により効果向上。
「これが初めての僕の魔法.......」
「私はこの魔法を知っている、私はこの矢を知っている」
アルテミスはベルの背中に体を預けて呟く。ベルの背中には女の子独特の柔らかさと、暖かさを感じているだろう。ベルはその感触を感じると顔が熱くなった。
「この矢は全てを貫く。ベルの誓いが強ければ強いほど、どんな敵でも打ち滅ぼすことができる」
「か....み...さま?」
ベルは戸惑っていた。この魔法を知っていることに、本来魔法は神でさえも子供達に発現した魔法はおおよその見解はできる、だが全てわかるわけじゃない。けれどアルテミスはそれを見たことあるかのようにベルに話しかけていた。
「ベル。誓いはなんでもいいんだ。誰かを守りたいとか勝ちたい人がいるとかどんな誓いでもいい」
「ベル。お前はあのモンスターを倒したいか?」
「倒したいです!こんな弱い僕でもあのモンスターを倒したい!」
この言葉をベルはすぐ口にすることができた。ベルは立ち上がり、アルテミスの方を見て叫ぶ。勝ちたいとそう叫んだ。
「なら、なぜ倒したいと思ったんだ」
「..........助けたい人がいるからです」
ベルはアルテミス様の顔を直視しながら、答えた。アルテミスも真剣な眼差しでベルのことを見る。自分の子どもの答えを聞かなくてはいけない。
「レフィーヤも必死で戦ってる。それに【ロキ・ファミリア】のみんなだって戦ってくれてる。......助けたい。僕はあの人たちを助けたいんです!」
ベルは誓いをアルテミスに向けてぶつける。高揚して息が荒くなる。息を少し整えてからベルはまだ助けたい人がいると呟いた。
「そして、何より......神様を助けたいんです!!」
ベルは顔を赤くしながら最も助けたい人をアルテミスに告げた。今の今までベルと一緒にいた女の子を。ベルが困ったときは時に厳しく、時に優しく導いてくれた神様を。ベルはなによりも助けたいとそう告げた。
「ああ、嬉しい。これほど幸せなことはない。ベルが私を想ってくれていることを知って、こんなにも嬉しくなるものなんだな」
アルテミスは破顔した笑顔で、立ち上がりベルの両肩に手を置き、顔を近づけて微笑みながらベルに告げる。
「その誓いをわすれるな。さあその誓いを叫べ!ベル!」
「はいっ!!」
ベルはモンスター達と向き直して、決意に満ちた表情をしている。そして目を閉じ、右手を前に突き出し、今の今まで出来なかったことをする。
「【悠久の空 恵みの大地 大いなる森 純潔の月】」
詠唱だ。ベルは今の今まで詠唱なんて縁がないもので、みるだけのものだった。けれど今のベルならできる。
「【いかなる権能をも弾く聖なる領域 聖なる貞潔】」
突き出した右手に光が宿る。キラキラと光る蒼い星の粒のようなものが何かを作ろうと無象無象に動く。
モンスター達は魔法を使ってる
「ッッ!?ロキファミリアの皆さん!あのモンスターをベルの方へ近づけさせないでください!!」
レフィーヤがモンスター達を見て、ロキファミリアに叫ぶ。モンスターがベルの方へと向かおうとした時、二つの同時衝撃によって押し戻される。
「言われなくてもッ!」
「わかってるんだよそんなことッッッ!!!」
ティオナが詠唱を聞いて笑顔で、ティオネはモンスターに激情しながら行動した。
レフィーヤに言われる前に、足が動いたのはベルを守る以外にも一つあった。この魔法が全てを変えることができるかもしれないという第一級冒険者の直感だった。
「【あらゆる権能をも貫く至高の矢 至高の鏃】」
(ロキファミリアの皆さんが僕を守ってくれている。これほど安心するものなんだ)
ベルは魔法が初めてのため、集中するため目を瞑って詠唱しているが、きっと眼前ではロキファミリアのみんなが守ってくれていると確信していた。
「【我が名はオリオン】」
ベルは目を開ける。そこには醜悪なモンスター達と戦う冒険者の姿がそこにあった。殴りすぎて、拳が潰れてきてるアマゾネス姉妹。剣で押し返すが触手により傷だらけになりながらも戦う剣姫。三人の補助を魔法でしながら、冒険者の端くれとして少しでも役に立とうとするエルフ。
今ベルの右手にはみんなを守るための誓いが宿っていた。
(あれは鉄槍?けどなんか神聖なものの感じがする。ただの鉄槍じゃない!)
レフィーヤがベルの魔法の姿を見た。その姿はただの鉄でできたような鉄槍だった。しかしその鉄槍は眩い蒼い光の
【
けれど一つレフィーヤの思うところに間違っているところがある。あれは槍ではない。正確には矢。あれはオリオンの矢であり、誓いの矢。
ベルがアルテミスを想う心があり、アルテミスもベルを想っているから発言した魔法。そしてアルテミス眷属であるからこそ発現した魔法。断言できる。この魔法は、この世の中で一番神秘的な魔法。アルテミスとベルだからこそなせる魔法。
「【天上の射手 月は弓 星は弦 誓いは矢 来たれ破邪の一撃】」
ベルは光の粒から具現したオリオンの矢をしっかり握りしめる。
そして疾走する。
「いけ、ベル。いつになるかはわからないが私のベル・クラネルはきっと誰にも負けないすごい冒険者になり、みんなが羨む英雄にだってなる」
アルテミスが自分の眷属が英雄へ一歩近づいた瞬間を忘れないように目に焼き付ける。
ベルが疾走する道を【ロキ・ファミリア】が道を作る。横からベルを狙う触手達をティオナが拳で弾き、頭上から迫る触手達を蹴りで弾き返すティオネ、そして目の前から迫る触手達を自前の剣で斬り伏せる。ベルは一切足を止めずに、疾走した。
「やっちゃえ!冒険者君ッッ!!」
「これで倒せなかったら恨むからね!」
「......頑張って!」
「ベル!お願い!!」
傷だらけで拳を突き上げて叫ぶアマゾネスの妹と、ヘタリと座り込むアマゾネスの姉と、はにかみながら応援する憧憬がいた。そしてこれまでベルを支えてきた同じ眷属の仲間が叫んでいた。
ベルは槍を持ち替え、槍を投げる態勢に入った。そしてアルテミスから授かったステイタスの全力を持って、誓いの矢を放つ。
アルテミスはこの光景を目に焼き付けながら、さっきの言葉の続きを呟いた。
「だから、これが初めてベルが胸を張って自慢できる
「【ガウス・オリオン】ッッッッ!!!」
ベルの叫びと同時に矢が放たれる。矢は眩い蒼い光に包まれる。放った矢は風を切り裂き、周辺に凄まじい風圧を起こす。その矢は吸い込まれるようにモンスター達に直撃した。
『ーーーーーーーー』
一瞬だった。凄まじい威力と共にモンスター達が断末魔を吐く前に消滅した。緑壁はモンスターが消滅したと同時に消滅した。あたり周辺はその矢の被害のため、大きな砂煙と周辺にあった家などは吹き飛ばし、地面は矢が放った放物線上にクレーターが続いていた。これを見る限りLv.1の冒険者から放たれた威力ではない。
砂煙が終わると、矢は消えていて残っているのは矢が放った被害だけだった。あれだけの数だ。このまま戦闘が続けば応援は来ただろうが、ベル達は、いやもしかしたら【ロキ・ファミリア】のアイズ達もモンスター達に蹂躙されていたかもしれない。
新種のモンスターが大量に出てきて、下級冒険者がいる中でこうして生きているのは奇跡に等しい。
「すまない!遅くなった!.......って何が起こった!?」
遅れて到着したのは、【ロキ・ファミリア】の副団長リヴェリア・リヨス・アールヴだった。戦闘態勢に入っていたリヴェリアだがあたり周辺の被害やモンスター達がいないことがわかって、リヴェリアは戦闘がすでに終わったことを察した。
「うーんとね。新種の気持ち悪いモンスターがたくさん出てきて、私たちが引きつけて〜、この子が全部倒しちゃった!」
「は?」
ティオナの漠然とした説明にリヴェリアは懸念そうな顔をした。ティオナが指を刺した方を見ると、力を使い果たし主神に膝枕をされている白髪の少年がいた。
「あれはどう見ても、冒険者になってまもない少年じゃないか、その子が新種のモンスターを全部倒せるわけないだろ。お前達でも攻めあぐねていただろう」
リヴェリアはティオナのバレバレの嘘に突っ込む。並大抵のモンスターの集団が襲ってこようと、アイズ、ティオナ、ティオネならば無傷で切り抜けられるはずだが、この三人がボロボロになっているのだから相当強かった新種のモンスター達なのだろうとわかった。
なのに、あの日から悔しさのあまり酒場から飛び出してから、2週間も経っていない少年が第一級冒険者の助けになるわけないとそう思っているリヴェリアだった。
「あー.......リヴェリア。そこにいるバカの言う通りよ」
「は?」
「うん、あの子のおかげで全部倒せた」
「は?......................本当か?」
「「「
リヴェリアは度肝を抜かれ言葉を失う。頭が痛いのか頭に右手を添えながら。
「で、あのすごい魔法何!?冒険者くん...........って!?いない!?」
「ほんと、いつの間にかいないわね」
「え?.......本当だ。あのエルフの子....ウィリディスさんもいない」
ティオナが興味津々の顔で、さっきまでいたはずの冒険者に話しかけようとしたがいなくなっていることに気づくと驚いていて、ティオネはいなくなってることを知ったが疲れでそれどころではなく、アイズはレフィーヤまでもいないと報告した。
「私たちが会話してる隙にいなくなったんだろう。少し話を聞きたかったところだが.....疲れてるようだし仕方ない。とりあえず
リヴェリアは白いマントを翻し、颯爽と歩いていく。そしてベルの勇姿を見ていた第一級冒険者の三人はまたあの子に会いたいと願うのだった。
ヘスティアはどう登場させるかは決めたんですけど、あることが決まらないと出せない状態です。もうちょい先になりそうです........。
リリは次出そうかなと、いろいろオリジナル展開決めてるのでリリもどんな状態で会おうかとか、どうやってベルくんを好きにさせようかといろいろ悩んでる所存です。ナイフじゃないから奪えないし。どうすっかなぁ〜
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僕と神聖契約と精霊の祠
忙しすぎて、ちょこちょこ書いていたのですが、この話を作るのが大変すぎて時間かかりました。
精霊魔法
ベル・クラネル
Lv.1
力 : E 417→C 677 耐久 : F 352→D 515 器用 : F 396→D 536 敏捷 : D 532→B 721 魔力 : I 0→H 105
《魔法》
【ガウス・オリオン】
・破邪の一撃。
・誓いによって威力上昇。
・誓いによって消費魔力上昇。
《スキル》
【
・早熟する。
・守護意識が続く限り効果持続。
・守護意識の丈により効果上昇。
【
・運命的相性。
・自身の成長と神の認識によりステイタス変革。
・
「これは.......」
ロキファミリアから逃げるように、豊穣の女主人に帰宅したアルテミスファミリア。ベルは主神の部屋にある椅子に座り、ステイタス更新を受けていた。レフィーヤは下にある、豊穣の女主人に向かい。晩ご飯を取りに行っている。
そして今、何が起こってるのかわからないベルと度肝を抜かれているアルテミスがいる。
この二つのスキルは、
特に2つ目のスキル。【
本来神と子どもでは意識というか、価値観そのものが違う。神という何億年を生きていて天界から下界を見ていた神からしたら一瞬と言ってもいい命を生きている子ども達では価値観が違うのは当然。
だが現実にいたのだ。アルテミスという女神とベル・クラネルという子ども。二人はきっとアルテミスがオラリオに降り立って、ベルの元に現れなければ、
彼女彼は下界にもまだ天界にも神はたくさんいる。そして子どももたくさんの種族が下界にいる。さらに神は不変だが、子どもは生まれ変わると性格や根本から違ってくる。その中でベルは運命の神様に出会ったことになる。スキルが変革をもたらしているのが何よりもの証拠だろう。
このスキルはアルテミスが思うに、ベルが成長し、アルテミスが成長を認識することでステイタスに変革をもたらすのだろう。ベルの成長と言っても単純に戦闘して成長することではない。根本的な成長である。ベルがもつ価値観、潜在意識などの成長。ベルはなにを目指すのか、いわゆる心の変化である。そしてそれをアルテミスが認識し、尊重することで変革をもたらす。
そしてベルはあの戦いを終えて、成長したと言える。彼は【ロキ・ファミリア】をレフィーヤを、そしてアルテミスを守りたい思いで立ち上がることができた。英雄はみんなを守ることができると言うのが多くの下界の認識だろう。実際英雄と呼ばれたものは皆を守り、悪を打ち滅ぼしている。それを認め、尊重してくれたアルテミス。だからこその【
「ベル、驚かずに聞いてくれ」
「は、はい」
「お前にスキル変化が起きている」
ベルは叫び出さずに絶句していた。アルテミスは真剣な顔をして、ベルを見つめる。ベルに発現したスキルは詳しくは話すつもりはないが、やはりあのことは伝えるべきだろう。
現在レフィーヤはベルのステイタス更新を待っているだけなのにとてつもない現場を見てしまっている雰囲気を出している。新参者が口を出せる状況ではなかった。
「昨日の戦闘でベルにスキルに変革が起き、【
「ええええええ!?それってどう言うことなんですか!!」
「落ち着け、そのスキルは確かに消えたが、かわりに違うスキルが発現した。ベルの成長はまだ止まらない」
「そ、それは良かったんですけど、けど【
ベルは自分のステイタスの紙を持っているが、スキル二つが隠れた状態である。それを見つめるのをやめると、ベルはアルテミスに不安そうに尋ねる。アルテミスは食事を並べてある食卓に座る。レフィーヤは食事を並べ終え、食卓に座って待っている。しっかり聞き耳を立てていたレフィーヤだった。
「理由はある」
アルテミスはベルを自室から呼び出すように、手招きをしながら食卓に呼ぶ、ベルは自分の上着急いで着て、食卓に現れる。四人用の食卓なのでレフィーヤの隣に座る。
「お前がアイズ・ヴァレンシュタインに勘違いしていたからだ」
「「はい?」」
理解不能だった。ベルはなにを言ってるんだ神様と思った。無理もない、ベルはアイズ・ヴァレンシュタインに助けられ、しかもアイズは神々から剣姫と謳われるくらいの美しさを誇る。あの時のベルからしたら命を危機を救うお姫様なのだ。恋をしてもおかしくない。しかしアルテミスは違うとベルに告げたのだ。
一口、焼き魚をアルテミスはつまんだあと、腕を組んでこう話した。
「事実消えてしまっている。私が思うに命の危機を救われて憧れと恋を履き違えたと思う」
「そんなことってあるんですか?」
「わからない。けど自分の胸に聞けばわかるんじゃないか?」
ベルは目を閉じ、手を胸に当てる。考え込むように、胸の内の声を聞くように自問自答する。レフィーヤはその間にベルに出現していた【
「確かに僕はアイズさんから命を救ってくれました」
ベルは目を開け、アルテミスに告げる。手はまだ胸の内に、まだ何かを探っているかのように。
「そしてアイズさんに見惚れました、憧れました。これは間違い無いです」
「そうか」
「けど確かに神様の言う通り、あの人に追いつきたいと言う気持ちだけだったのもしれません。けど今もあの人に追い付きたいって今でも思ってます、だから目指す目標は変わりません、まずは彼女と肩を並べる存在になりたいです」
ベルの瞳には強い意志が宿っていた。出会いを求めにベルはここに来たのは事実だ。だがしかしベルは根本的には求めていたのは違かった。ベルは英雄になりたかったのだ。
そして今最も英雄に近いのが、最前線で戦っている第一級冒険者。その中でも自分を助けてくれたアイズ・ヴァレンシュタインに恋という誤解の憧れを抱いただけである。けれど目指すものは変わらない。まずは彼女と肩を並べて戦える存在になる。
きっと
だから肩を並べて戦える存在になろうとそう思った。
「そうか、ベル。その誓いを忘れるな。きっとその誓いがお前を強くする」
「はいッ!!」
「そしてレフィーヤ」
「は、はい」
「お前はベルに負けるな。きっとベルはすぐにお前を超えてくる、だから負けるなレフィーヤ」
レフィーヤは手に力をぎゅっと込めた。きっとベルはレフィーヤを超える。レフィーヤもそう直感してる。けれど抜かれないようにではない。ベルのように自分も成長していくんだと改めて実感したからだ。
「はいッ!!」
ベルとレフィーヤは笑顔でアルテミスに誓い合う。アルテミスは笑顔で彼らのような眷属を持てて幸せだとそう思った。
ベルにはスキルの詳細、【
けれどベルにはなんらかのスキルが自分には発現してるということはわかっている。けれど、スキルの詳細を説明しないアルテミスを見てきっと何かあるのだろうと思っている。だからベルはアルテミスを信じることにした。きっとこの選択が正しいと分かっていたから。
******
「ただいま帰りました、神様」
「ああ、おかえりお前たち」
アルテミスはいつも通り笑顔で迎えてくれた。アルテミスはカチャカチャと音を立てて、何やら食事の準備をしているようだった。
「今日は私がミアから教えてもらった料理を作ってみたんだ。いい感じにできたと思うから食べて欲しいんだが」
「アルテミス様って料理できたんですか?意外ですね.....」
レフィーヤがボソッとベルの後ろで呟くと、ベルは心の中で’’レフィーヤサンッッ!!’’と呟きながらアルテミスの方を恐る恐る見る。
「レフィーヤ......それはどういう意味だ?」
「いッ!?い、いまの聞こえてました.......?」
「..........レフィーヤ、今日はお前夕飯抜きだ」
「すみませんでしたッ!!」
ベルは始めてレフィーヤが深々と頭を下げて謝罪する瞬間を目撃するのだった。
******
食事が終わり、ステイタス更新をしてもらおうと僕は神様に声をかけようとした。
「ベル、レフィーヤ。私から少し提案があるんだが聞いてくれないか?」
僕が話しかけようと思った矢先、神様が話し始めた。
「は、はい。提案ってなんでしょうか?」
レフィーヤは神様の問いに返す。
「私に類する、精霊の祠に行ってみないか?」
「「精霊の祠??」」
精霊の祠。いくつかの英雄譚でも聞いたことがある。精霊は神様の使いであり、神様の命により下界に降りてきた。そして精霊は下界に暮らし始めたという。神秘な森や祠などに住み着き始め、下界の子供達はその噂を聞き、探しにいくが全く持って見つからないので伝説となっている。
英雄譚では、伝説の英雄達なので精霊から力をもらったり、神秘な森に行き、精霊の力をもらったりしている。
その時は神様達が下界に降りてきてない時の話が多数で、今では神様達が下界に降りてきている。神様の恩恵がある今では精霊を探しにいく人なんていう人はほぼいない。
「ああ、そうだな、なんと説明した方がいいか」
神様がむむむっと考えていて、神様はそうだと手を打ち、口を開いた。
「英雄譚の『アルゴノゥト』という童話を知っているか?」
「はい、有名な英雄譚ですから。英雄に憧れる少年の物語ですよね」
『アルゴノゥト』道化の少年がなし崩し的に、ミノタウロスからお姫様を救う物語。
原初の英雄と言われていて、最も古い英雄譚として有名だ。
「それがどうかしたんですか?」
僕が神様に尋ねる。
「『アルゴノゥト』という英雄譚を見たならわかるだろうが、アルゴノゥトは精霊の祠に行き、精霊から強大な力をもらったと書かれていたな?その強大な力を授かりに行かないか?」
「その精霊の祠はどこにあるんですか?」
レフィーヤが小さく手を挙げて答えた。確かに精霊から力をもらえるというのならば、みんな欲しいだろう。精霊の祠は今では伝説である。神様が降りてきた今、精霊の祠を探すよりも、ダンジョンに潜って実際に経験値を積んだ方が早いのだ。その精霊の祠を今では誰も探していないため、精霊の祠の場所は誰でも気になる。
「オラリオから少し離れた場所に、『フィーサナの森』という場所がある。そこに精霊の祠がある」
『フィーサナの森』全く持って僕は聞いたことがなかった。それも僕は田舎に住んでいたので、田舎の近くの村かおじいちゃんから聞かされていたオラリオくらいしか知らないのだ。
神様はそのまま話し始めた。
「数日前、ガネーシャに
「と、突然過ぎませんか!?」
僕は大声を出してしまった。けどまあ、さすがに突然すぎるよね.....。明日出発するなんて....。
「だから選んで欲しい。精霊の祠にはたくさんの危険がある。私に類する精霊と言っても、はいそうですかと言ってお前達の力になるわけではない。きっと精霊の祠にはお前達を試す試練が待っている。危険が伴うはずだ。それでも精霊の祠に行くか?」
僕とレフィーヤは顔を下に向けて考えた。精霊の祠に行くか行かないか。だがそれはすぐに答えが出た。僕とレフィーヤは顔を上げた時が一緒で一緒のことを考えていると思ってしまったので、顔を見合わせて笑ってしまった。
「「行きます!!」」
僕とレフィーヤは同時に神様に返す。きっと精霊の祠では危険が沢山あると、神様も言っていた。きっと大変なことが待っているのだろうと思った。けれどあの人に追いつけるなら、一歩でも早く英雄になれるなら、そして最も尊敬する神様に認められるような人になるなら、僕は精霊の祠に行きたいと願った。
「そうか、わかった。精霊の祠までガネーシャが言うには一週間で着くらしい。食料は用意してある。準備はできている」
「あ、あの。神様は僕たちが行くって言うことがわかっていたんですか?」
「当たり前だろう?お前達は私の眷属だ、お前達がなんて答えるかわかるだろう」
神様は当然な顔で僕のことを見てきた。本当にこの神様には敵わないと僕は改めて実感した。
精霊の祠では何があるのかわからない。けど、強くなるための僕は一歩踏み出した。
「ベル君、アイズ好きだったんじゃなかったのかよ!!」
分かってます言いたいことは分かってます。僕だってアイズさんは大好きなんです。このまま、アイズさんに修行をつけてもらってミノタウロス倒して、【リトル・ルーキー】爆誕!!にしたかったですよ、そっちの方がどんなに楽か。
けどこの半年この作品を考えていると、いろんな構想が浮かんできました。
せっかくアルテミス様という神様が主役なのに、その子を主体にしないでどうするかと考えた末、このスキルと精霊の祠でした。映画見た人ならばわかるでしょうがアルテミス様は映画で「私に類する精霊」と発言していたことからの創作です。原作と全く違うのでアンタレスとかの封印に使ってません。今後も原作と違う展開をずっと続けていくつもりです。
次回は精霊の祠編です。
精霊の祠では何が待っているのか楽しみに待っていただければ幸いです。精霊の祠編は三話程度で終わるんじゃないかな?と思っております。
そして、現在の僕が考えていることを言いますね。ネタバレなし程度に。
まずヘスティアの登場の仕方。アルテミスファミリアに入団する二人。この二つが精霊の祠編が終わった後に出てきます。誰が仲間になるのか、ヘスティアはどうやって登場するのか考えました。
もう一度言います。原作とは全く違います。仲間になる人が意外な人が沢山います。けれども、僕も世界観を崩さずやっていくのでよろしくお願いします。
次回の更新はいつになるかわかりません。また適当に書くのでよろしくお願いします
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僕と精霊
「俺がガネーシャだ!!!!!!」
「うるさい、騒がしいぞガネーシャ」
ガネーシャ様がシュンとして、小さな声で「俺がガネーシャだ」と呟く姿は何故かかわいそうに思う。
僕たちはオラリオの検問を抜け、少し歩くとガネーシャ様が眷属のシャクティさんを後ろに連れて、待っていた。
「それで移動手段を用意してくれると聞いたんだが、馬車がないぞガネーシャ」
「そうだ!お前たちが移動するのは馬車ではない!お前たちが移動するのは、これだ!!」
ガネーシャ様は天に指を指したので、僕たち3人も上を見上げると、僕たちを覆うほどの何か上から近づいて、そしてそれは現れた。
それは
「まてまて!こいつらは生まれた時から
僕とレフィーヤは得物をしまって、恐る恐る竜を見る。するとガパッと大きく口を開けた。一瞬ギョッとしたがそれも束の間。舌を出して僕の頬を舐めだす。まるで子犬みたいに舐めていた。
「うわ!お前、くすぐったいぞ」
『グウウウ♪』
「神様も舐められてるんですね........ん?レフィーヤ?」
神様は竜に舐められていると同時に神様は頭を撫でて愛でていた。僕も同じように頭を撫でて愛でていたが、レフィーヤはもう一体の竜には近づかない。しかもレフィーヤはものすごく警戒している。
そうだ、レフィーヤは飛竜に村を滅ぼされた。この竜が
僕達はこれに乗って移動する。ならば絶対に竜に触れなければならない。レフィーヤはそれに触れられるのか、僕は何かできないかと声をかけようとするが、レフィーヤの過去を知っている僕にはなんで声をかければいいのかわからなかった。
「レフィーヤ」
神様はもう竜を手懐けていた。竜に舐めるのをやめさせ、レフィーヤの近くに行き、レフィーヤの肩に手を置いた。
「レフィーヤ、お前の過去は知っている。お前が嫌悪する理由もわかる。けどなレフィーヤ今お前が見るべきものは違う。お前には失ったものが大きいかもしれない。けどここに来て得たものがある」
神様はレフィーヤを抱きしめた。まるで母のように。レフィーヤはそれを拒むことなく、神様を受け入れた様子だった。しかしレフィーヤの手は行き場を失ったように、掴もうとした手を下げようとしていた。
「失ったものばかり数えるな。後ろを振り返るな。いくら後悔はしても失ったものは帰らない。前を向け、数少ないものしか残ってなかったとしても、レフィーヤに残されてるものを数えろ、お前が見つけたものが残っているだろう?」
「わ、私に残ってるもの.....私が見つけた場所」
レフィーヤは下げそうになった手をゆっくりと神様の背中を掴んだ。そして目元には今にも溢れそうな涙があった。
僕ならどうしただろう。そんな
レフィーヤは僕のお姉さんって感じの風格を放っていて、きっとレフィーヤも僕がしっかりしてないあまり彼女も常に強がっている。けど違う、彼女をいつからか強い存在だと思っていた。けど僕と歳は一つしか変わらないじゃないか。そんな子が愛していた両親を殺されて村まで殺されて、そう易々と吹っ切れるわけがない。僕だっていまだにお爺ちゃんのことを引きずっている。けどそれでも前を向けと、過去を振り返るなと今あるべきものを見ろと、そう神様はレフィーヤに、いや僕達に伝えている。
レフィーヤは涙を流しながら、子どものように神様に泣きじゃくり始めた。
「もう一つ
「レフィーヤ......」
「ああ、ありがとうレフィーヤ」
彼女は今もこれからも
******
一週間。谷を超え、森を超え、幾度かの
僕達は精霊が住み付いているという祠の付近まで歩いていた。
「ここだ、私に類する精霊が住み着いている祠だ」
アルテミスが指を刺した方向をベルとレフィーヤは見つめると、その先には青白く光り輝く祠があった。けれどその奥は見えないように、扉があり、開かないように硬く閉ざされてていた。
アルテミスは目を閉じ、手を扉にかざす。アルテミスから蒼白い光が溢れ始める。それは神威。この扉はアルテミスの神威で開くことになっていた。アルテミスは下界に降りたのは最近だということを考えるとこの遺跡は今日初めて開くことになる。
扉が神威に反応を示し、錆び付いているのかゆっくりゴゴゴッという効果音をたてながら、開いていく。
「どんな試練が待ち受けてるか、私にもわからない。きっと厳しい試練が待ち受けてるだろう。けれど折れないで欲しい。どんな辛い試練があったとしても転んでもいい、倒れてもいい、けど折れないでくれ、立ち上がって先を見据えるんだ。自分が何を成し遂げたいのか。何に至りたいのか」
「「はいッッ!」」
「よし、いくぞ」
******
この洞窟はただの洞窟ではない、薄く青白い光を放ち、松明も必要とならない。精霊の力が洞窟全体に染み渡り、こういう現象を起こしているんだろう。神秘的という言葉が当てはまる。誰一人来たことがない、探索することすらも許させていなかった空間。事実上この祠に入ったのはこの三人だけ。壊して入るということは絶対にできない。まずフィサーナの森。入ったら迷って出れなくなる言われてる場所で、最奥にあるこの場所にたどり着くわけないというのがあるが、一番は壊せないというところにある。
ベルとレフィーヤは物珍しそうに辺りを見渡し、若干不安そうに先へ先へと進んでいく。アルテミスの場合珍しいというか懐かしさを感じているようだった。
ある程度進むと分かれ道に至った、目の前に道はなく、右か左かに分かれることになる。ベルとレフィーヤはどちらに進もうかアルテミスに聞こうとしたところで祠の青白い輝きがいっそ激しくなった。
『『ようこそ、私たちの精霊の祠へ』』
二つの声がした。どちらも女性の声で、透き通った声をしていた。まるで女神のような声だった。
『神アルテミスの恩恵を授かっているようですね、ならば試練を受けることを許しましょう』
『これから貴方達が挑む試練は生半可なものではありません』
『覚悟して臨むことをおすすめします』
『一人は左へ』
『『もう一人は右へ』』
『『............』』
『ちょっと今の
『はぁ!?違うわよ!私が道案内をしました後に、一緒に汝らの加護が在らんことをって言うって言ったじゃない!』
『それは千年前に貴方が勝手に決めたことなのだわ!私は五百年前に変えましょうって言ったのだわ!」
「「あ、ハハハ.......」」
「............」
なぜか言い合っていた。精霊の姿形も見えないが、三人の目には浮かんでいた、女の人達が指を差し合いながら怒鳴り合ってる風景を。
ベルとレフィーヤは苦笑いをしながら聞いていた。アルテミスはというともう沸点がそこまで来ていて、いつ爆発してもおかしくない状態だった。アルテミスが声を上げようとした瞬間、精霊達はアルテミスに気づき、咳払いをして話を進めた。
『で、では!そこの白髪の兎みたいな子は左へどうぞだわ!!』
『じゃ、じゃあ!私はこの可愛いエルフの子を貰うわね!右へ!右へどうぞ!!!!」
『『だからアルテミス様!怒らないでください!!!謝りますから!ごめんなさい!!!』』
仲がいいのか、仲が悪いのか二人は同時に声を合わせてアルテミスに謝罪した。アルテミスの怖さはやっぱり人類共通かつ精霊にも伝わってるらしい。
「...........では、私はここで待ってればいいのか?
一人の精霊はルナ、もう一人はシルフという。
ルナは『だわ!』という口癖を治そうとしてる精霊。普段はお淑やかなのだが、喜怒哀楽が激しくなると、この口調が出てきてしまうらしい。
シルフという精霊は気の強い精霊だが、ただ曲がったことが嫌いなだけだ。口調が荒いのでよくルナに『女らしくない』と言われている
『アルテミス様待っていても、どちらかについてきても構いません。けれど手出しはしてはいけません、ここはシルフも同意見だと思います』
『ええ、そこはルナと同意見です。アルテミス様がどれだけ子どもたちを愛してるのかは知らないですけれど、手出しした場合私たちはもう二度と手を貸すことはないと思ってください』
『『これは彼ら、彼女らの子どもたちが紡ぐ物語。時代の英雄は
英雄になるのは子ども達、神や精霊ではない。神や精霊は手を貸すだけ、悩み足掻き取捨選択するのは子ども達。神々はただ手助けするだけ、そう精霊達はアルテミスに告げた。
アルテミスはそんなことわかってるように、アルテミスはすでに覚悟した顔だった。
「わかっている、私は手出ししないことを誓おう」
『それならば安心です。ではアルテミス様。ここで待ちますか?それともついて来ますか?』
「当然ついていく。私の子供たちの行方をこの目で見る」
******
「よく来たわね!まずは貴方の名を聞きましょうか」
「は、はい!私はレフィーヤ・ウィリディスと言います!よろしくお願いします!!」
「私はシルフよ!じゃあレフィーヤ。試練について説明するわ!」
レフィーヤはベルと別れ、右の道へ進んでいた。先へと進んでいくと開けた場所があり、まるでダンジョンの空洞が
そしてそこに立っていたのは、真っ赤な髪が腰まであり、
「私が行う試験は、『今に至ること』よ!」
******
「こちらも始めましょうか。ではまずは名前を」
「べ、ベル・クラネルです」
「ベルね。私はルナ、よろしく。では試験を始める前に、アルテミス様は私の後ろに」
「わかった」
アルテミスはベルの元へと来ていた。やはり冒険者になって1ヶ月一応レフィーヤも冒険者になったばっかりだが、一応戦闘の心得はある。なので一番心配だと言えるのがベルだった。
ルナという女性は真っ黒の長い髪を一つにまとめ、
「私が貴方に課す試練は、『英雄とは何か』です」
******
一人の少年と一人の少女は眠りについた。誰の声も届きもしない夢の中に。そこに映し出されるは、精霊達の課す試練。少年の夢はダンジョンへ。少女の夢は懐かしい故郷へ。これは夢であって夢ではない。夢で行われた試練はそのまま恩恵へと変わる。しかし試験を乗り越えることができなければ永遠に夢の中を彷徨い続ける。
女神は少女の安否を祈ると共に、少年の夢に落ちゆく様を、行く末を
多分長引かなければ、後1話で精霊編は終わります。そのあとの構想も考えてあります。少し次の話はこれで大丈夫かな?という感じで書くんですけど、まあ大丈夫でしょう。
申し訳ないのが一個前の話、この話でも戦闘を全くしないのは申し訳ないなって思っています。次の話ではバチバチに戦闘させようかなっていう思いがあるので期待してもらえれば.......。
いつかのアンケートで取った、アルテミスとの日常回も番外編としてつけようかなと、多分先にはなってしまうんですけど、お待ちいただいたらと。次回の更新も不定期なのでよろしくどうぞ。
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僕と私の精霊の試練
今回で精霊編終わると思ってたんですけど、5000文字ほど行ってしまったので、前編とさせてもらいます。
後半は年末までに投稿したいな…(自信なし)
一人の少女は幸せだった。
「お母さん!見てみて、さっき奥の森にあったお花で冠作ってみたの!どう?似合う?」
山吹色の髪を一つにまとめ、それは可愛らしい容姿をしたエルフの少女が家で母親に興奮しながら、花の冠見せていた。
母はこうするともっと可愛いわよと、レフィーヤから花の冠を受け取り、レフィーヤの頭に乗せることにした。
「うわ!ねえねえ!お父さん似合う?似合う?」
ああ、レフィーヤ似合うよ。そう言って父親は一人用の椅子に座りながら、優しい笑顔で笑いかけた。レフィーヤは嬉しくてクルクルと回り始める。レフィーヤは故郷の村に暮らして15年の時が過ぎていた。故郷では魔法の勉強を怠らなかった、レフィーヤはというよりはこの村の人々は神の恩恵を授かっていないが、勤勉なので大抵のモンスターなら対応できる人外集団と言っても過言ではない。
そしてレフィーヤは家の中で騒いでいると、外から同胞の声が聞こえてきた。それは火龍が攻めてきたというものだった。レフィーヤの父と母はレフィーヤを匿うように机の下に逃げ込んだ。
「あれ?村から歓声が上がってる?」
そうみたいだね、村のみんなが倒してしまったみたいだ。そうレフィーヤの父が呟いた。母も歓声に変わった瞬間机の下からレフィーヤを出し、洗い物を始めるのだった。
レフィーヤの村はどんなモンスターに攻められても対処ができる村だった。ゴブリンの大群だとしても、ミノタウロスが来たとしても、村のみんなは対処できるようになっていた。そんな村にレフィーヤは存在している。いつかはその人たちと肩を並べて戦えるようになりたいと願っていた。
ー■■■■るなー
「うっ!」
レフィーヤの頭に亀裂が走ったような痛みが来る。レフィーヤは膝をついてしまっていた。それについては父も母も見てないふり、いや見えてないようだった。
ー■を■■るなー
足に力を込めてと立ち上がる、しかしレフィーヤの頭はどんどん痛みが増していく。まるで何かに気づかせるように。レフィーヤは頭痛を我慢し、ふらふらながらも外の空気を吸おうと、ドアに向かう。
しかしドアに向かう途中ドアを開けたらもう両親に会えない気がした。だから少しレフィーヤはドアに向かうのを躊躇した。
ー目を背けるなー
頭痛は治った。そのおかげか先ほどの声がはっきりとレフィーヤに届いていた。『目を背けるな』そう言われた。何も背けてなどいない、何も失ってはいない、これが現実だ。目を背けるも何も後ろめたいことはない。
レフィーヤは心の中完結させて、ドアに向かうのをやめた。両親の方へゆっくりと歩み出した。
******
少年は英雄に憧れている。
『まずは問おう!君にとって英雄とは?』
ベルは真っ黒な世界にいた。平衡感覚はある、視覚もできる。だってベルの目の前にはベルよりも少し背の高い若い青年がいたから。顔は認知できない、顔は真っ黒になっており、どんな顔なのかもわからない。彼との距離は10Mくらいだろうか、ベルはその場に立ちながら口を開く。
「僕にとって英雄とは、誰もを救うことができる英雄です。悪を倒し、みんなを笑顔にするそんな英雄に僕はなりたい」
『まあ、そうだろうな、そうだろう!それが英雄の理想像!誰もを救うことができて、善民を助け悪を挫く。それこそが英雄の理想像、そういうことなんだろう?』
「はい、僕が思う英雄です」
その青年はカラカラと笑いながら、ベルの問いに答えた。まるで面白がるように、ベルがそう答えるということを知っていたかのように対応していた。
『だがな、ベル。その悪が救いを求めていても君は同じことを言えるのか?』
「どういう......ことですか?......」
『わかりやすく説明しよう、英雄は悪を挫く、それは絶対だ。しかし君は英雄は皆を笑顔にするとそう言った。そこで矛盾が生じるんだ、英雄は悪を笑顔に、救えてないと』
その青年はベルに問い直すようにそう答えた。確かに青年の言ってることは間違ってはない。英雄は皆を救う、笑顔にするとそう言った。しかし悪は救わなくていいのか?悪いものは切り捨てられるしかないのか?ベルは必死に言い返そうと声を出そうとするが、青年の声に打ち消される。
『まあ、言いたいことはわかる。悪人は悪いことをしてるなら当然切り捨てられてもいいだろうと、では違う問いを』
その青年はまた問い直す。まるで腹の内を探るように、彼は問い詰めていく英雄とは何かを。
青年が指を鳴らすと世界が変わった。遺跡のような場所に移動したと言うよりは遺跡を映し出したと言った方がいい。
『ここには君と後ろには君の大切な人、そして目の前には君たちを殺そうとする悪人がいる。君は大切な人を守るために人を殺せるか?』
ベルの後ろには、傷だらけで座り込んでいるアルテミス様とレフィーヤがいた。そして今にも殺意を出し、殺そうとしている悪人顔の男がいた。
「■■■■■ッッ!!」
「ッッッ!?」
襲いかかってきた。そこまで強いわけではない、Lv.1のベルでも対応できるほどだから。敵の片手剣を、背中に背負っていた黒幻を瞬時に取り出し、鍔迫り合いを起こしていた。
(この相手は僕でも倒せる!けど僕に人を斬れるのか....?)
『さあベル、君は何を選択する?』
「くッッ!?」
一瞬ベルは迷った。その一瞬が命取りだった。ベルは鍔迫り合いに負け、右に投げられるように飛ばされる。そのままベルの方には目をくれずアルテミスとレフィーヤの方へ殺意を持って駆けていく。
「ッッッ!?神様!!レフィーヤ!!」
ベルが叫んだその瞬間、二人はベルの眼前で首を飛ばされた。彼女らが偽物だと感じることができないほど最高に作り上げた幻だった。ベルは両膝を落とし、そのまま地面に手をついた。
『君は愚かだなベル・クラネル。今のが夢でよかったと思っているだろう、君は。まあこれは夢なんだが、君は私に言ったはずだ.....英雄になりたいと』
ピクリと四つん這いになっていたベルの体が動く。何かに気づかされるように、ベルの体は動き始めようとしていた。そのまま青年はゆっくりと笑い、指をまた鳴らした。
『今から私は3つの試練を課す。それを乗り越えなければ、永遠に何もない夢の中を彷徨ってもらう、二度目はないぞ、ベル』
ベルの心臓は緊張を紛らすため、ドッドッドと心臓が悲鳴を上げていた。
******
幸せだった、両親が作ったホットパイを食べ、他愛もない世間話を繰り広げる。幸せのはずだった。母親に口元についたホットパイを拭われ、父親はそれをみてゆっくり笑う。
でもレフィーヤの心の中には今でもモヤがかかったようだった。何か違和感を感じる、しかしこの違和感を認めてしまえば、この空間が壊れてしまうようで、レフィーヤ自身認めることはできなかった。
「ああ、幸せだなぁ」
レフィーヤは一言呟いて、この空間を壊さないように優しい世界に浸るのだった。
******
『まず一つ目だ、ベル。心して答えろ』
ベルよりも少し背が高い黒い人影が喋る。ベルはこれの試練を乗り越えられるか不安でしかなかった。ベルはごくりと喉を鳴らす。
『もしだ、喋れる
ベルは理解するのに数秒かかった。
(怪物が人の心を持ってて喋れる?)
そんな馬鹿げたことあるはずがない。怪物は人に災いを齎すもの。人と共存できるわけがない。そう普通の人なら考えるだろう。だがベル・クラネルは違った。数秒驚いたあとベルは口を開く。
「僕は助けます」
『
「助けます!!」
ベルは食い気味に答える。拳を握りしめ、人影に訴えるように。
『....』
「僕たち、人だって
『一つ目の問い、聞かせてもらった。次の問い、先程の戦いを見せてもらおう』
人影はパチンと指を鳴らすと、先程同様に遺跡を映し出され、ベルの後ろにはアルテミスとレフィーヤが傷だらけで座り込んでいた。そして目の前には、悪人顔の片手剣を持った男が殺意を出しベルを、いやアルテミスたちを見ていた。確実に殺気がベルではなく、大切な
『精霊の力はすごくてな、神アルテミスやレフィーヤの姿かたちそっくりの幻想作れる上に、幻想が殺されると現実も
「ッッ!?」
「■■■■■ッッ!!」
その瞬間、ベルは大きく踏み込み、黒幻を抜く。それは敵がもうアルテミスたちを狙っているからだった。
無条件反射だった。その青年の声を聞いた瞬間。身体がもう動いていた。確かにあの青年があそこまでの力を持っているのかという疑問もある。しかし万が一の可能性がないわけでもない。
『さあ、見せてくれ、ベル。お前が見せる結末を』
******
永遠にこの空間に居たかった。痛い思いもしない、心も痛むこともない。記憶でも幸せな人生を送ってきたと訴えかける。けど心が違うと叫んでいた。本当のお前は何を知り、何を学んだのかと。
たくさん涙を流し、身体も心もボロボロになった。もう挫けそうで、眠ってしまいたいと何度も思った、しかし光があった。
親を亡くしてから、親代わりをしてくれた人。少し抜けてるところはあるが尊敬できる女神。
そしてまだ弱々しいけど、いつか自分すらも飲み込んでしまうほどの光を放つ少年。
-起きろ-
−起きろ‼︎–
ー目を背けるな!ー
『君は誰?』
『私は?』
『そう、あなたは誰』
『…レフィーヤ・ウィリディス』
『それだけ?』
『…違う』
『……』
『私は!!レフィーヤ・ウィリディス!!一度は故郷を燃やされ、両親も惨殺され!!帰るところをなくした!!けど私には帰る場所がある!!』
『私は!!冒険者、レフィーヤ・ウィリディス!!』
幸せの空間を作り出していた、今は亡き家がひび割れる。村のざわめきも聞こえなくなる。
割れる。
レフィーヤは自分が食べていたホットパイがガラスのように消える。
割れる。
今まで過ごしてきた家がガラスのように消え、黒い空間に立っていた。
割れる。
レフィーヤは振り返ると、黒い空間にレフィーヤの両親が微笑ましそうに、そしてどこか悲しそうに、見つめていた。
たくさん伝えたいことがあった。今自分が何をしてるのか、これから何をしたいのか、昨日したこと、今日これからすること、明日何をするのか、これから食べるご飯の話。
たくさん、たくさん、たくさん話したいことがあった。けど、今目の前にいる人たちは亡霊だとしても、本来ならいない存在。あの時伝えられなかったことを言おう。
「…..行ってきます」
震える唇を噛んで、震える両手をぎゅっと胸のまえで組んで、涙ながら口にする。
『いってらっしゃい!』
満面の笑みで送り出してくれた。初めて両親の声が聞こえた気がした。そしてガラスのように消える。
「あぁぁぁあぁぁぁぁッ!!」
レフィーヤは膝を崩し、堪えきれなかった涙を流す。彼彼女が本物であろうが偽物であろうが、きっとこの想いは本物だから。ありがとうと最後レフィーヤは心の中で呟き、涙を拭い立ち上がる。
立ち上がると、黒い空間から人影が現れる。精霊シルフだった。
「いい趣味ですね、こんな夢見せて」
「仕方ないと割り切りなさい、これが試練だもの!」
苛立ちを隠しきれなかったレフィーヤは目の前のシルフに嫌味を垂れる。シルフは悪びれる様子もないで自慢げにふふんと腰に手を当てながら答えた。その態度にイラッとしたレフィーヤが眉を細める。
「怒る気持ちもわかるわ!けど、さっき会ったあなたより今のあなたの方がいい顔してるわよ」
「....体のいいこと言わないでください」
「それで、試練に打ち勝ったわけだけどあなたは精霊の力を得る権利があるわ」
ゴクリと喉を鳴らす。
精霊の力、古代では最強と言われていた存在。それが今神の恩恵を授かる。それは通用するのか、レフィーヤは疑問を覚えていた。
「私は貴方の中に残り続ける。誇っていいわ、貴方自身の力で試練を乗り越え精霊の力を得た、その力は借り物なんかじゃない。貴方自身の力なのだから」
そしてシルフは人の形から、黄金色の人魂のように変化した。その人魂はレフィーヤの胸の中に吸い込まれていく。
レフィーヤは自覚した。私の中に入ってきたものは人知では理解できないもの。身体に入ってきた瞬間わかった。神の恩恵にも刻まれずとも使えるこの力を試したくなった。
「いかないと、ベルのところに...」
新たな力を得たレフィーヤは涙を拭い、歩き出す。
魔法とかの詳細は後編で…
今回のお話の意図とかも後半の後書きで描きたいと思います。
前半の補足だけ失礼します。
前回ベルはダンジョンへと書いていたんですけどとある青年に介入され、本来の試練とは異なる試練をさせられてます。なのでこんな意地悪な質問ばかりされてます。精霊もまた介入できるんですけど、彼がどういう選択するか見るために見てます。
後半もよろしくお願いします。
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僕は英雄になりたい
少ないですが、書きました。
「ぐぅぅッッ!!」
僕はどうしたら.....!?黒い影は強いわけではない、力も敏捷も高いわけではない。だけど僕が押されてる。相手に技があるわけでもない、なんなら僕の方が神様やレフィーヤに教われてる分僕の方が高い、なのに押される。
******
相手の腕を斬る、再生し止まらない。
なら足を斬る、転倒するが再生し止まらない。
腕や足を斬るだけでも、精神力が削られる。人ではない、わかっている。頭では理解していても
『どうした、ベル。英雄になるんだろ?悪を斬るんだ。簡単なことじゃないか』
簡単なわけがないだろ!?人を斬るんだぞ!?
この先なにがあるのかわからない。冒険者になった僕は悪と対峙する可能性のほうが高い。いや、きっとする。その時僕は斬れるのか。それを考えないといけない。
悪は僕に抱く感情は殺意しかない。
圧される!!
大きく振りかぶられた、剣で僕の頭を狙って振り下ろされる。黒幻でなんとか防ぐが、重い、重い!こんなに重いのか!!
『ベル。お前が思うほど英雄の道は軽くない。酷く茨の道だ。何かを犠牲にして進むこともある。100を助けるために1を切り捨てる選択もある』
「ッッッ!!!」
鍔迫り合いをしながら、僕は精霊に言われた言葉が頭の中で木霊する。
それが英雄なのか、1を切り捨てる?冗談じゃない!!みんなを守るのが英雄だろ!!これが偽善者と知っていても、僕は偽善を現実にできる英雄になりたい。
あぁ、そうか僕は...
僕は 英雄 になりたいんだ。
「そんな選択!僕が目指してる英雄じゃない!!」
鍔迫り合いで負けていた僕の手に力が入る。膝を曲げ、押されていた体が起き上がる。黒幻に力を入れ、悪をはじきとばす。
僕は彼の言葉を聞いた途端、言葉が出ていた。そうだ僕の中で答えは出てた。神様やレフィーヤと過ごしてるうちに、いや、その前から祖父から言われていた
『これはお前の物語だ』
「グッッ....!!!」
『...どうして武器を捨てた』
僕は武器を捨て、手を広げて彼を止めた。彼は、躊躇なく僕の腹を刺す。
喀血したのがわかる。当然だ、僕の体の中には剣が刺さっているのだから。
きっと僕を刺している悪は戸惑っている。殺意も、敵意すらもない。刺した剣を手放し、膝をついた。この悪に顔というものがあるなら、理解ができない様で呆然としているのだろう。
「….さっきあなたが言っていた、喋れる
『…..』
「僕は諦めない。悪人すら仲間にしてしまうような、理想を僕は追い続ける」
まだ僕は英雄じゃない、だからこそどんな英雄になるのか僕自身で決めることができる。英雄に憧れた人は可能性は無限大なんだ。
悪人は僕が斬ったわけでもなく、精霊が何かしたわけでもなく、光の粒となって空に消えていく。一瞬、表情が見えないはずの悪が笑ったように見えた。
僕に刺さっていた剣も光の粒となって消える、傷口は消えず残り僕は腰に刺さっているポーションで緊急処置をとる。
『お前は何を目指してる?』
「英雄。僕は英雄になりたい」
精霊もまた黒い顔で表情が見えないが、ゆっくりと笑った気がした。
精霊は僕と向き合い僕の目を見る。
『では最後の問いだ、ベル』
先ほどまで戦場だった暗闇世界に静寂が訪れる。
僕は悪い気分ではなかった。僕のやりたいこと、これから目指すもの、やらなくてはいけないこと、それが明確だったから。
『英雄とは?』
僕はもう迷わない。
「理想家」
『ふむ...その心は?』
「理想を追い続けることが僕が求め続ける英雄だからです。何かに妥協して、納得して誰かを切り捨てるような僕にはなりたくない。まだ弱くて、何もできないくらいだけど」
『「僕は英雄になりたい」』
声が重なる。
黒く塗りつぶされていた顔が剥がれていく。
精霊、いや青年、いや英雄が僕の目の前にいた。
いろんな人に騙されて、お姫様が拐われ、なし崩しに助けてしまうそんなおかしな話。そんな英雄が僕の目の前に。
「アルゴノゥトさん...」
「今はベル・クラネル。だろ?私?」
途中から気づいていた。彼が精霊でもなんでもないことを、僕自身なんだって、神様が言っていた。死んでしまった時、100年後か1000年後か、はたまた1万年後に生まれ変わると記憶も一切忘れて、生まれ変わると。
だからきっとこの話は忘れるのだろう。けど彼が紡いできた軌跡を僕は忘れない。
おじいちゃんはアルゴノゥトのファンだった。出回っている本の話ではなく、そこにある裏のアルゴノゥトの苦悩を教えてくれた。
「私は英雄になる
「アルゴノゥトさん...」
黒い世界が崩れ始める。そして同様にアルゴノゥトさんの体も光の粒のように消えていく。アルゴノゥトさんは僕が捨てた黒幻を拾う。
「話は終わりだ。ベル、英雄が理想家と名乗るなら。理想を追い続けろ、挫けてもいい倒れてもいい、けど諦めるな」
拾った黒幻を僕に渡してくれる。それをゆっくり手放さないように力を込めて握りしめる。
「アルゴノゥトさん、あなたと話せてよかった」
「ああ、僕もだよ」
黒い世界が壊れると同時に彼もまた消えた。眼前には精霊ルナさんがいた。神様もルナさんの後ろにいて、僕のことを見守っていてくれた。
あれ?....僕はいったい誰と喋っていたのだろうか。何か大切な話をしていた。けど僕がやるべきことは覚えている。英雄になろう。理想家の英雄に。
******
アルテミスとルナは想定してなかった。確かに英雄と問う試練だった。けど内容はこんなものではなかった、舞台はダンジョンだったはずだ。けど何者かに介入された。一度は侵入者を追い出そうともしたが、彼の生まれ変われの英雄と分かった時点で、見守ることにした。きっとベルは彼の方が成長できると思ったからだ。
だからルナは認めている。ベル・クラネルは英雄に憧れる少年から目指す少年になったと、彼の力になりたいとルナは心の底から思っている。
だからアルテミスは恋をしている。真っ直ぐ白き魂を携え、何者にも優しい彼が大好きだと。
「ベル、試練突破おめでとう。本当にこの試練で成長したと思うわ」
「そうですか?...そうかもしれません。もう迷いません。やることは単純でした」
「単純だからこそ、難しい。そうでしょう?」
「はい」
ルナはベルの胸に手を当て、発光しだす。ベルの眼前には幻想的な光景が映っていた。やがて、精霊は光に包まれ、真っ白な人魂に変化する。ベルの中に入っていく。最後に彼女は、『頑張ってね、ずっとみてるから。またね』と呟いた気がした。
「ベル!!」
「か、神しゃま!?」
「なっ、なっ!何してるんですか!!アルテミス様!はしたないですよ!!」
アルテミスは試練が終わると同時に、ベルに抱きつく。ベルの顔はアルテミスの胸に埋まり、ベルの顔は真っ赤になっていた。レフィーヤはベルからアルテミス離そうとして、二人の間に入り込もうとする。
アルテミスはレフィーヤに剥がされてしまい。若干膨れっ面だったが、ベルとレフィーヤのステイタスを刻む。
レフィーヤ・ウィリディス
Lv.2
力 : B 800→B 823 耐久 : D 694→C 712 器用 : C 782→B 804 敏捷 : B 801→B 834 魔力 : B 832→B 854
《魔法》
【アルクス・レイ】
・単射魔法。
・標準対象を自動追尾。
【バーナス・レーベル】
・身体能力向上
・対象者5人まで付与可能
・自分に付与可能
【トニトルス】
・
・雷魔法
・詠唱式【
《スキル》
・
魔法効果超上昇
「これまた随分と…」
彼女もまた成長したな。とアルテミスはふっと微笑む。やはり追い詰められ、乗り越えた先は、成長を促す。子供達の成長は本当に早い。
「よし、次はベルだ!」
ベル・クラネル
Lv.1
力 : B 724→S 902 耐久 : C 648→A 878 器用 : C 697→S 900 敏捷 : A 809→S 976 魔力 : G 290→ F 344
《魔法》
【ガウス・オリオン】
・破邪の一撃。
・誓いによって威力上昇。
・誓いによって消費魔力上昇。
【エレジェイト・ムーン】
・
・月魔法。
・詠唱式【
《スキル》
【
・早熟する。
・守護意識が続く限り効果持続。
・守護意識の丈により効果上昇。
【
・運命的相性。
・自身の成長と神の認識によりステイタス変革。
・
「うわっ」
アルテミスからの第一声である。
もうちょい続く...
そうなんです、もう少しだけ書かせてください。
特に魔法について書かせてくだせぇ...
この話が終わり次第、新章突入させます。
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