プレデター・クロスオーバー (陰猫(改))
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漁夫の利と言う名の奇襲

 剣と魔法と希望に満ちた世界。

 

 その世界に彼は遥か宇宙から、やって来た。

 

 彼は宇宙船を停泊させると特殊なマスクを被り、外に出て、周囲を見渡す。

 

 その左肩にはナルガクルガと呼ばれるモンスターの頭蓋骨が装飾品として飾られていた。

 

 ーーと、複数の声がマスクのセンサーに引っ掛かり、彼はそちらを目指して駆け出す。

 

 声の方へ向かうと小柄のモンスター達と鎧に身を纏う三人の少年と白いローブを着た少女の一行が戦っているのが見える。

 

 彼は察知されぬ距離で左腕に装着したガントレッドを操作すると周囲に溶け込み、木から木へと跳び移りながら近くで様子を伺う。

 

「くそっ!ゴブリンめ!」

 

 小柄なモンスターはゴブリンと言うらしく、彼はそれを音声に記録する。

 

 その若き冒険者達には荷が重かったのか、それとも多勢に無勢だったのか、少年達はゴブリン達に袋叩きにされ、残された少女は白いローブを引き裂かれてゴブリン達の慰みものとなった。

 

 冒険者達が全滅し、生け捕りにされた少女が運ばれる。

 

 その気の緩んだゴブリン達を観察した彼は木から飛び降りると地面へと着地して、その姿を現せる。

 

 異変に気付いたゴブリン達が振り返り、慌てて彼に身構える。

 

 その中にはホブゴブリンと呼ばれるゴブリンの上位種である彼の身長以上のモンスターもいた。

 

 彼は威嚇する様に両手を後ろに広げて吠える。

 

 それを合図にゴブリン達が一斉に襲い掛かって来た。

 

 そんなゴブリン達に彼は挨拶代わりと言わんばかりに肩のプラズマキャノンを発射してゴブリン達を吹き飛ばす。

 

 爆風と共に吹き飛ばされたゴブリン達が肉片となって転がって行った。

 

 その破壊力にゴブリン達の動きが一瞬鈍る。

 

 勿論、これは彼の計算の内である。

 

 ゴブリン達を牽制すると彼はレイザーディスクと呼ばれる刃のついたディスクを投げ、ゴブリン達をスライスして行く。

 

 此処でホブゴブリンが襲い掛かったが、その棍棒を持つ手は彼の手元に戻ったレイザーディスクで切断され、ゼロ距離からのプラズマキャノンで内臓を吹き飛ばされて後方に吹き飛ぶ。

 

 そこから先は一方的な殲滅であった。

 

 子供並みの知能を持つとされるゴブリンでも一方的に虐殺する彼を危険だと判断出来る程、圧倒的なものであった。

 

 戦意を失ったゴブリン達が逃げ出そうとすると、そう言ったゴブリンは彼のレイザーディスクやスピア、ワイヤーの餌食となり、残されたのは肉体的にも精神的にもゴブリンにボロボロにされた少女だけであった。

 

 そんな彼女に掛ける言葉など、彼には持ち合わせていない。

 

 ゴブリン達を全滅させると彼はゴブリン達の生皮を剥がして木に吊し上げ、ホブゴブリンを蹴り飛ばして、うつ伏せにさせてから強引に脊髄を引き抜いてホブゴブリンの頭蓋骨を手に入れる。

 

 彼は戦利品であるホブゴブリンの頭蓋骨を手にして全滅した冒険者をそのままに自身が乗って来た宇宙船へと戻って行った。

 

 そして、ホブゴブリンの頭蓋骨を丁寧に洗浄して磨き、コレクションの一つとして宇宙船の自室に飾る。

 

 魔神が蘇り、混沌が支配する世界ーーそんな中だからこそ、彼は別の宇宙からやって来た。

 

 彼に名前らしい名前はないが、彼の種族を別の宇宙では、こう呼んだ。

 

 "プレデター"と。

 

 これはそのプレデターと呼ばれる種族の宇宙人が闘争の支配する数多の世界が交差する中で様々なモンスターや戦士達と戦う物語である。




名称:ナルガ・プレデター

武装:リストブレイド×2、レイザーディスク、ネット、スピアetc.

備考:数多の世界で獲物を狩るベテランの狩人のプレデターと呼ばれる宇宙人。
 狡猾で奇襲を得意とし、迅竜ナルガクルガの頭蓋骨を左肩にトレードマークとして身に着けている。
 その肌は同じプレデターとは違い、漆黒である。
 その身体中には大小様々な古傷があり、彼が今まで壮絶な戦いをして来た証となっている。
 敢えて強敵であった生き物を殺さない等、他のプレデターにはない独自の掟を持つらしい。
 同じベテランのハンターであるザ・クリーナーの様に下顎の牙が一本ない。


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小鬼殺しと補食者

 彼はとあるゴブリンの根城である廃墟へと向かうと冒険者達が入るのを確認してから音声を再生する。

 

『くそっ!ゴブリンめ!』

 

 その声を聞いて侵入した冒険者達が廃墟の中心へと駆け付けるのを待ってから、彼はゴブリンと冒険者達の戦いを観察した。

 

 その中で彼はゴブリンを殺す事に慣れた錆び付いた鎧の人間を見る。

 

 この危機的状況にありながら策を用いり、的確にゴブリンを始末するその人物の戦い方は彼の参考に大いになった。

 

 故に彼はゴブリンから、その人間に標的を変える。

 

「変だよ、オルクボルク。他の冒険者の姿が見付からない」

「ゴブリンスレイヤーさん。私も何か嫌な予感がします」

 

 ゴブリンスレイヤーやオルクボルクーーそう呼ばれた人間を彼は廃墟の屋根から確認する。

 

 観察しながら彼はゴブリンスレイヤーの合理的な作戦に目を見張る。

 

 固有の武器のみを使わず、時に知恵を巡らせて罠を張り、時に所持した道具を使い、ゴブリン達を始末する。

 

 その戦い振りに彼は良いアイディアを得たと思った。

 

 ーーとは言え、手練れとは言え、ゴブリンスレイヤーのパーティーには廃墟全てのゴブリンを討伐するのは困難だったらしい。

 

 いや、彼が音声を再生しなければ、ゴブリンスレイヤーとその仲間はもっと慎重に討伐を行っていただろう。

 

 そう思うと彼は口惜しく感じた。

 

 ゴブリンスレイヤー達が異変を感じて、一時撤退すると彼は廃墟の屋根から降り、健在で未だ何があったかを把握してないゴブリン達を始末する。

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 翌日、休憩を取ったゴブリンスレイヤー達は再びゴブリンの棲まう廃墟へと足を踏み入れた。

 

「また此処?……流石にオルクボルクでもおかしいって解るでしょ?」

「確かにの。昨日聞いたあの声からは、まるで生気が感じられんかったしな」

 

 妖精弓手と鉱人道士の言葉に女神官もかつてない異変に緊迫する。

 

「……だからこそだ」

 

 ゴブリンスレイヤーはそう告げると一歩踏み出し、すぐに立ち止まった。

 

「ーーっと、どうしたのよ、オルクボルク?」

「死臭がしますな」

 

 ゴブリンスレイヤーの代わりに蜥蜴僧侶が答えるとゴブリンスレイヤー達は警戒しながら前進を再開する。

 

 そこで見たのは生皮を剥がされ、宙吊りにぶら下がるゴブリン達の死骸であった。

 

「ーー何よ、これ?」

 

 それを見て、妖精弓手が思わず、こみ上げる吐き気を手で押さえる。

 

「……見せしめか?」

 

 ゴブリンスレイヤーはそれをしばし観察すると周囲を探索する。

 

 どう言う理由かは定かでないが、ゴブリン達を虐殺した何かは孕み袋にされた女性や子供のゴブリンは殺さなかった様であった。

 

 ゴブリンスレイヤーはその子供のゴブリンを処分してから更に周囲を探る。

 

「ーーっ!?」

 

 そんな中、妖精弓手はそちらへと振り返った。

 

 だが、そこには何もなく、ただ崩れかけた廃墟の屋根と青い空が見えた。

 

「どうしたんですか?」

 

 女神官の言葉に答えず、妖精弓手は弓を構える。

 

 妖精弓手にだけ解っていた。

 

 そこに見えざる何かがいると言う事にーー恐らく、ゴブリン達を血祭りに上げた者だろうと。

 

 だが、その見えざる何かは妖精弓手が身構えると、その場から去って行った。

 

 理由は定かではないが、恐らく、自分は標的と思われてないのだろう。

 

 そう判断すると妖精弓手は脱力して、武器を下ろす。

 

「何かいたのか?」

「ええ。でも、何かまでは解らなかったわ」

 

 ゴブリンスレイヤーの問いに妖精弓手はそう答えると彼らと共に地下に通じる通路へと入る。

 

 そこもまたゴブリンの死体だらけであり、ゴブリンロードと思われる首のない死体が玉座にもたれ掛かっていた。

 

「さっきの奴の仕業かも」

 

 妖精弓手がそう呟くとゴブリンスレイヤーはこう返した。

 

「そんな事よりゴブリンだ」



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罠だらけの戦い

 宇宙船に戻った彼は洗浄し、綺麗に磨いてからゴブリンロードの頭蓋骨を壁のコレクションの一角に飾ると、ゴブリンスレイヤー達の為の武装を選び、再びゴブリン達が根城に使っていた場所へと向かう。

 

 そこは変わらず、彼が吊し上げたゴブリン達の死骸がぶら下がっていた。

 

 彼はそれをどけながら、右腕のガントレットを操作し、ゴブリン達の根城の地下マップを表示する。

 

 そして、仕掛けて置いたセンサーに引っ掛かったゴブリンスレイヤー達の姿を映像として映してからズームして確認し、ゴブリンスレイヤー達がいる地下へと移動を開始する。

 

 そこで彼はすぐに異変に気付いた。

 

 仕掛けて置いた罠の数が明らかに増えていたからだ。

 

 それも彼の物だけではない罠や彼が予め、設置した配置の変えられた罠もある。

 

 彼はゴブリンスレイヤー達を罠に嵌めたと思っていたが、自身が罠に嵌められようとしているのだと気付く。

 

 だが、彼は敢えて鳴子を鳴らして地下へと入って行った。

 

 一族としての誇りによるものもあるが、それよりも標的であるゴブリンスレイヤーが知恵を絞って仕掛けた罠に興味が湧いたからである。

 

 彼は慎重に罠を警戒しながら地下へと進む。

 

 彼のセンサーにこの世界の原始的な罠は通用しない。

 

 ーーだが、経験豊富な彼にはそれを突破するだけの技術と知識があった。

 

 そして、学習する術も……。

 

 数ある罠を突破すると彼は奥で待っていたゴブリンスレイヤーと対峙する。

 

 ゴブリンスレイヤーの仲間は周囲に展開しているらしく、物陰に隠れて息を潜めている。

 

「ゴブリンじゃないのか?」

『ゴブリンじゃないのか?』

 

 ゴブリンスレイヤーの問いに彼は即座に音声を再生して答える。

 

「目的はなんだ?」

 

 今度の問いには音声ではなく、ゴブリンスレイヤーを指差す事で答えた。

 

 そして、リストブレイドを出して吠える。

 

「決闘が望みなのか?」

 

 ゴブリンスレイヤーが問うのに対して彼の背後の物陰に隠れていた妖精弓手が踊り出て、弓矢を構えようとする。

 

 彼はそれより速く振り返るとネットで妖精弓手を壁に張り付けた。

 

 そんな彼にゴブリンスレイヤーが迫る。

 

 彼は振り向き直りながら、リストブレイドでゴブリンスレイヤーの剣を防ぐとゴブリンスレイヤーのフルフェイスの兜に顔を近付けた。

 

 彼のマスクとゴブリンスレイヤーの兜が擦れ合い、火花が散る。

 

「目的は俺の様だが、俺はお前と遊んでやる暇はない」

 

 ゴブリンスレイヤーはそう告げると彼の腹を蹴って距離を取った。

 

 だが、強靭な彼の肉体を押し退ける事は叶わず、逆に後退してしまう。

 

 かくして、罠だらけのゴブリンの根城で宇宙を越えた格闘が展開されるのだった。



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エデンの果実

 力はゴブリンスレイヤーよりも体格的に恵まれている彼に分があった。

 だが、ゴブリンスレイヤーには仲間がいる。

 

 分があったとは云え、彼には周囲の行動までは理解出来ない。

 

「いまだ!」

 

 ゴブリンスレイヤーのその言葉に彼が振り返った瞬間、女神官の聖なる光が辺りを包む。

 その閃光は彼の視界を遮り、その目を眩ませるには十分だった。

 

 その瞬間を見逃さず、ゴブリンスレイヤーが彼に迫る。

 まさに好機であったが、ゴブリンスレイヤーにはただ一つ誤算があった。

 

 それは反射的に素早く対象が身を屈めた事である。

 その動作故に彼の一撃はそのマスクを掠める程度に収まり、そのまま、リストブレイドで胴体を貫く。

 

 その一撃は鎖帷子と鎧の二重装甲のゴブリンスレイヤーの肉に達していた。

 フルフェイスの兜からゴブリンスレイヤーの血が零れる。

 

 だが、ゴブリンスレイヤーは後退りするのではなく、寧ろ、深く自分に押し込め、覆い被さるような姿勢で彼の背中に何かを仕掛ける。

 それが自分の仕掛けた罠の一つである事に気付いた彼だが、時既に遅く、ゴブリンスレイヤーと共に爆発に巻き込まれる。

 

 ゴブリンスレイヤーは後方に吹き飛び、ゴロゴロと転がる。

 血塗れだが、彼は奇跡的に一命は取り止めていた。

 

 故に見る。

 

 発光する液体に染まりながらも佇む彼を・・・。

 

 無論、彼とて無傷ではない。

 

 爆発で背中が大きく焼け爛れ、壊れたマスクから素顔が露出している。

 

 その異形に誰もが言葉を失ったが、彼は千切れた腕にも焼け爛れた身体にも関わらず、ゴブリンスレイヤーへと前進した。

 何か仕掛けるのかと鉱人道士や蜥蜴僧侶が身構えるが、彼は転がったゴブリンスレイヤーの前に転がる壊れた兜を無事な手で拾うだけであった。

 

『また会おう、勇者よ』

 

 彼はそれだけ言うとゴブリンスレイヤーに背を向け、来た道を戻っていく。

 

「逃げた?」

「いやいや。ありゃあ、見逃してくれたのじゃろう」

 

 蜥蜴僧侶と鉱人道士は互いにそう呟くとボロボロのゴブリンスレイヤーと未だにネットで身動き出来ない妖精弓手の元へと向かう。

 

 

 ーー出血多量で瀕死になりながら彼はなんとか自身の宇宙船に戻ると治療に専念する。

 彼の腕は元々が義手であった為、あの腕自体なくても問題はなかった。

 彼は横になり、マシンを起動させて治療を開始させると今一度、壊れたゴブリンスレイヤーの兜を眺め、大事にそうに抱えながら深い眠りにつく。

 

 生死を懸けた死闘の後に生き残るのは彼の種族では恥である。

 だが、異端なる彼は気にしない。

 

 寧ろ、楽しみが増えた。

 

 生き残るからこそ、人間が叡知を授かるように彼もまた知恵を振り絞り、生き残る事に生き甲斐を感じているのだった。

 

 彼はナルガ・プレデター。

 

 狡猾で異端なる戦士である。



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掟を破る理由

 彼が治療に専念している間、船は新たな次元の壁を越え、別の世界へと彼を誘う。

 

 此処で少し、彼について説明しよう。

 

 彼が誇り高く戦うのではなく、無様でも生存する道を選んだのには理由が幾つかある。

 

 一つは勿論、様々な猛者と戦う為である。

 そして、もう一つは自分達とは異なる亜種族と戦う為である。

 

 彼等以外のーー否、似て異なるとも云うべき種族は他にもいる。

 その中で一際、強力な戦闘力を誇る亜種が存在する。

 

 例えるなら蜜蜂と雀蜂の違いに近いだろう。

 奴等は大柄で彼ら以上の体格を持ち、似た技術を持つ。

 もっと正確に云うならば、彼らの天敵とも呼ぶべきだろうか。

 

 奴らは彼のような同胞を生け捕りにし、仲間が助けに来るのを待って始末する。

 それ以外にも戦闘に特化した人間や別種の存在を狩り場である惑星に連れ出し、自らの戦闘欲求を満たす為に更なる知識を貪欲に吸収しようとする。

 

 これ以上、犠牲者が出ない為にも彼はあらゆる手を尽くさねばならなかった。

 例え、同胞達から異端と忌み嫌われても、彼には同胞を守る義務があるのだ。

 その為なら誇りも捨てよう。

 

 それが彼の導き出した結論である。

 

 その結果、身体の半分をサイボーグ化して補おうとも、掟に背いて獲物を仕留める事なく見逃そうとも彼は更なる高みを目指す為に進む。

 例え、同胞に忌み嫌われようとも彼はただ、亜種である奴等に苦しめられる同胞を救う事を願った。

 

 無論、掟の全てを否定するつもりもない。

 

 故にゴブリンと云う種族は狩って様子を見た。

 

 だが、ゴブリンの知能は彼を満足させるものではなかった。

 結果、彼はゴブリンではなく、知略を尽くすゴブリンスレイヤーに標的を切り替えた。

 

 それはある意味、正解だったろう。

 身体の一部をまた失ったが、彼らの知恵と勇気は称賛に値する。

 

 だからこそ、彼はゴブリンスレイヤーを生かす事を選ぶ。

 

 いつか、再び、また一戦交える約束をしたのは、その為である。

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 治療を終えて目を覚ました彼は新たに機械化したその身体が何処までのモノになったのかを知る為にも力ある生物との戦いを欲した。

 

 今回は人間では駄目だ。

 知略を巡らせ、強敵とぶつかり合う戦闘ではなく、純粋な力比べを彼は欲した。

 その為、彼は人間との戦いを後回しにすべきと考え、人間の生まれる遥か以前の地球を目指す。

 

 そう言った理由で彼は太古の惑星へと降り立つ事になるのであったが、ここで彼は運命的な出会いを果たすのであった。

 

 まさか、彼もこの世界に人間がいるとは思うまい。

 それも自分よりも遥かに巨体を有する恐竜達と純粋な力比べの出来る人間が存在する等、想定外の事である。




話に出て来る奴等とはバーサーカープレデターの事ですね。
いずれ、プレデターと云う生物をやめた彼はバーサーカー達と戦います。
それはいずれの話で今回は○○○と戦って貰います。

次回、タグ追加と同時に対戦相手を公開します。
恐らく、この時点で察している方もいると思いますが、正解は次回に持ち越しです。


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捕食者と野人

 恐竜が跋扈する白亜紀後期。

 

 後の現代でピクルと名付けられる野人は見えざる何かを察して空を見上げる。

 この世界とは違う何かにピクルは興味をそそられた。

 

 進化とは常に環境の変化や生存本能から成り立つ。

 この頃のピクルはまだ進化途上の類人猿が如く、木々を飛び移る生活を送っていた。

 だが、この世界にはない何か得体の知れないそれにピクルの好奇心は刺激されたのだった。

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 彼は宇宙船が次の次元の地球に降り立つと宇宙船から降り、周囲を見渡す。

 今回の武装はリストブレイド以外装着していない。

 だが、新たに作られた腕のパワーを測量するには丁度良いと彼は判断する。

 

 そんな彼の近くで茂みが動く。

 彼がそちらを見るとそこにはラプトルの姿があった。

 

 彼はすぐに狩りの姿勢に入る。

 そんな彼の背後から別のラプトルが現れ、振り返った彼を押し倒し、義手に噛みつく。

 

 彼はそんなラプトルに吠え、義手であるパワードアームから駆動音を響かせて噛みつくラプトルの牙を砕きながら振り払う。

 素早く起き上がった彼は牙を砕かれて後退するラプトルの首を掴むともう一方の手からリストブレイドを展開し、そのラプトルの顎を貫く。

 

 顎から後頭部までを貫かれたラプトルは絶叫しながらグッタリとし、そのまま、頭蓋骨ごと引き抜かれる。

 

 相手が脅威と感じた他のラプトルは一声鳴くとそのまま、再び茂みの中へと消えて行く。

 それを見送ってから、彼は自分が倒したラプトルの死骸へと近付き、マスクでスキャンする。

 そして、それが食べられる物だと判断するとマスクを外してラプトルの死骸に歯を立てた。

 

 その一部始終をピクルは見ていた。

 二本足で地上を歩く事、恐竜に挑み、その肉を貪る。

 ピクルはこれを本能的に理解した。

 

 これこそが生存本能なのだと・・・。

 

 他の仲間のように恐竜に怯えて木々を飛び移って逃げるのではなく、立ち向かう事で頂点に立つ事を・・・。

 

 それを本能で悟ったピクルは自分とは違う存在の彼を見据えて笑う。

 ピクルは彼が強者だと理解した。

 

 だから、自ら地上に降り立ち、不馴れな大地で彼と向き合う事にしたのだった。

 彼もまたピクルの存在に気付き、ラプトルの肉を食らっていた手を止める。

 

 彼が最初に思ったのは疑問であった。

 この世界には人間はいない筈だ。

 

 では、こいつはなんなのか、と。

 ピクルはピクルで彼にフラフラと近付き、彼が食らっていたラプトルの死骸を指差す。

 

 彼はーーこいつはイレギュラーだが、それ故に面白いかも知れないーーと考える。

 

 そして、一歩引いてピクルがラプトルの肉を食らうのを眺めた。

 小動物を食らう事はあっても強者である恐竜の死骸を食らう事のなかったピクルはその味に感激した。

 

 そんなピクルに彼は興味を持つ。

 

 こいつは大物になるかも知れない、と。

 

 その時、戦うのが如何なるものかを想像しつつ、彼はこの野人と共にこの世界で狩りを始める事を決める。




お待たせしました。
そんな訳で次は刃牙のピクルと戦います。

流石のピクルも幼少の頃は他の類人猿同様に木の上で生活していたかなと思って。
なので、今のピクルを作る為に彼が鍛えます。
ピクルや宮本武蔵の話は手に入らなかったのでアドバイスなどがあれば、お願いします。


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異種族の友情・・・そして、別れ

 彼は野人と共に地を駆けた。

 ピクルに合わせ、彼は極力、自身の生身で戦った。

 

 如何にしてラプトルとの戦うのかも教え、大型の恐竜とも対等に戦える筋肉や骨格などを作った。

 野生の力とは恐ろしく、純粋で真綿が水を吸うようにピクルは順応していった。

 

 そう。順応である。

 

 ピクルと云う野人は異星人である彼との出会いをきっかけに類人猿のそれとは違うーー恐竜との戦闘を前提にした進化を彼との狩りで繰り返し行っていた。

 

 きっかけと云うのは何事にもある。

 

 ピクルと呼ばれる野人は彼をきっかけに白亜紀最強の野人として進化が完了するのも時間の問題であった。

 そして、その為の身体能力を手に入れようとしてる。

 

 強力な肉食恐竜との戦いは仕上げとばかりにここから始まった。

 時にはまだ敵わぬと知って逃走したり、彼に助けを求めたりした。

 彼も厳しく、この野人を育てたが、それ以上にこの野人に愛着が湧いた。

 

 故に時に助力したり、時に逃走の仕方を教えた。

 

 いつしか、この野人と彼の間に友情のようなものが芽生える。

 それと同時に別れの時が近い事もお互いに理解する。

 

 ティラノサウルスとの死闘にピクルが勝利し、その肉を頬張っている最中、彼はピクルに戦いを挑む事を行った。

 

 ピクルは理解しなかったーーしたくなかったが、本能が理解してしまった。

 

 ああ。これでこいつと別れなんだな。とーー。

 

 先に攻撃を仕掛けたのはピクルではなく、彼であった。

 彼はアームの力を最大まで起動させ、ピクルを殴る。

 

 そして、彼の部族独特の威嚇スタイルでピクルを挑発した。

 この時、ピクルの身体は最終形態のそれに近い進化をしていた。

 無論、持って産まれた天性の恩恵と云うのもある。

 

 だが、それでもピクルの脳を揺らすには十分な一撃だった。ピクルは頭を振ると彼を見詰めた。

 

 本能で理解はしていた。

 だが、芽生えた友情がそれを拒んでいる。

 

 それを否定するように彼はピクルに再び迫った。

 ピクルはそれを本能的にしゃがんで避けながら、嫌でも理解してしまう。

 

 それ故に涙した。

 

 ピクルを相手する彼もまた悲痛な叫びを上げる。だが、これは通過儀礼に過ぎない。

 

 ピクルと呼ばれる野人をより進化させるにはこの方法しかないのだ。

 故に彼は一切の躊躇いを捨て、数年以上、狩りの仕方を教え続けたこの野人へと最後の試練と云わんばかりに近付く。

 

 それに対してピクルは這いつくばる事で応える。降伏からそうしたのではない。

 自身に狩りを教えたこの異形の生物であり、恩師であり、親友である彼に全力で挑む為である。

 そして、ピクルは野人独特のスタイルで真っ向から彼に挑んだ。

 

 異常な瞬発力による体当たりにより、ピクルの突進を受けた彼はもの見事に吹き飛んだ。

 木々を薙ぎ倒し、岩盤に叩き付けられ、彼の肉体も無事ではすまなかった。

 元より持っている素質が違う。

 

 近代兵器による狩りが主な彼と原始的な力で狩りをする事を学んだピクルとでは持っている性質が違うのだ。

 

 だが、敗北した彼の胸中には喜びがあった。

 よく、ここまで成長をしたなと誉めたかった。

 

 ピクルの方は放心したように動かない。

 ここからどうすべきか、彼は迷っていた。

 

 そんなピクルに彼はリストブレイドを取り出した。

 

 ーーそして、自身の右足を切断する。

 

 それが何を意味するのかピクルは理解出来なかった。

 ただ、彼が苦痛に顔を歪めているのは解った。

 

 彼は切断した足をピクルの前に投げる。

 

 ここでピクルは本能で理解した。

 これが弱肉強食なのだ。勝てば、その肉を喰らい、強者として生きねばならぬと・・・。

 

 それを本能で悟ったピクルは地に落ちた彼の足を泣きながら食らった。

 

 そして、ピクルがその足を完食した頃には彼の姿はなく、あの飛行物体が飛んで行くのを気付く。

 ピクルの境地にあるのは寂しさであった。

 

 本当は別れたくなどない。

 

 しかし、子が母から離れるようにピクルもまた彼から離れねばならないと心で理解していた。

 

 だからこそ、ピクルは声にならぬ叫びで一声鳴き、彼を乗せた宇宙船が見えなくなるまで空を見上げ続ける。



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ワイルド・アマゾン

 新たに義足で補う彼が次に訪れたのは密林の生い茂る惑星であった。

 そこもまた原始の姿をしていたが、知能はピクルのいた世界よりも数段進んでいるだろう。

 

 しかし、それはあくまでも水準がやや上がった程度であり、そこの惑星の生活自体は未だ狩猟本能のまま、獲物を狩っていた。

 

 彼の半分は機械で補っている。

 掟にも背き、最早、彼がエルダーとなる事はないであろう。

 

 エルダー。彼の種族では最高の地位であるが、そこまで上り詰めるには敗北は許されない。

 彼はこれまで幾度と敗北を味わっている。

 それどころか、掟に背いて逃亡生活を送っている。

 

 エルダーはおろか、異端として彼は種族のつま弾きにされている。

 それでも彼は同族を憎む事をせず、ただ奴等との戦いだけを意識して己を鍛えるのみであった。

 

 

 そんな事を考えながら降り立った彼は一人の人間と出会う。

 人間は腰布だけを巻き、此方を明らかに敵視している。

 

 いや、敵視ではない。

 

 それは共に戦ったあの原人のように獲物を狩る時の目をしている。

 

 人間らしきそれは彼をしばし見据えると奇襲なども考えず、真っ正面から襲い掛かって行く。

 だが、その突進はピクルの比ではない程、遅い。はっきり言ってそのレベルは現代に毛が生えた程度であろう。

 

 故にリストブレイドで一閃して終わりだ。

 襲い掛かってきたその人間の背中を彼はリストブレイドで斬り裂き、血が吹き出す。

 

 その一撃はパワードアームで強化義手によるリストブレイドの一撃である。

 

 本来ならば、それで終わる。

 

 ーーだが、その人間はそれに耐えた。

 手応えはあった。骨まで達した筈であった。

 

 致命的である筈の一撃である。

 それをこの進化前の人間は耐えたのだ。

 

 ピクルとは違う何かを予感し、彼は身構えた。

 

 人間は自身の背中の傷に触れるとその血を舐める。

 

 そして、こう呟く。

 

「アマゾン」とーー。

 

 その瞬間、周囲に衝撃波が走り、彼もまた僅かに怯む。

 そして、見た。それが迷彩柄のパワードスーツに身を包んだ異形の生物へと進化ーー否、変身した事に。

 

 その姿は先にも述べたように爬虫類を模したパワードスーツのような姿であった。

 その手足には鋭利な鋭い爪とヒレを持ち、傷だらけのメタリックなボディーが歴戦である事を示している。

 

 後にアマゾンと呼ばれる生命体。

 

 本来は人為的に産み出されるそれは自然界のウィルスにより、独自の進化を遂げていたのである。

 無論、その人為的なアマゾンと呼ばれる種が誕生するにはこの時代ではまだ、あり得ない。

 

 つまり、これは自然が産み出した天然のアマゾンーーワイルド・アマゾンと呼ばれる生命体である。

 

 もっとも、そのような事は彼にとってはどうでも良い事である。

 ただ、それは獲物としては十分な魅力がある事には彼にも解っていた。

 

 故にこれは避けられない事である。

 

 ナルガ・プレデター対ワイルド・アマゾン。

 

 

 異なる生命体同士のぶつかり合い。

 その戦いの幕が今まさに開けようとしていた。




※ワイルド・アマゾン。

太古のアマゾンライダーである。
姿は人為的に作られたアマゾンズに近い。

ーー違いがあるとすれば、彼は自然の恩恵の産み出した天然由来のアマゾンである事。

因みに昭和ライダーのアマゾンも実は改造人間だったりする。


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新たなる進化への試み

 変身したワイルドアマゾンと彼の力はほぼ互角であった。

 違いがあるとするならば、ある程度の傷なら自然治癒してしまうワイルドアマゾンに分がある事であろう。

 

 それは肉を斬り、骨を断つ彼のリストブレイドを持ってしても致命傷には至らない。

 だからと云って、彼が不利と云う訳でもない。

 

 パワードアームで強化された義手による一撃は確実に相手を追い詰めている。

 そして、未知の相手による修羅場の数は彼の方が圧倒的に多い。

 

 加えて、彼にはワイルドアマゾンの心音が低下している事にも気付いている。

 傷は塞がろうと出血量まではどうしようもない。

 

 ワイルドアマゾンもそれを理解しているのか、一声吼えるとフラフラの状態で身構えた。

 

 そんなアマゾンに対して彼は仮面を外し、リストブレイド以外の武装を外すと両手を広げ、プレデター独特の威嚇を行う。

 

 それはかつて、彼が失ったプレデターと呼ばれる種族が敬意を持って決闘すると云う行為であった。

 ゴブリンスレイヤーのような知恵もなく、ピクルのような超人的な能力もないこのアマゾンと呼ばれる存在は彼の種族に近い。

 

 ならば、最上位の敬意を持って相手するのが、もっとも適した選択であろうと彼は判断したのである。

 

 生暖かい風が吹き、それが止むと同時に互いに突進して行く。

 

 ワイルドアマゾンの牙が彼の額を狙うが、それは彼の義手に阻まれ、ワイルドアマゾンは心臓を貫かれて吐血する。

 ワイルドアマゾンが口を緩め、力なく仰け反ると彼はアマゾンの脇腹を掴み、更に深々とリストブレイドを突き刺し、そのまま、喉元まで斬り裂く。

 

 血飛沫を上げて仰向けに倒れ込むワイルドアマゾン。

 

 そんなアマゾンに彼は呼吸を整えて、その身体をうつ伏せにするとワイルドアマゾンの背骨から頭蓋骨にかけてを引き抜く。

 

 今回の獲物は彼の誇りを思い出させる良き一戦であった。

 故に彼は久し振りに相手を生かすのではなく、死を与えたのである。

 

 こうして、彼の新たな戦利品がまた一つ増える。

 

 その後、彼は武装を装着し直し、宇宙船に戻ると早速、戦利品を丁寧に洗浄する。

 どう云う原理かまでかは解らないが、ワイルドアマゾンの頭蓋骨は人間の骨と変わらぬ形となり、それがどう云う仕掛けなのかも彼の興味を惹いた。

 

 そこで考えたのが、ワイルドアマゾンの細胞がプレデターである彼の細胞と融合するとどうなるかであった。

 上手くいけば、彼もプレデターの身でありながら、アマゾンに変身する事が可能かも知れぬと考えたのである。

 

 その研究に彼は没頭し、その惑星にしばし、滞在し続けた。



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